吸血鬼の魔導 (ザラキ大佐)
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1話

吾輩の名はアイス・ヴェルガモット

宵闇を支配する吸血鬼である

これは吾輩が魔の頂点へ君臨する話である。

 

 

 

イギリス中の魔法力をもった者達が11歳から通う魔法学校、その名もホグワーズ魔法学校。

数々の有力な魔法使いを輩出してきた言わずと知れた有名校であり、現在は20世紀最高の魔法使いと称されるダンブルドア教授が校長を務める。

そのホグワーズへ生徒達を運ぶ列車の前には期待に胸を膨らませた新入生が溢れかえっていた。まぁ車窓から喧騒を眺める吾輩は余裕たっぷりである。

 

吾輩の名はアイス・ヴェルガモット

闇の眷属、吸血鬼なのである。

16代続く伝統あるヴェルガモット家の長女。

白磁の肌に銀の輝きを讃える麗しきロングヘアー、その目は紅く染まり美しさのあまり一度見れば眼を離すことは叶わないだろう。

偉大なる先祖の功績により杖を持つことが許され、名声をほしいままにしてきた。

そう吾輩は偉大なのだ

吸血鬼とは闇とは静寂を尊ぶものなのだ。

だからコンパーメントの扉を睨みつけ開かぬことを願うのだ

できれば終点まで開かないでほしい、できれば帰りたい。

吸血鬼の身にあるが神へ願ってもいい

だが、そんな願いは紙を破くかのように開かれたドアに切り捨てられる。

 

「こんにちわ!一緒にいいかしら?」

よくはない、ここは吾輩のゆっくりプレイスである。帰ってほしいのである。何と断ればいいのやらと相手の女子の顔に目を向けるが言葉が出ぬ…

「えー…ダメ?」

ダメだ…気まずい…とりあえず本を読んで流そう。ポケットに入れていた漫画本を読もう…

「あら?それって、もしかして魔法界の漫画なの?私魔法界の漫画なんて初めて見るわ!ねぇどんな物なの?私はまだ魔法界のことって初めてで見たことないのよ!教科書は全部読んだのだけれど、そう教科書よ!貴方は予習してきたの?それとも魔法界育ちの子って家で教えてもらっているのかしら?だとしたらどうしましょう!」

ヒェェ…コミュ強怖い…選択をを間違えたようである。十数匹の雛鳥の鳴き声のようだ…本は仕舞おう。

「…こんにちわ」

「ええ!こんにちわ!始めましてね!あっそうそう自己紹介しなきゃね、私の名前はハーマイオニー・グレンジャー、今年からホグワーズ入学なの!」

「…アイス・ヴェルガモットです」

「よろしくね!アイス!」

「…ハイ」

緊張で吐きそうである。一刻も早く気絶したい…誰か銀の杭を持ってきてくれ。

「それでねアイス!寮の組み合わせなんだけど…

 

この後数時間もの間。吾輩はハーマイオニーからの問いに適当な相槌をとらされることとなり灰になりかけた…吸血鬼の弱点にハーマイオニーを加わえるべきだな…

 

 

 

ようやく拷問から解放され吾輩はホグワーズ城前へ到着した。

空は既に星が輝く黒に変わり闇が吾輩を祝福しているかのようである。

マクゴニャルという魔女へ先導され着いたのは生徒達が集まる大広間、ここで集団監視の下に心を暴くというプライバシーもクソもないプレイが行われるのだ。

そんな私の陰鬱な気分とは裏腹に組分け帽子は歌い出す、発声器官がど関係ないとばかりに声を張り上げ、やれグリフィンドールは勇敢だスリザリンは狡猾だと、これじゃあスリザリンの生徒達も捻くれて育ちそうだな。

歌い終わればいよいよ組み分けだ、名前順なら私が一番か…

「アイス・ヴェルガモット!」

やはり吾輩か…胃液がせり上がってきている気がする…いや大丈夫だイメージトレーニングはバッチリだ、ノープロブレムだ。

いやに古臭いとんがり帽子を被る、そう、この瞬間私は唱えるのだスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だ

「グリフィンドール!」

よぉぉし!流石吾輩!一瞬でゴールイン!今日は帰ってニンニク料理だ!

 

 

 



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2

吾輩の名はアイス・ヴェルガモット。

現在は生徒達が賑わう大広間で朝食をとっている、嫌いなものはニンジンとトマトである、あとピーマンも苦手だ、あとサラダも。

「ねぇアイス、サラダも食べなきゃダメよ!そんなのだと体に悪いわよ!」

…このお節介焼きはハーマイオニー・グレンジャー、不幸なことに彼女に気に入られてしまったようだ。彼女は喋らなければ死んでしまうとでも言うように吾輩へ喋り続けている。吾輩は曖昧な相槌くらいしかうてないというのに物好きなものである。どうかクールに去って主人公達と話してきてほしいものだ。

「アイス!ねぇったら!聞いてる?サラダもほらっ!」

…聞いてない聞いてない

 

入学初日から一夜明け、今日からホグワーズでの授業が始まる。

この迷路の如きホグワーズの通路は吸血鬼たる吾輩であっても思うように進めず非常に腹立たしいのである!

「アイス!急いで!授業に間に合わないわよ!」

むむむ!ハーマイオニーはお節介が過ぎるのである!吾輩は一人で歩けるのである!そう、そうなのだ吾輩は一人で出来るのだ!授業で鼻を明かしてやるのだ!

「アイス!よそ見してると危ないわよ!」

 

 

まず魔法史はひたすら退屈に過ぎるものであったがハーマイオニーはそうでもないようで目をキラキラさせながら随分と楽しそうにしていた。

それを横目に吾輩は教科書を盾に眠る戦法を試しハーマイオニーに怒られた。

夜行性なので仕方ないのだ、眠いのだ。

 

呪文学は魔法界で生きてきた分、吾輩に分があると思ったがリアルチートマイオニーは一度で呪文を成功させていた…吾輩悔しい!教師に褒められ照れているハーマイオニーは「予習してたのよっ!」なんて頬を赤らめていて、カワイイ!クヤシイ!

 

変身術の授業である。吾輩これ得意である。

マッチを針に変身させるなど将来はコウモリに変身する吾輩にとっては正にベイビーサブミッションといえるのだ!どうであろう?凄いであろう?どうだハーマイオニー!…ハーマイオニー?

むむ!ハーマイオニーは誰ぞに教えていてこっちを向かないじゃないか!ハーマイオニー!ハーマイオニー!気づけ!気づけ!

「ミス、ヴェルガモット針を振り回してはいけませんよ」

ぐぬぬ…

 

1日の授業も終わり夕食の席で吾輩は思う。

まぁ吾輩はなかなかだったと思う!誇り高き吾輩ならばホグワーズ1の魔法使いも首席の座もなんとかなるのである!であればと栄養をつけるためとガーリックステーキに食らいつくのだ!

明日は初の飛行訓練の日!吾輩の踏み台になってもらうぞハリーポッター!HAHAHAHッッ!喉ガッ…!

「アイス!大丈夫!?そんなに急いで食べるからよ!ほら水飲んで」

ぐへぇ



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3

今日は待ちに待った飛行訓練の日である…が、吾輩は医務室で天井を見上げていた。どうやら貧血らしい。

フフフ今宵の吾輩は血に飢えておるわ…。

マダム・ポンフリーに強制的に寝かされてから一時間たつが許可がでない。残念ながら飛行訓練には間に合わないようだ。

…命拾いしたなポッター!シーカーの座はくれてやろう!だが来年は吾輩がシーカーの座を頂くからな!HAHAHAHA!

 

 

 

飛行訓練で哀れにも手首を折ったネビルと入れ代わるように復帰した吾輩はハーマイオニーのお怒りの言葉を聞かされていた。

 

「ああ!アイス心配したわよ!もう大丈夫なのよね?今にも死にそうな顔してて心配したのよ!いい?もっと沢山食べなきゃダメよ!だから貧血になるのよ!それとね!聞いてよアイス。ハリーったら箒に乗ったこともないっていうのに無謀にも飛び出してネビルの二の舞になるところだったわ!それによ!運良く、本当に運良くクィディッチの選手に選ばれたって喜んじゃって!本当に気がしれないわ!」

 

「…そうだねハーマイオニー」

 

「そうよアイス!それにマルフォイの挑発に乗って夜に抜け出して決闘だなんて言ってるのよ!夜に抜け出すなんていくつ点が引かれるか!男の子って皆んなこうなのかしら!信じられない!信じられないわ!」

 

「………」吾輩は思う…貰ったことはないが吠えメールとは今のハーマイオニーみたいなものだろうかなと。

 

 

 

 

午後は闇の呪文に対する防衛術である。クィレル先生の教室はニンニクの匂いで満たされていて吾輩大ピンチ!と思うだろうが全く心配無用である!そう、吾輩は高貴な吸血鬼の一族なのだ!ニンニクの匂いなど克服しておるのだ!それどころか好物でもある!

 

「オェッ!ひどい匂いだ、こんな匂いを振りまくなんてクィレルの奴は鼻がトロールみたくなってるに違いないよ」などとロン・ウィーズリーが言う

「そうだねロン、どうかしてるよ…」ハリーポッター…お前もか…

 

フフフ…俗世の人間と感覚が違うのも当然か…食欲そそるよい匂いだと思うのだがな…そうだろう?ハーマイオニー?

「そうね…鼻が曲がりそうなくらい臭いわね…」

 

「………」

明日からニンニクは避けよう。

 

 

 

 

 

窓から月光が射しこむ部屋で、そろそろ寝ようかとベッドに入ったところで同室のハーマイオニーが少し用事があるからって出て行ってしまった。

夜間の外出は禁じられているというのに、どこに行くのだろう?

むむ…なんだろう?…何か忘れてる気がするけど眠くて仕方ないので早く寝よう。

 

 

 

 



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