東方地底生活記 (Cr.M=かにかま)
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一/何事も最初が肝心って言うよね?

初の二次創作です、可笑しいところはありまくると思います(^^;;
それでも構わないという方はどうぞ!


幻想郷...

そこは人々から忘れられ、幻想になったモノが流れ着く異世界

何百年という歴史を持ち、そこでは人、妖怪、神、仙人と言った様々な種族が絶妙なバランスを取りながら同じ世界で共存するというところが実現している楽園とも言える場所

しかし、種族の本質は変わることはなく妖怪は人を襲い、人は妖怪を畏怖するという関係に変わりはない

幻想郷の管理人、八雲紫と博麗神社の巫女によって先述述べた幻想郷のパワーバランスは保たれており、基本的には平和で退屈な毎日を送ってるのが日課であったりもする

 

これはそんな幻想郷に流れ着いた一人の外来人の物語...

 

 

 

「...........熱い」

 

俺は目を覚ました第一発言が熱いとは何とも珍しい発言をしてしまった

しかし事実なのだから仕方ない!

それは否定したくても否定できない真実だからね!

 

俺の名前は銕蒼蔦(くろがねそうたつ)

名前の由来は一切不明だ、親に聞いても教えてくれなかったしな...

俺は今から半年程前に、この何でもありの非常識だらけの世界に流れ着いてしまった

お陰様で親に名前の由来を聞くことが出来なくなってしまったことに悲しさも無念さも何も感じない!

 

.....さっきから俺は一体誰に説明しているんだろう?

画面の前の読者とかそんなオチじゃないよな?

もしかしたら寝起きで頭が正常に働いてないのかもしれない、とりあえず俺は冷水で洗顔を行い目を覚ますことにした

そして鏡に自分の顔が映る

オールバックになった少し長めの黒髪に所々にピアスと獣のような鋭いツリ目

....相変わらずの悪人顏だからって凹んだわけじゃないもんね!

 

そしていつもの白いカッターシャツを直接羽織り、自分で言うのも何だが不気味な模様が刺繍された赤いバンダナを巻き、首に地味に細かい装飾が施された銀色のチョーカーを装着する

ちなみにカッターシャツの下には何も着ていない、だって熱いんだもん

唯一身に着けるモノと言えば腰に巻くサラシくらいだ、毎日ちゃんと替えてるし、洗濯もしているから決して不潔ではない!

 

あまりにもいつも通り過ぎる一連の流れを終え、皆はまだ寝ているであろうがキッチンへと繋がっているリビングへと足を向ける

 

「今日の朝食は何にしようかな〜?」

 

途中道行く所々で此処で飼われている動物達とスキンシップを取りながら俺は深いため息を一つ吐いた

 

地霊殿の居候、俺こと銕蒼蔦の一日は始まったばかりである!

 

 

 

.....今日の俺ホントに独り言多いな

 

 

 

「あ、蒼蔦」

 

「おはよう〜」

 

俺がリビングに着くといつもこの時間にはいないはずの二人がソファでゆるりとくつろいでいた

 

「おくう、お燐、今日は早いな」

 

「今日は死体が全然落ちてなかったからね〜、あたいホント残念だよ」

 

「俺としては平和でいいと思うんだけどな」

 

俺の言葉にむ〜っと頬を膨らませる

赤い髪に二本の尾、頭にある二つの猫耳と人間の耳というつけ耳か本物かよくわからない耳をピコピコと火焔猫燐(かえんびょうりん)、通称お燐は猫又ではなく火車という種族に分類されており「死体を持ち去る程度の能力」という役に立つのかよくわからない能力を保持している

怨霊や死体と会話する力もあるらしく、初対面で全力で殺されそうになったことは今でも忘れることの出来ない、いい思い出となっている

それでも今は打ち解けあい、そこそこ仲良くさせてもらってる

 

そして、背後に何やら凄まじい威圧感と危機感を感じる...

 

「メガフレア!」

 

「殺す気かァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!」

 

俺はゼロ距離の熱砲撃を全力で回避する、我ながら中々の反射神経だと褒めてやりたいほどだ

 

「いきなり何すんだ、おくう!」

 

「憎かった、私をボッチにしてお燐とイチャイチャしてる蒼蔦が無性に憎かった、パルパルパルパル...」

 

「その台詞はあの嫉妬を操るアイツだけで十分だ!頼むから理不尽な理由で俺に制御棒まで出して攻撃するんじゃない、人間ってかなり脆いから!」

 

「蒼蔦なら大丈夫、人外だから」

 

「お前にその台詞を言う資格はない!」

 

全く、コイツはホントいつも油断ならない!

彼女、霊烏路空(れいうじうつほ)、通称おくうは太陽の化身、八咫烏と呼ばれる種族だ

緑と白を基調とした服装をしており、背中には大きな黒い翼でその上に裏地が宇宙柄のマントを羽織っており、実は取り出し自由と最近気がついた右手の物騒な身の丈程の制御棒が特徴的で「核融合を操る程度の能力」という何ともチートで人類が力で挑んでも絶対に敵いっこない力を保持している

更に言えばかなりの鳥頭で、俺の名前を完全に覚えるだけで二ヶ月程掛かったことに驚きを隠せなかった

ちなみに先程の攻撃が核融合で放たれた一撃なら俺は命どころか体の原型すら留めていなかったであろう、それを証拠に壁が少し焦げた程度で被害は済んでいるのだから

....十分な器物損害に思われるがこの幻想郷では常識に囚われてはいけないことをどうか覚えておいていただきたい

 

「そういやおくう、もう間欠泉地下センターの仕事は終わりか?」

 

「すっぽかしてきた」

 

『今すぐ戻れ!!』

 

俺だけではなく、お燐までも突っ込んだ

 

「うにゅ〜、面倒くさいよ」

 

面倒臭いとかいう理由であそこを放っておくわけにはいかない!

何やら世にも恐ろしいと評判の山の神様から依頼されていることらしいのでとても重要な案件だ!

というかコイツは神様の頼みを堂々とすっぽかして来たことに何の疑問も迷いも見られないから尚更質が悪い!

 

「あ、そういえばお腹すいた」

 

「あたいも」

 

「そういや朝飯作る為に下りて来たこと忘れてた」

 

俺はうっかりしたという様子で頭をわしゃわしゃと掻き上げる

時間帯的にそろそろさとり様もこいし様も起きてくる時間っぽいので少し急いだ方がいいかもしれない

 

「じゃあ、急いで朝飯作ってくるよ」

 

「私も手伝う!」

 

「お前は間欠泉センターの仕事を終わらせてからにしろ!」

 

「えぇ〜」

 

おくうは渋々と言った様子も見せずリビングから動く素振りすらみせない

お燐はお燐でさとり様がそこら辺から拾ってきたペット(主に猫)と戯れちゃってるし...

 

「お前が帰ってくる頃には朝食は完成してると思うからさ、早く間欠泉センター...に......」

 

俺はおくうの背中を押そうと手を出したのだがそれは空振りに終わってしまう

おくうが俺の視界から消えていた、その代わりになにやらキッチンから爆発音にも似た轟音が聞こえてきた気がする...

 

「うにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!?」

 

「キッチンでメガフレア使ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」

 

俺はこれ以上の大惨事を防ぐべく急いでキッチンへと急行した

 

 




続くかもしれない!


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二/何気ない日常が幸せだと、これほど感じたことはない!

なぜだろう、ネタが次々と思い浮かぶ


ヨッ、俺銕蒼蔦!

年齢はあえて内緒の一応人間だ、俺は今地霊殿から外出する形で旧都と呼ばれる街まで来ている

なぜなら朝飯を作るはずだったのだが、熱かい悩む神の火ことおくうがキッチンの河童特製最新式のコンロの付け方がわからないまま使用しようと、何故か右手の制御棒をコンロに向けてメガフレアを割と全力で放出したものだから居候先のキッチンは大惨事な状態となってしまった!

一応生きている食材を確認したかったが、ここ幻想郷にはまだ外の世界の生活するに必要不可欠の三種の神器の一つ、冷蔵庫が幻想入りしていなかったため殆どの食材は非常に不本意だったのだが⑨の協力で手に入れた氷で保存をしていたのだが、その氷ごと食材の九割が駄目になってしまっていた

お燐は気がつけばどこかに行ってしまい、おくうはおくうで逃げるように間欠泉地下センターに今更戻って行った

 

そして、現在に至る

未だ眠っているさとり様とこいし様を置いて地霊殿を留守にするのは非常に不本意だったのだが、お燐が外に出掛けていないことを祈りつつ俺は最低でも朝飯を作る程度の食材が欲しかったので旧都に食料調達に来ている

本音を言ってしまえば行くなら人里が良かったのだが、時間が掛かりすぎるし何よりも遠い

それに長年の地底生活の為に太陽の日差しも月の明かりも最近ではまともに浴びていない上に、地底では朝の感覚で行動しているが地上が朝とは限らない

もう時差ボケとかそんなのでは済まされないくらい体内時計と生活習慣が滅茶苦茶になってしまっている、そんな俺が地上に行ってしまえば何か負けた気分になる気がする

.....まぁ、本当のことを言えば幻想入りして半年の間、地上には何度か行ったことはある

博麗神社で開かれた宴会の時や、香霖堂という外の道具を取り扱う店に足を運んだり、妖怪の山付近にある河童の工房に行ったりと、時間の流れもある程度はわかるが本当にそうなのかはわからない、俺は所詮小心者だよ、笑いたきゃ笑えよ!!

 

そして、旧都には別の用事もある

おくうがキッチンをニュークリアフュージョンしてしまったため、修理もしないといけない

そこで旧都に住む鬼の力を借りる

彼等は力が強く、こういう仕事などもすることが多いらしい

過去に博麗神社を襲ったという大地震で倒壊した神社を建て直したのも彼等と聞く

鬼には一応知り合いもいるためなんとかなるであろう、何しろ俺一人の力ではキッチンのあの惨状をどうすることもできない...

他力本願がここまで役に立つ四字熟語だと思ったことはないかもしれない

 

そんなこんなで歩き続けること早20分ちょっと、やっとのことで旧都が見えてきた

旧都は地霊殿よりも灼熱地獄から離れている場所に位置しているため、やや涼しめの快適な環境となっている

まぁ、人間の俺にとってはどちらにしても熱いという感想しか言うことはできないわけだが

俺はとりあえず何を買うかを考えながらあいつが居そうな酒場に向かってゆっくりと旧都に足を踏み入れる

旧都は地上の人間や妖怪を嫌う者達の集まり、というか大半が妖怪のため俺は少し浮いてしまうがそんなことを気にしていてはここでは生きていけないので、そこら辺は適当に対応するしかないだろう

焼き鳥屋の前を通って朝から焼き鳥はちょっとな、と苦笑いしながら他の食材を探していると、

 

「ギャーーーーー!」

 

「グワァーーーー!!」

 

....何やら近くの酒場から複数人の叫び声と爆音が響き渡った

もしかしたらあいつ、また暴れてるんじゃ...

俺は内心不安になりながらも食材探しを中断して騒ぎのある酒場に行ってみる、そこには...

 

『申し訳ございませんでした!』

 

「わかりゃいいよ、わかりゃ」

 

.....おそらく鬼と思われる大の男十数人が一人の女性に土下座していた、というか彼女も鬼の一人だと額から生える赤い大きな角でわかった、というか顔見知りということも同時に判明した

 

彼女は星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)

長い金色の髪に手首には鎖が千切れたような手錠、女性とは思えない豪快な肉体こそが彼女の強さと存在感を表している

一通り落ち着いたところで俺は彼女に声を掛ける

 

「勇儀さん」

 

「お、蒼蔦久しぶりだな」

 

「勇儀さんは相変わらずッスね」

 

「まぁな、それより何の用だ?」

 

 

 

数分後...

 

「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!星熊の姉御に人間が勝負を挑むよ!」

 

やたらテンションの高い酒場の店主が客寄せの為にわざわざメガホンを使い、辺りの鬼や妖怪達に声を掛ける

俺と勇儀さんの周りには既に百を越えるギャラリーが集まっており、テンションも最高潮に盛り上がって...

 

「...ッて、ちょっと待ていッ!!」

 

「ん、どうした?」

 

俺の叫びに勇儀さんは酒を飲みながらキョトンとした表情で尋ね返す

 

「何でこんなことになってんすか!?俺はただ勇儀さんにキッチンの修理を頼んだだけだった気がするんですけどー!?」

 

「私が一勝負しよう、って言ったらお前が応じたんだろ?」

 

「酒瓶差し出して勝負って言ったからてっきり飲み比べかと思ったんすよ!なんで実力勝負なんですか、俺が勝ち目あるわけがないじゃないッスか!」

 

「最初から諦めんな!私はそういう軟弱者の頼みは聞かないよ!!」

 

「詰んだ!?」

 

俺の矛盾を勇儀さんは見事に論破する、クソゥ口喧嘩でも勝てる気がしねぇ!

なんかギャラリーもいい感じに盛り上がっちゃってるし、これ完全に逃げ場なしじゃん!

 

「それに前々からあんたとは戦ってみたかったんだよ、蒼蔦」

 

「俺みたいな力もない人間をそんなにサンドバックにしたかったのかよ」

 

「嘘だね、蒼蔦は戦う力は持ってるだろ?しかもその力は普通の人間よりも遥かに高いはずだ」

 

「なっ....!?」

 

俺が戦えることがバレた!?

今までそんな振る舞いした覚えはない、あくまでも普通の人間を装ってこの半年間生活してきたはずだ

地霊殿の皆には話しているが、それ以外に話した覚えもない...

 

「.....なんで俺が戦えるってわかったんですか?」

 

「勘」

 

「えぇ!?」

 

この人、やはり侮れない!

 

「それと今回は見逃すが次は気をつけな、私ら鬼っていう種族は嘘とかそういうのが大っ嫌いなんだ、蒼蔦は私に対して嘘をついた、これで戦う理由もできたんじゃないかい?」

 

「.....いい感じに纏めてますけどそれはあくまでも鬼の見方ですよね?」

 

「当たり前だ」

 

勇儀さんはやる気満々な様子で拳をポキポキと鳴らし始める

俺もそろそろ覚悟を決めた方がいいかもしれない、勇儀さんから逃げることはおろか、この流れに逆らえるわけでもない!

 

「勇儀さん、一戦お願いします!」

 

俺は勇儀さんを真っ直ぐ見つめる

今まで以上に目をツリ上げて

 

「いい眼だ、先手は貰うよ!」

 

勇儀さんは酒を飲み干すと、とてつもない殺気を纏いながら真正面からこちらに突っ込んで来る

勇儀さんの能力は「怪力乱神を持つ程度の能力」、あらゆる力において彼女を越えることは不可能であろう

能力以前に種族の差がある、俺はそんなハンデキャップを背負いつつも勇儀さんの一撃を間一髪の所で避ける

俺はそのまま右ストレートを勇儀さんに向かって放つ

勇儀さんはそれを軽々と受け止め、カウンターのキックを繰り出す

俺は勇儀さんの一撃を一発でも喰らえば戦闘不能になってしまうだろう

だからこそ、俺はどんな姑息な手を使ってでも回避に専念する

まずは勇儀さんに自由を奪われている右手を思いっきり引っ張り、右腕から右手を外す

そして蹴りの範囲外に転がり込み攻撃を回避することに成功する

 

「え...?」

 

当の勇儀さんは目の前で起こった現実について行けていない様子だ

そのまま自分の持っている俺の右手を確認する

 

「あ、あぁぁぁぁ、わ、悪い、お、おおおお前の右手...」

 

「勇儀さん、とりあえず右手返してください」

 

「いやいやいやいや、とりあえず治療だ!くっつくかはわからないが永遠亭の医者にでも見せれば、」

 

ガチャ☆

俺は勇儀さんから右手を取り返し再び右腕にくっつける

 

「ハァ!?」

 

勇儀さんは驚きで俺の右手と右腕を何度も見直す

まぁ、この驚きは当然だが勇儀さんは少しオーバーリアクションな気もする

 

「蒼蔦、あんた一体...」

 

「そうですね、俺は確かに人間ですけど少し違うんですよ...」

 

俺は再び右手を右腕から外し、勇儀さんに俺の正体を明かす

 

 

「俺は...サイボーグだ!!」

 




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三/いつ、何時でも避けては通れない道がある!!

寒くなってきた今日この頃...


サイボーグ、いわば俺は改造人間という括りに当てはまる人外だ

この幻想郷の中でたった一人の存在であり、イレギュラーな存在

俺がサイボーグだと幻想郷内で知っているのはさとり様、こいし様、お燐、おくう、八雲紫、河城にとり、森近霖之助、そして勇儀さん...

しかし、サイボーグと言っても体の作りはとても中途半端で右腕と左上半身(具体的に言えば首より下、肋骨より上)であり、それ以外は生身の人間と何ら変わらない構造となっている

何故そんな中途半端な作りになってしまったのかは灼熱地獄よりも深い深い理由があるのだが、今語ることではないだろう

まぁ、中途半端は中途半端なのだがサイボーグはサイボーグだ

しかし、いくら体を鋼鉄並みの強度の材質を使っていたとしても、いくら人間離れした力を使えるとしても、所詮本質はただの人間である

 

そして俺と今戦っている相手、星熊勇儀は女性とはいえ鬼である

更にいえば勇儀さんは鬼の四天王と呼ばれる括りの一人に分類されており、鬼の中でもかなりの手練れであることになる

普通の鬼にすら勝てるかわからない俺がそんな実力者と戦えばどうなるかなど、チルノでも理解できるであろう

 

つまり、俺が一体何を言いたいのかと言うと...

 

「勝ったのは星熊の姉御、星熊の姉御に賭けてた人は大当たり!そこの人間に賭けてたやつは残念だったな出直せこのヤロー!」

 

「おい立てよ人間、ガッツ見せろよー!」

 

「お前を信じてやった俺が馬鹿だったよ!金返せー!」

 

「細胞具とかいってても所詮は人間って訳か...」

 

...手加減なしにボコボコに叩きのめされました

 

 

 

「ちくしょう、酷い目にあったぜ...」

 

その後、俺は勇儀さんとギャラリーの鬼たちに拉致られる形で酒場へと連行された

そして飲むこと一時間半、やっとのことで解放された俺は片手に五つの弁当を袋に入れて旧都を後にし、地霊殿へと向かっていた

そのどさくさに紛れて勇儀さんにキッチンの修理をお願いすることに成功し、今すぐは無理なので後から地霊殿まで来てくれるらしい

これならボコボコにされた甲斐はあったかもしれない

....決してマゾヒストとかいう変態ではないので、そこは誤解しないでいただきたい

それに時間帯的にもさとり様もこいし様も起きてるだろう、おくうも戻ってるだろうし、お燐は、まぁいいか、一番暇そうだし

俺は全身を勇儀さんの一撃で痛めてしまったので急ごうにも急ぐことができない

サイボーグとは言えど体力の回復まですることはできない、というかできたら今すぐやってると思う

 

俺はやっとのことで地霊殿に到着し、心の準備をしながら扉を開く

...何の準備かはわからないが何となくしとかなければいけない流れだったりするのは気のせいだろうか...

ちなみに玄関に入ると大きな広間に出ることになり、その奥がリビングとなっている

広間にもペット達は集まっており、こちらに歩み寄って来る動物も少なくはない

半年も暮らせばこういう環境にも慣れてくるものだ、と軽く憂鬱な気分になりながらも、リビングに繋がる扉を開け放つ

 

「ただい...ま...」

 

ぐ〜きゅるるる〜、ぐ〜きゅるきゅるきゅ〜

 

.....何だろうこの光景は

いつも皆で楽しく食事をするはずの机が今日に限っては四人の少女たちがハイライトを失った瞳でこちらの持っている袋を凝視している

彼女達は全員妖怪である、本来であれば食事をしなくとも恐れさえあれば生きていける生命体の筈なのだがここは幻想郷、外の世界の常識はどうやら一切と言ってもいいほど通用しないらしい

 

現に彼女達は腹を空かしているのだから

 

ぐ〜きゅるるる〜、ぐ〜きゅるきゅるきゅ〜

 

「.......えと、お待たせしました?」

 

瞬間、少女たちは俺、正確には俺の持つ弁当に向かって飢えたケダモノの如く表情を強張らせ、眼に光と欲望を宿しながら食欲を満たすために行動を開始した

 

 

 

「まったく、今後はこのようなことがないようにしてくださいね」

 

ホント、すみません...

俺は口には出さないが目の前の少女、地霊殿の主である、覚妖怪の古明地さとり(こめいじさとり)様に自分用に買ってきたトンカツ弁当を食べながら謝罪の意を示す

桃色のショートヘアに水色を基調とした服装、黒いヘアバンドと第三の眼とも言われるアクセサリーのような赤い目玉が特徴的と言ってもいいほどに目立つ

 

「まぁ、美味しいので良しとします」

 

さとり様は俺が彼女に買ってきたオムレツ弁当を食べながら俺が心で思ったことを言葉にして返す

彼女は「心を読む程度の能力」を持つため俺が口に出さなくても言っていることがわかるらしい

実際、今俺が思っていることもわかる様子みたいだし

 

「...蒼蔦さん、あなたは先程から一体誰に私の説明をしているのですか?」

 

「え、俺そんな感じでした?」

 

「思いっきり説明口調でしたよ」

 

マジか、俺は自分の心の中の口調が自分でわからないとはな...

そういえばこいし様が見当たらないな、さっきまでそこで一緒に項垂れていたのに...

 

「蒼蔦〜、次は日の丸弁当が食べたいな」

 

「あたいは鮭弁当!」

 

「お前ら自分で料理する気はないのかよ!」

 

まぁ、居候させてもらってる身として色々と手伝いはさせてもらっているのだが、彼女達の料理スキルのなさには一番驚かされた

俺が地霊殿に居候するや否や、俺の基本的な仕事は料理くらいである

そして今ではキッチンを我がものにしてしまっている状態である

.....ホント、俺が来る前は一体何を食べて生活していたのだろうか?

 

「ほぼ毎日がお弁当でした、お金にもあまり困らなかったので」

 

俺の疑問はさとり様の一言によって解決した

なるほど、恐らくおくうが給料を貰い、さとり様が管理、お燐とこいし様が買い出しと言った関係が一瞬で頭の中でイメージとして完成した、というかそれ以外に考えることができなかった

さとり様も縦にコクリと頷いてるし

ついでにペット達にも実は買ってきていた少量の食べ物を小皿に入れて床に置くと地霊殿内にいる大半の動物達が駆け寄ってきた

 

「やはり蒼蔦は優しいですね」

 

「そんなことないさ、必要最低限のことをしてるまでだよ」

 

「それでも、皆はあなたに感謝していますよ」

 

さとり様は俺に笑顔で返してくれた

よく見ると、お燐やおくうも笑顔でこちらを見ていた

それを見て俺は本当に必要とされている存在なんだと、ここに居てもいいんだといつも思うことができる

 

地霊殿に来れて良かった、皆と出会えて本当に良かった

 

俺は少し気恥ずかしくなり、そっぽを向き苦笑いして誤魔化す

 

「あ、蒼蔦照れてる!」

 

「これは意外な一面ね」

 

うるせぇ、俺だって恥ずかしいと思うことくらいあるんだよ!

別に照れても寿命が縮まる訳でも年を取る訳でもないんだから、ほっとけー!と声に出したかったがあまりにも恥ずかしいので心の中で叫ぶことにした

 

「ふふふ、蒼蔦さんは私という存在をお忘れのようですね」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ねぇ、もしかして蒼蔦心で何か言ったの?」

 

「さとり様、是非話してくださいよ」

 

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺は笑顔で話をしたくてうずうずしているさとり様を全力で止めに入った

 

.....それにしても何か忘れている気がするのはなぜだろう?

 

「蒼蔦さんは、ぷくく...」

 

「油断も隙もないな、この覚妖怪様!」

 

そんなことよりも俺の赤っ恥黒歴史が暴露されることだけは阻止せねば!

 

 




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四/人生何でも上手くいくという考え始めたのはどこの誰でしょうね!?

東方の知名度スゲー、と思った時もありました


勇儀さんが地霊殿に到着したのは俺が旧都に行った翌日となった

 

「なんで昨日来れなかったんですか!?」

 

「いや悪い悪い、酒飲んでから行こうと思ったんだけど寝ちまっててさ」

 

なんてことだ、まぁ来てくれないよりは遥かにマシだが...

昨日の食事はキッチンが使えないせいで本当に大変だった...

おくうが「昼ごはんは人里の団子屋がいい!」とか言い出したため、俺はわざわざ人里まで五人分の団子を購入して来た

始めは皆で行こうと思っていたのだが、さとり様が「流石に妖怪がこんな大人数で人里に入る訳には...」という一理ある理由ができたので、唯一の人間である俺が人里まで行ってきた

.....一人納得せずに、うにゅうにゅ言っている奴もいたがその辺は俺のスルースキルが働き何とか大きな騒ぎにはならずに済んだ

そして晩飯は地上の夜雀、ミスティア・ローレライの屋台に皆で行くことになった

店主が妖怪なので妖怪でも行ける屋台として一部では評判である

たまに人里の人間も訪れており、八目鰻が名物で俺も美味しく頂いている

その後、べろんべろんに酔ってしまったさとり様達を連れて帰るのに苦労したため俺は今少し寝不足気味である

 

そして現在に至る

今起きているのは俺のみで他の皆はまだ眠っている

昨日の酒がよっぽど効いたかのように思われる

俺はそこまで飲む方ではないので勇儀さんと一緒に飲みに行った時は本当に死ぬかと思った...

 

「にしても、何をどうしたらキッチンがこうなんるだ?」

 

「....そこんとこあまり聞かないで下さい」

 

「お、おう」

 

何故か勇儀さんが申し訳なさそうにこちらから目を逸らす

俺だっておくうがメガフレアを使っただけでこんな酷い惨劇になるなんて夢にも思ってみなかったのだから

一応俺も勇儀さんの手伝いをすることになっている

コンロは本当に駄目になってしまったっぽいので作り直しということになるだろう

一応作り直せなくはないが、この際にとりにグレードアップを頼んでもいいかなと思ったりもする

 

「じゃあ勇儀さん、始めますか」

 

「そうだね」

 

俺たちは早速今は眠っているおくうが滅茶苦茶にしてしまったキッチンの修復に取り掛かった

 

 

 

「うお〜い、蒼蔦ゥ〜酒ェ〜!」

 

30分後、星熊勇儀、地霊殿のキッチン(半壊)にて酔い潰れる

いや、そもそも何故こうなったか説明が必要かもしれない...

 

俺と勇儀さんは何の問題もなくそれぞれ作業を行っていた、それでいてこれまでにないほどスピーディかつ効率的で、もしかしたら今日中で終わるんじゃね?的な雰囲気すらも出ていた

勇儀さんは八割以上全焼してしまった壁を、俺はコンロの修理と釘打ちなどの細かい作業を行っていた

ここまでは順調だった、そう順調だったんだ!

大事なコトなので二回言ったからな!

そこで俺の一言が悲劇の引き金となってしまった...

 

「勇儀さん、そろそろ休憩しませんか?」

 

「え、もうかい?私はまだまだいけるけど」

 

「人間と鬼を一緒にしないでくださいよ」

 

「じゃあ蒼蔦は休んでなよ、私は続けるからさ」

 

「それも何かな...」

 

「お、中々正直じゃん」

 

「というより、目の前で女性が働いてるのに男が休むわけにはいきませんからね」

 

「ヘぇ〜そりゃ口説いてんのかい?」

 

「なんでそうなるんですか...」

 

「まぁ、いいか、確かに休みは必要だしな」

 

「.....勇儀さん、それ何ですか?」

 

「酒」

 

「ここに来るまでも飲んでたんですよね!?」

 

「あれくらいじゃまだまだだよ、ほら蒼蔦、あんたも飲みなよ私が注いでやるから」

 

「はぁ、では一杯....」

 

 

そして現在に至る

勇儀さんがあまりにも飲むものだから昨日ついでにミスティアの店で大量購入した酒もほとんどなくなってしまった

.....しかもこの人、いつの間にか眠ってるし

 

俺はこのままでは作業が進まないと思い一旦キッチンから出て部屋に戻り外出の準備をする

行く場所はミスティアの屋台とにとりの工房、恐らくこの時間帯ではミスティアが店をやっているかはわからないが酒を少しだけ分けてもらえたら嬉しい、もし駄目ならば人里か旧都で買ってもいいだろう

そしてキッチンを修理している間に河童の技術を色々と借りて外の世界の電化製品を出来るだけ再現したいという願望もあった

ついでと言ってはなんだが香霖堂に寄るのもいいかもしれない

 

しかし、勇儀さんをあのままにしておく訳にもいかないのでさとり様かお燐が起きてくるのをリビングで待つことにした

 

 

 

しばらくして、さとり様がリビングに下りてきた

 

「おはようございます、さとり様」

 

「おはようございます蒼蔦さん、昨日は迷惑をお掛けしたみたいで...」

 

「いやいや、そんなこと全然ないです「蒼兄ー!おはよーーー!」ぐるブフォォーす!!」

 

蒼蔦さーん!というさとり様の声がリビングに響き渡る中、俺はソファと一緒に倒れることとなった

それにしても何かが飛んできた様な...

 

「蒼兄、私のこと見えてる?」

 

「あ、あぁ、おはようございます、こいし様」

 

「私に敬語やめてって何回言えばわかるの、もー」

 

悪い悪い、と俺はさとり様の妹である、古明地こいし(こめいじこいし)様の頭を撫でる

薄い緑の髪に黄色と黒を基調とした服に、目を閉じた青い第三の目、今は室内だから被ってはいないが黄色いリボンのついた黒い帽子を被っている

そして俺のことを蒼兄と呼んでいる

彼女は容姿こそは幼いが、中身は俺よりも恐らく年上であろう

さとり様しかり、妖怪なのだから

 

「.....蒼蔦さん、聞こえてますよ」

 

「悪気があったわけじゃありません、すみませんでした!」

 

俺は心の声を聞かれてしまった、さとり様に人類の最終兵器DOGEZAを繰り出した!

 

「そういえば蒼兄、どこか行くの?」

 

「あぁ少し知り合いに会いに、ってこいし様?どうして帽子を被ってキラキラした瞳でこちらを見ていらっしゃるのでしょうか?」

 

「私も連れて行って!」

 

頼まれてしまった...

普通であればイエスと答える所なのだが、こいし様と一緒に出かけると財布の減りが早いんだよね...

だから、

 

「だが断る!」

 

「うぇーん、うぇーん、蒼兄が怒ったー」

 

「...蒼蔦さん、まさかあなたがこいしを泣かすようなゲス野郎でしたとは...」

 

「ちょ、待っ、違、え?こいし様、それ嘘泣きですよね?本当に泣いてなんかないですよね!そしてさとり様、どうかそのスペルカードを仕舞ってくれませんでしょうか?」

 

「.....チッ」

 

さとり様が今までに見たことないくらい恐ろしい形相で小さく舌打ちをした

こいし様もこいし様でニヤニヤしながらこっち見てるし...

 

「わかりましたよ、一緒に行きましょう」

 

「蒼兄ー、早く早く!」

 

「何でこいし様、あんたはもう既に地霊殿の敷地外にいるんですかね!?あ、それとさとり様、キッチンで勇儀さん寝てるんでよろしくお願いします!」

 

俺はさとり様に勇儀さんを任せ返事も聞かずにこいし様の後を追った

 

.....これじゃあどっちが出かけると言い出したかわからないな

 

 




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五/地底の正しい歩き方なんてものはない!

駄目だ、ネタが思いつかない


地霊殿を出発して五分と少々、俺とこいし様はひとまず旧都に向かうことにした

特に理由はないのだが、強いて理由を言うならば必要物資の調達である

地霊殿からある程度の物資は持ってきたとは言え、キッチンが半壊したせいで非常食も殺られてしまったらしいので、もしもの時の非常食を購入しなければならなくなった

なにせ地上は妖怪やら妖精やら人外やらがウヨウヨしているような場所だから何が起こるか分かったモノじゃない!

いくら中途半端なサイボーグと言えど元は人間だから、基本的には人間と同じである

そして地上は灼熱地獄のある地底よりも温度が低いのでカッターシャツの下にTシャツを着ているというどうでもいい情報も伝えておこう、ついでに少し大きめのバッグも持っている

.....全く、この頃俺は一体どこと交信しているのだろうか

 

「蒼兄、どうしたの?」

 

「いや、何でもない」

 

どうやら心配をかけてしまったらしいな

どうやらこいし様は昔、第三の目を閉じてしまったらしく、さとり様のように心を読む力がない

その代わりに覚妖怪としてではなく、古明地こいしという一人の少女に与えられた「無意識を操る程度の能力」なるものが覚醒したらしい

 

ちなみに俺には程度の能力と呼ばれる力はない

いや、覚醒していないという方が正しいのかもしれない

さとり様が言うには、個人差があるらしく目覚めないまま一生を終えるものもいるくらいらしい

俺はサイボーグだから今まで何とか能力なしでやっていけたが、それでも異世界に流れ着いたのだから能力的な何かは男ならば一度は思うはず、何故なら俺がそうだから!

 

「....蒼兄、さっきから変な顔してるよ永淋に診てもらえば?」

 

「こいし様、それは俺にしばらく帰ってくるなと言ってんのか?」

 

「ううん、その悪人面を整形してもらえば、って言ってるんだよ」

 

「人の気にしてることを笑顔で言うのはヤメてもらえませんかね!?」

 

こいし様はきょとんとする

流石「無意識を操る程度の能力」の使い手、悪意ゼロの無意識で俺の心配をしてくれたようだ

.....これを心配と受け取っていいのかも疑問だが

こいし様はそんな俺の思考に気付く気配もなく、トコトコと俺に付いてくる

本当、無邪気な所は見た目相応の子供らしいのに幻想郷ではそんな常識は通用しないんだよな...

こいし様も妖怪だから俺よりも長寿に違いない

しかし年齢のことに触れるのは女性に対して失礼なので誰も聞くことができないのは明確である

 

「蒼兄、旧都が見えてきたよ、ついでに朝ごはんも食べて行こうよ」

 

「そうだな、確かに朝飯はまだ...」

 

そこで俺は気がついてしまった

地霊殿ではいつも俺が朝昼晩と三食を作っていたこと、今はキッチンが壊れており使用不可能だということ

 

「.....まぁ、いいか」

 

今は(酔い潰れてしまってるが)勇儀さんもいるし、何とかなるであろうと信じたい

それに念のために余り物を少し置いてきてあるし大丈夫だろう

 

「こいし様は何が食べたいんだ?」

 

「ラーメン!」

 

「幻想郷にあったっけ!?」

 

俺はこいし様を追いかけ、旧都に向かって走って行った

 

 

 

「本当にあったよラーメン屋...」

 

数分後、俺とこいし様は旧都にある明らかに人が通るような道ではない路地裏の一角に恐らくスキマ妖怪の仕業により幻想入りしたラーメン屋の屋台があった

ていうかどうしてこいし様はこんな知る人ぞ知るを通り越して知る人いるの?というような場所を知っているのであろうか?

大方散歩している時に見つけたというのが正しい答えなんだろう

....それ以前に朝からラーメンを食べることになるとは思わなかった

俺とこいし様は席に座り、店主を呼ぶためにあるだろう鈴を鳴らす

 

「いらっしゃい、何食うんだ?」

 

....店主の接客態度に少しだけ文句を言いたい、何だろうな、客が来やがった的な顔で一瞬舌打ちをされた気もする

 

「塩ラーメンと醤油ラーメンで」

 

「へいへい、一人で二つも食うのかよ、しかも違う種類を」

 

「まぁな、こう見えて大飯食らいなんだ」

 

まぁいいけどよ、と店主は舌打ちを一つして奥で調理を始める

俺と店主の会話で気がついた人はいるかもしれないが、店主にこいし様の姿は見えていない

こいし様の「無意識を操る程度の能力」は他人の無意識に存在するというのが能力の本質であるため、こいし様を意識していないとこいし様の姿を確認することはできない

俺もたまにだが姿を確認できないことはある

この能力は意図的に発動するものではなく、自動的に発動しているものなので、こいし様の意思で能力を解除することもできない

だからこそ彼女は盗みやら、食い逃げやらを平気でしている

このラーメン屋も被害にあったのかなー、と少しだけ遠い目になる

 

「こいし様、醤油ラーメンで良かったか?」

 

「うん!」

 

俺たちは少しの雑談をしながらラーメンを待った

店主に独り言が多いと軽蔑の眼差しも向けられたがこいし様の姿を確認できていないならば仕方ないと思い苦笑いで誤魔化す

あと、ここのラーメンは結構美味しかった

店主とも仲良くなり、また今度来ると店主と約束をし屋台を後にした

 

さて、準備も済んだことだし地上へ向かいましょうかね

 

 




銕蒼蔦のイメージ画像(下手なので注意!)
参考程度でお願いします(^^)


【挿絵表示】


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六/人の短所は笑うもんじゃない、いつかイジメに繋がるよ!

思ったよりも読んでくださってる方がいるみたいで
本当ありがとうございます(^^)


どうも、こちら地霊殿です

そして私はこの地霊殿の主でこいしの姉である覚妖怪の古明地さとりです

蒼蔦さんとこいしが外出してしまったので地霊殿の様子は私が伝えることになっているようです、よろしくお願いしますね

....私は一体誰に説明しているのでしょうか?

蒼蔦さんといい、最近どうも変なモノを受信してしまいますね...

それはそうとどうして勇儀さんがここにいるのでしょう、しかも酔い潰れてますし...

なんだか声をかけにくい状況ですね、お燐もおくうも起きてこないですし、ペット達の朝食も蒼蔦さんがあげてしまったみたいですし...

本当、あの人が来てくれてから私も色々と助けてもらってるみたいですね、半年しか一緒に生活していないのにいつもいるとこうも長い時間に感じられてしまうのは本当不思議なものです

 

「んぁ〜?蒼蔦?」

 

キッチンの方から勇儀さんの声が、どうやら起きてくれたようですね

 

「おはようございます」

 

「ん、さとり?蒼蔦知らないか?」

 

「蒼蔦さんなら先程こいしと出掛けましたよ」

 

「なんだとー!?」

 

「ひぃっ!?」

 

勇儀さんが突然叫んだせいで私は思わず驚いてしまいました

勇儀さんはまだ酔いが覚めたわけではないようで、ほんのりと頬が赤く染まっている気がしますね

 

「あいつ、今日は一日私と飲み明かすって約束を破るつもりかァ!さとり、あいつは一体どこに行ったんだァ!!」

 

「そ、そんなことを言われても...」

 

私にそんなこと聞かれても困りますよ!

蒼蔦さんは行き先も告げずにさっさと行ってしまったんですから!

ていうか、蒼蔦さんは勇儀さんと一体いつそんな約束をしたのでしょう、多分旧都に行ったときだと思いますが帰ってきたら問い詰めなければ!

勇儀さんは私に聞いてもわからないと判断したのか、私の肩を離し酒を飲み始めました

そこで勇儀さんの心の愚痴が私に聞こえてきました

私の能力「心を読む程度の能力」が発動したようです

別段聞こうと思って聞いたわけではありませんが、勇儀さんがここにいる理由がわかるかもしれないということで聞くことにしました

 

『くそ、あいつキッチンの修理はどうすんだよ!手伝ってくれるんじゃないのかよ!今日は一日二人で過ごすってことじゃないのかよ、全く本当にどうしてくれるんだよな!私に一人で修理しろと言うのかよ、それはさすがに無理だから手伝ってくれるって話になってたはずだ!フフフフ、鬼の私に嘘を吐くとは本当いい度胸だ、帰ってきたら覚えときなよ!』

 

.....蒼蔦さん、早く帰ってきてください

どうやら勇儀さんは蒼蔦さんにキッチンの修理を頼まれて来たようですね

べ、別に安心なんてしてませんから!

ただ私は、そう!この地霊殿が勇儀さんの暴走でただの木片にならないことを祈りながら蒼蔦さんの帰宅を願っただけですから!

ん?まだ愚痴が続くようですね?

 

『ホント、蒼蔦もあんな貧乳のどこがいいんだ!ロリコン、ペドフィリア!戻ってきたら私が全力で体で語ってやる!』

 

え、ちょ、勇儀さん?

 

『よく考えたらあいつの周りって八咫烏以外皆小さい奴らばかりじゃないか、まさかあいつ本当に小さい方が好きなのか!?だとしたら無理矢理でもその考えを...』

 

「...............きゅぅう...」

 

この後のことは私の記憶にはありませんが、顔が真っ赤になった状態で倒れていたそうです

フフフフ、蒼蔦さんに問い詰めることが一つ増えたようです、覚悟しておいてくださいね!

 

 

 

ゾワッ!

 

「どうしたの蒼兄?」

 

「わ、わからんが何か悪寒が...」

 

旧都から出た俺とこいし様は地底から地上への続く道のある所へ徒歩で向かっている途中、何やら凄まじい邪気に当てられた気がするが気のせいだと信じたい

地底から地上へ出るのは難しいことではない、空を飛べればの話だが

この幻想郷では大抵の者が空を飛ぶことができる

勿論、こいし様もできるが俺はできない

一応人間にも霊力なるモノが体に宿っており、それを応用活用することで空を飛べるらしいのだが俺にはその霊力が常人よりも遥かに少ない

これは体が半分機械のサイボーグのせいと妖怪の賢者に一度言われたことがある

だから俺は...

 

「蒼兄、早く早く!」

 

「ちくしょう...いつか絶対に...俺は空を飛べるようになってやる!!」

 

ロッククライミング方式で地上へと続く壁を全速力でよじ登っていた

灼熱地獄の近い地霊殿や旧都のある場所は第二層目となっており、更に上の層まで上がらなければならない

昨日はおくうに乗っていったので苦労はなかったが、流石にこいし様に協力を頼むわけにもいかない

だからこそ俺はここを登る!

そして俺が地上へあまり行かない理由の一つがこれだったりもする!

 

「くそ、今度にとりに頼んで飛行機能のパーツ製作を頼んでみるか...」

 

俺は独り言のように愚痴りながらも壁をひたすら登って行く

こいし様をあまり待たせるわけにもいかないのでとりあえず急ぐ!

 

「......ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」

 

しばらくしてから、頭上から何やら聞き覚えのある声がどんどんと近づいてきた

....ん?近づいて?

 

「へっ?ブっ!?」

 

俺が気がついたときには、その物体は俺が上を見た瞬間に綺麗に顔面に激突した

俺はその衝撃に耐え切ることができずにそのまま下へと落下していった

 

 

 

 

「で、何か言うことは?」

 

「申し訳ありませんでした...てへ☆」

 

「お前絶対に反省する気ないだろォ!!!」

 

ポカッともう一発拳骨が落ちる

本当、俺がサイボーグじゃなかったら今頃死んでいたかもしれない事態になんて軽い奴だ!

 

「だって落ちてくるななんてさ、私の存在を銕は否定したいんだね!」

 

「落ちてくるのは構わないがせめて全身全霊体力を削ってロッククライミングしてる俺に落ちてくるのはやめろ!」

 

「そっか、銕は確か空飛べないんだったんだね」

 

「この腹黒桶妖怪が!」

 

「む、腹黒は認めるけど私は桶妖怪じゃないよ、私は釣瓶落としの妖怪キスメだよ!」

 

「どっちでもいいわ!」

 

先程から俺と口論しているこの自称釣瓶落としの妖怪キスメは地底に住人である一人である

まぁ、鬼火を落とされるよりかは遥かにマシだが何か釈然としない!

彼女は始めもっと無口で人見知りするような妖怪だったはずなのに、俺に落ちてきたことをキッカケによく会うことが多くなり、今ではこんな腹黒少女にまで成長してしまった

まぁ、彼女も一応妖怪なのだから案外こちらの方が本質なのかもしれない

 

「そういや今日はヤマメと一緒じゃないんだな」

 

「ヤマメは最近会ってないよ、永遠亭の兎に捕まって以来ね」

 

「.....それは会うことはないわな」

 

俺は苦笑いを浮かべるのに対してキスメは何故か笑顔である

友人があの天才医師によって実験台にされてるかもしれないというのに陽気なモノである

 

「それよりどうしてくれるんだよ、また登らないといけないじゃねぇか!」

 

「また登ればいいじゃない」

 

「簡単に言いやがった!」

 

「それじゃあね〜」

 

「あ、テメェズルイぞ!待てコラ、その糸引き千切ってやる!!」

 

俺はどこに繋がっているかわからないキスメの桶についた糸に毎回疑問を抱いてしまう

落ちて来るたびにあの糸で上に再び上がっているようなのだが一体全体どういう仕組みなのか理解することができない

俺はキスメを追いかけてもう一度壁を登り始めた

.....無事に地上にちゃんと行けるかどうか滅茶苦茶不安になってきたな

この調子で大丈夫か、地霊殿にちゃんと帰れるかな?

 

「俺はいつか絶対に空を飛べるようになってやるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

俺が叫んだ瞬間、キスメが青ざめた表情でこちらを見ていたのはそれはまた別の話...

 

 

 

 

 

 

「蒼兄、まだかな〜....はぁ〜」

 

 




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七/人の話はキッチリと聞きましょう、大切なコトを聞き逃してしまいますよ!

閻魔大王よりもこっちの方が勢いがある件について!


キスメの妨害を受けつつも何とかこいし様の待っている上層に辿り着いたのはあれから約一時間半後のことであった

勿論こいし様のご機嫌はこれでもか!とばかりに悪く、こればかりは俺にも非があるので反論することはできない

俺を妨害した当の本人は既にどこかへ消えてしまったわけだし...

 

「ちょっと蒼兄、聞いてる!?」

 

「はい!申し訳ありませんでした!」

 

「絶対聞いてなかったよね、そのごめんなさいは多分私の話を聞いてなかったことに対するごめんなさいだよね!」

 

「何でそうなるの!?いやイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、俺はこいし様をこんなトコに一人で待たせて本当に悪いと思って...」

 

「嘘だッ!!」

 

「嘘じゃねぇし!!」

 

.....どうやら俺はとんでもない誤解をされているらしい

こいし様は変なトコで頑固な人だからこれは前途多難な感じがまだ地底から出てすらもないのに感じられる、しかもこのことがあのこいし様LOVEのさとり様にばれてしまった暁には.....

 

『そ・う・た・つ・さん♡こいしをいじめるなんてどういうことでしょうか?ホント、蒼蔦さんには困ってきまいますね〜、フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ....♡』

 

.....死亡フラグが立ってしまった

何てことだ、まさかたったの七話目の冒頭早々に避けられぬ死亡フラグを立ててしまうことになるとは、話さなければバレないとかそんな甘い考えはとりあえず捨てなければならない!

なぜならばこいし様がこのことを話せばアウトだし、さとり様に心を読まれてもアウトだ...

しかも前者の方が威力百倍になりそうで余計に怖い、妖怪の怒りに触れぬように気をつけろ!という教訓はここに来て嫌という程学んだ筈なのに俺は同じ過ちを繰り返してしまうとでも言うのか!

しかし今回に至っては完全にキスメが悪い!

そうだ、キスメが悪いんじゃないか!なのにあいつは...

 

「銕〜さっきから何一人で叫んでんの?うるさくて昼寝できぶるへぇい!?」

 

背後から話しかけてきてくれたので鋼の右ストレートをブっ放ちました☆

後悔していなければ悪意もない、突然背後から現れるキスメが全て悪いんだから!

俺は今自分でもわかる、俺は今までにないくらい美しいドヤ顔になっているに違いない!!

 

「......蒼兄、物凄いゲスい顔してて怖いよ」

 

.....訂正、美しいゲス顔でした

 

 

 

「ホント申し訳ありませんでした」

 

俺はキスメを桶から下ろして土下座させている

全く、仮にも妖怪とは言えど見た目少女のキスメに土下座をさせるとは、俺も成長したもんだよな

流れ着いた当時はこんなこと平気でできなかったが今ではできてしまう

劇的ビフォーアフター、何か悪い方向に変わってしまったのは気のせいだ、断じてそんなことはない!

幻想郷で生き抜くには必要不可欠なスキルだからな!

何故ならばこの幻想郷、何故かはわからないがやけに女性の比率が高いのだ、博麗の巫女しかり妖怪の賢者しかり白黒の魔法使いしかり永遠に幼き赤い月しかり冥界の亡霊姫しかり月の頭脳しかり熱かい悩む神の炎しかり自称毘沙門天の生まれ変わりの虎しかり山の神しかりなど、幻想郷に必要なのはパワーバランスなどではなく男女バランスが非常に大事だと何回思ったことであろうか!

ホント霖之助とは男同士できる話があるから彼の存在は俺の中では大きいモノであり彼の存在が俺のここでの生活の支えになっていると言っても過言ではない!

.....別にホモとかそんなんじゃねぇぞ

 

「銕、いつまで私は桶から下りてたらいいの!?そろそろ桶に戻らないと禁断症状でウズウズしちゃうんだけど!」

 

「一生戻るな」

 

「まさかの選択肢!?」

 

「蒼兄、流石に酷いんじゃない?それって蒼兄と私が一緒に寝るなって言ってるみたいなもんだよ?」

 

「何しれっとありもしない出来事を言っちゃってるのかな、そんなくらいじゃ禁断症状は起きないから大丈夫です!」

 

「そんなことないよ、ほら体が震えて...」

 

俺のこいし様への返答を何故かキスメが受け取った

もしやキスメはこいし様を意識していない、つまりこいし様はキスメの無意識下に存在している...

つまり俺はキスメと二人で会話しているように映るわけか...

こいし様もそれをわかってやっているようで舌を出して「テヘペロ☆」とか言ってるし...

こいし様のテヘペロ☆はとりあえずスルーするとして、キスメの禁断症状はどうやらマジな方らしい...

 

「わかったよ、さっさと戻りな」

 

「え、私に地霊殿に帰れって言うの!?」

 

「どうしてそうなるの!?」

 

今度はキスメに言ったつもりがこいし様が受け取ってしまった

 

「ありがとね銕、あと本当にごめんね〜じゃね〜」

 

「おう、気ぃ付けて帰れよ」

 

キスメは桶に戻り、お礼と謝罪をしてどこかへと行ってしまった

全く、あの糸は本当にどこに繋がってるんだか...

 

「そ、そんな...蒼兄...えぐっ」

 

.....何やらとんでもない状況になってる気もした

 

「蒼兄と、蒼兄とお出かけできると、思っでだのに...!」

 

「あ、あの〜こいし様、どうなさったのでしょうか...?」

 

「蒼兄が、気をつけて帰れっ、て...」

 

「いや、アレはキスメに言ったことでこいし様に言ったのではなくて...」

 

「だっで、その前にも蒼兄がさっさど、戻れっでぇ...」

 

「それもキスメに言ったことッスよ、何でこいし様は」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

.....どうしてこうなったのでしょうか

俺はどこをどう間違えたんだ、このままでは本当にさとり様に殺されかねない!何とかしなければ!

 

「こいし様、とりあえず俺の話を聞いてください!」

 

俺は必死にこいし様に話を聞いてもらおうとするが、こいし様は泣きながらポケットから一枚の紙を取り出して構えの体制に入った

......え、ちょっ、待っ、それって!

 

深層「無意識の遺伝子」

 

やはりスペルカードだった!

スペルカードとは、今代の博麗の巫女が提案した幻想郷の決闘に使われる、いわゆる必殺技である

非殺生設定で必ず避けられるという条件を満たしてさえすればいいという人間と妖怪の力の差を埋める為に作られたものらしい、って俺は一体誰に解説してんだー!?

しかもこんな余裕あるんだったら避けるんだったー!!

 

「蒼兄のバカーーーーー!」

 

「グボボボボボボボバァホォ!!?」

 

俺はこいし様のスペルを全身に浴び気を失った

ていうかこの威力で非殺生とか確実に嘘だろ、今度博麗の巫女に抗議してやると心に誓った瞬間であった

 




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八/偶然という言葉ほど、恐ろしく恨めしいモノはない!

お知らせ
テストが近づいてきたのでしばらく更新できません


「.....どこだここ?」

 

俺はまだハッキリしない意識を無理にでも覚醒させ、上体を起こす

どうやら木造小屋の一室らしい、辺りの雰囲気からして間違いはないはずだ

しかしこんな場所に覚えがない上に俺は何故フカフカの白いベッドの上で寝ていることすら理解することもできないというのに...!

 

よし、思い出そう!

まず俺は勇儀さんをさとり様に任せて地霊殿の食糧補給の為に人里へ向かうべく地上へと向かった、しかし地上に行く前に旧都で少し寄り道してラーメン食って店主と仲良くなって旧都を出てロッククライミングしてキスメの妨害に合ってキスメを説教して気絶...

あれ、何か大切なことを忘れてる気が...

この感覚は過去何度も体験したことがある、そして思い出すために...

 

鞄から財布を取り出し中から一枚の写真を取り出す

この写真は身肌離さず常に持っている、彼女を意識下に置くために必要なアイテムだからだ

 

「.....そうだ、俺はこいし様のスペルカードを全身に浴びたんだ」

 

俺は意識をハッキリとさせる、俺はあの時こいし様の一応非殺生機能らしいスペルカードをモロに受けて意識を手放したんだ

そういえばこいし様はどこに行ったのだろう、この小屋がまず何なのかをハッキリさせたいところであるがこいし様の安否の方が心配になる

こいし様も俺以上の力を持つ妖怪で本来ならば俺が心配される側なのだが、容姿が幼いので母性本能というか何というか、男のプライドがアドレナリンを刺激して心配せざるを得なくなってしまう

.....あと一つ言っておきたいが俺は決してロリコンではない、ついでに言えば変態と書いて紳士と読むクレイジーな考えも下心も持ち合わせていない!

性的欲求はないこともないが半サイボーグ化の影響で思考回路が少し普通の人間とはズレてるトコロがあるらしい、よって俺の性的欲求も常人よりも少ないらしいが細かいことはよくわからないのが本音だ

まぁ、こんなことを言う奴に限ってそんなことばかり考えてるとか言われるが俺はさとり様のお墨付きなのでそこいらの男とは違うのだ!

 

そんな訳で俺はこの部屋の唯一(後ろに窓があるのだが残念ながら俺はその存在に気がつかなかった)の出口である扉のドアノブを捻る

そのまま廊下に出て一つの扉を開く

 

そして俺は一秒後、この世界に生まれてこなかったらよかったという程の後悔を味わうこととなる

 

ガチャリ、と扉は静かに俺の手によって開かれる

部屋の中には一人の少女がいた

少し薄めの金色の髪に人間にしては少し長い、例えるならばエルフのような耳を持つ少女...

俺は彼女を知っている、というか顔見知りだ

水橋パルスィ(みずはしぱるすぃ)という橋姫という妖怪に分類される

地上と地底の狭間に住んでおり何かと嫉妬心が人一倍強い彼女に絡まれたら中々会話が終わらないとの認識もある

しかし、今重要なのはそこではない

彼女の身体に問題がある、彼女は普段はたしてあれほど露出度の高い服を着ていただろうか、彼女の肌がこんなに目に焼き付くことがあっただろうか

さて、現実を見よう...

 

「...............」

 

パルスィの顔が真っ赤になってしまっている、恐らく俺の顔も真っ赤になってしまっているだろう

その前に俺は彼女の右手に握りしめられている刃物の方が気になって仕方ない

 

「ちょ、待っ、待ってて!不可抗力だ、何かの間違いだッ!!」

 

「ふにゅあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「ブホォッ!?」

 

全力で左の平手打ちを頬にくらいました

 

 

 

「全く、人の家を自由に歩き回るなんて信じられない上に妬ましい...」

 

「蒼兄、どうやらまだ反省してないみたいだね?」

 

「待て、まずは俺の話を聞いてくれないか?」

 

『ヤダ』

 

「たった二文字で断られただと!?」

 

どうやら俺に発言権はないらしく、こいし様とパルスィは勝手に話を変な方向に進めていく

どうやらこいし様もここに来ていたらしくパルスィの悲鳴を聞きつけてきたら右の頬に綺麗な紅葉柄の模様をつけて倒れた俺を発見するや否や突然袈裟固めで俺の関節を封じてきて全身が少し痛い...

ホント、俺が一体何をしたと言うのだろうか...

 

「で、何であんなトコで倒れてたの?」

 

まだ顔が若干赤いがパルスィはどうやら機嫌を直してくれたらしく、俺に尋ねてくる

どうやら彼女が発見してくれたようだ

 

「あぁ、それはこい【ギロリッ!!】....疲れて座ってたらそのまま寝てしまってたんだ」

 

「.....貴方馬鹿でしょ?」

 

「もう何とでも言えよ!」

 

俺はとりあえず叫び喚く

だって事実を言おうとしたらこいし様が今までにないくらい怖い顔でスペルカード構えてるんだもん!

畜生、こんな理不尽なことはない!

 

「.....ホントにどうしたの、あれ」

 

「さぁ、わかんな〜い!」

 

「この、確信犯が...!」

 

俺は怒りのあまりにこいし様を殴ろうとしてしまうがパルスィに全力で止められる

確かにこいし様のイタズラは無邪気で可愛いモノが多いがそれでも許しておけないモノくらいはある!

.....そういえば

 

「パルスィ、お前こいし様が見えてんのか?」

 

「えぇ、普通に」

 

パルスィはきょとんとした表情になる

何か、何当たり前なこと言ってんだコイツ?的な顔が地味にうざいのは置いておこう

 

「パルスィとはよく散歩の時に会ってるからね!」

 

「こんな場所まで歩き回ってたのかよ!」

 

「一番遠くで迷いの竹林かな?」

 

「そんな遠く行くなら地霊殿にいろよ、さとり様いつも寂しそうにお前の帰り待ってんだぞ!」

 

「え、蒼兄そんなこと思ってたの?」

 

「なんでそうなるの、俺さとり様がってちゃんと言ったよね!?」

 

「ごめん、よく聞こえなかった」

 

「どんな耳してんだよ!」

 

俺はこいし様の都合がいいのか悪いのかよくわからない耳に思わず突っ込んでしまうが後悔はしていない

実際さとり様はこいし様に少し依存というか心配してるところもあるので、そのことで俺によく酒を持ってきては愚痴るため正直こいし様には地霊殿に居てもらいたい、今も誰かに愚痴ってるかもしれないが...

 

「ホント、あんた達って仲がいいわね、妬ましい...」

 

パルスィは小声で頬を少し赤く染めて呟くも俺もこいし様も彼女の声を聞くことはなかった

 

......ていうか俺たちには買い出しの為に人里に向かうって目的があるんだが、こいし様は覚えてるんだろうか?

 

 




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クリスマス特別編 〜地霊殿の聖夜〜

今回はクリスマス番外編です
本編の時間軸とは一切関係ありませんのでご了承ください

楽しんでいただければ幸いです(^^)


「蒼蔦蒼蔦、今日は苦理厨魔厨なんだって!」

 

「.....一体何があったんだ、クリスマス」

 

俺が部屋でゆったりと灼熱地獄の変わらぬ熱さを肌で直接感じながら静かに読書しているところに、おくうがノックもなしに制御棒をこちらに向けながら言い放つ

 

「てか、なんで制御棒をこっちに向けてんだよ、殺す気かよ!」

 

「え、苦理厨魔厨って火薬を筒に入れてドカーンって盛り上がる日なんじゃないの?」

 

「あながち間違ってない気もするが本来はもっと小さいやつを使うんだぞ!」

 

とりあえずおくうに制御棒を仕舞うことを全力で説得する、そうしなければ俺の体が原型を留めることなく綺麗に溶け去ってしまう!

 

それで、なんでコイツはクリスマスなんてモノを知っているのだろう?

予想としては妖怪の山の現人神が何かしてたんだろうとしか予想できない、紫も無理矢理幻想入りさせそうだが幻想郷の管理人として限度はわかっている....と信じたい!

 

「そもそもクリスマスってのはだな、イエス・キリストって偉い人の復活するお祝いをする日であって晩餐会を開いたり、カップルでイチャイチャしたりする間違った方向性が最近目立ち始めてる聖なる夜であってだな、」

 

「zzzz...、あっ、へっ?何か言ってた?」

 

「話を聞けェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

 

「うにゅ!?」

 

俺はおくうの頭に全力でチョップをする、どうやら鳥頭に説明をした俺が馬鹿だったらしい

俺もここに来る前は彼女とか、それ以前に女っ気ゼロの生活を送っていたので本当に「リア充」とかに分類されている奴らとは毎年戦争をよくしたものだぜ

 

「蒼蔦、今日は苦理厨魔厨だよ!」

 

「その台詞は二回目だ、この鳥頭!」

 

「うにゅにゅ!!?」

 

何やら驚愕に満ちた表情で衝撃を受けてやがる、何だその劇画タッチ風の顔...

ん、そういえば...

 

「確かクリスマスって鳥肉を食べる日でもあるんだよな」

 

「.....え?」

 

「俺もうろ覚えなんだけど、皆で輪になって鳥を囲んで火を起こして丸焼きにして部位を切り刻んで美味しくいただく鶏の虐殺日とか、ってどうしたんだおくう?なんで涙目でこっち見ながら制御棒出してエネルギーチャージしちゃってんの!?」

 

「...蒼蔦は私を食べるの?」

 

「あぁ!そういうことか、いや違うぞ違う違う違うあくまでもクリスマスに食べるのは鶏であって烏は」

 

「それでも私は立ち上がる、苦理厨魔厨という厄日から鶏達を守るために!!」

 

「何かっこいいこと言ってんだよ、それで何で怒りの矛先が俺なの!?クリスマスのこと教えてもらったの早苗だろ、だったらあいつにメガフレアを打つべきじゃないのか、あいつはもう山の神達と鳥肉を美味しく食べ始めてる頃かもしれないぞ!!」

 

「....!!」

 

おくうがカッ!と目を見開き、俺の部屋の窓を制御棒で盛大に殴り、

 

「苦理厨魔厨の平和は私が守る!!」

 

とか言ってどこかへ飛んで行った

....何か言っている内容が若干矛盾していた気がするが、そこはおくうなのでスルーすることに決めた

 

 

 

俺はおくうに部屋の窓を破壊され熱さが直接入ってくるのに耐えきれなくなり若干涼しいリビングに移動した

そこにはさとり様とお燐が、

 

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおら、さっさと進めやコラ、今夜中に仕事を済ませなければならぬのだぞ!!」

 

「すみませんすみません、急ぎます、急ぎますので鞭はご勘弁を...」

 

「フォーフォー、フォーフォ、口答えする暇があるならさっさと進まんかーい!」

 

「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

.....ええっと、何コレ?

リビングの扉を開けた先に見えた光景は赤いパンクファッションと帽子を被ったキャラ崩壊等では既に修復不可能なテンションになってしまっているさとり様と四つん這いに這いずり泣きながら鞭を打たれているお燐の姿があった

 

何やら入ってはいけない雰囲気が漂ってしまっており、入るのを躊躇っていると...

 

「お姉ちゃーん、頼まれてたもの買ってきたよー!!」

 

後ろから無邪気でいつもと変わらぬ無邪気な可愛さのあるこいし様が扉をスパーン!と開け放った

ホント、こいし様の無意識は変なところで働くトコロがあるものだ

しかし、こいし様もやはり、

 

「..............お姉ちゃん?」

 

「..............そ、蒼蔦さん?」

 

「..............あ、いや、これは」

 

うわ、気づかれた!

さとり様顔めっちゃ真っ赤じゃん、そんなに恥ずかしいならするなよ!

こいし様もこいし様で呆然としちゃってるし!

.......お燐に至っては顔真っ赤ってレベルじゃない、全身真っ赤だ

恐らくあの変態天人と同じ趣味を持っていると思われたのが最大の屈辱なのだろう

 

「.....こいし様、戻りましょうか」

 

「.....お、お姉ちゃん、また後でね」

 

俺たちはリビングの扉を静かに閉めた

 

『こ、これには訳がーーー!』

 

断末魔の叫びがリビングから響いた気がする

 

 

俺とこいし様はとりあえずリビングに戻ることにした

 

「今日は栗守升って聞きましたので」

 

「.....何でも当て字にすればいいってモンじゃねぇっすよ、誰からそのこと聞いたんスか?」

 

「勇儀さんが『食離須麻州って言うのは赤い服着た王女様が奴隷を鞭で打つ行事』とおっしゃっていたので....」

 

「どうやったらそんなことに!?」

 

「あ、あたいは無縁塚で偶然会った小町から『愚利酢蔴素って言うのは四つん這いになった獣が空を走る競技』って聞いたから...」

 

「だから、何でそうなるわけ!?」

 

俺は頭を抑えながら涙を流す

外の世界を生きる画面の向こうの皆さん、どうやら幻想郷のクリスマスはそちらの世界よりも腐っているようですぜ

 

「蒼兄、じゃあクリスマスって何なの?」

 

「ありがとうございます!」

 

『何が!?』

 

俺は嬉しさのあまりお礼を言ってしまう、何せ今日初めて正しいクリスマスの文字を見ることができたのだから!

 

「簡単に言うと、モミの木に飾りして家族で美味い飯食って、サンタクロースっていう赤い服着たおじさまがトナカイの引くソリに乗っていい子にプレゼント配る行事かな」

 

俺はおくうに言ったことと新たに説明を加えた

 

「お燐、今すぐ地上からモミの木を!こいしは私とここで待機、蒼蔦さんはおくうの捜索と飾りの準備をお願いします!」

 

「あいあいさー!」

 

「ヤル気満々かお前ら!」

 

どうやら思いの他ノリが良かったらしい、いつの間にか回復したお燐に至っては既に出発してしまっている

俺はそれらしきモノが置いてそうな香霖堂へと向かった

.....ついでにおくうの捜索と

 

 

 

五時間後...

 

「蒼兄遅い!」

 

「全く、いくら空が飛べないとはいえ時間が掛かり過ぎです!」

 

「ホント、人間はダメダメだね〜」

 

「蒼蔦蒼蔦、早くやろうよ!」

 

「悪かった、だがおくう!お前を探してて遅くなったからお前に文句を言う資格はない、ついでにお燐テメェ途中で俺のこと抜かしただろ!お前だろ、あの火車に四メートルくらいの大木持って爆走してた奴!」

 

おくうはきょとんと、お燐に至っては舌を出して手を合わせている

.....コイツラは

軽く怒りを覚えたがここで怒ってしまえばクリスマスが終わってしまうかもしれない

 

「ツリーの飾りは?」

 

『もう既に』

 

「早過ぎだろ!」

 

驚くもツリーを見るとしっかりと飾り付けされていた、さっき持って帰ったばかりなのにどうやったらこんな超スピードで飾り付けができるんだ、そこは人間と妖怪の違いがあるかもしれないので突っ込まないことにする

 

「料理は...」

 

『ロイヤルタワーケーキ!』

 

「すげェな、オイ!」

 

『ケン◯ッキーフ◯イドチ◯ン!』

 

「何故あるんだ!?」

 

「先程、紫さんがスキマで...」

 

「納得だ」

 

まさか外の世界の超メジャーグルメがここに来て食べれるとは思わなかった!

何だかんだですげェ豪華になってしまったな、地霊殿、恐るべし!

いや、この場合は楽しいイベントであれば平気で外の世界にスキマを繋ぐ紫が恐ろしいのか?

はたまたこれから共食いをするのに気がついていないおくうが恐ろしいのかはわからない

 

「それでね、蒼兄...」

 

「どうしたんだ、こいし様?」

 

何やらこいし様がもじもじしながらこちらに声をかけてくる

少々の時間はあったもののこいし様は手に持った包みをこちらに差し出す

 

「これは?」

 

「クリスマスプレゼント!」

 

俺はその言葉を理解するのに少しの時間が必要だった、何せその単語を聞くのは実に久しぶりな気がするからだ

すると、

 

「あたいも」

 

お燐も

 

「私からも」

 

さとり様も

 

「私も!」

 

おくうも

 

皆、笑顔でこちらを見ていた

 

「それは私達の気持ちだよ!」

 

「いつもお世話になってるし、今日という日を正しく教えてくれたしね」

 

「いつも居候って言葉を使って私達以上に一人で頑張ってくれてますしね」

 

「蒼蔦、ありがとうね!」

 

俺は言葉が出なかった

驚きよりも先に嬉しさが表情に出たようだ

 

「あ、あり、ありがとう、でも俺何も用意できてない...」

 

「何言ってるんですか」

 

さとり様はヤレヤレといった様子で、

 

「今日という素晴らしい日を用意してくれたじゃないですか、サンタクロースさん」

 

俺はその言葉を聞いた途端、頭が真っ白になった

俺は本当に嬉しかった、気がつけば涙が流れていた

幻想入りした時に外の世界で過ごした一部の記憶を失った俺をここに住まわせてもらった彼女達にいつも何かしたいと思っていた、恩返しをしたいと思っていた

 

「蒼蔦さん、あなたはもう地霊殿の一員、私達の家族です」

 

さとり様は俺の手を取り優しく語りかける

 

「貴方のいない生活なんて、私達は考えることができません」

 

こいし様達も笑顔で頷く

俺は家族、という言葉に再び涙を流す、その言葉が俺にとってどれくらい嬉しいことか...

さとり様はですから、と繋げ

 

「居候を理由に一人で無茶するのはもうやめてください、私達も力になりますから」

 

「はい!」

 

俺は涙を拭いて最高の笑顔を浮かべた、皆が笑顔だった

 

 

俺達はとりあえず席に座り、ワイン(紅魔館仕入れ)の入ったグラスを手に取った

 

クリスマス...

外の世界ではキリストの誕生を祝う祭り、カップル達の聖夜...

 

「では、今日という聖なる夜に...」

 

しかし幻想郷、特にこの地霊殿は少し違う

 

『カンパーイ!』

 

家族の絆を深め、最高の笑顔というプレゼントをする特別な日であった

 

その夜以来、地霊殿から家族の暖かい光が消えることは決してなかった

 

 




メリークリスマス!


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⑨/知人が多いといいって言うこともあるけど大半はろくでもないことで終わることが多いんだよね!

これで今年の投稿は終わりです
来年もよろしくお願いします(^^)


よう、俺銕蒼蔦

なんか久し振りだな、もう何ヶ月も会ってない感じがするのは気のせいか?

 

「...蒼兄、何さっきからブツブツ言ってるの、もう人里に着くよ」

 

「おぉ、そうか」

 

そう、俺とこいし様は今まさに人里の前まで来ている、え?何か一気に飛んでる気がするって?

じゃあ何か、聞きたいのか?

パルスィの家を出て地上に出た瞬間、外の世界の話題で盛り上がれる緑の髪の現人神に絡まれて守矢神徒への勧誘を受けるもバッサリと断ったら涙目でこちらを見つめてきてしばらくしたら文々。新聞の記者に見つかってあらぬ誤解を記事にされるのを現人神と全力で阻止するために協力したり騒ぎを聞きつけた山の神様達が現人神こと東風谷早苗に加勢して何故か記者こと射命丸文にではなくこちらに怒りの形相を向けて全力で弾幕打ってきたのをこいし様と一緒に防ぎながら後退して全速力でミスティアの屋台にまで逃げたのはいいがミスティアは何故かもう既に酔っ払っており愚痴を延々と聞かされるトコロだったので適当に相槌を打ちながら隙を見て二人で逃亡したら白黒魔法使いに捕まって弾幕勝負を迫られてそこまた偶然通りかかった七色の人形使いが劇画タッチがよく似合う表情を浮かべながらハイライトの消えた瞳をこちらに向けてきて白黒魔法使いこと霧雨魔理沙と俺とこいし様に無差別に人形と弾幕を放ってくるので必死に避けていたら魔理沙がマスタースパークとか言って俺ごと巻き込んだぶっといレーザー弾幕を放ってこいし様と喧嘩になり収集がつかなくなったところでこれまた射命丸がやって来て場はカオス極まりないことになり更には暗闇と共に人食い妖怪までもやって来たと思えば首のないろくろ首までやって来て更に面倒なことになってしまい俺が一つ一つ片付けるも酔っ払った二本角の鬼に絡まれる前に人里まで全力疾走して疲労困憊とした俺のどうでもいい話をお前は聞きたいのか?

 

「ねぇねぇ、そういえば何を買いに人里まで来たの?」

 

「そうだな、まずどこか座れる店で休んでから一週間分くらいの食事ときゅうり数本と酒樽数個とこれから必要になりそうな生活用品かな?」

 

「きゅうりと食事は別なの!?」

 

「きゅうりはこれから使わないといけないからな、きゅうりがなかったらあいつ家にも入れて来れないかもしれないし...」

 

「....蒼兄、なんか苦労してるんだね」

 

「そうなんだよ...」

 

俺はどんよりとした雰囲気を出しながら重い足取りで人里へと足を踏み入れた

 

 

 

人里の団子屋で小休止を取った俺とこいし様は一先ずきゅうりを買うべく八百屋へと足を進めた

すると、八百屋でどこかで見たような人物がいるじゃないですか

 

「...蒼兄、なんか顔怖いよ」

 

どうやらこいし様が見る限り俺の顔は怖い部類になっているらしい、しかし不思議だよな〜笑いが止まらないなんてさ〜

俺は死ぬ覚悟と命を懸けて、って両方同じ意味だがそんな感じでノリと勢いに任せて、

 

「よぉ、PAD長!また今度オススメのワインでも、うぉい!?」

 

「貴方の血のワインとかオススメですけどどうなさいますか?」

 

「す、すんません...調子乗りました...」

 

「わかればよろしい」とPA...もとい霧の湖の近くにある紅魔館という大きな屋敷のメイド長をしている人間の十六夜咲夜(いざよいさくや)は両手に握りしめていた大量のナイフをどこかへと仕舞う

銀色の髪にメイド服というこの人里でもとてもと言って目立つ服装をしているのだが周りの人々はあまり気に留めない、何故ならここが幻想郷だからだ

しかし、

 

「ちょっと、蒼兄に何してるのよ!当たってたら死んでたかもしれないじゃないの!!」

 

「あらこいしさん、そちらの従者さんから喧嘩を売ってきたというのにそれはないんじゃないかしら?」

 

.....一触即発の雰囲気だけは見逃してもらえそうにない、ほらだって周りの人なんか俺が止めろとばかりに俺に視線寄せちゃってるし、ていうか何で俺?え、何で、これ俺のせいなの??

確かに俺も悪いトコロはあったと思うけどこいし様が気がついたら喧嘩売ってるだけであって俺関係なくないかな?

 

「.....畜生、俺のせいなのかよ」

 

「そうね、あなたが余計なことをしなければ咲夜もあそこまで過剰にならなかったでしょうし」

 

「だよな〜.....ん?」

 

そういえば俺は誰と喋っているのだろう、声のする方向を見てみると少し低い位置に日傘が見えた

この位置は何となく予想がつくな

 

「レミリア嬢、まだ太陽出てますよ」

 

「いいのよ、たまには気分転換ってやつも必要でしょ?」

 

「は、はぁ...」

 

俺が曖昧に返事するとレミリア嬢は何かあるかのような含み笑いを浮かべる、全くこの人は相変わらず考えていることがよくわからないところがある

さとり様と同じくらいの身長で背中から蝙蝠の翼を生やした彼女こそが十六夜咲夜の仕える主人であり紅魔館の現当主である吸血鬼、レミリア・スカーレット嬢は本来であれば昼間などといった太陽の出ている時間帯に行動することは少ないはずなのだが今日は咲夜と一緒に人里まで来ているところを見ると少し貴重なことなのかもしれない

 

「それよりさとりは元気かしら?」

 

「えぇ、そちらこそフランドール嬢は元気ですか?」

 

「.....この間お気に入りのソファを派手に破られたわ」

 

「お、お元気そうで何より...」

 

こんな感じで俺とレミリア嬢は何かと苦労話というか気が合うというか話をすることが多い

たまにさとり様に会うために地底まで来られる時もあるので何かと顔を合わすことは少ないわけでもないのだ

 

「咲夜、そろそろ帰るわよ!」

 

「はいお嬢様、今夜こそは私と熱い夜を過ごしましょうね!」

 

「何でそうなるの!?それより貴女また私の下着を盗んだんじゃないの、一つ棚から消えてたんだけど!」

 

「な、何のことやら.....」

 

「何で鼻血垂らしてるの、もう帰るわよ!」

 

「あぁ、お嬢様、お待ちになって〜」

 

.....あれでよく完全で瀟洒な従者とかメイドとか言ったモンだよな、本当に

俺は一先ずレミリア嬢がうっかりズッコケて日傘を手放して太陽の光で灰にならないことだけ祈った

 

「蒼兄、何険しい顔してるの?」

 

「いや、何でもない...」

 

俺はさっさときゅうりを買ってその場を後にした、何というか居づらかったのが本音である

そんな流れで俺とこいし様は八百屋を後にした

 

 




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十/何もかも人に責任を押し付ける奴ほど器って小ちゃいモノなんだよ!

新年初投稿です
今年もよろしくお願いします(^^)


「だから、私は絶対に帰らないからね!」

 

「うるさい!今日は蒼蔦と二人で新製品の開発するんだから帰ってよ、まだ誰にも見せてない代物なんだから!」

 

「じゃあ私と蒼兄がその代物の第一使用者として名前を刻んであげる!」

 

「き・さ・ま・の、名前は不要じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「........はぁ」

 

俺は現在、目の前の光景に頭を抱えている、いや本当に頭抱えているよ

片手だけど...

俺と一緒にここまでやって来たこいし様もムキになってるし、俺が会いに来たにとりの奴も何か今まで見たことないくらいとんでもない形相になっちゃってるし...

本当、なんでこうなったんだろうな

 

「お前ら一旦落ち着けよ、冷静に話し合えば状況は...」

 

「もう埒が明かないわ!弾幕ごっこで決着つけるわよ!」

 

「上等だ、河童の技術力の凄まじさを見せてやるよ!!」

 

「悪化させてんじゃねぇよ!何をどう討論したらそんなことになったのか聞きたいわ!!」

 

『幻想郷の常識に従ったまで!』

 

「なんでそこだけ息ピッタリなんだよ!」

 

俺がぜェーぜェーと息を切らしている間に決戦の火蓋は切れてしまったようで俺を部屋に一人残して二人は外に出てしまった

....全く、お互いに怪我をしなきゃいいが二人とも妖怪で一応非殺生設定のある戦いなので多少は大丈夫な筈だが、

 

「.....止めに行こう」

 

それが中途半端な改造を施された人間がするということは大変無謀なことで承知の上だ、だけど俺はやはり争ってほしくない

こいし様もにとりも俺にとっては大切な人だから!

 

俺は扉のドアノブを捻り外へと走り出した

 

 

 

さて、何がなんだか全くわからない画面の向こうの皆様の為に少々時を戻しまして説明いたしましょう!

紅魔館のメイドと吸血鬼(姉)のいた八百屋を後にして人里を出た俺とこいし様は妖怪の山の麓に移動した

 

「蒼兄、誰に説明してるの?」

 

「あれ、俺何か言ってました?」

 

「よくわからないことを言ってたよ、画面の向こうの皆様とか何とか」

 

「.....俺そんなこと言ったっけ?」

 

どうやら俺は最近疲れている上に若干こいし様の【無意識を操る程度の能力】の影響を受けてしまっているらしい、いや影響が及ぶ能力かどうかはしらないけどさ...

とりあえず妖怪の山の麓にある河童工房の近くまで来ています、きゅうり持参で

ここ重要ですよ!

俺は数ある工房の中で[NI☆TO☆RI]と表札の掛かっている扉の前まで移動する、こいし様は辺りにある電子機器らしきモノが珍しいのかさっきからキョロキョロと辺りを見回している

まぁ、俺は外の世界の最先端の電子機器を見てきた上によく来ているからそこまで珍しくはない

しかし、前来た時よりも数が増えてる気がする...

あの車輪と電子レンジらしきモノを組み合わせて発電しそうな装置とか、伸びるアームの手の先がベタベタの得体のしれない液体がポタポタと垂れているモノとか、無駄にデカイ扇風機か室外機かよくわからないモノまである

いや〜、こうして見ると外の世界の技術は進んでるな〜

本当、正直に思ってしまう...

 

俺はとりあえず扉の横に設置されているインターホンを軽く押す、これも河童の技術と俺の外の世界の知識の賜物で地霊殿にも設置されているが普及が進んでいないので誰も使い方がわからず出番はほとんどない、撤去の案も出ているくらいである

 

プルルルルルルルルルル....

プルルルルルルルルルルルル....

 

「いや、なんでだよ!」

 

インターホンを鳴らすと何故か電話の呼び出し音が鳴り響く、恐らくにとりが設定したと思われるがこのチョイスはどうかと思う

ていうかこの前来た時は普通だったのに!

俺が一人で頭の中を整理していると扉の奥から「はーい!」と少々テンションの高い声が響く、多分インターホンを使ってもらえたことに激しく喜んでいるのであろう

そして、ガチャッと扉が勢い良く開かれ、

 

「はいはーい、お越しいただきありがとうございます、いつも笑顔がモットーで安全使いやすいことで有名な河城にとり印の最先端機械はこちら........」

 

...もの凄いハイテンションかつ早口でウキウキとした表情が俺の姿を捉えた瞬間に凍りつく

緑の帽子に青い髪をツインテールで結び、やはりこれまた薄い青色の服を着た河童の少女、河城にとり(かわしろにとり)が顔を真っ赤にして、

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

盛大に泣き叫んだ

 

 

 

「で、これは俺が悪いのか?」

 

「悪いね、悪くなかったら今日は厄神様が幸せを運んでくるよ!」

 

「理不尽だろ!」

 

俺とこいし様(にとりには見えていない)はとりあえず工房に入れてもらうことに成功した

成功の秘訣?きゅうりだよ

 

「でもきゅうりを持ってきたのは流石ね、私のことをよくわかってる証拠だわ」

 

という具合にまぁ、チョロいモンです

にとりのきゅうりの食し方は非常にシンプル・イズ・ザ・ベストの象徴で水で洗ったきゅうりをかじる、以上でありたまに酒と合わすと言った具合である

 

「そういやにとり、この前設計段階だったアレできてるか?」

 

「あぁアレね、勿論できてるよ!最高傑作!後で渡すね」

 

「悪いな、他にも作りたいのあったのに...」

 

「いや全然いいよ、アレはアレで作りがいあったし!」

 

こんな感じで俺とにとりはいつも二人で外の世界の技術とか発明品の自慢などの雑談で時間を過ごすことが多い、たまに一緒に制作することもある

しかし、今日の客は俺一人ではない

 

「ウゥ〜グルルルルルルルル...」

 

「こ、こいし様?」

 

何やら不穏でヤバそうな雰囲気が出ている!

まずい、これは怒っている!

以前、おくうがこいし様のプリンをこっそり食べた時の雰囲気にそっくりである

しかし、にとりにはこいし様の姿は見えていない

......大丈夫かな?

 

「....ねぇ蒼蔦、さっきから隣で唸ってる子は誰?」

 

「気がついてたァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

まさかの展開だ、非常にまずい!

 

「って!それ私のきゅうり!」

 

「べ〜だ、蒼兄が買ったきゅうりだから別に私が食べても何の問題もないし」

 

「そ、蒼...兄...!?」

 

何やらにとりが額に青筋をピキピキと浮かべて穏やかな状況ではなくなってきた、こいし様も何か次々ときゅうりを食べ始めるし!

 

「ちょ、待っ、それ私のきゅうりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!しかも許せない、そのどこから持ち出したか知らないけど味噌に付けて食べる食べ方、解せぬ!!」

 

「あなたこそ何、ガジガジと噛んでごっくんなんて下品な食べ方!そんなんだからいつまで経っても男できないんだよ、この引きこもり!」

 

「ひ、ひき、引きこもり...」

 

ま、まずい、非常にまずい!!

俺は傍観者の立場であり本来ならば中立的な立場で成り行きを見守らないといけないのだが二人から漏れ流れる妖気がビンビンと肌に伝わってくる!

それを証拠にホラ、冷や汗ダラダラだよ!

ていうかこいし様ってこんなにグイグイいくタイプだっけ!?

 

「帰んなさい!きゅうりを生で食べる素晴らしさと研究開発の醍醐味を理解できないチビはさっさと!」

 

「あなたにチビって言われたくないし!!」

 

「い・い・か・ら・か・え・れ!ここは子供の来る場所じゃない!」

 

「私子供じゃないし!」

 

「コイツ....!!」

 

そして冒頭に戻って欲しい

その後もエスカレートする暴言の嵐もあり、何やかんやで弾幕ごっこにまで発展してしまったこの争いを俺はどうすることもできなかったんだ

 

だから俺はこの二人を必ず止める、結構矛盾とかいっぱいある気もするけどそこはご都合主義で乗り切ってやる!

この幻想郷では常識に捉われちゃいけないって、どこかの現人神が言ってたくらいだからな!!

 

結論、俺は悪くない!

 

 




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一一/やはりこの世界は平等には成り立たないのが必然なのかもしれない!

今回少し短めです(^^)


河童「のびーるアーム」

 

抑制「スーパーエゴ」

 

 

「中々やるわね河童、蒼兄ほどじゃないけどね!」

 

「ハッ、言ってなチビィ!ぎったんぎたんにしてやる!」

 

「やってみなさい!」

 

.....よぅ銕蒼蔦だ、やはり妖怪同士の弾幕勝負は俺みたいな中途半端な人外が想像するよりもかなり激しいらしい

証拠に非殺生設定されてるはずの弾幕が凄い威力と数になってる

もうこれでクレーター何個目だ!?ていうか明らかにアレ本気の戦いですよね、もう決闘ルールとか完全無視の妖怪本来の戦いですよね!?

 

「チッ、外したか次は当てる!」

 

にとりさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん、顔が物凄くゲスい笑顔になってますよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

画面の向こうの読者、及び外の世界のファン様に見せられないよー!

 

何、これ本当に弾幕ごっこ!?博麗の巫女が設定した人間も妖怪も種族関係なしに平等に戦えるという幻想郷の決闘方式ですよね!?

俺、勝てる気はおろか混ざれる自信ないんですけどォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

「結構楽しくなってきたわね、ヒャッハーーー!」

 

あんたもか、こいし様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

もうヤダこの二人、妖怪の本性というか本能丸出しじゃねぇか!

それとこいし様よ、あんた今物凄い形相で笑顔浮かべてますよ、それこそキャラ崩壊とかどうとかのレベルを超えているくらいに!

 

ていうか何でこんな戦闘ガンガンやっちゃってるの、俺はこの幻想郷を平凡かつ平穏無事に暮らしたいだけなのに!

妖怪とか妖精とか亡霊とか神様がいる時点で諦めた方がいいのかもしれないが、かくいう俺もサイボーグな訳だけど...

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

二人の勝負は更にエスカレートしていく、というよりも先ほどからこちらに赤い液体がブシャブシャと飛んできているような気もするのだが気のせいだと信じたい、いくらエスカレートしてるとはいえグロすぎるのはご勘弁したいしな

 

ん、お前はさっきから何で解説ばかりで喋らないかだって?そ、それはだな...

 

「これでどう!」

 

「やるわね、でもこんなの楽勝よ!」

 

「口だけは立派ねチビ、ならこれはどう?」

 

「効かないわね、でもね私は絶対にあなたを倒さないといけないの、蒼兄の為にも!」

 

「奇遇だね、私も蒼蔦の為にこの戦いは負けられない!」

 

『蒼蔦(兄)の仇は私が取る!!』

 

.....二人の流れ弾を喰らってぶっ倒れています、仰向けに...

 

それで二人は何か自分は悪くない、と言い張って他人に責任を押し付け自分の正義を貫き、俺の仇を取ろうとしてくれているらしい...

この言葉を聞いた皆様は戦い激化の原因は私めにあると言いたいだろうがそれは断じて違うッ!!

俺が扉を開き部屋を出て止めようとしたその瞬間からペースは全く落ちずにそのまま今の今も戦っているんだ

ちなみにだが俺はこの時今後絶対にこの二人は会わせないと心に固く誓ったことも言っておこう

 

俺は決して悪くないッ!!

 

 

 

その後戦いは夕暮れまで続き、引き分けで勝負は終わった

というよりも俺が勇気を出して弾幕勝負中のにとりを羽交い締めにした時に思わず彼女の胸を触ってしまいボディーブローを溝に喰らった犠牲もあったのだが...

一先ず長居する気もなかったのでにとりから依頼してたブツを受け取ってこいし様と工房を後にした、去り際にとりの頬がほんのり赤かったのは明らかに俺のせいだろうな

うん、ごめん

 

「蒼兄蒼兄、次はどこに行くの?」

 

「もう時間が時間だしな、人里で夕飯の具材買って帰るか...」

 

「えぇ〜、もう帰るの?」

 

「当たり前ッスよ、さとり様が心配しますよ」

 

「むぅ〜」

 

「.....何か好きなモノ買ってあげますから」

 

「本当!?」

 

チョロい、こいし様はやはり見た目相応の子供だった

目をキラキラ輝かせながらスキップしながら俺の手を引っ張る

全く、さっきの戦いの時とギャップが激しすぎる

 

「早く行こうよ、蒼兄!」

 

こいし様が全力で腕を引っ張る

そう、ここで思い出してもらいたい

こいし様が普通の人間ならば皆様の予想する展開になったであろう

しかし、彼女は妖怪である、力も寿命も人間の何倍もある

そんな彼女が半分人間の俺の腕を全力で引っ張るとどうなるか、もう答えは出ているはずだ

 

「ちょ、こいし様!腕、腕千切れる、もうちょっと、ゆっくり...」

 

「え?何か言った?」

 

サイボーグで助かった、腕は持って行かれず済んだがどこかのドクタースランプみたいに走り出すので力は更に強くなる

 

本当、無意識って恐ろしい...

 




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一二/機械の便利さを知る前に食べることのありがたさを知るべきだ!!

連続投稿です(^^)


やはり今日も燃え盛るくらいに熱い灼熱地獄の熱を肌で感じ取っている地霊殿のある日、

 

「ねぇ蒼蔦、肉まん食べたい!」

 

「......お、おぅ?」

 

先日勇儀さんのお陰で完全修復されたキッチンで食材の整理をしているとおくうが扉をバーン!と開け放ち目をキラキラと純粋な子供のように輝かせて顔を近づけてきた

そういえば肉まんって幻想入りしてたんだっけ...

何か最近あの自由なスキマ妖怪様が幻想郷にポンポンと様々な外の世界のモノをスキマを経由して持ってくるので何が幻想入りして何が幻想入りしていないかの基準が少し曖昧になってしまい困っている

 

「ちなみにその、肉まんって食べ物のことは誰から聞いたんだ?」

 

「早苗ちゃん、神社でもご馳走してもらっておいしかったよ!」

 

「あいつかァァァァァ!!」

 

すみません紫さん、今度お詫びに肩でも揉みますので

俺は一番に疑った人物に届くはずのない謝罪を明後日の方向にとりあえずはしておいた、して損はないと思う

 

「それで他にも豚まんとかカレーまんとかエビまんとか蟹まんとかアンパンまんとか種類がいっぱいあることも教えてもらったよ!」

 

「何かおかしいの混ざってないか!?というかお前はいっつも仕事の後一体何をしてるんだよ!!」

 

「うにゅ?外の世界のこと教えてもらったり早苗ちゃんの持ってる男の人と男の人が抱き合ってる本を一緒に読んだり...て蒼蔦、そんなでかい包丁取り出してどうしたの!?」

 

「いや何、守矢神社と少し戦う理由ができたからな...」

 

迂闊だった、まさか早苗の奴が腐女子的趣味があったとは!

今度からおくうを守矢神社に仕事に行く際少し注意しておかないと!

 

「ねぇ蒼蔦、肉まん作ってよアレ本当にもの凄くおいしかったんだよ、ちゃいにーずの料理はとても美味しいって早苗ちゃん言ってたし!」

 

「あいつ曲がりなりにもジャパニーズだよな!?」

 

「蒼蔦作ってよぉ〜」

 

「あぁ、もう、わかったから涙目で制御棒を眉間に当てるのやめてくれ、本当に死んじゃうから!」

 

やったー!と制御棒を外し嬉しそうにヨダレを垂らしながら一人喜ぶおくうを見てると何だが本当に物理的に世界を滅ぼせる力を持ってる少女とは思えなくなるんだよな、いや本当に...

俺は先程取り出した全長三メートルの中華包丁を戸棚に仕舞い肉まんを作るために先日にとりの工房で共同制作し完成した冷蔵庫を開き材料を探す、中々無駄のない動きに見えるかもしれないが実は俺、肉まんを作るなんて生まれて初めてである

外の世界ではロー○ンとかセブ○イレブンとかで簡単に購入して食べてたし...

見た目からして一先ず生地を作ってそれで中身の具材に豚肉と秋姉妹から頂いた野菜、それで油とみりん、にんにく、醤油、辛子...

 

「.....食に関してはかなり充実してるな幻想郷」

 

おそらくあのスキマ妖怪が持ってきたのだろうが幻想郷は外の世界でいう江戸時代辺りの時代背景である

まぁ海外はもっと発達していたんだろうけど、よく見たらどっかで見た銘柄のモノばっかだし...ん?

 

「あれ、豚肉ってどこに入れたっけな?」

 

「蒼蔦、豚肉ならお燐がおやつに炙ってペットと一緒に食べてたよ」

 

「猫ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!あの豚肉滅茶苦茶高かったんだぞォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

届くはずのない悲痛の叫びがキッチンに広がり反響する

おそらく今も無縁塚辺りで死体採取にでも趣味に没頭してるんだろうな畜生、あの豚肉特価セールで安かったけどそれでも3500円だぞ!

しかも10kgだぞ!どうやったらおやつに消えてなくなるんだ!?

俺は豚肉に代用できるモノを探すが生憎だがそんなモノは我が地霊殿の冷蔵庫にはなかった...

 

「畜生、あの猫覚えてろよ...フフフフフフフフフフフ....」

 

「そ、蒼蔦??」

 

俺がブツブツと恨み言を呟き負の笑いを浮かべると珍しくおくうがあたふたしている

どうやらこの怒りは相当なモノらしいな、今度あいつの財布から5000パクッとこっと!

 

「仕方ねぇ、豚肉がないなら旧都まで買いに行かないとな...」

 

「私も行くー!」

 

「いいけど問題起こすなよ」

 

「何、その私が行く度に旧都の酒場が吹き飛んだり鬼たちにトラウマ植え付けたり試食コーナーの食べ物が全部なくなったり店が全部閉まっちゃうようなことが度々起こっているような言い方、失礼よ!」

 

「全部事実だろうが!しかも自覚してんのかよ、余計にタチが悪いじゃねぇか!」

 

「私悪くないし!」

 

「この期に及んで無罪主張だと!?」

 

もう頭が痛くなりそうだ...

実際あいつが壊した酒場の修理とか鬼たちのトラウマ治すためのカウセリングとか試食コーナーは、まぁいいけど店が閉まった後も旧都の人達に謝ってんの全部俺だからな...

最近じゃあ問題全部俺に押し付けりゃオッケーみたいな方程式まで完成してしまってるし...

 

「お願い!今回は制御棒出さないし能力使わないって約束するから!」

 

「.....それも何回目だか」

 

「うにゅ〜...」

 

俺はため息を一つ吐いて、割と本気で落ち込んでしまっているおくうを見る

実際こいつ本人には悪気はないんだがテンション上がると周りが見えなくなっちまうんだよな

それに能力も今じゃ制御できてるけど偶に調子に乗って暴走するのもおくうが悪い状況も少ないし

 

「約束できんのか?」

 

「ぅ、うにゅ?」

 

「旧都で制御棒と能力を使わないこと、約束できるなら一緒に来い」

 

「.....!」

 

「俺も久々に肉まん食いたくなってきたしな、ついでに食材も調達したいし」

 

「うん!約束する!」

 

おくうは眩しい無邪気な笑顔を浮かべながら大きく縦に頷く

そしてキッチンの扉をバーン!と開け放ち閉めるのも忘れ走り去って行く

俺はそんな後ろ姿を見守りながらエプロンを外し財布をポケットに入れてキッチンからリビングへ移動した

 




感想、批評、評価、罵倒、その他諸々お待ちしてます(^^)


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バレンタイン特別編 〜銕蒼蔦の受難〜

今回はバレンタイン特別編です(^^)
某嫉妬妖怪は出てきませんので予めご了承ください


ある冬の日の幻想郷、と言っても地底は年中暑いし雪が降るわけでもないのであまり季節の流れを読み取りづらいがなんとなく今が冬だってことは俺にはわかる

度々地上に顔を出しているし地上で会った知人に尋ねれば済むことだし白い妖精が飛んでたら春、紅い姉妹が農作業をしていたら秋、雪が降り⑨とその保護者さん(仮)が活発だったら冬、向日葵畑のドSを向日葵畑以外で見かけたら夏という判別方法もある

 

俺こと銕蒼蔦はいつもと変わることなく地霊殿内に用意された自室のベッドに横になっていつもと変わらぬ日々を送っている

普段と違うことと言えばさとり様達御一行が珍しくお揃いで朝から出かけてしまっており現在無駄に広いこの地霊殿には俺しかいないということくらいだな

あ、あとはさとり様のペット達もこの地霊殿に残っている

 

ぶっちゃけて本音を言おう、暇だ...

 

幻想入りする前ならばゲームやらPCやらありとあらゆる娯楽が俺の退屈を払ってくれたのだが、生憎とここは幻想郷

どこかの蓬莱ニートの所か親友の道具屋か河童と協力制作するか不本意に不本意だがスキマ妖怪の力でも頼らない限りはそんな代物はここでは手に入らないだろう

 

「.....少し出かけよう」

 

思い立ったが吉日、俺はいつものバンダナを頭に巻きチョーカーの具合を確かめて黒いシャツの上から白いカッターシャツを羽織る

そして鞄に防寒着もといフードの付いたジャケットを押し込みポケットに財布を入れて玄関まで移動する

 

「じゃあな、ちょっと出かけてくる」

 

俺は動物たちに見送られて地霊殿を出発した、鍵はきちんと掛けて火のもとも確認したから問題ない!

 

「久し振りに香霖堂に行こうか」

 

俺は地上にある香霖堂を目指して歩き始めた

 

 

 

その頃...

 

「うーん、どれがいいかしらね」

 

「あたい的にあの人ならどんなモノでも純粋に飛び跳ねて喜ぶと思いますけどね」

 

「でも蒼兄ってあまり甘いの食べるイメージないよね...」

 

どうも、地霊殿の主にして覚妖怪のさとりです

私たちは今人里までやって来ています、おくうは今席を外していますがもうすぐ戻るでしょう

 

「ねぇさとり様〜、今日って本当に0214なんですよね?」

 

お燐が今更不安に思ったのか確認を入れてきました

 

「えぇ、間違いないはずです」

 

「でもおくうの情報じゃちょっと私も不安なんだけど」

 

「.....だ、大丈夫です。ちゃんと私も確認しましたから」

 

えぇ、ちゃんと「心を読む程度の能力」で人里の人達の心の声を聴かせていただきましたからね!

 

 

『今日こそはこーりんに、こーりんに想いを...!』

 

『俺は今年こそ慧音先生からチョコを貰うんだ!この際義理でも本命でも失敗作でもなんでも構わねぇ!』

 

『阿求さん、今年こそは貴方の想いはこの僕が!』

 

 

.....えーと、何はともあれ間違いなさそうですね、はい

 

「さとり様〜早苗ちゃん連行してきたよ〜!」

 

そうこうしている内におくうが現人神こと東風谷早苗(こちやさなえ)さんを連れてきてくれたようですね、首根っこを片手で掴みながら

「きゃん!」と早苗さんはおくうに手を離され落下、うんいい音です

 

「痛たた、どうしたのよ空ちゃん。急に首根っこ掴んで飛んだりして、ていうか上着着てないから寒い!めっちゃ寒いぃぃぃ!!」

 

緑色の長い髪に少し幼さの残る顔の早苗さんは何故か下着姿...

 

「おくう、これは一体どういうことなのかしら?」

 

「うにゅ?さとり様が早急に連れてくるようにと言ったので超特急で連れてきただけですよ?」

 

おくうは私の質問に首を傾げる、このままじゃ原因はわからないままなので少し早苗さんの心を見てみましょう...

 

『寒いぃ、全く空ちゃんは説明もなしに着替えてる途中の私を連れ去るなんて、しかもここ人里じゃん!それに私下着じゃん!!恥ずかしい!ヤバイ本当に恥ずかしい!どうしよ、こんなトコあの鴉天狗にでも見られたらいい笑い者よ...』

 

.....心中察しました

 

「おくう、あなたの上着を早苗さんに貸してあげなさい」

 

「なん、てか怖ッ!?さとり様、今まで見たことないくらい怖い顔でそんなこと言わないでくださいよ!」

 

「いいから早くしろ、この鳥頭」

 

「さ、さとり様のキャラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、てか、ぁん、やめ、む、無理矢理脱がさないでくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「お姉ちゃん、あれはマジだね」

 

「本気ですね」

 

「そんなことより寒いし恥ずかしいよぉぉぉ!」

 

 

 

一方...

 

「いらっしゃ、あぁ蒼蔦じゃないか。久しぶりだね」

 

「よぉ、相変わらず客いねェな」

 

「....昨日はツケで払う常連さんが来てたんだけどね」

 

「ご、ご愁傷様で」

 

地霊殿を出て数分、俺はやっとの思いで親友である森近霖之助(もりちかりんのすけ)の経営している道具屋、香霖堂に到着した

彼は妖怪と人間のハーフで所謂半人半妖と言ったところだ

綺麗な白に近い銀色の髪に眼鏡をかけたいかにも優等生っと言った容貌をしている

あとこの幻想郷でも数少ない男の知り合いなので何かと気も合う

 

「それで、今日も暇つぶしかい?」

 

「まぁそんなトコかな」

 

俺が香霖堂を訪ねる理由は大抵暇つぶしか外の世界の物資調達だ

この香霖堂では幻想郷の外の世界、つまり俺が幻想入りする前の世界のモノを取り扱っている数少ないというかここしか扱ってない気もする

 

「お茶でも出そうか、どうせすぐに帰る気はないんだろ?」

 

「まぁね、よくわかってんじゃん」

 

「君とはそこそこ付き合いが長いからね。それに暇つぶしで来てくれる客の中でも最もマトモな客だと信じてるし」

 

「.....相変わらず苦労してんだな」

 

「苦労してるよ」

 

俺と霖之助は互いに苦笑いをする

霖之助は眼鏡をクイッと上げるとカウンターを離れて奥の部屋に移動する

それにしても、久々に来たがまたモノが増えた気がする

例えば、この浮き付きの釣竿とか前と後ろの両方のタイヤがパンクしちゃってる自転車とか無駄にでかい風車のプロペラとか明らかに廃棄処分された大きな滑り台とかよく見たらどこか懐かしい某モンスターの人形とか時代背景がいまいち読み取れないマク◯ナルドの看板とかクリスマスのときお世話になったケン◯ッキーのカー◯ルさんの人形とか近未来的な電光掲示板とか...

よくもこんなにも物が幻想入りしてくるものだよな

そしてこのカレンダー、なんで無駄に半年分の年月しかないんだよ

しかも1966年っていつの話だっての!

 

「お待たせ、とそのカレンダーがどうかしたのかい?」

 

「いや、何でもない」

 

俺は霖之助から茶を受け取って一気飲みをした

熱かったが外は死ぬほど寒かったので問題なかった

 

「そういや今って何月なの?」

 

「今日は2月14日だったね」

 

「ふーん、2月14日ね...ッ!!」

 

その時、俺の中の何かが覚醒した

気がつけば俺は大きく目を見開き鋼の握力で湯呑みを粉々にしていた

霖之助は俺の突然の行動に少々驚きを感じているがそんなコトはどうでもいいッ!!

 

「貴様ッ!今日は2月14日だと言うのかッ!!」

 

「そ、そうだよ、どうしたんだい、急に...」

 

「どうしたもこうしたもだなッ!!」

 

俺は何故か霖之助の胸ぐらを掴み喧嘩腰になっていた

まさか、今日があの恨めしく忌まわしきBARENTAINだと言うのか...!!

この銕蒼蔦、一生の不覚ッ...!!

 

「そ、蒼蔦、そろそろ離して、くれないかな?」

 

「うぉぉ、すまん!」

 

俺は今我に返った、どうやら相当長い時間霖之助の首を絞めていたらしい

 

「ケホッ、ケホッ、全く君の腕は本当に鉄なんだな。改めて実感させてもらったよ」

 

「案外大丈夫そうだ...」

 

俺はなんかもう、霖之助の発言には謝るにも謝りきれなくなってしまう

超今更だが霖之助も俺のことをサイボーグだと知っている人物の一人である

 

「あぁ、そうそう!」

 

霖之助が何かを思い出したかのように話し始める

 

「今朝朱鷺子がチョコを持ってきてくれたんだが」

 

「リア充、爆発しろッ!」

 

俺は無意識に霖之助を殴っていた

 

 

 

「....なんで私が地霊殿まで連れて来られてるんですか?」

 

「いや〜あたいは悪いなんて微塵も思ってないけどさ〜、ちょっと利用させてもらいたくて」

 

「何ここ怖い、超帰りたい!?」

 

人里から早苗を連れて(半ば無理矢理、服を交換条件に)地霊殿に戻った私たちは普段なら絶ッッッッッッッッッッ対に蒼蔦さん以外使うことのないキッチンにエプロンとバンダナを装備して早苗さんを縛って固定して足を踏み入れてました

動物たちの話しだと蒼蔦さんは出かけてるようですし好都合です

 

「早苗ちゃん、逃げようとしたらメガフレアね」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、こんな状態で逃げろって言う方が無理ですよ!いくら私が能力を使ったとしても逃げる気なんて元から全くありませんからその制御棒をどうか仕舞ってくださいお願いします!!」

 

.....早苗さん必死すぎでしょ

「この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」とか言っていた方が何をおっしゃっているのだか

 

「ねぇねぇお姉ちゃん、早く作ろうよ!」

 

「そうねこいし、蒼蔦さんが帰って来る前に早く仕上げましょうか」

 

私が包丁を取り出しタオルで拭くと何故か早苗さんは「ヒィィ!?」と言いながら涙を流しています、一体何故でしょう?

 

「さとり様、火は強火で良かったですかね?」

 

「そうね、そのくらいの方が火も通りやすくて丁度いいかもね」

 

お燐はそう言って了解しました、と言って大きな鍋を持ってきました

....まったく、そんな大きな鍋に一体何を入れるんだか

すると後ろの早苗さんの顔色が悪くなったと思ったらダラダラと汗をかきはじめました、まぁたしかにこの辺は地上に比べれば暑いですが...

 

「さとり様さとり様、冷凍庫の中身の整理もできました!」

 

「あら、意外に大きいのね。人一人くらいは入るんじゃないかしら?」

 

本当に大きな冷蔵庫、蒼蔦さんはよくこんなモノを作りましたね

.....それに一体なんなんでしょう、早苗さんがもう泣いてるとかそんなレベルじゃなくてなんでフルフルフルと頭を横に振るって歯をガチガチガチガチと鳴らし震わせてこちらを見ているのでしょう?

 

え?能力ですか?

今はオフですね、この能力はそこまで好かないのであまり使いたくないのですよ

 

そして私は買ってきた材料を並べます

 

「早苗さん、では早速ですがチョコレートの作り方を...」

 

私が早苗の方を見た時、何故か彼女は泡を吹いて気絶していました

 

はて、一体彼女に何があったのかしら?

 

 

 

「畜生、あの野郎!リア充ライフを優雅に満喫しやがってッ!」

 

俺はもう香霖堂を出て地霊殿に帰っている途中である

あの後白黒魔法使いまでもが霖之助、もとい男の敵にチョコレートを持ってきたので更に一発ブチかました所、白黒魔法使いが突っかかってきて危うく弾幕ごっこにまで発展するところであった

.....勝負は目に見えているので無謀にも俺は挑もうとはあえてしなかったがな

 

俺はそんなことを憂鬱な思いに浸りながら大きく溜息を一つ漏らす

思えば幻想郷に来るまでにも女の子から本命(義理はあったようでなかったような...)のチョコレートなんて貰ったことなんてなかったな

俺の周りただでさえ女っ気が少なかったし俺を好きになる物好きなんているはずもないし....

なんだろ、視界が若干ぼけてきたぞ

心なしか目から汗が流れている気もする

 

(やめだやめだ、どうせ俺は非リアなんだ!画面の向こうにも同志たちは多くいるはずだ、弱気になるな俺は決して一人じゃねぇ!!)

 

俺は無理にテンションを上げてもう気がつけば地霊殿の目の前までやって来ていたことに気がつく

相変わらず外で元気に遊ぶ犬猫達に見送られて地霊殿の入り口にまで近づくと見知った人影を発見する

赤い髪の上に黒い猫耳をぴょこぴょことさせるここの住人の一人

 

「よぉお燐、帰ってたんだな」

 

「あ、うん、ついさっきね...」

 

「どうしたんだ、何かいつもと雰囲気違うぞ?」

 

何だか上手くは言えないがいつもと違って返事にキレがない

お燐は何かもっとこう、堂々としているし俺の冗談(じゃないときもある)にも全力で突っ込みを入れてくれるほどテンションが高いのに...

心なしか顔も少し赤い気がする

 

「お前、もしかして熱でもあんのか?」

 

「そ、そんなことないよ!だ、だ、だだだだだ第一妖怪が風邪なんか引くわけないじゃないのよ!」

 

「....すげ〜な妖怪」

 

やはり妖怪は風邪を引かないようだ

たしかにお燐は風邪を引くようなこともしてないし、風邪を引いているなら外で猫たちと話しているなんてこともまずないだろう

 

「そ、それよりさぁ、今日はいい天気だと思わない?」

 

「天気も何もいつもと変わらないが

...」

 

................................................................................................................................................................................................................................................。

 

き、気まずい!

な、何でこうも会話が続かないんだ

いつもならばボケとツッコミの応酬が延々と繰り返されるというのに!

 

「あ、あのさ」

 

お燐の一言が沈黙を打ち破り小さな小包を俺に差し出してくる

 

「こ、これどうぞ」

 

「お、おぉ。ていうかこれって何?」

 

「えと、えーと、ネズミの死体!」

 

「嫌がらせか!しかもご丁寧に包装までして!?」

 

「あ、ま、間違えた!ごめん、そ、それはあれよ!人間の小指!」

 

「余計怖いわ!」

 

「あーうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!ちょっと苦くて甘い茶色い固形物よ!!それじゃあね!」

 

「あ、お、おい!」

 

俺の声が届くことはなくお燐は地霊殿とは反対方向へと走り去ってしまった

とりあえず中身が気になったので俺はプルプルと手を震わせながらゆっくりと包装を解いていく

 

「....ッ!」

 

そこで俺の思考は止まった

そして無意識に頬が緩んでいるのが自分でも理解できた

 

「お燐、ありがとう」

 

俺は小包を包装し直して鞄に仕舞う

そして地霊殿の中にやっとのことで帰宅した

 

 

 

「あ、蒼蔦〜!」

 

「おぅおくう、ただいま〜!」

 

俺が地霊殿に入ってリビングにいたのは地獄鴉兼八咫烏のおくうだった

相も変わらず元気な様子だった

俺とおくうは軽くハイタッチを交わす、これはいつの間にか恒例となってしまい二人でよく行うことが多い

 

「そういや今日は朝からどこに行ってたんだよ、久しぶりに山の神様達から休暇貰ってたんだろ?」

 

「うん、だからさとり様達と出かけてた!」

 

「うん、それも知ってる」

 

まぁ、これがおくうの平常運転なのだから仕方ない

俺もこのペースにスッカリ慣れてしまい最初こそ突っ込みの応酬だったのだがもう軽く受け流せるまで成長している

案外彼女と漫才でペアを組んだら結構イイ線までいきそうな気もする

 

すると突然おくうは立ち上がったかと思ったら俺の顔面、具体的に言うのであれば鼻先三ミリあたりのギリギリの位置まで制御棒を突き出してきた

 

「え、ちょ、待っ、ええ!?これどういうこと!?」

 

「フフフ、さぁ蒼蔦!貴様は今からこの渾身の新技の実験台となるがよい!」

 

「俺何かしましたかッ!?」

 

まったく意味がわからなかった!

おくうが予測不能かつ奇想天外な行動を行うのは今に始まったことではないがここまで笑顔を浮かべて楽しそうにしながら割とガチで恐怖を感じるのは初めてである

 

「お、落ち着けよおくう。は、話せばわかるさ」

 

気がつけば俺はダラダラと冷や汗を垂らしながら無駄とも無謀とも言える交渉をあの鳥頭相手に行っている自分の愚かさに気づかされる

奴に話しは通用しない!俺ももはやここまでかッ!

 

「どーん!」

 

「ふゴッ!?」

 

ある意味意表を突いた攻撃だった

制御棒を横に振りバットのように俺を打ち上げたのだ

まさかの不意打ちに対応できずモロにその一撃をくらってしまう

何度でも言うが俺はサイボーグであるが超絶中途半端な改造を施されたサイボーグで首から下の左上半身と右腕以外は生身の人間とまったく変わりのない構造と防御力なのである

もちろん頭は後者である生身のままである

 

「痛てて、こんなのくらったら普通の人間は痛いじゃすまねぇぞ...」

 

「大丈夫、蒼蔦は普通じゃないからね!」

 

「お前が殴ったトコロは普通の部分なの!」

 

俺は涙目でおくうに訴える

こんなの理不尽すぎる、俺が一体いつ何をしたと言うんだ!

 

「あ、そうだ蒼蔦に渡すものがあったんだ!」

 

おくうはそう言って制御棒の側面部分をカパッと開けて何かを探すようにゴソゴソと手探りする

.....一体どういう構造してるんだろう

 

「はい、コレ!」

 

「これは?」

 

「今日はバレンタインデーだからね!蒼蔦にはいつもお世話になってるから日頃の感謝を込めてのお礼だよ!」

 

おくうは笑顔でそう告げた

なんだろう、嬉しい反面少し悲しい気もする

俺は笑顔でおくうからの感謝の気持ちを受け取った

 

「ところで中身は一体何なんだ?」

 

「忘れた!」

 

 

 

「ん?」

 

俺が自分の部屋に向かっている途中、俺の部屋の前で何やらハート型の小包を両手に抱えて立ち止まっているさとり様がいることに気がつく

どうやら能力も使っておらず、こちらに気がついている様子もなさそうだ

以前までの俺ならば「え、何この可愛い生物?お持ち帰りしたい!」とか言って部屋に連れ込むのだが生憎、俺はもう昔の俺ではなかった!

 

俺はさとり様にバレないようにそろ〜り、そろ〜りとゆっくり気配を限界にまで殺して近寄る

 

そしてさとり様の肩に両手をセッティングすると同時に...

 

「さ〜とり様〜!」

 

「ひぃぃ、にやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

ちょっとしたドッキリを披露してみた

と言っても普通に話しかけただけなんですけどね

 

「どこが普通なんですか!?危うく心臓が止まるかと思いましたよ!?」

 

さとり様が物凄い涙目でこちらを睨みつけてくる、第三の目からも若干だが涙が流れてる

顔を真っ赤にしてさっきまで持っていた小包を背後に隠しながらゼェーハァーゼェーハァー、と呼吸を整える

 

「で、それなんですか?」

 

「そ、そそれとは?」

 

「今さとり様が手に持ってる物ですよ、それに何か俺に用があったみたいですけど?」

 

「うぅ...!」

 

俺は自分でもわかるくらいにニヤニヤしながらさとり様に質問をぶつける

実はこの地霊殿で一番弄びがいがあるのはさとり様なんだよね

耳まで顔を真っ赤にさせたさとり様は明らかに目を泳がせて焦点は合ってないがこちらを見ている

....外の世界では俗にこれをロリコンという性癖になってしまい、警察にも通報されかねない状態だがここは全てを受け入れる世界幻想郷

受け入れてはいけないものまで受け入れてしまうという欠点はあるが心が広いことは真っこと良いことである

 

「.....さっきから全部聞こえてますよ?」

 

「はて、ナンノコトヤラ」

 

俺は目を逸らしながら必死に誤魔化す

やはりこの人の「心を読む程度の能力」は侮れないな...

俺はそんなことを言いつつ頬を赤らめる純真乙女心のさとり様に一言放つ

 

「そう言えば今日はバレンタインデーでしたね〜」

 

「ッ!!」

 

「いや〜俺もうお燐とおくうから貰ったんですよね、初めて貰いましたけど嬉しかったですわ」

 

「そ、そうな、の、よよよよかったですね」

 

「そういうわけで俺はそろそろ部屋に入らさせていただきますね」

 

俺はさとり様を片手で持ち上げて扉から遠ざける

そしてドアノブを回して部屋に入る

 

「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!!え、えっちょ、待ってください!私そ、蒼蔦さんにわ、わわわわわわわわ渡すものがありまして!」

 

「渡すものですか」

 

「貴方にはいつもお世話になってるのでそのお礼ですよ!では私はこれで失礼しますッ!!」

 

さとり様は俺に小包を渡すなりどこかへと顔を真っ赤にして走り去ってしまった

おそらく自分の部屋だろうがなんか階段から転げ落ちる音が聞こえた気がする

 

「.....大丈夫かな、さとり様」

 

俺は若干心配しつつも一先ず部屋に荷物を置いてさとり様の様子を見に行こうとした瞬間、俺の視界は真っ暗になった

更に言えば背中に何かが張り付いてる気もする

 

「だ〜れだ?」

 

「こいし様〜」

 

「へへへ、正解!」

 

視界が元に戻ると俺はゆっくりと振り返る

そこにはさとり様の妹のこいし様が無邪気な笑みを浮かべて立っていた

 

「はい蒼兄、バレンタインデーのチョコだよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

何かこいし様めちゃくちゃ素直!

今日で一番時間が短かった

 

「みんなもっと素直になればいいのに、特にお姉ちゃんのあれは..........ププッ」

 

「こいし様、笑っては悪いですよ」

 

とか言っている俺も笑いを堪えるのに必死なんだけどね

 

「じゃあね蒼兄、また感想聞かせてね!」

 

こいし様はそう言って部屋を出て行った、というかいつの間に入って来たのだろうか?

ある意味この地霊殿で最強なのはこいし様なのかもしれないな

 

「さて....」

 

俺は机に今日の戦利品を並べた

そして高らかに虚空に向かってドヤ顔で宣言する

 

「悪いな、今年は俺お前らの敵だわ」

 

自分でもわかるくらいのゲスい顔で誰にも告げるわけでもなく独り言のように呟いた

 

 

 

 

一方...

 

「こ、ここここーりん、私はわた、しはわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「と、とりあえずその八卦炉を仕舞ってくれないか!?み、店が、商品が灰になってきまう!」

 

白黒魔法使いは鈍感リア充の半人半妖に想いを伝えようと恥ずかしさのあまりに暴走をしてしまい、

 

「............早苗、中々帰ってこないね」

 

「そうねぇ〜」

 

妖怪の山に建つ守矢神社の茶の間では二人の神の現人神兼巫女の帰りを待つ会話があったらしいとか

 

 

 




リア充爆発しろッ!!


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一三/人は決して見た目で判断してはいけないんだよ!

テスト前?
はは、何のことやら?


結論から話そう、やはり初めて作るモノは上手くいかない

旧都の商店街で具材その他必要な食材諸々を購入して、いざ調理!と勢いに任せて調理を始めてみたものの形が整わなかったり、分量を間違えてしまったり、何故かめちゃくちゃ美味しい小籠包ができてしまったりと肉まんがどうしても完成しなかった

おくうはおくうで珍しく旧都で問題を起こさなかったものの手伝いとか言って制御棒で火力調整に失敗し試作品を消し炭にトランスフォームさせたり、まだ具材しかない中身だけをつまみ食いをしたりととても上手くいく要素がなかった

 

 

そんなわけで...

 

「なんで私の家に来ることになるんでしょうね!?」

 

「いや、こういうの上手そうだったから」

 

ある仙人のお宅におくうと一緒にお邪魔しちゃってます☆

彼女の名前は茨木華扇(いばらぎかせん)、一応仙人らしい

当の本人は俺たちの突然の訪問に頭を抱えて「なぜこの場所が...」などと呟いている

 

「そもそもどうして私が肉まんとやらを作るのが上手いイメージになっちゃってるんですか?」

 

「チャイナドレス着てるし雰囲気が中国だったから」

 

「それならばあの紅いお屋敷の門番の方が中国だと私は思うんですけど!?」

 

「いや、あいつが料理できるなんて到底思えないし」

 

「それ明らかに偏見!?」

 

いやだって、あいつが料理って想像もできないよ

俺も始めは紅魔館に行こうとしたんだけどニンニク料理とか絶対に出ないと思うしね、あそこのお嬢は天下の吸血鬼様だし

 

「心配するなって、具材はこっちで全部用意してるからさ」

 

「もう私が作ること確定!?」

 

「茨木、お前さっきから突っ込みしかしてないよな、そんなんで疲れないか?」

 

「誰のせいだと思ってるんだ...!」

 

突如豹変した茨木が殺気立った声でドスの効いた声で俺を睨みつける

.....ヤベ、超怖い!

 

「マジ頼むよ茨木、俺も既に17回くらい失敗したけど手伝えることあったら全力で手伝うからさ!」

 

「.....ハァ、仕方ないですね」

 

こうして第二次肉まん調理作戦が始まったのであった

 

 

 

「え、茨木お前肉まんを知らないのか!?」

 

「知るわけないじゃないですか、人里でも見かけたことないですし」

 

「マジか...」

 

俺は少し悲しい気持ちになった

まさかまだ幻想入りしてなかったなんてな、道理で単品で売ってないわけだ

あまりにも幻想入りする前まで普通に買っていたから感覚がおかしくなってしまっているのかもしれない

やはり幻想郷は奥が深い!

 

「簡単に言うとだな、豚肉をミンチにしてニンニクとか他にもいろんなものを混ぜた具材を」

 

「豚、肉を....ミンチ....!?」

 

なんだか茨木が俺の横でとんでもないモノを見た白黒の劇画タッチ風の驚いた表情になってしまっている

あれ、なんか地雷踏んだかな?

 

「ダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメですダメです絶ッッッッ対にダメですよ、生き物の命を犠牲にしてまで作るほどの品じゃありません!」

 

「と、とりあえず落ち着け、首が、首が絞まってるから!」

 

しまった、こいつの動物に対する愛というか認識を忘れていた!

茨木は動物愛護団体の会長か!くらいの動物愛好家でもある

そんな彼女に豚肉を使うなど、かなりの禁句だったりもする!

 

「銕さん、あなたまさか他にも罪のない動物達の命を狩りその身を食し生活してきたわけではないでしょうね!?」

 

「ハハハハ、何をそんな馬鹿な、こ...............と.................を...................................おっしゃいますか!」

 

「なんですか!?今の微妙に長い間の末に開き直ったように答えるあなたは一体なんなんですか!?」

 

本音を言ってしまえば思い当たる節がいくつかあったなんて今のこのテンパって理性が半ば飛びかけている仙人に言うことなんてできない

そう言ってしまえば俺の命どころか肉体が消し飛んでしまうだろう

仙人だからってお慈悲は期待できない、それにコイツは俺がサイボーグだってことを知らないから下手に力を使うわけにもいかない!

 

「蒼蔦ー!」

 

俺が命の危機(?)に陥って希望を失いかけたその時、外で茨木邸に集まった動物たちと戯れていたおくうが厨房の扉を大きく開け放った

 

「おくう!」

 

「ねぇねぇ。肉まんまだできないの?」

 

茨木は一先ず俺の首から手を離してくれた

状況が状況だったからな、茨木もおくうが乱入してきたことから理性を取り戻したんだろう

 

「悪いな、実は豚肉がなくてな」

 

「へへへ、そうだと思ったよ。やっぱり私凄い!」

 

『え?』

 

俺と茨木は言っていることがよくわからず思わず声を揃えてしまう

おくうはパァッとキラキラした笑顔で右腕に持っている何かをズルズルと引きずってここまで持ってきたようだ

何か嫌な予感しかしないのだが...

 

「.......おくう、何だそれ?」

 

「豚。」

 

瞬間、ドサッという効果音とともに茨木はブクブクと泡を吹いて気絶した

 




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一四/掃除をすると心が綺麗になるって言うけど根が腐ってたらそれはもはや修復できないものなんだ!!

テスト中だけどやる気が出ないので更新!


今日は月に一回の地霊殿大掃除の日である

 

太陽の光が遮られている代わりに灼熱の業火の当てられている地底に建つ巨大な地霊殿という屋敷に住む俺こと銕蒼蔦は(自分で言うのもなんだが)慣れた手付きでステンドグラスを乾拭きしてから水拭き、その次にまた再び乾拭きという作業を繰り返していた

そもそもこの大掃除は本来外の世界では新年に一度行うか行わないか程度の行事なのだが潔癖症までとはいかないが綺麗好きな家主、古明寺さとり様が提案し長年続いているらしい

なんでも地霊殿が一度関わった異変で地霊殿の中が博麗の巫女さんと白黒魔法使いに無茶苦茶にされたことから始まったとも言われている

俺は雑巾をバケツでジャブジャブと濯ぎ、ギューと力を込め雑巾を思いっきり捻じり絞る

地霊殿のロビーにある八咫烏を象った巨大なステンドグラスはちょっとやそっとじゃ綺麗にはならない、というよりサイズが巨大であるが故に全部やるのに時間が掛かるだけなんだがそこは気にしてはいけない

 

「......綺麗なんだけど、もっとこう小さくても良かった気がするんだよな」

 

俺は溜息と一緒に思わず愚痴も一緒にこぼしてしまう

どうやら俺はここの雑巾掛けだけで一日が終わってしまいそうだ、皆の所まで手伝いに行けそうにないな

俺はバケツの水がかなり汚れていることに気がつき、水を入れ替えるために何故か水道が通っている中庭に移動する

中庭にはたくさんの猫、犬、鳥、イノシシ、リス、トカゲ、蛇、蠍、ポニー、亀、牛、ゴリラ、オオカミ、イグアナ、ツキノワグマ、チーター、豹、ホワイトライオン、インベーター、鳳凰、麒麟、エトセトラエトセトラ...

と言った具合にさとり様のペットが数多くウロウロと歩き回っている

本当、あの動物マニア仙人様顔負けの面子とも言えるだろう

地霊殿だけでも動物園を開けそうなほどの数の動物たちのいる中庭から少し離れたところに水道が通っている蛇口がある

河童に頼んだのか、スキマ経由でクラ○アンに依頼したかは不明だが外の世界と同様に扱うことができるので俺にとってはありがたかった

 

よく見ると先客がいた

 

「お燐」

 

「あ、どうしたの?もしかしてここ使うの?」

 

そう、猫又もどきのお燐だ

彼女は正式分類すると火車という種族であって見た目こそ猫又だが猫又ではないらしい、耳も人間のモノと猫のモノ両方あるし全く種族詐欺も甚だしいトコだ!

 

「.....何か失礼なこと考えなかった?」

 

「はて、何のことやら」

 

俺はおどけるようにして誤魔化した

どうやらここの住人はさとり様の影響を受けて読心術が人一倍優れているようだ

 

「お前はここの担当なのか?」

 

「そうだよ、中庭もさっきまで掃除してたんだけどさとり様がやって来てあたいのコレクションの隠し場所がバレちゃってさぁ〜、ちょっとテンション上がんないのよ」

 

お燐はあはは、と笑いながら軽く涙を流したそうな表情を浮かべる

いつもはピンッと立っている猫耳も今はしゅんと垂れ下がっている、空元気のようだ

 

「コレクション?中庭にそんなモンあったのか?」

 

「うん、あの辺に集めた死体を九つくらい埋めてて」

 

「この庭の肉食動物中心にやたらと血気盛んな理由がわかった気がする!どうして中庭に埋めたりしたんだ!?」

 

「だって部屋に持って行ったら臭いし不潔だし!」

 

「じゃあ集めなきゃいいじゃん!」

 

どうやら例の死体はさとり様が発見して直ぐに処分したらしいが一体誰のモノなのだろうか

名前も顔も知らないが一先ず手を合わせておこう

 

「それであんたは何しに来たの?」

 

「あ、あぁ、水を入れ替えに来たんだよ」

 

「ていうか仕事遅くない?どうせまだあそこの雑巾掛けしてんでしょ?」

 

「ほっとけ」

 

お燐はやたらニヤニヤも意地の悪い笑みを浮かべながら肩に手を回してくるが俺はバケツの水を一旦全て出し、蛇口を捻り新しい水をバケツの半分くらいまで入れる

 

「あれ、満タンまで入れないの?」

 

「満タンまで入れたら重いしこぼしちゃうかもしれねェだろ、この位が丁度いいんだよ」

 

お燐はコクンと小首を傾げバケツの中に映る自分自身と俺の顔を覗きながら質問を投げかけてくるも俺はごく自然に正論を返す

俺は妖怪じゃないからそこまで力があるわけでもないし空を飛べるわけでもないから徒歩で移動するしかない

そこんところの違いをお燐には是非ともわかっていただきたいのだがどうもそこは種族の壁というモノが理解をどうしても阻んでしまうのだ

 

「ねぇあんたさぁ、思ってたよりも軟弱で女々しい奴なんだね」

 

「どういう意味だよそれは、俺はただ単に合理的かつ安全に作業を進めるための自分の中の最良の方法を選んで進めてんだよ」

 

「そこよ!男ってさぁ、もっとこう、なんて言うかわぁー!って感じで無理難題にも果敢に挑むイメージしかあたいにはないからさ」

 

「それは確実に偏見だろ!」

 

「あくまでもイメージよ、男って主人公みたいに後先考えずに突っ走る馬鹿が多いイメージしかないからさ」

 

「おま、この野郎馬鹿ってハッキリ言いやがった!!」

 

「あたいは野郎じゃないんだけどね」

 

「うるさい猫又もどき!」

 

「酷ッ!?」

 

お燐は猫又もどきという単語にショックを受けているが俺は気にする様子もなく軽く流し、ため息をつく

 

「大体な、こんなグダグダで長ったらしいトークを見ても画面の向こうの皆様は満足しねェのだよ!こんなんだから近日アクセスも総合UAもお気に入りも感想も増えずに挙句の果てランキングに載ることもなく終わってんだよ!」

 

「何の話!?」

 

俺の突然の怒りにお燐はとりあえず突っ込んだ

彼女はどうやら突っ込まなければいけない何かを感じたようだ

 

「まぁ、俺は主人公でもなければご都合主義なんてモノに縛られてるチート野郎じゃないからな。あくまでもサイボーグってだけの凡人だしな」

 

「それは凡人って言わないと思う」

 

「うるせェなお燐、お前はさっきから俺に何を求めてんだよ?」

 

「熱い夜」

 

「ちょっと待てコラァ、何サラッと聞き流せない単語を何気なく発してんだ!」

 

俺はお燐の一言に今までにないくらいに全力で突っ込む

自分じゃ見えないがおそらく今の俺の顔はリンゴの様に真っ赤になっているだろう

文面からは伝わりにくいかもしれないが俺の声は今までよりも大きいモノとなってしまった

そんな俺の様子にお燐は面白そうにニヤニヤと頬を緩めて、

 

「やだ、何興奮しちゃってるの?もしかして本気にしちゃったの、本気にしちゃったんでしょ?うわ〜やっぱり男って所詮欲情にまみれたゴミクズだったのね、マジないわ〜引くわ〜。あたいがあんたにこんなこと言う理由どころか価値すらもないし。ていうかあんた結構初心なのね〜この程度で興奮とか、ホントにないわ〜」

 

「.....頬真っ赤に染めて俺とも視線を合わせずに明後日の方向に向かって罵倒しても説得力どころか何がしたいのかすらわからんぞ」

 

俺はお燐にそう指摘するとスカートの下から覗いている二本の尻尾がまるで何かに思いっきり引っ張られたようにピンッと立ち、後ろに一歩引いて指で俺を指しながら

 

「う、うるさいうるさいうるさいうるさい!あたいがいつあんたのこと好きとか愛してるとか下着盗んだとか部屋に頻繁に出入りしてるとか飲みかけのお茶飲んだりとかしたって言った!?こ、根拠も証拠もないのにありもないこと言わないでよね!」

 

「今突っ込みが追いつかないくらいのとんでもないこと言いまくったよな!?それが真実だとしたら俺はお前に対する対応を今後少し考えないといけないんだが!?」

 

「.........................................................................................................................全部嘘よ」

 

「その長い間は一体何なんだよ!?」

 

長い長い沈黙の末、気まずそうに顔を逸らし放った一言はまさかの無罪主張だった

お燐は回復すると頬を真っ赤に染めて爪を立ててガリガリと俺の体で爪を研ぎ始める、正直言うとやめてもらいたい!

 

「うぅぅぅぅ、あ、あんたのせいよ。あんたがあたいに突っかかってきたせいでこんな辱めを人間風情の前で、ふにゃぁ!?」

 

「悪かったな人間風情が猫又もどきの愚痴を聞く羽目になっちまって」

 

俺は笑顔でお燐の両頬を抓りムニムニと弄ぶ

 

「ひょ、あんふぁやふぇひゃしゃいよぉ...」

 

「あ?何言ってるかわからないなー」

 

「ほ、ほのひゃろー!」

 

俺はお燐の頬を引っ張ってムニムニするのが結構楽しくなってきた

この場に鏡がなくて正確なことはわからないが恐らく今の俺の表情は花妖怪が絶好調で快楽に溺れた時の笑みと近いモノがあるだろう

涙目で反論するお燐の言葉を全て無視して俺はひたすらムニムニと引っ張り続ける

 

「ほ、ほへんひゃしゃい、ほ、ほふはふぉひゅりゅしくらしゃひ...」

 

「やだ」

 

「ほ、ほのふぉにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

そこから暫くの間、俺は新しい娯楽をひたすら楽しんだ

 




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一五/後先考えずに行動することが迷惑なのは結果的にいい方向に進むなんてことはほぼ確実にないからだよ!

地霊殿は今日も平和です


因果応報とはまさにこのことであろう

 

「......マジ悪いって、このことは本当に俺が悪かったって」

 

「......もう謝っても仕方ないからさっさと終わらせよ」

 

「了解」と俺は隣で箒で床の埃を集めるお燐に簡単に返事を返す

俺は引き続きそのままステンドグラスの水拭きをひたすら続ける

 

どうしてこんなことになったかって?

 

中庭でお燐のことを弄んでると激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態のさとり様がやって来て長くありがたい説教を述べ五時間位行われ更に罰としてお燐と供にロビー全体の掃除を任されたというわけで今ココである

さとり様は去り際に「そんなにお燐といるのが楽しいならもっと居ればいいじゃないですか...」と顔を逸らしていたことも説明に加えておこう

 

.....まぁ、今回は全面的に俺が悪いので一番の難所で誰もが避けるステンドグラスの掃除は俺がやっている、というか最初からココの担当だったんだけどね

ちなみにさとり様やこいし様、おくうは既に就寝してお休みなさってる

地底だから時間の流れがわかりづらいが半年もここで生活していれば体が覚えてしまうようで正確ではないにしろ大体の時間は把握できる

しかし今は時間など大した問題ではない、今は目の前の与えられた使命を果たすのだ銕蒼蔦!

 

「ねぇ、ちょっと塵取りやってよ」

 

「そんくらい自分でやってくれよ、俺だって自分のトコやんのに精一杯なんだからよ」

 

「.....こんなことになったのは誰のせいだと思ってんのよ?」

 

「満更じゃなさそうな表情でニヤけてたのはどこのどいつだよ?」

 

「サ、サァーネー、ダレノコトカシラネー」

 

「この部分終わったら手伝ってやるからさっさと自分の世界から戻ってこい」

 

俺は明後日の方向に目を向けているお燐をジト目で睨み溜息を一つ吐く

ステンドグラスの自分の背丈と梯子で届かない場所は俺の右腕に搭載されているマジックハンド顔負けの伸縮機能(最大2.4m)を使いゴシゴシと作業を進める

 

八咫烏の姿が描かれたステンドグラスは徐々に本来の輝きを取り戻し、灼熱地獄が照らす光を反射するように全方位に光を放つ

お燐の方も随分と埃が集まっているようだ、というか俺に頼まなくても普通にやった方が絶対に早く終わりそうなんだけどな...

俺は一旦梯子から降りてお燐に声を掛けようと汗を拭いながら近づく

 

「おいお燐、そろそ....!?」

 

「....?どうしたの??」

 

俺は目を疑った、何故...

カッ、と物凄い形相で普段の二倍程目を見開いた(お燐談)俺はワナワナと震え始め(お燐談)ゆっくりと目に写ったそれを指差す

 

「そ、それは.....」

 

「一体何なのよ?」

 

お燐はうんざりした様子で俺を睨む

今思えばこの地霊殿の面子の中でも一番ギクシャクした関係から始まったのはお燐だ、その影響かは知らないが今でもたまにお燐と口論になることが多い

だから彼女は恐らく冗談抜きでうんざりしているのだろう

でも仕方ないじゃないか、誰にだって嫌いなモノの一つや二つあるのだから

 

それは美しい黒く不気味な光沢を放つ

 

それはユラユラと怪しげな雰囲気を醸し出す

 

それは両の瞳をギラリと光らせている

 

それは非常に生命力の強い生き物でちょっとやそっとじゃ倒せない

 

それはカサカサとゾクっとする音を響かせながらひたすら床を歩き回る

 

それは時々宙を舞い万人を恐怖のどん底に叩き落とす

 

それ、いやそいつは.....!

 

「GO☆KI☆BU☆RI...!」

 

厄災の悪魔が俺の前、今ここに降臨したのであった

 

「何でお前がこんなとこに!?」

 

「ちょ、あんた?どうしたの?」

 

「クソッ、やはりこの世界でも覇権を握るつもりか!?そうはさせねぇぞ、こっちじゃ向こうと違って貴様を死滅させる方法なら何万通りもあるんだ、覚悟しやがれッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

行け、お燐!君に決めた!!」

 

「なんであたいが!?」

 

俺は悪夢の蟲神、通称プロフェッサーGから距離を三メートル開き安全圏へと避難する

本来ならば百メートル避難しなければ本当の安全とは言えないのだがそこまですれば地霊殿を出て旧都を越えて灼熱地獄の果てまで行かなければならない!

大袈裟と思った画面の向こうの皆様、断じて大袈裟などではないッ!

全ては自分の身を守り世界を奴から守り抜かねばならんのだ!!

.....あのトラウマを生んだ悲劇はもう繰り返してはならない!

 

「.....ていうかいつまでそこにいんのよ?」

 

「奴が完全に姿を消すまでだ、いいかお燐。決して奴を怒らせてはならない、付け加えるならば叩き潰すのもアウトだ。奴の繁殖力を甘く見た瞬間命を落とす瞬間だと思え!!」

 

「.....でもたかがゴキブリじゃない」

 

「その名を呼ぶなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

俺は耳を塞ぎ地霊殿が震えるほどの大きな声で叫ぶ

その様子にお燐はきょとんとした後ニヤニヤと怪しげな笑みを浮かべているのが俺の目にはハッキリと映った

何か「ヘェ〜あんたってこんなのが苦手なんだ〜」的な思考がさとり様ではないが普通に伝わってくる!

 

「ねぇねぇ、ちょっと塵取りが動いてゴミが入りにくいからあんた塵取り支えててよ」

 

「なら塵取りをこっちに持ってきてくれ」

 

「あんたがこっち来なさいよ」

 

「絶対にヤダ!」

 

俺はゴキ○ェットを両手に構えながらお燐の言葉を否定する

というか否定するしかない!!

だがお燐があんな態度で奴があそこにいてはいつまでも掃除が終わらない

俺は妖怪でも神でもなく人間だ

妖怪や神と比べても傷つきやすく疲れやすく腹も減りやすい

つまり俺は掃除を早急に終わらせて睡眠を十分に取らなければならないのだ!

だというのに奴がそれを遮る!

 

.......クソ!こうなったら最終手段だ!

 

「殺られるくらいなら殺ってやる!!」

 

俺は左の脇腹をパカッと開き中に搭載されていた筒状の棒を一本取り出す

見た目はおくうの制御棒と近いモノが見られる

俺はそれをそのまま左腕に装着して右手で持ち手を握る

そして奴に狙いを定める

 

「覚悟しろ....!俺が跡形もなく増殖できぬように消滅させてやる...!」

 

「ちょ、あんた!それが何だかよくわからないけどいくらなんでもそれは大袈裟!」

 

「説明しよう!これこそ俺とにとりの技術とおくうの制御棒と八卦路の構造を組み込み更には応用し魔法と科学技術の応用して完成した俺専用の兵器、超エネルギー圧縮砲!大気中に漂う僅かな霊力や魔力、妖力、神力とありとあらゆるエネルギーを一点に集中させる術式とおくうの核融合にも匹敵するエネルギーを生成し白黒魔法使いのマスパよりも鮮やかで派手な超高温の熱光線を放出する俺の持つ一応非殺生設定搭載の最高最強の武器!しかもまだ一度も試し撃ちはしたことはないッ!!」

 

「よくわからないけどなんでおくうのエネルギーに匹敵する力をゴキブリ一匹のために使おうとしてる訳!?ゴキブリは確かに跡形もなく消滅するだろうけど地霊殿が保たないよ!!」

 

「奴が消えることと比べたら苦でもないさ」

 

「爽やかにさらっと何言ってんのよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!?」

 

俺は叫ぶお燐をスルーし奴に狙いを定め、持ち手にあるグリップを軽く捻りエネルギーの充填を始める

俺の体の中に含まれる僅かな霊力と大気中の様々なエネルギーが一点に濃縮され淡い光を放つ

 

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!?本気で撃つ気なの、地霊殿壊れちゃうよ!?」

 

「建て直せば済むことだ!」

 

「その前にゴキブリ見逃せばいいことだとあたいは思いまーす!」

 

「これも地霊殿と俺の生活環境の保護、そして俺のトラウマと過去をこれ以上刺激しないため必要なことなんだ!」

 

「ほぼ自己中心的な考えで地霊殿を崩壊の危機に晒さないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

お燐は顔を青くし冷や汗をダラダラに焦りに焦って俺の体を羽交い締めで抑えてくる

彼女の未発達な貧乳が体に当たるが今はそんなことで欲情している場合ではない!

一刻も早く奴にトドメを!

 

充填が完了し発射の合図とともに膨大なエネルギーが一直線放出される

 

「くらえG!レーザービーム!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

レーザービームは一直線に標的に向かって放出された

 

(あれ?ゴキブリはどこに...)

 

地霊殿に淡い光が包み込んだ

 

 

 

「それで?一体掃除をするだけで何でこんなに散らかるのかしら?」

 

「す、すみません」

 

結論から言わせてもらおう

俺がレーザービームを放ったときに奴は既にカサカサとその場を移動してしまっていたのだ

お燐はレーザービームの威力に腰を抜かして動けずにその場にぺたりと座り込んだまま一歩も動かなかった

俺は奴の捜索のためレーザービームを放ったバケモノ兵器、G.Ⅱ.k-nitori7を装備したまま捜索したのだが騒ぎを聞きつけたさとり様が目を覚まして先ほどよりも目が虚ろな笑顔でニッコリと俺の機械化してるはずの肩をミシミシメキメキと跡が残るほど強い力で握り締められて現在説教を受けています

 

「い、いや、ですがさとり様。奴を退治することには床の大穴一つ小さな被害ですよ、名誉の傷ってやつですよ!」

 

「問答無用です、たかがゴキブリごときにこんな強力な力を使う貴方には少しO☆HA☆NA☆SIが必要です」

 

さとり様は額の青筋をビキビキと皺の寄ったお婆ちゃんのように険しい表情に変えていく

その姿が般若か修羅かに見えてしまい先程から冷や汗が止まる気配がない

 

「へぇ〜お婆ちゃんときて般若に修羅........ね♪」

 

「...................」

 

その後、さとり様が呼び寄せた白黒閻魔様と動物仙人様のお二方を加えた説教が半日近く行われ、さとり様にG.Ⅱ.k-nitori7を没収されたのは言うまでもあるまい

 




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一六/過ぎ去った日々は戻ってこないけど過ぎ去った日々を取り戻すことはできると思うんだ!

たまにはこちらも執筆(^^)
少し無理矢理感がありますがご了承ください


無縁塚、魔法の森をくぐり抜けて再思の道を抜けた所に位置する危険だらけの幻想郷の中でも何かと危険度が高い場所で外の世界から紛れ込むモノも少なくはない

冥界、外の世界、幻想郷と言った三つの世界の境界が交錯する場所でもあり自分自身の存在そのものを維持するだけでも困難な場所とも言われており、基本的に好き好んで近づく物好きの方が少ない

 

まぁ、俺も訳あってこの無縁塚にやって来る羽目となってしまった物好きの一人なのかもしれない

 

(あのチビ閻魔め、あんだけ長い説教したその上に反省文なんて書かせやがって!ここに来るまでどんだけ苦労すると思ってんだ!」

 

途中から声に出てしまっていた気もするが辺りを見回しても人影も人の気配も見当たらないため誰にも聞かれてはいないだろう

俺こと銕蒼蔦は一週間前の大掃除の日にGをぶっ飛ばして地霊殿の一部を損傷させてしまったことで説教という名の拷問を受けた後、チビ閻魔に辞書と間違うほどの分厚さを誇る原稿用紙(しかもご丁寧に全部裏表記入式)を渡されて「こちらに反省の心意気をお書きください。一言一句丁寧に、そして全部埋めなさいよ?」とスペルカードを構えて脅されてしまったのだ

 

そしてほぼ不眠不休断食五日間で反省文を全て次の日に全力で休み、今日提出するために無縁塚までやって来たのだ

ここにやって来るまでに魔法の森の妖怪に襲われるわ地底じゃ勇儀さんに絡まれるわエトセトラエトセトラ...

あれ、何だろ?目の前が霞んできた気がする...

 

幸いこの無縁塚はそこまで広くないのであのチビ閻魔を見つけるのにそこまで時間は掛からないだろう

相変わらず外の世界から流れ着いた壊れた道具や使い道のなくなった電化製品や結構リアルな人骨や誰かわからない見知らぬ人が楽しそうに笑っている写真だとかを足場にしなければならない、だがチビ閻魔の住居が近くなると緑や普通では見られない植物が生い茂る場所になってくる

 

それを証拠にさっきから足場に草が目立ち始め、枝垂れ桜っぽい木や彼岸花が数を増やしていた

 

そしてその枝垂れ桜の一本の枝に彼女がいることも証拠の一つ...

 

「ぐぉ〜、ぐぉ〜...」

 

......おっさんかお前は

木の上に簡易的な座敷間が設置されその上で何処か高級感を漂わせるソファで横になり頭に新聞を乗せて大きくイビキをかいている赤い髪の少女がいた

 

「んぐぅ、あたいはまだまだいけるぜ〜!むにゃむにゃ...」

 

「.............................」

 

俺はその光景をしばらく見続けた後、無言で右拳を握りしめる

そして、桜の木を全力で殴りつける

拳は機械化の影響で鋼鉄の硬度(実際)の拳は桜の木に振動を与えた

 

そして座敷間ごと少女が落下してくる

 

「きゃ!?」

 

少女は何が起きたか理解できないと言った様子で辺りを見渡す

そしてこちらを見た時に俺の存在に気がついたようだ

 

「お、お前か!あたいのサボ...いや、休暇を邪魔したのは!?」

 

「.....見苦しいぜ小町、素直にサボりって認めちまえよ。俺これからお前の上司に会いに行くつもりだからよ」

 

「お前絶対チクるよな!?あたいがサボってたことついでに絶対チクるよな、いやいやそんなよくわかったなこの野郎、的な笑み浮かべてんじゃないよー!」

 

このサボりの名前は小野塚小町(おのづかこまち)

死神でチビ閻魔の部下らしいがよくサボることでチビ閻魔も手を焼いているらしい

そこで俺がついでにこいつのサボリをチビ閻魔に報告して説教を短くしてもらおうという算段だ」

 

「途中から声に出てたぞ!?お前は命の恩人に対してそんな態度取るやつだったのか!?」

 

「は?命の恩人?俺とお前の関係ってそんな重要な伏線で繋がってたっけ?」

 

「まさかの否定!?」

 

「いや、だって俺が幻想郷に流れ着いて無縁塚で死にかけの所にやって来て食糧とか言って残飯を持ってきやがった奴はどこのどいつだよ?」

 

「いやいやいやいやいやいや、十分あたいはあんたの命繋ぎとめてるよね!?これ以上にないほどの恩あるよね!?」

 

「どうせなら残飯じゃなくて新鮮な食い物が良かった」

 

「それただの我儘じゃん!」

 

「我儘だが何が悪い?」

 

「何で開き直ってんの!?」

 

ウム、普段突っ込んでばっかだから久々にボケに回るっていいよね

何かストレスも解消されるし小町の場合は弄びがいがある

 

「そういや何で蒼は無縁塚まで一人でわざわざ来たんだよ?あたいに会いになんてくだらない理由とかじゃないんだろ?」

 

「あぁ、チビ閻魔にこれを提出しに来たんだよ」

 

「.....何それ?」

 

「反省文」

 

何か小町が同情でもしているかのような眼差しを向けてくる

 

「蒼、あんた苦労してんだね」

 

「まぁ色々とね、小町も相変わらずサボりたいほど仕事が詰まってんのか?」

 

「.....そういうことでお願いします」

 

俺と小町が意気投合した貴重な瞬間であった

 

 

 

「判決、貴方は私を馬鹿にしたので黒です!」

 

「ちょ、何を馬鹿にしたんですか!?言いがかりはよしてくださいよ!」

 

「黙りなさい!その豊富な胸こそが罪の重さ!よって貴方は黒です、異論は認めません!」

 

「り、理不尽だ〜!」とナイスバディな女性の魂はどこかへと連れていかれてしまった

.....こんなのが閻魔様の一角なんて信じたくないのだがどうやら現実は目の前にあったようだ

 

「む、銕蒼蔦ですか。本日は一体どのようなご用件で?」

 

俺に気がついた四季映姫ヤマザナドゥ(しきえいきやまざなどぅ)がこちらにトテトテとやって来た

さとり様と同じくらいの身長で可愛らしい容姿なのだが、何分頭が相当の堅物なので見た目に惑わされてしまえば終わりである

 

「前お渡しくださった反省文ですよ、終わったんで持ってきたんですよ」

 

「え、本当に全部書いたのですか?」

 

「え?」

 

「いえ、まさか本当に全部書く馬鹿がいるとは思わなかったので少々驚いているだけです」

 

「よしチビ閻魔、覚悟はいいな?」

 

俺がアレを書くのにどれだけの苦労をしたと...!

ない頭必死に使って書くことがないのに無理矢理言葉を埋め込んで全部やったというのに...!

 

「え、まさか本気だったんですか?ぷくく、ですがこれで反省の意は表れているようですので受け取っといてあげらすよ、仕方ありませんね」

 

「じゃあ、やらなくても良かったと?俺のあの五日間は無駄だったと?」

 

「そんなことは言ってませんよ、しかし自主的に行える良心的な人はそうそういませんよ。それにしても五日ですか、よくガンバリマシタネー」

 

俺はチビ閻魔の首根っこを何の前触れもなく無言で掴み、三途の川の方向にまで全力で投げ飛ばした

 

チビ閻魔は星となりました☆

 

 

その後、珍しく仕事をしていた小町によってチビ閻魔は回収されたらしい

そして態々また地霊殿までやって来て気迫と勢いと威圧に負けてまた説教を半日ぶっ通しに行われたのはまた別の話である




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一七/人は誰でも空を飛びたいとか思ってると言われているけど高所恐怖症の人からしたら何を考えているかわからないモノなんだよ!!

久々の投稿です(^^)


本日もあちこちで弾幕の轟音が響き渡り妖怪達が殺伐とした様子で殺気立っている平和な幻想郷

俺こと銕蒼蔦もこのあまりにも非日常的な光景を当たり前と捉えてしまったことに恐怖さえ感じている

 

「.....外の世界は平和ボケし過ぎなのでは?」

 

「ごもっともです、こっちに来てからそうとしか思えねェスよ。あっちで暮らしていた時のあんなことやこんなことが全部平和に思えてくるくらいにね」

 

「平和はいいことだと思いますけどね」

 

「ごもっともですよ、さとり様」

 

俺とさとり様、そして今は歩き疲れて俺の背中でお眠りになっているこいし様は現在紅魔館に向かっている

本来ならば行く理由どころか行く気すら起こらない吸血鬼のお屋敷だがある日を境にさとり様とレミリア嬢が友好を深めるとか言う理由で月に一度くらいのペースで紅魔館に行っている

たまにレミリア嬢御一行が地霊殿にいらっしゃることもあるのだが大抵が深夜とか早朝といった吸血鬼の弱点の一つである太陽が昇る前の時間帯となっている

まぁ、俺たちはそんなの気にすることはないけど

 

魔法の森を抜けて霧の湖に出てきた

やはり霧の湖というだけあって霧が濃く視界もとても良好とは言えない

 

「流石は霧の湖だな、何も見えない」

 

「蒼蔦さん見るのではなく感じるのです、まぁ妖怪の私は肉眼でもある程度は見えますけどね」

 

さとり様がドヤ顔で俺を見上げる

うむ、中々見られない経験かつ少々苛立ちを覚えた

だが可愛いから許す

 

「まぁ、見えるのは冗談ですけどね」

 

「冗談かよ!?」

 

最近のさとり様は何だか掴み所がない...

 

 

 

そして紅魔館に到着

え、その間何があったかって?

何もなかったよ、⑨が現れることもそーなのかーも出没しなかったよ?

 

「.....蒼蔦さん、近々永遠亭に行くことをお勧めします」

 

「何で!?」

 

突然さとり様に冷たい視線とともに本気で心配されてしまった、その視線辛いよ!あぁ、なんか第三の目までじと目でこっち見てるし!

 

「いっつも思うけど蒼兄ってよく叫ぶよね、マイブーム?」

 

「決して違いますからね!」

 

この姉妹は本当に...

あ、こいし様は途中で起きたので今手を繋いで隣を歩いてます

 

「で、毎度思うけどさ...」

 

俺は改めて紅魔館を見る

地霊殿に匹敵する程大きく何人住めるんだってくらいの西洋風のお屋敷でとにかく赤い

いや、この場合は紅いかな?

だが着目するのは決してそこではない、目の前にいる長身の少女に注目していただきたい

龍と書かれた帽子に明らかにメイドインチャイナっぽい服装、赤いロングヘアーの少女である

彼女は紅美鈴(ほんめいりん)、この大きな紅魔館の住人の一人であり武術に関しては幻想郷でも上位に位置するとも言われる使い手である

そんな腕っ節を見せつけるように門番として紅魔館の鉄壁の壁として今日も紅魔館を守っている...んだよな?

 

「すぅーすぅー」

 

『................』

 

うむ、相変わらず幸せそうに寝ていた

もし寝ていなかったら彼女が紅美鈴であるかどうかを疑わなければなかった

 

「こいし様、紅魔館に入って咲夜呼んできて」

 

「ひゃぃぃぃぃぃ!!さ、咲夜さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?ね、寝てませんよー、決してポカポカした天気と睡魔に負けて意識を失ったりなんか決してしてませんからねー!」

 

「あ、こいし様。やっぱいいです」

 

「相変わらず面白い人だね〜」

 

「こらこいし、指を指しちゃダメ、見世物じゃないんだから」

 

勢いよく目覚めた美鈴はどうやら現状を理解していないようで辺りをひたすら警戒している

 

「よぅ美鈴、そういうわけだから通ってくぜ」

 

「えぇ、どうぞ...........って何ナチュラルにスルーしようとしてるんですか!?私の扱い酷くないですか、私の台詞さっきのとコレの二つだけって酷くないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「チッ、このまま咲夜を呼んできてさっきの様子を録画したデータを紅魔館のレミリア嬢に献上しようと思ってのに」

 

「それ私の今後の存続に関わってくるんですけど!?こんなところで美鈴終了のお知らせ、とかありきたりの展開はやめてくださいよ、洒落になりませんよ!」

 

「それもそうだな、たしかにそれはそれで面白いかもな」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!この人やっぱり苦手だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

美鈴が地面にひたすら頭を打ちつけているが、大丈夫かコイツ?

一体何がどういう経緯と心境の変化でこんなんになっちまったんだ?

 

「あなたのせいですよ」

 

「え、俺何かしました?」

 

「どうやら死にたいようだな小僧ォ!」

 

「普段温厚な門番さんがご乱心だと!?」

 

まさかのキャラ崩壊に驚きを隠せない!

これは、戦うしかないのか!?

 

「蒼蔦さん、物凄い妖気です!あれは本気ですよ!」

 

「蒼兄、ここは私たちが」

 

「そうはいきませんよ、あいつが俺に何の恨みがあるかは知らねェが俺が決着をつけなきゃならない。そんな気がするんです」

 

俺は拳を握りしめる

リアル鋼の拳があの化け物にどこまで通用するか、俺が妖怪相手に引けを取らない互角の戦いができるのか

 

そんなことではない!

そんなことなど関係なしに奴の相手は俺がしなければならない、さとり様とこいし様が戦ってしまったらダメなんだ、彼女達にばかり頼っていてはダメなんだ!

 

「下がっててください、俺が決着をつけてきます!」

 

さとり様とこいし様は何も言わなかった

俺は改めて怒りの形相の紅美鈴と向かい合う

凄まじいプレッシャーと殺気に押しつぶされそうになるがここで退けば一生の笑い者だ!

 

「来いよ、お前の怒りは俺が受け止めてやる!」

 

「減らず口ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!」

 

 

 

妖怪の本性剥き出しの紅魔館の門番さん、紅美鈴!

 

立ち向かうは外の世界からやって来たサイボーグ少年、銕蒼蔦!

 

決戦の火蓋は切られた!

 

幻想郷の行方はいかに!?

 

紅魔館の行方はいかに!?

 

二人の戦いが幻想郷に何をもたらすのか!?

 

 

俺と美鈴の拳が.....

 

そして..........!?

 

 

 

真相は読者様の心の中!

 

ご愛読ありがとうございました!!

 

 

 

 

「勝手に終わらせてんじゃねぇよ!」

 

そんな作者の声が聞こえた気がした

 

 




感想、評価、批評、罵倒、その他諸々お待ちしてます(^^)

もちろん最終回ではありません(笑)


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一八/親しき友にも礼儀ありっていうこの言葉を考えた人は本当に天才だと思っている!

久々の更新、そしてもう一人の外来人登場!


現在俺たちはメイド長の咲夜により紅魔館の客室に案内されている。

え?門番との謎にシリアスに持っていった戦い(笑)はどうなったかって?

そんなの咲夜の介入によって丸く収まったよ、彼女のチート能力のせいで何もかもが終わったころには美鈴なんて頭から下地面に埋まってたし。

彼女、紅魔館のメイド長十六夜咲夜は人間でありながら超人的な身体能力と「時間を操る程度の能力」というチート染みた人外の力を有している。しかも操る対象は時だけではなく空間も対象となるようで、そのせいで紅魔館は外観と合わない部屋の広さとなっており同時に迷路のように複雑な作りになってしまっている。

あれもこれもレミリア嬢のご要望らしいのだが本人ですらも迷うことは多々あるらしい。

 

「ではお嬢様方を呼んで参りますのでこちらでゆっくりしてお待ちください」

 

扉を開けて俺たちが部屋に入るのを確認すると、彼女は俺たちの視界から急に消え去る。

本当チートな能力だと思う、ていうか態々能力使ってまで呼びにいかなくてもいいんじゃないのかな?

 

その後、ゆっくりくつろいでくれと言われたものの数秒程で扉がコンコンとノックされてしまったのでゆっくりと休む暇すら与えてくれなかった。

応答もなしに扉は吹っ飛び一人の少女が俺に向かって飛来してくる。七色の宝石のようなモノを羽の代わりとし翼の骨格を形成した異形の翼を持ち金色に輝く髪をサイドテールにした少女が.....!

 

「そぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「ちょ、フランドール嬢、まだ準備ってやつが、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

俺はお星様になったようです。

 

 

 

「ご、ごめんなさい」

 

「いや、いいんだフランドール嬢。大した怪我じゃなかったし、俺の不注意もあったからさ」

 

「.....背骨打撲と肋骨の数本骨折のどこが大した怪我じゃないのか」

 

数分後、霧の湖に落下したらしい俺は咲夜に回収されたようで何とか紅魔館に戻ってこれた。

目の前で顔を俯かして今にも泣きそうな顔のフランドール嬢はレミリア嬢の妹で、つい数ヶ月前までは狂気に支配され今の大人しい(?)性格ではなく破壊と殺戮を楽しむ危険な状態だったとは俺はとても思えない。

俺自身も体の半分を改造したサイボーグなのでそこまでのダメージはなかったのだがさとり様とこいし様は大いに心配してくれたらしい。

 

「まったく、本当に蒼蔦さんは注意力と回避力が足りませんね。帰ったら勇儀さんに頼んで鍛えてもらってはどうでしょうか、生き残るために」

 

「本当だね。蒼兄は男なのに弱いって本当にダメだよね。いくら妖怪と人間のハンデがあったとしても少しくらい強くないと」

 

..........えっと、彼女達は本当に心配してくれたのでしょうか?

俺はレミリア嬢の方に目を向けるとプイッと顔を逸らされてしまった。

咲夜に至ってはニヤニヤしながらざまぁ見ろ、みたいな表情を浮かべてるし.....

 

「ま、フランちゃんもちょっとは気をつけた方がいいよ。俺も受け止めるのに命張ってる時もあるからさ、自分の力はきちんと制御しないと」

 

「うん、私頑張る」

 

それはよかった、とボサボサと寝癖のついた深緑色の髪で右目を隠しているスーツを着崩した青年....?

ん、青年??

ちょっと待て、そこでフラン嬢の頭をなでなでしている青年は一体誰だ?紅魔館に男はいなかったはずだぞ、俺の記憶が正しければ。

 

「ちょっと待て、あんた誰だ?」

 

「あ、やっぱ気になる?結構自然な流れで参加したから気づかれてないと思ってたんだけどな〜」

 

青年はヘラヘラと笑う、どうやら本当に気づいてないと思ったらしいな。

咲夜は顔に手を当てて何故かため息をついてるし.....

俺たちが疑問に思っているとレミリア嬢が彼の前に立ち高らかに笑みを浮かべる。

 

「蒼蔦、彼もあなたと同じ外来人よ。つい先週くらいに幻想入りしてきて今ではこの紅魔館の執事として働いてもらってるわ」

 

「鰊原浚(かどはらしゅん)で〜す、咲夜ちゃんには頭が決して上がらない健全な青少年で紅魔館の執事してま〜す。ちなみに好きな食べ物は人里にある団子屋の団子で11月11日生まれ、さそり座のB型。趣味は三味線で得意料理はナポリタン、ついでに言えばこの紅魔館の中は広すぎるので未だに覚えられません☆」

 

.....何とも必要以上の情報を提供した自己紹介だった。

 

「こ、個性的な人ですね」

 

「あはは、よろしくね〜」

 

さとり様は苦笑い、こいし様は打ち解けあったみたいで握手をかわしてる。

 

「咲夜、お前あいつに一体何をしたんだ?」

 

「別に、ちょっと紅魔館内の掃除をお願いしたり体慣らしの為の対戦相手になってもらったり新作スペルカードの実験体になってもらったりしただけよ?」

 

「うん、十分すぎる理由だな」

 

咲夜はコクリと首を傾げるが幻想入りして一週間ちょっとした経ってない者にこちらの世界の戦闘や技術を浴びせることは少し酷な気もするが何だかんだで乗り越えて馴染んでるあいつも凄いと思う。

俺だったら絶対に無理だ。うん、地霊殿で本当によかった。

 

「そういや蒼蔦君、君も外の世界からやってきたんだよね?」

 

「あぁそうだ、半年くらい前からかな」

 

「そう、結構長いんだね」

 

鰊原は笑みを崩さずに話しかけてくる、どうやらかなり無邪気な青年のようで上手いことこの紅魔館に馴染んでいるようにも見える。

その前にあのレミリア嬢がよく咲夜以外の人間を紅魔館に住まわせることを許したことに驚きを隠せない。

彼女、紅魔館の当主レミリア・スカーレットはプライドの高い吸血鬼で本来であれば外来人など取って血を吸い尽くすはずなのだが。

彼女の気まぐれがうまく働いたのかもしれない。

 

「お前も頑張れよ、この幻想郷は生半可な覚悟で生きていける世界じゃないからな」

 

俺は新入りにそう忠告した、それでも彼は笑みを崩さなかった。

 

「安心してよ、その言葉は一週間前にも咲夜ちゃんから言われてるからさ。それにこんな面白い世界に来られたんだから俺としても簡単に死ぬのはつまらないからね」

 

彼、鰊原はニヤリと猫の目のように目を吊り上げて覚悟の光を込めらせて真面目な表情で、それでいてどことなく楽しそうに返事をした。

 

 

 

親睦会も終わりに差し掛かった時、俺はレミリア嬢に呼び出され別室で二人っきりになっていた。

 

「それで、一体何の御用でしょうか?」

 

「まぁそう硬くならないで、浚までとは言わないけど少しは楽にしなさいな」

 

「.....それもそうっすね」

 

俺はレミリア嬢の言葉に頷き目の前のティーカップに手を伸ばす。

 

「蒼蔦、あなたをここに呼んだのはあなたの能力について話をするためよ」

 

「俺の、能力?」

 

「そう、あなたは気がついてないようだけど蒼蔦、お前はその身に能力を宿している」

 

「どういうことですか、俺はそんな感じ全然ないですよ」

 

「でしょうね、だからさっき私は自分では気がついてないって言ったはずよね?」

 

レミリア嬢は咳払いを一つする。

 

「私もあなたの能力については詳しくはわからない。だけど何処か私の能力に近いモノを感じるわ」

 

「レミリア嬢の、能力と?」

 

レミリア嬢の能力「運命を操る程度の能力」、それに俺は近いモノがどうやらあるらしい。

 

「発現は、俺次第ということですか?」

 

「そうなるでしょうね、でも浚は既に能力を手に入れているわ。彼の適応性といい成長速度といい本当に外来人なのか疑いたいわね」

 

「あいつが.....」

 

「話はこんな所かしらね、そろそろ皆の所に戻りましょう」

 

レミリア嬢は静かに立ち上がった。

俺はすぐには立たずに少し悩んだ、もし自分に能力があるというなら少しだけ喜ばしいことである。

しかし半年近くも能力が発現することもなく今に至るため、その自分次第というのはどうすればいいのだろう?

鰊原は幻想郷にやって来て一週間たらずしか経っていないに関わらず自分の能力を見つけ出している。

彼は何をしたのだろうか、そして彼の能力とは一体どのようなものなのだろう?

 

「蒼蔦〜」

 

俺が思考の海を彷徨っているとレミリア嬢が声をかけてくる、どうやら俺のことを待っていてくれたようだ。

 

「すみません、すぐに行き」

 

「と、届かない」

 

ドアノブに手が届かずにただ背伸びをして悪戦苦闘しているだけであった。

 

 




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一九/基本的に勧誘販売やセールスの類やその他怪しげな宗教団体へのお誘いはお断りしています!

久々の更新です(^^)


「どうも、いつもでお馴染みのニコニコゆかりんのスキマ宅配でーす☆お荷物を届けに来たのでこちらにサインをお願いしまーす!」

 

「うん、何しに来たんだよ。ていうか何だよそのキャラは」

 

地霊殿にある一室のベッドで寝転がって外の世界から辛うじて持ってくることのできたソ○ーのウォーク○マンで音楽を聴いていると、俺の目の前つまり天井に穴が開いたと思えば空間に歪が発生し、その中から幻想郷の創世者である八雲紫(やくもゆかり)が某超能力都市の序列第五位みたいなキラキラした瞳でウィンクをしながらやって来たのだ。うん、普通に吐きそうだった。

 

「もぅ、ノリ悪くない?」

 

「悪くないし可愛くもない。若作りすんのは勝手だけど、そんなのは自分の式の前だけにしとけよ。見てるこっちが恥ずかしいから」

 

「.....この前藍と喧嘩して今冷戦状態なのよね。橙も寺子屋の友達と毎日のように遊びに行っちゃってるし」

 

「どうせ原因は百パーセントあんたなんだろ?」

 

うぅぅ、とドンヨリとした雰囲気で部屋の隅に蹲る幻想郷最強(?)のスキマ妖怪。俺としては彼女の家庭事情になど一切興味がない上に彼女が何故ここに突然やって来たのかもわからない。とりあえず両耳からイヤホンを外すことにした。

 

「それで今回は一体何を押し売りに来たんだ?基本的に地霊殿はセールスお断りだぜ?」

 

「いやいやいやいやいや、ちょっとは同情してよ!?こんな可憐な美少女が体育座りしてイジけてるのよ!励ますとか何かあるでしょ!」

 

「自分で美少女って言ってたら世話ねェな、ていうか本当に用がないんなら帰れよな。俺、あんた嫌いだし」

 

「結構傷つくこと言ってくれるわね!」

 

俺は笑みのないジト目で紫を睨みながら静かにイヤホンを付け直す。

 

「ちょっと待って!本当に荷物あるから、さとりちゃんが宅配頼んだ荷物あるから!」

 

「.....さとり様が?だったら直接本人に渡せばいいだろ」

 

「あなたから渡した方が面白いことになりそうなのよ!だからお願い、協力してぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「うわ、ちょ、泣きついてんじゃねぇよ!」

 

結構ガチで涙を流しながら飛びついてきた紫を必死に引き剥がそうと持てる力の全てを持って手を前に突き出す。途中、俺の右手は何やら柔らかい物体に触れた気もするがどうでもいいのでこの際スルーしよう。

 

「えぇー!そこスルーしちゃうの!?読者の期待全力で裏切っちゃうの!?」

 

「うるせぇ、さっさと帰れ!」

 

「じゃあ、これさとりちゃんに渡しといてね。それじゃ☆」

 

紫はそう言うとダンボールを一つ置いて投げキッスのオマケ付きでスキマへと姿を消した。

彼女の能力である「境界を操る程度の能力」はあらゆる境界を操作し弄ぶというチート染みた能力だ、どうやらあの能力で外の世界にも度々行っているらしいがそれでいいのか妖怪よ。

 

俺はまったく、と悪態を付きながらダンボールを持ち上げる。

中身はわからないがそこまで重いものではなく、片手でも持てる重さだった。何が入っているのか気になるところではあるがとりあえずさとり様の所にコレを持っていくことが先決だと判断する。

 

.....紫の思い通りになるのは嫌だが俺から渡した方が面白いとは一体どういうことであろう?

 

 

 

「さとり様ー、失礼しますよー」

 

一応ノックを二回鳴らしてさとり様の部屋に入る。読書の好きな彼女は部屋一面に本がありジャンルも様々でかなり幅が広い。

紅魔館の大図書館には負けるが俺もたまに本を借りにくることがある。

さとり様は俺の目の前で眼鏡をかけながら本を読んでいた。

 

「蒼蔦さん、どうしたんですか?何か悩み事でもあるんですか?」

 

「いや、そういうわけじゃないんスけど。紫が荷物を持ってきたのでそれを届けに...」

 

瞬間、さとり様は驚愕に表情を変えて手に持っていた本を床に落下させてしまった。オマケに頬を真っ赤に染めたと思えば眼鏡までも不自然にズレてしまった。何故だ!?

 

「あ、あの〜さとり様?」

 

「ななな、ななななななななんでしょうかぁ!?別に私はレミリアさんに勧められただけで私個人の趣味とかそんなんじゃありませんからね、蒼蔦さんんんん!」

 

うむ、意味がわからん。

 

「いや、あの、さとり様?一体何のことでしょうか、レミリア嬢がどうかなされたんでしょうか?」

 

「はぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!は、早くそれを置いてここから去りなさい!」

 

一体どうしたと言うのだろうか。そこまで言われてしまえば中身が気になってしまうのだが...

 

「え''、中身見てないんですか?」

 

「見てませんよ。ていうかこの中一体何が入ってるんですか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

.............................................................................................。

 

「.....中身、見てないんですよね?」

 

「見てねぇッスよ。他人のモノの中身見るわけにはいかねぇッスし」

 

「本当に見てないんですよね?」

 

「だから、見てませんって。ちゃんと能力使って確かめてくださいよ」

 

「.....見てませんよね?」

 

「能力使っても信用なしですか!?」

 

まさかそこまで俺の信用は失われてしまっていたのか!?確かにここ最近さとり様と話す機会が少なくなってしまっているのも事実だが仕事はキチンとしているはずだ。

主におくうの荒事業の後処理とか後処理とか後処理とか後処理とか後処理とか後処理とか!

 

「べ、別にそんなんじゃないんです!だから、お願いですからそんなに気にしないでください!」

 

気がつけば俺は三角座りをしてしまっていたようだ、惨めだ。

 

「それで、結局その中身って何なんですか?わざわざ紫の奴を頼ってまで仕入れるほどの貴重の品なんですよね?」

 

俺がさとり様に質問するとさとり様はドキン!という効果音と一緒に体をビクン!と動かしプルプルと体を震わせる。

質問しただけなのに何だか地雷を踏んでしまったような感覚でいっぱいだった。

 

「た、確かに貴重な品です。この幻想郷では手に入りにくいほどの、それはもう」

 

「ということは外の世界のモノですか?」

 

「そ、そうですよ。こちらよりもあちらの方がこういう文化は発展していると聞いたので」

 

「う〜む、益々中身が気になる」

 

「も、もういいじゃないですか、ね!そこまで気にするようなことじゃありませんから、ねッ!」

 

「は、はい」

 

俺はさとり様の威圧に耐えきれなく肯定してしまった。彼女の目は語っていた、これ以上何も聞くな、と。

 

そうして俺はさとり様の部屋を後にした。

 

 

 

数時間後...

 

(.....やはり恥ずかしい)

 

私は蒼蔦さんが部屋を出た後にダンボールの中を取り出して間違ってないか確認をして、早速試着してみました。

そう、レミリアさんに勧められて買ったゴスロリと呼ばれる服を。

紫さんに発注を頼んでみたら一発オーケーを貰い、本日届いて着てみたのですがやはり恥ずかしいです。

こんな服で人前に出てる人は本当に凄いと思います。

 

私は鏡の前で恥ずかしがっている自分の姿に更に恥ずかしくなってしまい、そろそろ着替えようと服を脱ぎ始め

 

「さとり様ー、そろそろ晩飯ですよー...」

 

見られてしまった、私が一番見られたくなかった人に!

 

 

一方、蒼蔦視点では。

 

え、何コレ?どういう状況??

さとり様はどこから調達したかわからない普段着ないような黒いゴスロリ服を着て鏡の前で立っていた、ていうかこの部屋鏡あったんだ。

 

俺は状況が読み込めずに立ちすくんでいるとさとり様がスペルカードを構えてこちらに向かって走ってくる、ん?スペルカード?

 

俺の意識はそこで途絶えた。

ちなみに翌日になってもこの日何故自分が気絶しており何をしていたのか一切思い出すことができなかった。

 

 




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二十/現地のことは現地の人に聞くのが一番だけど勝手に盛り上がられて会話にならない時ってよくあるよね!

久々の更新です(^^)
勉強の息抜き程度のクオリティですが勘弁してください(笑)


銕蒼蔦、現在魔法の森までやって来ております。

 

地底で生活を続けていて気がつけば地上の季節は流れ流れて秋、収穫の秋、芸術の秋、食欲の秋、読書の秋、妖怪の秋、弾幕の秋などの秋に使える代名詞的な言葉が多い季節である。

魔法の森も少し前までは深緑の木々が辺りに怪しい雰囲気を醸し出していたが、今はキノコが大量に繁殖してしまい更に怪しい雰囲気と謎の胞子が漂っている。

気候で言えば穏やかで落ち着いてきている。

 

俺は食料を調達するために魔法の森でキノコ狩りをしている。

昨日、冷蔵庫の中にあった大量の食材が一夜にして半分以上なくなるという異常事態(後に犯人はわかったが)に襲われたのでこの先一週間近くの食材を調達しなければならなくなってしまったのだ。

 

当の本人が来ていない理由は察して欲しい。

 

しかし、やはり魔法の森は一筋縄ではいかなかった。

ジメジメしてるし怪しい空気が漂っているし臭いし眠たくなるし、おそらく半分以上がキノコの胞子による影響だろうと俺は勝手に完結させる。

 

ちなみに俺にどのキノコが食べられないかなんて見当つかない。

もしかしたら1U◯キノコがあるかもしれないし◯神キノコがあるかもしれないしノコ◯コの実だってあるかもしれない、カラダカラキ◯コガハエルダケみたいな恐ろしいモノもある可能性だってある。

それはそれで面白そうだが、ク◯ボーやキノ◯オ、タマ◯ダケやモロバ◯ルなどは勘弁願いたい、しかもこの幻想郷においてそんなモノは存在しないと言い切れない辺りが恐ろしい。

 

両手にポリ袋一杯のキノコを収穫した俺はどれが食べれるキノコかを見てもらうために友人のいる香霖堂を目指す、幸いそこまで遠い位置ではないため丁度良い。

ついでだし久々に外の世界から流れ着いたモノを見てみるのもありかもしれ「マスタースパーーーーーーーーーク!!」い......って、え?

 

「どわっ!?」

 

いきなりどこからか聞き覚えのある高飛車の声が聞こえたと思えば目の前を凄まじいエネルギーの塊が通過した。

反射神経が働いたお陰で直撃は免れたが当たれば大きなダメージを負っていたに違いない!

 

「フッ、貴様に私が倒せるかな?霧雨の魔法使いよ」

 

「上等だッ!お前が馬鹿にした人間様の底力をみせてやるゼ!」

 

「哀れなり、人間よ。底が知れるわ」

 

「勝負はまだまだこれからだゼ!」

 

俺がビームの飛んできた方向に目を向けると二人の少女が互いにガンを飛ばしながら向かい合っていた。

 

「どうやら私を本気で怒らせたようだな。私の九つの頭が貴様の命を刈り取るだろう」

 

片目に手を当ててニヒルな笑みで決めポーズを華麗に決めている端から見ればかなり痛々しい赤髪の少女は赤蛮奇(せきばんき)

ろくろ首なのに首が浮いているという幻想郷でも謎が多い人物である。

 

「そんなもん全部私の魔法で撃ち落としてやるゼ!」

 

箒に立ち乗りし赤蛮奇を指差している金髪の少女は霧雨魔理沙(きりさめまりさ)

霧雨魔法商店という聞いたことも営業しているところも見たことのない店の店主であり、本業泥棒並びに普通の魔法使いを貫く少女である。

 

「我が力、紅き九つの彗星の如く一撃...!」

 

飛頭「ナインズヘッド」

 

赤蛮奇がスペルを宣言すると九つに増殖した赤蛮奇のGA☆N☆ME☆Nが魔理沙目掛けて四方八方に飛び出す。

軽くホラーなのは彼女が妖怪だからだろう、それにしてももっとマシなスペルがなかったものか。

 

「まだまだ!」

 

赤蛮奇は更に速度を速める。

彼女のGA☆N☆ME☆Nは木々を蹴散らし、砂埃を激しく撒くしあげる。

 

.....こちらにも流れ弾がいくつか来ているが気にしないでおこう。

 

「やるじゃねぇか!ならこっちは!」

 

魔符「スターダストレヴァリエ」

 

魔理沙も負けずと星型の弾幕を四方八方に放つ。

しかし、最も威力のあるものは赤蛮奇に向かってしっかりと飛んで行っていた。

 

.....またしても威力の小さい星型の弾幕がこちらに飛んできたが弾幕ごっこを観戦しているため、この程度の流れ弾はスルーする。

 

「やるな、久々に私の右腕も疼いてきたぞ!」

 

「先手必勝だゼ!」

 

恋苻「マスタースパーク」

 

「迎え撃たせてもらおう!」

 

飛頭「デュラハンヘッド」

 

互いの弾幕が激しく激突する、見たところ魔理沙の方が僅かに押しているようにも見える。

魔理沙の持つミニ八卦炉は霖之助が作った魔法道具で魔力を充填させて放つことのできる代物である。

彼女の技の大半はこの道具に頼っていると言っても過言でもない。

だからこそ事件は起きた。

 

「あ」

 

魔理沙の間抜けな声とともにミニ八卦炉が彼女の手から滑り落ちたのだ。恐らく力みすぎたのが原因であろう。

 

そしてミニ八卦炉からはまだマスタースパークが放たれたまま、マスタースパークは向きを変えて俺に向かってくるではないか。

 

もちろん俺に避ける術はなかった。

 

「ギィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!?」

 

魔理沙が冷や汗を流している様子が見えた。

 

 

 

「はぁー、死ぬかと思ったぜ」

 

「.....その一言で済ませれるっておかしくないか?」

 

数分後、マスタースパークのせいで駄目になってしまったキノコの採取を始めることとなった。

 

「クソ、どうして私まで貴様ら人間の言いなりに」

 

「別に言いんだぜ。お前の頭だけを川に沈めてやっても」

 

「そ、それだけは勘弁してくれ!いくらなんでもやり過ぎではないか!?」

 

「幻想郷に一般的な基準を求めてる時点で間違ってんじゃない?」

 

「ぐぅ、言い返せない...」

 

ぐぅって口で言うやつ初めて見たなー、なんて思いながら俺はキノコ採取を再開する。

 

「そういや、何でお前ら戦ってたんだ?結構ガチっぽかったけどさ」

 

「いや大した理由はないんだゼ。私個人の理由としては出番が少ないからイライラをぶつける相手が欲しかったんだ」

 

「なんつぅか、個人的かつメタい事情だな」

 

俺は思わず溜息を吐く。

そういえばこいつ原作じゃ主人公並みのメインな立ち位置な癖してこの小説じゃ初登場だな。

 

「馬鹿言ってるんじゃないゼ!何回か出てたから、名前とか台詞だけで何回か出てたからー!」

 

「近い近い近い、わかったから近い!」

 

心を読まれた。

何か最近読心術使える奴を多く見るんだが、さとり様の立ち位置が若干危うい気もする。

 

「で、生首は?」

 

「誰が生首だ、否定しないけど!」

 

「否定はしないんだ」

 

「私はかつて奴との戦いの折に痛めた右腕が疼き始めたからな、暴走を鎮めるために力をぶつける対象を探してたまでよ」

 

「それでそこから魔理沙と会って気があったから弾幕勝負が始まった、と」

 

『まぁ、ざっくり言えばね』

 

何ともくだらない理由だった、そんな理由で今まで苦労して収穫したキノコが駄目になってしまったとなると呆れを通り越して怒りすらも湧いてこない。

 

「して蒼蔦よ、貴様はわざわざ漆黒の闇街から光を求めて聖域へとやって来たのか?」

 

「いんや、別に日光浴目的じゃないが単純にキノコ狩りだよ。食料が不足してるからな」

 

「なるほどな、大儀なことだ」

 

「意味わからねぇよ」

 

俺は本日何度目かわからない溜息を吐く。

赤蛮奇という少女の種族としての原理もわからないがもっとわからないのが彼女の性格だったりもする。

プライドが高いのはわかるのだが、どうしてこうなってしまったのかまではわからない。

まさか幻想郷にまでやって来て中二病に出会うことになるとは当時の俺は思ってすらなかっただろう、しかも妖怪の。

 

「なぁなぁ蒼蔦、このキノコとかうまそうだぞ!」

 

「めちゃくちゃ毒入ってそうだよ!何だよこれ、セアカコケグモかってくらい見事な毒配色じゃねぇか!」

 

「蒼蔦はわかってないな、未知の味を追い求めるロマンを。それに大抵の毒は燃やせば消えるゼ」

 

「その前にキノコそのものが黒焦げになって炭を食う羽目になっいまうがな!ホントお前今までよくこんな森のキノコ食べて行きて来られたよな!」

 

「へへへ、運はいいんだ」

 

「褒めてねぇよ!呆れてんだよ!」

 

ダメだ、やはり彼女と話すとどうしても自分のペースというモノを保てない!

 

「おい人間共!面白いキノコを見つけたぞ!」

 

「あン、そりゃ一体...」

 

赤蛮奇が持っているそれを見た瞬間、俺は目を疑った。

 

「そ、それは...」

 

「ん、どうした?」

 

俺はもう一度赤蛮奇の持つキノコに目を向ける。

 

「キ◯コの里、って何であるんだよ!?」

 

思わず赤蛮奇の手に持っているキ◯コの里を叩き落として粉々に砕いてしまう、ていうか何で単品なの!?

 

「うぉ!何をする!?」

 

「お前それどこで拾ったんだ!?ていうかそれキノコじゃねぇし!キノコ型だけど違うからね!」

 

「黙れ!我を愚弄する気か!」

 

グルルルルル、と唸り声を上げる赤蛮奇は俺に掴みかかってくる。

このまま事態が悪化してしまえばスペルカードを発動されてしまうかもしれないが、戦闘はなるべく避けたい。

 

「なぁ、そろそろ終わりにしないか?私ちょっと疲れてきたゼ」

 

「暫しの間待たれよ霧雨の、私は今からこの無礼者を葬らなければならぬのだ!」

 

「おいおい物騒なこと言ってんじゃねぇよ、いい加減にしないと蒼蔦さん怒っちゃうよ。サ◯ヤ人みたいに怒ってパワーアップしちゃうよ!」

 

「ほぉ、面白いじゃないか。やってみろよ!」

 

バチバチバチと未だにメンチを切っている俺たちは一触即発の状態にまで発展してしまった。

だが俺も男だ、ここで退くわけにはいかないッ!

 

「泣いてから謝っても許してやらねぇぞ、首無し娘!」

 

「上等だ、返り討ちにしてくれようこの小童め!」

 

こうして十人に聞いて十人がハテナマークを浮かべる戦いのコングが鳴らされた。

 

.......そういや俺さっき戦闘云々は避けたいとか言ってたけど前言撤回でお願いします。

 

 




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二一/友達の友達と二人きりになることほど気まずいことはないと思うんだ、これならまだ知らぬ他人の方がマシだと思えることもある!!

凍結中とは言ったが更新しないとは言ってない(謎の言い訳)


「...........」

 

「...........」

 

「...........」

 

「.....クッキーあるけど、食うか?」

 

「ん、もらう」

 

俺がスッと手渡したクッキーを無表情でピンク色の長髪少女が受け取り、小動物のようにポリポリと食べ始める。

少女の周囲に浮かぶお面(?)がくるくると移動しており、とても摩訶不思議な光景には見えなかった。

まだ幻想郷に流れ着くまでは奇怪な光景に見えたかもしれないが、今は慣れてしまい何とも感じなくなってしまっている。

全く、慣れとは恐ろしいものである。

 

「うまかった、ぐっじょぶ☆」

 

グッ!と少女は無表情のまま親指を立てる。

表情の変化がなく、感情を読み取りづらいため俺も絡みにくい。

 

「そいつは良かった。ていうか、こいし様は一体どこに行ったのだか」

 

「わからない。でも我々はこいしに連れてこられた。我々としてもここがどこかイマイチわかっていない」

 

「.....ホントあの人は自由人というかお転婆というか」

 

「性格はアレだが、我々の友になってくれたのはありがたい。青年もそうなのか?」

 

「いんや、俺は居候だ。たしかに一緒にいて退屈はしないけど」

 

俺が言葉を続けると少女、秦こころ(はたのこころ)が興味深そうに俺の言葉に耳を傾ける。

 

 

こころがこいし様によって地霊殿にまで連れてこられたのは今から約10分前、俺が部屋で体の簡単なメンテをしているといつものごとくスパーン!と扉が開かれたと思うとそこにはこころを拉致したかのように首根っこを掴んで引きずってきたこいし様が現れたのだ。

 

『蒼兄!今日は私の友達を紹介するね!ふふん、私はお姉ちゃんと違っていつまでも引きこもりのぼっちでは終わらないんだよ!私はお姉ちゃんを越える!!』

 

『.....とりあえずその手を離してあげてください、死相が見えます』

 

占い師でもないのに死相が見えてしまったのだから相当ヤバイ状態であると判断せざるを得なかった。

 

『わ、我々の生涯に、一片の悔いな、し!!』

 

『こころちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?帰ってきてぇぇぇぇぇぇ!!』

 

『一旦その手を離しなさいな!それと落ち着いてください!!』

 

俺は強行手段でこいし様からこころを引き剥がした。

我々という独特な一人称を使う少女、こころはケホケホ、とやっとの思いことで通った酸素の通り道に酸素を吸い込むようにして必死で呼吸をしていた。

 

『はじめまして、我々の名前は秦こころと申します。一応こいしの友人という扱いになってる』

 

『あ、ども丁寧に。銕蒼蔦です』

 

『ちょ、一応って酷くない!?』

 

『友達とは自分の家に問答無用で拉致していいものなのか?そうか、では我々も今度聖と太子にやってみよう』

 

『いーんじゃない?』

 

『いや、待て待て待て!何でそこから話が進んじゃうの!?』

 

『何を言うか青年、がーるずとーくとはこのようなものであろう?』

 

こころはキョトンとした様子で俺に問い返す、無表情で。

 

『こころちゃん、蒼兄は男だからガールズトークのルールがイマイチ把握できてないんだよ』

 

『そうであったか、失礼した』

 

『なんで俺が悪いみたいな雰囲気になっちゃってんのかなぁ?』

 

僅か数秒足らずで俺はこの場で孤立してしまった、まぁ元々男性率の低いこの幻想郷で孤立してるようなものだけど、それでも孤立は寂しいものである。

こころの周囲に浮かぶお面の一つである、あれは火男だろうか?

火男らしきお面がこころの頭上にまで移動していた。

 

『蒼兄説明するね!こころちゃんは今楽しんでるよ!』

 

『そうなんですか?表情に変わりはないですが』

 

『私にはわかるんだよー、すごいでしょー!』

 

エヘン、と最近ややさとり様よりも発育が良さげだがそれでも慎ましく小さな胸を張る。

それにつられてこころも無表情でエヘン、と胸を張る。

サイズはこいし様といい勝負をしていた。

−−−それからはこいし様と仲良く(こころは無表情なのでとてもそうは見えなかったが、こいし様曰く楽しんでるらしい)話をしており、俺は蚊帳の外となってしまった。

一人用のソファに座りながらフラン嬢に続いて仲の良い友人が出来たことに微笑ましく思い頬を緩めてしまっていた。

そういえば、さとり様にはレミリア嬢がいた。

ボッチではなかったことを思い出した。

 

『それよりもこいし、何故我々をここに連れてきたんだ?』

 

こころの頭上のお面が狐を模したお面に変わる。

もしかしたら、頭上に来た仮面によって表情を見分けるのかもしれない。

彼女のことは何も知らないし、種族も定かではない。

もちろん、年齢や人脈、能力に関しても今日ここで初めて会ったのだから。

 

『そうだった、実はね−−−』

 

こいし様が言葉を紡ごうとした瞬間、俺とこころの目の前からこいし様が消えた。

 

『こいし様!?』

 

『こいし!?』

 

こいし様の能力である「無意識を操る程度の能力」であれば、俺たちの前から姿を消すことは造作もないことだが、それはあくまでもこいし様が無意識に溶け込み一体化したときのみである。

俺たちは確かに先ほどまでこいし様と話しており、意識の中に捉えていた。

 

それなのに、何故?

 

『.....まぁ、こいしのことだからその内ひょっこり帰ってくるだろう』

 

『いや、でも』

 

『青年、お前はこいしのことを心配しすぎだ。大丈夫、何せ私の初めての友人なのだからな』

 

こころの迫力に押され、俺は何も言えなくなってしまった。

まぁ、実際こいし様はふらっとどこかに出かけて気がついたら帰ってくるような人だ。

地底でもそこそこ顔は広いから誘拐しようとかボコボコにやられて帰ってくるなんてことはまずないだろう。

というか、そんなことがあれば地霊殿の全戦力が総動員されることとなってしまう。

 

『そういうわけだ、互いに親睦を深めでもしながらあいつを待とうじゃないか』

 

狐のお面を頭に乗せたこころは真剣な(無)表情でこちらを見据えていた。

 

 

 

そして、話の話題も尽きてしまい現在に至る。

彼女は付喪神、予想はしていたがやはり人間ではなかった。

幻想郷はたしかに人間と妖怪の共生を目的としたまさに幻想郷なのだが、力量からして妖怪といった類の方が多いのも事実。

俺の知人も人間は数えれるほどの数しかこの幻想郷にはいない。

 

「どうした青年?先ほどから無言が続いてるが」

 

「あ、あぁ。話題がないなぁって思って」

 

なるほど、とこころが先ほど手渡したクッキーを両手で必死にハムスターのように頬張りながら応える。

話題の提示を要求したいのだが、いかんせんこころも対話自体が得意そうな人柄ではない。

大方こいし様に連れられることが多いのだろう。

そしてあちこちで騒動に巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて.....

 

「.....どうした青年、急に泣き出して」

 

「いや、お前も苦労してるんだなぁって思ったら、つい」

 

「そ、そうか」

 

若干引かれた気もしたが俺自身は決して気にしない。

慣れてるから、もう他人から白い目向けられたり引かれたりしてるなら慣れてるから!!

.....言ってて何だか悲しくなってきたな、さとり様だったら俺のこの心の叫びを聞いてもらえて会話にもなるのだが、目の前の少女はそうもいかなさそうだ。

首を傾げながら奇異な目でこちらを見つめている気がする。

 

「.........」

 

「.........」

 

と、とりあえずこのまま黙っていても仕方ないので何か話題を出そう。

こいし様もどこに行ったかもいつ戻ってくるのかもわからないわけだし。

 

「なぁ、そういえばこいし様とはどうやって知り合ったんだ?」

 

「こいしと?」

 

「うん。こいし様はこころも知ってると思うけど他人からは普段は認識されない。それなのにこころはこいし様と親しげにしていた、それなりに付き合いがないとできない態度だ」

 

「.....こいしは普段からあんな感じだとは思うが」

 

「それだよ、普段から、ってことは頻繁に会ってるってことだろ?」

 

少なくとも俺が幻想郷にやって来たとき、いや、それ以前から付き合いがあったと考えた方が良さそうだ。

もしかしたら、いつもフラフラ〜とどこかに行ってるのもこころに会いに行っているのかもしれない。

それならばどこかで無茶とか危ないことしてるかよりは安心だし、さとり様の胃痛も良くなるかもしれない。

 

「青年はこいしと出会ってどのくらいなんだ?」

 

「俺は、半年ちょっとかな?」

 

幻想郷に流れ着いたのもそのくらいだし、馴染むのは長い時間を費やしたがそこは今は言わなくてもいいだろう。

 

「そうか、我々は一年くらい前だな」

 

「一年、か」

 

「うむ、それからはしつこく付きまとわれている。舞の練習中だろうが昼飯時だろうがお手洗いの時だろうが風呂に入ってる時だろうが、こいしはどこからともなく姿を現して私にスキンシップを求めてきた」

 

ここで僅かな変化が生じる、今の今まで無表情だったこころの頬が僅かに、ほんの僅かにだが仄かに赤色になっていたのだ。

 

「ま、まぁ、我々も退屈することなかったし、悪くなかったけどな」

 

−−−こころがデレた。

 

この場に守谷神社の巫女がいたなら、「キマシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」とかいう奇声を上げ、暴れ回ること間違いないだろう。

俺もそのギャップに少しドキッとしてしまったのは内緒である。

 

「どうしたのだ青年?顔が赤いぞ??」

 

「な、何でもねェよ!」

 

お前も十分真っ赤だよ、と言おうと思ったのに別の言葉が出てしまった。

その顔で上目遣いはマジ反則だろうが、チクショウが!

幻想郷にやって来て少しは女性耐性が付いたと思ったが、どうやらまだまだらしいな俺。

ここにやってくるまでは女性と関わったことがほとんどなかったと思われる。

俺って今も昔もチキン野郎なんだなぁ、とか思ってると目の前でこころが残ったクッキーをぼりぼりと小動物のようにまた食べ始めた。




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二二/何をするにしても気分転換は必要なんだと思うんだ!!

まさかの戦闘あり!


どーも!お久しぶり!

え?俺が誰かって、やだなぁ、忘れられちまったの?

俺だよ俺、銕蒼蔦君より後に幻想入りしてきた後輩で成り行きで紅魔館で咲夜ちゃんの下僕兼執事やってる鰊原浚で☆す!

.....ちょ、ちょっと待って待って!ねぇ、お願いだから閉じないで!

画面右上の赤枠で白いバツ印の付いたボタンをポチッとしないで!

今回はどうやら俺が主役みたいなんだよ、地霊殿じゃなくて紅魔館が舞台みたいなんだよ!

変に期待させちゃったらごめんね、でもこればっかりは俺にはどうすることもできないから許して!

え、俺の名前の漢字が読めないからさよなら?よく言われるんだよ、これ。

ちなみに性がかどはら、名前がしゅんです。

覚えてくれたら嬉しいな!ていうかそれだったら蒼蔦君も普通に読めない漢字だよね?

俺並みに難しいし、普段使わない漢字だよね!?

理不尽だ、これが出演数の差というやつなのか、哀れ。

 

ちなみに今俺は咲夜ちゃんに言われて館の掃除をしてます、ここはホントに馬鹿みたいに広くて未だにどこに何があるのかハッキリしないんだよね。

レミィちゃんが咲夜ちゃんに見栄はって内部だけでも広くして!とか言った結果らしいけど。

仕事仲間の妖精メイドちゃん達とキャッキャッしながら掃除してると屋敷の壁に穴が空いて奴が来た、うん。いつも通りだけど後でパチェちゃんからお叱りを受けるのもいいけど一応止めておこう。

 

「やぁ、また来たのか魔理沙ちゃん」

 

「またお前か!?そこをどけ執事さん、私はパチェリーの本を借りに来ただけなんだぜ!」

 

「ははは、やっぱり?いつも通り魔理沙ちゃんらしいね!」

 

まぁ予想はしてたんだけどね。

壁の修理は後でやらないと咲夜ちゃん怒るだろうな、とりあえず妖精メイドちゃんに罪はないからここから離れてもらおう。

 

「−−−ならば、俺を倒してからここを通るんだな」

 

「−−−ッ、望むところだ!」

 

フランちゃんと毎日のように弾幕ごっこはやってる、いつの間にかキュッとしてドカーン!が俺にとって快楽に変わりはじめたのはいつからだろう、その時から俺はどこかぶっ壊れてしまったのかもしれない。

魔理沙ちゃんが得物のミニ八卦炉を構え、箒に乗って突進してくる。

−−−遅い、この程度の速度なら避けるまでもなく、受け止めれる!

 

「フッ」

 

「おい!そこは避けろよ!」

 

箒の先端が頭にぶつかって吹っ飛ばされてしまったけど一切気にしない、こんなの痛いうちに入らない。

そのまま吹っ飛びながら胸ポケットからスペルカードを取り出して詠唱する。

 

遊符「びっくり間欠泉」

ブゥゥゥゥン、と俺の足元から魔理沙ちゃんに向けて床に複数のエネルギーの塊が球状になり出現する。

クイ、と人差し指と中指を立てることで俺に近いエネルギー弾が天井に向かって光線となり上昇する。

 

「なっ!?この位置はマズイ!!」

 

「逃がさないよ〜」

 

ドン!ドン!ドン!とエネルギー弾は次々に光線と変わり魔理沙ちゃんを追い詰める。

廊下は俺のスペルカードの範囲としてるので魔理沙ちゃんは必然的に壁から館の外に出ることになる。

魔理沙ちゃんは箒に乗れてるからいいけど、俺は歩きなのが辛いんだよね〜

ま、歩きもしないけど。そもそもこの位置から動くつもりないし。

 

「−−−ってオイ!?追ってこないのかよ!!」

 

「俺はあくまでも魔理沙ちゃんをパチェちゃんから遠ざけるのが目的だからね。このままお帰りいただけると俺的にもありがたいんだよね」

 

「そうはいくか!」

 

星符「ポラリスユニーク」

館の外に出た魔理沙ちゃんがスペルカードを唱えると桃、青、緑、黄の四つの星型弾幕が飛んでくる。

飛んでくる弾幕に俺は迷わずに飛び込む、空は飛べないけど!

俺と激突した青い弾幕は弾けるように爆発し、更に小型の弾幕となり弾けた。中々の威力!

 

「お前今自分から当たりにいかなかったか!?」

 

「気のせいだ!弾幕が俺を呼んでた気がしただけだ!」

 

「お前は一体何を言ってるんだ!?」

 

っとと、危ない危ない。思わず空中に出ちゃったけど弾幕の衝撃で屋敷に戻ることができた。

なるほどね、弾幕の衝撃はこんな風に使うこともできるんだな、覚えておこう。

 

「どうすんの?まだやるー?」

 

「当たり前、だ、ぜ!」

 

恋符「マスタースパーク」

お、魔理沙ちゃんの得意技が飛んできたか。

直線上で軌道変化もなくただデカイだけの砲撃、言えばそれだけで避けるのも容易いんだけど避けたら紅魔館に直撃しちゃうんだよね。

ここで紅魔館崩れたらレミィちゃんだけじゃなくて皆に怒られるし、何より俺の住む場所と俺を拾って養ってくれてる方々に対して申し訳ない。

−−−ま、避ける気はないけどね。

 

マスタースパークは俺に直撃する、でも無傷。

執事服も破けてない。いくらスペルカードが非殺生設定だからってこれはおかしいって?

そんなことはないよ〜。だって俺は現にボロボロだし。

 

「なっ!?マスタースパークが直撃したのに何で立ってられるんだ!?」

 

自慢の技を放ってなお倒れなかった俺に驚きを隠せてない魔理沙ちゃん。

ま、正直言うとそろそろ騙してきた体が限界になってきたから決着つけさせてもらうよ。

 

「じゃ、次は俺の番だ!」

 

快符「天国と地獄」

俺がスペルカードを魔理沙ちゃんに投げることで発動。

このスペルカードは少々特殊で俺の能力と併せることで初めて使える。

そう、俺の能力である「真偽を魅せる程度の能力」によって。

簡単に説明しよう、まず俺は攻撃を受けることで無傷というわけではない。

これが真実、そして攻撃を受けて無傷ということ偽り。

真実から偽り、偽りから真実を他者に魅せて俺自身には直接影響を与える能力。

だからわざわざ攻撃を受けないといけないし、真実を作り出す必要がある。

タダでは偽りの事象を作り出すことなんてできないのだ、この間知り合った天邪鬼ちゃんはそこんとこやってのけちゃうから色々とおかしい。

とにかくだ、さっき俺が魔理沙ちゃんに投げたスペルカードには俺が受けた真実を偽りに変えた時の真実側のダメージを込めた。

そこんところの操作もできる分、この能力はかなり融通が利く。

さっきから難しいこと言ってるけど、簡単に言うとね。

 

俺が今まで受けたダメージを魔理沙ちゃんに向かって投げたってこと、テヘ☆

 

一応非殺生設定だから大丈夫でしょ、ドカーン!とすっごいデカイ爆発が起こったけど魔理沙ちゃんも割と頑丈だから大丈夫ってことで。

 

「チクショー!覚えてろー!」

 

「またのご来館お待ちしてま〜す」

 

瞬時に復活した魔理沙ちゃんは三下の捨て台詞を吐いて帰って行った。

撃退成功、と。さて、この壁早く直さないと咲夜ちゃんにナイフ持って追い掛け回されそうだ。

 

「ちょ、浚さん!?何してるんですか!?」

 

「おー、美鈴ちゃん!おはよー!」

 

「おはようございます。じゃなくて、みすずじゃなくてめいりんです!いい加減覚えやがれこのヤロー!」

 

「いやー、漢字は間違ってないからいいよね?」

 

「ていうかいつの間に魔理沙さん来てたんですか!?また私が寝てたとか思われるじゃないですか、昼寝、じゃなくて休憩してただけなのに!」

 

「俺に聞かないでよ〜、こっちも咲夜ちゃんにいつ殺されるかってヒヤヒヤしてるんだからさ!」

 

「ほほう。覚悟は既にできてるんですね、それは結構なことです」

 

あ、手遅れだったか。

能力使って壁をさっさと直したいけど、生憎俺自身にしか能力は影響受けないんだよね。

となると、詰んだ。

 

「それと中国、どこに行こうとしてるんですか?さっきの話全部聞こえてますからご安心ください」

 

「逃げるぞ美鈴ちゃん!幻想郷の彼方まで!」

 

「行きましょう!逃避行です!」

 

「逃がすか!」

 

こうして俺と美鈴ちゃんの逃亡生活が始まったのであった。

咲夜ちゃんの能力は俺は防げたけど防げなかった美鈴ちゃんを見捨てた、すまない!見捨てるつもりはなかったんだ!

でも、あの局面じゃどうしようもなかったんだ!

 

「浚さんの薄情者ー!」

 

目指すは永遠亭!

後ろは絶対に振り返らない!!




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二三/興味を持つのはいいことだけど、ほどほどにね!!

お久しぶりです


紅葉が散り、豊穣神姉妹が「私らの任期おーわり! あとはよろよろ! あ、来年は葡萄が食べたいなー」とか言いながらもう秋も終わりかぁと思いに耽っている昼下がり。

 

今日も地底は平和です。

体内時計がないと本当に時間がわからないなぁ、ここ。 俺じゃなかったら発狂して死んでるんじゃないかと思うよ、うん。

さとり様に荷物運びを手伝わされ、もとい雑用として扱われたお仕事もそろそろ終わる。 この荷物をどかしてこの箱をさとり様の部屋に持っていけば終わりだ。

 

「さとり様ー、頼まれてたもの持ってきましたよ」

「ありがとうございます、そこ置いておいてください」

「? わかりました」

 

なんかさとり様元気ない?

 

「.....なんでそういうとこには敏感なんですか、貴方は」

「一緒に暮らして長いからじゃないですかね。 ここに置いときますよ」

 

片腕とはいえ、機械化した腕の俺は普通の人間よりも力は出る。 パワードスーツのような役割もあるからだ、多分大抵のものは片手で持つことはできるだろうけど、バランスが悪くなりそうなのであまりしない。

 

「そ、蒼蔦さん」

「はいー?」

「.....何がやっと俺のこと頼ってくれる気になったかですか、貴方のことは前から頼りにしてるでしょうに」

「.....わざわざ口にする必要もないでしょ、恥ずかしい」

「あら、なら心の中で思うだけでなく口にしてくださってもよろしいのでは?」

 

─やっぱり敵わないな、この人には。

 

「.....何故撫でられてるのですか?」

「さとり様には敵いませんよ、ホント」

「.....そうでしょう」

 

ない胸を張られるさとり様。 多分、そろそろパンチが飛んでくるだろうけど気にしない。

 

「それでなにかご用ですか?」

「えぇ、実は少し気になる本が書斎から出てきまして、人里の方へと行きたいのですが─」

「お供すればいいんですね、わかりました」

「えぇ、お願いします」

 

さとり様はデスクの上に置いてある一冊の本を手に取る。 先程まで読んでいたようで手の届く位置にあった。

 

「これが?」

「えぇ、いわゆる妖魔本と呼ばれるものです。 西洋の文字ですので私には読めなくて」

「なるほど、俺も読めませんわ」

 

アルファベット、であるのは間違いないが英語はあまり詳しくない。

そもそもアルファベット体系であるが、これが英語である確証もない。

フランス語、ドイツ語、オランダ語、その他考えられるものはいくつかある。

 

「書斎の書物は全て把握してるつもりでしたが、まさかこのようなものが今になって出てくるとは思いませんでしたよ」

「ということは、その妖魔本としての効力も内容もわからないんですか?」

「そうなります、あまり危険なものでなければいいのですが」

「危険なものならパチェリー嬢に引き取ってもらうのが最善でしょうな、さとり様以外に本を扱えるやつはうちにいなさそうなので」

「.....そうですね、この地霊殿にあっては危険かもですね」

 

想像してほしい。

こいし様が無意識のうちに本を失くして問題がこの幻想郷のどこかで発生する。

 

─大いにあり得る。

 

想像してほしい。

お空が危険なものならメガフレアで燃やしてしまえと地霊殿ごと崩壊させてしまう。

 

─大変あり得る。

 

想像してほしい。

お燐が─

 

「.....あれ、お燐は大丈夫そうだな」

「でも、あの子本に興味なんてあるんですかね?」

「ないですね」

 

どうやら地霊殿の面々に読書家は少ないようだ。 かくいう俺もそこまで好きなわけというわけでもないが。

 

「たまには読んでみるのもいいと思います、何か貸しますよ」

「それじゃ、また読書したい気分になったらお願いしますね」

 

地霊殿の留守をお燐に任せて俺とさとり様は地上に向かった。

最後に地上に顔を出したときと比べて随分寒くなった。 幻想郷の四季はハッキリしている。 それぞれ四季を象徴し司る者達がいるからだろう。

 

人里も変わることなく賑わいを見せている。 平和だ。

 

「それで、何故人里へ? パチェリー嬢に預けるなら直接紅魔館へ向かえばいいのでは?」

「ついでですので貸本屋に行こうかと、鈴奈庵をご存知ですか?」

「いえ、全く」

「ふふ、そんな気はしてました」

 

とても心外だ。

 

「鈴奈庵には外の世界からの書物も扱ってるんですよ、娘さんの趣味らしいですけど」

「へぇ、香霖堂以外にもそんなとこがあったのか」

「それに彼女は妖魔本コレクターを自称してるほどです。 この本についても何かわかるかもしれません」

 

少し興味が湧いてきた。

鈴奈庵は人里の中でも賑わうところにあるようで途中でおばちゃんからりんごを頂いたり、おにぎりを頂いたり、仙桃を頂いたり、文々。新聞なんかも頂いてしまった。

 

「暖かいところですね。 妖怪である私まで構ってくださるなんて」

「.....多分ですけど、どっかの巫女や魔女のせいで妖怪の脅威が薄れてるんだと思いますぜ、うん。 それか人里の結界が信用されてるか」

「そこは嘘でも私を励ますところなんじゃないですか?」

「変に嘘ついてもさとり様傷つくだけでしょ」

 

りんごを齧りながら他愛もない話をしながら、さとり様のペースに合わせて歩く。 やがて一軒の木造小屋の前でさとり様が足を止めた。

 

「ここですか?」

「えぇ、先客がいるようですがお邪魔しましょう」

 

 

 

「─カエレ!」

「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねぇんだ!」

「あだ!?」

 

先客、霧雨魔理沙の脳天にチョップを入れる。 もちろん右手で。

 

「お、お、なんだ、まるで鉄で殴られたみたいだ、ぜ」

「ったく、霖之助の教育は一体どうなってやがんだ。 こんな奴を野放しにしとくとか正気の沙汰じゃねぇ」

「散々な言われようだな、オイ!?」

 

パチェリー嬢の愚痴を聞く身にもなってほしい。

 

「あ、あのぉ、店内での大乱闘はごめんですよ?」

「これは失礼、俺としたことがマナーも守れない奴と同レベルになっちまうところだったぜ」

「おいおい、聞こえてるぜ? それは私に向かっていってんのか?」

「お前以外誰がいるんだ、自覚あんじゃねぇか」

 

やれやれ、これだから教育のなってない自称魔女さんには困ったものだぜ。

用が済んだのか、魔理沙は捨て台詞を吐いてどっかへ行ってしまった。 ガキじゃん。

それでさとり様と話してるこの子が例のコレクターさんか。

 

「そうでしたね、蒼蔦さんは初対面でしたね」

「さとり様に人里の知り合いがいたことにちょっと驚きです」

「まぁ、ある伝手からですがね。 少し興味があったものでして」

「もしかして、人間さん?」

「あぁ、至って普通の人間だよ」

 

さとり様がジト目で見てくる、何故だ。

 

「それで、わざわざ地底からどのようなご用件でしょうか?」

「そうでした。 実はうちの書斎から妖魔本が見つかったので、見ていただこうかと」

「─お二人共、その椅子にお座りください! 詳しくお伺いしましょう、あ、お茶淹れてきますね!」

「目の色が変わった.....」

 

促されるがまま座り、十秒もしないうちに戻ってきた。 あ、茶柱立ってる。

 

「あ、申し遅れました人間さん。 私はこの鈴奈庵の本居小鈴と申します」

「俺は銕蒼蔦、よろしく」

 

幻想郷で中々見ないまともそうな子だ、仲良くやれそうだ。

.....またもさとり様がジト目で睨んでくる、何故だ!?

 

「それで! かの地霊殿で! 見つかったという! 妖魔本は! い! ず! こ! に!?」

「近い近い近い近い!」

 

─前言撤回。 やっぱりこの子も幻想郷の住人だわ。

お茶が美味い。

 

「こちらに。 念のため、お札で妖力を抑えてあります。 危険はないと思いますがね」

「ほほう、これが─」

 

.....何の変哲もない本がギチギチと音を立てたり動いたりするはずもないんだけどなぁ。

小鈴ちゃんの簡易鑑定の結果、表紙に書かれたタイトルは『鳥獣戯画』というありきたりなタイトルだ。

 

「あれ、鳥獣戯画ってたしか巻物じゃなかったですか? しかも西洋文体じゃないですよね?」

「ええ、原典はそうだと私も聞いております。 しかし、ここは幻想郷。 外の世界の道理は通じないのです」

「.....説得力ありすぎですね」

 

地霊殿にあるにはらしいっちゃらしい書物だ。

 

「ところでさとりさん、この本はどちらで?」

「それが、あまり覚えてないんですよ。 何年も昔のことだったような気もしますし、最近譲ってもらったような気もして」

「少なくとも俺がお世話になる前ですね」

 

こんな怪しい本の受け渡しをしてるところを見たら、それこそ忘れられないし嫌でも記憶に残ってる。

 

「.....わかりました。 念のため霊夢さんの協力の元調べてみます」

「お願いします。 あと以前お借りしたものを返却しに来ました」

「ありがとうございます、返してくれるだけでありがたいです。 いや、ほんとに」

「苦労してんだな」

 

主な原因はさっきまでいた白黒魔女と見た。

それにしても、外の世界の本か。 たしかに見たことあるようなものもあるけど、いかんせん古すぎる。

俺が読んだことのあるものはなさそうだ。

 

「.....蒼蔦さん」

「気にしないでください、さとり様。 別に記憶もすぐに戻る必要もないんです、ゆっくり気長にお世話になりますよ」

 

お茶を飲み干し、小鈴ちゃんに挨拶をして鈴奈庵を後にした。

─鈴奈庵を取り巻く妖気のようなものが一層強まった気がしたが、さとり様の能力によってそれは杞憂に終わった。

興味本位で小鈴ちゃんが妖魔本の封を一つ剥がしただけだったのだから。

幸い、怪我も呪いもないとのことなので大丈夫だろう。

 

「.....あの子、いつか呪いに喰われるんじゃ」

「私もそんな気がします」

 

訂正、少しだけ不安だった。

 

 

 

「あの、男ォ、すずちゃんと仲良くキャッキャウフフしおってからにィィィィィィ!! 今に見てろ! この俺が貴様を呪ってやる! すずちゃんの隣に立つのは、この、俺、だ!!」

 




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幕間/霊烏路空の思うこと

 

 どうも、空です。

 みんなからはお空ってよく呼ばれてます!

 今日はみんなお出掛けしてて、とても退屈です!

 

 さとり様と蒼蔦は地上の人里、お燐は買い出し、こいし様は、相変わらずどこかへ行っちゃってる。

 私はというと、バイトもないし、やることないしで、ひーまひましてる感じ。

 地上に向けてメガフレアしちゃおうかな?

 核融合でドッカーンと花火打ち上げちゃってもいいかな、え、だめ?

 

 お燐からはお留守番しててって言われてるけど、出掛けたい気持ちでいっぱいです。

 うにゅ。

 

 ちょっと前まで、蒼蔦は地霊殿にいることが多かったのに、最近は皆と出掛けることが多くて忙しそう。

 さとり様とは難しい本の話してたし、こいし様の友達のこころちゃんとも会うことが増えたみたい。

 お燐とも仲良くなさそうなのに実際はすっごく仲良しだし、嬉しいんだけど、ちょびっと寂しい。

 お兄ちゃん、がいたらあんな感じなんだろうなぁっていうのが蒼蔦。

 みんなからもそんな感じだし、人間で一番年下なのに変な感じ。

 さいぼうぐ、っていう種族みたいだけど、よくわからない。

 蒼蔦に聞いても難しい話になっちゃうから、あまりこのことは話したくないの。

 

 そういえば、お燐が蒼蔦を拾ってきたときは本当に死んじゃってるんじゃないかって思ったんだよ。

 お燐は残念がってたけど、さとり様は悲しい顔してた。

 わからないけど、私もそれで悲しくなった。

 最初、蒼蔦はみんなと仲良くできてなかったから、私にとってはとても嬉しい。

 でも、一番最初に仲良くなったのは、このお空なんだから、そこのところみんなわかってほしいな!

 蒼蔦はバカに見えるけど、私より賢い。

 いんてりってやつ、寺子屋で習った。

 さとり様の書斎の本もよく読んでるみたいだし、男の人ってだけで本は好きじゃないと思ってたんだけど、わからないなぁ。

 

 うにゅ、そういえば、お燐はいつになったら蒼蔦のことを名前で呼ぶのかな?

 帰ったら、聞いてみよう。

 

 あ、こいし様帰ってきた!

 トタトタトタ、って足音がする。

 

 「ただいまー!あれ、お空だけ?」

 「おかえりー!みんな出掛けてるよ!」

 

 むいしきを操るこいし様は気配を感じにくい。

 やっと慣れてきたけど、最初は出掛けるときも、帰ってくるときも気づけなかった。

 でも、わかるようになって嬉しい!家族だから!おかえりが言えるから!

 

 「ねぇねぇ、こいし様」

 「なに、お空?」

 「こいし様は、蒼蔦のことどう思ってる?」

 「蒼兄のこと?」

 

 うーん、って悩んでるこいし様。

 

 「よくわかんない!」

 「そっか!」

 

 ははははは、よくわからない!

 

 「だってさ、蒼兄人間なのに全然人間らしくないんだもん!」

 「え、そうかな?」

 「そうだよ!」

 

 うーん、人間らしいっていうのもよくわからないかも。

 

 「お姉ちゃんが蒼兄のことをあれだけ信用してるのも、蒼兄が蒼兄だからだと思うんだ」

 「………うにゅ?」

 「普通の人間ならお姉ちゃんは地霊殿に蒼兄を住まわせない、普通の人間ならお姉ちゃんは蒼兄を頼りにしない、そういうことなんだよ」

 

 う、うーん?

 そ、そういうことなの?

 

 「私は、もう目を閉じちゃったから蒼兄が本当は何を考えてるかわからないけど、お姉ちゃんは違う。その上でお姉ちゃんが蒼兄を傍に置くのはお姉ちゃんなりの信頼、私達さとり妖怪にとって怖いのはドス黒い本性なの」

 「え、えと、えっと…??」

 「要するに、お姉ちゃんは蒼兄のことが大好きってかとだよ!」

 「なるほど!私と一緒!」

 「お空だけじゃないよ、お燐も私も、蒼兄は家族だから大好きなの!」

 

 そっか!

 それなら私もわかる!

 

 「それじゃそれじゃ、蒼蔦も私達のこと大好きだよね!家族だよね!」

 「もちろん!」

 

 よかった!

 

 「……て、なんでこんな話になったんだっけ?」

 「うにゅ?」

 「ま、いっか!」

 

 こいし様はやっぱり凄いなぁ、みんなのことちゃんと見て考えてる。

 私も見習わないと!

 

 「ただいまー!」

 

 あ、さとり様と蒼蔦だ!

 

 「「おかえり!!」」

 

 ─家族が帰ってきた!




二年と六ヶ月ぶりの帰還。


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