ドッタンバッタンフロントライン (焔薙)
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番外資料
作品資料


まぁ参考程度に


【Guarigione】

 

ケレスが院長を務め事務員のカルカノM1891が人気の整体院、人間は勿論、人形のメンテナンスもエステも行っている。費用は要相談、正し人形のメンテナンスは少し割高、グリフィン相手だと更に上る

 

評判は良く、通院してくる患者も少なくはない。普通の街の整体院といった感じの可もなく不可もなくなお店である。因みにだが出張サービスも承っており連絡一本で直ぐに駆けつける

 

【ケレス】

年齢 35

 

身長 170

 

体重 それなり

 

バスト そこそこ豊満

 

性別 女

 

当作品の主人公、整体師としての腕前は当たり前によく、人形の整備士としても非常に高い能力を持ち合わせている。性格は人当たりがよく気さく、だが少々型破りなところがあったり面倒臭がりだったりする。それ以外にも人形も人間も別け隔てなく接し、本編のような光景を見ると胸糞悪くなりついつい首を突っ込む所があったりする

 

服装は大体決まっておりロングブーツにスリットの入ったロングスカート、カッターシャツ、白衣であることが多い、部屋で寛いでる時は白衣は脱ぐがそれだけである。因みにスリットの入ったロングスカートなのは後述する義足を使いやすくするため、スカートなのに立体機動とか飛び回ることを普通にやるので下着が見えたりするがそんなのを一々気にしたりしない、と言うか見ても仕方ないでしょとか思ってる

 

元々は正規軍の特殊部隊の隊長であり、とある作戦で両足、右手、左目を失い退役。だが作戦の成功には多大に貢献しており、また今までの功績を盾に義肢と義眼にあれこれ注文をつけ更に正規軍の技術部門がノリノリになってしまった結果

 

左目:人間用にダウングレードした射撃アシスト、暗視装置搭載

 

右腕:指先からスパイクに変形後、ワイヤー射出される機構が搭載、スパイクは勿論だがワイヤーも切れ味がよく本編のように人体を輪切りにしたり何処かに打ち込んで自身をその場所に移動するフックショット的な使い方もできる(早い話がスラッシュハーケン)

 

左足:膝部分にグレネードランチャーを搭載、強度もかなり高め

 

右足:膝部分に刃物を搭載、近接時に突然起動させ不意をつくこととか出来る

 

と色々大丈夫なのかこれと言うものがが出来上がった、メンテナンスは自分と同居人に手伝ってもらっている。他にもピースメーカー、小型の投げナイフなどを所持しておりいざという時には迷いなく使われる(そして怒られる)

 

また正規軍の特殊部隊隊長を勤めてただけあって戦闘力は高め、ハイエンドモデル相手でもタイマンならエリートだろうが問題ない

 

容姿は端麗であり実年齢より若く見られることが多く、髪はマリンブルーのウェーブが掛かった肩くらいの長さ、顔付くも良くて目は少々キツめの印象がある、右はワインレッド、左はエメラルドグリーンとオッドアイなのが特徴

 

交友関係もそこそこあり正規軍とは流石に連絡をとっていないが新たな上客としてグリフィンのクルーガーやヘリアン、ペルシカとの繋がりがあったりする




やりたい放題に盛ったらこんなキャラが……扱いきれるかはちと分からん


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本編
ファーストコンタクト


動かしやすいキャラを目指したら属性過多になって好き勝手頭の中でやりだした不具合


街の一角、その中に存在する建物、どうやら店のようであり看板にはイタリア語で癒やしを意味する【Guarigione】の文字が刻まれている、何のお店かと言うと此処は整体院、しかしここの院長が少し特殊で人形のメンテナンスも担ってる、因みに普通の整体ならば特に必要ないが人形のメンテとなると完全予約制となっている、だが突如来ても割と普通に診てくれる

 

その診療室にて一人の女性が椅子に座りパソコンと向き合っていた。綺麗な白衣に身を包み、スリットの入ったロングスカートからはロングブーツが見えマリンブルーのウェーブが入った肩まである髪、整った顔に少々鋭い目は右はワインレッド、左はエメラルドグリーンとオッドアイが特徴的な彼女がこのGuarigioneの院長であり、名を【ケレス】と名乗っている。本名ではないが

 

見た目と診察を受けた患者からは腕も文句無しであり非常に人当たりがよく気さくな院長さんという非の打ち所がない女性に見られている彼女だがあくまで外面だけはというのが頭に付く、オフになればダラケにダラケて同居人に家事をぶん投げるその様はまさに残念美人と言う称号が輝いているだろう

 

カチカチと時計の針が進む音だけが響く診察室、ケレスもパソコンにデータを打ち終えたのか背もたれに寄り掛かり伸びをした所で診察室の扉が開かれ、一人の少女が顔を出す、ピンクの髪に勝ち気な顔の少女は【カルカノM1891】とある事情で彼女のもとで保護され働いている同居人の戦術人形だ、ケレスからは【カル】の愛称で呼ばれている

 

「院長、おばあちゃん来ましたよ」

 

「もうそんな時間だった?通してあげて!」

 

「畏まりました」

 

少し待ち患者である顔見知りの老婆が入ってくれば診察を開始する、と言ってもいつもの週一回の通院なので世間話を交えつつ不調はないか、何処か新たに痛む箇所はないかと言うのを聞いていき必要な処置を施してから

 

「じゃあ、何時も通りに貼り薬と痛み止め、一週間分出しておくね」

 

「悪いね、歳は取りたくないねぇ、ちょっとしたことで痛みが来ちゃうから」

 

「何言ってるのよ、まだまだ動けてるじゃない。はい、お大事にね」

 

ありがとうねと出ていく老婆、後今日は誰が来るっけなと書類を見れば午前は今ので最後だったようだ。それを確認してから彼女は机の引き出しから財布を取り出してから立ち上がり、待合室に出る

 

出てきたケレスに気付いたカルがどうしたのですかと聞けば

 

「ちょっと、外に出るだけよ。一応外には昼休み中って出しておくけど急患が来たら通信入れて頂戴」

 

「はいはい、無駄遣いしないでくださいね?」

 

「……考えとく」

 

院長!!とカルの叫びを無視しつつGuarigioneを出て、のんびりと歩を進める。大通りに出て週一度の移動式屋台の元気な客寄せの声を聞きつつ、いつもの雑貨屋に向かおうとした時、ふと路地裏に視線が向かった

 

音が聴こえたのだ、そして微かな声、見ればすぐに分かった、男二人が誰かに暴行を加えている。どうせチンピラ同士の小競り合いかと思ったのだが左目が更に鮮明に映してしまったそれを見て、はぁと溜息をついた

 

首を突っ込むつもりはなかったのだが、そう言い訳をしつつ徐に右手を、見るからに義手のそれを二人の男の片方に向けて

 

「まぁ、面倒事は今更よね」

 

つぶやきと同時に指先から鋭いスパイク状に変形して射出され男の頭部を貫いた。あまりのも突然の出来事にもう片方の男は貫かれた相棒を見ることしか出来ない

 

だがその呆けがいけなかった、もし直ぐに動きしゃがむなどしていればもう少し寿命は伸びたのかもしれないのにそれを出来なかった男は壁に刺さった五本のスパイクが巻き戻される際、ケレスは右腕を動かしてワイヤー部分をしならせ、男の顔にぶつければ、それはもう綺麗な輪切りが出来上がった

 

瞬く間に顔だけを輪切りにされ重力に従い倒れる男見ることもなく彼女は暴行されていた『人形の少女』の元へと歩き出す

 

「やれやれ、これはまたカルから有り難い小言を言われそうだよ……立てる?」

 

「……なんで、助けたのですか」

 

「なんで、か。そうね、私はアンタみたいなのを放おっておくのは嫌なの、って、ああメンドクサ」

 

複数の足音が聞こえケレスががそっちを見れば集団の姿、どうやらこの少女を持っていかれると何やら不都合らしい連中は既に銃を彼女に向けていた

 

「悪いな、そいつを置いて去るってんなら命は取らねぇぜ?」

 

「(数はそこそこ、やれなくはないけどこの娘をさっさと連れ帰りたいし)ごめん、ちょっと強引に行く」

 

えっという少女の声を無視して彼女を抱えると頭上に向けスパイクを射出、屋根に突き刺さったのを確認してから巻き戻しながら壁を駆け上がる、無論、連中は逃がす訳にはいかないと発砲するが器用に避け、屋根に着地

 

下からは男どもの叫び声が聞こえる、だが彼女の顔は非常に余裕があるものでこのまま逃亡するのかと思いきやヒョコッと下に顔を出して

 

「所で、それで全部?」

 

「撃て!!」

 

「うぉっと、危な。とりあえず全部っぽいかな」

 

返ってきた答えに苦笑しつつあれで全部なら好都合だと笑うケレスに少女は無表情のまま口を開く

 

「……私をさっさと連中に引き渡して下さい」

 

「それじゃ、アンタ死ぬけど?」

 

「構いません、どうせ……」

 

「じゃあ生かす、悪いけど選択肢なんてアンタにはもう存在しないから」

 

そのためにも下の五月蝿いの片付けますかとまた少女を抱えて屋根伝いに走り出し、連中が車に乗ったのを確認してから適当な路地裏に着地

 

男たちは遂に諦めたかと入り口を塞ぐように車を止めた瞬間、その全てが爆発で吹き飛んだ。辛うじて生きて燃え上がる車から這い出た一人が見たのは左足を膝から折り曲げて煙を上げているケレスの姿、馬鹿なと男が驚愕する、何処の世界に義足にグレネードランチャーを仕込む奴が居るのかと、しかもそれを追われていたとは言え街中でブチかます吹っ飛んだ奴が居るのかと、二度目の爆発、男の思考はそこで途切れた

 

アリーヴェデルチ(さようならよ)

 

「……えぇ」

 

ガコンと足を戻してから得意げにそう告げたケレスに困惑を隠せない少女、価値などない自分を助けるためだけに此処まで破天荒な行動を引き起こしたことに戸惑いを隠せない、何故という疑問が頭を埋め尽くす、でも

 

「安心、していいのでしょうか」

 

「良いよ、さて、帰ろうか。まぁちょっと騒ぎにはなるだろうけど私は知らないっと」

 

今度は少女をおんぶして再度スパイクを射出して屋根伝いに帰路につくケレス、気付けば少女は寝息を立てていた、安心しきったその顔にケレスは微笑み帰宅する。これはそんな色々ぶっ飛んでる女性、ケレスとそんな彼女に振り回される人形二人のお話

 

尚、帰宅早々に

 

「で、何したんですか院長?」

 

「あ、いや、これはねカル、助けるために」

 

「助けるために街中でグレネードランチャーぶっ放すバカが何処に居るんですか!!!弾代だって洒落にならないんですよ!!もういいです、今月の売上から院長の小遣い代を削ってそっちに回しますからね!」

 

「え、あ……はい」

 

めちゃくちゃ怒られた




こっちに縛りは存在しないけどそもそもメインの人形はカルカノM1891と本編で保護した少女だけなので問題なし

基本的に思いついたら書く程度だから更新速度は期待しないでくださいね、キャラ紹介は直ぐに書くつもりですが

因みにこっちは色々フットワーク軽くしてるのでフリーです、自由に使ってね!!


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ようこそ【Guarigione】へ

だから私が考えなしで悪かったって言ってるじゃん……(怒られて拗ねる三十路の図


帰宅早々に説教されたケレスは現在、とりあえず元気の出るもの作っちゃいますから彼女を寝かせて治療してあげてくださいとカルに言われ人形専用の病室のベッドに寝かせた彼女の処置を施していた

 

元はとても綺麗な人形だったはずの彼女、だが見るだけで分かるほど度重なった暴行、虐待、性欲のはけ口にも使われたのだろうという傷や痕が到るところに存在し、ケレス自身もここまで酷いのは初めてだよと悪態をつくほどだった。なので彼女が先ずしたことは髪の手入れ、本当ならば肌の傷の手入れもしたいのだが下手に服を脱がすと言う行為を行えば起きてトラウマを刺激してしまう可能性を考慮してのこと、ゆっくりと櫛を入れれば少し引っ掛かる感触が彼女の手に伝わる、やはり傷んでるかと眉を顰める

 

(相当長い期間、そういった扱いを受けたんだろうね……そりゃあれだけ擦れるわよ)

 

これは彼女が起きてからじゃないと本格的なのは難しいわね、そう考えたケレスは髪の手入れは簡単に済ませ、近くの機械を起動させる、すると機械が展開され180度から特殊なセンサーが当てられる。これはグリフィンのペルシカリアとの仕事の報酬で貰った機械でありコードなどを刺さずともシステム面でのメンテナンスを可能にする物、なのだが微妙に精度が悪かったりするので基本的にはコードを刺したりパッチタイプの物を付けたりするのだが今回の彼女は何かしらでトラウマを刺激してしまうかもしれないというのを孕んでいるため、とりあえずこれで何か問題がないかを調べてしまおうという魂胆だ

 

読み込まれモニターに表示されるデータ、それを見たケレスは驚く、型番だけを見れば旧式の彼女だが内部は高性能であり今の人形とも引けを取らないどころか一部は優位に立ててしまう性能をしていたのだ。だが同時にその一部の優位の項目で彼女がどういった目的で造られたかを簡単に想定できてしまった。その一部とは

 

(感情と表情のデータが異常に割り振られてる……ちっ、やっぱりそういう事か。最初っから真っ当な所で使う気はなかったようで)

 

今日だけで何回目かは数えてない悪態をつくケレス、またそれ以外にもなにか彼女に不利益になっているデータ、または盗聴などの監視データなどは入ってないかを一通り調べ、丁寧に削除、それから機械を停止させる

 

安心しきった顔の少女、もしかしたら生まれてからあのように誰かに守られるということすらもされずに生きてきたのかもしれない彼女の寝顔に思わず優しい笑みが溢れたケレスはベッド横の丸イスに座ってそっと頭を撫でればそのタイミングで

 

「うっ……あ、れ?」

 

「起きた?」

 

「っ!!??」

 

突如声を掛けられ驚いた少女は反射したかのように身体をケレスから離そうとするが彼女が寝ていたのは一人用の普通の大きさのベッドであり、そんな事をすれば

 

「ひゃああ!?」

 

可愛らしい悲鳴とともにドスンと落ちる、その反応を見てしまったなぁと思いつつ覗き込めば目を回している少女の姿、どうやら明確な拒否ではなく覚醒しきってないとことに声を掛けられ反射的な防衛的な反応だったらしい

 

「だ、大丈夫かしら?」

 

「貴女は……え、夢、じゃない?」

 

「まぁ、夢ではないと思うわよ?それに人形は夢見ないでしょう?」

 

「あ……い、今のは言葉の綾というのです」

 

はいはい、と何とも可愛らしい言い訳に適当な反応をすれば本当に分かってますかという視線が飛んでくる、その後自分でベッドに戻った少女にケレスはいくつか簡単な診断を行う。動きに異常はないか、気分に異常は出てないか、ところでお腹は空いてないか等など、必要なことから雑談までしていき、いよいよ本題

 

「さて、大体こんなもんか、じゃあ次、肌と髪の手入れ、したいんだけど大丈夫かしら?」

 

「あ、えっと……」

 

「そうよね、ごめん、流石にこれは私が無神経過ぎたわね、はぁこれ聞かれたらカルになんてどヤされるか」

 

「少なくとも少女心が分からないおばさんですかね、院長?」

 

わぁい辛辣と振り向けばエプロン姿で笑顔のカル、開かれた扉からはシチューと思われる食欲をそそる匂いが部屋に入ってきていた、どうやら昼食の準備が済んでたらしい

 

ケレスはそんな事務員の辛辣な言葉に凹み、少女は現れてそうそうそんな言葉を吐いたカルに驚いた顔をしていた。いや、それよりもと少女は今の会話に思ったことを口にした

 

「院長?それに、おばさん?」

 

「二度刺し!?」

 

「静かにしててくださいね、初めまして私はこの整体院【Guarigione】での助手と事務等などを担当してます【カルカノM1891】です。でこっちの凹んでいるのがケレス院長です、一応この整体院の院長さんで、年齢は35です」

 

「ねぇ、カル、怒ってます?」

 

「はい、とても」

 

だよね……と再度凹むケレス、それから二人の会話を聞いててカルは別のことに気付き、まさかと思いつつ

 

「所で、貴女は名前とかは?」

 

「……ないです。『おい』とか『お前』とかばかりでしたから」

 

「ちょっと、私だって流石にそれは聞かなかったわよ」

 

「寧ろ聞いてたらおかずが一品無くなってましたよ、でもそうですか……」

 

うぅむと目を閉じて悩むカル、彼女は気付いていた、ケレスがここに住まわせる気満々だということに、じゃなければ彼処までの会話が出てくることはないからだ

 

しかし、このまま悩んでいては折角のの料理が冷めてしまうと思考を切り替え先に食べてしまいましょうかと言おうとした時、凹んでいたケレスが顔を上げて

 

「ところでさ、アンタは行く宛がないわけだよね。ここで住まないかい?」

 

「随分と唐突に切り出しましたね、ああ、忘れてたのですね」

 

「悪かったって、ね、もう本当にそろそろ心折れるから私」

 

「あ、あの、え、居ても良いんです、か?だって、私あんな奴らに狙われて、きっとまた……」

 

少女が不安を最後まで言い切る前にケレスが彼女を抱きしめる、優しく、だけど力強く、まるで母親のそれのような抱擁、言葉にしないが彼女には分かった、安心しなさい、ともう怖がる必要はないと

 

「いい、のですか?」

 

「ええ、アンタさえ良ければ、ね」

 

「はい、これでも私達、腕っぷしは強いですからね」

 

「……ひっぐ、えぐ、おね゛がいじます、いさせてくだざい」

 

自然と涙がこぼれた、ここまで優しい物を感じたことがなかった少女は感情を抑えることが出来なかった、そんな彼女をよしよしと頭を撫でてそれから

 

「順序がいろいろごちゃごちゃしたけど、これからはもう家族ならアンタは悪いからね。【リベルタ】っていうのはどうかしら?」

 

「自由、ですか。悪くないのでは?」

 

「はい、ありがとうございます。リベルタ、私の名前……」

 

クゥぅと感動的な雰囲気の場に可愛らしい腹の虫がなる、その発信源を見れば、先程まで泣いていた少女【リベルタ】からだった

 

「なるほど、自由だ」

 

「ええ、自由ですね」

 

「ち、違います!これは自由とは関係ないですよね!?」

 

賑やかになるなこれは、ケレスとカルは互いにそう思いながら今度は恥ずかしさで枕で顔を隠しているリベルタを見て笑みをこぼすのであった




おかずが一品減ってた(そもそも昼食はシチューのみ)

リベルタ

今後のGuarigioneのツッコミ担当、カルと同じく事務員として働く、但しこっちは完全に民間な為に現状は戦闘能力は無い、近い内にペルシカの所に行くかもしれない、因みにだが名前こそ変わってるがドルフロのサンダーその人、これってオリジナル人形タグ入れたほうがいいんですかね……

なんか書けたので、次回からはいつ上がるかは分からないよ!!


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出張時の相棒

え、幾ら掛かったのかって?カルが二ヶ月程、口を利いてくれなかった位かな(死んだ瞳)(少しは金銭感覚を学べ三十路)


昼食を終えたリベルタは一人で入浴をしていた、これはカルが気を利かせ事前に用意しておいた物であり、それをありがたく思いながら熱いシャワーで自身の体を流していく、それからゆっくりと湯船に浸かる

 

熱すぎない丁度いいお湯の熱さで赤く火照る肌に浮かび上がる無数の傷跡、昼食時、ケレスがこう言っていた

 

「その体、傷跡も残さずに綺麗にする、それは約束するよ」

 

「まぁ、院長は腕は確かですからね~」

 

トゲしか感じられない言い方に本当に折れるからね!?と叫ぶケレスを思い出し、フフッと笑みが溢れる。いい人達だ、と、だが同時にもしあの時、ケレス院長に見つけてもらわなければ私はとIFを考えてしまいギュッと傷跡を手で抑える、ついさっきまで自身がされていたこと、あの男たちの下卑た顔、それを思い出し身体を震え呼吸が若干乱れる

 

「リベルタちゃん、替えの服置いておきますね!」

 

「っ!あ、はい、ありがとうございます!」

 

「いえいえ、お湯加減とか大丈夫ですかね?」

 

「大丈夫です、とても、気持ちいいです」

 

「良かったです、じゃあ何かあったら呼んで下さい」

 

その後、軽くのぼせそうになるくらいにお風呂を堪能し、用意してもらった服に戸惑いながらも着替えてお風呂場から出てくればちょうど洗濯物を干し終えたカルが彼女を見て

 

「あ、やっぱりよく似合ってますね!」

 

「ありがとう、ございます……本当にいいんですか、こんないい服」

 

「私が作ったのですが院長も私も着ないタイプの服だったので実はタンスの肥やしになってたんですよ、なので着てくれた方が嬉しいですよ」

 

「作った!?す、凄い……」

 

いや、唯の趣味ですよと笑うカル、そのタンスだけではなくクローゼットにもまだまだ様々な服が眠ってる事を知りリベルタが更に驚くのだがそれはまだ先のお話

 

そこでふと周りを見て気付いたリベルタがカルに聞く

 

「あの、ケレス院長は?」

 

「院長だったら車の整備に行きましたよ」

 

「車ですか?」

 

「ええ、この整体院、一応出張サービスもしてますから。グリフィン本部や基地の指揮官、重役、他の街からも噂を聞いて偶に連絡が来たりします」

 

「だから必要なんだ……」

 

「良かったらそこの扉から車庫に行けますから見て来てもいいですよ、多分、ここの手伝いを始めれば嫌でも乗ることになりますし」

 

言われ、では行ってきますと教えられた扉を開き廊下を少し歩いてけば、そこには小ぢんまりしているが車庫になっていて壁とかには工具やら整備に必要なものが一通り揃っており、中央には黒の【ミニクーパー】が鎮座していた

 

だが肝心の院長の姿が無い、何処に居るのかと思っていると車の下から声が聞こえた

 

「これで、よし。ごめんな~最近走らせてやれなくて……だが今日は本部に行く用事があるから存分に走れるからなぁ」

 

「ケレス院長?」

 

「ん、その声はリベルタ?ちょっと待ってて」

 

ガラガラと車輪の音と共に車の下から先程までの格好ではなくて作業着姿のケレスが現れる、先程のセリフから車の整備をしていたためか顔も少々汚れている

 

彼女はヨイショと立ち上がりつつ首に巻いてある手ぬぐいで顔を拭く、それからリベルタの近くまで行き

 

「車庫は、当然始めてよね。いらっしゃい、彼処に居るのが私の相棒の一人【ラムレイ】見た目こんなんだけど色々イジってあるから下手な軍用車よりも頑丈よ」

 

「えっと、どのくらいイジったのですか?」

 

「よくぞ聞いてくれました。窓や外装は勿論、耐弾耐爆仕様に、タイヤも勿論それよね。それから内部も全て出来るだけ正規軍で使われてるようなものを引っ張ってきて速度も余裕でブッちぎれるほどにしたわ」

 

正規軍、その言葉が出てきた時、ケレス院長は何者なのかと言う疑問が湧いた。簡単に言ってるがどう考えても普通に手に入るそれではないのは彼女だって理解できる

 

まさか、引っ張ってきてっていうのは盗ってきたという意味なのではという心配すら出てきて、思わず聞いてしまった

 

「あの、ケレス院長、正規軍から盗んだものを使うのはマズイのでは?」

 

「なんでそうなったの!?これは私が正規軍に居た時のパイプ使って格安で買ったお古よ、だから安心して頂戴」

 

「……え、正規軍に居た?ケレス院長って正規軍の人だったのですか!?」

 

あれ、話さなかったっけ?と不思議な顔をするケレスにしてません、聞いてませんと答えればあ~、そうだったかと呟いてから

 

「私、少し前まで正規軍の特殊部隊の隊長してたのよ、でまぁある作戦で成功のためにと滅茶苦茶な無茶をして左目と右腕と両足失ってね、前々から整体院をやりたかったのと人形の扱いに不満に思ってたこともあってそれを機に退役。今に至るってわけ」

 

出てきたのは予想を遥かに超えたケレスの経歴、聞いたリベルタは口を閉じるのも忘れるほどの衝撃を受けていた。その反応が面白かったのか少々笑ってから彼女はでもまぁと続ける

 

「今じゃそこまで連絡も取ってないわ、たま~に昔の仲間や技術部のヤンチャ連中が手紙を寄越したりするけど」

 

「は、はは、そうですか……(凄い人に拾われたのかもしれませんね私)」

 

乾いた笑いしか出ないリベルタ、そんな彼女には気付かずケレスは着替えが置いてある場所に向かい、徐に作業着に手を掛けて脱ぎ出した

 

「ちょ、あ、待って下さい、すぐに出ていきます!」

 

「え?別に気にしてないけど?」

 

「私が気にするのです!!」

 

そうかなぁ?と悩む声を背にリベルタは車庫を後にする、後にその事をカルに伝えれば

 

「ああ、気にするだけ無駄ですよ、同性なんだから気にしなくてもとか何とか言って治りませんし」

 

「えぇ……」

 

今日だけで一気に疲れてるリベルタ、だが世界はまだ彼女を休ませる様子はなかった

 

「カル、リベルタ、グリフィン本部行くわよ、準備して」

 

爆走、独走、激走、暴走、ラムレイが走る。リベルタは目を回す




ラムレイ
見た目は黒のミニクーパー、実態はカスタマイズが施されモンスターマシンと化した車。出張時や遠出の際に使われるがケレス以外には操縦は難しい程になっている、傷つくくらいじゃ問題ないが半壊とか壊れるとかなり凹む姿が見れる

リベルタちゃんの服は変更なし、あの服装。あの服のデザインかっこよすぎて困る


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グリフィンは割と鴨

だってあいつら身体に爆弾抱えてる人たち多いじゃん(身も蓋もない三十路


此処で一つ話をしておこう、Guarigioneのある街からグリフィン本部のある街に行くには普通の車ならば1時間、これは一般人にとっては命懸けの行動である。

 

と言うのも街から出れば鉄血と出会う確率が極端に跳ね上がるからだ、一応その地区担当の複数のグリフィン基地が戦術人形を使い辺りから排除してくれてはいるがそれも完璧ではなく残党や新たに流れてきた鉄血と遭遇、そのまま命を落とすこともザラではない、そんな危険な町の外、そこを爆走する黒いミニクーパーが居た

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁ!!!???す、スピード!!スピード出し過ぎですケレス院長ぉぉぉぉぉ!!!???」

 

「まだそんなに出してないわよ~、それにのんびり走るほうが危ないって」

 

予想を遥かに超えた速度で爆走するミニクーパー、もといケレスの愛車【ラムレイ】、その車内では当たり前だがこれが初めて乗るリベルタが顔を真っ青にしさっきまで見せていたクールな感じは鳴りを潜めそれはもう面白い顔をして絶叫していた。

 

一方、叫ばれたケレスがそんな感じに呑気に告げるのだがその際、後部座席の彼女の方を見ながら言うのでリベルタは指を前に刺しながら更に叫ぶことになる

 

「前見てくださいぃぃィィィ!!!???」

 

「なんだか、新鮮ですね、この反応……少し前までは私がやってたんですよねこれ」

 

「どうしてそんなに冷静にひゃっ!!??今飛んだ!?飛びましたよこの車!!???」

 

「大丈夫よリベルタ、これくらいじゃこの子はびくともしないからさ」

 

「私が言いたいのはそういうことじゃなくてですねぇぇぇぇ!!!???」

 

絶叫するリベルタ、呑気に返事しながら更にアクセルを踏むケレス、もはや慣れたので何とも思わないがリベルタの新鮮な反応にこんな顔もできるんですねと微笑むカル、そんな三人が本部がある街に着いたのは出てから20分後、40分近く短縮できる速度で走ったことになる。

 

街の検問に要件を伝え身分証を提示すれば直ぐに通され制限速度でラムレイを走らせながら本部を目指す、流石に本部の加護を直接受けれるだけあって街は自分たちの所より活気があり、治安もよいのだがリベルタは漠然と落ち着かないと感じていた。

 

理由はわからない、ただ何となく安心できないと言うべきだろう感情が渦巻く、それが顔に出ていたのか

 

「どうしましたリベルタちゃん?」

 

「え、何がですか?」

 

「浮かない顔、してましたよ」

 

「あ、いえ、何と言っていいのか分からないのですが……ちょっと落ち着かないなって」

 

落ち着かない?とカルが疑問符を頭の上に浮かべているとケレスがそりゃそうでしょと笑いながら

 

「確かに治安も良い、街に活気もある、だけどここはグリフィンのお膝元、妙な威圧感があるんでしょ、カルや私はもう慣れちゃったから感じないだけよ」

 

「言われれば私も初めて来た時とかはそんな気がしたかもしれませんね」

 

「でしょ?だからリベルタの感じたことは言っちゃえば正常な反応なのよ、っと着いたわ」

 

「ここが、グリフィン本部……やはり大きな所ですね」

 

「まぁ、小さかったらそれはそれで問題よね」

 

はいじゃあ行くわよと仕事道具を三人で分担して持ち受付に向かえば受付担当から声を掛けられる、どうやらケレスのことを知っているようでその口調は明らかに仕事用ではなく友だちと話すような感じだった

 

「はぁい、ケレス、今日こそ私の誘いを受けてくれるのかしら?」

 

「何度も言うけど私はノーマルだからね57、今日はペルシカからの出張依頼できたのよ、確認取ってもらえる?」

 

「あら残念、まぁ良いわ。少し待ってて頂戴」

 

受付嬢もとい【Five-seveN】が手元の端末から通信を繋いでる間、リベルタが先程の会話について聞く、彼女としては今のは社交辞令みたいな物だと思ってのことだったが

 

「いや、あれはマジよ」

 

「え……あ、いや、え?」

 

「彼女、両刀よ。私も一回本気で喰われかけたもの」

 

「偶々、私が気付いたから未遂でしたけどね」

 

「もしかして、私も気をつけない、ヒッ!?」

 

瞬間、リベルタの背中が寒気に襲われた、振り向こうと思ったが身体がそれを拒否する、なぜだかは分からないが振り向いてはいけないと警鐘が鳴り響いている。

 

気付けば彼女はケレスの背中に隠れヒョコッと顔を出していた、そこには笑顔のFive-seveN、だがその笑顔は彼女には捕食者のそれに見えた

 

「あ~、ウチの娘を怯えさせるの止めてくれないかしら?」

 

「そんなつもりはなかったのだけど、ごめんなさいね可愛い小鳥ちゃん、でも私優しい方よ?」

 

「言いながら舌なめずりするの止めて下さい、割と怖いですよ」

 

あらごめんなさいと本当にそう思っているのかわからない声に更に警戒を強めるリベルタ、それを見て更に笑みを深めるFive-seveNだったがこれ以上は流石に怒られると思ったのか顔を業務中のそれに切り替える

 

「さて、ペルシカには確認が取れたからこれ身に着けてね」

 

「あいよ、しっかり着いてきなさい、ここって割と入り組んでたりするから逸れると迷うわよ。じゃあね57」

 

「帰りの際はまた寄って頂戴ね、ケレス」

 

はいはいと手を振りながら歩き出すカルとリベルタも軽く会釈してから渡されたカードを首から下げて彼女の後を追う。

 

途中、きっと何度も来ることになるだろうと思ったリベルタは道を覚えながら歩くがそこで妙に視線が向けられていることに気付いた。この視線は知っている、興味本位の奴だと中にはそういう対象として見ているものすらある、そしてこれは自分だけではなくケレスやカルにも向けられていると。

 

だが二人は何も反応していない、きっと慣れているんだと思ったら自分が少し情けなく感じ少し顔が俯いてしまったがそこでポンとカルの手が彼女の頭を撫でた

 

「平気ですよ、奴らは見てくるだけ、手を出してくる奴らは居ませんからね」

 

「ん?ああ、カルの言う通りよ、少し前までは割とちょっかい出してきたりしてきたんだけど、最近は無くなったわね」

 

「そりゃそうですよ、手を出してきた奴ら、院長どうしましたっけ?」

 

「ちょっとオハナシしただけよ、っとと、行き過ぎる所だった」

 

オハナシとは、リベルタはそう疑問に思ったがこの院長の事だからきっと手を出したくなくなることしたんだろうなと自己解決しているとケレスがインターホンを鳴らし扉が開かれ、そこに居たのは

 

「やぁ、今回も頼むよ」

 

ネコ耳の目に隈が酷い女性【ペルシカリア】これが本部に来た理由、彼女から仕事の依頼が来たからであり、ケレスも彼女に用事があったからだ




受付嬢Five-seveNさん
両刀ガチ勢、因みにケレスが喰われそうになったのは一緒に呑まないかで酔い潰すという方法を取ったから、カルが迎えに来なかったら未遂ではなくなっていた

ペルシカとかヘリアンとかカリンちゃんとか体ボロボロだよ絶対


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身体は労れ

調子が悪くなって辛くなったら私を呼べばいいとか思ってる奴に容赦なんていらない(変な所で容赦がない三十路


依頼者、ペルシカリア、通称ペルシカと呼ばれる彼女は何を隠そう現在普及している第二世代戦術人形の母であり稀代の天才科学者である。

 

とまで書けば凄い人なのだがこういった突飛した天才ゆえの弊害とでも言うべきか、天は二物を与えずをと言うべきか、私生活はケレスと変わらない、もしくはそれ以上にズボラなのだ。

 

尚且、睡眠不足、運動不足等などetcのお蔭で割と身体にガタが来やすいようでケレスに出張を頼むのはこれが初めてではない、そろそろ親友と呼べるほどにはここに来ているかもしれない。

 

「はいじゃあ何時も通りそこのベッドに……ベッドの上は私達が来る前に片付けろって言わなかった?」

 

「あ、あ~、ごめん忘れてた」

 

「院長も人のこと言えませんよね?あれ、どうして目を逸らすんですか?」

 

どんぐりの背比べと言う言葉を電脳から引っ張り上げてしまったリベルタが軽く笑う、だがすぐに口を抑え周りを見れば自分に注目が集まっており、それからケレスがペルシカに

 

「ちょっと、娘に笑われたじゃない」

 

「それは君の私生活が問題あるからだろ?」

 

「お言葉だと思いますが二人共、五十歩百歩って言葉知ってます?」

 

敬意の欠片も感じられないバッサリとした物言いに言葉に詰まる二人、それを見て思わずまた笑ってしまうリベルタ。

 

それからカルが結局ベッドを片付けている間にペルシカが白衣を脱いでまずは椅子に座ってもらって状態を確認する。

 

「……何時もと変わらないか、あのさぁ、いつも言ってるわよね少しはストレッチとかしろって」

 

「面倒じゃんったい!!???」

 

「ああ?身体は労れって言ってるよね?天才の癖にそんなことは忘れるのか?」

 

「痛いっ!!??痛いから、ちょっと医者が患者苛めてあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!???」

 

「け、ケレス院長、不味いですよ、不味いですってそんな力込めたら!?」

 

ペルシカの言い分にキレたケレスが不必要なくらいに力を込め凝ってる部分を押せば当然かなりの痛みが走りペルシカが叫ぶ、がどうやら前からだったようで今回は許すつもりのない彼女は泣き叫ぼうが力を緩めず更に押しラボに叫び声が木霊する。

 

リベルタはそんな彼女を止めようとするがどう止めれば良いのか分からずオドオドする、と言うか有名な博士に容赦なさすぎますよ院長と思っているとベッドの片付けが終わったカルがケレスに近付いて、スパン!といい音を響かせ頭を叩いてから

 

「院長、ふざけてないで仕事して下さい、殴りますよ」

 

「殴ってから言う言葉じゃないわよね!?」

 

「……」

 

「あ、はい、仕事します、ほらペルシカベッドに横になる」

 

「君は少し患者の扱いを考えるべきじゃないかな」

 

あんた以外はキチンと扱ってるから無問題よと言いつつ残りの処置は丁寧に行っていく、それを見て一安心だとリベルタが息を吐いているとカルが

 

「リベルタ、良いんですよああいう時は容赦なくなぐ、違った。どついてでも止めちゃって」

 

「聴こえてるからね~?」

 

「聞こえるように言ってるんですよ院長?」

 

「え、でも……」

 

まぁいきなり私みたいにやれっていうのは酷ですよねと軽く笑いながらテキパキとケレスのサポートをしていく、まさに出来る女性と言った感じの立ち振舞いに尊敬の目になるリベルタ、私もこうなりたいと思う、彼女の中でカルがよく出来る優しい姉という立場になった瞬間である。

 

一方、ケレスは命の恩人であり自分を先程からサラリと娘と呼び自分も彼女を母親のように感じている、が少々抜けている人かもしれないとも感じていた。

 

「ああ、そこそこ、で彼女、リベルタだっけ?どうしたんだい?」

 

「ちょっとね、それで彼女のことで話があるんだけど」

 

「あまり大変なことじゃなければいいよ、あ、ごめんもう少し下かな」

 

広がってるじゃないと愚痴りつつ言われた場所を押せばまた気持ちの良さそうな声を上げるペルシカ、数十分のマッサージ後、終えた彼女達はペルシカが出したコーヒーと紅茶を飲みながら一息ついていた。

 

あんな容赦のないマッサージだったはずだがしたあとはすこぶる調子がいいらしく体をしきりに動かしては

 

「いやぁ、助かったよ。また宜しく」

 

「報酬さえ払ってくれればいいけど、少しは身体を大切にしないと駄目よ」

 

ああ、覚えておくよと言うが多分駄目だろうなぁと短いながらのやり取りで悟るリベルタ、カルも片手を頭に当て溜息を付いてる所を見るに何時もこの会話が行われているんだろうなぁと苦笑を浮かべる。

 

それはケレスも同じで全く調子が良いんだからと呟いてから

 

「まぁ、今回はこっちも用事があったから良いんだけどさ、ペルシカ、ちょっとうちの娘、二人共一回見てくれない?」

 

「む?別に構わないけど、君に所でも見れるじゃない、駄目なの?」

 

「駄目って訳じゃないけどさ、あんたの方が人形に関しては腕は良い、それにリベルタの方はちょっと怪しいところからぶん取ったようなもんだから内部の識別を私に移してほしいのよ」

 

「ああ、そういう。良いわよ、じゃあリベルタ、少し失礼するよ」

 

やはり他の誰かに触れられるというのは怖いのかリベルタは気付けば近くに来ていたケレスの手を強く握り締めていた、握られたケレスも優しく握り返せば安心したような顔になりペルシカの診断を受ける。

 

こちらは数分で終わり、もう大丈夫だよと言ってから

 

「うん、これで君は完全にケレスの娘だ。次はカルだね『彼女』は元気かい?」

 

「ん?えっと、私は元気ですよ?不調もありません」

 

「うんうん、なら良いんだ」

 

今の会話に疑問を覚えるリベルタだったがケレスもペルシカも深く聞かないのでとりあえず触れないでおく、それから簡単な問診、機械を使った検査を終えたケレス達はペルシカに別れを告げ本部を後にする。

 

こうして彼女の初めての出張体験は終わったのだが、そこでリベルタは忘れていた、帰るということは

 

「……あ、安全運転でお願いできませんか?」

 

「え、安全運転よ、ほら乗った乗った」

 

「リベルタ、厳しいようですが諦めて慣れてくださいね」

 

帰り道、トンデモナイ速度で爆走して少女の叫び声が木霊する車を見たと噂になったとかならなかったとか




こっち随分と雑や無いか!!!うん、やっぱり二作同時進行は頭のキャパが死ぬ、ちょっと後悔してる

ペルシカ
常連の一人、事あるごとに呼ぶくせに自分で改善しようとしない、でも金払いは良いので無碍に出来ない上客。自分はケレスよりズボラではないと思っている


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Guarigioneの朝

あと、一時間……(休日のお父さんみたいな三十路お姉さん


リベルタを保護し、ペルシカの依頼を済ませた翌日、彼女はカルの自室で目が覚めた。

 

と言うのもリベルタの部屋は準備は出来ていたが流石にいきなり個室に一人は可愛そうだということで最初はケレスの部屋で寝ようかと言っていたのだが。

 

「あの、院長?部屋は片付けてますか?」

 

「……いや、私とリベルタ位なら寝れるわよ」

 

「リベルタ、今日は私の部屋で共に寝ましょうか」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

今の微妙な間から多分碌に片付けられてないなこれ、そもそも一昨日掃除したばかりなのにもう汚くしたのかと思いつつリベルタを部屋に案内する

 

その後ろでえ、あれ、ちょっと?とケレスが言うがカルの懸念どおり、本当にギリギリ二人が寝れるくらいであり、足の踏み場もない汚部屋、流石に駄目だろうと言われること間違い無しの有様だった模様。

 

目が覚めた彼女は隣を見ればそこには既に誰も居ない、どうやらもう起きて家事を始めているらしい、手伝うつもりだった彼女は慌てて起き昨夜カルが用意しておいてくれたまた別の服に着替えて部屋を出れば丁度、朝食の準備をしているカルの姿

 

「お、おはようございます!ごめんなさい寝過ごしました」

 

「おはようリベルタちゃん、良いんですよもうちょっとゆっくり寝てても?」

 

「いえ、住まわせてもらうのに呑気に寝てるなんて出来ません、何か手伝います」

 

そうですかと手を顎に当てるがカルとしては別段手伝ってもらうことがないというのが本音だったりする、しかし断ればきっと捨てられた子犬みたいにシュンとしてしまうのを思い浮かべると無碍にも出来ない。

 

さて、どうしましょうかと考えそこでふと気付く、彼女の今までを考えるともしかしてと思い

 

「ところでリベルタちゃん、家事とかって何が出来ますか?」

 

「……えっとそう言えばしたことないかも

 

彼女的にはものすごく小言で言ったつもりだろうがこれでもライフルの戦術人形であるカルには割とはっきり聴こえて苦笑を浮かべる、しかしこの働き者の意思には素直に嬉しいので

 

「ではそこにある、料理や食器等を並べてもらっていいでしょうか」

 

「あ、はい、任せて下さい!」

 

テキパキと配膳を始める、どうやらこういった事も初めてだったようで少々危なかっしさも感じるがそれでも彼女の顔は輝いており、カルも思わず頬が緩む。

 

リベルタの手伝いもあり何時もより早く終わった朝食の準備、だがケレスはまだ起きてきていない。

 

「起きてきませんね、院長」

 

「まぁ、今日は定休日だからって言うのがあると思いますけどだいたい私が起こさないと寝てるんですよあの人……」

 

定休日だったんだと驚くリベルタ、そこからそう言えばまだこの整体院の事は何も知らないと気付き、カルに聞いてみれば

 

「ここは火曜日と日曜日を定休日にしてるんですよ。まぁ余程の急患なら定休日でも診たりはしますけどね」

 

「そうだったのですか、でもそろそろ起こさないと冷めちゃいますよね」

 

「ですね~、リベルタちゃんは先に座って少し待ってて下さい、起こしてきちゃいますから」

 

全くあの人はと言いながら彼女の部屋に向かうカルを見送ってから自分は言われた通りに座って待つことに。

 

彼女にとっては食卓に並ぶ料理というのも昨日のシチューが初めてであり、朝食とか昼食とかの時間ごとの食事だって同じく昨日が初めてだ、更に昨日はシチュー一品だけだったが、今日はスクラブルエッグにベーコン、サラダにスープにパンまで揃っている、ある種豪華な食事なんてもっての外な世界で生きてた彼女。

 

はっきり言えばかなり楽しみだった、早く来ないかなとチラチラ、ケレスの部屋がある方向を見てしまうくらいに

 

「う~、私は良いから食べちゃいなよ~」

 

「何言ってるんですか院長、あの娘に寂しい思いさせたいんですか?」

 

料理の誘惑から耐え続けて数分、念願の声が聴こえ、自分でも気付かないほどにキラキラした目でそっちを向けばボサボサの明らかに今さっき起きましたという顔のケレスとしかも服装はブラは付けておらず黒い下着にTシャツ一枚と言う格好にリベルタは顔を赤くするがそれでも挨拶をしてみる

 

「おはようございます、ケレス院長」

 

「んあ、ああ、リベルタおはよう、ファ~、よく寝れた?」

 

「はい、あんなフカフカのベッド、初めてで、気持ちよかったです」

 

「そうか、んっん~、じゃあ食べようっか」

 

「やれやれ、食べる前に顔洗ってきてください」

 

え~、面倒と渋るがニッコリ笑うカルに何かを感じ取ったケレスは何も言わずに頷いてそそくさと洗面所に消える、相変わらずの力関係にまだ慣れないリベルタは少し引き攣った笑みを浮かべていると、顔を洗い終えたケレスが帰ってくる。

 

その顔は先程の眠たげなものとは違い、覚醒した感じではあり動きも昨日見たしっかりした物になっていた、服装は相変わらずだが、という訳で遂に我慢できなくなったリベルタは

 

「あの、院長、服は?」

 

「へ?」

 

「だからせめて上下はしっかり着たほうが良いって言ったじゃないですか」

 

「いや、だって暑いし……それよりほら、朝食食べちゃいましょ?」

 

どうやら普段からこれらしい、もしかして院長は普段はだらしない女性なのではとリベルタが思うが、いやいやいきなりそう考えるのは失礼でしょと思い直す、尚、大当たりだったと気付くまでそんなに掛からない模様

 

ケレスの事は一旦置いておき、彼女の言う通り朝食を食べ始めることにした、絶妙に胡椒が効いてるカリカリのベーコン、フワフワなスクラブルエッグとパン、温かいコーンスープ、一口食べてはしっかり味わい感動するリベルタ、昨日も見た光景だがそれでも心安らぐそれにケレスもカルも優しい顔で見つめる。

 

「美味しい?」

 

「はい、とても美味しいです」

 

「ふふ、なら作ったかいがあります、今日の昼食も張り切っちゃいましょうかね」

 

至って普通の家族の団欒のような朝食、彼女は思う、今日は一体どんな楽しいことがあるのだろうかと、でもそれはそれとして

 

「やっぱり、せめてブラは付けたほうが」

 

「……寝てるときに窮屈じゃんあれ」

 

ケレス、彼女は家にいる時のだらし無さは酷いものである。




家族のやり取りみたいな感じになりそうかなこの小説、基地じゃないからこその一日みたいな。まぁ時にはラムレイで爆走したり義肢で暴れたりするけどご愛嬌ってことで

向こうとこっちの温度差でそろそろ自分が死ねそう


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院長は人気者

まぁ、ここで整体院開いて長いからねぇ(どっちかと言うと腕っぷしが有名だと気付け三十路


朝食を終え、ケレス達は街を買い物がてら散歩をしていた、買い物と言っても昼食及び夕食の材料とリベルタが部屋に置きたい小物くらいであり本来の目的はリベルタに街を案内しつつ、ケレス達と交流ある者に彼女の顔を覚えて貰うことだ。

 

「やぁ、おやっさん、儲かってる?」

 

「おお、先生じゃねぇか、まぁボチボチだなぁ」

 

その内の一人、食材屋の店主にケレスが挨拶すれば向こうも笑いながら返してくる、このお店は彼女達もよく使い、また店主も彼女の整体院を利用する間柄である。

 

一応、今回の散歩の目的を聞かされていたリベルタだが店主を前にした瞬間、カルの後ろに隠れてしまっている。

 

「ボチボチなら良いじゃないの、聞いた話だと少し離れた街なんか悲惨みたいよ」

 

「そりゃあ、鉄血が猛威奮ってる場所なんかはそうだろうよ、やぁカルちゃん、とおや、見ない顔だね」

 

「こんにちは、おじさん。ほら、大丈夫ですよこの人は院長の常連の一人ですし」

 

そう促されカルの後ろから出てくるリベルタ、当たり前だが人間不信は直ぐにどうこう出来る問題ではない、なので信頼できる人間だとしても彼女が慣れるまでは出来る限り側にいて怖がらないようにするようにしている。

 

対して店主の親父さんは怒るでもなく彼らしい笑顔でリベルタに向き合い、軽く頭を下げてから

 

「始めましてだな、おらぁここの店主をしてもんだ、先生とは彼女がここに来てからすぐの付き合いだよ」

 

「こ、こんにちは、リベルタ、です」

 

「どう、可愛いでしょウチの娘?」

 

「呵々、だがウチの嫁さんには負けるなぁ?」

 

お、言ってくれるわねこの愛妻家めと互いに軽く笑い合い、数十分程四人で雑談をしてからじゃあまた後で買い物に来るよ次の目的地に進む。

 

雑貨屋の老婆、小物店の若いお姉さん、カルが良く利用している服屋のおばちゃん、どの人もリベルタを見て優しい笑顔で挨拶をしてから彼女が楽しめそうな世間話、小物店や服屋ではこれ似合うんじゃないなどで少々もみくちゃにされたがリベルタには不思議と嫌な感じはせずに自然と笑みが溢れた。

 

「知らなかった、こんなに暖かい人たちが居るなんて……」

 

「そうでしょ、貴女が知ってるところも確かにこの街の一部だけど、本当はこんな感じに優しい街でもあるのよ」

 

「私が救われたのもこの街に院長が居たお陰もありますがこの街の人が死にかけていた私を見つけ直ぐに院長を呼んでくれたお陰でもありますからね」

 

「そうだったのですか?」

 

「ええ、まぁその話は後にしましょうか。院長、次は何処に?」

 

「一番の問題児共」

 

たった一言のそれにああと何故かドナ・ドナされる子牛を見る目で自分を見つめるカルに自分がこれからどんな人達に会わされるのかと不安になるリベルタはそっとケレスの方を見れば、優しく頭を撫でられてから

 

「私のそばを離れないようにね」

 

「もっと不安になるんですけど!?」

 

ヘーキヘーキと軽く言うケレスにいや、本当にどんな所に行かされるんですか私!?と今からガクガク震え始めるリベルタとそれを眺め、ああまぁ昔の私だな~と呑気なことを考えるカルの三人が辿り着いたのは何の変哲も無い雑貨ビル、ここのその問題児がと疑問に思うリベルタだったが、それは建物内のとある部屋に入った瞬間に理解した。

 

「姉御に姉さん!?来るなら一言言ってくれれば全員で迎えましたのに!」

 

「良いわよ、大体全員でって街の見回りどうすんのよ、それでなくても怪しい奴ら紛れ込んでたってのに」

 

「なっ!?も、申し訳ございやせん!!この責任は俺の指で」

 

そこに居たのは明らかにカタギではない男性、見た感じ今は彼一人しか居ないようだが言葉から察するに複数人居るようで、更に街の見回りも彼らがしているようだがケレスの一言で顔を青ざめながら懐からドスを取り出して小指を切り落とそうとするその光景にヒッと声を引きつらせるリベルタ。

 

一方、ケレスはそれを見てはぁと大きなため息をついてからドスを持つ彼の腕を掴んでそれはそれはいい笑顔で

 

「要らないっての、今日はウチで迎えた娘の顔を覚えてもらおうってだけで来たのよ」

 

「姉御の娘、ですかい?」

 

「あ~、えっとリベルタちゃん、大丈夫ですよ、怖いですけど怖くないですからね~」

 

男の鋭い視線がリベルタを射抜けば彼女はカルの背中に隠れ服をギュッと掴んで震えてしまう、流石にこの手の異性の前に出すとか鬼ですか貴女は!とカルの厳しい視線にあ、と言葉を詰まらせるケレス、それから彼女の側まで行き

 

「ごめん、少し迫力が強すぎたね」

 

「だ、大丈夫、です。えっと、り、りり、リベルタ、です」

 

「無理しなくても、院長~?」

 

ああ、うん、私が完全に悪かったとバツが悪そうに頭を掻き、それから男の方を見れば真剣な目で何かをスケッチして少し待てば

 

「おし、これでどうでしょう」

 

「お、相変わらず見た目に合わない似顔絵術持ってるわよね」

 

彼が見せてのはリベルタの似顔絵、それもかなりレベルが高くこれならば他の仲間達もすぐに覚えるだろうという出来、此処に来たのはこれが目的だったのでそれが済んだ以上長居は無用だなとケレスが男、この事務所のボスに手短に他の要件を伝えてから彼女達は事務所を後にした。

 

「あの、先程の方とはどういう繋がりなのですか?」

 

「まぁ、簡単に言えば喧嘩売ってきたから徹底的に潰したら手下になった的な?」

 

「そ、そうですか」

 

なんだかどっと疲れたなぁとため息を突いているとそれを見たカルがジトッとした視線をケレスに送りつつ

 

「大丈夫ですかリベルタちゃん、院長、やはりあの方々といきなり会わせるというの流石に酷ですよ」

 

「そうよね、でもほら早めに顔覚えておいたもらったほうが良いと思ってさ、でもそうよね、帰りになにか食べようか」

 

「え、いや、そんな大丈夫です!」

 

良いから良いからとケレスがまた優しく頭を撫で、カルは言葉に甘えちゃいましょ、どうせ少ない院長のお小遣いからの奢りですしと笑う。

 

それを聞いて、まだ何処か遠慮はあるもののもう染まりつつある彼女はじゃあ、と先ほど街中で見て気になったものを口にする。

 

「カフェの、パンケーキが食べてみたいです」

 

リベルタ、少しだけ自分の意見を出すことを覚える。




事務所のボス
極東の島国にあったヤクザというものを真似た方々の集まりのボス、組長と呼ばれたがっているが全員ボスと呼んでいる。主に裏と表の見回り、違法な店の浄化などをケレスから言い渡され遂行しているが漏れも出る。特技は機械顔負けの似顔制作。

ドッタンバッタンは週一を基本にしていきたい


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もう一人の家族

実は私は二重人格なのよ(ミステリアスガール


あの後、カフェでパンケーキ(フルセットモデル)を満喫したリベルタだったが、少し前にちらっと出たカルの話が気になっていた。

 

彼女は死にかけてこの街に来た、でも聞けば彼女は戦術人形、つまりそれは

 

(戦場からの敗走人形?でもそれだったら連れ戻されてるだろうし)

 

考えるがだからといって彼女のことをあまり知らないリベルタが答えに辿り着くということはなく、しかし気になると言えば気になってしまう彼女は夕食後、自身が入浴後にカルがお風呂に向かったタイミングで意を決して

 

「あの、院長……その一つ聞いていいですか?」

 

「うん?何かしらリベルタ」

 

「今日、カルさんがポロッと言った死にかけで街に着いて、それで院長に救われたと言う話、それって」

 

かなり遠慮気味に、いや自分でも凄く踏み入ったことを聞いていると自覚しているので聞いたけど罪悪感で殺されそうな声と顔でリベルタが聞けばケレスはあ~と頭を掻き、チラッとお風呂場の扉から聴こえる鼻歌を確認してから

 

「ま、気になっちゃうわよね。いいわ、でもあの娘には秘密ね、ちょっと絡まってる話だからさ」

 

「は、はい、院長が言うならば勿論秘密にします」

 

「ありがと、って言っても簡単にだけど……あの娘はね、元々二つ先の地区にあった司令部、そこが壊滅し鉄血から逃げ延びてきた人形なのよ」

 

始まりから衝撃的なカルの過去話、彼女はケレスの言う通り司令部が鉄血の襲撃で壊滅、何とか軍用車でこの街がある地区まで逃げてきたのだが途中で別の鉄血に見つかり攻撃され、命からがらに辿り着き助けられた。

 

と言うのが『カル』が記憶しているストーリー、では実際は、というと

 

「カルだけじゃなかった……妹【カルカノM91/38】も一緒だったのよ、いえ、それも違うわね」

 

「違う?」

 

「生きて辿り着いたのはカルカノM91/38だけだったのよ、カルはその時すでに手遅れなレベルだったのよ」

 

え、と言葉が漏れる、だって今ここに居るのはカルなのだから、そんな感じの顔をしていたのだろう、ケレスはええ、貴女の疑問はご尤も余と言い続けた。

 

「だからこそ、私は妹の方だけでも救おうとした、だけどそれを彼女が拒否して……」

 

【私が、生きても仕方ないわ、お姉さんを、助けて】

 

懇願のそれをケレスは隠すことなく彼女はすでに手の施しようがないと言うも、それならば今度は自分のコアを使えと、それで姉を救ってくれとカルカノM91/38は何度も、ケレスに伝えれば彼女は

 

「カルを、妹のコアと複合させる形で蘇生させた、いえ、複合なんてものじゃないわ、あの娘のコアの9割は妹の物なのだから」

 

「でも、それだったら人格は妹の人格が出るはずでは」

 

「……ふふ、それはそうね、今日の夜分かるわよ」

 

は?と小首を傾げた所でカルがお風呂から出てきてその話はそこで打ち切りとなりケレスはお風呂場に消え、残ったリベルタはカルの顔を見る。

 

そこにあるのは何時もと変わらない彼女、いやそもそも妹の性格も知らないのでどっちかはわからない、だがケレスの言葉から今此処にいるのは間違いなくカルであると思えば余計に訳が解らなくなるリベルタ

 

「どうかしましたかリベルタ?」

 

「え、あ、いえ、何でもないです」

 

秘密だと言われてる以上、聞くわけにもいかずにその日もカルの部屋でともに寝ることになり就寝した。

 

就寝後、深夜という時間にリベルタは隣でカルが起きたのと頭を撫でられた感触で意識が浮上し目を開けば

 

「あら、起こしてしまったかしら、いえ、それとも気配を感じやすのかしら?」

 

「カル、さん?」

 

まだぼんやりとした視界に映るのは当然ながらこの部屋の主であるカルなのだが、何かが違うとリベルタは直感する。

 

話し方や口調、いやもっと直接的に違う何かがあると視界をクリアにしていけば分かった、目の色が違う、本来のカルは赤い、だが今の彼女は青い瞳だと気付いた時、やっと眼の前の彼女は違う人物だと気付けた。

 

「ええ、カルよ」

 

「違い、ますよね?」

 

カルだと名乗ったが間髪入れずにリベルタがそう告げれば、バレちゃったと手を口に当て含み笑いをする、それから観念したように

 

「初めまして私はカルカノM91/38、ケレスからは【カノ】と呼ばれてるわ」

 

「あ、リベルタ、です」

 

「ええ知ってるわ、(カノ)からはお姉さんの記憶が覗けるから、逆はできないから私がこうして人格だけ生きてるのは知らないし、これからも知らなくていいのだけど」

 

それを聞いて何故?となるリベルタ、生きているなら知らせてあげればいいのにと姉妹とはそういうものではないのかと思っていればカノはフフッと優しく微笑み

 

「世の中、嘘が必要なときもあるの、例えばそう……『この街に辿り着いたのは初めから自分一人だった』とかね」

 

「それは、院長から聞きました、でもどうして」

 

「だって、辛いじゃない、妹の命で自分が生き残ったなんて、それが私の望みだとしてもね」

 

そう語るカノの顔に未練はなく、姉の記憶に自分が居ないということに寂しさも感じられなかった、それは覚悟していたことだから、言葉になくともそう語っている。

 

だがリベルタは見えた、それが嘘だと、確かに殆どが本音だと思うがそれでも一つだけ嘘があるのを感じ、だがどう言葉にすればいいのかがまだ分からない彼女はその行き場を失った感情をどうすればいいのかわからなくなり、気付いたら

 

「あ、れ?」

 

「っ、そう、貴女も泣いてくれるのね……」

 

涙が溢れていた、それを見たカノは驚きながらも優しくリベルタの涙を指で拭い、優しいのねと言葉を掛け頭を優しく撫でる。

 

暫くリベルタの啜り泣く声が響くその間、カノは彼女を撫でる手を止めずに窓から夜空と月を眺め、あの日もこんな夜だったなと思い出に浸る。

 

「私は、お姉さんが生きていれば満足なのよ、でも、そうね、こうして、泣いてくれる人たちが居てくれるのはやっぱり嬉しいかも」

 

誰からも記憶に残らないのは寂しいものと呟いた所でリベルタが静かだなと見れば穏やかな寝息を立てている彼女、意外とマイペースなのねと微笑み、それから静かに、本当に囁く声で

 

「お姉さんを宜しくね、可愛い可愛い、妹さん」

 

カルカノM91/38、大好きな姉からは既に記憶から去っているがそれでも彼女は生きて静かに見守っている存在である。




カルカノM91/38
カルの妹であり通称【カノ】、だがカルの記憶からは存在そのものが全て消えており彼女からカノを認識することは出来ない。だがカノからカルのすべてを感じ、見ることが出来るので前に出てきた時に会話の齟齬が出ることはない、またこの時のカルは意識がなくなっている状態になる。

週一って言ったの誰だよオラァン!!!


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