ヤミヤミの実で宵闇の妖怪 (にゃもし。)
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一人娘の家出 金髪少女の大冒険 序章 → “ ジャヤ島 ”
1話 ヤミヤミの実で宵闇の妖怪


 

 

偉大なる航路(グランドライン)──海上】

 

 

 マーシャル・D・ティーチ

 

 

 言わずと知れた海賊の一人。己が黒ひげの異名を持つその人物に生まれ変わったことを知った時にその男は絶望した。ゆえにその男はこれから起こりうるであろう未来に対して抗うことにした。

 

 そして男の涙ぐましい努力の結果、実に平和的な方法で、粘り強く話し合った末に、サッチを殺害せずにヤミヤミの実を手に入れたのである。

 

 

「ヤミヤミの実でルーミア? いや、何で?」

 

 

 念願の実を口にしたら、あまりの不味さにビックリ。さらにむさ苦しい男から容姿端麗な金髪少女へと性別どころか身に纏った衣装すらも変化して二度ビックリ。それも自分が知る「東方project」のキャラクターである「ルーミア」になったことに男はその場に踞って頭を抱えた。

 

 ちなみに件の悪魔の実を引き渡す条件の一つとして本人の目の前で食するという提示を出し、一部始終を見ていたサッチは船の甲板をダンダンと拳で叩いたり、男を指差したりして、腹を抱えて笑い転がっていた。

 

 そのサッチの様に腹を立てた男は怒りのあまりにサッチの右足を右ローキックで粉砕。あまりの痛さにサッチは悲鳴を上げたのちに白目を剥いて口からぶくぶくと泡を吹きながら気絶。さらに騒ぎを聞き付けた他の船員が駆け付け、あっという間に元男の少女の周囲360度を物騒な得物を片手に逃げられないように取り囲んだ。

 

 

「なんでこんな所に少女が?」

「それにティーチのヤツはどうしたんだ?」

「とりあえず何か知ってるのかもしれんから捕まえておくか?」

 

 

 「そうだな…」と、騒ぎの元であろう少女を捕縛しようとするも、これは堪らんと半ば本能的に男は床を蹴って高く跳び、そのまま空を飛んで逃亡したのであった。

 

 

 

 

 海の上を、月を背景に、宵闇の空を、一人の少女が舞う…

 

 

 

 

 それはどこか儚く、今にも消えてしまいそうな幻想的な光景に見えた……と、その少女の逃亡劇を見た海賊達はのちに語る。

 

 

 

 

 それから男が白ひげ海賊団を抜け出して数日後、原作が始まる数ヶ月前。男はマーシャル・D・ティーチからルーミアと名前を変えて活動する。

 

 原作のティーチが仲間にしていた初期メンバーを集めて海賊団を結成。ルーミアが宵闇の妖怪と呼ばれていることにちなんで「宵闇ノ海賊団」と名乗る。また世間からはルーミアを中心とした小規模の海賊団ということもあって「ルーミア一味」とも呼ばれるようになる。

 

 結成後、先ず彼女達が行なったのは医療大国と呼ばれている冬島ドラム王国で悪魔の実の抜き取り方の調査である。その際に一味は調査中にワポルと遭遇し、そのまま交戦。結果、敗北したワポルは国外逃亡。ワポルの行動に呆気に取られるも無事に目的を果たす。ついでにワポルを国から追い出したことでドラム王国の住民から大層喜ばれたそうな。

 

 その次に彼女達はジャヤ島に移動。ジャヤ島の外れに住むモンブラン・クリケットを訪ねるためだ。目的は空島へ渡る方法を本人の口から聞き出すためである。……というのは前置きで実際はルーミアの好奇心が大きい。その時に猿山連合軍のマシラ、ショウジョウとも親しくなる。ついでに自らを猿山連合軍の最高戦力と勝手に名乗り、モンブランの住居に当人の許可なく居座る。ルーミア達はそこを拠点に原作の主人公であるルフィ達を待ち構えることにした。

 

 

 そんな中、原作を知る彼女は考える。

 

 

(──何も白ひげ海賊団を敵に回してまでグラグラの実にこだわる必要はあるのか? 他の実、例えば……ゴロゴロの実でも良いのでは? それにエネルを倒せば、そうすればあの空飛ぶ船も手に入る!)……と。

 

 

 ルーミアは妙案とばかりにメンバーに計画を打ち明け、メンバー全員もそれに快くニコニコ顔で了承。ゴロゴロの実を手に入れるためにルフィ一味に接触を図る段取りをする。

 

 だがその前にルーミアは空を飛べることを利用して単独で空島スカイピアに渡る。ゴロゴロの実の能力者──エネルの存在を確かめるためである。

 

 道中、ジャヤの原住民であるシャンディアの戦士から襲撃を受けるもルーミアはこれを返り討ち、痛め付けられ満足に動けない彼らを前にして、「共にエネルを倒さないか?」……と、話を持ち掛ける。

 

 当然、最初は不信感を抱かれるが、エネル打倒という共通の目的もあり、半ば押し付ける形で共闘の約束を取り付けることに成功。引き続き、エネルに関する情報を集め、原作通りにエネルがゴロゴロの実の能力者だということが判明する。

 

 その後、ゴロゴロの実の能力者の天敵であるゴムゴムの実の能力者──ルフィを連れてくるべく、ルーミアは空島を後にしてジャヤへと頭から落ちるようにして向かう。

 

 

 

 

──そして……

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──ジャヤ島 近辺の海】

 

 

 

 

 ジャヤ島で麦わらの一味を待ち構えることにしたルーミア。しかし、彼らがいつジャヤ島に来るのかは明確には分かっていなかった。だが最初に接触したのがマシラをボスとしたマシラ海賊団だということは覚えている。そこで彼女は暇潰しも兼ねてマシラ海賊団がサルベージをするために船を出航する際は一緒に乗ることにした。

 

 

「わははー、ようやく始まりの始まりが来たのかー!」

 

 

 その努力が遂に実ったのか、いつものように猿の形をした船首に腰掛け、持参したチェリーパイをほおばりつつ海に向かって足をパタパタさせて海をぼんやり眺めていると、上空から海中へと落ちていく大型船──ガレオン船を目撃。マシラを含めた船員を焚き付けて急いで現場に向かわせ、その途中で羊をかたどった船首をした小型船──ゴーイング・メリー号を目にして先程の言葉を口にしたのである。

 

 

(──モンキー・D・ルフィ! 海賊王の称号はくれてやる! なれるもんならな! その代わり……!)

 

 

 船首の上で器用に立った後、両手を左右に大きく広げたポーズを取りながらルーミアは叫んだ。

 

 

「世界を引っ掻き回す手伝いをしてもらおうか!」

 

 

 「わははー…」と、どことなく間延びした笑い声を上げながらゴーイング・メリー号へと船を近付けさせる。

 

  




 

( ´・ω・)にゃもし。

◆いくつか考えていた「ONE PIECE」と「東方project」のクロスオーバーもの。

◆悔いはない。

◆他には船の精霊が「メリー」「サニーミルク」なんてのも…

◆ちょっとだけ訂正したよ。 


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2話 接触

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──名も無き無人島】

 

 

 ルーミア

 

 

 「東方project」の作品に登場するキャラクターの一人。マーシャル・D・ティーチからルーミアへと姿形、性別が変わってしまった男が白ひげ海賊団を抜けて真っ先に行なったのは、自分の身体の特性と能力の調査である。何しろ彼の知るルーミアは「闇を操る程度の能力」という一見して強そうな名称の能力を持っているにも関わらず、一番弱い1面のボスに配置されていたからだ。しかも、比喩抜きに弱い。(──それでも妖怪という種族なだけあって普通の人間──鍛えていない一般人よりは強いが……)さらに日光に弱いらしく、日に当たると弱体化する始末である。そのため、日中のルーミアは日光を遮るために自身の周囲を闇で覆っている──と、云われている。

 

 もっとも彼──現、彼女が懸念していたような弱体化等は一切見られず、ルーミアの容姿をしたヤミヤミの実の能力を持ったうえに空を飛べるマーシャル・D・ティーチ……と、いうのが彼女の調べた結果である。この結果にさしもの彼女も安堵の溜め息を漏らす。

 

 こうして不安の種が一つ消えたことで、だいぶ気が楽になった彼女。ふとそこで自分がいなくなった後の白ひげ海賊団がどうなったのか気になった。……が、それもほどなくして知ることとなる。

 

 

「マーシャル・D・ティーチが死亡?」

 

 

 人気(ひとけ)のない無人島の岬にて、ニュース・クーから新聞を購読して読み漁れば、そこには何故か男だった時の顔写真付きで自分が死んだ記事が掲載されていた。おまけに少女を助けるために己を犠牲にしたという美談になっている。書かれている記事によると、少女の身代わりになって近海の主に喰われたそうな。

 

 

「なんだこれ?」

 

 

 当初、彼女は自分の死亡記事の原因をあれこれ考えていたが、途中から面倒くさくなったらしく「そのうち白ひげ海賊団の連中に会うからその時に聞けばいいや、わははー」と、思考するのを放棄した。

 

   

 そしてルーミアは目的を達成するためにその島を後にした。

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──ジャヤ島 近辺の海】

 

 

 マーシャル・D・ティーチの身長は344㎝。成人男性のおよそ2倍ほどもある大男なのである。それが悪魔の実を食べたことにより10歳ほどの小柄な少女──おおよそ120㎝までに縮んでしまった。だが、そんな目に遭ったにも関わらず、身体能力に大して変化がなかったのは不幸中の幸いといえよう。

 

 もっとも身長が低くなれば当然、目線は前より低くなり、両手両足の長さも変わったので距離感や感覚等も以前と違ってくる。それ故に今の少女の体に慣れる必要があった。要は体を動かして感覚を掴むことである。

 

 無論、ジャヤ島に来る途中──ドラム王国でワポル達と戦闘を起こしたことがあるが、その時はもっぱら自身の能力と仲間に頼っていたこともあり、肉体の感覚を完全に掴めたとは言い難い。

 

 さらに感覚を研ぎ澄ませるためにルーミアはマシラ海賊団の船に一緒に乗り込む。もっとも、サルベージに関する知識も経験もなく、悪魔の実の副作用でカナヅチになった彼女は万が一のことも考えて、見物することにとどまっている。周りがそうさせないというのも理由の一つではあるが……

 

 だがこの広い海、海賊達が跋扈蔓延る大海賊時代。海賊同士の衝突、諍いはさして珍しくもなく、猿山連合軍もまたそういう目に遭うことも暫しある。その時こそルーミアは水を得た魚のようにイキイキとした表情で暴れまくる。海賊同士の争い、そこで発生する戦闘こそがルーミアの狙いなのである。

 

 体から発生する闇を用いたり、高い身体能力に任せて戦う彼女を見た海賊達はいつしか畏怖の念を込めて彼女をこう呼ぶようになった。

 

 

 宵闇のルーミア。 ……と、

 

 

 それと、付け加えて言うならば、大海原を行く船乗り達が戦う相手が何も同じ人間とは限らない。むしろ人間と戦うことは珍しい方だろう。天気や風、海そのもの、はたまた病気。あるいは巨大な海獣、未知なる海王類──そう、例えばガレオン船よりも巨大な海亀なんてのと遭遇する時だってある。

 

 

巨大海亀が気絶してる間に船長を助けるぞ──!

アイアイサー!

 

 

 群れなら兎も角、単体ならばルーミアの敵ではない。海上に浮上した大亀はルーミアの重たい一撃を頬に食らってあっさりと白目を剥いて気絶した。そして大亀の口の中にある沈没船にいるであろう園長(ボス)──マシラを救出すべく甲板の上を船員達が慌ただしく動き回る。

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 

 

 

 マシラ海賊団に引っ付いて小動物のように動き回るルーミア。目的の麦わらの一味を目にするも、特に何をするわけでもなく、手すりに腰かけてじーっと彼らを観察するかのように眺めるだけにとどまっていた。麦わらの一味もまた「何であの海賊団に女の子が?」と疑問に思いつつも、マシラ達に気付かれないようにこっそりとサルベージを続ける。

 

 流れに変化が起きたのは、海底に潜ったマシラ海賊団の船員達が何者かの手によって負傷し、激昂したマシラが原因を探るべく海底へと潜った後である。

 

 唐突に巨大な海亀が海上に浮上。大亀に食われた沈没船を見て船員が口の中に船長がいると判断、とっさにルーミアにお願いする。

 

 

「大亀が潜る前に殴って気絶させてください!」──と、

 

 

 これには甲板にいた麦わらの一味達は「あんな小さな女の子に何ができるのか?」と意見が一致。手すりを蹴って大亀へと跳んでいくルーミアを見てナミが慌てて「やめなさい!」と大声で張り上げるも、崩れ落ちる大亀を見て絶句。後に続く言葉が出ない。

 

 そうこうしているうちに麦わらの一味が沈没船から帰還。彼らの後を追ったマシラもゴーイング・メリー号に降り立ち、一触即発の空気に包まれる中、急に空が雲で覆われて暗くなり、次いで現れた巨人よりも巨大な複数の黒い人影を見て、麦わらの一味は船にマシラを乗せたままその場から逃走。

 

 

「慌てるな、マシラがそう簡単にやられるわけがない」

 

 

 脱兎の如く逃げていくゴーイング・メリー号。その後を追うとする船員達に制止をかけるのはいつの間にか船に戻ったルーミア。船員達もマシラの強さを思い出して動きを止めて聞き入っている。

 

 

「まずは船首(バルコ)ハンターとゆりかごの回収。その後にジャヤ島へ戻るぞー。サルベージを大人しく見学するような連中がマシラを海に蹴落とすようなことをするとは思えないし、一緒にジャヤ島に向かうだろーしなー、わはははー」

 

 

 船員達もそれで納得したのか「アイアイサー」と作業に取り掛かる。でも、念のために逃げた方角だけはきちんと覚えさせておく。

 

 

(──ようやく空島編。ゴロゴロの実がようやく手に入る……)

 

  

 作業を早めるため、未だ気絶している大亀へとルーミアは飛んでいく。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

●とりあえず、2話目。
 1,000文字、書くだけでも大変だー。


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3話 ジャヤ島

 

 

【麦わらの一味──ゴーイング・メリー号】

 

 

 大空を覆い尽くす程の巨大な暗雲の下、天にまで届きそうな巨大な黒い人影を見た麦わらの一味は船に部外者──マシラがいるにも関わらず、彼を乗せたまま必死の形相でその場から一目散に逃げ出した。

 

 それから無我夢中に船を進ませること少々。件の黒い人影が見えなくなるまで離れたことで、彼らは漸く一息を入れて落ち着きを取り戻す。

 

 そして、つい今しがた見た黒い人影を含めた一連の出来事について誰からとなく順番に口を開いていき、その時になって初めて自分達の船にマシラがいることに気付く。

 

 沈没船で怒り狂ったゴリラのように暴れてた姿を目の当たりしたこともあったのだろう、自分達の船で暴れたら堪らないと思ったのか、ルフィ、ゾロ、サンジの三人がマシラを船外へ蹴飛ばそうと動くも、次の瞬間「待ちなさい!」と怒り顔のナミが全力で振るった拳で頭を叩きのめされ、床に突っ伏した形で止められてしまう。

 

 唐突に自分達の仲間の筈の三人をはっ倒したナミを不思議そうに、きょとんとした表情で見ていたマシラ。ナミはそんな彼に「ねえ」と声を掛けた後に尋ねる。

 

 

「あなたと一緒に乗っていた女の子って何者なの?」

 

 

 

 

【マシラ海賊団──ビクトリー・ハンター号】

 

 

 マシラが麦わらの一味のナミから自身の正体を尋ねられているとは露知らず、ルーミアは気絶したままぷかぷかと海上に漂っている大亀の口の中にある船首(バルコ)ハンターとゆりかごの回収を終えた後、マシラを捜索しつつ船をジャヤ島へと向かわせていた。その航海中に突然、船内にある大型の電伝虫(ルーミア命名 チャッピー)が『プルルルル…』と鳴り出す。

 

 

『──こちら、ショウジョウ。なかなか取らないからハラハラしたぜ。……あ、あとマシラを回収したから、モックタウンとこに来てくれ……』

 

 

 電伝虫から聞こえてきたのは猿山連合軍の一つ。ショウジョウ海賊団の大園長(おおボス)ショウジョウ。ルーミアは受話器を左手に「アイアイサー」と敬礼しながら返事を返し……

 

 

(……ん? マシラを回収したのってショウジョウだっけ? それに何でモックタウン?)

 

 

 ──と疑問に思いながらも船員達に指示を出して一路ジャヤ島のモックタウンへと船を進ませる。

 

 

 

 

【ジャヤ島──嘲りの街 モックタウン】

 

 

 モックタウンの港に着いたルーミアが率いるマシラ海賊団。着いた早々、ショウジョウ海賊団の船とその側に停泊しているゴーイング・メリー号を発見し、甲板に猿山連合軍の二人と麦わらの一味がいるのを確認するが、その麦わらの一味の内、何故かルフィとゾロの二人だけは負傷していた。もっともルーミアは二人をそんな目に遭わせた人物に心当たりがある。何せ、このモックタウンには傍若無人を絵に描いたようなチンピラ『ハイエナのベラミー』が来ているのだから……

 

 

「ははーん、さてはお前らベラミーにやられたなー?」

 

 

 開口一番、腕を組みつつルーミアがこれ見よがしに、にんまりと得意気な顔でさらにベラミーの名前を強調して彼らに言った途端、鬼の形相をしたナミにキツく睨まれ、その凄みを利かせた顔に思わず「ぴぃっ」と涙目で小さな悲鳴を漏らしてしまう。それこそ彼らに言おうと思っていた「──人の夢は!!! 終わらねェ!!!!」を言いそびれる程に。

 

 そこからナミの怒りが収まるのを待ってからルーミアは事の経緯を聞かされる。彼らの話によると、ナミがマシラと一緒にいた少女──ルーミアの存在に興味を抱き、マシラはナミを中心に彼らから質問攻めに遭ったようだ。ルーミアが「空島」に行きたがっていることを皮切りに「ゴロゴロの実の能力者」「ジャヤ島」そこにあった文明と黄金郷、当時そこに住んでいたと云われている原住民シャンディアにノーランドの子孫等々……最後は聞かれてもいないのにべらべらと心底楽しそうに喋る始末。

 

 ルフィはその話を聞いて目を輝かせ、ルーミアと合流次第、猿山連合軍の本拠地へ行こうとしたが、

 

 

「彼を疑うわけじゃないけど、猿山連合軍の話をそのまま鵜呑みにするのは危険なのでは?」

 

 

 ……という意見がロビンから出てゾロも彼女に賛同。ならばジャヤ島にある街で情報収集をしよう、という話になり、そこにマシラが「どうせならショウジョウと合流しようぜ」と提案。ショウジョウがナワバリにしている海へと寄ってから港に移動。港に到着後、ルフィとゾロを護衛につけたナミの3人とロビン1人の二手に別れて街を散策。その途中でナミ達のグループが酒場でベラミーと遭遇し、その時に絡まれたらしい。

 

 ちなみにマシラとショウジョウは事前にモックタウンが海賊達が落とす金で成り立っている街で治安が悪いことと、何よりも「空島」の存在を信じていないことを教えていたようであるが……

 

 

「あそこまで笑われるとは思わないわよ!! 普通!!」

 

 

 よほど腹に据えかねるものがあったのか、「お陰で恥をかいたわ!!」バンバンと平手で船の手すりを叩きまくるナミ。

 

 

「こんな街、とっとと出ていくわよ!!」

 

「「 アイアイサー 」」

 

 

 怒るナミの号令の下、一同はジャヤ島の東、猿山連合軍の本拠地でもあるモンブラン・クリケットの自宅へと船を進ませる。

 

 

 

 

【ジャヤ島 東──猿山連合軍 本拠地】

 

 

「……そいつは災難だったな」

 

 

 猿山連合軍 最終園長(ラストボス) モンブラン・クリケット

 親しい人間からはオヤッサンと呼ばれている人物である。

 

 マシラ、ショウジョウ、ルーミアが連れてきたこともあって警戒心が薄れたのだろう、ぶっきらぼうだが彼は麦わらの一味を快く迎え入れた。

 

 ナミ達はそこで民謡「うそつきノーランド」のモデルとなった400年前の人物──モンブラン・ノーランドの航海日誌から猿山連合軍が何故この近辺の海でサルベージをしているのか、その理由を知ることとなる。同時に空島に関する記述を発見。さらに空島へ行く方法を教えてもらい、その手助けを猿山連合軍総出で行うこととなった。

 

 それから両者入り乱れての宴会が始まり、真夜中を過ぎた頃に猿山連合軍はサウスバードの存在を思い出し、このままでは空島には行けないぞ、とクリケットは麦わらの一味全員とルーミアをサウスバード捕獲のために森へと向かわせる。

 

 

 

 

「ウィ~~ッハッハァ~!!! やっと獲物を獲る時か!!!

 相手は自然(ロギア)系だぜ、お嬢! ウォーターセブンにいるラフィットとオーガーもこっちに呼び寄せた方がいいんじゃねェのか!?」

 

 

 覆面をした大男と馬に乗った如何にも病弱そうな男が二人。森の中、切り株の上でふんぞり返るルーミアの招集に応じてやって来た「宵闇ノ海賊団」のメンバーである。

 

 

「んー。相手がこちらの仲間になるならば戦う必要はないんだけどなー」

 

「神を名乗るような男が従うとは思わねェけどな、従わねェ時はどうするんだ? おい?」

 

 

 問われたルーミアは「その時は仕方がない。その時は……」と大げさに肩をすくめた後に屈託のない、それでいてどこか狂気を感じる笑みで言った。

 

 

 

 

──殺してでも奪い取る。

 

 

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

●勘のいい人なら分かっちゃうかなー。

●感想、返信が遅いのを了承して。

●物語は思いっきり、はしょるスタイルでいこうと思ふ。

●最後のが書きたかっただけ……

●基本ルーミアの一人称は通常時「私」
 感情が高ぶっている時「俺」
 笑い声「わははー」でいこうと思ふ。


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→ “ 空島 スカイピア ” 奪う者と奪われる者
4話 白い海と白い雲


 

 

【ジャヤ島 東──猿山連合軍 本拠地】

 

 

 ルーミアにとって「ゴロゴロの実」及び、その能力の入手は必ず達成しておきたい空島での案件の一つである。

 

 その最初の段階、突き上げる海流(ノックアップストリーム)で空島へ行く時に第三者から私怨等で邪魔されたら堪ったものではない。

 

 それ故にジャヤ島にいる間、同じ海賊団のメンバーであるバージェスとドクQには「街で人目に付くような派手な事はするな、特に爆弾」と、あらかじめ言い含め、自身にもなるべく目立つような行動は起こさないように心掛けていた。

 

 ……が、それでも親しい人物が理不尽な暴力によって負傷した姿を目の当たりにすると怒りが込み上げてくるようで、空高く立ち昇る炎のように夜の闇よりも濃い闇を体に纏わせて、ベニヤ板に描かれているベラミーのシンボルマークを静かに眺めていた。

 

 

「……今のお前が行くと無関係のやつまで巻き込んで街を壊滅しかねん。……ここで大人しくしていろ……」

 

 

 今にも飛び出さんばかりのルーミアに制止をかけたのは他ならぬモンブラン・クリケットだった。包帯を巻いた痛々しい体でマシラとショウジョウに指示を出してゴーイング・メリー号の修繕と強化に取り掛かる。

 

 クリケットに言われたことも一つの要因になったのだろう、ルーミアは体から放出していた闇を小さく抑え、猿山連合軍の作業を黙って見つめていた。

 

 

 

 

朝までには戻る

 

 

 今まで彼らのやり取りを静観していたルフィが突然そんな言葉を口にしたかと思えば、クリケットが止める間もなく街へと走っていく。遠ざかる彼の後ろ姿を見ながらルーミアはいつの間にかに側にいたナミに尋ねる。

 

 

「あいつ一人で大丈夫なのか?」

「ああ見えて強いから平気よ」

「いや、帰りに寄り道しないのかなーって……」

 

サンジ君、急いで後を追っかけて!!

任せてくださいナミさん!!!

 

 

 言うや否、土煙を激しく上空に巻き上げながら先を行くルフィ以上に全力疾走でルフィの後を追う。

 

 

 

 

 東の空が明るくなった頃、奪われた金塊が納められているであろう風呂敷を背負い、さらに大きな二本の角を持ったカブトムシ──ヘラクレスを誇らしげに掲げながらルフィが戻ってきた。その後ろにはルフィと同じように風呂敷を背負ったサンジもいるが、何故か見るからに疲労困憊した様子だった。

 

 

もう虫は見たくねぇ……

 

 

 それだけ言うと切り株のイスに深く腰掛け、項垂れた姿勢でじっと地面を見つめたまま動かなくなる。どうやらルフィの虫取りに無理矢理、付き合わされたようである。精神的にかなり消耗したらしくナミの「ご苦労様」の労いの言葉にもいまいち反応を示さない。

 

 

 

 

「たとえ何が起きようと!!!

 こいつらのために全力を尽くせ!!!」

 

「「 アイアイサー!!! 」」

 

 

 ゴーイング・メリー号の修繕と強化が終え、麦わらの一味とともに一緒の船にルーミア一行も乗り込み、出航の準備が整った頃、クリケットは大声で猿山連合軍にそう呼び掛け、彼らもまた応える。その後、ゴーイング・メリー号を含む大小3隻の船はジャヤ島を後にし、空島へ移動するために突き上げる海流(ノックアップストリーム)が発生すると思われる海へと向かっていく。

 

 

 

 

【海上──突き上げる海流(ノックアップストリーム) 発生 予測地点】

 

 

 波間に漂うこと数時間。その甲斐あってか、彼らの下に巨大な積乱雲の塊──積帝雲が夜を引き連れてやって来た。それに呼応したのか、海が荒れ始め、うねり、大きな渦を作り出す。……かと思えば、急におさまり、波が穏やかになる。

 

 

 突き上げる海流(ノックアップストリーム)の前兆だ。

 

 

 突如して巨大な水柱が立ち上がる。船すらも一口で呑み込む程の太さだ。空高く昇るその水柱はあっという間に天にある積帝雲の下部に突き刺さり、麦わらの一味とルーミア達を乗せたゴーイング・メリー号がその水柱に沿って上へ上へと昇っていき…… そのまま積帝雲の中に船ごと突っ込んだ。

 

 

 

 

 そして

 

 

 

 

【???】

 

 

 ……見渡す限り白い海と白い雲の世界。麦わらの一味とルーミアの一行を乗せた船はそこに辿り着いた。

 

 船が雲海へと突入、雲の中を突き進んでいる間、まともに呼吸ができず息を止めていた彼らはようやく息が吸えると肺に空気を送り込む。

 

 

「……猿山連合軍。連中のいる手前じゃあ、遠慮して聞けなかったが、そろそろ白状してもいいんじゃねェのか?」

 

 

 全員の息が整った頃、親指で刀の鍔を押し出し、いつでも刀が抜ける状態に構えるゾロ。彼が放つ剣呑な雰囲気にバージェスも「お? やる気か?」と前に出る。

 

 

「『俺たちは空島を知っています。そこまで案内します』

 ウソップの言葉じゃないがそこまで親切だと勘繰りたくもなる。ほいほい付いていって「ワナでした~」じゃあシャレにならねェだろ? 得体の知れない人間はここできっちり敵か味方か、はっきりさせた上で目的を吐かせるべきだ。この船には他にもB・W(バロック・ワークス)の元副社長もいることだしな」

 

 

 ちらっとロビンを一瞥し、ルーミア達三人と対峙するように向き合うゾロ。彼以外のメンバーは──事の成り行きを静かに見守る者、場をどうにかしようと双方を宥める者、ゾロを非難する者、訳が分からずオロオロする者──と、様々な反応を見せる中、彼らを前にしたルーミア達は……

 

 

「ウィ~~ッハッハッハ!!! 違いねェなァ!!! 俺だったら海に落とすぜ、こんな怪しい連中は!!

 どうする、お嬢? 別にコイツらがいなくても目的は果たせるんだろ?」

 

……だが、そうなるとこちらも只では済まなくなる。麦わらの一味とシャンディアの戦士をエネルにぶつけ合わせるべきだろう。最終的な判断は船長に任せるが……

 

「わははー、ワイパーが使い物になるかどうか試すって言ってたからなー。あいつの邪魔になると不機嫌になるからここで降りるぞー。それに説明するのがすこぶる面倒だ」

 

 

 ルーミアの「降りる」の言葉に訝しがる麦わらの一味。彼らの目の前でドクQからリンゴを受け取ったバージェスがリンゴを甲板に叩きつけると煙幕が発生、船が灰色の煙に覆われてしまう。やがて、煙幕が収まった頃にはルーミア達の姿は甲板のどこにもなく……

 

 

「ルフィ! アイツら小舟で! しかも速ぇ!! あと何か牛が四角く雲を走ってこっちに来るから大変だ~~~!!!」

 

 

 双眼鏡を覗いていたチョッパーが指差す方向には誰も漕いでいないのに雲の上を独りでに爆走する小舟。それに乗ったルーミア達の、船から遠ざかっていく後ろ姿と、

 

 

「誰か来る!!! 雲の上を走ってくるぞ!!!」

 

 

 腰みのに四角い仮面という未開の原住民のような出で立ちの男が一人。巨大な筒状の武器──大砲らしき物と盾を手に文字通り雲の上を走ってゴーイング・メリー号に向かってくる姿をサンジが捉えた。

 

 

「ルーミアが言っていたゴムゴムの実の能力者はいるか?」

 

 

 白い雲の海の表面を蹴って船の手すりに器用に着地したかと思えばそんなことを尋ねてくる。尋ねられて半ば反射的にルフィが「俺だけど?」と答えると件の男は言った。

 

 

「やつらの試練を受ける前に俺がお前達を試す」

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

●「なろう」で毎日更新してる奴は化け物か? ……と、思ふ。

●おかしいとこあったら誤字報告お願いします。

●ここから暴走、迷走するかも……


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5話 隠れ家の小さな主

 

 

 かつて地上ではジャヤ島と呼ばれていた神の島(アッパーヤード)では、時にエネルの部下である「神隊」が船を手に入れてその地から逃げ出すことがある。

 

 シャンディアの戦士達はそんな彼らの事情等お構い無しに逃げる彼らを排除しようとする。元々スカイピアの神であり彼らの上司でもあった「空の騎士」を自称するガン・フォールはそんな元部下達を他の空島へ無事に逃がしてやるために傭兵稼業をやっていた。

 

 時折、麦わらの一味のように空島とは関係のない地上の人間──青海人をシャンディアの戦士達が攻撃するのは彼らを「神隊」と間違えるからだ。

 

 

 そんなことなど露知らずに白海を航海する一隻の無名の船。無情にもシャンディアの戦士達と遭遇。ワイパーの持つバズーカで船体に穴を開けられ、火の手が上がる。さらに船員達のほとんどがワイパーとの戦闘で負傷、動けるのはごく少数……という、まさに四面楚歌の状態にその船と船員達は陥っていた。

 

 

「近くの島雲まで引っ張ってやろーかー?」  

 

 

 炎上しながら沈むだけの船に現れたのは両手を横に広げて宙に浮遊する少女。彼らは藁にも縋る思いで彼女にお願いした。

 

 島雲まで移動した所で彼らはスカイピアの現状をルーミアから聞かされた。自然(ロギア)系ゴロゴロの実の能力者であるエネルの恐怖政治。青海人の末路。唯一の出口もエネルが見張っている状態。おまけに自分達の船は火事を消し止めるためにルーミアが闇で開けた穴で船体が穴だらけになっていて使い物にならない始末。そんな状況の彼らには空を飛べるルーミアだけが唯一の希望であり頼りだった。そんな彼らにルーミアは尋ねた。

 

 

「──今後、ここを通る船に警告を促してくれるなら物資とか持ってくるけど、どうする?」

 

 

 明日を生き延びるのも危うい彼らには断る理由がなかった。

 

 

 幸い彼らにはお金があったのでルーミアはそのお金で入国証明書を入手して普通に入国。ちなみに移動する時は小舟を使用して、あたかも能力者ではないように誤魔化していた。

 

 エンジェル島に到着後。住人に好奇の目で見られていたが何食わぬ顔でスカイピアを観光。繁華街「ラブリー通り」で買い物を済ませ、ついでに空島特有の生き物である雲ギツネを捕獲。

 

 帰りは人の気配がないのを確認してから雲ギツネを小脇に抱えつつ巨大な風呂敷を背負い、さらに片手で小舟を引きずりながらモグラのように闇で島雲を削って進みながら彼らの下に戻った。

 

 

 

 

 その後ルーミアはシャンディアと話をつけるために上層の白々海に移動。雲隠れの村を捜索している時にワイパー達と出くわした。得体の知れない人間を集落に近付けさせたくないという思いもあるだろうが好戦的といっても過言ではないワイパーが先頭を切っている部隊、戦闘へと流れるのは自然といえよう。

 

 

 もっとも

 

 

 姿形こそ少女に変わったものの、黒ひげことマーシャル・D・ティーチは四皇の一人「白ひげ海賊団」に20年以上も在籍し、その間に赤髪のシャンクスの顔面に傷を負わせ、さらに自然(ロギア)系の悪魔の実を食べた人物。そんな経歴を持つ者が弱い筈もなく。

 

 

「──共にエネルを倒さないか?」

 

 

 傷つき、倒れ伏せたシャンディアの戦士達にルーミアは口と目を弧に描いてそう声をかけた。

 

   

 

 

 それからルーミアは空島と地上を行き交うことを繰り返し、最後に麦わらの一味を連れて来た。

 

 

【上空7,000㍍──白海 とある隠れ家】

 

 

 上空10,000㍍にある白々海。そこへと通じる巨大な門の周辺には人が乗っても沈まない雲──島雲が無数、存在している。その内の一つに内部をくり貫いてドーム状に加工した物があり、そこには幾つもの大小様々な形のテントが乱雑に張られていて人々が生活していた。その中でも一際大きなテントがある。ルーミアが空島で活動する際に拠点にしている場所だ。麦わらの一味と別れた後、彼女はここにやって来たのである。

 

 

「ルーミア様! 例のビルカ捜索の件ですが、全く忌々しいことにエネルの奴めは徹底的に! 念入りに! 完全無欠に! 破壊したようでして影も形も見当たりません!! 人がいた痕跡すらも皆無です!!」

 

「……ルーミアちゃん。気球についてだけど、……実験的に作った小さなものなら問題ないの。でもそれ以上、人が乗れるような大きな物となると、どうしても材料が足りなくなるの。布とか、布とか、布とか……あ、あと糸とか……」

 

「ルーミア嬢、(ダイヤル)と雲の加工だが、さすがに本職のようにはいかねぇぜ。もう少し時間が必要だ。俺としては上にいる専門の技術者から習うべきだと思うぜ」

 

 

 そのテントの中で島雲を切って作ったふかふかのイスに身を半ばうずめて座っているルーミアは数人の男女から上記の報告を受けていた。ついでに空島で育ったカボチャにストローを突き刺して中身を啜りながら雲ギツネを膝に乗せて撫でくり回している。

 

 

「ウィハハハ! お嬢、雲隠れの村からシャンディアだかシャンドラだか知らねェが客が来たぜ。メガネと帽子だ!」

 

「ブラハムだ。そっちのメガネはカマキリ。食料とか持ってきたからブツと交換してくれ。ワイパーが短気を起こす前に頼む」

 

 

 そこに二人のシャンディアの戦士を連れたバージェスが加わる。ルーミアの命令の下、二人の前に箱詰めにされた物資──地上の武器や弾薬、鉄等が山積みにされていく。

 

 

「喜べ者共、朗報だ」

 

 

 積まれていく木箱を眺めていたルーミア。雲ギツネを小脇に抱えたかと思えば突然すくっとイスから立ち上がり、黒塗りの木製のテーブルの上に懐から取り出した一枚の手配書を置く。それはルフィが初めて賞金首になった時の3,000万ベリーのものだ。

 

 

モンキー・D・ルフィがここに来た!!

 

 

 テント内に激震が走る。誰もが動きを止めて硬直し、彼女の次の言葉を待つ。

 

 

待ちに待った神殺しの時間だ!!!

 

 

 ルーミアの呑気な笑い声「わははー」がテント内に響き、次いでバージェスの大声がそれに合わさる。テント内にいた数人の男女は戦々恐々し、シャンディアの戦士達は感情の籠らない冷めた目で二人を見つめていた。

 

     




( ´・ω・)にゃもし。

●ルーミアは38歳。

●白ひげ海賊団のとこに20年以上もいたら覇気の一つや二つ習得するだろ、というのが私の考えよ。

●思ったよりも話が進まない……


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6話 それぞれの隠れ家

 

 

【白海──ルーミアの隠れ家】

 

 

「麦わらの一味が天国の門を通りました!! 入国料を払った形跡はありません!! 不法入国です!!!!」

 

 

 大慌てでテントに入ってきた男が口にした不法入国という言葉にその場はしんと静まり返ったが、やがて降って湧いたかのようにバカ騒ぎを始める。

 

 

 エネルが空島スカイピアの唯一神になって以降、犯罪者は神の島(アッパーヤード)にある裁きの地に誘導するよう国民に義務付けられた。もっとも、入国料を払って正式に入国しても犯罪者に仕立てられて、やはり同じように裁きの地に送られるが……

 

 

 ……とはいえ、困難ではあるがスカイピアから逃げ出すことは不可能ではない。ルーミアは麦わらの一味が逃亡する可能性を考えてスカイピアの出入口にあたる天国の門付近と青海への出口である雲の果て(クラウド・エンド)に人を配置して監視させていた。場合によっては船員を人質にするために誘拐、脅迫の類い、あるいは交渉することも考えていた。

 

 

「エネルが、あいつが一緒に乗る船員の選別──サバイバルを始めたら乗り込むぞ。神の島(アッパーヤード)に……」

 

 

 ルーミアが言ったエネルの名前に誰かが喉を鳴らす。この隠れ家にはエネルが放った雷を目の当たりにした者は少なからずいる。その中には本当に倒せるのか懐疑心を抱く者も存在している。

 

 

「だがその前に宴だ!! 騒げ!! 者共!!!! 

 エネルがいなくなりゃあ、あのでっかい蛇の腹にある黄金を回収できる! エネルを倒す必要はない!! 

 今夜はそのための前夜祭だ!!!! わはははー!」

 

 

 待っていましたと言わんばかりに大いに大声ではしゃぎまくり、夜が深まっていく。

 

 

 彼女にとってゴロゴロの実こそが最優先事項であり、それ以外は二の次である。

 

 神の島(アッパーヤード)に住まう空の主の腹の中にある金塊は目的を隠すための良い隠れ蓑になると考えていた。何しろエネルを含めて彼に仕える神官達は皆、心網(マントラ)という相手の意思を読み取る能力を有しているのだから。

 

 

「手に入ったら麦わらの一味と相談して山分けしとけ、でないと暴れかねないからなー、わはははー」

 

 

 「一応、あれでも海賊らしいからなー」と言いつつ、飲み食いを始める。

 

 

 

 

【白々海──雲隠れの村】

 

 

 白々海に浮かぶ巨大な大地(ヴァース)──神の島(アッパーヤード)

 

 彼の島を挟んでエンジェル島の反対側に位置する島雲の内部にはジャヤ島の先住民であるシャンディアの末裔が生活している。

 

 約400年前、彼らは突き上げる海流(ノックアップストリーム)でジャヤ島の一部ごと空島に運ばれた後、空の者に武力で島から追い出され、そして奪われた故郷を取り戻すために空の者と戦いを繰り広げていた。

 

 それがガン・フォールの代になってから談合の場が幾度となく設けられるようになったが、その話し合いは突然やって来たエネルにより解決することなく終わりを告げる。

 

 それからエネルはスカイピアの新たな神になり、シャンディアの戦士はワイパーを筆頭にゲリラ活動を開始。そんな折に彼らの集落付近にルーミアがやって来て……

 

 

 シャンディアの戦士を一人残らず叩きのめした。

 

 

 その後、彼女は彼らに共闘を要求し、ワイパー達は条件付きで呑む。

 

 

──相手がこちらを利用するならば、こちらも相手を利用するまでのこと……

 

 

 ワイパーを始めとしたシャンディアの戦士達はルーミアに対して武器や武具、空島では手に入りにくい鉄等を要求し、ルーミアはそれぐらいならと引き受けた。

 

 本当ならば自分達の力だけで故郷を取り戻したかっただろう彼らだが、ルーミアとの戦闘で力の差を思い知らされ、彼女を敵に回すぐらいなら……と、妥協せざるを得なかった。それに相手の真意を探るという意味合いもある。

 

 彼女が目的を達成した後、そのまま空島を去るなら良し。そうでない場合、例えばエネルに成り代わって新たな神になるつもりならば、エネルと殺し合って生き残った方を襲えばいい。エネルとルーミア。双方が戦えば、どちらも無事では済まないことだろう。その時ならば勝ち目はある。……とワイパーを中心に一部の人達は考えた。

 

 

 下の白海でルフィ達と戦った後、雲隠れの村に戻ったワイパー。端から見ても不機嫌な表情で座りながら武器の手入れをしている彼の下に朗報が届く。

 

 

──神官の一人、サトリの声が消えた。おそらく青海人に倒された。……と、

 

    




( ´・ω・)にゃもし。

●ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

●書いては消して、書いては消して……を繰り返したら、気がつけば金曜日。短い小説がさらに短くなった。


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7話 方舟マクシム

 

 

 エネルとその配下である神官達が習得している心網(マントラ)

 

 彼らはその心網(マントラ)の「人間が体から発する声を聞く力」を相手の居場所を探るレーダーのようなものに暫し用いる。

 

 特にエネルの心網(マントラ)は空島スカイピア全土の隅々にまで行き渡ると云われており、その上ゴロゴロの実で得た雷の体で電波を読み取ることで人々の会話を聞くことも可能である。

 

 エネルが神の島(アッパーヤード)にある社にいながら法を犯した犯罪者に対して正確に裁きの雷を落とすことができるのはそのためである。

 

 それ故、ルーミアは事を起こすまではエネルがいる白々海には可能な限り出向かないようにしていた。いくら体が前世と比べて遥かに頑丈になったとはいえ生身で雷は受けたくないからだ。

 

 

 

 

【白海──島雲内部】

 

 

 焦った表情をした男女数名で構成された一団がテント内に突入、人だかりを押し退けながらテントの奥にいるルーミアの下へ一目散に駆け寄る。

 

 麦わらの一味が白海にある天国の門をくぐったと同時に情報収集のためにルーミアが白々海のあちこちに送った者達だ。

 

 

「麦わらの船が超特急エビに運ばれました! 乗っていたのは『海賊狩りのゾロ』『ニコ・ロビン』『タヌキ』に『航海士の姉ちゃん』の4名です!!」

 

「エンジェル島で落雷です! エネルの裁きです!! 寸での所で『空の騎士』が娘を助けました!!」

 

「船長『麦わらのルフィ』と船員二人『ぐるまゆ』『長鼻』の計3人がボートで神の島(アッパーヤード)に行きました!! 神官達の試練です!!」

 

「武装したシャンディアの戦士の一団が雲隠れの村から出陣! 神の島(アッパーヤード)で爆発を確認! 神官達と交戦した模様です! その後、北東の離島に撤退したのを目撃したとのこと!!」

 

 

 テント内でバカ騒ぎして飲み食いしている一同に交じっているルーミアの下に次々とここより上層にある白々海で起きた出来事の報告が次々と寄せられる。

 

 そして、シャンディアの戦士達が撤退した報告を最後に漸く報せが終わる。

 

 

「……シャンディアの戦士達は北東の離島で待機。麦わらの一味とガン・フォールは神の島(アッパーヤード)のどこかで野営。ってとこかなー? わはははー」

 

「ウィハハハッ! 明日は神官神兵総出でお出迎えだったな! お嬢、俺がいくらか減らしておこうか? 体が鈍って仕方がねェ!! ウィハハハッ!!」

 

……船長の持つ()()は頼りにしない方がいいだろう。()()というイレギュラーがここにいるせいで船長の知る()()がすでに変わっていても、おかしくはない……

 

「どっちみちエネルがいなくなれば騒動は落ち着くんだ。お前ら、麦わらの一味がヘマしないようにサポートしてやれ」

 

「「 アイアイサー!!!! 」」

 

 

 ルーミアの号令とともにテント内がさらに騒がしくなるが、時間が経つにつれて夜が更けていくと、彼らの喧しい声も少なく小さくなっていき、最後には静けさに包まれた。

 

 

 

 

【白々海──神の島(アッパーヤード)

 

 

 夜が明けて翌日。

 

 神の島──アッパーヤードを舞台に空の者と青海人が入り乱れての生き残りを賭けたサバイバルが静かに始まり、島の各所で激しい戦いが繰り広げられた。

 

 神官の一人であるシュラを皮切りに脱落者が増えていき、時間の経過とともに同じ数だけの負傷者が増えていく。

 

 やがてサバイバルが終盤に差し掛かった頃なのだろう、エネルが放ったと思われる雷の光を島の外から目にするようになった。

 

 一方でエンジェル島では島の住人である少女コニスが、エネルがこれからやろうとしている「スカイピアの消滅」を伝えたのか、スカイピアの法の番人であるホワイトベレー部隊の誘導の下に続々と荷物を持った人々が船に乗って島から出ていく。

 

 誘導している人間の中には青海人──ルーミアの隠れ家にいる人達も交じっていて住人達を急き立てており、シャンディアがいる雲隠れの村にも同じように青海人の一団がいて集落の人間達に避難を要請している。

 

 その間にも神の島(アッパーヤード)の地下から地面を突き破って船体の上部を出した「方舟マクシム」から黒い雲が立ち昇っていき、白々海の白い空を黒に塗り替えていく。

 

 

 

 

『──お嬢。エネルの野郎、俺達を倒した後「航海士の姉ちゃん」連れてどこかへ行きやがったみたいだ!! たぶん「方舟」だ!! 他のやつらはここにいるぜ!!』

 

──船長。……治療したぐるまゆ長鼻なんだが、方舟へ行くと言って出ていったんだが……

 

「わははは、重傷の身でよくやるなー。まあ、いいや。『麦わらの船』と『麦わらの一味』それに負傷者は他のやつらに任せて、お前ら二人は電伝虫をそっちに置いてこっちに来い。そろそろ()()()()()()()準備を始めるぞ」

 

『『 ──アイアイサー…… 』』

 

 

 神の島(アッパーヤード)を一望できる小さな島雲の一つに大小の木箱を机とイスの代わりにしているルーミア。彼女はそこでスカイピアで起こっている状況を電伝虫を通して逐一に聞いていた。

 

 やがて神の島(アッパーヤード)の地下から「方舟マクシム」が完全に浮上、その全貌が人々の目につくとほぼ同時に白々海の空を覆い尽くした雷雲から無差別に雷が落ち始める。

 

 さらに今も尚、逃げ惑う人でごった返しているエンジェル島の真上の雷雲が島ほどの巨大な球状になっていき、そのまま島に落下、直後に黒い雷雲が弾けて強い閃光を放つ。

 

 そして光が収まり、煙が風で煽られて消えた後、そこに現れたのは…… 海雲ごとぽっかりと空いた底が見えない暗く黒い大きな穴だけであり、島は跡形もなく消滅していた。

 

 

「……うん、悪くないな」

 

 

 破壊を撒き散らし続ける雷とそれを生み出した「方舟マクシム」を見てルーミアは口を弧にしてそう呟き、

 

 

「分類上、あれが兵器──武器のカテゴリーに一応入るとしたら、動物(ゾオン)系の()()()()()()()()()、……B・W(バロックワークス)に出てきた犬の銃、スパンダム長官が持っている象の剣みたいになるのかなー?」

 

 

 暗い笑みを浮かべながら、その空飛ぶ舟を見続けていた。

 

  




( ´・ω・)にゃもし。

●勘のいい人なら分かってしまうんじゃないかな、と思っている今日この頃。ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

●ここ最近、金曜日になってから書き上げる日々。「なろう」で毎日更新してる人スゴすぎ。
 


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8話 神の左手、悪魔の右手

 

 

【白々海】

 

 

 雷雲で覆われたスカイピアの上空に浮かぶ「方舟マクシム」。舟から吐き出された黒い煙が雷雲となってスカイピアの各地に雷を落としては空島を破壊していく。

 

 その空飛ぶ舟の甲板ではスカイピアの命運を分ける──(ゴッド)・エネルと麦わらの一味達による──激闘が繰り広げられていた。

 

 最後はルフィが身の丈ほどの黄金の塊が付いた右手でエネルを黄金の鐘に叩きつけ、気絶したエネルは「方舟マクシム」とともに海雲へ頭から落下、そのまま浮上することなく沈んでいった。

 

 こうしてスカイピアでの一連の騒動は()()()()()()()

 

 

 

 

【白海】

 

 

 白々海の海雲へ消えていったエネルと方舟マクシム。その落ちた先は白海にある島雲の一つだった。

 

 そこで気絶から回復したエネルはすぐさま心網(マントラ)を展開させ、周囲を探りつつ警戒態勢を取り、次に舟が破損していないか船内をくまなく調べた。

 

 そして飛行するのに問題がないと確認するや否や舟を再起動させ、いざこれから飛び立とう──という時に突然エネルの心網(マントラ)が一つの気配を捉える。それもすぐ近く、舟の甲板からだ。

 

 何の前触れもなく現れたその気配に不思議に思いながらも警戒を強めつつ急いでその場に駆け付けるエネル。そこで彼が見たものは……舟の手すりに腰掛けた金髪の少女──ルーミアであった。

 

 サバイバル中、エネルはスカイピア全土に心網(マントラ)を張り巡らせ、さらに悪魔の実の能力を応用して人々の会話を盗み聞きしていた。当然、その中にはルーミアの指示で動いていた青海人も含まれている。

 

 ……とはいえ、それで「聞く」ことはできても「見る」ことまではできない。それゆえに試練を受けさせる入国者の姿を天国の門で映像貝(ビジョンダイアル)を使って写真を撮っていた。

 

 そのこともあってか、エネルは少女の姿に見覚えがあった。そして思い出す。一人でエンジェル島にやって来て到底一人では食いきれないであろうの量の買い物をした後、シャンディアの集落に赴いて戦士達全員を一人でなおかつ体術のみで倒した少女のことを……

 

 その時は大の大人でも到達が困難な空島に少女が一人でやって来たということもあってエネルも興味を引いていたが、シャンディアの事件以降は姿を見せることがなく、時が経つにつれて関心が薄れていった。

 

 

「ヤハハハハハ! 青海人に指示を出していたのがキサマのような小娘だとはな! ゴム人間をこの空島に手引きしたのもキサマの仕業だな?」

 

 

 能力を使って盗聴した青海人の会話と過去に見た映像貝(ビジョンダイアル)から目の前の少女が青海人を束ねる存在である「ルーミア」だと判断、黄金の棍棒の先端を三又の矛に変えて切っ先を彼女に向ける。

 

 

 

 

 時折、シャンディアの戦士達が生活物資を詰めた荷物を持って白海に下りては、空島では手に入りにくい青海の物とおぼしき品が入った木箱を持って戻ってくることがある。

 

 部下からの報告にもあったが、エネルは「取るに足らぬ」と捨て置き、まともに取り合わなかった。

 

 

「シャンディアの戦士がいくら青海の武器防具を手に入れたところで、雷の体を傷付けることも、雷を防ぐことなどもできはしない。ヤハハハハハ!」……と得意気に語ったのだ。

 

 

 もっともその認識は今回の出来事ではからずも変えざるを得なかったが……

 

 それゆえにエネルは一連の出来事の裏で暗躍していた人物がわざわざ目の前に現れた……ということは「海楼石」で能力を封じる。あるいは「青海のゴム人間」のように自分の体を触れるうえに傷付けるような手段を持っているのだろう、と考える。

 

 その一方でエネルは彼女が何を目的に近づいたのか気になったのか、「目的は何だ?」と尋ねると、ルーミアは左手で懐から切れ味の鋭そうな大振りのナイフを取り出し逆手で構えた後に答える。

 

 

「んー、略奪かなー?」

 

「ヤハハハハハハ! 神を相手にか? 巫山戯(ふざけ)たことを抜かす不届き者めが。黄金なら上で探せばよかろう。巨大な黄金の鐘があったはずだぞ?」

 

「盗みをしない盗人がいるとでも? でも、お前が相手でも『罰当たりな行為』になるのかなー? もしそうなるなら『天罰』とかどうなると思う?」

 

「いろいろと喋る娘だな。試せばよかろう。もっとも私の場合だと文字通り天から罰が下るがな」

 

 

 エネルの身体中を紫電が駆け巡り、両手で持った黄金の三又の矛は熱で赤みを帯びる。ルーミアもまた手すりから降りると体から闇を発生させ纏わせ、足下からも闇を生み出しては徐々に広げて侵蝕させていく。

 

 

 

 

神の島(アッパーヤード)

 

 

 ルフィがエネルを倒した後、神の島(アッパーヤード)のシャンドラの遺跡がある場所で宴が催された。そこでは青海人、エンジェル島の住人、シャンディア、分け隔てることなく一緒になって炎を中心にして騒いでいた。

 

 

 そこへ突然、悲報が舞い込む。数人の男が必死の形相で伝えに来たのだ。

 

 

(ゴッド)・エネルの舟がやって来た!」──と、

 

 

 慌てて駆け付ける麦わらの一味。彼らが島の淵まで足を運ばせるとそこには伝えに来た男達の言う通りに「方舟マクシム」が海雲の上を漂いながらこちらに向かって来るのが見えた。

 

 

「エネルが言ってたわ。あの舟は『雷』を動力にしているって……」

 

 

 ナミの言葉に麦わらの一味達は察知して苦い顔を作り、遅れてやって来たシャンディアの戦士やスカイピアの神兵、神隊も空飛ぶ舟を見て絶句する。

 

 そんな悲壮感が漂う空気の中、ただ一人、双眼鏡を覗いて見ていたゾロだけは不思議そうに尋ねる。

 

 

「あの舟が『雷』で動くんなら、何で『エネル』じゃなくて『ルーミア』が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 近づいてくる「方舟マクシム」。その舟の甲板にはエネルの姿はどこにもなく、代わりにあるのは…… バージェスとドクQの大男二人と、二人に挟まれるような立ち位置に立つ、右手に闇を纏わせ、左手からは電気を迸らせるルーミアの姿だった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

●ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
 ようやっとゴロゴロの実を入手。待たせてゴメン。

●誤字脱字、おかしな表現あれば報告お願いします。

●毎度、金曜日に書き上げてます。
 執筆速度を上げたい。社会人ツラい。

闇水(くろうず)→グサッ じゃあ、あんまりなのでカットです。時間もなかったので……

●原作でも何で悪魔の実の能力を二つ手に入れても無事なのか分からないのでそこら辺は不明のまま話を進ませます。


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9話 大きなヘビ

 

 

 真夜中の神の島(アッパーヤード)にて──

 

 島の淵にほど近い開けた場所に、麦わらの一味を含む大勢の見物人が見ている目の前で「方舟マクシム」が着陸した。

 

 それから程なくして、愛馬に乗っているドクQごと馬を左肩に担ぎ上げ、右腕でルーミアを小脇に抱えた格好のバージェスが舟の甲板から飛び降り、ルフィ達の前に姿を現す。

 

 彼ら三人が現れたことで集まっていた人々の間にどよめきが起こるが、当の本人達は一瞥するだけでさして気にも留めず、人だかりの先頭にいるルフィ達を見つけると彼らに声をかける。

 

  

運がいいな、お前ら。……自然(ロギア)系を相手に一人も欠けないなんてな……

 

「ウィ~~~ハッハッハッハ!! お嬢の知識があるとはいえ、正直、半信半疑だったがな!」

 

「わははははー。お前達のおかげでエネルから「舟」と「能力」を手に入れた。改めて礼を言おう」

 

 

 バージェスの手で地面にそっと下ろされるルーミア。彼女はスカートの両端を指で摘まんで、スカートを軽く持ち上げ、ルフィ達に会釈してみせる。

 

 

「それでエネルはどうなった? それに何でお前(ルーミア)がエネルの「舟」と「能力」を持っていやがる?」

 

 

 不躾にルーミアに尋ねるゾロ。彼と同じことを思っていたのか他の面子も頷き、あるいは似たような質問をするが……

 

 

説明するのが面倒だから明日で

 

「「 おいっ!!!! 」」

 

 

 答えになっていない返答を返すと、さっさとドクQとバージェスの二人を連れて神の島(アッパーヤード)の奥、遺跡がある場所へと向かってしまう。

 

 

「──『実』の能力者が死ぬと世界のどこかにその能力を秘めた『悪魔の実』が復活する。──そのことから、エネルが死んで復活した『ゴロゴロの実』を彼女(ルーミア)が口にした。……と考えていいんじゃないかしら?」

 

 

 納得しかねる面々に意見を述べるのはニコ・ロビン。

 

 

「……もっとも何で彼女が『悪魔の実』を二つ食べても平気なのか、どうやってエネルを倒して『ゴロゴロの実』を手に入れたのかは分からないけど……」

 

 

 そのことを人に見られないためにエネルが空島から離れるのを待っていたのでは? ……と憶測を立てるロビンにワイパーは「なんだっていい」と口を挟み、

 

 

「エネルは死んだ。それだけ分かれば十分だ」

 

 

 死体こそ無いものの、エネルの死を判断できる材料がある。その場にいた人達は大いに戸惑い困惑し、あちこちで話し合う姿が見られる。

 

 

「ほんじゃあ、宴に戻っても問題ないんだよな?」

 

 

 その時、今まで黙ってたルフィが突然そんなことを宣う。彼の発言に一同あきれつつも同じ麦わらの一味の乗組員が彼を窘める。

 

 

「ここであれこれ考えたら問題が解決するのか? だったら戻って宴の続きをした方が俺はいい。ルーミアがエネルを倒したなら、もうエネルについて悩む必要はないだろ?」

 

 

 それだけ言うと元来た道へと引き返していき、ついでゾロも「違いねぇ。こっちは酒を飲み直すとするか……」とルフィの後を追う。残った麦わらの一味のメンバーも戻っていく。

 

 

「ワイパー、いろいろと思うところがあるだろうが、とりあえず皆に「エネルは死んだ」って伝えた方がいいだろう」

 

「……ああ、そうだな」

 

 

 同じシャンディアの戦士であるカマキリの提案にワイパーは賛同し、遺跡のある広場へ、エネルの死を伝えるために森の奥へと入っていく。

 

 そしてエネルの死を伝えた時に沸いた歓声を見て、彼らは複雑な表情をしたという。

 

 だがそう思ったのも束の間、数刻前の「方舟マクシム」の出来事なんぞ忘れたかのように彼らは宴会の場へ自ら入っていって大騒ぎをする。

 

 

 

 

 連日に続く国を上げた喜びの宴もいつの間にか終わりを迎え、誰もが寝静まった頃、麦わらの一味がこそこそと動き始める。空の主の体内にある黄金を回収するためだ。

 

 

「こうして見てると普通の女の子にしか見えないわね」

 

 

 移動する傍ら、近くを通る際に見たルーミアの寝顔を見てナミがそう漏らす。彼女は今、雲キツネを両腕で抱きつつすぴすぴと小さな寝息を立てながら寝入っていた。その近くには豪快ないびきをかきながら大の字で寝ているバージェスと「……はぁ、はぁ」と苦しそうなドクQの姿もある。

 

 

「それよりもコイツらが起きると厄介だ。早く行ってくれ、俺は連中の気を引く」

 

 

 ウソップが仲間を急かし、ウソップとロビンを除くメンバーが巨大なヘビの下へと向かい、そこで彼らは遭遇した。ルーミアの指示で来ていたであろう人間達の一団と、

 

 

「「 あ、どーも 」」

 

 

 予想外の先客に思わず言葉を交わし、一礼をする麦わらの一味。しかし、すぐさま気を取り直して先客達の格好を観察すると、彼らが背負っている袋やリュックには黄金が詰まれているのが分かる。

 

 

「「 あ────────っ!!!! 」」

 

 

 黄金が入っているのが分かった瞬間、大声を上げる麦わらの一味達。男達は叫ぶ彼らに慌てふためき、静かにさせようと宥めさせるが、時すでに遅し、ヘビが起き上がってしまう。

 

 

「「 …………………………っっっっ!!!? 」」

 

 

 寝惚け眼で起き上がったヘビに声にならない悲鳴を上げる両者。特にヘビが暴れまわる姿を知っている者は戦々恐々で事の成り行きを見守っている。

 

 ……が、ヘビは暴れるような素振りは一切見せず、大きなあくびを一つした後、そのまま横になって再び深い眠りに入った。

 

 しばらくヘビを観察するも起きる気配がないことに安心したのか一人の男がルフィ達に話しかける。

 

 

「まずは黄金の回収、分配はその後で、ヘビが暴れて困るのはお互い様だろ?」

 

 

 代表格の人間らしき男がしている口の前に人差し指を立てる仕草で押し黙るルフィ達。

 

 

「積もる話は後だ。おたくらだって手ぶらで地上には戻りたくないだろ?」

 

 

 こうして黄金の回収は静かに共同で行われた。

 

 

 

 




( ´・ω・)にゃもし。


■毎度、金曜日に追い込み執筆してます。
 ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

■誤字脱字おかしな表現ございましたら報告をお願いします。

■執筆速度、上げたい。
 「なろう」で毎日更新してる人達って、いつ執筆してるんだろう……


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10話 試す

  

 

 空島スカイピアをエネルから解放してくれた礼として折れた黄金の柱に布を巻いて大勢の男達が担いで森の中を遺跡のある場所にいる麦わらの一味の下へと運んでいる。

 

 

ウィ~~~ッハッハッハァ~~~!!!

 

 

 その道中、笑い声とともに彼らの行く手を遮るように木の上から大男の黒い影が降ってきた。

 

 

「こいつはスゲぇな!!! これが一本あれば当分、金に困らねェぜ!!!」

 

 

 突如、降ってきた大男の正体はバージェス。恩人である青海人の一人の出現に彼らは思わず足を止め、バージェスの名を叫びながら驚く。

 

 

「そいつはここに置いていった方がいいぜ!!! この先でうちのお嬢が麦わらの一味と話し合いをしてる。結果次第じゃあ、戦場になるかもしれねぇからなァ!!!」

 

 

 突然そんなことを言われて困ったのは黄金の柱を運んでいる空島の住人達。麦わらの一味とルーミア。同じ青海人なのに何故? ……という疑問を思い浮かべる彼らにニコ・ロビンはお願いをする。

 

 

「従った方が話が進みそうね。悪いけどこれをここに置いてくれる? 私もあのお嬢ちゃんに尋ねたいことがあるわ」

 

「……ニコ・ロビンか、ついてきな。うちのお嬢は()()()に用がある。詳しいことはお嬢から聞きな」

 

 

 そう言って背を向けるとそのまま歩を進ませるバージェス。残されたロビン達は彼の言う通りに柱をその場に置いて彼の後を追う。

 

 

 

 

──それから……

 

 

 

 

 「空の主」と呼ばれている超巨大なウワバミ。その腹の中に収められていた黄金の装飾品やインゴット等の金目となる物は一つ残らず「麦わらの一味」と空島にいる青海人の男達の手によって回収され、男達が用意した木箱に入れられた。ついでに偽装のためか、(ダイアル)の絵が書かれている張り紙がしてある。

 

 

「わはははー。結構な量だなー。2億ベリー……それ以上はあるんじゃないかなー?」

 

 

 そこへドクQを連れたルーミアが現れる。

 

 

「黄金を持って船へ行こうとしてるみたいだけど、肝心の()はどこにあるのかな~?」

 

 

 そんなことを宣いながら両手の掌を向かい合わせに十本の指をわきわきと動かすルーミア。笑顔がとても悪どい。当然ルフィ達は犯人、もしくはそのような指示を出したであろう彼女に対して非難の声を上げる。

 

 

「ニコ・ロビン。彼女が何で()()()になったのか知りたくない?」

 

「いや、いいよ。それよりも船を返してくれ」

 

「いやダメだね。いやでも聞いてもらうよ『モンキー・D・ルフィ』。それにちょうど連中も来たみたいだしなー」

 

 

 森の奥からバージェス達が姿を見せたのはその時だった。

 

 

「連日の宴で話しそびれたけど今、聞かせてやるよ。私の数ある目的の一つを、ね? その木箱の中身と船はその後に渡すよ」

 

 

 後で渡すと言われて不承不承ながらも話を聞く態度を見せる麦わらの一味。バージェス達が到着するのを待ってからルーミアは口を開く。

 

 

「私の目的は『月』だ。そこにあると言われてる古代遺跡の調査。そのために古代文字──歴史の本文(ポーネグリフ)を読める『ニコ・ロビン』が欲しい」

 

「ロビンは俺の仲間だからダメだ」

 

「海軍はニコ・ロビンを追っている。彼女と一緒にいたら海軍に目をつけられる。場合によっては「大将」が来る場合もある。それでもか? 『モンキー・D・ルフィ』?」

 

「ああ、当然だ」

 

 

 きっぱり言い放つルフィ。そんな彼をルーミアは愉しそうに口角を上げて見つめる。

 

 

「それじゃあ、仲間を守れるかどうか試してみようか? 『モンキー・D・ルフィ』私は一度でいいからお前と戦ってみたかったんだよね」

 

 

 そしてルーミアが「(ソル)」と呟いた途端、彼女の姿が掻き消える。直後──

 

 

指銃(シガン)

 

 

 ルフィの眼前に現れると同時に人差し指をルフィの腹部目掛けて突き刺そうとする。

 

 

「執事の技か!? あぶねぇ!!」

 

 

 しかし間一髪、ルフィは横に大きく飛び退いて難を逃れる。

 

 

「バージェスは『海賊狩り』と『ぐるまゆ』。ドクQは『ニコ・ロビン』。他は残りの一味の見張りなー」

 

「「 アイアイサー 」」

 

 

 ルーミアの指示の下、それぞれ動き出す大男二人と配下の人間達。麦わらの一味もまた彼らを迎え撃つ構えを見せる。

 

 

「『ぐるまゆ』って俺のことか!? ルーミアちゃん!?」

 

「とっととコイツを倒すぞ『ぐるまゆ』」

 

「んだとマリモヘッド!?」

 

「ウィ~~ハッハッハァ~~!! お嬢の頼みだ!! 悪く思うなよ!!」

 

 

 両腕をくの字に曲げて押し迫るバージェス。二人はすれ違いざまに、首裏に回し蹴りを叩き込み、脇腹を刀で斬りつつ離れる。

 

 

「くそったれめ、鉄を蹴ったみたいな感触だ。どんな体をしてやがるんだ!?」

 

「刀が弾かれる。悪魔の実の能力者か?」

 

「海軍が使う『鉄塊(テッカイ)』ってやつだ!! お嬢から教えてもらった技だ!! ウィーハッハッハァ!!!」

 

 

 麦わらの一味の中でも戦闘を得意としている三人とルーミア、バージェスが戦っている一方で……

 

 

 

 

「あなたは何もしなくていいの?」

 

……ああ、船長からは言われてる。それに俺は生まれつき体が弱いんだ。正直、体を動かしたくない。……はぁ、はぁ

 

「そう、お大事に」

 

 

 ロビンとドクQは彼らが戦っているのを暢気に観戦していた。

 

 

 

 

「悪いな、うちのボスの命令なんでね。手荒な真似はしたくないから大人しくしていてくれよ、頼むから」

 

 

 ナミとウソップ、チョッパーの周りを取り囲む男達の一人が恐る恐る声をかける。

 

 

「ちょっとそこのゲリラ! 私達を助けなさいよ! うちの船長がエネルを倒したのよ!? それぐらい、いいでしょ!?」

 

 

 ナミが柳眉を逆立てて遠巻きに眺めていたワイパーに怒鳴るように檄を飛ばすものの……

 

 

「忘れたのか青海人の女、ルーミアは今ゴロゴロの実の能力を宿しているんだぞ?」

 

 

 答えたワイパーが言った言葉でナミは思い出す。

 

 

「やつがその気になればここ一帯が焦土と化す。下手な真似はできない!」

 

 




コ" コ" コ" コ" コ"
( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

■誤字脱字おかしな表現がございましたら、報告をお願いします。

■前話の感想の大半が文字が動くことについてだったのが驚いた。本文でギャグ以外に使えるのかな、これ。

■ルーミアの数ある目的の一つが明らかになりました。

■毎度、金曜日に書き上げてます。


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11話 白ひげの娘は28歳

  

 

 神の島(アッパーヤード)の奥深く、遺跡が眠る場所を背景にルフィとルーミアの両者による攻防が行われていた。

 

 

紙絵(カミエ)

 

 

 真剣な表情で打つルフィの乱打を、ルーミアは腕を左右に広げたポーズでルフィの腕と腕の間を縫うように蛇行しながら接近、ルフィの腹に掌底を叩き込み、突き飛ばす。

 

 突き飛ばされたルフィは数歩後ろへ、左足でたたら踏みながらも片足でなんとか踏みとどまり、次いで右足をムチのようにしならせて伸ばしながら横薙ぎに払う。

 

 ──が、ルーミアはこれを跳ねるように軽く跳んで余裕の表情で避けてみせる。

 

 

ゴムゴムの(ピストル)!!!!

 

 

 そこへ勇ましい掛け声とともにルフィの右腕が伸びながら未だ宙に浮いているルーミアに向かって拳が飛んでいく。

 

 

月歩(ゲッポウ)

 

 

 迫り来る右の拳に対してルーミアは宙に浮いている状態から何もない筈の足下の空間を片足で蹴って更に跳躍、そのまま後方に宙返りを披露、彼女の真下を勢い余ったルフィの拳が通り過ぎていく。  

 

 

嵐脚(ランキャク)

 

 

 さらにルフィの攻撃を躱す際、宙返りする時に蹴り上げた脚から三日月状の鎌鼬が放たれ、ルフィの右の肩口を切る。

 

 ……と、そこでルーミアは両足を揃えて地面に着地した。

 

 

「『(ソル)』『指銃(シガン)』『紙絵(カミエ)』『月歩(ゲッポウ)』『嵐脚(ランキャク)』これとバージェスの『鉄塊(テッカイ)』の六つの技は『六式』と呼ばれている」

 

 

 左手で右肩をおさえながら息を切らすルフィにルーミアは講義でもするかの如く人差し指を立てつつ得意気に説き聞かせる。

 

 

「ロビンを捕まえるためにこの先の海でこういう技を使う連中が出てくる。さらに今いる3人の『大将』は全員が自然(ロギア)系の能力者で当然そんな連中よりも強い。その上、偉大なる航路(グランドライン)の後半の海には『覇気使い』なんて存在もいる」

 

 

 そう言って右腕を弓を引くように体の後ろへ持っていくと、その腕の拳が黒く変色し、金属のような妖しい光沢感を放つ。

 

 

「全員じゃないけど、覇気使いは大抵こうやって体を変化させて攻撃力と防御力を強化させる。そして何よりも自然(ロギア)系の()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが大きな利点……」

 

 

 忽然と姿が掻き消えたかと思えば次の瞬間、轟音とともにルフィの腹部を貫かんばかりに右腕を半ばめり込ませるルーミアの姿が現れた。

 

 

「……………………っっっ!!!?」

 

 

 腹に拳をめり込まされ、苦痛に顔を歪ませ後、がくっと力なく首を垂れるルフィ。しばらく動かないルフィを見て勝利を確信したのか、勝ち誇った笑顔を見せるルーミア。

 

 

「──やっと、捕まえた……」

 

 

 そのルーミアの右手首を突然動き出したルフィが両腕で掴んだ。がっちり掴んでいるのか、慌てふためくルーミアが腕を引き抜こうとしているがびくともしない。

 

 やがてルフィはルーミアの腕を掴んだまま「ゴムゴムのぉ~」と、首を徐々に後ろへ後ろへと伸ばしていき……

 

 

「──わ!? ちょっ!? 待った! タイム!」

 

鐘ェっ!!!!

 

 

 空いた左手で制止をかけるルーミアを無視して彼女の頭に反動で勢いのついた頭突きを喰らわした。

 

 

ぴィぎゃぁっ!?

 

 

 骨と骨がぶつかったような「ごっ」という鈍い音が響くと同時に奇妙な鳴き声がルーミアの口から漏れ、さらに衝突の勢いでルフィの腹に飲み込まれていた腕がすっぽ抜け、そのまま仰向けの状態で地面に倒れた。

 

 

「……『六式』も『覇気』も習得してないのによくやる」

 

 

 それでもルーミアの意識を刈り取るまでいかず、彼女はルフィに対して涙目で恨みがましい視線を送りつつ、額をさすりながら起き上がってみせる。

 

 そんな彼女にルフィは油断なく身構え、息を切らしながらも戦闘体勢を整えるが……

 

 

「この勝負はお前の勝ちでいい。ちょうど向こうの方でも決着が付いたみたいだしなー」

 

 

 言ってバージェス達がいる方角にその場にいる一同が顔を向けると、バージェスが両膝をついて、うつ伏せで倒れていくところだった。その傍らにはアザだらけで満身創痍のゾロとサンジの姿もある。

 

 

「バージェスには『鉄塊(テッカイ)』以外の技も習得させるべきだな……。とりあえず約束通り船を返そう。()()()()()()から離れた方がいいぞ?」

 

 

 その場でちょこんとしゃがんで地面に右手の掌を当てると、彼女を基点に闇が広がっていき、ある程度の大きさまで広がると今度は闇の中から船が、ゴーイング・メリー号がせりだしてきた。

 

 

「船は返した。あとは好きにしていい。それとも島の淵まで運んでやろうか? んー?」

 

 

 やがて船を闇から完全に出すと、せせら笑いながらルーミアは尋ねた。

 

 

 

 

 それから紆余曲折を経て、神の島(アッパーヤード)から二隻の船が出航した。一つは麦わらの一味を乗せたゴーイング・メリー号。そしてもう一つは方舟マクシム。その甲板には何故かルーミアしか乗っていない。

 

 

『──お嬢、俺達も一緒に行かなくていいのか?』

 

「んー。『月』は空島よりも上空にあるからなー。空気が空島より薄い、もしかしたら無い可能性もある」

 

 

 電伝虫ごしに会話を交わすルーミアとバージェス。

 ルーミアはルフィとの戦闘の後、巨大ヘビから出た財宝をくれてやるかわりに……と、目の前で黄金の柱を闇に飲み込ませ、そのままマクシムに乗ったのである。

 

 彼女の行動に麦わらの一味は呆気に取られ、ナミに至っては「私の黄金!!」と柳眉を逆立てて般若のように激怒していた。

 

 

『──とりあえず早めに頼むぜ。「麦わら」から盗み取った「ビブルカード」がぐいぐい動いてやがる』

 

 

 宴の最中、ルーミアは手下達にルフィが持っているビブルカード、その一部を手に入れるよう指示を出していた。

 

 本来なら「黒ひげ」が「エース」と決闘を行い、そのあと海軍に引き渡していただけに、エースの動向が気になっていたのだ。

 

 

「まあ、どちらにしろ私達がやることは変わらないけどなー。ジャヤ島に手下を送って、バージェスとドクQは空島に待機。帰りはお前らのビブルカードを頼りに辿るから無くさないようになー」

 

『──アイアイサー!』

 

 

 

 

【ゴーイング・メリー号】

 

 

 空島名物タコバルーンで空を漂うメリー号。甲板にいる彼らは今回の空島で起きた出来事、特にルーミアについて話し合っていた。

 

 ルーミアが『ゴロゴロ』『ヤミヤミ』二つの能力を持っていること、また彼女が語る『六式』と『覇気』の存在。

 

 ヤミヤミの実の能力についてはロビンに心当たりがあるのか、昔の海賊である「デービー・ジョーンズ」の話を持ち出す。

 

 

「悪魔に呪われて深い海底に今も生きているという昔の海賊。……海底に沈んだ船や財宝は全て彼のロッカーにしまわれる」

 

 

 その伝説とルーミアが闇から船を取り出したり、黄金の柱をしまいこんだ光景を思い出して納得する一同。その能力で空島に物資を運んでいたのでは? ……と推測をする。

 

 

「あの子の目的はわからないけど、素性はわかったわ」

 

 

 空を飛び交うカモメから新聞ニュース・クーを購読していたナミ。その新聞の一面にはでかでかとルーミアの顔写真が記載されていた。

 

 

「『エドワード・ルーミア』。四皇の一人『白ひげ』の娘よ」

 

 

 四皇の娘と聞かされてルフィ達は衝撃を受けるものの、四皇の娘ならばあの強さもありえると納得した。

 

 

「歳はあれで28歳らしい……」

 

「「 ええぇぇ~~~~っっ!!!? 」」

 

 




(゜o゜(☆○=(-_- )゙あんぱーんち

スゴイ威力だ( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。

■毎度、金曜日に書き上げてマス。

■動く文字の使い道が分からん。開拓の余地あり。

■駆け足ですが、ひとまず空島、終わりました。
 そろそろオリ主ルーミアが白ひげ脱退後の地上のこと書かなくちゃ……

■本人のいないとこで年齢詐称。


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閑話 むかしむかし、あるところに……
12話 賞金稼ぎ「黒ひげ」の失態


 

 

 

 

 ……おおよそ20年前。

 

 

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 「黒ひげ」こと「マーシャル・D・ティーチ」

 

 彼の登場人物に生まれた男が「白ひげ海賊団」に入る前はシャボンディ諸島で単独で賞金稼ぎを生業にしていて当時から「黒ひげ」と呼ばれていた。

 

 もっとも狙うのは小物、小悪党といった危険が少なく且つ確実に倒せる者だけに留めておいて、懸賞金が億を超えるような危険な大物には決して手を出さなかった。

 

 

「わざわざ危険を犯してまで海賊をやる必要はねェ! 賞金稼ぎとして生きるのも悪くはねェな! ゼハハハハハ!!」

 

 

 そう彼が思った矢先……

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン) 後半の海──白ひげ海賊団】

 

 

「グラララララ。それで天竜人の奴隷になりそうだった男女を逃がして賞金首になった。……ってわけか」

 

 

 呆れと憐れみを含んだ、しかしどこか楽しげな物言いの白ひげ。玉座に座る彼の目の前には深々と額を床につけて土下座をしているティーチの姿があった。

 

 シャボンディ諸島で実力が己よりも格下の賞金首相手に調子に乗っていたティーチ。ある日のこと、顔見知りの男女が天竜人に連れていかれそうになっている場面に遭遇。

 

 

「『(ソル)』でいけるはずだ! サンジだってできたんだ! 俺にもできるはずだぜ!」

 

 

 ……と果敢に敢行。「(ソル)」による高速移動で天竜人とその部下らしき護衛達に急接近。瞬く間に彼らの首に手刀を当てて気絶させて無力化させることに成功。次いで二人の枷を破壊して島から逃した。

 

 ……と、そこまではよかったのだが、その時に彼のことを厭わしく思っていた同業者数人にバッチリ顔を見られてしまう。

 

 案の定、ここぞとばかりに通報され、間もなく海軍が登場。シャボンディ諸島から逃亡せざるを得なくなった。そして白ひげを頼りに彼の人物が根城にしている新世界へ赴いたのである。

 

 

 

 

 ……それから20年。

 

 

 

 

 原作が始まる少し前にティーチはヤミヤミの実を食べて能力者となり、白ひげ海賊団を抜けた。

 

 白ひげ海賊団の乗組員達はティーチがいずれ、この船を去るだろうとは思っていた。何しろ普段から空島へ行くと豪語しており……

 

 

「ヤミヤミの実の能力で上に引っ張れば空を飛べるはずだ!! 空島ならさすがの海軍も追ってこれねェだろ! ゼハハハハハ!!」

 

 

 ──と「ヤミヤミの実」を欲していたティーチが件の悪魔の実を手に入れて能力者になれば、空島へ行くのは想像に難くない。

 

 ……とはいえ、さすがの白ひげ海賊団の乗組員達といえど20年もかかったうえに悪魔の実を食べて性転換するとは思わなかったようで甲板のあちこちで変身前と変身後の写真を見比べて困惑、あるいは大笑いしている。そんな男衆どもに白ひげは笑いを堪えつつ提案する。

 

 

「もう昔のこととはいえ、ヤツは天竜人から奴隷を逃した経歴がある。死んだことにしといた方がヤツにとって都合がいいだろう」

 

 

 こうして表向きにはティーチが死亡したことになり、さらに悪のりした白ひげ乗組員、主にサッチを中心に「ティーチが己の身を犠牲にして少女を助けた」……という美談に仕上げ、素性や生い立ち、経歴などのバックストーリーを作った。

 

 

 ちなみに彼らが「ルーミア」という名を知ったのは……

 

 

 

 

『医療大国ドラム王国国王ワポル、国外逃亡!!!?』

 

『元守備隊長は語った。「ワポルが少女に狼藉を働こうとしたので我慢できずに殴った。後悔はしていない」』

 

『ワポル元国王、少女嗜好なのかー!?』

 

 

 

 

 ──という見出しと島の民間護衛団体の団長を勤める「ドルトン」の顔写真が記載された新聞によるものだ。

 

 その新聞にある記事の一つ「少女と愉快な仲間達、モンブラン・ノーランドの無念を晴らすため空島を目指す!」その中に「ルーミア」の名が記されてあったのである。

 

 無論、ワポルを殴ってドラム島から追い出したのはルーミア一味。本来なら大罪であり賞金を掛けられてもおかしくはない所業なのだが、悪政を敷いて苦しませるワポルなんぞに国民が好感など抱くわけがなく、むしろ「追い出してくれてありがとう!」である。

 

 ゆえにドラム島の人間達はルーミア達を庇うため、事件を捏造。自分達がやったことにしたのである。海軍もまた年端もいかない少女に大の大人を倒せる力を持っているとは考えておらずルーミアに懸賞金を掛けなかった。

 

 さらにワポルの横暴な振る舞いは他国に知れ渡っており、海軍も含む不特定多数の人間から「彼ならやりかねない」「いつかやるだろうと思ってた」「自業自得」「ざまぁwww」と思われたのも要因の一つになっているといえよう。

 

 かくしてルーミアは懸賞金を掛けられずに済み、麦わらの一味と出会うまではジャヤ島で猿山連合軍とともに悠々自適な日々を過ごすこととなる。

 

 そしてルーミアが麦わらの一味と出会い、空島へ行った後に「白ひげの娘」という記事が書かれた新聞が出回り、彼女が月から空島へ帰還した時に知ることになる。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。
ぷるぷる。僕は悪い にゃもし。 じゃないよ。

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。

■今回は白ひげ海賊団、入団前と脱退後の大まかな流れを。

■次回は空島のその後を書きたいなー。


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13話 ニュース・クーがもたらすもの

 

 

 それはルーミアが()()()()()()()()()遥か上空の「月」へと向かい、麦わらの一味が地上の海へ戻るべく空島を去った後の話である。

 

 麦わらの一味が新聞に書かれていた「ルーミア」に関する記事で驚愕したように、各地で波紋を呼ぶ。

 

 

 

 

【ウォーターセブン】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)、前半の海にある造船が盛んな島であり、島中の至る所に張り巡らされてある水路から「水の都」とも呼ばれている。そして今現在その「水の都」にて「白ひげの娘」という話題が物議を醸した。

 

 

「ホホホ。白ひげも思い切ったことをしますね。うちの姫を大々的に宣伝していただけるなんて」

 

「笑い事ではないが、これも運命か……」

 

「──ですが、そのおかげで手を出してくる不敬な輩は目に見えて減るでしょう。ホホホ」

 

「その分、『白ひげの娘』ということで目をつける人間が出てくるだろうがな」

 

 

 島の一画にある上品そうな雰囲気を放つカフェ。そこに設けられているテラス席に長身でやや細身の男が二人、向かい合う形で席についていた。

 

 一人はコーヒーを片手に啜りつつ新聞を読んでいる「ラフィット」。もう一人は長い銃身を持つ銃を手入れしている「ヴァン・オーガー」。彼ら二人はルーミアの指示の下、ウォーターセブンに来ていた。

 

 

「ホホホ。それでは海軍に連れていかれる前に()()()()()()と接触しに行きましょうか?」

 

「……ああ、ここに例の一味が来れば、()()()()()()()()も動き始めることだろう。……なれば、我々も目的の品を手に入れる準備をしなければなるまい」

 

 

 そう言って立ち上がる二人。会計を済まして向かう先は島の北東の海岸にある解体家「フランキー一家」の本拠地である「フランキーハウス」。そこへと足を運ぶ。

 

 

 

 

【冬島──ドラム島】

 

 

 今は国の名がない島であるドラム島。その地にもその情報が新聞からもたらされた。

 

 以前この島に屈強な男たちを連れてやって来た少女ルーミア。一部の島の住人たちはどこかの金持ちの子が親にねだって海賊の真似事をしているのだろうと考え……下手に藪をつついて蛇を出す必要はない──と他の住人たちに注意を呼び掛けて遠くから見守る形で少女をつぶさに観察をしていた。

 

 

 しかし彼女にちょっかいをかけるバカがいた。ワポルである。

 

 

 一部始終を見ていた見物人は最初、少女が連れている男たちが戦闘するだろうと思っていたが、いざ蓋を開けてみれば、少女一人でワポルとワポルが連れている近衛兵を一人残らず地に叩き伏せていた。

 

 

「もしもアイツらがまたここに来て悪さをするようなら私に知らせてほしい。あの船が欲しいから」

 

 

 船に乗って逃走するワポルを指差しながら少女がドルトンに言った後、彼女は島のあちこちを散策。そして目当ての物が見つかったのか島をあとにした。

 

 その後、ルーミアたちが去ってからワポルがやって来たが、その前にやって来た「麦わらの一味」の船長である「ルフィ」がワポルを空の彼方へと突き飛ばした。

 

 最悪、ルーミアに連絡を入れて追い出してもらおう、という意見があっただけにドルトンは拍子抜けした。

 

 結局、別の人間の手によってワポルは追放、そして彼が所有していた「船」が手に入ったが、相手が「白ひげの娘」なだけに約束を無下にするわけにもいかずドルトンは連絡を入れることにする。

 

 

「──ああ、ドラム島の『ドルトン』なのだが……」

 

 

 

 

【ジャヤ島】

 

 

「「 おやっさ~~~~~ん!!!! 」」

 

 新聞を片手で握りしめながら二人の大男──マシラとショウジョウがどかどかと音を鳴らしながら、彼らがおやっさんと呼んでいる「モンブラン・クリケット」の下へと走っていく。

 

 

「こいつを見てくれ!」

「俺はこれを見てハラハラしたぜ!」

 

 

 到着するや否や切り株に腰掛けるクリケットに新聞の一面を見せる。件の「ルーミア」の記事だが……

 

 

「ルーミアのことだろ? それならここにいる連中が教えてくれたよ」

 

 

 そう言うクリケットの後ろには空島で活動していたルーミアの配下がいた。

 

 

「「 あ、どーも 」」

 

 

 猿山連合軍の二人とルーミアの配下が揃って頭を下げる。

 

 

「──って、おやっさん! こいつら信用できるんですか!?」

「いつぞやのベラミーみてェにならねェか、ハラハラするぜ!」

 

「ここにルーミアと小僧が写ってる写真がある。こいつらが持ってきたものだ。どうやら空島の風景らしい……」

 

 

「「 すげェ!!!! 」」

 

 

 クリケットが見せる写真を目玉が飛び出さんばかりで凝視、写真を手に取って一枚一枚確認しては驚きの声を上げる。

 

 

「ここにいる連中はジャヤ島の近辺で『空島』を作るつもりだそうだ」

 

 

 空島を作るという目的を聞かされて、写真を見ていたマシラとショウジョウも思わずその手を止めてしまう。

 

 

「ルーミアは『空島を作ることで空島を証明させる』つもりだとよ、このジャヤ島にいる連中にな」

 

 

 そう語るクリケットはとても楽しそうだった。

 

 

 

 

 そして当の本人は……

 

 

【月】

 

 

 月のとある一画に激しい戦闘の跡がある。そこには兵士や兵器、あるいは船や発掘するための機械の残骸がそこかしこにあり、今も煙を吹いて火花を散らしていた。

 

 

「わはは、これで月の遺跡の遺物を盗まれる心配がなくなったわけだけど、肝心のカラクリ島のちっこい兵士が見つからないんだよなー」

 

 

 ルーミアの雷で空いたのだろう、遺跡へと通じる穴が彼女の前に現れた。

 

 

「とりあえず遺跡に眠っている兵士を叩き起こして探させるかなー、わははははー」

 

 

 そう言いながら穴の奥へと入っていく。そしてほどなくして月の遺跡は彼女の雷で復活を遂げた。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。
勇者の攻撃!
にゃもし。は564のダメージを受けた!

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。
 朝の4時頃に書き上げたよ。
 あとは活動報告にでも書きまする。

■次はウォーターセブン辺りかなー。


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→ “ ウォーターセブン ” 始まりの下準備
14話 強奪


  

 

【ウォーターセブン──フランキーハウス】

 

 

 島の北東の海岸にある解体家フランキー一家の本拠地。

 

 その建物の中では棟梁であるフランキーがしかめっ面で終始にこやか笑顔のラフィットと向かい合う形で席に座って商談をしている。その彼ら二人のそれぞれの背後にはオーガーとフランキーを慕うガラの悪い男たちが二つの陣営に分かれて立っていた。

 

 

「──単純で分かりやすい。確かにこの『気球』なら空を飛べる。……だが、島から島への移動には使えねェ。特に偉大なる航路(グランドライン)じゃあ、途中で燃料が尽きて海に落ちるのが関の山だ。それにこいつじゃあ、人も荷物もそんなに多くは乗せられねぇだろうよ」

 

「ホホホ。でしょうね。何も島への移動だけが目的ではありません。他にも用途はありますのであしからず」

 

「……だがそれ以上に何で()()なんだ? 俺が言うのもなんだが、ここは解体家っていう看板を出してはいるが実際はゴロツキの溜まり場だ。普通の人間ならマトモな会社、それこそ『ガレーラカンパニー』に持ち込むもんだぜ。いったい何を隠して何を企んでやがるんだ? テメェらはよぉ?」

 

 

 威圧感のある声で問いながらラフィットを睨み付けるフランキー。そんな彼の脅しとも取れる態度をラフィットは顔色一つ変えずに淡々と語る。

 

 

「近々、あなたと()()()()()()()が殺害される可能性があります」

 

 

 唐突に出てきた「殺害」という単語に言葉を詰まらせるフランキー。見知った顔が脳裏を過ったのか、こみかみから一筋の冷や汗が頬を伝って流れ落ちていく。

 

 

「ここでは話しにくい内容ですので移動しませんか? そう、例えば海列車「パッフィング・トム」を製造した造船会社『トムズワーカーズ』。彼らの本社があったと云われている「橋の下倉庫」なんていかがですか?」

 

 

 「ホホホ」と笑うラフィットをフランキーは気味の悪いものでも見るような目付きでしばらく値踏みするが、やがて意を決したのか……

 

 

「ここでいい。移動する必要はねェ。今すぐここで知っていることを洗いざらい喋ってもらおうか? 痛い目に遭う前になァ?」

 

「ホホホ。できますかね? あなたがたに?」

 

 

 それから程なくしてフランキーハウス内は死者こそ出ていないものの、部屋内は負傷者と大小の瓦礫で溢れかえり、そこかしこで人間の呻き声が聞こえる戦場跡のような光景と化していた。この光景を作り出したラフィットとオーガーは頭から血を流して這いつくばった格好で倒れ伏せているフランキーに……

 

 

「私どもはしばらくこの街に滞在していますので、あなたの気が変わったならばお声をかけてください」

 

「……とはいえ、再び会えるかどうかは日々の行いにもよるがな」

 

 

 それだけを告げると振り返ることなく開け放たれた扉をくぐって、そのまま去っていった。

 

 

 

 

「──それが古代兵器『プルトン』の設計図というわけか?」

 

 

 フランキーハウスを出て街へと戻っていく傍ら、設計図をつぶさに観察しているラフィットにオーガーが問いかけた。

 

 

「ええ、この設計図が姫がご所望していた()()()()()というわけです。あと一つ『ドアドアの実』なのですが……」

 

「酒場の店主の『ブルーノ』だったか? 今のうちに殺して奪うか?」

 

「いいえ、『麦わらの一味』の犯行にしておきたいので後にします。彼らが『ロビン』奪還するどさくさ紛れに奪えとのことです。ホホホ」

 

「ふむ。『エニエス・ロビー』なら死体が一つ増えても不思議ではないな。ところでフランキーにかけた()()()は大丈夫なのだろうな?」

 

「ぬかりなく、彼に渡した設計図の写しは彼の目にはオリジナルのものに見えてますよ」

 

 

 そう自慢気に語るラフィット。彼ら二人はフランキーハウス内にてフランキー以外の人間の意識を奪った後、フランキーに催眠術をかけて設計図を強奪。代わりに模写した物を渡したのである。

 

 

「ホホホ。『アイスバーグ』市長の危機を知った(フランキー)がどんな行動を起こすのが不安要素ですが……」

 

「それもまた「巡り合わせ」というものだ。我々は目的の品を手に入れればよい」

 

 

 やがて街の入り口に辿り着いた二人は人混みの中へと消えていった。

 

 

 

 

【ジャヤ島】

 

 

 空島から帰還を果たしたルーミアの手下たち。彼らはここを拠点の一つにすべく日夜、作業に没頭していた。その彼らに交じって猿山連合軍の姿も確認できる。

 

 当初、彼らは「モンブラン・ノーランド」が語る黄金郷が空島にあるのを確認できた後、新たなロマンを模索していたが……特に急ぐ理由もなく、ルーミアのやることに興味が出たらしく、こうして一緒になって作業をしていた。

 

 

 そんなある日、一人の男が彼らの下に訪れた。

 

 

「……フフフフフ。ここに『エドワード・ルーミア』とかいう「白ひげの娘」はいるか?」

 

 

 フラミンゴの羽を思わせるような上着と特徴的なサングラスを着用した長身の男──「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」。七武海の一人がやって来たのである。

 

 




ゴゴゴコ" コ" コ" コ" コ"ゴゴゴ
( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。

■次は「ジャヤ島」+α かしらねぇ。

■あとは「活動報告」にでも書くよん。


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15話 厄介事

 

 

【ジャヤ島 東の海岸──猿山連合軍 本拠地】

 

 

「──ジャヤ島に噂の『御令嬢』はいねェ。『空島』へ行ったらしい。一足、遅かったみたいだな。フッフッフッ……」

 

 

 切り株に足を組んで座っているドフラミンゴ。彼は人を小バカにしたような態度で電伝虫でどこかにかけていた。そんな彼の様子をクリケットを始めとした猿山連合軍やルーミアの手下たちが遠巻きに恐る恐る眺めている。何しろ相手は七武海の一人だ。自分たちに刃を向ける可能性がある。そうなれば自分たちに勝ち目はない。

 

 やがて、通話中の相手と話し終えたのか受話器を置き、クリケットらがいる方向に顔を向けると……

 

 

「今ちょうど暇を持て余している連中がジャヤ島にいる。そいつらを『空島』に送りたいんだが、もちろん協力してくれるよな?」

 

 

 当然と言わんばかりに尋ねるドフラミンゴ。彼の態度にクリケットは呆れながら溜め息を吐く。ドフラミンゴには空島へ渡るのがどんなに困難で危険なのか、ルーミアの手下たちと一緒に説明したからである。

 

 

「……協力はするがすぐには無理だ。空島がある積帝雲が来るのは俺たちの経験からして、おそらく二週間後辺りになる。その間に準備をしてくれ、あと船もこっちに持ってこい。改装してやる」

 

 

 クリケットのその返事に満足したのか、ドフラミンゴの笑みがいっそう深くなる。そして電伝虫の受話器を取ると……

 

 

「──ベラミー。お前にチャンスをくれてやろう。フッフッフッ……」

 

 

 

 

【ウォーターセブン──フランキーハウス】

 

 

 建物こそ崩れなかったものの、中は壊滅状態になっているフランキーハウス。このままでは生活するのもままならないとフランキー一家総出で瓦礫等を撤去、片付けをし、なんとか座るだけの場所を確保。その後、フランキーを中心に彼らは円陣を組んで地べたに座って話し合っていた。

 

 

「……あの()()の言っていることは十中八九『アイスバーグ』の暗殺だろうよ。無論、ただの愉快犯という可能性もあるが、あれほどの実力を持った人間が無意味なことをするとは思えねェ……」

 

 

 「暗殺」という言葉にフランキー一家の間に緊張が走り、誰かが鳴らした喉の音が響く。そしてフランキーの言葉に静かに聞き耳を立てる。

 

 

「悔しいがアイツらの実力は本物だ。力付くでどうにかできる相手じゃねェ。おまけに連中の目的もさっぱり分からねェ、ときたもんだ」

 

 

 「あちゃー」と言わんばかりに片手を顔面に置くフランキー。そんな活気のない場に一人の男が飛行機の模型を持ったまま慌てた様子で駆け寄る。

 

 

「アニキ! この『ゴム動力飛行機』めっちゃ楽しい!!」

 

 

 言って飛行機を投げ、彼らの頭上で旋回を始めると「おー」とどよめきが起こった。

 

 

「……って、そうじゃねェ!!」

 

 

 一緒になって飛行機を見ていたフランキー。自分たちの置かれた境遇を思い出したのか、頭上で旋回して飛んでいる飛行機を跳んで掴む。周囲から惜しがる声が漏れる。

 

 

「こんな雑な作りじゃあ大して飛べねェだろうが!!」

 

 

 言うや否、改造に取りかかり始める。そんなフランキーの行動に歓声が沸き上がる。そして……

 

 

「よし! 次はこの『気球』とやらの製作を始めるか! アイツらが残したメモによると上空から見る下の景色が素晴らしい……って、そういうことかよ! こんちくしょー!!」

 

 

 設計図を地面に叩きつけるフランキーに周囲の人間がどうしたものかと心配そうに声をかける。

 

 

「とりあえず、お前らは手分けしてあの()()を探してこい! ただし手を出すな! いいな!? それと空飛ぶ乗り物のことは一切口外するな! 敵対している連中に知られたら目も当てられねェ状況になりかねねェ!!」

 

 

 そしてフランキー一家は「ラフィット」「オーガー」を探すべく街中を駆け巡り……

 

 

 

 

「ココロのババー、頼みてェことがある」

 

 

 ウォーターセブンの中心街にある酒場の一つ『ブルーノ』。そこのカウンター席で昼間からビールを飲んでいる恰幅のいい年配の女性にフランキーは声をかけながら隣の席に座った。

 

 

「この手紙を黙って受け取って、黙って渡してくれ……」

 

 

 いつになく真剣なフランキーにココロと呼ばれた女性は思わず手紙を受け取る。

 

 

「厄介事かい? まさか、()()じゃないだろうね?」

 

()()()()()だ。それじゃあ、頼んだぜ。俺はこれから家にカチコミに来た二人組を探さなきゃあなんねェんでな」

 

 

 それだけ伝えるとフランキーは酒場から出ていき、あとに残されたココロは手紙の表面をつぶさに見てみるが、そこには何も書かれていなかった。

 

 

「とうとう、来ちまったってことかねぇ……」

 

 

 差出人どころか宛先も何も書かれていない手紙だが、彼女にはこの手紙を渡すべき相手は分かっていたようで、酒場を出た後、その足で『ガレーラカンパニー』へと向かった。

 

 

 

 

 そんな彼らを建物の屋上から見つめている二人がいる。「ラフィット」と「オーガー」である。

 

 

「ホホホ。あの女性は確か『トムズワーカーズ』の元社員でしたね」

 

「ふむ。さすがに直接、市長に接触するのは危険と判断したか…… フランキーは我々と会いたいみたいだが、どうする?」

 

「彼の御仁に工作員の正体を正直に教えたところで上手く活用できるとは思えません。……ので、別に会う必要はないでしょう」

 

「それもそうだな。……となると、『麦わらの一味』が来るまで待機せねばならないな」

 

「ええ、待ち遠しい限りです。ホホホホホ」

 

 

 

 

 それから数日後、ウォーターセブンに「麦わらの一味」が現れた。その間、フランキー一家は終ぞ彼ら二人を見つけることは叶わなかった。

 

 

 

 




コ" コ" コ" コ" コ"
( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。

■土曜日、朝5時に書き上げた。憑かれた。

■次は麦わらinウォーターセブンあたりかのー。

■ONE PIECEの世界って空飛ぶ乗り物ってガスガスの実の能力者のシーザーが使っている飛行船? 空島ウェザリアでじいさんが言っていた「気球」。エネルの方舟マクシム。ぐらいなのかしらねぇ。飛行機とかって実際どうなんだろね。
 
■あとは活動報告に書くわよん。


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16話 嘲笑う海賊たち

 

 

【ジャヤ島】

 

 

 「ルフィ」に敗れた「ベラミー」を制裁するためジャヤ島に現れた「ドフラミンゴ」。彼はモックタウンでベラミーに制裁を加えた後、「ルーミア」を探して猿山連合軍がいる東の海岸を訪れた。

 

 しかし、件の人物はそこにはおらず、聞けばルフィと一緒に「空島」へ向かったという。そこでドフラミンゴはベラミーを呼び出すことにした。空島に送るために……

 

 

 

 

「副船長として断固反対だ!! 突き上げる海流(ノックアップストリーム)で『空島』なんてバカげてる!! 考え直せ!! ベラミー!!」

 

 

 声を荒らげて喋っているのはベラミー海賊団の副船長である「サーキース」。そして彼と対話をしているのは一味の船長である「ベラミー」。彼らは東の海岸で待ち構えていたドフラミンゴから……

 

 

「やつらが空島で()()()()()()()()、調べてこい」

 

 

 ──と言い渡され、その後ドフラミンゴは「用事がある」と言い残して文字通り空を飛んで彼らの前からいなくなった。

 

 

 

 

「どうしても行くなら一人で行ってくれ、ここでお別れだ」

 

 

 散々、仲間内で言い争った後、サーキースたちは船に乗り込み、ベラミーをその場に一人残して出航していった。

 

 

「……船はなんとか調達する。時間までには間に合わせる」

 

 

 船が見えなくなるまで見送った後、ベラミーは振り返らずにクリケットたちにそう言い放ち、街のある方角──モックタウンへと歩き始める。

 

 

「いけ好かねぇ連中だが、ああなっちまったら憐れだな……」

「ああ、見ていてハラハラしたぜ」

 

 

 複雑な表情を見せるマシラとショウジョウ。

 

 

「やつらが決めたことだ。他人の俺たちがどうこう言う筋合いはねぇ。それよりもやつが船を調達したときのために準備をしとけ」

 

 

 クリケットの指示の下、猿山連合軍はのろのろと動き出す。そんな中、ベラミーが去っていった方角を眺めながらクリケットは声には出さずに……

 

 

(……ドフラミンゴの命令を無視するわけにはいかねぇ。かといって船員を危ない目に遇わせられない。……だから、さっきのような茶番をして意図的に別れた。……とまあ、見ず知らずの赤の他人どもにそう伝えるのは余計なお世話だろうな……)

 

 

 クリケットはそう思いながらタバコに火をつけて、吸い始めた。そして……

 

 

(……それよりもドフラミンゴが小娘に目をつけた方が問題だな、何事もなければいいんだが……)

 

 

 

 

【ジャヤ島──モックタウン】

 

 

 ホテルにある一室。豪華な作りをしているその部屋にドフラミンゴは備え付けられているイスに深々と腰掛けて寛いでいた。そこに一人の巨漢がベランダに現れて、室内へと入っていく。

 

 

「フッフッフッ。お前がメッセンジャーとはな? 海軍はえらく張り切ってるようだな? 暴君?」

 

「電伝虫だと盗聴される恐れがある」

 

 

 モックタウンにあるホテルの一つ「トロピカルホテル」。そこは今ドフラミンゴが貸し切っており、従業員以外、誰も入れさせないようにしてあった。そこに七武海の一人「バーソロミュー・くま」が来訪してきたのである。

 

 

「準備が整った。バナロ島に来い」

 

「……ゲッコー・モリアがうまいことやったわけか、あのぐーたら野郎が、フッフッフッ。お前はこの後どうするんだ? まさか、それだけ伝えてサヨナラってわけじゃないだろ?」

 

「お前に言う必要はない」

 

「フッフッフッ。この小娘だろ?」

 

 

 新聞に掲載されていたルーミアの顔写真を手に取ってヒラヒラさせるも、くまは無言を貫く。

 

 

「俺の部下にも調べさせてるが、ほとんど何も分かっちゃいない。このなりで28歳ってことぐらいしかな? それすらも怪しいがな、フッフッフッ」

 

 

 得意気に話すも、肝心のくまの姿はどこにも見当たらない。ただただ開け放たれた窓のカーテンがそよ風で揺れるのみ。

 

 

「フッフッフッ、せっかちな野郎だ。……まあ、俺も行くとするか……」

 

 

 やおら立ち上がるとドフラミンゴは誰に言うわけでもなく言った。

 

 

「──『エース』の捕縛に……!!」

 

 

 部屋の中でドフラミンゴの笑い声である「フッフッフッ」が響く。  

 

 

 

 

【ウォーターセブン】

 

 

 木箱等が並べて積まれている倉庫の一画。そこにある木箱をイス代わりにしてラフィットとオーガーは座っていた。

 

 

「ラフィットさん! オーガーさん! 例の麦わらの一味が来ました!!」 

 

 

 そこへ息を切らしながら一人の男が麦わらの一味がこの島に来たことを伝えた。ラフィットとオーガーはこの地にやって来たはいいがガレーラカンパニー、あるいはフランキー一家の手によって解散させられた元海賊でなおかつ、監獄送りを免れた人間たちを集めた。自分たちの手足にするために。それも民衆にいても目立たないような連中を。二人は彼らを使ってウォーターセブン等の情勢を逐一に手に入れていたのである。

 

 

「ホホホ。ようやく来ましたか」

 

「やつらがこの地に来るのは避けられない運命だったか……」

 

「では、彼らがこれから起こすであろう騒動に便乗させてもらいましょうか?」

 

 

 手に持ったステッキで器用にシルクハットのつばを上げながらラフィットは言った。

 

 

 

 

 そして……

 

 

【空島スカイピア】

 

 

 ある日の空島スカイピア。突如、上空の白い雲を裂いて一人の少女が空から落ちてきた。カマキリはなぜか胸に手を当てた仰向けの状態でゆっくりと降りてくる少女を指差しつつワイパーに向かって叫ぶ。

 

 

「ワイパー!! 月からルーミアが帰ってきやがった!!」

 

「そんなもん見りゃ分かる!! あんな非常識ができるのはあの女しかいない!!」

 

 

 シャンディアの部族はルーミアの登場に困惑し、ルーミアの手下たちはボスの帰還に歓喜の雄叫びを発した。

 

 




ざわ…   ざわ…
( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれてアリガトウございます。

■朝4時頃に書き上げたよ。あとのこまけぇことは活動報告にでも書くべ。


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17話 歴史の修正力

 

 

【空島スカイピア】

 

 

 ルーミアが月に向かった後、空島に残ったルーミアの手下たちは彼女の命令を受けて(ダイアル)の収集や島雲の加工、さらにそれらを使った実験及び開発等を行い、その成果の一つとして彼らは船体が島雲でできたダイアル船を製作した。

 

 その後、完成したダイアル船の試運転を行うため、テストパイロットに選ばれた手下たちはバージェスのビブルカードの一部を持って空島の外を飛び出す。もっとも安全のためそんな遠く離れるわけではなく、彼らの目と鼻の先には空島の外周が見える。

 

 それから空を漂うこと十数分ほど時間が経った頃か、彼らは目的の一つである空を舞うニュース・クーの群れと遭遇し新聞を購読、地上の情報を得た。

 

 

「「 …………28歳 だと? 」」

 

 

 その購読した新聞から彼らは自分たちの船長であるルーミアの正体を知ることとなった。ポカンとした表情で呆けたのも束の間、彼らはすぐさま急いで新聞を持ち帰り、その情報は瞬く間にスカイピアの隅々にまで駆け巡った。

 

 

 そしてそれから数日後の今日、ルーミアが月からの帰還を果たして神の島(アッパーヤード)を大地とした空島スカイピアの地に舞い戻った。

 

 

「…………28歳?」

 

 

 ルーミア一味が使っているテント内にて、困惑した表情でルーミアは穴が空くほど新聞を食い入るようにじっと見ていた。

 

 

「ウィーハッハッハッハァ~!! お嬢の歳は確か 38 だった気がするんだが、違ったのか?」

 

……38だと、マーシャル・D・ティーチと同じ年齢になり、怪しまれる可能性がある。白ひげ海賊団の誰かが考慮したのだろう…… 天竜人のことも考えれば、船長はこれを機会にエドワード・ルーミアと名乗った方がいいかもしれない……

 

 

 愉快そうに笑うバージェスと、たどたどしい話し方で進言を述べるドクQ。ルーミアは彼ら二人と別の地にいる「ラフィット」「オーガー」には海賊団を立ち上げる時に自分の経緯を話してあった。それ故の会話である。

 

 

「とりあえずウォーターセブンに行くぞ! 急いで行けば『麦わらの一味』に追い付けるかもしれないし、その時に腹いせにボコればいい!!」

 

「お? リベンジするのか?」

 

……麦わらの一味を倒すのは賛同できないが、ラフィットオーガーと合流すべきだな…… 

 

 

 かくしてルーミアは出航の準備に取り掛かる。……もっとも、ルーミアがした行動といえば、必要な荷物を彼女が生み出す闇の中にしまいこむだけなので、ほとんど時間がかからず手ぶら状態なのだが……

 

 

 

 

「本気でそれで行くのか?」

 

 

 あきれ気味で尋ねるのはワイパー。いろいろ思うことがあるのか険しい表情を見せている。彼はルーミアたちがスカイピアを出発するということで見送りに来た者のうちの一人である。ワイパーと同じく思ったのか他の面子も鷹揚に頷いてみせる。

 

 雲の果て(クラウドエンド)の出口付近にある建物。そこには小さな島雲の上に小舟──ダイアル船を乗せた乗り物が海雲の上をぷかぷかと浮いていた。

 

 

「神官どもにやった『雲流しの刑』と大差ないんだが、本当にいいんだな?」

 

「心配性だな、お前は。安心しろ、いざという時は『闇』の中にしまいこんだ『船』に二人を押し込んで飛び降りる」

 

「……わかった。もういい、お前たちの好きにしろ」

 

「わはははー、そうさせてもらおー」

 

 

 そんな短いやり取りをした後、ルーミアたちは空島をあとにする。そして別れ際にルーミアは両手をメガホンの形にしてワイパーに声をかける。

 

 

「そのうち『モンブラン・ノーランド』の子孫を連れてくるから黄金の鐘を見せてやれ!!」

 

 

 そのルーミアの言葉にワイパーたちは声を揃えて応えた。

 

 

「「 当たり前だ!!!!! 」」

 

 

 その後、お互いの姿が見えなくなるまで両者は大手を振り、誰かが鳴らしたであろう黄金の鐘の音が耳に入った。

 

 

 

 

【ウォーターセブン】

 

 

 正しくは『ウォーターセブン』と“司法の島”と呼ばれている『エニエス・ロビー』を結ぶ線路の上。その線路の上を二人の男が並んでウォーターセブンに向かって進んでいた。後ろ手で手枷を嵌められた上に金属の鎖で縛られた一人の大男を引き摺りながら……

 

 

「……何も生かしたままウォーターセブンに持っていく必要もあるまい。それこそエニエス・ロビーで殺害して能力を奪っても良かったのではないか?」

 

 

 金属の鎖で縛られた男──気絶したブルーノから伸びている鎖の端を肩に背負いながらオーガーは隣を歩くラフィットに声をかける。

 

 

「……ドアドアの実の能力は『インペルダウン』。もしかしたら『聖地マリージョア』の侵入に必要になるかもしれませんので、そうなれば確実に入手すべきでしょう」

 

「ふむ。一理あるが、まあよい。全ては運命の赴くままにだ」

 

「ええ、それにエニエス・ロビーにあった機密文書『()()()()()』に関する情報を後ろの方から念入りに聞き出す必要もありますので、ホホホホホ」

 

「ここまでは想定通りだが、過去改変した故に歴史の修正力が働いたのか、少し見極めるべきかもしれぬな……」

 

 

 ウォーターセブンの島の輪郭が見える距離まで近づくと、二人を迎えに来た小舟が静かに彼らに近づいていく。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■ここまで読んでくれてサンキュー。

■朝の4時半ごろに書き上げた。

■あとの細かいことは活動報告に書くべ。

■指摘を受けて「当然だ」→「当たり前だ」に変更よん。
 文字数もちょっと増えて皆ハッピー。


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18話 ルーミア再び

 

 

【ウォーターセブン】

 

 

 ラフィットとオーガーが手下の名義で借りている貸倉庫。その屋内にて今現在、ルーミアを中心に一味の主要人物たちが思い思いの姿勢で寛いでいた。その室内に淡々とした少女の、ルーミアの声が聞こえてくる。

 

 

「──『白ひげ海賊団』との小競り合いを何度も起こし、

 大渦蜘蛛海賊団船長『スクアード』の手引きとスパイ行為。

 『ゲッコー・モリア』による2番船船員の()の強奪及び船員の捕縛。

 『CP9』による『ルーミア』を、()を誘拐?

 ……それから、それらをエサにしてバナロ島に『エース』を誘き寄せ、そこで『ゲッコー・モリア』と『ドフラミンゴ』が目標を捕縛。……バナロ島の決闘? 私の代わりか? こいつらが? それにしたって私を誘拐って……」

 

 

 倉庫にある木箱の一つにルーミアは腰掛け、手持ち無沙汰になっている両足を交互にげしげしと木箱に踵をぶつけては眉間にシワを寄せながら紙の束を一枚一枚捲っていく。

 

 

「ええ、命知らずにも今は亡きブルーノとか仰る酒場の店主は──“プルトンの設計図”を入手した後にCP9総出で姫を誘拐する予定だった。──と親切に教えてくれましたよ。ホホホホホ」

 

……その前に“麦わらの一味”に壊滅させられたというわけか、運のないやつらだ……

 

「エニエス・ロビーでのCP9と麦わらの一味の衝突と壊滅。バナロ島でのエースの捕縛は避けられない運命だったのだろう。そのおかげで我々はここにいるがな……」

 

「ウィ~ハッハッハァー!! ()の麦わらの一味を倒せねぇやつらが俺たちを捕まえるつもりだったのか? 舐められたもんだな!!」

 

 

 ルーミアを除いたメンバーがそう口々に言いながらテーブルの上に視線を向ける。そこには唐草模様の実が皿の上に無造作に置かれていた。ブルーノから情報を聞き出した後、彼を殺害して手に入れたものだ。

 

 

「それでこの中の誰が()()を食べるのだ?」

 

 

 問うオーガーにバージェスはづかづかと近づき無言で悪魔の実を手に取ると……

 

 

「どっちみち、お嬢と一緒にインペルダウンに潜り込んで暴れるなら、ある程度戦闘力がある奴が食うべきだろ?」

 

 

 そう言って丸齧り、そのまま飲み込んで見せる。しかし、あまりの不味さなのか、途中でむせて咳き込む。それを満足した顔つきでルーミアが眺めた後、おもむろに出口の方へと赴き、他のメンバーも彼女の跡を追う形でついていく。

 

 

「“プルトンの設計図”と“ドアドアの実”は手に入った。せっかくここに来たんだ。市長に挨拶しに行こうか? 偉大なるアイスバーグ氏になー、わはははははー」

 

 

 

 

 造船島1番ドックの奥、CP9が起こした事件で火事になって焼け落ちたガレーラカンパニー本社兼アイスバーグ自宅。その跡地に仮設本社が建てられており、そこに船を失った麦わらの一味たちが滞在していた。

 

 そこへ道中、立ち塞がる人間を蹴散らし、扉を蹴破ってルーミアたちが現れた。なおかつ「わはははー」と哄笑を上げながら出入口を塞ぐように立ち並ぶ。

 

 

「久しぶりだなー、麦わらの! エニエス・ロビーでたいそう暴れたみたいだな! わはははー」

 

 

 腕を左右に広げた格好でテーブルに陣取って手掴みで食事しているルフィにルーミアは声をかける。そのすぐ側にある丸テーブルには突っ伏せているナミと料理を運んでいるサンジの姿もある。ナミとサンジは突然現れたルーミアに驚くが、ルフィは相変わらず食事の手を止めない、どころか鼻ちょうちんを作って爆睡していた。

 

 

「あ、ルーミア? 久しぶりー」

「悪いなルーミアちゃん、ルフィは今寝たまま食ってるんだ」

 

 

 声に張り合いのないナミに、申し訳なさそうに説明するサンジ。ルーミアたちを止めるためにやって来たであろうガレーラカンパニーの社員とおぼしき人間たちは彼らのその様子から「なんだ、知り合いだったのか」と引き返していく。

 

 

「姫に対して無礼ですが、なんとも器用な男ですね、ホホホホホ」

「ウィ~ハッハッハァー、信じられねぇがホントに寝てやがるぜコイツ。どうする、お嬢?」

 

 

 ルフィをつつきながら尋ねるバージェスにルーミアは一足でテーブルを飛び越え、未だ眠りこけるルフィの頭に()()()()()()()を叩き込む。

 

 

い!? (いて)ェ~~~!!!!

 

 

 覇気を纏った一撃に思わずのたうち回るルフィ。サンジとナミはルフィに声をかけるが、以前その攻撃を見たことがあったせいか、さほど驚きはしない。

 

 

「とりあえず起きろ。それとメンバー全員を集めろ。特に『ニコ・ロビン』。月で見つけた遺跡を見せてやる。写真でよければだがな」

 

 

 テーブルの上で偉そうに腕を組みながらルーミアはルフィに言った。

 

 

 

 

 それからウソップを除いた麦わらの一味とアイスバーグ、さらに双子の姉妹を連れたフランキーが一堂に会した。途中、ラフィットとオーガーを見たフランキーが逆上し彼ら二人に食って掛かる場面があったが周囲にいた人間が慌てて彼をおさえて落ち着かせて、今は大人しくしている。もっとも剣呑な雰囲気を隠すことなく放っているが……

 

 

 そんな空気の中をルーミアは楽し気な顔で尋ねる。

 

 

「トムの無念を少しは晴らせるかもしれないと言ったら、

 お前ら協力するか?」

 

 

 問われた一同は一瞬なんのことかと、間の抜けた声が遠慮なしに漏れる。

 

 

「モンブラン・ノーランドみたいな絵本を作るのさ、もっともいろいろと()()()()()()けどなー?」

 

 

 にんまりと言うルーミアにルフィが口を挟んでくる。

 

 

「いやそんなことよりも月の遺跡を見せてくれよ、すっげー気になる」

 

 

 恩師であるトムのことをそんなこと呼ばわりされて元社員の二人が複雑な表情を見せ、麦わらの一味はうんうんと頷き、その反応にルーミアは「えー」と不平を言うが、すぐにあっけらかんとした口調で……

 

 

いいよー

 

「「 いいのかよ 」」

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■早朝5時にできた……


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19話 悪意

 

 

 テーブルの上に十数枚の写真が乱雑に散らばっている。ルーミアが“月”で撮ったものだ。

 

 月面にいた異様な風体の宇宙海賊と彼らが使っている機械や乗り物。その残骸。次いで月の遺跡内部を写したもの。最後には二枚の壁画。……と、それで全部であり、ルーミアが月で出会った機械仕掛けの小さな兵士が写っているものは一切無い。彼女が意図的に隠しているようだ。

 

 

「この壁画に描かれている人物の羽って、スカイピアの人たちと一緒よね。空島の人たちは月の末裔ってことかしら? 壁画を見るかぎり、彼らは何かしらの理由があって月から降りたみたいだけど……」

 

 

 壁画が写っている写真をまじまじと見つめるロビン。思案に耽っているのか、アゴに手を当てた姿勢で立ち止まっている。

 

 

「俺としてはこの珍妙な格好をした連中が使っている道具に興味があるんだが、残骸とかはねぇのか? 写真だけでも、えらく高度な技術が使われているのがビンビン伝わってくるぜ。こいつらの技術をものにできれば、船を作るときに組み込みてぇんだが……」

 

 

 技術屋として気になるのか、フランキーとアイスバーグが宇宙海賊が使っていた機械や残骸等を熱心に見ていた。途中、自分が言った「船」という言葉で思い出したのか、フランキーはその場にいた麦わらの一味を相手に「船を作らせてくれ」と頼み込み、彼らは……というより船長であるルフィが快く承諾、その後、建物を出ようと扉をくぐるときにルーミアは声をかけた。

 

 

「うちの『ラフィット』と『オーガー』があなたたちをボコったことはもういいのか?」

 

 

 ……と、それに対してフランキーはこう応えた。

 

 

「先にケンカをふっかけたのは俺たちだ。無様に負けたうえにぐちぐち言うようなカッコ悪いマネができるかってんだ」

 

 

 そう捲し立てるように言うと、双子の姉妹を連れて早足で建物を出ていく。喧しい音を立てながら遠ざかっていく彼らの後ろ姿を眺めた後、今度はゾロがルーミアに対して尋ねた。

 

 

「──んで、今回は何を企んでいるんだ? ……また、ロビンを勧誘しに来たのか? ん?」

 

 

 ふてぶてしい態度で問うゾロにサンジが「おい、マリモヘッド。ルーミアちゃんに失礼だろ」と突っかかるも改める素振りは見せない。逆に「てめぇは黙ってろ」と苛立ちが混じった口調で返し、ナミもまたサンジに対して「サンジ君は黙ってて」と言う始末。他の面子も空島であった出来事を思い出したのか表情を引き締める。

 

 

「わはははー。安心しろ。今回は“アイスバーグ”氏に用があって来ただけだ」

 

 

 そう言うと懐から一つの貝殻を取り出し、その貝の殻頂を押す。

 

 

『……ジャヤ島を起点に(ダイアル)の養殖を始めている。そこで育てた“ダイアル”を買い取る気はないか?』

 

 

 貝から流れたのはルーミアの声。

 

 

「ンマー。声を録音し、再生できるのか? ちょっと見せてくれ」

 

 

 地上では物珍しい品物に思わず飛び付くアイスバーグ。麦わらの一味は「何で“ダイアル”を?」と言わんばかりに首をかしげる。

 

 ルーミアはアイスバーグの反応ににんまりと笑うと、能力を行使して足下に闇を展開、次いで身を屈んで闇の中に片手を突っ込み、そこから一抱えほどの風呂敷を取り出す。そして机の上で広げて中身を見せる。そこには数字の焼き印がつけられた“ダイアル”とおぼしき貝が幾つもあった。

 

 

「とりあえず空島で手に入る“ダイアル”を一通り揃えてきた。詳しいことはこの紙に書いてある」

 

 

 言って、紙の束をアイスバーグに手渡す。そこに書かれているのは“ダイアル”の種類とその番号。そして“ダイアル”のそれぞれの特性である。

 

 

「もっとも“ダイアル”の養殖の実験は始めたばかりだから数は揃えてないけどなー。成功したら、こっちから連絡を入れるか、人を送る。……最悪、失敗した場合は空島から仕入れるよ」

 

 

 視線を上に向けつつ、軽く曲げた右腕の人差し指で頭上を指差して空島を示すルーミア。

 

 

「……それじゃあ、用件は済ましたし、お前たちを捕まえに来た海軍と鉢合わせになると面倒だから帰る。じゃあなー」

 

 

 ……と大手を振って、そそくさと立ち去ろうとするが、さらりと言った海軍という言葉にナミがルーミアの肩を掴んで引き止め、彼女の顔を自分の方に向けると至近距離で詰問する。

 

 

「ちょっとルーミア!? 海軍ってどういうこと!?」

 

「海軍の重要拠点の一つ、エニエス・ロビーを落とされたんだ。追っ手が来るのは当然でしょ?」

 

 

 至極当然にきょとんとした表情で答えるルーミアにナミは思わず頭を抱えて蹲る。そんな彼女を憐れんだのか、ルーミアは提案してみる。

 

 

「この街にいる間、匿ってもらったら? 一応、アイスバーグ氏を助けた英雄だし、受け入れてもらえるんじゃないかなー?」

 

「お願いアイスバーグさん!! 海軍がいる間だけでいいから匿って!!!!」

 

「ンマー、助けてもらった手前だし、そういう事情なら……」

 

「ありがとう!! アイスバーグさん!!!!」

 

  

 感極まったのか、涙を流しながら感謝の言葉を述べるナミ。そこへ息を切らせた伝令が建物の中へ入ってきた。

 

 

「アイスバーグさん大変です! 海軍が来ました!!!!」

 

「「 もう来てんのかよ!!!? 」」

 

 

 

 

 ウォーターセブンの外れにある海岸、陸地の上の何もない空中に突然、丸い円の切れ目が入り……扉のように開き、そこからバージェスを先頭に男たちがぞろぞろと出ていき、最後にルーミアが扉をくぐって地面に両足で着地する。

 

 彼らはドアドアの実の能力を使用して仮設本社からここまで、誰にも見つからずに辿り着いたのである。

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァー!! ドアドアの実の能力がここまで便利だとは思わなかったぜ!!!!」

 

……ああ、これを手にした俺たちは運がいい……

 

「ホホホホホ、実に隠密向きの能力ですね」

 

「ふむ。確かに海軍が来ているな、それも『海軍の英雄』だ」

 

 

 オーガーの視線の先には、猛犬を模した船首を持つ海軍の船が港に停泊していた。

 

 

「……『ガープ』が来たとなると、そろそろ『バナロ島の決闘』かなー? まー、どちらにしろ次の目的地は『シャボンディ諸島』だ。ドフラミンゴが『人間屋(ヒューマン・ショップ)』を切り捨てるなら、貰うとしようじゃないか? そんでそこの支配人をミョスガルド聖にやってもらうとしよう。わはははー」

 

 

 

 

【バナロ島】

 

 

「俺の仲間は無事なんだろうな……!!!!

 

 

 忌々しげに家屋の屋根に立つ二人の人物を凝視する青年──エース。

 

 

「キシシシシシ! まぬけが本気で来やがった!!」

 

「フッフッフッフ、ありがたい。お前が仲間を大切にするやつで助かったよ」

 

 

 エースを見下す二人は七武海の『ゲッコー・モリア』と『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』だった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■朝の6時半にできた。

■GWは無理そう。すまん。いちおうガンバる。やれるだけ、やってみる。

■ここまで読んでくれて、ありがとう。


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バナロ島の決闘 “ 火拳 ” vs “ 七武海 ”
20話 オモチャと影


 

 

 バナロ島にある町の大通り。普段は人で溢れかえっているであろうその場所は今は閑散としており、エースと対峙している七武海の二人──モリアとドフラミンゴを除いて人の姿はどこにも見当たらない。

 

 

「キシシシシシッ!! 生きている仲間がいると面倒だな? そうは思わないか?」

 

 

 地面にあるモリアの影から無数の丸い体躯をしたコウモリが生み出され、それが大口を開いてエースへと襲いかかり、そこへ……

 

 

「フッフッフッフ。どうした? 『火拳のエース』? 自慢の“火”は見せないのか? ……ああ、どこかの()()()()()()()()()()が建物ごと火に焼かれたら、何のために助けに来たのか分からなくなるよなァ?」

 

 

 そう言いながらコウモリもろともエースに向けてドフラミンゴが指先から出した“糸”を弾丸のように飛ばしてくる。さらに“糸”でできた自分そっくりの人形を操ってぶつけてくる。

 

 

「……ああ、そうそう。建物は燃えやすい木造だから気をつけてくれ。フッフッフッフ」

 

 

 取って付けたような、わざとらしい言い方で警告を促すドフラミンゴにエースは舌打ちを一つ打って地面を転がりながら躱す。その後も二人の七武海は遠距離攻撃を主体に仕掛け、時折モリアがエースの影を切り取ろうと己の影と場所を入れ替えて接近するが、そのたびにエースは己の体を流動体に変化させ、あるいは火が放つ閃光で自分の影を掻き消して回避してみせる。

 

 

「ちぃっ! キリがねえ! おい、ドフラミンゴ! とっとと()()()()()を盾にして、エースにぶつけろ!!」

 

「俺に命令するなモリア。……だが面倒なのも事実だ」

 

 

 悪態を吐くモリアにしかめっ面をするドフラミンゴ。しかしモリアと同じく煩わらしく思ったのか、片手を前に、まるで人形を操るかのような動きを見せると……

 

 

「……さあ、感動のご対面だ。フッフッフッフ」

 

 

 指の動きと連動するように周囲の建物の中から幾つもの人影が飛び出し、そのままエースへと武器を手に襲いかかる。

 

 

 そして……

 

 

 後ろ手で手錠を嵌められ地面に俯せになって倒れているエース。その周囲には武装した男たちが涙を流しながら立っている。彼らはみなエースを船長とした『スペード海賊団』の乗組員であり、ドフラミンゴが能力で操ってエースに海楼石を嵌めさせたのである。

 

 

「キシシシシシ。手こずらせやがって、おいドフラミンゴ! さっさと始めろ!!」

 

「堪え性のないやつだ。……とはいえ、七武海二人を相手にここまで粘るとはな、さすがは白ひげ海賊団の隊長……といったところか? フッフッフッフ」

 

 

 息を切らして地べたに座って両足を伸ばしているモリアと、モリアとは対称にまだ余裕を見せるドフラミンゴ。やがてドフラミンゴの下に大男を連れた少女が現れ、その少女に命令を下す。

 

 

「シュガー…… ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 シュガーと呼ばれた少女は二つ返事で頷くと次々に掌で船員を軽く触れてオモチャに変えていき、ほどなくして全員がオモチャに変わった。

 

 

「フッフッフッフ。なぜこんな場所にオモチャがあるのか、今となっちゃ俺もお前も分かっちゃいないだろうが、大方この俺と敵対していたお前の味方なんだろう。……オモチャにされると本人を除いて記憶から忘れられてしまう。……それがシュガーの能力だ」

 

 

 そしてエースの下までゆったりと歩いて近づき被っている帽子をはねのけ、髪を無造作に掴んで持ち上げる。

 

 

「海賊王ゴール・D・ロジャー。ろくでもない父親を持ってしまったお前に同情して選択肢をくれてやろう。オモチャにされるが生き残れる未来と、このまま海軍に引き渡されて殺される未来。……さあ、好きな方を選べ」

 

 

 薄ら笑いを浮かべながら問うドフラミンゴに対してエースは睨みつけながら叫ぶ。

 

 

「俺の親父は白ひげだ!! 親父に忘れられるぐらいなら!! 死んだ方がマシだ!!!!」

  

 

 そう吼えるエースにドフラミンゴは「フッフッフッフ」と片手を顔に当てて一頻り笑った後、

 

 

「そうか、それは残念だ。……まあ、お前ならそう答えるだろうとは思っていたけどな」

 

 

 それから電伝虫でエース捕縛の報を受けた海軍が現場に急行、エースを連行していき、オモチャにされたスペード海賊団のクルーは……

 

 

「あのエースに味方をした、ということはこのガラクタどもは元々は『白ひげ海賊団』のメンバーなんだろ? さぞかし活きのいいゾンビが出来上がるぜ! キシシシシシッ!」

 

 

 ……と、モリアに影を切り取られ、あげく労働力としてドフラミンゴが治める『ドレスローザ』へと連れていかれた。

 

 

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 品位を感じさせるレストランの一室。そこに礼服で身だしなみを整えたルーミア一味と黒のドレスで着飾ったルーミアが席に着いていた。

 

 やがて出入口の扉が開かれ、目的の人物が現れたのを確認したルーミアは口を開く。

 

 

「ようこそ、ドンキホーテ・ミョスガルド聖。あなたがここに来たということは……今は亡きオトヒメ王妃に諭され“人間”にして貰った──と考えていいのかなー?」

 

 

 テーブルに両ひじをつけ、手の甲にアゴを乗せた少女を見てミョスガルドは眉をひそめる。理由の一つとして、とてもじゃないが28歳には見えないからだ。それと……

 

 

「──魚人島にいる魚人、および人魚を全員あなたの“奴隷”にしてしまえば……ある意味、手出しできにくい状況になると思わない?」

 

 

 聖地マリージョアにふらりと現れたラフィット。前もって彼からそんな提案を聞かされたからだ。

 

  




( ´・ω・)にゃもし。

■仕事の合間に執筆しました。土曜日、過ぎちゃったけど今のところ週一投稿。

■とりあえず文字を埋めた感じ、誤字脱字おかしな表現ありましたら報告をお願いします。

■GW10日もいらん。3日で十分じゃろ。振替休日、考えた人を地獄に叩き落としたい。

■拙者、働きたくないでゴザル。


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→ “ シャボンディ諸島 ” 麦わら海賊団 船員 消失
21話 ドンキホーテ・ミョスガルド聖


 

 

無理だ

 

 

 魚人島の住民全員の奴隷化を提案するルーミアにミョスガルドは力強く否定する。

 

 

「──他の天竜人、それに世界政府が黙っているわけがない。必ず何らかの措置を講じてくる」

 

 

 キッパリとそう言い放つミョスガルド。しかし、ルーミアにとってその回答は予想の範疇だったのか、即座に次の質問に移る。

 

 

「──それじゃあー、一部の王族が特定の場所、例えば『世界会議(レヴェリー)』が行われる()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは……? 無論、『世界会議(レヴェリー)』が終われば奴隷から解放させる。それは可能かなー?」

 

 

 問われるミョスガルド。その質問は予想外だったのだろうか返答に窮する。それでもたどたどしくも言葉を返す。

 

 

「不可能ではない。……しかし、前例がない。正直どうなるのか、予測がつかない」

 

「……ふむふむ。じゃあ、海軍と相談してみるのは? 連中だって『世界会議(レヴェリー)』中のマリージョアで騒ぎを起こしたくないだろうし……」

 

 

 腕を組みつつ、こくこくと頷くルーミア。それからも対話は滞りなく進み、やがて……

 

 

(──彼の魚人島は『白ひげ』の縄張り。その娘が魚人島を気にかけるのは分かる。しかし……)

 

 

「エドワード・ルーミア。君の目的は一体……? いや、何を欲している?」

 

 

 王族の身の安全。魚人島に利益になる話だが、話を持ってきたルーミアにとってメリットになる要素が思い浮かばないゆえにミョスガルドは尋ねた。

 

 

()()()()()()()()()海軍に『王下七武海』の推奨をしてほしい。幸い今は空きが一つあるからなー、わはははははー」

 

()()()()……?」

 

「んー、あとで伝えるよ。今は七武海の称号は邪魔にしかならないと思うからなー。七武海に関しては無理そうなら、やらなくてもいいよ。ドンキホーテ・ミョスガルド聖──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが今回の目的だしなー……」

 

 

 ドンキホーテ・ミョスガルド。奴隷を一人も持っていないことから他の天竜人から奇人扱いされている。

 

 そのことからミョスガルドはルーミアが他の奴隷を持つ天竜人よりは幾分話の通じる奴隷を持たない自分の下にラフィットを送り、こうして話し合いの場を設けたのだろう、と考えた。何しろ奴隷を一人も持っていないのだから、問答無用で捕まって奴隷にされる可能性はない、と断定できないがそれでも低いと言えよう。

 

 そして『王下七武海』への推奨も天竜人が持つ“権力”ならば不可能ではない。ルーミアがそれを欲しているのならば、こうして対面する機会を作ったのにも納得できる。問題は実力があるかどうかだが……

 

 

(──見た目と実年齢が合っていない。なんともやりにくい相手だ……)

 

 

 向かい合って座っているルーミアを見てそんなことを思っているミョスガルド。やがてルーミアは思い出したかのように胸の前で柏手を打ち……

 

 

「……そうそう、そろそろこのシャボンディ諸島に海賊たちが集まって来る頃だし、どうせだから見に行かない? 今回、億越えの海賊が11人もいるからなー。それに()()()()()()に手を出すバカはいないから大丈夫だよね?」

 

 

 目をキラキラに輝かせてそんなことを述べるルーミアにミョスガルドは苦笑いを浮かべた。何しろ今この場には奴隷を持たないせいで奇人と言われているが、天竜人の一人がここにいるのだから……

 

 

 そして、シャボンディ諸島に、後の世に“最悪の世代”と呼ばれる海賊たちが集まり始め、その中には麦わらのルフィを船長とした『麦わらの一味』の姿があった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■すまねぇ、今回は短かった。

■GW10連勤務の疲れが1日で消えるわけがねぇ……


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22話 オークション会場

  

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 その正体は79本もの巨大なマングローブの集合体であり、そのため島特有の磁場が発生しない特殊な島。各々の樹木にはそれぞれ番号が付けられており、区画としても使われている。

 

 そのうちの一つ「41GR」という番号が付けられたマングローブの、一本一本が船よりも巨大な根の一つに一隻の船が横付けにして停泊していた。特徴的な顔をしたライオンの船首を持った船サウザンド・サニー号。麦わらの一味の船である。

 

 その船──サニー号を遠くからこっそりと覗き見している黒服の一団がいる。その中のリーダー格の一人が望遠鏡で甲板にいる麦わらの一味を観察しつつ電伝虫で連絡を取っていた。

 

 

 

 

人間屋(ヒューマンショップ)

 

 

 商品である奴隷を見せるための舞台と、扇状に広がっている観客席。その観客席の一角から、ややぐぐもった不明瞭な男の声が周囲の迷惑なんぞ気に止めずに聞こえてくる。

 

 

『──ボス。「41番GR(グローブ)」にいる『麦わらの一味』に動きがあります。巨大なトビウオに乗った一団が現れました。例の人攫い屋です……』

 

 

 会場内の出入口付近の席を陣取っている正装姿のルーミア一行とミョスガルド。席の中央、ミョスガルドの隣に座っているルーミアの手元には電伝虫の受話器が握られており、そこから41番GRで麦わらの一味を見張っている男の声が流れてくる。

 

 

「ウィーハッハッハァ~~~!! 麦わらの連中がようやくここに来るか!?」

 

……仲間を攫われたのか? 運のない連中だ……

 

「そのおかげで連中は()()に立ち寄らざる得ない状況になった。そういう巡り合わせなのだろう」

 

「ホホホホホ。彼らの中に人魚らしき女性がいましたから攫われたのはその女性かと……」

 

 

 受話器から流れてくる麦わらの一味の情報に黒服姿の船員が好き勝手に言い放ち、周囲にいた人間たちは露骨に怪訝な顔をする。そして、船員の会話から聞き取れたのか、あちこちで顔を見合わせながら「麦わらの一味」「人魚」という言葉を交えたひそひそ話を目にするようになる。

 

 彼らがここ──人間屋(ヒューマンショップ)にやって来たのはオークションが始まるほんの少し前、天竜人であるミョスガルドを先頭にルーミア一行を連れてやって来たのである。

 

 天竜人が少女を伴ってオークション会場に足を踏み入れる。しかも白ひげの娘と言われている少女を、だ。

 

 当然、オークション会場は蜂の巣をつついたような騒ぎが起こった。もっとも当人たちはざわつく会場など尻目にさっさと席に着いたが……

 

 

 

 

──人間屋(ヒューマンショップ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を起こせば、乗っ取りやすくなると思わない?

 

 

 ここに来る道中、隣を歩くルーミアがそうミョスガルドに尋ねた。

 

 

──人身売買は禁止されている。でも犯罪の()()()の一端にはなってると思うなー。一向に減らない海賊対策としては、ね? それに全面的に禁止したら他の人間が黙ってるわけがない。

 

 

──海賊等の犯罪者。賭場での破産者。どーしてもお金が欲しい場合として自ら奴隷になる場合とか……

 

 

──前者はともかく後者には「()()()()()()()()()()」権利と、奴隷を買った人間があまりにも酷い場合はこっちで買い戻せるようにできれば……

 

 

──ようするに奴隷の地位と環境を向上することが目的だな。

 

 

──人攫いからの売買を禁止にする。それだけでも不幸な人間は減らせる。

 

 

──オーナーが()()()だったら面と向かって文句言うわけにもいかないと思わない?

 

 

 口元に人差し指を当てつつ、そう得意気に語るルーミア。彼女の言わんとしていることに嫌でも察したミョスガルドは少々辟易していた。

 

 

(──だが、不幸に捕まって奴隷にされてしまった無実の人間を減らせるのも事実。しかし、本当にそう上手くいくものなのか……?)

 

 

 麦わらの一味が連れている人魚。その人魚が人攫いに誘拐され、人魚を助けるために麦わらの一味がここにやって来る。……そうルーミアから聞かされたミョスガルド。

 

 

「麦わらの一味がやって来たら、こっちへ来るよう手配してくれ」

 

 

 近くにいた従業員の一人にそう告げるミョスガルド。慌てた従業員が会場内を早歩きで移動して舞台の裏へと消えていく。そして徐々に人が増えていく会場内。その中には同じ天竜人であるロズワードが現れ、ミョスガルドに対して如何にも侮蔑の含んだ視線を投げて……

 

 

「ミョスガルド殿は過去の事故で狂ってしまわれて心配していたが、完治なされたようでなによりだえ」

 

 

 ……と娘と一緒にイヤミを言う場面があったが、ミョスガルドはさして気にせずに時候の挨拶をするのみ。ロズワードもそれ以上のことはせずにさっさとVIP席へと着く。

 

 そして、会場の扉を開いて麦わらの一味であるナミがやけに自信のある表情を浮かべながら現れた。

 

 

 「新世界の怪物」あるいは「黄金帝」と呼ばれている『ギルド・テゾーロ』と一緒に……

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■突然、過ぎるかな? でも前々から出そうと思っていたんだ。

■朝の5時頃に出来た。

■あとは活動報告に書くよん。


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23話 「黄金帝」ギルド・テゾーロ

 

 

 「黄金帝」ギルド・テゾーロ。

 

 彼が「マーシャル・D・ティーチ」死亡の報せを知った時、彼は酷く狼狽した。何しろ「マーシャル・D・ティーチ」はテゾーロが天竜人の奴隷にされるとこを救ってくれた恩人なのだから。……それにその強さも十分知っている。

 

 ティーチはそう簡単に死ぬような人間ではない。もしや海軍や天竜人が関係しているのでは? ……と考えたテゾーロは事の真相を確かめるべく「白ひげ」の下へと向かうことを決意する。

 

 ……が、どういうわけかその頃にはすでに海軍が白ひげに頻繁にちょっかいをかけており、白ひげの周辺一帯は危険地帯と化していた。さらに間の悪いことに同じ四皇の一人「赤髪のシャンクス」も動き出しており、白ひげとの接触は困難を極まっていた。

 

 「新世界の怪物」とも言われているテゾーロといえど、海軍を敵に回すことも、ましてやシャンクスの邪魔をしたいとも思わない。

 

 そこで彼は白ひげの娘と言われている「エドワード・ルーミア」と、彼女と面識があり、なおかつティーチと同じく「D」の称号を持った「モンキー・D・ルフィ」に目をつけた。

 

 

「グラグラの実の能力を持った最強の男“白ひげ”が負ける光景は正直、思い浮かばない。……ならば、海軍との小競り合いが終わった後にでも会いに行けばいい」

 

 

 ……と考え、数名の部下とともにテゾーロはシャボンディ諸島へと向かうことにした。

 

 

 

 

【シャボンディ諸島──41番GR(グローブ)

 

 

 島を構成する巨大なマングローブの根の一本に船を横付けにして停泊している「麦わらの一味」たち。意気揚々と島に降り立つ彼らの下に一人の男──テゾーロが近づき、警戒を露にする彼らに構わず一味の船長であるルフィに声をかける。

 

 

「──お前が『モンキー・D・ルフィ』か……?」

 

「ん? ああ、そうだけど?」

 

「白ひげの娘『エドワード・ルーミア』について聞きたいんだが……」

 

「ああ、いいぞ」

 

「……………………君はもう少し考えて行動した方がいい」

 

 

 船員に一言も相談せずにあっさりと承諾するルフィにテゾーロは暫し絶句し、思わず額に掌を当てる。こんな船長でよくもまあ、ここ(シャボンディ諸島)まで来れたものだと。ともに行動している船員もまた船長であるルフィにあきれつつも「ルフィだし…」と半ば諦め気味ではあるが納得している様子である。それでも何名かは鋭い視線をテゾーロに向けている。

 

 

「無論、タダとは言わない。……そうだな、ここでの滞在費用はこちらで全額負担するし、腕のいいコーティング職人を手配しよう」

 

「いや、別にいいよ。職人はハチに頼むし、ルーミアのこともそれほど知ってるわけじゃねぇから」

 

「──だが、君たちは一時期ルーミアたちと一緒に“空島”に行ったのではないのか? 私はその情報が欲しいんだ」

 

「ん? なんでだ?」

 

「私の恩人である『マーシャル・D・ティーチ』は20年以上前から“空島”の存在を証明することで『モンブラン・ノーランド』の無実を晴らそうとしていた」

  

 

 

 

【シャボンディ諸島──13番GR(グローブ)

 

 

 その後、サンジ、フランキー、ウソップの三人を船に残してタコの魚人であるハチの案内のもと、テゾーロを含む一同はシャッキーが経営しているバーへと移動、そこでテゾーロから『ティーチ』に関する詳しい話を聞かされ、ティーチがシャボンディ諸島で起こした一連の事件、天竜人に危害を加えたこと、さらにテゾーロ本人がその時の事件の当事者の一人ということに驚かされた。

 

 

「考えたものね。いくら海軍でもたった一人の人間のために“四皇”に手を出すわけにはいかないし、割に合わないものね。私もクロコダイルじゃなくて白ひげの傘下に入るべきだったかしら?」

 

 

 語られるティーチの武勇伝に感嘆の声を上げるロビン。なおもテゾーロはティーチに関する話を語っていき、その当時からジャヤ島の一部が突き上げる海流(ノックアップストリーム)で空に飛ばされたと考えていたティーチに度肝を抜かれる。

 

 

「他にも賞金稼ぎをする傍ら論文なんてのも書いていたよ。私も何度か見させてもらった。その一つが……義手、義足に悪魔の実を食わせて限りなく生身に近い義肢を作る。そのための動物(ゾオン)系の悪魔の実の栽培。四肢を失った人間に笑顔を、という意味を込めて『SMILE(スマイル) 0ベリー』と名付けられた。……もっとも家宅捜査の際にそれが書かれた用紙は海軍に全部持っていかれてしまったがな……」

 

 

 そこで自嘲気味に語るテゾーロにゾロが口を挟む。

 

 

「それでお前は何がしたいんだ? まさかここで延々とすでに死んだ男の自慢話を聞かせるために俺たちに接触したわけじゃあるまい?」

 

 

 

 

「……ここ数日前に現れた『エドワード・ルーミア』は()()()()()()()()()『ドンキホーテ・ミョスガルド』と行動をともにしている」

 

 

 天竜人とその名前を聞いて唖然とする一同。彼らはつい先ほど別の天竜人の横暴を目の当たりにしたからだ。

 

 

「天竜人がここ(シャボンディ諸島)にやって来るのは奴隷を買うためなのだろう。それもオークション会場がある『1番GR(グローブ)』。私はそこで彼女に接触するつもりだ」

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■朝の6時過ぎにできた。あぶねー。


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24話 俺の部下になる気はないか?

 

 

 そして場面はテゾーロがオークション会場に入った時に戻る。

 

 テゾーロがオークション会場に現れた時、会場内はざわついた。彼の黄金帝が今、話題になっている海賊の一味と一緒に現れたせいだろう。……それゆえにか、そこかしこから彼らの関係性について憶測を立てる声が否応なしに耳に入ってくる。

 

 周囲のその声からこのオークション会場に『麦わらの一味』だけでなく『テゾーロ』もやって来たのを察知したルーミアは護衛として船員たちをミョスガルドのもとに残して『麦わらの一味』がいる会場入り口へ一人で向かう。

 

 

「──『新世界の怪物』が『麦わらの一味』と一緒? 船員が奴隷にでもされたのかなー?」

 

 

 「ごきげんよう」とドレスの両端を指で摘まんでにこやかに挨拶を交わした後、そんな質問を遠慮なくぶつけるルーミア。小憎らしい笑みを浮かべるルーミアにテゾーロは皮肉気味に答える。

  

 

「一応、私は彼らに警告をしたのだがな…… 聞き入れてもらえなかった挙げ句に『私が持っている情報が欲しければ協力しろ』と、ご覧の通りの有り様さ」

 

 

 ……と肩を竦めて答えるテゾーロに、さも興味がなさそうにルーミアは「ふーん」と応える。そこへ、

 

 

「それよりもルーミアちゃん、天竜人なんかと一緒にいて大丈夫なのかい? 連中、美少女や美女を奴隷として連れていくんだぜ?」

 

 

 ルーミアの身を案じてそう声をかけるサンジ。他の面々もここへ来る途中で見かけた天竜人の傍若無人な態度を見ていたこともあってか、天竜人との距離を置くよう薦めてくるが……

 

 

「海軍の中にろくでもない悪党がいるように…

 海賊の中にどうしようもないお人好しがいるように…

 天竜人の中にはマトモな価値観を持っているのがいる。

 私と一緒にいる天竜人はそーゆー人物なのさ。……それに天竜人の持つ強大で強力な権力が魅力的だからなー、わはははー」

 

 

 天竜人が近くにいるにも関わらずそう宣うルーミアに一同は言い知れぬ感情を抱いたのか、言葉を濁して返事を返し、あるいは無口になる。

 

 それからオークションは途中で商品である人間が舌を噛んで倒れるというハプニングに見舞われるも滞りなく進んでいき、やがて司会の語る「目玉商品」──巨大な金魚鉢に入れられた人魚のケイミーが舞台会場へと運ばれた。

 

 

5億ベリーィ~~~!!! 5億で買うえ~~!!!

 

 

 そしてオークションにかけるやいな、天竜人の一人──チャルロスが5億という落札価格を掲げて会場内を黙らせた。そのあまりの高額な値段に会場内にいる参加者たちは早くも落胆し、諦めの境地に至っている。

 

 

10億、出そう

 

 

 そんな折、テゾーロが倍の値段を出して周囲を驚かせ、麦わらの一味もまた彼の行動に驚き「ケイミーを奪い返せる」と希望を見出だし、司会を勤める男は大金に歓声を上げる。一方で5億を提示したチャルロスは「下々のくせに…」と露骨に不快感を露にする。

 

 

50億ベリー

 

 

 そんな中、チャルロスの父であるロズワードがテゾーロの落札価格を上回る50億を提示、会場内は再びシンと静まり返る。

 

 

「値段がつり上がるたびに50億追加するえ、天竜人たる者、下々に負けたとなっては一生の恥だからな」

 

 

 静まり返った会場内をロズワードの声が通る。これにはさしものテゾーロも黙らざるを得ず、これ以降、価格の値が上がることはなく時間だけが過ぎていき……

 

 

「50億ベリーにて──」

 

 

 司会が打ち止めを知らすハンマーを叩いたその時に、悲鳴とも雄叫びとも聞こえる大声を上げながらオークション会場の出入口を破壊して会場内に何者かが突っ込んできた。

 

 その突然の出来事にオークションは一時中断。突っ込んだ際にもうもうと煙が舞い上がり、煙が晴れるとそこにいたのは、目を回して気絶している巨大なトビウオと麦わらの一味のゾロとルフィだった。

 

 金魚鉢に入れられたケイミーを見た途端、ケイミーを取り戻すべく舞台へと駆け寄るルフィ。ハチが数本の腕で引き止めようとするも、その時に魚人であることがバレてルフィを放してしまい、一人立っているとこをチャルロスに銃で撃たれ、床に倒れてしまった。

 

 そして、ハチが撃たれたことに気づいたルフィはハチを撃ってはしゃいでいるチャルロスを殴り飛ばす。……そのあまりな光景に会場内の人間たちは唖然とした。

 

 

「殴りやがった!! 『麦わらのルフィ』が天竜人を!! 大将が来て、ここは戦場になるぞ!! 巻き込まれたくねェ奴はとっとと逃げちまいな!! ウィ~~~ハッハッハァ───!!!!」

 

 

 そこへ静観していたバージェスが状況を説明するように大声を上げて逃げるように促し、会場内にいた人間たちは我先にと出口へ殺到、オークション関係者もまた麦わらの一味を捕らえるべく屈強な男たちを差し向け、会場内はさらに騒がしくなる。

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァ───!!!! こいつはえれぇことになったな!!! お嬢!!! 乗っ取りは無理なんじゃねェか!?」

 

「我々がどう動こうともこのオークション会場がこうなるのは必然的なのだろう」

 

……この場にいる連中は運がないな……

 

「わはははー、せっかくだ。どさくさに紛れて帳簿と宝、金を手に入れておこうかなー?」

 

「ホホホホホ。そうですね、それでは……」

 

 

 ラフェットがそう言うと出入口付近にいるルーミアを残して船員全員が席を立って舞台裏へと移動を始める。会場内で暴れる麦わらの一味をよそにテゾーロの隣に立つルーミアにミョスガルドが近づく。

 

 

「信じられん。海賊が天竜人に手をかけるとは…… それに君の目的はここを乗っ取ることではなかったのか?」

 

「さすがにここまで騒がれるとは思わなかったからなー。それに本命は帳簿と宝と金。戦力になりそうな奴隷の確保。乗っ取りはオマケだなー」

 

 

 そして正史通りに巨人とレイリーが現れ、覇気で会場を鎮め、ケイミーを始めとした奴隷たちが解放される。

 

 そこへ司会の男──ディスコが電伝虫を携えてルーミアの下へやって来た。

 

 

「『エドワード・ルーミア』だな!? Mr.ドフラミンゴがあんたに話があるそうだ!!」

 

 

 そう言って電伝虫を向けると、電伝虫の口から男の声──ドフラミンゴの声が流れてくる。

 

 

『──フッフッフッフッフッ。「エドワード・ルーミア」だな……?』

 

 

 独特な笑い声を上げて尋ねるドフラミンゴ。ルーミアの存在を電伝虫越しに確認した後、ドフラミンゴはルーミアを勧誘する。

 

 

『──俺の部下になる気はないか?』

 

 

 ……と、

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■朝の6時にできた。


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25話 悪巧み

 

 

 突然、現れた老人──レイリーの覇気で大勢の人間が気絶して静かになったオークション会場。そこでは、ドフラミンゴが電伝虫越しにルーミアを味方に引き入れようとしていた。

 

 その交渉の場から少し離れた場所には、レイリーの覇気を耐え、気絶から免れた者たちが事態の成り行きを見守るべく、二人のやり取りを静かに観察していた。

 

 しかし、建物の外を海軍が完全に包囲していることを知った麦わらの一味を始めとした海賊たちは、海軍の最高戦力である「大将」が到着する前に脱出することを決めて、表の出入口からオークション会場を出ていき、建物の外で待ち構えていた海軍と交戦を始める。一方、奴隷として連れてこられた人間たちもまた、表の出入口とは別の扉から巨人と一緒に出ていった。

 

 そして、あとに残ったのは事件に巻き込まれて一応、被害者になっている者たちである「ミョスガルド」「テゾーロ」といった“ルーミア”あるいは“ティーチ”と面識のある者たちと、ドフラミンゴとの通信が繋がったままの電伝虫を持ってきたディスコのみである。

 

 

『──ジャヤ島にいる奴から聞いたんだが、(ダイアル)とかいう不思議な貝を養殖しているんだろ? それを買い取りたい』

 

 

 会場内から人が減ったのを察したのか、そんなことを宣うドフラミンゴ。部下云々の話から貝の買い取りへと話が移行したことに不審に思われたことを感じ取ったのか、承諾を渋るルーミアにドフラミンゴはわけを話す。

 

 

『──俺の部下になれば身の安全は保障される。(ダイアル)の養殖は是非とも成功してほしいからな…… まあ、実験段階中に第三者からのつまらない横やりを入れられないための配慮ってやつだ。……部下がイヤなら「七武海」の称号はどうだ? 俺が推薦しよう。ちょうど今、空きが一つあることだしな、フッフッフッフッ』

 

 

 ──と、代案を出すドフラミンゴにルーミアは……

 

 

「『()()()()()()にちょっかいをかける命知らずなバカはいない。仮にそんなヤツがいたとしても、返り討ちにするだけの戦力も実力もある。それに「七武海」に関しては当てがある。……だけど、(ダイアル)の買い取りは悪くないな」

 

『……何も「今すぐに返事をよこせ」──なんて無茶は言わねェ。()()()()()()()()()()()()()…… 返信はそっちが落ち着いた後にでもくれればいい。期待して待つとしよう。フッフッフッフッフッ』

 

 

 そしてドフラミンゴとの通信が途切れ、それを見届けたディスコが(せき)を切ったようにルーミアに話しかける。

 

 

「Ms.ルーミア!! あんたにこの電伝虫と番号のメモを渡す!! こいつはMr.ドフラミンゴに繋がる番号だ!! Mr.ドフラミンゴから渡すよう言われたからな!!!」

 

 

 そう言って電伝虫と番号の羅列が書かれた紙切れをルーミアに手渡すと、ディスコはそそくさと急ぎ足でステージの裏を通っていずこへと去っていった。

 

 

「お嬢! めぼしい物はほとんどあのじいさんに持っていかれてるぜ!! 帳簿とか書類関係の物しか残ってねぇ!!」

 

 

 それからほどなくして、ディスコと入れ替わるように片手に紙の束を持ったバージェスたちが戻ってくる。

 

 

……だが、()()()()を手に入れたのは不幸中の幸いだ……

 

「ホホホホホ、それにドフラミンゴが過去に出品した“悪魔の実”。その悪魔の実の名前とそれらを落札した人間の名を知ったのは大きな収穫かと……」

 

「ああ、()()()()()()()()()のほとんどが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。落札者のほとんどは雇われたサクラか、ドフラミンゴの関係者なのだろう」

 

「ウィ~~~ハッハッハッハァー!! いわゆる“()()()()()()”ってやつだぜ!! 当てが外れたな、お嬢!!」

 

 

 ドフラミンゴがオークション会場でやっていた行為に驚いているのか、目を丸くするミョスガルド。テゾーロの方は彼ならやりかねないと思っていたのか、深く頷いていた。

 

 やがて外の騒ぎが収まったのか、会場内へ海軍がなだれ込み、天竜人である「ミョスガルド」とその関係者とおぼしき「テゾーロ」と「ルーミア一味」を目敏く見つけると、安全のためか建物の外へと彼らを避難誘導する。

 

 

「……『麦わらの一味』の跡を追わなくていいのかなー? 連中と一緒にここに来たみたいだけど?」

 

「ああ、欲しい情報はすでに手に入れている。あとは君から『ティーチ』のことについて聞きたいとこだが…… 今はハチ──タコの魚人の容体が気になる。すまないが、彼がいる所まで移動してもらっても構わないか?」

 

「そうだな、私からも是非とも頼みたい」

 

「『黄金帝』と天竜人である『ミョスガルド聖』からも頼まれたら行かざるを得ないなー、わははははー」

 

 

 

 

【シャボンディ諸島──13番GR(グローブ)

 

 

 13番GR(グローブ)の片隅にあるバー『シャッキー'S ぼったくりBAR』。そこへ辿り着いたルーミア一行。閉店を意味する「CLOSED」の札が下げられているが、ルーミアはそんなのは関係ないとばかしに扉を開けてしまう。

 

 その店内にはベッドの上で横たわってチョッパーから治療を施されているハチと、思い思いに寛いでいる麦わらの一味、さらにカウンター席に座るレイリーの姿があった。

 

 扉が何の前触れもなく開かれたことで店内にいたルフィたちは一瞬身構えるが、それが顔見知りである「テゾーロ」や「ルーミア」と分かるや否、すぐに警戒を解く。……しかし、最後に現れた天竜人──ミョスガルドを見て警戒心を強める。

 

 

「安心しろ、こちらにいる『ミョスガルド聖』は話の通じる人物だ。そこにいる人魚なら、過去に『魚人島』を訪れたことのある天竜人といえば、誰だか分かるかなー?」

 

 

 ルーミアに問われるが、キョトンとするケイミー。何のことかさっぱり分からないと言った様子の彼女に傍らにいた喋るヒトデ──パッパグが耳打ちして教える。

 

 

オトヒメ王妃の署名に賛同した天竜人!?

 

 

 そこでようやく思い出したのか「ハハー」と恭しくひれ伏すケイミー。

 

 

「もうあれから8年も時間が経っている。忘れるのも仕方のないことなのだろう。それよりも彼の容体はどうだね?」

 

 

 包帯を巻かれて横たわっているハチを見てそう尋ねるミョスガルド。診察していたチョッパーから命に別状がないことを知らされると安堵の溜め息を漏らす。

 

 

「どうでもいいけど何でお前らがここに来たんだ?」

 

 

 その様子をじっと見ていたルフィが突然そんなことを喋り出す。店内にいた一同も同じことを思ったのか、ルーミアたちをじっと見据える。その視線に晒されながらもルーミアは微笑を浮かべながら答えた。

 

 

「ここにいる全員、私と手を組む気はないか?」

 

   




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■朝6時に一応、完成。

■おかしな表現があれば報告をお願いします。


 -追記-

■次回以降は思いっきりはしょろうと思う。
 ぶっちゃけ、最初の頃の方が個人的にも面白いと思うんよ。
 
■最近は文字数稼がねば、週一投稿せねばと、自ら追い込んでやってるせいかなー。

■送られたメッセージにそのようなこと書かれてたので…

■前みたいにはしょることを心掛けながら書くよん。


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→ “ インペルダウン ” 集団脱獄 事件簿
26話 彼らの行方は……


( ´・ω・)にゃもし。

■「最初は面白かった」という意見があったので…
 └26話をそんな感じにしたよん。


  

 

 「手を組まないか?」と彼らに同盟を持ちかけるルーミア。もっとも、その場に居合わせた──楽観的なルフィを除いた──彼らは難色を示した。それゆえにか、ルーミアは彼らに自分の望みを、目的を言う。

 

 

 曰く、傲慢な()()()()()()()()()()()()、「ミョスガルド聖」のような()()()()()()()を“五老星”のような地位につけさせる。そのためにオトヒメ王妃のように天竜人を説得して“賛同者”を増やす。そのためなら喜んで協力する。

 

 

 このことを聞かされた彼らは最初こそ呆気に取られて呆然とするものの、次第に冷静さを取り戻すと彼女の身を案じてかルーミアにやめるように言い聞かせる。しかし、それで動じるルーミアではない。説得する彼らを尻目に彼女は次の案を述べる。

 

 

 “音楽”の持つ力が世界にどれほど影響を与えるのか、音貝(トーン・ダイアル)に音楽を録音させて全世界に売り出し、人々が、世界がどんな反応をするのか見てみたい。そのために「黄金帝」の持つ資金力と人脈が欲しい。

 

 

 本人を目の前にいけしゃあしゃあと言い放つルーミアにさしものテゾーロは苦笑いで返した。……とはいえ、聞かされたこの案は元々「マーシャル・D・ティーチ」が過去に言っていたものと内容がほぼ同じなこともあってか、いろいろと条件をつけてだがテゾーロは承諾した。

 

 

 一方、「麦わらの一味」には航海中に見つけた“歴史の本文(ポーネグリフ)”の模写、もしくは写真に収めることを依頼。先の「ミョスガルド」と「テゾーロ」には無茶な要望を出していただけに麦わらの一味の船員たちはこれには拍子抜けした。

 

 

 そして最後に「受ける受けないは自由、返事はあとで結構」と連絡先として電伝虫の番号を控えたメモをテーブルに置くと、意気揚々と扉を開けて出ていき、扉が閉まる間際にひょっこりと扉の隙間から顔だけを覗かせて……

 

 

「──“大将”の『黄猿』と“七武海”の暴君の異名を持つ『バーソロミュー・くま』。さらに()()()()()()()()()()()()平和主義者(パシフィスタ)』も来てるから逃げるなり隠れるなり行動するなら早めにした方がいいかもなー? わははははー」

 

 

 ……と、したり顔で忠告を言い残して去っていった。

 

 

 ルーミアが出ていった扉を無言で見つめる一同。しばらく時間が経ってから突然、思い出したかのようにロビンがテゾーロに尋ねる。

 

 

「あの娘から『マーシャル・D・ティーチ』のことを聞かなくていいのかしら?」

 

 

 言われて「あっ」と気づくテゾーロ。慌てて扉を開けるも、すでにルーミア一行の姿はどこにもなかった。

 

 

 その後、急にいなくなったルーミアたちを不思議に思いつつも、船をコーティングするべく店を出るレイリー。麦わらの一味もまたルーミアが語った海軍の最高戦力である“大将”『黄猿』と“七武海”『バーソロミュー・くま』との衝突を避けるためにコーティングが完了するまでの三日間の間、シャボンディ諸島の各地へバラけて行動することを決めたのだが……

 

 

【シャボンディ諸島──12番GR(グローブ)

 

 

 巨大なマングローブを支える根の上に戦闘の余波で瓦礫と化した建物の残骸が見える。島のあちこちで海賊──麦わらの一味と海軍の戦闘の跡が見られ、今もなお戦闘が続けられている。もっとも強者(海軍)が一方的に弱者(海賊)をいたぶるような感じではあるが……

 

 いくら億を超える懸賞金をかけられた海賊にレイリーの助けがあるとはいえど、“大将”の一人である「黄猿」に人造兵器「パシフィスタ」。そのモデルとなった“七武海”「暴君くま」。さらに覇気を使う「戦桃丸」が相手では分が悪く、一人一人、くまが持つ悪魔の実の能力でシャボンディ諸島の外へと次々に弾き飛ばされ、最後に残ったルフィもまた他の船員たちと同様に島の外へと飛ばされ、シャボンディ諸島から麦わらの一味たちは一人もいなくなった。

 

 

 

 

【シャボンディ諸島──近海】

 

 

 海上に浮かんでいる一隻の船。そのマストにある見張り台でシャボンディ諸島から勢いよく空を滑空しているルフィの姿を目で追っている男がいる。ヴァン・オーガーである。彼は遠ざかっていくルフィを目で追いながら眼下にいるラフィットにそのことを伝える。

 

 

「──“麦わら”が飛ばされているのを確認した。……ふむ。シャボンディ諸島を2時の方向──といったところか……?」

 

「ホホホホホ。でしたら、“麦わら”の行き先は“女ヶ島(にょうがしま)”『アマゾン・リリー』と見て間違いないでしょう」

 

 

 テーブルの上に敷いた地図に線を引きながらラフィットは応える。地図をよく見ればルフィ以外の“麦わらの一味”の行き先を示す細長い線が引かれており、その途中に島とその名称が描かれていた。

 

 

「では我々も『マリンフォード』で行われる“頂上戦争”に向けて準備をしましょうか? 彼の『黄金帝』と『ミョスガルド聖』がいささか懸念材料ですが、ホホホホホ」

 

 

 準備を整えた後、ラフィットの号令の下、黒の布地に白い十字架をあしらったシンボルマークを掲げた彼らの船が出航する。その船には「バージェス」と「ルーミア」の姿はなかった。二人は「インペルダウン」を目指して一足先に海へと出ていったのだ。

 

 

 

 

【シャボンディ諸島──41番GR(グローブ)

 

 

 無人となった「サウザンド・サニー号」。その船を強奪すべく“人攫い”や“賞金稼ぎ”たちが現れる。そうはさせんと“麦わらの一味”に恩義を感じている元“人攫い屋”の「デュバル」とタコの魚人である「ハチ」が奮闘、阻止している。

 

 ……とはいえ多勢に無勢、彼らの体力に陰りが見え始めた頃に「テゾーロ」と「ミョスガルド」が現れ、ミョスガルドが声高らかに宣言する。

 

 

「この船は“天竜人”である『ミョスガルド』が押収する!!!」

 

 

 天竜人相手に逆らうわけにはいかず、その場にいた“人攫い屋”たちは立ち去っていく。そして入れ替わるように大柄の体躯を持った男──『バーソロミュー・くま』がやって来て尋ねる。

 

 

「その船をどうするつもりだ?」……と、

 

 

 

 

【インペルダウン】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)の外側を流れる「凪の帯(カームベルト)」。その海中に造られた悪名高い凶悪犯どもが最後に行き着く海底大監獄。侵入は勿論のこと脱獄も不可能と言わしめる世界政府が有している建物である。

 

 

「ウィ~ハッハッハァ──!!!! 間違いねェ!! 『エース』の“ビブルカード”は真下を指したままだぜ!! お嬢!!」

 

「わはははー。『金獅子のシキ』が過去に脱獄したことがあるから上空も警戒されてると思っていたけどなー、どうやら杞憂だったみたいだなー」

 

 

 インペルダウンの入口がある海上部分には四つの細長い塔がある。その塔の一つ、頂上にある屋根に「バージェス」は片手でしがみつきながら、「ルーミア」は両手を広げた格好でふよふよと宙に漂いながら、インペルダウンを見渡す。

 

 

「古来より建物へ侵入する方法は二つに一つ。誰にも見つからず、こそこそと忍び込むか……」

 

 

 そう言いつつルーミアは左手の掌を頭上、どんよりとした灰色の雲に覆われた空に翳すと……

 

 

「騒ぎに乗じて乗り込む!!」

 

 

 左腕から極太の電撃を放ち、雲に突き刺す。

 

 

万雷(ママラガン)!!!!

 

 

 次いで、ルーミアの電撃を飲み込んだ雲から幾千、幾万もの雷がインペルダウンとその周辺の海に落ちて、視界を白一色に塗り潰した。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■朝4時にできた。
 └おやすみー。

■前書きにもあったように以前のような書き方に戻しました。
 └……と、思っている。
 └そうしないとストーリーが進まないので……

■そういや、ONE PIECE 二次作品でインペルダウン以降まで進んだ作品ってどれくらいあったかしらん……

■とりあえずメッセージを送った方、ありがとう。

■感想の返信、書かなくちゃ……

■あとで活動報告、書くべ。

■誤字脱字おかしな表現あれば報告をー

■章タイトルをつけました。いいの思い付いたら変えるかも…


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27話 侵入者たち

 

 

【インペルダウン】

 

 

 無風の海域である“凪の帯(カームベルト)”には(しけ)はない。……にも関わらず、インペルダウンの上空には、今にも大降りの雨が降り出さんばかりの黒くどんよりとした雷雲が雷鳴を轟かせて漂っている。それはルーミアが遥か上空で“方舟マクシム”に備えられている装置を起動させて雷雲を生み出したせいである。

 

 

 インペルダウン周辺が深い霧に包まれようとも、そんなものが頭上に出現すれば、勘のいい看守は異変に気づく。さらにその雲から雨のごとく雷が降り注げば、それが人為的に引き起こされたものと考え、警戒を強めるのは当然といえよう。何しろ、この世界には“悪魔の実”というものがあり、その中には天候にすら作用するものもあるのだから……

 

 

 『万雷(ママラガン)』──人工的に生み出した雷雲から幾つもの雷を地上へと落とす──空島「スカイピア」で君臨していた(ゴッド)・エネルが使用していた技の一つ。ルーミアはエネルを殺害することで手に入れたその能力を用いて、インペルダウンとその周辺の海に数えきれないほどの雷を落としたのだ。

 

 

 もっとも、今回は建物内部への侵入を目的としたために建物が崩壊しないように威力を落とし、その代わりに雷が発生する際の閃光を強力にさせている。

 

 

 それは一重にインペルダウンに張り巡らされているであろう“電伝虫”の()を雷の光で視界を奪うためであり、あわよくば雷が持つ途方もない電力で電波(念波)で仲間と交信するその生物の電波を一時的にでも乱し、映像などの情報を途絶えさせる──停電のような状況を意図的に作ることができれば……とルーミアはひそかに淡い期待をしていた。

 

 

 これらの発端となったのは、ルーミアの一味がシャボンディ諸島で「黄猿」が(のち)の最悪の世代の一人になる「バジル・ホーキンス」に対して能力で目潰しをしたのを思い出し……「電伝虫も生物。なら目潰しも有効なのでは?」とルーミアに進言、彼女もまた「電伝虫がいようといなくとも敵の目を惹き付けることに変わりはないし、場をかき乱すのにちょうどいいなー」……と何の躊躇いもなく今回の侵入の際、実験も兼ねて実行した。

 

 

 かくして目論見は功を成し、ルーミアとバージェスの二人は入口へと通じる桟橋に急いで飛び降り、次いで正面にある巨人すらも通れるであろう巨大な両開きの扉にバージェスの“ドアドアの実の能力”で新たな“扉”を作ることで()()()()()()()()()()()()通過、入った痕跡を残すことなくインペルダウンの内部へと侵入してみせた。

 

 

 二人は侵入後、人の気配を感じるたびに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。如何に「侵入不可能」「脱獄不可能」を謳い文句にしているインペルダウンといえども、“ドアドアの実”の真骨頂である“空気開扉(エアドア)”が作り出す異空間に身を潜められたら、そこにいる看守たちがどんなに優れようとも探しだすのは困難であり、見つけられないのは致し方ない。

 

 

 こうしてルーミアとバージェスは看守たちの目に触れることなく、インペルダウン内部を移動する。さらに、“ゴロゴロの実”の能力で生命が発する微弱な電波を察知しながら、二人はインペルダウン内部を「エース」が囚われている監獄──“LEVEL-6”がある最下層を目指して、下へ下へと降りていく。

 

 

 道中に出会う囚人たちに近々、集団脱獄をする旨を伝えながら……

 

 

 大小、二つの(シルエット)が石造りの迷宮を駆け抜けていく。一つは髪を肩の所で切り揃えた小さな女の子。もう一つは上半身が逞しい大柄の男。──とててて……と、先を急ぐ女の子の後を大柄の男がズカズカと跡を追う。

 

 

 女の子は行く先々で牢屋に入れられている人物に手招きして呼び寄せると、こしょこしょと耳打ちする。そして一通り話をすると、とててて……と大柄の男を連れて牢屋だらけの迷宮をひたすら進んでいく。

 

 

 赤い鼻の道化師。髪型が「3」の人間。砂漠のような環境にいたハイテンションのバレリーナのオカマ。大きな鍋がある場所にいた無愛想な坊主頭の殺し屋。狼がたむろしている極寒の林。その奥にいる頭がやたらとデカイ、オカマの女王。道中、彼らと出会っては名残惜しそうに別れる。

 

 薄暗い迷宮を進むと時折、制服をびっちりと着こなした看守たちを見かける。放し飼いの猛獣が徘徊している。大きな鈍重そうな扉が立ち塞がる。目を回したカタツムリが転がっている。

 

 

 宙に浮く。天井にしがみつく。異空間に身を潜める。扉を作る。ツンツンとつついてみる。

 

 

 

 

 そして、小さな女の子と大柄の男は辿り着く。

 

 

 

 

【インペルダウン──地下6階「LEVEL-6」無限地獄】

 

 

 インペルダウンの最下層。そこは終身囚や死刑囚は勿論のこと、政府にとって不都合な事件を起こした者が入れられるエリアでもある。そこに()の“海賊王”「ゴール・D・ロジャー」の血を引く男──「ポートガス・D・エース」が幽閉されていた。

 

 

「──ルフィが来るのか……? ここに? ティー……いや、今は『ルーミア』だったな…… 正直、信じられねぇんだが……」

 

 

 鉄格子越しに会話をする「エース」と「ルーミア」。牢屋の奥で鎮座させられているエースの両手首にはそれぞれ枷が嵌められており、その枷から延びている鎖が壁に空いた穴の奥へと繋がっている。近くにはジンベエザメの魚人である「海侠のジンベエ」もエースと同じ牢に入れられている。

 

 

「──あくまで()()()()()()()()だけだなー」

 

 

 そんな前置きを置いてからルーミアはシャボンディ諸島で起きた事件のあらましを説明。その時にルフィが「暴君くま」の能力で同じ“七武海”「ボア・ハンコック」がいる“女ヶ島(にょうがしま)アマゾン・リリー”に飛ばされたこと、そしてルフィなら「ハンコック」の力を借りてここまで来れるのではないか……? ──と、憶測を立てた。

 

 

「いや、悪魔の実で“体型”がそこまで変わったことに対して言ったんだけど?」

 

「お前、実は余裕あるだろ?」

 

 

 牢の中にいるというのにあっけらかんと答えるエースにあきれるルーミア。ついでにここに来る途中に出会った「イワンコフ」から「暴君くま」が革命軍の一員だということ、ルフィの父親が革命軍のボスであることも教え、そのことを聞かされたエースとジンベエは()の暴君がなぜ海賊であるルフィを助けたのか納得する。

 

 

()()()お前を助けることができる。……その代わり、()()()()()()()()()()()()()()ルフィが入れ違いでインペルダウンに取り残される可能性がある」

 

 

 ルフィの話となるとエースは締まりのない顔から一転、引き締まった表情を見せる。

 

 

「ルフィを見捨てて私と一緒に脱獄するか、ルフィを助けるために己を犠牲にするか、電伝虫が気を失って役目を果たしていない今のうちに決めろ」

 

 

 感情が読み取れない能面のように無表情な顔で選択を迫るルーミアにエースは……

 

 

 

 

【インペルダウン“LEVEL5.5番地” ニューカマーランド】

 

 

 インペルダウンの“LEVEL-5”と“LEVEL-6”の狭間にある能力者によって作られた空間。そこに革命軍幹部「イワンコフ」が建国した“ニューカマーランド”がある。

 

 

「ン~フフフ。それでヴァナタ、おめおめと戻ってきタブルわけね? なかなか見上げたボーイじゃないの「火拳のエース」は…… 脱走できるチャンスをふいにして、弟の安全を優先するなんて普通の人間じゃできナッシブルことね!!」

 

 

 ニューカマーランド内にあるステージで腰をくねらせながら話しかけるのは革命軍幹部イワンコフ。もっとも声をかけられたルーミアとバージェスはテーブルの席について、ひたすら飲み食いをしている。そんな態度の二人にイワンコフとニューカマーランドの住人たちは思わず「……って、無視かよ!?」と一緒に叫ぶ。

 

 

 それからルーミアとバージェスがニューカマーランドで過ごすこと数日後のこと。

 

 

 

 

【インペルダウン──地下1階「LEVEL-1」紅蓮地獄】

 

 

 そのエリアの天井付近に一個の目玉が辺りを探るようにふよふよと宙に浮いて漂っていた。やがてその目玉は一つの影を捉える。麦わら帽子を被った一人の青年を……

 

 

「信じられねぇ、()()()()()()()()()()()に麦わらが来やがった……」

 

 

 驚愕した表情で片目が空洞になっている赤い鼻が特徴の囚人服を着たバギーが小声で漏らしたのちに、にやっと笑みを浮かべる。

 

 

ぎゃはははは!! おい、やろうども!!!

 待ちに待った脱獄の時間だ!!!!

 

 

 さして広くない牢獄の一室にバギーの笑い声が響き渡り、間を置かずに囚人たちの歓声が上がった。

 

  




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■朝の5時だー。
 └おやすみー。

■一言メッセージ来たし、返信するかー。
 └相手はお気に入りユーザー以外ブロックしていた。
 └どーしろと…
 └活動報告に書いたところで相手が見るか?
 └何もしないよりは…
 └ついでにあとがきにも書くべ。

■雲川山海様、残念ですが、あなたのリクエストに応えることはできません。



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28話 この監獄に二人がいる。

 

 

【「LEVEL-5.5」ニューカマーランド】

 

 

 イワンコフが仕切っているニューカマーランドにはインペルダウン監獄内部の各エリアを映しているモニター室があり、そこでは今現在、ニューカマーランドの住人(オカマ)たちが監獄内で起こっている騒動を面白がって見ていた。

 

 その彼らの間に交ざって小さな少女──ルーミアが自身の体躯に合わない玉座のような大きな席に一人ちょこんと座って鎮座しており、映画でも鑑賞するかのごとくにポップコーンを膝の上に置いてもぐもぐと頬張りつつ、時折、肘掛けに置いてあるジュースをごきゅごきゅ飲みながら、はしゃぐオカマたちを尻目に画面に映っている映像──騒動を起こしている人物たちとその行動をつぶさに観察していた。その彼女の両隣にはビールを片手に大ぶりの肉を齧っているバージェスと腕を腰に当てて立っているイワンコフがいる。

 

 彼らが見ている画面にはいつもの格好のルフィと囚人服姿のバギーの二人が監獄内に大量にいるブルゴリ──髑髏の頭巾を被って監獄内を徘徊している海に生息しているゴリラ──を蹴散らしながら地下1階のフロアを駆け抜けていく姿が映っていた。

 

 その後、ルフィとバギーは階層を降りるたびに同行者を増やしていき、地下4階「LEVEL-4」“焦熱地獄”と呼ばれる超巨大な鉄釜があるフロアに辿り着く頃には元BW(バロックワークス)の社員であり、かつてルフィと敵対していた「ギャルディーノ」通称“Mr.3”と「ベンサム」通称“Mr.2ボン・クレー”の2名を加えた4名になっていた。

 

 しかし彼らの奮闘もそこで終わりを告げる。道中に現れたインペルダウンの監獄署長を務める男「マゼラン」が立ち塞がったのだ。マゼランの操る「毒」の前にルフィはあえなく敗北、他のメンバーも散り散りになり、そしてマゼランの毒を全身に浴びて倒れたルフィは地下5階「LEVEL-5」“極寒地獄”へと送られることとなる。

 

 

 

 

【地下5階「LEVEL-5」“極寒地獄”】

 

 

 そのフロアは雪と氷で覆われている極寒地帯であり、そのあまりの寒さに電伝虫が耐えられないために監視用の電伝虫が設置されておらず、そのせいで通信や映像が遮断される。また、牢屋の外には監獄内にいる動物(バジリスクやスフィンクス)にも襲い掛かって捕食してしまうほど狂暴な軍隊ウルフが群れで放し飼いにされており、監獄内にある林が軍隊ウルフの巣になっている。

 

 そんな危険地帯に毒で体を満足に動かせないルフィを乗せたソリを引き摺りながらボン・クレーがやって来た。毒に冒されたルフィを治療してもらうため“奇跡の人”と呼ばれている「イワンコフ」を探すためである。

 

 ──が、そんな場所に足を踏み入れれば、狼たちが襲い掛かるのは道理。ボン・クレーもまたその例に漏れず狼たちに襲われた。必死に抗戦するも、狼に脛や肩、頭部などを噛みつかれたびに傷を増やし、血を流し、最後には堪えきれず無数の狼に噛みつかれたまま雪原に倒れた。

 

 その時にルフィがゆらりと立ち上がって吼えた。

 

 

離れろォォ!!!!

 

 

 ルフィがそう力んで叫ぶと狼たちはたちまち目に見えて分かるほどに怯え、身を竦ませ……やがて口から泡を吹きながら意識を失い、その場に倒れ込んだ。そしてルフィもまた力を使い果たしたかその場で倒れ、何もしていないのに狼たちが気絶するその光景を不思議そうに見ながらボン・クレーもルフィと同様に意識を手放す。

 

 その後、倒れたルフィとボン・クレーの下に大小二つの影が近づく。厚手のコートを羽織ったバージェスとルーミアの二人である。ルーミアは傍らにいたバージェスに指示を下すと指示を受けたバージェスはボン・クレーを肩に担ぎ、ルフィを乗せたソリを片手で引き摺りながら林の奥へと消えていく。

 

 

「──死刑執行まであと“26時間”だったなー」

 

 

 去る間際、首からぶら下げた懐中時計を手に取ったルーミアがそんな言葉を漏らす。本来なら革命軍の幹部である「イナズマ」がルフィとボン・クレーを回収すべく現れた時に“26時間”というフレーズが出ていたのをルーミアは思い出したのだ。そして、ふと考える。

 

 

「今このインペルダウンに「エース」と「ルフィ」がいる。今なら……」

 

 

 何かを思い付いたのか、急ぎ足でニューカマーランドへと向かった。

 

 

 

 

【ニューカマーランド】

 

 

 重傷のルフィとボン・クレーを連れたルーミアたちがニューカマーランドに戻った時、いつの間にか意識を取り戻したルフィ。彼は待ち構えていたイワンコフにボン・クレーを助けてくれと懇願。イワンコフがその願いを聞き入れ、その次に洞窟の奥、隔離された独房でイワンコフが自身が持つ悪魔の実の能力を用いてルフィの治療に取り掛かかる。

 

 ほどなくして身が裂かれんばかりの絶叫がほとばしった。

 

 それから、10時間ほど経過した頃、ボン・クレーが意識を取り戻す。彼は現在の状況やルフィの現状をイワンコフやイナズマから聞かされ、ついでニューカマーランドにおいて異質な二人組のうちの一人、ルーミアからエースの救出と脱獄の話を聞かされる。

  

 

「署長の「マゼラン」はルフィとの戦闘で“毒”を使い過ぎてトイレに籠っている。副署長の「ハンニャバル」は()()()()()()()()()()()()()()。今、インペルダウンの戦力はかなり低下している。今ならエースを救出するのにさほど苦労はしないと思わない?」

 

 

 丸い円形のテーブルにある席についてそんなことを宣う。しかし、マゼランの実力を、毒の恐怖を間近で見せつけられたボン・クレーは救出した後のことを問うと……

 

 

「──エースを連行するため「LEVEL-6」にマゼランが訪れる。その「LEVEL-6」にマゼランを閉じ込める。無論、マゼランが来る前にエースを救出しておくけどなー、わははー」

 

 

 ルフィが思ったよりも早く、それにエースがマリンフォードに連れていかれる前、なおかつこのインペルダウンに二人がいるゆえに思い付いた急ごしらえの計画とルーミアは皮肉を込めて語り、何よりも「マゼラン」と戦わなくて済むと豪語する。

 

 

「マゼランが「LEVEL-6」、エースが入れられている牢屋の前に着き次第、二つある出入口を物理的に破壊して使えなくなるようにする。その後、集団脱獄を始める!! この好機をみすみす逃す必要はない!!」

 

 

 そしてルーミアとバージェスはエースの救出と脱獄の準備に取り掛かる。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■朝の4時にデキタヨ。
 └おやすみ。

■いい意味でも悪い意味でも人の期待を裏切る。
 └二次小説とかで…

■感想の返信
 └あとで…

■感想数1,000超えてる作品の人スゲェ。

■誤字脱字おかしな表現あれば報告を…
 └毎度、ありがとうございます。


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29話 再会

 

 

【ニューカマーランド】

 

 

 ニューカマーランドの奥にある洞窟の中、治療中に暴れないように台ごと巻き付けるように鎖で拘束されているルフィ。彼は同意の上でイワンコフの能力で“免疫力”を過剰に引き出し“猛毒”と戦える体に改造してもらった。

 

 無論、何の代償もなしでマゼランの毒を解毒できるはずもなく、寿命10年と引き換えに繰り返される肉体の「再生」と「破壊」から生じる耐え難い激痛に苛まれている。

 

 その光景を扉の窓からそっと覗き込んだボン・クレー。そのあまりの凄惨な光景にイワンコフにやめるよう嘆願するも「奇跡を舐めるな!!」と殴られ逆に説き伏せられてしまう。治療の中断を諦めた彼はルフィの力に少しでもなれれば……と、扉の外から声援を送り始める。最初はボン・クレーのみだったが、彼に感化されたのか次第に人が増えていき、最後にはニューカマーランド全員でルフィにエールを送ることとなった。

 

 

 

 

【地下6階「LEVEL-6」“無間地獄”】

 

 

 目覚めたボン・クレーがニューカマーランドの住人と一緒にルフィにエールを送っている最中、ルーミアとバージェスの二人は最下層の地下6階へと移動、エースが囚われている牢獄の前に再びやって来た。

 

 そしてルフィがインペルダウンにやって来たこと、マゼランと交戦して毒にやられたこと、そのため上の階で治療を受けていることを告げるとエースは深刻そうな表情で言う。

 

 

「──ルフィに会わせてくれ……」

 

 

 エースの頼みにルーミアは二つ返事で了承し、エースを拘束している鎖をバージェスの能力で分断、ついでにエースと同じ牢獄に入れられていたジンベエも解放した。

 

 また、牢獄から解放された二人を見て同じエリアに入れられている囚人たちが自分たちもここから出せ、さもなくばお前たちの存在を密告する、と騒ぎ立てる始末。

 

 そんなぎゃーぎゃー喚く囚人たちにルーミアは()()()「白ひげ」に手を出さないことを条件に彼らを牢から出すことを約束する。

 

 これにはエースとジンベエは苦い顔をしたが、一刻も早くルフィに会い、その後マリンフォードにやって来るであろう白ひげと面会して戦争の回避、もしくは早期決着を望む二人は渋々黙認することにした。

 

 最悪、戦争終結後、脱獄した後の囚人たちがあまりにも目に余るような事件を起こすならば、自分たちで捕まえて海軍関係の施設にでも放り込めばいいと、二人は考えた。

 

 着々と脱獄の準備をしている彼ら。そこへ声をかける者がいた。インペルダウンの看守長であったが監獄内で囚人たちを虐殺する態度を問題視したマゼランの手によって収監された「雨のシリュウ」その人である。

 

 

「……“LEVEL-6”──()()にマゼランのやろうを誘き寄せて閉じ込めたいようだが、あいつ相手だと大した時間稼ぎにしかならねえ。俺をここから出せ、力を貸してやる」

 

 

 “LEVEL-6”の牢獄に入れられているとはいえ「看守長」の肩書きを持っているシリュウにエースとジンベエは不信感を抱き、牢から出すことに反対するが、ルーミアはシリュウを牢から解き放った。何しろシリュウが一人に対してこちらは四人、悪魔の実の能力者が三人おり、そのうち二人が自然(ロギア)系の能力者であり、さらに元七武海がいるのだから、何よりもインペルダウンの情報を持っている……と、渋る二人にルーミアは言う。

 

 

「……まずはそうだな、囚人どもは全員、牢屋に入っておけ。今、出てもマゼランのやろうにバレる上に封鎖されるだけだ。ここに来るどころか、警戒して“LEVEL-1”、それも出入口のとこで待ち構えるだろうよ。やつがリフトに乗って動いている時に脱獄してリフトを破壊しろ。それまでは牢に入っておけ、電伝虫に見られる前にな、それに医者でもないやつが“麦わら”のとこへ行ったところで何かできるわけじゃないだろ?」

 

 

 シリュウは解放された「エース」と「ジンベエ」に向かってそんなことを宣うと、自身は壁を背にして眠りに入った。

 

 

 

 

 それから、おおよそ10時間が経過。エースを護送するための海軍の軍艦が到着し、同じ頃、ルフィの解毒が終了し回復、さらにルフィが革命軍の総司令官「ドラゴン」の息子だということがイワンコフに知られ、イワンコフを始めとしたニューカマーランドの住人全員が脱獄に全面的に協力することを誓う。

 

 そして“LEVEL-6”に行ったきり戻ってこないルーミアとバージェスを心配したルフィが下層へと向かうもイワンコフとイナズマに止められる。電伝虫から送られてくる映像から“LEVEL-6”で異変が起こったのを察知したのだ。

 

 

 エースを海軍に引き渡すためにリフトで“LEVEL-6”へと降りていったマゼランたち看守。そのリフトが動くのを確認したルーミアは“LEVEL-6”のエリアの床全体に“闇”を広げて囚人たちを急いで回収、次いでエースがリフトを乗り降りに使われる太い鎖と綱を燃やして切断、さらに降りてくるリフトの床に向かって真下から火球を放って破壊、リフトを使用不能にしつつマゼランたちを攻撃した。

 

 その後、急いで階段で上の階へと上りつつ、マゼランたちが後を追って上がってこられないように両脇の壁を破壊、瓦礫で通れないようにルーミアたちは工作した。

 

 そしてルーミアたちはエースを連れて“ニューカマーランド”に帰還、イワンコフたちと合流。 

 

 

 そこでルフィはエースと再会を果たした。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■朝6時45分にできた。
 └ギリギリだわ。
 └おやすみ。


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30話 脱獄

 

 

【地下5階「LEVEL-5」“極寒地獄”】

 

 

 「LEVEL-6」の囚人たちを“闇”に飲み込ませて「LEVEL-5」に戻ってきたルーミア。いくら凶悪犯といえど──

 

 

「お嬢、いくら連中でも“闇”の中にずっと入れっぱなしじゃあ、使い物にならなくなるんじゃねェのか……?」

 

 

 ……というバージェスの進言と「ニューカマーランド」の存在を知られるのはイワンコフにとってはいい顔をしないだろう、というルーミア自身の考えもあり、凍てつく極寒の中にて彼らを解放されることとなった。

 

 

──“解放(リベレイション)

 

 

 両腕を左右に広げたルーミアの足下を中心に、紙に水墨を垂らしたように“闇”が広がっていく。やがて、その黒い水面(みなも)から幾重もの波紋が広がり、そのたびに波紋の中央から囚人服を着た人間がせり上がってくる。「LEVEL-6」の囚人たちである。

 

 

 解放された彼らは当初、自由の身となったことに喜んでいたが、すぐに極寒地獄のあまりの寒さに身と歯をガチガチと震わせ、今はエースが作った焚き火に身を寄せあって、愚痴を言いながら寒さを凌いでいる。かくいうルーミアとバージェスも最前列に陣取り掌を前にかざして体を温めている。

 

 

 もっとも少数ではあるが寒さをものともせず離れたところで思い思いに過ごしている者もいる。元七武海の「サー・クロコダイル」を始めとした国家転覆を目論んだ政治犯や正史では黒ひげの船員になる者たち、他にもルーミアが知らない顔ぶれもその中に若干交ざっている。

 

 

 ルーミアは彼らをこそこそと観察していたが、途中で中断することになる。「ニューカマーランド」の人間たちとマゼランの“毒”に打ち勝った「麦わら」を連れたイワンコフが現れたのだ。

 

 

 そして到着するや否やクロコダイルを目敏く見つけたルフィが彼に突っ掛かり、次にクロコダイルを出したルーミアに問いつめるが、イワンコフが件の元七武海の“弱み”を握っていることとエースの助力もあってルフィは渋々だが大人しくなった。

 

 

 そんな状況の最中(さなか)でインペルダウンの脱獄が始まる。動かない彼らに業を煮やしたシリュウが発破をかけたせいである。

 

 

やつ(マゼラン)のことだ、ナメクジのように壁を這って登ってくるか、瓦礫をどかしながらでも追っかけてくる。追いつかれる前に距離を取った方がいいだろ。あいつには“毒の道(ベノム・ロード)”とかいう移動技があることだしな……。全く忌々しい野郎だ」

 

 

 ついでにマゼランが有利になる3階、4階での戦闘を避けたいとつけ加え、ほどなくしてニューカマーランドの住人と「LEVEL-6」の囚人たち総出による脱走劇が彼らが発する雄叫びとともに始まった。

 

 

 

 

 「LEVEL-6」最下層から始まった囚人たちの暴動に対して各階の看守たちは果敢に応戦するもマゼランが欠けたのも要因の一つではあるが何よりも数が多いこともあって彼らでは囚人たちを止めることをできず順に倒されて突破されていく。

 

 

 さらに同時期、他の場所──バギーとMr.3がいる「LEVEL-2」フロアでも二人が煽動して起こした暴動が発生しており、そのことも副署長であるハンニャバルの頭を悩ましている。

 

 

 おまけにルーミアたちは行く先々で連絡が取れないように各階の看守室を襲っては徹底的に破壊、フロア内にいる電伝虫を回収し通信を遮断させては囚人たちを解放、階層を上るごとに戦力を増加させていく。

 

 

 やがてハンニャバルはマゼランが来るのを見越して地下2階の階段付近と階段にインペルダウン内の戦力を集結させた。もはや自分たちではこの暴動を止められず、マゼランにしか止められないと判断、マゼランが来るまで自分たちは囚人たちの足止めに徹することにしたのである。

 

 

 しかし、ルーミアはそこに待ち構えていたハンニャバルたちを有無を言わせずに“闇”に呑み込ませて無力化、走る速度を緩ませることなく上へと続く階段を駆け上っていく。

 

 

 このまま何事もなく地上へと出られると囚人たちの間でそんな空気が流れていた時、突然、リフトから大量の毒液が噴出、避けきれずにまともに浴びてしまう者が続出した。そしてその毒液が引いた後のその場所には囚人たちを睨むマゼランが立っていた。

 

 

「“毒竜(ヒドラ)”」

 

 

 こちらを見るや否、毒でできた三つ首の竜を囚人たちに放つも、すんでのところでMr.3が“蝋”でできた巨大な壁を生み出してこれを防ぐ。

 

 

 自身の“毒竜”を防いだMr.3に対して警戒を強めるマゼラン。ルーミアたちもまたマゼラン相手に無視するわけにもいかず、ルーミアとバージェスにMr.3がマゼランの足止めを請け負い、「正義の門」を開かせるためにボン・クレーとシリュウが動力室へと向かい、ルフィを含む後の人間たちは船を手に入れるために桟橋へと急ぐ。

 

 

 去っていくルフィの後ろ姿を見送りつつ目前に立つルーミアの腕を広げたポーズを見てマゼランが尋ねると彼女は得意気に答える。

 

 

「“聖人が十字架に磔られました”って言っているように見える?」

 

「──“白ひげ”のシンボルマークを表しているのかと思ったがな……。それよりも俺の部下たちはどうした?」

 

 

 尋ねるマゼランにルーミアは右腕に“闇”を纏わせながら、笑みを弧の形にして答える。

 

 

「今、会わせてやる」

 

 

 

 

 ルーミアたちとマゼランが相対している中、ルフィたちは桟橋に辿り着いた。……だが、桟橋に停泊しているであろう海軍の軍艦、エースを護送するために用意された船を強奪する手筈であったが、どういうわけか船が1隻も泊まっていなかった。

 

 

 それはマゼランが万が一に備えて海軍に指示を出していた故である。──桟橋から離れろ……と、

 

 

 この光景に囚人たちが絶望する中、魚人であるジンベエを筆頭に軍艦を奪う段取りをする。ジンベエが巨大な扉を背負い、その上に軍艦を奪うための戦力を乗せて軍艦まで泳いでいくのである。

 

 

 いつマゼランが来るかも分からないこともあり、すぐに実行に移された。途中、奪うための船を1隻破壊してしまうが、のちに強奪に成功。その後、ジンベエが呼び寄せたジンベエザメの背に乗って軍艦に乗り込み、海軍の軍艦から砲撃が飛び交う中、「正義の門」へと船を進ませる。

 

 

 海軍たちは「正義の門」がインペルダウン内部で開閉されることを知っており、「正義の門」の前で立ち往生するであろうと考え、脱獄囚たちが乗っている軍艦を沈めるべく後を追う。

 

 

 その「正義の門」が開く。 

 

 

 インペルダウン内部、動力室にマゼランに化けたボン・クレーが看守たちに指示を出したせいである。看守たちは疑問に思いつつも「正義の門」を開いて脱獄囚を逃し、彼らが扉をくぐった後、すぐに閉じた。そんな看守たちにシリュウは愛用の刀に手をかけて声をかける。

 

 

「ご苦労。それじゃあ、あばよ」

 

 

 そうシリュウが呟くとその場にいた看守たちを一人残らず切り捨てた。

 

 




 

( ´・ω・)にゃもし。


■土曜日、ちょっと寝たら、スゲェ寝た。


■なので日曜日に執筆。朝の5時を過ぎた…
 └寝よう。

■誤字脱字とか、よろすこ。


■あとは活動報告にでも書くべ。


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→ “ マリンフォード ” 後の頂上戦争
31話 船上でのひととき


 

 

【タライ海流】

 

 

 海流という名がつけられているものの、それの正体は変形した巨大な渦潮であり、その渦潮を構成する三角形の角にはそれぞれ政府三大機関である──

 

 

 海軍本部「マリンフォード」

 大監獄「インペルダウン」

 司法の島「エニエス・ロビー」

 

 

 ──がある。そして「タライ海流」はこれらの政府三大機関を結ぶ世界政府専用の巨大な海流でもある。

 

 

 そのうちの一本、海軍本部が置かれてある「マリンフォード」に向かって流れている海流の上をインペルダウンの脱獄囚たちが乗っ取った1隻の海軍の軍艦が浮かんでいた。ルフィたちを乗せた船である。彼らはインペルダウンから脱獄できたことに感涙しており、そこかしこで喜びはしゃいでいた。

 

 

 そんな彼らを見て同じ船に乗り合わせているクロコダイルが水を差すような発言をする。

 

 

「これからマリンフォードの戦争に乗り込むって時に随分とのんきなものだな?」──と……

 

 

 そのことを思い出したのか、途端に表情を暗くする脱獄囚たち、やがて、そのうち一人がこの軍艦を乗っ取って逃げ出そうと言い放つ。

 

 

 一応、彼らはルーミアからインペルダウンを脱獄した後はそのままマリンフォードで起きる戦争に参加すること、タライ海流に一度乗れば「正義の門」を使わない限り抜け出すことができないことを伝えられていたのだが、囚人たちにとっては戦争に参戦するよりはマシと考えたようである。そして彼らは自分たちを解放させたバギーを担ぎ出す。

 

 

「頼むぜ!! キャプテン・バギー!!」

「指示をくれ!!」

「「 バギー!! バギー!! 」」

 

 

 そんな一触即発のその空気を収めたのは担ぎ出されたバギー。バギーは彼らに対して海賊としての矜持、誇り、恩義という単語を用いて彼らを説得、場を収めることに成功する。そのバギーに惚れたのか彼を讃える脱獄囚、もっとも当のバギーの内心では……

 

 

(──いくらこっちの人数が多いとはいえ、相手は「麦わら」だけじゃなく「元七武海」に「革命軍幹部」もいやがるんだぞ!? 今はいないが、どういうわけか悪魔の実の能力を2個、それも自然(ロギア)系を持っているルーミアがいるのに勝てるわけあるか!! アホ!!!!)

 

 

 ……なんてことを思っていたりする。さらに、

 

 

(海軍と白ひげが争っているときにこいつらをぶつければ多少なりとも混乱するはずだ。そのどさくさに紛れてトンズラすれば……)

 

 

 その企みを頭の中で想像したのか「ぎゃははは!!」と笑い始めるバギー。そんな彼を「戦争で勝つつもりでいる。海軍など大したことない」と解釈したのか脱獄囚のうち囚人たちはバギーを祈るポーズで尊敬の眼差しで見つめ、他の人間──クロコダイルは呆れた表情で眺め、一部ジンベエなどは囚人たちを纏めるその能力を評価する。

 

 

 その後もマリンフォードに向けて航海する脱獄囚たち。突如、ルフィたちが乗っている軍艦の横の海域、その海面から巨大な顔が飛び出す。インペルダウンに収監されていた巨人の一人だ。ただし他の巨人と比べてもかなりの巨体で普通の巨人が子供ぐらいの大きさに見えてしまう程の大きさを誇っている。

 

 

 次いでルフィたちが乗っている軍艦とは別の軍艦が海上に浮上する。どうやら巨人が手に持ってここまで移動していたようだ。その軍艦にいる人間たちのほとんどは「LEVEL-6」に収監されていた囚人たちのようで、そちらに乗っている脱獄囚たちもルフィたち同様に騒いでいる。

 

 

 ともに脱獄した仲ということもあって彼らに大手を振るルフィ。その彼にイワンコフが注意を促す。奴らの中には「白ひげ」の手によってインペルダウンに送られたことを恨んでいる者もおり、白ひげの首を取るために戦争中に仕掛けてくる可能性があるということを……

 

 

「安心しろ!! ()()()に仕掛けるつもりはないニャ!!」

 

 

 イワンコフの忠告が耳に入ったのか「LEVEL-6」の囚人の一人が応える。イワンコフが知っている顔らしく「悪政王」と小さく呟く。

 

 

「エースボーイ、海軍だけじゃなくあいつらにも目を光らせる必要があるブルね」

 

 

 白ひげを助けたいであろうエースに声をかけるイワンコフ。そのイワンコフにエースは頼み込む。

 

 

「もしものとき、白ひげとは無関係のあんたにルフィを頼みたい」

 

 

 そう言うと周りに人がいないことを確認してからエースはイワンコフに語り出す。

 

 

「──なるほどね!! エースボーイ!! よく白状してくれたブルね!! いいわよ、もしものときは首に縄を巻き付けてでも麦わらボーイを連れていくブルわ!!!!」

 

「……ああ、頼むぜ」

 

 

 エースが密かにイワンコフにお願い事をしている時、軍艦のメインマスト、その根元近くに備え付けられている電伝虫が「プルルルル」と音を出しながら震え、ちょうど近くにいたルフィが反射的に受話器を取った。

 

 

『──こちら「海軍本部」……』

 

 

 通話先は「海軍本部」。彼らは先のインペルダウンにいた艦隊から報告を受けて脱獄囚たちのことを知ったのである。通話相手である海軍の人間は脱獄囚相手に説明でもするかのように語っていく。

 

 その内容は今回の脱獄の主犯は「3()名」であり、その内訳は海賊「麦わらのルフィ」。同じく海賊「道化のバギー」とついでに本人の過去の経歴を暴露され、最後に白ひげの娘と言われている「ルーミア」の名が挙げられた。

 

 その3人の手によってインペルダウンを壊滅させられ「エース」を奪還されたこと、その3人の目的が「白ひげ」と「海軍」の戦争が激化する前に介入すること……

 

 

 そして最後に白ひげを討伐するまで「正義の門」が開くことはない、彼の大海賊を討ち取った後は次はお前たちだ、と告げると一方的に通信を切った。

 

 

 海軍のその話を聞いて苦々しい表情をするエース。ルフィに対して巻き込ませてすまないと頭を下げて謝罪をし、今からでも遅くない白ひげと関係のないお前は船を降りろと半ば命令に近い口調で告げるが、ルフィをこれを却下。その後、二人で言い争いを始めてしまう。

 

 

 そんなとき、言い争うルフィたちが乗っている軍艦の甲板にインペルダウンに最後まで残っていたルーミアたちがふわりと舞い降りる。

 

 

「随分と騒がしかったけど、何かあったのかー?」 

 

 

 きょとんとした表情でルーミアは尋ねた。

 

 

 

 

   少女に説明中……

 

 

 

 

「私が麦わらを助ける義理も義務もない」

 

 

 事の経緯を聞かされたルーミア。エースはルーミアにルフィを連れて他の島へ逃げるよう頼み込むが彼女はにべもなくそれを断った。

 

 

「こっちはお前(エース)以上に親父殿との付き合いが長いからなー、それを無視して付き合いの短い麦わらを優先して助ける気は起きないなー、諦めろ。わはははー」

 

 

 そう答えるルーミアに納得したのかエースはイワンコフに目を向け、視線に気づいたイワンコフが無言で頷く。

 

 

 船は進み、やがて大きな門が見えてくる。「正義の門」だ。その巨大な門を目しつつ船の舵を取りながらジンベエがルーミアに問う。

 

 

「ところでマリンフォードの「正義の門」はどうするつもりなんじゃ? あれは内部からの操作でしか開けんぞ?」

 

「『マリンフォード』にこっちの仲間が潜り込んでいる」 

 

 

 肩からぶら下げた赤いカバンに手を突っ込んで中から取り出し、手のひらに乗せたのは一匹の電伝虫。その電伝虫から通信が入る。

 

 

『──姫ですか? 門を開けますが気をつけてください。3隻の軍艦が待ち構えています。インペルダウンから軍艦で姫を追いかけている者もいるようですよ。数が正しければ5隻とのこと……』

 

 

 軍艦の存在を聞かされ、甲板にいた人間たちに緊張が走る。さらに次の言葉で驚愕する。

 

 

『──それに偽者かと思われますが、処刑台に「エース」がいます……』

 

 




⊂(・ω・` )


( ´・ω・)にゃもし。
*「残像だ。だが今のは残像でも痛かったぞ。

■朝4時にできた。
 └ついでに特殊タグで遊ぶべ。
 └できた。寝る。おやすみー。

■あとは活動報告に書くべ。


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32話 開戦は人知れず始まる。

 

 

【マリンフォード「海軍本部」】

 

 

 「海軍本部」のある三日月形の島“マリンフォード”

 

 

 白ひげの2番隊隊長である「火拳のエース」の公開処刑が行われるその島には大きな町があり、主に海兵たちとその家族が住んでいる。

 

 

 しかし、今は「白ひげ」との戦争に備えて避難勧告が出されているため、住人たちは近くの島──シャボンディ諸島等に避難している。そのこともあってか、今現在、島にある町は静けさに満ちている。

 

 

 その一方で海軍がその島で「白ひげ」との戦争に備えて待機している中、各所から報告が届けられる作戦本部が置かれている会議室では蜂の巣をつついたかのような騒ぎに陥っていた。

 

 

エースを奪還されただとォォォ!?

 

 

 海軍将校の一人が部下からの報告を受けてすっとんきょうな声を上げる。報告の内容は主にインペルダウン大監獄のものであり、その署長であるマゼランから送られてきたものである。

 

 

 事が事なだけに将校はすぐさま箝口令を敷き、次いで上の人間──センゴクに連絡。彼に判断を委ねる。それに対してのセンゴクの返答は……

 

 

「このマリンフォードで『白ひげ』を討つ!! そのために準備をしてきた!!」

 

 

 センゴクは部下の海兵たちに白ひげをおびき寄せるため、エースの身代わりを用意させて処刑台に送らせ、その様子を映像電伝虫を使って放送、シャボンディ諸島にある巨大なモニターにその光景が映る。

 

 

 次いでインペルダウンの脱獄囚に関してはエースを護送するはずだった軍艦5隻に跡を追わせ、さらにマリンフォードからも3隻を向かわせて足止めをさせ、計8隻の軍艦でタライ海流にて彼らを挟み撃ちにして迎撃する作戦を立てた。

 

 

 一度、タライ海流に乗ってしまえば「正義の門」を開閉させない限り脱出することはできない。そのこともあってセンゴクは脱獄囚たちがタライ海流にいる間に殲滅させる腹積もりであった。

 

 

 白ひげを討伐した後にエースを生け捕りにして処刑することも考えていたが、さすがにそれは不可能と言わずまでもかなり困難とセンゴクは判断。まずは白ひげの討伐を優先させる。エースに関しては早々に生け捕りを諦め、場合によっては脱獄囚ともどもタライ海流にて軍艦を砲撃して海に沈め、殲滅することも視野に入れる。

 

 

 何しろ相手はインペルダウンに収監されるような悪人ども。それに船に乗っている連中の中には「エース」や「ルフィ」「ルーミア」といった世間を騒がせている悪党を親に持つ人間もいる。認めたくないが実力もある。

 

 

 白ひげの2番隊隊長を任されている自然(ロギア)系能力者「火拳のエース」に七武海を二人打ち倒した「麦わらのルフィ」、仲間とおぼしき男と一緒とはいえインペルダウンの署長である「マゼラン」を再起不能にした「ルーミア」。他にも革命軍幹部や元七武海の二人、LEVEL-6に収監されていた囚人たちもいる。

 

 

 このそうそうたる面子に、さしものセンゴクも頭を抱え、思わず愚痴を漏らす。

 

 

「……悪夢としか言いようがない」

 

「ぶわっはっはっは!! さすがはわしの孫じゃ!!」

 

「笑い事じゃないぞ!! ガープ!! お前の孫が起こした問題なんだぞ!?」

 

 

 自分の親族が関わっている事件にも関わらず豪快に笑い飛ばすガープ。彼に対して、もの言いたげそうな顔を向けるが、長年の付き合いから何を言っても無駄と判断し、部下から手渡された資料の束に目を通していく。

 

 

「よりによって自然(ロギア)系『ゴロゴロの実』の能力者か……」

 

 

 資料には「インペルダウン」で起きた脱獄の詳細と脱獄囚「ルーミア」等に関する情報が事細かに記されていた。……だが、その資料にはルーミアがインペルダウン内の戦闘において「ヤミヤミの実」の能力を使用していなかったせいもあるのだろう、その資料には「ゴロゴロの実」のことは書かれていても、「ヤミヤミの実」に関する能力については一切、書かれていなかった。

 

 

(……「エース」を連れた脱獄囚どもがわざわざここ(マリンフォード)に来る。「エース」を救出したならば、奴らが海軍本部のあるマリンフォードに来る理由なぞない。おそらく連中には「白ひげ」に連絡する術がなく、伝えていない。だから連中はそのことを報せるために危険を承知の上で「白ひげ」が現れるであろうマリンフォードに来る。無論、タライ海流から抜け出せないのも理由の一つだろうが……)

 

 

 刻々と迫る処刑の時間。脱獄囚たちが「正義の門」付近に来る頃合いを見計らってセンゴクは3隻の軍艦の出撃を命じる。

 

 

 脱獄囚を討伐するためにマリンフォードを離れる3隻の軍艦。しかし、その3隻の軍艦が「正義の門」に到達するよりも早く門が開き、門の向こう側から1隻の軍艦が現れる。ルーミアたちが乗っている船だ。

 

 

「脱獄囚の船だ!! 撃て!!!!」

 

 

 海兵の一人が甲板に乗っている囚人服姿の人間を見るや否、声を張り上げて報せ、甲板上が慌ただしくなり、しばらくして砲撃の準備を整い、いざ大砲を発射するときに今度は周囲の見張りをしていた海兵が叫び、警告を発する。

 

 

「後方に軍艦!! 脱獄囚どもです!!!!」

 

 

 海面を割ってもう1隻の軍艦が飛び出し、間を置かずに大砲の弾が海兵たちに向かって飛んでいく。

 

 

「インペルダウンから5隻が来るはずだ!! それまで持ちこたえさせるんだ!!!!」

 

 

 指揮を預かる将校の一人が叱咤激励を飛ばすも……

 

 

「た、隊長!! 正義の門が……」

「閉じていくだと!?」

「動力室の連中は何をやっているんだ!?」

 

 

 軍艦を挟んで大砲が飛び交う海上、海兵たちが見守る中、彼らが見ている目の前で「正義の門」が閉じられ、まもなくして海兵たちが乗っている軍艦の1隻が炎上し、海の中へと沈んでいった。

 

 

 「正義の門」付近で軍艦による砲撃戦が行われている一方で、マリンフォードでも(いくさ)が始まる。

 

 

 三日月形のマリンフォードの湾頭付近の海に無数の海賊船が出現したのだ。さらに湾内にも鯨を模した船首を持つ4隻の船が海底から浮上、その内の1隻“モビーディック号”の白鯨を模した船首の上に立つ大男──白ひげがマリンフォードに居合わす海軍たちに向かって叫ぶ。

 

 

 

 

おれの愛する息子は無事なんだろうな………!!!!

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■朝の4時にできたよん。
 └後書きをちょこちょこ書いて、おやすみー。

■ヤバいな、とうとうここまで来ちゃったよ。
 └頂上決戦。
 └正直、ここまで続くとは思わんかった。
 └正直、舐めてたわ。

■あえて言おう、期待を裏切らせてもらいます。
 └いつも通りに好きに書くよん。

■ぶっちゃけ本作のルーミアさん「38歳」なので
 └成長する見込みがもうないのよ。
 └ニュース・クーでは「28歳」と記載されている。

■後は活動報告に書くべ。

■誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。
 └確認せずにほいほい適用しています。
 └探すのけっこう面倒なので…


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33話 面子と落とし前

 

 

 

 

 マリンフォードにある『正義の門』付近でルーミアたち脱獄囚が海軍と船による砲撃戦をしている頃……

 

 

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 シャボンディ諸島の広場に設置してある巨大モニターにはマリンフォードの処刑台に座らせている「エース」らしき人物が映し出されていた。見物人が見守る中、センゴクはエースが彼の海賊王の子だということを暴露、シャボンディ諸島にいた人間たちに衝撃を与えた。

 

 

 そこへ『白ひげ』が現れた。

 

 

「白ひげが現れたってことはあのエースは本物なのか?」

「……海軍が箔をつけるために用意したニセモノじゃなかったのか?」

「いや、そもそも海軍がニセモノを用意する理由なんてあるのか? ビブルカードでわかるだろ? 白ひげともあろう人物が持っていないとは思えない」

「どちらにしろ海軍が白ひげにケンカを売ったことに変わりはない。白ひげには四皇としての面子があるんだ。報復をしないわけがない」

 

 

 白ひげが現れたことで多少、動揺するも「白ひげならばあり得る」と、どこか納得する見物人たち。彼らはモニターの下で戦争の勝敗、戦後、世界はどうなるのか等々…… その憶測を立て始める。そして彼らが結論を出す前に画面の向こう側ではマリンフォードを戦場にした戦争が始まる前ぶれだろう、無数の海賊船が集まり始まる。

 

 

 モニターに映るその光景を見守る観戦者の中には衣服に黒地に十字架をあしらったワッペンをつけた男たちの集団がいる。そのうちの一人が懐から電伝虫を取り出す。

 

 

「──ラフィットさん。……ええ、シャボンディ諸島のモニターに動きがあります……」

 

 

 シャボンディ諸島から得られる情報を逐一、報告する役目を負った男は連絡先であるラフィットに通達。その情報を受け取ったラフィットはルーミアに伝えるべく電伝虫のダイヤルを回す。

 

 

 

 

【マリンフォード】

 

 

 ──マリンフォードの沖合いの海上、『正義の門』の付近にて1隻の軍艦が轟々と激しい炎を上げて燃えている。その甲板では炎とそれが生み出す熱から逃れるべく燃え盛る船から次々と海兵たちが手摺を乗り越えて海へと飛び込んでいく。やがて船は海面に漂う彼らの目の前で胴体の半ばあたりに亀裂が入り、軋む音を立てながら二つにへし折れ、最後には完全に分断、船の内部が剥き出しになった断面部分から海へと沈んでいく。

 

 

 その光景を残った2隻の軍艦のうち、間近にいた軍艦に乗船している海軍たちが凝視しながら口々に捲し立てる。

 

 

「バカな!? 一体いつの間に被弾したんだ!?」

「……そ、それが何もないところから突然、白いゼリー状の液体が船に流れ込んで、その後に雷鳴のような轟音が鳴ったかと思えば炎上しまして……」

 

 

 怒鳴る将校に海兵の一人がしどろもどろながらも答える。その時、彼らのすぐ側の空間が突如、両開きの扉が開くように左右に開いた。

 

 

ウィーハッハッハッハァ~~~!!!!

 

 

 その空間の奥にいたのはバージェスを始めとした武装した囚人姿の人間たち。彼らは扉が完全に開くと同時に扉の縁を蹴って勢いよく飛び出す。そして手にした武器を片手に目についた海兵から襲いかかり、たちまち船の上は双方入り乱れての乱戦になった。

 

 

 海兵たちを率いる立場にいる将校は部下たちを叱りつけながらも奮い立たせつつ、味方の軍艦の様子を見る。余裕があるならば彼らに救援を要請するためだ。

 

 

 しかし、将校が見たのは海兵たちが一人残らず倒され、代わりに数名の脱獄囚たちが我が物顔で居座っている光景だった。

 

 

「ウィーハッハッハッハァ~~~!!!!」

 

 

 なんとも陽気な大声に振り向く将校。彼は眼前に腕を後ろに大きく振りかぶる大男──バージェスの姿を最後に、意識が途切れる。

 

 

 

 

「名前だけ聞くと侵入以外に使えなさそうな能力の名前だが…… 案外、使い道があるもんだな」

 

 

 未だ軍艦の甲板で暴れまわる囚人服姿の人間に交じって肉弾戦で敵をなぎ倒していくバージェス。その光景を、海兵たちを乱雑に積み上げて作った山の頂きに腰を下ろして葉巻を吹かしながらクロコダイルは眺めていた。

 

 

「わはははー。悪魔の実の能力は使い手次第。……というやつだなー」

 

 

 人の山のてっぺんに座るクロコダイルの足下、眼下から聞こえてくる少女の──ルーミアの声に顔を向けるクロコダイル。そこにはルーミアが床にちょこんと正座をして電伝虫でどこかにかけている最中だった。

 

 

『──以上です』

 

 

 やがて相手との話を終えたのか、おもむろにすくっと立ち上がるルーミア。彼女は誰に対して言うわけでもなく深刻そうに顔を歪めながら言う。

 

 

「……『白ひげ』がマリンフォードに現れた」  

 

 

 

 

 

 

 

 マリンフォードの湾内に現れた白ひげ。彼が現れたのを確認したセンゴクは配下の海兵に映像電伝虫の音声のみを切るよう、指示を出す。シャボンディ諸島の処刑台にいるエースがニセモノと悟られないためにだ。もっとも──

 

 

「グララララ!! わざわざニセモノを用意するとは随分と手の込んだことをしてくれるじゃねぇか!? なあ? センゴク!!」

 

「お前がこうして現れたんだ。決してムダな行動ではなかった。あとはお前を倒せば、エースを守る者がいなくなる。ついでにお前の娘とかいう者も監獄に送ってやろう」

 

「それを俺が許すと思うか? こっちは俺の大事な息子を痛めつけられたんだ。その落とし前をつけさせてもらおうか?」

 

 

 そう言うと自身の身長を超す薙刀を船首に突き刺して両手を自由にさせると、両脇の何もない空間に拳を叩き込み、大気に()()を入れさせる。

 

 

「これだけの数の軍艦だ。エースとティーチが逃げやすいように減らしておかねぇとなぁ? グララララ!!」

 

 

 しばらくして、マリンフォードを挟んで島の両側の海がうねり、膨れ上がり、やがて島を飲み込むほどの大きさの津波に変化して、島の両側から島を押し潰さんばかりに押し寄せてきた。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。     (・ω・` )フリーザ

フリーザ「ホホホホホ。今のは残像ですよ。……ですが、残像でも先ほどの攻撃はなかなか痛かったですよ? どうです? 私の部下になりませんか?」

■残像ネタの生みの親である飛影よりもフリーザのが思い付く。

■朝の5時にできた。
 └寝るおー。


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34話 マリンフォードの海域に……

 

 

 マリンフォードの両側から島の標高よりも倍以上に高く巨大な津波が島内部へと押し寄せてきた──かと思えば、戦場になっている湾内のど真ん中へ飛び出した海軍の大将の一人が悪魔の実の能力で迫り来る海の壁を瞬時に凍らせて津波を止め、次に白ひげたちの船4隻ごと湾内の海を凍らせて彼らの動きを封じる。

 

 

 戦場に足場ができたことで海賊たちは船から飛び降りて凍った海の上へ、海軍は防波堤を飛び越えて、凍った湾内へと両者入り乱れて大勢の人が雪崩れ込み、戦場は一層、騒がしくなる。

 

 

 それはのちに呼ばれることになる頂上戦争の名に相応しく、今までに類を見ない大規模なものになっていく。

 

 

 巨大な氷山を上下二つ真横に断ち切るほどの斬撃を放つ剣士の地を這う縦一文字の衝撃波を、白ひげ海賊団の隊長格の大柄の海賊が身体の左半分をダイヤモンドに変化させ、その大きな体で無傷で受け止める。

 

 

 そして意趣返しと言わんばかりにその海賊が湾内の凍った海を掘り起こして投げ放った数名の巨人をまとめて押し潰してしまうほど山のように大きな氷塊を、今度は別の大将が溶岩に変化させた腕から発射された火炎弾で跡形もなく蒸発させる。

 

 

 そんな光景をシャボンディ諸島の人間たちはこの世の終わりでも見ているかのようにモニター越しに固唾を呑んで戦争の様子を見守っていた。

 

 

 そんな彼らとは別の視点、別の場所、遥か高みから戦場の様子を窺っている者たちがいた。

 

 

 

 

 マリンフォードから程近い海域。戦場の爆音が僅かながらに聞こえてくるその場所にて、そこに1隻の船が海面を漂っていた。黒地に白の十字架をあしらったシンボルマークを掲げているルーミア一行の船である。その船の甲板から鉄でできた太く頑丈そうな鎖が天に向かって伸びている。

 

 

 その鎖を上に辿っていくと、やがて空に浮かぶ一つの気球に辿り着く。乗っているのはルーミアの船員の一人である「オーガー」と配下の男二人。彼らはその場所から携帯用の片手で持てる小型の望遠鏡で遥か先、眼下に見えるマリンフォードの状況とその周囲をつぶさに観察していた。

 

 

 海軍の最高戦力である三人の大将はもとより、数人メンバーが欠けている王下七武海。海軍の英雄ガープに仏のセンゴク。──という海軍の主だったメンバーに、白ひげと彼を支える10人の隊長に白ひげを慕う傘下の海賊たち。そしてルーミアたち脱獄囚が乗っている2隻の軍艦。

 

 

 海賊と海軍。戦場で命のやり取りをしている両者の様子を望遠鏡で視界におさめつつ、オーガーは手元の台座に鎮座している電伝虫の受話器を取り、船にいるラフィットと連絡を取る。

 

 

「──以上だ。()()よりも変更点が多々ある。これより先は『白ひげ』の周囲を警戒しながら海兵たちを減らしておこう」

 

 

 そう言うと隣にいる男に白ひげの周囲と大将の監視を頼むオーガー。不思議そうな顔を浮かべる男にオーガーは長銃を構えながら教える。

 

 

「傘下の海賊が海軍に騙されて裏切る可能性があるからだ」

 

 

 長銃の照準機に片目を当てたまま答えると同時に引き金を引く。発射された一個の弾丸が照準機に映った一人の海兵の左膝を撃ち抜く。撃たれたその海兵は片膝を屈して前のめりになって倒れかかる。そこに相対していた海賊に背中を斬られて斬り伏せられてしまう。

 

 

「……戦場に流れ弾はつきものだ。たとえ私の手でなくともお前は撃たれた運命だったのだろう」

  

 

 一部始終を見終えた後、淡々とした表情と口調で語るオーガー。彼は次のターゲットを撃つため、照準機から目を離し、長銃に弾を込める。その間にもマリンフォードで起きている争いは続いている。

 

 

 そんな危険地帯に飛び込もうとする一団がいる。

 

 

 脱獄囚たちが乗る2隻の軍艦がマリンフォードへと向かっている。そのうち1隻、ルーミアたちがいる船の甲板では彼女を中心に話し合いが行われている。

 

 

「……海軍が親父殿を逃さないようにここの湾内入口をおさえるだろーから、やつらの増援が現れたとこを背後から私たちが襲撃、挟み撃ちにするわけだなー」

 

 

 どこから持ってきたのか甲板にテーブルが置かれており、そのテーブルの上には簡略化されたマリンフォードの地図が描かれていた紙切れが置かれていた。背が低いこともあって台座の上に乗っていたルーミア。彼女は持っていたペンの頭で地図の一点、丸で囲まれた「増援」の文字をペシペシと軽く叩いて指す。

 

 

 地図にはマリンフォードを表しているだろう大きな三日月が描かれていおり、その湾内の出入口には丸で囲まれた「増援」という文字がある。その「増援」の文字の上と下にはそれぞれ矢印があり、文字の方に向いていた。

 

 

「親父殿がわざわざ湾内に現れたのは海軍の主戦力を惹き付けるためと撤退する時の殿(しんがり)を務めるつもりなんだろなー、わはははー。湾の外に居てくれたら楽だったんだけどなー」

 

 

 やがてルーミアたちの乗る船はマリンフォードの全容を捉える距離まで近づいた。それに伴い囚人たちと彼らを率いるバギーはルーミアから貸し与えられた(ダイアル)を装着し、戦闘態勢を整える。電伝虫で伝えられるマリンフォードの戦況を逐一、聞きながらルーミアたちは船を進ませる。

 

 

(……白ひげと一緒なら海軍もどうにかなりそうだ。逃げ切った後にこの囚人たちを上手いこと言いくるめて配下にするのも悪くねぇなぁ!! ぎゃははは!!)

 

 

 海軍本部が置かれているマリンフォードを目の前にして「ぎゃははは!!」と声を出して笑うバギーに囚人たちは「海軍など恐るるに足らず!!」と解釈したらしく得物を高々に掲げて威勢のいい雄叫びを上げる。バギーもそんな彼らを頼もしく思ったのかさらに笑い声を上げる。

 

 

(……どさくさ紛れに白ひげの首を取るつもりだが、こいつらがいる限りそう簡単に取れそうもないな……)

 

 

 そんなバギーたちとは対照的にクロコダイルは彼らを冷ややかな目で一瞥し、ルーミアとエース、元七武海であるジンベエ、さらに自分の弱味を握っているイワンコフを順に眺めてそんなことを考える。

 

 

 クロコダイルが彼らを見てそう思っていたように彼らもまたクロコダイルを、さらに隣を走るもう1隻の船に乗っているLEVEL-6の囚人たちにも目を光らせる。油断なく目を光らせるジンベエとエース、イワンコフの三者に対してルーミアは言う。

 

 

「あの船の連中、全員が全員とも親父殿にやられたわけじゃないからな、それこそ他の四皇だったり、七武海にやられた連中もいるはず。そんな連中が足並み揃えて親父殿の首を取りに行くとは思えないなー」

 

 

 なるほどと頷いてみせるものの、それでも完全に疑念を拭えないのか訝しげる。そんな彼らにルーミアは付け加えて言う。

 

 

 

「いざというときは“闇”に呑み込ませた上に上空7,000mの空から落とすから安心しろ」──と、

 

 

 どことなく暗い笑顔を浮かべるルーミアに冷や汗をかく各々。船は様々な意志を乗せて戦場へと進む。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■日付変わる前だからセーフ!!!!

■正直、諦めていたヨ。
 諦めないって大事だネ。

■仕事の合間に書いていたヨ。

■誤字とかヨロスコ。

■仕事に戻るヨ。

■接客業の従業員に優しくしてあげて……


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35話 ルーミア参上

 

 

「クロコダイルやジンベエはともかく『暴君』までいないのが妙だな……」

 

 

 視線の先、防波堤の上にいる七武海の面々を見据えながら白ひげは言う。彼の記憶では、クロコダイルは名の知られていない海賊に討伐され、ジンベエは魚人島の恩のために海軍に反発、その後インペルダウンに投獄されたのを白ひげは知っている。そのため二人がこの場にいないことは理解できる。

 

 

 それゆえ、「七武海にして唯一政府の言いなりに動く男」と言われている彼の「暴君」がこの場にいないことに疑問を抱いていた。

 

 

「ふん。……まあ、いい。向こうの戦力が減っているんだ。悲観することはねェ。むしろ、ありがたいぐらいだ」

 

 

 何かあるのでは? ……と勘ぐりつつも白ひげは船員たちに進軍させる。

 

 

 白ひげ海賊団は開戦当初から湾内にとどまって海軍の「大将」や「七武海」と戦っていた。対して傘下の海賊たちは湾内に入って彼らを手助けするようなことはなく、島の外側に配置されている軍艦を相手にしていた。

 

 

 それは白ひげ海賊団が「大将」や「王下七武海」といった海軍の厄介な戦力を相手にするため、そして白ひげは傘下の海賊たちに処刑台にいるエースは偽者であり本物はすでに脱獄していてマリンフォードに向かっていること、エースたちと合流次第、自分たちが殿になって撤退する旨を前もって彼らに通達していた。

 

 

 傘下の海賊たちもまた白ひげ海賊団が撤退するときの負担を少しでも減らすためマリンフォード海域、島の外にある軍艦と戦って数を減らしていた。

 

 

 そして戦争の半ば、傘下の海賊の一人である──海軍に所属している巨人よりも倍以上の巨体を持つ古代巨人種──リトルオーズJr.が湾内入口、左側の防壁を腕力にものを言わせて破壊、さらに「氷の魔女」の異名を持つ女海賊ホワイティベティが大将青キジが凍らせた海を砕氷船で氷を砕きつつ右側の防壁に船ごと突っ込んで破壊、出入口を広げさせる。そしてそのまま氷で身動きが取れない白ひげ海賊団の船を自由にさせるべく湾内に足を踏み入れるが……

 

 

「『暴君くま』だと!? それもいっぱい居やがる!!」

「違う!! 暴君じゃない!! うわさの『パシフィスタ』か!?」

「それだけじゃない!! 大将もいるぞ!!!!」

「青キジだ!! 能力に気をつけろ!!!!」

 

 

 待ち構えてパシフィスタが海賊たちに向けて一斉に口から細い光線を発射、海賊たちの間に着弾したその場所に半円の光を作り出しては爆発、白ひげの救援に向かう海賊たちを駆逐していく。さらに大将青キジが彼らの船を海ごと凍らせて彼らの()を奪う。

 

 

 無論、彼らとて黙ってやられるわけがなく、各自で反撃を行うも、持っている武器がパシフィスタの肌にキズをつけるどころか逆に砕かれ、武器を失い無防備になったところを至近距離から光線を撃たれて返り討ちに遭う。

 

 

 白ひげがいる場所の後方、湾内入口に海軍の増援であるパシフィスタが出現したことにより、戦局に陰りが出始める。白ひげは海軍の増援に対応すべく、()()()()船の近くにいた傘下の海賊の船長の一人を自分の近くに呼び寄せる。

 

 

 大渦蜘蛛海賊団 船長 スクアードを……

 

 

 スクアードは白ひげと二言三言、言葉を交わすと、愛用の身の丈を超す刀を鞘から抜いて抜き身の状態にさせ、白ひげに背を見せるように刀を両手で持って水平に構えた後、切っ先を白ひげに向けて飛びかかった。

 

 

「「…………っ!!!?」」

 

 

 しかし、白ひげの腹に突き刺さるはずだった刀はどこからか飛んできた弾丸により刀身を半分ほどの長さに砕かれて失速、勢いが落ちる。それでもスクアードはところ構わず縦に振りかぶるが、白ひげはそれを空いた左腕で受け止め、スクアードの刀の刃は白ひげの腕の半ばで動きが完全に止まる。

 

 

「──失敗したか…… エースの件といい、脱獄の件といい…… こうも失敗が立て続けに続くとはな……」

 

 

 「ここら辺で優位に立ちたかったんだがな……」白ひげに致命傷を与えるため赤犬サカズキにスクアードと接触するよう使命を与えたセンゴク。彼は作戦を次の段階に移すため湾内に設置されている「包囲壁」を作動させるよう部下に指示を下す。

 

 

 センゴクの目には急いで駆けつけたマルコがスクアードを床に押さえつけて取り押さえる光景が映っていた。

 

 

 

 

 湾内で激しい戦闘が行われている一方でルーミアが乗る軍艦ではラフィットから送られてきた──傘下の海賊であるスクアードが白ひげを刺そうとした情報を聞いて事情を知るルーミアを除いた一同が驚愕する。

 

 

『──姫。傘下の海賊「スクアード」が白ひげを刺そうとしましたが、オーガーが阻止しました。……しかし、湾内に鋼鉄の壁がせり出し、湾頭には例の「パシフィスタ」と「青キジ」がおります……』

 

 

 『それでは合流先に……』と、そこで通信が一度途絶える。

 

 

「うちの船には「ウォーターセブン」や「シャボンディ諸島」から拾ってきた船医と医療王国「ドラム王国」の医者数名が乗っている。頭と心臓さえ守れば多少の無茶はどうにかなる。それこそ内臓を焼かれてもなー?」

 

 

 「安心してやられろ」と腰に手を当てて、木箱の上でふんぞり返るルーミアに「さすがにそれは無理だろ」と囚人服を着た脱獄囚の一人が言うがルーミアはこれを軽く聞き流す。そして仏頂面のクロコダイルに声をかける。

 

 

「うちの親父殿を討ち取るまたとないチャンスだが、そんなことをすれば海軍が喜ぶだけだが、お前はどうする? サー・クロコダイル?」   

 

 

 そう尋ねるルーミアにクロコダイルは面白くなさそうに一瞥した後、マリンフォードの方に顔を向ける。

 

 

「よし!! お前ら腹をくくれ!! これよりマリンフォードに突貫する!!!!」 

 

 

 なぜかバギーが先導して囚人たちを焚き付け、囚人たちが威勢のいい雄叫びを上げる。

 

 

 やがて軍艦は海と氷の境目まで到達すると……突如、船体の前方部分が浮き上がり、そのまま氷の上に乗り上げる。そして引っ張られるように前へ前へと氷を削りながら、時には横倒しになった船を撥ね飛ばしつつ凍った海の上を突き進む。

 

 

 それから程なくしてパシフィスタがいる湾頭にまで軍艦は到達する。

 

 

 当然、こんな目立つ登場の仕方して気づかれないはずがなくパシフィスタを率いている戦桃丸──金太郎を彷彿させる大男がパシフィスタに迎撃を命じる。

 

 

 1隻の軍艦目掛けて一斉に放たれるパシフィスタの光線。その数は優に20は超える。

 

 

 ──が、その全てが軍艦に突き刺さる寸前、上空から落ちてきた極太の落雷に遮られて一つも届かず雷に打ち消された。

 

 

 それを目の当たりにした戦桃丸は電伝虫で誰かに連絡する。

 

 

「さっきの落雷でわかったと思うが、ゴロゴロの実の能力者──ルーミアが来た」……と、

 

 

 軍艦の先端、(へさき)には腕を左右に伸ばした格好のルーミアが立っていた。

 

 

「金太郎に熊はつきものだけど、それはさすがに多すぎるから残り一体になるまで減らしてあげるよ」

 

 

 ルーミアのそれが合図になったのか、軍艦から脱獄囚たちが飛び出す。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■仕事の合間に投稿よん。

■誤字とか、あったら報告をお願いします。

■感想の返信すまねぇ。


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36話 合流する。脱出を図る。試みる。

 

 

 凍った海の上に乗り上げた軍艦。その舳先に立つルーミア。彼女が左手を頭上高く掲げると、その人差し指の指先にバチバチと電気が迸る。

 

 

「やってみたかった必殺技その1!!」

 

 

 電気を纏ったその指先を大柄の大男──人造兵器パシフィスタの一体に向けて指先から言葉とともに雷を解き放つ。

 

 

「サンダーブレイク!!」

 

 

 一条の雷がパシフィスタの胴体に直撃。パシフィスタの全身を電気が覆う。

 

 

 やがて電撃がおさまった後にはぷすぷすと至るところから灰色の煙を上げて全身が黒く焦げたパシフィスタがそこに立っていた。そして力尽きたのか両膝から崩れ落ち、前向きに倒れ、それっきり動かなくなる。戦場にしばし沈黙が流れる。

 

 

 それからほどなくして海賊たちの間で歓声が沸き起こり、対して海兵たちは顔をしかめる。前者は誰もなし得なかった海軍の兵器の破壊を成し遂げた頼もしい存在の出現に、後者は自分たちの強力な戦力を難なく無力化させた厄介な存在の出現に、それぞれ感情を露にする。

 

 

 さらにルーミアたち脱獄囚の集団はバージェスを筆頭にパシフィスタの部隊に攻撃を仕掛ける。

 

 

 Mr.3の蝋でパシフィスタの足や頭を覆って動きを封じ、そこへバージェスがドアドアの実の能力でパシフィスタの身体の一部をドアのように開閉させて機械が詰まった中身を露出させる。そして最後にバージェスの後ろで待機していたバギーたち囚人服の男どもが丸出しになった身体内部へ(ダイアル)を使った攻撃を叩き込んでいく。

 

 

「ギャハハハ!! 海軍の兵器もこうなりゃ恰好の的だな!! おい!! お前らこの調子で殲滅させるぞ!!」

 

「「 おお~~~~っっ!!!! 」」

 

 

 また一体、バギーたちの手によってパシフィスタを倒されるのを見て戦桃丸は舌打ちを打つ。彼は応援を要請すべく電伝虫の受話器を取った。

 

 

「──パシフィスタじゃ相手にならん。相性が悪すぎる。急いで応援を寄越してくれ。それと沖合いから動かない軍艦が1隻おる。……ああ、やつらが奪った軍艦だ」

 

 

 そう通信を送った後、受話器の向こう側から間延びした返答が返ってきた。

 

 

 

 

 ルーミアたちの参入とパシフィスタ撃破に調子づいた海賊たちは巻き返しを図る。彼らはパシフィスタの部隊をルーミアたちに任せて湾頭へと進撃を開始する。その中には「エース」と「ルフィ」。それに二人を支援するべく彼らのあとを追うイワンコフが率いるニューカマーの軍団。さらに「ジンベエ」や「クロコダイル」の元七武海のメンバーも加わっている。

 

 

 彼らは急ぎ足で道中の海兵たちを蹴散らしながら白ひげの下へと向かう。ルーミアは軍艦の手すりの上に腰掛けて足をパタパタさせながら彼らの後ろ姿を見送った後、眼下で行われている戦闘に目を向ける。

 

 

 風貝(ブレスダイアル)がついたスケート靴を装着したバギーが宙に浮きながら囚人たちに叱咤激励を飛ばし、衝撃貝(インパクト・ダイアル)を手のひらに嵌めた囚人たちがパシフィスタの攻撃を防いでは胴体に衝撃を叩き込む。さらにパシフィスタが口から光線を発射する素振りを見せようものならば、Mr.3が蝋で顔面を覆わせて至近距離で暴発させる。

 

  

 バギーたちが戦っている場所とは別のところではバージェスと戦桃丸が対峙していた。

 

 

「ウィ──ハッハッハァ~~~っ!!!!

 図体のわりにはよく避けるじゃねェか~~~っ!?」 

 

「あれを見ちゃあ、たとえ覇気を纏っても受ける気にならん。大事なまさかりをこんな風にしやがって」

 

 

 バージェスに向かって悪態を吐く戦桃丸。彼の手元にはまさかりの持ち手部分だった鉄の棒が握られていた。

 

 

 戦桃丸は使い物にならなくなった持ち手部分をバージェスに向かって投げた後にあとを追うように駆ける。対してバージェスは自分に向かって飛んでくる鉄の棒を左手で掴んで受け止め、空いた右手で迫ってくる戦桃丸の顔面目掛けて伸ばす。

 

 

 だが戦桃丸はその右手の手首を左手の甲で強く払って触れられるのを阻止。がら空きになったバージェスの胴体に両手を使った突っ張りを叩き込む。

 

 

足空独行(アシガラドッコイ)!!」

 

 

 両手の突っ張りをもろに食らったバージェスは弾き飛ばされ、軍艦の船体に背中から激突した。

 

 

 

 

 軍艦の手すりに腰掛けて戦場の一部始終を眺めていたルーミア。その彼女の膝の上に乗っている電伝虫が小刻みに震えて通信が入ったことを伝える。通信相手はオーガー。彼は気球に乗って上空から戦場の様子を窺い、その様子をルーミアに伝えていたのである。

 

  

 オーガーの情報によると、湾内の氷を赤犬が溶かし、白ひげたちは船を捨てて湾頭へと移動。そこに待ち構えていた大将たちと激しい戦闘が行われているという。さらに七武海や名のある中将たちも加わり、一瞬の隙を見せたマルコが中将の一人に後ろ手で手錠をかけられ、さらにダイヤモンド・ジョズが青雉に氷づけにされ、そこで足止めを食らっているという。

 

 

『──それと大将の一人、黄猿がそっちに向かっている……』

 

 

 直後、バギーたちが戦闘している一角で強烈な閃光が走り、囚人たちを巻き込んで爆発が起きた。その爆風に煽られて宙に浮いていたバギーが「ぬわぁにぃ~!?」と、すっとんきょうな声を上げながらどこかへとぶっ飛んでいく。

 

 

「……ああ、今しがた来たよ。そろそろ“万雷(ママラガン)”の用意をした方がいいかもなー」

 

 

 爆発の中心地には黄色のストライプスーツを着た中年男性が立っており、軍艦の手すりに座っているルーミアを観察するようにじっと凝視していた。

 

 

「ずいぶんとまぁー、可愛らしいお嬢ちゃんだねぇ……」

  

 

 などと開口一番にそんなことを宣う黄猿にルーミアは無言で懐から分銅のついた鎖を取り出して投げるが、黄猿はそれが覇気が纏っていないものと分かると、身動き一つせず自然体で受ける。

 

 

「残念だけど、わっしみたいな自然系(ロギア)の能力者に覇気の込もっていない攻撃など無意味だよぉー……」

 

 

 ルーミアの投げた鎖つき分銅は黄猿の腹をものの見事に貫通して先端の分銅が氷上に突き刺さるものの、黄猿は自然系(ロギア)特有の体を流動体にすることで攻撃を無効化していた。

 

 

「それじゃあ、()()()()()()()()()()()()()どうなるのかなー?」

 

 

 言うや否、鎖に覇気を纏わせ、さらに電流を流す。これには黄猿は堪らず苦悶の表情を浮かべて体をくの字に折り曲げる。その後、自ら体を光に変えて分解、少し離れた場所で同じ体勢で体を再構築する。

 

 

「今ので倒れてくれたら楽だったんだけどなー、さすがに大将相手じゃ高望みし過ぎたかなー?」

 

 

 右手で鎖を引き寄せて手元に手繰らせながら言うルーミア。

 

 

「末恐ろしいことを思いつくお嬢ちゃんだねェー……。おじさんじゃなければ、今ので死んでたところだよぉー……」

 

 

 そう言いながら立ち上がる黄猿の右手にはいつの間にかに光でできた剣が握られていた。

 

 

 

 

 湾頭にて白ひげ海賊団が海軍と衝突しているところを、海軍を挟む形で脱獄囚たちがようやく駆けつけてきた。センゴクは前後から攻撃されるのを嫌って海軍の中央部分をわざと開けさせて両者を一度合流させ、彼らが湾頭から脱出する時、今度は自分たちが左右から挟みつつ、彼らの行く手を遮るようにコの形に陣形を整えて攻める作戦を立て、それを実行に移した。

 

 

 これに対して白ひげ陣営は中央突破で海軍の包囲網を無理矢理、突き抜けて脱出を図る試みをする。

 

 

 その道中で白ひげが片膝をつき、そこへ腕をマグマに変えた赤犬が襲いかかった。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■この小説を書き始めた頃、ダグラス・バレットの存在を知らなかった。
→今さら出てきても話に組み込めないでゴザル。
→ルフィとは別の方法、別のルートで脱出したことにしとこ。
→ということで大半のLEVEL-6は出てこないんだ。すまねぇ。

■感想の返信をするときのエネルギーを執筆に割くことにしたよ。
→返信、すまねぇ。
→その代わりに週一投稿をガンバるよ。あと気まぐれに短編とか書く。
→原作:キン肉マン
 マンモスマンになった男
 とか書いた。

■朝の6時に出来た。


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37話 戦争の終盤

 

 

 ふわりと腕を左右に広げた格好で氷上に爪先から器用に降り立つルーミア。降り立つ際、真下からの風に煽られてスカートが膨らみ、膝から下──普段スカートによって隠された部分が露になってしまうが彼女は恥じらうどころか気にする素振りは見せない。ちなみに一部の囚人はその光景を余すことなく映像電伝虫におさめて、シャボンディ諸島にその映像を送信している。黄猿も送信先が気になるのかルーミアに尋ねてみると彼女は答える。

 

 

「せっかくだからこの戦争の光景をシャボンディ諸島にいる連中にも見せようと思ってなー?」

 

「それは困るねぇ……。わっしがお嬢ちゃんを倒すとこを見られちゃあ、わっしや海軍に対する心証が悪くなるねぇ……」

 

「安心しろ、私は負けるつもりはないからなー、わははは」

 

 

 ルーミアが左腕を前に突き出すと袖の裏から分銅のついた鎖が黄猿を目掛けて飛んでいく。もっとも直進で飛んでいくだけの鎖では黄猿を捉えることは難しく、黄猿が横に一歩、体をずらすだけであっさりと避けられてしまい、その後ろにいたパシフィスタの一体に先端の分銅が突き刺さると同時に体内に直接、電気を送り込まれて感電。ぷすぷすと口から煙を吐きながら氷の上に倒れた。

 

 

 あっさりと倒されるパシフィスタの1体を見ながら黄猿は非難がましくルーミアに言う。

 

 

「知ってるかい? パシフィスタ1体作るのに軍艦1隻かかるらしいんだよねぇ……」

 

「避けずに食らえば安く済むかもなー?」

 

 

 そう言って左腕の力だけで鎖を引いてパシフィスタに刺さっていた分銅を引き抜いた後、鎖に再度電気を流し込むルーミア。電流を流し込まれた鎖が鎌首をもたげた蛇のように動き出す。次いでルーミアが左腕を縦に振って長い鎖を縦に波打たせ、鎖の先にある先端部分の分銅で黄猿を砕かんばかりにと上空から頭上へと落としていく。

 

 

 Mr.3が作り出した蝋を壁にして、その向こう側にいる囚人の一団が映像電伝虫で二人の戦いを映像におさめていた。

 

 

 

 

 シャボンディ諸島。マリンフォードの光景を映している巨大モニターの前には黒地に白の十字架をあしらったマークをつけた──ルーミアの配下と様々な海賊旗を掲げている集団、あるいは一目で軍関係者とわかる集団がその場所を占拠してモニター前の場所を陣取っていた。その中には懸賞金が億を超える海賊たちもちらほらと見受けられる。

 

 

「……ほう、これが(ダイアル)とかいうやつか、今あるのはこれだけなのか? 他に種類はないのか?」

「悪魔の実は強力だが数が少ない上に高価になる。おまけに弱点もある。その点、これは養殖さえ成功すれば安く済むな……」

「失敗しても安全に空島へ行けるやつがいれば問題はねぇ。それにあの『ルーミア』とかいう小娘は空を飛べる。調達は可能なんだろ?」

 

 

 黒塗りの豪奢な造りのテーブルの上にはこれまた高価そうな木箱があり、その木箱一個につき一つの(ダイアル)が大事そうに詰め込まれてある。海賊やどこかの国の軍人らしい人間たちが(ダイアル)を手に取って確かめている。

 

 

 一般人たちは彼らの存在を戦々恐々しながら遠巻きに眺めていた。そんな彼らとは離れた場所にテゾーロや天竜人であるミョスガルド、さらに天竜人であるミョスガルドの要請で彼の護衛をやらされていることになっている七武海の一人である「暴君」がおり、静かにモニターを凝視していた。そんな暴君にミョスガルドは声をかける。

 

 

「世界政府と取引をすると言っているが本気なのか?」

 

「……元国王として責務を果たすためだ」

 

 

 尋ねるミョスガルドに対して暴君はモニターから視線を外さずにそう答える。

 

 

「おい、お前らモニターを見てみろよ。動きがあるぞ。バギーが復活したぜ」

 

 

 海賊の一人がモニターを指差す。黄猿の光線を、ルーミアは左腕を雷に変えて防ぎ、ルーミアの雷や覇気を纏った鎖を黄猿は受けることなく高速で避ける。そんな戦いを繰り返す両者にバギーが空から割って入ってきた。

 

 

「おいっ!! こら!! てめぇ~!! さっきはよくもやりやがったなァァ~~~っっああ!?」

 

 

 現れるや否や、上空から強襲。右拳を前にして突撃を試みるバギー。だが当たる寸前で黄猿の光の剣で輪切りにされて、あえなく失敗。輪切りにされたバギーの体が宙にとどまる。

 

 

「かかったな!! マヌケがァァァ~~~っっ!!」

 

 

 しかし、バラバラの実の能力のおかげで点や線による攻撃は無効化できるバギー。体が修復する傍ら、バギーは真っ正面から黄猿の胴体を両足で挟んで抱きつく。

 

 

「……やられたねぇ~。靴の底に“海楼石”を仕込んでいたのかい……」

 

「そういうこった。あとはテメぇにこの“排撃貝(リジェクト・ダイアル)”をぶちこませば、テメェはおしまいよ!! 威力が衝撃貝(インパクト・ダイアル)の10倍だが、反動もスゴイから極力使うな、ってルーミアが言っていたがなァ~? ギャハハハ!!」

 

 

 そう言って右手の掌に仕込まれている排撃貝(リジェクト・ダイアル)を黄猿の胸に押し当てるバギー。

 

 

「──だが、しか~~~し!! こうやって腕を切り離せば反動など関係なくなる!!!!」

 

 

 バギーが(ダイアル)の頭頂部を掌で押した瞬間、強烈な衝撃が黄猿の体を襲った。──と、同時に掌を伝ってバギーの体に痛みが伝わったらしく、声にならない悲鳴を上げて白目を剥いた後、黄猿の拘束を解いて氷上に落ちた。

 

 

 拘束が解かれ、海楼石による脱力感が軽くなったのを感じた黄猿。そう感じたのも束の間、再度、海楼石による虚脱感が再び彼を襲うとともに左手で首の裏を掴まれる感触を感じ取る。

 

 

「──正直、バギーがここまでやってくれるとは思わなかったけど、この機を逃すほど私はあまくないなー」

 

 

 

 

“ 1億V(ボルト) 放電(ヴァーリー)

 

 

 

 

 背中越しにルーミアの声を聞いた直後、黄猿は雷に打たれて意識を刈り取られた。

 

 

 

 

 その後、ルーミアは囚人たちに命じてインペルダウンから持ってきた海楼石の枷で黄猿を拘束。ついでに戦桃丸もバージェスと囚人たちの手によって捕らえられていた。それからルーミアは黄猿を連れて撤退するよう囚人たちに指示を出し、彼女自身は戦場に残った。

 

 

 どうやら彼女たちが戦っている間に動いていたらしく辺り一帯に海軍の姿は見えない。マリンフォードのある方角から戦闘の音が聞こえてくる。その道中には戦闘の跡がちらほらと見受けられる。

 

 

 そこでふと空を見上げるルーミア。空には背景に溶け込むような色合いをした複数の気球が黒い雲を空に撒き散らしながら空を飛んでいる。ルーミアが手配したものだ。黒い雲は広範囲に渡って散布されており、まもなくマリンフォード全域を覆うことになるだろう。

 

 

 空に浮かんでいた気球が突然、人が乗っているゴンドラ部分からライトで赤い点滅を繰り返す。ルーミアの一味にだけ伝わる合図である。それを見たルーミアは舌打ちを一つ打ち、激しい戦闘が行われている場所──海軍と白ひげがぶつかっている地──へと向かうべく、逃げようとしたMr.3の首根っこを掴んで肩に担いだバージェスとともに氷上を滑るようにして移動を開始、バージェスの能力を使って目的の場所に辿り着いた時は──

 

 

 

 

 ちょうど、エースが白ひげを庇ったために赤犬の右腕で背中から体を貫かれた頃だった。

 

 

 

 

 怒り狂った白ひげが能力が込もった左腕を振り下ろして赤犬の頭部を殴打、次に薙刀の柄の部分を腹に叩き込んで弾き飛ばす。

 

 

 赤犬との距離が離れている間にMr.3が合鍵を作ってマルコの手錠を外し、ルーミアが氷漬けのジョズを雷の熱で解凍させ、バージェスが電伝虫で仲間と連絡を取る。その間にエースを始めとした重傷者などの一人では動けない者たちを一ヶ所に集めた後にルーミアの闇で回収。そして足場の氷を割ってバージェスが呼び寄せた3隻の巨大船が現れる。その周囲には巨大なトビウオに跨がった多数の人間たちの存在も確認できる。

 

 

「船に乗れ!! もしくはトビウオにしがみつけ!! 殿は私がやる!!」

 

 

 ルーミアの一声で動き出す海賊たち。無論、海軍が彼らを逃すはずもなく追撃をかけるが、船に乗っている船員たちが彼らが進軍する通り道に向かって燃焼砲(バーンバズーカ)──砲弾の代わりに青白い炎を吐き出すバズーカ砲で足場の氷を溶かして彼らの進軍を妨げる。

 

 

 上空の気球からの信号で海賊たちが戦域から離脱したことを確認したルーミアは左腕を雷化させて上空に漂う雷雲に突き刺す。

 

 

 

 

万雷(ママラガン)

 

 

 

 

 千を優に超えて万に届く雷がその地に降り注いだ。

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)ざわ…

■古明地さとりになった私はMTGというカードゲームの一種を始める。心が読める私の前に戦略など意味は無し。無双する私。
 そんな私の前に予知能力の一種を持った紅魔館の主レミリア・スカーレットが立ちはだかる。かくして

 テレパシーvs予知能力 
(白黒デッキ)(赤単色ゴブリンデッキ)

 による戦いが始まった。


※そんな夢を見た。


■朝の4時にできた。

■とりあえず文字を埋めた。そんな感じ。
 あと毎回毎回、戦闘描写を省略するのも味気なかったので

■毎度、誤字脱字報告ありがとうございます。

■マンモスマンも書いているけどアクセス数が少ないネ。


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戦争の後 → 3D2Y “ シャボンディ諸島 ”
38話 ウソと生存と策略と……


 

 

 偉大なる航路(グランドライン)の海に1隻の軍艦が漂っている。それを目指して航海していた別の軍艦がその軍艦に近づき、武装した海兵たちが乗り込む。彼らがそこで見たのは船のメインマストに座らせた状態で鎖で幾重にもがんじがらめにくくりつけられたボルサリーノ──黄猿の姿であった。

 

 

 よほど黄猿を捕らえた人間──白ひげ海賊団の関係者が彼や海軍を警戒していたのだろう、手足にはそれぞれ海楼石の枷が嵌められており、船の甲板はもとより船内の隅々まで捜索したが黄猿以外の人間の姿が見つからなかった。

 

 

 それでも海兵たちは万が一の奇襲に警戒しつつ黄猿を解放。彼を連れて海軍本部へと帰還する。余談だが枷を外すためのカギが船からは一切見つからず、そのおかげで海兵たちは枷を外すのに手間取ったそうな。

 

 

 

 

「──追跡は失敗したか、あわよくば連中のアジトに乗り込めるかと思っていたんだがな、それでエースはどうなったんだ?」 

 

 

 海軍本部にある一室。そこではセンゴクが黄猿に対して事情聴取を行なっていた。黄猿の話によるとエースは死亡、白ひげもまた海兵たちが「毒」を塗った装備品を用いたことで毒に冒され、余命が幾ばくもないという。

 

 

 さらにエースの義兄弟であり、革命家ドラゴンの息子でもある「麦わらのルフィ」はイワンコフとともに撤退の途中に白ひげらと別れ、そしてインペルダウンLEVEL-6に投獄されていた連中は戦争のどさくさに紛れて行方をくらませたという。

 

 

 ……とはいえ、その話も人伝に聞いたことゆえに確実ではなく。囚われの身では彼らを直接見て確かめる方法がなかったと黄猿は語る。

 

 

「……真偽のほどを確かめさせるとするか、それが真実ならばニュース・クーに載せて全世界に公表するまでだ」

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──前半の海にあるとある島】

 

 

 青々とした草木が鬱蒼と生い茂る島の上空の空に一つの気球が浮かんでいた。島の様子や島に近づく船を監視するためにルーミアが放ったものだ。

 

 

 その気球に乗っている人間が島に近づく1隻の船を発見する。彼らが見つけたその船は海賊旗を掲げており、そのシンボルマークであるドクロの左目には三本の傷が描かれていた。四皇の一人『赤髪のシャンクス』が掲げている海賊旗である。

 

 

「ボスにすぐに報せろ!! “赤髪”が来た!!」

 

 

 望遠鏡を覗いていた一人が同乗者にそう伝えると、一緒に乗っていた男が慌てて電伝虫の受話器を取る。

 

 

 

 

 島の淵に赤髪のシャンクスが乗る船が到着して乗組員が島に降り立つと、ルーミアを始めとした彼女の船員、白ひげ海賊団の隊長たち、バギーをリーダーにしたインペルダウンの脱獄組などがシャンクスたちを出迎えた。もっとも彼らの纏っている空気は剣呑としており、お世辞にも歓迎しているとは言い難い。

 

 

「うちの親父殿が待っている。ついてきな」

 

 

 ルーミアに連れられて案内される赤髪海賊団のメンバー。彼らが案内された先は島内部、奥にひっそりと建てられたコテージ。その建物の内部には体に点滴のような管を通し、鼻に呼吸器をはめ、さらに体のあちこちに包帯を巻いて巨大なベッドに横たわる痛々しい格好の白ひげの姿があった。

 

 

「よく来たな、……で何しに来た?」

 

 

 尋ねる白ひげにシャンクスは答える。自分は休戦協定を結ぶために海軍──「仏のセンゴク」から依頼されてここに来た……と、

 

 

 「仏のセンゴク」という名に露骨に顔をしかめる白ひげ。「智将」とも渾名されるその存在に白ひげ陣営の人間から何か裏があるのでは? ……と勘ぐる者が現れる。それに対してシャンクスは言う。

 

 

 休戦協定を結ぶ場に白ひげが現れなければ、他の海賊たちが白ひげが死んだ。あるいは重傷で身動きが取れないと考え、シマを襲う可能性がある。海軍とて罪のない民間人が犠牲になるのはしのびない。無論、打算あっての行動でもあるが……

 

 

「いいだろう。ただし三日以内、そこにお前も出ろ」

 

 

 そう了承する白ひげの言葉を受け取ったシャンクスは島をあとにする。

 

 

『──ボス。“赤髪”の船が見えなくなりました……』

 

 

 コテージに備え付けられている電伝虫からシャンクスが島を離れたことを知ったルーミアは周囲にいるのが自分の船員たちと白ひげに隊長たち、白衣を着た医者のみを確認した後、足下に“闇”を展開させ、そこから寝台に横たわる「エース」が寝台ごとせりあがってくる。意識がないせいか瞳を閉じたままだが、胸が上下に動いていることから生きているのが分かる。

 

 

 エースが現れたのを機に待ち構えていた医者たちが一斉に作業に取りかかる。寝台の上にいるエースを極力動かさないようにして別室へと運んでいく。

 

 

「エースが生きていることを知れば海軍が再び動き出すかもしれない。ゆえにエースは“死んだ”方がいいかもしれないな……」

 

 

 そのためにルーミアは別れ際、気を失っていたルフィからビブルカードを抜き取っていた。

 

 

「それよりも親父。ジェルマ王国──ヴィンスモーク家の人間なら体内の“毒”をどうにかできるかもしれないんだけど? 本当にいいのか?」

 

 

 戦争の際に海軍から「毒」を盛られた白ひげ。その毒は非常に強力なもので常人ならば一日も持たない。……と診察した医者は語っていた。次いでに白ひげなら三日が限界だろうとも。

 

 

「自分の体は自分がよく知っている。それよりもお前の話を聞かせろ。ここにいる全員が知りたがっているんだ」

 

 

 「グララララ」と愉しげに笑う白ひげにルーミアは心底イヤな顔をした。その後もルーミアを含め隊長たちが白ひげに一縷の望みをかけて「ジェルマ王国」に行くべきだと説得を試みるがついぞ白ひげ当人が行くことは叶わなかった。やがて全員が諦めて今度はルーミアに矛先が向く。

 

 

「何でお前そーなったんだ?」とゲラゲラ笑いながら問う。それに対してルーミアは答えた。

 

 

「んー。“悪魔の実”というのは「情報の塊」であり「体を作り替える」触媒かつ、引き金を引く起爆剤みたいなものだから、食ってる時に「余計な情報」が入って、こーなったんだろなー」

 

 

 ──とジュースの入ったコップを両手に持ってちびちびと飲みながら言う。

 

 

「まあ、見苦しいおっさんよりは可愛らしくていいんじゃないか? 華があっていいと思うぜ?」

 

 

 片目をつぶり親指を立ててそんなことを宣うのは白ひげ海賊団のサッチ。ルーミアは久しぶりに見た彼の右足に無言で蹴りを叩き込んだ。その日、余計な重傷患者が一人増えたことでルーミアが医者からガミガミとこっぴどく叱られる場面が見られたそうな。

 

  




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■さとりになった私はこいしに命じてレミリアのデッキに細工を仕掛ける。
 そしてレミリアもまたメイドに命じて私のデッキに細工を施す。
 ドローフェイズで出てくるのは終盤で出てくるような呪文コストの高いカードばっか、膠着するフィールド。出てこないモンスター。墓地にはやむを得ず捨てられていくカードが増えていく。フラストレーションがたまって歯軋りする両者。応援に駆けつけた両陣営は思った。「こいつはヒドイ」と。

■誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。

■でき次第、投稿って感じ。

■マンモスマンのと交互に執筆してる。

■この時にルーミア等、登場人物の懸賞金問題発生。
 ルフィがエニエスロビー脱出時、4億ぐらいだったしなー
 アンケートっていう機能があったなー、そーいえば

■評価人数が変わらないのに評価値が変動してビビる時がある。
 


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39話 海賊側、海軍側、海賊側

※お詫びと訂正。ドフラミンゴさんのセリフを変えたよ。


 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──どこかの海 赤髪海賊団】

 

 

「左目のキズが疼いた」

 

 

 白ひげ海賊団との会合の帰り、シャンクスは船員たちがいる前でそんなことを漏らした。

 

 

「あの少女に会ってから、あの野郎につけられたキズが疼きやがる」

 

 

 左目にある三本のキズを指差しながらシャンクスは語る。過去にティーチが三本の鉄の爪がついた手甲でつけたものだ。よく見れば傷痕が僅かに蠢いている。

 

 

「本当に『マーシャル・D・ティーチ』は死んだのか?」

 

 

 シャンクスを始め、赤髪海賊団の船員たちは過去に何度も白ひげ海賊団と激闘を繰り広げたことがある。その際、彼らは『黒ひげ』こと『マーシャル・D・ティーチ』とも戦っており、彼の実力も少なからず知っている。

 

 

 それゆえに彼が死んだ──それも事故による死亡が報道されたときはどこか懐疑的な目でその新聞の記事を見ていた。

 

 

 そして今回の訪問はティーチの生死を確かめる意味も兼ねて海軍のセンゴクから秘密裏に依頼を請け負ったのである。

 

 

 依頼を受けた後、シャンクスたちは白ひげ海賊団がいると思われるシマの一つに足を踏み入れ、そこで彼らは件の少女──ルーミアと初めて出会う。

 

 

「初めて会うのにまるで初めて会った人物とは思えない」

「昔、どこかで会った気がする」

「知人に会ったような気分だ」

 

 

 それがルーミアに対しての赤髪海賊団の印象であり、そして彼らが共通して感じたのが……「放つ雰囲気がどことなくティーチに似ている」……ということだった。

 

 

「『悪魔の実』は未だに解明されていない部分もある。ヤツは『ヤミヤミの実』を欲していた。だが今のヤミヤミの実の能力者はあの少女だ。……まあ、ゴロゴロの実の能力者でもあるがな……」

 

 

 姿形はまるっきり共通点がないのにそう感じるのを、一味の副船長であるベックマンがセンゴクから得た情報を基に分析する。

 

 

「たとえばの話だが、ヤミヤミの実を食べたヤツが死んで新たに現れたヤミヤミの実にヤツの記憶や知識が一片でもあれば……? その実を他の誰かが食べれば……? それが記憶の片隅にでも残り、知らず知らずのうちにその知識や記憶にあるクセが習慣化して漂う雰囲気が似てくるかもしれない」

 

 

 そして最後に一つの仮説を立てる。

 

 

「あるいは、実はあの娘はティーチが悪魔の実を食べて変化した姿……」

 

 

「「 いや、それはない 」」

 

 

「……だろうな。もしも変化するなら図鑑に記載されているはずだ。それをティーチが見落とすはずがない」

 

 

 その後、彼らはルーミアやティーチ、白ひげ海賊団の今後について議論を交わすが、

 

 

「ロジャーやガープに子どもがいたんだ。白ひげに子どもがいたって不思議じゃない」

 

 

 ……という結論を出しただけで、無意味に時間だけを浪費したという。

 

 

 

 

【マリンフォード──海軍本部】

 

 

「あの時、確かに白ひげは『ティーチ』の名を口にした。……しかし戦場にティーチは現れなかった。ヤツの口ぶりからして脱獄組の中にいるものと思われていたが……」

 

 

 海軍本部の一室、机の上には資料やら報告書の束が高く積まれており、前方の視界を塞いでいる。そんな環境の中でセンゴクは今回の戦争についての報告をまとめていた。

 

 

「私は何か重大な間違いを、いや、勘違いをしているのではなかろうか……?」

 

 

 センゴクが調べていたのはインペルダウンを脱獄した主犯たちである。そのうちの一人「ルーミア」に関する報告を見ていた。

 

 

「どちらにしろ、あの娘が悪魔の実の能力を二つ持っていて、白ひげの娘と言われるだけの戦闘力を持っていることに変わりはないが……」

 

 

 ルーミアが戦争の時に「雷」と撤退時に「闇」、二種類の力を行使していたのを大勢の人間たちが目撃していた。そのことから海軍は彼女が二つの実の能力を持ち合わせていると判断した。

 

 

 資料には今までルーミアが関わっていた事件などが事細かく記載されており、さらに関わった人物の名も挙げられていた。

 

 

「だがそれ以上に交遊関係、及び人間関係、背後関係が歪であり、危険だな…… 本当にいったい何者なんだ? まるでこの世界に何の前触れもなく、いきなり現れたような感じがしてならん……」

 

 

 そこで今度は脱獄に協力していた囚人の一人である「イワンコフ」の顔写真入りの資料に目を通す。あまりの顔のでかさに写真にはおさめきれず顔の部分しか写っておらず何故かウィンクをしていた。

 

 

「イワンコフには性転換させる能力がある。それでティーチが性転換した存在があの少女……、いや、どう考えても時間が合わないな……」

 

 

 ルーミアとイワンコフが初めて接触したのは今回の脱獄の時であり、ルーミアという存在が現れたのは脱獄以前である。さらに『金獅子のシキ』以降に脱獄に成功した者はいない。その事を踏まえるとセンゴクの中では「ルーミア=性転換したティーチ」という図式は成り立たなかった。

 

 

「髪や瞳の色、体型とかも含めて何一つ一致しない。やはり、あの少女が白ひげの娘か、あるいは白ひげがヤツの配下を息子と呼んでいるように血の繋がっていない赤の他人と考えるのが自然といえよう。いささか納得できない部分もあるが今はそれよりも海軍本部の、マリンフォードの再建に専念せねばならんな……」

 

 

 そう言って戦争に関する紙の束を横にどけると、マリンフォード再建に関する資料に手を伸ばす。

 

 

「ああ、そう言えば懸賞金も決めねばならんかったな……」

 

 

 数字の羅列がズラリと書かれていた書類を見てセンゴクはそんなことを思い出し口にする。書類はルーミアによって破壊されたパシフィスタの総被害額だった。

 

 

『──“22億ベリー”……』

 

 

 その数字を見てセンゴクは頭を抱えた。他にもLEVEL-6の脱獄囚や麦わらのことを考えなければならないだけにセンゴクは気分が滅入った。

 

 

 

 

【ドレスローザ──王宮】

 

 

「フッフッフッフ、血が繋がっているかどうか分からんが、あれは確かに白ひげの娘と呼ばれるだけの力はある」

 

 

 厳かな雰囲気を放つ王宮。その王宮内に客人を迎えるための部屋の中にて数名の部下とともにドフラミンゴはルーミアの手配書を片手に来客の対応をしていた。

 

 

「ベラミー、お前が持ってきた空島の情報は十分に価値がある」

 

 

 高級そうなソファーに体を深々と埋めながら眼下に片膝を床につけて頭を垂れるベラミーにドフラミンゴはそう声をかける。 

 

 

「ああ、オレのシンボルを貸すことを赦そう。なんなら別れた船員を呼び戻してやろうか?」

 

 

 しかしベラミーはこれを拒否。もう一度、ドフラミンゴの下につくことを望み、それを承諾された。

 

 

「あの娘と接触したテゾーロにミョスガルド。その周辺を調べておけ」

 

 

 ベラミーが去った後、ドフラミンゴは配下の部下にそう命令を下す。

 

 

「戦争前にクロコダイルとジンベエは称号を剥奪され、七武海には今現在、空きが二つある。そのうちの一つはあの娘にくれてやってもいいとは思わないか? あの娘が好き勝手に暴れるよりはマシだろう? フッフッフッフ」

 

 

 テーブルの上に置かれている(ダイアル)を手に取ってまじまじと凝視しながらドフラミンゴは言う。

 

 

「よくも悪くも武器は消耗品だ。だからこそ武器商人というものは儲かる。あの娘が取り扱う消耗しない商品によっては、釘を刺す必要があるな……」

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──前半の海】

 

 

 白ひげ海賊団がいるその島から、未だ目覚めないエースを乗せた1隻の船が信頼できる船員とともに出航し、やがて海中へと沈んでいった。行き先は医療大国と謳われている「ドラム王国」。白ひげ海賊団はエースの治療をドラム王国に託すことにしたのである。このことを知るのは白ひげ海賊団内でもごく一部であり、インペルダウンの脱獄組などの部外者たちには知らされていない。

 

 

 一方で毒に冒された白ひげをどうにか助けるべく、ルーミアはジェルマ王国に電伝虫で打診するも「危ない橋を渡るつもりはない」と一蹴された。そんな切り捨てるような返信にも関わらず、白ひげは当然の反応だ、と言わんばかりに鼻で笑っていたが、団員たちは気が気でないでいる。

 

 

 ちなみにルーミアはジェルマ王国の返信に対して激昂「お前たち一家がお茶会でピンチになっても助けないから覚悟しろ!!」と電伝虫の向こう側にいる相手に向かってビシッと指差して返すが、ジェルマの現国王は鼻で笑って返し、両腕を上げて憤慨する彼女を「ムキー!! うがー!!」……余計に怒らせる結果になった。

 

 

 その数時間後にバギーの部下とともにアルビダが島に現れて合流。島は美女が来たこともあって一層、賑やかになる。

 

 

 その翌日、見張り番を兼ねている気球の乗組員が島に近づく無数の軍艦を目敏く発見、すぐにルーミアに報告された。

 

 

────ッッッです!!!!

 

 

 電伝虫から伝えられる報告を受けてルーミアはすぐさま島を引き払う指示を下す。一人の船員が彼女に近づいてその理由を尋ねるとルーミアは答えた。

 

 

「赤犬が乗っている」

 

  




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■MTG さとりんvsレミリア ファイナル

 フィールドにマナを生み出す土地カード(プレイヤーはこの土地から魔力を引き出して呪文を唱える。MP発生装置みたいなもん)を延々と置いていく(土地はMP必要なく置ける)展開からようやく動き出す。

 さとりんが呪文で敵も味方ついでに全プレイヤーにダメージを与える呪文(黒には多い。時点で赤)でフィールドに出ているクリーチャー(MTGではモンスターのことをそう呼ぶ)を一掃。

 フィールドががら空きになったところで墓地に送られた大型クリーチャー・カードを呪文で呼び出しレミリアを攻撃、勝負がついた。これが私が見た夢の内容だった。

 MTGって少ないね。ハーメルン。

 MTGに関するマンガとかないかなと探す私。
→ほう、デュエル・マスターズというものがるのか、どれどれ
→なんで途中で変わるんや…… 全私が泣いた。

■6時過ぎにできた。

■誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。
 一言評価もありがとうございます。
 過去に愉快な一言付き評価をもらったことがって、一言評価通知があるとビビる。

■戦後から2年後まで長くなるかも、無関係な話とか、ifストーリーとかも書きたいなー。

■アンケートのルフィがつけられた懸賞金の時期に間違いがあったっぽいが気にしないでくださいまし、

■今週、マンモスマンを書いてないなー。   


 -追記-

▪️47話でモリアさん七武海在籍扱いになってるので過去改変しました。

▪️ドフラミンゴさんのセリフを変更

 モリアさんを戦死扱いから在籍扱いに
 七武海の空きが三つから二つに

 なりました。


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40話 存命している者たち

 

 

 海上に浮かんでいる一隻の軍艦から島の上空に向かって一筋の細い光が一直線に射ち出され、瞬く間に気球のバルーン部分を貫いて穴を穿ち、光が通り過ぎた数瞬後に爆発四散。爆風が人を乗せたゴンドラ部分を高速で地上へと落とす。

 

 

「──黄猿も乗っているみたいだなー……」

 

 

 島の奥地、木々がまばらになっている場所にて、遥か先の軍艦、上空の爆発、落ちていくゴンドラを順番に見据えながら他人事のように暢気に宣うルーミア。先の大戦で手の内の一つを見せたこともあり真っ先に狙われたのだろう……と、アゴに手を当てて考える。

 

 

 次いでゴンドラの危機的状況を打破すべく彼女が指を鳴らすと彼女の足下の影から闇が蠢めきながらゴンドラの落下する方向へ木々の間をすり抜けつつ細長く伸びていき、やがて先端の闇がゴンドラのおおよその落下地点まで辿り着くと今度は木々を闇の中へと呑み込みつつ横に大きく膨張、黒い水を蓄えた泥沼のような光景を即席で作り出し、ゴンドラが地面に激突する寸前に闇でできた水溜まりに不時着させた。

 

 

 そして今度はお返しとばかりに左腕を雷に変化させ、先頭を進む軍艦に向かって船を呑み込むほどの極太の雷を放つ。

 

 

 しかし、軍艦を沈めるのに十分な威力を持ったその雷は船に接触する手前で見えない壁にでもぶち当たったかのように弾かれて四方に飛び散り、跡形もなく消え失せてしまう。

 

 

 だが、それも想定内の結果だったのか、ルーミアはさほど驚かず、むしろ当然の結果として受け入れている節がある。その場にいた白ひげ海賊団もまた間近で白ひげの能力が海軍の大将に防がれたのを戦争で一度目撃しているせいか大半が平静を保っている。

 

 

 もっとも中には「海軍は休戦協定を反故にするつもりか!?」と怒りを露にする者がいたが、同時に「海軍が海賊との約束を守るはずがない」と、どこか諦めに似た境地で達観する者もいた。

 

 

「ボス!! あの軍艦には『赤犬』だけじゃなく『黄猿』も乗ってますぜ!!」

 

「うん、知ってる」

 

 

 先ほどまでゴンドラに乗っていた黒い髭を蓄えた恰幅の良い──ルーミアからはその見た目からドワーフと呼ばれている男が望遠鏡を片手に今更ながら報せにやってきた。よほど急いできたのだろう汗だくになっている。

 

 

「──『赤犬』とやり合うのはまだ時期じゃない。引き上げる……」

 

 

 そう言うと軍艦がやって来る方向とは真逆の方角へ歩を進ませ、他に島に滞在していた人間たちが彼女の後を追う。

 

 

 それから程なくして10隻以上の軍艦による島への砲撃が開始され、島が業火に包まれた。

 

 

 やがて島を徹底的に破壊し尽くした海軍は島の沿岸に軍艦を横付けして停泊させ、船から背中に長銃を背負った海兵たちが縄ばしごを使って降りては島内部へと足並み揃えて上陸する。

 

 

「ふん。逃げ足だけは早い」

 

 

 その海兵たちを仕切っているサカズキ──赤犬は足下に転がっている人形たちの破片を一瞥してそんなことを愚痴る。彼らが島に砲撃した際に破壊したものだ。表面こそ色が塗られているものの、砕かれたことでようやく見えた断面部分は白一色だった。Mr.3が作った蝋人形である。

 

 

 その後も海軍たちは白ひげ海賊団の痕跡を探すため、島の内部をくまなく捜索したが、よくできた蝋人形以外、ついぞ見つけることは叶わなかったという。さらにその日を境に白ひげの消息が途絶える。

 

 

 

 

 明けて翌日、ニュース・クーにより世界各地に戦争に関する報道がなされた。新聞の一面には火拳のエースが白ひげを庇って赤犬に腹を貫かれた場面が大々的に載せられており、民衆たちの大半はそのことからエースの生存は絶望視していた。

 

 

 他にも掲載されている記事の中には白ひげに斬りかかるスクアードの姿や戦場に降り注ぐ雷などの様子を写した写真が載せられていたが、どれもエースのと比べたらいまいちインパクトに欠けていて「エース死亡」の記事ほど人々の関心を惹き付けるまでには至らなかった。

 

 

 いろいろと詳しく書かれている新聞だが、世界政府や海軍にとって報じられたら困る出来事は一切、公表されておらず、伏せられていた。

 

 

 そして新聞が各地に届けられると同時に今回の戦争で懸賞金をかけられることになった人物の手配書も配布された。

 

 

 

【宵闇ノ海賊団】

 

 船長 エドワード・ルーミア

 

 異名 宵闇

 

 懸賞金額 22億4,760万ベリー

 

 

 

 初頭の手配に世界にも類を見ない異例の破格が彼女につけられた。ちなみに彼女には能力が二つあるせいか、幾つもの異名がつけられているが、彼女の能力の一つである「闇」と彼女が立ち上げた海賊団の名称から取って「宵闇」と呼ばれることが多い。

 

 

 「エースの死亡」と「ルーミア」「麦わらのルフィ」に「重傷の白ひげ」……と民衆たちはしばらくの間この話題で賑わっていたが、話題になっている肝心の彼らは新聞の報道以降、世間に姿を現すことはなかった。ゆえに彼らの間では「白ひげ死亡説」「全滅説」がまことしやかに噂されるようになった。

 

 

 それから数日後、頂上戦争から二週間後、大衆の予想に反して彼らは現れた。……とはいえさすがに全員とはいかず主だったメンバーのみであるが……

 

 

 マリンフォードには「ルフィ」「ジンベエ」と何故か一緒についてきた「ボン・クレー」。さらに彼の海賊王が率いる海賊団の副船長を務めていた「レイリー」が彼らの中にいて一部の人間を驚かせた。

 

 

 彼らは軍艦を一隻奪うとその船でマリンフォードを一周し、その後、ルフィが広場にある「オックス・ベル」を16回鳴らしてから堂々と黙祷を捧げて、その姿を多くの取材陣に撮られ記事にされた。仲間に向けたメッセージを示した右腕にある「3D2Y」と一緒に……

 

 

 一方で白ひげ海賊団の隊長たちやルーミアを引き連れた白ひげがシャボンディ諸島の広場に現れて場を騒然とさせ、その場にいた一同に告げる。

 

 

 エースが死んだこと、己もいずれ毒で尽きること、己の時代が終わって新たな海賊の時代が到来すること、そして最後に──

 

 

「“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”は実在する!!!!」

 

 

 シャボンディ諸島全域に届かんばかりの声でワンピースの存在、その有無をほのめかした。

 

    




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

▪️朝の7時過ぎにできたヨ。
 今、あとがき中。

▪️ルーミアの懸賞金が決まりました。
 アンケートご協力ありがとうございました。

▪️なんやかんやで…

 UA     50万
 お気に入り 5,000
 ☆9     100

 …等々を突破してました。ありがとうございます。

▪️毎度、誤字脱字報告ありがとうございます。

▪️返信していないけど感想は読んでおります。
 感想ありがとうございます。
 
▪️M:TG関連のマンガ
 「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」
 ……を購入したよ。なんか恋愛が多少入っているネ。
 知らないカード、知らない戦術が多く出ててビックリよ。
 前の話で紹介ありがとうございます。

▪️白ひげ、気合いで二週間過ぎても存命しているのはやり過ぎたかな……? でもまあ世界最強の男だし、ここまできたら書きたいように書くべ。


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41話 白ヤギさんからお手紙着いた。

 

 

女ヶ島(にょうがしま) アマゾン・リリー】

 

 

 マリンフォードで事件──16点鐘を起こしたルフィたちはその後、女ヶ島に戻っていた。そこでルフィはレイリーが提案する覇気の修得による自身の強化に賛同し、島に残ることを決め、対してジンベエは白ひげと彼とともにいるであろうルーミアに会いに行くために島を出ていくことを決意。ボン・クレーもまたインペルダウン脱獄の際、協力してもらった恩を返すために島を出ていくことを告げる。

 

 

 そして二人が出ていく当日、島の沿岸にてルフィが二人を見送っていた。

 

 

「……そっか、ボンちゃんが仲間になってくれたら面白かったのになあー」

 

「ゴメンね、麦ちゃん。先約があるのよぉ~」

 

 

 ボン・クレーの言う先約というのはルーミアのことである。彼女は自分の配下に加わることを条件に、先のインペルダウンの脱獄とイワンコフの救助に協力したのである。それはボン・クレーだけではなく他に脱獄した数名のメンバーにも脱獄を条件にルーミアは勧誘していた。ボン・クレーはそのこととルーミアの目的をルフィに伝える。

 

 

B・W(バロック・ワークス)を復活させるつもりなのよ」

 

 

 その言葉を聞いて表情を引き締めるルフィ。七武海の一人──サー・クロコダイルが立ち上げた組織がその名であり、ルフィたちは過去にアラバスタという名の砂漠の王国で国家転覆を目論んでいた彼らと死闘を繰り広げたことがあるのだ。

 

 

 当時、ルフィたちはその国の王女であるビビとともに行動をしており、アラバスタ王国の味方をしていた。そのこともありクロコダイルと彼の手足で動いていたB・Wに対して良い感情を抱いていない。

 

 

 ……のだが元B・Wの幹部であったボン・クレーに対しては海軍に包囲されていたアラバスタから脱出する際、ボン・クレー自身がルフィたちを逃すために自ら囮になったこともあり、わりと友好な関係を築いている。

 

 

 B・Wに対して危惧の念を抱いているであろうルフィに対してボン・クレーは「麦ちゃん。大丈夫よ」安心させるように語りかける。

 

 

「あちしがついてるわ」

 

 

 親指を立てながら笑顔でそんなことを言い、傍らにいたジンベエも厳つい顔つきのまま……

 

 

「──ルフィ君が懸念するのも分かるが、クロコダイルのいないB・Wに以前ほどの影響力は出るまい。……たとえ、あったとしても白ひげの娘、ルーミアを頂点とした組織になる。以前とは中身が違うものになるだろう」

 

 

 「それにいざという時はワシが体を張ってでも止める」そう言い残して彼らは女ヶ島を出ていき、ルフィもまた覇気を身につけるためレイリーとともに目的の島へと向かう。

 

 

 

 

【マリンフォード】

 

 

 室内で二人の男、赤犬ことサカズキとセンゴクが机を間に挟んで激しく言い争っている。その周囲には黄猿ボルサリーノと青雉クザン、他の大将の姿も確認できる。

 

 

「何故、無断で艦隊を出撃させた!!!? いずれは白ひげは死ぬ!! いたずらに海兵たちを特攻させて死なすつもりか!? サカズキ!!」

 

「殲滅させてこそ意味がある!! やつらが疲弊している千載一遇の機を逃すつもりですかい!?」

 

「だが現実は連中に逃げられただろう!?」

 

 

 それからしばらくして、お互いにこれ以上の不毛な話し合いは無駄と悟ったか、どちらからともなく話を切り上げ、サカズキは部屋を出ていく。

 

 

「やつが、サカズキが万が一にでも『元帥』になればろくでもないことが起きかねない。……やはりクザン、お前が『元帥』になるべきだろう。オハラの件もあることだしな……」

 

「……しかし、納得できますかね。アイツが?」

 

「それでも納得させねばならん。でなければやつの正義で犠牲になる者が増えるだけだ」

 

 

 元帥候補の問題に対して早々に見切りをつけたセンゴク。彼は次に自らではないとはいえ、潰してしまった赤髪海賊団の面子をどうするべきか悩む。悩んだ末に……

 

 

「……“七武海”加入で矛をおさめられればよいが……」

 

 

 手元の書類には天竜人の一人、ミョスガルド聖が直筆したルーミアの七武海加入の嘆願書が握られていた。

 

 

 

 

【旧ドラム王国】

 

 

 年中を通して雪で覆われている冬島。医療大国と謳われているその島には今現在、白ひげ海賊団とルーミアたちが負傷者の治療のため、赤犬が率いる海軍の襲撃以降、彼らはそこに滞在していた。

 

 

 そして頂上戦争からずっと意識不明の状態だったエースが遂に目覚め、彼を看護していた看護婦がルーミアたちにそのことを報せた。

 

 

 やがてエースが寝かされているベッドにルーミアが現れる。その両手にそれぞれ一個の音貝(トーン・ダイアル)と一つの悪魔の実を携えて……

 

 

「……親父は?」

 

 

 横になった状態から顔だけを横に向けてそう尋ねるエース。ルーミアは答える代わりに音貝(トーン・ダイアル)と悪魔の実をエースの枕元に置く。

 

 

「その音貝(トーン・ダイアル)に親父殿がお前に向けたメッセージが録音されている。使い方は知っているか? あとその悪魔の実はお前が認めるやつにくれてやれ」

 

 

 短いながらも返事が返ったのを確認してからルーミアは病室を出て扉の横の壁に腕を組んで身を預ける。まもなく扉の向こう側から嗚咽による泣き声が扉の外に漏れてルーミアの耳に届いた。

 

 

 その後、ルーミアの下に伝書バットを連れた白ひげ海賊団のメンバー、マルコやジョズがやって来る。伝書バットが持ってきた封書には七武海への勧誘。マルコたちは白ひげが所有していたシマを襲撃する者、海賊、犯罪者等が現れるようになったため、その迎撃と防衛のためにここを離れることを彼女に告げた。そしてシマを守るためルーミアが七武海に入るというなら傘下に下ることも…… 

 

 

「スクアードと連絡が取れる?」

 

 

 白ひげ海賊団が離れること、傘下に入るのを了承するルーミア。それから出航の準備をするべく背を見せる彼らにルーミアはそう声をかけ、彼らは何故そこでスクアードの名が出てくるのか、疑問を口にする。ルーミアは短く、その疑問に対して無表情で一言で答えた。

 

 

敵討ち

 

 




ざわ…( ´・ω・)ざわ…

▪️朝の4時にできたよ。

▪️26日、27日に「ヤミヤミ」と「マンモス」2作品がランク入りしたよ。
 モチベは上がったが執筆速度は変わらなかった。

▪️毎度、誤字脱字の報告ありがとうございます。

▪️バーが赤に戻った。ギリギリ。

▪️眠いのでおやすみ。

※サカズキさんのセリフをちょっと変えたよ。


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42話 落とし前と、そのあと…

※赤犬ファンの皆さま、ごめんなさい。
※10月7日。ちょっと変えた。


 

 

 偉大なる航路(グランドライン)、新世界にある白ひげ──エドワード・ニューゲートの故郷の島。その島にある広場では白ひげと()()()の葬儀が厳かに行われており、白ひげ海賊団のメンバーたちとルーミアが率いる宵闇ノ海賊団、さらに赤髪海賊団がその葬儀を執り行っていた。そんな彼らから少し離れた場所にはさまざまな海賊旗を掲げた屈強な男たちがいる。

 

 

「スクアードの野郎はいねぇのか、なんとも薄情な野郎だ」

「さすがにあんなことをしでかしておいて、おめおめと顔を出せないんだろ?」

「来たら来たで針のむしろになるだけだし、来ない方がお互いのためだろうな」

 

 

 その葬儀に駆けつけたのは生前、白ひげを慕っていた傘下の海賊団や彼の手によって救われた民間の人間たち。彼らはその葬儀に参列していないスクアードたちに対して口々に噂をし、記者たちはその葬儀の様子を撮影していた。

 

 

「あの親父さんの娘……ルーミアとかいうのが“七武海”加入してくれて正直、助かったな……」

「思うところがあるけど、親父さんのシマを守るためだ。血筋よりも実力が重要。その点、彼女は申し分ない」

「……実の子かどうかはいいんだよ。実際、身寄りのない俺たちが息子と呼ばれてたことだしな、問題は何でよりによってここに他の“七武海”のドフラミンゴがいるんだ? 赤髪海賊団がいるのはまだ分かるんだが……」

 

 

 その葬儀の参列にはドフラミンゴの姿があった。当のドフラミンゴは人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべながらルーミアの姿をじっと見据えて用意されていたイスに腰掛けていた。

 

 

「──フッフッフッフッフッ……」

 

 

 参列に参加している者たちの中には戦争の際に見せた(ダイアル)やルーミアの実力を見て交流を図るために接触してきたのでは……? ──と勘繰る者たちが次第に増えてくる。

 

 

 その中にはルーミア、彼女が率いる海賊団の傘下に入って本当に良かったのか? 疑問視する声が出てくるが……

 

 

「間違った道を歩みそうになったら正せば良い。そのための白ひげ海賊団だよい」

 

 

 マルコやジョズたち白ひげ海賊団の隊長格が彼らを窘め、()()()()()()()()()()()()を思う。

 

 

 いくら奥の手、能力者を封じ込める手段があり、青雉クザンと戦って疲弊しているとはいえ、はたして、赤犬サカズキを倒せるのか? ……と、

 

 

 

 

 白ひげの葬儀と同日。葬儀が行われている島とは別の島にて……

 

 

【新世界──後のパンクハザード】

 

 

 その島では二人の大将──青雉クザンと赤犬サカズキが海軍の方針を巡って激しい決闘が行われていた。そしてその決闘は十日間の激闘の末に赤犬の勝利で終わった。

 

 

 サカズキの足下には右足を失い火傷を負ったクザンが両肘両膝をついて頭を垂れた四つん這いの格好で倒れており、対してサカズキは息を切らせながらも二本の足でしっかりと地面に立った状態でクザンを見下ろしていた。

 

 

 そこへ足音を鳴らしながら一人の男が現れる。

 

 

「──スクアードか……」

 

 

 サカズキが現れた男の名を口にする。頂上戦争と言われる戦争にて海軍──サカズキに騙されて白ひげに斬りかかった男である。

 

 

「てめえも親父と同じ目に遭わせねぇと俺自身が納得できねぇんだよ!!」

 

 

 見れば片手にある抜き身の剣は腕を伝って黒く変色し、他にも体の所々には装飾品のように(ダイアル)を身に付けて武装しており、鬼の形相でサカズキを睨んでいた。そんなスクアードを一瞥しつつ、逆の方角にサカズキは目をやる。

 

 

「……お前は確か今日の白ひげの葬儀に出席してるはずだったが、何故お前がここにいる?」

 

 

 サカズキを挟む形で反対側には両腕を左右に伸ばし、右腕に“闇”を纏わせ、左腕に“雷”を迸らせる無表情…… いや、僅かながら侮蔑を含んだ顔でサカズキを見下すルーミアが静かに宙に浮いていた。

 

 

 右腕の“闇”が大きく広がり、左腕の“雷”が一層、激しくなると同時にスクアードが身を低く剣の切っ先をサカズキに向けながら駆け寄る。サカズキもまた両者を迎え討つべく両腕の上腕部分をマグマに変化させて一回り大きくした腕で身構える。

 

 

 クザンもまたサカズキに加勢すべく失った右足を補うため氷でできた足を生やして立ち上がるが、そこにルーミアが声をかける。

 

 

()()()のような犠牲者を増やしたいなら、赤犬の手助けをすればいい。そうすれば次の元帥は『赤犬サカズキ』だ。……もっとも、それができればの話だけどなー」

 

 

 言って右手を高々と上げるルーミア。その掌から炎のように立ち上る“闇”が頭上で巨大な球体を作り上げ、そこから黒塗りの棺をロープで引き摺った海賊たちが飛び出す。スクアードが掲げている海賊旗をつけていることからスクアードを船長とした「大渦蜘蛛海賊団」の船員だということが分かる。

 

 

「ここら辺一帯は私の“雷”の影響で電伝虫は使えない。援軍は来ないと考えた方がいい」

 

 

 淡々とサカズキに向けて語りかけるルーミア。スクアードの攻撃を捌きつつサカズキはルーミアたちの動きに注意する。海賊たちは棺から武器や防具類を取り出しては各々、手に取っていた。サカズキは彼らが装備している武具を見てあからさまな舌打ちをする。彼らが取り出したのが海軍が使っている対能力者用の物だからである。

 

 

「さあ、落とし前をつけてもらおうか?」

 

 

 スクアードとサカズキが戦闘しているところに男たちが武器を手に近づいていく。

 

 

 

 

 如何にサカズキといえど、十日間の激闘の後にルーミアたちと戦うだけの体力はもはや無く、クザンと比べれば決着はあっさりと付いた。それでも半数以上の海賊たちを道連れにしたのは流石といえよう。

 

 

 数名の海賊がクザンを鎖で何重にも巻いて拘束し、数十名もの屈強な男たちが血を流し、あるいは火傷を負って倒れ伏す状況の中、サカズキのマグマの拳がスクアードの腹を貫く。

 

 

 スクアードは腹を貫かれながらもルーミアに指示を出し、彼女が応える。

 

 

「──“闇水(くろうず)”……」

 

 

 サカズキの背後、首の真後ろに移動していたルーミアがほんの数cmにも満たない超至近距離から能力を発動、彼女の掌から発した“闇”がサカズキの実体を捉え、能力を封じ込め、ただの人間に戻し、流動体になるのを阻止する。

 

 

 そこへスクアードが腹を貫かれたまま、人差し指でサカズキの胸を突き刺す。“毒”で赤黒く変色した腕の指で……

 

 

 

 

 仰向けになって倒れているサカズキの胸の上に一個の果実が無造作に置かれている。その表皮が徐々に唐草模様に変化していく。やがて完全に変化したその果実をルーミアが手に取り、小さな鍵つきの宝箱に大事そうにしまいこむ。

 

 

「今後、命を狙われる危険性のある『ミョスガルド聖』にでもあげるべきかな?」

 

 

 ……と、その小さな宝箱を両手で包み込むように持ってそんなことを口にする。

 

 

「どちらにしろ、これでサカズキが元帥になることはない。“仏のセンゴク”が望んだ人物“クザン”が元帥になるなー」

 

 

 ちらりと顔を向けるルーミアの視線の先には件のクザンが未だに拘束された状態で座らされている。その彼の背後にはラフィットがステッキの先端をクザンの背中に押し当てながら立っている。海楼石がついたステッキだ。さらに海楼石の手錠も嵌められている。そのためクザンは能力を行使することができないでいる。そして、やや離れた場所にはオーガーがいつでも撃てるよう長銃を構えている。

 

 

「“七武海”加入直後にこんな事件を起こして無事で済まされると思っているのか?」

 

「海軍と世界政府には内緒にしてくれると嬉しいんだけどなー?」

 

「……無理だな。俺には報告する義務がある」

 

 

 ルーミアの願いを却下するクザン。その回答に「残念」と肩を竦めて彼女が答えるとラフィットがクザンの正面に回り込み催眠術でルーミアにとって都合の悪い記憶を忘れさせた。

 

 

 

 

「墓には何を刻もうか?」

 

 

 ラフィットに頼んでクザンに催眠を施してもらった後、今にも命の灯が消えそうなスクアードにそう声をかけるルーミア。彼は岩を背に、腹を押さえて両足を伸ばした状態で座っている。サカズキのマグマのおかげで傷口は焼かれ、出血は止まっているが…… もはや助からないのは誰の目にも明らかだった。

エースの時は凍った海の氷で仮死状態で保たれ、新鮮な臓器の代えが手に入りやすい状況と優秀な医師の存在で一命を取り留めたが……

 

 

「それよりも船員を頼む」

 

 

「…………わかった」

 

 

「それと……」

 

 

 そこで口を動かすほどの力はもはやないのか、会話が途切れて後に続く言葉が一向に出てこない。ただただ口から「ヒューヒュー」と空気が漏れる音が響くのみ。

 

 

「お前が悔やんでいたこと、謝罪していたことを伝えておく」

 

 

 ルーミアからの返答に僅かに指を動かしてみせるスクアード。だがそれ以降、彼が体を動かすことはなかった。

 

 

 

 

 それから、しばらくして一部の生存者たちとルーミアが去った後、第三者から連絡を受けた海軍がパンクハザードに足を踏み入れる。そこにはすでにルーミアたちの姿はどこにも見当たらず。生存者はクザンのみ。駆けつけた海兵がクザンに尋ねると彼は答えた。

 

 

「──サカズキを殺ったのはそこのスクアード。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」と

 

 

 

 

 そして決闘から数日後……

 

 

【旧ドラム王国】

 

 

 旧ドラム王国にて、療養中のエースと彼の護衛のためにジンベエが滞在していた。ベッドに横たわるエースの手元にはここ数日の新聞、主に海軍とルーミアに関する物が纏めて積まれている。

 

 

『白ひげ、エドワード・ニューゲート死亡!!』

『白ひげの娘、エドワード・ルーミア“七武海”加入!!』

『赤犬サカズキ、青雉クザンとの決闘後にスクアードと戦闘か!? 両者、遺体で発見される!!』

『青雉クザン、元帥に昇任!!』

 

 

 一通り読み終えた後、新聞の束を備え付けのテーブルに置くエース。未だ完治はしていないのか、身体中に包帯を巻いているものの、体を動かすほどまでは回復している。

 

 

「新聞に書かれちゃおらんから赤犬サカズキを殺害したのがルーミアだということはバレてはおらんだろう。あの娘さんの言うことを信じるなら、いずれはドフラミンゴを叩きのめしてインペルダウンに送り込むそうだ。元凶を放っておくつもりはないが、ルフィ君の頑張り次第ではルフィ君に譲るかもしれん、とも言っておったな」

 

 

 ベッドの脇にあるイスに腰掛けながら、そう話しかけるジンベエに「そうか」とエースは相槌を打つ。エースはジンベエたちに自分がなぜ捕らわれたのかを療養中の傍ら彼らに話しており、当然ドフラミンゴのこと、バナロ島での出来事を話していた。

 

 

 もっともドフラミンゴの部下に自分の船員たちがオモチャにされたことをエースは忘れていた。

 

 

「……なら俺も2年ほど頑張ってみるかな、せめてあいつの兄貴として、親父の息子として、胸を張れるぐらいにはな?」

 

 

 愛用の帽子を手に取って被ると笑顔でそんなことを言う。

 

 

「それで、ルーミアの言うスカイピアっていう空島にはどうやって行くんだ?」

 

 

 世間から身を隠すためエースはルーミアの提案により空島スカイピアへと渡ること決意。身を隠すためもあるが、知らない島へ行けるということもあってエースは楽しみにしていた。その顔はまるで好奇心を隠しきれない少年のようだったとジンベエは語る。

 

 

「すまんがエースはん。ワシは一度、魚人島へ戻ろうと思っとる」

 

 

 白ひげの死亡以降、彼のシマを狙って襲撃をかける者たちや白ひげに恨みのある犯罪者たちがしばしば現れた。そのたびに白ひげ海賊団や傘下の海賊団が対応を行なっており、特にルーミアが率いる「宵闇ノ海賊団」は文字通り一人残らず徹底的に叩き潰していた。

 

 

「ジャヤ島にはあの娘さんが世話になったという海賊団とサッチがおるらしい。行き方はそやつらに聞くといいだろう」

 

 

 魚人島もまた例に漏れず一時的に犯罪者共が横行していたが、ジンベエを船長とした「タイヨウの海賊団」や魚人島リュウグウ王国に常備している軍「ネプチューン軍」のおかげで今は平静を取り戻している。

 

 

 ジンベエは魚人島のことを気にかけていたが、ルーミアからの依頼ということと、戦争にて白ひげを守れなかったことを悔やみ、せめてエースはと戦争以降エースの側にいた。エースもまたその事情を知って彼の魚人島行きを快く賛同、むしろ自分のせいで今まで行けなかったことを詫びる。もっともジンベエはそんなこと気にするなと朗らかに一蹴したが……

 

 

「行く前にルーミアに挨拶した方がよかろう。あの娘さんは随分と気にしておったからのぅ」

 

「ああ、そうするよ。なんだかんだで世話になったことだしな」

 

 

 その後、エースとジンベエは様子を見に来たルーミアと面会、軽い挨拶を交わした後、それぞれ目的の場所へと赴き、その地にしばらく居座ることとなる。

 

 

 そしてルーミアは麦わらの一味の動向に気を付けつつ、バギーを座長とした「バギーズ・デリバリー」と、ボン・クレーを社長とした「バロック・ワークス」を設立。勢力を延ばしていくこととなる。

 

  




●● 

ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…
クリーチャー──にゃもし。
 瞬速、防衛
 にゃもし。が墓地、もしくは追放領域に置かれた場合、あなたは●●を支払うことで手札に加えてもよい。そうしない場合はあなたのライブラリーの一番下に置く。
 ハーメルンには“にゃもし。”という作者がいる。
0/3 


■朝の4時に出来た。

■マンモスマンもできた。

■誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。

■赤犬をあっさりと退場させてしまいました。
 赤犬ファンの皆さま、ごめんなさい。
 だって口調がわからないんだもん。

■相変わらず黒ひげ関連の二次少ないなー。
 同じ敵役なのにドフラミンゴ関係のが圧倒的に多いなー。
 とりあえず敵役二次増えると嬉しいなー。

■M:TG新エキスパンション
 エルドレインの王権、購入したよ。
 「出来事」「一徹」という能力が面白いネ。
 なんか赤のカード、強くね?

■一応、この小説も一段落したので、ここから先は順番とか時間系列がバラバラになるかも……
 前半の海を舞台にすることが多いかも……
 関係ない話とか入れるかも……
 前半の海に出てきたキャラを出すかも……

■50位以下だが、9月26日~27日に「ヤミヤミ」と「マンモスマン」の2作品が日間ランキングにランク入りした。やったZE。

※10月7日。マグマで焼かれたなら出血しないのでは? という指摘があったのでちょっと変えてみた。


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43話 それぞれの島で……

  

  

 偉大なる航路(グランドライン) ── 後半の海

 

 

【 カライ・バリ島 】

 

 

 「新世界」とも呼ばれるその海に浮かぶ島々の一つにそんな名前の島がある。ルーミアはその島に()()派遣会社「バギーズ・デリバリー」を設立、バギーをその組織の頭に任命し、指名されたバギーは高笑いを上げながら快く引き受けた。

 

 

 任命以降、バギーは各所から送られてくる依頼に応じて人材をその地に送っていた。ルーミアのネームバリューもあってか、その人材派遣会社はそこそこの賑わいを見せていた。そのこともあってか、バギーは上機嫌である。

 

 

「やけに上機嫌だが契約はちゃんと守っているんだろうな?」

 

 

 サーカスを思わせるテント内部に設置してある高台で笑うバギーに水を差すような発言を言う人物が現れる。乱雑に積まれている木箱の一つに腰かける彼は白ひげ海賊団の3番隊隊長であるジョズだ。彼は戦争の時、青雉クザンとの戦闘で全身を氷付けにされた際に右腕を砕かれてしまい、今現在は左腕一本の隻腕となっていた。彼以外にも白ひげ海賊団の船員の姿がちらほらと見受けられる。さらに宵闇ノ海賊団の船員である「バージェス」と新たに加わった「シリュウ」の二人もテント内におり、テント内部に置かれているソファーにおのおの寛いで過ごしていた。

 

 

「わーってるって『堅気の人間には手を出すな』だろ? 安心しろ、ちゃんと守ってるって、ギャハハハハ!!」

 

 

 顔をにやつかせながらバギーは答える。ルーミアが彼に任命する際、契約の一つとして民間人に対して危害を加えないことを厳守させ、バギーもまたその命令を忠実に守っていた。バギーとしても海軍に自分がロジャー海賊団の元船員と知られた以上、万が一ここを追い出されでもしたら、すぐに海軍に追われるのが目に見えて分かっていたので、その命令に大人しく従っていた。

 

 

 もっとも堅気ではない人間や組織等に対しては守る必要がないので徹底的に危害を加えた上に略奪の限りを尽くしていたが、その日頃の行いの賜物か、略奪を主体とした海賊団や犯罪者集団からは畏怖の対象として見られ、恐れられるようになり、バギーはますます増長するようになった。

 

 

 そして今回、増長しているバギーに釘を刺す意味も兼ねてジョズがやって来た。彼は一枚の絵をバギーに見せるようにして言う。その絵は本来なら物語では新世界以降のバギーの姿、自身の能力で手足を切り離し、布で隙間ごと体を覆って隠蔽し、体を大きく見せた姿である。ご丁寧にも服の下の中身の図解がなされている。ジョズは紙の裏に書かれている文を読み上げていく。

 

 

「──『この格好を一度でも人前で披露した場合、問答無用でお前を放逐。お前の後釜はお前以外のバギー海賊団の船員か、アルビダ海賊団の船長が“バギーズ・デリバリー”の座長になる』……だそうだ」

 

 

 これにはバギーは思わず「ぬぁわにぃぃぃ!?」と目玉が飛び出んばかりに大きく見開いてすっとんきょうな声を上げる。絵姿には見覚えがあったからだ。無論、その理不尽な要求に納得できないバギーはすぐさま反論、理由を言えと求めた。

 

 

「『デザインが気に入らない』『バギーっぽくない』『生理的に受け付けない』『ファンをやめる』……っていうのが主な理由だ。あとはルーミア提督、本人に直接、文句を言ってくれ」

 

「ふざけんな、そんなんで納得できるか!! あと最後の四つ目、理由じゃねぇだろ!?」

 

「まあ、いいじゃねぇか、契約さえ守ればここの座長を続けられるんだから」

 

 

 なおも憤慨するバギーをジョズは宥め、それを見ていた他の面子が笑う。そんな光景がここ最近よく見られている。

 

 

 白ひげ亡き後の白ひげ海賊団はルーミアや隊長たち、傘下の海賊団の願いもあって船長不在だが、1番隊隊長であるマルコが船長代理を務めて今も現存している。彼らは戦争以降、白ひげのシマにちょっかいをかける海賊団や犯罪者集団に対応するためにこのカライ・バリ島を拠点にして活動していた。それに加えて最近、海賊島「ハチノス」にインペルダウンの最下層──LEVEL-6に幽閉されていた脱獄囚たちを中心に無法者たちが集まり「海賊連合」なるものを作ったのが原因である。カライ・バリ島にいる彼らはその海賊連合に対して目を光らせて監視していた。

 

 

「ここに“宵闇屋”はいるか?」

 

 

 その彼らの下に一人の男が入口から現れ、テント内にいた一人が彼の名を呟き、尋ねる。

 

 

「トラファルガー・ロー、“死の外科医”が何の用だ?」

 

 

 船員の問いに“死の外科医”トラファルガー・ローは不敵な笑みを浮かべながら答える。

 

 

「同盟を組みたい」……と

 

 

 

 

 前半の海

 

 

【 モモイロ島 ── カマバッカ王国 】

 

 

 前半の海にあるモモイロ島を中心とした国であり、革命軍の一員でもあるエンポリオ・イワンコフを女王としたオカマだらけの国である。ついでにその王国に生息している動物たちまでもがカマっぽい。そして、シャボンディ諸島でくまに飛ばされたサンジが着いた島でもある。彼はルフィが自分の仲間たちにメッセージを送るために海軍本部──マリンフォードで起こした「16点鐘」の事件以降も仲間の力になるならば……と、己の料理の腕と身体能力を鍛えるためカマバッカ王国に留まっていた。

 

 

 そんなある日、連日連夜やたらと無駄に無意味に強いオカマたちを相手に戦闘をこなすサンジの下に客人が訪れた。

 

 

「──と、いうことがあったわけよ~~~う!」

 

 

 本名ベンサム、通称ボン・クレーその人である。ルーミアは各地に散らばっている麦わらの一味の様子を見るために配下たちを向かわせた。サンジがいるカマバッカ王国にはイワンコフがいる可能性もあったためボン・クレーは自ら志願した。無論、ルーミアには麦わらの一味の生存確認以外にも目的はあり、そのうちの一つが戦争で失った戦力の補充である。

 

 

 ボン・クレーとサンジ。彼ら二人は過去に一度、アラバスタ王国にて死闘を繰り広げたことがあったのだが、アラバスタから脱出する際、ボン・クレーが自ら進んで海軍の囮になったこと、インペルダウンやマリンフォードでの戦争で自分たちの船長であるルフィを助けたこともあってか、敵対視することなく、お互い友好的に接している。今もファンシーな薄ピンク色のパラソル付きのテーブルを挟んでボン・クレーが戦争で起きていた出来事をサンジに話している。そして力を求めてカマバッカ王国にやって来たことを語り、次にサンジの素性について先ほどのふざけた態度とはうってかわって至極真面目な顔で尋ねる。

 

 

「サンジちゃん、ルーミアちゃんから聞いたんだけど、あなたってあの“ジェルマ王国”の王子様って本当なの?」

 

 

 目に見えて分かるほどにサンジの顔が不快そうに歪んだ。その表情から触れてほしくない内容だということが一目で分かるがボン・クレーは構わず喋り続ける。

 

 

「もしそうだとしたら、あなた四皇の一人ビッグ・マムの娘と政略結婚させられるかもしれないのよう」

 

 

 そう言ってテーブルの上に一枚の写真を置くボン・クレー。その写真はビッグ・マムの娘の一人である「シャーロット・プリン」が写したものだった。サンジはその写真を手に取ると写真の人物に対して文字通り両目をハートの形にするが、すぐに真面目な表情に戻ってボン・クレーに尋ねる。

 

 

「詳しく聞かせてくれ」

 

 

 そうキリッと言うサンジは有象無象の屈強なオカマたちと過ごしているうちに女性に対して免疫が弱くなったのか、鼻から血を垂らしていた。

 

 

 

 

【 空島 スカイピア 】

 

 

 旧ドラム島でジンベエと別れたエースは素性と顔をマントで隠して一人ジャヤ島へと移動。エースはそこでサッチと合流し、現地で待っていた猿山連合軍と出会い、彼らとともに気球で空島へと渡ることとなる。……とはいえ、猿山連合軍全員を乗せられるスペースが気球にはなく、エース、サッチ、猿山連合軍 最終園長(ラストボス)であるモンブラン・クリケットの三人で向かうこととなった。

 

 

「その頭の栗は…… お前がルーミアが言っていたモンブラン・ノーランドの子孫なのか……?」

 

「ああ、随分と長くかかっちまったが、先祖の代わりに来た。そういうテメェはカルガラの末裔か?」

 

 

 空島に浮かぶ巨大な大地に不時着し、その地に足を踏み入れたエース一行は待ち構えていたワイパーたちと遭遇。もっとも、事前にルーミアから知らされたせいか、すぐに身元が割れた。

 

 

 お互いの正体が分かった途端、すぐに打ち解けて宴を始める一同。彼らはそれぞれの先祖や自分たちの過去を語らい、次いでここ最近の近況を話し合った。

 

 

「しばらく前にここに青海からベラミーとかいう男が一人で来たんだが……」

 

 

 ワイパーはベラミーが空島に来たことを告げ、彼はルーミアやルフィが空島で何をしていたのか? ……と、空島の住人を相手に聞き込みをしていたことを教えた。その時、空島の住人は彼がルーミアや青海にいるノーランドの知り合いということもあって、当初はエネルが倒されて間もなく良くも悪くも浮かれていたこともあってか、何の疑問も抱かずに素直に答えていたという。しかしベラミーに対して疑念を持った今は迂闊に喋ってしまった自分たちを呪い、エースたちに頭を下げる。

 

 

「ルーミアやルフィがそう簡単にやられるようなタマに見えるのか? 心配するだけムダってもんだぜ」

 

 

 謝罪する彼らにクリケットはそう言って笑いながら一蹴。その後、害した気分を払拭するかのように宴はさらにやかましく派手になって朝まで続いたという。

 

 

 

 

【 前半の海 ── とある島 】

 

 

 街の一角にて、路上で歌を歌い、楽器で音楽を奏でる男がいる。それだけならば大して珍しい光景ではないが、それを行なっている者が骸骨ならば話は別である。サンジと同じくして別の島に飛ばされていたブルックである。物珍しさもあってか人だかりが出来上がっている。

 

 

 その後、演奏終了後に数名の屈強なお供をつけた金髪の少女と長身の男の二人が彼に近づく。二人の接近に気づいたブルックが帽子を上げて暢気に挨拶するが、二人の正体を知っている手長族のサンクリンは顔を青ざめさせた。そんな彼に少女は声をかける。

 

 

「私の名は『ルーミア』。あなた、芸能プロダクションっていう会社を作ってみる気はない? 隣にいる『テゾーロ』も協力してくれるみたいなんだけどなー、わはははー」

 

 

 見た目こそ少女だがその実力は大将の一人を倒すほどの力を持った「ルーミア」と実業家として新世界で名を轟かす「テゾーロ」の二人を前にして彼らの要求を断れる真似などサンクリンにはできなかった。

 

 

(──いや待てよ。この二人を味方につければ、さらに金儲けできる!!)

 

 

 最初こそ二人に対して戦々恐々としていたサンクリンだが、すぐに頭を切り換え、彼ら二人に対して揉み手をしつつ笑顔を見せる。

 

 

 その後、サンクリンは二人の力を借りて世界中から歌や音楽に携わる者、モデル、舞台俳優などを集めて芸能プロダクション──サンクリン事務所なるものを設立。同時に所属している彼らに関連した商品を開発、徐々に知名度を上げていき、それに伴い売上も延びていき、笑いが止まらないという。

 

 

 

 

【 NEWスパイダーズカフェ 】

 

 

 アラバスタ王国で麦わらの一味に敗北したB・W(バロック・ワークス)の幹部──オフィサーエージェントと呼ばれていた面々は紆余曲折を経て、とある荒野でカフェを開業していた。

 

 

 そこにルーミアが立ち上げたNEW B・W(バロック・ワークス)ともいうべき会社の副社長に任命されたMr.3ことギャルディーノが訪れる。

 

 

「何もここをやめろとは言わんよ。君たちにとっても悪くはない話だと思うガネ? 何しろ、ここにいる全員はみんな賞金首だ。七武海の庇護があった方が安心できると思うガネ?」

 

 

 カウンターの席に座りながら、かつての同僚であるザラに話しかけるMr.3。彼がここに来たのはスカウトである。ルーミアとしてはこのスカウトに関しての成否は問われていないが、Mr.3としては知っている人間と組んだ方が仕事がしやすいのだろう。積極的に勧誘していた。

 

 

 それからも交渉は続き、やがて条件付きだが彼らのスカウトに成功。その後、Mr.3はウィスキーピークに赴き、そこにいた賞金稼ぎたちを取り込み、そして最後の仕事を残すことになる。

 

 

“リトルガーデンにいる巨人二人をスカウト、よろすこ。無理そうなら私も行く。ちゃお。”

 

 

 やたらとまるっこい文字で書かれたルーミアの似顔絵つきの指令書を見てMr.3は盛大にため息をついた。その彼の様子を見た部下が彼を憐れんだ。Mr.3は二人の巨人から恨まれても仕方のない所業をしていたからだ。

 

 

「よし、ルーミア提督を待とう。すぐに彼女と連絡を取りたまえ」 

 

 

 Mr.3はさんざん考えた末にその結論に達して部下に指示を出す。彼の部下たちは賛同し拍手を送る。彼らもまた巨人相手に無理だろ、と思っていたのだ。 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…          

( サトシヘッド・ω)
あ、野生のにゃもし。が飛び出した!


■朝の5時ごろにできたよ。

■誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。

■メッセージがあったのでこの場を借りて返信。
 過去に短編で「ヒロアカ」書いたことあるよー。
 ただし、変態仮面とのクロスオーバー。

■雑な理由で退場させたサカズキさんに関する感想、指摘等、ありがとうございます。直せるとこは直せたよー。

■しばらくは、戦争終了後~3D2Y 辺りを書くおー。

■MTG、久々にデッキ作ってお店のイベントにgo
 相手、ゾンビを生み出す土地からゾンビをわらわら出してやられたZE。ひどす。

■寝る。おやすみなさい。
 


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44話 砂の王国に宵闇の少女

 

 

 偉大なる航路(グランドライン) ── 前半の海

 

 

【 ボーイン列島 おいはぎの森「グリンストン」 】

 

 

 その正体は島の形をした超巨大な食肉植物であり、その植物の学名は「ストマックバロン」という。その大きさたるや口になっている部分だけで巨大な海獣や大型の海王類すらも一口で丸呑みするほどである。

 

 

 今その島には麦わらの一味の「ウソップ」と……本名不明、森の勇者を騙る自称「ヘラクレスン」という男が滞在していた。彼ら二人は師弟の間柄であり、ウソップは来る2年後、シャボンディ諸島での麦わらの一味再集結に向けてヘラクレスンから己を鍛えるべく彼から師事を受けていた。

 

 

「ホホホホホ!! …………? ……麦わらの一味の“ウソップ”とお見受けられますが……間違いありませんか?」

 

 

 その彼らの目の前で両腕を鳥の翼に変化させたラフィットが降り立ち、ウソップ本人に尋ねる。

 

 

「ん? おれがそうだけど……? そういう、お前は確かルーミアと一緒にいたやつだよな……?」

 

 

 ラフィットが尋ねたのは目的の人物であるウソップが力士と見紛うほどに激太りしていたからだ。そしてウソップもまたラフィットがウォーターセブンでルーミアと一緒にいたこともあり、彼に見覚えがあった。

 

 

 

 

「──おれたちがいない間にこんなことになっていたのか……」

 

 

 ラフィットが持ってきた新聞の束を読み終えたウソップが驚愕した表情でそんな言葉を漏らす。頬を伝って落ちる水滴は冷や汗によるものなのか、それともただ単に太っているせいだけなのか判断がつきにくい。ラフィットはルーミアから事前にウソップが太っている可能性があると示唆していたが、彼が知る限りではウソップがシャボンディ諸島から飛ばされるまではごく標準的な体型をしていたはずだった。それゆえ、1ヶ月もしないうちにここまで様変わりするとは思っていなかったのである。ウソップの特徴の一つである“長鼻”がなければ別人と判断していたことだろう……と、彼自身そう思っていた。

 

 

「ところでおたくらが欲しがっていた “ 天候棒(クリマ・タクト) ” の設計図なんだが、こんな感じでいいのか? 必要なら今おれが考えてる強化したやつのを書いてやるけど? なんかうちのルフィ──船長がおたくんとこのルーミアに助けられたみたいだしな……」

 

 

 切り株の一つに足を組んで座りつつ、設計図の束を一枚一枚捲りながら書かれている内容を隅々まで吟味しているラフィットにそう尋ねるウソップ。インペルダウンでの脱獄とマリンフォードで起こった頂上戦争、二つの出来事の詳細をラフィットから詳しく聞かされたウソップが返礼の意味を兼ねてそう提案する。

 

 

「ホホホ!! うちの姫はあくまで “ 雲 ” を作れる道具を欲しているだけですので、あしからず……」

 

 

 ラフィットが “ 天候棒(クリマ・タクト) ” 欲したとき、当然ウソップは何故そんなものを欲しているのか彼に問いただした。マトモな返答が返ってくるとは思っていなかったが、ウソップの意に反してラフィットは答えた。

 

 

「武器」

 

 

 そしてもう一つが……

 

 

「空島を人工的に作るときの補助」

 

 

 ウソップはその返答に深く考える。武器として使えたのは “ ナミ ” だからこそ…… 普通の人間に、それも戦闘中に使えるような代物じゃない。たとえ数を揃えたとしても扱える人間はごく僅かだろう。

 

 

 ジャヤ島の街にいた連中は空島の存在に否定的であり、猿山連合軍のような夢を追うものたちをバカにしていた。猿山連合軍に在籍していたルーミアが空島に強いこだわりを持っていても、おかしいことはない。そこでウソップは思いきって質問することにした。

 

 

「空島を作ってどうするつもりなのか?」

 

 

 この問いに対してラフィットはこう答えた。ジャヤ島の真上で人工的に空島を作り、そこで空島に生息している “ 空魚 ” を始めとした動植物を養殖、栽培し、ジャヤ島にあるホテルや飲食店に提供する。

 

 

「とりあえず、正規の値段の10倍から100倍辺りで取引しようと思ってます。ホホホホホ」

 

ぼったくりすぎるだろ!?

 

 

 機会があればもう一度、空島の食べ物を食べてみたいと思っていたウソップ。彼はラフィット相手に値段の引き下げを要求したが、暖簾に腕押しと言わんばかりにのらりくらりとあしらわれて、そしてラフィットは次の麦わらの一味に会わなければならないので……と、なおも値段引き下げを要求するウソップを振り切って島を飛び立った。

 

 

 

 

【 空島 ウェザリア 】

 

 

 その空島に住むハレダスらによって作られた人工の空島であり、ナミが飛ばされた場所でもある。彼らは年がら年中その空島にて過ごしているわけではなく、時に青海──下界に降りて物資と情報を入手して世界中を旅している。

 

 

「空島ウェザリアのみなさまとナミ様でございますね?」

 

 

 世界中を移動している彼らを捉えるためにルーミアは前半の海の各々の島にいる配下たちに幹部が到着するまで彼らを待たせるよう言い含めた。彼らが欲しているであろう物資と情報を持たせて。

 

 

 

 

「んー…… もうちょっと、ぼったくってもいいんじゃない?」

 

 

 ウソップと同じようにナミに目的を話すラフィット。正規の値段の10倍から100倍という値に否定的どころか逆に上げてくる始末。これにはその場に居合わせた配下たちが「ええっ!?」と軽く引き気味になる。

 

 

「どうせ、相手は王族、貴族とかの金持ちをターゲットにしてるんでしょ? それなら……」

 

 

 さらには商売に関して口を挟んでこようとするナミにラフィットは待ったをかける。このままナミと会話していたら話が明後日の方向に進みそうな気配がしたからだ。そして自分たちの目的の一つである空島作成のため、ハレダスにわけを話し、空島に関する知識を手に入れる。

 

 

 そして目的を果たし、そそくさと去って行こうとするラフィットらにナミが声をかける。他の船員に、麦わらの一味にも会いに行くの? ……と。

 

 

 尋ねるナミにラフィットは答える。

 

 

 “ バルジモア王国 ” にいる「サイボーグ フランキー」はとある大規模な爆発事件で海軍がその犯人を捕まえるために大勢の海兵たちが常駐している。

 

 「悪魔の子 ニコ・ロビン」は「東の海」にある建設途中の巨大な橋 “ テキーラウルフ ” にて革命軍と行動をともにしている。その二つの地は危険を冒してまで行く必要はない。

 

 

 また「チョッパー」がいる「南の海」 “ トリノ王国 ” に関しては幹部クラスが行くまでもなく護衛をつけた数名の人間が彼らの知識を求めて現地に向かっている。

 

 

 そして「海賊狩りのゾロ」がいるクライガナ島 “ シッケアール王国跡地 ” にはルーミア、宵闇ノ海賊団にとって利益になるようなものはほとんどない。

 

 

 ……とはいえ、万が一のことを考えて「3D2Y」の意味を書いたルーミア直筆の手紙がニュース・クーによってその島に送られている。

 

 

 その後、他の麦わらの一味の居場所をナミに教えた後、ラフィットたちは彼女と形だけの短い別れの挨拶を交わして島を後にした。

 

 

 

 

【 リトルガーデン 】

 

 

 “ 麦わらの一味 ”、“ B・W (バロック・ワークス)”とよくも悪くも関わりを持った二人の巨人「青鬼のドリー」「赤鬼のブロギー」が決闘の場にしている島であり、その様は大昔の地球を思わせる植物が生い茂っており、またその地には太古の地球で絶滅した恐竜たちが今もなお闊歩している。

 

 

 その地にMr.3を連れたルーミアが訪れた。

 

 

 かつて自分たちの決闘を汚した人物を連れてきているルーミアに二人の巨人は憤慨し、いつ爆発してもおかしくない一触即発の状態に陥った。そのせいで交渉は非常に難航したものの、最終的には脅迫に半ば近い形で彼ら二人を取り込むことに成功する。

 

 

 傘下に入れば決闘の邪魔をされることが、完全ではないが、少なくとも確実にその数を減らす。……と言われ、不承不承ながらも二人の巨人は承諾した。

 

 

 それ以降、その島にはルーミア配下の人間が置かれることになり、その島にやって来たはいいもののログが貯まるのが1年もかかるためにその島に立ち往生するはめになった人間たちを救済することになる。無論、タダではなく相応の品や金銭等を要求するが……

 

 

「そういえばドリーよ。大昔に人間の女の子に何か言われていた気がするんだが……」

 

「……奇遇だな、俺もだブロギー。確か……」

 

 

 後に、配下たちからルーミアへ報告が送られることになる。

 

 

“──リトルガーデンの巨人が決闘の合間に『狩り勝負』なるものを始めた……”──と。

 

 

 

 

 それから数日後。

 

 

【 アラバスタ 】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)、前半の海にある「サンディ島」にある砂の王国。そこにある天井のない野外で行われている劇場の観客席に礼装姿のルーミアたちがいた。

 

 

『それでも黄金都市シャンドラは存在していたんだ!!!!』

 

 

 劇場の舞台にて、モンブラン・ノーランドに扮した役者が処刑台の上で無理矢理、跪かせられた状態でそのセリフを涙を流しながら叫ぶ。

 

 

 そんな提督を助けるために船員たちが処刑台に向かって駆け寄るも途中で国の兵士たちに阻まれて近づけない。

 

 

 やがて死刑執行人の男が斧を頭上、高くに振り上げて……

 

 

 ナレーションの声とともに劇はそこで終わってしまう。

 

 

 舞台がよく見える最前列の席からB・Wの幹部とルーミア、サンクリン事務所のメンバーにギルド・テゾーロ、天竜人であるミョスガルド聖、白ひげ海賊団船長代理になったマルコ。その彼らの隣にはアラバスタの王であるコブラとその娘であるビビ王女たちと、そうそうたる顔ぶれがその演目に見入っていた。

 

 

「ウソつきノーランドというイメージをこれで払拭できると思うか?」

 

 

 誰に尋ねるわけでもなく、幕が降りても未だに拍手のやまない舞台を見据えながらそう問いかけるルーミア。……しばらくしてからコブラ王が口を開く。

 

 

「“北の海”は難しいが、その物語が知られていない他の海ならこの演目に出てくるノーランドがイメージとして定着するだろう」

 

 

 その言葉に満足したのか深く頷くルーミア。舞台上では小道具が片付けられ、サンクリン事務所に所属している歌手たちが準備を進められ、まもなく開始する。

 

 

 サンジの足で顔面を変えられた二人組、見た目に反して爆撃のごとく音を鳴らしてロックを奏でる見目麗しい人魚たち…… 彼ら彼女らの演奏が終わり、トリを務めるブルックの登場に場は一層盛り上がり、ブルックの姿を一目見た何人かが失神して担架で運ばれていく。

 

 

「知っているか? あのブルックは偉大なる航路(グランドライン)の入口、双子岬にいるアイランドクジラの主人だ」

 

 

 ルーミアのために用意された豪奢な肘掛け付きの椅子に彼女は片肘で頬杖をつきつつ、そう語る。そのブルックのことを知らなかった者たちが目を大きく見開いて驚く。

 

 

「私は勝手なウワサで悪いイメージを持たれた人物を救いたい。少しでも払拭させたい。そういう思いが私を突き動かす原動力の一つなのだろうな、わははは」

 

 

 「……結局はただの自己満足に過ぎないけどなー」と、伏せ目がちにどこか自嘲めいた口調でルーミアはそう言う。

 

 

「さてと、音楽が終わることだし、そろそろ本題に入りたいから場所を変えることにしようか?」

 

 

 コブラ王にそう提案するルーミア。ちょうどブルックの歌が終わり会場内を割れんばかりの歓声が包まれ、コブラ王とビビ王女と二人を護衛している兵士たちに緊張が走る。そんな彼らを少しでも落ち着かせるためなのか、ルーミアは言う。

 

 

「安心しろ。私が欲しているのは “ 歴史 ” だ」

 

 




 

         (M)


 ( 人の頭 ・ω)
 やったー! 野生のにゃもし。を捕獲したぞ! 


 
■朝の6時30分ごろにできた。
 すまねぇ、寝る。おやすみなさい。


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45話 “アラバスタ”のちに“ハチノス”

 

 

【サンディ島──アラバスタ王国】

 

 

 古代のエジプトを思わせる砂の王国アラバスタ。その王国の首都であるアルバーナには首都と同じ名を冠した「アルバーナ宮殿」という建物があり、そこには「ネフェルタリ家」を始めとした王族の他に政府や国王軍の関係者等が住んでいる。

 

 

 今その宮殿にルーミア一行が招かれており、その宮殿内にて晩餐会が催されていた。

 

 

 アラバスタ王国側の人間からしてみれば、先日、王国転覆を謀った元七武海のクロコダイルの件があっただけに同じ七武海であるルーミアに対して複雑な心境がある。

 

 

 もっとも、その晩餐会にはルーミア本人を始めとして白ひげ海賊団船長代理のマルコにB・W(バロック・ワークス)の元幹部といった戦闘能力の高い者たちが軒並みに揃っており、さらに黄金帝ギルド・テゾーロや天竜人であるミョスガルド聖もその晩餐会に出席している。

 

 

 そのため王国側としても彼ら相手に無下にはできず、まるで腫れ物にでも触れるかのように慎重に接していた。

 

 

 厳重な警備が敷かれた宮殿の中、来賓客を招くためにある部屋の一つ、入口から入って向かってテーブルの右側には王国側、左側にはルーミア側、と分かれて席についている双方から物々しい雰囲気が放たれてる中、厨房から運ばれてきた料理が食卓の上にキレイに並べられていく。そのどれもが空島の素材を使用した一品であり、ルーミアが無理を言って厨房を借り、彼女が連れてきた料理人たちに命じて作らせたものだ。

 

 

「そこにある料理は空島でしか採れない物で作った品だ。冷めないうちに存分に召し上がるといい、わはははー!」

 

 

 肩の開いた黒のドレスを着込んだルーミアが重苦しい場の空気など何処吹く風と言わんばかりに能天気な声で乾杯の音頭を取ると、一同が料理に手をつけていく。そして一口、料理を口に含んだ瞬間、地上の海や山では味わえない味覚に誰しもが驚き、絶賛した。

 

 

「盗聴しようとした輩はあらかじめ無力化しておいたから盗み聞きされることはないけど…… それでも万が一のことを考えて場所を変えようかな?」

 

 

 ルーミアの足下を中心に“闇”が蠢きながら広がり、部屋の隅々まで行き渡る。ルーミア側の人間たちは事前に知らされてはいたが、それでも足下に蠢く“闇”を見てびくつく者、眉をひそめる者、興味深く観察する者……等さまざまな反応を見せる中……事情を知らない王国の兵士たちがルーミア側の襲撃と勘違いし、コブラ王を避難させるべく急いで駆けつけるもコブラ王が片手で彼らを制止する。

 

 

「コブラ王。貴方から見て、口が堅く、信用できる……そういった人物を同行することを許可しよう」

 

 

 ほどなくしてコブラ王の命令で数名の人間──護衛隊の主要人物等を除いて兵士たちが口惜しそうに部屋から出ていき、あとに残った人間たちが部屋中を敷き詰める“闇”の中へとテーブルごと沈んでいく。まもなくしてその部屋から誰もいなくなった。

 

 

 ルーミアの“闇”の中に沈んだ彼らだが、今、彼らがいる場所は木造の建物とおぼしき場所の室内だった。室内には光源として光を放つ灯貝(ランプダイアル)が壁に設置されており、部屋の中は昼間のような明るさを保っている。

 

 

 その“闇”の中とは思えない場所にざわめく一同。次第に声はひそまり、自然とそれを行なったルーミアに視線が向けられるが、彼女はその視線に応えることなくコブラ王に淡々とした声音で尋ねる。

 

 

 

 

「次の世界会議(レヴェリー)で世界政府に何を問う?」

 

 

 

 

 先ほどまでのふざけた態度とは打って変わって至極真面目なルーミアの態度にコブラ王はやや気後れするものの、コブラ王もまた王族らしく毅然とした態度で応えた。

 

 

 

 

「…………について、世界政府に問うてみたいと思っている」

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【港町ナノハナ】

 

 

 明けて翌日、アラバスタの玄関口である港町ナノハナからルーミア一行を乗せた船が数隻、港から出航していった。港にはサンクリン事務所に所属している俳優や歌手のファンと思われる人だかりができていて名残惜しそうに彼らを見送っている。その人だかりから離れた場所にはコブラ王と彼を護衛する兵士たちがいた。コブラ王は去っていく船を眺めながら今回の会談について振り返る。

 

 

 ルーミア一行との密談ではコブラ王は当たり障りのない、近況に関する返信を返し、ルーミアたちには王国転覆に関する出来事、“空白の100年”には一切、触れなかった。

 

 

 もっとも、ルーミアはそれを見越していたのだろう、彼女はコブラ王の返答の後に“空白の100年”を秘密裏に調べていたオハラが滅んだ経緯と、その後のニコ・ロビンの行動を大まかに教え、王国側の人間を大いに驚かせた。

 

 

 そして最後に「法を犯せば“オハラ”の二の舞になる可能性が高い」と言い残して彼女との会話は終わった。無論、コブラ王とて可能な限りルーミアから彼女の目的、及び情報等を得ようと試みてはいた。

 

 

「天竜人の改心」

 

 

 コブラ王の予想とは裏腹にルーミアは素直に答えたが、返ってきたその言葉に天竜人のことを知っている王国の人間たちは絶句した。天竜人が、あの傍若無人を絵に書いたような連中が改心するとは露ほども思っていないからだろう。王国側からは否定的な意見が多い。ルーミア自身もそれを否定はしなかった。

 

 

 一応、同席していたミョスガルド聖からかつて自分はリュウグウ王国にいた王妃オトヒメに説得された過去があり、天竜人の改心は不可能ではない、と意見を述べるものの、王国側からは彼が天竜人の一人ということもあってか、言葉を濁すばかりで良い返事は聞かない。ルーミアもまたオトヒメ王妃と同じやり方では無理だろう、と認めていた。

 

 

「残念だが私にはリュウグウ王国にいた王妃オトヒメみたいな聖人君子の真似事はできない。だから……」

 

 

 左腕で頬杖をつきつつ、空いた右手の人差し指で空中にくるくると何度も円を描きながらルーミアは言い、再度、コブラ王たちを唖然とさせた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 去っていくルーミアたちの船を見送りながらコブラ王は昨日ルーミアが言ったことについて頭を悩ませる。彼女の言う手段というものが“洗脳”と“催眠術”だったからだ。その後、会談は荒れに荒れたが、ルーミアが意見を曲げることはついぞなかった。彼女の言い分もある程度、理解できてしまうだけにコブラ王も強気には出られなかったのだ。

 

 

「文字通り天竜人を釣るための“エサ”というわけか……」

 

 

 昨日、口にした料理を思い浮かべてそんなことを漏らすコブラ王。側近たちも同じことを思っているのか王の言葉に深く頷いてみせる。

 

 

「しかし、これは些か高い気がするのだが……」

 

 

 メニューを手に取ったコブラ王が片眉を吊り上げて唸る。ルーミアが宣伝用に置いていったメニューには相場の倍以上の値段が書かれていた。安いものでも10倍。高額なものになると100倍以上の値段がつけられていたのだ。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 アラバスタを発ったルーミア一行はシャボンディ諸島に向けて航海していた。先頭を進む船に主要メンバーが乗っており、船内の一室にて此度の会談について話し合っていた。

 

 

「意見が違えば、オレたちにも“洗脳”や“催眠術”を施すつもりか?」

 

 

 先の件で出てきた“天竜人の洗脳”に不安が募ったのか、ついそんなことを口走った者が現れたからだ。

 

 

「そんなものにかかるマヌケを乗せた覚えはないな」

 

 

 暗に身内に対して使うつもりはないとルーミアは遠回しに言ったがそれでも納得しない輩には彼女は黙秘することを条件にこの件から下りること提示した。

 

 

「天竜人を変えれば、世界中に歌と音楽と文化を広めれば、世界は少しは幾分マシになる。私とともに世界を少しでも変えたいヤツは残れ」

 

 

 当事者たちにそう問うルーミア。幸か不幸か船を降りる者は一人もおらず、マルコはルーミアを監視をするために、サンクリンは金のために、テゾーロやミョスガルドは彼女の行動に興味を持ち、さまざまな理由で彼らは船に残った。

 

 

「降りる者はいないようでなによりだなー。わはははー」

 

 

 誰も降りないことに上機嫌になるルーミア。腰に手を当てて一頻りに笑った後、明後日の方向に人差し指を指しつつ告げる。

 

 

「これより海賊島(かいぞくじま)“ハチノス”を襲撃する!!」

 

 

 ルーミアの命令で船内は慌ただしくなる。

 

 

 それから、しばらくして船はルーミアの“闇”に呑み込まれて収納され、青白い炎を纏った鳥と化したマルコとともにルーミアは“ハチノス”を目指して空を飛ぶ。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

海賊島(かいぞくじま)ハチノス】

 

 

 ドクロを模した巨大な岩が目立つ“新世界”にある島。そこにはインペルダウンのLEVEL-6に収監された犯罪者たちが集まってできた集団“海賊連合”が拠点にしている島である。ルーミアたちはこの集団とたびたび小競り合いを行なっていた。

 

 

 そして今回、元帥クザンから命もあり、ルーミアたちによる大規模な掃討作戦が行われることとなった。

 

 

 しかしルーミアはその命を受けた直後に偉大なる航海(グランドライン)の前半の海を漫遊、海軍から強い反発を受けることとなったが彼女は無視。クザンもまた「日時さえ守ればそれまで好きにしていいよ」と半ば放置。

 

 

 海賊連合もまたルーミア抜きで掃討作戦は行わないだろうと高を括っていたが、ハチノスの沖合いに島を取り囲むように突然現れたルーミアの軍勢に海賊連合は蜂の巣をつついたかのように騒ぐ。

 

 

 

 

「私が直接、動くのもいいが、それでは味気ないというものだなー。一番槍はくれてやろう。名乗りを上げろ。名声をくれてやろう。安心しろ、私は他人の功績を奪い取るような盗人の真似はせん。わはははー」

 

 

 ハチノスのドクロ岩が見える船の甲板にて黒のドレス姿のルーミアがこれまた彼女用に作られた豪奢な椅子に腰かけて、尊大な態度でそんなことを宣う。

 

 

「「 バギー座長、行きましょうぜ!! 」」

 

「いや待て、お前ら!?」

 

 

 ルーミアの言葉に真っ先に反応したのはバギーの取り巻きたち、彼らは手に持った武器を高く掲げて雄叫びを上げる。バギーが慌てて止めるも聞き入られず、逆に好戦的だと思われる始末。彼らはバギーを神輿のように担ぐと意気揚々と自分たちの船に戻っていく。

 

 

「随分とやる気じゃないのよう!! あちしたちも負けてられないわねい!!」

 

「いや、ちょっと待つだガネ。何も社長自ら戦場に赴く必要はないと思わないガネ?」

 

 

 次いでB・W(バロック・ワークス)の元幹部たち。やる気のある社長ボン・クレーをMr.3がどうにかして宥めようとするも全く聞き入れてもらえず、腕を引っ張られて無理矢理、連れていかれ、バギーたちのあとを追う。

 

 

「マルコたちはどうする?」

 

 

 あとに残った白ひげ海賊団にそう尋ねるルーミア。彼らは名乗りには上がらず「守りは必要だよい」とその場に残った。他にもテゾーロやミョスガルド、ついでにサンクリン事務所の面々の姿もある。ルーミアは安全のために他の島に降ろすことを提案していたが、彼らはルーミアに同行することを望んだ。

 

 

「親父のシマに手を出せばどうなるのか、白ひげ海賊団が大人しく見過ごすはずがないぐらい分かりそうだと思うけどなー? どう思う?」

 

「あの連中の中には昔、親父にやられてインペルダウンにぶちこまれたやつもいるからなあ、私怨で動いても不思議じゃないよい」

 

 

 海賊連合のシマへの襲撃を不思議に思ったルーミアが傍らにいるマルコに尋ねると、そんな回答が返ってきた。

 

 

「親父が生きている間に恩を返したかったが、それがもはやできない以上、シマを守ることで恩を返す。“敗北者”というレッテルを取り払う。親父の功績と名を未来永劫に残す」

 

 

 ハチノスに上陸したバギーの部隊とボン・クレーの部隊が港のあちこちで早速ハデに暴れまわっていた。その中でも巨人の集団が一際目立つ。 

 

 

「提督の命令なら仕方ないよい。……だが親父へ恩返ししたかったのは何もお前だけじゃないよい」

 

 

 そう言うとマルコが白ひげ海賊団を率いて動き出す。

 

 

「恩を返したい人物が必ずしも生きているとは限らない。人生とはままならないものだな……」

 

 

 そのテゾーロの言葉に深く共感したのか、ミョスガルドは深く頷く。テゾーロの言葉にぎょっとしたルーミアが冷や汗をかいたが、彼女はそれを振り払うかのように戦場にいる部隊に指示とは言えない指示を送る。

 

 

 

 

「あの世にいる親父に届くぐらいハデに騒げ!!」

 

 

 

 




 
( ´・ω・)にゃもし。


 にゃもし。は逃げ出した! 


■朝の6時45分だわ。
 あとは活動報告に書くおー。
 寝るおー。お休みなさい。



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46話 海賊島“ハチノス”壊滅!!!!

 

 

海賊島(かいぞくじま)“ハチノス”】

 

 

 1隻の黒塗りの海賊船が島の沖合いに浮かんでいる。掲げている海賊旗は“宵闇ノ海賊団”を示す黒地に白の十字架。その海賊団の船長を務めるルーミアはその船の甲板に設置されている玉座とでも呼べそうな豪奢な椅子に身を委ねて、海賊島“ハチノス”の全貌がよく見えるその場所から片手で持つための棒が付いた小型の双眼鏡で劇場でも観るかのように戦場の様子を「ふふふん♪」と鼻唄交じりで暢気に観察していた。

 

 

 ルーミアが見ている島の一角では味方の巨人たちが悪魔の実の能力で通常の巨人よりも体の大きさが10倍以上に巨大化させたサンファン・ウルフを相手取っている。他の場所では悪魔の実の能力と思われる跡が森や建物等に刻まれており、今も喧しい銃声と爆発音を響かせている。

 

 

「ここに()がいるのに連中がここへの奇襲とか襲撃がないのが不思議だなー」

 

 

 双眼鏡から目を離したかと思うと突然そんなことを宣うルーミア。その場に居合わせた船員の何人かが彼女の物騒な言葉に思わず身を竦める。

 

 

「えー、それは困る」

 

 

 全く困ってなさそうにそう言ったのは帽子を被った、おさげ髪の小柄な女の子。小柄といってもルーミアよりは背が高いが。彼女はB・W(バロック・ワークス)の元幹部であり、その組織在籍中でのコードネームは「ミス・ゴールデンウィーク」。本名は「マリアンヌ」。彼女には直接的な戦闘力は皆無に等しいゆえにここに待機していた。戦闘領域から離れているとはいえ、敵との抗争中の今ものほほんと船の甲板にシートを敷いてその上でせんべいを齧っては緑茶を啜っている。時折、ルーミアに他愛もない質問をぶつけてくる。

 

 

「ねー、リトルガーデンにいる巨人を手下にしたのに何で呼ばなかったの?」

 

「防衛は必要だからなー、それに他の理由もある」

 

 

 戦争中にも関わらず暢気に会話を交わす両者。その時に海賊島に大規模な爆発が起こる。

 

 

 島の半分を覆うほどの閃光が発せられたかと思えば、その直後に爆炎が爆ぜる。撒き散らされた爆炎と爆風が木々を根元から薙ぎ倒し、建物を破壊、人が敵味方関係なく木の葉のように吹き飛ばされる。巨人ですらもバランスを崩して倒れる。

 

 

「大変です提督!! “ハチノス”に大規模な爆発が!!!!」

 

「……見れば分かる。それより被害状況はどうなっている?」

 

 

 報告しにきた男が戦場の状況を逐一に書いた書類を読み上げていく。一つ読み上げていくたびにルーミアは左腕に紫電を纏わせてバチバチっと鳴らすがその顔は怒りに染まること決してなく、終始無表情であった。対して男の方は読み上げていくたびに顔から血の気が引いていく。

 

 

 そして一通り男が報告を済ますとルーミアは“ハチノス”から部隊を引き上げさせ、負傷者には治療を行わせた。その間、ルーミアはゴロゴロの実の能力を応用して島の隅々まで電波を飛ばし、人の気配を探りつつ、同時に人が交わす会話の声を拾っていく。そこでルーミアは自分たちの陣営の兵士に化けて負傷者に紛れ込もうとしていた女囚人の一人、“若月狩り”カタリーナ・デボンを捕捉した。

 

 

「──ネズミを捉えた。目印をつけるから捕らえろ」

 

 

 電伝虫でそう伝えるとルーミアは玉座に腰かけたまま左腕を天に向かって伸ばす。掲げる左腕から雷が腕を伝って天に昇っていき、頭上、真上の雲に突き刺さる。

 

 

神の裁き(エル・トール)

 

 

 次いでルーミアが左手の人差し指で島を指し示すと、島の真上にある雲から人間一人を呑み込むほどの太さの雷が島に向かって落下していく。その雷の落下地点、木々の間に潜んで辺りの様子を窺っていたデボン。自分を含めて周辺が明るくなったことに不審に思った彼女はふと空を見上げる。デボンが思考する間もなくルーミアの雷は周囲を巻き込むことなく彼女に落ちた。

 

 

 

 

「カラーズ・トラップ“友達の黄緑”」

 

 

 膝をついた状態で船の甲板、ルーミアが座る玉座の前で座らされ、なおかつ身動きできないように後ろ手で海楼石入りの枷を嵌められたデボン。ルーミアの落雷を食らって気絶した彼女はその後、ドアドアの実の能力で難を逃れたバージェスたちとMr.3の蝋で爆発を耐えきったB・W幹部たちに発見され即座に蝋で拘束、後にルーミアの下へと連行されて現在に至る。マリアンヌはその彼女の胸に黄緑色の絵の具で文字のようなマークを服の上から描いた。

 

 

 ミス・ゴールデンウィークこと“自由の旗手マリアンヌ”は悪魔の実の能力者ではないものの、彼女は特殊な絵の具を用いて相手に暗示をかけることができる。暗示は成功し、マークを描かれたデボンは奇妙な笑い声を上げながらマリアンヌと楽しく談笑する。マリアンヌは自分の暗示が成功したのを確かめた後、ルーミアに「何を聞き出す?」と尋ねる。ルーミアはマリアンヌの問いに対して……

 

 

「──『()を隠してる?』 ……だな」

 

 

 ルーミアのこの質問に何人もの人間が感嘆した声や呟きを漏らし、声を唸らせる。これ一つで相手が持っている情報等をかなり引き出せるからだろう。もっともルーミアにしてはどこぞの世界の某旅団の団長のセリフを引用しただけだが……

 

 

 そしてデボンから得られた情報では彼女が負傷者として紛れ込んだ後にB・Wに侵入、隙を見て現社長であるボン・クレーを殺害して入れ替わって会社を乗っ取り、徐々に自分たちの仲間を引き入れる予定だったらしい。島の爆発も敵の戦力を纏めて減らすためだけでなく、ボン・クレーに化けたデボンがB・Wを乗っ取った後に戦力補充の名目で自分たちの息のかかった人間たちを引き入れるつもりとのこと。そして最後はルーミアの首を取って成り代わる。……のが彼らの大まかな計画だったらしい。

 

 

 それを聞かされたB・Wの幹部メンバーはB・Wに思い入れ等があったのだろう、彼らは大層、激怒、あるいは静観していた。ルーミアは彼らの言い分を聞き入れながら静かに命令を下す。

 

 

「そいつの枷を外してやれ」

 

 

 無論、反論はあった。しかし、ここがデボンにとって逃れられないような敵陣地のど真ん中ということ、能力者にとって忌避すべき海のど真ん中、さらにマリアンヌがつけた暗示のマークがあるということもありデボンは拘束を解かれた。当然、ルーミアは理由を聞かれる。

 

 

「この私をここまで手こずらせた。一歩、間違えればB・Wを乗っ取られていた。失敗こそしたが、その手腕に対して褒美をやろうと思ってな?」

 

 

 ……と、ルーミアはデボンに「決闘」か「服従」の二つの選択を与えた。カタリーヌ・デボンはルーミアに後者を選んだ場合の処遇を聞いた後、前者を選んだ。

 

 

 甲板の上で仰向けに倒れているデボン。その胸元には豪奢な作りをした短剣が深く突き刺さっていた。

 

 

「お前の趣味嗜好は理解できないが、強者には敬意を払うことにしているし、死にゆく者に対しては死後、辱しめを受けないよう丁重に扱うことを部下に徹底させている。何か言い残すことがあるなら聞いてやろう。場合によっては願いも聞き入れてやるぞ? 叶えられる範囲内だがなー」 

 

 

 淡々と述べるルーミアにデボンは「ムルンフッフッフッ」と笑い声を上げた後に……

 

 

「若月を狩れない世界に興味はないわ」

 

 

 そう言って不敵な笑みを浮かべたまま息を引き取った。その後、ルーミアの命もあってデボンの亡骸は上質な服装を着衣させた上で丁重に葬られることとなる。

 

 

 幸いにも今回の戦闘で重軽傷を負った人間は多数いても死傷者は一人も出すことはなかったが、インペルダウンに収監されていた囚人たちを捕らえることはできなかった。海軍もまた世間体を気にしていたのだろう、新聞には『海賊連合本拠地“海賊島ハチノス”壊滅!!』とだけ大きく報道され、その海賊連合の主なメンバーがインペルダウンの脱獄囚で構成されている、といった詳しい内容等は伏せられた。そしてルーミアは元帥クザンから引き続き“海賊連合”の掃討を請け負うこととなる。

 

 

「顔はバレなくても、他の識別方法でバレる可能性があるかもしれないけど、あちしが連中をおびき寄せるためにデボンに化けようかしら? ちなみにあちしの変装を見破ったのは麦ちゃんの仲間の一人だったわよーう」

 

 

 そう提案するボン・クレーにルーミアはその案を却下する。デボンからB・W侵入に成功した時と失敗した時の連絡方法および手段はついぞ聞き出せなかったが、残りの海賊連合のメンバーにはデボンが入れ代わりの成否、その確認を取れる手段があるとルーミアたちは考えた。デボンが失敗したことを知らずに意気揚々とB・Wに出向き、そこで待ち構えていた敵に一網打尽に捕まえられたら困るのは彼らだから。

 

 

「んで? どうすんだ? その悪魔の実は? なんならおれが貰っておこうか? ぎゃははは!!」

 

 

 どこからか持ってきたテーブルの上には一つの悪魔の実が入った小さな宝箱が置かれていた。デボンが死んだことで手に入ったイヌイヌの実 モデル“九尾の狐”である。爆風で遠くに吹き飛ばされ、戻ってきた頃には全てが終わっていたバギーが物欲しそうに悪魔の実を凝視していた。

 

 

「いや、私が管理する。海賊連合に渡ってデボンみたいなのが来ても困るからなー」

 

 

 右手の手のひらに小さな丸い“闇”を生み出すとそのまま宝箱を吸い込んでしまう。

 

 

「思った以上に時間がかかってしまったが、このままカライ・バリ島に帰還する! わははははー」

 

 

 船の進行方向を指差すルーミア。彼女の号令で船内は騒がしくなり、船は加速する。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【カライ・バリ島】

 

 

 物資の補給を兼ねてカライ・バリ島に立ち寄るルーミアたち。その道中でルーミアはトラファルガー・ローが自分に面会するために島に訪れていることを知る。そのことを知った彼女はローに会うため彼がいるであろうテントへと足を踏み入れる。

 

 

「わはははー。待たせたなー、“トラファルガー・ロー”」

 

 

 バギーズデリバリーが置かれているカライ・バリ島。その地をルーミアに会うために訪れていたローだったが、その時ルーミアは偉大なる航路(グランドライン)、前半の海をあちこち回っており、さらにその後に海賊島“ハチノス”を襲撃していてなかなか会えずにいた。もっともローと彼を船長とした“ハートの海賊団”は島を散策するなどして時間を潰していた。ローに関してはドラム王国の医療技術に興味があったのか、医学書を読み漁っていた。

 

 

「道中、配下から話は聞いていたが、お前から直接聞きたい」

 

 

 テント内にあるソファーにローの隣で寛いでいた白熊のミンク族のベポ。ルーミアは当然のようにベポの膝の上にちょこんと座る。ベポは当たり前のように座る彼女に対して困惑、ローに助けを求めるように視線を投げ掛ける。

 

 

「隣だと話しづらいから場所を変えてくれないか?」

 

 

 言われたルーミアは少々不機嫌気味になり膨れっ面になるが、しぶしぶ立ち上がるとベポを立ち上がらせて手首を掴んでベポともどもローの向かい側に移動する。その間、ベポが「キャプテン! この子ものすごく力が強いよ!」と言うがルーミアは無視。ベポを座らせた後、再度ベポの膝の上に座ってベポの膝の上を陣取る。ついでに腕を組みつつ、なぜか勝ち誇った顔つきでローを見ていた。

 

 

「同盟の件についてだな……」

 

 

 ベポの困った顔を直視しないようにしながら話を始めようとするロー。その時、ルーミアの配下の人間たちがテント入口に現れる。よほど切羽詰まった状況なのだろう汗だくになっていた。

 

 

「白ひげの息子を騙る男と白ひげの愛人を騙るババアが……」

 

 

 最後まで言うことなく背後からの一撃で吹き飛ばされる男数名。ルーミアは右手から“闇”を発生させて彼らを受け止め、男たちの背後から出てきた歪な体躯の大男と派手な身なりの老婆の姿を確認する。白ひげ海賊団のメンバーは見覚えがあるのか何人かが露骨に舌打ちをする。ルーミアもまた知識にあり、宵闇ノ海賊団のメンバーもまた彼女から事前に知らされており警戒していた。

 

 

「白ひげの遺産を寄越しな小娘! 遺産は長男であるこの“ウィーブル”が貰う権利がある!」

 

 

 ルーミアを見つけるや否や、開口一番にそんなことを宣う。

 

 




Lv1
HP1
ひんし


( ´・ω・)にゃもし。

▪️ギリギリだぜ。

▪️宿屋で瀕死が全快する不思議な世界。

▪️朝の6時30分ごろに本文ができたが、あとがきを作るのに20分ぐらいかかった。

▪️寝るおー、お休みなさい。


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47話 私は38歳だ。

※お詫び

 39話でおかしな表現、矛盾点があったので後で直しますえ。
 ↓
 直しました。


 

 

【カライ・バリ島】

 

 

 その島にあるバギーズデリバリーのテント内にて、ルーミアとトラファルガー・ロー、両者による同盟に関する話し合いが行われる……というその時にその親子は現れた。白ひげの息子を名乗る“エドワード・ウィーブル”とその母親であり白ひげの愛人を騙る派手な身なりの老婆“バッキン”。二人の登場でルーミアはローとの会談を中断せざるを得なくなった。その上、バッキンは報せに駆けつけてきたルーミアの配下を吹き飛ばした後、ルーミアに対して「遺産を寄越せ」と言う始末。そんなバッキンに対してルーミアは心底、蔑んだ目、呆れた口調で言った。

 

 

「金は全部、親父の酒代で消えた。遺産? そんなもんは無い。諦めろ。あったとしても、戦争に参加せず、親父を助けず、全てが終わった今ごろになって金銭目的でのこのこと現れるような薄情な人間にくれてやる金など、びた一文、一銭も無い。帰れ。こっちはこれから客人と大事な話をしなきゃならんから、お前らと話してる暇など微塵も無い。失せろ」

 

 

 ……と、ソファーの上、白熊のミンク族であるベポの膝の上で「しっしっ」と右手で追い払うような仕草をバッキンに向けるルーミア。マルコを始めとした白ひげ海賊団のメンバーもルーミアに賛同しているのか、首を縦に振る。

 

 

 しかし、それで納得するようなバッキンではない。彼女はルーミアに……

 

 

「お前のような小娘がこんな組織を作れるはずがない。遺産を使ってこの組織を立ち上げたんだろ?」

 

 

 ……と解釈。しまいには──

 

 

「私がこの海賊団の()になってやる。それで遺産云々は帳消しにしてやる」

 

 

 なんてことを宣う。ルーミアの海賊団を乗っ取る気満々のバッキンのその発言にその場に居合わせたメンバーが青筋を立てて怒りを露にする。

 

 

「ホホホ。ぶち殺しますよ。うちの船長は“エドワード・ルーミア”ですよ?」

 

「ウィーハッハッハァ~~~!!!! めんどくせぇ!! お嬢!! 今この場でこいつらを殺っちまおうぜ!!!! その方が後腐れなくて済む!!」

 

 

 特に“宵闇ノ海賊団”を立ち上げた時からいる初期メンバーの怒りは計り知れず、いつでも飛び掛かるよう、二人の親子の前に立ちはだかる。さらに外野にいるバギーが二人や周囲の人間を煽ってくることもあってその場の空気が熱を帯びてくる。

 

 

「ここでこいつらが暴れたらここが更地になるけど、いいのか?」

 

 

 更地とまではいかなくともこの島で暴れられたら困るのはバギー。味方の実力を知っているだけにそれが比喩的な表現ではなく、本気で戦えばそうなると気づいた彼はすぐに前言撤回して二人を島から追い出すよう発言を変える。それがどういうわけか、バギーズデリバリーの一部のメンバーは自分たちの身を案じての発言と捉えて号泣、中には神にでも祈りを捧げるように拝む者も、そして彼らはバギーにますます傾倒していく。

 

 

「……お前たちがここに滞在することを許可する。ただし暴れるな。ここにいるトラファルガー・ローの後でいくらでも話し合いをしてやる。それともここにいる全員と後から来るかもしれない海軍と戦って、あるかどうかも疑わしい親父の《遺産》とやらを戦闘の余波で島ごと吹き飛ばしてみるか?」

 

 

 ルーミアからそう言われたバッキン。ここでやり合うのは得策ではないと判断したのか、彼女はルーミアが手配した配下に連れられてウィーブルとともに大人しくテントを出ていく。

 

 

「待たせたなトラファルガー・ロー。今すぐ同盟の件について話し合いたいところだが、ここだと何処かの誰かに盗み聞きされる可能性があるからなー……」

 

 

 「場所を変えようか?」とルーミアが言った途端、彼女の右腕から生み出された“闇”が彼女とローを床に敷き詰められた闇の中に引き摺り込む。

 

 

 “闇”の中にある木造建ての室内、そこにはルーミアとローがテーブルを挟んで向かい合う形でソファーに座っている。ルーミアは相変わらずベポの膝の上に座っているが、彼らの周りには宵闇ノ海賊団と白ひげ海賊団が取り囲んでいた。

 

 

「“火拳のエース”を捕らえて海軍に差し出した、ある意味戦争の元凶“ドンキホーテ・ドフラミンゴ”を失脚させることができる。場合によっては“ゲッコー・モリア”もだ」

 

 

 ローの言葉に白ひげ海賊団はざわめき、宵闇ノ海賊団は不敵に笑う。本来なら先のマリンフォードでの戦争の後、ゲッコー・モリアはドフラミンゴの粛清から逃れるために姿を晦ませるが、この世界では未だに七武海に在籍しており、宵闇ノ海賊団のメンバーはエース捕縛の功績で粛清を免れたのだろうと考えていた。次に失敗すれば後がないことも。

 

 

 そして、ドフラミンゴはドレスローザ王国を乗っ取った主犯であり、それが世間に明るみになれば七武海の称号は剥奪され、そうなれば彼らを犯罪者として捕らえることが可能になり、ルーミア側の人間としては願ったり叶ったりの状況になる。ローはドフラミンゴを失脚させる方法があると言い、ルーミアに協力を求めた。

 

 

 ドフラミンゴを仇敵としているのは何もルーミアや白ひげ海賊団だけではない。エースと義兄弟の契りを交わした“モンキー・D・ルフィ”もその一人である。ルーミアが持っている知識ではローはルフィと同盟を組んでいた。そのことを不思議に思ったルーミアはローに尋ねる。

 

 

「“麦わら屋”は革命軍のボスの息子だ。海軍や世界政府に目をつけられる可能性がある。リスクが大きい。戦力もあんたと比べたら頼りない。その点、あんたは“七武海”の一人だ。戦力は申し分無い上に危険も少なく得られるものも大きいのが利点だ」

 

 

 ローが語る計画では麦わらの一味をパンクハザードに誘導してその島で暴れさせ、そこにあるSAD製造室を破壊した後にドレスローザに招き入れ、彼らがドレスローザを引っ掛き回してる間にSMILE工場を壊滅、平行して人間をオモチャに変える能力者であるシュガーを気絶させて能力を解除、元の姿に戻った被害者たちの証言でドフラミンゴが行なっていた犯行が暴露、そうすればドフラミンゴの国乗っ取りが明るみになり、七武海の称号を剥奪される。それまでは麦わらの一味が使い物になるまで静観しているという。麦わらの一味がドレスローザに来ない可能性もあると指摘があったが、その可能性は限りなく低い、とローは語る。ルーミアは暫し考えてからローとの同盟を承諾するが、一つの条件を加えた。“ホビホビの実”もしくはその能力者であるシュガーの確保である。「何故だ?」と理由を問うローにルーミアは答えた。

 

 

「五老星やそいつらよりも上にいるヤツを“オモチャ”に変えようと思ってな? やつらが“オペオペの実”で“不老不死”になっていた場合の保険として“ホビホビの実”が欲しい。安心しろ、この私は“不老不死”なんてものには興味はない。場合によっては“カイドウ”やSMILEを取引していた連中の討伐にも力を貸してやる。ドフラミンゴを倒したら奴らが大人しく黙っているとは思えないからなー。わはははー」

 

 

 “不老不死”や人造悪魔の実である“SMILE”について饒舌に喋るルーミアにそこはかとない不気味さを感じたのか、ローは終始押し黙っていたが、やがて思い当たる節があるのか、ポツリと漏らす。

 

 

「──そういえば“マーシャル・D・ティーチ”は白ひげ海賊団の一員だったな……」

 

 

 「知っていても不思議ではないか……」そう一人で納得するロー。

 

 

(──奴隷にされそうだった一組の恋人を助けるために護衛をけちらし天竜人をぶちのめした“マーシャル・D・ティーチ”。海軍はそいつの自宅から“人造悪魔の実”に関する資料を入手し、どこからか漏れたのかドフラミンゴはそれを手に入れた。本来なら義手や義足といった“物”に食わせるためのそれを海軍とドフラミンゴは“兵器”として転用。白ひげ海賊団の連中にとってはおもしろくないだろうな……)

 

 

 ローはそんなことを思いながら周囲にいる白ひげ海賊団の面子をチラッと盗み見する。数名が小刻みに肩や体を震わせ、うち何人かが背中をこちらに向けて顔を手で隠すように覆っている。笑いを堪える姿に見えなくもないがさすがに故人を笑うようなそんな不謹慎なことを白ひげ海賊団の連中がするはずがないと考えたローは彼らが涙を堪えるための行動と判断した。そのうち堪えきれなくなったのか部屋を出ていく者が続出する始末。ローはその光景を見てティーチという人物は彼らから慕われて愛されていたのだろうと考えた。

 

 

「すまない。触れてはいけない話題だったようだな……」

 

 

 体を震わせながら、ひたすら下を向いて俯いていたルーミアにローはばつが悪そうに謝罪した。ローからは見えないがルーミアは顔を真っ赤にしていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

「……先ほどのは見なかったことにしてくれ」 

 

 

 ローが島を出ていく時、ルーミアは彼に背中を向けたままそう話しかけ、ローもまた「ああ、わかってる」と告げて船に乗り込み、そのまま出航していった。

 

 

「“ティーチ”の名前が出てくるとは思わなかったよい」

 

 

 去っていく船を眺めながらマルコは腕を組みつつそんなことを宣い、白ひげ海賊団のメンバーはさもありなんとコクコクと何度も頷いてみせる。

 

 

「ようやっと終わったかい、身内よりも赤の他人を優先するなんて躾がなってないわねェ~」

  

 

 ぶつくさ言いながらバッキンがルーミアに近寄ってくる。その後ろにはウィーブルの姿もあり、その周りには二人をどうにか引き留めようとしたのだろうルーミアの配下たちがたむろしていた。そしてバッキンがルーミアの目の前に立つや否、機関銃のように捲し立ててくる。いろいろと余計で無駄な話、関係のない話がバッキンの口から出てきたが、要約するとこうなる。

 

 

 

 

「ウィーブルは35歳でお前よりも年上だから兄であるウィーブル、ひいてはあたしの言うことを聞け」

 

 

 

 

 それに対するルーミアの返答はこうだった。

 

 

 

 

「私は 38歳 だ」

 

 

 

 

 翌日の新聞にルーミアの実年齢が掲載されることとなった。

 

 

 

 




       (・ω・` )(・ω・` )

( ´・ω・)にゃもし。
あ! 野生のミニスカートと野生の大人のお姉さんだ!
行け! にゃもし。! 君に決めた!



▪️朝の7時頃に完成 → あとがき中。

▪️毎度、誤字脱字報告ありがとうございます。

▪️連休中は仕事中。

▪️そろそろシャボンディ諸島、書きたい。
 もういっそ、キンクリ……

▪️あとは活動報告に書くべ。

▪️おやすみなさい。(。-ω-)zzz


 -追記-

▪️39話にてドフラミンゴさんがモリアさん「戦死扱い」してたのでそこら辺を後で変えるよー。
 ↓
▪️変えました。


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48話 シャボンディ諸島へ

 

 

「アンタみたいな 38歳 がいてたまるかっ!!!!」

 

 

 ルーミアが自ら実年齢を嘘偽りなく公表したが、バッキンは頭から嘘と決めつけて全く信じず、それどころか「構わん! やっちまいな!」とウィーブルをけしかける。

 

 

「え? でも母ーたん。このしと、おれの姉ーたん……」

 

「──んなわけあるかいっ!! こいつは白ひげの娘を騙るニセモノだよ! やっちまっていいよ!!」

 

 

 最初は自分の身内かもしれない人間だけに気乗りしなかったウィーブルだったが、バッキンからニセモノだと教えられた途端に顔を真っ赤にして激昂「よくも騙したなー!!」と薙刀をブンブン振り回して威嚇する。

 

 

「さらばだ愚弟よ。地獄で姉を敬え」

 

 

 対してルーミアはバッキンの性格からして二人の説得と和解は無理と瞬時に判断。物騒なことを口走りつつ即座に左右の腕にそれぞれ別々の悪魔の実の能力──“雷”と“闇”を纏わせて迎撃する態勢を整える。白ひげ海賊団と宵闇ノ海賊団の船員もまたルーミアと同様にいつでもルーミアに加勢できるように臨戦態勢を取り、構えを見せる。

 

 

「待ぁぁぁてェ~~~い! てめェら、こんなところで暴れるんじゃねェ───っ!!」

 

 

 そんな両者の間に挟まれる位置に割って入る影が一つ、文字通り空から落下する勢いで舞い降りる。バギーである。彼はルーミアの実年齢はともかく「白ひげの娘」というのは信じていいとウィーブルに話しかける。

 

 

「あの“白ひげ”がわざわざ自分の娘と宣伝したんだぞ!? お前は“白ひげ”の言葉を疑う気か!?」

 

 

 言われて思い出したのか、しどろもどろになるウィーブル。なおも諭すようにバギーはウィーブルに語っていく。もっともバギーとしては……

 

 

(──ふっざけんな!! よりによって港で暴れるか!? 普通!? ここを万が一、潰されでもされたら、しばらくの間、身動きが取れなくなるだろ~~~がっ!!)

 

 

 島の玄関口でもある港を破壊され、一時的にでも封鎖されようものなら物流等が滞る可能性がある。バギーは自分の懐が少なくなることを恐れて割って入ったのである。

 

 

「よく聞けウィーブル、“白ひげ”という男はだな……」

 

 

 赤く染まる海に沈んでいく夕陽を背景にバギーはウィーブルに静かに涙を流しながら語っていく。

 

 

 

 

「おろろろ~~~ん!! おでが、おでが間違っていたどォォォ───っっっ!!!!」

 

 

 はたして一体どんな魔法をバギーは使ったのか、気がつけばウィーブルは両膝と両の手のひらを地面に着けた格好で大粒の涙を流しながらバギーに対して頭を下げていた。バッキンもまたバギーからここにいる連中全員を相手に暴れるよりは一旦ルーミアの海賊団に入ってから遺産を探した方が効率がいいだろうと助言を受けて、しぶしぶと大人しく引き下がる。そのバギーの手腕に白ひげ海賊団は「実力はないのに」と思いつつも感心し、バギーズデリバリーの社員はウィーブルとバギーにつられてもらい泣きをする。

 

 

「それじゃあ、ウィーブルはバギーが責任持って面倒を見るんだな?」

 

 

 二人のやり取りを見ていたルーミアが唐突にそんなことを言い、バギーは思わず「え?」と呆けた顔を見せる。バギーズデリバリーの社員は暴れようとしたウィーブルすらも広い心で受け止める度量をバギーは持っていると彼を持ち上げ、煽てられて調子に乗ったバギーは快くウィーブルを受け入れてしまう。

そして「今夜は宴だ!」と、バギーを筆頭にどんちゃん騒ぎを始める。そんなバギーたちを尻目にルーミアはマルコにバッキンについて問うが得られた情報は彼女の持っている知識と大差がなかった。

 

 

「……放っておけばと傘下の海賊団や親父のシマを荒らしていた可能性があるよい。ある意味、これでよかったのかもしれないよい」

 

 

 さまざまな人間を“息子”として迎え入れた白ひげを見ていたルーミア。ふと彼女はその過去を振り返り、つい「親父は偉大だったんだなー」と口にする。それを聞いたマルコは茶化すように「今ごろ気づいたかよい?」と笑いながら言い、他のメンバーを宴に誘い、その列に加わる。ルーミアもまた宵闇ノ海賊団の船員たちに促されてしぶしぶ参加する。

 

 

 

 

 そして月日は流れていく。

 

 

 

   

───────────────
 

 

 

 

 

【前半の海にある、とある非加盟国の島】

 

 

 世界には天竜人に納める献上金である「天上金」を納められず非加盟国扱いになっている国が少なからず存在している。そのような国は政府からの庇護や支援を受けられず、ましてや国軍等の武力がなければ、海賊や犯罪者たちの標的になりやすく、そのような輩から襲撃され、島を支配されることも珍しくはない。

 

 

「船長!! 大変だ!! よその海賊団からの襲撃です!!」

 

 

 そして海賊団が海賊団を襲うことも珍しくはない。もっとも支配されている人間側からしてみれば、支配層の人間が替わるだけで自分たちの境遇がさして変わることはないので島の人間たちにとってはどうでもいいと思っているのがざらである。

 

 

「黒地に十字架の旗──“宵闇ノ海賊団”がやって来ました!! 今、交戦中ですぜ!!」

 

 

 だがその日、襲撃をかけてきたのは“王下七武海”の称号を得ている人間の一団。島の住人たちは僅かにだが希望を持てた。

 

 

 昼間から酒場を陣取って占領していた海賊団、その船長にその報告が届けられた。「船を指揮しているのは誰だ?」と尋ねる船長に部下は答えた。

 

 

「──天竜人の“ミョスガルド聖”です……」

 

 

 緊張からか、冷や汗を垂らしながら答える部下に船長は応えた。

 

 

「“ミョスガルド”を生きたまま捕らえろ。そいつを人質にすれば七武海といえど手を出せないはずだ。そいつを盾にして島を脱出するぞ」

 

 

 そう部下に命令を下した後、船長もまた捕縛のために動き出す。

 

 

「物好きな天竜人が正義の海賊ごっこをしている」

 

 

 いつからか、そのような話がまことしやかに噂されるようになっていた。船長がその噂を初めて聞いた時、権力にものを言わせて七武海を従わせているのだろう、と考えていた。現にこの近海で宵闇ノ海賊団を従わせているミョスガルドが暴れていることを知っていた。

 

 

「天竜人を誘拐すれば金がたんまり入る。周りにいる人間が強くとも本人自身は強くはないだろう。煙幕か何かで視界を塞いだ後、かっさらえばいい」

 

 

 船長が頭の中で計画を練りながら広場に赴くとそこには彼が思い描いていた光景とは全く違う光景が広がっていた。

 

 

 筋骨隆々、なおかつ均整の取れた体つきをした上半身裸の男がトゲ付きのこん棒で自分の部下たちを一掃する光景がそこにあった。あまりの光景に思わず絶句する船長と側近たち。やがて最後の一人が頭上からの一撃で叩きのめされて地に伏すとその男は彼らに顔を向けて言い放つ。

 

 

「私は天竜人の“ミョスガルド”というものだ。島の人間たちが迷惑しているので、すまないが出ていってくれないか?」

 

 

 そう船長に言い放つミョスガルド。しかし島を占領していた船長はミョスガルドに対して大声で「ふざけるな」と怒鳴る。

 

 

「お前みたいな“天竜人”がいてたまるか!!」

 

 

 計画のことなどすっかり忘れて敵意剥き出しで幅の広い片刃の刀を右手に手下ともどもミョスガルドに襲いかかる。相手が船長と側近ということもあって一緒にいた船員が助太刀を申し出るがミョスガルドはやんわりと断り、一人で迎え撃ち、迫ってくる敵を一人ずつ、こん棒の一撃で倒していき、ものの数分もしないうちにその海賊団を壊滅させた。

 

 

「ここの島に巣くっていた海賊団はここにおわす天竜人である“ミョスガルド聖”が退治なさってくれた!」

 

 

 山積みに積み上げられた海賊たちの頂に立つミョスガルドを手のひらで示しながら言う船員に島民たちは感謝の言葉を述べながらもどこかぎこちない。彼らの知る天竜人が自分たちのために戦うとは露ほども思っておらず、考えてもいなかったからだ。おまけに一人で海賊団を壊滅させるほどの戦闘力を持っている。いつその力が自分たちに向けられるのかと島民たちはミョスガルドを恐れていた。

 

 

 やがて島の港に宵闇ノ海賊団を示す黒地に十字架の海賊らしからぬ“海賊旗”を掲げた後、ミョスガルドたちは出港した。彼らはここ数ヶ月、非加盟国に出向いては一定の条件の下に“海賊旗”を貸していた。それは、万が一、宵闇ノ海賊団が壊滅しても自分たちの国を守れるだけの「武力」を手に入れることと、非加盟国同士による結びつき──同盟を彼らに課していた。もっとも宵闇ノ海賊団の力をもってしても前半の海が限界であり、ましてや四皇などの強者がシマにしている島は問題がありすぎて半ば放置にせざるを得なかった。

 

 

「ミョスガルド聖、そろそろシャボンディ諸島です」

 

 

 彼らの向かう先、その前方には巨大なマングローブが密集して出来上がった島が見える。

 

 

「予想以上に天竜人のイメージというのは悪いものなのだな」

 

 

 甲板の上にてそんなことを呟くミョスガルドに船員は苦笑いで「それでも以前よりはマシになってますよ」と応える。

 

 

「……だとよいのだが……」

 

 

 疲れた口調でミョスガルドはそう言う。船はやがてシャボンディ諸島に到着する。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 巨大な黄金船「グランテゾーロ」

 

 

 黄金帝と呼ばれている“ギルド・テゾーロ”が所有している船である。本来ならば後半の海を航海しているその船はルーミアの能力で前半の海に移動しており、今現在その船は今や“ソウルキング”として名高くなったブルックによる世界ツアーを行うための移動手段とステージのために使われていた。

 

 

 無論、ブルックによる音楽だけでなく、ブルックのマネージャーでもあるサンクリンが抱えている他の音楽家による演奏、所属している俳優や女優を使っての劇場、舞台等の催しが連日連夜、行われていて船を賑やかせている。

 

 

 そしてその巨大な船は今ジャヤ島の港に停泊していた。そのジャヤ島の上空には小さな空島「ウェザリア」と人の手によって作られた計二つの空島がぷかぷかと浮かんでいた。

 

 

 その空島を下から見上げる者たちがいる。ギルド・テゾーロと側近たち、サンクリンやブルック、ナミとウェザリアの人間たち。彼らはその空島を満足そうに眺めていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【クライガナ島──シッケアール王国跡地】

 

 

 今は亡き王国の跡地があるクライガナ島。その島から宵闇ノ海賊団の旗印を掲げた船が出港していく。その船には麦わらの一味であるゾロはもとよりゲッコー・モリアの配下の一人である少女ペローナ。さらにB・W(バロック・ワークス)の幹部であるミス・バレンタインことミキータが乗り合わせていた。甲板の上でゾロがペローナとミキータの二人から苦言を言い渡されて終始、渋い表情をしていた。

 

 

 ちなみにミキータがゾロとペローナと一緒にいるのはルーミアがゾロに手紙を届けるのに依頼したからである。元々「運び屋ミキータ」という二つ名が彼女につけられていたのでそれもあってルーミアはミキータに依頼した。ミキータもまた過去に自分を痛めつけた相手がミホークにやられている姿を見られるということもあって二つ返事で彼女は引き受け、それ以降たびたびゾロの様子を見に行くようになったのである。

 

 

「……ああ、うぜぇ」

 

 

 ゾロは二人に聞こえないようにぼそっとぼやいた。

 

 

 そしてほぼ同時期に他の麦わらの一味もまたシャボンディ諸島を目指す。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 シャボンディ諸島は今や宵闇ノ海賊団のシマの一つといっても過言ではないほどにルーミアの支配下に置かれていた。その島にあるホテルの最上階の部屋に居座るルーミア。その彼女の下に報せが人の手によって届けられる。内容は麦わらの一味に関する報告であり、彼らがこのシャボンディ諸島に向かっている、とのことだった。

 

 

 報告の束を見終えてから、しばらく思案に耽るルーミア。その彼女の足下を九本の尻尾を持った金色の体毛の狐が体を擦り付けて甘えてくる。やがて、結論が出たのかルーミアは配下の男に命ずる。

 

 

「今、このシャボンディ諸島にいるニセモノを潰したいやつに潰させろ──とMr.3に伝えろ。私も久々に連中と話がしたいからなー、わはははははー」

 

 

 狐を抱き上げて毛皮と尻尾の感触を存分に堪能しながらルーミアは笑い声を上げる。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。
***「おお、にゃもし。よ。死んでしまうとは情けない。
転生先を選ばせてやろう。

1)雪男
2)イエティ
3)ビッグフット

にゃもし。「違いがわからないニャー。


▪️日曜日になってしまった。

▪️なんとか週一投稿続いている。やったネ。

▪️すまねぇ。寝るおー。


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3D2Y 麦わらの一味 再集結 →
49話 集結と再会


 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 シャボンディ諸島のさまざまな場所で一枚のチラシが否応なしにも目に入る。島に滞在している“麦わらの一味”を名乗る一団が偉大なる航路(グランドライン)、後半の海、“新世界”と呼ばれている海を航海するために配っている船員募集のチラシである。彼らは今現在、真昼間から酒場の一つを貸切状態にして好き放題やっていた。そんな彼らの下に一人の男が訪ねる。

 

  

「君たちが“麦わらの一味”を騙る連中カネ?」

 

 

 開け放たれた扉に立ち尽くし、メガネに手を添えながらそう尋ねる男は逆光で顔が陰になっていて見えにくいが、頭部にある「3」の形をした髷が彼をどこの誰かを特定できる。Mr.3の通称で知られている“闇金ギャルディーノ”である。

 

 

 酒場の外にて、“麦わらの一味”を騙る一団がいる酒場にMr.3が入っていくのを見物していた野次馬たちがいる。彼らは酒場を遠巻きに眺めながら、さまざまなウワサを立てている。さらにその建物を含む周辺の様子を人目のつかない目立たない場所、建物と建物の間の隙間や建物の陰など、要所要所からいつでも酒場内に駆け込み、酒場内を武力制圧できるように配置されている海兵たちが監視していた。時折、電伝虫で上層部らしき人物との小声での会話のやり取りを目にする。彼らの表情は真剣そのもので、相手が大物ということもあって非常に緊張しており、彼らの中を緊迫した空気が漂っている。

 

 

 その折、建物の内側から盛大に扉をぶち破って麦わらを被った一人の大男が吹っ飛び、大の字になって地面に倒れた。件の“麦わらの一味”を騙る連中を束ねる船長である。今は強烈な一撃でも喰らったのか、白目を剥いて気絶しており、ぴくりとも動かないでいる。

 

 

 その直後、堰を切ったように壊れた扉から人が次々と飛び出す。どの人物も“麦わらの一味”の特徴をしているが、知る人が知ればすぐにニセモノと判別してしまう大変お粗末な変装をしている。

 

 

 その彼らの足下を建物の中から勢いよく流れ出る蝋が捕らえて瞬く間に硬化、彼らの動きを止める。

 

 

「すまないがそこにいる“麦わらの一味”を騙るニセモノたちを連行してくれないガネ? 視界に入れるのも勿論、そいつらの声を聞くだけでも至極、不愉快になるのでね?」

 

 

 酒場の出入口を塞ぐように立つMr.3が、心底、不快そうに顔を歪ませながら海兵たちに一方的にそうお願いすると、困惑する海兵たちを余所にその場を立ち去った。

 

 

 後に残った海兵たちは一応、事の顛末を電伝虫で上層部に伝えた後、ニセモノたちを連行。ニセモノに関する情報はその日のうちに島中に通達され、船員募集のチラシで集まった海賊たちはニセモノごときに自分たちが顎で使われるところだったと憤慨、彼らに報復すべく島中を探しているところを数体のパシフィスタを連れた戦桃丸の手によって鎮圧され、ほぼ全員が連行された。

 

 

 そして大量の海賊を連れて大勢の海軍が島から出ていった後を見計らって、ルーミアたちの手引きで本物の“麦わらの一味”がシャボンディ諸島にやって来た。

 

 

 

 

 大通りを大勢のお供を引き連れた天竜人が横行している。頭部に三本の角を持った四足歩行の恐竜、二体で引く馬車には天竜人であるチャルロス聖が乗っており、非常に機嫌が良いのか、鼻唄をしていた。彼が行く道の両端には天竜人一行の通行の邪魔にならないように道を空けた観衆たちで溢れかえっている。皆一様に引きつった笑顔でチャルロスに手を振って彼を見送っていた。

 

 

 その光景が気になっているのか、人だかりの外側を通っていた本物の“麦わらの一味”であるゾロが足を止め、つられて先を歩いてゾロを先導していたミキータとペローナも動きを止める。ペローナが足を止めているゾロを急かせるものの気の抜けた返事をするばかりで一向に動く素振りを見せない。

 

 

「天竜人に関わっても、ろくなことにならないわよ? キャハハハ!」

 

「そうだぞ。それよりも私はとっととB・W(バロック・ワークス)デパートってとこにあるファンシーグッズ売り場に行きたいんだ! 早くしろ!」

 

 

 二人に顔を横に向けたまま「ああ」と返事するゾロ。彼の視線の先には怪我人を担架に乗せた一行が天竜人の前を横切ろうとしていた。

 

 

「ふん、ここで怪我人を死なせたら、わちきと父上の顔に泥がつくぞえ。おい、そこの人間ども、そいつらを手伝ってやれぞえ」

 

 

 言われて数名の人間が慌てて救護の手伝いをし、そのまま病院へと向かっていく。やがて天竜人の一行は何事もなかったように行進を再開する。

 

 

 ゾロはそれを見届けた後、止めていた歩を進ませる。

 

 

 その出来事とほぼ同時刻、ルーミアの命によりB・Wの手によって作られた港にて……

 

 

 「B・W」の看板が掲げられている港に停泊している船から異様なオカマの一団が降り立つ。言い様のないそのあまりの風体に誰一人近寄ろうとせず、道行く通行人、あるいは港で働いている人間たちの誰もが目すらも合わせようとはしない。その一団の先頭に立つサンジは感慨深げに言った。

 

 

「ボンちゃんが時々“ナミさん”に変身してくれなかったら、途中で心が折れるところだった……」

 

 

 目を瞑り、顔を天に向けながらそんなことを述べるサンジ。その様はまるで天に祈りを捧げるかのようである。一通り天に仰いだ後、サンジはボン・クレーの案内の下、ルーミアがいる場所へと向かう。背後から聞こえてくる野太い声援を背に受けながら……

 

 

 

 

 “ソウルキング”の異名を持つブルック。彼のために行われているといっても過言ではない世界ツアー。その最終日が行われるのがシャボンディ諸島であり、その島の広場には即席のライブ会場が設けられていた。会場は満員であり、会場の外にすらも人だかりができており、警備として配置されていたB・Wの社員だけでは足りず海軍の手を借りるほど盛況であった。

 

  

『──みなさんに言わなければならないことがあります……』

 

 

 舞台上に立つブルックが観客に向かって告げていく。自分がとある海賊団の一員であることを、このライブで引退することを…… そして最後の音楽を披露し会場を沸かせた。

 

 

 一方で他の麦わらの一味の船員もまた動き出す。

 

 

 トリノ王国に滞在しているB・W社員の連絡により事前に巨大な怪鳥に乗ったチョッパーが来ることを察知した港の職員によりチョッパーを港へ誘導、B・Wの社員に連れられていく。

 

 

 またB・Wが経営しているデパートではB・W社員を顎でこき使っているナミが大量の買い物袋を社員に持たせて出ていく。(ちなみに費用はなぜかルーミア持ちになっている)

 

 

 麦わらの一味が所有している船──サウザンド・サニー号の点検を終えたフランキーが大工道具片手に移動を始め、デパート内の本屋で時間を潰していたロビンは他の船員が島に来たことを、報せに来たB・Wの社員に知らされ、同様にデパート内にある(ダイアル)売り場を見て回っていたウソップにもその報がくる。

 

 

 そして最後の一人、船長であるルフィがハンコックとともにシャボンディ諸島に入る。

 

 

 

 

 シャボンディ諸島に建てられたB・Wが経営しているホテルの一室。ホテル内でも最も豪華に作られたその部屋にルーミアがいた。その彼女にMr.3から直接“麦わらの一味”全員が集結したことを伝えられ、すぐさま麦わらの一味とその関係者をここへ連れてくるようルーミアからMr.3を経由してシャボンディ諸島全域に通達された。まもなくしてルーミアの下に麦わらの一味がやって来た。

 

 

「ようこそ、ワルガキども。わははははー」

 

 

 よく好んで着用している黒のドレスを身に纏い、愛用している、しかし身の丈に合っていない玉座に腰をおろして麦わらの一味をそう言って出迎えるルーミア。その彼女の膝の上には尻尾がたくさん生えているキツネが丸くなって陣取っており、ルーミアに背中や頭を撫でられるたびに気持ち良さそうに目を細める。

 

 

「女を2年も待たせたんだ。期待に添えるほどの実力をつけたと考えていーんだなー?」

 

 

 不敵な笑みを浮かべると居並ぶ麦わらの一味に向けてそんなことを宣う。

 

  




▶️たたかう
  ぼうぎょ
  どうぐ
  にげる


( ´・ω・)にゃもし。
**「ぷるぷる。僕は悪い にゃもし。 じゃないよ。


▪️土曜日にほぼ出来上がったが何か物足りなさを感じたので仕事の合間に修正とかしたが、ほぼ変わらなかった。いとおかし。予定ではいろんなキャラが出るはずだったんだが…

▪️誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。

▪️なんやかんやで次で50話だわ。

▪️朝の4時だ。おやすみー。

▪️感想の返信しないとだわ。


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50話 10人+1人?

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 ホテルの一室を借りて、ルーミアは麦わらの一味たちと2年ぶりの再会を果たした。その後ルーミアが彼らと会話を少々した後、ルーミアと彼女の関係者を部屋に残してルフィたちが部屋から出ていった。彼らがいなくなったのを見計らってからルーミアは部屋に残ったうちの一人、テゾーロに声をかける。

 

 

「今さらだが…… 七武海、就任おめでとう、というべきかなー? わはははー!」

 

 

 七武海の一人であったクロコダイルがルフィに敗北し、彼が企てていた王国乗っ取りが明るみになったことでクロコダイルは七武海の称号を剥奪され、インペルダウンに収監。その結果、席が一つ空いた“王下七武海”。世界政府はその穴を埋めるべく海賊の選別を行っていたが、麦わらの一味が起こした数々の事件、続くマリンフォードでの頂上戦争等で欠けた七武海のメンバーの補充は後回しにされていた。

 

 

 そして戦争後、落ち着いた頃を見計らってテゾーロが名乗りを上げ、世界政府は問題無しと判断、テゾーロは無事に七武海の称号を得た。

 

 

「──元々は七武海になってからティーチを迎え入れ、七武海の庇護の下に天竜人から彼を守るつもりだったからね……」

 

 

 ルーミアから理由を問われるとそう自嘲気味に答えたテゾーロ。ルーミアは能面のように無表情を無理矢理作り、心を無にして平静を保たせてその場を乗り切ろうとする。幸いテゾーロに正体を気づかれていない。なおもテゾーロの話は続く。

 

 

「人造悪魔の実は本を正せば彼の、ティーチの論文に辿り着く。何も知らない人間からその論文が兵器作成のため……と思われるのは心外だからね。その前に手を打っておこうと思ったまでだよ」

 

 

 そう言って差し出したのは一冊の本。題名には「ティーチの奇妙な冒険」と書かれている。パラパラとルーミアが本を捲ると、コマ割りのある絵を主体とし、そこにセリフや擬音語がつけられている……いわゆる「マンガ」と言われるものに仕上がっていた。もっとも本に描かれている内容の中にはルーミアが知らないエピソードがあり、当の本人を困惑させていた。ついでに作者が「ステラ」と記されており、さらにルーミアを混乱させる。さらに付け加えて言うと少なくともルーミアの知る限り吸血鬼やら柱の男たちやらと戦った記憶はない。記憶はないが、まだティーチだったとき、もしも本を出すなら……とアイデアを出した覚えがルーミアにはあった。ちなみにまだ連載中らしくまだ続いているとのこと。

 

 

「きゃははは! B・W(バロック・ワークス)でも人気あるのよね、この本。最近じゃあ、劇場にもなってるみたいよ?」

 

 

 陽気に笑いながら喋るミキータ。彼女は肩から斜めにぶら下げているバッグから一枚の紙を取り出し……

 

 

「依頼の“ペローナ”のビブルカードよ」

 

 

 ……と言ってルーミアに手渡し、ペローナがいつでもモリアを探しに行けるのにわざわざ島に滞在していたのは、修行のたびにケガを負うゾロの治療や看病やらで島での滞在期間がずるずると延びていき、結果、今日(こんにち)までに至る羽目になったとペローナの言い分をミキータは語る。その間、ミキータはペローナの爪を採取、ビブルカードに加工させた。

 

 

「あと、あの娘、準備が終わり次第、本格的に探すみたいよ? モリアのところに行くのはもう少し先になるんじゃないかしら? きゃははは!」

 

 

 そう報告するミキータ。ルーミアの手元にあるビブルカードはある一定の方角、ペローナがいると思われる場所をぐいぐいと指し示していた。方角が気になる様子のルーミアにミキータはペローナがいると思われる場所を教える。麦わらの一味、というよりはゾロのあとをこっそりと尾行しているらしい。

 

 

「紙切れ一枚だと味気ないなー、少し飾り付けを頼む」

 

 

 そうミキータに頼みつつビブルカードを渡すルーミア。ビブルカードを受け取ったミキータはそのままバッグにしまいこむ。ルーミアがそれを見届けると七武海の一人であるハンコックに顔を向ける。彼女はルフィと一緒にいれば彼に迷惑がかかると思い、ここに残った一人である。

 

 

「そこの海賊女帝には戦争後のルフィの看病と覇気の修得で世話になったみたいだなー? わはははー」

 

 

 待たされて不機嫌顔のハンコック。しかしルフィのことになると途端に頬を赤らめて機嫌が良くなる。そして誰も頼んでもいないのにルフィについて語っていき、そこに悪乗りしたミキータが加わり、話が弾む。

 

 

「ボンちゃんの方は最近どう?」

 

 

 ルーミアが他の人と会話してる間、暇を持て余せたのか、その場でぐるぐると回っていたボン・クレー。

 

 

「さすがのインペルダウンの凶悪犯たちも革命軍とオカマを敵に回すのが怖かったみたいで誰も寄って来なくてヒマだったわよ~~~う!」

 

 

 海賊島“ハチノス”襲撃後、敵対している海賊が企てていたボン・クレーとの入れ替わりを阻止したものの、その計画が再び敢行される可能性があることを視野に入れて、ルーミアはサンジの生存確認と保護を名目にボン・クレーの安全を確保するために彼をカマバッカ王国に送り込んだ。ついでに本人の努力でカマバッカ王国に伝わる拳法と覇気の修得、さらに島にいる達人たちを倒してレシピ集を全てかき集め、料理の腕を上げた。

 

 

 その後、名ばかりの会談になりつつあるホテルの一室とは別に件のルフィたちはというと……

 

 

 ルーミアが滞在しているホテルから“麦わらの一味”たちが続々と出てくる。彼らが次に向かう先は──今は名義の上では天竜人であるミョスガルド聖の物となっているが──彼らの船が停泊している港である。その道中で今回のルーミアとの会談や2年間の修行について麦わらの一行は歩きながら話し合った。そこでいの一番に口を開いたのはサンジ。彼はゾロとルフィを「ビシビシッ!」と順に指差しながら詰問する。ちなみに彼がホテルの部屋にいる間はハンコックを見た影響でずっと石化して固まって非情に静かだった。そして部屋を出る際はフランキーに運んでもらった経緯がある。

 

 

「おれの修行仲間であるボンちゃんから聞いたんだが、2年間の修行中、そこのマリモはお城で女二人両手に花で、ルフィに至っては“女ヶ島”に滞在していたそうじゃねえか? お前ら二人本当に修行していたんだろうな!?」

 

 

 今にも飛びかからん勢いでゾロに詰め寄るサンジ。その両目には嫉妬の炎がメラメラと渦巻いていた。そしてサンジは2年もの間、如何に過ごしてきたのか語っていく。カマバッカ王国にて達人相手に鍛練をし、ボン・クレーもまた一時期、海賊連合に命を狙われていたことを考え、己を鍛えるべくサンジと同様にカマバッカ王国にて鍛え、ついでに料理の腕を上げたことをサンジは血の涙を流しながら語った。

 

 

「それに比べてオレは右も左も上も下も前も後ろも全てがオカマのオカマの王国だぞ!? ボンちゃんが時々ナミさんに変身して膝枕して頭をナデナデしてくれてなかったら死んでいたんだぞ!? 物理的にも精神的にも!! だ!!」

 

 

 一気にそう捲し立てつつ、怒りと悲しみの表情を交互に顔に出して言い放つサンジにサンジを除く一同はかわいそうな目で彼を見る。ナミに至ってはゴミでも見るかのように彼を見ていた。

 

 

「エロコックのことはいったん脇に置いてだ。あのおかしな身なりをした……天竜人ってのはどうだった? 前に来た時とは随分とえらい変わりようだったんだが……」

 

 

 ゾロは来る途中に見かけた天竜人とその行動を話し、他のメンバーも島に滞在中に見かけた天竜人について語っていく。

 

 

「島にいる人たちから聞いたけど、あの(ルーミア)の言う通りB・W(バロック・ワークス)の幹部が「ヒューマン・ショップ」に招き入れて、そこで洗脳だか催眠術、強力な暗示を施しているみたいよ? へたに関わって元の天竜人に戻ると困るからあんまり関わるな、とも言っていたわ」

 

 

 ホテル内での会談時の時もルーミアと天竜人についての会話をして同じような回答をルーミアがしていたが、確認の意味を兼ねて事前に島の住民から聞き込みしていたらしいロビンがそう答え、複雑な表情を浮かべながらも一同は……そうでもしないと性格を変えられなかったんだろう、と納得し、よくもまあ天竜人相手にそんな真似ができたものだなあ、と呆れつつも感心する。

 

 

 そして話題はルーミアが膝に乗せていた九本の尻尾を持った“狐”に話が移る。複数の尻尾を持っているということもあってルフィたちはその“狐”についてルーミアに尋ねるとその時、彼女はこう答えた。

 

 

『──こいつの名は“ラン”。……お前たちには“方舟マキシム”と言った方が分かりやすいかなー? わはははー!』

 

 

 ルーミアは自分の腕に抱えられている狐の正体をあっさりと明かす。もっともルフィたちは空島で見た空飛ぶ船と目の前にいる狐が同一の存在とは半信半疑で判断に迷っていたが…… それゆえ真偽を確かめるために方舟に変化するようルーミアに頼み込むが彼女はこれを断り、代わりに違う動物に変化させて能力者だということを証明させた。ついでに元の持ち主がボンちゃんの命を狙おうとしたのでその人物を殺害して悪魔の実を奪取したことを彼女は語る。その後はそれ以上の話はされず、その狐の件はそこで半ば強引に打ち切られた。

 

 

「本人たっての希望でミョスガルド聖が“魚人島”に行きたいそうだ」

 

 

 最後にルーミアは傍らにいるミョスガルドを目配せつつルフィたちにそう言う。その後、ミョスガルドはルーミアと話がしたいから……と、その場に残り、未だ納得しかねるルフィたちを追い出して……

 

 

 そして現在に至る。

 

   

 島を歩くことしばらく、ルフィたちは島に新たに作られた港、その一角にある「海獣屋」と書かれた看板を掲げている店舗に到着する。遥か深い深海にある“魚人島”へ向かう船のために海獣を貸している店である。

 

 

 ……のだが、今は魚人島で起きている事件のせいで利用する客がいないせいか、出入口近くにあるカウンターでは暇を持て余している数人の屈強な魚人や見目麗しい人魚が雑談などして過ごして店番をしていた。

 

 

 ──対して、その店の隣にあるタコの魚人であるハチが船を改造して作ったタコ焼き屋は繁盛しており、店のカウンターにもなっている船の甲板ではハチが数名の客相手に切り盛りしていた。

 

 

 その客の中にはどう見ても堅気の人間には見えない──海賊団の一味などが交ざっている。もっとも彼らが特に何か問題を起こすわけでもなく普通に一般人に交ざってタコ焼きを「ほふほふ」と頬張っていた。

 

 

 そこにタコ焼きの匂いからハチの存在に気づいたルフィがハチに「おーい!」と声をかける。

 

 

 

 

「……にゅ~~~。“魚人島”では今“新魚人海賊団”を名乗っている連中が戦闘奴隷として人間の海賊とかを狩ってるんだ。それで今すぐに船が出せないし、海獣も貸せないんだ。悪いな麦わら。ここを仕切っているB・Wかそいつらのボスをやっている七武海のルーミア本人か幹部、そいつらの許可さえ、あれば出せなくもないけどな~~~」

 

 

 「お前たちなら魚人相手でも倒しちまうだろうしな」とタコ焼きを焼く手を休むことなく動かしながらそんなことを述べるハチ。ルフィは口を動かして何かを喋るが、タコ焼きを目一杯、口の中に詰めて「ふごふご」と話しているため何を言っているのか分からない。

 

 

「その点は心配ない」

 

 

 そこへルーミアたちとの会談を終えたのか、ミョスガルドがやって来た。

 

 

「なぜなら私がここに来た」

 

 




 
 
( ´・ω・)にゃもし。

****の攻撃!
にゃもし。「いたーい。
にゃもし。は スゴい ダメージ を 受けた!


▪️気がつけば日曜の朝4時を過ぎていた。

▪️毎度、誤字脱字報告ありがとうございます。

▪️頭がパラッパーの状態の時に書いているせいか、何を書いているのか分からん時がある。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点ありましたら報告をお願いします。

▪️オリ主がルフィたちとともに行動していないだけでルフィたちはほとんど原作沿いなのよね。

▪️ボンちゃんが好き。

▪️次は魚人島なんだけど、ほとんど書かずに終わるかも

▪️今回のM:TG

 おれは《呪われた狩人、ガラク》[ELD]を使うぜ!

1)青黒で手札捨てられまくる。
  《屋敷の踊り》でエンチャント、アーティファクトを
  大量に4/4クリーチャー化→負けた。
  
2)《創案の火》からの《願いのフェイ》でBW召喚
  BWを《サルカン》のドラゴン化でやられて負けた。

3)《ガラク》+《トルシミール》で勝った。

 


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51話 王下七武海は諸島に、麦わらの一味は深海に

 

 

 2年ぶりにシャボンディ諸島にて再集結を果たした麦わらの一味。彼らは魚人島へ向かうためシャボンディ諸島の港の一角にある「海獣屋」から海獣を借りて遥か深海へにある「魚人島」に向けて出航を試みようとするものの、港で小船を改造して作られたタコ焼き屋を経営していた彼らの知り合いであるタコの魚人のハチと遭遇、彼から──

 

 

“……魚人島では今現在「新魚人海賊団」を名乗る魚人の集団による人間狩りが横行している。そのため港を仕切っているB・W(バロック・ワークス)社が渡航する人間たちの安全面を考慮して海獣の貸し出しはもとより魚人島への運航を中止させている──”

 

 

 ……ということを知らされ、麦わらの一味一行は港で足止めを食らっていた。仕方なしにタコ焼きを頬張りながら思案する一行。そこへルーミアから通行許可書を貰ったミョスガルドが現れ、ミョスガルドの乗船と彼の護衛という条件付きで彼らは魚人島へ渡る機会を得た。

 

 

 ──のだが……

 

 

絶対に断固反対よ!!!!

 

 

 一味の航海士であるナミが猛烈に反対した。荒事が苦手なウソップとチョッパーも彼女に同調し、他のメンバーにもやめるよう呼びかけ促す。

 

 

「厄介事が起きていることがわかっている島にわざわざ危険を冒してまでそこへ行く必要はないわ!! 事件を起こしている連中が大人しくなるまで待つのよ。……それにここにはルーミアがいるわ。彼女が連中を討伐するまで待ちましょう」

 

 

 そう提案するナミにルフィはあからさまに至極不満そうな顔を出す。そんなルフィにナミは「あのねぇ……」と諭すように話をする。

 

 

「今から向かう魚人島にはアーロンみたいなやつが仕切って人間狩りをしているのよ? それも私がいたココヤシ村よりも遥かに規模の大きいのが…… いくら、あんたたちでも無理があるでしょ?」

 

 

 「航海士として、そんな危険な場所にみんなを連れていけない」……とルフィたちにそう言い聞かせる。

 

 

「もしくは他のルートを探すの。……それでミョスガルドさん、いちおう念のために聞きますけど、魚人島を通らずに「新世界」へ行ける他のルートってないんですか? 七武海のテゾーロの船は「新世界」を航海していたっていう話だし……」

 

 

 ミョスガルドに尋ねるナミに彼は「あることはあるのだが……」となんとも歯切れが悪い返事を返すが、それでもナミは「ほら、見なさい」と上機嫌になり、彼からその方法を嬉々として聞く。

 

 

「ルーミア殿の“ヤミヤミの実”の能力で船を収納して……」

 

 

 ミョスガルドの説明を静かに聞く一同。ナミは「うんうん」とニコニコ笑顔で聞き入る。

 

 

「船員たちは天竜人たちがいる「聖地マリージョア」の中を突っ切らなければならないのだが…… それと世界政府からの許可が必要になる」

 

 

 「天竜人」という言葉を聞いて思わず言葉が詰まり絶句。ニコニコ笑顔から一転して暗く沈んだ表情になり「七武海だから許可が下りるんだ」と肩を落としてぶつぶつ言うナミ。意気消沈してふてくされる彼女をサンジが元気付けようと声をかけて試みるも効果は無し。

 

 

「連中が人間狩りをしているからって四六時中、人間狩りをしているわけでも島の出入口を見張ってるわけじゃあないだろ? それこそ連中が活動してない時間帯を見計らって手薄なところとかから忍び込めばいいんじゃないのか?」

 

 

 見兼ねたゾロがそう助言をして「それもそうね」とやや諦め気味にも納得したのか、やがてナミは元の調子を取り戻す。

 

 

「魚人島がそんな危険地帯になっているんだから当然、貸してくれる「海獣」は安くしてくれるわよね? うちは「天竜人」であるミョスガルド聖を魚人島まで連れていかなくちゃいけないしねぇ?」 

 

 

 そして散々、屁理屈を述べた後、海獣屋の魚人と人魚を相手に値引き交渉して貸し出し料をタダにしたのを皮切りに航海に必要な備品や物資を要求、これもタダにさせて周辺の人間や魚人たちを唖然させた。のちにナミと交渉した魚人たちは語る。

 

 

「気づいたらこちらが頭を下げて物資とか渡していた。なんか知らないけどスゲぇ悔しいし、なんか納得できねぇ……」

 

 

 彼らはこの出来事を教訓に本格的に商売について考えるようになり、海獣や魚人の身体能力を活かして島と島を繋ぐ貿易業を始めることとなる。その後、その貿易業は成功をおさめ、彼らの名は世界に広まる。そして彼らの功績はのちの魚人や人魚の地位向上に大いに役立てることとなるのだが、それはまた別の話になる。

 

 

 ナミにいいように言いくるめられた彼らは「とりあえず……」とB・Wに報告、ルーミアから直接……

 

 

『──天竜人を乗せて「新魚人海賊団」が活発している「魚人島」まで行くんだ。むしろ足りないぐらいだ。ご苦労、あとは好きにしていいぞ』

 

 

 なんてことない風に言うルーミアに魚人たちは恐縮、彼らは己の不甲斐なさにルーミアの力に少しでもなるべく商売に力を入れることになる。

 

 

「にゅ~~~、おれはこいつらを「魚人島」まで連れて行かなくちゃならないから悪いけどお客さん……」

 

「ケヒヒヒヒィ~~~♡ あっしらは海賊をやってるような無法者でごぜェますけどォ~、「天竜人」を乗せてる船を止めるような物分かりの悪い人間じゃあ~~~ございませんのでおれァらに構わず、どうぞ、お行きなさってくださいましぃ~。ケヒヒヒィ~」

 

 

 店のカウンターにいた客に申し訳なさそうに謝るハチ。彼はお詫びの品としていくつものタコ焼きをその客に与えるとルフィたちを連れて船着き場へと向かった。

 

 

「ケヒヒヒヒヒィ~。あの「麦わらの一味」が船員募集しているって言うからシャボンディ諸島まではるばる来たっていうのにですよぉ~~~、ま~さかのニセモノさんだったときは心底ぉ~、ガッカリしましたが…… ホンモノさんも来てるだなんて、おれらぁはツキがついてますねぇ~」

 

 

 「これも神の思し召しってやつですかねぇ……」細身で長身、服の袖が長すぎて両手が隠れている状態の男が周囲に聞かれないように小声でそう言って席を立ち上がると、手足は細いのに胴体は丸い体型の人間を数人引き連れてルフィたちの後を追うように船着き場へと向かう。

 

 

「そういや麦わらたちは魚人島へ向かう前にレクチャーとか受けていたか? まだならあそこにいる人魚たちから受けられるぞ?」

 

「大丈夫よ。レイリーさんから一通り教えてもらったし問題ないわ」

 

「いや、ナミさん、確認のために一度、あそこにいる人魚のお姉さんたちからレクチャーを受けましょう。もしかしたら、あのレイリーのじいさんが間違えてる可能性があるかもしれませんし……」

 

「エロコックはレクチャーを受けたいみたいだから一人だけ残して、おれたちは魚人島へ行こうぜ」

 

「クソマリモ、てめぇは黙ってろ」

 

 

 そんな会話をしながら前を進む麦わらの一味の後ろには体を流動体──姿を沼に変えた男「濡れ髪のカリブー」がこそこそと後をつけて物陰に隠れては一人ほくそ笑む。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

「七武海が三人もシャボンディ諸島に集まっているのは怪しまれるのではないのかい?」

 

 

 ホテルからルフィたちが出ていった後、イスの背もたれに身を預けてゴロゴロの実の能力でルフィたちとその周辺の音と声を目を瞑って聞いていたルーミア。テゾーロは彼女にそう声をかける。

 

 

「麦わらの一味が集結しているためルーミアは万全を期すために他の七武海に協力を要請、「テゾーロ」と「ハンコック」が応えた。……ってことにするから問題ないなー、わははは」

 

「……ふむ。ちんちくりんな見た目のわりにはいろいろと考えておるようじゃな……」

 

「ちんちくりんは余計だ」

 

 

 ハンコックからちんちくりん呼ばわりされて少しムッとした表情になるルーミア。それでも一応はハンコックが自分より年下ということもあり、余裕のある態度を見せつつ、ハンコックに気を利かせたような言葉をかける。

 

 

「せっかくだからパトロールがてらに見送ったらどうだ? 麦わらの一味の航海を邪魔するやつがいるかもしれないしなー? わはははー」

 

「ルフィなら問題なく潜航できると思うが、万が一ということもありうるな……」

 

 

 少し考える素振りを見せた後「こうしておられん!!」言うや否や、扉を蹴り飛ばす勢いで足で開け放って部屋を出ていく。

 

 

「あとはミョスガルド聖のことだが、本気で行かせるつもりかい? 聞けば彼は過去に一度「魚人島」に行って死にかけたというらしいが……一応、念のために聞くが一体何のためにだ?」

 

「君が彼の立場だったら、どうする? 恩人を殺したやつがそこにいるかもしれない。行けば真実がわかるかもしれない。何もしなければどこの馬の骨かもわからない見ず知らずの赤の他人が解決して終わらせてしまう。私ならその前に行くぞ? 安心しろ、私が所有している「悪魔の実」を口にこそしなかったが彼は強くなった。誉められた方法ではないが「覇気」も身につけた。それにあそこには「ジンベエ」がいる」

 

 

 心配する要素はないと言わんばかりにきっぱりと言い放つとルーミアは彼女の膝の上にすやすや寝ているキツネのラン、その背中を撫でる。

 

 

「悪魔の実があるのになぜ口にしなかったのだ?」

 

 

「──“世間から「悪魔の実」のおかげで勝った。と思われたくない。”……だそうだ」

 

 

(……それに「マグマグの実」を所持していることでサカズキ殺害に関与されている──と海軍に疑われるのは君にとっては好ましくない状況だろう? とも言ってたけどなー……)

 

 

 ルーミアはテゾーロがいることもあって敢えて口に出さずに心の中でとどめる。サカズキ殺害に関してはルーミアが立ち上げた組織でも詳細を知るのはごく一部であり、ミョスガルドにも知らされてはいない。

 

 

(サカズキを倒したのは「スクアード」。あいつの名誉のためにもその方がいいだろうなー……)

 

 

「……せっかく、七武海の三人、それも「麦わらの一味」に協力している共犯者が揃っているからなー。ハンコックが戻り次第、話を進めようかなー? わはははー」

 

 

 しばらくしてからルーミアの下にハンコックが戻り、ハチの案内の下、ミョスガルドを加えた「麦わらの一味」と彼らを追う「カリブー海賊団」が海面下へ潜航したという報告が届けられ、まもなくして「ルーミア」「テゾーロ」「ハンコック」ら七武海メンバー三人による協定が結ばれることとなった。

 

 

 

 

 そして「麦わらの一味」一行は「ミョスガルド」と「ハチ」、さらに船を引く海猫と、魚人島に向かうメンバーが正史と違って増えているものの、彼らは予定通りに深海を進んでいく。そして「カリブー海賊団」もまた海牛モームに船を引っ張らせて彼らの後を追う。

 

 

 

 




 

**** は にゃもし。 を 倒した!
にゃもし。 は 死に間際に 呪い を 放った!
**** は 呪われた!
**** は 性転換した!
**** は ネコミミ と ネコシッポ が 生えた!
**** は 語尾 に 「にゃ」 が つくようになった!


▪️朝の5時だー。寝るー。

▪️「」→どのカッコをどのように使うか悩む。

▪️誤字脱字報告、毎度ありりんす。

▪️頭がパラッパー状態で書いてるー。
 
▪️執筆中もMTGのことを考えてるZE。

▪️次回は他の天竜人の様子とか、シャボンディ諸島、とか
 書きたいとこだーねー。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点ありましたら報告をお願いします。

-追記-

▪️サンジのセリフ

訂正前「レイリーとかいうじいさん……」
訂正後「レイリーのじいさん……」

 ……というふうに直しました。レイリーとサンジが顔見知りなのにこれは変なのでは? という指摘があったので。


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52話 マングローブで、雲の上で、海の中で、

 

 

 2年前のシャボンディ諸島の近辺にあるマリンフォードには海軍本部が置かれており、非常事態等がひとたび起これば海兵たちがすぐに駆けつけるようになっていた。そのため偉大なる航路(グランドライン)、前半の海を航海する海賊たちが集結する地ながら「海軍本部」という海賊にとっての脅威のおかげで海賊たちは大人しく、無法地帯を除けば、さほど治安は悪くはなかった。

 

 

 しかし頂上決戦以後、「クザン」が新たな元帥として任命されたのを機に海軍はマリンフォードにあった「海軍本部」を赤い土の大陸(レッドライン)を挟んで対にある支部「G1」と場所を入れ替えた。

 

 

“「海軍本部」が移動したら海賊にとっての抑止力がなくなって無法地帯が増えるのではないか?”

 

 

 ……と、島の住人は戦々恐々していたが、そこに現れたのは新たに七武海に任命したルーミアであった。

 

 

 当初、島の住人は映像電伝虫が映した戦争の映像から彼女の持つ力の一部を知ってはいたが、彼女の見た目もあって懐疑的であった。……だが、彼女の背後には「宵闇ノ海賊団」を始めとしたマルコ率いる「白ひげ海賊団」、バギーを座長とした「バギーズ・デリバリー」、さらに組織の頭がボン・クレーに変わったものの、元七武海のサー・クロコダイルが立ち上げた「B・W(バロック・ワークス)」がいることもあって、彼女ではなく彼女の持つ戦力を海軍に代わる力として密かに期待していた。

 

 

 マリンフォードで起こった戦争の映像を見ても彼女の実力に対して半信半疑の人はいる。……では新聞でしか彼女のことを知らない人物、例えば海賊や犯罪者等が彼女と対面した場合はどうなるだろうか? そういった連中の中には彼女が島にいるにも関わらず平然と犯罪行動を起こす者たちが少なからず存在していた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 その日、シャボンディ諸島には多くの海賊たちが来訪していた。偉大なる航路(グランドライン)、四つの海から出発して前半の海を乗り越えた海賊たちが集結していた日。ルーミアは天竜人であるミョスガルドが行う海賊討伐、その彼の護衛を名目にわざと各組織の幹部たちを島から遠ざけさせ、さらにそのことを外部に漏らした。

 

 

「ヒャッハ────っ!!!!」

「幹部どもが軒並み出払っている今がチャンスだぜ!!!!」

「汚物は消毒だ~!!」

 

 

 情報をわざと流していることを知らずに情報を掴んだと勘違いした少々、露出の激しいモヒカン頭の集団がシャボンディ諸島に上陸。目につく建物を手当たり次第に破壊し、逃げ遅れた住民たちに襲いかかる。

 

 

 モヒカンの集団を目にした男──逆立った髪にM字型に剥げた額をした──は思わず「もうダメだ。おしまいだぁ」と弱音を吐いてしまう。

 

 

 島の住人が見ている前で暴れまくるモヒカンの集団。だがそのうちの一人がどこからか飛来してきた拳大ほどの石が股間に強打。堪らずその場で股間を両手でおさえて踞る。残ったモヒカンたちは犠牲になった彼に同情しつつ、石が飛んできた方向に目を向ける。

 

 

「──ようこそ、ワルガキども」

 

 

 そこにはいつもの格好をしたルーミアが地面から僅かに浮かびながら両腕を左右に広げた格好で宙に浮いていた。

 

 

 そこからはモヒカンたちにとって悪夢の出来事だった。

 

 

 当初、モヒカンたちは自分たちの身長の半分にも満たない少女──ルーミアのことを侮っていた。どうせ、お飾りの船長なのだろう、と……

 

 

 そう言って不用意に近づきルーミアのおでこを軽く小突いて彼女を小馬鹿にしていたモヒカンの一人が間を置かずに吹っ飛ばされたのを皮切りに次々と倒されるモヒカンたち。その光景を目の当たりにした彼らはルーミアを舐めてかかる相手ではないと考えを改めて本気で応戦を始める。

 

 

 しかし、モヒカンたちはルーミアの体格が小さいために自分たちの攻撃は当たりにくく、たとえ命中したとしても腕一本であっさりと防がれてしまう。対してルーミアはモヒカンたちの体が自分よりも大きいために攻撃を当てやすく、さらに一撃で相手を戦闘不能に陥らせるほどの腕力を彼女は有していた。

 

 

 その結果、海賊団の船長を含めた全てのモヒカンが地に伏す光景がそこに出来上がった。

 

 

“生き恥と死に恥、選ぶならどっちがいい?”

 

 

 うつ伏せで倒れ伏すモヒカンを率いる男にそう尋ねるルーミア。周囲に散らばって燃え盛る船の残骸のせいでほんのり赤く染まる彼女を前にして船長は「生き恥」を選んだ。

 

 

 なお、このやり取りを一部始終見ていたM字ハゲの男は「お前がナンバーワンだ」と偉そうに腕を組みつつ手のひらを返したそうな。

 

 

 そしてその襲撃以降、シャボンディ諸島内にて彼女の力を疑う者は目に見えてわかるほどに減ったという。

 

 

 もっとも目的の一つは、ルーミア自身を囮にしてインペルダウンの脱獄囚「海賊連合」たちを島に誘き寄せ、集まったところを出払っていた艦隊で一網打尽するつもりだったのだが…… それゆえルーミアは残念がっていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 B・Wの本社付近にはB・Wの幹部たちがよく集まる「スパイダーズカフェ」なる建物が存在する。そこに久方ぶりに現在のB・Wに在籍している幹部たちが集まって近況報告等をしていた。

 

 

「……と、いうわけで、今のあたしは以前のあたしよりも一回りも二回りも違うってわけよぉ~~~っ!!!! わかるぅ~~~っ!?」

 

 

 貸切状態にしているらしく幹部以外は人の姿が見えない店内。そのカウンター席に大柄のオカマ──ボン・クレーが座っており、テーブルをばんばん叩きながら大声で喋っていた。彼の対応をしていた女店主ポーラ──本名ザラは「はいはい」と軽く聞き流し、ミキータは「キャハハハ」とおかしく笑う。

 

 

「お前らの笑い声は腰に響くんだよ!! このバッども!! このバッ!!」

 

 

 二人の笑い声が気に障ったのか、腰を痛めてソファーに寝そべっていた状態から非常に短い言葉を連発して叱咤するミス・メリークリスマスことドロフィー。その彼女の腰を甲斐甲斐しく「ご~め~ん~」と叩くMr.4と呼ばれていたベーブ。その近くには動物(ゾオン)系の悪魔の実「イヌイヌの実」モデル、ダックスフントを食べた銃、ラッスーが床に寝そべっている。そんな彼らの会話を耳にしながらMr.5、爆弾人間と恐れられていたジェムが店内の修復作業を行なっていた。

 

 

「全員、揃っているようだガネ?」

 

 

 そこへミス・ゴールデンウィーク──マリアンヌを連れたMr.3が店内に入ってきた。

 

 

 

 

 一応、電伝虫による連絡のやり取りはあったものの、ボン・クレーがカマバッカ王国に滞在していたため、一堂に会する機会がなかなか恵まれなかったB・Wの面々。此度、ボン・クレーがカマバッカ王国での修行を終え、シャボンディ諸島にやって来たことで定期報告も兼ねてMr.3が彼らに呼び掛けた。

 

 

「ボスが“天竜人を洗脳する”っていうから、てっきり全員やるのかと思ってたのよね。今のところは一部の偉そうなやつだけだし、色白の鳥の人も手伝ってくれるから楽だよ」

 

 

 そう告げるとせんべいを齧っては茶を啜るマリアンヌ。彼女はルーミアと出会った時のことを思い浮かべる。

 

 

“──10人のグループがいたとしよう。その中で一番、力のあるやつを洗脳する。そうすれば、しぶしぶだろうけど他のやつは従うと思う。……これなら、わざわざ全員を洗脳する必要がなくなるんじゃないかなー? それとも「聖地マリージョア」にいる天竜人全員を洗脳してみるかー?”

 

 

 Mr.3に誘われ、ルーミアから能力を買われ、彼女からその仕事を言い渡されたマリアンヌ。以降、シャボンディ諸島の「ヒューマン・ショップ」に訪れる天竜人を相手に入れ墨を施し、ラフィットとともに彼らに暗示をかけるようになった。洗脳や暗示もそれほど難しいことを要求されているわけでもなく、ただ……

 

 

“私たちと友達になって、

 友達である私たちのお願いを聞き入れる”

 

 

 ──といった複雑ではないのもルーミアからの勧誘を引き受けた理由の一つといえよう。そして事あるごと問題を起こす天竜人たちに()()()()()「上に立つ者としてみっともない」と彼らを嗜めていた。

 

 

「未遂で終わったとはいえ、七武海がアラバスタ乗っ取りを企て、……まあ我々が起こした事件のことだガネ。それとドレスローザに至ってはドフラミンゴが乗っ取った。ルーミア提督はただでさえ危うい七武海の制度にこれらの事件の影響で“七武海制度の撤廃”が後押しされるのを懸念している。そこで提督は……」

 

 

 メンバーの前で長々と話すMr.3。要は七武海が起こした事件を同じ七武海が解決するということである。

 

 

「……もっとも、それをやったとこで印象が多少良くなるだけの話だガネ。それにやられた連中の恨みが消えるわけじゃないし、廃止の話がなくなるとは思えん。そこで“七武海”そのものを天竜人の「ミョスガルド聖」の私兵団にしてしまおう。……というのが提督の考えだ」

 

 

 「天竜人の私兵団」と聞かされた彼らは訝しんたり、さまざまな反応を見せる。総じて「本当にそれは可能なのか?」と首を傾げていた。そんな彼らの態度にMr.3は告げる。

 

 

「やらなきゃ“七武海制度”の廃止とともに海軍が敵になる」

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 スパイダーズカフェにて幹部たちが集まって話し合ってる頃、ルーミアの下に「シャーロット・リンリン」通称「ビッグ・マム」の名で知られている四皇の一人、その使者としてミンク族のペコムズと足長族のタマゴ男爵が訪れていた。

 

 

「だから~、結婚しろとも、婚約しろとも、言ってねぇ! ジェルマの三男坊とシャーロット家の三十五女である「シャーロット・プリン」様の結婚式に出るだけでいいんだ! ガオ!!」

 

 

 ビッグ・マムはルーミアに自分の息子との「見合い話」と、自分の娘の「結婚式の招待」を伝えるためにわざわざペコムズとタマゴ男爵を寄越したのである。さすがのルーミアもこの話に面を食らったものの、正史ではジェルマ国王を騙していたことを知っていることもあり、あの女なら、自分たちにも不意討ち騙し討ちをやりかねないと内心、納得した。

 

 

「いいだろう。その結婚式とやらの招待を受けよう……」

 

 

 しぶしぶ彼らの要請を受けるルーミア。「君は実に良い判断をしたでソワール」別れ際にタマゴ男爵がそう言い残して立ち去るのを見届けてからルーミアは今は元帥になっているクザンへ電伝虫で連絡を取る。

 

 

『──あららら、別にいいんじゃないの? へたに刺激して戦争を起こすよりはマシだろ。こっちは当分、面倒事など回避したいからなぁ……』

 

 

 現七武海の一人が四皇の一人と対面する。……だという話なのになんとも暢気な回答をするクザンにルーミアは呆れつつ、さっさと本題に入ることにした。

 

 

「ビッグ・マムの傘下にいる「カポネ・ベッジ」がビッグ・マムの暗殺を企てている──と言ったらどうする?」

 

 

 ルーミアは受話器の向こうでクザンが息を呑む音を確かに聞いた。

 

 

 

 

【空島──スカイピア】

 

 

 遥か上空に浮かぶ巨大な積乱雲。その雲の中に空島スカイピアがある。以前と比べると青海との交流が増えたせいか、それに伴いトラブルも増えた。例えば青海でノーランドの物語を知った人間が彼の黄金を狙ったり、青海では10倍から100倍もの値がつけられる空島特有の生き物を密漁、及び密猟などと事件を起こす者が後を絶たなかった。そのたびにワイパーたちシャンドラの戦士や警察の役目を果たすホワイトベレー隊が犯罪者たちを取り締まっており、彼らに交じって「アヴドゥル」という偽名を使い変装しているエースがそこにいた。

 

 

 そのエースの下にスカイピアに滞在しているルーミアの配下の一人が報せを持ってやって来た。何事かと尋ねるワイパーにエースはまるで自分の自慢話でもするかのように答えた。

 

 

「おれの弟が修行を終えて出航したから来いってさ」

 

 

 

 

【魚人島──リュウグウ王国】

 

 

「人間のっ!! それもひ弱な天竜人ごときにっ!!」

 

 

 そう言ってミョスガルドと相対するのは「新魚人海賊団」を率いるホオジロザメの魚人である「ホーディー・ジョーンズ」。激闘を繰り広げたせいか、満身創痍のぼろぼろの格好をしていた。

 

 

 さらに周囲には麦わらの一味たちが倒した魚人や戦闘奴隷として無理矢理、連れてこられた人間たちが気を失っており、ところどころに幹部たちの姿が見える。

 

 

 B・Wが魚人島への出航を中止にしたため人間の奴隷が減ったものの、それでも総勢7万人もの兵力がジョーンズにはあったが、それも軒並み壊滅、残すは船長であるジョーンズのみとなった。

 

 

「王妃オトヒメは、お前のようなヤツにやられたというのか……」

 

 

 ジョーンズに対してどこかもの悲しい雰囲気を醸し出すミョスガルド。

 

 

 棒立ちのミョスガルドに罵声を浴びせながら襲いかかるジョーンズ。その彼の顔面にミョスガルドの右拳が突き刺さり、めり込み、そして拳を突き刺したままジョーンズの頭ごと後頭部から地面へと叩きつけた。

 

 




( ´・ω・)
にゃもし。


「必殺“にゃもし。”砲」


▪️ほぼ勢いで書いた。

▪️朝の5時だ。

▪️よし寝よう。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点等ありましたら報告をお願いします。


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53話 「楽園」と「新世界」の境界で……

注)魚人島の話はおもいっきりはしょった。


 

 

 シャボンディ諸島にあるB・W(バロック・ワークス)が保有している建物の地下には島の各所を監視しているモニター室がある。その部屋に無数あるモニターの幾つかは今現在、島に滞在している天竜人たちの姿を映していた。

 

 

 B・W主催のトレーディングカードゲームの大会に出場して対戦しているロズワード。高級感溢れる大理石のテーブルにはカードが並べられており、海軍や海賊、過去にあった事件をモチーフにしている。「速攻つきの《ブルック》でプレイヤーを攻撃!」それで勝負が付いたらしく対戦相手の海賊は右手に手札を持ったままガクッと項垂れた。

 

 

 同性同士の恋愛マンガの執筆にひたすら勤しむシャルリア。以前、興味本位で彼女が書いたマンガを見てしまったB・W社員は思わず口にした。「腐ってやがる!!」「人類には早すぎる」……等々。以降、彼女のような女性を指して「貴腐人」と呼ばれるようになった。

 

 

 どこかの店内、職人気質もかくやと言わんばかりに真剣な顔つきでフィギュアを見つめるチャルロス。彼の背後には未開封の箱付きフィギュアと作成のために必要と思われる道具が山積みになっていた。その隣の棚には彼の作品と思われるフィギュアが厳重に保管されており、モデルはルーミアであり、なぜかドレス姿でイスに足を組んで腰掛けていた。作った本人の趣味が反映しているのか、やたらと蠱惑的な笑みを浮かべている。

 

 

 やがて天竜人たちは満足したのか、島を出ていき帰路に就く。B・Wの人間たちは彼らが船に乗って島を出ていくのを確認してからホッと一息を吐く。……がすぐに気を引き締める。これから彼らは自分たちの上司に報告をせねばならないのだ。おまけに島には他の七武海が滞在しており、さらには四皇の一人ビッグ・マムの使者も来ている。そして魚人島の問題も解決しておらず、そのため一部の物流が滞っており、その結果、支障を来しているルートがある。そう思うと彼らは知らず知らずのうちに溜め息を吐いた。問題が一つでも早急に解決することを祈りながら彼らは上司の下へと赴く。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 ルーミアが要人と対面する時、彼女は決まってドレス姿で出向くが、普段はラフな服装をして過ごしている。ついでに人の目を気にしない時はズボラな格好をしていた。今も要人との対面を果たし終えて気が緩んでいるのか、上はインナー用のキャミソールに短パンという格好でベッドの上で胡座を掻いて寛いでいる。その格好で過ごすルーミアに対し、彼女の身の回りを世話をするメイドの一人、年配の女性がやんわりと注意し、改善するよう促すが、返事をするだけで一向に直す気配がない。そんなルーミアに対し呆れつつもマルコは今回の「見合い」と「結婚式」について尋ねた。

 

 

「行かなければ、それを口実に“戦争”。行けば“暗殺”ってとこだろうなー、何しろ、うちだけじゃなく、あわよくば「ジェルマ」の戦力も手に入るからなー、わはははははー」

 

 

 すると物騒な返答が返ってきた。他人事のように答えるルーミアにマルコは額に指を当てて顔をしかめる。そんなマルコにルーミアはビッグ・マムの傘下に入っている「カポネ・ベッジ」。彼がビッグ・マム暗殺を企てている件を言い……

 

 

「最悪、ジェルマとベッジを囮にして逃げるから安心しろ。ベッジはともかくジェルマのやつらには貸しがあるからなー、わははははー」

 

 

 そう宣う。

 

 

「……だがその前にドフラミンゴの件だなー。エース……じゃなくてアヴドゥルが戻り次第、「ドレスローザ」へ出発だなー」

 

 

 

 

【魚人島】

 

 

 魚人島の乗っ取りを企てていた「新魚人海賊団」。船長を含む幹部たちは麦わらの一味とミョスガルドの手によって全員、打ち倒され、一人残らず牢に入れられた。また戦闘奴隷として囚われていた人間たちは解放され、事件に関わった魚人たちは王国の監視の下、強制労働をさせられることとなった。

 

 

 王国が転覆される危機があっただけに犯人たちを倒したルフィたちは一躍魚人島の英雄に祀られた。大きな事件、さらに人間よりも強靭な身体能力を持つ魚人相手にも関わらず負傷らしい負傷を負った者がいないことから、麦わらの一味の実力が如何に強大なのか、理解できるといえよう。もっともミョスガルドのみ右腕を負傷し、ギプスで固定して包帯を巻いているが……

 

 

「大変無茶をなさる。いくら暗示をかけて強化してもらったからって肉体の強度まで強化されているわけじゃございませんぞ」 

 

 

 魚人島にある王宮内、病室代わりに使われている部屋内にてミョスガルドにそう嗜めるのはジンベエ。ジンベエはルーミアの依頼でミョスガルドの護衛と監視をしていた。彼が仇を目の前にして無茶をしないように……と。

 

 

 ミョスガルドをイスに座らせて彼を診ていたチョッパーは「なんでこんなことを……」と暗示をかけた人間に不快感を示すがミョスガルドは暗示をかけた人間を擁護する。

 

 

「魚人相手に心許ないゆえ、暗示をかけてもらった」……と。

 

 

 もっとも、その代償に彼の右腕は傷を負い「完全に治るのは当分、先になるぞ」……と彼を診ていたチョッパーが語る。

 

 

「ミョスガルド聖……」

 

 

 突然の声、その出所である扉に顔を向ける一同。そこには恐る恐る中を覗き込むようにして扉の外を陣取っているネプチューン王がそこにいた。

 

 

 

 

 チョッパーはミョスガルドの容態を診なければならないということで部屋に残ったが、ジンベエはミョスガルドとネプチューン王に気を遣って部屋を出た。ジンベエの背後から二人の話す声が聞こえてくる。そこにルフィが現れた。よほど慌てていたのか、息を切らしている。そして一呼吸置いた後、大きな声でジンベエに話しかける。

 

 

おれの仲間にならねえか!?

 

 

 非常に嬉々とした表情でルフィはジンベエを勧誘する。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 ルフィの突然の勧誘は他の船員に相談することなく独断によるものだった。ルフィのいつもの行動ゆえに船員たちも「またか……」と半ば諦め気味に呆れていた。

 

 

 問題は誘った相手が顔見知りとはいえ七武海の一人であるルーミアを代表とした海賊団のその傘下の一つであり、その船長ということである。これには船員たちは頭を抱えた。何しろ相手は七武海のルーミア。何を要求してくるのか、わかったものではない。そのこともあって他の船員は諦めるよう促すが船長であるルフィは頑なに拒否する。そんな悩む彼らにジンベエが申し出る。

 

 

「本人に尋ねてみたらどうじゃろう? 魚人島のことで彼女に報告せねばならんからのぅ」

 

 

 

 

………………………………………

 

 

 

 

 ジンベエの進言を実行するため、王宮内の玉座の間に主なメンバーを集めて電伝虫でルーミアとのコンタクトを取ったルフィ。開口一番、彼はルーミアに「ジンベエを仲間にしていいか?」と尋ね、対して返ってきたルーミアの回答は『……条件次第だなー』の一言だった。その一言を聞いた船員たちはイヤな予感を感じたのか露骨に顔をしかめる。

 

 

『──四皇の一人「ビッグ・マム」が治める万国(トットランド)。私はそこで行われるシャーロット家とヴィンスモーク家の「結婚式」に招待されてる。それに「ドフラミンゴ」の件もあるからなー、その二つの件が片付いたら好きにしていいぞ。あとは本人の意思次第だなー、わはははー』

 

 

 ルーミアと同じ七武海である「ドフラミンゴ」はともかく、四皇である「ビッグ・マム」の名が出てきたことに首を傾げる麦わらの一味たち。その理由をジンベエが話す。

 

 

「ワシが船長している「タイヨウの海賊団」の副船長アラディンがビッグ・マムの娘と結婚したんじゃ。もっとも休戦協定のための婚姻、いわゆる政略結婚というやつじゃな……」

 

『最初はこの私と息子の一人とくっつけさせたかったみたいだけどなー、さすがのビッグ・マムも自分の息子が「ロリコン」呼ばわりされるのはイヤだったみたいだなー、わははははー』

 

 

 受話器の向こうで笑い声を上げるルーミアにナミは思わず「遠回しに体型についてバカにされてる気がするんだけど、あんたはそれでいいの?」と口にする。

 

 

「ジンベエは七武海を務めていたほどの男だ。お前がそう簡単に手放す人材とは思わねえ。正直、お前から無理難題をふっかけてくると思っていたんだがな……。それがないとなると、おれたちの下にジンベエを置くこと、それがお前にとって益になる、と考えてみるべきかな……。そこんところどうなんだ?」

 

『ああ、その通りだ。声からして話しかけてきたのは「海賊狩り」かなー?』

 

 

 いつの間にかに電伝虫に詰め寄って受話器を取って通話していたゾロ。

 

 

「なんだっていいよ、そんなの。せっかく仲間にしてもいいってルーミアが言ってくれてるんだからさー」

 

 

 「ありがとうな、ルーミア」心底、嬉しそうに礼を述べる。礼を言うルフィにルーミアは彼にではなく他の船員たちに向けて話しかける。

 

 

『お前たちの船長はトラブルを生み出し、あるいはトラブルを引き寄せる体質の持ち主で、なおかつトラブルの元に自ら突っ込む人間だ。……だからは私は多くは語らないことにしたのさ、こちらが何もしなくても勝手に事件を解決してくれる。現に魚人島の問題を解決した。そういった人間なら人材を派遣して戦力を増強させた方が最終的に私にとって得になるからなー、わははははー』

 

 

 思い当たる節があるのか、船員たちは苦笑いを浮かべたり、顔をしかめたりする。そんな中ルフィは長々と喋るルーミアの言葉に対して思案していたらしく首を傾げ、やがて結論が出たのか、口に出す。

 

 

「ようするに今まで通り普通に航海をすればいいんだな?」

 

『まあ、そうなるな』

 

 

 そう結論付けるルフィに船員たちは顔を引きつかせ、うち数名が「普通」という言葉に「今まで普通に航海したことってあったっけ……」と悩ませ、チョッパーはなぜか「ルフィ、すげぇ」と目を輝かせていた。

 

 

 その後、ルーミアと麦わらの一味たちと魚人島で起こった事件のあらましについて少々、会話した後……

 

 

『新世界にある「ドレスローザ」に来い。うちにいる「アヴドゥル」がお前たちに会いたがっているからなー』

 

 

 ……とルーミアは落ち合う約束を取り付ける。

 

 

『それにジンベエのことは電伝虫じゃなく、一度直接会った方がお互い納得するだろ?』

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 シャボンディ諸島の港に停泊している船から一人の男が降り立った。最近、七武海テゾーロがいるグラン・テゾーロを中心に流行しているマンガ、その登場人物の一人「アヴドゥル」と似たような格好をしている。そのためか、たまにすれ違う通行人から「石仮面?」「アヴドゥルさん」「完成度、高いな、おい」等と言われる。その作品に出てくる登場人物と違うのは石のような材質でできている仮面を被っていることぐらいだろうか、彼は手に持った紙切れ、地図が書かれているそれを頼りに目的地の場所を目指して歩き始めた。彼の行く先にはルーミアが寝泊まりに使っているB・Wが管理している建物が見える。

 

 

「久しぶりだガネ。マリンフォードの頂上戦争以来になるガネ?」

 

 

 その道中、人が往来する道のど真ん中で彼は腕組みして待っていたMr.3と出会った。

 

 

「ついて来たまえ、ルーミア提督がお待ちだガネ」

 

 

 メガネを指で軽く押しながらMr.3がそれだけ告げると返事を待たずに先を進み、Mr.3の後を仮面の男がついていく。

 

 

 

    




 
   コ" コ" コ" コ" コ"
ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

 ガラハド は 邪神 を 倒した! 
 邪神 は 宝箱 を 持っていた!
 宝箱 の 中 には にゃもし。 が 入っていた!
 ガラハド は にゃもし。 を 手に入れた! 


▪️↑の後に例の選択肢をアンケートにしようと思っていたが……

 「小説に関係のないのはダメよ?」

 ──という文があったので諦めざるを得なかった。

▪️朝の4時だよー。

▪️毎度、誤字脱字おかしな表現、矛盾点等の報告をありがとうございます。

▪️なんやかんやで、1年経ったわ……
 そして未だに終わらないことにビックリ。
 でもまあ、ジャヤ島~魚人島までを1年で凝縮したと思えば……

▪️相変わらず後書きで遊ぶスタイル。
 本文でやる勇気がない。
 うまく使う人はスゴいね。

▪️毎週更新してる私を私は褒めたい。
 
▪️いつの間にか途絶えた他のONE PIECE作品、切ない。

▪️次回はちょっと日常? を書きたい。

 Mr.3とお金のために奴隷になることを希望する人間
 足の負傷のために海賊を引退、ジャヤ島でコックしているサッチと彼を見に来たエースと猿山連合軍
 B・W主催トレーディングカード公式大会で「麦わらの一味」デッキで挑むロメ男と七武海デッキ使いロズワード
 等身大チョッパー人形を買うモブ海軍とペローナ
 ビッグ・マムの結婚式の祝いの品に悩む魚人島の人々と爆弾入りの玉手箱を所望するルーミア
 白ひげの故郷で墓守している大渦蜘蛛海賊団とラフィット
 
 
 書きたいこと、いっぱい、あるなー。

▪️M:TG

 エレメントもりもり、神の効果でゾンビもりもり、デッキにやられた。ひどす。
 
 


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54話 あの日、あの時、あの場所で……

注)時空系列バラバラです。


 

 

偉大なる航路(グランド・ライン)──前半の海】

 

 

 白ひげの娘と言われている「エドワード・ルーミア」

 

 

 彼女が王下七武海に任命された後、彼女はB・W(バロック・ワークス)の人間を引き連れてシャボンディ諸島にやって来た。そして島を拠点にして活動を始める。その後、島の要所要所に彼女の命令でB・Wが監視・管理する建物がいくつも建てられた。

 

 

【シャボンディ諸島──スパイダーズカフェ】

 

 

 B・Wが管理している建物の一つである「スパイダーズカフェ」

 

 

 店内は島によく見かけるカフェと似たような造りになっているが、ここを訪れる人間の中にはどう見ても一般人には見えない人種の人間もいる。そういった人間は人が少ない時間帯、もしくはB・Wの社員の案内の下、人目のつかない場所──地下や別室に案内され、そこでB・Wの幹部の人間との対談や取引等が行われる。その中には金と引き換えに自ら奴隷になることを希望する者がいた。

 

 

「頼む!! どうしても金が必要なんだ!!」

 

 

 店内の日当たりの良さそうな席を一人で占領し、足を組みつつ新聞を片手にアールグレイの紅茶を啜って寛いでいたMr.3。その彼の眼前で額を床に擦り付けんばかりに頭を下げて土下座している男と彼の子どもらしい男の子が立っていた。

 

 

 その男の話を聞けば、まだ幼い娘の治療にどうしても大金が必要であり、そのためなら自ら奴隷になることも辞さない……とMr.3に懇願した。

 

 

「すいません副社長。すぐに下がらせますので……」

 

 

 どこからか連絡が来たのか店内に入ってきたのは過去にシャボンディ諸島で人身売買を行なっていた男ディスコ。彼は連れてきた屈強な男二人に命じて土下座する男を挟んで左右からそれぞれ腕を引っ張って無理矢理、立ち上がらせると、その場から引き摺るようにして男共々、店から立ち去ろうとする。

 

 

「まあ、待ちたまえ」

 

 

 立ち去る男たちにMr.3は声をかけた。

 

 

………………………………………

 

 

 Mr.3の一声で男の奴隷落ちを認めることとなり、娘の治療費と引き換えに男は奴隷となった。別れ際、深々と頭を下げて礼を述べる父親とその男の子。二人が店を出ていったのを見届けてからMr.3は傍らにいたディスコに指示を出す。

 

 

「……あの親子の過去の経歴と背後関係を徹底的に調べてこい。あれがスパイならしばらく泳がせておけ、もし待遇と報酬で寝返させることができそうならやれ、そして情報を吐かせろ」

 

 

 そう指示を下すと何事もなかったかのように音を立てて紅茶を啜る。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【ジャヤ島】

 

 

 空島スカイピアで2年ほど過ごしていたエース。彼はルーミアからの連絡でルフィの修行が完了したことを知るとルフィやルーミアたちに会うことを決めた。

 

 

 気球で空を移動中、彼が雲の上から見えたジャヤ島の姿は彼が以前に見た時よりも人と建物が増え、何よりも島の上空に島を覆うように小さな空島が浮かんでいた。その空島にはまばらに人がおり、さまざまな植物と生け簀らしきものがあった。やがてエースを乗せた気球はジャヤ島にある街から外れた開けた場所に降り立つ。

 

 

「よお、久しぶりだな」 

  

 

 そこでエースを出迎えたのはモンブラン・クリケットを筆頭にした猿山連合軍の面子。彼らはエースの来訪を歓迎した。

 

 

 エースを含めサッチと猿山連合軍は一度、空島スカイピアに渡ったことがあるが、数日の滞在ののちエースを空島に残して青海へ戻った。その後、サッチは足のケガを理由に海賊を引退、ジャヤ島で料理店を始め、猿山連合軍は新たなロマンを求めて大海原へと航海を始めた。そして今回エースが空島からジャヤ島に降り立つことを知った猿山連合軍は一度ジャヤ島に戻ることを決め、そこでエースを待つことにしたのである。

 

 

「ジャヤ島で畑ドロボウに密漁するバカがいるんだ、空島で同じことするバカがいてもおかしくはないか……」

 

 

 大小の切り株をテーブルやイス代わりにして和気あいあいとお互いの近況報告を知らせる。エースから空島の状況を教えてもらったクリケットはそんなことを述べた。

 

 

「お前ら待たせたな! ジャヤ島空島名物フルコースだ! 食ってけ!」

 

 

 そこへ料理を載せた皿を両手に持ったサッチたちがやって来て、日がまだ高いうちにあるにも関わらず、そこかしこで酒盛りを始めてしまう。やがて日が完全に沈み、次第に夜がふけていく。酔い潰れて動けなくなった人間が続出していく中、サッチはエースに「海賊を続けるのか?」と問う。

 

 

「──あの戦争で命を落とした連中の体の一部がおれの体の一部となって今のおれを生かしてくれている。そいつらが──

 

 “もう一度、海賊をしてバカをしたい!”

 

 ……って、言っている気がしてな……」

 

 

 どこか寂しげな表情でエースがそう答えると中身の入った酒瓶を一気に煽って飲み干す。サッチもまた「そうか」と、ちびちびと盃に口をつける。誰かがつけた焚き火が辺りをうっすらと赤く染め上げる。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

【魚人島──リュウグウ王国】

 

 

 王国転覆を狙ってクーデターを起こしたホーディ・ジョーンズ。彼が麦わらの一味の手によって幹部ともども倒されて敗北し彼らのクーデターは失敗に終わった。その後、麦わらの一味は魚人島でさんざん飲み食いをした後、新世界に向けて海上へと船を浮上させ魚人島を後にする。

 

 

「強力な爆弾の入った「玉手箱」じゃもん?」

 

『──ああ、そうだ。私はそれが欲しいんだなー』

 

 

 麦わらの一味がいなくなった後の王宮で電伝虫でルーミアと通話しているネプチューン。ルーミアがビッグ・マム主宰の結婚式に招かれていることを知っている彼は結婚祝いの品として四皇にふさわしいものを所望するだろうとは思っていた。

 

 

「……………………じゃもんっっっ!!!?」

 

 

 だがルーミアが欲しがっていたものはよりによって「爆弾」である。これにはネプチューンを含めてその場に居合わせた一同は面食らった。さらにビッグ・マムが行う結婚式を取り巻く、その複雑な環境──ビッグ・マムによるジェルマ王国暗殺、傘下に加わっているはずのベッジによるビッグ・マム暗殺等──に言葉を失う。

 

 

『──お前たちは、そうだなー

 

「このルーミアに脅されて協力せざるを得なかった」

 

 ……とでも言えばいいかなー?』

 

 

 場合によっては全ての責任を自分に押し付けても構わないというルーミアの発言にネプチューンは納得せず、また受け入れ難かった。

 

 

「“ドロボウ対策に用意したもの”と“ホンモノ”を間違えて渡してしまった。全てはこのネプチューンの不注意によるもの……これ以上の譲歩できんじゃもん」

 

 

 そう、きっぱり言い放つネプチューン。その後も話し合いは平行線を辿るが、やがてルーミアが先に堪忍袋の緒が切れ……「このガンコじじい!!」と悪態を吐き、ネプチューンもまた売り言葉に買い言葉で「小娘ふぜいが!!」と両者同時に電伝虫の受話器を叩きつけるように切った。

 

 

「あの娘には我々、魚人や人魚がいつまでも守られてばかりの存在ではない。……ということを思い知らせる必要があるじゃもん」

 

 

 「かといって今、自由に動かせる兵がおらん」と腕を組みつつ、思い悩む。先のクーデターの件の影響で兵士たちの大半は魚人街というスラム街の見回りや破損した建築物の建て直しや撤去等に人員が充てられているのである。

 

 

「ならばワシが行きましょう。向こうにはワシが所属している「タイヨウの海賊団」もおる。最悪、どさくさ紛れに逃がすことぐらいはやってみせましょう」

 

 

 そこにジンベエが名乗りを上げた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)「新世界」】

 

 

 白ひげの故郷「スフィンクス」

 

 

 そこには彼の遺体が丁重に葬られており、ついでに先の戦争で死んだことになっている「エース」の墓標も存在している。その墓標から離れた場所にはルーミアの命令で敵討ちを成し遂げたものの、亡くなってしまったスクアードと船員たちの墓が建てられている。さらに生き残った船員たちが墓守の番をしていた。

 

 

「ビッグ・マムがルーミア嬢さんの暗殺を企んでいるだと!?」

「戦力を取り込むためだけに……」

 

 

 その彼らの下にラフィットが訪れていた。

 

 

「ホホホホホ。無論、ただの憶測に過ぎませんが相手はあの四皇の一人ビッグ・マムですよ? “備えあれば憂いなし”という言葉もあります。戦力は多いにこしたことはございません」

 

 

 「証拠になるかどうかはあなたたちの判断に任せますが、こういうものがあります」とテーブルの上に並べられていくのは結婚式の進行が詳細に書かれている書類。それとは別に計画されている「ジェルマ王」暗殺の計画書の束の数々。

 

 

「ジェルマ王の暗殺の他に別の人物の暗殺を企てていてもおかしくはない、と思いませんか? ホホホホホ」

 

 

 そう尋ねるラフィットに胡散臭さを感じつつも船員たちは頷き、彼に尋ねた。

 

 

「おれたちに何ができる?」──と、

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)──海中】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)、後半の海「新世界」に向けてルフィたちを乗せた船が海上へと浮上していく。浮上していく船の中で彼らは思い思いに過ごしていた。

 

 

「……にしても意外よね。てっきりミョスガルドさんも仲間に誘うのかと思っていたわ」

 

 

 そんな中、ナミが今回のルフィの行動──仲間の勧誘に関してルフィと話をしていた。

 

 

「だってあの天竜人のおっさんって天竜人なんだろ?」

 

「言いたいことは分かるけど何を言ってんのよ? ……まあ、天竜人らしくないのは本人も認めていたけど……」

 

「だからさ、あのおっさんが海賊になったら他の天竜人に嫌われるんじゃないかなと思ったんだ」

 

 

 なんてことないように言うルフィに彼を除く船員たちが驚き、言葉を失う。彼らの変化に首を傾げながらもルフィは言葉を続ける。

 

 

「たぶんルーミアは天竜人の中にも「いいやつ」と「わるいやつ」がいるってことをおれたちに伝えたかったんじゃないかなーと思ってな、そんな気がした」

 

 

 そう言葉を締めくくるルフィ。船はやがてクジラの群れに遭遇し、彼らの乗る船はクジラの頭に乗せられ、そのまま海中を上っていく。

 

 




 
ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

ガラハド「念願のにゃもし。を手に入れたぞ!
 そう、関係ないね
殺してでも奪い取る
 頼む、譲ってくれ


▪️サブタイトル、歌の歌詞だったと思うが何の歌か分からん。

▪️他の作者さんは本編と関係ない話
 ~話数記念とか、UA~突破記念とか、クリスマス記念とかで
 特別回というのをやるが、私にはそんな余裕はない。スマン

▪️朝の5時を過ぎている。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点等の報告ありがとうございます。

▪️前回のあとがきに書いたの、全部書けなかった。

▪️次回? パンクハザード? 
 ほとんどルーミア関わらんし、いらんじゃろ。
 問題はドレスローザよ。いやホントどーしよーかーなー。
 麦わらの一味、別行動、多すぎ。

▪️M:TG

 一回勝って一回負けた。
 似たようなデッキなのに解せぬ。

▪️寝るおー。おやすみー。

 =追記=

▪️Mr.3が飲んでいたものをコーヒーから紅茶に変更よ。
 


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“ ドレスローザ王国 ” での騒動
55話 ドレスローザ王国に宵闇のルーミア


注)パンクハザードはほとんどはしょった。


 

 

 海面の下、海の中を1隻の潜水艇が漂っている。その潜水艇から伸びている潜望鏡が前方にある島を捉えており、ちょうどその島から麦わらの一味を乗せた船・サニー号が出航していく様子を見ていた。それからしばらくして生身で空を舞うように滑空する長身の男──ドンキホーテ・ドフラミンゴがその島にある船着き場に降り立つのを確認すると、潜水艇は島を目指して静かに移動を始めた。

 

 

 

 

【パンクハザード】

 

 

 

 

 島の船着き場にて一方的にスモーカーを痛め付けているドフラミンゴ。周囲にいる海兵たちがやめるよう涙ながら懇願するがドフラミンゴは聞く耳を持たず、スモーカーを痛め続ける。そのドフラミンゴの近くには彼の部下である二人の男女──ベビー5とバッファローが彼が行う行為を静かに静観しつつも彼の邪魔にならないよう周囲を警戒していた。

 

 

「ぎゃはははは!! おい、アルビダ!! 見てみろよ!! 見覚えのある顔がド派手にやられてるぜ!!」

 

 

 海面を割って派手に水飛沫を撒き散らしながら浮上する潜水艇。そのハッチが開いて中から顔を覗かせたと思えばそんなことを宣うのはバギー。彼はスモーカーを指差しながらゲラゲラ笑う。名を言われたアルビダは出入口に居座るバギーを鬱陶しそうに押し退けて外にいるドフラミンゴと彼に足蹴にされて床に伏せられているスモーカーを見ると「あら、ホントだわ」と不機嫌な顔つきから一転して顔をにやけさせる。そんな彼らの出現にドフラミンゴは露骨に舌打ちを打ち、海兵たちは新手の海賊に緊張していたが相手が七武海のルーミアの手下と知って安堵の息を吐く。

 

 

「そいつを殺りたい気持ちはひっじょ~~~うに理解できるがよ~~~、そいつをど~~~しても生かしておきたいっていう物好きな連中がいてなあ? おれたちはわざわざテメェにそれを報せに来たってわけよ?」 

 

 

 そう言うと潜水艇から飛び降りてきれいに着地を決める……いや、床から僅かに宙に浮いて止まると懐から一匹の電伝虫を取り出してドフラミンゴに見せるように手のひらに載せる。その電伝虫の頭にはリボンが巻かれており、どこかルーミアを思わせる飾り付けが施されていた。

 

 

『──ドフラミンゴだなー? わははははー!』

 

 

 その装飾が施されている電伝虫からは期待を裏切らずルーミアの声が流れてきた。そしてルーミアがドフラミンゴと通話をした後、ドフラミンゴは苦虫を噛み潰したような険しい顔つきでベビー5と一緒にバッファローの背に乗って飛んで島から去っていった。

 

 

『──その島で手に入る「悪魔の実」はお前の好きにしていいぞー、ただし……』

 

「わ──ってるって、自分たちで使うか、身内に売れ、だろ?」

 

『……それとだなー……』

 

「心配性だなー、おめぇはよー、ちゃ──んと大会受付までには間に合わせるって! ぎゃはははは!!」

 

 

 何がおかしいのか一頻りに笑った後、一部始終見ていた人間たち──海兵と島の研究所を仕切っていたシーザーの元部下たちに振り返る。

 

 

「つーわけだ。この島の道案内をよろしく頼むぜ? 無論、いやとは言わねえよな~~~?」

 

 

 下卑た笑みを浮かべながら、ほとんど脅迫に近い形で彼らにそうお願いした。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 海中を突き進む潜水艇の中、腕を組みつつイスにふんぞり反って座るバギー。彼の目の前にある机の上には小さな宝箱が二つ置かれていた。中身はともにパンクハザードで手に入れた悪魔の実が入っている。

 

 

「あとはドレスローザで行われるコロシアム、そこの景品に出される『グラグラの実』があれば、おれの「バギーズデリバリー」は安泰ってもんだぜ!」

 

 

 さして広くない潜水艇の中でバギーの如何にも上機嫌な笑い声が響く。

 

 

「よ~し、テメェら巨人のハイルディンに連絡を入れておけ、ホントならウィーブルを参加させたかったんだが、ドフラミンゴの野郎が認めなかったからなぁ……、あんちきしょうめぇ……」

 

 

 そう愚痴るバギーにアルビダが「ハイルディンに入手させてウィーブルに食わせればいいんじゃないのかい?」と提案すると「なるほど」と一人納得し、案を出したアルビダをバギーは褒めちぎる。

 

 

 もっともその後、ドレスローザの受付にて「その場で食す」という条件が付け加えられたのを知ったバギーが地団駄を踏む彼の姿を見られることになる。

 

 

 

 

【ドレスローザ王国】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)「新世界」にある国家であり、王下七武海の一人である「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」が治めている国である。今、その地にルーミア一行が滞在しており、そのせいもあってか国内は不穏な空気が漂っている。

 

 

 何しろ、ドンキホーテ・ドフラミンゴは戦争の引き金を引いた存在と言える人物であり、エドワード・ルーミアはその被害者の遺族といえる存在なのだから…… もっとも彼女はエドワード・ニューゲートとは血の繋がっている親子関係ではないが……

 

 

 その噂の渦中であるルーミアとその一行は今現在ドフラミンゴが手配したホテルに滞在しており、部屋にある大きな丸いテーブルを囲んで談話をしていた。

 

 

 その場にいる主な面子は……

 

 

・バギーズデリバリーの座長を務める「バギー」と、自称、白ひげの息子「エドワード・ウィーブル」

 

・白ひげ海賊団、船長代理「マルコ」

 

B・W(バロック・ワークス)のNo.2だが通称「Mr.3」

 

・アヴドゥルの名と姿を借りた「エース」

 

・戦う天竜人「ミョスガルド聖」

 

・そして宵闇ノ海賊団、提督「ルーミア」

 

 

 ──その気になれば一国を落とせるだけの戦力がその場にいた。

 

 

「一応、念のために聞くが本当に大丈夫なんだろうなあ?」

 

 

 訝しげに尋ねるバギー。彼を含めここにいるメンバーはこの島に来る船の中でドンキホーテ・ファミリーの中には遠くのものを見る千里眼の能力を持ち、さらに相手の目を覗き込むことで思考すらも読み取れる悪魔の実の能力者がいることを事前に知らされている。

 

 

「今もこうしている間にその女に覗き見されてるのは確かだなー、連中はここで行われていることについて話をしているぞ」

 

 

 両目を瞑り、空中に円を描くようにくるくる回しながら喋るルーミア。彼女はその間にもドレスローザ全土に電波を飛ばして人々の会話──主にドフラミンゴ・ファミリーの会話を盗み聞きしている。

 

 

「ボン・クレーが麦わらの一味と接触、コロシアムに出場させることに成功させたみたいだなー」 

 

 

 そう言って閉じていた瞳をうっすらと開け、テーブルに置かれているコロシアムの絵柄が描かれているカードを指でとんとんと軽く押す。

 

 

「こちらが何もしなくても麦わらの一味たちが勝手に動いて『ホビホビの実』でオモチャ化した人間たちを元の姿に戻してくれる」

 

 

 言って立ち上がるルーミアに他のメンバーも立ち上がる。ルーミアは一人一人の顔を見ながら声をかけていく。

 

 

「ハイルディンにはちゃんと説明したか?」

 

「ああ、ホビホビの実のことはちゃんと伝えておいたぜ」

 

 

 「抜かりはない!」と意気込みを見せるバギー。

 

 

「聖地マリージョアの事件を考えればドフラミンゴとは会わない方がいいと思うけどなー?」

 

「それでも彼とは一度話がしたいのでな」

 

 

 ルーミアが危険性を訴えるものの、それでもミョスガルドはドフラミンゴと会うことを決意する。

 

 

「アヴドゥル。ドレスローザのゴタゴタが終わったら麦わらの一味、ルフィとともに行動してもらう。海軍に目をつけられたくないからなー」

 

「ああ、わかっている。おれは元々、一人で海賊をしていたからな、船員とかいなかったし、荷物とか船とかの問題はないから安心してくれ」

 

 

 アヴドゥルと呼ばれているエースがそう答える。

 

 

「ウィーブル。グラグラの実が他のやつのものになるけどいいのかなー?」

 

「バギーが言ってた!! グラグラの実を食べたら『グラグラの実のおかげで強くなった』と言われてバカにされるから、悪魔の実を食べないで最強を証明した方がいい。その方がとーたんが喜ぶだろうって!!」

 

 

 大粒の涙を流しながら語るウィーブル。彼の背後では得意気な顔で親指を立てて見せるバギーの姿が見えた。

 

 

「マルコは今回のことについてどうだ?」

 

「オモチャ化した人間を戻すのは賛成だよい。……だが麦わら一人でドフラミンゴと戦わせるのは賛同できんよい」

 

「海賊王を目指す男がドフラミンゴぐらい倒せないようでは困る。それに麦わらは過去にクロコダイルとモリアを撃破しているぞ? 案外、倒せるかもなー?」

 

 

 複雑な表情を見せるマルコに対し……

 

 

「戦争のことと2年間の失踪を考えれば麦わらの実力を疑うのももっともだなー。……なら、この事件で見極めればいい。それで判断しろ」

 

「そうだったな、われながら軽率だったよい」

 

 

 全員に話しかけた後、「わはははー」そう笑い声を上げながら腕を左右に広げた格好で部屋を出ていくルーミア。他のメンバーも彼女の後に続いて出ていき、やがて部屋の中には誰もいなくなった。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【コリーダコロシアム】

 

 

 ルーミアを提督とした海賊団。その規模は大きく。「四皇」に匹敵する戦力を持ち合わせている。ルーミアの実力もあり、そのため彼女のことを「王下七武海」の一人でありながら「四皇」の一人として数えられることもある。

 

 

 その人物が「グラグラの実」をコロシアムの景品として提示してみせた。

 

 

 事前に告知はされていたが、扱うモノがモノだけに懐疑的な声もあった。……だが相手は七武海、かつ白ひげの娘と認知されていることもあり信用度は高かった。それゆえにその悪魔の実を入手せんがためにさまざまな理由で闘技場に参加する者も多い。それでも疑うものはいた。

 

 

“──その悪魔の実が本当に「グラグラの実」なのか!?”

 

 

 観客席の一角を陣取るルーミアの一団。そこに大声で問いただす者がいた。

 

 

 返答を待ち望んでいるのか、水を打ったように静まる会場。

 

 

 彼女のために用意されたイスに腰掛け、片腕で頬杖を突くルーミア。静まり返った会場を見た彼女はたっぷりと間を置いてから答えた。

 

 

その場で食べれば分かる。

 

 もしも、それが「グラグラの実」じゃなければ……

 

 エドワード・ルーミアは「王下七武海」を脱退し、

 

 エドワードの家名を捨てた上に

 

 今後一切エドワードを名乗らないことを誓おう

 

 

 ルーミアが言い終えてしばらく経ってからコロシアムが歓声に包まれた。

 

 




 
( ´・ω・)にゃもし。
にゃもし。「あけおめー。
    この小説の更新がクリスマス・プレゼント兼お年玉じゃ。
    ふぉっふぉっふぉっふぉ。


▪️あけおめー。

▪️朝の4時だと!?

▪️パンクハザードは思い切りはしょった。
 でもちょっとだけ書いた。

▪️誤字脱字、おかしな表現、矛盾点等の指摘、ありんす。

▪️ONE PIECE二次新作増えると嬉しいネ。
 更新が途絶えると悲しいZE。
 なんかいつの間にかに削除されてるのあるよね。

▪️正直、この作品がここまで続くとは思わんかった……

▪️次回もドレスローザ王国だなー。

▪️M:TG

 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》使って勝利よ。

▪️あとは活動報告にでも書くべ。

▪️さあ、寝るかー。おやすみー。(。-ω-)zzz


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56話 闘技場でのあれこれ

 

 

【ドレスローザ王国──コリーダコロシアム】

 

 

 ルーミアの宣誓に割れんばかりの歓声が沸き上がり、声が大きくなるにつれて熱気が高まるコロシアム内。それも徐々におさまり声量もざわつく程度になったころを見計らってルーミアは警告を発した。

 

 

「──なんらかの手段でこのコロシアム以外の場所や、こちらが指定する方法以外の不正な手段で『グラグラの実』を入手した場合、この私と大会主催であるドフラミンゴの顔に泥を塗ったとして……」

 

 

 おもむろに右腕を真上に真っ直ぐに高く掲げるルーミア。その腕に雷を纏わせるとその腕から極太の雷の束を上空に向かって放出、それが天高くにて大樹のように幾重にも枝分かれし、やがてその一本一本が海面に落下、数瞬の間、眩い閃光が島を覆った。その光景に観客はもとより出場する選手やコロシアムの外にいた人間たちも唖然とする。

 

 

「その場合、文字通り天罰を下すことになるから覚悟するように、わははははー!」

 

 

 ルーミアが披露した「ゴロゴロの実」の能力とその威力を目の当たりにしたせいかコロシアム内は一気にしんと静まり返る。そんな彼らの心情など知らないとばかりにルーミアの少女特有の声が響く。

 

 

「『グラグラの実』はさきほど見せた雷以上の破壊力を生み出す。そして今回のコロシアムの景品がその『グラグラの実』だ」

 

 

 「グラグラの実」の名前が出てきたこともあってか、少しずつだが喧騒を取り戻す。

 

 

「やい、テメエら!! いいか、よく聞け……」

 

 

 それでもゴロゴロの実の能力を目の当たりにしたせいか、戦々恐々する見物人たち。そこでバギーが口を開く。彼は話術で観客席の人間とコロシアムに出場する選手たちを焚き付けてその気にさせ、コロシアム内はさきほど以上の異様な興奮に包まれた。

 

 

『──ドフラミンゴが失脚すれば戦力を求めて「バギーズデリバリー」に依頼が殺到する可能性がありますよ?』

 

 

 ここに来る道中、今この場にいないラフィットからそう耳打ちされたバギー。はじめは気乗りはしなかったが彼だが、ドフラミンゴの失脚した場合のメリットを聞かされたことでルーミアが立てる計画──ドフラミンゴの失脚──に賛同するようになった。

 

 

(……麦わらが失敗しても、おれたちとルーミア、さらに海軍まで出張ってるんだ。負ける気がしねえ。……噂の地下工場もこの際、いただいてしまうのもわるくねえなあ……)

 

 

 内心、そんなことを考えていたバギー。自分が裏の世界を思いのままに動かせる光景を思い浮かべ、思わずほくそ笑む。

 

 

「『グラグラの実』争奪戦にしけた戦いは似合わねえ!! あの世にいる白ひげがつまらねえ戦いを望んでいると思うか!? なら答えは一つだ!! さあ!! テメエらド派手に暴れようぜ!!」

 

 

 「あの世にいる白ひげに見せつけてやれ!!」バギーがそう締め括るとコロシアム内は一層盛り上がりを見せ、かくして「グラグラの実」の争奪戦が始まった。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 今回のコロシアムはAからDの計4つのブロックでサバイバル戦を行い。各ブロックで最後まで勝ち残った各1名、計4名が決勝戦に駒を進めることができ、そこで改めて争奪戦を行う手筈になっている。そして最後の争奪戦ではエース改めアヴドゥルが出場することになっており、彼からカギを奪い取り、悪魔の実が入った宝箱を持つルーミアがいる玉座まで赴き、そこでようやく入手することになる。

 

 

「──鳥が目を失ったみたいだなー……」

 

 

 そんな中、ルーミアは眼下で行われているAブロックのサバイバル戦を観戦中にそんなことをポツリと漏らす。彼女が言う「鳥」と「目」の意味をあらかじめ教えられたメンバーは三者三様の反応を示すが動く素振りは見せない。ここにいる一同は麦わらの一味がドレスローザにいるオモチャたちのオモチャ化を解除して元の姿を取り戻すまで動かないようルーミアから言い含められているからである。

 

 

『──勝者は謎の覆面選手「ダリオ・ブランドー」だ!!!!』

 

 

 そして一同が見ている前でAブロックの優勝者が決まった。本来ならバージェスがその場にいたが、今回、彼は出場していない。

 

 

「誰だ? あれは?」

 

 

 誰に言うともなく尋ねるルーミアにMr.3が答える。他の面子も気になるのか大人しく聞き入る。

 

 

 Mr.3曰く、他国からの参加者で、素性は不明──とのこと。しかし彼は続けて、あの体格と鼻に何よりもここまで漂ってくるほどの酒臭さに見覚えがある。……と言い、そして最後にその名をゆっくりと告げる。

 

 

 大酒の『バスコ・ショット』

 

 

 

 

「いろいろと気になるみてえだけどよお、要はあいつに勝たせないようにすればいいだけの話じゃねえのか?」

 

 

 謎の覆面選手の目論見等に考えを巡らす一同だったが、バギーの言う通り、決勝戦で倒してしまえばいい……ということもあって、覆面選手の正体を探るのは一旦、保留することとなった。

 

 

 続くBブロック。目まぐるしい攻防と軍師ダガマの策略による共謀や裏切りで順当に数を減らし…… 最後、「戦う王」で知られるエリザベロー2世の伝家の宝刀キング・パンチが解き放たれて決着がつくかと思われたが、物理的な衝撃波を伴うそのパンチを「人食」バルトロメオが悪魔の実の能力で防いでみせ、能力を用いてエリザベローを倒した。

 

 

 勝ち残ったのが悪魔の実の能力者ということもあり、エースがルーミアにその場合はどうするのか? ……と尋ねた。

 

 

「こちらで買い取るか、代わりの悪魔の実を用意するか、だなー。優勝者がルフィだったらお前を押し付ける」

 

 

 代わりの悪魔の実ということでバギーが、まさかおれが手に入れた悪魔の実のことじゃねえだろうなあ? と突っ掛かるが……

 

 

「グラグラの実と交換するぞ?」

 

 

 ……の一言であっさりと了承する。

 

 

 そしてCブロック。ルーシーという偽名を使ったルフィが出場。開始早々に猛牛に跨がって爆走、バギーが推している巨人ハイルディンの振り下ろしによる一撃を猛牛もろとも食らうも無傷で済み、逆にハイルディンを一撃で下す。そして最後まで残った八宝水軍の元棟梁である首領・チンジャオと激闘を繰り広げ、見事打ち倒してみせた。

 

 

 戦争以降、久方ぶりに見せたルフィの戦いぶりから確実に強くなったことを感じ取り、感心する一同。バギーだけはハイルディンを倒されたことに怒りを露にしていたが……

 

 

「……革命軍の人間がルフィと接触して入れ替わったみたいだなー」

 

 

 ルフィとチンジャオの激闘の余波で二つに割れてしまった闘技場。その修復のために入れ替え作業が行われているコロシアム内。その間にもルーミアはドレスローザ王国全土に電波を飛ばして主要人物の会話を盗み聞きをする。そこで飛ばした電波の一部、コロシアムの内部にてルフィが革命軍の人間であるサボと入れ替わったことをルーミアは知る。

 

 

「相手は革命軍、参謀総長のサボだなー」

 

 

 「サボ」という人物の名を聞いたエースが僅かながらに身体をこわばらせるのを確認してからルーミアは言う。

 

 

「……ルフィは革命軍のボスの息子だからなー、向こうから接触があっても不思議じゃない」

 

 

 「決勝戦で確かめてみるか?」とルーミアはエースにそう尋ねると彼は「……ああ」と短い返事を返し、それきり押し黙る。

 

 

 最後のDブロックでは虐殺行為を行なった前国王であるリク・ドルド3世の孫娘ということでレベッカの入場と同時に大ブーイングが発生するものの、見るに見かねた同じブロックに出場していたキャベンディッシュが観客をたしなめる……という場面が見れた。

 

 

 試合は最初こそ騒々しく始まり、途中、キャベンディッシュが試合中にも関わらず闘技場にて爆睡。そのことにより彼のもう一つの人格である「ハクバ」が現れ、瞬く間に出場選手を切り伏せ、全員を切り捨てた後に再び寝入ってしまう。結果、最初に立ち上がったレベッカが決勝戦に出場する機会を手に入れた。

 

 

 決勝戦出場に喜ぶレベッカだったが、観客席にいる人間たちはおもしろくないらしく彼女に対して無遠慮に罵倒を浴びせてくる。そんな観客を黙らせたのはルーミアの雷だった。観客席に向かって四方八方に放たれた雷だったが、彼女が観客に当たらないようにコントロールしているらしく、雷による被害は一人も出なかった。その後に有無を言わさない「黙れ」の一言に全員が沈黙。

 

 

「私とともについていく気はないか?」

 

 

 静まり返るコロシアム内、レベッカに向けて放ったルーミアの勧誘の言葉に呆気を取られる彼女。

 

 

「無論、すぐに返事を寄越せとは言わない。考えておいてほしいなー、わはははー」

 

 

 ルーミアの突然の申し出に思わず「……あ、はい」と返事をするレベッカ。観客も七武海相手では強くは言えないのか、これ以降レベッカに対してブーイングを行うようなことはなくなったという。

 

 

「おいおい、いいのか? どうみても国に関わるような厄介事を持ってるぜ、あのねえちゃんはよお~」

 

「バギー座長の言う通りだガネ。少なくとも事件が解決するまでは関わらない方がよいと思うガネ」

 

 

 ルーミアの勧誘に対してやや否定的なバギーとMr.3。彼ら二人に対して他の面子は、というと……

 

 

「ねーたん! とーたんならあの子を助けるはずだ!! おで、だずげだい!!」

 

「白ひげ海賊団は元よりお人好しで人助けをする集団だよい」

 

「そうだな、少なくともこの国に置いておくよりはいいんじゃないのか? おれは歓迎するぜ?」

 

 

 肯定的な意見を述べる。そして最終的な判断を提督であるルーミアに委ねる。

 

 

「私があの場でああ言ったのは観客を黙らせるためだったけどなー、それよりアヴドゥルは決勝戦の準備をしとけ、あのサボとかいう男の正体が気になるからなー」

 

 

 「嘘も方便」とレベッカを勧誘した経緯をあっさりと話し、話題を強引に変えるべく、決勝戦とサボについて触れる。彼らも革命軍の動向が気になったのか、ルーミアをおちょくることなく大人しく聞き入る。

 

 

 やがて決勝戦の舞台が整い終えて、各ブロックから資格を手に入れた選手たちが次々と入場し、場は盛り上がりを見せる。

 

 

 そして各ブロックから1名ずつ計4名とはべつにドフラミンゴ・ファミリーからはディアマンテが出場。さらに……

 

 

『──宵闇ノ海賊団からは謎の選手「アヴドゥル」!! 選手たちはこいつから宝箱の「カギ」を奪い、さらに玉座にいるルーミアから「グラグラの実」の入った宝箱を貰ってようやく悪魔の実を口にすることができる!!』

 

 

 司会を務める男──ギャッツが今回の争奪戦の内容を教えつつ、各選手のプロフィールを紹介していく。そして最後にルーミアにマイクを渡すと彼女に選手や観客席に向けて「何か一言を……」とお願いする。

 

 

「特にないなー、とっとと始めていいぞー、わはははー」

 

 

 気の抜けた返答に多少がっかりするギャッツだったが、すぐに気を取り直して試合開始のゴングを鳴らした。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

魔神にゃもし。「お前のハーレムを叶えてやろう。
       ただし 男の娘 か 漢女 のみとする。

▪️朝の6時クポ。

▪️次回、どしよかねー。

案1)麦わらの一味やローのあれこれ
 
 めんどい。

案2)闘技場、決勝戦。
 オモチャ化、解除。やったね。
 
 上を書かなくて済む。


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57話 新たなグラグラの実の能力者とゲームの始まり

 

 

 一部の例外(ヤミヤミの実など)を除いて、自然(ロギア)系の能力者たちは己の体を自然物に変化させることで相手の物理攻撃をすり抜けることができる。その体質のため、自然(ロギア)系の悪魔の実を食した能力者に対して攻撃を加えることは困難であり、逆に彼らの攻撃は普通に通る。それゆえに事前に対策等を用意していなければ一方的にやられてしまう。そのことから数ある悪魔の実の中でも最強種と謳われている。

 

 

 メラメラの実を食べたエースもまたその一人である。だが闘技場の上にいる彼は体を炎に変えることなく敵の攻撃を捌きながら対応していた。彼は万が一、自分の正体が悟られるのを恐れて消極的な戦いをしており、メラメラの実の能力を一切使わずにもっぱら体術と空島特産の(ダイアル)を駆使して戦っていた。

 

 

 

 

 決勝戦ということで特設のステージが設けられた闘技場。……といっても各予選で使用していたリングとさほど変わった箇所はない。ただ一つ違う点はリングの端に観客席に向かって延びている階段が一ヶ所あり、その先に玉座に座っているルーミアがいるということぐらいだろう。そのルーミアの周囲には万が一のために彼女を守る護衛としてエース以外の人間たちがいる。

 

 

「……思ったよりも苦戦しているなー。地下は……」

 

 

 両肩が露出した漆黒のドレスを身に纏い。身の丈に合っていない玉座に座って眼下でカギをめぐって争う選手たちを見ながらそう呟くルーミア。彼女は今現在、右腕で頬杖を突きつつ、悪魔の実が入った小さな宝箱を閉じた膝の上にちょこんと載せて、手持ちぶさたになった左手で宝箱を弄りつつも、主要人物の動向を探るため、彼らがいるであろう場所──ドフラミンゴ・ファミリーがいる王宮やオモチャの家と呼ばれている人工悪魔の実を製造しているSMILE工場、さらにはオモチャ化したものたちを強制労働させている地下の港……を重点的にそこに電波を飛ばしていた。

 

 

「──オモチャ化が解除される……」

 

 

 ぼそりと呟くルーミアに気を引き締めて身構える一同。やがてドレスローザ王国のいたるところでオモチャ化したものたちが元の姿を取り戻すと同時に失われた記憶を取り戻す。それは当然、コロシアム内にいるオモチャたちも同様に元の姿を取り戻す。大半は人の姿だが、中にはゴリラや大蛇といった猛獣の類いも交ざっている。Mr.3はそういった放し飼い状態の猛獣の手足に液状化した蝋を巻き付け、巻き付くと同時に即座に硬質化させて拘束していく。

 

 

「……思い出したよい」

 

「ああ、エースは一人で航海していたわけじゃなかったなー」

 

 

 オモチャ化解除の影響はマルコとルーミアにも及んだ。二人は苦々しい表情で闘技場を見ていた。見ればエースは戦闘中にも関わらず右手で頭をおさえ、体をわなわなと震わせていた。正体を隠すために被っている石仮面で顔を覆っているから表情は見れないが、おそらくドフラミンゴに対して怒っているのだろう……とエースをよく知るルーミアとマルコは判断する。

 

 

 そんな隙を見せるエースを対戦している相手が放っておくはずがなく、そのうちの一人であるサボがエースに急接近、腕力に任せて石仮面を破壊、ついでに腰にあったカギを奪い取った。そしてレベッカに投げ渡すと自身はバルトロメオとともにレベッカのあとを追おうとする他の出場者──ディアマンテとバスコ・ショットの足止めに徹して彼女を階段へ、その先にいるルーミアがいる玉座へ向かわせた。

 

 

「おめでとう。まさか君がここにたどり着けるとは思わなかったなー」

 

 

 ほどなくして玉座の前にたどり着くレベッカ。ルーミアは労いの言葉を述べるとレベッカに宝箱を手渡し、彼女がそれを受け取ると……

 

 

「ルーシー!!」

 

 

 闘技場の方へ振り返りサボの偽名を叫ぶ。闘技場の中央にいたサボが短く答えると拳をリングの床に押し当て力を込める。途端にサボの掌を起点にクモの巣状に亀裂が伸びていき、それがリングの端にまで入り、まもなく砕けた。

 

 

 リングが砕かれ、ルーミアの下にいるレベッカ以外の選手は足場がなくなる前にバラバラに飛び退いて観客席の最前列に避難して難を逃れる。レベッカはそのうちの一人、サボに向かって宝箱を投げ渡す。

 

 

「お願い!! それでこの国を救って!!」

 

 

 レベッカから宝箱を受け取ったサボは両手でこじ開け始める。カギを使わず開けようとするサボの行動に周囲の人間が思わず「いや、カギを使えよ!」と助言するも本人は聞き入れず。そうはさせじとディアマンテとバスコ・ショットが妨害に入ろうとするもバルトロメオのバリアで阻まれる。

 

 

 やがてサボの腕力によって宝箱がひしゃげ、宝箱の中に入っていたものが露になる。そこに入ってあるのは一個の悪魔の実。サボは中身を取り出しそれを手に取って口元に運んだ。

 

 

「おいおい!? この場合はどうなるんだ!? 『グラグラの実』を手に入れたのはそっちのねえちゃんだが、食ったのはあっちのヒゲのにいちゃんだぞ!?」

 

 

 近くにいるレベッカと観客席にいるサボを交互に指差してバギーがそう尋ねる。観客席にいる見物人たちも気になるのかヤジを飛ばしてくる。

 

 

「勝者は『ルーシー』だ」

 

 

 静かにそう告げた後、坦々と「コロシアム内にて入手する」というルールに違反はしていない。……と説明をし、最後に──

 

 

「Cブロックでの首領チンジャオとの激闘は素晴らしいものだった。グラグラの実を手にする資格は十分にあると私は思う。お前たちもそうは思わないか?」

 

 

 観客にそう問うルーミア。観客たちもまたCブロックでの試合を思い浮かべたのか、ルーシーに対してやや好意的な意見が出始める。中にはレベッカにやるよりはマシだ、というひねくれた意見もあったが、全体的には賛成の意見が多い。

 

 

『「グラグラの実」争奪戦の優勝者は「ルーシー」だ!!!!』

 

 

 そして最後に司会のギャッツの優勝者の名を告げると歓声が沸き上がった。

 

 

「みんな聞いてくれ!!」

 

 

 歓声が静まるのを見計らって、オモチャ化していた男の一人がそう叫ぶ。内容は自分たちがオモチャ化した経緯とドフラミンゴが陰で行なってきた数々の犯罪、彼らは余すことなく全てを暴露、ドフラミンゴの行いを知った彼らは逃げるようにしてコロシアムから出ていく。

 

 

 

 

「悪いが用事ができた。この国はかならず救う」

 

 

 観客のいなくなったコロシアムにて、サボはレベッカに向けてそう言い残すとコロシアムの中央、リングのあった大穴へと飛び込んだ。

 

 

 その後、王国をすっぽりと覆う巨大な鳥カゴが形成され、次いで岩石を操る能力を持った能力者──ピーカの力でリングに空いた大穴から一つの建物──工場がせりあがって地上に姿を現し、次いで花畑の大地が町を呑み込みながら小山のように大きく伸びていき、その上層部には王宮がいつの間にかに移動していた。その間にもドフラミンゴの糸で操られた人々が各地で暴れまわっていた。

 

 

 観客のいなくなったコロシアムにはルーミアたちとレベッカ、レベッカを守るようサボから言い渡されたバルトロメオがいる。彼ら以外には人は見当たらない。彼らが見上げる空には巨大なスクリーンが投影されており、そこにはドフラミンゴが提案するゲーム、その賞金首の顔写真が映されていた。主に映っているのはリク王を始めとした王族、麦わらの一味、革命軍のサボにローが映っていた。そして一際、大きく宣伝され破格の賞金首をつけられたのはオモチャ化したものたちを元の姿に戻した立役者であるウソップ。彼だけが5億を示す星5個がつけられていた。

 

 

「さすがに同じ七武海には賞金をかけられないみたいだよい」

 

「連中は秘密を知ったやつら一人残らず消すつもりなのになー、わはははー」

 

「ギャハハハハ! 麦わらに死の外科医と呼ばれている物騒なやつがいるうえに闘技場にいる連中、革命軍の幹部に海軍大将! さらにおれたちもいるのにか!?」

 

 

 鳥カゴで王国内に閉じ込められているにも関わらず彼らはさほど問題にしていない様子で語り合う。ただ一人、新しい石仮面を被ったエースだけが終始無言だった。そこにドフラミンゴ・ファミリーの一員とおぼしき男の襟首を掴んで引き摺ったウィーブルと電伝虫を載せたトレイを持ったMr.3がやって来る。ルーミアはその電伝虫の受話器を取ると受話器の向こう側にいるドフラミンゴと連絡を取る。

 

 

『──何の用だ?』

 

 

 受話器越しでも分かるほどにえらく不機嫌なドフラミンゴの声が聞こえてくる。そんな彼に対してルーミアは「この私も賞金首に加えろ」とぞんざいな口調で彼に言い放つ。それでもドフラミンゴはルーミアに対して極力、平静を保って問う。

 

 

『……一応、念のために聞くが何のためにだ?』

 

「レベッカが私の部下になった」

 

 

 ルーミアの回答に静かになるドフラミンゴ。ルーミアは構わず話を続ける。

 

 

「上司が部下を守るのは当然だと思わないかなー?」

 

 

 その後、新たな賞金首としてルーミアの顔写真が投影された。ちなみに賞金額は3億を示す星3個である。

 

 

「ドフラミンゴはどっちみち秘密を知った者を一人残らず消すつもりだからなー」 

 

 

 レベッカはドフラミンゴに対抗するためにサボと協力して手に入れたグラグラの実を、自分が食べるよりはサボの方がいいだろうと彼に実を、ルーミアには部下になることと引き換えに助力を願った。その際、ルーミアは先ほどのようなことを述べていた。

 

 

「大船に乗ったつもりでいろ。何しろこのルーミアは有能だからなー、わはははー」

 

 

 腕を組んでふんぞり反るルーミアを見て、自分より年上だが身長が半分ほどしかない彼女にはたして頼って良かったのだろうか、と考えるレベッカだったが、観客を黙らせるために放った雷を思い出してすぐにその考えを改める。

 

 

「ええ、お願いします」

 

 

 そう言いながらルーミアに頭を下げる。

 

 

 まもなくしてゲームが始まった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

前回までのあらすじ

ハーレムを叶えられる。
ただし「男の娘」か「漢女」 

→男の娘

魔神にゃもし。
「ヴァカめ! 
 見目麗しい男の娘が来ると思ったか?
 きさまにはスカートを穿いた
 『ブサイク大総統』がお似合いじゃ!」

 BAD END

→漢女

魔神にゃもし。
「ヴァカめ!
 おっぱいのついたイケメンが来ると思ったか?
 きさまには限りなくゴリラに近いゴリラをくれてやる!」

 GORILLA END

次回
 バッドエンドでもゴリラエンドでもない。
 第三のエンドとは? 
 第3話「心の目で見れば美少女さ……」
 乞うご期待!


▪️朝の5時半頃にできた。

▪️誤字脱字報告、毎度ありがとうございます。

▪️MTG
 テーロスのシールドやってきたZE。負けたZE。

▪️次回は今回の後だねー。ひゃっほー。

▪️そろそろ寝るおー、おやすみー。(。-ω-)zzz


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58話 王国の崩壊

注意)俺TUEEEEというよりは
  俺のサポートSUGEEEE ……って感じ?


 

 

「冗談じゃねえ! あれで3億なんて割が合わなすぎるだろ!」

「ちきしょう、せっかく5億が目の前にいるっていうのに……」

「やっぱりダメだったじゃねえか!! くそ! 誰だよ!? 全員で襲いかかれば『ゴッド・ウソップ』を拉致できるって言ったのは!?」

 

「「 お前だよ!! 」」

 

 

 観客のいないコロシアムの観客席にて、ドフラミンゴが提示する賞金に目が眩み、何をとち狂ったのかルーミア一行に襲いかかったコロシアムの選手の一団。どさくさ紛れにゴッド・ウソップを拉致し、厄介なルーミア一味は海軍かドフラミンゴ・ファミリーに任せるつもりだったようだが……

 

 

 無論、彼らがルーミア一味に敵うはずがなく、誰一人してウソップにたどり着くことなく、モノの数秒足らずで全員、打ちのめされ…… 今は全員仲良く床に這いつくばった体勢でそんなことを愚痴り合う。さらに念のためにと身動きが取れないようにMr.3の蝋を体の上から覆い被せるようにかけられ、拘束された。

 

 

「当然だろ。何せルーミアは凶悪なヤミヤミの実と自然(ロギア)系、最強と謳われているゴロゴロの実、二つの悪魔の実を食った能力者、さらにここにはおれたちもいるんだぞ? ギャハハハハ!」

 

「座長は大して何もしていないのに何でそんなに偉そうなんだガネ?」

 

「こいつは昔からこんな感じだよい」

 

 

 襲撃者たちを無力化したルーミア一味は彼らを前にして、のんきにそんなことを述べる。

 

 

 

 

 ことの始まりは

 

 

 コロシアムに空いた穴からウソップを担いだ小人の集団にロビン、さらに革命軍の一味が出てきてルーミア一行と鉢合わせし、その後に彼らのあとを追うように賞金首目当ての集団が現れ、その集団をルーミア一行が一掃、現在に至った。

 

 

「ここは騒がしいから移動するかなー」

 

 

 その後も散発的にやって来る襲撃者に辟易していたのか、ルーミアが移動を提案、その場に居合わせた一同、特にウソップが激しく了承し、彼らはすぐそばにある王宮があった高台へと能力者たちの能力で即席の階段を作って移動。もっとも全員一緒にではなく正体を晒したサボのみ「やることがある」と言ってコロシアムにとどまり、ルーミアたちは彼と別れた。その高台に移動した彼らはそこで王宮で暴れていたルフィとロー、王宮まで二人を道案内したヴィオラ王女に王宮で囚われていたリク王たちと合流する。

 

 

「あ、3!」

 

 

 合流した直後、Mr.3を目敏く見つけたルフィがローの腕に嵌められている錠の解除を依頼、Mr.3は言われるままに蝋でカギを生成し、解除。そして解除するや否や、ドフラミンゴがいるであろう王宮を目指してローを連れて高台から飛び降りた。続けてその二人をサポートすべく小人の集団とロビン、バルトロメオが無数のカブトムシにヒモをくくりつけ、それにぶら下がって滑空する、という危なっかしい方法で目指す。

 

 

 そうして麦わらの一味たちは王族たちをルーミアたちに半ば押し付ける形でいなくなった。

 

 

「記憶が戻った時、真っ先にドフラミンゴに向かっていきそうだったけどなー」

 

 

 安全を確保したのを確認して、Mr.3に蝋で玉座を作ってもらい、そこに腰掛けながら未だ変装をしているエースにそう声をかけるルーミア。対してエースは「正直、いろんなことが起こりすぎて頭が混乱している。それに親父の時で思い知ったからな……」と気落ちした様子でエースは言った。

 

 

「ドフラミンゴからヤツにお前の捕縛の指示を出した人物を聞き出す。それまでは──」

 

「わかっている」

 

 

(……まあ少なくとも、激昂してドフラミンゴに殴りかかって正体を晒すよりはマシだなー……)

 

 

 内心そんなことを思いながらもルーミアは情報を得るためにドレスローザ王国の隅々に電波を飛ばし、やがて王宮内を駆け抜けるルフィと、彼らに近づく存在を察知する。

 

 

「シュガーが目覚めてルフィのところへ向かうみたいだなー」

 

 

 それを聞いたウソップがシュガーをもう一度気絶させるために狙撃の準備を始め、ヴィオラ王女がウソップの目となってサポートをする。

 

 

 そこに「ワノ国」の侍二人が高台に到着、おまけに賞金首のリストに載っている人間を捕まえに来た王国の住民を引き連れて……

 

 

「Mr.3」

 

「仰せのままに」

 

 

 玉座に腰掛けたままルーミアがMr.3に命令を下す前に彼は即座に行動に出る。床に向けた両腕から大量の蝋を放出、あっという間にくるぶしまで浸かるほどの蝋を床一面に満たし、襲いかかってきた住民たちの足を止めてみせる。

 

 

 そうして足を止めている間にウソップが狙撃に成功、シュガーを再び気絶させる。もっともその場でシュガーが気絶したかどうかを確認できるのは悪魔の実の能力で千里眼を持ったヴィオラと王国全土に電波を飛ばせるルーミアの二人のみだが……

 

 

「すまないが彼らを解放してやってくれんか?」

 

 

 相手をオモチャ化させる能力者──シュガーが再起不能に陥ったことを知って声をかけたのだろう。リク王がルーミアたちに頭を下げてそう頼み込んできた。すぐさまバギーが「また襲ってきたらどうするんだ!?」と反対してきたが、Mr.3が「私の蝋でまた止めればいいだけの話だガネ」と窘め、バギーはしぶしぶ承諾、彼らは解放されるものの、バギーが恐れるような事態は起こらず、それどころか彼らはリク王に向かって膝を床につけて(こうべ)を垂れた。「我々はどうすればいいのか?」と……

 

 

「もう少し待ってみよう。それからでも遅くはない」

 

 

 跪く彼らにリク王はそう言葉をかける。真っ直ぐに見つめる王の視線の先を追うと玉座に腰かけるルーミアに当たる。彼女を当てにしていると考えたのか、数名の人間がリク王に苦言を呈する。

 

 

「待ってください、リク王!!」

「そいつはドフラミンゴと同じ海賊で『七武海』です!! 信用できません!!」

「ドフラミンゴを倒したあと、ここを支配するつもりかもしれませんよ!?」

 

 

 必死に説得を試みるドレスローザ王国の人間たちにルーミア側の人間、バギーとウィーブルが「ドフラミンゴと一緒にするな!」「ねーたんはそんなことしない!」と反論するも騒ぎはおさまらず、天竜人ということもあるのだろう、ミョスガルド聖が宥めることでようやく落ち着きを取り戻す。そして当の本人はというと……

 

 

「海賊相手なら当然の反応だなー、わはははー」

 

 

 ……と他人事のように笑っていた。

 

 

「ここで仲違いしても喜ぶのはドフラミンゴファミリーだけだよい。親しい人間をオモチャに変え、無理矢理に働かせ、この国を嘲笑っていた男の益になるような行動をする必要もあるまい?」

 

 

 マルコからそう言われて押し黙る王国の住民たち。そんな中、ヴィオラ王女が短い悲鳴を上げる。彼女は彼女の義兄に当たる人物──キュロスがドフラミンゴファミリーの幹部であるディアマンテと交戦しているのを千里眼で見ていたのだがキュロスが窮地に追いやられたらしく短い悲鳴を上げた。リク王が尋ねるとヴィオラは状況を教えつつ、両者が戦っていると思われる場所の上空を指差す。そこには無数の棘付き鉄球が滞空していた。

 

 

「「 ええっ!? 」」

 

 

 ……のだが、その全てがルーミアが放った雷で消し炭にされてしまった。

 

 

「余計なお世話だったかな?」

 

 

 幾条もの電気が帯電している左手をヒラヒラさせて問う。キュロスの窮地を救ったことでルーミアに「感謝する」と礼を述べるリク王。その後、キュロスがディアマンテを破ったことを知ると王国の人間たちは歓喜を上げた。

 

 

 だがそう思ったのも束の間、今度は巨大な石人間と化したピーカが現れて、リク王たちがいる高台へと向かってきた。

 

 

「ちょっとルーミアさん!? 無敵の雷であれをどうにかしてくれませんか!?」

 

 

 これには慌てたウソップが涙やら鼻水でぐちゃぐちゃになった顔でルーミアに懇願するも……

 

 

「ゾロがいるではないか。 もう少し仲間を信用してみたらどうだ?」

 

 

 ピーカが拳を振り下ろす直前になってからそう言うルーミア。直後、遠くから飛来してきたゾロが山ほどの大きさと化したピーカを上半身と下半身、二つに分断させた。

 

 

「「 !!!? 」」

 

 

 石巨人が二つに分断されるその光景に敵味方問わず声にならない驚きを見せる。さらにゾロの斬撃はそれで終わらず、空中にいる間に上半身をさらに縦に斬り、石の中に潜ったピーカがいる石人形を輪切りに斬って、石人間の破片へとピーカを追い込ませる。最後には、逃げる先を失ったピーカが石人形を捨て飛び出す。全身に覇気を纏って黒く変色させてゾロに襲いかかるも、ゾロの覇気を纏った刀には敵わず、一刀の下で斬り捨てられてピーカは敗北。……気を失ったピーカがそのまま地面に落下した。

 

 

 しかし、ピーカを倒したものの、石人形の残骸は残っていた。……だが高台の上にとどまっていたその残骸はルーミアの「闇」に全て呑み込まれ、一欠片とて人々の頭上に降り注ぐことはなかった。

 

 

「おれたちをドフラミンゴにぶつけるんだ。それぐらい働いてもバチは当たらないだろ?」

 

 

 ピーカを斬り捨て、刀を構えたまま地面に不時着したゾロ。彼は不敵な笑みを浮かべて高台に向かってそう一方的に告げるとどこかへと移動した。

 

 

「七武海を瓦礫の撤去作業に利用するとはなー?」

 

 

 ピーカが討ち取られたことで先ほどよりも大きな歓声が上がる。そしてほどなくしてヴィオラの口から最後まで残った幹部トレーボルがルフィとローの手によって再起不能にさせられ、あとはドフラミンゴのみになったことを知らされるとますます歓声の声が大きくなった。

 

 

「──それでも『海軍』は動かない……」

 

 

 その時、ぼそりと言ったルーミアに水を打ったように場は静かになる。バギーもまたそこに便乗して海軍に対して悪態をつく。それもあってか徐々にだが海軍に対して不満の声が上がっていった。この時、何名かの人間がおずおずとヴィオラ王女に尋ねる。「海軍は何をしているのか?」と……

 

 

「革命軍の一員と戦闘しています」

 

 

 正直に話すヴィオラ。海軍がドフラミンゴよりも麦わらの一味とローの捕縛を優先していることを知った彼らはここにはいない海軍に向けて憤りをぶつける。

 

 

「海軍はおれたちよりもそっちの方が優先なのかよ!」

「ドフラミンゴを野放しにするつもりなの!?」

「麦わらとローはドフラミンゴを倒そうとしているんだぞ!?」

「なんで彼らの邪魔をする必要があるんだ!?」

 

 

 そこにバギーが加わり、彼の話術もあってか、徐々に過熱化していく。リク王が彼らを宥めようとするが、しばらくは熱が収まりそうにない。

 

 

「ルーミア、お前は何がしたいんだ……?」

 

 

 石仮面を被ったままのエースが困惑した声でルーミアに問う。

 

 

「……親父が敗北した時、親父が死んだ時、親父の敗北を、親父の死を喜んでいたやつらがいる。そいつらに対して思うところがないわけではない。……仕返しにやつらに対して少し『毒』を流そうと思ってな?」

 

 

 淡々と無表情で語っていくルーミア。近くにいたエースたちは静かに聞き流していく。やがて……

 

 

「やつらが王国を守ることよりもルフィ捕縛を優先しているのは……」──と述べた後、もったいぶるように間を置いてから……

 

 

“──事実だろ?”

 

 

 そう告げたのであった。 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…


最終回「勇者が現れた日、魔神が敗北した日」

勇者
「俺の目を…
 たとえ相手がドブスLv99のドブスでも
 年齢相応の美少女もしくは美女に
 見えるようにしてください。あと質感と肌触りも…」

魔神にゃもし。
「………………………………」


 世界は少しだけ平和になった。


───────────────



▪️更新、遅れたスマン。
 テーロス発売で浮かれた。
 神話レアの巨人揃ってさらに浮かれた。

▪️いきおいで書いた。

▪️次回はドレスローザ王国の終わり部分かなー?


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59話 かくして王国は滅びて海賊は奔走する

※お詫び※ 週一更新じゃなくなった。スマン。


 

 

 ドフラミンゴが発案したゲームが開始されてから数刻が経つ。彼が掲げる賞金首たちは捕縛されるどころか、逆に一丸となってゲームの主催者側の人間たちを次々と倒して再起不能にさせていった。その甲斐あって厄介な幹部たちは彼らの手によって軒並み全滅。残す強敵はドレスローザ王国、現国王ドンキホーテ・ドフラミンゴ、ただ一人のみとなった。

 

 

「──オモチャ化が解除されて悪行がバレた時点で逃亡するのが最善策だと私は思うんだけどなー? もぐもぐ」

 

 

 王宮があった高台の上でMr.3作成の玉座に腰掛けつつアップルパイを頬張りながらそんなことを宣うルーミア。

 

 

「ギャハハハ!! 格下相手に尻尾を巻いて逃げたらカッコがつかねえからだろ? おれにはよォ~く分かるぜ、その気持ちが痛いほどによォー」

 

 

 ルーミアの疑問に返答を返したのはバギー。腕を組んだ格好で宙に浮きながら両目を瞑ってうんうんと頻りに頷く。

 

 

「よく言う。万が一、連中が逃げる素振りを見せようならば船に雷を落として逃亡手段を奪うつもりだったくせにだよい」

 

「んー。さすがにそれはもったいないからなー。船を『闇』の中にしまいこんで事が終わったら自分の物にするつもりだったけどなー」

 

 

 そんな会話をするマルコとルーミアに「えげつないな……」と思わず口にするエース。

 

 

 そうしてる間にもヴィオラはルフィとドフラミンゴが戦っている様子をみんなに語って報せる。

 

 

 その二人の戦闘は王宮の屋上から始まり、ルフィの強烈な打撃を食らったドフラミンゴが市街地の中心部まで吹き飛ばされ、ルフィもあとを追って場所を移動。死闘の舞台が王宮の屋上から町の中心部へと変わり、時間が経つごとに二人の戦闘の激しさは増していき、それに伴って戦いの跡があちこちに刻まれていく。

 

 

 そして「鳥カゴ」が急速に(せば)まり始める。

 

 

 王国全土を覆っていた刃物のように鋭い糸でできた檻は始まりこそは非常にゆっくりとした速度で中心部に向かって動いていたが、ドフラミンゴが市街地に降り立った頃から動きがだんだんと速くなり、それに連れて範囲も狭くなっていった。

 

 

 「鳥カゴ」の変化からここにいては危険と判断したリク王が高台に集まっている一同に移動を促し、さらに電伝虫で王国全土にいる国民に向けて呼び掛け、バギーが発破をかける。Mr.3は彼らのために蝋でできた滑り台や階段を作り出し、移動を始め、まだ安全な場所へと向かう。

 

 

「ルフィの『覇気』が尽きたようだなー。息はあるが、ほとんど動けないみたいだなー、わはははは!」

 

 

 高台から階段や滑り台を使って降りていく人々を眺めつつ、電波で戦局を伺っていたルーミア。ルフィの不利を察知した彼女は嬉々とした表情で「ここは任せた!」とそう言うや否や、ウィーブルを呼んで彼の肩に乗っかり、乗っかった状態のままウィーブルともども高台から飛び降りる。

 

 

 ルーミアやヴィオラからドフラミンゴと戦っていたルフィが動かなくなったことを知り、絶望する人間たちがいたが、ルーミアとウィーブルがドフラミンゴの下へ向かったことですぐに希望を見出だし、「鳥カゴ」が完全に閉じる前に決着が付くことをおのおの祈る。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 市街地にて、岩にめり込んだドフラミンゴにとどめを刺す直前に覇気を失い、空中で失速し、地面に落ちたルフィ。落ちた先で身動きが取れず窮地に陥った彼を救ったのはコロシアムの司会を務めていたギャッツとルフィに協力しなかった方のコロシアムの選手たち、さらに海賊団の船員と思われる人間たちであった。睨み合う両者の間、その上空から少女の笑い声が響く。

 

 

「わはははは──っ!!!!」

 

 

 両者の間にある空間、そこに盛大に砂塵を撒き散らして着地し、小さな人物を肩に乗せた大男らしき影が降って来た。

 

 

「ねーたん、コイツらは……?」

 

「んー。コロシアムで司会してたヤツと選手の集まりってところだなー」

 

 

 土煙が晴れて現れたのは薙刀を構え、肩にルーミアを乗せたウィーブル。二人はドフラミンゴを視界の端におさめつつ、周囲を確認、その場の状況を把握していく。そして二人はドフラミンゴを、ドフラミンゴは空から降ってきた二人を、両者は向かい合って対峙したまま油断なく、お互いを見据えて相手の出方を伺う。

 

 

「悪いけど、ここで選手交代だなー。……ウィーブル、お前はルフィを守れ」

 

 

 ウィーブルの肩からコロシアムの司会者──ギャッツに背負われているルフィを見て戦闘の続行は難しいと判断してウィーブルにそう指示を下すルーミア。 

 

 

「……まだ、だ……。まだ、やれる。……10分くれ……」

 

 

 だがルフィはほとんど息も絶え絶えの状態にも関わらず、声を振り絞って戦闘続行の意思を彼女に示す。

 

 

「あとで代価を払ってもらう。それが条件だなー」

 

 

 そうルーミアが告げるとルフィは無言で頷いてみせた。ルフィの無言の返答を見て満足したルーミアは次にドフラミンゴの方に振り向き尋ねる。

 

 

「──それで、お前はどうする? ドンキホーテ・ドフラミンゴ?」

 

 

 尋ねるルーミアに対してドフラミンゴは苦虫を噛み潰したような顔をして、やがて言葉を口に出す。 

 

 

「10分、待ってやる」

 

 

 さしものドフラミンゴといえども負傷した状態で無傷のルーミアとやり合うのは得策ではないと判断し、彼は自身を回復させる意味合いも兼ねて、ルフィが戦える状態になるまで10分待つことを選んだ。その間、ルーミアはドフラミンゴに「聞きたいことがあるんだが……」と声をかける。

 

 

「お前にエース捕縛の命令を出したのは『五老星』か?」

 

 

 そう尋ねるルーミアにドフラミンゴは──

 

 

「……いいや、もっと上だ」

 

 

 人差し指を天に向けながら人を小バカにしたような笑みを浮かべてそう答えた。

 

 

「お前をぶちのめして勝ってもただの自己満足。負けたら大損。おまけに背後には『カイドウ』がいるんだったなー」

 

「……ああ、そうだ。四皇を敵に回すのがどれほどバカげてるのか、白ひげを父親に持つお前なら分かるはずだろ? フッフッフッフ……」

 

 

 「怒れるカイドウを敵に回したくはないなー」とウィーブルの肩に乗っかったまま足をばたばたさせ、アゴに手を当てて思案する素振りを見せるルーミア。ドフラミンゴもまた内心、考えていた。

 

 

(……こいつ(ルーミア)にはヤミヤミの実の能力で物を取り込む能力。配下のバージェスにはドアドア。さらに切断を無効化できるバギー。どいつもこいつも『鳥カゴ』を抜ける可能性がありやがる! くそったれめ! ……いっそのこと「カイドウ」を盾に交渉するか? 最悪ここを捨てて拠点を移すことも考えた方がよさそうだな……)

 

 

 拠点の破棄と移動について段取りを考え始めているドフラミンゴ。ルーミアと交渉をしようと口を開きかけた時、ルーミアもまた考えがまとまったらしく、ドフラミンゴがいる目の前でわざとらしく言う。

 

 

「……となると“麦わら”に“ドフラミンゴ”をぶちのめしてもらって、カイドウの怒りの矛先を麦わらに向けさせるのが理想だなー、わはははは!」

 

 

 ルーミアの言動にドフラミンゴは軽く舌打ちを打つ。懐から懐中時計を取り出して時間を確認すると、未だギャッツに背負われているルフィに向けて言い放つ。

 

 

「──時間だ。“モンキー・D・ルフィ”。十分、休んだろ? フッフッフッフ……」

 

 

(……まずはおれの王国をめちゃめちゃにしたこいつを処分だ。ルーミアとの話はそれからだ……)

 

 

 両手の指先から糸を垂れ流してルフィがいる方へと歩み寄るドフラミンゴ。ルフィはギャッツに無理を言って下ろさせてもらうもやや前のめりの格好で足下もふらふらでおぼつかない。それでも前面にいるドフラミンゴを見据えるために顔は前を向いている。

 

 

 そんなルフィの身を案じてのことか周囲にいた海賊たちが止めに入るもルフィは彼らの手を払いのけて制止を振り切り、それでも力付くで止めようとルフィの肩に手をかける者がいたが、ルフィから発する迫力に圧されて足を竦ませる。やがてドフラミンゴの目と鼻の先に立ち、見上げる形で彼を睨みつける。

 

 

 かくしてルフィとドフラミンゴ、二人の戦闘が再開した。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 当初、再開された両者の戦闘はドフラミンゴの優勢で進んでいた。……否、むしろ、一方的だった。能力を覚醒させて町の一帯を糸に変化させたドフラミンゴ。人の目には見えないほどの細い糸でルフィを拘束し、人の腕よりも太く束ねた糸の集合体で何度も小突き、ついには鋭く尖った尖端がルフィの覇気を纏った脇腹を貫き、突き刺す。

 

 

 しかし、怒るルフィが自分を拘束しているドフラミンゴの糸をギア4(フォース)──覇気を纏いつつ、上半身を膨らませ、糸を強引に引き千切り、解放されたと同時に上空に跳ね上がる。そして宙にて弓を引くように右腕を大きく後ろに引き絞って力を溜める。

 

 

 その拳を振り下ろさせまいと、ドフラミンゴがルフィのあとを追って空を駆け上がる。さらに彼の後ろには地面から生えた16本もの糸の束が追従し、ドフラミンゴとともに宙に浮かぶルフィを目指す。

 

 

 駆け上がる途中、ルフィの攻撃の予兆を感じたドフラミンゴが自身とルフィの間に能力で生み出した糸を用いて巨大なクモの巣を形成、ルフィの拳から己を守る盾として目の前に張る。さらにクモの巣の隙間から追従してきた16本もの糸の束を弾丸のようにルフィ目掛けて発射させた。

 

 

 だが、拳を振り下ろす寸前、ルフィは左腕に口をつけて空気を送り込み、右腕を巨人の腕の如く肥大化。その腕をもってして──

 

 

 宙に浮かぶクモの巣をガラスのように叩き壊し

 

 

 16本もの凶弾を弾き落とし

 

 

 ドフラミンゴの顔面に拳をめり込ませ

 

 

 地上へ叩き落とした。

 

 

 

 

 ほどなくしてギャッツが“鳥カゴ”の消失を伝え、次いでルフィの勝利を告げ、遅れて国中から歓声の声が沸いた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 空中から垂直に地上へと落下したドフラミンゴは雑多に積み上げられた瓦礫の山を蹴散らし、地面に激突、さらに勢い余って地面を砕き、その下にある地下港にまで到達していた。

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァ──ッ!!」

 

 

 そのドフラミンゴの下にいち早く駆けつけたのはバージェスだった。瓦礫の山に半ば埋もれていたドフラミンゴ。僅かに出ていた足を引っ張って瓦礫から引き上げると、そばに控えていた配下たちがドフラミンゴの手足に海楼石が入った枷を嵌めて身動きが取れないように鎖で拘束する。

 

 

「お嬢、言われた通り“ドフラミンゴ”と“幹部”以上の連中を全員、確保したぜ!! 今なら連中の能力を楽に奪えるが、いいのか?」

 

 

 ドフラミンゴが拘束されたのを確認してからバージェスは電伝虫でルーミアにその旨を伝える。

 

 

「……ん? ああ、地下港の武器はバギーんとこの連中が持っていったぜ。オカマ野郎は今も上でウワサを流しているんじゃねえか? さすがのお嬢でもドレスローザの全てを把握するのは無理だったか! ウィ~ハッハッハァー!!」

 

 

 薄暗い地下港の一角にバージェスの笑い声が響き、彼の周囲で配下の人間たちが忙しなく動く。

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

勇者
「桃鉄の貧乏神を東方の紫苑ちゃんにしてください」

魔神にゃもし。
「たやすいことだ。ついでに……
 ミニボンビー時は幼女化。
 キングボンビー時はうさぎさんの格好。
 ~にしておいた」

勇者
「幼女化は認めるがうさぎは認めねえ。表へ出ろ」

賢者
「スク水にすべきです」

バトルマスター
「制服は必要でござる」

外道
『ジーパンに手ぶら☆』

魔神にゃもし。
「まとめて相手してやる。かかってきな」

───────────────


▪️更新、遅れた。スマン。

▪️毎度、誤字脱字等の報告、ありがとうございます。

▪️勢いで書いた。

▪️ドフラミンゴが倒される二次って少ない気がする。
 ……というよりもそこまで話が進んでいる二次ってどんぐらいあるんだろね。

▪️次回は戦後だね。

▪️感想の返信は書けたら書く。

▪️ちなみに私はブレザー制服を希望。
 紫苑ちゃんなら似合いそうな気がする。

▪️それじゃあ、寝まするー。おやすみー。


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60話 王国の復興に向けて

 

 

 王宮のとある一室。薄暗いその部屋には黒塗りの豪華なイスが置かれており、そこには体を太い鎖でがんじがらめに縛られたドフラミンゴが座らされている。

 

 

「……こいつはいったい何の真似だ? このおれを笑い者にするためか?」

 

 

 不機嫌さを一切隠そうとせずに細長いテーブルを挟んで向かい側のイスに腰掛けている小さな人物──ルーミアにそう問いかける。

 

 

「なーに、お前に聞きたいことがあったからなー。リク王に無理を言って、この場を設けてもらった。わはははー」

 

 

 ドフラミンゴ問いに対してルーミアはそう答える。彼女以外にもマルコやバギーといったルーミア側の主要メンバーが周囲にたむろしている。さらに彼らの他にもリク王といった王族にドレスローザに滞在している麦わらの一味やローの姿も見える。みな、ドフラミンゴに対して油断なく身構えていた。

 

 

「ここにいる連中はこの私を信用できなくてなー、この私を見張るためにここにいるのさ。ちなみに麦わらは寝ながら食うのに忙しくてここには来れない。──だそうだ」

 

 

 そう前置きを置いてからルーミアは尋ねる。

 

 

「“ナギナギの実”を持っていないか?」

 

 

 そう尋ねるルーミアにドフラミンゴは答えた。

 

 

 

 

「……お前がおれの家族に手を出さないなら、くれてやる」

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 ルーミアはドフラミンゴが提示する場所に配下を向かわせるとその場所には彼の言う通りに件の悪魔の実が大切に保管されていた。そしてルーミアは悪魔の実を入手後、ドフラミンゴを海軍に引き渡した。

 

 

 海軍に引き渡される間際、ドフラミンゴは……

 

 

「エースを生け捕りにした、ある意味、戦争の元凶を作ったおれを、憎いと思わないのか? お前の家族を、白ひげを死なす要因を作った男をなぜ生かす?」

 

 

「お前を殺したら、お前にエース生け捕りの指令を出したやつを……「殺す手間が省けた」──と喜ばせるだけだからなー」

 

 

 「それはお前にとっても私にとっても面白くないとは思わないかー?」……笑みを浮かべてそう答えるルーミアにドフラミンゴは「違いない」とだけ言い残して鎖で拘束されたまま連れていかれた。

 

 

 

 

 イスに腰かけ膝の上に載せた小さな宝箱を指で弄くり回しているルーミア。その宝箱の中身には彼女が欲しがっていた“ナギナギの実”が入っている。その悪魔の実を手に入れたのがよほど嬉しいのか上機嫌で鼻唄を歌っている。

 

 

 ドフラミンゴ・ファミリーにはさまざまな戦闘向きの悪魔の実の能力者がおり、過去にルーミアが“ゴロゴロの実”の能力者である「エネル」を狩って、その能力を己のものにしたことを知っている麦わらの一味は何故、彼らから能力を奪わずに戦闘に向かない悪魔の実“ナギナギの実”を欲しがっているのか疑問に思い、ウソップが恐る恐るそのことを口にした。もっとも問われたルーミアは……

 

 

「タダでは教えないなー。支払う代償次第では教えてやらないこともないけどなー? わはははー」

 

 

 「──で、何を支払うかなー?」そう尋ねるルーミアに対し、ウソップは口をつぐみ、他のメンバーも押し黙る。

 

 

 部屋の中には天竜人であるミョスガルドもおり、彼は複雑な表情をしていた。ドフラミンゴを海軍に引き渡す前にミョスガルドはドフラミンゴが下界で海賊をやる要因──聖地マリージョアの件について深く頭を下げて謝罪したが、返ってきた返答はミョスガルドを困惑させるものだった。

 

 

「憎いと思ってもいるが、お前たちのおかげでおれは本当の家族を得ることもできた。そのことについては礼を言おう。フッフッフッフ……」

 

 

 人を小バカにするような笑みを浮かべながらそう言い残して、ドフラミンゴは海軍に引き渡された。その時に現れたのは海軍の大将、藤虎と呼ばれている「イッショウ」と彼に付き従う海兵たち。

 

 

「ご協力、感謝いたしやす」

 

 

 頭を軽く下げてそれだけ言うとイッショウは踵を返して去って行こうとする。途中、海軍中将のメイナードがルーミアの方に振り向いて睨み付けて何かを言いかける場面があったが、察したイッショウが彼を窘める。

 

 

「メイナードさん。今はそちらにいるお嬢さんと争うのは得策じゃあございやせん。そう言うたはずですぜ?」

 

 

 メイナードの方に顔を向けることなく、有無を言わさない強い口調でそう告げるイッショウに彼は言葉を詰まらせ、それ以降、一言も喋らなくなった。

 

 

「ドフラミンゴから武器や人工悪魔の実を買っている連中の中には四皇の“カイドウ”もいる。そいつの報復行為がくるかもしれないからドフラミンゴ・ファミリーの人間にリンチを加えないように……と部下に頼んでそのことを流布しているんだけど、余計なお世話だったかなー? わはははー」

 

 

 去っていくイッショウの背中に向けてそう声をかけるルーミア。対してイッショウは……

 

 

「ええ、おかげさまで海軍の仕事が一つ減りやした」

 

 

 ほがらかにそう答えた後、海兵たちを引き連れて部屋を出ていった。

 

 

 その後、イッショウを筆頭にドレスローザ王国に滞在している海兵たちは民間の人間に対して土下座をし、その光景を記者たちの手によって写真におさめられた。

 

 そのことはすぐに海軍元帥であるクザンの耳に入り、クザンは電伝虫でことの経緯をイッショウ本人から直接、聞かされるものの、さして激昂することもなく窘める程度でおさまる。

 

 むしろ「いやな役目をさせてしまった」とクザンが謝罪し、逆にイッショウが「上の人間がそう簡単に頭を下げるもんじゃございやせん」と進言するほどだった。

 

 

 

 

「……エースが旗揚げした海賊団。『スペード海賊団』の船員だったなー?」

 

 

 イスに腰かけるルーミアの眼前に一つの海賊団の船員たちが土下座をしていた。代表者──副船長とおぼしき青い髪の男がルーミアの問いかけに対して頭を下げたまま小さな声で「……はい」と答える。

 

 

「……『ゲッコー・モリア』と『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』相手に敗北して囚われるな……というのは酷というものだなー。理解できる。……でも、だからといって罰を与えないわけにはいかない。罰を与えなければ他の連中に対して示しがつかない。わかるなー?」

 

 

 そしてルーミアは「アヴドゥル」をスペード海賊団に加えることと、麦わら海賊団の傘下に入ることを彼らに強制した。

 

 

「エースは命をかけて麦わらを庇った。今度はエースの代わりにお前たちが麦わらを守れ、そして見届けろ、麦わらの一味がこの世界に何をもたらすのか、をだ」

 

 

 「それがお前たちに対する罰だなー」そう告げるとルーミアはさっさと彼らを部屋から追い出す。彼らが部屋を出ていく途中、彼らのうちの数名がやたらと変装したエース──アヴドゥルに視線をちらちらと向けていたが、はよ出ろと言わんばかりに「しっしっ」と手で追い払う仕草をするルーミアにすごすごと出ていく。

 

 

「さすがに分かるやつには分かるみたいだよい」

 

 

 さもおかしそうに笑うマルコにルーミアは「だろうなー」と曖昧な相槌を打ち、電伝虫で港にいる配下にアヴドゥルのために船を1隻、手配するよう言付ける。

 

 

 

 

「……あの~? コロシアムで、あなたの仲間になる……っていう件なんだけど……?」

 

 

 頃合いを見計らって恐る恐る声をかけるのはレベッカ。

 

 

「ん? あー、あれはコロシアムにいた観客たちのヤジが気に入らなかったからそう言っただけだなー、「嘘も方便」というやつだ。気にするな。わははははー」

 

 

 ルーミアの返答にレベッカは「はあ……」とどこか気の抜けた返事を返し、彼女の身を案じていたリク王とキュロスは安堵の息を漏らす。

 

 

「話は終わったな? それじゃあ~、ここからはビジネスの話をしようじゃあねえか? なあーにおたくらにとっても悪い話じゃねえ。ぎゃははは!!」

 

 

 リク王との交渉を始めるバギー。彼は「王国の復興に何かと人手が必要だろう?」……と大袈裟に身ぶり羽振りを交えて語ると船大工等の人材を派遣する約束を取り付ける。その見返りとして地下港にあった武器や人工悪魔の実を要求、リク王はその要求をしぶしぶ承諾する。

 

 

「麦わらの一味はカイドウを敵に回した。いずれ麦わらとカイドウはぶつかる。こいつは麦わらの一味とそいつらに味方する連中に売り付けよう……って、つもりなのさ!! ぎゃははは!!」

 

 

 聞いてもいないのにべらべらと喋るバギー。彼の口から出てきたカイドウの名にその場にいた一同に緊張が走る。

 

 

「──さて、海軍がいなくなったことだし、そろそろ麦わらをここに呼ぼうか? わはははは!」

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

 前回までのあらすじ

▪️桃鉄の貧乏神を紫苑ちゃんにして着せ替えできるようにしようZE

 戦士たちの野望 

 最終話 つわものどもがゆめのあと


創造者
「R指定入るから衣装チェンジは無しよ」

 魔神にゃもし。 は 死んだ!
 勇者 は 死んだ!
 賢者 は 死んだ!
 バトルマスター は 死んだ!
 外道 は 死んだ!
 外道 は 死亡状態 を なかったことにした!



▪️朝の6時に出来た。
▪️とりあえず文字を埋めた。そんな感じ。
▪️マリオメーカーとMTGの動画を見てた。ごめん。
▪️毎度、誤字脱字等の報告ありがとうございます。
▪️MTGがらみの二次、少ないね。
▪️ONE PIECE二次増えてるね。

▪️次回はドレスローザから脱出のあれこれをやりたいね。
 あと、書けたらゾウのとこも書きたい。

 


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“万国(トットランド)”
61話 あちこちに宵闇ノ……


 

 

 食堂として使われている王宮の一室にて

 

 

 細長いテーブルの上にはさまざまな料理が置かれており、そのテーブルを挟んでルフィとルーミアが向かい合う形で座っていた。テーブルの上に置かれている料理を次々に口の中に放り込んで豪快に貪っているルフィに対し、ルーミアはちびちびとナイフとフォークで小さく切り分けながら口許に持っていく。その二人の周囲には両陣営の人間たちが寛いでいた。もっとも中には麦わらの一味のゾロのように油断なく視線を巡らす者もいたが……

 

 

 そんな状況になる前

 

 

 いくら呼んでもやって来ないルフィに業を煮やしたルーミアはルフィがいるであろう場所に自ら赴いた。そこで彼女が目撃したのは──寝ながら食事をする……というルフィの姿であった。そしていくら呼んでも起きないルフィに対してルーミアは彼の脛に覇気を込めたローキックを叩き込んで起こして現在に至る。

 

 

 

 

「──ゾウがいる海域に待機していたうちの船員がお前たちんとこのクルーと接触した。お前んとこのぐる眉たちだなー」

 

 

 ルーミアが食事を摂る傍らそんな報告を寄越す。

 

 

 途端、それを聞いたルフィが口の中に食べ物を詰めたまま「ホントか!?」とルーミアに向かって喋り、同時に口の中に含んでいた食べ物を吹き出す。当然、ルフィの前にいたルーミアに降りかかるが、すんでのところで左手から生み出した雷で消し炭に変える。ついでにテーブルの上に置かれているものも一瞬で真っ黒な炭へと変貌する。それを見たルフィが「もったいねえ!」と叫ぶがルーミアは構わず話を続ける。

 

 

 ルーミアがルフィだけでなく麦わらの一味に向けて語ったのはロジャー海賊団に乗っていたワノ国の人間であり、白ひげ海賊団の元船員でもあった「光月おでん」のことであった。

 

 

「──今となっては親父がどんな思いをしていたのかを確かめる術はない。自分の弟分を信じず笑うような国は助ける価値はないと思ったのか、あるいはカイドウとぶつかればただではすまないと考え、さらにカイドウとぶつかった後に漁夫の利を狙った第三勢力を考えて見送っていた可能性もある。真実は誰にも分からずだなー」

 

 

 そう静かに語るルーミアにその場にいた一同は静かに聞き入れる。

 

 

「それでも親父は気にはしていたんだろーなー。ときどきワノ国がある方角を向いているときがあった。それを見たエースが『ワノ国』に行くと言い出したのがある意味、全ての始まりだったなー」

 

 

 エースに関する話となったせいだろう、ルフィは食事する手を止めて、至極真面目な表情で先を続けろと言わんばかりにルーミアをじっと見据えていた。

 

 

 ルーミアの話によると

 

 

 ワノ国の様子を窺うためにエースたちスペード海賊団が向かった。……とはいえ彼の国は四皇の一人「カイドウ」の支配下に置かれている地。大人数でぞろぞろと足を踏み入れ、そのことが原因で争う羽目になったら目も当てられない。そこでワノ国にはエース一人で入ることになり、他の船員は一つ前の島で待機することとなった。

 

 

 そしてエースがワノ国に滞在している間、彼が船にいない時を見計らって手下を引き連れたドフラミンゴとゲッコー・モリアが襲った。

 

 

 その後、ワノ国のあまりにも酷い現状を知ったエースが電伝虫で報告をしたものの、やはり直接、白ひげにそのことを伝えた方がいいだろう、と自分の船に帰還。そこで彼が目にしたのはもぬけの殻と化した船と船体の横にペンキででかでかと描かれたドフラミンゴ・ファミリーを示すマークに、マストの下に置かれているメッセージを書きなぐった一枚のメモ。そこには……

 

 

 

 

“一人で来い”

 

 

 

 

 ……とだけ書かれており、重しとしてメモの上には「バナロ島」を指す永久指針(エターナルポース)が置かれていた。エースはこのことを他言すれば船員の命はないと考え、一人で解決することを試みる。

 

 

 その結果、エースは捕縛され、マリンフォードで行われた頂上戦争の引き金となった。

 

 

 

 

「──ワノ国の解放、開国は親父の弟分である「光月おでん」の悲願であり、エースや親父の願いでもあると私は考えている。できることなら叶えてやりたいと思うし、そこに戦力を集中したいのが本音だなー」

 

 

 だが「革命軍」と「ビッグ・マム」、さらに「インペルダウン」の脱獄囚のこともあり、迂闊に兵を送るわけにはいかない、とルーミアは言った。

 

 

「……まあ、その前に海軍大将のイッショウがいるドレスローザを脱出できるかどうかがお前たちの問題だなー。安心しろ、私はお前たちを捕縛する気はないし、お前たちが捕まるならお前たちの代わりに私がカイドウを討ち取ってやる。わはははー」

 

 

 笑いながらそう宣告するルーミアにルフィは「おれがブッ飛ばすからいい」とむすっとした表情で返す。そんな反応を見せるルフィをルーミアは心底、愉しそうに笑う。

 

 

 やがて十分に堪能したのかルーミアはルフィに「そろそろ本題に入ろうかなー?」と会話を切り上げて、次の話題に進む。

 

 

「念のために聞くが、革命軍にいる“サボ”はお前の兄なのか?」

 

 

 先ほどのふざけた態度とは打って変わって抑揚のない声でそう問うルーミア。その問いにルフィは短く「ああ、そうだ」と告げると、彼の返答を聞いたルーミアは諦めがついたかのような溜め息を漏らした。

 

 

 

 

 その後の麦わらの一味の行動はルーミアの概ね知る通りであり、彼女はその様子をゴロゴロの実の能力を応用して盗み聞きをしていた。

 

 

 麦わらの一味はドレスローザから脱出する際に海軍大将イッショウと戦闘に入るものの、サボが彼らの戦闘に割って入り、ルフィたちと、同じくドレスローザでドフラミンゴ・ファミリー相手にルフィたちと共闘をした海賊たちを船へと逃がす。

 

 ……がイッショウは彼らを逃すまいとドレスローザに存在する瓦礫を彼らの頭上に漂わせる。海上で彼らの上から降らせて潰すためである。

 

 しかし、それを察したドレスローザの住民たちが海賊たちを追う振りをして彼らを庇う。自分たちがいれば海賊たちに手を出さないだろう、と……

 

 かくして彼らの目論見は功を奏し、ルフィたちは無事にドレスローザからの脱出を果たし、サンジたちがいるであろうゾウへと向かう。

 

 

 

 

 そして、そのゾウでは……

 

 

【ゾウ】

 

 

 時は遡って麦わらの一味──サンジたちがいるサニー号がドレスローザ付近の海域にてシーザーを奪還するためにやって来たビッグ・マムの一味に追われた後の話である。彼らはビッグ・マムの追手を撒いた後、ゾウに辿り着いたのだが、彼らの後を追うようにして黒地に白の十字架をあしらったシンボルマーク──宵闇ノ海賊団が現れた。

 

 

……運がいいな、お前ら…… ビッグ・マムから逃れるなんてな……

 

「クズどもにしては上出来だな」

   

 

 その船に乗っていたのはドクQとシリュウの二人だった。明確にルーミアたちとは敵対しているというわけではないが、海賊たちと敵対している──政府の犬と評される七武海の配下なだけに警戒を露にするサンジたち。

 

 

「安心しろ。俺たちの目的はお前たち麦わらの一味じゃない」

 

……ああ、うちの提督はカイドウの部下の能力を欲しがっているのさ……

 

 

 能力を欲している。その言葉を聞いた麦わらの一味は露骨に眉をひそめた。

 

 

 

 

【とある島】

 

 

「キャハハハ! お久しぶりね!」

 

 

 ゲッコー・モリアが根城にしているその島に部下を引き連れたミス・バレンタインことミキータが訪れた。そして顔見知りであるペローナを見つけると親しそうに声をかける。

 

 

「早速だけど、あんたとこの親玉に会わせてくれない? うちのお姫様が話をしたいみたいなのよ。カイドウと麦わらについてね?」

 

 

 相手が自分たちの船長たちと同じ七武海の一員を務める海賊なだけにミキータたちを無下に扱うわけにはいかず、ペローナはしぶしぶモリアの下へと向かう。

 

 

 

 

【ヨンタマリア号──甲板】

 

 

 ドレスローザから無事に脱出を果たしたルフィたちはオオロンブスを提督とした彼が所有している船の上で彼と同じくドレスローザでオモチャにされた者たちと一緒にルフィの了承なしに傘下に入ると宣言し、杯を飲んだ。その中には巨人たちの姿がなく、代わりにスペード海賊団の姿があった。さらにはサボの姿も確認できる。ルフィとサボは互いの無事を喜び、今までの経緯を語り合う。

 

 そこへ石仮面を外したエースが現れて、ルフィとサボ、エースと面識のある麦わらの一味、その場にいた一同を大いに驚かせた。

 

 

「聖地マリージョアへの攻撃を中止にすることはできないか?」

 

 

 死んだと思われていたエース。矢継ぎ早に質問をぶつける彼らをおさえてエースはサボに向かってそう尋ねるも、サボは首を横に振って……

 

 

「ドンキホーテ・ミョスガルド聖やルーミアのおかげで多少、改善されていることは認めるが、だからといって彼らが行なった過去の所業が消えることはないし、それで長年、練っていた計画を今さら変更するわけにはいかない──それが革命軍の決定だ。それにおれの一存で変えることはできない」

 

 

 そうキッパリとエースに言い放つサボ。ルフィも懇願するがサボは首を横に振る。いつまでも平行線をたどる三人の話し合いに埒が明かないと感じたのか、ゾロが口を挟む。「ルーミアは何か言っていなかったのか……?」と。

 

 

 

 

【ドレスローザ──王宮】

 

 

「──“努力はするが、期待はするな”……だったかよい」

 

 

 ルーミアの関係者が一堂に集まっている一室。その中心には大きな丸いテーブルが置かれており、その上には大まかな海図と各勢力のリーダーと主要人物を象ったフィギュアが置かれていた。

 

 先ほどのセリフはルフィがいるグループにエースのフィギュアを置いたルーミアに対してマルコが口にしたものである。

 

 

「お前さんがエースを遠ざけさせたのは聖地マリージョアで兄弟同士で争わないよう……という配慮かよい?」

 

「それもあるが、味方の足を引っ張る可能性があるからなー、それに海軍や世界政府に正体を知られたら面倒だからだなー」

 

 

 そう答えると「違いない」とマルコは大きく頷いてみせる。

 

 

「……とりあえず今はビッグ・マムのお茶会の参加、その準備をしないとだなー、わはははー」

 

 

 にこやかに笑みを浮かべながら海図の上、ビッグ・マムのフィギュアが置かれているその近くに新巨人海賊団の船長を務める「ハイルディン」を始めとして、「カポネ・ベッジ」「ジェルマ王国」の一族、あるいはビッグ・マムに恨みを持つ人物たちのフィギュアなどを配置していく。さらにその外側に自分たちの旗を示す黒地に白の十字架のシンボルマークと腕を組んだ「ジンベエ」を置いた。

 

 

「なにもビッグ・マムを無理に倒す必要はない。ビッグ・マムの怒りが麦わらに向けば、それで十分。“ゾウ”の件が終わり次第、向かうとしようか? わはははー」

 

 

 

 

【革命軍──船内】

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァ──!! ドアドアの実ほど侵入に適した悪魔の実はねえなァ? お前もそう思うだろう? クラハドール?」

  

 

 革命軍が所有する船の中、食糧等が貯蔵している一室にて木箱や冷蔵庫に扉を作っては中におさめられていた食料を物色していたバージェスが「クラハドール」と呼ばれている執事姿の男に声をかける。声をかけられたクラハドールはさも迷惑そうに眉をひそめて手首でメガネを押し上げる。

 

 

「私の知る限りこれは執事のする仕事ではない気がするのですが……?」

 

「お嬢がナギナギの実がどれくらい使えるのか試してみたかったんだろ? おっと、それよりも人が来たぜ?」

 

 

 そういって何もない空間に扉を作って出来上がった異空間に入る二人。直後、数人の革命軍の人間が部屋に入るも、当然、消えた二人を見つけることは叶わず、そのまま部屋を出ていく。

 

 

「よし、行ったな? お嬢への定時連絡だ。見張りと音消しを頼むぜ?」

 

 

 クラハドールにそう頼むとバージェスはバッグから電伝虫を取り出しダイヤルを回していく。やがて、ルーミアとの通信が繋がり、彼女の声が流れてくる。

 

 

『────────』

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァ───っ!!!! 海軍の手柄にするのか? ああ、わかったぜ。任せてくれ」

 

 

 通信を終えるといそいそとバッグの中に電伝虫をしまいこみ……

 

 

「せっかく革命軍の船に来てるんだ。お嬢の役に立ちそうな情報を盗んでいこうか?」

 

 

 そうクラハドールに告げると文字通り音もなく部屋を出ていった。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

信者
「PS VITAの背面タッチパッドは何のためについているんですか?」


「ギャルゲーのためじゃ」


▪️気合いを入れてやる気を無理矢理、出して捻り出したのが今回の話でございます。
▪️キャプテン・クロ、クラハドールはなんとなく出したかったの、あとオリキャラ考えるの、面倒だったので…
▪️毎度、誤字脱字等の報告ありがとうございます。
▪️失踪しないようにほどほどガンバる。
▪️「なろう」で女幼馴染み、ざまぁ作品、増えてるね。
▪️キャベツだけじゃなくサルフィも消えていたのか…
▪️削除した作品を復活してほしいが無理だろなあ…
▪️そう思うと過去に削除した作品を書きたくなってきた。
▪️でもやる気が起きない。
▪️コロナでイベント中止。全私が泣いた。

▪️次回は「ゾウ」をさくっとやりたいね。
 あとビッグ・マム書けるかなー。
 
▪️ONE PIECE×東方project もっと増えてもいいと思う。

※7/17(日)
▪️ルフィたちとドフラミンゴで共闘
 の部分が、ドフラミンゴさん仲良しさんなってる感じなので下記に書き直しました。
▪️麦わらの一味はドレスローザから脱出する際に海軍大将イッショウと戦闘に入るものの、サボが彼らの戦闘に割って入り、ルフィたちと、同じくドレスローザでドフラミンゴ・ファミリー相手にルフィたちと共闘をした海賊たちを船へと逃がす。


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62話 「ワノ国」へ、「万国」へ

 

 

 麦わらの一味を捕縛するために動き出した海軍大将藤虎。彼がいるドレスローザ王国からルフィたちは無事に脱出し、そのまま出航。その後、ルフィたちはドレスローザ王国にてドフラミンゴ打倒に協力した者たちと船の上で兄弟杯を交わし、次いで宴を始める。

 

 やがて、その宴が終わると、誰からともなく各々ルフィに別れを告げて自分たちの船に戻り、再び会うことを約束して、それぞれの目的地へと向かう。

 

 そんな中、移動する手段を持たないルフィたちはエースたちスペード海賊団の船に乗せてもらい、サンジたちがいる“ゾウ”へと向かった。

 

 

 

 

【ゾウ──モコモ公国】

 

 

 ドフラミンゴから逃れるべくルフィたちと別れたサンジたちは偉大なる航路(グランドライン)を渡り歩く背中に一つの国を背負い天を衝かんばかりの巨体を持つ巨大なゾウ──象主(ズニーシャ)がいる付近の海域でルーミアの配下であるドクQ、シリュウと合流。何故、自分たちの居場所がわかったのか? 訝しげなサンジにドクQが1枚のビブルカードを片手に視線をチョッパーに向けながら答えた。

 

 

……そこにいる船医はしばらく“トリノ王国”に滞在していた。……おれの部下もそこにいた……つめの一部を手に入れても、不思議じゃない……

 

 

 そう答えるドクQたちに苦い顔をしつつも、いつまでもこの場にいても仕方ない……とサンジたちは宵闇ノ海賊団が所有する気球に乗って移動、ほどなくしてゾウの背中にある「モコモ公国」にたどり着いた。

 

 そしてゾウの背中にある森を探索中、国に残っていたジャックの配下に遭遇し、彼らと戦闘になるものの、サンジたちはあっさりと返り討ちにする。

 

 

「お前たちじゃあ話にならん。ジャックを連れてこい」

 

 

 巨大なワニに乗って敗走するジャックの手下たち。彼らのその背中に向かって、愛刀を腰にある鞘にしまいこみながらシリュウはそう吐き捨てた。そして彼らの姿が見えなくなったころ。サンジはドクQとシリュウに「お前らがここに来た目的はやつらの悪魔の実の能力か?」と尋ねる。

 

 

「いずれ、お前たちはカイドウと殺り合うんだろ? なら減らせるうちに減らした方がいい」

 

 

 彼らに対して信用していないのか、サンジが彼らにそう問いただしたところ、返ってきた返答はそれだった。これ以上、情報を引き出せないと思ったのか、それ以降、サンジが彼らに問いただすことはなかった。

 

 その後、モコモ公国の領内に足を踏み入れるが、サンジたちがそこで見たのは……徹底的に破壊された街並みと、いたるところで体を満足に動かせないで横たわる──二足歩行で言葉を話す知性を持った動物──ミンク族たちの弱々しい姿であった。

 

 毒で動けない彼らを見兼ねたチョッパーが一目散に彼らの下に駆けつけて治療を始め、つられて他の面子も動く。やがてミンク族全員の治療を終えて、しばらく経った頃にビッグ・マムの使者として「カポネ・ベッジ」とモコモ公国を故郷としたミンク族「ペコムズ」が来訪、ベッジが人気のないところにサンジを誘い出してビッグ・マムの下へ半ば脅迫に近い形で連れていこうとするがペコムズがモコモ公国を救ってもらった件もあってこれを拒否、紆余曲折の末にベッジが背後からペコムズに発砲して負傷させ、サンジとシーザーを連れていった。

 

 残されたナミたちはドレスローザに残った他の船員、ルフィたちと相談するために、モコモ公国に残ることを決め、ルフィたちを待つ間にミンク族たちの治療を続ける。

 

 それから10日後、モコモ公国にルフィたちを乗せたスペード海賊団が到着。ナミたちとの合流を果たした。当然、姿の見えないサンジについて尋ねると、その事についてナミは重々しい口調で事の経緯を話す。

 

 その結果、ルフィはサンジと話し合うべくビッグ・マムがいる万国(トットランド)へ赴くことを決めた。

 

 いざ目的地へ向かおうとするその時にドフラミンゴの奪還を試みたものの失敗し、新聞に死亡記事を報じられたジャックが無数の船とともに現れる。

 

 そして現れるや否、ゾウの四本ある脚のうちの一本に集中的に大砲を撃つ。

 

 突然の砲撃、それも無数の弾を受ければ、如何に巨体を誇るゾウといえど負傷する。そしてゾウが倒れれば背中にある街もただでは済まない。

 

 ……ゆえにゾウはゾウの声が聞こえる人物──モモの助にいつまでも攻撃をやめないジャックの船に反撃をする許可を願い、願いを受理されると同時にゾウの長い鼻でジャックたちの船を粉砕、ただの1隻すら残さず彼らの船、全てを海の藻屑にさせた。

 

 

───────────────

 

 

『──だいたいの話はそこにいるドクQとシリュウから聞いた。ジェルマ王国の三男坊は連れていかれたようだな? わははははー!』

 

 

 ジャックの艦隊を撃退し、負傷したゾウの脚に治療を施した後、未だモコモ公国にいるルフィたちにドクQが持つ電伝虫からルーミアの声が流れてきた。

 

 

『──ヴィンスモーク・サンジについてはジャヤ島にいる時から気がついていたなー。あの眉毛は特徴的だからなー。……ちなみに本格的に調べ始めたのはサンジがカマバッカ王国にいる時だなー。わははははー!』

 

 

 電伝虫の受話器の向こうから一頻りに笑った後、ルーミアはルフィに尋ねる。これからどうするのか? と。……対してルフィは、行き先を変えるつもりはない。サンジと直接、会う。……と力強く告げた。

 

 

『──「鬼人のギン」を知っているかなー? そいつを連れていってやれ。なんでもサンジに「恩」を返したいそうなー』

 

 

 

 

 「鬼人のギン」

 

 

 東の海(イースト・ブルー)にて、サンジが麦わらの一味に加入する前にサンジと戦った人物の一人である。もっとも勝敗がついた後は船長の首領・クリークともども行方知れずだったが…… 

 

 なぜその人物がいるのかゾロが尋ねるとドクQが答えた。毒に冒されて、とある島の病院に捨てられていたのを拾った……と。

 

 ドクQが何故そのような人物を拾ってきたのか? 麦わらの一味がそう疑問に思っていると横からネコマムシが「頼みたいことがある」と話に割って入ってきた。

 

 

「ゆガラのとこにおる“マルコ”と“バギー”に会わせてほしいじゃきに」

 

 

 カイドウと戦うための戦力が欲しい……とルーミアに頼み込み、──私にわざわざ言う必要はない。電伝虫で連絡すればいいだろう。今、近くにいるから代わろうか? ……と代わろうとするルーミアにネコマムシは……

 

 

「久しぶりに“マルコ”と“バギー”に会いたいと思うてたとこぜよ。白ひげの親父のこともあるじゃき。それにアイツらに直接、頼まんのはゆガラの顔を立てるためじゃきに」

 

 

 ……と言われたルーミアは「なるほどなー」と一人納得し、今度は周囲にワノ国出身の人間がいないことをドクQに確認してもらってからルフィたちに向けて「私からもお前たちに尋ねたいことがある」と話しかける。

 

 

『──「夕立ち カン十郎」。やつは()()()なのに絵を描くときは()()で描く。その理由を知らないか?』

 

 

 言われて「あー、そういえば……」気づくルフィたち。

 

 

『──光月おでんのカイドウ暗殺の失敗は情報を流したバカがいたせいだろーなー。あんまり連中を信用しない方がいいぞ? 最悪、知らず知らずのうちに全員が催眠や洗脳でカイドウの傀儡と化している可能性もあるしなー。……ま、私からのありがたい忠告と思え。わははははー!』

 

 

 そう笑うルーミアに「そういや、お前は天竜人を洗脳してたな……」と呆れつつも感心するゾロ。

 

 

『──それじゃあ、私はそろそろ万国(トットランド)に行く準備をするからここで切らせてもらう』

 

 

 そう一方的に言って通信を切るルーミア。あとにはなんとも言えない沈黙が続く。

 

 

「あの女はさらっと重要なことを言って切りやがった」

 

 

 ようやく口を開いたのはゾロ。彼は今の現状を確認しつつ問題点等を述べていき、サンジを見捨てて「ワノ国」に行くこと検討する。当然、ルフィを始めとした麦わらの一味が反論するも……

 

 

「カイドウを敵に回している状態でさらにビッグ・マムを敵に回すつもりか?」

 

 

 カイドウとビッグ・マムの名にナミやウソップ、チョッパーが怖じ気づいて言葉を詰まらせるものの、ルフィはサンジと話し合うために万国行きを決める。……とはいえ、さすがに正面切って乗り込むのは得策ではないと考え、麦わらの一味は「ワノ国」に行くメンバーと「万国」行くメンバーと二つに分けることにした。

 

 

 そしてエースが率いるスペード海賊団は……

 

 

「おれは万国に行った後、ルーミアのところに戻る」

 

 

 先のこととはいえ離脱宣言するエースに一同が驚き、その理由を尋ねるとエースは答えた。

 

 

 

 

「おれはサボを止めたい」

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

賢者
「マネマネの実の能力が覚醒すれば理想の女性を作れるのでは?」

勇者&バトルマスター
「「さすが賢者だ」」

外道
「こんなこともあろうかと魔神に願い事を叶えてマネマネの実の能力者にしてもらったよ☆」




▪️さすがに二週間以上更新がないのはダメな気がしてガンバった。
▪️毎度、誤字脱字等の報告ありがとうございます。
▪️ゾウ編、さくっと終わると思ったが終わらなかった。
▪️知らない間にお気に入りのONE PIECEの二次作品が消えていて悲しい。
▪️キャベツ、サルフィ、逆行ゾロ、百計のクロ憑依、etc.
▪️次は万国かーなー、さくっと終わらせたいけど、さくっと終わらないだろーなー。
▪️とりあえず、寝る。(。-ω-)zzz


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63話 お茶会の前に、戦争の準備を……

 

 

 麦わらの一味たちとローが率いるハートの海賊団がモコモ公国を去っていった後……

 

 

 

 

【ゾウ──近海】

 

 

 海上にて、船よりも遥かに巨大なゾウの長い鼻で船ごと薙ぎ払われ、砕け散った船の残骸とともに海底に沈められたジャックとその部下たち。

 

 彼らは悪魔の実のデメリットであるカナヅチになってしまったこともあって海底から自力で浮かび上がることができず窮地に陥っていた。

 

 そんな彼らを──能力者のみだが──海底から引き上げて救ったのは魚人たちであり、魚人たちに指示を出したのは彼らをここまで連れてきたドクQとシリュウであった。

 

 

「……助かった、礼を言おう。カイドウさんにもお前たちのことを伝える」

 

 

 甲板に引き上げられたジャックは起き上がるのが億劫なのか、寝そべった状態のままドクQとシリュウにそう礼を述べるが……

 

 

「礼なら、お前たちが持っている能力を頂く。“ワノ国”にいるカイドウにおれたちのことを伝える必要もない」

 

 

 そう言いながら鞘におさまっている刀の鍔を親指で押して、いつでも鞘から瞬時に抜刀して斬れる状態にするシリュウ。不穏な空気を感じ取ったのか、上半身を起こしたジャックがそのシリュウを忌々しげに睨めつけながら呟く。

 

 

「──能力者狩りか……」

 

「……ああ、そうだ。うちの提督は歴史大好き人間みたいでな……“遺跡を破壊するようなクズは殺していい”……と言われてる。そこにいるヤブ医者の言葉を借りるなら“運がなかった”と

言ったところだな」

 

 

 傍らにいるドクQをアゴで指しながらシリュウはそんなことを宣い、ジャックもまた起き上がって身構える。

 

 

 

 

───────────────
 

 

 

 

 

 魚人たちが船の上から海へと遺体を次から次へと投げ棄てている。全てシリュウとドクQが斬り捨てた者たちだ。その傍らには人工悪魔の実であるSMILE(スマイル)が山積みに置かれている。やがて最後に巨漢の遺体──ジャックの遺体を海に放り込むとシリュウは電伝虫でルーミアと連絡を取る。

 

 

「──ああ、今しがた片付け終えたところだ。例のブツはしっかり確保してある」

 

 

 そう伝えると一人、小さな宝箱を片手に船内へと通じる扉をくぐった。後には乗り合わせた船員たちの慌ただしい喧騒が残る。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【カライ・バリ島】

 

 

 新世界にある島の一つにサーカスのテントの形をした「バギーズデリバリー」の本社が置かれている。代表者であるバギーを始めとした社員たちはそこを拠点に活動をしていた。そして時折、ルーミアの関係者や同盟を結んでいる組織の人間たちもその建物に出入りをしていた。特に今日は組織を束ねているルーミアが来ていることもあってか祭りでもやっているのか思うほどに随分と華やかで賑やかであった。

 

 

「──万国(トットランド)に向かっている麦わらの一味がビッグ・マムのところでおとなしくしていると思うか?」

 

 

 彼女のために用意されたであろう身の丈に合っていない豪奢なイスに腰掛けたルーミアが笑みを浮かべながら周囲にそう尋ねると……

 

 

「ギャハハハハッ!! あいつらが、──あの麦わらがおとなしくしているはずがねェ!! とくに仲間が絡むと周りがどうなろうとお構いなしにイノシシみてえに突っ込んでくるぞ!?」

 

 

 「ギャハハハ!!」と、さもあらんと言わんばかりにバギーが答え、周囲にいたバギーの一味もうんうんと頷く。

 

 

「シャンクスには声をかけねェのか? あいつなら戦力になると思うんだが?」

 

 

 周りに聞こえないようにバギーは小声でルーミアに耳打ちする。……というのもルーミアは一部の人間のみに四皇討伐の話をしており、ルーミアがそのための戦力をかき集めていることをバギーは知っていた。そこでふとシャンクスのことを思い出したのである。そして、あわよくばシャンクスの戦力を少しでも削ることができれば……とバギーは考え、ルーミアに進言したわけである。

 

 

「……ああ、シャンクスは海軍と繋がっている可能性があるから声をかけていないなー。わははははー」

 

「なるほど海軍か、そりゃあ仕方がないな」

 

 

 何事もなかったかのようにジョッキに入ったビールを一気に煽るバギー。やがて最後の一粒まで飲みほして空になったジョッキをドンとテーブルに下ろてから一息吐くと……

 

 

ぬぅわぁにィ!? 海軍だとォォォ!!!?

 

 

 ──突然、思い出したかのように目玉が飛び出さんばかりにそう叫ぶ。

 

 

「ラフィットに調べさせたし、海軍に潜り込んでいるヤツからも教えてもらったからなー。ほぼ間違いないだろーなー」

 

 

 ルーミアからそう教えられてもどこか納得できないところがあるのか、腕を組んでしきりに唸るバギー。

 

 

「麦わらとビッグ・マムの勢力が追いかけっこしている間にビッグ・マムを殺る。……とはいえ、ここを留守にするわけにはいかないからなー。留守中は頼むぞ、わはははー」

 

 

 ルーミアの頼みごとに「おう、任せろ」と二つ返事で返すバギー。彼は自分がビッグ・マムと直接やり合うのを嫌がっていたからである。……だが、さしものバギーでもビッグ・マムとやり合うつもりでいるルーミアに戦力を送らない……というのは世間体に悪いだろうと考え、ビッグ・マムと因縁がある巨人たちを送り込むことになった。

 

 そしてルーミアは万が一、自分たちが敗れて死亡した場合のことを考え自分の後釜にミョスガルド聖を推し、彼もまたこれを了承、同盟を結んでいる組織──テゾーロやハンコックにも通達させた。

 

 もっとも彼らはルーミアが敗れることはあっても死亡するとはつゆにも思っていないが……

 

 

「……で、お前たち“大渦蜘蛛海賊団”は本気でついてくるつもりなのかー?」

 

 

 そう尋ねるルーミアの眼前には恭しく膝をついて頭を垂れる四人の男がいた。いずれもラフィットが連れて来た大渦蜘蛛海賊団のメンバーである。もっとも全員がこの場にいるわけではないが…… 「何故ここに連れて来た?」尋ねるルーミアにラフィットは「弾除けの盾は多い方がよろしいでしょう?」と答え……

 

 

「世の中には死に場所を求める男たちもいるのですよ。ホホホ」

 

 

 本人たちがいるにも関わらずそんなことを宣った。大渦蜘蛛海賊団のメンバーもまた否定はせず苦笑いを浮かべる。

 

 

「親父ならこう言うだろうと思いましてね……

 “死んだやつの墓を守るよりも今、生きているやつを守れ”

 ──親父の家族を戦争に参加せず、みすみす守れずに死なせたとなっちゃあ、あの世で親父と船長にどつかれてしまいますよ」

 

 

 「それだけは御免蒙る」朗らかにそう答える船員の一人にルーミアは内心、自分が白ひげとは血の繋がりがない赤の他人と知ったらガッカリするだろうなあ、と思いつつも「そうか」となんとも言えない複雑な表情で返した。

 

 

……なら、これが役に立つだろう……

 

 

 そう言ったのはドクQ。彼は無数の果実らしきものが入ったカゴをテーブルの上に無造作に置く。それはドクQとシリュウがカイドウの手下を殺害して手に入れた人造悪魔の実であった。そしてその脇には丸薬の詰まったビンが置かれており、そのビンに貼り付けられているラベルには「ランブルボール(改良型)」という文字で記載されている。

 

 

「──無論、使うか使わないかはお前たちの自由だが、

 ……どうする?」

 

 

 そう尋ねるルーミアに間を置かずに一人の男が代表して答えた。

 

 

 

 

是が非でもない

 

 

 

 

 そう答える男にルーミアはアゴに手を当てて暫し考える仕草をして思案に耽る。……やがて、説得は無理と判断して諦めがついたのか、一同が見ている目の前で盛大な溜め息を吐いてみせる。

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 カライ・バリ島からルーミアたちを乗せた船が出港する。その一行の中には大渦蜘蛛海賊団はもとよりウィーブルも数に含まれていた。その船をバギーを始めとしたバギーズ・デリバリーの面々が大手を振って見送り、やがて船の後ろ姿が見えなくなった頃、バギーは見送った部下とともにテントへと戻る。

 

 内心、ビッグ・マムに会わずに済んだと喜ぶバギー。意気揚々とテント内部に入っていく彼がそこで目にしたのは暴飲暴食で丸々と太ったバッキンとその彼女の給仕人にさせられている旧バギー海賊団の面々に、ルーミアの手足として動いているラフィットとシリュウ、さらにそこに海軍本部にいるはずの「クザン」が加わっていた。予想外の人物に驚愕するバギー、内心ビビりつつも尋ねる。

 

 

「……な、なんで、お前がここにいるんだよ?」

 

「書類仕事が面倒くさくなって逃げてきた。少し匿ってくれ」

 

「おいっ!?」

 

 

 そんな返答が返ってくるとは思わず、つい声を上げるバギー。……だがすぐに、そんな理由で海軍の人間がこんなところに来るはずがない、と考えを改め、詰問しようと声をかけたときに電伝虫がけたたましく鳴る。

 

 

『──ウィ~ハッハッハァー!! おれだ!!』

 

 

 通信の相手は革命軍がいる基地に侵入していたバージェスだった。

 

 

『──居場所はおれのビブルカードで探ってくれ、おれたちを「バスターコール」に巻き込んでも構わねえ』

 

 

 そう言い残して一方的に切られた。その後、通話中、バージェスから発せられた「バスターコール」の言葉にテント内はどよめく。

 

 

「ほほほ。先の一件、ドレスローザにて革命軍の人間に『グラグラの実』を渡したのはご存知でしょう? その件でうちの姫が革命軍と通じているのでは……? と疑いの目を向ける人間がいるのです」

 

  

 ラフィットの言葉にバギーを含めた数人が「なるほど」と頷く。

 

 

「そういうわけでここを補給基地として使わせてくれ。……あ、あとおれがいることは内緒にしてくれ」

 

「いや海軍の元帥がそれじゃダメだろ」

 

 

 バギーにそう頼み込むクザンだったがにべもなく拒否された。その後やって来た海軍にクザンは連れていかれ、まもなくして革命軍討伐のためにラフィットとシリュウが乗る宵闇ノ海賊団の船を先頭に海軍の船が出航していき、バギーズデリバリーは周囲の治安を守るために残った。

 

 そして件の島にて「バスターコール」が発動され、翌日の新聞にそのことが大きく掲載された。

 

 またそれとは別にビッグ・マムが治める地にルーミアの一行が到着した。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

・理想の女の子を…
 最終回「星に願いを、君には現実と悪夢を」

 見た目だけでも理想の女の子を…とマネマネの実を食べた外道さん。あら不思議、外道さんはPTメンバーが理想とする女の子を連れてきたよ。そして翌日、ベッドの隣にいたはずの女の子が男になっていた。合掌。

勇者 は ダメージ を 受けた!
賢者 は 死んだ!
バトルマスター は 新たな扉 が 開いた!
外道 は 笑っている。

▪️おくれてゴメン。
 根性入れて書いたよ。


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64話 ごちゃごちゃお茶会

 

 

【万国(トットランド)】

 

 

 ビッグ・マムの娘であるプリンとヴィンスモーク家の三男であるサンジ──その二人の結婚式に招かれたルーミアはビッグ・マムが治める万国(トットランド)にウィーブルとともに入国、その数時間後に結婚式が行われた。

 

 

 結婚式は盛大に行われ、進行が留まることなく進んでいったが、神父の前で二人が誓いの証を立てるその時になって漸くビッグ・マムらが企てていた暗殺を決行する。

 

 

 そのためプリンは額にある第三の目を開かさせ、それを見たサンジが硬直、隙を見せたサンジにプリンが隠し持っていた銃で暗殺する手はずだったが……

 

 

「なんて……キレイな瞳なんだ…」

 

 

 サンジが発したその一言でプリンはその場で泣き崩れ、そこで結婚式の進行と同時に暗殺計画が止まった。

 

 

 不測の事態に、その場にいた一同に緊張が走る。

 

 

 ビッグ・マムの陣営はプリンの手で行われるはずのサンジの暗殺が計画通りに行われないことに戸惑い。

 

 

 ヴィンスモーク家の人間たちは突然の出来事に眉をひそめるものの、特にこれといった行動は起こさず、静観を決めつつも周囲を警戒する。

 

 

 特にジェルマ王国の現国王であるジャッジはルーミアと彼女の周囲を警戒していた。何しろ彼は毒に冒された白ひげを助けるために頼み込んできたルーミアを一蹴した過去とビッグ・マムからの忠告もあって警戒していた。

 

 

 もっとも当のルーミアはヴィンスモーク家の人間たちには目もくれず彼女と彼女の周囲にいる男たち──ビッグ・マムに親族を殺されるなどで恨みを抱いている者たちを冷ややかに眺めていた。

 

 

 さらにヴィンスモーク家とは別にビッグ・マムの息子であるカタクリもルーミアたちを視界の端におさめつつ、ヴィンスモーク家の方にも目を向けている。

 

 

 やがて計画通りに事が運ばないことに業を煮やしたカタクリがサンジに向けて一粒の豆を指で弾かせて彼のこみかみを狙うが……危険を察知したサンジが身を後ろに引かせて避け、当たり損ねた豆がビッグ・マムの指示で今まさに懐から銃を取り出そうとした神父の額を撃ち抜く。

 

 

 「パァァァーンッ!!」という銃声に似た音が響き渡り、その音を合図に巨大なウェディングケーキの中から無数のルフィが飛び出し、獣のように四つ足でところ構わず走り出した。

 

 

 同じ顔をした闖入者たちによる結婚式の乱入、それも今、世界を騒がせている海賊船の船長の集団に会場は騒然となり、ルフィたちが起こす動物染みた、知性を感じさせない野生動物のような行動に慌てふためく。

 

 

 そんな中、ビッグ・マムは無惨に砕け散ったウェディングケーキを茫然とただ眺めていたが、やがて怒りに肩を震わせ、次にそんな惨事を引き起こしたルフィの名を叫び、吼える。「本物はどいつだ!?」と。

 

 

 対してルフィはバカ正直に答えて己がいる居場所をビッグ・マムに教えてしまう。もっともルフィはいきり立つビッグ・マムを一睨みするだけで正面切って戦おうとはせず、式場となっている場の上空を縦横無尽に跳びまわり、目的のものをひたすら見つけるべく忙しなく首を動かしている。

 

 

 やがて目的のもの、年配のシスター姿の女性がおさめられている写真立てを見つけると、なおも喚き散らすビッグ・マムをよそにそれを破壊すべく腕を真っ直ぐに伸ばす。

 

 

 ……が、それが破壊されるすんでのところをルフィの目的にいち早く気づいたカタクリがルフィと同様に自身の能力でゴムのように脚を伸ばして阻止、さらにルフィの四肢を粘着させて拘束した。

 

 

 それを見たビッグ・マムが手を出すなと実の息子であるカタクリに噛みつくものの、カタクリからルフィの狙いが写真であることを説明されて一応の落ち着きを取り戻す。

 

 

「──で、これはどういうつもりなのかなー?」

 

 

 騒動が起きているにも関わらず笑みを浮かべて楽しそうに傍観していたルーミア。その彼女の周囲を武装したビッグ・マムの兵隊が取り囲んでいた。少し離れたところにいるヴィンスモーク家も同様に取り囲まれており、ルーミアたちが拘束されていないのに対して彼らは両手両足をアメで固められており身動きが取れない。そしてその部隊の指揮をビッグ・マムの長男であるペロスペローが執っていた。

 

 

 当然、納得がいかないヴィンスモーク・ジャッジは問い詰めるもペロスペローは人を小馬鹿にした態度で答える。

 

 

 曰く──ヴィンスモーク家はルーミアの怒りを買って全員が彼女の手によって殺害される。その後、ビッグ・マムの顔に泥を塗ったとしてルーミア一行はビッグ・マムたちの手によって報いを受ける。

 

 

 ……と本人たちがいる目の前で意気揚々と答えた。

 

 

 この返答にジャッジは怒りを覚えビッグ・マムに噛みつくものの、完全に拘束された状態ではろくに身動きが取れず、また己のこれからの境遇に歯を食いしばって涙を流す。

 

 

 ジャッジが感情を露にしている一方で彼の子どもたちはというと、ペロスペローの能力で手足を拘束されているにも関わらず、何てことはないと言わんばかりに置かれている状況とこれからの処遇について普段通りに談笑し、感情を吐露している実の父親について不思議そうに語っていた。

 

 

「エドワード・ルーミア! 恥を忍んで共闘を持ちかけたい!! いくらお前でもここから抜け出すのは難しいはずだろう!? 無論、成功したら報酬ははずむ!!」

 

 

 一縷の望みをかけて、ルーミアにそう話を持ちかけるジャッジ。見ればルーミアを含む彼女たちは自分たちのように拘束されていない。それもあってジャッジは彼女に話を持ちかけたのである。

 

 

「私なら可能だなー。でもどうせなら使えないと思っているどこぞの三男坊に助けてもらったら、さぞかし屈辱的だろうなー、……と思わないかなー?」

 

 

 言って、ちらりとサンジの方に目を向けるルーミア。ルーミアの言わんとしていることを理解したジャッジがすぐさま否定するがルーミアは構わず「サンジならできるさ」と言い。

 

 

「それに2年前に暴れたルーキーが頑張っているからなー。そいつらがいったいここで何をやらかすのか、気になると思わないかなー?」

 

 

 そう言うとテーブルの上に右手を置き、その指先から黒く変色、やがて腕の付け根まで黒く変色した右腕から「闇」が溢れて墨を垂らすようにテーブルの上に広がっていく。そして今度はゴポゴポと音を立てながらその「闇」の中からさまざまな種類の銃と刀剣類、さらに色分けされた(ダイアル)が出てきて、彼女の周囲にいる人間たちが順に手に取っていく。

 

 

 無論、ビッグ・マムの子どもたちがルーミアたちの武装化を許すはずがなく、すぐさま兵隊たちに号令を出し、命令を受けた兵隊たちが雨あられのごとく四方八方からルーミアたちに向けて銃弾や矢、飛び道具の類いを放つも、そのことごとくがルーミアの左手から放たれた雷で撃ち落とされ、ルーミアの下まで届かない。

 

 

 そしてビッグ・マムの陣営からの攻撃が止むのを見計らって、(ダイアル)を手にしたジンベエが貝から少量の水を取り出して手のひらに載せると、それを未だカタクリに拘束されているルフィに向けて投げ放ち──結果、カタクリの足が水に濡れて粘着力が弱まり、そこからルフィは自力で脱出。脱出と同時に後ろに飛び退き距離を取る。もっともそのせいで目的の写真立てがある場所とは離れてしまう。そこへ近寄ってきたベッジがルフィを押し倒し、額に長銃を突きつける。

 

 

 ルフィが写真立てから離れたこと、味方であるベッジがルフィの動きを止めたことでビッグ・マムの陣営は安堵の息を吐く。

 

 

 だが、どこからか駆けつけてきた兵隊たちの報告で再びざわつく。

 

 

“遥か上空にルーミアの空飛ぶ船「マクシム」を発見! 甲板に「不死鳥マルコ」の姿を確認!”

“大量の流氷とそれに乗ってやって来た体の一部が動物の人間、おそらく人造悪魔の実を食べた能力者、さらに巨大なマンモスが現れて各地で暴れております!”

 

 

 前者はともかく後者の報告にビッグ・マムはカイドウの仕業と決めつけ、怒りで顔を赤く染める。彼女の知る限りでは人造悪魔の実を使用した兵隊を持っているのはカイドウしか知らないからだ。今回の計画が未だにうまくいっておらず、ウェディングケーキを台無しにされ、怒りで頭が回っていない、ということもあるが……

 

 

 そんな混沌とした状況の中、写真立てを割る音が響いた。

 

 

 敵味方関係なく音のした方を振り向くと、黒服にアフロの生えた頭蓋骨が乗っかった──麦わらの一味の一人であるブルックが割られた写真立ての側に立っていた。

 

 

 ベッジは件の写真立てが割られたことを知ると、ルフィの拘束を解き、配下の人間とともにビッグ・マムの方へと歩む。その手にビッグ・マムすら殺害しうる毒ガス兵器を携えて。

 

 

 写真立てが割れれば、どうなるのか、そのことをよく知るビッグ・マムの子らはその後に起こるビッグ・マムの奇声と彼女の弱体化を警戒するが、一向にそれが起こる素振りを見せない。ただ茫然自失の状態になったらしく、何をするわけでもなく、ただその場で突っ立っている。そのビッグ・マムの予想外の反応にその場にいた一同は動揺する。

 

  

 それはビッグ・マムの暗殺を企てているものたちも同様で暗殺の実行のためにビッグ・マムの様子を密かに窺い、また、ブルックはビッグ・マムが「奇声」を上げないのは事件が同時に多発して何に対して怒れば分からず混乱しているのでは? ……と指摘し、もう一度、写真立てを見せれば反応を見せるのでは? ……とルフィに提案、ルフィは返事一つで頷き、腕を伸ばして写真立てを手に取ると、腕を伸ばしたまま写真立てをビッグ・マムの真正面に据える。ルフィに気づいたビッグ・マムの子らが阻止に走り、ジンベエが彼らの行動を妨げる。さらにサンジが彼らの隙をついてヴィンスモーク家を拘束していた飴を破壊。

 

 

「……………………っ!!!?」

 

 

 かくしてベッジの思惑通りにビッグ・マムが奇声を上げる。大音量の奇声対策に耳栓をしていたベッジたちが悠々とビッグ・マムに近づき毒ガス兵器を彼女に向ける。少し遅れてルーミアの周囲にいた男たちもビッグ・マムの周囲に陣取り武器の照準を彼女に向ける。ベッジが彼らの存在に怪訝な表情をするものの、彼らの狙いが自分たちと同じだとわかると口角を上げて視線をビッグ・マムへ向け直す。

 

 

「「撃て!!!!」」 

 

 

 跪くビッグ・マム。彼女の膝が赤く傷を負うのを確認してからベッジと黒服の男たちの代表者らしき老人の声が重なり、上げた片手を下げる合図とともに一斉に放たれた。

 

 

 しかし、毒ガスが詰まった弾頭も無数の銃弾も、その全てが悉く、ビッグ・マムに届く寸前に、物理を伴う彼女の大音量の奇声によって破壊されてしまった。

 

 

 この結果にベッジは顔を青ざめさせ、すぐさま万が一のために待機させていたシーザーを呼び寄せる。道中に無理矢理、確保したビッグ・マムの娘の一人、特殊な鏡を生み出せるブリュレ。彼女が生み出したその鏡から行ける鏡の中の世界。そこにある通路を通って逃げ出すためだ。その鏡をくぐろうとしたその時、その鏡がビッグ・マムから発せられた奇声による風圧で粉々に割れてしまう。

 

 

 鏡を割られてしまったことで退路を断たれてしまったベッジたち、麦わらの一味にヴィンスモーク家の人間たち、それと彼らと少し離れたところにあるテーブルにはルーミアと彼女に付き従う黒服の男たちの姿が見える。

 

 

大頭目(ビッグ・ファーザー)!!!

 

 

 退路を断たれて脱出が困難と判断したベッジ。彼は悪魔の実の能力で「人を模した城」とでもいうべき、ビッグ・マムよりも巨大な存在へと変貌。部下と麦わらの一味にヴィンスモーク家らに呼びかけ、己の内部へと一時的に避難させ、ビッグ・マムたちに対して籠城の構えを見せる。

 

 

 巨大な城へと変化したベッジだが、正気に戻ったビッグ・マムが構わず殴り付けて石造りのようなその堅固な表面を少しずつ破壊、さらに足下はペロスペローの飴で固められピクリとも動けず、両手にある砲台のその砲身にはカタクリのモチが詰め込まれていて使用不能に。

 

 

 山と見紛う巨大な建造物の屋上、しかもビッグ・マムたちに囲まれた逃げ場のない状況に陥ったベッジたち連合軍。彼らはこの状況下から逃れるべく城内にて話し合う中、ジンベエがいるのを確認できるが、ルーミアがいないことに気づく。自ずとジンベエに視線が集まり、ジンベエが己に視線が集まるのを確認した後、静かに彼は語った。

 

 

「──正気の沙汰とは思わねえ!! やり口もエグい!! ……だが! その方法なら確実にあのババアを始末できる!!」

 

 

 ジンベエが一通り喋り終えると、ベッジがそう素直に感想を漏らし、その場にいた一同も激しく同意するのか深く頷いてみせる。最後にジンベエがその方法の名称を口にする。

 

 

「──あやつの言うには“巨大兵器、及び巨大生物破壊の心得”。……だそうじゃ」

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…



勇者
「魔王を倒した褒美にTS転生を望んだ場合はどうなる?
魔人にゃもし。
「トランスフォーマーの
 ・ユニクロン(G1)
 ・スタースクリーム(G1)
 二つのうちのキライな方を選ばせてやろう。
勇者
「トランスフォーマーのトとスでTSかよ。


 
▪️おくれてスマン。
▪️ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
▪️誤字脱字矛盾点おかしな表現等ありましたら報告をお願いします。
▪️最後のあのセリフでだいたい想像つくだろーなーと思う今日この頃。
▪️原作のお茶会の場面ごちゃごちゃしてて書きづらかった。
▪️次回は麦わらの一味、ベッジたちが万国から脱出するときになるね。
▪️感想の返信はブロリーと遭遇したベジータの心境で。
▪️なろうやハーメルンで18時更新する人がおるんだが何か意味あるのかなー。なんかUA伸びそうな気配がするのでわいもやるべー。ということで。

 


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65話 逃亡のち窃盗

 

 

 ビッグ・マムの暗殺に失敗したことで逃げ場のない状況に陥ったベッジはシロシロの実の能力で人を模した見るからに堅固で巨大な石造りの城に変身。その場にいた連合軍のメンバーとヴィンスモーク家の人間たちを城内に収容させて一時的に避難させた。

 

 

 そんな彼らとは別にルーミアたちは会場に残って事態の成り行きを見守っていた。連合軍が無事に城内に避難するのを見届けるためでもある。そのルーミアがいるためか、彼女による背後からの襲撃を警戒してビッグ・マム海賊団は連合軍の入城を許すはめになった。

 

 

 その後、正気を取り戻したビッグ・マムが変身したベッジに怒りに任せて殴りかかり、ますます状況が悪化。

 

 

 そんな状況の中、巨大化したベッジが縮んで元の人の姿に戻り、ベッジの体内から飛び出したシーザーがベッジを抱えて飛翔、会場からの脱出を試みる。しかし、そうはさせまいとビッグ・マム海賊団が彼らを捕らえようと動き出す。そこへ──

 

 

「──全員、目を閉じろ!! ルーミアの雷で目が潰れるぞ!!」

 

 

 いち早く察知したカタクリが警告を発し、その場にいた一同は言われるがままに目を閉じる。その直後、数瞬もの間に会場が閃光に飲み込まれた。

 

 

 そして光がおさまると今度は会場の遥か下から轟音とともに爆発が発生、巨大な建物が巨木のようにゆっくりと傾きながら倒れ始める。会場に持ち込まれた強力な爆弾が会場の下に落下、地面に激突する際、その衝撃で爆発したためである。

 

 

 慌てるビッグ・マム海賊団。その混乱のどさくさに紛れてベッジを抱えたシーザーが倒れていく建物から空を飛んで離脱。辛くもビッグ・マム海賊団の包囲網から逃れることに成功した。

 

 

 対してビッグ・マム海賊団は壊滅の危機に陥る。このまま建物が崩壊すればビッグ・マム海賊団の主要メンバーが地面との激突で軒並み死亡して、ほぼ壊滅状態になってしまう。

 

 

 そんな危機的の状況を救ったのがビッグ・マム海賊団の総料理長を務めるシュトロイゼン。彼はククククの実の能力──物を食材に変える力で崩れていく建物をホイップクリームとスポンジに変化させ、その食材にクッションの役割をはたさせることでビッグ・マム海賊団を地面との直接の激突を防いだ。

 

 

「──だが、ご本人様は着地に失敗、重傷を負ったみたいだなー」

 

 

 ビッグ・マム海賊団が難を逃れた頃、ビッグ・マム海賊団を敵に回している勢力はそれぞれ万国からの脱出を開始していたが、ルーミアだけはゴロゴロの実の能力でビッグ・マム海賊団の会話を盗み聞きして様子を探っていた。近くにはウィーブルと黒服たちの姿があり周囲を警戒している。ルーミアは一通り会話を盗み聞きした後、電伝虫で連絡を取る。

 

 

「──アヴドゥルはいるかなー? 残念だが“毒ガス”も“爆弾”も失敗した。当初の予定通り私がやつを仕留める。それとビッグ・マムは食いわずらいを発症させた。おそらく狙われるのはウェディングケーキをぶっ潰した麦わらの一味だろうなー……」

 

『──わかった。こちらは“鏡”からビッグ・マムの兵士が出てきたから船内にある鏡という鏡は全部、砕いて海に捨てた。面倒なんでおれたちが乗ってきた船を一つ潰した。ルフィたちが到着次第、サニー号で一緒に逃げるつもりだ。……悪い、ここらでいったん切らせてもらう。森が()()騒がしくなった……』

 

 

 そう言って電伝虫の受話器を置くアヴドゥル──エース。彼の近くにはエースの仲間であるスペード海賊団の面々と麦わらの一味のブルックとチョッパーが一緒にいた。

 

 

 二人は結婚式の騒動の後、サニー号の確保のためにルフィたちと別れて潜水艦で移動、サニー号の近くで停泊していたエースと一足先に合流をはたすが、二人が到着した時にはすでにビッグ・マム海賊団の兵隊が船内にある鏡を使って侵入した後であり、エースたちは彼らと戦闘している真っ最中だった。

 

 

 幸い、主な幹部やビッグ・マムの子らが鏡を通じて侵入してくることはなく、戦闘不能にしているものの、エースたちは際限なく出てくるビッグ・マム海賊団を少しでも減らすべく、船内にある鏡ごと自分たちが乗ってきた船を破壊したのである。

 

 

 エースが「森が騒がしくなった」と言って暫く経った頃、森の奥から木々を薙ぎ倒しながらサニー号に向かって「飴」でできた洪水が押し寄せてきた。

 

 

 だんだんとサニー号に近づくにつれて高さと激しさを増していく飴の洪水。ついにはサニー号を丸呑みするほどの高さに成長すると津波となって襲いかかってきた。

 

 

 「火拳!!!!

 

 

 サニー号に押し寄せる飴の壁に、その高さに匹敵する拳の形をした炎が激突、触れた箇所を瞬時に溶かしながら進み、まもなく巨大な飴の壁が左右に大きく分断、と同時に炎の拳が砕け散って火の粉と化した破片が辺りに撒き散らされる。砕け散った炎の下には熱を帯びて赤熱化した肌を持った大男──オーブンが面白くなさそうにエースに問いかける。

 

 

「ぬるい炎だ。病み上がりのせいか?」

 

「安心しろ、俺は炎だけが取り柄の男じゃない。それよりも俺のことをよく調べているみたいだな?」

 

「……死体は見つからず、ルーミアの近くにはいつの間にかに「炎」を扱う男が現れた。こんな怪しい人物をおれたちが調べないと思ったか? 鏡を通して聞こえていたぞ?」

 

「ははは、返す言葉がねえな」

 

 

 オーブンとは対照的に笑みを浮かべるエース。もはや隠す意味はないと変装を解き、船員に能力者の存在に気を付けるよう呼び掛けた後、船の手摺を蹴ってオーブンがいる地面に飛び降りる。

 

 

「氷を溶かすために流氷の方に向かうと思っていたんだけどなー。そのために氷山を砕いたって話を聞いたんだが……」

 

「バカ正直に敵の思惑に乗る必要があるのか? それよりも船にいる連中を放っておいていいのか?」

 

「すぐ終わらせばいいさ」

 

 

 言い終わると同時にオーブンに駆け寄るエース。接近しつつも両手に炎を灯し、それをオーブン目掛けて投げる。オーブンの交差させた腕に当たった二つの炎はオーブンを渦を描いて包み込んで炎上、大きく燃え上がる。しかし、オーブンは雄叫びを発して腕を力強く左右に大きく広げると炎が掻消えて消失。

 

 

 腕を広げたオーブンの眼下、手前、腕を伸ばせば届く距離に、そこにエースがおり、弓を構えるように曲げた右腕を体の後ろに引き、指先を曲げた右拳で構えていた。

 

 

「ルーミア発案。『二重の極み』だそうだ。指の関節部分で一発当てた後にすぐに指の根本部分で二発目を当てるだけの技なんだが、これがなかなか難しい」

 

 

 言ってオーブンの腹を打ち抜くエース。複数の衝撃音がオーブンの腹部から発せられ、まもなくオーブンは白目を剥いて後ろ向きに倒れた。

  

 

「ちなみにおれは炎の推進力も使って二発以上当てているから正しくは『二重』以上になるんだけどな?」

 

 

 倒れたオーブンにそう言い残すと足の裏から炎を勢いよく噴き出し、その反動で宙に浮き、そのままサニー号のある方角へと飛んでいった。

 

 

 エースとオーブンが戦っている一方でサニー号の甲板にはいったいどこから流れ込んできたのか、足下が埋まるほどの「飴」が甲板いっぱいに広がっていた。その「飴」は表面を小刻みに波立たせて蠢きながら船上にいる生物たちを丸呑みにせんと生物がいる方向へと寄っていく。

 

 

 無論、サニー号にいる面子は飲み込まれないよう様々な種類の(ダイアル)を使って──衝撃を与えて破壊、熱で融解させる、貝に飴を吸い込ませる……等々と──抵抗をするものの、『飴』の質量は彼らの予想と抵抗力を上回り、やがて少しずつ押されぎみに、最後には『飴』が彼らが使用している『貝』を『飴』で包み込んで硬化、使用不能にさせてしまう。次いで『飴』が『貝』を包むと今度はそれを使用しているものたちへと『飴』が伸びていく。そして船上で動けるものは誰一人いなくなる。

 

 

 エースがサニー号から離れている僅かの合間にサニー号にいる船員たちは皆、『飴』に包み込まれて無力化されてしまった。

 

 

 『飴』でコーティングされた生きた彫像が立ち並ぶ船上、それを行なった『飴』の能力者、シャーロット家の長男である「ペロスペロー」。彼は船の手摺に寄りかかりながら弟であるオーブンとエースの戦闘をつぶさに観察していた。

 

 

 その観察していたペロスペローに向かって人間一人を飲み込むほどの火球が飛んできた。

 

 

 常人なら火傷では済まさない炎の塊、ペロスペローは袖の裏から取り出した貝を火球に向かって掲げ──火球は貝に少しずつ吸い込まれて萎んでいき、やがて火球全てが貝に取り込まれた。

 

 

 足裏から炎を噴出させることで宙に浮き、萎んでいく火球を眺めていたエースはペロスペローと、彼が掲げていた貝を凝視する。

 

 

「トーン・ダイアル以外のダイアルは徹底的に管理しているはずなんだけどな?」

 

「海賊らしく持っている奴から奪えばいい」

 

 

 答えるペロスペローにエースは背中から炎を噴き出して落ちるように移動。炎による推進力を得て右脚の飛び蹴りを放つもペロスペローはこれを衝撃を吸収する貝──ショック・ダイアル──で蹴りの衝撃をダイアルに吸収させて防ぎ、防がれると分かると今度は右足から炎を放出、その反動でペロスペローからいったん離れて距離を取る。エースが放出した炎だが、ペロスペローはこれをダイアルで吸い込ませて炎によるダメージを防ぐ。

 

 

「悪い。正直、舐めていた」

 

「なあにお互いさまだ。優秀な弟がいると格下のレッテルを貼られて意味もなく見下される」

 

 

 船の甲板と空中で対峙する両者。暫く睨み合うと森の方が騒がしくなり、森の出口からナミを先頭に続々と麦わらの一味が飛び出してくる。しかし、その中に船長であるルフィの姿が見当たらない。

 

 

「──ルフィは鏡の中に連れてかれたわ! あとで合流するから先に行け! ……って! それとサンジ君はケーキ作りで別行動よ!」

 

 

 先頭を走るナミが走りながらそう説明して、そのまま船に乗り込もうとするも、船の惨状を見て船の手前、島の縁で急停止、あとに続く仲間たちもナミに倣って慌てて止まる。

 

 

「麦わらの義兄! そのアメ野郎をおれに寄越せ! おれがそいつの能力を解除させて、船を自由にさせる!」

 

 

 吼えるように叫ぶのは麦わらの一味とともに行動しているジャガーのミンク族のペドロ。ペドロの要望にエースはすぐさま行動に移す。宙を滑空、滑るようにペロスペローの背後に回り込み、炎を纏った回し蹴りをペロスペローの背中に叩き込む。鈍い打撃の音とともにペロスペローは船の外へと吹き飛び、あわや地面と激突する寸前に背中から飴を放出させて地面との激突を防ぐ。

 

 

「──お前たちと距離を取るのはこちらも好都合。船にいる連中はそのまま飴に、残っている連中もこれからやって来るママの怒り……」

 

 

「感謝する。これだけ離れていれば船にまで被害は届かない」

 

 

 話しているペロスペローにペドロが飛びかかり片手で地面に押さえつける。しかしペロスペローに触れている部分から飴が這い上がって徐々に包み込まれていく。徐々に飴に覆われていくペドロ、仲間も身動きとれないそんな状況の中、絶望した表情を感じさせない、むしろこちらを睨み付けるほどの強い意思を感じさせるペドロの表情に不審を抱いたのかペロスペローが問いかける。それでも自分たちの勝ちを信じてやまないのか勝ち誇った顔でだが。

 

 

「キサマらの船はあの通り。この状況をひっくり返す魔法でもあるのか?」

 

「──ああ、とびきりの魔法がな……」

 

 

 そう言って服の裏を見せるペドロ。そこには大量のダイナマイトが巻かれていた。それを見たペロスペローは顔を青ざめさせて絶句した。

 

 

 直後、森の一角を吹き飛ばさんほどの巨大な爆発が起きた。

 

 

 爆発によって火の手が上がった森の入口、その火の光に照らされたサニー号に麦わらの仲間たちが急いで駆け込む。幸いペロスペローの能力は解除されて動かせること可能であり、彼らは船に乗船次第、出航の準備に取りかかった。

 

 

 ビッグ・マムの脅威が迫っており急いでいたこともあってか、さほど時間をかけずに出航できる態勢にはなったものの、犠牲になったペドロや鏡の中に取り込まれたルフィのこともあってすぐに出航というわけにはいかず、暫く口論になったが……

 

 

「ペドロの死を! 決意を! ムダにする気か!?」

 

 

 ジンベエの一喝でおさまり、彼らは島を離れることを決める。

 

 

 その後、島から出航したのも束の間、サニー号の進行方向には一国を攻め落とせるのでは思うほどの大量のビッグ・マム海賊団の船が大砲を彼らに向けて待ち構えていた。

 

 

 ……だが、そのビッグ・マム海賊団の艦隊に目掛けて巨大な氷の塊が降った。

 

 

「ああ、おれの友達の巨人とバギーんとこの巨人傭兵団だ。ルーミアが経営している会社の社員にやたらと野球の上手いヤツがいるらしくてな? そいつから教えてもらったらしい」

 

 

 突然の出来事を不思議がる面子にそう答えるエース。降り注ぐ流氷の雨とそれによって荒れ狂う海に足並みを乱すビッグ・マム海賊団の艦隊。僅かに空いた隙間をサニー号は縫うようにして進み、サニー号の頭上に落ちてくる氷はエースの炎で溶かしながら、無事に艦隊を抜けた。

 

 

 ひとまずビッグ・マムの艦隊を抜けた一行、しばらくはルフィと落ち合う場所に向けて順調に航海を続けていたが、彼らにとってもっとも恐ろしい人物──ビッグ・マムが意思を持った雲ゼウスに乗ってサニー号の後方から迫って来た。恐ろしい形相で迫って来るビッグ・マムに船上に緊張が走る中、一人エースは不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「ありがたい。これでようやく誰にも邪魔されることなく『北風』と『太陽』を奪えるな?」

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

にゃもし。
「えーん。執筆が進まないよー。

天使
「エタって続きが見れなくなった作品。
 そんな悲しい思いを与えていいのですか?

悪魔
「ここでエタったら笑い者にされるだけだぞ?

魔王
「キサマ、それでもハーメルンの書き手か!?

にゃもし。
「魔王!?

■そんなこんなで書き上げたよー。
■トットランド偏、書いてる人いないかなー、参考にしたいよー。
■誤字脱字おかしな表現、矛盾点ありましたら報告をー。
■思ったよりも話が進まんかった。
■感想ありがとうございます。でも返信が遅いので……


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66話 慢心

 

 

 海上を一隻の船──サニー号が突き進む。その後ろでは飢えにより痩せて細くなったビッグ・マムが、彼女の肩に乗ったペロスペローの能力で海面の上に絨毯を敷くようにアメを垂れ流し、その敷かれたアメの上を歩いてサニー号の後を追っていた。相手はゆったりとした動作で歩いているにも関わらずサニー号はビッグ・マムを撒けずにいる。その追ってくるビッグ・マムの様子を窺いながらサニー号にいる麦わらの一味とエースはルフィとの待ち合わせの場所に指定したカカオ島へと向かっていた。

 

 

「──“雲”と“太陽”は奪った。このまま『カカオ島』に向かう……」

 

『──でかした! 迷宮の出口はこっちで確保したからそのままこっちに向かっていいぞ、わはははー』

 

 

 サニー号の甲板にて、現状を確認するため電伝虫を通じてルーミアと会話をしているエース。

 

 

「カカオ島はルーミアたちが制圧したみたいだ。そこでルーミアがビッグ・マムを抑えているうちにルフィを回収してそのまま離脱する」

 

「ヨホホホホ。このままルフィさんを迎えに行くとして、ビッグ・マムをルーミアさんたちに押し付けるような感じで任せてよろしいのですか? 一緒に逃げた方がいいと思いますけどねー」

 

「ビッグ・マムの“足”はこうして奪った。いざというときは空を飛んで逃げる手筈になっている。それにいざというときのために伏兵を忍び込ませている」

 

 

 そう話すエースの手には二つの貝(ダイアル)が握られており、それぞれに「雲」「太陽」と書かれたラベルが貼られていた。ビッグ・マムがサニー号に乗り込んだ時に彼女が使役しているホーミーズをブルックがゼウスを、エースがプロメテウスを、それぞれがビッグ・マムの隙を見てダイアルに吸い込ませたものである。その後、移動する手段を失ったのを見計らってジンベエが渾身の一撃でビッグ・マムを海に突き落としたのだが、後を追っていたペロスペローと彼が率いる艦隊が海に沈みかけていた彼女を救助、今に至る。

 

 

 その後も彼らはビッグ・マムたちに追われながらもカカオ島を目指し、その道中でサニー号と同じく艦隊に追われていたサンジと彼が作ったケーキを乗せたベッジの船と合流、サンジは一緒に連れてきたプリンの助力でサニー号に乗り込み、そのままカカオ島へと向かう。その遠ざかっていく二人を眺めながらベッジの部下はベッジに尋ねる。

 

 

「ファーザー! どうします!? このまま麦わらたちと一緒にいますと……」

 

「麦わらたちが艦隊を、ルーミアがビッグ・マムを相手してるその隙に逃げる。慌てる必要はどこにもねえ。ケーキをカカオ島に置いたらしばらく様子を見るぞ。

 ──それとペロスペローに連絡を入れる。電伝虫を用意しろ。運んでる最中にケーキを潰されたら堪ったもんじゃねえからな……」

 

 

 やがて、部下の一人が持ってきた電伝虫の受話器を手に取るベッジ、受話器の向こう側から如何にも憤慨した然のペロスペローの声が受話器から流れる。

 

 

「ああ、俺だ。ビッグ・マムの癇癪を鎮める方法があるんだが……」

 

 

 

 

【万国(トットランド)──カカオ島】

 

 

 

 

 その後、ペロスペローとの交渉が功を奏したのか、ケーキを載せたベッジの船は誰にも邪魔されることなく島に到着、ケーキはルーミアたちがいる場所とは離れた場所へと運ばれた。部下を己の能力で収用して事の成り行きを陰から見守るベッジ。それからほどなくしてケーキの匂いに釣られたビッグ・マムが現れ、彼女の身の丈よりも巨大なウェディング・ケーキにかぶりつき、貪り始める。

 

 

 

 

 カカオ島にある広場の中央では大きな姿見が置かれていた。現在トットランドにて能力者が作った鏡の中にある迷宮から脱出できる唯一の出入口になっている。ビッグ・マムの息子たちがルフィを捕らえるために用意したものなのだが、現在、彼らの姿はどこにもなく、代わりにルーミアたちが広場を陣取っていた。その中にはビッグ・マムと因縁のある巨人ハイルディンとその彼の腐れ縁の女巨人エルザやジェルマ王国現国王ジャッジを始めとした彼の子どもたちの姿もあった。その全員が中央にある姿見を思い思いで眺めていた。

 

 

「正直、ジェルマ王国のお前たちがここに来るとは思っていなかったなー。お前たちの国にはビッグ・マムの兵隊が襲撃を仕掛けているはずなんだけどなー?」

 

「それならすでに潰した。ここにいるのはやつらに一泡を吹かすためだ。艦隊もじきに来る」

 

 

 ウィーブルの肩に乗っかったまま尋ねるルーミアに対してジャッジはそうぶっきらぼうに答え、そのまま鏡に視線を向ける。 

 

 

 それからしばらくして一同が見守る中、鏡の向こう側から簀巻きにされたビッグ・マムの娘の一人ブリュレを小脇に抱え、マスクで顔を隠したペコムズがルフィが入っているであろう袋を担いで飛び出す。しかし、迷宮から抜け出したのはいいが待ち構えていたルーミアたちに警戒を露にする。

 

 

「カタクリを出し抜いたのかなー? わはははー。倒したにしろ逃げたにしろ、どちらにとってもこっちの好都合」

 

 

 しばらく鏡を凝視していたルーミア。彼らが鏡から抜け出た後、これ以上の変化はないと判断したのか、左手の人差し指から小さな雷撃を放って姿見を粉砕、破片が辺りに散らばる。

 

 

「ビッグ・マムがケーキを食べ終える前にサニー号に乗り込め、ビッグ・マムはこちらで引き受ける」

 

「わ、わかった! ブリュレはどうするんだ!?」

 

「人質として連れていけ、弾除けの盾にするのもいいな。そいつがいれば他の兄弟たちが撃つのを躊躇うかもしれないしなー、わはははー」

 

「鬼かお前ら!?」

 

 

 喚くブリュレを余所にルーミアたちに警戒していたペコムズだったが追いかけてくるであろうビッグ・マム海賊団の足止めとサンジが同行するということもあって警戒を解き、島の外へと向かう。

 

 

『──お嬢! ビッグ・マムがぁぁぁっっっ!!!?』

 

『──剣が、刃が通らねえ!!?』

 

『──銃弾が跳ね返されるだとぉ!!?』

 

──食事の邪魔だ!! どきなぁぁぁっ!!

 

 

 どこからか調達して広場に設置されたテーブルの上には無数の電伝虫が置かれていた。そのうちの一つがけたたましく鳴ったかと思えば、騒がしい雑音と人々の悲鳴が流れてきた。ビッグ・マムの到来を報せるものである。その後、大型の草食獣の群れが爆走でもしているかのような足音がルーミアたちがいる広場に向かってだんだんと近づいてきた。

 

 

「一応、念のために言うが先手は俺たちがもらっていいんだな?」

 

「ああ、いいぞー。もっとも私はお前たちが一矢報いることはできても勝つとは微塵も思っていないけどなー、わはははー」

 

 

 ルーミアの物言いにハイルディンが憮然とした表情をするものの、これといった反論をするわけでもなく音のする方へと顔を向ける。いつの間にかに音は聞こえなくなっていた。その代わりに騒音の主が仁王立ちしてルーミアたちを見ていた。

 

 

「ハーハハママママ!! ケーキをご馳走してくれた礼にテメエらの組織と残りの寿命で勘弁してやるよ!!」

 

 

 ケーキを食べて元の体型に戻ったビッグ・マムがルーミアたちの前に現れた。

 

 

 

 

 カカオ島の周辺の海ではビッグ・マムの艦隊が島にある港を取り囲むように包囲網を敷いていた。彼らの大半はカカオ島に常駐していた部隊だったが、カカオ島に突如出現した闇とその闇の中から飛び出したルーミアたちの手によって半壊、かろうじて無事な兵隊がペロスペローの指示で船で海へと避難、そこで待機を命じられたのだ。その部隊を預かる隊長格の人間がペロスペローにビッグ・マムを助けるべきでは──と具申するも……

 

 

「カカオ島に行ったところでルーミアの雷でやられるだけだ。ルーミアはママに任せて俺たちは麦わらの一味の捕縛か、殲滅させることだけを考えればいい。幸い、ケーキはママを満足させるやつだったらしく、今は正気に戻っている」

 

 

 ちらりと島の内陸部へと目を向けるペロスペロー。間もなくして人々が争う怒声と爆音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 その島の街にある広場ではルーミアの陣営と思われる黒服の男たちが息も絶え絶えの状態で広場のあちこちで倒れており、広場の中心部では嬉々とした表情のビッグ・マムが己よりも倍以上の体躯を持つ巨人の一人、ハイルディンと素手で殴り合っていた。

 

 

 巨人の一撃を受けてもキズどころかアザ(ひと)つ残さないビッグ・マムに対してハイルディンはビッグ・マムから一撃を受けるたびに体にアザをつけられ、キズを増やし、血を流す。

 

 

 増えていくキズで徐々に動きが鈍くなっていくハイルディンを好機と見たビッグ・マムは彼の顔面を右手一つで掴み、顔を掴んだまま腕力に任せて前方に前のめりになりながら地面に叩きつける。

 

 

 轟音とともに地面に叩きつけられたハイルディン、彼の後頭部を起点に石畳がクモの巣状に割れて陥没、小さなクレーターが出来上がる。その中心部でハイルディンは地面に縫い付けられたかのごとく仰向けの状態で動かなくなった。

 

 

「終わるまでそこで大人しくしてな!!」

 

 

 クレーターの縁に陣取り、手足を投げ出して倒れているハイルディンに向かってそう吐き捨てるとビッグ・マムは広場の一角に目を向ける。そこにはハイルディンの仲間である女巨人のエルザに薙刀を両手に持って構えて佇むウィーグル、さらにウィーブルの肩にちょこんと腰かけて乗っているルーミアがいた。

 

 

「小細工はもうないだろうなァ!?」

 

 

 凄みを効かせる笑顔で彼らに尋ねるビッグ・マム、面と向かって対峙するウィーブルとエルザは緊張した面持ちでルーミアは嗜虐的な笑みで返事を返す。

 

 

「巨人相手なら少しは手加減をしてくれると思ったんだけどなー? わははははー!」

 

「ハーハハママママ!! なぁに記憶を抜いてテメェのせいにすればすむことさ!!

 あとはテメエを殺してゴロゴロとヤミヤミの実、それにテメエが作った組織を全て頂いてやるよ!! ありがたく思いな!!」

 

 

 ルーミアに対してそう言うとビッグ・マムは腕を黒く変色、覇気を纏わせてウィーブルと彼の肩にいるルーミアに向かって駆け寄る。

 

 

 その直後に島を覆うほどの半球体の稲光が現れ、それが消えたと同時に先ほどよりも喧しい爆音と閃光が島から発せられるようになった。

 

 

「兄貴! 港にペコムズとジェルマの連中が!! 麦わらの船も近づいて来るぞ!? それにジェルマの艦隊が動き出したぜ!?」

 

「わかっている!! ルーミアとママが殺り合っているうちに麦わらの一味を潰すぞ! 艦隊には艦隊でおさえろ! ジェルマのやつらを近寄せるな!! 麦わらの船には俺も行く! 何隻かついてこい!! ついでにアメが入ったダイアルを垂れ流しておけ!! スケーター部隊も配置しろ!! とにかく時間を稼げ!!」

 

 

 ペロスペローが矢継ぎ早に指令を出し、他の兄弟や配下の人間がそれに従い各々行動する。近づいてくるジェルマの艦隊にビッグ・マム海賊団が動き出し、間もなくして艦隊同士による砲撃が始まった。

 

 

 

 

 その艦隊同士の砲撃をよそにペロスペローを乗せた船が島に近づいてくるサニー号に接近。そのサニー号から船を近づけさせまいとエースが巨大な火の玉を作って飛ばし、ペロスペローがダイアルに吸い込ませて無効化させ、お返しとばかりに大砲を撃たせるもサニー号にいる船員たちが各々弾を撃ち落とす。

 

 

 

 

 港ではブリュレを担いだペコムズと背中にルフィを背負ったサンジを先頭にした一団が海に向かって駆け抜けていく。ビッグ・マム海賊団が彼らに向けて銃や大砲を発砲するが、簀巻きにされたブリュレの存在に気づいた彼らは撃つのをやめ、彼女を奪還すべくペコムズたちに襲いかかるも、ジェルマがこれを蹴散らす。

 

 

 

 

 カカオ島とその周辺でそんな戦闘が起きている一方でカカオ島の広場で行われている死闘にも動きがあった。

 

 

 声にならない奇声を発しながら指を組んだ両手でウィーブルの背中を叩きつけるビッグ・マム。堪らずウィーブルはお腹から地面に叩きつけられ、さらに右足で思いっきり踏みつけられ、その衝撃が地面を隆起させる。

 

 

 そのビッグ・マムの体の表面上を黒く薄い円が足下から這い、そのまま背中をつたって登っていく。ビッグ・マムが何とかしてそれを剥ぎ取ろうとするが、悲しいかな彼女の腕では背中にまでは手が届かない。それが首までに到達するとその紙のように薄い物体を掴もうとビッグ・マムが手を伸ばすがウィーブルがビッグ・マムに体当たりを仕掛け、彼女の行動を妨げる。しかし反撃として腹部に鋭い蹴りを入れられて近くの建物まで蹴り飛ばされた。その数瞬の隙を逃がさず、それはビッグ・マムの口から体内へと侵入を果たし、しばらくしてビッグ・マムが苦しみ始める。

 

 

 始めにビッグ・マムの胸から噴水のように血が吹き出た。

 

 

 それの勢いが弱まり少しずつおさまると今度は少しずつ皮膚が裂けていき、生々しいピンク色の肉が見えた。

 

 

 小さな子供ほどの大きさに肥大化した心臓が薙刀に刺された状態で飛び出す。

 

 

 さらにその薙刀を片手に全身を血で真っ赤に染めた少女──ルーミアが血を滴らしながら穴から這い出るようにビッグ・マムの体内から出てきた。

 

 

 急いでその場から離れようとするルーミアだったが、ビッグ・マムに片手で薙刀ごと掴まれてしまう。

 

 

「……いくら、お前でも心臓がなければあとは死ぬだけだなー?」

 

 

 ビッグ・マムの握られた右手から頭だけ出した状態のルーミアが勝ち誇った顔で顔中が汗だくのビッグ・マムに顔を向ける。「わはははー」と笑うルーミアを憎々しげに見ていたビッグ・マムだったが、唐突に底意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

 

(──出血多量のうえに心臓を失っているのに何で……?)

 

 

 ビッグ・マムの態度に釈然としないルーミア。その原因を探るべくビッグ・マムをつぶさに観察するが、すぐにその原因が解明された。

 

 

「……自分の『血』をホーミーズ化させた!?」

 

 

 ビッグ・マムの足下に溜まっている血溜まりがぷかぷかと浮かぶと彼女の胸の上で一ヶ所に集まり、そこに目と口が現れる。その出来上がったばかりのホーミーズから四本の管が伸びてそれがビッグ・マムの体内に入って血管と繋がると、そのホーミーズは心臓の代わりと言わんばかりに脈動しだす。

 

 

「なんて出鱈目な!!」

 

「それが『悪魔の実』だよ!! てめえのせいで寿命がいくらか減ったぞ!?」

 

 

 悪態を吐くルーミアにそう返すとビッグ・マムはルーミアを握った右手に力を加える。──と同時に薙刀に刺さった心臓もホーミーズ化させたらしく、その心臓にも目と口が開き、自ら動き出して薙刀から脱出、ぷかぷかと浮かんで移動して、ビッグ・マムの体内へと入っていく。ビッグ・マムは己の心臓が体内へと戻ったのを確認した後、両手でルーミアを掴み、腕に血管が浮かび上がるほどに強く握り始めた。

 

 

「ハーハハハママママ!! エドワード・ルーミア!! テメエは俺の敵として認めてやるよ!! この俺の手で直々に殺されることを光栄に思うんだな!!」

 

 

 両手で顔を赤くするほどルーミアを強く握り締めるビッグ・マム。ビッグ・マムに握られているルーミアもまた彼女に握り潰されないために力を入れて覇気を纏い、ひたすら耐える。そのルーミアはいつもの余裕がないのか、常に見せていた笑顔がなく、代わりに歯を食いしばる険しい表情を見せていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 そこには海がなく、代わりにピンク色の淡い光沢を放つアメが敷き詰められていた。

 

 

 ルーミアたちと別れたペコムズたちを待ち構えていたのはそんな光景だった。

 

 

 さらにスケート靴を履いたビッグ・マム海賊団が武装して彼らに武器を向ける。

 

 

 その部隊の後ろには巨大な女性──スイート3将星の一人スムージーが立っていた。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 海が煮え立つ。

 

 

 ボコボコと海面が泡立ち、そこかしこから湯気が立ち上り、それがうっすらと漂う白い煙となって辺りを覆い視界を遮る。

 

 

 上昇した海の温度がサニー号を損傷させる。

 

 

 それを下卑た笑みでペロスペローは見つめ、彼に追従してきたビッグ・マム海賊団は歓喜の声を上げる。

 

 

 サニー号の後方にはダイアルを動力とした小舟がぽつんと浮かんでおり、そこには包帯を巻いたオーブンが両拳を海面に突き刺して能力を解放していた。

 

 

「国をいいようにかき乱されて大人しく寝ていられるか!!」

 

 

 そう吼えて体を赤く発光させ、それに伴い温度が上昇、海に突き刺した拳を起点に放射状にボコボコと海が煮え立つ。

 

 

 オーブンの存在に気付いたエースはサニー号を麦わらの一味に任せて両足から炎を噴出させて飛んで一人で向かおうとするが、ペロスペローがダイアルを用いた火炎をサニー号に向けて放射、船の危機にエースが慌てて反転、その身で炎を受け止めて吸収させ燃焼を防ぐ。

 

 

「今しがた入った情報からルーミアはママの手でもう虫の息。麦わらも動けずにいる。その船も熱でやられるか、炎で燃やされるか、好きな方を選べ。ここは甘い甘いお菓子の国だが俺たちはそんなに甘くはない!」

 

 

 船の手摺からエースたちに向けてそんなことを宣うペロスペローにエースやサニー号にいる船員たちは厳しい表情を見せていた。

 

 

 

  




ざわ( ´・ω・)にゃもし。ざわ

■良い子のみんな調子はどう?
 遅れてスマン。
 ぶっちゃけ書く気が失せていた。

■感想、メッセージ、メール等の返信は…
「行けたら行く…」
「先生は怒らないから…」
「お年玉はお母さんが預かる…」
 …な感じで書けたら書きたいと思ふ。

■誤字脱字及び、おかしな表現矛盾点等は
 なんかうまい言い訳が思い付いたら書く。

■ビッグ・マムに関してはビッグ・マムだからできるんじゃねえの? …って感じ。
 雲と炎ができて「血」と「心臓」はできないってのは能力者としてどうよ? …って感じ。

■ここまで読んでくれてありがとうございます。
 それではアディオス。

 


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67話 悪あがき

 

 

 オーブンの能力でサニー号の周囲の海水の温度が上昇、それにともない船体が損傷していく。さらにペロスペローが率いるビッグ・マム海賊団の妨害もあって、思うようにルフィを助けに行けないこの状況をサニー号にいる面々は歯がゆい思いをしていた。

 

 

 撃 水(うちみず)

 

 

 人間の頭ほどの大きさの水の塊がサニー号の甲板から撃ち出され、その水の塊は楕円状に形を歪ませつつ、弓なりにオーブンへと飛んでいく。

 

 

 しかしオーブンは撃ち出されたそれを赤熱化させた腕を交差させて防ぎ、腕に衝突した水の塊はジュッと焼いた石に水をぶっかけたような音を残して霧散、散った水と腕についた水がオーブンの熱で気化して蒸気となって立ち上る。

 

 

 そしてオーブンが海水から腕を引き上げたことによって上がり続けていた海水の温度の上昇が止まった。オーブンは自分に向けて放った人物を睨む。オーブンの視線の先にあるのはジンベエであり、撃ったのは彼だった。

 

 

「ここはワシが食い止める! お前たちは先に行け!」

 

「待てジンベエ!」

 

 

 油断なくオーブンを睨みつつ船の縁に進み、そこから海へと飛び込もうとするジンベエをエースが声をかけて止める。その時、ビッグ・マム海賊団の船員の一人が声を上げた。

 

 

「おい! あれを見ろ!」

 

 

 周囲を警戒していた彼はふと空を見上げると空を飛ぶ大きな物体を発見し、彼の周りにいた船員もつられて上を見る。それはルーミアが所有している空飛ぶ船である方舟マクシムだった。

 

 

「……そうか、やつらは海路が使えないときのためにあれを用意していたのか! このごたごたですっかり忘れてた!」

 

 

 ペロスペローは空に浮かぶ方舟を見て一人でそう納得すると、部下たちに指示を出すべく電伝虫の受話器を手に取り命令を下す。

 

 

「──やつらは麦わらのルフィをあれで逃すつもりだ! 

月歩(ゲッポウ)”が使えるやつはあれに乗り込め!

 モンドールも呼んでこい! やつの本ならあの距離まで届くはずだ! 最悪、墜としても構わない! 

 万が一、逃げられでもしたらママの怒りを買うと思え!」

 

 

 早口で捲し立てるようにそう言い放つと、彼の指示を受けて無数にあるビッグ・マム海賊団の船、その各々から船員たちが飛び出し、何もない宙を足場にして蹴って上に跳ぶことを何度も繰り返し、やや遅れて鳥のように羽ばたく本を足場にした船員たちも空を飛ぶ方舟を目指して空を登っていく。

 

 

 見る間に方舟マクシムに接近する船員たち、意気揚々と船の甲板に降り立とうとするその時、複数の大きな影が現れて彼らと衝突、船の外へと勢いよく撥ね飛ばされた。

 

 

「何だ!? やつらは!?」

 

 

 船員の一人が叫び、撥ね飛ばされながらも、すぐさま体勢を整え、空中にて『月歩』を繰り返してその空域にとどまるビッグ・マム海賊団の船員たち、彼らは自分たちを撥ね飛ばしたものの正体を見て驚く。それは事の成り行きを見守っていた船にいるペロスペローを始めとしたビッグ・マム海賊団の船員たちやサニー号にいる麦わらの一味もそうだった。

 

 

「羽の生えた猛獣だと!? 悪魔の実か!?」

 

 

 影の正体を見たペロスペローがそう判断する。今しがた自分たちの味方を撥ね飛ばしたのはトラやライオンといった肉食獣や象やゴリラ等の大型の草食獣、または巨大なヘビやトカゲのような爬虫類といった動物たちだった。そしてペロスペローの指摘通りにそれらには鳥やコウモリ、はたまた昆虫のような羽が背中から生えており、また胴体には鞍がくくりつけられていて、そこに人が乗っていた。

 

 

 そしてそれらを率いるのは…… 

 

 

「ホホホホホ。いかがですか? 空飛ぶ猛獣というのは?」

 

「ルーミアのところのラフィットか!?」

 

 

 ビッグ・マム海賊団の船員たちが月歩を用いて空飛ぶ猛獣を操るルーミアに与する猛獣使いたちと空中戦を繰り広げているのを余所に、獅子の上半身、その獅子の頭の隣に猛禽類の頭と下半身を持った生き物の背に乗ったラフィットがペロスペローが乗る船の近くの宙を漂い、ペロスペローだけでなくサニー号にいるメンバーを大いに驚かせた。

 

 

 その折に肉を斬る耳障りな音とオーブンの叫び声がその場に居合わせた一同の耳に入る。

 

 

「こういうのはきっちりと止めを刺しておけ、あとあと面倒になるのは分かっていただろうが……」

 

 

 小舟に乗っていたオーブン。その彼の背後にはコウモリのような皮膜のついた腕を生やした巨大な虎が宙を漂い、その背にはシリュウが騎乗していた。一同の目がラフィットに集中している隙に後ろからオーブンを斬ったらしく、オーブンの背中には首筋から腰にかけて斜めに斬られた切り傷が一本の赤い線となって生々しく残っていた。

 

 

「海水で頭を冷やしてきな」

 

 

 さらにオーブンは背後から足蹴にされて海に落とされてしまい、海面に波紋だけが残る。

 

 

 麦わらの援軍にビッグ・マム海賊団が少なからず動揺するものの、そこは戦闘慣れしていた彼らだけあってすぐに平静を取り戻す。そして現れた援軍に対処しようとしたとき、突如として彼らの船が揺れた。

 

 

 その揺れが小さくなると今度は船が少しずつ沈み始める。

 

 

 沈みゆく船に慌てふためく彼ら、その原因を解明しようとする彼らにラフィットは答えた。

 

 

「ホホホホホ、海中からショック・ダイアルで船底に穴を開けた後、そこからウォーター・ダイアルでダイアルに貯めた水を流し込んでいるだけです」

 

 

 「早くしないと沈みますよ?」猛獣に乗ったまま、こともなげに言い放つラフィットにペロスペローたちは苦々しい表情になるも船底に開けられた穴を塞ぐために数名が甲板から離れて船内にあるであろう現場へと向かう。その後、甲板にいる船員が減ったのを見計らったのか、海中から勢いよく複数の影が飛び出し、甲板に着地、船員たちを驚かせるとともに納得させた。

 

 

「魚人だと!? 船に穴を開けたのはやつらの仕業か!」

 

 

 現れた魚人たちは悪態を吐く船員を無視して一目散に船の舵に向かう。当然、ペロスペローが排除に向かうが猛獣に乗ったラフィットが先回りして行く手を遮る──と同時に頭をかち割る勢いで片手でステッキを振り下ろし、ペロスペローは慌てつつもこれをアメでできた義腕で防ぐ。そして彼らが相対している隙にペロスペローを除いた船員たちは魚人たちの前に立ち塞がるが、魚人の一人が懐から取り出したダイアルを見て短い悲鳴を上げて青ざめる。

 

 

 その直後、船の前方部、舵もろとも船の一部が抉り取られるように船員たちと一緒に吹き飛び、船が欠けた。

 

 

 ペロスペローたちがラフィットたちを相手に立ち往生している隙にサニー号はルフィがいる方向へと急ぎ向かう。その彼らの行く先々でまるで示し合わせたように敵対する船が揺らぎ動きを止める。そこへ海中から甲板へ少数の魚人が乗り込み、舵を破壊して動きを止め、海へ飛び込んで逃げる。サニー号はそうして止まった船と船の間にある隙間を縫うようにして進み、上空では方舟マクシムがサニー号に合わせて進んでいた。

 

 

 ペロスペローが指揮する船ではサニー号が離れるのを確認した魚人たちは一目散に海に飛び込んで海中を深く潜り込んで姿を隠し、入れ替わるようにしてシリュウが猛獣から飛び降りて甲板に着地する。降り立ったシリュウと同じように猛獣から降りたラフィットをペロスペローが率いる船員たちが取り囲む。

 

 

「時間が惜しい。始めるとするか?」

 

 

 いつでも抜刀できるように鞘におさまった刀の鍔に利き手を添えながらシリュウが言葉を投げ掛け、船員たちは答える代わりに雄叫びを上げながら襲いかかった。

 

 

 

 

 海上でルーミアの一派とペロスペローらがぶつかり、ペロスペローの指示で方舟を墜とさんと方舟に取りつこうとするモンドールたちが空飛ぶ猛獣を従えるルーミアの陣営と空中戦を広げていたところを燃える身体を持った大鳥──マルコと……

 

 

コン!!

 

 

 方舟の後方部から生えた九本の巨大な尻尾が彼らの邪魔をする。後方からの奇襲が困難ならば、と前方に回り込めば巨大な前足と狐の頭部が出現、おまけに口から雷を吐き、ルーミアの陣営の兵士、マルコの猛攻もあって少しずつモンドールの味方が減っていく。

 

 

「ドクターを連れてきて正解だったな……

 急いで向かった方が良さそうだ」

 

 

 方舟に搭乗していたルーミアの一味、オーガーが片目で長銃のスコープを覗いたまま不意にそう呟き、その理由を述べる。

 

 

「船長がビッグ・マムに捕まって握り潰されそうになっている。場合によってはこちらであれの仕掛けを起こす必要があるかもしれん」

 

 

 スコープから視線を外して淡々とそう述べると、懐から赤い弾丸を取り出した。

 

 

 

 

 

 ビッグ・マムの巨大な手のひらの中で藻掻き、そこから抜き出さんと抗うルーミア。彼女はこの状況に堪えつつもこの窮地から逃れる方法は何かないか……と頭の中で画策するも、一瞬たりとも気を緩めば、たちまち押し潰されてしまうこの状況下では大した考えは思い浮かばず、また迂闊にも動けず、ただただ時間だけが無情に過ぎていく。

 

 

 そんなルーミアにとって好ましくない状況が続く中、銃声による連続した破裂音が鳴り響いた。

 

 

 銃撃の標的となり背中から撃たれたのはビッグ・マム。もっとも彼女の背中に当たった銃弾は彼女の肌を撃ち抜くことは敵わず、潰れて歪に変形した無数の銃弾がぱらぱらと彼女の足下の地面に落ちる。

 

 

あ"ん"?

 

 

 背中越しに後ろを睨み付けるビッグ・マム。そこに立っていたのは身体の一部が獣に変化した異形の一団。彼らは手にしている銃器の銃口をビッグ・マムに向けて彼女と対峙していた。

 

 

 ビッグ・マムに対して銃器がほとんど役に立たないと知った彼らは銃器を放り捨て懐から丸薬と液体の入った小瓶を取り出すと、その丸薬を口に含んで噛み砕き、小瓶に口をつけて中に入っている液体を一気に飲みほす。

 

 

「「うおおおぉぉぉっっっ!!!!」」

 

 

 彼らの体に獣毛が少しずつ生え、体つきも徐々に獣類に変化していき、体長は倍以上に膨れ上がり、やがて彼らは二本足で立つ巨大な獣へとなった。

 

 

 そして変貌を遂げた彼らは剣や斧を手にビッグ・マムへと飛びかかり、その無防備な背中に目掛けて得物を勢いよく縦に振り下ろし、あるいは大きく横に振りかぶって、叩きつけた。

 

 

ハーっハハハ、ママママっ!!

 

 

 しかし、彼らのその必殺の一撃はそのことごとくがビッグ・マムの皮膚にキズをつけること敵わず、それどころか逆に武器が耐えられずに破損してしまった。

 

 

「「────────っっっ!!!?」」

 

 

 声にならない驚きの声を上げて動きを止める彼ら。その隙をビッグ・マムは己が使役している帽子のホーミーズ、ナポレオンを巨大な曲刀に変化させ……

 

 

 左手に持った曲刀を横に振って彼らの体を一つ残らず上下二つに分断させた。

 

 

「化け物め……」

 

 

 斬られた者のうちの一人が上半身だけになった己の身体とビッグ・マムを交互に見て忌々しそうに言い放ち、そのまま背中から地面に落ちた。

 

 

「無駄死にだったな!!」

 

 

 地面に落ちた彼らを一瞥して彼らの行動を笑う。

 

 

「おっと、いけない。右手にはてめえらの大事な人間がいたんだったなぁ~? ハーハハハ、ママママ」

 

 

 いつでも使えるようにするためか、巨大な曲刀に変化させたナポレオンを曲刀のまま──地面に倒れている一人の胸を切っ先が地面に到達するまでに深く突き刺して縫いとめて止めを刺し、未だ右手に掴んだままにしていたルーミアを凝視しつつ、その様を彼らに見せつける。彼らがビッグ・マムに襲撃をかけたことで右手の握る力がほんの少し弱まり僅かに隙間が空いたが、彼らが倒れたことにより、それも元の木阿弥となってしまった。

 

 

「「うぉぉぉおおお────っっっ!!!!」」

 

 

 突然の雄叫びにビッグ・マムは怪訝そうな顔で声のした方向に顔を向ける。

 

 

 そこには鬼気迫る表情で己に向かって突進を仕掛ける大男と巨人──ウィーブルとハイルディンの姿があった。

 

 

 ビッグ・マムは向かってくる彼らに不機嫌に舌打ちを打つつ、二人を無視できないと判断、地面に突き刺した曲刀の柄に手を伸ばす。

 

 

 その僅かの時間にビッグ・マムの顔面に弾が炸裂、赤い液体が顔に付着、さらに赤い煙が顔を覆い、煙を吸ってしまう。

 

 

────────辛っっっ!!!!

 

 

 そのあまりの(から)さに顔面が紅く染まり、新鮮な空気を求めて口が開き、舌がだらしなく伸び、目を回す。それでも右手に握ったルーミアを手離さないのは長年の経験の賜物といえよう。

 

 

 そこへウィーブルとハイルディンの拳が無防備状態のビッグ・マムの腹部と顔面を捉え、大砲の弾が当たったような轟音が鳴り、衝撃が発生する。

 

 

 だが、大男と巨人の攻撃を受けてもビッグ・マムの体を少々揺らした程度のみで終わり、彼女自身は一歩も引かずその場にとどまった。攻撃の気配を察知して瞬時に身構えて備えたからである。

 

 

 そして己に拳を突きつけたままの二人、その手首を掴み、強引に引き寄せ、左右の手でそれぞれの頭を掴むと……

 

 

「てめえらのせいでルーミアを逃しちまったじゃねえか!!」

 

 

 シンバルでも鳴らすかの如く頭部同士でかち割らせた。

 

 

 そう、二人の攻撃に耐えるためにビッグ・マムは右手の力を緩ませ、そのせいでルーミアは脱出したのである。如何にビッグ・マムといえど右手にルーミアを掴んだまま耐える、あるいはルーミアを逃がさないのは難しいと判断、二人を倒すことを優先したのだ。

 

 

 さらに今のこの状況、敵が己一人しかおらず、援軍もなく邪魔される要素がない。それはルーミアにとっては有利な状況になっている。またとないこの千載一遇のチャンスをはたしてルーミアを逃すだろうか? 

 

 

 ビッグ・マムの答えは「否」である。

 

 

 それに逃げられたとしても相手はそれなりに「シマ」を持っている海賊だ。場所も知られている。こちらから相手が出てくるまで潰し回ればいい。その未来を思うとビッグ・マムは知らず知らずのうちに人の悪い笑みを浮かべた。

 

 

 頭部をかち割らされ、額から血が吹き出し、顔が血塗れになった二人は……白目を剥いて意識を失い、体を後ろに反らすようにゆっくりと傾き、地面に四肢を投げ出すような格好で倒れた。

 

 

「──知っているか? シャーロット・リンリン……」

 

 

 自分の背後、それも後頭部から聞こえてくる女の子の、ルーミアの声に「探す手間が省けた」と笑みが一層深くなる。

 

 

「ウソついたら針千本、呑ーます♪

 お前の体内に潜り込んだ私が何もしないと思ったのか?

 さすがに1,000本は用意できなかったけどなー」

 

 

 ビッグ・マムの背中に虫のように張り付いているルーミア。彼女の左腕が雷化、次いでビッグ・マムの背中から十数本もの針が飛び出し、背中から針が生えた格好になる。もっとも針といっても一本一本が子どもの腕ほどの太さがあるが、これにはビッグ・マムといえど声にならない獣のような雄叫びを上げてしまう。

 

 

「くそが! 手が届かねえ! おい、針を抜け! この針で串刺しにしてやる!」

 

 

 背中から滲み出るビッグ・マムの血液が植物の蔦のように針に絡みつき、抜こうとする。その針にルーミアは未だ雷化させたままの腕で掴み、すかさず電気を流した。

 

 

 ルーミアの流す電気に血液が触れた側から蒸発、体の中へと引っ込み、針を伝って体内へと流れていく。その流れていく電気に体がビクッと震えるビッグ・マム。しかし……

 

 

「そうはさせないよ~~~」

 

 

 間の抜けた声とともにビッグ・マムの体から人間一人が包み込めるほどの球体の雷がせり出してルーミアが生み出した電気を吸い込んで吸収してしまう。

 

 

 放射させた雷をホーミーズ化されたあげくに無効化され舌打ちをするルーミア。そこへビッグ・マムに刺さっていた針がホーミーズ化、自ら動いて引っこ抜いて宙に浮くと鋭い尖端部分をルーミアに向けて、そのまま突っ込む。

 

 

闇穴道(ブラック・ホール)

 

 

 右手で払うように腕を動かすルーミア。その動きに沿って黒い靄のようなものが前方に広がり、顔のついた針が一つ残らずそれに吸い込まれ、闇の奥に飲み込まれ、消える。

 

 

 ビッグ・マムが背中に張り付いたルーミアを押し潰すため、ルーミアを張り付けたまま後ろ向きに倒れ、背中から地面に落下。落ちた拍子で彼女の周囲に土煙が舞う。

 

 

 そのビッグ・マムが倒れた場所から少し離れて黒い円が地面に一つ、その円からルーミアが頭から姿を現し、倒れたままのビッグ・マムの頭、その横顔に向けて左腕を振い、雷でできた槍が飛んでいく。

 

 

 だが、ビッグ・マムに向けて投げ放たれたその雷の槍が突如、上へと軌道がずれてその先にいた雷球のホーミーズの口に吸い込まれてしまう。 

 

 

「自慢の雷もこうなれば通用しねえなあ。

 自然現象すらもホーミーズ化させて支配できる俺に恐いものはねえ」

 

 

 ゆったりとした動作で起き上がりつつ、眼下にいるルーミアにビッグ・マムはそんなことを宣う。

 

 

「……だが、お前が今まで食べて蓄えたソウルに限りはあるだろ?」

 

 

 そう言いつつ左手の人差し指で空を指差す。空はいつの間にかに黒い雲で覆われていた。

 

 

「お前のソウルが尽きるか、私がくたばるか……

 あれで我慢比べしようじゃないか?

 

 安心しろ。

 

 今、この島にいるのはこの()()()しかいない」

 

 

 言われて周囲を見渡すビッグ・マム。ルーミアの言う通りに人の姿どころか気配すら感じない。それどころか彼女がいつも手元に置いてあるホーミーズの一つ、ナポレオンもいつの間にかに消えていた。

 

 

「てめえ、どこに──」

 

 

 ビッグ・マムが言い終えるよりも先に雷鳴が鳴り、音がかき消える。ルーミアの雷化した左腕、そのカギ爪のような左手が雷雲に突き刺さり、次いで黒々とした黒雲に光がところどころ灯され、そのたびに音が鳴る。

 

 

 

 

 その光景は遠く離れたところからでも観測できた。

 

 

「ば、ばかな方舟はここにあるんだぞ。なんでルーミアの()()が起きるんだよ!?」

 

 

 空を進む方舟マクシムを墜とすため方舟に浮遊している本を足場に方舟にまとわりついているモンドール。彼を含むビッグ・マムの陣営はルーミアを含めた能力者たちの力を事前に調べていた。特に甚大な被害が被るだろうルーミアの能力は徹底的に調べられていた。当然、彼女が所有している方舟マクシムのことも念入りに調査が行われていた。

 

 

「……雷雲もまた雲の一つ。ミルキー・ダイアルに貯めさせることも不可能ではない。そういうことだ。あとはそれを持たせた人間に空にバラ撒かせればよい」

 

 

 浮遊している本に乗っているモンドールの疑問に淡々と答えるのは方舟の甲板にいるオーガー。

 

 

「──ところで、海楼石の粉をつけた銃弾を能力者に撃ち込んだ場合、その能力者はどうなるか知っているか?」

 

 

 彼は言い終えると同時に構えた長銃の引き金を引いた。発砲音は全部で四つ。それぞれがモンドールの両膝と両肘に命中、体内に食い込み、まもなくしてモンドールは落下した。

 

 

 

 

 方舟にまとわりついていたモンドールが落ちていく様と島の上空に漂っている雷雲を、ペロスペローが指揮をしていた船から交互に眺めている者たちがいる。シリュウとラフィットの二人だ。二人は船のマストに座った状態で鎖で何重にも巻いて拘束されたペロスペローを眼前にして立っていた。彼らの側には騎獣にしている猛獣が二人を守るように周囲を警戒している。

 

 

「──ああ、そうだ。俺が乗っている船は俺以外全滅だ。俺もじきにやられる。島にいるママとルーミアは無視して麦わらたちを追え……」

 

 

 ペロスペローが足下に置かれている電伝虫で味方にそう報告するのを確認するとラフィットは受話器を置いて通話を切る。

 

 

「おい、これで万が一ママが殺られた場合、後釜に俺を推してくれるんだろうな? それに『ソルソルの実』もだ!」

 

「ホホホホホ。私たちはあなた方と違って()()はちゃんと守りますので」

 

「……それじゃあ、終わるまで寝とけ」

 

 

 ラフィットに噛みつくペロスペローを側にいたシリュウが鞘に納まった刀を水平に振って顔面を殴打、そのまま気を失い沈黙する。そのペロスペローを見てシリュウは面白くなさそうに言う。

 

 

「憐れだな。こいつは()()()()()()()()()()……と思っているんだろうな」

 

「元々、野心があったというのもあるでしょう。私たちには関係のないことですよ」

 

 

 それだけ言い残すとペロスペローをそのままに、羽の生えた猛獣に跨がってその場から飛び去った。

 

 

 

 

 太く大きな水柱が立った。水飛沫が辺り盛大に飛び散り、海面を割って巨大な腕が天に向かって突き出る。少し遅れて現れたのは、巨大な笠を被り、前に突き出た柱のような角を持った巨大な顔。その後その顔の大きさに見合う巨大な上半身が海面に浮上。巨人が海面から現れた。次いで彼の角を模した揃いの兜を被った船員を乗せた船が現れ、その周囲に最初に現れた巨人よりも小さな巨人を乗せた船が浮上する。

 

 

エース君!! 助けに来たよ──!!!!

 

 

 そして最初に現れた巨人はエースがいるサニー号を見つけると親しそうに声をかけた。

 

 

 

 

 ペロスペローのアメで敷き詰められた海面をルフィたちが行く。そのルフィたちをスムージーたちが妨害する。彼らの背後、島がある方角から雷鳴とともに閃光が迸る。その雷鳴からルーミアが本気を出したんだ、と判断して叫ぶ者がちらほらいる。

 

 

「なんだ!? あれは!?」

 

 

 その中の一人が何かを目敏く見つけて声に出す。彼が指差す方向にはこちらに向かって降ってくる何か巨大なもの。それは気球のバルーンを備えた船だった。その船の船首には大柄な人物が立っており眼下にいるルフィたちに向けて叫んだ。

 

 

麦ちゃぁぁぁ~~~~ん!!!!

 助けにきたわよぉぉぉ───!!!!

 友情の名の下にっ!!!!

 

 

 その人物はルーミアを船長とした『宵闇ノ海賊団』

 その傘下にいる組織の一つ

『バロック・ワークス』の代表ボン・クレーだった。

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

賢者
「“DIO”は金髪・吸血鬼。
 “フランドール”も金髪・吸血鬼。
 DIOをフランにTSさせても問題はないのでは?

バトルマスター
「さすが賢者!
 その叡知に脱帽でゴザル!

勇者
「魔王討伐の報酬はそれで決まりだな。

魔神
「願いごとを己の私利私欲のためではなく
 他人のために使う。
 そなたらこそ真の勇者よ。

外道
「鑑賞キボンヌ。

魔神
「任せてクレナーデ。


▪️遅れてスマン。
 誤字脱字とかの報告ありりんす。
 感想ごめん。読んではいる。

▪️ビッグ・マムはラスボスなってもおかしくない人物なのでしぶとくさせました。

▪️ゼンカイジャー面白い。
 人間1人にロボ4人って思いきったことするよね。
 リアルタイムで見れないのが残念。

▪️最近、ロックス関連が増えてきたね。

▪️ロックス一味になった狐が「盗作」扱いでビックリよ。
 未だにどこら辺が盗作なのか分からん。

▪️ティーチTS、悪魔の実食って幼女化モリア……関連でメッセージ来たことあって感想メッセージを残したことがあるが……大丈夫だよね。

▪️心底どうでもいいかもしれぬが
 悪魔の実二つ食ったオリ主少なくね?

▪️次の68話はダイジェストなると思ふ。

 


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68話 「カカオ島」の死闘

 

 

 

 

 国の要所要所で大小さまざまな組織や勢力が入り乱れての争いが終わらない未だ戦争真っ只中の「万国(トットランド)

 

 

 だが、ある瞬間

 

 

 その島に島を覆うほどの雷雲が僅かな時間で現れたというのもあるが、勘の優れた者や戦場の空気の流れに敏感な者、あるいは聡い者は皆一様に示し合わせたかのように何かを感じ取り、敵と戦闘中だろうが構わず一時的にその手を止めて、その島がある方角に顔や視線を向けた。

 

 

 彼らが見ているその方角の先にある島は折しも「ビッグ・マム」と「ルーミア」がいる「カカオ島」であった。

 

 

 

 

【万国(トットランド)── カカオ島】

 

 

 

 

 「ビッグ・マム」と「ルーミア」

 

 

 閑散とした人気(ひとけ)のない寂れた無人の街を背景に二人は向かい合うようにして対峙していた。

 

 

 先ほどまで命のやり取りをしていたとは思えない、実に愉快そうに笑みを浮かべて向かい合う二人。

 

 

 彼女たちの頭上では島を覆うほどの黒々とした雷雲が今にも雷を落とさんとばかりにゴロゴロと耳障りな雷鳴を鳴らして広がっている。

 

 

 そして

 

 

 二人が対峙して少々時間が経った頃、彼方から飛んできた一つの弾丸がビッグ・マムの首の後ろ、その皮膚に着弾したと同時に破裂、粘着性のある粉が飛び散って、着弾した箇所とその周辺に付着した。

 

 

 戦場になっているカカオ島から遠く離れた空に浮かんでいる方舟マクシム。その船の縁に並んで佇む狙撃手たちのうちの一人であるオーガーが愛用の長銃でビッグ・マムに向けて撃ったものだ。ただの粉ではない。対能力者用に用意した海楼石のものである。

 

 

 もっとも、撃たれた当のビッグ・マムは当たった瞬間、少々、眉をひそめたものの、さほど気にする様子はなく、一瞬たりとも目を離さない、と言わんばかりにルーミアに視線を向けたままでいる。

 

 

 そのルーミアはビッグ・マムに撃ち込まれた弾丸が着弾するのを確認すると同時に雷化させた左腕と霧状の黒いもやのようなものを纏わせた右腕を真っ直ぐに上に伸ばし、手のひらを上に向けて翳していた。

 

 

 雷化させた左腕はそのまま真っ直ぐに伸びていき、右腕からは黒いもやが煙のように立ち昇っていき──

 

 

 瞬く間にそれらの先端が雷雲に深く突き刺さる。

 

 

万 雷(ママラガン)

 

 

 途端、豪雨のごとき落雷が降り注いでビッグ・マムもろとも島中の建物という建物を軒並み破壊し尽くして何もない所々黒く焦げた跡のある灰色の大地へと変えていく。

 

 

 さらにルーミアは両手にあたる部分を雷雲に突き刺したままの両腕を、斧を振り下ろすような仕草でビッグ・マムに向けて勢いよく振り下ろす。

 

 

 大きく弧を描いてしなるその両腕の先端には空島の一つを消滅させるほどの威力を持った黒い雷雲でできた巨大な丸い塊が一つ……

 

 

雷 迎(らいごう)

 

 

 それがビッグ・マムの頭上へ、ゆったりとした速度で落ちていく。

 

 

ぬぅぅぅぉぉぉおおお───っっっ!!!!

 

 

 だが、あろうことか、粉末状とはいえ海楼石で多少なりとも能力が弱体化したはずのビッグ・マムが、掲げた両手の手のひらで頭上から落ちてくる“雷迎”を受け止めてみせた。

 

 

 

 

 ──敵の増援や第三者による介入等の不測の事態にいつでも対応できるようにと、戦闘が始まる前から微弱な電波を垂れ流し、人の声とその位置を常に把握できるようにしていたルーミア。

 

 粉末状の海楼石がビッグ・マムに対して効果を発揮しないのもそれで知ってしまった。

 

 先の戦闘で己の血液をホーミーズ化させたビッグ・マムはそのホーミーズに己の体に付着した海楼石の粉を、その部分を()()()()()()よう命じたのである。

 

 渋るホーミーズにビッグ・マムは言う。

 

 

 負けて死ぬよりマシだ。

 

 

 ──と。

 

 

 

 

 女の声とは思えない野太い声を出すビッグ・マムと動きが遅くなった雷迎にルーミアは雷迎一つでは足りず、また先の戦闘で己が放った雷をビッグ・マムがホーミーズ化させたことから雷迎をホーミーズ化させていると判断、即座に両腕を上に上げ、ビッグ・マムと雷迎が拮抗している間に二発目の雷迎の作成にかかる。

 

 

 その後、ルーミアが二発目の雷迎を完成させたと同じくしてビッグ・マムもまた雷迎をホーミーズ化させることに成功していた。

 

 

 どことなく愛嬌のある顔を持った巨大なホーミーズと化した“雷迎”

 

 

 そのホーミーズ化した“雷迎”にルーミアは二つ目の“雷迎”をぶつける。

 

 

 ホーミーズ化した下から迎え撃つ意思ある雷迎とルーミアが新たに作った上から落ちてくる雷迎。

 

 二つの雷迎が双方、潰し合い、削り合い、お互いに体積を擦り減らしながら辺りに火花と紫電を撒き散らし、その都度、突風が吹き荒れる。

 

 

 その二つの雷迎が潰し合っているその隙にルーミアは残り少なくなった雷雲をヤミヤミの実の能力の一つ、引力でかき集めて圧縮させ、三つ目の“雷迎”を生成、せめぎ合っていた二つの雷迎が眩い閃光を放って互いに消滅させたのを見計らってから三度ビッグ・マムに落とす。

 

 

 再度、両手で受け止めようとするビッグ・マムだったが、ルーミアはビッグ・マムに巻き込ませる形で彼女の両手に触れる寸前で雷迎を破裂させる。

 

 

 荒れ狂う雷球の中央付近にて閉じ込められたビッグ・マム。

 

 

 雷球が地面を抉り、削り、掘りながら、中にいるビッグ・マムとともに徐々に沈んでいく。

 

 

 その後も雷球は島の中央で地面を抉り続け、深く巨大な穴を作り出していく。

 

 

 その雷球がビッグ・マムの怒声とともに四方八方に弾けて散った。

 

 

 ビッグ・マムが雷迎に耐え続け、その末に力尽くで破ってみせたのだ。

 

 

 歪な円柱の形をした穴の底で陣取るビッグ・マム。そこにいる彼女に向けてルーミアは切り立った穴の縁から雷化させた左腕を鞭のように上下にしならせて伸ばす。

 

 

 ビッグ・マムはその左腕から伸びた雷を体に触れる既のところで感電するのを構わず覇気を纏った右手で掴み、力任せに引き寄せる。

 

 強引に引っ張られてビッグ・マムの下に飛び込む形で引き寄せられるルーミア。

 

 ビッグ・マムは飛び込んでくるルーミアに空いた左手で殴りかかる。

 

 

 しかし、その左拳は空中で急停止して止まったルーミアの目の前を横切って空振りに終わる。

 

 ルーミアは左腕を伸ばしたと見せかけて実際はその腕は雷を放出して腕に見せかけた偽物であり、頃合いを見て切り離したのだ。

 

 

 その直後、ビッグ・マムの顔面にルーミアは左手を向け、その左手の手のひらから爆発するような強い閃光を放ち、その強い光にビッグ・マムは思わず目を瞑ってしまう。

 

 次いでルーミアはビッグ・マムが目をつぶっている隙に空中を滑るようにして移動をして彼女の頭部の左側へ回り込み……

 

 

闇 水(くろうず)

 

 

 黒いもやを垂れ流している右手でビッグ・マムの髪の毛を掴む。

 

 そこへビッグ・マムの体に張り付いていた血のホーミーズが鎌首をもたげ、一本の赤い槍となってルーミアの右のこみかみへと飛び掛かる。

 

 しかし、血のホーミーズは頭を後ろに下げたルーミアの目の前を掠めて外れ、その先にある彼女が左手に持っていた「水」のラベルが貼ってあるダイアルへと一滴残らず吸い込まれて消えてしまう。

 

 次いで、中身が入ったダイアルを手放し、自由となった雷が迸る左手でビッグ・マムの左耳の穴に己の左手の人差し指を突っ込ませて────

 

 

放 電(ヴァーリー)

 

 

 指先から雷を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇に満ちた場所がある。

 

 

 そこにはいつ消えてもおかしくない、なんとも頼りない光源が一つ、拳ほどの小さな雷球が点滅を繰り返して宙に浮いている。

 

 

 その明かりの下に大の字で四肢を投げ出した格好で地面に仰向けになっているルーミアがいた。

 

 

 口は新鮮な空気を求めてだらしなく半開きの状態、息も絶え絶えで、胸は呼吸のたびに上下に大きく動き、顔中はもとより全身が汗で濡れていて、その汗で服がびったりと肌に密着、周囲の地面も汗を吸って濡れていた。

 

 

 まさに疲労困憊を絵に描いたような有り様であった。

 

 

 そのルーミアが寝そべっている場所から少し離れたところにはビッグ・マムが仁王立ちして彼女を見下していた。

 

 

 その顔はその表情だけで人を殺してしまいそうな凄みを利かせた笑みが張り付いている。

 

 

 いつルーミアに襲いかかってもおかしくない状況なのだが……

 

 

 いくら待てどもビッグ・マムはピクリとも動かなかった。

 

 

 

 

 わはははは……

 

 

 

 

 やがて呼吸が整い、落ち着きをだいぶ取り戻したルーミアは近くに仁王立ちして佇むビッグ・マムを地面に寝そべったまま視線を向けて……

 

 

 

 

 四 皇 ビ ッ グ ・ マ ム !

 

 シ ャ ー ロ ッ ト ・ リ ン リ ン !

 

 お 前 が !!

 

 麦 わ ら と 戦 う 運 命 よ り も !!

 

 () () () () () !!

 

 () () () () () み た い だ な ー!

 

 わ は は は は は は は は は──────!!!!

 

 

 

 

 薄暗い穴の底で

 

 目を細め、口も細長い弧の形にして

 

 どこか狂気が垣間見えるその暗い笑顔で

 

 いつまでも、いつまでも笑っていた。

 

 

 

 

 さしものビッグ・マムといえど、能力を封じられた上で脳に雷撃を放たれては無事には済まず、その生涯に終止符を打たれたのである。

 

 

 かくして、ビッグ・マムとルーミアの殺し合いはビッグ・マムの死をもって終わりを告げ、戦争は終結した。

 

 

 

 

 




ざわ…( ´・ω・)ざわ…

▪️かなり間が空いての投稿、ゴメン。
 毎度、誤字脱字報告ありがとうございます。

▪️とりあえず感想の返信っぽいことを…

・生きていたんかワレ云々
 生きてました。

・ルーミアの一人称、云々
 僕とか俺だと違和感あるやろ?

・能力云々
 ロギアだし能力のON・OFFできるんじゃろ。
 でなきゃエースはん、日常生活、送るの大変じゃろ。

外道
「そんなことより『東方おねショタ四天王』決めようぜ☆

▪️執筆中、そんな悪魔の声が聞こえた。

勇者
「慧音は外せないな。

バトルマスター
「異論はない。
 しかし四天王ではすぐに埋まってしまう。
 七英雄とか、なんとか16衆みたいに数を増やすべきでゴザル。

賢者
「数を増やせば増やすほど、それが持つありがたみが失われる。
 四天王だからこそ、おねショタの質が、格が上がるというものだ。
 数はこのまま、質を上げるのだ。

一同
「「さすが、賢者だ。

▪️書きたりねえ、久々に活動報告を書こうかな

 


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ビッグ・マムが存在しない世界
69話 その報せは瞬く間に広がって……


68話 にてルーミアはついに孤立無援状態のビッグ・マムを殺害し、それから……


 

 

 

 

 その報せは瞬く間に全世界に広まった。

 

 

 

 

 四皇ビッグ・マム!!

『シャーロット・リンリン』討ち死に!!

 

 

 

 

 太字で横にそう大きく書かれた見出しと紙面のおおよそ半分を占める己を見る者に対して睨み返すような凶悪な面構えをしたビッグ・マムの顔写真が一面を飾る新聞がニュース・クー(新聞を配っているカモメたち)によって世界のあらゆる場所の隅々にまで届けられた。

 

 

 その記事を読んだ多くの人間は様々な反応を示したが、大抵は同じ四皇の一人だった「白ひげ」こと「エドワード・ニューゲート」……彼が亡くなった後に起こった──シマの奪い合いによる抗争が再び起こることを危惧していた。

 

 

 しかし彼ら一般市民の心配を余所にそういった争いはほとんど起こらず、たとえあったとしてもすぐさまルーミアの配下や協力者たちの手の者、はたまた海軍らがすぐに駆けつけ、瞬く間に鎮圧、彼らの助力もあってさして被害は出さずに済んだという。

 

 

 それはひとえにルーミアがビッグ・マムを殺害した後、万国(トットランド)を己の支配下に置いたことを大々的に触れ回ったという要因もあるが、それ以前にルーミアが己のシマを荒らす者に対して容赦せず、制裁を加えていたというのも大きいだろう。そのためルーミアを知る者は今回の件に対し静観を決め、彼女が支配するシマに手を出さず──それゆえに被害は小さく済んだ……と人々は考えた。

 

 

 そうして、さまざまな戦術、戦略を用いたとはいえルーミアが四皇の一角を崩したという事実に、かつて白ひげが存命時、彼の庇護下にあった人々は白ひげに代わる強力な統治者の台頭に期待を込め、逆に彼と敵対していた者は日増しに強く強大になっていく彼女と彼女が保有する戦力を苦々しく思い、あるいは強敵の出現に不敵な笑みを浮かべ、海軍の人間は厄介な悩みの種が一つ増えたと複雑な表情を作った。

 

 

 そしてルーミアが長い間、誰も成し遂げ得なかったビッグ・マムの殺害は世界に波紋を呼ぶこととなる。

 

 

 

 

白土(しらつち)の島『バルディゴ』】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)にある革命軍が根城にしている島の一つであり、彼らはその島にある岩山をくり貫いて造った砦を本部として使()()()()()

 

 ……が、見るからに堅牢なその砦は今は見る影もなく無惨な瓦礫の山へと変わり果てていた。

 

 破壊されてから時間がさほど経っていないこともあってか、所々に小さな火の手が上がり、そこから煙が立ち上っているのがそこかしこに見られる。地面に近い場所は未だ熱を帯びているのか、白い煙の湯気がゆらゆらと陽炎のように揺らめいている。

 

 

ウィ~~~ハッハッハァー!!!!

 

 

 大小さまざまな岩石を積み上げてできた瓦礫の山の頂上に鍛え上げられた上半身に対し小さな下半身をした体躯の覆面の大男が曲げた両腕を頭上に掲げながら大声で笑い声を上げている。その近くにはやや不機嫌そうな顔をした執事姿の男の姿も見られる。革命軍の拠点に侵入していたバージェスとクラハドール(キャプテン・クロ)である。

 

 

「……いつまでバカみたいに笑ってる? さっさとここから離れるぞ。──あの盲目野郎、俺たちごとここを潰すつもりだ」

 

「なんだと!?」

 

 

 クラハドールが腕時計のように身に付けていた小型の盗聴用の電伝虫。そこから流れてくる海軍の会話を盗み聞きしていた彼は手のひらでメガネを押し上げ、呆れた口調でバージェスにそう伝えると……。

 

 

「こうしちゃいられねぇ! お嬢が懸念していた『グラグラの実』の対抗策の実験にもろもろの用事は済んだんだ! とっとと、ずらかろうぜ!!」

 

 

 そう言って()()()()()()にまるでドアノブに手をかけるような仕草をするバージェス……するとその彼の手を起点にドアのような切り込みが空間に現れ、次いで扉が開くように彼の手前、左側へと開いていく。「ドアドアの実」の能力によるものだ。その空いた隙間から覗き見える暗く、どんよりとした灰色の空間の奥へと二人は手慣れた様子で躊躇うことなく入っていった。

 

 その直後、瓦礫の山よりも遥かに巨大な、それこそ小さな山ほどの隕石が二人が去った後に空から落ちて瓦礫ともども地面を押し潰して地中に深くめり込み、やがて辺りに熱気を帯びた底の見えない巨大な穴を作った。

 

 

──────────

 

 

 島に巨大な隕石が落ちるその光景を島から遠く離れた沖合で浮かんでいる船の甲板から眺めているものたちがいる。そのうちの一人が顔に入れ墨らしき模様を施し、只ならぬ気配を放つ男に声をかける。

 

 

「──ドラゴンさん、このまま『カマバッカ王国』へ向かいますか?」

 

 

 声をかけられたドラゴンは島に視線を向けつつ答えた。

 

 

「……いや、別の拠点へ向かう。行き先はこれだ。それと、ルーミアの配下の魚人に後をつけられないように気をつけてくれ」

 

 

 懐からエターナルポースを取り出して、ぶっきらぼうにそう答えたドラゴンに周りにいた船員たちは驚きつつもどこか納得した様子を見せた。カマバッカ王国にはルーミアの配下の一人である『ボン・クレー』が滞在していた時期があったからだ。彼の手足として動いているバロック・ワークスの社員が密かに活動してもおかしくはない。彼らはそう考えていた。

 

 彼らはドラゴンが下す指示の下、エターナルポースが指し示す目的の島へと向かう。

 

 

──────────

 

 

 ドラゴンが率いる革命軍とは別に島の様子を見ていたものたちがいる。帆に青いカモメと英文字が記された軍艦が数隻、海軍である。彼らは軍艦の砲撃で革命軍の拠点を潰した後も海上にて停泊して、そこから革命軍の出方を窺っていた。そのうちの一隻には海軍の最高戦力である大将の一人、藤虎こと『イッショウ』が乗り合わせていた。先ほどの隕石も彼の能力によるものであった。彼らはバージェスのビブルカードを持つ魚人の案内の下、革命軍の拠点を襲撃したのである。

 

 

「……イッショウさん、あの島には七武海の……ルーミアの手下がいたんですが、奴らごと撃ってしまって良かったんですか?」

 

「──やっこさんも敵の本部には手練れを送っていることでございやしょう。あっしらが気にかける必要はございやせん。

 ……いろいろ言いてえこと聞きてえこと山ほどございましょうが、『二兎追うものは一兎も得ず』と、先人のありがたい言葉にもありますように今は革命軍を叩くことだけを考えるよう、お願いしやす」

 

 

 そう語るイッショウの両目は僅かに開いていた。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

【カライ・バリ島】

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)、後半の海『新世界』にあるその島の中央には巨大なテントがあり、バギーたちはそこを拠点に活動していた。

 

 

喜べ野郎共!! 朗報だ!!!!

 

 

 ステージ中央に立つバギーが観客席にいる部下や客人たちに向かってそう叫ぶと観客席にいる人間たちは静まり返る。そしてバギーは観客席が静かになったのを確認するともったいぶるかのように両腕を横に広げてから朗々たる声で彼らに語りかけた。

 

 

我らが盟主エドワード・ルーミアが!!

 ()()()()()()()()を討ち取りやがった!!!!

 

 

 そう高々と宣告すると同時に「おー!」と歓声が上がるが、彼らは事前に新聞などの情報媒体から仕入れたことにより知っていたこともあってか、いささか小さく感じられる。

 

 だがバギーが次に発した言葉でテント内は歓声で埋め尽くされた。

 

 

次に取るのはカイドウの首だ!!!!

 

 

 そうバギーが言葉を発した直後、待っていましたと言わんばかりに鼓膜を突き破るほどの大勢の人間の大声がテント内を埋め尽くした。そのあまりの声量はけしかけたバギーが思わず「うおっ!?」と怯むほどであった。

 

 しかし、それも本の束の間、彼らの反応に気を良くしたバギーはすっと片手を上に上げ彼らを落ち着かせて静かにさせた後、カイドウを討ち取るための、これから実行していく作戦の具体的な内容の話に触れていく。

 

 

「ビッグ・マムを殺ったとはいえ、さすがのルーミアでも休みなしで立て続けに戦うのは無謀ってもんだ。それが四皇なら尚更だ。そこでだ──」

 

 

 するとバギーの背後に映像を映すための銀幕が下りて、そこへ映像が映し出された。中央にはスクリーンの半分を埋める麦わら帽子を被った笑顔のルフィ。その周りにはドレスローザの件で彼と盃を交わした海賊や賞金首たちの手配書が映されていた。

 

 

「こいつらをカイドウにぶつけさせて時間を稼がせる。

 なあ~に心配することはねえ。

 ありがてえことに俺たちが焚き付けることなく『麦わらの一味』は勝手に『ワノ国』に行ってくれる。

 親分がカイドウぶちのめしに行くんだ。

 せっかく盃を交わした子分にも知らせてやらねえとなあ? ギャハハハ!!!!」

 

 

 バギーがそう言って人の悪そうな笑みを浮かべて品のない笑い声を上げると観客席にいる人間たちも彼につられて、そこかしこで人を小バカにしたような態度で笑い始めた。

 

 ──だが、一緒に笑っているその中の一人は開封口が少し開いたバッグを足下に置いており、それをよく見るとそのバッグの中には一匹の電伝虫が入っていて、じっとバギーがいるステージの方に視線を向けていた。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

【グラン・テゾーロ】

 

 

 学校の教室ほどの広さがある薄暗い部屋の壁には映写機から投影された映像が映し出されており、そこには笑い声を上げるバギーの姿が映されていて鳴り止まないバギー・コールが部屋に響いていた。

 

 やがて音声が途絶え映像が途切れて真っ黒になると同時に部屋が明るくなり、その場にいた面子の姿が露になる。万国(トットランド)から脱出した際にサニー号に乗り合わせた麦わらの一味とエースにジンベエ、さらにはグラン・テゾーロのオーナーであるギルド・テゾーロがそこにいた。

 

 彼らはそこで補給と船の補強のためにグラン・テゾーロに船を停泊させ、その傍らにこれから向かう『ワノ国』に関係する情報を収集していた。その一つとしてテゾーロがバギーズ・デリバリーに潜り込ませていたスパイが手に入れた映像をルフィたちに見せていた。

 

 その件に関してルーミアの知己であるエースがその場にいることもあって一緒に見せてもいいのか……? ──という意見がナミから出たが、テゾーロはそのルーミアから許可を貰っているので問題ないと告げるとナミたちは驚いて、ここにはいないルーミアに疑惑を抱くもテゾーロが次に説明したその内容を聞いて双方を争わせて途中で横槍を入れる漁夫の利を好む彼女らしいと半ば呆れる形で一応の納得を見せた。

 

 そしてルーミアたちが立てた戦略が、自分たちよりも有効な手の一つだということも理解した。その上で彼らは話し合う。

 

 

「──スクリーンに映っていた彼、バギーは言っていなかったけど、彼らの計画では君たち以外にもカイドウに因縁のある七武海の『ゲッコー・モリア』や『モコモ公国』、他にも個人や組織で恨みのある人間にも声をかけてぶつけるつもりらしい。

 そうして君たちにある程度、露払いさせたそのあとに『宵闇』を率いたルーミアを筆頭に『バギーズデリバリー』と『バロックワークス』『白ひげ海賊団』の一部に先の戦争で傘下に下った『ビッグ・マム海賊団』の残党、そこに『海軍』を加わえた戦力で一気に壊滅させるつもりのようだ」

 

 

 部屋の中央に備えられていた机に集まる一同。机の上には簡略化された『ワノ国』の地図が描かれており、その中心には『カイドウ』の手配書が無造作に置かれていた。

 

 そして『カイドウ』を取り囲むようにテゾーロが挙げていたそれぞれの組織の顔とでも呼べる人物の手配書や似顔絵が置かれている。

 

 

「そうそうたる顔ぶれだな。ルーミアちゃんは本気で殺るつもりみたいだが……ビッグ・マムといいカイドウといい二人を殺る理由はいったい何なんだ?」

 

 

 タバコを咥えながら手配書の一つにあった『ボン・クレー』のを手に取って疑問を口にするのはサンジ。

 

 

「おでんの敵討ち」

 

 

 サンジに疑問に答えたのは沈黙を保っていたエース。ぼそっと呟くように言ったエースに一同の視線が集まる。

 

 

「俺の前にいた2番隊隊長が『おでん』だったんだ。そのおでんを殺ったのが『カイドウ』で『ビッグ・マム』はカイドウと組まれる可能性があったから今回の騒動で倒す必要があった……っていうのがルーミアの言い分だ。実際、カイドウとビッグ・マムはその昔、一緒の船に乗っていったらしい」

 

 

 そう説明するエースにおのおの納得したような態度を示す彼らだが、一人ルフィは「ルーミア」の名を聞いて突然、思い出したかのように「そうだ!」と叫び、次いでエースに話しかけてきた。

 

 

「なあエース、あのチビ女、ルーミアと連絡を取れねえか? オレ、あいつにどうしても言いたいことあるんだよ」

 

 

 エースはぐいぐいと詰め寄るルフィに若干引き気味になりつつも「お、おう」と応え、周りにいる人間もルフィに賛同するのも手伝ってか、懐から電伝虫を取り出すとルーミアに繋がるとおぼしき番号をかけていく。

 

 ほどなくして、しばらく『ぷるぷるぷる…』と鳴いた後、通話が繋がったことを知らせる『ガチャ』と共に少女の、ルーミアの声が流れてくる。

 

 

『──エー、じゃなくて「アヴドゥル」だったなー。お前がかけてくるってことは無事に着いたんだなー?』

 

 

 そうかかってくると同時にルフィがエースから受話器を半ば奪うように取り、エースが止める間もなく捲し立てるように一気に話す。

 

 

「オレだ! ルフィだ!

 仲間を助けるのに手伝ってくれて、ありがとな! 

 だけどよお、ビッグ・マムはオレがぶっ飛ばすつもりだったのに勝手に倒すなよな!

 それとジンベエをオレの仲間にするから!」

 

 

 満面の笑顔、眉間に皺を寄せた不機嫌そうな仏頂面、普段は見せない真剣な顔つき……コロコロと表情を変えながら手にした受話器で向こうにいる相手に対して一方的に話しかけてくる。

 

 

『──お前たちを助けたのはカイドウにぶつけるため。

 ビッグ・マムの件はお前たちがマヌケだった。それだけの話だなー。ジンベエは本人の意思次第……』

 

 

 淡々と答えていくルーミア、そこにルフィが口を挟んでくる。

 

 

カイドウは俺が倒す。

 だから、お前はこっちに来るな

 

 

 凄味を効かせた面構えと低い声で手にした受話器に話しかけるルフィ。……すると、彼が手にしている受話器の向こう側から何がおかしいのかルーミアの『わははははー』という笑い声が聞こえてき、静かになった部屋に響く。一頻り笑うと……

 

 

『──安心しろ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 先ほどテゾーロが言っていた作戦ではルーミアが行くことになっている。……にも関わらず彼女本人は否定を口にした。そのことに受話器の向こうにいるルーミアを除いた一同が、どういうことなのか…? と、怪訝な表情を伝電虫に向ける。

 

 

『──ん? ……今「モリア」が港で暴れてるって通報が来たからなー。悪いけど、ここで切らせてもらう。あとはそこにいる「アヴドゥル」に聞けばいい……』

 

 

 『それじゃあなー』そう言い残すとルフィたちの「「おい!」」という非難めいた制止を無視して「ガチャッ」と通話が途切れ、しばらくの間は何とも言えない空気が場を支配した。

 

 

「俺が知っている限りのことを話す」

 

 

 そんな中、エースが口を開いて……

 

 

「そのあとはルフィ……。

 俺はお前たちとはここで別れる」

 

 

 ルフィたちを目の前にしてそう告げた。

 

 




ざわ…(´ ・ω・)にゃもし。ざわ…

▪️ここまで読んでくれて、ありがとうございます

▪️ものすごい遅くなってスイマセン

▪️感想の返信してないけど読んでます
 ありがとうございます

▪️そう言えば原作キャラ何人か救っているけど、それ以上に原作キャラ何人か殺っているなー


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70話 悪巧み

前回 69話
ビッグ・マムの訃報が世界経済新聞によって報じらされ
バルディゴにいる革命軍はバージェスとクラハドールの手引きでやって来た海軍の襲撃で本部は壊滅するもドラゴンたちは脱出していた。しかし、それは海軍にとっては予想のうちだった。 
カライ・バリ島にいるバギーはカイドウを狙うことを宣言
一方、ルフィたちはグラン・テゾーロにて戦いの疲れを癒し、ルーミアと電伝虫で連絡を取る。


 

 

【グラン・テゾーロ】

 

 

 電伝虫でのルーミアとの対話を終えた後のこと、腕を組んで何か難しいことを考えているような表情が堅い顔でルフィは誰に言うわけでもなく唐突に呟いた。

 

 

「なんかよくわかんねえけど、たぶんアイツは──

 

 “カイドウを倒してみせろ”

 

 ……って言いてえと思うんだ」

 

 

 途中、ルーミアの真似のつもりだろうか、意地の悪そうな顔でそんなこと宣う。その後もルーミアの言動に対してルフィたちは思うところがあり仲間内で話し合おうとしたが……

 

 

「ここでうだうだ考えたって答えはそう簡単に出ねえだろうし、どうにもならねえんだ。だったら先を急ごう」

 

 

 ……という船長であるルフィの案により彼らは『ワノ国』へ進むことを決定した。

 

 

 

 

 やがて麦わらの一味が巨大豪華客船グラン・テゾーロでの物資の補給と船の補強が一通り終わり出航した後、彼らが出航していくのを見届けたエースがグラン・テゾーロを離れる際、見送りに来たテゾーロに向けて周囲に誰もいないのを確認した上で彼は言った。

 

 

「ティーチは命に別状はないけど、見るも無惨な姿になっちまってる。

 ……まあ、いずれは会わせるけど、今はダメだ。

 こちらが落ち着くまで待ってもらえないか?

 首に縄を引っ掛けてでも会わせるからさ?」

 

 

 申し訳なさそうに頼み込むエースの姿にテゾーロは苦笑いを浮かべつつも了承し……

 

 

「正直な話、君はこれからどうするつもりなんだい?

 無論、答えられる範囲で構わないが……」

 

 

 そう尋ねるテゾーロにエースは軽いおつかいでも済ますような軽い感じで答えた。

 

 

「ちょっと兄弟を止めに行こうと思ってる」 

 

 

 

  

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 2年ほど前の頂上戦争後、七武海に任命されたルーミアがシャボンディ諸島を支配するようになってからその島々の一角にはいつの頃か「港」と呼ばれるようになった場所がある。

 

 そこにはコーティングを施してくれる職人や船等を牽引する海獣とそれらを管理している魚人などが集まり、さらには魚人島、あるいは他の島へと向かう船とその乗組員たちが集まるようになり、そこがさながら「港」のよう見えることから、いつしか「港」と呼ばれるようになりシャボンディ諸島の玄関口とも言える場所になっていった。

 

 そんなある日、港でいつもとは違う喧騒が起きていた。

 

 

聞こえなかったのか!!

 ルーミアを出せと言ってんだ!!!

 

 

 身長が2mを超すのがざらにある魚人たちよりもさらに倍近くの体格を持った大男──ゲッコー・モリアが港へと続く大通りで騒ぎを起こしていた。

 

 

「うるせえぞ!! モリア!!

 お前は自分の手下にママの遺体と悪魔の実を奪わせるためにうちに潜り込ませただろう!? ふざけるな!!」

 

 

 ちょっとした人だかりになっていた大通りを二つに割ってモリアの前に現れたのは先日の戦争で敗北し、ルーミアの傘下に下ったビッグ・マム海賊団のペロスペローだった。

 

 彼はルーミアの指示で妹のブリュレとともにシャボンディ諸島に来ていた。

 

 目の前のモリアが手下に死体泥棒させた元凶なだけに敵対心を剥き出しに食って掛かるペロスペロー。モリアを睨みつつ自分がここに至るまでの経緯とビッグ・マム亡き後の兄弟たちとのゴタゴタを思い返す。

 

 

  

 

・・・・・・・・・・

 

 

ママが倒されるなんて

 誰も思わないだろ!?

 

 

 敵に暗示をかけられたとはいえ、自分たちの船長であるビッグ・マムを孤立化させるよう仕向けたことで兄弟たちから槍玉に挙げられたペロスペローだが、彼も兄弟たちに負けず劣らず怒鳴り返して反論する。

 

 だがお互い喚き散らしても一向に進展することがない話し合いに嫌気が差したのもあるだろうが……場が落ち着くのを見計らっていたのだろう、今まで静観を決めていた兄弟の一人カタクリが口を開く。

 

 

「俺たちはあまりにも敵を作りすぎた……

 今はルーミアの傘下に入った方がいい。

 ペロスペロー兄さんと話し合ったが、今のビッグ・マム海賊団にママに代わる戦力、象徴が必要だ」

 

 

 坦々と語るカタクリの言葉に静かに聞き入れる一同。うち一人が好奇心から尋ねた──その象徴はどうやって調達するのか? ……と。果たして答えたのはペロスペローだった。

 

 

 

「ジェルマと協力して“カタクリ”と“ルーミア”の合いの子を作る。やつらの科学なら可能なはずだ!!」

 

 

 どこか狂気を感じさせる暗い表情で答えるペロスペローにその場にいた兄弟たちがおののく。ペロスペローはそんな兄弟たちの反応など気にする様子なく語っていく。

 

 

うまくいけばママ並みの武装色の覇気と!!

 カタクリ並みの見聞色の覇気!!

 さらに二つの悪魔の実の能力を持ったママを超えた怪物が誕生する!!

 

 

 その後、自分に酔いしれたのか不気味に笑い続けるペロスペローだったが、「大変です!」と汗だくで報せを届けに部屋に入って来たであろう兵隊の一人に顔をしかめる。

 

 

ママのご遺体と悪魔の実が入った箱が消えました!!

 

 

 しかし顔を青ざめさせて報せる兵隊のその内容にペロスペローだけでなく他の兄弟たちも慌てふためいた。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 その騒動で国中が大騒ぎになったのを思い出したのか、モリアを見るその目付きはさらに険しくなる。

 

 

(──幸い、悪魔の実はニセモノにすり替えておいたし、ママの遺体も行方を晦ませられる前に奪い返せたからよかったものの……)

 

 

 件の事件の折、ペロスペローを中心に兄弟たちはあらゆる伝で下手人を捜索、その末に捕縛することに成功した。

 

 その後、また今回のように悪魔の実を奪われることを危惧した彼らはいっそのこと国内の人間に食わせることを思い付く。

 

 そこで白羽の矢が立ったのは双子の姉妹であるローラとシフォンの父親パウンドであった。ペロスペローは双子の姉妹が起こした罪を帳消しにする代わりに悪魔の実『ソルソルの実』の飲食とビッグ・マムが国内で行なった魂の徴収を命じた。

 

 そして、いずれ現れるであろう万国(トットランド)の新たな支配者にその命をもって『ソルソルの実』を渡すことも……

 

 

「ルーミアがいる場所に案内してやる。ついて来い」

 

 

 そう一方的に告げるとモリアの返事を待たずに来た道へと引き返していき、モリアもまた遅れてしぶしぶと後をついていった。その先には周囲にある建物よりも巨大な建造物が建っていて、その屋上には白い鯨を象ったシンボルが置かれていた。

 

 

 

 

 その白い鯨の形をした建物の中にはルーミア専用の部屋が設けられており、畳で敷き詰められた和風のその部屋の中央には白い涼しげな浴衣姿に白い鯨を模した帽子を被ったルーミアと足の短いテーブルを挟んで向かい合うように白いスーツと仮面を着用した細身で長身の男が正座を崩した格好で座っていた。男はCP「サイファーポール」と呼ばれる諜報機関の属する人間だった。

 

 

「わはははははー。酷いことするなー。五老星の指示かな?」

 

「……君が知る必要はない。我々は君たちの『悪魔の実』を抜き取る力に目をつけて、それを利用することに決めたのだ。

 そうすれば、わざわざ『インペルダウン』なんてものに囚人を生かしたまま放り込む必要はなくなり『悪魔の実』が手に入る。君にも我々にもメリットはある」

 

 

 そう言って立ち上がると……

 

「私はそろそろ、お暇するとしよう。

 なにやら騒がしいのが来るようだしね?」

 

 ──と別れ際にそう言い残して部屋から去った。 

 

 

 それから暫くして二人の男が言い争う声と無遠慮な足音が段々とルーミアのいる部屋へと近づくにつれ音が大きくなっていき、やがて……

 

 

オレの手下をどこへやった!?

 

 

 巨大な襖を左右に思いっきり強く開け放つと同時に見るからに怒り心頭に発しているモリアがそんなことを宣いながら現れた。その後ろにはモリアの陰に隠れるような形でペロスペローの姿も僅かながらも見える。

 

 ルーミアは問い詰めてくるモリアに対して答える代わりに自分の真後ろを親指で指差す。

 

 モリアがルーミアの行動につられて彼女が指差す背後を見てみると──

 

 

「アブサロム!!」

 

 

 ルーミアの背後には巨大なモニターがあり、そこにはモリアの探していた人物が映し出されていた。

 

 薄暗い部屋の中、後ろ手で拘束された状態でイスに座らせられ、両目も目隠しされ、シャボンディ諸島で奴隷につけられる首輪もつけられている。さらに両隣には逃がさないための見張りか、顔こそ影で見えにくいものの男が二人、側で立っているのが見える。

 

 

「てめえ今すぐアブサロムを放しやがれ!!」

 

 

 足下の影から目玉のない球形の体を持ったコウモリを生み出し周囲に浮かばせるモリア。しかし、前にいるルーミアだけでなく後ろでアメを垂らしているペロスペローも気にしてるのだろう、すぐに襲うような短慮な真似はせず、その場で押しとどまる。

 

 モリアとペロスペロー、双方がいつ襲い掛かってもおかしくない剣呑な雰囲気が漂う中でルーミアはモリアに対して取引を持ちかける。

  

 

「……麦わらの一味と交戦して海底に沈んだカイドウの手下、それも大看板とその部下の遺体……」

 

 

 ──それで手を打たないか?

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 モリアが去った後、バロック・ワークスで雇っている女性店員の力を借りて和装からいつもの服装に着替えたルーミアは腕を左右に広げたポーズで機嫌良さそうに鼻歌を口ずさみながらシャボンディ諸島のとある場所に向かって大通りを歩いていた。

 

 そのルーミアの後ろには見るからに疲れた顔をしたペロスペローが彼女の後をついている。他にもバロック・ワークスのマークを服につけた人間も数名ほど見受けられる。

 

 道中、ふと気になったのか、ペロスペローは前を歩くルーミアに先ほどモリアとの間で行われた取引について尋ねる。

 

 

「おいルーミア、あのモリアのやろうはお前からの()()()を断ったがいいのか?」

 

 

 そう尋ねつつもペロスペローは内心ではジャックの遺体でゾンビなんぞ作ろうものならカイドウの怒りを買うことになり、そうなればモリアはただでは済まないことになるだろう……と考えていた。

 

 モリアもまたそうなる可能性が高いことが分かっていたから断ったことだろう……とも考えていた。

 

 

不服か?

 

!!!!

 

 

 ペロスペローから尋ねられたルーミアは急に立ち止まり後ろを振り向いて無表情でそう問い返すと、ペロスペローは慌てた様子で理由を述べる。

 

 ルーミアの怒りを買って文字通り雷を落とされたら堪ったものではないからだ。それにルーミアの雷は己の母を死に追いやったものでもある。今、彼の脳裏には雷と黒い巨大な塊が島を壊していく記憶が蘇っていた。

 

 

「“ママ”と“ソルソルの実”は俺たち『ビッグ・マム海賊団』の良くも悪くも象徴だ。それを盗んだコソ泥を無罪放免で自由にするどころかオモチャを与えるのは他の連中に舐められる上にこちらの面子が立たない! 表立って言わないが納得できない兄弟たちもいるはずだ! こっちの身にもなって考え直してくれ!」

 

 

 一気に捲し立てるように早口でべらべらと喋り出す。そんなペロスペローの様子がおかしいのか、振り向いた姿勢のままでルーミアは目を細め、口を弧の形に歪ませてから唇を動かしていく。

 

 返事を聞いたペロスペローは人の悪そうな悪どい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「……また悪巧みか……?」

 

「ホホホ。シリュウ、あなたは黙っていなさい。姫が話してる最中ですよ?」

 

 

 ルーミアとペロスペローを遠巻きにして眺めている人たちによって二人を取り囲むように出来上がっていた人だかり。その人だかりがひとりでに二つに割れて二人の大男、シリュウとラフィットが現れた。

 

 

「ウィ~ハッハッハァー!

 お嬢! 今、帰ってきたとこだぜ!」

 

「ここでは潜入も執事のやる仕事のうちに入るのか?」

 

 

 次いで同じようにして覆面の大男、バージェスとそのバージェスが隣にいるせいで小さく見られるが周囲にいる成人男性よりは背が高い執事姿のクラハドールの二人も現れる。

 

 

……モリアは、巡り合わせが悪いな……

 ……麦わらと、出会ったばかりに……

 

「仕方あるまい。やつはそうなる星の下に生まれたのだろう」

 

 

 さらに体の弱そうな馬に跨がったこれまた体の弱そうな大男、ドクQと長銃を肩に乗せたスコープ状の片眼鏡をかけたオーガー。

 

 

「は~~~い、ルーちゃん、ご機嫌いかがぁー?」

 

「社長! 我々は特設ステージで落ち合う約束をしたはずだガネ!? 勝手に移動するのはいかがなものガネ!?」

 

 

 バレエのように爪先立ちで移動しながら近づいてきたオカマの大男、ボン・クレーと彼に苦言を呈している数字の「3」という髪型からそのままMr.3と言われているギャルディーノ。

 

 

「わはははー、せっかくだ。このまま向かうとするかなー?」

 

 

 そう言うと先陣を切って歩き出すルーミア。他の男たちもルーミアに連れて動き出す。ルーミアを中央に左右には彼女よりも体格の大きな男たちが彼女に従って歩く様は、多少の例外はあるものの名の知れた実力者はいずれも体格が大きく立派なのが多いこの世界において彼女のその小さな体は物珍しく異質であるといえよう。

 

 

「ルーミア様! ありがとうございます!

 おかげさまで妻が戻って来ました!!」

 

「出来立ての甘いお菓子がありますよ! 一口どうです?」

 

「俺たち魚人も感謝してるぜ!

 まあ、未だにここで人さらいやってる命知らずな連中がいるけどな!」

 

 

 しかし、ルーミアの恩恵を受けている島の住人たちは気にもせず好意的な声をかけてくる。ルーミアはそんな彼らに笑顔で手を振って応え、先を急ぐ。そのルーミアの行く先には彼女を待ち構えていた集団がいた。

 

 

「待っていたぞ! ルーミア!

 いくらお前でもビッグ・マムとやり合って無傷で済むはずがねえ! 

 弱ったお前らをぶちのめしてここをおれたちのシマにさせてもらうぜ!!」

 

 

 立ちはだかるのは己が船長だということを知らしめているのか海賊帽子を被った男たちの集団その数10数名ほどとその配下らしきガラの悪い男たちの軍団からなる軍勢。

 

 それが船長格の号令とともにルーミアたちに向かって駆け寄り……

 

 

「「!!!!?」」

 

 

 交差したと思った瞬間、船長格の男たちは驚愕した表情でぼろぼろの姿で宙に舞い、配下の手下たちは一人残らず足下に広がっている“闇”に呑み込まれていく。

 

 

機は熟した。

 オヤジの課題も果たした

 

 

 背後で宙に舞った人間たちと呑み込まれて消えていく船員たちを尻目にルーミアは誰に言うわけでも静かに語り出す。しかし、その声はどこまでも響き渡り、不思議と誰の耳にもすんなりと入ってくる。

 

 

なぜオヤジが海賊王にもっとも近い位置にいながら海賊王にならなかったのか……

 

 それを教えに行こうか?

 

 

 言い終えると同時に船長格の人間たちが地面に落ち、逆に“闇”に呑み込まれていた手下たちは勢いよく天に向かって噴き出し、ほどなくして地面に落下した。

 

 周囲の島の住人はルーミアたちに襲いかかった襲撃者たちが気絶して動かなくなるのを確認すると、しばらくして誰からともなく歓声が沸いた。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…
▪️テスト用に前のおさらいを前書きにさらっと書いてみたよ。
▪️過去に書いていたボーボボでも書いてたんだよね。たぶん。
▪️心底どうでもいいが……
「おれが…「おれたちが」ガンダムだ!!」
 ──みたいにカギカッコの中にカギカッコ書く人、増えてるの何でだろ?
 言いたいことはわかるが、あれ誰が言っているのか、わかりにくくね?


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