僕は君と幽美に微笑みたい。〜だから今日も、僕は半径1メートルの世界で君と向かい合う〜 (リュオン)
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第1話 向かい合って笑いたい

ーーー僕の所属するクラスには、とある机が存在する。

 

 

ーーーその机は、クラスメイト、いや、学園の生徒全てと言っても過言では無いだろう人々が、こう呼んでいる。

 

 

 

 

ーーー呪いの机、とーーー

 

 

 

 

その机には、とある1人の女性が、いつも肘をついて座っている。

 

 

授業中、休み時間、放課後。

 

 

そんな学校生活の全ての時間を、彼女は肘をついて、窓の外をぼんやりと眺めるーーーそんな行為に費やしている。

 

 

 

彼女は、美しい。

 

 

何処か吹雪を思わせる、腰の辺りまで伸びた真っ白な透き通った髪。

 

すべすべとした、見る者に陶器をイメージさせる、綺麗な透き通った肌。

 

座っている状態からでもゆうに分かる、調和の取れた、その場所に存在するだけで空間に馴染みつつ、果てし無い存在感を発する透き通った身体。

 

白と黒、その2つが反発しつつも共存し合う、ガラスの様な透き通った瞳。

 

そして、聞いた者に流水を考えさせる、流れる様な透き通った声。

 

 

全てに置いて完璧と言っても良い程の容姿を持った彼女は、だがそれでも、僕以外の人の眼を惹く事無く、()()()()()()()

 

 

何故なのか、一ヶ月程前に中学二年生に昇級し、新たなクラスでの生活をスタートさせた僕は、直ぐにそう考えた。

 

即ち、何故これ程までに美しくーーー人の心臓の鼓動を速める程の魅力を持った彼女が、()()()()()()()()()()()1日を過ごして居るのか。

 

 

 

その答も、また直ぐにやって来た。

 

 

 

ーーーーー俗に、僕の所属する学園には、“関わってはいけない領域”がある。

 

 

ーーーーー俗に、“学校の七不思議”と呼ばれるソレは、関わった者に不幸と呪いを与えると。

 

 

 

 

ーーーーその内6つ、ソレは、僕も知っていた。

 

 

云く、西校舎3階の女子トイレ、その奥から三番目の個室を三回ノックする事で現れる、おかっぱの少女の噂。

 

 

云く、音楽室に飾られた絵画の一枚、ベートーヴェンの瞳が、こちらを見つめると言う噂。

 

 

云く、云く、云くーーー

 

 

 

ソレらの人の業によって生まれた“噂”は、人の口から耳、そして口から伝わって行く。

 

 

 

ーーーーいつしか、ソレらの“云く”は、僕の耳にも入ってくる。

 

 

 

 

 

ーーーだが、僕の耳に入って来たのは6つだ。つまり、“1つ足りない”

 

 

 

 

ーーーーその、最後の1つ。数少ない僕の友人に聞いた所、どうやら知らない僕の方が異常だった様だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーその、“見られない彼女”

 

 

 

ーーーーーー彼女もまた、触れてはならない“七不思議”の1つ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー『呪いの机に向かう、透き通った地縛霊』の噂。

 

 

 

 

ーーーーーーーー誰にも見られる事無く、人に何ら害を成す事無く、だがその存在を怪しまれ、また不気味がられる不憫な存在ーーーーーーーソレが、彼女と言う人間(幽霊)の正体だ。

 

 

 

 

ーーーー僕は、その存在に恋をした。

 

 

 

いつも誰とも馴れ合う事無く、ただ自身のペースを貫く少女に。

 

 

誰からも誰よりも不気味がられ、だがそれを気にする事無くただそこに居る彼女に。

 

 

自身の存在出来るテリトリー、“呪いの机に向かう、半径1メートルのその空間で、誰よりも孤独に、誰よりも美しく存在する”、そんな“幽霊”に。

 

 

 

 

 

ーーーだから僕は、今日も彼女に微笑みかける。

 

 

 

 

孤独な彼女の、1つの拠り所に、なれる様に。

 

 

未だ一度足りとも見た事の無い、だが明確に想像出来る、きっと美しいのであろう微笑みを、一度と言わずこの目に焼き付ける為に。

 

 

 

 

ーーーーだから僕は、今日も半径1メートルのこの空間で、彼女に話しかける。

 

 

 

 

 

ーーーーー「おはよ、優美(ゆみ)さん」

 

 

ーーーーー「あなたは、何故いつも私に話しかけてくるのですか。」

 

 

 

 

ーーーーー未だ相容れられない、一ヶ月の君と僕の関係。

 




小説家になろう様にて投稿して居るものを、転載して見ました。(作者本人なのでご安心を。)

どっちの方が伸びるとか、そう言うのがあると思ったのでね。

まあ、余り長いシリーズでも無いので、のんびり投稿していけたらなと。

いちお、これを読んで興味が湧いたなら、小説家になろう様に投稿して居る他の作品も、読んでいただけると幸いです。

では。


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