滅竜魔法を持って、悪魔の学園へ (黒牙雷真)
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原作前
第1話
「で、オレは貴方の所為で死んでしまったと……。そういうことですか、エセ神様?」
どうも、皆様。オレこと、狩谷龍呀は何故か分からないがいきなり、神様と名乗る者から死んだと告げられた。
どんなss小説ですかね?
「誰がエセ神様だ!私は本当に神様なんだ!」
「それでオレはどうしたらいいんですか?」
「それなんだけど……君はまず、地獄に行くことはない。だから、君には転生してもらいます」
「転生……ですか?」
「そう、転生」
「はぁ……。で、何処へ転生するんだ?」
「転生する場所は……【ハイスクールD×D】になるね」
「うわぁ…………パワーインフレがバッカみたいな奴じゃん」
「そうだね、今の君だと死んでしまうね。そこで、君には4つまで特典を進呈しよう」
本当にss小説みたいな展開になりましたよ。
でも、面白そうだから良いか。
「4つか…………なら……
1,フェアリーテイルの滅竜魔法全て
2,ナツ・ドラグニルと同じくらいの身体能力
3,スレイヤー系能力が効かない
ぐらいあれば、あっちの世界でも生きて行けるかな?」
「これは最早、チートを通り越してバグだね?」
「だって、せっかく転生するのに直ぐに死んだら嫌じゃん」
「それで、最後の一つは?」
「できれば、魔法を完全に物にするためフェアリーテイルのキャラクターと修業がしたい」
「それでいいの?」
「ああ、頼む」
「わかったよ!」
「それじゃ、特典を与えるよ」
「ああ」
神様はオレに向けて手のひらを見せるように突き出し、俺では理解できない言葉で詠唱する。
「%#◯〒§▲▽#%▲♪♯〒*#%▽」
神様の詠唱が終わると身体の奥から色々な物が沸き上がってくる。それに合わせて身体中が熱くもなる。
「ッ!!」
「はい、終わったよ」
「ああ……」
「試しに何か魔力を出してごらん」
「…………」
いきなり、言われてもなぁ…………。とりあえず、あの男の魔法をやって見るか!
オレは身体の奥から炎が沸き出るイメージをしてから大きく息を吸う。
すると、オレの身体から出たであろう魔力を帯びた炎がどんどん口の中に集まる。
そして…………
「火竜の咆哮!!」
口の中に溜めていた酸素と魔力を帯びた炎を吐き出すとアニメと同じ、火竜の咆哮が出た。
「おおぉぉぉぉ!!」
「ホントに出た!カッケェェェェ!!」
「よかった、ちゃんと出たみたいで」
「それじゃ、今から修行場所に送るよ」
「お願いします!」
神様はまた、オレでは理解できない言葉で詠唱する。すると神様の後ろに光の粒が集まり出し、やがて大きな門へと姿を変えた。また、門にはフェアリーテイルのギルドマークがあった。
「これは…………フェアリーテイルのギルドマーク」
「さぁ、行きたまえ!この先には、君が望む者が勢揃いしている。その者たちから魔法技術を学ぶと良い!」
「ハッハハハハ!やべぇ…………凄く、ワクワクしてるよ、オレ!」
「なら、こんな時に言う言葉があるだろう?」
「ああ!」
オレはワクワクで魔力が抑え切れずにオーラとなって漏れ出る。
そして、オレは自分に活を入れるために、あの男の言葉を口にしながら両拳を自分の前で合わせな、門を潜る。
「燃えてきたぁぁぁぁあ!!」
で、神様によって作られた扉をくぐったオレは、とある島に居た。けれど、この島を何処かで見た記憶がある…
「もしかして、ここは天狼島なのか……?」
「いかにも、ここは天狼島じゃ。よく、来よったな小童」
天狼島を見ていると後ろから聞いたことのある声がしたので後ろを向くとそこにはフェアリーテイルの三代目と六代目ギルドマスターのマカロフ・ドレアーが居た。
「貴方はマスター・マカロフ……」
「儂を知っとるのか?それなら話が早い。早速、修業を始めるかのぅ」
「お、お願いします!」
「ほれ!ナツ、小童を鍛えてやれ!」
マカロフはある男の名前を口にすると空から桜色の髪の毛に白いマフラーをした男が飛んできた。
「あ?なんだ、じっちゃん。呼んだか?」
「こやつを鍛えてやれ」
「コイツを?」
「ナツ・ドラグニル……」
「なんだ?オレのこと知ってるのか……ん?」
ナツは鼻をヒクヒクと動かすとオレに近付きオレの体の臭いを嗅ぎだした。
「お前、なんかオレと似た匂いがするな?」クンクン
「あ、ああ……。それは、オレもナツと同じ滅竜魔導士だからだ」
「何!お前も滅竜魔導士なのか?!」
「そうだ」
「じゃあじゃあ、何の滅竜魔導士なんだ?」
「属性は全てだ」
「全て!?」
「論より証拠だな」
オレはナツに自分が滅竜魔導士だという証拠を見せるためにフェアリーテイルのメンバーの滅竜魔法を見せることにした。
「天竜の咆哮!」
周囲の空気を魔力と共に吸い込み、一気に海へと放つ。すると、グルグルと風の竜巻がオレの口から海へと放たれた。
「うおっ!?そいつはウェンディの魔法!」
「まだまだ、雷竜の咆哮!」
続いて魔力で雷を形成して、さっきと同じように海へと雷を放つ。
「今度は、ラクサスの魔法だ!」
「どうだ?これでオレが滅竜魔導士だって分かったか?」
「ああ!こんなに多くの属性を使える滅竜魔導士を見たのは二人目だ!」
「まだ、覚えたてだから滅竜魔導士の戦い方を俺に教えてくれ!」
「いいぜ!その代わり、満足が行くくらいに自分が成長したと思った時は俺と本気で闘ってくれ」
「ああ、オレも彼のナツ・ドラグニルと本気で闘えるなら、闘う以外の選択肢は無いぜ」
「オッシャアアア!」
「「燃えてきた!」」
オレはナツが言うであろう掛け声に合わせて同じ掛け声を口にするとナツは俺を見てニヒリと笑った。
なので、俺もニヒリと笑顔で返す。
「行くぞ!あっ、そういえば名前を聞いてなかったな。お前、名前は?」
「オレは龍呀……狩谷龍呀だ!」
「よし、龍呀!俺に付いてこい」
「おう!」
こうして、オレの新たな人生へ向けて準備である、滅竜魔法の修行が始まった。
主人公の名前が思いつかなかったので使い回しました。
すみませんm(__)m
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第2話
天狼島の大きく開けた場所で二人の男が対峙している。
一人は桜色の髪をした男と、もう一人。髪の色が違うが容姿が似ている男。
「行くぞ、龍呀!」
「おう!」
二人が返答し合うと同時に走りだし、そして…………
「火竜の鉄拳!!」
「水竜の流拳!!」
炎を帯びた拳と渦巻いた水を纏った拳がぶつかり合う。それにより水が炎で蒸発し、周囲に白い煙が発生する。
「まだまだ!」
「火竜の咆哮!!」
「水竜の咆哮!!」
白い靄の中、男たちは今度は互いに口から勢いよく炎と水のブレスが激突する。
「ヘヘヘヘッ、やるな」
「こんな程度じゃ、負けないぜ。ナツ!」
「なら、これでどうだ!」
ナツは腰を少し落とし、拳に力を入れて身体の奥底にある力を呼び起こす。呼び起した、それは雷を帯びた炎だった。
「モード、雷炎竜!!」
「モード、雷炎竜か…………なら!」
「ウオオオオオ!!」
ナツがモード雷炎竜になったのを見たオレは、それに応えるかの様にナツと同じ様に腰を少し落とし水竜と違う力を呼び起こす。
それは…………
「モード、水嵐竜!!」
水の滅竜魔法と空気を司る天空の滅竜魔法を織り混ぜた魔法。これにより、嵐の滅竜魔法が使えるようになる。
「へぇ……今回は水嵐竜なんだな、龍呀」
「ああ…………まだ、このモードはナツに試していなかったからな」
そう、オレはこの5年間の修行でモードを物にした。他にもあるがモード状態だと発動ができない物や一度使うと疲労が激しい物も会得できた。
また、普通のモードなら長時間で使用できるまでは成長している。
「そりゃ、楽しみだ」
「まぁ、見てなって!」
「まずは手始めに…………水嵐竜の咆哮!!」
「雷炎竜の咆哮!!」
水嵐と雷炎のブレスが激突し、それにより先ほどとは違い、空気を揺らす程だった。
「次で決める!滅竜奥義・改 嵐竜天翔波!!」
「なら、こっちもだ!滅竜奥義・改 紅蓮爆雷刃!!」
二人の雷と炎の渦と水と風の渦がぶつかり合う。
そして、そのぶつかり合った衝撃は今までの物とは桁違いにデカく、木々を揺らし、島を揺らし、二人が立っていた地面は抉れるほどだった。
しかし、これ以上は危険だと思い、ある男が二人を止める。
「そこまでじゃ!お前ら」
「じっちゃん!?」
「マスター!?」
「お前らは天狼島を吹き飛ばすつもりか!?」
「いや………龍呀の卒業テストだから本気でやらないとって思ってさ……」アサアセ
「オレもナツとの約束があるから本気でやってました。すみません……」アセアセ
「まったく!これだから、ガキは……」
「それで、マスター。龍呀の卒業試験の結果は?」
マスター・マカロフの後ろから銀色で長髪の女性がマスターにオレの卒業試験結果を聞いた。
「ミラも見てたのか?」
「私だけじゃなくてギルドのみんなが貴方たち二人の闘いを見てたわよ」
「え?」
辺りを見渡すとフェアリーテイルのギルドメンバー全員が離れた場所にいた。
「二人とも凄かったよ!」
「まさしく、漢だ!」
「なかなか、やるじゃねぇか」ギヒッ
「本当に凄かったですよ」
「まさか、モードまで物にするとはね」
「ルーシィ、エルフマン、カジル、ウェンディ、シャルルまで……」
「お前さんはよく、この5年間でここまで成長した。よって、お主に卒業試験合格を言い渡す!」
「ありがとうございます!」
「それじゃ、卒業の証の授与ね。リサーナ!」
「はい」
リサーナがオレに差し出したのはナツのマフラーと良く似たマフラーとフェアリーテイルのギルドメンバーの印をつける判子だった。
そして、マフラーを着けてからリサーナに左肩にギルドマークを刻んでもらう。
「卒業おめでとう、龍呀」
「ありがとう、リサーナ」
ギルドマークを刻むとギルドマークは何故か分からないが直ぐに透明になり、左肩は何の印もない元の肌へと変わってしまう。
「これにて、卒業式を終了する」
「龍呀、お主はもう我等と同じ、フェアリーテイルの仲間であり、何処へ行っても家族じゃ。それを忘れるでないぞ?」
「はい!」
「なんとも、丁度いい時間じゃのう。お主の迎えが来たようじゃ」
「え?」
オレは後ろを振り向くと初めて天狼島に来た時と同じ扉があった。
「行け、龍呀!お主の新たな門出じゃ!」
「はい!」
オレはリサーナからもらったマフラーを首に巻いて、扉へ歩を進める。
そして、扉の前に立つとオレは一度後ろに身体を向けて、フェアリーテイルの皆に…………
「この5年間、大変お世話になりました!」
深く頭を下げてから扉の戸を押して扉をくくる。
「まったく…………門出だと言ったろうにアヤツは親を泣かせおって……」ポロポロ
「マスター……」
「今日は良き日だ!皆の衆、龍呀の門出を祝って宴じゃあ!」
「「「オオオオオ!!」」」
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第3話
5年間の修行を終えて、再び神様の居るところへ戻ってきた。
「おっ!お帰り」
「ただいまです」
「大分、強くなったみたいだね」
「ええ、お陰様で」
「あっ、それと4つ目の願いだけど」
「???」
「やっぱり、他にない?あっ、そうだ!」
「なんですか?」
「君がいない間に原作を読んでたんだけど、あるヒロインを救って欲しいのよ」
「それって原作ブレイクしない?」
「いいの、いいの!ブレイク上等よ!」
「えぇぇぇぇ……」
「で、救ってほしいのは黒歌と姫島朱乃の二人だね」
「めさくさ、原作ブレイクするキャラじゃん!特に姫島朱乃とか!オレ、ハイスクールD×Dは3期までしか見てないんだけど……」
「なんだ?なら、どうせ原作ブレイクするんだから楽しんじゃいなよ」
「まぁ、神様がそういうなら…………」
「よし、決まり!さっそく、黒歌の方を助けに行ってもらうよ」
「えっ、いきなりですか!?」
「そういう訳だから、行ってらっしゃい!」
神様は何処から分からないが垂れてきた紐を何の躊躇もなく、引き。それに合わせて、オレは浮遊感を感じた。
うん…………これはあれ、ですな。
「このクソ神がぁぁぁぁぁ!!」
「アハハハハ!!」
下に落ちて行くに連れて神様の笑い声が遠くなるのを感じた。
そして…………
「ぐぇ!?」ドス
なんの受け身も取っていなかったため、多分、地面だろうか?それにオレは顔面キッスをすることになった。
「いてててて…………ここ何処だよ?」
まずは、辺り一面を見渡すが……木、木、木、木。
木しかないじゃん!
「本当にここは何処だよ…………ん?」クンクン
「この臭いは人か?動物か?それに嗅いだことの無い臭いもするな」
「だとすると…………黒歌か?」
「なら、助けるしかないよな!」
オレはラクサスの雷の滅竜魔法で身体を雷に変えて、臭いがする方へ急ぐ。
◇◆◇
《side???》
「待て、SS級犯罪悪魔の黒歌!」
「誰が待つかっての!」
今日は失敗した。私は妹が心配になり黒猫に変身して観察してから街離れの所で元の姿に戻ったらバウンティーハンターの悪魔たちに見つかってしまった。
「本当に執拗い。そんなに執拗いと女に嫌われるわよ?」
「うるせぇ!てめぇを取っ捕まえて、その後は思う存分楽しませてもらうから良いんだよ!」
「うわっ、キモ!」
「うるせぇ!」
後ろを追いかけてくる悪魔たちに気を取られていると前から魔法が飛んでくることに気が付かずに何発か受けてしまう。
「!?」
「きゃあっ!?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、足が…………」
やられた、今ので受け身を取ることを失敗して足を捻ってしまった。
このままだと、かなりヤバイ。魔法も底を付き始めてるのに…………
「フッヘヘヘヘ、もう鬼ごっこはお仕舞いかい、子猫ちゃん?」
「クッ……!」
「早く、ヤることヤッチまおうぜ」
「そうだな」
「…………。(いや、こんな奴らに奪われるなんて!)」
私は手の打ちようがなく、何とか打開策がないか考えていると、いきなり目の前に雲も無いのに雷が飛来してきた。
◇◆◇
《side龍呀》
臭いをたどり雷で向かっていると、大きな木の下に一人の猫耳を生やした女性と数人の悪魔が居た。
「あれか……てか、黒歌エロ過ぎ!」
黒歌とおぼしき女性は黒い浴衣がかなりはだけており、胸元がかなり露出して、足はギリギリ太ももまでしか見えていないが後少しずらしてしまったら完全にその先が見えてしまうほどだった。
「でも、アニメで見た時から好きなキャラだし、これはこれでいいか」
悪魔たちが黒歌に襲い(意味深)かかろうとした時に落雷の様にオレは黒歌と悪魔たちの間に降りて、悪魔たちに魔法を使わずに一発ずつ決める。
「オラッ!」
「アガッ!?」
「グハッ!?」
「カハッ!?」
あまり、力を込めたつもりではなかったのだが悪魔たちは5mほど吹き飛んでしまう。
「あれ?おっかしいな……そんなに力込めたつもりじゃなかったんだけどな……」
「に、人間…………?」
黒歌はあまりのことに驚いている様だが、オレが殴り飛ばした悪魔たちはその間に体制を整えた様だ。
「貴様、何者だ!」
「なんで、人間風情が冥界に」
「あ?ここは冥界なのか?」
「それで、お前は何者なんだ!」
「オレか?オレはフェアリーテイルの
「フェアリーテイルだ?」
「おい、聞いたことあるか?」
「人間のドラゴンスレイヤーも聞いたことがねぇな?」
「まぁ、取り敢えず……死ねや!」
悪魔たちは魔法陣を展開し、色々な属性の魔法を放つがスレイヤー系魔法を持つ魔導士にはそんなのは無意味だ。
「逃げて!人間があんな数の魔法を受けたら、ひとたまりも無いわよ!」
「平気平気。まぁ、見てな!」
オレは魔法を発動せずに吸い込むことをイメージしながら息を大きく吸う。すると悪魔たちから放たれた魔法がドンドン、オレの口へと吸い込まれて行く。
「ふぃ~、ごちそうさま」
「なっ!?」
「あ、あの人間、俺たちの魔法を…………」
「食べやがった!?」
「今度はこっちから行くぜ?」
一気に駆け出し、悪魔たちの懐へ潜り込む。
「ナツ、行くぞ。火竜の鉄拳!!」
ナツお得意の火の滅竜魔法を一人の悪魔に打ち込む。続いて、ラクサス、ウェンディの魔法も決めて行く。
「グハッ!?」
「雷竜の鉄拳!!」
「ガハッ!?」
「天竜の翼撃!!」
「ドブァッ!?」
「おいおい、この程度かよ?まぁ、いいや。もう、コイツを狙わないなら見逃してやる」
「こんな人間風情に……」
「嘗められて……」
「たまるかぁぁぁぁ!!」
悪魔たちは最後の悪足掻きに全力の魔法をオレに放なってくるので、屠ることにした。
「救えない奴らだ」
「白竜の───咆哮!!」
今度は悪魔にとって最も効果的な属性の光属性のブレスを悪魔たちに放つ。すると悪魔たちが放った魔法ごと悪魔たちを呑み込み、跡形もなく消し飛ばした。
「す、すごい…………」
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第4話
黒歌を追いかけていた悪魔を白竜の咆哮で消し飛ばした後、黒歌に近付いて、天空の滅竜魔法で黒歌の足を治して行く。
「よし、これで大丈夫だな」
「あ、ありがとうにゃ……」
「やっぱり、語尾に『にゃ』が付くと可愛いな」
「にゃっ!?」
「ほ~れほれほれ」ナデナデ
オレは失礼を承知で黒歌の喉を撫でてやる。すると黒歌の頭にある猫耳がピクピクと嬉しいそうに動きだす。
また、尻尾をユラユラさせながらゴロゴロと喉を鳴らしくれる。
「ゴロゴロ……」
「可愛いな……」ナデナデ
少しこれを続けていると風が吹き込んできて、風に流されて来たのか悪魔と人間の臭いが混じった臭いを感じた。
「この臭いは……人間?悪魔?どっちだ?」
「ほう、臭いで相手の種族が分かるのか?」
「誰だ!」
上の方から声が聞こえてきたので黒歌を守る様に臨戦体制に入る。
「大丈夫よ。それにしても、もっと早く助けに来てくれても良かったんじゃない、ヴァーリ?」
「そこのマフラーを付けている人間が気になってな。少し観察していたんだ」
「それで私の初めてが奪われたらどうするのよ!」
「えっと…………アンタ、白龍皇なのか?」
「いかにも、今代の白龍皇に選ばれた。ヴァーリだ。よろしく、ドラゴンスレイヤーくん」
「そうか……。アンタがあの、ヴァーリ・ルシファーなのか」
「「!?」」
二人はまさか、ヴァーリの本名を知っている奴がこんな所に居るとは思わず。驚きの表示を見せた。
「ドラゴンスレイヤーくん。君は何処でそれを知ったんだい?」
「さぁな?教えても理解できないだろうから教えない。それにアンタは悪魔のはずだ。悪魔なら取引するもんだろう?」
「クッハハハハ、これは面白い!この俺に取引か」
「なら、その情報と交換に君は何を望む?」
「ん~、なら黒歌をオレのお嫁にください!」
「にゃっ!?」
「クッハハハハ!!」
「にゃ、にゃにゃに言っているにゃコイツ!?」
「だって黒歌が可愛いし綺麗だなって思って。この人ならお嫁さんに欲しいな~と」
「良いだろう。黒歌を君の嫁にするがいい」
「勝手に決めるにゃ!」
「で、ドラゴンスレイヤーくん。君は何処で知ったんだい?」
「待てよ。黒歌はオレのお嫁に来るなんて、まだ一言も認めていないから取引は成立してないぞ?」
「誰が行くか!」
「黒歌。お前、前に強い雄の子が欲しいと言っていたろう?彼ならそれに当て嵌まるんじゃないのか?」
「はっ!そうにゃ、コイツなら強い子供できるにゃ!」
なんか黒歌は強い子供を作るために納得したようだが、そんなんじゃ俺は嫌だな。
ちゃんと互いに支え合う、鴛鴦の様な関係になりたいのだ。
「そんな、利用する感じならオレはお断りだよ」
「なんでにゃ?」
「オレは本気で黒歌のことが好きなんだよ!」
オレは黒歌の綺麗な瞳を見詰めながら愛の告白をした。前世でも一度も告白したことがない。
すると、黒歌は着物の袖で顔を隠し、身体クネクネと動かす。
また、黒歌の尻尾を見ると二本の尻尾でハートマークを作っていた。
「そ、そんにゃに見詰められたら恥ずかしいにゃ……。///////」
これは脈ありですかね?
「これは黒歌もまんざらでないようだな。よかったな、ドラゴンスレイヤーくん?」
「え?マジで!」
「こんな私で良ければ……よろしく、お願いするにゃ。///////」
「やったー!」
ヤッホー!黒歌がオレのお嫁に来てくれたぜ!
『心の中で喜んでる最中で悪いんだけども、時間だよ』
え?もう、そんな、時間なのん?
黒歌を連れて行ってもいい?
『原作ブレイクするし、良いんじゃない?』
うわ……適当な神様だ、やっぱり……。
「黒歌、手を」
「は、はいにゃ。///////」
「それじゃ、ヴァーリ。また、会った時は闘おうな?」
「おい、待て!まだ、情報のことを…………」
ヴァーリが何か言っていたが、神様の力で再び、神様の居るところへ転移した。無論、黒歌も一緒にね。
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第5話
黒歌をお嫁にしてから神様がいる所へ戻ってきた俺たちはまず、自己紹介をすることになった。
「まずは俺からだな。オレの名前は狩谷龍呀。あとは知っての通り、種族は人間で、フェアリーテイルの滅竜魔導士だ」
「私の名前は黒歌にゃ。種族は元々は猫又だったけど今は転生悪魔にゃ」
「それでは、私だけど……神様です」
「は?」
黒歌は神様の自己紹介の『神様です』に間抜け顔で固まった。
そして、錆び付いた錻の様にギギギギと顔を俺の方へ向けての冷や汗を流しながら質問をしてきた。
「りゅ、りゅりゅ龍呀、本当なの?」
「本当だ」
「…………」
「はにゃぁぁ…………」バタリ
今度はキャパオーバーしたのか白眼を向いて倒れた。
「あらま、気絶しちゃった」
「いや、これが普通の反応だから。オレも最初は夢か何かかと思ってたから黒歌みたいな気絶はしなかったけど」
「まぁそうだね。いきなり、目の前に神様だもんね?」
「それで、次は姫島朱乃の所なんだろう?」
「そうそう。姫島親子が姫島の一族に殺されるのを止めて欲しいのさ」
「わかったよ。でもその前に、顔を隠すためにミストガンの服を用意してくれ」
「なんで、また?」
「何となくだ」
「わかったよ、ホイ」
「ありがとうございます」
神様からフェアリーテイルのミストガンの服を一式もらって着替える。
これなら、顔がバレないから後で面倒なことになることは避けられる。
「それじゃ、行ってらっしゃい!」
「黒歌をお願いします」
黒歌を神様に任せて、オレは神様の展開した転移魔法で姫島朱乃の最も悲しい時代に行くことになった。
◇◆◇
《side???》
とある神社で二人の親子が数人の大人たちに囲まれていた。
「朱璃、そのガキを寄越せ!」
「嫌です!この子はあの人との大切な子供なの!」
「ええい、早く寄越せ!」
「母様……」
「大丈夫よ、朱乃。朱乃は母様が守るから」
「グスッ……お願い、誰か、母様を助けて!」
「なら、娘諸共逝くがよい!」
「朱乃!」
「母様!」
大人の人はその手に持つ刀で母様の背中を切り裂いた。
そして、母様は私に覆い被さる様に倒れてきた。
「母様!母様!」
「朱……乃……貴女……だけ……でも……生きて」
「嫌だよ!母様がいないと嫌だよ!」
「ごめん……ね」
「お願い誰か、誰か母様を助けて!」
私は願った。誰でも良いから母様を助けてと。そして、奇跡は少し遅れて起きた。
「まだ、娘の方は息があるのか。なら楽に逝かせてやる」
「……グスッ……グスッ……」
「あの世でこの様なことになった事を、お主の父を恨むのだな」
母様を切りつけた大人の人は母様を切りつけた刀で私を切りつけようとするが何処からか男の声が聞こえてきて、その大人を殴り飛ばした。
「殺らせるかぁぁぁぁ!!」
「なに!?」
「火竜の鉄拳!!」
「グハッ!?」
「え……?」
「もう大丈夫。安心しろ」
◇◆◇
《side龍呀》
再び、神様によって転移させられたのはとある神社の石階段の前だった。
「ここが姫島神社なのか……ん?」クンクン
「これは……血の臭い!!」
オレは血の臭いを感じたので雷になって一気に石階段を登っていく。
すると途中で見えない壁に阻まれてしまう。
「これは結界か?これくらいなら破れるな」
「鉄竜剣!!」
鉄竜剣で結界を破り、神社の脇にある神主の家に入るとそこには背中から血を流している女性と今にも殺されそうな少女がいた。
「殺らせるかぁぁぁぁ!!」
「なに!?」
「火竜の鉄拳!!」
「グハッ!?」
「え……?」
少女は殺されると思っていたのか殺されていないことに驚いていた。
「もう大丈夫だ。安心しろ」
「貴様、何者だ!」
「あ?そんなの言う必要があるのかよ?それとアンタら何やってんだ?あ"ぁ?」
「そやつらは穢れた血を持つ子供を宿すだけに飽きたらず、家庭など持ちおったから我等一族が粛正しに来ただけだ!」
「そうか…………でも、オレには関係ないから。てめぇらをぶっ飛ばすことにしたわ」
「なに!!」
「簡単に帰れると思うなよ?」
そこからは簡単に説明するが姫島一族を魔法を使わずにボコボコにして亀甲縛りをして放置。
縛り終わると急いで朱乃のお母さんである朱漓さんの傷を治す。
「ねぇ、母様は大丈夫なの?」
「大丈夫、必ず助けるから」
少し出血が多いが何とか一命は取り留めることができた。
けれど、完全に傷が癒えるまで朱漓さんに魔法を使っていると背後から朱乃と少し似た臭いが流れてきた。
「朱璃!朱乃!」
「父様!」
「朱乃、よかった無事で!朱漓は?朱漓はどうした?」
「母様は今、私達を助けてくれた人が治してくれてる」
「それは本当か?」
「うん!」
玄関の方から多分、バラキエルのオッサンだろう。
朱乃とオッサンがオレのことを話している様だ。
「朱璃!」
「安心しな、一命は取り留めたから」
「そうか……妻と娘を助けてくれて感謝する」
「別に通りかかっただけだから、気にするな」
バラキエルのオッサンと話しているとマントを朱乃に引っ張られた。
「ねぇ、お名前なんて言うの?」
「オレか?オレは、ナツ・ドラグニル。フェアリーテイルの滅竜魔導士だ」
ここは偽名が一番だろう。
「ナツお兄さん。母様と私をたすけてくれて、ありがとう」
「ちゃんと、お礼を言えてえらいな」ナデナデ
「えへへ……」
「それじゃ、君のお父さんも帰ってきたことだし。オレは帰るよ」
「ナツお兄さん、また会えるかな?」
「そう願っていれば、きっと……」
「何から何まで、すまない」
「気にするな。それじゃ」
オレは影の滅竜魔法で影に潜り、姫島神社を後にして人気が無いところで神様に念話をする。
「神様、少し手間を取ったけど姫島親子を救ったぞ」
『はいはい、お疲れ様。一度こっちに戻すよ?』
「了解だ」
また、神様の転移魔法で黒歌がいる所へ転移する。
無事に転移が成功すると黒歌が笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさい、龍呀」
「ただいま、黒歌」
「帰ってきて、早々で悪いんだけど。君たちを原作の開始日より少し前に転移させるよ。家とかお金はこっちでやっておくから。ついでに、便利な小型ラクリマも送るから」
「わかった」
「他には、二人の子供が出来ても問題ないからね?」
「本当かにゃ!」
「それはまだ早いっての!//////」
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旧校舎のディアボロスと滅竜魔導士
第6話
「天竜の翼撃!!」
「Groooga!?」
「雷竜の鉄拳!!」
「Gngaaaaa!?」
神様によって原作の開始日より少し前に転移させてもらったオレと黒歌は、一軒家に住んでいる。
そして、今オレは神様が用意してくれた家の地下にある異空間の中で簡易ラクリマで出した、フェアリーテイルの大魔闘演武に出てきた
「左手の炎と右手の炎を合わせて……」
「火竜の煌炎!!」
火竜の煌炎を地面に叩き付けて一気にD~Cまでのクラスモンスターを一掃する。
残りはBが15体、Aが4体、Sが1体のみ。
「残り20体」
残りの20体を倒すために
奥に進むに連れて、モンスターが四足歩行から二足歩行へと変わっていく。
「水竜の海刃槍!!」
水の滅竜魔法で右手に水で形成した三叉槍をBクラスのモンスターに投擲する。けれど、Bクラスとなるとこれだけでは倒せない。
「コイツを喰らえ!」
「雷竜の方天戟!!」
今度は雷竜の方天戟をさっきの攻撃で濡れたモンスターたちに投擲すると水は電気を通り易いから大ダメージが入る。また、濡れていないモンスターは床が濡れているためダメージを受ける。
「残り5体」
残りの5体を倒すために先に進んでいくと、ゲームのボスステージの様な円型状の広い部屋で4体のAクラスモンスターが部屋に入った途端に襲いかかってきた。
「へぇ、面白しれぇ」
「ちょっと、本気を出すか」
「モード、雷炎竜」
「雷炎竜の撃鉄!!」
「Guooooo!?」
「雷炎竜の砕爪!!」
「Gugaaaa!?」
雷炎竜の攻撃でAクラスモンスターを瞬殺していくと大魔闘演武とは違い、スタート地点からSクラスモンスターが居る訳でなく最初からSクラスモンスターは最深部に居るため、Sクラスは最初からステータス3倍が確定している。
「これで最後だな」
「UOOOOOO!!」
Sクラスは椅子の上で魔王の様な姿で俺を待ち構えていたので立ち上がる前に一発入れる。
「雷炎竜の咆哮!!」
炎と雷のブレスがSクラスを呑み込みで行き、爆発が起きて煙が上がる。
けれど、そんなの関係ない。もう直ぐ、朝飯の時間になるため、一気に決める。
「まだまだ!」
「滅竜奥義・改 紅蓮爆雷刃!!」
渾身の滅竜奥義を放つとゲームで良くある勝利のファンファーレが流れる。
そして、ファンファーレが終わると今回の
「ノーマルでタイムは…………40分45秒か」
「まだ、エルザのタイムには勝てないか……」
大魔闘演武でのエルザのタイムには、やはり初回からモードを使わないと超えられない。
途中からのモードだとなると、この有り様だ。
そんなことを思っていると異空間の入り口からエプロン姿の黒歌がやってくる。
「龍呀、ごはんだにゃ」
「了解」
「「いただきます」」
「龍呀、今日は白音がいる学園に転入するのよね?」
「そうだけど?」
「なら、白音のことで何か分かったら教えて欲しいの」
「分かった。黒歌も猫の姿なら自由に動けるんだから白音のことを見に行けばいいのに」
「でも、学園はグレモリーとシトリーの根城なのよねぇ」
「なるほどな」
黒歌が何故、自由に外を歩けるのかは神様がラクリマと一緒に黒歌の悪魔の気配や臭いを消す首輪を用意してくれたのだ。
首輪の輪にはフェアリーテイルのマークがあり、また安定の鈴もついている。
初めて、首輪を着けた時に黒歌の奴は、『これで完全に龍呀の飼い猫にゃ』なんて照れながら言うもうですから、鼻血が出るかと思いましたよ。
懐かしいことを思い出していると家を出ないといけない時間になった。
「それじゃ黒歌。学校に行ってくるけど、何にかあったら小型ラクリマで知らせてくれな?」
「大丈夫よ。それよりも顔をもっとこっちへ近づけて」
黒歌の要望で顔を近づけて…………
「ん……」
「ん……」
簡単なキスをする。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
家を出て、携帯のマップアプリとオレと同じ制服を着た人をたどりに学園へと向かう。
それから約15分ほどで学園の正門前に着いたけど…………
「転校なんて、生まれて初めてだし。どうしたら、いいんだ?」
初めての転校でアタフタしているとメガネをかけた女子生徒が話かけてきた。
「そこの貴方」
「は、はい!」
「見たことがない顔ですが、転校生ですか?」
「はい、今日から二年に転入する。狩谷龍呀です」
「そうですか。申し遅れました、三年で生徒会長をしている支取蒼那です。以後、お見知り置きを」
「こちらこそ、よろしくお願いします。支取先輩」
「フフフフ。椿姫、彼を職員室までお願いします」
「わかりました、会長」
椿姫先輩の後を追って駒王学園の職員室へと向かう。
「ここです。では、私はこれで」
「どうも、ありがとうございます」
椿姫先輩にお礼を言ってから職員室の中に入り、担任の先生と共に教室へ向かう。
◇◆◇
《sideイッセー》
やぁ、みんな。兵藤一誠だ。
昨日、彼女の天野夕麻ちゃんと、それはそれは楽しいデートしていたんたが、終わりに差し掛かろうとした時に夕麻ちゃんに公園で……まさかの殺される夢を見たんだ。
そして、今日、悪友である。元浜や松田たちに夕麻ちゃんのことを聞いたら知らないって言うんだよ。
まったく、どうなってるんだよ?
そんなことを朝から考えていると担任が来て、HRが始まった。
「えー、みんな、おはよう」
「「「おはようございます」」」
「まず、最初に転校生を紹介します」
「転校生?」
担任の口から転校生と出た瞬間に俺以外のクラスの奴らがざわめきだす。
俺は今、そんなことを気にしてられるほど余裕がないのだ。
「先生、先生!転校生は女子ですか?」
「残念、男子だ。それも、一部の人間には嬉しい顔だと思うぞ?」
「えー?」
「どんな顔なんだろう!」
「それでは入ってきてくれ!」
「はーい!」
担任が廊下に声をかけて、廊下から一人の男子が入って来たが、その男子の顔がまさかの…………
「では、自己紹介を頼む」
「えぇ……フィオーレ魔導魔術学園から、転校してきました。ナツ・ドラグニルです。よろしく」
「…………」
「…………」
「…………」
「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」
まさか、まさかのFAIRY TAILに出てくる、ナツ・ドラグニルに瓜二つなのだ。けれど、違う点は髪の色が黒な所だけだ。
「これこれ、冗談はそこまでしなさい」
「すみません。えー、狩谷龍呀です。よく、FAIRY TAILのナツ・ドラグニルに似ていると言われますが、よろしく」
狩谷がそう自己紹介を閉めると、再び、クラスの連中が騒ぎだす。
「スゲー、マジで、ナツ・ドラグニルに似てんじゃん!」
「声もそっくりだし!」
「なぁ、狩谷。ナツの決めセリフを言って見てくれよ!」
「ああ、良いぜ」
「火竜の鉄拳!!」
「「「オオオオーッ!!」」」」
「滅竜奥義・紅蓮爆炎刃!!」
「「「「オオオオオーッ!!」」」」
狩谷がナツの真似をすると男子たちが歓喜を上げる。けれど、時間が来たのか担任が男子たちを止める。
「はいはい、そこまでだ。狩谷、席はあそこにいる兵藤の隣だ」
「わかりました」
「狩谷龍呀だ。よろしく」
「兵藤一誠だ。こっちこそ、よろしく」
こうして、俺は波乱の運命を共にする友と出会ったのである。
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第7話
《side龍呀》
無事に自己紹介も終えて、昼休みになったので学生の憧れの1つである、『屋上で昼飯を食べる!』をするために屋上へと向かう。
「う~ん、風が気持ち良いなぁ」
屋上に出たら入り口の近くにある梯子を上り、良い感じのスペースで黒歌が作ってくれた大きな弁当を食べる。
「うん、美味い!」
「黒歌の奴、こっちに来てから料理が上手くなったな。アニメだと料理しなさそうなイメージだったけど……まぁ、良いか」
「それにしても、イッセーが既に悪魔に転生してるとはな……。だとなると今日辺りにドーナシークに狙われるのか」
弁当を食べ終わり、原作に介入するか悩みながら入り口へ飛び降りると一人の生徒が驚いて倒れそうになるのを抱き止める。
「よっと」
「きゃっ!?」
「おっとっと!」
「すまない、大丈夫か?」
「いえ。こちらこそ、すみません。それとありがとうございます」
「怪我がないならよかった。それじゃ」
「あ、あの!」
「ん?」
オレの所為で倒れそうになった生徒が呼び止める。
てか、この子、銀髪で左の髪の毛には黒猫の髪止めを着けているのが特徴の塔城小猫こと白音じゃないか!
「なんだ?」
「その、名前を聞いてもいいですか?」
「狩谷龍呀、二年だ」
「私は塔城小猫、一年です」
「じゃあな、塔城」
今は華麗に去るぜ…………。
しかし、後ろで小猫が何か言っていたが、耳に意識を集中していなかったため聞き取れなかった。
「姉様の臭い…………どうして?」
塔城と邂逅の後は普通に学生らしい授業を受けて1日が終了。クラスの連中に色々と質問なんかを聞かれたが引っ越しの荷物解きがあると言って家に帰ることにした。
家に帰る途中で黒歌から小型ラクリマへ連絡が来ていた。
内容は……今日はスーパーで魚がセールだから買って来て欲しいとのこと。なんとも、平和に夫婦の様なやり取りをしている。
「さぁて、スーパーに寄りますか」
スーパーでセールの魚と黒歌用のチャオチュールかつお節味を買って家に向かって居ると石階段を降りているイッセーを見つけた。
「おいおい、グレモリーの眷属は誰もイッセーを見てないのかよ?」
◇◆◇
俺は元浜と松田のビデオ観賞会を抜け出して、何の考えも無しに歩いていると夕麻ちゃんとデートをした、あの公園に来ていた。
「この公園……」
「そうだ、ここだよ。俺はこの公園で夕麻ちゃんとデートをしたんだ」
「夕麻ちゃん……」
「あれが夢だったなんて、俺……信じたくねぇよ」
そう口した後、身体中から危険次号の様な嫌な感じを感じた。
「ッ!!」
「なんだ?」
俺は嫌な物の気配がする方を向くとコートに帽子を被った。知らないオッサンがいた。
嫌な感じの正体はそのオッサンからだったので少し距離を取ろうとすると……
「!?」
「ちょっと下がろとしただけなのに……」
「逃げ腰か?」
「ッ…………訳分かんねぇっての!」
それから俺は走りに走った。脱兎の様に生きるために逃げた。
しかし…………
「羽?夕麻ちゃん?」
「なっ!?」
その羽の正体はコートのオッサンが空を飛んだことによって落ちてきた羽だった。
それに先周りもされてしまった。
「下級な存在はこれだから困る」
「また、夢かよ?」
「フッン、主の気配も仲間の気配も無し。消える素振りすら見せず、魔法陣も展開しない。状況を分析するとお前は、はぐれか」
オッサンは右手から槍の様な物を形成した。
その槍を見た途端に身体の本能がアレはヤバいと叫んでいる。
「ならば、殺しても何の問題もあるまい」
オッサンはその手に持つ槍を俺に向けて投擲してきた。
ヤバい、殺られる!
「影竜の咆哮!!」
「え…………?」
「なに!?」
オッサンから放たれた槍が木々の影から吹き出たが、黒い渦によって粉々に粉砕され、俺に届くことはなかった。
◇◆◇
《side龍呀》
ヤバいヤバい。あと、少し遅かったら堕天使の光の槍がイッセーの腹を貫くところだった。
「よう、イッセー。生きてるか?」
「え………龍呀?」
「人間……?貴様、一体何者だ!」
「オレか?オレはフェアリーテイルの
「ドラゴンスレイヤーだと?」
「マジかよ……」
オッサンはただの人間に光の槍を粉砕されたことに驚き。イッセーはオレがまさかの滅竜魔導士だったことに驚いている様だ。
「オッサン、あんた、コイツの認識を間違えてるぜ」
「なに?」
「コイツはかの『紅髪の滅殺姫』の眷属だぜ?」
「なに!?」
「それでも、まだ殺るってんならオレたちが相手するぜ?」
「俺たち?」
イッセーはオレの発言に疑問符を上げたが直ぐにその理由を理解したらしい。それは、イッセーの背後からグレモリーの紋章が刻まれた魔法陣が展開されたからだ。
そして、魔法陣からリアス・グレモリーと姫島朱乃、塔城小猫の三人が現れた。
「その子に触れないでちょうだい」
「遅いですよ、リアス・グレモリー先輩?」
「貴方ね?私達にわざと分かるように魔力の波動を送ったのは」
「そのお陰でイッセーは無事なんですから良いじゃないですか?」
「そうね、それに関して礼を言うわ」
「これで分かったろう。オッサン?」
「フッハハハ。これは……この街がグレモリー家の次期当主の管轄であったとは……」
「まぁ、今日の所は退散しよう。だが、下僕は放し飼いにしないことだ。私の様な者が散歩がてら狩ってしまうかもしれんぞ?」
「ご忠告、痛み入るわ。私の方も今度こんなことをしたら、その時は躊躇無く殺らせてもらうから……そのつもりで」
「オレもコイツが狙われたら、躊躇無く消し飛ばしてやるからな」
「そのセリフ、そっくりそちらへ返そう。グレモリー家の次期当主、それにフェアリーテイルのドラゴンスレイヤー」
オッサンは堕天使の羽を広げ飛び立つ。
「我が名はドーナシーク。再び、合間見えないことを願おう」
その言葉を最後にドーナシークの臭いは公園から完全に消えた。
「迂闊でしたわ。まさか、堕天使と接触するなんて」
「本当ね。ところでそこの貴方」
グレモリー先輩は俺の方を向き質問をしてくる。
「何ですか?」
「一体、何者?」
「あのオッサンにも同じことを言ったが、オレはフェアリーテイルの
「そう。貴方、うちの生徒みたいだし、明日使いを出すわ。その時にまた、詳しく聞かせてちょうだい?」
「まぁ、別にいいですけど」
「それじゃ、よろしくね」
「そんじゃ、オレも帰りますかね。イッセー、今日はもう一人で出歩くなよ?今回はたまたま、オレが食材の買い出しの帰りに見掛けたからよかったものの」
「あ、ああ…………サンキュー、龍呀」
「おう。そんじゃ、今度こそ。では、また明日」
オレは影になって黒歌が待つ。我が家に帰ることにした。
「フェアリーテイルの
「朱乃?フェアリーテイルのドラゴンスレイヤーについて何か知っているの?」
「ええ……。過去に私は一族に親子で殺されそうになったところをフェアリーテイルの
「なら、彼が?」
「まだ、分からないわ。なにせ、10年以上も前の話よ?なのに、歳を取らないのはおかしいわ」
「だとなると朱乃を助けた人物の子孫なの?」
「それも分からないわ」
「取り敢えず、今は兵藤先輩をお家に送りましょう」
「そうね」
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第8話
イッセーを助けて、リアス・グレモリーとの邂逅の後、影に入って家に向かっていた。
「今日の夕飯は何かな?」
あと少しで家に着くというところでオレは自分の家から違和感を感じた。
「ッ!!」
「これは……悪魔の臭い!黒歌!!」
黒歌から出る悪魔の臭いはもう嗅ぎ慣れているので違和感が無いはずなのに、家からは黒歌以外の悪魔の臭いを感じて、違和感に気づいた。直ぐに影から出て雷で家へと急ぐ。
玄関からリビングに入ると、風呂上がりだったのか分からないがバスタオルを体に巻いてへたり込む黒歌と、黒歌を囲む様に立っている紅髪の男と銀髪を女がいた。
それを見た俺は頭に血が一気に登り、頭の中で何かが切れる感じがした。
「てめぇらぁぁぁ!黒歌に何をしてんだァァァ!!」
「雷炎竜の擊鉄!!」
「……ッ!?」
「オラッ!」
「きゃっ!?」
即座にモード雷炎竜になり、紅髪の男を庭へと殴り飛ばし、女は回し蹴りでキッチンに蹴り飛ばす。
そして、男と黒歌の距離が開けたら、雷炎竜から白影竜にモードを変更し男に追撃を加える。
「白影竜の擊鉄!!」
「オラオラオラオラオラオラーッ!」
左手には白竜を右手には影竜の魔法を帯びた拳を男へ連続で乱打する。そして、最後に両方を混ぜた片手拳でアッパーを決める。
「これで終わりだ!」
「滅竜奥義・改 聖影竜……「そこまでです!」」
留めの滅竜奥義を放とうとすると先ほど蹴り飛ばした銀髪の女が黒歌の首元に氷で作ったであろう刃物を当てていた。
「りゅ、龍呀……」
「…………」
それを見た俺は仕方なく、白影竜を解く。すると先ほど白影の擊鉄を決めたはずの男が笑いながら此方へ歩いてくる。
「いやいや、参った参った。僕がここまで殺られるのは何百年振りだったかな?アッハハハハ」
「……ッ!?(おいおい、マジかよ。割と本気で打ち込んだのに…)」
「たかだか、人間だと思って気を抜き過ぎです。反省してください!」
「アッハハハハ、すまないね」
「……ッ!!(今だ!!)」
「以後………グレイフィア!!」
「……ッ!?」
二人の一瞬の隙に雷で女に近付いて、雷竜の鉄拳で玄関へと殴り飛ばし、黒歌から引き剥がす。
引き剥がしたら、制服の上着を脱いでバスタオル一枚の黒歌にかけてやる。上着をかけた後は魔力を全力で解放しながら威圧して男と女へ問う。
「お前らは一体、何なんだ!」
「まさか、人間がここまでデカい魔力を持っているとは……」
「お前たちの目的は何だ?何故、人の妻を狙う!」
「これはすまない。君の奥さんに危害を加えに来た訳ではないんだ。ただ、話がしたかっただけなんだ」
「話しだと?」
「そうです。SS級犯罪悪魔の黒歌に聞かなければならない話があるのです」
先ほど雷竜の鉄拳で殴り飛ばした女も此方へ戻ってくる。
「黒歌は渡さねぇぞ」
「構わない。話だけさせてほしいんだ」
「黒歌、お前はどうする?」
「話をするにゃ。でも、龍呀も隣に居て欲しいにゃ」
「分かった」
黒歌は一度、自室に戻り着替えてくるとのこと。
その間、オレは紅髪の男と男がグレイフィアと呼んだ女を監視している。
「で、てめぇらはリアス・グレモリーの兄とその女王でいいのか?」
「へぇ、君は僕たちのことを知っているみたいだね」
「ああ、サーゼクス・グレモリーことサーゼクス・ルシファーに、その妻グレイフィア・ルキフグスことグレイフィア・グレモリーかグレイフィア・ルシファーだろう?そんで、旧魔王派の悪魔だった奴だろう?」
「まさか、そこまで知っているとはね。なら、僕も聞いて良いかい?君は一体何者なんだい?」
「人間が天使や堕天使と同じ、ましてやドラゴンと同じ力を持つ者は、僕は生まれてこの方、神器以外で見たことがない。けれど君は魔法を使った」
「狩谷龍呀。フェアリーテイルの滅竜魔導士で、黒歌の夫だ」
「滅竜魔導士……その滅竜魔法は魔力を持つ者なら誰でも会得出来るのかい?」
「無理だな。本来なら滅竜魔法はドラゴンに教わるかラクリマという魔法水晶を体内に埋め込む必要がある。けれど、オレはそのどちらでもない」
「どちらでもない?」
「オレはこの世界の人間じゃないからな」
「それはどういう……「お待たせしました」」
サーゼクスが最後まで言う前に黒歌がバスタオル姿からいつもの着物姿になって戻ってきた。
「この話は終わりだ。とっとと、本題に入ってくれ」
「それじゃ、黒歌くん。君は何故、自分の主を殺したのかね?別に責めている訳ではないんだ。君の元主のことについて調べていたら黒い話が出てきてね」
「それは本当なんですか?」
「ああ、本当だ。だから、君の話によっては犯罪悪魔から取り除くことも考えている」
「それは本当なのか!」
「もちろん。けれど、時間は掛かるけどね」
「わかりました。全て、お話します」
それから黒歌は自分の過去について話し始めた。
自分の両親のことや何故、自分の主を殺したのかも全て。
この話を少しだけ知っているとはいえ、何度聞いても、その主に苛立ちを覚える。
「…………これで以上です」
「分かった。ありがとう、黒歌くん」
「続いて、狩谷龍呀。先ほどの話の続き聞かせてもらいたい」
「仕方ねぇな。サーゼクス、お前はこの世界に神はいくつ居ると思う?」
「え?」
「だから、お前は神が地球だけに存在しているとでも思っているのかと聞いたんだ」
「…………なるほど。君は異世界の人間……そう言いたいのかい?」
「そうだ」
「アハハハハ。面白い、面白いよ」
「信じるのですか、サーゼクス?」
「僕は信じるよ。何せ、この僕が手傷を負ったんだよ。グレイフィア?」
「そうですが……」
「天竜の息吹」
白影竜の擊鉄で負わせた、サーゼクスの腕の傷を天竜の息吹で治していく。
それを見た、サーゼクスとグレイフィアは驚きの表情をした。
「傷が……!」
「これは凄い。滅竜魔法はこんなこともできるんだね」
「天空の滅竜魔法だ」
「僕の眷属に枠があったら是非、君をスカウトしていたよ」
「そうかよ」
「では、僕たちもそろそろ帰ろうかな」
「そうしてくれ、オレたちはまだ夕飯を食べてないんだ」
「あっ!龍呀、少しいいかにゃ?」
「なんだ?」
「魔王様にも一緒に夕飯を食べて行って貰いたいにゃ」
「何でだ?」
「妹の……白音のことを少し聞きたいにゃ」
「………………分かった」
それからはオレと黒歌とグレイフィアが先ほどの騒動でめちゃくちゃにしたキッチンを片付け。その後は女性陣に料理を任せて、サーゼクスと話をすることになった。
「龍呀くん。滅竜魔法は何属性あるんだい?」
「属性はかなりあるぞ。火、鉄、天、雷、聖、影、水、氷、毒、風、土。そして、魔だ」
「魔?」
「魔竜だよ。もっと知りたいなら人間界に存在するアニメでFAIRY TAILを見ろよ。漫画もあるぞ?」
「フェアリーテイルはアニメなのかい?」
「オレはある人の力で本物のフェアリーテイルのメンバーと会ったことがあるから、アニメだけではないな」
「なかなか、興味深いねぇ」
滅竜魔法の話が終わると黒歌とグレイフィアが作った夕飯を食べながら、黒歌が知らない白音のことを聞いた。
その時の黒歌は少し暗い顔をしていた。
「それでは、今度こそ失礼するよ」
「ごちそうさまでした」
「いえ、魔王様のお口にあって何よりでした」
「あっ、龍呀くん」
「今度はなんだよ?」
「これは僕、個人の願いだ。妹を……リアスを頼む」
「なら、その対価に黒歌のはぐれ悪魔の認定を解除を早めろ」
「出来るだけ、努力しよう。それと最後に何故、本気で僕を殺しに来なかったんだい?」
「本気でやれば、黒歌にまで被害が及ぶからな」
「なるほど。では」
そう言って、サーゼクスたちは転移魔法で帰って行った。
「クッ……」ギリ!
「龍呀?」
「勝てなかった…………全力じゃないとはいえ。割と本気で白影竜を使ったんだけどな」
「龍呀…………」
「オレ……もっと強くなる。誰も黒歌を……オレの大切な人を傷付けさせないために」
「ありがとう、龍呀」
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第9話
リアスやサーゼクスとの邂逅の翌日、早朝特訓を終えたオレは学園に向かっていると学園の正門で生徒たちが何やら騒いでいた。
その原因はイッセーとリアス・グレモリーが並んで登校しているからだ。
「な、何故だ!」
「あんな奴に……ありえねぇ!?」
「よりによって、あんな下品な奴と……!?」
「り、リアスお姉様……」
当の二人だが、リアスの方は何のその。イッセーは鼻の下を伸ばしていた。
「イッセー。その、締まりのない顔を直したらどうだ?」
「りゅ、龍呀!?」
「あら、狩谷くん。ごきげんよう」
「どうも、グレモリー先輩」
「今日、貴方たちに使いを出すわ」
「使い?」
「放課後に、また会いましょう」
「え……ああ……ちょっ、リアス先輩!ちょっと待ってくださいよ!」
リアスはイッセーの呼び止めに応じずに一人で校舎の中へ行ってしまった。
そして、それを見てるだけのイッセーに二人の男が襲いかかってきたので、回避する。
「よっと」
「イッセー!」
「ぐはっ!」
イッセーは坊主頭の奴に殴られて柱に顔面からキスをしてしまう。
「イッセー、貴様!モテない同盟の同士だったはずじゃないのか!?」
「…………。(なんとも、ダサい同盟だこと)」
「まぁ、落ち着け松田」
今度はメガネをかけた男が怒り狂っている坊主頭を止める。
「元浜……!」
「取り敢えず、訳を聞かせてもらおうかイッセー。俺たちと別れてから昨日、何があった!!」
と二人してイッセーに問い詰める中、オレは携帯兼小型ラクリマを見ると時刻がHRに近付いているため放置して自分の教室へ向かう。
そして、放課後…………
「使いが来るとか言ってたけど、結局誰も来なかったな……」
「そうでもないみたいぞ?イッセー」
「え?」
「こっちへ向かってくるグレモリー先輩に似た臭いが来ている」
「マジで……?」
イッセーがオレに聞き返してくると教室の入り口で主に女子たちが騒ぎだす。
その、原因は金髪のイケメンだった。
「やぁ」
「「「木場くん! 」」」
「けっ、イケメン王子か……死ね!」
「オレたちに寄越した使いはあのイケメン王子だぞ」
「なん……だと……」
「ちょっと、失礼するよ」
女子が騒ぐ中、木場は俺たちのところへやってくる。
「やぁ、どうも。リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだけど、兵藤くんと狩谷くんで……合ってるかな?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、僕に付いてきて」
「了解だ」
その後、木場の後に付いて行く。途中の廊下で何故か『木場×狩谷』や『狩谷×木場』などの話が聞こえてきた。
マジで止めろよ!オレには黒歌って奥さんがいるんだからよ!!
そして着きました。本校舎から離れた場所にある、木造建築の旧校舎だった。
「な、なんだ、この部屋は?」
「おっ、塔城……」
「狩谷先輩……」
「なんだ、狩谷くんは小猫ちゃんと知り合いだったかい?」
「いや、昨日偶然、昼休みに屋上で弁当食って教室に戻ろうした時にちょっとな」
「そうなんだ。こちらは兵藤一誠くんだよ」
「どうも」
「これはどうも」
イッセーは塔城を見ると朝と同じ締まりのない顔になり、そして、部屋の中に何故かある、シャワー室のシャワーが流れる音を聞くと……
「デヘヘヘヘ」
「部長、御召し物です」
「ありがとう、朱乃」
「リアス先輩!やはりか、なんて素敵な部室なのだ……」
「だから、その締まりのない顔を止めろっての!」
「イヤらしい顔。それに比べて、狩谷先輩は紳士です」
イッセーの馬面を見て塔城はイッセーに毒を吐いた。
「あら、あらあら。フフフフ」
「貴方たちが新しい部員さんですのね。はじめまして、副部長を勤めています。姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知り置きを」
「ひょ、兵藤一誠です。こちらこそ、始めまして」
「狩谷龍呀です」
「なんて、素敵な部活なのだ!」
「ダメだこりゃ……」
オレはイッセーの変態顔を何とか止めようとしたが諦めると、シャワー室からリアス先輩が髪を拭きながら出て来た。
「ごめんなさい、貴方の家にお泊まりしたままだったから」
「い、いえ!お気になさらず」
「リアス先輩、髪を乾かすの手伝いますよ。(どうせ、バレてるし)」
オレは天竜の魔法で暖かい風をリアス先輩の髪に優しく流す。
「ありがとう。それじゃ、これで皆揃ったわね」
「私たちオカルト研究部は貴方たちを歓迎するわ」
「は、はあ……」
「でも、オカルト研究は仮の姿。私の趣味みたいな物なの」
「は?それはどういう……?」
「単刀直入に言うわ。私たちは…………悪魔なの」
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第10話
「私たちは悪魔なの」
リアス・グレモリー先輩から、まさかのカミングアウトでイッセーは『は?何言っての、この人?』みたいな顔になってしまった。
オレは臭いで分かるから、この部室にはオレ以外の全員が悪魔だって知ってるから驚かない。
「…………それはとっても単刀直入ですね?」
「昨日の黒い翼の男。アレは堕天使よ」
「………ッ!!」
「神に仕えし者でありながら、邪な感情を持っていたため冥界に堕ちてしまった者たちよ」
「彼らは人間を操りながら私達、悪魔を滅ぼそうとしているの。太古の昔から冥界……人間界で言うところの地獄の覇権を巡ってね」
「堕天使以外にも神の命を受けて悪魔を倒しにくる天使もいるわ。つまり三竦みの状態って訳」
「…………」
イッセーはリアス先輩の説明をイチマイ理解していないのか顔が色々と変化していた。
「ここまでは理解できたかしら?」
「えっと……普通の高校生には難易度の高いお話っていうか……なんというか…………あははは」
「天野夕麻」
「ッ!?」
リアス先輩から出た、女性の名前を聞いたイッセーは表情を強張らせた。
「忘れてはいないでしょう?デートまでしたんですものね?」
「…………何処でその名前を聞いたか知りませんが、そのことをオカルト云々で話されるのは困るっていうか…………不愉快なんですよね。すみませんけど……」
イッセーが席を立ち上がり部屋を出て行こうとすると、リアス先輩は懐から一枚の写真をテーブルの上に投げた。
それは、天野夕麻と思わしき女性とイッセーが笑いながら歩いている写真だった。
「ッ…………夕麻ちゃん!!」
「彼女は存在していたわ。確かにね」
「…………」
「この子よね、天野夕麻ちゃん……って?」
「そ、そうです!でも、どうやってこれを……」
あぁ、話長げぇ…………寝るか。
「悪い、塔城。あとでお菓子やるから、二人の話が終わったら起こしてくれ」
「わかりました」
「じゃ、お休み」
オレは腕の組んで、身体をソファーに預けて仮眠をすることにした。
仮眠といっても警戒は一応しているので何かしらの変化が起きれば直ぐに臨戦体制に移行できる。
「……先輩!狩谷先輩!」
「ん?おお、塔城。もう、二人の話は終わったのか?」
「はい。今度は狩谷先輩の番です」
「そうか」
「狩谷くん。貴方のことをこれから龍呀と呼ばせてもらうわ」
「構わないですよ」
「それじゃ、龍呀。貴方のあの魔法は何?」
「あれは滅竜魔法ですよ」
「滅竜魔法?」
「マジかよ……!」
イッセーはオレの魔法が滅竜魔法だと聞いて目をキラキラさせていた。
「イッセー。貴方、滅竜魔法について何か知っているの?」
「は、はい」
「なら、イッセー。リアス先輩にオレの滅竜魔法を教えてやれ」
「マジで、あの滅竜魔法なのか龍呀?」
「ああ。マジの滅竜魔法だ」
「スゲェ……」キラキラ
「二人だけで話して無いで、私たちにも分かる様に説明しなさいよ!」
「あ、はい。えっと、龍呀が使う滅竜魔法は字の如く、竜を滅するための魔法でそれを扱う者を通称、ドラゴンスレイヤーって呼ぶんです。元々はアニメ、FAIRY TAILの中だけの話だと思ってたんですけど……」
「ドラゴンスレイヤー……」
「それで、スレイヤー系魔法を持つ魔導士には同じ属性の魔法がソイツには効かないんです」
「魔法が効かない?」
「論より証拠だな。姫島先輩、魔法で雷なんか出せますか?」
「え、ええ…………出せますが?」
「なら、オレに撃ってくれませんか?」
「え!?」
「朱乃先輩、大丈夫ですよ。ドラゴンスレイヤーは使う属性を食うことができますから」
「本当ですの?」
「本当です」
「で、では少し弱めに行きますわよ?」
「全力でも構いませんよ?」
「それでは…………ハッ!」
姫島先輩は人間が痺れる程度の魔力で雷を放ってくるがオレはそれを…………
「すぅーーー」
「「「えぇぇぇぇ!?」」」
「オオオオオ!!」キラキラ
「どうも、ごちそうさまです。美味かったですよ、姫島先輩」
「そ、それは……お粗末様でした」
「アレが滅竜魔法の特徴の一つです。でも、やっぱりスゲェな!」
「龍呀!お前、滅竜魔法の属性は雷なのか?」
「いや、全部だけど?」
「全部!?」
「龍呀、滅竜魔法には全部で何種類の属性が有るのかしら?」
「えっと……火、鉄、天、雷、聖、影、水、氷、毒、風、土。そして、魔だ」
「そんなに……それに魔?」
「えっと、それは魔竜アクノロギアのことです」
「アクノロギア?」
「アクノロギアってのは……「イッセー!」…なんだよ、龍呀?」
「その先は言わなくていい」
「何でだよ!もしかしたら、お前もアクノロギアと同じで……」
「アクノロギアと同じ?どういうこと、イッセー?」
「滅竜魔法にはデメリットも存在するんですよ。その一つは乗り物酔い。そして二つ目は、滅竜魔法を多様すると人間がドラゴンになってしまうんです」
「「「ドラゴンに!?」」」
イッセーからの滅竜魔法のデメリットを聞いたオカルト研究のみんなは凄く驚いていた。
「そして、人間からドラゴンになった奴が……」
「魔竜、アクノロギアって訳ね……」
「龍呀。まだ、聞きたいことがある」
「なんだ?」
「お前はナツ・ドラグニルと同じで"END"なのか?」
「ナツ・ドラグニル……」
「いや、オレは……「やっと会えましたわ!」」
オレが続きを話す前に姫島先輩が涙目で抱きついてきた。
やっぱり、イッセーの所為でバレたか……。
「やっと、やっと会えました。ナツお兄さん」ポロポロ
「えっと、久しぶりで良いのか?朱漓さんは元気か?」
「はい!貴方のお陰で今も元気に生きていますわ」
「えっと……朱乃?できれば、説明してくれるかしら?」
「昨日、話した私と母様の恩人が彼なのよ。リアス」
「まさか……でも、10年以上も前よね?なら、何で歳を取ってないの?」
「それは…………オレの魔法ってことで」
その後は、何故かずっと姫…「朱乃」…に腕を抱き締められながら座り。それを見た、イッセーは血の涙を流し、リアス先輩からは『悪魔にならないか?』と勧誘を受けたが今はまだ人間で居ることをオレは選択した。
他には、何故かオカルト研究部に入部することになった。
まぁ、塔城こと白音と同じ部活に入るのだから黒歌へお土産話が出来るから結果オーライかな?
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第11話
オカルト研究部に入部した後、解散になり家に帰る。しかし、何故か付けられている気配がしたので人気の無い場所で影に入り家へと帰った。
「逃げられましたか…………」
そして、今度こそ家に帰り、玄関の鍵を開けて家の中に入ると、いつものアレが待っている。
「お帰りにゃ、龍呀」
「ただいま」
「ご飯にするかにゃ?お風呂にするかにゃ?それとも……わ・た・し……かなにゃ?」
「いつも言っているが……最後はまだ早いっての!」
「ただの夫婦のスキンシッ…………ッ!!」
黒猫は『夫婦のスキンシップ』と言おうした時、いきなり顔を俯かせた。
「ん、黒歌?どうした?」
「ねぇ、龍呀?なんで、貴方の身体から私と白音以外の女の臭いがするのかしら、教えてくれる?」ゴゴゴゴ
黒猫は何故か髪の毛を逆立たせ、尻尾も大きく左右に振っている。これは、怒ってる?怒ってるサインなのかな?
「ああ……それは、多分、朱乃の臭いだな。前に神様に頼まれて助けた時の女の子が、この時代だとオレの先輩だったんだよ」
「で、オレがその時の助けた人物だってことがなんやかんやあってバレて、部活が終わるまで腕を抱き締められながらソファーに座ってたからだな」
「浮気じゃないのね?」
「ああ、俺は浮気はしないよ」
「なら、いいけど。でも、白音ならハーレムに加えても良いわよ?姉妹丼とか男は好きなんでしょ?」
「お前なぁ……!」
「さぁ、ご飯にするにゃ」
「ったく…………」
その後は普通に夕飯を食べて、風呂に一人で入り、風呂上がりの黒歌の髪の毛をドライヤーではなく天竜の魔法で乾かして1日が終了。
入部してから翌日、俺は今だに色んな学年の生徒から質問責めを受けた、特に腐女子から。それ故に部室に入ると…………
「チワー」
「分かったかしら、イッセー?」
「わかりました」
「何で怒られてんの?」
「それは兵藤先輩が教会へ近付いたからです」
「マジか、イッセー…………。変態だとは噂で知っていたがバカだとは……」
「誰がバカだ!誰が!」
「お前だよ!ゲームとかだと悪魔と天使は相反する存在だろうが!なのに、何でそれに気が付かないんだよお前!」
「ぐぬぬぬぬ」
イッセーは自分の行いを反論できないことに唸りをあげる。
それをよそに先ほどまでいなかった、朱乃が部室にやって来た。
「部長、大公からのご依頼ですわ」
「大公から?」
「この街で、はぐれ悪魔が見つかったそうですわ?」
「…………。(まさか、黒歌?一応、メールを送って置くか)」
はぐれ悪魔と聞いて黒歌のことが心配になり、メールを送ると返信で自分ではないと返ってきた。それを見たオレは安堵の息を吐く。
はぐれ悪魔退治に出たオレたちは、標的が根城にしているであろう廃墟に来ていた。
「イッセー」
「はい、部長」
「貴方、チェスは分かる?」
「チェスって……ボードゲームのアレですか?」
「主の私がキングで…………」
廃墟に入るとリアス先輩はチェスの話を始めた。
これはイッセーたちの体内にある
「来た」
「ああ、ターゲットの登場だ」
オレと塔城は鼻が良いため、ターゲットが近付いて来るのが直ぐに分かった。
なので、皆に一声かけて臨戦体制を取らせる。
「不味そうな臭いがするわ。でも、美味しそうな臭いもするわ。甘いのかしら?苦いのかしら?」
ターゲットとおぼしき者の方から女性の声が聞こえたと思ったら柱から出て来たのは何の衣類も着ていない女性だった。
「おっぱい!」
「お前はそれしか言わんのか、イッセー!」
「はぐれ悪魔のバイザー。主の元を逃げ、その欲求を満たすために暴れ回る不逞の輩。その罪、万死に値するわ!」
「グレモリー公爵の名に置いて、貴女を吹き飛ばしてあげる!」
「小賢しい小娘だこと。その赤い髪の様に、貴女の身を鮮血で染めてあげましょうか?」
「ああ……部長、ちょっといいすっか?」
「何かしら、龍呀?」
「コイツはオレに殺らせてくれないですか?毎日、早朝の特訓で同じ相手ばかりしてると飽きるんで。それに部長や皆もオレの実力を見たくないですか?」
「そうね……なら、お願いしようかしら」
「おっしゃぁぁあ!燃えてきた!」
拳と拳を合わせてから魔力を解放し練り合わせる。
「なに?たかだか人間ごときが私の相手をするのかしら?」
「ただの人間だと油断してると痛い目に合うぜ!」
一気に駆け出し、バイザーの腹部へ一撃をお見舞いする。
「おりゃぁぁぁあっ!!」
「なっ……がはっ!?」
「まだまだ、行くぞぉぉぉお!」
高速で移動しながらバイザーを煽り、隙ができれば打撃を決めていく。
久しぶりに伏魔殿とは違う相手のため楽しくなり笑いが出てしまう。
「ハハハハハッ!!」
「な、なんか……龍呀の奴、性格変わってないか?」
「そ、そうね……。彼、元々戦闘狂の気質があったのではないかしら?」
「でも、狩谷先輩凄いです」
「そうだね。魔力を解放してるとはいえ、それを両手両足だけにしか纏わせてない。なにより、バイザーの攻撃を全て見切っている」
「あらあら、ウフフフ。流石は、フェアリーテイルの滅竜魔導士ですわ」
オカルト研究部のメンバーがオレの戦闘を見て、何か言っているけど今はどうでもいい。そろそろ、飽きてきてるし終わらせるか。
「これで決める!」
「はぁ……はぁ……はぁ……、このバイザーが人間ごときに……」
「喰らえ! 白竜の──」
「あの、バカ!? 皆、物影に隠れろ!」
「──鉄拳!!」
「─────!?」
イッセーの一声で皆は物影に隠れ。それを余所にオレはバイザーに向けて、白竜の鉄拳を決める。
すると、バイザーは声にならない断末魔を上げながら聖属性の攻撃を受けたため跡形もなく消滅した。
また、白竜の鉄拳を放った先は廃墟の壁ごと地面が抉れていた。
「ふぅ~、終わった」
「龍呀、てめぇはバカかなのか!?俺たちは光の攻撃を受けたら消滅しちまうのに、なんでお前は白竜の魔法を使ってんだよ!」
「あっ、わりぃ……テンション上がって、白竜の鉄拳を使っちまった。アハハハハ」
「アハハハハ。じゃねぇよ、マジで!!」
「これが滅竜魔導士……」
「凄まじいです」
「ですが、狩谷くんは本気を出してないみたいですよ?」
「底が知れませんわね。フフフフ」
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第12話
────パシンッ!
「何度言えば分かるの?」
今の音は部長がイッセーの頬を引っぱたいた音だ。
なんでもイッセーは先日、偶然にも出会ったシスターの子を堕天使から助けた出したいんだそうだ。
「駄目なものは駄目よ。彼女のことは忘れなさい。貴方はグレモリー家の眷属なのよ」
「じゃあ、俺をその眷属から外してください。そうすりゃ、俺一人で」
「できるはず無いでしょ」
「俺ってチェスのポーンなんでしょ?兵士の駒が一個消えるくらい……」
「イッセー……」
「なんだよ、龍呀?俺は今、大事な……」
「歯ぁぁ食いしばれ!」
「ガァッ!?」
「「「龍呀!?(龍呀くん!?(狩也くん!?(狩谷先輩!?)」」」
オレはイッセーの言葉に頭に来たので、イッセーの顔面を殴り飛ばした後、胸ぐらを掴む。
「いってぇぇなあ!」
「てめぇは自分のことしか考えてねぇよな?お前は部長のことを考えたことはあんのかよ!仲間が居なくなる辛さをお前は知ってるのかよ!」
「ッ……」
「なんで、部長がお前にあんなことを言ったのか考えろ」
オレはイッセーの胸ぐらを放る様に離す。
「ありがとう、龍呀」
「いいですよ、別に。俺も思うところがあったので」
知り合って、まだ数日だけどイッセーが黒歌の様になるのは嫌だった。
部長たちも塔城の様に悲しい思いをしてほしくなかった。
そのため、オレはつい感情的になってしまった。
「イッセー、貴方はポーンを一番弱い駒だと思っている訳?」
「…………」
イッセーは無言で肯定を示す。
「悪魔の駒は実際のチェスの駒と同様の特徴を持つと、言ったはずよ?」
「実際のポーンの特徴って……」
「プロモーション」
「???」
「ポーンは敵陣地の最奥まで駒を進めれば、キング以外の他の駒に昇格できる」
「俺が他の皆の力を持てるってことですか?」
「主である私がそこを敵陣地だと認めればね。そう、例えば『教会』の様に」
何とも分かりやすい、OKサインだ。
この人、実はツンデレなんじゃないかって思うよ。
「ついでに貴方のセイクリッド・ギアだけど……」
「力を倍にするんですよね?夕麻ちゃ……ッ!」
「堕天使から聞きました……」
「思いなさい」
「…………」
「セイクリッド・ギアは持ち主の『思う』力で強くなるの。その思いが強ければ強いほど、必ずそれに答えてくれるはずよ」
「思いの……力……」
部長が言い終わると朱乃が部長に何か耳打ちをしていた。
そこで、コブラの魔法である。毒竜の滅竜魔法を使った。
『大公からの伝令で駒王町にいる、堕天使は処分して、よろしいそうです』
と朱乃の声が聞こえた。
「急用が出来たわ。私と朱乃は少し外出します」
「部長!まだ話はおわ……「いいこと?」」
「プロモーションを使ったとしても、駒一つで勝てるほど堕天使は甘くないわよ」
本当、ツンデレ姫だろう。
「そのくらい、分かってますよ」
「行くのかい?」
「ああ!止めたって無駄だからな」
「殺されるよ?」
「たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」
「良い覚悟……と言いたいところだけど、やっぱり無謀だ」
「うるせぇ、イケメ…………ん?」
「僕も行く。部長は君に『たとえプロモーションを使っても』って仰ってたろう?」
「ああ……」
「部長は教会を『敵陣地』と認めたんだよ。同時に僕らで兵藤くんをフォローしろって指示でもあるからね」
「あのツンデレ姫はプロモーションの話しをした時には、既に許可を出してたんだよ。頭に血が上り過ぎだ、イッセー」
オレは先ほど殴った方のイッセーの頬に優しく拳を当てる。その際、拳と一緒に天竜の治癒魔法を付与しておく。
「龍呀……じゃあ、小猫ちゃんも?」
「狩谷先輩が入れば大丈夫だとは思いますが、念のため私も行きます」
「だとさ」
部長からの分かりやすい指示が分かったところで俺たちはイッセーの友である、アーシアの救出に教会へ向かった。
「……なんつう殺気だよ」
「神父も相当集まっている様だね」
「マジか、来てくれて助かったぜ」
「だって、仲間じゃないか。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないからね。憎いと言ってもいい」
「木場?」
ありゃ、復讐を覚えた奴の目だな。木場の奴、その負の感情で自分の身を滅ぼさなければいいけどなあ。
「オレはフェアリーテイルの魔導士として仲間を守るのが当たり前だ。そんじゃ、一発派手に洒落込むか」
「ん?」
オレと塔城は木の影から出て、教会の正面玄関に歩いて行く。
「二人とも?」
「堕天使たちも私たちに気付いてるでしょうから」
「せーの!」
「堕天使くん、あ・そ・び・ましょ!」
「フン!」
塔城と二人でドアを蹴り破り、聖堂の中に入ったが誰も待ち構えていなかった。
しかし、聖堂の中は荒れ放題だった。
「酷でぇもんだな……」
イッセーがそう呟くと、何処からか拍手が聞こえてきた。
「やあやあやあ、再会だね?感動的ですね?おや?そちらの黒髪の奴は初めましてかな?」
「フリード!」
こいつ、オレの好きな声優さんベスト5に載る。松◯さんに声似てるのに、この変態野郎はムカつく!
まぁ、本人が声優なんだけどね?
「俺としては二度会う悪魔は居ないと思ってたんっすよ。ほら、俺、めちゃくちゃ強いんでぇ。だから、一度会ったら即これよ、でしたからねぇ」
フリードは話しながら首チョンパのジェスチャーを取る。
「だからさ、ムカつく訳よ。俺に恥かかせたてめぇらクソ悪魔とそのお仲間がよ」
「アーシアは何処だ!」
「ああ。悪魔に魅いられたクソシスターなら、この祭壇から地下に続いてる祭儀場におりますです」
「それはどうも……あんがとよ!」
「グギャッ!?」
フリードが一瞬振り向いた瞬間に、一気に懐へ入りフリードを殴り飛ばし、聖堂の一番奥にある石像にめり込ませる。
「ウッシ!」
「急ごう!」
オレたちは急いで祭壇の下にある階段を降りた
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第13話
祭壇の地下に降りると既にアーシアから神器が抜かれていた。
「アーシア!」
「これこそが、私が長年欲していた力!これさえあれば、私は愛を……頂けるわ」
祭儀場の奥にいる堕天使はアーシアから抜き取った神器を自分の体内に取り込み始めた。
「フフフフ、アハハハハ。これが至高の力、これで私は至高の堕天使になれるのよ。私をバカにしてきた者を見返すことができるわ!」
「ざけんじゃ──「天竜の咆哮!!」……龍呀!?」
オレは天竜の咆哮で、はぐれ神父たちから一筋の道を作る。
「行け、イッセー!」
「ここは僕たちが!」
「抑えます」
「サンキュー!」
イッセーはオレたちが広げた道を一直線に進んでいく。
「さぁ~て、主人公がヒロインを助けに行ったんだ。てめぇらはオレたちの相手をしてもらうぜ?」
「なんだ、貴様は?」
「人間のくせに悪魔の味方をするのか?」
「悪魔がどうとかそんなのは関係ねぇ。オレは仲間のために戦う、それがフェアリーテイルの魔導士だ!」
「フェアリーテイルの魔導士?」
「行くぞ、氷竜の翼刃!!」
氷の滅竜魔法で両方の腕から肘にかけてまで氷の刃を作り、神父たちに攻撃していく。
造形魔法ならグレイやジュビア、ラキに教えてもらったからある程度は造れる。
「せらぁぁぁあっ!!」
「ぐあっ……」カチン
「うわあああ、あの氷に切られた奴が氷りついたぞ!?」
「へっ、これが竜を滅する氷の冷たさだ!」
それからはオレたち三人で、神父たちを倒して行く。
粗方片付けると、イッセーは祭儀場の上で堕天使と話しをしていた。
「兵藤くん!ここでは不利だ」
「初めての彼女だったんだ……」
イッセーは自分がどれだけの思いを向けていたのかを話し始めた。堕天使が始めての彼女で、その彼女を大切にしようと思っていたことや彼女のことが本当に好きだったのがよく伝わってきた。
しかし、そんなイッセーを堕天使は嘲笑うかの様に光の槍でイッセーのことを殺そうとする。
「させるか、影竜の暗黒弓!!」
「チッ!」
影の滅竜魔法で弓と矢を形成して、堕天使に向けて放ち、イッセーを助ける。
そして、イッセーはアーシアを抱き抱えて祭儀場から飛び降り、出口へと走る。
「逃がすな!」
「だから、させねぇっての!影竜の足枷!!」
今度は自分の影を神父たちの影に突き刺し、ジャンプのマンガに出て来る、影を操る忍者を真似た技で動きを封じる。
「龍呀……?」
「行け、イッセー」
「兵藤くん、逃げろ!ここは僕たちが道を塞ぐ。
行くんだ! 」
「早く逃げて」
「でも!」
「いいから、行け!」
「木場、小猫ちゃん……無事に帰ったら、俺のことを絶対『イッセー』って呼べよ。絶対だからな!」
「いいか!俺たち、仲間だからなぁぁぁ!」
そう言って、イッセーは泣きながら出口へと走って行った。
イッセーを送り出した、木場と塔城はオレの影から偶然にも逃れた神父たちを押さえていた。
そんな中、塔城に向けて複数の神父が襲いかかる。
オレはアイツと……黒歌と約束したんだ。白音のことを守ると……だから…………
「そいつに触れるんじゃねぇ!」
「ぐあっ!?」
「かはっッ!?」
「ぐぼわっ!?」
「がっ!?」
塔城に攻撃を仕掛けていた、はぐれ神父たちに向けて、影竜のシャドウレイを放つ。
すると無数の影が神父たちを撃退していく。
「狩谷先輩?」
「大丈夫か、塔城?怪我は?」
「え、ええ……ありがとうございます」
「そうか……ならいい」
「呑気に話をするなんて、余裕じゃない!」
祭儀場に居た堕天使はオレと塔城へ向けて光の槍を投げて来たので、オレは塔城の前に出る。
「ハッ!人間が悪魔の身代わりにでもなるつもり?」
「いいや、そんなことはしねぇよ。オレには帰りを待ってる奴が家には居るんだ!」
大きく吸うイメージで吸い込みながら、堕天使からの光の槍を食らう。
「光の槍を食べた!?」
「お前の光は不味い光だな~。お返しだ、鉄竜の咆哮!!」
「きゃあああああ!?」
堕天使を鉄竜の咆哮で吹き飛ばすと壁を貫通する。
そして、少し経つと壁から堕天使が出て来る。
「この、人間風情がぁぁぁぁあ!!」
「その人間風情に吹き飛ばされたお前は、人間以下ってことだな?」
「チッ、覚えてなさい!」
堕天使はそう言って、出口の方へと飛んで行ってしまった。
「あの野郎、イッセーのところへ!?」
「急ぎましょう」
「そうだね」
急ぎ、堕天使の後を追う。
「狩谷くん。君ならもっと早く、イッセーくんのところへ行けるだろう?」
「ああ」
「では、お願いします」
「了解!」
体を雷に変化させてイッセーのところへ一気に向かう。
すると聖堂からイッセーの声が聞こえてきた。
「だから、コイツを…………一発、殴らせてください!」
「う、嘘よ!立ち上がれるはずがない…………体中を光が内側から焦がしてるはずよ!光を緩和する能力を持たない、下級悪魔が耐えられるはず……」
「だから言ったろう?てめぇは人間以下だって」
「この声は!?」
「龍呀!」
「よう、イッセー。酷い有り様だな?」
「うるせえ!」
「手を貸すぜ?」
「いや、コイツは俺の手でぶん殴る」
「なら、サポートだけでもさせてもらう。天竜の息吹」
「なっ………傷が……」
「ついでに、バーニア、アームズ、アーマー、エンチャント!!」
「サンキュー、龍呀。応えてくれ、俺のセイクリッド・ギア!!」
イッセーが神器に向けて叫ぶと腕の甲の部分にしか装備されていなかった神器が腕から指まで完全に覆う様に変化した。それはまさに籠手である。
『Explosion!!』
「この波動は何よ、あり得ないわ!その神器は、ただのトゥワイス・クリティカルじゃないの!?」
「知るかよ、そんなの!ただ、分かることは………てめぇをぶん殴れるってことだけだァァァァ!!」
イッセーは一気に駆け出し、堕天使の懐へ入る。
当の堕天使は、一瞬でイッセーに懐へ入り込まれるとは思っておらず、反応に遅れた。
「ぶっ飛べ、クソ天使ィィィィィ!!」
「ぎゃあああああああ!?」
イッセーに殴り飛ばされた堕天使は教会の窓ガラスを破り、外へぶっ飛んで行った。
「やったな、イッセー」
「まさか、一人で堕天使を倒しちゃうなんて」
「でも、アーシアが…………」
「安心なさい、イッセー」
「部長……」
「少し賭けになるけど、彼女を悪魔に転生させるわ」
「そうか、その手があった!」
アーシアを蘇生する手段が決まると塔城が教会の外から堕天使を引き摺りながら此方へやってきて、放る様に堕天使を離す。
「部長、持ってきました」
「ぐは…………」
「初めまして、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー、グレモリー公爵家の次期当主よ」
「グレモリーの娘か!」
「以後お見知り置きを、短い間でしょうけど。それから……」
部長は自分の手から三枚の黒い羽をレイナーレに見えるように落とした。
「訪ねてきてくれた、貴女のお友達は私が消し飛ばしてあげたわ」
「消し飛ば……した?」
「部長は『紅髪のルインプリンセス』、滅殺姫という異名を持つからね」
「滅殺!?そんなスゲー人の眷属になったんだ、俺……」
「グレモリーの娘がよくも!」
「以前、ドーナシークにイッセーが襲われた時からこの街で複数の堕天使が何か企んでいたことは察してたわ」
「私たちに害を及ばさなければ手を出さなかったけれど、人間に手を出しても彼が貴女たちを消し飛ばしていたでしょう」
「じゃあ、部長は俺のために……」
「イッセー?その、セイクリッド・ギアは……」
「あ、ああ……いつの間にか形が変わってて」
「赤い龍……そう、そういうことなのね。堕天使レイナーレ、この子……兵藤一誠のセイクリッド・ギアは単なるトゥワイス・クリティカルでは無いわ」
「なに……?」
「持ち主の力を10秒ごとに倍加させ、魔王や神すら一時的に超えることができる力があると言われている。13種の
「『赤龍帝の籠手』、ブーステッド・ギア!」
リアスから、まさかの真実を聞いたレイナーレは狼狽え始める。
「神をも滅ぼすと伝えられている忌まわしき神器がこんな子供に!?」
「どんなに強力でも、パワーアップには時間を要するから万能ではないわ。今回は龍呀のサポートや相手が油断してたお陰で勝てた様なものよ」
「消えてもらうわ、堕天使さん」
リアスがそう言うとレイナーレの奴が…………
「イッセーくん!」
「「「ッ!?」」」
「助けて……」
レイナーレは堕天使の姿から天野夕麻の姿に変身して、イッセーに助けを乞うてきた。
「あんなことを言ったけど、堕天使としての役目を果たすために仕方なかったの……」
「夕麻……ちゃん……」
「ほら、その証拠にコレ!捨てずに持っていたの、忘れてないわよね?貴方に買ってもらった……」
レイナーレはイッセーとデートした時に買ってもらったであろう、シュシュをイッセーに見せる。
「なんで、そんなもん、まだ……持ってんだよ……」
「どうしても、捨てられなかったの!だって、貴方が……」
「不味い、小猫ちゃん」
「うん」
木場と塔城がイッセーを守ろうと動くが部長がそれを止めた。
「私を助けて、イッセーくん!」
「てめえは何処までイッセーを苦しめるんだ!」
「…………龍呀?」
「消えろ!」
オレはレイナーレの頭を掴み、全力でレイナーレを燃やす。すると、レイナーレは声に鳴らない断末魔をあげながら灰となった。
「サンキュー、龍呀」
「ああ」
この後、部長がアーシアをビショップの駒で転生悪魔として転生させ。イッセーにアーシアを守るように指示を出して、堕天使の事件は終わりを告げた。
氷竜の翼刃はイメージとしては
モンスターハンターのナルガクルガの剛刃翼です。
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第14話
アーシアがオカルト研究部に入って数日。
今回の部活内容はイッセーとアーシアが悪魔課業でチラシ配りを終えるとのことで使い魔を入手することになった。
そして、オカルト研究部の皆がそれぞれ使い魔を見せてくれた。
部長は小さいコウモリ。うん、悪魔らしい。
朱乃は小鬼。うん、日本らしい。
小猫は、まんま白い子猫だ。
木場は、イッセーが止めてしまったため分からない。
それと何故、塔城のことを小猫と呼ぶ様になったのかは教会の時、助けたお礼だそうだ。
使い魔の説明が終わると部室の入り口から、ある人たちが入ってきた。
「なっ……!こ、このお方は……」
「支取先輩に椿姫先輩まで?」
「あの、どちら様ですか?」
「この学校の生徒会長、支取蒼那先輩だよ。隣は副会長の神羅椿姫先輩。てか、生徒会メンバー勢揃いかよ」
「お揃いでどうしたの、ソーナ?」
「お互いに下僕が増えたことだし、改めてご挨拶をと」
「下僕って……まさか」
「このお方の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔、シトリー家の次期当主様ですわ」
「こ、この学園に他にも悪魔が?」
「リアス先輩、僕たちのことを彼に話してなかったんですか?同じ悪魔なのに気が付かない、コイツもどうよって感じですが……」
「匙、私たちはお互い干渉しないことになっているの、兵藤くんが知らなくて当然です」
「お前、最近書記として生徒会の追加メンバーになった。たしか、二年C組の…………」
「匙元次郎、ポーンです」
「ポーンの兵藤一誠。ビショップのアーシア・アルジェント。そして…………」
「どうも、支取先輩、椿姫先輩」
「貴方は狩谷くん!?」
「どうも、狩谷龍呀ことフェアリーテイルの滅竜魔導士です」
「狩谷くんが魔導士だったなんて……」
「黙っていて、すみません」
「おい、狩谷って言ったか?お前、FAIRY TAILの魔導士なんて厨二か?」
「匙、コイツはマジもんの滅竜魔法士なんだよ」
「兵藤まで……変態とは思っていたが頭まで悪いとはな」
「なんだとゴラーッ!」
「匙、お前のイッセーへの評価は一つ間違っているし、オレは厨二じゃない」
「なら、証拠を見せてみろよ!」
「いいぞ?ホレ、鉄竜剣」
「なっ……腕が剣に」
鉄の滅竜魔法で腕を剣に変化させる。
「ほれ、もう一丁。鉄竜槍」
「今度は槍に」
「木場、鉄の剣を頼む」
「仕方ないね」
「サンキュー」
木場に作ってもらった鉄の剣を何の躊躇いも無く食べる。
「どうだ?わかったか?」モグモグ
「あ、ああ……こりゃ、マジもんの滅竜魔導士だ」
「で、匙もポーンなんだな。それも同学年だなんて」
「俺としては変態三人組の一人である、お前と同じなんて酷くプライドが傷付くんだけどな」
「だあっ!?な、なんだと、てんめぇぇ!」
「おう、殺るか?俺は悪魔になったばかりだが、こう見えて駒4つの兵士だぜ?」
匙はイッセーに向けて威張っているが、匙はイッセーの駒数とそれに値する物を知らない。
「匙、お止めなさい。それに、そこの彼は駒を8つ消費しているのよ?」
「8つって……全部じゃないですか!?信じられない、こんな奴が」
「うっせぇ!」
「ごめんなさいね、兵藤くん、アルジェントさん。よろしければ、新人悪魔同士仲良くしてくださいね?」
「「はい!」」
「ところで狩谷くん」
「なんですか?」
「悪魔になる気はありませんか?」
「すみません。それに関しては部長にもお誘いを受けたのですが、お断りさせてもらいます」
「何故ですか?」
「そうですね………今は時期ではない、ということで」
「では、いずれ誰かの眷属になる気があると?」
「そうですね。いずれは」
「わかりました」
その後、支取先輩の眷属も使い魔を手に入れるつもりだったらしく、そのサポートをしてくる悪魔が月に一度しか請け負ってくれないため、高校生らしくスポーツで優先権を決める事になった。結果はオカルト研究部の勝ちだった。
で、オレたちは使い魔マスターが居るところに行くことになった。
ちなみにだが、オレが行けたのは朱乃が俺の魔力と同調させて起動する転移魔法を作ってくれたお陰である。
「ここは……?」
「使い魔が生息する森ですわ」
「僕達もここで使い魔を手に入れたんだ」
「確かに、何が出てきても可笑しくないな……」
「そうですね……」
「ゲットだぜぃ!」
「誰だ!」
「俺の名は使い魔マスター、ザトゥージだぜ!」
「いや、サトシじゃん」
「ザトゥージだぜぃ!」
「いやだから……「ザトゥージだぜぃ!」」
「やっぱり、ザトゥー……「サトシだぜぃ!」」
「あっ……」
「サトシ、なんじゃん」
「今のは……」
「龍呀、ザトゥージで遊ぶのは止めなさい」
「すみません、面白かったので」
「もう……」
「さぁて、どんな使い魔をご所望なんだぜぇい?強いの?速いの?それとも毒持ちとか?」
「そっすね、可愛い使い魔とかってないっすかね?女の子系とか」デヘヘヘ
「チッチッチ!これだから素人はダメなんだぜぇい。使い魔ってのは有用で強いのをゲットしてなんぼだぜぇい?」
「すなわち!個体の能力を理解して且つ、自分の特性を補う様な……」
「あの、私も可愛い使い魔が欲しいです」
「うん、わかったよん」
ザトゥージの奴、顔が孫を溺愛する爺さんの顔になってたぞ。
「ありがとうございます」
そんな訳でザトゥージに連れられて来たのは、森の中にある湖だった。
「ここの湖にはウンディーネという、水の精霊が住み着いているんだぜぇい」
「オオオオ、水の精霊!名前からして、おそらく」
「イッセー、多分お前が思い描いているであろうウンディーネは俺たち人間が理想を押し付けた物だぞ」
イッセーはオレの話しを聞かずに顔をだらしなくさせて、ハァハァと息を荒くしていた。
それをよそに木場は湖を見て声をあげるので湖を見るとキラキラと輝いていた。
「あっ、湖が!」
「おっ、ウンディーネが姿を現すぞ」
「おおおお!!」
しかし、湖の中から現れたのは…………ゴリマッチョな女性だった。
やはり人の夢と書いて儚い、人が描く理想は儚い物であった。
「あれがウンディーネだぜぃ」
「イヤイヤイヤ!!あれは、どう見ても水浴びに来た格闘家ですから!」
「運が良いぜ、少年。アレはレア度が高い。打撃に秀でた水の精霊も悪くないぜぇい?」
「悪い!癒し系っていうより殺し系じゃねぇか!?」
「でも、あれは女性型だぜぇい?」
「最も知りたくない事実でした」
ウンディーネを見たあと、他の使い魔を見つけるために移動することにした。
「でも、あの娘の目は清い目をしていました。きっと心の綺麗な女の子に違いありません」
「アレを女の子とか……呼ばないで」
ガチムチウンディーネのことを女の子と言ったアーシアに珍しくイッセーはマジなトーンでウンディーネを『女の子』呼びするの止めさせた。
「待て!」
「「「「???」」」」
「見ろ」
ザドゥージの声で一同は止まった。ザトゥージが指で示した先を見ると、そこには小さなドラゴンが木の枝に止まっていた。
「ドラゴン?」
「可愛いです」
「スプライト・ドラゴン。青い雷撃を使う、ドラゴンの子供だぜぃ」
「これはかなり上位クラスですね」
「私も見るのは初めてだわ」
「ゲットするなら今だぜぃ?成熟したらゲットは無理だからな」
「イッセーくんは赤龍帝の力を持ってますし、相性は良いんじゃないかしら?」
「なるほど、よし!スプライト・ドラゴン、君に……「きゃああ!?」……アーシア!?」
アーシアが悲鳴を上げたのは空から緑色の液体の様な物が降ってきたからだ。
「スライムか!」
「燃え尽きろ、火竜の咆哮!!」
「そして、皆。先に謝る。水竜の咆哮!!」
女性陣の服を溶かそうと襲いかかるスライムたちを火竜の咆哮で燃やし。次に女性陣に付いているスライムを威力をシャワー程度に抑えた、水竜の咆哮で洗い流してから天竜の咆哮で体を乾かし、小型の収用ラクリマから俺の服を出して女性陣に渡す。
「取り敢えず、これを着てくれ」
「ありがとう、龍呀」
「ありがとうございます、龍呀くん」
「ありがとうございます、龍呀さん」
「ありがとうございます、龍呀先輩」
「龍呀、お前!せっかくのラッキーシーンがぁ!?」
「あ"ぁん?今、何か言ったか、イッセー?」
「いえ、何でもありません。ですから、その右手に纏ってる炎を消してください。お願いします!」
「コイツは布地を主食とするスライムだぜぇい。女性の衣類を溶かす以外、特に害はないんだが……」
「服を溶かすスライムだと!部長、俺、このスライムを使い魔にします」
イッセーは生き残ったスライムを指を指す。
「イッセー、使い魔は悪魔にとって大切な物なの。だから、スライムはダメよ」
「いやだ。俺はスラ太郎に会うためにここへ来たんだ!」
しかし、イッセーのそんな嘆きは儚く散る。それはスプライト・ドラゴンがイッセーごとスライムに青い電撃を放ったのだ。
「あばばばばばば、何が……」
「スプライト・ドラゴンの雷撃?」
「あぁぁぁぁ、スラ太郎……てんめぇ!」
「クピー!」
「あばばばばばば」
「イッセーさん!?」
「クゥー」
「え?」
スプライト・ドラゴンはイッセーに雷撃を当て終わると何故かアーシアの右肩に止まった。
「これは……」
「そいつは敵と認識した奴にしか攻撃しないんだぜぇい。つまり、少年とスライムが金髪美少女を襲ったと思ったんだぜぃ」
「ということは、つまり……」
「アーシアがスプライト・ドラゴンをゲットしたということだな」
アーシアがスプライト・ドラゴンをゲットしたあとは、使い魔として契約をするために儀式を行い、スプライト・ドラゴンは正式にアーシアの使い魔となった。
「くすぐったいです。ラッセーくん」
「ラッセー?」
「はい、雷撃を放つ子ですし。あ、あの、イッセーさんのお名前をいただいちゃいました」
「ダッハハハ。まぁ、いいや。よろしくな、ラッセー?」
「クピャーッ!」
「あがががががが!?」
「言うのを忘れてが、雄のドラゴンは他の生物の雄が大嫌いなんだぜぇい」
「ですが、イッセー先輩よりも先に龍呀先輩がアーシア先輩の側に居るのに、何で電撃を撃たないんですか?」
「ああ、それは多分。オレがさっき、スライムを燃やしたり、皆のスライムを洗い流したり、体を乾かすために滅竜魔法を使ったろう?」
「はい」
「だから、ラッセーは本能的に『コイツはヤバい!逆らっちゃいけない!』って思ったんだろうよ」
「なるほど」
こうして、使い魔の満月の夜は終わりを告げた。
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戦闘校舎のフェニックスと炎の滅竜魔法
第15話
アーシアが使い魔と契約してから二週間弱。
イッセーから何故か昨夜、部長が夜這いに来たとかバカげた妄想を聞かされた。
そして、今度は部長が何かに悩んでいるとことで木場と合流して部室に向かう。
「部長のお悩みねぇ……多分、グレモリー家に関わることじゃないかな?」
「朱乃さんなら、何か知ってるかな?」
「あの人は部長の懐刀だから、恐らく………ッ!?」
「気付いたか。(これは、グレイフィアの臭い?)」
「どうしたんだよ?」
「イッセー、オカルト研究部に悪魔の客人だ」
「悪魔の?」
「ここに来て、初めて気付くなんて……この僕が……。龍呀くんは何時から?」
「悪魔の臭いだと分かったのは校舎を出た辺りからだ」
「流石はドラゴンスレイヤーの鼻だね」
そして、少し警戒しながら部室に入る。
「チワーッス。あれ、グレイフィアさん?」
「…………」
グレイフィアはオレのことを見ると一礼したのでオレも一礼する。
そして、オカルト研究部部員が揃うと部長が話をし始める。
「全員揃ったわね?」
「お嬢様。私かお話しましょうか?」
「いいえ、私がやるわ。実はね……」
部長が何かを説明する前に部室の中に魔法陣が展開された。
そして、魔法陣から現れたのは…………
「「「「!?」」」」
「フェニックス……」
金髪のホストの様な格好をした男性悪魔だった。
「ふぅ~、人間界は久しぶりだ。会いに来たぜ愛しのリアス」
「…………。(コイツがライザー・フェニックス。声だけは格好いいのに……)」
「誰だ、コイツ?」
「この方はライザー・フェニックス様。純血の上級悪魔であり、フェニックス家の御三男」
「フェニックス家?」
「不死鳥フェニックスの悪魔だよ。フェニックスは日本で言う鳳凰だ」
「そして、グレモリー家の次期当主の婿殿」
「グレモリーの当主って…………まさか!?」
「すなわち、リアス・グレモリーお嬢様の御婚約者様に在らせられます」
「婚約ぅぅぅぅう!?」
イッセーは部長が婚約していることに驚きのあまり声を荒らげる。
「いやー、リアスのクイーンが入れてくれたお茶は美味しいものだな」
「痛み入りますわ」
ワーオ!朱乃の奴、ライザーに向け毛嫌いしている態度を全開にしてるよ。
そして、当のライザーは部長の髪をいじったり、太ももを撫でたりしていた。
「いい加減にしてちょうだい。ライザー、以前にも言ったはずよ。私は貴方とは結婚しないわ」
「だが、リアス。君の御家事情はそんな我儘が通用しないほど、切羽詰まってると思うんだが?」
「家を潰すつもりはないわ。婿養子だって迎え入れるつもり。でも、私は私が良いと思った者と結婚する」
「先の戦争で激減した純血悪魔の血を絶やさないというのは、悪魔全体での問題でもある。君のお父様とサーゼクス様も未来を考えて、この縁談を決めたんだ」
「父も兄も一族の者も……皆、急ぎ過ぎるのよ。もう、二度と言わないわ」
「ライザー……貴方と結婚しない!」
部長がそう宣言するとライザーが右手を部長の顎の下に当て、顎クイッをした。
「ッ!?」
「俺もな……リアス。フェニックス家の看板を背負っているんだよ。名前に泥を塗られる訳にはいかないんだ」
「…………」
「部長!」
「俺は君の下僕を全員焼き付くしてでも、君を冥界に連れて帰る」
「お二人ともそこまでです」
二人が魔力を解放し始めているので止める。
するとライザーの目が見下した様な目に変わる。
「なんだ?何故、ここに下賎で下等種族の人間が居るんだ!」
「彼は私の協力者よ!下賎な者呼ばわりしないで!」
「フンッ!」
「お嬢様、ライザー様。私はサーゼクス様から命を受けてこの場に居ります故、一切の遠慮は致しません」
グレイフィアもオレと同じでケンカをする二人を牽制する様な言葉を言った。それを聞いたライザーはやはり俺の時とは態度が違った。
「最強のクイーンと称される貴女に、そんなことを言われてしまうと流石の俺でも怖いよ」
「最強のクイーンですか…………。(その最強がそこの彼に軽々と吹き飛ばれましたが……)」ボソッ
ライザーから『最強のクイーン』と聞いてグレイフィアは何かを呟いた。
「グレイフィア?」
「何でもありません。旦那様方もこうなることを予想されていました。よって決裂した場合の最終手段も仰せつかっております」
「最終手段?どういうこと、グレイフィア?」
「お嬢様がそこまでご意志を貫き通したいのであれば、ライザー様とレーティングゲームにて決着をと」
「レーティングゲーム?何処かで……そうだ!生徒会長がたしかそんなことを」
「爵位持ちの悪魔が行う、下僕を戦わせて競うチェスに似たゲームだよ」
「チェス……」
「私たちが悪魔の駒と呼ばれるチェスの駒を模した力を有しているのは、そのためですわ」
「そうだったのか」
「俺はゲームを何度も経験しているし勝ち星も多い。しかし、君は経験どころか、まだ公式のゲームの資格すら無いんだぜ?」
「…………」
「本来、レーティングゲームに参加できるのは成熟した悪魔だけですわ」
「じゃ、じゃあ、無茶苦茶不利じゃん!」
「不利なのはそれだけじゃないです」
「え……!?」
「リアス、念のため確認して置きたいんだが君の下僕はそこにいる人間以外全てなのかい?」
「だとしたら、どうなの?」
「フッハハハハ」パチン
ライザーは部長から下僕はこれだけと聞いた途端に笑いだし、フィンガースナップで指を鳴らし魔法陣を展開する。
すると魔法陣から15人の女性や女の子が出てきた。
「此方は15名。つまり、駒がフルに揃っているぞ」
「美女、美少女ばかり15人だと、なんて奴だ!」
「また始まったよ……」
「くぅぅぅぅぅ、何て男だ…………」
「お、おいリアス。この下僕くん、俺を見て号泣してるんだが……」
「その子の夢はハーレムなのよ……」
イッセーの夢を聞いたライザーの眷属はイッセーの変態さに呆れている。
「キモいですわ」
「フッフフフ、なるほどね。ユーベルーナ」
「はい、ライザー様」
ライザーはユーベルーナという女性を呼ぶと白昼堂々とディープキスや胸等を触るのをイッセーに見せつけていた。
また、オレと木場は小猫とアーシアの目を塞ぐ。
「なっ!?」
「見えないです、龍呀先輩」
「真っ暗です」
「二人にはまだ早いし、教育に悪影響だ」
「僕も同感だね」
「お前には一生できまい。下級悪魔くん」
「うるせい!そんな調子じゃ、部長と結婚しても他の女の子とイチャイチャするだろう!この種蒔き、焼き鳥野郎!」
「貴様、自分の立場を弁えて物を言っているのか?」
「知るか!俺の立場はな、部長の下僕ってだけだ!」
「ッ!!」
「それ以上でも以下でもねぇ!」
「イッセー?」
イッセーは即座に赤龍帝の籠手を展開し、ライザーの眷属に突っ込む。
「ゲームなんざ、必要ねぇ!この場で全員、倒してやらぁぁぁぁ!」
「イッセーさん!?」
『Boost』
「ミラ」
ライザーからミラと呼ばれた女の子は眷属の中から飛び出る。また、その子の手には棍棒があった。
「こんな小さな女の子が?やりづらいぜ」
イッセーがそう口から溢すとミラは一気にイッセーの懐へと入り込もうとするが…………
【パチンッ!】
1つのフィンガースナップで指を鳴らす音が部室に響き渡り、ミラはイッセーの懐へ入ろうとしたが、いつの間にかミラとイッセーの足が凍り付いていた。
しかし、それだけはなく部室全体が凍り付いていたのだ。
「な、なんだこれは!?」
「グレイフィア、貴女がやったの?」
「いえ、私は何も……」
「だとしたら…………」
部長はまず、グレイフィアに聞いてからオレの方へ視線を向ける。
「あのさ、イッセーもライザーさんも頭に血が上り過ぎてませんか?」
「龍呀……まさか、貴方がこれをやったの?」
「あっ、すみません。イッセーが無謀にも動いたので魔力を少し解放しちゃいました。アハハハ」
「そ、そう。イッセーを止めてくれて、ありがとう」
「人間が、ここまでの魔力を持っているだと……」
「あの、グレイフィアさん。そのレーティングゲームってオレも参加できますかね?」
「非公式のゲームなので、可能かもしれませんが」
「なら、オレも参加します」
「龍呀!?」
「オレも一応オカルト研究部の部員なんで、部長が困ってるなら力を貸しますよ」
「貴方、分かっているの?レーティングゲームは遊びではないの!もしかしたら、死ぬかもしれないのよ?」
「大丈夫ですよ。オレはフェアリーテイルの滅竜魔導士ですから、そんな柔じゃないですよ」
「では、お二方とも10日後にゲームを行います。よろしいですね?」
「俺は構わない」
「私もよ」
「それでは、10日後の夜に」
こうして、ライザーとのレーティングゲームを10日後に行うことになった。
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第16話
先日のライザーとの接触から翌日。オレたちは10日後に控えているライザーとのレーティングゲームのために部長のご家族が所有する別荘で修行をすることになった。
そして、オレは皆のサポートとして修行に参加することになった。
正直、オレの場合は白竜の滅竜魔法でライザーを消滅させることは容易いからな。
けれど、ストーリーに影響するからしないけど。
まぁ、今更ではあるが。
「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ」
「ほらイッセー、早く来なさい」
「美味しいですわよ~」
「は、は~い」
「あ、あの、私も少し荷物を持った方が…………」
「いいのよ。イッセーはあれくらいこなさないと」
部長たちはオレたちが歩いている道の先にある水飲み場で手を振っている。
「お先に」
「く、くそ……木場の奴、余裕見せやがって!」
「失礼」
「うあっ!?」
小猫はイッセーや木場の何倍ものデカさの荷物を軽々と背負いながら坂道を登っていく。
そして、オレはというと…………
「ほらほら、イッセー頑張れよ」
「あの………龍呀さん?貴方、その背負っている鹿はなんですか?」
「偶々、美味そうな匂いがしたから取ってきた。あとで食おうと思って」
「色々と駄目だろう!」
そして、別荘に着いたのだが…………
「なぁ、イッセー?」
「なんだ、龍呀」
「これはオレたちの知ってる別荘なのか?」
「いや、多分違う。これは、もはや……」
「「豪邸」」
「さぁ、中に入って直ぐに修行を始めるわよ」
「直ぐ修行!?やっぱり、部長は鬼だ!」
「悪魔よ」
別荘の中に入り、各自割り振られた自室で動きやすい服に着替える。オレはやっぱりナツの服が一番動きやすいので、ナツの服と同じ服装になる。
「龍呀、それ……」
「ああ、俺はこれが一番動きやすいからな」
「マジで、髪を染めたらFAIRY TAILのナツになるぞ」
「だろうな」
着替えが終わり、全員で別荘の外に出る。
─レッスン1─
「行くぜ、木場!」
「何処からでも!」
「ウリャアアアッ!」
「フッ!」
イッセーは木刀で木場へ仕掛ける。けれど、やはり剣は木場の専売特許である。
「そうじゃない、剣の動きだけじゃなくて相手や周囲もよく見るんだ」
「デヤアアアッ!」
「フッ!」
イッセーが大振りで振り下ろした木刀を木場は簡単に叩き落とした。
「あっ……」
「次、龍呀くん」
「オッシャアアアッ!」
「木場、実剣で来てくれ」
「いいのかい?」
「ああ」
「分かった。なら、本気で行くよ?」
「来い!」
「それじゃッ!」
木場はナイトの駒を使って全力で高速移動しながら向かってくる。けれど、そんなのはオレには通用しない。天竜の力で空気の流れを読んで見切る。
それにスピードなら俄然、ジェットの方が速い。
「そこだ!鉄竜剣!!」
右斜め後ろから来るであろう、木場の動きを先に読んで鉄竜剣で切り掛かる。
「ッ!?」
「流石はナイト。瞬時に剣でいなしたな」
「まさか、行動を読まれるとはね」
「もっと来いよ?」
「なら、遠慮なく!」
ある程度、木場との剣を交えると次は朱乃からの魔力の修行へ
─レッスン2─
「魔力は体全体を覆うオーラから流れる様に集めるのです」
「デイッ!ぐぬぬぬ…………」
イッセーは右腕を突き出して内側から捻り出す様な声をあげる。
「全然駄目だ……。なぁ龍呀、お前はどんな感じで魔力を出してるんだ?」
「オレか?そうだな……例えばナツの火竜の鉄拳なら、そのイメージを頭の中で自分と混ぜ合わせて、最後には自分で打つイメージを強くするだけ」
「ようは、イメージが大切って訳ね……」
「それが、かなりの物になるとこうなる」
オレは右拳の雷を帯びた炎をイッセーたちに見せる。
「雷を帯びた、炎…………」
「それって…………」
「そっ。モード、雷炎竜」
「二つの属性を合わせるなんて……」
「まさか、モードまでとは………ってことは、ドラゴンフォースも……?」
「一応は出来るぞ?」
「スゲー!」
続いて、朱乃から小猫の修行へ
─レッスン3─
「ぐあああっ、ガハッ!?」
イッセーは小猫に殴れて木に背中を打ち付けて倒れる。
「よわ」
「クッ、まだまだ!」
イッセーは再び、小猫に突撃するがあっさりとノックアウトされてしまう。
「打撃は相手の中心線を狙って、適格且つ抉るように打つんです」
「グアアアアア!?」
「ああぁぁぁ……」チーン
「あっ、やり過ぎました」
「おいおい……」
まさかのイッセーがダウンしたので、オレが小猫の相手をすることになった。
「では、行きます」
「来いよ」
「フッ!」
「……」ペシ
「ハッ!」
「……」ペシ
「ムッ」イラ
「当たってください」
「いや、当たってるじゃん」ペシ
「全て、いなしてるじゃないですか」
「そりゃ、修行だし……なっ!」
「!?」
ずっと小猫からの攻撃を全ていなし、小猫に隙が出たところに普通の拳を入れる。すると、小猫は咄嗟に腕をクロスしてオレの拳を受け止める。
その際、小猫の足元は後ろに引き摺られた様な跡が少しだけできる。
「龍呀先輩、本当に人間ですか?」
「う~ん。多分、そろそろ人間を止めてるかも?半人半竜?」
「それって確か、龍呀先輩が使っている滅竜魔法の副作用ですよね?怖くはないんですか?」
「そうだな~、怖くないと言ったら嘘になるかな。もしも、アクノロギアみたいになったらオレはこの世界で最も災厄の存在になってしまうからな」
「…………」
「お喋りはお仕舞いだ。ほら、かかってこい」
「行きます!」
それから30分くらい小猫と組み手をしてから、オレはみんなの夕飯の支度をしに別荘へと戻った。
「はい、お待ちどう」
「おお、スゲエ」
「これはこれは」
「これ全部、龍呀が作ったの?」
「ええ、そうですよ」
「龍呀くん、凄いね」
「美味しいそうです」
オレが作ったのは、行きに仕留めた鹿のローストビーフ、ジャーマンポテト、山菜の天ぷら、湖にいる魚で作った、魚のカルパッチョ等々、全部で15品ほど作った。
「イッセー、今日一日修行してみてどうだったかしら?」
「えっと、正直俺が一番弱かったです。人間の龍呀にすら勝てないなんて……」
「そうね、それは確実ね。それと龍呀は普通の人間とは桁が違うわよ、イッセー」
「でもアーシアの回復、貴方のブーステッド・ギアだって貴重な戦力よ。相手もそれを理解しているはずだから仲間の足を引っ張らないように、最低でも逃げるくらいの力は付けて欲しいの」
「りょ、了解ッス」
「は、はい」
「さて、食事も済んだし。お風呂に入りましょうか?」
部長から『お風呂』と聞いて、イッセーは勢い良く席を立ち上がる。
「お風呂ぉぉぉぉお!」
「あら、イッセー?私たちの入浴を覗きたいの?なら、一緒に入る?私は構わないわよ。朱乃はどう?」
「ウッフフフ。殿方のお背中を流してみたいですけど、私は龍呀くんが良いですわ」
「お、俺!?」
「龍呀、てめえ…うらやましいぞ!」
。゚(゚´Д`゚)゚。
「そんなことで泣くな!」
「アーシアはどうかしら?愛しのイッセーだから、平気よね?」
「はい」
「小猫は?」
「嫌です。ですが、龍呀先輩なら………考えても」
「だから、何で俺なんだよ!!」
「龍呀ァァァァア、貴様!」
。゚(゚´Д`゚)゚。
「だから泣くなっての!!」
「まぁ、朱乃が駄目な時点でイッセーの混浴は無しだけれど。龍呀、貴方はどうするの?私たちと入る?」
「断固として遠慮します!(仮にも、一緒に入ってみろ?黒歌に叱られるわ!)」
「あら、残念」
そして、食器の片付けをしてから男女に別れて温泉に入る。
しかし、やはりと言うべきか性欲の化身が興奮して止まない。
変態のイッセーは女子風呂との境目にある壁をずっと見ている。
「はぁ~、はぁ~」(*☆∀☆)=3
「イッセーくん、そんなことをして何の意味が?」
「黙ってろ、これも修行の内だ!」(*`Д´)ノ!!
「イッセーくん、透視能力でも身に付けたいのかな?」
「さぁな?アイツならやりかねん」
「ところで龍呀くん」
「なんだ?」
「その体の傷は一体?」
「これは滅竜魔法を修行してる時に付いた物だ。かなり、無謀な修行方法をしていたからな」
「どんな修行なんだい?参考まで聞かせてくれるかな?」
「そうだな……。まずは、山籠りだな。それも魔獣が住んでる山のな」
「え?」
「それから、ドラゴンと戦ったり……」
「…………」(;゚Д゚)
「他にはフェアリーテイルの仲間と戦ったりかな?」
「なんか、とてつもないね」
「そうか?今もそれに近い修行は毎日してるぞ?」
「その修行は一体……」
「伏魔殿っていう殿堂をクリアする修行なんだが、難易度があってイージー、ノーマル、ハードの中から1つを選択して殿堂の中に居るD~Sまで100体の悪魔を倒すんだ」
「悪魔?僕たちとは違うのかい?」
「こっちのは人の形をしてないし、言葉すら話さない化け物さ」
「そんなのがいるんだね……」
「なんなら、今度やってみるか?」
「え、いいのかい?」
「構わないさ。ただし、かなり難しいぞ?俺でもノーマルをクリアするのに一時間くらいかかるし」
「龍呀くんですら一時間も……」
「そんだけ難しいのさ。先に上がるぞ?それとイッセー、そろそろ止めないと小猫の拳が鳩尾に来るぞ」
「マジか!?」
温泉から上がり、皆、自室で寝静まっている時。オレは一人、別荘から抜け出し森の中へと入る。
そして、少し開けた場所で伏魔殿のラクリマを起動させて伏魔殿に挑む。
「よし、今回はハードでやってみるか」
しかし、この時、温泉で臭いが流れていた所為かオレの後を尾行して来ている者が居るとは気が付かなかった。
◇◆◇
《side小猫》
私は喉が乾いたので水を飲みに行くと龍呀先輩が一人、別荘から抜け出すのを見つけた。
「こんな夜中に何処へ行くんだろう?」
そんな先輩を興味本意で追いかけると森の中へと入り、やがて開けた場所に着くと龍呀先輩は切り株の上に水晶の様な物を置いた。
そして、その水晶に魔力を送ると龍呀先輩はその場から消えた。
「え、消えた!?」
木の影から出て、龍呀先輩を探すが見当たらない。最後の可能性として龍呀先輩が触った水晶に私も触ると水晶が突然、光だした。
「にゃっ!?」
光が止むと水晶の上にホログラムの様な物が出現し。そして、そのホログラムには龍呀先輩が映っていた。
しかし、ただ映っていたのではなく、大量のモンスターと戦いながらボロボロになっている龍呀先輩が映っていた。
「なに……これ……」
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第17話
《side小猫》
修行一日目の夜。皆が寝静まった頃、水を飲みに行くと龍呀先輩が別荘を出たので追いかけると開けた場所で先輩は水晶玉の様な物に手を触れると姿を消した。
私は水晶玉が気になり触れるとホログラムの様な物が現れ、そこにはボロボロの龍呀先輩が映っていた。
「龍呀……先輩?」
『ぐああああ!!』
「あっ!」
『まだまだ、こんなんじゃアイツを守れない……』
「アイツって誰のことなんだろう……?」
『モード、白影竜&カオスドライブ!!』
龍呀先輩は白と黒の魔力をその身に纏い、『カオスドライブ』と叫ぶと先輩の魔力の質が濃くなった気がする。
「カオス……ドライブ……」
『白影竜のカオスレイ!!』
右手の白い魔力、左手の黒い魔力を合わせて無数の白黒の閃光を先輩がモンスターたちに放つ。
すると、大量に居たモンスターはある程度、倒すことに成功するがまだ何十体ものモンスターが先輩のことを囲んでいた。
「こんなの、勝てっこいない……」
『まだまだ、諦めねぇぞ!』
「龍呀先輩……」
『ウオオオオオ!!』
それから、何十分も先輩はモンスターたちと傷だらけになりながら戦い続けた。
そして、先輩は殆ど立ってるのですら限界な状態なのに大技を繰り出す。
『滅竜奥義・改 聖影竜閃牙!!』
大技が放たれるとそれはモンスターたち呑み込んでいく。
「凄い……」
しかし…………
『だめ……だったか……』バタリ
龍呀先輩は全ての魔力を使い果たしたのか、その場に倒れてしまう。
「龍呀先輩!」
先輩が倒れたのも束の間、大量に居たモンスターは倒したはずなのに違うモンスターがジリジリと龍呀先輩に近づく。
「そんな…………どうにかしないと」
私は水晶玉をあちこち触り、龍呀先輩をあの場からこちら側に戻せないか試す。
「お願い、戻って!」
水晶玉をあちこち触っていると何かが反応する感覚があり、後ろから【ドサッ】と何かが落ちる音が聞こえた。
「龍呀先輩、龍呀先輩!」ユサユサ
何度も先輩の名前を呼んでも返事がない。なので先輩を担いで別荘に戻り、アーシア先輩の部屋のドアを叩く。
「アーシア先輩!アーシア先輩!」ドンドン
何度か呼んでいるとドアが開き、アーシア先輩が目を擦りながら出てきてくれた。
「どうしたんですか、小猫ちゃん?」
「龍呀先輩が……龍呀先輩が大変なんです!」
「龍呀さんが?」
アーシア先輩を連れて一階のリビングにあるソファーに寝かせているボロボロの龍呀先輩を見せた。
「これは!?」
「何があったんですか、小猫ちゃん?」
「龍呀先輩が一人で別荘から出ていくのが見えて追いかけると、水晶玉みたいな物を出して、それに触れると消えたんです」
「それで、私も水晶玉を触ってみたらホログラムの様な物が出て来て。そこには既にボロボロになった龍呀先輩が大量のモンスターと戦っていたんです」
「ということは、龍呀さんは一人で修行を?取り敢えず、怪我を治します」
「お願いします」
◇◆◇
《side龍呀》
「んん…………知ってる天井だ」
「龍呀先輩!」
「龍呀さん!」
「あれ?アーシアに小猫?なんで?」
「てか、オレ、いつ別荘に戻った?」
「もう、心配したんですよ!」
「まったくです」
アーシアと小猫の言葉でオレに何があったのかを思いだした。
「あー、なるほど。伏魔殿で魔力のペース配分と難易度を見誤ってリタイアしたのか」
「なんで、あんな無茶な特訓をしてたんですか?」
「…………」
「教えてください」
「言ったらお前が傷付くぞ?」
「構いません」
「不完全燃焼だったんだよ、昼間の特訓がな。だから、誰も起きていない真夜中に普段している特訓をやろうと思ったんだよ」
「そうですか…………」
「まぁ、今日はもう伏魔殿には挑まないさ。魔力も無いしな」
セカンドオリジンを解放してれば、伏魔殿のハードをクリア出来たかもしれないがそれでは意味がないのだ。
あの夜から早くも8日間が過ぎ、今日はイッセーの成長を確かめる日だ。
「ブーステッド・ギアを使いなさい。イッセー」
「え?」
「でも、この合宿中は使っちゃダメだって、部長が…………」
「私の許可無しにはね?」
「相手はそうね……龍呀、頼めるかしら?」
「ご指名とあらば」
部長のご指名なのでオレはイッセーの前で構える。
「何処からでもかかってこいよ」
「ブーステッド、ギア!」
イッセーがそう叫びながら構えると左腕から真っ赤な声で出現する。
『Boost!!』
「もう一度!」
「ブースト!」
『Boost!!』
「もう一度!」
「ブースト!」
『Boost!!』
「まだまだよ!」
「ブースト!」
『Boost!!』
「もう一回!」
「ブースト!」
『Boost!!』
「もっと!」
「ブースト!」
「ブースト!」
「ブースト!」
『Boost!!』
「これで12回パワーアップしましたわ」
朱乃の言うとおり、イッセーはブーステッド・ギアで2の12乗強化した。よって、イッセーの能力は4096倍されているのだ。
「ストップ!」
「イッセー、分かる?今までの貴方なら、ここまでの強化に耐えられなかったはずよ」
「ッ……!」
「貴方だって、ちゃんと修行の成果が表れているのよ?」
「そうか………!」
「それでは始め!」
部長の合図で、イッセーは今まで溜めていた力を解放する。
「行くぜ!ブーステッド・ギア!」
『Explosion!!』
するとイッセーの魔力の質が一気にデカくなった?
「あれは?」
「あの音声によってイッセーは、一定時間強化されたままの状態を保ったままで戦うことができるのよ」
ブーステッド・ギアの不思議な音声が気になったアーシアに不思議な音声のことを部長が教える。
「龍呀!」
「了解!」
「ウオオオオッ! 鉄竜剣!!」
「ぐっ!?」
ある程度、手加減をした鉄竜剣をイッセーに向けて振り下ろす。それをイッセーはブーステッド・ギアで受け止め、弾く。
あれ?一応、鉄竜剣も滅竜魔法なのにダメージがそんなに無い?
あっ!まだ、イッセーがドライグと取引してないからか、納得。
「イッセー!魔力の塊を撃つのよ!」
「ハアアアアッ!!」
イッセーは左手を開き、小さな魔力の塊を生成する。
「やっぱり、これだけ!?」
「行くぞ、イッセー!」
「撃ちなさい!」
「このォォォォォォオ!!」
イッセーは先ほど生成した小さな魔力の塊をブーステッド・ギアで殴ると魔力の塊は巨大なビームとなってオレに襲いかかってくる。
「チッ!」
「雷炎竜の撃鉄!!」
いきなりのことにオレも反応が遅れたので咄嗟に雷炎竜の撃鉄でイッセーが放った魔力の塊を空へと軌道をずらす。
ずらした魔力の塊はかなりの高さまで上ると爆発し、空にあった雲がその爆発により全て吹き飛ぶ程の威力だった。
「いやー、参ったぜ。いきなりのことだがら雷炎竜の撃鉄を使っちまった」
「こ、これが俺のちか……ら……」
イッセーは一気に力を消耗したのか、その場で膝をついてしまう。
「イッセーさん!」
「流石に力を使い果たしたみたいね。それと龍呀、今の雷を帯びた炎は?」
「あれは、モード雷炎竜です。炎の滅竜魔法と雷の滅竜魔法を混ぜ合わせた物なんですよ」
「そんなものまで隠していたのね」
「正直、モード雷炎竜とかは人間界で使えば簡単に街が一つ丸ごと無くなる威力を持っていますから」
「そんなに………?」
部長はモード雷炎竜の力を聞いて驚いていた。
「イッセー、貴方はゲームの要。恐らく、イッセーの攻撃力は状況を大きく左右するわ。私たちを、そして何より自分を信じなさい」
「みんなを………自分自身を………」
こうして俺たちの修行合宿は最終段階へと移行した。
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第18話
10日の修行を終えた次の日。
オレはオカルト研究部vsライザーとのレーティングゲームのために自室で戦闘用の服に着替える。
服装は無地のノースリーブTシャツの上にノースリーブの黒い服を着てから膝までしかない白いズボンを履き、腰には服と同じ腰巻。そして首には転生する前にフェアリーテイルのみんなからもらったマフラーを巻く。
「龍呀、白音のことをよろしくね」
「出来るだけのことはする」
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
黒歌に見送られてからオカルト研究部の部室に着くと既にオレ以外の部員は勢揃いしていた。
「すみません、遅れました」
「いいわよ。まだ、ゲームの時間ではないもの」
部長と朱乃はリラックスしながら紅茶を飲み。木場は自分の剣を磨き。小猫はファイティンググローブの感触を確かめていた。
「なぁ、龍呀」
「なんだよ?」
「お前は、この雰囲気は平気なのか?」
「そうだな。特にこれと言って感じる物はないな」
「マジか……俺は緊張しまくりだぜ」
「わ、私もです……」
「まぁ、気楽に行こうぜ?」
イッセーたちもある程度、緊張が収まると支取先輩と椿姫先輩が部長へ激励を送り。それが終わるとグレイフィアが魔法陣から現れる。
「皆様、準備はよろしいですか?」
「ええ、いつでもいいわ」
「開始時間になりましたら、この魔方陣から専用バトルフィールドに転送されます。狩谷様はこちらの魔法陣から」
グレイフィアはグレモリーの家紋が描かれた魔法陣とは別に、なんとフェアリーテイルのギルドマークが描かれた魔法陣を展開した。
「なっ!それはギルド フェアリーテイルのマーク!?」
イッセーは魔法陣に描かれたマークに驚いていた。
「へぇー、洒落たことをするじゃねぇか。シスコン魔王が」ボソッ
「あの、専用フィールドって何ですか?レーティングゲームになんの関係が?」
イッセーはグレイフィアが言っていた。専用フィールドについて疑問の声を上げるとその質問に朱乃が答える。
「レーティングゲーム用に作られる異空間ですわ。使い棄ての空間ですから、どんなに派手な事をしても大丈夫ですわ」ウフフフ
「だったら、龍呀のモード雷炎竜が使えるじゃん!」
朱乃の説明でイッセーはオレの雷炎竜が何の躊躇いも無く使えることに喜んでいた。
「ちなみに、今回のゲームは魔王ルシファー様もご覧になられますので」チラリ
「…………。(はいはい。そういうことね)」
グレイフィアは魔王がゲームを見ることを部長たちに伝えながら、此方へチラリと目線を寄越してきた。
あのシスコンめ!オレの力を見たいからって態々伝える必要があるのか?
「そう、お兄様も…………」
「魔王!?部長のお兄さんって魔王なんですか?」
「ええ、そうよ」
「"紅髪の魔王"こと、サーゼクス・ルシファー。それが部長のお兄さんだよ」
「でも、お兄さんなら何で部長と名前が違うんだ?」
「それは前の大戦で亡くなられた、前魔王ルシファー様のご意志を受け継いだからなんだ」
「それで部長さんがグレモリー家の跡継ぎに」
「そうだったんだ…………」
部長の家のこと聞いたあと、約10分くらい経つと先ほどの魔法陣が再び展開される。
そして魔法陣の上に乗り転移するが…………。
「あれ?」
「何も変わってませんね」
「いや、変わってるぞ」
「え?」
「この部屋にさっきまで部長と朱乃が飲んでた紅茶の臭いがねぇ」
「良かった……もしかして、俺の所為で転移が失敗したかと思ったぜ」
イッセーが自分の魔力の無さの所為でオカルト研究部員達の転移が失敗したのかと思っていたが無事に転移が出来たことに安堵する。
そして、安堵しているのも束の間。直ぐにグレイフィアの審判を務める自己紹介とフィールドについての説明アナウンスが流れる。
【皆様。この度、グレモリー家、フェニックス家の審判役を仰せつかったグレモリー家の使用人のグレイフィアでございます。今回のフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学舎。駒王学園のレプリカを用意しました】
「レプリカ……なるほど。だから、使い棄てでどんな派手な事をしても平気なのか。それにしても学園一つまるごと作るとか悪魔の力って、どんだけ凄まじいんだよ……」
「水や電気を通さなければ、オレも形だけは作ることはできるぞ?」
「最早、龍呀も規格外だな」
【両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様の本陣が旧校舎、オカルト研究部部室。ライザー様の本陣は新校舎、学長室。よってポーンのプロモーションは互いの校舎に侵入を果たすことで可能になります】
「じゃあ、新校舎に入っちまえば、俺は最強のクイーン並の力がプロモーションできるってわけだ!」
「あらあら、そんな簡単ではありませんわよ」
「え?」
「そりゃそうだろう。イッセーがプロモーションを狙っているのと同じ様に相手もプロモーション狙ってくるだろうよ」
「そっか……」
「みんな、これを付けてちょうだい」
「部長、これは?」
「小型の通信機よ。これがあれば色々と便利だから」
オレたちは部長から渡された小型の通信機を耳に入れて、ゲームが開始されるまでのんびりする。
【それでは、ゲームスタートです】
グレイフィアのアナウンスと共に学園の鐘の音が響く。
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第19話
ゲームが開始されてからまず作戦を立てることにしたオレたちは、学園の見取り図を見ながら話を進める。
「龍呀、貴方にはイッセーと小猫と共に体育館でライザー眷属を撃破あるいは足止めをお願い」
「了解」
「裕斗は森の中にトラップを仕掛けて、朱乃はイッセーたちが体育館に来るであろうライザーの眷属たちを足止めをしている間に魔力を溜めておいてちょうだい」
「わかりました」
「わかりましたわ」
「アーシアは私とここで待機ね」
「わ、わかりました」
部長の指示で各自、自分が請け負った役割を果たすために移動する。
「敵」
「ああ、数は4人だな」
「そこにいるのは分かっているわよ。グレモリーの下僕さん」
「こそこそやっても無駄って訳か」
既に相手側の眷属にオレたちが隠れてるいることがバレているので仕方なく幕の影から出る。
「ルークさんにやたら元気なポーンさんね。それと氷の魔法を使う人間」
「へぇー、覚えてくれてたのか」
「取り敢えず、自己紹介をするわ。私はルークの雪蘭」
「ポーンのミラ」
「ポーンのイルでーす」
「同じ、ポーンのネルでーす」
「自己紹介をしてもらったらこっちもしないとな。ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士 狩谷龍呀」
「ルークの塔城小猫」
「ポーンの兵藤一誠」
「自己紹介も終えたし。一丁、おっ始めようぜ!」
「ミラはポーンを、イルとネルは人間を、私はルークを相手するわ」
「分かった」
「「バラバラ!バラバラ!」」
雪蘭の指示でミラたちは一気に動き出す。
「ガキだからって手加減はしねぇぞ?オレは」
「解体しまーす!」
「しまーす!」
「かかってきな?」
イルとネルは持参したチェーンソーでオレを切りかかってくるが全く当たらない。
「なんで、当たらないのよ!」
「こんなんじゃ、ライザー様に怒られちゃうわ!」
「ほれほれ、どうした?」
「ムッカー!」
「早く、バラバラになっちゃえ!」
二人はオレの煽りで怒ったのかチェーンソーをブンブン振り回す。
それを何度も簡単に回避していると棍棒を持ったポーンと戦っていたはずのイッセーが…………。
「龍呀、俺に任せろ!」
「イッセー?」
「ブーステッド・ギア!」
『Boost!!』
『Explosion!!』
「まずは君たちから!」
「一つ!」
「きゃっ!?」
「二つ!」
「ひゃっ!?」
イッセーはブーステッド・ギアで溜めた力を解放して、イルとネルの身体に触れる。
「ていっ!」
「よっと!」
触れた後に出来た隙をミラが棍棒で突き攻撃をするがイッセーはそれを冷静に対処し、ミラの棍棒の右手でへし折り、ミラの身体にも触れる。
「私の棍を………!?」
「これで三つ!」
「人間だけじゃなくて」
「こんな奴に負けたら」
「本当にライザー様の怒られちゃうよ!」
「こんのーッ!」
「「絶対にバラバラにする!」」
ライザーのポーン三人がイッセーに突撃するとイッセーは悪魔の翼を広げ。『ライダー……変身!』のポーズを取り、そして…………。
「喰らえ!俺の必殺技!!」
「イッセーの必殺技って確か…………」
「
イッセーが指を鳴らすとライザーのポーンたちの身体に小さな魔法陣が展開されて、ポーンたちの服を弾け飛ばす。
するとポーンたちはデリケートゾーンを手で隠して悲鳴をあげる。
「フッハハハハ!どうだ、見たか!」
「脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージを永遠と、そう!永遠と妄想し続け、俺は持てる魔力の才能を全て女の子を裸にするために使い切ったんだ!」
「これが俺の必殺技、『
イッセーは洋服崩壊が決まったことに喜び。10日間の修行中で会得した技を高らかに説明した。
「全くもって、無駄な努力」
「オレの変態な友人がすまないな」
オレはイッセーの必殺技を思い出したので体育館内にある衣服を探してミラたちに渡す。
「あっ、どうも……」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「ありがとう!」
「どういたしまして」
「龍呀!てめぇ、俺のせっかくの必殺技を!!」
「うるせえ!女の子を辱しめて何が必殺技だ!必殺技なら、もっと格好良くて威力がある技なのが常識だろうが!」
イッセーと揉めていると部長から通信が来たので体育館から退避する。
「逃げる気?」
「まだ、勝負は着いてないわ!」
「自分たちの拠点を捨てるつもりか!」
後ろでライザーの眷属が何か叫んでいるが関係ない。オレたちはオレたちの作戦のために行動しており、体育館を出るとやがて黄色の魔法陣が現れ、そのまま落雷となり体育館に落ちた。
落雷を落とした主は朱乃だった。
「テイク」
【ライダー様のポーン三名、ルーク一名。戦闘不能】
「す、すげぇ……」
「朱乃先輩の通り名は『雷の巫女』」
「まんまだな」
「その名前と力は知る人ぞ知る存在、だそうです」
小猫の朱乃に関する説明を聞きながら朱乃ことを見ると何故か頬を赤めらせていた。
やはり、ドSサディストか…………。
「取り敢えず、小猫はこれを着てこい。オレの服で悪いが」
体育館でライザーのルークと戦って、制服が破けている小猫に俺は自分の服を脱いで渡す。
「ありがとうございます。龍呀先輩」
「気に………ッ!!」
「小猫!」
「ッ!?」
小猫が服を着替えるために木の影に入ろうとした時に小猫の足元に魔法陣が見えたので急いで小猫をその場から突き飛ばす。
すると突き飛ばしたオレが代わり魔法陣の爆発を受けてしまう。
「龍呀先輩!?」
「龍呀!?」
「龍呀くん!?」
「テイク」
「ライザーのクイーンか!」
龍呀が小猫を守る代わりにライザーのクイーンの魔法を受けてしまう。
そして、爆発によって出来た爆炎が止むと、そこには上半身の服がボロボロで身体には傷一つ無い龍呀の姿があった。
「ふぅ~。いや、驚いた」
「龍呀!」
「龍呀先輩!」
「なっ!何故、まだ生きているの!?」
「あんな弱い魔法で俺がそう簡単に死ぬかよ。
「くっ!」
「お返しだ!」
オレはライザーのクイーンに服を燃やされたお返しのために足に炎の滅竜魔法を纏わせて一気にクイーンに向けてジャンプしクイーンの前まで行く。そしてクイーンの頭を掴む。
「がっ!?」
「喰らえ、火竜の握撃!!」
クイーンを掴んだ手に炎の滅竜魔法で爆発させる。
【ライザー様のクイーン、戦闘不能】
「ライザーのクイーンを一撃で…………」
「凄い…………」
「本当ですわね」
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第20話
ライザーのクイーンを撃破した後、オレとイッセーに小猫は木場の下へ向かう。朱乃は一度、部長と合流するみたいだ。
【ライザー様のポーン三名。戦闘不能】
「三人?ってことは木場か!」
「さすがはイケメン。うわっ!?」
「やあ」
イッセーは木場のことを褒めるといきなり物影に引き込まれたのでイッセーは驚きの声をあげる。
「お、お前かよ」
「ああ、僕だよ」
「ポーンの撃破、お疲れ」
「朱乃さんのお陰で楽に仕留められたよ」
「残るは8体か」
「龍呀くんがライザーのクイーンを撃破してくれたのは大きいよ」
「その所為で服がダメになっちまったけどな」
「すみません。私の所為で……」
「気にするな。小猫が無事なら服の一枚や二枚なんて安いもんよ」ナデナデ
「うにゅ……」
オレの今の格好は上半身裸の状態のナツだ。
それから今後の作戦の話をしていると部長と朱乃がライザーに挑むと通信が来た。
木場は部長に無茶だと言ったが、あの頑固なお姫様はそれでも行くと言ったのだ。とっととこっちの仕事も終わらせることにした。
「やい、どうせ隠れてるんだろう。正々堂々、勝負しやがれ!」
「フフフフ」
イッセーが陸上競技場で叫ぶと女性の笑い声と共に砂埃が舞い上がり。砂埃の中から鎧を着用した女騎士が出てきた。
「私はライザー様に仕える、ナイト。カーラマインだ」
「堂々と真正面から出てくるとは正気の沙汰とは思えんな。だが、私はお前らのようなバカが大好きだ」
カーラマインは左腰に納めていた剣を引き抜き構える。また、カーラマインの剣の刃には炎が纏わりつく。
「イッセー、珍しく告白されてるぞ」
「え?マジで!」
「イッセーくん、今のは龍呀くんが言っている様な告白とは違うよ」
「僕はリアス様に仕える、ナイト。木場裕斗」
「ナイト同士の戦い、待ち望んでいたよ!」
「よくぞ言った。リアス・グレモリーのナイト!」
「ハアアアアアッ!」
木場とカーラマインが自己紹介を終えると直ぐ様、ナイト同士の剣の戦いが始まった。
「すげぇ……つうか、俺たちの出る幕無くね?」
「そうとは限らないぜ。居るんだろう?出てこいよ!」
「出て来ないなら…………火竜の煌炎!!」
オレは木の影に隠れているライザーの残りの眷属たちに火の煌炎を投げつける。
【ライザー様のポーン二名。ビショップ一名。戦闘不能】
「ありゃ、運が悪かったな」
「なんて、野蛮なの?」
火竜の煌炎を投げつけたら場所から金髪の少女と仮面着けた女性と背中に大剣を背負った女性が出てきた。
「いや、最初に言ったじゃねぇか。出てこいよ、ってさ?」
「そうでしたわね」
「それじゃ誰が来るんだ?お前か?」
「私は戦いませんの」
「「はぁ?」」
オレとイッセーは金髪の少女の言葉に疑問符をあげるが俺は直ぐにその意味が分かった。
「お前、もしかしてライザーの妹か?」
「え?妹ォォォォォオ!?」
「あら、ご存知でしたの」
「戦う相手のことを調べるのは常識だ」
「そうですわね。イザベラ、貴方はリアス様のポーンを、シーリスはリアス様のルークと人間を」
「わかりました」
「わかりました」
ライザーの妹の指示でイザベラとシーリスが襲いかかってくる。
「さぁ、来いよ」
「嘗めていられるのも今のうちだ」
「ハアアアアアッ!」
「鉄竜剣!」
「なっ!腕が剣に!?」
「貴方、本当に人間ですの!?」
シーリスとライザーの妹は人間であるオレの右腕が剣に変わったことに、とても驚いている様子だ。
しかし、戦いの最中にそんな驚いていいのか?
「オレはただの人間じゃなくて、フェアリーテイルの滅竜魔導士なんだよ」
「きゃああああ!?」
「なんだ?」
いきなり女性の悲鳴が聞こえたのでそちらを見ると、そこには素っ裸のイザベラがへたり込んでいた。
「なんて下品な」
「最低です」
「イッセーの奴、またあの変態技を使ったのかよ」
「女にとっては恐ろしい技だな」
「僕も初めてみたけど、なんか…………」
「うちのイッセーが変態でごめん」
「うちのイッセーくんが変態でごめんなさい」
「うちのイッセー先輩が変態でごめんなさい」
「コラー!三人とも、見も蓋もない謝り方をするな!」
オレたちがライザーの眷属たちに謝罪をしているとイッセーはそのことに地団駄を踏む。
「そこの兵士さん。あれが何なのか分かりますかしら?」
「はっ!部長!?」
ライザーの妹が指で示したのは新校舎の屋根の上にいる部長と朱乃、アーシアの姿だった。
「直接仕掛けるって言っても早すぎるだろう」
「こちらも手を読まれていたのか」
「イッセー、木場、小猫!お前たちは部長の所へ急げ」
「でも、龍呀!」
「イッセー!てめぇらは何のためにこの戦いに参加してんだ!」
「龍呀」
「龍呀くん」
「龍呀先輩」
「だから、ここは任せろ!」
「…………悪い、頼む!」
「龍呀くん、後を頼む!それとこれ」
「あとをお願いします」
「任せとけって」
イッセー、木場、小猫は部長たちの所へ急いで向かう。
また、木場は自分の責務を任せてしまう代わりに鉄の剣をオレに投げ渡してくるのでそれを受け取り食べる。
「さぁ、仕切り直しだ」モグモグ
「剣を食べた!?」
「本当に人間ですの!?」
「行くぜ!」
「火竜の鉄拳!!」
「がはっ!?」
「翼撃!!」
「きゃあああっ!?」
「咆哮!!」
「うわあああ!?」
【ライザー様のナイト二名。ルーク一名。戦闘不能】
炎の滅竜魔法で一気にライザーの妹以外の眷属を葬る。
「人間がこんな…………」
「さぁて、オレの役割はここまでだな」
【リアス様のナイト、一名。ルーク、一名。戦闘不能】
木場と小猫が負けたか…………。
「え?今のはどういう意味ですの?」
「どういう意味も何も、これ以上オレが戦っても今後意味がないからだ」
「意味がない?」
「仮にこのゲームに勝てても、それは人間の力によって勝てたものとか言われて終わりだ。だから、オレの役割は今は終わりだ」
「それに、このゲームは負ける」
「え?」
【リアス様のリザインを確認。このゲームはライザー・フェニックス様の勝ちです】
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第21話
ライザーとのレーティングゲームから翌日。
オレはベッドの上である奴が家に訪ねてくるのを待っている。
「龍呀、お客様にゃ」
「来たか」
黒歌に呼ばれてリビングに降りるとスーツ姿のサーゼクスが椅子に座っていた。
「やぁ、龍呀くん」
「待ってたぜ、サーゼクス」
「待っていた?君は私がここに来ることを読んでいたのかい?」
「まぁ、半分はそうだが。もう半分は違う」
「なら、もう半分を聞かせてもらえるかい?」
「もう半分はオレの所へじゃなくて、イッセーの所へグレイフィアを送り込むと読んでいた」
「まさか、そこまでとは……」
「それで、何の用だ?」
「君に………いや、フェアリーテイルの滅竜魔導士。狩谷龍呀くんへ、私から依頼だ」
「依頼ねぇ……。内容は?」
「明後日に行われる、リアスとライザーくんの婚約パーティーに乗り込んでリアスを拐ってほしい」
「ほう」
「お願いできるかい?」
「良いぜ。ただし、パーティーに乗り込んだ際にオレとライザーを戦わせろ。そして、勝った者には何かしらの報酬を渡す。これが条件だ」
「何かしら報酬?君は何が欲しいんだい?」
「そんなの決まってんだろう、黒歌さ」
「龍呀、貴方まさか!」
「そう、そのパーティーで転生悪魔、黒歌の全権を報酬にして、黒歌をはぐれ悪魔から解除する」
「ハハハハハ!まさか、そんな願いを報酬にするとは」
「分かった。それじゃ、これがパーティー会場へ転移できる魔法陣だ」
「イッセーが目を覚ましたら依頼を遂行しに行く」
「楽しみにしているよ。フェアリーテイルのドラゴンスレイヤーくん」
そう言い残し、サーゼクスは魔法陣で転移し帰って行った。
そして、翌日の夜。
イッセーの家からドラゴンの臭いがしたのでサーゼクスからもらった魔法陣が描かれた紙を使用する。
「それじゃ、黒歌。行ってくる」
「行ってらっしゃいにゃ、龍呀」
魔法陣で転移すると既にイッセーが来ていた。
「待っていてください、部長」
「一人で行くなんて水臭いぞ、イッセー」
「龍呀!?」
「よう」
「なんで!?」
「オレもちょっと用があってな。それより、パーティーに乗り込むぞ」
「お、おう!」
オレたちはパーティー会場に向けて走りだす。
途中、衛兵たちが襲いかかってきたがオレが全てボコボコにする。
そして、パーティー会場の前に大きな扉があるのでそれを…………。
「一丁、派手に行くか」
「ああ!」
「ライザーくん、あ・そ・び・ま・しょっ!」
扉に向けて火竜の鉄拳を扉に向けて放ち。扉を粉砕しながら悪魔たちが集まるパーティー会場へと乗り込む。
「部長!」
「イッセー!?それに龍呀も」
「おい貴様ら、ここを何処だと……」
「俺は駒王学園、オカルト研究部の兵藤一誠!」
「ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士。狩谷龍呀!」
「部長……リアス・グレモリー様の処女は俺の物だ!」
「格好がつかねぇな」
「なっ!?貴様ァァア!」
「何を考えているの!?あの男」
「取り抑えろ!」
ライザーの声で衛兵たちが集まるが、オカルト研究部の皆が足止めをしてくれた。
「二人とも、ここは僕らに任せて」
「遅いです」
「木場、小猫ちゃん!」
「あらあら、やっと来たんですね」
「朱乃さん」
「すまん」
「さぁ、二人とも」
「はい!」
「ああ!」
衛兵たちが倒されて行くのを見た他の悪魔たちは、この事態にざわめきだす。
そんな中、ある男がざわめきを止める。
「これは私が用意した余興ですよ」
「誰?」
「あれがサーゼクス・ルシファー。部長の兄貴だ」
「あの人が魔王……」
「サーゼクス様!余興とはいかが……」
「ライザーくん。レーティングゲーム、興味深く拝見させてもらったよ。しかしながら、ゲーム経験も無く、戦力もそこの人間に劣る妹相手ではいささか」
「あの戦いにご不満でも?」
「いやいや、私が言葉を差し挟めばレーティングゲームそのものが存在意義を失ってしまう」
「まして、今回は事情が事情だ。旧家の顔も立たないだろう?」
「ッ………!」
「可愛い妹のせっかくの婚約パーティーだ。派手な趣向も欲しいものだ」
「そこの二人。君たちが有するドラゴンと滅竜の力。この目で直接見たいと思っていてね」
「…………。(俺のは実際に受けただろうが!)」
「グレイフィアに少々段取ってもらったのだよ」
「なるほど。つまりは……」
「ドラゴン対フェニックス。伝説の力を宿す者たちによって会場を盛り上げる、というのはどうかね?」
「!!」
イッセーはサーゼクスのその提案に驚いた。しかし、直ぐにその提案を俺たちで受ける。
「分かりました」
「オレも構わない」
「それでは、ドラゴン使いくんに滅竜使いくん。君たちは勝利の対価に何を望む?」
「サーゼクス様!下級悪魔と人間などに……」
「下級であろうと上級であろうと、ましてや人間であろうと、こちらから願い出た以上。それ相応の対価を払わねばならいない」
「何を希望する?爵位かい?それとも絶世の美女かな?さぁ、何でも言ってみたまえ!」
「イッセー。お前から先に言えよ」
「サンキュー、龍呀」
「俺は部長、いいえ。リアス・グレモリー様を返してください!」
「分かった。君は?」
「オレはとある悪魔の全権だ」
「ほう、その悪魔とは?」
「勝負に勝ってから決めるさ」
「分かった」
「それではフィールドへ転送する」
オレたちはサーゼクスの転移魔法により、特設バトルフィールドへ転送させられた。
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第22話
『それでは始めてもらうか』
「イッセー。オレがある程度、ライザーを弱らすから最後はお前が決めろ!」
「任せろ、龍呀!」
「人間風情がこの俺に勝てるはずが───」
「火竜の鉄拳!!」
「ぐあああっ!?」
ライザーが何か言い終わる前に火竜の鉄拳を顔面に打ち込み吹き飛ばす。
「な、なんだ、その威力は!?」
「さぁ、フェニックスの炎とドラゴンの炎。どちらがより強く燃え盛るか、勝負と行こうぜ!」
「な、嘗めるァァァァア!!」
ライザーは怒ったのか両手に炎の塊を作り。それをオレに投げつけてくる。
なのでオレも炎を投げることにした。
「火竜の煌炎!!」
「なっ、バカな!?」
オレが投げた火竜の煌炎はライザーの炎ごと呑み込んでライザーに当たる。
「何故、人間ごときに俺の炎が……」
「まだまだ、行くぞ!」
ライザーに向けて一気に駆け出し。連続で炎の滅竜魔法を決めて行く。
「火竜の鉄拳!!」
「鉤爪!!」
「翼撃!!」
「劍角!!」
「炎肘!!」
「うぼわっ!?」
「な、なんだ、その魔法は!?」
「龍呀の魔法は、竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、その魂を狩り取ることのできる魔法だ!」
「滅竜奥義・紅蓮爆炎刃!!」
「ぐあああっ!?」
ライザーは紅蓮爆炎刃で大きく吹き飛ばされてルークの駒を型通った灯台にぶつかり、瓦礫の下敷きになる。
「イッセー、交代だ」パン
「おう!」パン
オレたちはタッチをして交代する。
もしも、イッセーが危なくなればオレが出るがな。
この戦いには黒歌の運命もかかってるからな。
▽▲▽
《sideイッセー》
「さぁ、次は俺の番だ」
「部長!プロモーションをすること許可願います」
俺はライザーに向けて走りながら部長にプロモーションの許可をもらう。そして、ポーンからクイーンへとプロモーションする。
「プロモーション、クイーン!」
「下級悪魔風情が!」
瓦礫から出てきたライザーは俺に炎を放ってくるが明らかにゲームの時より威力がない。
これは龍呀の滅竜魔法のお陰でなのか?
「部長!」
「俺は木場の様に剣の才能はありません。朱乃さんみたいに魔力の天才でもありません。小猫ちゃんみたいなバカ力は無いし。アーシアの持ってる様な素晴らしい治癒の力もありません」
「ましてや、龍呀のような滅竜の力もありません。それでも、俺は最強のポーンになります」
「部長のためなら神様だって、ぶっ飛ばしてやります!」
「輝きやがれ、オーバー・ブーストォォォオ!!」
『WIelsh Dragon Over Booster!!!』
『赤龍帝の籠手』からその電子音がなると俺の身体を真紅の鎧が纏まりつく。
これこそが本当の赤龍帝の力なんだ。
「これが龍帝の力、禁手、『
俺の左腕に宿る。赤き龍帝ドライグと左腕を取引に10秒間だけ成れる力だ。
龍呀がライザーのことを弱らせてくれなかったら危なかった。
「10秒もあれば、奴を殴り飛ばせる!」
『Ⅹ』
「ウリャアアアア!!」
『赤龍帝の鎧』で強化した魔力の塊をライザーに向けて放つがライザーはそれを回避してしまう。
また、避けた魔力の塊は灯台に当たり大爆発する。
「くっ!?」
「ここだァァァァア!!」
「ぬわあああ!?」
ライザーが回避したことにより出来た隙をついで一気に懐へ入り一発狙うが、それをライザーはギリギリの所で回避してしまう。
『Ⅸ』
「なんだ、この力と早さは。本当にあの人間といい貴様といい。この俺を不愉快にしてくれる!」
「火の鳥、鳳凰、不死鳥フェニックスと称えられた我一族の業火」
「その身に受けて、燃え尽きろォォォオ!」
『Ⅷ』
「てめぇのちんけな炎なんかで俺が焼かれる訳がねぇだろォォォオ!」
俺とライザーは互いの拳がぶつかり合い。その衝撃で俺は空中から落ちてしまう。
また、『赤龍帝の鎧』の至る箇所に皹が入っていた。
「ぐあっ!?」
「鎧がなかったら……これがアイツの力だってのか」
『Ⅶ』
「くそっ、あの人間から受けたダメージが……」
正面を見るとライザーもさっきの衝撃で空中から落ち。龍呀のダメージが予想よりも大きかったのか傷の治りが遅い。
「貴様はブーステッド・ギアが無ければ。ただのグズだ!」
ライザーは炎を俺に投げてくるが鎧の推進力でそれを回避する。
すると、それを読んでいたのかライザーは俺に拳を向けてくるので俺も拳を放つ。
「ハアアアアアッ!」
「デヤアアアアッ!」
『Ⅵ』
互いに放った拳はお互いの顔面に炸裂し、俺は吐血するが少ししてからライザーも吐血する。
「ぐはっ!?」
「ハッハハ。その程───ごはっ!?」
「き、貴様、何をした……?」
ライザーは何故、自分が吐血しているのか理由が分からずに俺と共に再び、空中から落下するがその時に俺が左手に握っていた物を見る。
「なっ!十字架だと……!?」
『Ⅴ』
「うちのビショップは元シスターなんでね。奥に仕舞い込んでたのをちょっと借りて来たのさ。
流石のアンタでもセイクリッド・ギアで高めた聖なる力は堪えるようだな」
『Ⅳ』
「バカな……。十字架は悪魔の身体を激しく痛め付ける。いかにドラゴンの鎧を身に着けようと手にすること自体…………ッ!!」
「まさか、貴様?籠手に宿るドラゴンに自分の腕を…………」
『Ⅲ』
「悪魔の腕じゃなく、ドラゴンの腕なら悪魔の弱点は関係ないからな!」
「正気か、貴様!?そんなことをすれば、二度と戻らないんたぞ!」
『Ⅱ』
「それがどうした!」
『Ⅰ』
「たかが俺の腕の一本。部長が戻ってくるなら安い!」
「取引だァァァァア!!」
最後の留めを決めるために鎧の推進力でライザーに突撃する。しかし、途中でカウントアップが来てしまい『禁手』が解けて転んでしまう。
ドライグに聞いて今度は何処と取引すれば再び禁手になれるか聞いてみたいところ今の俺では全く可能性が無いらしい。
けれど、最後の悪足掻きに鎧の力の一部を籠手のに宝玉に移動させてくれたみたいだ。
「全く、本当にしまらねーな」
「龍呀?」
「少しだけ力を貸してやるから、今度こそ決めろよ?」
「ああ!」
龍呀は俺のこと起こしてくれた後、背中に手をおいて。一気に魔力を流し込んでくれる。するとブーステッド・ギアの宝玉が激しく光る。
「な、なんだ、それは!」
「スゲェ…………力がみなぎってくる」
「ついでにこれもサービスだ。バーニア、アーマー、アームズ、エンチャント!!」
「サンキュー、龍呀。行くっぞォォォォオ」
「この死に損ないがァァァァア」
俺は一気に駆け出しながらポケットに仕舞っていた聖水を十字架を持っている左腕に掛ける。
「アーシアが言っていた。悪魔は聖水が苦手だって」
「木場が言っていた。視野を広げて、相手を見ろと!」
『Transfer』
「朱乃さんが言っていた。魔力は身体全体を覆うオーラから流れる様に集める。意思を集中させて魔力の波動を感じれば良いと!」
俺は龍呀からもらった魔力と自分の魔力をブーステッド・ギアに集める。
「小猫ちゃんが言っていた。打撃は中心線を狙って的確に抉り込む様に打つんだと!」
「龍呀が言っていた。技は放つイメージと自分のイメージを頭の中で合わせて、放つんだと!」
ライザーはブーステッド・ギアに集まった力に恐怖したのか狼狽えだした。
「ま、待て!分かっているのか?この婚約は悪魔の未来に必要で、大事な事なんだぞ!お前の様な何も知らないガキがどうこうする様な物じゃ、ないんだぁぁぁあ!」
「難しいことは分からねぇよ。でもな!お前に負けて気絶してる時、うっすらと覚えていたことがある」
「部長が泣いてたんだよ!俺がてめぇを殴る理由はそれだけで十分だ!」
「喰らいやがれ、龍帝の鉄拳!!」
俺は全ての力の左ストレートをライザーの鳩尾を狙って思い切り打ち込む。
するとライザーは腹を抱えて踞り、動きを止める。
その後にライザーの妹が俺の前に転移してきて両手を広げ、ライザーに攻撃させない様にする。
「文句かあるなら、俺の所へ来い!いつでも、相手になってやる」
こうして最後の戦いは俺たちの勝利になった。
龍帝の鉄拳はただのグーパンチです。
火竜の鉄拳などは別物です。
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第23話
《side龍呀》
ライザーと戦い終わったオレたちは、パーティー会場へと戻ってきていた。
「それでは、ドラゴンスレイヤーくん。君が望むのはとある悪魔の全権だが。そのとある悪魔とは一体誰のことだい?」
ようやく、ようやく、お前を本当の自由に出来る時が来たぞ。黒歌!
「オレが言っていたとある悪魔とは、SS級犯罪悪魔の黒歌のことだ」
「「「なっ!?」」」
パーティー会場にいるサーゼクスとグレイフィア以外の悪魔たちが俺の発言に凄く驚いていた。その中でも小猫が信じられないという目でオレを見ていた。
「魔王ならちゃんと答えてくれるよな?」
「ふざけるな!SS級犯罪悪魔の黒歌だと!?」
「正気なのかこの人間は!?」
「あんな主殺しの全権などと……」
オレは貴族の悪魔たちが放ったその言葉に怒りが爆発した。
「おい、誰だ今の?何も知らない奴がアイツの……黒歌のことを悪く言うんじゃねぇ!!!!」
堪忍袋の緒が切れたので魔力を全力で解放する。するとオレの魔力で立っている場所にはクレーターの様な物ができ、パーティー会場は揺れ出し、柱や壁には皹が入る。
この時のオレの目には殺意が宿っていた事だろう。
「龍呀……」
「龍呀くん……」
「龍呀先輩……」
「分かった。私こと魔王サーゼクス・ルシファーの名に置いて、SS級犯罪悪魔である黒歌の全権をフェアリーテイルの滅竜魔導士 狩谷龍呀くんに一任する。また、黒歌くんのはぐれ悪魔認定はこの場合に置いて既に解除したものとする」
サーゼクスの宣言を聞いたオレは少しだけ頭が冷静になる。
「後日、君の所へ我が妹リアスを通して黒歌くんの権利書を渡す」
「分かった」
オレはパーティー会場から出ようとするが念のために、この場にいる貴族悪魔たちに念を押す。やり方は白竜のドラゴンフォースで貴族悪魔を脅す。
「もしも今後、黒歌や黒歌の家族に手を出してみろ?サーゼクス・ルシファーの腕に傷を負わせたこのオレがお前たちを跡形も無く、聖なる白竜の力で消し飛ばしてやる。覚えておけ」ゴゴゴゴ
それを最後にオレは本当にパーティー会場から退場した。
▽▲▽
《sideイッセー》
俺は今。本能的に死の恐怖を感じた。
龍呀が勝利の対価にSS級犯罪悪魔の黒歌とかいう悪魔の全権と言った途端に貴族の悪魔たちは騒ぎだす。そして、貴族の誰かが黒歌の悪口を言った途端に心臓が止まるかの様な圧力を感じた。
その圧力を出していたのは龍呀だった。
その時の龍呀の目は今までに見たことが無いほど、怖い目をしていた。それも目から殺意がビシビシと伝わってくるほどだ。
そして、パーティー会場を出る時に扉があった所で立ち止まると白竜のドラゴンフォースを使ったのか龍呀の身体には白い竜の鱗が現れていた。
他にも驚くことがあった。なんと、龍呀は部長のお兄さんである。サーゼクス・ルシファー様に手傷を負わせたことがあるらしい。それを聞いたパーティー会場の悪魔たちは顔が一気に青ざめたり、ガタガタと震え出した。
マジで、どんだけ規格外なんだよ。お前は…………。
「お、お兄様。龍呀が言った事は本当ですか?」ガタガタ
「ああ、本当だとも。私は彼と一度戦ったことがある。無論、お互いに本気ではなかったけどね。でも、まさか彼の本気があそこまで凄まじいとはね。もしかしたら、私でも勝てないかもしれないね」
「今まで私たちは一緒に過ごして来ましたが、彼の力の底が分かりません」ガタガタ
「何、人間界でも言うだろう?『触らぬ神に祟り無し』ってね。だから、この場にいる全員に私からのお願いだ。彼の逆鱗には触れないでくれ。これは今後、彼とは友好な関係で居たいからだ。もしも、彼の逆鱗に触れてしまったら今度こそ私たち悪魔にとって滅亡の未来が見えてくる。私からは以上だ」
サーゼクス様のその発言にパーティー会場内の悪魔たちは一同に同意の意を示した。
▽▲▽
《side龍呀》
サーゼクスに勝利の対価に黒歌の全権をオレへ一任することの言質を取った。それにパーティー会場に居た悪魔たちにも牽制が出来たから、よしとしよう。
「ただいま」
「お帰りなさい、龍呀」
「黒歌、話がある」
「分かったにゃ」
オレは一度、自室へ行き。部屋着へと着替えてからリビングで椅子に座り、黒歌と対面する。
「それでパーティー会場での事だが、結果として黒歌のはぐれ悪魔認定は解除。ならびに黒歌の全権は俺に一任されることになった」
「本当なの……?本当に私はもう、はぐれ悪魔なんかじゃないの?」ポロポロ
「ああ。もう、お前を苦しめる物はない。黒歌、お前は今度こそ本当の自由なんだ」
「龍呀……ありがとう……ありがとう」ポロポロ
「どういたしまして」
「後日、部長の方から黒歌の権利書が届くはずだから、それまではまだ自由じゃないけど」
「分かってるわ」
「それと、アイツに…………白音に本当のことを話そう。パーティー会場でオレの対価を話した時、アイツが一番驚いていたはずだ」
「…………」
「大丈夫だ、心配すんな。お前たちは家族なんだ。だから、必ず分かり合える」
「分かった。白音に本当のことを話してみる」
「ああ」
それから3日後。部長にサーゼクスから権利書が届いたと連絡が来た。そして現在、オレはグレモリー眷属に囲まれながら権利書を拝見している。
「確認しました」
「ありがとうございます、部長」
「礼には及ばないわ、魔王様からのご命令だから。それで龍呀。何故、貴方が元SS級犯罪悪魔の黒歌のことを知っていたの?」
「そうですね。そろそろ、話しても構わないかな。まず、オレはこの世界の住人じゃない」
「「「!?」」」
「それはどういうこと、龍呀?!」
「オレは元の世界で神様のミスとかで死んでしまったんですよ。それで、ここに転生させてやると言われて、オレは神様に滅竜魔法を護身用にくれと願ったんです」
「だから、お前は滅竜魔法が使えたのか」
「ああ。でも滅竜魔法を貰ってもただ使えるだけだから天狼島で5年間の間、修行したんだ」
「それで最後に黒歌は神様から救ってほしいと言われたから助けた。これは朱乃、お前も含まれている」
「私も……?」
「オレがいなかったら、朱璃さんは…………」
「そうですわね。龍呀くんがいなかったら……今頃、私も母様も……」
「今まで黙ってて悪かったな」
今まで黙っていたことを話して少しだけ心の重荷が軽くなった気がする。
「龍呀先輩。姉様は……黒歌姉様は何処に?」
「オレの家だ。小猫、いや……今はこう呼ぶべきだろうな、白音」
「!?」
「白音、お前は黒歌から聞かなければいけないことがある。何故、黒歌がはぐれ悪魔になってしまったのか、その真実をな」
「…………」
「なら、私も同席するわ龍呀!」
小猫に黒歌の話しを聞かなければならないとオレが言うと、直ぐに部長が自分も同席させろと言い出した。
「部長、それはできない」
「なぜ?私は小猫の主で小猫は私の下僕なのよ!」
「主だろうが下僕だろうが、部長は白音とは血が繋がっていない。端から見れば、部長は赤の他人だ」
「!?」
「それとも部長はグレモリー家のこと全てを血の繋がっていない赤の他人に話せますか?」
「そ、それは…………」
「なら、オレの言っている意味が分かるでしょ?これは、血を分けた黒歌と白音、二人の姉妹だけで話すべきことなんですよ」
「分かったわ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、俺はこれで。白音、心の整理が出来たら、ここへ何時でも来るといい」
小猫が座っているソファーの前にあるテーブルに一枚のメモを置いて、オレは部室から出た。
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第24話
権利書を部長から受け取ってから早くも一週間。その間、小猫はずっとオレのことを避けていた。そしてある日の夜、オレの家の呼び鈴が鳴る。
「はーい、どちらさ………白音」
「こんばんは。黒歌姉様、龍呀先輩」
「心の整理は着いたのか?」
「はい。なので、来ました」
「分かった。取り敢えず、中に入れよ」
「お邪魔します」
小猫をリビングへと案内して黒歌と対面する様に椅子に座らせる。
「あとは二人で思う存分話すと良い。オレは地下に居るから」
地下に入ると見たことがある人物がいた。
「なっ!? 貴女は、メイビス・ヴァーミリオン!?」
「こんばんは、異世界にいる若き妖精の魔導士」
「なんで、初代が?」
「私が居るのは、貴方を迎えに来たのですよ。狩谷龍呀」
「オレを迎えに来た?」
「そう。今後、貴方の行く道には戦の困難が待ち受けています。だから、神様が貴方に新たな力を身に付けて貰わないといけないとのこと」
「新たな力を……?」
「それでは行きましょうか」
「ちょっ、待っ!」
……パンッ!
オレが言い終わる前に初代が両手を合わせて『パンッ』と鳴らすと身体に浮遊感が襲い。それが止むとオレはただただ広い場所に居た。
「ここは…………?」
「やぁ、久しぶりだね」
「あっ、エセ神様」
「誰がエセ神様だ!まったく」
「狩谷龍呀くん。君を呼んだのは他でもない、君に新たな力を身に付けてもらうためだよ」
「何でだよ?オレは転生する前、確かに4つ願いを選んだはすだ」
「いいや、君には4つ目が残っている。だから、私が勝手に決めたよ」
神様がそう言うと右手を高く上げて、そして…………。
「さぁ、来てくれ!」
指を鳴らすと神様の背後に魔法陣が展開される。そして、その魔法陣から現れたのは…………
「なっ、お前は………!?」
「貴様が異世界の滅竜魔導士か?」
「アクノロギア!」
「我こそはアクノロギア!竜の王にして全ての竜を滅する魔の竜なり!」
アクノロギアは自分の名前を口にすると共に魔力を解放する。その魔力のデカさにオレは吹き飛ばれそうになるが足を踏ん張る。
「ぐっ!?」
「なんて、魔力のデカさだよ。こんな奴をナツは倒したのか」
「ナツ?それはナツ・ドラグニルのことか?」
「ああ、ナツはオレの仲間だ。そしてオレは、ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀」
「狩谷龍呀。よし、覚えたぞ」
「で、神様。アクノロギアを呼んで何をするんだ?」
「そんなの決まってるじゃん、修行だよ」
「え……?」
「この空間は君の居た世界と時間が異なるから思う存分に修行するといいよ。アクノロギアの状態は最盛期にしてあるから」
「ほう?神とやらも粋なことをしてくれるな」
「なに、君には彼を鍛えて貰わないと」
「よかろう。その余興、この我が乗ってやろう」
「マジかよ…………」
「それでは早速行くぞ。異世界の滅竜魔導士、狩谷龍呀!!」
「来やがれ、魔竜アクノロギア!!」
◇◆◇
《side黒歌》
白音が家に訪ねて来て、リビングで対面する様に座り、龍呀が私たちのために地下へ行った後。
未だに、私たちは沈黙したままだった。
「…………」
「…………」
しばらく沈黙を続けていると白音がしびれを切らしたのか口を開いた。
「お久しぶりです。黒歌姉様」
「そうね。久しぶりだにゃ、白音」
「先日、龍呀先輩から聞きました。私は姉様が何で、はぐれ悪魔になったのか。その真相を」
「…………」
「聞かせてもらえますか?」
「…………分かったにゃ」
やっぱり、話さないとダメなんだ。龍呀は大丈夫だと言っていたけれど、それでも不安だ。
でも、家族だから伝えないといけない。せっかく、龍呀がくれた白音と和解するチャンスなんだもの!
「白音は、私がナベリウス家の分家の上級悪魔の眷属になったのは知っているかにゃ?」
「はい。部長……リアス・グレモリー様とサーゼクス様から聞きました」
「その時の主に私は、私たち二人が生きて行くために必要な、衣・食・住を提供してもらうことを対価に転生悪魔として眷属になったにゃ」
「けれど、アイツは私たちの仙術の力に目を付け、白音を無理矢理にでも眷属にすると言い出したにゃ」
「え……?」
「だから、私は何度もアイツに抗議したにゃ。私がもっと頑張るから妹に……白音だけには手を出さないでと」
「けれど、アイツはそれを聞き入れなかった。だから私はアイツを殺してはぐれ悪魔になったにゃ」
「そんな……そんなことが」
「本当は知らないままで居て欲しかったにゃ。これを聞いたら、白音は絶対に自分を責めるから」
「そんなの当たり前じゃないですか!」
「私はずっと姉様が仙術の力に溺れて主を殺して、はぐれ悪魔になったと……」ポロポロ
「そして、弱い私は要らないから置いて行ったと…………ずっと、そう思ってたのに」ポロポロ
「なのに姉様は、私を守るために…………」ポロポロ
「ずっと、ずっと、私は姉様のことを誤解していたなんて、ごめんなさい、ごめんなさい」ポロポロ
白音は私から真実を聞いて泣き出してしまう。
私はそんな白音に寄り添い抱き締める。
「でも、いいにゃ。私は別に何とも思ってないから、こうして白音と本当の話しができて、それで十分だにゃ」
「黒歌姉様……」ポロポロ
「これも全て、龍呀のお陰だにゃ」
「はい。龍呀先輩には感謝してもしきれません」
こうして、私は龍呀のお陰で白音との和解ができた。
そして、和解が出来て綺麗に話が終わり告げようとした時、地下の部屋から今までに感じた事のない。
計り知れない魔力のデカさを感じた。
「「!!」」
「な、何ですか、この魔力のデカさ!?」
「この魔力の波動は……龍呀!」
私たちは急いで地下へ行くと、ズボンがボロボロで上半身が裸、首にお気に入りマフラーを巻いて、目を瞑っていた龍呀がそこに佇んでいた。
「りゅ、龍呀?」
◇◆◇
《side龍呀》
オレは初代によってエセ神様の所へ飛ばされ、エセ神様の力で魔竜アクノロギアとの修行を終えて元の世界に戻ってきた。
しかし、さっきほどまでアクノロギアとガチバトルをしていた所為か魔力をゼロまでに抑えることが出来ていなかったようでリビングにいる黒歌たちが慌てて降りてきた様だ。
「りゅ、龍呀?」
「ん?黒歌か……話は終わったのか?」
「う、うん。終わったにゃ」
「それより、その魔力のデカさは何ですか………龍呀先輩?」
「ライザーとの試合でも、そんなデカさはしていませんでしたよね?」
「ああ……。さっきまで神様の所でアクノロギアと修行してたんだよ」
「アクノロギア!?」
小猫はオレの修行相手を聞いて、すごく驚いていた。
「白音、ソイツを知っているのかにゃ?」
「私も詳しくは知りませんが、リアス様のポーンで今代の赤龍帝の兵藤一誠先輩から前に聞いたのですが」
「魔竜アクノロギア、そのドラゴンは世界をも破壊できる程の力を持っているドラゴンだとか」
「世界を破壊する程の力を持っているドラゴン!?」
「そんな化け物みたいな奴と修行をしてたのかにゃ、龍呀は!?」
「だから、そう言ってんだろうが。それにお互いに魔法が効かないから素手で戦うことになったし」
「魔竜と素手で…………」
「何処までも規格外だにゃ…………」
「それより、腹が減ったから何かないか?」
「なら、そろそろ夕飯の時間になるから何か作るにゃ」
「ね、姉様が料理を作る日が来るなんて……」
「白音、私も一応女よ。料理ぐらいは作れるわよ」
「でも、子供の頃に作ってもらった時……」
「あ、あの時はまだ未熟だっただけにゃ!」
「何でもいいから飯~」
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月光校庭のエクスカリバーと雷炎の滅竜魔法
第25話
黒歌と小猫が和解し、オレが神様に呼び出されてアクノロギアと修行した日の翌日。放課後の部室では…………。
「「小さくな~れ~、小さくな~れ~」」
朱乃とアーシアが魔力でイッセーの左腕を人間の腕に変化させているが、あまりにも龍の力が強いのか直ぐにドラゴンの腕に戻ってしまう。
「このままだと、週に何度も魔力をかける必要がありそうだな」
「龍呀の魔力で何とかならないかしら?」
「やってみます。イッセー、左手で拳を作れ」
「ああ」
オレはイッセーと拳を合わせて、魔力をイッセーに流す。すると…………
「オオオオ!元に戻った!」
「それとイッセー。念のため、これを飲んでおけ」
収納ラクリマから錠剤くらいの大きさのラクリマをイッセーに渡す。
「このラクリマは?」
「それは龍の力を吸収して魔力に変えてくれるラクリマだ。それが一番小さくて、一番弱い物だが。それでもダメなら、もう少し強力な奴を渡すから」
「なんか、薬みたいだな」
「強ち間違ってはないだろう?」
「そうだな。サンキュー」ゴクリ
「おう」
それから時間は過ぎて行き、部活の終了時間になると部長からとんでもないことを聞かされた。
「あっ、そうそう、龍呀」
「なんです?」
「今日から貴方の家に小猫が住むことになってるから」
「は…………?」
「はぁぁぁぁぁあ!?」
「何でそんなことに!?」
「小猫から言い出したことよ。姉とせっかく和解が出来たから一緒に暮らしたいってね」
「…………はぁ~、分かったよ」
「すみません。龍呀先輩」
「気にするな。近い未来、そうなるだろうと思ってはいたがこんな早くとは…………」
「ところでよ、龍呀?」
「なんだ、イッセー?」
「小猫ちゃんのお姉さんは、その…………可愛いのか?」
────ブチッ!
「イッセー。黒歌に色目を使ったら、ガチで殺す」ゴゴゴゴ
「ひぃぃぃぃっ!?」
「ムゥ…………」
イッセーを脅していると何故か小猫が拗ねたような顔をしていた。
何故だ?
「どうしたんだ、小猫?」
「別になんでもありません…………バカ」ボソッ
「なんだよ、一体……」
てな訳で小猫が拗ねている理由が分からないまま家に帰ると家の前で…………。
「はーい、ご苦労様でーす」
「あっ、二人ともお帰りにゃ」
家の前で引っ越し屋の人にサインしている黒歌がおり。サインが終わると黒歌はこちらに気付いた。
「黒歌、今の引っ越し屋は?」
「それは白音の荷物を届けてくれた、業者の人にゃ」
「何とも手回しが早いことで」
「取り敢えず、部屋は数があるから白音は自分の好きな部屋を選ぶといいにゃ」
「では、そうします」
トントン拍子で小猫が我が家に移り住むことが決まった。そして、荷物までもが我が家に届いた。
まぁ、せっかく姉妹が和解できたのだから数年の溝を埋めて欲しいものだ。
小猫が引っ越して来て翌日。本日の部活はイッセーの家で行うことになった。
何故、イッセーの家なのかは旧校舎が年に一度の全体清掃なんだとか。
「それでは定例会議を行うわよ」
「今月の契約件数は朱乃が11件。小猫が10件。裕斗か8件。アーシアが3件」
「やるじゃないか、アーシアさん」
「新人さんにしては上出来です」
「わぁー、ありがとうございます」
「で、イッセーは…………0件」
「め、面目ありません」
「でも、部長。イッセーが行った依頼先は評判が良かったんですよね?」
「そうなのよ。だから、少し困っているの」
「イッセー、評判は悪くないんだ。あとは契約だけだな」
「おう!」
「あっ、そうだ!なんなら、オレと契約するか?」
「龍呀と?」
「ああ。食料の買い出しを手伝ってくれ」
「分かった」
オレがイッセーと契約の約束をした後、部屋の扉が開き廊下からイッセーのお母さんがクッキーやらイッセーのアルバムやらを持ってきた。
アルバムの中身を見ていると、子供の頃のイッセーが全裸で牛乳瓶をラッパ飲みしている写真などがあった。
「ねぇ、イッセーくん。この写真に写ってる剣に見覚えは?」
「これは確か、昔に近所の子と遊んでた時の写真だ。えっと名前は…………」
「こんなこともあるんだね」
「その写真に写ってる剣がどうしたんだよ?」
「これはね…………聖剣だよ」
部活が終わり家で夕食を食べてのんびりしていると小猫が二階から降りてきた。
「龍呀先輩、部長からはぐれ悪魔の討伐要請です」
「分かった」
「私も行くにゃ」
「黒歌も?」
「姉様も?」
「グレモリーの次期当主に白音のことをよろしくとご挨拶に行くだけにゃ」
「…………わかりました」
「ありがとうにゃ、白音」
オレたちは準備を整えて小猫が部長から聞いた座標に黒歌の転移魔法で転移する。
すると転移先には部長、朱乃、木場、アーシアが揃っていた。
「こんばんは、部長」
「こんばんは」
「呼び出して悪かったわね。それと…………」
「初めましてにゃ。リアス・グレモリー」
「貴女が黒歌ね。それで、何のご用かしら?」
「今回はただのご挨拶にゃ。大切な妹の主と一度直接、話しがしたかったにゃ」
「そう」
「これからも大切な妹をよろしくお願いするにゃ」
「もちろんよ。リアス・グレモリーの名に置いて約束するわ」
「ありがとうにゃ」
それから少ししてからイッセーがやってきた。
その時、黒歌の身体を見て鼻の下を伸ばしたので拳骨をイッセーの脳天から振り下ろし地面に少しめり込ませる。
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第26話
イッセーが合流したので、本格的にはぐれ悪魔退治に乗り出す。
「はぐれ悪魔はあの廃工場の中ですか?」
「間違いなく、はぐれ悪魔の臭い」
「オレも感じてるから間違いないな」
「今晩中に討伐するよう命令が出てしまいまして」
「それだけ危険な存在って訳ね。中で戦うのは不利ね」
「アーシアは後方に待機。朱乃と私は外で待ち構えるから小猫と裕斗とイッセー。それに龍呀で敵を外に誘き寄せてちょうだい」
「「「「了解」」」」
部長の指示で皆が動き出す。
「黒歌、何も無いとは思うがイレギュラーがあったら部長たちを頼む」
「分かったわ」
黒歌に部長たちのことを頼み。オレたちは廃工場へと入る。
「今度はどんな奴かな?また、化け物みたいな奴だったら…………」
「えい」
「ラアッ!」
イッセーが何か言っているがオレと小猫は堂々と扉を蹴り破る。
「やっぱり、いきなりですか……」
「チマチマやっても面倒なだけだろう?本当なら工場ごと消し飛ばした方が早いんだけど」
「そんな無茶苦茶な……」
廃工場の中に入ったらまず、雷竜の魔法でハンドボールくらいの大きさの雷電球を4つ作り工場内の端に飛ばす。
「雷電球よ!」
「オオオオッ、明るい!」
「これなら、直ぐに見つかるだろう?」
「でも、龍呀。こんなことをしたら、他の人間たちにばれるんじゃないか?」
「その心配は無用ですよ、イッセー先輩」
「小猫ちゃん?」
「姉様が、龍呀先輩のために廃工場の周りに結界を張ってるので」
「そういうことだ。それよりも………いたぞ!」
オレが見ている先には物陰に隠れる銀髪の女性が居るが、その女性はいきなり物陰から出ると姿を人間から角の生えた蜘蛛へと変貌させてた。
「ヴェェェェア!!」
「どあっ!?やっぱり、化け物じゃん!」
『Boost!』
姿を蜘蛛へ変貌させたはぐれ悪魔は意外にも敏捷性が高く、駒は多分ナイトだろうと推測する。なので、ナイトにはナイトで対抗する。
「裕斗先輩、お願いします」
「…………」
「裕斗先輩!」
「あっ!ごめん」
木場は戦闘中には関わらず。何かを考え込んでいたのか動き出しが遅く。はぐれ悪魔が先に蜘蛛の尻の部分からクモの糸の様な物を出すがオレは本能的にそのクモの糸は危ないと感じたので天竜の魔法で防御する。
「天竜の旋風壁!!」
「龍呀、ナイス!」
『Boost!』
「次は俺だ!」
『Explosion!』
「喰らえ、ドラゴン・ショットー!!」
イッセーは二度倍加させた力でドラゴン・ショットーを放つがはぐれ悪魔の手で簡単に弾かれてしまう。
「チッ!やっぱり、パワーアップが足りねぇか……」
「何、ボーっとしてんだイケメン!」
「ッ!!」
木場はイッセーの声で我に還ってたのか鞘から剣を引き抜き。高く飛び上がり、クモの巣でぶら下がっているはぐれ悪魔に切り掛かる。
「デヤアアアアッ!」
木場の一太刀ではぐれ悪魔は左腕を切り落とされる。しかし、着地時に何かに躓いてしまう。
それをチャンスと思ったのか、はぐれ悪魔は木場に覆い被さるように襲いかかる。
「木場!」
「本当に何をボサッとしてやがる!」
オレは木場を助けるために足に魔力を纏わせて敏捷性を高めてから一気にはぐれ悪魔の懐へ入り、魔力を纏わせた拳でアッパーを決める。
それにより、はぐれ悪魔は廃工場の天井にある硝子を貫いて外へ出る。
「朱乃、任せた!」
「分かりましたわ!」
「ハアアアアッ!」
外へと出たはぐれ悪魔は外で待ち構えていた朱乃の雷撃により、黒焦げになる。黒焦げになったはぐれ悪魔は地球の重力で落下する。落下する場所は運悪く部長の目の前だ。
「主の下を逃げ。己の欲求を満たすままに暴れ回る不貞の輩。その罪、万死に値するわ!」
「グレモリー公爵の名において、貴方を消し飛ばしてあげる!」
部長は最後の留めに破壊の魔力ではぐれ悪魔を言葉通り跡形も無く消し飛ばした。
「やった!」
「心を完全に失っていました。最早、悪魔とは呼べませんわね」
「ああは成りたくねぇな」
イッセーは、はぐれ悪魔の成れの果てを見て体を抱き締めた。
「なら、部長から下から離れないことだな」
「あの様なはぐれ悪魔でしたから緊急の討伐命令が出るはずですわ」
はぐれ悪魔の討伐を無事に終えて一息入れていると、少し離れた場所で叩かれる音が聞こえた。
その音は部長と木場によるものだった。
「これで、目は覚めたかしら?」
「…………」
「少し間違えれば誰かが危なかったのよ?」
「すみませんでした」
「一体どうしたの?貴方らしくもない」
「調子が悪かっただけです。今日はこれで失礼します」ペコリ
「裕斗……」
木場は部長に一礼して廃工場から去ろうとするのをイッセーが追いかけて声をかける。
「木場!」
「どうしたんだよ?マジでお前、変だぞ?部長にあんな冷たい態度なんて」
「君には関係ないよ」
「心配してんだろうが!」
「心配?誰が誰をだい?」
「は?」
イッセーは木場が言っている意味が理解できなかった。
「悪魔は本来利己的なものだろう?」
「お前………何を言ってんだよ?」
「まっ、今日は僕が悪かったと思っているよ。それじゃ」
「待てよ!」
「もし、悩みとかがあるなら話してくれ。俺たち仲間だろう?」
「仲間、か」
「イッセーくん、君は熱いね」
「……」
「僕はね。基本的なことを思い出したんだよ」
「基本的なこと?」
「僕が何のために悪魔になったのか、ということだよ」
「そりゃあ部長のためだろう」
「いや、違うね。僕は復讐の為に悪魔に転生したんだよ」
「復讐?」
「聖剣エクスカリバーを破壊するために生きているんだよ。僕は」
それを最後に木場は廃工場から去った。
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第27話
はぐれ悪魔を討伐してから2日。現在、オカルト研究部の部室に教会側からの使者が来ているとかで目の前に二人の女の子がソファーに座っている。
「会談を受けていただき感謝する」
「私はゼノヴィア」
「紫藤イリナよ」
青い髪に緑のメッシュが入っている方がゼノヴィアで、茶髪の方が紫藤イリナか…………。
「神の信徒が悪魔に何の用かしら?」
「元々行方不明になっていた一本を除いた残り六本のエクスカリバーは教会の3つの派閥が保管していましたが、その内の三本が堕天使に強奪されました」
「「「!!」」」
「強奪された!?」
まさかのことにオレを除く、オカルト研究部員は凄く驚いていた。
「私たちが持っているのは残った内の破壊の聖剣:エクスカリバー・デストラクション」
「私が持つ。この、擬態の聖剣:エクスカリバー・ミミックの二本だけ」
イリナは自分の腕に付けているアクセサリーを示した。
「で、私たちにどうして欲しいのかしら?」
「今回の一件は我々と堕天使の問題だ。この街に巣食う悪魔に要らぬ介入をされるのは面倒なのでね」
「随時な物言いね。私たちが堕天使と組んで聖剣をどうにかするとでも?」
「聖剣は悪魔にとって忌むべき物だ。堕天使と利害が一致するじゃないか」
「残念ね。今さら聖剣ごときに執着はしないわ」
「なに?」
「聖剣は近距離でしか意味をなさない。けれど、私たちは聖剣よりもそこにいる人間の彼を恐れているわ」
「人間を?」
「ええ。彼は人間の身でありながら白竜……つまり、聖なる竜の力を宿し、その力で魔王の一人に手傷を負わせるほどの実力を持つわ」
部長は何故か俺のことを教会の二人に話した。
本当に何故話したの?それとやっぱり、あの時の影響でオレのことを悪魔たちは恐れてるんだね。
「人間が魔王を……!?」
「君、すごいね」
「そうでもない。手傷だけで、致命傷にはなってないからダメだ」
「致命傷になっていたら、それはそれで困るのだけれど………」
部長はオレの言葉を聞いて、こめかみに手を当てて頭を痛がるポーズを取る。
「話しを戻しましょうか。私は堕天使なんかとは手を組んだりなんかしないわ。グレモリーの名に賭けて、魔王の顔に泥を塗る様なことはしないわ」
「それが聞けただけで十分だ」
「それで、私たちはこれで…………ん?」
ゼノヴィアとイリナは部室から去ろうと立ち上がるとイッセーの側にいるアーシアを見た。
「兵藤一誠の家を訪ねた時にもしやと思ってたいたが、やはりアーシア・アルジェントか」
「は、はい」
「まさか、こんな地で魔女に会おうとはな」
「!?」
「ああ、貴女が魔女になったっていう元聖女さん?」
ゼノヴィアとイリナの口からアーシアのことを魔女という言葉が聞こえた。
また、アーシアは魔女という言葉を聞いてから身体が震え始めた。
「堕天使や悪魔をも癒す能力を持っていたために追放されたとは聞いていたけど、悪魔になっていたとはねぇ」
「あの……私は……」
「しかし、聖女と呼ばれた者が悪魔とはな。堕ちれば堕ちるものだ」
「てめぇ!いい加減しろ、お前ら……!?」
イッセーがゼノヴィアたち二人に詰め寄ろうとした時に小猫が止める。
「ダメです、イッセー先輩」
「くっ!」
「まだ、我らの神を信じているのか?」
ゼノヴィアは震えるアーシアに向けて、そう問うた。
それをイリナがバカにするような言い回しをする。
「ゼノヴィア、彼女は悪魔なのよ?」
「いや、彼女からまだ神を信じている臭いがする」
「へぇ~、そうなんだ」
「ねぇ、アーシアさんは主を信じているの?悪魔の身になってまで?」
コイツら分かってて言ってやがんだろう?
「す、捨てきれないだけです。ずっと、信じて来ましたのですから」
「ならば、今直ぐに私たちに切られると良い」
「!?」
「君が罪深くとも、我らの神は救いの手を差し伸べてくれるはずだ。せめて、私の手で断罪してやろう。神の名の下に」
ダメだ。頭にきた!
オレと同じ考えなのか、イッセーとオレはアーシアの前に出る。
「ふざけんな!」
「自分たちで勝手に聖女に祭り上げた挙げ句、勝手に魔女にするとは、とんだ落ちぶれ神様だな」
「なに?今の発言、許さんぞ!」
「許してもらう必要はない。オレたちは仲間を守りたいだけだからな」
「俺も龍呀と同じだ!」
「イッセーさん、龍呀さん」
「君たちはアーシア・アルジェントの何だ?」
「さっきも言ったがオレはアーシアの仲間だ。イッセーは?」
「俺はアーシアの家族だ!友達だ!仲間だ!お前たちがアーシアに手を出すってなんら、俺はお前ら全員を敵に回しても戦うぜ!」
「ほうー。それは私たち教会全てへの挑戦か?一介の悪魔が大口を叩くね?」
「イッセー、龍呀。お止めなさい」
部長がオレたちを止めると部室の入り口から新たな声がかかる。
「ちょうど良い。僕が相手になろう」
「誰だ、君は?」
「君たちの先輩だよ。失敗作だけどね」
そして、オレたちは聖剣使いの二人と戦うことになった。
最初は木場&イッセーvsゼノヴィア&イリナだ。
まぁ、結果から言ってしまうとイッセーはイリナに"洋服崩壊"を決めようとしたところ避けられて小猫とアーシアに当たりそうだったのでオレが撃沈させた。
木場の方は愚策にも持ち味のスピードを捨てて、破壊力に力を回した所為であえなく敗北した。
「次は君だ」
「えっと、貴方、名前は……」
「狩谷龍呀。フェアリーテイルの滅竜魔導士だ」
「滅竜魔導士?」
「部長、すみませんが今から戦う光景は見せることができないので」
「それはどういう……」
─────パチンッ!
部長が言い終わる前に指をらして土の滅竜魔法で俺たちの周りを囲うように土の壁を作る。
「なんの真似だ?」
「今から使う魔法は部長たちには致命傷になるからな。なんせ、さっき言っていた聖なる白竜の力を使うからな」
「魔王に手傷を負わせたほどの魔法……」
「フッ、面白い!」
「さぁ、何処からでもかかって来いよ」
オレは二人に片手で煽る。
「なら行くぞ!」
「ハアアアアッ!」
まずはゼノヴィアが破壊の聖剣で上から切りかかってくるが、それを片手で受け止める。
「…………」ガシッ
「なっ!?」
「嘘!破壊の聖剣を片手で受け止めるなんて」
「君は本当に人間なのか…………?」
「ああ、人間だ。しっかし、白竜の力と比べると聖剣エクスカリバーの聖なる力は弱いんだな?」
「なに?」
「オレの白竜の力はもっと強いぞ?」
「なら、その力を見せてもらおうか!」
ゼノヴィアは再び、破壊の聖剣に力を込めるがびくともしない。なので俺は、聖剣ごとイリナの方へと投げ飛ばす。
「うわああああっ!?」
「ゼノヴィア!?」
「じゃあ、今から見せてやるよ。竜を滅する聖なる光をな」
構えを取り、魔法を解放して白竜の力を出す。
「ホーリードライブ!!」
ホーリードライブを使ったオレの身体からは白いオーラがユラユラと出る。そして、ゼノヴィアとイリナはホーリードライブの聖なる光のデカさに驚愕している。
「な、なんだ、その聖なる力のデカさは!?」
「これが魔王に手傷を負わせた、聖なる竜の光」
「あんま人に撃つのは気が向かねぇから空を見てな」
「空?」
大きく空気を吸ってから空に身体を向けてから、そして…………。
「白竜のホーリーブレス!!」
適当な力で白竜のホーリーブレスを放つ。それにより、空には一筋の光が伸びた。
「これでもまだやるか?」
「「…………」」
「いいや、私の降参だ」
「私も貴方には勝てないわ」
「そうか」
戦いが終わると指を鳴らして土の壁を崩壊させる。
すると土の壁の外から傷が治ったのかイッセーが駆け寄ってくる。
「おい、龍呀!今って……」
「ああ、白竜のホーリーブレスだ」
「やっぱり。だから、土の壁を作ったのか」
「そういうこと」
こうしてオレの聖剣使いとの勝負は勝利で終わった。
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第28話
教会の二人が去った後、オレたちは部室に戻ると傷が治った木場が教会の二人を追いかけようと動き出した。
「待ちなさい、裕斗。私の元から去るなんて許さないわ!」
「貴方はグレモリー家の眷属、ナイトなのよ?」
「すみません、部長」
「裕斗……」
木場は部長の言葉を無視して部室から出て行ってしまった。
「き、木場さん……」
「どうして……」
その日は皆解散となり、家へと帰る。
そして、翌日。何故か、小猫に話しがあると屋上に呼ばれた。
「話ってなんだ?」
「イッセー先輩が何やら裕斗先輩のために動き出そうとしているので協力して欲しいんです」
「まぁ、オレは良いけど。このことは部長には話したのか?」
「いえ……」
「はぁ~、わかったよ。そこは何とかしてやるから、放課後にまたな」
「すみません。ありがとうございます」
「別に気にするな。これも黒歌のためだ」
「むぅ…………」プクー
「な、なんだよ」
「なんで、そこで姉様が出てくるんですか?」
「いやだって、オレは黒歌の夫だし」
「うそ……」ガーン
「いや、マジで」
「家に帰ったら話しをしなくては」ボソボソ
「それじゃ、オレは行くぞ?」
「はい」
屋上から出ると急いで三年の教室へ向かう。
「チワース、二年の狩谷です。リアス・グレモリー先輩か姫島朱乃先輩は居ますか?部活のことで話しがあって」
部長と朱乃の教室で二人を呼ぶと直ぐに二人とも来た。
「どうしたの、龍呀?貴方が私たちの教室に来るだなんて」
「珍しいですわね?」
「イッセーと木場のことです」
オレがそういうと二人は顔付きが切り変わった。
「こっちへ」
「はい」
三人で人気のない場所に行き。話しをする。
「それで、二人に何かあったの?」
「いえ、ただイッセーが何やら動き出したそうだと小猫から聞いたので」
「あの子ったら……」
「だから、オレと小猫がイッセーを監視することの許可を貰おうと」
「なるほどね。貴方と小猫がイッセーを見ていれば安心できるわ。けれど、何故小猫まで……」
「多分、黒歌のことが木場と重なってるんだと思います」
「そういことね。わかったわ、貴方たちにイッセーの監視と裕斗の捜索をお願いするわ」
「分かりました。では」
「ええ」
そして、放課後。小猫に部長たちから許可をもらったこととイッセーの尾行と監視のことを話し、
現在は喫茶店のテラスでイッセーと生徒会役員の匙の話しを隠れて聞いている。
そして、匙が去ろうとするのを小猫が止める。
「俺は断る!」
「あれ?」
「なっ、小猫ちゃんに龍呀!?」
「どうも」
「よう、イッセー」
「やはり、イッセー先輩はエクスカリバーの破壊を考えていたんですね」
「全く、水臭いぜ。オレたちにも言えよな」
匙を捕まえて、オレたちは席を移動して一つのテーブルに座る。
また、匙は再び逃げようとするが小猫の怪力で逃げられない。
「教会側に協力?」
「アイツら堕天使に悪用されるくらいなら消滅させるって言ってただろう」
「最悪は破壊してでも回収したいようですね」
「木場はエクスカリバーに打ち勝って復讐を果たしたい。片や教会の二人はエクスカリバーの回収または破壊。上手い具合に利害が一致しているな」
「だからさ、俺たちの方から協力を願い出るんだ」
「なるほどな」
「ですが、素直に受け入れるとは思えませんが」
「当たって砕けろだ!木場がまた俺たちと悪魔稼業が続けれるなら思い付くこと何でもやってやる!」
「まずは、あの二人を探さなくてはいけませんね」
という訳でオレたちは宛もなく教会の二人を歩きながら探す。
また、探している最中に匙が愚痴をこぼす。
「なぁ、俺は居なくていいだろう?無敵のルークとフェアリーテイルの滅竜魔導士が居るんだからさ」
「戦力は多い方が良いんだよ。しかし、やっぱり簡単には見つからないな。第一、こんな繁華街に白ローブを着た女性なんて……」
「居たが?」
「本当に居たよ!」
「えー、迷える子羊にお恵みを~」
「天の父に代わって哀れな私達にご慈悲を~」
てな訳で目標の二人を見つけたオレたちは近くのファミリーレストランに向かい二人に飯を食わせることにした。
「美味い、イリナ。この国の飯は美味いぞ!」
「これよ、これ!ファミレスのセットメニューこそ、私のソウルフード!」
「物凄い食べっぷりだ……」
「よっぽど腹が減ってたんだな」
それから20分近く、延々と教会の二人はファミレスの飯を食っていた。
マジで、ファミレスメニュー全て制覇するのでは?と思うほどだった。
そして、腹が満たされると…………
「なんてことだ……。信仰のためとはいえ、悪魔に救われるとは世も末だ」
「いやいや、助けたのは俺たちじゃなくて」
「龍呀先輩です」
「私たちは悪魔に魂を売ってしまったのよ」
「だから、俺たちじゃなくて龍呀が奢ってくれてんだよ!それに奢られておいてそれかよ!」
「なら、いいのかしら?」
「いいんじゃないか?」
何やら二人は勝手に自己完結しているようだ。
それが終わるとイリナが十字架を指で切り始める。
「それじゃ主よ、この心優しい者と悪魔たちにご慈悲を」
「「「あああああ!?」」」
「イリナ、オレは良いけどイッセーたちは悪魔なんだぞ?そんなことしたらダメージが入るだろうが」
「あら、ごめんなさい。つい癖で」
「で、私たちに接触した理由は?」
「エクスカリバーの破壊に協力したい」
「なに?」
イッセーは何故、教会の二人と同じエクスカリバーの破壊に協力したいのかを二人に話した。
「話は分かった。一本くらいなら任せても良い」
「なっ、ちょっと、ゼノヴィア!?」
ゼノヴィアから協力の承諾を得るとイリナは驚き、イッセーと小猫は喜び、匙は拒否して欲しかったのか悔しい顔をしていた。
「彼方は堕天使の幹部であるコカビエルが控えている。正直、私たちだけでは荷が重い」
「でも……」
「なに、本部もドラゴンと人間の力を借りるなとは言っていないさ」
「そんな屁理屈な……」
「何より狩谷龍呀の助力があれば堕天使の幹部を退けてエクスカリバーを回収する確率が高くなるだろう?違うか?」
「そりゃ、昨日のあの力を見せてもらったらそう思うけど」
「なら、話しは決まりだ」
二人はあれやこれや話していたが結果は変わらず。オレたちと協力することになった。
そして、オレたちは木場と合流することにした。
「それでイッセーくんは僕のためにそこの二人にエクスカリバーの破壊の協力を頼んだと?」
「ああ、そうだ」
「でもね、僕は僕の手でエクスカリバーを破壊したいんだ」
「木場、お前がエクスカリバーを破壊してもお前の復讐は終わらないぞ」
「どういうことだい、龍呀くん?」
「お前が受けた聖剣計画の元を絶たないとダメだって言ってんだよ」
「聖剣計画の元?」
「バルパー・ガリレイ。ソイツを殺さないと聖剣計画が終わらない。エクスカリバーが仮になくなっても聖剣はこの世にはいくつも存在するんだからな」
「バルパー・ガリレイ……その男が僕の同士たちを……」
話が終わると教会の二人は去り。その後に木場はオレたちに今回の件から手を引けと言うがイッセーがそれを説得し、小猫が木場に最後の止めをさして木場が折れた。
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第29話
エクスカリバーの破壊協力を木場に話してオレたちは一度家に戻った。夕食を食べたあと、前に堕天使と騒動があった教会に集まっていた。
「まずは、皆これを着てくれ」
「これは神父服?」
「どうやら、コカビエルたちはエクスカリバーを持っている神父を狙っているようでね」
「なるほど、それでか」
「悪魔が神父の格好なんて……」
「僕は目的のためなら何でもやるさ」
男女で別れて神父服に着替える。
「着替えたな。全員で動くのは非効率だから二手に分れよう」
「じゃあ、俺たちは街の東側を」
「では、我らは西の方へ回ろう。何かあったらイリナの携帯に連絡してくれ」
「分かった」
「そうだ、兵藤一誠。君に伝えることがある、白い龍は目覚めているぞ」
「ッ!?」
ゼノヴィアから『白い龍』と聞いたイッセーはフリードを探す最中も何かを考えて込んでいるようだ。
「イッセー先輩。どうかしましたか??」
「いや、次は何処へ移動しようかなって」
「やはり人気の無い場所か」
「木場、何処か心当たりがあるのか?」
「うん、無いこともない」
オレたちは木場が知っている人気の無い場所へ向かう。
その時、オレは携帯ラクリマで黒歌に連絡して部長たちも合流するように頼んだ。
そして、たどり着いた場所は…………
「ここって、オレが白竜の力ではぐれ悪魔のバイザーを消し飛ばした館じゃねぇか」
「はぐれ悪魔?」
「ああ。ここでオカ研の皆と人だか悪魔だが分からなくなっちまった、はぐれ悪魔を討伐しに来たことがあるんだ」
「ですが、バイザーは龍呀先輩が1人で討伐してしまいました」
「狩谷は鉄竜だけじゃなくて白竜まで使えるのかよ」
「お前ら、話しは終わりだ」
「裕斗先輩」
「うん」
「何だ、この悪寒」
イッセーたちは悪魔としての感覚で、オレは臭いで敵が居ること分かった。
「上!」
「ヒャッホォォォオ!!」
「ガキーンッ、スッ」
小猫が敵が居る所を言うと、そこから聖剣を持ったフリード・セルゼンが飛び出してきた。
そんなフリードを木場が魔剣で受け止め、弾く。弾かれたフリードは館のオブジェクトの上に乗る。
「この間はどうーも」
「お前は……!」
「例のはぐれ神父?」
「フリード、てめえ!」
「おんや~?いつぞやのガキ二人とチ………」
「あ"ぁ?」ギロリ
フリードが小猫のことをチビと言うとした時、小猫の殺気がこもった目がフリードに向けられた。
「わわわわわ!こ、小柄のお嬢さん!」
「ったく、今夜も楽しく神父狩り♪。っと思ってつうのに、クソ悪魔共のコスプレかよ~」ペロ~ン
フリードは俺たちを煽るかのように聖剣の刀身を舌で舐める。
「気をつけて下さい。あの剣は……」
「ああ。間違いねぇ、奪われた内の聖剣エクスカリバーだ」
「お前たちは絶対に当たるなよ!天竜の治癒魔法でも死んでたら治せないからな!」
「分かってる!」
全員、動き難い神父服を脱ぎ捨てて臨戦態勢に入る。
『Boost!』
「おやおや、五人係?いやいや人気者は辛いね~」
「誤解するな、お前の相手は僕一人だ!」
木場は頭に血が上っているのか一人でエクスカリバーを持っているフリードに突撃してしまう。
「まぁ、クソ悪魔共が何人来ようと~?このエクスカリバーちゃんが相手にはなりませんぜっ!」
「ッ!?」
人間であるフリードが木場のスピードと互角の動きを見せている。
それによりフリードに対して徐々に遅れを取り、受け身に回ってしまう。
「これが天閃の聖剣。人呼んでエクスカリバー・ラピッドリィ!俺呼んで、超速の剣!」
「くっ!」
「木場と同じ速度で動いてやがるのか!これじゃ、ナイトのスピードを封じられたも同然だ」
「かなり不味いです」
「待ってなよ?ギャラリーの連中も後で、ちゃんと始末してやるかよ~」
「なによーっ!」
『Boost!』
「なんとか奴の動きを止められれば木場に力を譲渡してやれるのに」
「兵藤、足を止めればいいだな?」
「え?」
「ラインよ!」
匙がそう叫ぶと匙の左手の甲に黒いトカゲのような籠手?か何かが出現する。
「今だ!行け、ライン!」
そして、匙はその籠手?のような物から出る水色のロープの様な物をフリードの足に巻き付かせる。
「うおおおおっ!?」
「見たか?これが俺のセイクリッド・ギア、『
「お前もセイクリッド・ギアを?」
「ああ!」
「やるじゃねぇか!」
イッセーは匙が同じポーンで、また同じセイクリッド・ギア持ちだったことに喜んでいるようだ。
「そーりゃあああっ!」
匙は
それをフリードはエクスカリバーで切ろうとするが全く切れるようがない。
「クソッ、クソッ、クソッ!この神器もドラゴン系かよ」
「それもドラゴンかよ?」
『Boost!』
「小猫、準備!」
「分かりました」
「うわっ!?こ、小猫ちゃん?」
「行きますよ?」
「名付けて、人間槍!」
「えい!」
小猫にイッセーを投げやりの構えで持ち上げてもらい。イッセーをそのまま木場に向けて投擲する作戦だ。
「ウソダアアアアッ!!」
『Boost!』
「イッセーくん!」
「木場ァァァア!!」
『Transfer!』
イッセーは小猫に投擲されながらも身体を上手く使い木場へ四回倍加して、十六倍の力を譲渡した。
また、俺もイッセーに続いて木場にアームズ、アーマーをエンチャントする。
「ドラゴンの力、確かに送ったぞ!」
「木場!オレのも持って行け!」
「龍呀くんまで!?」
「受け取ってしまった物は仕方ないな。有りがたく使わせてもらうよ!」
「なに!?」
「行くぞ、ソード・バース!」
木場は剣を下に突き刺して譲渡された力を解放する。するとフリードが乗ってオブジェクトの足場から魔剣が迫ってくるように襲い掛かる。
それをフリードは必死に破壊する。
そんな中、館から誰かの声が聞こえてくる。
「やはり、ソード・バースか」
「誰だ?!」
「使い手の技量次第では無敵の力を発揮するセイクリッド・ギアだ。フリード、まだ聖剣の力の使い方が十分ではないようだな?」
「オオオオ、バルパーのじいさん!」
「なに?」
「それじゃ、コイツが聖剣計画の首謀者!」
「バルパー・ガリレェェェェイ!!」
木場は怒りが混ざった声音でバルパー・ガリレイの名を呼んだ。
「いかにも。フリード、身体に流れる聖なる因子を刀身に流し込んでみろ!」
「あらっ?簡単に切れちゃった~!」
フリードが聖なる因子をエクスカリバーに流し込み、『
「お返しに喰らいな、クソイケメン悪魔くん!」
「ハアッ!」
「あい?」
エクスカリバーに聖なる因子を込めて威力を高めてフリードが木場に切りかかろうとした時、小猫が呼んだのかゼノヴィアが破壊の聖剣でフリードの聖剣を受け止めた。
「ゼノヴィア!?」
「は~い、イッセーくん」
「イリナまで!」
「連絡をもらったから駆け付けたわよ」
「なんで?」
匙がなんで教会の二人が来たのかを疑問に思っているとそれを小猫が答える。
また、小猫の手には携帯が握られている。
「そういう手筈ですから」
「フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ……神の名の元、断罪してくれる!」
「ハッ!俺様の前で、その憎たらしい名前を出すんじゃねぇ!この、ビッチがぁぁぁあ!」
フリードとゼノヴィアが唾是りになっている所へ木場が切りかかる。
「フリード、時間だ」
「チッ!まぁ、そいうことだがら、バイナラバ!」
フリードは懐から閃光玉を取り出し、それを地面に投げつけて姿を消す。
それを木場とゼノヴィア、イリナは追いかけていってしまった。
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第30話
木場たちがフリードとバルパーを追いかけて行ったあと、イッセーも追いかけようとするが転けてしまう。そのタイミングで黒歌経由で呼んだ部長と朱乃それに何故か支取先輩と椿姫先輩も現れた。
「あれ?支取先輩に椿姫先輩まで」
「龍呀、ソーナたちは私が呼んだのよ」
「なるほど」
「こんばんは、狩谷くん」
「こんばんは、支取先輩」
そして、オレたちは館の中に入りイッセーと匙のお説教タイムが始まった。
「あのー、部長?」
「何かしらイッセー?」
「何故、俺だけ正座をさせられてるんですか?龍呀だって俺たちと一緒で勝手に動いたのに!」
「それは龍呀は小猫と共に貴方の監視役を頼んだからよ。イッセー」
「え?マジで?」
「本当よ」
「そんな……」
イッセーの方は部長に任して…………、
「匙!」
「ひぃぃぃぃ!?」
「は、はい……」
「貴方はこんなにも勝手なことをしていたのですね」
支取先輩が匙を叱っているので、少しだけ匙を助けてやることにした。
「支取先輩。少しいいですか?」
「なんですか、狩谷くん?」
「匙は匙で、この街のために動いてたんですよ。支取先輩や部長が大きく動けない状況ですし。だから自分ならある程度は行動できると思ったんじゃないんですか?」
「そうなんですか、匙?」
「それは……」
「それにオレたちが半ば無理やり付き合わせたような物ですから。なので、匙には軽いお仕置きくらいでお願いします」
「…………はぁ~。今回は狩谷くんに免じてお仕置きは休みの日に学園を一人で掃除をすることで許します」
「会長ォォォォオ!」
「狩谷!お前のお陰でお仕置きされずに済んだ!ありがとう!」
「別に気にするな、同じ学園の仲間だろう?」
「狩谷ァァァア!!」
匙はお仕置きを免れたことに嬉しいのかオレの手を握りながら嬉し涙を流していた。
その頃、イッセーは部長に魔力を帯びた手でお尻叩きをされていた。
それが終わると各自家に帰ることにした。
翌日の放課後。オレは部活を休んで黒歌と共にある男の所へ臭いを頼りに向かった。目的地はとあるマンションの一室。その一室の前に着くと目的の男を呼び出す。
呼び出すと、その男は浴衣姿で出てきた。
「はーい。なんだ、兄ちゃん?俺に用か?」
「ああ、そうだ。堕天使の総督、アザゼル」
「ほう、兄ちゃんは裏のことを知っているのか?それに兄ちゃんの後ろにいるべっぴんさんは悪魔か」
「オレの妻に手を出したら殺す」
「たかが人間がこの俺に勝てるのか?」
「あんまり龍呀を甘く見ない方がいいわよ。龍呀は魔王サーゼクスに手傷を負わせるほどの力を持っているから」
「なに!!あの、サーゼクスをだと!?」
「話しがある、中に入れさせてもらえるか?」
「分かった」
オレたちはアザゼルに続いて中に入る。
そして、アザゼルは冷蔵庫から酒とジュースを二本持ってきた。
「で、話しってのは?」
「念のための確認だ。コカビエルが独断で動いているのは本当か?」
「ああ、本当だ」
「分かった。それが聞ければ十分だ」
オレはアザゼルが聞きたいことを聞いたので去ろうとするとアザゼルに止められる。
「待てよ」
「なんだ?」
「お前さんが本当にサーゼクスに手傷を負わせるほどの力があるのか見せてくれないか?」
「なんのために?」
「単なる興味本位だ」
「分かった。なら、この部屋を覆う様に結界を張ってくれ」
「分かった」パチン
アザゼルは指を鳴らして、ある程度強度がある結界を張ってくれた。
「黒歌、少し離れてくれ」
「分かったわ」
「それじゃ、サーゼクスに手傷を負わせた力と同等の力を見せてやるよ」
「同等の力だと?」
「モード、雷炎竜!!」
「マジかよ……」
アザゼルはオレのモード雷炎竜を見えて冷や汗を流しながら苦笑いをしていた。
「これで分かったか?」
「ああ、よーく分かった。本当にお前さん、人間か?」
「オレは本当に人間でフェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀だ」
「フェアリーテイルの滅竜魔導士だと!?」
「龍呀はアニメや漫画とは違って、本物の滅竜魔導士よ」
「こりゃたまげた」
「それじゃ、オレは帰るよ」
「いや、もう1つ聞きたいことがある。お前さんは過去に堕天使の親子を助けたことがあるか?」
「その堕天使の親子ってのはバラキエルと妻と娘のことだろう、アザゼル?」
「やっぱり、お前がナツ・ドラグニル!」
「今度こそ…………ッ!!。この感じは!」
「ほー、誰かが禁手に至ったか」
「だとなると木場の聖魔剣か」
「聖魔剣だと?」
「ああ。リアス・グレモリーのナイトの神器が禁手に至って聖魔剣を作り上げたんだよ」
「よく知っているな?」
「まぁな。本当に今度こそ帰るわ」
オレと黒歌はアザゼルの家から出て、急いで駒王学園へ向かう。
「まさか、もう戦いが始まってるとはな」
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第31話
アザゼルの家を出たオレと黒歌は、急いで駒王学園に向かった。
そして、学園の前に着くと支取先輩たち生徒会の皆が学園を覆うように結界を張っていた。
「すみません、遅れました」
「狩谷!」
「遅刻ですよ。狩谷くん」
「すみません。皆は?」
「リアスたちは中でコカビエルと交戦中です」
「分かりました。一度、皆集まってください!」
「何をする気ですか?」
「皆、もう魔力が心許ないでしょ?だから、魔力を渡します」
「それは有難いです。ですが、それをしたら狩谷くんが……」
支取先輩はオレから魔力を受け取りながらそう言うのでセカンドオリジンのことを話す。
「大丈夫ですよ。もしもの時はセカンドオリジンを使いますから」
「セカンドオリジン?」
「要は魔力の器がオレにはもう1つあるんですよ」
「そんなことが……」
「じゃあ、オレは部長たちの所へ行きますね。あっ、それと……」
「何ですか?」
「もしかしたら、結界を破るかもしれないので、それだけ伝えたくて。それじゃ」
生徒会のメンバーに魔力を与えたあと。結界内に入り、自分の魔力でフェアリーテイルのマークが描かれた魔法陣を進行方向の先に展開する。そして、その魔法陣をくぐるとオレの服装を駒王学園の制服からナツの服へと変わる。
着替えが終わり、魔法陣から校庭に出ると…………
「ふざけんな!」
「お前の勝手な言い分で俺たちの街を、仲間を消されてたまるかぁぁぁあ!」
「ああ、その通りだ。イッセー!」
オレはイッセーに続いてコカビエルに向けて叫ぶと全員此方を向く。
「その声は………!」
「待たせたな、皆!」
「龍呀」
「龍呀くん」
「龍呀先輩」
「龍呀さん」
「龍呀くん」
「狩谷龍呀」
「遅ぇぇんだよ、龍呀!」
上から部長、朱乃、小猫、アーシア、木場、ゼノヴィア、イッセーの順でオレの名前を呼ぶ。
「なんだ、ただの人間じゃないか」
「その人間を甘く見ていると痛い目見るぜ?」
「人間風情に何が─────」
「火竜の鉄拳!!」
いつも通りコカビエルが何かを言う前に火竜の鉄拳を決めて殴り飛ばす。
すると、コカビエルは何回か地面にバウンドする。
また、オレはコカビエルを殴り飛ばしたら部長たちの方へ向き、天竜の魔法でケガを治していく。
「天竜の息吹!!」
「傷が一瞬で……」
「それもこんな広範囲で」
「流石はフェアリーテイルの滅竜魔導士ですわ」
「フェアリーテイルの滅竜魔導士……そうか!貴様があのサーゼクスに手傷を負わせたと言う人間か!」
「ああ、そうだ。オレがギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀!」
「面白い。サーゼクスに手傷負わせたその力、俺に見せてみろ!」
「いいぜ?後悔するなよ」
「モード、雷炎竜」
モード雷炎竜を今回は完全解放する。するとオレの左腕に透明になっていたフェアリーテイルのマークが赤く浮き上がる。
また、生徒会メンバーが張っている結界に雷炎竜の魔力の余波で壊れる。
「結界が!」
「それに雷を帯びた炎だと?!」
「黒歌!全力の結界で周囲を守れ!」
「分かったわ!だから、龍呀は全力でソイツをぶっ飛ばしちゃって!」
「分かってるさ!」
黒歌が新しく硬い結界を張ってくれたので全力で戦える。
「この魔力のデカさ。サーゼクスに手傷を負わせたのは本当のようだな」
「さぁ、その力を俺に見せてみろ!」
「行くぞ?」
魔力を足に纏わせて一気にコカビエル懐へ入ってる。しかし、コカビエルはオレの動きが見えなかったのか懐へ入っていることに驚く。
「貴様、いつの間に!?」
「コカビエル、お前、遅いよ」
「オラオラオラオラーッ!!」
素手でコカビエルに攻撃していく。それをコカビエルは必死に受け止めるが次第にコカビエルの腹や顔にオレのパンチが入っていく。
「どうしたよ?こんなもんか?」
「人間風情が嘗めるなァァァア!!」
コカビエルから右ストレートが飛んでくるが少し後ろに飛びながら腕をクロスして衝撃を受け流す。
また、コカビエルは左手で光の槍を投げてくる。
「消えろ、人間!」
しかし、それをオレは素手で掴み、砕く。
「なっ!?」
「俺の光の槍を、砕くだと!?」
「もっとこいよ?」
ナツが大魔闘演舞でスティングとローグにやった様にオレもコカビエルへ向けて指先の炎を操り『come on』と煽る。
するとそれにキレたのかコカビエルは大量の光の槍を精製して、オレに目掛けて放ってくる。光の槍の数は約10000。
「これで終わりだ、人間!今度こそ、消えて無くなれ!」
そんな数の光の槍を見た部長たちは絶望的な顔をしているが三人だけはそんな顔をしていなった。
それは黒歌と小猫、それに朱乃だ。
「全て焼き尽くす!」
「雷炎竜の───咆哮!!」
身体から雷炎の炎の出してから雷炎の炎を口に吸い込み。雷炎の咆哮にしてコカビエルが放った約10000もの光の槍に向けて放つ。
すると、光の槍はいとも簡単に雷炎竜の咆哮に全て呑み込まれた。
「バカな!?」
「あれだけの数の光の槍を一撃で……!」
「これで最後だ。コカビエル!」
「ぐはっ!?」
再び、コカビエルの懐へ入り。コカビエルを身体ごと高く蹴り上げ。
「滅竜奥義・改 紅蓮爆雷刃!!」
宙に浮いたコカビエルに向けて全力の紅蓮爆雷刃を放った。しかし、その時の紅蓮爆雷刃は普通のと違った。
「炎と雷の双竜……普通の紅蓮爆雷刃と違う!?」
イッセーが言うように今回の紅蓮爆雷刃は宙に浮いているコカビエルに放ったが螺旋状にではなく。炎と雷の二頭の竜が絡み合うようにコカビエルを挟み空へと登って行き、最後には空から地面に向けて真っ逆さまに飛来してきたのだ。
「イッセー、普通のとは違うってどういうこと?」
「本来なら滅竜奥義・改 紅蓮爆雷刃は雷を帯びた炎が螺旋状に相手に向かう技なんです」
「ですが、龍呀が放ったのはコカビエルを中心に炎と雷の竜が絡み合うように当たったんです」
『名付けるなら、雷炎・竜双撃だな。相棒』
「ドライグ!?」
『相棒、あの人間……いや、ドラゴンはまだまだ本当の全力を見せてないぞ?今のは、その一端でしかない』
「あれがまだ、その一部だってのかよ……」
滅竜奥義を受けたコカビエルは紅蓮爆雷刃によって作り上げれたクレーターの中で沈黙している。
それを見たオレは雷炎竜を解く。
「あのコカビエルを一人で倒すとは……」
「…………」ジー
「龍呀?」
イッセーはオレがコカビエルを倒したのに臨戦態勢である場所を見ていることに疑問をもった。
「そこにいるんだろう?白龍皇!」
「白龍皇!?」
オレは誰もいない空へ『白龍皇』と呼ぶと空から白い閃光と共に白い鎧に青い翼を生やした人物が現れた。
「久しぶりだな、ドラゴンスレイヤーくん」
「そうだな。お前からしたら何年振りになるのか?」
「そうなるな。黒歌とは上手くいっているのか?」
「安心なさい、ヴァーリ」
「黒歌か、久しぶりだな」
「ええ、久しぶりね」
「ところでいつから気付いていた?」
「オレが学園の前に着いた時には気付いていたさ。どうせ、お前は最初から学園の近くにいたんだろう?」
「どうやら、全てバレバレのようだな」
「ほれ、持ってけ」
オレはクレーターで沈黙しているコカビエルをヴァーリに向けて放り投げる。
「確かに受けとった。そっちのはぐれ神父にも聞き出さないといけない情報があるので貰っていくぞ?」
「ああ、好きにしろ」
「それでは」
ヴァーリはコカビエルとフリードを連れて行こうとした時。イッセーの左腕に宿る赤龍帝が口を開いた。
『無視か、白いの?』
『起きていたか、赤いの』
『せっかく出会っても、この状況ではな……』
『いいさ。いずれ、戦う運命だからな。こういうこともある』
『また会おう、ドライグ』
『ああ、またなアルビオン』
赤龍帝と白龍皇の会話が終わり、ヴァーリが去ろうとした時、イッセーが止める。
「おい!どういうことだ、お前は何なんだ?!」
「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ?いずれ戦う、俺の宿敵くん。それとまた会ったら、あの時の約束をしよう。ドラゴンスレイヤーくん」
「狩谷龍呀だ」
「そうか。ではな、ドラゴンスレイヤーの狩谷龍呀」
それを最後にヴァーリは再び白い閃光となって、駒王学園から去った。
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停止教室のヴァンパイアと雷天の滅竜魔法
第32話
コカビエルと聖剣の騒動が終わった日の夜。
夕食を食べ終わったあと、リビングでゆっくりとしていると小猫に話しかけられる。
「あの、龍呀先輩」
「なんだ?」
「龍呀先輩は……その、黒歌姉様の旦那さん、何ですよね?」
「ああ、そのつもりだが?」
「でしたら、私も龍呀先輩の奥さんに加えてくれませんか?」
「は?」
今、小猫は何と仰いました?
私も奥さんに加えてほしい?
何?何処のハーレム王の兵藤一誠くん?
「龍呀先輩のお陰で姉様の過去を知って和解ができました。それに教会の時もレーティングゲームの時もコカビエルの時も、私を助けてくれました」
「だから、私は、龍呀先輩が好きになったんです」
「えっとだな、小猫。さすがに二人も奥さんを持つのは、その世間的に……な?」
「悪魔は一夫多妻制よ。龍呀」
「黒歌!?」
夕食で使った食器を洗っていた黒歌がいつの間にかオレの後ろにおり。また、あすなろ抱きをしてくる。
それを見た、小猫は嫉妬したのか普段隠している感情を顔に出し始めた。
「姉様だけ、狡い!私も龍呀先輩に抱き付きたいです!」
「ちょっ、小猫!?」
「なら、前から龍呀に抱き付けばいいじゃない?」
「ちょっ、黒歌まで!?」
「そうします」
小猫は黒歌に促されるままにオレの股の上に座り抱き付いてくる。
また、小猫が抱き付いてるため、小猫の頭がオレの顔の少し下に来るので女の子特有の甘い臭いがオレの鼻をくすぐる。
そして、少し時間が経つと小猫が顔を上げて、黒歌と同じで綺麗な金色の瞳を潤ませて、頬を赤らめせながら俺に告白をしてくる。
「龍呀先輩。私は龍呀先輩が好きです!大好きです!」
「えっと……」
「私じゃ、ダメ、ですか……?」上目遣い+ウルウル
「えっと、あの、その……」
「龍呀、いい加減観念なさい。女の子の告白を無下に扱う物じゃないわよ」
「だが、黒歌、おま………お前は賛成だったな」
「分かった……。改めて、二人目の奥さんとしてよろしくな、小猫」
「はい!」
とまぁこんな感じで、オレに二人目の奥さんが出来てしまった。イッセーごめんね。お前より先にハーレムが出来てしまったよ。
その翌日の放課後。
オカルト研究部の部室では…………。
「やぁ、滅竜魔導士」
「おう。お前、悪魔に転生したんだな?」
「なんだ、分かっていたのか?」
「臭いだ。滅竜魔導士は鼻が良いんだ」
「なるほど、それでか。兵藤一誠と同じように君も驚かせようとしたのに」
「意外にそういう面があるんだな。もっとこう、硬いイメージがお前にはあったから」
「そうなのか?」
「ああ」
それからゼノヴィアが何故悪魔に転生したのかを聞いたら、オレが到着する前にコカビエルから神と魔王が過去の大戦で死亡していることを話されて知ってしまった。
それを教会の上層部に問うたら、知ってはならないことを知ってしまったと異端の烙印を押されてしまい、
やけくそで部長に頼みこみ悪魔になったそうだ。
そして、ゼノヴィアが悪魔になって数日。部室では部長がアザゼルに対して激怒していた。
「冗談じゃないわ!堕天使の総督が私たちの縄張りに侵入して営業妨害をしていただなんて」
「部長、一度辞書で営業妨害という言葉を調べた方が良いですよ」
「龍呀先輩、今はそれを言うべきではないかと」
「でもさ、アザゼルからはちゃんと報酬を貰ってる訳じゃん?」
「しかも、私の可愛いイッセーにまで手を出そうとするだなんて。万死に値するわ」
「万死に値しても、部長たちじゃアザゼルに勝てないけどな」
「それも言うべきありませんよ」
「だって、本当のことじゃねぇか」
「言葉とは時に人を傷付けます」
「お前たち悪魔じゃん」
「むぅ……」ポカポカ
「小猫、痛い、痛いから!」
小猫がオレの奥さんになってから部室でよく俺の膝の上に座ってくるのだ。そして現在、膝の上に座っている小猫にポカポカと殴られているので凄く痛い。
また、初めて小猫が膝の上に乗って来た時、イッセーは泣いていた。
ごめんイッセー。けれど、小猫も黒歌同様に色眼を使ったら制裁してやる。
「部長、この街でトップ会談が行われるというのは本当なんですか?」
「ええ、さっき私の所にも連絡が来たわ。一度、三大勢力のトップが集まって今後のことについて話し合うことになったわ」
「会談のきっかけになったのはコカビエルが原因か」
「でしょうね」
「イッセー、今後はアザゼルに注意しなさい」
「わかりました」
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第33話
とある休日に何故かオカ研の活動を行うということで蝉がミンミンと鳴く中、オレたちは水着を持って駒王学園へ。
また、今回は黒歌も参加していいそうだ。
「プール、プール、プールにゃ!」
「あまりはしゃがないでください、姉様」
「だって、白音と水で遊ぶだなんて久しぶりじゃない?」
「それはそうですが」
「小猫、今回は黒歌のために妥協してくれ」
「龍呀先輩が言うなら分かりました」
学園に着いて部長から言われた今日の活動内容はプール掃除だそうだ。
なんでも、コカビエル戦の時に生徒会が学園を修復したのでオレたちオカルト研究部がプール掃除をすることになったらしい。
そんな訳でテキパキと掃除して、掃除の対価としてオレたちはプールで遊ぶ。
「龍呀、オイルを塗ってくれるかにゃ?」
「分かったよ。 そこに寝ろ」
「じゃあ、よろしくにゃ」
オレは黒歌からオイルを受けて取り、オイルを手のひらで暖めて黒歌の背中へ優しく塗る。
「あれが小猫ちゃんのお姉様の黒歌さんの水着姿。 部長や朱乃さんに劣るとも勝らないダイナマイトボディー!! くぅー、龍呀が奴が羨ましいぜー!!」
イッセーがそんなことを口にしたのでオイル塗りを少し止めて、イッセーに近寄りプールへ蹴り飛ばすことにした。
「イッセー?」
「な、なんでしょう、龍呀さん!」
「前に言ったよな? 黒歌に色眼を使ったらガチで殺すと?」
「えっと……今のはですね……」
「一辺溺れて来い!」
「ぐぼおっ!?」
「あばばばばば!? おぼ、溺れ、溺れる!?」バシャバシャ
イッセーは蹴り飛ばされたことによりプールでジタバタと暴れて溺れている。
無論、オレは助けない。どうせ、木場が助けるだろうしな。
「小猫、もう少しだ。 がんばれ」
「は、はい……」
黒歌のオイル塗りを終えたあと、小猫から泳ぎの練習をしたいと言われたので手伝っている。
やはり、猫の妖怪でも水は苦手なのな。
また、隣ではイッセーがアーシアに泳ぎを教えている。アーシアは教会で育ったため泳ぐ習慣がなかったのだろう。
「よし、25mを完泳だ。少し休憩しよう」
「ありがとうございます」
「気にするな」
一度、プールから上がり。更衣室にオレは戻り自分の荷物の中から収納ラクリマを持ってプールサイドに戻る、
プールサイドに戻るとラクリマから色々なジュースやお菓子などを取り出す。
「皆、一息入れないか?」
「そうね。少し、休憩にしましょう」
「そうですわね」
全員で一度休憩を取ることにして、それぞれラクリマから出したお菓子などを食べている。
そんな中、オレはオレンジジュースを平たい小さな容器に流し込む。
それを見ていたイッセーはオレに質問をしてくる。
「龍呀、ジュースを容器に流して何をするんだ?」
「それはな、こうするんだよ」
「アイスメイク・アイスキャディー」
容器の中に一本の棒を半分くらいまで容器に入れてから氷の滅竜魔法を工夫して容器の下からジュースだけを凍らせてアイスキャディーを作る。
「ジュースを凍らせてアイスにしたのね」
「魔法を鍛えるのも地道に日常的にやるのが大切だ。 イッセーもあの洋服崩壊以外も練習しろよ?」
「そうよ、イッセー。 あんな下品な魔法の使い方は間違っているわ」
「それに露出狂が相手だと洋服崩壊も意味がないぞ? だから、地道に魔力の特訓をしろよ」
「は、はい……」
「それじゃ、皆、好きな味を選んでくれ」
ラクリマから色々なジュースを取り出して自分の好みのアイスを作ることにした。
アイスを食べ終わると何故かオレは朱乃にオイルを塗ってくれと頼まれたので塗ってやった。
他にはラクリマからビーチボールを取り出し遊ぶ。
また、イッセーはゼノヴィアに呼ばれて更衣室に行ったら子作りをして欲しいと言われて部長とアーシアに迫られていた。
その後、プールで遊び終わるが部室ではイッセーのお説教が行われている。
「随分と賑やかだな」
突如、部室の入り口の方から声が聞こえると扉の前に白い魔法陣が展開され、陣の中からサーゼクスとグレイフィアが現れる。
「何かのイベントかい?」
「お、お兄様?!」
「魔王様?!」
いきなりの魔王来訪に部室とイッセーは驚き。ワンテンポしてから俺、アーシア、ゼノヴィア以外の部室にいる悪魔は跪く。
それからアーシアとゼノヴィアにサーゼクスが自己紹介した。
「それよりお兄様。 どうしてここへ?」
「何を言っているんだ。 公開授業が近いのだろう?」
「ま、まさか!?」
「是非とも我が妹が勉学に励む姿を見たいのだ」
サーゼクスはそう呑気に言ってみせた。
「サーゼクス、それだけじゃないだろう? 重大なことは早く言えよ」
「まったく、君も相変わらずのようだね。 パーティー会場で私と手合わせした時よりも強い、聖なる力を見せつけ、今も魔王を前にしているのに動じない」
「あの時は、何にも知らない奴らが黒歌を悪く言うからだ。 何にも言わなかったら直ぐに帰ったさ」
「まぁ、私もあの時はいささか軽率な発言だと思ったがね」
「で、本題を話せ」
「そうだね。 この度、三大勢力のトップ会合がここ駒王学園で行われことになった」
「「「「!?」」」」
サーゼクスの言葉にグレモリー眷属一同は驚く。
「無論、君にも参加してもらうよ? この私に手加減していたとはいえ、手傷を追わせ。 あの、コカビエルを意図も容易く倒した。 フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀くん」
「龍呀でいい」
「それでは龍呀。君も是非、参加してくれるかな?」
「お前には貸しがあるから参加してやる」
「それはありがたい」
その後、サーゼクスは人間界に来たはいいが宿がないとかアホなことを言い。
そこをイッセーが宿を提供することになった。
本当に魔王は何処か抜けてる部分があるような。
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第34話
先日、プライベートで部室にやってきたサーゼクスに三大勢力会議に参加しろと言われて参加する意を示したオレは今、家の地下で小猫の特訓中だ。
コカビエルの件以来、小猫は今よりも強くなりたいとオレと黒歌に頭を下げたのだ。
「さぁ小猫、何処からでも来い!」
「わかりました」
「はぁぁああッ!!」
小猫は腰を少し落とすとあまり総量がない魔力で電気を体内に生成し始めてた。すると、小猫の体の回りからバチバチと青白い小さな閃光が生まれる。
「へぇー、大分それを維持できるようになったじゃねぇか?」
「龍呀先輩の魔力のお陰で何とか感覚は掴めましたが、まだまだです。 それより行きますっ!」
「ああ!」
小猫はクラウチングスタートの種類の中で最も飛び出し速度が付く、エロンゲーテッドの構えを取ると足に力を入れ……バゴンッと何かが破裂する音と共に姿を消した。
「速いな。 でも、追えない速度じゃ……ないっ!」
「なっ!?」
小猫は体内に電気を溜め込み自分の筋肉を刺激して、一時的に脅威的なパワーとスピードを得ることができるがそれは体内に電気が溜まっていればだ。この技も、モチーフはジャンプ作品の物からだ。
けれど、今のオレにはそれでも足りない。なんせ、あのアクノロギアとタイマンで殺り合ったからな。なので、容易く小猫の攻撃を受け止める。
「ほらほら、呆けていないで次に移れ」
「はい!」
再び、小猫は高速で移動しながらオレを撹乱してから怒涛の高速連続パンチを放ってくる。
「ダダダダダアッ!!」
それを腕をクロスして全て受け止める。しかし、流石に魔力を纏っていない腕では少しずつだが足が後ろへズルズルと押し込められていく。
「ウオォォォラッ!!」
「にゃっ!?」
小猫の怒涛の高速連続パンチを魔力の波動で小猫ごと吹き飛ばす。すると小猫は上手く身体を捻り着地する。
「よく、着地したな」
「毎度毎度、同じ技で吹き飛ばされれば誰だって対処できるようになります」ムスッ
「ハハハハッ!それは悪かった。なら、次は俺から行くぞ」
「ふっ………」シュッ
オレが構えると小猫もファイティングポーズを取る。足に力を込めて地面を蹴って、一瞬で小猫の懐へ入ると右ストレートをボディへ目掛けて打ち込んだ。すると、小猫は少し遅れて後ろへ飛び顔を歪めながら腕をクロスして、できるだけダメージを軽減させた。
「後ろに飛んでダメージを軽減、やるな」
「それでも、腕がビリビリ痺れてます。 毎回思いますが、龍呀先輩、本当に人間ですか?」
「前にも言ったがもう、半分人間は止めてる」
「え………?」
「その証拠に、ほれ」
オレは一度、目を閉じてから瞳に意識を集中させる。すると、身体の奥からドクンッと普通よりも強く心臓が拍動すると身体から魔力とは違う何かが漏れでるような感覚を感じたら、目を開ける。
「!?」
「りゅ、龍呀先輩……その目……」
小猫がオレの瞳を見て驚くのも仕方ない。なにせ、今のオレの瞳は爬虫類のような瞳に変わっているからな。また、身体からは陽炎のような透明の何かがゆらゆら上がっていた。
「これで分かったろう? オレは半分人間を止めた。 半人半龍なんだよ。 その内、身体全てが龍に変わるだろう」
「それと何ですか? その、龍呀先輩の身体から漂っているオーラは?」
「これは竜のオーラだ」
「これが……竜のオーラ」
「まぁ、でも、アクロノギアみたいにはならないと思うから安心しろ」
「わかりました」
オレの竜化の話しを終えると一階へ繋がる階段から黒歌の朝飯ができたとオレたちを呼ぶ声が聞こえてきた。
黒歌が作った美味しい朝食を食べたあと、オレと小猫は学校があるので学校に行く。その間、黒歌は婚約パーティー以来、自由の身になっているので買い物や散歩をしている。それと前に黒歌に渡した認識阻害の首輪を何故かまだ首に着けている。
「それじゃ、行ってくる」
「姉様、行ってきます」
「二人とも行ってらっしゃいにゃ。 それと龍呀、忘れ物」
そう言って黒歌はオレの首に腕を回して軽い触れるだけのキスをする。キスが終わると隣にいる小猫がムスッとむくれている。
「はい。 今後こそ、行ってらっしゃいにゃ」
「ああ、行ってきます」
「ムウ…………」ムスッ
「なんだよ? どうしたんだ?」
「別に何でもありません」
ムスッと不貞腐れながら小猫が先に歩いて行く。流石にちょっと意地悪をし過ぎたか。
オレもそこまで鈍感ではない、小猫にも黒歌の同じ触れるだけキスをすることにした。
「小猫」
「なんです…………んむっ!?」
「んっ………これで満足したか?」
「ふ、不意打ちは卑怯です………。///////」カァァ
キスを終えたあと学校に向かうと道中で何故か知らんがイッセーを除くグレモリー眷属の面々と鉢合わせた。
「あれ? 部長、今日はイッセーと一緒に登校してないんすか?」
「ええ。 さっきまでお兄様に町を案内していたの」
「なるほど、サーゼクスを………」
「そうよ。 だから、イッセーは先に…………ッ!?」
「祐斗、ゼノヴィア!」
「分かっています!」
「ああ!」
部長はイッセーのことについて言おとした時。少し先にある学校の校門前にある橋の上で銀髪の男がイッセーに指を突き付けたので部長はナイト二人にイッセーを守るように指示を出した。
「はぁ~、あの戦闘狂め。 余計なことを」
仕方ないのでフィンガースナップで指を鳴らして、銀髪の男に光の滅竜魔法を付与した氷の刃を地面から喉元へ突き付ける形で展開する。
「動くなよ、ヴァーリ? 動いたら、致命傷だぞ」
「りゅ、龍呀!? それに部長たちも………」
「ん? これはやはり君か…………狩谷龍呀」
「こんな所で何をしてやがる?このクソ戦闘狂が」
「いや、なに、ただの挨拶さ」
「挨拶だと?」
「兵藤一誠、君はこの世界で何番目に強いと思う?」
「なに?」
「君の禁手。 まぁ、未完成の状態だが上から数えると四桁。 1000~1500の間くらいだ。 いや、宿主のスペック的にはもっと下かな?」
「変わって、狩谷龍呀は、あのコカビエル相手に本当の全力を出していないにも関わらずあっさりと倒して見せた。
君なら二桁は入っているだろう」
「なにが言いたいっ!」
「兵藤一誠は貴重な存在だ。 十分に育てた方がいい、リアス・グレモリー?」
「白龍皇……何のつもりかしら? 貴方は堕天使と繋がりを持っているのよ。 必要以上の接触は……「フッ!」」
ヴァーリは、イッセーに近づいて行く部長の話しを鼻で笑い遮る。
「二天龍と称された、 ウェルシュ・ドラゴンとバニシング・ドラゴン。 赤龍と白龍に関わった者は過去、ろくな生き方をしていない。 貴女はどうなるんだろうな?」
「…………」
「それと今日は戦い来た訳じゃない。 だから、これを解いてくれないか? 狩谷龍呀」
「…………」パチン
フィンガースナップで指を鳴らしてヴァーリの喉元に突き付けている氷の刃を解除する。すると、そのままヴァーリは去っていった。
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第35話
ヴァーリとの邂逅のあと、オレは普通に教室へ。イッセーはオレとヴァーリのドラゴンの力で左腕がドラゴン化。朱乃に頼んでドラゴンのオーラを吸い出してもらった。
「イッセー、大丈夫か?」
「ああ。龍呀のラクリマと朱乃さんのお陰で大分楽だよ」
「そうか。ならいいが」
イッセーと話ながら教室に入ると、いきなり野生の元浜と松田が襲いかかってきた。
「イッセー、貴様!」
「ついでに、狩谷も!」
「しゃらくせーっ!」
「ヒデッ!!」
「ブウッ!!」
いきなり襲いかかってきた野生の変態二人にラリアットを決めて、そのまま床に叩き付ける。
ちなみにちゃんと手加減はしてますよ?
「で、何ゆえ、オレたちを襲った?え?」
「えっとー、その、転校生のゼノヴィアちゃんが…………」正座
「オカルト研究部に入部したという情報を得まして…………」正座
「「だから、美少女や美人の集まりであるオカルト研究部に属しているお前たちが羨ましいかったんだ!!」」
「そんなことでかよ…………」
「「そ…」」
「ん?」
「「そんなことだとっ!?狩谷、貴様という奴は!!」」
「俺たち、モテナイ同盟の男子がオカルト研究部に属している貴様らをどのような思いで見ていると思う!」
「それなのに、貴様という奴は『そんなこと』と済ますか!」
「いや、だってな…………」
オカルト研究部に入りたいなら入りたいと言えばいいじゃないかと思うが、どうやら部長の力で入部ができないようだ。
まぁ、流石にオレやイッセーと違って一般人を裏の世界に巻き込むのは危ないからな。
そんなことを頭の片隅で考えていると桐生が話かけてきた。
「ねぇ、狩谷」
「なんだ?」
「私の情報網に、狩谷と一年生美少女の塔城さんが同じ家から出てきた、っていう情報を得たんだけど。どうなの?」
「なにっ!?」
「狩谷、貴様!オカルト研究部に属するだけに飽きたらず。我らが駒王学園のマスコットである。塔城小猫ちゃんまでもその毒牙に!?」
「あー、そのことなら本当だ。だって、小猫とオレはそのうち家族になるし」
「「「「か、家族!?」」」」
「その情報をもっと詳しく教えろ、狩谷!」
「何故、貴様が小猫ちゃんと!」
「安心しろ。どうせ、明日の公開授業で分かる」
松田と元浜がそう言い残すと丁度、予礼のチャイムが鳴るので自分の席について授業の準備をする。
その後、1日の授業とオカルト研究部の活動が終わり。夕食を済まして、黒歌が淹れてくれた緑茶を啜りながら、オレの膝の上で寝転ぶ小猫を撫でながら明日の公開授業について黒歌に聞くことにした。
「なぁ、黒歌」ナデナデ
「ゴロゴロ……」
「なんにゃ?」
「明日の公開授業には来るんだろう?」
「もちろんにゃ。白音と龍呀を見に行くにゃ」
「じゃあ、そん時にクラスの連中に黒歌と婚約してると話していいか?」
「別に構わないけど、どうしてにゃ?」
「それが、同じクラスの奴にオレが小猫と一緒に登校するところを見られたみたいでな。それで質問された時、咄嗟に
「なるほどね、分かったにゃ。龍呀のクラスに行った時は、正妻とした見せつければいいのね」
「正妻って、お前な…………痛ッ!」
「ヴゥゥゥゥ」カジカジ
「小猫、お前…………」
「…………」プイ
どうやら、小猫は
「悪かったよ。でも、小猫も黒歌と同様にオレの奥さんになるんだから家族になるという意味では、どっち変わらないだろう?」
「仮に義理の妹という意味であっても、奥さんという意味であっても。だろう?」
「そうですけど…………恋する乙女としては複雑です」プイ
「それを言われてしまうと…………あははは」ポリポリ
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第36話
「龍呀~、来たわよ」
「おう。小猫の方はもう見たのか?」
「ええ、それはもうジックリとね」
「そうか」
現在、公開授業の二限が終わった休み時間に小猫のクラスを見終わった黒歌がオレのクラスへと来ていた。
因みに服装は浴衣ではなく。スーツなのだが、色々と窮屈なようでYシャツのボタンが悲鳴をあげている。
「か、狩谷…………」
「そ、その超絶美人は一体…………」
「元浜に松田か。紹介するよ。此方は小猫の実の
姉である塔城黒歌だ。そんでもってオレの婚約者だ」
「どうも、龍呀の婚約者の黒歌です。いつも、夫がお世話になっております」ペコリ
「「か……」」
「「か?」」
「「神は死んだ…………」」
どうやら、この変態二人はオレと黒歌が婚約しているという話にダメージを受けたのか両手両膝を付いて項垂れてしまった。
「それじゃあ、黒歌。オレは席に戻る」
「ええ、しっかりと龍呀の授業風景を見ておくわね」
「おい、二人とも。そろそろ席に戻れ。先生が来るぞ」
「やっぱり、顔なのか?顔が全てなのか………?」
「松田、狩谷相手では最初から負け戦だったのかも知れん」
「元浜…………」
「所詮、アニメキャラには勝てないということだ」
「やっぱり、顔が全てか………!?」
尚も項垂れている変態二人を放置して自分の席に座り。次の英語の授業になると、何故か分からないが英語の教師が紙粘土を教材として配り始めた。
「今日の英語の授業は、今渡した紙粘土で好きな物を作ってみてください」
「いやいや。英語の授業に紙粘土を使うって、図工や美術の授業じゃないんだから…………」
「動物でも人でも物でも、何でも構いません。自分が思い描いた、有りのままの表現を形にするのです。そういう英会話もあるのです」
「ねぇよ!そんな英語!」
意味の分からない英語教師にツッコミを入れるが周りの奴らは普通に紙粘土を捏ね始めた。
「オレだけなのか?オレだけがおかしいのか?」
あの、エセ神様に転生させられる前は、そこそこ偏差値がある高校に通っていたオレだが。英会話で紙粘土を使うのは初めてだぞ?
「はぁ……仕方ない、やるか」
このまま頭を抱えていても仕方ないので、オレも紙粘土を捏ね始めた。
それから少しするとイッセーの席の前を通った教師が騒ぎ始めた。
「ひょ、兵藤くん!?」
「はい?」
イッセーは何やらエロい妄想をしていたのか、いつの間にかイッセーの目の前には紙粘土で作られた部長の裸体人形が出来ていた。
「あれ、リアス御姉様じゃない?」
「そうよ。凄いソックリ」
「おい、こっちも見ろよ!」
今度は何故か知らないがオレの前の席の奴が声をあげた。
「狩谷のやつ、FAIRY TAILの炎竜王イグニールとその横に幼い頃のナツ・ドラクニルが並んでるぞ!」
「スゲー!」
「イグニールの完成度、高えー!」
「なぁ、狩谷。この、イグニールとナツを俺に五千円で売ってくれないか?美術部として、これを塗装したいんだ!」
「なら、金は半分俺が出すから完成したらアニメ研究部に置かせてくれ」
「分かったよ。五千円で提供してやるよ」
「「ありがとー、狩谷!」」
目の前で美術部副部長とアニメ研究部副部長からイグニールとナツの粘土模型を提供して欲しいと言われたので言い値で提供することにした。
「だあー!だから、売らないって言ってんだろうが!」
「イッセー、貴様!」
「オカルト研究部に属しているのに、俺たちに慈悲を与えないとはどういうことだ!」
「そうよそうよ!」
「エロ兵藤がリアス御姉様の部活動に入っているだけでさえ、私たちは納得していないのに」
「それなのに、リアス御姉様の裸体人形まで!」
「俺は、これを部長にお渡しするんだ!」
何やら、イッセーもイッセーで大変だな。元浜や松田を始め、クラスの部長を慕う女子から部長の裸体人形でオークションが行われたり。イッセーが持つのに反対だと言われたりで。
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第37話
「良くできてるわね」
「あらあら。 さすが毎日、部長のお身体を見て、触っているイッセーくんですわね」ウフフフ
紙粘土の授業が終わり。イッセー作:部長の裸体フィギュアを当の部長本人にもイッセーの力作を見て、部長は嬉しいそうだ。
部長の懐刀である朱乃も、褒めているようだ。
因みに、黒歌は小猫のことを再び見に行った。
「ま、毎日だなんて。 朱乃さん、機会がある時に脳内に焼き付けるんです!」
「誇れることじゃないだろう、それ!?」
「龍呀くんのは………ドラゴンに幼い龍呀くん、かしら?」
「いえ、龍呀が作ったのは炎竜王イグニールに幼い頃の火の滅竜魔導士ナツ・ドラグニルですよ」
「これが本当のナツ・ドラグニル…………。髪の毛の色以外は龍呀くんソックリですわね」
部長と朱乃に見せているのは、美術部の一人が高速でオレの紙粘土作品に塗装したあとの写真である。
「でも、何でナツとイグニールなんだ?」
「フェアリーテイルの滅竜魔導士って言ったらやっぱり一番に思い付くのはナツだし、 ドラゴンと聞かれたら、アクノロギアかイグニールだろうからな」
「なるほどな」
イッセーにオレが何でナツとイグニールの粘土模型を作ったのかを説明すると、体育館に繋がる渡り廊下をカメラを持った大勢の生徒が体育館に向かって走っていた。
「魔女っ子の撮影会だと!?」
「これは! 元写真部として、レンズを通して余すことなく記録せねば!!」
「魔女っ子?」
「今の………絶対に元浜と松田だろう」
「魔女っ子………まさか!?」
「部長、何か知ってるんですか?」
「えぇ……一応ね」
そんな、魔女っ子の正体を確かめるためにオレたちは体育館への向かう。体育館に入るとステージの上で、まさに魔女っ子コスプレをしている美少女がいた。
やっぱり、彼女か…………。
「あれは………魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブのコスプレじゃないか!」
「よく、あの長ったらしい名前を覚えてられるな、お前は………」
「イッセーさん、お詳しいんですね」
「あるお得意様の付き合いで、アニメの全話観賞マラソンをしたことがあってね」
絶対にそのお得意様とはミルたんのことだよな。
「コッッラァァァァア!!」
「あっ、匙だ」
「学校で何にやってんだ? ほら、解散解散!」
流石は生徒会。学園の騒動が起きれば、呼ばれずとも『颯爽、登場!』するのか……。
そんな匙くんは魔女っ子の写真を撮っていた生徒からクレームを受けるがなんとか解散させる事に成功したようだ。
「あの、ご家族の方でしょうか?」
「うん!」
「そんな格好で学校に来られると困るんですが……」
「えぇ……?」
匙から注意を受けた魔女っ子は、何故か知らないが匙に向けて魔女っ子のポーズを取った。
「ミルミル☆ミルミル☆スパイラルー!」
「だから、真面目に人の話を……」
「よう、匙。 ちゃんと仕事してんじゃん」
「からかうな、兵藤」
「匙、一応教えておくが。 その人、人間じゃないぞ」
「はぁ?」
匙はオレの言っている意味が分からないという表情を見せたあと、突然オレたちが入ってきた体育館の入り口とは反対の入り口が開いた。
「匙? 何事ですか?」
開いた入り口から現れたのは我らが駒王学園の生徒会長、支取蒼那ことソーナ・シトリーである。
「それが会長…この方が……」
「ソーナちゃん! みーつけた」
「………ッ!!」
支取先輩は魔女っ子を見た途端に体が固まってしまった。
「もしかして…………」
「イッセーに匙、その魔女っ子の人は支取先輩のお姉さんだ。 悪魔の臭いに加えて魔力の波動も似ている」
「会長のお姉さん!?」
「って、ことは…………」
「ええ、龍呀の言う通り。 あの方は、ソーナのお姉様で現四大魔王の一人であせられる。 セラフォルー・レヴィアタン様よ」
イッセーの問いに部長が答えた。
「それにしても、やはりドラゴンスレイヤーの鼻は凄いわね」
「でも、たまに大変ですけどね。 今の季節の下駄箱から匂う汗臭い靴の臭いとか、ゴミ置き場にある腐った生ゴミの臭いとか……」
「そ、それは…………」
ドラゴンスレイヤーの意外なデメリットに部長もコメントに困ってしまった。
「と、取り敢えず。 セラフォルー様にご挨拶するわよ。 付いてきなさい、イッセー、アーシア」
「「は、はい!」」
「部長、オレは?」
「そうね。 龍呀にも来てもらおうかしら」
「わかりました」
そんなこんなでオレたちは部長の後ろを歩きながらセラフォルー・レヴィアタンに挨拶をすることになった。
「お久しぶりです。 セラフォルー様」
「あら、リアスちゃん、おひさ~。元気してましたか?」
「はい、お陰様で。 今日はソーナの公開授業へ?」
「うん! でね、ソーナちゃんったら酷いのよ。 今日のこと黙ってたんだがら」
「…………」プイッ
セラフォルーの言葉に支取先輩は目を逸らした。
まぁ、こんなテンションの高い姉は流石に面倒だとは思うだろう。
「もう、お姉さん。 ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだから」
「冗談なのか本気なのか、さっぱり分からん」
「まぁ、十中八九冗談だろう。これから、トップ会談をするのに戦争をおっ始めるのはバカかアホくらいだろう」
「だ、だよな…………」
セラフォルーのとんでも発言にイッセーは困惑しているようだ。
すると、セラフォルーは部長の後ろにいるオレたちに気づいたようだ。
「リアスちゃん。 あの子たちが噂のドライグくんにドラゴンスレイヤーくん?」
「はい。イッセー、龍呀。 ご挨拶なさい」
「は、はい!」
「わかりました」
部長に呼ばれたのでセラフォルーの前で自己紹介をすることにした。
「初めまして、兵藤一誠です。 リアス・グレモリー様のポーンをやってます」
「ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀です」
「初めまして、魔王のセラフォルー・レヴィアタンです。 『レヴィアたん』って呼んでね?」
「は、はぁ………」
「…………」
流石のオレでもセラフォルーの呼び方にはノーコメントである。
「お姉様、私はここの生徒会長を任されているのです。 いくら、身内だとしてもその様な格好はあまりにも…………容認できません!」
「そんな、ソーナちゃん! ソーナちゃんに、そんなこと言われたら…………お姉ちゃん悲しい!」
「お姉ちゃんが魔法少女に憧れてるって知ってるでしょ?」
「どこかで聞いたことがあるセリフだな…………」
何故かイッセーがセラフォルーの『魔法少女に憧れている』の言葉に反応した。
まぁ、イッセーが反応するのは分かるよ。だって、セラフォルーと同じことを言ったのはある意味で最強の『ミルたん☆』だからな。
「きらめく☆ステッキで天使や堕天使を抹殺なんだから」
「お姉さま、ご自重ください。 お姉さまがきらめかれたら小国が数分で滅びます」
やはり、魔法少女でなく魔王少女なんだな………。
外見では、魔法少女なのに。
「なぁ、匙」
「なんだ、兵藤?」
「コカビエルが襲ってきた時、会長はお姉さんを呼ばなかったけど。 仲が悪いからってわけじゃないんだよな?」
「イッセーくん、逆ですわ」
「え?」
イッセーの匙への問いに朱乃が答えた。
「セラフォルー様が妹君である、ソーナ会長を溺愛し過ぎているので、逆に呼ぶと収拾がつかなくなると」
「た、確かに妹が堕天使に汚されるとか言って、即戦争になってたかもしれないな」
「それを考えてると、やっぱり龍呀がコカビエルを倒してくれて助かったよな」
「そうですわね」
「いや、オレが居なくてもヴァーリの奴がコカビエルを倒していたはずだ。 アイツの実力は部長よりも格段に上だしな」
だって、アイツ魔王ルシファーの孫だし。それに『白龍皇の光翼』を使わずともコカビエルクラスなら難なく退けられるだろう。
そんなことを考えていると、支取先輩がセラフォルーのことで我慢の限界に達したのか目元を潤ませながら体育館から走り去っていく。
「もう耐えられません!」
「待って、ソーナちゃん!」
「来ないでください!」
「そんな、ソーナたん。お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇっ!」
「『たん』を付けないでください!」
と姉妹による追いかけっこが始まった。
「じゃあ、俺。会長のフォローをしに行くから」
「お、おう。頑張れよ」
「支取先輩によろしく言っておいてくれ」
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第38話
公開授業が終わったのその日の夜。夕食を食べ終えたあと、オレと小猫は日課となっている夕食後の特訓を地下で行っている。
「残り15分だ。そのまま維持しろ」
「は、はい………」
今、やっているのは小猫の身体に小猫が出せる全力の魔力を一定時間纏わせる特訓と魔力の維持を兼ね備えた特訓だ。
全力で魔力を放出すればするほど魔力の器は大きくなり、魔力の維持が長くなれば長くなるほど、雷を帯びた状態《モード雷獣》が長時間維持できるのだ。
「はい、そこまで。10分休憩だ」
「…………ッ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」ポタポタ
15分が経ったことを小猫に伝えると魔力が限界だったのか急に脱力し、両手両膝を付け、荒い息を呼吸をしながら額から汗を垂らす。
サーゼクスがプライベートでやって来た時から早くも1ヶ月。その間に、小猫は目に見えるほどに能力を伸ばしている。
それもそのはず、休みの日は朝から晩まで食事やトイレ以外は全ての時間を小猫は特訓に費やしているのだから。
「休憩終了。次は放出系の特訓に移るが、イメージは出来てるか?」
「龍呀先輩の技をモチーフに…………」
「なら、やってみろ」
「はい!」
「ハァァァァァアッ!!」ピョコン!
「これは……」
「雷獣の鋭爪!!」
なんと、小猫は仙術モードになり。そして、自分の手足に仙術のオーラを纏わせたあと、その上に魔力で生成した雷を纏わせて鉤爪を形成したのだ。
「これが私の新しい技です」
「なるほどな、仙術のオーラの上に魔力で雷を纏わせたのか………。やるじゃねぇか、小猫!」
「でも、長時間維持ができなくて。長くても、5分が限界なんです………」
そう小猫が言うと最初の一定時間の魔力維持の特訓の影響なのか雷獣の鉤爪が維持できなくなり霧散する。すると、魔力を全て使い放たして疲れたのか小猫の頭にある猫耳がしなだれる。
「いや、よくこの技を編み出した」
「前に、アーシア先輩を堕天使から助けに行った時の龍呀先輩が見せた、氷竜の翼刃と………ライザーの戦いで見せた、火竜の鉤爪をモチーフにしたんです」
「なるほど、なるほど」
「いつか、龍呀先輩の滅竜奥義や2つの属性を合わせたモードを身に付けるのが私の目標です」
「なら、雷竜の滅竜奥義を見せておこうか」
「いいんですか?」
「構わないさ。可愛い奥さんからの頼みだからな」
「か、可愛い……奥さん………。//////」プシュ~
「アイスメイク・ブロック!!」
「固さは…………ん~、こんくらいでいいか?」コンコン
氷の滅竜魔法で疑似標的を作成してから、一応氷の強度を確認した。
「それじゃあ、いくぞ?」
「は、はい!」
「滅竜奥義・鳴御雷!!」
オレは小猫に雷の滅竜魔法の奥義を見せるために右手に魔力を収束させて、ある程度貯まると右腕を突き出し、激しい轟音と共に滅竜奥義・鳴御雷を放った。
───ズガガガガガンッ!!!!
激しい轟音が止むと目の前にあったはずの氷の塊の疑似標的が跡形もなく消失していた。
「まっ、こんなもんよ」
「…す、すごい…………」
小猫が鳴御雷を見せると慌てたようすの黒歌がリビングに繋がる入り口からやってきた。
「い、今の轟音はなんにゃ!? し、白音は大丈夫かにゃ!?」
「無事ですよ。姉様」
「良かったにゃ…………」ヘニャヘニャ~
「おい、黒歌。オレの心配は?」
「今の轟音なら龍呀は平気にゃ。何せ、あの魔王の一人、サーゼクス・ルシファーに手傷を負わせるほどの実力の持ち主だから、心配してないにゃ」
「それは喜んでいいのか、ちょっと困るコメントなんだが…………」
「これは誉め言葉にゃ」
そういいながら黒歌はウィンクした。
しゃあない、誤魔化されてあげますかね。これも惚れた弱みだ。
「二人が無事なのは分かったけど、さっきの轟音の正体は何にかにゃ?」
「ああ、それならオレが小猫のために滅竜奥義を放って見せたんだよ」
「滅竜奥義をかにゃ!?」
「そう。雷の滅竜奥義、鳴御雷をな……」
「雷の滅竜奥義…………。はぁ~、だから、あんな轟音がリビングにまで響いた訳……」
「少しはご近所迷惑も考えてほしいものね」
轟音の正体が分かると、黒歌の語尾から『にゃ』が抜けた。これは、基本的に人間として過ごす時の口調だ。素の状態や慌てた時なんかは、よく語尾に『にゃ』が付くのだ。因みに、小猫は語尾に『にゃ』が付くのは恥ずかしいそうだ。
「ねぇ?ちゃんと聞いてる?今度から、滅竜奥義なんかを放つ時は時間帯を気にしなさいよね!」
「わ、分かった……」
「す、すみません………姉様」
「小猫、今日の特訓は終了だ。もう、魔力も残ってないだろう?」
「はい……。流石に、ガス欠です」
「なら、お風呂に入ってきなさい白音。汗かいたでしょう?」
「はい。では、私はお風呂に行ってきます。お疲れ様でした」ペコリ
「おう。お疲れ様」
小猫はオレに一礼すると、地下からリビングへと繋がる階段を登ってリビングへと上がって行った。
「白音の成長の調子はどう?」
「圧倒的に成長している。多分、今のグレモリー眷属でトップ3だろう」
「トップはリアス・グレモリー。二番目は、そのクイーンかしら?」
「やはり、魔力の潜在総量で小猫は部長や朱乃に負けているからな。仙術と魔法がもっと使えるようになれば、部長をも越えるかもしれないな」
「それは、楽しみにゃ。それじゃ、私は伏魔殿で少し身体を動かしてくるにゃ~」
「難易度は?」
「先週、ノーマルをクリアできるようになったにゃ♪そういう、龍呀は?」
「ハードを2時間15分」
「にゃっ、ハードをクリアできるようになったのかにゃ!?」
「最初からドラゴンフォースとモード有りでな」
「それはズルにゃ!?」
「ズルくないだろう。だったら、黒歌もドラゴンフォースみたいな何とかモードを身に付けるんだな。小猫はモードを身に付けたぞ」
「私だって、雷獣は使えるにゃ!!」
「なら、あとはレパートリーを増やすだけだな」
「絶対に龍呀のタイムに追い付いてやるにゃっ!!」
「楽しみにしてるぜ」
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第39話
「「「いただきます」」」
朝食前の特訓を終えて、朝食を食べていると小猫から、とある質問がオレに飛んできた。
「あの、龍呀先輩」
「なんだ?」
「コカビエルとの戦いの時に、確か龍呀先輩の左腕に何か赤いマークかタトゥーがありましたよね?あれって、何のマークなんですか?」
「あれはギルドの一員の証だ。小猫たちで言えば、グレモリー家の家紋のような物だ」
「では、あれがギルド フェアリーテイルのギルドマークということなんですか?」
「そういうことだ」
「なるほど」
「龍呀、そのギルドマーク。私にも付けられないのかにゃ?」
「流石に無理がある。オレもこの世界にくる前にエセ神様が修行をさせてくれるために天狼島へ飛ばしてくれたお陰でフェアリーテイルのギルドマークを付けることが出来たんだ」
「まぁ、可能性としてはエセ神様が気まぐれにやって来た時にギルドマークを付けてもらう他ないな」
「なら、仕方ないにゃ………」
オレの説明を聞くと黒歌は少し寂しそうな顔をしていた。
何とかしてやりたいがこればっかりはオレにもどうしようもない。
◇◆◇
その日の放課後。コカビエルの件でどうやら部長の評価が上がったらしく、力が強く自分で制御ができないために封印されていた、もう一人のビショップを解放することをサーゼクスに許可をもらったため、オレたちはオカルト研究部全員で『開かずの扉』と呼ばれている刑事ドラマとかでよく見る『KEEP OUT!!』と書かれている黄色テープが貼られた扉の前に来ている。
「ここに、もう一人のビショップがいて、1日中、ここに住んでいるのよ。一応、深夜には扉の術式が解けて旧校舎内だけなら部屋から出てもいいんだけど、中にいる子自体がそれを拒否しているの」
「ただの、引きこもりじゃねぇか」
そんなオレの呟きに部長はため息を吐きながら頷き、肯定した。
「ですが、なかにいる子は眷属のなかでも一番の稼ぎ頭だったりするのですよ」
「引きこもりが稼げる物って言ったら、株式とかか?」
「龍呀くんのやり方もあるとは思いますが、中の子はパソコンを介して、特殊な契約を人間と執り行っているのです。直接私たちと会いたくない人間もいるのですよ」
「なるほどね。契約者の中には、顔がコンプレックスな奴に、対人恐怖症などの奴がいるってことか」
朱乃の説明で、やはりギャスパーは引きこもりなんだなと改めて理解した。それと、奴は男なんだよな………声優さんはヒロインキャラで有名なのに………。
「それじゃあ、開けるわ」
一人で内心落ち込んでいると部長は、扉に刻まれた呪術的な刻印を消し去り、扉を開く。
すると、扉の奥から────────。
「イヤァァァアアアアアッッ!!」
「な、なんだ!?」
「………」ズキズキ
やっぱりか、こうなったか。耳に僅かに違和感が………。
扉を開けて部屋に入ると、いきなり女性特有の甲高い声の悲鳴が鳴り響いた。そして、声の発生源は部屋の中にある棺からだった。
「ごきげんよう。元気そうで良かったわ」
「な、何事なんですかぁぁぁぁ?」
「封印が解けたのですよ。だから、私たちと一緒に………」
部長が挨拶をしてから、朱乃が棺の蓋を開けると中には金髪で女装したギャスパーがいた。
「嫌ですぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅ!外怖いぃぃぃ!」
「おおっ!女の子!しかもアーシアに続く、金髪美少女!ビショップは金髪尽くしってことスッか!」
「イッセー、見た目と声に騙されるな。喉元を見てみろ、コイツは男だ」
「いやいや、龍呀。どうみても金髪美少女だろう?」
「ドラゴンスレイヤーの鼻で分かる。コイツは黒歌や小猫、朱乃たちのような女性特有の匂いがしない」
「イッセー、龍呀の言う通りこの子は男の子よ。それと龍呀。私は変な匂いとかしてないわよね?」
「わ、私も知りたいです!龍呀さん」
性別を匂いで見分ける話を嘘で話すと、それを信じた部長とアーシアが迫るように「自分はどうだ?」と聞いてくる。
「さ、さすがにここでは─────グホッ!?」
「龍呀先輩、少し………いいえ、かなりデリカシーに欠けます。反省してください」フンス
「こ、小猫………お前………」バタリ
いきなり小猫が、薄い魔力の衣を纏っていたオレのボディーへ、雷の魔法と仙術で強化した拳に合わせて、戦車の駒の特性を使い、抉り込むように、且つ、鳩尾へと打ち込んで来た。
「こ、小猫? 貴女、いつの間にそんなに強く………?」
「コカビエルの一件から毎日、平日の朝と夜は龍呀先輩に実戦と魔法を、休日は朝から晩まで姉様に仙術を鍛えてもらっていますから」
「そ、そう………」
部長も流石に、雷で強化した拳を捉えることができなかったようで冷や汗をかいていた。
「イッテテテ………。流石に雷で加速させて拳を打ってくるとは思わなかったぜ」サスリサスリ
「自業自得です」
「悪かったよ」ナデリナデリ
「反省してください………。/////」ゴロゴロ
「りゅ、龍呀ー!!テメェー!!」
腹の痛みを少し我慢しながら、小猫に謝罪して頭を撫でる。すると気持ちいいのか、仙術の力を使った時に出た耳がピコピコと動き、喉をゴロゴロ鳴らす。
そんな、小猫を見た、イッセーが悔しそうにしているが無視!
「と、と、ところで、この方は誰なんですか?」
今まで黙っていたギャスパーがオレたちを指で示して、部長に問う。
「ギャスパー、貴方がここにいる間に増えた眷属と協力者よ。ポーンの兵藤一誠、ナイトのゼノヴィア、それと貴方と同じ、ビショップのアーシアよ」
「それと協力者の───」
「ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀だ。よろしくな、ギャスパー」
「よ、よろしく、です」
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第40話
ギャスパーと挨拶を済ましたら、部長が優しくギャスパーに外へ出るように促す。
「お願いだから、外に出ましょう?ね?」
「嫌ですぅぅぅぅ!」
「ほら、部長が外に出ろって────」
「バカっ!イッセー、よせっ!」
「え?」
イッセーはオレの静止するよう促す声を無視してギャスパーの腕を掴んだ瞬間、時間が止まった。正確には、オレとギャスパー以外の全てがだ。
「はぁ~、やっぱりこうなったか」
「な、ななななんで動けるんですか!?」
「多分、時の滅竜の力だな。オレも可能性としてはあるんじゃないかって思ってはいたけど。本当にあるとは………。(エセ神様、やり過ぎ)」
「め、滅竜の力?」
「さっき、自己紹介の時に言ったろう?オレは滅竜魔導士。ドラゴンを滅するための魔法を扱うんだよ。通称、ドラゴンスレイヤー。それよか、ギャスパー」
「は、はぃぃぃぃ!」
「一度、両手を臍の辺りに置いて、深呼吸しろ。部長たちにはオレから説明する」
「わ、わかりました」
ギャスパーはオレの指示通り、臍の辺りに両手を置き、深く深呼吸した。すると、ギャスパーの興奮が治まったようで止まっていた時間が動き出した。
「あれ? 今、何が?」
「おかしいです。何かいま一瞬」
「………何かされたのは確かだね」
上からイッセー、アーシア、ゼノヴィアの順でギャスパーの神器の効果の影響を肌で感じていた。他のメンバーはやはり知っているようす。
そんで取り敢えず、イッセーの脳天に一撃入れることにした………。
「こっっの、バカたれがぁぁぁあ!!」バゴンッ
「へびしっ!?」
イッセーの脳天に魔力無しの力で拳骨を落とし、漫画のように床へめり込ませた。
「イッセーさん!?」
「龍呀!?」
「イッセー、てめぇは少し接し方を考えろ!初対面の相手に、ましてや対人恐怖症気味の奴に他の奴らと同じ接し方をしたら精神的にストレスになるだろう!!」
「す、すびぃばぜぇん………」
「りゅ、龍呀、貴方の口振りからするに………。もしかして貴方、ギャスパーの神器の影響を………」
「ええ、受けていません。どうやら、オレの滅竜の力の中には、どうやら《時の滅竜魔法》も存在するようです」
「規格外とは思っていたけど、時の滅竜魔法って………」
「部長、取り敢えずギャスパーの面倒は、二年のオレたちで見ます」
「そうね。龍呀が居てくれれば安心だわ」
部長にギャスパーのことを任せてもらったから、ギャスパーの神器について部室で話ことになった。
「それじゃあ、ギャスパーの神器の説明をお願いします。どうやら、イッセーたちも知りたいようなので」
「ええ、わかったわ」
「ギャスパーは、興奮すると視界に映し全ての物体の時間を一定の間停止することができる神器を持っているのよ」
「『停止世界の邪眼』と呼ばれる神器です」
「時間を止める神器ですか!? こんな奴に……」
「彼は神器を制御できないため、大公及び魔王サーゼクス様の命でここで封じ込められていたのですわ」
「そのうえ、無意識に能力が高まっていくようで、《禁手》に至る可能性もあるのよ」
「《禁手》ですか………でも制御できないんじゃあ………」
「まぁ、一応簡単に制御できる方法はあるけどな」
「本当なの、龍呀!?」
オレの言葉に部長が勢いよく立ち上がる。
「ええ。簡単な話で、イッセーの血をギャスパーに飲ませれば、ギャスパーの神器はギャスパーの制御下に完全に置かれますよ」
「そんなことが………さすがは赤龍帝の力ね。ところで、何故、貴方がそんなことを知っているのかしら?」
「そのことについては、会談の時に話そうと思います。異世界からの転生者であることに関係するので」
「そう………わかったわ」
◇◆◇
「いんやぁぁぁぁあ!!」
「ほら、走れ。もたもたしていると、このデュランダルの餌食になるぞ?」
あのあと、部長がトップ会談の打ち合わせのため懐刀で『女王』である朱乃と、先日、《禁手化》に至った木場は外出中のため、残ったメンバーでギャスパーの面倒を見ている。
てか、ゼノヴィアの奴、悪魔のギャスパーに聖剣を振り回しながら追いかけ回してどうする。これだから脳筋は………。
「はい、ゼノヴィア。そこまでだ」
「なんだ、龍呀。止めるな」
「お前はバカなのか?いや、バカなんだな。悪魔に聖剣を振り回してどうする。一歩間違えれば、ギャスパーが滅されちまうじゃねぇか!」
「た、たしかに………」
「はぁ………」
ゼノヴィアの首根っこをつまみ上げ、お説教していると………。
「ギャーくん、これを食べれば直ぐに元気に………」
「いやぁぁぁぁあ!? ニンニク嫌いぃぃぃぃぃ!!」
「小猫、お前まで………てか、なんか楽しんでないか!?」
ゼノヴィアから解放されたギャスパーに、次は小猫が吸血鬼が苦手なニンニクを持ちながら、ほんの僅かに笑みを浮かべながら追いかけ回していた。
「小猫、それ以上やったら今日の晩飯後のデザート、お前だけ無しな」
「ッ!?」ピタリ
「さすが、龍呀………」
「小猫ちゃんの弱点をついてますね………あはは」
「イッセー、テメェも見てないで止めやがれ!それか、匙を支取先輩から借りてきてくれ」
「匙を?」
「呼んだか、狩谷?」
「おお、匙!ちょうどよかった」
何とちょうど、花壇の手入れをしに来ていた匙がいた。
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第41話
ゼノヴィアがギャスパーをデュランダルで追いかけ回すの止め。小猫がニンニクを持ってギャスパーを追いかけるの止めたあと、イッセーに匙を呼ぶよう頼むと偶然にも花壇の手入れをしに来ていた匙がいた。
なので、アニメでアザゼルが匙に教えるはずの匙の神器の使い方を話す。
「てな訳で、お前の神器が今のギャスパーには効果的なんだ。それにお礼と言っちゃあなんだけど、シトリー眷属で何かオレに頼みごとがあった時は無償で引き受けるからさ」
「なるほど、分かった。俺も生徒会として後輩が困っているなら手を貸すぜ。でも、俺の『黒い龍脈』にそんな力がなぁ………」
「鍛え方によっては、イッセーといいところまで戦えるぜ?」
「マジか! それより、あの金髪の子は本当に男の娘なのか? 女の子じゃなくて?」
「声は女みたいだが、れっきとした女装趣味の男子だ。匙、現実を見ろ? イッセーは、既に諦めている」
「あの、性欲の権化である兵藤が諦めている………だと………」
匙に再度、ギャスパーの趣味と性別を説明すると、膝と手をついて項垂れてしまった。それよりも、コイツらは気が付かないのか?
おっ、小猫はどうやら気が付いている様子。
「………」チラリ
「………」コクリ
小猫が此方にチラリと視線を向けたのでコクリと頷いてやる。それは、『殺れ』の合図である。
そして、小猫は俺の合図を受け取り、近場にある石ころを拾い、木が生い茂る中の一本の木に投げつける。
「当たれ」
「ちょっ………!?」
「いい位置によろけたな、アザゼル総督?」
「おい、待て………お前、それは……!」
「待つかよ! 喰らいやがれー!!」
「ハポンッ!!」
小猫が木に隠れていたアザゼルに全力で石ころを投げ、アザゼルがそれを回避すると、今度は俺がそこら辺にあった石ころを全力でアザゼルに投げる。
すると、脳天に当たり、クルクルと落ちてくる。
「いててて、なにをしやがる! ドラゴンスレイヤー!!」
「喧しい! 堕天使の気配を消して他勢力のテリトリーには入る、常識がなってないクソ総督が!!」
「で、何の用だ? 『聖魔剣使い』の木場はいねぇぞ」
「なに! こいつ、俺だけじゃなくて木場まで狙ってんのか!? 木場を狙っているならそうはさせない!」
アニメで、この時のアザゼルの目的を知っているので先読みして話す。すると、その発言にイッセーが反応して『赤龍帝の籠手』を展開する
「なんだよ………いねぇのかよ、つまんねぇな。てか、コカビエルにも勝てないお前らが俺と勝負になるわけがねぇだろう。だが………そこの白い奴とドラゴンスレイヤーは別だがな」
そう言って、アザゼルは小猫のことを興味深く観察する。
「白い奴って………小猫ちゃんのことか?」
「おい、ドラゴンスレイヤー。お前さん、そこの娘を鍛えているだろう。それもかなりの密度で……」
「ああ、うちの嫁さんの一人だからな。その嫁さんの頼みで、今では中級悪魔であれば、同等に殺り合えるくらいまでに成長している」
「いつからだ?」
「一ヶ月前だ」
「ほう………一ヶ月でこれだけね。おっ、そこのお前。それの神器、『黒い龍脈』じゃねぇか」
小猫の観察が終わると次は、イッセーの隣にいる匙の神器に目が行ったようだ。
「ああ、そうだ」
「なるほど………。なら、そこに隠れているハーフヴァンパイアの神器の特訓にはもってこいじゃねぇか」
「そのことなら、さっき狩谷から聞いたぜ。俺の神器は、彼の伝説の五大龍王の一体であり、『黒邪の龍王』と呼ばれたヴリトラの神器なんだってな。その能力も把握済みだ」
「なんだよ、知ってんのかよ………。なら、帰るとするかなぁ」
匙の言葉に少し驚いた表情をして帰ろうとするアザゼルをイッセーが止める。
「おい、アザゼル! 何故、正体を隠して俺に接触した!?」
「それは………俺の趣味だ」
「そうだ、アザゼル。人工神器は完成してるのか?」
「人工神器?」
「ドラゴンスレイヤー、どこでそれを知った?」ギロリ
「さぁな。会談の時になれば分かるかもしれないぜ?」
「くえない奴め」
そう言い残してアザゼルは堕天使の翼を出して飛び去って行った。アザゼルが去ったあと、イッセーが人工神器について聞いてくる。
「龍呀、さっきの人工神器ってなんだ?」
「お前は、神器がどうやって作られるか知ってるよな?」
「確か……聖書の神の手によって作られるんたんだろう?」
「それが普通の神器。人工神器はそうじゃない。人工神器は聖書の神の力を使わずに作る物。いわばレプリカだな」
「そんなものが………」
「まぁ、まだ完成してない様子だったがな。さっ、ギャスパーの特訓を再開するぞ」
アザゼルが去ったあと、ギャスパーの神器をアニメと同じようにバレーボールで特訓することにしたがあまり、成長の伸びがよくない。匙の『黒い龍脈』で力を吸収しても『停止世界の邪眼』の力が大きな過ぎるため吸って吸っても力が落ちる気配がない。
別の手段としてイッセーの血を飲ませるかという案が出たが、ギャスパーが血は生臭いので嫌だと言う始末。
これは、長い目でギャスパーを見る他ないのだろう。
アニメなら、会談襲撃の時に飲むのだがなぁ………。
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第42話
アザゼルとの邂逅のあと、ギャスパーの特訓を下校時間まで続け。流石に夕食を摂るために一度、各自の家に戻ることになった。しかし、イッセーだけはギャスパーのところで待つと言った。
なので、イッセーにギャスパーを任せてオレたちは家に帰ることにした。
「ただいま」
「ただいまです」
「お帰りなさい、二人とも」
家に着くと、玄関でエプロン姿の黒歌が出迎えてくれた。
「ああ、ただいま。黒歌」
「ただいまです。姉様」
帰って来た挨拶をしたあと、自室に鞄を置いて、手洗いうがいなどを済ませてからリビングにて夕食を摂りギャスパーのことについて三人で話すことにした。
「なるほどね。血が嫌いで、時を止める力が制御できないハーフヴァンパイアねぇ………」
「ああ。オレや黒歌は、力の影響を受けないとしても。小猫やイッセーたちがな………。それにここのままだと、いくらグレモリーの眷属といえは、最悪の場合は………」
「それは何とか避けたいです。ギャーくんは大切な友達ですから」
「オレも何とかしてやりたいが、こればっかりはギャスパーの心の問題だからな。根気よく特訓して、力を制御できるようになるしかないな」
トップ会談の時のことを頭の中で思い出す。ギャスパーは会談中に魔法使いに強制的に神器を暴走させられてしまうのと、小猫が拘束されてしまう。この二つのうち、一つである小猫の拘束は起きないと思う。
何せアニメと違って、オレと黒歌が小猫を強化してしまっているからだ。本来なら、小猫が仙術を使うのは夏休みの特訓当たりからだ。
どうしたものか………。
「龍呀先輩、このあとはギャーくんの所へ?」
「んー、悩んでる。俺が行ってもやることはイッセーと変わらないしな」
「イッセー先輩と?」
「今頃、イッセーはギャスパーに『赤龍帝』として経験したことを話してるはずだ。『赤龍帝』の力を使えば使うほど自分がどうにかなってしまいそうだ、とかな」
「………」
オレの説明に小猫は少し考え込んでしまった。多分、心の奥底ではまだ仙術の力に対する恐怖心が住み着いたままなのだろう。こればかりはアニメ通り。小猫の心次第だ。
まぁ、そんな我が奥さんにちょっとだけアドバイス。
「小猫、お前もまだ完全に仙術の力に恐怖を拭い去れていない。だから、焦るな。力も求めることは別に悪いことじゃない。その力をどうやって、誰のために扱うかが大事なんだ」
「力をどうやって、誰のために………」
「そうだ。オレでいえば黒歌と小猫のために、イッセーなら部長のために、といった大切な存在のために力を振るう。小猫は、誰のために力を振るいたい?」
「私は、姉様や龍呀先輩。それに、部長たちのために力を使いたい!」
「なら、焦らず。基礎からコツコツと力を伸ばせばいい。オレもそうしてきたからな」ナデナデ
「分かりました。頑張ります」ゴロゴロ
「ああ、頑張れ」
その後、夕食を食べ終わり一息ついてから、オレは学園に戻ることにした。アニメだと今頃、イッセーの奴が男子会を初めている頃だろう。
「それじゃあ、行ってくる」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「ギャーくんをお願いします」
「分かってる」
玄関にて、寝間着姿の奥さん二人に見送られながら学園に向かう。途中で、視線を感じたので近く公園によることにした。
「おい、居るんだろう。出てこいよ」
「おやおや、気付かれていたか」
そう言いながら物影から出てきたのは、何処かの学園の制服の上に中国の漢服を着て、槍を持った黒髪の男だった。
「何のようだ?」
「なに、巷で噂になっているドラゴンスレイヤーに挨拶をしに来たのさ」
「なるほど。お前は裏側の人間か」
「いかにも。俺の名前は曹操。名前から分かる通り、曹操の子孫だ」
「んで、その曹操が何のようだ。 挨拶だけなら、そんな槍はいらないよな?」
「出きれば、少しばかり手合わせを願いたくてね」
「手合わせ、ねぇ………」
どうした物かな? こいつの臭いからするにはただの人間だが。槍の方はイッセーの神器と似た臭いがするだよなぁ………。
「いいぜ。ただし、場所はオレが決めるがいいか?」
「構わないよ」
「オーケー」
曹操から了承が得られたので、懐にある小型ラクリマを空へ放り投げる。すると、オレと曹操をFAIRY TAILに出てきた大魔闘演武のスタジアムへと転移させた。
「ほほー、これは転移魔法の一種かな?」
「まー、そんなもんだ。ここなら、遠慮なくやれんだろう?」
「それは此方としても嬉しい限りだ。では、遠慮なく先手を貰うとしようッ!!」
「掛かってこいよ!」
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第43話
学園に向かうとしたら途中で、曹操と名乗る男と手合わせになったオレは、現在、曹操を攻撃を待っている。
「ふんっ!」
「………」
曹操からミドルレンジからの槍による連続突きが放たれるが、それをよく見ながら最低限の動きで回避する。
「流石は、ドラゴンスレイヤー。この程度の突きでは、魔法を使うまでもないと?」
「まぁな。てか、お前だって手を抜いてるじゃねぇか」
「やはり、見破られていたか。では、少し本気を出すとしよう!」ダッ
「へぇ………面白れぇな」ニヤリ
先程までとは段違いな速さで突撃してくる曹操に、闘争心が滾らされ。此方も応戦するために魔力を両手足に纏わせる。
「はぁぁああああ!!」
「ウオラァアッ!!」ガキン
「なっ!?」
「どうしたよ?」
どうやら、曹操は自慢の槍を弾かれたことに驚いているようだ。
「まさか、魔力を帯びた素手で『神滅具』の中でも最強と唄われる、この『
「なにを呆けてやがる。次はオレから行くぞ?」
「ッ!!」
ある程度、曹操の力量が見えたので魔力で加速せずに普通の身体能力の加速だけで曹操の懐に入る。オレの身体能力………というよりもナツの身体能力はオリンピック選手を簡単に超えるため普段の日常では出せないでいたのだ。
「速いッ!?」
「ウッッァア”ッ!!」
「ぐっ……!!」
手始めに曹操に向けて勢いを乗せた右ストレートを打ち込むと『
「へぇー、やるじゃねぇか」
「お褒めに預り光栄だね」
「久しぶりに手応えがある奴に出会えて、燃えてきたぞ!!」
「なら、俺も少し本気を出そう」
本当に久しぶりに手応えがある奴に出会えて闘志が滾らされ、魔力がオレの感情に反応して膨れ上がる。
それに合わせて、曹操も『
「行くぞ!」
「火竜の鉄拳!!」
「はぁぁあああ!!」
オレの連続の火竜の鉄拳に対して、曹操は聖なるオーラを帯びた『
「オラオラオラオラー!!」
「そりゃそりゃそりゃそりゃー!!」
互いに繰り出した技の魔力とオーラがぶつかり合い衝撃波を生み出す。しかし、実力はオレの方が上のようで拳と槍の切っ先がぶつかり合い、つばぜり合いのような形になるとジリジリとオレの《炎の滅竜魔法》が曹操の『
「バカな………!?」
「曹操、感謝するぜ。久しぶりに手応えがある相手と本気でないとはいえ、戦えて楽しかった。だから………お前に敬意を称してコレで決める!」
「雷天竜の擊鉄!!」
火竜の鉄拳を纏わせている拳を一気に属性を雷竜と天竜の魔力を融合させた、モード雷天竜の属性に変化させ。そのまま、超圧縮し螺旋回転させた空気に落雷と同様の電力を纏わせた《雷天竜の擊鉄》で『
「ぐああああっ………がはぁっ!!」ドガン
「これが………ドラゴンスレイヤーの………力………」バタリ
「楽しかったぜ、曹操。またやろうな」
意識を失った曹操に反応して小型ラクリマが停止する。ボロボロの曹操をそのままにしておくのは忍びないので天竜の魔法で傷を治してから公園のベンチに寝かせて、学園へと向かう。
「チワー!」
「あれ、龍呀?」
「どうしたんだい、こんな時間に?」
「いや、毒の滅竜魔法でお前たちの話を聞いていたら。面白そうな話をしていたから、急いで着たんだよ。(本当はアニメ知識だが)」
「なるほど、コブラの魔法か……」
「龍呀くん。できれば、どうして毒の滅竜魔法で君の家から僕たちの会話が聞こえてのか参考までに教えてくれるかな?」
「いいぜ。毒の滅竜魔法は、遠くでも生き物の音が聞こえるんだ。もっと簡単にいえば、敵の筋肉の音や心の声なんかも聞こえるんだよ」
「す、すごい! そんな魔法が使えるなら無敵に近いじゃないか!?」
「でもな、木場。そんな魔法にも弱点があるんだぜい」
「こんな凄い魔法に弱点? どんな弱点があるんだい、イッセーくん」
「音だ」
「音?」
「筋肉の音や心の声が聞こえるってことは、それだけ聴力がよくなる。逆に考えれば、そんな奴に爆音を聴かせたらどうなるよ?」
「そりゃー、耳に負担が………あっ!」
「そういうこと」
「確かに、イッセーの言うとおり本来の毒の滅竜魔法の使い手であるコブラは無敵に近いと思われたが、炎の滅竜魔法の使い手であるナツの雄叫びに耳をやられて敗北したんだ」
「なら、龍呀先輩も………」
「安心しろギャスパー。オレの場合は特別でな。他の属性の滅竜魔法がある所為か、意識しないとそういう能力は使えないようになってる」
「へぇー、意外と不便がないんだね」
「まぁな。それより、第一回『女子のこんなところがたまなく好きだ選手権』の話に戻すが。オレが女子のたまらなく好きなのところは、笑顔とか照れてるのが隠せてないのにツーンとする表情だな。やっぱり」
「ぐはっ!!」バタリ
「イッセーくん!?」
「イッセー先輩!?」
オレの言葉にイッセーは断末魔と共に倒れ伏せた。
「どうやら、自分の心が欲に溺れていると悟ったようだ。よかったな、イッセー」
「うるせいやい!」
そのあとも、朝まで男子だけで色々な話をした。
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第44話
曹操との手合わせとイッセー、木場、ギャスパーとの『男子会』をした翌週の土曜日。オレは、朱乃に呼ばれてとある場所に来ていた。
「ここは………神社?」
「あれ、龍呀?」
「おー、イッセー。どうしたんだ?」
「いや、朱乃さんに呼ばれてさ」
「お前も?」
「ってことは、龍呀もか?」
「ああ。大事な話があるからって、言われて場所はこの手紙に書いてあった場所を携帯で検索して来たんだ」
「てか、ここ神社だよな?俺や朱乃さん、悪魔が来て平気なのか?」
「神聖さを感じないから大丈夫だろう?」
「そっか! 龍呀は《白竜の滅竜魔法》が使えるから聖なる力が分かるのか」
「そういうこと。それより、行くぞ」
「ああ」
「ウサギ跳びでな」
「何処の修行僧だよ、それ!?」
てな感じで、それなりに段数がある石階段をスポコンアニメバリにイッセーにウサギ跳びをさせることにした。
「俺は後ろから何時でも、火竜の鉄拳を打てるようにスタンバルから」
「お前、鬼だろ!?」
「竜人?」
「なんで、疑問系なんだよ!」
「四の五の言わずに跳べ!脱兎のように」ボウッ
「跳ぶ、跳ぶよ!だから、その手に灯してる火を近付けないでくれぇぇぇぇ!?」ピョン、ピョン
半ば強引にイッセーにウサギ跳びをさせ、その背後から《滅竜魔法》で脅しながらオレも石階段を登っていく。階段を登っているとやがて、中間地点と思われる階段がない場合に着くと、一人の巫女さんが箒で掃除をしていた。しかし、その巫女さんの顔に見覚えがあった。
「朱乃………さん?」
「イッセー、あの人は朱乃じゃない」
「え? じゃあ、朱乃さんのお姉さんか誰かか?」
「いんや、あの人は朱乃のお母さんだ」
「お、お母さん!?」
「あら? 朱乃のお友達かしら?」
イッセーの声に朱璃さんはオレたちに気が付いたようだ。
「お久しぶりです、朱璃さん」
「あら?何処かでお会いしたことあったかしら?」
「ええ。十年ほど前に、前の姫島神社で」
「!?」
「当時、貴方は傷を負って意識がありませんでしたがね」
「では、貴方が………」
「ナツ・ドラグニルこと、狩谷龍呀です」
「そう、貴方が………。十年前に私と娘を助けていただき、本当にありがとうございます」ペコリ
過去の話を朱璃さんに伝えると、頭を下げて感謝の言葉を向けてきた。
「いえ、あれは神様から言われたことですから」
「神様?」
「ええ。それより、朱乃に呼ばれて来たんですが………」
「朱乃なら、本殿の横にある社務所に居ますよ」
「分かりました」
「では、また」
朱璃さんに朱乃がいる場合を教えてもらい、石階段を登り終えると聖の力を感じ、イッセーを静止する。
「まて、イッセー」
「龍─────ッ!?」
「おやおや、気付きましたか」
「そんな、わざわざ聖なる力の波動を撒き散らしておいてよく言うぜ」
「それはそれは」
「おい、龍呀。あいつ、何者だ? なんか、あいつを見ていると肌がピリピリすんだけど」
「奴は、ミカエル。熾天使の一人で、天使長だ」
「ミカエル!? 天使長!?」
「ほー、そこまでお気付きになるとは、イリナから聞いていた通りですね」
「アンタ、イリナを知っているのか!?」
「ええ。彼女は、私のセイントですから」
「遂に、天使も転生システムを導入かよ」
「ええ」
少しばかり、ミカエルと睨み合っていると社務所から小走りで巫女姿の朱乃が向かってくる。
「遅れて申し訳ありません、ミカエル様。それに、龍呀くんにイッセーくんも」
「別に気にしていませんよ」
「同じく」
「お、俺も」
「では、本殿にご案内します」
そのまま、朱乃が先導し、姫島神社の本殿へと入る。
「改めてまして、天使長を務めさせていただいてます。ミカエルです」
「リアス・グレモリーのポーン、兵藤一誠です」
「ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀だ」
「では、本題に入らせてもらいます。実は、赤龍帝である。兵藤一誠くんにある物を授けに来たのです」
「俺に?」
ミカエルがイッセーにある物を授けると言うと、ミカエルの胸元が輝き出すと一本の剣が現れた。それを見たイッセーは本能的に剣と距離を取った。
「ッ!!」ゾワリ
「な、なんすか、それ!?」
「これは、ゲオルギウス───聖ジョージといえば伝わりやすいでしょうか? 彼の持っていた龍殺しの聖剣『アスカロン』です」
「ゲオルギウス?聖ジョージ?」
イッセーがミカエルの言葉に疑問符を頭に上げていると左腕に宿るドライグが口を開く。
『有名な龍殺しだ。まあ、お前も少しは勉強しろ』
「うるせっ! てか、龍殺しってことは龍呀の魔法と同じ………」
「ああ。俺の滅竜魔法を剣にしたような物だ」
「す、すげぇ………」
「特殊儀礼を施してあるので、悪魔の貴方でもドラゴンの力があれば扱えるはずです。貴方のブーステッド・ギアに同化させるといった感じでしょうか」
「歴代の中でも最弱と噂される貴方の、良い補助武器になるかと思いまして」
「最弱………これでも色々と努力してるんですけどね。いえ、認めますけどね。でも、どうして?」
「大戦後、大規模な戦こそ無くなりましたが、ご存知のように。三大勢力の小規模なつばぜり合いは未だに続いています。」
「あれで、小規模な訳ねぇ………」
イッセーは、コカビエルとの戦闘を小規模な物なのかと呆気に捉えているようだ。
「この状態が続けば、いずれ皆滅ぶ。そうでなくとも、横合いから他の勢力が攻め込んでくるかもしれません」
「他の勢力?」
「イッセー的に分かりやすくいえば、北欧神話にでてくるアースガルズ。ギリシャ神話のオリンポス。他にもインド神話や日本の天照大御神等々。この世界には、ゲームとかに出てくる神々は殆ど存在する」
「マジかよ………」
「マジだ。この世界は小説のような物と違って、奴らは人間でも殺せる」
「え………?」
「簡単な話。オレが滅神魔法を習得すればいい。まぁ、その場合、どこかの神の雷なり炎なりを喰わないとダメだがな」
「その話は本当なのですか、狩谷龍呀!?」
「そいえばアニメで、ナツはギルド“
「なら、滅竜魔法が使える龍呀も使えることになるのか………。やっぱり、規格外」
「だとすると、龍呀くんの二つ名はいずれ、【ドラゴンスレイヤー】から【ゴッド・ドラゴンスレイヤー】になりますのね」ウフフフ
「ゴッド・ドラゴンスレイヤー………」
ミカエルは、朱乃の口から出た【ゴッド・ドラゴンスレイヤー】を復唱し、何やら感傷に浸っているようだ。
「話を戻すぞ。んで、アスカロンをイッセーのブーステッド・ギアに同化させるんだよな」
「ええ。くどいようですが、このアスカロンはいわば、悪魔勢力との友好の証として、貴方に授けるのです。それに今度の会談は好機とも思っているのですよ」
「好機?」
「三大勢力が手を取り合い、無駄な争いを無くすためのね」
「争いを………」
「過去の大戦の時、一度だけ皆が手を取り合ったことがありました。赤と白の龍が戦場をかき乱した時です」
「………」
「あの時のように、再び手を取り合えるよう。貴方に、赤龍帝に、いわば願を掛けたのですよ」
「………」
ミカエルの言葉に、イッセーはアスカロンを受け取るか少し迷っているようだ。そんな、イッセーに朱乃が声をかける。
「イッセーくん、ここは有り難く頂戴しましょう」
「あ、はい。朱乃さんがそういうなら」
どうやら、朱乃の声で腹を決めた様子のイッセーは、ミカエルから差し出されたアスカロンをブーステッド・ギア越しに掴もうとする。
「聖剣と同化って………そんなことできるのかよ?」
『神器は宿主の思いに応える。お前が望めば叶わんこともない』
「俺が望めば………」
『相棒、ブーステッド・ギアに意識を集中するんだ』
「おう!」
イッセーは、ドライグの指示通り。ブーステッド・ギアに意識を集中させながら、今度こそアスカロンの柄を掴んだ。
『波動を聖剣に合わせろ!』
「ああ!」
イッセーがブーステッド・ギアをアスカロンの聖なる波動と同調させると、アスカロンがブーステッド・ギアと融合し、手甲剣のような姿に変化していた。
「本当に合体しやがった………」
「これで、私の用事は済みました。では、私はこれで」
「あ、あの!俺、貴方に聞きたいことがあるんです!」
「生憎、今は時間がありません。会談の席か、会談後に伺いましょう」
「必ずお願いします」
「ええ。約束します、兵藤一誠。それと、いずれ貴方が宿す、聖なる滅竜の魔法も拝見したい物です。狩谷龍呀」
「機会があればな」
「では」
その言葉を最後に、ミカエルの身体を光が包み込み、一瞬の閃光のあと、この場から消えた。
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第45話
ミカエルが去ったあと、イッセーは部長に連れられて姫島神社から去っていき。オレだけが神社の中の客間に通され、朱乃が淹れてくれたお茶を飲みながら朱乃を待っていた。
「失礼します」
そう言って襖を開けて入ってきたのは、朱乃に朱璃さん。それに、バラキエルのおっさんも入ってきた。
そして、オレの向かい側に朱璃さん、バラキエルのおっさんが座り、誕生日席のような場所に朱乃が座った。
「私は、バラキエル。堕天使勢力の幹部だ」
「知っているでしょうが朱乃の母の朱璃です」
「ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀です」
「改めて、礼を言わせてほしい。龍呀殿」
バラキエルのおっさんがそう口にすると、姫島一家三人がオレに頭を下げた。
「あの時、貴殿がいなければ朱璃だけでなく。朱乃まで私は失っていたかも知れない。そのことを深く感謝を申し上げる」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いえ、そのことに関しては、お二人に話すべきことがあります」
「話すべきこと、とは?」
バラキエルのおっさんが疑問符をあげているが前に朱乃に話したことをバラキエルのおっさんと朱璃さんに話すことにしていた。
「実は、朱乃と朱璃さんを助けたのは偶然ではなく。襲われることをオレは前から知っていたんです」
「前から知っていた?」
「ええ。突拍子のない話ですが、オレはこの世界の住人ではない。異世界からの転生者なんですよ」
「異世界からの………」
「転生者………」
「それで、現代に転生する前にオレを転生させる神があなた方、姫島家族を助けて欲しいとの申し出がありまして、あなた方を助けました」
「なんと、そんなことが………」
「神が私達をお救いするために貴方を………」
「そんな訳で、偶然、あるいは神の気紛れといった形であなた方家族を助けました」
「仮に神の気紛れだとしても、貴殿が我が妻と娘を救ってくれたことに変わりはない。故に、貴殿は私たち家族の恩人なのだ」
「そうです。主人の言葉通りですわ」
「龍呀くん、私は貴方に救われたから今があるの。だから、感謝の言葉は受け取ってほしいの」
「………わかりました」
ここで感謝の言葉を受け取らないとエンドレスになる可能性があるので朱乃の言う通りに感謝の言葉を受け取り、朱乃が淹れてくれたお茶を飲む。鼻の中にお茶の香りが広がると同時に、朱漓さんが爆弾発言をする。
「ところで龍呀さん。貴方、家の朱乃を娶る気はあるかしら?」
「ブフーッ!!」
「しゅ、朱璃!?」
「か、母様!?」
「ゴホッ、ゴホッ!な、何故そのようなことをオレに?」
「朱乃は、子供の頃から男の子にモテるのよ。でも、誰一人としてお付き合いをしなかったのよ。それで、どうしてお付き合いしないのか聞いてみたの」
「そしたら、『大きくなってナツお兄さんと結婚するの!』なんて言うんですよ。でも、いずれはナツお兄さんとは違う男性とお付き合いすると思っていた矢先に」
「ナツお兄さん、張本人である龍呀さんに再会したのよ。母としては、初恋の人とお付き合いして、いずれは結婚してほしいものなのよ」
「は、はぁ………」チラリ
「もう、お嫁に行けない。////////」カアアアア
朱璃さんのいきなりの発言に戸惑いながら、朱乃の方をチラリと見ると、両手で顔を覆い、耳まで真っ赤に染めていた。
「だから、お付き合いしてくれるかしら?」
「え、えーっと、オレには既に婚約者が………」
「なら、朱乃と一緒に娶ればいいじゃない。朱乃は、私と同じそこらの娘よりも美人だし、料理もできるし、スタイルも良いほうよ。それに、夜の営みだってそれなりに………」
「か、母様!? 龍呀くんの前で、私のあられもない話をしないでください!」
「あら?でも、最近脱衣場の鏡の前で、『龍呀くんは胸が大きい方が好きかしら?』なんて言っていたじゃないの」
「なっ、ななな………!////////」
「(仮に朱乃を黒歌たちと一緒に娶ることに悪い気はしないが………。二人にバレた時が怖い)」
「だから、娘を娶ってくれるわよね? それともなにかしら? こんなにも辱しめておいて、責任を取らない気かしら?」
「朱乃を辱しめたのはアンタだよ!?」
「私を辱しめたのは母様です!?」
「朱璃、そこまでにしてやらないか?二人のことなんだし、私たちが口を出す必要は………」
「貴方はいいの?ここで朱乃を龍呀さんに任せておかないと、何処の馬の骨とも知れないちゃらんぽらんな男に娶られても」
「それはダメだ!龍呀殿、是非とも家の朱乃を妻に!!」
「お、お父様まで………」
「と、取り敢えず、婚約者に聞いてみます」
取り敢えず、その場凌ぎに客間から出て携帯で黒歌に電話をする。
『もしもし、龍呀? どうしたにゃん?』
「それが、ちょっと面倒なことになってな………」
『面倒なこと?』
「朱乃のご両親に朱乃を娶る気はないかと問われてな………」
『にゃっ!?』
「そんな訳で、黒歌に相談したんだが………。どうする?」
『………どうするも何も龍呀が決めなさい。私は、龍呀が決めたならそれに従うだけにゃ。白音も、グレモリーの女王なら納得するはずにゃ』
「黒歌、お前………」
『だから、あとは任せるにゃ~』
それを最後に、黒歌との通話が切れる。
「………」
「よしっ!」
腹を括り、朱乃と朱璃さん、バラキエルのおっさんが待っている客間に戻る。すると、朱漓さんが黒歌の返答を聞いてくる。
「龍呀さん、婚約者方は………」
「あー、それなんですが………任せるとのことで………」
「あら! なら、朱乃をもらってください!」
「………………朱乃。どうする?俺はお前の意思を聞きたい」
「………私は、あの夜からナツお兄さんを、龍呀くんをお慕いしています。//////」
「………分かった。改めて、三人目の奥さんとしてよろしくな。朱乃」
「はい!」
こうして、黒歌、小猫に続いて、朱乃までもがオレの奥さんとして加わることになった。本当、原作のイッセー、ごめんなさい。
そんな風に心のうちで原作のイッセーに謝罪していると、またもや朱漓さんが口を開く。
「朱乃、婚約おめでとう!」
「ありがとう。母様」
「無事に龍呀さんと朱乃の婚約が決まったところで、龍呀さんに提案なんだけど。朱乃を貴方の家で住まわせてくれないかしら?」
「まぁ、いいですけど」
「あら、ありがとう」
朱漓さんがどんどん朱乃のことを決めていく反面。バラキエルのおっさんはぶつぶつと朱乃と朱漓さんに聞こえないよう呟いているだろうが、この距離だとオレには普通に聞こえるのだが………。
「朱乃が婚約?朱乃が同居?ってことは………私がお爺ちゃんに?」ブツブツ
「………。(おっさん、話が飛躍し過ぎてるぞ)」
とまぁ、トップ会談の前に新しい奥さんの婚約と同居が決まったのである。
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第46話
朱乃が同居してから数日。最初、朱乃がウチに同居すると黒歌と小猫に話すと、地下の特訓場に連行され、二人してモード雷獣で襲い掛かって来やがったが、二人の魔力が底を尽きるまでひたすら攻撃を受け止めていた。
その後は、黒歌と朱乃が何故か料理の腕前で火花を散らし。大量の飯が出てきたがオレと小猫で残さず美味しくいただきました。
そんなことがあったが本日は、三大勢力のトップ会談当日。コカビエルを倒した、というのは建前でサーゼクスの奴がオレをトップ会談に参加させたのは十中八九。オレのアビリティ魔法である《滅竜魔法》が原因だろう。
「それじゃあ、行くわよ」
「「「「はい!」」」」
部長の声でオカルト研究部部員は返事をする。今回の会談には、オレの付き添いとして黒歌も同行することになっている。
「ギャスパー、良い子でお留守番してるのよ?」
『………』
「何かの拍子で、貴方の能力が発動してしまったら大変なことになるわ。分かってちょうだい」
部長は、段ボールに入っているギャスパーに優しく説明すると、段ボールから上半身だけ出して返事をする。
「は、はい」
「小猫に一緒に居てもらうから。お願いね、小猫」
「はい、部長」
「ギャスパー、大人しくてろよ? コレ貸してやるから」
「は、はい! ありがとうございます。イッセー先輩」
「お菓子も沢山用意したから」
「ありがとう。小猫ちゃん」
イッセーは、会談中にギャスパーが寂しくならないように持参したゲーム機をギャスパーに渡し。小猫は、ギャスパーのために家から段ボール一杯に詰めたお菓子をテーブルに乗せていた。
「オレからはコレだ」
「コレは?」
オレはギャスパーにフェアリーテイルの仲間の一人が持っている仮面をオレ流にアレンジした仮面を渡す。
「龍呀、それって………」
「これは、フェアリーテイルの仲間がとある魔法を抑えるために付けている仮面と似た物だ」
「やっぱり、ビックスローの仮面かよ。どうりで見たことがあるわけだ」
「ありがとうございます。龍呀先輩!」
「おう!」
ギャスパーのために色々と品を渡したあと、オレたちは会談の会場である。職員会議室に向かう。
そして、会議室の前に着くと部長が扉をノックし、なかへと入る。
「失礼します」
なかに入ると円形の大きなテーブルに五つの椅子があり。そのうちの4つに、サーゼクス、セラフォルー、ミカエル、アザゼルが座っており。魔王二人の後ろには、支取先輩と副会長。ミカエルの後ろにはイリナ。アザゼルの後ろにはヴァーリが立っていた。
「紹介する。私の妹とその眷属たちと、その協力者だ。先日のコカビエルの襲撃では、彼女たちと協力者が活躍してくれた」
「それはご苦労様でした。改めて、お礼を申し上げます」
「悪かったな、俺のところのモンが迷惑をかけた」
アニメ通り、アザゼルはコカビエルの件に対して悪びれた様子が見えない。
「リアスとその眷属はそこの席に座りなさい。龍呀くんは、こっちの席に座ってくれたまえ。その後ろに黒歌くんが立ってくれ」
「分かった」
「分かりました」
オレと黒歌はサーゼクスに勧められるままに、五つのうちの空いている一席に座り。その後ろに黒歌が立つ。
「これで参加者が全員揃ったところで、会談の前提条件を一つ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している。ということで構わないかな?」
「「「「「………」」」」」
「では、それを認知しているとして、話を進める」
サーゼクスの会議開始の合図でトップ会談が行われた。最初の話として、サーゼクスがコカビエルの件の一部始終を部長に映像ともに細くを求めた。
「以上が私、リアス・グレモリーとその眷属。ならびに、ギルド フェアリーテイルの狩谷龍呀と黒歌が関与した事件の顛末です」
「私、ソーナ・シトリーも彼女の報告に偽りがないことを証言いたします」
「オレもコカビエルを殺った身として、リアス・グレモリーの報告に偽りがないことを、ギルド フェアリーテイルに誓って証言する」
「ご苦労、下がってくれ」
「ありがとう。リアスちゃん、ソーナちゃん☆」
「………ッ!!////」
おやおや?支取先輩、セラフォルーにお礼を言われて嬉しいようだ。表情に出ないようにしているが、心の音では、「お姉様に褒めてもらった!やったー!」てきな音が聞こえてくる。
「リアスの報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
「意見もなにも、コカビエルが単独で起こしたことだからな」
「預かり知らぬところだと?」
「目的が分かるまで游がせておいたのさ。フフッ、俺自身が町に潜入していたとは、奴も思わなかったようだが。もっといえば、ドラゴンスレイヤーの雷を帯びた炎の方が想定外だったようだがな。ここは中々、良い町だぞ」
アザゼルが話を反らそうとするのでオレが咎める。
「話をずらすな、アザゼル」
「だから、ヴァーリを始末に行かせただろうが。だが、ヴァーリがコカビエルを始末する前にお前さんが奴を始末していたがな。んで、奴の処罰は地獄の底で『永久凍結』の刑にした。もう出て来られねぇよ」
「問題はコカビエルが事を起こした動機です。あなた方に不満を抱いていたという」
「ああ。戦争が中途半端に終わっちまったことにそうとう不満だったようだ。俺は今更、戦争なんぞに興味もないがな」
「不満分子ってことね?」
セラフォルーの言葉にアザゼルも他人のことを言えた口か、のように口を開く。
「フッ、お前さんらも色々とあるらしいじゃねぇか?」
「……………」
「それは今回のことには関係のない話だ。今回の会談の目的は────「もう面倒くせぇ話はいい」………」
「とっとと和平を結んじまおうぜ、と言いたいところだがその前に」
「ドラゴンスレイヤー、お前さん何者だ?この町に突如として現れ。何より、お前さんが使う《滅竜魔法》。それを何処で覚えた?もしくは、誰に教わった?」
「そうだな。その話をしておくか」
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第47話
アザゼルから質問で、皆のオレへの疑問を話すのに、ちょうどいい場なので話すことにした。
「まずは、こいつを見てくれ」
オレは、懐に入れていた収納ラクリマからA4サイズの資料を四人に渡した。その資料の内容は、オレが転生者である内容だ。
「これは本当なのですか? 狩谷龍呀」
「ああ、そうだ。オレは、異世界からの転生者だ」
「異世界からの転生ねぇ………」
「俄に信じ難いわね」
「なら、呼べばくるだろう」
「「「「え?」」」」
「見てるんだろう?エセ神様!」
エセ神様を呼ぶと姿は見えないがオレたちの脳内にエセ神様の怒った声が響いた。
【誰がエセ神様だッ!】
「これは………!」
「おいおい、マジかよ………」
「これが、異世界の神」
オレと黒歌を除いた全員が本当に異世界に神がいることに動揺を隠せないでいた。
「これでオレが異世界の転生者なのは証明できたな」
「そ、その様ですね」
【んで、龍呀くん。私を呼んだのはコレだけ?】
「まぁな」
【キミは私を何だと思っているんだい!?】
「自分のミスで、罪もないオレの人生を一度終わらせた救いようもないエセ神様」
【うぐっ!? それを言われると弁明のしようもない………】
「以上、オレの正体でした」
そう締め括るとするとアザゼルが止める。
「待てよ、ドラゴンスレイヤー」
「あ?」
「お前さんには、他にも聞きたいことがある。何故、ソーナ・シトリーの眷属にいる小僧の神器の使い方を知っていやがった? あの小僧の言い方だと、悪魔勢力は神器のことを深く理解していない様だった」
「あー、それな………。なぁ、エセ神様。こいつらに原作のことを話してもいいか?」
「原作?」
オレの言葉にイッセーは疑問に思ったか、言葉をもらす。
【別にいいよ。ここは、謂わばIFの世界だから】
「了解」
「んで、アザゼルの質問に対してだが。オレはこれから体育祭までに起こる出来事を物語として知っているからだ」
「「「「「!!」」」」」
「龍呀くん、それはどういう………」
「簡単な話だ。兵藤一誠を主人公とした物語を転生前に見てきたんだ」
「俺が主人公!?」
「しかし、オレはその物語を破壊してしまった。その証拠に、小猫と黒歌の和解に続き、朱乃の母親の生存。これらがオレが原作を壊したことにより生まれた産物だ」
「そんな訳で、イッセー」
「なんだよ」
「強くなれ。今後、お前は色々な奴らと戦う運命にある。それに関して、オレは必要最低限のことしか関与しない」
「………」
「そんな色々な奴らの中に、部長やアーシアの命を付け狙う者もいる」
「!!」
「二人を守れるのは、木場や小猫でもゼノヴィアでもない。ましてやオレや黒歌でもない。お前だけなんだ、イッセー」
「俺が部長とアーシアを………」
「だから、強くなれ。オレの説明は以上だ。」
オレとエセ神様の話を聞いた皆は、未だに信じ切れていないか、はたまた情報を脳内で整理しているのかしばらくの間沈黙が訪れた。
その後、アザゼルが口を開く。
「取り敢えず、ドラゴンスレイヤーのことは理解した。次に、和平を結ぶに当たっての問題だ」
アザゼルの言葉にイッセーが問う。
「問題?」
「三竦みの外側にいながらに世界を動かすほどの力を持っている。赤龍帝、白龍皇、ドラゴンスレイヤー、お前たちの考えを聞きたい」
アザゼルからのその質問を真っ先に答えのはヴァーリだった。
「俺は強い奴と戦えればいいさ。例えば、《滅竜魔導士》の狩谷龍呀とかな」ギラギラ
「約束もあるしな、ヴァーリ」ギラギラ
「ああ。そうだな」
「フッ、戦争をしなくとも強い奴は五万といるさ。それに、どうやらドラゴンスレイヤーはお前の挑戦を受けてくれる物好きらしいしな」
「そんじゃ次、ドラゴンスレイヤー。お前の意見は?」
「オレか?そんなの決まっている。悪魔勢力は知っているがオレの妻である、黒歌、小猫、朱乃に手を出す輩は神だろうがドラゴンだろうが滅するだけだ」ゴゴゴゴ
「「「「………」」」」ゴクリ
「「「「………」」」」ガタガタ
「………」ギラギラ
どうやら、無意識のうちにこの部屋へ圧力をかけていたようでトップは息を飲み、イッセーたちは黒歌、小猫、朱乃を除いた全員が顔を青くし身体をガタガタと振るわせ、ヴァーリはその瞳にギラギラとした闘争の火を宿らせていた。
「悪い。なんせ、前に一度そこのシスコン魔王に黒歌を襲われたと勘違いした所為で、黒歌たちが狙われるとなるとどうも理性が少し危ういみたいだ」
「その節は、本当にすまなかった」
「なに、気にするな。サーゼクスのお陰で、黒歌を自由の身にすることが出来たんだからな」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「ドラゴンスレイヤーに関しては、そいつの女たちに手を出さなせければいいわけだ。それじゃあ、最後に赤龍帝。お前の意見を聞かせて欲しい」
「いぃぃぃ!? えーっと………いきなりそんなことを言われても困りますけど………」
「なら、イッセー、こう考えろ。和平を結べば、部長といずれ結婚して家庭を築づける。つまりは、童貞卒業だ」
「なっ!?//////」
「なにぃぃい!?」
「和平を結ばなければ、オレが言った奴ら以外に部長やアーシアを付け狙う奴らが増えて、童貞卒業も出来やしない」
「和平!和平に賛成!和平、サイコー!!」
「因みに、オレが元居た世界の物語の兵藤一誠もアザゼルに、『和平を結べば、種の存続が重要になり。リアス・グレモリーを毎日抱けて、子作りに励める』と言われて、和平に賛成していたぜ」
オレがそう説明すると、部長、朱乃、小猫、アーシア、木場が苦笑いやため息を吐いていた。
「イッセーくん、サーゼクス様が居られるんだよ?」
「あ……………」
「フフフフ」クスクス
サーゼクスはイッセーの和平に賛成する理由に肩を震わせながらクスクスと笑っている。そんな、兄を見ながら部長は恥ずかしいそうにしている。
「もう、貴方って人は………」
「あらあら」クスクス
この滑った空気を打破しようとイッセーは改めて自分の意志を宣言する?
「と、とにかく! 俺の力は、リアス様と仲間たちのためにしか使いません! これは絶対です!」
そのあとは、アニメの通りにイッセーがミカエルと、アーシアとゼノヴィアの教会からの追放の話。神の『システム」の話。アザゼルにはレイナーレたちの件の話をする。途中、イッセーがアザゼルに暴走しそうになるが部長が止める。
そして、アザゼルがレイナーレの件に対しての償いをすることを話そうとすると駒王学園全体の空間に異変が起きた。
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第48話
『!!』のサイズで行きます。
イッセーがミカエルとの話が終わり。アザゼルが償いの話をしていると駒王学園全体の空間に異変が起きた。
オレはそのことをアニメで見ていたため、異変を感じた瞬間に濃密な竜の波動を波のように、この部屋だけに放出した。
「波ッ!!」
「これは………」
「一体………」
「時間が停止したのか?」
「よう。全員、動けるな?」
オレの竜の波動でギャスパーの神器の影響を受けなかったようで、三大トップと黒歌、イッセー、部長、木場、ゼノヴィア、イリナ、ヴァーリのような特殊な能力や剣を持たない者でも動けるなようになっていた。
「ドラゴンスレイヤー、今のはドラゴンの波動だな?」
「ああ」
「どういうこと、龍呀?」
アザゼルの言葉に、部長が問うとサーゼクスがヒントを出した。
「リアス、龍呀くんの瞳をよく見てみなさい」
「龍呀の瞳?」
「ッ!!」
「お、おい、龍呀。その目………それにその陽炎のようなユラユラとした物は………」
「アーシアとゼノヴィアを除いたグレモリー眷属なら分かるだろう? これは滅竜魔法の副作用だ。ほれ」
この頃になって、滅竜魔法の副作用が目に見えるようになった証拠を眼やオーラ以外にも見せることにした。すると、アーシアが驚きのあまり声をもらす。
「龍呀さんの両手が……」
アーシアの言うとおり、制服であまり見えていないがオレの両手は竜化が始まっている。右腕は肩の辺りまで完全に竜化し、左腕は肘の辺りまで白い竜の腕に変化している。コカビエルとの戦闘から少し経った頃、アニメのように皮膚がボロボロと剥がれ落ちたのを確認した時は流石に驚いた。
そして、それから今まで黒歌、小猫、朱乃にバレないように魔力で右腕を隠していた。
「おい、龍呀。竜化がそこまで進んでいるなら、味覚は!? 触覚は!?」
「そんな話は後だ。今は敵だ」
「敵!?」
イッセーの質問を後回しにして、敵のことを教えると会議室が揺れ出した。イッセーたちは、窓際にかけより外を見る。
「あれは、なんだ………?」
「あれは、魔術師ね」
「魔術師?!」
「まったく、魔女っ子の私を差し置いて失礼なのよ!」
「しかし、先ほどの力は………」
「ギャスパーの神器だ」
「ギャスパーの!?」
先ほど、オレが竜の波動で無効した力についてミカエルが疑問を口にしたので答える。すると、その答えに部長とイッセーが驚く。
「停止能力を持つ者は、滅多に存在しない。恐らく、敵の手に落ちたと見るべきだろう」
サーゼクスのギャスパーが暴走した原因を説明したあとに、部長に前世のアニメで見た奴を問うことにした。
「部長、残りの戦車の駒は部室にありますね?」
「ええ、あるけど………なるほど、そう言うことね」
「キャスリングか」
「はい」
どうやら、オレの質問で質問の意図を部長は読み取ってくれようだ。因みにイッセーはキャスリングを知らないようで木場がアニメ通りに説明していた。
「あとは、リアスと誰か………」
「俺が行きます!」
「イッセーくん………」
「龍呀の言葉が本当なら、俺しか部長とアーシアを守れない。部長が危険な場所に行くなら、俺が部長を守るために行きます!」
「イッセー、あなた………」
「イッセー、念のためにコレを小猫に」
「龍呀、これは?」
「オレの魔力を結晶化させたもの。簡単にいえば、MPポーションの結晶体だと思ってくれ。もしも、小猫が“
「アレ?」
「ほう、ドラゴンスレイヤーは珍しい物を持っているな。あとで、研究させてくれよ」
「却下だ」
「チッ!ケチな奴め」
オレがイッセーにオレの魔力を封じ込めた魔力結晶を渡すと研究オタクのアザゼルが興味を示し提供を求めたが却下するとふて腐れやがった。
「それよか、アザゼル。テロリスト共とお前が神器持ちを集めている理由を皆に説明してやれよ。その間にグレイフィア。イッセーを部室に飛ばす魔法陣を構築しろ」
オレはアザゼルとグレイフィアにそう言いながら魔力結晶をグレイフィアに投げ渡す。
「頼むよ、グレイフィア」
「わかりました」
「てか、マジでそんなことまで知ってのかよ、お前さんは………」
「アザゼルが説明している間に、ヴァーリ。少しゲームをしないか?」
「ゲーム?」
「オレたちが外に出て、魔術師たちを多く倒した方が勝ちの単純なゲームだ」
「フッ、おもしろいな。いいかい、アザゼル?」
「そうだな。白龍皇が敵を撹乱していてくれた方がこっちも楽に動けそうだしな」
「そういう訳だから、君の誘いに乗るよ」
「なら、ゲーム開始の合図は、お前が『禁手化』状態になったらだ」
「いいだろう」
「オッシャー! 燃えてきたぞ!!」
ゲームを開始するために会議室から飛び出し、ヴァーリと共に魔術師たちが大量にいる外へと出る。そして、オレは地上で空中で飛翔するヴァーリが『禁手化』するまでは腕組待機する。その際、魔術師からの魔力攻撃を竜のオーラで相殺させる。
「────禁手化」
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!』
「ゲームの………始まりだぁぁぁあ!!」
ヴァーリが『禁手化』したので一気に三割ほど魔力を解放して、雄叫びを上げる。雄叫びを上げ終わったら、足に天竜の魔力で空気を凝縮して足場として空を駆ける。
「な、なんだコイツ!?」
「空中を駆けてる!?」
「何、驚いてんだよ。てめえらだって、空飛んでだろうが。それよか、行くぜ!」
「オラァア!!」
「がっ!?」
「まだまだ!」
「「うわああああ!?」」
空を飛んでいる魔術師に近づくと、魔力を帯びた拳で殴り飛ばし、怯んでいる奴は頭を掴み、仲間の魔術師に投げつける。
「ほらほら、どうした? かかってこいやぁ、オラ!」
「な、嘗めるな!」
「たかだか、一人で!」
「なら………止めてみなッ!!」
そこからはひたすらに楽しんでいた。考えて動いて、連係もする奴を相手するのは黒歌と小猫くらいしか居ないので、流石に自分の嫁さんとなると手加減をしてしまうからだ。
けれど、今相手しているのは本当の敵だ。ならば、遠慮なしに暴れられる。敵の頭に踵落としを落とし、グラウンドにめり込ませたり、思い切り顔面をなぐり、蹴り飛ばし、投げ回したり、叩きつけたりと思う存分に闘いを楽しめる。
そんなことを思いながらヴァーリを見ると、魔力で生成した青い雷で敵を一掃していた。
「そろそろ、身体も温まって来たし。真面目にやるかな」
「雷竜の咆哮!!」
流石に真面目にやらないとゲームを吹っ掛けた側として面子が立たないので、滅竜魔法を使って行くことにした。
個人的に思うことなのですが、魔剣創造と聖剣創造も『神滅具』に入ると思うんですよね。
二つの能力は創造する剣に能力の付与なので神殺しや身体能力の強化とかで神や魔王クラスも屠れると思うのです。
他にも某の黒いアーチャーのように小さい剣を敵の体内に潜り混ませて、内側から串刺しにするなんてこともできると思うんです。
この話に何か意見がありましたらコメントをお願いします。
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第49話
《sideイッセー》
龍呀とヴァーリが会議室から飛び出し、ヴァーリの奴が意図も容易く『禁手化』をしたの合図にゲームと称した蹂躙が始まった。
「あんな簡単に禁手化をしやがった………」
「アザゼル、先ほどの龍呀くんが言っていた話の続きだ」
「分かってるよ。俺たちが神器持ちを集めていたのは備えていたからだ」
「備えていた?戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いですね」
ミカエルさんが呆れるように言う。
「言ったろ? お前らに戦争はしない。てか、ドラゴンスレイヤーがリアス・グレモリーを付け狙う奴らの話をした時に俺たちは出てきてねぇだろうが」
「確かに、龍呀の奴は堕天使勢力のことは何も言っていなかった」
「なら、何に備えていたのですか?」
「────『禍の団』」
「カオス・ブリゲード?」
聞きなれない単語だが、サーゼクス様もご存知ない様子。なら、龍呀が言ってた部長とアーシアを付け狙う奴等の名前なのか?
「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からもうちの副総督のシェムハザが不審な行動をする集団に目をつけていたのさ。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ」
「危険分子?」
「なかには、禁手に至った神器持ちの人間も含まれている。加えて、『神滅具』持ちも数人確認してるぜ」
「その者たちの目的は?」
ミカエルさんがアザゼルにそう訊く。
「破壊と混乱。単純だろう? この世界の平和が気に入らないのさ。───テロリストって奴はよぅ」
「そんな奴等にギャスパーが利用されてるなんて………許せねぇ! 部長、必ずギャスパーを救い出しましょう!」
「ええ、そうね。イッセー!」
「あぁ、行く前にちょっと待ちな」
「なんだよ?」
「コイツを持っていけ」
アザゼルから腕輪の様な物を二つ渡されたので受けとる。
「これは?」
「その腕輪が『禁手化』の対価の代わりになる代物だ」
「じゃあ、これがあれば!」
「ただし、使うのは最後の手段にしておけ。体力の消費までは、調整できなかった」
「………分かってる。それで一度、失敗しかけてる」
「もう一つはハーフヴァンパイアに付けろ。そうすれば、暴走を抑えてくれるはずだ。それと、いいか?」
「今までは、ドラゴンスレイヤーが力を貸してくれたから上手くいっただけだ。お前は、人間に毛が生えたような悪魔だ。力を飼い慣らさないと、そのうち力に殺されるぞ」
「………」
「お前自身が、神器の弱点なんだからな」
「分かってるさ。そんなこと………」
アザゼルが言う通り、今までの戦いには必ず龍呀がいた。アーシアを助ける時も、ライザーの時も、コカビエルの時も、そして今も………。
『赤龍帝の籠手』を持っていても持ちの主が弱っちいままじゃあダメだ。龍呀が知っている物語の“兵藤一誠”はどうやって強くなったんだ?この戦いが終わったら龍呀に聞いてみよう。
今よりも強くなって、龍呀に守ってもらうんじゃなくて。俺が皆を守り、龍呀と背中合わせで戦えるように成るために。
「サーゼクス様、魔法陣の準備が完了しました」
「そうか………ッ!!」
グレイフィアさんが転移魔法の構築が完了したことをサーゼクス様に伝えると会議室の中でグレイフィアさんの転移魔法とは違う。オレンジ色の転移魔法が出現した。
「この魔法陣は!?」
「グレイフィア、リアスとイッセーくんを早く飛ばせ!」
「はっ!」
グレイフィアさんは俺と部長を会議室の隅に行くよう急かせると、小さな魔法陣を床に展開した。
「お嬢様、ご武運を」
「ちょ、ちょっとグレイフィア!? お兄様!」
▽▲▽
《side龍呀》
ヴァーリと共に魔術師共を片っ端から倒していると、突如としてサーゼクスたちとは違う悪魔の臭いがオレの鼻についた。
「あ?もう、あのメガネが来たのか」
「おーい、ヴァーリ。カテレア・レヴィアタンが来たが、お前さんは指示とか受けてないのか?」
前世の今後の展開を知っているのでヴァーリに普通に聞いてみる。
「君は本当に未来を知っているのだな。ならば、遊びはここまでにするか」
「その口振りからするにやっぱり、アースガルズとの戦いとかでスカウトを呑んだ口か?」
「その通り。アースガルズの神々と拳を交えるのはとても魅力的でね。俺には、和平なんてどうでもいい。強い奴等と戦えればね」
「まぁ、止めても無駄なのは知っているし。今後の展開に障害が出るから止めねぇよ。んで、やるか?」
「ああ!」
「………」
「そらぁあッ!!」
「遅せぇよ」
「がはっ!?」
闘争心が最高潮になったヴァーリは、高速で近づいてくるのでギリギリの距離で軽く後ろにステップを踏み、顔面に手加減無しの回し蹴りを決めてアザゼルの方へ蹴り飛ばす。すると『白龍皇の鎧』の兜が砕かれたヴァーリが飛んで来たことにアザゼルとカテレアが驚く。
「な、なんだ!? ヴァーリ?!」
「どこから………!?」
「おーい、アザゼル。ヴァーリの奴、禍の団にアースガルズの神々とバトリたいから反旗を翻したそうだ。だから、蹴り飛ばした」
「おいおい、マジかよ。あの、ヴァーリを簡単に蹴り飛すとか、とんでもねぇ。やっぱり………」
「あの人間が白龍皇を………? そんなバカな話が───」
「あいつをただの人間だと思うなよ。あいつは、俺たちの知らない魔法でドラゴンを滅する力を持ってる人間だ」
「では、あの者が………!」
「ああ。ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士でドラゴンスレイヤーだ」
とかなんとか、空に浮きながらオレの台詞を取ったことを普通に聞いていた。
「アザゼル! 人の台詞を取るなよ!?」
「そこからこっちの話も聞こえるのかよ」
「そこの貴方、我々と共に来る気はありませんか?」
「ねぇな。だって、お前タイプじゃないし」
「なっ………!?」
「ふははははは!! ドラゴンスレイヤーの奴、即答かよ。それにタイプじゃないとか。お前さんも振られたな、カテレア・レヴィアタン」
「魔王の末裔である、このカテレア・レヴィアタンが人間ごときに辱しめられるなんて! 死になさい、人間!!」
どうやら、スカウトを断ったことと、タイプでないことを言ってたら頭に来たようで魔法を放ってくるがオレには通用しない。
「おっ、飯か。いただきまーす」
「は?」
「へ?」
「あーん」モグモグ、ゴックン
「んー。魔導師の奴らよりは、不味くもなく。超普通な味」
「ま、魔法を食った!?」
「ま、魔法を食べた!?」
カテレアから放たれた魔法を食っていてると、カテレアとアザゼルが驚きのあまり声を上げる。
「おい、アザゼル。何で、お前驚いていやがる。資料を見ていたろう。このクソ総督」
「見たが半信半疑だったからな………。てか、クソ総督ってなんだ!クソ総督って!」
「そんなのは、お前以外に───ッ!!」ガシッ
「お喋りされるほど、手を抜かれているとは心外だな」
アザゼルに話している最中に、青い閃光となって突撃してきたヴァーリの拳を受け止める。てか、人が話しているのに遮るとは礼儀がなってない。なので、お仕置きに腹へ膝をめり込ませ、そのまま空へと放る。
「おい、人が話してるのに遮るなよ。アザゼルお父さんに教わらなかったのか?ええ?」
「がはっ!?」
「………そんなことはどうでもいい!」
「ひでぇな、おい。昔はもっと可愛げがあったのに………」
「だとよ?ヴァーリくん」
「今は、キミと闘うことしか興味はないねッ!」
そう言うと今度は魔法弾を使った戦法に変更して来たので、全て喰らう。
「ヴァーリ、その戦法は悪手だ。オレには、魔法というものは全て効かない」
「しかし、どこまで耐えられるかな?」
「オレはお前と違って、限界は存在しない。オレが魔法を喰らうのは呼吸や食事と同じなんだよ。それに、お前だって理解しているだろう?」
「オレが実力の半分も出していないことに」
「ああ。気付いていたさ。しかし、キミは俺に触れた。アルビオンの半減の力でキミの魔力を奪って、本気にさせてやるさ」
「できるものならやってみな」
「アルビオン!」
『Divide!』
ヴァーリが『白龍皇の光翼』でオレの力を半減させようと魔力を奪うと案の定、オレの膨大な魔力がヴァーリの身体を蝕む
「これはッ……があああああ!?」
『なんて魔力の量だ!? ヴァーリ、すぐに吸収した魔力を放出しろ! ヴァーリ!』
「バカな奴だ。オレが本気を出していないの知っていながらそれでも奪うとか。バカとしかいえねぇよ」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ」
「な、なんて魔力のデカさだ。キミは、本当に人間なのか?」
「いや、さっきの話でオレが竜化してる話をしたよね?もう人間じゃなくて、竜人だろう。普通」
ヴァーリがアルビオンに促されるように奪った魔力を放出し、息を切らせながらボケたのでツッコンでしまった。
「まぁ、いいや。んで、まだやるのか?」
「無論。今の俺が、どこまでキミに通用するのか試してみたい」
「わかった」
「では、行くぞ!」
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第50話
《sideイッセー》
サーゼクス様の声で、グレイフィアさんの転移魔法で転移させられると気付いた時には、既に部室についていた。
そして、最初に俺たちの存在に気付いたのはテロリストではなく。ギャスパーと小猫ちゃんだった。
「あれ? 部長にイッセー先輩?」
「………」チラ、モグモグ
「えーっと、どういう状況かしら?これは?」
部長が驚くのも無理もない。何故なら、ギャスパーはソファーの上で俺が貸したゲームをピコピコとやっており、小猫ちゃんは一心不乱にお菓子を食べている。
また、部室の壁には至る箇所に猛獣の鋭い爪か何かで切りつけたあとや穴が空いていた。何より一番驚くのが────。
「むぐぅぅっ!?」ジタバタ
「んんっ!んぐっ!んぐぅぅぅ!」ジタバタ
「んんんっ!んんんっ!」ジタバタ
ギャスパーを捕らえようとした魔導師たちが縄で亀甲縛りせれて天井から吊るされており、加えて猿轡を咥えさせられており、だめ押しに臍の当たりに蝋燭をギリギリ当たるか当たらないかのラインで立てている。
こんな状況を見たら驚くのも仕方ない。そして、こんな状況をギャスパーが説明してくれた。
「それがですね………いきなり、この人たちが襲ってきて小猫ちゃんが対処していたんですが。この人たちが小猫ちゃんを怒らして、こうなりました」
「怒らした?」
ギャスパーの説明に疑問を抱き、ギャスパーに俺は聞いた。
「この人たちは、小猫ちゃんのお菓子を踏み潰したんですよ。それも多分、龍呀先輩のお手製のお菓子を………」
「「あ………」」
ギャスパーの返答で、小猫ちゃんが怒った理由に部長と一緒に納得してしまった。そりゃ、怒るわ。
「五月蝿いですよ。このメス豚ども」パチンパチン
「「ん“ぐうううっ!?」」
「小猫ちゃん、怖ッ!?」
魔導師たちが五月蝿かったようで、雷を帯びた掌で亀甲縛りで動けない魔導師たちのお尻を容赦なくひっぱたいた。加えて、戦車の駒の力も遠慮無しに使ってるようでひっぱたいた力でグルグルと回転している。小猫ちゃんまでドSになってる………。
「ふ、二人が無事なら、そ、それでいいわ………」
流石の部長も小猫ちゃんの豹変振りには引いているようだ。俺もこれは引いている。
「あっ、小猫ちゃん。龍呀から、魔力結晶を小猫ちゃんに渡すよう言われてたから渡すよ」
「ありがとうございます」ガリッ、ゴックン
「「ッ!!」」
ポケットに入れていた魔力結晶を小猫ちゃんに渡すと、小猫ちゃんは直ぐにそれを口に放り込み、結晶を噛み砕いた。
すると、魔法のセンスがない俺でも分かるくらい。デカい魔力が小猫ちゃんの中にあるのが感じられた。加えて憶測だが、小猫ちゃんが噛み砕いた魔力結晶の属性はどうやら、《雷》だったようで小猫ちゃんの身体に某雷の忍者のような薄い水色の雷が目視できるくらい帯電していた。
「こ、小猫ちゃん………それって………」
「雷の鎧です」
「やっぱり。それに技名も同じかよ……」
「イッセー、雷の鎧とは何かしら?」
「えっと、とある漫画の技を龍呀が小猫ちゃんの《雷の鎧》のモチーフにしたと思うんですが、能力は全身体能力向上と、この雷に触れた相手に致命傷を与えるものだと思います」
「そうなの、小猫?」
「はい。その通りです、部長。龍呀先輩の修行で身に付けました」
小猫ちゃんが部長の質問に返答すると帯電した雷が収まる。てか、小猫ちゃん。《雷の鎧》を制御できるのかよ!?
「と、取り敢えず。小猫とギャスパーが無事ならそれでいいわ」
「す、すみません」
部長が言うように確かに二人が無事で良かった。
「イッセー、アザゼルから受け取った腕輪をギャスパーに」
「はい、部長!ギャスパー、コイツを腕に付けてみろ」
「イッセー先輩、これは?」
「アザゼルの奴が、神器の暴走を抑える効果があるという腕輪だ」
「この腕輪にそんな力が………」
ギャスパーは、俺から受け取ったアザゼル製の腕輪を付ける。しかし、ギャスパーの神器はまだ暴走したままだ。
「あれ?何も起きねぇぞ?」
「もしかして、不良品かしら?」
腕輪でもダメだとするとどうする?龍呀が知っている物語の俺はどうやって、この状況を乗り越えた? 頑張って色々と龍呀の言葉を思い返しているとある言葉を思い出した。
───イッセーの血をギャスパーに飲ませれば、ギャスパーの神器はギャスパーの制御下に完全に置かれますよ────
そうか!俺の、赤龍帝の血だッ!? そうと決まれば、ギャスパーには悪いが俺の血を飲んでもらうことにした。それにまず………。
「アスカロン!」
『Blade!』
新たな音声と共に、赤龍帝の籠手から甲から伸びたアスカロンで右手の掌を軽く一閃する。少し痛いが我慢だ。そんな俺の行動を見せた部長は声をあげる。
「い、イッセー?!」
「大丈夫ですよ、部長。ギャスパー、よく聞け?龍呀の奴、本当は俺たちとは別の世界の人間なんだとさ」
「えっ?」
俺の言葉で驚くギャスパーに、龍呀に俺が主人公だと聞いた時に感じたことを包み隠さずに伝える。
「そんでさ、あいつの知ってるもう一人の俺はさ。その世界に存在する、とある物語の主人公なんだとよ。驚くよな?スケベで変態で弱っちくてどうしようもない俺がだぞ?」
「そんな俺でも主人公になって、色々な人に憧れられる対象になったりしてるんだと思う。だからさ、ギャスパー。俺たちのために、俺の血を飲んでくれ」
「………」
「これからも俺は、お前も含めてグレモリー眷属としてリアス・グレモリー様を守りたい。多分、俺だけじゃあ、どうしようもない時がある。そんな時、ギャスパーが力を貸してくれれば守れるはずだから」
「頼む!力を貸してくれ!」
「イッセー、あなた………」
そうだ。俺は龍呀の知ってるような“兵藤一誠”には成れない。不様に負けるかもしれない。けれど、俺一人じゃなくて、お前や木場、小猫ちゃん、朱乃さん、ゼノヴィア、時には部長やアーシア、守る存在である二人にも頼ってしまうと思う。けれど、どんな不細工でも仲間を守りたい。大切な女性たちを守りたい。だから、頼む、ギャスパー!
「イッセー先輩………」
「分かりました。イッセー先輩は、僕を見捨てずに親身になってくれました。こんなことで恩返しの一つができるのであれば、飲みます」
「ギャスパー!」
「では、いただきます」ペロリ
ギャスパーが俺の右手から滴る血をペロリと舐めると空気が一辺した。不気味で言い知れない悪寒が俺の身体を駆け巡ってた、のだが───力が覚醒してもギャスパーは締まらなかった。
『やっぱり、血ィィ生臭くて不味い………』
「おいおい………」
どうにかギャスパーの暴走は止まったようなので一安心だな。あとは、残りのテロリスト共だ。
「ギャスパーの暴走も収まったことだし。魔王様たちのところへ行くわよ。三人とも」
「「「はい、部長!」」」
俺たちは、みんながいる新校舎に向かおうとすると旧校舎の廊下に何かが飛来してきた。
「な、なんだ?!」
「フフフフ!この俺は簡単に蹴り飛ばすとは。やはり、最高だよキミは!狩谷龍呀ッ!!!」
「ヴァ、ヴァーリ!?」
どうやら、ヴァーリは龍呀と戦闘していて、それにより新校舎からここまで吹き飛ばされて来た様だ。てか、新校舎からここまでどんくらいあると思ってんだ。規格外過ぎるぞ龍呀………。
そんなことを思っていると態勢を立て直したヴァーリが粉々に粉砕された『白龍皇の鎧』を瞬間で修復する。
「奴の鎧は、修復能力があるのかよ!?」
『俺たち二天龍の鎧は、所有者に余力があればいくらでも再生可能だ。相棒』
「ドライグ!?」
『俺たち二天龍は、どちらかが再起不能になるまで戦いは止まらんさ。それが俺たち、二天龍と称されたドラゴンの戦いだ』
「なら、俺もいつかはヴァーリみたいに何度でも禁手化が可能になるのか!?」
『可能性はゼロではない』
「それだけ知れれば十分だ!」
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第51話
《side龍呀》
ヴァーリが俺に魔法が効かないと知って、近接戦闘に切り替わって約5分。正直、驚いている。あのヴァーリをオレが拳と脚で圧倒している。これは、完全にアクノロギアとの特訓の成果であろう。
そんなことを確かめていると空間に変化が感じられた。これは、イッセーたちがギャスパーの暴走を止めたからなのだろう。
「考えごとをしながら、俺の攻撃を全ていなすとは流石だな、狩谷龍呀」
「悪い悪い、空間に変化を感じられたからな。てか、ヴァーリ。お前、近接戦闘弱くね?」
「生憎、今まで魔法が効かない相手に巡り会えたことが無くてね」
「確かに、そうだろうな。魔法が効かない奴なんて、数えるほどしかいないだろうしな」
ヴァーリがというよりも、この世界の大半が魔法での攻撃がメインになっている。そんな世界に魔法が効かない存在が現れたらどうだろう。即座にチート級である。
しかし、オレの《滅竜魔法》はその上のドチート級である。魔法による自動防御、魔法捕食、ドラゴンスレイヤー、エンチャントなどなどの能力があるのだから、モヤットボールさんも驚くほどの「チートやチータやろう!そんなん!」 である。
「ほれ、右の腹が甘い!」
「ぐっ………!?」
「次は、顔のガード!」
「がっ………!?」
戦闘をしているはずが、いつの間にか龍呀先生によるヴァーリくんの格闘戦闘教室になっているのは気のせいかな?
つい、黒歌や小猫の様にヴァーリのガードが甘い所を突きながらアドバイスを出してしまう。これでコイツが強くなったらどうしよう?このあとのイッセーとの戦闘で影響が無ければいいけど………。
「てかさ………魔導師共がウゼェ。なあ、ヴァーリ。少し休憩でいいか?」
「何故だい、やっと高ぶって来たところだろう?」
「いや、お前が良いならいいんだけど。合間合間に魔導師たちの魔法が飛んでくるのがウザくてさ」
「確かに、少し目障りなってきたな」
「お前は、少し休んでろ。一撃で終わらすから」
「それは新しい力なのか?」
「ああ。まだ、この世界で家の中以外じゃあ二回目だな」
「それは楽しみだ」
どうやら、ヴァーリの奴はオレの技にまで興味があるようで、瞳を少年のようにキラキラと輝かせているのは気のせい?
「まぁ、いいや。モード、雷天竜!」
雷天竜を発動して、グラウンドにいる魔導師たちを全て一掃するために中規模技を使うことにした。そのため、声帯だけを《毒の滅竜魔法》で強化してサーゼクスやアザゼルたちに警告する。
「アザゼル、聞こえているなら防御結界の中に戻るかあるいは自分で結界を張れ。今から魔導師たちを全て一掃するために中規模な魔法を使う。以上だ」
警告を伝えると、アザゼルは慌てて防御結界を展開した。
「さて、やりますか!」
「雷天竜の
片手を上げて、魔力を四割ほど解放しながら、グラウンドを天竜の力で空気を操り、空中にいる魔導師たちを強制的に一ヶ所に集める。魔導師たちは逃げようとするが逃げられない。一度、風に捕まれば洗濯機の中のようにグルグルと風の渦に流されるのに加えて、風の中に雷の滅竜魔法が混じっているため、痺れて身動きができない。
「これで全員かな?」
魔導師が全員、風の渦に巻き込まれたのを確認してから最後の仕上げをする。
「轟け───天雷ッ!!!」
決め台詞を叫びながら、上げていた片手を振り下ろすと風の渦に捕まっていた魔導師たちは捕まっている風によってグラウンドの地面へと叩き付けられた後に、風に混じっていた雷が集束して、約10万ボルトほどになった雷が轟音と共に地面に這いつくばっている魔導師たらに降り注ぎ、グラウンドの地面に人型の焦げ跡だけが残る。
「さて、ヴァーリ。レッスンの続きと行こうか?」
「止めておくよ。今の俺では到底、キミには敵わないと理解した」
「そうか。なら、悪いが勝者としてあることをしてもらう」
「あること?」
「簡単な話。イッセーと戦うことだ」
「なるほどな。いいだろう」
「他にもう一つ。お前にはスパイをしてもらう」
「そんなことをして、俺へのメリットは?」
「報酬は、魔王や神クラスの敵100体と闘える理想郷で、どうだ?」
「その話。乗らないわけがないだろう」ギラギラ
「なら、交渉成立」
俺の話にギラギラとした闘争心の炎を灯しながらヴァーリは受けた。よし、これでアニメ通りのイッセーvsヴァーリが成立する。あとは、どうやってアニメ通りの展開に持っていくかだが………。おや?この臭いは、イッセーとヴァーリ以外のドラゴンか。となると、アザゼルだな。
「アザゼルの奴が、人工神器を禁手化させたみたいだぜ。ヴァーリ」
「そのようだ。それもドラゴン系ときた」
「さて、交渉は成立した。オレたちの関係がバレない程度に本気で格闘のレッスンをするか、ヴァーリ」
「………いいだろう。勝てないのであれば、強くなるためにキミから技術を教わるのも悪くない」
それから再び、龍呀先生によるヴァーリくんの格闘レッスンが始まり、アザゼルがカレテアとの戦闘で左腕を切り落とすまではずっと格闘レッスンを続けていた。
その後、アザゼルの奴がカテレアの自爆から逃れるために自分の腕を切り落としたところを見ていると、偶然にも魔力を纏ったヴァーリの拳がボディーに入り、思わず吹き飛ばされてしまった。
「ぐおおおおおッ!!」
流石に纏っている魔力は食えないので、吹き飛ばされて部室棟の壁に貫通したあと、久しぶりに殴り飛ばされたことに驚きながら首をぐるりとゆっくり回して関節を鳴らす。
「いやぁ………参った参った。まさか、ボディーに入るとはなぁ」ゴキゴキ
「油断するからにゃ」
肩の骨をゴキゴキと鳴らしていると、呆れた顔で小言を言う黒歌の姿がそこにあった。
「黒歌か。ここに居ていいのか?」
「魔王様二人と天使長がいれば平気にゃ。それに、どうせこの時には私はいなかったはずにゃ」
「まぁな。アニメでも、黒歌はまだ先、夏休み中に出てくるからな」
「なら、若手悪魔の会合の時かにゃ」
「そういうこと」
「それとヴァーリとの交渉のことは白音たちに話すのかにゃ?」
流石は猫耳。聴覚は人間の20倍以上、犬の2倍あると云われているだけはある。ということは小猫にも聞こえていたりするのかな?
「それは追々な。ん?もう、イッセーとの戦闘が始まろうとしてるのか」
「最強の白龍皇と最弱の赤龍帝。どちらが勝つのかしら?」
「条件が揃えば、イッセーだな」
「条件?」
「半減の力の吸収」
「なっ!? 相反する力を吸収したら宿主に膨大な負荷がかかって、最悪は死ぬにゃ!?」
「だが、兵藤一誠というバカな男はやるだろうな」
「はぁ………呆れた。龍呀が知っている物語の赤龍帝チンもそれをやったのかにゃ?」
「やってモノにした」
黒歌は信じられないという顔しているが、既に見ているはずだ。木場の聖と魔の融合を。ならば、倍加と半減が融合しないわけがない。
「さてさて、あのアニメでも特に熱いシーンをこの目でしかと刮目して見ますかね」
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第52話
ヴァーリの魔力を帯びた拳により、部室棟に吹き飛ばされたあと黒歌に油断し過ぎたと注意を受けながら瓦礫から抜け出し、首の骨を鳴らす。このあとに起きる、赤龍帝vs白龍皇の激闘を見るためにグラウンドに出ると、イッセーの龍のオーラが爆発的に増加したのと加えて、イッセーの怒りの声が聞こえてきた。
「何で、俺の父さんと母さんが、てめぇの都合に合わせて殺されなくちゃならねぇんだよォォォッ!!」
『Welsh Dragon Over Booster!!!!』
「てめぇなんぞに、親を殺されてたまるかよォォォッ!!」
ライザーの戦いの時と同じドライグの声が響くとイッセーの身体に『赤龍帝の鎧』が纏われていた。加えて、前回と違って今回はアザゼル製の腕輪があるため10秒で禁手化が解除されるわけではない。
「おおおおっ! アニメ通りの展開だ!!」キラキラ
「龍呀の目が輝やいてるにゃ!?」
「だってよ、黒歌。前世では、このシーンは男なら憧れるバトルシーンなんだぜ? 目を輝かさなさい男なんていねぇって!?」キラキラ
「そ、そう………」
普段は見せないオレの表情に少し引き気味の黒歌を放っておいて、オレはリアル版の【赤龍帝vs白龍皇】を見逃さないように移動する。
「いやー、ヴァーリの成長速度には驚いたぜ」
「龍呀、無事だったのね!?」
呑気にそう言いながら部長たちの共にたどり着くと部長が驚き。小猫と朱乃がヴァーリに吹き飛ばされたことに心配になって近寄ってきた。
「ヴァーリがあまりにも近接戦闘が弱いから鍛えていたら、まさかの不意打ちを喰らったけど、滅竜魔法には魔法による自動防御があるから、ある程度までなら無傷なんですよ」
「つくづく、滅竜魔法というものは規格外ね」ヤレヤレ
「今更よ、リアス」
「龍呀先輩に常識は通用しません」
「二人とも酷くね?」
ヴァーリに吹き飛ばさたのに無傷でいることに部長たちに説明したら、朱乃、小猫から辛辣な言葉を吐かれた。その後、イッセーがヴァーリに押されていた。
すると、部長がイッセーにかけようとするが、それをサーゼクスが止める。
「イッセー!」
「リアス」
「放して、お兄様!」
「あの二人のオーラは限界を超えている。近付くだけでも焼かれて死ぬぞ」
「でも、こうして見てるだけなんて………」
部長は、イッセーが戦っているのに自分が何も出来ないことに無力感を感じていた。けれど、そのことを他所にイッセーとヴァーリの戦いは激しさを増していく。
「弱い、弱すぎる!」
「かはっ……!?」
イッセーはヴァーリの拳を無防備に腹で受けるとマスク越しでも分かるほど吐血した。加えて、ヴァーリは追い打ちとばかりに半減の力を発動させる。それにより、体制を持ち直すことも出来ずにイッセーは地面へと落下した。
『Dvide!!』
「ぐあっ!?」
「イッセー!」
地面に倒れ伏したイッセーに部長が心配な音がこもった声でイッセーを名前を呼ぶと、イッセーはド根性とばかりに拳を地面に突き立て立ち上がる。
「大丈夫です、部長!心配、いらないですから!」
そんな姿にギャスパーは願うようにイッセーにエールを送る。
「イッセー先輩………負けないで!」
「ああ、部長が見てんだもんな!負けられっかよォォォォオ!!」
『Boost!!』
部長とギャスパーのエールのためにド根性で立ち上がり、力を倍加させるとイッセーはヴァーリを見て、あることに気付いた。
「あれは?」
『キャパシティを越える力を翼から吐き出しているのさ。そうすることで奴は常に、上限を維持できる訳だ』
「どんなに宿主が凄くとも限界はあるってことか!」
イッセーがドライグのアルビオンの翼から吐き出している光について説明を受けているとヴァーリがあることを口にした。
「そうだったな。コカビエルの時、君は仲間のために戦ったのだったな。家族よりも先に、仲間を殺すべきだったかッ!」
そう言いながら、ヴァーリは魔力の弾をアーシアとギャスパーへと投げ付けた。流石に、これは見逃せないので魔力の弾を蹴り飛ばした。
「おい、ヴァーリ。テメェの相手はイッセーだろう。なのに、何でアーシアとギャスパーを狙った? 答えようによったらオレはテメェは滅するぞ、ヴァーリ」
威圧感をヴァーリに向けたあと、イッセーに少しだけ助言する。
「イッセー、テメェもチンタラとやれてんな!テメェには、対ヴァーリように奥の手があんだろうが!? ソイツに倍加してしまくれ!!」
「そうか!」
「ドライグ! アスカロンに力の譲渡だッ!」
『Transfer!!』
オレの言葉でイッセーはオレの意図に気付いたようで、真っ正直からヴァーリへと突っ込む。すると、途中で倍加の力をアスカロンが収納されている左手に付与し、そのままヴァーリの顔面を殴り付けた。
それにより、ヴァーリのマスクが破損した。殴り付けたあとは、そのままヴァーリに組み付いて、ヴァーリに力の譲渡し始めた。
「なッッ!?」
「ここだ!」
『Transfer!!』
そんなイッセーの行動に部長は、驚きのあまり声を溢した。
「ヴァーリに力を譲渡?!」
「テメェの吸い取る力と吐き出す力を一気に高めてやる!この翼が処理できるなくまでなァァアッ!!」
「ぐうっ!!」
『機能がオーバドライブする。一度、体制を立て直せ』
アルビオンがヴァーリに助言するが、その助言通りに今の組み付いているイッセーがさせるわけがない。
「龍呀には及ばないが、ドラゴンスレイヤーの力!受けてみやがれッ!!」
アスカロンの力がこもったイッセーの左拳がヴァーリの腹部の宝玉に突き刺さると、白龍皇の鎧が砕け散る。それにより、ヴァーリは地面に急降下し、両膝を付いて、吐血した血を袖で拭う。
「凄いな………俺の神器をふっ飛ばした!やればできるじゃないか!それこそ、俺のライバル!!」
そう言いながらヴァーリは鎧を再展開させた。それと合わせて、イッセーの左手が一度輝いた。どうやら、タイムリミットが迫っているようだ。
「やっぱり、こうなるか。仕方がない、助言を出してやるか」
「イッセー!」
「龍呀?」
「白龍皇の力を自分に譲渡し、吸収しろ!オレからはそれだけだ」
「ヴァーリの力を自分に譲渡して、吸収………。ん?もしかして?」
再び、イッセーはオレの意図に気付いたのか足元に転がっているアルビオンの宝玉を掴んだ。
「神器は思いによって進化するんだよな?」
『面白い。だが、死ぬ覚悟があるか?相棒』
「死ぬのは勘弁だ。俺はまだ、部長の処女をもらってないし。何より、龍呀に言われたんだ!俺にしか、部長たちを守れないと!」
「そのためなら、痛みなんざ我慢してやらぁぁぁあ!!」
『フッハハハハハッ! 良い覚悟だ!ならば俺も覚悟を決めよう! 我は力の塊と称された赤き帝王!お互い、生きて超えて見せるぞ!相棒! 否ッ! 兵藤一誠ッッ!』
「応ッ!」
これからイッセーが行うことにオレはワクワクが抑えきれずにいた。すると、黒歌がオレに話しかけてきた。
「龍呀、あれがさっき言ってたやつかにゃ?」
「ああ。イッセーは、自分の寿命と引き換えに白龍皇の力を吸収する。前世の兵藤一誠も同じことをやって、成功させた」
黒歌の話を肯定すると、隣に居た部長とアーシアが詰め寄ってきた。
「その話は、本当なの龍呀!?」
「本当なんですか、龍呀さん!?」
「あっ………やっちまった」
部長とアーシアの前でイッセーの無謀な行為の代償を話てしまったことを今さらになって思い出した。
そんな、鬼気迫る二人の顔にオレは、もしも、これが俺だったら黒歌や小猫、朱乃も心配するのだろうと思ってしまったので観念して話ことにした。
「はぁ………、さっきの話は本当です」
「そんな………」
「イッセーさん………」
二人が悲しそうな顔をしているので、今後の『覇龍』について、話してしまおうか悩んでいるとアルビオンの半減の力を吸収することに成功したドライグの声が響いた。
『Vanishing Dragon Power is taken!!!』
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第53話
『Vanishing Dragon Power is taken!!!』
そのドライグの声を聞いた瞬間、オレは前世で好きだったシーンを見れたことに、感動のあまり歓喜する。
部長やアーシアたちには悪いが『ハイスクールD×D』が好きな男ならば、このシーンは興奮する場面だと思うから勘弁して欲しい。
「来たぁぁぁあ!!」キラキラ
「りゅ、龍呀くん………」
「龍呀先輩………」
またもや、ヒーローに憧れる少年の心丸出しの顔でイッセーを見ていると、普段見せないオレの顔を見た、朱乃と小猫は先ほどの黒歌のように少しばかり困惑していた。
そんなことを余所にオレは食い入るようにイッセーとヴァーリの戦いを観察する。
「………へへへ、『白龍皇の籠手』ってとこか?」
アルビオンの半減の力を吸収したことにより、右腕の『赤龍帝の籠手』が『白龍皇の籠手』へと変貌した。そんな現象を見たアルビオンは、あり得ないと叫ぶがオレが否定する。
『あり得ん!こんなことは、あり得ない!』
「いんや、あり得ないことはないねぇよ。アルビオン」
『なに?』
「何故ならイッセーよりも前に、そのあり得ない相反する力を融合させた騎士がオレたちの仲間には居るからな!」
オレはそう言って、木場を親指で示す。
『……「神器プログラム」の不備について、実現させたというのか? いや、しかし、こんなことは……。思ついたとしても実際に行うのは愚かだ……』
『相反する力の融合は、何が起こるか分からないが。それがドラゴンの関わるものだとしたら、死ぬかもしれない?否、死ぬほうが自然だ』
今だに信じられない様子のアルビオンにドライグが肯定しながらも否定する。
『ああ、確かに普通ならそうだろう。だが、今の相棒はその普通というのが通用せん。しかし、代償にかなり寿命を縮ませたぞ、相棒。いくら悪魔が永遠に近い時間を生きるとしても────』
「一万年も生きるつもりねぇ。やりたいことなら山ほどあるがな」
やっぱり、兵藤一誠という主人公と赤龍帝ドライグというコンビは最高であるとオレは目の前の二人を見て、改めて思った。
「ヴァーリ、これでテメェの力を奪ってやったぜ!大人しく────」
「フッハッハッハッ!! 面白い!なら、俺も本気をだそう!!」
そう言って、ヴァーリは高く飛翔し、空中で停止して翼を大きく広げると、アルビオンのある音声がなった。
『Half Dimension!』
その音声と共にまばゆいオーラに包まれたヴァーリは、左手を眼下の先にある新校舎に向け、開いていた掌を少しずつ握り始める。すると、ヴァーリの左手に合わせて、新校舎が収縮をし始めた。
「何をしやがった!?」
「次元を歪めています。非常に危険です!」
イッセーの問いにミカエルが答え。部長がヴァーリのその力にまともではないと口にする。
「まともじゃないわ!」
「まともじゃねぇのさ。ドラゴンを宿すような奴は、どこかな?」チラリ
「おい、アザゼル。何で、オレを見る」
「いや、別に」
「この野郎………いつか、焼き
アザゼルの話には一理ある。赤龍帝を宿しているイッセーは、部長の乳で成長する。白龍皇の宿すヴァーリは、魔王と人間のハーフ。滅竜魔法を習得したオレにいたっては、転生者。どれも、まともではない。ヴリトラを宿している匙は………何処かあったか?
そんなことを考えているとアザゼルがイッセーにヴァーリがやろうとしていることをイッセー用に分かりやすく説明していた。
「おい、赤龍帝。兵藤一誠」
「なんだよ?」
「お前にも分かりやすく説明してやる。あの能力は周囲のものを半分にしていく」
「半分?」
「つまりだ。リアス・グレモリーのバストも半分になっちまうぞ」
「はあ?」
アザゼルによるイッセー用の説明に部長は疑問の声を上げ。アザゼルの説明を聞いたイッセーは、ピタリと止まり。数テンポ、間を置いてからワナワナと震え始めたのちに激昂し、それと共に爆発的にイッセーの龍のオーラが増幅した。
「ふざけんなァァァァアアアアッッッ!!!!」
『Boost!!』
「アハハハハハハハ!! やっぱり、このシーンは最高だな!おい!」
前世アニメで見た時はマジで爆笑したシーンをリアルで目にして腹を抱えて爆笑するしかできなかった。
マジで最高!流石は、おっぱいドラゴン。乳龍帝。
「俺の部長のおっぱいを半分にするだと!? 」
「なに?」
どうやら、ヴァーリはイッセーの言っていることがあまり理解出来ていないようだ。それはそうだろう。普通なら、こんな展開で乳が半分にされることによって強くなる主人公はいない。イッセーが規格外なだけだ。
「許さない!」
『Boost!!』
「てめえだけは────」
『Boost!!』
「──許さないぞッッ!ヴァーリィィィィィィッッ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
更に倍加の能力で龍のオーラを増幅していくイッセーのオーラにサーゼクスたちは危険性を感じ、即座に防御結界を展開する。オレ的には、アクノロギアとの特訓でこの程度なら平気。正直、まだ生ぬるい。
しかし、流石に黒歌をこのオーラに晒すのは危ないので自作の結界魔法を展開する。
「アハハハハハハハ!! あー、笑い過ぎて腹痛てぇ!」
「リアス・グレモリーの胸だけで、こんなに強くなるなんて。たしか、龍呀の知ってるお伽噺の私も赤龍帝ちんに退けられるのよね?」
「ああ。イッセーが部長の乳首を押し込んで、部長が『ぃやんっ!♡』って啼くと完全な禁手化に至って、アニメの黒歌を退く」
「はぁ……。お伽噺とはいえ、まさか、私が女の胸で成長する男に退けられるのなんて。屈辱的だにゃ」
女の黒歌からしたらそうだろうな。女の胸で成長する変態に退けられるのは、相当屈辱的だとオレも敵がそうなら同じことを思う。だけど、観てる側としては爆笑モノです。
ある程度、イッセーの龍のオーラの増幅が止まるとかなりの速さでヴァーリとの距離を詰め、イッセーの膝蹴りがヴァーリのボディーに突き刺さる。
「ぐはっ! なんだ、このスピードは!?」
「てめえを野放しにしてたら、部長どころか皆のおっぱいまで半分になっちまう!」
いやいや、ならんてイッセー。なったら、今頃は世界的なニュースになるから。
「これは、部長のおっぱいの分!」
『Divide!!』
「ぐはっ!」
イッセーの右拳がヴァーリの腹部を抉り込むと移植したばかりの半減の力でヴァーリのオーラを半減させ、吸収した。それにより、弱まった防御力よりイッセーの拳の方が威力が勝り、ヴァーリは吐血した。
しかし、イッセーの猛攻は続く。
「これは朱乃さんのおっぱいの分!」
またもやイッセーは叫び、今度は頭突きをヴァーリに決める。それにより互いに兜が砕け散る。しかし、その叫びがオレを少しイラつかせた。
「(あとで一発、全力の火竜の鉄拳をイッセーの土手っ腹にブチ込むか)」ブチッ
「これは、黒歌さんのおっぱいの分!」
「(二発目………)ブチブチッ
「これは、成長中のアーシアのおっぱいの分!」
今度は、アーシアの胸のことを叫びながらヴァーリを蹴り上げる。
「これは、ゼノヴィアのおっぱいの分!」
「うぐぁっ!」
「そして、これは───半分にされたら丸っきり無くなっちまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だぁぁぁぁああああッッ!」
「ぐああああッ!」
「(イッセー、殺す。滅竜奥義、放って、コロス!)」ブチブチブチッ
イッセーが朱乃や黒歌のみならず。小猫の胸のことまで叫んだことに対して怒りのあまり、オレの竜としてのオーラが膨れ上がる。
それによりドラゴンを宿している二人はオレのオーラに気が付いたのか、イッセーとヴァーリは此方を見て驚いていた。
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第54話
怒りで膨れ上がったオレの竜オーラに気付いた、イッセーとヴァーリは驚いた表情のまま固まっていた。
「悪いな、勝負の邪魔をしちまって。オレの事はいいから続けてくれ。それと、イッセー。あとでお前は半殺しな」
「龍呀、私も手伝うにゃん♪」
「龍呀先輩、私も一枚噛ませてください」
「それは面白しろそうですわね。私も参加しようかしら。フフフフ」
オレのイッセーに対する半殺し宣言に、黒歌、小猫、朱乃の我が家の奥様方が額に青筋を立てながらニコニコと笑みを浮かべている。
「ヒィィィィィ!?」
イッセーは、オレと額に青筋を浮かばせながら微笑む奥様三人衆を見て、情けない悲鳴をあげるとタイムリミットが来たのか『禁手化』が解ける。それを見た、ヴァーリは落胆したようにオレへ返答する。
「いや、やめておく。それに、どうやら迎えが来たようだ」
「迎え?なるほど。この初めての臭いは美猴が来たのか」
「やはり、知っていたか」
「臭いは初めてだが。これでも、前世ではお前たちが出てくるアニメのファンだったんだぜ?」
「なるほど」
ヴァーリが迎えが来たといいながら空を見上げると結果が砕け散り。空から人影が飛来してきた。
「ヴァーリ、迎え来たぜぃ。北のアース神族と一戦交えるから帰って来いってさ」
「そうか。わかった」
美猴が現れたのでヴァーリにある物を渡すことにした。
「勝手に帰るのはいいが、契約は守れよ。ヴァーリ?」
「わかっているさ。君との契約は俺としてもとても魅力的だからな」
「ならいい。それと、コイツを持っていけ」
「これは?」
ヴァーリに投げ渡したのは、オレの家の合鍵と小型通信用ラクリマである。通信ラクリマは現在の所、オレ、黒歌、小猫、朱乃しか所持していないため。ハッキングや発信源の逆探知などは出来ない。
「オレの家の合鍵と通信の小型ラクリマだ。オレたちに、有力な情報だと思ったら気兼ねなく連絡しろ」
「了解した」
オレとヴァーリで話しをしているとイッセーが美猴を指で示して、誰なのかを聞いてきた。
「なぁ、龍呀。そいつ、誰なんだよ?」
「あ?そいつは美猴。簡単に説明すると孫悟空だ、孫悟空」
「そ、そ、孫、孫悟空ぅぅぅぅっ!?」
流石に、あの有名な西遊記に出てくる孫悟空が目の前な現れればば驚くわな。そんなイッセーのためか、アザゼルがオレの説明に捕捉を加えた。
「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。しかし。まさか、お前まで『禍の団』入りとは世も末だな。いや、『白い龍』に『孫悟空』か。お似合いではあるか」
アザゼルのその言葉に美猴はカッカッカッと笑う。
「俺っちは初代と違って、自由気ままに生きるんだぜぃ。よろしくな、赤龍帝にドラゴンスレイヤー」
「お前も、ヴァーリから契約の話を聞いて面白そうならオレの家に来いよ。ただし、対価は貰うけどな」
「まぁ、その契約ってのを聞いてからにするわ」
そう言って美猴は手に持っている如意棒を振り回してから地面に突き立てる。すると、ヴァーリと美猴の足元から闇が現れ、二人を呑み込んでいく。
また、去り際にヴァーリがイッセーにメッセージを残して行った。
「次に会う時は、もっと激しく殺ろう。もっと強く!」
「待ちなさい!」
闇に呑み込まれて去るヴァーリと美猴に部長が追いかけようとするが止める。
「部長、今は追わなくていいです。それに、ヴァーリには『禍の団』の密偵としての役割を頼んでありますから」
「密偵?」
「そのことについて。詳しく聞かせてくれるんだろうね、龍呀くん?」
「わかってるさ。サーゼクス」
ヴァーリの契約と密偵という話に三大勢力のトップは興味津々である。
「ヴァーリには、オレの家にある。特別な特訓場を対価に『禍の団』からオレたちに有名な情報を流してもらうよう契約した」
「特別な特訓場?」
「魔王や神クラスの魔物が100匹もいる、特訓場だ」
「あぁ。伏魔殿のことにゃ」
オレの説明で黒歌が伏魔殿だと口にする。それについて、アザゼルが額に皺を寄せる。
「伏魔殿だと?」
「安心しろ。この世界に伏魔殿があるかは知らないが、あったとしてもオレの家にあるのは別世界から持ってきた伏魔殿だ。どういう物かは、FAIRY TAILのアニメを参考にしろ」
「それでも、不満なら。この場にいる三勢力のトップと部長、支取先輩にヴァーリの奴に渡した物と同じやつを渡してやるよ」
そう言うと、アザゼルがウキウキとした顔で手を伸ばしてきたので懐から出した小型通信用ラクリマをアザゼルの顔面に投げつける。他は、きちんと手渡しをした。
その後は、サーゼクスがカテレアの事を謝罪。アザゼルがヴァーリの事で謝罪した。他には悪魔、天使、堕天使の三種族が共同で学園を修復。イッセーはミカエルにアーシアとゼノヴィアが祈りを捧げられるように頼み込んでいた。
全てが終わりかと思った、なんとエセ神様がオレに声を掛けてきた。
【あー、テステス。龍呀くん、聞こえてる?】
「聞こえてるが、なんだ?」
【いやー、君の身体の件についてなんだけど………】
エセ神様がオレの身体の話をするとイッセーが食い付いてきた。
「そうだ、龍呀!お前、あんなに竜化が進んでるってことは五感が──味覚や触覚が感じてないんじゃないのか!?」
イッセーのその言葉に全員が驚いた表情でオレを見る。すると、黒歌が近付いてくる。
「そ、そうなのかにゃ龍呀?赤龍帝ちんの言う通りなのかにゃ?」
「ああ……。コカビエルとの戦闘のあとから、味覚、触覚の順で五感を感じなくなった。今も黒歌が近くにいるのに黒歌の温もりが感じられない」
イッセーの言葉に肯定すると黒歌はオレの制服のギュッと掴み俯く。そんな黒歌を見たエセ神様があることを口にする。
【なんか、シリアスになってるところ悪いけど。龍呀くんの竜化は止めれないけど、五感は戻せるからね?】
「えっ!?」
「本当かにゃ!?」
【ほんまほんま!ホンマチオコ!】
最後のは分からないが、どうやらオレの五感を取り戻すことができるようだ。
「それで、どうすれば龍呀の五感は戻るのかにゃ!」
【簡単なことだよ】
エセ神様がそう言ったあと、空から何か箱のような物が黒歌の下にゆっくりと落ちてきて箱は独りでに黒歌の手へと着地した。なので箱を見てみると蓋には、何故かフェアリーテイルのギルドマークが刻まれていた。
「これに何が入ってるのかにゃ?」
【龍呀くんの五感を戻す薬。それと、黒歌くんご所望のフェアリースタンプ】
「ん?フェアリースタンプ?」
エセ神様の最後の言葉に疑問を感じたので聞き返すとまさかのことを説明された。
【簡単にいえば、フェアリーテイルのギルドメンバーにできるスタンプだね。やったね!これで、君も魔導士ギルド フェアリーテイルの一員だ♪】
「「「………」」」
「「「「はああああああ!?」」」
ギルドメンバーにできるスタンプって………マスターに聞かなくていいのかよ!? まさか、エセ神様の野郎。オレに、この世界でフェアリーテイルの支部ギルドを作らせて、ギルマスにさせるつもりか?
【おやおや~?その顔ぶりだと、私が考えていることが分かったようだねぇ。龍呀く~ん♪】
「嫌だ!絶対にオレはギルマスなんてやらないぞ!」
「龍呀がギルマス!?」
【え~、面白そうじゃない。それに君は《ビーストスレイヤー》を既に二人も育ててるんだから、向いてると思うんだけどなぁ………】
「ビースト………スレイヤー?」
今度は、イッセーがエセ神様の言葉に疑問を感じたのか聞き返した。
【そう、ビーストスレイヤー。またの名を滅獣魔導士。能力は魔獣、聖魔を問わず。獣を滅するための魔法だよ】
「それって………」
「もしかしなくても………」
支取先輩、部長の順で言いながら、この場にいる全員で黒歌と小猫に視線が集まる。流石にオレも二人に視線を向けてしまう。
【習得したのは、まったくの偶然だよ。まぁ、黒歌くんと小猫くんの魔力が龍呀くんの魔力と相性が良かったんだろうねぇ。感覚を掴ませるためや魔力結晶から二人は龍呀くんの魔力を少なからず身体に取り込んでる訳だからね】
「な、なら、俺はどうなんです?ライザーとの戦いで、龍呀が魔力を流してもらいましたけど………」
エセ神様の黒歌と小猫が《滅獣魔導士》として覚醒した経緯を聞いて、イッセーは自分も似たようなことをされたことがあると話した。
【君の場合は、君の中にいる赤龍帝くんと反発して習得は不可能だよ。二人以外にも、この世界には何人か龍呀くんの魔力と相性がピッタリな子はいるから、何かしらのスレイヤー魔法を覚える可能性はなきにしもあらずだよ】
「マジか………まぁ、魔法のセンスは皆無だから諦めていたけど。はぁ………」
エセ神様の説明でイッセーは肩を落として落ち込んでいた。
【それじゃあ、私はこれで。龍呀くんがいきなり呼ぶもんだから仕事が中途半端だよ……】
「悪かったな、エセ神様。それと、サンキュー」
【どういたしまして】
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第55話
黒歌と小猫の滅獣魔法の技を色々と考えているのですがあまり良いのが出ません。
なのでに活動報告のコメントに技名と概要を載せていただければ、作中で出すかもしれないのでお願いします。
エセ神様──いや、神様が帰ったあと色々とあったがオレたちの自宅に帰り。リビングで朱乃が淹れたお茶を飲む前に、神様から受け取った錠剤を服用してからお茶を飲むと即効性なのか、ほんの僅かだがお茶の味と湯の熱さのような物を感じられた。
「どうですか、龍呀くん?」
「ああ。僅かにだが、味と熱さを感じることができた」
「それは良かったですわ!」
「良かったにゃ!」
「良かったです」
味と熱さを感じられたことに我が家の奥様方は笑顔で喜んでくれた。その後は、三人とも何かを期待しているようにウズウズとしているようだ。
「「「………」」」ウズウズ
「三人ともウズウズして、どうしたんだ?」
「龍呀、前に話したフェアリーテイルのギルドマークのことなんだけどにゃ」ウズウズ
「ああ、それでか………なるほどな。なら、黒歌からだな」
ギルドマークが刻まれている箱からフェアリースタンプを取り出すと黒歌は二本の尻尾をピンッと立てる。
「待たせて悪かったな。で、何処にギルドマークを刻む?」
「龍呀とお揃いにしたいから、左手の甲にするにゃ!」
「あいよ」
黒歌の要望通りに黒色のフェアリーテイルのギルドマークを黒歌の左手の甲に刻むとオレと同じようにギルドマークが皮膚に吸収されるかのように透明になっていった。
「どうやら、黒歌のギルドマークはオレと似たような感じで出たり消えたりするのか」
「龍呀と同じにゃか?」
「取り敢えず、モード雷獣になってみろよ」
「龍呀が言うなら分かったにゃ」
オレの言葉通りに黒歌は、モード雷獣を発動させ帯電状態になると先ほど消えたギルドマークが黒歌の左手の甲に浮き上がるように現れた。
「出たにゃ!これで、龍呀の奥さんである印がついたにゃ!」
「印がなくてもお前はオレの奥さんだからね?それとやっぱり、何かしらのモードを発動するか一定の魔力をその部位に留めないとギルドマークは浮き出ないのか」
オレと黒歌のギルドマークが透明になる現象について仮説を立てていると、黒歌がギルドマークを刻んでもらったことに小猫が嫉妬しているのかオレに近付いてきて、珍しく猫耳をピコピコとさせていた。
「小猫?」
「私も姉様と同じ、龍呀先輩の奥さんである印が欲しいです」ピコピコ
「ああ、分かった。小猫は何処に刻む?」
「私も姉様と同じ所へ」
「あいよ」
小猫にも黒歌同様に左手の甲にギルドマークを刻んでやると小猫のは、黒歌と対照的な白色だった。あとは、オレや黒歌と同じですぐに透明になって消えた。
「黒歌と小猫ちゃんの番が終わったのでしたら、次は私ですわね?」
「朱乃は、何処に刻むんだ?」
「私も、二人と同じ場所で構いませんわ」
「あいよ」
朱乃には、黄色のギルドマークを刻んで、そのあとは黒歌と小猫と同様に透明になった。
「ギルドマークも刻んだことだし、黒歌に朱乃。悪いがヴァーリを鍛えてた所為か腹減った。何か作ってくれないか?」
「分かったにゃ」
「分かりました」
二人に飯を頼むと、ギルドマークを刻まれて嬉しいのか二人はニコニコした表情のまま、約14人前の料理がテーブルに出てきたが今のオレには丁度良かったため、あっという間に完食してしまった。
そして、トップ会談が行われた日の翌日の放課後。アニメ通り、アザゼルがオカルト研究部の顧問として就任していた。
「てな訳で、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった」
「どういうことかしら?」
アザゼルがオカルト研究部の顧問となったと部室の椅子に座りながら言うと、その経緯について部長が額に皺を寄せながら問う。
「いや何。サーゼクスに頼んだら、セラフォルーの妹に言えというんでね」
「会長がっ!?」
まさかの支取先輩がアザゼルのオカルト研究部顧問就任を許可したことにイッセーは驚きのあまり声を上げた。
それに続いて、支取先輩がアザゼルをオカルト研究部の顧問にせざるおえなか経緯を口からこぼした。
「でないと、姉が代わりに学園へ来ると脅され………いえ、せがまれまして」
「支取先輩、誤魔化せてませんからねソレ」
「要するに私たちオカ研を売った訳ね、ソーナ」ジトー
「では、あとの事はお願いします」
「ちょっと、ソーナ!?」
オレが支取先輩にツッコミを入れてから部長が支取先輩をジト目で睨むと支取先輩は眼鏡をクイッと一度上げる足早に部室から退散した。
すると、支取先輩に向けていた部長のジト目が何故かオレの方へと向けられてた。まぁ、理由は分かっているがな。
「そういえば、龍呀。 貴方、私たちは未来を学園祭が始まる前まで知ってるいるのよね?なら何故、アザゼルがオカルト研究部の顧問になることを教えてくれないのよ!?」
「いやー、それは所謂タイムパラドックス的なやつがですね。アレがアレでアレがアレしちゃうので………ストーリー的に回避不可能なイベントというやつです。はい…」アハハハ
「はぁ………」
オレの苦し紛れの言い訳に部長はアタマイタイのポーズを取りながら左右に首を振る。そんな部長を他所にイッセーはアザゼルの自身で切断したはずの腕について質問をする。
「えっと………その腕は?」
「ああ。神器研究のついでに作った万能アームさ。一度、こういうのを装備して見たかったんだ。ただし、この学園に滞在するのにサーゼクスから条件を課せられた」
そう言いながら、アザゼルは左腕の義手についているドリルやロケットパンチ機能などを狭い部室の中で見せびらかした。
「じょ、条件?」
アザゼルのサーゼクスからの条件という言葉に疑問視したのかギャスパーが段ボールから頭を出して質問する。
「お前たちの未成熟の神器を正しく成長させることだ。未知の進化を秘めた『赤龍帝の籠手』、『聖魔剣』、『停止世界の邪眼』」
「俺の研究成果を叩き込んで、独自の進化を模索してやる。んじゃあ、そういうことで」
サーゼクスからの条件を説明するとアザゼルは、部室の窓から帰ろうとする。そんなアザゼルを見た部長は、アザゼルがオカルト研究部の顧問になることを認めないと叫ぶ。
「ちょっと、私まだ納得して………」
「おっと、それからサーゼクスから伝言を頼まれてんだった」
「お兄様から?」
「以前、赤龍帝の家に泊まった時に眷属のスキンシップの重要性を知ったそうだ。特に赤龍帝。お前にとっては必要不可欠のようだからな」
「えっと………全然、言ってる意味が?」
サーゼクスの伝言とやらは、アニメ通りだとしたら小猫と朱乃もイッセーの家に住むのか?仮に、イッセーの家に住むことになって、二人に変なことするようなら滅するか。
「………」ゴゴゴゴ
「おいおい、ドラゴンスレイヤー。そんなに殺意を駄々漏れにするなよ。お前が考えているようなことにはならねぇよ。どうせ、お前はお前自身がいなかった時の今の話を知ってんだろう?」
「悪いな。ちょっと、イッセーを半殺しにするかどうか迷っててな」
「おい!また人を簡単に半殺しにすることを考えるなよっ!?」
「まぁ、いいや。魔王サーゼクス・ルシファーの名において命ず。姫島朱乃と塔城小猫を除いたオカルト研究部女子部員は全員、兵藤一誠と共に生活すること、だとさ」
「おー、サーゼクスの奴、分かってるじゃねぇか」
サーゼクスがオカルト研究部の女子部員全員がイッセーの家に住むことを朱乃と小猫だけを除いたことに喜ぶ。
「まぁ、何にせよ。これで、一学期が終わるのか」
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冥界合宿と滅竜魔導士の弟子
第56話
「時空竜の切断!!」
一学期最後の平日。オレは、新しい滅竜魔法の斬撃を放つと、斬撃は周りの空間を切り裂きながら次第にその斬撃を大きく巨大化させていく。そして、切り裂さかれた空間から、また斬撃が生まれ、左右に斬撃を飛ばす。
「よし………時空竜の切断、完成」
我が家の特別特訓場にて、新しい可能性を感じた滅竜魔法のために『駒王協定』が締結されてからひたすら鍛練をしていると偶然、《時の滅竜魔法》と《空間の滅竜魔法》の二つの滅竜魔法を融合することができた。新しいモード、《モード時空竜》を編み出すことができた。
しかし、滅竜奥義でもないのに《モード時空竜》の技は一発で滅竜奥義・改の四発分に相当するほどの魔力消費である。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「しっかし………マジで燃費悪いな。時と空間の滅竜魔法………」
早朝から限界ギリギリまで《時空竜》の技を連発して、セカンドオリジンまで魔力を使い過ぎて息を切らしながら額から汗が滝のように流れる。
「お疲れ様です、龍呀くん。はい、タオルとドリンク」
「おう。サンキュー」
オレと同じように早朝特訓をしている朱乃がタオルとぬるいスポーツドリンクを渡してくれる。
「どうですか、成長の程は?」
「まぁまぁだな。長時間でのモード時空竜の戦闘はまだ無理だな。初見殺しか一撃必殺だな。それに、二つとも制御が難しい」
「そんなに難しいのですか?」
「ああ。やり方をミスれば、技を放った場所だけ周囲のエーテルナノを永続的に取り込み、不可視の空間の穴を開けてしまう。それだけは起きないようにしたい」
「エーテルナノ?」
「ああ、そうか。イッセー以外は、FAIRY TAILを見てないから用語を知らないのか。なら、一度資料を作成しないとかな? この世界にはwikiがあるから助かる」
FAIRY TAILの用語集を作成するために、早朝の特訓はここまでに部屋へと戻る。すると、何故か猫姉妹がオレのベッドの上で仲良く寝ていた。
確かに、今日の朝食当番は朱乃だ。だからと言って、オレがいない間にオレのベッドに潜り込む必要があるか?普通なら無いよな。
だが………黒歌が小猫のことを大切そうに抱き締めて寝ている姿を見てしまうと起こそうと思えなくなってしまうが、小猫に関しては今日が夏休み前の最後の学校なので起こす。その際、少しだけ趣向を変えてみる。
「おい、白音。起きろ。そろそろ、朝飯だぞ」
小猫のことを『白音』と呼ぶと普段は隠している猫耳がピコりと出てくる。
「ほら、黒歌も起きろ。お前が起きないと白音が起きれないだろう」
今度は黒歌の名前を呼んでやると家では普通に出している猫耳が小猫同様にピコりと動いた。嬉しいようだ。
「起きないとイタズラするぞ」
「していいにゃよ」
「し、してくれても構いません。/////」
「お前ら………起きてたのかよ」
どうやら、狸寝入りなぬ猫寝入りをしていたようだ。
てか、小猫よ。顔を真っ赤にするほど恥ずかしいなら黒歌の真似をするなよ。
「起きたのなら、顔を洗ってこい。オレは風呂に行ってくる」
二匹の猫を放っておいて風呂に向かう。以前の『駒王協定』の日から少しだけ風呂がでかくなっていた。もしかしなくとも、神様のお蔭だ。
「また、背中の竜化が進んでる。まぁ、竜化の制御はできるてるし問題ないか」
風呂場の鏡に映る自分の姿を見て、どんどん人間を止めていることを実感する。というよりも転生してから外形が人間を止めているだけで中身の臓器や骨は5年間の修行で既に竜化をしていたのだろう。フェアリーテイルのドラゴンスレイヤーたちと修行をしていて竜化しない訳がない。
「よし、出るか」
そして、時竜の力の使わずとも時をキンクリして現在は放課後。なにやら、イッセーは部室の窓から外を眺めながら黄昏ていた。
「なぁ、木場。お前たちはやっぱり冥界に帰るのか?」
「冥界に?」
「うん、そうだよ。毎年の恒例だからね。イッセーくんは初めてだね」
「その場合は、オレは人間界で留守番か。まぁ、どうせ夏休み中にヴァーリの奴が来るかもな」
木場と会話をしながら考えていると部長と朱乃が部室に入ってきた。
「皆、揃ってるわね」
部長がソファーに座り。朱乃が入れた紅茶で一息入れてから部長の口から冥界に帰る話がされた。
「部長も冥界に帰るんですか?」
「ええ。夏休みだし故郷に帰るの。毎年のことなのよ?──ってイッセー、どうしたの?」
「部長が突然、冥界に帰るっていうから俺を置いて行っちゃうんじゃないかって思いましたよ………」
部長とイッセーがイチャコラしている間に、オカルト研究部の部員でオレを含めた三人がアザゼルの気配に気付いた。
その二人とは、小猫と朱乃だ。小猫は当然だとして、朱乃もアザゼルの気配を感じ取れるまでには成長が出来たようで嬉しく思う。
「そういう訳で、明日から冥界に行くわ。長期旅行の準備をしてちょうだい」
「あー、因みにオレと黒歌。それと、そこでコソコソと気配を消して椅子に座ってるクソ総督はどすればいいですか?」
「誰が、クソ総督だ!誰が!」
アザゼルの声でオレ、小猫、朱乃の以外のオカルト研究部員は全員驚いていた。
「アザゼル先生!?」
「貴方、いつの間!?」
「ドラゴンスレイヤーとその女どもを除いて、他の奴らは俺の気配を感じられないようじゃ。修業が足りないようだな」
「………」
アザゼルの言葉に部長はムッとした顔をするが仕方ないがないことだ。何せ、王の部長が女王の朱乃や戦車の小猫に遅れを取っているのだから。
「んで、冥界でのスケジュールは………リアスは里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。あと、例の新鋭若手悪魔たちの会合。それとお前らの修業だ。俺は主に修業に付き合うわけだがな」
「お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクスたちと会合か。ったく、面倒くさいもんだ。それと、ドラゴンスレイヤー。お前は、セラフォルーからの依頼だ。ギルド フェアリーテイルの狩谷龍呀宛のな」
「魔王少女から?」
アザゼルがテーブルに差し出してきたのは一通の手紙。それには、シトリー家の家紋と思われる手紙の封止がされていた。
それを指先だけ、鉄竜剣に変えて封を開ける。手紙の内容は簡単に言えば、支取先輩とその眷属たちを鍛えて欲しいとのこと。これは、魔王ではなく。一個人としての依頼らしい。
報酬は、冥界へのフリーパスポートや冥界にいる際の援助などであった。フリーパスポートに関して手紙と一緒に入っていた。どうやら、前払いのようだ。
「龍呀、セラフォルー様からどんな依頼が来たの?」
「すみません。この依頼、セラフォルーさん個人としての依頼らしいので内容を話す訳にはいかないです」
「そう………なら、仕方ないわね」
部長も納得してくれたみたいで良かったが、この依頼は支取先輩たちは知っているのだろうか? 念のため、この後に生徒会へ確認しに行くことにしよう。
「では、アザゼルと龍呀、それに黒歌は彼方までは同行するのね?行きの予約はこちらでしていていいかしら?」
「ああ、よろしく頼む。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。いつものは堕天使側のルートだからな」
「オレもお願いします」
「分かったわ。それじゃあ、今日は解散にしましょう。皆、明日の準備があるのだから」
「「「「はい!」」」」
部長の一声で解散したあと、オレは一人で生徒会室へ。小猫と朱乃には悪いが、先に帰ってもらうことにした。
てなわけで、ドアをノックしてから生徒会室へ入る。
「失礼します」
「狩谷くん?」
「狩谷?」
「支取先輩に、セラフォルーさんからの依頼の確認をしたくて来ました」
「お姉様からの依頼?」
やはり、支取先輩はセラフォルーさんから何も聞いていなかったようす。なので、手紙をそのまま、支取先輩に渡す。
そして、内容を見ていくとため息を吐きながらコメカミに手を当てていた。
「はぁ………お姉様ったら。ごめんなさい、狩谷くん。よろしければ、お願いできるかしら? 貴方が私達の修業を見てくれるとはとても勉強になりますので」
「狩谷が俺たちの修業を見るって………会長?」
「構いませんよ。ただし、オレはかなりスパルタなんで」
匙が何やら驚いているが今は無視。今は依頼が大事だ。
「ところで、冥界にはリアスたちと一緒に?」
「ええ。部長たちやアザゼルと一緒です」
「分かりました。では、修業の件。お願いしますね」
「はい」
支取先輩に依頼の確認を終えたら、その日は真っ直ぐに帰る。
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第57話
セラフォルーさんからの依頼を支取先輩に確認してから、その依頼を受理することになった翌日。
現在、絶賛冥界行きの列車の車内でオレこと、狩谷龍呀はグロッキーです。はい………。
「き、気持ち悪い………ウプッ!」
「龍呀、大丈夫かにゃ?」
「トロイヤの魔法はどうしたんだよ?」
「イッセー、もう十回はかけた。なのに、全然効かないんだ………うぇぇ」
「お、おう………」
バケツに頭を突っ込んで吐こうには何も出てこない。
それに《トロイヤ》の魔法が効かないのは多分、天竜以外の属性を習得している所為だろう。他に、考えられるのは竜化が進行し過ぎたくらいだ。
「本当に滅竜魔導士は乗り物に弱いんだね。イッセーくんの言うとおりだ」
木場が何か言ってるが今は返答できない。マジで気持ち悪い。そんな時、列車のアナウンスが流れた。
『まもなく、シトリー領に到着します』
そのアナウンスが流れると前の車両に繋がる扉から支取先輩に椿先輩、それと匙がやってきた。
「よう、兵藤。それに………やっぱり、狩谷は乗り物酔いか」
「ああ。トロイヤの魔法をかけても効果が無いんだと。今は黒歌さんたちが看病してる」
「くぅー、狩谷の奴め羨ましい!!!」
匙も何か言ってるが今は返答できない。気持ち悪い。
支取先輩が部長たちと話したあとシトリー領で降りたあと、部長とアザゼルから話があるというので黒歌に支えられながら別の車両に移動した。
「で、話って何だ?」
「これから、あいつらの今の実力を測るためにリアスを抜いたグレモリー眷属で、あるドラゴンと戦わせる」
「元龍王のタンニーンだろう?」
「タンニーン!? ブレイズ・ミーティア・ドラゴンのタンニーンかにゃ?!」
「やっぱり、知ってるのかよ………」
「そういう訳だから、貴方たちには伝えて置きたかったのよ」
「分かった。んじゃあ、オレと黒歌は戻ります。黒歌、頼む」
「分かったにゃ」
再び、黒歌に支えられながらイッセーたちがいる車両へ移動する。その後は、アニメ通り、列車が止まり。空間に何かしらの魔法が干渉をしたのを感じた。
そして、気が付けば隣に部長とアザゼルがいた。どうやら、タンニーンと戦う山に強制的に転移させられたようだ。
「ふっかぁぁぁあつ!!!」
「龍呀が元気になったにゃ」
乗り物酔いから復活したら、イッセーたちとタンニーンとの戦いを見る。まぁ、大体がアニメ通りの展開だな。違う点は、小猫がモード雷獣でタンニーンを翻弄しながら顎にだけ打撃を入れている点だ。
それ故に何度も、小猫のモード雷獣と合わさった拳を顎に受けて脳が少しだが揺れてい怯んでいる。
「塔城のアレが例の滅獣魔法ってやつか………」
「属性は雷ね。それに雷の鎧を使わずに腕と脚だけに集約して、魔力を節約しているわね」
「あれが、モード雷獣にゃ。それも全部、龍呀が教えたものにゃ!」
「だが、あと7分だ」
「7分?」
部長がオレの言葉に反応した。
「小猫が雷獣を発動してあんだけ動いてタンニーンを翻弄しているんだ。今まで、維持するだけしか使っていなかったのを土壇場で使えばどうなるか」
「いつもよりも早いタイムリミットが来るのが当たり前にゃ。普通に維持してるだけでも、もって15分が限界。それに加えて、白音は私や龍呀のようにセカンドオリジンの器がまだ出来てないにゃ」
「えっ?ちょっと待って! 黒歌、貴女もセカンドオリジンがあるの!?」
「最近、やっと器が出来たところにゃ。まだまだ、鍛練が足りないにゃ………」
黒歌の言うとおり、黒歌は何とセカンドオリジンの器が出来上がったのだ。それにより、伏魔殿のノーマルは何とかクリア出きるまで、ハードは最初のDランクモンスターを5体まで倒すまでに至った。
今更だが、伏魔殿の難易度を悪魔の階級で表すと、イージーが下級悪魔から上級悪魔ほどの強さ、ノーマルが上級悪魔から最上級悪魔ほどの強さ、ハードが最上級悪魔から二天龍クラスといったところだろうか。
「そうこう言ってるうちにイッセーのチャージが完了したか…………だが、今のイッセーの力じゃあ、タンニーンには通用しないがな」
「だろうな。今の赤龍帝は何もかもが足りねぇ」
オレとアザゼルがイッセーの力量不足の話をしているとタンニーンと戦っているイッセーが朱乃と共にドラゴンショットを放つがタンニーンは無傷。
「そういえば、アザゼル。バラキエルのおっさんは、朱乃に光の力を使わせてないのか?」
「それが………朱乃の奴はガキの頃に光の力の制御を誤ってから自分の光の力がちょっとしたトラウマになってるみたいでな………」
「はぁ?」
朱乃が光の力にトラウマを持っている? アニメでは、そんなことはなかった。もしかしたら、オレがあの時に介入したからか?
そんなことを考えているといつの間にかイッセーたちの戦いが終わったようだ。それにより、アザゼルが種明かしをしに動こうとするがオレはあることをアザゼルに頼むことにした。
「よし、そろそろ種明かしと行きますかね」
「なぁ、アザゼル。タンニーンを止める前に頼みがあるんだがいいか?」
「一応聞いてやる」
「この世界のドラゴンと戦ってみてぇ」
「はぁ………」
「なっ!?」
「やっぱりこうなったにゃ………」ヤレヤレ
アザゼルはため息を吐き、部長は驚きのあまり絶句し、黒歌は分かっていたのか仕方のない夫を見る目で此方を見てくる。
「分かった。ただし、滅竜魔法は禁止だ。それでもいいなら好きにしろ」
「オッシャァァアアアッ!! 燃えてきたァァアア!!!!」
本当のドラゴンと戦えることに闘志が燃え上がり、ナツの様な台詞が口に出ていた。
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第58話
アザゼルから滅竜魔法を使わなければタンニーンと手合わせをしてもいいと許可を得たので、黒歌に制服の上着を預けてから準備運動をする。
準備が終わるとタンニーンがイッセーに攻撃を仕掛けようとしている瞬間だったので魔力は纏わずに竜のオーラを両足だけに纏わせて竜の脚力で一気にタンニーンの上を取る。
タンニーンの上を取ったらタンニーンの頭を踏み台にしてイッセーの前に躍り出る。
「待たせたな、お前ら!」
「りゅ、龍呀!」
「「龍呀くん!」」
「「龍呀先輩!」」
「龍呀さん!」
「龍呀!」
上からイッセー、朱乃、木場、小猫、ギャスパー、アーシア、ゼノヴィアの順でオレの名前を叫び呼ぶ。その声には安堵の声音が込もっていることが《毒竜》の魔法で理解できた。
「よう、ドラゴン。悪いがオレの相手になってくれねぇか?」
「そうか!龍呀は《天竜の滅竜魔法》があるからドラゴンと会話ができるのか!?」
何やらイッセーがそれらしいことを言ってるがタンニーンが会話をできることを知らないから仕方ない。そんなことを頭の中で考えているとタンニーンの心の声が聞こえてきた。
「(なるほど。此奴がサーゼクス殿が言っていた龍を滅する魔法。滅龍魔法を使う魔導士か)」
「あれ?何か字が違う。滅龍じゃなくて滅竜な!間違えんな!」
「(此奴、俺の考えていることが………!?)」
「ああ。全部聞こえてるぜ。これも滅竜魔法の一つだ」
今更だがタンニーンの奴、オレが心の声を聞けるとわかった途端に心の声で会話を初めやがったよ。
「そうだ。お前ら、コイツとはオレ一人でやりたい。だから、離れてろ!」
タンニーンとサシで戦いたいためにイッセーに下がるように指示を出すとイッセーが止めてくる。
「けど、龍呀………!?」
「イッセー先輩。ここは龍呀先輩の指示にしたがってください。流石に龍呀先輩が調子に乗り始めたら、ここにいるのは危険です」
「でも、小猫ちゃん!!」
「大丈夫です。龍呀先輩は、あのアクノロギアと戦えるくらい強い《滅竜魔導士》です」
「小猫ちゃん………わかった。龍呀、無茶だけはするなよ!」
「ああ!」
小猫のお蔭でイッセーの退避が完了するとタンニーンが俺の意図をわかってくれているのか心の声で準備が出来たかと尋ねてくる。
「(もうよいのか?)」
「ああ。ここからオレとおっちゃんとのガチンコ勝負だ!」
「(お、おっちゃッ………まぁ、よい。こちらもある程度、本気で行くぞ!)」
「オッシャアー!燃えて来たぞ!!」
両拳を合わせてからタンニーンに向かって駆け出す。すると、タンニーンは小手調べと言わんばかりに龍麟に覆われた右拳を真っ直ぐに振り下ろしてくるので、此方も右拳のストレートで応える。
「ウッッオラァァアアッ!!!」
「(これは………!!?)」
オレとタンニーン、互いの拳が衝突するとバトル漫画のようなに拳が衝突した余波で空気が揺れる。そして、衝突した拳は次第にタンニーンの方が押されて始めたので更に力を込めてアッパーカットのようなに拳の軌道を変える。
「グゥゥオアアアーッ!!!」
「(ば、バカな………!?)」
アッパーカットに軌道を変えたことにより競り負けたタンニーンが大きく尻餅を付く。それを見たイッセーたちが驚きの感情を次々と声にする。
「ドラゴンにパワーで競り勝つとか、ありえねぇ………」鼻血タラー
「これは流石に、僕も笑えないかな………」
「いつも通り、龍呀先輩は規格外です」
「あらあら、あんな剛力に組み敷かれたら、私では逃れられませんわね。でも、そういうプレイもありかもしれませんわ。/////」クネクネ
「す、凄いです………」
「私もいつかは、あれくらい………」
「あわわわわ!!」
朱乃、お前だけ発言に異なるんだが!? それに頬を赤く染めながら巫女姿でクネクネするなよ。イッセーが鼻血垂らしてんだろが!!
あとイッセー、てめえは二度目の半殺しするから覚悟しとけ?いくら否定しても心の声がただ漏れだバカたれの変態め。そんなイッセーの半殺しの件について考えているとタンニーンが何かやら心の声で声を掛けてきた。
「(貴殿の滅竜魔法はドラゴンの炎を食えるらしいな!ならば、俺の炎を喰らってみろ!!!)」
タンニーンの口から放たれ炎のブレスがオレに襲いかかってくるが今回はアザゼルから滅竜魔法は禁止でのタンニーンの手合わせが認められているため、今回は炎を食べずに………屠る。
「しゃらくせー!」
アザゼルは確かに《滅竜魔法》はダメだと言ったが《竜》としての力を使うなとは言っていない。なので、竜の力を二割ほど出して両腕を竜化させて、タンニーンのブレスを腕を振るって掻き消す。
「なんちゃってテイクオーバー。ドラゴンソウルってな……」
「(腕が龍化しただと?! 貴殿は神器持ちなのか!?)」
「いんや、これは滅竜魔法の弊害だ。安心しろ、制御は出来てる。それより、行くぞッ!!」
竜化したことにより今まで抑えてきた闘争本能の一部が解放され、力がドンドン沸き上がってくる。
「オラァァア!!」
「グヴォア!?」
「小手調べはもういいだろう。本気でかかってこいやぁぁあ!!!」
驚いて固まっているタンニーンの腹に一撃入れてながら煽る。するとタンニーンもやっと本気になったのか目付きが変わる。
「グオオオオオッ!!」
「へっ! そう来なくちゃぁ面白くねぇ!」
そこからはイッセーたちの戦闘が可愛いく見えるほどの激闘と変化した。小手先無しの竜人間vsドラゴンとのガチンコの殴り合い。地形を変化させてしまったり、断崖絶壁を竜のオーラを纏った足で少し強く踏みつけでめり込ませながらタンニーンが吐く炎を回避したり。伸びる角はこれまた竜のオーラが纏った両手足で弾いたりと、楽しんでいた。
「やべぇ………めちゃくちゃ楽しい!」
「フッハハハハ!俺も久しぶりに楽しいぞ!」
「まだまだ、行くぜ!タンニーン!」
「それは此方もだ!滅竜魔導士!」
お互いに久しぶりに腕を振るえる相手と巡り会ったことにヒットアップしてしまい止め頃が頭から飛んでいるとアザゼルが慌ててオレたちの間に止めに入るが─────。
「待て待て、お前ら!それ以上やられたら──グヴォアッ!!」
「あっ、アザゼル」
「なんだ居たのか」
「お、お前らなぁ………!!」
アザゼルの登場により、オレとタンニーンの拳が最後に衝突する前にオレとタンニーンの拳がアザゼルの顔面にクリティカルヒット。そのまま、アザゼルは拳の圧力によりギャグマンガのようにグルグルと回転しながらぶっ飛んだ。てか、オレたちはアザゼルが居たことをすっかり忘れていたのである。ごめん、アザゼル。反省はしている。
加えて、オレたちが止まったことによりオカルト研究部の皆と黒歌も此方に集まってくる。
「あー、二人ともこのドラゴンは何なんだ?」
「転生悪魔だ」
イッセーの問に答えてやるとアニメ通り驚きやがった。
「このドラゴンが悪魔ぁぁぁあ!?」
タンニーンが転生悪魔だと知るとイッセーはとても驚いているがそんなイッセーを他所にドラゴン同士であるドライグとタンニーンが会話を始める。
「久しいな、ドライグ」
『ああ。懐かしいな、タンニーン』
「てか、知り合いかよ!?」
「ブレイズ・ミーティア・ドラゴン。すなわち『魔龍聖』タンニーン。元龍王の一角でな。とある理由でドラゴンから悪魔に転生した物好きだな奴さ」
アザゼルがタンニーンの紹介をされるとイッセーと木場が驚きのあまり声にする。
「ドラゴンが悪魔に………?!」
「どんだけ最強なんだよ………」
「お前らの修業のため手を貸してもらった」
「修業?つまり、特訓なのか!?」
アザゼルの修業という言葉に脳筋のゼノヴィアが反応した。するとタンニーンが仕方ないけど特訓に協力する理由を話した。まぁ、知ってるけどね。
「フンッ。サーゼクス殿の頼みだというから特別に来てやったんだ。その辺を忘れるな、堕天使の総督殿」
「それよりどうだった。ドラゴンスレイヤーの実力は?」
「驚いている。が、それ以上に俺の眷属に空きがあったら勧誘したいくらいだ。まさか、人間の身体でありながらドラゴンとサシで戦えるとは」
どうやら、タンニーンからは認められたようだ。この世界のドラゴンに認められたことに嬉しく思っているとアザゼルがオレにあることを尋ねてくる。
「龍呀、あれで何割だ?」
「なに?」
「そうだなー。竜としての力なら二割強ってところだな。魔法はゼロだ。今回、タンニーンのおっちゃんと手合わせするのに滅竜魔法を使うなって言うからさ」
「あ、あれで二割強だと………それも、噂の滅竜魔法無しだと………!?」
「これが、サーゼクスの奴が一目置く。ドラゴンを滅することのできる魔法を操る魔導士。ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士、狩谷龍呀だ」
「これが滅竜魔導士……。いや、その一端でしかないのか。俺でも途中から4割を出していたが。アザゼル、もしも狩谷殿が魔法を使っていたら俺はどうなっていた?」
「一方的な蹂躙だろうな。奴は、複数の属性の滅竜魔法が使える。加えて、大抵の属性は奴の養分にされてしまう。つまり、奴に魔法や属性攻撃なんぞ効かないのさ。可能性としては同じ、龍殺しの力くらいか?」
「計りしれんなぁ………」
などと色々とアザゼルとタンニーンが話しているが………ごめんね、アザゼル。この身体は
あとは、アニメ通りに話が進んだ。手抜きじゃないよ。だってアニメ通りなんだもんな。
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第59話
「はぁ~。冥界の温泉も悪くねぇなぁ………」
タンニーンとの手合わせをしたあと、オレたちというよりイッセーたちがタンニーンとの戦闘で砂だらけになったのでグレモリー領の温泉で汚れと疲れを落としている。
「旅ゆけば~♪」
せっかく、温泉を楽しいんでいるのにも関わらず堕天使のクソ総督は黒い翼を全開に広げながら鼻歌交じりに歌ってやがる。
広いとはいえ、そんなに翼を広げるなよ。てか、翼が濡れて飛べなくなるぞ?もしかして、そんなことはないの?
「ハハハハ、やっぱり冥界──地獄といえば温泉だよな。しかも冥界でも屈指の名家グレモリーの私有温泉とくれば名泉も名泉だろう」
「これが酒でもあれば言うこと無しなんだがなぁ………」
「湯船に浸かりながらの飲酒は危険だぞ?」
「それは人間の場合だ。俺たち異形の存在とされる堕天使、天使、悪魔は関係ねぇよ。それにお前さんだって、人間でじゃなくて《竜人》なんだから硬いことをいうなよ」
確かに、既に内臓の殆どが竜化が完了している。それに骨も竜の骨に変化している。そのため、やろうと思えば背中から竜の翼を生やすこともできる。
流石に、昨日の深夜特訓でいきなり、身体が完全な竜化。つまり、滅竜の母であるアイリーン・ベルセリオンのように身体もドラゴンサイズになったのは、黒歌や小猫、朱乃も目玉が点になっていた。
「そういや、タンニーンとの手合わせで《竜》としての力を二割強しか出してないと言っていたが本当か?」
「ああ。さすがに六割ほど出すと無意識に背中から竜の翼が生えるんだよ。完全な《竜化》をすると、肉体が人型から本当のドラゴンへとサイズが変わるんだ」
「なるほど。リアスたちを巻き込まないためにもセーブしていたと?」
「ああ」
本当ならタンニーンとの手合わせで竜の力を4割出した状態で闘いたかったのだが、以前に家で竜化した状態で伏魔殿に挑んだら、中のステージが崩壊するという驚きの結果になった。
けれど、伏魔殿の外に出てしまえばステージは復元してるから問題はなかったが力のセーブを考えたのはいうまでもない。
「それとアザゼル。翼で飛ぶって、どんな感じなんだ?」
「は?」
オレの問いにアザゼルは「何を言ってるんだ、コイツ?」みたいな顔をしてから数テンポ間が空くと笑い始めた。
「プッ、アッハハハハ!! そうだよな!お前ら、人間は翼で飛ぶなんて感覚は無いもんな!」
「出きれば、簡単な飛び方を教えて欲しいんだが」
「なら、まず翼を出して見ろ」
「ああ」
アザゼルに促されるままに感覚的に肩甲骨の辺りに意識を集中させて翼を広げるイメージを頭の中で造る。すると、バサッという音と共に肩甲骨の辺りから翼が生える。
「出たな。そんじゃあ、今から触れて俺が飛ぶ時と同じ翼の動きをやるから感覚で覚えろよ?」
「ああ」
それから数回、右側の翼をアザゼルが触れながら翼で飛ぶ感覚を教えてくれた。けれど、触れる度に今までに感じたことの無い感覚に戸惑ってしまった。
「今、動かされている感覚は分かるか?」
「ああ」
「今の感覚を反復してみろ」
「わかった」
アザゼルに教えてもらった感覚通りに翼を羽ばたかせ、ある程度、自分でも感覚を掴めたら一度だけ強く羽ばたかせる。
「バカ、お前!まだ説明が………うおっ!?」
「ちょっ、龍呀! わぷーっ!?」
「龍呀くん! あぶーっ!?」
「あわわわ!! わぶーっ!?」
一度だけ強く羽ばたかせただけで、かなり上空まで飛翔してしまった。それにより、アザゼルたちにお湯を被せてしまった。
加えて、ここで気付いたことがある。オレは飛翔する方法は教えてもらったが、ホバリングのやり方は教わっていない。
故に………。
「お、落ちるぅぅう!?」
と、取り敢えず鳥が風を掴むようにオレも竜の翼を大きく広げて、ハングライダー要領で何とか男湯に戻る。
「な、何とか帰って来れた………」
「おい、龍呀!いきなり、飛ぶなよ!?」
「わ、悪い………四人とも」
お湯を被せてしまったことに、キチンと四人に謝罪をした。すると、イッセーからあることを尋ねられた。それも、答えづらいものをだ。
「な、なぁ、龍呀」
「なんだよ?」
「お前、前世で俺が主人公のアニメを見てたんだよなぁ?」
「そうだけど?」
「なら、俺の彼───」
「答えない!」
「ちょっ!」
イッセーの質問が直ぐに理解出来たので話を絶ち切ることにした。例え、この世界がIFだとしても。答えていいものと悪いものがある。
「悪いが、それは今後の戦いにも差し障るものになるから答えない。いや、答えられないと言った方がいいな」
「やっぱり、ダメですかねぇ………」
「駄目だ。それにオレが介入してるから色々と話が違ってるしな」
「なら、物語の俺は、どうやって強くなってた?もしくは、どうやって完全な禁手化ができるようになったんだ?それくらいならいいだろう?」
「んー………」
どう答えたものか………。答えをそのまま教えてしまったら、イッセーは部長に頼んで、部長はそれをイッセーのためと思い、了承しかねない。
となると、教えてやるとしたら………やはり、あの擬音かなぁ?
「ヒントはめちゃくちゃ修業して、ぽちっとぽちっと、ずむずむいや~ん、だ」
「はぁ?」
「だから、これが物語のお前が禁手化をできるようになったヒントだよ!?」
「修業はわかる。けれど、後のぽちっとぽちっと、ずむずむいや~ん、が分からないんだが?」
流石にこれ以上は答えられん。そんなことを思っていると、いつの間にか堕天使の翼を引っ込め、酒を飲んでいるアザゼルが声をかけてくる。
「なんだよ、イッセー。お前、龍呀のヒントがわからなかったのか?」
「だから、そう言ってるじゃないですか? まさか!アザゼル先生は、龍呀のヒントが分かったんですか!?」
「おうよ。てか、龍呀は意外とムッツリだよな」
「なっ!?」
やべぇ………流石は堕天使の総督。俺が今まで黒歌たちにも隠していたことに気付きやがった様だ。
「だって、そうだろう。龍呀の奴は、俺たちを物語として知っている。つまり、人間のアニメとして見ていたということだ」
「それって………」
「お前とリアス、アーシアの今までの日常生活を見られていた訳だ。いや、これから体育祭までの日常を知っている訳だから。ある程度の未来も見られていた訳だ。ガハハハ!!」
やはり、こいつはクソ総督だ。クソ総督の何者でもない!!
改めて、そう確信すると男湯の上に位置する女湯から部長、アーシア、黒歌、小猫、朱乃の順で声が聞こえてきた。
『ちょっと、龍呀!今の話は本当なの!?』
『あわわわ。龍呀さんにまで裸を見られていたなんて………恥ずかしいです!?』
『龍呀、あとでちょっと夫婦でお話があるから覚悟するにゃん☆』
『龍呀先輩は、紳士だと信じていたのに幻滅です』
『あらあら、黒歌。私も龍呀くんとO☆HA☆NA☆SHIがしたいわ。フフフ』
あら~、上に奥様から怒りの魔力を感じますねぇ。どうやって、弁明をしたものかを考えていると隣にいるイッセーから先日のヴァーリと戦った時、同様に爆発的にオーラが増幅した。
「龍呀、テメェェエエエエ!!」
「ちょっ、イッセー!?」
「テメェ、黒歌さんに小猫ちゃん。それに朱乃さんだけに飽きたらず。部長やアーシアの裸までぇぇえ!!」
「裸はまだ見てないぞ! てか、黒歌に小猫の場合は前世でも見れてないから!?」
「でも、黒歌さんと小猫ちゃん以外の上は二次元として見たってことだろうが!?」
「えーっと、それは………」プイッ
イッセーの問いに答えづらいので顔を背けてしまった。それがトリガーになったのか、普通ならあり得ないことが起きた。
「龍呀ァァアアアアア!!!!」
『Welsh Dragon Over Booster!!!』
「うそぉーん!?」
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第60話
知っている人がいましたら、コメントをお願いします。
『Welsh Dragon Over Booster!!!』
「うそぉーん!?」
イッセーの問いに答えづらかったので顔を背けたら、突然、イッセーの未完成版の禁手化が発動した。
いやいや、どうやって禁手化したんだよ!? 何も代償にできるものなんて………いや?あったわ。それもイッセーの体内の中に……でも、そんなことが可能なのか?
取り敢えず、聞いてみることにした、
「い、イッセー? どうやって未完成の禁手化をできんだ?」
「んなの、こと知るかよぉぉお!!」
「やべっ!?」
今のイッセーは、オレに対する嫉妬の怒りで頭に血が上っているのか人の話を聞こうとせずに攻めてきた。
なので、こちらも構えて迎撃体制に入る。
「オラーッ!!」
「アイスメイク・シールド!!」
『BoostBoostBoost!!!』
「なっ!?」
イッセーの右ストレートを氷の盾で防ごうとすると、右拳が盾に当たる瞬間に三回倍加させて、メキメキッと音を立てながら氷の盾に皹を入れる。
「嘘だろっ!?」
『BoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
「やばい、砕ける!」
「ウオオオオオッ!!!」
皹が入りながら防ぐも、イッセーはそのまま追加で五回倍加させて、全力ではないオレの氷の盾を粉砕した。
それに合わせて、オレは瞬間的にラクサス直伝の滅竜魔法ではない、ただの雷の魔法で腕の筋肉を刺激して普通よりは速い速度で腕をクロスに構え、加えて腕だけを竜化させて硬化させる。
ヴァーリやタンニーンとの戦闘でここまで成長するとは、やはりドラゴン系の神器保持者の成長速度は異常だ。
「おい、イッセー!風呂場で暴れんな!!」
「うるせぇぇええ!!」
流石にこれ以上、暴れると部長にも迷惑をかけるのでちょっとばっかしイッセーにお仕置きを与えることにした。
なので、尚も殴りかかろうとイッセーに対して、ジュビア直伝のただの水魔法でイッセーを拘束する。
「ウォーター・ロック!!」
「ゴボゴボッ!?」
「そこで頭を冷やせ、変態バカ野郎が」
イッセーが尚もウォーター・ロックの中でもがいているが知らない。けれど、あと15秒経過したらウォーター・ロックを解除してやるとしよう。
てか今思えば、水の魔法って殺傷能力高過ぎない? ジュビアが九鬼門の一人、漆黒僧正のキースにやったように、自身の身体を水にして、敵の身体に侵入し、中から身体を膨張させて、敵の身体だけ木っ端微塵になる。
これも考慮してシトリー眷属の修業のメニューを考えないと………。
「おい、龍呀」
「ん?なんだ、アザゼル?」
「早く、魔法を解かないとイッセーが溺死するぞ」
「え?」
「………」プカ~
「やべっ!?」
アザゼルの説明で、いつの間にかウォーター・ロックの中で未完成禁手化が解除され、力無くプカプカと浮かんでい溺れているイッセーに気付いて、慌ててウォーター・ロックを解除する。
ウォーター・ロック解除したら、温泉から出して、床の上に仰向けに寝かせてから胸の辺りに微弱の電気を纏わせた拳を落とす。すると、イッセーがゴホッと水を吐き出してので安堵する。
「このバカ。頭を冷やさずにずっと、もがいてやがったな。それとやっぱり、プール掃除の時に渡した小型のラクリマがイッセーの体内から消滅してやがる」
「小型のラクリマ? それはどんなラクリマなんだ、龍呀?」
イッセーにお湯を吐かせる際に、体内にあったラクリマのがなくなっている話を呟いていると酔いが覚めたのか、研究好きのアザゼルが話に参加してきた。
「イッセーの体内にあったラクリマは、イッセーの余分な龍のオーラを吸収する効果があるラクリマなんだ。それが、何の因果か、さっきの未完成禁手化の代償の代わりになっていたようだ」
「ほー。俺の腕輪と同じくらいの効力を持つほどか、どのくらいのエネルギーが蓄積されていたんだか……」
「ラクリマを渡したのは、コカビエルとの騒ぎの後だから、まだそんなに蓄積されるほど日にちが経ってないと思うんだが………こればかりは専門じゃないしなぁ」
ラクリマの専門は、ウォーレンだからなぁ。オレが所持しているラクリマは、大体がウォーレン先生のレシピを元に作っているから専門ではない。
「アザゼルは、ウォーレンと少し気が合いそうだな」
「ウォーレン? そいつが、ラクリマの専門科なのか?」
「まぁな。ウォーレンは、前に渡した小型通信ラクリマを作った張本人だ」
「なるほどなぁ。一度は会ってみたいもんだぜ」
「可能性としては皆無に等しいだろうな。別の世界の人間だし」
「だよなぁ………」
アザゼルとラクリマの話をしたあと、温泉をたっぷりと堪能してから再び、グレモリー家所有の列車に乗ってグレモリー領の中心部と向かった。
グレモリー領に着いて、アザゼルと別れたあと、グレモリー領民が部長が帰って来たことを祝って、パレードが行われていた。アニメでは出なかったシーンなので、かなり驚いている。
んで、オレと黒歌はグレモリー眷属ではないため、部長の客人という立場でグレモリー邸に招かれることになり、客人用の馬車が用意されていたが、オレは滅竜魔導士だから乗り物はアウトなのにゼノヴィアを除いた女性陣に無理矢理馬車に乗せられた。
絶対に風呂場のことで根にもってやがる。加えて、客人用の馬車にはグレモリー眷属の一人ということで小猫が同乗することになった。
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第61話
無理矢理に馬車へ乗せられて揺られること30分。やっと、部長の実家であるグレモリー邸に到着。まずは、部長が先に馬車から降りてからオレたちも馬車が降りる。
「や、やっと着いた………」
滅竜魔導士にとって、乗り物は天敵。念のために三輪車を試したがダメだった。加えて、エレベーターやエスカレーター、玩具の乗り物、ローラーシューズでもダメなのは驚いた。
「さあ、行くわよ」
グレモリー邸に入り、左に執事、右にメイドがズラリと立ち並ぶ中、部長を追いかけながらオレたちもカーペットの上を歩いていると奥の方から部長やサーゼクスの髪と同じ髪を色した少年が走ってくる。
「リアス姉様!お帰りなさい!」
「ただいま、ミリキャス! ちょっと見ないうちに大きくなって……」
やはり、サーゼクスとグレフィアの息子である。ミリキャス・グレモリーだったか。部長もミリキャスを愛おしそうに抱き締めると、イッセーがミリキャスについて部長に尋ねる。
「あの、部長。この子は?」
「お兄様………サーゼクス・ルシファー様の子供なの」
「部長さんの甥子さんですか」
「さぁ、挨拶なさい」
イッセーの質問に答えたあと、ミリキャスの頭を撫でてから、ミリキャスにオレたちへ挨拶をするよう促した。
「はい。ミリキャス・グレモリーです。初めてまして」
ミリキャスが挨拶をすると微笑ましそうにアーシアとゼノヴィアがミリキャスの感想を言う。また、イッセーがミリキャスの母親について疑問を溢す。
「あは、可愛い!」
「正真正銘のプリンスということか」
「あれ? てことは、サーゼクス様のお嫁さんって一体………?」
「サーゼクスの嫁はグレイフィアだ。イッセー」
「え? マジ?」
イッセーの疑問にオレが答えるとイッセーの目が点になる。そんなことを余所にグレイフィアがとある扉の前に立って、オレたちに声をかけてくる。
「皆様。では、奥へどうぞ」
声をかけたらグレイフィアの前の扉が独りでに開き、開かれた部屋へ、ミリキャスが走りながら入っていく。
「リアス姉様がお帰りになさいました!」
「これこれ、なんですか。お行儀の悪い!」
部長に続いて、オレたちも部屋に入るとアニメで見た通り。亜麻色の髪をした女性がミリキャスを抱きしめていた。まぁ、部長の母親なのだが。
「イッセー、先に言っておく。既婚者を熱い眼差しで見ないことをオススメするぞ。それとあの人は部長の姉ではない」
「え? あの人、部長のお姉さんじゃないのか!?」
「あの人をアニメで見たことがある」
「龍呀は、お母様を知っているのね」
「ええ。アニメでも、今の同じ光景がありましたから」
「お、お母様!? 」
「イッセー、部長の母親が若いことに驚くのは分かるが。FAIRY TAILで例えればアイリーン・ベルセリオンと似た方法で今の姿を保っている」
「あっ、なるほど!」
ヴェネラナの容姿について、アイリーンの例で説明すると身体で「納得!」と表すように掌の上に拳を横にポンッと置く。
イッセーがヴェネラナの容姿に納得するとグレモリー眷属の女王である、朱乃が代表となってヴェネラナに挨拶をしながら頭を下げる。
「ご無沙汰しております。ヴェネラナ様」
朱乃が頭を下げるとオレと部長以外のグレモリー眷属と黒歌も朱乃に続いて、ヴェネラナに頭を下げる。
「お元気そうで何よりです。新しい方々も初めてまして、リアスの母のヴェネラナ・グレモリーです」
ヴェネラナがオレたちに挨拶をするとオレとイッセーに声がかかる。
「お二人が兵藤一誠さんと狩谷龍呀さんでしたね」
「どうして、俺のことを?」
「娘の婚約パーティーくらい、顔を覗かせますわ。母親ですもの」
その言葉にイッセーの心拍数と筋肉の音に変化が聞こえた。どうやら、婚約パーティーの時に叫んだことを今更になって恥ずかしくなったようだ。ドンマイ!
「そ、その節は! とても大変なことを仕出かしてしまい、大変申し訳なく………!」
「フフフ!お気になさらないで、夫にも良い薬になったわ。娘の気持ちも考えずに婚約だなんて」
イッセーの謝罪に微笑まし者を見るような顔で微笑んだあと、ちょっと意味を含んだ目で部長を見たながら部長を弄る。
すると、赤面した部長が声をあげた。
「お母様!」
「それでは、夕食にいたしましょう。さあ、リアス。皆さんをご案内して」
ヴェネラナが夕食にすると話をしたあと、オレたちを食事場へ案内するように部長に言ったあと、優雅に去ると部長は、辱しめられた鬱憤を当たる場所がなくなり、諦めた。
「………はい」
部長に案内されて大きなダイニングルームに豪華な夕食となったのだが。イッセーとアーシア、ゼノヴィアがコース料理のナイフとフォークの使い方や食べ方などがちぐはぐで余り思うように食べれていない。
オレ?オレは、前世で接待などでこういうフランス料理店に行く時がありましたよ。思い出したくない記憶だがな。
「龍呀さんは、ナイフとフォークの使い方が分かっているのですね」
考えことをしているといきなり、ヴェネラナから声をかけられて驚くが直ぐに接待の対応で答える。
「ええ。過去に経験がありまして。悪魔貴族流の作法と自分の作法では、違う点があると思いますがご了承願います」
「何分、何年もそういう作法を使う料理を食べていなかったので」
「お気になさないでください。他の皆さんも堅苦しい食べ方は気にせずに、食べてください」
オー!ヴェネラナ、ナイス!もしかして、イッセーとアーシア、ゼノヴィアの食べ方を見てからオレに声をかけて、堅苦しい食べ方から緩い食べ方に変更させるためにこんな質問をしたのか? だったら、以外と彼女は策士だ。
堅苦しい食べ方から一辺して、普通の食べ方で食べていると部長の父親である、グレモリー卿からイッセーに声がかかり世間話が始まった。
そして、グレモリー卿がイッセーに『お義父さん』を進めて、それをヴェネラナが尖ると部長は顔を赤くしてダイニングルームから出てってしまった。部長が出て行った理由をイッセーは理解していない顔で部長のあとを見ていた。
コイツ………ハーレムが実現しているのに無意識なんだよなぁ。部長やアーシア、ゼノヴィアも苦労するなぁ。
「あの、グレモリー卿」
「なんだね、狩谷龍呀くん」
「お願いがありまして。食事のあとにどこか広い場所を少し借りれませんか?」
「なにをするんだい?」
「日課の特訓です。主に黒歌と小猫。そして朱乃のですが。よければ、ご覧になりますか?」
「ふむ。時間があれば拝見しよう」
「分かりました」
夕食を終えるとその日の夜は、いつもよりも早めに特訓を終わらせてベッドで寝ることにしたのだが………何故かオレのベッドで黒歌と朱乃が左右からオレの腕をホールドして、小猫が腹の上に乗ってホールド。身動きが取れない状態での就寝となってしまった。
これも惚れた弱みですね………トホホ。(;´д`)
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第62話
グレモリー邸に泊まった次の日。今日は、早朝特訓は無しにして身体を解す程度でスパーリングという名の準備運動を終えたあと朝食を取り、グレモリー邸の噴水広場にて集合している。オカルト研究部員+αが揃うとアザゼルが口を開く。
「よし! 全員揃ってるな。人間界の時間で20日間、トレーニングメニューを作った」
アザゼルのその言葉にイッセーが愚痴を放つ。
「20日も特訓すんのかよ?!」
「イッセー。まずは、お前からだ」
「え?」
イッセーはアザゼルの言葉の意味が今一理解出来てない様子だが、直ぐにアザゼルの言葉の意味を理解する。それは、タンニーンの翼の羽ばたく音が聞こえて来たからだ。
「昨日のドラゴンのおっさん!」
「そいつがお前の専属トレーナーだ」
「うえっ!?」
イッセーもまさかドラゴンが特訓の相手だとは思っていなかったようで変な声をあげる。
「ドライグを宿す者を鍛えるのは、始めてだ」
「修業中に禁手化に至らせたい。まっ、死なない程度に気張れや」
「皆さん、もう少し言い方ってもんが────あがっ!?」
イッセーは、台詞を言い終わる前に襟首をタンニーンに掴まれた。そんなイッセーに部長が一声掛けるが慈悲はない。
「イッセー!」
「部長………」
「気張なりなさい!」
「そうでした。優しい部長も修業の時には、鬼のしごき部長に変貌するんでした」
それを最後にイッセーは、タンニーンにグレモリー領の山奥へと連れて行かれたのであった。さて、見るもんも見たことだし、オレも移動するかな。
「それじゃ、そろそろオレもシトリー領に向かいます。黒歌、小猫、朱乃、いつもの特訓は20日の間は自己判断に任す。だが、オーバーワークは止めろ」
「前世のアニメで小猫は、猫又の力を受け入れる前にオーバーワークで倒れている。だから、三人ともオーバーワークに注意してくれ。じゃなぁ」
オーバーワークについて注意したあと、昨日の夜にグレイフィアに頼んで用意してもらった冥界の地図を頼りに身体を雷にして、シトリー領の関門場へまずは向かう。
関門場に着くとセラフォルーさんから手紙と共に同封されていたフリーパスで身元を確認してからシトリー領のシトリー邸へ、また雷になって飛んでいく。
シトリー邸に着いたら門番の悪魔に依頼書を見せてからシトリー家のメイドに支取先輩の所へ案内してもらう。すると、既に玄関の広場にシトリー眷属が全員揃っていた。
「すみません。少し遅れました」
「いえ、約束の時間を決めていないので大丈夫ですよ。それでは、狩谷くん。貴方は、私達にどういう修業の指導を?」
「そうですね。取り敢えず、イッセーと同じように山奥へ行きましょう」
「山奥ですか? ですが、今から準備が………」
支取先輩の問いにオレが答えると椿姫先輩が山奥へ行くための装備の準備を考えるがその必要はない。昨日のうちに準備はオレの方でしてある。
「大掛かりの準備は問題ありませんよ。収納ラクリマに色々と収納してありますから、他に必要な物は皆の着替えくらいですね」
「着替えだけですか?」
オレの説明に支取先輩が尋ねてくるので答える。
「ええ。収納ラクリマには、業務スーパーで買い溜めした食材を限界まで収納してありますから。他にも料理器具や簡易ベッド、トイレットペーパー、洗剤等も収納してあります。火や水は魔法で何とかなりますし、風呂なんかはオレが魔法で造りますから問題ないです」
「分かりました。それでは、簡単に着替えだけ纏めて来ます。少し待っていてください」
「分かりました」
支取先輩にあまり荷物がいらないことに理解してもらったあと、シトリー眷属の皆は一度自分の部屋に戻り、キャリーバッグを持って戻ってきた。匙に関しては大型のボストンバックだ。
「皆の荷物も収納ラクリマに入れますね」
シトリー眷属の荷物を一ヶ所に集めてから収納ラクリマ専用の魔法陣を展開して、そのまま魔法を起動させる。すると荷物が魔法陣に沈むようにラクリマへ収納されていく。
「これでよし。あとは、修業場所の山だけど………どこかありませんか?」
荷物の準備は整っているが修業を行う場所については何にも考えていなかった。なので、支取先輩に聞いてみた。
「そうですね………シトリー領の北端にある山なら大丈夫だと思います。あそこは、一面荒野ですから」
「なるほど。なら、そこへ行きましょう」
「でも、どうやってそこまで行くんだよ狩谷」
「そんなの、オレの背中に乗ればいいだろう?」
「狩谷の背中に?」
匙が山に行く方法について聞いてくるのでシトリー邸から出て、開けた場所でオレは完全竜化をする。すると、後ろからついてきたシトリー眷属が絶句していた。
「これで平気だろう?」
「し、白い……イグニール!?!?」
「狩谷くんがドラゴンに……!」
どうやら、完全な竜化したオレの外見は白いイグニールらしい。これで2回目の完全竜化をしたが竜化した状態の自分の姿を見ることなんてなかった。
「全員、オレの背中に支取先輩は案内を頼みます」
「わ、分かりました」
皆を乗せるために背を低くして皆を乗せる。皆が乗り終わったら、ゆっくりと翼を羽ばたかせて飛翔する。飛翔する際に、天竜の滅竜魔法で皆が受ける風圧などを相殺する。
支取先輩のナビにより、到着した山は本当に殆んど草木がない荒野だった。まぁ、滅竜魔法の応用で何とかなるだろう。
竜化を解いてから懐の収納ラクリマから『マジックパワーファインダー』を出す。これは、FAIRY TAILの大魔闘演武編に出てきた機械ラクリマだ。
「か、狩谷! それって、マジック・パワー・ファインダーこと、MPFじゃねぇか!?」
「おう。匙はやっぱり、分かってるな。さて、修業場所は広くて良い場所だ。まず、皆の力量を測るためにこの魔力計測ラクリマに魔法を放ってもらう。それから、皆の悪魔の駒も教えてほしい」
「因みに、今のオレの最大値は8069だ。聖十大魔道のジュラには勝てなかった」
「いや! お前もその数値はおかしいだろ!?」
「まぁ、細かいことは省いて。パパッと、コイツに魔力をぶつけてくれ」
「分かりました。皆、やりますよ!」
「「「「「はい!」」」」」
支取先輩の掛け声でシトリー眷属に活が入った。
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第63話
セラフォルーさんからの依頼である。シトリー眷属の修業のために収納ラクリマからMPFを取り出してシトリー眷属の力量を測ることにした。
そして、トップバッターはやはり『王』である、支取先輩からだ。
「行きます! 水龍のレヴィアタン!!!!」
支取先輩は展開した魔法陣から巨大な水龍を形成して、そのまま、MPFに衝突させる。そして、MPFに計測された魔力数値は………2396。
「2369か………なかなかだな」
続いて、『女王』である椿姫先輩の番だ。
「ハァァァア!!!」
椿姫先輩は、魔力で球体を形成してドッチボールの容量で魔力の球をMPFにぶつける。そして、数値は………1963。
「これまた、なかなかだな」
続いて、『戦車』の由良翼紗は魔力を込めた拳をMPFに放つ。数値は………386。やはり、『戦車』だと魔力はそこまでめざましくないようだ。
次に、『騎士』の巡巴柄は、何の属性もないただの魔力の塊を放った。数値は286。
次に『僧侶』の花戒桃も何の属性もないただの魔力の塊を放つ。数値は958。やはり、『僧侶』なだけあって魔力の総量はそれなりか。ソウリョウだけに?
次に同じ『僧侶』の草下憐耶だ。コイツは、花戒桃と違って炎の魔法をMPFにぶつける。数値は1630。コイツはなかなかだ。『女王』の椿姫先輩に匹敵しそうなほどだとは………。
次に『兵士』の仁村留流子も巡や花戒と同じようにただの魔力の塊をMPFにぶつける。数値は196。
最後に『兵士』の匙だが───
「ウォォリャァアアア!!!」
───雄叫びを上げながら魔力の塊をMPFに放つも、数値は98。
「なんでだぁぁぁぁあ!!!! なんで、俺だけ………」
「ドンマイ、匙」
「狩谷………?」
「オレは最初から1000は行ってたけどな」
「こんちくしょぉぉお!!!!」
オレの最初の数値を聞いて、匙は涙を滝ようなや流しながら地面に八つ当たりを始めた。
そんな匙は放っていて、オレの実力を見せるために実演することを話すと支取先輩も賛成してくる。
「よし。皆の大体の力量は把握した。それでは、修業メニューを開始する前に、オレの実力を皆に見せて置こう」
「そうですね。私と椿姫はトップ会談の時に見ていますが他の者は、まだ狩谷くんの魔法を見ていませんから」
「てな訳で………ほい」パチンッ
足に魔力を込めて、フィンガースナップを鳴らすとオレの背後に地面から巨大な岩山が形成される。それを見た、支取先輩と椿姫先輩を含めて全員が驚いた。
「まず、最初の5日間はトンネルを掘ってもらいます」
トンネルを掘ってもらうと話すと椿姫先輩が聞き返してくる。なので、少し意地悪をする。
「と、トンネルですか?」
「ええ。ただし、手作業で掘ってもらいます。器具は用意します。それから“
「魔法を放っちゃダメってそんな………」
『兵士』の仁村が顔を青くする。しかし、あえてオレはトンネル掘りの修業メニューに“
「では、器具はこれを使ってください」
収納ラクリマから割り箸を一本取り出して、それを地面に刺してから《木の滅竜魔法》とラキの《木の造形魔法》の混合魔法で割り箸の生命力を活性化させて、大樹にする。大樹にしたら、一部を変形させて20本ほど木製のスコップと一輪車の荷台を作成する。
「木製のスコップで、あの山にトンネルを作るんですか!? 無理無理! 絶対に無理です!!!!」
木製のスコップで山にトンネルを作ると分かった途端に、『騎士』の巡が涙目になりながら弱音を吐く。それを見かねたのか、支取先輩も口を開く。
「狩谷くん。流石に木のスコップでは、岩山にトンネルを掘るのは………無謀かと」
「だから、言ったでしょう? オレの修業はかなりスパルタだと。それに魔法を放ってはダメと言いましたが、使うなと言ってないです」
「「「「「へ?」」」」」
シトリー眷属一同は、オレの言葉に疑問符を上げたが、少しして匙があること気付いたようで声を上げる。
「あああああっ!!!」
「どうしたのですか、匙?」
「俺、狩谷の言っている意味が分かったんですよ!会長!」
「本当ですか、匙!?」
「はい。狩谷は【魔法を放つな】とは言いましたが、魔力を帯びさせてはダメだとは言ってないんですよ! 」
「どういうこと、匙くん?」
「だから、木製のスコップに魔力を込めて強化すれば岩山だって簡単に掘れます!」
「なるほど。確かにそれなら………」
おうおう。匙の野郎、オレの意図を全て理解しやがったよ。さては、コイツ………狩人×狩人を読んで、見ているな?
「匙が色々とネタばらしをしてくれましたが、理解が出来たようなので早速始めてください」
「「「「はい!」」」」
シトリー眷属は、木製のスコップと荷物を持ってオレの背後にある岩山を掘り出し始めた。皆が穴堀り修業をしている間にオレは、拠点と風呂を作ることにした。
まずは、拠点を作るために大樹に触れてツリーハウスを造形する。ツリーハウスを造形する際、ツリーハウスに登るための階段は敢えて作らなかった。もしも、魔獣が階段を登ってきたら面倒になるからだ。
次に、ツリーハウスと逆側に風呂場を作るために移動。移動したら《土の造形魔法》で風呂場を作る。因みにキチンと男湯と女湯は分けてあります。
「拠点と風呂はこれでよし」
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第64話
ツリーハウスと風呂場を造形したあと、シトリー眷属の皆のために昼飯の支度をしていると岩山の方から声が聞こえてきた。
「「「「開通したぁぁああ!!!」」」
どうやら、トンネルが出来たようだ。まずは、労いの言葉をかけてから昼飯にしよう。
「お疲れ様。昼飯の用意はできてる。このタオルで、手と顔を拭いたら食べよう」
「「「「はい!」」」」
全員にタオルを渡してから、木製のテーブルに木製の食器を置いていく。そして、昼飯の献立はシンプルに七種のおにぎりと唐揚げ、だし巻き玉子、野菜スティック、きゅうりの糠漬け、たくあん、三種の煮物、豚汁だ。
「美味い、美味いぞ!こんな美味い飯は久しぶりに食べたぜ!!!」
「本当に美味しいですね」
昼飯を食べていると、匙の奴が穴堀りの修業で余程腹を空かしたのか涙目になりながら左手におにぎり、右手に箸で摘まんだ唐揚げを食べていた。
匙とは別に腹が空いていても、やはり貴族の娘なのか気品がある食べ方の支取先輩がオレの料理を褒めくれる。
「それは良かったです。まだまだあるので、どんどん御代わりもしてくれ」
「狩谷、豚汁御代わり!」
「おう」
匙に豚汁の御代わりを渡したら、他の女性陣も御代わりをしてくれた。それを何度か繰り返していると寸胴で作った豚汁や大皿七枚に山盛りで乗せたおにぎりや他のおかずも綺麗に完食していた。作った側からしたら嬉しい限りだ。
そして、食後の小休止に魔法で生成した水と炎でお湯を作り。持参した緑茶の葉が入った急須にお湯を注ぎ込み、皆に緑茶を淹れていく。
「さて、まずは穴堀りの感想を聞こうか」
トンネル掘りの感想を聞くと支取先輩が感想を言う。それに続いて他の皆も思い思いの感想を口にする。
「そうですね。私は、魔力操作には自信があったのですが身体全体に魔力を長時間留めて置くのがこんなに難しいとは思いもしませんでした」
「私も会長程とは言いませんが自信はありましたね」
「私達も『僧侶』だから自信があったけど体力が………」
「ですね。魔法だけなら何とかなるんですが………体力までは」
「私は、体力には自信があったが魔力を使うと普通よりも体力が消費してしまう。やはり、魔力が足りてないからだろう」
「私も皆さんと同じです」
「右に同じくです」
「俺も同じです」
皆の感想を聞くに長時間の魔力維持と魔力循環が不十分だということが分かった。セラフォルーさんの依頼通りにシトリー眷属を強くすることは出来るが、どこまでのラインなのかがちょっと分からない。
なので、聞いてみることにしよう。
「一つ質問。皆はどこまで強くなりたい。因みにグレモリー眷属のイッセーはドラゴンとマンツーマンでサバイバルをしているぞ」
「兵藤がドラゴンとサバイバル!?」
イッセーの修業内容を話すと匙の奴は、驚いて立ち上がってしまう。やはり、ライバル視しているのだろう。
「そうですか、兵藤くんはドラゴンとサバイバルを」チラリ
「な、何ですか会長? そのチラリと見たのは、まさかとは思いますが俺を兵藤と同じようにドラゴンとサバイバルをやらせるつもりじゃないですよね!?」
「狩谷くん、少しお願いがあるのですが」
「会長!?」
「支取先輩のお願いは理解できますが、それは残り5日の時にやります。それまでは、皆には全体的に鍛えてもらいます」
「なので、穴堀り再開してくれ………っと、その前に天竜の息吹!!」
岩山を掘っている時に掌にマメが出来るはずなので、マメが破ける前に皆の掌に治癒魔法をかけておく。マメが破けて修業効率が下がるのは避けたい。
「これは治癒魔法ですか?」
「天空の滅竜魔法の一つだ。怪我をしたらいつでも言ってくれ。その時は、また治すから」
「ありがとうございます。狩谷くん」
支取先輩からお礼を言われたあとに、《土の滅竜魔法》で再び、岩山を作るが今度のは前回よりも硬度をほんの僅かにだが上げておく。これから岩山が開通するごとに強度を上げていくが数日でどこまで基礎的な能力が向上するか楽しみだ。
「さて、オレも自分の修業をしないと」
修業と言っても魔力循環の修業だ。例えば、左手から右足へ瞬時に魔力を送り込むやり方だったり、モードに成らないで多数の属性の滅竜魔法の維持だったりと魔力を循環させる修業でも色々とある。
まずは、ただの魔力を身体全体に巡らせて、左手に雷、右手に水、左足に炎、右足に風、胴体に鉄の滅竜の魔力を纏わせて維持。ある程度、維持が出来たら纏わせている魔力を一度胴体に戻して、違う属性で再度身体に纏わせる。属性は、左手に聖、右手に氷、左足に影、右足に岩、胴体に木を纏わせ、それを維持する。
それを夕暮れまで何度か繰り返す。そして、夕暮れ時になり夕飯の支度を始めようとすると岩山がある方からシトリー眷属の皆の声が響いてきた。
「「「「か、開通したぁぁ………」」」」」
二度目の開通を労って、温かいタオルとスポーツドリンクをシトリー眷属の皆に持っていくとシトリー眷属の皆は、新開通させたトンネルの前で全員倒れ伏していた。
「皆、お疲れ様。温かいタオルとスポーツドリンクだ」
「あ、ありがとうございます。狩谷くん」
「サンキュー、狩谷」
「ありがとうございます」
「「「「ありがとう」」」」」
シトリー眷属全員、疲労困憊のようだな。今日の夕飯のメインはビーフシチューにするかな。
「風呂を直ぐに用意するから動けるようになったら、風呂に入ってくれ」
「「「「「はーい」」」」」
疲れ果てた声音の返事を聞いてから土の滅竜魔法で作った風呂場の湯船にお湯を流す大きな壷の中に生活用ラクリマの一種である、お湯と疲労回復に効果があるラクリマを起動させて壷の中に入れておく。
その間に収納 ラクリマから今日の晩御飯の材料を取り出して料理していく。料理を始めて10分くらいに動けるようになったシトリー眷属が着替えを持って風呂に向かった。そこで皆に風呂の注意事項を伝える。
「風呂場にシャワーはないのでお湯が流れて来る場所から頭と身体を洗うお湯を先に桶に溜めて置いてくださいね!」
「「「「「はーい」」」」」
「それから、青の暖簾が男風呂で赤の暖簾が女風呂なので匙は間違えるなよ!」
「わ、分かってる………流石にそんな体力も度胸もねぇよ」
「そ、そうか」
どうやら、相当疲労困憊のようだ。その後、料理が完成して風呂に向かった皆が帰ってくると料理の匂いを嗅いだ途端にかなりの早足でツリーハウスへ、着替えを置いてきて席に座った。
「それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」
まずは、皆一斉にビーフシチューをスプーンですくい口へと運ぶと表情が緩んだ。しかし、一人だけ反応が違った。その一人とは、匙だ。
「カァー!このデミグラスソースが身体に沁みるぅ」
「そうか」
こうして、1日目の修業が終了した。
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第65話
シトリー眷属の修業を始めてから5日が経過した頃、オレが持っている小型通信用ラクリマにヴァーリから着信が入った。
「どうした、ヴァーリ?」
『狩谷龍呀。禍の団と協力関係にある北欧の神が一人。若手悪魔の会合に乱入するという情報を得た』
「ロキか」
『やはり、知っていたか』
「ああ」
アニメでは、黒歌が小猫を連れ去ろうとしてイッセーと部長が止めに入り、偶々付いて来た美猴&黒歌と戦闘している間にオーディンが条約の碑に名前を刻もうとした時にロキがフェンリル共に攻めてくるんだよなぁ。
オレが物語に介入しているから変更点があると考えていたが杞憂に終わったようだ。
「引き続き密偵を頼む。それから地下室にある伏魔殿の感想はどうだ?」
『最高だ。あんな、血湧き肉踊る戦いは君や兵藤一誠と戦った時以来だ!』
「それはなによりだ」
『では、そろそろ続きに挑みに行く』
「無理はするなよ」
『それは無理な相談だ。フフフフ』
それを最後にヴァーリとの通話が切れた。あの戦闘狂め、伏魔殿でめちゃくちゃ楽しんでやがるなぁ。
まぁ、確かに、目に見えるくらい自分が強くなったり、強い相手がいるほど燃える感覚は分からないでもない。オレも天狼島で修業してた頃はそうだったからなぁ。でも、流石にフェアリーテイルのS級魔導士を四人同時に相手するのは死を感じたがな。
っと、そんなことよりもサーゼクスやアザゼルにこの事を伝えなければ。通信ラクリマでサーゼクスとアザゼルの端末に着信を入れると同時に通話が繋がった。
『どうした、龍呀?』
『どうしたんだい、龍呀くん?』
「色々と会議をしているところを悪いと思うがヴァーリから密告だ。若手悪魔の会合に北欧の悪神ロキが乱入してくる。これは、オレの前世の記憶と合致している。加えて、フェンリルなどを追加でな」
『おいおい、マジかよぉ』
『悪神ロキにフェンリルまで………』
どうやら、悪魔、堕天使のトップの奴らでも頭を悩ませるらしい。
「ロキの目的は、三大勢力の和平に賛同しようとするオーディンの排除だ。ラグナロクが出来ないとか言ってたっけな?」
『何処かで聞いたような話だな』
「まぁ、ヴァーリ曰く、ロキと禍の団は協力関係にあると言っていた」
『そうか。何にせよ、知らせてくれてありがとう。龍呀くん』
「オレではなく。ヴァーリにいつか伝えろ。あいつはオレの家で伏魔殿に挑んでやがるから」
これで、三大勢力のトップは何かしらの対策を考えるだろう。アニメだと、アジュカが転移魔法と封印魔法を混合させたオリジナルの魔法で一時的にロキを封印するが体育祭が始まる前に解かれてしまうんだよなぁ。
『分かった』
サーゼクスたちの通話を終えるとオレはシトリー眷属が開通させた岩山を強度増して再び、生成する。するとシトリー眷属から悲鳴のような物が聞こえてきた。
まぁ、明日から午後の修業メニューを変更するから頑張ってくれや。そして、午前のメニューを終えて全員で食卓を囲みながら小休止のほうじ茶を飲んでいる所で午後のメニューを説明することにした。
「さて、午後からは個別の系統別メニューに変更する」
「個別で系統別ですか?」
「そうです。基本的に全員に強化系の魔法の使い方を習得して貰う。んでまずは支取先輩から、魔力の変化系と具現化系、放出系の3つです」
「魔力の変化系と具現化系、放出系……ですか?」
「イメージとして、変化系では自分の身体を水に変えて敵からの攻撃を無力化してもらいます。具現化系では、水で自分の分身を生成。最後に放出系では、水蒸気爆発を会得してもらいます」
「は? 」
流石に驚くか。あと15日の間に3つの系統技を会得しろなんて無茶な特訓をさせるのだから、当たり前か。けれど、この3つを会得できれば格段に支取先輩は強くなる。
「続いて、椿姫先輩には強化系と放出系です。その二つの系統で椿姫先輩の神器を強化してもらいます。目標としては、オレの手加減した火竜の咆哮を跳ね返してもらいます」
「狩谷くんの滅竜魔法をですか?」
「あくまでも目標です」
「わ、わかりました」
椿姫先輩の神器は、反射系の神器。反射できる器が大きければ大きほど、反射できる幅も広がる。例えば、モード雷炎竜とかな。
「続いて、僧侶の二人は操作系だ。魔力の塊を複数展開して維持。魔力の塊には一つずつ別の属性を付与させながら敵にぶつけろ」
「「は、はい!」」
僧侶の二人は主に支取先輩や椿姫先輩と同じ、魔法による遠距離攻撃がメインになる。ならば、一気に強力な技を放つのではなく。複数の属性と攻撃で攻めて行く方が安定するし、不足の事態にも対応できる。
「続いて、騎士の巡には放出系だ。お前は、刀を使うらしいから刀に魔力を付与したり、魔力で斬撃を飛ばすのを目標にしてくれ」
「わかりました」
騎士ならば、某死神のように斬撃を飛ばせた方が攻撃のレパートリーが増えて、色々な場面で役に立つ。
「続いて、戦車の由良と兵士の仁村はオレが造形する敵を倒してくれ」
「わ、わかりました」
「分かった」
「最後に匙」
「お、おう!」
「お前は、オレとマンツーマンだ」ニヤリ
そうオレが言うと匙は顔を青くしてガタガタと震え出す。まぁ、死刑宣告をされたようなものだが。コイツもドラゴン系の神器持ちだが、滅竜魔法を喰らったら一溜まりもないと思っているのだろう。
「安心しろ、匙。滅竜魔法は使わないが、ボロ雑巾になる覚悟だけはしとけ」ニコ
「イイイイイヤアアアアア!!!」
匙に向けて下衆な笑顔を向けると悲鳴を上げる。
「個別のメニューはこれで以上だ。全員で行う強化系は明日から始める。皆、頑張ってくれ。では、ごちそうさまでした!」
「「「「ごちそうさまでした!」
「ご、ごちそうさまでした………」
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第66話
「ウラァァァア!!」
「がはっ……!?」
「バカ野郎! 腹の魔力を弱めてんじゃねぇ!!」
「お、おっす!」
シトリー眷属たちの修行も系統別へと移行して、若手悪魔の会合まで残り5日。その間、皆、オレが組んだ修行メニューを必死にこなして確実に強くなっている。
具体的には、支取先輩が『幽鬼の支配者』に居た頃のジュビアくらいまでは強くなり、椿姫先輩は目標通り手加減した火竜の咆哮を神器で跳ね返すことが出来るまでに成長した。他は、二人と比べると少し落ちるが皆も順調に成長していた。
そして、匙とオレとタイマンで修行をしている。魔力を纏わせてないただの右ストレートを匙の魔力の膜が薄くなっていた腹へ決めると、魔力の防御が甘く、右ストレートの勢いを殺し切れずもろにボディーに受けて、そのまま数回地面にバウンドしたあと直ぐ受け身を取りながら臨戦態勢を取る。ようやく、吹き飛ばされても直ぐに臨戦態勢が取れるようになったか。
最初は、軽く吹き飛ばされたら数分は動かくなったり、気絶してたりしていたのに成長したなぁ………。
「まだまだ行くぞォォオ!!」
「来いやぁぁあ!!」
これだけの打たれ強さが身に付けば、《禁手化》したイッセー相手でもある程度は正面から戦えるだろう。
正直、匙がヴリトラの炎を自由自在に操れるのであれば、ナンチャンって滅竜魔法を伝授しようとも思ったがそう上手くは行かないものだ。
「オッシャー! ギア上げてくぞ、匙ぃぃい! テイク・オーバー、ドラゴン・ソウル!!」
「ちょっ、待って狩谷! それは無理、無理だからァァァァアア!!!?」
「行くぜー!!」
「ぎやああああああ!!!?」
それから3日後のこと。
「えー、では、修行期間も残すところあと2日になりましたが………明々後日のレーティングゲームのために1日休みとします」
「「「「オオオオ!!」」
「皆さん、大変よく頑張った思っているので思う存分リラックスしてきてください。そして、最後の修行メニューは………現時点をもって、この場から羽も転移魔法も無しでシトリー邸まで帰ってください!」
「「「「は?」」」」
オレの最後の修行メニューに一同固まってしまった。
すると、シトリー眷属の『王』であり、生徒会長の支取先輩ではなく。椿姫先輩が口を開いた。
「ちょっ、ちょっと待ってください、狩谷くん! いくら何でも羽を使用せずに屋敷へ帰宅するには流石に………」
「甘えないでください、椿姫先輩! たかだか1日サバイバルを経験するだけです。前に言いましたがオカルト研究部のイッセーと比べたらまだ序の口です」
「それは………」
「それにオレは、たかだか1日のサバイバルも出来ないくらいにしか皆さんを弱く鍛えたつもりはありませんよ。何のために基礎鍛練として穴堀をさせたと思っているんですか?」
「それに………地形もわからない。相手もわからない。謂わば、レーティングゲームに近い状態ではないですか? 他にも今まで個人的な修行はさせてきましたが連携の修行は皆無。なら、今が一番実戦できる時です」
「「「「「はっ!」」」」
その言葉で皆、オレがなんのために1日サバイバルをやらそうとしていたのかに気付いたようだ。
「羽と転移魔法以外ならバンバン魔法を使ってでもって構いません。ただし、これからは全て実戦であることを決して忘れないように以上! では、解散!!」
そうして、オレが見るシトリー眷属の修行は終わりを告げた。
あとは、1日のサバイバルでどれだけ自分たちが成長し、どれだけ戦いの視野と選択肢が広くなったのかを確め、自分の力としてモノにするだけだ。
「さぁて、オレも久しぶりにサバイバルでもやろうかな」
「「「「え?」」」」
「んじゃあ、お先にシトリー邸に向かってるんで皆さん頑張ってください!」
魔界という見知らぬ土地でのサバイバルに探求心をワクワクさせながら魔力を使わずに先日飛んで来た方に向かって走り出す。
因みに、ここからシトリー邸までどのくらいの距離があるかは知りません。だって、魔力があるなら何とかなると思ってるし、自分の領地なのだから帰り道くらいは支取先輩がどうにかしてくるだろう。
「久々のサバイバルだ!!!!」
◇◆◇
《sideソーナ》
狩谷くんから最後の修行メニューということで悪魔としての羽も転移魔法も使わずにシトリー邸に帰えるように言われましたが、少し無謀な気がしてなりません。
なにより、ドラゴンスレイヤーのいいえ、水の造形魔導士の弟子として、あーまで言われては必ず自力で帰ってみせます。
「皆さん、気をしっかり! 我々はこの世界で数少ないドラゴンスレイヤーの弟子です。ならば、師匠からの挑戦状は真面目から受けましょう!」
「「「「はい! 会長!」」」」
「行きますよ!」
私の掛け声で眷属たちは付いてきてくれた。けれど、羽や転移魔法が使えないというのはかなり厄介であった。
今まで深く入り込んだりしたことがないため、この山に住んでいる魔獣がどういった生態を持ち、地形がどういった状況なのかはも情報が皆無の中、全てがトライ&エラーの繰り返しだった。
「匙、先攻お願いします!」
「わっかりました!!」
匙は、《黒い龍脈》のラインを周りの木々たちに伸ばし、立体的な起動を用いて所見の魔獣を撹乱。よく観察してからまずは後頭部へ重い一撃を叩き込む。
「セオラァァアアッ!!」
『グガァァァ………!!!?』
匙の重い一撃が効いたのか魔獣は後頭部を抑えながら絶叫をあげる。しかし、その絶好の隙を私の『戦車』は逃すことなく魔獣の懐に入り込み────
「ボディーがガラ空きだよ! セイッ!!」
魔力で強化した正拳付きを放ち、魔獣を木々を凪倒しながら吹き飛ばし、沈黙させた。
「これが今の私の………眷属たちの実力」
正直、あの泥臭い修行に何の意味があるのかと自問自答していたが狩谷くんの修行は着実に私達を強くさせていた。
「彼には感謝しかありませんね」
今までの修行の手応えを私たちはしっかりと確認しつつ、休憩時には互いの連携を相談し合い、試して行く。
そして、何より一番気付いたことは皆が皆のフォローに回っているということ。切り込み隊長の匙が打ち漏らせば、翼沙が仕留め。それでもダメならば、巴柄が首を落としにかかる。
空を飛ぶ魔獣であれば、先手必勝と言わんばかりに桃が魔力で攻撃。当たらないのであれば椿姫が『追憶の鏡』を複数配置し、魔獣の背後から何倍にも増幅させた魔法を反射させる。
「流石ですね。椿姫」
「ありがとうございます、会長」
「私も負けていられませんね! ウォーター・スライサー!!」
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冥界ラグナログと四体のドラゴン
第67話
「え? オレもパーティーにですか?」
「うん! だって、龍呀くんは夏休み前までの未来を知ってるし。何より、君がいたら本当に悪神ロキが来たとしても対処出来るでしょう?」
「まぁ、そうですけど………」
シトリー眷属たちの修業を終えて、荒野から半日程度でシトリー邸に帰ってきたオレは、たまたまご両親に顔を見せにきていたセラフォルーさんに捕まり、明後日のパーティーに警備兼シトリー眷属の護衛として誘われている。
「悪魔でもない、ましてや堕天使や天使でもない竜人のオレが行ってもいいんですか?」
「そこは大丈夫よ。魔王の一人である私が決めたんだから、それにサーゼクスちゃんたちも賛成してくれると思うし」
「はぁ………わかりました。パーティーに参加させて頂きます」
黒歌がパーティーに乱入してくるというイッセーの成長イベントを潰してしまったので、今回のパーティーがアニメ通りに物事が進んでいくとは思えない。
なにかしらのアニメとは違うイベントが発生するのではないかとオレの中でも警戒はしている。なので、このタイミングでセラフォルーさんからのシトリー眷属の護衛依頼でパーティーに参加できるのは有難いと思う半面、黒歌ことを見下している貴族悪魔共の顔を見るとなると嫌で仕方ない。
「ありがとうー! 龍呀くんが護衛に居てくれれば、おつむの固いおじ様たちも下手に手を出して来ないと思うから安心できるわ。それから君には、リアスちゃんとのレーティングゲームの時にソーナちゃんたちの監督役として参加してもらうからね」
「別に良いですけど、前世ではグレモリー眷属とシトリー眷属とのレーティングゲームはアニメでは公開されていないので、オレも手探り状態ですけど良いですか?」
「え? 君でもソーナちゃんとリアスちゃんのレーティングゲームの結果は知らないの?」
「ええ。オレは原作を読まずにアニメだけ見てましたから」
前世のアニメ『ハイスクールD×D』だと、グレモリー眷属とシトリー眷属とのレーティングゲームは描かれずにパーティー後は即ロキ戦になってたので、勝敗の行方はオレでも知らない。
しかし、前世のアニメで知っているグレモリー眷属であれば、誰一人として禁手に至っていないシトリー眷属に勝機はないとオレの中では結論付いている。
「そっか‥…。でも、未来のことが分かちゃったら色々とつまらないから知らない方がいいよね。それに、龍呀くんが鍛えてくれたソーナちゃんがどこまで成長したのか気になるから楽しみにしておくね。それじゃあ、私はお仕事があるからバイバイ」
そう言い残して、セラフォルーさんは転移魔法で仕事先へと転移して行った。
その後、日付が変わる寸前のところで至るところになってようやく魔物たちの巣窟からシトリー眷属が帰ってきた。身なりを観察するに約20日間の修業は無駄でなかったようで、それぞれ自分なりに手応えを感じながら怪我らしい怪我もしていなかった。
その次の日になると、シトリー眷属は誰一人として昼過ぎまでになっても起きる者はおらず。執事やメイドたちに心配されたのはここだけの話である。
「てな、感じで今に至るわけだ」
「いやいや! めちゃくちゃ話を省略し過ぎだろう!?」
簡単に20日間の修業と若手悪魔のパーティーに参加することなった件について、グレモリー邸の部屋でイッセーに説明してやると何が不満なのかツッコミを入れられてしまった。
「それより、イッセーも中々の修行をしたみたいだな。龍のオーラが前より跳ね上がってる。流石はタンニーンのおっちゃん」
「そこは俺じゃないのかよ!?」
「お前が成長するのはアニメで知ってるからな。その成長を促し、至らせたおっちゃんが称賛されるのが普通だろう。けど、やっぱり禁手化には至ってないんだろう」
「‥…‥…あ、ああ。でも、温泉の時に龍呀が言ってた修業がおっさんとの修業なら、あとはぽちっとぽちっと、ずむずむいや~ん、この擬音の解明だけだ。それさえ分かれば、俺は禁手化に成れるんだよな?」
「アニメだとそうだな。ん? この臭い‥…‥…いや香りは、薔薇にフローラル、あとは果物系。香水か?」
イッセーの禁手化について話をしていると、女性陣がパーティーのために着替えている部屋から女性特有の甘い匂いとは別の匂いが鼻を擽ったので、瞬時にその匂いの識別を脳内から導き出した。
シトリー眷属も含めて、駒王学園に所属している悪魔たちの匂いは既に嗅ぎなれているので、そこへ普段とは違う臭いがすれば直ぐに分かる。
「相変わらず、ドラゴンスレイヤーの嗅覚は鋭いね。イッセーくんもドライグに鼻を提供すれば、敵の臭いとかで居場所を把握できるんじゃないかな?」
椅子に座りながら静かに小説を読んでいた木場がイッセーにそう提案するが、それをオレが止める。
「止めておけ。以前にも言ったが、ドラゴンスレイヤーの鼻も万能じゃない。強烈な刺激臭を喰らえば黒歌たちよりもダメージがデカイんだよ。前にも、夕飯に食べたあとの納豆をビニール袋に入れ忘れて、翌朝に納豆の臭いで死ぬかと思ったわ。マジであの時、朱乃がいなかったら鼻に洗濯バサミを着けながら息を止めてやるしかなかったからな‥…‥…」
「真夏の袋に入れ忘れた納豆は、ある種の兵器だからな。俺も過去に経験したことがあるよ」
「僕も初めて一人暮らしを始めた時に経験があるね」
三者とも過去に同じ経験をしたことがあるので、苦笑いを浮かべる他なかった。それから程なくして、グレモリー眷属+黒歌の面々がドレスアップして隣の部屋から出てきた。
グレモリー眷属の女子たちはアニメと違って、全員がパーティー用のドレス姿。しかし、黒歌も珍しく着物ではなくドレス姿なのには驚いた。黒歌のことだから、着慣れた着物だろうとは思っていたが、まさかのドレスだとは思いもしなかった。
「どうかにゃん龍呀。私のドレス姿は?」
「ああ。新鮮味があって良いな。似合ってるぞ」
素直に黒歌のドレス姿を褒めていると今度は、小猫と朱乃から感想を求められてしまった。
「龍呀くん、私と小猫ちゃんのドレス姿もいかがですか?」
「もちろん、二人とも似合ってるぞ」
「ウフフフ。それは良かったですわ」
「ありがとうございます」
朱乃と小猫のドレスについても素直な感想を言うと二人とも嬉しそうにしてくれているので、正直に言って良かった。
「龍呀から感想を聞けたところで、次は龍呀が着替える番にゃん」
「はい?」
「さあさあ、龍呀くん。時間は刻々と近いているので、着替えは速やかに行いましょう」
「えっ、ちょっ!?」
「時間は有限です」
「だから、ちょっ待っ─────」
最後まで言い終わる前に、三人によって先程まで女子たちが着替えをしていた部屋へと押し込まれてしまった。
部屋に入ると隣の部屋で嗅いでいたよりも強烈な女の子特有の甘い臭いと数々の化粧品や香水の臭いがごちゃ混ぜになっていて男のオレをクラクラさせる。
「めちゃくちゃ女の子の甘い匂いや香水の臭いでクラクラする‥…‥…」
「あらあら、大変ですわね」
「なら、早くこいつに着替えるにゃん!」
「私たちは部屋の外で待ってます。着替えが終わったら出てきてください」
ビニール袋に入れられた一着の服を手渡されたあと、彼女たち三人はそそくさと部屋を出て行ってしまった。
なので、まずは部屋の窓を全開にして《天空の滅竜魔法》の応用で部屋が散らからない程度の風魔法で室内を換気して、頭がクラクラする甘い匂いを外へと追い出す。
「ふぅ、これくらいで大丈夫だろう」
換気が済んだらビニール袋に入っている服を確認すると、その服はとても見覚えのあるデザインだった。というよりも────
「これって、大魔闘演武の時のナツのデザインじゃんか!?」
右側が半袖で、左側が長袖の黒とオレンジの服に膝丈くらいしかない白いズボン。まんま大魔闘演武にナツが着ていた服を再現しているようだが、材質は何か特殊な繊維で出来ているようで僅かにだが魔力の流れが感じ取れる。
「大方、サーゼクスとアザゼル辺りが企んでたんだろう」
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第68話
それぞれの着替えが済んだところで、アニメとは違ってシトリー眷属もグレモリー邸に到着した。
支取先輩と部長が他愛のない会話を短くしたところで、部長の一声でグレモリー邸の庭に移動すると遠くの方からタンニーンのおっちゃんとその眷属たちが飛んでやってきた。
「よう。タンニーンのおっちゃん、20日振りだな」
「貴殿も息災の様だな。約束通り来たぞ、兵藤一誠」
「うん!ありがとう、おっさん!」
イッセーもアニメ通り、タンニーンのおっちゃんと仲が良いようだ。流石は師弟。
「さて、タンニーンのおっちゃんも来たことだし。オレも完全竜化するかな」
「そういえば、龍呀のドラゴンになった姿は初めて見るな」
「兵藤よ。狩谷の完全竜化を見て驚けよ。俺が見た時はマジで驚き、感動した」
「なんで、驚いてるのに感動するんだよ」
「ま、見とけって」
先にオレの完全竜化を見たことがある匙がイッセーに向かってニヤニヤ顔で、自慢気に驚くよう言っているがお前が自慢できることじゃないだろうとは言わなかった。
そして、完全竜化をするとその姿を見たイッセーがいつぞやの匙の様に驚く。
「し、白いイグニール!!?」
「な? 驚き、感動したろう?」
「あなたが竜化してる訳じゃないのに、何故そんなに自慢気なんですか、サジ」
「か、会長‥…‥…!?」
二回目は、匙の主たるシトリー眷属の『王』の支取先輩が言ってくれた。
「狩谷くん、またお願いしますね」
「ええ、これもセラフォルーさんからの依頼なので、しっかりと護衛させていただきます」
パーティー前のお喋りも程々にして、小猫と朱乃を除いたイッセーたちグレモリー眷属はタンニーンのおっちゃんの背中。黒歌、小猫、朱乃を含めたシトリー眷属の皆は、オレの背中に乗り込んだ。
パーティーの会場となる場所は、グレモリー領の端にある広大に広がる森の中にポツンと立てられている高級ホテルだった。目の前で飛行しているタンニーンのおっちゃんが下降して行くのに合わせて、オレもその背中を追うように下降していく。
すると下にあるスポーツ競技会をするためのスタジアムからパパパッとオレたちを一斉にライトを照らし始めた。
「地味に眩しいな」
スタジアムに無事に着陸して、タンニーンのおっちゃんはグレモリー眷属を、オレはシトリー眷属+αをスタジアムに降ろしてから完全竜化を解いて、いつもの人型に戻ると周りの悪魔たちが驚きの表情と声をあげている。
タンニーンのおっちゃんが送迎を終えたので、大型の悪魔専用の待機スペースに向かうと言ってからイッセーと部長がおっちゃんにお礼を言うのを聞いてから、おっちゃんは悪魔の羽でその待機スペースへと飛んで行った。
スタジアムに残されたオレたちは、ホテルの従業員に連れられて高級リムジンへと案内されるのだが、オレは一度、その従業員に支取先輩と共にセラフォルーさんの招待状を見せると黒歌と共にシトリー眷属が乗車するリムジンに乗せられた。
そして、何故か黒歌がエクシードと同じように姿へと変化している。見た目は、まんま黒いシャルルである。
「なあ、黒歌。なんで、お前はエクシードの姿に変化してるんだ?」
「だって、FAIRY TAILの滅竜魔導士には誰かしらエクシードがついてるじゃにゃい。ナツはハッピー。ウェンディにはシャルル。ガジルにはリリー。スティングにはレクター。ローグにはフロッシュ。なら、龍呀にだって居てもおかしくはないでしょう?」
「その流れで言われると納得してしまうな.......」
「それに、ここ1ヶ月。旦那様の身体を堪能出来なかったのだから今くらいは堪能したってバチは当たらないにゃん♪」
「これは後で、小猫と朱乃の二人にも同じことをされそうだな」
久しぶりの黒歌と会話をしているのも束の間、あっという間にリムジンはホテルに到着。リムジンから降りると大勢の従業員に迎え入れられるままにホテルの中に入り、フロントで朱乃が確認を取るとグレモリー眷属とシトリー眷属は別々のエレベーターに乗り込む。
オレもフェアリーテイルの魔導士としてセラフォルーさんからのシトリー眷属護衛の依頼のため、シトリー眷属と共にエレベーターへと乗り込む。
パーティーの会場となるフロアに到着し、エレベーターの扉が開くとそこはきらびやかに装飾されたパーティー会場だった。
「前世でも大企業のお偉いさん方のパーティーに参加したことがあるけど、ここまでのは滅多にないな」
「そういえば、前世の狩谷は歳いくつだったんだ?」
匙がオレの前世の年齢について訪ねてきたので素直に答えてやる。
「前世だと39歳だな。営業マンとして色々と身体を使ってたから歳を重ねる毎に肩や腰とかに疲労が溜まるんだよ。4月の健康診断でも色々とレッドゾーンに入ってて、食生活や日常生活の見直しをして下さいって散々医者からお説教を受けたっけな。本当、十代の身体は元気があって動き安いよ」
「めちゃくちゃ実体験だな‥…‥…」
匙の質問に答えたあと、支取先輩と椿姫先輩は貴族悪魔のお偉いさん方に挨拶をするために動き出したので、何もないとは思うが護衛として頭にエクシード化している黒歌を乗せて、二人の後を追いかけることにした。
二人が貴族悪魔のお偉いさん方と挨拶をしている時、何故か貴族悪魔のお偉いさんはオレを見ると顔を青くして身体をガタガタと震えさせているのは、以前のライザーとの一件でオレがやらかしたからだと思い出した。
「ん? この臭いは‥…‥…あの人たちが来たのか」
「あの人たち、とは誰のことですか狩谷くん」
「悪魔とも堕天使とも違う初めて嗅ぐ臭いなので、オレの予想になってしまいますけど。北欧の主神であるオーディンとその傍付きのヴァルキリーが来たんだと思います。案内役は、朱乃の父親でバラキエルのお義父さんでしょうね」
「ちょっと待て、狩谷。今、姫島先輩の父親の呼び方が違うと感じたのは俺だけか?」
「そういえば、匙は『駒王協定』の時にはいなかったんだな。実は、黒歌以外にも小猫と朱乃の二人とも婚約と同居してるんだ」
「なっ‥…‥婚約と同居だと!?」
「んで、朱乃の両親とは協定が結ばれ少し前に顔合わせをして、そのまま婚約と同居することになったんだよ。まさか、お義母さんの方が乗り乗りだと思っても見なかったがな」
「まさか、こんな身近にハーレム野郎が居るだなんて‥…‥…」
黒歌以外にも小猫と朱乃の二人と婚約、同居していることを匙に言うと匙は両膝を付いて項垂れてしまう。そこへ、シトリー眷属の女子たちが慰めの言葉をかけ始める。
「そんな訳で、支取先輩。バラキエルのお義父さんに挨拶をしてくるので少し外れます」
「ええ、構いませんよ」
「すみません」
支取先輩に一言謝ってからバラキエルのお義父さんやアザゼル、四大魔王。そしてオーディンがいる場所へ向かう。
「セラフォルーさん、お待たせしました。それとバラキエルのお義父さんもご無沙汰してます」
「あっ、龍呀くん」
「おお、龍呀殿。貴殿もこのパーティーに参加しておられたか」
「お義父さん、龍呀殿は止めて下さい。いずれは朱乃と結婚するれば、お義父さんとは義理の親子になるんですから、龍呀でいいですよ」
「そうか。なら、龍呀くんと呼ばせてもらうとする」
「はい。それと始めまして、北欧の主神オーディン。オレはギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士の狩谷龍呀。頭の上にいるのは訳あって猫の姿に変化している妻の黒歌です」
「よろしくお願いしますにゃん♪」
「ホホウ。お主が近頃噂になっておる滅竜魔導士か。フム、お主、この世界とは別の世界からわしら神々よりも高位の存在によって転生させられておるのう」
まさか、そこまでのことを一目で見抜くとは、ミーミルの泉の水で片眼と引き換えにあるゆる知恵と魔術を得ただけはあるようだ。
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第69話
四大魔王、オーディン、バラキエルのお義父さんに挨拶も程々したあと、サーゼクスの演説が行われるので、仕事あるオレは護衛依頼のためにシトリー眷属が集まっている場所へと移動する。
「黒歌、悪いが部長たちのところへ行ってくれるか?」
「どうしてにゃん?」
「ヴァーリからの密告で、このパーティーにオーディンに反旗を翻した悪神ロキがフェンリルと共に乱入してくる。オレはシトリー眷属の護衛の依頼があるから、もしもの時のために黒歌にはグレモリー眷属の側に居て欲しいんだ。それにお前と小猫の魔法ならあのフェンリルを怯ませるくらいは出来るだろう?」
「なるほど、ビーストスレイヤーの初陣って訳ね。任せなさい。白音たちには話すの?」
「いや、今の小猫はフェアリーテイルではなくグレモリー眷属として動いてる。だから、ここはオレたちだけで対処する。頼むぞ」
「了解にゃん♪」
オレの頼みを快く受けてくれた黒歌は、エクシードの状態のままでハッピーたちみたいな天使のような羽ではなく悪魔の羽で、なんちゃって《翼の魔法》を再現しながら妹の小猫のところへパタパタと羽を羽ばたかせて行った。
そんな黒歌を見た小猫は、突然、目の前に半猫化した黒歌が現れたことに驚くも何とか誤魔化してくれたので下手に巻き込まむことはないだろう。
「さて、オレもここにいる全員に補助魔法をかけられるくらいに魔力を溜めて置かないとな。幸い、冥界は人間界よりもエーテルナノが豊富で助かる」
初めて冥界に来た初日は、人間界よりもエーテルナノが豊富で空気が旨いので、いつぞやのライザーが言っていた人間界の空気は汚れているという言葉に共感せざるを得えなかった。
なので、他の者たちにはバレないようにしながら空気中のエーテルナノを《天空の滅竜魔法》で飲み物を口にするのと同時に喰らっていく。そして、サーゼクスの演説の終わりを迎えようとしていたのでグラスをテーブルに置いて、いつでも動けるように構える。
「オーディン殿、異議がなければ条約の碑にご調印を」
「うむ」
オーディンは、サーゼクスに促されてゆっくりとした足取りでパーティー会場のステージの上に設置されているモニュメントの前に行くと、そのモニュメントに手を付けたその瞬間。某裁判ゲームのような台詞が何処から響いてきた。
『異議あり!』
「アニメとヴァーリの情報通りだな」
突然、空中に見たこともない魔法陣が描かれたのでオカルト研究部の皆の近くにいる黒歌へ視線を向けると同じことを考えていてくれたようで頷き合う。
頷き合ったあと、魔法陣の方に視線を戻すとその魔法陣は左右に扉のように開かれ、なかから悪神ロキが現れた。
「我こそは北欧神ロキだ」
「これは珍客ですなー」
「ロキ殿!北欧の神と云えど、そなたにこの場を荒らす権利はない!!」
サーゼクスの忠告にロキは大義名分は自分にあるかの如く態度で、オーディンへの不満を口にする。
「我らが主神殿が、我ら以外の神話体系と接触していくのは耐え難い苦痛でね」
「ロキよ。今すぐにヴァルハラへ帰るならば許してやらんでもないが?」
ロキとオーディン。北欧の二神が睨みになったことで漸くパーティーの正規で警備している憲兵悪魔たちが動きだすが、お前たちではこれから現れるフェンリルを相手にするのは荷が重すぎる。
「許す? ふざけるな老い耄れ風情が!」
「なっ‥…‥…主神に向かって何ていうことを!?」
オーディンを老い耄れと言ったことに傍付きであるヴァルキリーのロスヴァイセがロキを咎めるが当のロキは、聞く耳持たずと言わんばかりに話を続ける。
「他の神話体系との和平を結んでは、我らが迎えるべき『神々の黄昏』が成就できないではないか!」
「どっかで聞いたような話だな、おい。テメェ、『禍の団』と繋がってやがるな?」
「協力関係にあることは認めよう。だが、これは私の意思だ!いでよ、我が愛しき息子よ!!!」
ロキのその雄叫びと共に新たな魔法陣が描かれ、その中から巨大な狼が一匹、躍り出た。間違いなく、神をも殺せる牙と爪を持つ神獣フェンリルだ。
そして、ロキの奴がフィンガースナップを鳴らすと同時にフェンリルが動き出したので、依頼通りにパーティーに招かれざる客への対処をすることにした。
「行くぞ、黒歌!」
「はいにゃ!」
「神の王冠、神の騎士!!」
黒歌と共に身体を雷に変化させて、落雷の速度でフェンリルの目の前に躍り出しながらパーティー会場にいるロキ以外の全員に補助魔法かけたあと、そのまま俺は足に雷の《滅竜魔法》を付与し、黒歌も同様に足に雷の《滅獣魔法》を纏わせた踵落としを駄犬の頭上から叩き込む。
「雷竜の鉤爪!!!」
「雷獣の鋭爪!!!」
2つのスレイヤー魔法を受けたフェンリルは、体勢を維持出来ずにかなりの勢いで床に叩きつけられた。
「おいおい、他人を襲い掛かろうとする駄犬を飼ってるとか飼い主としてなってないんじゃないのか?」
「獣畜生に何を躾ても無駄にゃん」
「貴様らは一体何者だ!?」
「魔導士ギルド フェアリーテイルの滅竜魔導士だ!」
「同じく、滅獣魔導士にゃん!」
「フン、たがだか人間と転生悪魔風情が二匹出てきたところで何ができる」
「フェアリーテイルの魔導士を嘗めるんじゃねぇえ!!!!」
オレと黒歌のことをただの人間と転生悪魔だとロキが油断しているうちに、グレイが動きだけを見せてくれた魔法をオレなりに改良してオリジナルの魔法として編み出した滅竜魔法を構える。
腰を落として、両手を突き出しながらクロスさせて、魔力をセカンドオリジンも含めて全開解放させると会場に暴風のような魔力が荒れ狂う。そんな新たな滅竜魔法のオレの動きと構えと暴風のような魔力を少し離れたところで見て、感じていたイッセーと匙が《
「止めろ、龍呀!! 何もここで
「そいつは自分の命や存在した記憶と引き換えに使う魔法だって、フェアリーテイルのお前が知らないはずがねぇだろう!!!!」
「「「なっ‥…!!!!」」」
イッセーと匙のその叫びでオレ以外の全員が驚き、どよめき合う。二人の叫びを聞いて、フェンリルを相手をしていた黒歌と部長の側にいた小猫、朱乃の三人が鬼気迫る表情でオレの魔法を止めようと近づいている。
「己の全存在をかけた魔法だと!? 人間、貴様は悪魔風情ごときに己の命をかけるのか!!!?」
「へっ、バカいうなよ。誰が嫁さんを置いて逝けるか。こいつは、
「その魔法を使わせるな、フェンリル!!!」
「甘めえよ」
ロキがこれから放とうとしているオリジナルの滅竜魔法に危機感を感じたのか、フェンリルを使って阻止しようとするがその前にロキとフェンリル。やつらの足元に黄金の時計を模したような魔法陣が描かれる。
「なっ‥…‥…黄金の時計!!?」
「もしかして、
「だからそう言ってんだろうが。技名はまだないが、行くぞ。ウオオオオオオ!!!!」
更に魔力を解放させるとロキとフェンリルの足元の動きいていた時計の針がゆっくりとだが動き止める。そして、それに合わせて奴らの動きにも鈍くなっていき。
「なんだ、この結晶は!? くそっ、身体の‥‥…動きが‥‥…鈍く‥‥…」
「どうだ? 神の動きすら止める魔法を初めて受け感想は?」
「人間‥…‥…風情が‥…‥…!!!!」
ロキが最後まで言い終わる前に黄金の時計の針は動きを止めて、ロキとフェンリルを黄金の光で包み込むと奴らを石化させたように奴らの身体が足元から水色の結晶化が進み始める。やがて完全に結晶の中に封じ込めれた姿を確認するとオレの身体中の力がスーッと抜けて、座り込んでしまう。
「ふぅー、ぶっつけ本番でやってみたが何とか成功したな」
「龍呀!!!」
「龍呀先輩!!!」
「龍呀くん!!!」
「うおっ、お前ら、ちょっ!?」
力が抜けて身動きが取れないところへ、黒歌、小猫、朱乃の三人の人間ロケットを受け止めることなどできるはずもなく、押し倒されてしまう。
「心配したにゃ! すごく、すっっごく心配したにゃん!!」
「そうですよ。イッセー先輩や生徒会の人の叫びを聞いて‥…‥…」
「今回は無事に済ましたが、もう二度とあんな自分の存在と引き換えに使うような魔法を使わないでください!! イッセーくんや匙くんから聞いた時は肝を冷やしました!!!!」
「いや、さっきの魔法は
未だに、オレの服を離さずに涙でぐちゃぐちゃになっているであろう顔をオレの腹で三人が隠しているとセラフォルーさんがゆっくりとやってきた。
「お疲れ様、龍呀くん。君と黒歌のお陰で被害も出さずに穏便に事を済ませそうだよ。ありがとう」
「それは良かったですけど、今の魔法で殆ど魔力を使ってしまったので、このあとの護衛依頼は無理そうなんですみません」
「ううん、大丈夫だよ。ロキとフェンリルの動きを完全に止めるだなんて大手柄だよ。あっ、因みにロキとフェンリルはどのくらい動きを止められるのかな?」
「そうですね。流石に神相手だと滅竜魔法も効果を発揮しないんで、最低で約10日ってところが限界でしょうね。
セラフォルーさんから現在も腹に顔を隠している三人へ視線を向ける。
「なるほどね。それじゃあ、またあとで話をすることになると思うからその時はよろしくね」
「了解です」
戦闘BGMはSAIGO NO MAHOUかな?
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第70話
「疲れてるところ悪いね、龍呀くん」
「気にするな、と言いたいが少し辛い。だから手短に頼む、サーゼクス」
北欧の悪神とその息子であるフェンリルの動きを封じるためにセカンドオリジンを含めた9割りの魔力を消費する、時属性のオリジナル滅竜魔法を使ったあと、パーティーは急遽中止。各勢力たちによる対ロキの会議にオレは出席している。
「それで、ロキとフェンリルはどのくらい動き止められるんだ龍呀」
「セラフォルーさんにも言ったが、神相手となると効果は乏しいから魔力にものをいわせて、約10日が限界だった。その間にロキをどうにかする策を考えないと駄目だろうな」
「因みに龍呀くんの前世で、我々はどんな行動を取っていたのか教えてくれないか?」
アザゼルの問いに答えると、体育祭が始まるまでのこの世界の流れを唯一知っているオレにサーゼクスは何の躊躇もなく訪ねてきた。
「まずオレが知っている流れなら、本来はベルゼブブさんがロキを時空の彼方へと転移魔法で封印するんだが、その効果も1日しか持たない。そして、その1日の間にオーディンのじっちゃんがヴァルハラからミョルニルを持ってくるんだよ」
「ちょっと、あなた!我らが主神に向かって、じっちゃんとは‥…‥…」
「よせ、ロスヴァイセ。今は、こやつの知識はわしよりも重要なものなのだ。爺呼ばわり程度なんぞ、捨て置け」
「‥…‥オーディン様がそう仰るのであれば」
「すまんのう。続けてくれ」
「ロキとの戦闘中にミョルニルは来るが、それを扱える兵藤一誠がフェンリルの牙にやられる。が幸い、さっきのパーティーでライザーの妹からもらった『フェニックスの涙』で起死回生をする。あとは無事にロキを撃退、ハッピーエンドだ」
イッセーがフェンリルにやられると話をした時は皆、表情を歪めていたがレイヴェルのファインプレーによりイッセーが復活して、ロキを倒すという流れを聞いた時の表情は安堵の表情だった。
「安心するのは、まだ早いぞ。オレが今話した兵藤一誠は訳あって先ほどのパーティーで禁手化に至っていることが前提条件だ」
「そのとある訳とは聞いてもいいかね、龍呀くん」
「ああ。この世界はもうIFの世界だからな。んで、そのとある訳ってのは、グレモリー眷属の塔城小猫を姉である黒歌が拐おうとした時に禁手化に至る。至り方は、ここでは言えない卑猥な方法なので省かせてもらう」
「なるほど。つまり、龍呀がその方法をイッセーに教えりゃあ、あいつは直ぐにでも禁手化に至れると?」
俺の説明にアザゼルがそう聞き返してくる。
「ああ。それと言い忘れてたが今のまま、イッセーを戦いに行かせるのは少しヤバいんだよ。今のブーステット・ギアは分岐点に立っている。禁手化か普通の強化」
「ならば、イッセーくんには禁手化に至ってもらおう。龍呀くん、彼に方法を教えてくれないか?」
「無論、そのつもりだ。本来なら至れるはずの禁手化への成長イベントをオレが奪ってしまったのも同義だからな。加えて、アザゼル。匙に他のヴリトラの神器を移植してくれ。それも前世の物語に出てくる」
「移植はいいが、耐えられるのか?」
「だれが鍛えたと思ってんだ? タンニーンのおっちゃんほどじゃないにしろ、オレがタイマンで鍛えた愛弟子だぞ。禁手化に至ってないイッセーならば勝てるくらいには育ててある」
「ほほう。ドラゴンスレイヤーのお前がそこまで言うってことは、シトリー眷属全員がかなり鍛えてあると思っていいんだな?」
「ああ、特に椿姫先輩はオレの魔法を返せるくらい強いぞ」
「おいおい、それは流石に驚いたぞ。ハハハハ!!!! よし、あとでヴリトラの小僧にはうちで保有しているヴリトラの神器を移植してやる」
アザゼルは、シトリー眷属の成長具合を聞いてから匙に堕天使勢力が保有しているヴリトラの神器を移植してくれると言質を取れたので良かった。
「んんっ、少し話がずれているようだがオーディン殿。龍呀くんの話によれば、別の世界のあなたは赤龍帝にロキ撃退のためにミョルニルを託したそうですが、如何かな?」
「わしとて分かっておる。全ては北欧の主神たるわしの責任じゃ、何とかしよう。それと龍殺しの魔導士よ。お主に此度の褒美をやろう。何がいい?」
「いきなり言われてもなぁ‥…‥…」
「でしたら、以前、『駒王協定』が締結される前に私に言っていた神殺しの魔法を習得するのは如何ですか、狩谷龍呀」
オーディンからのご褒美を何にしようか迷っているとミカエルが夏休み前に姫島神社で話していた滅神魔法のことにふれてきた。
「神殺しの魔法じゃと? そんなものがあるのか、お主」
「あるにある。オレが知ってるスレイヤー系魔法は、4つ。オレの滅竜魔法。黒歌と小猫の滅獣魔法。そして、滅神魔法と滅悪魔法。その中でも滅悪魔法は朱乃に可能性があるだろう」
「奇妙な魔法じゃのう‥…‥。それで、わしは何をすればよい?」
「オレが滅神魔法を使うようになるのは、神の炎か雷を食らう必要あるけど、それなりにリスクも伴う」
「リスク?」
「滅竜魔導士は、同じ属性の魔法であっても滅神魔法を食らうことができない。つまり、他の魔法なら食えるが神の炎や雷を食えば、身体が拒絶反応を起こして最悪は死ぬ」
でも、ナツの身体能力をもらってから滅神竜魔法に至れる可能性はあるんだけどな。
オレの他のスレイヤー系魔導士が滅神魔法を習得する際のリスクを説明すると最初に言い出したミカエルが口を開く。
「最悪は死ぬって、以前、姫島神社ではそのようなことは兵藤一誠も一言も‥…‥…」
「イッセーはどうかは知らないが、リスクのことを言えるはずがない。側に朱乃が居たんだからな」
「ッ‥…‥…!!」
オレの顔を見たミカエルは、そのあとは何も言えずに俯いてしまった。
「それでどうするんだ、龍呀。リスクを承知で、その滅神魔法とやらを習得するのか? それとも物語通り、イッセーにやらせるのか」
「もちろん、食らうぜ。仲間のために1%でも勝率を上げられるのであれば、どんな困難にも立ち向かう。それがフェアリーテイルの魔導士だからな。それに考え方を変えてみれば、これも一種の神の試練ってやつだ。元人間の男として、神の試練を越えた英雄に憧れたこともある」
「ホホホ、自ら死の危険を知りながら神の試練に挑むか。よいぞ、よいぞよいぞ、滅竜魔導士。否、狩谷龍呀! お主のような危険を承知で、更なる高みへと登ろうとする無鉄砲な輩を久方ぶりにみたわい。神の炎と雷、このわしがお主に与えよ。そして越えてみせよ、神の試練を!!!!」
「おう!」
大笑いしながら品定めするような眼差しを向けてくるオーディンにウキウキとしながら答える。
「それでは、ロキ撃退にはグレモリー眷属から赤龍帝・兵藤一誠。シトリー眷属から『兵士』、匙元次郎。ギルド フェアリーテイルからは滅竜魔導士・狩谷龍呀が参加することに異論はありますかな?」
対ロキ戦闘に挑む面子にサーゼクスがこの場にいる者に賛否を問うがそこでオレは更に新しいメンバーを組み込むことにした。
「オレから一つ。ロキ撃退に今代の白龍皇であるヴァーリ・ルシファーの召集を提案する」
「確かにあいつが居りゃ、かなりの戦力にはなるが大丈夫なのか?」
「そこは、北欧の悪神と戦ってみないかと誘ってやればヴァーリのことだから面白がってほいほいと来るぞ。それに今頃、まだあいつはオレの家にいるはずだし」
「似た者同士だからこそ、思考パターンがわかるわけか‥…」
「では改めて、ロキ撃退にはグレモリー眷属から赤龍帝・兵藤一誠。シトリー眷属から『兵士』の匙元次郎。ギルド フェアリーテイルからは滅竜魔導士・狩谷龍呀。そして白龍皇のヴァーリ・ルシファーが参加することに異論はありますかな?」
サーゼクスがこの会議にいる皆に問うと無言で返答する。
「では、また9日後に、ロキ撃退の作戦の調整と最終確認のためにお集まり頂きたい。こちらも異論はありますかな?」
二度目のサーゼクスの問いに皆、無言になる。
「では、9日後の作戦調整の日に」
サーゼクスのその言葉で、会議に参加していた皆が部屋から出ていく。
会議が終わったので、オーディンのじっちゃんに試練の話をしに行くことにした。
「オーディンのじっちゃん、ヴァルハラに行くのを少しだけ遅らせることはできるか?」
「いいじゃろう。そこはわしが何とかしよう」
「ありがとう」
オーディンのじっちゃんにお礼を言ってから懐にしまっておいた小型の通信ラクリマを取り出して、家にいるであろうヴァーリに電話する。
「もしもし、ヴァーリ? 今暇か?」
『暇ではないな。君の家で今も戦っている最中だ』
「そうか。悪いが今直ぐに冥界へ来てくれ。10日後に北欧の悪神と戦うことになった。お前も参加しないか?」
『なんだい、その面白しろそうな誘いは。行かない訳がないだろう。もちろん、参加するとも』
「それでお前に頼みがある。その間、イッセーを鍛えてくれないか。今からあいつを禁手化に至らせる。禁手化に至ったイッセーなら遊び相手程度にはなるだろう」
『なるほど。俺が鍛えて、鍛えた相手といずれ戦う。それはそれで面白いな。いいだろう、兵藤一誠を鍛える話も喜んで受けよう』
「それじゃあ、待ってるからな」
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第71話
「えー、二人をここに呼んだのは他でもない。ロキ撃退作戦のためにイッセーを禁手化に至らせるための方法を教えるために呼びました」
オレはイッセーを禁手化に至らせるために、グレモリー家が所持している特別な特訓場にイッセーと部長の二人だけを呼んだ。
「お兄様からも聞いているわ。でも、本当にイッセーを禁手化に至らせることができるの? 禁手化に至るには、宿主に劇的な変化か訪れなければ至れないと聞いているわ」
「それが至れてしまうのがイッセーなんですよ。正直、こいつはエロ方向でなら禁手化すら至れてしまうんですよ」
オレもアニメで見た時は、こんなことで強くなる主人公は初めて爆笑したのは言い思いでだ。
「エロ方向って、どんな方向なんだ、龍呀!!」
「イッセー、あなた‥…‥…」
「時間がないから単刀直入に言うが、イッセー。部長の胸を両手でつつけ」
「はい?」
「ちょっと、龍呀!? あなた、突然なにを‥…‥!!/////」
「申し訳ないですけど、これはマジです。オレの知っている物語の兵藤一誠も同じ方法で禁手化に至ってます。それも戦闘中に」
オレの発言に部長が顔を赤くしながら驚いている中、イッセーはさっき言った言葉を身体を使ってどういうことなのかを試行錯誤しながら復唱していた。
「部長の胸、両手でつつく。ぽちっとぽちっと、ずむずむいや~ん。部長の胸、両手でつつく。ぽちっとぽちっと、ずむずむいや~ん、はっ!!」
そして、何かを閃いたのかバッと部長に振り返り。アニメと同じあの台詞を口にした。
「部長!おっぱいをつつかさてください」
「なっ、イッセーまで‥…‥…」
「オレは二人から離れて待ってるんで、禁手化したら呼んでください。乳龍帝にスイッチ姫」
『おい、狩谷龍呀!! 今、聞き捨てならない汚名があったがどういうことだ!?』
イッセーの左腕に宿っているドライグがオレの呟きを聞いていたのか『乳龍帝』という言葉について訪ねてきたが「いずれ分かるさ。おっぱいドラゴン」とだけ残して、二人の姿が見えないところで回復しきってない魔力回復に勤めることにした。
そして、ものの数分でイッセーは至った。
『────至ったッ。マジで本当に至りやがったッ!』
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
「禁手、『赤龍帝の鎧』ッ! 主のおっぱいをつついてここに降臨ッッ!」
「アハハハハハハ!!!!」
リアルに部長のおっぱいをつついて禁手化に至ったイッセーとドライグの台詞を聞いて、笑いを我慢出来ずに腹を抱えてします。
本当におっぱいドラゴン最高だわ。マジで、面白しれぇー!!!!
『相棒、おめでとう。しかし、酷い。俺は本格的に泣くぞ、そろそろ』
「ああ、ありがとうよ。そしてエロくてゴメン」
イッセーが禁手化に至ったので物陰から出て、禁手化の時間を伸ばすためにイッセーの修業相手であるヴァーリに連絡を取る。
「イッセーが至った。アーシアと共に入ってきてくれ」
『わかった』
ヴァーリとの通話を切ってから今もはしゃいでいるイッセーに声をかける。
「イッセー、はしゃぐのもそこまでにしろ。10日後までにお前は禁手状態の制限時間を最大限伸ばす必要がある。だから、そのためにお前にうってつけの相手を呼んだ」
「うってつけの相手? タンニーンのおっさんじゃないのか?」
俺が呼んだうってつけ相手をイッセーはタンニーンのおっちゃんだと思っていたようだが、入り口から入ってきたヴァーリによって否定される。
「元龍王のタンニーンじゃなくて悪かったな、兵藤一誠」
「なっ、お前は‥…‥…ヴァーリ!?」
「何故、白龍皇がここに!?」
「それは狩谷龍呀から面白い誘いがあったからさ。近々、北欧の悪神と一戦交えるみたいじゃないか、こんな面白い話は滅多にない」
「約束通り、半殺し程度で頼むぞヴァーリ」
「任せろ。兵藤一誠を俺好みの強さに鍛えて、いずれ戦う。人間界で言うところの育成ゲームみたいで実に面白い。それにアザゼルから聞いたよ。君はロキとの戦いのために神殺しの魔法、滅神魔法を習得するんだろう?」
イッセーを育成することに玩具を買ってもらった子供のようにウキウキとしていたヴァーリがここで余計なことを口走った。
そして、クソ総督。てめえもヴァーリに余計なこと教えるんじゃねよ。
「神殺しの魔法ですって!!?」
「兵藤一誠を俺が鍛えている間に、君は更に強くなる。直ぐにとはいかなくても、いずれ君と戦うその時が楽しみで仕方ないよ」
「ああ、存分に楽しみにして置けヴァーリ。そして、言って置くがお前よりも先に、自分の竜に『神』の名を付け。オレは竜と神を殺す、『滅竜神』へと至ることをな!!」
「滅竜神‥…‥…フフフ、アハハハハ!!!! なるほど、確かにそうだな。ならば、俺もここに宣言しよう。俺はいずれ、ドラゴン・オブ・ドラゴンと称される夢幻龍グレートレッドを打倒し、真なる『白龍神皇』になるとな!!!!」
オレたち二人は、互いに成長して至る自分を宣言してから拳同士をぶつける。
「先で待ってるからな、未来の白龍神皇のヴァーリ」
「必ず追い付くから待っていろ、滅竜神の狩谷龍呀」
拳を離したらオレは入り口に歩き出し、ヴァーリはイッセーを鍛えるために『白龍皇の鎧』を纏う。
イッセーをヴァーリに任せたあと、オレはオーディンのじっちゃんとロスヴァイセの二人とヴァルハラに向かうために合流するが待ち合わせ場所には、何故か黒歌、小猫、朱乃の三人がいた。
「何で、お前らがいるんだよ」
「猫又の耳を甘くみてるからにゃん。猫又は、猫の妖怪。故に猫と同じくらい鼻や耳も良いのよ」
「龍呀先輩が悪神ロキと戦うためにヴァルハラで修業をすると白龍皇とアザゼル先生の話を聞きました」
「ですので、私たちはそのお見送りですわ。あと、これは私たち三人で丹精込めて作ったお弁当です。あちらでお食べになってくださいな」
朱乃が差し出したのは、八段の重箱だった。その重箱からはめちゃくちゃ美味そうな香りが漂ってくるので、収納ラクリマに収納する。
「ありがとう、大切に食べる。それじゃあ、行ってくるな」
「頑張るにゃん」
「ファイトです」
「行ってらっしゃいませ」
数日間の間だけだが、三人に別れの挨拶を交わしてオーディンのじっちゃんが展開している魔法陣の中に入り、じっちゃんが杖を地面に打ち付けると景色が一変した。
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第72話
《sideイッセー》
「喰らえっ、ドラゴン──────」
「遅いッ!」
「ぐあっ!!」
左手のドラゴンショットを放つ時の僅かな隙を狙われて、特訓相手であるヴァーリの高速による飛び蹴りが腹部へ深々と刺さる。
蹴りの威力と衝撃に耐えきれなくなった身体は、ドライグのサポートがあるのにも関わらず地面へと俺を叩きつけて、意識を奪い去って行こうとするが唇を噛んで、その痛みによって何とか意識を保つ。その代償に口の中は鉄の味が一杯になる。
そのまま這いつくばってないで次のヴァーリの攻撃に備えて動こうとするけど、身体が鉄のように重たい。
『相棒、避けろッ!!』
「んンンンンンンッ、おっぱい根性!!!!!!」
少し先には部長が俺とヴァーリの戦いを眺めている。つまりは、先日、この両手でつついた部長のおっぱいがあるということ。自分の力で動けないなら煩悩の力で身体を動かす。つまり、おっぱい根性だ。
煩悩の力で何とか身体を動かして、ヴァーリの攻撃を回避することに成功したところで体力や集中力が切れてしまった為に鎧が解除されてしまった。あとほんのちょっと、足の爪先が地面を蹴ることさえ出来れば届く距離なのに、俺の手は部長のおっぱいに届くことはなかった。
『よくもまぁ、女の胸だけでヴァーリの攻撃を躱せたものだ……』
「ククククッ、やはり君は面白いな兵藤一誠!」
『やっぱり、狩谷龍呀が言い残したとおりになるのか!? 嫌だ、俺は誇り高い、赤き龍の帝王なんだ!! 決して、乳龍帝でもおっぱいドラゴンなんかでもなぁああい!! うおおおおおん!!!!』
俺のおっぱいへの根性が見せた回避に、アルビオンは呆れ、ヴァーリは面白いモノのを見たように笑い、ドライグは龍呀が言い残した言葉と俺の言動に一人で泣いている。
そんな俺を部長と今も俺の身体に出来た怪我を治してくれているアーシアは苦笑いをしている。
「それにしても本気ではないにしろ、白龍皇との特訓を始めてからは目を見張るほどイッセーが成長しているわね。これは二天龍だからなのかしら?」
『それは俺たちにもわからん。態々、自分と同じくらいまで鍛えようとする白龍皇など過去にはいなかった』
『ドライグの言う通り、我々はお互いに強かろうが弱かろうが本能にしたがって戦ってきた。狩谷龍呀の案に乗ったヴァーリが異例なのだ』
「俺は弱い相手には興味はないんだ、アルビオン。やるなら、最高に強くなった相手と戦いたい!! 例えば、滅神魔法を習得して戻ってきた狩谷龍呀とかね」
ヴァーリとの特訓が始まってから確かに自分でも戦うごとに強くなっているのを実感する。それはタンニーンのおっさんとのサバイバル生活よりも実感できる程だ。
「はい。これで全部治りましたよイッセーさん」
「ありがとう、アーシア。それにして、龍呀の奴はどんな特訓をしてるんだろうなぁ。公式設定だと、滅神魔法を習得した滅神魔導士たちは、魔導書を読んで習得したってあったはずだけど、龍呀の場合はやっぱり食って習得するのか?」
「それはヴァルハラから帰ってきた龍呀本人に聞きましょう」
「そうですね。それからヴァルハラにいるであろう綺麗なヴァルキリーの皆さんのおっぱいとか色々と聞かないと、どぅふふふ!!」
「むぅ……!!」
「ちょっ、アーシア? 痛い、痛いよ、アーシアさん!?」
◇◆◇
《side小猫》
「滅獣奥義・
目の前の巨大な岩に向かって、全力の雷の滅獣魔法を纏わせた拳を打ち付ける。けれど、岩が完全に崩壊することなく亀裂が入る程度で収まってしまった。
「魔力と仙術の練り合わせがが弱いわよ、白音。それだと、『戦車』の力に魔力を乗せてるだけで表面にしか攻撃が伝わないにゃ。見てなさい」
姉様から私の滅獣奥義の悪かったポイントを教えてもらったあと、姉様の実演を見て更に覚える。
「滅獣奥義・吼御雷」
同じ属性の滅獣奥義なのに、姉様は私と違って、ただ触れるように拳を岩に当てると岩は内側から弾け、爆散した。これだけで、姉様と私の滅獣奥義が大きく違うことを理解してしまった。
それと同時に、もっと姉様の下で仙術を極めれば今の姉様みたく強くなれると確信が得られた。
「今のが魔力と仙術を均等に練り合わせた滅獣奥義。これにあなたの『戦車』の特性を加えた拳が合わされば、私よりも強い滅獣奥義が完成するわ」
「姉様よりも強い?」
「ええ。私の駒は『僧侶』。白音とは正反対の特性と言ってもいいわ。吼御雷はあなたに合っている滅獣奥義。だから、仙術も頑張りなさい」
「はい、姉様!」
今回の戦いで、私と姉様は必須だとアザゼル先生から説明された。駒王協定の時に現れた異世界の神の言葉通りなら、私たちが使える滅獣魔法でフェンリルを撃退できるかもしれない。そうなれば、龍呀先輩と部長たちが悪神ロキの相手に集中できる。
私には、龍呀先輩みたいな魔竜と戦えるだけの膨大な魔力はない、部長みたいに反則級の魔法もない、イッセー先輩のような神をも越える神器もない、姉様みたいに上手く仙術や妖術が使える訳でもない。
けれど、龍呀先輩が与えくれた力が、滅獣魔法が私にはある。だから、極めてやる。最強の滅獣魔導士に私はなる。これだけは姉様にだって負けてやるものか。
「それじゃあ、精神統一から始めるにゃん」
「はい!」
深く深呼吸をしてから目を瞑り、身体が一番楽な自然体で仙術と魔力を身体の中で均等になるように練り上げる。けれど、龍呀先輩に出会って、姉様から過去の真実を聞くまで仙術を嫌っていた分のツケで仙術が上手く魔力と均等に練れない。
他にも、仙術を練る時に少なからず邪な気が混じってしまう。それを何とか排出するも神経をかなり使うため、粒のような汗が額から垂れる。
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第73話
お久しぶりです。
一応、この作品は生きていることをご報告させてください。
それと、懐かしいアンケートをゴールデンウィークが終わるまで出します。
なので、投票などをお願いします。
《side匙》
「いいか、匙。神器の後天的に発現────つまり、移植にはかなりのリスクが伴う。が、成功すれば劇的にお前は強くなる。もしかしたら、二天龍の一角である赤龍帝を宿しているイッセーに迫るくらいな」
「俺が兵藤に…………」
「あとは、お前さんの気持ち次第だ。神器は、宿主の想いに呼応する。ま、移植に関しては龍呀が俺に進めてきたくらいだ。そんなに心配はいらんだろう」
「そっすか、狩谷────いや、あえてここは、師匠が太鼓判を押してくれたんですね」
今、俺はアザゼル先生の共に堕天使の総本山で『神の子を見張る者』に訪れている。理由は、散り散りになったヴリトラの神器をすべて俺に移植してパワーアップを図るためだ。
このことは、狩谷がアザゼル先生に進めたくれたようで、案外あっさりと俺の主である会長も受け入れてくれた。
「それじゃあ、始めるぞ。覚悟はいいな?」
「はい、お願いします!」
「よっしゃ!」
それから始まったのは俺が知っているような医療的な移植とは全くの別物だった。
まずは、移植する際の拒絶反応を少しでも抑えるためにアザゼル先生謹製の薬物を点滴で投与されるのに加えて魔法やら何やらをかけられた後に『黒い龍脈』以外のヴリトラの神器を身体のあちこちに移植された。
「うぐっ………がぁぁぁっ!?」
「耐えろ、匙! これで二つ目だ!!」
「っあ…………!」
移植される度、無意識に俺の身体がベッドの上で跳ね上がり、高熱に襲われるがアザゼル先生の薬のお陰で翌日には収まりはする。それを何度か繰り返して、最後のヴリトラの神器を移植した途端に今まで保っていた意識がプツリとテレビの電源が切れるかのように真っ暗に染まった。
次第に意識がはっきりすると周りは真っ暗で、どこに何があるのか分からないまま、慌てずに修行通りに周囲の警戒しながら一度深く深呼吸をする。呼吸を整えることで、思考をクリアにする。狩谷との修行で散々覚えさせられたことの一つだ。
「周回は真っ暗で、正確な位置取りは把握できない。だとすると、あれだな!」
身体の中で一度魔力を練り、それを一気に周囲へと霧状に放出する。これによって、魔力戦闘が苦手な俺でも周囲の索敵ができるようになった。
「障害物に、生き物の気配無し………」
本当に何もない真っ暗な空間だということが分かると突然、さっきまでそこにはなかったはずの大きな気配を感じて思わず大きく後方へ飛び退き、臨戦態勢を取る。
臨戦態勢のまま、突然現れた気配の正体を確かめるために目を凝らすとそこには大きな黒い蛇のように物が蜷局を巻いていた。
「なんだよ、これ………」
大きな黒い蛇に圧倒されてしまい、思わずそう呟いてしまう。
『ん? ほう、神によって四つに分かたれた我が魂をその身に全て宿すとは、珍しい宿主に出会えたようだ』
黒い蛇のその言葉で、何となくだが奴が何者なのかを理解した。
「もしかしなくても、お前がヴリトラか?」
『いかにも』
「そうか……。なら、頼むがある。ヴリトラ、俺に力を貸して欲しい!」
『なに故だ?』
「近いうちに、北欧の悪神ロキと戦うことになってるんだ。だから、五大龍王の一角であるお前の力が必要なんだ。会長や生徒会の皆、仲間たちを守るために」
『汝の想いは理解した。良かろ、汝を我が分身として認め、我が力を貸してやろう』
「本当か!? ありがとうな、ヴリトラ!」
ヴリトラと邂逅して、友好関係が築けた途端に意識がフワフワと浮いて行くのがわかった。どうやら、ここは俺の精神世界だったみたいだ。
朦朧とする意識の中、水滴が落ちる音だけが鮮明に分かるようになってくると自分が目を瞑っていることにも理解ができるようになってきた。
「ん、んん…………そうか、無事に全部適合できたのか」
ゆっくりと手のひらを握ったり、開いたりして身体の調子を確かめながら新しく神器を宿すのだから、劇的なパワーアップをしてるいるのではないかという淡い期待をしていたが、それは叶わなかったようだ。
それでも、これで今まで以上に会長や生徒会の皆の力に成れるという確信は確かにあった。
「おや、目が覚めたようですね、匙くん」
「シェムハザさん」
「お加減はどうですか?」
「大丈夫みたいです」
「そうですか、それは何よりです」
赤いベレー帽に銀髪をした堕天使の副総督であるシェムハザさんに、目が覚めてからの体調などを軽く話した。
「今日は目が覚めたばかりなので様子を見て、明日の昼頃から本格的な神器の特訓を始めましょう。アザゼル総督には、私から伝えて置きます。他に何かありましたら、そちらの端末で連絡してください」
「ありがとうございます」
「では、私はこれで」
◇◆◇
《sideアザゼル》
「これじゃねぇ…………どこにやった?」
総督室に備え付けられている本棚から対ロキ戦に備えて、色々と文献やらを掘り起こしているうちにフェンリル対策用の道具が記載されている書物があったのを思い出したのだ。
いかせん、何十年も前に読んだので何処に仕舞っておいたのか思い出せないため、手当たり次第に読み漁っている。すると、総督室の入り口から副総督であるシェムハザがやってきた。
「アザゼル、匙くんが目を覚ましました」
「そうか。おっ、見つけた、これだ!」
ヴリトラの神器を無事に全て、その身体に宿すことに成功した匙が目を覚ましたとシェムハザが報告を受けた。それに合わせて、お目当ての書物も本棚から見つかった。
これで、一番厄介なフェンリルをより確実に抑える道具が解るはずだ。目的の書物を片手に、匙がいる医務室へと向かう。
「よう、目が覚めたようだな」
「アザゼル先生」
「で、どうよう。新たに三つのヴリトラ系の神器を取り込んだ感覚は」
「正直、凄いですよ。それに精神世界でヴリトラと対話をしました」
「ほぅ………それは朗報だな」
匙の言葉に思わず眉を動かしてしまった。ヴリトラ系の神器を新たに三つ取り込んで早々にヴリトラと対話ができると、龍呀のやつが太鼓判を押すわけだ。
ヴリトラ系の神器を宿す存在として、匙元士郎という転生悪魔は歴代の中でもトップクラスだろうと俺は見た。
「目が覚めて早々で悪いが、お前さんの力を借りたい」
「俺の?」
「ああ。龍呀が封じ込めているフェンリルに対抗するアイテムを作るために、龍の力がいる。それも龍王クラスの物がな」
「なるほど、わかりました。俺でよければ協力します」
「それは助かる。あとは、タンニーンと二天龍を宿すイッセーとヴァーリにも手伝ってもらわないとな」
「あの二人にもですか?」
「ああ。龍王クラス以上が複数いないと空けられない龍門を開くためにな。そのあとは、お前もイッセーたちと合流して、新しく身体に宿したヴリトラ系神器の感覚を確かめておけ」
「わかりました」
このままであれば、龍呀が推薦したメンバーのパワーアップも順調に進むだろう。あとは、オーディンがミョルニルを雷神トールから借りれるかどうかだな。
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第74話
どうも、黒牙雷真です。
まずは、アンケートを投票していただいた読者の皆さまに感謝と謝罪させていただきます。
アンケートに投票していただいたお陰で、オリジナル主人公の龍呀には滅竜魔法に加えて、滅神魔法も今後は追加していきます。投票していただき、ありがとございます。
続いて謝罪に移ります。私個人で今年のゴールデンウィークは5月5日で終わりだと勘違いをしていアンケートの投票を一時的にストップさせてしまいました。何度か、Googleで今年のゴールデンウィークを確認していましたが、何故か昨年のゴールデンウィークが反映されていました。申し訳ありません。
最後に、色々と新しい作品を書き溜めしているので小説の投稿がかなり遅れることがありますが、今後も「滅竜魔法を持って、悪魔の学園へ」をよろしくお願いします。
《sideイッセー》
「そろそろ来るぞ」
左腕の腕時計を確認しているアザゼル先生がそう呟くと、部長の家であるグレモリー侯爵の庭に魔法陣が展開されて、その魔法陣から知ってる顔が二人現れる。
一人は、俺の友達で仲間である龍呀。もう一人は、オーディン様のお付きであるヴァルキリーのロスヴァイセさんだ。二人が帰ってきたと思った矢先のことだった。
龍呀の身体が漏れ出る魔力に俺たちは戦慄する。静かでありながら荒々しい、存在感がそこにはあった。タンニーンのおっさんのサバイバル修業とヴァーリとのガチバトル修業がなければ、恐怖でチビってたかもしれない。
「ただいま、みんな」
けれど、その一言で俺たちは戦慄から解放されて笑顔になる。
「いやはや、たった数日でここまで化けるか。なにをやったらそんなに強くなるんだよ」
アザゼル先生のその問い掛けに、龍呀はまさかの答えを口にする。
「ん~、なんちゃってラグナログ?」
「は?」
「「「「え?」」」」
龍呀の口から出てきた一言に、俺たち一同は固まってしまう。
たっぷりと五秒が経ってからギギギィッと錆び付いた錻のようにアザゼル先生がロスヴァイセさんの方へ顔を向けて、龍呀の言っているかどうか視線だけで訪ねるとロスヴァイセさんの深い溜め息を吐きながら首を縦に振って、肯定した。
龍呀が言っていることが肯定されると、アザゼル先生は片手で顔を覆って天を仰いだ。
「まったくドラゴンの力を宿す奴のはどいつもこいつも…………」
ヴァーリ然り、龍呀然り、本当なんてドラゴンの力宿す奴は闘いたがるんだ? 俺なんて、美人美女とエッチなあれやこれやハーレムの夢を叶えられるならそれでいいのに………。
まぁ、龍呀の奴は、黒歌さんに小猫ちゃん、それから朱乃さんと既にハーレムを築いているので羨ましいので俺も大概かも知れないな。
「龍呀の規格外さ今更だからどうしようねぇとして。ロスヴァイセ、お前さんがオーディンの代わりに作成会議に参加すると聞いているがあの爺さんは今何やってんだ?」
「それが北欧の神々の中で、さすがにミョルニルを悪魔に一時的とはいえ貸し与えるのに反対する方々が居られまして。オーディン様は、その方々との交渉に勤しんでおります」
「かぁー、まったく頭の固い連中だな、おい。元はといえば、そっちの悪神が事の発端だろうに………ったく」
やっぱりどこの神様も悪魔とは仲が悪いみたいで、アザゼル先生もやれやれといった両手をプラプラさせながら首を左右に振って呆れていた。
「ところで、龍呀よぅ。例の魔法は習得出来たのか?」
アザゼル先生のその問い掛けに龍呀は、満面の笑みを浮かべながら右手に見慣れた普通の赤い炎、左手には黒い炎。この黒い炎は間違いなく────炎の滅神魔法だ。
龍呀が炎の滅神魔法を片手に灯すと隣にいたロスヴァイセさんが反射的に龍呀から大きく距離を取る。その反応からアザゼル先生は満足気な笑みを浮かべる。
「半神のヴァルキリーであるロスヴァイセが反射的に龍呀から距離を取るあたり、無事に噂の滅神魔法を習得したようだな。これでこっちの戦力も万全に近い状態になったな」
「ちょっ!? りゅ、龍呀
「悪りぃ悪りぃ、ついな………アハハハ」
「笑いごとではありません!」
さっきアザゼル先生が言っていたが戦乙女は半分神のようで、龍呀が新しい習得した滅神魔法は劇物以外の何物でもなく。そのため、ものすごい剣幕でロスヴァイセさんが叱っている。
しかし、それも束の間、ゾワリとした悪寒を隣の方から感じるとそこにはバチバチと放電するような音が聞こえるとそこには黒歌さん、小猫ちゃんの二人が身体から水色の電気を纏っており、朱乃さんも黄色い稲妻を纏っている。纏っているだけならば別に気にしな…………いや、気にするかもしれないが今はそこではない。
一番気にするところは、お三方が表情は笑顔なのに目が笑っていない。むしろ、なんか光が宿っていない気がする。例えるならアニメのヤンデレキャラの目をしている。
「ウフフ、そうですわ。笑いごとではありませんよ、龍呀くん」
「浮気は赦しません」
「正妻として、夫の不始末はしっかりと付けないといけないわね。覚悟するにゃん、龍呀」
「ちょっと待て、お前ら!何か勘違いしてるぞ!?」
「出会って一週間ほどしか経っていないのに名前呼びで尚且つ『
「では、逝きましょうか龍呀先輩」
「ちょっ、今なんか字がおかしいなかった?! てか小猫、お前いつの間にそんな力が強くなったんだ!? それなりに力を込めてるのに抜け出せねぇ!!」
ヤンデレ笑顔で笑う朱乃さんと力付くで龍呀をグレモリーの屋敷に引き摺っていく小猫ちゃん、それ抗っている龍呀が見て、俺は本当に龍呀が返って来たのだと何故か安心してしまった。
普通は、安心するべきではないのだろうが。
「リアスにアザゼル、悪いけど龍呀と少しばかり夫婦のO☆HA☆NA☆SHIをしてくるから一時間後には連絡するわ。あとはよろしくにゃん♪」
そう言って、黒歌さんも小猫ちゃんたち同様に屋敷の中へと消えて行った。
「修羅場ね」
「修羅場です」
「あれが修羅場なのか」
黒歌さんの姿が完全に消えると部長、アーシア、ゼノヴィアの三人がそんなことを呟いていた。
「取り敢えず龍呀とあの三人には後で話すとして、それまではロスヴァイセ、お前さんと明日の作戦を詰めたい」
「わかりました」
「私たちも黒歌から連絡が来るまで屋敷で自由に過ごしましょう」
部長のその一声で俺たちは全員、屋敷に戻ることにした。
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