翠と穹と雲と (イエシア)
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第1話「不思議な出会い」

皆さんはじめまして!
僕はイエシアと申します!今回が初の投稿になり、ワクワクしている反面、少し不安もありますが、皆さんに読んでいただきたいと思って作った作品なので、少し気に食わない点もあるとは思いますが、是非最後まで読んでいってくださると嬉しいです!




 

 

俺の名前は武野 新(たけの あらた)。今年で17歳の高校二年生だ。

近所の普通高校に通っている、ホントに普通の高校生。別に人気者という訳でもなく、嫌われ者でもない。顔も友人曰く「イケメンでもないし、ブスでもない」らしい。運動は割と好きだが、部活は帰宅部。学業の方は良くもなく悪くもなくという所。

 

そんな俺はいつものように小学校時代からの旧友であり、悪友?の愛島 来人(めしま らいと)と他愛もないことを喋りながら下校していた。

「なぁ来人、今日なんか寒くね?」

「それマジわかる。今まで暖かったのになんでこう急に寒くなるのかね。」

「しかも昼から急に寒くなったよなぁ。あ、なぁなぁ、コンビニ寄ってこ。」

「そだな。んじゃ俺はココアを頼むよ?」

「は?なんで俺が来人に奢ることになってんだよ?(怒)」

「だって提案したの新じゃん?」

「ワケわかんねーこと言ってんじゃねぇ!自分で買えこの万年金欠野郎!」

俺はそう言って来人に蹴りを入れると来人は笑いながら痛がっていた。俺もそんな来人を見ながら笑った。

「ホラ、置いてくぞー。」

「ちょっ!待てよって!!」

 

 

「ありがとうございました〜」

 

「おい新、この肉まん美味いぞ!?」

「もう何回も食ったし、それ。」

呆れた口調で来人にそう言い返す。

「なぁんだ…」

来人はつまらなさそうに肉まんを頬張る。俺はさっき買ったコーヒーを冷めないうちに制服のポケットに入れた。

 

「ごちそうさま〜」

「じゃあ、またな来人。」

「おう。気ぃつけてな」

俺は来人が肉まんを食べ終わるのを待ち、コンビニめ来人と別れて家路へ向かっていた。

季節は10月、陽が落ちるのも段々早くなってくる時期で、俺が家路につくのを待たずにかなり暗くなっていた。

「さむっ…。」

俺は制服のポケットの中でまだ温かいコーヒーを手で転がしながら暖を取っていた。

 

俺の住む家はそれほど人里から離れている訳では無いが、普段からあまり人通りが少ない。周りの家は高齢者が多いようで、近くに同級生は愚か、下級生や上級生の姿を見たことがない。

 

そんな道を歩いていると、俺は道端でブロック塀に力なくもたれる人影に気がついた。

「ん?…何してんだろ。」

街灯はあるものの、そのシルエットしか確認出来なかったので、近づいてみることにした。

「あの〜…」

「…」

声をかけても返事がない。しかもその姿は実に奇妙だった。

見た目は俺と同じ高校生くらいで、髪は緑色、カエルのアクセサリーとヘビのアクセサリーを着けている。白と青を基調とした巫女装束のようなものを着ているが、肩や脇は出ているし、更にはへそまで出ている。極めつけはスカートを履いていて、とても俺の想像する巫女装束からかなりかけ離れていたし、こんなに寒い時期にこんな格好で「風邪ひくよ!?」と言わんばかりの格好だった。

「ね、ねぇ君大丈夫?どこか怪我してるの?寒くない?」

「…」

相変わらず返事がない。その時、俺の意識がこう叫んだ。

 

───このままじゃこの子が危ない!!

 

俺は着ていた制服を脱ぎ、彼女に羽織らせた。やはり気を失っているらしい、俺が抱えあげてもなんの抵抗もしなかったし、かなりぐったりしている。

俺は焦燥感に駆られ、寒い事も気にせずに一心不乱に家まで走った。

 

 

 

俺の家には両親はいない。別に亡くなったとかそういう訳じゃなく、両親曰く「社会勉強の一環として早めの一人暮らしをさせる」ということで両親の祖父、祖母を伴った家族会議を行い、わざわざ母方の祖父と祖母は俺の実家に引っ越してまで俺にこの家を託した。

家族ぐるみで一体何を考えてるのやら、と思うこともあったが、まぁそのおかげで大体の家事をこなせるようになった。

それはさておき、俺は鍵をかけていない玄関の扉をを蹴り開けると、急いでリビングのソファの上に彼女を寝かせた。

エアコンのスイッチを入れ、ホットカーペットの電源を入れ、暖気が逃げないように開いていた扉を片っ端から閉めていった。

俺は寝室から来客用の掛け布団を持ってきて横たわる彼女にかけた。

「えっと…あ、風呂も沸かさねぇと!!」

俺は急いで風呂のタッチパネルで「おいだき」ボタンを押して風呂を沸かした。

「あとは…ココアの用意をするだけか。」

俺は引き出しからやかんを取り出し、水を注いでお湯を沸かし始めた。

 

 

 

 

「ん…ここ…は?」

目を覚ますとそこには見知らぬ天井が広がっていました。私の体には男子高校生のものであろう制服がかかっていて、その上からも掛け布団が掛けられていました。

私が何もわからずにキョロキョロしていると、部屋の奥の方から声が聞こえてきました。

「あ、やっと起きた!」

声の方に目をやると、そこにはキッチンに立つ同い年くらいの男の子がいました。その男の子はやかんに沸かしたお湯をマグカップに注いで私の目の前のテーブルに置きました。ほのかな甘い香りからするとどうやらココアのようです。

「君、名前は?俺ん家の近くで倒れてたんだよ?」

「ぁ…こちや…東風谷 早苗って言います。ここはあなたの家なんですか?」

「そう。ここは俺ん家、で、東風谷さんは俺ん家のちかくで倒れてたんだ。あんなとこで何してたの?」

「私は…確か、里から帰る途中の山道で深い霧に見舞われて…それで…あ!妖怪に襲われて…」

「ちょっ、ちょちょちょちょ!!え?何?妖怪?この近く妖怪とかいるの!?」

「いえ、幻想郷での話でして…」

「幻想郷?どこ?それ。」

「多分ここは幻想郷の外の世界…つまり、私の元々いた世界…」

「ごめん…東風谷さんの言ってることに理解が追いつかないんだけど…」

「ごっ、ごめんなさい!!えと、簡単に説明するとですね…」

 

東風谷さん曰く、東風谷さんはこことは違う世界、「俺達の住む世界から隔離された世界」の、「幻想郷」というところから来たらしく、どうやらお使いの帰り道に何らかのトラブルに巻き込まれ、この世界に迷い込んだという。因みに東風谷さんは最初から幻想郷に住んでいた訳ではなく、元々この世界の人で、事情があってあちらの世界に行ったという。

何ともまぁ信じ難い話なのだが…

「それで、どうやったらその幻想郷に帰れるの?」

「それが…私にもよくわからなくって…」

「え!?じゃあ、下手したら一生この世界で生活することになるかもしれないって事!?」

「最悪の場合は…」

苦笑いを浮かべる東風谷さん。少し不安気な表情が混じっている気がする。いよいよ困ったことになった。

「う〜ん…」

途方に暮れる俺。このまま東風谷さんを見捨てるわけにも行かない。しょうがない…

「別に変な意味とかじゃないんだけど、落ち着くまで家でゆっくりしていきなよ。」

「え?」

やべ、流石にキモかったか!!そりゃそうだよな。いきなり知らない人の家に「泊まって行きなよ」とか誘拐犯の吐くセリフじゃねぇか!!きっと俺はこの後蔑みの目で睨まれながら気持ち悪いって言われるに違いない!

俺の人生ここでゲームオーバー!?

そんなの嫌だぁぁぁぁ!!

 

「いいんですか!!!?ありがとうございます!!」

「え…あ、よろしくね。」

「よろしくお願いします!!」

俺は東風谷さんの二つ返事に呆気に取られた。

 

 

 

あ……色々心配しすぎて変なこと頭の中で叫んでたけどあっさり解決しちゃったよ…

 

 

 

 

こうして東風谷さんは落ち着くまで俺の家で過ごすわけなんだが、その…もうちょっと人を疑った方がいいんじゃないかな(汗)

 

「お腹すきませんか?」

「そういえば空いてきましたね。」

丁度いいタイミングでお風呂が沸いた事を知らせるアラームが鳴った。

 

「あ、じゃあ俺飯作るんでその間お風呂入ってください。身体冷やしちゃいけないんで。」

「そんな!泊めてもらっているのにご飯まで作ってもらうなんて!!私も手伝います!!」

「でも東風谷さん体冷えてるから…」

「大丈夫です!!」

「でも…」

「平気です!!」

「えぇ…」

中々食い下がらない東風谷さんに俺はタジタジになってしまった。

というか、東風谷さん相当お腹減ってるんだなぁ〜。

 

どうにかして東風谷さんを先にお風呂に入れる方法はないかな…

そう考える俺の頭に1つの名案が浮かんだ。

「なら、お風呂上がるまで待ってるんで、それからご飯作りましょうよ。それでいいですか?」

「は、はい!そうしましょう!それじゃあ急いでお風呂済ませてきますね!」

やっと東風谷さんを説得できた。

東風谷さんは鼻歌混じりに張り切りながら脱衣所へ消えた。

 

 

リビングには俺一人…

 

(てか、よく考えたら結構やばくないか?)

だってキッチンに2人で立つんだぞ?それは2人の距離が一気に近くなるということ。そんなこと、思春期真っ盛りの男子高校生にとってかなりやりづらい状況になってしまう!!

というか、同じ空間で女の子と生活するなんて生まれて初めてだぞ!?それもあんなに可愛い女の子!!(言い忘れていたが、東風谷さんはかなりの美少女だ。同じ高校に通う女の子達とは比べ物にならないくらいの。)俺よくゆっくりしていきなよなんて言えたな!!ハッキリ言って尊敬するぞ!!

これからどうなってしまうんだ!?俺の人生!!

 

 

 

 




初投稿のこの作品、いかがでしたでしょうか?
これからもっと皆様に楽しんで頂ける作品を作っていきたいと思っているので、ご意見・ご感想ありましたら、どしどしお願いします!

本日は僕の作品を読んでいただき、本当にありがとうございました!!


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第2話「振り回される気持ち」

満を持して第2話の投稿です!
1話から読んでいただいた皆様本当にありがとうございます!まだまだ未熟ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです!




 

 

俺が色々なことを考えてるとあっという間に時間は過ぎるもの。東風谷さんはお風呂を済ませて脱衣所から俺になにやら呼びかけていた。

 

「あの〜私、何着ればいいですか〜?」

俺はその声を聞いて我に返った。そうだ!東風谷さんの服用意してなかった!!

 

「ごっ、ごめん!今用意するから待ってて!!」

俺は急いで2階の自室に行き、タンスから乱雑にパーカーとパジャマ代わりに使っていた部屋着のズボンを持って東風谷さんの待つ脱衣所に行った。

 

「東風谷さん、入るよ?」

「うぇえ!?ままっ…待って下さいね!?」

どうやら東風谷さんは裸で脱衣所にいたみたいだ。

いかんいかん、色々変なこと想像してしまう!

「えいっ!」ぺしっ

俺は平常心を取り戻すために頬をビンタして邪の心を振り払った。

「もういいかい?」

「は、はいっ!」

「俺の部屋着で悪いけど、今日のところはこれで我慢してくれ!!」

俺はまだ風呂場にいる東風谷さんに磨りガラスを隔ててそう言った。

 

「お、お構いなく!下着とかは明日買いに行くので…」

「ホント…ごめん…じゃあ、キッチンで待ってるんで。」

「は、はい!」

その返事を聞いて俺はキッチンに向かった。

 

 

なんだろう。普段こんなに女の子と喋ったことないし、さっき改めて考えてからすごく意識するようになった。いけない…仮にも身の安全を守ってあげなきゃならない立場なのに!こんな邪念捨ててやる!!

 

そんな風に頭の中で再び息を吹き返した邪の心を押し殺そうと葛藤していると、準備を済ませた東風谷さんが現れた。

「準備出来ましたよ!!早速始めましょう!!」

「あ、うん!じゃあ今日は回鍋肉作るんで、材料から出しましょうか。」

「回鍋肉いいですね!」

「好きですか?」

「結構好きな方ですよ!」

「それは良かったよ。」

俺と東風谷さんはテキパキと材料を用意し、調理に取りかかった。

 

 

調理中、変にだんまりを決め込んでも妙な空気が漂うだけなので、俺は東風谷さんの幻想郷での生活などについて聞いていた。

 

「この前は外来人の方が幻想郷に迷い込んで、大騒ぎになったんですよ〜。」

「へぇ〜、そんなことがあったんだね!あ、外来人って何者なの?」

「それはですね、こっちの世界から幻想郷に来た方々のことを言うんですよ。」

「じゃあ、東風谷さんはこっちの世界での『外来人』になりますね!」

「厳密に言えば『半外来人』ですけどね!」

「そっか!そうだったね!」

 

「ところでなんですけど、」

「うん?」

「まだあなたのお名前をお聞きしてなかったんですけど…」

「あ!ご、ごめん!つい忘れちゃってたよ!じゃあ、改めて!俺の名前は武野 新、呼び方は東風谷さんに任せるよ。よろしく!」

「新…いい名前ですね!!」

「そ、そんなことないよ!!東風谷さんの名前の方がよっぽどいい名前だよ!」

多分今の俺の顔は東風谷さんに名前を褒められてすごくだらしない顔になってると思う。(こんな美人に褒められたら否が応でもだらしない顔になるだろ。)

「じゃあ、『新くん』って呼びますね!!」

「……うん!!」

その時、俺の頭の中では『新くん』というフレーズが何度も再生され、それと同時に東風谷さんの髪の香りで、俺は新たな未知の領域に立ったみたいだった。

「「いただきます!」」

「美味しいです!新くんの腕前は確かですね!!」

「そんな、俺だけのものじゃないよ!この味は!」

「箸が止まりません!!」

東風谷さんはやっぱりかなりお腹が空いていたらしく、ものすごいスピードで回鍋肉を食べ尽くした。

 

 

 

「「ごちそうさまでした!!」」

 

「あぁ〜美味しかった〜!!新くんは料理上手ですね!」

 

「一人暮らししてたらこれくらい出来なきゃ死ぬからね。それに、この位は心得ておかないと毎日似たようなものばかりじゃ苦労するよ。」

 

「褒められてるんですからさっきみたいに照れてくださいよ〜!」ニヤニヤ

 

やっぱり名前褒められた時のリアクション見られてたのか…超恥ずかしい!!

 

「で、でも流石に東風谷さんには敵わないと思うなぁ。」

 

食事中に聞いた話だけど、東風谷さんは普段3人で生活しており、その三人分の料理を全て東風谷さんが切り盛りしているらしく、味には自信があるという。

 

「今度食べてみます?」

 

 

「ヴェ!?」

 

何だって…!?東風谷さん…今、あなた何て!?

思わぬ返しに変な声が出てしまった。

「ここで新くんに認めてもらえれば、私の自信に拍車がかかるので!!」

「そ、それなら…、お願いしますっ!!」

「はい!分かりました!!」

なんてこった…あぁ神よ…俺をこんなにも良い女の子に出会わせてくれてありがとうございます。

「じゃあ私食器洗うので、新くんはお風呂に入ってくださいね!」

「お言葉に甘えてそうするよ。」

俺は言葉では表せない幸せを胸に脱衣所へと向かった。

 

 

 

俺が風呂からあがると、東風谷さんは来た時に寝ていたソファで眠っていた。

「東風谷さ〜ん?こんなところで寝たら風邪ひくよ〜?」

「むにゃ…あ…新くん…」

「ちゃんと布団用意してあるからさ」

「はい…」

 

客人を流石にソファで寝かせるわけにはいかないので、俺は自室の俺のベッドで寝かせることにした。

寝ぼけまなこの東風谷さんを俺の部屋に誘導し、東風谷さんが布団に潜ったところで部屋の電気を消した。

「おやすみなさい。」

「おやすみなさい…新くん……」

俺は東風谷さんの返事を聞くとそっと部屋の扉を閉めた。

 

「さて、少しバラエティ番組でも見て俺も寝るとするかな。」

俺はそう独り言を呟いてリビングへと向かった。

 

 

 

 

「んぁ…?」

気づくと俺はリビングのソファで眠っていた。閉めたカーテンの隙間から朝陽が差して、小鳥のさえずりが聞こえる。

「人に風邪ひくとか言いながら自分が出来てないなんてね」ハハ…

今の時刻は朝の7時2分。今日は土曜日なので、いつまでも寝ていたい気分だが、リビングのソファじゃろくに眠れない。どうやら東風谷さんもまだ起きていないみたいだ。

 

すると、リビングのドアが開く音がした。

「おはようございます、新くん。」

「あ、おはよう東風谷さん。朝ごはんにしようか。」

「そうですね!」

俺はソファから立ち上がると、食べ物をいつも入れてある棚から食パンを取り出し、トースターで焼き始めた。

「それにしても新くんは早起きなんですね!いつからリビングにいたんですか?」

「あー…いつって言うと、ずっといたかな。」

「え?」

「ソファでいつの間にか寝てた。」

「え?新くんに部屋って無いんですか?」

「いや、昨日東風谷さんが寝た部屋が俺の部屋だよ。」

「嘘!?ごめんなさい新くん!!私なんかが寝てしまって!!」

いやいや。寧ろ構わないさ、俺のベッドだって東風谷さんに使ってもらって大喜びしているだろうさ!!

「俺の方こそごめんね。俺の部屋なんて使わせてしまって。もし嫌なら他の部屋にするけど、」

「とんでもないです!本当にありがたいです!!」

「そ、そう?」

(それなら良かった。)

そう思うと同時に食パンが焼けたことを知らせる鐘がなった。

 

「あ〜、ジャムも残り少ないな。買いに行かないと。」

「では、今日行きませんか?ついでと言ってはなんですが、この街を紹介してくださいよ!」

「そうだね。天気もいいしそうしよっk…」

何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

東風谷さん!良いのかい!?俺で良いのかい!それはその…つまり……

 

「ありがとうございます!!」

 

東風谷さんは俺が複雑なことを考えている間に満面の笑みでお礼を言ってきた。

こんな笑顔見せられちゃ行くしかないじゃないか…

そうだ。これはただの買い物なんだ。

 

その時、手元に置いていたスマートフォンの通知音がなった。

それは悪友からのメッセージを知らせるものだった。

来人【今日暇?遊びに行かね?】

 

「あー…」

 

俺はバツの悪い気持ちで返信した。

新【ワリー。今日先客入ってんのよ】

来人【お?もしや女の子?まさかデート?www】

 

「ム"っ!?」

 

俺はあえて考えないようにしていたことを掘り返され、むせてしまった。

「新くん大丈夫!?」

「だっ…!大丈夫、大丈夫!」

野郎…今度あったらシメてやる…!

 

「早く食べて出発しよっかー。」

「…? そ、そうですね!」

俺は平静を装ってパンに食らいついた。

しっかりしろ!武野 新!まだスタートラインにすら立ってないぞ!!

自分にそう言い聞かせるしかなかった。

 

続く




本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
もっとより良い作品を作りたいので、ご感想やご意見を頂ければ幸いです!評価もお願いします!



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第3話「すれ違う想い」

この作品を読んでいただいている皆様、こんにちは!イエシアです!先日、3件のお気に入り登録と、1件のご感想を頂けました!ありがとうございます!!これは、僕にとってはかなり大きな進歩ですし、次回作への原動力になります!これからもどうかよろしくお願い致します!!


 

 

今日、俺はなんだかんだで俺と東風谷さんは街に出て買い物、兼街紹介をすることになった。

決してデートなんかじゃないぞ!?

「まず東風谷さんの私服とか身の回りで必要なものを買おうか。」

「そうですね!どんな服を買おうかなぁ〜」

(東風谷さん楽しそうだなぁ)

東風谷さんのこれから起こる出来事に期待する表情は楽しそうだった。

「とりあえず、近くのショッピングモールに行こっか。」

「ショッピングモールがこの近くにあるんですか!?」

「あるよ!」

「そうと分かれば急ぎましょう!!」

東風谷さんはそう言うと子供のように駆け出した。

「あっ!待ってよ!道わかんないでしょうが!」

 

 

場所は移ってショッピングモール。東風谷さんは服選びに没頭している。

俺は服を吟味している東風谷さんの横でどんな服を選ぶのか見ていた。

「新くん、私 試着室行ってきますね!!」

「あ、うん。」

(東風谷さんに似合いそうな服だったなぁ…)

 

「新くん!!これ似合いますか!?」

「すごく似合ってるよ!これ買うの?」

「う〜ん…もうちょっと買っていいですか?」

「いいよ!でも程々にねー。(苦笑)」

あんまり買いすぎると今月のお小遣いが干上がってしまうからね。なんせ払うのは俺だから!!

まぁ、東風谷さんのためならいいか…

 

「こんなのはどうですか!?」

「うん!大人っぽくていいと思う!」

「えへへ〜!」///

(可愛い」

「え?何か言いました?」

「んぇ!?いやいや!?何も!?」

どうやら無意識のうちに考えが言葉になってしまった。事実だから、まぁしょうがないよね。

 

 

と、まぁこんな感じで一日のほとんどを買い物で終わらせた。あとは帰り道に街の紹介をするかな。

 

「新くん、私ちょっと着替えに行ってきますね!」

「はーい。ここで待ってるからね。」

「はい!」

 

新しい服に着替えに行った東風谷さんを待つ間、俺は休憩所の椅子にもたれてぼーっとしていた。

すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「あれ、新じゃん!!お前何してんのここで。」

「ヴェ!?来人!!」

(なんでてめぇがここに居るんだよ!!)

「お!たくさん買い物してるねぇ!何買ったんだ?」

「しょっ、食料だよ!てめーにやるモンなんてねぇからな!」

「分かってるよそんくらい!んじゃあ俺そろそろ行くわ!夕方から友達と遊ぶ約束してるからさ!」

「お、夜遊びか、警察に気をつけるんだぞ。それじゃあな。」

来人は俺にそう告げて走って人混みの中に消えた。

 

(あぶねー!東風谷さん見られると色々誤解されそうで怖かったー!!)

俺がそう考えていると、東風谷さんが着替えを済ませて帰ってきた。

「お待たせしました!行きましょうか、新くん!!」

「そ、そうだね!」

 

俺は気持ち急ぎ足でショッピングモールを出ると、いろんな寄り道をしながらこの街を紹介した。

「ここが駅で…」

「ここは街の図書館で…」

「ここは学生に人気のカフェ!…」

 

気がつくともう時刻は夕方の5時を回っていた。

「もうこんな時間か。東風谷さん足きつくない?」

「いえ!まだ歩けます!!歩けるんですけど…その…」

「?」

「お腹が空きました」ニコ

やっぱり可愛い。

「そうだね。どこかで食べていこうか。」

「はい!」

 

俺と東風谷さんは近くにあったファミレスに入って食事をとった。

「東風谷さん。」

「はい?」

「東風谷さんには友達いる?」

「はい!いつも仲良くしてもらっているお友達がいます!」

「そう…東風谷さんは、その、幻想郷の友達とかと会えなくて辛くない?」

俺のその言葉を聞いた瞬間、一瞬だけど東風谷さんの表情は曇った。だけどすぐに明るくなって、

「そうですね…実は少し寂しいです。」

(やっぱりそうだよな。)

 

親しい友達がいた世界から、いきなり何も知らない世界に迷い込んで…寂しくないわけない。

「早く…早く帰れるといいね。」

「はい。それまで、お世話になりますね!」

「うん!困った時はお互い様、なんでも相談してね!!」

「ありがとうございます!!」

「それじゃ、帰ろっか!」

「はい!!」

 

 

 

自分が友達と会えなかったら…周りに知る人が誰一人いなかったら。

 

 

俺は風呂の中で、ご飯を食べている時に話した内容を思い出してそんなことを考えていた。

「東風谷さんはやっぱり強い人なんだな。寂しいのにあんなふうに笑えるなんて。」

せめて少しの間くらい寂しさを忘れさせてあげたらいいなぁ。

俺はそう思いつつ、風呂から上がった。

 

 

俺は次の日、東風谷さんが「海を見たい」と言ったから、近くの砂浜に連れてくことにした。

気分転換には丁度いいと思ったし、最近海に行ってなかったからいい機会だ。

「幻想郷、海ないんだっけ。」

「はい。私は早いうちに向こうに行ったので、海をあまり見ることが出来なくて。貴重な休日を割いてまでありがとうございます!」

「構わないよ。俺も海久しぶりにいくし。」

 

そうこうしてると、俺達が歩く目の前に大きな蒼い海が姿を現した。

「わぁ…!!」

東風谷さんは久しく見た海に心踊らせ、海に向かってかけて行った。

俺は波打ち際ではしゃぐ東風谷さんを遠巻きに眺めながらゆったりとした時間の流れを感じると共に、確かな不安に心を締め付けられていた。

 

(こんな時間がいつまでも続けばいいのに…)

 

いずれ東風谷さんは幻想郷に帰ってしまう。その時俺は、何を思うのだろう。果たして東風谷さんのように笑っていられるだろうか。

東風谷さんと過ごした時間は本当に短い時間だけど、

「…!」

 

東風谷さんといる時は誰といる時よりも楽しかった。

「…ん!」

 

そんな風に思えた相手が突然居なくなって、

「あ…た…!」

 

果たして俺はやって行けるだろうか。

 

「新くん!?」

「っ!!」

気づくと目の前に東風谷さんがいた。ずっと呼んでいたらしいけど、俺は全く気が付かなった。

「どうしたんですか?そんな表情をして。」

「え…」

そんな表情…俺、今どんな表情してるんだろ。分からない。だから、適当な答えを探して東風谷さんの質問に答えた。

「あ、あぁ…て、テストが近いから憂鬱だなぁ〜って!」

 

「やっぱり新くんは面白いですね!」

 

 

 

今日、新くんと海に行きました。久しぶりに見た海は広くて蒼くて綺麗でした!それに風も気持ちよくて、来てよかったと思っています!連れてきてくれた新くんには本当に感謝してます!!

 

でも…

 

新くんはあまり楽しそうじゃありませんでした。私が声をかけてもどこか遠くを見てるみたいで。それに、とても悲しそうな、寂しそうな表情をしていて。

新くんは「テストが近いから憂鬱だ」って言っていました。でも、テストが近いからってあんな表情はしないはずです。

 

新くんは私の小さな悩みに気づいて、相談に乗ってくれました。私はその時とても気分が楽になりました。

だから、新くんにも悩みがあるのなら、私に相談してほしいです。たとえ力になれなくても、私に出来る精一杯の事をしてあげたいから。

 

新くんは、私を助けてくれた、私の大切な人だから…

 

 

続く




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!いかがでしたでしょうか?ご意見・ご感想ありましたら、どしどし送っていただければ幸いです!これからも良い作品作りに尽力していきたいと思います!!
本日もありがとうございました!


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第4話「応援」

作品を読んで頂いている皆様、こんにちは!イエシアです!
いよいよこの作品も終盤に近づいて来ました!そして終盤に近づくにつれ、新作を書かなきゃと焦る僕もいます!でもいいアイデアが浮かばなくてのたうち回っている状態です!そんなこんなで第4話、お楽しみください。


 

「ここは…海?」

気づくと私は新くんが連れてきてくれたあの砂浜、あの波打ち際に立っていました。

「東風谷さん!」

あ!!新くんが呼んでいる!!

私は私を呼ぶその声に元気よく応えます。

「はい!どうかしましたか?新くん!!」

「東風谷さん、俺、東風谷さんに言わなきゃならなきことがあるんだ。」

「え?」

これは以前紅魔館でパチュリーさんに借りた恋愛小説で読んだことがあります!新くんはきっと私に…

 

「俺、東風谷さんといると、楽しくないんだ。」

 

────え…?

 

「俺、東風谷さんの事嫌いなんだ。」

 

────新…くん?

 

「だからさ…」

 

────待って…新くん…そこから先は言わないでっ!!

 

 

 

 

幻想郷に早く帰ってよ。

 

 

 

 

「っ!?」

今まで私が見ていた風景は全て溶け、いつの間にか新くんの部屋に変わっていました。

「…ゅ、夢…?」

先程のあの言葉が脳裏を離れず、ふとした瞬間になんとも言えない恐怖で私を包みます。

「…新…くん」

 

その恐怖が襲う度、私は泣き、もがき苦しみ、想いを寄せる人の名を叫びたくなるのです。

でも、あの時海で見た新くんのあの表情を思い出すと、これ以上新くんに負担をかけたくないという思いで私は笑顔を見せるのです。

 

「嫌だよ……嫌いにならないでよ…」

 

 

 

思えば5日前、私は幻想郷から何故かこちらの世界に迷い込んでしまいました。気を失い、そのまま夜の寒さに蝕まれる私を彼、新くんは助けてくれました。

 

新くんはすごく真面目で優しくて、私に良くしてくれました。

私のわがままにも文句も言わずに聞いてくれて、短い間で私は彼に想いを寄せるようになりました。

 

でも、新くんは違うみたいです。あの日、あの海で見たあの表情はきっと、私が新くんにかけた負担の表れだと思うのです。

 

私は、新くんと自分はやっぱり釣り合わないのかもしれない…いつしかそう思うようになりました。

 

新くんは人に優しくて、真面目で、でもたまに可愛いところも見せてくれる面白い人。それに比べて私は魅力が無くて、ドジで、わがままで、新くんに迷惑ばかりかけて…

 

 

いっその事もう幻想郷に帰った方がいいのかもしれません。

 

だけど、

 

新くんに対するこの想いはずっと大きくなり続け、新くんと一緒に過ごしたいという気持ちも大きくなり続けるのです。

 

 

 

 

「東風谷さんが起きてこない。なんでだ…?」

いつもならこの時間帯に東風谷さんは起きてくる…はずなのに、今日は起きてこない。もうすぐ学校に行かなきゃならないけど、そんなことはどうでもいい。もしかしたら、部屋で体調を崩して苦しんでいるかもしれない。

 

俺は募る不安を胸に東風谷さんの眠る俺の部屋へ向かった。

部屋の前に立ち、ドアをノックするが返事は帰ってこない。

「東風谷さん?起きてる?」

「…」

「寝てるのかな。」

俺はますます心配になって、思い切ってドアを開けてみた。

 

東風谷さんは起きていた。けど、その表情にはいつもの東風谷さんが見せる元気が全くなかった。どこか遠くを見てるみたいで、まるで魂はここに無い…そんな表情をしていた。

「東風谷さん!?」

「…っ!!新くん…」

「ど、どうしたの!?」

「…私…嫌な…夢を見たんです。」

「言わなくていい!!言わなくていいから、今日はもうゆっくり休んで!」

「は…はい…」

 

 

 

結局俺は東風谷さんを家に1人で置いてきて学校に来てしまった。

「はぁ…。」

(本当に東風谷さんの事を想ってるんだったら、彼女のいるべき世界へ彼女が帰ることを応援してあげないと…。)

 

「俺が要らない心配させるから、俺が東風谷さんにこんな想いを持つから、きっと東風谷さんを引き止めてしまうんだ…」

俺が考えに耽っていると、不意に後ろから声をかけられた。

 

「よォ新!お前が昼休みに屋上なんて珍しいな!!」

「なんだ。来人か。」

「なんだその言い方、お前らしくねーな」

「なんだよ俺らしさって」

「いつものお前躊躇なんてしねぇもん!」

「そうか?フフッ」

来人の答えに思わず笑いがこぼれてしまった。

「やっと笑ったか!!」

「はぁ?」

「最近お前ずっと湿っぽいからよ。なんかあったか?」

なんでもお見通しってか…。

やっぱり小学校時代からの友達だけはある。表情の変化に気づいたんだろうなぁ。

「まぁ、色々。」

「相談していいんだぜ?俺ら友達だろ?」

「そうだな。でもな、来人。これは俺にしか解決できない、人に答えを求めても帰ってこない複雑な悩みなんだ。」

「そ、そうなのか。」

「お前を誇らしく思うよ。ありがとな。」

俺は来人の肩をぽんと叩くと、教室に戻った。

 

 

「本当に好きなら、全力で支えないとな。」

 

 

 

「じゃあ、頼んだわよ?」

「え?着いてこないのか?」

「当たり前よ。呼べば来るから、それじゃ。」

「あ!待て!!」

 

そう言ってスキマを閉じて八雲紫は消えた。

「さぁて。どこを探せばいいのやら。」

 

 

 

「ただいまー」

返事はない。東風谷さんは寝ているから帰ってくるはずがない。

 

俺は荷物を下ろして部屋へ向かった。

ドアをノックすると、「どうぞ」と帰ってきた。

どうやら今起きたらしい。

「東風谷さん、体調はどんな感じ?」

「今朝よりは良くなりました…」

東風谷さんは笑顔を見せてくれたが、その笑顔はかなり引きつっていて、無理していることが分かった。

 

「何か…食べたいものとかある?」

「いえ…」

「そっか。また、来るから。」

「はい…」

俺は静かに扉を閉めて、キッチンへと向かった。

 

 

俺はキッチンに立つと早速調理を始めた。

「元気がない時はお粥がいいよな。」

 

俺は黙々とお粥を作り、梅干しをトッピングして東風谷さんのところへ持っていった。

 

「東風谷さん、入るよ。」

「…はい。」

「東風谷さんお粥食べれる?」

「作って…くれたんですか?」

「ごめん…余計だったよね…」

「た…食べます。」

「あ…うん。」

 

俺はスプーンにお お粥をひとすくいすると、息で冷まして東風谷さんの口に持っていった。

東風谷さんはそれを咥え、お粥を食べた。

「熱くない?無理しなくていいからね。」

「美味しいです。」

「そう。なら良かった。」

「もう少し…頂けますか?」

「う、うん。」

東風谷さんはそのままお粥を完食した。

俺が食器を整えて下げようとしていた時、東風谷さんはふと口を開いた。

 

「また…」

「え、」

「新くんに助けてもらいましたね。」

「そんな。俺は別に何も…」

「好きな人に嫌われるってどんな感じなんでしょうか…」

「好きな人に…嫌われる…?」

 

そうか、これが今朝東風谷さんが見た夢…

俺だったら…

 

「悲しくて…寂しくて…辛くて…苦しいと俺は思います。」

「…」

「でも、本当にその人が好きなら、俺は嫌われてもその人を応援し続けます。」

「…応援…」

「だから俺は、東風谷さんの事、応援してます。みんなのところに帰れるように、全力で支えますから。」

「え…?」

「ん?」

俺は自分の言った言葉の意味をよくよく考えてみた。

(俺は好きな人を応援するって言ったから…東風谷さんを応援するってことは………!!!!!!!!!)

「ぅあぁぁあ!?あ、いや、その特にふ、ふふ深い意味とかはななっ、無いからっ!!」////

俺は苦し紛れの言い訳とも取れる言葉を残して、バタバタと部屋を後にした。

 

「新くん…やっぱりあなたは優しい人です!」

私の中の新くんへの想いはさらに大きくなりました。

「いつか…この想いを君に…」

 

 

続く




今回も読んでいただき、ありがとうございます!
本作のご意見・ご感想や評価をしていただけると嬉しいです!
本作はあと少しですが、まだまだ頑張っていきたいので、応援よろしくお願いします!


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第5話「終わりを告げた平穏」

本作を読んで頂いている皆様、こんにちは!イエシアです!新作は艦これにしようと思いたった今日この頃です。それより、物語はついに大詰めです!気になる方はぜひ最後まで読んでいってください!


東風谷さんはあの日を境に元気になった。お粥が効いてくれたのならいいけど。

(あんなこと言ってキモイとか思われてないよな〜…いや、思われてるよ。絶対…)

 

それからというもの、東風谷さんは俺の帰宅途中の道にある公園まで俺を迎えに来てくれるようになった。

 

「あ!新くん!!」

「ただいま、東風谷さん。」

「おかえりなさい!!」

 

「今日は何があったんですか?」

「今日は友達と体育の時にバスケをしましたよ。」

「へぇ〜!健康的ですね!」

 

「今日は夕飯何にしますか?」

「うどんがいいですね!俺も手伝います!」

「肉うどんにしましょうか!」

 

「明日もいい一日になるといいですね!!」

「はい!きっと、いい一日になりますよ。」

 

 

こんな風に他愛もない話を家に着くまで交わしている。そして俺は思う。

 

──なんて温かい時間なんだろう。

 

そしてそう思うと同時に俺の頭にあの不安が蘇る。

 

──東風谷さんが居なくなったら俺はどうなるんだろう。

 

今はかなり表情は隠せるようになったけど、頭にこの言葉はずっとよぎり続け、俺を苦しめる。

 

 

でも、俺は決めた。

東風谷さんが幸せなら俺はいくらだって彼女を応援すると。

 

 

だから、どんな結末が来ようと、俺は耐えきる。

それが、東風谷さんのことを考えた最前の策なんだ。

 

そんなことを考えながら東風谷さんと家に帰った。

「東風谷さん、今日はやっぱりカレーにしませんか?」

「うどんはいいんですか?…まぁ新くんが決めたならそれでいいですけどれそれじゃあ早速準備しましょうか!!」

 

 

 

 

「頼まれたからにはやるしかない。早苗ちゃんは僕の友人でもあるから。早く見つけて連れて帰らないと…」

 

 

 

 

「東風谷さん今日は何されてたんですか?」

俺は食後のデザートのみかんを食べながら東風谷さんに質問する。

「今日は少しお散歩に行きました!」

「へぇ〜。どんな所に行ったんですか?」

「猫がいっぱいいる所があってですね!」

「あぁ〜、林道さんとこの猫ちゃん達かもしれない。」

「あ、それとですね…」

その時、お風呂が沸いたことを知らせるアラームがなった。

「お風呂沸いたみたいですね。東風谷さん先にどうぞ〜」

「はい!お言葉に甘えますね!!」

東風谷さんはそう言ってリビングから去った。

 

1人になった俺は窓際に行って、夜空を見上げた。

(いつまで…続くのかな。この時間は。)

できればずっと続いてほしい。ずっと東風谷さんの隣に居たい。いつか、この思いを伝えられる日がきっと来る。今はまだ迷いがあってうまく伝えられそうもないけど、その時が来たら、絶対に伝える。

 

 

 

「新くん、お風呂あがりましたよ!」

「は〜い。」

 

 

 

朝、登校していると、来人と合流した。来人はいつも学校に行く時間が早いので、合流することなんて無いのだが、多分、俺のことを気遣ってわざと時間を遅らせたんだと思う。

「おはよう、新!」

「おはよう来人」

「どうだ?あれからなんか変わったか?」

「うん。まぁ少しだけどさ。」

「このまま解決するといいな!!」

「頑張るよ。」

 

朝から悪友に元気づけられた。ありがとう、来人。

 

「はい、ここがXなら、ここは必然的にYに……」

俺は、ぼーっとしながら、授業を聞いていた。

最近はずっとこんな感じで一日を過している。

静かに外の風景を眺め、東風谷さんはこの風景を見て何を思うのだろう…東風谷さんは何してるだろう…東風谷さんは俺のことどう思ってるのだろう…

 

そんなことをぼんやりと考えながら。

 

 

 

「片想いってのは、勝手に相手に期待しちまうもんだよなぁ。」

 

──誰だ?この声は。

 

「そんな淡い期待、さっさと捨てれば楽なのになぁ…」

 

──お前は誰だ!俺に何を教えたい!

 

「こんな風にならないといいけどなぁ…」

 

我に返ると、いつの間にか俺は東風谷さんがいつも待ってくれているあの公園に立っていた。

 

「あれ、俺今まで授業受けてたのになんで…」

 

すると、東風谷さんが満面の笑顔でこっちに走ってくる。

 

「東風谷さn…」

 

でも、その笑顔は俺に向けられたものじゃなかった。

知らない、白髪の男の人。しっかりしてそうで、優しそうで、かっこいい。

 

その男の人に向けられた笑顔は、東風谷さんをさらに輝かせた。

「東風…谷さん…」

そして東風谷さんとその男の人は俺の方を見てこう言った。

 

 

 

「さようなら!!」

 

 

 

────新くん!

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

俺はどうやら居眠りをしていたらしい。

俺の叫び声を聞いたクラスの人間は一同騒然。その後すぐに、誰かが笑ったのを皮切りにクラスは一気に笑いに包まれる。

でも俺は全然笑えなかった。

 

(今日、帰ったら絶対に東風谷さんにこの思いを伝えよう。じゃないと…手遅れになる!!)

 

 

「なぁ、今日の朝、3組の園原が4組の七宮に告ったらしいぜ。」

「へー。それでどうなったの?」

「園原玉砕!ま、あの顔で七宮はきついだろ!」

「片想いは相手に勝手に期待しちゃうもんな〜」

 

来人がその友人達と楽しげに話している。その内容はこれから俺に起こりうることだった。

 

「新はどう思う?」

「っ!?…おっ、俺?」

「うん。」

「おっ、俺も…そう思うよ…」

俺は不意に振られた話題に少し戸惑い、同意した。

「だよなー!!」

 

正しい答えなんてわからない。唯一分かるのは、自分がその人に恋をしたということ。

そんな複雑な考えが俺の頭の中を渦巻いていた。

 

 

俺は学校が終わるとすぐ、あの公園に向かって急いだ。

きっと東風谷さんはあの公園で今日も待っているはずだ。

あの夢と同じことが起こらないように。

 

 

俺が息を切らしながら公園につくと、いつも東風谷さんが座るベンチに、東風谷さんはいた。

(良かった……!)

俺は東風谷さんの姿を見ると安心し、声をかけた。

 

「東風y…!?」

 

東風谷さんは俺が声をかける前になにかに気づいて、ベンチを立ち上がる。

その表情はまさにあの夢と同じ表情だった。あの輝いた笑顔。

 

その視線の先には……

 

あの白髪の男の人がいた。

 

「嘘だ…」

 

東風谷さんはそのままその人のところに行くとその人に抱きついて泣いていた。

 

この人なんだ。この人が以前夢を見たと言った時に出てきた『好きな人』だったんだ。

 

 

「は…はは…はははは……」

もうダメだ。あの時は強がってどんな結末だろうと耐え抜くと言ったけど…どんなに辛くても彼女を応援するって決めたはずなのに…

 

 

俺はそのまま来た道を走った。

頬に涙をこぼしながら。

 

 

 

 

 

 

 

もう何もかもがどうでも良くなった。

 

 

続く




今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!ついに次回で本作は終わりですが、ご意見やご感想はまだまだ待っています!次回作の参考にしたいので、どしどし送っていただけると嬉しいです!評価もお願いします!
本日もありがとうございました!


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第6話「翠と穹と雲と」

本作を読んでいただいただいている皆様、こんにちは!イエシアです!
今回、ついに本作は最終回かを迎えました!少し名残惜しい気もしますが、新作を出そうと考えているので、また読んでいただけると嬉しいです!
それではお楽しみください!


その日、新くんは帰ってきませんでした。次の日も、その次の日も、その次の日も……

 

 

 

 

私はその日、あの公園のベンチで新くんの帰りを待っていました。

すると、

「早苗ちゃん!?」

聞き覚えのある声がどこからが聞こえてきて、その声の方向に目を向けると、そこには親しい友人、「森近霖之助」がいました。

「早苗ちゃん!やっと見つけたよ!みんな心配してるよ!!」

「霖之助さん!!」

私は久々に会う友人に出会えたことを霖之助さんに抱きつき、涙を流して喜びました。

「帰ろう。みんなの所に!」

私は唸ずこうとしました。でも、何か引っかかるのです。

それは、すぐに分かりました。

「待ってください!!まだ…まだ新くんが帰ってきてないんです!!」

「新くん?誰だいそれは?」

「この世界で私を助けてくれた私の大切な人…彼と話したい…話してそれから決めてもいいですか?」

 

 

 

 

でも…新くんは帰ってきませんでした。日が暮れても、日が昇っても、また日が暮れても…きっと、何も食べてないに違いない。どこかで寒さに凍えて苦しんでいるかもしれない。どこかで大怪我をして動けなくなってるかもしれない。きっと、誰かの助けを待っているに違いない。そんな新くんの姿を想像すると胸が張り裂けそうで、いてもたってもいられなくなって、家を飛び出そうとすると霖之助さんに止められて、

「このままあと五日帰ってこなかったら幻想郷に帰ろう」

と言われました。

私は泣きながら、

「新くんに助けて貰った恩を返したい!!今すぐ新くんを助けたい!!」

と叫びました。

でも霖之助さんは、

「ここで君まで居なくなったら君を待ってる人達はどうなる!?」

と、やはり私はを止めるのです。

「やっとの思いで新くんのことが分かってきたって言うのに、こんな形でお別れするなんて絶対に嫌です!!」

 

新くんは私を助けてくれた。新くんは私を褒めてくれた。新くんは私を支えてくれた。新くんは私に人を想う大切さを教えてくれた。

 

これからももっと貴方と一緒にいろんな気持ちを分かち合いたい!!

 

私は霖之助さんの羽交い締めを振り払って家を飛び出していました。

「早苗ちゃん!?」

 

「新くぅぅぅぅぅん!!」

 

私は走ります。体が傷だらけになっても、走り続けます。

私は叫びます。愛する人の名前を。声が枯れても。

 

私が新くんにかけた迷惑の方が何倍も新くんの負担になったから、新くんを追い詰めたから。

私が新くんの力になれたことの方が少ないから、これからその数を増やしたいから…

 

 

 

どこだろう。ここ。どこかの山か、森みたいだ。

あそこから逃げ出して何日経ったのかな。もう何日も何も食べてないや。おかげで走る力も残ってないし、起き上がる力もほとんど残っていない。涙はとっくの昔に枯れ果ててしまった。

 

全てわかっていたことなのに。自分じゃ東風谷さんを支えられないなんてこと、最初からわかってたのに。それでも諦めようとしなかったのは何故だろう。

今頃、東風谷さんは何してるだろう。ちゃんと、幻想郷で友達に会えただろうか。あの白髪の人とちゃんと結ばれただろうか。もう、俺の役目は終わったのかな。ずっと東風谷さんの隣に居たいって願いは叶わなかったけど、彼女の幸せを願って支えられたかな。ちゃんと、自分で決めたこと、やれたかな。

 

もうわかんないや。全部どうでも良くなって、難しい人間関係から解放された。やっと自由になれた。

 

 

 

 

見つからない。新くんが見つからない。あの優しい表情や、あの優しい声、あの優しい眼差し、たまに見せてくれる恥ずかしがる表情、もう二度と会えないなんて嫌!!君に嫌われててもいい。1度でいいからまた他愛もない話をして、一緒に料理を作って、また一緒にお買い物に出かけて、またあの海を、今度は2人ならんで笑顔で眺めたい!!

 

そして伝えたい!私のこの想いを!!

 

「新くぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!」

 

 

 

「こ…ちや…さ…」

聞こえた。東風谷さんの声が。なんで俺を探すの?幻想郷に戻らないと、みんなが待っているんじゃなかったの?あの男の人とはどうなるの?

浮かんでくるのは東風谷さんの心配ばかり。

 

でも俺のそんな考えとは裏腹に、俺の体は東風谷さんの声に呼応して動き始めていた。

その声の方向に向かおうと、最後の力を振り絞って立ち上がろうとしていた。

もう体力なんて残っていないはずなのに。

徐々に戻ってくるあの気持ち。今までネガティブな考えだった俺の頭が、東風谷さんの声を聞いて色鮮やかなものに変わっていく。

 

そうだ。俺は…俺は東風谷さん…いや、早苗のことが…

 

 

────好きだったんだ!!!!

 

 

「早苗ぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

「新くん!?」

声が聞こえる!!私を呼ぶ、新くんの声が!!何度も聞いたあの声の面影がある!

 

 

どうやら森の中に俺は横たわっていたらしい。少し急な斜面を転がり落ちると、俺は道路に投げ出された。

 

あと少し!あと少しで早苗にまた会える!

 

あと少し!あと少しで新くんにまた会える!

 

 

俺はボロボロの体を奮い立たせ、直感を信じて走り出した。

 

私は体の傷が痛むのを我慢して、直感を信じて走り続けた。

 

「「あれは…」」

 

「早苗!!」

「新くん!!」

 

2人は抱き合い、お互いが生きていることを確かめあった。

やっと会えた喜びからか、涙がとめどなく溢れて止まらなかった。

「早苗だ!やっと会えた!俺の大好きな早苗!」

「新くん!もう絶対に離さない!大好きな新くん!」

 

俺は早苗に向き直り、今までの事を謝った。

「ごめんね早苗。何も言わずに居なくなったりして。」

私はそんな新くんの涙で潤う目を見て今までの事を謝った。

「私の方こそごめんね。新くんが悩んでることに気づいてあげられなくて。」

「ううん。でももういいんだ。苦しみも悲しみも、幸せも喜びも全部2人で分かちあって生きたいんだ。だから…俺と付き合ってほしい!!」

俺は伝えた。自分の想いを。今、俺が早苗に伝えたい言葉の全てを詰め込んで。

 

「そんなの、新くん答え聞かなくても本当は分かってるくせに!!喜んで貴方について行きます!!」

 

 

 

 

 

「本当にいいのかい?早苗ちゃん。みんなに事情は説明するけどさ。」

「はい。私はこの世界で生きていきます。」

「分かった。じゃあ、新くん。早苗ちゃんを頼んだよ。」

「はい!」

「これで僕はお暇するよ。紫さん!!」

突如、森近霖之助の後ろにスキマが現れ、その中から女の人が顔を出した。

「二人とも、お幸せにね!!」

その女の人、「八雲紫」は森近霖之助を隙間の中に入れ、手を振って消えた。

「行ったみたいだね。」

「はい。でも、悲しくないです。」

「ホントに?」

「はい!だって、私には貴方がいるから!!」

 

 




本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!
今まで応援してくださった皆様や、本作を読んでいただいた皆様には感謝してもしきれません!新作も頑張るので、どうか応援よろしくお願いします!


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