ゲゲゲとキメラ人 ((´鋼`))
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キメラ人

 日本人は無意識の信仰を人々は行う中、畏怖の念の存在を現代人は忘れつつある。しかしそんな世の中であろうとも、摩訶不思議を体験する人間も居れば探求の道に進む人間とて居る。勿論、ただ探求するだけではなく実際にやってみようとする大馬鹿者と大馬鹿者と捉えられる人間も居る。これはそんな一人の大馬鹿者の話し。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 高速道路を運転し、身体に轟々と当たっていく生暖かな春風をひしひしと感じながら東京に向かう。今年の4月に1回生として勉学に励むのだが、住居を決める際に居候という形でお世話になる家まで一走り。

 

 しかし、やはり東京に近づくにつれて交通量が多くなっていくのが分かる。基本人混みは苦手なのだが在学する大学が東京にあるのだから仕方の無いことだけれども、正直言って東京という街に嫌悪感を持っているから何で東京にあるんだよオイ、と受験後にグチグチと文句を言っていた。

 

 そろそろ東京に降りる頃合いだ。さてさて、久々に裕太に話をしようかね。あの子、本当に妖怪やら不思議な話やらが大好きだし、こっちも話しがいがあるってものよ。でも全部実体験のことばかりだから、話していいのかは分からんけども。

 

 そんな訳で特に何事もなく居候先に到着した。強いて言えばようやく閑静な住宅街にたどり着いて……っち、面倒なの見つけた。んでこんな時間に【夜道怪】が出没してるんだよ。お前活動時間黄昏時か夜だろ、出てくんなアホ。名前守れよ。とにかく気付かれないように急いでベルを鳴らさなければ……。

 

 

「ヤドウカ!」

 

 

 あぁんバレた!もーやだ、大体こんな目に遭うからさぁ。持ってる力が力なだけに遭遇率が実際通常より高いし、若い頃に怪異ばっかに突っ込んで体質なんか変わったし。殆ど自業自得じゃねぇかいい加減にしろ。

 

 ん?おーどしたどした2人とも。おっ?ヒョウに乗って警告してくるとな? そりゃまた……って待て待て待て! 過剰戦力だから、龍神の時点で妖怪アウトだから!あ、この2人も妖怪だわ……って違うから!取り敢えず無視を決めておこうか。

 

 ともかくバイクから荷物を取って……んあ、小豆くれ? まだお外でしょうがいい加減にしなさい。分かったから用意してくれた自室に入ったら上げるから、せめてもう少し待っててててて!バランス崩れるちょまっ! 案外力強いからね2人とも!

 

 わちゃわちゃと揉まれながら玄関のベルを鳴らす。そうすると待たずとも聞きなれた声が出迎えてくれた。

 

 

〔はーい!待ってて!〕

 

 

 家の中でドタドタと足音が響きこちらに向かっているのが分かる。そしてドアが開けられると中から小学四年生ぐらいの眼鏡をかけた少年が羨望の眼差しを向けていた。

 

 

「おう裕太、久しぶりじゃのぉ。」

「久しぶりお兄ちゃん!」

「元気しよったかね? また色んな話しあるき、楽しみにしちょいてよ。」

「うん! あ、早く入って! 案内するから!」

「これこれ、焦らんでもえいき。先に裕太のお父さんとお母さんに挨拶せにゃね。」

 

 

 やはりというか、なんと言うか。裕太は可愛いねぇ。ここまで話を聞きたいってことに好意が持てるし。ふはっ、どうやら俺も話がしたいみたいだ……って2人とも髪引っ張るな。毛根死滅したら小豆没収するからな。

 

 




|ω・`)

|彡

|つ【衝動が抑えられなかった。反省してないです。】


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キメラ人 裕太視点

 今日僕の家にお兄ちゃんが住む日だ。お兄ちゃんといっても遠く離れて暮らしているし、そもそも家族ってわけじゃない。でもいつも優しくしてくれて、お兄ちゃんが体験した不思議なことをいつも聞かせてくれるんだ。幽体離脱して色んな場所に行ったことや、【座敷童子】と一緒に暮らしていたりとか!

 

 でも座敷童子って、家から離れたらその家は不幸になるっておばあちゃんから聞いたことがあるけど……大丈夫なのかな? それに幸福を呼ぶってことだと龍神と鳳凰がそれぞれ……えっと、二柱ずつ居るって。確か神様の数え方が“柱”だから合ってるはず。

 

 お兄ちゃんが来るのを待ってると玄関のチャイムが鳴った。すぐにモニターを見るとお兄ちゃんが何やらフラフラとバランスを崩しそうにしているのが見えた。

 

 

〔はーい!待ってて!〕

 

 

 そう言ってすぐに玄関まで向かう。ドアに着いて開けると大好きなお兄ちゃんが笑顔でそこに居た。

 

 

「おう裕太、久しぶりじゃのぉ。」

「久しぶりお兄ちゃん!」

「元気しよったかね? また色んな話しあるき、楽しみにしちょいてよ。」

「うん! あ、早く入って! 案内するから!」

「これこれ、焦らんでもえいき。先に裕太のお父さんとお母さんに挨拶せにゃね。」

 

 

 のそりのそりと家に入るお兄ちゃん、まだフラフラしてるし髪まで引っ張られてるから座敷童子がイタズラをしているみたいだ。といっても実際に見えてるのはお兄ちゃんだけで、僕には全然見えない。だから羨ましいって思っちゃう。

 

 それでも今たった1人だけ僕の話をちゃんと聞いてくれたり、質問にもちゃんと答えてくれるお兄ちゃんだ。しかも妖怪のことを調べる勉強をしているんだ。でもお兄ちゃんが言うには見方が違うから全然違う内容って言ってた。

 

 お父さんとお母さんにあいさつをしたら僕が手を引っ張って部屋まで案内する。空き部屋が1つだけあったからそこを使ってもらうんだけど、あそこ元々すごいホコリだらけで、お兄ちゃんが住むことが決まったからがんばって掃除したんだ。でも何だか変に涼しいから妖怪が居るのかなと思って見渡してみたけど、僕には見えないから諦めちゃった。

 

 

「ここだよ、お兄ちゃん。」

「ほぉ……ほぉ?」

「どうしたの?」

「この部屋、何かおるねぇ。」

「何かって……妖怪!?」

「そこまでは分からん。まぁ見てみんと何も言えんきの、ちょっと待ちよ。」

 

 

 そう言ってお兄ちゃんはその部屋に入り、僕も入ってみた。僕が見ても何にもわからないけれど、お兄ちゃんは部屋の左の隅っこの戸棚の方をずっと見ていた。ふとその戸棚の方まで歩いて、取手に手をかけた。勢い良く戸棚を開けると、お兄ちゃんは声をあげて後ろに下がった。

 

 

「うぉっ!」

「お兄ちゃん!?」

「大丈夫で、にしても……あっ逃げたな。」

「逃げたの!?」

「【納戸婆(なんどばばあ)】やったで。“ヒョー”()うて逃げおったわ。多分アイツが変な気の源やったみたいやな、もう変な気はせんし。」

「えー!見たかったー!」

「裕太やったら尻もち着いて暫く動けんと思うで〜?」

「違うもん!」

「ハッハッハッ、そう怒らんでえいき。外国のお化けの話するで。」

 

 

 結局その話が聞きたくてお兄ちゃんの準備を手伝うことになった。でも外国で見た【タキシム】っていうお化けはすごく面白かったし、少し悲しくなった。




裕太君視点

そういえば裕太君最近出てないよね。


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名無きにしも非ず

「おっし裕太、ヘルメットしたかね?」

「うん!」

「おっしゃ行くかぁ!」

「おー!」

 

 

 ハンドルを回してエンジンを蒸かし公道を走っていく、2人乗りは大丈夫なバイクだからまぁ良いとしよう。何が良いのかは俺自身も良く分かってない。4月9日の今は裕太を学校に送っているところだ。

 

 こちらもそろそろ大学が始まるが、準備は既に終わってるし何も問題は無い。にしてもこの辺りは本当に静かで過ごしやすいな、いっその事移住も良かったり……せめて妖怪からは少し遠くから見守る感じの関係性でありたいんだけどなぁ。

 

 ほら所々変なの見える、やだやだ本当にもー。妖怪じゃなくて幽霊なんだけどさ、それでも見ているこちら側としては不気味に思えて……思えて……やばいこれを普段通りと思ってる自分が居るんだが。

 

 裕太の通う学校の校門前に到着し降りて、裕太からヘルメットを返してもらい裕太を降ろす。

 

 

「裕太、学校で何かあったら言いよ。あ、また迎えに来るきね。終わったら電話しいよ。」

「うん! 行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい。」

 

 

 ふぅー……こうして送り迎えするのも良いもんだ。裕太の良い顔が見れて満足満足。

 

 

 

『ご主人の周りに亡霊共が集まってくるのも知れて満足満足。』

「おい馬鹿止めぃ、現実逃避してたのに戻すな。」

『仕方なかろう。実際危険な目に逢いそうなのに、警告を出さぬものは居らんよ。』

「あー聞きとう無かった。ちょっと撒くかね。」

『おー。』

 

 

 いそいそとバイクに乗って時速は守って走りましょう。それで俺を見ている亡霊どもは追いつけなくなりますので……いやホント誰に言ってんの俺は。街並みは大体覚えたからちょっとお出かけって感じで行けば楽しめるな。

 

 何かゴミ漁ってる変なの居たけど、気にしない!気にしないったら気にしない!

 

 

『さっきの半妖じゃったな。喜べご主人、同類が居ったぞ。』

「やったねタエちゃ……って乗らせるな阿呆。」

『乗らんのかいご主人、そこは波に乗るみたくノリノリで乗らんかい。』

「ヤダわこんちくしょう!」

 

 

 信号交差点で止まる。通勤中の街並み、交通量の多い車が大体見かける幽霊や妖怪エトセトラが加えられて普段の街並みが微妙な紫のモヤで不快な色合いで装飾されてマース、やだよこんな街並み。

 

 頭が痛くなってくるわこんなん、普通の街かと思ったら妖怪絡みのきな臭いもんがプンプンしてるじゃねぇか。そして一番奇妙なのが……目に見えて分かるぐらい妖力が、いんや邪気か。1本線みたく伸びてる、コイツを追ってみるか。

 

 

笑鬼(えき)行くで。」

『合点承知之助、行くかのぉ。』

 

 

 古臭い受け答えをしつつこの漂ってる邪気を追跡してみる。追いかけてみるが何処まで続いてるのか分からなくなってくるものの、必ず原因に辿り着くのは確証していた。そうして暫く走り、中学校の最寄りの公園に着いた。

 

 入口付近に停めてヘルメットを脱ぎ抱えて公園を探索する。親子で遊んでいるところを他所に俺は周囲や上を見るが……痕跡があるだけで何も分からなかった。

 

 

『逃げたかもしれんな。いんや若しくは、相手にもされんかったとかの。』

「まぁ……何も無けりゃ良いんじゃけどの。そっちの方がありがたい。」

『違いない。』

 

 

 ただこの時俺が呟いた願望は、叶わぬものとなっていくことには何者であれ気付きはしなかった。



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