我ら駒王の異端児也 (天覧会の部長)
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プロローグ

 新連載です!
 
 今作ではどこかで見たようなキャラクター達が登場しますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。


 地がひっくり返るような豪雨の夜だった。

 

 豪邸という言葉が相応しい西洋式の家屋にあるリビングに、一人の女性が血塗れで斃れており、それを囲むように一人の幼い少年と一人の男性が佇んでいた。

 

 

『テメェのせいだ!テメェせいで、母さんはッッ!母さんはッッ!母さんはッッ!!』

 

 豪雨の中、その雨音を消し去るほどの声量で少年は慟哭する。

 

 その慟哭は、倒れ伏す少年の母を守れなかった目の前の男に対して向けられたもののようで、自分に対しても向けられているようだった。

 

『・・・・・・・・すまねぇ』

 

 男性も密かに涙を流し続けながら、目の前の女性を守れなかった事を悔いていた。

 

『絶対に許さねぇ!!テメェだけは、絶対に許さねぇッ!!』

 

 自分の目の前の男を睨みながら、少年は彼の下へ覚束無い足取りで歩き出した。

 

 

『なんで母さんを見捨てた!!』

 

 男性の腰辺りの身長しかない少年は、彼の元まで辿り着くと、太腿に力強い拳ををぶつけた。

 

 

『なんで母さんを守ってやらなかったんだ!』

 

 ――再び力強く拳をぶつけた。

 

 

 

『なんで母さんを見捨てた!』

 

 ――再び力強く拳をぶつけた。

 

 

 

『なんですぐに来てくれなかったんだ!』

 

 ――再び力強く拳をぶつけた。

 

 

 

『お前は!強いのに!』

 

 ――再び力強く拳をぶつけた。

 

 

 

『なんでこういう時に俺達の側にいてくれなかったんだ!』

 

 ――再び力強く拳をぶつけた。

 

 

『なんで・・・・!なんで・・・・!なん・・・・で・・・・』

 

 ――弱々しく、虫も殺せぬ勢いで拳をぶつけた。

 

 

 よくよく見てみれば、男が拳をぶつけられた箇所が、深く凍りついていた。

 

 放っておけば確実に壊死するであろう凍傷。しかし、それでも尚男性は少年の拳を受け止め続けた。

 

 

 

 ――それでしか、少年の心を受け止める術が無いから――

 

 

『・・・・っ・・・・!・・・・っ!・・・・!!』

 

 拳を男性に突き立てたまま、天を仰いで悔しさで咽び泣く少年。

 

 

『どうして・・・・オレは・・・・』 

 

 泣きながら、呂律の回りきっていない声で

 

『こんなにも・・・・よわいんだ』

 

 

 

―――●●●―――

 

 

 

「・・・・随分と懐かしい夢を見たもんだな」

 

 早朝、一人の青年が布団から身を起こした。

  

 艶のある銀髪に黒曜石を思わせる漆黒の瞳。女性の目を惹きつける端麗な顔立ちをしたなかなかの美青年である。

 

 青年は布団から出ると共に、未だ掛け布団を被りながら隣で眠る少女に気を遣いながら、未だ覚めぬ眠気と闘いながら小さく一言呟く。

 

「まだ、完全に割り切れてねぇってことか・・・・」

 

 青年は、窓から空を仰ぎながら一人呟き考え込んでいた。

 

 

「違うと、思う」

 

 青年が一人考え込む中、突如隣から鈴をふるわすような澄んだ声で、青年の独り言に答えが返ってきた。

 

「!?」

 

 青年はその返答に驚愕して寝床を振り返る。

 

 

 

――振り返った先には、黄金がいた。

 

 

 老若男女問わず虜にするであろう花の(かんばせ)。腰辺りまで届く長い金髪は陽光を受け眩い光を放ち、その瞳は黄金に輝いている。

 シミ一つ存在しない白磁の肌が肌艶の良さをこれでもかというほど強調しており、肢体はまさに人体の黄金比と呼ぶに相応しい。

 

 そんな少女が、横向きになりながら青年をじっと見つめている。

 

「・・・・悪ィ、起こしちまった」

 

 青年は、先程できるだけ静かに動いたのにも関わらず目の前の少女を起こしてしまったことに、軽く謝罪した。

 

「ううん、平気・・・・」

 

 そんな青年の謝罪に、私も起きないといけなかったしという意味を込めながら首を横に振り、可愛らしいあくびをしながら少女は布団から出た。

 

「ん・・・・おはよう、白夜」

 

「おはよう、リリア」

 

 互いに朝の挨拶を交わす。

 

 こうして、青年『黒鷺白夜』と少女『リリア』の日常が始まる。

 

 

 

 二人は寝室から出ると、おぼつかない足取りで、この日本家屋で一番広い和室へと向かった。 

 

 

「おはよう二人とも。今日は随分と早いお目覚めだね」

 

 辿り着いた和室には、二人しかいないはずの家屋に先客がいた。

 

 

 白夜とはまた違ったダークカラーの強い銀髪に、黄金色の瞳。いかなる俳優やモデルであろう裸足で逃げ出すであろう程の、過剰なまでに整った美しい顔立ちをした男であった。

 

 

 常人が行えば必ず失笑されるであろう、広い和室に置かれたテーブルで一人紅茶を嗜んでいるという姿は、その男が行えば何か一つの絵画ではと思わせるほど。

 

 そんな月と雪が交わって生まれたような絶世の美男子が、紅茶を嗜みながら出迎えてくれるというシチュエーションを目の当たりにし、頭が真っ白になる二人。

 

 

「おや、どうかしたのかい?」 

 

 頭が真っ白になっている二人に、当の元凶は何事もなかったかのように尋ねた。

 

「・・・・!あぁ、そうだ、大毅」

 

 

 いち早く元に戻った白夜は、目の前の美青年。その名を『沙刀大毅』というに思わず物申した。

 

「ティーカップは使用したらちゃんと洗ってくれ」

 

「えぇ?そっち?」

 

 そう。白夜が真っ白になって呆然としていた理由は、洗い物が増えるという面倒事に対するものであった。

 因みに、リリアが唖然としていた理由は、そのティーカップが最近購入した新品だったからである。

 

「?駄目なのか?」

 

 何ともなかったかのように振る舞う白夜に、思わず紅茶を嗜んでいた元凶がツッコミを入れる。

 

「そうだよ、普通自分達の家に侵入者がいたら追い出すものだからね」

 

 沙刀大毅はツッコむと共に、白夜の少々場違いな言動に頭を抱えた。

 

「別に気にするほどのことでもねぇだろ。合鍵は渡してあるんだから」

 

 天然で周りからよく心配される白夜は、涼し気な顔で何事もなかったかのように振る舞った。

 

 ・・・・その生活模様が周囲から心配される要因なのだということは、言わぬが花である。

 

 

「・・・・もっとこう、他人が自宅に上がり込んで紅茶を嗜んでいたらもっと何かしら言うものじゃないかい?」

 

「?そうなのか?リリア」

 

「うん、そうだよ」

 

 リリアも、大毅と同じ意見であった。

 

 そんな、勝手に合鍵で家に上がり込んでいた大毅に逆に注意されてしまった白夜は、リリアと共にテーブルの上に用意してあった焼き鮭と味噌汁と白いご飯を食べ始めた。

 

 ちなみに、これらの朝食は全て大毅が用意したものである。

 

「大毅」

 

「どうしたんだい?」

 

「朝飯、ありがとな」

 

 屈託のない笑顔でお礼を言われ、参ったなぁと頭をかく大毅。

 

 そう。二人はこうして大毅が朝御飯を用意してくれるのを知っているから、なにも言わないのである。

 

 

 ・・・・まぁ、言ったところで別に何も変わらないから、何も言っていないだけなのかも知れないが。

 

 

 

 ―――こうして、彼らの日常が始まる。

 




お読みいただきありがとうございました!
ここで、現時点で紹介できる主人公達の簡単な設定を。


 黒鷺白夜(クロサキ ビャクヤ) 性別 男
 
 イメージは、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍を銀髪にして瞳を黒くした感じ。




 沙刀大毅(サトウ ダイキ)性別 男

 イメージは、『PSYCHO―PASS』の槙島聖護。
 

 リリア 性別  女
 

 イメージは、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のアイズ・ヴァレンシュタイン。
 

 これらが、現時点で紹介できるオリキャラ達の設定です。

 ぶっちゃけ、自分でも書いててカオスだなぁと感じました。
 実際に存在してたら周りの視線集めるだけじゃすまないだろうなぁ、この人たち。
 
 次回もお楽しみに!


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