『リドリー』 (ゼロん)
しおりを挟む

『リドリー』

スマブラSPにリドリー様が参戦するとのことで。
発売おめでとう! さっそくつかうぞぉ!


 さすらいのバウンティーハンター、サムス・アランの活躍によって、悪逆非道の数々で宇宙を震撼させた宇宙海賊『スペースパイレーツ』は壊滅した。

 サムスの第二の故郷であり、宇宙海賊の本拠地と化した———惑星ゼーベスと共に。

 

「……」

 

 数々の任務を達成し、宇宙を救ってきた英雄サムスは、スペースシップを宇宙に飛ばす度、暗闇に浮かぶ星々を見るたびに思う。

 

「……ベビー」

 

 自分を救ってくれた一つの無垢な命のことを。

 

 数年が経っても惑星ゼーベスのことは忘れない。『彼女』には、宇宙のチリとなったあの惑星に執着する理由が余りにも多かったためだ。

 

 親代わりになってくれた者たちが生み出し、彼らが死ぬきっかけとなってしまったマザーブレイン。

 マザーブレインに追い詰められ、自分を庇い散って逝ったベビーメトロイド。

 

『———ひさしぶりだなぁ、地球人種のメスガキィ!!』

 

 そして……宿敵リドリーとの決着。

 

『……俺様が何を糧に痛めた身体を再生できたかを教えてやろーかぁ!? えぇ!? おい!!』

 

『———肉さ』

 

『部下どもに殺戮を命じさせ、貴様らのお仲間の肉をたっぷりと持ってこさせたのさ!!』

 

 その性質は……下劣。外道と呼ぶ他なかった。

 奴を打ち倒した時を思い出す度に。両親を殺し故郷を滅ぼしたヤツの、リドリーの醜悪な笑みが離れてくれない。

 

 ———堪えても……足の震えまでは止まらなかった。

 

『もしかしたら、俺が喰っちまったかもしれねぇオメーのママもパパも喜んでいるかもなぁ!? 「リドリー様の細胞のひとつになれて光栄です」って!! おっとぉ! ———もしかしたら、以前オメーが俺に放った一撃でその細胞もぶっ飛んでるかもなぁ!?』

 

『———リドリィィィィーーーーーーーーッッ!!!!!!!』

 

『———殺してやるよ、サムス・アラン。

 そのために俺はくせぇ地球人種の肉を喰らいながら、思ってたんだからなぁ』

 

 ——いつか貴様に復讐してやるって。

 

 確かにその時のリドリーは死んだ。

いや———殺した。

 だがリドリーは、その体が滅んでも、その形を変えてサムスを追い詰めてきた。

 クローン体。トラウマ。寄生生物X。サイボーグ。

 以前のように知性があるわけでもなく、ヤツが言葉を発することはなかったが。

 

 そのどれもが、サムスを苦しめた。恐怖させ戦慄させた。

 全ての個体が持っていた狡猾さと執拗さは……どのリドリーもオリジナルのものと同じだった。

 

「……もう二度と貴様に会わないことを祈っているよ」

 

 そう祈り、サムスは今日も飛ぶ。

 

 

 =====

 

 

 ———そのころ、スペースパイレーツ残党本拠地。

 

「それにしても……この小さいのが本当にリドリー様なのか?」

 

「他の奴が、ゼーベスが木っ端みじんになる前に回収したって言ってたからな。まぁ、本当なんじゃねーの?」

 

 海賊団の下っ端二人は、巨大なカプセルの中で、鮮やかな緑の培養液に浸った小さい生物を見て訝し気な目で見つめる。

 

「しっかし、こんな弱々しいヒヨコがリドリー様ぁ? 信じられねぇよ。こんなん再生したって何の役にも立ちやしねぇよ」

 

 以前からスペースパイレーツ最高司令官、リドリーの再生は何度も行っていた。

 しかし、いずれの利用も生物兵器として。過去に海賊の指揮をとっていたオリジナルではなく、いずれもクローンのものだ。

 

 しかし、今この培養液に漬けられている個体は間違いなくオリジナル。

 惑星ゼーベスにて、サムスに敗北したリドリーは致命傷の回復のためにあえて自分の身体を退化させ、生き永らえた。

 手下に傷ついた自分を回収させ、復活の時を今か、今かと待ち望んでいるのだ。

 

「見かけで判断すんなよ。リドリー様がいたからこそ、スペースパイレーツは全盛期の頃は宇宙支配なんて夢じゃねぇってとこまでなれたんだぜ?」

 

 実際に最高司令官がリドリーであったころのスペースパイレーツは向かう所、敵なしだった。マザーブレインを参謀に仕立て上げ、有能な主力幹部をそろえた全盛期は宇宙支配目前だったのだ。

 

 ———サムスさえいなければ。

 

 右にいた下っ端の一人が、左にいる下っ端に論じるも納得しようとはしない。

 

「大体よォ、パワードスーツを着てるだけの地球人種の小娘にやられちまう最高司令官だぜ? んなもんの傷の再生を促進させたからってどうなるんだよ」

 

「しっ!! リドリー様が起きるぞ!」

 

『へいへい』と空返事をする下っ端をよそに、カプセルから培養液が抜けロックが解除される。

 

『———』

 

 ヒヨコとウサギを合わせたかのような、白い羽毛の可愛らしい生き物が、ちょこちょこと空いたカプセルから出てくる。

 

「リドリー様。おかえりなさいませ」

 

『リドリー』と呼ばれた可愛い『ヒヨコ』の前に、部下の一人が丁寧にひざまづく。

 

「……きゅう?」

 

「ぎゃははは!! こんなのがリドリー様かよ!? 再生のために退化して脳みそまでやられちまったんじゃねぇのか!?」

 

 あざとい笑みを浮かべながら『ヒヨコ』はその小さな足で、ゲラゲラと笑う男に向かっていく。

 

「おお? どうしたおチビちゃん。ミルクでもほしいんでちゅか? ぎゃははは!!」

 

「馬鹿!! 何言ってるんだ!?」

 

『———きゅう、きゅう! きゅいん!』

 

『ヒヨコ』は下品な男の腕に頬ずりをしている。

 

「ぷぷ……! なにって、可愛いペットに挨拶だよ! ほらほら———」

 

 下品な男は自分の腕の中にいるはずの『ヒヨコ』を見る。

 

「……え?」

 

 しかし、男の二の腕から下に———『腕はなかった』。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ———っ!?!?!?!」

 

 よく見ると、『ヒヨコ』の周りの体毛にはびっしりと血がこびりついていた。

『なにか』を咀嚼し機嫌が良さそうに舌なめずりをしている。

 

『……きゅぷ。きゅぶギュブブブウブブブブブブブ———』

 

 突然、『ヒヨコ』の身体が膨らみ、緑色の体液をバラまきながらビシビシと音を立てる。

 背中がひび割れ、中から巨大な腕が飛び出す。

 

「ひぃ———っ!?」

 

『ヒヨコ』の身体がさらに肥大化し、中から飛び出したのは、槍のように鋭い尾をもった巨大『トカゲ』。

 

「……ふぅ。マッずい肉だ。だが、オカゲで本来の姿にちっとばかし近づけたってトコロか」

 

『ヒヨコ』から出てきた『トカゲ』は少し詰まった言葉で満足そうに言った。

 

「……やっぱり、リドリー様だったんですね」

 

「ン? おぉ。再生のタメに一時的に幼体にマデ退化したンだが……どうだった? 案外ラブリーな赤ん坊だったろう?」

 

「……」

 

 幼体の時から変わらず悪魔でした。と言ったらどうなるのか。

 機嫌を損ねたら殺されかけない、と下っ端たちはノーコメントを貫いた。

 

「ちっ……反応はナイのか? ツマラん」

 

 しかし本来の姿とは違い、今の『リドリー』には翼はなく四足歩行で、体は羽毛に覆われている。

 

「それよりもリドリー様、元のお姿に戻るのに『肉』はご所望で……?」

 

 ちぐはぐな丁寧語で『リドリー』に接する下っ端は腕を喰いちぎられた部下を見る。ひぃと嗚咽をこぼした部下をみて、リドリーは興が冷めたと言いたげに眉をひそめる。

 

「イラん。あとは時間経過で次の脱皮がくる。そうすれば、だいぶツッカエテイルこの言葉遣いもドウにかなる」

 

「左様ですか……」

 

 

 =====

 

 

 復活から数日でリドリーは本来の姿に戻った。

 成体の『トカゲ』から完全体となった身体はより巨大に。

 ———禍々しい『ドラゴン』へと姿を変えて。

 

「ようやくこの姿に戻ったのはいいが……ずいぶんとちっこくなったなぁ。スペースパイレーツも」

 

 完全復活の最中に建造させた旗艦と、戦艦数隻。

 リドリーのいた頃の宇宙海賊、星をも容易に乗っ取れる程の戦力を有した全盛期の10分の1にも満たない戦力だ。

 

「……申し訳ありません。参謀であったマザーブレインがいなくなった今では指揮系統も」

 

「———あんな脳みそ野郎、どうだっていい。俺様は誰かの指示を受けるなんざ、もうまっぴらごめんだ」

 

 マザーブレインは確かに優秀だった。メトロイドを戦力投入することを提案し、うまく制御できたのも彼の参謀がいたからできたことだ。

 ———だからずっと利害関係の一致で従ってきた。

 

 しかしゼーベスの高度な技術提供も終わり、マザーが惑星ごとぶっ飛んだ今。

 ———海賊は誰の命令を聞く必要もない。

 なにより、あれこれと後ろで指示を出されるのにリドリーはうんざりしていた。

 

「……まぁいい。ちょうど金になりそうなイベントもあることだ……勢力拡大のためには、まず資金集めだ」

 

 金がなくては残虐非道なパイレーツとはいえど動かない。

 リドリーは若干ため息を吐きながら、金になりそうな情報を集めることにした。

 

 

 =====

 

 

「リドリー様、もうすぐで地球に到着します」

 

「いよいよか……」

 

 リドリーはスペースパイレーツ旗艦の指令室で、悪魔のような羽を広げ、邪悪な笑みを浮かべる。握ったチラシには『大乱闘スマッシュブラザーズ』と何でもアリの武術大会のことが書かれている。

 

 そこには当然出場選手のリストも———

 

「———今度こそ殺してやる。サムス・アラン」

 

 リドリーは低く唸り声をあげ、冷たく凍るような声色が船内に響く。

 彼に恐怖から従うものは身体を震わせ、残る部下も殺気を感じ取り身体を震わせる。

 

『ついでに大会に来た他の参加者もな』と笑みを深め、宇宙海賊総員に彼は告げた。

 

 

「大気圏突入後にハッチを開けろ!! ———皆殺しパーリィだぁっ!!!」

 

 

 ———リドリー、参戦。

 

 

 





リドリー「なぁにぃ!? 身長制限だとぉ!?」

———はい。ファイターとしての参戦なら、最大3mまでしか……

こうしてリドリーは3m程度のサイズで参戦しましたとさ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。