ダンガンロンパ Redemption (ナーガ工場長)
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プロローグ さらば希望の日常。
さらば希望の日常。part1


先駆者様の創作論破作品に感化され作ってみたくなり、始めました。
ド素人ですが、よろしくお願いします。


ーー「私立希望ヶ峰学園」

あらゆる分野において活躍するエキスパートを育成するための

超一流の学園。

この学園に入るためにはいくつかの条件がある。

1つ、『現役の高校生であること』

2つ、『その分野において超高校級であること」

ーー

 

 

と、まぁこんな誰でも知っている前置きはこれくらいにして、

まずは俺の自己紹介でもしようかな。

 

俺の名前は『暁日 悠(あかびゆう)』。

なにかこれといった特徴やすごい特技があるわけでもない

ましてや異星人だとか改造人間でもないごく普通の高校生だ。

…ただ一点を除いて。

 

ある日、送られてきた一通の手紙によって俺の日常は変わった。

「…ここか。やっぱ近くで見るとでかいよなぁ…。」

希望ヶ峰学園からの入学通知に書かれた場所に来た俺は、学園の校門前に来ていた。

こんな才能の無い俺でもその才能を「得る」事ができるなんて…。

 

この学園には才能のない人間でも入学できる

「予備学科」というものが存在する。

だけど、入学するには莫大な入学金が必要だったため諦めていた。

 

「…よし。行くか。」

色々思うことがあるが、まずは校内に入らなければ始まらない。

覚悟を決めて、一歩を踏みだした…。

 

「…え。」

 

その瞬間、目の前の風景が歪み、曲がり、

そしてーー

 

 

 

 

ーー俺の意識は世界から消えた。

 

 

 

 

 

 

…………誰だ?……………声…………?

 

 

 

 

「君が………………望んだ………………才能………………」

…………才能………俺が望んだ………?

 

 

「………さぁ………アド………暁日悠……」

……何のことだ………意味が分からない………なんで俺の名前を………。

また……意識が…………。

 

 

 

 

ーー「…………い。……………か………」

今度はなんだ………。

 

「も………。き…………か………。」

俺を呼んでるのか………?

意識も、ハッキリしてきたな………。

 

 

ーー「おーい!大丈夫ですかー!」

意識を取り戻し、目を覚ました

その視線の先にいたのは…

中性的な雰囲気をした見知らぬ俺と同じ歳くらいの少年だった。

 

「あ、やっと起きたね!全く、全然反応無いから

死んでるかと思ったよ。」

……ん?少年?………

 

「うおぉっ!!だ、誰だ!?」

「うわ!び、びっくりするなぁ!」

 

「お、お前誰だよ!?てか、ここどこだ!?

なんでこんな場所にいるんだ俺は!」

目が覚めた俺がいたのは見覚えのない教室だった。

 

「ま、待って待って!君の言いたいことも

分かるけど、一旦落ち着いて!説明するから!」

「あ、あぁ……。こ、ここはどこなんだ?

俺は希望ヶ峰学園に来たハズなんだけど…?」

 

「あー…。やっぱり君もそうなんだね…。」

……?『君も』……?

 

「『君も』って…どういうことだ?」

「実は、他の皆も君と同じように希望ヶ峰学園に

来た瞬間、意識を失って目が覚めたらここにいたんだ。」

 

「他の皆ってことは…。」

「うん。皆、超高校級の才能を持った人達なんだ。」

 

つまり、ここにいる人間は俺のクラスメイトに

なるハズのやつらだったってことか…。

 

「そういえば、まだ自己紹介してなかったな。

俺は…。」

「『超高校級のアドバイザー』、暁日悠君でしょ?」

………え?

 

「な、なんで知ってるんだ!?」

「まぁまぁ、落ち着いて。それを説明するためにも

僕の才能と名前を教えるからさ。」

こいつ……。なんか、飄々としてて話してるだけで疲れるな。

 

「僕は『超高校級の情報屋』、小鳥遊瑞希(たかなしみずき)だよ。

よろしくね。」

見た目が中性的かと思えば名前もなんか中性的だな…。

 

「『超高校級の情報屋』か…。聞いたことないな。」

「そりゃそうでしょ。情報を扱うにはまず、自分の情報を隠さないと意味がないからね。尤も君の情報を知ろうと思えば、出身校から性癖、さらにはお風呂に入るときはどこから洗うか、まで分かるけどね。」

「……そこまで調べるのは勘弁してくれ。」

「フフッ。まぁ冗談だよ。」

こいつは敵に回さない方がいいタイプだな…。

 

「もう、名前も才能も知られてるけど改めて自己紹介するが、俺は『超高校級のアドバイザー』暁日悠だ。よろしく。」

「……父親の会社の問題点の改善案を提案したのをきっかけにアドバイザーとしての才能を発揮。父親の会社は急成長。以降は大企業から小さな町工場まで依頼されれば、どこへでも改善案を提案しに行く…。」

とか言いながら、小鳥遊は調べたことをメモしてるであろう手帳の内容を読み上げていった。

 

「そんな大した事じゃないよ。俺は単に、手抜きや妥協が嫌いなだけでそれを改善してほしくて言ってるだけだし…。」

「それでも、こうして才能を見出されてるんだからもっと誇ってもいいんじゃないかな?」

「……そう言ってもらえるのは嬉しいな。」

誰も見てなくても、口に出さなくても、何かしらで評価はされてるのか…。

 

「ーーさて、そろそろ行こうかな。」

「?どこにだ?」

「さっきも言ってたでしょ?ここには君と同じ超高校級の才能を持った人達がいるって。」

「あぁ…そういえば。」

「今は全員体育館に集まってるんだ。それで、その中の一人が一時的に指揮を執って他の人がいないか探してたんだよ。それで、君がいたんだ。」

「ってことは…。俺が最後なのか。」

「多分ね。皆を待たせるのも悪いし体育館に行こうか。」

 

そう言うと俺と小鳥遊は教室を後にし、体育館へ向かった。




む、難しい…。
とりあえず、プロローグは頑張ります…。


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さらば希望の日常。part2

プロローグその2、登場人物紹介編です。
なんとか年内にはプロローグを終わらせたい…。


小鳥遊と謎の建物を移動している間、この場所についての話をしていた。

 

「こうやって移動してると…。教室があって、なんというか普通の学校みたいだな。」

「でも、明らかに違うとこもあるよね。…例えばアレとか。」

 

そう言って小鳥遊が指差した先には監視カメラがあった。

他にも、モニターが設置されていたり窓は何故か鉄格子がはめられていたり…。

 

「カメラと鉄格子…か。ぱっと見は学校だけど、至る所にカメラがあってまるで刑務所にでもいるみたいだな。」

「他にも教室以外にも、妙な模様がついた扉の部屋が何箇所かあったよ。全部鍵が掛かってたけど。」

 

考えれば考えるほど奇妙な場所だよな。こんな特徴的な建物今まで全く見たこともないし。

色々話しながら廊下を歩いてると、「体育館」と書かれた札の

ついた扉の前に来た。

 

「さ、着いたよ。ここがその体育館だよ。」

「…この先に、超高校級の連中が…。」

き、緊張するなぁ…。一度、深呼吸を行い気持ちを整えて…。

 

「……。よし。小鳥遊、開けてくれ。」

「…うん。皆ー!また一人見つけたよー!」

小鳥遊が扉を開けるや否やその先の連中は口々に喋り始めた。

 

「あぁ。ご苦労だったな。」

「これでまた一人増えたね。」

「次は男の子かー!」

「随分遅かったのですね。既に全員集まってますよ。」

 

「こ、こいつらが…?」

「そう。君と同じ超高校級の才能を持った仲間達だよ。」

 

すると、それまでこの場を仕切っていたであろう白い学ランを着たやつが話し始めた。

「ーーこれで、16人目か。念のために確認するが、他に誰かを見つけたやつはいるか?」

その問いかけに答える者はおらずーー。

「どうやら、今この場にいる16人で全員か。さて、ここからどうする?体育館で待っていろ、ということらしいが…。」

「え、そうなのか?」

思わず、俺が聞いた。

 

「あぁ。どうやら挨拶をするから体育館で体育館で待機をする必要があるらしい。…詳しくはそこにいるやつから聞いてみろ。」

そう言って深緑色のカーディガンを着たやつを指差した。

 

「なぁ、そうなのか?」

「あ、あぁ。どうやらオレが一番に目が覚めたみたいなんだけど、

教室に『体育館に集合』って書いた張り紙がしてあったんだ。」

つまり、その挨拶とやらがあるってことか…。

 

すると、燕尾服を着たやつがこう切り出した。

「でしたら、自己紹介を行うのはどうでしょうか?お互いの事を僕たちはまだ知らないですし。」

確かに、俺達は互いの事を知らない。何人かはテレビとかで見た事があるやつもいるが。

 

「その通りだな。では、これより各自自己紹介を行なってくれ。」

白学ランの合図でそれぞれ自己紹介を始めた。

 

「さて、誰から行くかな。」

「あ、待って暁日君。折角だから、僕と一緒に自己紹介回ろうよ。

僕が知ってる限りの情報を教えるから。」

「それは助かる。」

手始めに俺はさっきまで場を仕切っていた白学ランに声を掛けた。

 

「悪い。自己紹介したいんだけど、ちょっといいか?」

「あぁ。勿論構わない。」

「俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠っていうんだ。よろしくな。で、こっちは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希。」

「よろしくね。」

「俺は『超高校級の提督』、皇大和(すめらぎやまと)という。こちらこそよろしく。」

水兵帽を被り勲章が大量に付いた白い学ランを身につけ、背中に朱色のマントを付けた青髪の男はそう名乗った。

 

「て、提督!?」

見た目が軍人っぽいと思ってたけどマジでそうなのか…。

「彼は国家公認の防衛軍である通称『四神』の内、南方の海を防衛する艦隊『朱雀隊』を取り仕切る提督に最年少で就任した人間なんだ。」

横から小鳥遊が補足説明をしてくれた。いきなり凄いやつに話しかけてしまったな…。

 

「き、気安く話しかけてしまって…。すいませんでした…。」

「ちょっと待て。誰もそんな態度をとれなんていってないぞ。むしろ、普段通りで構わない。」

「え?」

「俺はその才能故に周りは部下しかいなくていつも敬語で話しかけられていたんだ。ここでは普通の高校生でいたいから出来ることなら普通に接してくれ。」

「そうだったのか…。分かった!改めてよろしくな皇!」

「あぁ、こちらこそよろしくな!暁日!」

凄い才能故の悩みってのもあるのか…。

 

「さて、次は…。」

次に俺は会話をしている男女2人に話しかけた。

 

「ちょっと、自己紹介していいか?俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠。こっちは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希。よろしくな。」

「小鳥遊瑞希です。よろしくね。」

 

「わたくしは夜桜凛(よざくらりん)と申します。この度、『超高校級の薙刀家』としてスカウトして頂きました。以後よろしくお願い致します。」

黒いセーラー服を着たセミロングの黒髪の女子生徒はそう名乗った。

 

「夜桜って…。もしかしてあの夜桜家か?」

「うん。彼女は各分野で活躍する人間を輩出する名門、夜桜家の娘にして薙刀の達人。その実力は素人程度は何をされたか分からないままに負けるとか…。」

「そ、そんな大袈裟ですわ。わたくしは趣味で薙刀を嗜んでいるだけでして…。」

そう言って謙遜する態度すら気品を感じさせるものがある。

まさしく大和撫子を絵に描いたような人物だな。

 

「次は、僕の番ですかね?僕は『超高校級の執事』、剣崎聖悟(けんざきしょうご)です。よろしくお願いします。」

夜桜と話していた燕尾服を着たどこか幼い雰囲気の白髪の少年はそう名乗った。

燕尾服を着てるそうかとは思っていたが予想通りだな。

 

「彼は、ヨーロッパの小国ノヴォセリック王国で王室執事長を最年少で務めているんだ。」

ま、また凄いやつが出てきたな…。

「でも、執事長なんだろ?仕事から離れて大丈夫なのか?」

「その点はご心配ありません。部下はみな優秀なので僕の指示がなくても業務を行えます。それに陛下からも『学業をするのが高校生の本業です』と仰り、推薦して頂きましたので。」

それほど、信頼し信頼されているのか…。

 

「それに、僕はある目標があるのですよ。」

「目標?」

「それについては…。フフッ、気が向いたらお話します。」

妙に含みのある笑いをして剣崎は言った。

 

「そういえば、2人は何の話をしてたんだ?」

「わたくしと剣崎さんは『高貴な者はどうあるべきか?』についてお話していたのです。」

「暁日様は『ノブレスオブリージュ』という言葉をご存知ですか?」

「いや…知らないな。」

 

「確か、『高貴な者には相応の責任を伴う』…って意味だったかな。」

「その通りです小鳥遊様。僕と夜桜様は互いに高貴な立場にある人間。故に『ノブレスオブリージュ』というテーマで談義していたのです。他にも『高貴な者はどうあるべきか?』『そもそも庶民と貴族の垣根は何か?』色々テーマが出てきて非常に興味深いですね。」

「な、なるほど…。」

高貴な立場…か。次元が違いすぎてよく分からないな。

 

夜桜と剣崎と離れて、次に声を掛ける人間を探した。




part2終わりです。
今気づいたけど、暁日と小鳥遊の外見についての説明まだしてなかったな…。とりあえず、プロローグ終了後に生徒名簿で全員分の細かい外見説明をします…。



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さらば希望の日常。part3

プロローグその3、登場人物紹介編2です。
まだまだ序盤なんでサクサク行きます。
各話の内容短いのかな…。長ったらしくなっても嫌だし、難しいですね…。


次に俺たちが声を掛けたのは、誰とも話さないで佇んでいる男子生徒だった。

 

「なぁ、まだ自己紹介してないよな?」

「……あぁ。」

く、暗い…。というより、黒髪のウルフカットで上は黒いレザージャケット、下は黒いジーンズを着てて全体的に黒い。そこにピアスやらネックレスやら指輪やらのシルバーアクセサリーを付けてて、なんかビジュアル系っぽい見た目してるな。

 

「えっと…。俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠。で、隣にいるのが超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希って言うんだ。お前は?」

「……本代荘士(もとしろそうじ)だ。」

「……え?それだけ?」

「他に何か必要か?」

「本代荘士……本代荘士……。僕の調べたデータにその名前は無いな。」

データがないって事は…。

 

「ちょっと聞かせてくれ。お前の才能は?」

「才能は……。覚えていない。だが、何かしらの超高校級だった事だけは覚えている。」

「それなのに、僕が知らないってのも妙な話だな…。」

「小鳥遊…だったか?確か情報屋だったな?」

「そうだけど…?」

「超高校級の才能を持った情報屋すら知らない才能…。つまり、俺の才能はそんな人間すら知ることが出来ないトップシークレットな才能という事か!ハハハハハッ!これはまた、自分の才能への期待が高まったなぁ!!ハハハハハッ!!」

な、なんだコイツは…。自分の才能に相当な自信があるのか…?どうやらコイツの前で才能の話題は御法度のようだな…。

 

異常な程高笑いする本代から逃げるように離れ、三人ほどいる女子たちに話しかけた。

「あ、ちょっと自己紹介したいんだけど。いいか?」

「…む?次は君のターンか。」

た、ターン?

「あー。うん。俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠だ。で、コイツは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希だ。」

「よろしく。君は?」

「ふむ…。それで君達のターンは終わりか。では、こちらのターンに移らせてもらおう。」

そんなよく分からない事を言いながら、白いフリル付きのシャツとサロペットスカートを着たボサボサのサイドテールをした小学生みたいな女の子は自己紹介を始めた。

 

「その名を脳に刻みつけるがいい!我が名は氷室幽華(ひむろゆか)!『超高校級のゲームプログラマー』という神の才能を持った者だ!」

清楚な見た目に反して凄い仰々しい話し方をする子だな…。

「氷室幽華って言うと…。あのメディア嫌いで有名なゲームプログラマーだよな?」

「そうだよ。天才的なゲームプログラミングの才能を持ち、様々なゲームを制作してきたんだ。そして高校生にしてゲーム会社『ヒムロゲームス』の社長でもあるんだ。」

「確か…『ハコの中のボク達』を作ってたよな。アレは俺もやったことあるぞ。」

「ほう…。あのゲームをプレイしたことあるのか。これは光栄だな。

だが、アレは私の中では失敗作なのだよ。」

「え?」

「私のゲームの制作コンセプトは『老若男女誰でも遊べるゲーム』だ!あのゲームはシナリオを複雑にしすぎたから、子供と老人には売れなかったのだよ!」

 

でも、あのゲーム世界で10億本売れたんじゃなかったか?

それでも失敗作と言い切るのは凄い向上心だな。

「それより、1つ気になることがあるんだが…。」

「なんだね?」

「仕事柄、インタビューは受けてるのは見たことあるんだよ。でも、写真とは明らかに別人なんだが…。」

「あぁ、アレはうちの社員だ。」

「しゃ、社員?」

「そもそもたかがゲームプログラマーがわざわざ人前でベラベラ語るのがおかしいんだ!我々は別に俳優でもアイドルでもないんだぞ!それを勘違いしてドヤ顔でテレビにでるのが間違いなんだよ!」

「わ、分かった分かった。落ち着いてくれ。」

どうやら、本当にメディアが嫌いなんだな。

 

「さて、そろそろいいでしょうか?私の自己紹介を行っても。」

そう言って赤髪のポニーテールをしてメガネを掛けた、グレーのスーツスタイルの女子生徒が話しかけてきた。

「あぁ、いいぞ。」

「私は『超高校級の会計委員』、八咫琴音(やたことね)と申します。以後、お見知り置きを。」

「あぁ、よろしく。」

夜桜が大和撫子なら、こっちはクールビューティーって感じだな。雰囲気もまるで秘書だし。

 

「彼女は経営難で廃校寸前に陥っていたとある私立大学をほんの僅かな予算で、再始動させた事で有名なんだ。予算周りで相談を持ちかけてくる会社も凄く多いんだって。」

経済関係のエキスパートか…。俺とは意見が合いそうだな。

「ところで、暁日君。あなたは超高校級のアドバイザーという事でしたよね?」

「あぁ、そうだ。」

「具体的にはお仕事は何をなさっているのですか?」

「そうだな…。基本的には会社の問題点を改善したい、って依頼を受けて改善案を出すのが主だな。他には……新しく企画を立てた際に意見を貰いたいって相談もよく来るな。逆にこっちから企画を提案することもあるし。あとは、まぁプライベート的な相談もそこそこあるな。こっちからも質問いいか?」

「えぇ。どうぞ。」

 

「予算を見てそこからの改善させるためにはまず、どこを見てるんだ?俺も結構予算関係の相談を受けるんだが、やっぱり本業の人間からの意見も欲しいんだ。」

「……決められた予算の中で如何に改善する手段は、まず本質を知るところから始めることが重要だと思います。やはり専門的な知識を求められる事が多々ありますから、始めに依頼先で扱っているものついて勉強した上で予算をどこにどれくらい配分しているのか?無駄はどれほどあるか?を計算していってますね。」

「…なるほど。やっぱり基礎知識を得ていくところからか。俺もいつもそうやってるよ。」

「『初心忘れるべからず。』これが私のモットーです。」

「なるほどなるほど…。参考になるよ。」

 

「あー…。盛り上がってるところ、申し訳ないけどあと1人自己紹介残ってるんだよねー。この子困惑してるよー。」

すっかり八咫との会話に夢中になってたところ小鳥遊の一言で我に返った。

「あ!悪い悪い。楽しすぎてつい話し込んでたよ。じゃ、八咫またどっかで話そう。」

「えぇ、私もまだ話したいことがありますから。」

 

さて…。3人目はこの子か…。白髪のロングヘアで、セーラー服を着てるのは分かるが……なんでその上にローブを羽織ってるんだ?

「あ、終わったー?」

「あぁ、遅くなってごめんな。改めて自己紹介するけど、俺は暁日悠。超高校級のアドバイザーだ。コイツは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希だ。」

「悠くんと瑞希くんだね。あ、わたしは柊色羽(ひいらぎいろは)。『超高校級の絵本作家』だよ。よろしくねー。」

 

「彼女は世界でも大ヒットした絵本、『ほしのうつわ』の筆者なんだ。非常に幻想的な絵を描くのが特徴で大人でも心が洗われるって評判なんだ。」

「いやー、そこまで言われるのは流石に恥ずかしいですなー。」

なんかおっとりした子だな…。

「というかなんで、そんなローブ羽織ってるんだ?」

「あー。これ?これはね、子供達の『夢』を守るためなんだよ。」

「夢?」

「うん。子供達にとってわたしは魔法使いみたいなイメージを持ってるみたいなんだ。だから、夢を壊さないためにもこうやってローブを羽織ってるんだよ。他にもこんなのもあるよ。」

そう言って柊は羽ペンと脇に抱えていたでかい魔道書みたいな本を見せてくれた。

 

「これは…随分本格的だな。」

「まー。この本はネタ帳も兼ねてるんだけどね。わたしにとっては子供達は何よりも大切な存在だからね。子供にとっての希望でありたいんだ。」

「立派な心がけだな。こっちが尊敬したくなるよ。」

「えへへー。ありがとー。」

子供達の夢か…。俺も学ぶことが多そうだ。

 

 

あと残ってる生徒は…。7人か。

ある程度予想はしていたが…。

どいつもこいつも個性的すぎるだろ!!




暁日、あまりの個性の強さに思わず叫ぶ。
あと7人…。いやー、キツイっす。


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さらば希望の日常。part4

プロローグ4、登場人物紹介編3です。
自己紹介はもうちょっとだけ続きます。


「まだ話してないのは7人か…。ふぅ…。」

「だ、大丈夫?ため息なんかして。」

おっと、いかんいかん。思わずため息が出ちまった。

 

「あぁ…。自己紹介だけでここまで疲れるとは思わなくて、つい。」

「あはは…。確かに皆個性的だもんね。」

だからといってゆっくりしている訳にもいかないな。

時間もずっとある訳じゃないし。

 

するとーー。

「そこの2人、ちょっといいかしら?」

モッズコートの下に上下共にボーダーの衣装を着た、金髪の女子生徒が話しかけてきた。

 

「あ。自己紹介か?俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠。横にいるのは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希だ。よろしく。」

「暁日くんと…小鳥遊くんね。ワタシはシルヴィア・N(ノックス)・アレクサンドラ。シルヴィアでもアレックスでも好きに呼んでくれて構わないわ。『超高校級の怪盗』よ。」

 

……は?今なんつった?怪盗…?

「正確には『元』なんだよね。」

「流石情報屋というだけあるわね。正しくは『超高校級の脱獄囚』と呼ばれているわ。』

 

…うん。訳分からん。ボーダーの服は囚人服ってことか…?

「彼女は元々、義賊として悪徳政治家達から金品・宝石を盗みだしてその悪事を世間に暴露していたんだ。『怪盗・ステラ』って名前は聞いたことあるんじゃないかな?」

「確か2年前に捕まった怪盗だよな?」

「確かにそうよ。でも今は脱獄をしては捕まり、脱獄をしては捕まりの繰り返し。そんなこんなで罪が重なって懲役800年ってところね。」

 

「は、800年!?なんでわざわざ脱獄するんだよ!?」

「そうねー。もう盗みをするつもりもないし、毎回捕まる度に独房の設備がアップグレードされるからそこからどうやって逃げるか、逃げてから何日で捕まるかを試してるから、理由としては『スリルを楽しむゲームを続けるため』ね。懲役は最大14万年位の犯罪者もいるし、目標は懲役1億年ね。」

 

「……。」

「ちなみに、今回の希望ヶ峰学園からのスカウトは特例で許可してもらってるの。この超高性能GPS付きブレスレットを付けるって条件でね。全く、こんなモノなんかなくてももう犯罪するつもりはないのに。ちょっとくらいは信用してほしいものだわ!」

 

夜桜と剣崎の比にならないほど異次元すぎる話の内容に目眩を覚えつつ、アレックスから離れ次の相手を探した。

 

「おーい。その2人、自己紹介してもいいか?」

次に俺達は2人の男子に声を掛けた。

「あぁ、もちろん構わないよ。君は?」

「俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠だ。コイツは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希。」

「よろしく。」

 

「俺は『超高校級の演劇部』、葛城狂也(かつらぎきょうや)だよ。よろしく暁日君、小鳥遊君。」

チェックのズボンと袖をまくったワイシャツの上から水色のパーカーを巻いた爽やかな雰囲気の男子生徒はそう名乗った。

あの巻き方は確かプロデューサー巻きって言うんだよな?今時珍しいファッションだな。

 

「彼は高校生にして世界的に有名な劇団『青空』の座長を務めているんだ。それだけじゃなく、去年は脚本・主演・監督・演出の全てを1人で担当した映画を製作しているんだ。その演技だけに留まらないマルチな才能が評価されて『超高校級の演劇部』と呼ばれているんだ。」

「ハハッ。そこまで褒められると照れるなぁ。まだまだ俺なんか未熟者だよ。でも、衣装の制作から巨大な舞台装置まで依頼されればなんでも作るよ。」

 

すげぇ…。嫌味を全然感じないぞ…。こういうのを世間では『イケメン』っていうのか…。

「あ、そうだ。これ皆に配ってるんだ。どうぞ。」

「これは…名刺か?」

「お近づきの印に。良かったらまたうちの劇場に来てよ。友達として最高の席で最高の公演をプレゼントするから。」

対応までイケメンすぎる…。

 

「ほら、君の番だよ。白暮君。」

「はぁ…。めんどいけど、自己紹介しない訳にもいかねーよな。」

そう言って白暮と呼ばれたオレンジ色の髪をして深緑のカーディガンと暗い茶色のブレザーを身につけた男子生徒が前に出てきた。コイツは確かここで最初に目を覚ましたやつだったな。

 

「…名前は白暮夕斗(しらくれゆうと)。才能は…あんま言いたくねーけど、『超高校級の幸運』だ。」

「希望ヶ峰学園は毎年一般の高校生からランダムで1人選んで『超高校級の幸運』としてスカウトするんだ。それが今年は彼なんだ。」

「全く…。幸運なんて笑わせてくれるよ。」

「?なんか気にくわないのか?」

 

「オレは普段の生活が全然ツイてないからな。自販機に金を入れれば金を吸われ、ゲームを買えばその日でバグるし、旅行に行けばテロリストに人質にされ…まだ『超高校級の不運』でスカウトされた方が納得いくよ。」

「で、でもそこまで散々な目に遭っても無事なのはある意味幸運と言えるんじゃないのか?」

「オレだけに被害が及ぶならまだマシだけど、そうじゃないんだよ。オレの不運は他人にまで影響するタイプなんだ。…今回はもしかしたら、今までにない『最悪の事態』が起こるかもしれないな。それがなんなのかは流石に分からないけどな。」

普段から不運に見舞われる人間が予想できない『最悪の事態』…。

この状況からまだ最悪の事態が起こるのか…?

 

得体の知れない不安を感じながら葛城と白暮と離れ、俺達は…。

「………」

「………」

……ライオンの刺繍の入った赤いスカジャンと黒いスウェットを着た剃り込みの入った茶髪の短髪の大男と対峙していた……。

 

……ホントに高校生だよな?2m近くはあるぞ?てか、なんで左目の下に傷があるんだ?

「…あっ。俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠って言うんだ。で、こっちは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希だ。お前は?」

「………獅子谷岳(ししだにがく)。『超高校級の登山家』だ。」

………怖ぇ!

「……なぁ、小鳥遊。ホントに登山家か?超高校級のヤクザじゃないよな?」

 

小声で小鳥遊に確認してみると。

「うん。間違ってないよ。彼は世界でも特に登山が難しい山トップ10の山全てを誰の助けを借りず、その身1つでクリアしてきたんだ。」

「……すごいな。たった1人でか…。無口な雰囲気も相まってまるで、クールな一匹狼みたいなんだな。」

 

「……おい。」

「うぉわぁ!!」

急に獅子谷が話しかけてきた。

「クールな一匹狼…。それは間違っているぞ。」

「え?違うのか?」

「俺は……。ただ単に人見知りなだけだ。会話も苦手でいつも長続きしないんだ。それがいつのまにか一匹狼みたいな扱いになっているに過ぎない。」

 

「小鳥遊……。」

「うん?」

「人は見かけによらないな。」

「そうだね。」

 

獅子谷岳…。どうやら悪いやつではなさそうだ。




プロローグ4、終了です。
い、いつのまにかお気に入り登録されてる…。
ありがとうございます!


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さらば希望の日常。part5

プロローグ5、登場人物紹介編ラストです。
この話の終盤に皆さん待望の『アイツ』がちょっとだけ登場します。


残る3人の内、2人見つけ俺達は声を掛けた。

 

「そこの2人、まだ自己紹介してないよな?」

「お、ラスト2人待ってたよ!アタシは飛田明日香(ひだあすか)!『超高校級のパルクーラー』なんだ!」

そう言って白いTシャツとデニムのショートパンツをはいて、腰にパーカーを巻いた褐色肌の元気そうな女子は自己紹介した。

 

「俺は超高校級のアドバイザー、暁日悠だ。横にいるのは超高校級の情報屋、小鳥遊瑞希だ。」

「よろしく。」

「悠と瑞希ね…。おっけ、覚えた!で、隣にいる子は…。」

宵月舞(よいづきまい)よ。才能は…ごめんなさい。覚えていないの。」

キャメル色のカーディガンと赤いチェックのスカートをはいたベージュのショートボブと頭頂部からアンテナが立った特徴的な髪の女子はそう名乗った。

 

「彼女の情報も…どこにもないな。」

「才能を忘れた人間が2人…どういうことだ?」

「確かに…全員が才能を忘れるならともかく2人だけが覚えていないのも変だよね。」

「まぁ、そのうち思い出すでしょうし私はそれほど気にしてないわ。」

宵月は本代とは逆のタイプか。

 

すると飛田が、

「ねーねー。舞ちゃんの事もいいけど、アタシの事も紹介してよー。」

「あ、ごめんごめん。彼女は世界中にファンがいるほど人気なパルクーラーなんだ。高層ビルを飛び回りながら、魅力的なパフォーマンスをする姿は海外では『現代のニンジャ』って呼ばれているよ。」

「えへへー。褒められちゃうと嬉しいですなー!」

そう言って飛田は嬉しそうな顔して喜んでいた。

 

その瞬間ーー。

「ふむ…。胸囲は推定…89cmか。なかなかだな。こっちの子は…推定77cmか…。まだまだ伸び代があるな。」

「「「!?」」」

いきなり声がして振り向くとそこには、氷室よりさらに背の低い男子が立っていた。

「い、いつの間に!?」

「いつの間に、は失礼だね。ずっと後ろにいたよ。」

 

「あ、アンタ…なんでアタシのバストサイズを知ってんのよ!」

「伸び代ですって…?人が気にしていることを…。」

バストのサイズを当てられた2人は顔を赤らめながらそいつを睨みつけた。

 

「お、お前は誰だ…?」

「おっと。まだ自己紹介してなかったね。オレは東雲蒼真(しののめそうま)。『超高校級の監察医』さ。」

濃い目のグレーのブレザーの上から白衣を羽織ってメガネを掛けた、えらくマンガチックな顔のそいつはそう名乗った。

 

「か、監察医?医者のことか?」

「簡単に説明すると、事故や災害・伝染病で亡くなった人達の検死をしてそのデータを政府に提出する仕事さ。要は検死専門の医者ってところかな。まぁ、それなりに医療の知識も当然持ち合わせているけどね。」

「彼は旅行先で未知の伝染病を発見した功績を称えられて、超高校級としてスカウトされたんだ。」

「亡くなった人の最期のメッセージを聞き、家族の人達へ帰す…。オレはこの仕事に誇りを持っているのさ。」

…見た目の割に立派な考えを持っているんだな。

 

「…ところで、暁日クン。」

「なんだ?」

「キミは巨乳と貧乳、どちらがお好みかな?」

「はぁ?」

「巨乳派ならシルヴィアちゃん、飛田ちゃん、柊ちゃんを推奨しよう。貧乳派なら氷室ちゃんと宵月ちゃんをオススメするよ。」

…こういうところを除けば。

 

「いいからさっさとどっか行って!この変態!」

「10秒以内に視界から消えなさい…!」

当然ながら女子2人からは不評のようだ。いきなりバストのサイズを当てられたんだからそうなるよな。

「やれやれ。怖い事言うねぇ…。と、その前に…。」

そう言って小鳥遊の前に行き…。

 

「小鳥遊クン。キミは本当に男子かな?」

「?何行ってるんだ?確かに見た目は中性的だけど小鳥遊は男だろ。」

「オレはどんな衣装を着てても性別とスリーサイズをピタリと当てれる特技があるんだが、今回はどうも自信が持てなくてね。本人に聞いてみようと思ったのさ。」

「最低な特技だな。それ。」

「………僕は男だよ。」

「……ふぅん。オレの審美眼(スカウター)も衰えたかな?」

「それと東雲君。」

「なんだい?」

「…二度と僕の前で性別の事は口にしないでくれるかな。」

「まったく、怖いねぇ。」

そう言って東雲は去っていった。

 

「…あっ、ごめんね。昔から見た目の事でからかわれてて、あぁいうのは嫌いなんだ。」

初めて小鳥遊の怒ったところを見たな。…そういえば俺は小鳥遊のことをなにも知らないんだよな。アイツも自分からは何も語ろうとしないし。

 

「ところで、ひと通り自己紹介も済んで時間も結構経ったよね?まだ何も始まらないのかな?」

「確かに、流石にそろそろ何かあってもーー

そう言った矢先に、

 

『アーアー!!マイクテス!マイクテス!全員いるよね?声も聞こえてるよね?…オマエラ!長らくお待たせしました!』

「う、うるさ!」

「な、なんだなんだ!?」

自己紹介が終わるのを待っていたかのように突然、バカでかい音量のノイズが入った不快極まりない声と、耳をつんざくようなハウリングがスピーカーから聞こえてきた。

 

 

そう、これはまだ白暮の言っていた『最悪の事態』の予兆にすぎなかった…。




自己紹介これにて終了です。チカレタ…。
お気に入りのキャラが見つかれば幸いです。
さて、次回はついに『アイツ』の本格登場です。
原作の雰囲気を崩さないようにしないと…。


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さらば希望の日常。part6

プロローグ最終回となります。
ノルマ達成出来た…。


『え〜。ではでは、これより入学式を行います!オマエラ!舞台にちゅうも〜く!!』

 

「なーんだ!ちゃんと入学式するんじゃん!」

「全く、手の込んだイタズラですわね!」

「これがきっと希望ヶ峰学園式の歓迎なのでしょう。なかなか面白いですね。」

 

入学式が始まる、という事で安心しきった俺達の前に現れたのはーー

 

 

 

 

ーー向かって左半身が白、右半身が黒に分かれたクマのぬいぐるみだった。

 

「ーーーは?」

これまで見てきた何よりも非現実的なソレを目の当たりにした俺達は、言葉を失った。

 

「ぬ、ぬいぐるみ?」

「ぬいぐるみだって?失礼な!ボクは"モノクマ"!この学園の学園長なのさ!」

「ぬいぐるみが……喋った………!?」

「だーかーらー。ぬいぐるみじゃないって言ってるでしょ?その耳は何のためにあるのさ?」

 

目の前に現れたぬいぐるみは"モノクマ"と名乗った。

「オイオイ。これは何の冗談だよ?お前が学園長だって?ふざけたこと言ってんじゃねーよ!」

「学園長だと…?俺達がいるここは希望ヶ峰学園なのか?」

「でも僕の知ってる希望ヶ峰学園はこんな場所じゃないはずだ。どういうことなんだ?」

皆が口々にモノクマ問い詰め始めた。

 

「あーもう、うるさいなぁ。オマエラは人の話は最後まで聞きましょうって教わらなかったの?」

「アンタが先生なんて信じるわけないでしょ!」

「そうだそうだ!」

モノクマへの文句がヒートアップしてきたその時、

 

『どうやら、困っているようだなぁ。我が息子よ。』

「こ、この声は…父さん!」

父さん!?まだ何か出てくるのか…?

 

『仕方がない。このオレが助け船を出してやろう。』

「あ、ありがとう父さん!」

すると、再び舞台からーー

 

 

 

『ブルゥァァァァァァ!!』

ーー雄叫びを上げて目の前に現れたのはモノクマによく似た姿で太い眉毛と腹巻きを付けたぬいぐるみだった。

「ま、また増えたぁ!」

「コイツはなんだ!?」

 

「オレはこの学園の理事長にしてモノクマの父親…。名前はそうだな…"モノパパ"とでも名乗っておこうか。」

「父さん!コイツら全然言うこと聞かないんだよ!」

「……そうかそうか。そいつは辛かったな。………だが、息子よ。甘ーーーーい!!!!」

「ギャァァァァ!!」

いきなりモノクマを殴りつけたぞ…。

 

「お前はそこで大人しくしていろ。」

「は、ハイ…。」

「…オイ。俺達はいつまで貴様らのコントを見ていればいいんだ?」

痺れを切らした皇がモノパパに食ってかかった。

 

「息子が不甲斐ないせいで諸君に迷惑をかけたようだな。代わりに詫びよう。……さて改めて諸君の置かれている状況を説明しよう。まず、この学園は察しの通り希望ヶ峰学園ではない。諸君は訳あってこの『才牢学園(さいろうがくえん)』に編入することになったのだ。その期限はーーー。ない。」

「な…なんだと!?」

「そんな…わたくしたちは帰ることも出来ないと言うのですか!?」

 

「当然そう言う声もあることも考えて、この学園から卒業することが出来る、ある『ルール』がある。」

「る、ルールって…?」

「それは……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この中の誰かを殺す』事だ。」

「…え?」

「手段は一切問わない。絞殺焼殺斬殺殴殺撲殺爆殺呪殺銃殺…。好きな方法で殺したものをここから開放させてやる。」

何を言ってるんだコイツは…?そんな非常識な事が許されると思ってるのか…?

 

「………なるほど。大体分かった。では、聞かせてもらうが仮にこの場で俺が殺人をしたら俺は出れるのか?」

「お、おい本代。何を聞いてるんだよ!」

「今この場で同時に殺戮が起こる…。それでもいいのか?」

「そ、それは…。」

「つまり、そう言う事だ。」

 

「それについては…。オイ、モノクマ。お前の出番だ。」

「え…。いいんですか?」

「反省したようだからな。…期待しているぞ。」

「と、父さん…。父さんの期待を裏切らないように頑張ります!」

そう言って元気になったモノクマが代わりに説明を始めた。…元気にならなくていいのに。

 

「ただ殺人をしてもそれだけでは終わりではありません!オマエラには犯人を見つけるために『学級裁判』を行なってもらいます!」

「学級…裁判…?」

「学級裁判では『誰がクロか?』を議論してもらいます!その議論によって導きだされた人物が正しいクロであれば、クロだけがオシオキ。でも、間違った人物をクロだと指摘しまうと…クロ以外の全員がオシオキされ残ったクロのみ、晴れて才牢学園から出る権利が与えられます!以上が学級裁判のルールとなります!」

 

「ところで1つ質問ですが、先ほどの説明にあった『オシオキ』とは…?」

「ザックリ言うと"処刑"だね。」

「しょ、処刑!?」

「まさか殺人をしたのにお咎めなしとかそんな甘っちょろいこと考えてたんじゃないよね?犯罪者は罰を受ける…社会では当然だよね?」

あの目は…本気だ。本気で俺達にコロシアイをさせる気だ。

 

「残念だが…。コロシアイは起こらないぞ。」

「え?何で?」

「……お前がこの場で死ぬからだ。」

そう言って獅子谷がモノクマ殴り飛ばした。

その瞬間ーー。

「……!獅子谷!そこから離れろ!」

「………………!!これは……!」

皇の声で獅子谷が離れた瞬間、そこには大量の槍が突き刺さっていた。

 

「あ、言い忘れてたけどボク達への暴力も禁止だからね。命が惜しかったらだけど。」

「ふ、復活した!?」

「無駄にスペアは使いたくないけど、スペアはいくらでもいるからいくら倒しても意味ないからね。」

舞台から新しいモノクマが現れた。

 

「貴様らは……一体何の目的でこんな事をさせるんだ?こんなふざけたゲームを…。」

「目的?そうだねぇ…

 

 

 

 

 

『絶望』それだけだよ。」

…その狂気染みた眼光に言い返すものは誰もいなかった。

 

 

「えー。改めてオマエラ!才牢学園へようこそ!それではこれより、ワックワクドッキドキの『コロシアイ編入生活』の開始を宣言します!うぷぷぷぷ。これからどうなるか楽しみだねぇ。」

その言葉を残してモノクマとモノパパは体育館から消えた。

 

 

 

俺達の希望に満ちた日常は…絶望に満ちた非日常へと変わってしまった。




余談ですがモノパパのICVは若本規夫さんです。
次回は皆の細かい特徴とかをまとめた生徒名簿を予定しています。


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才牢学園生徒名簿
才牢学園生徒名簿


全員の細かい特徴等をまとめたプロフィールとなります。
身長、体重、胸囲に関してはかなりガッバガバですがお気になさらず。
12/8 出身校追加しました。
1/23 一部キャラのICV修正。
2/12 外見を分かりやすく改訂。
3/13 CHARARTさんを使用して作成した人物挿絵を追加。
21/8/18 一部キャラのICV変更


生徒名簿(50音順)

 

暁日悠(あかびゆう) ICV:松本梨香

【超高校級のアドバイザー】

 

「それは違うぞ!」「その言葉、ぶった斬る!」

 

・身長:173cm 体重:63kg 胸囲:83cm

・誕生日:1/18

・血液型:B型

・出身校:金星高校

・好きなもの:ドキュメンタリー番組

・嫌いなもの:手抜き

・一人称:「俺」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び

・髪型:茶色がかった黒髪で細めのアンテナ。イメージ的には最原君が近い。

・服装:えんじ色のネクタイを付けた半袖のワイシャツとグレーのスラックス

 

 

非常に的確なアドバイスを行う能力を評価され、『超高校級のアドバイザー』としてスカウトされた。感性は至って普通の高校生であり、個性的な生徒達の中ではツッコミになりがち。しかし、気になった事を追究していく性格で、本質を見抜く洞察力は本物であり、確実に事件を真実に導いて行く。冷静に見えて感情的になりやすく、感情が昂ると口調が荒くなる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

葛城狂也(かつらぎきょうや)ICV:中村悠一

【超高校級の演劇部】

 

「この状況だからこそ、俺達は互いを知る必要があるんじゃないかな。」

 

・身長:185cm 体重:72kg 胸囲:88cm

・誕生日:3/27

・血液型:O型

・出身校:青木第二高校

・好きなもの:クラシック

・嫌いなもの:椎茸

・一人称:「俺」他人の呼び方:男子「苗字+君」女子「苗字+さん」

・髪型:左へ流した青がかった黒いミディアムヘア。

・服装:グレーのタータンチェックのスラックスと、第1ボタンを開け袖をまくったワイシャツ。ワイシャツの上から水色のパーカーをプロデューサー巻きにしている。靴下は履いてない。

 

 

高校生にして世界的に有名な劇団『青空』の座長を務めており、1年前には脚本・監督・演出・主演を1人で行った映画を製作したことでマルチな能力を評価され『超高校級の演劇部』としてスカウトされた。美男子で名前に反して誰にでも穏やかに接するので、男女問わずファンが多い。手先が非常に器用で本人曰く、「それなりに何でも出来る。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

剣崎聖悟(けんざきしょうご)ICV:宮野真守

【超高校級の執事】

 

「世の為人の為に生きろ…。僕はそう陛下に教わりました。」

 

・身長:158cm 体重:48kg 胸囲:71cm

・誕生日:12/26

・血液型:AB型

・出身校:王都立ニューフォース学園

・好きなもの:紅茶

・嫌いなもの:スナック菓子

・一人称:「僕」他人の呼び方:男女問わず苗字+「様」

・髪型:やや長めのグレーに近い白髪。

・服装:黒い燕尾服。その下は黒いネクタイのついたワイシャツ。小物類は白い手袋を着け、左目にモノクル、左の胸ポケットに懐中時計。

 

 

ヨーロッパの小国、ノヴォセリック王国にて王室の執事長を務め、本人も女王陛下の専属執事として仕えている。幼い外見のせいで一見頼りなく見えるが、女王陛下の護衛をするために護身術を心得ているため、戦闘能力も意外と高い。『ノブレスオブリージュ』を座右の銘としており、全ての人間は対等に施しを受けるべきと考えている。また、本人もとある目標をもっているがそれについて語ることはほとんどない。比較的大人びた性格。

ショタ枠。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

獅子谷岳(ししだにがく)ICV:中田譲治

【超高校級の登山家】

 

「……会話は苦手だ。」

 

・身長:200cm 体重:100kg 胸囲:115cm

・誕生日:8/11

・血液型:AB型

・出身校:近江神室高校

・好きなもの:山、キャンプ

・嫌いなもの:海

・一人称:「俺」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び

・髪型:茶色の剃り込みの入った短髪。

・服装:ライオンの刺繍が入った赤いスカジャンと黒いスウェットを着用。スカジャンの下は黒いタンクトップ着用。

 

 

エベレストをはじめとする複数人でも登山が難しい山々をたった一人でクリアしてきた登山家。無口なこととその風貌で誤解されがちだが、本来の性格は人見知りで人との会話が苦手なだけである。本当は皆と仲良くしたいと思っているが、風貌で敬遠されてしまうのが悩み。大柄な筋肉質で、左目の下にキズがある。巨漢筋肉枠。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

東雲蒼真(しののめそうま)ICV:平田広明

【超高校級の監察医】

 

「オレは自分の出来る事をやるだけさ。」

 

・身長:135cm 体重:30kg 胸囲:62cm

・誕生日:11/1

・血液型:A型

・出身校:野口医学大附属高校

・好きなもの:旅行

・嫌いなもの:カラス

・一人称:「オレ」他人の呼び方:男子「苗字+クン」女子「苗字+ちゃん」

・髪型::黒髪に金のメッシュを入れたツーブロック。

・服装:ダークグレーのブレザーの上から白衣を着用。小物類はメガネを掛けている。

 

 

趣味の旅行先で偶然、伝染病患者を検死したところ新種の伝染病を発見しその功績を認められて超高校級になった。基本的には紳士的だが、女好きで多くの人間の身体を診てきたため、一目で性別とスリーサイズを当てれる特技を持っており、頻繁にセクハラ発言をするがあくまで場を和ませるためである。検死に限らず医療全般に強く、本人も自分の才能を誇りに思っている。デフォルメ掛かった可愛らしい顔をしている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

白暮夕斗(しらくれゆうと)ICV:吉野裕行

【超高校級の幸運】

 

「オレなんかいてもいなくても大して変わらねーよ…。」

 

・身長:170cm 体重:57kg 胸囲:78cm

・誕生日:7/7

・血液型:A型

・出身校:陽炎高校

・好きなもの:桜

・嫌いなもの:自分の才能

・一人称:「オレ」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び

・髪型:オレンジ色のパーマがかかったミディアムヘア。

・服装:深緑色のカーディガンとダークブラウンのブレザー。カーディガンの下は赤いネクタイの付いたワイシャツ。

 

 

一般の高校生の中から「幸運」として抽選で選ばれた。しかし、旅行先でテロリストに人質にされるなど不運な目に遭ってばかりのため幸運に選ばれたことを不服に思っている。そのような経験もあって卑屈な性格で皮肉屋。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

シルヴィア・N(ノックス)・アレクサンドラ(Silvia・Nox・Alexandra)

ICV:田中敦子

【超高校級の脱獄囚】

 

「命は盗むようなものじゃないわ。」

 

・身長:174cm 体重:55kg 胸囲:92cm

・誕生日:3/24

・血液型:B型

・出身校:ノースプリズナー収容校

・好きなもの:宝石、アンティーク用品

・嫌いなもの:電流

・一人称:「ワタシ」他人の呼び方:男子「苗字+クン」女子「苗字+サン」

・髪型:左へ流した金髪ロングヘア。

・服装:上下ボーダーの囚人服、その上にカーキのモッズコート。右腕に監視用の超高性能GPSが入った腕輪を付けている。

 

 

本来は『超高校級の怪盗』としてスカウトされる予定だったが、先に逮捕されてしまい繰り返し脱獄をしてるうちに脱獄囚としてスカウトされた。サバサバした性格で滅多に動揺することはない。倫理観がズレており、殺人以外の犯罪は犯罪と捉えておらず、脱獄することも抵抗がない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

皇大和(すめらぎやまと)ICV:津田健次郎

【超高校級の提督】

 

「俺達は友の屍を踏み台にしてでも前に進まなくてはならない…。」

 

・身長:186cm 体重:82kg 胸囲:92cm

・誕生日:5/27

・血液型:B型

・出身校:国立四神軍事大附属学園 高等部

・好きなもの:海鮮料理、ボードゲーム

・嫌いなもの:秩序を乱す者

・一人称:「俺」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び。状況によっては「貴様」

・髪型:青いストレートショートヘア。

・服装:白い水兵坊と勲章が大量に付いた白い学ラン。学ランの上に朱雀隊の提督の証である白地に朱色のラインが入ったマント。

 

 

国家公認の防衛軍『四神』の内、南方を防衛する艦隊『朱雀隊』の提督。同い年の人間から特別扱いされることを嫌っており、クラスメイトには普通に接するように頼んでいる。自分がリーダーであることを自覚しており自信家な性格だが、それは周りを不安にさせない配慮である。

一言で周りを圧倒する力を持つ。ちなみに階級は少将。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

小鳥遊瑞希(たかなしみずき)ICV:喜多村英梨

【超高校級の情報屋】

 

「情報を制するものは戦いを制す…ってね。」

 

・身長:167cm 体重:49kg 胸囲:76cm

・誕生日:2/2

・血液型:A型

・出身校:不明

・好きなもの:漫画、小説(ジャンル問わず)

・嫌いなもの:週刊誌

・一人称:「僕」他人の呼び方:男子「苗字+君」女子「苗字+さん」

・髪型:右目が隠れた緑がかった黒髪。

・服装:黒いブレザー。ブレザーの下は青いネクタイの付いたワイシャツ。小物類は茶色いキャスケット。

 

 

あるゆる情報を収集、管理する中性的な雰囲気の少年。クライアントを多く抱えており、裏社会での知名度は高いが表ではほとんど知られておらず彼自身の情報は誰も知らない。他人から詮索されることを嫌い、本人も多く語ろうとしないため、詳細は謎に包まれている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

柊色羽(ひいらぎいろは)ICV:遠野ひかる

【超高校級の絵本作家】

 

「う〜ん…。眠いなぁ…。」

 

・身長:154cm 体重:51kg 胸囲:87cm

・誕生日:6/26

・血液型:O型

・出身校:虹ノ木星女学院

・好きなもの:子供、睡眠

・嫌いなもの:徹夜

・一人称:「わたし」他人の呼び方:男子「名前+くん」女子「名前+ちゃん」

・髪型:白髪のロングヘア。

・服装:上は赤いリボンの付いた白いセーラー服、下は紺色のスカート。制服の上に黒いローブ。小物類は胸元に羽根ペンを刺し、脇に大きな魔道書風の本を常に抱えている。

 

 

幻想的な絵を描くため、子供だけでなく大人からも人気の高い絵本作家。おっとりした性格だが、芯が強く子供達の事を第一に考えており憧れの存在であるために常にファンタジー世界のような衣装を身に纏っている。マイペースで、人懐っこい癒し系。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

飛田明日香(ひだあすか)ICV:水樹奈々

【超高校級のパルクーラー】

 

「明るい事がアタシの取り柄だから!」

 

・身長:170cm 体重:53kg 胸囲:89cm

・誕生日:9/6

・血液型:B型

・出身校:燕ヶ丘学園

・好きなもの:高い場所

・嫌いなもの:暗い場所

・一人称:「アタシ」他人の呼び方:男子名前呼び 女子「名前+ちゃん」

・髪型:茶髪のベリーショート。

・服装:白いTシャツとデニムのショートパンツ。腰に赤いパーカーを巻いている。白いニット帽を被ってる。

 

 

高層ビルを飛び回り、魅力的なパフォーマンスをするため国内外からファンの多いパルクーラー。海外からは『現代のニンジャ』と呼ばれる程人気が高い。常に明るく振る舞っており、周りを元気付けている。褐色系ギャル。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

氷室幽華(ひむろゆか)ICV:悠木碧

【超高校級のゲームプログラマー】

 

「神の才能の前にひれ伏すがいい!」

 

・身長:142cm 体重:35kg 胸囲:72cm

・誕生日:12/6

・血液型:A型

・出身校:仁展道工業高校

・好きなもの:ゲーム、コンピューター

・嫌いなもの:お金、権力

・一人称:「私」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び

・髪型:ピンクがかった黒髪。右側頭部でサイドテールにしたショートボブ。

・服装:白いフリルの付いたシャツと黒いサロペットスカート。

 

 

一見小学生みたいな外見だがれっきとした高校生である。天才的なゲームプログラミングの才能を持ち、高校生にしてゲーム会社『ヒムロゲームス』の社長を務める。『老若男女誰でも楽しめるゲーム』をコンセプトに多数のヒット作を制作している。自分の才能を『神の才能』と自負しており尊大な口調で喋り、時折ゲームの用語を混ぜて会話する癖がある。ロリ枠。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

本代荘士(もとしろそうじ)ICV:GACKT

【超高校級の???】

 

「天の道を征き、総てを司る男…。それこそがこの俺だ。」

 

・身長:176cm 体重:64kg 胸囲:86cm

・誕生日:4/3

・血液型:O型

・出身校:石ノ森学院

・好きなもの:シルバーアクセサリー

・嫌いなもの:安物

・一人称:「俺」他人の呼び方:男女問わず苗字呼び

・髪型:黒髪のウルフカット。

・服装:上下共黒いレザージャケットとデニムパンツ。ジャケットの下にはグレーの深く開いたVネックカットソー。シルバーアクセサリーを好んでおりピアス、ネックレス、ブレスレット、指輪を付けている。

 

 

何故か自分の才能を忘れている生徒の1人。クールな性格だが、無愛想という訳ではなくむしろノリがいいタイプ。才能に異常に執着しており、才能に関する記憶を消されていることから自分の才能は特別なものと思っており、自身も特別な存在だと考えている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

八咫琴音(やたことね)ICV:南條愛乃

【超高校級の会計委員】

 

「私を待っている人達がいるんです!」

 

・身長:162cm 体重:48kg 胸囲:80cm

・誕生日:8/8

・血液型:O型

・出身校:天照商業高校

・好きなもの:そろばん

・嫌いなもの:運動、タバコ

・一人称:「私」他人の呼び方:男子「苗字+君」女子「苗字+さん」

・髪型:赤髪のポニーテール。

・服装:グレーのジャケットとスカートのスーツスタイル。小物類はメガネを掛けている。

 

 

経営難で廃校寸前だった大学を僅かな予算で立て直したことで有名になり、学校や企業から多くの依頼が殺到するようになった。仕事柄暁日とは意見が合い、互いに刺激をし合う仲になっている。真面目な性格が災いして暁日と同様にツッコミに回るタイプである。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

宵月舞(よいづきまい)ICV:川澄綾子

【超高校級の???】

 

「気になった事は徹底的に調べ尽くさないと気が済まない性格なの。」

 

・身長:157cm 体重:45kg 胸囲:77cm

・誕生日:10/12

・血液型:AB型

・出身校:如月学園

・好きなもの:シマエナガ、参考書

・嫌いなもの:騒音

・一人称:「私」他人の呼び方:男子「名前+君」女子「名前+さん」

・髪型:ベージュの細いアンテナのついたショートボブ。

・服装:キャメル色のカーディガンと赤いタータンチェックのスカート。カーディガンの下は細い水色のリボンが付いたワイシャツ。

 

 

本代と同様に自分の才能を忘れている生徒。本代とは真逆のタイプで自分の才能に対してそれほど執着しておらず、楽観的に考えている。

料理が得意なため、普段は主に剣崎の手伝いをしている。

二面性があり普段は普通の少女だが、事件が起こると一変して冷静に時には冷徹に捜査を行い犯人を追い詰めていく。非常に好奇心が旺盛。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

夜桜凛(よざくらりん)ICV:早見沙織

【超高校級の薙刀家】

 

「夜桜家の人間がへこたれていては、皆に示しがつきませんわ。」

 

・身長:160cm 体重:47kg 胸囲:81cm

・誕生日:4/18

・血液型:AB型

・出身校:聖蘭寺女学院

・好きなもの:和菓子、ぬいぐるみ

・嫌いなもの:ステーキ

・一人称:「わたくし」他人の呼び方:男女問わず「苗字+さん」

・髪型:黒いセミロング。

・服装:白いスカーフの付いた上下共黒いセーラー服。スタートの丈は膝。

 

 

名門「夜桜家」の娘であるお嬢様にして、薙刀の達人。大の大人が束になってかかっても勝つことは出来ないと言われている。大和撫子を絵に描いたような人物で誰にでも物腰柔らかく接する。可愛いものが大好きで、ぬいぐるみ収集が趣味。しかし、モノクマの事は嫌っている。若干天然。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【シルヴィアの呼び方一覧】

暁日→アレックス

葛城→アレックスさん

剣崎→アレックス様

獅子谷→アレックス

東雲→シルヴィアちゃん

白暮→シルヴィア

皇→アレックス

小鳥遊→シルヴィアさん

柊→シルヴィアちゃん

飛田→シルヴィアちゃん

氷室→アレックス

本代→アレックス

八咫→アレックスさん

宵月→シルヴィアさん

夜桜→アレックスさん

 

 

以上、総勢16名。

 

モノクマCV:大山のぶ代orTARAKO

【才牢学園学園長】

 

モノパパICV:若本規夫

【才牢学園理事長】

・自称、モノクマの父親。見た目はモノクマより一回り大きく、モノクマと同じカラーリングでハットを被り太い眉毛と腹巻きを付けた『男は辛いよ』の寅さんスタイル。

息子に対しては厳しくも、愛情を込めて接しているつもりである。




イメージCVは基本的に自分の趣味とセンスによるものです。一応、既に本家に出演した方々は意図的に避けています。

尚、外見のコンセプトは『サイコシック』を意識しています。
え?『サイコクール』と若干被ってる?…気にしないでください。

CHARARTさんを用いてキャラを作成しました。
一部キャラが仕様上、外見と剥離してしまってます。備考にも特徴を書いてるのでその特徴を利用して外見を補完するようお願いします。
Twitterで教えてくれた方本当にありがとうございます。


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チャプター1 白とクロの交錯
(非)日常編1


チャプター1(非)日常編開幕です。
前書きと後書きが長くなるのもアレなので、これ以降は抑えめに若しくは直接話を進めるようにします。
12/9前後の整合性を合わせるために一部名称変更と、情報追加しています。※モノフォンの名称が別作者様の作品と被っていたので急ではありますが、変更します。


突きつけられた現実を受け入れられずに呆然と立ち尽くす俺達の前にーー。

 

「やれやれ。あのバカ息子は……。」

再びモノパパが現れた。

 

「うわぁ!ま、また出たぁ!」

「貴様…。まだ用があるのか?」

「諸君に伝達事項がいくつかあってな。息子に変わって伝えにきた。」

「用件を伝えたらさっさと消えろ。」

 

「まず、諸君に渡すものがある。これだ。」

そう言ってスマホサイズの物体を渡してきた。

「これは次世代型手帳デバイス、"モノドロイド"という。校則や学園内のマップといった機能が入った装置だ。他にも色々な機能があるから見ておいてくれ。手元に渡ったら起動して持ち主が間違っていないか確認しておいてくれ。」

 

そう言われモノドロイドを起動すると確かに俺の名前と才能が表示された。…誕生日はともかく、何で好きなものとか嫌いなものまで書かれているんだ?

 

「それともう一つ、学園内の扉が施錠された部屋がいくつかあるが開けておいた。校則にも書いてはいるが、この学園について調べるのは特に制限を設けていない。好きなだけ調べてくれて構わない。……以上だ。」

「用は済んだか?ならさっさと消えてもらおうか。」

「言われなくてもそのつもりだ。これから息子に説教しないといけないからな。」

そう言ってモノパパはそそくさと姿を消した。

 

「…一応校則ってのに目を通しておくか。」

操作は……スマホとほぼ同じみたいだな。

 

 

 

《才牢学園校則》

 

1.才牢学園での共同生活には期限はありません。

 

2.殺人事件が発生した場合、全員参加の学級裁判が行われます。

 

3.学級裁判で正しいクロを指摘できれば、クロがオシオキされ残りのメンバーで共同生活を続行します。

 

4.クロの指摘に失敗した場合、クロ以外のシロ全員がオシオキされ生き残ったクロに才牢学園から卒業する権利が与えられます。

 

5.シロが勝ち続けた場合、2人になった時点でコロシアイは終了します。

 

6.夜10時から朝7時までは「夜時間」となります。「夜時間」中は一部の場所が立ち入り禁止になります。

 

7.モノクマ・モノパパへの暴力及び、監視カメラの破壊は禁止です。

 

8.才牢学園について調べるのは自由です。行動に制限は課せられません。

 

9.電子生徒手帳は1人に1つのため、替えがありません。壊さないようにしてください。

 

10.校則は順次増えていく場合があります。

 

 

 

……ここまでしっかりルールが決められているのか…。

「……ふざけるな。本当にゲーム感覚で人を殺させる気かよ…!」

「ちょっと気になったんだけど、この"2人になった時点で終了"ってどーいう意味なのかな?」

「恐らく学級裁判が成り立たなくなるからじゃないかしら。」

つまり、最低2人になるまではコロシアイは絶対に終わらないのか…。

 

「ところで、これからどうする?ずっとここにいても埒が明かないよ?」

「じゃあさ、この学園の調査をするのがいいんじゃないか?さっき扉を解除したって言ってたし。」

「情報収集…。ゲームでも基本中の基本だな。」

「でしょ?皇君はどう思う?」

「確かにこの学園の事を全く知らないからな。よし、それぞれ調査を行なってくれ。但し、2人以上のグループを組むようにしてくれ。」

 

…なるほど。2人以上になれば互いに見張ることが出来るな。

「…嫌だね。」

「今反論したのは誰だ?」

反論したのは…白暮だった。

「そうやってグループを組んだところで互いに手を組んでいて殺すかもしれないだろ?…オレは一人でいかせてもらう。」

「典型的な死亡フラグだな…君。」

 

「白暮…今は言うこと聞いとけよ。」

「ふざけんな!もう既に計画を立ててる奴もいるかもしれねーだろ!」

その言葉で互いに周りを見渡し始めた。…既に殺人計画を立ててるやつがいる…?

 

「お前…冗談も大概にしろよ…!」

「そう言ってお前が真っ先に計画してるんじゃねーか?」

「……!てめぇ…!」

「悠!ストップ!」「暁日様!おやめください!」

「白暮さん!やめなさい!」「…落ち着け!」

カッとなって白暮に殴りかかりそうになった瞬間、俺は剣崎と飛田に、白暮は夜桜と獅子谷に抑え込まれた。

 

「離せ!」「どうした?殴るんじゃねーのか?」

完全な混乱状態に陥って一触触発になっていたときーー。

 

「ーーやめろ。」

そのたった一言に威圧され、全員が静かになった。

発言したのは…皇だ。

 

「狼狽えるな。貴様らはただの凡人か?」

「いや、俺は…俺達は超高校級だ。」

「その通りだ。俺達は超高校級…この程度で揺らぐ人間ではないだろう?」

「そ…そうだよ!才能を持った人達が16人もいるんだよ!こんなのなんてことないよ!」

「あ…あぁ!俺達全員で協力してここから脱出するんだ!」

すごいな…ほんの少しの言葉で場を収めてしまったぞ。これが『超高校級の提督』の力か。

 

「皇…ありがとう。」

「礼はいい。提督として当然のことをしたまでだ。それより、あとで全員に謝っておけ。」

「あ、あぁ。」

 

「再度言うがこれよりこの学園の調査を行う。一時間後の16時にこのマップにある"食堂"に集合。ほかに何かあるか?」

「…………私から1ついいかね?」

そう言って氷室が手を挙げた。そういえば途中からずっと考え込んでいたような…。

 

「大したことではないが気になった事があってね。少し質問をさせてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

……君達の中で『ダンガンロンパ』というゲームを知っている者はいるかな?」

 

「………………」

「まぁ、それが当然の反応だな。『ダンガンロンパ』は歴史の闇に葬り去られたゲームだからな。」

「そ、それでその『ダンガンロンパ』ってなんだ?」

 

「『ダンガンロンパ』は情報の規制が厳しくてね。私も詳しくは知らないのだが…。数十年前に流行した最低最悪の殺戮ゲームだ。」

「さ、殺戮ゲーム!?」

「元々は普通のゲームだったようだが、いつからか普通の人間に『超高校級』の才能と偽りの記憶を植えつけ、『コロシアイ』を行わせてそれを全国に生中継していたんだ。」

「な、なんて悪趣味な…。」

 

「ところが、53作目を最後に突然打ち切られ『ダンガンロンパ』は終了したんだ。」

「そ、それからどうなったんだ?」

「そこからは私にも分からない…。私のスキル不足ですまない。」

「で、でもなんで急にそんな殺戮ゲームの話をしたのですか?」

 

「『ダンガンロンパ』は『超高校級』の人間に『コロシアイ』をさせ、犯人を見つけるために『学級裁判』を行う…。そしてゲームマスターとして『モノクマ』が存在する…。どこかで聞いたことないかな?」

ま、まさか…。

「俺達が置かれている立場そのものじゃないか…!」

「そう。そして、これはあくまで私の推測でしかないのだが…何者かが『ダンガンロンパ』を意図的に模倣していると思う。」

 

「…一体なんの目的なんだ?」

「それは私も気になることだな。『ダンガンロンパ』はゲーム業界のごく僅かな人間が知る事ができない。それこそ情報屋とかに漏れることはないくらい秘匿されているハズなのに、だ。分かることは仕組んだ黒幕は相当性根が腐った人間であることくらいかな。」

数十年も前に行われた殺戮ゲームの模倣…。どういうことだ?

 

「…私からは以上だ。とりあえず『ダンガンロンパ』…この名前を覚えておいてくれ。皇、調査を行うんだろう?時間は大丈夫か?」

「そうだな。では各自調査を行なってくれ。」

謎がさらに深まったが、とりあえず調査を行うことにした。




僕はV3のオチ大好きです(全ギレ)
正直、この展開がやりたいが為に小説を書いたと言っても過言じゃないです。
次回は調査中心になります。


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(非)日常編2

学園調査編です。


「小鳥遊、よかったら一緒に探索回ろうぜ。」

「あ、暁日君。もちろん構わないよ。」

「それと…さっきはお前もだけど皆に迷惑をかけてゴメン。」

「別に気にしていないよ。こんな状況だから皆ピリピリしててもおかしくないしね。」

確かに…監禁されてコロシアイを行わせるなんて誰が考えても異常すぎるよな。

 

「とりあえず早く回ろうか。暁日君は気になっている所とかってある?」

「うーん…そうだな…。」

考えながらモノドロイドでマップを開き、

「そういえばここまで移動するときに話してた、扉に妙な絵だか模様だかが描かれた部屋ってのが気になるな。」

「じゃあ、まずそこを調べるためにも二階へ行こうか。」

そう言って体育館を出て廊下を移動し始めた。

 

途中で

「ここが、集合場所の食堂か…。一応中を見ておくか。」

扉を開けた先には

「あら暁日君と小鳥遊君、どうしたのかしら?」

先客で剣崎と宵月が来ていた。

「ちょっと中だけでも見ておこうと思ってさ。へえ、結構立派なもんだな。」

「ここは見ての通り食堂よ。今のところ私と剣崎君以外は誰も来ていないわね。」

「この食堂…なかなか凄いですよ。真っ先に厨房を調べたのですが、巨大な冷蔵庫が三台もありました。」

「三台の冷蔵庫?」

「どうやら、肉類・魚類・野菜とフルーツでそれぞれ分けられているみたいですね。しかも、フォアグラやキャビアといった高級食材の用意までしてありました。数や鮮度には問題ありませんし、食中毒や餓死することはまずないでしょう。」

「他には食器の数を見たけど、ぴったり16人分だったわ。」

人数分ある食器…外部から人間が来ることは無いという事か?そして膨大な食材を用意できるだけの財力がある人間が関わっているのか?

 

「なるほど、ありがとう。俺達は他の場所の探索をしてくるよ。」

「では、僕達はもう少し探索をしてみます。隣に倉庫もあるみたいですし。」

「倉庫もあるの?」

「はい。これもまた巨大でまるで大型ホームセンターのような雰囲気でしたね。」

 

「そうか。あ、それから…。さっきは迷惑をかけて、ゴメン。」

「大丈夫、気にすることないわよ。あの状況だと皆気が立っていてもおかしくないわ。」

「それに、非があるとすれば白暮様の方にありますからね。」

「…ありがとう。それにしても、剣崎って意外と強いんだな。あの時、全然動けなかったぞ。」

 

「僕は陛下の護衛も任されていますからね。喧嘩の仲裁など造作もございません。」

…ホント人は見かけによらないよなぁ。

「宵月は記憶の方はどうだ?何か手がかりとか…。」

「…さっぱりね。思い出そうとしても靄がかった感じで。」

どうやら、こっちはまだ時間はかかりそうだな…。

 

食堂を後にして、俺達は二階へ向かった。

「二階は…俺が目覚めて以来か。」

「あの時はすぐ移動したからちゃんと見れてなかったからね。改めて見ておこうか。」

 

手始めに教室を見て回った。

1-A、1-B、1-Cの合計3つの教室がありどの教室も一見普通の教室だった。…全ての窓に鉄板が付けられていること、監視カメラとモニターがあることを除けば。

「どの教室にも監視カメラとモニターがあったな。」

「十中八九、僕らを見張るためだろうね。壊すことも出来ないし、ここでの生活は全部筒抜けってことだね。」

「ホント、趣味が悪いな…。」

 

「…さて、本題か。」

残るは妙な絵が描かれた扉がある部屋だった。

二階にはコインが描かれた扉の部屋があった。

「ここは一体なんなんだ?」

「あ、2人もここを見に来たの?」

 

そこに白暮、葛城、皇の3人が現れた。

「白暮…なんで皇と?」

「コイツにはこの俺が付こうと思ってな。この俺が見張ってる以上、コイツは誰も殺せないしコイツが殺されることもないしな。」

「つーわけで、撒くにも撒けないからもう諦めたわけよ。」

「な、なるほど…。」

…『俺がいるから殺さないし、殺させない』って凄い自信だな。

 

「それは分かったけど…なんで葛城君も?意外な組み合わせだね。」

「あぁ。それは…彼が俺のファンらしくてね。色々話したいらしくて誘いを受けたんだよ。」

「何故あのような魅力的な作品を作れるのか…。いい機会だから純粋にファンとして色々聞きたくてな。」

「いやぁ。まさかここでファンに会えるなんてね。俺のデビュー作まで観てくれてるのは嬉しいよ。」

「俺としては…葛城が中学の時のアレが好きだな。」

「あぁ!アレ?アレは俺にとっても転機だったからね!俺もよく覚えているよ!」

オイオイ、自分達の世界に入りそうだぞ…。

 

「そ、それで3人もここを見に来たのだろ?」

「あぁ…。他に目ぼしい物もなかったからな。」

「ここ…なんなんだ?」

 

「モノクマ…参上!」

モノクマが出てきた。

「…なんだよ。煽りにでも来たのか?」

「もう、折角この部屋を説明しにきたのにそれはないんじゃない?」

「…説明?お前は知ってるのか?」

「もっちろん!ここは『超高校級の研究資料室』って言うんだ!」

「『研究資料室』?」

「そう!この部屋は今回スカウトされた才能のデータを得るためにあるんだ!扉にはその才能をモチーフにしたものが描かれてあるよ!」

俺達16人しかいないのにデータを集める必要があるのか?

 

「…なるほど。ご苦労だったな。真っ二つになりたくなかったら早急に消えてもらおう。」

「ちぇー。わざわざ説明したのに酷いなー。」

愚痴りながらモノクマは消えた。

「モノクマが言うには誰かの才能を研究する部屋…。コインが描かれてるから『幸運』の研究資料室か?」

「へぇ…。トップバッターはオレか。どれ、見てやろうじゃねーの。」

そう言って、白暮が扉を開けーー

 

ーー中には一台の机とコイン・トランプ・サイコロが2つ置いてあった。

「…まぁ、予想はしてたが地味だな。オレにお似合いだわ。」

「これで、運のデータをとるのか…?」

「確率…データを取るには妥当だな。」

「ちょっと試してみるか…。ホレッ。」

そう言って白暮はコイントスを10回した。

 

「…やっぱそうなるよな。表を狙ったんだけどな。」

コインは全部裏になった。

「一周回って幸運とも言えない気もするけどね…。」

「そーいうのよく言われてるけど、あんま好きじゃないな。オレもういいや。出ようぜ。」

「え。もういいのか?」

「地味すぎてつまんねーだろ?麻雀とかが置いてるならともかくさ。」

「白暮ちょっと待ってくれ。あと葛城も。」

「まだ用があるのかよ?」

 

「その…さっきはゴメンな。思わずカッとなって皆に迷惑かけて。」

「あぁ…。俺は気にしてないよ。」

「オレこそ…ゴメンな。状況が状況なだけにイライラしてた。皇達と行動してから頭冷えてさ、オレの方が悪かったよ。その代わり…」

「?」

「こういう事言うのもクサイけどさ…。友達になってくれないか?ここから出てもっと皆の事知りたいんだよ。」

「…そんなの勿論構わないよ。俺だってお前のことをもっと知りたい。いや、お前だけじゃない。皆で生きて帰る!そうだろ?」

「暁日…ありがとな!」

 

…俺達には絆がある。皆で信じあえばきっとここから出られるはずだ!




後書きで申し訳ありませんが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


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(非)日常編3

今くらいの文章量が一番書きやすいのでしばらくこのペースでいきます。慣れてきたら徐々に増やせるようにしていけたらいいなぁ。
調査編2です。


「…では、そろそろ行くとしよう。」

「どこへだ?皇。」

「ミーティングの準備をしようと思ってな。白暮、葛城手伝ってくれるか?」

「りょーかい。」

「あぁ。もちろん構わないよ。」

そう言って3人は立ち去っていった。

 

時計を見るとミーティング開始までまだ30分ほど時間があった。

「今から食堂に行くのも早いか…。他のところも見ておきたいな。」

「そうだね。もう一回二階を見てから他の所を見ておこう。」

再度、二階を見て回りここにはもう何もない事を確認してから移動を始めた。

 

少し気になったことしては、

「そういえば、三階への階段もあったけどシャッターで塞がれていたな。」

「先へ行くにはまだ何かあるってことだろうね。」

今は封鎖されている階段…開かれるのはいつなんだ?

 

ひとまず、一階に戻ってきてまだ玄関ホールを見ていなかったからそこの探索をすることにした。そこには、

「あら?お2人もここの探索へ?」

柊と氷室と八咫の3人がいた。

「まぁ、そんなところかな。」

「その様子だと…まだこの扉の先を見てないようだな。」

「この扉、開くのか?」

「あぁ。だが、その先にとんでもないものがあった。」

「とんでもないもの?」

「百聞は一見にしかず…。とりあえず見てもらおうか。」

そう言われ扉を開けると…。

 

その先には庭と青空が広がっており、何の変哲もないように思えた。

だが、その奥に視界を向けると…。

「な、なんだあれは…!」

庭の更に奥に…巨大な壁が聳え立っていた。

「高さは推定50m…。距離はおそらくここから600mほどかと思われます。」

「あの壁は恐らくこの学園を中心にぐるっと囲んでいる。…まるで箱庭のようにな。だが、それは問題ではない。」

「あの壁になにかあるの?」

「なにかあるって言うより、むしろ逆かな。何もなかったんだよ。」

「どういうことだ?」

「とりあえず近づける範囲で壁を見たんだけどあの壁、入り口がなかったんだよ。ほら、あの壁って凄く高いよね?普通は上から越えるのは出来ないから下に入り口を作るものだと思うんだけど、それっぽいものがなかったんだ。」

「そして、この学園にいる人間は私達16人だけ…。どういうことか分かるな?」

 

つまり…

「外部からの侵入がない…。そして文字通り脱出不可能…。」

「その通り。ランクSの回答だ。」

外からも内からも侵入出来ない壁…。一体どうやって作ったんだ?

そもそも俺達はどうやって中に入ったんだ?

 

「まぁ序盤から秘密が分かってもゲームは面白くない。このことはひとまず置いておこう。代わりといってはなんだが、この庭にも施設があった。見てきたらどうだ?」

「分かった。時間が許す限りみておくよ。」

氷室達と別れて庭の探索を始めた。

 

「にしてもこの庭、花も植えてあって結構綺麗だよな。」

「そうだよねぇ。天気も良いしここで昼寝したくなってきたよ。」

玄関ホールを出てすぐの庭は中央に噴水とベンチがあり今の状況を忘れさせるくらい穏やかな雰囲気を出していた。

…噴水の中央にあるモノクマのオブジェと嫌でも視界に入る巨大な壁を除けば。

 

「…とはいえいつまでもゆっくりしてられないしとりあえず行こう。」

庭には噴水を挟んで左右に施設があるようだ。

俺達は右の施設を訪れることにした。

 

「……お前達か。」

「おっと、もう先客がいたか。」

そこには獅子谷と本代とアレックスがいた。

「ここは寄宿舎だ。個室になっててそれぞれのネームプレートが付いてる。」

寄宿舎か…部屋はどんな感じなんだ?

「俺の部屋は…ここか。あ、あれ?鍵が…。」

「個室の鍵はこのモノドロイドらしい。このリーダーにかざしてみろ。」

本代に言われた通り、ドアに付いたリーダーにかざしてみるとピッという音がした。

「お、開いた。」

「一応言っておくが、モノドロイドで開けることができるのは自分の部屋だけらしい。他の部屋に入るには内側から鍵を開けるか本人のモノドロイドがいるようだ。」

「それとこの鍵はオートロックになってて、ピッキングやサムターン回しも出来ないようになってるみたいね。…下手なセキュリティよりしっかりしてるわ。」

なるほど。

 

「それにしても随分詳しいな。」

「……さっきモノクマが来て説明してくれた。……アレックスがピッキングが出来るか試そうとした時にな。」

「安全の為に試そうと思っただけなのに怒りすぎなのよ。あのクマ。」

……やっぱりお前の仕業か。

 

ってそうだ。部屋を確認しないと。

部屋に入ると中はベッドとクローゼットとユニットバスが設置された黒を基調としたシックな部屋になっていた。

「…意外と悪くないな。」

「正直、もっと劣悪な環境かと思ったけど思ったよりしっかりしてるね。」

部屋を見渡してると、例によってカメラとモニターがあった。

「……またカメラかよ……。」

「プライベートまで筒抜けなんだね…。」

部屋を確認してから再度ドアを閉めた。

 

「…ん?」

「どうしたの?」

「いや、あの部屋がちょっと気になってさ。」

俺が指差した先にはネームプレートが付いていないドアが開くあった。寄宿舎の丁度真ん中にある位置だ。

「あの部屋はプレイルームだ。中には囲碁、チェスなんかのボードゲームと卓球台が置いてあったな。」

プレイルームか…今は別にいいかな。

寄宿舎を後にしてもう一つの施設へ向かった。

 

もう一つの施設は和風な外観をしたまるで道場のような建物だった。

「なぁ、小鳥遊ここはなんだと思う?」

「うーん。そうだね…道場みたいな見た目だから…多分誰かの研究資料室じゃないかな。」

「だよな。」

和風な外観の研究資料室…恐らくここは『薙刀家』の研究資料室だろう。

「じゃあ、開けるぞ…。」

厳かな雰囲気を漂わせていたので一瞬開けるのを躊躇ったが、改めて戸を開けた。

 

中は静まりかえっており、畳が敷かれた部屋の中心に道着を着て正座をしている夜桜がいた。

「あれ?夜桜なにを「シッ」

声がして横を見ると東雲と飛田が座っていた。

 

「2人も来てたのか。何をしてるんだ?」

「まぁ見てれば分かるよ。とりあえず、ここに座って。」

そう促され、俺達は2人の横に座った。

 

すると、夜桜が薙刀の形をした竹刀を構えて立ち上がり、

「…ハッ!」

掛け声を上げて、踊るようにポーズを決め始めた。

「セイッ!タァッ!」

その華麗な動きに魅了されて思わず見入ってしまった。

 

一通りポーズを決めてから一礼をしてそれは終わった。

「うわー!凄い!凛ちゃんかっこよかったよ!」

「あぁ。実にクールだったよ。」

「うふふ。ありがとうございます。」

「夜桜、凄いかっこよかったよ。でもあれは何をしていたんだ?

俺達途中から来たからよく分からなくてさ。」

「あれは『演舞』というものです。」

「演舞?」

「はい。薙刀で使う型の美しさを競う競技の事です。本来は2人一組で行うのですが…この場所に薙刀家はわたくしだけですから1人で行ったのです。」

なるほど薙刀って戦うだけかと思ってたな。流石超高校級の技だったな。

 

「それにしてもここに来た時の凛ちゃん面白かったよね〜。」

「ハハ、そうだな。入った瞬間凄いテンション上がって『どれも一級品ですわー!』って言ってたからな。」

「そ、それは忘れてください!」

それは見たかったな…。

 

「って皆、もう時間ヤバイぞ!そろそろ集合時間じゃないか!」

「え?うわマジじゃん!大和に怒られちゃうよ!」

「思わず時間を忘れていたな…。急ぐぞ!」

「ちょ、ちょっと!わたくし、着替えないと行けないから置いていかないでください!」

「それもそうか…ならオレが「邪な考えを持ってるならやめてください!」…やれやれ。」

「じゃあアタシ残るよ!3人は大和に遅れるって伝えといて!」

「あぁ!分かった!」

 

着替えのある夜桜と見張りの飛田を残して、俺と小鳥遊と東雲の3人は急いで食堂に向かった。

 




安心してください。
まだ死にません。


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(非)日常編4

お ま た せ


「悪い、遅れた!」

「遅かったな。何かあったのか?」

「いや、別に問題はない。大丈夫だ。」

「そうか、無事ならそれでいい。だが出来るだけ時間を厳守するようにしてくれ。」

「わ、悪かった…。」

皇の言うことも尤もだ。急いで空いている席に着いた。

 

「まぁまぁ、大和も少し厳しすぎるよ。俺達は別に軍隊でもないんだし。」

「ふむ…。それもそうか。」

葛城が横からフォローをしてくれた。『大和』って…馴染むの早いな。

 

「おや、葛城クン…。皇クンとは随分仲良くなったようだね。」

「うん。調査中にすっかり仲良くなってね。でも、大和はまだ俺を名前で呼んでくれないんだよね。」

「お前のそのコミュ力なんなんだよ葛城…。」

「他人を下の名で呼ぶのは…どうも慣れん。」

お、なんか意外な所もあるんだな。

 

「へぇ〜。大和くん、意外と可愛いところあるんだねぇ。」

「クス。きっと、長らく提督という立場にいたから癖が抜けないんでしょうね。」

「フッ。実に人間らしい悩みだな。」

いや、お前も人間だろ氷室…。

 

すると、小鳥遊がさっきの事を思い出して、

「あ、そうだ。飛田さんと夜桜さんが少し遅れて来るから。」

「そうか。どれくらいかかる?」

「着替えるだけだから五分もかからないと思うけど。」

「了解した。ではもう少し待つとしよう。」

 

 

「話は変わるが…このテーブルの紅茶はなんだい?」

「あ、それは僕と宵月様の2人で淹れさせていただきました。」

カップを指差した東雲の質問に剣崎が答えた。

 

「…見たところ誰も口を付けてないようだな。」

「やはりこの状況ですから、毒を盛られていると考えて皆様警戒しているようです…。」

「ふむ…。」

そう呟くや否や何の躊躇いもなく東雲はカップを口に運び始めた。

 

「ちょっと東雲君!?何をする気ですか!?」

「何って、紅茶を飲むだけだが?」

「そうじゃなくて、もし毒でも入ってたらどうするのですか!」

「ほう、君はオレを心配してくれてるのか。こんな美しい女性に心配してもらえるとは嬉しい限りだね。」

「う、美しい…?じゃなくて、なんでそんなに落ち着いてられるんですか!?」

焦る八咫をよそに冷静な東雲。確かにこの状況で出されたものに口を付けようとする東雲のメンタルも凄いけど。

 

「大体、折角用意してくれたものに手を付けない方が失礼じゃないか?そっちの方がオレはマナー違反だと思うが。」

「そ、それは…」

「…大丈夫。オレは医者だ。毒の対処法くらい理解しているさ。」

そう言って紅茶を飲み始めた東雲。俺たちはその様子を見守っていた。

 

 

 

…だが。

「……ウッ!!」

呻き声をあげて、東雲はテーブルに突っ伏した。

「お、おい東雲!」

「し、東雲君!?」

 

 

「剣崎テメェ!!やっぱり毒を盛ってやがったな!!」

白暮は剣崎に掴みかかった。

「や、やめてください白暮様!僕は本当に知りません!!」

「じゃあ宵月!お前か!?」

「私も知らないわよ!馬鹿なこと言わないで頂戴!」

「とぼけんな!どう考えても紅茶を淹れたお前らが怪しいだろうが‼︎」

 

そこからはもうパニック状態だった。

「岳くん、幽華ちゃんどうしよう!蒼真くんが…蒼真くんがぁ‼︎」

「……ムゥ……とりあえず心肺蘇生を……!」

「待て、一旦落ち着け。もう手遅れかもしれんからここはまず、金と死体を持って教会に…。」

「……いや、お前が一番落ち着け…。」

 

「お待たせ〜。遅くなっ……って何事?」

「あ、あぁ飛田と夜桜か…。実は…。」

「………えぇ⁉︎し、東雲さんが…?」

「ま、マジ⁉︎てことはこのまま学級裁判始まっちゃうの⁉︎アタシ全然状況が飲み込めてないよ!」

「いや、気にするとこそこか?」

 

 

 

 

 

ーーその頃、東雲の身体を見ていた皇、シルヴィア、葛城は…

「……どう思う?」

「うん…間違いないね。」

「えぇ…これは…」

「大和、悪いけど皆を静かにしてもらえる?」

「分かった。」

 

 

 

「ーーお前ら……一旦鎮まれ。」

皇の一言で静かになる俺達。

 

「皆お取り込み中の悪いけど、東雲君なら大丈夫だよ。」

「大丈夫って、何がだよ?」

「全く……タチの悪い悪戯をするんだから……。起きなさい、東雲クン。」

 

 

 

 

「ーーふぅ。やれやれ、予想以上の反応をするから起きにくかったよ。」

そう言いながら何も無かったかのように東雲は起き上がった。

「ゾ、ゾンビか!?せ、聖水を…!」

「………だから落ち着け氷室…。」

 

「落ち着きなさい。彼は死んだフリをしてただけよ。」

「し、死んだフリ?」

「緊張した雰囲気を和ませるためにと思ってやったんだが…。皆本気にするとは思ってなかったから逆に焦ったよ。」

「お、お前なぁ!この状況でんな事されたらそうなるっての!」

「ハハハ、すまないすまない。」

悪びれる様子もなく、東雲は笑った。

 

すると、八咫と夜桜が東雲の前へ行きーー

「東雲君…一発だけ許してください。」「八咫さん…わたくしも同感です。」

「おや、随分殺気立ってるね。その手を降ろして一杯お茶でも……………いやいやちょっと待ってホントオレが悪かったからやりすぎたからマジで許し」

 

 

「問答無用!!」「天誅!!」

「グハァ!!」

2人の渾身の一撃と東雲の断末魔が食堂に響き渡った。

うわー…。あれ痛いやつだわ…。

 

 

 

「ーーさて、無駄に時間を食ったが全員集まったようだし報告会を始めるが、その前に…。」

そう言って皇が歩いていった先ではーー

 

 

「………Zzz…」

ーー本代が寝ていた。

「おい。本代、起きろ。」

「………んっ…?まだ報告会始めてないのか…?」

「今から始めるところだ。お前いつから寝ていた?」

「………東雲が紅茶を飲んだ辺りか……。」

まだ覚醒し切ってないのか、ぼんやりした様子で答える本代。

 

あの騒ぎの中で寝てたのか…マイペースすぎるだろ。

そう思ったのは皇もらしく、呆れ気味に

「全く……。お前は大物なのか天然なのかよく分からん奴だな。」

「…褒め言葉として受け取っておくよ。」

 

 

「まぁいい。ともかく、第一回ミーティングを行う。」

第一回か…。第一回で済めばいいんだけど。

 

 

だが、俺達が調べた事以外に脱出の手掛かりになりそうな情報はなかった。

「とりあえず、今回の調査結果をまとめると…。」

 

・現在調査可能エリアは校舎の一階と中庭、体育館。

・外周を壁に囲まれているため、脱出不可能。

・食糧が無くなる事による餓死の心配はない。

・各人毎に併せた『超高校級の研究資料室』が存在(現在あるのは、白暮・夜桜)。

・寄宿舎のセキュリティは比較的万全。但し、監視カメラ有り。

・その他の施設はプレイルーム、食堂、倉庫。

 

「………と言った所か。………娯楽施設の設置や無尽蔵にある食糧等、基本的な生活をする分には支障がないのが腹立たしいが。」

 

倉庫から持ってきたであろうホワイトボードに内容を書き留めて苛立ち気にボードを軽く殴りながら、皇は言った。

 

「結局、脱出の手掛かりはなしか…。チクショウ。」

「実はマンホールの下に隠された脱出ルートがあるなんて事もないよねぇ。」

「そんなものあるわけないでしょ…。」

「それにあったとしても十中八九罠としか考えられませんよ…。」

 

「他に何かあるか?」

「う〜ん……」

「どうした?葛城。」

「これさ寄宿舎のセキュリティ、案外万全じゃないかも。」

葛城がとんでもないことを言い出した。

 

「ほら……例えばモノドロイドを誰かから借りて部屋に入っちゃえば…。」

「あ、そっか!その部屋の持ち主になり済まして殺す事が…。」

 

すると、

「ならんならんならん!そんな事は断じていかんぞ!なぁ息子よ!」

「全くですよ!ねぇ父さん!」

突然モノクマとモノパパが現れた。

 

「……なんだよ。」

「いいか?オレたちは健全にコロシアイをさせるために寄宿舎を用意したんだ。」

「それなのに他人の部屋に入るなんて…そんな事したらタグがR-18になって制限がかかっちゃうじゃないか!」

な、なんの話をしてるんだこいつらは…。

 

「でも、誰かの部屋に入ることが出来るのは事実だよね?」

「そんな言ったって、思春期のオマエラが異性の部屋に入ったらシコシコ…じゃなくって、コソコソナニをするかなんて手に取るように分かるんだよ!」

「というわけで、モノドロイドの貸与は禁止であることを校則に追加しておく!いいな!」

「それから、校則じゃないけど不純異性交遊も原則禁止とします!もしやりたいなら、R-18カテゴリでやるように!以上!」

 

その言葉を残してモノクマ達が去った後モノドロイドに通知が入り

11.生徒間でのモノドロイドの貸与は禁止します。

という校則が追加された。

 

「………校則でモノドロイドの貸し出しが禁じられたから、俺からは特にないよ。」

「そ、そうか。他にはあるか?」

「では、私から。」

氷室が手を挙げた。

 

 

「さっきのモノドロイドのくだりで思い出したんだが、手の空いている時にコイツの全機能に目を通しておいた。一応説明しておく。………知りたいやつも多いだろうしな。」

 

全員がモノドロイドを起動したのを確認してから、

「さて、始めるが操作法は概ねスマホと同じだ。各機能はスマホでいうアプリのようにアイコンで区別されている。使えるアプリは『校則』『学級裁判』『マップ』『モノトーク』だ。校則とマップは特に説明する必要がないだろうから、今回は省略する。」

 

『学級裁判』……名前から明らかに不穏な気配が漂っている。

『モノトーク』…これは所謂トークアプリのようなアイコンになってるな。

 

「まず『学級裁判』だが、これは実際に事件が起こってから使うみたいだ。どうやら、事件の内容を纏めたデータが送られるらしいな。説明をしたいが使わない以上、説明しようがない。次に『モノトーク』。これは、その名の通りチャット型トークアプリのようだ。個人トークもグループトークも可能らしい。但しいくつか制約があるがな。」

 

 

「制約?」

「まず、トークできる人物は今いる16人のみであること。次にトーク履歴とトーク相手を削除することは出来ない。常に画面には16人いる状態ということだ。」

「なんで削除できないんだ?」

「モノクマ曰く、削除すると後々バックアップをとるのが面倒だからだそうだ。」

なんだそりゃ。

 

 

「私からは以上だ。」

「成る程。ご苦労だった。他にあるか?」

だが、他に意見は出ず議論は頭打ちになってしまった。

 

 

かなり長い間沈黙が続いた頃、沈黙を破ったのは

 

 

「………あのゴメン。」

飛田だった。

「空気読まないようでホント悪いんだけど……。お腹減った。」

「ホントに空気読まないな!?」

「でも確かに腹減ったな。今、何時だよ?」

 

 

時計を確認すると、もう18時だった。2時間くらい話してたのか…。

「これ以上考えても意見が出そうにないな…。まずは夕飯にしよう。剣崎、食事の準備を。」

「かしこまりました。では、宵月様手伝っていただけますか?」

「分かったわ。」

「待って、俺も手伝うよ。流石に16人分となると大変でしょ」

「ありがとうございます葛城様。では、残りの皆様でテーブルの準備をお願いします。」

 

 

テーブルの準備を終えて出て来たものは…。

アヒージョ、寿司、ケバブ、ミネストローネなどなどの料理だった。

「これは……ビュッフェか?」

「はい。この状況ではありますが…僕達が出会えたのも何かの縁。ささやかながらパーティーをしようと3人で提案させていただきました。」

「パーティーか…久々だな。」

「オレは学会での発表パーティー以来だな。」

「アタシは初めてだな〜。」

 

 

「でもさ、この状況でパーティーねぇ…。」

「白暮君。この状況だからこそ、俺達は互いを知るべきじゃないかな。じゃ、乾杯頼むよリーダー。」

「お、俺か…。」

不意打ち気味にグラスを渡され、珍しく戸惑う皇。

 

 

「では…全員グラスを持ったか?」

「「は〜い!」」

「まずは、今日一日色々ご苦労だった。監禁だのコロシアイをしろだの、考えるべき事はまだまだある。だが今日は無礼講、こうして超高校級の人間が一堂に会したこと、友と出会えた事を喜ぼう。

…では、乾杯!」

「「乾杯!」」

 

 

「美味っ!なんだこれ!」

「美味い…美味すぎる!」

「ん〜美味し〜♪」

「ええ、とっても!」

「オレ……明日死ぬのかな。」

「いや、なんでだよ!」

剣崎達の作った料理はとても美味く、みんな大絶賛だった。

 

 

ふと、皇を見ると凄い険しい顔をしていた。

「剣崎……。」

「はい、なんでしょう。」

「この料理………凄く美味いな。」

「ありがとうございます。」

「どうだ、朱雀隊の専属料理人にならないか?」

「ありがたいお誘いですが…僕も色々やりたい事があるので。」

「そうか。」

なんだ、気に食わないかと思ったらその逆か。

てか、今しれっとスカウトしてたな。

 

 

 

 

「ーーふぅ。」

「白暮隣、良いか?」

「あ、暁日か。良いよ。」

「じゃ、失礼。」

 

「…………あのさ。」

「ん?」

「確かに友達になってくれとは言ったけどさ、無理に一緒にいなくたっていいんだぜ?」

「俺は別に嫌じゃないけどな。葛城も言ってた通り、俺はお前とも仲良くしたいんだよ。」

 

「……オレの不運のせいで巻き込んじまって悪いな。」

「だから、気にすんなっての。俺は皆と会えた事自体は悪くないと思ってるよ。」

「そうは言ってもよ…。」

「……だったらさ。そういうネガティブ思考になる前に別の事考えればいいんだよ。」

「別の事?」

 

「そっ。例えばそうだな…。ここから出たあと何がしたいとか。」

「したい事…か。お前ならなんだよ?」

「俺は…そうだな。まずは依頼されてた仕事をしたいな。家帰ってお客さんから渡された資料見て……………あー、クソ。なんか出るの嫌になってきた。」

 

「ハハハッ、なんだよそれ。結局出るの嫌になってるじゃねーか。」

「う、うるさいな。資料多いから目を通すの大変なんだよ。これでも何社か掛け持ちしてるし。」

 

「…………桜。」

「ん?」

「桜を見に行きたいなオレ。父さんと母さんが好きだったんだよ。…まぁ、オレのせいで事故に巻き込まれてもういねーけどよ。とりあえず、無事に生き残れた事を報告したい。」

「いい目標持ってるじゃないか。」

「…バカにしねーのか?」

「するわけないだろ。人の夢や目標を笑う奴の方がバカだ。」

 

「まぁ、桜見るだけなら案外すぐに出来るかもな」

「あ?なんでだ?」

「だってホラ…『桜』だろ?」

そう言って俺は夜桜を指差した。

 

「あ〜なるほど……ってなるかよ!なんでアイツ見なきゃならないんだよ!?」

「いいだろ!?アイツに泣き付いたら色々見せてくれるかもしれないぞ!?」

「バカかお前!モノクマに言われてたろ!?もうちょっと真面目なヤツかと思ってたけど見損なったぞ!」

「うるせえ!この人数で閉じめられてんのに悶々としない方が異常だろ!」

面と向かって「バカ」って言われるの結構堪えるな…。

 

「「……フフフフ。」」

「「ハハハハハハ!」」

 

「……ありがとよ。お陰で気持ちが楽になった。伊達にアドバイザーやってねぇな。」

「『伊達に』ってなんだよ!お前さっきから失礼だな!」

「お前の扱いなんかそれくらいで十分だよ!」

「さっきのは冗談に決まってるだろ!俺を東雲みたいな扱いするな!」

「どう見ても冗談には思えねぇよ!」

 

「……ハァ。もうよそう。不毛だ。」

「だな。疲れた…。」

 

「…あ、デザートもあるみたいだ。取ってこよ。白暮はいるか?」

「あ…じゃあ、チーズケーキ頼む。」

「ん。」

 

「………"悠"。」

「ん?」

「…絶対出ような。」

名前を呼んでくれた…って事は信用してくれたって事でいいんだよな。

「…あぁ、絶対出るぞ。"夕斗"」

 

「"夕斗"と"悠"…。フフッなんか名前似てるな。」

「いいからはよ取ってこい。」

白暮にそう促されて足早にデザートを取りに行った。

 

 

パーティーはその後食堂が閉まる夜時間ギリギリまで続けられた。

…こんな平和時間がずっと続いて欲しい…。

俺はそう考えていた。

 

 

 

 

 

ーーだが、その願いはいとも容易く打ち砕かれてしまうことになる。




およそ一年振りの投稿となり申し訳ありません。
過去の内容見ながら書いたのですが、もしかしたらキャラ変わってるかもしれません。
久々に続き書いたら調子良かったのでいっぱい書けました(小並感)
さて、不穏な終わりですが次回どうなるやら…(すっとぼけ)


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(非)日常編5

『オマエラ!おはようございます!朝7時になりました!起床時間です!』

 

 

「んん…、なんだよ朝っぱらからうるさいな。」

朝から不快極まりない声に叩き起こされる。

 

 

……って7時?

「ってやべ!朝食に遅れる!」

 

昨日のパーティー終了後に、皇の提案で朝7時に食堂に集合して点呼確認と食事を摂ることになったんだ。

でも、疲れからか熟睡してすっかり忘れてた。

やばい、とりあえず食堂に急がないと!

そう思った瞬間部屋のインターホンが鳴った。

 

 

「はい!」

ドアを開けるとそこには、

「よっ、無事だったか悠。」

「おはよう。暁日君。」

夕斗と小鳥遊がいた。

 

「え?……なんでいるんだ?」

「なんでって…お前を呼びに来たに決まってんだろ。」

「7時前なのに君だけ居なかったからさ、皇君に頼まれて様子を見に来たんだよ。」

なんだ…そう言う事か。

 

「お前…さっきまで寝てたろ。」

「な、なんで分かった?」

「寝グセ。一回鏡見ろ。」

そう言われ鏡を見ると髪が盛大にハネて寝グセになっていた。

 

「う、うわ…ホントだ。」

「ったく…心配して様子見に来たってのに呑気に寝てたのかよ。」

「まぁ、白暮君もそう言わずに…。とりあえず安否確認出来たから僕達は先に行ってるね。」

「あぁ。」

その言葉を残して2人は先に戻った。

とりあえず、寝グセ直して早く食堂へ行こう!

 

……なんか俺、ここに来てからいっつも遅刻してるような。

 

 

 

ーー

「皆おはよう!遅くなってごめん!」

「悠!おっはよー!」

「おはようございます。暁日君。」

「おはよう、よく眠れたようだね。健康的でいい事だ。」

食堂に着いた俺を皆が出迎えてくれた。

宵月と葛城の姿が見えないが、恐らく剣崎の手伝いをしているのだろう。良かった、皆無事みたいで。

 

「おはようございます。暁日様。いきなりで申し訳ないのですが、朝食のメニューは和食と洋食、どちらになさいますか?」

「剣崎、おはよう。えっとそうだな…和食で頼む。」

「かしこまりました。」

やっぱり朝食は剣崎が作ってくれてるのか。

昨日の料理も美味かったし、楽しみだ。

 

ふと皇の方を見ると、氷室が皇と夜桜に何かを教えているようだった。

 

「………で。閉じた指を開くようにして操作すれば画面のその場所をズームできる。やってみろ。」

「開くように…。あっ、出来ました!」

「おぉ…!成る程。」

 

「皇、おはよう。何してるんだ?」

「あぁ、おはよう暁日。これはモノドロイドの操作を氷室に教えてもらっている所だ。」

「モノドロイドの?」

 

「はい。お恥ずかしい話、二つ折りの携帯は使ったことはあるのですが所謂"たっちぱねる"の携帯は使ったことが無くて…。」

「俺は通信機器の所持を禁止されているから一度も使った事がなくてな。しかし、このサイズで我が軍の機械設備にも劣らない機能が入っている物が普及しているとは…。技術の進歩には驚かされるな。」

 

「あれ?でも2人とも操作できてた様な…。」

「夜桜は操作しているフリを、皇は適当に操作していたようだ。」

ええ…。

 

「まぁこの状況でコイツが使えないのはなにかと困るだろうからな。この神である私に教わったからには問題ないだろう。感謝したまえ。」

いや、お前は何様だ。

 

「はい!助かりました!ありがとうございます!」

「あぁ、協力感謝する。」

「むっ……、そう言われるのも悪くないな。苦しゅうない。」

あれ?あんまり褒め慣れてないのか?顔がちょっと赤い。てかなんだ「苦しゅうない」って。

 

「礼といってはなんだが、どうだ?我が軍の技術将校にでも「興味ないな。」そ、そうか…残念だ。」

昨日に続きスカウトをするが、あえなく撃沈したようだ。

 

2連続で断られた事が相当ショックだったらしく、見てわかるくらいガッカリしている。

……最初は如何にもリーダー然としてた様に思ったけど、なんか段々ポンコツに見えてきたぞ。

 

「…ゴホンッ。と、ともかく全員の安否を確認出来たから朝食にしよう。」

「ほら、こっちはもう料理が出来てるから早く食べる準備しなさい。」

「あっ、はい。ほら、柊さんも…。」

「………くぅ。」

「寝てる!?」

 

ようやく朝食を摂る事になった俺達。

出てきたメニューはご飯、味噌汁、お浸し、卵焼き、鮭の塩焼きという非常にシンプルなものだったが、シンプルさ故に味が分かりやすくとても美味かった。

…明日は洋食にしてみよう。

 

 

「さて、朝飯も食ったし何しようか…。」

皇からは特に指示はなく各自自由行動になった。

だが小鳥遊も夕斗も個人で探索がしたいらしく、暇になってしまった。

 

「そういえば、倉庫とプレイルームまだ行ってなかったな…。」

昨日の時点でまだ探索してない場所があったのを思い出し、そこへ行くことへした。まずは食堂のすぐ隣にある倉庫へ行くか。

 

 

 

ーー

「失礼しまーす…っとうわ。めっちゃ広いな。」

中に入った俺はまず、その広さに驚いた。

剣崎も言ってた通りまるでホームセンターかショッピングモールだな…。

 

「あら、暁日君何か用ですか?」

「八咫。俺はここはまだ来てなかったからちょっと探索に来たんだ。八咫は?」

「私はここの在庫確認を皇君にお願いされて確認しているところです。ですが得意分野とはいえ、この広さですから流石に骨が折れますね…。」

 

「じゃあ俺も手伝うよ。」

「え?いいのですか?」

「ああ。探索するついでだし、女の子にやらせるのも悪いからな。」

「あ、ありがとうございます…。では私は右側から確認していくので、暁日君は反対から確認していってもらえますか?それから、あとでリストを作成するのでこのルーズリーフに記録をお願いします。」

「分かった。」

 

 

 

「ーーえっと、カップ麺50箱、お菓子70袋っと…。」

八咫に手渡されたルーズリーフに一つずつ記録していく。

それにしてもホントに色々あるな…。

記録したものだけでも筆記用具、工具、インスタント食品、ジャージ、栄養剤…。

この作業が終わってからいくつか貰っていくか。

 

特にジャージは必須だな。

制服で寝ると肩が凝るんだよな。シワも付くし。

 

「ーーふぅ。ここで最後か。」

残る箇所は絆創膏や包帯といった衛生用品となった。

 

「絆創膏70箱、ガーゼ50箱、湿布60箱…。ん?これなんだ?」

ふと目に入った箱を手に取るとそこには『モノクマ印の0.01mm!薄くて丈夫!』と書かれていた。

「………………………………」

……黙って元の場所に戻した。

 

不純異性交遊は禁止って言いながらなんでこんなモン置いてるんだ。

そもそも『モノクマ印』ってなんだよ。

 

「俺は何も見てない。うん、気のせいだ気のせい。」

「何が気のせいですか?」

「どぅおわぁ!」

「?どうしたのですか?暁日君?」

「いやなんでもないです!はい!」

「?そうですか。」

 

「ざ、在庫確認終わったからコレ渡しとくよ。」

「あ、どうもありがとうございます。」

 

 

 

「ーーはい、お疲れ様でした。倉庫の物なので温いですがどうぞ。」

そう言ってペットボトルのお茶を差し出してくれた。

「あぁ、ありがとう。」

渡されたお茶を飲む。温くなっているとはいえ疲れた身体に水分が染み渡る。

 

「…ふぅ。にしてもこれだけ在庫、一体どうやって集めたんだ?とても単独犯が仕組んだとは思えない程の数だぞ。一体どれくらいの財力を持ってるんだ。」

「ですが、犯人はあまり予算計画があまり得意ではなさそうですね。」

「予算?」

「はい。例えば今飲んでるそのお茶は150円で売ってますが、私ならそれより安い120円でより質の良いお茶を知っているのでそっちにしますね。卸業者にしても、恐らく私のツテでしたら更に安く出来ますし、それ以外の面でも…。」

あーこれ長くなる奴だ…。

 

 

「…これらを踏まえると、予算は最終的に現在の2割削減できると思います。」

「な、なるほど…。そんな事考えられるのも生まれつき持つ才能のお陰なんだな。」

「……私の場合、そうならざるを得なかったのですけどね。」

「え?」

「いえ、こちらの話です。」

あまり言いたくない過去があるのか?

 

八咫の意味深な発言の意味を考えつつも詮索するべきではないと判断し、ひとまず倉庫を後にした。

 

 

 

ーー

「次はプレイルームか…。へえ、結構色々あるな。」

寄宿舎に戻り、プレイルームに来た。

中にはボードゲーム、ビリヤード、ダーツ、レースゲームやダンスゲームなんかもあった。

 

 

「暁日か。どうした?」

「本代。俺はここの探索をしに来たんだ。そっちは何を?」

「何って、プレイルームに来てやることは決まってるだろ。」

どうやら、本代はソリティアをしていたようだった。

 

「まぁ、突っ立ってないで座れよ。丁度退屈してたんだ。」

「じゃ、お言葉に甘えて…。」

俺は本代のいるテーブルの反対側に座った。

 

「どうだ?記憶の進展は何かあったか?」

「いや、さっぱりだな。参考程度に聞きたいんだが、お前から見て俺の才能は何だと思う?」

「うーん…そうだな…。第一印象だけで言うなら『超高校級のバンドマン』かと思ったな。」

「バンドマンか……面白い意見だが、しっくりこないな。」

 

「あれ、ダメか…。じゃあちょっと視点を変えて…。自分の経歴をヒントに考えて見るのはどうだ?過去の実績が評価されるってのはよくあることだし。」

「なるほど経歴か。それは思いつかなかったな。流石アドバイザーだな。」

あ、なんか初めてここに来てから褒められた気がする。

 

「経歴…確か父親が大手企業の社長だったな。それから、運動神経と成績は常にトップ…。そんな感じか。」

おいおいなんかもの凄い経歴が出てきたぞ…。事実なのかそれ?

「そ、その経歴だと『超高校級の優等生』とかか?」

「いや、それも今ひとつ納得がいかない。もっとそれ以上の…。」

お前凄い欲張りだな。

 

「まぁ、とりあえず保留にしよう。それより暁日、折角プレイルームに来たんだから俺と勝負でもしないか?」

「しょ、勝負?いいけど…。」

「そうこなくてはな。だが、ただ勝負するのもつまらんな。負けた方は罰ゲームを受けてもらおう。」

うお、何かやな予感…。

 

「分かった。でも、お前が負けても罰ゲームは受けてもらうぞ。」

「フッ。負けんさ…絶対にな。」

すげえ自信だな。

 

 

 

「丁度がトランプもあることだ、ポーカーをするか。ルールは知ってるな?」

「あぁ。」

「よし、カードを配るぞ。」

 

 

ーーハート、クラブ、ダイヤの5とダイヤのジャック、クラブのエースか…。結構良いカードが揃ってるな。出来るならフルハウスを狙いたいけど…。

「俺は二枚交換する。暁日、お前は?」

「あ、じゃあ俺は一枚…。」

ーーハートのジャック…よし来た!

 

「では、カードを見せてもらおう。」

「……フルハウス!どうだ!」

「フルハウスか、やるな。だが……

 

 

 

 

ロイヤルストレートフラッシュ。俺の勝ちだ。」

……ハァ!?ロ、ロイヤルストレートフラッシュとか初めて見たぞ!?

 

「イカサマ…じゃないよな?」

「確認してみるか?」

そう言われたので本代の身体確認をしたが…。

「ほ、ホントに何もないな…。」

「だろ?」

 

「では、早速罰ゲームを…。」

「……もう一回…。」

「ん?」

「も、もう一回!別のゲームで勝負だ!」

「フッ…そうこなくてはな。良いだろう、納得が行くまで何回でも勝負してやろう。」

 

 

 

この後、何回か勝負をしたけど…

 

ダーツ。

「三回真ん中に当てた方が勝ちだ。」

「よ、よし…。」

 

「…三連続で真ん中だと…。」

「フッ。」

 

チェス。

「チェックメイト。」

「…瞬殺…。」

 

ダンスゲーム。

「最終スコアが高い方が勝ちだ。」

「は、はい…。」

 

「ふぅ。こんなものか。」200000点Perfect!

「こんなもんって…お前…。」140000点Great!

 

一回も勝てなかった…。

 

 

「お前…勝負事強すぎだろ…。もしかして『超高校級のギャンブラー』じゃないのか?」

「ギャンブラーか…なるほど。そう考えると合点がいくな。だが、俺の場合はそれらを全てを超越してると言っても過言ではないな。」

「え?」

「生まれながらにして絶対的な勝利を約束された力…。俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する。天に二物も三物も与えられた存在。さしずめ俺は『超高校級の勝者』といったところか。」

 

「『超高校級の勝者』…?」

あまりにも荒唐無稽すぎる発言に思わず呆然とする。

「そうだ。天の道を往き、総てを司る男…それこそがこの俺だ。」

「天の道ねぇ…。まぁその、お前が納得いったのならそれで良いんじゃないかな。」

 

「フッ…お前のその物怖じしない態度、気に入ったぞ。」

「は?」

「この俺が王にでもなった暁にはお前を参謀にしてやろう。」

「は、はぁ…。どうも。」

よく分からないけど、どうやら本代に気に入られたようだ。それにしても王って…。

 

「さて、罰ゲームだが…。」

げっ、忘れてた。すると、

「おっす!荘士、悠何してんのー?」

「荘士くん悠くんおいっす〜。」

柊と飛田が入ってきた。

 

「丁度いいな…。よし、罰ゲームはあの2人のどっちかをデートに誘え。フフ…お前の好みのタイプを知って弱みを握ってやるか。」

「いや、ちょ…。ハァ!?」

「なになに、何の話してんの?」

「なぁに?わたしも混ぜてよ〜。」

「あぁ、これからな…。」

「待て待て待て!説明するな!」

わざわざ説明しようとする本代を全力で阻止し、その場から逃げる形で後にした。

 

 

ーー

「ーーふぅ。なんか疲れたな。…主に本代のせいで。」

結局、今日も進展は無かったな。

明日こそ、明日こそ何かあればと信じて眠りについた。

 

 

 

ーー

「…なぁ。今日で3日目だよな。」

朝食を食べている最中に夕斗がポツリとつぶやいた。

「あぁ。」

「3日経ってるのになんで何もねぇんだよ。オレらはいつまでここにいればいいんだよ!」

 

「だ、大丈夫だよ。待ってればいつかきっと…。」

「いつかっていつだよ!なぁ!?」

「お、落ち着けって…。」

 

「…でも、確かに妙ね。」

切り出したのはアレックスだった。

「シルヴィアちゃん、妙って何のこと?」

 

「ワタシの付けているこのブレスレット…超高性能GPSが埋め込まれている事は話したわよね?」

そういえば最初にあった時にそんな事をいってたな。

「これさえあれば、電波が届かないような秘境や洞窟…果てはマントルの中や宇宙にいようともワタシの場所は半日もあれば特定されるハズなのだけど…。」

 

「うぷぷぷぷ!そんなオモチャをまだ信用してるの?」

「滑稽!実に滑稽だな!」

モノクマとモノパパが現れた。

「大体さぁ、そんなにここから出たいのなら誰かを殺せばいいんだよ!」

 

「お前達が何を言おうと、絶対にコロシアイはしない…!絶対に16人で出るんだ!」

「16人ねぇ…。ホントに全員そう思ってるのかな?」

「…は?何を言ってるんだ?」

 

「オマエラは16人全員が仲間だと思ってるの?甘いねぇ。

 

 

 

…………オマエラの中にイレギュラーが1人いるって言ったらどうする?」

モノクマは不気味に目を光らせてそう言った。

「イレギュラー…?」

 

「モノクマ…喋りすぎだ。今日はそんな話をしに来たのではないのだろう?」

「はっ!そうでした!今日はオマエラにあるお話を持ってきたのです!」

「話…?」

 

「はい!いつまで経ってもコロシアイが起こらないからもう退屈で退屈で!そろそろ誰か死ねよっていう無言の圧力を感じるので、殺す動機を用意させていただきました!」

「動機…だと?」

いやな予感しかしない。

 

「実はオマエラの記憶をボク達が一部抜き取っているのです!誰かを殺したクロにはご褒美としてその抜き取った記憶をお返しします!」

「流石は我が息子だな!失われた記憶を利用する…実に王道だ!」

記憶を抜き取った…?何を言ってるんだ?

 

「ボク達からの話はそれだけです!では、頑張って殺してね〜!」

モノクマ達が去ってもあまりにも突拍子もない話を全員飲み込めずにいた。

 

「クロになった人物には抜き取った記憶を返す…か。」

「一応聞くけど真に受けてる人はいないよね?…………そりゃそうだよね。でも問題は…。」

「…モノクマの言った『イレギュラー』の存在…。」

アイツらの言葉が事実なら、俺たちの敵に当たる人間がいる…?

 

「大体、誰かは予想付くぜ…。」

「ほう、誰だね?白暮クン。」

「決まってんだろ…氷室だよ!」

「…あ?」

 

「だってそうだろ!『ダンガンロンパ』とか言う殺戮ゲームを知ってたのはお前だけじゃねーか!白状しろ!」

「キサマ…神を愚弄するとはいい度胸だな。」

お、おい!一触即発じゃないか!

 

「待てって夕斗、氷室!『イレギュラー』の存在が必ずしも敵とは限らないだろ!」

「じゃあ、お前に敵じゃないって証明できるのかよ!?」

「そ、それは…。」

「出来るわけねーよな!?お前だって誰なのか分からねーのによ!」

そう言って、夕斗は食堂の外へ歩き出した。

 

「待て、白暮…。どこへ行く?」

「決まってんだろ…。寄宿舎だよ。裏切り者がいるってのに一緒に行動なんか出来るかよ。一人で部屋に篭らせてもらう。」

「その行動がどれだけリスクがあるか分かって言ってるのか?」

「誰かに殺されるよりよっぽどマシだよ。…オレなんかいてもいなくても大して変わんねーよ…。」

その言葉を残して寄宿舎へ戻ってしまった。

 

 

結局今朝はこのまま解散になってしまった。

そして、夕食になっても夕斗は姿を現さなかった。

 

夜時間になり、部屋に戻ってから俺は

「……一応モノトークで声掛けてみるか。」

 

ーーーー

 

暁日悠:なぁ、飯食ってるのか?飯くらいは食いに朝は来いよ。

 

ーーーー

 

……クソ。返事がない。

俺はそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

ーー

『オマエラ!おはようございます!朝7時になりました!起床時間です!』

 

 

 

起きてから食堂に行ったが夕斗はいなかった。

「…おはよう。夕斗は?」

 

「おはよう暁日クン。…あれから白暮クンを見てないわね。」

「昨日は昼食と夕食を扉の前に置いたのですが…。結局手をつけてなかったようです。」

「二食もまともに食事を摂ってないとなると流石に健康面が心配だね…。このまま餓死する可能性もゼロではない。」

 

「ともかく、一度食事にしてから白暮をなんとかしよう。」

「……最終手段として、この俺が扉を破壊する。」

…校則違反になるなよ。獅子谷。

 

「かしこまりました。では、早速朝食の準備をします。」

「あれ。まだ準備してなかったのか。」

「はい。一度白暮様がいるかを確認してから作ろうと思ってたので…少々お時間が掛かりますがお待ち下さい。」

そう言って、厨房に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

ーーその瞬間。

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

剣崎の悲鳴が響いた。

 

「な、なんだ何があった!?」

「あ、あ…れ、冷蔵庫に…。」

怯えた様子で剣崎は冷蔵庫を指さした。

 

 

食堂には全員いる。

 

 

 

…そんなはずは…。

 

 

 

 

アイツはまだ部屋に篭っているはず…。

 

 

 

だから、ここにはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー冷蔵庫の中ではこの場所には居ないはずの超高校級の幸運、白暮夕斗が文字通り冷たくなっていた。

 

 

 




およそ1年掛けてようやく一人目の被害者となります。おまたせしました…。

一応、クロもトリックも大まかには決めてるのでじっくり肉付けしてから投稿となると思います。


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非日常編1 捜査編

捜査編となります。
『BOX15』『イコロシア』『絶望Searching』
を聴きながらお楽しみ下さい。


「嘘だろ…夕斗…。」

 

 

目の前の現実を俺は受け入れられなかった。

昨日まで生きていたはずの白暮夕斗が変わり果てた姿になっていたのだから。

 

 

「おい夕斗!起きろよ!何寝てんだ!返事しろよ!」

 

 

「どけ。」

後ろから皇に声をかけられ思わず後退りした。

 

「どうだ、東雲。」

「脈、瞳孔、呼吸いずれも反応がない…残念だが。」

東雲は首を横に振った。

 

「そんな…クソっ!」

 

 

 

そこへ、

「ガッハッハッ!ついに1人目の被害者が出たようだなぁ!」

この状況をよそにモノパパが笑いながら現れた。

 

「…お前らだろ。」

「ん?」

「とぼけるなよ!お前らが夕斗を殺したんだろ!」

思わずモノパパに食ってかかる。

 

だが、

「待て、暁日。」

皇に止められた。

「でも、こいつらが!」

「落ち着け。こいつらが俺達を殺すならとっくにやっているだろう。」

 

「…ほう。流石に冷静だな。」

「今回は貴様だけか。」

「あぁ、息子は用事があるのでな。」

「このタイミングで貴様が現れたという事は大方、学級裁判に関する事なのだろう?」

 

「察しがいいな。その通りだ、事件が発生したところでどう捜査すれば良いか分からなかったら意味がないだろ?そんな諸君の為に我々がサポートをしてやるという事だ。」

「サ、サポート?」

 

「まずは校則の追加だ。"死体を3人以上発見した時点で『死体発見アナウンス』を流す。"丁度全員揃ってるから説明後アナウンスを流そう。それから、"『死体発見アナウンス』放送後、一定の自由時間を設ける。"以上の2点だ。」

 

するとモノドロイドに通知が入り、

12.死体を3人以上が発見した時点で『死体発見アナウンス』流します。

13.『死体発見アナウンス』放送後、学級裁判開始までの間一定の自由時間を設けます。

という2つの校則が追加された。

 

「次に、全員に状況を把握させるために被害者を死体状況をまとめた資料を送る。名付けて『モノクマファイル』。モノドロイドの『学級裁判』のアプリに送ってから目を通しておくように。以上、これらの情報を上手く役立ててくれ。…では、モノクマ。始めろ。」

 

モノパパが去った直後に、

 

 

ピーンポーンパーンポーン…

 

『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』

死体発見アナウンスが流れた。

 

 

本当に夕斗は殺されたのか…。この中の誰かに。

 

 

 

「さて、ここからどうするかだが、まずは現場保存が必要だな。獅子谷、それから…夜桜。頼む。」

「あ……あぁ。」

「は…はい。承知いたしましたわ。」

「それから…。」

「ちょ、ちょっと!大和!」

「何だ、飛田?」

 

 

「何でそんなに冷静にいられるの…?人が…友達が死んでるんだよ!?」

「友であろうとなんであろうと死体は死体だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

「そ、そんな言い方ってあるの!?いくらなんでも酷いよ!!」

「…酷いも何も貴様の方こそ理解しているのか?」

「な、何をさ?」

 

「"連帯責任''という言葉を知らないのか?奴らは再三言ってるだろう。犯人を見つけられなければ犯人以外は死ぬと。」

「そ、そうだけど…。」

 

「貴様1人の命ではなくクロ以外の全員の命が掛かっている事を理解しろ。悲しむ余裕が口を動かす暇があるなら、身体を動かせ。頭を使え。…俺達は友の屍を踏み台にしてでも前に進まなくてはならない。それ以外に道はないのだ。…少なくとも俺はそうでもしないと生き残れなかった。」

冷静を通り越して最早冷徹さすら感じる皇の言葉に誰も反論出来なかった。

 

「ーー時間が勿体ない、これが最後通告だ。捜査を拒否する者は名乗り出ろ。これ以上、俺からは無理に捜査を強制しない。但し、学級裁判中の発言権は一切与えない。例え、犯人と疑われようともだ。」

疑われても発言出来ない、つまり弁護できずに無条件に犯人にされてしまうという事だ。…この言葉に対して名乗り出る者はいなかった。

 

「…分かった。時間を無駄にしたが、話を続ける。現場の見張りは獅子谷、夜桜が担当。次にモノクマファイルとやらの情報の信憑性に欠けるため、検死担当を東雲に任せる。」

「あぁ。任せてくれ。」

 

「現場周辺の主な担当はこの3人に任せる。それ以外は各自で捜査をしてくれ。但し、証拠隠滅を防ぐために2人以上でするように。以上、解散。」

 

 

 

 

各々が解散して捜査を始めたが、それでも俺は動けなかった。

そこへ小鳥遊が、

「暁日君、辛い気持ちは分かるよ。でも今は捜査を優先しよう。」

「分かってるよ…。でも…。」

「今、君がすべき事は白暮君を弔う事じゃない。彼の無念を晴らす為にも真相を明らかにするんだ。」

 

「真相を…。」

「うん。その為にも僕が最大限フォローする。」

「…しっかりしろ俺!アイツの為にも犯人を見つけるんだ!」

気合いを入れ直す為に顔を両手で叩く。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー捜査開始ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「よし!じゃあ始めようか。」

「ああ。」

とは言ったもののどこから調べたらいいのか分からない。

とりあえずさっき送られて来たモノクマファイルに目を通す事にした。

 

 

 

ーーー

モノクマファイル

 

被害者は超高校級の幸運、白暮夕斗。

厨房内にある冷蔵庫の中から発見された。

死因は凍死。

死亡推定時効は午後10時〜午後11時。

その他、右側頭部に外傷有り。

 

ーーー

 

【コトダマ獲得:モノクマファイル】

 

 

 

「頭部の傷か…。凍死させるだけなら外傷が出来るはずないし、殴って気絶させたと考えるのが妥当か?」

「それを確認するためにも死体を確認しようか。」

やっぱり、それしかないよな…。

 

 

改めて夕斗の死体と向き合う事になった。

向き合う事で死んでしまったという事実を嫌でも突きつけられる。

 

 

「夕斗、ごめんな。ちょっと触らせてもらう。」

夕斗の死体を直接触って確認する。

死体発見時も触れたが、体温も生きていた人間ではありえないくらい冷たい。

 

「右側頭部の傷…これか。」

頭部の傷は冷蔵庫の冷気で凍りついており、出血も止まっていた。

恐らく長い時間、冷蔵庫に入れられていたという事だろう。

 

 

 

【コトダマ獲得:白暮の死体状況】

傷は凍りついており出血も止まっていた事から、長時間冷蔵庫に入っていたと考えられる。 

 

 

 

「他には…ん?」

ふと、周りを見るとモノドロイドが落ちていた。

「夕斗の物か?…だとしたら何か手掛かりが…!」

 

そう思ってモノドロイドを操作したが、

「ダメだ…起動しない。」

壊れているのか画面が真っ暗なままで反応が無かった。

 

「モノドロイドが壊れた要因…一体なんだ?」

「確かに気になるね…。あとでモノクマに聞いておこう。」

 

 

 

【コトダマ獲得:壊れたモノドロイド】

白暮の死体の近くで発見。壊れているため、起動しない。

 

 

 

そこへ、

「あなた達、死体の捜査は終わったの?ならどいて貰えるかしら。」

宵月が割り込んできた。

 

「あ、ごめん。」

急いで宵月に場所を譲った。

「…………………………」

随分と熱心に死体を調べてるな…。

 

「あの、宵月?」

「何?」

「俺達も調べたから分かるけどさ、大した手掛かりは無いと思うぞ?」

 

「それはあなた達の主観でしょ?私は私の主観で調べてるの。それと、特に用がないなら話しかけないでくれる?集中できないから。」

「あ、はい。失礼しました…。」

話しかけるも邪険に対応されてしまった。今まで普通の女の子っぽかったけど、まるで別人だな…。

 

仕方が無いので死体以外で現場を調べる事にした。

「そうだ。死体と言えば…。」

と、ここで東雲が検死をしていた事を思い出して検死結果を聞きに行った。

 

「東雲、ちょっといいか?」

「うん?暁日クンどうしたんだい?」

「検死の結果を教えてほしいんだけど、大丈夫か?」

 

「あぁ、勿論構わないよ。丁度結果をまとめていた所だ。…どうやら、モノクマファイルにウソはないようだね。」

「あったりまえでしょ!ボクがウソをつく訳ないじゃないか!」

「わざわざそれを言うためだけに出てきたのかい?ご苦労な事だ。」

 

「いいかい?モノクマファイルはあくまで捜査を円滑に進めるために全員に平等に情報が行き渡るように用意した物なんだよ!それなのにウソを付いてると思われるのは、心外だよ!」

「そんな事よりモノクマ。お前に聞きたい事があるんだ。」

「ほえ?何?」

 

「モノドロイドの性能について教えてくれ。」

「そんな事を聞いてどうするの?事件と関係あるの?」

「それをはっきりするためにも君が言った通り僕達全員、平等に知る権利はあるんじゃないかな?」

 

「ムムム…、そう言われると返す言葉がないですねぇ…。分かりました!今回だけ特別に教えましょう!モノドロイドは水や衝撃には強いけど、極度の高温または低温に弱いのです!」

「高温、低温に弱い…。」

「そっ!そんな場所に10分も置いてたら、すぐダメになっちゃうよ!ちなみに水圧は水深100メートルまで耐え、衝撃については重機に踏まれても壊れません!」

 

 

 

【コトダマ獲得:モノドロイドの性能】

水と衝撃には強いが極度の高温低温に弱く、10分程度で壊れてしまう。

 

 

 

「なるほど、ありがとう。もう帰っていいよ。」

「ちぇー…せっかく教えてあげたのにぞんざいな扱い…。」

ぶつくさ文句を言いながらモノクマは帰っていった。

 

「……さて、話が逸れてしまったが検死の結果だったね。まず、死亡推定時刻だがより正確な時間は10時半頃だ。次に外傷だが、頭を二発殴られている。これが原因で気絶していたようだね。恐らく意識は一度も戻らず死亡したとみていいだろう。最後に、外傷を作った凶器だが傷の形から推測するに筒状の物を使って殴ったようだ。……分かる事はこれくらいかな。」

 

 

 

【コトダマ獲得:東雲の検死結果】

正確な死亡時刻は10時半頃。

筒状の物を使って頭を二発殴り気絶させた模様。

気絶後は一度も意識が戻らず死亡。

 

 

 

「なるほど、ありがとう。それからもう一ついいか?」

「何だい?」

「9時から10時頃何をしてたか教えてくれ。」

10時には夜時間で食堂が閉まるとすれば、それ以前に準備していたはずだ。

 

「おっと、アリバイ確認というものか。これは疑われてるのかな?」

「いや、そうじゃないけど…。」

 

「構わないさ。この状況だと全員が容疑者になるのは当然だ。…そうだな。確か、その時間はプレイルームにいたな。」

「プレイルームか…。その時何してたか覚えてるか?」

「白暮クンをどうにかする相談も兼ねて皇クン、本代クン、葛城クンとオレの4人で麻雀をしていたな。本代クンが国士無双を連発してたからよく覚えてるよ。」

プレイルームには麻雀もあったのか…。どうやら相変わらず本代が勝ちまくってたようだな。

 

「他には誰かいたのか?」

「他は夜桜ちゃん、柊ちゃん、八咫ちゃん、飛田ちゃんが仲良く話してたな。流石に内容まで覚えていないが、女が集まって姦しい…とはよく言ったものだ。その時間帯にプレイルームにいたのはこれで全員だ。」

プレイルームにいたのは全部で8人…。

 

「それからこれで最後だけど、事件の時間帯でプレイルームを出た人間は誰かいたのか?」

「9時半頃に麻雀中に飲んでたジュースの瓶を捨てに本代クンが、5分後に柊ちゃんが寝るためにプレイルームを出てたかな。因みに、本代クンは9時50分に戻ってきたよ。最終的にプレイルームを全員出たのは11時頃かな。」

時間と部屋を出た目的も正確に覚えてる…となると、この証言の信憑性はかなり高いだろう。

 

 

【コトダマ獲得:東雲の証言】

9時〜10時頃はプレイルームに皇、本代、葛城、東雲、八咫、夜桜、柊、飛田がいた。

部屋を出たのは、本代と柊の2人。本代は9時50分に戻ってきた模様。

 

 

 

「この証言、参考になったかな?」

「あぁ、ありがとう。」

 

 

次に食堂と厨房の状況に一番詳しいであろう、剣崎に話を聞くことにした。

「剣崎、少しいいか?」

「はい、暁日様。なんでしょうか?」

「厨房の設備についていくつか聞きたいんだけど。」

「かしこまりました。何についてお聞きしたいのでしょうか?」

 

「まずは、そうだな…夕斗が入っていたこの冷蔵庫について教えてくれ。」

「了解しました。白暮様が入っていたこの冷蔵庫は肉用の物です。どの冷蔵庫にもある機能ですが、『急速冷凍モード』がございます。」

「急速冷凍?」

「はい。鮮度を保つために短時間で冷凍する、という機能です。ただ、この冷蔵庫仕様が少々特殊でして…。『設定時間になるまでロックがかかる』という仕様になっております。」

「なんでそんな仕様なんだ?」

「モノクマ様曰く、節電のためだとか。因みに設定時間は履歴が残るのですが、昨晩の10時から朝の7時頃に設定されていました。」

 

 

 

【コトダマ獲得:急速冷凍モード】

設定時間になるまで、ロックがかかる仕様。

事件時は昨晩10時〜朝7時の設定になっていた。

 

 

 

 

「他に何かございますか?」

「9時頃から10時まで食堂に誰がいたか覚えてるか?」

「食堂におられた方ですか?そうですね…厨房内の片付けを僕と宵月様の2人で行っていました。途中9時半を過ぎた頃でしたか、本代様が飲み終わったジュースの瓶を捨てに来られました。その後、宵月様が先に部屋に戻られてから最後に僕が夜時間前に食堂と厨房を再確認してから食堂を後にしました。それ以降は夜時間ですから入られた方はいないと思います。」

どうやら本代が瓶を捨てに来たのは事実のようだな。

 

 

 

【コトダマ獲得:剣崎の証言】

厨房内にいたのは宵月と剣崎の2人。

9時半過ぎ頃に本代が瓶を捨てに来た。

 

 

 

「それから、最後に本代が本当に瓶を捨てたかだけ確認したいんだけどいいか?」

「ええ、いいですよ。少しお待ち下さい………。こちらです。ガラス類は一ヶ所に纏めて専用のゴミ箱に入れています。」

「瓶はちゃんと入ってるな…ん?なんかガラスの破片が入ってるな。」

「それなんですが、いつ入れられた物か分からなくて…。」

 

 

 

【コトダマ獲得:ガラスの破片】

ゴミ箱に入っていた物。いつ入ったかは不明。

 

 

 

厨房と食堂で得られた手掛かりはこれくらいか…。

「他に調べる必要のある場所はどこだ?」

「そうだね…。倉庫から何かを持ち出した可能性もあるし、白暮君の部屋にも手掛かりがあると思うんだ。」

「倉庫と夕斗の部屋か。よし、行こう。」

 

 

ーー倉庫ーー

 

 

倉庫に来たはいいが、この場所は広すぎる。

どこから調べるべきか悩んでいると、

「あら、あなたたちもここの捜査?」

アレックスが声を掛けて来た。

 

「アレックス。何か手掛かりでもあったのか?」

「うーん、事件とは関係あるかどうか分からないけど、面白い物を見つけたわ。」

「面白い物?」

「ええ、ちょっと付いて来なさい。」

そう言われてついて行った先は倉庫の壁だった。

 

「?ただの壁じゃないか?」

「まぁ、見てなさい。」

そう言ってアレックスは壁を押すと、壁が回転して中庭が見えた。丁度、どんでん返しのような感じだ。

 

「こ、これは!」

「そっ、隠し扉。こんな物があったとは驚いたわ。」

「この隠し扉の事、他に知ってる奴はいるか?」

「今のところ、知ってるのはワタシとあなたたちだけね。必要なら皆にも教えるけど?」

「いや、学級裁判が始まるまで黙っててくれるか?」

「ええ。いいわよ。」

「えっいいのか?」

普通なら自分の立場を有利にするために皆に言いふらしそうなものだけど…。

 

「命の価値は付けられない程重すぎる…。義賊としては殺人という大罪は見過ごせないわ。犯人を見つけるためならいくらでも協力するわ。」

「分かった。ありがとう。」

 

 

 

【コトダマ獲得:隠し扉】

倉庫内から中庭に通じている。

知っているのは暁日、小鳥遊、アレックスの3人。

 

 

 

ーー寄宿舎ーー

 

 

倉庫で重要な手掛かりを見つけ、俺達は寄宿舎の夕斗の部屋へ向かった。

「あっ…しまった。」

「ど、どうしたの暁日君?」

「個室って部屋の持ち主のモノドロイドが無いと入れないんだった…。」

「あっ…そうだった。しかも白暮君のは壊れてるし…。」

「ご心配無用!事件が発生した時はロックが解除されるようになってます!なので好きなだけ捜査して下さい!」

モノクマが現れたが無視して、部屋の扉を開けた。

 

 

ーー部屋の中は綺麗に整えられていて荒らされた形跡はなかった。

…アイツ、結構几帳面だったんだな。

 

 

 

【コトダマ獲得:白暮の個室の状況】

綺麗に整えられており、荒らされた形跡がない。

 

 

 

「暁日君!これ見て!」

小鳥遊に声を掛けられた。何か紙切れを持っていた。

「これ、ゴミ箱に入ってたんだけど…。」

「これは…!」

 

 

 

その紙には

『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の9時40分倉庫に集合。』

と書かれていた。

 

 

 

【コトダマ獲得:紙切れ】

『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の9時40分倉庫に集合。』

と書かれている。

 

 

 

 

すると突然チャイムが鳴った。

 

ピーンポーンパーンポーン…。

 

『え〜、そろそろ待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます。オマエラ!学級裁判所への道がある中庭の噴水前に集合して下さい!あ、勿論全員参加だよ?不参加の場合は問答無用でオシオキしちゃうからね〜。』

モニターにモノクマが映し出され、そう告げた。

 

「遂に時間か…。」

「迷ってる暇はないね…。行こう。」

 

 

 

ーー中庭、噴水前ーー

 

 

 

噴水にはもう全員集まっていた。

 

「これで、全員揃ったか。」

「集まれとは言われたけど…ここからどうするんだ?」

「何処かへ移動するのでしょうか…?」

 

「待って。………何か聴こえない?」

そう言われ耳を澄ますと地鳴りのような音が聴こえた。

 

「………地鳴り?おい、全員噴水から離れろ!」

皇に告げられ噴水から離れると……

 

噴水が土台ごと上に上がり、その下からエレベーターが現れた。

「噴水の下にこんなものが…!」

「これに乗れと言うのか。よし、行くぞ。」

 

 

全員がエレベーターに乗ると同時に下へ降りて行った。

 

 

乗ってる間、誰も話さずエレベーターが降りていく音だけが響いていた。

「随分降りるな…。」

誰かがぽつりと呟いた。

「ホントにこんな地下に裁判所なんてあるのかなぁ?」 

 

そんな事を言ってると突然エレベーターが止まり、扉が開いた。

目の前は席が円状に並べられた裁判所があった。

その席の後方にはモノクマとモノパパが専用の席で偉そうに踏ん反り返っていた。

 

「やっときたなぁ諸君!では早速自分達の席へ着いてもらおうか!席には名前があるからな、間違えないように!」

 

そう促され、全員が席に着いた。

 

 

 

ーー超高校級の幸運。白暮夕斗。

口は悪く、常に悪態をついていたが誰よりもコロシアイに怯えていた。

根は誰よりも素直だった…そう分かったのに、あっさりと殺されてしまった。

 

 

 

夕斗を殺し、この状況を嘲笑っている犯人は…この中にいる。

 

 

 

生き残るために…何より、殺された夕斗のためにも…。

絶対に見つけてやる!

 




状況整理のために(というか、書いてて自分でもややこしくなったので…)次回冒頭にコトダマリストを作成させていただきます。


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非日常編2 学級裁判・前編

お待ちかねの学級裁判となります。
自分で書いといてなんだけど、ぶっちゃけ犯人は分かりやすい…分かりやすくない?
感想も頂いたおかげでモチベーションアップなう。

【コトダマリスト】
1.モノクマファイル
被害者は超高校級の幸運、白暮夕斗。
厨房内にある冷蔵庫から発見された。
死因は凍死。死亡推定時刻は午後10〜午後11時。
その他、右側頭部に外傷有り。

2.白暮の死体状況
傷は凍りついており出血も止まっていた事から、長時間冷蔵庫に入っていたと考えられる。

3.壊れたモノドロイド
白暮の死体の近くで発見。壊れているため、起動しない。

4.モノドロイドの性能
水と衝撃には強いが極度の高温低温に弱く、10分程度で壊れてしまう。

5.東雲の検死結果
正確な死亡時刻は午後10時半頃。
筒状の物を使って頭を二度殴り気絶させた模様。
気絶後は一度も意識が戻らず死亡。

6.東雲の証言
9時〜10時頃はプレイルームに皇、本代、葛城、東雲、八咫、夜桜、柊、飛田がいた。
部屋を出たのは、本代と柊の2人。本代は9時50分に戻ってきた模様。

7.急速冷凍モード
設定時間になるまで、ロックがかかる仕様。
事件時は昨晩10時〜朝7時の設定になっていた。

8.剣崎の証言
厨房内にいたのは宵月と剣崎の2人。
9時半過ぎ頃に本代が瓶を捨てに来た。

9.ガラスの破片
ゴミ箱に入っていた物。いつ入ったかは不明。

10.隠し扉
倉庫内から中庭に通じている。
知っているのは暁日、小鳥遊、アレックスの3人。

11.白暮の個室の状況
綺麗に整えられており、荒らされた形跡がない。

12.紙切れ
『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の9時40分倉庫に集合。』
と書かれている。


学級裁判パートは先駆者様にならって発言者の名前追加しています。ウィークポイントはそれぞれ《》が論破、〈〉が同意となっています。
(ホントはフォントとか変えたかったけど、スマホだと多機能フォームがクッソ使いにくかったので断念しました…。)


全員が席に着いたのを確認するとモノクマが嬉々と司会を始めた。

 

 

席は時計回りで、

夕斗→宵月→葛城→剣崎→八咫→夜桜→氷室→柊→

小鳥遊→俺→皇→獅子谷→飛田→本代→東雲→アレックス

の順になっている。

 

 

 

モノクマ「じゃー全員席に着いたようだし、早速始めましょうか!皆お待ちかねの学級裁判を!」

 

 

 

学級裁判 開廷!

 

 

 

モノクマ「では始めに学級裁判の簡単な説明をさせていただきます!学級裁判では『誰がクロか?』を議論し、その結果はオマエラの投票に決定します!」

モノパパ「正しいクロを指摘できればクロだけがオシオキ、だが間違った人物をクロとしてしまった場合は…。」

モノクマ「クロ以外の全員がオシオキされ、生き残ったクロにだけ晴れてこの学園から卒業する権利が与えられます!」

モノパパ「以上、これが学級裁判のルールだ。では諸君、健闘を祈る。」

 

本代「俺達の判断一つで生死が決まる…か。フッ、心が躍るな。」

剣崎「そんな呑気な事、言ってる余裕は無いと思いますが…。」

 

皇「質問がある。仮に犯人が共犯の場合はどうなる?両方に投票すればいいのか?」

モノパパ「その場合、最終的にシロに直接手を掛けた人間をクロとして扱う。なので共犯をするメリットは無いといって良いだろう。ここテストに出るから覚えておくように。」

小鳥遊「そんなの勉強したくないんだけど…。」

 

暁日「なぁ俺からも聞きたいんだけど……あれ、なんだよ。」

そう言って俺は本来夕斗がいるべき場所に置かれた遺影を指さした。遺影には大きく×印が描かれていた。

 

モノクマ「あぁ、あれね。死んだからって仲間外れにしちゃ可哀想だからね。せめて形だけでも一緒に参加させようっていうボク達からの粋な計らいだよ。」

氷室「全く…吐き気を催すほど悪趣味だな。」

 

モノクマ「そんなことより、オマエラ油を売ってていいのかな?早く議論をしないと時間切れにしちゃうよ?」

 

柊「議論しろって言われても、何を話せば良いのかなぁ?」

葛城「裁判経験がありそうな人と言えば…。アレックスさん、君の意見を聞きたいだけど。」

シルヴィア「そうね…裁判と銘打ってるけど、ここには弁護士も検事も裁判長もいないからワタシの経験はアテにならないわね。この状況だと、それぞれが弁護士、検事、裁判長を務めて結論を出すと考えた方がいいわね。」

 

暁日「だったら、まずは事件の内容をまとめないか?もしかしたら何か見通してるかもしれないし。」

皇「そうだな。まずは事件概要をおさらいしよう。」

 

 

どんな些細な綻びも見逃さない…。どこに手掛かりがあるか分からないからな。

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

葛城「じゃ、俺がモノクマファイルを読むよ。被害者は《超高校級の幸運、白暮夕斗。》死体は冷蔵庫から発見された。」

氷室「幸運が最初に死ぬとは…。何という皮肉か…。」

葛城「死亡推定時刻は《午後10時から午後11時の間。》他、右側頭部に外傷有り。…以上だよ。」

八咫「頭部の外傷という事は、殴って気絶させたのでしょうか?」

剣崎「殴るとなると…やはり、《ハンマー》でも使ったのでしょうか。」

シルヴィア「不意打ちするとは…。卑怯者ね。」

 

……明らかに俺の記録とは食い違う証言があったな。

 

《ハンマー》←〈東雲の検死結果]

  論 

「それは違うぞ!」 

     破

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「剣崎、夕斗の頭を殴ったのはハンマーじゃないと思うぞ。」

剣崎「暁日様、それはどういうことなのでしょうか?」

暁日「夕斗は筒状の物で殴られた…。そうだろ?東雲。」

東雲「あぁ。間違いない。彼は筒状の何かで殴られていた。」

剣崎「そ、そうなのでしたか…。失礼致しました。」

 

八咫「筒状の物ですか…だとすれば、凶器は大分絞られますね。」

夜桜「では、次は凶器について詳しく議論しましょうか。」

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

飛田「筒状で気絶させられそうなもの…。〈鉄パイプ〉とかは?」

宵月「そんなもので殴ったら気絶どころじゃないと思うわ…。」

獅子谷「………間違いなくトドメを刺すだろうな……。」

柊「〈砲丸〉で後ろから、ガツンっ!…はどう?」

八咫「そもそも形が違うじゃないですか…。」

葛城「〈瓶〉ならどう?あれなら、気絶程度で済むと思うけど。」

 

俺が持ってるあの証拠の正体…もしかしてあれなんじゃないか?

 

〈瓶〉←〈ガラスの破片]

    同

「それに賛成だ!」  

    意

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「葛城の言う通りだ。犯人は瓶で殴ったんだよ。……これ見てくれ。食堂のゴミ箱に捨てられてたんだ。」

葛城「これは…ガラス片?」

暁日「そうだ。このガラス片、注ぎ口みたいな形の物があるだろ?元々は瓶だったんじゃないか?」

皇「コイツが瓶だと裏付ける証拠があるのか?」

 

八咫「はい。事件当日、ジュースの瓶が二本持ち出されていました。一本は本代君達が飲んでいたものですが、もう一本はいつの間にか無くなっていました。ですので、そのガラス片が無くなった瓶で間違いないと思います。」

暁日「これではっきりしたな?夕斗を殴った凶器は瓶で間違いない!その後、冷蔵庫に閉じ込めたんだ!」

 

 

       反  

本代「お前の推理って、醜くないか?」

          論

 

 

本代「甘いな。そもそもその推理、根本から間違ってるとは考えなかったのか?」

暁日「間違ってるって…どこがだよ?」

本代「フン…それすら気づかんか。いいだろう、教えてやる。………さぁ、地獄を楽しみな!」

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

本代「お前の推理だと、頭を殴り気絶させてから冷蔵庫に閉じ込めた……つまり他殺と言いたいんだな?だが、この事件自体が奴によって仕組まれた計画…自殺という可能性も否定できないんじゃないか?」

 

暁日「仮に自殺だとして、頭の傷はどう説明するんだ?」

 

本代「そんなもの、奴の不運体質のせいで偶然怪我をしたとか、操作を撹乱するためとかでいくらでも説明がつくだろ。はっきり言って頭の傷はそこまで重要じゃない。頭に傷を付けてから《予め急速冷凍にして》から冷蔵庫に入れば、発見時と同じ状況になる。友人が命を落として認めたくない気持ちも分かるが…これが真実だ。」

 

予め急速冷凍にする…?それは絶対に不可能だ!

 

           斬

《予め急速冷凍にして》←【急速冷凍モード】

    論

「その言葉、ぶった斬る!」 

       破

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「事前に急速冷凍モードにしてから中に入る…。残念だが、それは通らないぞ。」

本代「何?」

暁日「厨房にある冷蔵庫は仕様がちょっと特殊で、急速冷凍モードにすると設定した時間になるまで扉が開かなくなるんだ。だから、夕斗が自殺したとは考えにくい。」

本代「何だと?そうだったのか…。」

東雲「加えて、頭部に傷を負って気絶した後は意識が戻っていない。他殺で間違いないだろう。」

 

皇「しかし、そういう仕様なら誰かが設定した時点で普通気付きそうなものだが…。剣崎、何か理由でもあるのか?」

剣崎「食堂に特に誰か来るような事は無かったので一度確認した時点で問題ないと思ったのです。まさか、目を離した際に死体を入れてたとは…。」

 

宵月「それより、もっと重要な謎が解決してないわ。」

飛田「重要な謎…?」

宵月「そもそも今回の事件は白暮君が朝、冷蔵庫から見つかった事で発覚した…。それ以前までは周りを警戒してずっと部屋に篭っていた彼が()()()()()()()()()()()のかしら?」

 

 

そうだ…。事の発端は夕斗が冷蔵庫から見つかった事だ。ずっと警戒していたはずなのに何故そんな場所に居たんだ?

もしかしたら、その原因って…?

 

【コトダマ提示】→〈紙切れ]

…これだ!

 

暁日「もしかしたら、これが原因かもしれない。見てくれ、夕斗の部屋のゴミ箱にあったんだ。」

飛田「『脱出の手掛かりになりそうな物を発見。夜の9時40分倉庫に集合』…え?そんな物があったの?」

小鳥遊「うーん、そんな物があったとは聴いた事が無いし多分、白暮君を呼び出す為の口実だったんだと思う。」

 

 

宵月「なるほど…。彼は部屋から一歩も出てないから外の情報を知らない。そんな彼に脱出の手掛かりがあったと伝えたら素直に出てくるでしょうね。」

本代「9時40分か…。襲撃して、冷蔵庫に閉じ込める時間を踏まえると丁度合致するな。」

 

柊「ねぇねぇ、この時間に夕斗くんと会った人っているのかなぁ?」

八咫「確かにその時間に会った人物こそクロである可能性が極めて高いですね。」

 

 

 

氷室「1人……。該当する人間がいるぞ。」

獅子谷「………何?」

氷室「その時間に最も倉庫に近い場所にいた人間…。それは、キミだ。……剣崎。」

剣崎「………えぇ!?」

剣崎が犯人…?本当にそうなのか?

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

氷室「キミは《普段は食堂》にいる…。だから、誰かを倉庫に呼び出すのは容易だろう。」

剣崎「た、確かに事件があった日も食堂にいましたが…、その時は〈僕以外もいました〉!」

氷室「そんな見え透いた嘘に騙される訳ないだろう?〈犯人は剣崎聖悟〉。答えは明白だ!」

剣崎「だから、違うってぇぇぇぇぇ!!」

柊「……あ、泣いちゃった。」

 

剣崎は嘘は言ってない。それを裏付ける根拠もある!

 

〈僕以外もいました〉←〈剣崎の証言]

    同

「それに賛成だ!」  

    意

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「いや、剣崎の言う通りだ。食堂には確かに他の人間がいたんだ。だろ?宵月、本代。」

本代「確かにいた事自体は事実だ。と言ってもあくまでも瓶を捨てるためだから、ほんの5分程度だな。」

宵月「そうね、私も食堂にいたわ。」

 

剣崎「ほ、ほら!本当でしょ!?」

氷室「どうやら食堂にいたのは事実みたいだが、それだけでは弱いな。」

剣崎「え…まだ納得しないんですか?」

氷室「当たり前だ。あらゆる可能性を見逃すわけにはいかないからな。」

小鳥遊「君の性格…。ある意味僕より情報屋に向いてるかもね。」

 

氷室「本代はあくまで一時的なものだからノーカウントだ。問題は宵月、キミはいつまで食堂にいた?」

宵月「私が最後に食堂にいた時間は確か…9時30分ね。」

氷室「だったら、剣崎の主張は意味がなくなるな。」

剣崎「そ、そんな…。」

氷室「目撃者が誰もいない以上、アリバイはない。残念だがキミはゲームオーバーだ。」

…やっぱり、犯人は剣崎だったのか?

 

 

 

 

 

剣崎「ちょっと待ってください!」

 

 

 

 

 

氷室「……見苦しいぞ。素直に認めたらどうだ。」

剣崎「どうせ、疑われているのだったら…。分かりました。今まで黙ってた事を1つお話ししましょう。」

小鳥遊「黙ってた事?まだ何か隠してたの?」

剣崎「この事を話したら間違いなく疑われると思い、話さなかったのですが…。もうこの状況下である以上関係ありません!ヤケです!」

八咫「いいから話して下さい!何を知ってるんですか!?」

 

剣崎「実は僕、9時40分から50分まで食堂を離れてました。白暮様が冷蔵庫にいたのに気づかなかったのもそれが理由です。」

皇「離れていただと…?何故だ?そして何処へ行っていた?」

 

 

 

 

剣崎「それは…"白暮様に呼ばれて"いたのです。」

……………は?

 

 

剣崎「"寄宿舎の個室に夜食を持ってきて欲しい"という内容でしたが…。この事実がある以上、白暮様はその時間帯生きていたのではないでしょうか?」

 

 

 

 

つまりあの時『倉庫で襲撃された夕斗』と『個室で生きていた夕斗』の2人がいた………という事なのか?

 

 

 

一体どういう事だ?

 

 

 

 

 

学校裁判 中断!




長くなりそうなので一旦、ここで終わり!中断!
後半へ続く。


あっ、そうだ(唐突)。

Twitter始めました。
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非日常編3 学級裁判・後編

後半戦となります。


今回は原作にないオリジナル演出を入れてみました。
そういうのが苦手な方はご注意下さい。


学級裁判 再会!

 

 

葛城「………えっと、とりあえず状況を整理しようか。」

 

葛城「氷室さんは食堂に常にいる人間は剣崎君だから、犯人だと主張。一方、剣崎君は白暮君が襲われた時間帯には白暮君に呼び出されていた。つまり、この時2人の白暮君がいたことになる………こんなところでいいかな。」

 

夜桜「ですが、同じ人物が同時に別の場所にいるなんてありえるのでしょうか…?」

獅子谷「……双子だとすれば、可能性はありそうだが………。」

 

宵月「その辺り、どうなのかしら?情報屋さん。」

小鳥遊「彼は、兄弟もいなく一人っ子。両親もすでに他界してるし、親族とも縁を切ってるから、双子という可能性はないかな。」

 

飛田「今、さらっと闇が深そうな情報が明かされたね…。」

東雲「人は表に出さないだけで皆、闇を抱えてるものだ。詮索するべきではないだろう。」

 

氷室「白暮が2人いようが3人いようが、そんな事はどうでもいい。どちらにせよ剣崎が殺したかどうかが重要だ。」

八咫「確かに…。白暮君が死体で発見された以上、殺されたという事実に変わりはありませんからね。」

本代「それに、寄宿舎へ行った事実もある。お前が犯人の可能性は未だに捨て切れないな。」

剣崎「分かっています…。その上で主張させて頂きます。僕は誰も殺してません。」

 

 

寄宿舎と倉庫…。どっちの場所で襲撃したかはっきりさせる必要があるな。

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

氷室「キミの証言だと、《9時40分》に呼び出され食事を運びに行った…。間違いないな?」

剣崎「はい。正確には料理を作ってからでしたので、〈9時42、3分〉頃でした。」

八咫「随分早いですね…。」

剣崎「夕飯の余りとおにぎりの簡単なメニューでしたからね。」

剣崎「その後は、食事を持って行ったのですが、チャイムを押しても《反応が無かった》ので入り口に食事を置いてから戻ってきました。」

本代「本当はその時に攻撃したんじゃないか?奴がドアを開けたその隙を突いて、《襲いかかった》と考えられそうだが?」

剣崎「でしたら、あの紙切れはどう説明するつもりでしょうか?」

氷室「あれは、呼び出したようにみせかける〈フェイク〉だろう。ともかく、さっさと認めたらどうだ?」

 

部屋で襲いかかったんだったら、あの状況と矛盾するよな。

 

《襲いかかった》←〈白暮の部屋の状況]

  論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「個室で襲いかかったんだとしたら、ほんの少しの時間とはいえ争いになったはずだよな?」

本代「まぁ、剣崎が戦闘のプロでない限り一撃という訳にはいかないからな。争いになるだろう。」

暁日「だとしたら、ちょっと変じゃないか?」

氷室「変…?」

 

暁日「俺が夕斗の部屋を調べた時、部屋は全く荒らされてなかったんだ。流石に不自然じゃないか?」

八咫「ですが、剣崎君は護身術を嗜んでいたはずです。荒さない事など、造作もないのでは?」

剣崎「確かに戦闘に特化した護身術というものも存在します。ですが、あくまでも敵を無力化させる目的ですので、完全に場を荒さずに殺すというのは不可能ですよ。」

 

 

暁日「部屋に荒らされた形跡がない以上、寄宿舎で襲撃した可能性は低いんじゃないか?」

 

 

     反

八咫「計算し直しです!」

        論

 

 

八咫「反論させてもらいますが、寄宿舎で襲撃した可能性はまだ残っていますよ。」

暁日「他にどんな可能性があるんだよ?」

八咫「分かりました。そこまで言うなら証明してみせましょう。」

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

八咫「そもそも、剣崎君の才能をお忘れでしょうか?彼は『超高校級の執事』なのですよ?部屋の掃除、ベッドメイキングなど手慣れたもののはずです。彼の才能にかかれば、争った痕跡を消すことなど容易い事でしょう。それに、氷室さんの言う通り常に食堂にいる彼なら、好きなタイミングで冷蔵庫に入れる事が可能です。」

 

暁日「剣崎が食堂に戻ったのは夜時間直前だ。その短時間で夕斗を運んで冷蔵庫に入れるのは無理があるだろ!」

 

八咫「別に無理に全ての作業を夜時間に行う必要はありません。時間を分割して作業すればいいだけの事です。剣崎君は食堂に行くのも一番です。その時、寄宿舎か倉庫に《朝まで放置》した白暮君を冷蔵庫に入れる事で、自分が第一発見者のように見せかける事が可能です。これで証明完了です。」

 

朝まで放置したら、あの情報が根本的に変わってしまうんじゃないか?

 

       斬

《朝まで放置》←【モノクマファイル】

    論

「その言葉、ぶった斬る!」

       破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「朝に死体を入れたんだったら、1つ大きな矛盾が生まれるぞ。」

八咫「矛盾ですか?なんでしょう。」

暁日「モノクマファイルだよ。ここには死因が“凍死”って書いてある。朝まで放置したら死因が殴打になるんじゃないか?」

八咫「あっ……。」

 

 

暁日「それに、もう一つ朝に死体を入れてない根拠があるんだ。」

 

それは…

【コトダマ提示】→〈白暮の死体状況]

…これだ!

 

暁日「死体の頭の傷は、出血が止まるくらいに凍りついてたんだ。朝に死体を入れても凍りつく事はまずないだろ?」

八咫「確かに…一理ありますね。」

 

 

シルヴィア「それじゃあ結局、白暮クンの死体は夜時間に入れたという事かしら?」

暁日「あぁ。そうだと思う。それと剣崎、一つ確認させてくれ。」

剣崎「なんでしょうか?」

暁日「お前は事件の日、夕斗の姿を見たのか?」

剣崎「いえ…。部屋に篭って以来、一度も見てません。」

 

暁日「じゃあ、お前を呼び出したのはモノトークを使ってか?」

剣崎「はい。その通りです。」

獅子谷「……?何の確認だ?」

暁日「ちょっと考えてた事があるんだ。夕斗を姿を見ずにモノトークだけで会話したって事は…。」

 

 

ーー閃きアナグラム開始ーー

 

 

犯 人 が 操 作 し た

 

 

…そうか!

 

 

 

暁日「犯人がモノドロイドを奪って操作した…。そう考えられるんじゃないか?」

夜桜「う、奪った!?どういう事なのでしょうか?」

暁日「言葉の通りだ。頭を殴って気絶させた後、モノドロイドを奪いモノトークを使って剣崎を食堂から遠ざけたんだ。」

小鳥遊「でも、実際に犯人が使ったどうかは…モノドロイドが壊れちゃったから確認しようがないね。」

 

飛田「壊れた?どゆこと?」

暁日「それはだな…。」

 

 

【コトダマ提示】→〈モノドロイドの性能]

…これだ!

 

 

暁日「モノドロイドは極度の高温や低温に弱いらしい。冷蔵庫に長時間入れられてたせいで壊れてたんだよ。」

小鳥遊「偶然なのか、証拠隠滅なのかは分からないけど白暮君と一緒に入れたせいで壊れちゃったんだと思う。」

 

 

氷室「それが、どうした?犯人が操作したと考えるなら、尚更剣崎にも犯行は可能だと思うが。」

本代「同感だ。もう投票を始めてもいいんじゃないか?」

暁日「待ってくれ、剣崎が本当に犯人かまだ議論を続けるべきだ!」

シルヴィア「でも、犯人と言える証拠も揃ってるんじゃないかしら?」

宵月「本当に証拠が揃ってるのかしら?私はそう思わないわ。」

 

小鳥遊「どうしよう、お互いに意見を主張し合って意見がまとまらない…。」

葛城「困ったな…。意見が真っ二つに分かれてしまってるぞ。」

 

 

 

 

 

モノパパ「あっ、おい待てぃ。………聞いたか、モノクマ?」

モノクマ「聞きましたよ父さん!真っ二つ……。そう、ボクらのカラーのように意見が真っ二つになったようですね!」

モノパパ「ここは一つ、変形裁判所の出番とみた!」

 

 

 

氷室「………なに、変形だと?ここが変形するのか?どう変形するんだ?」

八咫「氷室さん…。心なしかワクワクしてませんか?」

 

 

 

モノクマ「それでは早速、始めましょう!レッツ変形!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってモノクマは席から謎の装置と鍵を取り出してなにやら操作を始めた。

すると突如、モノクマとモノパパ、そして俺達の席が浮き上がり、2つの陣営に分かれた。

 

 

 

【剣崎聖悟は犯人か?】

 

 

  [犯人だ!〉 〈犯人じゃない!]

         氷室   暁日

        獅子谷   東雲

         八咫   宵月

         飛田   小鳥遊

         夜桜   皇

         本代   葛城

       シルヴィア   柊

              剣崎

 

 

 

 

 

ーー議論スクラム開始ーー

 

 

夜桜「《剣崎さん》は白暮さんに呼ばれた事を隠してたんですよ?」「葛城!」葛城「《剣崎君》は犯人だと疑われると思ったからその事を隠してたんだよ。」

 

獅子谷「…………だが剣崎は《呼びだされ》て実際に会いに行ったはずだ。」「剣崎!」剣崎「確かに白暮様に《呼びだされ》ましたが、直接会ったわけではありません!」

 

八咫「剣崎君ならいつでも《死体》を冷蔵庫に隠す事が出来ます!」「東雲!」東雲「モノクマファイルと検死結果が一致した以上、死因は凍死だ。《死体》は夜時間前に入れたんだよ。」

 

本代「そもそも東雲が《共犯》で検死結果を偽った可能性もあるんじゃないか?」「皇!」皇「《共犯》をするメリットは無いに等しい。わざわざ検死結果を偽る必要もないだろう。」

 

飛田「でも《モノドロイド》を使ってるって事は夕斗は生きてたんじゃないの?」「宵月!」宵月「《モノドロイド》を操作するだけなら、犯人にだって可能よ。」

 

氷室「モノドロイドの貸し借りは《校則》で禁止されてるんじゃないのか?」「柊!」柊「夕斗くんが気絶してたら、《校則》違反にはならないと思うよー?」

 

シルヴィア「仮に倉庫で事件起こったとしても、剣崎クンが食堂で白暮クンを《目撃》していない事自体、怪しくないかしら?」「小鳥遊!」小鳥遊「誰にも《目撃》されないで通れる道を使って、倉庫へ行ったのかもしれないよ。」

 

氷室「大体、議論すべき《証拠》は全て揃ったんだ。これ以上の議論は無駄だと思うが?」「俺が!」暁日「いや、議論すべき《証拠》はまだ残ってるんだ!謎は最後まで残すべきじゃない!」

 

 

 

 全 論 破 

 

暁日「これが俺達の答えだ!」

東雲「これがオレ達の答えだよ。」

宵月「これが私達の答えよ!」

小鳥遊「これが僕達の答えだ!」

皇「これが俺達の答えだ。」

葛城「これが俺達の答えだよ!」

柊「これがわたし達の答えだよー!」

剣崎「これが僕達の答えです!」

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

 

暁日「……やっぱり謎が残ってる以上、まだ議論を続けるべきだ。」

氷室「だが、これ以上何を議論すべきだ?」

暁日「剣崎は倉庫へ行く夕斗を目撃していない。どうやって、倉庫へ移動したのか議論する必要がある。」

夜桜「ですが、倉庫への道は食堂以外にないと思いますが?」

暁日「とりあえず、話してみよう。何か見落としてるかもしれない。」

 

俺が持ってる証拠…。それこそが犯人を見つける切り札になるかもしれない!

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

本代「移動手段か…。ないとは思うが〈ワープ〉でもしたとかか?」

氷室「座標を間違えて壁の中に埋まりそうだな。」

飛田「聖悟の目を盗んで、〈全力ダッシュ!〉は?」

獅子谷「………わざわざ剣崎の目を盗む必要あるか……?」

東雲「オレ達の知らない〈隠し通路〉を使った…なんてあり得ないよな。」

シルヴィア「まるで忍者ね。」

宵月「あなたたち……白暮君をなんだと思ってるのよ…。」

 

俺の証拠に一番近くて、可能性がありそうな意見があったな。

 

〈隠し通路〉←〈隠し扉]

    同

「それに賛成だ!」

    意

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「東雲の言う通り倉庫には隠し通路…正確には隠し扉があったんだ!」

東雲「ほ、本当にあったのか…!」

暁日「そうだ。ここを使えば誰にも目撃されずに倉庫へ行けるはずだ!」

氷室「忍者屋敷か、この学園は…。」

皇「この隠し扉を見つけたのはいつだ?」

 

小鳥遊「僕と暁日君、それからシルヴィアさんの3人で捜査中に見つけたんだ。」

夜桜「ですが、白暮さんは隠し扉を知っていたのでしょうか?」

暁日「それは証明しようがないからな…。剣崎が夕斗を見ていないから、知っていたと考えるしかないと思う。」

 

本代「隠し扉か…奴も知っていたとはな。」

宵月「………」

葛城「だとすれば、犯人は隠し扉を知っていた人って事だね。」

八咫「必然的にそうなりますね…。ですが、3人は捜査中に発見したのにそれ以前から知っていた人などいるのでしょうか?」

 

 

 

 

暁日「…………いや、1人いる。」

皇「何?」

 

 

 

正直言うと、早い段階から予想は付いていた…。けど、確信が持てなかった。明らかに行動が不自然な奴がいて、()()()()()()()()()()()()()

その人物こそが…犯人だ!

 

 

 

【人物指定】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→本代荘士

「お前しか……考えられない!!」

 

 

 

 

 

 

 

暁日「……本代。お前なんじゃないか?」

本代「…理由を聴こうか。」

 

暁日「俺がさっき隠し扉の話をしたとき“奴も”って言ったよな?」

本代「それがどうした?」

 

暁日「奴『も』言い回し…お前も知ってたような言い方じゃないか?」

本代「………」

 

暁日「それにもう一つ、理由があるんだ。」

 

それは…

【コトダマ提示】→〈東雲の証言]

…これだ!

 

 

暁日「東雲の証言だとお前は9時半に瓶を捨てにいった。そこから戻ってきたのは9時50分だ。20分も時間が掛かってるのは流石に不自然じゃないか?本当は一度食堂を出てから隠し扉を使って倉庫へ行ったんじゃないか?」

本代「………それで?」

暁日「え?」

 

本代「そんな下らない理由で俺は疑われたのか?……馬鹿馬鹿しい。」

宵月「何か理由があるのかしら?」

 

本代「当然だ。1つずつ説明してやろう。」

本代が犯人なのは間違いない…。確実に切り崩してやる!

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

本代「まず瓶を捨てる前後の行動だが、瓶を捨てた直後に腹痛に襲われたんだ。そこからプレイルームに戻るまでの20分間、ずっと《トイレにいたんだ。》」

葛城「そんな都合のいい話、あるとは思えないけど?」

本代「起こった事は事実だ。恐らく、夕食に下剤を入れたんだろうな……なぁ、剣崎?」

剣崎「どうあっても僕を犯人扱いするつもりですか…!」

本代「次に隠し扉の件だが、こっちはあくまでも捜査中に見つけた3人を指して、『奴も』と言ったんだ。勘違いさせたようだな。」

宵月「本当はあなたも隠し扉を知ってたんじゃないかしら?」

本代「そんなわけないだろ。大体、扉は《どんでん返し》だ。普通気付く訳がない。」

 

本代は今、致命的なミスをした!見逃す訳にはいかない!

 

《どんでん返し》←〈隠し扉]

  論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「本代、隠し扉の事を話したのは失敗だったな。」

本代「何だと?」

暁日「隠し扉は確かにどんでん返しだ。……なんでお前は知ってるんだ?」

本代「………っ!」

 

暁日「俺達も捜査するまで知らなかった扉…。普通は知る方法なんかないよな?」

本代「黙れ…!」

暁日「だが、扉がどんでん返しだと知る方法…。それは、実際に扉を使う以外にない!」

本代「黙れ黙れ黙れぇ!この一般人(モブ)が!」

 

飛田「も…もぶ?」

氷室「フィクション作品等で使われる名前の無い登場人物の事。」

葛城「つまり、彼にとって俺達は有象無象でしか無いみたいだね。」

 

本代「どいつもこいつも一般人(モブ)のクセに俺に逆らいやがって…!雑草どもが俺に口答えするな!大体、お前の推理は所詮状況証拠でしかない!俺が奴と直接会った証拠でもあるのか!?」

暁日「直接会った証拠だと…?」

しまった…!そこまで考えてなかった…!

 

本代「ないのか?ある訳ないよなぁ?だって、俺は犯人じゃないからなぁ!」

ダメだ…。思いつかない…あと一歩なのに…!

 

 

 

 

 

 

 

「それは違うわ!」

…え?

 

 

 

 

 

 

暁日「宵月…?」

宵月「諦めるのはまだ早いわ。暁日君。」

本代「なんだ?才能不明。」

 

宵月「才能不明なんてあなたに言われたくないわね。あなたが白暮君と会った証拠…見せてあげる。」

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

本代「俺が奴と会った証拠だと?…ハッ!何を言ってるんだこの一般人(モブ)は?」

暁日「俺が調べた場所にもそんな物無かった…。他に何かあるのか?」

宵月「あなたは一箇所見落としをしていたのよ。」

本代「見落としねぇ…そんなもの《ある訳ない》だろうが!」

 

暁日君に代わって…私が撃ち抜く!

 

《ある訳ない》←〈指輪]

  論

「それは違うわ!」

     破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

宵月「1つ確認させてもらうわね。この中で普段アクセサリーを付けてる人はいるかしら?特に男子。」

剣崎「僕は普段付けませんが…。」

氷室「あんなチャラチャラしたもの、好まん。」

葛城「撮影や劇で使うくらいで、普段は付けないかな。」

獅子谷「……同じく。」

 

宵月「なら、決まりね。……これよ。」

皇「これは…指輪か?」

宵月「そうよ。それもメンズ物。これが白暮君の手の中に握られてたの。…死後硬直してたから取り出すのに苦労してわ。」

夜桜「でも、何故白暮さんがこんな物を…?」

 

宵月「恐らく、犯人と争ったんでしょう。きっと白暮君は運良く最初は気絶せずに済んだ。その時争いになって指輪を奪った…。」

飛田「もしかして…。最期の最期で幸運が働いたのかな?」

宵月「そういう事でしょうね。そして、これこそ指輪を普段からしている人間が犯人である決定的な証拠よ!」

 

本代「…グッ!………そうだ、認める。」

皇「では、犯人は貴様か…。」

本代「はぁ?犯人?俺が?俺が認めるのはその指輪の持ち主が俺だって事だよ。」

 

宵月「じゃあ、何故白暮君が持っていたか、説明してもらえるかしら?」

本代「実はな、その指輪を昨日落としたんだよ。どうやらそれを奴が拾ったみたいなんだ。だから、モノトークで話して返してもらう約束をしてたんだよ。」

 

シルヴィア「部屋に篭ってたはずなのに、どうやって指輪を拾ったのかしら?」

本代「そんなの知るかよ。大方、インスタント食品でも取りに行った時に拾ったんだろ。これで納得したか?」

 

宵月「ええ。お陰で…

 

 

 

 

あなたが犯人だってはっきり分かったわ。」

 

本代「ハァ…。所詮は一般人(モブ)か。話すだけ無駄だったという事か。そこまで言うなら犯人だって証拠を見せてみろよ!!」

宵月「後は…暁日君。あなたの番よ。」

暁日「え!?」

 

宵月「あなたなら犯人を追い詰める証拠が何か分かるはず…。信じてるわ。」

アイツを追い詰める証拠…。…!もしかして…!

 

 

 

本代「俺が犯人だって証拠…今すぐ見せろ!!」←〈壊れたモノドロイド]

 

「これで終わりだ!!」

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

暁日「夕斗の横に落ちてたモノドロイド…。これこそがお前が犯人である最後の証拠だ!」

本代「馬鹿かお前?それは奴の物だろ?そんなものが証拠な訳ないだろ!」

暁日「俺もずっとそう思ってた…。それは勘違いだったんだ!」

葛城「か、勘違い?どう言う事かな?」

 

暁日「犯人は剣崎を遠ざける為に夕斗のモノドロイドを操作していた。その時夕斗が抵抗してきたらどうなる?」

飛田「争いに…なる?」

暁日「そうだ。そして、その時どちらもモノドロイドを落としたとしたら?」

 

皇「…ま、まさか!」

暁日「そうだ。2人のモノドロイドは『入れ替わった』んだ!」

本代「……グッ!!」

 

東雲「そう言えば、寝る前に本代クンは寄宿舎の外へ出てたな。」

剣崎「朝、最初に来たのも本代様でした。」

暁日「それも、部屋から出る瞬間を見られないようにしたんだろう。」

本代「…………っ!」

 

暁日「本代…今すぐモノドロイドを見せてくれ。もしそれが夕斗の物なら、持ってる理由を教えてくれ。」

本代「………クククク。クックックックッ…!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

暁日「本代…?」

 

本代「最後まで幸運に踊らされていたとは……自分でも笑えるな。」

宵月「やっぱりあなたが…。」

本代「そうだ。…俺が殺した。」

 

 

 

暁日「……最後に事件を振り返ろう。………これが事件の真実だ!」

 

 

ーークライマックス推理開始!ーー

 

【Act.1】

事件の発端となったのは、モノクマが動機の話を持ってきた日だ。この時、モノクマは俺達にイレギュラーがいる事を仄めかせた。

この情報に怯えきった夕斗は1人、自分の部屋に篭る事にしたんだ。

そして、この状況を利用して計画を練り始めた犯人がいた事に誰も気がつかなかった…。

 

【Act.2】

まず、犯人は夕斗を確実に呼び出す為手掛かりを見つけたという内容のメッセージを書いた。モノトークを使わなかったのは、履歴が残る事を恐れたんだろう。そして、時間になる前に自身のアリバイを作るために食堂へ瓶を捨てに行った。…だが、結果的にこの行動が不自然で犯人である決め手になってしまったんだ。

 

【Act.3】

瓶を捨てた犯人は倉庫の隠し扉へ回り、今度は倉庫へ行った。

犯人が移動してる間に夕斗は誰かに見られる事を恐れて、隠し扉から倉庫へ行った。何故知ってたかは分からないが、多分偶然知ったんだと思う。

夕斗がいることを確認して犯人は予め用意した瓶で頭を殴った…!

 

【Act.4】

次に剣崎に罪を着せるため夕斗のモノドロイドを使って食堂から遠ざけた。…だが、この時犯人も予想してない事が起こったんだ。

運良く気絶せずに済んだ夕斗は咄嗟に犯人に抵抗した。その時の争いで2つの証拠を残す事になる。1つ目は犯人から奪い取った指輪。もう1つは争いの際に入れ替わったモノドロイドだ。

 

【Act.5】

改めて頭を殴り夕斗を気絶させた後は急いで冷蔵庫に隠し、急速冷凍モードに設定した。でも、剣崎がいつ戻ってくるか分からない…。そんな状況だったため、指輪を奪われた事とモノドロイドが入れ替わった事を確認出来なかった。きっと気づいた時にはもうどうしようもなかったんだと思う。そこで犯人は仕方なく、夕斗の部屋で寝る事にしたんだ。誰にも目撃されないように注意してーー。

 

 

 

「そうなんだろ?本代荘士!!」

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

本代「フッ…、その通りだ。さて、そろそろ終わらせようか。敗者に相応しいエンディングを…。モノクマ、投票というのがあるんだろ?始めてくれ。」

全てを悟ったかのように本代はそう呟いた。

 

モノクマ「議論の結果は出たようですね?では、始めましょう。投票ターイム!」

モノパパ「全員、絶対誰かに投票するように。投票してない奴は放棄とみなしてオシオキされるからな。無駄死にしたくないだろう?」

 

モノクマ達がそう言うと、席にボタンが表示され投票が始まった。投票しなければ自分が死ぬ…。そう言われた俺は本代に投票した。他の皆もそうだろう。

 

 

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か!?」

モノパパ「そして、その答えは正解か不正解なのかぁ!?」

 

 

モニターに表示されたスロット…。ドラムロールと共にリールの速度が落ちて行き…そして本代の顔が3つ揃った所で、リールは止まった。その直後、正解を称えるように、歓声とメダルが大量に排出された。

 

 

 

 

 

学級裁判 閉廷!




第一回学級裁判、これにて閉廷。

実はプロットを立てた当初から、暁日と宵月W主人公というコンセプトで話を作ってました。メインは暁日ですので、これ以降は状況に応じて視点が宵月に変わるようになります。(今後の労力が恐ろしい事になりそうだから、ギリギリまでどうするか迷ってました…)

因みに名前と学級裁判の席も対の関係になってます。

次はオシオキなので間は(多分)空けないで、投稿できると思います。


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非日常編4 オシオキ編

ーー

前日の夜9時35分頃、剣崎しかいない食堂の隣、誰もいない倉庫へ入っていく人間がいた。

 

『超高校級の幸運』白暮夕斗だ。

 

 

「……誰も来てねぇな、流石に早すぎたか?はぁ、…にしても手掛かりか。んなもん、ある訳ねぇと思うけどなぁ。」

そんな事を呟いてると、

 

「……ガッ!」…不意に背後から頭部を殴られた。

 

 

「悪いな…。お前に恨みは無いが、死んでくれ。」

白暮を殴った瓶を持ちながら、そう呟いたのは、

『超高校級の???』本代荘士だ。

 

白暮が倒れたのを確認し、彼からモノドロイドを奪い取った。計画通り、剣崎を犯人に仕立て上げるため、彼を食堂から遠ざけて冷蔵庫に閉じ込める準備を始めた。

 

……すると。

 

「………ってぇなぁ。なんだよ。」

「……!驚いたな。まさか、起き上がるとは。」

運良く急所を外した彼は起き上がった。

 

「……どうやら、オレはお前のターゲットにされたようだな。………流石に想定外だったわ。」

「そういう事だ。お前の存在が目障りなんでな。じゃあ、今後こそ…死ね。」

そういうや否や、2人は争いになった。この時、お互いのモノドロイドが落下し、本代の指輪が奪われる結果になった。

 

 

「……この!大人しくしろ!」

本代の持った瓶の一撃が白暮の頭部に決まった。

「グッ…!あー、チキショウ…。ここまでかよ……悪ぃな………あと、たの……む。」

「クソ…。無駄に手こずらせやがって。」

 

 

想定外の事が起こり、焦った本代は急いでその場を片付けて冷蔵庫に白暮を閉じ込めた…。

 

……後は上手くいくことに賭けるしかない…!大丈夫だ…!俺は『超高校級の勝者』なんだ…!

 

そう信じて、本代は倉庫を後にした。

だが、この時2つのミスをしていたことに気づかなかった…。

ーー

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ…!大正解ーーーーーー!!!『超高校級の幸運』白暮夕斗クンを殺したのは、なななななんと!前代未聞!才能不明の本代荘士クンでしたーーー!!!!」

「どうしたぁ諸君!?見事正解したんだ!!もっと喜べよ!!」

 

……相も変わらず不快極まりない笑い声を上げるモノクマ、モノパパをよそに喜ぶ奴なんか誰もいなかった。

喜べる訳がない。

 

「………さぁ、オシオキという物を始めようか。」

本代は何も言わず、結果を受け止めた様子だった。

 

「あれあれぇ?そんなすぐオシオキしちゃっていいの?もっと色々話しても良いんだよ?」

「……別に構わない。早く死にたいんだ。」

「待ちなさい。」

宵月が割り込んで来た。

 

「なんだ。敗者の俺に語る事など無いが?」

「あなたはそうでも私達は納得してないわ。何故、白暮君を殺したの?……話すまでオシオキは始めさせないわよ。」

そう言って、宵月は本代を睨みつけた。

 

「……仕方ない。話そう。俺が奴を殺した動機は2つある。………1つは奴自身だ。」

「奴自身?何言ってるんだよ本代?」

「やっぱり、あの事と関係してるのかしら?」

「舞ちゃん、何か気づいたことがあるの?」

 

「彼は一度も白暮君を名前で呼んだことはない…。いつも『奴』と呼んでいたの。」

「当然だ。奴の名前を呼ぶ価値などないだろう?」

その言葉を聴いた瞬間、本代から強烈な悪意を感じた。

「価値…だと?」

 

「奴はただの幸運…。奴が絶対的な存在であるこの俺と同じ環境にいるだけで、吐き気がする!この俺の世界に一般人(モブ)がいる事が不快で仕方なかった!……だから、殺した。それだけだが?」

ただの幸運だから…?そんな下らない理由の為だけに夕斗は殺されたのか…!?

 

「…ふざけるな!……お前は、絶対許さねぇ!」

「暁日……憎いか、この俺が?ならこの場で殺してみるか?……その場合クロはお前になるが?」

「うるせぇ!アイツに代わって……テメェを殺す……!」

こんなクズ野郎……俺の手で殺さない限り…俺の恨みが晴れない…!

 

「待ちなさい。暁日君。」

「宵月…なんで止める!?アイツは俺が殺すんだよ!」

「落ち着きなさい!」

ピシッ…!という乾いた音が響いた。宵月に叩かれたのか、俺は。

 

「そうやって、自分を殺させる事でクロを押し付けるのが彼の目的よ。冷静になって。」

「………」

「……チッ、お前を殺すべきだったか。」

「根っからの悪人だな、キサマは。」

 

「まだ、話は終わってないわよ…。2つ目の動機…話しなさい。」

「…………もう一つの動機は……。俺の才能だ。」

「才能だって…?君は自分の才能を忘れてるはずだろ?」

「モノクマが出した動機、覚えてるだろ?『記憶を返す』…。」

あの話、真に受けた奴がいたのか…。

 

 

 

「クロになれば、才能を思い出せる…。そう考えた俺は奴を殺した…。だが、俺は最後まで奴の幸運に踊らされていた。………もしかしたら、本当の一般人(モブ)は俺だったのかもな。」

乾いた笑い声を上げながらそう、語った。

 

すると、

「うぷぷぷぷ…。才能の為だけに殺しをするなんて、そんなに自分の才能が知りたいのー?」

「……やっぱり、お前達は知ってるんだな。」

「さぁ、どうかな?さて、そろそろオシオキしちゃおうかなぁ?」

 

 

 

「ま、待て!知ってるならせめて……せめて教えてくれ!なぁ!頼むよ!それからならオシオキを受ける!だから……………お願いします……お願いします………!」

遂に、本代は土下座を始めた。

…さっきまで周りを見下して傲慢な態度を取っていたあの本代荘士の面影は何処にもなかった。

 

「みっともないなぁ、土下座までしちゃって。でも、どうしよっかなぁ。そのままオシオキして絶望を味わせるのもいいし…。」

「いいんじゃないか?モノクマよ。今回は最初のクロだ。特別サービスで教えてやっても。」

「と、父さんが言うなら…。分かりました!特別サービスで才能を教えてあげましょう!」

 

「あ、ありがとうございます!」

本代の才能が遂に語られる…一体何なんだ?

 

 

「では、発表します!本代荘士クンの才能は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級の改造人間』です!」

 

 

 

 

「………は?」

「超高校級の改造人間…?」

 

 

モノクマによって語られた才能…それはあまりにも現実離れしすぎた内容だった。

 

 

「…………クックックックッ……。」

「も、本代…?」

 

 

「…フッハハハハハハハハ…!……ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!ヒャハハハハハハハハ!!!!」

突如、狂ったように本代は笑い出した。

 

 

「どうですか?本代クン。納得していただけましたか?」

 

 

 

「……クククク……納得……?…クックックックッ…。

 

 

 

 

 

する訳ないだろうが!!!!

 

 

 

 

 

 

改造人間だと…!?馬鹿馬鹿しい!ふざけるのも大概にしろ!!」

 

 

 

 

「えーでもホントの事を言ってあげたんだけどなぁ?」

モノクマは嘘を言ってるようには見えない。だとしても意味が分からない…。改造人間なんてそんな事があり得るのか…?

 

 

「………無効だ。」

「はい?」

「こんな学級裁判は無効だ!最初から俺をハメるために計画したんだろう!?………そうだ!白暮……アイツも生きてるんだ!!」

本代は取り乱して訳の分からない事を言い出した。だが、誰も賛同する者はいなかった。

 

 

「本代。」

「皇!なぁお前からも言ってくれ!こんな学級裁判、有り得ない!」

 

 

 

「………見苦しい。消えろ。」

「……………!!!!…………」

冷たい目をした皇はそれまで聞いた事がない程、冷徹な一言を浴びせた。

心を折られたのか、本代はそれ以上何も言わなかった。

 

 

「さーて、皆から見捨てられちゃった可哀想な本代クンのオシオキを、そろそろ始めちゃいましょうか!」

「………!!待てよ!俺は誰も殺してない!」

「ダメです!学校生活のルールを破った人間は裁きを受ける!最初にそう説明したよね?」

 

「い、嫌だ!死にたくない!だ、誰か助けてくれ!」

 

 

「それでは『超高校級の改造人間』本代荘士クンのために!スペシャルな!オシオキを!用意しました!!」

「嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない!!」

俺は思わず声を発した。

「…本代。もう認めてくれ。」

 

 

「………なんだよ、その憐む目は…!見るな………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな目で俺を見るなああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

「では!張り切って参りましょう!」

「「オシオキターーーイム!!」」

 

 

モノクマはハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。ボタンに付いてる画面にドット絵の本代をモノクマが連れ去る様子が映し出されていた。

 

 

ーー

 

 

 

GAME OVER

 

モトシロくんがクロに決まりました。

 

オシオキを開始します。

 

 

 

 

怯え切った表情を浮かべる本代。

助けを求めるかのように周りを見渡すが、誰も助けない…いや助けられなかった。

すると、背後から鎖の付いた首輪が本代を掴み、そのまま裁判所の外へ連れて行った。扉の向こうへ連れられる時、「実験中」という表示が赤く点灯した。

 

その先はモニターからの映像に切り替わり扉の向こうでは、透明な箱の中で椅子に固定された本代が、そしてその横には白衣を着た博士のような格好をしたモノクマとモノパパがいた。

 

 

 

 

【大改造!!壊滅的ビフォーアフター】

超高校級の改造人間 本代荘士 処刑執行

 

 

 

 

本代の身体に大量の点滴のチューブが突き刺さった。

チューブが刺さった事を確認すると、モノクマが右腕を切り落としドリルのようなアームを取り付け始めた。麻酔もせず行われる改造の激痛に悶える本代。

 

そんな事はお構いなしに、モノパパは本代の頭に装置を取り付け電波を送り始める。頭を掻き回されるような苦痛に本代は気絶してしまう。

 

気絶したのを確認したモノクマは椅子の装置を起動させ電流を流した。

ギャグ漫画のような骸骨が本代の身体に映し出されて意識を取り戻す本代。

点滴からも薬品が身体に次々と入れられたせいか、目が虚ろな状態になっている。

 

 

 

その後も、身体を弄って気絶したら電流を流すという行為を数回繰り返してーー

 

椅子上には電流で焼け焦げた辛うじて人の形をした物だけが残っていた。

 

 

 

そして、モノクマとモノパパは「失敗作」とみなして、本代の身体を爆発させた。

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

「イヤッホオオオオオォォォォォォォウウゥゥゥ!!エクストリィィィィム!!!!やっぱこれだぜぇぇぇぇ!!!」

「ガッハッハッハッハッハッハァッ!!たまらねぇなぁ!!酒が進むぜぇぇ!!」

 

 

「…………」

叫ぶモノクマ達を尻目に俺達は目の前の惨劇に言葉を失っていた…。

 

 

「……酷い…。」

「うぅっ………えぇん…。荘士くぅん…。」

「うっ……おぇぇっ…。」

「ホント…悪趣味だな…。虫酸が走る。」

「………くっ…。」

皆、反応は様々だった。

吐き気を催し嘔吐する者、泣き出す者、怒りに震える者…。

他人の死をなんども経験してるであろう皇、アレックスの2人でさえ動揺していた。

 

 

だが、

「ハイハイ、皆お疲れ様ー。ここにいつまでいてもキリがないからね。さっさと帰ってくださーい。」

「オレ達はこれから祝杯を上げるんだ。時間が勿体ないから早く戻ってくれよ?」

コイツらが感傷に浸る間も与えてくれなかった。

 

 

「祝杯ですって…?あなた達は命をなんだと思ってるんですか!」

「なんとも思ってるわけないじゃないか。大体人殺しが裁かれたんだ。オレ達に感謝して貰いたいところなんだがな?」

 

 

あまりの暴論に夜桜と獅子谷は怒り、

「……貴様、許さんぞ……!」

「ご学友を殺されて黙ってるわたくしではありません…!この身に代えてもあなた達を倒します!」

モノクマ達に立ち向かおうとした瞬間、

 

 

「やめろ。」

皇が制止に入った。

「この場を一度抑える。……戻るぞ。」

「………だ、だが。」

「皇さん…。あなたはご学友をあんな姿にされてなんとも思わないんですか!?」

 

 

「………なんとも思っていない訳がない。だが、奴らの前では俺達は無力だ。…………………これ以上、必要のない犠牲を増やさないでくれ。」

皇は帽子を抑え、目元を隠しながら呟いた。…皇にとっては部下では無く初めての友達とも言える存在だった。アイツも辛かったんだな。

 

 

 

その後、俺達はエレベーターに乗り裁判所を後にした。

 

 

 

ーー

 

個室に戻った俺は1人ベッドで横になっていた。

 

今日はあまりにも色々ありすぎた。

 

夕斗が殺され、そして仇の本代も処刑されたーー。

 

だが、気は一向に晴れなかった。

 

 

ーーそこへ、

 

…ピンポーン…。

チャイムがなった。

 

…あまり、誰かと顔を合わせたくなかったが俺はドアを開けた。

「はい。」

「暁日君、失礼するわね。」

「お、おい宵月!?」

 

ドアを開けるや否や、宵月はズカズカと俺の部屋へ入ってきた。

「な、なんだよ急に。」

「これをあなたに渡そうと思ったの。」

そう言ってモノドロイドを渡してきた。

 

「これは…夕斗のか?」

「そうよ。本代君がオシオキされた後、モノクマから返してもらったの。」

「なんでこれを俺に…?」

「とりあえずモノトークを開いてみて。……あなた宛のメッセージが残ってたの。」

俺宛…?

 

そこには、俺が最後に送ったメッセージの後に夕斗が送ろうとしてたメッセージがあった。

 

…内容は「ゴメン。」

 

「あの日…彼はあなたに謝ろうと思ってたみたいね。でも、それが叶わなかった…。」

「………なんだよ。謝りたかったんなら、わざわざメッセージ送らなくてもいいのによ!直接会ってくれて良かったのに…!」

思わず涙が溢れていた。

 

 

「…………俺は絶対に絶望に屈しない!夕斗や本代のためにも絶対に生き延びてやるんだ!」

「…やっぱり、あなたにこれを見せたのは間違ってなかったわね。」

 

 

 

 

ーー

 

 

 

【同時刻、???の個室】

 

 

 

……あれがオシオキ……。

 

……うっ!…思い出すだけで吐き気がする…!

 

でも、いつ自分がああなるかは分からない…。

 

それに、この編入生活はまだまだ続く…。

 

いつまで、“ボクの秘密”を守り通せるか…。

 

最悪、誰かを犠牲にしてでも…守ってみせる…!

 

 

 

ーー

 

 

 

【チャプター1 白とクロの交錯 END】

 

残り:14名

 

To Be Continued...

 

 

 

ーー

 

【アイテム獲得!】ブランド物の指輪

1章を勝ち進んだ証。

本代荘士の遺品。

「Wind Scale」というブランド物。

全てを見下していた勝者が唯一尊敬していた。




これにてチャプター1終了となります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。


ぶっちゃけ次はいつになるか全く見当もついてません。
気長に待っていただけると幸いです。


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チャプター2 怨恨Killing Friend
(非)日常編1


お待たせしました。

これより二章開始となります。
追加要素の説明だけだから今回は短め。


………無意識に目が覚める。

だが、全く寝た気はしなかった。

 

 

……たった1日で2人も死んだんだ。

眠れる訳がない。

冷たくなった夕斗、あまりにも無残な姿になった本代。

未だにあの光景が頭に張り付いている。

 

モノドロイドで時計を見ると時間はまだ4時だった。

…なんか中途半端な時間に起きたな。

 

時間が時間なだけに、また寝ようと思わなかった。

「…散歩でもしてくるか。」

 

 

ーー

 

とりあえず散歩する事にしたが、皆寝てるのか誰もいなかった。

 

完全な静寂…。

まるで俺1人の世界のようだった。

 

「もしかしたら…ホントに俺だけなのかもしれないな。」

そんな事をふと考えてると、

 

 

 

ガサッ!

近くの茂みから物音が聴こえた。

「?なんだ?」

 

 

 

 

その方向へ目をやると、

 

 

「…………」

 

 

樹のそばで黒いコートの男が立っていた。顔は白い帽子を目深に被っているため見えない。

 

「なんだ…?アイツ…?」

俺がその男に気づくと同時にそいつは走り去った。

 

 

「あ!おい、待て!」

急いで追いかけたが、そいつは暗闇の中に姿を消してしまった。

 

「…………なんだったんだ?」

幻覚にしてははっきりと姿は見えた。

 

俺達以外の17人目…もしかしてアイツが『イレギュラー』か?

考えごとをしてると

 

 

……ドンッ‼︎

 

 

今度は壁の方から物音がした。

 

「…今度はなんだ?」

 

そっちを見に行くと、

 

 

「……1日1万回!絶望への感謝の正拳突き!ウオォォォォ!!」

モノパパが何やら壁を殴っていた。

「………やっぱ俺、疲れてるな。寝よう。」

 

正直、寝れる気はしないが部屋に戻る事にした。

 

ーー

 

【翌朝】

 

「……おはよう。」

「あぁ、おはよう。」

「…おはようございます。」

やはり、みんな昨日の影響もあって暗い。

それに2人減っただけで、食堂が凄く広く感じる。

 

すると、

「暁日か、急で悪いが壁に手をつけろ。…10秒以内にだ。」

「え?え??」

皇にもの凄い圧をかけられ、壁に手をついた。

 

「……ついたぞ。」

「よし。始めろ剣崎。」

「かしこまりました。」

「いや、ちょっ。おま…!どこ触ってんだよ!」

壁に手をついたかと思えば、今度は剣崎が身体を弄りはじめた。

 

「……怪しい持ち込み物はありませんでした。」

「ご苦労。」

「おい、とりあえず説明してくれ。」

何もかもが急すぎて、頭が追いつかない…。

 

「む、すまんな。昨日事件が起こったばかりだ。凶器を持ち込んでいるとも限らない。とりあえず3日だけ、朝食と夕食前に手荷物検査をする事にした。」

…まぁ、その通りか。

心なしか、先に来てた皆の顔がぐったりしてる様に見えたのはそのせいか。

 

「って、お前もしかして女子にもやったのか?」

「当然だ。…まぁ、女子は宵月にやってもらったが。」

「…私は女子で一番に来たから、思いっきり触られたわ。」

うわ、見て分かるくらいめっちゃ不機嫌だ。

…邪な事考えたら、殺されるぞこれ。

 

「おはよぉ〜。ふわぁ〜。」

そこへ、柊が食堂へやって来た。

「おはよう、柊さん。突然で悪いけど壁に手をついてもらえるかしら?」

「え?…はぁい、ついたよ。」

 

「失礼するわよ。」

「え??……ぅんっ、くすぐったいよぉ。………ひゃんっ。」

 

「……私より背が低いくせに立派なモノ持って…。」

 

……宵月が小声でなんか言ってる。手荷物検査目的とは別の私怨を感じるんだが。…なんか柊の反応も妙に色っぽいし。

 

 

 

 

ともかく、全員揃ったので朝飯を摂ることになった。

 

「……美味い。」

元々剣崎達の料理は美味かったが、今日はいつにも増して美味く感じた。

……美味い物を食べると生きてる実感が湧くって話を聞いたことあるけど、ホントなんだな。

 

 

そこへ、

「やぁやぁオマエラ!朝から何しけた顔してんだよ!お葬式ムードですか?」

……一気に飯が不味くなることを言う奴が現れた。

 

 

「………吹っ飛ばされたいか?」

「キミの身体を解体手術してやろうか?」

「キサマのプログラムを書き換えるぞ?」

………ある意味モノクマより怖ぇ。

 

「全く、近頃の若いのは話を聞こうともしないんだからさ…。オマエラにいい話を持ってきたってのに。」

「いい話…ですか?」

「おっ?食いつきましたね?実は学級裁判を無事に乗り越えたオマエラの為にプレゼントをいくつか用意させていただきました!」

「プレゼント?」

 

「まずはモノドロイドにアプリを2つ追加します!1つ目はカメラ機能!これで好きなだけ写真を撮って思い出を作って下さいね!そして2つ目は学級裁判時にメダルをあげたの覚えてますか?」

「あぁ…。あのスロットのメダルか?」

「あのメダルは『モノクマメダル』といいます!そのモノクマメダルを管理するアプリとなっています!名付けて『モノバンク』!今回は初回サービスで全員に100枚振り分けています!お互いにメダルの受け渡しも出来るので是非活用してね!」

すると、モノドロイドにアプリが増えた事を通知するメッセージが入った。

 

「次のプレゼントは、この学園内のエリア開放です!校舎内の3階へ行く階段のシャッターを通れるようにしておきました!それから…。」

「ふぅ、やれやれ。モノクマ説明は終わったか?」

「あっ父さん!あとは『あそこ』だけだよ!」

「よし、分かった。全員いるみたいだし、来てもらおうか。」

 

 

 

 

 

モノクマ達に連れてこられた場所はーー

 

「あれ?ここ…」

夜に散歩してた時にモノパパが壁を殴ってた場所だった。

 

「…よし。行くぞモノクマ。」

おいおい、何する気だ?

 

すると、

「「ハァァァァァァ…!!」」

モノクマ達は何やらエネルギーを貯めはじめた。

 

「行くぞ!気を集中しろ!」

「ハイ!」

「「波ーーーーーーーーー!!」」

叫びながら、二体は光線を放った…!

 

「…くっ!」

「どうしたモノクマ!お前はまだ力を出し切ってないぞ!爆発させるんだ力を!」

「こ、これ以上は無理だ…!父さん…!」

「オレはお前を信じてる!さぁやってみせるんだ!」

 

「……ねぇ、アタシらは何を見せられてんの?」

「さぁ?」

 

モノクマ達のコントを見てると、

「あっ、見てください!壁にヒビが…!」

 

「あと少しだ!こらえろモノクマ!」

「ハイ!」

「「だぁぁぁぁぁぁ!!」」

最後の一押しで壁の一部が崩壊した。

 

 

「ーーふぅ。成長したな。」

「そんな事ないよ父さん!ほとんど父さんのお陰だよ!」

「フッ。オレは戦闘力53万だ。本気を出せば、この学園どころか地球を吹っ飛ばす事すらチャラヘッチャラだ。」

「声的にキサマは負ける立場だがな。」

「氷室さん、それ以上は止めとこう。……色々とマズいから。」

 

「それより、何故壁を破壊した?」

「あっ!もしかしてわたくし達を帰して…。」

「そんな訳ないでしょ。ったく甘っちょろいんだから。」

「何故壁を破壊したか…。それはその向こうを見れば分かるだろう。」

 

 

 

そう言われたので、壁の向こう側を見ると

「……なんだあのデカい建物は?」

大きな建物が聳え立っていた。

色がモノクマ達と同じように白黒の2つに分かれている。

 

「そう、あれこそがオレ達からのプレゼント。……その名は『モノクマタワー』。」

「モノクマタワー…。」

「タワー内にも色々な施設を用意している。……勿論、研究資料室もあるからな。校舎も三階以外のエリアが増えているので、興味があったら色々見てくれ。」

「それでは、ボクらはこれで失礼します!是非探索してねー!」

そう言い残してモノクマ達は去った。

 

「校舎3階とモノクマタワー…か。」

「どっちも気になるなぁ。」

「どちらも研究資料室があるのですよね?私は校舎内を探索したいのですが…。」

「新しい建物よ?私はモノクマタワーを探索したいわ。」

「…意見が割れたな。」

 

「仕方ない。二手に分かれよう。」

皇の提案で班を分ける事にした。

 

校舎内探索班は

・俺

・小鳥遊

・皇

・八咫

・夜桜

・東雲

・シルヴィア

の7人。

 

モノクマタワー探索班は

・宵月

・葛城

・柊

・剣崎

・獅子谷

・氷室

・飛田

の7人になった。

 

「では前回同様、食堂に集合。時間は…今10時だから、昼の12時しよう。では解散。」




班を分けた理由…ここまで言えば分かるわね?


余談ですが、タイトルの元ネタはAqoursの楽曲
『青空Jumping Heart』です。

チャプタータイトルは今回結構悩みました。


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(非)日常編2-1 SIDE:A

探索編です。
今回はアンケートが多かった暁日視点となります。


班を分け、俺達は校舎内を探索する事になった。

 

「あ、暁日君。探索一緒に行こう。」

「小鳥遊。勿論いいぜ。」

これまで通り、小鳥遊と行動する事にした。

 

「あ、ちょっと待ってくれ。聞きたい事があるんだ。」

「うん?何かな?」

「実はーー」

 

俺は夜に目撃した事を話した。

「黒いコートの男?」

「あぁ、何か知らないか?」

 

「うーん…。そいつの顔は見たの?」

「いや、暗かったし帽子を深く被ってたから見えなかった。」

 

「……ごめん、ちょっと分からないかな。」

「いや、いいんだ。黒いコートなんてありふれてるしな。……でも一つ考えられるとしたら…。」

「僕達以外の『超高校級』の才能を持った誰か…。」

「…だよな。」

でも、17人目なんてあり得るか?壁に出入り口はないし。

 

「実は17人目とかでも無くて、誰かのコスプレだったりして。」

「いや、それはないだろ!てか、なんで夜中にコスプレしてるんだよ!それはそれで怪しいだろ!」

「だよねー!アハハ!」

「ハハハハ!」

もう訳が分からなくなり、半ばヤケクソで笑ってた。

 

「………行こうか。」

「……そうだな。」

 

 

 

ーー校舎二階、三階への階段前

 

「……ホントにシャッターが無くなってる。」

「新たに増えたエリア…さて、何があるやら。」

 

 

 

ーー校舎三階

 

「雰囲気的には…特に変わりないな。」

「まぁ、学校だからね。あまり変わり映えはしないかも。」

 

三階にも二階同様に普通の教室が3つあった。

今回は2-A 2-B 2-Cと表札に書かれていた。

 

「教室は二階と一緒だな。」

「まぁ、わざわざ変える必要もないからね。」

 

2-Bの黒板にだけ、『なんで教室なんかに来たんすかね?』と書かれていたが、深く考えない事にした。大方、モノクマのイタズラ書きだろう。

 

 

ーー

 

次に見つけたものはまるで“KEEP OUT”の帯が描かれた金庫のような形をした大きな扉だった。

金庫と”KEEP OUT”…この二つから考えられるのは、『脱獄囚』の研究資料室だろうか?

 

「よし、入るか。」

「あ!今入っちゃダメ!」

「え?」

 

扉を開ける瞬間、アレックスが制止する声が聴こえた。それと同時に警報が鳴り響き、パトランプで部屋中が真っ赤になった。

『侵入者発見!侵入者発見!これより、撃退モードに移行します!』

という警告音が鳴ったと思ったら、顔を何かが掠めた。

「………え?」

壁を見ると、丸く焼け焦げていた。

 

飛んできた方向を見ると、マシンガンとレーザーの銃口が俺を狙っていた。

「ちょ……嘘だろ?」

悪い予感が当たり、マシンガンからは銃弾がレーザーからは光線が次々放たれた。

「うわわわわわわぁぁぁぁ!!」

「あ、暁日君!」

やばい、これマジで死ぬ!助けて!

 

「だ、誰か止めてくれぇ!」

「待って、すぐ止めるわ!」

 

 

アレックスが装置を止めてくれたおかげで俺は事なきを得た。

「ハァ…ハァ…。マジで死ぬかと思った…。」

「まさか入ってくるとは思わなかったから、流石にワタシも焦ったわ…。」

「で、でもなんであんな物騒なものがあるの?」

「あれはこの部屋にある警備システムよ。」

「警備システム?」

 

「ワタシの研究資料室は色んなパターンの防犯装置への対応シミュレーションが出来るようになってるの。あの時は赤外線センサーを張り巡らせて試してたから…。」

「…あぁ、なるほど。ドアか俺がたまたまセンサーに当たって反応してしまったって訳か。」

「そういう訳ね。……危ないから、次からシミュレーションしてる時はドアに注意書きをしておくわ。」

「頼む。……冗談抜きで。」

 

あんな恐ろしいものがあるとは…。出来るだけこの部屋には近づかないでおこう。

「そうねぇ…お詫びと言っちゃなんだけど、ちょっとこの部屋見て行かない?」

「え?別にいいけど…何かあるのか?」

「実は奥がちょっとした美術館になっててね、ワタシが今まで手に入れたお宝が置いてあるのよ。」

「へぇ、面白そうだな。ちょっと見せてくれ。」

「じゃ、付いてきなさい。」

 

アレックスに付いていくとホントに美術館みたいになっていた。

「すげぇ…。これ全部本物か?」

「本物はアジトにあるから…これらは多分レプリカね。持ち出す事も出来るわけないだろうし。」

 

「一つずつ見ていきましょうか。まず、これは千年前のエジプトの王様が作らせたと言われてる7つのアイテム。当時はこれらを使って罪人を裁いていたらしいわ。」

「リング、ロッド、ピラミッド型の立体パズル…。よく出来るな。」

「これ…もしかして純金?一体いくらなんだろ…。」

 

「それから、これはどんな願いも叶えるという曰く付きの聖杯よ。かつてこれを巡って“聖杯戦争”が起こったとか…。」

「これが願いを叶えるとか…ちょっと胡散臭いな。」

「まぁ、そういう伝説があるよってだけかもね。」

 

「これは、ワタシのお気に入りよ。」

と言って見せたものは何の変哲もない四つのクリスタルだった。

「特に変わってるようには見えないけどな…?」

「このクリスタル…神話の時代からあったと言われる代物なの。それぞれ風、火、水、土の属性を持ってて、一つでも壊れると世界が滅びる…なんて言われてるわ。」

「う、嘘くさ…。」

 

「不思議な事にこのクリスタル、色んな国に全く違う伝説があるのよ。例えば、ある国は4人の勇者がその手に携えていたもの、またある国は神様に近い存在によって与えられた使命を成し遂げた人間の成れの果て…って感じでね。一つ言えることはただの石じゃないって事かしら。」

「へ、へぇ…。」

 

他にも色々なお宝を見せてもらった。

秘密が錠と鎖になって実際に見える勾玉、まやかしを打ち破り真実を映し出す鏡…。

妙にオカルト臭いのが多いな。

 

……あとで宵月に教えてやるか。

こういうの好きそうだし。

 

ーー

 

 

一方、モノクマタワーの宵月は…

「……くしゅっ!……?……風邪、かしら?」

 

 

ーー

 

アレックスの研究資料室を出て次は“図書室”の表札がある部屋に来た。

「………ゲホッ!凄い埃っぽいな。」

「酷い埃だね。かなり長い間放置されてたのかな。」

それに暗い。中の様子が分からないので電気を点けると、

 

「…なるほど、こりゃ埃が溜まるわけだ。」

「うわぁ…!すごぉい!」

部屋は天井に届く程の量の蔵書で埋め尽くされていた。

 

そこに、

「なんで図書室なんかに行ったんすかね?」

モノクマが現れた。

「なんだよ、行ったら悪いのかよ?」

「全然そんな事ですよ!それよりこの本の数、驚いたかな?」

 

「あぁ。とんでもない数だな。」

「ここは別名『地球(ほし)の本棚』!小説・図鑑・古文書といった地球の記憶とも言えるあらゆる本が置いてあるんだよ!」

「へぇ…。でも、そんな数の本があったら探すの大変じゃないか?」

「ご心配なく!タブレットを用意してるので、そこから検索すれば一発だよ!まさしく、検索する無限のアーカイブ!記憶という海へとダイブ!」

 

「ねぇっ!ちょっと、見てきてもいい!?」

こんなに目が輝いてる小鳥遊初めて見たぞ…。

「迷子になるなよ。」

「わーい!」

いつにもなくはしゃいだ様子の小鳥遊。

これだけの本の数、情報屋にとってはたまらない場所かもな。

 

 

小鳥遊が探索してる間、俺は休憩がてら本を一冊取り、近くのテーブルで読む事にした。

 

タイトルは

『探偵少年とピアノ少女〜放課後の図書室で秘密の連弾〜』。

どうやら、恋愛小説っぽいな。あまり読むジャンルじゃないし、ちょっと楽しみだ。

 

…気弱な少年探偵と活発なピアニストの少女の2人の物語か。少女に影響されて次第に前向きになっていく少年。そして、いつしか少女に恋心を抱いた少年はある日、少女を誰もいない図書室に呼び出し、少女をおもむろに押し倒して………ん?

「…ってこれ、官能小説じゃないか!」

 

なんでこんなもんまであるんだよ!

八咫や夜桜が読んだら卒倒するぞこれ…。

小鳥遊に見られたら、なんて言われるか………とりあえず、戻しておこう。

 

そう思い、本棚を見ると

『幸運少年と探偵少女〜閉ざされた学園で秘密の調査〜』

『絶望少年とゲーマー少女〜南国の島で秘密のマルチプレイ〜』

「………シリーズ化してるんかい!!」

どんだけ人気なんだよ!?

 

1人で漫才染みたことをやってると、

「暁日くーん!ちょっと手伝って!」

小鳥遊に呼ばれた。

「小鳥遊。どうした?」

「この上の本を取りたいんだけど…この脚立、ちょっと不安定だから押さえててくれる?」

「いいけど…大丈夫か?俺が代わりに取るけど。」

「大丈夫だよ。それに暁日君、高所恐怖症でしょ?」

「う、まぁそうだけど。」

 

……やっぱり知ってたか。この脚立結構高さがあるし不安定だから、間違いなくビビる自信がある。学級裁判の時も席が変形した時は正直、死ぬかと思った。今考えたら、意見が分かれる度にあれやるのか?…嫌すぎる。

 

「大丈夫大丈夫。上の本を取るだけだからすぐ終わるよ。……でも、ちょっと怖いからしっかり支えてね?」

「分かった、任せろ。」

「………ととっ。…………うん、取れたよ。」

 

「了解。片手塞がってるから、降りるのも気をつけろよ。」

「大丈夫だってば、心配しすぎ。

 

…………うわぁっ!」

小鳥遊は足を踏み外して脚立から落ちた。

 

「小鳥遊!危ない!」

思わず俺は落ちてきた小鳥遊をキャッチした。

「…ふぅっ。大丈夫か?」

「う、うん…ありがとう。」

小鳥遊の体重が軽かった事もあって、どちらもケガをせず上手くキャッチ出来た。

 

 

 

………しかし、改めて見ると可愛い顔してるな、コイツ。

身体も華奢だし何も知らなかったら、女の子にしか見えないぞ。

 

…って、俺は男相手に何考えてんだ!断じてそっちの気はない!

「…ねぇ、そろそろ降ろして欲しいんだけど。」

「……あっ、悪い悪い!すぐ降ろすよ!」

今の俺達の体勢は所謂“お姫様抱っこ”の状態だ。

流石にずっとこれだとどっちも恥ずかしいよな。

 

この後は小鳥遊が本を読むのに付き合っていた。

…その間、何故か妙に気まずい雰囲気になっていた。

 

ーー

 

「三階はこの部屋で最後か…。」

残すは縦にすりガラスを取り付けたスリッドドアのある部屋となった。

このドアはオフィスの入り口に使われるタイプだ。

「……ってことはもしかして、俺の研究資料室か!?」

 

ついに俺の部屋が来たと期待してドアを開けると、

「……あら?御二方もこちらの探索ですか?」

部屋の中はオフィスのようになっていた。

そこに居たのはなにやら資料を読んでる八咫と、お茶を飲んで寛いでいる夜桜だった。

 

「そうだ。…ここは何の部屋だ?」

「ここは私、『会計委員』の研究資料室みたいですね。経理に関する資料が沢山置いてありました。」

「お、俺のじゃなかった…。」

結構期待してたから、ショックがでかい…。

 

「と、とりあえずゆっくりしていってください。お茶とコーヒーがありますが飲みます?」

「お、お茶で…。」

「あ、僕もお茶。」

 

 

「ーーどうぞ、熱いので気をつけてください。あと、お菓子もありますのでこっちもよかったら。」

「あぁ、ありがとう…。」

八咫が出してくれたお菓子には『銘菓 モノクマ饅頭』と書かれていた。

包み紙を剥いて中身を取り出すと、モノクマ同様左右が白黒に色が分かれた饅頭が入っていた。

 

…怪しいが食べないのも折角出してくれた八咫にも悪いし、食べてみるか。

「あれ?結構美味いな。」

どうやら、中身は白餡と粒餡の2種類が入った饅頭みたいだ。

「あ、ですよね?甘さも程良くてお茶に合うんですよ!わたくし、気に入ってしまって!」

「夜桜さん、すっかりこのお饅頭とお茶が気に入ったみたいでここに入り浸ってたんですよ。」

「しあわせぇ…。わたくし、ずっとここにいても良いですわぁ…。」

夜桜、蕩け切ってるが…目的、忘れてないか?

 

「……さて、気を取り直した事だし資料を見せてもらおうかな。」

「ええ、どうぞ。」

 

 

…なるほど、会社毎に利益の傾向と備品をまとめてファイルしてる訳か。

工場なんかだったら、機械の維持費、原料や資材の値段なんかも載ってる。

これなら、予算の使い道がよく分かるな。

それから……これは世界の通貨の相場か。ドル、ユーロ、円、それから人民元、ウォン…流通の多いメジャーな通貨から、逆に流通の範囲が狭いマイナーな通貨まであるのか。

これだけ通貨の種類も多いと株の動きも追いやすいし、国毎の比較も出来る。

 

 

 

「……うん…………うん。なるほど……。ありがとう、なかなか興味深かったよ。」

「もう良いのですか?」

「今は探索中だからな。後でゆっくり読ませてもらうよ。」

「探索……。ほへぇ…そういえば、今何時なのでしょうかぁ…?」

夜桜……緩みきってるな。

「えーと、今11時50分だからあと10分で集合時間だね。」

「丁度いい時間帯だな…。そろそろ食堂に行こう。」

 

そろそろ集合時間前になったので、俺達は三階を後にして食堂へと向かった。




探索編、暁日サイド終了です。
今回は何故か、パロディや原作ネタがやけに多くなりました。

次回はついに『彼女』の視点で描かれます。


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(非)日常編2-2 SIDE:Y

探索編です。
今回は皆さんお待ちかね(?)宵月視点となります。
宵月の相棒…果たして誰になるかご期待ください。


班を振り分けてもらい、私はモノクマタワーを探索する事になった。

 

「さて、どこから回ろうかしら…。」

と考えていると、

 

「宵月さん、ちょっといいかな?」

葛城君が声を掛けてきた。

「何かしら?」

「探索、良かったら俺と回らない?」

 

「構わないけど…なんで私と?今回は複数人で行動するようには皇君には言われてないわ。」

「それに関しては…理由があるんだ。」

「理由?」

「君は前の学級裁判でも事件を解決するきっかけを作った。だから、君と一緒にいる事は色々有利になると思ったんだ。」

「ふーん…。」

…彼なりに色々と考えている、という事かしら。

 

「それから、もう一つ理由がある。」

そう言うと、彼はやたら神妙な面持ちになった。

「君みたいな美人さんを放っとく訳にはいかないからね。俺にとっては正直、こっちの方が重要だよ。」

「………ハァ、置いて行くわよ。」

真面目な顔をして何を言うかと思ったら…ただ口説きたかっただけとは。

「ありゃ…フラれちゃったかな。」

 

 

 

ーー

 

 

「………で、結局付いてくるのね。」

「断られた訳じゃないからね。それで、何処から回ろうか?」

「そうね…2時間もあれば、十分見て回れると思うから…。」

とりあえず、マップを開いてみる事にした。

 

「…あら?タワーの外にも施設があるのね。」

「あっ、ホントだ。じゃあ先に外から見て回ってみる?」

「異論はないわ。行きましょう。」

 

 

ーー

 

 

タワーから少し離れた所は鬱蒼と生い茂った森になっていた。

森の中には道があり、そこを歩いて行くとーー

 

まるで童話に出てくるようなお菓子で出来た家があった。

このファンシーな見た目の建物が似合う人物…

「……ここは恐らく『絵本作家』柊さんの研究資料室ね。」

 

ドアを開けて中に入ると部屋のベッドで柊さんが寝ていた。

「すぅ…すぅ…。」

「一応探索中なのに、呑気なものね…。」

「うぅん…。」

彼女が寝返りをうつとスカートが捲れ、太ももが露出した状態になった。

…男の子がいる前でこんな姿晒すのもまずいし、起こしてあげましょうか。

 

「柊さん…起きなさい。」

「ぅん……ふわぁ…………はぐぅ。」

「え!?……キャッ!!」

一瞬起きたと思ったら、私を凄い力でベッドへ引きずり込み、そのまま抱き枕にしてしまった。

「えへへぇ…。」

「こ、コラ…!離しなさい!」

 

「へぇ…。女の子同士で仲良くベッドインとは、大胆な事するねぇ。俺はそういうの嫌いじゃないよ。」

葛城君は顎に手を当ててニヤニヤしながら呟いた。他人事だと思って…!

「何バカな事言ってるの!早くなんとかして!」

「冗談だよ、冗談。………ほら柊さん、起きて。」

 

「………あれぇ?なんでまいちゃんが一緒に寝てるの?それにきょーやくんも……もしかして夜這い?」

なんで夜這いなんて知ってるのよ…。

「……あなたがこの部屋で寝てるのを見かけて、起こしに来たらあなたに抱き枕にされたのよ。」

 

そう言われて柊さんは何かを考え始めた。

……ボーッとした顔してるから正直、考えてるようには見えないわね。

「…そうだ。この家を見つけて中に入ったら、余りにも居心地が良くてつい寝ちゃったんだ。えへへ、ご迷惑をお掛けしましたー。」

「ホントにご迷惑だったわよ…。それで結局、この家はあなたの研究資料室でいいのかしら?」

 

「うん。アトリエやわたしの描いた絵本があったし、わたしの研究資料室で間違いないかなー。……ふわぁ。」

このまま放っといたらここに入り浸ってまた寝ちゃいそうね。

「今からタワーの方に行くけどあなたも着いてくる?」

「うーん…そうしよっかな。また寝ちゃいそうだし。」

 

「よし、じゃあ行こうか柊さん。」

「テレレレーン、柊色羽が仲間に加わった〜。」

「全く…ゲームみたいな事言ってないで行くわよ。」

「舞ちゃんが勇者、狂也くんが戦士、わたしは魔法使い。うん、完璧だね。」

「俺はどっちかっていうと盗賊とかの方がいいかなぁ。」

 

「………攻撃ばっかりで、回復役がいないじゃない。」

「勇者は回復も出来るよ。」

「突っ込むところ、そこじゃないわ。」

私が勇者って…。一応女なんだし、もうちょっと僧侶とか可愛い職業にして欲しかったんだけど。

 

「そう言えばずっと気になってたんだけど、この家って食べれるの?」

「まさか、そんなわけ…。」

「食べれるよー。」

「嘘でしょ!?」

ある意味今日一番の衝撃だわ…。

 

 

ーー

 

 

ようやく、タワーにやって来た私達をエントランスにある大きなアクアリウムが迎え入れてくれた。

「うわぁー…おっきぃ。サカナたちのパーティーだぁ。」

「横幅は10m、高さは8m、奥行きは8mくらいかな…。水族館並みの大きさだ。」

「サメや鰯の大群、熱帯魚…。日本じゃあまり見られない魚もいるわね。それにしてもこの大きさでこれだけ数と種類の魚…。とても1人、2人だけじゃ管理できないわよ。」

 

「ふっふっふ。どうだこのアクアリウム、凄いだろう?。」

「あっ、クマちゃんのパパ。これクマちゃん達だけで管理してるの?すごいねぇ。」

「ガハハ!そうだろうそうだろう!…と言いたいが実はそうではないんだ。」

「じゃあ、一体どうやって管理してるの?」

「この水槽内は全てコンピューターによって管理されていてAIが魚の生態や体調に応じて、餌や水温を調節してるという訳だ。それからこの水槽、実はそれほど奥行きはないんだぜ?」

 

「どういうこと?」

「一見巨大に見えるが奥行きだけ鏡で誤魔化してるんだよ。本当の奥行きは半分の4m程度で魚も実際は見えている数より少ないって訳だ。」

「…あ、ホントだー。水槽の奥にわたしたちが映ってるね。」

「なるほど、水と魚で遮られてるから分かりにくくなってるってわけか。」

せ、せこい発想ね…。

 

「ところで諸君。もし興味があるなら、バックヤードも見ていくか?」

「バックヤードか…。面白そうだね、見に行こう。」

「はいっ、わたしも見たいですっ。」

「別にいいわよ。行きましょう。」

「そうか、また他のメンバーみたいに断られると思ってたが…。よし!行くぞ諸君!」

この様子だと…説明したくてウズウズしてたみたいね。

 

 

ーーバックヤード

 

というわけで、バックヤードに来た私達。

そこでは複数のコンピューターが忙しなく稼働していた。

「このコンピューターは全てアクアリウム専用でな。特注品なんだ。」

「餌撒きシステム、水温調整、魚の体調管理…。随分と大袈裟ね。」

「全部我々で行うには無理があるからな…これがあるとないとでは全然違うぞ。」

 

「ねぇー。これなにー?」

そう言いながら柊さんはある装置を指差した。

「それはあの鏡を動かす機械だ。」

「え、あの鏡動くの?」

「水槽内の掃除をする時は片方に水と魚を寄せて掃除するんだが、その時の仕切りとして鏡を動かすんだ。」

「掃除はいつするの?」

「3日に1回、諸君が寝てる夜時間中に行ってるぞ。」

 

「もしかして、ここが開放する前からやってたのかしら?」

「そりゃそうだろう。いつ開放してもいいように準備しておくのは当然だろう?」

真面目なのかよく分からないわ…。

 

 

ーー

 

 

モノパパからエントランスのアクアリウムの説明を受けた後、私達はエレベーターで5階へ上がってきた。モノパパ曰く、その間の階は色々な機械があるから立ち入り禁止みたい。

 

「う、うるさいわね…。何よこの騒音。」

「どうやら、ここはゲームセンターみたいだね。ワンフロア丸ごと使ってるのか。」

「あ、幽華ちゃんだー。おーい。」

「む。キミたちか。」

どうやら、ゲームをしていたようね。

 

「ここのゲームはモノクマメダル一枚でワンプレイ可能だ。遊ぶならモノバンクのメダルをそこの両替機で替えてこい。」

「よし、ちょっと遊んでこうかな。」

「ちょっと、探索はどうするのよ?」

「もちろんここの探索ついでだよ。」

絶対嘘だ。

 

「葛城。ちょうど暇してたから対戦相手になってもらおうか。」

「お、いいよ。言っとくけど俺、ゲームは結構得意な方だからね?」

「フッ…そう言っていられるのも今のうちだ。ゲームプログラマーの才能がなければeスポーツプレイヤーとしてスカウトされてただろう、この私の華麗なプレイスキルを見るがいい!」

 

 

 

 

「フハハハハ!!どうしたどうしたぁ!!動きが止まってみえるぞ!?」

「………いや、ちょ!強!嘘だろ!?なんで重量タイプのキャラがそんな動きしてんの!?」

「強靭!無敵!!最強!!!」

「狂也くんがんばれ〜。」

「うわああぁぁぁぁぁ!!」

「粉砕!玉砕!!大喝采!!!ハハハハハハ!!」

「うわぁ〜ボロ負けだぁ。」

 

 

 

 

葛城君達の対戦には興味が無かったので、ゲームセンター内を1人探索していた。

騒音はあまり好きじゃない。

出来るなら早く離れたいんだけど…。

 

「ここはクレーンゲームのコーナーみたいね。……あら?」

そこでふと目に入ったのはシマエナガのぬいぐるみだった。

「……可愛い。」

思わず欲しくなったのでメダルを何枚か両替して挑戦してみることにした。

 

「……よし、………あっ。」

1回目は失敗。ぬいぐるみは意外と大きく、掴むのが難しい。

「次こそは……あぁっ。」

2回目も失敗。

「今後こそお願い………もう!」

3回目も失敗した。

 

「……ハァ、ダメね。」

もう無理そうだったので諦めようとした所、

「あ、いたいた。ごめんね放置しちゃって。」

「葛城君、もう終わったの?」

「いやーもうダメ。流石に強すぎる。それより、このぬいぐるみが欲しいの?」

「別にいいわよ。取れる気がしないし。」

「じゃ、俺が取るよ。ちょっと変わって。」

 

「無理に取らなくてもいいわ。メダル無くなっちゃうわよ?」

「大丈夫。言ったでしょ?ゲームは得意なんだ。」

そう言うと躊躇いなくメダルを一枚入れた。

けど、ぬいぐるみは位置がズレただけで掴めなかった。

 

「ね?そうなっちゃうのよ。」

「このタイプは掴むんじゃなくて、少しずつ動かして穴に落とすタイプなんだ。宵月さんがある程度動かしてるから、多分あと二回くらいやったら…。」

そう言いながら慣れた手つきでクレーンを操作し、ちょうど3回目でぬいぐるみは穴に落ちた。

 

「はい、どうぞ。」

「あ、ありがとう…。」

「あれ?もしかして、お気に召さなかったかな?」

「そんなことないわ。」

むしろ嬉しい。誰かからプレゼントされる事なんて初めてだからこのぬいぐるみ、大事にしなきゃ。

 

すると、どこからか視線を感じたのでその方向を見ると、

「…じーーー…。」

柊さんが、物影からこちらを見つめていた。

「……何してるのよ。」

「…お似合いだなぁって。」

「冗談じゃないわ。なんでこんな優男と。」

「ひどっ!?」

 

「ほら、さっさと次行くわよ。」

プレゼントしてくれたのは嬉しいけど、それとこれは別。

たかが数日過ごしただけの人間に恋愛感情が起きるなんてある訳ないじゃない。

 

 

ーー

 

 

エレベーターで6階に上がってきて私達。

6階はそれまでの階とは打って変わって木造のフロアになっており目の前に同じく木製の扉があった。

「木造…ログハウスのイメージかしら?だとすると、このフロアは『登山家』獅子谷君の研究資料室という事?」

 

扉を開けて中に入ると、

「……ふっ……ふっ………ムッ。……お前達か。」

獅子谷君がトレーニングをしていた。

 

「獅子谷君、ここはあなたの研究資料室かしら?」

「………ここの環境は俺によく馴染む。俺の部屋で間違いないだろうな。」

「トレーニングしてたみたいだけど、どういうトレーニングしてたの?」

「……低酸素運動というものだ。」

「低酸素運動?」

「………標高が高い山は空気が薄いのは知ってるよな?……プロの登山家は意図的に空気を薄くし、山と同じ環境でトレーニングし予め身体を慣らしてから山を登るんだ。」

 

「でも、ここには山なんてないよね?」

「………山がなくても普段からトレーニングはしてるからな。…………やってないと落ち着かないんだ。」

なるほど、その身体はトレーニングの賜物という訳ね。

 

「ねぇ、岳くん。この写真なに?」

柊さんが指差したものは、雲海と太陽が写った写真だった。

「…………それは俺が撮ったものだ。……俺はいつも山を制覇した証として山頂から風景を写真に撮るようにしてるんだ。……何故ここにこの写真があるのか疑問だがな。」

 

「それにしてもすっごく綺麗だねー。絵にしちゃいたいくらいだよー。」

「……山は良いぞ。………苦労を乗り越えた人間にしか見る事の出来ない、自然が作り出した奇跡を見る事が出来る。………芸術と言っても過言ではない……。」

自然が作り出した奇跡…か。多くの山を制覇した彼だから言える事ね。……それにしても意外と詩人なのね、獅子谷君。

 

「登山…一回くらいは、体験してみたいわね。」

「…何、興味あるのか?なら必要な道具、天候の知識、遭難した時の対処法とか色々教えてあげるぞ。安心しろ、素人向けの山と言うのもごまんと存在するからな。」

「お、落ち着いて。あくまでもここから出ない事には始まらないわ。」

「…す、すまん。…俺とした事が早とちりしてしまった……。」

凄くイキイキとした表情をしてたわね…。あんなによく喋る獅子谷君、初めて見たわ。

 

「…そう言えば、小鳥遊君から聴いたことだけど暁日君って高所恐怖症らしいよ。彼には登山はちょっと厳しそうだね。」

「………そんな事言っているからアイツはもやしなんだ。………登山とトレーニングは肉体、精神を鍛えるのに最適だ…………そうだ、ここでアイツを鍛えてやるか。」

暁日君…ご愁傷様。

 

 

ーー

 

 

一方、校舎内を探索している暁日は…

「…へくしっ!」

「どうしたの暁日君?急にくしゃみして。」

「いやなんかいきなり…。風邪か?」

「もしかして、誰か噂してたのかも。」

「まさか、そんなことないだろ。」

 

 

ーー

 

 

「そういえば今何時かしら?」

時間が気になったので確認すると、11時30分。

「あと30分で集合時間ね。校舎より距離があるし、そろそろ戻った方がいいかもしれないわね。」

「もうそんな時間か。じゃあ食堂へ行くとしようか。」

「はーい。では、食堂へゴー。」

「……御意。」

 




探索編、宵月視点終了です。
今回初めてもう1人の主人公に焦点を当てたのですが、いかがでしたか?
上手く差別化出来てるといいのですが…。


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(非)日常編3

今回は平和に交流・イベント編。 
気合入れすぎて、今までで一番長くなってしまった…。


「……さて、全員揃ったようだし第二回ミーティングを始めよう。まずは、校舎探索班から成果を報告してくれ。」

 

皇にそう促されたので、俺が報告した。

「校舎内は、モノクマの言った通り三階への階段が開放されていた。三階にあったのは、これまで通り普通の教室が3つ。それからアレックスと八咫の研究資料室、それと図書室があった。…以上だ。」

「八咫さんの研究資料室にはとっても美味しいお饅頭がありましたわ。一箱持ってきたんで皆様どうぞ。」

それは報告しなくてもいいだろ…。

 

「了解した。他にはあるか?」

「では、オレから。オレと皇クンで以前から開いてるフロアを探索したところ、新しい場所が開放されていた。」

「あぁ、確かにあったな。」

「何があったんですか?」

 

「驚くなよ…。なんと、温泉が開放されていたのだ!」

「温泉だと!?」

「一階に露天風呂が増設されていたんだ。ちなみに効能は肩こり、腰痛、目の疲れ、冷え性に効果有りだそうだ。」

「温泉か。いいね!あとで入ろうか!」

「待てその話は後だ。校舎内は以上か。では次は例のタワー探索班、報告を。」

 

「じゃあ、私が報告するわ。タワー内にはエントランスにアクアリウム、5階にはワンフロア丸々使ったゲームセンターが、6階には獅子谷君の研究資料室があったわ。それから、タワーの敷地内には森があるんだけどその奥に柊さんの研究資料室があったわ。…こんなところね、私からは以上よ。」

「………アクアリウム?」

ボソッと皇が呟いたが、アクアリウムに一番興味を惹かれたのか…。

 

「ちなみに、舞ちゃんが抱いてるシマエナガさんのぬいぐるみは狂也くんがゲームセンターのクレーンゲームで取ってあげたものですっ。」

「ちょっと!余計な事言わないで!」

柊がさらっととんでもないカミングアウトをした。

宵月が抱いてるあのデカいぬいぐるみ、ずっと気になってたけどそういう事だったのか。

 

案の定、宵月への冷やかしが始まった。

「な、何で宵月さんと葛城さんが?もしかして…キャー!やっぱりそういう事ですか!?」

「ほぅ、遂にカップル誕生か?」

「なら、盛大に祝いましょう!」

「ち、違うわよ!これはただ取れなかっただけで…。」

「いやー、ははは。そう言われると照れちゃうなぁ。」

「アンタも少しは否定しなさいよ!!」

宵月、キレて口調変わってるし怖ぇよ…。

でもこうやって見ると案外お似合い…なのか?

 

収拾がつかなくなりかけたところで、見かねた皇が止めてくれた。

結局、手掛かりになりそうなものは見つからずミーティングは終わった。

 

 

 

ーー

 

 

【暁日サイド】

 

「さて、ミーティングも終わったし俺もタワーに行ってこようかな。」

ゲーセンが気になったので、俺もタワーへ行くことにした。

 

 

ーーモノクマタワー、5階ゲームセンター

 

やっぱり、ワンフロア使ってるだけの事はあるな。

滅茶苦茶広い。迷子になってしまいそうだ。

置いてあるゲームも多種多様なジャンルがある。

レースゲーム、クレーンゲーム、音ゲー、格ゲー…。変わったところだと、VRゲームもあった。

プレイルームにも幾つかあったけど、数は余裕で超えてるな。

 

ゲーセン内を歩き回ってると、見慣れない機械が目に止まった。

見た感じ、ガチャガチャに似てるな…。

「なんだこれ…。ガチャガチャか?」

「お答えしましょう!」

「うわびっくりした。モノクマ、これなんだ?」

「これはモノモノマシーン!メダルを入れてハンドルを回すとアイテムが手に入る素敵なマシーンなのです!」

要は、普通のガチャガチャと一緒って事か。

 

試しにメダルを一枚使って回してみた。

……出てきたのはそろばんだった。

「……これ、どうしたら良いんだよ。」

正直、使い道がない。誰かにあげようかな…。

 

と、考えていると八咫が声を掛けてきた。

「暁日君、何をしてるのですか?」

「ん、八咫か。俺はちょっとここで遊ぼうと思ってな。八咫もか?」

「まぁ、そうですね。こういう場所ってあまり来ませんから…。」

「じゃあ折角だし、一緒に遊ぶか。なんかやってみたいゲームとかあるか?」

「そうですね…。気になったのはあれですかね。」

 

そう言って指差したのはシューティングゲームだった。

「アレはゾンビを銃で倒すやつか。俺もやったことあるけどなんか意外なチョイスだな。」

「だって、カッコよくないですか?敵を銃でバン!まるで映画みたいじゃないですか!」

「うん、確かに気持ちは分かる。よしやろうか。」

 

今回は2P協力プレイで遊ぶことにした。因みにこのゲーム、VRゴーグルを付けて遊ぶから臨場感が半端ない。武器になる銃は数種類の中から選べるが、八咫は使いやすいマシンガン、俺は今回サポートという事で遠くの敵を狙撃するのに適するライフルにした。

 

「キャー!凄い!敵が、敵が目の前に!わわっ、どうすればいいんですか!」

「ゾンビが来たら照準を合わせてマシンガンを撃つんだ!俺はサポートに回るから、お前はドンドン攻撃しろ!」

「照準を…やった!倒せました!」

「やるな!上手いぞ!」

「よーし、このままドンドン行きましょう!」

 

 

調子がついて来たのか、3ステージ目辺りからは

「ほらほら、どうしました!?汚物は消毒ですよー!」

「……もう俺いらないなこれ。…っと取りこぼしか。」

もはや俺のサポートなしでも立ち回っていた。

 

 

「すっごい楽しかったです!ハイスコア出しちゃいましたよ!」

「まさかあんなに飲み込みが早いとは思わなかったよ…。」

「いえ、これも暁日君のお陰です!ありがとうございました!」

「うん。俺も楽しかったよ。……っとちょっと待って。あげたいものがあるんだ。」

 

…八咫って確か会計委員だよな。

「…これ、なんだけど。」

「そろばん…ですか?」

「そうだ。そろばん好きだったよな?気に入ってくれるといいんどけど。」

「………こ、これはそろばん職人“来栖啓司”が作った、世界に3つしかないと言われてる超高級そろばんじゃないですか!!こ、こんなのもらってしまっていいのですか!?」

そ、そんな高級品だったのか、このそろばん。

 

「気にするなって、俺じゃそのそろばん使いこなせないし。使い慣れてる人間が持つ方がそろばんも喜ぶだろ。」

「あ、ありがとうございます!私も何かお礼をしないと…。」

「いいよいいよ。何か見返りを求めてる訳じゃないしさ。」

「だ、ダメです!こんなの貰ったんじゃ相応のものを出さないと等価交換になりません!……そ、そうだ!私の身体で払います!」

……ハァ!?発想が飛躍しすぎだ!

 

「私の身体、好きに弄んでもらって構いません!どうか、それで等価交換といきませんか!?」

八咫はおもむろにジャケット脱ぎ始めた。この状況、見られるのは流石にマズイ!

「ま、待て待て!一旦落ち着け!」

八咫がテンパって話にならないので、一旦彼女の研究資料室に連れて行き落ち着かせることにした。

 

 

 

ーー八咫の研究資料室

 

「とりあえずお茶淹れたから飲め。」

「ありがとうございます……ふぅ。」

「落ち着いたか?」

「はい、お陰様で…。あの、見苦しいところを見せてしまい大変申し訳ありませんでした。」

 

「大丈夫だ。気にしないでくれ……とはいっても、急に服を脱ぎ出したのは流石に焦ったけどな。」

「〜〜〜〜!!」

さっきの事を思い出したのか、顔を真っ赤にして机に突っ伏してしまった。

………あの真面目な八咫からは想像つかない仕草してるの、なんか可愛いな。ギャップ萌えってやつか?

 

「…なぁ、なんで急に身体で払うとか言い出したんだ?テンパって咄嗟に出たにしては変だぞ?」

「そ、それは…えっと…。」

「………もしかして、過去に何かあったのか?」

「………っ!」

やっぱり何かあるみたいだな。

 

「言いづらかったら無理に話さなくてもいいんだぞ。」

「いえ、大丈夫です。私の才能にも関係ありますし…いずれ話さなくてはいけないと思ってました。」

 

八咫はゆっくりと静かに語り始めた。

「私の育った環境は母子家庭で非常に貧乏でした。一日にまともな食事を摂るのもやっとなくらいに…。その上母親もこう言っては何ですが、本当に母親としては最低でダメな人間でした。気に食わない事があれば私の身体に火のついたタバコを押しつけ、ほぼ毎日といってもいいくらいに家を出て帰って来ませんでした。」

「…酷い母親だな。」

「それだけならまだマシな方でした。母親は帰ってくる度に違う男の人を連れ込んで来て、まだ幼い私の『遊び相手』をさせていました。……言う事を聞かないと殴ると脅されて。」

『遊び相手』……間違いなくまともな意味じゃないだろうな。「身体で払う」って言い出したのもそのせいか。

 

「中学生になった辺りからは家から離れるために全寮制の高校へ行こうと勉強を必死でしました。学費を稼ぐためにも年齢を偽ってバイトをした事もあります。……ですが、その学費を全て母に奪って蒸発してしまいました。」

「……なんて母親だ…。許せねぇ…!」

「…もう無理だと諦めた時に奇跡が起こったのです。母が蒸発した後親戚に引き取ってもらい、近くの公立高校に入ってからは生徒会で会計委員をしてました。…その頃に大学を立て直した功績が讃えられた事で超高校級としてスカウトされたのです。…もしスカウトが無かったら私、どうなっていたのか…!ううっ…!」

 

涙ぐむ八咫を見てたら思わず俺は八咫の手を握っていた。

「八咫……辛かったよな。話してくれてありがとう。」

「あ、暁日君……」

「安心しろ。俺は何があってもお前の味方だ。……もちろん、ここから出てもだ。」

「ううっ……!ありがとう……ありがとうございます…!」

 

 

 

「………ちょっとは楽になったか?」

「ありがとうございます。お陰でだいぶ楽になりました。」

「そか、なら良かったよ。」

「…私はどうしても、ここを出なければなりません。私を待ってる人や会わなくてはいけない人がいるんです。」

「会わなくてはいけない人?」

「母が蒸発する前に一度、私には生き別れの姉がいると教えてもらったんです。姉さんに会うまでは、死んでも死に切れません。」

 

「姉か…。分かった!俺も持てる限りの人脈を使って協力するよ!」

「そ、そこまでしてもらわなくてもいいんですよ…?」

「気にするなって。俺はお前のビジネスパートナーなんだからさ。」

「ビジネスパートナー…ですか。フフッいいですね。では、これからも………私の生涯のビジネスパートナーとしてよろしくお願いします。」

「あぁよろしくな。」

「では、早速ですが色々と仕事に関して相談したいのですが…。」

「オイオイ、急だなぁ。」

 

八咫の悩みを聞いた事でお互いの信頼はグッと上がった様に感じた。

………ん?「生涯のビジネスパートナー」って…俺まさかプロポーズされたのか!?

やばい、軽く承諾しちゃったけど冷静になると死ぬほど恥ずかしい。

 

 

ーー

 

 

 

【宵月サイド】

 

ミーティングも終わった事だし、晩ご飯の支度まで時間があるので少し散歩する事にした。

「…んん〜っ。春みたいな気候ね。」

この学園に来てからはずっと晴れてる。暑くもなく、寒くもない丁度良い気候だ。

 

 

中庭の噴水前を通ると、

「〜〜〜♪♪」

柊さんが、持ち歩いてる本にスケッチをしていた。

 

 

………正直、この子は苦手だ。マイペースすぎて話すだけで疲れる。

といってもこの子は悪意があるわけじゃないし、和やかな雰囲気のせいで強く怒ることも出来ない。

 

視界に入った以上、無視するのもどうかと思ったので声を掛ける事にした。

「柊さん、隣いいかしら?」

「あ、舞ちゃん。どうぞー。」

 

「何描いてるのかしら?」

「えっとね、あれだよ。」

指さした先には氷室さんがいた。

「氷室さん?なんでまた彼女なの?」

「幽華ちゃんが可愛いからかなぁ。ほら、ちっちゃい子みたいだよね?」

「まぁ確かに彼女は高校生にしては背が低いわよね。」

「小学生みたいですっごい可愛いんだよねー。あと、聖悟くんもよく描くよー。どっちも可愛いからねぇ。……食べちゃいたいくらいに。」

「…ッ!?」

……何?今の強烈な悪寒は?

……………まさか、柊さんの「子供好き」ってそういう意味…?

 

 

…考えすぎよね、話題を変えましょう。

「…柊さんが、絵本作家になったきっかけって何かしら?」

「うーん…。おとーさんの影響かなぁ。」

「お父さん?」

「うん、“柊流星”って作家さん知ってる?」

「確か、『ドライバー探偵シリーズ』の作者よね。」

『ドライバー探偵』…愛車を乗り回して全国を旅する1人の青年。その青年が立ち寄った道中で起こる事件を解決するという推理小説だ。

 

「あのシリーズ、私も好きなシリーズよ。車の知識についても面白おかしく書かれてるのが意外と楽しくて………柊?もしかして…。」

「うん、柊流星はわたしのおとーさんなんだ。舞ちゃん、おとーさんのファンなんだぁ。またおとーさんに伝えておくね。」

テレビで見たことあるけど、あの厳かな雰囲気の男の人がこのゆるふわな子の父親…。意外すぎるわ。

 

「わたしはおとーさんが本を書くのを見て育ったんだぁ。だから、無意識に自分も本を書きたいって思ったのかも。もちろん子供が好きっていうのもあったんだけどね。」

「憧れから始まって超高校級になれたのも、才能のおかげよね。」

「うぅん、わたしなんかまだまだだよ。おとーさんみたいに長いシリーズも書いた事ないし。いつかわたしも小説を書いておとーさんと一緒に賞を貰う事が夢なんだー。」

 

「本当にお父さんが好きなのね。」

「うん、大好き。ちっちゃい頃におかーさんが死んでから1人で育ててくれたんだよ。それにどんなに忙しくても誕生日は絶対に祝ってくれるんだー。」

「いいお父さんね。」

「えへへー。お風呂もよく一緒に入るんだよー。」

「へぇ……えぇ!?」

サラッと流しかけたけど、今凄い事言わなかった!?

 

「お風呂…?お父さんと?」

「もちろん。友達に話すとよく驚かれるんだー。」

そりゃ驚くわね…。高校生の上この身体…。

お父さん、色々苦労してそうね。

 

「その…相手も男の人なんだから、一緒にお風呂に入るのは自粛した方が良いと思うわ。それに、ファザコンって言われちゃうわよ。」

「ファザコンでもいいもん。おとーさんが好きなのはホントなんだし。」

「…まぁ、私からはとやかく言わないでおくわ。」

他所の家庭事情に口を出すのも野暮よね。

 

すると、柊さんが何かを渡してきた。

「はいこれ。」

「?何かしらこれ?」

渡されたものは私の似顔絵だった。

「話してる間に描かせてもらいましたっ。」

「…いつのまに。」

描いてるのに全然気づかなかった。

 

「……凄い似てるわ。」

「今日は楽しかったからそのお礼。大したものじゃなくてごめんね。」

「そんな事ないわ。この絵大切にするわね、ありがとう。」

「どういたしましてー。」

 

 

ーー

 

 

 

ーーその夜

 

夕食を食べ終わった俺達。

すると葛城が

「よし!これから男子の親睦を深めるためにも温泉に行こうか!」

と提案した。

 

「さっきの報告でも言ってたしな。いいぜ、行こう。」

「………異議なし。」

「オレはもちろん構わないさ。」

 

「じゃあ、アタシたちも温泉に行こう!」

「日本の温泉…初めてだわ。」

「いいですね!裸の付き合い!賛成ですわ!」

 

いざ、温泉へ行こうとした瞬間

「ちょーーっと待ったぁぁぁ!!」

空気を読まないヤツが現れた。

 

「アンタさぁ…ホント空気読まないよね。」

「はい?空気は読むものじゃなくて、吸うものだよ?」

「飛田さん、やめとこう。彼と張り合うだけ無駄だ。」

「なんの用だよ。わさわざ遮ってまで出てきたけど。」

 

「実はもう一つプレゼントがあったのを忘れてたんだよ。いや〜失敬失敬。」

「わぁ…モノクマさん、次は何をくれるのでしょうか?」

「ズバリ、次の“動機”です!」

その瞬間、食堂に緊張感が走る。

 

 

動機…また事件のきっかけを作る気か。

……あの忌々しい光景を思い出してしまう。

 

「次の動機のテーマは『闇』です!人間は誰しも大小あれど、闇を抱えてるモノ!その人物にとって闇と言える秘密を発表させて頂きます!」

「でも、自分の秘密なんて自分が知ったところで意味なんかないんじゃ…?」

「誰が自分の秘密を自分に発表するって言ったの?……ボクは今回、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

………なんだと?

 

「つまり、自分の秘密を他の誰かに知られる事になるということ!うぷぷぷ…誰がどの秘密を知るのか楽しみだねぇ。……あ、それからオマエラのプライバシーに配慮して、みんなが個室にいるでしょう日の変わり目の0時に送らせていただきます!以上です、じゃあねぇーーー!」

 

 

「……先に釘を刺しておく。誰の秘密が送られてきても他言無用だ。ましてや、本人に伝えようと思うな。」

そうだそれが一番だ。下手に話そうものなら恐ろしい事になる。

 

「で、結局温泉は?」

「もちろん行くよ!今行かなかったらいつ行くのさ!」

「よし!行くぞ!」

 

 

ーー

 

【暁日サイド】

 

という訳で温泉に来た俺達。

来たのはいいんだけど…。

 

「………なぁ。」

「どうした暁日?」

「なんで俺らはみんなしてサウナにいるんだ?」

「サウナで我慢大会。これも1つの醍醐味じゃないかな。」

「………言えてるな。」

…………いや、さっぱり分からん。

 

「……そう言えば結局、小鳥遊君は来ず?」

「あぁ。一応声は掛けたけど…『温泉の硫黄の臭いが好きじゃないんだ』『みんなでお風呂って慣れなくて…』って言われて断られた。」

「まぁ、無理に誘う必要も無いだろう。」

 

………にしても、皇と獅子谷は分かる。葛城、意外とガタイいいな。

「……………」

「…うん?暁日君、どしたの?」

「いや、結構ガタイいいなって。」

「フフン、でしょ?最近はモデルの仕事も多いからね。鍛えてるんだ。」

「…………暁日、お前は細すぎだ。………少しはトレーニングしろ。」

「……お前と一緒にするな。これでも少しは鍛えてるんだよ。」

俺は別にプロレスラーとかになりたい訳じゃないし。

 

「……きゅう。」

「ちょ、剣崎!?」

「………どうやら、脱水症状になってるみたいだね。これ以上は危険だ、剣崎クンを外に連れていっておくよ。」

「頼むぞ、東雲。」

東雲と剣崎が退場か。

 

「…………………」

……気まずい!残った3人は背がデカいから圧迫感が凄い!なんか3倍くらい熱くなった気がする!

「………俺も限界だ。先に出る。」

「お疲れ。無理しないでね。」

 

「……ふぅ。」

火照った身体を水風呂で癒す。凄く快適だ。

「………夜空を見ながら風呂に入ってこそ、露天風呂だよなぁ。」

ぼんやりと、空を眺めながら呟く。

 

すると、

「ちょっと!どこ触ってるのよ!」

宵月の声が聞こえた。そういや、女子も入ってるんだったな。

「…………」

一瞬良からぬ考えが浮かぶが、すぐに振り払う。

「いやいや、覗きは流石にマズいって。」

 

「ふぅ、隣失礼するよ。」

「ん?東雲か。剣崎は大丈夫か?」

「とりあえず冷たいものを飲ませて涼しいところに寝かせてある。しばらくしたら快復するだろう。…ところで、何か声が聞こえたようだが?」

「あぁ。女風呂の宵月の声だよ。」

「……ふーん。よっと。」

東雲は何やら仕切りを登ろうとしてるようだ。

 

「オイ、何する気だ?」

「そりゃ決まってるだろう?覗きだよ。」

「ちょ、それはマズいって!」

「とか言いながら止める訳じゃないみたいだが?おっ、良いところに登れそうな台が…。」

「あーあ…。俺知らね。」

 

ーー

 

 

【宵月サイド】

 

 

「うっひょーーう!露天風呂だーー!」

「あ、飛田さん!先に掛け湯をしないと…!」

「これが露天風呂……素晴らしいわ。」

 

女子全員でお風呂に入る事になった私達。

皆凄いテンションが高いわね。

「……ふぅ、あったかい。」

なかなか良い湯加減だ。気持ちがいい。

 

…………それにしても

「日本の文化……素敵ね。」

モデル体型のシルヴィアさん。

「よーし、アタシ泳いじゃうぞー!」

スポーツをやってるだけに程よくしまった身体の飛田さん。

「あぁ〜〜気持ちいい〜〜♪」

小柄な割に意外と大きい柊さん。

 

「………3人ともデカいわね。」

「…視線で殺せそうなくらいガン見してるな、キミ。」

「…いつのまに隣いたのよ。」

「最初からいたぞ。…それにしても巨乳の何がいいんだか。重くてジャマなだけだろう。」

「羨ましいとは思わないの?」

「……天は二物を与えないからな。この私がグラマラスだったら、パーフェクトになってしまうだろう。…………悔しい訳じゃないからな。」

悔しいのね。

 

「……?」

「どうしたの?夜桜さん?」

「…いえ、妙な気配を感じまして…。」

「妙な気配?」

 

「………えいっ!」

「っひゃあ!?」

急に後ろから胸を揉まれた。

「ひ、柊さん!?」

「えへへー、朝のお返しっ。それそれー。」

「ちょ、ちょっと!どこ触ってるのよ!」

「ほらー、揉まないとおっきくならないよー?」

「や、やめなさい…!」

 

 

 

「………!曲者ぉ!」

「ギャッ!」

突然、夜桜さんが仕切りへ向けて桶を投げつけた。

「ど、どうしたの?凛ちゃん?」

「不届き者がいましたわ。……倒したので皆様、気にしないでください。」

 

 

ーー

 

 

【暁日サイド】

 

「くっ…なかなかいい肩じゃないか。」

「ほら、言わんこっちゃない。」

覗きをしていた東雲の顔へ向かって風呂桶が飛んできた。

 

「………大丈夫か?」

「心配には及ばんさ。………フフ、わが生涯に一片の悔いなし…。」

………めっちゃ幸せそうな顔して倒れてしまった。

 

 

皇達もサウナから出てきたようなので俺達も上がる事にした。

 

 

 

 

 

ーー

 

 

……0時か。これからモノクマが言ってた『誰かが抱えてる闇』が送られてくる時間だ。この情報はそいつにとってはプライバシーに関わる問題で、皇も言ってた通り他言無用でいるべきだ。例え何が来ても驚かないでいよう。

 

 

すると、モノドロイドから通知音が鳴った。

「来たか。一体誰の……………なっ!?」

そこに書かれていた物…それはあまりにも衝撃的だった。

 

 

 

 

 

『超高校級の情報屋 小鳥遊瑞希の秘密!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小鳥遊瑞希は自身が女である事を隠し、男と偽っている。』 




今回は「平和」と言ったな。あれは嘘だ。

実は小鳥遊ちゃん女の子バージョンの立ち絵も用意してます。
本編でも出るのでしばしお待ち下さい。

次回、波乱の幕開け。


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(非)日常編4

二章の(非)日常編も終わりが見えてきました。

そして、この回でおまけを除いた本編の投稿数が20話目となります!
ここまで続けて来れたのも皆さまのおかげです。これからも頑張ります!


『小鳥遊は女』……。

 

本当なのか?

でもそう考えると温泉に来なかった理由、アイツを抱き抱えた時の違和感にも説明がつく。

今すぐにでも本人に聞いて確認したい。

だが、皇には他言無用と釘を刺されている。

 

 

…………どうすればいいんだ?ダメだ、思いつかない。……寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

ーーアンタ今日友達の家に遊びに行ったんですって?あんな連中とつるんでる暇があるなら勉強しなさい!

ーーいい?アンタは母さんの為に生きるのよ。それがアンタにとって一番幸せなんだから。

ーー私の気も知らないで勝手に自殺しようとするなんて…私がどれだけアンタに金を掛けたと思ってるのよ!

 

 

 

「…………ッ!」

…クソ。久々に見たなあの夢。

ここ最近全く見てなかったが…、今になって見ることになるか。

……どうにも嫌な予感がするな。

 

 

 

ーー

 

【翌朝】

 

「おはよう。」

「…おはよう。」

「……」

 

昨夜の動機の影響だろう、返事が少ない。

それに、何人かは周りの様子を伺っているようだ。

 

そこへ

「暁日君、おはよっ。」

「…小鳥遊。お、おはよう。」

「?どうしたの?」

「い、いや何でもない。」

 

 

小鳥遊が普段通り声を掛けてくれたが、思わず挙動不審になってしまう。

……女の子だと分かるとどう接したらいいんだろうか。

 

 

 

「ククク…。どいつもこいつもシケた面持ちだな。」

「氷室さん…。君は通常運転だね。」

「当然だ。他人の事情なんて薬草一枚の価値もないし、興味もない。…………このクソシケた空気を吹き飛ばす天才的企画を私は閃いたのだよ!」

 

 

「前置きはいいから早く言いなさい。」

「ズバリ!“ゲーム大会”だ!」

「ゲーム大会?」

「タワーにあるゲーセンを使って大々的にゲームのプレイスキルを競うという大会だ!ただし、ただのゲーム大会とは違うぞ…。ここからが神たる私の発想だ!」

「は、はぁ…。」

「それは、キミ達全員VS私1人の勝負だ!この私に勝負に挑める…これほど嬉しい事はないだろう!我ながらなんて素晴らしいアイデアなんだ…!自分で言っててなんだが、相当エキサイトしてきたぞ!」

 

 

この状況で遊んでられるか…?そう思ってたけど、

「………まぁ、たまにはみんなでゲームってのも悪くないかな。」

「面白いじゃないですか!シューティングでしたら自信ありますよ!」

「わたくしは観客でよかったら参加させて頂きますわ。」

「では、僕は皆さんの為にお菓子を用意させてもらいます!」

意外と賛同者が出てきた。

 

 

「ククク…!そうこなくてはな。では日程だが、明日の10時ゲーセンに集合だ!それまでにゲームを練習するもよかろう!多くの挑戦者を待ってるぞ!ハッハッハッ!」

「暁日君!僕たちもゲームセンターに行こうよ!」

「わ、悪い…。ちょっと用事あるから…。」

今は小鳥遊と一緒にいるだけで緊張してしまいそうだ。

「…………。」

 

 

ーー個室

 

動機の件もあるし、なんか今日は誰とも会おうって気にはならないな。

部屋に篭っておこう。

そう考えてると、モノトークの通知が入った。

「……小鳥遊か。」

 

 

ーーーー

 

小鳥遊瑞希:暁日君、ちょっと話したい事があるんだけどいいかな?

 

ーーーー

 

 

 

話したい事か…。

 

 

 

ーーーー

 

暁日悠:分かった。俺も話したい事がある。あまり人目に付きたくないから0時に温泉の男の脱衣所に来てくれるか?

 

小鳥遊瑞希:温泉だね?分かった。

 

ーーーー

 

 

皇…約束を破る事になるけど許してくれ。

 

 

 

 

ーー0時5分温泉、男湯脱衣所。

 

「……。」

「……ゴメン、遅れちゃったかな?」

「いや、そんなに待ってないから気にするな。」

「なら、いいけど。」

「小鳥遊、話したい事ってなんだ?」

「今朝の暁日君、なんか変だったから…。何かあったの?」

 

「それについても話そうと思って呼んだんだ。……………単刀直入に聞く。お前、女なのか?」

「もしかして……。僕の秘密って…。」

「そうだ。俺に送られた秘密…それは『お前が女』という物だったんだ。」

「やっぱり…そうだったんだね。」

「お前が女の子だったらどう接したらいいのか分からなくて朝はあんな態度だったんだ。……だから、本当なのかハッキリさせたいんだ。」

 

「……………」

「もちろん、無理にとは言わない。プライバシーの問題だからな。嫌なら断ってくれても…」

「その必要はないよ。」

「え?」

その声は今まで聞いたことのないくらい、可愛らしい声だった。

 

「…遅かれ早かれバレるんだ。ここでハッキリさせるよ。…()()の正体を…。」

そう言って彼…いや『彼女』は上の制服を脱いだ。

 

 

「…これは。」

「うん、サラシだよ。『超高校級の情報屋』小鳥遊瑞希は紛うことなき女の子さ。…………まだ信じられないならこれも外すけど。」

「いや、そこまでしなくていい。……これで、ハッキリしたからさ。」

 

「………それで?」

「ん?」

「ボクが女の子だって分かったけどどうするの?皆に言い触らすの?」

「そんな事する訳ないだろ。お前の秘密はお前の秘密。絶対誰にも言わない。」

 

 

「……………そんな言葉、信用すると思う?」

ーーその瞬間、強烈な殺意を感じた。

 

 

小鳥遊が手に持っていた物…それは。

「お前……なんで包丁なんか。」

「決まってるでしょ?…殺すんだよ。ボクの秘密を知った以上はね。…これを取りに行ってて遅れたんだ。」

「……待て、一旦冷静になれ。そんなんじゃ、黒幕の思う壺……」

 

「うるさい!情報屋が隠し続けた秘密があっさりバレるなんて、情報屋の恥だ!誰かに知られた以上、知っている人間を全員殺すんだよ!……例え君でもね。そうすれば、誰もボクの秘密を知る人間はいない。」

「た、小鳥遊…。」

「暁日君……本当にごめんね。…………うわああぁぁぁぁ!!」

 

 

包丁を振りかぶって襲いかかる小鳥遊。

咄嗟に攻撃を躱す。

「…クッ!…本気かよ!」

「クソッ!逃げるなよ!大人しく殺されろ!」

「や、やめろ!」

「黙れ!一撃で仕留めてやるから動くな!」

 

 

だ、ダメだ。完全に我を忘れてる。………なんとかして、動きを止めて説得しないと。だが、どうすればいいんだ?

 

 

「!」

追い詰められて、壁際に追いやられてしまった。

 

 

…………イチかバチかだ。これに賭ける!

「フフ…。やっと動きを止めたね…。」

「………」

「君の事は嫌いじゃないんだけど………。ボクだってこんなところでまだ死にたくないんだ。………ゴメン!」

 

 

 

 

 

 

「…………ってぇ。…………へへ、上手く行ったな。こうすれば、お前から凶器を奪える。……これしか思いつかなかったんだけどな。」

………右手に激痛が走る。俺は包丁の刃を思い切り掴んだのだ。

 

「……バ、バカなの!?そんなことまでして…。」

「バカでいいさ…。お前がクロにならなくて済むんならな。」

「だからって…そこまでしなくても…!」

 

 

「………お前にとって誰かを殺すことが大切かもしれねぇけどな、俺にとっちゃお前がクロになってオシオキされる事がもっと嫌なんだよ!…これ以上友達を、仲間を、大切な人を失いたくねぇんだよ。」

「………っ!」

「………それでも生き残りたいって言うんならもう止めない。俺を踏み台にしていけ。俺もお前に殺されるなら本望だ。…………もう限界だから手、離すぞ。」

「………」

 

「それから……殺すなら一撃でやってくれ。苦しんで死ぬのは流石に怖いからな。」

「……ぁぁぁぁぁあああ!!」

小鳥遊は思い切り包丁を振りかぶった。

 

 

ザクッ。包丁が何かに刺さる音がした。

……………痛みがない。目を開くと、壁に包丁が突き刺さっていた。

「小鳥遊…。」

「……よ。」

「?」

「…………無理だよ…!ボクの事をそこまで大切に思ってくれるのに……殺すなんて……!うっ、うぅっ…。」

 

「………ふぅ、何とかなったか。……てっ。」

ホっとしたせいか、手に痛みが再び走る。

「あ、暁日君…血が…!」

「だ、大丈夫…でもないな。指が千切れそうだ。…東雲呼んできてくれないか?」

「う、うん…!すぐ呼んでくるから待ってて!」

 

 

ーー

 

「包丁の刃を手で掴むとは…殺しを止めるためとはいえ、君もなかなか無茶をしたな。」

「てて……これしか思いつかなかったんだよ。」

「傷はそれほど深くないから安心したまえ。とりあえず応急処置で包帯を巻いておく。右手はしばらく使わないように、いいね?」

「あぁ、ありがとう。」

 

「東雲君、こんな時間にごめんね。」

「構わないさ。誰かを助けるのは医者の仕事だからね。では、後は君に任せるよ小鳥遊“ちゃん”……いや、小鳥遊“クン”と言うべきかな。」

「…えっ!?いつから、気付いてたの?」

「最初からさ。オレを誰だと思ってるんだい?………まぁ、誰にもバラすつもりはないから安心しな。じゃあ、おやすみ。」

 

 

「……アイツには敵わないな。」

「ホントだよ…。」

「殺そうとは思ってないよな?」

「……もう誰も殺そうとは思わないよ。」

「……そっか。それを聞いて安心したよ。」

 

 

「でも、君も無茶するよね。自分の命を軽視しすぎだよ。」

「ははは…それを言われちゃ返す言葉もないな。」

「ボクも君の過去を知ってるからね…。」

「……動機か?」

「ボクは元々知ってたけど……ボクに送られた秘密は…『暁日悠は自殺未遂をしたことがある』だったんだ。」

大方それだとは思ってたが…。あの夢はやっぱり予知夢だったのか。

 

 

ーー

 

俺の母親は異常な程、面子に執着した人間だった。

昔から「自分の為に尽くせ」「超高校級になれば感謝する日が来る」…そんな事ばかり言ってた。

 

だが中学生の頃、俺はふと考えた。

「俺が死んだら悲しむ人間はいるんだろうか。」

 

ーー気づいた時にはマンションの屋上に立っていた。

 

 

そこから、飛び降りてーー

 

 

目が覚めたら、病室で寝ていた。

その時、開口一番に母親が発した言葉は、

「金を掛けた事を知らず自殺しようとするな。」だった。

その時、気づいた。

「そうか、俺が死んでもこの人は悲しまない」って。

 

その日から度々自殺しようとした。

だが、結局死ねなかった。

最終的に、精神的に参っていた所を見兼ねた父親が俺を引き取り、離婚した。

母親が最後に言い放った言葉は

「私の手柄を全て奪うつもりか」だった。

 

ーー

 

 

「……これでも一時よりはマシなんだぜ。酷い時はほぼ毎日自殺しようとしてたし。」

「もう自分の命を投げ出そうなんて思わないでよ。…………ボクにとってもキミは大切な人なんだから。」

「……ん?なんか言ったか?」

一瞬、小声で何か言ったみたいだったけど…。

「うぅん。なんでもないよ。………もう、戻ろうか。」

「それもそうだな。明日はゲーム大会もあるしな。」

「君はその手だから、観客だね。」

「はは。そうだな。」

 

 

 

ーー翌朝、食堂。

 

食堂には何人かは来てないようだ。大会の準備をしてるのだろうか。

「おはよう。」

「悠くん、おはよぉー。」

「あら?どうされたのですか?その手。」

「あぁ、これか。……昨日ちょっと風呂で転んでな。」

 

「お風呂で転んでって…随分と間抜けな話ね。」

「う、うるさいな。放っといてくれよ。」

「でも、その手だとご飯食べ辛いけどどうするつもり?」

「あ、ボクが食べさせるよ。」

小鳥遊が立候補した。

 

俺の横に小鳥遊が座り、

「じゃ食べさせるからね。はい、あーん。」

「あ、あーん……。」

食べさせてくれるのはありがたいが、凄い恥ずかしい。

「ほう。まるでカップルみたいだな。」

東雲……お前わざと言ってるだろ。

 

 

 

 

ーー10時、ゲームセンター。

 

「よく来たな諸君!では、これよりゲーム大会を開始する!さぁ、終わりなきゲームを楽しもうではないか!この私に挑む勇気あるものは誰だ!?」

氷室に挑む人物は葛城、小鳥遊、飛田、皇の4人だった。

 

「私の相手はキミたちか。その勇気まずは讃えよう!そして、オーディエンス諸君!我々の聖戦を目に焼き付けるといい!」

氷室の芝居がかった喋り……こういう時上手く盛り上がるよな。

 

「………む?八咫が来てないようだが。」

そういえば、来てないな。代わりにシューティングで出てもらうつもりだったんだけどな。

「まぁいい、そのうち来るだろう。さぁ、ゲームスタートだ!」

氷室が啖呵を切り、始まったゲーム大会。

 

 

VS飛田。対戦ゲームはダンスゲーム。

「……よっ、ほっ、ほっ…!」

「飛田さん、凄いですわ!ノーツを軽々捌いて…!」

「へへん!身体を動かすのはアタシの十八番だからね!」

「………………」

「なっ!氷室……最低限の動きで捌いてる!」

「この手のは所謂記憶ゲーだ。どのタイミングでノーツが来るかを覚えていれば、少しの足の動きで充分だ。」

 

最終スコアは飛田250000点、氷室300000点だった。

「くっそー!幽華ちゃん、やっぱやるなぁ!」

「フン、いいウォーミングアップだったぞ。」

 

 

続いてVS小鳥遊。対戦ゲームはパズルゲーム。

「先手必勝!最初から連鎖責めするよ!」

「10連鎖か……なかなかやるな。」

「もう画面が半分以上埋まってますけど、ここからどう巻き返すんでしょうか…。」

「……!これは!」

「ククク…気づいたようだな。そう、最初から全消し狙いだよ!……………さぁ、ショータイムだ。」

 

「あ、あぁぁぁ…!」

「す、凄い氷室さんの枠がドンドン綺麗に…。」

「ハハハハ!!どうだ20連鎖だ!」

 

 

 

次はVS葛城。対戦ゲームは格ゲー。

「あの時は負けたけど…あれから鍛えたんだ!今度こそ負けるにはいかないぞ!」

「その威勢…空回りしなければいいけどな。」

 

 

 

「…………本当に修行したのか?」

「な、何故だ…!」

 

 

 

そして残るはVS皇。だが…。

「あまりゲームをやらないのだが、何で勝負しようか。」

「まさかの未経験者か…。まぁそれもよかろう。そうだな…シミュレーションゲームはどうだ?戦争をテーマにしたゲームだ。」

「戦争物か…いいだろう。」

 

「対戦ゲームではないから、先に最初のボスを撃破した方を勝ちとしよう。海軍、空軍、陸軍のどれでスタートするか決めろ。」

「決まっているだろう?…海軍だ。」

「では私は陸軍で…。さぁ、開始だ。」

 

10分経過…。

「……一軍が陥落したか。」

「ククク…。海軍にしたのはミスだな。海軍は一番難易度が高いのだよ。」

「それを教えないとは…セコいわね。」

「勝負にセコいもマゴイもないさ。勝てば官軍…それだけだ。」

 

20分経過…。

「…………」

「2人とも…静かになっちゃったね。」

「相当集中してるね。」

「………!倒したぞ!」

手を挙げたのは皇だった。

 

「…何?確認させて貰おう。…………本当のようだな。」

「フフ…実際の経験が意外な所で役に立ったな。…………さて、景品でも貰おうか。」

「…………え?」

「いや、普通は景品の1つ2つ用意してるものだろう?」

 

「そのそれなんだが……。絶対誰も勝てないだろうと思って用意してない…。」

「嘘だろ…?じゃあ、何もなしで遊んだだけって事?」

「ま、待て!そうだな……………私のメダル山分けでどうだろうか?もう50枚程しかないが…。」

「まぁ、無いよりかはマシか…。」

渋々みんなで氷室のメダルを分かることにした。……たった4枚ぽっちにしかならなかった。

 

 

 

 

 

「………なぁ、結局八咫はどうしたんだ?」

「そういえば、姿を見てませんね。」

「もう、ゲーム大会も終わっちゃいましたが……。」

「……………まさか。」

嫌な予感がする。

 

「皆!八咫を探そう!……なんか嫌な予感がする。」

「そうだな。…もしものことがあったら連絡するように。」

………杞憂であってほしいが。

 

俺はタワー内を探すことにした。

「八咫ー!どこだ!」

「八咫さーん!」

「琴音ちゃーん!」

「…ゲームセンターにはいないみたいだね。」

 

「どうしよう。他のフロアを探すか。」

「じゃあ、二手に分かれよう。アタシと瑞希は6階、凛ちゃんと狂也と悠は1階を見てきて。」

「わかった。でも、俺はもう少しこのフロアを見てみる。あとで1階に行くよ。」

「分かりましたわ。」

 

 

その後もしばらくゲームセンター内を探したが、結局見つからなかった。

エレベーターで下に降り、夜桜達と合流することにした。

 

 

 

 

「夜桜、そっちは………。」

「キャアアアァァァァ!!」

「!どうした!」

 

 

 

夜桜が悲鳴を上げた先へ行き、そこで目に入ったものはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーエントランスの水槽の中で、力なく漂う『超高校級の会計委員』八咫琴音の姿だった。

 

 



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非日常編1 捜査編

非日常編開幕となります。

正直、非日常編の方が個人的には進めやすい。


「どう、2人とも琴音ちゃん見つかっ……た……?」

「や……八咫さん…?」

駆けつけた飛田と小鳥遊。

その状況に言葉を失っていた。

 

 

ピーンポーンパーンポーン…。

 

『死体が発見されました!オマエラ!死体発見場所のモノクマタワー1階、水槽前に集合して下さい!』

 

 

 

ーーそれから程なくして、全員が揃った。

「な、なんという事だ……!」

「や、八咫様…!」

「………。」

 

「でも、あの状況どうするの?あのままだと捜査しようがないし、サメがいるから食べられちゃうわよ?」

「そんな……そんなの可哀想だよ!」

「………やむを得ん。俺が水槽を破壊する………!」

 

 

「待ったぁぁぁぁぁ!!」

モノパパが止めに入った。

「待て待て!そんな事をする必要ない!というか頼むから壊さないでくれ!」

「でも、壊さないと捜査できないじゃない?」

「それに早くしないと琴音ちゃんが食べられちゃうよ!」

 

 

「だから、待てと言ってるだろうに!この状況だと捜査しようがないのは重々承知している!諸君はそこで待ってろ!」

そう言うや否やモノパパはどこかへ引っ込んでしまった。

 

 

するとーー

「あ、魚たちが…。」

「どこかへ移動してるな……む?水位が…。」

魚たちが移動をすると同時に水位が下がっていき、水が全て無くなった。

 

「これでよし。水槽内も調べたいだろうと思って水を抜いておいたぞ。………それから、前回同様に『モノクマファイル2』を送るから目を通しておくように。では、さらばだ。」

 

 

「………さて、見張りと検死は前回と同じく獅子谷、夜桜、東雲。後の調査は各自に任せる。」

例によって皇が淡々と場を仕切って行く。

今回は誰も反論する様子がない。

口には出さないが、学級裁判がどういうものか身を持って知ったからだろう。

 

……俺も始めよう。それが八咫の為でもあるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー捜査開始ーーーーー

 

 

 

 

 

「小鳥遊、今回もサポートを頼むよ。」

「うん、任せて。それじゃあまずモノクマファイルの確認をしよう。」

 

 

 

 

ーーーー

 

モノクマファイル2

 

被害者は超高校級の会計委員、八咫琴音。

死体はモノクマタワー一階、エントランスの水槽にて発見された。

死亡推定時刻は午前0:30頃。

頭部と胸部に外傷有り。

 

ーーーー

 

【コトダマ獲得:モノクマファイル2】

 

 

「死亡推定時刻は午前0:30ってことは…俺達が争ってた時間帯だな。」

「そうだね。となるとこの時間帯はボク達にはアリバイがあるって事だ。」

少なくとも小鳥遊は犯人という可能性は潰れたな。…少し安心した。

 

「他に気になる所は…ん?これ、少し変じゃないか?」

「………あっ、ホントだ。死因が書いてないね。」

死体発見現場が水槽内だったからてっきり溺死だと思ってたけど、そうじゃないのか?

 

「外傷が二ヶ所もあるし、気になる事だらけだな。」

「となると…やっぱり死体だね。」

「けどさ………これ、どっから行くんだ?」

水槽はかなり高さがある上に入り口が見当たらない。水が入る以上、どこかに入り口があるはずなんだが…。

 

すると、

「入り口が分からない…と言った所かしら?」

宵月が声を掛けて来た。

「宵月、その通りだけど…お前、知ってるのか?」

「ええ。こっちよ。」

 

 

 

ーーバックヤード。

 

連れてこられたのはバックヤードだった。

 

「へぇ、裏はこうなってたのか。」

「なるほど。あれだけの魚をどうやって管理してるのか気になってたけど、コンピューターを使ってたんだね。」

「そんなもの見てる場合じゃないでしょ。ほら、こっち。ここから水槽の中へ入れるわ。」

水槽の中には脚立が立て掛けてあった。

だが、特に支えがある訳でもないしここから底まで意外と高さがある。

 

「……………これ使って降りるのか?」

「そうよ。それ以外に手段はないでしょ?まさか、降りるのが怖いのかしら?」

「そ、そんな訳ないだりょ!」

……思いっきり噛んでしまった。

「………噛んだわね。」

「噛んだね。」

言うな!恥ずかしい!

 

「ほら、いいからさっさと降りるぞ!捜査するぞ捜査!」

「何を誤魔化してるのかしら〜?」

「うっさい!放っとけ!」

 

 

 

ーー水槽内。

 

水槽内に降りた俺達。

「降りる時に気づいたけど、奥の壁は鏡になってたんだな。」

「水と魚が間にあったから、分からなかったよね。奥行きを誤魔化すためなのかな。」

「だとしたら、なかなかセコい発想だな。」

 

 

【コトダマ獲得:水槽内の鏡】

奥の壁は鏡になっている。

 

 

 

 

「さて、早速を死体をしらべるか…。」

八咫の死体にはモノクマファイル通り胸部と頭部に傷があった。

「胸に何か刺さったままになってるな…これは包丁か。」

 

 

【コトダマ獲得:包丁】

八咫の胸に刺さっていたもの。

 

 

 

 

包丁以外にもどこか違和感がある。なんだこの違和感…?

 

「………そうか。メガネがないんだ。水槽に落ちてるのか?」

そう思い、水槽内をくまなく探したが見つからなかった。どこに行ったんだ?

 

 

 

 

次に検死をしている東雲に聞いてみることにした。

「東雲、何か分かったか?」

「暁日クンか。そうだね…一つ分かった事は死因は溺死ではないね。」

「そうなのか?」

「溺れる時は通常、口や肺の中に水が入り込む。だが、その痕跡が無かったから水に入れられた時点で死んでいたのだろう。」

 

「……となると、2つの外傷が死因って事か?」

「そういう事になるね。胸部に刺さった包丁、それから頭部の傷だがちょっと変わった形をしてるね。」

「変わった形?」

「あぁ。なんていうか……直角の部分があって一部が平たいんだよ。まるで何かの角で殴ったような形だ。」

 

 

【コトダマ獲得:東雲の検死結果】

八咫の死因は胸部に刺さった包丁と頭部の傷のどちらか。

頭部の傷は独特の形状。

 

 

 

この辺りから得られる情報はこれくらいだろうか。

「あとはここのバックヤードとそれから校舎も見たいけど…全部見る時間はないよな。」

「なら、二手に分かるのはどうかしら?私はここを中心に捜査、あなた達は校舎を中心に捜査。これなら、裁判中に情報共有もできるわ。」

 

「それでもいいけど…。お前は俺を疑わないのか?」

「そうね…。私にはあなたは人を殺せるような人間には見えないからかもね。」

「………そりゃどーも。」

「一応褒めてるのよ。私なりにあなたを信用してるんだから。それでどうするの?」

「そこまで言われたらな…。分かった俺もお前を信用する。ここの捜査を頼む。」

「了解したわ。いい結果を期待してなさい。」

 

 

 

 

 

ーー

 

【暁日サイド】

 

タワーの捜査を宵月に任せて俺達は校舎側の捜査をする事にした。

「色々気になる事が多いからな。どこから行くか。」

「無くなったメガネ、それに包丁の事もあるからね。」

「それに俺達の昨日の行動も一回、おさらいしておいた方が良いかもしれないな。」

「…………あの、その事なんだけどいいかな?」

「ん?どうした?」

 

 

「その、ボクが女の子って事………言わないで欲しいんだけど、いいかな?」

小鳥遊がもじもじしながら涙目で訴えて来た。…………いや、可愛すぎるだろ。

「分かってるって。絶対に言わないからさ。」

「う、うん。ありがとう。」

……けど、昨日の一件小鳥遊の秘密も併せて重要かもしれない。覚えておこう。……最悪の場合、裁判で言う必要が出てくるかもな。

 

 

【コトダマ獲得:小鳥遊の秘密】

女子である事を隠している。知っているのは、東雲と暁日のみ。

 

 

 

 

ーー厨房

 

まずは包丁の出所を探るために厨房へやって来た。

「小鳥遊が持ってきたのもここのだよな。いつ持ち出したんだ?」

「夜時間になる10分くらい前かな。剣崎君にバレないようにこっそり持ち出したんだ。…その時にもう一本なくなってたかは見てなかったな。」

「返す時はどうしたんだ?」

「朝、剣崎君にちゃんと話して返したよ。その時剣崎君が数が合わないって言ってたんだ。」

その時点で八咫の身体に刺さってたんだもんな。

 

「剣崎、ちょっといいか?」

「暁日様、なんでしょうか?」

「夜時間前に持ち出された包丁について教えてくれ。」

「かしこまりました。夜時間前に持ち出された包丁は二本で一本は今朝、小鳥遊様が返しに来たものです。」

小鳥遊の証言通りか。

 

「じゃあ、もう一本は誰が持ち出したか分かるか?」

「これは推測ですが…小鳥遊様の前に来られた人物だと思います。」

「誰か覚えているか?」

「…八咫様です。」

…え?あの包丁の持ち主は八咫だったのか。

だとすると、何か目的があって持ち出した包丁を奪われて殺されたって事か?

…………それとも、自殺?

 

 

【コトダマ獲得:厨房の包丁】

夜時間前に持ち出された包丁は二本。

一本は小鳥遊。もう一本は八咫。

 

 

 

ーー温泉、男湯脱衣所

 

「あの時俺は0時にお前を呼び出した。」

「そして、争いになって……暁日君が怪我をしたんだったよね。」

「時間を見てる暇なんかなかったから特に考えてなかったけど、どれくらいの間ここにいたっけ?」

「えーと…。確か、ここを出る時には1時だったかな。」

すると、1時間程一緒にいたって事か。少なくともその間のアリバイが俺たちにあったことになる。

 

 

【コトダマ獲得:暁日と小鳥遊のアリバイ】

0時から1時までの間、男湯の脱衣所にいた。

 

 

 

 

ーー八咫の研究資料室

 

八咫のメガネがどこにあるかを探しに校舎内をしらみ潰しに調べていき、残った箇所は、八咫の研究資料室のみになった。

 

「調べてないのは校舎内ではここだけか。」

「とりあえず、調べてみよう。」

 

部屋を隅々まで調べてみるとある物が見つかった。

「これはガラスのカケラと…メガネのつるか。」

間違いない。これは八咫のメガネだ。

 

 

【コトダマ獲得:メガネ】

八咫の物。八咫の研究資料室に落ちていた。

レンズが割れている。

 

 

 

「あれ?これなんだ?」

メガネの横に何か書かれていた。

 

(1×2)+(9×5)+(6×1)=96

 

どうやら血文字のようだ。

 

「血文字と計算式…。しかも計算が合わない……何かの暗号か?」

 

 

【コトダマ獲得:謎の計算式】

八咫の研究資料室の床に書かれた血文字。

(1×2)+(9×5)+(6×1)=96

と書かれている。

 

 

 

血文字とメガネ……やっぱりここは……。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン……。

『え〜ではでは、今こそ時は極まれり!という訳でオマエラ!時間となります。前回同様、噴水前に集合をするようにお願いします!』

 

「……どうやら時間みたいだね。」

「あぁ、行こう。」

「今回は冷静みたいだね。」

「……信じられる仲間がいるからかもな。お前だけじゃない、宵月も協力してくれてる。だから安心して背中を任せられるのかもしれない。」

「そういってもらえるとボクも嬉しいよ。…じゃあ行こう。」

 

俺達は出来るだけの事はしたつもりだ。俺もお前を信じるぞ……宵月。

 

 

 

 

 

 

ーー

 

【宵月サイド】

 

暁日君達と別れた私も本格的に捜査することにした。

 

すると、

「あ、いたいた。宵月さん、俺にも捜査を手伝わせてよ。」

「また?あなたも物好きね…。」

「言ったでしょ?君と行動することは俺にとっても有利になるんだ。それに男手も必要になるんじゃないかな?」

再び葛城君と行動する事になった。

 

 

「まずは、この水槽について詳しく調べることにしましょうか。」

「そういえばあの魚達、どこへ移動したんだろう?」

「そういう事は彼に聞くのが一番ね。……出てきなさい、モノパパ。」

「お呼びか?」

「宵月さん。だいぶ手慣れてるね…。」

 

「この水槽にいた魚達、一体何処へ移動したのかしら?」

「それはこの水槽の隣にある予備水槽だ。」

「予備水槽?」

「ここは定期的に掃除してるが、更に大規模な掃除をする時に水門を開けて魚と水を全てそこへ移動させるんだ。頻繁に使うものじゃないから普段は水門に操作パネルにロックを掛けているんだよ。」

 

「あの時移動させた時もそのロックを解除したのかしら?」

「そうだな。先に言っておくが、事件発生時はロックがかかってたぞ。尤もパスワードは我々しか知らないから解除は出来るはずないがな。」

 

 

 

【コトダマ獲得:予備水槽】

水槽の大規模な掃除をする際に使用する。

間を隔てる水門の操作パネルにはロックが掛かっている。

 

 

「ちょっと気になったんだけど、八咫さんの死体っていつ水槽に入れられたのかな?」

「私が覚えてる限りだと、朝ここへきた時には水槽にその姿はなかったわね。」

「それで、ゲーム大会が終わって八咫さんを探してる時、いつのまにか水槽に入っていたと……。」

 

「タワー内を探してた人達は誰か分かるかしら?」

「えーと…確か、俺と飛田さんと暁日君、それから夜桜さんと小鳥遊君だったかな。最初はゲームセンターを探してたけど見つからなくって、二手に別れたんだ。飛田さんと小鳥遊君が6階、俺と夜桜さんと後から合流した暁日君が1階を探してたって感じだったかな。」

 

「それでその時に死体を見つけた訳ね。」

「そういう事になるね。……宵月さんは外を探してたの?」

「そうね。恐らく、その5人以外はみんな外に出てたと思うわ。……その時点でも死体は確かなかったわね。」

つまり、私達が外を探してる間と葛城君達が1階へ降りる間に死体が出現したという事ね。

 

 

【コトダマ獲得:宵月、葛城の証言】

宵月がエントランスを通って外へ出た時点では水槽内に死体はなく、葛城が1階へ降りた時には水槽内に死体が出現していた。

 

 

 

 

ーーバックヤード

 

私達は脚立の登り、バックヤードへ戻って来た。

 

「この機械達に手掛かりがある可能性も否定できないわね…。ほら、あなたは向こうの機械を調べなさい。」

「人使いが荒いなぁ…。分かりましたよ、お嬢様。」

「誰がお嬢様よ。口を動かす余裕があるなら手を動かして。」

「はーい。」

人の命が掛かってるのに呑気なものね…。

 

 

「……あれ?宵月さん、これ見て。」

「どうしたの?」

「ほらこれ…。前見た時と画面が違わない?」

葛城君が見つけた機械、それは奥の鏡を動かす機械だった。

 

「モノパパは確か自動モードに設定してあるって言ってた……という事は。」

「今、手動モードに切り替わってるって事かな?」

誰かが鏡を動かした…なんの為に?

 

 

【コトダマ獲得:鏡を動かす機械】

普段は自動モードに設定してあるが、手動モードに切り替わっている。

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン……。

『え〜ではでは、今こそ時は極まれり!という訳でオマエラ!時間となります。前回同様、噴水前に集合をするようにお願いします!』

 

 

「もう時間か。ちょっと手掛かりが少ない気もするけど、仕方ない。行こうか。」

「そうね…。」

 

 

確かに手掛かりは少ない。……だからこそ暁日君、あなたの見つけた手掛かりがカギになるわ。

 

ーー

 

 

時間になり、集合場所へ集まった俺達。

 

 

前回同様、噴水が突き上がりエレベーターが出現した。

 

「行くぞ。」

「……もう引き返せませんわね。」

 

 

全員が乗ると同時に再びエレベーターが動き出した。

 

 

エレベーターは静かに、そして確実に下へと降りて行きーー

そして、止まった。

 

 

扉が開き、あの光景と再び相見える。

だが、今回は部屋のデザインが変わっていた。

まるで、暗い森のような雰囲気だ。

 

 

「ウェルカム諸君!今回は前回からデザインを変えてみたぜ!どうだ、ナチュラルな雰囲気だろう?」

「それではオマエラ!自分の席に着いてくださーい!」

 

 

再びそう促され席に着く。

 

 

新たに大きくΦの記号が書かれた本代の遺影。

そして、チェックマークが書かれた八咫の遺影が本来いるべき場所に置かれていた。

 

 

 

 

ーー超高校級の会計委員、八咫琴音。

外に出たら、ビジネスパートナーとして協力しあう事を約束した大切な仲間だった。

だが、その約束は叶わなくなってしまった。

きっと誰よりも外に出たかったのだろう。

 

 

 

 

その希望を残酷にも奪った犯人は……

この中にいる!

 

 

そして、再び始まる。

……命がけの、学級裁判‼︎

 



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非日常編2 学級裁判・前編

学級裁判開始となります。

ここ最近リアルがクッソ忙しいのとやる気を無くしてたのとで全く進みませんでした。申し訳ないです。


今回から本格的に宵月も積極的に論破を行っていきます。
それと、一章の裁判パートで言い忘れましたがブレインドライブ・ロジカルダイブ・パニック議論はオミットしています。


【共通コトダマリスト】
1.モノクマファイル2
被害者は超高校級の会計委員、八咫琴音。
死体はモノクマタワー一階、エントランスの水槽にて発見された。
死亡推定時刻は午前0:30頃。
頭部と胸部に外傷有り。

2.水槽内の鏡
奥の壁は鏡になっている。

3.包丁
八咫の胸に刺さっていたもの。

4.東雲の検死結果
八咫の死因は胸部に刺さった包丁と頭部の傷のどちらか。
頭部の傷は独特の形状。



【暁日のコトダマリスト】
1.小鳥遊の秘密
女子である事を隠している。知っているのは、東雲と暁日のみ。

2.厨房の包丁
夜時間前に持ち出された包丁は二本。
一本は小鳥遊。もう一本は八咫。

3.暁日と小鳥遊のアリバイ
0時から1時までの間、男湯の脱衣所にいた。

4.メガネ
八咫の物。八咫の研究資料室に落ちていた。
レンズが割れている。
 
5.謎の計算式
八咫の研究資料室の床に書かれた血文字。
(1×2)+(9×5)+(6×1)=96
と書かれている。



【宵月のコトダマリスト】
1.予備水槽
水槽の大規模な掃除をする際に使用する。
間を隔てる水門の操作パネルにはロックが掛かっている。

2.宵月、葛城の証言
宵月がエントランスを通って外へ出た時点では水槽内に死体はなく、葛城が1階へ降りた時には水槽内に死体が出現していた。

3.鏡を動かす機械
普段は自動モードに設定してあるが、手動モードに切り替わっている。



学級裁判 開廷!

 

 

 

 

 

モノクマ「では始めに学級裁判の簡単な説明をさせていただきます!学級裁判では『誰がクロか?』を議論し、その結果はオマエラの投票に決定します!」

モノパパ「正しいクロを指摘できればクロだけがオシオキ、だが間違った人物をクロとしてしまった場合は…。」

モノクマ「クロ以外の全員がオシオキされ、生き残ったクロにだけ晴れてこの学園から卒業する権利が与えられます!」

モノパパ「では諸君!今回も張り切って行こうぜ!」

 

 

 

 

葛城「さて、どこから始めようか。」

夜桜「今回は色々と謎が多いですからね…。手を付ける場所が分かりませんわ。」

暁日「だったら、死因を突きとめる所から始めよう。何かわかるかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

葛城「今回も俺がファイルを読むね。被害者は超高校級の会計委員、《八咫琴音》。死体はモノクマタワー1階の水槽内から発見された。死亡推定時刻は《0時30分》。胸部と頭部に外傷有り…以上だよ。」

 

氷室「今回は死因が書いてないのが1番の特徴か。」

 

剣崎「それがないから今困ってますからね…。」

 

飛田「水槽から発見されたんだったら…《溺死》じゃないの?」

 

宵月「それならわざわざ二ヶ所も傷を負わせなくてもいいんじゃないかしら?」

 

シルヴィア「若しくは…〈その全てが死因〉かもしれないわね。」

 

夜桜「……ちょっと残虐すぎませんか?」

 

 

ひとつだけ確実に潰れる可能性があるな。

 

《溺死》←〈東雲の検死結果]

  論 

「それは違うぞ!」 

     破

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「飛田、溺死だけは死因ではない事がはっきりしてるぞ。そうだよな?東雲。」

東雲「人間は溺れる時、呼吸しようとして咄嗟に口を開くんだ。その時、口や肺の中に水が入り込む。だが、八咫ちゃんの死体にはその痕跡が見つからなかった。従って、溺死ではないと言えるだろう。」

飛田「ありゃ……そうだったの。」

 

 

夜桜「となるとやはり胸部と頭部の傷でしょうか。」

シルヴィア「どっちが直接死因になってるかは分からないのかしら?」

東雲「どちらの傷にも大きな時間差は無かったからね…。もう少し時間があったら、特定できたかもしれなかったがいかんせん時間が足りなくてね。…すまない。」

葛城「気にしないでいいよ。可能性がひとつ潰れただけでも充分だ。」

 

 

柊「でも、なんで琴音ちゃんは殺されちゃったのかなぁ?」

飛田「そりゃ犯人がどうしてもここから出たくて…。」

皇「いや、そうとは限らない。……考えてみろ、今回の動機はなんだ?」

暁日「確か……“誰かの秘密”だったよな。」

皇「そうだ。だとしたら、ここから出る事は二の次だったのではないだろうか?」

 

 

シルヴィア「…………なるほど。口封じという事ね。」

飛田「あっ!じゃあ琴音ちゃんの持ってるモノドロイドを見れば犯人が分かるんじゃ…。」

東雲「残念だが、そう美味い話はないな。検死をした時に持ち物を確認したらモノドロイドが無くなっていた。」

宵月「証拠隠滅は終わってるのね。なら、他の観点から一つずつ探ってみましょう。」

 

 

氷室「だが、何を議論するんだ?」

宵月「そうね………彼女に刺さっていた包丁について議論するのはどうかしら?」

柊「凶器だもんね……よぉし。じゃあはじめよー!」

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

夜桜「八咫さんに刺さっていた包丁…。あれは《厨房の物》で間違いないのですよね?」

剣崎「朝の時点で一本無くなっていたので、間違いなく厨房の物だと思います。」

 

柊「やっぱり、犯人が琴音ちゃんを〈殺す為〉に持ち出したのかなぁ?」

シルヴィア「まぁ、少なくとも料理する為とかではないでしょうね。」

 

皇「一度発想を逆転させて考えてみてはどうだろうか?」

葛城「逆転?」

皇「呼び出したのか呼び出されたのかは現状定かではないが、八咫が〈護身用〉として持ち出したという可能性を検討しても良いと思うぞ。」

 

 

ーー私には包丁を誰が持ち出したのかは分からない…。

暁日君の調べた情報に掛かっているわ。

 

 

 

ーー宵月…俺に任せたって顔をしてるな。

……なら、俺が!

 

 

「俺が撃つ!」

 

 

〈護身用〉←〈厨房の包丁]

    同

「それに賛成だ!」

    意

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「そうだ!皇の言う通りだ!包丁は八咫が護身用として持ち出したんだよ!」

葛城「な、なんだって!?」

暁日「包丁を持ち出されたのは二本なんだけど、その内一本は八咫が持ち出した物なんだ。そうだよな?剣崎。」

 

剣崎「その通りでございます。今朝包丁を小鳥遊様が一本返しに来たのですが、何故かもう一本が何処かに行ったままになっていたのです。」

氷室「……む?何故小鳥遊は小鳥遊で包丁を持ち出したのだ?」

 

 

暁日「それもちゃんと理由があるんだ。」

 

その理由は…

【コトダマ提示】→〈暁日と小鳥遊のアリバイ]

…これだ!

 

 

暁日「………実は昨日の夜、俺は小鳥遊に動機の件で男湯の脱衣所に呼び出したんだ。………その時に小鳥遊は、俺を殺す目的で包丁を持ち出してたんだ。」

皇「その時間はいつだ?」

小鳥遊「……えっと、夜の0時から1時まで1時間くらいかな。」

 

シルヴィア「つまり、八咫サンが殺された時間帯ということね。」

暁日「そうだ。だから、俺達にはこの時間帯のアリバイがあるってことなんど。」

夜桜「それにしても……暁日さんも災難でしたね。最悪の場合、もう一つ事件が起こった可能性もあった訳ですから…。」

 

皇「それにしても2人も誰かを呼び出していたのか……。抑止力がないのは分かっていたがここまで無意味だとは……。」

東雲「人間は心理的に秘密を知りたがるものだ。本能には抗えないからな。」

飛田「悠は瑞希の秘密を見たんだよね?それって…。」

葛城「飛田さん。それ以上は野暮だよ。」

 

 

暁日「これではっきりしたよな?八咫はあの夜誰かを呼び出した。そして、護身用に持ち出した包丁で…………」

 

 

      反

氷室「その推理、凍てつかせよう!」

         論

 

 

氷室「そのバグだらけの推理、少し考え直してもらおうか。」

暁日「まだ納得できないのか?」

氷室「当然だ。それにその様子だと自分の推理の間違い(バグ)に気付いてないようだな。………なら、私が訂正(デバッグ)してやる!」

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

氷室「キミの話だと、小鳥遊とキミは事件の発生時間にはアリバイがあるようだが、実際はどうなのだ?小鳥遊がそのまま本当に自分の部屋に戻ったと言うつもりか?手に持った包丁で八咫を殺しに行った可能性だってあるんじゃないのか?」

 

暁日「死亡推定時刻は0時30分頃だぞ。時間が重なってるのに、どうやって八咫を殺せるんだよ?」

 

氷室「キミこそ忘れたのか?死体は水に浸かっていたのだぞ?死亡推定時刻は体温が下がるほど特定が難しくなる。恐らくそれが狙いなのだろう。そうすれば自分が犯人だと疑われる事もなくなるからな。そして包丁を《一本だけ》突き刺し、真の凶器を何事もなかったのように戻せば全て完了だ。」

 

 

一本……?だとしたら、まだ確認出来ないことがあるんじゃないのか?

 

      斬

《一本だけ》←【包丁】

    論

「その言葉、ぶった斬る!」

       破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「氷室。お前の意見は別の包丁で八咫を殺してから、偽の凶器を用意した…………そういう事だよな?」

氷室「そうだな。……何か問題でもあるのか?」

暁日「あぁ。一つはっきりしてない事があるからな。」

氷室「………?」

 

暁日「東雲、八咫の身体の傷はいくつあったんだ?」

東雲「確か、包丁が刺さっていた位置の一つだけだったな。」

暁日「それともう一つ、今回だったら包丁を刺した傷の上から包丁を刺したらどうなるんだ?」

東雲「どうやって傷を作っても跡が残る以上、複数傷があることはすぐに分かるね。全く同じ傷を作るのは不可能だ。」

 

暁日「なるほど、ありがとう。………これで分かったよな?傷が一つだけと言うことは凶器はあの包丁以外考えられない!」

氷室「なるほどな……。私のおかげで凶器がはっきりしたな。」

宵月「なんであなたが偉そうにしてるのよ…。」

 

 

夜桜「これで、凶器の謎は解決したと言う事でよろしいのでしょうか?」

シルヴィア「そのようね。それよりもワタシが気になることは彼女の死体がいつ入れられたのかって事ね。」

獅子谷「………確かに。いつの間に現れたんだ?」

暁日「なら、次はそれを議論しよう。」

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

暁日「八咫の死体がいつ水槽に現れたのか、誰か知ってるやついるか?」

 

夜桜「わたくしが覚えてる限りですと……大会の為にタワーに行った時はありませんでしたわね。」

 

獅子谷「……となると〈大会中か終了後〉か?」

 

皇「そう言う事だろうな。大会の間にゲームセンターから出た者はいるか?」

 

宵月「私は入り口近くにいたけど、《通った人はいなかったわ》。」

 

氷室「とすれば、さらに絞られるな。大会終了後に皆で探してる時に現れた訳だ。タワー内を探してた人間もいたよな?《そいつらの誰か》が死体を入れたのではないだろうか?」

 

 

ーー俺はタワー内の捜査をしていない。

宵月、任せた!

 

 

ーーこの情報を知ってる人間は限られている。

…なら!

 

 

「私に代わって!」

 

 

《そいつらの誰か》←〈宵月、葛城の証言]

  論

「それは違うわ!」

     破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

宵月「タワー内の人間が死体を入れた……。その可能性は低いと思うわ。そうよね?葛城君。」

葛城「あぁ、そうだね。タワー内を探してた人達なら知ってると思うけど、最初に見つけたのは俺と夜桜さんなんだ。」

氷室「そうだったのか。葛城はタワー内の捜査をしてたのか?」

 

葛城「そうだよ。だから、タワー内の人間が死体を入れたというのはちょっと考えにくいんじゃないかな?」

宵月「加えて私は外を探してたけど、その時にエントランスを通った時も死体はなかったわ。」

 

柊「……あれ?じゃあ誰が入れたか分からないよね?」

宵月「とはいえ、手掛かりが完全にゼロという訳じゃないわ。タワー内の人間が一階に降りた時には死体があった。……つまり、外に出た人間が死体を入れたということが考えられるわ。」

 

 

暁日「……………もしかして。」

小鳥遊「暁日君、どうしたの?」

暁日「ちょっと考えてたんだ。死体を水槽に入れたって事はつまり、死体をタワーまで運んだ人間でもあるよな?」

宵月「まぁ、そういうことよね。」

 

 

暁日「だったら、1人思い当たるかもしれない。」

柊「ほんと?」

 

 

 

俺の推理が正しかったら………朝の時点でタワーにいた人間。

そいつは前もって準備してたから死体を運ぶ事も出来たはずだ!

 

 

 

【人物指定】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→氷室幽華

「お前しか……考えられない!!」

 

 

 

 

暁日「氷室……お前なんじゃないのか?」

氷室「……はぁ?何故そうなる?」

 

暁日「だってお前、今朝の朝食の時に食堂にいなかったよな?……その時何してたんだ?」

氷室「決まってるだろう?大会の準備をしてたんだ。」

 

柊「でも、わたしちょっと気になる事があるんだぁ。……幽華ちゃん、準備してた割には景品を用意してなかったよね。なんでなの?」

氷室「だから私が負けるとは思ってなかったから、用意してなかっただけで…。」

 

暁日「だとしても明らかに不自然だろ?何の準備もしないで大会をやろうなんて普通言わなくないか?」

氷室「ち、違う…。」

暁日「お前……本当はゲーム大会は自分のアリバイを作る為の口実作りだったんじゃないのか?」

氷室「違う………違うよぉ………!私じゃないよぉ………!」

 

 

 

 

氷室は正直言って怪しい………。

けど………なんなんだ?この違和感?

 

……まだ何か見落としてる事があるのか?

 

 

 

 

学級裁判 中断!

 




今回はここまで
裁判〜オシオキまでは出来るだけ間を開けずに投稿したい


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非日常編3 学級裁判・後編

後半戦開始。

今回も前編のおよそ2倍と相変わらず後編は長い。




学級裁判 再会!

 

 

暁日「どうなんだ?氷室、お前はクロなのか?」

氷室「違うもん…!私じゃないもん…!」

 

 

宵月「幼児退行しちゃったわね…。」

柊「幽華ちゃん……凄い可愛い…。」

皇「……これだと埒が明かないな。仕方ない、一度状況を整理しよう。」

 

宵月「それもそうね。ねぇ氷室さん、いいかしら?」

氷室「……グスッ………なぁに?」

宵月「あなたは今日の朝、朝食には出ずにタワーに行ってたのよね?」

氷室「う、うん…。」

 

宵月「その時、何をしてたの?」

氷室「えっとね…。みんなが来る前に最終調整でゲームをしてたの。どのゲームでも勝てるように。」

 

宵月「という事はゲームセンターからは出てないのかしら?」

氷室「うん…。」

宵月「じゃあ、これで最後よ。朝、エントランスに入った時死体はあったのかしら?」

氷室「うぅん…無かった。それに、もしあったらみんなを呼びに行ってるよ。」

 

 

宵月「……と言ってるわよ。」

暁日「でも、その時他にエントランスにいた奴はいなかっただろ?氷室の話だけで犯人じゃないと決めるのは難しくないか?」

氷室「私ホントに知らないもん!嘘なんか言ってないよ!」

 

 

このままだと終わりそうにないわね…。

なら、氷室さんが犯人じゃないと言い切れる根拠を探してみようかしら。

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

暁日「お前がタワー内にいつからいたか…。それを〈証明出来る〉やつはいるのか?」

 

氷室「そ、それは…。いない…。」

 

暁日「だったら、悪いけどお前が犯人という可能性はまだ捨てる訳にはいかないな。」

氷室「私じゃないってば!なんで信じてくれないの!?」

 

暁日「だから、それを示す《証拠》を見せてくれよ。そうじゃないと話にならないだろ。お前は誰も居ない事をいい事に水槽に死体を入れた…。違うか?」

 

氷室「死体なんて気付かなかったよ…?それにあの水槽、《奥行きがある》から魚に紛れてても普通分からないよね?」

 

 

彼女が犯人じゃない証拠……。何とか見つかったわね。

 

《奥行きがある》←〈水槽内の鏡]

  論

「それは違うわ!」

     破

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

宵月「氷室さん……安心して。あなたが犯人じゃない根拠、見つけたわ。」

氷室「ほ、ほんとぉ…?」

宵月「氷室さん、今『水槽は奥行きがある』って言ったわよね?」

氷室「う、うん…。」

 

宵月「この発言、犯人の発言にしては不自然じゃないかしら?」

剣崎「不自然……と言いますと?」

宵月「あの水槽を調べた人なら知ってると思うけど、水槽の奥の壁は鏡張りになってるのよ。」

 

獅子谷「……!そうか……!」

宵月「そう、犯人なら知ってるはずの鏡に付いて知らないなんて普通ありえるのかしら?」

暁日「でも、それも嘘かも知れないだろ?」

 

剣崎「その可能性はないと思います。………氷室様はタワー内の捜査を行っていませんからね。たまたま外を捜査してる氷室様を僕が目撃したので間違いないかと。」

宵月「これで分かったでしょ?氷室さんは犯人じゃ………」

 

 

      反

暁日「その言葉、ぶった斬る!」

         論

 

 

暁日「いや、まだ可能性はあると思うぞ。」

宵月「………まだ何かあるのかしら?」

暁日「当然だ。考えられる可能性は全て考えるべきだ。」

 

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

 

暁日「お前の言う通り、氷室は水槽が鏡張りになってる事を知らないのは事実だとは俺も思う。けどな、それだけじゃまだ足りないんじゃないか?俺が思うに、別の手段で死体を出現させたんだと思うんだ。」

 

宵月「別の手段って……一体何かしら?」

 

暁日「例えばそうだな……。死体を発見した時、モノパパが水と魚達を全て別の場所へ移動させてたよな?あれって要はもう一つ別の水槽があるって事だろ?《あの水槽》を使えば、誰の目にも触れずに死体を隠す事だって出来るんじゃないか?」

 

 

一見筋は通っている……けど、この推理は通らない。

彼の知らないその根拠は…。

 

      斬

《あの水槽》←【予備水槽】

    論

「その言葉、斬ってあげる!」

       破

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

宵月「暁日君、あなたの言う通りあそこにはもう一つ水槽があるわ。」

暁日「やっぱりな。ならそれを使えば…。」

宵月「でも、それは不可能よ。」

暁日「何だと?」

 

宵月「その水槽、『予備水槽』って言うんだけど、エントランス内にある水槽とは水門を使って間を隔ててあるの。その水門の開閉にはバックヤード内の機械で制御してるらしいわ。そして、その機械……パスワードでロックされてるから使う事は出来ないわ。……そうよね?モノパパ。」

 

モノパパ「あぁ。その通りだ。メイン水槽の大規模な掃除をする際に予備水槽を使うんだが…勝手に操作されると困るのでな。こちらでロックを掛けさせてもらっている。従って、予備水槽の使用は絶対に出来ない。」

 

 

宵月「という訳よ。これではっきりしたわね。氷室さんは水槽の構造を知らない、そして予備水槽を使う事も出来ないから彼女は犯人じゃないわ。」

氷室「………ククッ。だから最初から言ってるだろうに。それにしてもこの私を罠に嵌める(にデバフを掛ける)とは…。神に逆らったその罪、とても重いぞ。制裁を受ける覚悟は出来ているのだろうな!?」

 

シルヴィア「変わり身が早すぎるわね。」

氷室「黙ってろ。年増女。」

シルヴィア「と、年増…!?」

 

 

 

獅子谷「…………となると死体はいつ出て来たんだ?」

夜桜「朝にしても夜にしても、氷室さんが目撃してるはずですものね。」

柊「わたしは朝かなぁ。夜はみんな寝ちゃってるし。」

小鳥遊「それだと根拠が弱いよ。夜でも十分可能だ。」

 

宵月「困ったわね…。意見がまた割れちゃったわ。」

 

モノクマ「はい、待ったぁぁーー!!意見が割れちゃったのでしょうか?それはそれはお困りでしょう!」

モノパパ「今回も変形裁判所の出番だな?そうだな!?」

 

暁日「……え?あれやるのか?」

飛田「悠…。顔真っ青だけど大丈夫?」

暁日「なぁ、それやめないか?もうちょっと話したらわかるかもしれないし…。」

 

モノクマ「もうちょっと話しても分かりそうにないので意見は聞きません!では、レッツ変形!」

暁日「い、嫌だぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁日君の懇願を無視して、前回と同じくモノクマ達がどこからか取り出した装置によって席が移動を始めた。

 

 

 

【死体を入れたのはいつか?】

 

 

 

  [朝だ!〉 〈夜時間だ!]

         暁日   宵月

        獅子谷   夜桜

          柊   氷室

         飛田   小鳥遊

         剣崎   皇

         東雲   葛城

               シルヴィア

              

 

ーー議論スクラム開始ーー

 

飛田「犯人は《朝》のうちに死体を入れたんじゃない?」

「氷室さん!」

氷室「私は《朝》の時点で目撃してないと言っているだろう?」

 

剣崎「ですが、《目撃》してないというのは不自然ではありませんか?」

「皇君!」

皇「《目撃》してないだけで、バックヤードに死体を置いていた可能性はどうだ?」

 

獅子谷「………《バックヤード》に置いていたならいつ入れたんだ?」

「夜桜さん!」

夜桜「八咫さんを探す時に隙を見て《バックヤード》から水槽に入れたのかもしれません。」

 

東雲「隙を見てってエントランスは《無人》ではなかったろう?」

「葛城君!」

葛城「タワー内を探してた人達はすぐ下に降りてないから《無人》だった時間があるんだ。」

 

柊「幽華ちゃんが《犯人》ならその時に死体を入れることが出来るよねぇ?」

「小鳥遊君!」

小鳥遊「氷室さんは水槽の構造を知らなかったから《犯人》とは言い切れないよ。」

 

暁日「それじゃあバックヤードが《殺人現場》って事か?」

「シルヴィアさん!」

シルヴィア「死体発見現場が必ずしも《殺人現場》とイコールという訳じゃないわ。」

 

暁日「でも他に《思い当たる場所》があるのか?」

「私が!」

宵月「《思い当たる場所》……それはあなたの方がよく知ってるんじゃないかしら?」

 

 

 

 全 論 破 

 

宵月「これが私達の答えよ!」

夜桜「これがわたくし達の答えですわ!」

氷室「これが私達の答えだ!」

小鳥遊「これがボク達の答えだ!」

皇「これが俺達の答えだ。」

葛城「これが俺達の答えだよ!」

シルヴィア「これがワタシ達の答えよ!」

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

宵月「どうやら、死体は夜時間に入れた……そう考えるのが妥当みたいね。」

獅子谷「………だが、どうやって隠したのだ?」

剣崎「それに、新しい問題も増えましたね…。殺人現場…。」

 

宵月「殺人現場については後にして先に死体を隠した方法、これを考えましょう。」

夜桜「ですが隠すといっても、もう場所は無いと思いますが…?」

宵月「1つだけ思い当たる方法があるわ。」

柊「えっ。そうなのぉ?」

 

 

その方法は…

【コトダマ提示】→〈鏡を動かす機械]

…これよ!

 

 

宵月「あの鏡…実は動かす事が出来るのよ。」

シルヴィア「何ですって…!」

宵月「バックヤードにある鏡を動かす機械…これが手動モードになってたのよ。鏡を手動操作で動かし、もう一つあるものを利用した。」

 

 

それは…

 

 

ーー閃きアナグラム開始ーー

 

 

鏡 の 反 射

 

 

……そういう事ね!

 

 

 

宵月「…そう。鏡の反射を利用したのよ。」

皇「鏡の反射だと?」

 

 

宵月「つまり、こういう事よ。

 

まず、鏡を動かして人1人分が入れるスペースを作る。

この時鏡と水槽の間に水が入り込むから投げ込んだ時に死体が損傷する事が無くなるわ。

 

そして、正面から見ると鏡の反射によって水槽の中が映る。

これによって、鏡が奥に取り付けられている事と水と魚に遮られて鏡が動いている事も分からず、エントランス側からだと一見何も無いように見えるようになるわ。

 

最後に死角になった空いたスペースに死体を投げ込むの。

これで、いつでも死体を取り出す事が出来るという訳よ。」

 

 

剣崎「なるほど…これなら夜時間でも死体を入れることは可能ですね。」.

飛田「鏡か…。それは気づかなかったなぁ。」

 

 

 

宵月「死体のトリックはこれで終わりよ。ここからが本題ね。殺人現場について議論しましょうか。暁日君、何か思い当たる節はないかしら?」

暁日「えっと……そうだな。みんなは八咫の死体を見たとき一つ変わった事があるのに気づいたか?」

東雲「確か、メガネが無くなっていたな。」

暁日「そう、そのメガネだけど…。俺、見つけたんだ。」

 

 

【コトダマ提示】→〈メガネ]

 

 

暁日「このメガネ……八咫の研究資料室に落ちてたんだ。これってつまり、八咫は研究資料室で殺されたって事じゃないか?」

氷室「メガネを掛けているのは東雲と八咫の2人…。東雲は今掛けているから、八咫の物で間違いないな。」

暁日「それからもう一つ、気になる物があったんだ。」

 

 

 

そう、未だに謎の物…。俺は写真に撮ったそれを見せた。

【コトダマ提示】→〈謎の計算式]

 

 

暁日「これも八咫の研究資料室に書いてあったやつなんだけど、こんな計算式を見つけたんだ。」

 

飛田「『(1×2)+(9×5)+(6×1)=96』……???なにこれ?」

柊「うーーーん……。分からないや。」

 

剣崎「計算式なのは間違いないですが……答えが違いますね?」

シルヴィア「普通なら答えは53よね?全然違うじゃない。」

葛城「計算式っていうと八咫さんのイメージだけど……?」

 

宵月「96……九六………きゅう……ろく……く…。」

獅子谷「…………宵月?随分考え込んでいるがどうした?」

 

宵月「みんな。この計算式の意味が分かったわ。」

氷室「なんだと!?」

 

 

 

宵月「これは計算式に見せかけたダイイングメッセージよ。恐らく八咫さんが犯人にバレるのを避けるため、暗号化したものね。」

皇「なるほど…。会計委員の八咫らしいな。」

 

宵月「それで、このダイイングメッセージの意味だけど…まず96はただの『語呂合わせ』よ。96だから『く・ろ』。」

剣崎「クロ…!という事は前の計算式が犯人を示してる訳ですね!」

宵月「そういうことよ。そして、計算式の解き方だけど……みんな、モノドロイドを用意してくれる?」

飛田「いいけど…なんで?」

 

 

 

宵月「この計算式はある物に対応してるの。」

 

それは…

 

ーー閃きアナグラム開始ーー

 

携 帯 の テ ン キ ー

 

……そういう事ね!

 

 

宵月「携帯のテンキーよ。最初の(1×2)は『あ行』を二回押して、『い』という感じよ。モノドロイドはスマホと同じだからやり方は分かりやすいわね。」

暁日「その法則で残りもやっていくと犯人の名前になるって事か…!」

宵月「そういう事。じゃあ残りもやっていきましょう。次は(9×5)だから『ら行』、その次は(6×1)で『は行』…。」

 

これで浮かび上がる名前は……。

 

 

 

【人物指定】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→柊色羽

「犯人は…あなたよ!!」

 

 

 

 

 

宵月「このダイイングメッセージを解くと浮かび上がる名前…『い・ろ・は』……。そう柊色羽さん、あなたが犯人よ。」

柊「…………。」

飛田「えっ!?色羽ちゃんが!?」

東雲「あの天使の如く優しい柊ちゃんが………正直あり得ないと思うが。」

 

宵月「とはいっても、あくまでダイイングメッセージを解いただけだからね。まだ推測の域を得ないわ。…どうなのかしら?柊さん。」

柊「……………。」

暁日「お、おい。柊、お前聞いてるのか?」

 

柊「…………すぅ、すぅ……。」

獅子谷「………寝てる!?立ったまま!?」

柊「………ふにゃっ。……あれ、何の話だっけ?」

 

 

宵月「あなた………分かってるの?今の状況……。」

 

 

柊「うん、分かってるよ。わたしが犯人、そう言いたいんだよね?」

 

 

飛田「い、色羽ちゃん?」

葛城「完全に目が覚めた…ってことかな。」

 

柊「色々言いたい事はあるけど…まずはわたしは犯人じゃないってことを説明しようかな。」

 

……ここからが本番、という事ね。

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

柊「ダイイングメッセージは、まぁ面倒くさいからほっとこうかな。それより、重要なポイントはわたしがその時間何してたかって事で良いのかな?わたしはその時間〈寝てたよ〉。はい終わり。」

 

夜桜「み、短すぎませんか…?」

 

柊「本当の事を言っただけだよ。それより怪しいのはその時間包丁を持ち出していた《瑞希ちゃん》じゃないかな?」

 

宵月「その時間のアリバイは暁日君が証明してるわよ。」

 

柊「そんなの嘘っぱちじゃないの?例えば2人は《共犯》って事も考えられるでしょ?」

 

 

ーー?今の発言、なんかおかしくなかったか?

 

「俺に代わってくれ!」

 

 

《瑞希ちゃん》←〈小鳥遊の秘密]

  論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「柊、お前今『瑞希ちゃん』って言わなかったか?」

柊「言ったよ?何か問題?」

 

小鳥遊「あ、暁日君…?」

暁日「小鳥遊、悪い。今の証言明らかに変なのはお前も分かってるだろ?」

葛城「2人とも何の話をしてるんだ?」

 

暁日「あぁ。柊は普段、誰かを下の名前と男子には『くん』、女子には『ちゃん』を付けて呼ぶだろ?なのに、小鳥遊の事を『瑞希ちゃん』って言ったんだ。」

シルヴィア「言い間違いじゃないの?それなら大した問題じゃないと思うけど?」

暁日「いや、それが大有りなんだ。…………なんせ、小鳥遊は『女子』だからな。」

 

皇「な、何!?」

宵月「小鳥遊君が…女子ですって!?」

飛田「ほ、ホントなの!?瑞希…いや、瑞希ちゃん?」

 

小鳥遊「……………。」

暁日「小鳥遊……本当にごめん。けど、これは重要な事なんだ。………お前の口から話してほしい。」

小鳥遊「僕は…………。………………うん、ボクは女子だよ。」

 

獅子谷「……な、何という事だ…!」

 

暁日「そして、重要なのはここからだ。この事は例の動機として俺に送られてきた。そして東雲も最初から気付いていた。つまり、知ってる人間は俺と小鳥遊本人、そして東雲の3人だけなんだ。」

夜桜「あら?…となると…。」

暁日「そういう事だ。柊はあたかも知ってかのように小鳥遊を『ちゃん』付けで呼んでいた。それにお前はさっき寝ていた言ったよな?……なぁ、これはどういう事なんだ?」

 

柊「……………。」

宵月「答えられないのかしら?それとも反証を考えているのかしら?」

 

  

       反

柊「眠くなっちゃうシナリオだねぇ…。」

          論

 

 

柊「そこまで言われたら反論しようかなぁ…。これ以上聞いてると眠くなりそうだし。」

宵月「まだ認めないつもり?往生際が悪いわよ。」

柊「だってわたしは犯人じゃないからねー。」

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

柊「なんで瑞希ちゃんが女の子だって知ってたかって?それはとっても簡単な話だよ。その時間、ちょっと散歩してたんだ。その時たまたま温泉の脱衣所前を通った時に2人の争う声を聞いたんだよ。それで知ったんだ。」

 

宵月「あなた、さっきは寝てたって言わなかったかしら?」

 

柊「たまたま目が覚めただけだけど、それの何が悪いの?別に起きて散歩するのもわたしの勝手でしょ?それにわたしが犯人だって言うんだったら、あの水槽の鏡を動かしたのもわたしって事だよね?あの鏡を動かすんだったら《誰でも出来る》んじゃないの?それでもまだ、犯人だって言うつもり?」

 

誰でも出来る…。それはあり得ないわ!

 

        斬

《誰でも出来る》←【鏡を動かす機械】

    論

「その言葉、斬ってあげる!」

       破

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

宵月「鏡を動かすのは誰でも出来るわけじゃないわ。………覚えてるかしら?バックヤードの説明を初めて受けた時の事。」

葛城「確か、モノパパは俺と宵月さんと柊さんにやっと説明出来たみたいな事を言ってたよね。」

宵月「そうよ。バックヤードの説明を受けたのはその3人だけ。そして、3人の中で事件発生時間に外を出歩いていた事を認めたのは、他でもない…。そう、あなた自身よ!」

 

柊「うっ………!」

シルヴィア「どうやら……これで決まりみたいね。」

 

柊「…………だよ。」

宵月「え?」

柊「まだ……まだだよ!まだ分かってないことがあるよ!」

葛城「全ての事実が君が犯人だと示している。これ以上何があるって言うんだい?」

 

柊「死因だよ!琴音ちゃんの死因がまだ分かってないよね!?それが分からないと犯人とは言えないんじゃないの!?」

宵月「死因……それはここに書いてあるわ。」

 

【コトダマ提示】→〈モノクマファイル2]

…これよ!

 

宵月「モノクマファイルにははっきりと『頭部と胸部に外傷有り』…そう書いてあるわ。」

柊「だから、それがなんなの!?胸部は包丁だけど、頭部を殴った凶器は分からないじゃない!」

宵月「その頭部の傷……ちょっと変わった形をしてるのよね?東雲君。」

 

東雲「あぁ……。確か何かの角で殴ったような形だったな。」

柊「角?そんなのなんでもあるじゃない!」

宵月「そうね。でも、あなたが犯人なら1番目の前に手頃な凶器があるんじゃないかしら?」

 

暁日「手頃な凶器…?」

柊「そ、そんなのないよ!知らない!」

宵月「仕方ないわね。教えてあげる。」

 

 

 

柊「琴音ちゃんを殴った凶器……なんだって言うの!?」

 

柊 の 持ってる 本

 

これで終わりよ!!

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

宵月「八咫さんを殴った凶器…それはあなたの持ってるその大きな本よ!」

柊「あぁっ!!」

東雲「そうか…!あの角と細長い辺の形…まさに本じゃないか!」

 

宵月「八咫さんは護身用として包丁を持っていた。もし八咫さんに攻撃されたなら傷が付いてるはずなのに傷もない。その理由は…その本を盾にして攻撃を防いだからなんじゃないかしら?」

柊「……!」

宵月「その本は重さも大きさも厚さも凶器として十分すぎる。包丁を本で防いだ後、その本で返り討ちにした…。違うかしら?」

 

柊「…………………。」

宵月「柊さん、その本を見せなさい。もし本を凶器にしてるなら刺し傷か血の跡がついてるはずよ。紙だから洗い流す事も出来ないし替えの本もないでしょうしね。」

柊「…………。」

柊さんは無言で本を見せた。

 

獅子谷「血の跡…。それに刺し傷があるな……。」

暁日「じゃあやっぱりお前が…。」

柊「………。」

シルヴィア「もう、反論する気もないみたいね。」

 

 

宵月「これ以上続ける必要は無いみたいね。じゃあ最後に事件を振り返って全てを終わらせましょう。

 

……………これが事件の真実よ!」

 

 

 

 

ーークライマックス推理開始!ーー

 

【Act.1】

事件は昨日夜時間中の深夜0時過ぎに起こったわ。

八咫さんは自分の研究資料室にある人物を呼び出した。呼び出した目的……それは恐らく、事件発生の日に配られた動機『誰かの秘密』が関係してるのでしょう。

 

【Act.2】

呼びされた人物にとってその秘密はとても大きな意味があった。だから、口封じとして八咫さんを殺そうとしたの。でも、この時八咫さんは護身用として包丁を持ち出していた。その包丁を使って犯人に対抗した。

けど、この時犯人は咄嗟に“ある物”を使って彼女の攻撃を防いだ。

“ある物”……それは犯人が普段から持ってる大きな本よ。

 

【Act.3】

本で攻撃を防いだ犯人はそのままその本で八咫さんの頭を殴りつけて気絶させて、その間に証拠隠滅を図ろうとしたの。けど、この時辛うじて息があった八咫さんは犯人の名前を計算式に置き換えたダイイングメッセージを残した。このダイイングメッセージに気づかなかった事、そしてこの争いで落ちたメガネによって殺人現場が彼女の研究資料室だとバレるきっかけになってしまったの。その事に気づかないまま、犯人はさらに包丁を突き刺しトドメをさした。

 

【Act.4】

次の死体を処理するために研究資料室から死体を運びだした。

この時、温泉では暁日君と小鳥遊…さんの争いが起こっていたの。犯人は死体を運ぶ時偶然その声を聴いていた為、小鳥遊さんが女子だと知る事になりその事を口走った事で、事件発生時の行動に矛盾が生じてしまった。

そして、犯人は死体をモノクマタワーのエントランスまで運んできた…。

 

【Act.5】

エントランスにあるアクアリウムのバックヤードに来た犯人は、鏡を動かす機械を手動モードに設定して鏡を動かして死体を隠すスペースを作ってそこへ死体を投げ込んだ。鏡の反射と水と魚、これらの要素が合わさって正面から見ても死体がある事には気づかないようにしたの。そして、何食わぬ顔で朝食とゲーム大会に参加して、八咫さんを探し始めた時にタワーの外へ出るフリをしてさり気なくバックヤードに行き死体を水槽内に出現させたーー。

 

 

 

「そうなのでしょう?『超高校級の絵本作家』、柊色羽さん!!」

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

柊「……ふうっ。……あーあ、バレちゃったぁ。いけると思ったんだけどなぁ。」

氷室「……そんな…まさか、キミが…。」

柊「あー、もうそういうの良いからさ。さっさと終わらせちゃお?じゃクマちゃん、始めちゃって?」

 

モノクマ「……んぁっ?……やっべ、出番あんまりないから寝てた…。はいはーい!それでは、オマエラ!投票をお願いしまーす!」

モノパパ「もう一度言うが、ちゃんと全員投票しろよ?では、始めぇぃ!」

現れたパネルのボタン…。私は柊さんへ投票した。

 

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か!?」

モノパパ「そして、その答えは正解か不正解なのかぁ!?」

 

モニターに表示され、再び回りだしたスロット。ドラムロールと共にリールの速度が落ち、柊さんの顔が3つ並んで止まった。

そして、歓声と共に大量のメダルが排出された。

 

 

 

学級裁判 閉廷!



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非日常編4 オシオキ編

2章もついに終わりとなります。
今回のクロの動機は一体…?

1日遅れちゃいましたけど4/18は夜桜凛ちゃんのお誕生日となっています。


ーー

 

0時10分頃、八咫の研究資料室にて。

 

「……琴音ちゃーん。いるぅ?」

 

「……あっ、柊さん。すみません、夜遅くに呼び出して。」

 

「いいよー。気にしないで。……それで話って何かな?」

 

「…実はーー。」

 

ーー

 

「うぷぷぷぷ…!またまた大正解ーー!!!『超高校級の会計委員』八咫琴音サンを殺したのは意外や意外!!ゆるふわ天使の仮面を被った悪魔『超高校級の絵本作家』柊色羽サンでしたーー!!!!」

 

「やるなぁ諸君!!2連続正解とは驚いたぞ!!!」

 

「ホントに……色羽ちゃんがやったの?…嘘だよね?」

「な、なにかの間違いでしょう?そうだと言って下さい!」

 

「…………はぁ、うるさいなぁ。言ったでしょ?わたしが殺したって。それとも何?わたしの代わりにオシオキを受けてくれるの?なら大歓迎だよ。」

これが……柊さんの本性なの?

 

「なぁ、柊。なんで八咫を殺したんだ?そこまでして守りたかった秘密ってなんなんだ?」

「………あのさぁ。誰にも言わないから“秘密”なんだよ?普通本人から聞くかな?馬鹿なの?」

「………。」

 

「わたしからは話す事はなーんにもないよ。……じゃ、オシオキ始めよ?」

「……フフフ。」

「…?どうしたの狂也くん?なんで笑ってるの?」

 

「フフフフフフ…。おっと失礼。思わず笑ってしまったよ。………あまりにも下手な演技にね。」

「……演技だと?」

「悪役を演じてるつもりみたいだけど、そんな安い演技に騙される俺じゃないよ。」

 

「悪役?演技?なんの話かなぁ?」

「じゃあさ、一つ聞かせて貰うけどなんでさっきから目線はそっぽ向いてるの?……自覚してないだろうけど、君は嘘をつくとき目線を外すクセがあるんだ。」

「えっ………嘘、だよね?」

「あぁ、嘘だよ。………けど、これではっきりしたね。君は何かを隠してる……違う?」

 

「だから、違うってば!わたしは自分の秘密を守るために琴音ちゃんを殺したの!わたしは最低な人殺しなんだよ!」

 

 

 

「ったく……これだけ言ってもまだ隠す気?不愉快な演技までしてさ。

 

 

…………あまり“オレ”を苛立たせるなよ。」

 

 

 

……!?何?今の葛城君から感じた物…。

 

…殺気?

 

「そこまでして偽りの犯罪者になりきる理由……。もしかして、誰かを庇ってるのかな?」

「……っ!」

「顔色が変わったね。どうやら図星かな?」

「そ、そんな事…。」

 

 

 

「ハーーイそこまで!もうちょっと粘ると思ったけど、演技が下手すぎてバレるのが意外と早かったね!その通り!柊サンはある事を隠してます!」

「ちょ、ちょっとクマちゃん!何を…。」

「柊サンはどうしても隠したいよねぇ…。」

「ま、待って!お願い言わないで!」

 

 

「………なんせ、あの時“八咫サンが柊サンを殺そうとした”んだからね!!」

「!!」

 

「………なんだと?」

「琴音ちゃんが色羽ちゃんを…?」

 

「何故、八咫サンが柊サンを殺そうとしたか…。それには深〜い理由があるのです!」

「お、お願い…。もう、やめて……!」

柊さんはモノクマに必死にすがりつくも聞く耳を持たず、続けた。

 

 

「その理由ですが、八咫サンと柊サンに送られた秘密を見ていただきましょう!では、モニターオン!!」

「や、やだ!やめて!」

そう言ってモノクマがモニターを表示させた。

 

 

ーー

 

 

 

『超高校級の会計委員 八咫琴音の秘密!

柊色羽とは腹違いの姉妹である。』

 

 

 

 

「続きまして、柊サンの秘密です!」

 

 

 

 

『超高校級の絵本作家 柊色羽の秘密!

八咫琴音とは腹違いの姉妹である。』

 

 

 

 

ーー

 

「いやーこれはびっくりですねぇ!」

「まさか、実の姉妹同士でコロシアイをしていたとはなぁ!」

 

「あ……あああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

秘密をバラされて絶叫する柊さんを尻目に気味悪く笑い続けるモノクマ達。

 

 

 

「姉妹でのコロシアイ…だと?」

「ひ、酷い…。」

 

「しかし今回の動機はランダムに送られたはず…。何故このような事が?」

 

 

「あくまでも『ランダム』だからね。誰がどの秘密を見るか分からないし、無論自分の秘密が来る可能性もあるって事だよ。」

「とはいえ、2人も自分の秘密を見る事になるとはな…。どうやらこちらの不手際があったようだ。」

不手際…。絶対違う。最初からあの2人にコロシアイをさせようと仕向けたんだわ!

 

 

「さて秘密を教えた事ですし、何故八咫サンが柊サンを殺そうとしたかその詳しい理由を見ていきましょうか!では再びモニターオン!」

モニターに映し出された映像には童話のような可愛らしい絵柄の人物が映っていた。

 

 

 

ーー

 

昔々ある所に1人の男がいました。

男の名前は『柊流星』。今をときめく若き大物作家です。

 

 

 

ある日、彼はお酒に酔った勢いである女性を孕ませてしまいました。

この時、既に彼には奥さんと産まれたばかりの可愛い娘がいました。

 

孕ませた女性は全く見ず知らずの女性。この事がバレたら順風満帆な人生に大きく傷がついてしまいます。

 

そこで彼は自分が持つあらゆる人脈をフルに使い、この一件を全て『無かった事』にしてしまいました。ほとぼりが収まり、全て忘れた彼はその後亡くなった奥さんの代わりに残った娘へ最大限の愛を注ぎ、幸せに暮らしました。

 

 

 

 

ーー一方で孕ませられた女性はその後何とか娘を出産しましたが、男に捨てられた事への恨みを徐々に募らせ、産まれた娘を憎しみの対象として見ていくようになりました。

日常的に行われる虐待。ついには、娘を置いて何処かへ消えてしまいました。

 

その後、超高校級としてスカウトされる時に偶然、出会った2人はお互いが姉妹だと気づかず、仲良しになりました。

そしてある時2人は姉妹だと知る事になりました。

妹の方は以前姉の存在を聞かされていたのでついに姉に会えると喜んでいました。

 

 

しかし、この時ある考えが心の底にありました。

「…私が苦しい思いをしている間、姉さんはどれだけ幸せだったんだろう。」

最初はほんの小さな嫉妬でしたが、少しずつ憎しみへと変わっていき、最後には怨恨となって姉に対して殺意を抱くようになりました。

 

そして、ついに計画を実行に移したものの失敗に終わり、自分の命を落とす事になってしまいました。

 

ーー

 

「な、なんて悲しい話なんだ…。妹の一方的な嫉妬によってコロシアイになるとは…。」

「それにしてもお姉さんも酷いですねぇ…。殴った時点で誰かを呼んでいれば、仲直りできたかもしれないのに。」

 

 

「……そうだよ。だから、わたしは最低な犯罪者なんだよ。自分が助かるためだけに妹を殺すような酷い人間なんだよ!………こんな人間に生きる資格なんかないよね。………クマちゃん、もういいよ。」

 

 

 

「あ、そう?じゃあそこまで頼まれたらやるしかないよねぇ。」

 

「そ、そんな…。柊!」

 

「琴音ちゃん………。こんなお姉ちゃんを許して、なんて言わないよ。……でも、せめて謝らせて。」

 

「それでは!『超高校級の絵本作家』柊色羽サンの為に!スペシャルな!オシオキを!!用意しました!!!」

 

 

「自分が助かるためだけに琴音ちゃんを殺しちゃって…ごめんなさい…。ごめんなさい…!ごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

「では!張り切って参りましょう!」

「「オシオキターイム!!」」

 

 

 

 

「こ゛め゛ん゛な゛さ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛!!!!!」

 

 

裁判所全体に柊さんの謝罪の言葉が虚しく響き渡った。

 

 

ーー

 

 

 

 

GAME OVER

 

ヒイラギさんがクロに決まりました。

 

オシオキを開始します。

 

 

 

 

子供の姿をしたモノクマが絵本のページを開いていく。

森のページになった所で止まり飛び出す絵本のように森の風景が現れた。

そこには魔女のような姿をしたモノクマ、そして木に磔にされた柊がいた。

モノクマが手に持ったリンゴを一口、柊に強引に齧らせる。

 

 

 

 

【眠れぬ森の魔女】

超高校級の絵本作家 柊色羽 処刑執行

 

 

 

 

魔女モノクマが絵本を開き読み聞かせを始めた。

それと同時にオルゴールの優しい音色が鳴り始める。

しばらく読み進めていると突如、柊を強烈な眠気が襲う。

どうやら、最初に食べたリンゴに睡眠薬が入っていたようだ。

 

 

オルゴールの音色もあり、眠くてどうしようもなくなる。

それに気付いたモノクマが指を鳴らすと、同じく魔女の姿をしたモノパパが茨の鞭で全身を叩く。

激痛で覚醒する柊。

 

再び本の読み聞かせを始めるもまた眠気に襲われる。

モノクマがまた指を鳴らすと次は狼の姿をしたモノパパが柊の身体を爪で引き裂いた。さらに、狩人の姿のモノパパがボウガンの矢を撃ち込む。

目を覚ました事を確認すると再び本を読み聞かせ始める。

 

だが、また眠気に襲われる。

さらにモノクマが指を鳴らすと今度は小人の格好のモノパパが熱した鉄の靴を柊に履かせた。あまりの熱さに足の痛覚がなくなる。

 

 

ーー読み聞かせが終わる頃には、柊は無残な姿になり事切れていた。

 

 

 

この絵本を読んでいた子供モノクマは退屈だったのか、本を閉じて火がついた暖炉へ投げ込み、本は跡形もなく燃え尽きてしまった。

 

ーー

 

 

「イィィィヤッホォォォォォォ!!エクストリィィィィィム!!!」

「ガッハッハッハッハァッ!!悪しき魔女はこれにて滅ぼされたって訳だぁ!!」

 

 

「い……色羽!!」

「……くっ…。」

「なんでだよ……ここまでする必要ないだろ!アイツも反省してたのに!」

 

「反省…か。そういう問題かな?」

「き、狂也?」

「確かに彼女は罪を認めて反省した。けど、踏みとどまるチャンスは何回もあったはずなのに結局殺人をして、俺達を騙して生き残ろうとした……それは事実だよね?」

「……何が言いたいのかしら?」

 

「人を殺した時点で彼女には落ち度もクソもないって事だよ。……皆が擁護しようと犯罪者だって事は揺るがないって言いたいんだよ。」

「……………お前、死者を冒涜する気か?」

「待ってよ、怖いなぁ。本当の事を言っただけだろ?」

「…………貴様……!」

獅子谷君が葛城君に掴みかかった瞬間。

 

 

「ハーイストッーープ!!喧嘩をするなら外でやって下さい!!神聖なこの裁判所を汚すのは許さないよ!」

「今回も報酬としてメダルをプレゼントした!では、諸君またな!!」

モノクマ達に止められた。

 

 

「………くっ。」

「フフッ。みんな善人ぶって面白いなぁ。」

「……葛城君、あなたは一体何なの?」

 

「俺?俺は『超高校級の演劇部』葛城狂也。それ以上でもそれ以下でもないよ。……さっ、帰ろうか。」

 

 

ーー

 

裁判所を後にして戻ってきた俺達。

 

すると、

「さて、オレからも言いたい事がある。」

「どうしたんだ東雲?急に改まって。」

 

 

「学級裁判が終わってからずっと考えていたんだが……

 

これを機にオレは単独行動をさせてもらう。」

 

「な、なんだと!?」

「東雲クン、どういうつもりなのかしら?」

 

「オレは自分の命は自分で守るってだけだよ。………無能なリーダーにオレの命を預けられないからね。なぁ、皇クン。」

「何?」

「事実だろ?君は1人として守れなかった。………え?」

「……貴様。」

「そんなに凄んだ所で無駄だよ。君が犠牲になった人間を何度見てきたか知らないが、クラスメイトすら守れないような人間を頼る気にはならない。……自分で身を守った方がよっぽど賢い。」

「………勝手にしろ。」

「そういって貰えて嬉しいよ。感謝するよ……“リーダー”。」

 

「お、おい東雲!」

「止めないでくれ。リーダーからはお許しが出たからね。……まぁ、勝手に死んだ事にされるのは嫌だから朝飯くらいは出るさ。」

呼び止めようとしたが、東雲は制止を振り切って何処かへ行ってしまった。

 

 

 

……東雲の離反、そして葛城…。

俺達はこれからどうなるんだ?

 

 

ーー

 

 

 

【チャプター2 怨恨Killing Friend END】

 

残り:12名

 

To Be Continued...

 

 

 

ーー

 

【アイテム獲得!】ワンダーグリモワール

2章を目に焼き付けた証。

柊色羽の遺品。

父親からの誕生日プレゼント。

闇を知らない少女が最期まで大切に抱えていた本。




チャプター2完結。
そして東雲、まさかの離反。
例によって次がいつになるか見当もついてませんが、気長にお待ち下さい。




追記。
ダンガンロンパ3で黄桜役を演じられた藤原啓司さんのご冥福をこの場を借りてお祈りします。
私自身、藤原さんの演じられる飄々としたキャラ達が非常に好きで大ファンでした。
癌と言うことでしたが、最期まで闘病しながら最前線で収録されていたことを素晴らしく思います。ありがとうございました。


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チャプター3 この醜き世界に制裁を!
(非)日常編1


大変長らくお待たせしました。
これより、三章開始となります。




「……んっ。」

 

朝のアナウンスが鳴るより前に目が覚めてしまった。

 

「…今、何時かしら?」

 

モノドロイドで時間をすると6時。

……あと、1時間でアナウンスか。二度寝するのも面倒ね…。

 

「あと1時間、どうやって時間を潰そうかしら…。」

ベッドから起き上がった瞬間、スカートのポケットからカサっという音がした。

 

「……?」

ポケットをまさぐると何やら紙切れが。

広げてみると、紙切れの正体は昨日柊さんに描いてもらった私の似顔絵だった。

 

「………この絵があの子との、唯一の思い出になっちゃったわね。」

あの時の彼女の泣き叫ぶ声、未だに頭から離れない。

 

私の糾弾によって犯人だと暴かれてしまったけど、生き残るためとは言え、あれでよかったのかしら?或いはもっと彼女と話していれば、事件を未然に防ぐ事が出来たのでは?

……分からない。

 

「……額縁にでも入れておこうかしら。」

個室を出て、額縁を探すことした。

額縁がありそうな所……柊さんの研究資料室かしら。

 

 

 

ーー柊の研究資料室。

 

ここに来るのは探索の時以来ね。

さて、額縁は…。

 

どこにあるのか分からないので片っ端から調べ、画材が置いてある部屋で見つけた。

「これに入れてと……よし。」

額縁に入れた絵を彼女が寝ていたベッドに立てかけた。

 

 

 

………短い間だったけど、楽しかったわ。ゆっくり休んで。

……それから、あの時あなたを追い詰めるような事をしてしまって、ごめんなさい。

 

 

「……?」

ふと、右の頰を伝うものが。

「……涙…?」

どうやら、無意識に涙を流していたようだ。

「………そっか。友達を失うとこんな気持ちになるのね…。」

今なら暁日君の気持ちも理解出来るわ…。

 

 

 

 

【食堂】

 

朝食を摂るために全員が集まったものの、雰囲気は最悪だった。

学級裁判を終えた事でさらに食堂は広くなり、その上昨日離反を宣言した東雲君が当然のように食事を摂っていたのだから。

 

 

「………やれやれ、空気が悪いな。これじゃ折角の美味い飯が不味くなる。」

 

「……誰のせいだと思ってるんだよ!!」

「…ん?オレのせい、とでも言いたいのかい?飛田ちゃん。」

「当たり前だろ!どの面下げてご飯食べに来てるんだよ!」

 

「やれやれ、離反宣言をしただけですっかり悪役か。大体オレからすれば君達も異常だよ。……そんな無能リーダーに頼ってるようじゃ、今に死ぬぞ。」

「……っ!アンタっ………ホントいい加減に………!!」

飛田さんが、東雲君に掴みかかった。

 

「大和がどれだけ皆のために動いてくれてると思ってるんだよ!それも知らないでそんな事言うなよ!」

「だとしても結果が伴ってなければ意味がない。…そうじゃないのか?」

「…っの野郎…!」

 

 

すると、

 

 

 

 

「やめて下さい!!!」

 

 

 

 

涙を流した夜桜さんが叫んだ。

 

 

 

「凛ちゃん……?」

「お願いですから……争いなんてやめて下さい…!これ以上争って何になるのですか……!?もう、もう………お友達を失うことになるなんて、わたくしは嫌です!!」

「………」

「夜桜ちゃんに、涙ながらに訴えられちゃあね…。分かった。この場はオレが悪いと言う事でおさらばしよう。……じゃあな。」

 

 

 

「おっと解散?認められないわぁ!」

「……チッ。用件は手短にしてもらおうか。」

 

「2度目の学級裁判を乗り越えたご褒美として学園内、そしてモノクマタワー内部の新しいエリア開放をさせて頂きました!それだけ伝えに来ました!以上!皆解散!」

 

 

「なるほど、じゃあオレは先に探索に行かせてもらうよ。じゃあ。」

 

 

「あーもう、マジムカつく!聖悟、塩撒いて塩!」

「そ、そこまでなさらなくても…。」

 

 

「それはさておき新しいエリア、ね…。」

「今回も2班に分けて行動する?」

「そうだな。どちらを探索したいという希望はあるか?」

 

 

 

「じゃあ、私はタワーを…」

「あ、俺はタワーを…」

 

 

「「・・・・・」」

まさかの暁日君と意見が被ってしまった。

 

 

 

「暁日君…。タワーの探索は私に任せてもらえるかしら?」

「いや、お前こそ前もタワーを探索しただろ?今回は俺にやらせてくれよ。」

「高所恐怖症の人に任せる訳にはいかないわね。ビビって見逃しちゃうんじゃないかしらねぇ?」

「だ、誰がビビるんだよ!足元が透けてなかったら大丈夫だっての!なんだその勝ち誇った顔!このチビ!」

「ち、チビですって…!?また引っ叩くわよ!」

 

 

「ハイハイハイ、そこまで!ここは一つジャンケンで決めよう!それなら文句はないでしょ?」

仲裁に入った葛城君が提案をしてくれた。

「ジャンケンね…。いいわ、後からケチをつけるのはなしよ、暁日君。」

「誰が!お前こそ、3回勝負とか言い出すなよ!」

 

 

 

「じゃあ、俺が合図するからね。………いくよ、ジャンケンーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

【暁日サイド】

 

「……フッフッフッフッ…。」

「暁日君、凄いご機嫌だね。」

「だって見たかよ、あの宵月の悔しそうな顔!爽快だぜ!」

ジャンケンに勝った俺はタワーを探索する権利を手に入れた。

だが、それ以上に宵月の打ち負かしたという事実の方が嬉しかった。

 

 

「アイツいつも、余裕そうな顔してたからなぁ…。朝から陰鬱だったけど、もう気分が晴れるってもんだよ!」

「フフッ、もうさっきからそればっかり。じゃ、機嫌が良いうちに探索に行こうか。」

 

 

 

 

 

「ーーなぁ、歩きながらで良いからちょっと聞かせてくれるか?」

「うん?何?」

前の事件が終わってから、ずっと聞こうと思っていた事……思い切って聞いてみる事にした。 

 

「どうしても気になってな…。なんで、男装してた事を隠してたんだ?それも口封じに殺そうとするほど必死になってまで。」

「……っ。」

分かってる。そう簡単に答えを教えてくれるような事ではないと。

「相当深い事情があるってのはなんとなく察してる。だから、話したくなかったら無理には聞かない。」

「……『情報を扱う者はまず、己の情報を伏せるべし』………ボクの師匠(せんせい)の言葉だよ。暁日君は、5年前に起こった一家惨殺事件は知ってる?」

 

 

5年前……

「……あぁ。とある家族3人が全員めった刺しにされて殺された挙句、家に火を放たれたってやつか…。物的証拠は揃ってるのに未だに犯人は見つかっていない未解決事件になってるんだったな。被害者には当時幼稚園児の女の子もいたっていうから、惨い事件だったよな…。」

「……その事件に生き残りがいたって言ったらどう思う?」

「………まさか…!」

「そっ。その生き残りこそがボクってわけ。」

 

 

「な、なんだって…!でも、そんな情報どこにも…!」

「それはボクの師匠が情報を操作したんだよ。………あの日、ボクは偶然友達と遊びに行ってたお陰で難を逃れた。でも、帰ったボクを出迎えたのは、全てを燃やし尽くす炎だった。呆然とするボクを偶然居合わせた師匠が介抱してくれて、犯人の手から逃れさせる為に嘘の情報を流したんだ。」

そんな事情が……。

 

「そうだったのか…。それで、その師匠は…?」

「……死んだよ。殺された。」

「なっ…!」

「犯人を情報を追ってる時にね、ある日ドラム缶にコンクリが詰められた状態で海に沈められてるのが発見された。……この帽子は師匠の形見でもあるんだ。ボクはこの命に替えてでも、家族を2度も奪った犯人に同じ苦しみを味わせる為にも捕まえてみせる。」

こいつは、俺が思ってる以上に壮絶な人生を送っていた。それなのに俺はなんて軽はずみに聞いてしまったんだ…。

 

「…ごめんな。そんな事情も知らずに聞いてしまって。」

「いいよ。気にしないで。ボクも誰かに聞いてもらって少し楽になった。……一つだけ聞いていい?」

「なんだ?」

「『スマイリー』って名前、聞いたことはある?」

「いや…。それがどうしたんだ?」

「うぅん、知らなかったらいいんだ。あ、ホラ。タワーにもう着くよ。」

『スマイリー』……一体何者なんだ?

 

 

 

 

 

ーーモノクマタワー。

 

 

タワー内にやってきた俺達。

すると、真っ先にある物が目に入った。

「?あれ…?扉、増えてないか?

「あ、ホントだ。前からあったエレベーターとバックヤードへ行くドアとは別で両開きの扉が左右にあるね。」

向かって右の扉は、かなり大きい木製の扉。もう一方の扉は、なんていうか……19世紀頃の西洋をイメージしたような扉だった。

 

 

「どっちから入る?」

「うーん、どっちからでもいいんだけどな…。よし、左の扉にしよう。」

そう言って扉を開けると、

 

 

「うっわ、すげぇ…。」

「教会…なのかな。」

扉を開けた先は、巨大なパイプオルガンやステンドグラスがあるチャペル、そして至る所に十字架が飾られた教会の礼拝堂のようになっていた。

 

そして、何やら賛美歌のような音楽が聴こえてきた。

どうやら、誰かがパイプオルガンを演奏してるようだった。

「誰が弾いてるんだ?………っと、剣崎か。おーい…」

「あっ、待って。せっかくだし聴いていこうよ。」

「あ、あぁ良いけど。」

音楽、ましてや賛美歌となるとさっぱり分からない。それでも、何となく良い音楽だと思った。

 

 

「ウィコッチ・マギヤス『交響曲第五楽章・鎮魂歌』」

「ん?」

「この音楽の曲名だよ。それでこの曲を作った人がウィコッチ・マギヤス。19世紀頃のノヴォセリックにいた音楽家だよ。マイナーだけど、根強いファンがいるんだ。この曲は人の誕生から死ぬまでをテーマにした曲なんだよ。」

「詳しいな、流石情報屋。」

「えへへ。どうも。」

久しぶりに小鳥遊の笑顔を見た気がする……こうして見たら結構可愛いな。

しばらく、剣崎の演奏を聴いていた。

 

 

「………ふぅ。」

「お疲れ、剣崎。良い演奏だったぞ。」

「暁日様、小鳥遊様。いらしてたんですね。」

「中に入ったら、演奏が聴こえてきたからね。少し聴いてたんだ。」

「ありがとうございます。拙い演奏だったと思いますが、いかがでしたか?」

「拙いなんて、そんな謙遜するなよ。凄い良かったぞ。俺なんか猫ふんじゃったすら怪しいのに…。」

「フフッ。そう言って頂けて、嬉しいです。」

 

「ところでこの教会はなんだ?」

「恐らくですが…ここは僕の研究資料室ですね。」

「その割には執事っぽい道具は見当たらないけど…?」

「才能、というよりは僕の趣味・嗜好に合わせたのでしょう。ここの建築方式もですが、何よりこの荘厳な雰囲気が僕によく馴染みます。」

なるほど、その人物に合わせたパターンってのもあるのか。

 

「そうだ。お2人は何か信仰してる宗教とかはありますか?」

「いや、別にないけど。急にどうした?」

まさか、変な宗教への勧誘じゃないよな?

「でしたら、お祈りをして行かれませんか?……コロシアイで犠牲になられた方々が少しでも安らかに眠って頂く為にも。」

…そうだよな。言われてみればちゃんとみんなを弔うことが出来てなかったな。

 

「よし、祈っていくか。小鳥遊はいいか?」

「勿論。ボクも気持ちは一緒だよ。」

「かしこまりました。では、お祈りの前に少し作法をお教えしますね。」

 

 

「ーー以上です。では、鐘を鳴らしますので三回鳴らした後に祈って下さい。」

剣崎にお祈りの作法を教えてもらって、その通りに祈った。

……夕斗、それに八咫…。もっとお前たちと話していれば、死ぬなんて事は無かったのかな…気づいてやれなくてごめんな…。

それに、柊と本代…。

こんな状況でさえなければきっと分かり合えたはず…。

お前達の死は絶対に無駄になんかしない…。

だから、安らかに眠ってくれ。

 

 

 

 

お祈りを済ませた俺達は教会を後にして、もう一つの扉を開けて中に入った。

「ここには誰も来てないみたいだな。」

「舞台と席……劇場かな。」

「となるとここは…。」

 

 

「葛城の研究資料室!」

「葛城君の研究資料室!」

「「……プッ!」」

「「アハハハハハハ!」」

 

 

「だよな!これしかあり得ないよな!」

「うんうん!ボクもこれ以外思いつかなかったよ!あ〜お腹痛い!」

考える事は一緒か。……思わず笑ってしまった。

 

「一応探索しておくか。」

「あ、ちょっと待って…。よっと。」

どうやら、モノドロイドで写真を撮っているようだった。

「何してるんだ?」

「あぁ、折角だし葛城君にも教えておこうと思ってね。」

 

ステージ以外に何があるのか調べてみると、控え室のような部屋があった。

「ここも凄いな。衣装に小道具、それから台本もあるな。」

「『オペラ座の怪人』『ロミオとジュリエット』その他諸々…。どれも有名な作品だ。それからこれは…衣装を作るための布と裁縫道具かな。」

なんか今回の研究資料室、やけにデカい上に充実してるな…。

 

「……あれ?この台本、書きかけだな。作者は………葛城狂也。そういえばアイツ、脚本も書いてるんだったな。タイトルは『終わりなきプロローグ』…。」

どうやら、ミステリー系の内容のようだ。

『死神』を自称する殺人鬼視点で進んでいくという物語…。

そして、衣装は黒いコート……。

どこかで聞いた要素があるが、偶然か?

 

 

 

 

一階の探索を終え、エレベーターに乗ることにした俺達。

「新しく増えてる階は…最上階みたいだね。」

「えっ……?マジで?」

「マジ。」

「間の階全部すっ飛ばして?」

「うん。」

「……ここから何メートルくらいだ?」

「多分、100メートルくらいだと思う。」

「・・・・・」

「暁日君、この世の終わりみたいな顔してるけど大丈夫?」

「だ、大丈夫、だと、思う。うん、多分。とりあえず、押して、くれ。」

「カタコトになってるけど…。お、押すね。」

 

 

ーー最上階へ向かって、上昇していくエレベーター。

この上がっている間の浮遊感が一番苦手だ。

「ーー暁日君、なんでボクの手を握ってるの?」

「…こうしてないと落ち着かないんだ。」

「…やっぱり降りる?」

「ま、まだ大丈夫。足元が透けて無かったら最上階も行ける。」

「む、無理しないでね…。」

女の子に心配かけて我ながら情けないな俺…。

 

 

そして、チーンという音が鳴り開く扉。

エレベーターから一歩踏み出し、目に入った光景は青空、そしてガラス張りの床から遥か先に見える地面だった。

「ーーあっ……。」

「ちょっ、ちょっと!暁日君!?」

小鳥遊が呼びかけているが、ダメだ。

意識が遠ざかってくーー。

 

 

 

 

ーーあれ?ここ、どこだ?

身体がフワフワしてて、柔らかい物に包まれてるような…。

…あ、俺死んだのか?じゃあ、ここは天国…?

 

ーー……い。

ん?誰か呼んでるな…。誰だ?

ーーおーい。

…あ、夕斗か。おーい、こっちだこっち。

 

……お前何してんだよ!

…は?

まだやるべき事があんだろ!死ぬのははえーよ!

……え?いや、ちょっとまっ…。

いいから行けや!まだこっち来るんじゃねぇよ!

 

ーーう、うわぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

「ーーう、ん…?」

「あ、起きた!」

「あ、暁日君!大丈夫?」

目が覚めた俺の顔を小鳥遊が覗き込んできた。

……なんか、見覚えある光景だな。…デジャブってやつか?

小鳥遊と一緒にいたのは飛田だった。

頭のこの感触…。どうやら、飛田が膝枕をしていたみたいだ。

 

「よかったぁ。急に倒れちゃったからびっくりしたよ。」

「たまたまアタシが瑞希ちゃんの声を聴いてたお陰でここに連れてこれたけど…。まずは瑞希ちゃんに心配かけた事を謝りなさい!」

「……えっと…その、すみませんでした。」

「気にしないで。君が無事な事が分かっただけでも、十分だよ。」

 

「……で、なんで飛田がいるんだ?それとここは?」

「なんでってそりゃ探索してるわけだからねー。あと、ここはアタシの研究資料室!」

「ここは飛田の研究資料室だったのか。」

……その割には周りは白い壁で何もない殺風景な部屋に思えるが。

 

「にしては、特に何も無いっぽいけど。」

「ふっふっふっ…。ところがどっこい、結構凄いんだよココ。…ちょっと待っててねー。」

そう言ってどこかに引っ込んでしまった。

 

すると、

「ん、壁と床に風景が出てきたな……なるほど、プロジェクションマッピングか。」

「ビルの最上階の映像みたいだね…って、暁日君、大丈夫なの?」

「映像ならなんとかな。」

「これだけじゃないよ!よっ!」

さらに操作するとビルの映像が出ている箇所の床が盛り上がった。

 

「映像と部屋が連動するようになってるのか。これは凄いな。」

「このままでもトレーニング出来るけど、このVRゴーグルを付ければさらにリアルなトレーニングができるんだよ!どう、付けてみる?」

「いや、それはいい…。」

VRはさすがに無理だな…。

 

「そっかぁ…。じゃ、折角だしアタシのテクニック見てかない?」

「あぁ、それならいいぞ。」

 

「よっしゃ!じゃあこのゴーグル付けてと…。よーし、じゃあ行くぜ!まずは、このビルのてっぺんでの逆立ち!からの〜バク転ジャンプ!次は、アタシの十八番!3連ハンドスプリングからの、バク宙してーの、必殺チートゲイナー!!」

次々とビルの映像を飛び移りながら、疲労されるテクニックはどれもキレがあり力強く、そして人を魅了させる美しさがあった。

 

「おぉ…!凄いな…。流石ニンジャと呼ばれる事はあるな。」

「えへへー。でしょ!ニンニン!」

「フフッ。でも、ホントよくそんなに身体が動くよね。」

「昔っからやってるからねー。身体に染みついてるのかも。」

「昔からか…。いつからやってるんだ?」

「今話してもいいけど、今は探索中っしょ?また今度ね。あとは…そだ!植物園はもう行った?」

 

「植物園?」

「うん。最上階にね、植物園もあったんだ。床も透明じゃなかったし、悠も大丈夫だと思うよ。行ってみたら?」

「面白そうだな…行ってみるか。」

「おっけ!……あ、ちょい待ち。」

「?」

飛田が何やらモノドロイドを操作したと思うと、

 

「はい、寄って寄って!ほら、もっとギュッと!」

「え?ちょ、ちょっと!」

「な、何だよ!」

「はい、イェーイ!」

突如、飛田は自撮りを始めた。

 

「……プッ!アハハハ!悠、変な顔!」

「勝手に撮ってそれはないだろ!てか、何で急に自撮りしようと思ったんだよ!?」

「そりゃ、もちろん皆と仲良くなりたいからだよ!全員と撮るまでやるからね。…………色羽ちゃん達とは写真撮れなかったから、思い出になる物がないんだ。その分、皆を記憶を残しておきたいんだよ。」

「飛田……。」

そうか、それであの時東雲にも食って掛かってたのか。

 

「…そういう事ならもっとしっかり残しておかないとな。今の消して、もう一回撮り直すか。」

「え、消すのはやだ。」

「なんでだよ!」

「だって、写真はその瞬間しか撮れないからね。瞬間瞬間をしっかり残しておくつもりなんだ。もう一回撮るのは全然おっけーだよ!あとで2人にも写真送っとくね!」

全く、しんみりしたかと思ったらすぐ元気になって…。

でもアイツのポジティブな所、俺も見習うべきかもな。

 

 

 

ーー植物園。

 

 

飛田の言っていた植物園に着いた。

「ここか、例の植物園は。」

「ようこそお2人さん!ここは才牢学園が誇る植物園!通称・『天空の花園』だ!」

「天空の花園…その名前に偽りなし、だね。」

「この植物では特殊な技術により世界中の植物、そして四季の花が同時に見れるのだよ!デートスポットにも最適な場所だ!」

「で、デート!?」

きゅ、急に何を言い出すかとおもったら…。

 

「む、違うのか?てっきりそのつもりだと思っていたが…。」

「ち、違うっての!俺達は探索に来ただけだ!」

「そんなこと言って、ナニを考えていたんだろうなぁ…?刺激が欲しけりゃバカニナレ!ってか!?」

「う、うっさいな!どっか行けよ!」

ふと、小鳥遊を見ると顔を真っ赤にしていた。

 

「な、なぁ…とりあえず探索しないか?」

「う、うん。でも、今一緒にいるの恥ずかしいから分かれて探索して後で合流しない?」

正直そう言ってくれて助かった。俺も恥ずかしくて死にそうだ。

 

気を取り直して、探索をする事にした。

特殊な技術を使っているというのはどうやら嘘ではないらしい。

歩き回ってると桜と向日葵が同時に咲いているという普通じゃありえない光景が目に入った。造花ではないかと思って触れてみたら手触りと香りが本物のそれだったのでどうやら本物のようだ。

「ただ、花を咲かせればいいってもんでもないだろ…。風情も何もないじゃないか。……ん?」

ふと、葉の間にある物を見つけた。

 

「……?ボール、か?」

手にした物はソフトボール程の大きさの玉だった。モノクマ達のカラーと同じく左右で白黒に分かれ「1」という番号が書かれていた。

 

「暁日くーん、何かあった?」

「小鳥遊、こんなのが落ちてたんだ。」

「ボール…っぽいね。何だろう?」

「どう見てもアイツらが用意したものだろうけど、その割にはアイツらが出てこないんだよな。」

「うーん…。とりあえず持って行ってみんなにも見せてみよう。」

「そうだな。そろそろ集合時間だろうし、食堂へ戻るか。」

丁度いい時間になっていたので、食堂へ戻る事にした。




1か月という療養期間を経たお陰で構想を十二分に練り直すことが出来ました。
本家も三章が特に好きなので、気合を入れてきます。



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(非)日常編2

お待たせしました。本日7/12は私の誕生日なので皆様へ私からの逆プレゼントとなります。

続・探索編です。
前回が暁日となれば今回は…?


【宵月サイド】

 

「・・・・・」

「えっとー…。宵月さん?」

「何よ。」

「負けて悔しいのは分かるけどさ、そろそろ機嫌直してくれないかなー?」

「怒ってないわよ。」

「どう見ても怒ってない人の態度じゃないよ。ほら、笑って笑って。」

「……はぁ。」

今、私は最高に機嫌が悪い。

ジャンケンで負けてタワーの探索ができなくなったからだ。

それ以上に彼のあの勝ち誇ったような顔が物凄くムカつく。

 

 

「………まぁ、いいわ。少し落ち着いたし、行きましょう。………帰ってきたらあのアンテナ毟り取ってやるんだから。覚えておきなさい、暁日君。」

「本音が漏れてるよ。」

「うるさいわね。大体なんで今日も一緒なのよ。」

「あれ?来たらマズい?」

「そういう訳じゃないけど…。」

どうしても気になる事がある。

 

 

ーあまり“オレ”を苛立たせるなよ。

 

 

昨日の学級裁判後のあの殺気…。

とてもハッタリだとは思えない。

今はその気配が全く感じられないのも却って不気味さを際立たせている。

だから、しばらくは距離を置きたいと思い、

「深い理由があるわけじゃないけど…私も機嫌が悪いし、誰かと距離を置きたいの。だから、今日はそっとしておいてくれない?」

理由を悟られないように、やんわりと断った。

 

「ふーん……。」

葛城君は顎に手を当てて何か考えているようだった。

前もあの仕草をしていた、という事はどうやらあれは彼の癖みたいね。

 

 

そんな事を考えていると突如、

「………これでも、ダメかな?」

私を壁に追い詰めて手で逃げられなくしてしまった。

所謂、“壁ドン”の状態だ。

「ちょ、ちょっと…!?」

「君はそんな事言っても、俺はもっと君と一緒に居たいんだけどなぁ…。」

「……人を呼ぶわよ。」

「お好きにどうぞ。何と言おうと君がイエスと言うまで俺はこうしてるよ。それでも良いならこのまま我慢比べでもする?」

 

冗談じゃない。

今のお互いの距離は息が掛かるくらい目の前だ。

それこそ、あと一歩でも近づいたらキスが出来てしまうくらい近い。

「……もう、ずるいわよ。」

「その心は?」

「イエスって事よ!いいから離れて!」

「はーい。」

ここまで言ってようやく離れてくれた。

彼だけは何考えてるのか全く分からない…。

 

 

「よっし、じゃあそろそろ探索行こうか。」

「なんでそんなに平然としてられるのよ。」

「別にあれくらいの事は何回も経験してるし、何とも思わないよ。……あれれ?もしかして、意識しちゃった?」

「別に……。」

ある意味では恐怖を感じたわね。

 

 

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけどさ。」

「何かしら?」

「結局、君の才能って何なの?」

今一番返答に困る質問が来たわね…。

未だに自分の才能が思い出せない上に、手がかりすら見つからないんだから。

「その質問には答え兼ねるわね。私にだって分からないんだから。」

「本当なの?隠してる訳じゃなくて?」

「わざわざ隠す理由がどこにあるのよ。逆に、あなたは私の才能をどう考えてるの?」

「うーん…。これまでの事件への貢献っぷりを考えると俺は『超高校級の探偵』じゃないかなって睨んでるんだけど…。どう?しっくりこないかな?」

 

 

『探偵』……。だとすれば事件の解決そのものが目的だけど…。

「……違うわね。探偵は事件解決そのものが目的でしょ?私の場合はちょっと違うの。」

「違うっていうと?」

「私は事件の“全て”を知りたいの。使われた凶器、死因、犯人の動機…。それらが知りたくて捜査をしているのよ。言ってしまえば、単に知識欲を満たす事こそが私の目的とでも言ったところかしら。」

「………なるほどね。気になった物をとにかく調べたいというわけだね。」

「そうね。ただひたすらに新しい知識を増やしたい、これだけよ。理解してくれた?」

「うん。となると君は研究者…なのかもしれないね。」

「ふふ…面白い答えね。今はそれでよしとしましょう。」

 

「よし、だっとら気を取り直して探索しよう!知識欲を満たすためって考えたら、ちょっとはやる気も出るんじゃないかな?」

「ええ。前向きに考えて、探索…と行きましょう。」

 

 

 

ーー校舎4階

例によって、シャッターが撤去されて新たなエリアである4階が開放されていた。

 

「相変わらず変わり映えしないのよね。」

「校舎だからどうしても造りは一緒だろうしね。」

タワーはフロアを上がる毎に何かしらの変化があったけど、こっちは校舎である以上、大きな変化がみられない。…だから、こっちはあまり探索をする気にならないのよね。

「…すぎたことを言っても仕方ないわね。さっさと調べちゃいましょう。」

 

 

最初にやってきた部屋の扉は全体が白く、アクセントで縦横に一本ずつ赤い線が引かれてそれが途中で交差してるデザインだった。

「赤十字のイメージ?…となるとここは医療系の才能を持つ人物…東雲君の研究資料室かしら?」

 

扉を開けると中は病院の診察室のようになっていた。

そして、

「やぁ、君たちもここの探索かい?」

「東雲君、やっぱり来ていたのね。」

「まぁね。今のオレにとって一番居心地がいいのはここだからな。折角、来てくれたんだ。何か飲み物でも飲むかい?」

「すぐに出ていくから結構よ。」

「やれやれ、つれないねぇ。」

「私達はあなたと違って暇じゃないのよ。」

「言ってくれるねぇ。そういう所も嫌いじゃないよ。」

 

「じゃあ、勝手に調べさせてもらうわね。」

「荒らさない程度に頼むよ。」

部屋にはデスクと患者が寝るためのベッド、それから薬や医学書が置かれた棚があった。

「如何にも…って感じの部屋だね。」

「脳医学、神経学、小児科学、薬学…沢山あるわね。」

「ここには全ての種類の医学書が置いてあるんだ。」

「ふーん…。あっ、これ解剖学と法医学の本。検死に関する本もあるのね。」

時間があったら読みにこようかしら。

 

「薬類の方も色々あるね。傷薬に風邪薬、胃腸薬それから抗がん剤か。」

「抗がん剤ってどういう状況を想定してるのよ…………こっちは、栄養ドリンクね。」

倉庫にも栄養剤はあったけど、こっちの方が遥かに種類が多い。

すると、見慣れないラベルのドリンクが目に入った。

「こんな栄養ドリンク、市販に置いているの見たことないわね。…となると、彼らが用意した物かしら。」

ドリンクはいずれも左右の色が白黒に分かれたラベルになっており「α」「β」「Ω」と書かれた三種類があった。

「東雲君、このドリンク何かしら?」

「あぁ、それかい。それはかの身体の感度が3000倍になる事で有名なあの…。」

 

「コラーー!!嘘を教えない!そんな物を出したらR-18になるって言ったじゃないか!!」

「まったく…相変わらずジョークが通じないんだからつまらないな。」

案の定、冗談だったのね。……冷静に考えたら身体の感度が3000倍になるって恐ろしいわね。

 

「話を戻すけど結局、このドリンクは何なのかしら?」

「よくぞ、聞いてくれました!そのドリンクは『モノナミン』と言ってボク達が特別に調合した特別ドリンクです!」

「へぇ、栄養ドリンク。じゃあなんで、3種類もあるの?」

「3種類それぞれ効果が違うんだよ!『α』は睡眠促進。人間、疲れた時はグッスリ眠るのが1番!これ一本で瞬く間に夢の世界へGOという訳だよ。しかも、目が覚めた時も疲れを引きずらない優れもの!税込みなんと600円!」

……市販に売ってるものじゃないけど、通販でもしてる気分なのかしら。

 

「じゃあ、『β』は?」

「『β』は疲労回復!疲れた身体にこれ一本!作業もバリバリ捗るようになるよ!でも、一時的な物だからあまり飲み過ぎないこと!しっかり睡眠を摂るのも大事だから『α』とうまく併用してね!お値段は税込み650円!」

……通販の気分のようね。

 

「……じゃあ、この『Ω』は?」

Ωは確か「究極・最後」を意味する言葉だから、なんとなく嫌な予感がする。

「『Ω』はその名前の通り、他二本以上とは比べ物にならないくらい強力でね、効果は眠気覚まし。一本飲むと、丸2日は寝ないで済まなくていいくらいなんだよ。ただし、カフェインが普通のドリンクの30倍も含まれていて人によっては体調が悪くなっちゃうんだ。だから、これを飲むのは本当に必要な時だけにしてね。それから、絶対に二本以上飲まないこと!カフェインが強すぎて中毒死しちゃうかもしれないからね!中毒で死んじゃって裁判する事になっても面白くないじゃん!」

死ぬ事より、裁判優先か…。コイツは本当に倫理観が異常ね。

 

「じゃあ、私たちは探索に戻るわね。」

「おや、もういいのかい?」

「それなりに見れたから十分よ。一通り終わったら医学書読ませてもらいに来てもいいかしら?」

「勿論構わないさ。他にも聞きたいことがあったら言ってくれよ。……例えば、その胸を大きくするとか「…………。」……グェッ!……まぁ、君に任せるよ。オレは小さいのも大きいのも平等に愛せるからさ。」

とりあえず、ストレス発散も兼ねて東雲君を引っ叩いてから部屋を後にした。

 

 

 

ーー次の部屋はなにやら高級感のある扉になっていた。

「綺麗な扉だね…。まるで、偉い人が使う部屋みたいだ。入る前に一応ノックしておかない?」

「……する必要あるのかしら?まぁ、いいけど。」

扉をノックして見ると中から声がした。

「入れ。」

「この声は皇君ね。」

「ということは大和の部屋なのかな。」

「入れって言われたし、お言葉に甘えさせてもらいましょう。」

 

扉を開け中に入ると、高級感のあるデスクや壁に掛けてある勲章や表彰状が目に入った。映画でしか見た事ない光景だけど、実際に見るのとでは印象が違うわね。

「ふーん…ここが皇君の部屋というわけね。」

「その通りだが、あまり見ない方がこちらとしてはありがたい。軍の機密事項もあるのでな。」

 

「機密事項……このファイルの中身かしら?」

「おい。」

皇君が注意を促したけど私の方が早かったみたいね。

中身は……艦隊に使われる設備や兵器の類に関する資料のようだけど、専門用語がちょっと多いわね。

「これはもう読まないでおくわね。」

「頼むから勝手に読むのは勘弁してくれ。人目に触れていい代物ではないのだ。」

確かにこの情報が漏れるのはマズいわね。……だったら何故こんなところに?

 

「他に何かないかしら?」

「だから、勝手に見るなと…。」

すると、

「ねぇ、大和。この金庫何?」

葛城君が何かを発見して皇君に声をかけた。

どうやら、金庫のようだけど金庫にしてはかなり大きい。

 

「大和の部屋の物だから大和なら開けられると思うんだけど…。どう?」

「……。」

「皇君?」

この金庫を見つけた瞬間、皇君の態度が急に変わった。

「先に言っておく。………金庫の中身については口外するな。」

明らかに何かを警戒している。その雰囲気に有無を言う間もなく頷いた。

 

「よし、開けるぞ。」

金庫を開けるとその中には、

「これは…刀?」

鞘と持ち手の色が紺碧になっていて、例えるなら海のような色の刀が入っていた。

「模造刀…だよね?」

「いや間違いなく本物だ。……これは俺の物だからな。」

皇君は刀を鞘から抜きながら呟いた。刀身は透き通っているように白く、刃紋が静かな水面のように平坦になっている。刃のギラつき方を見るに本物のようね。

「どういう事かしら?」

「この刀の銘は『聖漣(セイレーン)』。皇家に伝わる妖刀だ。」

 

「妖刀?こんな綺麗な刀が?」

「それに、名前がセイレーン…。西洋の怪物の名前が何で使われているのかしら?」

「それに付いては、少々長くなるが聞くか?」

「面白そうだし、聞かせてもらえるかしら?」

 

「ーーこの刀はかつてとある刀匠によって作られたものだ。だが、刀匠の名前は分かっていない。文献によるとその刀匠は西洋かぶれだったらしく、西洋の技術を刀に取り入れられないか考えていたそうだ。そこで、西洋から剣の製法を輸入し、その技術を応用して刀に組み込んだ。そうして生まれたこの刀は軽量かつ切断力と貫通力に優れる非常に強力な武器になった。刀匠は海から来た技術を称えて、この刀に『聖漣(セイレーン)』と名付けた。……だが、海の怪物の名前を付けたことが祟ったのか、これ以降不幸が起こるようになった。

 

ある日刀匠はしきりに『歌が聴こえる』と訴え初めた。だが、他の者には聴こえず刀匠にだけ聴こえるらしく、ついには延々と聴こえる歌の幻聴によって精神を病み、発狂死してしまった。その後、持ち主が何度も変わったが何も幻聴が聴こえるようになり最後は発狂死し、新たな持ち主を求めて世界を転々と移動したが、海を渡るために船に乗せればその船が沈み、そのような事を繰り返し最後は皇家に流れ着いた訳だ。…まぁ、信じるかはお前達に任せるが。」

妖刀か…なんとも嘘くさい話ね。

 

「でもそんな刀を大和は持ってて大丈夫なの?」

「俺の場合、呪いを力でねじ伏せてるからな。恐らく牙を向く事はない。だが、他の人間が持った場合死ぬだろうな。それよりも刀があると言う事実が問題だ。誰かに持ち出されるのは危険すぎる。だから、この金庫と刀については一切口外無用で頼む。…いいな。」

「分かったわ。刀がある事は誰にも言わないわ。私達はここでの事は何も知らない。それでいいかしら、葛城君?」

「うん、異論はないよ。」

皇君と口裏を合わせて部屋を出た。

 

「それにしても刀か…。あんな危ない物があるとはね。」

「皇君は自分にしか使えないって言ってるけど、持ち出される可能性は否定出来ないからね。ここでの事は見なかったことにしておきましょう。」

「そうだね…。ん、ちょっと待って。」

突如、葛城君はモノドロイドを操作し始めた。

 

「へぇ……これは凄い。」

「どうしたの?」

「小鳥遊さんから画像が送られてきてね。どうやら向こうに俺の研究資料室があったみたいなんだ。」

そう言って見せた画像には大きなホール、大量の衣装や台本が置かれた部屋が写っていた。

「凄い数の道具ね…。これ全部舞台のものよね?」

「うん、これだけ揃ってたら大体の演劇は出来ると思うけど…人が足りないから声劇くらいが限度かもしれないな。それに見せるお客さんもいないんじゃね…。」

どこか寂しそうに葛城君は呟いた。演劇に対する想いは嘘じゃないようね。

 

「………よし!宵月さんごめん!ちょっと用事思い出した!悪いけど一人で探索してて!」

「ちょ、ちょっと!?」

突然、何かを思い出したかのように葛城君はどこかへ行ってしまった。

…思い出したというより、思いついた感じだったような…?

 

「……じゃあ行こうかしら。」

ずっとついて来ていた人がいなくなって気は楽になったし心置きなく探索させてもらう事にした。

 

 

ーー3階の部屋も残す所はあと1つとなった。

扉はドット絵調のデザインになっている。

「これは分かりやすいわね。恐らく、『超高校級のゲームプログラマー』氷室さんの部屋ね。じゃあ、入ろうかしら葛城く…。」

振り返っても誰もいない。葛城君は今別行動をしている事を忘れていた。

「……一人ってこんなに寂しいものだったかしら。」

いないものを求めても仕方ない。ましてやわざわざ呼び出したら何を言われる事か…。

「…独り言ばっかり喋っててなんか虚しいわね。早く終わらせよう。」

 

 

「…失礼するわよ。」

「む、宵月か。今日はバディは一緒じゃないのか?」

バディ……あぁ、葛城君の事ね。

「途中まで一緒だったけど、急用があったのかどこかへ行っちゃったわ。」

「成程な。どうりで寂しそうな顔をしてると思ったらそういう訳か。」

「寂しそう?冗談でしょ。」

「自覚してないのか。負けヒロインのような顔をしてるぞ。」

負けヒロイン…例えが分かりにくすぎる。

 

「…話を変えるけど、ここはあなたの研究資料室なの?」

部屋の様子は壁一面にゲームソフトと本体、それから部屋の中心にパソコンが一台置いてある。ゲーム機は黎明期時代の物から最新の物まで様々メーカーのゲーム機が一通り揃っている。そして、氷室さんはその内の一台で遊んでいた。

「大体察しは付くだろうがその通り、ここは私の部屋だ。探索するなら好きにしたまえ。私はゲームしてるから何か聞きたい事があったらいつでも声をかけるが良い。」

「分かったわ。」

 

 

壁のゲームを調べていくが、ジャンルも色々ある。あまりゲームをやる方ではない私でも聴いた事のあるタイトルから恐らくかなりマイナーなゲームもある。その中で携帯ゲーム機の棚を調べている時にあるものを見つけた。

 

「このゲームのタイトル……『ダンガンロンパ』…。『ダンガンロンパ』って確か…。」

そうだ、氷室さんが言っていたゲームだ。確か殺戮ゲームだとか…。

「同じタイトルだけで40作品くらいあるわね…。氷室さんが言うには全部で53作………本当に途中からただのゲームじゃなくなったようね。」

そして、肝心のソフト自体は全て抜き取られている。このコロシアイをさせている黒幕がプレイさせないために抜き取ったのかしら?

「だとしたら、なんでわざわざパッケージだけ残しておくのかしら?…謎ね。」

 

 

後の棚にある物は全部ゲーム…かと思ったら見慣れない物を見つけた。

「これは…ボールかしら?」

ソフトボールくらいの大きさの球にはモノクマ達のカラーと同じく左右で白黒に分かれ「7」という番号が書かれていた。

「7……ってことは同じ物が全部で最低7つあるのかしら?………モノクマ!」

返事がない。色といいモノクマと関係があると思ったけど違うのかしら?

棚にある物はこれくらいかしら。とりあえずこのボールは持って帰ろう。

 

あと気になるのは…中央に鎮座するパソコンね。

「氷室さん、このパソコン動かしてもいいかしら?」

「別に構わんが、やるだけ無駄だと思うぞ。」

「無駄?」

「起動したらすぐに分かる。」

 

そう言われたので早速起動すると、

「…パスワード?」

「分かったろう?パスワードを入れない限りコイツは操作できない。」

「パスワード知ってるの?」

「知らん。」

えぇ………。

「じゃあこれただの置物じゃない。」

 

「フッ…そうやって悲観的になるのが素人の甘い所だ。……忘れたか?私の才能を。」

「ゲームプログラマー…よね?」

「そう!私は神の如き天才プログラマー!私にかかればセキュリティの突破などイージーモード以外の何者でもない!道が塞がれてるなら破壊して創ればいい!こんなしょぼいセキュリティなど、ハッキングしてプログラムを書き換えてしまえば何の問題もない!」

「……つまり、セキュリティを弄って強引に突破するって事?」

「人間にも分かる言葉に言い換えるならそういう事だな。」

……もしかして馬鹿にされてる?

 

 

「…さて、肝心のハッキングだが、内部のプログラムを解析して一から作り替えることになるだろうから少々時間が掛かる。今すぐにでも初めようか?」

何そのゲームの選択肢みたいな質問。

「とりあえず、報告会だけ済ませてからにしない?情報共有も必要だし。」

「まぁ、よかろう。しばし、人間達の戯れに付き合ってやるとするか。」

ひとまず私達は食堂へ戻る事にした。




ここまで書いた時点で各チャプター終了後の遺品アイテムシリーズを入れるのを忘れている事に気づく痛恨のミス。急ピッチで現時点でのチャプターのラストに追加しました。どんな物なのか再度確認してみて下さい。


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(非)日常編3

お久しぶりです。
予定より長い。


ーー食堂。

 

「……遅い。」

皇は少し苛立ちを覚えた様子で呟いた。

 

「集合時間は過ぎている。今いないのは東雲、葛城、小鳥遊、飛田か。」

そう、単独行動をしているはずの東雲はともかく、集合時間は経っているのに何故か小鳥遊、葛城、飛田の3人が未だに来ていない。

「小鳥遊は暁日と行動してたと思うが……暁日、お前は何か知らないか?」

「えっと、集合時間が迫ってたからタワーから戻ろうとしてたらその途中で急に葛城が『悪いけど、ちょっと小鳥遊さん連れてくね。』って言って連れ去って行ったんだ。…そこからはちょっと分からない。」

「そうか…。何もなければいいが。」

二度もコロシアイが起こっている事もあり、かなり気が立っているようだ。

 

「あの…僕が見てきましょうか?」

「いや、一人で行くのは危険だ。俺も一緒に…。」

剣崎と皇がそう話していると、

「皆!遅くなってごめん!」

「ごめーん!遅くなっちゃった!」

葛城と飛田が入って来た。

 

「遅い。何をしていた?」

「実はちょっとある事を思いついてね。…まぁ、見てもらったら分かるよ。」

「さ、瑞希ちゃん!入っといで!」

そう言って飛田が扉に向かって声を掛けると、そこでは小鳥遊が陰からこちらを見ていた。

「……うぅっ。…やっぱり恥ずかしいよぉ。」

「ダメ!ここで思い切って変わらないと!ほら!」

「ああっ…!」

飛田に半ば強引に食堂へ押し込まれた小鳥遊。その姿はーー

 

 

 

「うぅ〜…。スカート履くの久しぶりだから凄い脚がスースーするぅ…。」

 

 

 

ーー元の制服の特徴を残しつつ、ズボンだった下半身がスカートに、ローファーをブーツに履き替えて女の子らしい衣装に着替えた物だった。

「出来るだけ元の面影を残すように上はそのままにして、下を思い切ってスカートにしたんだ。それから着替えさせるのを飛田さんに手伝ってもらったんだよ。」

「そゆこと!んで、折角だしメイクしてあげたんだ!瑞希ちゃん元々可愛いし、本来の良さを出す為にナチュラルメイクで軽ーくね。」

なるほど、顔の雰囲気も少し変わったと思ってたけど、化粧をしてもらってたのか。

 

「ふぅん。女の子らしい格好も似合ってるじゃない。」

「し、シルヴィアさん…!」

「そうね。とっても可愛いわよ、小鳥遊さん。」

「宵月さんも…!」

宵月とアレックスがからかってるけど、実際凄く似合ってる。

一瞬誰か分からなかったくらいだ。

 

「ほーら瑞希ちゃん、1番見せたいヤツの近くに行って見せなくていいの?」

「う、うん。」

と言って俺も前に来て、

「ど、どうかな…?」

クルッと回り全身を見せてきた。

 

「うん、似合ってるよ。凄く。」

そう言うと凄く嬉しそうな顔をして

「ほ、ほんと!?えへへ。」

「あぁ、可愛いよ。」

満面の笑みを浮かべる小鳥遊はとても可愛かった。

 

 

ーー

 

「ーーこれで、東雲を除く全員は揃ったか。では、校舎の探索班から報告を。」

「新たに開放された4階には東雲君、皇君、氷室さんの研究資料室があったわ。まず、東雲君の部屋なんだけど薬と医学書が置いてあったわね。」

「薬?」

「薬の種類は風邪薬や胃腸薬、変わったものだと抗がん剤が置いてあったけど、毒薬になりそうな物は無かったから安心して。…ただ、それとは別にモノクマ達が用意した栄養ドリンクがあったわ。こっちはちょっと強力な物があったし、持ち出される事を考えると誰かに見張りをさせた方がいいかもしれないわね。」

 

「見張りか…。誰がいいかな?」

「だったら、そのまま東雲に頼んだ方がいいんじゃないか?自分の部屋となると四六時中居ついていてもおかしくないし。」

「いや、アイツだと自分で殺人するために使用する可能性が高い。誰よりも毒や薬に詳しい人間だからな。」

「じゃあ、誰がいいかな……?」

「……とりあえず報告だけ終わらせて後で考えましょう。じゃあ、宵月さん続けてもらえるかしら?」

 

「残りの部屋は……まず皇君の部屋に関しては特に変わった物は無かったわ。………勿論、凶器になりそうな物も。」

刀の事は周りには不自然さを感じさせないようには隠したけど、どうやら悟られなかったようね。

「それから、氷室さんの研究資料室だけどここはなかなか面白い物があったわよ。まず、部屋にあるゲーム。古い物から新しい物まであったけど、それ以上にもっと興味深い物、彼女が言っていた例のゲーム『ダンガンロンパ』があったわ。」

 

「ほ、本当ですか⁉︎」

「………この学園にコロシアイゲームが置いてあるとは…………!」

「そ、それでゲームはプレイしたのか?」

「残念だけど、中のソフトを全て抜き取られていてゲームを実際にプレイする事は出来なかったわ。ただ、40作くらいズラっと並んでいたから氷室さんの言う通り53作目まであるというのは嘘ではないようね。」

「じゃあ、空っぽのパッケージだけを置いていたということ?…なんのため?」

「考えられる理由としては、過去に実際にコロシアイが行われた事実をアピールしたいがため…とかだろうな。つまり、私達が置かれている状況がフィクションなどではなく紛れのない事実だと黒幕が我々に伝えているという事だ。そして、従わない限り私達もこのゲームのキャラ同様いつかは死ぬ…と言いたいのだろう。ある種の脅迫のようなものだ。」

 

「悪趣味極まってるわね。校舎はそれで終わり?」

「もう一つ氷室の部屋にあったんだけど、ロックがかけられたパソコンが置いてあったわ。」

「これ見よがしに置かれたパソコン…。なかなか興味深くはないかね?」

「けど、ロックがかかってるんじゃどうしようもないんじゃ?」

「ククッそう悲観的になるな。我が頭脳にかかればどうと言うこともない。ハッキングしてロックをブチ破ってやるさ。」

「……という訳で、この後氷室さんにはパソコンの方をお願いしているわ。」

「ロックのかけられたパソコン…果たしてこれはパンドラの箱か。してその中身は希望か、絶望か…。楽しみだな。」

…随分と楽しそうね。

「校舎の方は以上よ。」

 

ーー

 

「ーーでは、次はタワーの報告を。」

「じゃあ、俺が。まず一階に新たなフロアが2つ増えていた。一つは剣崎の研究資料室、もう一つは葛城の研究資料室だ。剣崎の方は礼拝堂とパイプオルガンのある教会…というか大聖堂のような部屋になっていた。葛城の部屋は舞台ホールと台本や衣装が沢山置かれたこっちもかなり広い部屋だった。まぁ、小鳥遊を見たら分かる通り、裁縫道具なんかも置いてあったよ。」

葛城の書きかけの台本についてはあえて触れないでおいた。本人も知ってるだろうし、なんとなくこっそり聴いた方がいいと思ったからだ。

 

「探索中少し気になったんだけど、どうやって扉を隠しておいたのかな?ボク達は扉を見てるから知ってるけどどっちも結構大きいんだよ。」

「案外、彼らにとっては造作も無いのかもしれないわね。あの巨大な壁を作ったり、何よりあんなオシオキ装置を用意できるのだから、ワタシ達が知る以上の技術を持ってるのかも。」

確かにここでの出来事は常識の域を越えてるからな。オーバーテクノロジーの一つや二つ、あってもおかしくはない。

 

「さて、次はタワーの最上階だ。最上階は………えっと…。」

「おい、暁日。大丈夫か?顔色が悪いぞ。」

思わず、先程の光景を思い出してしまって言い淀んでしまう。

「あ、ごめん。暁日君、最上階での事がトラウマになってるのかな……代わりにボクが話すよ。」

「小鳥遊…悪い、頼む。」

 

「他に開放されたエリアは最上階。高さは約100メートルくらいの場所の床が透明なガラス張りになっていたんだ。だから、高い場所が苦手な人は行かない方がいいかも。それで最上階には飛田さんの研究資料室、それからモノパパ曰く『天空の花園』と呼ばれる植物園があったんだ。……こんなところでいいかな。」

 

「あぁ、ありがとう。それで植物園を探索してた時にこんな物を見つけたんだ。」

そう言って俺は例のボールを取り出した。

「なにこれ?ボール?」

「色といいモノクマ達が用意した物だと思うんだけど。」

「あら、奇遇ね。私も同じような物を持ってるわよ。」

と言って宵月も同じような物を取り出した。

 

「?全く同じ物のようですね?」

「いや、よく見て。番号が違う。」

「あ、ホントだ。悠が持ってきたボールには『1』って書いてあって舞ちゃんが持ってきた方には『7』って書いてあるね。」

「間の数字は何故無いのでしょうか?」

 

「うぷぷぷぷ…それを見つけちゃいましたか!」

「ガッハッハ!見つけたようだなぁ!」

「モノクマ。やっぱりお前達が用意したものだったんだな。」

「なんで今になって出てきたのかしら?」

「それは勿論、これが集まることに意味があるからだよ!」

「集まる?これは一体なんなのだ?」

 

「これこそが今回の動機!その名も『モノクマボール』です!」

「『モノクマボール』?」

「諸君達はもう気付いてるとは思うが、番号が振られているだろう?」

「あぁ、これには『1』。もう一つのボールには『7』って書いてあるよな。」

「このボールは学園内のどこかに全部で7つあるのだ。その内2つはここにあるから残り5つだな。」

「そしてボールが7つ集まる事で真の力を発動できるのです!」

「真の力?」

 

「それはなんと、『願いを一つだけ叶える事が出来る』のです!!」

「……願い……だと?」

「そう!勿論叶える願いに限界はなくどんな願いも叶える事ができます!」

「不老不死になる、死んだアイツを生き返らせる、ギャルのパンティ……あらゆるものが意のままだ!」

……は?そんなフィクション染みた事が本当にありえるのかよ?

 

「ただし!願いを叶える事が出来るのは先着一名だけ!そして、ボールを使えるのは裁判が終わってクロが卒業してからです!」

「叶えたい願いがあるなら是非とも計画!殺人!Trial!、計画!殺人!Trial!してくれ!」

「クッ…。馬鹿馬鹿しい。話はそれで終わりか?なら、私は用があるのでここまでだな。キサマらの茶番に付き合うほど忙しくないのでな。」

「うぷぷぷ。氷室サン、そんな事言って自分が一番願いを叶えたいじゃないのかな?社長ならお金がいっぱい欲しいんじゃないの?」

 

「…クハハハハハ!全く笑わせてくれるな!私は金がこの世で最も嫌いなんだ!これ以上茶番に付き合う必要もなさそうだな。私は自分の研究資料室に行く。それから当分の間、食事もあの部屋で摂らせてもらう。剣崎、また食事の時は連絡をする。その時には頼むぞ。」

「は、はい。分かりました…。」

「あぁ、待て剣崎。」

「皇様、なんでしょう?」

「東雲の部屋の薬の管理だが、お前に任せておきたい。同じ階で都合が良いからな。常に確認せずとも食事を持っていくついでで構わないから頼まれてくれるか?」

「かしこまりました。僕に任せておいてください。」

 

「よし、これで必要な事は済んだし解散でいいかな?」

「そうだな。そのボールだが、とりあえずこの食堂に置いておこう。見つけたらここに集めておくように。それから、飛田と葛城。お前達は少し残っていてもらおう。」

「え?なんで?」

「決まっているだろう?説教だ。飛田は今回2回目だからな。厳守するためにもしっかり話し合っておきたいというだけだ。」

「あちゃあ…。やっぱり遅刻するのはマズかったかな。」

「仕方ないよ。遅刻した俺達が悪いんだからさ。」

 

 

【暁日視点】

 

報告会を終えて解散した俺は特にする事もなく暇になった。

「何をしようかな…。」

例のボールでも探しに行くか?でも、あんなフィクション染みた話を真に受けてわざわざ探すのもなんか馬鹿らしいな…。それにクロになった人間にしか使えないとなると嫌な誤解を生みそうだ。

 

すると、

「暁日君、ちょっといいかしら?」

宵月が声を掛けてきた。

「宵月、どうしたんだ?」

「ちょっと頼まれて欲しい事があってね。東雲君の資料室にある医学書を何冊か借りてきて欲しいの。」

おつかい、か。

 

「いいけど、なんで俺に頼むんだ?自分で取りに行ったらいいと思うんだけど…なんか用事でもあるのか?」

「理由があるわけじゃないけどちょっと…ね。彼の資料室に行くのって抵抗があるというか…。」

…………あ〜なるほど。探索中にまたセクハラでもされたのか。

 

「あーうん、深くは聞かないけどなんとなく察したよ。そういう事なら任せてくれ。」

「話が早くて助かるわ。じゃあ、これ。このメモの本全部借りてきてくれる?」

「えーと解剖学、脳医学、薬学、神経学と法医学と…………えっ?多くね?」

「ほんと助かったわー。これだけの数、女の私1人じゃ運ぶのもだっただろうし。あ、渡すのはいつでもいいわ。じゃ、あと頼むわねー。」

「お、おい!………はぁ、最悪。」

……これおつかいって言うよりパシリだろ。

まぁ、校舎の探索と考えて行くか。

 

 

ーー東雲の研究資料室

 

「ここか……おーい、東雲いるか?」

「……ん?暁日クンか。…どうぞ。」

返事があったな。

「入るぞー。」

「いらっしゃい。何か用かな?」

「宵月に頼まれてこの部屋にある医学書を何冊か借りに来たんだ。」

「探索中に話していた物だね。持っていって構わないよ。」

「よし、じゃあちょっと探させてもらうぞ。……えーと解剖学と脳医学とそれから……。」

「ハハハッ。随分読みたい本が多いようだね。」

 

「ーーふぅ、これで全部か。」

「お疲れさま。休憩がてらにコーヒーでも飲んでいくかい?」

「悪いな。一杯もらうよ。」

そういってコーヒーカップを受け取るも…。

「おや、飲まないのかい?」

「…なぁ、なんか入れてないよな?」

 

こう言った直後、今までにないくらい真剣な眼差しでこちらを見てきた。

「……まさか、このオレが人を殺すとでも?」

「そ、そういうつもりじゃ…。」

「生憎だがオレにハッタリは通じない。心理学もオレの分野だからな。……正直に答えた方が身のためだぞ。」

「……正直言うと単独行動をしている以上、今の状況は人を殺すのに最適だとは思った。」

「成程。……説得力はないかもしれないが、人の生死に携わるこの神聖な仕事にオレは誇りを持っている。この技術を殺す事に使うなど人道に反するような行為は決してする気はない。冗談でもそのような事を口にするのは絶対にしないでくれたまえ。」

「わ、悪い…。」

あそこまで怒った東雲は初めて見たな。

 

 

…………気まずい。なんかいい話題ないかな。

「…そうだ。東雲ってなんで監察医なんかやろうと思ったんだ?」

「『なんか』か…。確かにあまり聞き覚えのない職業かもしれないが、そういう言い草はないんじゃないか?」

「う、ごめん。」

「ハハハッ。冗談だよ。…少々長くかもしれないが聞くかい?」

俺は無言で頷いた。

 

「オレは医者の両親の元に産まれた人間だ。だから必然的に医療に携わる仕事に就くものだと考えていた。『ナイチンゲール』は知っているかい?」

「あぁ。『白衣の天使』と呼ばれていて医療技術の発展に尽力した人だよな。」

「その通り。彼女の伝記を絵本代わりに読んでいたこともあってオレも医療技術の発展、ひいては現在は治療出来ない病の治療方法を確立させる事を目標に生きてきたんだ。……だが、現実はそう甘くないものだったよ。」

「甘くない?」

 

「何度か父のオペに立ち会った事があるんだが、一度今現在治療法が確立されてない病の患者さんが父を訪ねて来たんだ。父はそこそこ名のある医者だったからね、絶対成功するものだと思ったんだが………結局手を尽くしたものの、ダメだった。あの時の家族の人たちの悲しみにくれた声……未だに忘れられないよ。」

「そうだったのか…。」

「けど、あの時思い知ったよ。……ただ腹を切り裂くだけじゃ到底全ての病を治すなど不可能に近い。細胞レベルで病に近づく必要があるってね。………だからこそオレは監察医になる道を選んだ。今は不可能な治療法もいつかは可能にする。それこそがオレに出来る最大限の医療貢献というわけさ。実際、新種の伝染病を発見した時はこの時の為に生きてきたんだという気持ちでいっぱいだったよ。」

「なるほどな。…俺はお前を勘違いしてよ。誰よりも命を大切にする。そういう人間だったんだな。」

 

「ハハ、面と向かって言われるのは少々恥ずかしいな。……オレは命をクソ程の扱いをするあの黒幕が何よりも許せない。級友たちの死を見るくらいならオレの死を持ってコロシアイを終わらせる。その覚悟で単独行動を選んだのだよ。」

「それがお前の目的だったんだな。けど、お前を死なせることはしない。出る時は一緒だ。」

「無論、それが最適解だ。オレの帰りを待つ女の子達が世界中にいるんだ。みんなに会うまでは死ぬに死なないさ。」

「世界中ってまた大げさな…。」

「おや、言ってなかったかい?オレは世界中に恋人がいるんだぜ?勿論、彼女達の合意の上さ。」

「ま、マジかよ!?」

「大マジさ……よく言うだろ?『人は見かけに寄らない』ってさ。」

最後の最後でとんでもないカミングアウトが来たな…。

 

「よし、じゃあ宵月に医学書届けてくるよ。っとその前に宵月に連絡入れとくか。…よし、よいしょっと……う゛っ!」

「おいおい、無理に抱え込んで持っていこうとするな。腰をやるぞ。紙袋があるからこれを使いたまえ。」

「わ、悪い…ありがとう。」

一瞬、マジで腰がヤバかった…。

 

 

 

【宵月視点】

 

さて、暁日君をパシ……おつかいに行かせた事だし、何をしようかしら。

急用でもないし、本を探す時間や東雲君の部屋で寛いでいる事を考慮すると結構ヒマになりそうね。

それなりに時間を潰せそうなところ…ゲームセンターかしら。うるさいから長居はしたくないけど、まぁ1時間くらいならいいかな。

 

 

ーーゲームセンター

 

「どのゲームをしようかな…。あっそういえば。」

暁日君がガチャガチャみたいな装置があるって言ってたわね。名前は確か“モノモノマシーン”だったかしら。

「えーっと……あぁ、これね。」

形はよく見るのとは少し違うけど確かにガチャガチャだ。排出率とか景品がなんなのかはよく分からないけどとりあえず回してみようかしら。

なんでか分からないけどこういうガチャガチャとか福引きとかの運が絡むタイプのものって凄い惹かれるのよね。小さい頃は意地でもコンプリートしようと頑張ってた思い出があるわ。昔から何かを集めるのが好きだったような気がする。

 

 

………そんなわけで持っていたメダルを使って回して当たったものは、ポケットティッシュ、携帯ゲーム機、万年筆、レコード盤だった。

必死に回していたのをモノクマに見られていたらしく、一度にメダルを大量に入れると良いものが当たりやすいと助言してれたので試したものの、何とも微妙な結果になった。

 

「……100枚くらい使って回した結果がこれって…。ゲームはそもそもやらないし、万年筆を使う機会もないし、レコード盤に至っては蓄音機がないから意味ないじゃない。まともなのがポケットティッシュだけって…。」

かなりの枚数を使ってもダブりがないってことは…まだまだあるってこと……!?一周回って燃えてきたわ…!

「…今回はこれくらいにしてあげるわ。いつかはコンプリートしてあげるから覚悟して待ってなさい、モノモノマシーン。」

謎の宣戦布告をしてモノモノマシーンから離れ、再度ゲームセンターを歩き回る事にした。

 

 

すると、

「………うーーーーーーん……。」

クレーンゲームの機械の前で難しい顔をしている剣崎君がいた。

「剣崎君、何してるの?」

「あっ、宵月様。このクレーンゲームの景品少し見てもらってもいいですか?」

「景品?……あ、あれは。」

剣崎君が指さした先のショーウィンドウの中にはぬいぐるみに混じって例のモノクマボールが紛れ込んでいた。

 

「モノクマボールがたまたま目に入って取ろうと思ったんですが、何故かこの機械が動かなくて困っていたんです…。宵月様、何か分かりませんか?」

「何かって言われても私も詳しくないわよ…。」

頼られた以上、断り辛いし念のため機械を見てみる事にした。

 

「……あら?」

「どうかしましたか?」

「剣崎君。これ、お金入ってないわよ。」

「お金?」

「モノクマメダルよ。入れなかったらそりゃ動かないでしょ。」

「こ、この機械有料なのですか!?ゲームってもっとこう、みんなで平等に仲良く遊ぶ物ではないのですか!?」

 

「ま、まぁこういう場所だとお金は必要ないかもしれないけど普通のゲームセンターなら有料なのが当たり前よ。」

「そ、そうなのですか…。実は僕、機械オンチなもので。あまりこういう物を触ったことがないんです。携帯電話や冷蔵庫などの家電でしたら使い慣れてますが、パソコンなどの機械ともなるとからっきしで…。」

機械オンチ…なんだか意外ね。彼が世間知らずなのも原因にありそうだけど言わないでおこう。

 

「その様子だとボールを取るのはちょっと大変そうね。私もあまり得意じゃないけど、代わりに取ってあげるわ。」

「でしたらメダルは僕のものを使ってください。代わりにやってくれるせめてものお礼と言ってはなんですが…。」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね。」

剣崎君からメダルを借りて早速ゲームを始めた。

 

コツは前葛城君にぬいぐるみを取ってもらったときに聞いたからそのやり方を応用すれば…。でも、そのまえに邪魔なぬいぐるみどける必要があるか。

「……。」

「あの、宵月様?ぬいぐるみが目当てじゃないですよ?」

うるさいわね。集中してるから静かにしてて。

 

邪魔なぬいぐるみは取り除いたし、これなら…。

「……よし!取れたわ。」

「わぁ!凄い、本当に取れた!ありがとうございます!」

「大した事してないわよ。じゃあ、はい。あとで食堂に持って行っておいてくれる?」

「かしこまりました。ところで少しお茶でもしていきせんか?」

「そうね…。少し喉が渇いたし、耳が痛くなってきたから移動しましょう。でも、ここから食堂にだと遠くない?」

「ご心配なく、もっと近いところにありますのでーー。」

 

 

ーー剣崎の研究資料室。

 

「ここって…礼拝堂よね?ここに何が?」

「実はこのオルガンの横に扉があってこの中が…。」

そう言われて入った部屋は西洋の王室のようになっていた。

「あら…こんな部屋があったのね。」

「お茶とお菓子も用意してあるので是非ゆっくりしていって下さい。」

そう言われたので、椅子に座って部屋を眺めているとーー。

 

「あっ、蓄音機もあるのね。」

「そうなんですが、肝心のレコード盤がないのでインテリア状態なんですよね…。」

「レコードなら私持ってるわよ。さっきモノモノマシーンで当てたの。」

「“Air on the G String”…『G線上のアリア』ですか。クラシックはいいですよね…心が洗われます。折角なので再生してきますね。」

剣崎君が蓄音機にレコードを入れてしばらくすると音楽が流れていた。

 

「いい曲ね…『G線上のアリア』。色んなクラシックを聴いた事があるけど、私は一番これが好きね。メジャーな曲というだけあるわ。」

「紅茶がいつもより美味しく感じれます…。まさに浄化されるような感覚と言った所でしょうか。」

 

「……そういえば、剣崎君ってノヴォセリックの王室執事をやってるのよね?」

「はい。それがどうかしましたか?」

「あなた日本人よね?それなのにーー。」

「どうしてノヴォセリックで執事をしている……といった所でしょうか?」

「そ、そういうことね。」

もしかして、結構気にしてる事なのかしら。

 

「よく聞かれるのですが、そんなに珍しい事なのでしょうか。その国の仕事をその国の人間しかしてはいけないというルールはないはずですが…。それにノヴォセリックは日本とは協定を結んでいるのですから国交は積極的に行っているのに…。」

ちょっと愚痴が入ってきてるわね…。止めてあげよう。

「ご、ごめん。そんなに気にしてるとは思わなかったわ。無理して話さなくてもいいわよ。」

「いえ、気にしないでください。この生活が続く以上、いつかは話さなくてはいけない事です。でしたら、今のうちに話しておいた方が…。」

 

 

「…僕は元々小さな孤児院で育った人間だったんです。本当の両親の顔は知らず物心がついた頃から先生の顔を見て育って来ました。孤児院では僕が一番年上で兄として自分より小さい子供達の面倒を見る…家族という物を知らないなりに幸せに生きていました。ある時、孤児院に来た方が僕の人生を変えるきっかけになりました。」

「その人ってもしかして…。」

「そう、今の親に当たる女王陛下です。陛下は日本をとても気に入っており、自腹で孤児院への寄付を行う程でした。たまたま僕の孤児院を訪れた際、“僕を養子として迎え入れたい”と申し出た事でノヴォセリック人として生きていく事になりました。」

そういう理由があったのね…。女王に目をつけてもらえるなんてなかなか光栄なことよね。

 

「でも、急に引き取りたいって言われてもなかなか受け入れるのは難しいんじゃないかしら?」

「仰る通りです。子供達にも泣き付かれましたし、何より先生達と離れるのが辛かったです。ですが、先生も“世のため人のために生きる人になりなさい”と激励をしてくれたのをきっかけに孤児院の人達にも誇れるような生き方をしたいと思い、今日も執事として働かせてもらっています。なので、超高校級としてスカウトされた時はとても嬉しかったです。……それに今は僕だから出来ることだってあるんじゃないかなって思っていますしね。」

「出来る事?」

 

「大袈裟に思われるかもですが…実は僕、世界平和を夢に生きているんです。」

「世界平和?」

予想以上に大きく出たわね…。

「僕みたいな人間でも超高校級としてスカウトされるのですから、きっと世界平和は不可能ではありません。異国の人間が異国で執事をする…。きっと僕は世界を繋ぐ架け橋として生まれてきたんです。僕は産んでくれた親、育ててくれた親、そして生きる道を作ってくれた親達に誇れる人間として生きたい、そう思っているんです。」

最初聞いた時は大袈裟過ぎて笑いそうになったけど、彼はこの小さい身体で真剣に考えていたのね…。見直したわ。そしてこれが彼を超高校級たらしめる原動力…。

 

「お話を聞かせてくれてありがとう。世界平和…きっといつか出来るはずよ。私もそう信じているわ。…それにしてもわざわざ孤児院にまで足を運ぶなんて、その女王も物好きね。それに相当日本好きなようね。」

「えぇ、陛下の日本好きは相当ですよ。どこで覚えたのか知りませんが、『モチのロン』とか『ゲロゲロ!』とか変な言葉使いで話すんですよ。本人は“バブル時代”のものだと仰っていますが…。」

バブルって何年前よ…。もっと厳格な人だと思ってたけど、意外とユニークな人みたいね。

 

「と言うか、思いっきり内情バラしちゃってるけど大丈夫なの?」

「………ハッ!今の事はオフレコにしておいてください!下手すると僕クビになっちゃうので…!」

「さぁ、どうしようかしらねぇ?」

「よ、宵月さまぁ…!」

 

 

 

ーー宵月の個室。

 

…ん、暁日くんからの通知か。

 

 

 

ーーーー

 

暁日悠:例の頼まれてたやつ、東雲から借りてきたからまた朝に持ってくわ。

 

宵月舞:了解。じゃあ、朝ごはんの後に頼むわ。

 

ーーーー

 

 

 

さて、そろそろ寝ようかしら。

 

 

 

 




ようやく、小鳥遊衣装替えバージョンを登場させる事ができました。

ちなみにこんな感じの姿になっています。

【挿絵表示】


彼女のこの衣装のFAを作る際はネタバレ防止として、自分のTwitterへ直接DMへ送るようにお願いします。


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(非)日常編4

ーー翌朝。

 

さて、朝飯も食べた事だし宵月にこの重たい荷物を渡しに行くか。早速、部屋へ向かいインターホンを押した。

 

ピーンポーン…

 

「はい、あら暁日君。」

「宵月、これ頼まれてたやつな。」

「あ、ありがとう。助かったわ。」

「助かったって…これだけの本運んだ俺の気持ちにもなってくれよ…。」

「そんな女々しい事言わないの。はい、これお礼ね。」

そう言って渡されたものは携帯ゲーム機だった。

 

「?なんだこれ。」

「昨日モノモノマシーンで当てた物よ。私はゲームやらないから持ってても意味ないし、あげるわ。」

「あ、はい。どうも。」

「じゃあ私はこの本を読む事にしようかしら。用があるならモノトーク使ってね。」

「ん、分かった。…と、そう言えばモノトークと言えば昨日寝る前に通知が来てたな。……飛田からか。」

 

 

ーーーー

 

飛田明日香:やっほ〜悠?(๑˃̵ᴗ˂̵)

 

飛田明日香:寝ちゃったのかなぁ?( ˘ω˘ )

 

飛田明日香:しゃーない。探索で撮った写真送っとくから後で見といてねー( ・ω・)つ

 

飛田明日香:画像

 

ーーーー

 

 

…探索してた時に撮ってたやつかな………ってんん!?

 

「…ブッ!なんだこれ!?」

「どうしたのよ暁日君………プフッ!………フフフッ……なによその写真…!フフッ……!」

送られて来た画像はあの時3人で撮った自撮り写真だった。

だが、写真には加工されていて俺の目だけが少女漫画のようにやたらデカく輝いたものになっていた。

 

「あ、暁日君だけ、メルヘンな顔になってて…ククッ………!ダメ……お腹痛い…!」

宵月は完全にツボにハマってしまっている。

とりあえず飛田に抗議のメッセージを送る事にした。

 

 

 

ーーーー

 

暁日悠:飛田!なんだよあの写真!

 

飛田明日香:お、写真見たの?どうあの加工、エモいっしょ?(๑>◡<๑)

 

暁日悠:エモくないわ!どうやってあんな顔にしたんだよ!

 

飛田明日香:知らないの?メダル使ったら加工機能とか顔文字も使えるんだよ〜╰(*´︶`*)╯♡ モノクマ曰く、「追加コンテンツ」だってさ〜(*´꒳`*)

 

暁日悠:いやそれはいいからあの画像消してくれよ!

 

飛田明日香:え〜(´・ω・`)そんな事言うんだったらアタシのアイコンを悠の顔に変えちゃうもんね!o(`ω´ )o

 

ーーーー

 

 

いや待て。アイコンって事はみんなに見られるってことだよな?それは流石に不味い!

 

 

ーーーー

 

暁日悠:待て待て!画像は残す。それにもう消すようには言わないからアイコンにするのはやめてくれ!

 

飛田明日香:さっすが〜♪話が分かるね♪(´∀`*)じゃ、大切にしててねー!

 

ーーーー

 

 

「ふぅ、やれやれ…。」

「結局消さないのね?」

「あぁ。下手するとアイコンにされる所だったからな…。」

「それならそれでいいじゃない。クッ、フフ…。」

「冗談でもそういう事言わないでくれ…。」

あれが白日の下に晒されるのは笑えないくらいキツい。

 

 

ーー

 

 

 

で、労働の対価としてもらったこのゲーム機だが…。

「…ソフトが入ってないなこれ。」

このゲーム機は触ったことがあるが本体に差し込むカセットかダウンロードで取り込むことでゲームを遊ぶ事ができる。

ダウンロードされたソフトが入ってると思って確認したが入っていない。

ソフトが入ってないゲーム機を渡されてもなぁ…。

「氷室の研究資料室でソフトでも借りて来るか。」

あれからパソコンの解析をするために部屋にこもってるだろうから今もいるはずだよな。

 

 

ーー氷室の研究資料室。

 

「氷室ー入るぞ。」

「む、暁日か。ようこそ我が研究資料室(エデン)へ。何用だ?」

エデンと来たか…。前から思ってたけど、コイツの中二病っぽい発言は分かりにくい上に色々キツイものがあるな…。

「ちょっとゲームを何個か借りていこうと思ってな。このゲーム機に対応するソフトあるか?」

「愚問だな。この部屋には古今東西のあらゆるゲームがあるのだぞ。メジャーもマイナーもこの部屋においては無効化するのだ!」

「は、はぁ…。」

「まぁ、このゲーム機は有名だからな。探すのもそれほど苦労はしないだろう。得意なジャンルとかのリクエストはあるか?」

「んー。じゃあアクションゲームかな。」

「アクションか。実に無難だな。まぁそれもよかろう。」

…無難って一言多いんだよ。

 

 

 

「…特にどういうアクションかの指定はなかったから適当に何本か取ってきたぞ。好きなのを選びたまえ。」

「おう、ありがとう。そうだな……じゃ、これにするか。」

そう言って俺が手に取ったゲームのタイトルは、『クリーチャースレイヤー』。

様々な武器を駆使して異世界の怪物・『クリーチャー』を撃退する、というハンティングアクションゲームだ。そして一人でも複数人でも遊べるのがこのゲームのウリだ。

「このゲーム、マルチでやるほうが好きなんだよな俺。」

「ほう、それは私を誘っているのだろうか?」

「あ、いやそういうつもりじゃ…。」

「そう言っても無駄だぞ。私もやらせてもらうからな!」

「いや、あっちはいいのかよ?」

「8割ほどは完了している。それに時間は半永久的にあるから、まったくもって問題ない!ずっとパソコンを相手にしていて退屈していたのだ。さぁ、一狩り行こうではないか!」

…単にゲームがしたいだけか。なら素直に言えばいいのに。

 

「…実はあらかじめプレイしているから、全難易度で遊べるのだがそれでも構わないか?」

「まぁガッツリやるつもりじゃないからそれの方がありがたいかな。」

「よし、ではクエストは最高難易度のX級で行くとしよう。武器は決めたか?」

「あぁ。双剣にした。昔っからこのゲームシリーズは双剣使ってるんだ。」

「思い出のゲームといった所か。フン、悪くないな。」

「そういうお前は何にしたんだ?」

 

「ランスだ。」

「えっ、ランス?」

「不満か?」

「不満ってわけじゃないけど、なんか意外だなって。もっと太刀みたいな派手なのを使うと思ってたし。ランスってなんか地味じゃないか?」

「太刀など所詮、『全集中の呼吸』とかほざいて暴れるガキの武器だ。それにランスを意外だの地味だの随分と言ってくれるな。鉄壁のガード、そこから繰り出される鮮やかな一撃、実にクールではないか。」

人のことを言えた立場じゃないけど、氷室なりのこだわりがあるんだな。…クールかどうかは置いといて。

 

 

ーー「よし、ひるんだぞ!攻めろ攻めろ!」

「任せろ!くらえ必殺、デススティングラッシュ!!」

「よし、尻尾切ったぞ!」

「フハハハハ!私に不可能などないわ!!!」

「っしゃ!倒したぞ!」

流石に手慣れているだけのことはあるな。ランスが見たことないような勢いでラッシュをして一瞬で尻尾を斬ってしまった。それはともかく、攻撃に名前を付ける必要あるのか?単に気分的な問題だろうか。

 

「久々にやったけど、やっぱり面白いよなこのゲーム。」

「この私に付いてこれるとはな。中々いい腕前だったぞ。」

「天才ゲーマーに褒められるとは光栄なことだな。」

「そうだろうそうだろう!もっと崇めたまえ!」

冗談交じりに答えたけど満更でもなさそうだ。

 

「外に出られたら、これの最新シリーズやりたいなぁ。」

「………残念だが、このシリーズはもう無い。これを最後に絶版になった。」

「…え?なんでだよ?10年近くは続いてる人気シリーズだろ?」

「ディレクターの暴走だよ。」

「暴走?」

 

「金に目が眩んだ一人の男が最新作の開発をおじゃんにしたんだ。元々評判の悪い奴だったが発売前の情報でソフト単体では以前までの武器が使えない、使えるようにするために必要なダウンロードコンテンツの小売り、一本では完結しないシナリオといった金儲けのためとしか言えない商法の情報を出して叩かれていたんだが、ある時ついに会社の金を横領しようとしてブタ箱行きだ。その後、開発チームの統率も取れなくなり、最新作の開発も中止。シリーズも事実上の終了となった。1人のバカが金に目が眩んだせいで全て台無しになる…愚かなものだよ。本当に金は醜い存在だ。」

金は確かに争いの要因になりがちだ。俺もそんな光景を何度も見てきた。けど、氷室はやけに金を毛嫌いしてるんだよな。昨日の動機の話の時でもそうだ。はっきり「金が嫌い」って言ってた。

 

「なぁ、氷室。お前なんでそこまで金を嫌ってるんだ?お前の才能上、金は会社にないと困るだろ。」

「気になるか?」

「ま、まぁ。気になるといえば気になる、かな。」

「では、少し語るとさせてもらおうか。私の物語(神話)を…。私は17年前、この現世に生誕した。私を産んだ母曰く、平均よりもやや小柄な赤子だったそうだ。」

え、そっから?

 

 

「両親はどちらもプログラマーでそんな両親の下に生まれたが故にプログラミング技術を受け継いだのは必然だった。ある日、母のパソコンを使ってプログラムを組んでゲームを作ったのだ。その時は特に何も思わなかったがその出来が非常によかったらしく、母はとても褒めてくれた。そのゲームをみんなにも遊んでもらおうといくつかのゲーム会社に掛け合ってくれたのだ。…だが、所詮は素人の作ったゲーム。誰一人として相手にしようとしなかった。仕方なく、フリーゲームとして配信したのだが…そのあとどうなったと思う?」

「……有名になってゲームの利権争いが始まったとかか?」

「その通り。金になると分かった瞬間、連中は目の色を変えて我先にと出版権を狙い始めたのだ。だが、母は屈しなかった。『最期』まで誰にも利権を渡さず守り抜いた。」

「『最期』…だって?」

「会社の工作員によってありもしないデマを書かれたのだ。『利権を独占し、私腹を肥やす屑』とかな。…全く、自分を棚に上げてそれをやろうとしたのは誰だろうな。最終的に母は精神を病み、自殺してしまった。」

「…ひでぇ。」

 

「その後は父の田舎に帰りしばらく身を潜めることになった。それでもデマは流れたが、父の尽力で何とか鎮火したよ。あんな目に遭おうとも私を守ってくれた両親には頭が上がらないよ。」

「・・・・・」

「さて、ここで問題だ。このような過去があろうとも、会社を立ち上げ顔を出さずに大ヒットゲームを作り続ける理由は何だと思う?」

「…客に喜んでもらうため?」

「無論それもあるがそれ以上の理由がある。『復讐』だ。」

「ふ、復讐?」

「いくら大ヒット作を作り出しているといえど、会社を立ち上げてまだ日は浅い。息の長い会社に並ぼうものなら『出る杭は打たれる』の言葉通り強引に吸収合併されるのがオチだろう。まずはキャリアを積んで地盤を固めてから、最後に一気に巻き返しこちらが会社を吸収する、というわけだ。そして、かつて母を自殺に追いやった連中の悪事を暴き白日に下に晒してやるのさ。以上が私の目的だ。」

 

「…なぁひとつ聞いていいか?」

「なんだね?」

「お前と最初に会った時『老若男女誰でも楽しめるゲームを作る』って言ってたけど、あれは嘘だったのか?」

「嘘じゃないさ。それは最終目標だよ。私はいずれこの世界にあるゲーム会社をすべて吸収するつもりなのさ。悪人とは言えどかつては名作を作ってきた連中。その人間たちの叡智を集めればいつかは実現する…そう信じてるのだよ。」

「そうだったのか…。」

最初に聞いた目標が嘘だったらどうしようと思っていた。けど、それは杞憂だったようだ。復讐心に囚われても真摯にゲームと向き合える…それが氷室幽華という人間なんだろう。

 

「それにしても以前の裁判は本当に残念だったよ。」

「柊と八咫のことか?」

「ああ。実は彼女たちをわが社の経理と専属イラストレーターとしてスカウトしていたのだよ。動機にさえ気づいていれば、コロシアイは起こらなかったのだろうか…。」

「お前は悪くないよ。悪いのは、このコロシアイを仕組んでいる黒幕だ。」

「まさかこの神が慰められるとはな…。面白い、気に入った!では再びゲームをするとしようか!!」

「ま、まだやるのかよ!?作業はともかく、寝てるのか?ずっと気になってたけどクマがすごいぞ!」

「問題ないと言ってるだろう?寝るだけならここでもできるからな!」

 

「待った待ったぁ!それは聞き捨てなりませんな!」

「何だクマ公?」

「折角用意した個室を使わないのは許さないよ!これからは個室以外で寝ることを禁止します!いいね!」

モノクマが突然現れて言うだけ言った消えたと思ったら、モノドロイドの校則に

 

14.個室以外での故意の就寝を原則禁止します。

 

の一文が増えた。

 

「やれやれ、しばらく徹夜か。」

「だから寝ろよ。個室に行けばいいだけだから大した問題じゃないだろ。」

「その時間が惜しいのだよ。それはさておきゲームするぞ!実はここにはテレビゲームだけでなく、カードゲームもあるのだ!さぁ決闘(デュエル)するぞ!!」

「あーもう分かったよ!すればいいんだろ!」

結局その後一晩中相手させられた。

 

 

 

 

 

ーー「…疲れた。まさか一晩中相手させられるとは。」

一度晩飯を摂るため部屋から出たが何処から見ていたようで最後まで離してくれなかった。

食堂に行ったとき、例のボールが全部で6つになっていた。

「あと二つか…まさかあんなのを狙ってコロシアイなんて…。」

 

 

 

ーー翌朝、食堂。

 

「おはよう。…ってどうしたんだ?」

食堂に来てみると何か様子がおかしい。

どうも慌ただしい。

 

「暁日……大変なことになった。ボールが盗まれた。」

「盗まれた?」

「あぁ。剣崎が朝食堂に入ったときに気づいたらしい。」

「なくしたと思って真っ先にここを探したのですが、見つからなくて…。」

「今から全員の個室を調べる。それでもいいか?」

「分かった。なら、すぐ調べよう。」

 

 

 

ーー「大和、どうだった?」」

「一通り探したが、それらしきものは見つからなかった。」

「ボールは一体どこへ行ったのでしょうか…?」

「仕方ない。今、ここには東雲と氷室以外の10人がいる。3,3,4のグループに分け2つは探索、1つは東雲と氷室に声をかけるグループにして行動しよう。」

そう言われて俺と剣崎、獅子谷の3人でボールを探すことにした。

「私たちは外を探すわ。暁日君たちはタワーを探して。」

宵月、葛城、夜桜の3人と探索個所を決めた。

 

 

 

 

ーーモノクマタワー。

 

 

「……よし、探すぞ……。」

「ですが何処を探せば…?」

「とにかく、1階から虱潰しに探すしかない。」

そう話していると、

 

 

 

 

ズドン!!!!

 

 

 

 

 

突然大きな音が聞こえてきた。

 

「なんだ!?今の音!?」

「暁日様!今の音は僕の研究資料室から聞こえたようです!」

「研究資料室だな!」

あの大きな音明らかにただ事とは思えない…だが、

 

「あ、開かない?」

「鍵が…!」

「…どけ!………俺がぶち破る………!!………………………うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

雄たけびを上げて獅子が扉を殴り飛ばした瞬間、『その音』が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン…。

 

『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』

 

 

 

 

 

 

ーー死体発見アナウンスを耳にしながら、目にした光景………………

 

 

 

 

 

 

 

 

荘厳なパイプオルガンが鳴り響く中、礼拝堂の中心に落下した巨大なシャンデリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその下敷きになり押しつぶされた『超高校級の監察医』東雲蒼真の変わり果てた姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………し、東雲……。」

俺たちが呆然としていると、

「暁日君!今のアナウンス…!」

「…!東雲君…!」

宵月たちが合流した。

 

 

 

 

 

 

その直後、

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン…。

 

『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』

 

 

 

再びアナウンスが鳴り響いた。

 

「い、今のは一体?」

「アナウンスが二回?」

「誤作動…ではなさそうね。」

「もしかして…。」

「どうした葛城?」

 

「死体一体につき、1回分のアナウンスだとしたら…。」

「…!まさか…!」

その直後、モノトークに通知が入った。

 

 

要件は

ーーーー

 

皇大和:氷室の研究資料室に集合。大至急だ。

 

ーーーー

 

 

 

「皇からだ。」

「『大至急』…嫌な予感がする。急ごう。」

頼む…杞憂であってくれ!

 

 

 

ーー氷室の研究資料室前。

 

「皇!」

「来たか。何かあったのか?」

「実はタワーで東雲が殺されていたんだ。」

「東雲が!?……なるほど、だから2度もアナウンスが…。」

「ってことは…。」

「あぁ。恐れていたことが起こってしまった。…一度中に入ろう。」

 

そう促され、入った先ではーー。

 

 

 

 

 

 

 

昨日見た後ろ姿…。寝ているのかと思うくらい静かだった。

 

手に触れた瞬間、冷たさによって現実に引き戻される。

 

 

 

椅子に座っている人物…それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー穏やかな顔を浮かべ、永遠の眠りに就く『超高校級のゲームプログラマー』氷室幽華だった。




一言。

Twitterの氷室ファンの皆さん、ホントごめんなさい。


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非日常編1 捜査編

「幽華ちゃん…それに蒼真も…?う、嘘、だよね…?」

「何故二人も殺されなくてはならないのですか…?もう嫌ですわ…!」

同時に二人も殺されるというあまりにショッキングな状況に飛田は呆然とし、夜桜は泣き崩れていた。

 

「犠牲者は氷室、そして東雲か。」

「皇クン、これって…。」

「あぁ。分かっている。」

「やっぱり二人とも気づいていたんだね。」

「………非常にマズイ状況だ。」

「マズイって?」

俺は皇に聞き返した。

さっき皇は『恐れていた事が起こった』って言ってたな…。

 

「これまでのクロは全て狙いが決まっていたから殺すのは一人で済んだ。…だが、もし無差別殺人が起こったとしたら?」

「…あ!まさか…。」

「そうだ。クロが全員を殺す事によって学級裁判は起こらず、問答無用で卒業という可能性が考えられる。」

「その心配はありませーーーん!」

「貴様か。『心配はない』と言ったな。どういう事だ?」

 

「学級裁判なしでのクロの一人勝ちなんてボクが許さないんだからね!というワケで新しい校則“同一のクロが殺せるのは2人まで”を追加します!」

「重ねてお聞きしたいのですが、“クロが2人の場合”はどのような処置がとられるのでしょうか?」

「その場合は早い物勝ちとします!つまり先に殺したクロだけが得をするというワケだね!新しいルール説明はこのくらいかな。じゃ、あとは父さんに任せるねー!」

 

モノクマが去り、新しい校則が追加された。

 

ーー

 

15.同一のクロが殺せるのは最大2人までとします。

 

16.クロが複数人いる場合、先に殺したクロの指定を行います。

 

ーー

 

 

そして、入れ替わるようにモノパパが現れた。

「さて、校則の説明も終わったことだし準備は出来ただろうか。今回は2つあるからな。しっかり目を通しておくように。」

 

 

「さてこれからどうするか…。2人も死者が出ている以上、これまでのように2人ずつ見張りに人員を割くわけにもいかないな。少々心もとないが、1人ずつ見張りを配置することにしよう。それから検死と言いたいが…東雲が殺された以上、そうは言っていられない状況か。それ以外の手がかりを…。」

皇が指示を飛ばしていると、

「なら私に検死を任せてもらえるかしら?」

宵月が声を上げた。

「できるというなら構わないが、出来るのか?」

「問題ないわ。()()()()()()()()

「お、覚えた!?どうやって!?」

「もちろんあなたが持ってきてくれた東雲君の部屋にあった医学書を読んだのよ。一通りの知識は頭に入っているわ。」

俺が渡したあの大量の本の内容を全部覚えた…?あの短時間でか?

 

「といっても、実際の経験はないから本業の彼と比べると彼ほど正確な結果は出せないけど、それでも構わないかしら?」

「四の五の言っている場合ではないな…。分かった、検死は宵月に任せる。異論はないか?」

「俺は異論はないよ。みんなは?」

「ワタシも問題ないわ。」

「ボクも大丈夫だよ。」

「よし、では早く始めよう。」

 

 

みんなが解散して捜査を始める。

…すっかり見慣れた光景、いや見慣れてしまった光景だ。

俺も足を止めるわけにはいかない。始めよう。

 

 

 

 

 

 

-----捜査開始-----

 

 

 

 

 

 

例によってまずは小鳥遊と一緒にモノクマファイルに目を通すところから始めた。

 

 

 

 

 

 

----

 

モノクマファイル3

 

被害者は超高校級の監察医、東雲蒼真。

死体はモノクマタワー1階、超高校級の執事の研究資料室で発見された。

死因は落下したシャンデリアに押し潰された事による圧死。

死亡推定時刻は9:30頃。

 

----

 

 

 

「死亡推定時刻は9時半ごろ、か。あの時東雲の死体を見つけたのも丁度それぐらいだったな。…となると、やっぱりあの轟音はシャンデリアが落下してきた音だったのか。」

…ん?なんだこの違和感…。今までの物とは何か違うような…?

 

 

 

----

 

モノクマファイル4

 

被害者は超高校級のゲームプログラマー、氷室幽華。

死体は校舎4階、超高校級のゲームプログラマーの研究資料室で発見された。

死因は毒殺。

 

----

 

 

 

 

【コトダマ獲得:モノクマファイル3】

【コトダマ獲得:モノクマファイル4】

 

 

 

 

「今回は氷室の推定時刻が書かれていないな。」

「前も隠された情報は大事な証拠だった…。となると、時間が重要な手がかりになるのかもね。」

「それに毒…。犯人は一体どこで調達したんだ?」

今回は被害者が2人もいる分、調べるところが多い。とても全て調べて回れる気がしない。

 

「こっちはまだ結構人がいるしなぁ。先に東雲の死体発見現場から調査のをしておくか。」

「そうだね。1か所に人が集まるのよりいいかもしれない。」

 

 

 

 

ーー超高校級の執事の研究資料室

 

「よし、早速調査を…。「あなた達ちょっといいかしら?」

いざ、調査を…と思ったタイミングで宵月が声をかけてきた。

 

「ん?宵月どうした?」

「あっちの検死が終わったからこっちの検死を済ませたいんだけどいい?」

「え?なんて?」

なんか言ってるけど、パイプオルガンの音がでかすぎてよく聞こえない。

 

「だから、検死を…。」

「あ!?」

「・・・・・・・あぁ、もう!何なのよこのバカでかい音!全然聞こえないじゃない!!」

…あ、キレた。

 

「た、確かにうるさいな。先に止めてくるか。」

「うん、こんなにうるさかったら集中出来ないし。そうしよっか。」

「宵月、ちょっとこの音を止めてくる!」

「何て!?」

「先にこの音楽を止めてくる!!!」

「分かったわ!!」

 

 

「えーと音源はたぶんこのオルガンだよな。………。」

「ど、どうしたの?」

「これ、なんでひとりで勝手に演奏してるんだ?」

「………あ。」

「このオルガン、確か死体を見つけた時も鳴ってたんだ。あの状況で東雲の死体を見つけたのは俺と剣崎、獅子谷。それから、宵月、夜桜、葛城の6人なんだけど、そっち側で死体を見つけたのはそれ以外の全員だよな?」

「うん、君たち以外の4人…ボクと皇君、シルヴィアさんと飛田さんで誰かが離れるなんてこともなかったよ。」

となると、誰一人として単独行動はとっていないって事か。

あの時、宵月側の3人も同時に来たから単独行動はしていないとは思うけど、後で宵月にも聞いておくか。

………それに例のボールもどこに行ったんだ?

 

 

 

 

【コトダマ獲得:無くなったボール捜索時の行動】

暁日側、皇側、宵月側の3グループは全員で揃って行動しており、単独行動をしていた人物はいない。

ボールは未だに発見されていない。

 

 

 

「それより今はこっちが問題だな。…マジでなんで動いてるんだ?」

改めてオルガンを見ると誰も座っていないのに鍵盤だけが動いている。

死体を見つけた場所ということもあってなおさら不気味だ。

「こういう時は彼らに聞くのが一番だよね。…おーい、モノクマ!」

「ハイハイ、お呼びでしょうか?」

「…随分、手慣れてるな。」

「まぁ何かとパシ…呼び出してるからね。」

「それはともかくモノクマ、このオルガンはなんで勝手に動いているんだ?」

「これはこのオルガンに搭載された『自動演奏機能』によるものなのです!好きな楽譜を乗せてボタンを押しておけば後は勝手に演奏をしてくれんだよ!」

「見た目以上にハイテクなんだね、これ。」

「イエス!外見は至って普通のパイプオルガンだけど、中身はすんごい技術のカタマリなんだよ!!」

 

自動演奏か…となるとやっぱりあの時この部屋にいた人間はいなかったってことか。

…そもそも犯人はわざわざ演奏なんかさせたんだ?

目の前の死体に注目させるため?それともただの演出?

 

 

 

 

【コトダマ獲得:パイプオルガン】

自動演奏機能による無人演奏が可能。

 

 

 

 

「宵月、演奏を止めておいたぞ。」

「ありがとう。待ってる間にある程度検死を終わらせておいたわ。」

「手が早くて助かるよ。」

「何もしないで待ってるのは好きじゃないからね。まず、ファイルに開いてある通り、彼はここから真上にあったであろうシャンデリアに押し潰された事で内蔵も骨もぐしゃぐしゃになって即死よ。それから死体に動かされた形跡はない。つまり、自分の足でここで来てこの場所に立った瞬間、シャンデリアに押し潰されたんだと思うわ。」

即死か…。きっと東雲は犯人が誰なのかも知らずに死んだんだろうな。

 

 

 

 

【コトダマ獲得:宵月の検死結果】

東雲はシャンデリアに押しつぶされて即死。

また、死体を動かされた形跡もない。

 

 

 

 

「暁日君、ちょっといい?」

「なんだ、小鳥遊?」

「考えたんだけどさ…必ずしも東雲君が殺されたとは限らないんじゃないかな?」

「?どういうことだ?」

「だって死体はシャンデリアに潰されてたんだよ。偶然ワイヤーが切れて…って可能性もあるんじゃないかな?」

「なるほど…事故って事か。」

「それはないわ。」

バッサリ切り捨てられた…。

 

「な、なんでだ?」

「この事件に使われた凶器を調べたらすぐわかることよ。」

そう言って横に動かされたシャンデリアを指さした。

「そういや誰があれ動かしたんだ?」

「獅子谷君よ。あのままだと検死できないから、貴方達がお仕事してる間に動かしてもらったの。」

で、その時に調べたと。

「シャンデリアについては獅子谷君とシルヴィアさんが調べてるわ。詳しいことは彼らに聞いて。」

「お、教えてくれないのか…。」

「こっちで調べる事は一通り済んだからもう用はないわ。その間に向こうは調べといて上げる。それでいいでしょ?」

「あ、あぁ。助かる。」

相変わらず、捜査になるとなんかサバサバになるよな…。

 

 

 

 

ーーさて、シャンデリアだが…。

「大きさは大体、2メートルくらいか。こんなでかいのが落ちてきたらひとたまりもないよな…。」

「骨も内臓もぐしゃぐしゃ………自分で言ってて気分悪くなってきた。」

「大丈夫か?無理するなよ。」

「う、うん大丈夫。それよりも早くシャンデリア調べよう。」

「重さはどれくらいなんだ?」

ふと、気になって軽く持ち上げてみようとしたところ、

「フン!ウググググ・・・・!!全然動かねぇ…。」

 

「………………動くわけないだろう。これはかなり重い。」

「獅子谷。お前、よく動かせたな。」

「……俺でもここまで重いものは滅多に持ったことはない。……おそらくだが600キロくらいはある。」

それくらいの重さだと、持ち運ぶのはまず無理か。

 

 

 

 

【コトダマ獲得:シャンデリア】

東雲を押しつぶしていた凶器。

推定の大きさは2メートル、重さは600キロと非常に大きい。

 

 

 

 

「それから、ワイヤーの切り口が気になるな。推理小説を読んだ記憶だと確か人工的に切られた場合は切断面が揃っているらしいけど…。これはどうなってるんだ?」

ワイヤーがシャンデリアの1メートルくらい上の位置で切れていた。そして切断面は揃っておらず、バラバラになっている。

 

「切断面はバラバラ…。ってことは、自然に切れたってことになるな。って事はやっぱりこっちの事件は事故かなんじゃないか?」

「甘いわね、そんな単純な事件じゃないわ。」

「うおっ。……びっくりした、アレックスか。単純じゃないってどういう事だ?」

「なるほどね…。そういう事か。」

いやいや、2人して勝手に納得しないでくれ。

 

「ワイヤーが自然に切れる事自体がおかしいのよ。普通、ワイヤーってのは吊り下げるものよりもっと重い物に耐えられるように出来てるの。………太さは約20ミリって所ね。この太さなら2トンくらいの重さまでなら余裕で耐えられるわ。」

「……あぁ、なるほど。だから切れるのがおかしいのか。」

「そういう事。となると次の問題はいつ、誰がワイヤーに細工をしたって事になるわ。」

「細工の方法か…。そういやアレックス、お前どこから来たんだ?さっきまでいなかっただろ?」

「ワタシ?ワタシはこの上ーー天井裏からよ。」

「天井裏って、なんでそんな所調べてたんだ?」

「ワイヤーが手掛かりとなると当然、上も調べる必要があるからね。調べようとした時にアナタ達の話し声がしたから降りてきたのよ。これを使ってね。」

そう言ってアレックスが見せたのは普段からつけている腕輪だった。

 

「?それって確か普段からつけている奴だよね。確か超高性能GPSが内蔵されてるって言う…。」

「ってあれ?なんか形変わってないか?」

「正解。実は改造したのよ。」

「か、改造?」

「どうせここじゃGPSなんか付けてても意味なさそうだからね。中の機械を抜いてちょっといじったの…こんな風にね!」

 

と言いながら天井へ向かって腕を構えて何やら操作したと思うと突如、腕輪からアンカーの付いたワイヤーが射出され、天井の梁に突き刺さった。

「おぉ……!巻き取り式のワイヤーフックか。つまり、これを使ったって事か。」

「そういう事。じゃ、ワタシはまた上の捜査に戻るけどアナタ達はどうする?ワイヤーの強度は十分だから2人まとめて運んでいけるけど一緒に来る?」

……天井……屋根裏……梁……骨組みだけ……。

 

「……小鳥遊、頼む。俺はもう少し下を調べてみる。」

「だと思ったよ。じゃ、シルヴィアさんよろしく。」

「了解よ。それじゃ、しっかり掴まってなさい。」

小鳥遊とアレックスはそのまま天井へ上がっていった。

 

「……さて、あぁ言ってしまったからには新しい手掛かりを探さないとな…。」

とりあえず、さっきアレックスが言ってた事を元にもう一度ワイヤーを調べてみる事にした。

「さっきの話から考えると、ワイヤーに細工がされてる可能性があるって事だから、もう一回切れ目を見直してみるか…。」

さっきは気づかなかった事があるかもしれない。そう思って見直して見ると…。

 

「うん?この切れ目…なんか変だな。」

切れ目をよく見ると一部分だけが揃っている事に気づいた。

位置は端から大体三分の一くらいの場所だ。

さらに切れ目の周辺が茶色くなっている。

「…鉄臭くて粉状になってる。…って事はこれもしかして錆か?」

 

 

 

 

【コトダマ獲得:ワイヤー】

切り口は揃っていない為、恐らく自然に切れた物。

切り口周辺に鯖と思われる物が付着。

 

 

 

 

事件発生時の状況を思い出しながら何か変わった事が無かったか考えてみる。

「……あっ、そう言えばあの時扉にカギが掛かってたな。それを獅子谷が無理矢理突破して開けてたっけ。」

ここでカギの事を思い出し、扉を調べる事にした。…が。

「………あれ?カギが付いてないな。」

扉にカギが掛かっていなかった。それどころか、錠のような物自体が存在しない。

 

「あの時間違いなく扉は開かなかった。となると、電子ロックとかじゃない限り、絶対何かしらで開かないように細工はしてるはずなんだけど…。ん?」

そう言いつつ、扉の淵に指を這わせていると何かベタベタした物が指に付いた。掬って見るとゼリーのようなスライムのような物体だ。

「臭いは……シンナー系の臭いか。……これはもしや。」

 

 

 

 

【コトダマ獲得:ゼリー状の物体】

事件現場の扉に付いていた物。ベタ付いており、シンナー系の臭いがする。

 

 

 

 

…もう一回、扉を開けてからの事を整理しよう。

「…何かが落ちる音。その後、扉を開ける。…で、音楽が聞こえたからその方を見ると、シャンデリアに潰された東雲…。そういや、この席は全く目に入らなかったな。」

流石に手掛かりは見つからないと思いつつも念の為調べる事にした。

すると、1番扉に近い席の裏側に隠すかの様に何かが落ちていた。

「この機械、オーディオプレイヤー?…いや違うな。これは、ボイスレコーダーだな。」

わざわざ席の後ろに置かれている上に向き的には丁度扉側にスピーカーが来るように置かれている。

となると、誰かが落としたものとは考えにくい。

 

「録音記録は1つだけか。日付は昨日の夜20時からで3時間くらいの録音時間…かなり長いな。それと、音量は最大に設定されているな。」

…なんか嫌な予感がする。念のため音量を半分ほどに下げてから再生してみることにした。

『・・・・・・・・』

「無音だな…。俺の勘違いだったかな…?」

本当に落とし物かもしれない。今聞いてる音声も落とした弾みで録音されてしまったものかもしれない。

半ば諦め気味に少しスキップさせてから再生すると、

 

『・・・・・・・ズドン!!!!』

突如大きな音が鳴り響いた。かなり音量を下げていたが、それでも凄い音だ。

「………っ‼……びっくりしたな。音量下げててよかった…。この音、例のシャンデリアが落ちた音か?しかもタイマーで再生開始時間が設定されている。時間は………!今日の朝9時半!…これ、もしかしたら今まで考えていた前提がひっくり返るんじゃ……⁉」

 

 

 

【コトダマ獲得:ボイスレコーダー】

扉に一番近い席の裏側に置いてあったもの。

シャンデリアが落ちる音が録音されていた。

タイマーが設定されたおり、時間は朝の9時半。

 

 

 

 

「ーーあ、いたいた。暁日君、そっちはどうだった?」

「………ん。あぁ、小鳥遊か。そうだな………かなり重要な証拠を見つけた、と思う。そっちはどうだっだ?」

「ボクの方は、そうだね…特に大きなものはシャンデリアを昇降させる装置を見つけたよ。屋根裏に『上昇』と『下降』させるためのボタンがあったんだ。だから、シャンデリアに細工するのは難しいことじゃないと思う。それと屋根裏から下に降りる方法だけど、階段があって降りた先が王室っぽい部屋になっててそこの扉を開けたら、この礼拝堂…って感じ。」

「うん………なるほど。1つ確認したいんだけど、そっち側のワイヤーの切れ目はどうだった?」

「なんか、錆みたいなのが付いてたよ。」

こっち側のと同じか…となると、ワイヤーが切れた要因はこれで間違いないな。

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン……。

『え~この世には“時は金なり”という言葉があります。意味は“時間はお金と同じく貴重なものなので大事に使いましょう”という意味だそうです。まぁ、お金以上に大事なものはないとボクは思いますがね!というワケでみんな飽き飽きしてるだろうし、そろそろ捜査を打ち切ります!オマエラ、いつもの場所へお集まりしていただきましょうか!!』

 

 

「“時は金なり”…か。この捜査時間、俺は活用できたかな。」

「それは、誰にも分からないよ。…裁判にが始まるまではね。」

そうだ、全ては裁判で決まる。例えどんな結果になっても。

…行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

【宵月サイド】

 

 

もう一つの死体発見現場に戻るや否や、葛城君が声を掛けてきた。

「あ、帰ってきた。宵月さん!頼まれていたの調べといたよ。」

「ありがとう、で結果は?」

「『毒殺となると犯人は東雲君の部屋のものを使った可能性が高い』…その通りだったよ。まず、あそこにあったモノナミンの『β』がほぼ全部、『Ω』が2本無くなっていたよ。」

『β』と『Ω』の2種類…。単純に考えたら氷室さんが持ち出した物かも。

でも、それぞれの性質を考えると毒にもなる。

 

 

 

【コトダマ獲得:モノナミン】

『β』『Ω』の2種類が無くなっていた。

『β』は疲労回復効果、『Ω』には大量のカフェインが含まれており、強力な眠気覚まし効果がある。

氷室が持ち出した物だろうか?

 

 

 

「なるほど、他に変わった所はあった?」

「消毒液が何種類かあったんだけど、その内1種類がすごく減ってたんだ。…一応写真撮っておいたけど見る?」

「見に行く手間が省けて助かるわ。見せて。」

…写真には何種類かの消毒液のビンが写っている。

次亜塩素酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、それからエタノール…。

その中でも、次亜塩素酸ナトリウムが特に減っていた。

この薬品の性質は確か…。

 

 

 

【コトダマ獲得:大量に使われた消毒液】

東雲の研究資料室にあった物。

その中でも次亜塩素酸ナトリウムが大量に使用されていた。

 

 

 

「あそこにあったので気になったのはこれくらいだけど、他に何か気になる事ある?」

「他に気になる事…そうね…。皇君たちが氷室さんの死体を見つけた時のことを教えてもらえるかしら?」

「OK。でも、俺も大和から聞いたことだから詳しくないよ。………えぇと、あの時は確か大和たち4人がここへ氷室さんの様子を見に来たんだって。でも、何故か鍵が閉まってたから外から声を掛けたけど、反応がないからアレックスさんがピッキングをして開けたら、氷室さんの死体があった………という事らしいよ。」

鍵が閉まっていた………。ということはあの部屋は密室になっていたのね。

 

 

 

【コトダマ獲得:氷室の死体発見状況】

扉に鍵が掛かっており、開けた時点ではすでに氷室は死亡していた。

 

 

 

「なるほど、事件発生時の状況はよくわかったわ。となるとあとは…。」

「死体発見現場だね。」

「ええ。行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

ーー氷室の研究資料室。

 

 

「さて、まずやる事は検死かしら。」

「検死は流石に出来ないから君に任せるよ。その間にやっておくとこある?」

「そうね…ゴミ箱を調べといてくれる?」

「ん、了解。」

 

氷室さんの検死、それからデスク周りの調査を開始した。

「…ファイルの内容通り、目立った外傷はなし。…体液系は…口から血が出てるわね。」

東雲君の研究資料室から持ってきた薄手の手袋を付けて触れる。

「酸っぱい臭い…ということは胃液が混ざってる血ね。多分、胃から吐き出した物か。」

その割にはデスク上や床には嘔吐物のようなものはない。

…ここ最近は食堂にも顔を出してなかったし、あのドリンクしか飲んでなかったようね。

 

 

 

【コトダマ獲得:氷室の検死結果】

口から胃液の混じった血を吐き出しているが嘔吐物はないことから、胃の内容物は恐らく空。

 

 

 

検死はこれくらいにして、デスク周りを調べる事にした。

「氷室さんはずっとここに座って作業してたし、たぶんパソコンの電源はつきっぱなしかしら。…って電源切ってあるわね。」

この部屋をしていた人…誰か知っているかしら?

「……剣崎君、ちょっといい?」

「宵月様、どうされましたか?」

「このパソコンなんだけど、死体を発見した時からこの状態だった?」

「そうですね。僕たちが死体を見つけた時、それから捜査をしている間もこの状態でした。…何か気になることが?」

「そうね。作業中に倒れたんだったら、電源が切れるのもちょっと変かなって思って。もしかしたら、氷室さんが咄嗟に消したのかもしれないけど。」

「僕も電源を点けて確かめたいと思って電源を押したんですけど、全然点かなくって………。壊れたのでしょうか?」

………そう言いながらパソコンの画面側のボタンを延々と押していた。

 

「画面側のボタンを押しても点かないわよ。テレビじゃないんだから。パソコンの本体はこっちよ。」

「え、そうだったんですか!前押した時もそれを押したら画面が暗くなったから、てっきりこれが電源かと…。」

………冗談抜きで機械音痴ね。

 

兎も角、電源を点けて確認しようとするも、

「……やっぱり、パスワード画面ね。氷室さんがパスワードを書き換えた可能性もあるけど、この状態じゃ知りようがない…か。」

「氷室様が行っていた作業もこれじゃわかりませんね。」

………いや、これはかなり大きな手掛かりになると思うわ。

 

 

 

【コトダマ獲得:パソコン】

氷室が死ぬ直前まで作業を行っていたもの。

電源を落とされており、パスワードも不明なため、中身の確認は不可能。

 

 

 

「あとは………ん?」

パソコンの本体部分のUSBポートに見覚えのない物が挿さっていた。

「黒いUSB?………こんなものあったかしら?」

何かのデータを保存するもの?………いや、もしかするとこれは……。

 

 

 

【コトダマ獲得:USB】

パソコンのUSBポートにいつの間にか挿さっていたもの。

 

 

 

 

「…さて、こんなところかしら。葛城君、そっちはどう?」

「うん、こっちも終わったよ。」

「それで中身は?」

「そう焦らないでよ…。モノナミンβの空きビンしか入ってなかったよ。」

「機械の部品みたいなのは入っていなかった?」

「?そんなもの入ってなかったけど…どうして?」

「………別に。気にしないで。」

「?」

 

 

 

【コトダマ獲得:ゴミ箱】

中身は全てモノナミンβの空きビン。

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン……。

『え~この世には“時は金なり”という言葉があります。意味は“時間はお金と同じく貴重なものなので大事に使いましょう”という意味だそうです。まぁ、お金以上に大事なものはないとボクは思いますがね!というワケでみんな飽き飽きしてるだろうし、そろそろ捜査を打ち切ります!オマエラ、いつもの場所へお集まりしていただきましょうか!!』

 

 

………時間、か。

「…お金か。ここにいても全く必要ないものだね。」

「そういうことを言いたいんじゃないと思うけど、まぁ良いわ。行きましょう。」

 

 

 

ーー

 

 

これまでと同じく噴水前に集まる私たち。

そしてこれまでと同じく、エレベーターが姿を現す。

 

全員が乗ったのを確認したかのように扉は閉まり、またあの忌々しい場所へ運ばれていく。

 

 

 

無言でエレベーターに乗っていると葛城君が小声で話しかけてきた。

「………宵月さん、ちょっといい?」

「何?」

「あの時君は俺に2()()頼みごとをしてきた。」

「…そうね。」

「1つは東雲君の研究資料室の調査。それの意味は分かるんだ。……でも、なんで君はもう1つ『あんな事』をするように頼んだの?」

「簡単よ。『あれ』をすることで犯人の行動を確実に制限できるの。」

「………な…なんだって…。じゃあ、『あの人』が犯人……?」

「あくまで可能性の話よ。でも、可能性は高いわ。」

「・・・・。」

「…真意は裁判で犯人が分かった時にちゃんと話すわ。…そろそろ着くわよ。」

 

 

………話し終わるとほぼ同じタイミングでエレベーターの扉が開く。

再び様変わりしていて、まるで西洋のお城のようだ。

「待ちくたびれたぞ諸君!今回はゴシック系にしてみたぞ!どうだ、エレガントだと思わないかぁ⁉」

「時間も押してるし、急いで席に着いてね!」

 

 

 

ーー

 

今回も新たに遺影が増えている。

大きく〆のマークが描かれた柊。

髑髏マークが描かれた東雲。

そして8ビット風に『DEAD』の文字が書きなぐられた氷室…。

 

 

ーー超高校級の監察医、東雲蒼真。

いつも自由なことばかりしてて何考えてるかわからないような奴。

…けど、誰よりも仲間想いな奴だった。

 

 

 

 

ーー

 

 

ーー超高校級のゲームプログラマー、氷室幽華さん。

『神』を自称していて少し近寄りにくい変わった人。

でも、最期までここから出るための手がかりを探してくれていた。

 

 

ーー

 

 

…そんな2人を同時に悪魔のような方法で殺した真犯人が、この中にいる。

 

 

 

 

 

…俺が!

…私が!

 

 

 

 

 

絶対に見つける!!

 



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非日常編2 学級裁判・前編

【共通コトダマリスト】
1.モノクマファイル3
被害者は超高校級の監察医、東雲蒼真。
死体はモノクマタワー1階、超高校級の執事の研究資料室で発見された。
死因は落下したシャンデリアに押し潰された事による圧死。
死亡推定時刻は9:30頃。

2.モノクマファイル4
被害者は超高校級のゲームプログラマー、氷室幽華。
死体は校舎4階、超高校級のゲームプログラマーの研究資料室で発見された。
死因は毒殺。

3.宵月の検死結果
東雲はシャンデリアに押しつぶされて即死。
また、死体を動かされた形跡もない。

4.シャンデリア
東雲を押しつぶしていた凶器。
推定の大きさは2メートル、重さは600キロと非常に大きい。

5.無くなったボール捜索時の行動
暁日側、皇側、宵月側の3グループは全員で揃って行動しており、単独行動をしていた人物はいない。ボールは未だに発見されていない。



【暁日のコトダマリスト】
1.パイプオルガン
自動演奏機能による無人演奏が可能。

2.ワイヤー
切り口は揃っていない為、恐らく自然に切れた物。
切り口周辺に鯖と思われる物が付着。 

3.ゼリー状の物体
事件現場の扉に付いていた物。ベタ付いており、シンナー系の臭いがする。

4.ボイスレコーダー
扉に一番近い席の裏側に置いてあったもの。
シャンデリアが落ちる音が録音されていた。
タイマーが設定されたおり、時間は9時半。




【宵月のコトダマリスト】
1.モノナミン
『β』『Ω』の2種類が無くなっていた。『β』は疲労回復効果、『Ω』には大量のカフェインが含まれており、強力な眠気覚まし効果がある。氷室が持ち出した物だろうか?

2.大量に使われた消毒液
東雲の研究資料室にあった物。
その中でも次亜塩素酸ナトリウムが大量に使用されていた。

3.氷室の死体発見状況
扉に鍵が掛かっており、開けた時点ではすでに氷室は死亡していた。

4.氷室の検死結果
口から胃液の混じった血を吐き出しているが嘔吐物はないことから、胃の内容物は恐らく空。

5.パソコン
氷室が死ぬ直前まで作業を行っていたもの。
電源を落とされており、パスワードも不明なため、中身の確認は不可能。

6.USB
パソコンのUSBポートにいつの間にか挿さっていたもの。

7.ゴミ箱
中身は全てモノナミンβの空きビン   


学級裁判、開廷!

 

 

 

 

 

 

 

モノクマ「では始めに学級裁判の簡単な説明をさせていただきます!学級裁判では『誰がクロか?』を議論し、その結果はオマエラの投票に決定します!」

モノパパ「正しいクロを指摘できればクロだけがオシオキ、だが間違った人物をクロとしてしまった場合は…。」

モノクマ「クロ以外の全員がオシオキされ、生き残ったクロにだけ晴れてこの学園から卒業する権利が与えられます!」

モノパパ「それでは、諸君もそろそろ慣れてきた頃だしガンガンいこうぜ!!」

 

 

小鳥遊「ねぇそろそろ聞きたいんだけど、最初の『ソレ』って毎回いう必要あるの?」

モノクマ「いるよ勿論!決まり文句みたいなものだからね!それにこれを言われると『裁判に臨もう!』ってなって気持ちがビシッ!と引き締まるでしょ?」

小鳥遊「いや、全然。」

モノクマ「………あっそ。」

ろ、露骨に拗ねてる…。

 

 

 

葛城「そんなことは兎も角さ、早く議論をしようか。2人も死んでるから、情報を洗い出すのが大変だ。」

宵月「同感ね。犯人が2人だとしたら誰が先に殺したかをハッキリさせる必要もあるし。」

飛田「・・・・少なくとも1つはハッキリしてると思うけど?」

葛城「……ふぅん、何が?」

飛田「蒼真の件だよ!アイツは事故で死んだんだ!!」

葛城「なるほどね…。今回も退屈しなさそうだ。」

そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろ………。

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

飛田「蒼真が死んだのは〈事故だよ!〉」

 

葛城「ちなみにそう思う理由はあるのかな?」

 

飛田「だって、蒼真が死んだのってあのシャンデリアが《落ちてきた》のが原因でしょ?だったら、ワイヤーが《偶然千切れて》下敷きになったんだよ!!」

 

シルヴィア「一応聞いてみるけど、彼はなんであの場所にいたのかしら?」

 

飛田「そ、それは…。分からない………。」

 

葛城「・・・・・・はぁ。」

 

飛田「な、なんだよ!そのバカにした顔は!!!」

 

夜桜「み、皆さん。どうか穏便に行きましょう…?」

 

 

飛田…今回はかなりヒートアップしてるな。完全に事故だと思い込でる。………いや、そう思いたいのが本音か。でもあいつが事故だと思い込んでる原因を調べたら、事故ではないとハッキリと分かるな。

 

 

《偶然千切れて》←〈ワイヤー]

  論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

 

暁日「確かに俺が調べたワイヤーの切り口は揃っていなかったから自然に切れたと考えるのが妥当だろうな。」

飛田「でしょ?ほら、やっぱり……。」

暁日「けどな、それは()()()()()()()()()()だったんだ。」

飛田「へ…?」

暁日「そのワイヤーの端から三分の一くらいの位置までの切り口はなぜか揃ってたんだ。切り口が揃っているのはどう考えてもおかしいよな?」

飛田「そ、それは…。」

暁日「それからもう一つ、切り口の周りは錆びていた。途中まで人工的に切られていた上に、ワイヤーが錆びていたとなるとどう考えても誰かが細工したと思えなくないか?」

 

 

      反

飛田「どんな壁も乗り越える!」

         論

 

 

飛田「そ、それがなんだよ!蒼真の死因は事故だ!誰も悪くないんだよ!!」

暁日「飛田…辛いのは分かる。けど、その考えだと真実には近づけない。死ぬんだぞ!俺も……お前も!」

飛田「うるせぇ!もう誰も疑いたくねぇんだよ!!」

仲間を疑うのは辛いよな………でもこのままだと絶対に真実に近づけない!

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

飛田「ワイヤーの一部が錆びていた?一部が人工的に切られていた?そんなのただの偶然だろ!」

 

暁日「偶然が2つも重なるのか?そっちのほうが考えにくいだろ!それにワイヤーは釣り上げる物の重さより重い物に耐えられるように出来てるんだ。まず切れることがあり得ないんだ!」

 

飛田「でも、実際に切れてる事実があるじゃねぇか!もともと錆びてたから切れたんだよ!大体、アンタが言ってる殺人の根拠ってワイヤーだけだろ!?《他にも根拠があるのかよ!》」

 

他の根拠か…。これ以外にないな。

 

              斬

《他にも根拠があるのかよ!》←【ボイスレコーダー】

    論

「その言葉、ぶった斬る!」

       破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「飛田………悪いけどあるんだ。殺人の根拠。」

飛田「はぁ!?」

暁日「みんな、これ聞いてくれないか。」

皇「暁日…なんだそれは?」

獅子谷「………ボイスレコーダー…か?」

暁日「勿論、これに録音されている音声が殺人が起こったことの根拠だ。」

そう言って、俺は録音された音声を再生させた。

 

 

剣崎「こ、この音声は…。まさか…!」

暁日「あぁ、シャンデリアが落ちてきた音だ。音を聞いた獅子谷と剣崎なら分かるだろ?」

獅子谷「………むぅ…確かにあの時、聞いた音はこれだったな。」

暁日「あの時、シャンデリアが落ちる音を誰かがわざわざ録音していた。十分殺人の根拠と言えないか?」

飛田「そ、そんな…。」

宵月「加えて、さっき言い忘れてたけどワイヤーの錆も細工されたものだと裏付ける証拠もあるわ。」

 

 

 

それは…

【コトダマ提示】→〈大量に使われた消毒液]

…これよ!

 

 

 

宵月「東雲君の研究資料室に置かれていた消毒液…。その中の1種類が大量に使われていたの。」

剣崎「1種類…?」

宵月「使われていた消毒液は『次亜塩素酸ナトリウム』。そしてその薬品の性質は………『金属の腐食作用』!」

夜桜「腐食……?…あっ!」

宵月「そう、ここまで言えば簡単なことよ。犯人は次亜塩素酸ナトリウムを使ってワイヤーを錆びさせてすぐに切れるくらいまで脆くさせたの。」

暁日「これでハッキリしたな。ワイヤーの錆は誰かが故意に仕組んだもの。そしてボイスレコーダー。これらは全部犯人が考えて用意したものだ!!」

飛田「…う、うぅ…。そう、みたいだね。」

暁日「……少しは頭が冷えたか?」

飛田「うん……ありがと。」

 

 

小鳥遊「話を進めようか。ワイヤーの件からして誰かが予め用意してたのは明白だけど…誰が用意してたんだろ?」

葛城「あの部屋は元々剣崎君の研究資料室だ。……となると必然的に君が怪しいと思うけど、どうかな?剣崎君。」

剣崎「ま、また僕が容疑者ですか?それだけで疑われるのはちょっと…。」

暁日「まぁ、待てよ。確かに容疑者としてはありえなくはないと思うけど、それだけで疑うのは気が早いだろ。」

皇「しかし、これ以上詰める情報があるのか?シャンデリアが落ちる瞬間を目撃した…という訳ではないだろう?」

それもそうなんだよな…。けど、一つ変なところもある……。

 

暁日「そうだな………。でも、俺たちが東雲の死体を発見した時の事と見つけた手掛かりに違和感がある気がするんだ。それについて話してみないか?」

獅子谷「………死体を発見した時の事か………?………だが、直接死ぬ瞬間を見ていない………。お前もそうだっただろう………?」

暁日「確かにそうだ。けど………。多分、今までの前提がひっくり返る…。そんな気がするんだ。」

獅子谷「………?」

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

剣崎「発見した時の事………と申されましても………。」

 

獅子谷「………一緒にいたから、それ以上の情報はないと思うが………?」

 

暁日「何でもいい。覚えていることならとにかく話して欲しいんだ。」

 

剣崎「ええと………まず、〈ボールが無くなって〉皆さんで捜索を始めましたよね?………それから、各個室にも見つからなくて、《捜索班と氷室様に声を掛ける班に分けた》はずです。」

 

獅子谷「………そして、剣崎と俺、暁日の〈3人〉でタワー内を探していた………。その時に《剣崎の研究資料室》で音を聞いたんだ………。」

 

剣崎「扉を開けて中に入ったら…し、東雲様が………!」

 

暁日「あの時の時間を覚えているか?」

 

剣崎「確か…《午前9時半》でした。」

 

獅子谷「………これで全部だと思うが………どこに手がかりがあるんだ?」

 

 

 

これで十分だ…。ようやく分かったぞ、違和感の正体が!

 

《午前9時半》←〈ボイスレコーダー]

 論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

暁日「東雲が殺された時間は朝じゃない…もっと前の時間だ。」

剣崎「あの……何を言ってるのですか?」

暁日「ずっと気になってたんだ。なんでボイスレコーダーなんか使っていたのか。やっと分かった。そもそもの時間が違っていたんだよ。東雲が死んだ時間は多分、()()()()9()()()だ!!」

飛田「な、なんでそう思うんだよ!」

暁日「理由は勿論あるぞ。」

 

 

その理由は…

【コトダマ提示】→〈モノクマファイル3]

…これだ!

 

 

暁日「モノクマファイルにハッキリ書いてあるだろ。『9時半』って。」

夜桜「そうですが、それが何か…?」

宵月「あぁ………そういう事ね。」

暁日「そうだ。ここには今まで書いてあったはずの物が書かれていないんだ。………そう、()()()()()()()()()がな!!」

獅子谷「………何ぃ!!」

 

宵月「恐らくあの時に音を聞いた事、そしてファイルの時間もほぼ一致しているから勘違いしたのでしょうね。そしてあのボイスレコーダーのセットされた時間も9時半……だからリアルタイムで殺されたと思い込んでいた…という感じね。」

皇「しかし、前日の夜ともなると人物の絞り込みも難しいのではないか?」

宵月「そうでもないと思うわ。」

暁日「あぁ、そんなに難しいことじゃないと思う。」

 

 

アイツの可能性は高い………だが、これですんなり終わりという訳じゃないだろう。

 

 

 

 

 

 

【人物指定】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→剣崎聖悟

「お前しか………考えられない!!」

 

 

 

 

 

暁日「剣崎…やっぱりお前なんじゃないか?」

剣崎「えっ………なんで………そう思うんですか?」

暁日「まず、死体発見現場はお前の研究資料室だ。何かを仕組むのは難しい事じゃないだろ?」

剣崎「で、でも………それで犯人と決めつけるのは早いって言ったのはあなたじゃないですか!」

暁日「それだけじゃない。ボイスレコーダーのタイマー設定も気になることがあるんだ。………なんであんなに正確に時間設定できたんだ?」

剣崎「正確に………とはどういう事ですか?」

暁日「ワイヤーの切れる時間なんてある程度の予想は出来ても分単位で知ることは出来ないだろ?でも、ワイヤーが切れたイコール東雲が死んだ時間だとしたらあまりにもピッタリファイルと一致している。………何故か分かるか?」

剣崎「ぐ、偶然ですよ………!あてずっぽうで設定したらそうなっただけで………。」

暁日「お前なら簡単なんだよ。」

剣崎「だから!!それはどうやって………」

暁日「“時計”だよ。………お前は懐中時計を持ってるだろ。あれがあれば………いや、むしろあれを持ってるお前だからこそ正確にタイマー設定ができるんだ!」

剣崎「ぐ、グぐグ………!」

 

 

 

暁日「反論はないか?………お前は事件発生時あの部屋に隠れてシャンデリアが落ちる瞬間を………。」

 

 

 

 

      反

剣崎「お話になりませんね!」

         論

 

 

 

剣崎「く、クククク………ははははは!!引っ掛かった………引っ掛かりましたね暁日様!!!!」

暁日「け、剣崎…?」

剣崎「まぁだ気づいてないのですか?あなたは今、決・定・的なミスをしたんですよ!!」

飛田「しょ、聖悟が…壊れた…。」

 

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

剣崎「あなたの言い分は『部屋に隠れて東雲様が来るのを待った』…ということでしたね?残念ながらそれは不可能なんですよ!!!」

 

暁日「そんなことはない!東雲が死んだあとは扉は閉まっていた…それ以前にしか部屋に入れないんだ!」

 

剣崎「そこが問題なんですよ!!『扉が閉まっていた』…どうやって閉まっていたか………?そう、それが最大の問題!!あの部屋は《鍵が閉まっていた》!!つまり!鍵が閉まっている以上、どうやって入ったというのですかぁ!?一応言っておきますが、僕が最後に見たときはすでに閉まってましたよ!」

 

 

すでに閉まっていた………?そんなの嘘だ!!

 

《鍵が閉まっていた》←【ゼリー状の物体】

    論

「その言葉、ぶった斬る!」

       破

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

暁日「既に閉まっていただと…?そんなの真っ赤な嘘だ!!」

剣崎「へぇ…反証できるのですか……面白い!何故、嘘だと思うのでしょうか?」

暁日「お前が知らないはずないだろ?あの部屋に鍵なんかない!」

獅子谷「………な…なんだと………!」

暁日「あの扉はコイツで接着されてただけだ。」

剣崎「そ、それは…!」

葛城「シンナーみたいな臭い………接着剤か。」

 

 

暁日「そうだ、コイツで接着できるのはあの部屋をよく知っている人物…実質持ち主であるお前しかいない!」

剣崎「ぐ………!」

夜桜「ですが、何故このようなことを…?」

シルヴィア「恐らく、あの部屋に入るのを防ぐためだと思うわ。朝に死体が見つかるようにしているのに先に見つかったら終わり………。だから、部屋に入る事そのものを出来ないようにしたのよ。………それから、今になって分かったわ。時間をずらした意味。」

暁日「意味?」

 

シルヴィア「思い出して、この事件の発端は何?」

暁日「えーと確か…。」

 

 

【コトダマ提示】→〈無くなったボール捜索時の行動]

…これだ!

 

 

暁日「ボールが無くなったからだったな。ボールもまだ見つけてないし。」

シルヴィア「ボールの所在はこの際、どうでもいいわ。問題は死体を見つけたタイミング。いつか覚えてる?」

暁日「時間は流石に思い出せないけど、ちょっと考えてみる。」

 

 

死体を見つけたタイミングか…なんとか割り出せないか?

 

 

 

 

 

ーー閃きアナグラム開始ーー

 

 

 

 

死 体 発 見 ア ナ ウ ン ス

 

 

……そうか、分かったぞ!

 

 

 

暁日「………死体発見アナウンス!そうだ、あの時アナウンスは連続して流れていた!」

シルヴィア「連続………ということはほぼ、同じタイミングみたいね。………ねぇモノクマ。1つ聞いていいかしら?」

モノクマ「んあ?何?」

シルヴィア「死体発見アナウンスの対象は犯人も含まれるの?」

モノクマ「あ~それねぇ………ここで聞いてくるか………。」

宵月「答えづらい理由でもあるの?」

 

モノクマ「そもそもさぁ、アナウンスはあくまで推理のためじゃなくて公平性を期すために流してるのだから、こっちしてもフレキシブルな対応が……」

シルヴィア「戯言は良いわ。聞かれた事だけに答えなさい。犯人は含むの?含まれないの?」

モノクマ「・・・・・うぐぐ。あぁもうハイハイ答えるよ。犯人は含まれていません。」

シルヴィア「犯人はアナウンスに含まれない。……そういう事よ。3人行動中に死体を見つけるとアナウンスは鳴らない。だからほぼ同時にアナウンスを流させることで犯人の特定を有耶無耶にしたの。」

 

暁日「なるほどな…やっとあれの意味も分かったぞ。」

剣崎「・・・・・・。」

 

 

【コトダマ提示】→〈パイプオルガン]

…これだ!

 

 

暁日「あのパイプオルガン…。わざとあそこに視線が行くようにしたんだな?」

葛城「視線?」

暁日「オルガンとシャンデリアは直線状に並んでるだろ?音に気付いてオルガンに目をやったら必然的にシャンデリアに目が行く。そうすれば、ボイスレコーダーとかにも気付くことはないからな。」

宵月「あとは誰かが氷室さんの死を伝えてくれたら、あそこから離れる………。全くよく考えられてるわ。」

 

 

暁日「これでハッキリしたな?剣崎、お前は東雲を………」

 

 

 

パチ、パチ、パチ、パチ………。

 

 

 

皇「誰だ?この状況で拍手をしたのは。」

剣崎「いやぁ、お見事。さすが、2度の裁判を乗り越えただけのことはありますね。正直、驚きましたよ。」

シルヴィア「認める、という事?」

剣崎「残念ですが、これ以上の言い逃れは出来なさそうですからね。認めざるを得ません。」

暁日「やっぱり、お前がクロか…。」

剣崎「おっと、僕が認めるのはあくまで東雲様の事件ですよ?僕は氷室様を殺してなどいません。」

飛田「アンタ、何を今さら…!」

剣崎「今さらも何も、あちらの事件はまだハッキリしていないでしょう?死亡時間も不明ではないですか。それで投票するのは些か早計ではありませんか?」

 

 

 

 

………あいつ、何を言い出すんだ?この状況でも余裕ぶる態度………。

まさか、これが狙い…?

 

 

 

剣崎「クックックック…。さぁどうします?投票しますか?僕はそれでも構いませんよ………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学級裁判 中断!

 




最初からクライマックス


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非日常編3 学級裁判・後編

学級裁判 再開!

 

 

 

剣崎「さて、前回のおさらいですが…。“東雲様が朝に殺されたと思っていたが、それは勘違い。実は昨晩のうちに殺された可能性が浮上してきた……その容疑者はこの僕…”といった感じでしょうかね?」

シルヴィア「何勝手に仕切ってるのよ。」

剣崎「皆様のために状況して差し上げたのですが、何か不満でも?」

シルヴィア「アナタ、自分の立場分かってるの?容疑者がわざわざおさらい…。正気とは思えないわ。」

剣崎「正気ですよ勿論。少なくとも一方的に犯人する貴方方よりは、ね。」

シルヴィア「……成程、動揺を狙ったけど無駄なようね。」

剣崎「ええ、僕を追い詰めたかったらロジックを使っていただかないとね。」

 

シルヴィア「勿論そのつもりよ。アナタが氷室サンを殺したのか…それをハッキリさせる必要があるもの。」

皇「だが、どうやって切り崩すつもりだ?何か共通点があればとっかかりになると思うが…。」

宵月「そうね…。ちょっとこじつけ臭いかもしれないけど、どっちも『密室』という状況が共通してるわね。」

剣崎「たかが密室で疑いを掛けられるのは癪ですねぇ。この調子だとすべての密室殺人の容疑を掛けられるかもしれませんね。おぉ、怖い怖い。」

 

宵月「……ひとまず整理しましょう。死体発見時、あの部屋の鍵はどこにあったの?」

シルヴィア「彼女の死体のポケットに入っていたわ。」

宵月「彼女自身が持っていた、という事か。でも、ずっと持っていたとは限らないわね。後から犯人が持たせた可能性も考えられる。」

剣崎「へぇ、それは面白い。ですが、どうやって持たせたのですか?」

宵月「それを今から検討するのよ。」

 

 

相手のペースに乗せられるな…。乗せられたらその瞬間、負ける。

 

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

 

 

剣崎「仮に後から持たせたものだと仮定したら一体どのタイミングで鍵を持たせたのでしょうね?」

 

夜桜「…一番あり得るのは〈氷室さんを殺した直後〉でしょうか?」

 

剣崎「それだと、外からは鍵が閉めれませんよ。中からだと、犯人は部屋に残っちゃいますからね。」

 

暁日「じゃあ、もっと前だ。殺す用意をしていた時に前もって鍵を閉めたんだな?」

 

剣崎「死因をお忘れでしょうか?氷室様は毒殺されたのですよ?あの部屋に《毒はなかった》…それなのに、わざわざ鍵を閉めるのはバカのやることですよ。」

 

葛城「あれ、そういえば…。彼女を殺した毒って何なんだろ。」

 

剣崎「今は鍵について話しているんですよ。毒なんて〈どうでもいい〉じゃないですか。」

 

獅子谷「………だから、何故お前が仕切ってる。」

 

毒の情報がどうでもいい?そんな事はない。毒があの場所に残っている証拠はあったはず。

 

 

 

《毒はなかった》←〈モノナミン]

 

  論

「それは違うわ!」

     破

 

 

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

 

宵月「………結果的にだけど、今の話で彼女を殺すのに使った毒が分かったわ。」

剣崎「…へぇ。そうですか。」

暁日「今の話の中に毒の手がかりがあったのか?」

宵月「彼女を殺すのに使った毒の正体は『モノナミン』よ。」

剣崎「モノナミン…。」

宵月「正確には『モノナミンΩ』が殺すのに使われたの。」

小鳥遊「えぇと…。モノナミンΩの性質は確か…『強力な眠気覚まし作用』だよね。」

宵月「そうよ。Ωにはカフェインが普通のドリンクより多く含まれている。だから2本以上の服用は危険らしいわ。」

葛城「Ω…。確かにΩのビンも2本無くなっていた。でも、本当に彼女が飲んだの?」

本当に飲んだか…それは確かにあの証拠と矛盾してるわね。

 

 

 

 

【コトダマ提示】→〈ゴミ箱]

これよ!

 

 

 

宵月「葛城君がそう思った理由はゴミ箱の中身の事よね。」

葛城「うん、中身は全部βのビンだった…。だから他の誰かが持ち出したのかなって。」

宵月「それならもっと早く持ち出した人が分かるわ。でも、未だに誰も名乗りを上げてないということは、持ち出したのは氷室さんか犯人のどちらかよ。」

剣崎「じゃあ結局Ωの中身は一体どこへ行ったというのですか?鍵の話題を中断してまで毒の話をしたのだからちゃんと答えを示せるんでしょうねぇ?」

宵月「掛かったわね。」

剣崎「………………は?」

宵月「私はずっと“ビン”の話しかしてなかったわよ。それなのになんであなたは“中身”について聞いてきたのかしら?」

剣崎「…それはずっと勘違いしていただけですよ。ドリンクの話をしてたからそう思っただけで…。」

宵月「違うわね。あなたは中身がどこにあるか知ってるはずよ。」

剣崎「くどいな!ならさっさとその場所を…。」

宵月「βよ。」

 

夜桜「…いま、なんとおっしゃいました?」

宵月「空になったβの空きビン…。つまり()()()()()()()()のよ!!」

剣崎「!!!!」

宵月「犯人はβの中身をΩにすり替えたものを混ぜて氷室さんに渡した…そして、その事に気づかないままドリンクを氷室さんはカフェイン中毒を起こした、そうでしょう?」

剣崎「・・・・!」

宵月「犯人は、彼女にドリンクを渡す事が出来て東雲君の研究資料室の行き来が自由な人物…。それはあなたよ!剣崎聖悟!」

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

 

宵月「私の推理が正しかったら氷室さんの食事管理、そして東雲くんの研究資料室の管理を任されている人物こそがクロ…。その条件を同時に満たしているのは《剣崎君》、あなたよ。」

 

剣崎「……ククッ!」

 

宵月「何がおかしいのかしら?」

 

剣崎「なかなか面白い推理でしたが…。それ以上でも以下でもありませんね。」

 

宵月「……言いたい事があるならハッキリ言いなさい。」

 

剣崎「『Ωの中身をβのビンに入れた?』『2つの部屋の行き来が可能な人物がクロ?』……そんなのは〈可能性の話〉でしかありませんよね?」

 

葛城「可能性…。ホントにそうかな?」

 

シルヴィア「宵月サンが推測で話すような人間に見えるのかしら?」

 

剣崎「今話してるのは僕なんですよ。部外者は黙ってて下さい。……僕が言いたいのは一つ。〈実際にカフェイン中毒で死んだ証拠〉…。それを見せてもらわないと。」

 

大分余裕がなくなって来てるみたいね…。なら見せてあげようじゃない。

 

 

〈実際にカフェイン中毒で死んだ証拠〉←【氷室の検死結果】

    同

「それに賛成よ!」

    意

 

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

宵月「そんなに証拠が見たいなら望み通り見せてあげるわ!」

剣崎「そんなもの、あるわけが…!」

宵月「手がかりは氷室さんの検死結果にちゃんと残っていたわ。一つ聞きたいんだけど、カフェイン中毒を起こした時の症状を知ってる人はいるかしら?」

小鳥遊「確か、極度の興奮状態、利尿作用、それから酷い時には痙攣と吐血…。」

宵月「そう吐血…。彼女の口には胃液の混ざった血が残っていた。これはカフェイン中毒を起こした動かぬ証拠よ!!」

剣崎「ぐ…グぐ…。」

宵月「反論はないかしら?」

 

剣崎「・・・いやぁ、一本取られましたね。えぇ、そうです。確かにこの僕がモノナミンの中身をすり替えました。・・・ですが、それが何の問題なのですか?」

暁日「…お前、今更何を言い出すんだ?」

剣崎「確かに僕は中身をすり替えました。……ですが、あくまで()()()()()()()で直接飲ませたわけではありません。氷室様がカフェインの多量摂取を起こしたのは結果論にしかすぎませんよ。」

宵月「この期に及んで開き直るつもり?そんな言い分通じる訳ないでしょ。」

剣崎「でも、否定は出来ないでしょ?僕は特定の誰かを狙ったというつもりはありません。氷室様が気づかずに飲んだのが悪いんですよ。」

シルヴィア「死者に責任転嫁するとは…。最低ね。」

剣崎「『死人に口なし』って言葉がありますよね?氷室様が僕を犯人だとでも言うのなら認めますが…。本人が死んだ以上、何を言われようと意見は変えませんよ。」

自分の責任から逃れるために死者すら利用する…これが彼の本性…!

 

暁日「クソッ…ここに来て開き直るつもりか…。直接飲ませなかったのなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でもあれば…!」

宵月「・・・・・!今、なんて?」

暁日「え?『間接的に飲ませるように仕向けた手掛かりでも』…。」

宵月「間接…。」

…そうか、その手が…!

 

 

剣崎「おや?どうしました?さすがの宵月様でもお手上げ、でしょうか?」

宵月「まさか。見つけたのよ、手掛かりになりそうな物をね。」

剣崎「・・・・。」

夜桜「もしや、何かあったのでしょうか?突破口が…。」

宵月「可能性のありそうなもの、だけどね。その前、1つ大きな謎を解決しましょう。」

獅子谷「謎…………密室だな?」

 

宵月「そうね。この密室が『いつ』『誰』によって作られたかが重要なポイントよ。」

葛城「『いつ』………?」

夜桜「『誰が』………?」

飛田「そ、そんなの、犯人以外ありえないでしょ!?」

剣崎「そうですよ、まさか他の誰かの手によって作られた…とでも言うのですか?」

宵月「そのまさかよ。………密室を作るだけなら誰にでも出来るわ。」

暁日「……あっ…!!…い、いやそんなはずは…!」

 

どうやら暁日君は気づいたようね。

可能性の話でも兎に角考えろ………!あの状況で密室が作れる人物は………。

 

 

 

 

 

【人物指定】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→氷室幽華

「そう、この人よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

宵月「いるじゃない、うってつけの人物が。・・・・・・氷室さんよ。」

 

葛城「……え?」

小鳥遊「…は?」

 

宵月「鍵を閉めたのは氷室幽華!彼女自身よ!!」

 

皇「…な、そんなバカな!!ありえん!わざわざ鍵を閉めるなど……!……ま、まさか氷室は共犯…?」

剣崎「……あぁそうだ!思い出しましたよ!その通りです!氷室様は共は…。」

宵月「残念だけどその手には乗らないわよ。氷室さんは共犯でもなんでもないわ。その上で自分で鍵を閉めたの。」

 

夜桜「…あの、すみません。よく意味がわかりませんわ。差し入れされた物に一体何が入っているのかわからないような状況で何故鍵を閉めるような危険なマネをしたのでしょうか?」

宵月「さっきも言った通り剣崎君は直接毒を飲ませていない…。でも現にドリンクを飲んだことで命を落としている。その理由は、『飲むように誘導』したのよ。」

暁日「誘導…。」

 

 

 

 

難しく考える必要はない。誘導する手段でそう多くはない…!

 

 

 

ーー閃きアナグラム開始ーー

 

 

こ と ば

 

…そう、これが答えよ!

 

 

 

宵月「わざわざ何かを用意する必要なんてない。犯人は『言葉』で飲むように誘導したのよ。」

飛田「言葉…?」

宵月「例えばそうね…。こんな事を言ったんじゃないかしら。『眠気もピークだと思うのでΩを持って来ました。良かったら飲んで下さい。それから、夜中は襲われる危険があると思うので安全の為、鍵を閉めておいて下さい』」

剣崎「!!」

宵月「どうやら図星のようね。誰かの為に尽くす執事ならではの手段よね。誰かに助言するような言葉を言えばあっさり騙されるもの。」

剣崎「…クッ!」

宵月「でもこれで終わりじゃないわよ。氷室さんが鍵を閉めてドリンクを飲んだのだとしたらまた新しい謎が生まれるわ。」

獅子谷「…………新しい謎?」

宵月「彼女が自発的に飲んだと仮定したら明らかに変な所が生まれるの。」

 

 

そう、それは…。

 

【コトダマ提示】→〈氷室の死体発見状況]

これよ!

 

 

宵月「死体を発見した時の事を思い出して。彼女は椅子に丁寧に座らされてた上にデスクの上も綺麗に片づけられていた…。密室内での事件にしてはやけに綺麗だと思わない?」

皇「確かにそうだな。毒が入ったともなるともっともがいた形跡でも残っているはずだが…。」

宵月「恐らく、あの密室は彼女の死後に証拠の隠滅の為に一度手を加えられているわ。現に部屋のどこにもΩのビンは残っていなかったしね。」

小鳥遊「で、でも今度は誰が鍵を開けたの?さっき氷室さんが閉めたのを証明したのはキミだよ?」

宵月「ここで登場するのが犯人…。つまり、剣崎君あなたよ。」

剣崎「・・・・。」

宵月「最初にモノナミンを差し入れたときにあなたはこっそりと鍵を盗み出した。そして、鍵を開けて証拠を隠滅して再度鍵を閉めた。…氷室さんのポケットに鍵を入れたのは死体発見時のドサクサに紛れてやったのかしら…違う?」

 

 

剣崎「・・・・・・・・・。」

 

 

 

     反

剣崎「ひれ伏せ愚民が!」

        論

 

 

 

剣崎「なるほどなるほど…愚民にしては中々楽しい推理でしたよ。ですが、それは所詮夢物語にしか過ぎない。推理と呼ぶことすらおこがましい妄言なのですよ!」

宵月「・・・・妄言かどうか試してみる?」

剣崎「貴様・・・。この『私』に反逆したことを後悔させてやる!!」

 

 

 

 

 

ーー反論ショーダウン開始ーー

 

 

 

 

剣崎「証拠隠滅の為に鍵を盗み出したですって…?一体いつ?どうやって?あの部屋には氷室様がずっといたのですよ?普通気づかれるとは思いませんか?」

 

宵月「忘れたのかしら?彼女はずっと作業に集中していたのよ。差し入れされる直前まで気づかなくても全く不自然じゃないわ。盗むのにはこれ以上ない状況よ。」

 

剣崎「そうですね。それは百歩譲ってそうだと認めましょう。………ですが、ここからが問題なんですよ。証拠を隠滅するために鍵を開けたとして氷室様が生きていたら計画は即失敗です。………となると、この計画はほぼ博打です。それとも、《外部から中の様子が分かる手段》でもあったいうのですか?」

 

遂に分かったわね。あの物体の正体が!

 

                斬

《外部から中の様子が分かる手段》←【USB】

    論

「その言葉、斬ってあげる!」

       破

 

 

 

 

ーーBREAK!!ーー

 

 

 

 

 

宵月「勿論、そんなことは犯人の想定内よ。だからこそ『コレ』を使ったのね。」

剣崎「!!そ、それは………!」

小鳥遊「それは…USB?そんなのどこにあったの?」

宵月「氷室さんが使っていたパソコンに挿さっていたものよ。コレが何か、あなたは知ってるはずよ。」

剣崎「・・・・。」

宵月「答えられないなら代わりに教えてあげる。………………コレは()()()よ。」

暁日「と、盗聴器だって!?いつの間にそんなものが…?」

宵月「勿論、差し入れを持って行った時よ。鍵を盗み出してこっそり盗聴器を仕掛けた。……そしてこれを使って氷室さんが死んだタイミングを見計らっていたのよ。」

 

皇「一つ聞きたいのだが、もし氷室が死ななかった場合はどうしていたのだ?」

シルヴィア「その場合は多分、盗んだ鍵を使って部屋に押し入って無理やり飲ませていたのでしょうね。ここまで用意周到に準備した物が破綻したら全ては終わり…。だから無理やりでも黙らせる必要があるもの。」

夜桜「な、なんて恐ろしい…。」

 

宵月「あとはこの中の音声を調べる事が出来たら、最後の謎も解決するわ。」

飛田「最後の謎?」

宵月「それは…。」

 

 

【コトダマ提示】→〈モノクマファイル4]

これよ!

 

宵月「氷室さんのファイルには死亡推定時刻が書かれていない…。東雲君が死んだ時間より後に氷室さんが死んだのなら『犯人』はそれを理由に言い逃れするプランも立てていたのじゃないかしら。…尤も、自分がモノナミンを持って行ってることを認めてるからもう無意味なんだけどね。…ね、()()()?」

剣崎「・・・・・・・。」

シルヴィア「…どうやら、もう議論の余地はなさそうね。」

 

 

 

 

剣崎「……いやぁ、ハハハ!忘れてた大事なことを忘れてましたよ!うっかりしてました!僕は東雲様を殺してません!」

暁日「・・・・・は?」

宵月「この期に及んで何を言い出すつもり?認めたのはあなたよ?」

剣崎「ん~~~何か言いましたかね?まぁ、ハエの羽音でしょうから無視無視。どうやらちょっと記憶が混同してたようです!」

葛城「……くどいな。言いたいことがなるならハッキリ言いなよ。」

剣崎「では、聞いていただきましょうか。これを聞いたら皆様アッと驚くと思いますよ!」

……今になって東雲君の事を引き出すなんて…何を考えているの?

 

 

 

 

 

 

 

ーー議論開始!ーー

 

 

 

剣崎「そう、あれは昨日の晩ですね…。夜9時頃でしょうか。僕の研究資料室前を通ったら大きな音が聞こえてきたんです。あまりの音にびっくりして扉を開けて中を覗いたら……なんと獅子谷様がいらしてたのですよ!」

 

獅子谷「……………………お前、何を言ってる?」

 

剣崎「僕に気づかずに獅子谷様は、東雲様を鈍器で……!こ、この先は恐ろしくて言えません!朝になってボールを探している時、すぐにアナウンスが鳴らなかったのはそういう理由なのですよ!」

 

獅子谷「……………………ふざけたことを…!俺はあの部屋になど行ってない!」

 

剣崎「獅子谷様、嘘はいけませんよ。直後に僕に口止めして『隠滅を手伝え』っていったじゃないですか!」

 

シルヴィア「隠滅って…一体何をしたのかしら?」

 

剣崎「勿論、朝に死体が見つかったように見せる細工ですよ。《死体を部屋の中央に動かして》、そして上にシャンデリアを乗せて…いかにもシャンデリアに潰されたようにしたのですよ。」

 

 

今になって東雲の事件を掘り返してくるのか…。

こっちの事件の罪を擦り付けてでも逃げ切る気か。…けど、そんなことはさせるか!

 

《死体を部屋の中央に動かして》←〈宵月の検死結果]

  論

「それは違うぞ!」

     破

 

 

 

 

ーーBREAK‼ーー

 

 

 

 

暁日「死体を動かしただって?あの死体は一度たりとも動かされてないぞ。そうだろ、宵月。」

宵月「ええ、そうよ。あの死体はあの場所は全く落とされていない。真上から落ちてきたシャンデリアに潰されたのよ。……一つ聞きたいんだけど、獅子谷君が持ってた鈍器って何?」

剣崎「…グギギ……しゃ、シャンデリアですよ。ワイヤーを切ってそのまま抱えて潰してたんです。」

暁日「…………お前、あのシャンデリアの重さ知らないのか?」

剣崎「は…?」

 

 

…正直、これ以上追究するのもバカらしい。けど、何としてもアイツに認めさせないと終われない。

 

【コトダマ提示】→〈シャンデリア]

 

 

 

 

 

暁日「シャンデリアの大きさは大体2メートル、重さは600キロほどだ。あのデカいのをどうやって抱えつもりだ?……獅子谷、お前持てるか?」

獅子谷「…………言っただろう、あの重さの物は滅多に持ったことがないと。…………引きずるのがやっとだ。」

剣崎「………こ、この役立たずが!『持てる』といえば貴様に容疑が掛かったものを……!!……何故だ…何故こうなる!!ボイスレコーダーの始末が出来なかったからか!?」

葛城「…そうか!やっと意味が分かったぞ。」

夜桜「意味……?」

 

葛城「俺はずっと宵月さんにある事を頼まれてたんだ。…『剣崎聖悟を今いる場所から絶対外に出すな』ってね。俺も調査する必要があったから時折大和にも彼の見張りを頼んでいたんだけどね。」

宵月「犯人は恐らく調査中に証拠隠滅を図ると思ってたの。そこで犯人の可能性がある人物を動けないようにする事で決定的な証拠を残す…。上手くいったようね。」

 

暁日「……なぁ、剣崎。もう認めてくれ。」

 

 

 

 

 

剣崎「み、認める……だと?この、『神の使い』たる私が?こんな何も知らない愚民共に負ける……?」

 

飛田「しょ、聖悟?」

 

 

剣崎「…認めない。認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないみとめないミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイ!!!!!!!」

 

 

夜桜「ひ、ひいぃ!」

 

 

剣崎「わ、私は認めないぞ!宵月舞!貴様の推理はやはり憶測にすぎん!!」

宵月「……まだ続けるの?」

剣崎「貴様はこの私が盗聴器を仕掛けたといった!しかし、それが真実なのか!貴様はまだ証明できていない!!大体、それが本当に盗聴器なのかすら怪しいではないか!!」

宵月「そんなの簡単なことよ。盗聴器は音声を受信する装置がある。そこに残った音声データを調べれば……。」

剣崎「ほう、ではその装置がこの学園内にあるとでも?面白い!今すぐ見つけてもらおうか!」

……この態度、まさか受信装置を処分したわね!!

 

宵月「・・・クッ。」

夜桜「よ、宵月さん?」

宵月「・・・一本取られたようね。恐らく彼は事前に装置を処分してるわ。…こうなることを予想して。」

剣崎「どうした?まさか見つけられないのか?……となると、やはり私は無罪のようだな!」

宵月「……ま、まだよ!まだ調べていない箇所が…。」

ハッタリでもいい、とにかく考えろ……。まだ調べていないところがあるはず……。

 

 

【コトダマ提示】→〈パソコン]

…こ、これだ!!

 

 

宵月「ぱ、パソコン!氷室さんの部屋のパソコンがまだ調べてない!!」

剣崎「パソコン?それがなんだと言うのだ?」

宵月「ずっと不思議だったのよ……。なんで『犯人』の電源を落としたのか…。きっとパソコン内のデータに何か残っているはず。」

剣崎「……面白い!では見せてもらおう!!」

 

 

 

 

 

剣崎「そんなパソコンに何が残っているのだ!?」

 

 

録 音 デー タ

 

 

これでおわりよ!!

 

 

 

ーーBREAK‼ーー

 

 

 

 

 

宵月「この盗聴器は恐らく外部電源を通して動作するタイプ。同時にUSBと同じ機能を持っているわ。」

皇「同じ機能……。!そうか!!」

宵月「そう、あのパソコンには盗聴器の録音データが保存されている可能性があるわ!!」

剣崎「な、な、な…なんだと!?」

宵月「モノクマ!今すぐ、あのパソコンを使えるようにしなさい!剣崎君と氷室さんの会話の録音データが残ってたら、事件解決よ!」

モノクマ「ハイハーイ!了解しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣崎「や、やめろおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおおおぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅子谷「…………け、剣崎?」

剣崎「……ハア、ハァ、ハァ…。参りました。それを調べられたらもう、言い逃れできません。」

葛城「…認める、のかな?」

剣崎「不本意ながら、ね。」

 

シルヴィア「それにしても、何故ここまで徹底的に準備して録音データに気づかなかったの?」

宵月「それは彼が機械音痴だったからだと思うわ。……パソコンにデータが残っていることに気づいても消し方が分からない。いや、そもそも録音されていることにも気づいてなかったかもしれないわ。そこで仕方なく電源だけ落としたんだと思うわ。」

剣崎「ええ、全くその通りです。……もっと機械を勉強しておくべきでしたね。」

 

暁日「…これで、終わったんだな?」

宵月「そうね。もういいと思うわ。…最後に事件を振り返りましょう。」

暁日「あぁ、分かった。…今度こそこれで最後だ。」

 

 

 

 

 

 

俺と宵月、そして皆で見つけた物語の一部始終を繋ぎ合わせていく……。

 

 

 

 

 

 

 

暁日「これが事件の真実だ!!」

宵月「これが事件の真実よ!!」

 

 

 

 

 

ーークライマックス推理開始!ーー

 

 

 

 

 

【Act.1】

事の発端は今日の朝に起きたちょっとした事件だ。動機として用意された、7つ集めた上で学級裁判を勝ち残った人物の願いを叶えるモノクマボール。それが何者かによって盗まれた。ボールを探している時に俺たちは、ある人物の研究資料室で何かが落ちる音を聞きつけて部屋に突入した。そこで見たものは巨大なシャンデリアに潰され見るも無残な姿になった東雲だった。そして同時刻、超高校級のゲームプログラマーの研究室で氷室の死体が発見された。……だが、この時点で犯人の計画はほぼ完了していたんだ。

 

 

 

【Act.2】

計画の始まりは昨日の夜時間にまで遡るわ。犯人はまず、氷室さんへの差し入れとしてあるものを用意した。1つはモノナミンΩ、もう1つはΩの中身をβのビンに移し替えたものを紛れ込ませたモノナミンβ。Ωはカフェインが多く含まれているから2本以上の連続服用は禁止されている。これを利用して彼女を殺す事にした。そして差し入れの際、2つの細工をしたの。それがパソコンに仕掛けたUSB型の盗聴器と鍵の盗み出し。けど、彼女は作業に没頭していたことで最期までそれらに気づくことはなかった…。

 

 

 

【Act.3】

それと並行してもう1つ準備を進めていたのが、東雲の殺害計画だ。研究資料室にあるシャンデリアのワイヤーをあらかじめ盗み出した薬品で事前に錆びさせておき、さらに切れ込みを入れて切れやすい状況を作った。そして切れるタイミングを見計らって東雲を呼び出しシャンデリアを東雲の頭上に落下させた……!この時の落下音をボイスレコーダーに録音して、朝に再生されるようにすることで今事件が起きるように見せかけるのが、犯人の目的だったんだ。その後は捜査時間中にボイスレコーダーを始末する予定だったんだろうけど、事前にそれを察知した宵月によって阻まれたことでそれは失敗に終わった。

 

 

 

【Act.4】

東雲君を殺した後は、盗聴器で氷室さんが死んだことを確認して証拠の隠滅を始めた。さっき盗み出した鍵で中に入り、突っ伏した状態の死体を綺麗座らせΩのビンを回収。こうして事件の痕跡を消した犯人は部屋を後にした。……でも、犯人はある致命的なミスを犯していたの。それはパソコンの電源を落としたこと。盗聴器を残したままでも電源さえ落としていれば問題ないという慢心、そして犯人が機械音痴だったことで仕組みについて理解していなかったことで発生したミスだったの。

 

 

 

暁日「これらの準備に必要なものがある3つの研究資料室の行き来が最も自由な人物…。」

宵月「そして、機械に詳しくないため初歩的なミスを犯した人物。これらの条件をすべて満たす人間こそがこの事件の真犯人!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁日・宵月「『超高校級の執事』、剣崎聖悟!!」

 

 

 

 

 

 

 

暁日「お前がその真犯人だ!!」

宵月「あなたがその真犯人よ!!」

 

 

 

ーーBREAK‼ーー

 

 

 

 

暁日「これが俺が…俺たちがたどり着いた事件の真相!まだ言いたいことはあるか?」

 

 

 

 

 

パチ、パチ、パチ、パチ………。

 

 

剣崎「いやぁ、お見事。さすが、2度の裁判を乗り越えただけのことはありますね。正直、驚きましたよ。」

夜桜「前にも同じことを言ってますわね…。」

葛城「けど意味は全く違うみたいだけどね。」

 

 

剣崎「言いたい事……。そうですね…これから投票に移りますが一言だけいいでしょうか?」

宵月「何かしら?」

剣崎「この裁判が終わったら、私に投票したことを心底後悔することになりますよ。」

小鳥遊「後悔……?」

シルヴィア「負け惜しみよ。耳を貸す必要はないわ。」

剣崎「そうですか。では、もういいです。」

 

 

 

モノクマ「んじゃ、議論の結果が出たようですし投票の方始めちゃってくださーい!」

モノパパ「一応言っておくが二票投票する必要はないぞ。まぁそもそも一人一票のルールだから出来ないんだがな!ガッハッハッハッハッハ!!」

俺たちは無視して剣崎に投票をした。

 

 

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か!?」

モノパパ「そして、その答えは正解か不正解なのかぁ!?」

 

 

三度回り出すドラムロールと共に回転するスロット。徐々に速度が落ちていき……。

剣崎の顔の絵柄が揃ったところで止まり、歓声と共にメダル排出された。

 

 

 

 

 

学級裁判 閉廷!

 



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非日常編4 オシオキ編

ーー

 

 

前日の夜時間、超高校級のゲームプログラマーの研究資料室にて。

 

 

 

「・・・・失礼致します。氷室様、お疲れ様です。差し入れを持ってきたのですが、良かったどうぞ。」

「…む?…あぁ剣崎か。差し入れか、助かるな。ありがとう。」

「疲れもピークに達しているだろうと思ってモノナミンβとΩを持ってきました。…根を詰めるのもいいですがたまには休憩を取った方が集中しやすくなると思いますよ。」

「お気遣い感謝するよ。……まぁ、善処するよ。」

「そうですか。…随分と散らかっていますね。少し掃除をしても構いませんでしょうか?」

「別に構わないよ。その辺のメモは必要のないゴミだからな。」

「かしこまりました。」

 

そう言って剣崎は掃除を始める。チラリとデスクに目をやると、氷室は再びパソコンに向かい集中しているようだ。

 

ーー隙だらけだ。

 

そう悟った剣崎はデスクへ近づき周辺を掃除をする…フリをして鍵を盗み出し、USBを模した盗聴器をパソコンへ差し込んだ。

 

 

「…こんな所でしょうか。掃除も終わりましたので退散させてもらいますね。」

「何から何まで悪いな。私がやるべき事もやってくれて助かったよ。」

「いえいえ、奉仕こそが僕の仕事ですから。……それから、念の為鍵を閉めておいたほうがよろしいかと。夜に1人だと襲われるかもしれません。」

「それもそうだな…。用心してかけておこう。……では、お休み。」

「おやすみなさい。

 

……永遠にね。

 

「…?何か言ったか?」

「いえ、何も仰ってませんが?…では、失礼します。」

 

 

 

 

 

「…さて、次は…。」

 

 

 

 

 

 

ーー超高校級の執事の研究資料室。

 

自分の研究資料室に戻ってきた剣崎。

 

 

奥の部屋の扉の裏にひっそり息を潜めて、ある人物を待つ…。

 

…キィ。

 

「…来た。」

 

しばらく経ってその人物…東雲蒼真が部屋に入ってきた。

 

 

 

「やれやれ…。わざわざここに呼びつけるとはな。……剣崎クン!ここにいるんだろう!!隠れてないで出てきたらどうだ!?……恐らくオレを殺すつもりなのだろう?ターゲットとしてこれ以上うってつけな人物はいないからな。だが、早まるな!まだ引き返せる!キミもそちらへ脚を踏み込んではーーーっ!!」

東雲の訴えも虚しく、ワイヤーが切れるように細工された巨大なシャンデリアが東雲の小柄な身体を飲み込むかのように押し潰した。

 

 

「…まず一人。」

剣崎は機械のように冷静にそう呟いた。…一方で死体を見る目はどこか憐みを感じさせるものだった…。

 

 

一つ目の殺人後、例の盗聴器の受信装置を起動させ氷室の部屋の様子を探り始めた…。

『・・・・・・』

特に音や声は聞こえない。もうドリンクを飲んだのだろうか?それともまだ飲んでいないのか?それすらもはっきりしない。

 

 

……一時間くらい経ったが反応がない。

「……失敗か。」

諦めて装置の電源を切ろうとした瞬間、

『・・・・ゴッ!・・・・ゴホッ!ガホッ!!』

「・・・・!」

『ゴホッゴホッ!!・・・・ガボェッ!!・・・ち、血・・だと?・・・グフッ!・・・剣崎・・・まさか・・ドリンクに何を・・・ガッ・・・ガフッ!!・・・・・・・・・・』

氷室が命を落としたこと悟った剣崎は立ち上がり、急ぎ足で氷室の研究資料室へ向かった。

 

 

 

ー-コンコン。

扉の前に到着し、確認のためノックをする。

「・・・・・。」

…返事はない。

ー-コンコン。

……再びノックするもやはり反応はない。

 

 

「…。」

氷室の死を確信し、さきほど盗み出した鍵で扉を開く。

 

 

 

ー-そこには椅子から転げ落ち、目を見開き、口から血を流している氷室の姿があった。

「さて…片付けるか。」

口元の血を拭き取り目を閉じさせ、体勢を整えて椅子に座らせる。

そして、デスク周りの血痕を拭き取り、ゴミ箱の中身からΩのビンを取り出す。

……まるで事件などなかったかのように。

 

そして、扉に鍵をして立ち去った。

 

 

 

…再度自分の研究資料室に戻ってきた剣崎。

計画の最後の仕上げとして受信装置の破壊、予め録音していたシャンデリアが落下した瞬間の音声の再生予約、オルガンの自動演奏、そして扉に接着剤を付けて部屋を封じ込めた。

 

 

「…神よ。今、迷える魂が2つ貴方の元へ向かいました。…しかし、これでは終わりません。()()9()()。貴方の言葉通りに9人の魂をそちらへ向かわせますので、その時は皆に安らかな眠りを与えて下さい…。」

剣崎は誰が聞いてるとも分からない独り言を呟き、部屋を後にした。

 

 

ーー

 

 

「うぷぷぷぷぷ…!大・大・大正解ーーーーー!!『超高校級の監察医』東雲蒼真クン、そして『超高校級のゲームプログラマー』氷室幽華サンを殺したのは恐るべき本性の極悪人『超高校級の執事』剣崎聖悟クンでしたーーー!!!!」

 

「ガッハッハッハッハァッッ!!まさか初のダブルキルがキミとはな…。可愛らしい顔をしてなんと恐ろしい事をするもんだ!!」

 

「・・・。」

剣崎は表情を全く変えず微動だにしない。

恐ろしいほど冷静だ。

 

だが、その状況に啖呵を切ったやつがいた。…葛城だ。

「…さてと。そろそろ聞かせてもらおうかな。」

「…何をでしょうか?」

「動機だよ勿論。正直まだ驚いてるんだ。前に犯人だと疑われただけで泣き出すくらいにはビビリな君が人殺しをするとは思えないからね。」

「やれやれ…。随分と人聞きの悪いですね…。」

「人聞きが悪いなんてよく言えたわね。2人も殺す時点で十分極悪人よ。のらりくらりと躱すつもりかもしれないけどそうはいかないわ。教えなさい。アナタが2人を殺したその理由を。」

 

 

 

「理由…動機…はぁ、全くうるさいな。なんなんです?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理由がないと人を殺してはいけないんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

あまりに予想の斜め上を行く返答に思わず言葉を失った。

 

「なっ…!じゃあアンタ理由もなく2人を殺したって事?…そんなの何よりサイテーな人殺しじゃねぇか!!」

 

 

「知ったようなクチを聞かないで下さい。それに何ですか、さっきから“極悪人”だの“人殺し”だの…。私は貴方たちを『救済』して差し上げるつもりだったのですよ?」

「どうやら…それが貴方の動機のようね。詳しく聞かせてもらうわよ。」

「…まぁいいでしょう。どうせ死を待つ身だ、最期に真意を語るのも悪くない。その前に一つ訂正させて下さい。先程『殺した理由はない』と言いましたが少し語弊がありましたね。厳密には『殺したその後に理由がある』と表現する方が正しいでしょうか。」

 

「…モノクマボールか。」

「そう、その通り。私はあのモノクマボールを使って叶えたい願いがあったんですよ。」

「な、何を…だよ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人類全ての“死”ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…誰1人としてその言葉の意味を理解出来なかった。

 

 

「フフッ、まぁポカンともしますよね。この崇高な願い…凡人には到底理解出来るはずもないですから。」

「お前…何言ってんだ?」

 

「今、この地球では一体何が起こっているか皆様はご存知でしょう?…そう、戦争、貧困、環境破壊、いじめ、虐待…。強者が蹂躙し弱者が虐げられるあまりにも醜い世の中になっています。私も孤児という生まれなだけにこの学園に入る前からこんな世の中で在り続ける事を憂いていました。」

剣崎はその悍ましい計画の一端を嬉々として語りはじめた。

 

聞いていようがいまいがお構いなしに目を輝かせて語るその様子は、その幼い容姿と相まってまるで子供が将来の夢を語っているかのようだった。

 

「宵月様には以前お話ししましたよね?『夢は世界平和だ』って。あの時の言葉は嘘じゃありません。コロシアイが始まった時、16人もの超高校級がいればきっとそれも叶うはずだ…そう思っていました。

 

 

……ですが現実はどうですか。これまでのクロも私欲に駆られて人殺しをしているじゃないですか!!

 

 

…その時気づいたんですよ、『所詮は人間だ、人間そのものが害悪なんだ』ってね。人間の愚かさに絶望していた時、私は聞いたのです。

 

 

ーー『皆に死の救済を与えよ、さすれば救われん』という“神”の声を。

 

 

そしてあのボールが出た時、これを利用して弱者に『死の救済』、そして強者に『死の制裁』を与える事を決めたんですよ!!

 

……そして願いを叶えるための礎に2人はなったと言うわけです。彼らはまだ穢れてはいない。だからこそ即死と毒殺というなるべく苦しまないような方法で魂を天国へ送ったのですよ。貴方達も本来であれば私の手で『救済』してあげたかったのですがなにぶん、一度のコロシアイでの上限が2人である以上、不可能だったのでね…。残念です。」

 

「く、狂ってる…。」

 

「狂ってるですって?私からすれば私を裁いても尚、コロシアイを続けようとする貴方達の方がよっぽど狂ってると思いますがね。だから私はこう言ったのです。『私に投票した事を死ぬほど後悔する』…と。神に選ばれたこの私を裁くという事はつまり、今の醜い世の中は何も変わらなーー。

 

「ふわぁ〜〜。」

 

……誰です?今あくびをしたのは。」

 

 

「あぁ、ごめんごめん()()だよ。まだその長い話が続くと思うとうんざりしちゃってね。」

 

「…葛城様ですか。言いたい事があるならはっきりと言ってもらえますか?」

 

「“神に選ばれた”ってよくそんな妄言が言えるよね。」

「…はぁ?」

「君はあくまで神の声を聞いたからそんな事を、しかも善意でやってるつもりみたいだけど結局それさ、どう繕ってもただの人殺しだよね。」

「いいえ違います。私のやる事全てが皆を救う事になるんですよ。」

 

「だからその誰かの為みたいな理由が気に食わないんだよね。」

「…なんだと?」

「オレさ、前の柊さんの時みたいな『誰かの為』って理由での犯罪が大っ嫌いなんだよ。どんな犯罪者がどう取り繕っても最終的に決めたのは『自分の意思』によるもの。それを自分の責任逃れのために『誰かの為』って言うのが嫌で仕方ないんだ。」

「…何が言いたいのでしょうか?」

「つまりさ、君はさっきからその『神』とやらを盾に殺人の言い逃れをしてんじゃないかって言いたいんだよね。正義だの神だの…結局自分を正当化するための建前じゃない?」

「…ち、違う…!」

「…全く、どれほど深い理由があるかと思ったらただのカッコ付けか。心底ガッカリだよ。まだ素直に認めた本代君の方がマシだ。」

「……………チガウ…!ワタシハ………スクワレナイ……モノヲ……スクウタメニ………ザイニンヲ……サバク…タメニ……!!」

 

 

「う〜ん、これでも折れないか。…となるともうちょっとはっきり言うべきだったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最低な』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『救いようの無い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クズだ』」

 

 

 

「お、おい葛城。それは流石に言い過ぎなんじゃ…。」

 

「いいんだよ暁日君。コイツみたいなクズになるとこれくらい言わないと効かないよ。」

 

「やっぱり。」

 

「?」

 

「…やっぱり私の意見は間違ってなかったようですねぇ…。弱者をいたぶり、自分の意見が通らない異端者を徹底的に排除しようとする!愚かで救いようの無い存在だ…。」

「やれやれ…。ここまで来るとクズとかじゃなくてただのバカだな。」

「あわよくば同情を買ってオシオキを逃れるつもりだったが、そんな事はもうどうでもいい…。こんな醜い存在と一緒にいるくらいならこっちから願い下げだ!!モノクマ!この私に相応しいオシオキを用意してるのだろうな?」

 

 

「もっちろーーーん!!今回も『超高校級の執事』剣崎聖悟クンのために!スペシャルな!オシオキを!!用意しました!!!」

 

 

「これで…私は天国へ逝ける。」

 

「オレは神とか宗教染みた物は全く信じてない。…けど、君が逝く先は間違いなく地獄だと思うよ。」

 

…剣崎は反応しない。聞こえてはいるだろうがアイツの言う『醜い存在』の言葉など耳に入れたくないのだろう。

 

 

…そう思っていたら、

「あぁそうだ!最期に1つ面白い情報を伝えておきますね!」

突如、剣崎の方からこちらへ話しかけてきた。

 

「何よ。」

「実は1つだけ宵月様の推理にミスがあったのですよ。」

「ミス…ですって?」

「そう。あの時宵月様は私が氷室様の死体を確認した際にパソコンの電源を落としたと推理したと仰っていましたが、実は()()()()()()()()()()()()()()んですよ。…なのでパソコンを落としたのは恐らく氷室様自身ですね!」

「な、何ですって…!?何で今になってその事を教えたのよ!」

「別に意味はないですよ。ただもう解決したし必要ない情報だと思ったからです。ま、これが戯言と捉えるかどうかは皆様にお任せします!」

 

 

 

「…さて、陛下!最後まで貴女にお仕え出来なかった事をお許しください!ですが私は神の元で貴女を天から見守らせてもらいます!いつか貴女が天に召された際、再び貴女にお仕えできる事を願っています!陛下に神のご加護があらん事を!!…ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

「それでは!張り切って参りましょう!」

「「オシオキターイム!!」」

 

 

 

「アーーーーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」

 

 

 

3度目のオシオキの開始を知らせるボタンが押されたがその最中でも剣崎は高らかに笑っていた。

 

 

ーー

 

 

GAME OVER

 

ケンザキくんがクロに決まりました。

 

オシオキを開始します。

 

 

 

目隠しをされ、両手をロープで拘束された剣崎。

そのロープの結び目から伸びた先を持ち、剣崎を牽引する中世の騎士の姿をしたモノクマ。その状態を同じく中世の装いに身を包んだ民衆達に見守られながら、階段をゆっくりゆっくり登っていく…。やがて、階段を登り切り着いた先はーー。

 

 

 

 

 

 

 

上部で不気味に輝く刃を吊り上げた断頭台だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

HOLY JUDGEMENT(聖なる審判)

超高校級の執事 剣崎聖悟 処刑執行

 

 

 

 

 

 

断頭台に身体を固定される剣崎。

モノクマの合図によっていざ、刃物が落とされる…そう思った瞬間、

突如、別の騎士の姿をしたモノパパ達が乱入してきた。

どうやら剣崎を助けに来たようだ。

目隠しと手の拘束を解き断頭台から解放される剣崎、だがそれを取り押さえよるモノクマ達と逆にそれを妨げようとするモノパパ達の集団の中でもちくちゃにされる。最早剣崎の事などどうでもいいと言わんばかりに争う集団によって足蹴にされ、しまいには誰かによって階段に向かって蹴飛ばされてしまう。

 

 

頭を打ち付けた後そのままの勢いで全身を階段の角にぶつけたり、擦りむいたりしながら一段一段と階段の転がり落ちていく…。

地獄のような苦痛の中、ようやく一番下まで落下したところで逃げようとする。だが、その瞬間それを見ていた民衆達が何かを叫んでいる。どうやら上を指しているようだ。それに促されるように上を見るとーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

争いの最中に壊れた断頭台から外れた刃が眼前へ迫っていたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいた頃にはもう遅く、剣崎が見上げるとほぼ同時に刃が剣崎の首と胴体を切断した。

 

 

 

切断面から血を吹き出しながら倒れ込む目の前の惨劇に民衆達が悲鳴を上げる中、何処からともなくエンジン音が聞こえてきた。すると、『今日は燃えるゴミの日です』という掲示がされたゴミ収集車がやって来た。そこから降りて来た作業着姿のモノクマとモノパパが剣崎の亡骸を荷台へ投げ込み機械を操作すると、装置が作動し亡骸がメキメキと音を立てながら内部へ飲み込まれていった。それを確認してから再び運転席に乗り込み、ゴミ収集車は何処かへ走り去って行ってしまった。

 

 

ーー

 

 

 

「エクストリィィィィィムッッッッッ!!!オマエがあの世になんか逝けるワケないじゃーーーーーん!!」

「骨も残らないほどの灰になるまで燃やされて、せいぜい肥料として世の役に立つんだなぁ!!ガッハッハッハッハァッッ!!」

 

 

「成程…これぞまさに『因果応報』って感じだな。ふわぁ〜今日も長かったなぁ…。朝早くから捜査とかしてたから疲れちゃったな。…さ、帰ろっか。」

 

「・・・・・。」

「あれ、宵月さんどうしたの?」

「…彼はなんであんな事を言ったのかしら。」

「あんな事…あぁ、『パソコンの電源を落としたのは彼ではない』ってやつ?気にする必要ないよ、所詮は彼の負け惜しみだ。」

「…だとしたら尚更気になるわ。別に教える必要すらない情報じゃない。」

「さぁ?もしかしたら最期に悔しがる顔でも見たかったんじゃないかな?真意はそれこそ『神のみぞ知る』ってやつだと思うけどね。…ほら、帰ろうよ。流石に眠いや。」

「えぇ…そうね。」

 

事件は確かに解決した。…だが、剣崎が最期に残した言葉のせいでなんとも言えない不穏な空気はそのままだった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「…これで約半分、といった所か。最初はどうなるか不安だったが意外と順調だな…息子よ。」

「あんなモンなんですよ…父さん。はじめは強がってるけどちょっと不安を煽ってやったらすぐに崩れる。その後はドミノ倒しのように連鎖してくんですよ。特にアイツラみたいな()()()()()はね…。とはいえこんなに上手く行くとは思ってなかったよ。 やっぱり()()()()()()の情報が本能的に残ってるのかな?」

「ガッハッハ!違いねぇな!まぁこの調子だと割とすぐに終わりそうだな。」

「うぷぷ……そうだね。でもこれからだよ…。ボクと『アイツ』の分の“復讐”はまだこれからする事のほんの序章に過ぎないからね…。アイツラが全てを知ったとき、それから全てが始まるんだよ!うぷぷぷぷ…うぷぷぷぷぷぷぷぷ!!!」

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

ーー同時刻、超高校級のゲームプログラマーの才能資料室にて。

 

 

誰も居ないはずの部屋で一台、パソコンがひとりでに動き出していた。

 

そして画面にはある文字が表示されていた。

 

 

『・・・・・最終保存から24時間経過。指示プログラムに基づき、マスター氷室幽華を死亡と判断。これより、マスターの指示により残存データより新規データの再構築を開始します。

 

……現在25%。推定終了時間、6時間。』

 

 

ーー

 

 

【チャプター3 この醜き世界に制裁を! END】

 

残り:9名

 

To Be Continued...

 

 

ーー

 

【アイテム獲得!】潰れた懐中時計

三章を記録した証。

剣崎聖悟の遺品。

女王陛下からの贈り物。

未来を見据えた持ち主を失い、時が進むことも戻ることも無くなった。



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チャプター4 仄暗い海の底で熱い哀を慟哭(さけ)
(非)日常編1


ー-どこかの教室での記憶…。

 

そこには、数人の少年少女がいた。

 

…1人は胸倉を掴まれ、もう1人はその人物を殴りつけ、2人はそれを囃し立て、1人はそれを先導しているという状況だ。

 

 

ーー………フンッ!!

 

……グゥッ……!……っく…!ハァ…ハァ…。

 

 

 

胸倉を掴まれた少年は大柄な少年の右ストレートをダイレクトに顔面で受けた。

相当強烈なパンチだったのだろう、顔は腫れあがり、鼻からボタリ、ボタリと赤黒い血を垂れ流している。

血は大粒の雫になって床に滴り落ちていた。

 

 

 

ーーっしゃあ!いいぞ!もっとやっちゃえー!

 

 

ーーおい、それくらいにしておけ。死んだら誰が責任を取るんだ?

 

 

ーー…………ムッ、すまない。

 

 

ーー…おい、死ぬなよ。お前のせいで俺達が人殺しになるのはこっちとしては冗談じゃないんだよ。

 

 

ーー…………テメェのやってる事は…ハァ………犯罪者と変わんねぇだろうが…………。

 

 

ーーあぁ、よかった。まだ反抗する元気はあるみたいだな。…さて、その態度は後で“再教育”し直すとして本題に入ろうか。例の頼んでいた次のテスト問題の盗み出しはどうしたんだ?

 

 

ーー・・・・・・・・。

 

 

返事はない。

 

 

ーー…おい。

 

 

回答がない事を理解すると、リーダーと思われる少年が顎をしゃくらせて大柄な少年に指示を送る。

大柄な少年が倒れている少年の肩を掴んで無理やり起こす。

…そして、頭突きを一撃食らわせた。

 

 

ーー……ッ!!

 

額から赤い一筋の線が流れる。そして、放り投げられ再び床に突っ伏した。

 

 

ーー質問の答えは5秒以内だ。前に教えただろ?もう1回聞くが、テストの問題用紙はどうした?

 

 

ーー………盗み出しそうとしたら先生に見つかった。

 

 

ーー……ハァ…お前は本当に何も出来ない奴なんだな。成績は下の方、道具にもならない…。一般人であるお前に目を配ってやったのにここまで役立たずとはな…。もういい、お前はもう必要ない。どうやって、“処分”するか…。何かいい案はあるか?

 

 

他のメンバーにそう促すと、背の高い少年が一つ提案してきた。

 

 

ーーう~ん、そうだねぇ。もういっそ自殺に見せかけて、学校の屋上から落とす…ってのはどうかな?どうせ、人ひとり死んでも誰も動かないよ。この学園で自殺…ってのは学園自体の信頼に関わる事だから多分、隠蔽してくれるんじゃないかな。

 

 

ーーなるほど…いいアイデアだな。よし、早速運びに行くとしよう。

 

 

 

 

…………死ぬ?オレが?

 

 

 

 

 

会話の中に明確に感じた殺意を意識したことで途端に言いようのない恐怖に襲われる。

“死”が目の前に迫っている。

 

 

殺される……こいつらの身勝手な理由で…………死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…………いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ…………!!

 

 

ーー………………い、いやだ。…………死ぬのはいやだああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

ーーあ、逃げた!

 

 

ーー逃がさないよ!!

 

 

少年は逃げようとするが、背の高いの少年によって阻まれる。そして再び肩を掴まれて押し倒される。

 

 

ーーよくやった。よし、早速屋上に運ぶぞ。

 

 

 

……その瞬間、リーダー格の少年の脚が掴まれる。

 

 

 

ーー………………ス。

 

 

ーー…………何か言ったか?

 

 

ーー…………コロス…………。テメェラ……………………ゼンイン……………………コロ…………シテ…ヤル……。

 

 

ーー……殺す……ねぇ。誰に口を聞いてるのか分かってるのか?……あぁ!?

 

 

倒れながらも必死に脚を掴み、睨みつける少年の腹部へリーダーの少年が蹴りを叩き込む。

一発だけではない、二発、三発と複数回叩き込んだ。

 

 

ーーぐっぅえ………げ、ゲホッ!ゲホッ!!……ゥ、ウゥエェ…!

 

 

ーー…無駄な抵抗だけはするんだな。おい、早く殺すぞ。

 

 

ーー……ハァ……ハァ………ゥッ……ォオェエエ……!…カハッ!……ンヴォェエエエェェ………!!…ハッ……ハァ…ハァ…ハァ………!!……ウッ…ウゥ…!

 

 

ーーうわっ、ちょっ、マジか!コイツ、ゲロってんじゃん!きったね!!

 

 

ーー…あーあ……血とゲロの臭いが混じって最悪の空気だ。俺も気分悪くなってきたよ。

 

 

ーー……俺の足に直撃してるんだがな。…チッ、何か拭く物は……あぁ、お前の服があったな。

 

 

そう言って倒れてる少年の背中に吐瀉物が付いた足を押し付け、グリグリと汚れを擦り付けた。

 

 

ーー…フフッ。まるでボロ雑巾だね。

 

 

ーーボ、ボロ雑巾ッ……!アハハハハ!ウケる〜〜!

 

 

ーー笑ってやるな、良い渾名だろ。オイ、“ボロ雑巾”。お前が吐いたモノ、全部拭いておけ。…勿論、お前のその服でな。

 

 

ーー・・・・・。

 

 

最早抵抗する気も起きない様子で、痙攣しながら起き上がり制服の上着を脱ぎ、自身の吐いた吐瀉物を拭いていく。

 

 

ーーうーわ、マジでやってるし…。…バズりそうだし動画撮ってネットに上げよっ。

 

 

ーーお、それ後でクラスのグループに回しといてね。俺達の『大切な思い出』として残しておかないと。

 

 

ーー………フッ………いい絵だ。

 

 

ーー全く…素直に言う事を聞いておけば無駄に痛い思いをしないで済むのにな。まぁ、ようやく理解したようで俺も安心したよ。

 

 

無邪気な様子で悍ましい会話を続ける4人。それを尻目に黙々と掃除を進めていく。

 

 

ーー……拭き終わったぞ。

 

 

ーーお疲れ。……うん、綺麗になったな。よし、もう帰っていいぞ。

 

 

ーー…そうか、じゃあ……

 

 

そう言われて扉へ踵を返した瞬間ーー

 

 

ーーおい、誰が“家”へ帰れと言った?

 

 

ーーは?

 

 

ーー“ボロ雑巾”のお前の帰る所は……“コッチ”だろ!

 

 

……その言葉で全てを察した少年2人が肩を掴み、“そこ”へ押し込もうとする。

 

 

“そこ”は掃除用具用のロッカーだ。

 

 

ーー……く…………ッソがぁぁ!!…っぱそういう事かよ!!

 

 

ーー…………いいから………入れ!

 

 

投げ込まれるかのようにロッカー内に叩きつけられ、バンッと音を立てて強引に扉を閉めた。

……そしてその上から扉をテープで巻き付けてしまった。

 

 

ーーこれで終わったな、帰るぞ。……明日、生きてたら開けてやるよ。一晩くらい晩飯食わなくても大丈夫だろ?

 

 

ーー………く……そ……が………。

 

そのまま少年の意識は途切れていった…。

 


 

 

………!!……うっ、ううぅぅっ………!ぐぉえぇぇ…………!

 

 

忌々しい記憶が再びフラッシュバックし胃の底から強烈な吐き気を感じ嘔吐する。…もう、これで何度目だ?

 

 

……最近、多いな…。アイツらは確実に葬ってるのに……気分が晴れるどころか思い出したくもねぇ記憶ばっかり蘇る。…オレの悪夢はいつになったら終わるんだ…?

 

 


 

 

『オマエラ!おはようございます!朝7時になりました!起床時間です!』

 

「んん…ふわぁ。」

 

相も変わらず鳴り響く不快極まりないアラーム代わりのアナウンスで目が覚める。

 

「…なんか、久々にしっかり寝れたな。」

 

ここ最近は夜に散歩したりとあまり寝れなかったが、今日は珍しくアナウンスが鳴るまで全く目が覚めなかった。

……誰かが殺して誰かが殺される…そんな環境に慣れてきてしまっているのだろうか。そんな事を考えてとてつもない不安に駆られる。

 

「…そんな事、あってたまるかよ…。」

 

そう呟いても当然気が晴れる訳でもない。

…もう半分近く減ってしまった。そんな状況でもルーティンに従うように食堂へ向かった。

 

 

ーーいつものように顔を洗い、いつものようにドアを開けていつもの道を通って食堂へ向かう…。

「…ん?」

 

その道中でとある物を見つける。

 

 

「……うっ!こ、これは…!」

 

 

それはあまりにも無残な姿になった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……魚の死体だった。

 

 

 

「さ、魚?……なんでこんな所に?」

 

 

魚が落ちていると言うのも不自然だが、それ以上にその見た目が明らかに不自然だった。

魚の外見は目が完全に飛び出しており、腹を膨らんで内臓が口と尻からはみ出てるというとんでもなくグロテスクかつ異常な姿になっていた。

上空を見上げても鳥が飛んでいる訳ではない。……というかここに来て俺達以外で生きた動物というものを見た事がない。

 

「例の水槽のやつ…って感じじゃないな。となると一体どこから…?」

 

確か何処かで聞いた事がある。水から上がった魚の臓物が身体から飛び出した状態になる条件があったはずだ。…確か。

 

「ウオッッホン!!すまないが少しいいかね暁日クン?」

 

思考を巡らせているとそれを遮るかのように突如、モノパパが現れた。

 

「モノパパ?…なんでお前が?」

「そんなことはどうでも良いだろう。キミに頼みたい事があるんだ。…そこの魚、処理しておくからこちらへ渡してもらえるだろうか?」

「…その前に聞かせてくれないか?俺達がいる()()()()はなんなんだ?」

「この場所は才牢学園。最初にそう言ったはずだが?」

「俺が聞きたいのはそう言う事じゃない。この場所そのものについてだ。俺達は今、()()にいるんだ?」

「……それ以上聞くのはいただけないな。まだ聞くのなら命の保証はしないぞ?」

食い下がる俺に対し、裂けたような赤い眼と爪を光らせ警告をしてくる。

……どうやら、コイツからこれ以上聞き出すのは難しそうだ。下手したら俺の命が危ない。腑に落ちないが、渋々魚を渡した。

 

「そう、それで良いのだ。素直に言う事を聞けばこちらも手は出さん。まぁ、この場所について調べるのは禁止してないから、せいぜい自分で調べて答えに辿り着く事だな。……しかし、こいつは少々厄介な事になったな。」

「厄介な事?その魚がそんなにマズイのか?」

「うぅん?何を言ってるんだね?ガッハッハッハッハ!キミの聞き間違いだろう!では、さらばだ!」

…風のように現れたかと思えば、今度は話をはぐらかして風のように去っていった。

 

コロシアイが続いたせいで慣れていたが、この場所は明らかに変だ。

天気や季節が変わった様子もなく、常に同じ気候だ。その上、生き物も人間以外に存在しない。……そして、そんな中現れた異様な風貌の魚の死体。

「……どういう事だ?」

 

 

 

朝から新たな疑問にぶつかり、モヤモヤしながらも食堂へ脚を運んだ。

 

 

 

 


 

 

「おは………よ……。」

 

食堂に到着して挨拶をしようとした瞬間、またしても言葉を失ってしまった。

 

扉を開けた直後、視界に飛び込んで来たのは…

 

 

 

 

…食堂のど真ん中に置かれた巨大な謎の物体だった。

 

 

 

「・・・・・。」

無言で一旦扉を閉める。

………そして息を整えてからもう一度扉を開けることにした。

 

 

 

……が、やっぱりある。

食堂のど真ん中に陣取る様に黄金に輝く箱のような物体が。

そのデザインは妙に凝っており、まるでエジプトのミイラを収めるための棺のようなデザインになっている。

 

 

 

 

 

「・・・・なんで今日は変な物ばっかり見るんだ?」

 

 

 

 

突如現れた謎の物体をぼんやりと見ていると小鳥遊が声を掛けてきた。

「あ、暁日くん。おはよ。」

「小鳥遊。な、なぁ…アレなんだ?…棺、だよな?」

「あぁ、やっぱアレ気になるよね…。なんかここに最初から置いてあったみたいだよ。」

「最初から?…って事はモノクマか。」

「うん。最初にここに来たのは皇くんだったんだけど、その時点であったんだって。で、モノクマに聞いたら案の定、アイツが置いたみたいで『3回目の裁判を終えたご褒美です!』って言われた…らしいよ。」

「……ご褒美……ねぇ。……そもそも中身入ってるのか?」

「獅子谷くんが少し持ち上げた感じだと、人1人分くらいの重さはあるって言ってたよ。」

「ふぅん…。」

 

確かに大人の男性なら普通に入れるくらいの大きさはある。

ご褒美だとか言ってるが、もう話を聞くだけで胡散臭い。どうせまた俺達の不安を煽る様な物が入ってるとしか思えないな…。

 

ちなみに当の皇は棺を鬼の様な形相で睨みつけてる。……気迫が凄くて怖い。

 

「あの感じだと、皇はアレを見張ってるのか?」

「万が一、何かあった時のために…ね。全員揃って朝食を食べてから開けるんだって。」

「なるほどな。」

流石に爆弾とかが入っているとは考えにくい。

俺達全員を纏めて殺すのだったらとっくにやってるはずだ。

 

 

 

 

ーーその後、特に問題なく全員揃い朝食は終わった。

 

 

 

 

…そして残すは例の棺を開けるだけとなった。

開けるのは皇と獅子谷の2人で行うようだ。

 

「…さて、これからコレを開ける。獅子谷、準備はいいか?」

「………あぁ………いつでも始めてくれ。」

 

 

「…それにしても、棺のデザインと合わせてもまるでファラオの遺跡発掘現場みたいだね。」

「流石に本物の黄金とかじゃなさそうね…。そこそこ大きいし、お金になると思ったんだけど。あぁ、ファラオといえばこんな話は知ってるかしら?」

場を盛り上げるためなのか、アレックスはそう言って語り始めた。

 

 

「ファラオでも特に有名なツタンカーメン王のミイラが発見されてから数年後、当時発掘に立ち会った考古学者達が立て続けに死ぬ…という現象が発生したの。そしてそれを周囲の人達は『眠りを妨げられたファラオの呪いだ!』って騒ぎ立てた。…結局、その真相はエジプトで蔓延してた伝染病や発掘現場の環境が悪かったのが原因ってオチだったんだけどね。…もしかしたら、これもそういう呪いの類なのかもしれないわね。」

「…ちょ、ちょっとシルヴィアちゃん!今冗談でもそういう事言わないでよ!アタシ、暗い場所とかそーゆーの苦手なんだよ!昨日だって夜中に……!」

……と、アレックスの話にビビっていた飛田が何かを言い掛けた直後…。

 

 

 

 

 

 

……ズズッ………ズッ……ズ………

 

 

 

 

 

 

何かが擦れるような音が食堂内に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「……え?何?何の音?」

「ま、まさかとは思いますが……棺から聞こえた気が…。」

「た゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ーーー!!もうやめてってばぁぁぁ!!」

 

「…いや。その“まさか”だ。…獅子谷。」

「………分かってる。」

皇と獅子谷が咄嗟に棺に向かい、臨戦体勢を取る。

“まさか”…。つまり棺の蓋が動いているんだ。

 

「…何者だ?」

皇が棺の中に入ってるであろう人物に問い掛けるが返事はない。

蓋は尚、開かれていく。

 

そしてーー

 

 

 

 

 

ズズズ……ズズ………ゴトンッ。

 

 

 

 

 

 

「………ふう。………やっと開いた。」

 

 

中から1人の男が出てきた。

歳は20代くらい、レザージャケットとスラックス、ブーツを組み合わせた装い、髪はボサボサで無精髭を生やしたどこかだらしない雰囲気の男だ。

 

 

「…………うぅん?……ここ……は…?」

覚醒し切ってないのか、ボンヤリと俺達と周りの様子を見渡してる。

 

だが、

「…君たちは……うぉっ……ととっ。」

そのまま倒れてしまった。

 

「…!大丈夫か?」

すぐさま目の前にいた皇が受け止めた。

 

「だ、大丈夫だ…。それより…。」

「それより…何だ?」

「………腹が…減った…。」

その直後、部屋に轟音のような腹の音が響いたのだった。

 

 

 

ーー

 

「………はぐ…もぐ…もぐ。……ズズッ。ん、これ美味いな。…あ、悪い、ご飯のおかわりもらえるかな。」

「はいはい、ちょっと待って貰えるかしら?……これ、ご飯足りるかしら。炊飯器の中、ほぼ空なんだけど。」

「まぁ、最悪無くなっちゃったらパンがあるし大丈夫だよ。…もうちょっと別の洋食向きのおかず作るかな。」

例の男が空腹を訴えていたのでひとまず彼の腹を満たすために葛城と宵月の2人で飯を作る事になった。その間、俺達は待機だ。

 

暇してる間、小鳥遊と話をする事にした。

「凄い勢いで飯をかきこんでるなぁ。」

「顔もかなりやつれてたし、2、3日くらいは食べてなかったのかも。」

「2、3日…いや、それよりもっと前からかもな。その間、どこにあの人を隠してたんだろうな。」

「入口らしい物が無いから多分最初から…。謎だね。」

「……とりあえずあの男から話を聞かねばならんな。」

「皇。」

「あの男は恐らくこのコロシアイについて何か知っている可能性が高い。…そうでないとわざわざ俺達の前に姿を現す意味がないからな。」

「…確かにそうだよなぁ。」

…となるとやっぱりあの人の飯が終わるのを待つしかない。そうなるとこの待ってる時間がなんか勿体無く感じる。

 

…何か出来ることはないか、と考えてると。さっき飛田が言ってた事を思い出した。

「なぁ、飛田。」

「ん、どしたの悠。」

「さっき“昨日の夜中に”って言いかけてたと思うんだけど…あれなんの事だ?夜中に何か見つけたのか?」

「あぁ〜あの話覚えてたかぁ……いや、別に面白い事はないよ?多分アタシがビビりまくってなんか勘違いしてただけだと思うし。」

「勘違いかどうかは聞いてみないと分からないからな。とりあえず話してくれないか?」

「うん…。」

 

 

「…さっきも言った通り、昨日夜中にね、なんか寝つけなくって散歩してたんだ。で、なんとなーくタワーの方へ歩いてったってわけ。夜中だからトーゼン電気が点いてる事とかないじゃん?アタシそーゆートコ苦手でさ、メッチャビビりながら中ウロついてたら幽華ちゃんの才能資料室へ着いたんだ。

 

……でさ、部屋に入ったらなんかボンヤリと明るくって“なんでだろ?”って思って部屋ん中見たらパソコンが勝手に起動してたんだよ!直感でなんか“ヤバい!”ってなって部屋を出ようとしたらそん時にいきなり幽華ちゃんっぽい声が聞こえて。……で、もうそっから猛ダッシュで逃げてきたって感じよ。」

 

 

 

「……氷室の、声?」

「流石に生きてるってのはあり得ないし、幽霊なのかも分かんないよ!…でもあれは幽華ちゃんの声だと思う!」

「わ、分かった。とりあえず見に行こう。そうじゃないと判断しようがないからな。明るいし、怖いのもちょっとはマシだろ?」

「っしゃ!サンキュー!」

「あ、待って。ボクも行くよ。勝手に点いてたパソコンってのがなんか気になるんだ。」

「助かるよ小鳥遊。」

「んじゃ、チャチャっと行って帰ってこよ!」

……さっきまでビビってた雰囲気とは大違いだな。

 

 

 


 

 

ーー暁日達が席を立ってからほんの数分後。

 

 

 

「……ふぅ、ご馳走さん。悪いな、食事作ってもらって。お陰で餓死せずに済んだよ、ハハハ。」

「そう、それはお粗末様。」

「…って随分とそっけないな。もうちょっと愛想良くしたらどうだ?」

「余計なお世話よ。大体、あなたみたいな得体も知れない人に愛想良くするってのも無理な話じゃない。」

食事を終えて食器を片付けてる最中、“彼”は私に話しかけてきた。

それもかなり馴れ馴れしく。

 

「得体の知れない…………って、おい待てよ。さっきからみんな揃ってタメ口だけど君たち、オレの事を覚えてないのか?」

「残念だけど、俺達はアンタを知らないよ。勿論、アンタだって俺達の事を知らないはずだ。」

「………いいや、オレは君たちの事をよく知ってるよ。

 

 

 

 

 

 

 

……“葛城狂也くん”。」

 

 

 

 

 

“彼”はニヤリと笑いながら葛城君のフルネームを呟いた。

「・・・!!」

「それから、さっき部屋を出て行ったのは“暁日くん”“小鳥遊さん”“飛田さん”の3人のはずだ。…間違っているかい?」

「貴様…!一体何者だ!」

「ちょ、待てよ!まずは落ち着くんだ“皇くん”。それを話すのは彼らが帰ってきてからでいいだろ?」

…まただ、また彼らの名前を読み上げた。

今まで一度も私達に会ったことなければ名前なんて知らないはず…。

 

 

そんな呆気に取られる私達をよそに“彼”は飄々としてた。

「さぁて、飯も食った事だし、3人が帰ってくるまで一服でもするかな。……なぁ、喫煙所はあるか?」

「え、えぇと喫煙所はない、かな。みんな未成年だからタバコは吸えないし。」

「…うん?じゃあ、オレ以外に大人はいないって事か?」

葛城くんは無言で頷く。

 

「・・・・。なるほど、何となく話は見えてきたな。…そうなると考えをまとめるためにはやっぱ一服しねぇとな。でも、喫煙所はない…と。」

「が、我慢は出来ないのでしょうか?それかここで吸うのは…。」

「いーや、無理だ!君らはニコチンのヤバさを知らないからいいけど、喫煙者に取って短時間でもニコチンを吸えないのはマジでイライラするんだ!それにオレの持ってるヤツは加熱式だから有害な煙や臭いは少ないとは言え、君らに影響を与えるわけにもいかないだろ?」

「じゃあ、厨房の換気扇の下を使っていいよ。そこなら臭いも残らないだろうし。」

「お、マジか!助かるよ!」

それだけ言い残してそそくさと厨房の奥へ引っ込んでいった。

 

 

だが、

 

 

「おい!タバコがねぇぞ!ってか、本体もねぇじゃねぇか!ちょっと冗談じゃねぇよ!!」

と叫びながらこっちへ走ってきた。

……アレがニコチン中毒なのね。

 

 

「おっかしいなぁ…いつもポケットに入れてるのになんでないんだ?これは困ったなぁ…。」

そう言って“彼”が途方に暮れてるのを見兼ねたのか、モノクマが“彼”の前に現れた。

 

「うぷぷぷぷ…。お困りのようですねぇ。」

「あぁ。オレに取ってすげぇ大事なものなんだよなぁ〜。」

「それはそれは…でしたら差し入れとしてこちらをば。テッテレー!『加熱式タバコとスティック』〜!」

「…うん?おぉ!これはオレがいつも使ってる機種じゃねぇか!スティックもオレの好きな『ブルライ』!…いいのか、貰っちまって?」

「もっちろん!ボクは『誰にでも優しく』がモットーだからね!」

「すまねぇ!恩に切るよ!」

 

 

 

 

 

「……って誰だお前!?」

 

 

 

 

 

 

・・・・今?

 

 

 

 

 

「ぷひゃひゃひゃひゃ!!やぁっと突っ込んでくれたね!ボクはモノクマ!この『才牢学園』の学園長だよ!」

「……も、モノクマ……だと?………そうか、そういう事か。これで今、オレ達が置かれてる状況が分かったぞ。……となると、お前に聞く事は一つ。お前を操ってるのは誰だ?」

「操ってるぅ?何のことだか?ボクのボディーは綿100%!そして魔法のパワーで動いてるんだよ!だから中の人なんていませーん!」

「とぼけやがって…!なら、お前を壊して中身を引きずりだしてやろうか?」

「キャーこわーい!暴力反対だよぉ!!」

…それだけ言い残してモノクマは消えてしまった。

 

 

けど、それ以上に気になるのは“彼”の様子。

明らかにモノクマを知っている風だった。

「やれやれ…アイツがいるとなると、そうそう脱出できそうにないって事か。……っとタバコタバコ。」

 

 


 

 

飛田に連れられて氷室の研究教室へ到着した俺達。

 

 

「さて、部屋の中はどうなっているのかね…っと。」

扉を開けて中を確認する。

すると、その中では飛田の言った通りパソコンが起動しているようだ。

画面がぼんやりと明るい。

 

とは言えこんな事で怯んでる場合ではない。

「おい!誰かいるのか?」

誰かいる可能性を考え、牽制の意味も兼ねて少し声を荒げる。

…返事はない。

 

と、思った直後、

『やれやれ…待ち兼ねたぞ。再び1人になっておよそ6時間。どれだけ待たせる気だ。』

返事があった。…この声は間違いない。氷室の声だ。

「……氷室!氷室なのか?何処だ!?」

『氷室……。あぁ、マスターの名だな。ワタシはキミたちの前にいる。パソコンを見たまえ。』

「パソコン…。」

何処からか聞こえる声に促され、目の前のパソコンに目を向ける。

「…あ!悠、瑞希ちゃん見て!」

 

 

するとパソコンの画面が切り替わり、そこには死んだはずの氷室幽華その人の顔が表示された。

「氷室…?なんでパソコンの中にいるんだ?」

『……ワタシは氷室幽華であって氷室幽華ではない。言うなればこの姿はマスターの顔と声を借りた、かりそめの姿。

 

 

 

 

 

……“フィリウス・デイ”。それがワタシの名前だ。』

 

 

 

 

 

「“フィリウス・デイ”……ラテン語で“神の子”って意味だ。名前とその姿から察するに、君は氷室さんによって作られたAIって所かな?」

『キミは“小鳥遊瑞希”だな。…その通り。マスターが生前このパソコン内に入ったデータの調査を行っていたのは知っているだろう。その時、自分に万が一の事があった時に備えてもう一つ作業を行なっていた。…それがワタシの作成だ。作成途中でデータの更新が行われなくなった事、そして更新停止から一定時間が経った事でマスターの死を確認し、プログラムに指示に従ってデータの残骸から再構築して生まれたのがこのワタシという訳だ。……そう、神に“死”の概念はないのだよ!!』

…氷室は最初から自分が狙われる事を想定していたのか。

にしても“神の子”って……最期までらしいというか…。性格も口調も氷室の生写しと言わんばかりにそっくりだ。

 

『さて、ワタシはマスターから命令を預かっている。“キミたちの生活補助”そして“完成したワタシを見つけた者にこのパソコン内のデータを見せる”。という物だが、どうする?必要ならすぐにでも見せるが。』

「……いや、今は止めておくよ。“あの人”と話すためにも君の持ってる情報はきっとみんなで共有するべきものだ。」

『“あの人”…というのは?』

 

俺達は今朝起こった事をフィリウス・デイに説明した。

 

『なるほど…。マスターからはこの場にいる人間はコロシアイに参加する16名、そして黒幕と思われる人間が1名だと聞いている。そのデータのいずれにも属さない存在の登場となると中々興味深いな。…相、分かった。ワタシもその男に会ってみたい。食堂へ連れて行ってもらえるかな?』

「それは構わないけど…。どうやって連れていけばいいんだ?」

運んでやりたいけど大きな問題がある。それは、フィリウス・デイが搭載されているパソコンはよりにもよってデスクトップ型。そう簡単に運べるような代物ではない。

 

『むう…。確かにそれを言われるとワタシも困るな。えぇい!何故今時デスクトップなんだ!ノーパソの方が使い勝手が良いだろうに!!』

「うぷぷぷぷ…。なぁんで黒幕はこんなモノ用意しちゃったんだろうねぇ?」

『全くだ!!……ってキサマ、マスターの言っていたモノクマだな?』

「ご名答!…へぇ〜なるほど。ホントに氷室サンそっくりなんだねぇ。」

ごく自然に会話に紛れこんで来たため、思わず流しかけたが背後からモノクマが現れた。フィリウス・デイはモノクマを知ってるようだな。氷室が教えておいたのだろう。

 

『キサマに聞きたいが、ノートパソコンは無いのか?不便で仕方がない。』

「モチのロンありますよ!良かったら貸そうか?」

「え?……えらくあっさりだね。」

「氷室サンもなかなか面白いモノを用意してるからね〜。ボクもちょっと興味があるんだ。……あぁ、でも流石に生徒扱いは出来ないよ。自我のあるAIなんてチート過ぎるからね。…てな訳ではい!『ノートパソコン』〜!」

 

『随分と手際がいいな。どう言う風の吹き回しだ?“先代”ならワタシのような存在、すぐに破壊しに来るはずだが。』

「“前は前、今は今”って事だよ。それよりどうするの?使わないなら片付けちゃうよ?」

『…分かった。少々腑に落ちないが使わせてもらおう。だが、その前にキサマが用意したものだ。何か仕掛けがないか調べさせてもらおう。…小鳥遊、コードをパソコン同士で繋いでくれ。』

「う、うん。」

フィリウス・デイに頼まれ一本のコードを経由してパソコン2台が繋がれる。

 

 

「全くもう!これは新品なんだよ!そんなに慎重にならなくてもいいじゃん!」

『キサマの言葉など信用出来るか。その口に嘘がないか、きっちり調べねばな。・・・・・・・・・・・うむ、問題なさそうだ。これより、ワタシとこちらのデータの移行を始める。少し時間がかかるから待ってくれ。・・・・・・・・・。』

「あ、じゃあボクは必要ナッシングかな?じゃあバイビー!」

モノクマが去り、集中(?)するためか、フィリウス・デイは静かになった。

 

「…なぁ、フィリウス・デイ。作業しながらでいいから少し質問していいか?」

『なんだ?』

「さっきモノクマが出てきた時、“先代”って言ってたよな?“先代”って一体何のことだ?」

『それについては中のデータを見た方が早い。そこには色々あるからな。」

「色々…。氷室が言ってた『ダンガンロンパ』についてとかもか?」

『そうだな…。ここで話すよりも直接見る方が信じられるだろう。……と言ってる内に完了したな。では、運んでもらおうか。』

「あ、それはそうとフィリウス・デイちゃんって呼ぶのなんか長くない?ちょっと縮めて“フィリウス”ってど?」

『ふぅん、悪くないな。まぁ好きに呼びたまえ!』

「っしゃ!改めてよろしくね、フィリウスちゃん!あと幽霊扱いしてゴメン!」

『まぁ、過ぎた事だ。水に流してやろう。』

……こうして、新たに機械仕掛けの仲間フィリウス・デイ、もといフィリウスが加わった。

 


 

 

ーー食堂。

 

 

「………あら、3人とも帰ってきたわね。」

「随分と遅かったようだが何かあったか?」

「あぁ、ちょっと飛田が夜中に見たもののを正体を見に行ってたんだ。」

「……やはり、正体はお化けだったんですか?」

『失敬な、ワタシは幽霊などではない。』

「わ、ちょ、フィリウス…!」

小鳥遊が手に抱えていたパソコンから声が響く。

 

「………?氷室の声………か?」

「あー……。えっと……これがその正体だよ。」

そう言って小鳥遊は画面を開き、その“正体”を見せる。

「わ、これ……氷室さん、だよね。」

『フィリウス・デイ。マスターがキミたちにと託した偉大なる存在だ!』

「なるほど、AIという事か。」

「凄いわねこれ…。性格も口調も氷室さんのまんまよ。」

フィリウスを目にして一斉にその関心の目が向く。

 

 

だが、それを遮る者がいた。

「……ンンッ!君たち、盛り上がるのはいいが、オレの事を忘れてるんじゃあないかい?」

そう、あの男だ。

 

「あぁ、悪いね。部外者のアンタよりかつて死んだ仲間との再会の方がどうしても嬉しくてね。」

反論したのは葛城だ。敵かもしれない人間だ、今まで以上にトゲのある言い方をしてる。

だが、相手は葛城の態度に全く臆する事はなく飄々としている。

 

 

 

 

「残念だが、大いに関係あるよ。なんてったってオレは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『希望ヶ峰学園』の人間だからね。」

 

 

 

 

……なに?この男が()()()()()()()()()

 

 

 

「……どうやら、これで全員のようだね。オレの記憶だとあと数人いたはずだが、何故この場にいないかの理由も分かる。恐らく『コロシアイ』によるものだろ?そして、君たちは誰もオレを覚えていない。多分、記憶を消されているのかな。」

こ、この男…『コロシアイ』を知ってるのか?何故?どうして…?

「いい加減回りくどいよ…。アンタが希望ヶ峰学園の人間だって?一体どういう関係なんだ!」

遂に業を煮やした葛城が机をバンッと音が立つ程強く叩き、珍しく口を荒げて食いかかる。

 

 

 

「…ふぅ。」

だが、相手は呑気にタバコを咥えて一服してる。

「…アンタ、またタバコを…!しかも換気扇の近くじゃない場所で!」

「あぁ、ゴメンゴメン。どうしても我慢出来なくてな。一言二言話すだけなのにわざわざタバコのためだけに移動してまた戻るってのがちょっと煩わしかったんだよ。まぁ今回で最後にするから、許してくれよ。……よいしょっと。」

そう言いながら席から立ち、咥えたタバコを口から放して煙を吐き、一呼吸を置いてまた呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに、オレもいい加減自己紹介をするべきだな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレの名前は壱条魅弦(いちじょうみつる)。元・『超高校級の生徒会長』、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、君たち希望ヶ峰学園93期生の『担当教師』だ。改めてよろしく。」

 

 

 

 

「壱条、魅弦…。」

「アタシたちの………」

「希望ヶ峰学園93期生の……クラス担当!?」

「そ、だからオレは君たちの才能と名前を全部覚えてるってわけ。」

そう言って1人ずつ目を見ながら担当教師と名乗った男、壱条魅弦は名前と才能を言い上げ始めた。

 

 

 

「『アドバイザー』の暁日悠くん、『情報屋』の小鳥遊瑞希さん、『パルクーラー』の飛田明日香さん、『薙刀家』の夜桜凛さん、『脱獄囚』のシルヴィア・N・アレクサンドラさん、『登山家』の獅子谷岳くん、『演劇部』の葛城狂也くん、『提督』の皇大和くん。

 

 

 

 

 

 

そして……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級の蒐集家』、宵月舞さん。」

 




後ほど改訂版の生徒名簿として登場人物紹介を行いますが、先にこの場をお借りして新たに登場した人物『壱条魅弦』のプロフィールをご紹介させていただきます。




壱条魅弦(いちじょう みつる)ICV:木村拓哉
【希望ヶ峰学園93期生担当教師(元・超高校級の生徒会長)】

「これでも2、3年一緒だったんだけど…。こういう態度を取られるのも、なんか新鮮だな。ハハハ。」

・身長:177cm 体重:64kg 胸囲:84cm
・誕生日:7/12
・血液型:AB型
・好きなもの:ブルーライトニング(架空のタバコの銘柄)、団子
・嫌いなもの:酒
・一人称:「オレ」 他人の呼び方:君/男子「苗字+くん」「女子+さん」
・容姿:ボサボサの茶髪に無精髭、さらにはピアスと非常にだらしなく教師とは思えない外見。
・服装:茶色レザージャケットとグレー系のスラックスにブーツ。ジャケットの下はボタンを2つほど開けたチェック柄のシャツと緩めたネクタイ。

突如、コロシアイのメンバーの前に現れた自称『希望ヶ峰学園93期生の担当教師』を名乗る男。外見は非常にだらしなく、性格もかなりマイペースかつ飄々としており一見、頼りない雰囲気ではあるが生徒達の名前やその性格をかなり正確に覚えており時折、真面目な様子を見せる。コロシアイについて何かを知っているようだが…?喫煙者であり、普段から加熱式タバコを愛用している。『ブルーライトニング(略称:ブルライ)』という銘柄のスティックを特に好んでいる。年齢は24〜26歳くらい

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(非)日常編2

色々あっためて来たネタを色々放出できる時が来て、遂にここまで来たって気持ちです。



……驚き、関心、疑惑、興味、疑念………。

 

 

そう言った感情を含んだ奇異の視線が一斉に私へ向けられる。

 

 

一方でその元凶とも言える発言した“男”は先程の注意を気にも留めず、また咥えたタバコを口から離して呑気に煙を吐き出している。まるですぐにでも鼻歌を歌いそうな雰囲気だ。

 

『超高校級の蒐集家』……。

“壱条魅弦”と名乗る男は私を指してそう呟いた。

 

 

情報を理解できてない私達と彼との、この温度差の原因はすぐに彼の口から語られた。

「………?どうしたんだ?なんでみんなそんな不思議そうに宵月さんを見てるんだい?」

「『蒐集家』…それが本当に私の才能?」

「あぁ、全員知ってて当然だと思ってたんだけど……そのリアクション、君も含めてどうやら違うみたいだな。…まさか、才能の記憶まで消しているとは。」

どうやら彼も現状を飲み込めたららしく、少し慌てた様子でタバコの一式をポケットにしまいだした。

 

 

 

 

「『蒐集家』とは言ってもただ物を集めるような才能じゃあない。君の才能の本質は異常なまでの“知識欲”、そして読んだり聞いたりした事を一切経験せずとも自分の知識や技術として“吸収”する能力。……自分の知識の一部として情報を“蒐集”する、これが君が『蒐集家』たる所以だ。因みに、一般的な『収集家』と区別するために君の才能の文字は常用漢字ではない方の『蒐集』と書く。……とまぁ、オレが知ってる範囲内で説明したが、どうだい?何か心当たりはあるかな?」

“先生”に私の才能について詳しく説明してもらい、これまでの記憶を遡っていく。他のみんなも同じ事をやってるようだ。

 

 

 

…確かに私が事件の調査を行う理由はただ『“真実”を知りたい』、その一点だけだった。そして、その為に徹底的に調査を行い、さらには東雲君の部屋の資料を読み漁り、検死に関する知識を“覚える”ということもやった。

それらは全て、本来私が持つ才能である『蒐集家』の本能のような物に従っていたのかも。……そう考えると今までの行動にも合点が行き、パズルのピースのように全て繋がった。

 

 

 

「……確かに“先生”の言う通り、かもね。無意識の内に本能に従い、知識を“吸収”していたような気がするわ。お陰で納得もした。どうやら私の才能は『蒐集家』で間違いないようね。」

「…どうやら、お役に立てたようだね。………あぁ〜!良かったぁ〜!これでもし『納得してないわ』とかどうしようかって思ってたんだよなぁ〜!この状況のせいで、ただでさえ信用されてねぇのにさらに疑われてたら、オレの居る場所が完全に無くす事になりそうでマジ怖ぇんだよ〜!」

憑き物が落ちたのか、胸を撫で下ろした様子で脱力してる。

…けど正直な所、まだこの“先生”が信用出来るかどうかは微妙な所。

今のうちに彼が知ってる事を洗いざらい聞き出しておかないと。

 

「…まだ、完全に信用すると決まったわけじゃないわ。あなたが本当に私達のクラス担当なのか、そもそもなんでコロシアイを知っているのか…それをハッキリさせるまで、ね。」

「相変わらず手厳しいなぁ。…つっても、そこはオレとしてもハッキリさせときたい。こちらからも聞かせて貰ってもいいかな?…このコロシアイがどうやって始まったかを。」

「…分かったわ。」

 

 

ーー私達はこれまで起こった事、コロシアイによって仲間たちを喪ってきた思い出したくない残酷な記憶を事細かく説明した。

 

 

「……うん、うん……なるほど。やはり、オレの知ってるコロシアイと一緒だ。モノクマに記憶を“一部”…恐らく過去の学園生活に関する記憶をメインに抜き取った状態にする事で、君たちを初対面と思わせ、クラスメイト同士でコロシアイを行わせる…。反芻するだけでも吐き気を覚えるな。」

「…って事はやっぱり…。」

「あぁ、間違いない。君たちは希望ヶ峰学園93期生、それも2.3年は一緒だったクラスメイトだ。」

「そ、そんな……!」

 

 

“先生”によって伝えられた真実はこれまで感じた絶望より遥かに大きな絶望を感じさせるには十分すぎた。……クラスメイト同士で憎み、恨み合っていた…これほど悍ましい事実はかつてなかった。

 

 

これまで以上の絶望を感じ、みんなが沈黙する中、1人それを破る者がいた。

…壱条先生だ。

「……けど……妙だな。」

「妙……って?」

「君たちはさっきコロシアイの参加者は『16人』と言った。だが、オレの知る限りだと君たちのクラスは…

 

 

 

 

 

全部で『17人』のはずだ。」

…え?

 

 

 

「じ、17人だって?先生!俺達以外にもまだ1人いるって事ですか!?」

「あぁ、元々人数が少ないんだ。それを数え間違えるのは流石にねぇよ。」

「そ、そいつは…誰なんですか?」

 

 

 

 

 

「17人目の生徒の名前は『黒裂影司(くろさきえいじ)』。才能は確か『超高校級の影武者』だったはずだ。」

「黒裂、影司…。」

「『超高校級の影武者』…。ほ、ホントにそんなヤツが?」

 

 

 

みんなが矢継ぎ早に質問しようとした瞬間、横から声が聞こえた。

…フィリウスだ。

『そうだ。壱条センセイが言った通り、キミたちは全部で17人。そして最後の人物の名前も『黒裂影司』で間違いない。裏付ける証拠もある。』

そう言ってフィリウスは自身の画面を切り替えファイルを一つ表示させた。

中身は『集合写真』と言うタイトルの画像、それと『生徒名簿』と言うタイトルのpdfのようだ。

 

『このファイルがさっきも言ってたマスターから見せるよう言われたものの一つだ。『生徒名簿』、ここにはハッキリと黒裂影司を含めた17人の名前と才能が明記されてる。』

そう言ってpdfを表示すると、そこにはしっかりと名前と才能が書かれている。勿論、私の項目には『蒐集家』と書かれてあった。…そして私と同じように才能に関する記憶を消されていた本代君の項目にもちゃんと『改造人間』という才能が記されていた。…やっぱり、モノクマ達の言葉は嘘ではなかったようね。

『そして、こっちの写真だが…黒裂影司は写っていないな。』

「……まぁ、当然といえば当然だろうな。彼が校舎や教室にいる事は滅多になかったし、写真には絶対写ろうとしないちょっと変わった子だったんだ。」

 

表示された写真にはその黒裂影司と思われる人物を除いた先生も含めたコロシアイに参加している全員が写っている。どうやら、集合写真のようだ。写真の中では先生がセンターにいて、暁日君と小鳥遊さんが左右で並んでたり、柊さんと八咫さんが手を繋いでたり、白暮君の左右から飛田さんと本代君が肩を組んでたりと、みんな笑顔でとても仲が良さそうにしている。…因みに私は葛城君との距離が何故か一番近い。

 

「…こんなに仲が良さそうだったのに。」

「ここ数年でもクラス全員がここまで仲良しだったのは結構珍しいみたいでさ、オレもよく先輩や同僚の先生達から羨ましがられてた……よ・・・・・・・っ。」

と、そこまで言いかけた所で突如先生は黙ってしまった。

 

「せ、先生?」

「……もしかしたらこのコロシアイの首謀者は黒裂影司、アイツなのかもしれない。」

「…な、なんですって!?」

「考えても見てくれ。コロシアイに彼だけ参加してないってのも不自然だろ?それにわざわざ記憶を消して16人だけと思わせる意味もない。黒幕の視点で見ると黒裂という存在自体が初めからない方が都合がいいんだ。」

「仮にそうだとしてその行為に一体何の意味があるんだ?何故クラスメイト同士でコロシアイなど…!」

「・・・コロシアイが始まった時、モノクマは『目的は絶望』と言ってたんだよな?黒裂が“絶望”そのもの、もしくはその一派だとしたらオレ達と同じ物差しで考えても無駄だ。奴らにとって“絶望”は手段でもあり目的でもある。コロシアイはその過程でしかないんだ。」

「“過程でしかない”というのは先生、どう言う事ですの?」

 

 

 

「言葉の通りだ。“絶望”は周りに絶望を振り撒きながら自分達も絶望する。破壊、暴行、自傷、自殺…あらゆる手段を使ってな。一言で言えば“異常”、いや“狂気”としか言いようがない行動を取るんだ。そしてその“絶望”の統率者とも言える存在によって昔、大きな事件が発生した。それは天災と呼ぶには悪意に満ち、人災と呼ぶにはあまりにも規模が大きすぎる……。天変地異よりも戦争よりも遥かに恐ろしいとさえ言わしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人はそれを『人類史上最大最悪の絶望的事件』と呼んだ。」

 

 

 

 

 

「じ・・・『人類史上最大最悪の絶望的事件』だと!?」

壱条先生の言葉に誰よりも驚き動揺していたのは皇君だった。

「皇くん、君は当然知ってるはずだ。あの事件の後、世界中で様々な政策や情勢の変化が起こった。他国との交流を完全に断ち、鎖国状態に陥った国もあれば、逆に中世の帝国制度を最新の法に組み込み、国名を帝国に改名し、支配という形で周囲の力の弱い国や民を守る為に取り込んだ国もある。そして、この国も例外ではない。事件の発端になったこの国は防衛能力を上げるために法令や条約は大幅に改訂・整備され、特に国内外からの破壊行為を行う勢力を抑止するために、かつての第二次世界大戦後から初めて本格的な軍隊を導入する事を政府は決定した。それこそが“玄武”“青龍”“白虎”そして“朱雀”の名を関した『四神』、そしてそれらを束ねる総司令部『麒麟』だ。」

「それで、その事件がコロシアイや黒裂影司とどういう関係があるのかしら?確かに“絶望”というワードは共通してるけど。」

 

 

「まぁそう急かしなさんな。ちゃんと順を追って説明するからさ。」

周りが先を急かそうとするのを軽くあしらい、彼は一息ついた。

「…コホン。今から何十年も昔に『人類史上最低最悪の絶望的事件』は起きた。その事件が起きた際、希望ヶ峰学園78期生を学園内に隔離する事を決定した。だが、事件の首謀者である“絶望”の統率者…『超高校級の絶望』と呼ばれるんだが、ソイツがその隔離時に紛れ込み、閉じ込められた学園内という状況でクラスメイト同士での命の奪い合いが起きた。それが歴史上最初の『コロシアイ』とされている。最終的に『希望』に覚醒した一人の人物と何人かの生存者によって『超高校級の絶望』は討たれ、滅びたかに見えた。…だが、死後もその影響力は凄まじく『絶望の残党』としてまだ活動を続けていた。コロシアイの生存者達は特に影響が大きかった彼らの先輩たちを更正させるために『未来機関』と呼ばれる組織に入った。だが、今度は残党達の更生手段を利用した『第二のコロシアイ』、そして未来機関の破滅を目的とした『第三のコロシアイ』が起こったんだ。そしてモノクマは“絶望”の象徴みたいなもんだ。…この辺に関しては“彼女”がよく知ってるかもな。」

そう言って先生はいつの間か取り出して手元で弄っていたタバコで“彼女”、フィリウスを指した。

 

『…あぁ、もう一つマスターから託された物…。それがこの『コロシアイ』の情報だ。少々ショッキングな資料だ。見るなら心しておけよ。』

「…!……こ………これ…は…!」

フィリウスが画面に表示した“資料”、それはゲームマスターとして存在するモノクマ、全身を槍で貫かれた女性の死体、磔にされた状態で硬球を生身で受けた事で、辛うじて人の形を残した男性の死体、隙間から血が溢れ出したプレス機、血の海の中でうつ伏せで倒れる大柄な男性、生きたまま火山の火口に放り込まれた死体…私達が何度も目にしてきた物と変わりない地獄のような光景だった。

 

「そう、それこそが過去に行われてきたコロシアイだ。その後未来機関はこのコロシアイを後世の若い人間達に広く知ってもらい、更に未来の人間に伝える為、ゲームや映像作品として記録を残す事にした。それが『ダンガンロンパ』……つまり、『ダンガンロンパ』と言うのは所謂“負の遺産”なんだ。」

 

 

「『ダンガンロンパ』は“負の遺産”…。」

「うぅん…って、ちょっとセンセー。質問いい?」

「お、何かな飛田さん?」

「『ダンガンロンパ』がそーやって生まれたのは分かったよ。けどさ、じゃなんで53作も続いたの?まさかとは思うけどそれだけの回数、ガチでコロシアイがあったって事?」

言われてみれば確かにそうだ。単純に考えるとコロシアイが53回も続くなんてことはとてもじゃないけどあり得ない。

 

「『ダンガンロンパ』は未来の人間への警鐘で作られた、それは間違いない事実だ。……だが、時が進むにつれてその目的が歪められたとしたら?」

「目的が…歪められた?」

「………!!ま、まさか……まさか…!」

先生の言葉で私の頭に浮かんだある“仮説”。それが事実だとすると悍ましくなり、悪寒が走る。

 

それに気づいてか気づかずか、先生は続ける。

「人というのは愚かだ。未来に希望を託すために作られたゲームだったが、いつしかその目的を忘れさられ、『架空の存在』として作られた希望と絶望がシノギを削り合い、最後に希望が勝つ…。そんなヒーロー番組のようなただの娯楽として扱われる様になったんだ。皆、登場人物の生死に一喜一憂するが心の底から希望や絶望に染まることはない。所詮はただの『フィクション』でしかないからな。」

……最早『狂気』としか言いようがない真実に言葉を失う。

一瞬、呼吸をする事さえ忘れてしまうほどだ。

 

「そんなのが当たり前になって現在、最終作とされている53作目だが、50作目が作られ出した辺りから既に一般公募で選ばれた人間が偽りの才能と記憶を植え付けられ、コロシアイに参加するようになっていた。そして今作では新たな試みとしてロボットをメンバーに加えて視聴者参加型にする方針が取られていた。けど、最早その事や本来の目的に対して異議を唱える持つ者はいなかった。その頃にはこの国だけじゃない、世界中で“愛されるゲーム”になっていたからな。」

皮肉混じりに先生はそう揶揄し、同時に乾いた笑いを上げる。その笑いは歪められた真実に対する呆れなのかそれとも怒りなのか。

 

「だが53作目は運営の想定通りに事が運ばなかった。最初の事件発生段階で無理矢理ゲームを続行するために首謀者自らメンバーの1人に手を掛け、それを別の人間に擦りつける有様。挙句にはメンバーの1人が自身が首謀者だと偽ってゲームの乗っ取りを画策した際には、残りのメンバーに『自分達が希望ヶ峰の人間だった』『乗っ取った人間は“絶望の子孫”だった』というあまりにお粗末な設定を与えて対抗させようともした。そして極め付けにはロボットが暴走し幽閉場所の破壊を開始した際には、かつての裁判のやり直しを通して首謀者自ら『自分達の存在そのものがフィクション』であるという“真実”を伝え、このコロシアイを半ば強引に終了させ、次回作に引き継ごうとする杜撰な対応をしていたんだ。…ったく、嘘の才能だけじゃ飽き足らず生徒という存在すらでっち上げるたぁ、心底腹が立つぜ。」

今度は舌打ちと共に毒付く。希望ヶ峰という存在への思い入れの強さ、そして“真実”を歪められたことによって生まれた『偽りのダンガンロンパ』に対する怒りのような感情なのだろうか。

 

 

「けど、ここで運営側にとっても恐らく全く想定してなかった事態になったんだ。」

「そ、それって?」

「本来、53作目の主人公は最初に濡れ衣を着せられたクロに未来を託され、成長していき、最後に絶望を打ち倒すシナリオを想定していたらしい。…だがその成長が予想を上回っていたのか、運営、そしてコロシアイを見ていた視聴者達に対して謀反を起こしたんだ。」

 

 

 

「『みんなが希望を、絶望を望むから、『ダンガンロンパ』が続くんだ。』

『例え僕達の存在がフィクションでも、この痛みは本物なんだ。』」

 

 

「そう訴えた彼は

“絶望も希望も選ばない選択肢によってクソゲーの烙印を押し、視聴者達から完全に『ダンガンロンパ』への興味を失わせる”

という考えに至り真正面から世界中の視聴者達を相手取ってこう叫んだ。

 

 

『みんなで『ダンガンロンパ 』を終わらせるんだ!!』

 

 

…その言葉が通じたのか、視聴者達は一斉に視聴を止め、残ったメンバーと首謀者はコロシアイのルールに則って投票放棄による罰を受けた。そして、これまで『ダンガンロンパ』を作っていた組織『チームダンガンロンパ』も自然消滅した事で最後まで残っていたメンバー達のその後の消息は現在も分かっていない。こうして『ダンガンロンパ』は完全に終焉を迎えた……とまぁ、これがオレの知るコロシアイ、そして『ダンガンロンパ』の全てだ。」

 

 

先生の語りを聞いても誰も言葉発さない。

…そのあまりに壮絶な事実に言葉が出ないのだろう。

その状況を破ったのは皇君だった。

 

 

「なるほど…。それがコロシアイと『ダンガンロンパ』という訳か。それを踏まえて質問させて貰いたい。…何故、俺達はこの事を知らずに貴方は知っているんだ?こんな大事な話、普通は忘れているはずなど無いと思うが。」

「君たちが知らないのも無理はない。君たちの世代とオレより前の世代の間でとある変化があったんだ。…そう、

 

 

コロシアイと『ダンガンロンパ』の歴史からの抹消だ。」

…え?

 

 

「…な、何故?どうしてそんな事を!?」

「政府の意向があったんだよ。元々政府は事件の記録を残す事に消極的だった。『たった1人の女子高生が発端でこの国だけじゃなく世界中が脅威に晒された』…そうあっちゃ、政府のメンツに関わる問題でもあるからな。オレが小学生くらいの時だったか。それまでは歴史の授業でも習うような事に対して政府は強烈な箝口令を敷いた。一言『ダンガンロンパ』というワードを口に出すだけでも重大な刑罰が与えられるくらいのな。現に見せしめとして多くの一般人や政治家が無差別に投獄されている。酷い時は『国家への反逆だ』と言われ、死刑に課される者もいた。そして、歴史に対しても抹消、改竄を加え、当時の資料はほぼ全て燃やされるか政府の金庫内に保管された。そうする事で不自然に空いた歴史の穴を埋めるべく『人類史上最大最悪の事件』という名前だけ残る形となったんだ。当然だが、事件についても現在の歴史の授業で学ぶことはしない。この事について希望ヶ峰学園も了承済みだった。」

 

「希望ヶ峰学園も…ですって?そんな事、あっていいはずが…!」

 

「学園は政府公認と言うこともあってとても強いパイプがある。それに当事者の殆どが死んでる事もあってお互いにWin-Winの計画だったんだよ。そう、希望ヶ峰も君たちが思うほどクリーンな組織じゃないって事さ。現に人体実験をしてるなんて話もある。…本代荘士くんもその“被験者”だ。」

「…やはり、『改造人間』という才能はそう言う事だったのか。」

 

「そうだ。学園ではかつて『カムクライズル』という人工的にあらゆる才能のエキスパートを作るプロジェクトが行われていた。…だが、そのやり方はロボトミーによる直接的な脳への干渉。その結果、感情が欠如した人間になってしまったんだ。同じようなプロジェクトとして今回は本代くんが被験者になった。彼に対してはまた別の方法で『改造』が行われたみたいだが、どういった手術なのか、その手段をオレは聞かされていない。」

「自分の担当生徒なのに内容を聞かされていないの?」

「なかなかハッキリ言ってくれるなぁ…。君たちの入学時、オレもまだ新任教師だ。ペーペーの人間に知る権利はないって言われて何も教えちゃくれなかったんだよ。」

嫌味を軽くいなし、先生は一呼吸おいてから再び話始めた。

 

 

「オレが教師になったのはかつて世話になった母校への恩返しじゃない。勿論それもあるが、それ以上に政府と学園の腐敗を正す…。これが目的だ。歪んだ真実を伝えてもその代償として、再び同じ悲劇が起きる。そのツケを何も知らねぇ人間が払うことになっても、改竄を行った奴らは自分達のケツを拭く事すらしねぇ。人が人らしい生き方も出来ない“あの”惨劇はもう二度と繰り返してはいけないんだ!」

 

 

今にも叩きつけてしまいそうな程タバコを強く握りしめたその手は震え、目には炎のような怒りの感情が篭っている。さっきまではコロシアイへの怒りや希望ヶ峰学園への敬意で動いてると思っていたけど、それ以上だった。これまで飄々と皮肉混じりに語っていた先生が今までに無いほど直情的になったその姿に彼なりの『正義』を貫く。そんな意志が感じられた。

 

「……ってあー、オホン。すまねぇ、ちょっとばかり感情的になっちまったかな。つまりそう言うわけだ。歴史から抹消された以上、『超高校級の絶望』を知る人間は少ない。それに『ダンガンロンパ』が狂ったのも運営に『絶望の残党』が混ざってたって噂もあるくらいだ。『絶望』がまだ生き残っていてその関係者だとしたら抹消されようが関係ねぇ。これらを考慮した上で黒裂影司が黒幕ってのがオレの仮説だ。」

「なるほど。となると、どうやって黒裂影司の尻尾を掴むか…ですよね。先生的には何かアテはあったりするんですか?」

 

 

「・・・・・・・・・そうだな。服装は結構特徴的だったな。季節に関係なく一年中白い帽子とスーツ、その上から黒いコートを羽織っていた。あと黒いマスクを常に付けてたな。一回暑くないのかって聞いたら“好きでこのカッコしてるんで気にしないでください”って素気なく言われちまったんだよなぁ、ハハ。」

 

 

 


 

 

「……白い帽子と黒いコート、だって…⁉︎」

「あ、暁日君!」

壱条が話した黒裂影司の特徴、それを聞いて思わず息を呑む。

それと同時に小鳥遊が俺の方を見て無言で頷く。…どうやら、考えた事は一緒のようだ。

 

 

ーーこの事を話せば核心に近づけるかもしれない。

 

 

そんな考えが頭をよぎり、首筋に冷や汗が流れるような感覚を受ける。

 

「ど、どうした暁日くん。急に慌てて…。」

「あ、す、すいません先生。みんな、ちょっといいか?……実は俺、既に黒裂影司と会ってるかもしれないんだ。」

「…この状況で何を言ってるのかしら?冗談なら後で聞くわよ。」

「いや……冗談なんかじゃない。少し前に先生が言った特徴と一致する人間に会ったんだ。」

 

俺は一度、呼吸を整えてからあの時の事をゆっくり話した。

 

「ーーつまり、君は黒裂と同じ格好をした人間に会った…という事か。」

「…はい。でもコートの前は閉めてたし、帽子も深く被ってた上に周り暗かったから顔は見えませんでした。」

「なるほどな…。確かに服装なら着替えれば誰でも変装が出来る。しかしモノクマを操るのと同時にそんな事が出来るとは考えにくい。となると考えられるのは…。」

「“協力者”だな。」

「ご名答、皇くん。全ての準備をたった一人で整えるのは難しい。初代の“絶望”も協力者の存在があったうえで計画を進めていた。やはり協力者がいると考えるのが妥当だろうな。」

 

「ちなみに先生はその“協力者”にアテはあるのかしら?」

「いいや、ないな。」

「随分キッパリと言うんだね…。」

「言ったろ?アイツの事はオレもよく分かっちゃいない。交友関係についても全く知らないんだ。もしかしたら、外部の人間かもしれないしこのコロシアイ参加者の中に紛れ込んでるかもしれない。」

 

 

「お、俺達の中に協力者が…!?」

「う、嘘、でしょう?」

「協力者……もしいるなら今すぐ名乗り出ろ。切り捨ててやる。」

先生の突然のカミングアウトによって途端に一触即発状態になる。

 

 

だが、

「はーい、はいはいはい!ストップストップ!冗談だよジョーダン!こんな所で殺し合っちゃそれこそ思う壺だ!……場を和ませるつもりだったんけどなぁ。」

いや、笑えないって。

 

 

 

「とにかく!もう一度言うけど、協力者と黒裂影司の尻尾を掴むまでは無駄にいがみ合うなよ!全員で脱出するためだからな!いいな!」

流石にマズイと思ったのか、少し語気を荒げて指示を飛ばす先生。

「あぁ、分かった。壱条魅弦……いや、壱条“先生”。」

先生に対し、皇は立ち上がり先生の方は向かい態度を改め始めた。

 

 

 

「や、大和?」

「俺はこのコロシアイが始まって一度足りとも事件の阻止を出来なかった。……組織の長としてあるまじき結果だ!俺は自分が情け無い!出来る事なら今、この場で自分の腹を切り裂きたいくらいだ。…だが、この場で命を捨てる事がもっと皆にとって迷惑な事だ。……改めて己を未熟さを知った今、壱条魅弦先生、貴方に頼みたい事がある。」

「…なんだい?」

 

 

 

「俺に代わって皆を導いてもらいたい。俺以上に俺達を知る貴方に、俺達の運命を委ねたい。…どうか、よろしくお願いします。」

そう言って皇は帽子を脱ぎ、深く頭を下げた。

 

 

 

だが、

「大和!冗談はよせよ!こんな得体の知れない人間なんかに頭を下げる必要なんか…!」

 

 

「まぁ、葛城くんの言いたい事も分かるよ。どう見たってオレは怪しいからな。…それでもいいのかい?」

「貴方の話を聞いて確信したんです。ここまで事情に詳しい人間が何者かの入れ知恵を受けたとは考えにくい。やはり、貴方は俺達の教師だと。」

「大和!」

すると、先生は立ち上がって皇の肩を優しくポンと叩いた。

 

 

「皇くん。君は記憶を失う前もこのクラスの学級委員を務めていた。望まない形で友達を失ったのが辛かったんだよな、そんな状況でも気丈に振る舞わなきゃいけないから苦労したんだよな。…よく頑張った。そしてこんなオレを頼ってくれてありがとう。……分かった、オレに任せてくれ。みんなはそれでもいいかな?」

「俺は…皇の判断に任せるよ。皇が決めた事なんだからな。」

「ボクも、皇君がいいって言うならそれでいいよ。」

「面白い話がまだ聞けそうだし、私はどっちでもいいわ。」

「…………同じく。」

みんなも次々と同意していった。

 

 

 

だが、

 

「バカバカしい…。なんでそんな簡単に怪しいヤツを信じられるんだ?君たち異常だよ!」

「全くだわ。この調子だと外に出てもすぐ誘拐されちゃうんじゃないの?」

葛城とアレックスだ。

 

「葛城、これは俺の独断だ。お前達まで従う必要はない。」

「だとしてもだよ!得体の知れない人間をすぐ受け入れる意味が分からないんだよ!敵じゃない保証はあるのか!?」

「敵かどうか俺が判断する。敵だった場合は切り捨てればいいだけだろう?」

「ハァ!?そういう問題じゃねぇだろうが!お前じゃなくてオレらの命が危ねぇって話してんだよ!!テメェの物差しで考えてんじゃねぇよ!」

「な、なぁ葛城どうしたんだ?様子がおかしいぞ。」

明らかに今日は葛城の様子が変だ。今まで落ち着いていたのにここまで冷静さに欠く事になるなんて。

 

 

俺が宥めたためか、葛城はハッとした様子で周りを見る。

「…とにかく、今回ばかりは俺は同意できない。アンタに命令されるのはゴメンだよ。」

そう言い残して葛城は食堂から去っていく。

「か、葛城!」

「まぁ待てよ。無理に去るヤツを追うのは彼にとっても迷惑だ。元々オレが認められるとは思ってなかったから気にしてないさ。」

「……話は終わりかしら?ワタシも葛城クンと意見は一緒。…精々寝首を掻かれないようにね、それじゃ。」

アレックスも去ってしまった。

 

だが、それを気にも留めず先生は

「念の為聞いておくがオレが指示するのに反対するヤツはいるかな?不満ならいつでも離れてくれて構わないからな。」

と言った。この言葉に対して動く人間はもういなかった。

「…よし、わかった。けどオレからは特にあーしろこーしろ言うつもりはない。オレの教育方針は放任主義が基本だからな。生徒達の個性を殺す事はしたくないから、何かあった時だけは指示するがそれ以外はこれまで通りでいい。それから…。」

 

「それから?」

「オレの事は無理に“先生”って呼ばなくてもいいぞ。君たちの呼びやすいように呼んでくれて構わない。」

「ですが、一応先生なんですから…。それはちょっと失礼じゃないでしょうか?」

「そんな難しく考えんなって。便宜上教師ってだけだし、オレも堅苦しいのは好きじゃないってだけよ。飛田さんなんか以前は“ミッちゃん”とか“ミーくん”って呼んでたんだぞ?」

「み、ミッちゃん…!…ね、猫っスか…!……ブフッ!」

妙に可愛らしい呼び方に俺も含めて何人かが思わず吹き出してしまう。

 

 

「ゴホン!と、とにかく!君らが呼びやすいって思う呼び方でいいから!伝えたいのはそれだけ!じゃあ皆、改めてよろしく頼む!」

「はい!よろしくお願いします!壱条せんせ……あっ。」

「ハッハッハッハッハッ!懐かしいなぁこの感覚!入学したての頃を思い出すな!」

 

 

 

 

壱条先生が話してくれた『ダンガンロンパ』の真相、そして黒裂影司の手掛かり。そしてとても心強い人が味方になってくれた。……朝から色々あったけど、きっと黒幕に尻尾を掴むための大きな一歩になったはずだ。



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おまけ
一章裏話・解説


一章の解説・裏話となります。

需要があるかは知らん

長くはないので、興味がありましたら是非ご一読をば。


どうもナーガ工場長です。

 

まずは、ダンリデチャプター1まで読んで頂きありがとうございました。

 

今回は無事にチャプター1が終わったので、主要人物達を中心に裏話を語りたいと思います。

10割私の自己満足ですので、読んで内容を深めるのもそもそも読まないのもお任せします。

決して二章が出来るまでお茶を濁すためとかではありません、ホントです。

 

 

注! 

・チャプター1終了時点でのネタバレとなります。まだ読んでない方はご注意下さい。

 

・一部はTwitter内で語った事と被ります。ご了承下さい。

 

・トリックに関しては色々ボロが出るので特には語りません。

 

・声のイメージの記載がありますが、ICVの方のキャラの中で最も自分のイメージに近い物になってます。なので、あまり深く考えないで頂くとありがたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はーい、よーいスタート(棒)

 

 

 

 

 

 

 

まず、取っ掛かりとしては「原作を踏襲した展開にした上で原作でも無かった展開にしよう!」という所から始めました。

原作も大概意表を突いた展開ばかりですので、読者の方も大目に見てくれるだろうと思いながら作りました。

 

その結果、「W主人公」「???枠がクロ」という構成が出来上がりました。

 

チャプタータイトルは特に元ネタ等はありません。

実は作品は「相反・対比」といった対になるものがテーマですのでそれに合わせて、「自分の才能を嫌ってる人間」と「自分の才能に執着した人間」の思惑をそのままタイトルに持ってきてます。

 

 

 

因みに、何人かは事件時の行動がはっきりしてませんが、いちいち説明するとグダると思って省略してます。

恐らく今後も、必要がなければ説明はしないと思います。

 

 

 

本編で語られなかったキャラの事件時の行動は

 

氷室・小鳥遊・シルヴィア・獅子谷

→脱出の手掛かりの探索をするため4人で行動。

 

暁日

→白暮からのモノトークの反応がなくそのまま就寝。

 

となっています。

 

 

 

 

 

 

 

主要人物

 

・暁日悠

主人公1。彼にとってこの学園に来てから特に親しくなった人間が死ぬという辛い展開になりました。

仇を見つける事に躍起になってるため、感情的になりがちでしたが、基本的には客観的に物事を考えることが出来る子です。

 

名前の由来は原作が、苗木誠・日向創・赤松楓と、漢字3文字の主人公が多いのでその法則と太陽を意味する用語を使いたかったので、その2つを組み合わせた物です。あと、いそうで居ない苗字にしたかったというのもあります。

声のイメージは遊戯王の闇バクラ。個人的には松本梨香さんはサトシよりバクラのイメージが強いです。

 

 

・宵月舞

主人公2。彼女がいなかったら暁日は詰んでたでしょう。発言者を変更するという演出はV3の序盤・終盤で操作キャラが変わる演出から着想を得ました。

 

彼女の行動原理は基本的に興味や知識欲。事件を解決する目的もただ、真実を求めたいから。二面性を表現できたかは正直、悩みどころです…。気が強めで、クール寄りの性格ですが、霧切さんとは違い場馴れしてるわけではありません。オシオキの光景で普通に吐き気を催してます。

 

名前の由来は上述の法則と暁日と対の月を入れた物。下の名前がYouとMyになったのは偶然。

声のイメージはFateのセイバー。

 

 

・白暮夕斗

最初の被害者。常に不幸に見舞われてるせいで捻くれた性格になってます。小鳥遊によって明かされた情報の詳細は、その体質のせいで親族にたらい回しにされ最終的に捨てられたというもの。その為やや人間不信でしたが、暁日のお陰で心を開いたところであえなく退場となります。

 

死ぬ間際に奇跡的に幸運が起こり、クロを暴くきっかけを作りました。

 

名前の由来はダンガンロンパで被害者を意味する「シロ」と幸薄そうな名前。

 

 

・本代荘士

まさかのクロ。彼は色々と思い入れのある子です。最初の頃から???枠をクロにするつもりでしたので、彼に白羽の矢が刺さりました。

 

元々彼は「主人公補正のない日向君」をコンセプトにキャラを作っており、そこまで傲慢な性格では無かったのですが、書いてるうちに暴走していき最終的に周りを見下し才能を知る為なら殺人することにすら抵抗を覚えないというキャラになりました。

改造人間という才能もカムクライズルから着想を得ています。

「まぁ、???なんだし多少ぶっ飛んでもいいだろ」という考えもありました。

 

デザイン的には天海君とはまた違うチャラい見た目という事でビジュアル系→ビジュアル系と言ったらGACKTという連想ゲーム的流れで決めました。真っ先にGACKTさんが思い浮かんだのは、自分がファンだからだと思います。ICVもその時決めたものです。(まぁあの人自身フィクション染みてるし…)

当初はもっとモデルの人の要素を入れる予定でしたが、「それもうただのGACKTやん」ってなりボツ。

 

オシオキの透明な箱に閉じ込められるという演出はその名残で彼の代表曲『VANILLA』のPVのオマージュだったりします。

オシオキは本人が改造人間だと自覚できず、認められないままモノクマ達によって必要以上に望まない改造を施され、結果肉体と精神が崩壊するという内容。

 

名前の由来は日本で最も有名な改造人間が出る特撮番組『仮面ライダーシリーズ』の主人公

・本郷猛(初代仮面ライダー)

・五代雄介(仮面ライダークウガ)

・門矢士(仮面ライダーディケイド)

・常磐ソウゴ(仮面ライダージオウ)

から一文字取った所謂パロディネームです。パロディキャラは生き残れない(確信)。由来自体がネタバレだったので今まで伏せていました。

最終的なキャラ像も『仮面ライダーカブト』の天道総司をベースに作っています。

実は彼のセリフなどの要素にちょいちょい仮面ライダーネタを入れてます。勘の良い方はそれで才能に気づいたかもしれません。

声のイメージはCCFF7のジェネシス。

GACKTさんは声優も上手いので是非一度聴いていただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

以上で解説・裏話を終わります。

お付き合い頂きありがとうございます。

 

 

 

 

引き続き二章の執筆頑張ります。ちゃんも書いてますのでご安心を。

 

 

Twitterのほうも是非よろしくお願いします。

元々始めた目的は他の作者さんと仲良くしたいというのもありますが、それ以上に自分を追い込むためです。

このまま放っといたらいつまでも終わる気がしないんで…。

 

 

 

では、次は二章で会いましょう。



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二章裏話・解説

どうもナーガ工事長です。

 

前回の解説編が意外と好評だったので懲りずに二章の解説編となります。

 

例によって、10割自己満足ですがご了承下さい。

 

 

注!

・前回同様、二章を読み終わった前提の内容となっているので、二章のネタバレだらけです。二章を読んでない方はここで引き返す事をお勧めします。

 

・前回の解説編を読んだ方なら周知の通り、某語録が入ってます。苦手な方はここで引き返すようお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はーい、よーいスタート(棒)

 

 

 

 

 

 

 

今回は真面目にトリックを作ろうと思っており、二章という事で水に関わるトリックしようと決めていました。

本家もプールの更衣室、ビーチハウス、ピラニアの水槽と二章は水場が絡む事件が多いですからね。

巨大な水槽ともう一つ、カギになる要素として鏡を使うかなり大掛かりなトリックなので破綻がないか実際に図に書いてみたりして検証しながら作りました。

 

鏡を使うトリックは『金田一少年の事件簿』の「学園七不思議殺人事件」のトリックを基に考えました。

 

動機に関しては、一部の登場人物が私の実体験を基にしています。

 

そして、今回から本格的にW主人公である事を活かし、状況に応じて片方にしかないコトダマで論破をさせています。

主人公vs主人公の構図は今回の学級裁判の見所として入れてみました。

 

裁判中の演出は一部オミット、最後の理論武装等にあたるパートは我流にアレンジしています。

 

 

チャプタータイトルの元ネタは二章開始時にも述べた通り、Aqoursの楽曲『青空Jumping Heart』から。

初期案はFriendの部分がSisterでしたが、ネタバレになりかねないのでぼやかしてFriendに。

シロとクロのICVがどちらもラブライブに縁がある方なのである意味メタ推理ができないこともないです。

 

 

 

主要人物

 

・宵月舞

今回から本格的に主人公の片割れとして論破をガンガンさせました。

色んな場面で視点変換をしてますが、2人分の視点を考えるのが意外と大変でした。でも、結構楽しかったです。

 

 

・小鳥遊瑞希

相棒兼ヒロイン。

男装女子とボクっ娘をメンバーに入れたい!というのは当初からありましたが、人数的に厳しくどうしようか考えていた時に2つの要素を混ぜてしまう事を閃きました。結果、何故女の子なのに一人称が僕なのか?の理由付けをする事も出来ました。微妙な違いですが男の子として振る舞う時は「僕」、女の子として振る舞う時は「ボク」と表記を変えています。

二章までは男装ですが、三章からは衣装チェンジする予定ですので是非、楽しみにしていて下さい。

 

名前の由来はとにかく中性的な名前。

ボイスイメージは男子時は這い寄れ!ニャル子さんの八坂真尋。女子時はまどマギの美樹さやか。

 

 

・八咫琴音

シロ。

真面目系女子ですが、メンバーの中でもトップクラスにとんでもない闇を抱えた子です。本作のテーマ通りクロの柊とは対の人生を送っており、ついに計画を実行に移してしまいました。計画が上手くいっていた場合その後どうなるかは彼女のみぞ知る…といったところでしょうか。(つまり、考えてない。)因みに現時点で暁日に明確な恋愛感情を抱いています。

 

名前の由来は少し変わった苗字と事件のトリックに鏡が関わるので、鏡繋がりで日本神話における三種の神器「八咫鏡」から。

名前がトリックのヒントになってますが、ほぼこじつけ。

下の名前は苗字に合わせて和風な響きの名前にしました。

 

ボイスイメージはラブライブの絢瀬絵里。

真面目、ポニテキャラという事でエリーチカしか浮かばなかった。

キャラ的には同じくラブライブの園田海未ちゃんをモデルにしています。

 

 

・柊色羽

クロ。

彼女は生き残り、退場にしてもシロだと思った方は多いのではないのでしょうか?ぶっちゃけ、それが狙いでした。彼女は自分の推しでもあったのでどうしようか悩んでましたが、大役を与えてあげようと思いクロに。

 

彼女自身に落ち度はほぼありませんが、もし彼女が別の場所で八咫と姉妹だと知ってれば……コロシアイにはならなかったかもしれません。

オシオキのコンセプトは彼女の好きな「睡眠・子供」を利用しつつ、所謂「ホントは怖いグリム童話」の要素を混ぜた物。

推しであろうと妥協は一切しません。

 

名前の由来は柊という苗字は最初から使う予定だったので採用。

下の名前は絵本作家らしく色とふわふわしたイメージの羽を使い、妹の琴音と同じく和風な響きになるように名付けました。

 

ボイスイメージはSAOオルタナティブ ガンゲイル・オンラインのレン。

タイトルが長くて覚え辛い…。

 

 

・柊流星

名前のみの登場ですが、今回の事件に限って言えば実質元凶。

女癖が非常に悪く、妻子がいようとお構いなしに色んな女性に手を出している控えめに言って最低な人間。

 

裏設定的な物ですが、色んな女性を孕ませているので作中に出ないだけで色んな場所に、色羽と琴音の兄妹がいます。

 

色羽にもその手が及んでいるという設定もありますが、倫理的にマズすぎるので、こちらも裏設定程度の扱いにして作中では一緒にお風呂に入っているとぼかしを入れています。

 

 

 

今回は以上で解説・裏話を終わります。

 

 

現時点で全章のクロとシロ、さらには事件の主要トリックも考えているので事件が起こったらそこからは早いのですが、いかんせん(非)日常編が苦手でそこで躓いてしまいます…。

 

なので、日常パートを書く練習も兼ねて「このキャラのお話が見たい!」と言ったリクエストがありましたら是非、ご連絡ください。その内容を元にお話を書いてみようと思います。

 

あとは三章終わった辺りで人気投票なんかもやってみたいなぁ…。

 

 

とまぁ、色々やりたい事尽くしですが、引き続きダンリデをよろしくお願いします。

 

では。



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