Monster HunterXX 黒龍伝説之巻 伝説の章 (マスクまる)
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第一章 運命の黒龍

以前暇つぶしに書いていたものをあげてみようと思います。
完結しきっていないので、時間のある時に加筆しながらあげていこうと思います。


 集会酒場。 

龍識船の一角にあり、多くのハンターが集う場所。龍歴院前集会所に代わる拠点である。

ここでは、『G級』と呼ばれる高難度のクエストを受けることができる。

 クエストは、難易度ごとにランク分けされていて、『下位』・『上位』・『G級』の

3つのランクがある。G級は、1番難易度が高く、実力の認められた

限られたハンターしか、ここへ来ることさえできない。

「あぁ、疲れた。G級ってホントきついわ。」

クエストから帰ってきた大剣使いのハンターの少女はそう言うと、椅子に座りゴクリと水を飲み干す。

 すると、仲間のチャージアックス使いの少年ハンターがいう。

「だから言ったじゃないか。今まで何とかなってきたからって、今回も大丈夫だとは限らないって。」

 G級のクエストは、実力のある凄腕ハンターでも、油断すれば危険だ。

それほどに難易度が高いのである。「いつもこうだから」というのは、通用しない。

「それに…、」

少年ハンターは続けた。

「どんなに実力があっても、いつやられてもおかしくないだろう。」

「ハル、分かったから。そんなに熱くならないでよ。」

ハルと呼ばれたハンターは、かなり強いらしい。椅子に座っている彼女に比べて、疲れた様子はない。

「リンは、楽観的すぎだ。もう少し先のことを考えたらどうだ。」

彼女の名前はリンというらしい。確かに、彼に比べれば、かなり疲れている。

ガンガン攻めて反撃をくらうタイプのようだ。

「ハルは、頭固すぎだよね。」

彼女が馬鹿にしたように言うと、「そんなことはないし、お前には言われたくない。」といいかえした。

「まあ、俺はお前の力は認めている。そうでなきゃ2人では、まずG級には行かないからな。」

「ハル。それは、私が強いってことかな。ねぇねぇ。」

超ムカつく。こいつは褒めると調子に乗るタイプだったことをすっかり忘れていた。

「ま、油断はしないでほしいけどな。」

とりあえずこう言っておけば、それ以上悪化しないのでとりあえず大丈夫だろう。

 いつも通り、クエストから帰ってくると、マスターから声がかかった。

「マスター。何かありましたか。」

マスターは、いつも酒場の様子を見てまわっている。

 かつては、龍歴院とハンターズギルドを渡り歩いた敏腕ハンターで、今は、酒場の経営をしながら、ハンターズギルドの依頼をハンター達に仲介しているのだ。

「じつは、ラオシャンロンの目撃情報が入ったの。」

「ラオシャンロンですか。」

 ラオシャンロンは、古い呼び名で「老山龍」とも呼ばれる古龍。

棘だらけの甲殻、長大な首と尾、頭に生えた一本の角、そして何より圧倒的な巨体が特徴。

歩くだけで大地を揺り動かし、自然物・人工物を問わず周囲にある全てを崩落させるその姿から「歩く天災」の異名をとり、また「動く霊峰」とも称される。普段は四足歩行だが、尻尾を支えにして後ろ足で立ち上がる事もあり、その様子は誰もが思わず見上げる程。

鱗の一枚でさえ飛竜の甲殻に匹敵する頑強さを誇り、悠久の時を経て作られた甲殻は岩盤の如く堅く分厚いという。

また、これ等の素材には特殊なエネルギーが宿っているとされ、老山龍の素材から作られる武器は、龍を相手取るとその破壊力を増すと言われている。比較的古くから一部の地域に定期的に出現し、ほぼ一定のルートを巡回するように闊歩する姿が確認されているモンスターだ 。

「知っての通りだけど、そのままにしたら被害が出るかもしれないから撃退を依頼したいのだけどいいかしら。」

「俺はいいですけど。」

「わたしもいいよ。」

リンが彼の後に続いた。それを聞いてマスターは、頷いて「じゃあ、お願いするわ。」といってクエストを紹介してくれた。

 すると、クエストの受付係が、ハル達にアドバイスをくれた。

「ラオシャンロンは存在については一般にも広く知られている古龍ですが、生態は多くの謎に包まれています。くれぐれもお気をつけて。」

「ああ、ありがとう。」

 

 とは言ったものの、さすがに2人で行くのは危険だ。

ハンターズギルドや各街では過去に確認されたラオシャンロンの徘徊ルート上に砦を建造している。しかし、ラオシャンロンは基本的に目の前に障害物があるだけではルートを変更したり引き返したりすることは無く、その障害物を持ち前の体躯を活かした体当たりなどで破壊し、強引に進行を続けようとする。

そんなモンスターを俺たちだけでは攻撃することさえままならないだろう。

悩んでいる彼らに、声をかけたハンターがいた。

「何か悩んでいるようだな。俺でよければ力になろう。」

振り返って声の方を見ると、そこには見覚えのある男が立っていた。

「久しぶりだな。元気にしていたか。」

声の主は、ギルドで知らない人はいないといわれる、凄腕のボウガン使いのハンターで、ハルの師である『光彩の弾丸』の異名を持つユウキであった。

「ユウキさん。お久しぶりです。」

「ユウキって、あの。光彩の弾丸の。」

リンが驚きながら質問してきた。

「ユウキさんは、俺がギルドに入ってすぐの時に、お世話になった人だ。要するに師匠だ。」

「ハルが世話になっているようだな。」

ユウキが言うと、「いえいえ、こちらこそ頼りにしています。」と、リンは慌てた様子で言った。

「なんでここに?」

「いや面白いものをドンドルマから依頼されてな。

『古龍の書』というものだ。いまはこれの解読にここに来たんだ。」

「なるほど。」

「ところで、何か悩んでいたようだが。」

「実は…。」

ハルは、ユウキに事情を話した。すると、「私も手伝おう。」と言ってくれた。

「しかし、ラオシャンロンか。手ごわい相手だな。3人では、少し厳しい気もするな。」

「そうですよね。」

「ラオシャンロンというと出現が確認された後、しばらくするといつの間にか姿を消している謎の多いモンスターだったな。」

ギルドでもこの不可解な出没事例には首を捻っているが、山腹に鉱物精錬所が建設された際に地下から地震と共にラオシャンロンが現れたという記録から、

『普段は地中に潜っており、定期的に地上に現れては縄張りを闊歩しているのではないか』と推測している。定期的に己の縄張りを徘徊する姿が確認されており、当然ルート上に人間の住む村や街があろうとラオシャンロンがそれを気にすることなど無く、そのまま通過しようとするため、放置しておけば甚大無比な被害が発生してしまう。それ故にハンターズギルドではラオシャンロンの出現が確認されると、非常事態宣言を出して地域住民に警戒や避難を呼び掛ける。

そして特にラオシャンロンの接近が危惧される地域にはハンターを派遣し、

近場の砦を拠点として撃退を目指す。

しかし、歩みを進めるだけで大きな風圧や震動が発生し、無意識に振られる尻尾ですら凶器と化し、明確な敵意を持たないとしても、動作の一つ一つが外敵をことごとく蹴散らす巨龍の進行を食い止めるのは、熟練のハンターやパーティであっても至難の業とされる。

ココットの英雄が遺した伝説の一つに「巨大龍を討ち果たした」というものもあるが、

あくまで伝説上の逸話である。

巨大龍がラオシャンロンである確証もない。

「面白そうな話をしているわね。」

「あ、ヒトミさん。来てたんですね。」

ヒトミと呼ばれた弓使いの女性ハンターは、ユウキと同じくとても有名なハンターで、とてつもない強さを誇る、『弓撃の女王』の異名をもち、ほかのハンターから憧れのまなざしで見られるハンターである。

「あら、リン久しぶりね。」

リンとヒトミさんは知り合いらしい。

「なんだ。知り合いか。驚いた。」

ユウキさんは、知らなかったらしく、少し驚いたらしい。

「ラオシャンロンなんて久しぶりじゃない。たのしみだわ。」

ユウキさん、さらにヒトミさんまでパーティに入った今なら撃退はしやすいだろう。

ちなみに、ラオシャンロンにまつわる逸話として、以下のようなものが語られている。

とある砦の近辺にラオシャンロンが出現、ハンターを中心とした防衛戦の末、ラオシャンロンは撃退された。しかし、その防衛戦に参加したハンターや、その様子を観察していた一部の人間や竜人族から、撃退されたラオシャンロンの様子がどうもおかしかった、という報告が幾つか挙がった。

「まるでその場には居ない何かに怯え、それから逃げるように去って行った」と。

この事からラオシャンロンが出現する理由の一つとして、

「強大な力を持った”何か”から逃げている」という説が

“ごく一部”で語られるようになった。

しかし、この説について肯定的な意見は少ない。

山のような巨体を誇り、歩く天災とまで呼ばれるラオシャンロンが恐れをなす存在など、

ある筈が無いという意見が大多数である。

実際に天災ですら怯えて逃げ出すような者が存在するとなれば、それこそ伝説に語られる黒き龍くらいのものだろう。

現在ではほとんど信憑性の無い噂話として語られる程度だが、

一部の学者の間では、黒龍伝説の冒頭部と繋がりが見られるとの見解もあるが、

結局のところ真相は定かではない。

 

「そろそろ準備を始めましょう?早くしないとラオシャンロンが消えちゃうわ。」

「ふっ、そうですね。」

ヒトミさんの言葉に全員が頷き、ラオシャンロンの撃退に向け、準備を始めた。

 

砦へとついた彼らは、強大な敵との戦いを繰り広げようとしていた。

 




やっぱり、変なとこが所々あって修正が…
コリャヒデェナ


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第二章 伝説再臨

暇つぶし作品第二話です。


 古龍の撃退の依頼はかなり前からやっている。その中には、クシャルダオラや、テオ・テスカトル、オオナズチ、シナト村で災厄と恐れられる、シャガルマガラとの戦いもあった。だが、リンにとってラオシャンロンとの戦いは初めてだ。ハルもたった一度しか対峙したことがない。それもはるか前の話で、ベテランハンターについていき、戦った程度である。

 今ハル達が向かっている防衛砦には、巨龍砲や固定式拘束弾、移動式大砲やそのレール、吊り橋が建設されている。

中でも巨龍砲は、"最終兵器"とも呼称される強力な兵器で、その名の通り、龍属性をエネルギーとして用いる大砲である。数年前、あるハンターが、ギルドと共に作成したものだという。

 大都市ドンドルマへのクシャルダオラの接近と襲来が確実視され、ハンターは巨龍砲建造のために、筆頭ハンター隊リーダーの師匠の設計および指示の下で奔走することとなったという。そしてこの巨龍砲は、最も重要な存在として扱われており、 かつて危惧通り、ドンドルマを襲ったクシャルダオラとの最終決戦において筆頭ハンター達と協力しながら、この巨龍砲でクシャルダオラを撃退することができたという。

(そんな大砲を造るのは、大変だっただろうな。)

ハルは心の中でそう思った。

 砲身は天空山で採掘できる良質な鉱石で作られており、発射に必要な龍属性エネルギーは、獄狼竜の素材を利用しているらしい。ドンドルマにある戦闘街では、撃龍槍と対面になるように設置されているらしい。砦に新設された巨龍砲はエリア1の最深部に1門のみ設置されている。    

大型モンスターの頭が入りそうなほど大きい口径に金の塗装と、存在感は抜群で、実際に並べてみるとわかるが、そのサイズは大型古龍の全長を上回り、口径の巨大さから想像される通り、発射される大砲の弾自体も途轍もない大きさであり、直径は実にハンターの身長程度。発射後は、冷却を必要とするため、連続して撃つことはできないが、砦にあるものは、発射後の冷却時間は5分とドンドルマのものより短縮されているらしい。

起動方法が特殊であり、"高密度滅龍炭"というアイテムがないと発射できない。ハンターがこのアイテムを入手していない場合は起動できないのである。

「だから、砦にあるボックスから高密度滅龍炭を取り忘れることがないようにな。」

ユウキが

また、クエスト開始後一定時間経ってから使用許可が降りるため、このタイミングが来るまでは、撃つことはできない。巨龍砲の弾は強力な龍属性を思わせる赤黒い稲妻と光を纏っており、着弾時には大型モンスターを覆い尽くす程の大爆発が発生する。

人間が扱える兵器として、これほどの迫力を持ったものは未だかつてないだろう。

これまで最強の兵器として名を馳せていた撃龍槍以上の最終兵器として期待できるという。

文句なしで史上最強の一撃であろう。

なお、着弾時に巻き起こる大爆発でハンターは、ふっ飛びはするがダメージはない。対巨龍爆弾と同様である。

移動式大砲は、侵攻ルートに沿う形でレールが敷設されており、これら防衛設備を各エリアで運用できる。トロッコの上に大砲が積んであり、その名の通り移動できる大砲で、

戦闘街の最終防衛ラインであるエリア2を囲むようにレールが設置されている。

大砲の左右にある"移動スイッチ"を押すことでその方向へ車両が移動する。

また、搭載されている大砲も通常の物とは異なり、10発まで弾を装填でき、装填即発ではなく、スイッチで任意のタイミングで発射できる。

弾は車両下部の2箇所の穴から装填し、装填数が増えていくと車両上部にある装置の色が変わる。

2発以上装填した状態で発射すると装填されている分を連続して発射する。

前までは、なかったのだが、新たに砦にも移動式大砲が配備されている。

今回は前衛砦のあるエリア1、本砦のあるエリア2にそれぞれ1門ずつ設置されており、

トロッコの走行中も砲弾を発射できるように改良されている。

「砦の設備も進化しているんですね。」と、リンが呟く。

「そうだな。これからも、どんなモンスターが現れるか分からないからこそだろう。」

ユウキの説明に皆が頷く。

 これまでも、新たなモンスターが出現するということは度々あった。これからどんなモンスターが現れるか分からないということがなければ、今までの設備でよかったのだろう。

「砦についたわ。皆行くわよ。」

ヒトミはかなりテンションが上がっている。久しぶりのラオシャンロンだからだろう。

「まあ、無理はしないように頑張ります。」

ハルが言った。

「そうね。無理のない程度に、ね。」

「ラオシャンロンは、まず前衛砦に侵入して、突き進み、最終防衛ラインの、本砦に侵入する。ラオシャンロンは、砦を破壊する可能性もあるので、それまでに撃退しなければならない。振動で、砦の一部が崩れ落ちてくることもある。注意して戦ってくれ。」

「では、いくぞ。」

「「はい。」」

こうして、彼らは、ラオシャンロンの迎撃に臨んだ。

 砦に入ってしばらくすると、ラオシャンロンが現れた。「これが、ラオシャンロン。」

リンは驚いているが、そんな暇はない。

ハルは、リンにそういうと、チャージアックスを構えた。

 しかし、ラオシャンロンはどんどん侵入してくる。

「くっ。こんなに手ごわいとは。」

ハルはそう呟くと、チャージアックスを展開し、片手剣から、斧へと変形させ攻撃を仕掛ける。

 リンはというと、少しの間その大きさに呆然としていたが、ふと正気を取戻し、攻撃し始めた。が、さすがはラオシャンロンである。歩くたびに風を起こすためまともに攻撃できないのである。

「こんな風じゃ攻撃どころじゃないわね。」

だが、リンは、エリアルというスタイルを使っている。ラオシャンロンの足を踏み台にすることで、風圧を食らうことなく攻撃を仕掛けることに成功したのである。

一方。ユウキとヒトミは、遠距離の武器を使っているので、遠くから狙っていた。

しかし、ユウキが「ヒトミはエリアルだろう。近くからでもいいんじゃないのか。」

とかいうから、ヒトミは、「遠くから狙った方が安全じゃない。」とか「こんな強いやつで遊んでいる暇はないわ。」とか言っている。でも、かなりのスピードで攻撃しているので案外相性がいいのかもしれない。

「ユウキそろそろいいんじゃない。」と彼女が言うと、「ああ。そうだな。」

ユウキはそう言って巨龍砲の方へ向かった。そして、ラオシャンロンに攻撃しているハル達に向かって「巨龍砲を撃つ。少し離れた方がいい。」

ハル達はユウキの声を聞いてラオシャンロンから離れた。すると、轟という音とともに、赤いドームが現れ消えた。すると、「ラオシャンロンを追って本砦へ向かうぞ。」と、いう声が聞こえ。彼らは、ラオシャンロンを追い本砦に向かった。

 本砦に入ってすぐラオシャンロンは見え始め、すぐに攻撃を始められた。

「そろそろ狩技撃ちますか。ハァァァ狩技っ『ムーンブレイク』」

リンは、そう叫ぶと空中に飛び上がり、大きく体をひねらせラオシャンロンの頭部に大剣を叩き付けた。この技は、武器の重量を利用するため重みを殺さずに有効にダメージを与えることができるのだ。

「決まったわね。」

リンは満足そうに次の攻撃に移った。

それを見て、ハルは「俺も行くか」と、呟き狩技を放つ。

「狩技『チェインソーサー』」

斧の盾の部分を高速回転させ、多段ヒットさせ切り刻む技でエネルギーを大量に溜められる。そして、そのまま次の攻撃にうつることができ隙が少ないのが魅力である。

「ここなら大砲をあてられる。」

ユウキの助言をもとにハルは、急いで内壁を登り、大砲に弾を装填した。

そして、スイッチを押す。

カァァァーンという音が鳴り響く。

すると、すぐに大砲が発射されラオシャンロンの背中に命中した。

オォォォォォという唸り声をあげるが侵攻が止まる気配はない。

そろそろ撃龍槍を当てられる距離だ。ハルは、撃龍槍のスイッチに向かった。

「ハル、危ない離れろ。」そう叫んだのはユウキだった。

その声に気付いたハルは、すぐそこから離れた。

そして、すぐに今いた場所をラオシャンロンが頭で薙ぎ払っていた。

ユウキの声がなかったら今頃巻き込まれていただろう。

そこに、リンがやってきて、ハルに声をかける。

「ハル、大丈夫だよね。」

「ああ、大丈夫だ。」

ユウキさんは本当に凄い。ハルは、そう思った。ユウキさんは、彼らに的確な指示をだす。これは、ハルにはマネできないベテランハンターの経験故だった。

「ハル、大丈夫なようだな。俺が時間を稼ぐ、その間に起動するんだ。」

ユウキは、そう言うとヘビィボウガンを担いで吊り橋に向かうと、なんとそこから飛び降り、ラオシャンロンの背中に飛び乗った。そして、対巨龍爆弾を置き飛び降りた。

そして、爆発と同時に「今だ、起動しろ。」という掛け声。

急いでスイッチを起動する。

ドドドドドドドドドドッ

撃龍槍が、ラオシャンロンの体を抉る。

ウォォォォォォォォォォッ

呻くラオシャンロン。

そして、そのままラオシャンロンは、砦から逃げて行った。

「やった、のか。」

「ああ、撃退、できたぞ。成功だ。」

ユウキとハルは、ほっとした様子で砦を後にする。

「疲れた、半端じゃないわ。」

「そうね、でもいい経験になったでしょ。」

リンとヒトミは、いつも通りである。そんなかんじで、みんな砦を後にした。

その後、一匹の飛龍が舞い降りたのを見たものも、

ウォォォオォオォォンという

静寂の中、砦に響いた巨大龍の断末魔を聞いたものは、誰一人としていなかった。

ハル達は無事に集会酒場へと帰還した。

この時伝説に語られる黒龍との運命の戦いに巻き込まれているのを、

ハル達は、知る由もなかった。

「そなた達は、知らなければなるまい。伝説の黒龍を。運命をかけた戦いを。」

 

 キョダイリュウノゼツメイニヨリ、デンセツハヨミガエル

   巨大竜  の 絶命 により、 伝説 は 蘇る




誤字多いなぁ…


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第三章 よみがえる黒龍伝説

暇つぶし作品第三話です。


「ラオシャンロンの撃退、見事だったわ。」

マスターは、そんな風に彼らを励ました。

「いえいえ。」

ハルは、一つ気になったことがあった。撃退されたラオシャンロンの様子がどうもおかしかった、という報告が幾つか挙がったことだ。

「まるでその場には居ない何かに怯え、それから逃げるように去って行った」と。

『ラオシャンロンは凶悪で最凶の"何か"から逃げている……』

ラオシャンロンは「なにかに怯えるように逃げて行った」らしい。

実際にラオシャンロンを撃退したとき、他の古龍とは明らかに様子が違っており、本当に得体のしれない何かに怯えて逃げていくように見えた。

その「何か」とは未だに不明だが、その陰には生ける災いと呼ばれた龍の名がちらつく。

その名は運命の戦争ないし避けられぬ死を意味し、古くから多くの民話や伝承に語り継がれる、この世に災厄と滅亡をもたらすとされる「伝説の黒龍」。

「ユウキさん。少しいいですか。」

「ああ。構わないが。」

「ラオシャンロンのことなんですが。」

そういうと、ユウキさんは、自分が知っていることを話してくれた。

 ラオシャンロンの撃退時の行動についてや、『黒龍伝説』との関わりについてである。

黒龍伝説とは、「キョダイリュウノゼツメイニヨリ、デンセツハヨミガエル」の一節から始まり、子どもたちが謳うわらべ歌である。

そして、代表的なものは、

数多の飛竜を駆遂せし時

伝説はよみがえらん

数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

彼の者はあらわれん

土を焼く者

鉄【くろがね】を溶かす者

水を煮立たす者

風を起こす者

木を薙ぐ者

炎を生み出す者

その者の名は ミラボレアス

その者の名は 宿命の戦い

その者の名は 避けられぬ死

喉あらば叫べ

耳あらば聞け

心あらば祈れ

ミラボレアス

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

彼の者の名を

という、この形態である。

なお、この伝説は地方によって大きく異なっており、

隣り合った地方でも節も詩もまるで違うことさえあるという。

この龍に関する伝説は遥か太古の時代より語り継がれていると思われることから、

"龍"と呼ばれる生物の始祖の姿を最も色濃く残す古き種族ではないかとも推測されている。

しかしその事実を知る者は世界的に見ても非常に少ない。

ハンターズギルドの関係者でもその存在を信じていない者がほとんどである。

と言うのも、「黒龍ミラボレアスはこの御伽話の中の存在でしかない」というのが一般常識だからである。

この詩は、数多ある黒龍伝説のほんの一例に過ぎない。これを念頭に置くと、グラン・ミラオスの引き起こした災厄こそが、タンジアの地方一帯に伝わる黒龍伝説と考えることもできる。

「ラオシャンロンが撃退された時、何かに怯え逃げるように去っていく様子を見せた。もし本当に何かから逃げているのだとすると、撃退された場合でもその何者かにとどめを刺されてしまっている可能性は…」

「否定できない。」

「そういうことなのか。でも、本当に黒龍なんているんですか?」

黒龍についての逸話は、いくつもある。

黒龍とシュレイド王国

その昔、世界に君臨し栄華を誇った大国「シュレイド」を滅ぼしたのもこのミラボレアスと推測されている。

黒龍との戦争によりシュレイド王国は文明ごと滅亡、東西に分裂してしまい、

中心部の古城はミラボレアスの住処となった。

王国の象徴であり中心であった城を乗っ取られた人々は

国を捨てるという選択をせざるを得ず、シュレイドの地を去った。

結果、かつて栄華を誇ったシュレイドは黒龍の翼下と成り果て、今では見る影も無いという。

現在では古城を中心とした旧王都は生命の息吹すら感じぬ廃墟と化しており、不気味な暗雲と空模様が異常なまでに重苦しい空気を漂わせるのみである。その異様な雰囲気からか、それともまた異なる要因からかは不明だが、旧王都一帯は強大な龍すらも近づくことを避けているらしく、付近ではこの地に踏み入ったと思しき生物が引き返してゆく姿が度々確認されるという。

 このような状態であることから、シュレイドを訪れるものは殆ど皆無であるが、過去には黒龍を討ち払うべくシュレイド城へと赴いたハンターもごく少数ながら存在したという。

黒龍征伐を期して出撃したハンターはいずれも名高い凄腕の狩人であったのだが、その殆どは討伐に向かう姿を最後に、消息を絶ち、そのまま謎の失踪を遂げた。当初、ギルドは辛うじて生還した者達から事情を聞こうとしたが、何故か全員とも証言を拒否、断固として黙秘を貫いた。故に、シュレイド城の不可解な消失現象は現在も解明されておらず、謎のままである。

 また、シュレイド城から生還したハンターの中には、何のモンスターか分からない黒い鱗や爪といった素材を「黒龍から剥ぎ取ったものだ」と主張して持ち帰って来た者もいたという。彼らは素材を工房に引き渡すと、それを元手に武具として生産してもらうことで、己の勲章の類としていた。しかし、生産された武具を身に着けてしばらくすると、黒龍の声や視線を感じる、自身の腕が黒龍の腕に見える等と主張するハンターが出始め、遂には行方不明になって消息を絶つ者や謎の狂死を遂げる者まで現れたという。古い文献などによると、黒龍の関わるそれらの武具は、ことごとく良からぬ伝承や噂がついてまわる。

片手剣、槍、大槌の三振りは「邪龍の神器」として恐れられており、

大剣を掲げし者は永遠に古龍と戦う宿命を強いられ、

太刀が刻んだ傷は100年経とうが癒える事は無いといわれる。

防具についても、前足を常に黒龍に捕まえられているような感覚が襲う、

加工に携わったものが次々不幸に見舞われるなど、武器と同様におぞましい逸話が残されている。

水晶でできているとされる「黒龍の眼」は、三大宝玉の一つとして数えられていることでも有名だが、時にはそれすら反射する光を見るだけでも怖気が走る"呪いの至宝"と称される。未解決の失踪事件を含め、あまりにも不吉な噂や出来事が多く相次いだことも重なり、各地方のギルドは黒龍に関するありとあらゆる情報を、徹底的な極秘事項に分類することを決定。

武具の生産レシピは原則非公開とし、ミラボレアス関連の依頼は表向きに発表する事を固く禁じた。

だが、更なる高みを望むハンター達の間でミラボレアスの存在は

「ハンター人生の究極の目標」として捉えられているという話もあり、どこまで効果があるのかは疑わしいのが現実である。

「もし、本当にいるとしたら、戦わねばならない。いや必ず戦うことになる。」

古語で"運命の戦争"を意味する名を持ち、古より語り継がれる伝説の黒龍。

闇の如き漆黒の身体は一目で恐怖を植え付け、その邪眼はあらゆる生物を威圧し、畏怖させるという。

存在そのものが伝説化しており、一般市民はおろかハンターたちからすらも御伽噺の中の存在と見做されている。

「黒龍ミラボレアスは空想上の怪物」というのがほぼ一般常識と化しており、

その存在に関して深く追及する者もほとんど存在しない。

ギルドの紋章にはこのミラボレアスが描かれているが、

「心構えを表しているんだな」などと考え、誰も謎に思わないのだろう。

また黒龍に関する童歌であり「黒龍伝説」についても各地に存在しているらしく、どれが真の物かも定かではない。

◦ただし、ギルドの最上部に位置する大長老やドンドルマの大臣、そして謎に包まれた赤衣の男など、

黒龍が実在することを知り得る人物はごく少数ながら存在している。

しかしながら彼らもその情報を住民やハンターに大々的に公表することはしておらず、

実在が正式に確認されてから現在に至るまで、黒龍の存在が公になったことはない。

ハルは、誰かの視線を感じ、振り返ると、赤い布に身を包んだ男が立っていた。

「伝説は甦ったのだ。運命には、抗うことしかできぬ。やつを、黒龍を。生かしておくことは、できぬのだ。」

この言葉に彼らは、ただ茫然と立ち尽くしていた。

 



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第四章 伝説の黒龍

暇つぶし作品第四話です。


「この世界の全土をわずか数日で焦土へ変える邪悪な者、黒龍『ミラボレアス』それが

やつの名だ。」

そう言ったのは、赤い布をまとった男だった。

ユウキさんから聞いた話をふと思い出した。シュレイド王国の創始者が命を落とした時、何処からか現れ黒龍伝説を詠じた詩人がいたらしい。その詩人は赤衣をまとっていたといわれている。

(まさかな、そんな筈はないよな。)

ハルは、首を振り想像を打ち消す。

「わたしは、ただの詩人だ。何も警戒することはなかろう。」

「なぜ、あなたは、伝説の黒龍のことを、さもいるかのように?」

「黒龍はおるのだ。かのシュレイドとかいう王国を滅ぼしただろう。」

「なっ。」

その言葉に、四人は絶句する。今、目の前にいる男は、黒龍はいると断言したのである。

(まさか、この人が黒龍伝説を唄ったのだろうか。)

それはミラボレアスがシュレイドの地に舞い降りる以前に唄われたものらしい。

繁栄の頂点を極めた王国はこの運命の戦争によって滅んでしまうだろう…。と言う、黒龍によって王国が滅亡することを示唆した内容である。

 現在の西シュレイド、東シュレイドを統括した国であったというシュレイド王国を、滅ぼしたと言われている、大いなる竜の災厄。

 その昔、栄華を極めたシュレイドを滅亡にまで追いやったと言われる大災厄の仮称。同時に東西シュレイド地方の分断の原因とされている。

 シュレイド地方。かつてこの地方には、世界に君臨した大国シュレイド王国が存在していたが、およそ千年前に起こった何らかの原因によって王国は分割され、現在では西シュレイドと東シュレイド、その中央に位置する、王国分裂時に放棄された旧シュレイド王城跡に分けられている。

王国分裂後の現在では東西相互の交流はほとんど無いが、これは旧シュレイド城が中立地帯に定められており、東西両国が領有権を巡る戦を起こさないことが原因であるらしい。

旧シュレイド城跡には、晴れる事の無い不気味な暗雲に包まれているのも、この事象が深く関わっているのではないかとあらゆる分野の学者や研究者達に推察されている。

しかし、詳しい事柄は何一つ分かっておらず、この事象に関する古文書などもほぼ皆無であることから、この件を、「大いなる竜の災厄」と呼称している。

 「伝説の黒龍が、本当に存在しているとは。しかし、それを知っているあなた和何者なんだ。」

ユウキが、質問する。しかし、「私は、ただの詩人だと初めに言いましたよ。」と、軽く受け流されてしまい赤衣の男はどこかに消えてしまった。

「あの男、本当に何者なんだ。」

ユウキが言った。

「気になりますね。」

ハルが続ける。

「『運命の戦い』か。」

過去には黒龍を討ち払うべくシュレイド城へと赴いたハンターも

ごく少数ながら存在したらしい。

「黒龍征伐を期して出撃したハンターはいずれも名高い凄腕の狩人であったのだが…」

ユウキが言葉を濁した。

「その殆どは討伐に向かう姿を最後に消息を絶ち、そのまま謎の失踪を遂げた。」

「そんな…。」

一同が絶句した。

当初、ギルドは辛うじて生還した者達から事情を聞こうとしたらしいが、

何故か全員とも証言を拒否、断固として黙秘を貫いたとのことだった。

「できることをしておくのが得策だろうな。」

「そうね。」

ヒトミが言った。

「できるだけ装備を整えておくとしよう。」

「はい。」

ユウキの言葉に皆が同意した。

「とりあえず、マスターに報告しておこう。」

「俺が行ってきます。」

ハルが言った。

「ああ、頼んだ。」

こうして、ハル達四人は、運命の戦いに巻き込まれていった。

 

 

「…うまくいったのかしら?」

「ああ。」

その少女は楽しそうに叫んだ。

「さあ、私たちの宴を楽しみましょう。」

その純白のドレスを身にまとった少女は闇の中に消えた。

 

 

 

 

謎の赤衣の男が現れてから、どのくらい経っただろうか。

それからというもの、赤衣の男は一度も姿を見せていない。

最近は、リンも腕を上げ、一人でG級クエストをクリアするという成長ぶりである。

ハル自身もリンに越されまいとユウキの指導の下、日々特訓を行っていた。

ユウキは、ユウキの指導の合間にミラボレアスについて古文書を調査していた。

その結果、唯一、灼熱のブレスを吐くという点が各資料の中で

散見されていることが分かった。

研究家のなかでは、巨大な火球であるとも、熾烈な粉塵爆発であるとも、螺旋状の火炎放射であるとも言われているが、どれが真に正しい特徴なのかは全く分かっていないらしい。

 それらについて共通する点は唯一つ、一撃であらゆる生命を塵も残さず消し飛ばす、

極悪にして無慈悲な破壊力を秘めているとされることのみである。その他、古文書などにはこのモンスターの生態らしきものが書かれており、

それによると、倒した獲物の亡骸を戦利品としてねぐらに持ち帰るという。

兵士やハンターの場合は武具ごと持ち去り、それらの武具はミラボレアスの体温で徐々に融解し、 鱗に染み込んでいき、己が外殻を成すとされる。

「だから、だからあいつは…」

「ユウキさん、あの…」

「ああ、すまない今いく。」

ユウキは、ミラボレアスの討伐を心に決めたのだった。

 

「ユウキさん、マスターが大至急龍識船本部へ来るようにとのことです。」

「わかった。」

ユウキは、龍識船本部へ向かった。

(胸騒ぎがする。なにか大変なことが起こるのではないだろうか。)

「まさかな。」

ユウキが龍識船本部に着くと、なにやら騒がしい様子であった。

「ユウキよく聞いて。シュレイド城跡付近で黒龍が目撃されたわ。」

「まさか…。」

マスターの言葉に動揺を隠しきれないユウキ。

「そう。『黒龍ミラボレアス』よ。」

「ハルたちにも、伝えておいてくれないかしら。」

マスターが言った。

「分かりました。」

ユウキはマスターにそう伝えると、足早にハル達のもとへ向かった。

 

「皆よく聞いてくれ。」

ユウキのその言葉に一同が真剣なまなざしになった。

「シュレイド城跡でミラボレアスが目撃された。」

「本当に…。」

リンのその言葉にハルが続けた。

「こうなった以上討伐しなくてはならない。」

「行くのね?」

ヒトミの質問に答えるようにハルは「ああそうだ。」と答えた。

四人がクエストカウンターの受付に話すと、もうすでに

クエストが来ているとのことだった。

「このクエストが届いておりました。」

「これは…」

そのクエストには、こう書かれていた。

 

『人望厚い国王

伝説の黒龍…まさか本当に存在していたとは。

城内に用意した各種設備を活用し、何としても奴を

撃破してくれ。国の命運は君たちにかかっている。頼む!』

という内容だった

「これで、ミラボレアスの存在は確かなものになったというわけだ。」

「行こう。」

四人はミラボレアスの討伐に向け動き出した。

 

 

「そろそろかしら。」

白いドレスを身にまとった少女が、嬉しそうに幼くはしゃいでいた。

「そうですな。あと少し…」

赤衣を身にまとった男が言った。

「ですが…」

「あなた様の出番はまだで御座います故。」

静寂に二人は消えた。

 



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第五章 宿命の黒き翼

暇つぶし作品第五話です。
前回のものに入れてしまおうと思ったのですが、そのままにしました。
(面倒くさいとかそういうんじゃないよ)
というくらい短いのです。お許しください。


 伝説の黒龍

メインターゲット:ミラボレアスの討伐または撃退

 

「このクエストは撃退でもクリアになるみたいですね。」

リンが言った。

「そのようだな。」

少し険しい表情でユウキが言った。

「ところで、ポッケ村にある巨大な剣を知っているか?」

「ええ、まぁ。」

それは、『黒いかけら』や『黒い塊』という禍々しい雰囲気を醸し出す謎の多い素材を

削りだすことの出来る大剣で、

時間を置けば削った部分が修復してしまうとのこと。

採掘の際は古龍骨が必要らしい。

ミラボレアスの鱗か甲殻が剥がれたものと推測されている。

「それが、どうかしたんですか。」

「あれは、かつてドンドルマの大長老がミラボレアスと戦った剣といわれている。」

「そして気になるのは、あの赤衣の男だ。」

あの男は、あれっきり一度も現れていない。

何が目的だったのか、それすらわからない。

その存在は「伝説」と呼ばれ、数多の飛竜と老山龍を駆逐した者の前に現れるとされているミラボレアス。

四人はその「伝説」と対峙する。

 

シュレイド城上空

黒い霧に覆われた死地シュレイド城。

その霧は、すべての生物を拒絶する。

そして、シュレイド城にすまう伝説 ミラボレアス。

その名は「運命の戦い」と「避けられぬ死」を意味する。

 

 

「数多の飛竜を駆逐せし時 伝説はよみがえらん」

 

『数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時』

 

彼らが目にした伝説は。

 

『彼の者はあらわれん』

紫がかった黒色の体。

 

『土を焼く者、鉄(くろがね)を溶かす者』

 

大きな翼と長い尾。

 

『水を煮立たす者、風を起こす者』

 

邪龍と呼ばれた災厄。

 

『木を薙ぐ者、炎を生み出す者』

 

数多の飛竜と老山龍を駆逐した者の前に現れるとされている。

 

『その者の名は ミラボレアス その者の名は 宿命の戦い』

 

伝説の黒龍。

 

『その者の名は 避けられぬ死』

 

かつてシュレイドを滅ぼした大いなる災い。

 

『喉あらば叫べ 耳あらば聞け 心あらば祈れ』

 

ミラボレアス

 

『ミラボレアス 天と地とを覆い尽くす』

 

『彼の者の名を 天と地とを覆い尽くす』

 

『彼の者の名を』

 

『彼の者の名を』

 

「いくぞっ!」

 

「おう!!」

 

彼らは、黒き伝説に戦いを挑んだ。

天を覆い 地を覆い

全てを拒絶し滅亡の運命に巻き込む伝説

伝説と四人の戦いが始まった。

 

○                         ○

 

最初に切り込んだのはハルだった。

ミラボレアスの懐に入り込む。

オォォォ

ミラボレアスの咆哮はじつに強力なものだった。

「くっ。」

「なんだと。」

「ただ咆えただけでダメージが。」

「ハル、大丈夫?」

リンがハルに言った。

「ああ、大丈夫だ。」

「ハルッ、大丈夫か!」

ユウキが叫んだ。

「はいっ、大丈夫です。」

「回復は、タイミングを見てするんだ。」

「回復している間に攻撃されると、逆にダメージを受けてしまうからな。」

グァァァァ

ミラボレアスが咆えた。

高台に乗っていたユウキに目標を定めたらしい。

「クッ、ここも駄目か。」

ユウキは、高台から飛び降りその場を離れた。

ドォォォォン

「あぶねっ。」

さっきまでユウキが乗っていた高台が無残にも粉々に粉砕されてしまった。

「ん?」

ミラボレアスがその長い鞭のような尾を振り上げ、そのまま振り下ろした。

「なっ。」

リンはギリギリのところで回避した。が、

ブンッ

「グッ」

薙ぎ払ってきた尾を回避できず致命的なダメージを負ってしまった。

「リンちゃん!!」

ヒトミが叫ぶ

「これで回復できるっ。」

そう言ってハルは、白い粉をばらまいた。

『アイテム:生命の大粉塵』

『使用すると同時に周囲に拡散し、触れた者の傷を癒やす。』

「これは、生命の大粉塵。いいぞ。」

ユウキが言った。

「ハルくんナイスだわ。」

ハルは、リンの無事を確認するとすぐに攻撃を再開した。

 




ほんとに短いなこれ。


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第六章 シュレイド城での決戦!

暇つぶし作品第六話です。
前回のがひどすぎただけです。


 かつての王国の城跡だけあって、バリスタや大砲、撃龍槍まで設置されている。

しかし、クエストが始まってからどれくらい経っただろうか。

彼らはすでに消耗しきっていた。

 相手も消耗してきてはいるだろうが、いまだ攻撃が緩む気配はない。

攻撃の手を休めなかったにもかかわらず倒れる気配を一切見せないのだ。決定打に欠け四人はこのままではじり貧であると感じていた。

「くっ、これでは体力が持たない。」

(だが、それは相手も同じこと。)

ハルは、冷静に状況を判断していた。

すると、ミラボレアスが直立姿勢になった。

「なんだ、しかしこの状況…」

「何か…、やばいっ!!!!!」

ハルが叫んだ。

ミラボレアスは、直立した姿勢で狙いを定め、正確にハンターに向けて

火球ブレスを放ったのだった。

リンとヒトミ、ユウキはハルが叫んだ直後に回避したので助かった。だが、

「ぐっ」

逃げ遅れたハルは真正面から火球ブレスを受けてしまった。

「ダメだ、これじゃあ耐えられないっ。」

火球が消えたときには、ハルの体力がギリギリ残っている程度だった。

「ハルくん!」

「ハル!」

叫んでいるリンとヒトミを横目にユウキがハルのもとへ駆け寄り粉塵をばらまいた。

「そうか、粉塵があったんだ。」

「ユウキも持ってきてたのね。」

「助かりました。ありがとうございます。」

ハルは、ユウキに言った。

「ああ、お前は少し休んでいろ。」

ユウキは、ハルにそういうと、ミラボレアスの視界に入らぬように戦場へと

走って行った。

 

ウォォォォォォォッ

咆哮の直後、ミラボレアスは前に倒れこんだ。

「あぶなっ」

リンは、「狩技『絶対回避:臨戦』」を使うことで回避。

ユウキやヒトミは遠くから攻撃していたため巻き込まれなかった。

「ボディプレスか。」

ユウキが言った。

ミラボレアスは、口元を燻らせていた。

「離れろっ!」

ユウキの声にリンが反応して即座にその場を離れた。

ウォォォォッ

ミラボレアスの咆哮である、大きく身を引き、そして赤い粉が空気中を漂い、次の瞬間

ドォォォォォン

爆発音とともにフィールドの半分が爆散した。

「危なかった。」

リンは、その光景を見て戦慄した。

「リン、大丈夫か。」

「はい。」

ユウキの問いかけにリンが答えた。

オオオォォォォ

ミラボレアスは、らせん状の炎を吐いて薙ぎ払う。

炎には紫色の不気味な瘴気が混じっており、禍を呼ぶ黒龍らしさを感じられる。

生半可な防御力と耐性では当然のように消し炭にしてくる威力もさることながら、

幅のみならず射程が長く、フィールドの半分以上を巻き込んだ。

右から左、左から右と両側からの薙ぎ払い、

その際に右から左なら前へ、左から右なら後ろへ大きく動き、

前進する場合は更に射程が伸び、後退の場合は懐付近も危険。

敢えて言うなら、どこでもいいから攻撃とするならチャンスであると言った感じか。

 

 

カァァァァン

「なんだ。何の音だ。」

 

ドドドドドドドド

「げ、撃龍槍。でも誰が。」

「フッ、少しはやるようになったようだな。」

「ハルくん。もう大丈夫なの?」

いち早く気付いたヒトミが問いかける。

「はい。もう大丈夫です。」

こうして、ハルが戦線復帰した。

「相手の体力も、もう少ないはずだ。一気にたたみかけるぞ。」

「はい。」

「分かりました。」

リンとハルがユウキに答えた。

 

しかし、それをあざ笑うかのようにミラボレアスが、切り札とも言うべき攻撃を放つ。

口内に膨大な炎を漲らせた後、地上に向けて巨大な火球を発射、

通常のブレスとは比較にもならないドーム状の大爆発で超広範囲を灰燼と化す。

その迫力たるや凄まじく、至近距離では眩いフラッシュと

凄まじい陽炎で視界が一切遮られ、

遠距離でもミラボレアスごと周囲を塵にしかねない

核爆発が如き爆風を目の当たりにした。

「な、まだこんな力が。」

「残っていたなんて。」

「く、あと少しだったのに。」

「あと少しで討伐できたのに。」

 

 

この攻撃により、全員が体力を削り取られてしまった。

しかし、ミラボレアスもその場から姿を消し、

四人は、撃退という形でクエストクリアとなった。

その直後、ギルドが調査隊を派遣したものの、シュレイドの地には変わらず霧が立ち込め、調査は打ち止めになった。結局、ミラボレアスの行方は分かっておらずギルドも常に動向を見張っている。

「結局、討伐できなかったというわけだな。」

「そうですね。」

「あと少しだったのに。」

「あんな力が残っていたなんてね。」

彼らは肩を落として言った。

最後のチャージブレスによって体力を根こそぎ奪われ、ミラボレアスも姿を消した。

しかし、これによりミラボレアスの真相が明らかになり次の対策ができるのだ。

 マスターも「あなたたちが無事でいてくれればそれでよかった。」と言っていた。

その後、ユウキは、黒龍伝説について調べていた。

そして、恐るべき事実が判明した。

 

「な、なんということだ。黒龍伝説は…終わってはいなかった」

 

 

ユウキがハル達のもとへ戻ると、あの謎の赤衣の男が立っていた。

「お主らはまだ黒龍の運命の中にいるのだ。そう簡単に逃れることはできぬよ。」

男はさらに続けた。

「あの黒龍は生きておる。まあそう簡単に死ぬわけもないがな。」

「しかし、『蘇りし伝説は無限の勇気を持つ英雄により、打ち滅ぼされる』というのもあるな。」

 

そして、男は、彼らに黒く染まった一冊の本を置き去って行った。

「貴様らにくれてやる。」と言い残して。

ユウキはそれを手に取った。

「これは、古文書か。」

 

「これは…」

「どうしたの、ユウキ。」

ヒトミの問いかけに対して震えた声でユウキが答えた。

「これは…伝説の書。」

「それがどうしたの。」

「黒龍…ミラボレアスの古文書だ。」

黒龍にまつわる書物がまとめられた古文書。それが伝説の書である。

「なんだと、これは…」

「紅龍…だと。」

紅龍。その名は,『運命の戦争』を意味する

「終焉の翼」

 




ちょっと短かったですかね。
ということで、黒龍伝説 伝説の章が完結となり、次回からは終焉の章となります。
では、また次回。


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