oregairu SS -第2世代奉仕部レポート- (なんとなくNT)
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#1 プロローグというものはあった方がやりやすい
「橋本、呼ばれたわけが分かるか?」
職員室にてプリントを片手に平塚先生はそう聞いてきた。
時は6月某日、入学して2ヶ月と少しが経ち色々と落ち着いてくる時期である。ちなみに、この二カ月で俺は身長が3mmほど縮んだ。
「...分かりません」
「ハァ...」
ため息を大きくつき持っていたプリントをデスクに置くとある欄に指をさした。そこは【進学希望先】と書いてある。
「そこには私立文系四大と書いた気が...」
「あぁ確かにそれは書いてある」
「ならどうして——」
「それ以外書いていないことを言っているんだ」
「.......!」
一瞬何のことか分からず、そして思い出す。そういえば、他の欄埋めてなかった。
「いや...それはぁ....特にまだ決めていなくてですね.....」
「別に決めていない事を言っているんじゃないだ、何も書いていない事を言っているんだ」
「それは同じじゃ...」
「今の君の年齢で将来が分からないのは当然だ。だからこそ、今その瞬間だけでいいから何か思いを残しておくのは非常に重要なんだ」
「はあ...」
「君が本当に将来で困った時があればこの事がヒントになるかもしれないからな」
確かに、言われてみればそうかもしれない。なんか納得した。
「それに、これはあくまで恒例行事のようなものだ。そこまで真面目に書かなくてもあまり問題無い」
「今の一言で何か大事なものを失いかけました」
「だが、先に言ったことも本当の事だよ。だからこれが再提出だ」
「えぇ...」
「そんなに難しい事じゃないだろう?そこまで悩まなくていいと言ったじゃないか」
「そう言われましても...」
「そうだ、なら何か趣味はないのかね?」
「ぬぅ...これといって特には」
「そうか...確か部活にも入っていなかったな」
「そうですね」
「なら放課後は何をしているんだ?」
「動画観てるか寝てるか、あれば宿題に手をつけてるか」
「つまり何もしていないんだな...」
「そうとも言いますね」
「ちなみにだが...大学のさらに先の事はどう考えているんだ?」
「大学のさらに先、ぬぅ...大学にもよりますけど何処かに就職すると思いますね」
「就職願望はあると?」
「そうなりますね」
「....専業主夫じゃないだけマシだな(小声)」
「なんですか?」
「いや此方の話だ。....よしっ」
そう言うと、先生は徐ろに立ち上がった。
「ちょっとついてきたまえ」
=========================
先生に連れて来られたのは人気の少ない棟のある教室だった。えっ、何か不穏な空気しかしないのだけれど大丈夫?
「失礼するよ」
先生はその教室のドアをノックせずに開ける。
「あっ!平塚先生!」
中から元気な女性の声が聞こえる。
「おう比企谷居たのか、ちょうど良かった」
「どうしたんですか?」
「少し時間いいか?」
「どうぞどうぞ! 是非是非!」
「橋本、入りたまえ」
俺は催促されるままに教室に入る。中には女子生徒が一人だけいた。
「あっどうも...」
「先生、そちらの生徒さんは?」
「紹介しよう私の組の生徒の橋本だ」
「ってことは1年生...!」
「あぁそうだ、新入部員を連れてきたぞ」
「ふぁ?」
唐突な謎の宣言に間の抜けた声が出る。てかここ部室だったの。
「新..入部....員?」
「そうだ、奉仕部の新入部員として君には頑張ってもらう」
「奉仕部...」
名前だけは聞いたことある。何でも、生徒のお願いを依頼として引き受け解決してしまうとか。あとは、なんか学校を裏で糸引いてるとか変な噂も聞いたことあるぞ。
「えっ...いやでも....」
「先生ぇ、また無理矢理連れてきたんですか?」
「無理矢理とは人聞きが悪いな。私はついてこいと言っただけだぞ」
先生はそのまま女子生徒と話し始めてしまう。
「.........」
「というわけだ、部長の意向を聞いて一応橋本の希望も聞こう」
「一応なんすね...」
何故か半ば諦めてる俺がいる。
「そんな無理して入らなくても平気だよ? 結構大変な部活だし」
女子生徒からは少し心配気な声をかけられた。
「しかしなぁ...橋本が入らないとなるとこの部活は廃部になるかもなぁ」
「えっ、そうなんですか?」
「彼女の他にもう一人男子部員がいるんだが、今は2人だけで活動しているんだ」
「なんでまた」
「去年までは3年生が居たんだが卒業したからな。今は1学期だからなんとか保っているが、最低3人は部員数いないと2学期にはどうなっているのか....」
「ぬぅ...」
「平塚先生ぇー...1年生に変な事言わないで下さいよ」
「しかしだな.....」
「しかしも何もありませんよ!あれじゃ只の脅しじゃないですか!」
「あの——!」
「ん?」
俺は女子生徒に聞いた。
「廃部っていうのは本当なんですか?」
「ん〜...それはこのままだとそうなるかも」
「えっ...」
「あっ!だからといって入れって言ってる訳じゃ無いからね!」
少し考える。この部活に関して言えば俺は何も関係が無い。むしろただひたすらに巻き込まれるてる感すらある。だけど———
「...俺で良ければ入りますよ」
——だけど、このまま終わらせてしまうには何か勿体ない気がした。
「えぇ!? そんな無理しなくていいんだよ!!」
「いや...無理はしてないですよ。自分暇なんで、特に何ができるとかではないんですが。俺含めて3人いればいいんですよね?」
「そうだけど...本当に大丈夫?」
「そちらが嫌なら辞めますけど...」
「いやいやいや!そんな事全然ないよ‼︎ ....そっか、じゃあよろしくね!」
握手を求めるように右手を差し出してきた。
「いえ、こちらこそ」
まあ、これも既に奉仕活動なのかな。などと思いつつ、差し出された手を握り返す。
こうしてその日の内に入部届けを提出し、奉仕部へと正式加入したのだった。
しかし、まさかこの後あんな事になるなんてこの時の俺は知る由もなかった...。
と言っておけば雰囲気は出るのではないかと思ったが、特に俺の中の気持ちは変わらなかった。
pixivで元々書いていてそれの第1話転載です。
コメント下さい。多分成長します
それではみなさん
パイナポォ(「・ω・)「
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#2-1 Case1-依頼人:菊名 薙-
言われると伸びる子(自称)なので
-前回のあらすじ-
なんだかんだで奉仕部とやらに入部した。
=========================
「それでは改めまして! ようこそ奉仕部へ!!」
入部した翌日の放課後、改めて自己紹介したいということで平塚先生経由で部室に呼ばれていた。
「私が部長の比企谷 小町です!比企谷先輩でも、小町先輩でも好きな様に呼んでね!」
「あっはい...」
比企谷部長か、前も思ったけど元気な人だな。
そして昨日はいなかったけど、比企谷の隣りにもう1人の部員の姿があった。
「川崎 大志です! 力になれるかは分からないけど何かあったら何でも言っていいよ!」
「ど、どうも...」
川崎先輩、部長に負けず劣らず元気そうな人だな。
「じゃあ橋本くんの番だよ!」
「あっ...えっと、橋本 有麻です。組は1年B組にいます。よろしくお願いします....」
来ることは分かっていたけど、特に考えても無かったので大して面白くもない自己紹介になってしまった。
「こちらこそよろしくね!」
「よろしくな! 橋本くん!」
こうしてお互いの自己紹介は終了した。そこまでは良かったのだが、
「ところで、今日は何をするんですか?」
「ん? 今日は特に依頼も無いから何もしないよ?」
「ふぉ? じゃあ何をすれば良いですか?」
「ん〜...依頼をする人が来るまでここで待つしかないからなぁ....あっ、そうだ! トランプでもしようか!」
「えぇ(困惑)....」
この部活は基本的に暇な部活だった。昨日言っていた大変とはどういう事だったのだろうか。
=========================
—1週間後
「大志くぅん...一体この部活はいつになったらまともな活動するんですかぁ....?」
俺はすっかりこの部活に慣れきってしまっていた。
「うーん...でも今は退屈でも、いざ依頼が来たりしたら結構大変なんだよね」
「でも俺が入部してからかれこれ1週間経ちますけど、一回も依頼来てないじゃないですかぁ...」
「確かになぁ、でもさこの時間って意外と貴重なんだよ」
「? と言いますと?」
「今は1学期だから少ないけど、2学期に入ると色んな学校行事があるじゃん?」
「そうですね」
「そうするとさ、奉仕部ってそのほとんどに依頼という名目で駆り出されるんだよね」
「うぇ...そうなんですか」
「そう、だからこういう時間って結構少なくなるだよ。それに、学校行事だけじゃなくて生徒会主催のイベントだってあるしさ」
「....何ですかそれ?」
「例えば海浜総合高校との合同でのクリスマスイベントとか」
「クリスマスイベント...なんか楽しそうですね」
「まあ大変だけど楽しいよ。あとはうちが主催のバレンタインイベントとかかな」
「バレンタイン...それは面白くなさそうですね」
「ははは...でも味見もさせてもらえるから悪いイベントではないかな」
「ぬぅ...」
「まあとにかく、今は依頼が無いからゆっくりしてていいと思うよ。いざ来たときの為にね」
そんな感じで大志くんと話していると扉が勢いよく開いた。
「やっはろー!」
比企谷部長だった。
「どこ行ってたんすか?」
いつも部室に行くと既にいるのに、今日は鍵だけ開けてどこかに行っていた様だった。
「部室の鍵もらいに行ったら、そのまま平塚先生に呼ばれてね。話聞く前に鍵開けてそのままUターンで平塚先生のとこ行ってきたんだ」
「ほーん、それで話ってのは部活関係ですか?」
「そう! それでね、ささっ入って入って!」
そう言うと部長は女子生徒を連れて部活に入った。
「依頼人連れてきたよ!」
何故か分からないが、なんだか忙しくなりそうな予感がするのは俺だけなんだろうか。
pixivからの転載です続きが気になっていただけるなら...
それではみなさん
パイナポォ(「・ω・)「
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#2-2 Case1-依頼人:菊名薙-
希望又は気分、話数が溜まり次第再開します
最後まで楽しんでほしい
「2年D組の菊名 薙です...」
とりあえず比企谷部長が連れてきた依頼人に用意した椅子に座ってもらい、依頼案件を聞くことにした。
「えーっと...じゃあ菊名さんの依頼を教えてもらえますか?」
なんとなく緊張気味な大志くんが質問を始める。この子意外とシャイなのかしら。
「その...ある人を私のとこに連れて来て欲しいんです」
「ある人...ですか」
「はい...名前は片倉というんですが、私の幼馴染なんです」
「片倉...もしかしてD組の片倉 条慈くんのこと?」
そこで部長が突然口を挟む。
「えっ...そ、そうです....」
「比企谷さん知ってるの?」
「ん〜、直接的な面識は無いんだけどね」
そして菊名先輩は話を続ける。
「その彼が最近学校に来なくなることが多くなって、来ても服装が乱れたりしてて...雰囲気や態度も乱暴になってしまってて....」
うーん、明らかになんか拗らせてるな。
「そうなった理由とかは分かりますか?」
「いえ...それを聞いても教えてくれなくて、いつも「うるさい、お前には関係ない」って....」
「だからしっかり話がしたいから連れてきて欲しいと」
「はい...」
「なるほど....」
その後色々話を聞いて一旦一息をつく。どうやら依頼内容をまとめると「変に拗らせてしまった幼馴染を依頼人の元へ連れてきて話をさせる」という事らしい。
「じゃあ、この依頼は奉仕部が引き受けさせてもらうね」
部長は菊名先輩にそう言うと鞄からメモを取り出した。
「ちゃんと出来るか分からないけど、何とかして菊名さんのとこまで連れて来れるようにしてみるよ」
「ほ、本当ですか...! あ、ありがとうございます!」
「じゃあその片倉くんの居る場所とか居そうな場所を教えてもらっていいかな?」
「えっと...まず千葉駅の—」
こうして一通りの情報を教えてもらった。
「それじゃあお願いします! 失礼しました」
菊名先輩は部室を出て行った。そして残った俺たち3人での作戦会議が始まる
「うーん...どうしよっか?」
「ついてくるように説得する方法、ですか?」
「そうなんだよねぇ、きっと普通に話しても来てくれないだろうなぁ」
「でしょうね」
うーんと部長は唸りながら考える。その横で大志くんは携帯をいじってた。
「大志くん何してるんすか?」
「ん? あぁ、いま友達に片倉のこと聞いてみてるんだけど」
「ほぉ、何か分かりました?」
「うーん...片倉が元々どういう人だったかは分かるんだけど、何で不良になってしまったのか分からないっぽいんだよね」
「まあそれが分かったら半分解決ですもんね」
「できればそれの方が良かったんだけどね」
「ぬぅ...そうですね」
「そうだ! 雪乃さんに相談してみよう!」
先ほどまで唸っていた部長が突然そう言いだした。
「ユキノさん?」
「あっごめんね。雪乃さんというのは私と大志くんの二つ上の先輩で、私の前の部長さんのことなんだけどね—」
そのまま部長はそのユキノさんの話を始めた、どうやらスゴい人らしい。とにかく、先人に相談するのは賛成だ。先輩たちは兎も角、俺はこの依頼が初めてで正直何もわからない。そんな中でいくら考えてもしょうがないので、先人から知恵を借りるのは必要なことだと思う。
「ところで比企谷先輩」
「どうしたの?」
「そのユキノさんに聞くのも良いんですが活動記録ってないんですか? まずはそっちを確認した方が...」
「活動記録? 多分ないと思うけど」
「あらまぁ...」
それって大丈夫なのかな。
「まあ、とにかく今日はもう時間も経ってるから部室閉めようか」
その部長の一言で大志くんが帰宅準備を始める。それに続いて俺も準備する。
「ねぇ有麻くん」
ふと部長から声がかかる。
「はい」
「私たちの初めての依頼だけどお互い頑張ろうね」
そう言って可愛らしい笑顔を向けられた。
「あっ...はい、よろしくお願いします....」
そういえばこの部長って可愛いって結構有名なんだよな。さっきまで忘れてたわ。
「じゃあ帰ろっか」
そうして部長が部室の鍵を閉め、俺たちはそれぞれの帰路についていった。
なんとなくだけど、俺はこの部活の大変さが少し分かった気がした。なるほど、確かにこれは忙しくなりそうだ。
コメント下さい
それではみなさん
パイナポォ(「・ω・)「
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#2-3 Case1-依頼人:菊名 薙-
多分成長します、植木の如く
—比企谷家:夜
「お兄ちゃーん? 起きてる?」
「ん? おー、なんだ小町?」
「うわっ...なんで相変わらずそんな腐って濁りきった目でアニメなんか観てるの...?」
「別に俺の目は腐って無いし、濁ってない、むしろ純真さまであるぞ。俺の目がそう見えてるのは俺の目に映っているこの世界がきっと—」
「ハイハイ、まあごみいちゃんだから仕方ないかぁ...」
「えっ、何、その結論に達するの早くない? てかその結論酷くない?」
「そんな事はどうでも良いの! ねぇお兄ちゃん、雪乃さんと今連絡取れる?」
「雪ノ下? 多分取れるとは思うが、どうした?」
「ん〜、ちょっと部活の事で相談したいことがあってね」
「なら雪ノ下じゃなくて俺に相談でいいじゃないか」
「え〜やだよ、お兄ちゃんのやり方ってどうせ碌なの無いんだもん」
「えぇ...それ割と傷つくんだけど」
「ほらっ早く連絡して!」
「てかお前が直接連絡すれば—」
「私のは充電切れてるの! ほら早く早く!」
「えぇ...」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「...もしもし雪ノ下か? 悪いなこんな遅くに....」
『...........』
「いや、俺じゃなくて小町がお前に相談したい事があるらしくてな....」
『...........』
「えっ来週? えーっと、確かその日は体調が悪くて....」
『...........』
「....あぁ、分かった、分かりました。行きますよ」
『...........』
「それじゃあ小町に変わるわ。ほれ小町」
「うん、ありがと」
「来週か...いきなりすぎるんだよなぁ...」
「もしもし!雪乃さん、お久しぶりです!」
『えぇ、お久しぶり小町さん。それで相談というのは?』
「部活の事で少しお話させていただきたいんですが—」
=========================
翌日、俺の中では特に意見はまとまらなかったが部室に向かう事にした。
「うーっす」
「あっ有麻くん、やっはろー!」
「やあ、橋本くん」
部室には既に2人とも揃っていた。しかしこの人たちいつも早いな。
「じゃあ有麻くんも来たし、始めよっか」
部長の合図で机を囲むように座る。
「それで、昨日雪乃さんに相談に乗ってもらったんだけどね...」
=========================
「—ということなんですよぉ...」
『そう...それは確かに難しい依頼ね。残念だけど、おそらく私では力になれそうに無いわ...』
「そんなぁっ! 雪乃さんだけが今は頼りなのにぃ....」
『きっと小町さんの言う通りその男子生徒は相手の話を聞く事はしないと思うから...会話が出来ない相手を対処するのは私でもかなり難しい事なの』
「うーん....ですよねぇ」
『それに—』
「?」
『それに頼りになるのは「私」だけでは無いわ』
「え? 他に誰がいるんですか??」
『そういう相手はむしろ私より比企谷くんの方が得意じゃないかしら?』
「えぇ!? それはどうですかねぇ...お兄ちゃんのことだから、人の気持ちとか逆撫でしそうな事言いそうですし....」
『それはどうかしら? 本心が分からない相手なんてそれぐらいしないと気持ちなんて見えないものよ』
「それはお兄ちゃんのことを言ってますか?」
『! ...ゴホンっ、それよりも比企谷くんに早く相談してみたらどうかしら?もう夜も遅いことですし』
「あっ、そうですね。夜遅くにすみませんでした」
『いえ、こちらこそ余りお役に立てずにごめんなさい』
「そんなことは無いですよ!むしろ色々と助言していただいてありがとうございます!!」
『そう? なら良かったのだけど...じゃあ小町さん、おやすみなさい』
「あ、あの雪乃さん!」
『? 何かしら?』
「その、これからも...兄のことをよろしくお願いします」
『...ふふっ、こちらこそよろしくお願いしますね』
「はいっ! それでは雪乃さんおやすみなさい!」
『ええ、おやすみなさい』
=========================
「それでお兄ちゃんにも相談したんだけど、やっぱり雪乃さんと同じ感じで...」
なんだろう、最終的に変な惚気...なのか?そんな事を聞かされた気がするぞ。しかも、その対象が部長じゃなく部長のお兄さん。てか兄弟いたんだ。
「ま、まあ自分たちで考えようって事だね」
ほらシャイニングボーイの大志くんもなんか気不味そうだし。いや、輝いてはないか。
「うーん...困ったなぁ」
先輩たちは頭を抱え考える。それにしても、会話が出来ない相手に説得矛盾を達成させるのか。まるで無から有を作ろうとしてみたいだな。普通に考えればそれは無理だよな。俺も普段だったらそんな事はしたくない。しかし、今回は仕事だからやらなくてはいけないわけで—
「....あっ」
「? 有麻くん何か思いついたの?」
昔誰かが言ってた気がする。「逆に考えるんだ、『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ」と。そうだよ、わざわざ説得なんて面倒なことしなくていいんだよ。
「...そうだ...それでいいじゃないか......」
「おーい? 有麻くん?」
「部長」
「うわっ、びっくりした。で、どうしたの?」
「今回の依頼は最終的にはその生徒を依頼人まで連れて行けばいいですよね?」
「えっ、まあそうだけど」
「ならこの依頼俺に任せてもらっていいですか?」
「! 有麻くん何か思いついたの?」
「ある程度は。だけど、この方法は万人に通じるやり方ではないので成功するか分かりませんが...」
「そっか、でもやるだけやってみようか! 大志くんもそれで大丈夫?」
「そうだね、このまま考えるよりは行動した方がいいかもしれない」
「よしっじゃあ善は急げ!早速片倉くんを探そう!」
「まあ善かどうか分かりませんけどね...」
そう誰にも聞こえない様に俺は小さく呟いた。
次回、#2のラストです
最後まで楽しんでください、楽しんでほしい
それではみなさん
パイナポォ(「・ω・)「
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#2-4 Case1-依頼人:菊名 薙-
コメント下さい
植木が如く‼︎
—翌日
そんなこんなで、あの後片倉という生徒を探すことになったのだが結局見つかることはなかった。そして、今日は放課後になってすぐに捜索を開始した奉仕部3人。菊名先輩が教えてくれた場所がそれぞれ距離があるので手分けをして探すことにし、見つけ次第連絡を入れるということにしたのだった。
「しかし、本当に大変だな...」
依頼が来て3日しか経っていないのだが、既にそれなりの疲労感を感じれている。これは何度も思ったことだが依頼というのを解決するのは忙しくて大変なんだな。
「ここは...いないな」
俺が割り当てられた箇所の殆どを確認したが、それらしい姿の人物はいなかった。
「......あっ」
ここで更なる事実に気づく。
「俺、片倉って人知らんじゃん....」
俺は今まで何をしていたんだ。姿形が分からない人の筈なのに2日間も何を求めて探していたんだ。
「....やっちまったなぁ」
途方にくれそうになったとき、携帯が鳴った。
『もしもし有麻くん! 片倉くん見つけたから急いで来て!場所はメールで送るから!』
そこに神がいた。
ともかく、指定された場所まで急いで行くことになった。
× × ×
「あっ来た来た、おーい!」
「比企谷さん声大きいよ...」
「すみません、お待たせしました」
指定された場所に行くと既に2人とも揃っていた。
「で、どの人が片倉って何ですか?」
「ほら、あの人」
部長が指差す先にはベンチに座っている総武高の制服を着た男が一人いた。
「....なんかデカくないっすか?」
ぱっと見て190cm以上はありそうな体格。しかも茶髪でオールバック、制服もだらしなく着崩し、ネックレスやピアス(イヤリング?)の装飾品を身につけいかにもな風貌をしておる。
「片倉くんってイギリス人と日本人のハーフらしくて、あの髪も地毛らしいよ」
「あぁ...だからジョージなんですね...」
何と安直な! にしても、彼の格好はあまりにも露骨な格好しすぎて逆に違和感がすごいするんだよな。
「ふぅ〜ん...なんとなく分かったわ」
「え? 何が分かったの?」
「ちょっと待ってて下さい、5分で戻ります」
そう言い残し、俺は急いでコンビニに向かった。
× × ×
結局5分ではなく15分かかってしまったが2人の元へ戻る。
「すみません、今戻りました」
「おかえりー、どこ行って—うえぇっ!?」
「橋本くんどうしたのその格好....」
普段はおろしてる髪を上げてワックスで固め、制服はシャツの胸元を開けてズボンは腰パンに。そう、いわゆる「いかにも」な格好である。
「まあ、「餅は餅屋」というか「毒を以て毒を制す」というか...とにかく行ってきますね」
「えっ、あっちょっと有麻くん!」
「はい?」
「あんまり危ないことはしないでね...」
その部長の言葉にはこれからしようとしている事が分かっている様だった。
「....はい、大丈夫ですよ!」
俺はそれに笑顔で答える。別に危なくなる事はしようとはしていないから。
× × ×
「あんたがD組の片倉か?」
その男の前に立ちとりあえず声をかけてみる。
「あ? なんだお前?」
「質問に質問で返すなと先生に習わなかったのか? もう一度聞くぞ、あんたが片倉 条慈か?」
「だったらなんだ? てかそもそもお前なんだよ?」
「なんだよって...そうだな....奉仕部、といえば分かるな? あんたも総武高生なら一度は名前くらい聞いたことあんだろ」
「奉仕部?....あぁあのパシリ野郎共か」
「パシリか...ははっ、強ち間違っちゃいねーな」
「んで? そのパシリが俺になんの用だ?」
「あっ、ちょっと待って」
「あ?」
俺はポケットから風船を取り出すとそれを膨らました。
「...要らないと思うけど風船いる?」
「は?」
「.....いや、何でもない」
風船から手を離すと、空気が抜けると同時にその推進力でどこかへ飛んで行った。....冗談の通じない奴だ。
「さっきからお前なんなんだよ?ナメてんのか?」
「いや悪い悪い、話を戻そう。俺はある人から依頼を受けててね」
「ある人からの依頼? なんだ俺を殺してこいとか言われてきたのか?」
「俺にはあんたがそんな大物には見えんがな」
「なんだと?」
「まあ、依頼内容は至って簡単だ。あんたを依頼人の元へと連れて行くことだ」
「依頼人の元へだと? 誰だよそいつ」
「....ま、今回は守秘義務は無さそうだしな。確か、依頼人の名前は菊名...さんだっけな」
「...薙が?」
「確か幼馴染なんだっけか...はあ、そんな歳になっても誰かに心配されてる様じゃダメだな」
「あぁ?」
「なんだ、分からんか?あんたにはその世界は向かないって言ってんだよ」
「......」
「だいたいあんたは何もかもが中途半端なんだよ。アウトローぶってるくせに制服着てるしよ」
「........」
「そんで制服着てるくせに学校にも来やしねぇ、とんだ「構ってちゃん」だな」
「..........テメェが....」
「形から入るのは構わねーけどよ、もっと世間ってものを知れってんだよ。しかも—」
「テメェが俺の何を知ってるんだってんだよ!!」
ここで片倉に一発殴られた。
「....イッテェ....まあ人を殴ることだけはできるんだな」
「ハァ...ハァ....あぁ?」
「だがそれだけだな。やっぱりあんたはその世界には向いてない」
「ウルセェっ!!」
さらにもう一発殴りかかってきたが、それを避けてその腕を固定する。
「一つだけ教えておいてやる。仮にそれでもその世界に進もうと思うなら—」
その瞬間、片倉の腹部に膝をぶち込む。
「—相手の力量くらい量れるようになれ」
「ぐぅっ....」
膝蹴りされその場に膝をつく片倉。
「あんたさ、さっき「俺の何を知ってるんだ」とか言ってたけどそれを言わなかったのはあんただろ?」
「.....チクショウ.....」
こいつ意外とまだまだ元気だな。
「まあ俺は興味ないけどさ、聞いてくれる人がいるんだ。だから、精一杯聞いてもらうんだ....な!」
まだ膝をついていた片倉に対し、その場でジョン・ウーを繰り出した。
「ぶっはぁっ!」
そのまま1mほど飛び片倉は動かなくなった。
「ふーぅ...おーい!大志くーん!!」
俺は自身に決めた役割を終え、待機していた大志くんを呼ぶ。
「有麻くん大丈夫だった!?」
大志くんと一緒に来た部長に先に声をかけられた。その間に大志くんは倒れている片倉を肩で担いで来た。
「まあ一発殴られたけど大丈夫ですよ。これくらい大したことじゃないので」
「なら良かったぁ。....でも—」
一瞬にして部長の雰囲気が変わるのを感じた。
「—でも、危ないことしないでって言ったよね?」
部長のことは知り合って間もないが、その目は確かに怒りが籠っているのは分かる。
「えっ...いや、これは成り行きでああなって.....」
「嘘、絶対嘘。こうなるって分かってた、いやこうなるようにやっていたんでしょ」
「.......」
何も言えなかった。この人は本当にどこまで分かっていたのかは分からない。ただ、この人には全て見通されてる気がした。
同年代の人にここまで本気で怒られるのも、ここまで本気で反省する気になるのも初めてだった。
「はぁ...今回は私たちの確認不足や思考不足もあったからこれ以上は言わないけど—もう、二度としないで」
まっすぐ目を見て言われる。俺にはその目から逸らす事が出来なかった。
「....はい」
「ならよろしい。....じゃあとりあえず帰ろっか!」
そしていつもの部長に戻る。この瞬間から俺はこの人には敵わないと実感した。
「橋本くん...そろそろもう片方支えてくれないか...彼結構重いんだ」
「あっ....ああすみません」
大志くんと2人で両肩を支えて3人(片倉含め4人)で学校に戻っていった。
× × ×
その後、保健室まで運んでベッドに転がして先生に事情話して菊名先輩を呼んでと色々やったが、あの2人は話す事が出来たらしい。まあ、2人しか居ない空間で片倉はそこまで動けないから話すしか無かったのだろう。てか、それが目的だったし。
そして初の依頼を終えた俺たちは—
「大志くぅ〜ん...何か一発芸やってよぉ」
「無茶振りがすごいな....」
また暇な時間を過ごしていた。ここが奉仕部の良いところでもあり、悪いところでもある。
「ぬぅ...何かやる事...やる事.....!」
俺はある事を思い出した。
「そうだ、アレ作ろうよ」
「アレ?」
「大志くんなんか使ってないノートとか無いっすか?」
「ん〜、教室にだったら新品が数冊あるけど...」
「じゃあちょっと取ってきますね!」
「えっ、ちょ、ちょっと!」
俺は部室を飛び出した。そして—
「大志くんのロッカーってどれですか?」
また戻ってきた。
「はあ、だから言おうとしたのに...俺のロッカーは—」
そして、大志くんから新品のノートを一冊貰いある物を作ることにした。
「やっはろー!」
ここで部長も丁度やってきた。
「ん? 有麻くん何書いてるの?」
「『活動レポート』ですよ。以前聞いたときに無いと言われたので」
「あぁー! それいいね!」
こうして、改めて俺たち奉仕部の活動が始まっていくのを感じた。
以前言った通り今回で一時お休みします
とか言ってどうせすぐ復活するでしょうけど
希望があればキャラの説明くらいは書きます
それではみなさん
パイナポォ(「・ω・)「
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