ファイアーエムブレムヒーローズ ~異界の巫女~ (femania)
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プロローグ プロローグ1 フェーの見た光景

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!

フェーはいったい何を見たのでしょう?


ヴァイス・ブレイヴ。至天の世界と呼ばれる世界に存在するアスク王国所属の特務機関。

 

その仕事は主に異界の扉の悪用による厄災から人々を守ること。

 

異界の扉とは、この世界と異界を繋ぐ扉のことであり、異界とは、様々な英雄が、人外の脅威から人々を救った世界のこと。

 

ヴァイスブレイヴの敵である組織や王国が日々アスク王国を滅ぼそうと進軍してくる。その扉を開け、強大な力を持つ英雄たちに『契約』を持ち掛け、アスク王国を滅ぼそうとするため、特務機関はその軍との戦いに日々身を投じる。

 

その中心戦力は、召喚士と呼ばれる異界から英雄を召喚する特殊な神器を使う人間により、呼び出された数多の英雄。

 

彼らとともに迫る敵を倒し、敵が開いた異界の扉を閉じ、この世界の関与で異界の歴史が改変されないように始末をつけるのも彼らの仕事だ。

 

ヴァイスブレイヴの戦闘員、アルフォンス、シャロン、アンナの3人は、伝書フクロウフェーの一匹と召喚士によって召喚された英雄たちとともに、エンブラ帝国と戦い、ムスペルを退け、ようやくアスク王国に平和を取り戻した。

 

未だエンブラとの戦いは続いているものの、召喚士によって呼び出された英雄とともに戦い、アスクの平和を守り続けている。

 

 

――そう、昨日までは。

 

 

「ふぇー、むにゃむにゃ」

 

あついような、焦げ臭いような。そんな謎の違和感によって、定位置で瞑想をしていた伝書フクロウは目を覚ます。

 

「ふぇ?」

 

いつもは夜でも敵の侵入を警戒しているはずの英雄の姿が見えなかった。

 

「皆さん……どうしたのでしょう?」

 

ぱたぱたぱた。つい癖になってしまっている翼を動かす擬音を口ずさみながら、上空へとはばたいた。

 

これでも伝書フクロウを自称するだけあり、上空に飛び立つことは苦ではない。

 

特務機関の建物は屋内なので上空から中の様子は見えないはずなのだが、その真理に気づくことなく、フェーは夜空へと飛び立った。

 

特務機関の本拠地の上空からは、白を基調とする、美しい街並みが見える――。

 

「ふぇ?」

 

はずだった。しかし、フェーの目の前に広がる街は、あまりに赤すぎる。

 

炎が上がっている。街が燃え、

 

「ひいぃ!」

「うあああああああああああああ!」

「やああああああああああああああ!」

 

人々の苦しむ声がたくさん聞こえてくる。

 

そして、それを行っているのは、

 

「あれは……英雄さん達ですか……?」

 

つい寝る前まで、気さくに話してくれたはずの、召喚士によって召喚された異界の英雄たちだった。

 

「なんで……なんで?」

 

フェーは混乱した。いったい何がどうなっているのかと。

 

二度見、三度見した。

 

召喚された中には、闇堕ちした英雄もいなくはなかったのは心得ているが、フェーが見る限り、街中で暴れているのは、そんな連中ではなかった。

 

マルス。リーフ。アイク。クロム。そのような善の心を持っているはずの英雄だった。そんな彼らが、容赦なくアスクの文明を破壊し、人々の命を奪っている。

 

それは、フェーにとっては、あまりに凄惨な光景だった。

 

「そんな、そんな……」

 

しかし、この鳥は伝書フクロウ、残念ながら人々を救う力は、今の自分にはない。

 

「アルフォンスさんたちに、召喚士さんにお知らせしなければ!」

 

フェーはすぐに、自分のお世話をしてくれる慈悲深い飼い主である、特務機関の誰かを探しに、これまで出したことのない凄まじいスピードで、城へと舞い戻った。

 




プロローグはまだ続きます。

早速大波乱です。
そして次回はエクラ登場です!
何故こんなことになってしまったのか、それが徐々に明らかに!

by トザキ

今回の連載は、1話1000文字から2000文字の中で終わらせて、読みやすくしようという話になり、このような形で、スピード感重視で進めていきます。

プロローグはまだ続くので、プロローグだけでも最後までご覧になって、この話の行く末に期待か不安かを測っていただければと思います。

by femania


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プロローグ2 召喚士エクラ

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!


「召喚士さん! 召喚士さん!」

 

エクラは、聞きなれた声に呼び出されて目を覚ます。

 

「フェーどうしたの?」

 

「大変なんですぅ、大変なんですぅ!」

 

いつもの癒される声に耳を傾けて、エクラはフェーがいつもと違うことに気づく。基本的に伝書フクロウとして穏やかな物言いのフェーが、今まで聞いたことのないほどの声量で自分を呼んでいたのだ。

 

「フェー。落ち着いて」

 

「ふぇー、ふぇー!」

 

「おちついて」

 

「ふぇ……ワタクシとしたことが、申し訳ありません」

 

「大丈夫、落ち着いて、ゆっくり、何を見たのか話をして」

 

「はい……」

 

エクラは寝間着から、いつもの出陣の時の服へと着替える。最初に異界から呼ばれた頃はなれなかったローブも今では簡単に着こなせる。

 

そのわずかの間、フェーが見た光景の報告に、真摯に耳を傾ける。

 

平静さは崩さなかったつもりだが、それでも一瞬着替えの手が、否、頭の中を含めて、生命維持に必要な生理現象以外のすべてが停止したような感覚に襲われる。

 

自分が召喚した英雄が人を襲っているということ。

 

否、それをエクラはすぐに否定する。

 

「そんなことないよ、フェー。確かに悪い人も中にはいたかもしれないけど、いい人だってたくさんいた。そんな英雄たちが、急に心変わりして、みんなでこの国を壊そうなんて思わないはずだ」

 

「召喚士さん……」

 

「とりあえず、アルフォンスなら、何か知っているはずだ。合流しよう」

 

「しかし……」

 

実はここに来るまで、アルフォンス、シャロン、アンナ、フィヨルムの部屋を順に尋ねたフェー。しかし。その部屋が、まるで爆破されたかのように、無残に壊されていたのだ。

 

「なんだって……?」

 

さすがのエクラもそれには衝撃が体を駆け抜ける。

 

まさか、死んだ――?

 

一瞬考え方が、それをすぐに否定した。

 

「大丈夫」

 

「召喚士さん。でもぉ……」

 

「不安になるのは分かる。けど、まだ死んだと決まったわけじゃない! みんな強いよ。だから、大丈夫だ」

 

何の確証もない、ただの気休めの言葉だった。しかし、それでも、フェーには効果があったようで、

 

「……召喚士さん。行きましょう!」

 

「ああ。まず一人、誰かと合流する!」

 

うるうるした目になりながらも立ち直った。エクラはフェーを肩に乗せ走り出した。

 

破壊された城。焼け焦げたカーペット。ところどころに転がるアスク兵の亡骸。

 

未だエクラは外には出ていない。それにも関わらず目に入る光景。すでに敵が城に潜入しているという事実を示している。

 

エクラは特務機関に来てから、戦争を経験した。生き残るために武器の扱いは苦手なりに、観察眼を鍛えてきた。それ故に、現状、特務機関の本部があるこの城に何が起こっているのかを容易に想像させた。

 

「みなさん、みつかりませんねぇ」

 

心配そうにさえずる伝書フクロウにエクラは頷きを返す。

 

しかし、あえて言葉は変えさなかった。きっと見つかる。まだ生きてる。そう信じているからだ。

 

だからこそ、城の中を走る。もしもの時はブレイザブリクを使って、もしものためにため込んだオーブを動力に神器の力を発動し、英雄に助けてもらうしかないと、敵との遭遇も考えながら。

 

いつもは戦いの時には、アルフォンス達が近くにいた。それが急に一人になり、底知れぬ不安がエクラの動きを鈍らせようとする。

 

しかし、エクラは自分を鼓舞し、必死に足を動かした。

 

そして、幸運なことに、ここまで敵には誰にも会わなかった。エクラが通ったところは既に戦闘が終わっていた様子で、アスク王国の兵士が無残な姿で倒れていたのもうなずける。

 

もうすぐで、あの場所に出る。誰かにはきっと会えるだろう。エクラはそう確信している。

 

エクラが目指しているのは、ヴァイスブレイヴの本拠地の中でも最も広い空間。掲示板や噴水、フェーの止まり木などが置いてあり、多くの英雄たちが集って談話や作戦会議を行う憩いの場。よくエクラはそこをホームと呼んでいる。

 

もうすぐ、というところで、とうとうエクラにも試練が訪れる。

 

「敵……!」

 

「ふぇー……」

 

血の匂い。今さっき起こった断末魔。振り返るその兵士は、エンブラの紋章を携える剣の兵と槍の兵。震えるフェーをなだめながら、エクラは召喚器をセットする。

 

「今、ここに他の英雄はいない。それがなぜかは知らないが、今はまず、ここを切り抜けないと」

 

エクラには相手のステータスを確認できる、特殊な観察スキルが付いている。それにより、敵のHP、いわゆる残りの生命力を数値にして見ることができ、敵の強さを客観的な分析にかけることができる。このスキルもあり、エクラはアスクの軍師としての一面ももつ。

 

脳に伝えられた情報は衝撃的なものだった。

 

(115……120……? なんか……おかしくない?)

 

かつて出会ったことのある英雄の中に、最高にタフなアーダンという英雄がいた。最高記録をもつ彼でも99だった。他の多くの英雄も、3桁のHPを持った敵など存在しない。

 

あのエンブラ兵は間違いなくただの一般兵。それにも関わらず、そのHPの量と大英雄戦、危険度アビサルで出てくる護衛兵並みのステータスが観測された。

 

(あんなの、英雄でも1人、2人じゃ倒せない……!)

 

しかし、すでに相手のエンブラ兵はエクラの存在に気づく。

 

「アスク……兵」

 

「滅ぼせ……ぇぇぇぇぇぇ!」

 

獣が肉を見つけたように牙を見せ、己の武器を持って突撃を開始する。

 

迷っている暇はなかった。エクラはブレイザブリクにオーブを装填し、神器を起動させる。

 

「我が祈り、我が意思。そのすべては至天の世界の平穏に捧げるもの。神竜アスクよ。そしてその巫女たる、レイリーンよ。この志に応えるならば、大いなる守護者をこの地に呼び出し給え!」

 

本来はこのような詠唱は必要ないものの、今はとにかく、この場を切り抜けるための奇蹟を信じるために唱えた。

 

そして神器のトリガーを引く。

 

「伝承の異界より来たれ! 栄光携えし英雄よ!」

 

撃ちだしたオーブのエネルギーによって異界の英雄は召喚される。あらかじめ色を決めておくことで召喚される英雄をある程度まで絞り込むが、そこから出る英雄は不明だ。

 

「……あれ?」

 

「ふぇー、召喚士さん?」

 

英雄が――召喚できなかった。

 




まだまだプロローグは続きます。

とりあえず特務機関の誰かが出るまでは続きます。
しばらくお付き合いいただければ幸いです。


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プロローグ3 異変

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・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!

召喚が……できない? オーブ返せー! とは残念ながらならないです。


何かの間違いかと、トリガーを再び引いたが、何度やっても、英雄が召喚できない。

 

「嘘だ……」

 

こんなことはこれまでなかった。誰か英雄はこの召喚の要請にこたえてくれたはずなのに。

 

「ふぇー! なぜですか。いったい……」

 

「フェー、これは?」

 

「ワタクシにも分かりません……こんなことぉ」

 

「アルフォンスに訊いてみるしかないか?」

 

しかし合流はできない。すでに兵士には見つかった。逃げることもエクラの身体技術ではできない。戦うか死ぬか。

 

「フェー。今までありがとう。逃げるんだ」

 

覚悟を決めるしかない。

 

「そんな、そんなことできません」

 

「いいから。誰かに守ってもらって。フェー」

 

「ふぇー、でも、今までお世話になった召喚士さんを見捨てることなんてできません!」

 

「大丈夫だから。行って!」

 

「ふぇー……」

 

エンブラの戦士は、剣を振りかぶり、槍を持ち、それぞれがエクラを殺すべく迫る。

 

エクラも死ぬのは怖い。しかし、幾度とない戦争が一般人である彼を、心意気だけでも立派なアスクの軍人に変えていた。

 

だからこそ、フェーを、特務機関の重要な情報収集係を死なせないために、犠牲になるしかないと思ったのだ。

 

「ふぇー! ふぇー! ふぇー!」

 

飛び立とうとフェーは翼を広げる。

 

しかし、その必要がなくなったのは、エンブラ兵を止める声が、戦士の後ろから響いたからだ。

 

「やめなさい……」

 

その声、エクラには聞き覚えがあった。

 

「ヴェロニカ皇女……?」

 

エクラに迫る戦士を止めたのは、エンブラの皇女であるヴェロニカ。今まで何度も激闘を繰り広げてきた、アスクの宿敵だ。

 

しかし――。

 

(HP680……? なにそれ!)

 

自分の目が狂ったかと一瞬思った。今のヴェロニカ皇女はそれほどに強い何かを秘めていたのだ。

 

そしてそんな数値で見なくても、今のヴェロニカ皇女が今までと違う力を持っているのは明らかだった。彼女の使う魔導書が、いつもにまして怪しく輝いていたのだ。

 

そして彼女自身も、いつもと同じようで、どこか違う雰囲気だった。

 

「こっち……来なさい」

 

ヴェロニカの誘いを受け、エクラは一瞬悩むが、今のエクラに抗うだけの力はない。エクラは素直に、ヴェロニカ皇女の指示に従い、その先にある、ホームへと歩き出した。

 

 

 

ホームは未だ綺麗に保たれている。フェーの止まり木にも、噴水にも、地面や上空にも傷一つついていなかった。

 

「ここがあなたたちの本拠地なのね。きれいだわ。ここはこのまま残しておきましょう……」

 

エクラは、ヴェロニカの近くにいる謎の騎士を見る。なぞというのはその騎士はほぼ透明で姿が詳しく見られないのだ。しかし、馬に乗っている事、巨大な剣を持っていることはかろうじて観察できる。

 

(HP340……。おかしい。何かおかしい……)

 

ここまでの数値だと、まるで目の前の2人が人間でないようにみえてならない。

 

そしてホームにはヴェロニカ皇女と、その騎士、そしてエクラとフェーしかいなかった。

 

「ふふ……怖い?」

 

「珍しい。笑うんだね」

 

「ええ。私はとてもきもちいいわ……だってアスクがこんなふうになってるんだもの」

 

いつものヴェロニカ皇女が言いそうな話だが、エクラは違和感がぬぐい切れない。

 

「ヴェロニカ皇女。なぜここに招いたの?」

 

本来であればエクラもアスクの人間、問答無用で殺す相手のはずなのだ。

 

それに対し、ヴェロニカ皇女は――

 

(……?)

 

違う。確かな証拠はないが、目の前にいるのはヴェロニカ皇女ではない。だからと言ってロキの変装かと言われればそうではない。敵を褒めるのもどうかと思うが、ロキの変身は自分が見てすぐに分かるもの程度ではないほど完璧だ。

 

瞳の奥に怪しい光を宿すヴェロニカはエクラに、底抜けに嬉しそうな笑顔を浮かべながらエクラに言った。

 

「宣戦布告……必要でしょ……?」

 

「君は誰だ……?」

 

「なにが言いたいの……?」

 

「答えてくれ」

 

「……物好きね。でも……あなたの予想と少し違うわ……」

 

ヴェロニカは愛用の魔導書を掲げ、魔力を放出する。

 

「私は、ヴェロニカ……それであってるわ」

 

「でも……君は」

 

「ええ。今はある人と……協力しているの。アスクを滅ぼすために。それだけの違いよ……」

 

「ある人……?」

 

エクラはそこから先を訊こうとしたが、それ以上をヴェロニカは許さなかった。

 

凄まじい魔力放出の影響が暴風となり、エクラに襲い掛かる。

 

「ふぇー!」

 

伝書フクロウは吹き飛ばされ、エクラもかろうじて前に体重をかけ続けるのが限界だった。

 

「あなたにはもっと……聞きたいことがあるはずよ?」

 




ヴェロニカ皇女登場です。
しかしなんだか様子がおかしい状態です。

このピンチをどう乗りきるのか、ご期待ください。

by トザキ

前回説明し忘れましたが、エクラは敵や味方のステータスを数値で確認できるという特殊能力を持っています。これは、ヒーローズをプレイしたことのある人なら分かると思いますが、上の方に出る、ユニットの強さを表す者です。HP3桁とか、シリーズでも烈火の火竜、聖魔の魔王、暁のアスタルテや、外伝、エコーズのドーマくらいしか思いつかないですね。設定がインフレしすぎです。

しかし、絶望感と言ったらこれくらいあっても良いのではないか、と思いそのまま出してます。後でこの判断に後悔が来ないことを祈るばかりです。

by femania


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プロローグ4 魔に堕ちた太陽

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・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!


もっと聞きたいこと? エクラは首を傾げる。

 

しかし、思い出すのに長い時間は必要なかった。

 

「エクラ!」

 

アルフォンス! と声には出さなかったが、頼もしい声が聞こえ、振り返ろうとする。

 

「伏せろ!」

 

しかし、親友から飛んできたのは再会を喜ぶ声ではなく、警告だった。

 

エクラは体勢が悪ければ吹っ飛ばされるところを耐え、何とか地面に屈む。

 

その頭上を、鋭利な弓が飛んで行ったのをエクラは確かに見た。

 

振り返る。エクラに新たな驚愕が走った。

 

アルフォンスが、血まみれになりながら、アンナに抱えられていたのだ。

 

そしてアンナから逃げるように、ふらふらと歩き出した。

 

「無理しちゃだめよ!」

 

アンナの叫びに、

 

「しかし、僕だけが弱気になっているわけにはいかないですよ、隊長」

 

と、徹底的に強がる姿勢を見せた。

 

「アルフォンス……」

 

「エクラ、無事でよかった……! く……」

 

アンナが警戒している先には、炎槍ジークムントを持ったエフラムが立っていた。その後ろには、蛇弓ニーズヘッグを持ったヒーニアスが援護のために矢をつがえている。

 

「すまない……英雄を」

 

アルフォンスが言いたいことはそこまでで伝わったが。

 

「ごめん。無理」

 

と、言い返すしかない。

 

「どうして……?」

 

「分からない。でも、英雄はどうしても召喚できないんだ……」

 

弱音を吐くしかないエクラ。申し訳なさで頭がいっぱいになった。その事実を告げた時のアルフォンスの顔は、今まで見たことがないくらいに絶望を感じさせる顔だったからだ。

 

そしてそんな彼らを守るアンナも限界を迎えている。

 

「よく耐えるな。正史世界の英雄にしては素晴らしい戦闘力だ。褒めて遣わす」

 

よく見ると、ジークムントが黒い。そしてエフラムもいつもの様子とは違う。

 

「く……」

 

そして、口ぶりから分かることは、アンナとアルフォンスはあのエフラムと戦っていたということ。そして2人がかりで挑んだアルフォンスとアンナに引けを取らないどころか、圧倒したということ。

 

エクラはそのエフラムのステータスを見た。

 

(HP450のうち残り412、他は攻撃力85 素早さ60、守備55、魔防50 勝てるわけない……!)

 

アルフォンスがさらにエフラムの槍を指さす。

 

「エクラ……武器を見てくれ」

 

「ああ、黒いね」

 

「本人はこう言っていた、魔槍ジークムント」

 

「聞いたことないよ?」

 

「あの槍、何か良くない力を感じる……恐ろしい槍だ……」

 

ヴェロニカはそれを聞き、ふふ、と笑い声をあげた。

 

「まさかあれも君の仕業か?」

 

尋ねるアルフォンスに、ヴェロニカは答える。

 

「私じゃない……彼が持っているのは、彼が彼の世界で得た力。終末世界のマギ・ヴァル大陸で人々を破滅へ追いやった魔王」

 

「馬鹿な……」

 

そんなことあり得ない。

 

アルフォンスもエクラもエフラムとともに戦ったことがあるからこそ分かる。エフラムは人々を虐殺するような人間ではないと。

 

「はぁ!」

 

凄まじい槍の刺突を、アンナは神器、ノーアトゥーンでかろうじて防ぐ。そして、反撃に転じるも、エフラムから放たれている魔の力が、ノーアトゥーンの斬撃すらも擦り傷程度に抑えてしまう。

 

「く……、はぁはぁ」

 

「正史世界を守る特務機関、ヴァイスブレイヴ。愚かな人間の最期のあがきを、俺が直々に見届けてやる。いくらでも足掻け、指一本動かなくなるまで可愛がった後、惨たらしく殺してやる。せめて俺を少しでも興じさせろよ? その間は後ろの2人には手を出さないでおいてやる」

 

「上等……じゃない!」

 

いつものエフラムが決して見せない笑み。悪の権化であることを示すような表情。アンナは再びそのエフラムに斬りかかった。エクラから見たアンナのHPは残り9.おそらく、次の攻撃が当たれば絶命する。

 

エクラは絶句するしかない。もはや、何もかもがわからない、そしてどうすればいいのかも。

 

「かわいいかおね……エクラ」

 

ヴェロニカが語り掛けてくる。

 




エフラム? がまさかの敵です。
この時点で何か変であることが分かると思います。

ここからが本番です。
ヴァイスブレイヴの敵はいったい何者なのか。
それが次回で明らかになります!


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プロローグ5 終末世界からの侵攻

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・この話はフィクションです。
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・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!


アルフォンスはかろうじて立ち上がり、すでに刃こぼれの激しいフォルクヴァングを構える。

 

「無様……いい気味だわ」

 

「ヴェロニカ皇女。いったい君は……何をした!」

 

この襲撃の核心に触れる問いを投げたアルフォンスの叫びに、ヴェロニカは寸分迷わず答える。

 

「決まっているわ……アスクを滅ぼすの」

 

「それだけじゃないはずだ。英雄の召喚ができないのも君の仕業だろう?」

 

「正しくは私たちの協力者の仕業だけれど……まあ、いいわ。そうよ、私たちの仕業」

 

そして、ヴェロニカは語る。このアスク崩壊を呼び起こした元凶と名乗る名を。

 

「ブレイザブリクの創始者、神龍アスクを信仰し、この世界に異界の扉と召喚器を創造した巫女レイリーン様の力……」

 

「レイリーンだって……?」

 

アルフォンスは自国の歴史に詳しいためかすぐに、名前にピンときたらしい。エクラも今の一言ですごい人だとは理解した。

 

「神話の時代の人間だ。生きているはずがない……!」

 

「でも、レイリーン様は来た……アスクをこの手で滅ぼすために」

 

「どうして……!」

 

エクラはアルフォンスと違う面で驚いていた。

 

(あのヴェロニカ皇女が、『様』をつけて人の名前を……)

 

違和感しかない言葉遣い。これもヴェロニカ皇女の異変の原因か、とエクラは予想した。

 

そして、いまだ謎に包まれる、気になる単語について、この場にワープで現れたもう一人が語りだす。

 

「ザガリア……!」

 

「アルフォンス。すまないな。これが……結末だ」

 

 いつものように仮面で目を隠して、ただ冷酷に事実を述べる。しかし、その声は少し震えていた。

 

「レイリーン様の力で、お前達に力を貸す正史世界の英雄はこの世界留まれなくなった。それ故にお前たちは英雄を呼べなくなった。そして、レイリーン様はエンブラだけが使役できる英雄がいる禁断の扉を開けたのだ。今この世界にやってこれるのは、終末世界、いずれ滅びを迎える世界における英雄たち。姿形は同じでも、正史世界よりも厳しい世界で戦い、それ故に凄まじい力を持った、本来伝承で語られることのない影の英雄たちだ」

 

「ザガリア、本気なのか……!」

 

ザガリアは俯き、そしてそのまま黙った。それ以上、何も語ることはないと言わんばかりに。

 

「エクラ……どう……すごいでしょ」

 

エクラは、短時間でまるでまた別世界に来たかのような感覚に陥った。ようやく慣れてきたこの世界で戦うのに慣れたばかりなのに。このような

 

「でも安心して、あなたたちはすぐには殺さない」

 

アルフォンスがふらつき、倒れそうになったのを、エクラは肩で支える。そのアルフォンスは決して意識を失ったわけではなく、その話に真っ向から向かい合う。

 

しかし、アルフォンスもまた、今の話を十分に飲み込めていない。

 

「君たちの言う終末世界……まさか、アスクで暴れているのは」

 

それにザガリアは答える。

 

「そうだ。本来とは違う道を辿った結果、この世界に語られる伝承とは違う結末に至った異界。その英雄たちが、今城下で暴れている英雄たちだ」

 

「その英雄と君たちは契約したと?」

 

「そうだ。そして、我々は前の君たちのように、すべてを打倒する可能性を手に入れた」

 

そこから先の言葉は言わずもがなだろう。

 

対して今のヴァイスブレイヴは味方となる英雄は1人もいない。この状況を打破する力を持っている戦士もいない。

 

ヴァイスブレイヴは既に敗北が決定的なのだ。

 

「……いいのか?」

 

「ええ……このままおわりはつまらないもの」

 

ヴェロニカはなにもしようとしなかった。

 

その代わり口を開いた。

 

「これは宣戦布告……」

 

アルフォンスは、その言葉の意味をしっかりとかみしめる。それは今まで戦闘状態だったエンブラからの改めての宣戦布告、つまり、この戦いですべての決着をつけるつもりだという意思表示である。

 

「戦線……布告……!」

 

「そうよ。アスクの王子。今は無様に逃げるのをゆるすの……。その代わり、ちゃんと……私と戦うの……。でも、英雄のいない今のままの貴方たちを相手にしてもつまらない……。だから猶予をあげるの……私たちと戦う猶予を。アスクは今終末世界に包囲されている。そんな世界の中でも、ブレイザブリクの召喚に応じる英雄はいるかもしれないから……」

 

「慈悲深いんだね」

 

アルフォンスの疑いを、次の一言が晴らす。

 

「にいさまのおねがいだから」

 

アルフォンスはザガリアを見る。しかし、ザガリアは、アルフォンスを見ることなく後ろを向き魔導書を上に掲げた。

 

「ザガリア……!」

 

「アルフォンス。俺達と戦いたければ終末世界を巡れ。この絶望に、アスクの滅亡という終焉になお、立ち上がり、お前達がヴェロニカを……アスクを救うというのなら」

 

魔導書は発動され、ヴェロニカとザガリア、そして傍にいた透明な黒の戦士は消えた。

 

「アルフォンス」

 

ヴェロニカが消え、地面に崩れ落ちるアルフォンス。

 

「く……」

 

エクラはアルフォンスのけがの具合を確認する。ダメージは負っているが、致命傷はないようで一安心する。杖の英雄が――。

 

「そうか……いないのか」

 

エクラはこういう時に人任せしかできない自分の無力さを恨むしかなかった。

 

アルフォンスは、傷口を押さえ、携行していた傷薬に目線を向けた、エクラはそれに気づき、傷薬をアルフォンスに飲ませる。

 

 アルフォンスは一瞬だけ、いつもの凛々しい顔に戻った。

 

「ありがとう……これで血が足りそうだ」

 

アルフォンスは立ち上がる。そして、フォルクヴァングを持ち、アンナの救援に向かおうとした。

 

アンナももう満身創痍だったが、それでも何とか首の皮を繋いでいる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

未だ、傷一つないような顔で立つエフラムを見て、ふざけんじゃないわよ、と文句を放つアンナ。アルフォンスが復活したのを横目で確認すると、

 

「……アルフォンス、エクラを連れて逃げなさい」

 

「アンナ隊長、僕はもう大丈夫です」

 

「大丈夫じゃないわ。こいつ、勝てなさそうよ」

 

エクラは今のエフラムの残り体力を見る。

 

HP残り372。対してアンナは残り4.おそらく30秒と時間稼ぎもできないだろう。

 

そうなれば槍と相性の悪いアルフォンスが、エフラムと戦うことになってしまう。

 

「ですが! このままではアンナ」

 

「アルフォンス! ヴァイスブレイブの使命を忘れたの?」

 

いつもは起こらないアンナの、数少ない激怒の咆哮がアルフォンスを襲った。エクラもアンナの本気の時の声を始めて聞き、体が震えた。仮にも、軍の隊長だと実感した時には、もう時すでに遅すぎるものだったが。

 

アルフォンスは当然、これまでの恩人を見捨てる真似はできない。しかし、アルフォンスの聡明な戦略眼は、アンナの言うとおりにすべきだと言っている。ジレンマで体が動かなくなってしまっている。

 

「アルフォンス!」

 

「く……」

 

「しっかりしなさい! あなたはアスクの王子よ! あなたが負けたらこの国は終わるの! あなたは血反吐吐いて泥をすすってでも生きなさい! 今、アスクの希望は、あなたとシャロンだけなのよ!」

 

「ですが……僕には……」

 

エクラはどうすればいいか、これまでずっと考えていた。召喚すらできなくなった自分にできることは何なのかと。

 

しかし、無力な自分に選択肢はほとんどない。

 

唯一できることは――。

 

「アンナさん、今までありがとうございました!」

と言い捨てて、アルフォンスの手を引き、ホームから逃げることだった。

 

「エクラ……!」

 

「行くよ、アルフォンス!」

 

「ダメだ!」

 

「わがまま言うな。気に入らなかったら後でいくらでも相手になる!」

 

「僕は……僕は……」

 

歯を食いしばり、ようやく走り出すアルフォンス。

 

それを見て、アンナは言った。二人に聞こえているかどうかも定かではないが。

 

「これまでごひいきにありがとう……、 どこかで別の私に出会ったら……その時はサービスしちゃうわ!」

 

と叫ぶ。

 

「泣かせるな? 実に無様な人間らしい姿だ」

 

エフラムを名乗る暗黒の槍使いに、アンナは最後に意地を見せる。

 

斧の5連撃による『流星』。アンナの最大の奥義だ。

 

「行くわよ!」

 

――ホームに5回の斧の打撃、そして1回の空を貫く刺突の音が響き、それ以降、ホームからは何も聞こえなくなった。

 

 

 これまで英雄たちと素晴らしく充実した時間を過ごしたはずのホームは、アスクとエンブラの最終決戦の始まりであり、そして、アスク王国を救うための、ヴァイスブレイブの長い旅の始まりとなったのだ。

 




ヴァイスブレイヴに過去最高の危機迫る!

これからの特務機関の長い長い旅をお楽しみください!

by トザキ

トザキ君の考えたファイアーエムブレムの世界を楽しみにながら執筆していきたいと思います。この作品もよろしくお願いします!

by femania


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オープニング

注意

深夜のノリで作ってます。
今後のストーリーの考察に役立ててください。

FGOタグがあるのでおそらく大丈夫だと信じたい……



ファイアーエムブレムヒーローズ―異界の巫女-

 

刮目し、耳を傾けよ。

 

今あなたたちの目の前に広がる光景を。

 

かつてこの世界を救済した英雄たちは、そこにはいない。

 

この世界に混乱を招いているのは、あなたたちの知らぬ別次元の英雄たち。

 

神話や伝承、そこに語られる英雄たちが為した奇跡は、この世界に蔓延る悪によって消え去り、その歴史は、この地を闇に包むに十分なほど狂い始めた。

 

ヴァイスブレイヴ。もはやあなたたちを救う英雄はいない。

 

この結果を、この運命を、あなたたちの辿った戦いの末路を受け入れるがいい。

 

これが英雄の召喚などという、異界に干渉する術を持ってしまったが故の報い。

 

これはすべて定められていた未来。アスク王国、いいや、至天の世界は、その罪を償うために、今日をもって終わりを告げる。

 

さあ、諦めなさい。どうしようと抗いようがないのだから。

 

――それでも。

 

それでも、ヴァイスブレイヴの皆さんが諦めないというのなら。私はあなたたちの相手になりましょう。

 

もしも、私のところへ至れるというのなら、その時はあなたたちと向き合い、そして戦いましょう。

 

それくらいは慈悲を差し上げます。ブレイザブリク、いまだその真の力を知らぬものの、愛しい我が後継者たちですから。

 

行く先で絶望を何度も噛みしめてなお、諦めぬというのならば――。

 

あなたたちの前には多くの苦しみが現れることでしょう。

 

***************************************

例えば、それは安寧の喪失

 

序章(危険度B-) 

至天の世界 終末統合聖国アスク 『最後の砦』 

 

「飛空城」「救援」「出発」

***************************************

例えば、それは非情なる反転

 

1章(危険度C) 

聖魔の世界 聖魔反転大陸マギ・ヴァル 「魔に堕ちた太陽」 

 

「グラド帝国の皇子」「分かたれた兄妹」「相容れぬ2人」

***************************************

例えば、それは愛すべき者たちからの裏切り

 

2章(危険度B+)

白夜・暗夜の世界 透魔永遠王国ハイドラ 「狭間に待つ死人」

 

「異界に待つ家族」「ハイドラ」「望まぬ終夜」

***************************************

例えば、それは知るべきではないもう一つ結末

 

3章(危険度D) 

聖戦の世界 歪曲運命決戦トラキア 「レンスター最後の姫」

 

「ゲイボルグ」「トラキア統一」「ランスリッター」

***************************************

例えば、それは避けられぬ滅亡

 

4章(危険度A) 

紋章の世界 邪竜最終戦争アカネイア 「影と光の英雄」

 

「ハーディン」「騙された1年」「暗黒竜」 

***************************************

例えば、それは圧倒的な力

 

5章(危険度A+) 

共鳴の世界 神話再演大戦バレンシア 「神断つ双牙の剣」

 

「出会うはずない2人」「リネア」「神々の黄昏」

***************************************

例えば、それは己の抱く醜悪な願望

 

6章(危険度 測定値不安定) 

烈火・封印の世界 楽園八将領域ナバタ・エトルリア 「人と竜の『理想郷』」

 

「八神将リリーナ」「ファ」「1000年を超える誓い」

***************************************

たとえばそれは、抗いようのない天災

 

7章(危険度A+++) 

蒼炎・暁の世界 神聖終焉戦線デイン 「人を統べる狂王」

 

「アシュナード」「負の女神」「再び交わす蒼黒の剣」

***************************************

 

数多くの絶望が、あなたたちを食らいつくすでしょう。

あなたたちは果たして『人の身』で、私のところまで辿りつけますか?

 

――それとも、自らを終末の使者に落としてなお……?

 

各地の世界の炎の紋章を集わせ、アスクの闇を払いなさい。

 

……ああ、こうして話していると、あなたたちに会いたくなってきた……。

 

どうか、私のところまでたどり着いてくださいね。

 

 




ノリで書いてみましたが、果たしてこんなに続くのか?

少し心配になってきましたが、トザキ君が諦めない限り、私も頑張りたいと思います。

しかし、思いつきネタなので、どこかで詰まる可能性もあります。
その時になったらまた連絡します。


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序章 終末統合聖国アスク 「最後の砦」 序章 1節 撤退

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!


「落ち着いた?」

 

「……すまない」

 

 自分の国が奪われた。その責任はたとえアルフォンスにはないとしても、間違いなく彼に襲い掛かる。それは王族という立場が背負わなければならない責。

 

 エクラはそのような立場とは無縁の場所で育った人間だ。しかし、そんな彼でもおとぎ話や創作でその苛烈さを創造することができるし、実際は想像の範囲で考えた重責を軽く超える何かがアルフォンスにはあるのだろうと察する。

 

 しかしエクラはアルフォンスに死んでほしくないという気持ちは負けていないつもりだった。だからこそ、彼の拒絶を、たとえ嫌われてでも一蹴し、連れて来るしかなかったのだ。

 

 アスクの場内は抜けたものの、城の敷地は広く門はまだはるか先。そこらにエンブラの戦士が徘徊している。しかし、城攻めではない、巡回の兵士だからかエクラの観察眼ではその兵士はさほど強い者には見えなかった。

 

エンブラ兵 HP54 攻50 速32 守28 魔28

 

と言ってもアルフォンスがそのまま一人で戦うには厳しい相手だ。

 

本人には言っていないが、アルフォンスはフォルクヴァングを未だきちんと扱えているかと問われれば、エクラはNOと答える。

 

恐らくあの剣は見た目こそ片手剣なものの、密度が高いらしくアルフォンスには未だ重いように見受けられる。そのためエクラから見てアルフォンスの速さのステータスは25ととても高いとは言えない。

 

速さとは動きの速さ。達人は例外として、通常は自分が一撃入れる間に、相手に二撃をもらっていては勝負にならない。

 

城門までは残り500メートル。しかし、その間は身を隠すところもなく、敵は見張りを任されているのか、そこから動こうとしない。

 

「突破するしかない」

 

「アルフォンスだけだと、1番早いのは不意打ちだ。相手が身構える前に、1撃で勝負を決めるしかない」

 

「ああ。行こうエクラ。シャロンやフィヨルムが心配だ。個々は一気に駆け抜けるよ」

 

エクラはそれに頷くと、持ってきていた入れ物からアイテムを出した。

 

本来は縛鎖の闘技場で使用するもので、体力的にハンデが出てしまうチームに軍師がアイテムで、回復やサポートを許されることで、そのハンデを埋めるためのものだ。

 

しかし、今はそのような高尚な理由はない。使うのはただ一つ。生き残るためだ。

 

アイテムは効果の累積はなく、私用したアイテムの中で最大の効果を発揮したものが、効力が続くまで適用されるが、アイテムの重ね掛けは3つ同時にまではできる。

 

「アルフォンス」

 

しかし大量に溜まったアイテムをさすがにそのまま持ってくることはできない。

 

エクラはこのような事態までは想定していなかった者の、召喚以外でも自分に役に立てることはないか考えた結果、ブレイザブリクの研究をしていた。

 

この神器は本来、英雄の召喚のために使われるものだ。それが機能の大部分を占めるのは事実である。

 

しかし、エクラの故郷で銃と呼ばれる武器に近い形をしているブレイザブリク。その形状には意味があると思っていた。英雄の召喚だけの者なら別に銃のかたちをとる必要はないからだ。

 

エクラは研究の末、ブレイザブリクの機能を拡張させることに成功する。

 

ブレイザブリクはエネルギーとしてオーブを装填されることで、英雄召喚の力場を発生させる。

 

エクラはオーブに、常々使っているアイテムの力を封入し撃ちだすことはできないか考えた。アイテムそのものは大きさも重さもあり、1人で持つには十種類それぞれ1個ずつが限界だ。

 

しかしオーブの形にすれば、オーブは重さもほとんどないため、ポーチ1つで最大999個まで運べる。召喚のためのオーブは現在294個。スルトとの戦いが終わり一時は枯渇しかけたものの、何とか持ち直した数である。

 

ポーチにはまだまだオーブを入れられるので、そこにアイテムの力を封入したアイテムオーブを各種30個ずつ、合計300個入れている。

 

「アルフォンス。今からアイテムで援護する」

 

「アイテムオーブ、完成したのか。すごいな」

 

「ほめるのは後で。アルフォンスは『竜穿』を準備して。奥義の刃と鼓舞の角笛、ブーツで移動力も上げるぞ」

 

同時に仕えるアイテム3つ、その効力を封入したオーブを1つずつ神器に装填し、撃ち放つ。

 

アルフォンスに赤い光の為で放たれた弾丸は、アルフォンスをつつむオーラとなり、その力を上昇させる。

 

アルフォンスは走り出す。

 

先ほども言った通り、遮るものは何もない。城門までの真っすぐ道。アスクの王子は、すでに血にまみれながらもかろうじて国の象徴たる、白と黄金の道を走り抜けた。

 

相手のエンブラ兵は迫る足音に気が付いた。しかし遅い。ブーツによる移動速度の上昇の恩恵は確かに存在し、相手が武器を構えるよりも早くアルフォンスの攻撃が入る。

 

「はああ!」

 

フォルクヴァングの振り上げによる1撃。エクラのアイテムの力で体の調子が最高潮のアルフォンスはすぐに奥義を放った。竜を穿つの奥義は、一撃の攻撃力が高い彼にこそ似合う技だとエクラは信じている。

 

そして神器の一閃はすさまじい風圧とともに相手の兵士を打ち上げる。

 

「ぐあああ!」

 

悲鳴を上げながら地面に打ち付けられたエンブラ兵。しかし生きている。

 

HPの減りようは攻撃の当たり具合にもよる。かすっただけではダメージ期待値の1割、当たっていても通常は3割から良くて7割、相手も攻撃を防ぐために動くので当然だ。

 

しかし今の一撃はクリティカルヒット。これはダメージ期待値100%セントも考えられる。

 

(アルフォンスの今の攻撃力は、間違いなく70を超えてた。相手のHPは……残り9)

 

残ってしまったが、それでも十分な痛手だ。

 

問題は相手の反撃だが、それも相手の傷の受けようでは、追撃は来ないだろう。攻撃を受けたら必ず反撃ができるわけではない。さすがに痛いものは痛いし、それで動けないこと相手の戦士にも、こちらにもある。

 

このような状況に持っていくには、原則相手のHPの8割程度を削ると可能だ。

 

「エクラ!」

 

「ああ」

 

無力化した。そう考えエクラも走り出す。幸いやられたふりなどではなく、その兵士は虫の息で横たわったままだった。

 

「基本はこの調子で行こう。アルフォンス」

 

「ああ。……エクラ上をみて」

 

「あれは」

見たことのあるフクロウが空を飛んでいる。

 

しかしただ飛んでいるのではなく旋回をして、まるで誰かに位置を教えるかのように目立っている。

 

「フェー!」

 

「フェー、もしかして、誰か見つけたのか?」

 

しかし抗う力のないフクロウに向けて風の魔法や、矢が続けざまに飛び始める。

 

たった一瞬。気づかなければフェーの合図に気が付かなかった。

 

「あそこに行ってみよう」

 

「場所は城下街だ。エクラ。敵も多い。警戒は怠ってはいけないよ」

 

「分かっている!」

 

エクラと、アルフォンスは走り出す。

 




次回 序章 2節 破壊された街


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序章 2節 合流

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



アイテムを数個使い、アルフォンスを強化することによって,アスクの城から無様に逃げた。後ろを振り返ることなく、ただ必死に。

 

「アルフォンス、平気?」

 

「心配ない。それよりもエクラ、けがはない?」

 

「大丈夫、結局戦ってるのはアルフォンスでしょ。こっちが弱音言ってられないって」

 

エクラも正直に言えば援軍が欲しかった。せめてブレイザブリクが正常に機能すれば、とないものねだりをしてしまう内心。さらにここで、もし自分が戦えればという想像がすぐに出てこなかったことに罪悪感を覚え、情けなく涙が出そうになる。

 

城門を抜け、昨日まで平和たったはずの城下街にたどり着く。

 

先ほど上空に見えたはずのフェーは既に見えなくなっている。しかし伝書フクロウとして何度も死線をくぐった(本人談)なので、まだ死んではいないとエクラもアルフォンスも信じている。

 

これも実際にはそうあってほしいというだけの願いだ。すでに風魔法や弓で相当狙われていた。しかし、エクラもアルフォンスも、すでにアンナの犠牲を見ている中で、これ以上の犠牲を見たくない、というのが本音だった。

 

「……なんてことを……」

 

アルフォンスの声が聞こえてくる。

 

それはこの城下街を見れば当然の反応だろう。

 

美しい街だった。この国の王族の在り方の写し鏡、ある場所は厳しく、ある場所は楽しく、ある場所は厳格で、ある場所は楽天的、そして街は一言でいえば清廉、という印象を受けるだろう。

 

しかし今はどうか。破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、殺人、殺人、殺戮、蹂躙、蹂躙。善い在り方をしていたこの街は、すでに死が充満する国へと変貌を遂げた。

 

建物は多くが白色であるが故に変貌したあとの変わりようはひどかった。赤く染めあげられている箇所が散見されるといえば、もはや後は語る必要はない。

 

アルフォンスが抱えている恐怖、悲しみは、想像を軽く超えるものだ。エクラもそれは重々承知している。本来はこのように気丈を振る舞えるような状態ではないことを。

 

「アルフォンス、敵だよ」

 

今エクラができることは、アルフォンスを前へ進めること。そしてアルフォンスを支えること。今アルフォンスの心がくじけたら、そこでアンナの意志はそこで潰えることになってしまう。そしてアスクの再興も水泡に帰す。

 

自分の役割は、もはや召喚者ではないからこそ、今はアスク残された欠片ほどの希望を失わないために、どんな恨み言を言っても絶対にアルフォンスの心を保ち続けるのだ。

 

そのためには、多少冷酷と感じられようと、エクラはいつもの通りに、ただ軍師としての職も果たす姿を見せる。いつも通りに。

 

「任せてくれ。すぐに倒す」

 

「槍だよ」

 

「……相性は悪いが、そこは何とかする。受けから入ろう」

 

「アイテムで援護するよ。奥義は――」

 

アルフォンスが剣を構えて、敵に突撃していく。エクラには、その背中はいつも通りに頼もしく見えた。

 

 

街を襲うエンブラの兵士たちは、強敵ではあったが、修練の塔の最上階に出てくる幻影並み、どうやら全員が全員、最初に会った、馬鹿げた強さの敵ではないことが分かった。

 

エクラとアルフォンスはそれに安心しつつ、城下街を少しづつ進んでいく。

 

3人以上、同時に相手はできない。その上アルフォンスには相当な負担がかかっているものの、それは特効薬のアイテムにより何とか体力と傷を治しながら凌ぐ。

 

もうすぐ街の中心。

 

本来は綺麗な噴水がトレードマークとして置かれている広場が見えてくるはずだ。

 

「アルフォンス! 見て!」

 

街の中心では、街の人間数人と、見慣れた一人の女性がいた。こちらには背中を向けているが、呼びかければ反応が返ってくる距離まで、2人はたどり着く。

 

「シャロン!」

 

アルフォンスはいち早く走る速度を上げ、シャロンの名前を呼ぶ。

 

「兄さま!」

 

シャロンはその呼びかけに笑って答えた。

 

――エクラは異変を感じる。

 

喜びによるものにしては、どうも顔色が悪い。その笑顔はまるで救世主を見るかのような顔だ。

 

「シャロン!」

 

アスクの王女は膝をつく。地面に水ではない水滴が滴り落ちた。

 

そこでアルフォンスはようやく、シャロンが何をしていたのかを知る。

 

震える城下街の住人。その中には子供が4人もいる。大人は震え、子供は既に泣いていた。

 

それは恐怖によるもの。

 

エクラは見た。シャロンを痛めつけていたその相手を。

 

「白夜王子リョウマ……!」

 

紫の雷、おぼろげな輪郭を持った、自分たちの知る英雄とは似ても似つかぬ男が立っていたのだ。

 




次回 第3節 終末世界の英雄(1)


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序章 3節 終末世界の英雄(1)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



白夜王リョウマ。

 

神器雷神刀の使い手であり、青い雷を纏った刀による国一の剣技を持った武人。

 

しかし目の前のリョウマに似たその男はいったい何者だろうか。そう思うぐらいに変質しているように、エクラには見えた。

 

なにより、リョウマはたとえ敵国の人間であろうと、一般人に襲い掛かるような真似はしない。召喚し、共に戦ってきたからこそ、エクラもアルフォンスも知っている。

 

「シャロン、下がっているんだ」

 

「兄さま……私……」

 

シャロンは泣きそうな目をしていた。

 

それは、アルフォンスとシャロンの英雄に対する接し方は違うことが原因だ。

 

アルフォンスは英雄に対して尊敬を向けるし、仲間としての意識を持っている。仲良くはするし、偽りない笑顔を向けることだってある。しかし、それはあくまで、仕事を行うための社交的な交友関係のつもりで。

 

対してシャロンは、英雄と友達になりたいということを堂々と宣言するほどに、英雄と深い関係になることを望んでいる。当然それが悪いことはなく、シャロンの飾らずに、ただ仲良くなりたいという願いを察することで、心を許した英雄も少なくない。

 

しかし、ここではシャロンのその心持ちが悪い方向に働いている。

 

アルフォンスは、一定の距離を持っているからこそ、英雄たちの原因不明の襲撃を聞いても心が揺れてはいない。

 

しかし、シャロンにとっては、共にアスク王国を愛し、そして戦ってくれた英雄たちに裏切られた、と思ってしまうのだ。

 

エクラは知っている。彼女は神器フェンサリルの使い手として素晴らしい成長を遂げたが、その本質は心優しい少女なのだ。家を破壊されるほどの裏切りを前に、槍を持ち、民を救うだけの胆力は本来持ち合わせていない。

 

しかし、それでも彼女は槍を持ち戦った。あのリョウマと。

 

「……兄さま、私はまだ」

 

アルフォンスは何かを言いたげだったが、その口を閉じる。目の前の敵を前に剣を構える。

 

エクラはリョウマのステータスを見る。

 

HP256 攻 70 速 60 守 30 魔 25

 

またもや頭のおかしいステータスだ。速さ60とか、どれだけ速いんだ。。

 

さすがにアルフォンスでは分が悪すぎる。

 

アイテムの特効薬を使い、シャロンのHPを全快にした。そして2人に神龍の涙を使用。能力値を底上げする。

 

「シャロン。スキル『守備の城塞』準備! 聖印で補強する! 最初のリョウマの攻撃を受けきってくれ!」

 

「エクラさん……!」

 

「お願いだ! アルフォンスだけだと死ぬ!」

 

「……他でもない、エクラさんの頼みなら……私、頑張ります!」

 

聖印はエクラが管理する英雄たちの能力を底上げする一つのアクセサリーだ。着脱に時間がかかるため、戦闘中に使うことはできないが、今のシャロンにならつけられる。

 

「シャロン、今は」

 

「分かってます。ふぇーさんも頑張って他の人の場所を探していますから。今は、辛くても泣きません」

 

彼女はこんなにも強いのか。エクラはシャロンのこの言葉を聞いて思った。

 

ならば自分も情けないことばかりを言ってはいられない。

 

「シャロン、行きます!」

 

兄の加勢に走り出したシャロンを支えるために、エクラは自分ができることを考える。

 




次回 第4節 終末世界の英雄(2)


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序章 4節 終末世界の英雄(2)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



紫電を纏う謎の雷神刀に似た刀、その光は本物の雷神刀にはない妖気を帯びている。

 

エクラはその刀の正体を探るべく、自身の戦略眼でリョウマ見た。

 

武器 テュール 攻撃+10 速さ+5

奥義を発動しやすい。このユニットの戦闘時、相手の追撃無効の効果を受けない。

 

このような効果は実際に戦うアルフォンス達には実感はないだろうが、エクラから見れば実際にその効果は発揮されている。

 

例えば、スキル『切り返し3』を持つ敵にアルフォンスが戦いを挑むと、最初の攻撃こそうまく入るものの、その後の追撃をするまでの間に相手が凄まじい速さで攻撃の手数を稼ぎ、襲い掛かったアルフォンスに手痛い攻撃を食らわせる。

 

スキルとは、結局その英雄が持っている技だ。鍛えれば他人も技でも身につくものもあれば、その英雄が生涯においてたどり着いた境地、もしくは手に入れた物や祝福などは他人にはまねできない。

 

対して武器や聖印についているのは、その武器自体が、戦闘に与える影響力である。目の前のリョウマが持つ刀の場合、受け手が追撃を不可能にする構えをとっても、その刀の攻撃は、その構えを解き、追撃を可能にする。これは、個人の気合や体調、その場の環境など関係なく、必ずそうなってしまうのだ。

 

「はあ!」

 

飛び出しざまに繰り出したアルフォンスの一撃は躱された。

 

そしてリョウマらしき侍の反撃が来る。アルフォンスは速い相手に弱い。侍から放たれる、連続の太刀を何とかしのぐアルフォンス。

 

一撃。

 

間も無くもう一撃。

 

その間隔は異常に短く、アルフォンスの防御を徐々に崩していく。

 

鋭い突きが放たれる。フォルクヴァングの防御を崩した。

 

さらに繰り出される剣戟。アルフォンスの防御は間に合わないだろう。狙いは足、片足を切断することで、動きを止める目的だ。

 

「はっ!」

 

割って入ったシャロンがその斬撃を受け止め、はじき返す。

 

「助かった」

 

シャロンに言葉を返している余裕はない。リョウマの太刀筋は想定よりもずれ、そこに隙が生まれる。

 

シャロンはリョウマに、最短で攻撃できるぶつけ方で、槍を押し出した。ショウマはそれをもろにくらい、バランスを崩す。

 

シャロンの攻撃。神器フェンサリルによる渾身の突き。しかし、崩れたはずの歩調を器用に直したリョウマは、矛先を刀で逸らす。

 

スキル『守備の城塞3』の力でシャロンは防御の構えに戻りやすくなっている。故に、すぐさま繰り出されるリョウマの攻撃を再び槍で受けることができる。

 

瞬間。あまりに速い二撃。エクラには捉えられない太刀。

 

シャロンは防ぎ切った。しかし、かろうじてだ。刃が深く肉に刻まれることはなかったが、確実に刀の刃はシャロンの体を捕えていた。

 

「う……!」

 

電撃がシャロンの体に走る。そもそも、帯びている雷が放つ力場だけで、常にアルフォンスとシャロンには痺れるような感覚が走っている。そこにさらに電気を追加されれば、それはまるで人を釘で刺すような痛みに変わるのだ。

 

しかし、倒れることはない。これまでの戦いがシャロンを強くしている。彼女も今や一人前の戦士だ。

 

「はぁあ!」

 

渾身のリョウマの攻撃を受けきったシャロンの裏からアルフォンスが飛び出した。斬り上げによる渾身の奥義『竜穿』刀で受けることはかなわない。その奥義のときに限り、剣の重さは威力と共に倍増しているのだから。

 

「……!」

 

リョウマは飛び退いた。当然アルフォンスの攻撃は当たらない。

 

しかし、アルフォンスの計画通りだった。すでにリョウマが飛んだ方向にシャロンは走り出している。カタナが届かない距離から、長いリーチを活用した刺突。

 

着地をしたばかりのショウマは動きに乱れが生じ、その刺突を致命傷にならない程度にしか逸らせない。故にシャロンの槍は確かに、侍の鎧を裂き、肉体まで浅くだが届いた。

 

お互いが距離をとって小休止。

 

エクラはアイテムを用意しつつ、戦う2人の様子を見た。

 

アルフォンス HP17 シャロン HP18

 

2人とも傷を負っている。対して、

 

リョウマ HP234

 

まだまだ元気そうだ。このままでは2人が負けるのは必須だ。加えて、浅い傷を受けるだけでここまでHPが減らされては、もし攻撃がもろに当たったとき、アルフォンスもシャロンも致命傷になることも分かる。

 

エクラは特効薬を2人に使い、体力を回復させる。しかし、頭ではどうリョウマを突破するかを必死に考えた。




次回 5節 終末世界の英雄(3)


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序章 5節 終末世界の英雄(3)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!


激闘。

 

エクラは正直に今の戦況に感動すら覚えていた。

 

確かにアイテムによる支援をしているにはしているが、出会った頃に比べてアルフォンスもシャロンも強くなっていることが一目瞭然である。

 

しかし、それでもあの2人が押されているのは,おそらく相手が強すぎるが故なのだ。

 

そもそも見た目は、白夜王リョウマの見た目をしている。持っている武器が雷神刀でなく、その剣の振り方も清流のような華麗さではなくすべて飲み込む濁流のような激しさを感じさせるものであったとしても、それでもあのリョウマだというのなら強敵であることに変わりはない。

 

ものすごい勢いで減っていく特効薬をはじめとするアイテムの数々。

 

戦いは既に15分を越え、それでも何とか生きている。

 

エクラは実は何度もブレイザブリクの引き金を引いていた。誰でもいいから援軍が来てほしいと願って。

 

しかし、何度オーブを装填しても、誰も来ない。神器は何の反応も示さない。

 

「アルフォンス……シャロン」

 

戦いは激しさを増していく。

 

「はああ!」

 

フォルクヴァングの斬撃。それを受け止め、反撃は二の太刀となって襲い掛かる。

 

「く……」

 

刃が首の3ミリ先を勢いよく通っていく。アルフォンスはその場で踏みとどまり再び斬りかかるが、それを難なく躱すリョウマ。

 

そこにシャロンが渾身の一撃を籠めた槍の刺突を見舞った。刀よりもはるかに重いその一撃をリョウマは自らの得物で捌き切ると、

 

「……フ」

 

勝機を見た笑みを一瞬浮かべ、刃をシャロンへ向けて滑らせる。その斬撃を紙一重で躱したシャロンだったが、隙を見極めたようで、間髪入れずに足蹴りを見舞わせる。

 

「ぐ……ん……」

 

シャロンが攻撃を受けて吹っ飛ばされる。

 

「シャロ」

 

「アルフォンス、任せて、敵から目を離したらダメだ!」

 

エクラがシャロンに近づき、打撃を受けた箇所を押さえているシャロンに再び特効薬を使用する。

 

アルフォンスは使うスキルを変更する。『金剛の構え3』という攻撃を受ける際に自らの防御力を上げる構えである。

 

アルフォンスやシャロン、この場にいないフィヨルムは歴戦の英雄と肩を並べるために多くのスキルを他の英雄を参考に身に着けている。そして最近ではこのように、戦闘中でも上手に使用スキルを変えることができる。ただしこれに関してはまだ完全な技術ではない。変えられるスキルには限りがある。

 

「……!」

 

リョウマの斬撃。それを構えによって受け止めるアルフォンス。しかし、金剛の構えを持ってなお、神器の攻撃はとてつもなく重く、受け止めようとしたアルフォンスも、その攻撃によって体勢を崩されそうになる。

 

「ぐ……おおお」

 

踏ん張り体に流れる衝撃をすべて受け止め、そして耐えきった。そしてフォルクヴァングの反撃を試みる。

 

「はあああ!」

 

テュールを弾き、アルフォンスはリョウマをぶっ飛ばすことも厭わないくらいの重い一撃を放った。

 

「……笑止」

 

初めて言葉を発するリョウマはその攻撃を軽く躱して見せると、さらに3回の斬撃を重ねる。それを再びアルフォンスは受けようとするが、先ほどの体勢を崩しかけた攻撃が3回。当然耐えられるはずもない。

 

そしてそれで身をもって理解する。徐々にリョウマは己の力を上げてきていると。先ほどまでの攻撃はすべて手を抜いていたのだと。

 

アルフォンスの剣は弾き飛ばされた。リョウマは剣が飛ぶ方向すらも計算に入れていたらしく、フォルクヴァングはすぐには取りに行けないほど遠くまで飛ばされた。

 

「しま……」

 

「死ね」

 

口を開いた瞬間、アルフォンスを殺すと宣言したリョウマ。

 

アルフォンスに振り下ろされるテュールの刃。すでにアルフォンスにはその刃を受けるための武器はない。

 

「兄さま!」

 

特効薬を受け再び動けるようになったシャロンは兄を助けるために走り出す。

 

――間に合わない。

 

(まずい……な)

 




次回 終末世界の英雄(4)


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序章 6節 終末世界の英雄(4)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



そう思いながら、アルフォンスは目の前で己を殺そうとしているリョウマに違和感を覚えていた。

 

今街を襲っている英雄はやはり自分たちが呼びだした英雄とは何かが違う。と。

 

そんな直感も今となっては無意味なのだ。振り下ろされる刃を止めることはもはやできない。

 

(ここまでか……)

 

妖しい電光を纏った刀が振り下ろされる。

 

アルフォンスは目を閉じた。己の死を覚悟して。

 

しかし、その刃はアルフォンスに届くことはなかった。

 

代わりにアルフォンスの目に飛び込んできたのはリョウマの剣戟を受け止める褐色の肌をした女性の姿だった。

 

「君は……!」

 

なんとアルフォンスですら力負けしたリョウマの渾身の一振りを力押しで弾いたのだ。

 

「姉上!」

 

「任せて!」

 

そして上空からもう一人の援軍らしき戦士が飛来する。態勢を崩したリョウマを背後から斬りつけた。

 

リョウマは初めて苦悶の表情を浮かべ、自らを攻撃したその戦士へ反撃に転じる。

 

しかし、その戦士は既にそこには存在せず、意味ありげに旋回していた上空の飛竜は、破壊力が圧縮された炎の球を放ち始めた。

 

リョウマはそれを斬りながら、徐々に後退していくその竜を追い始める。テュールに宿った雷を放ち、竜はそれを躱すとリョウマは本格的にその場を離れていった。

 

おかしい。エクラはあのリョウマの行動が解せなかった。普段のリョウマであれば、いくら不意打ちをされたと言っても、目の前の敵に背を向けるような真似はしないはずである。

 

先ほど見たエフラム、そして今のリョウマ、そもそも今現界している英雄は、自分たちのしる英雄とは、人格から異なっているらしい。

 

やはり自分たちを助けてくれた誇り高い英雄がこのような外道行為をしているわけではないと知り、一安心するアルフォンスは自分を助けてくれた剣士にお礼を言おうとした。

 

すぐに驚きで声が出なくなる。

 

なぜなら彼女がアルフォンスを助ける理由などないはずだからだ。

 

「レーヴァテイン……?」

 

彼女とはつい最近まで敵同士の関係であり、今も決して和解したとは言えない関係である。

 

「お前、平気?」

 

しかし、殺気を一切持たない彼女の目がアルフォンスの方に向いている。

 

「レーヴァテイン王女、なぜ?」

 

「姉上、助けると言った。だから、助けた」

 

「姉上……?」

 

その姿はシャロンとエクラが見ていた。物陰からゆっくりと姿を現したのは、以前の戦いで命を落としたレーギャルンであった。

 

「レーヴァテイン、お疲れ様」

 

「姉上、うまくいった?」

 

「ええ。もちろん」

 

シャロンが開いた口をふさげなくなってしまったのも無理はない。エクラもまた目を見開いて彼女を見る。

 

「ヴァイス・ブレイヴ、今はそこの住民の避難が先ではなくて?」

 

エクラの後ろには震える住民が十数人。戦う力を持たない彼らの命を保障するのは確かにアルフォンス達の仕事だ。

 

しかし、味方になるはずのない2人が現れたことに、アルフォンスは疑念を隠し切れない。

 

「君たちは……」

 

特に死んだはずのレーギャルンがここにいる意味がつかめない。すぐさま思い浮かんだのは、この地を襲っている英雄同様、終末世界という異界から現れた自分たちの敵である可能性。

 

「アルフォンス王子。フィヨルムは無事よ。今は街の外に向け、兄君と一緒に外へと向かっているわ」

 

「君が、彼女の心配をするのか?」

 

「今はどうか、妹と共に信じて」

 

「……」

 




次回 王女が憧れる英雄(1)


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序章 7節 王女が憧れる英雄(1)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!





レーヴァテインは剣を収め、姉の近くへと寄った。

 

アルフォンスが悩んだ結果、エクラの方を見る。あの顔は軍師としてのエクラに意見を求める顔であることはこれまでの付き合いでエクラは承知している。

 

エクラは彼女ら2人を見る。以前戦争の相手として戦ったときと違いは見られない。

 

だからと言って違いがないわけではない。雰囲気がどうも柔らかい気がする。何より敵意を全く向けていない。あのレーヴァテインがアスクの王族を前にしても剣を鞘に戻しているのが良い証拠だ。

 

何かの目的があることは確かだろう。特にレーギャルンはこの世界の彼女ではないことは間違いない。後で裏切る可能性もなくはないが、それ以上に利用できるものはすべて利用してでも今は生きなければならない状況なのは確かである。

 

「アルフォンス。信じよう」

 

エクラの声を聞き、アルフォンスは目の前の2人に向け、

 

「信じる。そしてどうか手を貸してほしい。生き残った民たちを救うために」

 

アルフォンスは手を差し出す。

 

「アスク流の信頼の誓いね。握手と言ったかしら」

 

レーギャルンは差し出された手をしっかりと握った。それも本気で、力強く。まるで裏切りに等微塵も考えていないかのように。

 

「姉上、また気配。ここにきてる」

 

「これ以上は人を庇いながら戦うのは難しいわ。アルフォンス王子、すぐに逃げましょう」

 

アルフォンスはその提案に頷くと、シャロンが守っていた民たちに近づき。

 

「逃げましょう」

 

と、震えて声が出なくなっている民たちに優しく語り掛けた。

 

一応の脅威が去り、自分たちが助かる可能性を見いだした民たちはそのアルフォンス王子の誘いに乗り少しづつ歩き出した。

 

「さ、君も」

 

しかし、たった1人、ある少女は拒んだ。

 

「嫌だ」

 

「ここは危ない」

 

「お前らなんて信用できるか。裏切りもの!」

 

「え……」

 

アルフォンスは自国の民に、正面向かい合ってその言葉を向けられた。初めての経験だった。いつも国の安全のために命を賭けて戦ってきた自覚があったからこそ、疎まれはしないだろうとどこかで信じていた。

 

しかし、そんなことはなかった。

 

その少女の言葉を大人は誰も諫めなかったのだ。

 

「今は――」

 

逃げるのが先だ、とアルフォンスが言おうとしたが。

 

「触るな。消えろ。英雄なんて他の世界の奴にすがらないと自分の民も守れない無能な王族に、あたしは守られたくない!」

 

と、アルフォンスの差し伸べた手を振り切って、街の方に逃げていった。

 

それはアルフォンスにとっても、シャロンにとっても初めての経験だった。

 

自分達がやってきたことは間違いじゃないと信じていた。

 

しかし、その少女に同情こそして、アルフォンスやシャロンを庇う声は、民たちの中からあがらない。それが現実だ。

 

「……そんな」

 

アルフォンスにとってはよほどショックだったのだろう。動こうとしない。少女を助けるために引き返すことも、民たちを逃がそうともできずただ、今の言葉を頭の中で反芻させていた。

 

エクラはその様子を見て、言葉をかける。

 

「アルフォンス! アンナ隊長との約束忘れた?」

 

血反吐を吐いて、泥をすすってでも今は生きろ。

 

その言葉を、思いを、ここで途切れさせるわけにはいかない。少女の言葉にショックを受けたのはエクラも同じだった。しかし、エクラはその言葉を忘れはしなかった。

 

「……ああ。そうだね」

 

アルフォンスは、震える声で、

 

「こっちへ。街の外へ逃げます!」

 

救出した民たちを誘導し、剣を持ち警戒をしながら少しずつ移動を始める。

 

そう。何もかも、落ち込むのは後だ。

 

一方シャロンは、迷っている。先ほどの少年を追うべきだという気持ちと、一緒に行くべきだという気持ち。

 

エクラはアルフォンスと一緒に行ってもらい、自分は先ほどの少女を追うつもりだった。

 

しかし、自分1人では不安だったエクラは、やはりシャロンだけでも一緒について行ってもらうべきかと考えを改める。

 

「シャロン」

 

「はい」

 

「一緒に、さっきの子を探しに行こう!」

 

「あ……はい。もちろんです!」

 

エクラはシャロンと共に、逃げていった少女を追いかける。

 

 

 

一方、レーギャルンとレーヴァテインと共に街の外を目指すアルフォンスは、今後の方針を考え始めた。

 

「レーギャルン王女、街を出た後はいったい?」

 

「レーギャルン。王女づけはいらないわ。今後は一緒に戦う仲間として」

 

「一緒に……?」

 

「街を出たらニフルとの境界へ向かう。そこにナーガ様が砦を用意してくださっているの」

 

「ナーガ様と言えば、異界の伝承に出てくる……?」

 

「ええ。今の私は大きくそのナーガ様と関係する存在なのだけれど。その話はまたいずれ。とにかく、その砦、まあ、城みたいな見た目なのだけれど、そこに行けば、エンブラの侵攻は及ばない」

 

見えた一縷の希望。そこに何があるかは把握できない。しかし、先ほどのエクラの声にしっかりと答えなければと決意を新たににする。

 

アンナ隊長との約束。アスク王国を守るために、今は生きるのだ。

 

「行きましょう。どんな希望でも、今は縋って見せます」

 

アルフォンスはもうすぐ街の出口へとたどり着こうとしていた。

 




この話の中では、エンブラ帝国の襲撃の際、街の護衛のために英雄召喚という機密の一部を一般市民に公開している設定です。なので一般市民は異界の英雄が、アスク王族の魔法でアスク王国を助けに来ている事だけを知っています。

もしかしたら本編と矛盾が出るかもしれませんが、ストーリー上このような設定で今回は続けていきたいと思います

次回 王女が憧れた英雄(2)



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序章 8節 王女が憧れる英雄(2)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!

前回逃げたのは少年ではなく少女です。前話、数か所少年表記をしていたところがありました。訂正します。



「ふぇー、アルフォンスさん!」

 

吉報は急に訪れた。どこかに飛ばされてしまった伝書フクロウが、自力でアルフォンスを見つけ情報を届けに来てくれたのだ。

 

「フェー、何か分かったのかい?」

 

「はいぃ、まず、フィヨルムさんはもうすぐ合流できると思われます。向こう側でも、心強い援軍が来てくれました」

 

「援軍?」

 

「フリーズさんとスリーズさんが来てくれたんです!」

 

「スルーズ……本当に?」

 

「はい。その……見間違いはないかとぉ」

 

「そうか……スリーズ王女が……」

 

スリーズとはムスペルとの戦争の際に命を落としたはずのニフルの王女である。これで死人が2人目登場したことになるのだ。違和感は拭えない。

 

それについて聞こうとレーギャルンの方を向いたアルフォンスだったが、先にレーギャルンが口を挟んだ。

 

「その話は後ね。それより、シャロン王女とエクラについては?」

 

「ふぇー、お2人はまだ城下街に残っているそうです……先ほどの少女を見つけると」

 

「……そう」

 

アルフォンスはつい来た道を望む。

 

本当であればアルフォンスも戻りたかった。この場をレーギャルンとレーヴァテインに任せ加勢したかった。

 

しかし、それはできない。今後ろについてきている多くの人間はアスク王国の住民。たとえ少ない数でも、守るべき民たちである。そんな彼らを王族として見捨てることはできない。

 

エクラも、アルフォンスは民たちと行くべきだ、と進言したのだ。あの子は必ず連れていくと。

 

故にアルフォンスは親友である彼を信じた。必ず帰ってきてくれると。

 

 

 

 

 

至天の世界の国と国は門を境に分かれている。門を先に急に天候が変わるのも至天の世界の特徴である。

 

今アルフォンス達がムスペルの王女たちと共に向かっているのはニフル王国。そこにこの地獄をなんとかするための方法があると聞いて。

 

「しかし、ナーガ様か」

 

神竜王ナーガ。数々の世界で神として伝承に記されている存在。アルフォンスが昔見た伝承では、異界を巡り、滅びそうな世界に手を差し伸べ、人々の良き営みを守る存在であると解釈されている。

 

「……レーギャルン、君はもしかすると」

 

「ええ、私は異界のレーギャルンと言うべきでしょう。そして妹も。それに、先ほど言ったスリーズや一緒に居るとされるフリーズも、ナーガ様によってこの世界に召喚された異界の存在」

 

「……そうなのか」

 

アルフォンスの表情が曇る。

 

「きっと、君がいれば、たとえ異界の存在だとしても、喜ぶよ。フィヨルムは」

 

この世界のレーギャルンは死んでいる。最期に妹を助けてほしいという願いをフィヨルムが受けたのだ。フィヨルムは、本当は助けたかったのに、結局は助けることはできなかった。その後悔がどれほど大きいものだったかをアルフォンスは知っている。

 

彼女にとっては、レーギャルンが助かったという事実がある世界があることが、自身の無力を感じてしまうきっかけになってしまうのだろうとも思った。

 

「悲しい顔、するな」

 

アルフォンスの様子を見て、反応を示したのは、妹のレーヴァテインだった。

 

「私の世界、フィヨルムいない。姉上、ずっと後悔していた」

 

「え……?」

 

レーヴァテインは、自身の世界の出来事を語る。

 

「ナーガ様に聞いた。この世界、姉上いないと。それをフィヨルムずっと後悔してるって。逆だな、私たちの世界と」

 

アルフォンスの知らない異界の結末。なんとフィヨルムは死んだという。

 

それを悲しそうに語るレーヴァテイン。

 

アルフォンスにとって、それは彼女の反応としては新鮮に映った。

 

アルフォンスは、自分の知るレーヴァテインよりも表情が豊かに思えたのだ。レーヴァテインもまた、この世界の彼女ではなく、異界の彼女であることを自覚する。

 

彼女を見てアルフォンスはこの世界のレーヴァテインのことも気になった。レーギャルンとは違い、この世界のレーヴァテインはまだ存命している。エンブラがムスペルやニフルに侵攻をしていた場合、無事であるかどうか。

 

「レーギャルン、君はムスペルが気にならないのか。この世界の」

 

「そうね……気にならないわけでないけれど、ナーガ様から、故郷に帰る事は堅く禁じられているの」

 

「どうして、ナーガ様はそのようなことを」

 

「それは……そうね……」

 

レーギャルンは妹を見る。その妹は頷くと、

 

「少し、長い話になるけど、ナーガ様のところへ向かうまでにはちょうどいい時間埋めになるかしらね」

 

レーギャルンは話を始める。異界の至天の世界において起こった出来事を。

 

 

 

 

 

シャロンとエクラは、先ほど逃げていった少女を捜索していた。

 

しかし、捜索は困難を極める。

 

「どこへ行ったんでしょうか……?」

 

「分からない……シャロン、前方に敵、こっち来て。隠れるよ」

 

「はい」

 

建物の影に隠れながら街を破壊しながら街中を進んでいる。

 

少女が死んでいる可能性も考えなくははなかった。

 

(少なくとも死体を見るまでは――。いけない。それはいけない。彼女は絶対に生きてる)

 

エクラは後ろ向きになっている自分を奮い立たせる。

 

美しかったアスクの街は破壊されている。もはや二度と元に戻らないだろうと思わせる参上だった。

 

それでも、どこかで生きているとエクラもシャロンも信じて、探し続けた。

 

「あの、ありがとうございます」

 

「シャロン?」

 

唐突にお礼を言われては、エクラもさすがに驚く。

 

「あの子を探しに行こう、なんて、本当はただの我が儘なんだってわかってたんです。でも、エクラさんはそんな私に命懸けで付き合ってくれている。それが私にはとても嬉しいです」

 

エクラはシャロンの言葉に、今できる限りの笑みで答えを返した。

 

「当り前だよ。だって、仲間だからね」

 

「エクラさん……!」

 

シャロンは嬉しそうに笑うと、

 

「私、こんなことしたのは、一緒にいた英雄さんじゃないって信じてるんです。だから、この異変と戦いたいです。なのでどうか、この異変が終わるまで、一緒にいてくださいね!」

 

と、エクラに向けて、短くはあるが、自身の思いを語った。

 

そしてエクラもそれに、しっかりと頷いて応えた。

 

そして再び少女を探そうとした、その時、

 

「うわああああああああああああ!」

 

悲鳴が聞こえた。それは間違いなく、先ほど逃げた少女の声だった。

 

「シャロン!」

 

「はい、行きましょう!」

 

本来はもう少し終末世界の英雄を警戒しなければならないが、エクラもシャロンも脇目もふらず一気に走り出す。

 

死体。違う。死体、あれは大人の形。

 

そしてしばらく走り続け、ようやく見つけた。

 

まだ生きている。そして、泣いている。

 

「大丈夫ですか!」

 

少女が涙ながらに振り返った。

 

その理由は明白である。少女の目の前には、と終末世界の英雄が卑しい笑みを浮かべながら立っていた。

 




次回 王女が憧れる英雄(3)


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序章 9節 王女が憧れる英雄(3)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「……さて、表が出るか裏が出るか」

 

1枚のコインを取り出すその男は、見間違いではなければ、聖魔の世界のヨシュアという男のはずだった。

 

普段は軽薄な男を気取っている彼だが、その根は善良で誇り高い王族であり、凄腕の傭兵でもある。持つ剣は氷剣アウドムラという、彼の表裏のない生き方を模したような純粋透明な氷剣である。

 

もっとも、目の前のその男は別だということは間違いなかった。

 

持っている剣は血に濡れている。しかしそうとは分からないほどに赤黒く輝く水晶の剣。さらに彼の後ろには、多くの大人が死んでいた。その首を、胴体を綺麗に両断されていた。

 

「あ……お姉ちゃん、なんで……私、勝手に」

 

少女はシャロンを見て、困惑する。しかしその体は助けを乞うように、手を伸ばす。

 

シャロンは少女に寄り添った。

 

「大丈夫ですか」

 

「あの、その……」

 

「もう大丈夫です! 後は私にお任せください!」

 

エクラにはシャロンのその言葉が強がりであることが分かる。戦略眼を使うまでもない。声が震えている。先ほど自分に声を掛けてきた声と違い力強さがない。

 

当然だろう。相対しているヨシュアと思わしきその男から感じられる力。それはおおよそ人間の力とは思えない威圧を漂わせている。

 

「あいつ、あいつが、みんな殺して……」

 

混乱している少女を抱え、シャロンにアイテムを使いシャロンの力を底上げしたものの、その力の差は圧倒的だ。

 

「ぅぁぁ……ああああ……」

 

涙を流す少女をなだめながら、エクラはシャロンを不安そうに見守る。

 

そもそもHPの差がおかしい。向こう側のヨシュアのHPは420もある。一方でシャロンの現在のHPは40。

 

おかしい、とエクラは毎回思うのだ。どうして終末世界の英雄はここまでステータスが化け物レベルになってしまうのか。

 

しかし、謎の追及は今すべきことではない。今行うべきことは、この現状を切り抜け、少女を無事にアルフォンス達に合流させること。

 

「……お嬢さん。なんのつもりだ?」

 

ヨシュアの問いにシャロンは、槍を握る手を震わせながら答えた。

 

「わ……私は、あの子を助けるために、貴女と戦います」

 

「そうか。いい女だ、あんたは。弱くても心は清純で、どうもあのクソ王子よりも友達になれそうなんだが……まあ、これも仕事なんでね。今からあんたを斬るんだが、恨むなよ?」

 

ヨシュアは赤い剣ではなく、手の親指の甲にコインを乗せる。

 

「そんなお嬢さんは俺との力の差を分からない馬鹿じゃないよな? このまま戦っても俺に勝てないのは分かるはずだ」

 

シャロンは、頷きはしなかった。しかし、反論もしなかった。

 

「ぅぅぁぁ……」

 

涙を流す少女。その姿を見てシャロンは弱弱しい姿を見せまいと奮起している。

 

ヨシュアは構える。しかし戦いの構えではない。それはコイントスの構えだ。

 

「どちらを選ぶ? 表か裏か。お前が答えて俺が投げる」

 

「どういうことですか?」

 

「簡単なことさ。お前はコインの表と裏のどちらかを言う。そして俺はコインを投げる。お前らは3人。だから3回だ。お前が当たった分だけここから逃がしてやる」

 

「つまり……3回当てれば3回逃がしてくれるんですか?」

 

「ああ。賭けなよ。それくらいの遊び心は必要さ。この、くだらない殺しをするぐらいならな」

 

「どうして、そんなことをするんですか」

 

シャロンが怒っている。声のトーンでそれが分かる。

 

そして敵の男もそれを感じたのか、その問いに事実を返した。

 

「俺の世界の民たちの命がかかっている。俺とて、関係ない命を奪うのは気が進まんが、他の世界よりも国の民だ。悪く思うなよ。さあ、俺は今からお前を斬らなきゃならん。コインの表と裏を決めろ。3回分、まとめてな」

 

和解の余地はない。これまでの終末世界の英雄と比べ話はまともにできているが、結局意味はない。

 

シャロンは、考えることなく言う。

 

「3回とも、表で」

 

「いいのか。確率は普通に考えて八分の一だ。1枚裏の方が当たる可能性も高い」

 

「構いません。3回裏でなければ、それで十分です」

 

「いい答えだ。なら、祈れよ」

 

ヨシュアはコインを投げた。

 

1回目。表。

 

2回目。表。

 

「運がいいな。誇れよ嬢ちゃん。少なくとも、後ろの2人の無事は決まった」

 

「……」

 

「うーん、緊張するねぇ」

 

3回目。

 

裏。

 

この瞬間、ヨシュアが1人を殺すという事実は決まった。

 

「ああ、残念だな。お嬢さん」

 

「いいえ。これで、あの事エクラさんは逃がしていただけるのですよね」

 

エクラは信じられない言葉を聞いた。

 

まるでシャロンが、自身を犠牲にすることを許容するかのような言葉だった。

 




次回 序章 10節 王女が憧れる英雄(4)


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序章 10節 王女が憧れる英雄(4)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「待って、そんな言い方まるで……!」

 

先ほどまで涙を流していた少女も今の言葉を聞いて、シャロンの方を見る。

 

「お嬢ちゃん。死に際の言葉ってのは大切だ。伝えたいことがあったら伝えておくといい」

 

「兄さまと同じです。私の役目は民を守ること。それが特務機関として戦う理由ですから。私1人の犠牲で誰かを守れるのなら、それで十分だと思います」

 

「シャロン! 何を言ってる!」

 

「エクラさん。その……私はエクラさんを巻き込んでしまったので、せめてあなただけでも逃げてほしいんです。もしも、終末世界の英雄に出会ってしまったら、最悪、こうすることは決めていました」

 

「シャロン、そんなこと言ってはいけない。この子は――」

 

これ以上、エクラは言葉をつづけられなかった。1人で逃がしても、この少女が別の英雄に在ってしまったら、今度は誰が守るというのだろう。逆に3人でここに残って、あの男と戦ったとしても、全滅は見えている。

 

エクラは自身の視野の狭さを恥じた。

 

シャロンは元より分かっていたのだ。もしも終末世界の英雄に出会ってしまったら誰か『戦える人間』が犠牲になって、他の人間を逃がすことが最善の道。

 

エクラはこれまで軍師として戦ってきたから分かる。多くの軍師の英雄から戦術や最善手を選ぶ決断の方法を学んできたから分かる。

 

終末世界のヨシュアと出会った時点で、この手を打つ以外に少女を生かす方法はない。

 

「……召喚士さん。最後まで、一緒に居てくれてありがとうございます」

 

「ダメだ、残るのは君じゃ」

 

「いいえ。私が残ります。私は約束を守ってくれたエクラさんのために、最後まであなたを守ります」

 

「どうしてそこまで! だって、今まで戦闘で役に立ったこともない。今だってこうして」

 

シャロンは首を振る。

 

「それを言うのなら、エクラさんは私たちにずっと力を貸してくれました。勝手にこの世界に飛ばされたって言ってたのに」

 

「それは、だって」

 

「エクラさんが私たちと一緒に戦ってくれると言ってくれてから、どんなに辛い時も、ずっと一緒に居てくれました。そのおかげで、たくさんの英雄さんともお友達になれました。エクラさんが来てくれてから、私の特務機関としての日々は楽しかったんですよ」

 

いつもと同じように、死ぬかもしれない間際であるにも関わらず、シャロンはいつも通りの笑顔で言葉を並べ続ける。

 

「どんなに無力でも諦めなかったエクラさんがいてくれたから、私もここまで諦めずに来れました。――その……私、英雄さんみたいに強くはないですけど、それでも、憧れた英雄さんのように戦うことができたのは、エクラさんが勇気をくれたからです。でも、まだ何もお返しできてないから。私は、せめて……あなたを守ります」

 

シャロンは槍を差し出す。暗に自分はもう使うことはないから、後を託すというかのように。

 

「エクラさん。どうか行ってください。その子を守ってください」

 

エクラは気持ちでは認められるはずもなかった。

 

だから、目の前のヨシュアらしき英雄に勝つ方法を何とか考えた。頭を無理やり回転させて何かないか模索した。

 

しかし、攻撃力78、速さ60、守備45、圧倒的な能力値を前に、いくら策を考えても勝ち筋は全く見えなかった。

 

「そんな……」

 

こんな時、自分が戦えたらと思う。しかし、その力は自分にはない。それは変えようのない事実だ。

 

「そんな、そんな……」

 

少女は顔を真っ赤にしながら、

 

「私が死ねば……」

 

と言い出すが、シャロンはそれを制止する。

 

「ダメですよ。私は貴女を守ります。そう言いました。きっと私じゃなくても、私が憧れる英雄さんはこうします。だから、私も、貴女に、エクラさんを、お兄様を信じてほしいから、貴女を守るという約束は破りません。……そういえば、お名前、聞いてませんでした」

 

「ぁ、その……ラフィ、ネ……」

 

「ラフィネさん。いい名前ですね。では私も改めて自己紹介を。目指すはお兄様やみんなを守れる強い人。あなたの味方、シャロンです」

 

「王女様でしょ、しんじゃだめ、死ぬのは、私でしょ!」

 

しかし、シャロンはそれ以上ラフィネの言葉に耳を傾けることはなかった。自分より少し年下の少女の頭を、優しくなでる。

 

「エクラさん。本当に、最後まで一緒に居てくれてありがとうございました。フェンサリル、どこかで役に立つかもしれません。どうか持って行ってください」

 

それだけ言うと、シャロンは今まで自分が使っていた槍を地面に落とし、ヨシュアのいる方へと歩き出す。

 

シャロンは本気だった。

 

エクラはこれほどまでに自分の無力を呪ったことはなかったかもしれない。

 

自分が戦えれば、活路は見えたかもしれない。そもそも、この少女を助けようとするのではなく、アルフォンスと逃げていればこんなことにはならなかったかもしれない。もしも――。

 

様々な思考が巡り、最終的たどり着いた結論。シャロンを死に至らしめたのは、自分の過失だったのではと言う疑念だった。

 

無力。無様。無能。英雄を召喚できないエクラは、本当に役立たずだと自覚するしかなかった。

 

もはやどうすることもできない。この場の最善手は、ラフィネを連れて逃げることだけ。

 

「なんで……王女さまが……」

 

唖然として彼女の背中を見ているラフィネの手を、エクラは彼女から託された槍を背負った後、しっかりと握りしめる。

 

「行こう」

 

たった一言だけラフィネに伝えると、シャロンに何か言おうと思った。

 

語りたい事は多かったが、エクラが彼女に言うべき言葉はこの1つしかない。

 

「ありがとう、シャロン!」

 

それは今だけではなく、長い長い戦いの間に多くの思い出をくれたことに対して。最期くらいは悲しい別れにしたくないから、精一杯の明るい声を出した。

 

シャロンは最後に振り向き、最高の笑顔を見せる。

 

見慣れたはずの輝かしい笑顔をエクラは胸に焼き付ける。

 

そしてシャロンは、もう二度とこちら側を向くことはなかった。

 

エクラは少女の手を引いて逃げる。もう後ろを振り向かず、シャロンを見捨てて。

 

「なんで、だって、私、かってに」

 

根はいい子なのだろうと、少女の独り言を聞いてエクラは思う。こうなったのは自分の生なのにどうして自分を助けるのだ、と彼女の言いたいことを的確に予想した。

 

「行こう。それを望んでいる」

 

エクラは彼女の手を引いて、その場から逃げ出した。

 

シャロンを置いていった。

 

ただ、悔し涙を浮かべながら、それでもそれを少女にもシャロンにも見せることなく、ただ走り出した。その手にラフィネを連れて。

 

これが本当の戦争だ。エクラは思い知った。

 

今までは、ただうまくいっていただけなのだ。自分の知る誰かが死ななかったのはただの幸運だ。こうやって大切な人を何人も失うのは当たり前なのだ。

 

英雄たちとて尊い犠牲を出してようやく平和を勝ち取ったのに、自分たちの世界だけが誰も失わないということはあり得ないだろう。

 

「シャロン……」

 

この犠牲は絶対忘れない。エクラはそう心に誓った。

 

 

 

 

「行ったか?」

 

「はい。もしかして待っててくれたんですか?」

 

「俺は勝負に嘘はつかない。賭けで2回勝った分の報酬はあるべきだろう?」

 

「ありがとうございます」

 

「怖いか?」

 

「もちろん……怖いです」

 

「それでいい。それが正しい。だから俺も後腐れなく殺せる。安心しろ、この剣は相手に痛みを与えない。そういう剣だ。目を閉じれば、眠るようにして意識を失う」

 

「……」

 

「よく覚悟した。俺はあんたを忘れないぜ。シャロン」

 

ヨシュアは今度こそ、コインではなく赤黒い水晶の剣を構える。

 

剣の通る軌道、向きは水平に、首を確実に撥ねるつもりだとみて分かる。

 

シャロンは目を閉じようとした。

 

――その時だった。

 

上空から、炎の球がヨシュア目掛けて飛んでくる。

 

「な……!」

 

これはヨシュアも予想していなかったらしく、ヨシュアは跳躍してその場を離れざるを得なかった。

 

一方、その場から動かなかったシャロンも、この場に割り込んだ何者かに抱えられ、場を察出する。

 

炎は着弾した。炎の下級魔法だったが、その爆発はボルガノンに匹敵する爆発であり、それを9回。着弾地点は一瞬で溶解する。

 

そしてそこに降り立つ一人の女性。まだ若く、シャロンの少し年上程度の年齢に見える彼女は、しなやかな藍色の長い髪をたなびかせ、賢者のローブに身を包んで、その場に舞い降りる。

 

「大丈夫?」

 

「あなたは……」

 

シャロンが知るよりは、少し大人になっているが、特徴はつかみやすく誰かは間違えない。

 

「リリーナさん……?」

 

「ああ、無事でよかった。異界の私がお世話になりました。彼女とは違うけれど、今、この世界に来れない彼女の代わりに、貴女にここで恩返しをします」

 

後ろを見ると、こちらもまた、シャロンが知るよりはとても凛々しい大人の姿になり、エリウッドによく似ていながらも、やはり別人の青年がいた。

 

「ロイさん……?」

 

「初めまして……なんだけど。君は異界の僕を知ってるんだね。多分子供の頃の僕を」

 

「はい……」

 

「ああ、やっぱり。この世界の記憶を読んでいたけれど、こちらの世界の僕はとても楽しそうだった」

 

「記憶を読む……?」

 

「すまない、それは後で教えるよ。ともかく今は、君を助けにここに来た。頼りにしてほしい」

 

絶望しか残っていなかったシャロンには頼もしすぎる援軍2人。いつもと雰囲気が違うとしても、シャロンは2人を信用し、身をゆだねることにした。

 

「まじか……」

 

「あら……どうしたの、剣士さん?」

 

「……俺達とは違う世界の人間か。んー緊張するね」

 

「自己紹介はいる?」

 

「いいや、エフラム王子にも言われているんだ。敵と会ったら殺し合うように。だから俺はあんたを斬るぜ。約束破ったら殺されるからな」

 

「そう……話し合いの余地はないのね」

 

リリーナはロイを見る。

 

「いいよ、リリーナ。久しぶりに君の魔法の輝きを見せてほしい」

 

「……嫌いに……ならないでね」

 

「まさか。そんなはずないだろう?」

 

それを聞いて安心したのか、リリーナは一瞬笑みを浮かべる。

 

シャロンは、背筋が凍った感覚を得た。嬉しそうな笑みだったそれを見て。

 

リリーナは魔導書を開く。それは特務機関の任務でも使っていた魔導書『フォルブレイズ』。

 

しかし、ここから先は違った。本を開いただけで、込められた魔力の放出により、リリーナを中心に、竜巻に近い風の激流が起こる。

 

絶句だった。シャロンも、そして終末世界の英雄であるヨシュアも。

 

ただ1人、ロイはその光景を笑顔で見守る。

 

「やべ――」

 

リリーナの魔法の発動の瞬間、赤い水晶の剣を持ったその剣士は『逃げればよかった』と後悔する。

 

 

次の瞬間。アスク城下街は、その半分が、炎の激流により焦土と化した。

 

 

リリーナの目の前から綺麗に街が一瞬でなくなった。

 

そのいたはずの剣士は、跡形も残っていない。

 

シャロンはその光景を見て混乱する。かつての特務機関の城で出会ったリリーナも、すさまじい魔力を秘めていたが、成長するとこれほどになるとはシャロンも思っていなかった。

 

「あ……」

 

リリーナは申し訳なさそうな顔でロイとシャロンの様子をうかがう。

 

「ごめんなさい……手を抜いたのだけれど。どうしても神将器では加減が効かなくて。この街を、壊してしまいました」

 

シャロンからは言葉は出てこない。

 

対してロイはその光景をさも当たり前のように受け止め、

 

「綺麗だったよリリーナ。気に病むことはない。もうこの街に生きている人は残っていないだろう。死した肉体を火葬した、と考えた方がいい。街はまた作れる。君は悪くない」

 

「……ごめんなさい、領主たるあなたにこのような些事を心配させて」

 

「構わない。僕はいつだって君の味方だ」

 

ロイはリリーナに笑いかけた。そしてシャロンにも話かける。

 

「大丈夫だった?」

 

「はい……。ありがとうございます……」

 

大人になった姿のロイ。そしてリリーナ。姿だけを見れば安心できるが、先ほどの龍の火炎放射のような激しい魔法を見せられた後ではとても安心はできない。

 

シャロンはもう分かっている。このロイもリリーナも、終末世界という異界から現れた英雄であることを。

 

「なんで……私を?」

 

シャロンはロイに尋ねる。

 

答えはすぐに返ってきた。

 

「この異変。エンブラ帝国の仕業であることは心得ている。だが、僕らは、彼らに反抗しようと思ってね」

 

「え……」

 

敵の敵は即ち味方というべきか。もしそれが本当なら、シャロンにとってだけでなく、ヴァイスブレイヴにとっても吉報だった。

 

「本当ですか……!」

 

「ああ、それで、この世界の特務機関の味方になろうと思って。誰かと合流しようと思ってたんだけど……よかった。君が……シャロンか」

 

「私の名前をご存じなのですか?」

 

「僕らは少し特例だ。飛んだ世界のことを、記録として『視る』ことができる。この世界では幼い僕やリリーナがお世話になったみたいだ。君たちなら信用できる」

 

「では、お兄様も助けてくれるんですね。エクラさんも……!」

 

「もちろん。助けた後は、僕の領地においで。民たちは僕らで預かろう」

 

たった1人、心細かったシャロンにとっては願ってもない幸運だと言えるだろう。終末世界の英雄にも味方になってくれる英雄はいる。その可能性があると、シャロンは希望を持った。

 

「ねえ、ロイ。せっかくだからシャロンさんだけ、先に私たちの世界に案内しない? ソフィーヤやファも心配しているし、一度、『切れ目』まで戻りましょう?」

 

「そうか。確かに、先に見てもらった方がいいな。僕らの故郷を」

 

「ええ。それが良いわ。それに、もしシャロンさんが、――を使えたら、私たちと特務機関の他の皆様を繋ぐ架け橋になるかも」

 

「それはいい考えだ。なら、すぐに行動しようか」

 

ロイはシャロンに尋ねる。

 

「一緒に来てもらえないだろうか?」

 

「でも、お兄様とも合流しなくちゃ」

 

「大丈夫。ここにはすぐに戻ってこれる。君のお兄様が連れている国民みんなを入れるには、君の協力が少し必要なんだ。不安だろうけど……協力してくれるかい?」

 

「そう……なんですか?」

 

「ああ。できれば、合流した時に、すぐに、君の仲間全員を迎え入れたい。僕らがこの世界に来れるのは、もしかすると、今回しかないかもしれない。チャンスを逃したくない。お願いだ」

 

「……わかりました」

 

シャロンは、ロイの言葉に従い2人について行くことにした。

 

 

 

 

エクラと共に逃げるラフィネ。しかし、彼らもまた最悪の事態を前にしていた。

 

「お2人とも、お待ちください」

 

イーリス王国の王女にして、絶望の未来を生きた藍色の剣士と言われる、聖王女ルキナが自身の身長程に大きな槍を持って、目の前に立ちはだかった。

 

「君は……」

 

「終末世界の英雄の中にあなた達の味方は1人もいません。しかしあえてこう言わざるを得ないでしょう。どうか、私を信じ、ついてきてください」

 

エクラに新たな選択が迫る。

 

 




次回 選択の結末(1)


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序章 11節 選択の結末(1)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



レーギャルンは語る。己が何者か。

 

それは異界へと赴き仕事をおこなうという特別な境遇のアルフォンスですら、耳を疑うような話であった。

 

「私と妹は、異界の存在。そして、ナーガ様に私たちの世界を救ってもらう代わりに、以後ナーガ様の剣となることを契約した者。ある地方では『ガーディアン』と呼ばれる存在」

 

「契約……守護者……」

 

「私たちの話をしながら、『ガーディアン』について説明しましょう。あなた達の世界では氷の儀を行ったフィヨルムがお父様を倒して世界を救った。けれど私たちの世界では、お父様にフィヨルムが殺されて、お父様を殺せるものはいなくなった。このままではこの世界が終わる。そう感じた私は、妹を守るために逃げたわ。逃げられないと分かっていたけれど」

 

「でも、助かった……ってことだね」

 

「ええ。偶然この世界に意識を傾けていたナーガ様が私たちの世界の危機を見かねて、この世界に救いの手を差し伸べようとしてくださったの。けれど、ナーガ様が世界に干渉するためにはその世界との縁が必要になる」

 

「縁?」

 

「その世界に生きる生命との契約による等価交換。助けてもらう代わりに対価を払う。本来、その世界の人間でどうにかするべき危機をナーガ様が救う代わりに、助けを求めた私たちはナーガ様のための傭兵として、救った世界の価値の分だけ働くことになる。自分たちの世界ではなく異界の危機を救うための手駒になる」

 

「価値、実際にはどれくらい……」

 

「私たちはまだ体感で700日くらいって言ったところかしら。長い人だとこの世界の暦で100年以上。異界の戦場に放り込まれて、その世界の邪悪を滅ぼし続ける。神の代行者として、殺し続ける人もいるみたい」

 

「そんな……ひどい仕打ちじゃないか」

 

「どうして?」

 

「どうしてって、君は妹と生きていくためにナーガに助けを求めたのだろう。その人だってその人なりの平和を願っただけのはず。ナーガ様はどうしてそんな仕打ちをその願った人に課すんだ」

 

アルフォンスの憐憫と怒りが混ざった表情を見てレーギャルンは笑った。

 

それは違うと言うように。

 

「それは、神となった存在は人を無償で助けることは禁じられているからよ」

 

「え……」

 

「アスク王国だって、神竜アスクを信仰しているでしょう。けれど、その竜からの恩恵はない。それはこの世界は人が生きていく世界だから。人が生きるために人が明日を拓いていく。その人の営みを見守るだけ。神が干渉するのは、その世界が滅ぶか滅ばないかの瀬戸際だけ」

 

「スルトの時だって世界が……?」

 

「アルフォンス、それは違う。ナーガ様のことを誤解しているわ」

 

「誤解じゃない。それでは平和を願った君たちが報われないだろう!」

 

しかし、レーギャルンは首を振る。

 

「確かに至天の世界の人間はスルトを放っておいたら滅んだでしょう。でも、世界は存続する。お父様はそのままでも、殺せる生命がいなくなって、生きる希望を失って廃人になるし、その灼熱に覆われた世界でも、数万年すれば新たな命が芽吹くわ」

 

アルフォンスは、ナーガの見る視点と、人間の視点の違いにようやく気が付く。

 

「ナーガは人類が滅びても、世界が滅びない限りは干渉できないと」

 

「そう、基本はね。神の権能は世界に与える影響が大きすぎる。故に簡単には世界に干渉できない。けれど、ナーガ様は何とか人類の味方をしようと、そこに抜け道を創った」

 

「それが、等価交換ということかい?」

 

「そう。人々から願われたとき、救援に使うエネルギーと等価の生贄をもらうことができれば、限定的にだけど世界に干渉できる。ナーガ様はそうして多くの世界を救ってきたわ。……具体例を言いましょうか。ある邪竜に滅ぼされそうになった世界の姫君とその御父上に邪竜の力を封ずる炎を授ける、その代わり、その姫君は平和になった世界に留まれず、ナーガ様の救世のために異界に召喚され続ける」

 

「……」

 

アルフォンスは納得したわけではなかった。特に100年戦わされている人間がいるという事実が、正しい救いに思えずにいられない。

 

しかし、この話の本題であるレーギャルン達の正体は何となくつかめた。そして次に、彼女たちが話をするのは、この世界に何が起こったか。

 

「ナーガ様は異界に広がる多くの平衡世界、つまりこことはすでに違う至天の世界を見たの。しかし、その世界は既に存在が抹消され見えなくなっていた」

 

「何……!」

 

つまり異界にいる自分もすでに死んでいる、ということ。

 

「残っている至天の世界はここだけ。さらに他の世界も様子がおかしい。これまでには見たことのない異変を確認したナーガ様は、私たちを連れてこの世界に降り立ったの。原因はこの世界にあると予想して」

 

「原因は分かったのかい?」

 

「おそらくアスク王国にすべての原因がある。今分かっているのはエンブラ帝国が関わっている事だけ。だから私たちはナーガ様の命令でアスク王国に行こうとしたのだけれど」

 

「そこで僕らと出会ったのか」

 

「そう。でも城まではいけなかったわ。あそこにいる英雄は私たち2人でも苦労する相手ばかり。しかも城に入ると、相手できない強ささった。ムスペルでは将軍をしていたけど、まだまだね」

 

「そうなのか」

 

「けれど、ナーガ様は言っていた。これは過去類を見ない危機であると」

 

「……それほどの危機が僕らの世界に来ているのか」

 

「何が起こっているかはこれから調査するしかないけれど、アルフォンス、貴方はこれまでの戦い以上に覚悟を決めるべきよ」

 

そして最後にこれからどうするかの話になる。

 

「ナーガ様はニフルの近くに?」

 

「ええ、そこに飛空城というこの事態に対応するための拠点を用意してあなたたちを待っているわ。元々アスク王国に行ったのもあなたたちに合流したかったという目的もあった」

 

「なぜ僕たちが?」

 

「ナーガ様は詳しいことはあなたたちが来てからと言ってたけれど、聞いた限りでは、特務機関の神器と、召喚器がこの事態の解決に必要だとか。アルフォンス、あなたも持っているでしょう?」

 

「ああ、ここにフォルクヴァングだけだけど」

 

「後は、フェンサリルとノーアトゥーン、そして召喚士とブレイザブリクね……」

 

ノーアトゥーン、その単語が出た時に、アルフォンスは思い出す。

 

「レーギャルン、実は……」

 

アルフォンスは、神器の斧を持っていたアンナを見殺しに逃げてきた顛末を伝える。それを聞いて少し驚いたものの、

 

「もとより万事うまくいくとは思っていない。それは後で対策を考えます。今はせめてシャロンと召喚士が無事であることを祈りましょう」

 

と言うにとどまり、怒る事はなかった。

 

「そうね……無事に召喚士とシャロンが逃げてくれていればいいけれど……」

 

「……シャロン」

 

心配でないはずがない。愛する家族と背中を預けられると100パーセント断言できる相棒。その2人が人を救うために未だ危険極まりない地で戦っているのだ。

 

しかし、王は個人の感情ではなく大義のために動くもの。父の言葉の正しさを理解し、戻りたいという衝動を必死に抑える。

 

「ふぇー!」

 

こんな時でも心に安らぎを与えてくれるフクロウの声がする。

 

「フェー!」

 

「皆さん! この先でフィヨルムさんと合流できます!」

 

「何人いる?」

 

「先んじて避難していた王国民2000名弱を率いていますぅ」

 

「そうか……! すぐに落ち合おう。場所は……」

 

アルフォンスは一度通ったことのある地、その詳細を思い出し、ニフルまでのサバンナ地帯の中にある、すでに滅んでしまった、村を思い出す。

 

アルフォンスにとっては苦い思い出がある場所だが、人々に休息を与えるにはいい広さを持った村であることに違いない。

 

「レーギャルン。ナーガ様はどこに?」

 

「ニフルへと至る門の前に、その城はあるわ」

 

「城の大きさは?」

 

「安心して、2000人なら十分な広さがあるわ。ニフルに逃がしてもエンブラの手はかかる。城の中に入ってもらいましょう」

 

「分かった。フェー、この先の廃村で一度合流だ!」

 

「ふぇー! 了解しましたぁ。向こう側に伝えに行きますぅ!」

 

フェーもすでに一日の飛行限界にすでに近い距離を飛んでいる事はアルフォンスには分かっていたが、それでも行ってもらうしかない。

 

アルフォンスは新竜王ナーガを名乗る神に出会い、事態の打開を目指すため、ただひたすらに歩き続ける。

 




話の中で出て来た邪竜を滅ぼした姫君は、その時代で結婚しなかったという設定です。エンディングを見ると、行方不明になったという話だったので、自分なりになぜ消えなければならなかったのかを妄想したことがあります。

もっとも、この設定だと、結婚した場合の説明がつきませんが、そこは契約履行の執行猶予ということで1つ。納得していただけれればと思います。

次回 選択の結末(2) 


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序章 12節 選択の結末(2)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



廃村。以前スルトの手によって焼かれたその村は、今は復興の途中になっている。アスク王国兵が中心となり、駐屯地を中心に破壊された家屋の復活を試みている。

 

そこで、多くの人民と共に、アルフォンスはフィヨルムたちと合流することができた。

 

「レーギャルン……王女」

 

フィヨルムがアルフォンスと合流したときに第1に発した言葉はそれだった。

 

「王女は要りません。これからは共に戦う仲間です。どうか私のことは普通に呼んで」

 

「え、ええ。わかりました。では私もそのように」

 

「……あえて嬉しいわ、フィヨルム」

 

別人であることはフィヨルムにも分かっている。しかし、それでも生きたレーギャルンとの再会は、話ができることは、フィヨルムにとっては嬉しい出来事だった。

 

廃村に2100名程度のアスク国民がこの地に集まった。

 

ここで1晩休息をとる必要が本来はあるだろう。

 

しかし、今はいつ終末世界の英雄が迫ってくるかが分からない。追いつかれたそれで終了だ。

 

アルフォンスは救助者に今後の方針を説明した後、今後の方針について戦える人間全員を集めて、軍議を開く。

 

この場に集まったのは、アルフォンス、レーギャルン、レーヴァテイン、フィヨルム、スリーズの5人。

 

駐屯地に用意されたテントの1つを貸し切り、現状報告と今後の方針を話し合う。

 

「フリーズさんは?」

 

「兄上は外で警戒中です。軍議は我々で」

 

もっとも、スリーズも新お会いで外をちらちら見ている様子で、積極的な参加は見込めない。

 

「彼らの様子は?」

 

「アスク王国の人たちは私たちのことをよく思っておられない様子ですね……」

 

「それでもついてきてもらうしかない。そもそも安全なところなんて世界のどこにもない。怪我人や精神疾患を患っている人は?」

 

「現状深刻な方はいません。何とかニフルまではもつかと」

 

不安に煽られて暴徒化する人々もいることを考えなくはなかったが、それは起こった場合今は対応できるだけの力がない。

 

「……では、城まではどうやって行こうか? についてだが……」

 

これには2人から提案があった。あらかじめフリーズはこの件を話しあうように提言していて、自身の意見も残している。

 

「フリーズ皇子は非とも戦力も分散させずこのまま突破することを提案している」

 

それに対しレーギャルンはもう1つの案を出した。

 

「一極集中は、全滅のリスクが高くなる。だってそこを狙われたら終わりよ。少なくとも3つの隊に分けて向かうべきだと思うのだけど」

 

「しかし、当然戦力も分散させなければいけない。襲われたとき迎え撃てる人間が少なければ、その分その隊の全滅もあり得る。戦力は分散させず、一極集中の方が生存率が上がる可能性もある」

 

「相手が相手よ。私たちが対応できない敵が襲ってきたらどうするの。襲われる箇所が1つなら分散させれば、助かる命もあるのではなくて?」

 

「……そうか。未だ相手の戦力の限界が分からない。確かに生存数を増やすには、その方法をとることもできる」

 

アルフォンスは思う。こんな時にエクラがいればと。

 

確かにエクラは、軍師の英雄ほどの軍略を立てられるわけではないが、それでもこれまでアスクに迫った2度の危機をすくために戦った経験を持つ特務機関の軍師となった。彼の意見は十分参考にできる説得力を持つだろう。

 

ふとエクラとシャロンを心配する気持ちが大きくなった。

 

しかし、それを押し殺して、アルフォンスは2つの案を吟味しようと、他の人にも意見を求めた。

 

フィヨルムは、

 

「私はどちらの策もうまくいくような気がしますけど……一方で不安でもあります。皆さんの意見に従いますので……」

 

レーヴァテインは姉に従うと良い、スリーズはフリーズの言うことに理があると主張する。

 

時間はない中で、どちらの意見を採用するか、民たちへの説明の時間も考慮すると、長い時間はかけられない。

 

(こうしてみると、自分の無力さを思い知るな。どれだけ仲間に頼っていたか、今さら思い知るなんて)

 

しかし、悩んでいる時間がないのも事実。方針を決めようと口を開こうとした。

 

――その時。

 

「間に合いました! エクラさん!」

 

この軍議の場に現れたのは、戦士の女性、そしてアルフォンスがよく知る相棒の姿。

 

アルフォンスにとってはまさに救いの手だった。

 

「エクラ!」

 

歓迎の態度を見せアルフォンス。しかし、一方のエクラは表情がかなり曇っていた。

 

「アルフォンス……」

 

連れてきた少女は無事だと確認するアルフォンス。

 

「良かった、無事だったんだね。実はシャロンにも……」

 

しかし、アルフォンスはここに来た人間がこれしかいないことに気づく。

 

「エクラ、シャロンは?」

 

「……」

 

エクラは何も言い返すことができなかった。

 




次回 序章12節 選択の結末(3)

次の投稿は日曜の朝7時です


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序章 13節 選択の結末(3)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



エクラは真実を継げないまま軍議に参加し、自身の方針を伝えた。エクラは戦力の一極集中に賛成したことが決め手となり方針もそのように確定する。

 

国民への今後の方針の説明はフィヨルムとスリーズが行うことになった。国民にはニフルからの援軍と説明することで一応の納得を促す。

 

本来はアルフォンスの仕事であるそれをスリーズが引き受けたのは、軍議の最後にエクラから伝えられた言葉。

 

シャロンを、終末世界の英雄から逃げるために置いて行った。その一言だった。

 

アルフォンスには気持ちを整理する時間が少しでも必要だろう。その配慮がありアルフォンスは一度休憩ということになった。

 

今はアルフォンスとエクラが2人で軍議の場に残っている。

 

「……ごめん」

 

エクラはただ謝る事しかできない。そして、彼女が最後に託したフェンサリルを差し出すしかない。形見である、その槍を。

 

アルフォンスは、その槍を受け取った後、顔を下に向け、エクラを直視することはなかった。

 

辛すぎることばかりだ。

 

恩人の死、そしてもはや生きていないだろう父母、さらに最愛の妹のあまりにも惨すぎる末路。

 

それでも立ち上がれと、誰が言えようか。

 

アルフォンスは爪で肌を切りそうなほどに握り拳に懸ける握力をさらに強め、歯を食いしばっている。しかし、涙は流さない。気丈な姿を見せ続ける。

 

「助けに行った……女の子は?」

 

「無事に連れ帰れた」

 

「……そうか。なら……よかった」

 

エクラはこの場でアルフォンスに殴られることも、何を言われる覚悟も、もはや殺される覚悟もあった。

 

故に、よかった、という言葉が、逆に怖かった。

 

「良く……ない」

 

「いいや、これでよかった。よかったんだ」

 

「アルフォンス」

 

「君は正しい。一番辛いのは君だ」

 

「違う」

 

頑なに否定するエクラに、アルフォンスはなおも言葉を返す。

 

「……ムスペルとの戦いが始まるときに……シャロンは言ってたんだ。自分と君のどちらかしか助からないときは、必ず自分を犠牲にして……君を……君を、助けるって。有言実行だ。きっと本望だったろう」

 

シャロンが、とんでもない覚悟を持って自分の隣で戦っていたことを、エクラはこの時初めて聞いた。

 

エクラの心にさらに刃が立つ。胸が苦しくなる。今の自分など生きていても戦力にならないというのに、それでもシャロンは自分を生かすために戦ってくれたことが。

 

しかし、たとえそんな話をしていたとしても、エクラは反論する。

 

「本望なはずはない。死にたくなかったに違いない。手が震えてた! 泣きそうだった。そんな彼女を……死に追いやったのは……」

 

「やめてくれ……、非の追及に意味はない。今はそれより」

 

「アルフォンス!」

 

アルフォンスは俯いていた状態からようやく顔を見せる。

 

涙をこらえていた。顔色が悪く、今にも吐きそうな顔だった。

 

辛くないわけがない。そんなこと誰が考えても分かるはずだが、エクラはアルフォンスの強がりとしか見えない言葉に騙されていた。

 

「アルフォンス……」

 

「……う、ああ……あぁぁ……すま、ない。大人げないな……ハハハ……」

 

アルフォンスの目からは、すでに涙がこぼれている。

 

「分かって……んだ……戦い……死ぬ……そんなの……分かってた……はずなんだ……」

 

しかし、アルフォンスは、泣き叫ぶことだけはしなかった。本当は泣きたくて、狂ってしまいたくて、楽になりたくて仕方がない。

 

しかし、現実逃避に意味はない。民を生かし、アスク王国を取り戻すことが自分の使命だと信じているからこそ、アルフォンスは現実を受け止め、飲み込み、ただ今のこの軍をお維持するために、我が儘と思っている自分の意志を封じようと必死にこらえている。

 

その姿は痛々しいことこの上ない。

 

しかし、エクラには、アルフォンスを救う何かを言う資格はなかった。

 

「だから……、僕は、平気だ。まだ平気だ。まだ……戦える」

 

アルフォンスは、ふらつきながら立ち上がる。こぼれた涙を拭き、いつものクールな顔を見せようと顔を創る。

 

今のアルフォンスは既にボロボロだ。もう、発狂寸前と言っても過言ではないだろう。

 

「アルフォンス。その……」

 

「さ……行こう、そろそろ……出発、だ」

 

「休んで。罰は後で受ける。休んでくれ。代わりは」

 

「いらないよ。僕は……生きる。生きる。体調の言っていた通り、血を吐いてでも、泥をすすってでも、屈辱に、試練に、たとえ誰を犠牲にしてでも生きて、いつかアスク王国を取り戻す」

 

アルフォンスは、エクラの方に振り向く。すでにすり減った精神を整え、声を張り上げる。

 

「行こう、エクラ。今は、戦う時だ」

 

「アルフォンス」

 

「僕は、平気だ」

 

そんなはずはない。あと少しでも彼の精神を追い詰める何かがあったら、アルフォンスは今度こそ、狂い始めてしまうだろう。

 

それくらいまで追いつめられている事は見て取れる。

 

しかし、今のエクラにそれを言う資格はない。なぜなら自分は元凶だから。

 

今の自分にできることは、今度こそ失敗はしないこと。軍師として、友として・

 

「ああ行こう。君がそう言うのなら」

 

エクラも立ち上がる。そして軍議のテントから外に出ようとした時、

 

「敵襲! 皆さん逃げてください!」

 

フィヨルムの叫び声が、街に響き渡った。

 




次回 14節 選択の結末(4)

次回の投稿は月曜の20時です


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序章 14節 選択の結末(4)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



外に出たエクラとアルフォンス。

 

廃村ではすでに多くの民が出発の準備をしている。フィヨルムはその誘導を行っていた。

 

「エクラさん。アルフォンスさん。もういいのですか?」

 

二人を心配するフィヨルム。アルフォンスの声は既にもとに戻っていた。

 

「それどころではないだろう。敵襲だって」

 

「はい。今は兄が食い止めてくれています」

 

「敵は?」

 

「見た目で判断する限りでは、白夜王国のリョウマ王子かと」

 

二人の額に冷や汗が伝う。すでに2人はアスクの地でその存在と戦っている。そしてその強さを目に焼き付けている。

 

「まずい、加勢しよう」

 

アルフォンスがエクラに提案し、走り出そうとするyが、それをフィヨルムが制止する。

 

「アルフォンス様。どうか、ここは民の避難の準備を。兄が敵を食い止めているうちに、全員出発しましょう」

 

「でも、フリーズ皇子が!」

 

これ以上の死者を出したくない。アルフォンスのその思いが強く表れている。

 

「大丈夫です」

 

「大丈夫なはずがないだろう!」

 

すぐに声を荒らげてしまうアルフォンスの方をエクラが軽くたたく。怒声に驚いて次の声が出なくなったフィヨルムに、

 

「ごめん。でもなぜ大丈夫かを話してくれないと、こっちも納得できないから、話してくれると嬉しい」

 

アルフォンスが本来言うべき言葉を代弁する。

 

「はい……、兄は、恐らく大丈夫なんです。リョウマさんと戦えています。念のたレーヴァテインと姉が様子を見ていますが、加勢してはいません」

 

「馬鹿な……」

 

エクラは驚く。終末世界の英雄はとんでもない強さを誇っていて、1人で戦えるような相手ではない。いかにフリーズ王子が強いと言っても、たった1人でなんとかなっていることには、フリーズ王子の本気が、あまりにも想像以上であった。

 

「私も驚きました。なにせ、知らなかったので。でも、兄は大丈夫です。今は住民の出発の準備を手伝いましょう」

 

「……任せる」

 

しかし、アルフォンスは走り出す。それは、まさしく今フリーズが戦っている街の外の方角。

 

「ちょっと……アルフォンス!」

 

冷静なふりをして、実のところ全く冷静には程遠い。かつてスルトに追い詰められた時もここまで取り乱してはいなかったはずなのに。

 

「アルフォンス様……!」

 

「フィヨルム、君は引き続き、アルフォンスの代わりを頼む」

 

「エクラ様は」

 

「追いかける。あれじゃあ、無茶なことをしかねない。ここでアルフォンスまで殺させるわけにはいかないさ」

 

「……わかりました」

 

本来アスクの王族の責務である行為を快く請け負ってくれたフィヨルムに、今できる最大限のお礼をして、エクラはアルフォンスと追いかける。

 

 

村の外のサバンナ地帯に到着したアルフォンス。

 

フィヨルムの報告通りに、そこでは戦いが繰り広げられていた。しかし、敵はリョウマらしき影だけではない。総勢五百のエンブラ兵も村の襲撃の訪れていたのだ。

 

エンブラ兵を食い止めていたのは、藍色の女剣士と、その隣で多彩な武器を使う男。なんとたった2人で500人のエンブラ兵を食い止め、フリーズに危害が及ばないようにしている。

 

一方その中でフリーズはリョウマと一騎打ちをしていた。

 

アルフォンスはすぐに加勢をするため走り出したが、その足はすぐに止まった。

 

その2人の戦いは、自分が付いていけるものではなかった。

 

一呼吸の間に突き出されるリョウマの3回の斬撃を躱し、後ろへと後退する。それを予知し瞬きの間に後ろに回りこむ。

 

再び迫る斬撃。リョウマの動きは速く、フリーズはその動きをとらえきれない。

 

テュールの斬撃は間違いなく当たる。

 

「……っ?」

 

その斬撃は防がれた。フリーズの体を守るように、自動で氷の障壁が発生する。剣戟は弾かれ纏っていた紫の電光が弾ける。

 

「ふっ!」

 

斬撃を弾かれることで一瞬体勢を崩したリョウマに、フリーズは反撃に転じる。

 

ギョッルと呼ばれる神器の剣。レイプトと同じく氷の力を宿すそれは、斬った痕の傷痕を凍らせる。氷の世界に伝わる神器はみなこのような力を持っている。

 

氷は自身の魔力から生成されるため、その魔力をうまく操作できるようになれば、特殊な事象を発生させることも不可能ではない。

 

ギョッルによる剣の横薙ぎ、そしてもう1度の突きを軽く躱したリョウマは、3回目の攻撃を刀でいなし、再び攻めに転じる。

 

磨きあげられた剣技は終末世界の英雄でも変わらない。アンナが使ったこともある奥義『流星』の動きを見ても、アンナのものよりも流麗で速い。目で捉えることは至難の業である。

 

フリーズにとっても同じで、すべての攻撃を捉えられているわけではない。先ほどから発生している氷の障壁がフリーズの剣の代わりに、防御を担っている。

 

「はぁ!」

 

防御に負担があまりかからないフリーズは、リョウマの猛攻を凌ぎながら反撃に転じることを可能にしている。

 

フリーズはギョッルから放たれる氷の魔力を高めた攻撃を放った。

 

「……っ!」

 

剣に紫の雷を宿し、渾身の一撃と思わせるフリーズの剣と衝突させる。

 

激突のした剣戟、そして雷と氷の魔力が激しくせめぎ合い、魔力の衝突による爆発が発生した。

 

「ぐ……!」

 

神器同士の戦いに勝利したのはフリーズだった。テュールは押し負けた。

 

フリーズはそのまま攻撃に踏み込んだ。

 

2回の斬撃。これは躱された。しかし、その後に繰り出す蹴りの一撃は躱しきる事はできず直撃する。

 

「ぐ……!」

 

まともに言葉を発することなく攻撃を仕掛け続ける機会のように戦っていた男が、初めて苦しそうな表情を浮かべる。

 

肉体に走った衝撃は想像以上だったのか、足の踏ん張りが足りず、奥へと飛ばされるリョウマ。

 

その一瞬の隙を逃すことなく、ギョッルを上に掲げる。その構えは何回か共闘した覚えのあるアルフォンスにも覚えのない動きだった。

 

「あれは……?」

 

アルフォンスの疑問に、レーヴァテインが答える。

 

「あれ、神器解放の合図」

 

「神器解放……?」

 

聞いたことのない言葉が、アルフォンスの頭を混乱させる。

 




投稿遅れて申し訳ありません。

第2部のPVの時に、フィヨルムがすごいことしてるんです。覚えていますでしょうか?
ヒーローズの神器は、レーザーを撃ったり、巨大な氷の柱を操ったりすることもできるらしいので、ただ武器を振り回すだけでなく、特殊な力を使った戦闘もどんどん書いていきたいと思います。

次の投稿は、一度他の2作品の投稿を挟むので、木曜日か金曜日の20:00の予定です。

次回 14節 選択の結末(4)


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序章 15節 選択の結末(5)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



剣に宿るのは氷の魔力。未だ流動的な魔力の塊が剣に集中し、ギョッルが青く輝く。

 

フリーズは剣を振り下ろす。剣に宿った魔力が共に放たれた。

 

半月状に変形した巨大な斬撃が地面を割りながら、リョウマに向かっていく。

 

「……っ!」

 

斬撃波は通過した場所を一瞬で凍らせていく。

 

雷の刀によって受け止めようとしたリョウマは、その光景を見て込められた魔力量がこれまでと桁違いであることを察する。

 

しかし、斬撃はものすごいスピードで標的に向かっていて、体勢を崩している今のリョウマが躱すことはできない。

 

「ぉお!」

 

受け止めることを選んだリョウマは、今、神器に宿せるだけの雷を宿し、その斬撃に己の刀をぶつける。

 

瞬間に集めたその場凌ぎの魔力に対し、ギョッルから放たれたのは、精神統一の末に寝られ続けた氷の魔力の集約。

 

勝敗は明白だ。

 

たとえ相手が終末世界の英雄だったとしても、それを覆すことなどできるはずはない。

 

ビキ。

 

金属が割れる音が響き渡る。目の前から迫る物質量に耐えられず折れようとしている武器がある。

 

当然ギョッルではない、リョウマが持っているテュールである。

 

神器から放たれる強大なエネルギーの衝突は、激しい音を立てながらせめぎ合っていたが、もうすぐで、紫の雷を、氷の斬撃は飲み込もうとしていた。

 

フリーズはただ目の前の敵の行く末を見守る。

 

「剣技に制裁がなかった。故に生まれた決定的な隙。それを見逃すほどの容赦をかけるつもりはない。凍れ」

 

「ぉぉおおお!」

 

刀が砕け始める、リョウマの体は凍てつきはじめ、霜が体を覆っていく。

 

「ぉ……おお……!」

 

どれほどの気合を入れても、目の前の斬撃を押し返すことはできなかった。

 

刀が折れた。膨大な氷の魔力は目の前の侍を容赦なく飲み込み、そこで凝縮された斬撃は変質し、エネルギーを爆散させた。

 

遠くで見守っていたアルフォンスやエクラまで届く破壊力の残滓。

 

そして、その場にいた侍は、爆発の後の煙から出てくることはなかった。

 

「……さすがだ。間一髪で逃げたか。だが、上半身は両断した。しばらくは出てくることはあるまい」

 

エクラは信じられないものを見た。

 

それはエクラにのみ見ることのできる、戦いを数値化する戦略眼。

 

それで見て今の神器解放と呼ばれるものの攻撃を数値化した結果、135ダメージを与えていることが判明した。3桁という、これまででは考えられない攻撃力数値を見て言葉が出ない。

 

「あれが……」

 

「神器の力を解放する術。これ、あいつらと戦うのに必要。姉様も言っている」

 

「神器解放。僕とフォルクヴァングにもできるのかな」

 

アルフォンスが興味をもつのも当然である。街の中で圧倒的な差で敗北しかけた相手に圧倒的な力で勝利して見せたこの戦い。その鍵が神器の力を解放することにあると知れば、アルフォンスも神器の使い手として、注目するのは、危機を迎えている身には至極真っ当な反応だ。

 

「きっかけと修業が必要。でも、できないことはない」

 

「なら……」

 

「ナーガ様に聞くと早い。お前そう言うなら、早くいくぞ」

 

「あ。ああ。そうだね」

 

既に話が出発に映っているのは、リョウマが連れてきた500人の兵士がほぼ全滅しているからだ。

 

その戦い方も、並みの人間とは思えないものだった。

 

藍色の剣士は剣から魔力を解き放ち、迫りくる敵を斬りながら、ものすごい勢いで吹っ飛ばしていく。兵士がもはや雑草を雑に引き抜いていくかのように空中に舞っている。

 

たいしてもう1人はそれほどの派手さはないが、敵から剣を奪い敵を斬り、槍を奪っては敵を突き、魔法を奪っては、その魔法で敵を倒していくという、万能な戦いをしながら確実に敵を屠り続ける。

 

兵士と、ナーガの使者である2人の力の差は歴然だった。言うなれば、人と竜巻の戦いと言っても良いほどの力の差であり、兵士に勝ち目はない。

 

エクラは、ナーガの使者の力に唖然とするしかない。

 

その中の1人であり、先ほど逃げているエクラを助けた藍色の剣士は、人柄であればエクラも良く知る人物だった。

 

イーリス聖王国、王女ルキナ。邪竜ギムレーを倒すため、滅びの未来から自身の過去に向かい、父とその仲間と協力することでようやく倒すに行った、英雄王の再来と言うにふさわしい、不屈の英雄として有名である。

 

そんな彼女が何故ナーガの守護者として現れたかは分からない。

 

しかし、自分が召喚したことのあるルキナとは別人であることは明白だった。

 

ステータスは総じて通常のルキナよりも10程度高く、さらに、持っている武器が『裏神剣ファルシオン』という、見たことのない武器である。スキルにも、フリーズと同じで見たことのないスキルを持っている。

 

ナーガの守護者という話も、終末世界の英雄と戦うという話も、本当なのだと理解できる。そして、勝利を疑うしかなかったこの戦いに、一筋の希望は確かに存在することを実感した。

 

「皆さん、出発の準備ができました!」

 

フィヨルムが報告をしにここまでくる。戦場を見て彼女は驚いたのは、先ほど始まった戦いがもう終わったという事実を見てのことだった。

 




次回 16節 選択の結末(6)


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序章 16節 選択の結末(6)

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
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・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

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これでOKという人はお楽しみください!



歩いて戻ってきた戦士3人。

 

その中で1人の男は、合流して早々に

 

「まったく、やけに強いな。あれで雑魚ではこの先は思いやられる」

 

としかめっ面になりながら、つぶやく。

 

「そんなことを言いながら、ずいぶん軽々と倒してたではないですか」

 

「そりゃ俺とてナーガとは長い付き合いだし、その程度はやってのける腕はついたさ。しかし……契約が終わってようやく解放されるかと思ったが、一方的な再契約でまだ働かされるとは、誰かあの神竜に人の心を分からせてやってほしいものだ」

 

「それは、ナーガ様の気持ちもわかります。あなた、優秀ですから」

 

「やめてくれ。君には遠く及ばない」

 

長い付き合いであることを他社でも感じられる内容の数々。

 

疲れた顔をしてルキナと話していたその男は、見た目こそかなり若い。

 

「お前がアルフォンスか?」

 

「そうだ」

 

「……今にも泣きだして死にそうな顔だ。俺でよければ介錯してやるが?」

 

「な……?」

 

ルキナが急な殺害宣言をした彼を慌てて止めようとする。アルフォンスは当然反論を述べた。

 

「僕が死にそうな顔など、失礼だが間違いだ」

 

「ほう? そうか。その程度の生意気な口が利けるなら、まだしばらくは問題なさそうだな。だが勝手な行動は控えておけ。お前が名乗り出ても、何もできないのだからな。命は大切にすることだ」

 

その男はその場を後にする。

 

侮辱を受けたことに若干の怒りを覚えるものの、アルフォンスはそれを事実であると受け止めるしかない。

 

「エクラ」

 

「何?」

 

「無様だね。僕らは」

 

自身を卑下する言葉などこれまで一度も使ったことのないアルフォンスが、その言葉を選んだことに、エクラは驚きを隠せない。

 

「アルフォンス」

 

「……行こう」

 

アルフォンスの表情はいつも通りだったが、エクラは通常との様子の違いを感じ取っている。必死に冷静を保っているだけ、いわゆる外側だけを綺麗に見せている状態だ。

 

しかし、エクラには今のアルフォンスにかける的確な言葉を持たない。

 

「うん」

 

ただ、アルフォンスの言うことに賛同することしかできなかった。

 

2人の様子をみていたフィヨルムはある恐怖を覚える。

 

いつか、あの2人の関係が破綻するときが来てしまうのではないかと。

 

そしてもしその時が来たら――

 

それ以上をフィヨルムは考えられなかった。

 

「フィヨルム?」

 

「姉様……」

 

「……大丈夫。私たちがついているわ。この世界の姉でないとしても、私はあなたの味方です。あの2人もきっと大丈夫」

 

「でも……」

 

「大丈夫です。あの2人は。それは、貴方がよくわかっているはずです」

 

異界の姉の言葉であっても、自分のよく知る声に、フィヨルムは焦り始めていた心を、落ち着かせることができた。

 

 

 

民の移動の準備は完了した。一応、襲撃してきたすべての敵を撃退したものの、すでに村の市がばれてしまった以上、長居はしていられない。

 

ここから、ナーガが待つとされる飛空場まではノンストップで行くことになっている。ルキナとレーヴァテイン、そしてフィヨルムが先行し、前方を確認する。

 

一方で、エクラとアルフォンスは、フリーズ皇子と共に、後ろで敵の警戒に当たっていた。

 

「アルフォンス王子」

 

「アルフォンスでいいですよ」

 

フリースの呼びかけに応えるアルフォンス。

 

「大丈夫か?」

 

「当然です。まだ、倒れている場合ではないので」

 

「……無理はしない方がいい。飛空城についたら、一度体を休めるべきだ」

 

「お心遣い感謝致します」

 

サバンナ地帯を歩く避難中の大集団。当然目立つ。それをたった10人程度で守ろうというのだから大変なことである。可能な限り密集しながら、目的地である城へ住民たちは足を進める。

 

その間、アルフォンスとエクラに聞こえてくる言葉の中には、当然心を抉るようなものもあった。

 

「アスク騎士団は何をしてるのかしら」

 

「あーあ。何が英雄だよ。他の世界を当てにしているから、こうなるんだ」

 

「今までアスクに不信感抱かないようにして暮らしてきたけど。戦いが終わったら移住しようかな」

 

「そうだな。それが懸命だろう」

 

アルフォンスに聞こえるように言っているのか、もしくは聞こえているとは思っていないのか。

 

気丈であることを見せているつもりのアルフォンスに対して、エクラは既に我慢の限界だった。

 

誰のおかげで助かったと思っているのだと。

 

当然、自分のおかげなどと欠片も思っていない。

 

アルフォンス、シャロン、アンナ隊長、そしてアスク王国の騎士たちが命を賭けて戦った結果が、絶望的な状況の中で2000人を生存させるという結果につながった。

 

無知であるが故にそのようなことが言える。戦いに勝たなければ完全な敗北、そのような常識ではない常識が、彼らには根付いているのだ。

 

「く……」

 

反論しようとしたエクラをフリーズは止める。

 

「やめろ」

 

らしくない命令口調。

 

「なんで……」

 

「我々がいくら弁をたてたところで、彼らは常に悪いものばかりを見るものだ。民を統べる王とその臣下は、民の言葉を聞きこそすれ、自分たちの意志を彼らに強要することは許されない」

 

「でも、それじゃ……」

 

「ああ、分かっている。アルフォンスには酷な話だ。だけど、アスク王国が民たちを守れなかったのは事実だ。こうして逃げ回っているのだから」

 

「……でも」

 

「アルフォンス達が頑張ったのは君が、そしてフィヨルムがよく知っている。だから気を落とす必要はない」

 

フリーズはエクラに、そしてアルフォンスにも聞こえるように言う。

 

「民を守るという役目を負った以上、敗北で民の心が離れるのは当たり前だ。だが、それはそもそも人の範疇を超えた仕事でもある。だから失敗することを奨励はできないが、たとえ今の状況でも決して君たちは間違っていない」

 

フリーズ皇子もまた一国の皇子だった存在。彼なりに理解の及ぶ範囲で、アルフォンスを弁護したのだ。

 

それを聞いた住民には、ただの言い訳に聞こえることだろう。

 

しかし、これは言い訳をしたのではなく、アルフォンスやエクラを理解している人間が確かに存在することを、フリーズは明言したのだ。

 

一瞬だけ、ほんの少し唇の端を吊り上げたアルフォンス。

 

「さあ、もうすぐ、ナーガ様が待つ飛空城に到着するぞ」

 

既にアルフォンスと、エクラの目の先には城の姿が映り始める。

 




次回 17節 選択の結末(7)


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序章 17節 選択の結末(7)

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・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

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飛空城。その存在はアンナが少し前に話題に挙げていたことをアルフォンスは覚えている。アスクの僻地に存在するそれは伝説では空を飛ぶという眉唾物のように聞こえた。

 

しかし、目の前にそびえ立つそれは明らかに前に来た時は存在しなかったし、そもそもこの地帯に城などの大きな建物を建てられるほどの堅い土壌はない。

 

『不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる』。今の状況がまさにそれに近い。

 

城は明らかに何らかの方法でこの場に現れたとしか言えないのだ。

 

そしてその城の主は堂々と、アスクの避難民を待ち構えたかのように堂々と、城の前に立っていた。

 

「ようこそ、飛空城へ。歓迎いたします。アスク王国の皆様」

 

尖った耳がチャームポイントの麗人。杖を持っているものの、最初に見た感覚では、ノノやファなどのマムクートに近い印象をアルフォンスは受ける。

 

その女性を怪しむ国民達、とうとう王族に騙されたかなどと、ここにきて飽きずに王族批判の火をつけようとする国民。

 

そんな彼らに、その女性は名乗った。

 

「私の名前はナーガ。この城を管理しているものです。長い大陸横断、さぞお疲れでしょう。どうか城の中に。5階より下は皆様に用意してあります。ルキナ、隣の彼と一緒にご案内お願いします」

 

「承りました」

 

アスク王国の住民は未だ疑い晴れぬものの、このままここにおいて枯れてもエンブラの兵士に殺されることを理解していない者はいないので、ルキナの後に従い、飛空上の中へと入っていく。

 

「アルフォンス、エクラ。私の元へ」

 

そしてアスク王国の最後の希望である2人はナーガの呼び声に従い彼女の元へ。

 

 

 

エクラはナーガを近くに見て、かつて英雄たちに聞いたことのあるナーガの話を思い出す。特にクロムやルキナからは詳しい話を聞いたことがあった。

 

ナーガというものは、決して単一の存在を示すものではないらしく。魂のみの存在になり世界に縛り付けられなくなった神龍族が多くの異界を監視する者としての責務についた時、その名前を名乗るようになるという説が一般的だ。

 

しかし真実は定かではない。違う説も数多く存在する。聖戦の世界のユリアが持っている魔導書『ナーガ』の存在もまた謎に包まれている。

 

しかし目の前にいる存在は、そのナーガを自称するだけあり、雰囲気が一般的なマムクートのものより、高次的存在であるような印象を受ける。

 

「アルフォンスとエクラですね?」

 

ナーガの問いに頷く2人。

 

「この世界に迫っている危機。そこからアスクを、いえ、多くの異界を救うためにあなたたちの力を貸していただきます」

 

アルフォンスはナーガの半ば強制的な言い方に物申す。

 

「あなたがナーガであることはひとまず認めるとして、あまりに話が唐突すぎる。少なくとも、貴方がなぜこの地に降りたのか、今回の事変となんの関係があるのか。そしてなぜ僕らが必要なのか、これらを話してもらわないと、僕らとしても進んで協力はできない」

 

神様的存在を相手によく言えるなぁ、とエクラは感心する。

 

「……そうですね。確かに、今の貴方の懸念も分かります。しかし、ここで多くを語るのは危険でしょう。我々は今すぐにでも飛び立たなければなりません」

 

ナーガの言い分も十分筋は通る。今はエンブラに狙われる身。アルフォンスもエクラも、1か所にとどまり続けるのは危険極まりない。

 

ただし、これが罠であれば一巻の終わりである。もはやアスク王国のために戦える者が少ない今、容易に誘いのるわけにもいかないのだ。

 

アルフォンスが警戒するのをナーガが見て、

 

「……では、1つだけ。この地に何が起こったかを、お話ししましょう」

 

アルフォンスは剣に柄に手をかける。人の話を聞くにはあまりに失礼な行為に当たり普段のアルフォンスでは絶対にしない行為だ。フィヨルムはさすがにこの行為を止めようとしたが、スリーズがそれを制止する。無理もないことです、と。

 

もしも急に乱心し、斬りかかろうとしたら自分が止めなければと、エクラはその意味で身構えた。

 

ナーガはそれを見たものの、さして気にも留めず話始める。

 

「一言で言ってしまえば、このアスクの地に起こったのは、時間軸からの逸脱です」

 

「どういうことですか?」

 

「ではまず、時間軸の話を少し。アルフォンス、貴方は異界という存在は知っていますね?」

 

「はい、それはヴァイスブレイブに務める者として当然のことです」

 

「よろしい。多くの異界は、原則互いに干渉することなくまるで平行するかのように時を刻みます。この至天の世界は、他の世界に干渉するという点では特異なものの、しかし、並行して時間という道を進む一つの世界として成り立っている」

 

所謂、平行世界論に近いものだとエクラは認識する。今自分のいる世界は、過去の選択により運命が決めつけられた世界であり、他の選択をした世界とは交わることなく続いていく。選択によって枝分かれした運命が、多種の世界の様相を創ることになる。

 

「しかし、常に世界が正しい道を選び進んでいる事はない。どこかで選択を間違えた世界は、正しい道、正しい時間軸から脱線する。……エクラ、例えばの話です。あなたの世界には電車という文明がありましたね?」

 

「あ、はい」

 

自身の故郷。別の世界における記憶をエクラは思い出す。

 

「電車がレールを踏み外すとどうなりますか?」

 

「脱線事故ですね……、車体が傾いて、倒れて、電車は壊れるし、人も死ぬかも……」

 

ナーガの話の真相を理解する。しかし、分かるのはエクラだけだ。アルフォンスや話を聞いていたフィヨルムには理解は難しい。

 

エクラは何とか分かりやすいように今のたとえ話を説明する。

 

アルフォンスもフィヨルムも頭の回転は速く、想像上のそれはエクラが説明したものに近しくなっていた。

 

「今、この至天の世界に起こっているのは、その脱線事故と同じだと考えてください。電車はこの世界、そして人とはあなた達だと考えてください」

 

正しい時間軸からの逸脱。その意味を少し理解し、

 

「……まさか、このままではこの世界が……?」

 

「その通りです」

 

「そのような話、信じられるとでも……?」

 

「今は信じていただく必要はありません。いずれはそう認めざるを得なくなりますから」

 

事実かもわからない与太話。そうともとれるが、現に今至天の世界には明らかに異常が起こり続けている。事実と言う証拠はなくとも、そう信じてしまいたくなる。

 

「もとよりブレイザブリクは、正しい時間軸の異界から英雄を呼ぶ神器になります。エクラ、貴方が英雄を呼べなくなったのは、あなたたちの世界が正しい時間軸から離れてしまったことにある。正史を辿るだろう異界と離れてしまったが故に、神器との接続が弱まり、呼び出しにくくなってしまったのです」

 

「じゃあ、神器の故障じゃなかった」

 

「はい。そこは安心してください。でも、先ほども言った通り、時間軸からの脱線は世界の破壊を意味する。このままではこの世界は滅びの運命にあります」

 

「……終末世界っていうのはまさか」

 

「その単語を聞いていたのですね……、はい。終末世界とは、正しい時間軸から外れた異界。いずれは滅びの運命を辿ることになる、異界のことなのです」

 

エクラは今自分がおかれている状況が大きすぎて、膝が笑い始めた。

 

アルフォンスは尋ねる。

 

「僕らの世界を守る方法は?」

 

ナーガはその問いに、こう答えた。

 

「通常、存在しません。あなた方の世界は脱線してしまった時点で、終末が決定づけられています」

 

それは非情な、最後の宣言だった。

 




次回 選択の結末(8)


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序章 18節 選択の結末(8)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「そんな……」

 

この世界を救う方法はない。その事実がアルフォンスとエクラの精神状態にさらなる悪影響を与えるのは確かである。

 

しかし、ナーガはそれにつけ足すように言った。

 

「ただし、今回は例外です。私がこの世界に降り立つことができたのは、この世界の異変が人為的に起こされたものだからです」

 

人為的と言うことは、この原因を引き起こした犯人がいるということ。

 

「この世界の時間軸からの逸脱は何者かによって引き起こされたものということですね」

 

アルフォンスの確認。ナーガはそれに反論はしなかった。

 

「犯人は終末世界の存在を知っていながら、わざとそうなるように世界を動かしていました。世界の脱線はあくまで自然な人の選択で行われるべきものです。意図的に終末世界へと世界を動かすことは許されません」

 

「だからあなたが助けを差し伸べるために?」

 

「はい、不正は許されるべきではありません。故に私は手を出せる状況になりました」

 

「では、この世界は助かるのですね?」

 

「……それは、まだわかりません」

 

話はこの世界の異常を解決する方法へ自然と動いていく。

 

「この世界はただ脱線しただけでない。逸脱した他の終末世界と鎖で連結させ、この世界を元の正史世界の時間軸に戻さないように仕向けられている。我々がこの世界を元の時間軸に戻すには、その鎖を外す必要があります」

 

これでもナーガは難しい話をできる限り簡単にしてくれているのだろうとエクラは思う。本来視界に入れることすら敵わない、平行世界の話。ナーガほどの力がなければ視ることすら不可能だろうその概念には、自分たちが考えも及ばないことがいろいろとあるはずである。

 

それを自分達にも分かるように、本来もっと複雑な内容をシンプルにして話をしている。聞いているエクラたちは、その鎖をどうにかすれば事態が好転すると分かる。

 

この手の方法は、物の本質を見抜きづらくなることがデメリットだが、それはおいおい少しずつ自力で解き明かしていくものだ。その手間をエクラも惜しまないつもりだった。

 

「そして、その鎖を切断するためには、アスクの神器に宿った、この世界の神格を持つ神秘が必要になる。だからこそ、あなたたちが必要なのです」

 

「……そうですか」

 

アルフォンスも特に混乱することはなく、ナーガの話を最後までおとなしく聞いていた。

 

そして話が一段落したところで口を開く。

 

「……つまり、僕らが行動を起こす必要があるということですね」

 

「その通り。そうしなければこの世界は滅ぶ以外の道を選べない。だから私は、あなたたちに非情な選択を選ばせます。どれほどの地獄を見ようと、屈辱を抱こうと、あなたたちにはこの世界に生きる人々の希望として、戦っていただきます」

 

ナーガの発言は非情な宣告に聞こえるものの、その意味を正しく理解できない者はいなかった。戦うしかない。それしか自分たちが助かる道がないのだ。

 

「この飛空城も関係が?」

 

「はい、この世界にあったものを、私の権能の力を使ってアスクの門と同じ力を持つように改装しました。鎖は実際に終末世界に行ってその世界における鎖を固定しているものをどうにかしなければならないのです。その……どうするかは、何が鎖かが不明のため大きさによると思いますが」

 

「アスクの門とおなじということは、僕らは異界に赴く必要があるということですか?」

 

「その通り」

 

それも今までの正史世界ではなく、謎に包まれた終末世界。

 

エクラはこれまで出会った、知っているようで知らない英雄たちを思い出す。その英雄たちが、生きている世界。

 

数多くの世界を旅してきたエクラでも全く予想はできない世界。

 

「エクラ」

 

アルフォンスがエクラを見る。

 

言葉にしなくてもエクラには分かる。これは相談したげな顔だと。内容も察しはつく、この話を信じていいかと。

 

「いいと思う」

 

「……すまない。信じていないわけじゃないけど、理由を聞かせてほしい」

 

「ああ、そうだね」

 

理由は至極明快だった。

 

まず自分たちどうするか分からない以上は、事情を知っていそうなナーガを名乗る存在について行き、事の真相を探る必要がある。

 

そして、自分の知っている英雄たちが、ナーガに迷いなく従っているところを見ると、騙されているわけではないと思える。

 

そんな結局根拠にも何にもなっていない話で、行こうと決めてしまうのはどうかと思うものの、エクラからすればそもそもすべての戦いがいつ死ぬか分からない綱渡りだった。一寸先は闇かもしれないなど慣れている。

 

今は進むべきだ、そう判断した。

 

一方王族であるアルフォンスはエクラのこの話を聞き、悩む。

 

アルフォンスとしては慎重に物事を判断するタイプである。さらに、今はシャロンもアンナも自身の不甲斐なさが故に失ったと思っている。

 

もう2度と同じ失敗はしたくない。それ故にいつもはエクラの相談に納得をすれば肯定的に受け取るものの、今は、まだ意を決することはできなかった。

 

「アルフォンス、どうか、私を信じてほしいのです」

 

「……でも……あまりに話が大きすぎて、やはり……」

 

アルフォンスは、未だその話を飲み、行動を起こせないでいる。

 

――その時。

 

あまりに唐突に、その男は少し離れた場所に現れた。

 

「ナーガ。人に希望だけを見せるのはよくない。たとえ救う方法があっても、彼らは絶対にこの世界の終わりを回避できないことを、絶望を教えてあげるべきだ」

 

ナーガの表情が急に険しくなる。

 

現れたその男にナーガが向けるのは、敵意。慈悲に満ちた顔をしていたはずのその顔は怒りで歪む。

 

「……人間を人間ではなくす。その悪行を平気でやってのけたあなたには言われたくありませんね。獅子王」

 

エクラとアルフォンスはその存在を見る。

 

第1印象は圧倒的な力のオーラ。相対するだけで鳥肌が立ち、本能がこの男と戦ってはいけないと叫ぶほど。

 

そしてナーガの使者たる異界のフリーズ、スリーズ、レーヴァテインはすぐに武器に手をかける。

 

それは、彼らが獅子王と呼ばれた彼を、敵であるとみなしているからだった

 

「……エリウッド……いや、少し違う。でも、すごく似ている」

 

エクラの独り言に、獅子王と呼ばれた男は反応を返した。

 

「ああ。父を知っているんだね。さすが特務機関。なら僕の名前を知っているはずだよ。僕はロイだ。父、エリウッドの息子。……君たちが知るロイよりは少し年を取ってしまったけれど、本物だよ」

 

ロイを自称する青年は、もう懐かしいような、さわやかな笑顔を見せた。

 




ロイの2つ名は若き獅子であるみたいです。若き獅子が15歳くらいのロイなら、成長したら普通の獅子ですね。ちなみに、なぜ王が付いているかは、まだ秘密です。by トザキ

FGOの影響受けまくってるって紹介文に書いてあるけど……特にここでは顕著にでていますね。 ストーリーはちゃんとFE要素を入れて考えてますのでご安心ください。 by femania 

次回 19節 選択の結末(9)


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序章 19節 選択の結末(9)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「絶対に救うことができない……?」

 

アルフォンスの耳に入ってきたのは、ロイを自称する青年が言う非情な宣告だけ。すでに心が折れかかっていて後ろ向きな思考に囚われようとしている証拠だ。

 

「そうだ」

 

アルフォンスのつぶやきを肯定するロイ。

 

「なりません。私は必ず、このアスクの世界を救います」

 

ナーガがそれに反論した。ロイは、不快であることを示す表情でナーガと向かい合う。2人の距離ははるか遠いものの、一触即発の状況だ。

 

「ナーガ。僕はそれを許さない」

 

「何故です。私はこの世界を救うのみ。あなたの世界には手を出さない」

 

「それは無理だ。この世界と鎖でつながっている世界の1つに僕の世界がある」

 

「鎖を外すだけです。それ以上の事はしない。あなた方とは相対することはない」

 

「違うね。君は分かっているはずだ。鎖を外すと言うことは、その世界、終末世界と変貌したその世界を終わらせることと同じことだ」

 

「それは仕方のないことです。あなた方の世界は終わる世界。ならば、救えば繁栄が望まれる世界の糧となることは義務なのです」

 

エクラは言葉を失う。世界を終わらせるというその言葉に。なぜなら、自分たちは、自分たちの世界を救いたいだけだ。他の世界を滅ぼすつもりはない。そのような、大量虐殺になるかもしれないことと同義の事をするつもりはなかった。

 

ロイはそれを聞き激昂する。

 

「それが間違っているというんだ!」

 

「間違いはあなたですよ。ロイ。あなたが間違えたから、あなたの世界は滅んだ」

 

「僕の世界は、多くの人間を幸福へと導くものだと信じている!」

 

「あなたの独善的なその正義があなたの世界を滅ぶべき悪として定めてしまった。なぜ分からないのですか?」

 

「滅ぶべき悪だと……!」

 

殺気。そしてあふれ出る尋常ではない魔力。嵐のように荒れ狂っているように感じるのは間違いなく怒りを表現しているのだろう。

 

それを攻撃の前兆だと感じたナーガは、手に持つ杖を構え、何かを唱え始める。

 

「ならばナーガ! 仮に僕らの世界を終焉に追い込んでしまったと認めよう! では、僕の世界で、涙を流して平和を願った理想郷の人々の願いを踏みにじることが正しいというのか! あの悲鳴を無視し、ファが泣いているのも黙殺し、竜はすべて殺しつくすべきだったと!」

 

「……いいえ。そうは言いません。しかし私は言いました。何かの間違いで、あの世界の多くの人々が竜を恐れてしまい、理想郷を滅ぼそうとしたとしても。決して、貴方が人の敵になってはならないと。それでは、ベルン王ゼフィールとやることは変わらない。あなたが悪になってしまうと」

 

「それでもかまわない。僕は悪でも構わなかった! これ以上の戦いがなくすためには、人を変えるしかない。それ以外に道はなかった!」

 

「はい。あなたがそれを選択してしまったことであの世界は最後の変化を起こし、変化がもうなくなった。あらゆる生命のそれ以上繁栄を見込めなくなった。永き安寧。確信のない永世王国」

 

「世界は平和になった!」

 

「そう、貴方は平和を勝ち取った。故に、あの世界の物語は終わるのです。人は、竜になっては、私と同じになってはいけなかった」

 

「君たちこそ間違っている。なぜだ。人の平和をなぜ拒む!」

 

「平和は良いことです。しかし、世界の終わりは致し方ないこと。あなたは何も悪くないのでしょう。しかし、決まってしまった運命なのですよ」

 

決して分かり合えない2人。

 

「これ以上の議論は無駄ですよ」

 

「だからあなたは嫌いだ。ナーガ。なぜ僕の世界が悪として断罪されなければならない。それが僕には納得できない」

 

「そうでしょうね」

 

ロイはそれだけ言いこの話を終わらせた。

 

しかし、すぐに戦いとはならなかった。

 

「ナーガ、先ほどの続きだ。なぜ、彼らに不可能であることを教えない」

 

「アルフォンスも無事、エクラも無事です。神器は後にすべて取り戻せば構わないでしょう。まだ希望はある」

 

「ナーガ。たとえ君自身が戦ったとしても、僕らの世界が勝つ」

 

「私たちこそ、貴方に負けるつもりはない」

 

「無理だ。八神将、僕らは竜を殺した英雄たちそのままの力を受け継いだのだから」

 

そう言うと、ナーガはフリーズに目を合わせる。

 

「フリーズ兄様……?」

 

心配そうに見つめる妹のフィヨルムの頭をなで、

 

「大丈夫だ」

 

とにこりと微笑んで安心させる。そして、ナーガの近くによると、神器のギョッルを抜く。

 

ナーガは何かを唱える。それと同時に、フリーズに膨大な魔力が流れ始める。

 

「ナーガ様?」

 

「フリーズ、もしもの時にお願いします」

 

「分かりました」

 

ナーガの元で戦う戦士として、フリーズは迷いなく頷く。ロイはそれも気に入らないようで、

 

「お気に入りの戦士なみたいだね。趣味の悪い。世界を救うという大義名分で、人をさらっては自分の兵士として使うなんて」

 

「等価交換です。あなたにとやかく言われたくはありませんね。異界への干渉もただではないのです」

 

「……いけないな。感情的になってしまうのは領主としてよくないと、父上から何度もお叱りを受けたのに、まだ治らない悪癖だ」

 

皮肉っぽく笑ったロイは再び顔を真剣なものに戻すと。

 

「ナーガ、君たちがこの世界を元に戻そうとする限り、僕らは、『理想郷』のすべての人々が君たちの敵だ」

 

アルフォンスやエクラの敵になると宣言する。

 




GW期間は投稿ラッシュです。こまめにのぞいてみてください。

次回 20節 選択の結末(10)


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序章 20節 選択の結末(10)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



エクラは戦慄せざるを得ない。今のロイ、その実力を自身の戦略眼で測ると、信じられない数値をたたき出している。

 

ロイ HP780 攻 130 速 80 守 72 魔 65 

武器 将剣デュランダル

 

またも見たことがない武器を持っているが、それ以上に驚くべきは、そのスキルにあるだろう。

 

スキルA 烈火

自分から攻撃時、自身の攻撃力が2倍になる。

スキルB 超人智の秘儀 

相手の絶対追撃を無効。自身の攻撃は2回攻撃になる。

スキルC 理想郷の領主

将と名のつく武器を使う味方(自身を含む)は戦闘時、HP以外のステータス+20

聖印 八神将の加護

自身以外の八神将が3人以上生きているとき、神竜種以外から受けるあらゆるダメージは0になる。

 

そんなもの人がどうやって倒せばいいというのか。はっきり言って以前戦ったスルトなど話にならない。その雰囲気もあふれ出る魔力も、目の前のロイの方がはるか格上だ。

 

スルトを相手にしてなんとか勝利したエクラたちにとって、目の前の存在が敵となったらいったいどうやって戦えばいいというのか。

 

しかし、それは戦わない者としての話。実際前面で戦う者。

 

フィヨルムは体が震えている。この前、ようやく凄まじい強敵だったスルトを倒したばかりで、それよりもはるか強いものを前にすればその反応もやむを得ない。

 

「フリーズ兄様!」

 

悲鳴のように兄の名を叫ぶフィヨルム。フリーズも目の前の敵の強さが分かっていないはずがない。

 

ロイは呆れた顔を見せ、

 

「ナーガ。君は彼らに僕らと戦う運命を進ませようというんだね」

 

「当然です。それが私の役目。あらゆる異界を守る神の権能を授かったナーガとしての役目なのですから」

 

「だが、たとえ君が戦うとしても、アルフォンスやエクラが戦わなければ意味はない。彼らは戦う意思を持ち続けられるかな? そして僕らを倒せるのかな?」

 

「戦力であればこちらも十分あります」

 

「では、ちょうどいい機会だ。試してみよう。僕らの持つ神将器の本来の力を見せる。ちょうど新しい神将器の使い手が見つかったんだ。ミレディやシャニー、ティトはマルテを使うと自分のドラゴンやペガサスが飛びにくそうだと断られてしまってね」

 

シャニーやティトと言う名前をエクラは聞いたことがある。前は共に戦ったこともある。確かに封印の世界の出身だ。

 

「氷雪の槍マルテ。この場は冬となり、吹雪の舞う極寒の世界へと変貌させる。さあ、その力見せてほしい。僕らの世界を守るために」

 

ロイは剣を構える様子はない。

 

フリーズは剣を構える。透き通った氷と黄金で模られた神器、ギョッルはこれまでにない輝きを見せているように錯覚するのは、ナーガの力が宿っているからだろうか。

 

あの王子であればニフル王国最強と言われても嘘ではないだろう。現に、終末世界のリョウマと思われる男と正面から戦い、敗走させるに至ったところをエクラは既に見ている。彼の力を未だに信じられないと言うことはない。

 

――しかし。しかしだ。

 

エクラはそれでも彼の勝利を信じられなかった。

 

ロイの先ほどの言葉は合図だった。

 

アスク王国の中では比較的暖かい気候であるこのサバンナ地帯。それが、たった一瞬で。

 

本当にたった一瞬で、地面ごとすべてが凍りついたのだ。

 

「これは……!」

 

目を見開くナーガ。その視線はロイではなく、その後ろに現れた1人に向いている。

 

髪が長い。黄金色のしなやかな頭髪。目は保護の為か、氷でできているようなゴーグルで覆われている。しかし、エクラは、仮に目が見えなくとも、その体形から、女性であると予想する。鎧のつくりがフィヨルムと同じ女性用のものに近かったからだ。水色と白を基調とする軽鎧を身に纏っている。

 

「……逃げなさい」

 

ナーガの声が震えている。アルフォンスが、なぜ、と問う前に、

 

「アルフォンス、エクラ! 早く飛空城へ逃げなさい!」

 

急に声を荒らげるナーガ。目にしわが寄っているのは怒りからではなく余裕がない証。ナーガから見て、新たに現れたその女性が、自分たちを逃がすほどの脅威であるという事を示している。

 

「早く!」

 

しかし、足を動かすより先に、膨大な力の増幅が感知できる。

 

圧倒。圧殺。

 

アルフォンスや、フィヨルムがいの一番に感じたのは、己の死の予感だった。

 

魔力は白と青が混ざった魔光の濁流となる。地面ごと吹き飛ばすほどの勢いで、たった一瞬で城を流し破壊するたった一撃による、必滅の運命。

 

フリーズは跳躍しその濁流から身を守った。

 

そして城を、フィヨルムやその仲間を守るように、氷の城壁が展開される。濁流は城壁とぶつかり、目の前で街一つを破壊しても不思議ではないほどの爆発を起こす。

 

壊れた城壁の隙間から襲い掛かる暴風。その余波だけで体が持っていかれそうになるエクラ。

 

「エクラさん、捕まって!」

 

レイプトを地面に突き刺し、自分の安定を図っているフィヨルムがエクラの手を掴む。

 

「ありがとう! フィヨルム」

 

「お気になさらず!」

 

ナーガが自身の魔力を使い、破壊された城壁を復元する。

 

フリーズがたった一瞬でそれほどの防御壁を展開できたことにも驚きである。これほどの大規模な魔法を一瞬で展開できる時点で、もはや人間業ではない。

 

しかし、それよりも、その壁をたった一撃で城壁を破壊しかけた今の一撃の威力。人間が吹ければ、命を確実に滅する竜の息吹の如き威力だった。

 

「見たでしょう! 今の貴方では勝ち目はありません! すぐに城の中へ!」

 

ナーガの再びの忠告。

 

それを素直に受け止め、エクラは飛空城へ行こうとする。

 

しかし、アルフォンスは動く様子はない。

 

「アルフォンス!」

 

「待ってくれ、僕らに何かできることはないだろうか」

 

「アルフォンス、ナーガは逃げろって」

 

「でも、でも、このままだと」

 

アルフォンスが恐れる未来。それは、間違いなく、フリーズが死ぬ未来だ。これ以上自分のミスで仲間を失いたくないと考えるアルフォンスは、どうにか加勢する方法を考えようとする。

 

そんなもの、今の自分達にはないというのに。

 

空中で氷のシールドを発生させたフリーズ。敵を見定める。

 

冷気を身の周りに漂わせ、神将器だろう厳かな槍を片手に、ただ城を見つめる女戦士。それを後ろで信頼して見守る獅子王ロイ。

 

狙いは飛空城。アスクを救う現状唯一の希望である飛空城を滅ぼそうとしているのは明らかである。

 

フリーズはそれが分かったからこそ、ゆっくりとこちらに歩いてくるマルテの使い手をそのままにするわけにはいかなかった。

 




次回 21節 選択の結末(11)


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序章 21章 選択の結末(11)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



空中に発生させた氷シールドを足場として蹴る。向かう方向はマルテの使い手。神器ギョッルが力を発露させ、フリーズの跳躍を援護する。神器の魔力は彼の進む道を作り、その速度を落とさないどころか、加速させていく。

 

1つの砲弾となったニフルの王子の渾身の一撃を前に、マルテの使い手は逃げることなく迎え撃つために槍を構える。その表情に決して揺らぎはなく、自身の無事を確信している。

 

激突。風が相克を起こしたのはその余波と言うべきか。

 

結果、フリーズが押し負けた。

 

槍の単なる横薙ぎと激突しただけであるはずなのに、フリーズの渾身の攻撃はその威力を打ち消され、あろうことか逆にはじき返されて、ぶっ飛ばされた。

 

信じられない、と言うフリーズの一瞬の驚愕を、マルテの使い手は逃さない。

 

凍り付いた地面から、氷でできた鎖が数十本も打ち出される。その光景は地面から人食い大蛇が何匹も襲い掛かっている様子を想像させる。

 

ギョッルを空中で器用に振り回し、鎖を斬っていくものの、数が多い。逃れられない。

 

脚に鎖が巻き付き、腕に鎖が巻き付き、フリーズは身動きが取れなくなった。鎖は神将のもとへとフリーズを連行する。

 

フリーズは鎖を斬ろうとするが、多くの鎖が巻き付いてしまっているため、動きは著しく制限され、鎖から解放されることはない。

 

マルテの使い手は空中でもがくフリーズに向けて再び槍の矛先を向ける。

 

そして。先ほど飛空城を破壊すべく襲い掛かった氷雪の魔力を宿す激流が、今度はフリーズ個人に向けられ、フリーズは飲み込まれる。

 

「兄様!」

 

フィヨルムが兄の無事を祈りながらその名を叫ぶ。

 

魔力の暴発。爆風が再び巻き起こった。そしてその中からその中から墜落するのは攻撃に身を晒すことになったフリーズ。

 

何かしらの方法で防いだようだが、すでに鎧の至る所が損傷を受け、生身の体が出ているところもある。

 

「がは……」

 

しかし、むしろ吐血で済んでいる事を賞賛すべきである。エクラはフリーズのHPが、今の一撃だけで残り6割を下回っていることが分かる。

 

「ダメだ……助けないと!」

 

アルフォンスは戦場へ身を投げ出そうとしている。自分には何もできないことは分かっているのに、ただ死ぬのみであることは明らかなのに、このままではフリーズが死んでしまうからと、アルフォンスは駆け出した。

 

完全に冷静さを欠いている。

 

「アルフォンス、行ったらだめ!」

 

エクラはアルフォンスを引っ張り、止めようとするが、

 

「離してくれ、このままじゃ! このままじゃ王子が死んでしまう!」

 

アルフォンスはエクラを振り切って向かおうとする。

 

いつものアルフォンスらしくはない。王族のとしての義務感を持ち得ているからこそ、己を律し、全体の幸福のための冷静な決断ができる聡明な男のはずだと、エクラは思っている。

 

しかし、今はどうだ。

 

戦いは始まったばかりであるが、すでに父も母も生死が分からず、妹は命を落とし、恩人は自分のために、命をなげうった。

 

それがアルフォンスの感情を昂らせ、理性的な判断力を鈍らせている。

 

大丈夫だ、先ほどエクラにそう言ったが、もはやそれは嘘だと分かる。今のアルフォンスはフィヨルムに同じ思いをさせたくないという優しさから行動しているのかもしれない。

 

しかし、自分の命を、この状況で、あまりに軽く見すぎている。あるいは、蛮勇でも理想を求めすぎている。

 

「アルフォンス!」

 

「離してくれ! エクラ! 僕はこれ以上は」

 

その不甲斐ないアルフォンスを諫めたのは、親友ではない。

 

「アスク王国王子! 喚きたてるな!」

 

フリーズが、ふらつきながらも地面に剣を刺し、それを軸に立ち上がろうとしている。

 

「フリーズ王子、時間は僕が稼ぐ! それくらいなら」

 

「思い上がるな!」

 

厳しい言葉だった。フリーズ王子に対して抱いていた印象からはとても想像できない怒声だった。

 

「お前に助けられることなど何もない! 己の弱さを噛みしめろ! 国を守れなかった今のお前のことなど、誰も頼りにしていない!」

 

「そんな……でも、だから行動を」

 

「思い上がるな。今は弱さに耐えろ。アスクを救う義務があるからこそ、たとえに何を失っても、何に裏切られようとも、今は生きろ!」

 

フィヨルムも今にも兄に加勢したいだろう。しかし、アルフォンスのために歯を食いしばって耐えている。

 

しかし、その声は届いていない。アルフォンスは既に狂い始めている。

 

「違う。特務機関の一員として、命を賭けても誰かを守るのが使命だ! エンブラの時のように、これ以上死人を増やさないために最善を尽くす。それが僕らの使命だ」

 

目をそむけたくなる醜悪。誰もが今のアルフォンスに感じてしまう後ろ向きな感情。

 

その瞬間、城から駆けてきたのは、先ほどルキナの隣にいた謎の男だった。一瞬で城とアルフォンスとの距離を詰めると、アルフォンスを殴った。

 

意識を奪う寸前の打撃。かなり素早く、フィヨルムもただ見ることしかできない。

 

その男はエクラに、

 

「すまないな。うるさいガキを黙らせた。連れていくのはお前に頼む、俺はナーガに話があるのでね」

 

ナーガはその謎の男を、

 

「ネームレス、どうしたのです」

 

と呼ぶ。エクラは初めてその男の名を知ることになる。

 

「なんで……」

 

アルフォンスの疑問に答えることなく、ネームレスと呼ばれる男は、ナーガの元に駆け寄った。

 

「エンブラの軍勢が後少しで到着する、俺が時間を稼ごう。転移の準備をしておけ」

 

「分かりました」

 

ネームレスは姿を消した。ナーガはそれを聞くと、

 

「エクラ、アルフォンス、フィヨルム。魔法であなた達を城の中へ飛ばします。転移の間、ひどい酩酊感が発生するかもしれませんが気を確かにしてください」

 

ナーガは魔法の準備を始める。

 

アルフォンスはそれを拒み、体全身が痛みで麻痺している中で、未だ動こうとするが、それをフィヨルムとエクラが2人で抱え上げ、

 

「アルフォンス様、行きましょう」

 

アルフォンスにとって非情ともとれる宣言をする。

 

そして心配そうに、否、もはや今生の別れを覚悟した目で、今にも倒れそうになりながらもマルテの使い手を睨む兄を見た。

 

「フリーズ兄様! どうか」

 

負けないで。それが言葉になることはない。




次回 22節 選択の結末(12)


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序章 22節 選択の結末(12)

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



しかし、言わずともその言葉は通じる。フリーズは最後に振り返ると、

 

「どうか、フィヨルム、そしてエクラ。君たちの旅が希望の絶えぬものになることを祈っている」

 

フリーズは、残った力をすべて解放する。

 

巨獣が咆哮をあげるのと同じくらいの轟音が、神器から響き渡る。

 

フリーズが立ち上がった。

 

それを見て、氷雪の力を秘める八神将が再び槍を構えた。槍からあふれ出る力は、竜との激突の際に世界の理を変革させたと伝説を残すもの。

 

しかし、臆することはない。

 

たとえ負けると分かっていても、今のフリーズに逃げるという選択肢はない。

 

転移の魔法には詠唱に時間がかかる。最後の希望が逃げる時間を稼ぐため、目の前の存在に挑みかかる。

 

ギョッルはその覚悟に応えるように、これまでにないほどの力を解放する。神将器、恐れるに足らないと言わんばかりにフリーズが必要とする魔力を解放する。

 

突撃するフリーズ。迎え撃つ八神将。

 

再び神将器マルテと神器ギョッルは激突する。今度は先ほどよりも激化した魔力のせめぎ合いが起こる。

 

押し勝ったのはフリーズだった。その威力をそのままマルテの使い手にぶつけ、八神将は勢いのまま後ろへ遠ざかっていく。

 

とんでもない衝撃をもろに受けてなお、全くダメージを追った様子のないマルテの使用者を目掛け、容赦のない追撃をしていく

 

少し距離を空けながら、空中に巨大な氷の円錐をいくつも創り出す。そして鋭利な矛として、神器でその円錐を撃ちだしていく。

 

巨大質量が襲い掛かってくる中でも、マルテの使い手は動じない。

 

打ち出された貫通力抜群の巨大な氷錘、その連続攻撃を、神将器の一振りで軽々と打ち砕いていく。

 

効果がない。それを見越したフリーズは剣に魔力を集中させ、氷の魔力を半月状に集中させた斬撃を放った。斬撃は形を保ちながら、勢い落ちることなく地面を両断しながら、八神将へと向かっていく。

 

しかし、それすらもマルテの放った魔力を伴う刺突をもって破壊される。

 

神器の力の激突により、その威力を物語る炸裂。その勢いのまま、空中へと跳躍する。

 

しかし、フリーズにすでに容赦はない。

 

空中にいる瞬間を狙って、空中に展開した氷の足場を伝いフリーズが一気に距離を詰め、剣でその敵を地面に叩き落す。

 

直撃。狙い通りに地面に墜落した八神将。しかし、すぐに体勢を立て直す。それにさらにフリーズは近接攻撃で追撃を試みる。

 

ギョッルによる2回の斬撃。全てが必殺となるよう、魔力を可能な限り乗せている。

 

それを受けとめ、弾き、槍による斬撃を見舞おうとするマルテの使い手。それを躱し再び怒涛の攻撃をするフリーズ。

 

当たっている。傷をつけている。しかし、すべてが必殺と宣言するに不足はないはずなのに、攻撃が通っている様子には見えない。

 

マルテに再び魔力が籠められる。マルテに秘められた力の解放の予兆である。

 

すべてを破壊する威力を秘めた魔光の激流が再び放たれた。狙いすました一撃は、フリーズを確実に捉えた。

 

ナーガの詠唱が終わり、転移の魔法が発動される。直後、アルフォンス、エクラ、フィヨルムは、外の様子が見える、飛空上のテラスへと瞬間移動した。

 

十階相当の高さにあるテラス、3人はすぐに、戦いが続く下を見る。

 

ナーガとその他2名を地面に置いたまま、城は飛び始める。今出せる最高のスピードをもって、天空へと急上昇する。それ故に、下をより広域的に見ることができるようになる。

 

封印の世界に伝わる伝説は真実だと、エクラもアルフォンスも認めざるを得なかった。水色と白色で輝く破壊の光が地面を迸り、地形を変形させているところを直視する。

 

エクラの戦略眼はフリーズを捉えた。

 

残り1割程度までHPが下がっている。すでに虫の息。次の攻撃をフリーズ王子は耐えることはできない。

 

しかし、それは本人が一番わかっているのだろうと思う。

 

飛空城が飛行を始めた。

 

そしてとどめを宣言する代わりに、神将器の使い手は槍を構えなおす。最後の一突きであることを示すように。

 

フリーズも己の限界を感じ、次の一撃に己が出力できるすべての力を込めた。

 

「神器解放」

 

それはリョウマを退けるに至ったフリーズの持つ最強の一撃。それをもって、痛手を与えることで、例え倒すことができなくとも撤退を狙う。

 

マルテの使い手はそれを阻止することは意図していないようで構えをそのままに、マルテは己の使用者の意志を汲み取り光り輝く。

 

「はああああ!」

 

今度はリョウマを倒した時の斬撃波ではない。ため込んだ魔力ごと、フィヨルムへと斬りかかる。狙いはその胴ただ一つ。地面を極限まで力を込めた足で蹴り飛ばし、一気にその距離を詰める。

 

振り下ろされるギョッルの斬撃は間違いなく、あのスルトすらも凌駕する力を秘めていると確信できる。

 

確かにその剣は直撃した。

 

――それがわざとだと気が付くのはその直後。

 

フリーズの全身全霊の一撃。それをマルテの使い手は、手で受け止めた。武器すらも使う必要はないという、圧倒的な力の差を示す。

 

その手で刃を握り、そして押し返す。渾身の力を押し返され、体勢を崩すフリーズに、マルテの使い手は神将器の最大出力を伴った一撃を放った。

 

放出される膨大な光の激流の中で、フリーズの体は白く染め上げられていく。

 

そして、天変地異の伝説が再現される。

 

地面を破壊しながら迸る破滅の輝き。飛空城が先ほどまでいた場所でそのエネルギーは蓄積され、暴発する。

 

そして、爆裂した魔力は変質する。

 

その場に、天を貫くほどの氷の塔が発生した。

 

 

 

絶句するしかない。

 

この場にいる誰もが言葉を発することができなかった。

 

「城は攻撃しないのかい? 逃げられてしまうよ」

 

獅子王の問いに、マルテの使い手は答える。

 

「でも……」

 

地上の話のはずなのに、エクラとアルフォンス、フィヨルムには確かにその声が聞こえる。

 

マルテの使い手は目を保護しているレンズを外す。そして素顔を上空に見せた。

 

「あそこにはお兄様とエクラさん、お友達のフィヨルムさんがいますから。むやみに攻撃をしては、危ないです」

 

「それにしては容赦なくフリーズ王子を殺したね」

 

「え……知り合い、ですか? あの人」

 

信じられないものを見た。

 

良い知らせと悪い知らせがある。まさしくその状況に出くわすことになった。

 

良い知らせは、シャロンが生きていたこと。

 

悪い知らせは――シャロンが敵になってしまったことだ。

 

シャロンは3人を見ると嬉しそうに手を振る。いつか見た光景を想起させる。

 

つい数日前まで平和だった頃にいつも見た光景。

 

「お兄さま、エクラさーん、フィヨルムさん! 今、私ロイさんのところでお世話になってます! 見ててくれましたか? 私とっても強くなりました! これでもう、足手まといじゃないです! 今度は私が、皆さんを助ける番です! あのエンブラ帝国から、皆さんを守ります! でも、なんで逃げるんですかー。降りてきてくださーい!」

 

前と同じように純粋な笑顔をしている。

 

しかし、それに笑顔で手を振り返す人は誰もいなかった。

 

アルフォンスは膝から崩れ落ちて何かが壊れた、エクラは、自身のせいだと自責の念を持ち、フィヨルムは未だその事実が受け止められなくて、何も返せなかった。

 

そして、少し離れた場所でまた、

 

「私のせいだ……」

 

と今にも涙を流そうとした少女もいた。

 




神器同士の激突。序章の山場でした。他に比べ少し長めになってしまいましたが、その分迫力を出したつもりです。いかがだったでしょうか?

次回 23節 アスク王国の軍師


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序章 23節 アスク王国の軍師

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



マルテの魔力によって生み出された氷の塔の最奥には、すでに息絶えたフリーズが肉体をそのままに封印されている。

 

ナーガはそれを一瞥して、祈りをささげた。

 

ロイは後ろからナーガに話かける。

 

「心変わりはいつでも受け入れる。僕たち『理想郷』の人間は来るものを拒みはしない。竜と共に生き、平和を愛することのできる善良な民を、人を何人でも受け入れよう」

 

それはすなわち、投降せよという暗喩だった。

 

「私は、私のために死んだ彼のために、必ずあなたたちを滅ぼします。炎の紋章に誓って」

 

ナーガはロイを睨み返した。

 

「そうか。君はまあ、そうだろう。けど、彼らはどうかな」

 

普段は慈悲に満ちた穏やかなナーガをもってして、

 

「この愚か者。彼らの家族を人質に取るとは」

 

心より憎しみに満ちた声を出させる者はそうはいないだろう。

 

「僕は自分の領地を守るためなら、どんな悪をも成す。それで民たちに断罪されるのならそれも受け入れる覚悟はある。全ては僕らが勝ち取った理想が正しいことを証明するため。子の所業が悪そのものだというのなら、僕は人類の悪となってでも、あの世界を滅ぼさせはしない」

 

「この国の民たち、そしてアルフォンスやエクラ、フィヨルムは私が守ります」

 

そう睨み返そうとする次の瞬間には、ロイも、そして新たなマルテの使い手となったシャロンも、その姿を消していた。

 

 

 

これは終末世界が如何に自分たちの想像を超えた相手であるか、アルフォンスやエクラがその身でわからされた瞬間だったと言える。

 

 

 

飛空上の1階から5階はやや狭いものの、避難民の居住スペースとして開放された。

 

飛空城には縮小的に再現したスペースもあり、食物もある程度保管されていたためしばらくは、暮らすことについては困らないだけの設備が存在する。

 

そして、6階以上が、今後のアルフォンス達の本拠地となる。一般の民は親友不可能、飛空城の機密事項、軍事物資、その他さまざまな叩くための設備が整っている。

 

「……1人にしてほしい。しばらくは誰も来ないでくれ」

 

自室に案内されると、アルフォンスは部屋に入ってしまい音沙汰がなくなってしまった。

 

すべて自分がアルフォンスをしっかり支えられなかったからだと、エクラは自分を責める。

 

何も守れなかった。何もできなかった。挙句の果てにアルフォンスをここまで追いつめて、シャロンを連れ去られた。

 

自分の無力に今にも泣きだしたかった。何もかも投げ出したかった。

 

「ふぇ……」

 

しかし、先に避難し、住民の避難誘導を手伝っていたフェーが、自分たちのもとに戻り、心配そうに見つめてくる姿を見て、エクラは、自虐は後だ、と自身を奮い立たせる。

 

止めっている時間はない。迷っている時間ももったいない。アルフォンスがダウンしている今、動くべきなのは自分だ。そう、自分に言い聞かせた。

 

エクラはフィヨルムに無理をいい、体を休める前に今後の方針を一緒に決めてほしいと打診する。

 

フィヨルムは、

 

「エクラさんは……お強いですね」

 

「ごめん、その、異界のお兄さんが」

 

「いえ、皮肉ではないです。それは誓って。エクラさんは今、アルフォンスさんの代わりをしようと今自分を懸命に鼓舞していらっしゃいます。私も見習わなければ。そう思ったのです。どうか、ご一緒させてください」

 

と、前向きな返答をした。それだけは、エクラにとっての救いだった。

 

7階の操舵室に連結する大広間。そこには大きな椅子が1つ用意されているものの、それ以外は何の違和感も覚えない。新しいところにきた感覚がないのは、恐らく、この場所がアスク王城のホームを再現しているものだからだと、エクラは思う。

 

「アルフォンスは?」

 

いつの間にか城に戻っていたナーガは、エクラに問う。エクラは答えることはできなかった。

 

「そうですか。無理もありませんね」

 

アルフォンスは心の整理がつくまでは、無理をさせてはいけない。それはこの場に集う、アスクの生き残り、そしてナーガの戦士たちの総意となっていた。

 

「ふん。無様な。弱い王族だよ」

 

ネームレスがアルフォンスを侮辱する。エクラはそれが許せなかったが、

 

「ネームレス!」

 

とナーガが忠告ととれる名呼びをし、

 

「失礼。失言のつもりはないが、もう少し場をわきまえるべきだったかな」

 

ネームレスが皮肉っぽく笑ってその場は収まる。しかし、エクラは、その男と友達にはなれそうにないと確信する。ルキナとなぜ仲がいいのかも納得できない。

 

ナーガはエクラに問う。

 

「ここまでよく頑張りました。しかし、体を休めないということは、すぐにでも行動を開始したいということですね?」

 

「はい」

 

返答するエクラに迷いはない。本当は今聞かなければならないことは他にもある、終末世界についてもっと詳しく聞きたいところだし、あのシャロンの変貌には何があったのかも知りたい。

 

しかし、いつものアルフォンスならそうはしない。自分たちがやるべきことを第一に考える。だからエクラもそうすることにした。

 

「自分の失態はできる限りのことをして取り戻します」

 

「良い心がけです。では、これからの方針を伝えましょう」

 




次回 終節 絶望に挑む希望の旅路へ


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序章 終節 絶望に挑む希望の旅路へ

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



ナーガは、七つの球体と思わし立体映像を映し出す、すごい、と素直に感心するレーヴァテイン。

 

「私の調査の結果、あなた達、至天の世界を終末へと引きずり込もうとする世界は7つ。先ほど申し上げた通り、各世界に直接乗り込み、その鎖に対処しなければなりません」

 

ナーガいくつかの球体の中に、さらなるものの映像を映し出す。どのような魔法を使っているのかが気になったが、エクラはその問いを飲み込んだ。

 

「今映し出されているのは?」

 

レーギャルンの質問にナーガは答えた。

 

「私の調査で判明している、鎖の役割を持つ目的の物体、もしくはそれに関連のあるものか人物を映し出しました」

 

1つの球体には、あの妖しい力を使うエフラムが映し出されている。さらにもう1つには封印の剣が映し出されている。そして、別のもう1つには、夜刀神が映し出されていた。

 

「もうしわけありませんが、それ以外は……現地で調査をしていただくほかありません」

 

しかし、大まかな方針が決まっても、エクラはそれだけでは情報不足のつもりだった。

 

「エクラ、聞きたいことがあったら聞いてよいのですよ?」

 

ナーガの誘いに乗り、徹底的に質問をぶつけていくことにする。

 

「まず、各世界に赴くとは言いますがどうやって?」

 

「そうですね。確かに、アスクのように門があればよかったのですが、ここにはさすがにそれを再現することはできませんでした」

 

「ではどうやって?」

 

「私の権能を使い、この飛空城ごと異界へと飛ばします。正しくは異界を通じる次元の裂け目を創ります。なので、エンブラの追撃も可能性として出てしまいますが、それしか方法がありません」

 

どうやって行くかは分かった。エクラが次に聞くのは、

 

「終末世界の英雄はとんでもない力を持っています。どうやって戦うのでしょう? 僕らが希望だと言いますが」

 

その質問に答えたのはナーガではなかった。この場にいるのにすごく違和感を持たずにはいられない、異界のルキナだ。

 

「大丈夫です。終末世界の英雄も無敵ではない。彼らは総じて、自分の世界にいると弱体化します。なぜそうなるのかは未だ分かっていないのですが……」

 

そこに付け加えるナーガ。

 

「しかし、例外が1つだけ。あの獅子王が統治する、封印烈火の世界のみ、そのルールの適応外になります。あなた方はいずれ、あのロイと戦わなければならなくなる。そして、シャロンとも」

 

しかし、エクラには今の段階で勝ち筋は見えない。

 

何より、先ほどの戦いは個と個の戦いである。それが今度軍と軍の戦いになればより恐ろしいことになる可能性が高い。

 

「それは、その世界に行くまでに僕らが強くならなければならないということ」

 

「察しが良いですねエクラ。今すぐ、あのロイを追いかけることはできないと判断で着ているようで何よりです」

 

「一応軍師ですから。自分の仕事はアルフォンスを勝たせるために頭を使うことなので」

 

「いい心がけです。ブレない心はやがて強い力につながるでしょう。あらゆる屈辱にも今は耐えなさい。必ず戦う方法は見つかります。私からはそれしか言えません」

 

エクラは頷く。ナーガは微笑み話をつづけた。

 

「次の行き先はもう決まっています」

 

「え」

 

「ごめんなさい。本来これはなた達アスクの戦い。本当はあなたやアルフォンスの意見を尊重すべきなのだけれど、今は選択肢が1つしかない」

 

「どれはどういうことですか?」

 

「他の世界に行くためには、次元の裂け目を通る必要がある。それは先ほど言いましたね?」

 

「はい」

 

「実は、他のどの世界に行くためにも、まずは、終末世界とあなた達の世界を結び付けている鎖の正体を掴まないと、別の世界へ進むことにきわめて大きな危険性がでてしまいます。次元の裂け目を飛ぶのは、船を飲み込むか飲み込まないかくらいの荒波がたっている海を船で渡るのと同じくらい危険なこと。最短距離で進む必要がある。そのためには、方位磁石のようなものが必要になるのだけれど」

 

「その方位磁石がないということですか?」

 

「ええ。場所は知っていても、実際に行くのにはまた別の障害がある。最短距離で行くためにはある程度の方角だけじゃなくて、きちんと最短経路を進む必要がある。幸い次元の跳躍は、最短経路が最も安定した道だから、そこさえ進めれば、次元流に飲み込まれて終わりということはなさそうなのです」

 

「その方位磁石をつくるには?」

 

「鎖のサンプルが必要になります。そのため、方位磁石無しで最短ルートを行ける唯一の世界。聖魔の世界を、まずは目指します。そこで、鎖となっている何かを、回収してきてほしいのです。それ以降はあなた方の意見を尊重致します」

 

エクラに拒否権はない。これは決定事項だ。

 

しかし不満はない。これで、アスク王国を救えるのなら、自分はなんだってやるつもりだとエクラは覚悟している。

 

「フィヨルム、覚悟はいい?」

 

「はい。至らぬ私ですが、アルフォンス様の気持ちに整理がつくまでは、どうかわたしをお頼りください」

 

「ありがとう」

 

エクラは、覚悟は決まった証として、ナーガに告げる。

 

「まだまだ知らないことはこれから順次聞いていきます。なので、これからよろしくお願いします。ナーガ様」

 

「ええ。アスクの危機を2度救った軍師エクラ。どうか私に力を貸してください」

 

その場に握手はない。

 

しかし、エクラはもうナーガを信用することにした。

 

そして覚悟する。どんなに痛いことにも、辛いことにも耐えて見せると。アンナ隊長の遺言、たとえ血反吐を吐いてでも、泥をすすってでも、生きて見せると。アスクに平和を取り戻すまで。

 

少なくともアルフォンスが立ち直るまでは、自分がその代わりを務めるのだと。

 

 

 

これから向かうのは、終わる運命が決定づけられた終末の世界。そこは、どこかで見たことがあるような、しかし決して明るみに出ない運命を背負った英雄たちが生きる世界。

 

これからアルフォンスとエクラは、その世界を駆けていく。

 

自分達の故郷を取り戻すため、そして大切な家族であるシャロンを取り戻すため。

 

ムスペルとの戦いとは比較にもならないほど壮絶な戦いの旅が始まる。

 




ここまでいかがだったでしょうか?
これがアビサルなんじゃないかと個人的には思っています。

本編ゲームの3部のPVを見る前に考えた話だったので、今見るとシャロンが悉くひどい目に遭ってばっかかも、とも思いましたが、仲間だった人間が敵になる展開はやってみたいと思ってたのです。……メインストーリーの3部と展開に被りがあったら笑って流して下さい。

また、ここまでは個人戦が多いイメージでしたが、今後は少しずつ戦闘参加人数の数を増やした戦いも考えていきます。FEっぽい戦闘にできる限り近づけていきたいと思うので、お楽しみに!

これから先、長い長い旅になりそうですが、どうかアルフォンス達の行く末を見守っていただけたらと思います!

by トザキ


ここまで書くのにすごい時間がかかった……。
しかし、何とか序章は終わらせられたので一安心です。戸崎君からは大筋のストーリーが渡されますが、細かい描写をすべて考えていると時間がたりないですね。ただでさえ、他の連載もあるので、どうしても時間がかかってしまいます。

ちなみに、幻想異聞録以外のFEをすべてプレイしているファンもどきの私も、ところどころストーリーの補強をしています。第1章は私が大筋を考えて、トザキ君がそれにさらにアイデアを加えまくったストーリーを組み上げています。

同時に、第1章の予告編も出しているので、そちらもぜひご覧になってください!

by femania


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第1章 intro announcement 聖魔反転大陸マギ・ヴァル「魔に堕ちた太陽」

予告編です。

いろいろと断片的に物語っているので、ストーリーをいろいろ予想しながら楽しんでほしいと思います。


第1章 予告 ~聖魔反転大陸マギ・ヴァル 「魔に堕ちた太陽」~

 

そこは戦乱の大地。ルネス王国の侵略によっておこる、人々の虐殺。そして魔物の氾濫。ルネス王国次期継承者が弱い国の破壊を望み、大陸全土にまき散らした戦火の焔。

 

 

 

『グラド帝国の皇子』

灰色の石造り、武骨ながらも堅牢で強い印象を人々に与えるその城の最奥。

そこで出会う。終末に抗う仲間に。

 

「予言の通り、たどり着いたんだね。ヴァイスブレイヴ」

 

「――ヴァイス・ブレイヴ。どれほどのものかと期待したけれど。この程度か」

 

「君たちはこの世界で死ぬ。弱者に情けをかけるほど、この国は甘くない。その余裕もないのだから。」

 

「皇帝は、強くあらねばならない。何があっても、民を守るために」

 

 

 

特務機関が最初に降り立ったその地は、すでに平和と呼べる場所はどこにもなく、人が悉く殺されていく地獄の世界。

 

 

 

『分かたれた兄妹』

ある夜のこと。

露草色の少女が親友に明かすのは、己の中の悲鳴だった。

 

「私は、ルネスの王女です。だから、裏切れない。裏切れないんです……」

 

告白する彼女に、親友の彼は語る。

 

「エイリーク。君は綺麗だ。その心の在り方が。だから、彼の近くで、それを汚してはいけない」

 

「でも……!」

 

「僕と一緒に来てほしい。たとえ誰が君にひどいことをしようとも。僕が、君を守るよ」

 

 

 

神々しく輝くべき太陽は黒く染まり、人の生きる希望を奪い去っていく。美しいものを穢れさせ、世界を絶望へと染め上げる。

 

 

『相容れぬ2人』

魔の瘴気が漂う森の中。

そこで相対するのはかつての親友。

 

「どうだ。リオン。俺は強くなった。賢くもなった。理想の王にあと少しで手が届く!」

 

そう宣う彼を憐れみの目で見る親友。

 

「いいや。エフラム。君はそのままでよかった。君は、強くなるべきじゃなかった」

 

 

 

在りし日の誓いを果たすため、道を違えた家族を正すため、片思いの相手の彼の暴虐をこれ以上見ないため、

 

 

『蛍石』

召喚士エクラは彼女に会う。

かつて正史世界のエフラムが決して忘れられないと言った、忠義の騎士に。

 

「リオン様は、かつての皇帝ヴィガルド様に似て強いお方だ」

 

「そうですね」

 

「だが、私にはそれが少し悲しい」

 

「え?」

 

「皇帝は強くあるべきだ。それは正しい。だが、ヴィガルド様と同じである必要はない。リオン様は父君と同じようにふるまっておられるが、私は、たとえどんなリオン様でもお仕えするつもりだった。リオン様は、元のままでも十分お強い方だったのだ」

 

 

 

聖なる使命を果たすため、『自分』の無念を晴らすため、生涯の宿敵を殺すため、

 

 

『石をかえしてください』

背中に翼をつけている少女。

見た目はまだ幼いその少女は目の前のルネスの将軍に乞う。

 

「お願いします。大切なものなんです」

 

「これですか?」

 

「おねがいします。なんでもしますから。石を返してください」

 

「……いま、なんでもとおっしゃいましたね?」

 

 

 

大陸最後の救世の地、グラド王国の皇帝と共に、マギ・ヴァル大陸を救い、炎の紋章を探索する、特務機関の最初の任務が始まる!

 




第1章へつながる幕間数回、5月中に投稿予定。

そして――6月初旬、ついに第1章開幕。

お楽しみに!


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幕間 少女の決意

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



次元跳躍中、外に出てはいけないという話を受け、少女は広い飛空城内を歩いていた。

 

飛空城、その構造はいったいどうなっているのか、子どもの頭で考えてもなかなか分からない。

 

飛空城の中には小さいながらも町がある。さすがにアスクの城下街には遠く及ばないものの、避難してきた人間が暮らすのには十分な大きさだった。

 

最初は困惑していた避難民も、数日も経てば、用意された町を活用しながら新たな生活を手探りで始めている。

 

「……あった」

 

少女はまだ子供だ。しかしそれほど子供ではない。だから、人にひどいことを言ってしまった後に後悔し、次に会った時、どうしようかと反省することができるほどには大人だ。

 

少女が来たのは武器屋だった。

 

自分ではどうにもできないかもしれない。それでも、ただ一人、大切な英雄を自分の手で殺してしまった償いをしたかった。たとえ、今からしようとしていることが無駄なかもしれなくても。

 

「ラフィネちゃん。どうしたの」

 

武器屋のおじさんとは、親を通じての知り合いだった。

 

彼女は、槍術を習いたいので、何か必要なものがあれば用意したいという旨を伝える。

 

15歳である彼女は、肉体的には十分に成長している。無理な運動も多少は許容するだろう。体を酷使する可能性のある行為を始めるには、今しかない。

 

槍術にしようとしたのは、シャロンに影響されたからだというのは、自覚していなかったが。

 

「ラフィネちゃん。危ないからやめなさい。それは男の学ぶものだ。君のような若い女の子はもっと、おしとやかな趣味を持つといい」

 

「そんなことない。シャロン様は、槍を持って立派に戦ってました! そんな風にとは言えないけれど、私だって、大事なものを守れるよう、学べることは学びたい!」

 

「ラフィネちゃん。槍術はそう甘くはない。きっと君では挫折する。いや、君だからではない、多くの人間が挫折する、厳しい世界だ。そんなものに輝かしい若い時代を奪われるのは、天国のお母さんだって望んでいないはずだ」

 

父はアスクの襲撃の際に死亡していて、母は病で二年前に他界した。幸い母の代わりに来た叔母は母と同じくらいにラフィネたちに愛を注いでくれる熱心な人で、叔母が来ても、困ったことはなかった。

 

しかし、アスクの襲撃の際に、叔母と妹とは離れ離れになってしまった。飛空城に来た時にも再会はできなかった。

 

まだ生きていると信じるほど、希望を持ってはいられない。アスクで起こったあの光景はただの虐殺だった。あの中で逃げ切れたなどと思っていない。

 

しかし、ラフィネはこうして救われた。まだ生きている。

 

いままで、神様に祈っても医者に祈っても母は助からず、アスクの兵隊を、他の世界の英雄を信じても裏切られた。だから、今は独りぼっちなのだ。

 

でも、あの人は違ったと、彼女は思っている。

 

アスク王国は信頼していない。故郷を守れなかった国をもう信じない。しかし、その中の王族、シャロンと、わざわざ助けに来てくれたエクラ。この二人は、信じていいと思った。

 

子供一人、見捨てていれば生きられたかもしれないのに、わざわざ助けに来たあの二人。アスク王国に生きる人々を助けるという意思が、シャロンからしっかりと伝わってきた。

 

彼女にとって、あの時のシャロンは間違いなく英雄だった。弱きものを守るために戦うヒーローだった。

 

そんな、英雄を自らの手で殺してしまったのだ。

 

あの時、我が儘を言って、逃げなければシャロンが追ってくることも、

 

もはや家族はいない、帰るべきところもない。ならば、せめて、自分が引き起こしてしまった犠牲への償いをしなければならない。

 

故に、彼女はすぐにではなくても、いつか、シャロンを取り戻す手伝いをしたいと決めた。アスク王国のために戦うのなんてお断りだったが、シャロンのためになら協力したいと思った。

 

そのために、まずは行動を起こそうと考えたのだ。いつか、シャロンを取り戻すために、飛空城の主が戦うときが来たら、必ず役に立てるように。

 

しかし、武器屋のおじさんは頑なに譲らない。

 

「ダメだ。そんな妄言を言う暇があったら、君はもっと世の中を学びなさい! 君はまだ子供だ! 君の仕事は、立派な大人になるために必要なことを身に着けることだ!」

 

「私のは、立派なじゃないっての?」

 

「当たり前だ。女の子は武器を持つべきじゃない!」

 

「何もすぐに戦いたいって言ってるわけじゃない! いつか役に立つかもしれないから勉強したいだけなのに!」

 

「君は守られる側だ! 兵士の真似事なんてする必要はない! できるわけないだろう!」

 

「おじさんの馬鹿! わからずや! 何もそんな言い方しなくてもいいじゃない!」

 

喧嘩はどんどんと苛烈になっていく。

 

その時、店に一人男が入ってきた。

 

「親父、鋼の剣を10くれ。……ん? 取り込み中だったか?」

 

「おお、ネームレスさん。いらっしゃい」

 

来たのは、アスクの王族を助けた謎の男であるネームレス。下には来ないものだと思っていたから、彼女はその来店に驚いた。

 

「聞いてくれよ、ネームレスさん。そこのお嬢ちゃんが、槍術を習いたいって。兄ちゃんからもなんか言ってくれよ」

 

「ん、彼女がか?」

 

何度かこの男が戦うところを、彼女は見たことがある。多彩な武器を使って敵を倒しつくしている姿は、間違いなくこの男が実力者だと言うことを示していた。

 

しかし、見た目の印象では、かなり性格が悪い人だという感想をぬぐえない。現に今も彼女を見つめるネームレスの目つきはあまり優しいものではない。

 

「いいんじゃないか?」

 

「え? 何を」

 

意外な言葉が返ってきた。

 

「若いときに無茶をさせると将来化けるやつもいる。最初から可能性を否定することが絶対の正義なら、俺と言う存在はここにいない。俺も昔は周りに比べてただのポンコツだった。剣の天才の王子、魔法の天才のすごい奴、そんな奴と隣で過ごしてきたからな。自分の才能のなさは痛感していた」

 

ネームレスは武器屋を見渡すと、青銅の槍を手に取り、店主に宣言をした。

 

「元々、今回の襲撃に嫌気がさして、自衛手段を学びたいと言い始めた若者も何人かいる。俺も次の世界についたら仕事だが、それまでは暇でな。ルキナと手合わせをする時間以外は、若者にいろいろと教えてやろうと思っていたところだ。その中で面倒を見よう」

 

「だが、彼女は女の子だ。できるわけが……」

 

ネームレスは急に不機嫌そうな顔になる。

 

「例えば、俺と行動を共にしているルキナは女性だ。彼女が弱いとでも? それとも彼女が男に見えたかな? 俺を馬鹿にするのは構わない。雑魚だからな。だが、あの高潔な王女の侮辱をしようと言うのなら、表に出てもらうことになる」

 

「な、なんだよ急に……」

 

「女性だから戦えないなどと、くだらん。アスク王国はそんな差別をするクソみたいな国なのか? ならばはっきり言っておこう。誰であっても、戦う術は身につけられる。戦い方が違うだけだ。結局、相手を殺せた方が勝ちなんだから」

 

ネームレスは青銅の槍を彼女に投げた。彼女は慌てて、その槍を掴む。

 

「お前、なんのために槍を学びたい」

 

ネームレスは彼女に問う。

 

急な質問に言葉が詰まったものの、彼女の心は既に決まっていた。それを不器用に、しかしありのままに言う。

 

「私、戦いたいです。シャロン様が死んだの、私のせいだから。その、すぐには役に立てないかもしれないけど。何かして、償いたいんです」

 

「……彼女が死んだのは君のせいではない。話を聞く限りでは、あの王女が選んだ道だった」

 

「でも」

 

「だが、君がそう思うのなら。俺はその願いを聞いてやろう。名は?」

 

「ラフィネです」

 

「ラフィネ。俺が教えられるすべてを教える。だが、長く辛い道になるぞ。何度も体が悲鳴を上げて死にたくなるかもしれない。それでもいいなら、俺がお前を鍛えてやる」

 

彼女はもう一度ネームレスを見る。

 

どこか嬉しそうな顔をしていた。その理由は彼女には分からなかったが、

 

「よろしくお願いします!」

 

目の前に来た救いの手に、縋ることに変わりはない。

 

ラフィネは迷わずその提案になるぐらいには本気だったのだ。

 

「よし、親父、その槍も追加だ」

 

ネームレスの今の顔は、戦いの時の厳しい目ではなく、どこか、父親のような、兄のような頼もしい表情に見えたのは、彼女の、ラフィネの気のせいだったのかもしれない。

 




次回 幕間 英雄召喚


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幕間2 英雄召喚

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「ふぇ……」

 

ぱたぱた。ぱたぱた。

 

その部屋の前を飛びながら心配そうな顔つきで、その伝書フクロウはその部屋を見つめる。

 

既にアルフォンスと会わなくなって一週間。

 

話を聞くと、エクラやフィヨルムもアルフォンスと1週間顔を合わせていないようで、部屋に引きこもったままだという。

 

これまでのアルフォンスのことを考えるとこれは決してあり得ないことだった。

 

「アルフォンスさん……」

 

フクロウは今日もその部屋の前で、アルフォンスが出てくるのを待ち続ける。

 

 

 

情けないのは分かっている。

 

本当はすぐにでも部屋を飛び出し、自分の故郷のために戦わなければならないことは自覚している。

 

しかし、アルフォンスは動けなかった。

 

ここを出るのが怖かった。

 

ここまでの旅路で自分ができたことは何だったか。特務機関として、人々を守るために自分ができたことは何だったか。アルフォンスは思い返す。

 

アンナ隊長を見殺しにした。

 

街の人間を避難させるために戦おうとしたものの、終末世界の英雄に歯が立たず、自分が情けなく逃げるしかなかった。

 

ある少女に言われた。アスク王国は他の国の英雄を頼ることでしか自分の国を守れない無能集団だと。

 

そもそも、英雄召喚という力に頼り切っていたからこそ、怒ってしまった悲劇なのかもしれない。つながってはいけない異界に接続した結果、あの恐ろしい敵が現れてしまったのではないか。

 

そして、シャロンとエクラを別行動させた結果、シャロンは敵の手におちた。そして今は敵となってしまった。あの時止めていれば、こんなことにはならなかった。シャロンは無事だったかもしれない。

 

醜い自分を自覚する。シャロンの件はエクラのせいだと、エクラが憎いと思ってしまった自分が本当に嫌になる。

 

そして、フリーズ王子に言われた。今の自分にできることは何もないと。

 

そう、何もない。

 

無力な自分にできることは何もなかった。

 

死ぬのを恐れているわけではない。しかし、その死が無為になるのが怖い。さらに、自分が出て死ぬだけならまだしも、自分のせいでむしろ状況を悪化させるのが怖い。

 

手が震えている。

 

アルフォンスは、情けない今の自分を、弱気になっている今の自分を誰にも見られたくなかった。

 

「……く……」

 

歯を食いしばっても、部屋から出る勇気は湧かなかった。

 

 

 

「まもなく、聖魔の世界につきます」

 

ナーガの座する飛空城の管理室。そこにエクラは来ていた。他の人間はいない。もうすぐ来る出撃の準備で駆け回っている。

 

「緊張、しますね」

 

「アルフォンスは?」

 

「……今回は無理だと思います。毎度持って行っている食事には手をつけているようですけど。話すこともままなりません」

 

「精神異常を起こす攻撃でも受けてしまったのでしょうか……そろそろ立ち直っていただきたいのですが・……」

 

「……もう少し様子を見させてください。ナーガ様。アルフォンスにとっても故郷を失うのは初めてのことです。きっと私の何十倍もショックを受けている」

 

「……優しいのですね。エクラ」

 

「いいえ。さすがに不甲斐なかったら言います。けど、今は信じます。アルフォンスは気持ちの整理をつけているだけだって」

 

「そうですか……」

 

 ナーガは聖魔の世界の大陸地図を出した。

 

「広い……」

 

「かつて、聖魔の世界に行ったことは?」

 

「あります。けど、大陸を旅したことはまだ」

 

「そうですか」

 

 ナーガはそれを聞くと、聖魔の世界について語り始める。

 

「古来より、聖魔の世界には魔物が存在します」

 

「魔物?」

 

 エクラが思い浮かべるのは、昔、ファンタジー系のゲームで敵ユニットとして出て来た異形の存在。

 

 そしてその想像は、あながち間違いではなかった。

 

「ええ。この地には魔王という悪が存在し、勇王エフラムが率いた連合軍がそれを討伐した。それが正史世界に伝わる、聖魔の光石の伝説」

 

 エクラもそれは断片的に聞いている。エフラムやエイリーク、ターナ、ヒーニアスといった当事者から、当時の話をしてもらったことがあった。全員が過酷な戦いだったと言っていたのも覚えている。

 

 ナーガは大陸の中央から順番に、国々を指さす。

 

 大陸中央に存在する、ルネス王国。地図上ではその左上に存在するフレリア王国。ルネスの右側に広がる砂漠のグラド王国。その上に存在するロストン聖教国。そして大陸の下半分を支配するグラド王国。

 

「これから向かうのは聖魔の世界ですが、それでも終末世界です。そもそも先ほど挙げた5つの国が存在するかどうかもわかりません」

 

 そこで思い出すのが、終末世界から来たと思われるエフラムのことを思い出す。

 

 正史世界の彼とは全く違う、残虐が形になったような男だった。アンナ隊長の仇でもある。

 

 終末世界では、何もかが未知数だ。

 

 エクラは飛空城やナーガの話を聞きながら、終末世界について、少し予習をしていた。

 

 異界と言うのは数多い。平行世界と言うにはすこし表現が違う。平行世界は自分達のイフが形になった世界のことだが、異界は、イフでできた世界ではない全くの違う世界のことだ。

 

 しかし、似ている世界はある。存在する人間は同じなものの、辿った歴史が異なる世界もある。それはアスク王国でも見受けられた。

 

 例えば、カタリナという英雄を重複召喚して二人呼び出したことがあったが、一人は明るく、マルスやシーダと仲良くしていたのに対し、もう一人は、少し影があり、マルスとは距離を取っていた。

 

 話を聞くと、辿った歴史が違うことが分かる。一人目は、最終的にマルス率いる連合軍の一人である、クリスという英雄に、命を救われたのに対し、もう一人のカタリナは、一度裏切りで分かれた後、二度とその世界のクリスに会うことはなかったという。

 

 正史世界の異界であっても、見た目が同じ人間で辿った歴史が大きく違う。

 

 それが終末世界ともなれば、自分たちが知っている英雄とは全く違うと考えたほうがいい。

 

 そして、ここからはエクラの予想になるが、終末世界とわざわざ断定されたということは、人の違いだけでなく、正史世界との何かさらなる大きな違いがあるのではないかと思っている。ナーガの言うように国が存在するという保証もないのだ。

 

「今分かっているのは、あのエフラムが敵だと言うこと」

 

 エクラの言葉に、ナーガは頷く。

 

「そうですね。おそらくあの世界に姿を現したというエフラムが、これから向かう聖魔の終末世界でも敵として立ちはだかるでしょう」

 

「そういえば、飛空城は聖魔の世界にどのように到着するのでしょう?」

 

 ふとエクラは、そんな問いをナーガに投げかける。

 

 これから聖魔の世界へと向かうという前提で、話をしていたが、そもそも到着の際に何か影響があるのではないかと、ふと心配になったのだ。

 

 それに対してナーガは落ち着いて答えを返す。

 

「飛空城は、その世界の空に到着可能です。その世界についたら、私の力で、地上まで飛ばします」

 

「つまり、飛空城が襲われる可能性はないと?」

 

「相手が対空手段や空を飛ぶ存在がいれば別ですが、あなた方が避難民を心配する必要はありません。あなた方は、ファイアーエムブレムの探索に集中してもらえるよう、私も配慮します」

 

「なるほど、それはありがたいです」

 

 すると、ナーガはエクラの腰に手を伸ばす。腰につけたブレイザブリクを取り出し、手に持った。

 

「そうだ、あなたと二人で話をする機会ですから、この神器についても少し注意をしておきましょう」

 

「注意?」

 

「アスク王国は特殊な環境なので、同じ英雄が二人いるということがありましたが、これから向かう異界では、召喚に制限があります」

 

「その……でも、そもそも召喚ができないんですけれど……」

 

「召喚の是非については私が何とかしてみましょう。アスク王国では、黒幕の影響力が強かったですが、距離的に離れた今なら、私の力も少しは効くかもしれません」

 

「本当ですか?」

 

「しかし、これから向かう異界で呼び出せるのは、その世界と縁の深い英雄のみしか召喚できません。そして、同じ人間は二人以上その世界に存在できない。これは異界での召喚における絶対のルールです」

 

 これから向かう聖魔の世界では、召喚できるのは聖魔の世界の英雄として認識されている英雄のみ。そして、今から向かう世界に例えばエイリークがいる場合、異界のエイリークを神器によって召喚はできないということだ。

 

 ナーガは何か呪文を唱え、神器に魔力を注いでいる。

 

 少し時間がかかるのだろう。しかし、もし召喚ができるとしたら、それはとても心強い味方となるので、ここは心して待つことにした。

 

「ふぇー」

 

 馴染み深い白いフクロウが飛んできた。

 

「フェー、アルフォンスは?」

 

 フェーにアルフォンスの様子を見守ってもらえるよう、エクラは先ほど頼んでいたため、その結果を聞き取る。

 

「どうだった?」

 

「アルフォンスさん、今日もお元気がないようですぅ……」

 

「そうか……」

 

「うう、アルフォンスさん。わたくし、本当に心配です」

 

「ごめんね、フェー」

 

「いえいえ、だめですよ。エクラさんは悪くありません。どうか、落ち込まないでください」

 

 今はこんなフェーの言葉でも、エクラはとても元気が出る。

 

 その時、神器が光った。

 

「……これは?」

 

「どうしたんですか? ナーガ様」

 

「ふふ、そこのフェーが来たら急に神器に術の入りが良くなりました。不思議ですね」

 

 そう言いながら、神器をエクラに返す。

 

「さて、これで召喚も可能になりました。呼び出せるのは聖魔の世界の英雄です」

 

「これで……」

 

 緊張の面持ちで神器を見るエクラ。

 

 今の気持ちは、初めてアスク王国に導かれ、神器を渡されたときの気持ちに似ているかもしれない。

 

 本当に召喚できるのか?

 

 ただ一つそれだけが不安だった。

 

 しかし、それは考えても仕方のないことだと自分に言い聞かせる。

 

 自分には戦う術はない。できるのは味方のサポートと英雄の召喚だけ。ならば、せめて自分に与えられた役割から逃げ出してはいけない。

 

 エクラはそう思い、ナーガの部屋を後にする。

 

 召喚は可能な限り広いところで。飛空城で最初に終末世界についての説明を受けた広間へと赴いた。

 

 今は誰もいないその地で、最初の味方を呼び出す。

 

 遅れてフェーとナーガがその地にやってきたものの、エクラは意に介さない。

 

 祈るようにして、神器の引き金を引いた。

 

 何かが違う。今までのように無反応ではなく、これはアスク王国にいた時に英雄を召喚する瞬間に確かに似ている。

 

 神器が、光り輝いた!

 

 ――目を開ける。

 

 目の前には3人の英雄が立っていた。召喚は成功したのだ。

 

「素晴らしいです。エクラ」

 

 神器によって呼び出されるのは、召喚したことのある英雄たち。何らかの影響でアスクから消えていた英雄たち。

 

「よお、なんか久しぶりだな。召喚士。再会を祝して、どうだ、ここはひとつ賭けでもしないか?」

 

 ジャハナ王国王子、ヨシュア。

 

「……久しぶり」

 

 女剣士、マリカ。

 

「お久しぶりです。もう一度あえて嬉しいです」

 

 竜人の少女、ミルラ。

 

 戦力としては申し分ない3人だと言える。

 

 最初にエクラが英雄たちを見た時に、つい涙をこぼしてしまいそうになる。その強さ、頼りになる圧倒的オーラ、やはり英雄は偉大だと感じる瞬間だった。

 

「おいおい、どうした、そんな辛気臭い顔をして?」

 

 ヨシュアに言われ、無意識にこぼれていた涙をエクラはふき取った。

 

「皆さん。力を貸してください」

 

 エクラは真摯に、英雄たちにその言葉を言う。そして、英雄たちも何かエクラの危機を察したのか、それを拒んだ者はいなかった。

 

「またよろしくな、エクラ」

 

 ヨシュアの言葉を聞きエクラは一安心する。

 

 しかし、一方で、ここでこの3人を呼び出せたと言うことは、終末の聖魔の世界では、この3人は既に死んでいるということになる。何もかもを喜べる状況ではなかった。

 

 それでも、今はこの召喚に、エクラは感謝する。

 

 癖で、英雄たちのステータスを見た。エクラにしか見えない数値化された英雄たちの強さを。

 

「……すごい」

 

 ナーガの力か。それとも聖魔の世界に近い領域で召喚したからか、その強さは、本来は存在しないレベル50相当と言っていい。

 

 そして、それぞれが見たことのないスキルや奥義を持っているのも、それが影響しているのか。

 

 なんにせよ、これで戦いの準備は整ったと言っていい。

 

「そろそろ、聖魔の世界につきます。皆さんを集めましょうか」

 

「はい」

 

 




 ヨシュア アウドムラの継承者
 奥義発動時、自身の魔防の5倍の数値をダメージに加算する。
 マリカ シャムシール・レディ
 偶数ターン時に相手へ与えるダメージが元々の計算値の3倍になる。
 ミルラ 神竜の加護
 味方が受ける飛行特攻が無効になる。自身に【遠距離反撃】を付与。

みたいなものを一応考えてはいました。どんなふうに本編に反映させるかは、実際に執筆を始めてみないと分からないです。


今回で幕間は終了です。次回以降の幕間は少し長くなると思いますが、今回は、いち早くストーリーをすすめて、この先この連載がどんな感じで進むのかを把握してもらいたいと考えています。

次回 聖魔反転大陸 マギ・ヴァル 開幕です!


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第1章 聖魔反転大陸マギ・ヴァル 1章 1節 『聖魔反転大陸』-1 

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

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その剣は己が名前。その名を与えられた自分は、帝国の剣として在ればいい。

 

そう思っていた過去を今は否定する。

 

己は剣だ。それに変わりはない。しかし今は自分の守りたいものを守る剣だと思っている。

 

「姉上」

 

目の前の美しい姉。レーギャルンをレーヴァテインは誇りに思っている。自分と違い己の正義と信念を持つ姉を尊敬している。

 

「出撃の準備ができたそうね、レーヴァテイン。準備はいい?」

 

「はい。姉上。私が、守るから」

 

「ふふ、頼りにしているわ。これから先にいるのは、何があるかもわからない世界なのだから、自分を守るのも大切なのだから」

 

「はい。姉上」

 

それぞれが武器を持って、集合場所へと赴く。

 

 

 

途中でスリーズと出会う。彼女は今回、飛空城の守護を担当するため留守番になっている。ナーガからの直々の命令で反論の余地はなく、フィヨルムと行動を共にできないのを残念そうにしていたのは記憶に新しい。

 

「あら、レーギャルン様」

 

「様づけは止してください。スリーズ王女。ここでは共に戦う身ですので」

 

「そうですか? では次から気を付けますね。レーギャルンさん、レーヴァテインさん。いよいよ出撃ですね。私はここから無事を祈っております」

 

「はい。スリーズ王女、どうか城と、その」

 

「ええ、アルフォンス王子のこともお任せください」

 

「……本当は、アスクの役目だとは思うのですけれど……」

 

「エクラさんはすごく忙しそうですからね。出撃の準備だと言って、いろいろと道具を用意して、薬を調合したり、英雄さんといろいろ話し合ったりと忙しそうで」

 

「ええ。少しは任せてほしいのですけれど、自分にできることは自分でするから、私たちには訓練に集中してほしいと強めに言われてはね。まったく、おかしな男です」

 

「姉上、エクラ、言うこと聞かせる?」

 

「いいのよ。彼には召喚士として、私たちの知らない苦労があるのでしょう。これまであの人とは共に戦ったことはないから、今はお手並み拝見としましょう」

 

 

 

 

実はたまたま、王女たちが会話している近くをエクラが通っていた。3人が仲睦まじく話し合うところ遠くから目撃し、エクラは少し感動を覚える。かつての戦いでは決してあり得なかった光景だからだ。

 

今思えばアスク王国での特務機関本部でも、異なる世界の英雄たちが親睦を深めていた。それは当たり前ではなく、素晴らしい奇跡だったのだろうと思い出す。

 

いつ必ず、それを取り戻す。

 

エクラはそう誓い、一足早く集合場所の、飛空城上層部にある広間へと赴く。

 

アルフォンスは今回出撃できない。やはり、そう簡単に気持ちの整理はつかなかったようだ。

 

一度だけ部屋を出て、剣を振っていたところを見たことがあったが、エクラを見た瞬間、

 

「ごめん」

 

とだけ言ってその場を去ってしまった。

 

嫌われたかと思って本当にショックだったことを覚えている。

 

しかし、自分のことなど今はどうでもいい。いち早く、アルフォンスには立ち直ってもらいたい。そうしなければシャロンを救うことは絶望的だと思っている。

 

「今は自分が頑張らないとね」

 

 

 

ルキナは新たに召喚された英雄に挨拶をしていた。その様子を感慨深く、ネームレスが見守っている。見ると少し汗をかいていた。おそらく、最近できた弟子の訓練を今日も行ってきたのだろう。

 

ナーガはエクラの到着と共に、席から立ちあがる。

 

エクラが見ると、先ほど遠くに見たはずのレーギャルンとレーヴァテインが先についていることが判明。

 

(なんで……?)

 

遠回りをしたつもりはないのだが、やはり飛空城の中の移動になれていない分遅いのだろうと思う。

 

そして周りを見る限り、自分が最後の到着であることが判明する。

 

「遅れてごめんなさい」

 

部屋全体に聞こえるよう、エクラは叫ぶ。ナーガは少し微笑み、

 

「構いませんよ、それの準備をしていたのでしょう?」

 

と、遺憾を示すことはなかった。

 

エクラのポーチには、様々なアイテムが入っている。アスク王国の脱出にも使っていたアイテムだが、これから先でもそれなりに使うだろうと思う。

 

そして、

 

「エクラ、先ほど私が渡したものを持っていますか?」

 

「光の加護ですね?」

 

「はい。3つお渡ししました。これで瀕死のダメージを負っても私の魔力で体を全快させます。さらに少しであれば力を授けることもできるでしょう。これを、これから地上に送る3チームに1つずつ渡します。その組み分けはあなたにお願いしますね」

 

飛空城を着陸させるのではなく、ナーガの転移魔法により、聖魔の世界へと着陸する算段になっている。

 

しかし、転移はおおよその場所を決められるものの、精密さには欠けるそうで、もしかすると敵陣の中に転移と言うことも考えられるらしい。

 

まとまって動いた結果、最悪の転移位置でそのまま全滅、ではさすがに笑えないので、ナーガと相談した結果、世界の探索は3チームに分かれて、相互間の連絡役をフェーが行うことになった。

 

危ない世界の上空をフェーが飛ぶのに、エクラは反対したものの、

 

「ワタクシもアスクの伝書フクロウです。お役に立てるところお役に立ちます!」

 

本人ならぬ、本フクロウの強い希望もあり、そのような役割をしてもらうことになった。

 

チームの組み分けは既にエクラが考えている。

 

1チーム レーギャルン フィヨルム ヨシュア エクラ

 

2チーム ネームレス ミルラ 

 

3チーム ルキナ レーヴァテイン マリカ

 

この3チームで動くことに決め、この場で組み分けを発表する。

 

2チームだけ戦力が貧弱という話が出ないわけがない。

 

しかし、当のネームレス本人は満足のようで、

 

「むしろそれの方がやりやすい。軍師の名は伊達ではないようだ。感謝する」

 

とお礼を言われたほどだった。エクラは反応に困ってしまったが、嫌な思いをしていないのならよいと考えることにした。

 

「姉上、一緒じゃない」

 

「まあ、仕方ないわ。ルキナ王女と共に頑張って」

 

「姉上がそう言うなら」

 

多少は文句も出るのは覚悟の上だ。エクラは、それぞれのリーダーである、ネームレスとルキナに光の加護を1つずつ渡す。

 

彼らがリーダーなのは当然、この中で、もっとも頼りになる戦力だからだ。

 

ナーガの加護か何かがあるのかと疑いたくなるほどの能力だった。観察眼で能力を見ていたが、レベルで言えば、70相当はある。アスク王国で見た戦いぶりも納得である。

 

「よろしく頼むわね」

 

「エクラさん。よろしくお願いします」

 

「召喚士。俺を選ぶとは物好きだね。まあ、嫌ってわけじゃないが」

 

 同じチームになった3人に、

 

「これから、よろしく」

 

 エクラは挨拶を済ませる。他のチームも同様に、少しの挨拶を済ませた後、ナーガは話をはじめる。

 

「皆さん。先日の戦いからまだ1週間程度しか経っていませんが、第1の終末世界に到着致しました。ここに覚悟をもって集まってくれたことへ、まずは最上の感謝を。そして皆さんには、終末世界を旅し、その世界と、かのアスク王国を繋ぐ鎖の役割を果たしているものを探してきていただきます」

 

 そう。終末世界と戦うことが目的ではない。優先すべきはアスク王国を救うこと。そのために可能な限りの戦いは避けて通るべきだ。

 

「エクラ、あなたのその召喚器を使えば、召喚した英雄であれば呼び寄せることができます。他のチームにいる英雄も呼び出せます。しかし、送り返すことはできません。それだけは注意を」

 

「はい」

 

「そして、その他の皆さん。終末世界では何が起こっても不思議はありません。どうかくれぐれも気を付けて」

 

 それに反論する者はいない。

 

 いよいよ始まろうとする終末世界の旅。エクラもフィヨルムも不安が募るが、アルフォンスがいない分まで頑張ろうという気だけはしっかりと持っている。

 

必ずアスク王国を救う。その信念はこの場の誰にも負けないつもりだ。

 

「では、皆さん。どうか、『鎖』を見つけてください。アスク王国を取り戻すために。私に力を貸してください」

 

ナーガは一礼をした後、

 

「では転移します!」

 

ナーガは呪文を唱え始める。

 

体が浮遊し始めた。




ようやく始まる第1章

第1章は18節までを目標としています。
今日からは勢いよく投稿する予定なので、一緒に物語を追っていただけれると幸いです。

早速明日も投稿する予定なので、お楽しみに。

by femania

いよいよ始まった第1章。

この話がいいものになるかを問う勝負の物語になるので、今後も何度もシナリオを考えながら、何とか頑張っていきたいと思います。

by トザキ


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1章 1節 『聖魔反転大陸』-2

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



思い出す。

 

もう何年前の話だろうか。もはや、この時にはもう戻れないというのに、その光景を見る。

 

「……やっぱり、僕には武術は向かないみたいだ」

 

「何。お前には聡明な知識と、魔道がある」

 

訓練なのに笑い合う2人」

 

「でも、僕ももっと強くなりたいよ、エフラムみたいに」

 

「誰であっても弱みは存在するものさ。俺だって、勉学はまだまだだし、魔道についてもからっきしだ」

 

「エフラムはすぐに寝ちゃうじゃないか」

 

「ははは、まあ気にするな。俺にも向いてないものもある。だから、お前もそう気にするな。俺達は友だ。だから助け合っていけばいい。たとえ、国は違えど、俺たちは助け合える」

 

「……そうだね。君の言う通りだ」

 

そんな笑い合う二人を見るだけで私は嬉しかった。

 

マギ・ヴァルの平和。二人の王子が笑い語り合う姿を見て将来は平和だと確信した。

 

「エイリーク」

 

「兄上、リオン。もう夕刻です。部屋に戻りましょう」

 

「そうだな」

 

「夜は、先生がお戻りになられるとのことです」

 

「何……まさか、また勉強か?」

 

「兄上。我々は遊びに来てるわけではないのですよ。グラドのご厚意で、帝国についての見聞を広めるために来ているのですから、歴史を学ぶことも肝要です!」

 

「また正論を……もう俺は眠いぞ……」

 

「ダメです!」

 

「分かった、そう怒るな……はぁ」

 

 兄はいち早く、部屋へとのろのろ歩き始める。

 

「リオン。ごめんなさい。兄上のだらしないところばかりを見せて。どうか、父君の方には」

 

「もちろんだよ、最も、父上もエフラムのことはよく知ってる。怒ったりはしないと思うのだけど、一応ね」

 

「ありがとう。じゃあ、行きましょうか」

 

「……うん。行こう」

 

在りし日の話、グラド帝国で兄と親友のリオンと一緒に過ごした日々。とても楽しかった。

 

 

 

しかし今はどうだ。

 

「いたぞやれ!」

 

「俺の母さんの仇!」

 

「裏切者のルネスを殺せ!」

 

恨みを向けられている。

 

あれだけ友好だったグラド帝国から。

 

「どうかここでお待ちを。私が討伐します」

 

ゼトが何かを言っているが、私はそれを無視し馬を走らせる。

 

「おやめください!」

 

既に平和だった過去はなく。ルネス王国はすべての王国の敵となった。

 

父は発狂した。理由は分からないが、突如、あらゆる国を滅ぼすと宣言したのだ。全ては恒久の平和のためにと。

 

嘘だと信じたかった。しかし、その命令で豹変した兄は、ルネスの双聖器を父から与えられ、その力で隣国のジャハナを滅ぼした。何の躊躇もなく、歯向かうものを悉く殺しながら。

 

私は何度も尋ねた。いったい、何がこの戦乱を巻き起こす原因となったのかと。

 

しかし、兄も父も、ただ後になれば分かると教えてはくれない。

 

私に命じたのは、とにかく残党を殺すこと。

 

もう1つの双聖器、ジークリンデ、その神器に宿る力を身に宿し、敵を殺しつくすこと

 

「あ、あああああ!」

 

私は、私が怖い。

 

こんなこと、本当はやりたくないのに、だんだんとそれに慣れてきている自分が。

 

「やめ、ぎゃsjばすあ」

 

私は、国が怖い。

 

豹変し、人の死にためらいがなくなり始めている故郷と、そこに住まう騎士たちが。

 

「ひいぃいい! あああ!」

 

私は、兄が怖い。

 

見せるようになった、人のものとは思えない冷たい笑顔が。

 

本当はこんなこといけないと分かっている。何度だって逃げたいと思ったし、何度だって反逆しようと思った。

 

しかし、私はルネスの王女だ。国を裏切ることなど許されない。周りが許してくれない。

 

ゼトの助言で顔を隠していても、私の罪が消えるわけじゃない。相手はきっと知らないのだろう。刃を向けている相手がルネスの王女であることを。

 

そして、一番恨まなければいけない相手によって、殺されていくという事実を。

 

戦いは始まってしまった。いつかは、ターナやヒーニアス王子に刃を向けることだってあり得る。その日はもうすぐそこまで来ている気がする。

 

親友にすら手を出してしまったらもう戻れないだろう。

 

私は人ではなくなる。良心など欠片も残らなくなる。そのなれば、ルネスの双聖器をただ人殺しのために使う、罪深い王女として永遠に名を刻むことになるだろう。

 

ああ。リオン。どうか私を見つけたら、私を殺して……醜くなった私を見ないで。

 

 

 

また、その剣を振り下ろす。目の前に現れた武器を持つ敵に向かって。

 

防がれた。

 

それは初めての経験だった。

 

 

ジークリンデは双聖器。並みの武器では、たとえ鋼の剣でも斬り裂いてしまう。

 

しかし、相手はそれを防いで見せたのだ。

 

「なんなのです! いきなり!」

 

目の前には氷の槍をもつ、一人の少女が立っていた。

 




1章 1節 『聖魔反転大陸』-3

明日投稿


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1章 1節 『聖魔反転大陸』-3

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



ナーガの転移は無事に終わった。

 

エクラたちが最初に向かうのはルネス王国だった。

 

一番戦力的に貧弱なエクラとフィヨルムのいるチームが、ルネスにいるなど本来は言語道断だが、エクラは他のチームの召喚英雄を呼び出すことができる。その上、オーブを装填すれば、また戦力を増強できるのもエクラの強みだ。

 

故に、緊急時には最も戦力を集められるエクラたちがルネス王国へと赴いたのだ。

 

しかし、これで呼び出せるということは、逆に言えば、終末世界で、同じ名前と見た目をした存在は死んでしまっているということ。

 

ヨシュアにその話をしたとき、

 

「それは興味深いな……俺はなぜ死んだのか。いい賭けの話題になりそうだ」

 

と、常人ではたどり着けない思考回路による返答が返ってきたのをよく覚えている。しかし、あまりいい顔はしていなかったのは確かだ。

 

もちろんルネスの城へとそのまま突撃をするのではない。しかし、アスク王国を襲撃したエフラムのいるルネスを調べれば、この終末世界がどのような世界なのかがいろいろとつかめるのではないかと考えたのだ。

 

よって城下街ではなく、郊外の町に飛ばすようにナーガに頼んでいたのだ。

 

 

 

ルネスとフレリアの国境付近に存在する町。望んだとおりの転移に成功した。

 

成功したのだが、目の前に剣を持った兵士が何人もいることで、現状を理解する。

 

「おいおい、運がねえな……」

 

ヨシュアにその言われようなのも仕方がない。

 

現在、この街は戦場と化していた。すでに血が飛び散った跡がそこら中に存在し、多くの金属がぶつかる音が響き渡る。

 

その場で戦っている人間には奇妙に映ったことだろう。

 

好きで入ってくるはずのない戦場に、急遽、装いもおかしな人間たちが現れたのだから。

 

エクラたちは、すでに一つの軍の戦士10人以上に囲まれている。まだ向こうは警戒からか手を出してこない者の、このままでは、殺されるか捕虜になるかしかない状況だ。

 

「まずいですね……全員が殺意を持ってこちらを」

 

向けられる恐ろしい視線にエクラは怯みながら神器を構える。もちろん戦うわけではないが、『奥義の刃』をセットし、味方の援護がすぐできるようにした。

 

そして、残りの3人はそれぞれ剣を構える。

 

「……ん? 馬鹿な……なぜ」

 

「あり得ない。ヨシュア様は遠征で命を落としたと、エフラム様は仰せになったはず」

 

ヨシュアをみた兵士数名がそんなことを呟き驚きの声をあげる。

 

エクラはそれを聞き逃さなかった。

 

(今の話……、やっぱり終末世界のヨシュアは死んでいる)

 

この前の出来事を思い出す。シャロンと一緒に少女を助けにいったとき、終末世界のヨシュアを自分は会っていた。そのヨシュアが死んだから、この場に味方で正史世界のヨシュアを呼び出すことができたのか。

 

「奴は偽物だ。エフラム様の言うことは絶対。不敬な偽物は殺せ!」

 

相手方の判断は、まさかの偽物扱い。本人は、ため息をついたものの、そこはさすが凄腕の傭兵。気持ちの切り替えは速く、アウドムラを構える。

 

殺せ。その命令と共に兵士が武器を構える。

 

「エクラ、和解は無理そうね」

 

レーギャルンの言葉で意を決し、エクラたちも武器を手に臨戦態勢をとった。

 

双方睨み合う。どちらかに動きがあればそれが開戦の合図だ。

 

そして、その合図はすぐに訪れた。頭をローブで多い、目を仮面で格隠した兵が一人突出して、襲い掛かってくる。狙いはフィヨルムだった。

 

見ると、その剣には血が滴っている。この場で多くの敵を殺してきた者であるのは間違いない。

 

迷いなく振り下ろされる一閃。

 

それをフィヨルムは、神器レイプトで受け止めた。

 

「なんなのです! いきなり!」

 

そして、押し込まれる剣を押し返し、フィヨルムは距離を取って、武器を構える。

 

「私たちは旅の者です。相手の素性も探らず急に襲い掛かられては、こちらも身を守るために必要な手段を取ります。どうか武器を収め、一度話を」

 

フィヨルムに襲い掛かったローブの剣士は、兵士が使っているものとは違う高位の武器のように見受けられるものを持っている。

 

剣士は何か思うところがあったのか、フィヨルムを見てしばらく黙り込んだが、すぐに再び剣を構え、襲い掛かってくる。

 

「ルネス軍の皆さん。エフラム様は、この街にいる武器を持つ者を皆殺しにせよという命令を下しました。それはどのような立場であっても関係なくです。さあ、目の前の敵を殺しなさい!」

 

周りに指示をしているのを見て、非常に立場の高い人間であることが伺える。

 

(あの剣……どこかで……)

 

エクラはそれに気づき、そのフードの人間を観察眼で視ようとした。

 

しかし、その余裕はなくなる。

 

今の号令で警戒状態だった兵士が一気に士気を高め、エクラたちに突撃してくる。

 

エクラはフードの兵士を視るのを諦め、味方の3人に『奥義の刃』を使用する。これにより、エクラの味方が持つ神器が力をより発現させやすくなった。そして、戦士である3人の調子も上がっていく。

 

「死ぬわけにはいかないの。悪く思って」

 

レーギャルンが早速神器の力を解放する。持っている剣からは炎が噴き出し、竜と共に宙を舞いながら敵を殺していく。

 

ムスペルの将軍の1人、その実力は本物で、奥義の刃で支援された今、奥義、烈火を使い、広範囲の敵を焼き、弱った敵を一人ずつ殺し始めている。

 

しかし、それは念のための退路を切り開くため。

 

ヨシュアはフィヨルムに一般兵が襲い掛からないようにサポートに徹していた。向こうの敵数が多く、エクラはヨシュアに特効薬を使い続けて、傷を回復させ続ける。

 

「はぁ!」

 

氷槍を思い切り振り、フードの騎士に挑むフィヨルム。

 

相手は、剣に蒼銀の光を宿した剣で、フィヨルムに猛攻を仕掛ける。

 

ヨシュアに挑む兵士たち以外は、その戦いを見て驚きを隠せない。

 

剣戟は、何度も積み上げられる。速く。速く。速く。

 

その中で、徐々に削り合う2人。

 

雷光と共に打ち出される神速の剣技。しかし、神器の力まで上乗せされたその剣技を受け止められるのは、アスク王国での日々があるからこそ。目の前で繰り広げられる剣舞は明らかに、聖魔の世界の英雄が使う剣技に通ずるもの。であれば、フィヨルムは既にそれを知っている。

 

ステータスの差はまだ歴然であり、躱しきれない攻撃もあるものの、それでも互角に戦い切れているのは、ただ経験があるからだった。

 

エクラは既に、その正体を隠す戦士の正体を見る。

 

蒼雷ジークリンデ、と名前は変わっているが間違いなく、マギ・ヴァルの双聖器。そしてそれを扱う人間は一人しかない。

 

そう。フィヨルムに刃を向け、民たちを殺すよう指示しているその戦士の正体は。

 

ルネス王国王女、エイリークだった。

 




1章 1節 『聖魔反転大陸』-4

明後日投稿予定


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1章 1節 『聖魔反転大陸』-4 

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



騎馬兵の音がする。

 

エクラは再び奥義の刃をフィヨルムに使い、次の攻撃に備えた。

 

まだ来たばかりなのに、ものすごい勢いでアイテムを使ってしまっているのには少し焦りを感じるが、フィヨルムが死なないことが第一優先だ。

 

「魔道兵! 放て!」

 

ローブの剣士、エイリークだろう人物が襲どいたように後ろを向く。

 

そこにはゼト将軍がいた。ルネスの中でも指折りの騎士である彼は、この戦場も騎馬に乗り、剣を持っている。

 

彼が連れてきた魔道騎馬兵、マージナイトが一斉に魔法をこちらへと撃ち放つ。

 

全員がファイアーという威力低めの攻撃なのは助かった。さすがに一斉に50発も打たれていて油断はできないが、これがボルガノン等であれば、さすがに耐えきれない。

 

「お任せください。皆さんは目の前の敵に集中を」

 

フィヨルムが、魔法を迎え撃つ。

 

ローブの剣士は、

 

「何を……!」

 

自殺行為とも思えるその行為に、唖然とする。

 

しかし、当然自殺行為などではない。

 

フィヨルムの奥義『氷の聖鏡』

 

鑑のごとく清らかな氷の盾を目の前に創り出し、相手の遠距離攻撃を受け止める。氷が受ける衝撃がフィヨルムに少しフィードバックされるものの、同時に受けた衝撃や魔力をレイプトの力へと変換する力も持っている。

 

炎の猛攻にも氷の盾は負けなかった。

 

「ぐ、ぅううう!」

 

すべての攻撃を受け来たレイプトは、敵に向かって、己が魔力を爆発させる。

 

直線に放たれたレイプトの氷の力は、相手の騎馬兵を的確に狙い、人は失墜していく。

 

「……只者ではないようだな。将軍! 一度お下がりください! ここは私が!」

 

ローブの剣士に向かって、ゼト将軍は叫ぶ。

 

なぜかは知らないが、エイリークは今は身分を隠して戦っているらしい。

 

ローブの剣士は今の反撃に見入っていた。

 

自分達は殺すはずの敵なのに。

 

 

*******************************

 

 

初めてだった。

 

神器を前にしても一歩も引かぬ戦いぶり。

 

そして猛攻を防ぐ氷の盾。

 

その他の人間も一人一人がすさまじい強さを誇っている。

 

こんな強い人を見るのは初めてだった。

 

ここでは死んではいけないと思った。

 

私はルネスの王女だから、王国を裏切れない。しかし、こんなことは間違っているのは分かっている。

 

人々の平和な暮らしを守るのが騎士の、貴族の務めだ。

 

ならば、私はだめでもこの人たちなら。

 

きっと、南で戦っているリオンの力になってくれる。

 

そう思った。

 

私は必死に目の前の氷の戦士に迫り、ゼトには聞こえないように小声で、聞こえるように祈ってこの言葉を口にする。

 

「グラドに逃げてください。そこでリオンの力になってください」

 

「え……?」

 

「お願いします」

 

相手は、今自分が聞いたことが信じられなかったようだ。

 

無理もない。今さっき、殺せと命令した将たる私は、逃げてくれと言ったのだから。

 

しかし、これでいい。

 

私はあまりに罪を重ね続けた。この身はいつか、裁かるのを待つしか未来はない。正しい生き方をできなかったのだから。

 

しかし、リオンには死んでほしくなかった。ルネスの暴挙で命を消すことはしてほしくなかった。

 

彼らがリオンの力になってくれるのならば、そうならないで済むかもしれない。ジークリンデをもってしても倒しきれない強い人ならば、その可能性はあるかもしれない。

 

ならば、これが自分にできるせめてものことだった。

 

後はゼトの目を何とかしなければならない。

 

ジークリンデを上へと掲げる。

 

 

*******************************

 

 

フィヨルムの一瞬の動揺をエクラは見逃さなかった。

 

しかし、直後、相手の持つジークリンデが、これまでにない強い光を放つのを目撃する。

 

一瞬で理解できる。これはヤバいということ。

 

相手の神器から耳を貫くのではと思ってしまうほどの音が響き渡り、その力を解放しようとする雷剣は、徐々に閃光を迸らせ始める。

 

「逃げよう、みんな」

 

エクラはすぐに退却を提案する。

 

それに反対したものはいなかった。

 

「よし、召喚士、俺が時間を稼ぐ。適当なところで俺を呼び戻せよ」

 

レーギャルンの働きにより、すでに退路はできている。そして、神器の英雄を呼び出す力を早速活用するときが来た。

 

「行こう、みんな。ヨシュアさんお願いします」

 

迷いはしない。ここで死ぬわけにはいかないからだ。

 

「乗りなさい、召喚士! フィヨルム!」

 

天より訪れるレーギャルンの竜に乗り、3人は離脱する。

 

「追うぞ!」

 

ゼト将軍は逃がそうとはしないものの、エイリークはそれを制止する。

 

「……敵前で背中を見せる者で、貴女の誇り高き刃を汚す必要はありません。私が焼き払います」

 

しかし、ゼト将軍は、

 

「いいえ、私はルネス騎士。私は使命を全うしなければなりません。どうかあなたはここでお待ちを」

 

と、多くの騎士が神器の魔力開放を恐れる中、単騎でレーギャルンを追い始める。

 

ヨシュアは、なんとそれを見のがした。

 

「なぜ、ゼトを通すのですか? 正史世界のヨシュア殿。あなたにとって、彼は敵です」

 

「まあ、あいつ一人なら何とかするだろう。それよりも気になるのは、あんた、正史世界とか終末世界とか、そういう難しい言葉を知ってる奴か」

 

「ええ。これでもルネスの幹部ですので」

 

「そうか。なら聞くが、エイリーク」

 

フードの剣士は、名を呼ばれ動揺する。

 

「賭けないか。コインを投げて表か裏か。お前が勝てば、このまま戦いを始める。だが、お前が負けたなら、一つ教えてくれ」

 

「何をです?」

 

ヨシュアはにやりと笑い。

 

「どうしてお前は、俺達を本気で殺そうとしていない?」

 

「どういうことですか?」

 

「力を解放すれば俺達を一掃できるその双聖器。それほどの武器を持っているのなら、お前は真っ先に、俺らを神器の最大火力で殺すべきだろう。お前が本当に、部下たちに命令した皆殺しをするのなら」

 

ヨシュアはコインを取り出した。

 

 




すこし遅れてすみません。

1章 2節 『南へ』-1
明後日投稿予定


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1章 2節 『南へ』-1 

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・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

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竜も3人を乗せるのは、きつかったようですぐにへばってしまった。

 

レーギャルンは大役を任せ、それを立派にこなした自分の竜をレーギャルンは褒めたたえる。

 

後ろを見ると敵が追ってきている様子はないので、いったん先ほどの情報を整理する。

 

奇しくも、話を始めたのはフィヨルムだった。

 

「先ほどの剣士様、南に行けと言っていました……」

 

「どういうこと?」

 

「分かりません。なんの目的があるのか。理由は教えてくれませんでしたが」

 

「それ、相手方からよね。言うことを聞く必要はないと思うわ」

 

レーギャルンがそう言うのも当然である。敵側の提案を素直に受け取るなど、正気の沙汰ではない。

 

「そうですね……」

 

しかし、フィヨルムは納得するものの、あまりいい顔はしなかった。エクラは何故かを詳しく聞いてみる。

 

フィヨルムは答えに躊躇ったものの、エクラが遠慮の必要がないと強調し、フィヨルムが恐る恐る言う。

 

「その、その言葉が、私には裏のない確かな願いであるように聞こえました」

 

「フィヨルム。そんな言葉が信用に足るというの?」

 

レーギャルンはいい顔はしない。しかし、フィヨルムもそれは重々承知だ。

 

「エクラ、どうするのかしら?」

 

エクラはこのチームのリーダーである。チーム内の意見対立をまとめるのはリーダーの役目であるのは、自明の理だ。

 

エクラは考える。

 

レーギャルンの話は正しい。反論の余地はないだろう。

 

しかし、そもそも、自分たちがこの地に訪れた目的を意識しなければならない。今自分たちはこの世界がどんな世界なのかを見極め、ナーガの言う鎖とは何かを探しだし、対処するために何を成さなければいけないのかを考えなければならない。

 

自分達には、目的を成し遂げるための情報が絶対的に足りていない。

 

そんな自分たちに、この世界のエイリークらしき戦士が、わざわざ戦いの中でフィヨルムに南に向かえと言った。それはつまり、罠でもなんでも、南には何かがある。

 

情報を必要としている今の自分達には、危険を踏み抜いてでも、この世界について知ることが何より大切。将来、自分たちを生かし、目的を達成するために。

 

「南には行こう。きっと何かがあるんだ」

 

「本気、貴方、相手の誘いにわざわざ乗るの?」

 

「でも、何もなければ相手もそんなことは言わないはずだ。フィヨルムに防いでもらった魔法も、ゼト将軍が号令をして放ったものだと分かった。自分たちが標的になったとなれば、そのままルネスに赴くのは危険だ。ルネスの状況はまだ判断材料に欠けるけれど、一度この国を離れた方がいい。なら、何か収穫がある南の方が、まだ光明が見えそうだ」

 

「そう。それなら反対はしない。でもまっすぐ行くのはだめね」

 

「うん。迂回しながら、追手がいるかどうかの様子を見ていこう」

 

地図を開く。

 

ルネス王国の南、そこにはグラド帝国が広がっている。正史世界の伝説では、マギ・ヴァル大陸に戦乱をもたらした元凶となった国。向かうのには一抹の不安が残る。

 

しかし、南と言うことは、グラドに行けと言うことなのだろう。

 

ならば迷っている時間ももったいない。

 

「エクラさん。ありがとうございます」

 

フィヨルムのお礼に、エクラは笑みを浮かべながら頷いた。

 

「気にしないで。行こう。まだ探索は始まったばかりだ」

 

3人は徒歩で南へと動き始める。

 

 

 

そのはるか後方、しかし、着実に、彼らを追う姿が会ったのだが、未だそれに3人は気づかないままだった。

 




次回 1章 2節 『南へ』-1

明後日投稿予定


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1章 2節 『南へ』-2

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

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ネームレスは非常に呆れていた。

 

「あ、あの……その、師匠に稽古をつけてもらう予約をしようと思って」

 

「……お前、だからと言ってなぜあの部屋まで追いかけてくる。言ったはずだ。飛空城の上層部は危険だから入るなと。ルフィア、お前、これからどうする気だ」

 

「……ごめんなさい」

 

「……はあ」

 

怒っていたわけではない、ネームレスも遥か昔、このような無茶を何度もして、そのたびに、当時の相棒だった剣士と、親友に何度も助けられていた。

 

故に、今、彼らの代わりに、新たな世代の無茶を諫める役と言うのはやぶさかではない。しかし状況が状況だ。さすがに師匠として、未熟な弟子を戦場へ連れてきてしまったのは、たとえ自分が望まなかったことだとしても、ひどい失態である。

 

なにより、弟子に何かあってはならないことが起こるのは、師匠としてネームレスが最も恐れることだ。

 

「あの……」

 

ミルラが口を開く。

 

「私も、守ります」

 

頼もしい申し出は非常にありがたいことだったが、彼女は竜人族であり戦うときは竜に変身する。強力な反面、それは非情に目立つので、ネームレスとしては最終手段にとどめておきたいところだった。

 

「申し出感謝する。だが、俺が良いというまでは変身はなしで頼む。目立つからな。あと翼を隠して髪型も変えてほしい。しばらくはルフィアの相手になってやってくれ」

 

ネームレスの申し出に頷き、ミルラは快く了承する。

 

「師匠……」

 

「いいか。絶対に無茶はするな。平時であれば稽古をつけてやるが、お前は絶対に戦場では戦うな。それが俺についてくる条件だ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「……まあ戦場を2回は経験させる予定だった。その1回目と思うことする。俺から離れるな。悪いが宿の部屋も同じにする。お前を守らなければならない」

 

「私に何か」

 

「何も言うな。俺もお前に死なれては目覚めが悪すぎる。どんなことも反論は許さんし、勝手な行動も許さん、いいな」

 

「……はい」

 

ネームレスは歩き出す。

 

 

彼らの人数が少ない代わりに強力な2名を選んだのは、闇の樹海と呼ばれる地の捜索だった。

 

竜人族が守り、魔物との縁が深いこの地であれば、何かエフラムがあのような状態となっているヒントが得られるかもしれないという、エクラの考え乗ったのだ。

 

「……久しぶりの挑戦者気分とは。俺も浮かれているな、気を引き締めなければ」

 

その手にはどこから現れたのか、守りの薙刀が握られていた。

 

 

 

ルキナとマリカはジャハナに来ていた。

 

広大な砂漠が広がるこの王国は、傭兵を多く輩出する国で有名である。

 

ここでルキナとマリカが行うのは、ヨシュアが殺された原因を調査するためだった。

 

しかし、本人を呼ぶと、さすがに大ごとになってしまうためそれはためらわれたものの、ジャハナのことを少しは知っている人間に動向を願い出たかった。

 

故に適役はマリカとなり、いま行動を共にしている。

 

しかし、マリカは先ほどから妙に不機嫌だ。

 

「あの、私と一緒は嫌ですか」

 

ルキナが尋ねると、それはないと分かりやすく首を横に振る。

 

「なんか、違う」

 

「違う?」

 

「私の知っているところじゃない……ような」

 

現状まだ敵の襲撃は受けていない者の、嫌な予感に見舞われる。

 

(この先に何かあるのでしょうか……?)

 

ルキナは一抹の不安を感じつつ、ジャハナの王宮を目指す。

 

 

 

各チーム探索の初日は、目立った成果をあげられずに終了した。

 




1章 2節 『南へ』-3

8月9日投稿予定、少し空きます。


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1章 2節 『南へ』-3 

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!




ルネス王国王城。

 

見目はかつてと何も変わっていないその城は、かつて違いただ冷たい空気が流れていた。

 

そして玉座に座っているのは既に、かつての王ではない。

 

「……戻ったか」

 

「はい。ただいま戻りました」

 

「俺はお前に出撃を命じた覚えはないぞ、エイリーク」

 

その男は、今の変わってしまったルネスを象徴する男だと言える。

 

「兄上。民を傷つける行為を、私は他の者には任せられません」

 

「心が痛むのはお前とて同じことだろう?」

 

「でも……私が背負えば、その分不幸な人はいません。私は兄上の妹として、このルネスの王たるあなたに私は逆らいません。ですがその中で可能な限りの悲しみを肩代わりするのは、私にとって国よりも大事な、王族としての使命です。殺すのは私と、私に従ってくれる近衛騎士だけでいい」

 

「……解せないな」

 

いつしか怪しい魔力を身に宿すようになった兄、今もその妖しい気配がにじみ出ている。

 

「お前は何故、人を救おうとする」

 

「何の話でしょうか。私はこの神器、ジークリンデを使い、敵を殺しつくしています。兄上の仰せのままに」

 

「違う。お前は何かを隠している。善良なお前のことだ。おそらく、敵に慈悲を賭けている。街に現れたヴァイスブレイヴの連中を逃がしたのも、お前が俺に隠れひそかに何かを企んでいる証だ」

 

「彼らには逃げられました。お気に召さないのならば、この首を差し出して謝罪します」

 

「必要ない。お前には生きていてもらうつもりだからだ。俺を見届ける役を果たしてもらう。俺の願いは果たされるその時まで」

 

「……」

 

「気に食わない、という顔だな?」

 

「私にはわかりません。兄上。だから私は、納得のいくまで何度も同じ質問をします! どうして邪魔なのですか。ルネス以外の国が。そこに住まう人々が。なぜ兄上には気にいらないのですか?」

 

「気にいらないわけじゃない。だが、必要な犠牲だ。俺は絶対者にならなければならない。そのためには、他の勢力は完全に潰さなければならない」

 

「兄上のどんな理想のために必要な犠牲なのですか! 私は、それさえ教えてくれたら!」

 

「無理だ。お前は俺を理解してはいけない。俺は、お前だけは失いたくない。お前は俺の手の中で、すべてが終わるのを待てばいい。今でもそう思っている」

 

「ゼトを監視につけているのも、それが理由ですか」

 

「そうだ。お前に何かあれば俺は怒りのまますべてを滅ぼすことになる。それは、避けたい。父は戦わずして愚かだったが俺は違う。俺はルネスを継ぎ、すべてを平和にする。そのために、可能な限り、合理的、平和的にこの戦争に勝利する」

 

「人々を殺して得る平和など……」

 

「もういい。部屋に戻れ、エイリーク。お前はそのまま、優しくあればいい。……いいか、すべてが終わるまで、決して顔を晒すな。民たちの前では、決して」

 

「……なぜですか」

 

「必要なことだからだ」

 

ある時を境に何も本心を晒してくれないまま、侵略戦争を肯定し続け、人々の命を尊ばなくなった兄。

 

「兄上……!」

 

「……俺も何度もお前に言う。今は耐えろ。何も納得できなくても、今生きる人々が苦しみを得ようとも、すべては未来のためだ。俺は悩まない。説得もされない。すべてが終わるまでな」

 

エイリークは怒りを露わにしながらも背を向けて、自分の部屋に歩き出す。

 

謁見の間を後にしたところで、またエイリークは後悔するのだ。どうしてあそこで兄にもっと挑まなかったのだろうかと。

 

無理だ。一人では怖い。エイリークそう思った。

 

エフラムの近くには強力な光魔法を操る司祭がいる。今は兄の従者として兄に仕えている。その男がエフラムへの反逆を許すはずもない。

 

そしてなにより、今のエフラムは人ではない。そんな予感は、エフラムを知る誰もが思っていた。悪霊に憑かれている。そう思いでもしなければ、この数年の変貌を説明できない。

 

そんな化け物相手に、1人で立ち向かう勇気はなかった。

 

正直、兄に怯えに近い感情を持っている。それは否定できない。

 

数か月前、エフラムはジャハナの王宮を、その神器の真の力を解放した一撃をもって完全に消し去った。

 

あの光景が今でも頭から離れない。

 

「エイリーク様」

 

騎士の一人フランツが心配そうな顔でエイリークをのぞき込む。

 

「また、あのエフラム様と……?」

 

エイリークは静かに頷く。

 

「……いったい、どうしてしまったのでしょうね。ルネスは」

 

「ごめんなさい。あなただって」

 

「気にしないでください。兄は騎士ですから。エフラム様を信じて今も戦場にいます。兄は何も変わっていません。騎士として国に仕える宣誓をしたあの日から、この命はルネス王国のためにある」

 

エイリークにはその言葉が痛かった。事実で頼りになるはずの言葉であるのだが、それがどうしようもなく不憫に思えた。

 

しかし他人ごとではない。エイリークもまた王族。最後まで国と共に在らなければならない存在。

 

そう。本当は、兄に叛逆しようなどと考えてはならない。王族としてならそれが正しいことで、今のエイリークには何の落ち度もない。

 

「エイリーク様。先日の出撃から働きすぎです。今はお休みください。無茶はいけません。国のために出撃するのは騎士です。あなたでは

 

しかしエイリークは、自分が情けなかった。

 

自分が正しいと思うことをしようともせず、逆に国を信じようともせず、ただ何もできないままうずくまっている

 

なんて非力なのだろうと、エイリークは思った。

 

「そういえば、ゼト将軍が戻っていませんね。いつもはエイリーク様の近くにいるのに」

 

「え……?」

 

嫌な予感がした。

 

まさか、まだ追撃を続けているということか。

 

自分が微かな願いを持って、西へと逃がしたあの不思議な人たちを追っている。

 

理由は明白だ、兄の命令通り、殺すため。

 

(どうか、無事で……!)

 

神器に対抗できる力を持ったあの人たちだけでも、自分の代わりに、この世界にとって正しいことを親友と成してほしい。

 

そう願うことしか、エイリークにできることはない。

 




1章 2節 『南へ』-4

別の連載をしばらくゆうせんするため、少し空きます。
8月15日更新


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1章 2節 『南へ』-4 

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



「とりあえず、今日はここで宿を取ろう」

 

南へ南下する途中、休息をとるのと情報収集及び備品の整理のために、街を経由することとなった。

 

グラドとルネスの国境に位置するセレフィユの街。2つを結び、二国の友好を象徴とする街の1つだった。

 

以前訪れた人里は既に戦火の中だったが、この街には目立った傷はない。

 

しかし、どうも静かだった。

 

「街の人々はいないのでしょうか?」

 

フィヨルムが2,3件建物を見て回るが、中を覗き込んでも住民らしき人物には出会えない。

 

エクラが嫌な予感を抱く。

 

「エクラ。もしかしてここ、無人?」

 

「……みたいだね。仕方ないから、どこか1つ家を貸してもらおうか。無断になっちゃうけど、こっちも休める場所が必要だし」

 

エクラが近くにあった家を訪ねようとする。

 

その時、

 

「何者だ、貴様ら!」

 

赤い重装を身に纏った兵士らしき男が話しかけてきた。

 

「盗賊か、勝手に人様の家に忍び込もうとは、グラド帝国騎士の名において貴様らを処分する!」

 

なんとこちらの言い分無しで、勝手に処分を始めようとしている。

 

さすがにそんな理由で殺されるのは理不尽にもほどがある。エクラは説得を試みる。

 

「あの、僕ら旅の者で」

 

「盗賊はみんなそう言うんだよ。言い訳はあの世でしてもらおうか」

 

聞く気なし。まいった。エクラは頭を抱えざるを得ない。

 

「……でも、不思議よね。これじゃあ、本当に誰もいない。これじゃ者も盗みほうだい」

 

武器を取り出しながらという全く親高に終わらせるつもりのない行動にでたレーギャルンだったが、一方で彼女が選んだ言葉には、何とかしてこの男から何かを聞けないかと気を使っているようにも聞こえる。

 

そして相手は単純な奴なのだろう。

 

「ここの街の人間は既に3日前にグラドに避難を終えている。これからこの街も戦場になるだろうからな」

 

「なぜ?」

 

「お前ら盗賊は社会に無頓着だから知らないだろうが、ルネス王国がいよいよグラドとの全面戦争を始めるかもという状況だ。何かきっかけのひとつでもあればすぐに始まる」

 

「へえ、それで。ありがとう」

 

「さあ、こっちに――」

 

言うまでもないが、レーギャルンは強い。それはムスペルとの戦いのときからはっきりとしていることだ。

 

英雄や一部の将軍を除いて、レーギャルンの敵はいない。

 

たった数秒でそこには気を失っている兵士が一人、という状況も決して不自然ではないのだ。

 

レーギャルンは全く悪びれもしない。通常運転だった。

 

「もうすぐ戦場になるのね……どうしようかしら。もしかすると今日って可能性も否定できない。戦いに巻き込まれる可能性もある」

 

しかし、今朝の出発から休憩なしでここまで来ている。戦時中で野宿はいただけない。大人数であれば見張りを1人用意すればいいが、3人では見張りを用意している余裕もない。少なくとも数時間の睡眠は全員に必要だ。

 

エクラは考える。

 

やはり一番問題すべきなのでは自分達への追手の有無。追手が来れば戦争開始の種火になることは間違いなし。しかし、確認する方法はない――。

 

「いや……」

 

そうでもないかもしれないとエクラは思う。フェーは3日に1回、自分たちの元へと飛んでくることになっている。そして、行動初日は自分達のところに来る予定だ。そこでフェーに上空から追手の有無を確認してもらうという手は使える。

 

「危ないけれど……これしかないな」

 

居れば即座に出発、いなければ休憩できる。幸い定刻までもうすぐなので、それまではこの街で、待機で良いだろう。

 

2人にもその旨を伝えて、同意をもらい、とりあえず体を休めるため宿屋らしきところを無断ではあるが使わせてもらうことにした。

 

宿は体を休めること以外はできなさそうなシンプルなつくりだったが、今のエクラたちにはそれだけでも十分だった。

 

エクラは特に戦いの後である2人にはしっかり休んでほしいと願っていた。

 

しかし、ここは敵地。残念ながらそううまくはいかない。

 

外が騒がしいと気が付いたのは、残念ながらフェーが到着する前だった。

 

「全員位置につけ!」

 

宿の外をエクラが見ると、先ほど気絶させた兵士と同じ色の鎧を着た兵士が数多く街を駆けまわっている。

 

「ルネス軍が来る!」

 

「なんだって、こんな夜中に」

 

「誰かを追ってたという話だったが」

 

「今は関係ない! とりあえずこの街を拠点とされるわけにはいかない。グラド帝国の威信にかけて、絶対に敵軍を殲滅するぞ!」

 

エクラが気になったのは、『誰かを追っていた』という兵士の証言だった。

 

追われていたのは自分達。そして追ってきたのは、間違いなく先に戦闘をしたルネス軍。

 

(追って来ていたのか)

 

レーギャルンの使役する竜は、自分たちを乗せてすさまじい速度で離脱をしてくれたため、あわよくば振り切れたかとエクラは思ったがそんなことはなかった。

 

「仕方ない……」

 

迎撃となれば自分達だけでは心許ない。

 

ヨシュアを呼び戻すことにした。神器を片手に、宿の中でも広い入り口のところで。

 

しかし、その入り口でまたも問題が発生する。

 

宿に侵入者が来た。

 

「……お前たち、何をしている」

 

ものすごい怖い顔でエクラは睨まれた。そのせいか、

 

「あ、えーと、ちょっとここを宿にさせてもらってて、旅の者なんですけど、その、あの、えーと、なんかこの街誰もいなくて、疲れれたから少し休ませてもらってて、ああ、もちろんお金は」

 

焦ったエクラは歴戦の軍師とは思えないような慌てぶり。今自分を守ってくれる戦士は誰もいないので、仕方ないと言えば仕方ないが。

 

しかし、ここに現れた威厳ある年の重ね方をした見目の戦士は、しばらくエクラを見ると、

 

「む、陛下のおっしゃる通りの身なり、予言が正しかったとでもいうのか……?」

 

と意味深なことを呟いた後、

 

「ここは危険だ。後にグラドへとお前達を送り届ける。それまで、ここから出るな」

 

とだけ言うと、外へと戻っていった。

 

何とか話が通じたかと、一安心するが、よく考えると、敵側が建物内を襲撃しに来ることは十分予測の範囲内だと気づく。

 

「……申し訳ないけど二人を起こしに行くか」

 

ヨシュアを呼び戻した後、エクラは二人を起こしに行くことに決めた。

 




1章 3節 『セレフィユ防衛戦』-1

仕事が思ったより忙しいぞ……書く時間と体力が……ない。
次回は25日に投稿と言うことにさせてください。

by femania


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1章 3節 『セレフィユ防衛戦』-1

注意事項

・連載小説初心者です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品です。元と性格や行動が違うことがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・この作品オリジナルキャラも人物描写はスキップしている場合があります。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・作品はほぼオリジナル展開であり、オリジナル設定も盛り込んでいます。

・原作のキャラやストーリーに愛がある方は、もしかすると受け入れ難い内容になっているかもしれないので閲覧注意です

これでOKという人はお楽しみください!



ここから出るな。

 

先ほどの老兵から述べられた警告があったものの、何もせずに待っているということはできない。

 

フィヨルムとレーギャルンは再び戦闘準備をしている一方で、戻っていたヨシュアがエクラの待機の時間を減らそうと気を使ったのか昔話を始める。

 

「セレフィユか。懐かしいな」

 

「何かあったの」

 

「ああ、正史世界での話になるが、この街ではいろんな奴と出会った。……ああ、前はグラド帝国が脱走者のシスターを追ってきたんだったか。俺はそいつと賭けをして、向こうが勝ったから助けてやった」

 

「向こうが負けてたら?」

 

「殺してたな。当時は傭兵でね、金を稼ぐ身だったし、人を殺すのにも慣れてたから、容赦なく任務を遂行しただろうな。もっとも、あの時負けておいて正解だった。賭け毛で勝ち馬に乗れたし、国に戻るきっかけもできた。今にして思えば、悪くなかったのかもな」

 

「そんなことが……」

 

「さて、エクラ。そろそろ敵も来たみたいだ。とりあえず俺達がすることは、この寝床を守ることだな?」

 

エクラは頷く。

 

「よし、了解した。さっきはエイ……向こう側の将軍と賭けをしてたから。今度は真面目に戦うとしよう」

 

そう言うと、ヨシュアは外へと出る。

 

「え、なんで」

 

「俺は剣なんでな、ここに近づいてくる奴を斬り捨てるくらいしかできない。俺を気にする必要はない。お前は、二人のお姫様をサポートしてやれ、ただでさえ、お前は戦えないんだからな」

 

アウドムラを片手に外へと躊躇なく飛び出していくヨシュア。

 

ああは言っていたものの、エクラはただ隠れているつもりはない。2階へと移動し、見晴らしの良い場所で。戦況を見極めるつもりだった。

 

しかし、さすがに護衛が無しなのは心許ないので、

 

「フィヨルム、護衛お願い……しますぅ」

 

フィヨルムに自分の身を守るよう願い出るのだった。結果、エクラとフィヨルムは2階から外の様子を見つつ戦況を確認する役、レーギャルンは宿屋に侵入してきた敵の撃撃、ヨシュアは外での迎撃と言う形に落ち着いた。

 

 

街一杯にグラドの兵士が広がるのは戦いが始まる前兆というべきか。

 

「ふぇー!」

 

そしてタイミング悪くここにきてしまった、3チームの相談役であるフェーに、外の様子を逐次伝えるよう懇願し、エクラは自分の見えないところの戦況を報告してもらう。

 

「街に多くの兵隊さんが近づいていますぅ……」

 

「敵将は?」

 

「ふぇー、その……ゼトさんのように見受けられまたぁ」

 

「何か言ってた?」

 

「ゼトさんは言っていませんでしたが、兵士さんは皆さんを探してるようで、見つけたら殺せと……」

 

「兵の種類は?」

 

「騎馬隊が中心になっていますぅ」

 

「弓は、飛行兵は、魔法兵は?」

 

「ペガサスさんやドラゴンさんはいないようでしたが、すみません、細かいことはぁ」

 

「分かった、ありがとう、引き続き上から情報を頼む」

 

「了解しました」

 

再び上空へと飛んでいくフクロウを見届け、エクラは街の入り口の方を見る。

 

「エクラさん。弓と魔法は任せてください」

 

「頼む。飛行兵がいないのだけが救いだったね。ここに一斉に来られたらおしまいだった」

セレフィユの街は高い壁に覆われていて、街の外の様子はここからでは見づらいという事情がある、フェーという偵察役は大きな意味を成すだろう。

 

下ではグラド帝国の兵士が動き始めている。すでに完全武装で、全員から緊張感が伝わってきていた。

 

「敵襲! 敵襲!」

 

そして宿屋に近くに陣取る兵士たちに、巡回兵が将軍の命令を伝える。

 

「侵入確認! 侵入確認! 敵はルネス、ソシアルナイトとパラディンを主体とする機動兵団! 敵将ゼト。全員、専守防衛! 敵の兵力を低下させるまで、損傷を押さえて撃撃せよ! 戦闘準備!」

 

巡回兵の指示に大きな威勢の良い声で返事をしたグラド軍が全員武器を構える。

 

爆発。連続する激しい金属音が聞こえてきた。

 

セレフィユでの戦いは、今始まったのだ。

 

 




1章 3節 『セレフィユ防衛戦』-2

次回はまた他の連載を優先するので、少し遅れます。


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