HIGH SCHOOL MEGIDO (極丸)
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プロローグ 少年達は運命と出会う

メギドの要素は皆無!!!!


それは幾年も前の話であった。

世界は3つの種族に分かれ、争いが起ころうとしていた。

3つの種族は言ってしまえば「善」「悪」そして「中庸」と言い表せるようなものであった

善と悪はその概念を、信念を持ち強大な力を持っていた

「悪」はその力をもって「中庸」を蹂躙せしめようとした

しかし、その蹂躙は志半ばで尽き果てるものとなった。

その「悪」を止めた存在、「悪」の王となり得る指環を持った少年と「悪」ではなく「中庸」へと堕ちた「悪」達によって………これは、記録はないが必ず存在した、王とそれに仕えた家臣の物語である

 

ダンタリオン出版社著作『我々ソロモン72柱の始まり 祖たる悪魔達の歩み』冒頭より抜粋

 

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「ふぅ…何度読んでも飽きないわね。これ」

 

大きな窓をに浮かぶ赤い月をバックにベットの上で本を読んでいた女性がいた。その女性は紅い長い髪をベットに広げなんとも分厚い本を読んでいた。表紙には『我々ソロモン72柱の始まり 祖たる悪魔達の歩み 第1章 辺境の剣』と書かれていた

 

「リアス。もう寝なさい。読書もいいかもしれないけど程々にね?」

 

するともう一人の女性が部屋に入ってきた。見た目は先ほどの女性とさほど変わりは無い十代と思われる女性であった

 

「ごめんなさいお母様。でも寝る前に一回は読んでおきたくて。」

 

まさかの母親であった。年齢詐欺もいいとこである

 

「もう、昔からよく読み聞かせてたけど、まさかこんなにも長く読み続けるなんてね。私も想像がつかなかったわ…」

「私もよ。だけどこのお話に出てくるソロモン王に憧れたから今の私が有るんだから。毎日読まないと失礼だもの!」

「それは知ってるわ。けど明日から人間界での学校でしょ?だったら早く寝て明日に備えなさい。」

「わかりましたわ、母様。」

 

そう言い残し母は娘にキスを残し部屋を出た。

其処には子供の寝息とその姿を照らす赤い月が残っていた

コレはこの少女が運命と出会う前のある日の一幕である

 

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「うーん、なかなか生かすデザインがないなー?オッチャンもう少しなんか良いのないの?」

「ねーよクソガキ、そこにあるもんで全部だよ」

 

夕暮れ時のシャッターが多く閉まった商店街の一角でそんな会話が起こっていた、学生服を着てカバンを肩に掛けて座り込んでいる少年と、ヒゲを生やし、杖をついた小柄な老人が話し込んでいた

 

「えー?わざわざ良い感じの店が隣駅のシャッター街付近にあるぞって噂聞いてきたからチャリ飛ばしてきたのによー!何にも買えずに帰るってなんか釈然としねーなー…」

「知るかよそっちの事情なんざ、んなことより買う気がねーんだったらさっさと失せろ!商売の邪魔なんだよ!」

 

なにやら少し苛烈さが増してきた。少年はかなりの時間ここに座り込んでいたらしい。すると少年はキレ気味に

 

「いいじゃねーかよ!こんなシャッター街なんだから大して人こないって!ていうかこの際もうなんでもいいや!オッチャン!こんなかで俺に似合うもの選んで!もうそれにする!」

 

と言った完全な逆ギレであるし、後半から意味不明である

 

「あぁ!?訳わかんねーぞクソガキ?」

「だってここまで来て元浜が勧めた店に何も買わずに帰るってなるとダセェからそれだけは避けたいんだよ!だからオッチャンのセンスに任せる!」

「自己中過ぎんだろ、まぁいいか、これ以上騒がれても迷惑だしな。よし、ならこれなんかどうだ?」

 

話が纏まり一息ついてからその店主が指したのはピンク色の宝石が埋め込まれた黒い筋の入った銀の輪でできた5個でワンセットの指輪だった

 

「おお!おっちゃんやるじゃねーか!実はそれこっちのペンダントとどっちにするかでケッコー決めあぐねてたんだよなー!ありがと!」

「勘違いすんな、指のサイズが合う奴が出てこないからお前に勧めただけだ」

「商魂たくましいな!!」

 

値札を見てみると「ピンクの指輪一つ600円」と描いてあった、5個だと三千円、おこづかい制だとなかなかに値が張る一品である

 

「うーんでも指輪かぁ…サイズ合うかな?」

「試してみるか?」

「え?!マジで!?つけていいの?!つけた瞬間に金請求したりしない?!」

「商品として使えなくなったらな」

「そっかそっか、なら遠慮なく」

 

そういい青年は鞄を下ろし指輪の一つを手に取り左手の人差し指に嵌めた

 

目覚めろ……王の者よ

 

「おぉ〜ぴったりじゃん!ついでに他のも………」

「壊すなよ………」

「わかってるわかってるって」

 

そう言いながら少年はどんどん指環を中指、薬指、親指、小指と順当に嵌めて行きそして全ての指に指輪が嵌った

 

「全部ハマったな〜こうしてみるとなかなかイカすかな?どうオッチャン?似合う?」

「ああ、指に丁度に合ってるな、よし買え」

「ブレねぇなオッチャン!んー、でも三千円だろ?だったらこっちのペンダントとかが良いかもな〜?三千円ははちょっと今月は厳しいから、また今度にするわ…ワリィな、そういうわけで………あり?」

「おいどうした?」

「………抜けなくなっちゃった………」

「「……………」」

「…お会計三千円だよ」

「……ハイ………」

 

自転車を漕ぐ少年の後ろ姿は何処か哀愁が漂っていた

 

「なんか三日月が青く輝いて見えるぜ………まるで俺の心の様だ」

 

俯き気味に呟きながら少年は帰路へと帰った。

そして少年の家にて、少年は孤軍奮闘していたーーーー

 

「んがぁぁぁああああああ!!!!!抜けろやクソ指輪ーーー!」

 

ーーーー指輪と。

かれこれもう夜中の11時である、普通に近所迷惑だ。

 

「ゼーゼーゼー!全然抜けねぇ!なんつー力込めて締め付けてんだこの指輪?!全く抜ける気配がしねぇ…勘弁してくれよ、明日普通に学校だぞ?絶対先生にバレる!どうすんだこれ?」

 

少年はパイプ型ベットの上で横になり目を閉じて考える

 

(ハンマーで叩き割る?指が割れる。ペンチでひき抜く?指が血だらけ。返金してもらうよう頼む?追い返されて終わり。だめだ全く思いつかねぇ。しょうがない、明日は袖で隠して1日を乗り切ろう)

 

そうして少年は電気を消して眠りについた

 

-----

 

翌朝

 

「よし!長袖による防御!ポケットに手は突っ込んだ!質問されても無視するようのイヤホンもバッチシ!幸いなことに体育は無いし!それでは行ってきます!」

 

少年は戦場へ向かった。と言っても学校ではあるがかなりの気合の入りようである。周りとの温度差が激しくなっていることに少年は気付いていなかった。

そして校内で少年は聞き慣れた声を聞いた

 

「おおーい!友野ー!」

「んん?おー兵藤か?それと元浜と松田もー、どうしたんだ?そんなに慌てて?」

「助けてくれ!今追われてる!」

 

その声の持ち主は血気迫った表情で少年に助けを求めた

尖った茶髪の少年にメガネのやせ細った少年、そして丸刈りのやや筋肉質な少年が走って詰め寄る。なにやら慌てているようだ。

 

「またー?もういい加減諦めなって、正直言ってもう飽き飽きしてきたよ?」

「そこをなんとか!」

「はーしょうがないなー、今日は誰?」

「村瀬と中山だ!頼む!」

「分かった分かった、だから首を揺するな!」

「悪りぃな!」

 

随分と手慣れた様子であしらった後、少年の元に剣道の胴着を着た少女二人が睨みを利かせ走り寄ってきた、その手にある竹刀は何に使うのかは考えないでおこう。

 

「やーやーお二方、本日もお美しゅうございますねー。どうしたの急に?」

「ねぇ友野くん!あのバカ3人見なかった!?」

「今日という今日はなんとしても討つ!」

「まーまー落ち着けって、そんな過剰になったら、いらんダメージ与えて良く無いよ。」

 

かなり高ぶった様子の少女二人を少年、友野は落ち着かせるよう促す。少女二人も従っているあたり三人は知らない仲では無いらしい

 

「一旦落ち着いて先生に報告してから、改めて3人を罰しよう!その方があいつらも反省するよ!」

「「「おいふざけんな!」」」

「あ、出てきちゃった」

 

まさかの裏切りに先程まで隠れていた3人が友野を叱ろうと

顔を出した、友野にも見えるということは近くで問い詰めていた他の二人にも見えるわけで……

 

「「見つけたーーーー!!」」

「「「あーーーーー!!!しまった-!!!」」」

 

南無三。3人は見つかってしまった。

 

「じゃあ、俺は先行ってるから3人とも死ぬなよー」

「「「待てやぁ!」」」

 

友野は3人の断末魔を背後に校舎へと向かった

 

そして校舎にて

「友野ー!テメー裏切りやがったな!」

「理解はしたがどちらに与するとは言ってないからセーフだ」

 

先程の丸坊主の筋肉質な少年が机に両手をつき決起迫る表情で友野を見ながら叫ぶが友野は涼しげに返答を返す。

友野の視線は終始少年の顔を見ることはなかった。

 

「くっそー!いつも上手い具合に逃げやがってー!」

「悔しかったら覗くのやめればいいだろ?」

 

メガネの少年が悔しそうに友野を睨むが当の本人は呆れた顔で独り言のように呟く

少年のメガネは終ぞ正面を向いた友野の顔を見れなかった

先ほどの三人の叩きつけ始めた愚痴を聞くに女子更衣室を覗こうとしたらしい。

普通に犯罪で逆恨みである。

 

「てゆうか友野!お前なんだよ!前回より女子達が気づくの早かったんだけど!お前また女子に助言したな!」

「おー流石は兵藤だ、よくぞお気づきで。でもおかげでいつもお前らを犯罪者になる前に未遂で防げてんだ。俺はいいことしたと思ってるからお前が何故俺の胸ぐらを両手で掴みながら揺さぶってんのかがわからないんだが?」

「おかげで俺たちは至福の時間を逃したんだよ!責任取りやがれー!」

「落ち着け落ち着け揺さぶんなよ、もう授業始まるぞ」

 

茶髪の少年、兵藤が友野を睨みながら首をガクガクさせながら叫んだ、友野はポケットに意識を向けながら右手で兵藤を制し、席に着くよう促した

 

「くっそー、あとで覚えてろよ!」

「忘れるまでは覚えてるよ」

 

渋々友野の意見に耳を貸しながら席に戻ると狙ったかのように担任が教室に入り、HRを告げるチャイムがなる

 

(とりあえずはバレてないか。よーしこのまま終えたら帰ってとっとと隣町へゴーだ)

 

友野は担任の強弱の無い声を聞きながら今日の予定を組む

袖の中の腕には薄く黒い紋様が浮き出し始めているのに気付くのはまだ先の話である

 

ーーーーーーーーーー

 

「はい、それでは帰りのHRを終わります。それではさようなら」

 

担任の覇気のない一言で生徒たちはすぐ様行動を起こす。

部活へ行くもの。

家へ帰るもの。

携帯ゲームに耽るもの。

親しい者と会話を楽しませるもの

そして…

 

「おーい!今日もお宝仕入れてきたぜー!」

「おお!今回のはなかなかに期待できるな!これはイケる!」

「見た目はストライクですね!問題は内容ですが…」

 

アダルトビデオの内容をひけらかして語るものである。

色々とおかしい気もするが先の覗き三人衆ならあり得てしまうのも何故か納得してしまう

周囲の冷めた視線も気にせず3人は堂々としたまま、エロビデ談義をし始めた

 

「おーいおめえら。周りを考えろ。めちゃくちゃ引かれてるぞ、ちっとは自重しろ」

「あん?!友野テメーは入れてやらねーよ!ザマァ見ろ!」

「別に羨ましいとは言ってねーよ兵藤」

「はん!負け惜しみか?今回手に入れたのはお前好みの年上クール系女優の人気作だぜ!入りたいんだろうが、入れてやんねーよーだー!」

「そーだそーだ!裏切り者はそれ相応の罪を償え!」

 

と物が話しかけたのが仲間に入りたいんだという決めつけからハナからトゲのある対応をするエロバカ三人衆である

どんどんとナレーションの評価が下がっていく一方だ

 

「だから違うっての、オメェらそんなんだから彼女できねぇんだろ?」

「「「うるせー!オメェもだろうが!」」」

「はいはい、俺も同じく彼女はいないよ、それでもお前らよりは早くに作る自信あるぜじゃあな、精々周り見て評価を下げないようにしろよ」

 

そう言い残し友野は教室を去った、早くに指輪の問題を解決したい一心の行動であった

しかし

 

「あれ?友野くんどこ行くの?」

「え?もう帰るんだけど?」

 

昇降口にて、下駄箱から靴を取り出し帰ろうとする友野を引き止める女子生徒がいた

その女子は不思議そうに友野を見つめながら

 

「何言ってるの?あなた今日図書委員の仕事でしょ?」

「あ」

 

友野、ここでまさかの失態である

 

ーーーーー

 

駒王学園の図書室は基本的には放課後誰もいない。

しかし週に三、四人ほど本を借りに来る人がいるだけに無人にするわけにもいかず、必ず一人は図書委員がカウンターで出張っているのである。しかし今日も誰もおらず結論ーーー

 

「暇だな」

 

ーーー暇であった。

友野自身も本をあまり読む質ではなく、やることがなさそうという理由で立候補しただけである。

なので、今は絶賛手持ち無沙汰であった。

 

「なんかテキトーなモンでも漁るか」

 

ずっと受付で足をブラブラさせながら顎をカウンターに置いていた友野だが、遂にそれにも飽きたのか、本を漁り始めた

 

「いいのでもあったらいいなー、ってあれ?なんだこれ?なになに?悪魔大全集ソロモン72柱編?面白そうだな、厨二ゴゴロをくすぐられるタイトルで」

 

そういい友野は黒い背表紙の本を手に取り読もうとする。

この時友野は油断していた。

 

「こんにちはユーキくん」

 

そんな声が友野の耳に入った

友野は本を両手で持ったまま返事をした

 

「あ、グレモリー先輩、そのユーキくんって言い方やめません?あんまし親しくないにもかかわらずそう呼ばれてるとあらぬ誤解受けそうで」

「あら、私は一向に構わないけど?それよりリアスって呼んでくれてもいいんじゃない?」

「そこまでの仲じゃないでしょ?ところで何のようです?ここ最近図書室使ってないじゃないすか」

 

声の持ち主は赤い長髪を持った女子生徒、リアス・グレモリーであった。

街中を歩けばブサイク好きでもない限りは、10人中最低でも7人は美人だと答える容姿の持ち主であるグレモリーは親しげに友野のそばに近寄り話を続ける

 

「あら、悪魔に興味があるの?そんな風には感じなかったけど」

「たまたまですよ。いつもはそこまでって感じですし。なんか知ってる悪魔っています?オレゲームとかで得た知識しかなくって、サタンとかルシファー位しか知らないんで」

 

美人の部類に入るリアス・グレモリーがそばに来ているにもかかわらず、友野は動揺せずにジッと本の目次を眺めていた

 

(うおおおおおおお!また来たよグレモリー先輩!そんな近くに来ないでください惚れちゃいます変な勘違いしそうになってしまいますよ!)

 

訂正、動揺はしていたらしい。しかし鋼のメンタルで持ち堪えた友野であった。

そんななか友野はリアス・グレモリーの次の行動に気に掛けていた

 

「そうね〜、わたしとしては同じ名前の『グレモリー』を知ってるくらいかしらね?」

「グレモリー?え?それって悪魔の名前だったんですか!」

「えぇそうよ、知らなかったの?」

「はい、でもグレモリーか…えーっとグレモリーグレモリーはー?」

 

友野はリアスから聞いた悪魔の名前を探し始めた、すると

 

「あら?ユーキくん?その指輪は何かしら?」

「へ?あ」

 

友野は完全に指輪に意識を向けるのを忘れていた

 

「………黙っといてくれません?」

「事情を聞いたらね」

 

時刻を同じくして

 

「好きです!付き合ってください!」

「へ?」

 

少年達は運命と出会った




途中で力尽きました。
このままだらだら書くよりかは良いかと思い投稿した次第です


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第1話 少年は秘密を知る。

投稿遅れて申し訳ございませんでした。
今回からメギド要素がちらっと出ます。



友野はその時緊張していた。

自分が今まで座ったこともないようなフカフカのソファの上で足を閉じて手を膝の上でグーにして背筋を過去最高に固く伸ばしながら、テーブルを挟んで向かい側に座っている目の前のお菓子を食べている白髪の少女の視線を受けていた。

 

「えーっと塔城さん?ここって旧校舎だよね?なんでこんなに立派なソファが?グレモリーさんに連れられてきたんだけど俺?ていうかなんで塔城さんがいるの?」

「一気に話しかけないでください。順を追って説明しますから、部長が」

「はぁ…ま、そうゆう事なら待ちますけど……そこのお菓子貰ってもいい?」

 

友野がそう言うと白髪の女子、塔城はコクリと頷きテーブルに置いてあったお菓子のうちの一つを友野に差し出した。

友野は受け取るとお辞儀をしてお菓子を受け取り包装紙を破いて食べ始めた。

フルーツ入りのクッキーだった。

 

「あらあら、塔城さんったらもう友野くんと仲良くなったんですの?羨ましいですわね」

「あ、姫島先輩」

 

食べ始めると奥の台所のようなところから黒い長い髪を一つに結った女子生徒、姫島がポットとティーカップを載せたソーサーを持ちながら友野達の元へと近づいた。

彼女は静かにソーサーからティーカップを手に取りソッと友野と塔城の前に置いた。

紅茶のいい香りがした。

 

「あ、ありがとうございます。姫島先輩。………ウメェなコレ、このクッキーと合うか?」

「あら、友野くんったらすごいですわね。この紅茶はそのクッキーに合わせて淹れてみたの。合うかしら?」

「紅茶云々はよくわかんないっすけど、取り敢えず上手いことは確かです。ね、塔城さん?」

「はい、とっても美味しいです。姫島さんの紅茶」

 

そう言いながら塔城は早くも次の獲物(お菓子)に手を伸ばし始めていた。

体は正直である。

 

(にしてもなんで俺こんな高嶺の花に囲まれてんだ?グレモリー先輩に指輪について色々聞かれた後になんかここに連れてこまれたけどさ?この指輪そんなに価値のあるもんなのか?あのじいさん案外いいもん持ってたんだな)

 

友野は紅茶を飲みながら考えた。

図書室で指輪がグレモリー先輩に見せた時、彼女は非常に驚いていた。

友野の左手首を掴んで指輪を凝視して少しばかりブツブツと呟くと『時間はあるかしら?』と強めのトーンで聞いてきてうなづいて答えるとそのままここに連れて来られ、現在のこの状況に対して考える暇がなかった。

そして友野自身はこの指輪に価値があるとは思えず数巡は考えたが答えは堂々巡りで終わりそうであった。

 

「うーん、やっぱり分からん。思いつく可能性がまるで浮かばねぇ」

「考え事ですか?でしたら甘い物ですよ先輩」

「それもそうか、ほんじゃもう一つ」

 

塔城の言葉に友野は考えるのを一旦やめてクッキーの乗った皿に手を伸ばそうとする…が、

 

「っておい!クッキーねぇじゃねぇか!もしかして全部食ったの?!」

「はい、美味しかったです」

「甘いもの勧めといて何それ?!ちょっとうまかったから気に入ってたのに!」

 

まさかの完食であった。この少女、見た目以上にずぶとい性格かもしれない。

友野はクッキーをあるものとして考えて期待していたのでその落胆は想像以上であった。

 

「買えばいいじゃないですか」

「今必要なの!なんなの塔城さんあなたそう言うキャラだったの?!イメージと全然違ぇんだけど?!」

「知りませんよあなたのイメージなんて」

「そうだけどさぁ……もういいや、いつかこのクッキーの売店教えてよ?お願いだから…」

「いいですよ、それくらい」

 

肩を落としながら塔城と話す友野を姫島は、ニコニコと微笑みながら眺めていた。

そして数分すると入り口から一人の人物が顔を出した

 

「あれ、二人とも初めて会うのに随分と仲がいいんだね?どこかで会ってたの?」

「うん?あ、木場じゃねぇかどうしたんだ?なんかすんごい汗だけど?」

 

その人物は金髪の美丈夫な男子生徒であった。

友野と同じ制服を着た男子、木場は急いで来たのか息が乱れ肩を上下に揺らしながら塔城のいるソファの隣に腰を下ろした。

 

「いやぁ、急に部長から呼び出しがかかってね。急いで此処に走ってきただけさ」

「ふーん、そりゃドンマイだな、まぁ紅茶飲めよ。姫島先輩の紅茶うめぇぞ」

「すいません姫島先輩、冷たい紅茶ってもらえます?」

「えぇ、良いわよ。すぐに淹れるわ」

 

姫島は奥の台所に向かっていった。

すると黙々と聞いていた塔城が

 

「友野先輩と木場先輩は知り合いだったんですか?」

「うん?あぁ、別に深い関係じゃねぇよ。ただ一年の時クラス一緒だったから話してただけだ」

「まぁね、現に最近じゃクラスが別だから廊下ですれ違っても挨拶するくらいになったしね」

「そうなんですか」

 

塔城はそれで気が済んだのか黙々と自分の持ってきた羊羹を食べ始めた。友野にやる気はさらさらないらしい。

そして姫島が冷えた紅茶を持ってきて本を読み始め、木場がもらった紅茶を5割ほど飲み再び飲もうとし始めグラスに口を付けようとした時、友野と塔城が羊羹を賭けた真剣勝負(ジャンケン)をして友野がグーで勝ちを取りに行った時に、彼女は戻ってきた。

 

「ごめんなさい遅れたわ!」

 

奥から勢いよくドアを開けて周囲の目を引きながら彼女、リアス・グレモリーは部屋へと入ってきた。

突然の出来事で姫島は本をとっさに閉じ、木場は紅茶を吹き出し、友野と塔城との決着は突然の出来事で手が開いてしまった友野がパーで塔城がチョキの結果に終わった。

 

「あら?どうしたのみんな?」

「部長、タイミング悪いです」

「リアス、私達は急いでないから落ち着いてきてって言ったわよ?」

「ああああああ!グレモリー先輩のバカヤロォオオオ!」

「……ナイスアシストです。部長」

 

紅茶をこぼした木場にタオルを渡す姫島に、勝負に負けた友野と羊羹を死守したが余りの友野の残念具合に若干引き気味な塔城。

これを見てグレモリーが起こした行動は……

 

「有希君いくらなんでも馴染みすぎじゃない?」

 

現状確認(ツッコミ)であった。

 

ーーーーー

 

「さて、それじゃあ改めて聞くけど、有希君?あなたはこの指輪に関して何も知らないの?」

「いやぁ、何も分かんないですかね。なんなんすかこの指輪?そんな価値あるんすか?普通に個人営業の雑貨屋で買っただけっすよ?」

「そう……」

 

友野がグレモリーの質問に対して何も知らないと返すと彼女は顎に指を当て試案にくれる。

 

「部長、どうしてその指輪にそんなに執着しているんですか?気になります」

「え?あぁ、そうね、じゃあ丁度使用者も見つかったことだし、皆んなに言ってもいいかもしれないわね」

「使用者?」

 

聞き慣れない言葉に友野は首を傾けるが、それは他も同じであった。

グレモリー以外はいまいちピンときておらず全員真意を掴めないでいた。

 

「まず有希君、今から話すことは全て真実よ。そしてこれを聞いたら少なくともあなたは今の生活とは全く違う生活を送ることになる。それも含めてこの指輪についての話をするけど、構わないかしら?」

「え?なんですか急に?まぁ大丈夫ですけど…」

「部長?」

 

突然の展開に頭がついていけない友野を置き去りにグレモリーは真剣な眼差しで語り出す。

その変化にソファーの後ろで傍観していた木場も怪訝な様子でグレモリーを見る。

 

「実はね、有希君。私たちはね…」

「ハイ?」

 

 

 

 

 

「悪魔なの」

 

そう言いグレモリーは背中からコウモリの持つような大きな羽を広げながら言った。

そして周りもいつの間にか同じような羽を広げていた。

それを見た友野の反応は…

 

「……は?!」

 

理解不能(キャパオーバー)だった。

そして数分後、廃校舎の一角にて…

 

「だから本当なのよ!信じてってば!」

「いやだから確かに驚きましたけど突拍子がなさ過ぎて疑いますって!」

 

そんな会話が聞こえてきた。

 

「だからあなたは今大変な状況の中にいるの!お願いだから信じて!」

「だから信じられませんって!急にそんなこと言われても!悪魔だとか天使だとか神器がどうとかロンギナントカがどうとか言われてもイマイチピンときませんよ。精々がクオリティの高い作り話だなーって思って終わりですよ!」

「本当のことなの!今は証明できないけど、お願いだから一旦信じて!」

 

友野を引っ張り戻そうとするグレモリーと、それに抵抗する友野。

身体的アベレージは男女の差があるにも関わらずグレモリーが優勢であった。

 

「ちょっとグレモリー先輩マジでしつこいですって!もうそろそろ日も沈みますし帰らせてくださいよ!今日話された事は誰にも言いませんから!後離れて下さい色々限界です!」

「嫌よ!お兄様からあなたを保護するように言われたんだから!保護下に入るまで絶対に離れないわよ!」

 

友野は必死に腰に上半身(・・・)全てを使って抱き着いてくるグレモリーをなんとか剥がそうとしていた。しかし剥がれず必死の訴えも寧ろより密着した形にさせるだけになってしまった。

 

「あの、部長…そろそろ離してあげた方がいいと…」

「な!?裕斗!あなた私を裏切るの?!」

「いや、そう言うわけではなくって、ただこの指輪を知っているのは僕らと部長のお兄さんだけですし友野君が指輪を買ったのも昨日の夜中だったので、知られていないんじゃないかなって思って」

「……それもそうね」

「じゃ、じゃあ離してくれます?この件は蹴りついたみたいですし」

「なら私があなたの家に行って守るわ!」

「はい!!?」

 

諦めてくれるかと思いきやまさかの展開である。寧ろ状況が悪化した感すらある。

 

「あの、リアス?なんでそこまでして……」

「そうと決まったら早速支度ね!朱乃!急いで着替えとかその他もろもろの用意をして!」

「いやいやいやいや何泊する気ですか!?いい加減諦めて下さいよ!」

「だって認めてくれないんだからこうなったら認めるまであなたを守るしかないじゃない!」

 

是が非でも友野に執着心を持つグレモリー。

友野は正直言ってかなり引いていた。

友野の中でのグレモリーのイメージが崩れていった。

何回か挨拶した程度に終わった仲なのにもかかわらずやたらと話しかけてきて変な人だなと感じたことはあった友野だったが、ここまでとは思いもしなかった。

 

「ハァ…分かりましたから、せめて今日だけにしてくださいよ?グレモリー先輩と登下校を一緒にしたらどんな噂が立つか分かったもんじゃないんで…」

「分かったわ!それまでにあなたを納得させればいいのね!」

「……も、それでいいです…」

 

誤解を解くのにも疲れたのか友野は溜息をつきながらグレモリーの意見に賛同した。

その光景を他のオカ研メンバーは一歩引きながら眺め続けていた。

 

ーーーーー

 

すっかり暗くなった坂道をグレモリーと友野は二人で歩いていた。左側の堀にある街灯が唯一の光源だった。右には暗くなるのに備える街が下に見える。

その二人の間は普通の学校の先輩後輩というにはあまりにも近かった。

 

「グレモリー先輩もうちょっと離れません?別に何かいる感じも無いですし気張りすぎですよ」

「いーえ!お兄様に絶対守るように言われているの!何かあってからじゃ遅いもの!むしろ私が一緒にいることを見せ付けているから被害がないかもしれないのよ!このまま続行よ!」

「えー……」

 

しかし二人の温度差は余りにもかけ離れていた。

そして友野はふと自分の手にしている指輪を顔の前に持ってきて眺める。

 

「しっかしこの指輪ほんとにグレモリー先輩の言ってる指輪なんですか?ゴツさ以外変わった点はないですけど?」

 

友野は未だに自身のつけている指輪がグレモリーの言うように価値のあるものとは思えなかった。

しかしグレモリーはそれをすぐさま否定する。

 

「だから言ってるでしょ。その指輪の真髄はあなた自身じゃなくて悪魔(わたし)達に影響のあるものなんだから」

「あー…なんか言ってましたね?なんでしたっけ?」

 

グレモリーの受け答えに友野は必死に先ほどオカルト研究部にて聞いた悪魔についてのあれこれを思い出す。

 

「だから私たち悪魔や人外を従える為作り上げた、唯一の人工の神器、それがあなたが手にしているソロモンの指輪よ」

「あーそうだったそうだった。で、この指輪がそのソロモンの指輪ってやつだって言う根拠はなんなんすか?」

「え?そりゃあモチロン……」

 

グレモリーが口を割ろうとしたその時……

 

キュアアアア!!!

 

その巨大な紫色のネズミは突如として堀の上から2人に飛びかかり襲った。

友野は突然のことに一瞬固まり、グレモリーは少し遅れ対応し、魔力の玉をネズミに打ち込む。魔力の玉を受けネズミは右の傾斜を落ちていったが途中で爪を立て勢いを殺し、坂を登り始める。体を少し揺さぶり埃を落としているあたり、いまいちダメージは負っていないらしい。

友野は硬直から意識を取り戻すと、すぐさま動揺が顔に浮かぶ。

 

「えええ!?な、なんスカあのネズミ!?ていうかグレモリー先輩今のって?!……え?!」

 

急な展開に友野はついていけず、何度もグレモリーと坂を踏ん張って登るネズミを交互に見やる。

 

「分からないわ!あんなネズミの魔物見たことないし、さっきの滅びの魔力もイマイチ効いてないみたい?不味いわね、どうやら倒す手段がないわ、てっきりお兄様が言ってた守るって、他の勢力からかと思ってたけどまさかこんな魔物みたいなモノのことを言ってたなんて!」

 

グレモリーも友野と同様に困惑していた。

自分の攻撃を過信したつもりはないがあまりにも効き目があらず、少しばかり冷や汗が流れていた。

 

(どうするの?さっきの様子から全然余裕そうだしこのままじゃ倒す前に私の魔力が切れる。連絡を取ろうにももうすぐ登り切りそうだし、そんな隙をつくれる相手でもなさそうだし…)

 

グレモリーは必死に策を巡らす。しかしその中で彼女は即座に思考の海から上がった。

 

「逃げますよ!グレモリー先輩!」

「っえ!?きゃっ!!」

 

友野が手を引き、来た道を逆走し坂道を登り始めたからだ。

突然のことにグレモリーは困惑し、登りきったネズミもすぐさま後を追う。その距離は最初は開いていたがすぐ様縮まりつつあった。

 

「ちょ、ちょっとユーキくん!?なんで逃げるの!倒さないとどこまでもついてくるわよ!」

「んなもんなんとなくですけど分かりますよ!でもこっちの方がまだ可能性がある!」

 

友野は必死にグレモリーの手を引きながら全力で走りぬく。後ろを振り向かず、後先も考えず、ネズミの声も聞かず、グレモリーを繋ぐ手を力一杯に握りしめ唯一直線に走り抜けていた。

 

「可能性?!どういうこと?!」

「まずオレが反撃を切り捨てたのが、あのネズミはさっきのグレモリー先輩の球みたいなので攻撃くらってもピンピンしてた!だったらまず今のオレらにある攻撃手段が全部効かないってこと!オレはそんなドラグソボールみたいな攻撃できないし、出来たとしても付け焼き刃だから効果も期待できない!」

 

友野は叫ぶようにグレモリーに説明をする。既に息が上がりつつある。

 

「ほんで二つ目がよく分かんないから!あんなビックサイズの殺意剥き出しのネズミが今の今までこの情報化社会の中で噂にもなってないなんておかしいにもほどがある!コレが初めての犯行でも!突発的に現れない限り、あのネズミが誰にも気付かれずに身を隠してきたなんて、普通のネズミと同程度の思考能力ならありえない!他に別の何かがいてもおかしくない!」

「……たった一瞬でそこまで思い至ったの……?」

 

たった一瞬で、それも得体の知れない恐怖が目の前に迫ってきている状況下の中で、そこまでの判断を瞬時にした友野に、グレモリーは息を飲んだ。

その間も友野は全力で走り、過呼吸気味になっていた。

 

「それで…グレモリー先輩……力貸してください…」

「へ…?」

 

友野は息を切らしながらグレモリーに作戦を耳打ちで伝える。

そしてグレモリーもその作戦を聞き、首を縦に振った。

 

----------

 

「お、あれが今代の指輪の適合者か。サーゼクスの奴から急に電話が入って来てみれば、コレぐらいの危機とも言えないような危険、自力で攻略してくれないと困るぜ?」

 

とある住宅の屋根上にて、1人の男が友野とグレモリーの逃走劇を見ていた。男は2人が危機的状況にいるということに気づいているようだが、手を貸す気はサラサラないらしい。男は至極リラックスして2人を眺める。

 

「ん?ありゃあ翼か?なるほど。飛んで逃げるのか、しかし女性に負担を掛けるのは感心しないなぁ。そういや今のメギドには全員羽が付いてたんだったな、しばらく見てねぇから忘れちまった。おっと今は悪魔って呼ぶんだっけ?」

 

男は腕を組み感慨深く呟く。

 

「しかし、やっと巡り会えたか。長かったもんだな、オレらが悪魔社会を作って引退し何年経つんだ?その後もハルマの作った派閥が戦争仕掛けてくるは、2匹の蜥蜴がその戦争に割り込んで封印に時間割くわで一時期はひどいもんだったな…」

 

男は腕を解くと改めて2人の逃走劇に目をやる。

そしてヒゲに手を当て愉快げに囁いた。

 

「だがコレで指輪に相応しいやつか否かが分かる。あの女性に頼まれれば助けてやるかも知れんが、そうなったらオレのお前に対する評価が上がる事はなくなると思うがな?」

 

そう言いながら男は腰に挿してある薔薇の意匠が施された剣を握り独り言ちる。

 

「お前はこの世界をメギドラルから守るための鍵だ。お前の意思に関係なく、世界はお前を求めるぜ。生きたいんだったらこんなとこで死ぬなよ?」

 

その後ろ姿はどこか覚悟に満ちていた。




実を言うと作者は持っているメギドがかなり少なく、ゆえに登場してくるかも知れないメギドが少なくなってしまうかも知れません。
ストーリーも第36ステージで止まっています。
なので活動報告にてメギドのPRをしてもらいたいなと思います。
1人でも多くのメギドを出したいので、どうかご協力お願いします。


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第2話 少年少女の一夜

サバトにて、初の課金。30連分購入。
成果
ダブりメギド3名。
新入メギド2名
SSRオーブ1つ……
今回の分合わせてガチャ産メギド20位しか居ないんだけどな……

今回は難産。
にわか故口調が難しい。
故に短い。
故に筆が乗らない。
故に書きたいとこまで行かねぇ!!


「グレモリー先輩、ここですオレん家。ありがとうございます。運んでもらって」

「いいわよ別に。それじゃあ入りましょ?」

「や、やっぱまじで泊まるんですか?」

「当たり前よ!あんなネズミと出会った後よ?むしろ余計に警戒するわよ!」

「俺としてはグレモリー先輩にあんなネズミの相手させて自分だけ安全圏に逃げようとしてるみたいで気がひけるんですけどね?」

 

オレの家の前でグレモリー先輩とオレはそんなことを言い合っていた。

あの後グレモリー先輩の羽を使ってオレごと飛んでネズミを撒いたのは良かったが、その事で逆にグレモリー先輩のやる気を引き上げてしまった。

こりゃ絶対に今日以降も止まる可能性が上がったな。

そしてそんな心境のまま、オレは家の鍵を開けて家に入り、グレモリー先輩も後に続く。

 

「あら?あなた親は家にいないの?」

 

グレモリー先輩は玄関に置いてある靴がオレの分しかないのを見てオレに問いかける。この質問に対して、オレはどう説明したもんかと頭を悩ませる。説明できないこともないが、空気が悪くなること必至だ。

 

「あー、2人とも共働きでいっつも帰るのが稀なんですよ。今日も一週間以上は家開けるって言ってましたし」

「あらそうなの?ふふ、有希くんの彼女と言って驚かせたかったのに残念だわ?」

「んなこと有り得ないって両親は考えるから驚かないんで大丈夫です。グレモリー先輩こっちですよ。今日泊まる部屋」

 

グレモリー先輩のシャレにオレは対応しながら、グレモリー先輩の泊まる部屋に案内する。

と言っても俺の部屋なのだが。

 

「んじゃ今日泊まる部屋ココでいいですか?ちょっと散らかってますけど」

「止まるのとは少し違うのだけれどね?」

「そんじゃあグレモリー先輩が寝んのがベットで俺が敷き布……」

 

オレはグレモリーの話を半ば無視して話を進めるが友野は言い終わる途中で考える。

『ひょっとして男子高校生が使い古したベットにグレモリー先輩を寝かせる事の方がむしろ失礼なのではないか』と、『異性が使ったベットで寝るよりも別の部屋で敷布団を敷いてそこで寝かした方が良いものではないか』と。

むしろそっちの方が正解である可能性が高い。

 

「グレモリー先輩。敷布団とオレの使い込んでるベット。どっちが良いですか?」

 

オレはグレモリー先輩に問いかける。

女性がそう簡単に男の使い込んでるベッドを使うのは違和感がすごいかもしれない。

オレも枕が変わると寝付き悪いタチだからな。

前に兵藤の家泊まった時一緒にいた元浜が大分被害を受けたらしいし。

なんか首を執拗に蹴られて寝違えが起こり帰ったその日は一日中首が動けなくなったらしい。オレはそれを聞いて本浜に湿布を奢った。

 

「そうね、じゃああなたと一緒に同じベットで寝るわ」

「話聞いてました?」

「あなたこそ私の今日の話聞いてた?」

 

あの時のグレモリー先輩は笑顔だったけど静かにキレてる様に見えてなんかヤバイ気がした。

見事に言い返されてオレは抵抗をやめた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「先輩なんか食べられないものとかあります?好き嫌いって意味じゃなくて」

「そうねー、特にないわ。それより料理を任せても良かったの?手伝うけど?」

 

そして今、友野はカウンターキッチンの台所で食材を出しながらリビングにいるグレモリーと会話をしていた。

グレモリーはリビングのソファに腰掛けながら窓を眺めて友野に声をかける。

 

「一応客人なんですし飯くらい出しますよ。むしろここ最近一人で飯食う機会しかなかったですし、むしろ食ってってください」

「じゃあ遠慮はしないわ」

「つっても簡単なもんとデザートぐらいしか作れないっすけど」

「へぇ、そんなのができるの?」

「ええ、最近は凝り始めて宮廷に出てくる様なデザートとか山積みのパンケーキとかにも挑戦しましたしね」

「美味しそうねー、私にも作ってくれないかしら?」

「いいっすよ。今は材料がないんで作れないっすけど、ちょっと他の人の意見も聞いて見たかったんで」

 

いつのまにか友野とグレモリーはお互いの顔を見ずに話を弾ませていた。

友野は包丁で野菜をカットしながら。グレモリー先輩は窓からの景色を眺めながら話している。

先程まで巨大なネズミに追われていたとは思えない様な落ち着きっぷりである。

そして数分後…

 

「いやーいい食いっぷりでしたねー、グレモリー先輩」

「ちょっと、女の子にその表現はどうなの?」

「美味しそうに食べてるのが似合ってるってことですよ。料理作った身としては嬉しいですから」

「……そう、思ってた答えと違うけどいいわ…」

「……なんかすいません」

「謝らなくていいから、私が虚しくなるわ」

 

食事を終えて二人は団欒を楽しんでいた。しかしグレモリーは終始チラチラとあたりに目をやる。警備ということを忘れてはいないらしい。

 

「さてと、それじゃあ有希君。これからどうするのかしら?」

「まぁ今日は風呂入れてそのまま就寝ですけど?あ、風呂は先入ります?あと入ります?それとも他人の家の風呂入らない主義ですか?」

「お風呂は一緒に入るとして、就寝となると隙が大きいわね……」

「今サラッとケッコーやばい発言しませんでした?」

 

二人は和気藹々と話を進めていく。

そして風呂場やベットなどで一悶着あったのだが、それは完全な蛇足であった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「うーん、やっぱり無いなぁ、あの指輪に関する本……」

 

真夜中の駒王学園の図書室にて、駒王学園高等部二年男子生徒、木場はスタンドライトの明かりのみをつけたまま本を漁っていた。薄暗い夜中に、照明をつけずに本を読んでいる姿は芸術的と言うべきか、不気味と言うべきか、側から見ると中々に独特な雰囲気であった。

そんな中で木場は黙々と本を漁っていた。

 

「あれだけ部長が重要視する指輪なら過去に何かあったはずだと思ったけど…重要事項すぎて、抹消されたのかな?」

 

木場は椅子の背もたれに倒れ込みながら今日の出来事を思い返す。

リアス・グレモリーの話した、長年連れ添った自分たちですら知らなかった事実。それを自分らではなく、今日初めて悪魔を知ったという友野に話すと言うことが、木場の中で一種の嫉妬を抱かせ、木場の興味を惹かせ図書室に足を運ばせていた。

しかし、木場を動かしていたのはそれだけではない。

 

「……どうして…どうして友野くんがあの指輪を……」

 

『よし、これで完了だ。研究が完成するまでにこの《指輪》の適合者を見つけられればよかったのだが、流石に高望みが過ぎるか。フォトンを操作できれば、私の悲願は私の思い描く以上のものになるはずなのだが……あの男のいう事だ、ある事は間違いない。早く見つけなければ』

 

木場の運命を変えたあの日に見た、聞いた事を木場は思い返す。

幼かった頃の自分が必死に建物の外から部屋の様子を慎重に覗き見た先に男が持っていた、友野が嵌めていた指輪と全く同じ指輪。部室に入った時には、一目見て息が上がったが、その後うまく誤魔化し、指輪をなるべく見ないように紅茶を飲んだりしてやり過ごすのに苦労をした。

木場はそれから部活が解散の流れになると急いで図書室に向かった。駒王学園の図書室は悪魔側の関係者が運営しているため、悪魔の世界の文献が集まりやすく、悪魔の木場が使う場合は多少の融通が利きやすいからだ。しかし数時間経過しても調べつくそうとしたが、木場が欲している情報は何も無かった。

 

「本当は見間違えなのかな?いや、あれは絶対に一緒だった。あの指輪…一体なんなんだ?どうして…」

「木場先輩?」

「うわぁ!?」

「にゃ!」

 

思考の海へと落ち掛けた木場であったが、ここで横槍が入る。

突然のことに驚きつつも木場は声のした方へと顔を向ける。

するとそこには、驚いて目をパチクリさせて尻餅をついた態勢の塔城がいた。

 

「ああ!ゴメンね小猫ちゃん!驚かせちゃったね?」

「いえ、心配要りませんこれくらい。それより先輩、この本の山…」

「ああ、実は今日の話を聞いてたら、少し気になっちゃってね。個人的にあの指輪がなんなのか調べてただけさ」

「……そうですか、それじゃあ帰りましょう。もう夜も遅いです」

「そっか、もうそんなに時間が…あれ?じゃあ小猫ちゃんはどうしてここに?」

「部長から借りていた本を返すのを忘れたので、部室に置いていこうとしたら図書室の明かりがついていたのが見えたんです」

「本?」

 

木場は子猫の発言に少しばかり不思議なモノを聞いたかの様に反応した。

普段のグレモリーは本を読む様な質ではなく、そんな彼女から借りた本に興味があったからだ。

 

「はい、部長がいつも読んでいる本で私も初めて読みましたけど、面白かったです。明日次巻を借りる予定だったので忘れない内に返しておこうかと」

「へぇ、子猫ちゃんがそんなに面白いっていうなんて、今度借りてみようかな?」

「はい、お勧めします」

 

この時木場はミスを犯した。

少なくともこの時小猫が持っていた本が、自分の欲しい情報が多少でも記されているかも知れないと考えられなかったのだ。

その本の名は……

 

 

 

『我々ソロモン72柱の始まり 祖たる悪魔達の歩み』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ようやく日本に着いたのです。やはりアーシアさんといるといつも以上に上手くいくのです」

「ありがとうございます皆さん。ここまでお見送りしてもらって、本当に感謝します」

「なぁに、これぐらいお安い御用さ。アンタ等には向こうで世話になったからな。これぐらいの送迎が出来ねぇと立つ瀬がねぇぜ」

「「「ありがとうごぜぇやした!姐さん!!」」」

 

同時刻、某空港にて。

可愛らしい少女2人と黒服づくめの厳つい男達を引き連れた高級な見た目をした毛皮のコートを羽織ったサングラスの男が向かい合っていた。

それだけでも怪しいのに、更に怪しいのがサングラスの男が引き連れている黒服全員が少女達に対して平身低頭で向き合っていることであった。

 

「構わないのです。奇跡の子は皆を救うべき存在なのです。それはどこへ行こうとも変わらないのです」

「へ、流石だね嬢ちゃん。最初にあった頃とまるで変わってねぇ。その揺るぎなさは見習いたいもんだ」

 

少女のうちの一人、マラカスを持った紫の髪の少女は両手のマラカスを振りながらなんて事はないとサングラスの男に告げる。それを見ると男は満足気にニヤリと笑った。

 

「しかし良いのかい?ここまででよ?なんだったらウチの組総出で目的地まで送ってやるのも訳ないぜ?」

「大丈夫です。最後くらいは自分たちの手で行きたいので」

「ま、そういうと思ったぜ。アンタらが決めたことなんだったら、これ以上は野暮ってもんだな。だが困ったらすぐにオレらを頼りな。手ェ貸してやるからよ。アーシアの姉御」

「も、もう!からかわないでください!さ、早く行きましょう!」

「あ〜れ〜」

 

男はもう一人、お尻にかかるほどに長い金髪を持つベールを被った修道女の服を着た少女、アーシアにも目を向ける。

アーシアも先ほどの少女と同様に助け入らないと断り、からかわれ照れている事を隠す様に隣にいたマラカスの少女を引きながら空港を出て行く。

 

「アーシアさん。まだ他の皆さんとの挨拶が済んでいないのです。止まって欲しいのです」

「ダメです!ここまで来たら後少しなんですから、早く行きましょう!」

「むう…わかったのです。それでは皆さんさようならなのです」

 

アーシアに引かれる少女は引かれていない方の手でマラカスを振りながら男達に別れを告げる。

マラカスの音と共に、男達のすすり泣く声が出始める。しかしアーシアは一度も振り向かずに空港を出て行った。

そして空港を出て少しした後にアーシアはピタリと止まった。

 

「さあ、ここからまた私達二人での旅のスタートです!また一から頑張りましょう!」

 

そう言い、アーシアは笑いながらマラカス少女の方を向く。

その顔にマラカスの少女は表情を変えずにこくりと頷く。

 

「ようやくアーシアの顔から別れのさびしさがでなくなったのです。奇跡の子の先輩として鼻が高い限りなのです」

「は、はい!もう泣きません!私は成長したんです!」

 

アーシアは、両手で握りこぶしを作り鼻息荒く宣言する。

その姿は非常に微笑ましいものであった。

 

「それでは行きましょう。レイナーレさんが待つと言っていた『駒王町』へ!」

「はい!急ぎましょう!クロケルちゃん!」

 

マラカスの少女、クロケルはマラカスを振り上げ、アーシアは握りこぶしを高く上げる。

彼女らの旅は再び始まった。

 

 

 

 

それにしても夜中の都心部で少女二人が和気藹々としているにもかかわらず誰も不思議がらないのはいったい何故だろうか?

 




活動報告にてメギドPR募集中!
ご意見お願いいたします!


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第3話 少年の日常は終わる

久々の投稿。
サバトではテルミナスメギドを一人迎えることができました(バールゼフォンとは言っていない)
それ以外にも新入メギドを3〜4人迎え入れられました。
前回の反動が来たか?
時間空けた割にクオリティ低い。


 目がさめると何時もとは違う感覚があった。

 まず一つは触覚、体の所々からなんとも言えぬ生暖かい感触が俺の体を包んでいた。背中だけに何やら柔らかい中に少し硬い感触もする。

 次に嗅覚、今まで嗅いだことがない様ないい匂いがする。できればもうちょっと嗅いでいたい位だ。

 最後に聴覚、何やらスースーと寝息を立てる声が耳元から聞こえてくる。起きたてなのにまた眠くなってしまう位に穏やかな寝息だった。

 以上の点から、俺は即座に状況を整理する。

 そして即座に思い至る。

 今目を覚ましたら絶対にヤバい気がする! と。

 最悪まだ視覚は覚醒していない。寝息を立てているのなら今のうちに脱出すれば……

 

「ううん……有希……」

 

 聴覚からのクリーンヒット! 

 普段の彼女とは違う眠たげな蕩けたヒーリングボイスが耳から直接囁かれる。

 そしてかなり密着しているのか息が直接かかりそれがかなりクる(・・)

 早く抜け出さなければいろいろなものがやばい気が友野はしてきた。急いでグレモリーの抱き枕状態から抜け出そうとする。

 しかし友野は分かっていなかった、グレモリーが彼自身から暖を求めていたことを。

 故に気付けなかった。その暖が離れようとするならば、一体人はどう行動に移すのかを。

 

「んあん、ダメよぉ〜……」

 

 彼女の手を解こうとした友野であったが彼女は更に拘束を強くした。

 柔らかい感触がよりダイレクトに友野に伝わってくる。

 真綿で首を絞められる感覚に襲われる友野であったがまだ諦めるには速い。友野は無理やり拘束を振り解こうと多少強引に体から抜けようとする。

 

「んん……ぁん……うぅあう……」

 

 途中途中でやけに艶かしい声が後ろから聞こえ、友野の体を細い腕が彼の体を這う様にして捕まえようとしてきたが友野はなんとかこれを回避。手が体を滑る時、変な感覚に陥りそうになったのは余談である。

 友野は抜け出し、部屋を出た後に呟く。

 

「……ふぅ、なんとか突破できたけど、これが連日続くってなると俺の理性がもたないな。目を閉じていたにも関わらずあのエロさ……グレモリー先輩恐るべしだな」

 

 友野は改めてグレモリー(彼女)がいかに魅力的かを再確認したのであった。

 

 ――――――――――

 

「今日も続行よ」

「やっぱっすか?」

 

 友野の家のリビングにて、グレモリーと友野は朝食を食べながらそんな会話をしていた。

 ちなみに今日の朝食はトースト1枚にマーガリンとジャム、そして友野は牛乳、リアスはモーニングコーヒーというシンプルなメニューだった。

 

「当たり前じゃない! 昨日は確かにあのネズミはこなかったけど、時間差で油断したところを! っていうのが考えられるわ。だとしたら、少なくともそうねー? 一ヶ月くらい一緒に居ないと、安心は出来ないわね」

「一ヶ月の間に俺が別の原因で殺されそうですけどね」

 

 グレモリーと一ヶ月も生活を共にするかもしれないと聞き、友野に未来が浮かび上がる。

 嫉妬の目で見つめる全男子生徒、興味や関心で黄色い奇声を上げる女子生徒が容易に想像できた。

 めんどくさいったら無い。

 そこで友野は予防線を張りに行く。

 

「じゃあせめて昼間はいつも通りの距離感でお願いしますよ? でないと俺の身が保たないと思うんで」

「いいけど、緊急事態になったら聞いてられないわよ?」

「そん時は俺も我慢しますよ。内容によりますけど。ていうかグレモリー先輩、一ヶ月も俺の護衛続けて大丈夫何ですか? ここの領主してるんでしょ? じゃあ長居できないんじゃ?」

「その辺は心配要らないわ。お兄様に連絡をしたら直ぐにこちらに使いを寄越すから、私達が護衛を務めるのはその間だけよ」

「へー、ってちょっと待ってください? 私()?」

「ええ、私()。流石に一ヶ月もの予定は想定してなかったから、1週間のうちの2日か3日くらいは私の眷属の一人を護衛に寄越すと思うわ」

「仮になんすね。えーっと眷属っていうと……」

「まぁオカルト研究部のあの子達よ。例外も一人いるけど、あの子達が護衛に参加すると考えていいわ」

 

 友野は昨日のオカルト研究部の面々を思い返す。そして思い返しが終わると、鬱陶しそうにため息をついた。

 

「はぁ〜……駒王学園の二大お姉様に、一年マスコットの塔城さん、さらには王子の木場様が護衛とは。王様にでもなった気分だな」

「あら、あながち間違いでもないわよ? その指輪をしてるんだから王としての素質はあるって事なんだから」

 

 グレモリーとの軽口の叩き合いに、友野はぐったりと肩を落とし、左手に目をやる。

 ギラギラと赤い光を放つ5つの指輪と昨夜まではなかった手の甲に刻まれた紋様がいやでも眼に映る。

 

「っていうかこの指輪本当に俺とグレモリー先輩以外に見えてないんすか? ちょっと怖いんですけど」

「大丈夫よ。なんせお兄様が電話した時に教えてくれた隠蔽術を施したんだから。むしろそれが見える、触れられるってことは、()()()()()()って証拠よ?」

 

 グレモリーはまるで薔薇のような笑顔を友野に向けながら告げる。その顔は言外に『信じてくれなきゃどうなると思う?』と言っているようで、友野は言及をやめる。そんなことよりも友野には気にすべきことがあったのだ。そう、指輪をした左手を見られるよりも優先すべき事柄が。

 

「にしても本当にグレモリー先輩以外も俺の護衛に着くんですか? 嘘じゃないですよね?」

「ここで嘘をつく理由はないわ。私一人で済ませたいけど。なかなかそうはいかないのよ」

 

 事実確認を済ませると友野は今後の事を憂いため息をつく。グレモリーだけでも嫉妬の目が怖いと言うのに、ここに昨日のオカルト研究部の面々が加わるとなると、バレたら尾びれ背びれどころか胸ビレに足と翼を生やして何処かへ飛んでいきそうな位に馬鹿馬鹿しい噂があちらこちらへ流れそうだ。

 

「あーあ、バレたらたまったもんじゃないな。ま、背に腹は変えられないし、安全を考慮するとなるとしゃあないことか……それじゃあ話もこれくらいにしてグレモリー先輩。俺そろそろ登校時間なんで、準備してくださいね?」

「あらもうそんな時間? というより気にしないで、私は大丈夫だから。先に出てちょうだい、鍵も閉めちゃって大丈夫」

「いやじゃないと合鍵渡さないとでしょ? やめて下さいよただでさえここ住宅地に近いから知り合いが多いんすよ?」

「私は悪魔よ? それくらいなんとか出来るわ」

「……合鍵勝手に作るのは無しっすよ?」

 

 そう言いながら友野は床に置いておいたショルダーバッグを肩に掛けながらリビングから出て行った。バタバタと足音が響く後に、鍵が閉まる音が聞こえる。

 そしてリビングに一人残るグレモリーは飲みかけのコーヒーに口を付ける。

 

「魔法陣は昨日のうちに作っておいたし、いつでも準備OKなんだから」

 

 グレモリーは誰も居ないはずのリビングでそう独りごちる。その言葉に反応するかのごとく、魔法陣がリビングに浮き上がった。

 

 ――――――――――

 

「さーてと、グレモリー先輩の言うこと信じたはいいが、悪魔的何かでどうこうするのかは今回は見逃すか。自分家改造されるのはパーソナルスペース侵害されるみたいで気分悪いけど、グレモリー先輩が俺の家から出るとこ他の奴らに見られるよりかはマシか」

 

 友野はいつもの通学路をショルダーバックを背負いながら歩いていた。

 すると目前で顎を限界まで開き驚愕の表現を浮かべたまま固まっている二人を発見する。

 友野はその静止した二人に嫌々ながら声をかける。

 

「何してんだ? 松田、元浜?」

 

 昨日の助平三人衆の内の二人、松田と元浜であった。

 話しかけられた二人は依然として固まったままであり、友野の声には全く反応を示さない。まるでモアイ像のごとく固まったままだった。

 ついに最後まで反応を示さなかった二人に友野は最終手段に出る。

 関わらなくてもいいものを自ら関わっていく辺り、普段は軽くあしらっているが見捨てられないらしい。

 

「おーい松田ー! 元浜ー! 兵藤に彼女できたってよー!」

 

 友野は二人の耳元で叫ぶ。これは友野流の二人の意識の覚醒の仕方である。

 普段からつるむことの多いこの3人は兵藤も入れて4人で泊まり込み、遊ぶこともあり、二人が寝込み続けなかなか起きない時はこの言葉で起こしてきた。唯一の欠点は意識が覚醒した時に二人からの怒号が飛んでくることだが。

 友野は言い終わると耳を塞ぎ目を閉じて二人の叫びを堪える姿勢に入る。しかし叫びは飛んで来ず友野はそーっと目を開ける。

 すると二人は未だ固まったままだった。

 いよいよ混乱が最高レベルにまで高まった友野は二人の肩を揺する。

 

「おい松田、元浜? どうしたってんだおい? 起きろー! 死ぬんじゃねぇ! まだ兵藤は彼女出来てねぇから! まだ俺らと同じだから! 希望捨てるな!」

「……ちげぇよ」

「へ?」

 

 友野の発言に始めて元浜が反応を示す。しかしか細い声で何を言ったかわからず、友野は聞き返す。

 するとその反応を皮切りに二人は友野の肩を力の限り掴むと喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。

 

「友野! 兵藤の野郎が、彼女を作りやがったんだよぉおおおおおお!!!」

「もう俺たちとは違うんだ兵藤は! あいつは、アイツはぁ!! ……俺たちの敵! リア充に成り下がっちまったんだよぉおおおお!!!」

「………………は!?」

 

 二人から告げられた言葉は友野を驚かせた。

 唖然として少しばかり脳の処理が追いついていない友野をよそに、二人の叫びは更に苛烈さを増していく。

 

「今朝兵藤がよぉ! 隣に女子を連れて歩いてきてよぉ! スッゲー自慢気に『俺の彼女だ』って言ってきたんだよ!」

「しかもスッゲェ可愛い子でよぉ! ウチの学校のリアスお姉様と引けを取らないくらいの美女だったんだよ!」

「なぁ許せねぇよな友野ぉお! 一緒にアイツ潰す計画建てようぜぇ! 裏切り者に罰を与えてやろうぜ!」

「い、いや落ち着けお前ら……何が何だか……」

 

 友野は必死になだめようと二人を手で制する。

 しかし二人は表情を未だ変えず叫び続ける。

 

 

「落ち着いていられるか! あの兵藤だぞ! あの兵藤に彼女が出来たっていう事ですら腹立たしいのに、しかも絶世の美少女! これを恨まずしてどうするというんだ! 友野! 同じ彼女なし同士、一緒にアイツを貶められる所まで貶めてやろうぜ!」

「そうだ! 彼女持ちの時点で俺らの敵! 裏切り者! アイツはオレよりも後、或いはずっと童貞であると思ったのに! これは立派な裏切りだ! 粛清の時は来た!」

「いや、だから……」

 

 友野は宥め続けるが未だ二人の慟哭は止まらず、更に苛烈さを増し、最後は最早ただの雄叫びであった。

 

「「おおおおおおおおおおおお!!」」

「うるさいわぁ!」

「「あべっす!」」

 

 ついに痺れを切らした友野は二人に空手チョップを食らわせる。獣と化し、友野の肩を握っていた二人にとってその攻撃を避ける知性は残っていなかった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「というと何か? 兵藤がその『天野夕麻』ちゃんって言う女の子を連れて来て、お前らはそのショックのあまりに立ち尽くしていたと?」

 

 友野は理性が戻った二人から聞いた話を掻い摘んで要点を述べる。その言葉に二人は力強く肯定し、そしてその光景を思い起こして再び怒りをあらわにする。

 

「そうだぜ友野! 兵藤の野郎、なんでも昨日の夕方頃に急に告白されたらしく、即オッケー出してそのまま付き合い始めたんだと! さっき一緒に仲良く学校に向かって行ったよ! 信じらんねぇよ全く!」

「ふーん、そうなんだ。俺らの中から遂に彼女もちができたか……よかったな」

「「良くねぇよ!」」

「どぅわっはい!!?」

 

 突如として叫び出した松田と元浜に友野は驚き耳を塞ぐ。今だに耳の中で反響する音に顔を顰めながら友野は二人に問いただす。

 

「ったくなんだよ突然よ? 何が不満なんだよ!」

「不満しかねぇわ! あの兵藤だぞ! 俺ならまだしも、あの兵藤が彼女を作れるなんて万に一つもあり得ねぇと考えていたのに! あいつは一生童貞のままい続けると思っていたにも関わらず作りやがったんだ! これを怒らずしてなんとする!」

「そうだぜ! 我等の裏切り者には厳正な処罰を下さなきゃならねぇ! ツー事で!」

 

 松田と元浜は自身の意見を言い終わると同時に、友野の肩を掴んだ。その顔は断ったら殺すというような、反論を許さない顔だった。

 

「「友野!!」」

「ん?!」

 

 そのあまりの圧に友野は思わず返答してしまった。そして血気迫る表情の二人は声を揃えて言った。

 

「「アイツと夕麻ちゃんの破局を手伝ってくれ!!」」

「……は?」

 

 その言葉を理解するのに、友野は数秒の時間が必要だった。

 

 ――――――――――

 

「お! なぁ友野! 聞いてくれよ! オレ実はさ……」

「彼女できたんたんだろ? もう元浜と松田から聞いたよ」

「え? もう聞いてたの? なんだよもうー、驚かせてやろうと思ったのによー!」

 

 駒王学園の教室の一角にて、兵藤と友野は軽口を叩きあっていた。

 少し離れた席で元浜と松田が恨みがましい目をして二人を睨んでいた。いや、正確には兵藤のみをだが。

 

(ったくあいつら、もう少し落ち着けっての。俺が色々と探り入れて彼女とのデートを台無しにさせる算段立ててやるって事で向こうからは何もしてこねぇからいいが。その浅ましさが彼女を作れない一端だと言うのを自覚すればマシになるのによー)

「んなことより兵藤、お前今週の日曜日にデートするんだと? あいつらから聞いたぜ?」

 

 友野はチラリと元浜と松田がいる席に目を向けながら話を振る。

 兵藤はそんな事は眼中にもなく、照れ臭そうに頭を掻きながらにやけヅラで答える。相当に浮かれているらしい。

 

「へへ、まぁな! 実はデートプランも考えてるんだー!」

「ふーん、用意がいいな……」

 

 兵藤の舞い上がった様子を見ながら友野は頭を働かせる。

 

「ん? どうしたよ友野?」

「……なぁ兵藤、実を言うと、縁担ぎみたいなもんで、すぐ近くの公園があるだろ? あそこ、デートスポットにいいらしいぞ。今の時期だとそうだなー、6時前とかになるといい具合に日が落ちるんだ。ロマンチックな演出して彼女に飽きられない様にするには、それがオススメだぞ? 現によくあの公園でデートしてるカップルよく見ただろ?」

「おお、サ、サンキュー友野! けど急にどうしたんだ? なんか気持ち悪りぃんだけど?」

「なぁに気にすんな、見え張って普段行かない様な場所デートコース憎まれたら長続きしないと思ったから助言しただけだ、愛想つかされない様にしろよ?」

「ウッセーよ!」

 

 友野は兵藤にオススメのデートスポットを指示し、席を離れる。既に友野の頭には次の算段があった。

 

(これで恐らく兵藤は6時前にはあの公園にいる事になる。俺の促した内容に従えばな。其処で兵藤と夕麻ちゃんとやらがいいムードになったらぶち壊しに掛かる……はぁあ、せっかくの休日に何やろうとしてんだろ、俺)

 

 友野は己の猜疑心にウンザリしながらも来たる日曜日に備えて、頭を冴え渡らせる。

 そしてチャイムが鳴り、教員が入り込む。出欠を取る声を聞きながら、友野はその顔もロクに知らない『()()()()()』について思いを馳せていた。

 

 ――――――――――

 

「ダメよ」

「やっぱり?」

 

 そして所変わり友野家にて、昨日と同じ様にグレモリーと友野は食卓を囲んでいた。グレモリーは友野からの話を聞くや否や即座に反対の意を述べる。

 

「日曜日の6時頃に外出したいと言われてもね? 今はなるべく外出は避けた方がいいと思うから、そういった行為はなるべく避けて欲しくて。昼間とかだったらまだ許せるんだけど、夕方頃になると少し難しいわ。お兄様からも無駄な外出は控える様言われているし、せめてお兄様の眷属か使いの者が来れば話は早いんだけど、今お兄様達は眷属総出で駆り出されてるから、人一人を送るのも苦労するみたい。私達の実力じゃ、いざという時守り切れる自信もないから、此処は我慢してくれる?」

「うううううん、でもなぁー」

 

 グレモリーからの矢継ぎ早な返答に友野はぐうの音も出ないでいた。確かに友野は今は謎の存在に追われる身、おいそれと夜中に外出しては捕まる危険性は上がっていくだけである。

 それを友野も理解しているのか、特に反論はしなかった。しかし不満げな様子がありありと見て取れる。

 それを見てグレモリーはハァと溜息をつく。

 

「分かったわ、要件を言って頂戴。簡単な事なら私の使い魔でも出来るし、最悪私か私のの眷属に行かせるわ。それでいいかしら?」

「うーん、俺はいいですけど、これをオカルト研究部員(あいつら)が受け入れてくれるかは分かりませんよ?」

 

 このままでは拉致があかないと思いグレモリーは折衷案を友野に提示する。その提案に友野も納得したが、彼の中にある懸念材料を提示する。

 その内容を聞いたグレモリーは眉をひそめるのみであった。

 

「そ、そう……そう言う事なの……だったら尚更外に出せないわ。人の恋路を他人がとやかく言うものじゃないわよ」

「いやー、俺もそう思います」

 

 グレモリーの返答に対して、友野は肯定する様にうなづく。その返答に面を食らったのか、グレモリーは目を開いて驚いた。

 

「あら意外ね。ショックを受けると思ったのに」

「自分から提案したわけではないっすからね。むしろ強要されたと言うか……」

 

『いいか友野、もし協力しなかったら木場とお前は一夜を同じ屋根の下で共に過ごした事のある関係だと言う噂をうちの女子を中心にばら撒くぞ? それでもいいならお前は協力しなくてもいい』

『一年の頃チョイチョイ話してたもんなー? それに嘘は言ってないからな。豪雨の時に一晩泊めて貰った事を言ってるのであって、それを向こう側がどう解釈するかは知らねー。さて、協力してくれるな?』

 

 友野は元浜と松田の交渉内容を、協力と言う名の脅しに近い内容の交渉材料を思い出し顔をしかめる。

 しかし、協力してはくれないだろうなと思い込んでいた友野の耳に入ったのはむしろ別の返答であった。

 

「分かったわ。それじゃあその二人とは別行動になるけど、私の方から一人を公園に向かわせるから、二人のデートを壊せはしないけどそれでいいわね? どうせそこまで積極的ではないんでしょう?」

「え?! いやいやいや! こんなくだらねー事にグレモリー先輩が関わらなくてもいいですって! いや、マジで!」

「いいのよ。それに……個人的な興味もあるから」

「……グレモリー先輩人の恋路に他人がどうこうとか言ってませんでした?」

「それとは違うわよ!」

 

 揚げ足を取られたように感じたのか、グレモリーは必死になって否定した。しかし力強く否定された友野は逆にグレモリーに対して猜疑心を抱いた。

 友野はもう少し聞きたいことがあったが、グッと堪えて夕食の続きを始めた。昨夜の様な同じ轍は踏まないらしい。

 

 ――――――――――

 

今、俺は史上最高の状況下にいる。夕日でライトアップされた公園で俺と夕麻ちゃんは二人っきりでベンチに座っていた。周りには誰も居ないし、俺の気のせいもあるかも知んないけど、今日のデートの始めと比べると距離が近いかもしれない。なんだかロマンチックな雰囲気だし、イケるか!?イケるのか!?

 

「ねぇ、兵藤くん……」

「な、なにかな?夕麻ちゃん?」

 

急に喋り出した夕麻ちゃんにドギマギしつつも、俺は彼女の方を向く。夕麻ちゃんは夕日に照らされてとても綺麗だった。そして夕麻ちゃんは俺に向かって告げた。

 

「実はね、あなたに一つだけ、お願いがあるの」

「お、おう!言ってみてよ夕麻ちゃん!俺が叶えられる事だったら、なんだって聞くからさ!」

 

彼女からのお願い。それを耳にした俺は彼氏の甲斐性を見せようと必死に口を回して大丈夫だと、問題ないと告げる。

それを微笑ましげに見つめて夕麻ちゃんは満足げにありがとうと頷くと口を開く。

 

「それじゃあ兵藤君……死んでくれる?」

「……へ?」

 

一瞬、彼女の言ったことの意味を理解できなかった。しかし、その意味を俺は次の瞬間理解する。何かが俺の頬を掠めて後ろに飛んで行ったのだ。振り向いて確認すると、それは俺の腕くらいの太さがある光の槍だった。

 

「ゆ、夕麻ちゃん?……」

「全く鈍いわね。おんなじことを何度も言わせないで。いいから何も言わずに死んでちょうだい」

 

夕麻ちゃんは再び槍を構えだし、それを見た俺はすぐさま走り出す。するとすぐ様後ろで蔑む様な甲高い夕麻ちゃんの声が聞こえる。しかし振り向くことなく、俺は走り続けた。

 

「うふふふ、どこに行こうと言うのかしら?もうこの場所一帯には結界を張ったから誰も助けに来ないわよ?あ、そうだわ、ただ殺すのは面白みがないから、あなたはいたぶって殺してあげるわ。腕を撃ち抜いたら今度は足を飛ばして、その後少しづつ心臓に近づけながら嬲り殺してあげる。さあ逃げなさい!早くしないと死んじゃうわよ!」

「ヒュー…ヒュー……」

 

俺は走り続けた。しかし光の槍はいつまでたっても降り止まない。後ろから聞こえる夕麻ちゃんの笑い声も鳴りやまない。次々と降り注ぐ槍に体を撃たれ血が流れる。やがて足も限界を迎え、ふらふらと俺は地面に倒れ込む。

すると夕麻ちゃんが空から羽を生やして現れた。もう俺の頭の中はパンク寸前であり、背中の羽に疑問を持つこともできなかった。

 

「あら、もう限界なの?まだ腕の一本も撃ち抜いてないわよ?相変わらず人間って本当に脆い生き物ね。まぁいいわ、ちょうどあなたで遊ぶのにも飽きた所だし、これで終わりにしてあげる」

「ハァ……ハァ……夕麻ちゃん、教えてくれ、なんで俺を……?」

「これから死ぬ人間なんぞに答える理由はないわ。さようなら、あなたとのデート、なかなかに詰まんなかったわよ」

 

そう言い切ると、夕麻ちゃんは光の槍を生み出して俺に標準を合わせた。命の危機だって言うのに、俺の頭の中は酸素が回っていないからか、今思えばバカみたいな考えが頭をよぎった。

 

『最後におっぱい位揉んで死にたかったなぁ……』

 

そう念じ終わったとほぼ同時で目の前が光に染まり、俺の意識は途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

夜中の公園の一角で白煙が立ち上る。それを見つめる少女、天野夕麻。別名を堕天使レイナーレは上空から見つめていた。

 

「……さてと、これで神器持ちを他勢力に渡る前に始末できたわね。全く、計画のためとはいえ、あんな子供みたいなデートに付き合わされるなんて、今思い出しても不快だわ」

 

レイナーレはその言葉を最後に立ち去ろうとする。人外である彼女にとって、下等生物と認識している人間を一人殺したところで何ら心は傷まないらしい。

 

「おいおい、相手の死亡を確認せずに立ち去るとは、少しばかりツメが甘いんじゃないかな?お嬢さん?」

 

その声は突如として白煙の中から聞こえた。レイナーレは驚きつつも振り返り戦闘態勢に入る。手には槍を生み出し、投げる用意をする。

やがて煙が晴れ、その正体が姿をあらわす。そこには死んでいるはずの兵藤の他に、もう一人男がいた。

 

「なぜ人避けの結界を張ったにも関わらず、人がいるのかしら?」

「それは秘密だ。わざわざ自分の首しめる様な真似はしないんでね」

 

その正体はバンダナを巻いた金髪の見た目十代の男であった。男は小振りのジャックナイフを取り出して、兵藤をかばう様にレイナーレと向き合っている。

 

「お、お前は……!何故お前がここに居る!ここ数十年はお前たちは活動をしていないはず!」

「お、俺を知ってるのか?まぁ基本俺らは今じゃ裏方だけど、昔やったことが中々に派手だし、そう簡単には忘れてくれねぇか」

 

男を見た瞬間、レイナーレの額から汗が流れ落ちる。それに対し、男は胡散臭い笑顔を振りまきレイナーレに話を持ちかける。

 

「ま、そんなことより、いくつかオマエに話があるんだが…一つ、どうしてコイツを狙ったんだ?二つ、コイツ以外にオマエの《《計(​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​)画(​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​)》》に関わる《《人(​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​)間(​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​)》》は後何人いるんだ?三つ、君の計画に何人の堕天使が関わっている?」

「……一つ目は神器を持っていたから。二つ目は後三人いるわ。三つ目も三人。これでいいか?」

「それだけ聞ければ満足だ。まあ安心してくれ、俺自身は手を出さない。これはグレモリーが対処すべき案件だし、()()()()()()()()()()()()()。だから実質、侵略行為はまだしていないわけだ。だから此方から手を出せば、先に攻撃したのは俺たちって事になる。そうなったら戦争だ。それはなるべく避けたい」

「……お前の目的はなんだ?」

「別に、大したことは思っちゃいねぇよ。ただ、あいつの器がどの程度のもんなのか知りてぇだけだ。久々の適合者だ。なるべく戦力になる様にしなきゃな。コイツはそのためにも必要なんだ、今死んでもらっちゃ困る」

 

男の返答にレイナーレは不満を抱く。男の言葉から、誰かしらの試験の為に使われようとしているのが分かったからだ。

しかしレイナーレはその不満を押し殺し、空へと飛び去る。そして忌々しげに兵藤の方を向くと舌打ちをして、今度こそ夜へと消えていった。

 

「さてと、兵藤一誠だったか?すまないとはおもわねぇけど、恨むなよ?コイツもオレらの陣営に引き込めればいいんだがなぁ…こればっかりはグレモリーの所が気付けるか否かだな。ま、これでアイツを此方側に引き込むことは出来るだろ」

 

男は兵藤を担ぎ上げると公園を立ち去っていく。そして去り際に男は囁く。

 

「さーて、『調停者』として出来るのはここら辺までだ。後は任せるぞ。グレモリーの跡継ぎ」

 

『調停者』、その名を冠する者が思うことは、今は本人にしか分からなかった。




メギドPR募集中。
そろそろクロスオーバー感を出したい所。


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夜の公園での邂逅

投稿遅れました。
待ってる人いないだろうけど……


グレモリー達が友野の護衛がついてから数日が経過したある日、その話題は唐突に告げられた。

 

「堕天使が騒ぎを起こしてた?」

「ええ、昨日の夜に監視用の使い魔から報告があったの。そこまで強い訳でもないし、特に害があるわけでもないから泳がして居たんだけど尻尾を出したのか、昨日の夜で近くの公園に結界が張られて居たのよ。私達が向かった頃にはもう誰も居なくて誰かと交戦した様な跡が残っていて……」

「へー……それってオレ目的?」

「それはないですわ。それなら直接コチラに乗り込んで来ればいいはず。堕天使は他者を見下す傾向が強いですから、特に中途半端な力を持ってしまったものはね、それをしないということは……」

「オレ以外の別件で堕天使が動いてる方が可能性としては高いってことか……」

「そういうことです。この件に関しては友野くんはあまり関わらなくてもいいですわ。あくまでこちらで処理すべき案件ですので、仮にもまだ無関係である人間を巻き込んでは領主としての地位が危ぶまれてしまいますから」

「あ、そうですか、でも困ったら言って下さいよ?一応これでももうそっち側の世界に足突っ込んでんですから」

「あらあら嬉しいですわ?それじゃあいつか頼みますわね?」

 

朝の友野家にて、友野は今日の護衛役である姫島と朝食を共にしていた。今日のご飯は姫島特製の朝定食らしい、和食メインのヘルシー志向でお茶まで尽くしに尽くされた優しい味だった。

しかし友野は姫島が淹れたお茶を飲みながらとある仮説を立てていた。

 

(昨日の夜中に公園で争いの跡……兵藤の奴、大丈夫か?ひょっとしてあの彼女が例の堕天使って可能性も……捨て切れねぇな)

 

未だに少しばかり寝ぼけたまま考え事をしている友野を見て、姫島は微笑ましげに自分の分のお茶を入れる。そしてその会話を皮切りに、二人の間に沈黙が続いた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ういーっす、おっはよおおおお!?」

 

沈黙の食事会を終わらせ、教室に訪れた友野に、走り込む男がいた。その男は友野を見つけ走り出すと、肩を無遠慮に掴み、友野に呼びかける。

 

「なあ友野!お前夕麻ちゃんって覚えてるよな!」

 

兵藤であった。兵藤は血気迫る表情で俺に迫ってきた。

俺は揺さぶられながらも、兵藤の質問に答えようと、必死に訴えかけてくる手を肩から降ろさせる。

 

「ああ、覚えてるって?夕麻ちゃんって子だろ?顔は知らないけど、お前がやたら幸せそうにデートの計画してたの覚えてるからな。あのニヤケっつら忘れるには中々にうざいから難しいと思うぞ?」

「………… !そ、そうだよな!夕麻ちゃんは確かにいたよな!」

「いやだから俺夕麻ちゃんの顔知らないっての、実在してるかどうかも今俺の中では怪しいとこなんだぞ」

 

 

友野は兵藤の突然の質問に困惑しながらも答え、兵藤はそれを聞いて安堵感を顔に浮かべる。そんな表情を見た友野は猜疑心から兵藤に尋ねる。

 

「なぁどうしたんだよ兵藤?お前が馬鹿なのは前からだけど、昨日一昨日でできた彼女の存在を忘れるほど馬鹿じゃないだろ?」

「……実はよ」

「おう」

 

兵藤は話した。自分が今まで経験してきたことを。彼女が突如として自分を殺しにかかってきた事。気が付いたら自分の家のベットに寝込んでいた事。今日の朝に元浜と松田に彼女のことを聞いたら二人とも、彼女の存在を忘れている事。その全てを友野に話した。

 

「おいおい兵藤。そりゃちと大袈裟が過ぎるぜ?そんな『BROACH』みたいな使い古された漫画の導入部分じゃないんだから、どうせ緊張してそこから変な夢でも見たっていうオチだよ。そんな嘘言ったって、すぐにあいつらに見透かされるぜ?」

(と言いつつ、なんかオレの中では一種の可能性が見えてきたんだけど……それはまだ言わない方がいいか……)

 

友野は兵藤の話に相槌を打ちつつも頭を働かせる。そして兵藤の気を逸らそうと、近くにいた元浜、松田に声をかける。

 

「ほら、あの二人いた。おーい元浜!松田!こいつ夕麻ちゃんと破局したってよー!」

 

そして友野は廊下にて出くわした元浜と松田に声を掛ける。

 

「ん?友野、お前何言ってんだ?こいつに彼女なんてできるわけねーだろ?」

「そうだぜ友野。お前まで兵藤みたいな嘘ぶっこくのか?つくとしたらもう少しましな嘘つけ」

「……あれ?」

(やっぱり兵藤の言う通り覚えてねぇ……ってことは十中八九今朝姫島先輩の言ってた『堕天使が起こした騒ぎ』が関係あるぞ……)

 

友野は表面上では驚きつつも、冷静に頭を働かせる。そして元浜と松田の反応を確認した兵藤が再び友野の肩を揺さぶり、必死に話しかける。

 

「ほ、ほらな!友野!あいつらはああ言うんだよ!なあ友野!お前しか夕麻ちゃんのこと知ってる奴はいねぇんだ!お願いだ!夕麻ちゃんがどこに行ったのか、探すの手伝ってくれ!」

「……いやまぁ、暇だから手伝うけど、オレその子の顔しらねぇぜ?」

「あ……」

「今気づいたのかよ……」

 

友野の指摘に気づいた兵藤の顔は、とても申し訳ない顔をしていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「収穫なし……か」

「悪りぃな友野。付き合わせちまったのに何も進展しなくてよ……」

「気にすんなって。普段のお前らの馬鹿騒ぎ未然に防ぐ為に割いてる労力に比べりゃだいぶマシだ」

 

その日の夕方頃、友野と兵藤は自販機のそばでジュースを飲みながら休憩をしていた。自販機で買った炭酸飲料のペットボトルの蓋を開けながら友野は物思いに耽る。

 

(何も進展がなかったって事は、益々今朝の一件の堕天使の可能性が湧いてきたぞ?堕天使がどれくらいこの街にいるのか知らねぇが、昨日の夜中に公園にいた奴なんてたかが知れてるしな)

(けど、仮に見つけたとしても俺たちじゃどうすることも出来ねぇ、同じ人外のグレモリー先輩があんなドラグソボールみたいな技使えんだから、堕天使(むこう)もそれを使えると考えた方が妥当だろ。だとすれば……俺たちが手を出せるのはここまでなのか?)

 

「……の…もの!友野!おーい聞こえてるかー!」

「あ、あああ!悪りぃな、考え事してた……」

「はぁあ、しかしどうしたもんだろうなー、これ以上は調べようもないし、どっから手ぇつけたもんかなー?」

 

兵藤の呼びかけにより、思考の海から抜けた友野を尻目に、兵藤は肩を落とす。兵藤は自販機で買った缶ジュースを飲みながらふとあたりに目をやる。

 

「……あれ?友野?なんかやたらと静かじゃね?」

「え?」

 

何故か誰もいなかった。時刻はもうすぐ夜中、会社から帰るサラリーマンや、夕飯を買うためにスーパーに向かう主婦などがいてもいい時間帯であるにもかかわらず、そこには誰1人としていなかった。その不気味なまでの静けさに、2人は少しばかり背中に悪寒が走り始めた。

 

「な、なぁ?なんかヤバくね?こう、言葉には出来ないけど、変な冷たさを感じるっつうかよ?とにかく一旦ここから離れようぜ?」

「同感。なんか分からんけど、ヤバイな……」

 

「どこへ行こうというのだね?」

「「!!??」」

 

先程まで誰もいないと感じ取っていた2人に、突如として第三者の声が聞こえる。2人は驚いて声のした方へ振り返ると、そこにはポークパイハットを被った、茶色いコートを着た中年の男が立っていた。

その男を見た瞬間、2人はさらに悪寒が強くなるのを感じ取った。

心臓が警鐘を鳴らし、頬から冷たい汗が伝い、奥歯が小刻みに震える。

しかし男はそんな2人は気にもせず、ゆっくりと近づいてくる。

 

「ふん、急遽貴様ら2人を捕らえろとの命令だが、どうにも気が乗らんな。何故私が人間どもに気を使って生け捕りにしなくてはいかんのだ、そういう訳だ。貴様ら、私についてきてもらおうか?もし歯向かえば……分かっているだろう?」

 

男は手元に光を集めながら友野達ににじり寄る。

それに伴い二人も足を後ろに引くが、事態は進展する。

 

「逃げろ!なんかヤベェ!」

「ちょ、友野!」

「待て!人間ども!」

 

二人は走った。それと同時に男も手元にあった光を投げる。

光は友野と兵藤の間をすり抜けて二人の目の前で地面に刺さり、地面が爆ぜた。

コンクリートの破片が宙を舞い、爆煙が二人の視界を遮り足と止めさせる。

突然視界を遮られ困惑している二人の背後から、男の声が聞こえた。

 

「今のは忠告だ。もう一度聞く。黙って私についてこい」

 

男の顔はひどく冷たい表情であった。その声には有無を言わさない気迫があり、並大抵の精神力の持ち主では卒倒してしまうほどに不気味であった。

 

「そう言うのって、命令でしょ?言うこと聞かなかったらどうするわけ?」

「私の槍で四肢を貫いて抵抗出来なくしてから貴様らの神器を抜き取るまでだ。神器持ちがまさか二人もいるとは、これでレイナーレ様の野望に貢献できると言うもの」

「レイナーレ?」

「友野?」

 

友野の呟きに兵頭が聞き返す。しかしそんな二人をよそに男は鬱陶しげに溜息をつく。

 

「貴様らは知らなくてもいい名だ、全く時間を使い過ぎたな。もういい、貴様らは八つ裂きだ」

 

兵頭の問いかけを無視して男は光を束ねて巨大な槍を生み出す。それを構え、兵藤達めがけて撃ち抜く……

 

「そこまでよ、堕天使」

「ぬ!?」

「「うおあ!!」」

 

紅い光が男の投げた光を相殺した。

爆風が二人を襲い、二人は倒れこむ。

 

「くっ!誰だ!」

 

男は腕で顔を覆い衝撃に耐え抜くと、紅い光が放たれた方角に目をやる。

その方角に目をやると、男の顔はひどく歪んだ。

二人は起き上がると男の向いている方角を見る。

 

「こんにちわ、いい夜ね?堕天使さん」

「グレモリー家の者か……猪口才な……まさかずっと監視していたのか?随分と小賢しいな?悪魔のプライドとやらはどうした?」

「もちろん持っているわ。だからこそ許せないのよ、堕天使(貴方達)を取り逃すのが」

 

リアス・グレモリーは男に向かって手を突き出して光を生み出していた。その座標は男だ。先ほどの光を打ち出したのはグレモリーらしい。

 

「グレモリー先輩!」

「ごめんなさいね有希くん、あら?その子は……」

 

 グレモリーは友野の横にいる兵藤を見つけると不思議そうな顔を浮かべて首を傾げる。その仕草に見惚れていた兵藤は意識を元に戻すと、思い出したかの様に慌てふためく。

 

「おい友野!どういうこったよ!なんで二大お姉様のグレモリー先輩がお前のこと下の名前で呼んでんだよ!説明しろ!」

「いの一番に聞くこと他にもあんだろ?」

 

 兵藤の主張に友野は多少の呆れを含んだため息を吐いた。先ほどまでの緊張感が嘘の様に飛散する。しかしそれはほんの数舜の事だった。

 

「ユーキ君?どうして貴方が巻き込まれてるのか聞くつもりは今は無いけど、後で覚えておいてね?とにかく今は走って!」

「うす!行くぞ兵藤!」

「ちょ!?おい!」

 

 友野はグレモリーの命令に力強く頷くと、兵藤の手を引く。自身の疑問にも答えてもらえず、急に腕を引っ張られたので兵藤の困惑はさらに加速した。

 

「……どうやらここは引き時の様だな……」

「逃すと思う?」

 

残ったコートの男とリアス・グレモリーは互いをじっと見つめ合う。その目はまるで一騎討ちをする騎士の様な厳格な空気が漂っていた。

 

「『逃すと思う?』違うな。私がお前を見過ごすのだ」

「……!待ちなさい!」

 

男の声と同時に足元に魔法陣が浮かび上がる。それを見るとグレモリーは必死の形相で手に籠めた魔力を打ち出すが、それは無駄玉に終わった。

 

「…………逃げたわね……とりあえず、まずはユウキ君に会いにいかなくちゃいけないわね……」

 

グレモリーは深追いはせずにその場を去る。そしてそこには静寂だけが残った。



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赤龍帝

「ハァ……ハァ……ハァ……」

「ゼー、ゼー……」

 

公園を走り抜けた兵藤と友野の二人は友野の家の前で息を切らしていた。公園から友野の家までを全力疾走で駆け抜けてきたのだ。距離にして約800メートル。それは息も切れるというものだ。

 

「つ、着いたぜ……俺んち」

「お。おぅ……は、早く入ろうぜ」

 

 二人はゾンビさながらの歩幅で玄関に向かう。友野はたどり着くと鍵を取り出し差し込む。

 

「お帰り友野君。部長から聞いて先に来てたよ」

 

 しかし差し込んだカギは押し込む間もなくすぐさま開けられる。駒王学園の王子様の木場優斗の手によって。

 

「……おい、なんで友野の家に木場が居んだよ?ひょっとしてお前ら……」

「そっからは冗談でも言うなよ?何処から尾鰭背鰭がつくか分かったもんじゃねぇからな」

 

 冗談めかして口を開こうとした兵藤の言葉を友野は先んじて封じる。その眼光は鋭く、冗談が通じないのは明確だった。

 

「な、何も言わねぇって……」

「だったらいいけどよ。ほら入れって。いつ来るが分からねぇぞ」

「お、おう!」

 

 友野の催促で兵藤は家に入る。友野の家に兵藤が入るのは実に2ヶ月ぶりであった。

 

「んじゃお邪魔すんぞ〜……お?」

「あらあらいらっしゃい。この子が友野くんの言ってた兵藤くん?」

「噂通りスケベそうな顔してますね。離れた方がいいですよ姫島先輩。何されるかわかりません」

 

 目の前には男の楽園が広がっていた。

 大和撫子で知られている二大お姉様の三年、姫島朱乃。そしてマスコットキャラのような愛くるしさを持つ一年の塔城子猫。

 駒王学園で知らない人はいないと言うほどの有名女子生徒二人を間近で見た兵藤の反応は素直なものだった。

 

「テメェ友野!どう言うことだこいつ!なんで姫島先輩と子猫ちゃんがここに居んだよ!納得のいくよう説明しろ!」

 

 嫉妬だ。まぁ無理もないかもしれない。絶世の美女とも言える顔と放漫な体つきをした乙女と愛玩動物のような愛らしさを持った将来性抜群のあどけなさを残す少女が一人の男の家にいるのだ。年頃の少年にとっては嫉妬するなという方が酷かもしれない。

 

「待て待て待て待て待て!姫島先輩は説明できるけど塔城さんに関しては何にもしらねぇんだけど!?オレも若干テンパってんの!分かる?!というか分かれ!」

「分かってたまるかってんだ!羨ましいんだよこのヤロー!」

「痛たたたたた!!首を締めるなお前!」

 

兵藤の怒りがなす業なのか、すごい勢いで友野の首が締まっていく。友野が必死に兵藤の手をタッチしてギブアップを申告しているが、兵藤には聞こえない。

 

「友野ぉ~!どういう意味だてめー!!姫島先輩はどうして分かるんだ?!なんか特別な関係か!!吐けー!お前が知ってる事洗いざらい全部吐けー!」

「ウググググ…………ひ、姫島先輩…………フォローを…………」

「兵藤君?友野君とはなにもありませんわ。ただ一つ屋根の下で食事を共にする関係ってだけですから」

「コノヤロー!」

「な、なんで業火に重油を…………」

「うふふ♪」

「姫島先輩!ちょっとおふざけが過ぎますよ!」

「…………」

 

 

 姫島の言葉で兵藤の力が強まる。腕に血管が二、三本浮かび上がり目が段々と理性を失いつつあった。事の元凶である姫島は楽し気にくすくすと笑っているだけであり、塔城は一歩引いた位置で冷ややかな目を兵藤に向けていた。唯一止めに入った木場も兵藤の怒りのパワーを抑えられないのか、完全に止めることは出来ていない。

 そこに一つの変化が訪れる。リビングの床が光りだし、謎の紋章が浮かび上がる。そこに一つの影が差す。

 

「今戻ったわ皆!有希君は無事!?」

 

 その影はリアス・グレモリーであった。グレモリーは現れたと同時に周囲を見渡し、友野を探す。そして兵藤に首を絞められている彼を見つける。

 

「有希君!大丈夫!!?」

「おおおおおい!友野!てめぇ姫島先輩だけじゃなくグレモリー先輩とも関係持ってんのか!!」

「ちょっと放しなさい!有希くんになにかあったら許さないんだから!!」

「しかも名前呼びとかいい加減にしやがれってんだ!!」

「…………だから名前呼び辞めてって言ったのに…………」

 

 事態はさらに悪化した。今日の友野の家の夜は長引きそうだ。

 

 

 

「ヴェッホ!エホ!ああ…………まだ胃酸が喉奥にある感じがすんな?」

「はい、お水。ゆっくり飲んでね」

「おお、サンキュー木場。んぐ…………っあー!やっと落ち着いた」

「一応言っとくがまだ納得したわけじゃねーからな?ちゃんと説明しろ」

「分かったからもうあの首締めはやめてくれよ?」

 

 兵藤を抑え(ちんあつし)てから数分後、ようやく息苦しさから解放された友野は喉奥を何度も鳴らした。木場はさりげなくコップに水を汲み差し出す。こういう些細な気配りも出来る部分が王子様と言って持て囃される要因かも知れない。その様子を兵藤は訝し気な目を向けて見ていた。

 

「それじゃあ落ち着いたところで、早速話をしていきましょうか?」

 

 そしてそれをリアス・グレモリーは正面からのぞき込んでいた。

 現在友野家のリビングには友野と兵藤、そして木場の男子組とグレモリー達女子組がテーブルを間に挟んで向かい合っていた。中央にはリアスと兵藤が陣取り、その両サイドは二人よりも一歩引いた状態で座っていた。話の主役は兵藤とグレモリーの様だ。

 

「は、はい!」

「いい返事ね。それじゃあ最初に、さっき出会った黒い羽根の男について話した方がいいかしら?」

「お、お願いします」

 

 グレモリーの美顔を正面から見ている兵藤はその迫力に少しばかり尻すごみする。しかし好奇心の方が勝ったのか、話を聞こうと前のめりになる。

 

「あれは言ってしまえば…………堕天使よ」

「堕天使…………ですか?」

「そう。ゲームなんかに登場するあなたが想像する通りの堕天使」

 

 そこからの彼女の話は友野が聞いた話と一緒であった。悪魔、天使、堕天使の三つ巴の大戦。『神器』という存在。そして、その神器が友野、そして兵藤にも宿っているという事実。

 

「へー、すげぇじゃん兵藤?お前そんな物騒なもん持ってたんだな?」

「そりゃお前も一緒だろうが!なんで俺だけ省こうとすんだよ!!」

「だって俺の場合はこの指輪だし、これ元から俺が持ってた訳でもねーしな。お前の場合は違うじゃん。ほら、早く出せ。銃刀法違反者」

「変なあだ名付けんな!!」

「じゃあ変態とっとと出すもん出せ」

「んのやろー!!」

「ぐえ!首はやめろっての!!」

 

 兵藤と友野の取っ組み合いが始まる。それを見ていたグレモリーはその様子を唖然と眺めていた。

 

「あなた達……今の話聞いてた?こちらとしては結構重要な話だったのだけど?」

 

「んあ?ああ、聞いてましたよ。けど、俺としちゃ前も言ったようにスケールがでかすぎて良く分かんないっつうか、神話みたいで現実味が無いんですよねー、羽男に襲われてもですけど」

「オレはそれよりも友野がグレモリー先輩と親しい関係だったことの方が重要です!!友野ー!俺の神器が出てきたら覚悟しとけよー!!」

「上等だよ俺の神器舐めんなよ。良く分かんねぇがスゲェんだからな。ビーム出るぞビーム。多分な」

「だったらこっちはロケットパンチだ!お前のビームもろとも顔面粉々にしてやる!!」

「面白れぇじゃねぇか!こっちには指輪五個あんだからなビーム以外にもスゲー効果4つ持ってんだからな!クラピカを思い出せ!俺たちの『HUNTER×HUNTER』を思い出せ!」

 

「何の話してんのよあなた達!!」

 

 紆余曲折して訳の分からない話に突飛していく二人にグレモリーの怒鳴り声は響いた。

 

 

 

 

 

「ソロモン王が見つかっただって!?」

 

 とある西洋の王城のような場所にて、赤毛の美男子が驚愕の表情を浮かべていた。その向こうに銀髪のメイド服姿の女性が膝を着いて向かい合っていた。

 

「はい。どうやらリアスの通っている高校にその適応者が居たらしく、指輪が輝いたとの報告が」

「リーアの高校……駒王学園か!まさか本当に実在していたなんて……おとぎ話や都市伝説みたいなものだと思っていたのに……」

「どうしますか?下手に強硬手段に出ると、指輪の力が発動してしまう可能性もありますよ」

 

 メイド服の女性の意見に赤髪の男は肘をテーブルについて額に拳を当てる。物悲し気に目が沈んでいた。

 

「…………今指輪はリーアの届く範囲の中にあるんだね?」

「はい。今はリアスが監視をしているらしいですが、指輪の力の影響次第では……」

「…………下手に手を打って気付かれない方がまだ安全策だ。此方からの接触は今は控えてくれ、グレイフィア」

「分かりました。眷属にもそう伝えておきます」

「頼むよ」

 

 赤紙の男とメイドの女性、グレイフィアとの会話が終わると、男はゆっくりと座っていた椅子の背もたれに全体重を預ける。ギシリと軋む音が聞こえるが、彼にはどうでもいい事であった。

 

「『悪魔たちの本来の力を解放する』と言われているソロモンの指輪……世界で唯一の悪魔によって作られた 『神器』か……眉唾物だったが、もし本当だったら、とんでもない事だ。動き出すかもしれない……あの御方達が…………」

 

 赤髪の男の呟きが誰にも聞かれることなく宙を漂った。

 

 

 

 

 




お久しぶりです。この数年でメギドも変わりましたね。
オリエンスの弱体化騒動から始まり、現在ではジズとミノソンが強いと話題です。
今後もメギド72の活躍を期待している身としてはハラハラします。
自分もミノソンを狙って回しましたがそれ以外の新参メギドが10体ほど引き当てるという結果に。嬉しいんやら悲しいんやら…………
この話も進めていけたら進めていく所存です。
いっそのこと作品一つを誰かに委託出来たら楽なんだろうな……


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