だれかの心臓になれたなら (sakana1234)
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#0と#1

俺は、なぜ生きているのだろう……

人々は、なぜ生きているのだろう……

生きる理由があるのだろうか……

俺は、生きている価値すらないのかもしれない…………


俺は、小学生の時までは、みんなと同じで楽しく暮らしていた。
そう、ごく普通の小学生として、生きがいを持って生きていた。
友達と遊ぶのが楽しかった。一緒に話すことが楽しかった……
だけど、今は違う。

俺は、独りぼっちだ。
こんな、孤独な世界に、俺はいたくない………
生きる理由も見つからない………

『死んでしまおう』


小学生の頃の俺は、どこにでもいる普通の少年だった。

友達も10人程度いて、勉強はできるが、図工等は苦手。

とにかく、誰にもいじめられることなんてなかった、普通の少年だった。

 

しかし、俺の人生が狂ったのは中学生からだった。

中学1年生、俺はとある女子に恋をした。

中学生に入ってから初めてで来た女子の友達だ。

毎日のように一緒に話したり、遊んだりしていた。

しだいに、その子のことが気になり出し、気づけばいつでもその子と一緒にいた。

 

そんな奇跡的な出会いがあった反面、最悪な出来事が起こった。

 

遠出していた両親が事故を起こしてしまったのだ。

2人とも緊急搬送され、1週間に及ぶ入院生活の後、両親はほぼ同時に死んでしまった。

 

「あああああっぁぁぁ!!!!!!」

俺は、それから丸1日、泣き止むことはなかった。

 

俺は精神的な病にかかり、学校に通うことも難しくなっていた。

 

そして、恐れていたことがついに起こってしまった。

 

「おい、独りぼっち、彼女にも捨てられちったなぁwwwww」

「ざまぁみろwwwww」

 

そう、クラス、学年のみんなからいじめられ、さらには俺の彼女と言われて傷ついたのか、しだいにいつも仲の良かった大好きな女子からも嫌われてしまい、俺は不登校になりかけていた。

 

死にたい。

死にたい。

死にたい。

死にたい……

 

死にたいっ………

 

 

 

一体、俺は、どうして生まれたのだろう。

生きる理由なんて何もない。

 

俺は、雨の降る中、外をぼんやりと歩いていた。

 

いっそ、このまま死んでしまおうか……

 

俺が死んだところで悲しむ人は誰もいない。

逆に喜ぶんじゃないか…?

 

俺に、生きる希望をくれ………

 

誰か……

 

誰かっ………!!

 

 

俺は、道路の真ん中で雨に溺れていた。

 

「大輝くん。そんなところにいたら、風邪ひいちゃうよ?」

 

ふと、隣から声がした。

 

「はい、傘貸してあげる」

 

それは、隣のクラスの女子、天野雛さんだった。

 

「えっ…?」

「傘、ないんでしょ?返してくれればいいからさ!」

「何で、話しかけるの…?」

「なんでって、心配だから」

 

「話したこともないのに…?」

 

「話したことなかったらダメ?」

 

「いや………俺に話しかけてくれた人、久しぶりだったからさ」

 

 

彼女は、俺に光をくれた。

 

「こうやって、女子と歩いたのも、いつぶりだろう……」

俺は小さな声でつぶやいた。

 

「ん?なんか言った?」

「いや、何でもないよ……」

 

俺は、こんな寒い中なのに、どこかぬくもりを感じた。

この感覚、久しぶりだな…

 

でも、実際は……

 

その子が、そっと俺の手を握っていたのだ……

 

俺は、そのことに気付かないまま、ずっと歩いていた……



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#2

#1の雛視点です。


~雛視点~

 

今日は土曜日。

図書館に読書でもしに行こうかな……

 

わたしは、思いついたことはすぐにやるタイプだ。

つまり、そろそろ雨が降る、という時間に図書館に行ったのだ。

 

もしかしたら、運命の人に会えるかも……

傘2本持ってこうかな~~

わたしは、そんな呑気なことを考えながら歩いていた。

 

鼻歌でも歌いながら歩いていると、10分程度で市立図書館についた。

 

意外とあっという間だったなぁ、運命の人いなかったか……

 

なんで一人なのに傘を2つも持っているんだろう……

周りはそう思っているだろう。

はぁ……持ってこなきゃよかったなぁ……

 

そのまま、気になっていた本を1時間程度読み、帰宅しようと席を立った。

 

図書館を出て1分程度たつと、ぽつぽつと、雨が降り始めた。

 

「あ、もう降ってきちゃった……」

わたしは、片方の傘をさすと、ゆっくりと歩き始めた。

もと来た道をゆっくりと、なるべく時間をかけて……

 

大きな通路に出ると、歩いている人は誰もいなかったが、道路の真ん中で雨に溺れている同年代くらいの男子を見つけた。

 

あれは………誰だろう…なんであんなところに……

 

不思議に思い、少し近づいたその時、パッと思い出した。

 

大輝くんだ…!

 

大輝くんは、隣のクラスで、中1のころからあこがれていた……

あの時は、すごくかっこよかったな……スポーツもできるし、勉強もできるし……彼の事を好きになる子は少なかったが、陰でずっと彼の事を想ってた。

だけど、大輝くんには1年生のころから彼女がいるとうわさされていた。

それがほんとかは分からないが、話したこともないし、フラれると怖いから告白する勇気など0に等しかった。

 

そして、彼の人生を大きく変化させたであろう出来事、両親が死んでしまったのだ。

それからは、クラスメイトからもいじめられ、彼女にもフラれ、今までの輝きはなくなってしまった……

 

「こんな世界なんて……」

きっと、そう思っているだろう…

 

彼にとって、もう生きる希望も何もないのだろう。

誰からも愛されることなどなくなり、誰かを愛することもなくなっただろう。

彼にとっての生きる理由……

わたしが、彼の生きる理由になれるかな………

 

わたしは、思い切って話しかけた。

 

「大輝くん」

ものすごくドキドキした。

だけど、彼を救ってあげないと。

もしかしたら、彼は誰でもいいから味方になってほしいのかもしれない。

わたしが、それになろう。

 

わたしは彼にもう1つの傘を渡した。

 

わたしが彼の生きる理由になるためには、まず仲良くならないと……

 

彼に死んでほしくない………

 

わたしは、彼に少しでも好意を持ってほしかった……

彼に、愛してもらいたかった。

 

愛を失った彼に、愛を取り戻してもらいたかった………

 

わたしは、そっと彼の手を握って、隣を歩いた。

 

ほんとは、わたしが彼を愛する理由がほしかっただけなのかもしれない。

だけど、彼に生きてほしいという思いは本当だった。

 

大輝くんは、わたしが手を握っていることなど気付いていなかった。

 

ふと、わたしが彼の立場だったら……と考えてみた。

 

親は亡くなり、学校ではいじめられ、愛する人には捨てられ………

こんな現実だったら、間違いなく自殺しているだろう…

 

希望を持って…大輝くん……



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第3話

~大輝視点~

次の日の朝、俺はいつも通り一人で学校に通い、いつも通り、誰からも避けられていた。

 

俺の方を見て笑いながら話している人がほとんどだ。

 

と、そのとき……

 

「大輝くーん!!」

 

廊下から声がした。

呼んでいたのは、俺だった……

 

そして、声の主は……

 

隣のクラスの雛だ。

 

「雛……」

俺は、急いで廊下へと向かい、雛を廊下の端へと連れて行った。

 

「何で、俺なんかに話しかけるの……」

 

俺はまず一言、そういった。

 

「なんでって……ダメなの?」

「そ、そうじゃないけど……」

そういう雛が可愛くて、ついそう答えてしまった……

 

もう、話しかけないでもらいたいのに………

 

「俺に、話しかけないで……」

俺は、自分の気持ちを伝えた。

ものすごく胸が痛かった。

本当は、雛とずっと一緒にいたい、話していたい……

 

だけど、俺と話してると、きっと雛もいじめられる……

 

それは嫌だ……!!

 

「ごめんね、私なんかが話しかけて……迷惑だったよね…じゃあ……」

そういって雛は、元気がなさそうに帰って行った。

 

「でも、これだけは言わせて」

雛は突然止まると……

 

「絶対に、死なないで…」

雛は、俺が自殺すると思っているのだろう……

俺には、生きる希望もないと思っているのだろう……

 

全部、その通りだよ……

 

雛が俺を救おうとしてくれてるのは分かってる…

 

だけどっ…

 

「死なないよ……だから、雛も、俺に話しかけないでくれ……これが、俺の願いだ」

 

俺は、きっぱり伝えた。

 

だけど、こんなの本心じゃない…

 

雛と一緒にいたいんだ…!

 

分かってる、わかってるさ……だけどね…

 

「雛が嫌な思いしたら、俺も悲しい……だからっ」

 

「わかったよ……大輝くんが願うなら……もう、話しかけない。だけど、嫌いにならないでね…」

雛は、俺の言葉を遮って、そういった……

 

嫌いにならないで…?

そんなの、当然だろ……

 

 

~雛視点~

大輝くんともっと話したい……

 

生きる希望を持ってもらいたい…

 

そう思って話しかけたけど……

やっぱり、大輝くんには足りないか……

わたしなんか…

 

でも、大輝くんがわたしの心配をしてくれているということは、分かった気がする。

 

その気持ちだけでも、ものすごくうれしかった…

 

だけど、話しかけないなんて…できる気がしない…

 

「でも、大輝くん。たまになら、相手してよ」

わたしは笑顔でそういって、クラスに戻っていった。

 

やっぱりだ……

 

クラスに戻ると、みんなの視線がわたしにあった…

 

「もしかして、大輝のこと…?w」

そんなささやき声が聞こえてきた…

 

ああ…せっかく大輝くんが心配してくれたのに、手遅れだ……

 

ごめんね。

 

 

~大輝視点~

クラスに戻ると、一部の男子が俺の周りによってたかって来た。

 

「さっきのやつ、隣のクラスの雛だよな?」

「お前あいつとなに話してたんだよ?」

「まさか、好きだとか??www」

「お前に恋なんか似合わねーよw」

こう言われることは分かっていたが……

 

雛のことでこう言われると、いつもの何倍も腹が立つ。

 

「何が悪いんだよ……恋して何が悪いんだよ!!!!!」

 

俺はそういうと、席に戻って一人読書を始めた。

 

そのうち授業が始まり、俺はいつも通り端で教師の話を聞いていた。

 

俺は、雛のことが好きなんだな……

 

雛は俺の事、どう思ってるんだろう…

 

少しでも好意を持ってくれてるのかな……

 

そんなことを考えているうちに授業はすぐに終わった。

 

 

~雛視点~

はぁ……どうしようかなぁ…

大輝くん、話しかけようかな…

 

誰もいない所なら、いいかな…

 

わたしは、手紙を書いて大輝くんの靴箱に入れ、体育館裏で待っていた。

 

来るかな……

 

すると……

 

わたしの前に、大輝くんがやってきた……

 

 

~大輝視点~

「どうしたの?呼び出して……」

俺は疑問に思っていたことを聞いた。

 

「あのさっ。わたし、大輝くんの心臓になりたいの!」

雛からは、予想外の答えが帰って来た。

 

「心臓……?」

俺は、一瞬何のことか分からなかった。

 

「今、大輝くん、なんで生きてるの?」

そう、俺には生きる理由なんてないのだ。

 

「生きる理由ってこと…? ないけど…」

「だから、その生きる理由になりたいんだよ……わたしが大輝くんの心臓になって…」

ようやく意味が分かった…

 

雛は、俺を本気で救おうとしてくれてるみたいだ……

 

「心臓か……ありがとう。ぜひ、俺の心臓になってよ」

俺はそういった。

 

これは、本音だった。

 

雛が俺の生きる理由なんだ……

こんな世界でも、雛がいれば生きていける…逆に雛がいなきゃ…生きていけない……心臓ってそういうことか。

 

雛は笑顔で帰って行った。

 

俺も、少し間をあけてから一人で帰り始めた。



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第4話

1週間後の朝…

 

俺は最悪な目覚め方をする。

 

電話がかかって来たのだ、それも、雛から。

 

「どうしたんだろう、こんな時間に」

つい昨日交換した携帯に雛から電話がかかってきたのだ。

 

「今日、休むから、ごめんね」

 

雛はそういって、電話を切ってしまった。

 

「休むのか……俺も学校休もうかな……」

雛がいない学校なんて行きたくもない。

 

しだいに、俺はそう思い始めていた。

 

結局、今日は休むことにした。

親は、俺の事など気にも留めず、もうすぐ中1の妹にかかりきりだった。

 

つまり、俺が休もうがどうしようが、気にすらしていないということだ。

 

「何で、休んだんだろう……」

俺は、不思議に思っていたが、まだ眠かったため、そのまま寝てしまった……

 

 

これから起きる最悪な事態に気付かずに……

 

 

~雛視点~

昨日の夕方

 

わたしは大輝くんと連絡先を交換して家に帰って来た。

 

「やっと連絡先もらえた~~」

その日はとても嬉しくて、ついはしゃいでいた。

 

すると……

 

「あ、いたっ……」

 

わたしは、思い切り転んで、頭を金属にぶつけてしまった。

そして、そのまま気絶してしまった……

 

家族がわたしのことに気付いたのは、わたしが気絶した約3時間後だ。

 

両親は出かけていて、帰って来たところ、わたしが倒れているのを見つけた。

 

「雛!!どうしたの!!?」

「とにかく、救急車呼べ!!」

 

それから3分後、すぐに救急車がやって来た。

 

救急隊員はわたしを連れて、救急病院へと直行した。

 

そして、翌日知らされたわたしの病名は……

 

「脳しんとうです。今すぐ入院が必要です。」

「入院……」

 

わたしが入院と聞いてまず思いついたことは……

 

大輝くんに、会えなくなる……

大輝くんに、どう伝えたらいいだろう……

 

とりあえず、このことは内緒にしよう………

 

 

~雛の両親視点~

わたしたちは、雛を病室に送った後、担当医の先生に呼ばれた。

 

何の話だろう……

 

「申し上げにくいのですが………雛さん、このままだと、助からないかもしれません……」

 

「えっ……」

 

わたしたちは、何も言えなかった……

先生に文句を言っても治るものではない……

 

でも、このことは……

 

雛には言わない方がいいだろう………

 

わたしたちはそう思い、そのことを胸に潜めていた……

 

 

~雛視点~

わたしの病気…治るのかな……

 

わたしは不安に思っていた……

 

もしわたしが死んでしまったら………

 

大輝くんはどう思うだろう…

 

死んじゃうかな……

 

いや、そんなのダメだ!!

死ぬとか考えちゃ……

 

わたしは生きる!!!

 

 

そして次の日から過酷な入院生活が始まった……

 

この病気を治して、大輝くんの前に出なきゃ……

 

でも、大輝くん、不思議に思っちゃうかな……

お母さん、入院してるっていっちゃったかな……

 

絶対に、絶対に……治して見せるからねっ!!

 

 

そして入院生活1週間後、わたしがベッドで寝ていると、隣のベッドから、2人の女性の話し声が聞こえてきた。

 

「隣にいる女の子、脳しんとうで死んじゃうかも、って噂よ……」

「やだ!!あんまり大声で言わないでちょうだい、聞こえたらどうするのよ!」

「知ってるわよ、きっと…可哀想に……」

 

死んじゃう……?

 

そんなこと、聞いてないよ……

 

なんでわたしが知らないのに隣の女の人たちが知ってるの……

 

なんで、教えてくれなかったの……

 

でも、良かった…

今知ることができて……

 

死んじゃうかもって知らないまま、大輝くんに気付かれない所で死ぬの嫌だから……

 

せめて、大輝くんに見守られながら死にたい……

 

これが、わたしのかすかな願いだった………

 

 

~大輝視点~

あれから1週間。

 

雛は一度も学校に来ていない。

 

理由は……

 

脳しんとう。

 

入院生活らしい。

 

そして………

 

死んじゃう可能性があるらしいということを、今日初めて知った……

 

急に朝電話があったのだ…

 

俺は大急ぎで電話に出ると、雛はこう言った。

 

「わたし、死んじゃうかもしれない……ごめんね…」

「ど、どういうことだよ!!病気か…?」

「確定ではないけど……死んじゃう可能性が高いみたい……だけど…わたしは最後まで大輝くんの心臓として生き続けるから、わたしが死んでも、新しい心臓を見つけて、生きていってね……」

「ちょ、雛!!」

 

雛はそれだけ言うと、電話を切ってしまった……

 

こんなの………

 

こんなの…………

 

あってたまるかよ…!!

 

とにかく今日は下校したらすぐに病院に向かおう。



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第5話

俺は下校すると全速力で走り、約1キロ先にある市立病院へと向かった。

 

3分後、俺は病院につき、階段を駆け上がった。

 

俺は、手あたり次第に病室を探し始めた。

 

雛は……雛はどこにいる!!!

 

そして6階まで上がり、603号室に入った時……

 

「大輝……くん…?」

「…雛っ!!」

 

雛の姿が見えた瞬間、俺は雛のもとへ向かい、強く抱きしめた。

 

雛はびっくりしたのか、頬が真っ赤だった。

 

「死ぬなよ……!雛っ!!!」

俺は、さらに強く抱きしめた。

雛は、抱きしめ返してきた。

 

「死にたくないよっ!!生きたい!!!!!」

雛は大きな声で叫んだ。

 

そのとき、雛の母親が病室に入って来た。

 

「雛……わかっちゃったのね…」

その瞬間、雛は泣きながら叫んだ。

 

「何で、言ってくれなかったの!!!」

「ごめんね……でも、希望を持ってほしかったから……」

「でも、お母さん…わたし、自分が死ぬかも、って知らなかったら、大輝くんに気付かれないまま死んでたかも……」

「大輝くん……?」

雛の母親は、俺の事を知らないようだった。

 

「俺の……心臓です」

俺はそういった。

 

すると、何かを理解したのか、雛の母親は部屋を出ていった。

 

「大輝くん……」

雛は、小さな声で俺を呼んだ。

 

「……好きだよ」

雛は俺にそういった。

 

「大輝くんの事、中学に入った時から、ずっと好きだった……この前、やっと話せたのに……それに浮かれて頭を打つなんて、ホントバカだよね……」

……俺のせい…

 

「俺のせいか……やっぱり、俺は誰かとかかわると、人を不幸にするんだ……」

「そ、そんなことないよ!!」

「俺がいなければ……君は今頃、もっと素敵な暮らしをしていたかもね……」

「大輝くん……そういうところ、嫌いだよ」

俺は、雛の言葉に少し驚いた。

 

「もっと、自信を持ってよ…!」

雛は俺に言った。

 

「わたしは……大輝くんの事が大好きだから!!大輝くんの生きる理由になりたかったから!!!いじめられても、我慢して生きてたんだよ……大輝くんも、わたしの心臓なの!!大輝くんがいなかったら、きっともっと早くに自殺してた……大輝くんがいてくれて、ほんとによかったよ……」

雛はいつの間にか涙を流していた。

 

俺も、泣かないように我慢していたのに、ついに泣いてしまった……

 

「俺も、雛に励まされた……こんな世界、生きる価値もない、と思っていた俺に、雛は話しかけてくれた……あの時、ホントは、ものすごくうれしかったよ……」

これは、俺の本音だった。

 

「それと……俺も…大好きだから」

俺はぼそっと言った。

 

「え?なんて??」

雛はとぼけている。

 

「え、いや聞こえたでしょ?」

「聞こえなかったよ~、もう一回言って!しっかり!!」

俺は仕方なく、雛の耳元により、少し大きな声で言った。

 

「俺も………大好きだよ」

俺は照れながらも、この時間を楽しんでいた……

 

「ありがとっ。絶対、死なないから!!!」

俺は、雛の笑い声を後ろに、病室を出た。

 

 

~雛視点~

わたしは大輝くんを見送ると、頭をおさえた……

 

頭痛が……

 

それは、尋常じゃない痛みだった……

 

嫌だ、嫌だっっ!!

 

死にたく……ないっ!!!!!

 

しかしそのあと頭痛は悪化し、緊急オペとなった……



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第6話(最終話)

~大輝視点~

次の日の朝、また電話があった。

今度は……雛の母親からだった…

 

「大輝……くん?」

「……はい」

俺は小さな声で答えた。

悪い予感しかしない……

 

「雛ね、昨日緊急オペして……医師によると、あと1週間ももたないかもって……雛から頼まれて……大輝くんに来てほしい、って…」

俺は一瞬目がくらんだ……

 

あと……1週間………!!

 

俺は、何も言わずに電話を切ると、病院まで走っていった。

 

ただ一心に……雛の事だけを考えて………

 

病院につくと、大急ぎで階段を上り、雛の所へ向かった。

 

「雛!!!」

俺は大声で叫び、雛の隣に行き、手を握った。

 

「大輝くん……」

「死ぬな!!!!!」

「死にたくないよ……!生きたいよ!!!」

雛は叫ぶが、あまり声が出ないのか、ほとんど聞こえてこない。

 

「いっそ、俺が代わってあげたい……!!雛が死ぬなら、代わりに俺が……!」

俺は泣きながらそう言った。

決して、できない願いだけど……

 

「でも……運命だよ…!」

雛は言うと、涙を流し始めた。

 

「死にたい俺は、今日もこうして息をしているのに……生きたい雛は………明日を見失って……こんな運命、嫌だ…!」

俺は叫んだ。

俺は死んだっていい、いっそのこと死にたい!!!

 

「死にたい俺を救ってくれたのは、雛だよ……雛がいたから、こんな世界でも生きていようと思えたんだよ……」

俺は本音を伝えた。

 

「でもね、大輝くん……人間は、いつかは死んじゃうんだよ……仕方ないの………」

「でも、やっぱり悲しいよ……どうしてこんなに悲しいんだろ……」

大事な人が死んでしまうのは悲しいこと……

だけど、誰しもいずれ死んでしまう………

 

「早すぎるよ…!!そりゃ悲しいに決まってるじゃん…」

俺はいうと、雛の手をより強く握った。

 

「大輝くん……残りの1週間……ずっと一緒に過ごしたいよ……」

雛はそういった。

 

「いいよ……1週間、ずっと一緒にいるよ。最期の時まで、ずっと一緒にいようね……!」

俺は涙ながらに言うと、雛の隣に座った。

 

病院の看護師にも無理を言い、1週間ずっと一緒にいることにした。

 

買い物にも行くけど、5分もせずに帰るようにしている。

 

そして、5日間、ほぼずっと一緒にいた。

 

部屋にいる時は、ずっと手をつないで、一緒に話をしていた。

 

話題もほとんどないけど……

 

6日目、そろそろ1週間が経つとき、急に機械の数値が変化した……

 

ついに、この時がやって来たのか……

 

「大輝くんっ……はぁ……苦しいっ!!!」

俺は急いで救急ボタンを押して、医師を呼んだ。

 

しかし、雛は口を動かして、何かを言おうとしてる……

 

「だい……きくんっ……!死な…ないでねっ!!!」

当たり前だろ……

 

「俺が雛に贈る、最期の愛の言葉だよ……聞いてねっ」

俺は息を吸うと……

 

「今まで、本当にありがとう…!大好きだよ……!!!」

俺は今までで一番涙を流しながら言った。

 

「……うん!!」

雛は笑顔でそういうと、オペ室へ連れていかれた……

 

 

翌日、俺は病室に座っていると、担当の医師がやって来た。

 

「雛ちゃんは……残念ながら、お亡くなりになりました」

医師は申し訳なさそうに言った。

 

「次は、俺がだれかの心臓にならないとな……」

俺はぼそっと言うと、雛のもとへ行き、雛にあることを伝えようとした。

 

雛は、ベッドに寝かされていた。

もちろん、もう、意識はない。

 

俺は雛の耳元でささやいた。

 

「俺の地獄で、君はいつでも絶えず鼓動している心臓だよ……俺も、だれかの心臓になれるように、がんばるよ……!だから、これからもずっと、俺の心臓でいてくれ……」

俺はそういうと泣かないうちに家に帰った。

 

それから7年後、すっかり俺も社会人だ……

 

あれから毎年、雛の命日にお墓に行き、1年の出来事を全て話している……

 

今日は、ちょうど命日だ……

 

今日は、雛にとっておきのお知らせをしないと……

 

「雛……俺、とうとう心臓になれたよ……俺、彼女ができたんだ……こんなこと雛に言うのもなんだけど…これからは、その人のために、いつまでも、幸せに生きていくよ。俺が、心臓になって……家族を守るから、見守っててね」

 

俺は花を供えると笑顔で帰っていった。

雛は、俺の心の中で、いつも励ましてくれている……

雛のためにも、幸せに暮らさないと………

 

~おしまい~




いよいよ終わりました……

ちょっと悲しい終わり方になっちゃったけど、僕はこの最期が一番いいと思います。
大好きな人に見守られて、死んでいく……

これほどいいことはあるでしょうか………

歌詞の一部分しか書いていませんが、書いていてものすごく、切なくなりました。

てことで、次は、もっと明るい曲を二次創作しようかな!!!

次も見てくれると嬉しいです!!!

それでは、また逢う日まで。


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