獣少女と共同生活!? (【夕立】)
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第一話 ウサギの少女

初めましての方は初めまして。見たことある人はありがとうございます。
【夕立】と申します。
この作品はあらすじの方にも書きましたが、この作品は「ノベルバ」というサイト(アプリ)で投稿されたものと内容は同じです。
このサイトにも投稿した理由として様々な理由がありますが、理由の一つとして友人があります。まぁ、そんなに大層な理由ではないですけど……。

さて、この作品は頭にパッと出てきた妄想などを物語にしているだけですので、結構設定がガバガバだったりします。すいません。
なので、そこら辺は暖かい目で見て下さると有り難いです。


4月。

社会は入学式や入社など、様々な形で新たな出会いを迎える時期。

勿論、この俺朝倉 誠(あさくら まこと)もその1人だ。

プログラムの会社に勤めて3年。流石にプログラミングにも慣れ、そこそこ安定した地位を手にした俺は、今日もいつもと変わりのない日常を送っていた。

納期や新入社員の面倒見などがあったりなど、少しいつもとは違うかもしれないが、それは誤差の範囲。俺の平和な日常は何一つ変わらない。

会社から帰宅する途中に電車に乗るのだが、睡魔に襲われて寝てしまい、いつの間にかよく分からない土地まで来てしまったが、幸い帰りの電車もある。……1時間半も後だが。

仕方なく時間を何処かで潰そうと考え、たまたま周りを見渡すと登山道らしき小道を発見。

一本道らしいので迷う心配もない。時間も腕時計で確認出来るので、見ながら歩いていれば間に合わないという事は少ないだろう。

……が、そんな慢心があんな大変な事になるとは思ってもいなかった。

******

山の中間くらいまで来ただろうか。広い空間が広がった場所へと繋がり、そこには小さな池があった。

夜空は星々が輝き、その夜空池が鏡のように移す。それは幻想的で、とても綺麗な光景だった。

目を奪われて見ていると、近くで草が不自然に動いた。

小動物でも動いたのだろうか……?

好奇心でその草に近づき、ゆっくり音を立てないように覗いてみる。

すると、そこに居たのはウサギの耳が付いている少女がスヤスヤと寝ていたのだ。

……なんでこんなところにコスプレ少女が?

見た感じ、高校生くらいの女の子。服はちょっとボロボロだが、長い耳と丸い尻尾はそこまで汚れていないように見える。

家出したコスプレ少女とか初めてみたぞ?まぁ、家出少女自体見たの初めてだけど。

時刻は22時を過ぎており、親御さんも心配しているだろう。

 

「こんな所で寝ていると風邪引くぞー」

 

少女の身体を揺すりつつ、声を掛けてみた。

するとウサギ耳がピクピクと動き、ゆっくりと目を開けてこちらを見た。

 

「……あ、人間さん。おはようございますぅ」

 

まだ寝ぼけているらしく、目をこすりながら返事をした。

ここの地域の子だろうか。……じゃなきゃここには居ないか。

 

「もう夜も遅い。送って行ってあげるから、もうお家に帰りな?」

「そうですね……。ところで、今何時ですか?」

 

彼女は時間を聞いてくる辺り、時計や携帯電話などを持っていないのだろう。今時の子にしては珍しい。

腕時計を見ると、時刻は22時25分。電車は約一時間後に来るわけだから、送っていっても間に合うとは思う。

 

「えっと、22時25分だね」

「えぇ!?もう22時を過ぎてしまったのですか!?」

 

時間を伝えてあげると、22時を過ぎている事に焦っていた。門限とかなのだろうか?

女の子は慌てながら辺りをキョロキョロ見渡し、空を見上げ、大きなため息をついた。

 

「大丈夫?門限とか?」

「いえ、22時を過ぎてしまったので家に帰れなくなってしまったんです」

 

……家に帰れなくなった?

電車はまだあるし、バスは……通ってると思う。

家の人が厳しくても、流石に『帰れない』というのは可笑しい。

ここはもう少し事情を聞いてみよう。

 

「えっと、家に帰れないって何か理由でもあるの?」

 

そう質問すると、彼女は息を整え、真剣な目でこちらを見た。

 

「はい。私、ご覧の通り白ウサギなのです」

「うん、ちょっと待って」

 

ご覧の通り、白ウサギだと?

誰がどう見てもウサギのコスプレとかにしか見えない。これをウサギと言う人は居ないと思う。

 

「えっと、俺の目に狂いがなければだけど、何処から見てもコスプレをした女の子……だよね?」

「違いますよ!コスプレとかじゃなく、しっかりとしたウサギなんです!証拠に……って、何で私人間の姿になってるんですかぁ!?」

 

彼女は自分の姿を確認すると、また驚いた。

自分の手や足、耳や尻尾を触ったり見たりして確認した。

その仕草ひとつひとつが可愛い。23歳独身の俺、感動。

しかし、動物が人間になるなんて聞いたことがない。漫画やアニメの世界ならありそうだが。

彼女自身も何故人間の姿になっているのか分からない辺り、自分自身の力で人間の姿になっているのではないのか。

 

「とりあえず、君のことを教えてもらってもいいかな?」

「は、はいです……」

 

そう彼女は警戒しながら話してくれた。

彼女の話を簡単にすると、彼女は別の世界から来たらしい。

その別の世界というのが、動物達だけの世界。アニマルワールド的なものに彼女は住んでいた。

その世界には人間年齢でいう18歳になると、別の世界の森で一週間暮らし、生活や行った世界の記録などをして帰ってくるというものがあるらしい。

彼女もその最中で、今日で7日目だったらしいのだ。

彼女が元の世界へ帰る方法は、21時から22時の間に御神木にお供え物を置くだけらしい。

しかし、突然の睡魔に襲われて寝てしまい、お供え物を指定の時間内にお供え出来なかった。

……今の俺もそんな感じだな。電車で寝過ごしてるし。

つまり、彼女は帰る場所がない。かと言ってここで過ごすとしても、見た目はコスプレ少女。警察に通報されかねない。

さらに、この世界の一般常識も知らない。これは色々とまずいのでは?

うーむ。この現状を他の人には知らせず、尚且彼女を安全に暮らせる方法……か。

まぁ、案はなくはない。が、彼女はそれでいいのだろうか?

……帰る手段が戻るまでなら大丈夫か。

そう考えた俺は、彼女にこう提案した。

 

「君は、ここの世界で過ごすには一人では大変だろう。もし君が良ければ、俺の家で過ごさないか?」

 

うむ、我ながら不審者っぽいな。

いや、この現状を知ってて周りに広めない方法。俺が彼女を守ってあげるしかないだろう。うん。これは最善の策なんだ。

彼女は、それを聞いて迷った。が、その迷いはすぐになくなった。恐らく、俺と同じような考えをしていたのだろう。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

彼女はペコリと頭を下げた。

こうして、俺とウサギの少女との共同生活が始まったのであった。




閲覧、ありがとうございました。
正直、この話を書いている途中でとあるアニメを見ていました。そしたら、途中なんかそれっぽくなってしまったので、どうせだからと書き直したりししてこの結果になりました。まだ似てる部分あるけれども。
初め、この作品を書く時に迷ったのが、どの動物を擬人化させるか。そしてその動物の擬人化の理由をどうするか。その2つでした。
その結果、目の前にチノちゃんの財布があったのでウサギにし、設定はガバガバになりそうと思いながら作りました。反省はしてます。

この後の話はノベルバにて六話まで公開していますが、ハーメルンでは少し時間を置いて投稿するつもりです。なので、連続投稿はせずに気ままに待っていてください。待ちきれないようならばノベルバを読むのをオススメします(ステマ)。

それでは、また次回に。


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第二話 共同生活

どうも、【夕立】です。
連続投稿はしてない。うん、してない。大体2時間空けたから(言い訳)。
それはさておき、第二話です。今回までが……導入かな?多分導入です。
ノベルバの方では、毎週金曜日を目標に投稿してますが、今週は都合上新しい話は書けそうにないです……。途中までは書いてるんですけどね。
前回の話で、「ウサギの情報が少ない」と言われまして、見直してみたら本当に少なかったですね。すいません。
因みにみぞれちゃんは白ウサギです。髪の色も白です。胸もおっきいです。
他にも情報はあるとは思いますが、パッと思いつく情報がないので、気になることを質問などしてくれれば考えます。なんか投げやりっぽくてすいません。


23時30分。

俺はウサギの少女と共に電車に乗った。

幸いにも、俺が持っていた帽子で耳を隠すことが出来たのだ。

とりあえず帽子で耳を隠してもらい、電車に乗り、俺の家まで行く。特にヤバイ事が起こらなければ問題ない筈だ。

彼女は初めての電車や景色を見て、目を輝かせていた。初めから電車だと分かったという事は、向こうの世界ではなくても、本などで見つけたりしたのだろうか?

彼女に色々聞いた所、向こうの世界でこの世界の事は少し勉強したらしいので、最低限の常識などは分かるそう。それは助かった。

そして、彼女の名前。何故初めに聞かなかったのだ、俺よ。

彼女は『みぞれ』という名前らしい。ウサギっぽい名前じゃないんだ。因幡とか、兎斗(みと)とか。

しかし、普通に人みたいに呼べる名で良かった。日常生活でウサギっぽい名前で呼ぶのは気が引けるからな……。

それから約20分ほど経ったぐらいで目的の駅に到着した。

そして、その駅から歩く事15分。2階建のアパートに着いた。このアパートの102号室。ここが俺の住んでいる部屋だ。

因みに、ここのアパートの管理人は高校2年の女の子。部屋が101号室と隣の部屋な事もあり、結構仲が良いと思う。

俺は部屋の鍵を開け、玄関に入ると電気を付けてみぞれを中に入るように言った。

みぞれは小さな声で「お邪魔します……」と言って入ってきた。

部屋は居間と寝室、トイレや風呂があり、結構広いと思う。

とりあえず、彼女を居間に通して適当に座らせた。俺はスーツ姿だった為、部屋着に着替えるから待っててと伝え、寝室に移動した。

スーツからラフな格好へと着替え、急いで居間に戻る。みぞれは慣れてないだろうし、変な物出してなきゃいいけど……。

しかし、彼女は机の前にちょこんと座ったまま。良かった、何かを漁ったりはしていないようだ。

ひとまず、彼女にお茶を出して話を聞こう。共同生活をする上で、聞きたい事は色々ある。

 

「さて、いくつか質問するけど、言いたくなかったら答えなくてもいいからね?」

「私が答えられる範囲でなら、何でも答えますよ」

 

ん?今、何でもって……?

いや、ふざけてる場合じゃない。真面目な話なんだ。

とりあえず、最低限聞いておきたい事は食事の事や一般常識を何処まで知っているか。まずはここら辺を聞いておくか。

 

「えっと、その身体になってもウサギの食事と同じなの?」

「恐らく、人間の食事でも大丈夫だとは思います。後、一応短い時間ならウサギの姿になっている事も出来るらしいです」

「ほう。具体的にはどの位の時間、ウサギになっていられるのか?」

「えーっと、10分位ですかね?」

 

ふむ。結構長いようで短いな。来客が来た時はウサギの姿になってもらうか、寝室に隠れてもらうか。そうゆう事になるな。

んで、食事も一緒で大丈夫って事は、2人前作るようになるだけなのか。手間もかからないから楽だな。

 

「それじゃあ、人間の知識はどれくらい知ってるの?」

「えっと、私は18歳なのでその歳ぐらいまでの知識はあると思います」

 

そりゃ便利だな。マナーとかルールを教えたりする手間が省けるって感じだな。

うん、聞きたい事は済んだ。明日土曜日だし、彼女の服とか買いに行ってもいいな。

そ、その……今着てる服もコート着てるだけにしか見えないし。中に何か着なくていいのか……?

 

「それじゃ、君は今日からここで住む事になるけど、聞きたい事とかあったら聞いていいからね?」

「はい!何から何までありがとうございます!」

 

こうして、俺とみぞれの共同生活が始まるのであった……。

……あ、今飯がカップ麺しかねぇや。




閲覧、ありがとうございました!
いやー、来週でもう今年が終わりますね。とても早く感じます。
年末といえば、大掃除をしたり、コタツでミカンを食べたり、ガキ使や紅白観たりしますね。因みに自分はコミケに行きます。ガキ使も多分観ます。
さて、先に言いますが、みぞれちゃんは痴女ではないです。服は謎の力で殆どなくなってしまっていたのです。イヤーナンデダロウネー。
すいません、単に服のセンスがないので描写しなかっただけです。ちゃんと後で服の描写もしますので許してください。
次の話は覚えていれば明日に投稿するかと思います。今日はこの後用事があるので……。
次の話は、一応ショッピングです。服を買いに行きますが、寄り道します。ちゃんとその次の話には服買いに行きますので……。
ネタバレというより、次回予告?的な感じで考えていただけるとありがたいです。
それでは、また次回お会いしましょう、


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第三話 初めての外食(ファミレス)

ドウモ、【夕立】=デス。
今回は外食しに行きます。ファミレスです。
皆さんはファミレスと言ったら何処を思い浮かべますか?
サイゼリア、ジョナサン、ガスト、デニーズなど……色々ありますね(ネットで調べたけど)。
自分はファミレスそんなに行かないですが、ドリンクバーの抹茶ラテが好きです。凄く甘いので食事前にはちょっと……って人が多いですが、自分は食事前でも2杯とか飲んじゃいます。
そんな中でも、今回はとあるファミレスにしました。理由はたまたま最近行ったからだった気がします。記憶が新しかったんです、多分。


土曜日の朝。

みぞれは寝室に寝かし、俺は部屋のソファーの上で寝ていた。久し振りにソファーで寝ると、身体がちょっと痛くなるな……。慣れれば問題ないが。

とりあえず、2人分の朝食でも……って、材料無いんだった。

仕方ない。予定を早めて食事をしながら買い物をする事にするか。

だが、みぞれが起きてくるまでは暇。テレビを観ながらコーヒーでも啜るとしようか。

 

******

「大きい建物ですねー」

「いつ見てもデケェな。このショッピングモール」

 

俺とみぞれが来たのは、最近できたショッピングモール。ここなら店の種類も沢山ある為、必要なものはここで全て揃いそうだ。

とにかく、まずは腹ごしらえ。

近くに丁度サ○ゼがあったので、そこに寄ることにした。

休日という事もあり、店内にはそこそこの人数の客がいた。待ち時間は……よかった。ないみたいだ。

店員に2名と伝えると、席に案内してもらった。みぞれは俺についてくるが、慣れない環境に戸惑っているのかキョロキョロと落ち着きがない様子。まぁ、自然界にはファミレスなんてないもんな。うん。

席に座ると、俺はとりあえずメニューを手に取りみぞれに渡した。

 

「俺は決まってるけど、みぞれはどうする?」

 

すると、みぞれはメニューを開き、1ページずつしっかり選んでいく。

18歳までの知識って事は、食い物は見た事あるのかな?分からなくてもメニューみたらある程度分かるかもだけど。

少し考えたみぞれは、メニューをテーブルの上に置いてとあるメニューを指差した。

 

「私、これがいいです!」

 

そう言って指していたメニューは、ミラノ風ドリア。うむ、王道だな。

俺は頷くと、店員を呼んだ。このピンポーンって鳴らすやつ、名前なんて言うんだっけ……。「ピンポン鳴らしてー」って会話で伝わってたから、正式名称知らねぇや。

呼んでから十数秒で店員が来た。俺はメニューを見ずにいつも食べるものを頼むことに。

 

「ミラノ風ドリアを2つ、シェフサラダを1つ。後、ドリンクバー2つお願いします」

「かしこまりました。ドリンクバーの方、あちらにございますので、ご自由にどうぞ」

 

そう言って店員は奥へと戻った。

とりあえず、ドリンクバーでも取ってくるか。

 

「みぞれ、飲み物でも取ってこようか」

「は、はい!」

 

そして、席を立った2人はドリンクバーコーナーへとやってきた。

みぞれはどれを飲もうか迷っているので、俺が先にブレンドコーヒーを選択。砂糖は……1本入れとこ。

みぞれは悩んだ末に、アップルティーを選択。俺サイゼのお茶とか紅茶系飲んだことないな……。

入れ終わった2人は、席へと戻る。みぞれがゆっくり歩いてこぼさないようにしているのがなんか可愛い。

席に戻った俺たちは、メニューが来るまで待つ。その間、俺は暫くみぞれを見ていた。

誰かと食べる飯……か。何だかんだであまり機会がなかった為、嬉しく思った。

俺は父親の顔を知らない。俺が小さい頃に離婚したらしいのだ。

そして、母は俺が高校の時に事故に遭い、亡くなった。

それ以来、俺は誰かと食事をあまりしなくなった。

勿論、会社で飲みに行かないか?と誘われる事もあったが、俺が酒を飲まない事もあり、あまり無理に誘わなくなった。避けてるわけではないらしいが。

その為、こうやって誰かと食事をするのが懐かしく感じ、楽しくも感じた。

そんな事を考えている間に、テーブルに料理が届いた。人間の姿での食事が初めてであるみぞれは、目の前に料理が置かれるとキラキラした目で見ていた。

 

「みぞれ、熱いから気をつけろよ?」

「はい!ちゃんと冷ましながら食べます!」

 

と言いながらも、すぐにスプーンですくって息で冷ますみぞれ。言葉といい、一般常識といい、食事といい……適正能力高くないか?

みぞれの食べる姿を見ながら、俺もドリアを食べていく。うん、やっぱり美味い。

この後は……まずみぞれの服を買って、皿とかも買いに行こう。そしたら多分いい時間になるから、夕飯の買い物して帰れば丁度いいかな?

そう考えると、結構今日は一杯一杯な1日になるな……。

よし、気合い入れて行くか!




閲覧、ありがとうございました!
はい。という事でサイゼリアでした。
ミラノ風ドリアは美味しいです。後、ミックスグリルも美味しいです。自分が頼むのは基本そのどちらかだと思います。
後、そこまで覚えてないにわかみたいな感覚なので、ん?ってなっても暖かく見てくれればと思っています。
……あー、なんかラーメン食べたくなってきたなぁ(唐突)。
さて、今回はこの辺で。また次回お会いしましょう!


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第四話 やっぱりみぞれは女性だなと思った

どうも、【夕立】です。
更新頻度を下げて、いつも(?)の更新頻度に近づけてみました。
……毎週金曜日だと、仕事とか疲れて見る機会が少ないかもですけど。
そんな事は置いておいて、今回は服を買いに行きます。
どんな服が出るんでしょう?個人的な趣味みたいなのもありますが、そこは気にしないで下さい。


食事が終わった俺達は、ショッピングモールにある洋服店に来た。勿論、俺がいつも来るし○むらではなく、今日はユ○クロに来た。多分女性服ならこっちの方がありそう(偏見)。

……まず、みぞれの服のサイズ俺知らねぇや。

と、言うことで知っているみぞれ自身に選ばせる事に。今まで貯金は貯めてあるし、ある程度多くても大丈夫。

みぞれは一着ずつ選んでいく。手に取ったと思えば戻して、また手に取ったと思えば戻す。その繰り返し。

やっぱり、こうゆうとこは女性なんだなーと思いつつ、見守る俺。親みたいな事してるな、俺。

服が決まったら後は下着か……。ここに確か売ってるよな?

まぁ、どちらにせよ俺が選ぶわけじゃない。みぞれに全てを任せよう。うん。

すると、みぞれがこちらに服を持ってきて話しかけてきた。

 

「誠さん、どっちの方が似合いますか?」

「んー、どっちも似合いそうだな。とりあえず試着でもしてみたら?」

 

そう言うと、みぞれは俺を連れて試着室まで小走りで向かった。

ふむ……。女性の服選びをした事ない俺にちゃんと務まるだろうか?素直な感想を言うだけでいいのかな?

いや、みぞれだったら着こなすだろう。女子高生なんてなんでも着こなしそうだし(偏見)。

そんな事を考えていると、中から「終わりましたー」と一言。それと同時に閉じていたカーテンが開く。

おぉ……、女の子らしい服装だ。

ちょっとモコモコした白い服に、黒っぽいスカート。眼福です。

 

「ど、どうですか?」

「うん、似合ってる。可愛いよ」

「ありがとうございます!」

 

どうやらご満悦のよう。返答はこんな感じで素直な感想でいいのか。

 

「それじゃあ、もう一着の方も見せますね」

「うん、待ってる」

 

そう言うと、またみぞれは試着室の中へ。

んー、次はどんな服が出てくることやら。ワンピースとかも似合いそうだし、ロングスカートとかもいいな。コートとかも似合いそう。

そう考えてると、また中から一言。次はどんなのかなー。

そう期待してると、カーテンが開く。

そこには、意外な服があった。

縦セーターである。

みぞれの胸が主張され、ちょっとぶかぶかの袖。ナニコレヤバい。

みぞれ、胸あるなーとは思ってたけど、これ結構あるよね?Eはあるよね?

 

「あの……どうですか?」

「買おう。それは買おう」

 

即決。ちなみにさっきの服も勿論買うが、これは買わなきゃ損。寧ろ着て下さい。

そんな変なイベント(?)がありつつも、買い物が終わった。

結構服などを買い、これで暫く服には困らないだろう。

みぞれも始めは遠慮していたが、試着して似合うやつはほぼカゴに入れた。お陰でカゴが2つ分一杯になったが。

縦セーターと横セーターはそれぞれ2〜3着ずつ。だって見たいからね。欲望には逆らえないね。

こうして、俺達はユ○クロを後にした。




閲覧、ありがとうございました!
胸が大きい人に縦セタを着させると、胸のところが更に主張してヤバイなーと考えていたのでこの服にしました。
恐らく、今後服の描写は少ないと思います。ファッションセンスが皆無なので……。
次の話はみぞれ視点のお話になります。いきなり視点が変わるかと思いますが、口調がガラッと変わるのでわかるとは思います。
が、未だみぞれの口調が個人的に定まってないので、ガバったりしたりするかもなのでご了承下さい。
それでは、また次回お会いしましょう!


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第五話 お留守番

どうも、【夕立】です。
なんだかんだで5日ぶりです。待っていた方、すいません。
七話まで出来てはいますが、週一投稿に近づけようとしたら感覚開け過ぎた感が凄いです……。はい。


月曜の朝7時。

眠たい身体を無理矢理起こし、スーツに着替える。

そう、とうとう会社の日が来てしまった。昨日までのみぞれとの有意義な休日を返してくれ……。

スーツに着替えた後、俺はリビングに向かいコーヒーとトーストを用意。

その匂いにつられたのか、みぞれも起きてきた。

 

「おはよう、みぞれ」

「おはようございます……。会社ですか?」

 

眠たそうな目をしたまま、みぞれは質問をしてきた。

それを見た俺は、トーストを追加で1枚焼き、りんごジュースを用意。みぞれはコーヒー飲まないからな。

 

「そ、今日から会社だから、留守番頼むよ。俺が居なくても好きに使っててくれていいから」

「わかりました。外に出る時は鍵を閉めておけばいいですね?」

「おう。ちゃんと戸締りしとけよ?」

「はいです!」

 

さっきまで眠たそうだったが、一度起きたからなのか元気な返事が返ってきた。

しかし、やはり心配だな。みぞれを一人にするのもあるけど、家が帰ったら散らかってましたーとかあったらと思うと……。

辞めよう。みぞれはいい子だからそんな事にはならない。……優しさが空回りしたらあるかもだが。

しかし、休む訳にもいかないので渋々仕事に行く俺。みぞれがいるいない関係なしに行きたくはないけど。

こうして不安要素が俺の心に残ったまま、俺は会社に向かった。

<hr>

誠さんが行って、初めて一人でこの家に過ごす事になった私。

しかも、念の為と言われて5,000円も置いていってくれた誠さん。私だってちゃんと昼食は作れます!……多分ですけど。

まだ時間は8時。今からお洗濯やお皿洗いなどをしても、誠さんが帰ってくるまで時間が沢山ある。

とりあえず、お散歩でもしようかな?

確か、ショッピングモールの帰り道に河川敷に連れてってもらったし、誠さんと出会った森にだって行ける。

あ、確かすぐ近くに公園もありましたね。行ったことないので、今日は公園にお散歩に行きましょう!

そうと決まれば早速準備です。

誠さんと買った服を身につけ、バックにお財布と家の鍵。そして誠さんに借りている携帯を持って準備完了!

戸締りよし、電気の消し忘れなし、家の鍵も閉めて……よし。

それじゃあ、早速お散歩開始です!

******

公園に着くと、おじいさんやおばあさん達もお散歩していたり、ウォーキングしている人、さらに子ども達もいます。

結構大きな公園で、子ども達の遊ぶ場所やちょっとした休憩スペース、図書館もあるそうです。

私は公園を1周しては深呼吸、また1周しては深呼吸。それを繰り返していました。

すると、足元にボールが転がってきました。

 

「そこのおねーさん!そのボール取って!」

 

どうやら、子ども達がボール遊びをしていたらしく、そのボールがたまたま転がってきたようです。

私は投げて届く自信がなかったので、ボールを持って小走りで子ども達の元へ。そしてボールを手渡しで返しました。

 

「はい、ボールです」

「ありがとう!おねーさん!」

 

ボールを手渡した少年は笑顔でボールを受け取りました。

すると、一緒にいたもう一人の少年がこちらをずっと見ていました。

気になった私は声をかけてみる事にしました。

 

「どうしたの?私に何か用?」

「おねーさんも一緒にやろうよ!」

「私ですか?いいですよ〜」

 

お誘いされた私は、一緒に遊ぶ事にしました。

最初はキャッチボール。彼らはボールの投げるスピードが速くて、中々キャッチするのが大変でした……。

すると、どんどん子ども達が集まっていき、鬼ごっこをする事に。

人数も多く、男女関係なく楽しく遊びました。私は足が速いわけではないですが、勿論子ども達の速度に合わせて走る事に。中々ペースを合わせると普通に走るより疲れる気がしました……。

そんなことをしていると、時刻はもう17時に。

子ども達は帰る時間なので、皆とお別れして私も帰ることに。

誠さん、確か今日は18時くらいに帰る予定と言っていたので、家でしっかりと待っていましょう。

帰り道をご機嫌に歩き、10分くらいで家に到着。

鍵を開けて、電気をつけたらすぐに荷物を片して台所へ。

ティーポット茶葉を入れ、お湯をゆっくりと入れて3分置く。

そして、ティーカップを用意していると丁度誠さんが帰ってきました。

私は玄関へと向かい、誠さんを見ると笑顔で言いました。

 

「おかえりなさい、誠さん!」




閲覧、ありがとうございました!
とうとう明日からコミケ95の開催ですね。1日目に行く方はお気をつけて下さいね。
……相変わらず関係ない話をしている前書きや後書きですが、これもこの作品の特徴だと思ってください。
さて、今年も残すところ後3日。初めは年越しネタとかも書こうとしましたが、季節感が合わなさそうという事で却下になりました。第一話で4月の設定でしたから……。
多分、来年あたりから行事と並行してネタを作れれば良いなぁとは思っています。あくまでも願望ですので、頭の隅にでもポイッとしておいて下さい。

それでは、また次回に!


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第六話 みぞれ、会社に行く(前編)

どうも、【夕立】です。
コミケ1日目、お疲れ様でした。自分は行ってませんが。
次回話は多分30日か31日に出します。そしたらノベルバ同様、金曜日投稿になるかと思います。
あえて『金曜日投稿』と言ったのは、毎週ではないからです。作品の進行具合や、個人的都合上書けなかったりなどがあるので、更新は金曜日と決めているだけで、毎週出来る自信がないからです。
かと言って、1,000〜2,000文字の間でなるべく書くという勝手なルールがあるので中々内容が濃くなることがないですが……。
因みに、何故1,000〜2,000文字なのかと言いますと、2〜3分とかの微妙に暇になってしまった時間でもササッと読めるようにと考えたからです。もっと多くても読みやすいとは思いますが、体感でこのくらいにしました。
……すいません、前書き長くて。


みぞれが来て早くも1ヶ月を過ぎた。

みぞれもこちらの生活にだいぶ慣れたらしく、最近は近くの公園に行くのが楽しみらしい。

俺の仕事も土日は基本休みなので、みぞれと一緒に過ごしたり、買い物に行ったりなど有意義な生活を過ごしていた。

そんなある土曜日の9時。俺の携帯が鳴った。どうやら電話らしい。

相手は……俺が始めて仕事を教えた|金沢 結衣(かなざわ ゆい)からだった。

 

「もしもし?どうし──」

「誠先輩!助けて下さい!」

 

俺の話している途中で大きな声で助けを呼んだ金沢さん。耳元でこんなに大声出されたら耳が痛いです……。

 

「分かったから、落ち着いて。深呼吸」

「スゥー……ハァー……。落ち着きました先輩!」

 

休日なのに相変わらず元気だなぁ……。俺にはこんなに元気に振る舞える自信ないぞ?

 

「で?要件は何?」

「それが、いきなりサーバーが落ちて処理を原因を調べてくれって頼まれて……」

「それってウチの仕事じゃないじゃん……。あそこはどうなってるの?」

「それが……他の対応とか、まだ終わってない問題があるらしくて……」

 

くそぅ……。よりによってウチに頼むか……。

ウチはどちらかというと、新人育成をメインとして、簡単なプログラムを作るのが仕事。

俺はその中でも教える立場であり、後輩の問題の修正や付け足してプログラムを完成まで持ち込むのが仕事。

つまり、この問題を対処出来るのは数少ない人だけ。

……休日出勤ですか。そうですか。

 

「分かった。今からそっちに行くけど、ちょっと時間かかるかもだからそれまでなんとか出来る?」

「恐らく大丈夫かと……。課長もいますし」

 

それなら安心だ。あの人割と雑だけど、やる時にはしっかりとやる人だからな。

 

「それじゃあ頼む。分からなかったらメモしてそのままにしといて」

「ラジャーです!」

 

その返事と共に電話を切る。みぞれはテレビを見ていた視線をこちらに向けていた。

 

「誠さん、お仕事ですか?」

「あぁ。悪いなみぞれ、いきなり仕事入って」

「いえいえ。お仕事なら仕方ありませんから」

 

やっぱりみぞれは優しいな……。なるべく早めに片付けて早く帰らないと。

俺は急いで荷物を用意して、スーツに着替え、小走りで玄関に向かった。

 

「誠さん、お弁当なくて大丈夫ですか?」

「あー……。コンビニとかで軽く済ませようかな」

「なら、私が作って持っていきますよ?」

 

マジか。みぞれの手作り弁当か。

みぞれは料理の腕が良く、たまに作ってもらっているがそれはもう満足している。

それを、お弁当として食えるのか……。最高じゃないか。

 

「でも、会社まで来れるか?」

「大丈夫です!以前教えてもらいましたから」

 

そうだな。もうみぞれは18歳の女の子。子供じゃないもんな。……親か、俺は。

とりあえず、お昼はみぞれに任せよう。俺は目の前の問題に向き合わなきゃな。

 

「それじゃあ、お弁当頼むな」

「はい!安心して待っていて下さい!」

 

こうして、俺は会社に急いで向かうのであった……。

******

あとはこのお弁当箱に入れて……よし!

栄養バランスを考えて作りましたし、見た目もいいですね。

後は、誠さんの会社まで無事に持って行くだけですね。

時刻は10時。会社までは1時間ほどの距離なので、少し迷っても大丈夫そうです。誠さんからも、心配だからという事でメールで道のりを教えてくれましたし……。

そういえば、電車に乗るのは初めてですね。見た事は何回もあるし、乗り方も知っているけれど……。やっぱり緊張しますね……。

戸締りなどをチェックして、外に出て鍵を閉めて……。よし。

まずは駅まで向かいましょう!




閲覧、ありがとうございました!
第八話を現在作成中ですが、第七話の区切り場所間違ったかな……。なんか変な感じになってる気がして凄いです。
ついでに、投稿はしないとは思いますが別の小説の案出しをしてます。とあるゲームを見てたらなんか書きたくなったので……。
ジャンルは恋愛系ですね。そのとあるゲーム自体がR-18なので、そっち方面にも出来ると考えてますが、多分全年齢で作ると思います。一応R-18の安打しもしますが()
変な雑談もありましたが、今回はここまでで。もし気になる人がいればその恋愛系の小説は出すと思います。……多分居ないとは思いますけど。
それでは、まだ次回お会いしましょう。


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第七話 みぞれ、会社に行く(中編)

あけましておめでとうございます。【夕立】です。
なんだかんだで30日か31日に投稿出来ませんでした。すいません。
コミケに行った方、お疲れ様でした。自分も疲れました……。
元日という事もあり、自分も祖母の家に帰っています。環境は変わるけどやはり落ち着きますね……。
次の話からは金曜日投稿に戻りますので、気長に待っていただく事になりますが、ご了承ください。


駅に着いた私は、券売機の所へ向かい上の路線図を見てみる。

いろんな色の線が沢山書いてあり、自分の居る駅の場所を探すのでも一苦労だった。

自分の居る駅を見つけた私は、そこに繋がっている線にそって誠さんの会社に一番近い駅を探す。

その線でさえ、上に行ったり下に行ったり……。道を外れたらまた戻って線を辿って目的の駅を見つける。

しばらく経って、ようやく見つけた私は料金を確認し、券売機の案内にそって乗車券を買った。

ここで難関を突破したと一安心しようとしたが、まだ電車に乗るには難所がある。

上り、下りの間違い。

誠さん曰く、上り下りで間違えると時間がとてもかかる。

目的地の反対方向に行くわけなので、戻るにしても元の時間にプラスで時間がかかってしまう為らしい。

その間違いを減らすための方法として、階段に書いてある進路方向の駅の一覧を見る方法と、駅員さんに聞くという2つの方法がある。

駅員さんに聞くのが早いが、駅員さんだって忙しいと思う。自分の力でなんとか出来るなら、自分の力でなんとかしなきゃ……。

まず、右側の階段の方向に行き、進路方向の駅の一覧を探す。こっちには……書いてませんね。

つまり、こっちの階段ではなく反対側の階段に登れば目的の駅まで行ける電車に乗れるわけですね!

しっかり乗れるか心配ではありますが、きっと大丈夫です。困ったら駅員さんに聞けば分かりますし……。

こうして、私の会社へのお使いの難所は超えたのであった──。

<hr>

「えーっと、確かこの道を右ですね」

 

私は地図アプリを見ながら誠さんの駅へと向かう。住所さえわかれば、ルートも複数表示されますし、これで迷う事はないはずです!

すると、向かいから歩いてきた女性にふと目が行きました。

体力の買い物袋。野菜などがはみ出ているのを見る限り、スーパーなどの買い物帰りでしょうか。

見た目は私と同じくらいの身長で、制服を着ている。高校生かな?

ふらふらとおぼつかない足取りで歩いている彼女は、暫くするとバランスを崩し、転んでしまった。

私は急いで駆け寄り、散乱した荷物を拾うのを手伝い、彼女に渡した。

 

「あ、ありがとうございます……」

「いえいえ、たまたま通っただけですので。それでは」

 

そう言って私は彼女を通り過ぎ、誠さんのいる会社へと再度向かおうとした。

 

「あ、あのっ!」

 

助けた彼女が私を呼び止めました。

私は手助けをしましたが、お礼を何度も言われるようなことはしたと思ってはいなかったので、彼女に伝えました。

 

「お礼は大丈夫ですよ?お言葉だけで十分ですから」

「い、いえ。そうではなくてですね……」

 

モジモジと彼女は落ち着かない様子。初対面でお礼以外の話したい事……ですか。

いえ、もしかしたら既に一度会っていて、私が忘れているだけなのでしょうか?

もしそうなのであれば、すぐに謝って思い出さなければ彼女に失礼ですね……。しかし、何処かで会ったでしょうか?

動物の頃も物覚えは良かったので、今も物覚えは良いと思ったのですが……。今までのは偶然覚えてただけだったんですかね……?

 

「えっと、間違っていたら申し訳ないんですけど、もしかして動物さんですか?」

 

──今、何て言いましたか?

私はあの大きめの耳も、尻尾も完全に隠せるようになっているはずです。誠さんと何度も外に出て試しましたから。

そのはずなのに、私が動物だとバレました。

理由として考えられるのは2つ。

1つ目は私の匂いですね。

いくら擬人化していても、動物としての本能などはあります。さらには、人間には分からない程度ですが動物だった頃の匂いもするそうです。

つまり、この人も擬人化しているだけの動物の可能性があります。

2つ目として、その動物の飼い主──主様であること。

主様になると、擬人化した動物の匂いが勘で分かるようになるらしいです。

この2つから分かる事……それは、この人は私同様の動物に関わっていると言う事。

……なら、私の正体を言っても大丈夫かな?

 

「……そうです。私は擬人化していますが、ウサギです」

「やっぱりそうでしたか!私以外の動物を暫く見なかったので、少し不安になっていたんです!」

 

彼女はそう言うと、私の両手を掴んできました。目はキラキラと輝いていて、心の底から嬉しく思っているんだと感じました。

 

「ところで、あなたは?」

「あ、申し遅れました。私、すずめの|秋風(あきかぜ)と言います」

 

そう言うと、秋風さんはペコリと頭を下げました。私もつい反射で、同じように頭を下げました。

話を聞くと、どうやら主様は居ないらしく一人でバイトをしながら生活をしているそうです。

今はその買い出しの帰りで、これが終わったら今日の仕事は終わり、何処か休める場所を探すそうです。

家はない為、寝床はすずめの姿になって寝ているそうで、案外ここでの暮らしに動物らしく適応していると言っていました。

ですが、やはり人間の姿をとすずめの姿を変えて暮らすのは体力的に厳しいようです。

何かいい案はないでしょうか……?

……そうです!こんな時こそ誠さんです!

 

「秋風さん。私の主様の許可が下りればですが、一緒に暮らしませんか?」

「みぞれ様、宜しいのでしょうか……?」

「きっと誠さんなら許可をくれると思いますよ!」

 

根拠はないけれど、誠さんならきっと許してくれる。何故かそう感じました。

断られてしまったら、秋風さんには申し訳ないですけど……。

 

「でしたら、私もみぞれ様の主様に会ってお願いします!みぞれ様がお願いするのも申し訳ないですから!」

 

秋風さんは、目を輝かせていました。

誠さんがお仕事中ですが、聞けるでしょうか……?

タイミングは今じゃなくて、誠さんが帰る時間でも大丈夫。もし忙しそうだったら、帰る時間に言いましょう。

こうして、私と秋風さんで誠さんのいる会社に行くことになりました。

……誠さんは許可してくれるでしょうか?




閲覧、ありがとうございました!
最近、ノベルゲー?を見ているのですが、やはり面白いですね。
自分もこんな話を書いてみたい。などを考えますが、下手に投稿作品を増やすと大変な事になりそうで中々出来ないですね。もっと暇な時間が増えればいいのですが……。
今年は「投稿間隔を出来るだけ開けない」のが目標ですかね。今年中に70〜80話くらい書ければ良いんですが、出来るか不安です……(汗)
それでは、また次回お会いしましょう!


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第八話 みぞれ、会社に行く(後編)

どうも、【夕立】です。
今回から金曜日投稿になります。ノベルバの方では6時に投稿。ハーメルンの方では18時投稿になります。
一応、ノベルバが先に始めたと言うことで時間をずらして投稿しています。個人的にはノベルバで見た後、ハーメルンの方で前書きや後書きを楽しんで貰えれば〜なんて思ってます。
勿論、ハーメルンの方だけというのも全然構いません。寧ろ読んでくれるだけで嬉しいですので。


その後、私は秋風さんと共に誠さんの会社に向かいました。

向かう途中は、こっちの世界に来た理由やどんな暮らしをしていたかなど、色々な事を話しました。

秋風さんは、人間の世界についての研究をしており、人間と動物の生活の違いや、擬人化する際の注意などを他の人に知らせるお仕事をしているようでした。

今はその仕事がひと段落し、長期休暇をもらっていて、どうせなのでという事でこちらで過ごしているそうです。

私も人間世界についての記録でこちらに来ましたが、秋風さんはどうやら擬人化した状態でこちらで過ごしていたそうです。

そうする事で、人間との共存が出来るのか。この世界は危害がないのか。そんな事を調べているそうです。

動物の姿で世界を行き来したりは良くある事ですが、擬人化した状態でのお仕事は各動物の中でも一握りしかいないので、そんなお仕事をされている秋風さんはとても凄い人なんだと思いました。

そうこうしている内に、目的の誠さんの会社まで着きました。

緊張しながら入ると、エントランスホールみたいな様な場所に出て、受付窓口が中央にありました。

私と秋風さんはその受付窓口に向かうと、受付の人が話しかけて来ました。

 

「お客様、お名前とご用件をお願いします」

「えっと、みぞれと言います。朝倉 誠さんにお届け物を届けに来ました」

 

あまり会社の様な場所は慣れていない為、少し緊張気味でしたが、受付の人はそう一言聞くと何処かに電話をかけ、十数秒で電話を切った。

 

「みぞれ様、4階で誠様がお待ちです。向かって右側のエレベーターから上にお上り下さい」

「は、はい。ありがとうございます」

 

受付の人が丁寧に場所を教えてくれたので、ぺこりと頭を下げ、エレベーターに向かった。

秋風さんも受付の人に頭を下げ、小走りで私に追いついた。

エレベーターの中では緊張しているせいか、私達は喋る事がなく、いつの間にか4階に着いていました。

エレベーターが開き、辺りを見渡そうとすると右側の通路から小走りで誠さんが来ました。

 

「みぞれ、大丈夫だったか!?」

「は、はい。何事もなくここまで来れましたから」

「そうか、良かった……」

 

私の一言を聞くと、安心したのか少し脱力する誠さん。ずっと心配していたようだった。

そう安心していた誠さんは、秋風さんが一緒に来ていたのに気付き、私に聞いてきました。

 

「ところでみぞれ、そちらの方は……?」

「あ、申し遅れました!私、すずめの秋風と申します。貴方様が朝倉 誠様で?」

 

秋風さんは丁寧に誠さんに挨拶をする。誠さんはちょっと驚きながら同じく頭を下げて挨拶をしました。

誠さんは、秋風さんの質問に対し頷きました。

すると、秋風さんは私の顔を見て、今言うと言う合図を出しました。

 

「えっと、誠さん。お願いがあるんですけど……」

「……予想はある程度つくけど、どんなお願い?」

 

誠さんは私がお願いがあると言うと、秋風さんの顔をチラッと見た後、私に聞いてきました。

恐らく、もうどんなお願いかは分かっていて、返事も決まっている。けれど、本人の口から聞きたい。そんな感じだと感じました。

 

「秋風さんを、うちに住まわせるというのは大丈夫ですか?」

「勿論、食事や掃除、洗濯など家事は一通り出来ますので、全て任せて頂いても結構ですので!」

 

私がお願いを言うと、秋風さんは付け足しをしてきました。

秋風さんはそれほど本気だと、これで誠さんに伝わったはずです。後は誠さん次第ですね……。

 

「……みぞれ、秋風さんと居る時間は楽しいかい?」

「は、はい!まだ少ない時間ですけれど、楽しいです!」

「そうか。秋風さんは?みぞれと一緒に居るのは楽しい?」

「はい!新たに学ばさせて頂く事もありますし、初めてこちらの世界で同じ動物の友達が出来て……嬉しかったです!」

 

私も秋風さんも、誠さんに同じ質問をされ、2人とも「楽しい」と答えた。

それを聞いた誠さんは、安心した顔で私達に話しかけた。

 

「ならいいでしょう。秋風さん、これから宜しくね」

「──っ!はいっ!」

 

秋風さんは少し涙を浮かべ、笑顔で返事をしました。

誠さんも何処か嬉しそうで、私も嬉しくなりました。

 

その後、私達はお弁当を誠さんに渡し、家へ帰ることにしました。

誠さんは、「20時までには帰る」と言って、私に夕飯を頼んできました。

私と秋風さんは、お互い顔を見た後、2人で夕飯を作ることにしました。

こうして、私と誠さんの家に新たな住人が増えました。




閲覧、ありがとうございました!
久し振りに祖母の家に帰りましたが、とても落ち着きますね……。羽を伸ばせていい感じです。
さて、ちょっとした作品の雑談?的なものを。
ハーメルンでは、前書きや後書きなどを楽しみにしてもらえればーと言っていますが、勿論ノベルバの方にも似たような楽しみ方があります。
それは、『ご意見』です。
ハーメルンの方では、リクエストなどが禁止されていますが、ノベルバの方では禁止されていません。
なので、作品の案などを随時募集しています。
「こんなのがあったらな〜」や「こんな話、見てみたいなー」や「こんなキャラ居たらなー」など、結構幅広く募集(?)しています。
後、更新がノベルバの方が早い。それだけの差ですので、ハーメルンだけで楽しむ。ノベルバだけで楽しむ。両方で楽しむ。何でもアリです。
それでは今回はここまで。次回お会いしましょう!


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第九話 誠の不安

どうも、【夕立】です。
次の話、どうしようかなーと考えた所、まず誠の家狭くね?と疑問に思ってこの話にしました。
1月になって、部屋でゲームをしていると身体が冷えるので、リビングでコタツに入ってやれる時間が個人的には至高の時間となっていますw
なんだかんだ、あったかい季節になるまで3ヶ月ぐらいあるんですもんね……。早く程よくあったかくなってくれ……。


あれから、秋風さんは荷物を持ってその日に引っ越しをしてきた。

次の日が日曜日だと言うこともあり、俺とみぞれも引っ越しの手伝いをしたので、すぐに終わった。

……が、一つ問題が生じた。

──部屋がない。

残念ながらうちはアパートなので、部屋はみぞれが今使っている部屋と、リビングの二部屋のみ。

とりあえず話した所、二人とも同室でいいとの事だったので、みぞれと秋風さんは同室になっている。

俺は変わらずリビングのソファーで寝ているが、流石にそろそろベッドでも寝たい。

……さて、どうしようか。

一軒家を買う……のも考えたが、今の俺にはこの生活でも大変。

貯金は多少あるけれど、足りないだろうし。

……アイツ(・・・)に頼るのだけはちょっと嫌だしな。後で何言われるか分かったもんじゃねぇし。

そうなると、やっぱ仕事量増やして功績残すしかないかなぁ……。

けど、みぞれ達をずっと留守番させるのはちょっと悪いしなぁ……。

うーむ、どうするべきかなぁ……。

と、考えながらソファーに座っていると、つんつんと肩をつつかれた。

それに反応するように俺は後ろを向く。そこには、秋風さんがいた。

 

「どうしました?何か考え事をしているようでしたが……。私でよければ、相談に乗りますが」

 

どうやら、考え事をしていた顔をしていたのか、俺を心配してくれているようだった。

しかし、相談する内容が……。

秋風が来て、部屋が少なく感じたから引っ越しを考えてるなんて言ったら、秋風さんに失礼だ。

ここはとりあえず、誤魔化すしかないか。

 

「いやー、今日の夕飯を考えててね。秋風さんは何か食べたいものとかある?」

 

すると、秋風さんは腕を組んで悩み始めた。どうやら誤魔化すことには成功したようだ。

が、この問題がバレるのも時間の問題かな。みぞれも最初は何回もいいのか聞いてきたレベルだったし……。

しかも、秋風さんは礼儀正しいだけじゃなく、どうやら勘が冴えているようだし。

すると、家のドアがガチャリと開く。どうやらみぞれが散歩から帰ってきたようだ。

 

「ただいまですー。あれ、お二人並んでどうしたんです?」

「あぁ。夕飯を一緒に考えてたんだよ。みぞれは何か食べたいのはある?」

 

みぞれに提案すると、みぞれも秋風さんと同じように悩み始めた。

しかし、みぞれは十数秒で口を開いた。

 

「私、カレーが食べたいです!」

 

笑顔いっぱいで答えるみぞれ。なんだか、さっきまで悩んでいたことがどうでもよくなる気がした。まぁ、結構重要だけどさ。

俺はソファーから立ち上がり、壁に掛けてあったバックを手に持った。

 

「それじゃ、買い物に行きますか!」

 

こうして、俺の悩みは一旦保留になるのであった──。




閲覧、ありがとうございました!
誠たちが引っ越しをする回があるのでしょうか?引っ越すとしたら一軒家あたりがいいですねー。今のところはないですが。
さて、「アイツ」という妙に気になる単語が出てきましたが、新キャラとして考えてます。暫く出しませんが。
なんなら、性別も名前も決めていないキャラなので、思い出した時に使おうかな〜ぐらいです。思い出さなかったら、そのキャラはストーリーでは出ない……なんて事もありますが。
さて、次回はしっかり間に合うのでしょうか?今回の話も投稿日の1時半に作り終わったので、結構ギリギリでした……。
それでは、また次回お会いしましょう!


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第十話 動物の習性

どうも、【夕立】です。
前回の話がギリギリだったのに対し、今回の話は1/14(月)に書き終わりました。なんでこうも極端なんだ……。
もっとこう……大体同じくらいのペースで書けるのが理想的なんですけど、現実そう上手くはいかないものですね。予定とかもありますし。
……もっと案出しとか書くペース早くなりたいなぁ。


秋風さんが来て、早2週間。

あれから特に何かあった訳ではないが、少し気になることが出来た。

……秋風さんって、編み物よくやるよなぁ。

6月に入り、もう暖かい時期を通り越して暑い時期になりかけているが、秋風さんは週に2〜3回は必ず編み物をしていた。

小さいコースターのようなものや、マフラーなどの少し大きめのもの。

使った所を見た事はないので、もしかしたら秋風さんは作っているだけなのかもしれない。

じーっと秋風さんの作業を見ながら、みぞれが入れてくれた紅茶を飲んでいると、視線に気付いた秋風さんがこちらに話しかけてきた。

 

「朝倉様?どうかなさいましたか?」

「んー?いや、秋風さん編み物よくやるな〜って思ってさ」

 

誤魔化すような事でもないので、秋風さんに思っていた事を素直に言った。

秋風さんは手元を見ると、「あぁ」と言って編み物をテーブルの上に置いた。

 

「編み物をやっているのって、動物のなごりみたいなものなんですよね」

「動物の……なごり?」

 

俺は、秋風さんが言った事が理解出来なかった。というより、よく分からなかった。

動物のなごり。つまり、動物の頃にやっていた習性か何かか?でも、すずめって編み物をする習性なんてないよな。

すると、俺がよく分からないのを察した秋風さんが付け足して説明してくれた。

 

「すずめの習性というより、鳥の習性みたいなものですかね。鳥が巣を作る作業と編み物をする作業って何処か似ているんですよ」

 

あぁ、なんとなく分かる気がする。

なんか巣を作る作業って、編み込んでるって言うのかな。そんな感じがする。

それが、偶々編み物の作業と似ていたからやっていた。そうゆうことか。

 

「つまり、やってないといざって時に覚えてなかったりするかもだから、似ている編み物で少しでも忘れないようにしている訳か」

「そーですね。そんな感じです」

 

ほうほう。やっぱり、動物でも暫くやってなかったりすると忘れたりするもんなんだな。

って事は、もしかしなくてもみぞれにも何か習性みたいなのが見れたり……。

んー、うさぎの習性……後ろ足をトントンさせるスタンピングだっけ?それをやったりとかしてたりするのかな?

気になるけど、みぞれ本人に聞くのはなんか気が引けるし……。

まぁ、いずれ発見出来る時が来る。その時を楽しみに待つとしよう。

……それまで、うさぎの習性についてもうちょっと調べて、予想でも立てておこうかな。

また、楽しみが一つ増えた一日だった――。




閲覧、ありがとうございました!
実は、最近お風呂の調子が良くなくて銭湯行ったり、親戚の家で済ませたりしている日が続いています。
やっぱり、他の場所のお風呂より慣れた自分の家のお風呂がいいですね。改めて実感しました。
さて、次の話はどうしようかな〜。全く考えてないですので、気分で決めるか友人にヒントでも貰おうかな……?
それでは、また次回お会いしましょう!


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第十一話 悪夢

どうも、【夕立】です。
無事に体調も優れ、元気にまた再開して参ります!
さて、今回は誠の過去についての話になります。結構シリアスのような感じになりますので、ご注意下さい(?)


『どうしてだよッ!』

 

──なんだ?俺の声……?

 

『なんで辞めたんだ!答えろよ!』

 

──あぁ、あの時の記憶か。

 

『あのせいで母さんは──』

 

──辞めてくれ……それ以上……辞めてくれ。

 

『お前なんて──』

******

「──ッ!」

 

ズドンッ!

跳ね起きる俺。そのせいでソファーの上から落ちてしまった。

身体を多少打ってしまったが、幸い傷や痕になりそうではなかった。

しかし、さっきまで見てた夢──随分と前の記憶を思い出したもんだ。

はぁ……。俺なりに解決したつもりではあったんだがな。まだ何処か心残りがあるみたいだ。

時刻は午前2時。まだ夜中か……。明日も仕事あるから、出来れば寝ていたかったんだがな。

……流石に寝直す気分じゃないな。

台所に行き、慣れた手つきでコーヒーを作る。

いつもより砂糖を入れ、いつもは使わないミルクも入れ、暖かくてちょっと甘いコーヒーの出来上がり。

気分を一気に変えたいという事もあり、ベランダに出て外の風を感じながら飲むことにした。

コーヒーを一口。うん、やっぱりちょっと甘いな。

……はぁ、みぞれ達の前じゃなくて良かった。あんな顔見せたら、あの子達がどれだけ心配するだろうか。

なるべく事情も話したくはないが、もし見つかって気が滅入っていたら、迷わず俺は話していただろう。

そして、あの子達の前で泣いていたりしていたかもしれない。それだけあの記憶は思い出したくなかった。

あれは今から約十年前。俺がまだ15歳だった頃だ。

家で母さんと親父と俺の三人暮らしをしていて、母は重い病気とかでずっと寝たきりの生活だった。

俺と親父は母さんの為に、出来ることなら何でもしてあげていた。母さんの病気は、今の医学では治らないとされていたからだ。

幸いにも薬で症状は軽く出来た為、寝たきりだが60歳くらいまでは生きていられると言われていた。

そう、あの出来事が起こるまでは。

親父は、突如母さんに薬を投与するのを辞めた。

俺は何度も理由を聞くが、黙ったまま。母さんにも聞くけど答えず、家にある薬も飲んでくれなかった。

始めは、何故だと考えた。一人で何度も、様々なケースを考えた。

しかし、答えを導き出す前に母さんは死んでしまった。

どうしていいか分からなくなった俺は、何度も親父を問い詰めた。

しかし、出てくる答えは黙秘のみ。

何も教えてくれない親父に、俺は徐々に距離を置き、もう何年も話さなくなっていた。

……あの頃の俺は、まだ子供っぽい思考だったと今は思う。

けど、親父はまだ心の何処かで嫌ってるし、恨んでいる。

……分かってはいるつもりだ。いつかはこうなってしまう、と。

けれど、まだ話したい事も沢山あったし、一緒にしたい事だって沢山あった。

はぁ……。思い出したくなかったわ。

もうちょい頭冷ましてから寝るか。じゃなきゃまた夢に出そうだ……。




閲覧、ありがとうございました!
誠の過去の話でした。結構この設定は前から考えてはいたので、いざ書き始めると結構辛いものがありますね……。
これ以外にも、誠には隠されている設定が多少はあるので、考えたりしながら読んで頂けると楽しみが増えるかと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!


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第十二話 謎の少女

どうも、【夕立】です。
なんだかんだ考えてましたが、この小説思ったより短くなるかも……とちょっと驚いている自分がいます。話数は、日常回を増やしたりすればいいだけなんですがね。


とある金曜日。会社が偶々早く終わったので、皆で夕飯を食べに行くことに。

俺は会社から家の方の駅へ。みぞれと秋風さんは家から駅に来てくれるらしいので、どうせだから駅近くのデパートへ。

そういえば、このデパートに俺が行くのはみぞれの服を買いに行った時以来か。秋風さんとみぞれの二人は、服を買いに行ったりなどでデパートにはたまに行っているらしい。

目的の駅に早めに着いたので、集合時間まで10分ほど余っていた。

近くの自販機で微糖のコーヒーを購入し、駅前の公園のベンチに座り込んだ。

時刻はまだ18時前で、まだ明るい事もあり公園には沢山の子どもが遊んでいた。

その風景を見つつ、缶コーヒーをちびちび飲んでいた。……傍から見たら、もしかしたら変態に見えるかもしれないな……。

バタバタと遊ぶ子ども達を見ると、俺にもあんな時期があったと思い出すな。今はあんなにはしゃげる体力もないし、なんなら危ない人になってしまう。

そんな事を考えていると、一人の少女が隣にちょこんと座った。他にもベンチはあるのにどうしてここなんだ……?

 

「お兄さん、今一人なの?」

「え、あぁ……。待ち合わせをしているんだ」

 

いきなり話かけられた為、ちょっと驚いたが普通に話すことが出来た。

少女の歳は、見る限り大体小学2~3年頃といった所だろうか。服は何故か和服で、何処か大人びた印象を受けた。

 

「……お兄さん、ペットとかって飼ってたりする?」

 

その言葉に、少しドキリとした。

みぞれも秋風さんも、元々は動物。何か獣っぽい匂いでもするのだろうか?

しかし、俺自身みぞれや秋風さんから獣っぽい匂いはしないし……。俺ってそんなに鼻悪かったっけ?

 

「えっと……、動物を飼ってる友達とよく会ってるからかな?自分はあまり感じなかったんだけど、もしかして気分悪くなったりした?」

「いえ、私も動物とは関わりが強いもので……。もしかしたらそのせいかもです」

 

よかった……。匂いがスーツについたら落とすの大変って聞いた事あるから、クリーニングに出そうか迷ったぞ。

しかし、動物と関わりがあるのに和服かぁ……。お金持ちとかだったりとかなのかな?

 

「……朝倉 誠さん。貴方、今後気をつけた方がいいですよ。その優しさが、己を傷つけますよ」

「――っ!?」

 

その言葉が少女の方から聞こえたので、少女の方を急いで向いた。

しかし、そこにはあの少女の姿はなく、俺一人だけベンチに座っていた。

そして、ポケットのスマホが鳴っていた。

急いで見ると、みぞれからだった。

 

『誠さん、着きましたが今何処に居ますか?』

「あぁ……、悪い。今駅前の公園に居るから、そっちに行く」

『わかりました。待っていますね』

 

電話を切り、缶コーヒーの缶をゴミ箱に捨てて駅に歩き始めた。

……あれは夢だったのだろうか?

気になるが、今はみぞれ達と夕飯を食うか。

 

――この時、俺はあの言葉をなんとも思っていなかった。




閲覧、ありがとうございました!
今回出てきた謎の少女。思いつきで書きましたが、結構重要人物にする予定ではあります。
……そもそも、日常回何書くか思いつかず、ストーリー進めようってなった自分にもうちょい頑張って欲しかったかもです。このままだと50話いかずに終わっちゃいそう……。
それでは、今回はこの辺で。また次回に~!


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第十三話 思わぬ提案

どうも、【夕立】です。
まさかのトラブルがあり、ノベルバの方では投稿時間が遅れましたが、ハーメルンでは遅れずに済みました。ちょっと安心。


仕事が終わり、明日から3連休という事もあり気分よく帰っていた。

家の前に着くまで、動画サイトに載っている曲を垂れ流しながら帰っていた。

今日はみぞれが夕飯を作ってくれていて、さらに俺が好きなオムライスを作ってくれているらしい。

そんな嬉しい事が重なり、今日の俺は機嫌がすこぶるいいのだ。

そんな事をしているうちに、家の前までたどり着いた。

 

「ただいまー」

 

ガチャリと家のドアを開けて、いつも通りただいまと言う。

……しかし、いつもとは違うのはすぐに分かった。

リビングは明るい為、みぞれも秋風さんもいる事は確実と言っていいだろう。

しかし、いつもくるはずの「おかえり」という一言が全く来なかったのだ。

それだけ。それだけの事なのだが、俺は内心何処か焦っていた。あの二人に何かあったのではないのか?そんな不安が心を締め付けていた。

急いで靴を脱ぎ、リビングまで走る。ドアを開ける時もちょっと強引だが、力強く開けた。

 

「みぞれ、秋風さん!大丈夫──」

 

すると、そこには正座をしている二人と、見知らぬ女性。女性からはフカフカそうな尻尾。そして耳。って事はこの人も獣か……。

 

「──おぉ、帰ったようじゃな。お主がこの二人の主じゃな?」

「は、はぁ……。朝倉 誠と言います」

 

とりあえず、二人の態度とこの人の言い方的に上司的な……まぁ偉い人なんだろう。

 

「うむ。妾は巫狐(みこ)と言う。この世界と獣の世界を繋ぐ結界の管理者……みたいなものじゃ」

 

この世界とみぞれ達の世界を繋いでる結界の管理者……か。

って事は、もしかしたらみぞれが家に帰れるのではないか?みぞれがここに居るのは家に帰れないからだもんな。

だが、そう思った俺は何処か悲しさと寂しさが心を埋め尽くしていた。

あの子が家に帰れるんだ。本来の場所に帰るだけ。

それなのに、俺は帰って欲しくないなどと自分勝手な事を……。

 

「ん?何をしんみりした顔をしておるのじゃ?お主」

 

そう言われ、ようやく我に返った。どうやら顔にまで出ていたらしい。

 

「す、すいません……。それで、ご用件と言うのは?」

「この2人が人間の家に居候をしていると聞いてな。近況報告と共に視察に来たと言う訳じゃ」

 

どうやら、みぞれが既に帰れなくなっていた事は知っているらしい。

しかし、近況報告と視察……だけ?みぞれを連れ帰る為に来たのではないのか?

 

「……お主、もしや勘違いをしておるな?別に連れて帰るつもりはない。寧ろいい勉強になるじゃろうし、ここに居させてやってはくれぬか?」

 

巫狐さんが来たのは、連れ帰る為じゃなかったのか……。

そして、巫狐さんからお願いされた居候続行の話。俺にとっては願ったり叶ったりである訳だし、断る理由は全くない。

 

「俺なんかで良ければ是非」

「そうか。……しかし、三人だとちと狭くないか?」

 

巫狐さんは部屋をキョロキョロと見ながらそう言った。

アパートなんてそもそもそんなに広くもないし、寧ろこのアパートは広いレベルになるだろう。

確かに引っ越して一軒家に……って案もあったが、そんなお金ないので二人には悪いとは思ってるけど。

すると、巫狐さんは「うむ」と頷いてこう言った。

 

「お主らに妾から新しい家をやろう。どの位まで大きく出来るか分からんが、恐らく三人で生活する分には困らんじゃろう」

「巫狐さん、それは悪いですよ!」

「なぁに。動物と人間の交流場のような場所を提供してくれている礼じゃ。素直に受け取ってくれた方が嬉しい」

 

そう言いながら笑顔を見せてくる巫狐さん。その笑顔はとても優しく、何故か懐かしく感じた。

それなら俺が断るのも悪いし、有り難く受け取る事にしよう。

 

「巫狐さん、ありがとうございます」

「いいんじゃよ。それじゃ、また後日に来る。その時に家もプレゼントするからの」

 

そう言って巫狐さんは窓の方に手を出すと、扉が出てきた。

その扉を開け、巫狐さんが中を入ると自動で扉が閉まり、扉が消えた。

……しかし、初めて会うはずの巫狐さんの笑顔が何故懐かしく感じたのだろうか。

そんな事を思いながら、三人で夕食を作り始めるのであった──。




閲覧、ありがとうございました!
いやー、昨日はバレンタインでしたね。皆様はチョコを貰ったり、渡したりしましたか?
自分は勿論いつも通り過ごしていました。チョコは……なかったです。
さて、何だかんだ続きみたいになりましたが、実はちょっとだけ脱線してます。本来は家そのままで行く予定でしたので……。
さて、今回はこの辺で。また次回お会いしましょ〜!


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第十四話 お引越し

どうも、【夕立】です。
久し振りにROUND1に行き、ボウリングやスポッチャを友人とやりに行ってきたのですが、やはり普段動かない人には辛いものがありますね……。
お陰で筋肉痛で両腕両足が動きにくく、右腕に関しては腕を伸ばせない位でした……。


「よし、コレで最後……っと」

 

巫狐さんが来てから二日後。俺達は新居へのお引越しをしていた。

巫狐はどうやら空いている土地を入手し、その空間に家を建てたらしい。なんか……魔法みたいで今でも信じられない。

その引越し先の家は俺の思っている家とは規模が違い、一瞬現実かどうか疑った。

家は二階建てで、地下付き。都会に近いこの土地に、そんな豪勢な家が建つのか……。

流石にここまでされては巫狐さんに悪いと思い、俺は巫狐さんにお礼などをしようとしたのだが、巫狐さんはこう言っていた。

 

「何、お主はみぞれと秋風の面倒を見てくれておるのじゃ。妾が出来るのはこのくらいしかないのでな、このくらいは妾にもさせてくれ」

 

と、そんな事を言って元の世界に戻っていった。

……だからと言って、こんな家に家具まで揃えてくれているのも悪い気がする。

一通り使うであろう家具が、最新式のもので用意されており、お風呂も普通の家にはない広さ。一気に10人くらい入れるのでは?と素で思ってしまうくらい。

そして、さらに驚いたのは部屋の数。和室が3部屋、洋室が5部屋の計8部屋。

……もしかして、ここを獣の世界との交流場とか宿泊施設的な場所にするつもりだったりしないだろうか?

いや、攻めて一言は言ってくれるだろう。あの人、そんな適当な人には見えなかったし。

みぞれと秋風さんは新居祝いという事で買い出しに行っている。2人で張り切って料理を作ると言っていたので、ちょっと……いや、凄く楽しみである。

すると、突如リビングに見覚えのある扉が現れた。この扉、確か──。

 

「よっと……。すまぬ、邪魔するぞ」

「巫狐さん。今回はありがとうございました」

 

その予想は的中。やっぱり巫狐さんだった。

何か伝え忘れとかなのかな?今日は引越しの場所を教えてもらうのに一度会ったから、帰った後に思い出した……とか?

 

「うむ。ところで、お主以前にこちらの世界で和服を着た者に会わなかったか?」

「和服……ですか?」

 

和服を着た人なんて、成人式でもなければ会うわけが──。

……いや、一度会ったな。駅前の公園で、和服を着た女の子に。

 

「和服を着た小学生くらいの女の子なら、この間会いましたね」

「小学生の女の子か……。その子の名は聞いたか?」

「いえ……。何か警告の様な事をされて居なくなってしまったので」

 

そう、あの時の警告。「その優しさが己を傷つける」と言う言葉を。

あの言葉がいつ何処で実感するかも分からないし、もしかしたらただの子供のイタズラとかジョークみたいなものかもしれない。

 

「……もし、その子の名前とかがわかったらみぞれか秋風もしくは妾にでもいい。すぐ伝えてくれぬか?」

「えぇ、勿論構いませんが……。何かその子に問題が?」

 

すると、巫狐さんは少し悩んでから言葉にした。

 

「──その子、もしかしたら指名手配している子かもしれんのじゃ」




閲覧、ありがとうございました!
最近とあるゲームを見ていたので、その影響で恋愛系も書いてみたいなーとか思ってしまいました……。恋愛経験ゼロなのに。
さて、前に出た少女を早速使ってみました。使い方に雑さを感じましたが、作者本人がそれを一番実感してます。すいません。
まだ最終話を書く予定もないので、暫くはまだ続きます。五十話くらいいきたいなーなんて欲望もあります。多分その前にストーリーが進んでほぼ解決!みたいになるオチが起きかねないのがちょっと不安ですが。
さて、今回はこの辺で。また次回に!


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第十五話 禁断の術

どうも、【夕立】です。
最近PCゲームを購入しまして、それをのんびりとプレイしているのですが、他にもやりたいPCゲームが多くて困っています……。
更に、数日前にはそのやりたいゲームの中の一つのファンディスクが発売されまして……。余計に買いたい……。


「──その子、もしかしたら指名手配している子かもしれんのじゃ」

 

そう、巫狐さんは確かに言った。

あんな子が……指名手配?何かの間違いとか冗談ではないだろうか?

 

「指名手配って……あの子がですか?」

「信じられん話じゃろうが、本当の話じゃ。あの子はやってはいけない術(・・・・・・・・・)を行い、またそれをやろうとしておる」

「やってはいけない術……ですか?」

 

やってはいけない術。つまり禁止される程危険な術か何かだろう。

その術を一度使っていて、また同じ事を繰り返そうとしている……。

 

「因みに、どんな術なんですか?」

 

そう聞くと、巫狐さんは少し悩んだ後、俺に教えてくれた。

 

「お主、もしも自分好みの世界が創れるとしたらどのような世界を望む?」

「自分好みの世界……ですか」

 

いきなり難しい質問を問いかけられたな……。

自分好みの世界って事は、自分が望んだ世界が創れるって訳か。けど、今の生活に特別不便がある訳ではないからな……。

 

「……あまり思いつかぬじゃろう?」

「そうですね。いきなりっていうのもありますけど、この世界に特別不便がある訳ではないので……」

「それはお主が今幸せだという証拠じゃな」

 

巫狐さんは笑顔でそう言った。

今が幸せか……。少し照れるが、確かにそうかもしれないな。

みぞれと出会って、秋風さんと出会って、色々あって。今は巫狐さんに家まで貰ったりして、幸せな生活を送っているかもしれない。

しかし、その笑顔もすぐに消えた。

巫狐さんはまた真剣な表情に戻り、話を続けた。

 

「じゃがな、あの子は違ったんじゃ。何かを代償にしてまで創りたい世界があった。一度目は失敗に終わったから良かったものの、今回はその術について書いてある書物──禁書(・・)を盗み、術を完成させようとしておる」

 

禁書。名前からして明らかにマズい書物なのが分かる。

さらに、禁術という事は恐らく大きな対価が必要なのだろう。

……あんなに幼い彼女が、そこまでして創りたい世界。どんな世界なのかはとても気になる。

だけど、本当に彼女はそんな禁術をしたいのだろうか?そんな考えもあった。

前に駅前の公園であった時、初対面の俺に彼女は「警告」してきた。

つまり、彼女は本当は禁術を──。

 

「まぁ、今後会うような事はないとは思うが、もし会うような事があれば気をつけるんじゃよ?」

「はい。肝に銘じておきます」

 

そう言うと、巫狐さんはこちらの世界と繋ぐ扉に入り、帰っていった。

その後も、俺は和服を着た彼女の姿とあの警告が頭から離れなかった。

何故、彼女は危険な禁術を使ってまで世界を作りたいのか。何故俺にだけ警告してくれたのか。

……彼女を探してみて、直接聞くのもいいかもしれないな。

そんな事を思いつつ、また作業に戻るのであった。




閲覧、ありがとうございました!
さて、早くも3月。月日が経つのは早いと実感するこの頃です。
前書きではPCゲームを買い、それをのんびりやっていると言っていましたが、他にも実は生配信をやってたりもしてます。
生配信と言っても、この小説の次回話を書いていたり、他の小説作れないかなーみたいな案出しをしていたり、たまーにゲームやってたりの公開作成みたいな感じです。
個人的には見ても面白くないと思いますが、やっている自分としては「見られているかもしれない」というプレッシャー(?)があるので、作成自体は順調に進んでいるので結果的に生配信して良かったなーなんて思う事が多いです。
【夕立】という名前で配信している訳ではないので、見つけにくいとは思いますが、暇でしたら探してみて下さると嬉しいです^_^
それでは、また次回に!


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第十六話 優しい笑み

どうも、【夕立】です。
活動報告でもお知らせしましたが、小説用のTwitter垢を作りました。
基本は自分の日常風景をつぶやいたり、小説ネタについてつぶやいたり、思いたったことをつぶやいたり……そんな事やってます(笑)
それでもいいよーという方、単に気になる方、興味本位の方誰でも歓迎ですので、是非フォローお願いします!(詳しくは活動報告にて!)
……前書きでいう事、少なくなってきたかも?


「ふぅ……」

 

引っ越しして1週間程。

初めは慣れない事が多すぎて戸惑ってしまったが、たった1週間で慣れてきた。

各自の部屋があり、家具なども一式揃っているので特に何かを買いに行くわけでもない為、忙しいという訳でもない。

会社への通勤は、道は変われどほぼ同じ。若干駅に近づいたかもしれないが、対して変わった感覚がなかった。

しかし、唯一変わった事が俺にはあった。

外に出る度、あの和服の少女を探すようになっていた。

見つけたら教えてくれと巫狐さんには言われたが、俺もあの子にどうしても聞きたいことがある。

彼女は、一体何の為に禁術を行おうとしているのか?本当にその禁術を使うべきのか?

そんなお節介な事を聞きたいが為に、あの時出会った少女を探していたのだ。

会社の行きと帰りには、前に会った公園に寄って少し探し、いつも通る道や買い物先でもついつい探してしまう様に。

みぞれと秋風さんはこの事は知らされてなかった様なので、俺一人で探していることになる。

確かに、禁術の条件も分からないし、犠牲があったりするのかさえ分からない俺だが、居ても立っても居られなかった。

休日も少し散歩と称して2〜3時間ほど探してみたりもしているが、未だ少女は見つからない。

もしかすると、もう術を終了させているかもしれない。

……いや、きっと彼女には──。

 

「誠さん、暗い顔になってますよ」

「──ッ!?」

 

いきなりみぞれに話しかけられたのに驚き、椅子から思わず立ち上がってしまった。

みぞれは驚いて一歩下がるが、すぐに近づいてきた。

そして俺の頭を優しくなで、優しい笑みで話しかけてきた。

 

「迷ったり、考えてつまずくのは悪いことではないと思います。ですが、一人で悩んでいても辛いと思います。ですから、よければ相談したりしてくれませんか?」

 

その顔は、何処か母さんに似ていた。

俺は、思わずみぞれに甘えそうになった。しかし、ここで甘えたらみぞれを不安にさせてしまう。

……いや、そもそも男として格好悪いな。

 

「そうだな。本当にヤバくなったら甘えさせてもらおうかな」

「はい!」

 

そう言うと、みぞれは満足そうな表情を浮かべた。

今は言えなくても、いずれは助けてもらうかもしれない。その時は思いきり甘えさせてもらうとしよう。

まぁ、今思い悩んでいても仕方ない。見つけたら聞きたい事はあるが、まず見つからなければ意味がない。

探す……というより、居たらラッキー程度に考えて生活するとしよう。俺が悩んでいると、みぞれや秋風さんを不安にさせてしまうかもしれないしな。

巫狐さんにも、俺が探している事は伝えなくていいか。見つけたら伝えて欲しいってだけだしな。

……気持ち、切り替えるか!




閲覧、ありがとうございました!
もう3月に入り、卒業の方も増えてきたかと思います。自分ももうすぐ卒業なので、今は暇って感じで過ごしてますが……。
来年からはまた忙しくなるので、いつも通り毎週投稿!みたいなのが出来なくなる可能性もあるので、今のうちに書ける分を書いてしまうか、案だけでも出してしまわないと……。
さて、次回話はまた日常系に戻ろうかと思います。ずっとこんなストーリーじゃ気が滅入ってしまいますからね。
なので、何かテキトーに思いついた事を書くかもなので、今の時期にコレ?とかなるかもしれませんが、極力気をつけます。
それでは、また次回に!


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第十七話 誠、熱を出す

どうも、【夕立】です。
Twitterを見て下さった方は知っていますが、実はこの話始めに書いていたものとは全く違う展開でした。要は書き直しました。
大体900文字くらい書き直したので、ほぼ一から書き直した感じでしたね。納得いかなかった(?)のが理由ですかね。
……それでも、微妙な感じですけどね(笑)


ピピピピッ、ピピピピッ。

 

「……しくじったな」

 

土曜日。少し体調が悪くなったので、あまり使わなくなった体温計で熱を測った。

結果、38.4℃。結構熱があった。

特に買い出しの用事や仕事の納期とかがなかった為、今日は元からゆっくりしていようと思ってはいたが、その休みが熱で取られるとは……。

ベットの上で座って体温計を見ていると、部屋のドアがコンコンとノックされた。

 

「誠さん、もう少しで朝食が出来ますよー」

 

どうやらみぞれが朝食の時間だと伝えに来たようだった。

けど、朝食は食えるか分からんし、かといって断るのも悪いし……。どうしたものか。

……ここは誤魔化しても仕方ない。素直に風邪だと伝えようと。

マスクを付け、温かくしておこうという理由でパーカーを羽織る。そして、部屋のドアを開けた。

 

「おはようござ──って、大丈夫ですか!?」

「おはよう、みぞれ。風邪をひいただけだから、大人しくしておけばすぐ治ると思う」

「そ、そうですか……」

 

出会ってから体調を崩したことがなかったから、みぞれは心配してる様子。そもそも体調不良なんていつぶりだろうか?

とりあえずリビングに向かうと、秋風さんの姿が見えなかった。

 

「アレ?秋風さんが居ないけど、まだ部屋?」

「いえ、お仕事であっちの世界に戻ってます」

「そっか」

 

巫狐さんが来てから、いつでも行き来出来るように門を開いておいてくれている。その門ことドアは、どうやら地下室に設置しているらしい。

……しかし久し振りにだな。みぞれと二人きりなんて。

俺が椅子に腰掛けると、みぞれが朝食を持ってくる。なるべく胃に優しいものがいいのだが……。

そして、目の前に置かれたのはうどん。珍しい朝食なので、少し驚いた。

その表情を見たみぞれは、少し笑ってこう言った。

 

「昨夜、誠さんの顔色が少し悪かったので、一応胃に優しいものをとうどんを作りましたが、結果的に良かったようですね」

 

昨日か……。体調悪い感じは全然しなかったが、どうやらみぞれは顔色の変化に気付いていたようだ。

……よく見ているなと共に、気付いてくれてありがとうという気持ちが凄い大きい。

そして、そのうどんを啜り食べ、一応完食。とは言っても、そこまで量があった訳ではないので普段なら足りないが、病人となった今では丁度いい量。ここまで来ると流石としか言いようがないな。

食器を洗い場に置き、その場で「ふぅ」と一息つくと、みぞれはこう言った。

 

「今日明日でお仕事もありませんし、ゆっくり休んで下さい。私でよければ何でもしますので」

 

ん?今何でもって……。いや、ふざけている場合じゃないな。

 

「あぁ、治るまでそうさせてもらうね」

「はい!」

 

みぞれは頼られると張り切るから、程々に頼るのが丁度いい。今日は恐らく頼るべき日なのかもしれないな。

こうして、休日二日間はみぞれに頼りっぱなしだった。




閲覧、ありがとうございました!
次回話も多分日常かな?なんて考えてますが、ぶっちゃけどんな話がいいか出なくなりかけてます。誰か助けて……。
出来れば二十話くらいまでは日常回で済ませたいと思ってます。出来るかはネタ次第ですが(笑)
それでは、また次回に!


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第十八話 後輩とお出かけ(前編)

どうも、【夕立】です。
ネタに詰まりかけて、友人と電話しながら書こうとしたところ、いつの間にか4時半でした。
そんなギリギリな中、今回は前に少しだけ出てきた朝倉 誠の後輩との話になります。ですので、少しだけの間みぞれと秋風さんはお休みです。コラそこ、タイトル詐欺とか言わないの。……自分でも薄々思ったから。


祝日の今日。俺はやる事がないので、暇をつぶすように書類整理をしたり、書類を清書しなおりたりをする事に。

すると、俺の携帯から着信音。休日の昼間に電話……誰からだろう?

そして、表記されている名前を確認すると、そこには金沢 結衣の文字。

 

「もしもし?」

『あ、先輩!おはようございます!』

「うん、おはよう」

 

もう昼間だけどね、というツッコミはあえてしないでおこう。

しかし、焦った様子はないあたりを見ると会社関係ではなさそうだな……。

 

「結衣ちゃんが会社関係以外で電話なんて珍しね。どうかしたの?」

『えっとですね、先輩って甘いもの好きですか?』

「そうだね、それなりには食べるよ」

『でしたら、私と一緒に食べに行きませんか?』

 

……え?

******

あの電話から一時間後。俺は駅前に来ていた。

結衣ちゃん曰く、駅前に新しくクレープ屋が出来たのだが、一人だと少し心細いらしく誰か一緒に行ける人を探していたらしい。

俺自身も甘いものが好きなので、断る理由もない為一緒に行く事に。

待ち合わせ時間には後10分程あるが、女性を待たせるのはあまり良くない。

……そういえば、結衣ちゃんと出かけるのはいつぶりだろうか?

結衣ちゃんとは中学校の後輩として知り合い、お互い同じ部で家も近い事もあり、そこそこ長い付き合いだった。

社会人になるという事で俺が引っ越した為、会社以外であまり会わなくなったので、結衣ちゃんとは何年も出かけていないかもしれない。

そして、約束の時間5分前に結衣ちゃんが走って現れた。

 

「先輩、お待たせしました!」

「別に急がなくても良かったのに。疲れるでしょ?」

「いえ、身体を動かすのは好きですから」

 

確かに、前から身体をよく動かす子ではあったな。文化系なのに、運動部並みの能力あったくらいだし。

そして、改めて見ると可愛い子ではある。

会社ではスーツと決まっている為、暫く見ていなかった私服だが、とても似合っていて可愛かった。

 

「それで?そのクレープ屋は何処にあるの?」

「はい!確かあっち側の通りを道沿いに行けばすぐだったはずです」

 

あまり駅前で長居するのも良くないので、とりあえず目的のクレープ屋に向かう事に。道は予め結衣ちゃんが調べておいてくれているので、俺はついていく事に。

……けど、俺の記憶が間違いでなければ確か彼女は──。

 

「あれ?この道であってる筈なんだけど……」

 

……地図が読めないのである。

地図アプリなどを起動して、色々見ているようだが、駅から歩いてもう十分。駅前というなら多分着いていてもおかしくない。

かといって、俺が調べようとしてもそもそも店舗が分からない。というより、秘密らしくて教えてもらってない。

……これは先が長そうだ。




閲覧、ありがとうございました!
恐らく明日、自分はコラボカフェに行く予定なので楽しみにしています。「金色ラブリッチェ Golden Time」というゲームのコラボカフェで、今からとても楽しみです。
恐らく、Twitterの方で呟いたりしていますので、よければ見て下さると嬉しいです。
それでは、また次回お会いしましょう!


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第十九話 後輩とお出かけ(後編)

どうも、【夕立】です。
最近特に何もないなーと思いながら小説を書いたりしてました。マジでやる事ない……。
新作の方は、異能系学園ラブコメにするのは決まって書き始めたはいいですが、そういえばバトル系の描写が上手く出来るか未だ心配です。他の人みたいに上手く書けるように頑張らなきゃ。


あれから一時間後。ようやくそれらしき店が見えてきた。

 

「先輩、あの店です!」

 

ようやく着いた……。それなりの体力はあるつもりだったが、流石にこれは疲れたな……。

そして、そのお目当てのクレープ屋の前はそこそこの列が出来ていた。クレープ屋『ポフィン』か……。俺もテレビで見たことあるな。

そして、俺達は最後尾と書いてある札のところに並んだ。

 

「結構並んでますね、先輩・・・・・・」

「まぁ、結構有名な店らしいからね。待つ時間もたまにはいいんじゃないかな」

 

なんて言ってみたが、単に歩き疲れて休憩をとりたいだけなんだがな。

だが、結衣ちゃんはそんな俺を尊敬するような目で見ていた。

やめてくれ!そんな純粋な目で見ないで!そんな自分の事ばかり考えていた俺が恥ずかしい!

しかし、休憩の為に待つと言ってもクレープ屋。基本は皆立ち食いの為、料金払って渡されたら何処かで食べる為に移動するので、そこまで待ち時間はなかった。

大体5分くらいだろうか?俺達は後3組の所まで順番が回っていた。

 

「メニュー表あるけど、結衣ちゃんは何食べる?」

「私はですね……コレにします!」

 

そう指差したのは、苺と苺クリームのスタンダードなクレープだった。やっぱり店のおススメと書いてあるし、一番人気とかなんだろうか。

 

「先輩はどうします?」

「俺か?俺は……コレにしようかな」

 

そう指差すのは、ツナマヨの温かいクレープ。最近では、クレープにツナマヨなどを包んで温かい状態で食べるのもある。

初めは甘いものが良かったのだが、小腹が空いている今、甘いものを食べるというよりこうゆう飯チックなものの方がいい。

すると、結衣ちゃんはそのメニューを見て少し驚いた顔をしていた。

 

「私、クレープは甘いものしかないと思ってたので少し意外でした……」

 

やっぱりそうゆう事か。

けど、コレ結構美味いんだよな。クレープの生地もいつもよりパリパリにしてたりする店もあるから、普通に飯として出せると思うし。

そんな会話をしていると、俺達の順番が回ってきた。

注文を済ませ、お会計。ゴソゴソと財布を出そうとしている結衣ちゃんを他所に、俺が2つ分の料金を支払う。

 

「せ、先輩!?奢ってもらうのは悪いです!」

「いいのいいの。誘ってもらったお礼って事で」

 

そう言って結衣ちゃんに財布をしまわせた。

結衣ちゃんは少し頬を膨らませたが、すぐに笑顔に変えた。

 

「ありがとうございます!先輩っ!」

 

その笑顔は、純粋無垢という言葉がぴったりだった。そして、輝いていた。

その後、クレープを食べ終えた俺達は折角だからという事でそのままショッピングへ。

初めは荷物持ちをする俺に遠慮していたが、俺が気にしなくていいよと言うと、お言葉に甘えてと言って買い物を楽しんでいた。

そして、時刻は18時を回ろうとしていた。

ピリリリリッと携帯が鳴るが、この着信音は俺の携帯ではない。と、いう事は結衣ちゃんか。

結衣ちゃんは「失礼します」と一言俺に言い、電話を受ける。

1分ちょっと電話した後、電話を切って申し訳なさそうにこちらを向いた。

 

「すいません、お母さんに呼ばれてしまいました……」

「あぁ、気にしなくていいよ。由佳さんによろしく言っておいて」

「はい!お母さんに言っておきますね!」

 

結衣ちゃんのお母さん、金沢 由佳(かなさわ ゆか)さんには俺も一時期お世話になったっけ。だいぶ懐かしいな。

こうして、俺と結衣ちゃんの休日は幕を閉じた──。




閲覧、ありがとうございました!
クレープ、甘いスイーツ系もいいのですが、自分はツナマヨみたいな感じのも好きです。寧ろ、頼むならそっちの方が確率が高いですね。
甘いものが好きな俺ですが、実は生クリームがあまり好きではないので……。生クリーム使った洋菓子、美味しい物ばかりなんですけどね……。
さて、今回はここら辺で。また次回!


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第二十話 変わった自分

どうも、【夕立】です!
最近、秋葉原でお金を使い過ぎ、控えようと思った矢先にイベント+期間限定物販……。エグいよ……。
さて、今回は日常回のような、ストーリーの続きのような微妙な回です。自分でもどっちか分からない……。


「はぁ……。疲れた」

 

日曜日の今日。俺は土曜日に引き続き、会社で休んでいた子の分の仕事をやっていた。

休日出勤も辛いのだが、若い子に無理に働いてもらいたくはない。俺も課長も、なるべく定時で帰ってもらいたいからな。

……まぁ、良くも悪くもお人好し過ぎると周りに言われてるしな。「控えろ」と言われても、周りに仕事とかがまわるくらいなら、俺がやって負担を減らそうって考えになってしまう。

そして、その仕事がようやく終わったのだ。

昨日は一応19時までやっていた為か、今日は16時で終わった。この会社、新人育成とかいう名目で結構仕事与えてるからなぁ……。

 

「お疲れ様ー。まーくん」

「課長、会社ではその呼び方やめて下さいって」

「いいじゃん。どうせ会社には私とまーくんの2人しか居ないんだし」

 

そんな風に親しげに話しかけてくるのが、ここの課長の|西行寺 文香(さいぎょうじ ふみか)。家が近かった為、結衣ちゃんと一緒に遊んでいたりしていた。

 

「それで?今から帰り?」

「まぁね。取り敢えず休んだ2人の期限がもう少しだったものと、金曜日にあった連絡事をまとめ終わったし」

「まーくんはほんっとマジメだねぇ。その期限って後12日後じゃなかった?」

 

一応、期限には1週間とちょっとあるが、もしかしたら何かしらで仕事が増えたり、手違いがあったり、急な要望もあるかもしれない。なら、早めに済ませて損はないだろう。

 

「ま、昔からまーくんは来る者拒まずみたいな所あったからねー。何でも頼まれ事引き受けてたから、良い様に使われてたからねー」

「……分かってても断れないんだよなぁ」

 

まぁ、その後に言われる「ありがとう」ってお礼が心地いいから、なんだかんだ引き受けちゃうってのも多いかな。

 

「でも、まーくんちょっと変わったよね。前より明るくなったもん」

「そうか?そんな変わってないと思うけど」

「ううん、変わった。きっと何かまーくんを変える出来事が起きたんだろうね」

 

俺を変える出来事……か。

確かに、あの時にみぞれと出会ってからの生活は大きく変わった。

みぞれと出かけたり、秋山さんと出会ったり、巫狐さんとも出会って、実は大変な子に会ってたりして……。

前までは会社行くか身体を休めるかの二択で、趣味もなかったし、やりたい事もなかった。

けど、今は違う。

みぞれ達の世界を救ってあげたい。あの子には別の理由があって禁術をしようとしてるのではないか?そんな事ばかり思い浮かべる。

 

「……そうかもな。俺、変わったかも」

 

『何が』変わったかと言われれば、はっきりは答えられない。だが、俺の中で『何か』は変わった。

……皆にお礼、ちゃんと言わなきゃな。

そして、他愛も無い話を少ししたら後、俺は帰路へと向かうのであった。




閲覧、ありがとうございました!
やはり、環境が変わると大変ですね。今までの生活が少し変わるだけで、こうも辛くなるとは……。
そして、環境が変わったので投稿頻度がもしかしたら減るかもしれません。書く時間が極端に減っているので……。
一応、ハーメルンの活動報告とノベルバ、Twitterのそれぞれで休む際には一言言いますので、チェックしてくれると助かります。
それでは、また次回お会いしましょう!


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第二十一話 少女の目的

どうも、【夕立】です。
何気に話が綺麗にまとまり、結構早く書けました。
……その代わり、いつも1,00文字程なのですが今回は2,000文字越えになりました。ほんの少し長いなーくらいですが。
因みにシリアスが入りますので、苦手な方は注意です。


文香と別れ、帰りの電車。16時半の電車に乗り、窓の外を見ると綺麗な夕焼けが見えた。

しかし、会社付近の駅から4駅しかない為、その綺麗な夕焼けを眺められる時間は少なかった。

もう少し見ていたいと思った俺は、駅前の公園へ。あそこは木々はあるが、近くにビルなどの遮蔽物が少ない為、夕焼けなどの風景を見るにはうってつけだろう。

そして、俺は公園に寄り、以前座った場所と同じ所に座る。駅側の入り口から近く、そこそこ木々も少ない。ここならいい感じに見えるだろう。

その考えは見事的中。綺麗な夕日が沈んでいくのが見えた。

その風景を眺めていると、仕事の疲れが癒されていくようだった。

 

「──おや、朝倉さんじゃないですか」

 

幼い声だが、何処か大人びた声。俺はこの声を以前にも聞いた事がある。

 

「……また会ったな。指名手配さん」

「あちらの世界の方から、事情を聞いたのですか」

 

彼女は、優しく微笑んでいた。それと同時に、俺を寒気が襲った。

彼女は、前と同じ雰囲気ではなかった。以前より、何処か余裕があるような雰囲気があった。

次に彼女にいつ会えるか分からない。ならば、俺が聞きたい事を、今聞いてみるしかないだろう。

 

「単刀直入に聞きます。貴方の目的はなんですか?」

「本当に単刀直入ですね。いいでしょう。貴方にだけはお教えしましょう。その代わり、他言無用ですよ?」

 

そう言って、彼女はまた微笑んだ。

何故、俺にだけ教えてくれる?もしかして、何かの罠なのでは?

そんな考えが横切ったが、今は情報が少ない。少しでも情報が聞き出せるなら、聞き出しておいて損はないだろう。

俺は彼女に身体を向け、話を聞く体制になった。

 

「私の目標──それは、『復讐』です」

「復……讐……?」

「えぇ。私は一度、死んでいるのです」

 

衝撃的な発言。そして、理解が出来ない発言だった。

彼女は一度死んでいて、その復讐をしようとしている……?

いや、だから新たな世界を作るのはおかしい。何も復讐出来ていないし、何より意味がない。

すると彼女は目を閉じ、話を続けた。

 

「私はあの世界で見捨てられ、死んだ後魂だけとなりました。この世界で言う、幽霊みたいなものです」

「見捨てられた……?」

「えぇ。多くの暴行や、教育と称し沢山の事をされてきました。私はその事を、何度も警察や施設に話しました。が、返ってくる答えは笑い者。誰も私を救ってなどくれませんでした」

 

あまりにも残酷な真実。俺はその真実を知らず、彼女を危ない事をする悪だと少なからず思っていた。

彼女は詳しくは話さなかったが、両親だけならここまで心は傷つかないと思う。つまり、周りの獣達からも暴行などを受けていたと思う。

……彼女は、辛い人生を送っていたのか。

 

「魂だけとなった私は、あの世界に居る事すら耐えられず、何処か別の世界に行く事を決心しました。その時、18歳になったら受ける試練の日がやってきたのです」

「18歳の試練……まさか!?」

 

その時、みぞれの姿が脳裏に浮かんだ。

確か、みぞれがこちらの世界に来た理由。それが、18歳になったら行う試練のようなものだと本人が言っていた。

つまり、彼女の魂はその時にこちらの世界に来たのか。

 

「ご存知なら話が早いです。その時に私はこちらの世界に来ました。そして魂で彷徨っている時に、この身体の持ち主に出会ったのです」

「その身体、君のものじゃなかったのか」

「えぇ。この身体は本来、後数日保てばいいレベルの重症でした。彼女は両親からの虐待を受けていて、意識不明の重症だったのです」

 

この身体の持ち主も、彼女と同じって事か。そして、虐待が酷いレベルまで達して病院送り。虐待されたまま放置された時間が長く、肉体も精神もボロボロだったという訳か。

 

「私は彼女に提案しました。彼女に自由を与える代わりに、私の願いを聞いて欲しい……と」

「それが、復讐だったのか……」

「えぇ。彼女は、私の願いを聞く前から提案を了承しました。『どうせ死ぬなら、誰かの為に役に立ちたい』……と」

 

この身体の持ち主は、恐らく優しい子だったのだろうな……。死を直前にしても尚、誰かの為に役に立ちたいなんて普通は考えないだろう。

そして、その条件を飲んだ彼女の身体を借りて今生きている。それが今の彼女か。

 

「私は基本はこの身体の中で眠っています。二重人格……の様なものですね。名前もこの身体の名前を借りて名乗っています」

「そういえば、名前聞いてなかったな」

「華です。佐倉 華(さくら はな)と言います」

 

佐倉 華。それが今の彼女の名前か。

初めは巫狐さんに伝えるつもりだった。しかし、この世界の事を絡んでいてはいくら偉い人であっても動く事が出来ないだろう。

何より、俺が彼女の事をあまり広めたいとは思えない。出来れば、穏便に解決してあげたい。それが俺の今の願いだった。

 

「さて……。私はそろそろ帰ります。夜遅くなってしまいますので」

「……なんというか、ありがとな」

「いえいえ、私が勝手に話した事です。気にしないで下さい」

 

そう言って、彼女はこの場を去った。時刻は既に18時を回ろうとしていた。

俺も帰るか……。ここに居ても、何か進展がある訳じゃないしな。

……そういや、夕日あんまり見れなかったなぁ。




閲覧、ありがとうございました!
4月になって、結構生活が変わって書く時間がまともに取れない分、1回の集中度が気持ち上がった気がします。
暫くはストーリーを進めるとして、日常回を挟む時にネタ切れにならない様に今から少し考えておこうと思います。
さて、今回はこの辺りで。また次回お会いしましょう!


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第二十二話 1人より、3人で

どうも、【夕立】です。
来週からゴールデンウィークに入り、予定もある程度詰まっているので忙しくなりそうだなーと思っていたら、そういえば今週の土日も予定あると気付き、暫く疲れが取れそうにありません……。
恐らくですが、ゴールデンウィーク中にまた秋葉原に行こうかと思います。そういえば、今月だけで3回は行ってる様な……?


華さんと話し終えた後、俺はまっすぐに家に帰った。

華さんが抱えている辛さ。それが全て分かる訳ではないが、何処か引っかかっていた。

彼女が暴行をされていて、その復讐がしたい。その事を話す顔はずっと微笑んでいたが、俺には悲しい表情に見えた。

何処がと言われれば詳しくは言えないのだが、恐らく「ぬくもり」を知らない彼女は、それを知りたいのではないのか?

それだとしたら、誰かがそのぬくもりを教えてあげないといけないのだが、この事情を話すのは秘密だと約束してしまった以上、誰かに協力してもらう事は出来ないし……。

はぁ、どうしたものかねぇ。

考えすぎて疲れてきたので、勢いよくベッドにダイブ。ふかふかであったかい。

かと言って眠いわけでもなく、布団の中でゴロゴロ。

時刻は21時。明日も仕事があるので、早く寝ないとな。

……かと言って眠くないのに寝るのって結構辛いので、散歩でもして身体を疲れさせる事に。

軽く身支度をし、リビングに出るとみぞれと秋風さんがテレビを観ていた。

 

「誠さん、今からおでかけですか?」

「うん。寝れないから、散歩にでも行こうかとね」

 

そう言って、リビングにあった上着を羽織り、準備完了。すると、2人も外出の準備を始める。

 

「私達もお供しますよ」

「私達も暇ですし、夜風にあたるのもいいですからね」

 

そう言うと、手早く準備を済ませて玄関へ。たまには皆で散歩もいいな。

そうして、俺達は家を出発した──。

******

夜道を歩いて十数分。俺達は駅前の公園へと着いた。

この公園は結構広く、中を適当に歩くだけでも結構な時間を消費するので、散歩する場所には最適だと思う。

……これだけ歩けば、今の悩みもどうにかなるかもしれないしな。

 

「ところで朝倉様」

「ん?どうしたの?」

 

入り口から歩いて少し経ったあたりで、秋風さんが話しかけてきた。

チラッと秋風さんの方を向くと、ちょっと真剣な顔になってこちらを見ていた。

 

「あまり深くは聞きませんが、何か悩んでらっしゃいませんか?」

 

いきなりそう言われ、ドキリとした。

もしかして、そんなに顔に出ていただろうか?みぞれもその問いを聞いて、俺を真剣な目で見ていたので、バレバレだったのか……。

でも、オブラートに包めば相談出来るし、少しは解決するかもしれない。これはチャンスなのかも。

 

「……恨みを晴らして、その子を元気にさせる方法ってあるのかな」

 

その問いを聞いた2人は、驚くような目をしていた。

そりゃ驚くか。意味分からない相談だし、そもそも俺が恨みを買ってるみたいな言い方だしな。驚くのも無理もない。

しかし、それでも2人は何も聞かず、真剣に考えてくれた。

本来ならば、誰かの為の悩みなのか、自分の為の悩みなのかを聞いたりするだろう。そういった誰でも生まれるであろう疑問は、無意識の内に聞いてしまったりもする。もしくは、慰めの言葉などをかけるだろう。

だが、2人はそのどちらもしなかった。

真剣に俺の問いを聞き入れ、真剣に考えてくれている。俺は、そんな2人に心からの感謝をした。

そして、公園内を散歩しながら3人で話し合い、時間が遅くなってきたので帰る事に。

2人は、あまり力になれずに申し訳なさそうにしていたが、俺にとっては大きな前進になったと思う。

次に華さんと会ったら、俺なりの救いの手を差し伸べられる様に──そう、心の中で誓った。




閲覧、ありがとうございました!
さて、前書きの方には個人的なゴールデンウィークの話をしましたが、どうせ10連休もあるのでいつもより一話でも多く投稿出来たらいいなと考えてます。
ゴールデンウィーク中に金曜日は2回来るので、二話投稿はほぼ確実。出来れば三話投稿するか、一話完結の読み切り作品を投稿するかで迷っています。
読み切りの方は、以前に言ったものとは別で、気分転換に書いてる感じなのでやろうとすれば早めに投稿出来るかも?とは考えてます。ただ、シリアスな内容になってしまいますが……。
いずれにせよ、ゴールデンウィーク中は忙しいのは確定しているので、多く投稿出来るかは約束は出来ないので、更新されていたらラッキー程度に考えていて下さい。
それでは、また次回に!


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第二十三話 佐倉 華と、もう一人の少女

ゴールデンウィークだー!と、【夕立】です。
まさかあんなに高熱から始まるとは思っておらず、正直笑うしかなかったです。直ぐに治ったので、それだけは良かったですね。
今回は、華ちゃんのお話となります。謎に包まれている彼女ですが、今回で少しは分かるかと思います。本当に少しですが。


「ただいまーっと」

 

マンションの2階のドアを開け、中に入る。

私の言葉の返事は返ってこない。部屋は真っ暗。

そう、これが私の──佐倉 華の今の現状なのだ。

正確に言えば、今借りている身体の持ち主の現状。私も、似たような経験をしたからよく分かる。

この子の両親は、この子が生と死の狭間を彷徨っている間の約1年間、ずっと帰りを待っていたらしい。

しかし、1年間も華の心配をしていたせいなのか、精神が病んでいき、2人とも自殺をしてしまったらしい。

そして、両親が亡くなった1週間後。私と一体化した華は、家に帰った。

華は、両親から虐待を受けていながらも、両親が好きだった。

虐待が毎日だった訳じゃない。両親も心が病んで、それで虐待をしてしまっていた。

私が調べた結果、両親も華の事を愛していた。虐待してしまっていた事に後悔していた。

明日は華を甘やかしてやろう。明日は目一杯愛してあげよう。

そんな時、彼女は病気で意識不明となった。

両親の心のダメージがどれだけ大きかったかは分からない。けど、間違いないのは自殺をしてしまう位の傷を負ったという事だ。

 

(|蕾(つぼみ)ちゃん、大丈夫?)

 

そう、華が語りかけてきた。

佐倉 華という名前になる前の──本当の私の名前。華だけが唯一知っている名前だ。

私と華は二重人格の様なものなのだが、それぞれの思想を持ち、それぞれの意思で人格を変える事が出来るといった、アニメとか漫画みたいな都合のいい設定になっている。

好み、行きたい場所、したい事。一緒にはいるが、考えている事は全くといっていい程に別。

だが、今まで言い争いなどにはなった事がなく、お互いが一歩引く様な感じ。

私は正直、華には悪い気持ちが多い。その為か、彼女には今与えられている命で、沢山の楽しみを見つけて経験をして欲しい。

──私が、味わう事が出来なかった楽しみを。

 

(えぇ、大丈夫。それより、今日の夕飯は任せて頂戴)

(急だね……?蕾ちゃんのご飯は美味しいから、寧ろお願いしたいくらいだけど)

 

ニコッと微笑んだ後、身体の所有権が私に移る。

手を握ったり、開いたりして感覚を確認。そして、テキパキと料理を作り始めた。

今の私は、あの時の様に一人じゃない。華が居る。

あの世界に復讐するとは言ったけれど、差別なんてない世界を作れるのは、私だけ。その為なら、どんな代償だって払うつもりだ。

だから、私はあの世界を──見えない差別が多いあの世界を、私が終わらせる。

私が、創り変えてみせる。




閲覧、ありがとうございました!
まず、軽いご報告を。恐らく、ゴールデンウィーク中にもう一話ぐらい投稿出来るかという話ですが、現在結構危ういです。
理由として、想像以上の多忙。その為、メインはPCで書いているのですが、そのPCを開く時間がほぼ取れていません。
携帯でも書きますが、チェックや細かな修正しかしないので、何処か慣れないというか……、そもそも携帯すらあまり触れてない気もしてます。
なので、正直投稿出来るか不安なところです。自分のやりたい事もする時間も欲しいですし。
後は他愛のない話を。最近Apexをやり始めまして、現在23レベルくらいなのですが、難しいですね……。
購入キャラも、無課金なので悩んだ結果ミラージュを選びました。結局使ってないのはアレですけど(汗)
個人的な使いやすさは、一番がブラッドハウンド、時点にパスバインダーですかね。足跡の表示とか、分かりやすいので動きやすいです。
こんな私でも、「一緒にやりましょ」という方が居れば受け付けていますので、Twitterの方で一言下さい。足手まといになるかもですが、宜しくお願いします。
それでは、また次回に!


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第二十四話 引越しのお手伝い(前編)

どうも、【夕立】です!
ゴールデンウィーク最終日、皆様はいかがでしたか?
自分はいとこが来たり、秋葉原行ったりと色々ありました。そう考えると結構ハードだったなぁと思います笑
ゴールデンウィーク最終日という事で、一話多めにかけたので投稿しました。ある意味ギリギリだったなぁ……。
5/10(金)にもしっかり投稿しますので、その辺はご安心を。


「はぁ……。休日くらいはゆっくりしたかった」

 

そう嘆きながら、いつも使う駅から電車で4駅。今となってはほぼ見なくなった、懐かしの場所に来ていた。

ここは、俺が生まれ育った場所。そして、今は出来ればあまり来たくない場所。

ここに来る理由はなかったのだが、とある人のお呼び出しにより、この土地に来ることになった。

そして、その呼び出した本人は……2分経っても来ず。あの人、マイペース過ぎるからな……。

駅で買った缶コーヒーを啜りつつ、待ち人を待っていると、遠くからそれらしき人が。

向こうも俺を見つけたのか、大きく手をブンブンと降る。子供じゃないんだから、はしゃぐなって……。

 

「ゴメン!遅くなっちゃった」

 

そう言って、俺の目の前で息を切らしながら来たのは、西行寺 文香。俺の会社の課長を務めている。

小さい頃から面倒を見てもらっていた俺は、文姉と呼んでいた。今は会社で会う事が多くなったので、文姉と呼ぶわけにもいかない。ので、課長と呼んでいる。

 

「遅くなったのはしょっちゅうだからいいけど、引っ越しするのを手伝えってどゆこと?」

「そのまんまの意味?会社近くに家を確保出来たから、そっちに引っ越そうかなーって」

 

簡単に引っ越すと言いながら、ニコニコしている文姉。そういやこの人、家がそこそこのお金持ちだから、引っ越しとか別荘とかしょっちゅう言ってたりしてたっけ?

前に引っ越ししようか悩んだ時、文姉に頼むのも良かったが、流石にそこまで迷惑をかける訳にもいかない。結果的に、巫狐さんに新しい家をもらったから良かったが。

つまり、引っ越しをしたいから力仕事は任せた。そうゆう事か……。

 

「……ん?引っ越しの手伝いって、俺以外には?」

「荷物自体、そんなにないからまーくんだけでいいかなーって」

「それは慢心過ぎじゃないですかね……」

 

家具を運ぶのを一人でやるって、結構な重労働。更に、会社に近いとなると4駅も離れている訳なので、量によっては往復。明らかに一人でやる量じゃない。

だが、手伝うと言ってしまった以上、手伝わずに帰るなんて言えない。やるしかないのだ。

 

「はぁ……。取り敢えず、トラックは?」

「車は確保してあるから、まーくんは積み込みをお願いね〜」

 

歩きながらニコニコして言う文姉。気が効いているんだが、いつも微妙に抜けてるんだよな。

そして、歩く事5分ほど。着いたのは、大きな高層マンションだった。

 

「文姉、もしかしてココ?」

「うん。ここの一番上の階に部屋借りてるのよ」

 

……ちょっとお金持ちってレベルじゃねぇ。お嬢様ってレベルのお金持ちだわ。

馴れない高層マンションにビクビクしながら入り、文姉に案内されて目的の部屋に到着。

カードを差し込み、鍵を開ける。オートロックってやつなのかな?初めて見たわ。

部屋の中は最上階というだけあり、街を見下ろせる景色。高い。

荷物は幸いにも、ダンボール5個分。これならそこまで時間はかからなそう。

こうして、引っ越し作業のお手伝いが始まった……。




閲覧、ありがとうございました!
多くの人が、明日から学校や会社が始まりますね。現実逃避をしたいのは分かります。が、皆様頑張りましょう!……Twitterとかの絵師様の絵とかを見て、元気付けて下さい。
それでは、また次回!


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第二十五話 引越しのお手伝い(後編)

どうも、【夕立】です。
月曜日に投稿し、家の用事で火曜日と水曜日は祖母の家で忙しく、何だかんだ書き始めたのが木曜日という、結構ハード(?)なスケジュールでした。次からは余裕がある時にだけ……と、心の中で誓いました。


荷物を運び始めて20分程。エレベーターがあるから楽だが、荷物を置いたり持ったりが多い為、結構足腰に疲れがきていた。

 

「これで最後……っと」

 

5つ目のダンボールをトラックの荷台に積み込み、運転手に「お願いします」と一言。

運転手が会釈をし、運転席に乗り込んだのを確認したところで、文姉が何処からか帰ってきた。

 

「おぉー、丁度終わった感じかな?」

「人に手伝わせておいて、何処に行ってたのさ……」

「ちょーっとお仕事をね〜」

 

そう言って、片手に持っていた携帯をフリフリと振る。

文姉は本来、今働いている会社の社長になれた人なのだが、本人が断ったのだ。

理由は文姉らしく、「今より大変になったら、遊んだりする時間が減っちゃうじゃない?」だそう。

その後、なんだかんだあったらしく会社の中ではだいぶ高い地位にいる。本人曰く、上から5番目くらいには入っているらしい。手際は昔から凄く良かったし、人柄も良いから輪の中心になりやすい人だったっけ?

……功績に似合わず、はしゃいだりふざけたりする人ではあるけど。

 

「まーくん」

 

身体を伸ばして休憩しながらトラックを見送っていると、後ろから文姉が真剣なトーンで話しかけてきた。

 

「なんだよ、そんな真剣な声出して」

「まーくん、何か一人で抱え込んでない?」

 

その一言を聞いた瞬間、何かが刺さるような痛みを感じた。

確かに、俺は悩んでいる。どうするべきか考えている。それも、誰の力も借りずに。

だって、これは華さんと約束した事だから。誰にも言わない、と。

だから、これは抱え込んでいるのとは違う。俺が一人で解決する問題だと、俺は心の中でずっと思っていた。

だが、文姉はそんな俺の焦りを加速させる様な一言を言った。

 

「一人で抱え込んでる?何も悩んじゃいないよ」

「ううん、絶対悩んでるよ。だって苦しそうだもん」

 

グサっと、また俺の心に何かが刺さった。

苦しそう?それは俺にかける言葉じゃない。華さんが一番苦しんでる。

だから、俺は最善策を考えているだけ。何も苦しい事なんてないじゃないか。

しかし、文姉はそんな俺に構わずに続けた。

 

「まーくんって、頼まれた事とかを誰の力も借りずに一人でこなそうとする。誰かに相談されたら、一人で解決しようとする。自分が助けて欲しくても、自分の事だからって誰にも相談しないで一人で抱え込んじゃう」

「……違う」

「誰かに頼られて、それが自分に出来ない事でも……明らかに難しい事でも、まーくんは一人で頑張ろうとする。今までにそれで何度ケガをしたりしてきたのか分からないくらい」

「違うって、言って──」

「違わないよ」

 

その否定する文姉は、俺の知ってる文姉の顔じゃなかった。

俺を叱ろうとしている。けれど、その表情には悲しみの感情も混じっている。

……何故?何故そんなに悲しそうにしているんだよ。

 

「まーくん、頼っちゃダメなんて誰も言ってない。それでまーくんが倒れたら、何人の人が悲しむと思う?何人の人が後悔すると思う?あの時、助けてあげれてればって」

 

なら、俺が倒れなければいい。俺が辛くても、誰かが幸せになってくれれば、俺はそれでいい。

もし、俺のせいで誰かが辛い思いをするならば、誰も巻き込まない様に一人を選べばいい。

だから、俺は──

 

「……お母さんの事だって、まだ後悔しているでしょ?」

「それはアンタには関係ないだろッ!!」

 

ハッと、我に返った時には遅かった。

俺は、文姉に怒鳴っていた。俺が感情的になってしまったせいだ。

文姉の顔は、今にも泣きそうだった。でも、俺が怒鳴って泣きそうになったんじゃないのはすぐに分かった。話してる途中も、声が少し震えていたからだ。

 

「……ゴメン、文姉」

 

そう一言、文姉に言った俺はその場を逃げ出した。後ろを振り返ることなく、走った。

適当に走り、着いたのは駅。この時、俺は遠くに行って、文姉が見つけられない様にと考えていた。

ICカードをかざして改札を通り、電車に乗り込む。

それは、俺の家に向かう電車の反対側だった。

家に帰ったら、文姉は恐らくすぐに来てしまう。なら、暫く何処かへ身を隠そう。

みぞれ達にも、メールで暫く家を空けるとだけ伝え、携帯の電源を切った。

……少し、頭を冷やそう。




閲覧、ありがとうございました!
今回はちょっとシリアス入れてみました。日常回を楽しみにしている方、また数話くらい書けませんが、楽しみに待っていて下さい。
……単に作者のネタ切れでストーリーを進めちゃってるんです!すいません!
次はみぞれ視点で心情を書くか、誠視点で何処かへ行った話を書くかと思います。こうゆうシリアスチックな時は、本文気持ち長めになっちゃうなぁ……。
それでは、また次回!


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第二十六話 嫌な予感

どうも、【夕立】です。
段々と気温も上がり、夏になってきたなーと感じられる様になってきました。
お陰で、寝て起きた時に暑さでテンションが下がるんですよね……。まだ若干涼しさは残ってますが、それでもやっぱり暑いです……。


「ふぅ。仕込みはこんな感じですかね」

 

夕飯をロールキャベツにしようと考えた私は、日中の間に仕込みだけしておくことに。

今日は、誠さんがお引越しのお手伝いに行っている。多分、沢山動くから疲れて帰ってくると思う。夕飯とお風呂、どちらが先でもいいように準備しておかなくちゃ。

秋風さんも今日はお休みで、リビングのソファーに座りながら編み物を編んでいる。

その編み物の完成度は高く、ネットのフリーマーケットに出品したところ、10点用意した編み物が1時間で完売。夏場だというのに、こんなに売れるのは凄いと思う。

何か工夫をしているのかと聞いたところ、コストが安いのでなるべく低額で、名前を編み物に付けてくれるというサービスも行なっているらしい。

その結果、春後半という売れにくそうなシーズンに完売出来たいう。

今では注文も受注しており、予約も多いらしい。どれだけ人気か、ネットなどに疎い私でもよく分かる。

しかし、秋風さんも仕事があるのでずっと編んでいる訳にもいかない。休んだりする時間だって欲しいと思う。

だが、秋風さんは「趣味でやっている事なので、あまり疲れたりとかは感じないですよ。寧ろ、色々な人の役に立ててると思うととても嬉しいです」と言っていた。

私は、これといった趣味がないからやれる家事をやっているけれど、たまに秋風さんが羨ましく感じる。

何かに全力で集中して、周りの人の役にも立っている。趣味ではないけれど、誠さんだって同じ。

けれど、私はそんな趣味がない。

家事をやっているのも、お世話になっているからやらなくちゃって使命感から始めたが、今では私の仕事と思っている。

何か見つけようともしたけれど、私に合うものはなく、結局このポジションに戻っている。

不満がある訳じゃないけれど、私も何かに全力になりたい。誰かの役に立ちたい。そう思っていた時だった。

私の携帯がリビングのテーブルの上で鳴り始めた。どうやらメールが来たらしい。

手を拭き、テーブルに近づいて携帯を見ると、誠さんからだった。

もしかして、遅くなるという連絡かな?と思いながらメールを開くが、そこには思いもよらない文が書かれていた。

 

『しばらく家を空けます。少しの間、みぞれと秋風さんに家の留守番を頼むので、探さずに待っていて下さい』

 

私は、その意味を理解出来なかった。けれど、ほっておいては駄目な気がした。

 

「……秋風さん、力を貸してくれませんか?」

「……?いいですけど、何かあったんですか?」

 

私が真剣な表情で話すと、秋風さんは私を心配していた。

私に出来るか分からない。そもそも、本当にこの行動があっているかも分からない。

けれど、動かずにはいられない。しなきゃいけない。この文からは、悲しさが感じたから。

だから、私は──

 

「誠さんを、探しに行きます」




閲覧、ありがとうございました!
この後は、基本誠視点でお送りします。みぞれ視点で話す事が少ないというか、誠の方でやりたい展開があるというか……って感じです(笑)
主の事情的には、小説の続きを書く時間がなくて、投稿前の日の夜に仕上げと称して書くのが多くなってきました。次の日の金曜日、眠くはなりますが仕方ない事です(汗)
投稿ペースはこのペースで定着し始めているので、あまり崩したくないっていうのが理由ですね。せっかく週一で投稿出来ているので、このまま頑張りたい!って感じです。
なので、「大丈夫ですか?」より「頑張って下さい!」などの応援や、感想やお気に入りなどで励みになるので、是非お願いします!
それでは、また次回!


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第二十七話 海岸の出会い

どうも、【夕立】です。
Twitterのアカウントを見ていて、たまに「アレ?このアカウント要らないない?」って思います。
前の日の夜ぐらいに予約投稿をするので、ハーメルンやノベルバの投稿お知らせの機能を使っても、最新話が投稿されている訳でもないので、誤解を招きそう……という事で使ってませんが、そしたら必要ない感じになってしまいました。
……今普通に使っているアカウントの方と合併して、アカウント削除しようかな?


電車に揺られてどの位の時間が経っただろう。気付くともう終点駅だった。

とりあえず電車を降り、改札口を出て辺りを確認。一番最初に見えたのは、広大な海だった。

俺は海に近付こうと道を回るが、着いたのは砂浜ではなく海岸の崖。まぁ、風にあたるくらいなら、砂浜でも崖でも問題はない。

崖の先に座り、ボーッと海を眺め続ける。何も考えず、ただボーッと。

しかし、何も考えないと意識してしまうと逆に何かを考えてしまう。

みぞれはどうしているだろう?秋風さんは仕事を上手くやれているだろうか?文姉には言いすぎてしまった。そんな事を。

しかし、これは自分探しの旅の様なものだ。華さんを救う考えをまとめたり、俺の心の整理をする為の必要な時間。それがたまたま今だったのだと。

誰に対してかも分からない言い訳を心の中で言いつつ、海を見ていると背後から足音が聞こえた。

足音に気になり、俺が振り向くとそこには小学生くらいの女の子が立っていた。

小学生にしては落ち着いた雰囲気。服や靴など、身につけているもの全てが新品かの様に綺麗で、少し違和感を感じたが、それを振り払うかの様に少女は話しかけてきた。

 

「……危ないですよ?」

「あ、あぁ」

 

崖に座っていたから、心配してくれたのだろう。その声を聞いた時には、違和感がなかったかのように消えていた。

俺が立つと、少女は俺が座っていた位置に腰を下ろし、海を眺め始める。危ないと言っておいて、自分はいいのか……。

 

「……私はいいんです。私は所詮、人形(・・)の様なものですから」

「人形……?」

 

俺の心を読んだかの様に少女は言う。何故読めたのかより、何故自分は人形と言ったのかが気になったのだ。

すると、少女は立ち上がり俺の方を向く。身構える必要はないのだが、何故か姿勢を正してしまった。

すると、彼女は無理に作った様な優しい顔で俺に話した。

 

「私は、この近くのお屋敷に住んでいます。いわゆる、お嬢様の様な暮らしをしています」

 

お嬢様……か。だから服が新品かの様に綺麗なのだろう。本当に新品なのかもしれないし、毎回クリーニングに出したりしているからなど、色々考えてみた。

 

「父が大手企業の社長をやっていて、母は有名な音楽家。そんな環境で育った私は、様々な教育を受けてきました。親の為に私もしっかりとやらなければ。初めはそう考えていました」

 

お金持ちの子や、お偉いさんの子は様々な教育を親から受けると聞いたことはある。

この子の場合、恐らく音楽や政治関係など。それは子の意思など関係なく、無理にでもやらせる親も多いという。

そして、彼女が言った『初めは』という言葉。つまり、今は少なくともそう考えていないという事。しかし、それでは人形という理由には至らない。

多くの情報を整理しながら考察するが、やはりまだ情報が足りない。そして、まだ彼女は話してくれるようなので、俺は彼女の話を真剣に聞いた。

 

「ある日、無垢だった私は父が主催のパーティに行く事になりました。身だしなみなどは勿論、立ち振る舞いを言われたり、父の側から離れない様にと言われました。そして、パーティ当日。父と母に用があり、部屋を訪ねようとすると、中からこんな話が聞こえてきたのです。『あの子は私達の役に立っている。これからも私達のためになってくれなければ』と」

 

それを聞いた俺は、怒りが込み上げてきた。

せっかく産まれた我が子を、道具の様に動かす親。役に立たたなければ、この人達はこの子に用がないと言わんばかりの言い方だった。

 

「そこで分かったのです。私は、親に上手く使われていた()に過ぎないのだと」

「……」

 

俺は何も言えなかった。彼女に同情しても、それは彼女の悩みは解決しない。

しかし、彼女の問題は両親。赤の他人の俺が首をつっこむ問題でもない。

彼女を助ける為の方法。なくはないのだが、彼女がそれに賛成するとは思えない。更に言えば、自分が危険な目に遭う可能性が高いのだ。

……だが、目の前の少女を放って置くわけにもいかない。俺は覚悟を決めて彼女にこう言った。

 

「おせっかいみたいに聞くが、君は両親から大切にされたいのか?」

「……分かりません。ですが、またあの頃に……無垢だった頃の様になりたいと思うのも確かです」

 

つまり、少なくとも親の愛情は受けたい。知りたい。そうゆう事だと俺は解釈をした。

彼女の話を聞いた以上、俺には助ける理由がある。ならば、答えは一つだ。

 

「──なら、俺に協力してくれないか?」




閲覧、ありがとうございました!
誠が考えている計画。一体彼は何をしようとしているのか!
脱線ぎみですが、誠が考えをまとめる期間をカットする訳にもいかないので、何かイベントを起こそうかな~と考えた結果、こうなりました。……あまり長くならないようにします。
それでは、今回はここまで!また次回!


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第二十八話 訴え

どうも、【夕立】です。
今回は、3,000文字を超える内容です。いつもより2〜3倍の内容なので、長く感じるかもしれません(いつもが短いだけですが)。
そして、この作品で個人的には見てほしい所でもあります。理由は後書きの方で……。


その日の夜。俺は早速計画を進めた。

まず、少女──雪ちゃんを家に一度帰した。

そして、寝静まる深夜3時。俺は、雪ちゃんの住む屋敷へと来ていた。

流石に不法侵入はマズイので、門の前で待機。すると、時間通りに雪ちゃんが門の反対側からやってきた。

ギィィッと音を立て、門がゆっくり開く。雪ちゃんは、開けた門の間を通ると門を閉めた。

 

「すみません、遅くなりました」

 

雪ちゃんは、俺が待っていたのを見るとそう言った。だが、俺が来たのも10分前くらいなので、それほど待ってはいない。

 

「大丈夫。それより、誰にもバレずに出来たか?」

「えぇ。ちゃんと部屋には手紙を置き、誰にも見られずに来ました」

 

そう言いながら、雪ちゃんは屋敷を見る。灯りも全て消えており、言った通りに部屋の窓だけは開けてきてくれていた。

俺の計画は、簡単に言えば親御さんが雪ちゃんをどう思っているか。それを明確にするだけのものだ。

しかし、人の気持ちはそう簡単に分かるものではない。ならば、どうすればいいのか?

大切か大切ではないか。それは無くせば分かるのだ。

人間、そこまで大切ではなければ、無くなっている事すら分からなかったり、他のもので代用したりなど別の方法を探したりする。

しかし、本当に大切なものだとそうはいかない。必死に探したりしてしまうものだ。

今回の場合、雪ちゃんには自分で置き手紙を描いてもらい、それを部屋に設置。

内容としては、場所と今までありがとうとだけ書いてあるだけ。そんな不自然な手紙だが、不安を煽るなら十分過ぎる文だ。

そして、俺と雪ちゃんはその場所──昨日出会った海岸の茂みにテントを張り、来るタイミングを見計らう。

更に不安を出してもらう為、雪ちゃんには予備の靴を持ってきてもらい、崖に靴を設置。周りから見れば、誰かが自殺をしたように見える様にしたのだ。

 

「しかし、この作戦で本当に大丈夫なのですか?」

「恐らくな。まぁ、来るかは親御さん次第だがな」

 

雪ちゃんは、テントについてすぐにそう聞いてきた。

俺は断言したものの、実際は不安だってある。

もし、ここで警察を頼ってしまったら?使用人しか来なかったら?そんな不安が。

しかし、俺は信じる。雪ちゃんの親御さんは、きっと雪ちゃんを大切に思ってくれている。必ずここに来る、と。

しかし、寝静まった今では来るはずもない。ここは朝に備え、仮眠を取ったりした方がいいだろう。

 

「とりあえず、計画は日が登らないと始まらない。それまでは仮眠を取るといいよ」

 

俺は雪ちゃんにそう言うと、コクリと頷いてくれた。

テントには寝袋が2つ。ベットや布団は用意出来なかったが、そこはなんとか我慢してもらうしかない。

しかし、雪ちゃんは寝袋が初めてなのだろう。寝袋の使い方を教えている途中、ずっと目を輝かせていた。

そして、雪ちゃんはテントに入り、俺は木陰で念の為に海岸を確認。いつ来るか分からないので、一応寝ずに監視を続けるとするか……。

******

そして、午前10時。すっかり日は登り、恐らくあちらも手紙に気付いてはいるだろう。

昼まで寝ているのは考えにくいので、判断基準は昼までに来るか。もしかしたら夕方かもしれないが、愛する娘ならば直ぐにでも来るだろう。

すると、慌てる足音が2つ。良かった、しっかり来てくれた様だ。

そこには、雪ちゃんの両親らしき人が2人。崖に靴があるのを見つけると、急いでその靴を手に取った。

……そろそろ、か。

敢えて分かりやすく草音を立て、注意を引く。そして、俺はゆっくりと2人の前に出た。

 

「……誰だ、君は」

 

警戒心剥き出しの父親。そりゃ、こんな時に怪しい男が現れたら誰でも警戒するよな。

俺は平然な顔をして、2人に頭を下げた。

 

「初めまして。雪さんのお父様とお母様……でよろしいでしょうか?」

 

その言葉を聞いた瞬間、警戒心から別の感情に変わったのがすぐに分かった。

これは、俺に怒りを向けている。

登場のタイミング、第一声が雪ちゃんの事。事情を知っている者でなければ、こんな偶然など起きないだろう。

そして、父親は怒りを声に乗せて俺に話しかけた。

 

「貴様……、雪に何をした?」

「いえ、何も。ただ、彼女の嘆きを聞いただけです」

「嘆き……だと?」

 

その言葉に、父親は戸惑いを隠せない様だった。

そして、俺は確信した。雪ちゃんは、この親の元に居るべきだと。素直になれない親だが、大切にしてくれている……と。

しかし、俺が分かっても雪ちゃんが納得するまでは付き合うつもりだ。雪ちゃんだって、きっと素直になれないだけで、本当は気づいているのかもしれないが。

俺は一呼吸置いた後、父親の目を見て話し始めた。

 

「雪さん、とても悩んでいました。もしかしたら、私は要らない存在なのかもしれない。そんな事も言っていました」

「雪……どうしてそんな事を……」

 

今まで口を開かなかった母親も、聞かずにはいられないくらいの衝撃だったのだろう。暗い表情のまま、そう呟いていた。

 

「雪さんは、貴方がた2人のとある呟きを耳にしました。それから、貴方がたから愛されていないのではないか……と、思うようになったそうです」

「私達の……呟き?」

「えぇ。パーティがあったある日、『あの子は私達の役に立っている。これからも私達のためになってくれなければ』。そんな言葉を呟きませんでしたか?」

「──ッ!」

 

心当たりがあったのだろう。2人は青ざめた表情になり、やがて膝から崩れ落ちてしまった。

しかし、これで辞めてはいけない。2人の本心を言葉にしてもらうまで、俺は訴えかけ続ける。

 

「その結果、雪さんは親の操り人形──駒なのではないかと考え始め、最後にはこの様な事になってしまった訳です」

 

膝をつき、母親は泣き崩れ、父親は唇を噛んでいた。

人の心は脆い。心にも思っていない言葉、たまたま聞いてしまった言葉、勘違いで自分に対してと思ってしまった言葉。そんな一言で、心はいともたやくす折れてしまう。

そして、その折れた心を癒すのは難しい。謝罪などで済む問題ではないのだ。

しかし、今回は癒せる筈だ。勘違いをしっかり訂正し、雪ちゃんは愛されていたのだと分からせる。今回はまだ傷が浅かっただけだが、もう少し時間が遅ければ、取り返しのつかない事になりかねなかっただろう。

 

「私は雪さんの家庭を知りません。どの様な生活をし、どの様な会話をしていたのか。しかし、一つだけわかる事があります」

「……教えてくれ。私は……どうしたら良かったんだ……?」

 

父親は、やがて俺に縋る様に聞いてきた。

少しやり過ぎた感がするが、これで雪ちゃんも分かってくれた事だろう。

そして、俺は優しい笑顔を2人に向け、こう言った。

 

「もし、雪さんが帰ってきたら今まで以上に愛して下さい。もう、貴方がたの元を離れたくないと思える位に」

 

その言葉を聞き終えると同時に、2人は大きな声で泣いた。『雪』と、名前を呼びながら。

隠していたテントの方へ視線を向けると、雪ちゃんも泣いていた。声を必死に出さない様に、渡した枕を抱きしめながら。

******

その後、雪ちゃん達は仲直りした。

雪ちゃんが自分だと思っていた聞き間違いは、どうやら他の企業の話らしく、仕事が忙しかった両親は雪ちゃんに冷たい態度を取りがちだったらしい。

雪ちゃんも、両親も暫くは泣きながら謝りあっていた。そして、愛していると伝え合っていた。

俺はそれを見守った後、雪ちゃんに招待されてお屋敷に。両親からも手厚く歓迎された。

そして、その夜。俺は、案内された部屋のベランダで夜空を見上げていた。

脳裏には華さんの出来事が浮かび、俺は気づいた。

──そうか、華さんを助ける方法。上手くいくかは分からないが、やってみる価値はある……!

そう決意し、俺はベットに入って寝るのであった。




閲覧、ありがとうございました!
伝えたかった事は2つです。
1つ目は、親は子供をしっかりと愛してあげて下さい。親が子供へと虐待などがニュースなどで報道されますが、自分はそれを見るたびに心が苦しくなります。
「愛す」といっても、「甘やかす」訳ではありません。叱る時は叱り、褒める時には褒めてあげる。それだけでもいいのです。
逆に、子供は親に感謝をして下さい。親は子供のために、色々としてくれています。それを、「当たり前」だと思わないで下さい。独り立ちした時、初めて親の苦労がわかるはずです。
2つ目は、言葉には気をつけて下さい。
ネットなどで、様々な暴言などが見られますが、それで自殺まで追い込む事は可能です。「そんなつもりはなかった」や、「自分のせいじゃない」では遅いのです。
作品内でもありましたが、心は思っているより脆いものです。心にもない暴言や失言で、誰かの心が折れてしまうかもしれないのです。
ですので、発言などをする際にはもう一度、確認をしてみて下さい。その再確認が、誰かを傷つけずに済むかもしれません。

偉そうに言ってしまいましたが、この話を読んでほしい理由はそんな感じです。もっと言いたい事や、伝えたい事はありますが、大体はこの2つです。
1人でも多くの人に、この考えが分かってもらえたらと思ってます。
それでは、また次回に!


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第二十九話 厨房事件

どうも、【夕立】です。
前回がシリアスな展開になってしまったので、今回はちょっと雰囲気をガラッと変えてみます。どんな展開に変えたのか、楽しみながら閲覧下さい!


小鳥の鳴き声と共に、カーテンの隙間から差し込む光を浴びて、俺は起きた。

正直昨日から寝ていない俺は、ベッドに入ってすぐに眠ってしまっていた。お陰で目覚めがとてもいい。

ベッドから起き上がり、布団を綺麗に直してから部屋を出る。

時刻はまだ6時。雪ちゃんはまだ起きていないだろう。

かと言って、勝手に出て行くわけにもいかないので、お屋敷の中をフラフラと歩く。探索だと思えば、少しは楽しい気分にはなる。

だが、下手に部屋のドアを開ける訳にもいかない。プライベート空間に勝手に入るなど、失礼にも程がある。

俺は、貰った屋敷内の地図を確認。昨日使った大広間、俺が使っていた客室。雪ちゃんの部屋やご両親の部屋まで書いてあった。……プライバシー空間を隠す気ないのだろうか?

俺は、近かった厨房へと足を運んでみた。

一応、どの部屋にも鍵はかかっているのだが、厨房は都合よく開いていた。既に中に誰かがいるのだろうか?

一応、バレないようにこっそりとドアを開けると、中はシーンと静まり返っている。ライトも付いていない辺り、鍵の締め忘れなのだろうか。

中に入ると、俺は一番初めに違和感を感じた。

……これは、血液の匂い?

そういえば、昨日の食事には魚や肉をが沢山出ていた。その料理を調理する時に出た匂いなのかもしれない。

だが、料理人が後始末を忘れるだろうか?

答えは否。食器もすぐに洗うし、血抜きなどもその場ですぐに洗い落とせる。

……なら、なんの匂いだ?

それを考えた瞬間、俺は手足が震えた。もしかしたら、事件がここで起きたのかもしれない──と。

そして、第一発見者は確実に俺だろう。よそ者が来て、その翌日に殺人事件など起きていた暁には、真っ先に俺が疑われてしまう。

ゴクリと、唾を飲む。ここまで踏み込んでしまったのだ。勇気を出して、最後まで確認しなければ。

俺は、匂いがする方向を探るように鼻に意識を集中させる。

しかし、厨房は広く、時間が経ったせいか匂いが充満していた。匂いを嗅いでいた俺は、少し気分が悪くなっていた。

それでも、鼻で探りながら厨房をゆっくりと進む。進んでいくと、匂いがキツくなっていたので、恐らくこの先だろう。

もし、殺人だった場合、ここに犯人がまだ居たらどうしよう?俺も間違いなく殺されるだろう。

そんな恐怖を感じながら歩いていると、ゴトッと大きな音が、近くでなった。

音の大きさ的に、軽くはない。かと言って、重すぎるものでもない。

厨房の道具はほぼ金属の為、ゴトッとはならない。

恐る恐る音がなった方を確認する為に、ゆっくりと身体を動かした。

そして、俺は見てしまった。

──服に血がついた、コックが倒れているのを。




閲覧、ありがとうございました!
血のついた服を着たコックが倒れている。事件ですね!
正直、自分はそんな空間にばったりと出くわしてしまったら、間違いなく吐きかけます。少量ならたまに見るのですが、大量だと匂いと見た目で……。
次回にこの展開の結末を明らかにしますので、楽しみにしていて下さい!
それでは、また次回!


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第三十話 厨房事件〜考察〜

どうも、【夕立】です。
最近、デスクトップPCが部屋で使える様になり、ネットでゲームやYouTubeがやりやすくなって喜んでいます。
後はメモリを追加で買って、とりあえずは完成!って感じなのでササっと買っちゃいたいです。今は仮でメモリを挿しているので……。


血のついた服を着たコックを見た俺は、おもわず叫びそうになった。

しかし、コックの違和感に気付き、俺は寸前のところで叫ぶのを堪えた。

そのコックは外傷はなく、血がついているのも服だけ。顔や手には血の跡はなかったのだ。

もしかすると、本当は血ではないのではないか?そう思ったが、血液の臭いはする。

すると、血液の臭いが強かった為か、気づかなかった臭いが漂ってきた。

……成る程、そうゆうことか。

俺は奥の洗い場まで行き、流しを確認。そこには、俺の想像通りのモノが残っていた。

流しにある三角コーナー。そこに、魚の内臓が残っていたのだ。

恐らく、このコックは魚の内臓処理をしていて、その時に何故か服に魚の血液が付着。手は洗ったが、服はすぐには洗えなかった。

その後、何かがあってここで眠ってしまったか、気絶してしまった……という事だろう。

とにかく、事情を知る為にもこのコックを起こさねばならないな。

俺はコックの元へ戻り、身体を揺する。

コックはそれでも起きる気配はない。どこまで眠りが深いんだ……。

一応脈を確認し、生きているのを確認。他に手掛かりがないか、起きるまで探すとするか……。

まず、辺りを見回すとテーブルの上に何かが付着していた。

そこには、血液と……粉か?何か細かい粒が血液に混じっていた。

恐らく、血液の上にかかってしまったのだろう。調理場という面から、塩の可能性が高い。

本当に塩か確認したいのだが、あいにくだがそんな道具などは持ち合わせていない。そもそも、そんな物を持っている筈がない。

次に手掛かりとして見つけたのは、机の上にあったコップ。中には何も入っていなかったが、底に黒い液体が少し残っているのを見る限り、コーヒーでも飲んでいたのだろう。

全く……。後処理もしっかりやっていないのに、コーヒーでブレイクタイムか。もう少ししっかりして欲しいものだ。

後は、洗い終わった食器が食器乾燥機に入っていた。これもまだ途中なのか。

状況を推理すると、コックは魚の下処理中に服に血液が付着。

すぐには洗えない為、仕方なく他の作業をやっていたが、何かが原因でここで倒れてしまった。

現場に残っているのは、コーヒーを入れていたであろうコップ、塩の様なものが上からかかった血液、服だけ血がついたコック。ここら辺が関係あるだろう。

そして、コックはだいぶ深い眠りについていて、身体を揺らしただけでは起きない……か。

コレは面白くなってきた。いや、楽しんではいけないのだが、推理するのが楽しくて仕方ない。

……とりあえず、応援でも呼んでから考えよう。




閲覧、ありがとうございました!
正直、この話を書いていて「思ったより引きずってるなー」とは感じてます。次回かその次で終わらせるので、もう少し待って下さい。
そして、案の定書き終えて投稿予約をしたのが投稿日の3時とかでした。ペースは落としたくないものの、時間があまり取れないと少し辛いですね……。
最悪、間に合わない様な事があれば、前日に各投稿サイト+Twitter(自分の趣味垢)で報告しますので、気にしていただけたらと思います。
それでは、また次回!


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第三十一話 事件解決(?)

どうも、【夕立】です!
自分、艦これをやっているのですが、中々イベントが厳しいです……。
原因は、恐らくレベルとバケツの量が問題ですね。E-1は甲でしたが、そこからE-2は乙、E-3からは丙になってしまい、ようやくE-4終わったところです。辛い……。


「いやー、すいません。お客様にご迷惑をお掛けしてしまって」

 

あの後、俺は他に起きていたお屋敷のメイドさんを呼び、コックを起こしたり、現場の片付けを行った。

あの後すぐに起きたコックは、なんともなかった様な雰囲気で起きた為、俺は事件性はないと判断。一安心だ。

とりあえず、コックに事情聴取だけはする事になり、俺とメイドさんとコックの3人で話し合う事にした。

 

「それで?何故あんな所で寝ていたんです?」

 

メイドさんが呆れた様な口調で言う。

コックの方も、原因が原因なのか頭を右手でさすりながら言った。

 

「片付けをし終わって、もう寝ようとしていたのでいつもの薬を飲んだんですよ。で、その後に明日の下処理を忘れてまして、急いでやってる内に……」

「はぁ……。全く何をやってるんです?」

「面目無い!」

 

メイドさんとコックの会話を聞く限り、恐らくこの2人は仲が良いのだろう。呆れ口調のメイドさんだが、顔には少し笑顔を浮かべていた。

つまり、血は魚のもの。そこにあった粉は、睡眠薬か何かだろう。

……しかし、どうしても疑問が残ってしまう。

血のところにあった粉は、明らかに血の上からかかったもの。コックは下処理前に薬を飲んだなら、その時の粉はおかしい。

……ここは、一つ確認してみるか。

 

「魚の下処理をする時、塩とかって使いましたか?」

「いや?煮付けにする予定だったから、塩は振らなかった筈だよ。塩がどうかしたのかい?」

 

コックはキョトンとした顔で俺を見る。

嘘をついている様には見えない。なら、あの粉は一体……?

 

「いえ、心当たりがないのでしたらいいんです」

 

俺は、あまり不安にさせない様に笑顔で言った。

コック達は、「どうしたんでしょう?」と顔を見合いながらクスクスと笑っていた。

その後は、コックは朝食の準備、メイドさんは仕事があるので解散。

俺も特にやる事がなかったが、他の人も起きてきていたので、とりあえずリビングに向かった。

心残りはあるが、あまり気にしない様に忘れることにした。

******

「ふふっ……。あの状況にもかかわらず、冷静さを欠かすことなく推理していましたね」

「……そうだな。あの男になら、任せても大丈夫かもしれんな」

 

女が男に向かって話すと、男も真剣な表情で納得していた。

その視線の先には、厨房で推理している朝倉 誠の姿があった。

その後、女はため息をつきながら男に話し続けた。

 

「でも、あんな事しなくてもあの人が悪い人ではないってわかっていたでしょう?」

「人はすぐに内側が分かるわけではない。人前ではない場所だと、すぐに本心が出てきてしまうものだ」

「ふふっ、そうね。……でも、あの粉は何なのかしら?」

「あれはただの塩だ。何も問題はない」

 

そう言いながら、男は厨房を見ていた視線を外し、何処かへと向かう。

女はそれを見ながら、笑みを浮かべてこう言った。

 

「本当、不器用な人──」




閲覧、ありがとうございました!
ノベルバの方で、いいねの様な機能がありまして、それがトータル20件きました!皆様ありがとうございます!
こうやって、目に見える形で評価されると嬉しいものですね……。評価が全てではなくても、やっぱり気にしてしまいます。
なので、気軽にコメント(感想)や、評価などをして下さると嬉しいです!お願いします!
それでは、また次回!


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第三十二話 お世話になりました

どうも、【夕立】です!
ノベルバの方で予約投稿をミスしてしまい、ノベルバの方では迷惑をかけてしまいましたが、ハーメルンはその後に確認したから大丈夫のはず……。多分?
そして、今回で屋敷回が終わります。次回からはみぞれ達が登場しますので、来週までお待ち下さい!


「とりあえず、これでよしっと……」

 

あの事件の後、朝食と昼食を済ませて部屋に戻り、帰りの荷支度をしていた。

4〜5日家を空けていた為、流石にみぞれ達にも心配をかけてしまった。……文姉には後で謝らないとな。あの人、何も考えてない雰囲気だけど、色々な事を考えてるからな。

みぞれには今日帰るとメールで伝えると、みぞれからはすぐに返信が返ってきた。ずっと心配してくれたのだろう。

文姉の方にもメールをしようとしたのだが、俺が直接謝りたい事もあり、電話をかけることにした。

しかし、今は平日の13時。仕事中だから、電話に出るのは無理だろうな……。

そんな気持ちで電話をかける。5コールくらいしたら、電話を切ってメールしよ──

 

「ま"ぁぁぁぁく"ぅぅぅぅん"!!」

 

1コールもせずに、電話越しに大声が聞こえた。しかも、泣きながら。

この泣き方はガチだ。どうやら、相当心配させてしまったらしい。

 

「文姉、落ち着いて?周りに迷惑かけるでしょ?」

「う"ん」

 

何とか落ち着かせないとと思い、俺は文姉を泣き止ませる。電話越しだけど、思いっきり鼻をかんでいるのが聞こえた。

なんとか落ち着いたのを確認し、俺は要件を伝えた。

 

「文姉、ごめん!あの時、いきなり逃げ出す様な事して……」

「まーくんのせいじゃないよ。私が言いすぎたし、アレは言っちゃいけない事だと思うし……」

 

明らかに落ち込んでいる文姉。だけど、アレは俺が一方的に悪かったのだ。

俺は、恐らく過去に後悔がある。未練がある。

父の気持ちも分からず、嫌っていた事。母がどんな思いで、あの決断をしたのか。母を何とか助けられなかったのか。

それらを文姉に指摘された時、俺は何も言えなかった。それが悔しかったのだろう。

つまり、文姉は何も悪くないのだ。

 

「とりあえず、今日中に帰るよ。明日には仕事復帰するつもりだから、よろしく」

「わかった。でも、無理しちゃ駄目だからね?」

「うん」

 

俺は電話を切り、荷物を持って玄関へと向かう。

すると、玄関口には雪ちゃんとそのご両親が待っていた。

 

「もう、帰るのかい?」

「はい。仕事もありますし、あまり家を空ける訳にもいかないので……」

 

何処か残念そうにするお父様と、何故かニコニコしているお母様。俺が何かしてしまったのだろうか?

すると、雪ちゃんが一枚の紙を渡してきた。見てみると、手紙というよりもメモ紙の様だ。

 

「これ、私の電話番号とメールアドレスです。朝倉さんさえよければ、話したり出来たら嬉しいのでいつでもご連絡下さい」

「わかった。たまに連絡させてもらうよ」

 

そして、俺は荷物を持って再度、別れを告げた。

さぁ、帰ろう。皆が待っている、あの家に──!




閲覧、ありがとうございました!
気温が上がり、だいぶ夏に近づいてきた感じがします。6月も終わるので、ほぼ夏ですが(汗)
自分は未だ冷房は解禁していませんが、皆様はどうでしょうか?扇風機で我慢している方もいるでしょうが、自分あまり扇風機の風を直で浴びるのが好きではないので、あまり付けないタイプです。お陰で部屋はとても暑いのですがね……。
それでは、また次回に!


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第三十三話 帰宅

どうも、【夕立】です!
先週は投稿を休んでしまい、申し訳ありません。まとまった時間が取れず、最終的には延期となってしまいました。
恐らく、今後もあるかとは思います。なるべく延期にならないようにはしますが、ご協力お願いします。
……前書き、堅苦しくなっちゃったなぁ。


電車に揺られて約2~3時間程。俺は、家の最寄り駅へと到着した。

現時刻は17時。みぞれ達は、夕飯を作って待っていてくれるらしく、そのメニューが楽しみだった。

ゆったりと家までの帰路を歩く。暫くここを歩かなかっただけで、こうも懐かしく感じるものなんだと思った。

そんな感傷に浸っていると、あっという間に家に到着した。

俺は鍵を開け、その懐かしい言葉を懐かしい人たちに言った。

 

「ただいま」

「おかえりなさい!誠さん!」

 

リビングから、小走りでこちらに来るみぞれと秋風さん。秋風さんは、ホッとした優しい顔でこちらに来ていた。

一方、みぞれは少し涙を浮かべていた。それほど、心配させてしまっていたのだろう。

 

「心配かけて悪かった。ごめん」

 

俺は、みぞれの頭を撫でながら俺は言った。

嫌がるのではないかと心配したが、みぞれは安心した顔で撫でを受け入れていた。

そんな俺たちを見ると、秋風さんは分かりやすい咳をした後に言った。

 

「ゴホン。……朝倉様、失礼を承知でお聞きしますが、何処に行っていらっしゃったんですか?」

「……電車で、少し遠くまでね。向こうで色々あったから、なんだかんだで帰りが遅くなっちゃったけどね」

 

頑張って笑みを浮かべるが、ぎこちない苦笑いにしかならなかった。まぁ、逃げ出しましたなんて言えないから仕方ない。

秋風さんもそれ以上は聞かず、やれやれと表情で語っていた。

すると、玄関での歓迎を受けたのが大きかったので気付かなかったが、いい匂いが漂ってきた。

 

「この匂い……」

「今日はオムライスとコンソメスープです!」

「オムライスか。みぞれの作るオムライスは美味いからな」

「えへへ……」

 

褒められて喜ぶみぞれ。その表情は、とても可愛らしかった。

みぞれのオムライスは、俗に言うふわとろオムライスで、オムレツ部分の外側を薄めに固め、中は半熟より少し固めといった器用な構造となっている。お陰で、オムレツを割って食べる某洋食店に近いものが家で食べれるのだ。

俺もそのオムライスは好きだし、秋風さんにも好評。その為、何かいい事があった時には大体このオムライスが出てくる。

スープの味は毎回変わり、今回のコンソメスープ、トマトスープ、中華風スープ……。具材が入っていたり、スープのみだったりと、作業工程を見なくても分かる位にこだわっている。

 

「それじゃ、冷めないうちに食べちゃおうか」

「はいっ!」

「そうですね」

 

そうして、俺たちはリビングに向かい、久しぶりに3人で食卓を囲んだ。

食事をする間、様々な話をしたが、3人の幸せな表情が消えることはなかった──。




閲覧、ありがとうございました!
もう2019年上半期が終わってしまいましたね。何故かとても早く感じます……。
改めて、この作品を確認していたのですが、第一話の投稿が2018年の11月1日なんですね……。8ヶ月もこの作品を書いている自覚がないです(汗)
次回の話は、また日常回かなーと考えてますが、いつもの如くネタがないです。お話しも終盤になってきたので、ここで新キャラという感じでもないので、どうしよう……という感じです。最悪、文香さんや結衣ちゃんとの絡みを混ぜればまだ何とかなる……うん。
それでは、また次回に!


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第三十四話 再会

どうも、【夕立】です。
最近、暑くなって夏本番かな?と思っていたら、恐らく湿度のせいですね。こうジメジメする日が続くと、何事もダルくなってきちゃいます……。
さて、学生さんは恐らく、今日辺りから終業式があり、明日から夏休みという方も多いのでしょう。沢山の思い出や、遊びに熱中出来るシーズンでもあり、夏期課題という宿題もあるのでしょう。
一方、私は元気に出勤してます。お盆休みは貰って、祖母の家に行ったり、C96(夏コミ)に行ったりする期間以外は、基本あまり変わらないので、普段通り生活してます。
……夏休みがあれば、小説もっと書けるのかな?


「ふわぁーっ」

 

数日ぶりに帰ってきて、しみじみ実感した。

やはり、自分の家が一番落ち着くな……。寝つきが、自分でも驚く位によかった。そして、目覚めもいい。やっぱり、慣れた場所が一番落ち着くんだな……。

ベッドで軽く体を伸ばし、時間を確認。会社がない日に6時起きか……。予定が無いのを考えると、もう少し寝てたかったと思う。

しかし、そんな考えとは裏腹に、目はすっかりと覚めてしまった。

いつまでも布団で座っていても暇なだけだ。取り敢えず、着替えてリビングに行こう。

服を適当に取り出し、着替えて洗面所に。顔と歯を磨いた後、鏡で寝癖を確認し、リビングへと向かった。

リビングには誰もおらず、どうやらまだ2人は寝ている様だった。

リビングには来たものの、特にやる事はない。かと言って、帰ってきたばかりで特に予定も入れてない。一日フリーな事に、まさかこうも寂しく感じるとは……。

少し考えていると、1つだけ案が浮かんだ。

そうとなれば、早めに支度をして出かけるか……。

******

出かける支度を済ませ、向かった先は駅前の公園。華さんが居れば、思いついた計画を実行出来る。居なければ、散歩やウォーキングにはちょうど良い場所だ。

しかし、もし華さんが来ていたとしても、この広い公園で早々会えるとは思えない。あまり期待せずに探すとするか……。

すると、公園を散歩がてら探し始めて数分。少し離れた所に知っている人影を見つけた。

少し話しかけるのを躊躇ったが、見て見ぬフリはあまりしたくない。話しかけようか。

そう考えた俺は、その人物に近づき、話しかけた。

 

「文姉、朝早くから散歩?」

「その声……!」

 

俺が話しかけた途端、目の色を変えてこちらに振り向いた。

そして、俺の姿を確認するやいなや、ぱぁっと顔が明るくなり、俺に飛びついてきた。

 

「まぁぁぁくぅぅぅん!!」

「おっと……。いきなり抱きつくのはやめてくれよ。ここ、公園なんだからさ」

 

そんな発言は文姉の耳には届いていない様だった。

喜びと安堵の表情を浮かべ、泣き始めてしまった。それだけ、俺が文姉に心配をかけてしまっていたのだろう。

そして、俺は文姉の頭を撫でながらこう言った。

 

「ただいま。そしてごめんな」

「うん……。おかえりなさいっ!」

 

泣きながらだが、文姉はそう言って笑ってくれた。

そんな文姉の姿を見ていると、俺はどれだけ幸せ者なのかがすぐに分かった。

その後は、華さんを見つけることは出来なかったが、文姉と小1時間くらい話しながら散歩をしたのだった──。




閲覧、ありがとうございました!
とりあえず、文香さんと誠は早めに仲直り(?)して貰いたかったので、内容が薄い感がしますが仲直りさせました。
後輩の結衣ちゃんとの絡みを入れたいなーと願望しつつ、文香さんとの絡みも面白そうだし、なんならその2人と誠とみぞれと秋風さんの計5人を絡ませるのも面白そうと思ってます。
五十話ぐらいでこのお話は完結させようと思っており、皆様お気づきだとは思いますが、華さんの問題を解決して完結となります。
要望があったり、気が向いたりしたらもしかしたら続きや、アフターストーリーを書くのもいいかなと思ってます。まだ擬人化させる動物は沢山いますし、あの家は広く作りましたからね……。
それでは、今回はこの辺で。また次回!


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第三十五話 とある日の仕事場

どうも、【夕立】です。
今回の日常回は、ちょっとこだわりました。こだわった理由は、凄く単純に気になって調べたからって理由ですけど。
そして、気付けばもう月末……。最近、1日が短いと思う事が多くなりました。そんな歳じゃない気はしてたのに……。


俺が会社に復帰して早1週間程。初めは周りに色々と聞かれたが、そこは色々言って誤魔化した。……自分でも、何を言ったか覚えてないのが怖い。

新人の子達は仕事にも少しずつだが慣れてきて、ある程度なら一人で出来るようになっていた。その分、頼られる機会が減ってしまってどこか悲しい気分だ。

俺のいる部署は、新人育成をメインとした雑務係みたいなもので、他の部署の仕事が回ってきたり、書類などの整理、後始末などを行なっている。

新人育成の理由として、色々な仕事が回ってくる。その為、どの部署が適正かなどを見分けるという事もある。

その為、この部署に居るのはある程度この会社に勤めている人や、単に文姉が気に入った人達が集まっている。悲しいのが、ほぼ後半の理由でこの部署の人が固まっていることだ。

俺は文姉に気に入られていたのもあるが、今年で4年目というそこまで長い期間ではないが、それなりの功績を残したというのもあるらしい。

そんな俺の所属する部署には、課長の文姉と後輩の結衣ちゃん、歳下で謎に包まれた|大倉 佳奈(おおくら かな)ちゃん、同期の|金堂 勇(こんどう いさむ)と俺の5人で回している。

一見少ないように見えるが、ここに定期的に新人育成として3〜5人程人が来る。その為、新人さんには簡単な仕事を教えながら済ませ、部署に居る5人で残りの仕事をこなしている。

その為、どちらかと言えば仕事は少ない。たまに、文姉の意見で5人で食事に出かけたり、何処かに遊びに行ったりする余裕があるくらいだ。

……急な仕事が入ってしまうと、人手不足になりやすいが。

誰かに説明するかの様な台詞を頭の中で話していると、肩をポンポンと2回と叩かれた。

振り返ると、ニコニコした表情の勇がそこに立っていた。

 

「なぁなぁ誠!とうとうやったぞ!」

「……大体予想出来るが、何をそんなに喜んでいるだ?」

「ふっふっふ、それはだな……!」

 

待ってました、と言わんばかりの表情で持っている鞄を漁り始める勇。

恐らく、最近仕事が多くない為、暇だったのだろう。だからと言って、何故俺に絡むんだ……。俺は見ての通り、仕事中だぞ?

そして、勇が鞄から取り出したモノが俺の机の上にドンッと置かれる。

机の上に置かれたのは、モデル銃。サバイバルゲームで使う様な、エアーガンだった。

 

「たまたまいつもの店に行ったら、新入荷として売っていたんだ!どうだ!このフォルム!カッコいいよなぁ……」

「まぁ、銃を見て格好いいとは思うが、職場にまで持ってくるなよ……」

 

そう言いながら、俺はそのエアーガンを手に取る。

俺も、軍艦や戦車、銃火器などは正直惹かれる。少しなら、名前や知識はあるつもりだ。

そして、勇か持ってきたのはドイツ製の『ルガー P08』という系統の自動拳銃だ。

1908年頃からドイツの陸軍の制式ピストルとして採用されたが、一番初めに制式投入したのはスイス。1900年くらいから使ってた筈だ。

因みに、銃火器なら俺は回転式拳銃か狙撃銃が好みだ。個人的に、ロマンが溢れていると思う。

恐らく、一度そんな話を勇にしてから、こうやって見せてもらったり、多く絡む様になった気がする。

そして、目を輝かせながらこの銃について語る勇。俺は仕事をしながら、たまに相槌を入れてやる。

たまに、ちゃんと聞いてるかチェックされるが、俺も少し内容が気になるのでちゃんと聞いている。話した内容の問題を出されるが、しっかりと答えた。

そんな話をしていると、文姉が楽しそうにしているという理由で来て、次に集まっているのに気になった結衣ちゃん、バイトの佳奈ちゃんが来た。

そして、仕事どころではなくなったこの部署は、仕事が終わる17時までずっとこの話をしていた。

……今日も、平和だったな。仕事、進まなかったが。




閲覧、ありがとうございました!
何気に、誠の会社について話してないのを思い出し、どうせだからという事で書いてみました。社内人数が少ないのは、単に登場人物を増やすのが面倒だったからですね。主に、名前を考えるのが……。
因みに、誠がリボルバーと狙撃銃が好きだと言ったのは、自分が好きだからですね。ワンショットワンキル感の狙撃銃、アクションがカッコいいリボルバー。凄くいいです!特に、メ○ルギアのオ○ロットのリボルバーアクションとかは凄い惹かれましたね……。
それでは、今回はこの辺で!また次回!


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第三十六話 怪奇現象?

どうも、【夕立】です。
これを投稿している頃には、私は祖母の家にいる事でしょう。……まぁ、書いているの8/2(投稿日)の0時頃ですけど。
さて、来週の金曜日にはコミックマーケットがありますね。私は今回、企業ブースをメインとして周る予定です。1日目だけの参加になりますが、お会いできたらいいですね(そもそも分からない)。
因みに、前日にある電気外祭りin高田馬場にも参加予定です。その後、まどそふとコラボカフェに行こうかなーとも考えてます。予定ですけれど。
……知らない人からすればら無駄に長いだけの前書きだなぁ。


「……えぇ、目標《ターゲット》は現在自宅で休息を取っている様です。……はい、直ちに次の作戦行動に移ります」

 

通信機を切り、改めて双眼鏡でとある家を覗く。

そこには、報告にあった通りに人間1人と獣人が2人住んでいた。

ようやくここまで来たんだ。作戦もあるけれど、私自身のケジメをつけるチャンスでもある。なんとしてでも、この作戦は成功させなければ……!

そうして、私は双眼鏡をしまい、目的の家へと向かった。

<hr>

「ふわぁぁっ。今日は天気も良くて気持ちがいいな」

「ですねー」

 

テレビを見ながら、横になってぐうたらしている俺。みぞれも俺ほどではないが、ソファーに座ってくつろいでいる。

秋風さんは相変わらずビシッと座っていたが、前よりはいい感じに馴染んできている。敬語とかは中々抜けそうにないけれど……。

買い物などの予定がない休日だと、どうしても気が抜けてぐうたらしてしまう。家くらい気を抜いてもいいのだが、だからと言ってぐうたらし過ぎるのも良くない。

けど、コレといって趣味がある訳でもないからな……。こうゆう時は、勇が羨ましく感じてしまうな。

すると、みぞれがいきなりすぅっ……と立ち上がった。そして、周りをキョロキョロと見回し始めたのだ。

流石にその不可解な行動が気になり、俺はみぞれに話しかけてみた。

 

「どうした?みぞれ」

「いえ……。嫌な予感と、何かいつもとは違う音がした気がしたのですが……」

 

そう言った後、俺とみぞれで窓の外などを確認するが、特に変わった様子はなかった。みぞれの気のせいだったのだろうか……?

みぞれも気のせいだったのかと思ったのか、俺に苦笑いをしながらソファーに座り直した。

しかし、そこで突如異変が起こった。

さっきまで見ていたテレビが、突如砂嵐に変わってしまったのだ。

テレビは古いものではないし、なんならさっきまで観れていたのだ。

試しにチャンネルを変えたりしてみるが、その砂嵐は変わる気配がない。コンセントを抜いたりしてみても、砂嵐は治らなかった。

 

「なんなんだ……?」

「いきなりテレビが観れなくなっちゃいましたね……」

 

流石にこの現象に、みぞれは僅かに震えていた。……俺も、実は足が震えてしまっている。

そんな俺達に追い打ちをかけるかの様に、窓の外からガタンッ!と大きな音が鳴った。

俺とみぞれはその音に過剰に反応し、無意識のうちに2人で近付いていた。

そして、窓の外には明らかに怪しげな黒い影。こんな昼間に、幽霊なんてある訳ないよな……?

そして、勢いよく窓を開けたその影は、こちらに向かってこう叫んだ。

 

「──朝倉 誠!いざ尋常に勝負だッ!」




閲覧、ありがとうございました!
恐らく、6〜7割くらいの確率で次週投稿をお休みするかと思います。
コミケやらは関係がなく、とある手伝いとして祖母の家に居るのですが、その時間を考えると、小説を書く時間自体取れない可能性が高い為です。
一応、お休みする際には木曜日にお知らせはしますので、木曜日にも確認する事をオススメします。
それでは、また次回!


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第三十七話 どうしてこうなった?

どうも、【夕立】です。
投稿前々日まで白紙だったのですが、前日にイベントがある為早く起きようとしたところ、逆に寝れなくなってしまい、2時間ほどで仕上げてしまいました……。
さて、前回、今回、次回は話が繋がってます。前編・中編・後編にしようとも考えましたが、後からサブタイトルを変えるのもめんdゲフンゲフン……分かりにくくなってしまうので、変えませんでした。
お陰で、今回のサブタイトルには困りました。そして、適当になりました。
……もっと、サブタイトル付けるのを上手くなりたい……。


「──朝倉 誠!いざ尋常に勝負だッ!」

 

その言葉を聞いて、初めは理解が追いつかなかった。

謎の怪奇現象が起きたと思ったら、窓から人が入ってきて、いきなり宣戦布告されたのだ。誰でも聞き返すレベルだ。

しかも、顔を確認したくても逆光になってしまっていて見えない。いや、確認したところで恐らく面識はないと思う。

そんな事を考えていると、その人物はいきなり飛びかかってきた。

隣にはみぞれもいる。関係のないみぞれを傷つける訳にもいかない……。いや、俺も関係はないと思うんだがな。

俺は、飛びかかってきた人物の腕だけを掴み、そのまま床に拘束。落下したダメージもあるのか、抵抗はあまりなかった。

 

「くっ……!離せよっ!」

「こらこら、あまり暴れるんじゃない。そもそも、俺は君が誰かすら分かっていないんだぞ?」

「何っ……!?」

 

どうやら、逆光になっていた事に気づいていなかったらしい。プチパニック状態だったのもあるけど、声も聞き覚えがない……はず。

そもそも、俺は人の事を覚えるのはあまり得意ではない。顔と名前が一致しないことなんて多いし、何度間違えたか数えきれない。

そして、暴れるのを辞めた事を確認し、拘束を俺は解いて立ち上がった。

声は女性寄りだが、声の高めな男の人もいる。口調に関しては男っぽかったし、男性であってほしい。女性に暴力を振るったみたいで、なんか悪い気持ちになってしまうし……。

そして、その人はゆっくりと立ち上がり、顔をこちらに向けた。

そして、俺はハッキリと確認した。

──その、大きな胸を。

 

「え、女性……だったのか……?」

「俺が誰か忘れちまったのか……。まぁ、結構前の事だから、仕方ないか……」

 

目に見えてしょんぼりとしてしまう彼女。俺がオロオロとしていると、みぞれが話に加わってきた。

 

「失礼ですが、あなたは……?」

「俺か?俺は風華(ふうか)。訳あってコイツにリベンジしにきた!」

 

得意げに言ってるが、思い切りねじ伏せられたよな……コイツ。

しかし、風華……か。特徴的な名前だから、記憶には残っていそうなんだが、全く心当たりがない。

頑張って記憶を辿っていると、窓をノックして入ってくる人物がもう1人。いや、玄関から来て欲しいんだが……。

 

「すいません、うちの風華がご迷惑をお掛けしました」

「んだよ!お前だって協力してたじゃねぇか!」

 

そう言うと、言い争いが始まってしまった。

知らない人がいきなり来て、いきなり襲ってきて、最後には目の前で喧嘩……。どうなってんだ……?

取り敢えず、色々状況を説明してもらいたいのもあるし、この2人を落ち着かせよう。うん。

 

「お2人さん。取り敢えず、話を聞かせてもらってもいいかな?お茶くらいなら出すから……」

「俺はお前にリベンジ出来ればそれでっ──」

「すいません、では、お言葉に甘えさせて頂きます」

 

風華の言葉を遮り、俺の提案を飲んでくれた彼女。こっちは比較的に常識人か……。

そうして、俺とみぞれと来客2人で話し合う事になった。

……平和って、なんだっけな。




閲覧、ありがとうございました!
さて、投稿前日から前回も言ったようにイベントに参加してきます。イベント参加前なので、感想が言えないのが残念ですが……。
いらん!とは思いますが、次回投稿時の後書きで感想を軽〜く述べたいと思います。ついでに、Twitterにも感想投稿してると思います。試しに探してみてね!
それでは、また次回!


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第三十八話 恩返し

どうも、【夕立】です!
まずは、C96ことコミックマーケット96、お疲れ様でした!
行った方は楽しめたでしょうか?自分は思ったより暑さにやられてしまいました……。今回は企業ブースがメインだったので、C97ではサークルメインで周りたいですね……。
そして、皆様台風は大丈夫でしょうか?事前の避難や、雨に気をつけてください!


「市販の麦茶ですが……」

「ありがとうございます」

 

とりあえず、テーブルのある席に座らせてお茶を出す。

俺とみぞれは隣に座り、その反対側にお客さんである二人を座らせた。

風華はどうやら、新たに来た女性には逆らえないらしい。文句を言う事はあっても、結果的には指示に従っている。上下関係の様なものが二人にはあるようだ。

とりあえず、話を聞くために俺も席に座ると、早速新たに来た女性が口を開いた。

 

「お騒がせしてすいませんでした。私はルナと申します。こっちの子が、風華です」

「どうも……。朝倉 誠です」

「えっと……みぞれです」

 

取り敢えず、全員の自己紹介が終了。ルナっていう名前的に、海外の人だろうか?日本人で金髪は少ないだろうし、海外の方の可能性が高い。

風華って子の方は、赤い髪。髪が短い事もあるのか、元気っ子という印象はすぐに伝わった。

その間も、ずっと風華は俺の方を睨んでいた。こんな子と昔に会っていれば、印象的だからすぐに浮かぶと思っていたが、やはり思い出せそうになかった。

そんな感じで悩んでいると、ルナさんが今の状況を説明してくれた。

 

「朝倉さんは覚えていらっしゃらないとは思いますが、私達は以前あなたに助けてもらっているのです」

「俺が……君達を?」

 

そう言われ、赤髪と金髪の女の子を記憶の中から探してみるが、残念ながら覚えていない。そもそも、俺じゃなくて似た人物だったりしないか?とも疑ってしまう。

しかし、俺が覚えていないのは分かっていたと言わんばかりに話を続けた。

 

「私達は、その助けてもらった恩を忘れられず、いつかその恩を返せないかと機を伺っていました。私達もようやくそれなりに実力が身につきました。ですので、ご迷惑でなければ何かお手伝いさせて頂けませんか?」

 

そう言われ、俺は黙ってしまった。

正直、手伝われるのはありがたい。だが、悲しい事に俺は彼女達を覚えていない。つまり、見知らぬ人に家の事を手伝ってもらう事になるのだ。

しかし、彼女達は恩返しをする為に色々身につけてきたらしい。それを無下にするのも……。

そんな葛藤をしていると、隣に座っていたみぞれが肩をつんつんと触ってきた。なにその仕草、可愛いんだけど。

そして、みぞれは俺にだけ聞こえる声で話しかけてきた。

 

「提案なんですが、この家で過ごしてもらって、お仕事を分担するのはどうでしょうか?彼女達の恩返しにもなりますし、一緒に過ごす上での分担でしたら、あまりこちらも気になりにくいと思うのですが……」

 

ふむ、そういう考え方もあるのか。確かに、それならあまり遠慮せずに過ごせるかもしれない。

しかし、彼女達にも家庭もあるし、家だってある。そんな簡単に上手くいくとは思えないけど……。

とりあえず、今はこの手段しか思いつかないし、提案してみるだけしてみよう。

 

「提案なんだが、ここの家で暮らしながら家の手伝いをしてもらうのはどうだろうか?勿論、家賃は要らない。食費だけ少し貰うとは思うが、それ以外は基本自由にしてくれて構わない。……どうだろうか?」

 

その話を聞いて、ルナさんと風華は顔を見合わせて、小声で話し合っていた。

まぁ、そりゃそうだよな……。そんな簡単に家庭を手放せる訳──。

 

「分かりました。それでは、今晩からお世話になってもよろしいでしょうか?」

 

うんうん──うん?

それはつまり、今晩からうちに来ますって事?俺は構わないんだが、思っていたより思い切りのいい2人だな……。

俺は頷くと、早速支度をするという事で2人はひとまず帰っていった。

……また、この家が賑やかになりそうです。




閲覧、ありがとうございました!
さて、今回からルナと風華というキャラクターが追加されました。そして、キャラクターが追加されてふと思いました。
……皆様、各キャラがどんな子か頭に作れているのかな?と。
一応、自分の頭の中には「こんな子!」という理想像は出来ているのですが、あまり文面にしていない気がして……。今度、機会があればキャラクター紹介を設けようと思っています。早めにしたいのも山々ですが、最終回後にすれば裏設定とかも書けて面白そうではあるのですが、最終回後だと「アレ?こんな子だったんだー」がありそうで……悩みどころです。
それでは、また次回!


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第三十九話 プラモデル

どうも、【夕立】です!
今回は、部屋にあったプラモデルを見ていて、何となく書いてみました。ネタがなかったのかな?
……まぁ、コレ書いているのも投稿当日の0時頃からなので、結構内容に焦っていたというのはありますが。


風華とルナさんが来ると決まり、支度をすると言ってからおよそ2〜3時間。荷物を持った2人がやってきた。

2人共、最低限の生活用品だけを持ってきたらしく、他に必要なものは現地調達をするらしい。まぁ、各部屋に生活に必要最低限のものを置いてくれた巫狐さんには本当に感謝だ。

とりあえず、2人共空き部屋に案内し、各自部屋で荷物整理をしてもらう。そして、案内を済ませた俺はリビングのソファーで深く座っていた。

思わぬ出来事が起き、更に住人がいきなり増えたという予想外の出来事に、俺は疲れたみたいだった。

……そりゃそうか。普通じゃありえない事が沢山起きたんだもんな。

すると、仕事から帰ってきた秋風さんがリビングに入ってきて、俺に話しかけてきた。

 

「靴が多いですが、お客ですか?」

「後で紹介するけど、急遽新しい住人が2人増える事になったんだよ。決まったのは数時間前だけどね」

「それはまた急ですね……。朝倉様がよろしいなら、私も構いませんが」

 

そう言った後、秋風さんは手に持っていた袋を目の前の机に置いた。

つい気になった俺は、その袋を見ながら秋風さんに聞いてみた。

 

「それは?」

「仕事先で貰ったものです。私はあまり詳しくないのですが、貰い物を断る訳にもいかなかったので……」

 

そう言って取り出したのは、軍艦のプラモデル。確かに、あまり女性が手にしているイメージはないな。どちらかと言えば、男性が作っている事が多いだろう。

パッケージを見た俺は、どんなか軍艦を確認。知っている軍艦だったので、少し手に取って見てみた。

 

「駆逐艦雪風か……。まぁ、有名な軍艦だな」

「ご存知なのですか?」

「少しだけね。なんでも、『奇跡の駆逐艦』って呼ばれた事もあるそうだ」

 

何でも、第二次世界大戦中に沈まずに生き残った軍艦だとか。「呉の雪風、佐世保の時雨」だっけか。

多くの海戦を生き残った事から、「幸運艦」や「不沈艦」とも言われたとか。逆に、周りの軍艦が撃沈される事が多かった事から、「死神」なんて言われた事もあったそうだ。

まぁ、軍艦や戦車や航空機は格好いいという理由で調べていた時期もあった。今ではピーク時ほど興味がある訳ではないしな。

すると、秋風さんはそのプラモデルと俺を交互に見て、何か納得した雰囲気で話しかけてきた。

 

「宜しければ、コレ差し上げます。よく知らず、あまり興味がない私より、知っている朝倉様が持っている方がよろしいでしょう。もしかしたら、朝倉様のご友人などに興味がある方もいるかもしれませんし」

 

そう言われて、俺は持っているプラモデルから秋風さんに視線を移した。

まぁ、俺もこうゆう作業をするのは嫌いではない。道具はないが、これを機にやってみるのも面白いかもしれないな……。

そう考えた俺は、小さく頷いた後に返事をした。

 

「それじゃあ、貰おうかな。出来たら見せるよ」

「ふふっ。それでは、楽しみにしていますね」

 

そんな話をした後、秋風さんは部屋へと戻っていった。

……後で必要な道具を調べて、明日辺りに道具を買ってこようか。




閲覧、ありがとうございました!
部屋にあったのは軍艦のプラモデルではなかったですが、頭に浮かんだのが軍艦だったので、軍艦にしました。
そして、なぜこの軍艦にしたか。有名な「大和」あたりでも良かったのですが、少し気になって貰えたらいいなーという事で「雪風」にしました。駆逐艦なら「島風」もありでしたし、話にも少しだけ出てきた「時雨」でも良かったのですが……。
皆さんはプラモデル作った事ありますかね?自分は、あまり時間をかけずに作っちゃうので、作りが少し雑に見える部分があります。まとまった時間もなく、出来れば一気に作りたい人なので……。
では、今回はこの辺で。また次回!


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第四十話 不思議な力

どうも、【夕立】です!
最近、大変な出来事が身に起きてしまい、テンションが下がったり何もする気の起きない日が続いてしまったりしてしまいましたが、何とか気持ちを切り替える事が出来ました。
そして、そろそろ華さんの事に決着をつけないとなーと思い始めました。綺麗に完結出来ればいいなぁ……。


その出来事は、平和な日常に突如訪れた。

買い出しに来た俺は、ルナさんと一緒に近くのデパートまで来ていた。

風華の方は別件があるとの事で、別行動。ルナさんは予定がなかったようなので、買い物ついでに案内することにした。

昨日、秋風さんに貰ったプラモデルを組み立てる為の道具を買うのと、ルナさんと風華の使う食器を買うのが今回の目的なのだが、買い物だけではつまらないだろう。少し、のんびりしていくとしよう。

そうして、デパートでの買い物が終わり、喫茶店へと向かおうとしていた道中で、その出来事は起きた。

交差点での信号待ち。その時、トラックがバランスを崩し、そのまま歩道へと突っ込んできた。

俺は勿論だが、他に信号待ちをしていた人達も逃げる事は出来ず、死を覚悟した。

しかし、ルナさんは自らトラックへと走り、他の人々よりトラックに近付くと、片手を地面につけた。

瞬間、謎の青いドームのようなもので人々の周りを覆うと、トラックはそのドームへと突っ込んだ。

しかし、そのトラックはドームにぶつかると同時に止まった。

トラックは無傷。歩道にいた人々も無傷。それを確認したルナさんは、ホッとした表情で地面から手を離した。

それと同時にそのドームは消え、何事も無かったかのような空間に戻った。

誰もが理解出来ず、立ち尽くしていた所、ルナさんは俺の手を引いた。

 

「あまり騒ぎになると大変ですので、早急に退散しましょう」

 

そう言って、俺たちは家へと戻っていった。

******

家に着いた俺は、あの出来事について聞くことにした。

 

「ルナさん、あの不思議な出来事はあなたが……?」

「えぇ。簡単に言えば、防御障壁ですね。空間と空間の間にドーム状の膜を作り、外側からの行動全てを遮断するというものです。内側からも何も出来ませんし、中と外を出入り出来ないので、不便な事もありますけれど」

 

平然と話すが、十分すぎる能力だ。

しかし、いきなり非現実的な出来事を目の当たりにした俺は、イマイチまだ実感出来ていなかった。

それが顔に出ていたのか、ルナさんは苦笑いしながら、俺に話した。

 

「出来ればあまり使いたい能力ではないのです。ここの人々に知られれば、私は要注意人物となりますし、何より研究対象になります。ですので、出来る限りこの件は内密にしてもらえれば……」

「分かった。他の人には言わないよ」

 

それと同時に、俺はこれ以上聞くのを止めた。本人が語りたくない事を、無理に聞くのは悪いしな……。

しかし、少しだけ感じた事もあった。出会った頃に、「実力を身につけてきた」と言っていたのは、もしかするとこの事なのではないか……と。

こうして、俺は事故に出会う事なく、いつも通りの日常を過ごし始めた。




閲覧、ありがとうございました!
最近、何故かカラオケ行きないなーなんて考えたりしています。カラオケに登録されていない曲を歌いたいんですけどね……。
そして、早くも8月が終わり、9月に突入しようとしております。夏休みが終わった学生さんや、もう出勤されている社会人の方、どちらも頑張っていきましょう!
それでは、また次回!


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第四十一話 焦る巫狐

どうも、【夕立】です!
かれこれ、もう9月。涼しくなってきたのを感じると同時に、台風が2つほど来ましたね……。湿度が上がってしまうと、せっかくの涼しさも蒸して暑くなってしまいます。
そして、最近金欠が……。行きたいところ、あったのに……。


とある金曜日。仕事帰りの俺は、明日から休日だという事で少し軽い足取りで家に帰った。

今日の夕飯は……確かオムライスだっけ?コンソメスープも少し凝っていて、色々工夫しているらしい。作り方は教えてくれなかったけど。

そんな調子で家に着くと同時に、家の前に巫狐さんが立っていた。

巫狐さんって、いつも家の中に置いてある扉を使っている筈なのに、何故外に居るのだろうか?

そんな事を考えていると、巫狐さんもこちらに気付いた様で、慌てる様にこちらに来た。

 

「朝倉、大変じゃ!!」

「そんな慌ててどうしたんですか?取り敢えず、一回落ち着きましょう?」

 

いつも落ち着いている巫狐さんだが、今日の巫狐さんは顔色もあまり良くないし、何か焦っているのが分かった。

俺は巫狐さんを落ち着かせるため、深呼吸を勧めた後、家の中で話す事にした。巫狐さん、この世界じゃ目立つからな……。

俺と巫狐さんは、リビングではなく和室に入り、何故か2人きりで話す事に。巫狐さんが俺に何かを話すって事は、少なからずみぞれ達の世界が関係しているだろうし、みぞれと秋風さんは呼んでおいた方がいいのでは?と思ったが、巫狐さんにも何か理由があっての事なのだろう。

みぞれは俺達にお茶を出した後、そそくさと部屋を退室した。しかも、何故かそわそわしていたのが気になる……。

しかし、2人きりになった途端に重い空気が変わる。そんな空気に耐えられず、すぐに乾く喉をお茶で潤そうとするが、あまり効果がないように感じた。

巫狐さんは大きな呼吸を1回した後、頭を下げながらこう言った。

 

「すまぬな、取り乱しておったようじゃ」

「いえ。それより、何かあったんですか?」

「そうじゃな……、何処から話そうか……」

 

そう言いながら、頭の中を整理する様に考え事をする巫狐さん。その姿に、俺まで緊張してしまい、ついつい背筋をピンっと伸ばしてしまう。

何秒……いや、何十秒経っただろうか。たった10秒でも、今の状況だと数分にも感じてしまう。

そして、とうとう巫狐さんが話し始めた。

 

「以前、お主に指名手配の女子(おなご)の話をしたじゃろう?」

「えぇ。見つけたら教えてほしい、とも言っていましたね」

「うむ。その女子だが、見つかった」

 

華さんが見つかったのか……。巫狐さん達がどの様な対処をするか分からないが、俺も早く説得して辞めさせなければ……。

しかし、それだけなら何故慌てる必要があるのだろうか?

そして、巫狐さんが言った事実に、俺も驚きを隠せなかった。

 

「──その女子、亡くなっていたんじゃよ」




閲覧、ありがとうございました!
本編は、とうとう最終章(?)に突入です。いきなり驚愕の出来事をブッ込んでしまいましたが、果たしてどういう事なのか!?というのを、予想しながら見て下さるといいかなーと思ってます。
…え?日常が少なかったって?えぇ、日常系を書くはずでした。だって、タイトル決めてから内容考えましたから。
……それなのに、思ったよりネタがなかったんです。タイトルをもうちょっと考えてつけた方が良かったなぁ……。
それでは、また次回!


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第四十二話 決意

どうも、【夕立】です!
台風の影響で、雨が強かったり雷が凄かったですね。自分の地域も少しの期間だけ停電してしまい、夜に暑い〜と言っていました。
さて、前話の最後の衝撃の事実から、今回は誠の考察みたいな回になります。もしかしたら、あまり面白くないかもですが、所々伏線は張っていますので、それを考えながら見てくださればと思います!


「──その女子、亡くなっていたんじゃよ」

 

その言葉を聞いた途端、俺は何故か冷静で、2つの考えが横切った。

1つは、一度亡くなっている事が分かっただけの可能性。佐倉 華という少女の身体を借りているだけで、俺が話した華さんは一度亡くなっている。それが発覚した、という事。

まぁ、この可能性はほぼゼロに等しいだろう。少し前に起きた出来事だ。調べれば分かるだろう。

そして、もう一つの考え。この考えだけは不思議と疑問に思わなかった。

──もう一度、死んでしまった可能性。

まず、考えないであろう可能性。そして、考えたくない可能性。なのに、すんなりと頭の中に浮かんだ。

そして、俺は巫狐さんに聞いてみた。

 

「その亡くなった少女に、会う事は出来ますか?」

「お主が見たと言う女子と同じかも確認しておきたいのでな。こちらからも確認を頼みたい」

「分かりました。今日は時間が時間ですし、明日でも大丈夫ですか?」

「うむ。では、明日に妾から迎えに来よう」

「すいません、お願いします」

 

その後、お茶を飲み干した巫狐さんは帰り、俺一人が和室に残っていた。

大きなため息と共に、座っていた俺はそのまま後ろに倒れ、横になった。

華さんに会って、言おうと思っていた事を言う前に会えなくなるなんて思ってもいなかった。いや、まだ確証ではないけれど。

しかし、もし本当に亡くなってしまったのなら、俺が説得する事も無くなったし、危機だって無くなった筈だ。

……それなのに、何か大きな違和感が俺の中に残っていた。

その違和感が、どの様なものかと言われたら俺は答えられない。だが、何故かしっくり来ないのだ。

もし、華さんが自ら命を絶ったのなら、何故あのような警告をしたのだろうか?そして、何故あんなに悲しそうな顔をしていたのだろうか?

つまり、何か原因がある筈だ。亡くなってしまっているなら、亡くなった原因。亡くなっていないのなら、偽装の様な事をした理由。

そして、俺はその原因が気になっている。ここまで関わってしまったという理由もあるのだが、俺が知りたいというのが大きい。

……こうなったら、とことん調べよう。暫く、会社も休ませてもらおう。

俺は、立ち上がってリビングに行き、3人で食事をし、風呂に入った。

そして、自室に戻った後、俺は枕元の小さな引き出しからとある物を取り出した。

それは、丸い宝石の様なものがついたネックレス。とある人から貰った、お守りの様なものだ。

俺は、そのネックレスを一度握りしめ、枕元に置いた。明日、コレを持って行こう。

そして、俺は明日に備えて早めに寝ることにした。何もない事を、祈りながら──。




閲覧、ありがとうございました!
明日からの3連休と、来週の3連休、皆様はどう過ごしますか?自分は、また祖母の家に行く予定です。今回は遊びに行くので、羽を伸ばしてきます。
さて、次回はいよいよ華さんの生死が分かります。一体、どうなるのでしょうか!?
それでは、また次回!


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第四十三話 いざ、動物の世界へ

どうも、【夕立】です!
まずはお久しぶりです!今まで何していたか〜などをここで話すと長くなりそうなので、詳しくは活動報告の方でご確認下さい!笑
忘れている方が多いと思うので、簡単なの説明でも。
華さんが亡くなったと報告を受けた誠は、巫狐さんに頼み、動物の世界へと行くことになりました!
……え?簡単過ぎるだろって?自分もあまり覚えてないので、遡ってもう一度見て頂けると幸いです。


翌日。俺は約束通り、巫狐さんと会っていた。

どうやら、華さんだと思われる人物は、みぞれ達が居る動物の世界で管理されているらしい。

本来であれば、関係者以外立ち入り禁止なのだが、巫狐さんが話を回してくれているらしい。

そして、俺は改めて家にある異世界へのゲートを見る。

異世界へのゲートって、大体は大きすぎるくらいのイメージがあるが、このゲートは残念と思うくらい普通の扉だった。どこの家にもありそうな……変哲も無い扉。

しかし、扉を開けてみると俺の感想はガラッと変わった。

扉の向こうには、明らかにこちらの世界とは違った風景。メルヘンチック……と言えば伝わりやすいのだろうか?

全体的にパステルカラーの色合いの世界。木々の色や街の色、人々の様子も俺の住んでいる世界とは全くもって違っていた。

 

「準備はよいか?戻ることも出来なくはないが、暫くの間はこちらの世界に居ることになるぞ?」

「……分かってます。俺にも、やらなきゃいけない事があるんです。俺が……やらなきゃいけないんです」

「……そうか。なら、行くぞ!」

「はい!」

 

そして、俺と巫狐さんは異世界に入っていった……。

<hr>

本来なら、感想の一言や観光をしようと思うのであろう。

しかし、一刻も争う事態だ。俺の頭の中には、そんな悠長な考えは微塵もなかった。

早く、華さんかどうか確認したい。もし別人なのであれば、華さん本人に俺の考えを言える機会があるという事。もう、チャンスがあるかだって分からないのだ。

そうして案内されたのは、大きな木の下。その木には、そこそこ大きな扉。ここに華さんが……。

そして、その扉を開けた先には沢山の|獣人(けものびと)が行き交っていた。

周りを見渡し、少しだけ整理してみた感じだと……市役所みたいな所だろう。窓口みたいな所とか、待っている様子の獣人とかも居るし。

しかし、俺が案内されたのは一番奥のエレベーター。中に入り、巫狐さんがカードをかざすとエレベーターは地下へと向かった。

俺と巫狐さんを乗せたエレベーターは、そこそこ長い時間降下し、ようやく降りたと思えば長い廊下。どれだけ厳重にされている区域なのかがとても分かりやすかった。

 

「すまぬな。長い間歩いて疲れたじゃろ?」

「長かったのは確かですけど、俺にはやらなきゃいけない役目の為に来ていますから。この位、どうって事ないですよ」

「そうか。……お主、変わったな」

「そうですか?」

「うむ。最初に会った頃より、心構えが違っておる。……お主には色々迷惑をかけたが、それがお主自身を変えさせたのかもしれぬな」

 

そう言われれば確かに、みぞれ達と出会ってから色々な事があった。そして、俺も色々な関わり方をした。

確かに、そう考えれば俺は変わったのかもしれない。けど、俺はまだ変わりたい自分に変われていない。

なら、もっと努力しなきゃいけない。今回の出来事は、その一歩なのだ。

 

「それでは……行くぞ!」

 

そして、俺はとうとう華さんが居る部屋のドアを開けた──。




閲覧、ありがとうございました!
今回の話、正直華さんと誠を合わせようと思っていたのに……。白紙から書き始め、日を何度も跨いで書くと何を書こうとしていたか忘れてしまいますね。
次の話こそ、集中して1〜2日の間にまとめられる様に出来たらいいなぁ……って思います。書いてないと、下手になるものですね……。
それでは、また次回!


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第四十四話 佐倉 華と蕾という少女

どうも、【夕立】です。
最近は台風が多いですね……。台風の被災地の復旧をしている最中に、大雨や台風などが来たりしていて、更に被害が大きくなったりしているそうです。
皆様も気をつけて下さいね。
自分ですか?自分は風と雨がいつもより強いなぁーくらいの地域だったので、大丈夫でした。


巫狐さんの一言の後、目の前の扉が開かれる。

部屋の中は病室の様になっており、色々な機材が並んであった。

その部屋の中心にベットがあり、そこに例の少女が横たわっていた。

俺は覚悟を決め、そのベットに近付く。ベットまでの距離は短いが、そこまでの一歩一歩がとても重く、長く感じた。

そして、とうとう少女の元にたどり着いた俺は、深呼吸をした後に顔を覗いた。

すると、そこに居たのは佐倉 華で間違いなかった。

──いや。正確には、佐倉 華であって佐倉 華ではなかった。

見た目は完全に、俺の知っている華さんで間違いない。けれど、何かが違う。何とははっきりは言えないが、何か違和感を感じたのだ。

そして、その違和感の正体はすぐに判明した。

 

『朝倉さん、聞こえていますか!?』

「この声……もしかして華さん?」

 

しかし、目の前の華さんらしき少女に変化はない。巫狐さんは声が聞こえていなかったのか、首をかじけてこちらを見ていた。

 

『はい、佐倉 華です!』

「巫狐さんが首を傾げてるって事は、この声は巫狐さんには聞こえてなさそうか……」

『朝倉さんにだけ聞こえる様です……。それより、大変なんです!』

 

……なんか、俺が会って喋った事のある華さんとは雰囲気が違くないか?喋り方もそうだが、幼さがあるというか……。

この念話も気になるが、それよりも華さんが焦っているのに疑問を感じたので、聞いてみることにした。

……念話がこちらからも出来るわけじゃなさそうなので、小声で話そうか。

 

「落ち着いて、ゆっくり事情を説明して。焦っていたら、伝える事が伝わらなくなっちゃうから」

『そ、そうですね……。すいません……』

 

すぅー、はぁー。と深呼吸の音まで聞こえてくるのだが、コレって本当に念話なのか……?でも、目の前の華さんはピクリとも動いていない。念話って凄いな……。

少し時間が経った後、華さんは落ち着いた様子で話を続けた。

 

『実は、朝倉さんの目の前の私は今まで会っていた私と別の私なんです』

「それは……どうゆう事だ?」

『今、その目の前にいるのは本来の私。つまり佐倉 華なんです。でも、今まで会っていたのは私ではなく、動物の世界から来た蕾ちゃんなんです』

「蕾ちゃん……か」

 

つまり、今まで話していたのは佐倉 華と名乗った蕾という少女。そして、今俺と念話で話しているのが本物の佐倉 華……という訳か。

なんか……ややこしい感じはするが、落ち着いて考えれば大丈夫。うん。

そういえば、俺は今まで蕾って子の事を華さんって呼んでたけど、本来の佐倉 華は幼さがあって……はっきり言って、さん付け変だな。変えるか。

そうして少しだけ考え、無難な呼び方にする事にした。

 

「それで、なんで今はその蕾って子じゃなくて華ちゃんなんだ?」

『それなんですが、今私と蕾ちゃんは身体が別にあるんです』

「……なんだって?」

『見た目は私なんですが、中身は蕾ちゃんなんです。私の姿はここにもあるんですが……』

「つまり、華ちゃんの見た目の少女が2人居るって事でいいのか?」

『はい。そうゆう事になります』

 

頭がこんがらがってきたが、その事実に安心と不安が生まれた。

佐倉 華が生きていたという安心感。蕾という少女が、まだ何処かで何かをしようとしているかもしれない不安。

……そうと決まれば、ここに長居してちゃダメか。

 

「大体の事情は分かった。俺は蕾を止めてくる」

『……お願いします。蕾ちゃんを救ってあげて下さい』

「おう、任された!」

 

俺は両手で自分の頬を叩き、巫狐さんの方を向いた。

巫狐さんはその行為に驚いていたが、何かを悟った様に真剣な目に変わった。

 

「……巫狐さん、力を貸してください」

「何があったんじゃ?」

 

俺は1度大きく呼吸をした後、巫狐さんに伝えた。

 

「詳しくは後で話しますが、華さん──いや、蕾を助けに行きます」




閲覧、ありがとうございました!
これを書いている最中、元々の華ちゃんの喋り方や蕾という名前をすっかり忘れていました……。二十三話の出来事だったので、もう二十話以上前なんですね……。そりゃ忘れるわ……。
自分はあまりネタ帳とか書かなくて、思いついた事を書くようにしています。お陰でしょっちゅう考えてる事を忘れたり、別の案が思いついて書き直ししたりしますけどね……。
でも、自分が楽しければオッケーです!(いい笑顔)
それでは、また次回に!


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第四十五話 再び、あの山へ

どうも、【夕立】です。
いやー、もう11月ですね〜。今年も残すところ後2ヶ月です。早い……。
最近では、画像を模写(携帯アプリを使って)する事が楽しく、段々慣れてきたので綺麗に描けるようにはなってきました。新しいのを描くたびに、こうした方がいいなと感じる事があるので、昔の模写を見ると下手に感じますが……。
ですが、未だに自分で一からは描けそうにないです……。みぞれちゃんとか、絵に描いてみたいんですけどね。
……誰か、身近に描ける人とか居ないかなぁ。


動物の世界での滞在時間は、約1時間程ととても短いものとなってしまった。

その理由が、今まで華さんと言っていた少女──蕾ちゃんは、現在動物の世界は居ないらしい。

一方、意識だけとなってしまった華ちゃんの方なのだが、驚くことにいつでも念話が出来るとの事。しかし、世界を超えての会話はほぼ不可能らしく、それで今まで俺に念話が出来なかったらしい。

そして、今から行く場所は蕾ちゃんが向かったであろう場所。そして、都合良く念話も通じる場所の様だ。

そして、その場所なのだが……。

 

「……懐かしいな。ここに来るのも」

 

なんと、みぞれと初めて会った山だった。

ここら辺で、一番この世界と動物の世界が繋がりやすい場所で、世界を繋ぐゲートが出てくるのも近場だとここだけ。俺達の住んでる所は、巫狐さんが特別に繋いでいるから例外だが。

巫狐さんから話を聞く限りでは、この山全体が繋がりやすい訳ではなく、頂上に登るにつれて力が強まっていくらしい。

携帯で軽く調べたのだが、頂上は近くの街を上から見下ろせるらしく、ちょっとした隠れ人気スポットらしい。

しかし、流石に夜遅くまでここにいる観光客や地元の人は居ないらしく、頂上に人がいるのは21時頃までらしい。

そして、現時刻は22時過ぎ。二つの世界が繋がりやすいのは夜らしく、俺達はそれまで家で待機していた。

家で待機している間、俺はみぞれや秋風さん、風華やルナさんに事情を説明した。

以前から少しだけ話していたみぞれと秋風さんは、新事実に驚いている様子。一方、何も知らない風華とルナさんは凄く驚いていた。

そりゃ、この世界以外の世界があって、そこには動物達が人の姿をしたりして暮らしています〜なんて信じられないだろう。俺も、みぞれと会っていなければ信じられなかっただろうし……。

全ての事情を4人に話した俺は、この後蕾ちゃんと会って話してくる事も話した。俺が止めてあげないといけない。華ちゃんからも頼まれているからな。

すると、4人は一緒に行ってもいいか?と聞いてきた。

俺としては、あまり危険な目に合わせる訳にはいかない。格好悪いが、自分の身すら守れる自信がないからな……。

しかし、俺の考えを伝える事を考えると人数は居てくれた方がいいのも確かだ。彼女達も、彼女達なりに考えて出した答えだ。否定するのは良くない。

……と、言う事で合計6人のメンバーで登山。そこまで険しい道ではなく、山もそれほど大きくないのですぐに山頂に着く事が出来た。

そして、そこには華ちゃんの言った通り華ちゃんの姿をした少女が立っていた。

 

──俺は、蕾ちゃんを暗闇から救ってみせる!




閲覧、ありがとうございました!
本編はとうとうクライマックス!(何回言ってるんだろう?)
五十話くらいで完結できたらな〜と思ってるので、長くても四話くらいで蕾ちゃんシーンを終わらせ、五十話目でめでたしめでたし!みたいな雰囲気にはしたいですかね。めでたしになるかは別ですが……。
そして、風華とルナさんの登場シーンが遅過ぎたせいで、本編にほぼほぼでてませんでしたね……。秋風さんもそうですけど。
そして、案の定この後も登場シーンはほぼないかと思います。基本は、誠が蕾ちゃんと話すシーンですからね……。登場を楽しみにしてた方、すいません。
それでは、また次回に!


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第四十六話 対話

どうも、【夕立】です!
まず、予定が狂いそうです……。五十話いかずに完結しそうです……。
後四話で五十話なんですが、予定だと最短で二話くらいで終わります。長くても三話繋げられればいいかなぁ……。
四話作るとなると、番外編みたいな感じになってしまい何話って書かないかもですね。ちゃんと予定しながらやらなかったから……。
まぁ、予定は未定ですから仕方ないですね!まずは作品を完成させないと、次の作品とかへのモチベに繋がりませんからね。
……はい、次からしっかりと設定とか書き留めてから作ります。すいません。


「あら……。来たのですね」

「あぁ。君を止める為にね」

 

俺が先頭になり、蕾ちゃんと対話する。

作戦なんて決めてない。が、俺が何とか説得すると伝えてある。

勿論、説得に失敗するかもしれない。その時は、巫狐さんが力づくでも取り押さえするとの事。

そんなに簡単な事じゃないのは分かっている。だが、彼女だって苦しんでいたんだ。周りに見捨てられ、独りで亡くなったんだ。恨んでしまう気持ちも分かる。

けど、今は違う。過去は変えられなくても、今は変えることが出来る。なら、その希望に賭けてみるのもありだろう。

俺は覚悟を決め、蕾さんに話しかけた。

 

「華さん……いや、蕾ちゃん。話がしたい」

「……華から聞いたのですね。私の名前を」

「あぁ。彼女から、君を止めて欲しいとも言われたよ」

「そうですか」

 

淡々と話す蕾ちゃん。その雰囲気は冷たく、少女が見せる雰囲気ではなかった。

まるで──全てを諦めているかの様に。

だからこそ、誰かが手を差し伸べてあげるべきだ。君には居場所がある、という事を教えてあげるべきなんだ。

 

「君の過去の話を聞いてから、考えた。俺は見捨てられた経験がある訳じゃない。けど、俺が独りの時に助けてくれる人はいた」

「……そうですか」

「全てを信じられなくなったり、全てに絶望していたりした時、その時に差し伸べられた手が、どれだけ幸せなものかも知っている」

 

俺が、何もかも捨てようとした時。そこで文姉は助けてくれた。俺を、闇の中から救ってくれた。

そして、それがどれだけありがたくて幸せなものかを知っている。だからこそ俺は、誰かを救える様な人間になりたいと思った。

そして、今がその時だ。

 

「過ぎてしまった過去を変える事は出来ない。それが、どれだけ幸せであったとしても、苦しいことでも、自分の心から消える事はない。けど、今を変える事はいくらでも出来る。過去の苦しさを忘れるくらいの幸せを作ればいい」

「……貴方はそれが出来ます。ですが、私にはもう出来ない事なのです。死んでしまっている、私には……」

「そんな事ないッ!」

 

俺は声を荒げた。蕾ちゃんを落ち込ませる為にこんな話をしているんじゃない。そして、その考えは違うという事。

蕾ちゃんは、驚いていた。しかし、また悲しい顔に戻ってしまっていた。

 

「確かに、過去の蕾ちゃんなら一人だったかもしれない。けど、今は違うだろ?」

「……何を、言って」

「何で、華ちゃんが君の為に身体を貸してくれていた?同情があったかもしれないが、同情だけなら俺に『助けてあげて下さい』なんて言わない。そして、俺も何も思っていないならここには居ない」

 

蕾ちゃんの気持ちが揺らいだ。これならいけるかもしれない──!

俺は、畳み掛ける様に話を続けた。

 

「今の君は昔の君とは違う。華ちゃんやここにいる人、そして俺が君を気にかけているんだ。だから──」

 

蕾ちゃんは一人なんかじゃない。気にかけてくれるのが家族じゃなかったとしても、それは偽物なんかじゃない。

俺は学んだ。本当に大切なものは、無くなって始めて大切さを実感する。当たり前の事が、当たり前じゃなかったと実感する。

だから、知って欲しい。俺が気付いたことに。彼女にも。

俺は、彼女に近づいて右手を差し伸ばし、こう言った。

 

「──一緒に、暮らさないか?」




閲覧、ありがとうございました!
今回はセリフ多めでしたが、正直書き方に迷ってました。
セリフを長々と繋げるのも変ですし、だからといって今回みたいな区切り方も違和感があるので、どうしようかと迷ってました。結果的にこちらにしましたが、見辛かったらすいません……。
それでは、また次回!


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第四十七話 幕引き

どうも、【夕立】です
最近、肌寒くなってきましたね……。自分は体調管理は気をつけているつもりですが、頭痛やくしゃみが最近多いです……。熱っぽくはないので、恐らく大丈夫ですが(汗)
皆さんも、体調管理は気をつけて下さいね!
……え?作品に触れてないって?今に始まった事じゃないんで許してくださいネタ不足なだけなんです。


「一緒に……暮らす?」

 

俺の言葉を聞き、蕾ちゃんは明らかに動揺していた。

本来であれば、「こんな事もうやめてくれ!」とか言ったりするのだろう。

けど、これは蕾ちゃん自身の心の問題。彼女の復讐をやめさせるには、彼女が心を許せる場所を作ってあげればいい。ただそれだけなのだ。

しかし、それだけの事が難しい。動物の世界では、禁止書物を無断で持ち出した犯罪者。こちらの世界では、そもそも理解してくれる人が少ない。

なら、こちらの世界で少なくとも暮らしやすいであろう俺達の家に暮らさせるのもよいだろう。

俺は、蕾ちゃんが聞き返した言葉に頷き、話を続けた。

 

「蕾ちゃんの事、少しだけど俺は知っている。そして、その事を踏まえた上で助けてあげたいと思った。だから、俺は考えたよ。蕾ちゃんにどうしてあげればいいのか」

 

今までたくさん悩んだ。そして、家族の温もりを──誰かが自分を思ってくれる喜びを、改めて知った。

蕾ちゃんはその温もりを知らない。なら、教えてあげればいいんだ。

 

「華ちゃんが病院にいた時、君が助けてくれたと聞いた。確かに、復讐する為の身体が必要だっただけなのかもしれない。けど、復讐の為だけなら身体の所有権は君がずっと持っていればいい。違うか?」

「……あくまでも、この身体は華のです。私のために協力してくれたとしても、私の勝手で華が死んでしまってはいけませんから」

「そう、君は華ちゃんを助けたかった。復讐より、自分と似たような悲しい結末を迎えようとしている彼女を」

 

蕾ちゃんは震えている。何故かは分からないが、恐らく華ちゃんとの出会いの時を思い出しているのではないだろうか?

蕾ちゃんの復讐心は今も残っている。けれど、復讐が終わってしまえば華ちゃんとの生活も終わってしまう。

けど、いつまでも身体を借りているわけにもいかない。そんな所だろう。

考えた結果、蕾ちゃんは復讐の目的を果たそうとした。しかし、その復讐もまた揺らいでいる。

蕾ちゃんは頑張った。幼いのに、こんなにも辛い経験を二度も体験した。

……もう、解放されてもいいんだ。

 

「蕾ちゃん、もう無理をしなくていいんだ。今度は、幸せになってもいいんだ」

「幸せ……に?」

 

その言葉を聞き、蕾ちゃんは涙を零した。

今まで抑え込んできた感情が溢れたのか。それとも、優しくされたのが嬉しかったのか。それとも、その両方なのか。

俺は蕾ちゃんに近付き、そっと抱きしめた。あまりにも弱々しい身体で、強く抱きしめたら壊れてしまうのではないか?と思うくらいに。

蕾ちゃんは、ガタが外れたかの様に大泣きした。俺は、泣き止むまでずっと頭を撫でた。子供をあやすみたいに。

 

──こうして、一つの大きな出来事に幕を降ろした。




閲覧、ありがとうございました!
とりあえず、今回で終わり!って訳じゃないです。区切りあまり良くないからね(白目)
まぁ、この後の誠達の話をしようかなーと思っていたので、なんかそれっぽく終われたけどもうちょっと続きます。
なので、次かその次くらいで終わると思います。それまで楽しんでください!
……え?次の作品はどうするかって?
実は、十話くらい書いてある作品があるんですが、コレジャナイ感がしてるので投稿するか怪しいです。
更に、この作品を自己満足で書いていたというのもあり、それ以外の作品に関しては作者の好きな展開とか属性てんこ盛りになったりして、正直ネタ出しの意味がなくなる可能性しかないんです。
後になって、「あ、こんな事あったな……」とかになっても嫌なので、ある程度まとまったら投稿しようかと思ってます。
……まぁ、読者様に続き読みたい!とか言われてしまっては、ニコニコしながら投稿してそうな気がしますけどね……。
それでは、また次回!


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最終話 おかえりなさい

どうも、【夕立】です!
タイトル通り、今回で最終話になります!
ですので、今までの出来事を振り返りながらご覧下さい!

……あ、最終話だからっていつもより長い訳ではないです。はい。


その後、蕾ちゃんは俺たちの家に暮らすことに決まったのだが、動物の世界での行いは決して許される事ではなかった。

巫狐さんは「その件については、任せてもらえぬか?」の一言で、具体的にどうするかは伝えてくれなかった。

蕾ちゃんはそのままうちが引き取り、順調に暮らしている。

しかし、解決した今も1つだけ残っていた。

あれ以来、華ちゃんがどうなったかが分からないのだ。

巫狐さんは、あの出来事以来こちらに来ていないらしく、華さんがどうなったか聞くことも出来ない。

みぞれや秋風さんも、あちらの世界に帰っても巫狐さんと会うこともなく、あの施設は関係者以外立ち入り禁止なので様子を見ることも出来ない。

……まぁ、ここでくよくよしているのを知ったら、華さんが悲しむかもしれない。いつも通り、今日も一日頑張るか!

とは言っても、今日は休日なので会社もないし、出掛ける用事もない。そして、それはこの家の住人全員が同じらしい。

俺がポーっとテレビを見ていると、家のインターホンが押された。

みぞれは、いつものようにスタスタと玄関まで確認しに行く。本当は家主の俺が行くべきなのだろうが、みぞれが「これぐらいやらせてください!」と言うので、お言葉に甘えている。

5分くらい経ってもみぞれが戻って来ず、少し心配して立ち上がろうとした直後、みぞれが戻ってきた。

 

「みぞれ、遅かったな。セールスとかか?」

「いえ、久しぶりに会うお客さんでした」

 

そう言って、みぞれがエスコートするように中に通すと、そこには久しぶりに会う人がいた。

 

「久しぶりじゃな、朝倉」

「巫狐さん!お久しぶりです。お元気でしたか?」

「うむ。少しばかり用事で顔が出せずにすまぬな」

 

相変わらず、巫狐さんは落ち着いた雰囲気で話しかけてくる。今まで、仕事が忙しくて来れなかっただけみたいでよかった……。

しかし、いつもの様にソファーに座るのではなく、ドアの前でずっと立っていた。

俺は、その事が不思議に思い、聞いてみることにした。

 

「巫狐さん、どうかしましたか?」

「あぁ。もう一人、客がおっての。入ってもよいぞ?」

 

そう言うと、巫狐さんの陰から一人の少女が現れた。

その姿は、毎日見ている姿なのだが、別人だとすぐにわかった。つまり──

 

「お久しぶりです。朝倉さん」

「華ちゃん……なのか?」

「はい。佐倉 華です」

 

その事実に、俺は思わず涙を流していた。

華ちゃんが無事だったんだ……。その事実に、俺は喜び、安心した。

 

「華の意識を、元の肉体に戻すのに少々手間取ってな。恐らく、蕾の肉体を作る際に華にも影響が出てしまってな。思いのほか時間がかかってしまったんじゃ」

「良かった……。無事だったんだな……」

「わわっ!そんなに泣かないで下さい!」

 

華ちゃんが慌てて駆け寄ってくるが、どうすればいいのかよく分からないという感じでオロオロしていた。

そんな姿も微笑ましく、俺は涙を拭いて笑顔を見せた。

 

「もう大丈夫。心配かけてごめんね」

「いえ……。こちらこそ、ご心配をおかけしました」

 

華ちゃんは敬語だったり、配慮が出来たりと一見大人びて見えるが、さっきみたいな姿をみるとやはり幼い少女だと感じる。

俺は華ちゃんの頭を撫でた後、巫狐さんに話しかけた。

 

「わざわざすいません。言ってくだされば、そちらに顔を出したのですが……」

「いいんじゃよ。それに、頼みたい事もあるからな」

「頼み事……ですか?」

「うむ。流石に、動物の世界で暮らしていくのは辛かろう。まして、犯罪者だった蕾の姿とほぼ同じじゃ。誤解も生まれかねんからの」

 

確かに、蕾ちゃんは華ちゃんの身体を借りていた為、姿はほぼ同じ。そして、動物の世界の住人達は佐倉 華という人間を知らない。確かに、誤解されるだろうな……。

 

「そこで、妾が安心して任せられる人間に託そうという事になってな」

「それが俺……という訳ですか」

「うむ。どうじゃ?」

 

俺は、それを聞いた瞬間から答えは決まっていた。

華ちゃんも、言葉で言ってはいないがこちらを緊張した様子でずっと見ている。

俺は息を大きく吐き、巫狐さんに俺の答えを伝えた。

 

「俺でよければ。幸い、巫狐さんに貰ったこの家の空き部屋はまだありますし、華ちゃんならうちも大歓迎だと思いますよ」

「本当ですかっ!?」

 

嬉しそうに喜ぶ華ちゃん。犬とかだったら、思いきり尻尾を振っているだろう。

一応、ここの住人には今までの華ちゃんと蕾ちゃんの出来事は話した。そして、理解もしてもらえた。

そんな皆だからこそ、受け入れて貰えると信じていた。

 

「……決まりじゃな。なら、今日は景気付けに祝いでもするかのぉ!」

「そうしましょうか!」

 

こうして、新しい住人が加わるお祝いと少し遅めの解決おめでとうのお祝いが開かれた。

昔では考えられなかった生活。だけど、そんな非日常も悪くはない。

これから賑やかになるこの家で、どんな出来事が起きていくのだろうか?

 

──俺は、これからも皆と楽しく過ごしていこうと誓ったのだった。




閲覧、ありがとうございました!
まずは、皆様ここまでありがとうございました!
自己満足で書いていましたが、やはり読んでもらえると実感出来ると嬉しいですね!
ストーリーも、内容が濃いとは決して言えなかったと思います。そもそも、一話一話が短くて変だったかもしれません。
ですが、ここまで書けたのは読者の皆様のお陰です。本当にありがとうございます!
次回作の方ですが、暫くは投稿しないと思います。案をしっかり固めたり、書いてて楽しい作品が出来たら投稿する予定です。
一応、書いている途中の作品が2作程ありますが、正直微妙かもしれないです。俺の趣味をありったけ詰め込んだら、結構変な作品になりそうなんですよね……。
美少女ゲーム(ビジュアルノベル)みたいに、一部のヒロインと付き合うルートをいくつか用意してみたりしたいんですが、そうすると完結までにいつまでかかるか……。途中で挫折するのも嫌なのですが、書いてみたいんですよね……。
まぁ、そんな事はどうでもいいです!(良くはない)

最後に、ここまで読んでくださってありがとうございます!
そして、ここまでの閲覧お疲れ様でした!
また機会がありましたらお会いしましょう!


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