エルとジュリエットの寄宿学校 (ヨーグリー)
しおりを挟む

もう一度転生!

「う...ん...ここ...は?」

 

「起きたか」

 

「あれ?なんでゼウス様がここに......そうだ!ベル達はどうなりました!?」

 

 (そうだ確か俺は18層の階層主からベルたちを逃がすために下の階に繋がる穴に飛ばしたんだ)

 

「まぁ落ち着きたまえ。まずはベル君と他の子たちはお主のおかげで無事じゃ」

 

「よかった。それで俺はどうやったら戻れますか」

 

「それなんじゃが」

 

「何か問題でも起きましたか?」

 

「エルよ落ち着いて聞いてくれ」

 

「は、はい」

 

ゼウス様はいつものへらへらした顔ではなく今までで見たことのない真剣な顔をしていたため俺もつい緊張してしまう。

 

「お主はベル達を下の階層に繋がる穴に突き飛ばした後階層主の攻撃を食らって...死んでしまったのじゃ」

 

「え......?」

 

「信じられんかもしれないが本当なんじゃ」

 

 (今死んだって言った?俺が?)

 

 ゼウス様の言葉が信じられず下を向き心の整理をしてると俺の前までゼウス様が近寄ってきて抱きしめた。

 

「ちょ、ゼウス様いきなり何を」

 

「よく頑張ったな。お疲れ様じゃ。これで二回目じゃのうお主の大切な人たちを守って自分は死んでしまうのは」

 

 (二回目か...二回目なら上手くやれると思ったけどだめだったか......。はぁ悔しいななんで俺ばかりが死んでしまうのだろう)

 

「まだベル達と...一緒に居たかったな」

 

「今ここにはワシら二人しかおらぬから全部吐き出してもいいぞ」

 

「う...うぅ...なんで俺なんですか?なんで俺ばかりが死ぬんですか!悔しいです!もっと...!もっと!ベル達と一緒にあの世界に居たかった!なんで!なんで俺なんですか.....」

 

言いたいことを言い終わったあとゼウス様の胸に顔を埋めて今までにないくらい泣いてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「落ち着いたか?」

 

「いやー、お恥ずかしいとこをお見せしました」

 

ゼウス様の胸から離れだいぶ落ち着きいつもの調子に戻る。

 

「それでこの後俺はどうなるんですか?」

 

「それはお主が決めていいぞ」

 

「俺ですか?うーん、どうしようかな」

 

「ちなみに一応転生先で死んでしまった者には三つの選択肢を選ぶ事が出来るんじゃ」

 

「三つ?」

 

「そうじゃ。まず一つ目がこのまま天国に行ってダラダラと過ごすか。

二つ目は現実世界にもう一度生まれ変わる。

三つ目は違う世界に転生するか。じゃ」

 

「同じ世界に転生する事って出来ないんですか?」

 

「出来ないんじゃよ。こればっかりは昔から決まっている事でのう」

 

「そうですか。あ、それともう一つ聞きたいんですが俺以外で今担当してる転生者っているんですか?」

 

「おらんぞ。まずワシの所に来る人は滅多にいないんじゃよ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん、ワシの所に来るにはある条件を満たさなくてならないんじゃよ。それでお主はその条件を満たしてるからワシの所に来れたんじゃよ」

 

「へぇ、んでその条件ってなんですか?」

 

「これは絶対に教えてはダメなんじゃよ。だがワシは知っての通りルールとか関係なしになんでも自由に出来るからなだからお主は当たりなんじゃよ」

 

「やっぱりこの神チートだ...」

 

「まぁ、ワシじゃからな」

 

「それならもう一度他の世界に転生したいです」

 

「作品はどうする?」

 

「あーまだ決まってないんですよね」

 

「それなら」

 

パチン。ドサドサドサ

 

ゼウス様が指パッチンするとどこからともなく沢山のラノベとマンガが降ってきた。

 

「ええ!?」

 

「この中から決めていいぞ」

 

降ってきたラノベとマンガは全部俺が好きなジャンルのものばかりだった。

 

「お主の頭の中を覗いてお主が好きそうな物を出しておいたぞ」

 

「え?頭の中を覗いた?」

 

「そうじゃ」

 

「俺のプライバシーが...」

 

ーーーーーーーーーーー

 

それから二週間後経った。え?時間が進むのが速い?知らんな。

 

「これは...」

 

俺が見つけたのは最近人気の『寄宿学校のジュリエット』だった。

 

「そういえばまだこれ読んでないな。とりあえずこれを読むか」

 

ーーーーーーーーーーー

 

読み始めてから二時間が経った。

 

「ふぅ、読み終わったー」

 

他の本を合わせて長時間座りっぱなしだったためその場に立ち上がり軽く準備運動をする。最後に股割りをすると背中から今まで以上に骨がポキポキと鳴った。

 

「このマンガ面白かったな。結構この作品好きだな。よし!」

 

(確かにこの辺にベルがあったはず....お、あった)

 

ピンポーン

 

「どうした」

 

「転生する作品決まりました!」

 

「なんの作品じゃ?」

 

「『寄宿学校のジュリエット』でお願いします」

 

「了解したぞ。あ、そういえばまだお主には前の世界の転生特典が残ってるんじゃよ。もちろん刻んでもらったファルナもな。もしお主がいらないと言うのなら消せるがどうする?」

 

「このままでお願いします。これは俺があの世界で生きていた証なので」

 

 そう言って『煉獄』を具現化させる。

 

「そうか。では最後に原作知識は消すか?」

 

「消してください」

 

「わかったぞ。それじゃあ転生させるぞ」

 

「はい!では行ってきます!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はい、どうもヨーグリーです。

 

今回は試作品です。原作は『寄宿学校のジュリエット』です。

 

書いた理由ですが寄宿学校のジュリエットのssを読んでたら書きたくなったのが理由です。原神の方で物語が後半まで行ったら本格的に書いていくつもりです。そのための試作品です。

 

それと自分はまだ原作とアニメどちらもまだ見てません。原作は一応発売している物は全部買ってあるのですが如何せん仕事の方が忙しくて一巻すら読めてないんですよね。

ですので今回の試作品で原作と違う所があると思いますがご了承ください。

 

原神の方は明日にでも最新話を投稿します。

 

それではまた次回!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転生してから一人目の友達!

 この世界に転生して5年が経った。一応『煉獄』が使えるか確認したがちゃんと使えた。けど今の俺はただの五歳児だから前の世界の身長の二倍の武器は使えるはずもなく当分『煉獄』はお預けになってしまった。それにここの世界は前の世界と違ってすごく平和だった。ただしとあることを除けば...

 

「いいかエル?東和国とウェスト公国の二つはいがみ合ってるがいつかきっとお父さんとお母さんみたいに国とか関係なく仲良くなれるんだ。だからエルは俺たち二人みたいに東和国やウェスト公国とか関係なくみんな平等に接してほしい。ま、今のエルに言ってもわからないか」

 

 そう言って笑いながら俺の頭を撫でる人。この人がこの世界での俺のお父さん、その後ろで優しく微笑む女性がお母さんだ。

 

 確かに俺が転生者じゃなく普通の子供だったらわからなかったかもしれないが俺はそうじゃない。だから俺はお父さんに言う。

 

「うん!難しいことはまだわからないけどいつか僕はお父さんとお母さんみたいになる!」

 

 俺は出来るだけ子供っぽく言う。

 

「そうか!それでこそ俺ら二人の息子だ!」

 

 そうこの世界は東和国とウェスト公国の二つがあってこの二つの国は敵対関係にあった。その中で俺の親は高等部時に今の二つの国の考えがダメだという考えが一緒だったためまずは自分たちの通っている高等部から変えるという目標を密かに立てていたらしい。そして二人は周りに今ではいけないという事を伝えたが誰も聞き入れてはくれなかった。もちろん二人のとても親しい友人たちは最初の方は納得してくれたが結局最後は諦めてしまった。ついには二人も高等部を卒業するころには諦めてしまった。その後二人は普通の恋人として付き合い10年前自分たちの親族だけを呼び結婚式に呼び式を挙げたらしい。これがお父さんから聞いた話だそれに今でも高等部に立てた目標はまだ諦めてきれないらしい。

 

 (それなら俺が二人の目標を達成させてみせる!まぁ明日からでもやっていけばいいが今の俺には仲がいい友人がいないんだよな。だからやるなら高等部からだそこで俺は頂点に立って高等部から変えて次に初等部、最後に中等部の順番で変えていく)

 

 ちなみになんで初等部と中等部の順番が逆かというと、初等部でいくら生意気な子供いたとしても根は素直な子が多いはずだから先に初等部からなのだ。決してロリコンとかじゃないからな!

 

 (そのためには今より多く勉強してそして今度は自分も死なずに誰かを守れるくらいに強くなる!けど今日は遅いし明日からでいいや。そういえば現実世界にいたときには誰かが『明日やろうはバカ野郎』って言ってたな)

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 それから勉強終わったら修行の日々続いた。最初は頑張ってるな程度でしか見てなかった親だが一ヵ月過ぎたころから少しずつ心配されることが多くなった。こんなの前の世界に比べたらどうってことないだがそんなことは親には言えないから、『僕ね!お父さんとお母さんが出来なかったことを今度は僕がやるんだ!だから頑張る!』と言った。そしたら二人は泣きながら俺に抱き着いてきた。それから二人はその日から少しずつ俺に甘くなっていた。その理由にを聞いてみたら『自分では気づかなかもしれないが身体は少しずつ疲労とかでストレスが溜まるものだ、だからストレス解消ていうわけではないが俺ら二人が出来ることはこれくらいしかないからな。だからきつくなったらいつでも言いなさい?』と言ってきた。正直めちゃくちゃ泣きそうになったがそこは我慢した。

 

 さすがにこれ以上親に迷惑をかけるのはダメだと思い勉強と修行がの時間を減らした。そして減らした分の時間はウェスト公国が自分たち東和国の反応を見るためにウェスト公国付近の公園で一人いる時間を作った。だけどその公園は滅多に人が通らず通っても誰も公園には見向きもしなかった。

 

 だけどいつもみたいにその公園のベンチでボーっとして時間を過ごしてたら入り口の方から金髪で髪が肩まで伸びてる一人の少女が立っていた。数秒目が合うとその少女はこちらに向かって歩いてきた。

 

「ねぇこんな時間に何してるの?」

 

「そういう君こそ何してるの?」

 

「私は少し散歩してたの。それであなたは?」

 

「僕はいつもこの時間に来てこうやって何もしないでボーっとしてるんだ」

 

「それって楽しい?」

 

「うーん楽しくはないかな」

 

「じゃあなんでやってるの?」

 

「ここの公園ってあまり人が通らないんだよそれで静かだからこうやってボーっとしてると落ち着くんだ。君も一緒にどう?」

 

「...うん」

 

 そう言って俺の隣に座る。そして五分ぐらい経つと女の子が口を開いた。

 

「なんか落ち着く」

 

「でしょ?」

 

「うん。でもなんであなたはここでこんなことしてるの」

 

「実はウェスト公国が僕みたいな東和国の子供の事をどう思ってるのかなって思って反応を見るためにここに来たんだけど人が全然通らなくてそれでもこうやってここで人が通るのを待ってたらこうやってボーっとしてるのが習慣になっちゃったんだ」

 

「あなた東和国なんだ」

 

「そうだよ」

 

「へぇ」

 

「あれ?君は他のウェスト公国の子みたいに何か言わないの?」

 

「なんで?どうして東和国だから悪口とか言わないといけないの?私はそんなの違うと思う」

 

 (へぇ、俺以外にもこういう子はいたんだ)

 

「そっか僕と同じだね!」

 

「同じ?」

 

「うん!僕もね相手がウェスト公国だから悪口を言うのはいけないことだと思うの。それで僕には叶えたい夢があるんだ」

 

「夢?」

 

「うん!僕のお父さんは東和国でお母さんウェスト公国なんだ!それで二人は国が違うから悪口を言ったりするのは良くない!ってよく言うんだ。それで二人は高等部の時にこんな世界を変えるていう目標があったんだけど結局変えられなかったんだ。だから僕がお父さんのとお母さんの代わりにこんな世界を変えるんだ!」

 

「なんかすごいね」

 

「でしょ?だから......最初の一歩として僕と友達になってください!」

 

 女の子に向かって頭を下げて右手を出してお願いをする。

 

「いいよ!私もあなたの夢を手伝ってあげる!」

 

 そう言って俺の右手を握ってくれる。それにさっきまでは少し暗い感じだったがいきなり明るくなった。きっと少し警戒をしていたのだろう。

 

「ジュリエット」

 

「え?」

 

「私の名前。ジュリエット・ペルシアだよよろしくね!...えーと」

 

「僕はエル!神崎エル!よろしくねペルシアちゃん!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから俺とペルシアちゃんは周りが暗くなるまで話した。

 

「あ!もうこんな時間!」

 

 ペルシアちゃんが公園に立っている時計を見て言う。

 

「本当だ...じゃあ今日はこれでお別れだね」

 

「そうだね......ねぇ」

 

「うん?」

 

「明日もここに来る?」

 

「来るよ!ていうか僕は毎日来てるよ」

 

「本当!じゃあ明日もこうやってお話ししない?」

 

「うん!」

 

「やった!じゃあまた明日ねエル君!」

 

「うんまた明日!」

 

 公園の出口に向かうペルシアちゃんを最後まで見届けた後俺も家に向かって歩き始める。

 

 (よし!まずは第一歩!とりあえずお父さんとお母さんには報告しておこう)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、どうもヨーグリーです。

 

まずはお気に入り登録した方ありがとうございます。

 

今回で試作品の二つ目です。今のところではあと二話続く予定です。そして次回で原作前が終わります。

 

多分読んでいて『ここ原作と設定が違うぞ?』ていうところがあるかもしれないですが自分はまだ原作を読んでないので違うところがあると思います。一応wikiの方で世界観を調べましたがあまり詳しくは見てません。それなら原作を早く読めよ。って思う方もいると思いますが最近何かと忙しくて読めないんですよね。それに前回言ったんですが今書いている作品が後半に入ったら本格的に活動していくつもりです。それまでにはきちんと原作を読んでおきます。

 

それじゃあもう書くことが無いので今回はここまで、また次回!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今度は高等部で......

 俺がペルちゃんと知り合って5ヵ月が経ったある日今日も俺らはいつもの公園で話していた。

 

「それでね犬塚が...どうしたのさっきから僕の顔ばかり見て」

 

「い、いやなんでもないよ!それでなんだっけ?犬塚?って子が体育の時間で転んだんだっけ?」

 

「いや、そんな話してないよ?それに顔も赤いけど大丈夫?熱でもあるの?」

 

 熱があるか確認するためにペルちゃんの前髪を上げておでこに手を当てる。少し熱いな。

 

「にゃ、にゃんでもないから!」

 

「でもさっき触ったら少し熱かったよ?今日はもう終わりにする?」

 

「それはだめ!」

 

 いきなりペルちゃんが大声を出した。

 

「ま、まぁペルちゃんがいいならそれでいいけどあんまり無理しちゃだめだからね?」

 

「うんわかってる」

 

「それじゃあさっきの続きでも...あー何話してたか忘れちゃった」

 

「私も忘れちゃった」

 

「ま、いっか今日はもうこのまま時間までボーっとしてようか」

 

「うん」

 

 ベンチに深く腰を掛けて空を見る。するとペルちゃんが手を握ってきた。

 

「えっとぉ...ペルちゃん?」

 

「だめ...?」

 

 上目使いで聞いてくるペルちゃん。

 

 (ぐはっ!これはまずいシルさん以上の可愛さだ!あの人は狙ってやってるけどこの子は狙ってやってるわけじゃないからタチが悪いぞ。それにまだこの子がまだ5歳でこの世界では同い年だが俺は精神年齢で言うと軽く30超えているおっさんだからよかったわ。もしこれが高等部のペルちゃんだったら一発で落ちたわ)

 

「もちろんいいよ!」

 

「やった!」

 

 そう言いながら小さくガッツポーズをする。うん可愛い。...あれ?俺落ちてね?

 

 

 それから何も話をしないで手だけを繋ぎ時間だけが進む。俺はこんな時間がとても心地よいと感じてしまう。もしこんな時間が続くなら俺はきっとどんな手を使ってもこの子を守るだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ、もうこんな時間」

 

「本当だ」

 

「時間が経つのはやいなぁ...」

 

「どうせ明日もここに来るんだしよくない?」

 

「よくない!エル君は女心っていう物を何もわかってない!」

 

「そ、そうすか」

 

「そうだよ!今日は今日!明日は明日って言葉があるでしょ!それだよ!」

 

「あ、はい」

 

「むぅ!絶対わかってない!...もういいもん今日は時間がないからまた今度教えてあげる」

 

「お、お手柔らかにお願いします......」

 

「それじゃあ...また明日」

 

「うんまた明日」

 

 ペルちゃんと公園の入り口まで一緒に行きお互い挨拶をして俺はペルちゃんが遠くなるまで見届ける。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただいまー」

 

 公園から帰ってきていつもみたいに最初に部屋に行って部屋着に着替えリビングに向かう。そしてリビングに行くとお父さんとお母さんが真剣な顔をして話していた。

 

「どうしたのお父さん?」

 

「帰ったか」

 

「うん今さっき。それでどうしたのなんか真剣な顔をしてるけど」

 

「エル、慌てず聞いてくれ」

 

「うん」

 

「俺とお母さんは親族以外には結婚したことを言ってないのは知ってるよな?」

 

「うん」

 

「実はな東和国とウェスト公国のとある人物から目を付けられているという話を俺の親父から聞いてなそれで一週間後にフランスの方に親父の友人がいるからその人に匿ってもらうことになった」

 

「本当に言ってる?」

 

「ああ、すまない俺が不甲斐ないばかりに」

 

「期間はどれくらい?」

 

「とりあえず国の目をある程度避けられるまでだな。でも安心してくれダリア学園の高等部までには間に合うように話をしておく」

 

「わかった」

 

「本当にすまない」

 

「エル、ペルシアちゃんにはきちんと言っておくのよ?」

 

「うん...悪いけど色々することがあるから部屋に戻るね」

 

 部屋に戻りこの一週間ペルちゃんに出来ることを考えた。

 

 (とりあえずどうするか...お父さんはダリア学園の高等部には間に合うように話を付けてくれるらしいからそれについては心配はないだろう。俺の夢は高等部から本格的に始動するからな。けどペルちゃんにはどうしようかな。......うーんだめだ!なにも思い浮かばない!とりあえず今日からフランスに行った時のことを考えよう。フランス語は現実世界の方で興味があって勉強したから話せるし)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そしてついに一週間が経ちフランスに行く前日になった。

 

「ペルちゃん」

 

「なに?」

 

「今日は大事な話があるんだ」

 

「大事な話?」

 

「うん......実は明日僕フランスに行くことになった」

 

「え......?」

 

「ごめんね本当はもっと早く言うべきだったんだけど、どうしても言い出せなくて」

 

「なんで?」

 

「お父さんの都合で......」

 

「やだ!私エル君と離れたくない!」

 

 そう言って俺の手を掴む。

 

「俺もペルちゃんと離れたくないけどだめなんだ」

 

「どうして!」

 

「どうしてもなんだ」

 

「なら私も一緒に行く!」

 

「無理だよ」

 

「そんなの言ってみなくちゃわからないよ!」

 

「無理なものは無理なんだよ......わかって」

 

「やだ!わかりたくない!一緒に!私はエル君と......一緒に...いたい」

 

 さっきよりも手に力を入れて俺の手を握るペルちゃん。それに対して俺も握り返す。

 

「聞いてペルちゃん」

 

「......なに?」

 

「僕ねダリア学園に入ろうと思ってたんだ。初等部と中等部はフランスの学校になると思うんだ。けど高等部までには帰ってくると思う。それで戻ってきたらダリア学園に編入するつもりだよ」

 

「それじゃあ...」

 

「うんもしペルちゃんがダリア学園に行くなら高等部になるけどまた会えるよ」

 

「行く!私ダリア学園に行く!」

 

「じゃあ約束ね?」

 

「うん約束!」

 

 そして俺たちは指切りをしてお互いに手を繋ぎいつもみたいにベンチに座る。けどその距離はどこかいつもより近い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ、もう時間だ」

 

「本当だ」

 

「うぅ...やっぱり嫌だよ......」

 

「もうまた泣くんだからどうせ高等部で会えるでしょ?」

 

「そうだけどそうじゃない!やっぱりエル君は女心をわかってない!」

 

「確かにそうかも」

 

「そうだよ!」

 

「そしたらペルちゃんにこれあげる!」

 

 俺は今日持ってきた手提げ袋から紙袋を出しその中身を出す。

 

「ヘアピン?」

 

「うんペルちゃんはいつも頭にリボン付けてるでしょ?それでリボンか髪にでもつけてもらえればいいなって思って」

 

 俺が渡したのは淡い黄色みを帯びた白色の花びらがついたヘアピンだった。

 

「すごーい!綺麗!」

 

「でしょ?ペルちゃんの髪の色とも合うと思ったんだ!」

 

「ありがと!エル君!」

 

「どういたしまして!」

 

「ちなみにこれはなんて名前の花なの?」

 

「それはねヒマワリだよ」

 

「え、でも私が知ってるヒマワリは黄色じゃ...」

 

「確かにヒマワリって言ったら黄色だけどそのヒマワリはイタリアンホワイトていうヒマワリなんだよ」

 

「へぇ」

 

「あとそれが今の僕の気持ちだよ!」

 

「エル君の今の気持ち?」

 

「うん!」

 

「えっと...うーん?」

 

「まぁ普通はわからないよね。家に帰ったらお母さんに花言葉を聞いてみるか自分で調べてみてよ」

 

「うん...」

 

「......それじゃあこれ以上だと暗くなっちゃうし」

 

「そうだね...」

 

「じゃあまたダリア学園の高等部で」

 

「うん!」

 

 そう言ってお互いに振り向き家へと帰る。

 

 (待っててねペルちゃんいつかきっとお父さんとお母さんの夢を叶られるぐらい強くなって君を守れるぐらいになるから......!)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、どうもヨーグリーです。

 

というわけで今回で原作前終了です。

 

今更ですがペルシアの口調は自分の予想です。

 

今回も書くことが無いのでここまで。それではまた次回!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開

 フランスのとある空港。そこで俺はお世話になった人たちと別れの挨拶をしていた。

 

「9年間本当にお世話になりました!フランシスさん」

 

「こちらこそありがとね君と過ごした9年間はとても楽しかったよ。でもよかったのかい?こっちでお父さんたちといた方が安全なのに」

 

「はい、自分にはどうしてもやり遂げなくてはいけない夢があるんです。それに約束もしましたしね」

 

 今話している人はお父さんのお父さん、まぁ俺のおじいちゃんだね。そのおじいちゃんとは昔から仲が良くて今回の事で俺たちを匿ってくれた人だ。

 

「......そうか。なら私からは何も言わないよ。...だけど何かあったらまた連絡してくれ私たちはいつでもエル君の味方だからな」

 

「ありがとうございます。......さてと」

 

 フランシスさんと会話を終えるとその後ろにいた親友のセドリックや他のクラスメイト達の方に顔を向ける。

 

「みんなも今までありがとね」

 

「おう!またいつでも遊びに来いよ!その時には何か手土産も頼むな!」

 

「もちろんセドリックには大好物のトマトをたくさん持ってきてやるよ」

 

「好きじゃねーよ!むしろ大っ嫌いだ!」

 

「まぁまぁセドリック落ち着いてトマトは甘くておいしい食べ物だよ?」

 

「ふん!あれのなにが甘いんだよ」

 

「まぁこんなセドリックは置いておいて」

 

「おい!」

 

「本当にありがとう!セドリックとは9年間ずっと一緒にいて学校もクラスも全部一緒で切っても切れない何かがあったし、他に辛いことや楽しかったこと色々あったけど今こうしてここに俺が居るのはみんながいたからなんだ。だからしつこいようだけど何回でも言わせてほしい......本当にありがとう!すごく楽しかった!」

 

「何くさい事言ってんだよ!お礼なら俺らも数えきれないほどあるわ。けど全部含めてみんなを代表して一言」

 

 途中で言葉を切って後ろにいるクラスメイトに顔を向けて一度うなずく。

 

「俺らの方こそ本当にありがとな!お前と一緒に過ごした今日までの日々は最高に楽しかったぜ!向こうでも元気にやれよ!」

 

「おう!」

 

 セドリックとみんなの思いも込められた言葉を受け取りそれに対して俺も全力で答える。

 

「エル」

 

「エル...」

 

「お父さん...お母さん...」

 

「今日まで本当によく頑張ったな流石俺らの息子だ」

 

「なにかあったらすぐこっちに戻ってきなさい。あなたがいつでも戻ってきてもいいように準備してるからね」

 

「うんありがとね二人とも」

 

 そう言って二人に近づき片方ずつ手を握り言う。

 

「二人の夢は必ず俺が叶えて見せる...だから二人はここで待ってて」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「それじゃあ行ってきます」

 

「「「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」」」

 

 (はぁ、会おうと思えばいつでも会えるのにもこういう別れは見送りされる嬉しさと別れたくないという悲しさで胸がいっぱいになるな。それにあの子は元気だろうか...もしこれで覚えられてなかったら悲しすぎて立ち直れないかもしれない。なんか心配になってきたな...)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペルシアside

 

 最近同じような夢を見る。それは私が幼いころの記憶。

 

『ペルちゃん今日はどうする?』

 

『今日はなんかボーっとしてたい気分かな』

 

『わかった!』

 

 たったそれだけの言葉だけを交わし二人で公園のベンチに座る。そしていつも私の方から手を繋ぐ。最初の頃はお互い恥ずかしながらも繋いでいたが回数が増えていくたびに慣れていって手を繋ぐのが当たり前になっていった。その時の私は何も思わなかったが今思うと少し残念な気分になる慣れっていうのは時に残酷ね。だけどたまに彼から手を繋いでくれることもあった。もちろんその時はうれしくてつい小さくガッツポーズをしたのをよく覚えている。

 

 だけど昨日と今日の夢は...

 

『実は僕明日フランスに行くことになった』

 

『やだ!私はエル君と離れたくない!』

 

 いきなり言われた彼からの言葉。私はそれを受け止められず離れたくないとわがままを言ってしまう。だってそれは仕方のないことだと思う。その時から私は彼に恋をしていたのだから。彼はウェスト公国と東和国など関係なく話せる唯一の友達そして時折見せるあの笑顔が私は堪らなく好きだった。そんな人が突然親の都合で遠く離れた国に行ってしまう私の前から大切な人がいなくなってしまうどうしても私は行かないでほしかった、だけど私はただ行かないでと言う事しか出来なかったそんな自分に腹が立ってしまって泣いてしまった。だが彼はそんな私を見てこう言った。

 

『僕ねダリア学園に入ろうと思ってたんだ。初等部と中等部はフランスの学校になると思う。けど高等部までには帰ってくると思う。それで戻ってきたらダリア学園に編入するつもりだよ』

 

 彼はそう言ったその時の私はよほど彼から離れたくなかったらしく『戻ってきたらダリア学園に編入するつもりだよ』って言葉を聞いて勢いで私もダリア学園に行くと言った。まぁその時から学校はダリア学園に行くと決めていたから問題はなかったけどね。そして二人でいつかまたダリア学園の高等部で会うという約束をした。

 

 なぜ最近あの日の夢を見続けるのかはいまだわからない。けどきっと私が彼の事をそれぐらい好きだという事なのかもしれない。

 

「ペルシア様!」

 

 突然ドアの前から女の子の声が聞こえる。

 

「今すぐ外の方に!黒犬の野郎どもが!」

 

「わかったわすぐ行く!」

 

「はい!」

 

 ドアの前から話しかけてくる女の子に言って準備をする。そして今日も彼からもらったイタリアンホワイトのヒマワリの花びらがついているヘアピンを着ける。

 

 このヘアピンをもらった時に彼は『僕の今の気持ちだよ!』と言ってきた。それに対して私は意味が分からず首を傾げる。すると彼は親にこれの花言葉を聞くか自分で調べてみてを言った。その夜私はお母様にどういう意味か聞いてみた、だけどお母様にもどういう意味か分からなかった。それなら調べてもいいが、なぜだか調べることだけはしたくなかった。なら彼に会った時にでも聞こう。それまでこのヘアピンは大事に使おうと決めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

エルside

 

 (あーやばい!やらかした!時差ぼけの所為で寝坊した!どうするか考えろ神崎エル......あ!これなら!)

 

 周囲に人がいないか確認をする。

 

 (よし周囲に人はいない!やるなら今だ!)

 

 周囲に人がいないかを確認をしたら足に思いっきり力を入れて飛ぶ。

 

 知らない人の家の屋根を足場にしてまた飛ぶそれを何度か繰り返していくうちにダリア学園が見えてくる。

 

 (見えてきた!よしこの距離なら本気で飛べば一回で行けるはず)

 

 そして赤い屋根の家の上に着地をして軽く準備運動をする。

 

 (よし!行くぞ!)

 

 ダンッ!

 

 さっきの倍の力で飛ぶ。......が少し力を入れすぎたため思ったより飛んでしまった。

 

 そしてダリア学園まで飛んできたが力加減をミスったせいで校門よりも先の校内と校門の真ん中の通路あたりで徐々に高度が落ちていって......

 

「うわぁぁぁぁ!どいてどいてぇぇぇぇぇぇ!」

 

 派手に落ちてしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペルシアside

 

 エルが落ちてくる少し前。

 

「ウェストのクソ貴族が!」

 

「東和国の野蛮人め!」

 

 今日も東和国の生徒との戦闘だった。

 

「犬塚!手を貸そうか!?」

 

「いや...ペルシアは俺が倒す!手ぇ出すな!」

 

 そう今の私は白猫のリーダーになるくらい強い。もし彼がこんな私を見たらなんていうのだろう?初めて彼と出会った日私は彼の夢を聞かされた。その夢を聞いて私はその手伝いをすると言った。だが今はこうやってウェスト公国と東和国とか言いながら黒犬の生徒と争っているのだ。彼が見ればきっと失望されるだろう。そう考えるだけで胸が痛む。

 

「ペルシア様ここはお任せください」

 

「スコット...」

 

「命をかけてあなたをお守りする...僕にできるのはそれくらいですから」

 

 そういって私の両手を包むように握ってくるスコット。

 

 こう言ってくれるのはうれしいのだが私はそれを彼に言われたらどれくらいうれしくなるだろうと考える。けど彼はまだここにはいない。

 

 そう思ってると突然上から声が聞こえる。

 

「うわぁぁぁぁ!どいてどいてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「え?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

エルside

 

 ズドン!

 

「いったぁ!...くない!?」

 

「う...うう...」

 

 突然下から声が聞こえたため下に向くと白い服を着た人がいた。

 

「うわぁ!すみません!つい力加減を間違えてしまって!」

 

 下敷きになってた人に謝る。そして周りを見ると全員が俺をじっと見ていた。

 

「あ、あれ?もしかして俺お邪魔?」

 

「ああすっげぇ邪魔」

 

 今度は後ろから声が聞こえたから振り向くと黒い制服、自分と同じ制服を着た目つきの悪い生徒がいた。

 

「ごめんね?今どくか...ら......って!もしかしてロミオ!?」

 

「はぁ?なんでお前俺の名前知ってるんだ?俺はお前なんかしらねぇけど」

 

「もしかして忘れた?ほら!小さい頃家が近くてよく遊んだじゃん!」

 

「小さい頃?家が近くてよく遊んだ......?あ!」

 

「思い出した?」

 

「ああ!お前よく遊んでた神崎エルだろ!」

 

「うん!久しぶりだねロミオ!」

 

「おう!あの時はいきなりフランスに行くって言ったからびっくりしたぜ」

 

 そういって俺の前にこぶしを出すロミオ。

 

「お?久しぶりにやるか」

 

 ロミオのこぶしに俺のこぶしを軽く当てる。

 

 これは俺とベルがよくやっていことだ。それをロミオに教えたのだ。

 

 すると突然ロミオの後ろにいるサイドテールにしている黒髪の女の子が犬塚に話しかける。

 

「犬塚こいつだれだ?」

 

「こいつは俺が小さかった頃に家が近くてなよく遊んでた幼馴染の神崎エルだ」

 

「Ravi de vous rencontrer. 初めましてロミオの幼馴染の神崎エルです!今日からこのダリア学園に編入することになりました!ちなみにフランスからの帰国子女です」

 

ロミオの隣に移動してきたサイドテールの女の子に自己紹介をしてフランスからの帰国子女だと伝えると、ええええええ!?と驚いていた。

 

 すると今度は俺のすぐ後ろで泣いている声が聞こえた。

 

「本当に...本当に帰って...来たんだ...」

 

 後ろを向くと両手で口元を抑えて泣いている金髪の女の子が立っていた。

 

 とても綺麗でまぶしい金色の髪の左に少し大きめの黒いリボンを着けてその反対側の髪には俺が幼いころにとある女の子にあげたイタリアンホワイトのヒマワリの花びらが付いたヘアピンを着けていた。

 

 そんな目の前にいる女の子が俺がこれまで三回別の世界で生きてきて心から本気で愛した人......ジュリエット・ペルシアだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

はい、どうもヨーグリーです。

 

初めにお気に入り登録してくださった方ありがとうございます!

 

今回から原作開始です。

 

一応自分の中でこれで試作品は終わりの予定でしたが原作前で二話使っちゃたのであと一話続きます。

 

それでは今回はここまで!また次回!

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強さとは...

「ペ、ペルちゃん...?」

 

 後ろを振り向くと泣いている子は俺が幼いころから心から愛したペルちゃんだった。

 

 泣いている彼女に近づこうと一歩前に出るとそのまま後ろを振り向き白猫の校舎に走って行ってしまった。

 

「ペ、ペルシア様!」

 

 俺が落ちるときに下敷きにしてしまった人がいつの間にか復活しており逃げるように走っていったペルちゃんを追いかける。

 

「ペルちゃん......」

 

「コラー!校内での喧嘩は禁止と言ってるだろうが!」

 

 突然校舎の方から教師が数名こちらに走ってくる。

 

 (仕方ないここは俺がおさめるか)

 

「おはようございます先生方」

 

「ん?君は...」

 

「自分は今日からこのダリア学園に編入することになった神崎エルです!今さっき先生が喧嘩と言いましたがそんなことしてませんよ?」

 

「なに?」

 

「ただ自分がここに集まってる生徒全員の前に派手な登場をしてしまってそのまま自分の自己紹介をしていたんです」

 

「そうなのか」

 

 俺の近くにいたロミオとサイドテールの女の子に確認をする。

 

 その時に俺はロミオにアイコンタクトで話を合わせてくれって意味を込める。ロミオもそれに軽くうなずく。

 

「そうなんすよ!いきなりこいつが俺らの目の前に上から落ちてきてそのままこいつの自己紹介をすることになったんすよ!な?蓮季」

 

「そ、そうだゾ!」

 

「どうやら本当らしいな。よし!それなら早く自分たちの教室に戻れ!」

 

 その言葉に黒犬、白猫の生徒みんなが戻って行く。

 

「あ、そうだ神崎はこの後職員室に来てくれ」

 

「分かりました」

 

「とりあえずエルは俺に着いてきてくれ教室まで案内するぞ」

 

「わかった」

 

ロミオに教室に案内される途中サイドテールの女の子、たしか蓮季?が俺に話しかけてきた。

 

「なぁ神崎はいつから犬塚と仲がよかったんだ?初等部と中等部では見たことないけど」

 

「ロミオとは初等部より前から家が近所ってことで一緒に遊んでたんだ。んでダリア学園の初等部に入学する前に親の都合でフランスに行くことになったんだ」

 

「じゃあフランス語話せるのか!?」

 

「もちろん話せるよ」

 

「すごいな!」

 

「ほらついたぞ」

 

どうやら蓮季と話してる間に教室に着いたらしい。

 

「今度フランス語聞かせてくれな!」

 

「いいよ。んじゃあ俺は職員室に行ってくる」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペルシアside

 

「ハァァァ!」

 

 カァン!

 

「ま、参った!」

 

「ありがとうございました!」

 

 私たち白猫は今剣術の特訓中だった。

 

「お疲れ様です!」

 

「サンキュ」

 

「男顔負けの強さですね!」

 

「いえまだまだよ」

 

「そんな!そんなに強いのに!」

 

「私の目指す強さっていうのは世界すら変えちゃうようなそういう強さなの...」

 

「世界?」

 

 そう私は強くない。昔彼と離れてから一人でも彼の夢の手伝いをしようとしたことがあった...けど私一人では何もできなかった。結局は口だけ...そして今朝彼は突如私たちの前に現れた。昔とは違って身長も伸びていてたくましくもなっていた。けど雰囲気はあまり昔とは変わってはいなかった。そんな彼を見たときに私はすごく嬉しくなり今すぐにでも飛びつきたかったがさすがに黒犬と白猫全員が見てる前ではやる勇気はない。それと同時に怖かった...もし私の事を忘れていたら、今の私を見てどう思うのか、どうしても考えてしまう。そして私はそんな二つの感情のせいで泣いてしまい彼から逃げるように校舎に戻ってしまった。

 

「そういえば今朝の彼は何者だったのでしょうか?いきなり僕の上に...上?......そうだ!あいついきなり僕の上に落ちてきて僕を下敷きにして!今度会ったら許さないぞ!」

 

 スコットが彼にされたことに勝手に怒っているが気になるのはそこじゃない。スコットが言った通り彼はいきなり上から落ちてきたのだ。普通はありえないことなのだが...

 

「ちゃんと歩け!」

 

 突然外から誰かが叫ぶ声がする

 

「行ってみましょう」

 

「はい」

 

 外に出てみると白猫の生徒が初等部の子を三人ほど連れてきた。

 

「どうしたの?」

 

「あぁ黒犬のガキどもがね白猫の寮に落書きしてたんでちょ~と痛い目に遭わせてやろうと思ってさ」

 

「どうしてそんなことをしたの?」

 

「白猫の奴に黒犬は弱いってバカにされたから!だからやり返した!文句あるか!」

 

 私が聞くと黒犬の初等部の子が怒りながら言ってきた。

 

 すると子供を連れてきた生徒が言ってた子を殴ろうと腕を振る。

 

「何してんだ」

 

 だけどその拳は当たることはなく横から来た生徒によって腕を掴まれる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エルside

 

 ロミオに教室を案内してもらってから職員室に行って担任の先生に色々説明してもらって今ようやく終わった。

 

 (教室に戻るのもいいけど少し散歩していくか)

 

 校舎を出て適当に歩いているとどこかから大きな声が聞こえた。

 

 (ん?なんかあっちの方から声が聞こえるぞ)

 

 声が聞こえた方まで行くと黒犬の初等部の子が白猫の生徒に連れていかれていた。

 

 そして大きな建物の前まで連れていかれてドアの前に行くとツインテールに髪を結んでいるペルちゃんが出てきた。

 

 (ぐはっ!...な、なんていう破壊力だ...あれだけで国一つを滅ぼせる可愛さじゃねーか。しゃ、写真撮っておこう)

 

 俺はポケットから自分のスマホを取り出し無音カメラのアプリを起動してペルちゃんを写真に撮る。

 

 (やった!まさか一日目からこんなペルちゃんの写真が撮れるなんて!......あれ?これ盗撮じゃないよね?...ま、いっか!)

 

 いや良くない。読者の皆さんは決して盗撮なんてしないでくださいね!盗撮は犯罪ですので。byヨーグリー

 

 フォルダーに保存したペルちゃんの写真に見とれていると突然初等部の子の声が聞こえた。

 

「白猫の奴に黒犬は弱いってバカにされたから!だからやり返した!文句あるか!」

 

 初等部の子が言うと前にいた白猫の男子生徒が殴ろうとしていた。

 

 (まずい...!)

 

 俺は咄嗟に隠れていた場所から飛び出し『ダンまち』から引き継いだファルナの俊敏をフルで使い殴ろうとしている白猫の生徒の腕を掴む。

 

「何してんだ」

 

「テ、テメェ...今朝の黒犬!いきなりどこから出てきた!」

 

「そんなことはどうでもいい早く答えろ」

 

「ふん!誰がお前みたいな黒犬に答えるかよ!」

 

「そうか」

 

 白猫の生徒が答えてくれなさそうだったから俺は掴んでいる腕を離してペルちゃんの方を向く。

 

「どうも今朝ぶりですね白猫のリーダーのジュリエット・ペルシアさん」

 

 俺はペルちゃんと知り合いだとばれないように他人のふりをする。

 

「え、ええ」

 

「それでこれは何があったか説明してもらえませんか?」

 

「ペルシア様から離れろ!」

 

 横から朝俺が下敷きにしてしまった人が殴りかかろうとする。

 

「よしなさい!」

 

 今度はペルちゃんが大きい声を出して止める。ペルちゃんかっこいい...!

 

 (いかんいかんあまりのかっこよさに見惚れちゃうところだった)

 

「いいわ話してあげる」

 

 それからペルちゃんに何があったか説明してもらった。

 

 どうやら黒犬の初等部の子が白猫の寮に落書きをしてたところを見つかりここまで連れていかれて今に至るらしい。

 

「わかりました。じゃあ少しまっててくれませんか?」

 

「え、ええ」

 

「さてと...」

 

 俺はペルちゃんの返事を聞いて後ろにいる初等部の子供たち方を向いて同じ目線になるように座り込む。

 

「君たちは白猫の人に黒犬は弱いって言われて悔しいか?」

 

「あ、当たり前だろ!」

 

 一番前にいる子が答える。

 

「じゃあさ白猫の寮に落書きして満足か?」

 

「......」

 

 俺が聞くと下を向き黙り込む。

 

「そうだよな満足しないよな?...でもな?もしそれで満足してたら俺は君たちの事を怒っていたかもしれないぞ?」

 

「え?」

 

 俺がなに言ってるのかわからず首を傾げる。

 

「俺はなここじゃない別の国で暮らしてたんだ。それでなその国は当たり前のようにお互いが陰で相手にばれないようにコソコソと悪口を言ってたり嫌がらせをしてたんだ。それでその人たちはやり切ったかのように満足げな顔をするんだ。けどなそういう奴らに限って一人では何も出来ない弱者なんだ。しかも何か問題が起きたら真っ先に他の人の所為にして自分が悪いことを認めないんだ。どうだすごく汚い人たちだろ?」

 

「うん...」

 

「けど君たちはまだそうじゃない。今からでも強くなれる」

 

「本当!」

 

「ああ」

 

「あ、でもどうやって強くなれるんだろう」

 

「強くなるって言っても三つあるんだ」

 

「三つ?」

 

「ああ、まず一つ目が心だ」

 

「心?」

 

「君たちはさ白猫の人たちに黒犬は弱いって言われて悔しかったんだろ?けどなそういうことは言わせておけばいいんだ。さっきも言ったがそういう奴らに限って何もできない弱者なんだ。けどだからって相手にバレずに嫌がらせで仕返ししても弱者だ」

 

「ならどうやって...」

 

「最初はつらいけど我慢するんだ」

 

「なんで?」

 

「君たちは黒犬の悪口を言われてどう思ったんだっけ?」

 

「悔しかった!」

 

「だろ?だからこそ我慢するんだ。今回の事で君たちはその悔しい気持ちを味わった。この世の中には何もせずに強くなれる人なんて一人もいないんだ。もしそれで強いって言うならその強さは偽物だ。本当の強さっていうのは君たちが味わった悔しい気持ちや辛い気持ち、こういう気持ちを知っている人が強いんだ」

 

「ぼ、僕はそんな悔しい気持ちや辛い気持ちを知っても強いとは思わない...」

 

「それは君がそういう経験をしてないからだ。俺はねそういう経験をたくさんしてきた。そしてそういう気持ちを持ってる人は相手の気持ちを思いやれる優しい人になれるんだ」

 

「お兄ちゃんもそうなの?」

 

「そうだぞ。俺は君たちよりずっとそういう経験をしてきた。だから俺は君たちの悔しいって気持ちがよくわかる。でも最初は我慢するのが大変でどうしてもやり返したくもなる...!けど我慢すればおのずと心は強くなり相手の気持ちを知ることも出来て思いやる心も出来て最終的にはとてもやさしい強い人になれる」

 

 俺が言い終わると初等部の子たちは目をキラキラさせながら俺を見てくる。

 

「なりたい!まだ難しいことはわからないけどお兄ちゃんみたいになりたい!」

 

「僕も!」

 

「私も!」

 

 一番前の子が言うと後ろにいた子も前に来て言う。

 

「そうかそうか今の話を聞いてそう思ったならきっとなれるさ!でも後の二つはまた今度な?」

 

「うん!」

 

「よし強くなるための一歩目だ!君たちのしたことは悪いことなのはわかるよね?」

 

「うん!」

 

「じゃあ悪いことしたらまずは何をするんだ?」

 

「あやまる!」

 

「うんそうだ。じゃあそこに金髪のお姉ちゃんがいるだろ?あの人は白猫のリーダーだ。だからその人にちゃんと謝ってきなさい」

 

「わかった!」

 

 返事をするとそのままペルちゃんの所に行く。

 

「白猫の寮に落書きをしてごめんなさい!」

 

「「ごめんなさい!」」

 

「私からも謝るわごめんなさい。うちの生徒が」

 

「うん!」

 

 お互いに謝ると子供たちは俺のところに戻ってくる。

 

「ちゃんとあやまれたよ!」

 

「よくできました!」

 

 そう言って三人の頭を順番に撫でる。

 

「わーい!ほめられた!」

 

「それじゃあ後はお兄ちゃんに任せて君たちはもう行きな」

 

「うん!それじゃあお兄ちゃんまたねー!」

 

「おうまたな」

 

 手を振られたため俺も振り返す。

 

「さてと」

 

 立ち上がり後ろにいる白猫の生徒の方に向きを変える。

 

「俺からも謝るすまなかった」

 

 頭を下げて謝る。

 

「も、もういいわよ謝らなくても」

 

「ありがとう。じゃあ仲直りの証として握手しない?」

 

 ペルちゃんの前まで移動して右手を出す。

 

「もちろんよ」

 

 ペルちゃんも少し前に出て右手を出して俺の手を握る。そして俺はもう少しペルちゃんに近づいて言う。

 

「ただいま」

 

「うんおかえり」

 

 お互い挨拶をして離れて手を離す。するとペルちゃんは少し残念そうに「あ...」と言う。

 

「それじゃあ俺はこれで失礼します」

 

 去ろうと後ろを向くと視界の端にロミオが入った。

 

「あれロミオ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

犬塚side

 

 (すげぇ勢いで出ちまったけどエルのやつたくましくなったな。それにエルが話してる時にペルシアがエルを見てる時のあんな顔今まで見たことがねぇ。しかもすこし顔が赤かったし...)

 

「あれロミオ?」

 

 (やべぇ!そういえば飛び出してそのままだった!)

 

「何しに来たの犬塚!」

 

「ま、待て別に喧嘩しに来たわけじゃねぇ!」

 

「じゃあなんの用なの!?」

 

「それはその...告...告...」

 

「こく...何よ?」

 

「告訴だ!告訴してやる!」

 

「はぁ!?」

 

 (ちくしょ!やっぱ言えねぇ!)

 

 そのまま俺は逃げるように戻って行ってしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

エルside

 

 (ロミオのやつ一体なにがしたかったんだ?まぁいっか)

 

 そして俺は黒犬の教室に戻って行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、どうもヨーグリーです。

 

今回でこの試作品シリーズは終わりですが、ここで重大発表があります。

 

来週から『エルとジュリエットの寄宿学校』の本格的に活動します!

 

理由はただ単純に書いてて楽しくてもっと書きたいからと思ったからです。

 

よかったらこれからもよろしくお願いします!

 

では今回はここまで!また次回!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見てしまった告白と俺の心模様

 教室に戻るとすでにロミオが戻っていた。

 

「ロミオさっきはどうしたんだ?」

 

「いや、なんでもねぇよ...」

 

「そうか。でも何かあったらいつでも言ってくれよ?相談に乗るからさ」

 

「おう」

 

 ロミオと会話をしてると蓮季がこっちに来た。

 

「二人はどこ行ってたんだ?」

 

「久しぶりに会ったから二人で話そうってなって校内を散歩してたんだよな?ロミオ」

 

「ああ」

 

「そうなのか!」

 

 それから俺は普通に授業を受けていた。

 

 (どこの世界に行っても数学ってあまり変わらないんだな...)

 

 そして一日の授業を全部終えて俺は自分の部屋に戻り荷造りをしていた。

 

 (いやー、まさか二人部屋で一人になるとはな...しかも一人だから超広い)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから時間が経ち気づいたら外は夜になっていた。

 

 (もうこんな時間か。そういえば今日は何曜日だ?)

 

 壁に掛かっているカレンダーを見る。

 

 (水曜日か。よしギター持って適当に静かな場所でも探すか)

 

 俺は部屋の隅に置いてあるアコースティックギターをケースにしまい背中に乗せて静かに部屋をでる。

 

 寮を出て少し歩き噴水広場に着く。

 

 (お?ここなら静かでいいんじゃない?)

 

 背負っていたギターをベンチの上に置いて座る。

 

 (はぁ、今日は一日目から大変だったな。でも今日はいい物も撮れたしいいか。あれ?確かケータイの持ち込みって駄目だったような...まぁいっか)

 

 ケースからギターを取り出し座りなおしてギターが弾きやすい体制になる。そしてギターを弾く。

 

『~~~~~♪』

 

 俺がこうしてギターを弾き始めたのは俺ら家族を匿ってくれたフランシスさんが弾いてるところを見てかっこよくて俺も弾きたいと言ってお父さんに買ってもらったのが理由だった。

 

 そしてたくさん練習をして3年が経った頃に俺は月、水、金、日曜日ごとに一人静かになれるところを探しては弾いていた。今となっては習慣になってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 だいぶ時間が経ち六曲目が弾き終わり部屋に戻る準備をする。すると白猫側の方から誰かが歩いてくる音が聞こえてくる。俺はまずいを思い急いで片づける。そして一応誰が来たのかを確認をしてみるとペルちゃんだった。

 

 (あれ?こんな時間にどうしたんだろう?しかも両手には剣持ってるし。あれ本物じゃないよね?一応隠れて見るか)

 

 俺はさっきまで座っていたベンチの下に隠れる。

 

 (ここばれないよね?角度的には大丈夫だけど...)

 

 バレるか心配していると今度は黒犬側から誰かが歩いてきた。

 

「よく来たわね......まずはひとつ聞きたいさっきあなたは私を襲ったの?それとも助けてくれたの?」

 

 (襲った?助けた?話が読めない。それより誰と話してるんだ?)

 

 黒犬側から来た人物がまだわからなかったため少し顔を出して見てみるとロミオが立っていた。

 

「襲ったのだとしたらこの剣で決闘を申し込むわ。でも助けたのだとしたらそれはなぜ?あなたにとって私は敵でしょう?...もし助けた理由が単なる同情なら...それは私にとっては襲われるのと同じくらい辛い...!」

 

「え...」

 

「誰にも......特に犬塚には同情されたくないの!勝手だけどライバルだと思ってるから...!あなたに弱いと思われることだけは耐えられない!」

 

「そんなこと思ってねぇよ!」

 

「ウソよ!いつも攻撃は手加減するし!私を喧嘩から遠ざけようとするじゃない!...それってバカにしてるからでしょ...?」

 

「ペルシア......わかった本気を見してやる!俺と決闘しろ!」

 

「ありがとう。私の気持ちを汲んでくれて。それじゃああなたの本気見せて頂戴!」

 

「あぁ」

 

 (ペルちゃんとロミオどっちが勝つんだ?ていうかロミオさっきからペルちゃんを泣かせすぎじゃね?後でお仕置きしておかないと...)

 

「「はぁぁぁぁぁ!」」

 

「好きだ!付き合ってくれ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 最後まで戦いを見届けるつもりだったがロミオのいきなりすぎる告白で勢いよくベンチの下から飛び出してしまった。

 

「エル!?」

 

「エル君!?」

 

 俺がいきなり大声を上げて飛び出したせいで二人が俺を見る。

 

「エル君だと!?」

 

 ペルちゃんが俺を昔からの呼び方で呼んでしまってそれに対してロミオが言い返す。

 

「あ...」

 

するとペルちゃんは両手で口を抑えてやってしまったっていう顔をする。そして俺も勢いで飛び出したもののどうしたらいいか分からず固まってしまう。

 

「全部聞いてたのか?」

 

俺がどうしたらいいか分からずにいるとロミオが俺に聞いてくる。

 

「う、うん。ていうか俺二人が来るだいぶ前からここにいたよ」

 

 (ていうかさっきから胸のあたりがモヤモヤするんだけど、しかもイライラもする...)

 

「まじ!?」

 

「うん...ま、まあ俺はこれで失礼するよ」

 

そう言って寮に戻ろうとする。

 

「ま、待って!」

 

「どうしたの?」

 

「えっとぉ...あのぉ...」

 

「何か言いたいことでもあるの?」

 

モヤモヤとイライラの所為でペルちゃんに対して少し強い口調で言ってしまう。

 

「これは...その...」

 

「はぁ、ロミオ悪いんだけど少しペルちゃん借りるよ」

 

「お、おう」

 

 下を向いて何か言いたそうにしているペルちゃんの手と取って噴水の反対側まで連れて行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ペルシアside

 

 エル君に手を引かれて噴水の反対まで連れていかれる。

 

「エ、エル君...?」

 

「ペルちゃんが言いにくいなら俺は聞かないよ。けどねちゃんと考えて答えを出さないとだめだよ?」

 

「え?」

 

 私はエル君の言葉に首を傾げる。

 

「人生は一度きりなんだ。まだ俺らは17歳でこれからもっと嬉しいことや悲しいことそして後悔や色んなことを経験していくと思う。けどねそういうのはその日やその場限りに感じるものなんだ一度過ぎたことはもうやり直せないんだ。だからペルちゃんはロミオに対してきちんと考えて答えを出してほしいんだ」

 

 彼から出てくる言葉。その一言ずつがまるで彼が何回も経験したかのように思えるぐらい重みがあった。だけど私は気づいてしまった......彼の顔がとても悲しそうにしていたのをそれと同時に今すぐにでも泣きそうな顔をしているのが。だから私は言えずにはいられなかった。

 

「どうしてエル君は今そんな悲しそうな顔してるの?」

 

 私が聞くと彼は少し驚いたような顔をした。

 

「悲しいそうな顔?そんな顔をしてないよ!ほら!」

 

 そう言っていつものおちゃらけた表情に戻る。

 

(そんなこと言って私に心配させないために...本当にエル君は...だけど私は彼のこういうところに惹かれたのよね)

 

「だからペルちゃんがどんな答えを出しても俺は...俺だけはいつまでも君の味方でいるから」

 

 (っ!...本当に...私はあとどれだけあなたを好きになればいいのかしら。それにすごく嬉しい...彼にこうやって言ってもらえるなんて。なら私が出す答えは一つだけだわ!)

 

「お?何か決まった顔になったね」

 

「ええ。エル君のおかげよありがとう」

 

「どういたしまして。それじゃあ俺は寮に戻るね」

 

「うん...おやすみ...」

 

「おやすみ」

 

 そのまま犬塚の横を通り黒犬の寮に戻っていくエル君。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エルside

 

 (はぁ、だめだ...さっきよりもモヤモヤするしイライラもする。それにペルちゃんに悲しそうな顔してるって言われたしなぁ。確かにああやってペルちゃんには言ったが話してる途中どうしてもロミオと付き合ったらって考えてしまう。考える度に胸が痛くなるし悲しくなって泣きそうにもなった。きっここれが嫉妬っていう物だろうか。でも答えを決めるのはペルちゃんだ...俺が出しゃばっていいものではない。それなら俺は隅から彼女を見守ろう......)

 

「あ、ギター置いてきた...まぁ明日取りに行けばいいか」

 

 

 

 




はい、どうもヨーグリーです。

前回書きましたが今回から本格的にこの作品を活動していきます。

そして今日はクリスマスですね。今年も自分は家で友達とゲームです...クリボッチじゃないだけマシですかね。

まぁそれはさておき、どうやらアニメの方は最終回を迎えたらしいですね。自分はアニメの方は見てないんでわからないんですけどね。

まぁそんな感じで今回はここまで!また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

炸裂!必殺の右ストレート!

  次の日今日も通路の前で黒犬と白猫が対峙していた。もちろん俺も呼ばれた。

 

「蓮季さんや?なぜ俺も呼ばれたのでしょうか?」

 

「そんなのもちろん神崎が黒犬の生徒だからだゾ」

 

「えぇ...俺戦うの嫌いなんだけど...」

 

 蓮季に言うと白猫側から昨日俺が下敷きにした人、スコット?が言ってきた。

 

「ふん!ただ戦うのが怖いだけじゃないのか?それなら今すぐに自分の部屋に戻ってるんだな!」

 

「戻れるなら今すぐにでも戻って寝たいよ...」

 

「ダメだゾ!」

 

「ほらな?」

 

「なら!昨日僕を下敷きした恨みここで晴らす!」

 

 そう言ってスコットは俺に殴りにかかる。けど俺はそれを躱す。

 

「ほぉ、なかなかやるじゃないか、ならこれならどうだ!」

 

  さっきより動きが速くなり手数も増える。

 

「スコットだっけ?止めるなら今のうちだよ?」

 

  全ての攻撃を躱しながらスコットに言う。

 

「それなら貴様が止めて見せるんだな!」

 

「言ったからね?」

 

俺は一度スコットと距離をとる。すると後ろからロミオが話しかけてくる。

 

「大丈夫かエル!?」

 

「あ、うん大丈夫だよ」

 

ロミオに言ってスコットを見る。

 

「えっとぉスコット?でいいんだよね?」

 

「いい加減名前覚えたらどうだい?」

 

「うん、まぁ善処するよ。んじゃあ次は俺の番ね?」

 

右足を肩幅まで広げて少し右を向く。そして右手に力を入れる。

 

「実はさ俺って自分が満足いく起き方をしないと寝起きが悪いんだよね。それで今朝誰かにドアを思いっきり叩かれて無理やり起こされたんだ、そのせいでめちゃくちゃ寝起き悪いんだ。だからスコット...君でこの機嫌を直さしてもらうわ」

 

そして俺はそのままスコットとの距離を詰める

 

「な!速すぎる...!」

 

「くらえ必殺スーパー......右ストレート!」

 

 スコットの顔面を殴る。

 

「ぐはぁ!」

 

 殴られたスコットはそのまま一直線に吹っ飛ぶ。

 

「スコット!」

 

「すげぇぇぇぇ!」

 

 それを見たペルちゃんはスコットの名前を叫び、ロミオも叫ぶ。

 

「ふぅ......よしスッキリした」

 

「お、鬼だゾ......」

 

 そして俺はそのまま昨日置いて行ってしまったギターを取りに行くため噴水広場に向かう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「確かここに置いたと思うんだけど...」

 

「探してるのはこれ?」

 

 俺がギターを探してると後ろから声をかけられる。

 

「ペルちゃん...」

 

「これ探してるんでしょ?」

 

 そう言って背中に背負っている俺のギターを下して前に差し出す。

 

「あ、うんそうこれだよ!昨日置いて行っちゃってさーありがとね」

 

 差し出せされたギターを受け取る。

 

「昨日はありがとねおかげで決心がついたわ」

 

「俺は何もしてないよ決めたのはペルちゃんだよ」

 

「ううんエル君が言ってくれなきゃいつまでも決まってなかったと思う。だから私こそありがとね」

 

 お礼を言って俺に微笑むペルちゃん。

 

「それでね今日の夜空いている?」

 

「夜?まぁ空いてるけど」

 

「そう、なら昨日と同じ時間にここに来てもらっていい?」

 

「まぁいいけど」

 

「ありがと、それじゃあ先に戻るわ。ちゃんと来てよ?」

 

「うん」

 

 そのまま白猫の校舎に戻って行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 一度自分の部屋に戻ってギターを置いてきてから教室に戻る。

 

「神崎!さっきのやつ凄かったな!」

 

「どうしたいきなり」

 

 戻ると蓮季が俺に近づき言ってくる。

 

「ああ蓮季がさっきお前がスコットを殴ったの見てからずっとこうなんだよ」

 

「あ、そうなんだ...」

 

「どうやったらあんな風に出来るんだ!?」

 

「えっとぉ...修行?」

 

「しゅ、修行って一体どんな修行すりゃあんな速く動けるんだよ...」

 

「もう死にたいと思いたくなるような感じのやつかな?」

 

「「本当にどんな修行!?」」

 

「まぁ冗談だけど......四割ぐらい」

 

 つい最後の方が小声になってしまう。

 

「お、おい今最後の方聞いちゃいけないことを聞いた気がするんだが...」

 

「は、蓮季もだゾ...」

 

「とりあえず席に座ろ?授業始まるよ?」

 

「おう。あと、エル後で話があるから昼休みいいか?」

 

「ああ...」

 

 ロミオが真面目な顔で言ってきたから俺もつられて真面目な顔をしてしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 昼休み俺とロミオは人目のつかない場所に来ていた。

 

「それで話って何かな?」

 

「ああ、昨日の事でな」

 

 ドクンッ...

 

 (落ち着け俺。たとえロミオとペルちゃんが付き合っても応援するんだ。昨日ペルちゃんに言ったばかりじゃないか)

 

「どうなった?」

 

 俺は出来るだけ平常心を保つようにする。

 

「俺たち...」

 

「ああ」

 

「友達になることになった」

 

「......は?」

 

「え?」

 

「友達?恋人じゃなくて?」

 

「ああ友達になった」

 

「それって振られた...てことでいいの?」

 

「あんまり振られたって言わないでくれ!思い出しただけで泣きそうになるんだ。...く、くっそぉぉぉぉぉ!」

 

「な、なんかごめん」

 

 四つん這いになり地面に向かって悔しそうに叫ぶロミオ。

 

「それでなんでそうなったの?」

 

「ああそれがな...」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『待たせたわね』

 

『もういいのか?』

 

『ええ」

 

『そ、それじゃあ答え聞いていいか?』

 

 一度目を瞑り深呼吸をする。

 

『ごめんなさい犬塚。私あなたと付き合えないわ』

 

『そんな......』

 

『あ!勘違いしないであなたが嫌いだからってわけじゃないの』

 

『ならどうして...』

 

『私他に好きな人がいるの』

 

『それってもしかして...エルの事か?』

 

『そ、そうよ』

 

『そっか...エルならしょうがねぇか』

 

『何も言わないの...?』

 

『他の奴だった文句の一つは言ってやりてぇがエルならしょうがねぇよ』

 

『ずいぶん彼の事を買ってるのね』

 

『ああ、あいつは俺にって蓮季と同じ親友だからな。まぁ初等部と中等部はあいつの親の都合でフランスに行っちまったがな。そういうペルシアはどうなんだ?エル君って呼んでるけど』

 

『私も昔彼とは仲が良かったのよ。それでいつの間にか好きになってたの』

 

『そ、そうか......』

 

『それに私も彼と同じ夢があるから』

 

『夢...?」

 

『初めて彼と出会ったときに教えてくれたの。エル君のお父さんは東和国でお母さんがウエスト公国なんだって』

 

『まじかよ!』

 

『それで彼のご両親がダリア学園の高等部の時に国が違うだけで争うのは良くなって思ってたらしいの。それで二人でこんな世界を変えようってなってダリア学園から変えようとしたんだって。だけど結局それは出来なかったの』

 

『そうだったのか...それでその話がエルの夢にどう繋がるんだ?』

 

『まぁゆっくり聞きなさい。ご両親の話を聞いた当時の彼は二人の出来なかったことを僕がやるんだ!って言ってたの。しかもまだ5歳よ?けどその眼には口先だけではない覚悟があっただから私はその夢を手伝うって決めたの』

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「とまぁこんな感じだな!」

 

「いやちょっと待ってすげー色々言いたいことがあるが...その話のどこに友達になる要素があった!?」

 

「あ、その部分忘れてた」

 

「はぁ相変わらずだなロミオは...それにお前はそれでいいのか?」

 

「何がだ?」

 

「お前の好きな相手の好きなやつが目の前にいるのにいいのかってことだよ」

 

「......よくねぇよ。しかもすげぇ悔しいよ。でもエルなら仕方ねぇかなって納得は出来るかなって...」

 

 その言葉を聞いて俺は腹が立った。それはロミオの本心ではないからだ。よくない、悔しい、たしかにこの二つは本心だ。だけど最後は違う。こいつはエルなら仕方ないって納得したと言ったがそれはただの強がりだ。俺はロミオの事は親友だと思っている。だからこそ最後まで本心を言ってほしい。だから俺のやることは一つしかない。

 

「お前舐めてんのか?」

 

「は?」

 

 俺を惚けた顔で見てきたからそのまま顔を殴る。

 

「いってぇな!何すんだよ!」

 

「ふざけんじゃねぇよ!」

 

「なんだよいきなり...」

 

「何が納得できるかな...だよ!今の自分の顔見て同じ事言えるのか!?」

 

 そう言って俺はポケットからスマホを出してカメラを起動させてインカメにする。

 

「ちょ、お前携帯の持ち込みはきん...し...」

 

「わかったか?お前は納得できるって口では言ってるがそれはただの強がりだ今の自分の顔を見てわかっただろ」

 

「ああ...そうだよ!悔しいよ!思ったよ俺じゃなくてなんでエルなんだって!けど...ペルシアがお前を好きって言ったんだなら諦めるしかねぇだろ...」

 

「へぇ、犬塚露壬雄ってそのその程度の男だったのか」

 

「は?」

 

「俺の知ってる犬塚露壬雄は目つきは悪くて口も悪い、しかもすぐ暴力を振るう奴だ。けどな簡単には諦めるような奴じゃなかった。でもまぁ今ここにいる犬塚露壬雄は俺の知ってる犬塚露壬雄とは真逆のザコのようだしな。んじゃ俺はそんな奴には話が無いから行くわ」

 

 言いたいことだけを言って俺は後ろを向き校舎に戻ろうとする。

 

「...待てよ」

 

「あ?まだ何かあるのか?」

 

 ロミオに呼ばれ後ろを振り向く。するとそのまま俺の顔を殴りに来る。それを俺は受け止める。

 

「だれがザコだって!?散々好き放題言いやがって!いくらエルでも許さねぇぞ!それに悔しくねぇわけねぇだろ!それなら俺がペルシアを振り向かせればいいだけじゃねぇか!」

 

「ふん」

 

 ロミオの言葉を聞いて俺は少し笑ってしまう。

 

「何がおかしいんだ」

 

「いや、やっと俺の知っている犬塚露壬雄に戻ったなって。それにやっと本心も言ってくれたしな」

 

「あ...」

 

 俺の左頬にあるロミオの右手を掴んでゆっくりとおろす。

 

「俺はお前の親友だ。それにこれはペルちゃんにも言ったことだが人生ていうのは一度しかないんだ。後悔しても遅いんだ。だから誰かに遠慮して生きるな...特に俺にはな?」

 

「ああ。ありがとなエル。おかげでスッキリした」

 

「それは何よりだ。それじゃあ次は俺の番な?」

 

「は?」

 

「だってお前俺のこと殴ったじゃん」

 

「いや、その前に一回俺の事殴らなかったか?」

 

「あれはノーカン。それにさっきのは挑戦状として受け取ったからな。それに俺もペルちゃんのこと好きだから俺からも負けないって意味を込めて殴らせてもらうわ」

 

「ちょっと待ってくれ!話会おうぜ?今ならまだ間に合うから、な?」

 

「や・だ」

 

 そして俺は朝スコットを殴った時の構えをする。

 

「必殺スーパー......右ストレート!」

 

 そしてロミオは吹っ飛んで行った。

 

「やべ、力加減ミスった......まぁいっか」

 




はい、どうもヨーグリーです。

皆さんは今日のクリスマスはどう過ごしましたか?自分はドラゴンボールの映画を見に行きました。あ、もちろん友達と一緒にですよ?

そして来週で今年も終わりますね。一応あと一話分書き溜めしてるのでそれを出したら今年最後になります。

それでは今回はここまで、また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タイミングと茶番そしてデコピン

 学校が終わりペルちゃんとの待ち合わせの時間まであと一時間。俺は先に噴水広場に来てベンチに座ってボーっとしていた。

 

 (久しぶりにこうやって何もせずに座ったな。こっちに来てからは何かと忙しくて出来なかったからな。それに少し眠くなって...き..た)

 

ーーーーーーーーーーーーーー

ペルシアside

 

 (うう、緊張するー少し早く来すぎたかな)

 

 白猫の寮から出て少し歩き私は噴水広場に来ていた。

 

 (あれ?あそこに座ってるのってエル君?)

 

 向こうのベンチに座っている人影に近づく。

 

 (やっぱりエル君だ)

 

「エルく...寝てる」

 

 近づいて声をかけようとしたがベンチに深く腰を掛けて寝息を立てていた。

 

 (こっちに来てからあまり寝てないのかしら...?それなら...)

 

 周りを見渡して人がいないかを確認して隣に座る。

 

 そして彼の頭に軽く触れて起こさないように優しく自分の膝の上に置く。

 

 (は、はずかしぃ...寝てるからってさすがに膝枕するのはレベルが高かったかも...でもこうやって見ると少し可愛いかも)

 

 今度は優しく頭を撫でる。

 

 (やっと会えたと思ったら思わず私から逃げ出しちゃうし、しかも昨日は犬塚に告白されてるところを見られちゃった。誤解されてなければいいのだけれど...けど今日は絶対に言うんだ!あなたが好きだって!そしてこの人の隣で一緒に夢を叶えたい。だから...)

 

「好きよエル君」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エルside

 

 (やばい!少し眠くなって寝て起きたらペルちゃんに膝枕されてる!しかもめっちゃやわらけぇ!どうしようこのまま寝たふりして堪能しようかな...)

 

 俺がそんなことを考えているとペルちゃんの口が開く。

 

「好きよエル君」

 

 (......俺はこの人の事が好きだ。三回別の世界で生きてきたがここまで好きになって愛おしいと思った人は誰一人いなかった。今日ロミオにはああ言ってしまったがやっぱり俺はこの人を誰にも取られたくない俺だけを見ていてほしい。そう考えると俺って結構性格が悪いな...でもそれでもいい俺はこの人の事が...)

 

 そのまま右腕を上にあげて彼女の頬に軽く触れながら言う。

 

「俺も好きだよペルちゃん」

 

「え......?」

 

「うん?」

 

 俺が言うとペルちゃんは惚けた返事をする。あれ?もしかして俺言うタイミング間違えた?

 

「~~~~~~~~~ッ!」

 

 ペルちゃんの顔を見るとトマトみたいに真っ赤になってた。

 

「お、起きてるなら言いなさいよ!」

 

「いた!」

 

 膝の上から地面に落とされる。

 

「ご、ごめんなさい!つい...」

 

「気にしないで。起きてるって言わない俺も悪かったし」

 

 立ち上がりベンチに座り直しす。

 

「いつから起きてたの?」

 

「えっと膝枕の時からです...」

 

「なんでそのタイミングで起きるのよ!」

 

「控えめに言って最高でした」

 

「この...バカ!」

 

「うわぁ!」

 

 今度は身体を横に押されまたベンチから落とされる。

 

「もう知らない!」

 

「悪かったって」

 

 そっぽ向いたペルちゃんの頭を撫でる。

 

「こ、今回だけは許してあげる!だから...その...もっと頭を...」

 

「うんペルちゃんにならいくらでも撫でてあげるよ」

 

 ペルちゃんはうれしそうな顔をする。

 

 そして俺は一度撫でるのやめて今日呼ばれた本題に入る。

 

「それで今日はなんで呼び出したの?」

 

「この流れでそれを聞くかしら普通?」

 

「まぁ一応ね」

 

「相変わらずねエル君は」

 

「人はそうそう変わるものじゃないよ。それになんかこの空気の方が俺らっぽくていいじゃん?」

 

「ふふ、確かにそうね」

 

「でしょ?」

 

 そう言って俺はペルちゃんの手を握りペルちゃんの方に向き直る。

 

「ペルちゃん。いや、ジュリエット・ペルシアさん。俺は幼い頃からあなたの事が好きです。俺と付き合ってください」

 

 手は握ったまま頭を下げる。

 

「はい!」

 

 手を強く握りかえしてくれるペルちゃん。

 

「じゃあこれでようやく...」

 

「ええ、恋人になったわね」

 

「やった!やっとだ!ここまで長かった...」

 

「本当よどれだけ私があなたの事を待ったと思ってるの?」

 

「うっ...言い返す言葉もございません」

 

「本当に昔からエル君は女心を分かってないんだから」

 

「すみません...」

 

「また今度じっくり教えてあげる!」

 

 そう言って俺に微笑む彼女の顔はオレンジ色の外灯で灯されより一層魅力的に見えた。

 

「それじゃあ今日はもう時間も遅いし戻ろうか」

 

「待って」

 

 ベンチから立ち上がろうとするとペルちゃんに服の袖を掴まれる。

 

「もう少しだけ...だめ...?」

 

 上目づかいで聞いてくる。可愛いなチクショウ。

 

「いいよ」

 

 俺はまたベンチに座る。すると不意に右手を握られる。

 

「ペルシアさん?何をなさってるのでしょうか?」

 

「だってあの日から全然繋いでないから...いやだった?」

 

 (そんな嫌なんてありえないです!むしろこっちからお願いしたいぐらいです)

 

「いやじゃないよ!ただ久しぶりだから少し驚いただけだよ」

 

「それにしても手でかくなったね」

 

「そりゃあ9年も経てば手ぐらい大きくなるよ。そう言うペルちゃんは...相変わらず柔らかいね」

 

「そこは男の子と女の子の違いよ。それにゴツゴツした手の女の子なんて嫌よ」

 

「まぁ確かに...」

 

「それとエル君はまだあの夢を叶えようとしてるの?」

 

「うんこれだけは絶対に成し遂げたいことだからね」

 

「そっか。...実は私ね最初の頃家の為に強くなってそしてこの世界を変えようと考えていたの...けど昔ある男の子と出会ったの。そしてその子の夢を聞かされたわ、最初は冗談だと思ったけどその子の目は口先ではない覚悟があった。そして一緒にいるうちに気づいたら家の為よりその子の隣で一緒にその夢を叶えるところを見たいって思うようになったの」

 

「ペルちゃん...」

 

「だからこれからはあなたの隣にいさせて?」

 

「俺の方こそ君の隣にいさせてください」

 

「あ、それと犬塚から伝言よ」

 

「お、おういきなりだね...」

 

「『俺もエルの夢を手伝うぜ!』らしいわよ」

 

「そっか...」

 

「これから三人で頑張りましょう」

 

「うん」

 

 それから俺らは昔みたいに手を繋ぎ話すこともなくただ座っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 次の日また今日も黒犬と白猫は対峙していた。そしてまた俺も呼ばれた。

 

「本当に飽きないなお前ら!」

 

「ど、どうしたエルいきなり大声なんて上げて」

 

「いやだってさ疲れない君たち?毎日毎日黒犬が!白猫が!なんて言って争うの」

 

「しょうがねぇだろ東和国とウェスト公国は敵対関係にあるんだから」

 

「ロミオ......敵対関係って言葉知ってたんだな」

 

「知ってるわ!」

 

「そんなくだらない事してないで早くしてもらえる?授業まで時間がないわ」

 

「だってよ?まぁ俺は戦うの嫌いだし、そもそも二つの国が敵対関係だったとしても興味ないから俺は戦闘に参加しないぞ」

 

 俺が言うとロミオが蓮季を呼んで耳元で何か話している。

 

「わかったゾ!」

 

 ロミオとの話が終わると俺の前まで来て少し屈んで上目遣いで俺に言ってくる。

 

「蓮季は神崎に戦ってほしいんだゾ...ダメ?」

 

 屈んでいるせいかいつも開けているワイシャツの第二ボタンから見える能満なお山が目に入ってしまう。そしてもう一声と言わんばかりに追い打ちをかけてくる。

 

「おねがい......」

 

 今度は少し目を潤して言う。

 

「しょ、しょうがないなぁ、今回だけだか...ヒィッ!」

 

 さすがにそこまでされたら断るのも悪いから「今回だけだからな」と言おうとしたときに目の前の白猫から殺気がこもった視線が俺に突き刺さる。

 

 その殺気のこもった視線を飛ばしている人を見るとペルちゃんだった。

 

 (これはやばい...蓮季には悪いけど断らせてもらう。だって俺まだ死にたくないし)

 

「わ、悪いな蓮季俺は戦闘には参加しない」

 

「そ、そうか...」

 

 俺が断ると蓮季はあからさまに落ち込んだ顔をしてもといた場所に戻る。

 

 (なんという罪悪感!でもここで断らなかったら俺がやばい...!)

 

「どうやら茶番も終わったようね!それじゃあ調教してあげる!黒犬!」

 

 そう言って白猫全員が向かってくる。

 

 (さっきの茶番を終わらせたの半分くらいあなたですよペルシアさん?)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから時間が経ちようやく戦闘が終わった。

 

 まずロミオとペルちゃんは俺の夢を手伝ってくれると言ってくれたから戦闘するふりをしていた。ちなみに俺はお互いの寮生が一人に集ってリンチなどやりすぎが無いか監視ししていた。けどほとんどがきちんと戦っていた。いや、きちんと戦っていたって何だし...そして今。

 

「おい神崎ぃさっきはよくも邪魔してくれたなぁ」

 

 そう言って俺に言い寄ってくる。丸流、古羊、土佐。

 

「おい!エルはお前らがやりすぎないようにしてくれたんだぞ!」

 

「そうだゾ!」

 

「うるせぇな今俺らは神崎に話してるんだ。それに」

 

「てめぇに」

 

「俺らの邪魔をしたらどうなるか」

 

「教えてやるよ」

 

 綺麗に三人順番に俺に言ってくる黒犬問題児三人。

 

「だから表出ろよ」

 

 俺の机を片手でドン!と叩く丸流。

 

「えぇ...やだよめんどくさい。それに戦うの好きじゃないんだけど...」

 

「んな事知らねぇよとりあえずお前は俺らの言う通りにすりゃあいいんだよ」

 

「めんどくさいなぁそういうのはお昼休みにいくらでも聞いてあげるからとりあえず今は次の授業の準備しよう?」

 

 俺が言うと今度は土佐が俺の胸倉を掴んでくる。

 

「ごちゃごちゃうっせーぞ!」

 

 本当にめんどくさいからロミオに助けてと目線を送る。

 

「お前らいい加減にしろ!エルはお前らのためにやったんだ!」

 

 ロミオが土佐の腕を掴みながら言う。

 

「うるせぇ!」

 

 土佐が腕を掴んでいるロミオを突き飛ばし古羊が突き飛ばされたロミオを足で踏んで動けないようにする。

 

 それを見て俺はキレてしまう。

 

「おい...」

 

「あぁ?」

 

「こっちが下手に出てればよぉ、俺に対しては何をしてもいいし何を言ってもいい...けどよ俺の大切な奴に手ぇ出すのは許さねぇぞ。いいだろう俺がテメェら三人いっぺんに相手してやる」

 

「お、おい待てエル!さすがのお前でも一人で三人を相手するのは無理だ!」

 

「そうだゾ!やめるなら今のうちだゾ!」

 

 俺の胸倉を掴んでいる土佐の腕をほどいてロミオの前に行ってロミオの腹に乗っている古羊の足をどける。

 

「え!?オイラ結構足に力入れてたよ!」

 

 ロミオの手を掴んで立たせる。

 

「エル...」

 

「悪いね。俺は基本自分の事に関してはどんな事でも我慢できるけど俺の大切な奴に関しては結構我慢できないんだわ」

 

「そう言ってられるのも今のうちだぜ?」

 

「ああそうかもな」

 

「こいつ今自分で言ったぜ!」

 

 丸流の挑発に俺が言うと土佐がバカにしたように言う。それに対して俺は少しバカにした風に言い返す。

 

「今のは俺の事じゃねぇよ。てめぇら三人の事だ」

 

「このぉ!」

 

 それを聞いてすぐ目の前にいた古羊が殴りかかってくる。

 

「エル!」

 

「神崎!」

 

 ロミオと蓮季が俺の名前を大声で呼ぶ!

 

「遅いよ」

 

 そう言って古羊のパンチを躱してそのまま足を掛けて転ばす。

 

「いってぇ!」

 

「てめぇ!」

 

 今度は土佐が殴りかかってくる。

 

「大振りすぎ。どういう軌道でパンチが来るかすぐ読まれるよ」

 

 土佐の大振りのパンチを左手で受け流して古羊と同じように足を引っかけて転ばす。

 

「ロミオ悪いんだけどこの二人頼むわ」

 

「お、おう」

 

 ロミオに転ばした二人を連れ行ってもらって今度は丸流が俺の正面に立つ。

 

「結構やるじゃねぇかお前」

 

「どうも。てかもうよくね?あと少しで授業が始まるよ」

 

 丸流に言うと「無理だな」と言って構える。

 

「どうしてもやるの?」

 

「当たり前だ」

 

 (これはまじで最後までやるやつですわ...やりすぎないように止めただけでなんでこうなっちゃうんですかね...)

 

「はぁ...」

 

 ついため息をついてしまう。

 

「じゃあ、あれだお互い先に一撃入れたら勝ちでいい?」

 

「ああ」

 

「それじゃ...」

 

 丸流との距離を一気に縮める。

 

「はえ!?」

 

 そして丸流の顔めがけて拳を振るう。

 

 それを見て反射的に目を瞑る丸流の顔の前で拳を寸止めする。

 

「...?」

 

 丸流が目を開けたと同時におでこにデコピンをする。

 

「いっ!」

 

「はい俺の勝ちね」

 

 丸流の肩に手を置いてロミオと蓮季に所に戻る。

 

「「..........」」

 

 二人のもとに戻っても黙ったままだった。

 

「おーいロミオ、蓮季?」

 

 二人の目の前で両手を振る。

 

「い、今なにしたんだ?」

 

「何したってデコピンだけど」

 

「いや確かにそうだけど俺が聞きたいのはそうじゃねぇよ」

 

「もうデタラメだゾ...」 

 

 二人はやれやれと言った感じに肩を竦める。

 

「まぁいっか、俺少しトイレに行ってくる」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 教室より少し遠いトイレに入り上半身の服を脱ぎ鏡に背中を向ける。

 

「なんで出てくるんだろう...」

 

 鏡に映っていたのは『ダンまち』の世界でヘスティア様に刻んでもらったファルナだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、どうもヨーグリーです。

いやー今年も残りわずかですね。それに年末年始は面白い番組が多くて何見るか迷うんですよね自分。

とまぁ今回はここまで、それではまた次回!

よいお年を!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

可愛いなチクショウ!

 ダリア学園は全寮制ゆえに遊ぶ目的の外出は禁じられている。だが3か月に一度だけ買い出しの名目で外出が許可されている。それが今日だ。

 

「神崎くーん」

 

「一人?私たち今からダリアパークに遊びに行くんだけど神崎君も一緒に行かない?」

 

「あ、いや今日一緒に遊ぶ人がいるから」

 

「えー!いいじゃん!」

 

「そういうわけには...」

 

 自分は今とても困ってます。丸流と土佐そして古羊の三人が絡んできて返り討ちにしたあの日からこんな感じにクラスの女子が話しかけられることが増えた。

 

「お待たせ」

 

「お、やっとき...た...」

 

 待ち合わせしてた人の声が聞こえたからそっちの方に顔を向けると超絶美少年がいた。

 

「な、なにあの美少年...」

 

「そういうわけだから俺行くね」

 

 そう言って待ち合わせしてたジュリ男、もとい男装したペルちゃんと並び町まで歩く。

 

 ちなみになんでペルちゃんが男装してるかというと...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 外出日前日の夜噴水広場

 

「明日の外出日一緒に回らない?」

 

「いや、無理じゃない?」

 

「ふっふっふ、甘いねペルちゃん、実は」

 

 今日持ってきた紙袋からあるものを取り出してペルちゃんの前に出す。

 

「何これ...?」

 

「なんとこれは演劇部から借りた東和民変装セット!」

 

「......」

 

「これなら明日一緒に回れるよ!」

 

「......」

 

 東和民変装セットを見せるとペルちゃんは何も言わずなんて説明したらいいかわからないような顔になる。

 

「......」

 

「いや何か言って!?」

 

「あなたはバカですか?」

 

「いきなり罵倒!?しかも敬語やめて!」

 

「無謀にもほどがあるでしょう!?」

 

「そうかな?」

 

「バレたらどうするのよ!」

 

「確かにそうだけどこのままじゃあどこも遊びに行けないし...」

 

「はぁ、考えておくわ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 とまぁこんな感じのやり取りが昨日の夜にありましてまさか本当に変装してくれるなんて。

 

「本当に隠しと通せるのかな?」

 

「大丈夫ただの美少年にしか見えないから」

 

「それはそれでなんかいやなんだけど...」

 

「ペルシア様!」

 

 二人で並んで歩いていると後ろからスコットが息を切らしながら変装しているペルちゃんに近づく。

 

 (もうバレた!?)

 

「おかしいな確かにペルシア様の匂いがしたんだが...いるのはバカ面の黒犬二人」

 

「バカ面って...」

 

 (こいつ変装してるとはいえペルちゃんの事バカにしたぞ)

 

 そしてスコットは変装したペルちゃんに気付かづまたどこかに探しに行った。

 

「私...匂う?」

 

「いや、匂わないから大丈夫だよ」

 

「そう?それより早く行こう?」

 

「うん」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ダリア学園から出てペルちゃんの案内でダリア街に来ていた。どうやら右側に東和国の店左側にウェスト公国の店が向こうまでたくさん並んでいた

 

「へぇ、二つの国のお店が並んでるんだね」

 

「この街もダリア学園も元々東和とウェストの友好のために作られたんだよ。」

 

「元々、ね」

 

「今はいがみ合ってるけどいつか二つの国もきっと仲良くなると思うの」

 

 (この風景を見てれば二つの国の友好のために作られたのはわかるけどそれは何十年前の話だ、ダリア学園の両生徒を見てたら今の二つの国の仲が悪いかがわかるしな。けどペルちゃんの言ういつかが来るように俺がダリア学園から変えてみせる)

 

「...ル君、エル君?」

 

「あ、ああ、どうしたの?」

 

「エル君の方こそどうしたの?なんか怖い顔してたけど」

 

「ちょっと考え事をね。それよりお腹すいてない?」

 

「まぁ今日は朝ご飯をあまり食べてないから」

 

「じゃあ何か食べたい物とかある?」

 

 俺が言うと顎に指を当てて東和側のお店を見る。

 

「じゃああそこがいい」

 

 ペルちゃんが指さしたお店を見ると拉麺と文字が書かれているお店だった。

 

「お、ラーメンか」

 

「らーめん?」

 

「うん、まぁ入っていればわかるよ」

 

 お店に入って開いている席に座りメニューを見る。

 

「なんか色々あるね」

 

「ペルちゃんはどれにする?」

 

「うーん、私はこれにする」

 

 ペルちゃんが選んだのは辛いラーメンだった。

 

「じゃあ俺は無難に醤油ラーメンにするかな」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 ラーメンが来るまでの間俺らは今までのことを話していた。

 

「まぁ初等部の頃の話はこんな感じかな」

 

「初等部の終わり頃には中等部の勉強が終わってるってどれだけ勉強してたのよ...」

 

「いやー初等部の内容が簡単すぎて先にやっておこうかなって勉強してたらいつの間にか終わってた」

 

「何よそれ...」

 

「お待たせしました!」

 

 話してると頼んだラーメンが来た。

 

「じゃあ食べよっか。いただきます」

 

「いただきます」

 

 まずはスープからいただく。

 

「うまいなこれ」

 

 隣を見るとかりゃいと言って涙目になっているペルちゃん。可愛いなチクショウ。ていうか割り箸を割らずに両手で一つずつ持って器用に食べている。

 

「もしかしてペルちゃん割り箸使ったことない?」

 

「割り箸?これのこと?」

 

 そう言って両手に持っている割り箸を見せてくる。

 

「うん、それなら俺が使い方を教えてあげるよ」

 

「お願いしようかな」

 

「オッケ。じゃあまずは真ん中に線があるでしょ?それで左右を軽くつまんで横に引っ張ると...」

 

 パキ

 

「ほらこうやって箸になるんだよ」

 

「えっと、こうやって左右を軽くつまんで横に...」

 

 パキ

 

「出来た!」

 

 割れたことが嬉しいのか割れた割り箸を持って俺に見せてくる。可愛いなチクショウ。

 

「それで使い方はここに人差し指を置いてその下に中指を置いて、そしてこっちの箸を親指でこう」

 

「えっと...人差し指でこうやって中指ではこうそして親指で...あっ」

 

 やはり最初は上手くいかないらしく割り箸を落としてしまう。

 

「中々難しいのね」

 

「まぁ初めてだからね」

 

 俺は席を立ちジュリ男の後ろに立つ。そして右手を軽くつかむ。

 

「ちょ、なにを...」

 

「俺がこうやって教えるよ。んじゃまず人差し指はここに置いて中指はここでそして親指はここ」

 

 順番に教えて箸の動かし方も教える。

 

「とまぁこんな感じかな」

 

「あ、ありがとう」

 

「冷めちゃうとあれだし食べちゃおっか」

 

「うん」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 お互いラーメンを食べ終えるとロミオと蓮季が入店してきた。

 

「あ、エルじゃねーか」

 

「おっすロミオそれに蓮季も」

 

「一人できたのか?」

 

「いや二人だよ」

 

 二人は俺の隣に座るジュリ男を見る。

 

「犬塚この子すっごい美少年だゾ!」

 

「あ、ああ確かに美少年だな。けどなんかどっかで見たことあるんだよな」

 

 ジュリ男に近づきジッと顔を見るロミオ。

 

「な、なんですか」

 

「いやなんかお前すげー見たことある顔なんだよな」

 

「でもわた...僕はあなたの事見たことないんですけど」

 

「そうなんだよな」

 

 するとジュリ男が近づき耳元で喋る。

 

「どうするバレそうだけど」

 

「うーん俺はロミオになら教えてもいいと思うんだよね。俺らの関係を唯一知ってるし」

 

「エル君がそう言うなら私はいいけど」

 

「わかった」

 

 ジュリ男が離れ俺はロミオの方に向き直る。

 

「ロミオ少し話があるんだけど一回外行かない?」

 

「話?まぁいいけど。そしたら蓮季先に座っててくれないか」

 

「わかったゾ」

 

 俺はロミオを連れて外に出る。

 

「そんで話ってなんだ?」

 

「俺の隣に座ってた子いるじゃん?実は男装したペルちゃんなんだ」

 

「は?」

 

「悪いんだけどこれは秘密にしてほしんだ」

 

「ちょちょちょっと待て、あの美少年が男装したペルシア?お前友達が多くないからってそんなこと言わなくてもいいだろ」

 

「本当だよ!それに友達がいないのは余計なお世話だよ!」

 

「ていうか男装したペルシアってまじ?」

 

「まじ」

 

「つまりデートってことか?」

 

「うん」

 

「ちくしょう!羨ましすぎる!」

 

 (いや、地面に手をついてそんなに悔しがらないで?周りの人の目を気にしてほしいんですけど...)

 

「とりあえずペルシアが男装してることを黙っておけばいいだな?」

 

「頼むわ」

 

「じゃあ今度何か奢れよ」

 

「もちろん」

 

 そして俺らが店の中に戻るとジュリ男と蓮季が仲良さそうに話していた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 俺ら二人はラーメンを食べ終わっていたため長居するのも他の客に迷惑になるからと言って店を出て今はダリアパークに来ていた。

 

「すげぇ!まるでどこぞのハイランドみたい!やっぱりダリアって名前がついてるだけあるわ」

 

「どこぞのハイランド?」

 

「あーペルちゃんは気にしなくてもいいよ」

 

「??まぁいいわそれより早く行きましょ!」

 

 そんなにダリアパークが楽しみだったのか走って先に行ってっしまった。

 

「たく...まさかこうやって二人で遊べる日が来るとわね。まぁペルちゃんは男装してるけど」

 

「エル君何してるの!はやく!」

 

「今行くよ!」

 

 (今だけはそういうの気にしないで俺も楽しむとしますか)

 

「何から乗ろうか」

 

「わた、僕あれ乗ってみたい!」

 

「え、あれはさすがにしょっぱなからレベル高くない」

 

 ジュリ男が指さしたのはジェットコースターだった。

 

「だめ...?」

 

「くっ...」

 

 (いくら男装とはいえ元が良いから上目遣いなんてされたら断れないじゃないですか)

 

「わかったよ」

 

「やった!」

 

 ガッツポーズをした後スキップでジェットコースターの列へと向かう。本当は絶叫系は苦手だけどあんな風に言われたら行くしかないですよ...

 

 そしてジェットコースターから戻った俺は気分が悪くなりベンチで座って休んでいた。

 

「ごめんねエル君、私が無理させたばかりに」

 

「気にしなくてもいいよ苦手でも乗るって決めたのは俺だから。あと五分くらい休めば治ると思うから少し待ってて」

 

「うん...」

 

 上を向いて休んでると突然右手を掴まれる。

 

「あのなにをしてるんでしょうか」

 

「治るまでの間だけでいいからだめ?」

 

「...いいよ」

 

 (上見といてよかったわ多分今の俺の顔赤くなってると思うし)

 

ーーーーーーーーーーー

 

 五分経ち気分も良くなってダリアパーク巡りを再開して色々なトラクションに乗ってとうとう帰りの時間に近づいていた。そして最後にお化け屋敷行こうとなって入ったらペルちゃんがお化けが大の苦手だったらしく一人で先に出口の方に走って行ってしまいはぐれてしまった。

 

 (ペルちゃんどこに行ったんだ)

 

「おーい!ジュリ男ー!」

 

 気づいたら俺はダリアパークの入り口方にまで来ていた。すると先の方に池の前に一人で立っているロミオがいた。そしてその後ろから外出とかまじだりー、とか言ってたくさんのお土産を持っている土佐と古羊そして丸流がいた。

 

 丸流がロミオを見つけると後ろまで近づき池に蹴り飛ばした。どうやらロミオは泳げないらしく溺れており丸流がロミオの頭を何度も踏んで顔が上がっては踏んで沈ませていた。

 

「あいつ!」

 

 俺がロミオを助けに行こうとしたら丸流の後ろからジュリ男が現れる。

 

「その足どけてくれないかな」

 

「ああ?」

 

「そんな馬鹿でも僕の大切な人の親友だから」

 

「あー?見たことのねぇガキだな」

 

 丸流は犬塚とじゃれていただけと嘘を言ってジュリ男に近づき不意打ちの目つぶしをする。ジュリ男はそれを避けて丸流の胸倉を掴み背負い投げをする。

 

「もう人を池に落としちゃだめだよ」

 

「はい...」

 

 (ペルちゃん強くね!?え、なにあの子あんなに強くなったの?ていうかロミオが!)

 

ーーーーーーーーーーー

 

 外出から帰って夜ご飯とお風呂も済ませて俺は寮から出て外を歩いていた。

 

 (そういえばラーメン屋さんから出て他の店を見回ってる時にアクセサリーショップをでロザリオを見つけて店員さんにお守りとして大切な人に贈る物だと聞いて勢いで買っちゃったけど渡すの忘れてたわ...)

 

 そんな事を考えながら歩いていると湖まで来てしまっていた。

 

「ここ結構風が気持ちよくて落ち着くな」

 

 (はぁ、ダンまちの時と歳が近いからなのか最近力を使わなくてもファルナが浮かび上がってくるんだよな。前までは力を使うときにしか出てこなかったのに...)

 

 俺は一度深呼吸をして左手を下に向けてこの世界に来て数年ぶりにある言葉を口にする。

 

「『煉獄』」

 

 すると下に向けた左手に光の粒が集まり姿を現す。

 

「本当にこの世界は平和だな」

 

 『煉獄』を鞘から抜いて平晴眼の構えをする。そして目を瞑り頭の中で『ダンまち』の世界で俺が一番一緒にいた人物を作り上げる。

 

 頭の中で作り上げた人物が構えを取って戦闘態勢になる。そして作り上げた人物、ベルがステータスの俊敏で自分に襲い掛かる。

 

 俺はそれを避けて武器を上から切りつける。それをベルはヘスティアナイフで受け止めて右足で俺の腹めがけて攻撃してくる。武器を腹に持ってきて受け止めても間に合ないから地面を思い切り蹴って後ろに飛ぶ。

 

 一度距離が開いてお互いに武器を構えてにらみ合う。

 

「エル君?」

 

 すると突然後ろから声を掛けられる。

 

「ペルちゃん?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

ペルシアside

 

 私は今一人で寮の外に出ていた。

 

 (今日はエル君の事色々知れたわね。まさか絶叫系が苦手だったなんてね。いつもは何かと平然としてるからなんか以外だったわ。それにあのラーメン?辛すぎよ!よく東和民は平気で食べられるわね!確かわりばし?だったかしらそれの使い方を教えてもらうときに後ろから優しく教えてもらえたしラーメンには感謝しないとね!)

 

 しばらく歩いていると少し遠くから何か物音が聞こえた。

 

 (何かしら?)

 

 音のする方に近づき草むらに隠れて見てみるとエル君がすごく長い剣?を持って一人でなにかすごい動きをしていた。

 

 少し様子見をしてると一度後ろに下がって動かなくなったから私はここぞとばかりに声を掛ける。

 

「エル君?」

 

「ペルちゃん?」

 

 手に持っている武器を鞘にしまって私の方を見る。

 

「あ、えっと何してたの?」

 

「ああ少し修行してたんだ」

 

「修行?こんな時間に?」

 

「うん。ここすごく静かで湖がなんかすごく綺麗で落ち着くんだよね」

 

「言われてみれば綺麗ね」

 

「でしょ?それでペルちゃんはどうしたの」

 

「私はただ少し歩いてただけよ」

 

 そっか、と言ってエル君は草むらの上に座る。

 

「ペルちゃんもおいで」

 

 自分の隣をポンポンと軽く叩いて座るように促してくる。

 

 私は促されるままにエル君の隣に座る。もちろん肩が触れ合うギリギリの距離で。

 

「今日は楽しかった?」

 

「楽しかったわよ」

 

「そっか...」

 

「エル君は、どうだった」

 

「もちろん楽しかったよ。でもやっぱり男装したペルちゃんじゃなくてそのままのペルちゃんとデートしたかったなって思うかな」

 

 (そ、そんな普通にデートって言うなんてずるいわよ...)

 

「そ、そうねいつか普通に東和国やウェスト公国関係なくデ、デートしたいわね。それにそうできるようにエル君が今のこの世界を変えるんでしょ?」

 

「俺だけじゃないよペルちゃんも一緒に変えるんでしょ?」

 

「そうだったわね」

 

「あ、あとロミオもだ」

 

「あ、忘れてた」

 

「まぁ地道に頑張ろうか」

 

 そう言って私の手を握ってくれる。

 

 (こういう事をいつも急にしてくるから本当にずるいわこの人)

 

「そういえばそのヘアピンってずっと着けてるの?」

 

「うんこれは私にとってすごく大切なものだから」

 

「そっか...ありがとね」

 

 エル君がさっきよりも強く手を握ってくれる。私もそれにこたえるように力を入れる。

 

「実は私この花の花言葉まだ知らないのよね」

 

「え、まじ?」

 

「ええ」

 

「調べなかったの?」

 

「うんお母様に聞いてもわからないって言ってたし、調べるのもなんか嫌だったからまたエル君と会った時に聞こうかなって」

 

「よく我慢できたね俺だったら絶対に調べる自信があるんだけど」

 

「私には我慢できる理由があったからかしら」

 

「我慢できる理由?」

 

「それは言えないわよ...まぁそれは置いておいてこれの花言葉って結局何なの?」

 

「言わないとだめですか?」

 

「だめです」

 

「えっと...あなたを......ける」

 

「え?よく聞こえなかったのだけれど」

 

「だから...あなたを想い続ける、っていう意味です...」

 

「そ、それってあの頃から...」

 

「はいそういう事です」

 

「そうだったの!?」

 

「いやー渡した日に意味を教えてもいいかなって思ったけどなんだか恥ずかしかったから誰かに教えてもらうか自分で調べてもらおうかなって思って渡したけどまさか今日までそれの花言葉を知らなかったなんてねー」

 

 いつもみたいにおちゃらけた感じで言う。

 

「恥ずかしいからって...」

 

「まぁ花言葉がわかったことだし結果オーライだね!」

 

「そいうことにしておいてあげる」

 

 私が言うとエル君は立ち上がり目の前に浮いてるボートの横まで行く。

 

「ねぇこれ乗って少し向こうまで行こっか」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エルside

 

 ボートを漕いで少し離れてから止めて今日買ったロザリオを出す。

 

「ペルちゃんにこれあげる」

 

「ロザリオ?」

 

「うん今日アクセサリーショップ行ったでしょ?そこの店員さんにお守りとして大切な人に贈るって聞いて買ったんだ」

 

「それなら私も持ってるわよ」

 

 そう言って首にかけてるロザリオを外す。

 

「まじか...それならこれは俺が使おうかな」

 

「待って!あのねウェストでは日々の祈りをロザリオに込めて大切な人に贈るのよ。だから恋人たちはロザリオを交換するの。それにこのロザリオはお母様に入学祝いにもらったもので今日までずっと祈りを込めてきたものなの、それにエル君にもらったこのヘアピンと同じくらい大切なものなの...だからエル君には私のロザリオを受け取ってほしいの...ダメかしら」

 

「俺の方こそそんな大切な物をもらっていいの?」

 

「うん大切なものだからこそエル君にもらってほしいの」

 

「わかった」

 

「じゃあもうちょっとこっちに来て」

 

 言われたとおりに少し近づく。するとペルちゃんは俺の首の後ろに腕を回してロザリアをかける。

 

「大切にしてね?」

 

「もちろん!」

 

 首に掛けられたロザリオをそっと撫でる。

 

「エル君は?」

 

「うん?」

 

「エル君のはかけてくれないの...?」

 

 (この子さっきから一回一回の仕草が可愛すぎなんですけど!今だって上目遣いで聞いてくるし本当に可愛いなチクショウ!)

 

 今度は俺がペルちゃんの首の後ろに腕を回して名前を呼ぶ。

 

「ペルちゃん」

 

「何?」

 

「Je t’aime de tout mon coeur. 」

 

 そう言って俺のロザリオをペルちゃんにかける。

 

「えっとどういう意味?」

 

「教えなーい」

 

「いいじゃない教えてくれても!」

 

「やーだ」

 

「もう!」

 

 ペルちゃんが勢いよく詰め寄ってくる。するとボートが揺れてしまいバランスを崩して俺にくっついてしまう形になる。

 

「ご、ごめんなさい!今離れるから!」

 

 ペルちゃんが離れようとしたため俺は両手で肩を掴みそのまま自分の体に引き寄せて抱きしめる

 

「な、なななななな何を!?」

 

「お願い少しだけでいいから...」

 

「う、うん...」

 

 俺が言うとペルちゃんもそっと俺の背中に腕を回して優しく抱きしめてくる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「も、もういいかしら...」

 

 お互い抱き合ってどれくらいたったのだろう。きっと五分くらいだろうけど俺からしたら十分いやそれ以上の時間にも感じた。

 

「ああ、ごめんつい」

 

「別にいいわよ...」

 

 お互い顔を赤くして気まずい状態になる。

 

「も、もう時間も遅いし今日は帰ろうか」

 

「え、ええそうね」

 

 船を最初乗った位置まで漕いでお互いにおやすみと言って自分たちの寮に戻ろうとする。

 

「エル君!」

 

 寮に戻ろうとしたときに後ろからペルちゃんに声を掛けられそして...

 

「なっ!?」

 

 頬にキスをされる。

 

「じゃあ...今度こそおやすみ」

 

 そう言って白猫の寮へと走って戻って行ってしまった。

 

 俺は何が起きたのか理解できず少しの間その場でただ立っていた。

 

 

 

 




はい、どうもヨーグリーです。

遅いですが皆様あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。

空いた時間を見つけて原作を読んでやっと8巻まで行きましたけどとにかくペルシアが可愛くてやばいです!もちろん他のキャラも可愛いですがやっぱり自分はペルシアですかね。

とまぁ今回はここまで。また次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。