英雄の欠片は何を成す (かとやん)
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僕の英雄

唐突にベルに『王の財宝』を持たせてみたくなったので書きました。

基本的に艦これの方を優先するのであちらより亀更新になると思います。



暖かい目で見て(・・;)


いつだってあの人がいた。

 

『ベル、男はハーレムを目指さんといかん』

 

『はーれむ?』

 

意味がわからずに首をかしげると柔和な笑みを浮かべながら

 

『そう、ハーレムじゃ』

 

僕の頭を撫でるあの人の手は、大きくて優しかった。

 

 

 

 

『ベル!逃げろ!!』

 

魔物から僕を守ろうとする背中は、誰よりも大きく見えた。

 

けれど・・・

あの人はもういない。

どれだけ泣いただろう、声を枯らしただろう。

悔しかった、悲しかった。

何もできなかった自分が情けなくて、あの人のいない日常が寂しくて・・・。

 

今日も悲しみの海に沈みかけた僕の視界に、ふとあるものが視界に写る。

霞んだ視界の中でなぜかはっきりと見えたソレは、あの人が僕のために書いていた英雄譚だった。

英雄王。そう名のつけられた本。背表紙には長い鎖が複雑に描かれている不思議な本・・・それが僕を呼んでいるように、窓からさす日に照らされていた。

ページをめくる。そこに小さな紙切れが挟まっていた。

それを見た僕の目からは、大粒の滴がこぼれた。

 

『ハーレムを目指せ』

 

少し弱々しく、しかしいつも通りの口調に僕は自然と笑ってしまう。視界はグシャグシャで涙が止まらないけれど、それでも必死に涙を拭きながらページをめくる―――。

 

 

 

 

『英雄とはなんだ?小僧』

 

ふと、声が聞こえた。

いつの間にか僕は真っ白な空間に立っていた。

知らない人の声が頭に響く。

いつもなら慌てふためくのに、何故か冷静にその問いに答えていた。

 

 

誰かを救う人

 

 

『否、英雄とは我のことだ』

 

脳裏に浮かんだその人影は金色の鎧を身につけ両手を掲げた。

 

『ありとあらゆる財を持ち、すべての種を統べる我が、我こそが!英雄の頂点、英雄王である!!』

 

僕はその人の解に待ったをかけた。

 

それは英雄じゃない

 

『……なに?』

 

それはきっと英雄じゃなくてもできること……

たくさんのお金をもって、いろんな人を導く、

すごいことだし、ものすごく大変だと思う……それでも、英雄とは違うと思う。

 

『…………では英雄とはなんだ? 返答次第では只では済まさぬぞ? 雑種』

 

2度目の問いに、僕は秘めた夢を、あの人の口癖を口に出していた。

 

 

己を賭したもの

 

 

『……』

 

 

あらゆる財をもった人でもない

剣を握ったものでもない

盾をかざしたものでも、誰かを癒したものでもない

 

己をとしたものこそが、英雄と呼ばれるのだ。

 

仲間を守れ、女を救え、己を賭けろ。

 

あの人の口癖が、教えが、姿が……僕の英雄だ

 

おじいちゃん。僕、英雄になりたい。あなたのような―――英雄に。

 

『……くくく』

 

その声は噛み殺したように笑うと、初めて僕の目を見た気がした。

 

『そうか、己を賭す……幾年ぶりに聞いた台詞よの。おい雑種……いや、ベル・クラネル』

 

そう言ってこちらを見るその人が、初めて僕の目を見た。

 

『我は英雄王だ。それは変わらん。だが、民に英雄ではないと言われて黙っているのも興がない』

 

そう言ってどこかから小さな鍵を取りだすと、ソレを僕に渡してきた。

 

『我の宝物庫の鍵だ。光栄に思え、ベル・クラネル。今までその鍵を渡した奴はおらん。そもそも王の宝物庫だからな』

 

『お前がその鍵を使うに値した時、その鍵は応える』

 

そう言い残すと人影は徐々に薄まって行く。

 

『ゆめゆめ忘れるな、お前に価値が見いだせなければ、ソレは容赦なくお前を飲み込むぞ。フハハハハハハハハハ!!』

 

 

 

 

 

あれから数日。

僕はオラリオ行きの馬車に乗り込んだ。

 

「おじいちゃん・・・行ってくるね」

 

首にかけられた小さな鍵を握りしめながら、少年は世界の中心へと歩み出す。

 

 




ちゃんとギル様してた?

これ以降ギル様は出てきません・・・・たぶん


修正と加筆しました。


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英雄の欠片、オラリオへ

いきなりコメントがついた!?

朝起きたらコメントがきていてビックリです。


「ここがオラリオかぁ」

 

 

巨大な門を潜った先は人の活気で溢れていた。

行商人が行き交い、鎧を着た人が武器を買い、主婦が男の人を殴り飛ばす。

よく見れば人種以外にも獣人と呼ばれる人や、耳の長いエルフもいた。

そんな周りの風景に圧倒されていると後ろから声がかかった。

 

「そこの兄ちゃん、オラリオには初めて来たのか?」

 

振り向くと、にやにやと笑いながら腰にさした剣の柄を撫でている男が立っていた。

 

「なんなら案内してやるよ」

 

何か嫌なものを感じた僕は後ずさりながら断ろうとする。

 

「いや、えっと、行かなきゃ行けないところがあるので……」

 

「あ?人の善意を無下にするってのか?この糞ガキが!」

 

「ごふぅ!?」

 

気づいたら思いっきり蹴られていた。

体が中に浮き表通りから追い出される。

蹴られたお腹と地面に叩きつけられた衝撃で肺から空気がなくなる。

息を忘れるほどの痛みに、僕はごろごろと転がる。

 

「へへへへ!!ざまぁねえな。ほら、これ以上痛い目にあいたくなけりゃ有り金全部置いてけよ」

 

僕はうずくまりながら咄嗟に首もとの鍵を握りしめた。

ほとんど反射で、意味は特にはなかったが男には勘にさわったのか、顔を歪めながらこちらに向かってくる。

 

「良い度胸してんじゃねえか!!」

 

「ッ!」

 

僕は次にくるであろう痛みに身構えた。

思いっきり振りかぶられた足に目を瞑る。

そして――――

 

「それ以上は見過ごせないな」

 

大通りから声がかけられた。

 

「んぁ?ッな、なんでおめぇが!!?」

 

そこには金髪の少年が立っていた。

身長は子供と大差なく、青色の瞳を光らせた少年に、男は顔を青くしながら叫んでいる。

 

「お、お前には関係ねえだろうが!!」

 

「確かに関係はない。が、一般市民を傷つけているのを見過ごす理由にもならない」

 

そう言ってこちらに近づいてくる少年に、男は一歩二歩と後ずさる。

 

「ぐっ、くそったれが!」

 

悪態をつきながら逃げていく男を僕は呆然と見ていた。

そんな僕に少年は懐から取り出した小さな瓶を手渡してきた。

 

「災難だったね。さぁ、このポーションを飲むといい」

 

僕は一瞬呆けた後、手渡されたそれを呷るように飲む。

すると腹部の激痛が嘘のように引いていった。

体を起こしてあちこちを触って確かめる。

 

「あれ?痛くなくなった?」

 

僕の反応がおかしかったのか少年は苦笑していた。

 

「ポーションも知らないとは……かなり遠くから来たんだね」

 

「あ!えっと、ありがとうございます!!」

 

お礼をいっていなかったことを思いだし、頭を下げてお礼を言う。

そうすると少年は朗らかに笑いながら手をふる。

 

「気にしないでくれ。困ったときはお互い様だろう?」

 

もう一度お礼を言おうとすると少年は、そういえば名前を聞いていなかったと言って手を差し出してきた。

 

「フィン・ディムナだ。一応冒険者をやっていてね。もし君が冒険者になるなら是非僕のファミリアに入って貰いたいよ」

 

「あ、ありがとうございます!僕はベル・クラネルです!!」

 

僕はフィンさんの手を握り返しながらもう一度お礼を言う。

フィンさんはもう一度手を降ってから大通りの中へ姿を消していった。

 

「僕も、あんな人になりたいな」

 

そう呟いてから気づく・・・。

ファミリアの名前を聞いていなかった、と。

 

 

 




正月前なので連続更新してみようかな(唐突)


まあやるとしたら艦これと交互にかな(-_-)

修正と加筆しました。


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英雄の欠片と巨人殺し

やるだけやってみようということで、続く限り連続投稿します。

気分で上げるので艦これが挙がるかこっちが挙がるかはわかりませんのであしからず。


あとコメントで指摘がありタグを増やしました。
こういう指摘はとてもありがたいので、これからもお願いします。m(__)m




「エイナさ゛~~ん゛」

 

「あはは……今日もダメだったんだ」

 

私、エイナ・チュールは窓口に泣きながら入ってきた子を眺めながらため息をこぼす。

白髪で赤い双眸、兎を思わせるシルエットにその小さな身体、ベル・クラネル。

彼が冒険者になりたいとギルドへ飛び込んできたときは友人と必死に止めようとした。

まぁ、それでも彼が食い下がってきて結局こちらが折れたのだけれど……。

 

「やっぱり僕の見た目が悪いんでしょうか」

 

いや、君の見た目はいいよ……別の意味で。

 

彼の要望で探索系ファミリアに入りたいからと紹介したのは中小ギルド合わせて数十個。

その全てに彼は断られたらしい。

 

「あと残ってるのは大規模ギルドだけだしなぁ」

 

「うぅ」

 

あと残っているのは

フレイヤファミリア

ロキファミリア

それと少しずれるけど

へファイストスファミリア

ぐらいしかないし……ダメもとで紹介してみるしかないか。

 

「あと残っとるのは三つくらいなんだけど、聞く?」

 

「はい!!」

 

あぁ、笑顔が眩しい。

 

 

 

 

 

 

「こ、ここがロキファミリア」

 

悠然と構える館『黄昏の道化』に僕は圧倒されていた。

エイナさんに紹介してもらってから走ってきたは良いんだけど……。

 

「よ、よし。いくぞ」

 

意を決して門番に声をかける。

 

「あ、あの!ロキ・ファミリアに入りたいんですけど!!」

 

「……お前のようなひ弱な人間は、ロキ・ファミリアに入れるわけにはいかん!!」

 

も、門前払い……

 

「そ、そこを何とかお願いします!」

 

「だめだ!とっとと帰れ!!」

 

「何を騒いで、おや?ベルじゃないか」

 

少し前に聞いた声……館のほうを見ると、女の人を連れた? ……憑かれた? フィンさんがいた。

 

「フィンさん!!お久しぶりです!」

 

「いやいや、団の者がすまなかったね。入団希望者は全員通すように言っているんだけどね」

 

フィンさんの横目を受けた門番は顔を真っ青にしながら震え始めたので、僕は慌てて間に入る。

 

「やめてくださいフィンさん。もともとは僕が弱そうだからいけないんです。この人は悪くありません」

 

僕がそう言うとフィンさんは一瞬目を見開いて、笑いだした。

 

「ハハハ。そうか、なら君は弱くないところを証明しなくてはね。ついてきてくれ」

 

「あ、はい!」

 

そう言って館へ入っていくフィンさんの後を僕は慌てて追いかけた。

……フィンさんに抱き着いてた褐色の女の人って誰だったんだろう?

 

 

 

 

 

着いたのは闘技場を彷彿とさせる円形の広場だった。

周りには訓練していた人たちが遠巻きにこちらを見ていた。

フィンさんはこちらに向き直る。

 

「さて、これから君の入団試験を開始する」

 

「はい」

 

フィンさんはしゃべりながら武器が乱雑に置かれている場所へ歩いていく。

そしてその中から木刀を一本取りだした。

それと同時に周りの人たちが騒ぎ始める。

 

「おい、あれ使うってことは団長本気なのか?」

 

「あのひょろくせえガキに?ありえねえだろ」

 

「団長は何を考えているのかしら」

 

「全員、あの小僧に(`・ω・´)ゞ」

 

 

なぜか数人ほどこちらに敬礼してくる人が・・・。

 

「試験内容はシンプル……僕に一撃加える。それだけだ」

 

「えっと、どこでもいいんですか?」

 

「どこでも構わない。胴体でも指先でも、ね。合格条件は僕に一撃加える。失格条件は君があきらめるまで」

 

「武器はあそこから好きなものを選んでくれて構わない」

 

そういって先ほど木刀を取り出した場所を指す。

そこには小型のナイフからハンマー、剣の部分が湾曲している不思議なものもあった。

 

やっぱり慣れてるものの方がいいよね。

そう思って手に取ったのは刃渡り15センチ程度のナイフだった。

僕はフィンさんの対面に移動する。

 

「準備はいいかい?多少のケガならポーションで治せるから、心配しなくていい」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

「よし。君の力、みせてもらうよ」

 

こうして僕の入団試験が始まった。

 

 




なんか、エイナさんが変態みたいになった。
そんな気はなかったのに・・・( ;∀;)


ま、いっか(*´∀`)


もしできれば今日の夜にも投稿します。

修正と加筆しました


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英雄の欠片と試験

ロキファミリアの入団試験。
それなのにロキや主要メンバーが一切出ていないという・・・。


しっかり出しますので・・・許して




 

 

「い、いきます!」

 

僕は全力で走りながら右手に持ったナイフを振る。

 

「大振りすぎるよ。もっとコンパクトに」

 

が、フィンさんは僕の攻撃を余裕で回避した。

僕は慌てて振り返ると、眼前には木刀が迫っていた。

 

ガンッ!

 

「いでッ!?」

 

そのままの流れで回し蹴りを食らって数メートル吹き飛ぶ。

薄れていく意識の中で、最近蹴り飛ばされてばかりだなと思った。

 

 

 

 

 

 

「ふう。先は長そうだ」

 

「フィン。どういうことか、説明してもらおうか?」

 

「やあリヴェリア。彼だよ、この前久しぶりに親指がうずいたと言ったのは」

 

団員たちの中から現れたエルフ『リヴェリア・リヨス・アールヴ』。

深緑の長い髪をした彼女はレベル6の冒険者であり副団長でもある。

彼女の機嫌が悪そうなのは、普通、入団試験は幹部がそろって行うはずが、勝手に行ったので怒っているようだった。

そんな彼女だが僕のセリフに目を見開いた。

 

「この子が? ……それにしてもやりすぎじゃないのか?」

 

「もしこれでこの子の心が折れてしまえば、それまでだったというだけさ」

 

「はぁ。……ロキには言ったのか?」

 

ベルを治療しながらそんなことを聞いてくるリヴェリアに僕は思わず苦笑がこぼれた。

 

「君も知っているだろう?あの神がこんな面白いこと、見逃さないのを」

 

「……あぁ。そうだったな」

 

眉間を抑えながらもベルを甲斐甲斐しく治療するリヴェリアに

そういうところが「母親」と呼ばれる原因だと思うよ―――と言いたくなったのは内緒だ。

僕は気絶している彼をもう一度見つめる。

 

ベル……君は、どうして冒険者になりたいんだい?

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あれ? ここって」

 

「起きたかい? 君は気絶してしまったんだけど」

 

フィンさんに言われて慌てて立ち上がる。

 

「す、すいません!!」

 

「なに、ただ当たり所が悪かっただけだよ。それで、続けるかい?」

 

そう言って木刀を構えるフィンさんに僕もナイフを構えて応える。

 

「お願いします!!」

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「も、もう一回お願いします」

 

「わかった」

 

ダブって見えるフィンさんにナイフを構える。

ポーションでは体力は回復しないということを気付いたのはどれくらい前だったか。

脚に力は入らないしナイフを持つ手も震え始めた。左腕は半ばから折れて今もひどく痛む。

うまく体が動かせないしもう駄目だと、気づいている。

自分は弱い。フィンさんはかなり手加減をしてくれているとおもう。

それでも、まともに切り合うこともできずに、躱されて背中に攻撃を入れられる。

分かってる。勝てっこない。弱すぎる……。

こんなのじゃ――――――――英雄にだって

 

僕の大ぶりの攻撃をフィンさんは木刀で弾く。

そのまま飛んでくる蹴りは流れるように僕の胴体に突き刺さった。

 

「ぅぁッ」

 

ひどくゆっくり見える時間の中で、僕は地面へ転がりうつ伏せの状態で転がった。

 

「——————。————」

 

周りの音がひどく遠くに聞こえる。

もう体を起こす力すら残っていなかった。

手足は縫い付けられたように動かなくなり、瞼も重くひとりでに閉じ始めた。

 

やっぱり、僕は英雄には、成れないのかな……

 

『戯けが。貴様ごときが英雄の名を関するなど100年早いわ!』

 

またあの幻覚だ……

 

『そのような覚悟で、英雄(我が財)を名乗れると、使えるなどと思うなよ?』

 

か、覚悟ならあります。

でも、僕は

 

『……やはり我の見込み違いであったか。あの程度のことで折れるとはな』

 

だって……僕は弱い。大切な人一人、守れない……

僕は―――

 

『折れても、挫けても……それでも己を賭すと……お前は我に言った』

 

ッ……。

かつてこの人に、そして自分自身に放った言葉。

大切な人の言葉、僕の原点。

この人の言葉にかつでの光景が走馬灯のように甦った。

あの時の決意が、想いが全身を焼き尽くすような熱と共に駆け巡る。

 

『あの矮小な()の言葉であるのは遺憾だが……我はお前の内に見た。だからこそ、その鍵を、我が財を、我が力を……我自身を懸けたのだ』

 

胸にかけられた鍵を握る。それは手が焼き切れそうなほど熱く、胸が破れそうなほど輝いていた。

 

『まあ、我が力と言っても我自身も残滓に過ぎんがな……』

 

『お前の、ベル・クラネルの、想いを、願いを……言ってみろ』

 

そう言って不敵に笑うその人(英雄)に、僕は英雄の残滓を見た。

 

『僕は―――』

 

 

 

 

 

 

満身創痍の彼の攻撃を弾いて蹴り飛ばす。

彼は倒れこんだまま動かなくなってしまった。

左腕はあらぬ方向に曲がって全身傷だらけ、リヴェリアや周りの団員も何人かが駆け寄ろうとする……だが。

 

「フィン! やりすぎだ!!」

 

「まて!! リヴェリア!」

 

治療に行こうとした人間を止める。

きた・・・疼きが・・・親指の疼きが!

脱力していた彼の身体が僅かに動き始める。

体の痺れが取れていくように、徐々に起き上がっていく。

 

「ぼ、くは」

 

右手を地面について這いずるように、焦点のあっていない目でゆっくりと確実に。

 

「僕は、なりたい」

 

足を引き摺りながら、だらりと下がった左腕を引き摺りながら立ち上がり始める。

 

「なりたいッ!」

 

そして、彼はボロボロの状態で、立ち上がった。

何度も大きく息をしている。それでも双眸はしっかりと僕を捉えていた。

 

「僕は、英雄になりたいッ!」

 

その瞬間、親指の疼きが今日一番の反応を示す。

 

 

 

 

 

 

『いいか、ベル・クラネル。お前が鍵を開けられるのは精々3回だ。心してゆけよ』

 

ありがとうございます。

僕は目を閉じて大きく息をする。二度三度と繰り返し、正面のフィンさんを捉える。

 

「っふ!」

 

全力で駆けだした。

何度かこけそうになるが無理やり走り続けてフィンさんの2メートル手前までたどり着く。

ここで!

僕は右手を大きく振り上げる。

ちょうど剣を持っていれば、切り下せるであろう位置に。

怪訝な表情のフィンさんめがけて振り下ろす!

 

「ッ?!!!?!?」

 

ガキィンッッ!!!

 

フィンさんの木刀との間に火花が散った。

振り上げるまで何も握っていなかった僕の手には真新しい片手直剣が握られていた。

……木刀なんですか……それホントに。

防がれたことに驚きながらも火花を散らす木刀を見てそんなことを思った。

 

「一体どういうことかな。僕にはいきなり武器が出てきたように見たんだけど」

 

フィンさんが訪ねてくるが気にせずにもう一度切り上げる。

しかし、今度は簡単に避けられ直剣を横から弾かれてしまう。

 

「ぐぅッ」

 

目眩がさっきよりも酷くなってきたせいで体勢が崩れた。

その隙をフィンさんが見逃すはずもなく木刀が振り下ろされる。

僕は、強引に後退しながら振り下ろされた木刀との間に右手を滑り込ませる。

次はここで!

 

ガァアンッッ!!

 

「今度は盾か!次は何かな!!」

 

「はぁ。はぁ。はぁッこれで、最後です!」

 

「なにをッッグ!??」

 

途切れる寸前に扉を開け……僕の意識は暗転した。

 

 




うまく書けたでしょうか?
戦闘描写は苦手です。

それと皆さんが期待していた『王の財宝』の使い方とはかけ離れているとは思いますが大目に見てください。m(__)m


明日・・・あげられるかな・・・。(´・ω・`)

修正と加筆しました


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英雄の欠片と神様

連日投稿とはいったい・・・


いよいよ主神様のご登場です(*´・ω・`)b


艦これを放置して此方を書くという・・・(・・;)

ベルのステ振り、どうしよ


「まさかフィンに一撃入れるとはな~」

 

遠目にしか見えんかったけど、確かにフィンの後ろに槍がいきなり出てきよったな……おもろいやんけ。

 

「……あの子」

 

「なんやアイズたん。あの子に興味でもわいたんか?」

 

「……いえ、別に」

 

うひゃあ!そう言いながら横目でチラチラ見るとか!

 

「アイズたん萌えーー!!!」

 

「それ以上したら切ります」

 

ひえっ……剣に手ぇかけんといてーな。

 

「ほ、ほんならフィンとこにいこか、アイズたん」

 

フィンが見込んだ男……どないな奴やろうな〜〜。

 

 

 

 

 

 

 

「してやられたな。フィン」

 

「あぁ、背後からの攻撃を受けたのは、何年ぶりだろうね」

 

まわりにいる団員が誰一人として声を漏らさない中、僕は背中に刺さった槍を抜きながら、治療片手間に此方に言葉を飛ばしてくるリヴェリアに笑い返す。

 

「この槍やさっきの剣に盾。一体どこから出てきたのか。色々疑問は残るけど……取り敢えず、入団おめでとう。ベル」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

訓練場全体から割れんばかりの喝采と惜しまぬ歓声が轟いた。

 

「やりやがったよ!あいつ!!」

 

「可愛い顔してやるじゃないか!」

 

「団長と新人の純愛もの……いいっ!」

 

ベルとの戦闘が、皆にも良い刺激になったようで、興奮覚めぬうちに全員が訓練を再開した。

ちょうど同じタイミングで入り口から見知った顔が二人入ってきた。

 

「おう! フィン。おもろいことやっとったみたいやな〜〜」

 

「やぁロキ。おそかったね」

 

僕らの主神、ロキ。

主神様は自身のお気に入り、アイズを連れて僕らのところまでやって来た。

 

「まさかフィンに一撃入れれるとは思わなんだわ。その子、どないしたん?」

 

笑いながらうっすらと目を細める主神様に僕は肩をすくめて見せた。

 

「ちょっと前に知り合ってね。期待以上だよ」

 

「……フィンさん。えっと、その子の、名前、は?」

 

僕はアイズの言葉に目を見開いた。

アイズが他人に興味を示す事は滅多にないのに……

ベルも罪な男だね。

 

「ベル・クラネル。今日から僕らの家族(ファミリア)になる子だ」

 

 

 

 

 

 

 

僕は真っ白な空間に正座していた。

目の前には金色の鎧を身につけた金髪赤目の青年……いや、英雄王が仁王立ちしていた。

 

『辛勝よの。ベル』

 

うっ、すいません。

 

『……ふっ。まぁ良いわ。よいかベルお前の器で出せる財宝は1つまみに過ぎん』

 

はい。

 

『精進せよ、ベル。たとえ我と同じ高みに届かないとて、蟻一匹分ぐらいは近づけるかもしれんからな! フハハハハハ!!』

 

あ、あり一匹分……が、頑張ります。

 

僕がいびつな笑みを浮かべると、英雄王は笑いながら消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……知らない天井だ」

 

微睡から抜け、目を開けると知らない天上が視界に入る。

そのままぼんやりとしていると視界に褐色の女の子が飛び出してきた。

 

「あ! 起きた!」

 

「うぇ!?」

 

とっさに飛び起きたら変な声が出てしまった。

 

「団長に勝つなんてすごいよ!!えっと、あ!私ティオナ!君は?」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねながらそういう少女、ティオナさんの花のような笑顔にどぎまぎしながら僕は答える。

 

「べ、ベルです。ベル・クラネルですっ」

 

「あはは! ベル。顔真っ赤だよー♪」

 

「なんや楽しそうやな~。うちも混ぜてくれんか~?」

 

そう言って入ってきたのは、細目が特徴的な緋色の人だった。

 

「あ、ロキじゃん」

 

「扱いひどないか!? ……一様ここの主神やで?」

 

か、神様?!

僕は一瞬で背筋を伸ばして挨拶をする。

 

「はははじめまして! ベル・クラネルでしゅ!!」

 

顔色が赤と青をいききする。

どどどどうしよう、神様に失礼なことを!

冷や汗をダラダラと垂らしながらあたふたする

 

「なんやおもろいやっちゃなぁ……おーい。ベル、はよ戻ってこんかいな」

 

「す、すいません」

 

僕が俯きながら謝ると、神様は雷に撃たれたかのように動きを止めた。

 

「かわい……んん! 気にせんでええよ。ほなベル、うちの家族になったんやし、恩恵刻んだろか?」

 

「……?」

 

「? どないしたんや」

 

恩恵? 神様が言うってことは大事なことだし、でも何? 恩恵って……

 

「まさか恩恵知らんとファミリア探しとったんか?!」

 

「う……すいません」

 

僕がもう一度俯くと、神様は頬をかきながら

 

「ま、まあエエわ。恩恵ってのはな?―――――」

 

と説明を始めた。

 

 

 

 

「へえ!そんなものがあるんですね!!」

 

「そや!そんで今からベルにも恩恵を与える……んやけど」

 

「えへへぇ……むにゃむにゃ」

 

神様の視線が僕から外れてティオナさんを捉える。

ティオナさんは、いつの間にか僕のとなりで眠っていた。

 

「……しゃあない。うちの部屋まで来てくれるか?」

 

「わかりました。起こしちゃかわいそうですもんね」

 

僕はそっとベッドから抜け出し、掛け布団をティオナさんにかける。

僕は静かに扉を閉めると足早に神様を追った。

強くなるために――――英雄になるために。

 

 




UA7000突破しました。
本当にありがたいです。


いよいよ次回、ベルのステータス開示します。



どうしようかな・・・ステータス(-_-)


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英雄の欠片に息吹を

いよいよステータス付与です!


それとUA10000突破しました!
ありがとうございますm(__)mm(__)m


「ついたで、ここがうちの部屋や」

 

「し、失礼します」

 

部屋の内装をキョロキョロと見回しているベルに、思わず苦笑が漏れる。

 

「そんな珍しい物なんかあらへん。さ、とっとと恩恵刻むで!」

 

「はい!」

 

「ほな上脱いでうつ伏せになってくれるか?」

 

「ぬ、脱ぐんですか?」

 

ぐはぁ! そ、その照れ方。もじもじしながら赤面上目使いとか、破壊力抜群やで!!

 

「か、神様?」

 

「だ、ダイジョブや……背中に恩恵刻むで脱いでくれると助かるんやけどな」

 

「わかりました」

 

いそいそと服を脱ぎ始めるベル。

そこからあらわになる素肌は陶器のように透き通っていた。

 

ごっつうきれいな肌しよるなーー!

こりゃたまら……アカンアカン!

新し入ってくれた子にこないな態度でどうすんねん!!

 

「脱げたみたいやし、ここにうつ伏せで寝てくれやええで」

 

うちはうつ伏せになったベルの背にまたがる。

 

「ほな、いくで?」

 

「はい!」

 

人差し指に針を突き刺して神の血(イコル)を垂らす。

そうしてステイタスを刻み、内容を確認……

 

なんじゃこりゃぁぁあああああああああ!!!!?!??!!!!!?!!

 

したと同時に、うちは絶叫をあげた。

 

お、おおおおおおおお落ち着くんやロキ。

へーじょーしんへーじょーしんや……深呼吸しよか。

ひっひっふー、ひっひっふー、って違うわアホたれぇ!!!

 

「えっと、神様? 大丈夫ですか?」

 

「大丈夫やで大丈夫。なんも問題あらへん。気にせんといてな。ベルのステータスにちょぉっっっと見たことないスキルがあっただけや」

 

「そ、そうですか?」

 

「そやそや! ほんなら今から紙に起こしたるさかいちょっとまってえな」

 

な、なんとしてもこのスキルは、このスキルだけは隠さなアカン!

 

「こ、これがベルのステータスや」

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力 : I 0

耐久 : I 0

器用 : I 0

俊敏 : I 0

魔力 : I 36

 

 

【スキル】

 

 

 

 

・王律鍵 I

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

宝物庫開門時の補正

 

 

 

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

 

「わあぁ!!! 魔法! 神様、僕魔法が使えますよ!」

 

「そ、そやな~」

 

そこかいな!

もっと意味不明なスキルあるやんけ!!

 

叫びたい。叫びたいけど、あんなふうに喜ばれたらなんもいえんやん……。

 

「と、取り敢えず服着てもエエで」

 

「あ、はい!」

 

 

 

僕が服を着たタイミングで神様が話しかけてくる。

 

「なぁベル。ベルはこのスキルのこと、なんや分かるか?」

 

神様が指したのは王律鍵というスキル。

僕はそれに胸元の鍵を見せながら答えた。

 

「多分これのことだと思います。ある人がくれたんです」

 

「ッ……そか、わかったわ。ありがとうな」

 

鍵を見た瞬間神様の雰囲気が一瞬だけ変わった気がした。

ただそれも一瞬のことで、すぐにさっきまでの雰囲気に戻る神様。

 

「恩恵も刻んで時間もちょうどエエし、ベルのお披露目も兼ねて、食堂に行こか」

 

「はい! 神様」

 

「先いっといてくれるか?」

 

「分かりました! 神様もすぐ来てくださいね!」

 

 

 

 

 

 

笑顔ででていくベル(子供)を見送りながら、手元にあるもう一枚の紙に目を落とす。

 

「ほんに、なんやねんこれ」

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力 : I 0

耐久 : I 0

器用 : I 0

俊敏 : I 0

魔力 : I 36

 

 

【スキル】

 

・憧憬願望

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

 

 

・王律鍵 I

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

 

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

 

早熟……まだはっきりせんけど恐らく成長速度に関わる超レアスキル。

それに今まで見たことがないスキルへの補正

 

スキルがスキルを補正するとか……。

 

「かなわんなぁ」

 

もう頭いたなってきたわ。

それにベルのもっとった鍵。

僅かにやけど神力に近いなにかを放っとった。

不安はある。ベルの意志とは関係なく、第3者の思惑も感じる。

それでも何だかんだと、すでに許容し始めている自分に苦笑が漏れる。

 

「もううちの子供やからな……それにおもろそうやし」

 

暖炉に紙を放り投げたロキはそのまま部屋を出た。

 

「? ……ベルに食堂の場所、教えたっけ?」

 

 

 




ステータスとスキルに関してはかなり悩みました。
確認のために下記に各ランクの数値帯を記載しておきます

0-99 I
100-199 H
200-299 G
300-399 F
400-499 E
500-599 D
600-699 C
700-799 B
800-899 A
900-999 S
1000-1099 SS

だったはず・・・間違ってたらすいません


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英雄の欠片と家族

インフルエンザに襲われて執筆がおくれましたm(__)m
寝起きに書いたので所々文章がおかしいかもしれませんがすいません。


ベルくんお披露目です。

まあ訓練場で大分知られてますけどね。

ベートとアイズはまだ会わせません。



「ここ、どこ?」

 

只今、僕は絶賛迷子です。

ステータスに浮かれて、神様に場所も聞かずに飛び出した僕は、長い廊下の中央で途方にくれていました。

 

「全部同じような扉だし……と、とにかく誰か見つけないと!」

 

顔を青くして、止まらぬ汗を滴ながら。

長い廊下を走り、角を曲がって

 

「うわ!」

 

「おっと、廊下は走るなと……ん?お前は」

 

「いてて。す、すいません」

 

誰かとぶつかってしまった。

僕は尻餅をついた状態で顔をあげる。

 

「確か、ベル・クラネル……だったか?」

 

「はっはい!」

 

深緑の髪をした女性のエルフが僕の事を見ていた。

僕はその綺麗さに見惚れて返事が遅れてしまった。

これがお爺ちゃんの言う絶世の美女というものなのかと、うっすらと思った。

 

「立てるか?」

 

「はい。あの、すいません」

 

「次からは気を付けるようにな。所でロキはどうした?」

 

エルフの人の言葉に僕ははっとして——

 

「ここ、どこですか?!」

 

泣きついていた。

 

「な!? おい、まて!」

 

「食堂の場所を教えてくださいいぃぃ!!」

 

 

 

 

 

「はぁ……つまり、ロキに先に行けと言われて、出てきたは良いものの、場所を聞いておらず迷子になったと」

 

「は、はい。すいません」

 

眉間を押さえながら大きなため息をつくエルフの人。

 

うぅ、怒らせちゃったかな・・・泣きついちゃったし

 

僕が正座しながら俯いていると突然頭を撫でられた。

 

「ロキがすまんな。お前は私が責任をもって案内しよう。……だから、その顔はやめてくれないか」

 

若干たじろいでいるように見えるエルフの人に僕は笑顔で返事をする。

 

「あ、ありがとうございます!!! えっと」

 

「ああ、そういえば名乗っていなかったな。リヴェリアだ」

 

「はい! ありがとうございます。リヴェリアさん!!」

 

僕がそういうとリヴェリアさんはもう一度たじろいだあと、また僕の頭を一撫でして歩きだした。

 

「ついてこい。食堂はこっちだ」

 

僕は慌ててリヴェリアさんのあとについていった。

 

 

 

 

 

「おや? ベルじゃないか、ロキはどうしたんだい?」

 

食堂につくと既にたくさんの人が集まっていて、席はほぼ満席だった。

そのままリヴェリアさんの後を着いていくとフィンさんたちが座っている席まで着た。

 

「えっと、神様は先に行けといわれたので」

 

「なるほど、それで迷っていたところをリヴェリアが連れてきたと」

 

「うっ、すいません」

 

「なに、君が謝ることじゃないよ。それに、噂をすれば君を迷子にさせた張本人だ」

 

そういわれて振り替えると神様が凄い勢いで走ってきた。

 

「ベルぅぅ!!! ごめんなぁっっっ!!?! ごふぅッ!」

 

「走るな」

 

そしてリヴェリアさんの拳が顔に刺さった。

神様はそのまま気絶してしまったようで、床で煙をあげながら延びてしまった。

 

「か、神様? 大丈夫ですか?」

 

「かッかッか! なぁに、心配するな小僧! 儂が気付けておくでな!!」

 

「え? あ、かみさま?!」

 

ドワーフのおじさんに神様が連れてかれた?!

 

「ははは。それじゃあベル、ついてきてくれるかい?」

 

「え? あの、どこへ?? 神様はいいんですか?!」

 

「ハハハ、ダイジョブ。いつものことだからね」

 

そう言ってフィンさんに僕は食堂の前の方へ連れていかれた。

あれがいつも? 神様って丈夫なんだなぁ。

 

 

 

 

「さて、食事の前に皆聞いてくれ」

 

フィンさんの一言でざわざわしていた食堂が一瞬で静かになる。

 

「入団試験を見ていた人は知っていると思うけど、僕のとなりにいる彼が今回入団することになったベル・クラネルだ。彼が困っていたら、助けてあげてくれ。それじゃあベル。一言」

 

そう言って僕の背中を軽く押すフィンさん。

僕は緊張を紛らわすために数回深呼吸したあと、なるべく大きな声で挨拶をし、

 

「ベル・クラネルです! 皆さんに早く追い付けるよう頑張りますので! 宜しくお願いします!!」

 

思いっきり頭を下げた。

数瞬の間を開けて、大きな拍手と激励が僕めがけて飛んでくる。

 

「こっちこそ宜しくな!! ベル!」

 

「試験の時! 見てたぜぇ!!」

 

「あぁ、ベルきゅん可愛いよぉ!」

 

 

「おめでとう。ベル、これから君は僕らの家族だ」

 

フィンさんのその言葉に、僕は目尻に涙をためながら笑い返した。

 




文章大丈夫かな?


あとリヴェリアはヒロインじゃないよ(まだ)(*´∀`)


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英雄の欠片と5日間

何気に評価見てみたら高くてびっくりしました(;´∀`)


艦これの方が進まねぇ( ;∀;)

一部文章修正


挨拶のあと、僕は強面のお兄さんや褐色(アマゾネス? っていうらしい)のお姉さん達から歓迎をうけながら朝食を食べた。

 

 

 

 

 

朝食を食べ終え、自室に案内された僕は突如として現れたリヴェリアさんに連れられて、図書室のような部屋に来ていた。

しばらく待つように言われて、僕が椅子に座って待っていると、リヴェリアさんが戻ってきた―――――――大量の本を抱えて。

 

「今日から私たちが遠征に出るまでの5日、お前にはダンジョン1層から5層までのモンスター、地形等すべて覚えてもらう」

 

「え」

 

「午後は私が、明日の午前からはフィンが、それぞれ知識と技を教える」

 

「あの」

 

「覚えられなければダンジョンには行かせないからな」

 

「えぇ!!?」

 

こうして半ば強制的に、僕の波乱に満ちた5日間が始まりの音を告げた。

 

 

 

 

 

 

「次にこの通路だが――――」

 

「そこは―――」

 

「このモンスターは―――」

 

 

 

「つ、疲れた・・・」

 

あれから6時間以上、リヴェリアさんの授業(スパルタ)を受け気づけば、窓から見える景色が紅く熟れ始めていた。

そんななか僕は頭のなかに文字とモンスターを回しながら机に突っ伏していた。

 

「ふむ。思っていた以上に飲み込みが早いな……もう少し増やすか」

 

「そんなぁ!!?」

 

僕の心からの悲鳴にリヴェリアさんは苦笑しながら答えた。

 

「冗談だ。明日からはフィンの扱きも入るからな。少し余裕を持たせたかったんだ」

 

そう言いながらリヴェリアさんは僕の目の前に新しい本を数冊置くと

 

「明日の分は予習しておくように」

 

その一言で僕は気絶した。

 

 

 

 

目の前で倒れた白髪の少年……ベル・クラネルの頭をそっと撫でながら私は苦笑の吐息を漏らす。

 

「まったく、フィンはとんでもない子を連れてきたな」

 

そう言って机の上に広げてある本を手に取る。

背表紙に2階層と書かれた本。

 

今日だけで2階層まで覚えてしまうとはな……まだ多少知識に穴はあるが、初日でこれなら上々だろう。

私の後継者にも劣らずの向上心。恐れ入ったよ。

 

残り5日、それまでに出来る限り安全マージンを広げられるようにしなければと、白髪の少年の髪を撫でながら思った私はそっとベルを抱き抱えて自室へと送り届けた。

 

 

 

 

次の日、いつの間にかベッドにいた僕は急いで着替えたあと、食堂へ向かった。

 

「おぉ! ベル、こっちやでぇ!!」

 

食堂に入ると神様が僕に声をかけてきたのでそちらへ向かう。

 

「神様!! 昨日は大丈夫だったんですか?」

 

僕がそう聞くと神様はきょとんとしたあと、腕を組んで数度首を捻ると

 

「ん、取り敢えず大丈夫やで!」

 

親指を立てた。

僕はホッと胸を撫で下ろしながら椅子に座る。

 

「それならよかったです」

 

「ほんで、ベルはこの後フィンと訓練するんか?」

 

僕は朝食のサンドイッチを飲み込んで答える。

 

「はい!」

 

「うむうむ。精進せえよベル」

 

くるしゅうない、くるしゅうないと言う神様を周りの人はスルーするか苦笑しながら眺めていた。

僕は一応拍手しておいたら神様が泣きついてきた。

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終えた僕とフィンさんはこの前の訓練場に来ていた。

 

「さて、これから指導していくわけだけど……前見せたあの力で武器を出して見てくれないかい?」

 

「はい」

 

僕は英雄王からの贈り物(スキル)を起動する。

自分の意識が一瞬なにかに引っ張られたあと宝物庫とリンクする。

そして、ごく普通(・・・・)に手を伸ばし、武器を掴んだ。

 

出てきたのは最低ランクの片手直剣。

今の僕に出せる、最高ランクで最低ランクの武器。

 

「ふむ。他には何があるのかな?」

 

「えっと……剣、槍、斧、盾……他にも色々あります」

 

なぜか知っている宝物庫の中身をざっと口頭で並べる。

 

「使い方次第で…………なら今の君はどれだけ出せる?」

 

真剣に考えてくれるフィンさんに、僕は謝るように口に出す。

 

「よ、4本です。でも実際は4本目で倒れるので3本です」

 

「……よし、君は恐らく遊撃の役が一番やり易いと思う。色々な武器が出せるなら、様々な場面に対応できるからね」

 

そう言われて嬉しくなってはにかむ僕にフィンさんは、でも、と続けた

 

「大抵の相手は君の力があれば問題ないだろう。しかし相手が人間なら? 1つの武器を極限まで扱える相手なら、それは君の天敵足りうるだろう。いろんな武器を使う相手は、一つ一つの技が脆く、弱い。所詮、器用貧乏にしかならないからね」

 

突き付けられた現実に、僕は拳を握り締める。

 

僕もうっすらと分かっていた。

皆、自分がこれと決めた武器を使い続けて強くなっていく。僕が知っている英雄彈の英雄も。きっと、目の前にいるフィンさんも……。

不意に頭を下げようとする僕に、フィンさんは再度、しかし、と問うた。

 

「もし、もしも万の武器を極限まで扱えるなら。それ足らしめる技を、駆け引きを……信念を持っているならば……それはきっと、英雄と呼ばれるだろう」

 

英雄……その言葉に僕は自然と構えをとっていた。

小さな頃から、幾つもの英雄彈を、聞いて、見て、感じた。自分もそうなりたいと願い、そして今、それ(理想)を越える英雄(ゆめ)の片鱗を見た気がした。

僕は宝物庫から武器を取り出す。

 

得物は槍。

単なる挑発にしか思えない行動に、フィンさんは武器を構えることで応えた。

 

「お願いします!」

 

僕はフィンさん目掛けて駆け出した。

眼前にいるフィンさん(英雄)を越えるために。

 




UA20000突破です。

ほんに感謝やで! byロキ



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英雄の欠片の成果

UA伸びすぎぃ!
ほんとに皆様に感謝です。皆様の感想や評価を励みに、これからも頑張っていきます。



「もっと速く」

 

「隙が大きい」

 

「今のは受け流す」

 

 

4日間はあっというまに過ぎ、既に5日目の正午になろうとしている。

僕は傷だらけの体に槍一本を携えてフィンさんからの攻撃に備える。

入団試験の時に似ているな、とぼんやりと思う。

 

「はぁ、はぁっはぁ」

 

右からの振り下ろし……転がって避ける。

更に右下からの切り上げ……避けられない。槍を割り込ませる……力負け、そのまま吹き飛ばされる。

転がって衝撃を逃がして直ぐに相手を視界に入れる。

眼前に迫る鋭い突き……槍で弾く……弾いた力を利用されて脇腹を殴打された。

半歩下がって膝をついたタイミングでフィンさんの蹴りが―――

 

 

「大分動けるようになったね」

 

フィンさんは構えを解くと微笑んだ。

 

「はぁ、はぁッッはいッ」

 

「ただまだ受け流しの見極めが甘いね。あとは武器はなにもそれ1つじゃないと言うことを忘れないようにね」

 

そう言ってフィンさんは僕の持っている武器を指す。

 

「これ以外、です、か?」

 

「そうだ。それに気づければもっとうまく立ち回れるだろう」

 

フィンさんは答えを言わずに、助言だけ残して訓練場を離れていった。

僕はそのまま後ろに倒れこんでしばらく考えることにした。

 

 

 

 

 

 

「おや? 君がダンジョンに潜らずここにいるなんて、珍しいね」

 

訓練場の出入り口、そこから中を覗き込むようにして立っていた人物に、僕はさも今気がついたかのように問いかける。

 

「……ベルが気になるのかい?」

 

「……なぜ、あんなに速く、強くなれるのか、気になって」

 

「彼には、目標があるから、じゃないかな」

 

「……ダンジョンに行ってきます」

 

そう言って金の髪を靡かせながら、彼女はダンジョンへ向かっていった。

僕はその後姿を見送ると、主神の部屋に向かう。

 

 

 

 

「おじゃまするよ」

 

「おぉ! フィンか。どないしたん?」

 

ロキはソファに座って酒瓶を傾けていた。

 

「またお酒かい? あとでリヴェリアがうるさいよ」

 

僕がそういうとお酒がなみなみと入ったコップに向かう手が止まる。

 

「うっ……嫌なこと言わんといてえな……まあ飲むけどな!」

 

「はぁ。遠征のことでちょっとね」

 

「ぷはぁ! ……んで、遠征のことっちゅうのは?」

 

「今回のメンバーに僕も加えてもらおうかと思ってね」

 

ロキは一瞬動きを止めると、ニタリと笑う。

 

「今度は何を考えとるんや?」

 

その質問に僕は親指を舐めながら答える。

 

「勘……かな」

 

「…………おもろいやんけ。のったるわ」

 

 

 

 

 

 

 

「フィンさんも遠征に行くんですか?」

 

「最近ダンジョンにあまり潜れていないからね。まあ遠征といっても2~3日だ。ロキにも許可はもらった」

 

そういいながらフィンさんは、周りの団員達を眺めるように一望する。

 

「君が入団して、団員達も以前より積極的に訓練している姿が見受けられる。だから僕がいない間、彼ら(団員)がどうするか気になってね」

 

「だからベル」

 

フィンさんは僕の方を向いて柔和な笑みを浮かべる。そして

 

「はい?」

 

「僕らが遠征に行く明日から、ダンジョンへ行くことを許可する」

 

そう告げた。

僕は数秒の時間を要して、たっぷり溜めた後……

 

「ほんとですか!!!!」

 

思わず叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「うれしそうだな。ベル」

 

「はい! フィンさんが明日からダンジョンに潜ってもいいって言ってくれたんです!!」

 

僕がそういうとリヴェリアさんは、ピクリッ…と動きを止めた。

 

「今なんと?」

 

「え、えっと……フィンさんが」

 

「明日?」

 

「は……はい」

 

リヴェリアさんは体をプルプルと震わせて……大きくため息をついて脱力した。

 

「はあぁぁ……本当なら10層まで覚えさせる予定だったんだが」

 

「え」

 

リヴェリアさんが今、ものすごいことを言った気がする。

 

「フィンが許可を出したのなら問題ないと判断したからだろう。だがベル」

 

「は、はい!」

 

「ダンジョンに絶対はない。私が教えたことだって通用しないこともある―――――それがあそこ(ダンジョン)だ」

 

リヴェリアさんは僕の目をまっすぐに見て、そういった。

そのままリヴェリアさんは、ならばこれまでの復習をと今まで以上にスパルタだったのは余談である。

 

 

 

 

「ほ~~ん。あのリヴェリア(ママ)がなぁ……よかったなぁベル」

 

「はい!」

 

へっへっへ……ベルの白い陶器みたいな肌。すべすべやでぇ。

 

「やけど、無茶だけはあかんで?」

 

「はい! リヴェリアさんにも絶対に5階層から下には絶対に行くなって言われました。それと安全マージンを教えた3倍以上とれって」

 

……ママ、それじゃモンスターに会えへんやん。

 

「ほい、ステイタスの更新、終わったで!」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力 : H 181

耐久 : G 231

器用 : H 188

俊敏 : G 277

魔力 : F 307

 

 

【スキル】

 

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

 

 

・王律鍵 I

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

 

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

 

「ステイタスってこんなに上がるものなんですね!!」

 

「そ、そそ、そうやで! ま、まあベルは他の子に比べてだいぶ成長早いから、このまま頑張るんやで!」

 

「はい!」

 

「ほ、ほな今日は早めに寝るんやで!!」

 

「はい!! おやすみなさい、神様!」

 

神様にはそういわれたが、僕は明日が楽しみすぎてなかなか寝付けなかった。

 

そういえば神様、すごい汗かいてたけど、大丈夫かな?

 

 




スキル欄の//は隠蔽されているということです。

ベル君のステ・・・伸ばしすぎたか?

でもフィンさんのしごきを5日間受けたわけで・・・アイズさんのしごきもステすごいことになってたし、大丈夫だよね!


ほんとに大丈夫かな・・・


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英雄の欠片、ダンジョンへ

ここまで来て気づく・・・レフィーヤ出てないやん!!


原作に入るのに時間かけすぎた( ;∀;)

じ、次回に顔を出させよう。うん、そうしよう。




 

早朝、自室から出て訓練場へ行く。

まだ誰もいない訓練場で素振りと動きの練習をする。

頭で思い描いたフィンさんの攻撃を受け止め、反撃しようとして倒される。という流れを数度繰り返したあと、僕は汗を拭いて食堂へと向かった。

 

今日はフィンさんたち幹部が、数日間の遠征に出る日、そして僕が初めてダンジョンに潜る日である。

 

 

 

 

「アイズとベートは先に行ったのかい?」

 

「はぁ。まったくあいつらは」

 

「がははは! まぁすぐ追い付くじゃろう!」

 

朝食のあと、僕はフィンさんたちを見送るために門まで来ていた。

 

「それじゃあベル。僕らは行くけど、君も気を付けるようにね」

 

「はい! フィンさんたちも気をつけて!!」

 

僕や数人の団員たちに見送られながらフィンさんたちはダンジョンがある、バベルへ歩いていった。

 

「……よし! 僕も準備しなきゃ!!」

 

僕は頬を叩いて気合いをいれると、自身も装備を整えに向かった。

 

 

 

 

バッグの中身を確認する。

予備の武器や携帯食。朝リヴェリアさんにもらったポーションも三本入っている。

 

「いよいよだ」

 

眼前には悠然と構えるバベル。

全身鎧(フルプレート)を着込んでいる人やフードを被った人、大きなバックを担いだ人など、大勢の人がバベル入っていく。

僕は一度大きく息を吸い込んだあと、バベルの下、ダンジョン一階層へと向かう。

 

 

洞窟のような場所なのに案外明るいんだな、と一階層に降りて最初に思った。

通路の至るところに生えている、水晶のようなものが光を放ちダンジョン内部を明るくしていた。

頭に叩き込んだ地図を思い浮かべながらゆっくりと進む。

そして何度か通路を曲がったところで

 

ガギギィ

 

なにか、の声を聞いた。

 

「ッ……」

 

僕はそっと通路を覗き込む。

そこにはゴブリンというダンジョン一、二階層の代表的とも言えるモンスターがいた。

 

数は一体。これなら

 

僕は槍を取り出す。

大きく呼吸を繰り返す。

 

大丈夫、フィンさんに教わった事を活かせば勝てる!

僕は一気に駆け出すと姿勢を低くしながら地面を這うように槍を走らせ―――一閃。

 

ガギィァ……?

 

ゴブリンは切られたことに気づかずに魔石となった。

 

「え?」

 

呆気なくゴブリンを倒せたことに動揺して辺りを確認する。もしかして攻撃が外れてまだゴブリンは生きているんじゃないかと思った。

だが、あるのは小さな魔石1つだけ。ゴブリンの姿はなく、本当に僕が倒したようで、そのことをようやく理解すると

 

「やった、僕でも勝てるんだ!!!!」

 

思いっきりガッツポーズを決めた。

初めてのダンジョンでモンスターを倒せた事に、にやけるのを堪えながら興奮と感動を噛み締める。

 

「よし!!もっと頑張るぞ!!」

 

落ちている魔石はしっかりと拾い、僕は思いっきり駆け出した!

 

 

 

それから僕は興奮の醒めぬまま一階層を走り回った。

あるときは数匹で固まっているゴブリンを、

また初めて遭遇したコボルトを、

固まっていれば槍で刺し、切り上げ、弾き飛ばした。

フィンさんに鍛えてもらったお陰で、ひどく遅く見えるゴブリンの攻撃は余裕で回避できたし、ゴブリンやコボルト相手なら数回、良ければ一撃で倒すこともできた。

 

そして気づくと、既に眼前には二階層への道があった。

僕はこのまま降りようと思って一歩前に―――

 

キュウウウゥ

 

「……お腹すいちゃった」

 

お腹の音で、漸く我に返った僕は赤面しながらダンジョンの出口へと向かった。

 

 

 

 

「これ、夢じゃないんだよね!」

 

ダンジョンから出た冒険者が最初にやること、換金だ。

取ってきた魔石等を、その価値に応じてお金(ヴァリス)に代えてくれるところらしい。

そしてさっきそこに魔石の入った袋を出して、帰って来た金額が

 

「4200ヴァリス! ホントにこれだけ稼いだんだ!」

 

神様に報告しなくちゃ!!

 

僕はお金の入った袋を握りしめてホームへと走っていった。

 

 

 

ホームに戻って報告すると、神様はお酒を吹き出したのは余談である。

大丈夫かな?

 

フィンさんたちが帰ってくるまで残り2日、それまでにどこまで行けるかな。

僕は目を瞑りながらそんなことを考えていた。

 

 




前回言った通り改行を少なくして書いてみました。

表現って難しい。
次回、レフィーヤ、そしてシル、登場!?


出せるかな(;´∀`)


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英雄の壁

武器のランク付けどうしよう(--;)

レフィーヤはまだ出せなかったよ(-_-)






ダンジョンに絶対はない。

 

そう教えられた事を本当の意味で理解するのは、ソレ(・・)に遭遇したときである。

 

冒険者をしていくなかで、必ず、絶望に相対する時がある。そんな時、多くの冒険者は生にしがみつこうとするか、或いは手放してしまう。

 

そう言った彼に、僕はあなたならどうしますか?

そう聞いた。

彼は笑ってこう言った―――――。

 

 

 

 

あれから二日、二階層三階層と降りて、今、僕は五階層(・・・)に来ていた。

 

「な……なん、で」

 

二階層も三階層も、出てきたモンスターは問題なく倒せていた。

コボルトとゴブリンの混じった集団にも勝てた。

そう、だから―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は間違えた。

 

五階層も問題ないと、僕なら倒せると慢心し、思い込んだ。

 

異常事態(イレギュラー)なんて起きないと……

その考えを圧し折るように現れたソレ。

 

 

ブモオオオォォォォォッ!!!!!

 

 

「な、何でここに……ッ」

 

僕の眼前にいるモンスター。

本来ここにいるはずのないレベル2()

鼻息を荒くして向かってくる怪物(ぜつぼう)に、僕は心が竦むのを感じた。

 

 

「ひッ?!」

 

僕は全力で駆け出す。

頭に叩き込んだ地図が出てこない。

右へ左へ、がむしゃらに走る。

 

ブンッッ!!!

 

背中を何かが掠める。喉が縮こまって息ができない。

躓きながら、転がり込むようにしてたどり着いた先は……

 

 

 

「行き止まり……」

 

ブオオオオォォォォォ!!!!!!!

 

「ッグァア!!?」

 

背中に響く衝撃に僕は宙を舞う。

壁に叩きつけられ、ドシャリ、と地面に落ちた。

 

「ぅぁ」

 

体に力が入らない。

体の中身を抉り出すような痛みに心が悲鳴をあげる。

全身を血の海が包み、引きずり込まれる様な感覚に陥る。

 

怖い、死にたくないっ。

必死に体を動かそうとしても、手足はそれを無視するように沈黙している。

 

フゥゥゥウウウッ!!

 

絶望は止めを刺すためにゆっくりと、悠然と歩いてくる。

斧を持った腕が振り上げられ————

 

 

 

 

 

 

 

ブモゥゥ?

 

ずれた。

地面へ落ちる自身の腕を認識し

自身の胸から突き出る銀の輝きを確認して、絶望は呆気なく消滅した。

 

「待ってて、今助けてあげるから」

 

「ぁ」

 

絶望を容易く刈り取るその光に、金色の髪を持つ女神に、僕は痛みを忘れ、見惚れた。

そして、ポーションによる激痛(治療)で意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「ぅ……ここは」

 

体中を刺す鈍い痛みに目を覚ます。

ゆっくりと辺りを見回して、ここが自分の部屋だと気づく。

 

「ッ……」

 

跳ね起きるようにして体を起こして、激痛に襲われた。

 

思い出した。モンスターに襲われて! 誰かに助けてもらっんだっけ。

 

「神様に、報告にいかなきゃっ」

 

鈍い痛みと脱力感に襲われながら、僕は部屋を出た。

道中、誰かに会うことはなかった。

 

今が何時かわからないや。もしかしたら夜なのかな。

 

そんな考えを巡らせながら、漸く神様の部屋までたどり着く。

 

「―――だ」

 

ノックしようとした手を止めた。

中から声が聞こえた。フィンさんの声だ。

 

僕は盗み聞きなんてと思ったが、なぜかそこから動けなかった。

 

聞こえるのはフィンさんとリヴェリアさんと神様、そして若い男の人の声だった。

 

「あの白髪のガキに―――」

 

「いい加減に―――か」

 

「は! 事実――――が!」

 

「英―――になるだぁ?!」

 

「プハハハハッ!おもし――」

 

「何がおか――――」

 

聞き取りにくい声。僕は罪悪感を抱きながら更に扉に近づいて——聞こえた。聞いてしまった。

 

 

「あんなガキが英雄になるたぁ、嗤わせる!」

 

「弱えぇ奴ほどいきがるんだ! 英雄になりたぁい、ちやほやされたぁいってな!!」

 

心臓が早鐘の様に打つ。

 

「フィンもあんなやつに一撃入れられるなんてなぁ!」

 

「あの程度の雑魚にも勝てねぇで泣き叫ぶ奴が、何が英雄だ。あいつには俺は死んでも守られたくないね」

 

「ベート!! いい加減に」

 

「あのガキには精々道化(ピエロ)がお似合いだ」

 

気づけば走り出していた。

あの場所に―――

 

 

 

 

 




次は早く出せると思います


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原点再起

今回、微妙かな・・・

さぁ、批判よこい!((((;゜Д゜)))


「あのガキには精々道化がお似合いだ」

 

そういい放つ狼の青年、ベートに僕はほんの僅かに怒気を含ませて言う。

 

「ベート、これ以上(家族)の夢を笑うことは許さないよ」

 

「……ケッ」

 

僕の言葉に興味を無くしたかのように吐き捨てる彼に、それにと続けた。

 

「あまり彼を見くびっていると、すぐに追い抜かれるよ……彼は、英雄になる子だからね」

 

僕がそう言って笑うと、ベートは鼻で笑って出ていった。

 

「ふぅ。リヴェリアも珍しく熱くなっていたね」

 

僕がそう言うとリヴェリアは少したじろいだあと咳払いをして誤魔化した。

 

「ベルは大丈夫なのか?」

 

「それはどちらの意味でだい?」

 

「両方だ」

 

「問題ないよ」

 

「なぜ言い切れる」

 

「……(ベル)は僕らのファミリアの子だからね」

 

僕の言葉に数秒動きを止めた彼女はふっと笑った。

 

「そうだな、ベルはロキ・ファミリアだ。あの程度で挫けることはないな」

 

そう言いながら微笑む彼女のそれは、母親のそれだ——と、言わない方がいいのかな。

 

「……うち、空気やん」

 

 

 

 

ダンジョンを駆けながら考える。

 

ピエロ……道化。

確かに、僕はそうかもしれない。

お爺ちゃんの夢を借りて、フィンさんの武器を借りて、リヴェリアさんに知識を借りた。

それでも慢心し、踊るように逃げ、笑いを取るように転がった。

やっぱり僕は英雄にはなれない。

僕は自分自身に理解させるために、口を開いた。

そして

 

「悔しいっ」

 

漏れた言葉は感情だった。

理性と心が分離した。

 

僕なんかには無理だと、弱い僕には不可能だと理性が訴える。

でも口から零れ出すのは心の叫びだった。

 

「悔しいッ」

 

仕方ない、僕は弱いんだから

背中が痛い。心が苦しい。

 

「強くなりたいッ」

 

無理だ。僕は英雄じゃない

荒い呼吸を繰り返す。鈍痛に肺が軋む。

 

夢中になって走って、たどり着いたのはドーム状の行き止まり。僕が逃げ込んだ場所。

壁がピキリと割れるなか、僕は自分()を縛る自分(理性)に叫んだ。

 

「英雄に、皆を守れる英雄になりたいッッ」

 

無理だ。誰かの夢を借りた(やつ)には。

壁から生まれる数多のモンスター

 

「仲間を、家族を守れる強さがほしいっ」

 

無理だ。きっとあのときみたいに逃げ出す。

十数体前後の群れを前に僕は叫び続ける。

 

「僕に(原点)をくれたあの人に」

 

自身の夢を掴むように胸を抱き、

 

英雄(自分自身)を託してくれたあの人に」

 

誓うように鍵を掴む。

 

「あの人たちに負けないような。笑われないような」

 

僕は己の内()を叫んだ。

 

「誇れる英雄に、認められる英雄に、僕はなりたいッ!」

 

 

 

 

あぁ、なんて不確かで不明瞭で朧げな夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

でも、それがお前(ぼく)だ。

 

うん。それが僕だ。

 

 

その時、僕のなかで何かが変わった。

 

グギャァァアアアア!!!!

 

眼前まで迫っているモンスターを前に、僕は新しい知識(・・)に笑みをこぼしながら呟いた。

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

 

僕の背後に広がる黄金の二つの波紋。

これもあの人に借りたもの。それでもいつか、自分のもの()にできるよう、頑張ろう。

 

波紋から出る剣の切っ先一瞬の溜めのあと、射出する。

 

ギェァァアッ?!

 

高速で飛び出した武器はゴブリンを貫通し壁に突き刺さる。

 

モンスターたちに生まれる一瞬の動揺に僕はすかさず武器を取り出す。

槍を一本取り出しながらもう一方で再度攻撃する。

ただ狙いが甘かったのか、コボルトの腕を切り飛ばしただけだった。

 

僕は槍を振るって片腕を失ったコボルトに止めを刺す。

 

ギェアアアアア!!!

 

ガガガ!!

 

ギャギャ!!!

 

モンスターたちもこのままでは不味いと感じたのか一斉に襲いかかってきた。

 

「ふぅ・・・はぁ!!!」

 

僕は強くなるために、追い付けるように、モンスターへと駆け出した。

 

 

 

「まだベルは見つからんのかいな!?」

 

「館は隅々まで探したけど見つからなかったね」

 

「ま、まさか家出か!? うおぉぉぉ、おのれモンスター、しばきまわしたろかぁ!!」

 

「落ち着いてください! ロキ様」

 

早朝、ベルが部屋からいなくなっていることが判明し、捜索を始めてから数時間。既に日は高く登り楽観視していた団員にも焦りが見えていた。

普段ならともかく、瀕死の重症をおった人間がなんの言伝ても無しに居なくなるのは可笑しい。それに居なくなったのがあのベルのような子であれば尚更だ。

 

全員が探索範囲を広げようと動き始めたとき、扉が開け放たれた。

 

「ロキ~、クラネルさん見つけました~!」

 

そう言って入ってきたのは傷だらけのベルを背負ったエルフの少女、レフィーヤだった。

 

「どどど、どないしたんや!?」

 

床に寝かされたベルに駆け寄るロキとファミリアの子供たち。

それに対して少し顔の赤いレフィーヤは説明しようとする。

 

「ええっと、その、私が外に出たらダンジョンの方からクラネルさんが歩いてくるのが見えて」

 

ポーションをベルに飲ませるところを見届けたロキは心底ほっとしたように息を漏らす。

 

「そか、とりあえず無事みたいやし、ほんま良かったわ」

 

とりあえずは一件落着ということでロキは「手伝ってくれた奴には今度酒奢ったるわ!」といつもの調子で騒ぎ始めた。

それに盛り上がる団員たちと眉間を押さえながらため息をこぼす幹部。

 

まだ彼らは、少年の変化に気づいてはいなかった。

 

 




最後意味深みたいに書きましたが別に伏線とかではないのであしからず


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英雄の欠片、謝罪する・・・

大変遅くなりました。
恐らくですがノロウイルスにかかっていまして(ヽ´ω`)

まだ本調子ではないですがとりあえずあげます。
後書きに今後の投稿ペースとか書きますので興味があれば


「すいませんでした!!!」

 

神様の部屋。そこで僕はフィンさんたちに土下座をしていた。

これは謝罪の最終奥義だとおじいちゃんに教えてもらった。

 

『いいかベル。女性が怒ったらまず謝れ、そういう時はまず男が頭を下げるもんだ』

 

そう教えられた。

そもそも今回は全部僕が悪いのだから謝るのは当然だ。

 

「……自分、どこいっとったん?」

 

神様にいつもの調子はなく、真剣な声が響く。

僕は頭を下げた状態で答えた。

 

「……ダンジョンに行って」

 

「あほぉ!! 何しとんねん! まだ治ってない体引き摺って!」

 

「す、すいません!」

 

「……顔あげな」

 

「……はい」

 

僕はゆっくりと顔をあげる。

神様は苦虫を噛み潰したような、苦しげで、悲しい顔をしていた。

 

「なんで、うちに話してくれんかったん?」

 

「そんな、頼りないか?」

 

「確かにうちにはなんもできんことかもしれん。それでも」

 

「家族やろ?」

 

「っ」

 

その言葉に僕は顔を伏せた。

そんな僕の頭を神様が優しく撫でてくれる。

 

「ケガはもうええんか?」

 

「はい」

 

「いっつも酒ばっか飲んで、頼りないけど、うちなりに話聞くで……うちが信用できへんかったら、リヴェリアでもえぇ。もう少し、ファミリア(家族)を頼ってぇな」

 

「ッ……はい」

 

僕は良いファミリアに入れた。だって、こんなに優しい(神様)がいるんだから。

 

「ロキ、それを口実にベルに変なことはするなよ」

 

僕を撫でている手が止まった。

小刻みに震え始めた。

あれ?神様?

 

「さて、ベルのステイタス更新しよか!」

 

「かみさまぁ?!」

 

大丈夫、だよね?

 

その後、ステイタスを更新してもらったけど

「また無理をするかもしれないから」と見せてもらえなかった。

 

 

 

 

僕は神様の部屋を出た後、僕を探してくれていた人たちにお礼と謝罪をして回った。

頭を下げると、皆さんは

 

「気にするな」

 

「ベルのお陰でただ酒が飲めるしな!」

 

「ベルきゅんのためなら何時でも!」

 

そう言って、逆に僕を励ましてくれる人や冒険でのアドバイスをくれる人もいた。

思わず涙が零れそうになったけど必死に堪えた。

この人たちにも早く追い付けるように、頑張らないと

 

そう決意新たに駆け出したところで……

 

 

 

ふと、風が吹いた。

 

「?」

 

肌に触れる暖かな風に、僕は無意識に足を進めた。

 

僅かに開いた扉の隙間から零れる日射しを浴びながら、僕は扉の向こう側を覗き込む。

そこで僕は、妖精を見た――――。

 

 

扉の向こうは、青い芝生が生い茂り、中央に一本の木が植えてある……そんな、中庭のような場所だった。

 

その庭の中央、木陰に立っている少女。

山吹色の髪をなびかせながら、淡い魔力をまとわせたその少女に、僕は心底見惚れていた。

 

 

 




次回、漸くレフィーヤと本格的に接触します。
Ψ(`∀´)Ψケケケ


今後の投稿ですが月に最低2本、良ければ3本を目処に投稿させていただきます。
まぁこれもいつまで続くか...急にペースを開けたり早めたりするかもなのであくまでも目安にしてください。

また、この作品とは別に投稿している作品に関しては、怪物祭で一区切りとし、そちらの作品の投稿に移行します。申し訳ありませんm(__)m
自分には両方を同時に、なんてことはできなかったので、一定感覚で交互に投稿させてもらいます。ご迷惑お掛けしますが何卒宜しくお願いします。
(これもほんとは活動報告でするべきなんだよなぁ)


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英雄の欠片とエルフ

UA48000突破!
なんてこったい(´・ω・)

今回、レフィーヤっぽくできたかな


彼女をぼんやりと眺めながら、どこかで見たような気が……と思っていると

 

「ッだれ……あれ?あなたは」

 

彼女がこちらを振り向いた。

僕は扉を開けて、慌てて飛び出る。

 

「こそこそしてすいません!」

 

「いえ、えっと。確かベル・クラネル……さんでしたよね」

 

「はい! ベルクラネルでしゅっ!」

 

・・・・・・

・・・

は、恥ずかしい!!

 

二人の間に気まずい空気が流れる。

エルフの少女も、どう反応すればいいのか迷いながら目を右往左往させている。

それから、たっぷりと時間をおいてから、彼女は事を無かったものとして話を切り出す

 

「な、ななにかご用ですか?」

 

が、やはりだめだった。

お互いを見合い、そしてどちらからというでなく「ぷっ」と吹き出した。

 

 

 

「あはははは。それで、クラネルさんはどうしてここに?」

 

「えっと、皆さんにご迷惑をかけたのでお礼をして廻っていました」

 

「あぁ、なるほど」

 

「えっと、僕を助けてくれたのって貴女ですよね?」

 

あの日、朦朧とした意識のなか、彼女に助けを求めた気がするのだ。

その考えは、どうやら当たっていたようで彼女は苦笑しながら頷いた。

頬が若干赤いような気がするのは気のせいだろうか。

 

「そ、そうですね。あの時はいきなりで、その、驚きましたけど……払い除けなかった自分にも」

 

「え?」

 

「あ! いえ、なんでもないです!!」

 

最後の方がうまく聞き取れなかったけど、何て言ったのかな?

 

「そ、そうですか?えっと、あのときは本当にありがとうございました……あの、すいません、名前を教えてもらっても」

 

僕がそう言うと彼女はハッとしてパタパタと慌てる。

 

「ああ!! すいません。名前も名乗らずに。私はレフィーヤ・ウィリディスです。レフィーヤと読んでください」

 

「ありがとうございます、レフィーヤさん! 僕のことはベルと呼んでください」

 

「はい。ベル」

 

「ところで、レフィーヤさんはどうしてここにいたんですか?」

 

僕がそう聞くとレフィーヤさんは僅かに肩を震わせたあと、力なく笑った。

 

「魔法の練習です。私、皆さんの足を引っ張ってばかりで。……皆に守ってもらってるのに満足に詠唱できなかったりで。だから少しでも、良くしよう練習してるんです」

 

そう言ってレフィーヤさんは両手を構えて目をつむる。

 

「解き放つ一条の光 聖木の弓幹(ゆがら) 汝 弓の名手なり 狙撃せよ 妖精の射手 穿て 必中の矢...アルクス・レイ」

 

レフィーヤさんから放たれた魔法は木を迂回するように曲がり壁に立て掛けてある板へと命中した。

 

「わぁ! すごいです!!」

 

「練習ではうまくいくんです。でも実戦だと、あの人の前だと、どうしてもうまくいかない。あの人に追い付きたいのにっ。皆を助けたいのに」

 

そう苦しげに言う少女に、僕は反射的に

 

「僕に魔法を教えて下さい!」

 

などと言ってしまった。

 

「え?」

 

「えっと、レフィーヤさんの魔法すごいです! 僕なんて狙った場所に飛んでいかないし放つのに時間が掛かるしで……だ、だから、あんな綺麗な魔法が撃てるレフィーヤさんに! 教えてほしいんです!」

 

早口で言うと、レフィーヤさんはポカンとしたあと

 

「ぷっ、あははは」

 

「な、なんで笑うんですかぁ」

 

顔を赤くして抗議する僕に、レフィーヤさんはお腹を抱えながら笑い続けた。

 

 

 

 

「はぁ、可笑しかったです」

 

ひとしきり笑った私は、涙を拭いながら目の前で、ちょっぴり拗ねたように目を逸らす少年を見る。

 

「ひどいです」

 

「ふふふ。ごめんなさい。それと、ありがとうございます」

 

落ち込んでいた私を彼なりに励ましてくれた。

その不器用さに暖かいものを感じながら私は手を差し出した。

 

「リヴェリア様のようにはできないかもしれないけど、任されました」

 

「っ! はい!! お願いします」

 

そう笑顔で私の手を握る彼の手は、とても暖かかった。

 

 



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英雄の欠片の特訓と…

お気に入りが800を超えました( ゚Д゚)

手、手が震えてきやがりますよ。


「魔力が多過ぎです!!?」

 

壁を貫通して、地面を大きく抉った惨劇に私は叫んだ。

 

 

 

私は、彼が魔法を行使するのを見て、まず違和感が、それに続いて呆然とした。

彼の魔法には限界がみえなかったから。

 

普通、どんな魔法にも最低限必要な魔力と、込められる魔力の限界値がある。

当然のように魔力が必要量足りていなければ魔法は発動できないし、余分に注げば注ぐほど威力は上がるものの制御が難しく、暴発しやすい。それに限界を越えて注ぎ込んでも溢れて無駄になるだけだ。

 

なのに……

彼の魔法は、無尽蔵とも呼べるほどに魔力を飲み込んでいる。

同じ武器でも魔力量が数倍以上の差があるときもあった。

さらに、不可解なこともあった。

込めた魔力が、ある一定の量に達すると性能は上がらなくなった。

そこが限界値かと思ってみても、溢れるはずの魔力は見えなかった。威力は上がらないのに限界はまだこない。まるでわざとその威力までしかでないようにしてあるかのような……そんな考えさえ浮かんだ。

 

そんな不可解な魔法に興味もあったが、彼がフラフラになってしまったところで一旦休憩。

取り敢えずは最適な魔力で魔法を使えるようになる特訓をするとこにした。

 

 

「この壁だけ割れるように魔力を込めてください」

 

そう言って指差したのは厚さ三センチほどの板?壁のようなものだった。

その裏に瓶を置き、壁だけを砕くように魔力を調整する特訓なのだけど……。

 

 

 

 

「難しくないですか!?」

 

割れた瓶を片付けながら僕は悲鳴を上げる。ほんの少し魔力が多いだけで簡単にビンが砕けてしまう。

的確に壁だけを壊すなんてと思いながら僕は何度も挑戦していく。

 

因みに、この壁は厚さや強度などを自由に変えられる魔道具で、神様が女湯に仕込もうとしたところを没収され、こういう実験台になっているらしい。

 

…………神様。

 

 

 

 

 

「ロキ、入るっ……どれだけ酒を飲んだんだッ!!?」

 

「マ゛マ゛ァァ!!」

 

私が部屋にはいいた瞬間、酷く濃い酒の臭いと一緒にバカ(ロキ)が飛びついてきた。

 

「誰がママだッ! というか離れろ!!」

 

無理やり引きはがすと、それでもロキは足にしがみついてきた。泣きながら……

主神の威厳丸潰しである……もともとないようなものだが。

ロキはガチ泣きしながら紙を渡してくる。

 

「こんなんどないせぇっちゅうねんやぁ゛?!」

 

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : G 276

耐久 : F 308

器用 : G 245

俊敏 : F 338

魔力 : E 412

 

 

【スキル】

 

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

 

 

・王律鍵 H

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

 

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

 

「ッ?!」

 

内容を見た瞬間、私は凍り付いたように動けなくなった。

フィンの扱きを考えても、いや、どう考えたって上がりすぎて(・・・・・・)いる。

 

「ロキ! これはいったいなんだ!?」

 

「だからぁ、ベルの…………マ、ママ?!」

 

ロキは私の顔を改めて見て顔を青くする。

一体誰と話しているつもりだったんだ。

 

「教えろ。ロキ」

 

「いやぁ……えっと…そのぉ」

 

冷や汗をダラダラとたらしながら必死に言い訳を考えるロキに私は紙を握りしめながら言った。

 

「言えないなら、このステイタスの伸びがおかしいことをベルに伝えようか」

 

「それだけは堪忍やぁぁ?!?!!」

 

「なら、言え」

 

「ひぃッ……わかりました」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……それで、このスキルの影響で間違いないのか?」

 

「そ、そや。ベルの想いによって効果が変わる超レアスキルや」

 

確かに、これは口外できるものではないし、これならばベルの異様な成長速度にも納得がいく。

 

「これをフィンには?」

 

「言うてへんけど」

 

「なら伝えるべきだ。このスキルを持っているのがベルなら、尚更だ」

 

私はもう一度大きなため息をついた後、天井を見あげた。

フィンが言っていた……英雄になる、か。

本当にどれだけ純粋なんだと、私は苦笑をこぼしながらそう思った。

 

 

 

 

「はぁぁ…………ふっ!!」

 

魔力が少なくなってきて意識も朦朧としてきた、その時、確かな手応えと共に槍を射出する。

 

「……やりましたね!ベル」

 

「や、やった?」

 

レフィーヤさんがそう笑顔で振り向く。

僕の放った槍は壁を貫き、ビンに当たる数センチ手前で止まっていた。

 

「やったッ」

 

僕がガッツポーズをするとレフィーヤさんは新しい瓶をセットする。

 

「今の感覚を忘れないように、もう一回行きますよ!」

 

「はい!!」

 

僕は全身の気だるさも忘れて再び魔力を練り始めた。

 

 

 



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英雄の欠片と幹部の懸念と苦悩

平成が終わりましたね(今更)。実感なんて微塵もないんですが。

モチベが上がったので執筆再開

え? 今まで何してたかだって? …………他者の作品呼んでたんだよ! 言わせんなこんちきしょうめごめんなさい。



ロキの執務室。そこでソファに対面する形で座るロキとリヴェリアに手渡された紙を見て、フィン・ディムナは数秒硬直した。

 

「……このスキルは、本当かい?」

 

「ほんまもんや。で、どない見る……そのスキル」

 

いつになく真剣なロキに、フィンは内心苦笑し……ベルのステイタスが書かれた紙を机に置いた。

 

「この上なく強力で、とても危ういスキル……かな」

 

フィンの回答にリヴェリアは深いため息をつき、ロキは「フィンもかぁ」とこぼす。

 

「このスキルの事をベルには」

 

「教えとらんよ。ベルに隠し事は無理や……こんな危険なスキルのことは教えん方がいい」

 

ロキの言葉にうなずく。

ベルという少年は何処までもまっすぐだ。良い意味でも、悪い意味でも。

憧憬願望。早熟すると書かれたそのスキルを、そのまま直訳すれば成長速度に関係するスキル……だがそのスキルは

 

成長速度だけじゃない。

 

限定的条件下におけるスキル補正……ともすれば他の王律鍵というスキルを補正するだけに思えるかもしれない……が、自身(スキル)が対象外だとは書いていない。

つまり、もしその効果を及ぼすのが発動させているスキルにも適応されるなら……成長速度は今の比ではなくなる。

 

その可能性を、ここにいる三人が等しく理解していた。

 

「限定的条件下っちゅうのがどんなもんか分からんけど……おそらくは」

 

「冒険をした時、かな」

 

冒険者は冒険してはならない。その矛盾している言葉の意味を、冒険者なら知っている。

己が器を昇華する。いわば自身の限界の突破……すなわち冒険。

冒険者が誰もが通る試練。格上との戦闘。それこそがその条件である……神であるロキと、神も認める勘を持つフィン(英雄)はそう推測した。

 

「……ロキ、あのミノタウロスは?」

 

「カウントはされとらん……はずや。上がり幅はいつもと変わらんかった」

 

先日ベルに致命傷を与えた存在。どこかの中堅ファミリアが討伐し損ね、上層へと逃走したらしい個体もベルからすれば格上。しかしその時は発動していないはずだとロキは言う。

ならば条件とはなんだろうか。そう考えていると扉がノックされる。

 

「リヴァリア様はいますか?」

 

そう言って入ってきたのはレフィーヤだった。

フィンたちは努めて空気を変えると、レフィーヤを部屋に通した。

 

「それでレフィーヤは。私に用とは?」

 

リヴェリアの問いにレフィーヤは「はい」と応えると、若干言いにくそうに目を逸らしながら

 

高等精神回復特効薬(ハイマジックポーション)を貰えないかと……」

 

レフィーヤの問いに、眉間に皺を刻んだエルフの王族が立ちふさがる。

レフィーヤは魔法職だ。普段からいくつもの精神回復薬を常備している彼女がその薬を切らす……それはここがダンジョンではない以上、異様なことだ。さらに視線をそらしながら頼むということはつまり、此処にいる三人(幹部と主神)にはばれたくないことがある、ということに他ならない

 

「高等精神回復特効薬? ほう。一体何のためか、教えてもらおうか。レフィーヤ」

 

ヒッ! と小さな悲鳴をこぼすレフィーヤは、若干涙目になりながら正直に答えた。

 

「べ、ベルの特訓に付き合っていたら、その。精神回復薬が尽きてしまって」

 

レフィーヤの答えに、レフィーヤ以外が硬直した。

魔法職。それもレフィーヤ(エルフ)の回復薬がなくなるほど魔力を使った……だと?

 

三者三様に眉間を抑えたり天井を仰いでいる最中にもレフィーヤは言い訳という名の弁明を進める。

 

「べ、ベルの成長が予想以上に早くてッ、えっと、教える身としてもやりがいがあったというか。ベルの魔法が興味深かったのもあるんですけどッ」

 

「レフィーヤ」

 

「は、はいぃ!」

 

いつも以上に低いリヴェリアの声音に、レフィーヤは直立不動になる。

プルプルと震える同胞の姿に、リヴェリアは今日一番のため息を吐きながら頭を振った。

 

「怒るつもりはない。団員同士での高め合いは寧ろ良しとしている……が。いや、これはこちらの都合だな。とにかく、今すぐにベルのところに連れて行ってくれ」

 

怒るつもりはないと言いながら、絶対零度を思わせる眼力に睨まれたレフィーヤは、「分かりました! 中庭です!!!」と脱兎のごとく走って行った。

 

『はぁ』

 

残された幹部と主神はもう一度溜息を吐いて、重い腰を上げる。このあとはもう一度ステイタスの更新が待っているベルの元へ。

 

 

 

 

「あ! 神様、フィンさん、リヴェリアさん!! どうしたんですか?」

 

中庭に行けば汗を垂らし疲労の色を強く出しながらも、やりきったという雰囲気を出しているベル。

そして壁にはロキの買った覗き壁(魔道具)が再起不能な状態で横たわっており、その側には大量の空き瓶が……。

 

「ベル……いったい何をしていたのかな」

 

フィンの諦めと逃避の混じった問いに、ベルは満面の笑みで

 

「頑張りました!!」

 

と答えた。

にこにこと笑うベルに、三人は怒る気力を抜かれ、「頑張ったね」と返すので精一杯だった。そんな三人の脳裏には、最近ようやく手の掛からなくなってきた少女の存在がちらついていた。

 

 




情景願望に関する設定は私個人の解釈で独自設定ですので悪しからず

ちなみに、ベルくんが撃ち出してる武器はオラリオで言う所の、第二級相当(英雄王からしたら最下位の武器)です。
......宝物庫でも上位の物を出し始めたらどうなるんだろ......まぁ魔力的に制限はあるけども。



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英雄の欠片と豊穣の女主人

今回は短め。ロキファミリアに所属しているからこその短さか。

宝具のレベルと魔力量の釣り合いが難しい。


昨日、レフィーヤさんと別れたあと、もう一度ステイタスの更新をして僕は眠りについた。

今朝、フィンさんから五階層までならダンジョンに潜っても良いと言われたので、僕はダンジョンへ続く大通りを歩いていた。

 

「あの、これ落としましたよ?」

 

「え?」

 

まだ早朝で人通りも少ないところで声をかけられた。僕が声の方へ振り向くと、緑を基調とした服にエプロンという姿の女の子がたっていた。

彼女は「これ、落としましたよ」と手持っていた小さな魔石を渡してくる。

 

「あれ? 昨日全部換金したはずなんだけどな」

 

「すいません。ありがとうございます」

 

僕がそう言って頭を下げると彼女は「いえいえ」と言って微笑んだ。

 

「冒険者さん、ですよね?」

 

「はい」

 

彼女のふんわりとした微笑みにどぎまぎしながら答える。

 

「こんな時間からダンジョンへ行かれるんですか?」

 

彼女の問いに「まだ駆け出しなので」と言うと彼女は両手を合わせて

 

「わぁ! 大変なんですね! あの、私『豊穣の女主人』っていうお店で働いているんです。こうして会うのも何かの縁ですし、宜しければ今夜飲みに来てくれませんか?」

 

恥ずかしそうに言う彼女に僕はたじろいでしまう。その反応に僕が拒否すると思ったのか、彼女は困ったように眉を寄せながら上目遣いで僕をみてきた。

 

「だめ、ですか?」

 

「うぐ......分かりました」

 

そう言った途端彼女は満面の笑みで、

 

「お待ちしています! 私はシル・フローヴァです」

 

と挨拶をして来たので僕も慌てて返した。

 

「あ、僕はベル・クラネルです」

 

「はい、宜しくお願いします。待ってますね、ベルさん!」

 

 

 

 

 

ゴブリンとコボルトを切り伏せながら今朝の事を思い出す。

 

可愛い女の子だったなぁ......って、ダメダメ。集中しないと!

 

僕は頬を叩き気合いを入れ直す。

レフィーヤさんに鍛えてもらったお陰で魔力にも随分と余裕があった僕は、もっと消費を押さえる練習をしようと誓った。

今日はいつも以上に稼いで......シルさんのお店に行かないと。

 

「よし! 行くぞぉ!!」

 

僕は気合いを入れながら、弾む足取りでダンジョンを駆けていく。

ちなみに調子に乗ったその日の稼ぎは五桁に迫るほどだった。

 

 

 

 

夕方、太陽が地平線へ沈み始めた頃にダンジョンから出てきた僕は、一度家に装備を置いたあと、教えてもらった場所に来ていた。

 

「あ! ベルさん、来てくれたんですね!!」

 

「えっと、はい」

 

「ささ! 入ってください!」

 

僕はシルさんに導かれるまま席へ連れていかれる。

そのまま席に座ると僕のふた周りは大きい女性が出てきた。

 

「へぇ。あんたがシルの言ってた男かい? 随分ひょろっちい体してるねぇ!」

 

地味に気にしていることを言われたじろぐ。

そんなことはおかまいなしに笑う女性は鋭い眼光で

 

「あんた、なんでも私を泣かすぐらいの大食漢なんだって?」

 

「へ?」

 

「望むところだよ! さぁ、どんと食べな!」

 

豪快な笑い声をあげながら奥へと帰っていく女性を見送りながら、僕は隣に立っているシルさんへ視線を向ける。

 

「......てへ?」

 

視線を反らしたまま誤魔化さないでください!

 

「僕、大食いだなんて言ってませんよね?!」

 

「......ベルさんなら大丈夫です!」

 

「何がですかぁ?!」

 

嘆いている間も800ヴァリス相当の料理が次々と運ばれてくる。

僕はお爺ちゃんの、

「女の子から出されたものは何でも食べきらなければならない」

という言葉を思いだし、料理の山へフォークを向けた......。

 

 

 

その日、豊穣の女主人では周りが見ているだけで胸焼け起こすほどの料理を平らげた少年がいたとか。

その場にいた冒険者やエルフは、それからもたまにやって来るその少年に、尊敬の念を送り続ける。

 

 




オラトリア見た方が書けるんだろうけど、時間がない(切実......いやほんとまじで)



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英雄の欠片とお祭りへの誘い

今回はレフィーヤで遊んでみた回

原作と違って、アイズとまだそんなに接触していないから、人柄の良いベルへの反応(印象?)はこんな感じだと思います。(願望……入った?)


「ねぇねぇ! ベルも怪物祭一緒に行こうよ!」

 

いつもの日課であるフィンさんとの模擬戦を終えた僕にティオナさんがそう切り出した。

 

「怪物祭、ですか?」

 

「うん。モンスターフィリアって言ってガネーシャファミリアがやるお祭りなんだ~」

 

ガネーシャファミリアが主催のお祭りというのは分かったものの、詳しい内容などが分からずにいるとティオネさんが嘆息交じりにやってくる。

 

「馬鹿ティオネ。それだけじゃ分からないでしょ。ごめんなさいねベル」

 

「い、いえいえ」

 

「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!」

 

「あ~はいはい」とあしらいながら、ティオネさんは大雑把にお祭りの事を説明してくれる。

怪物祭とは、ガネーシャファミリアの保有する闘技場で、モンスターを調教「テイム」することを主としたお祭りだとか。

 それ以外にも沢山のお店が並ぶので、ティオナさんたちはそちら目当てでお祭りに行くらしい。

 

「それで、この子がベルも誘うって言いだしてね」

 

「分かりまた。喜んで行かせていただきます!」

 

「やった! それじゃベル、明後日またここで集合ね!」

 

ティオナさんは笑顔でそう言うと走ってどこかへ行ってしまった。

僕とティオネさんは苦笑を溢し合う。

 

「あ、ティオネさん。レフィーヤさんも誘いませんか?」

 

魔法の練習に付き合ってもらっているレフィーヤさんにお礼の意味も兼ねて誘いたいと言うと、ティオネさんは「そうね」とつぶやく。

 

「あの子の事だからアイズと一緒に回るって言いそうだけど、本人がOKすればいいんじゃないかしら」

 

「じゃあレフィーヤさんのところに行ってきますね!」

 

僕はそう言って駆け出す。

背後から「ティオナにそっくり」と声が聞えた気がしたが、僕は気にせずレフィーヤさんの部屋に向かった。

 

 

 

 

「はあぁぁ。あ~~、アイズさんと一緒に回りたかったなぁ」

 

私は自室のベットに転がって愚痴を溢す。

今朝、アイズさんに怪物祭のお誘いをしたら……

 

『ごめんね。ロキに呼ばれてるから』

 

「って。あの堕神めぇぇ!!」

 

ボスッボスッと枕を殴る。

魔法職で筋力が低い私でもレベル相応の力を持っているので、枕から鈍い音が響く……が、私の耳には入らない。

そんなふうに私が荒れていると、遠慮がちに扉が叩かれた。

 

「あ、あの。レフィーヤ、さん?」

 

ベルの怯えた声に私ははっとなって枕を見る。

ず、ズタズタだッ!?

私は急いで枕をシーツで隠し、飛び散った羽毛を払い落とすと咳払いをして扉を開ける。

 

「な、なんですか? ベル」

 

扉の前にいたベルは頬を朱くし、目を泳がせながら遠慮がちに口を開いた。

 

「えっと、そういう日(・・・・・)、なん、ですか? だったら、そのまた出直すので……」

 

そういう日?

数秒考えて答えに行きついた私は顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

 

「違います!!!」

 

「ひッ! すいませんでした!!」

 

「ちょっと嫌なことがあっただけです!! だ、大体そういう日って……だ、だだ誰に教わったんですかぁ!?」

 

まくし立てるような見幕にベルは涙目になって「お、おじいちゃんが、女の人が怒ってるときは機嫌を損ねることをした時かそ、そういう日だからって!」と白状する。

ベルのおじいさん、いったい何を教えてるんですか!!

 

「それは間違ってます!! いや、あながち間違いじゃないけどッッてそうじゃなくて! ああ、もう!」

 

荒ぶる私と涙目なベルという混沌(カオス)な状況は、騒ぎを聞きつけた団員が集まってくるまで続いた。

 

 

 

 

「先ほどは大変失礼しました」

 

おじいさんから教わったという土下座? をしながら謝ってくるベルに私は溜息を吐きながら首を振った。

 

「いえ、ベルが悪いわけではありませんから。頭をあげてください」

 

私はベットに腰を下ろしそれで、と尋ねる。

 

「私に何か用事があったんですか?」

 

私がそう言うとベルは、一瞬ためらった後、

 

「怪物祭、一緒に回りませんか?」

 

と聞いてきた。

 

一緒に回る? ……そ、それってデ、デート?!

ベルからのデートのお誘い?! 

で、でも相手は会ったばかりのヒューマン……でも、まぁベルなら……

 

「ティオナさんたちも一緒に回るんです!」

 

笑顔のベルを見て、私はロキが前に言っていた

 

『上げて落とすっちゅうのはな、ただ落とされるのの何倍も来るんや……』

 

という言葉の意味が分かった気がした。

私は予想以上にがっくりきている自分にどこか驚きながらも乾いた笑いをこぼすのだった。

 

「レフィーヤさん? レフィーヤさん?!」

 

 

 

 




やりすぎたとは思う。だが後悔はしていない(`・ω・´)


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英雄の欠片と波乱の怪物祭

投稿した話を見直したら大分進行速度が遅いことに気がついたうぷ主です。

なかなかアイズと絡めないなと、最近焦りを感じだしています。

一応次の次ぐらいから本格的に絡む......かな?


「ふふ。だめね。もう少し我慢しようと思ったのだけれど」

 

薄暗い部屋の中、ソプラノのような甘い響きがこだまする。

足元に転がる亜人は、どこか恍惚とした表情をしており、焦点の合っていない目で虚空を見つめていた。

こうなった原因である人物は、フードからしなやかな腕を檻へと延ばす。

檻に閉じ込められているソレらは、鼻息荒く、しかし大人しく、成すがままに……

 

「さあ、あの子をもっと輝かせて?」

 

 

 

 

 

「それじゃ行こっか!」

 

陽気なティオナさんの声につられるように、僕たちはお祭りへとくり出す。

ふらふらするティオナさんをティオネさんが窘める姿はまさに姉妹で、僕とレフィーヤさんはそれを笑いながら見ていた。

冒険者で賑わうメインストリートが、今日はお祭りを楽しむ人で賑わっているのは新鮮で辺りをきょろきょろと見ていると、見知った顔を見つけた。

向うも僕を見つけたようでパタパタと人ごみをかき分けて来る。

 

「おはようございます」

 

「おはようございますニャ。ちょうどいいところにいたニャ、白髪頭」

 

「ベルさん。ちょっと頼みたいことがあるんだけど、いい?」

 

そう言ってアーニャさんとルノアさんは僕に大きめのがま口財布を渡してくる。

僕とレフィーヤさんが首を捻ると、アーニャさんはふふん、と胸を張った。

 

「おミャーはそれをおっちょこちょいのシルに届けるニャ」

 

「えっと……」

 

「ごめんね。この馬鹿!説明不足だよ!」

 

「ニャ!? ニャにおう! おっちょこちょいのシルが財布を忘れてお祭りに行ったニャンて言わなくても分かるニャ!」

 

「……と、そういうことよ。私たちまだ仕事あるからさ、お願いできない?」

 

「そういうことなら、分かりました」

 

僕がそう言うとルノアさんは片手でごめんと謝りながらアーニャさんを引き摺る様にして人ごみの中に消えていった。

 

「頼まれちゃいましたね」

 

「あ、すいません。皆でお祭りを廻ろうとしたのに」

 

僕がそう言うとレフィーヤさんは苦笑しながら首を振る。

 

「気にしないでください……それに」

 

どこか遠い目をするレフィーヤさんが「私もあの二人を探しますから」と言った。

あの二人? ……あ。

 

「ティオナさんとティオネさんは!?」

 

「人ごみの何処か、ですよ。あの二人は私が探しますから、ベルは行ってください」

 

また後で回りましょう? と言うレフィーヤさんに僕は頭を下げてから、シルさんを探すために人ごみの中へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「いないなぁ。シルさーん!」

 

あれからしばらく探し回ってもシルさんは見つからない。

ガネーシャファミリアの催し物が始まったようで、人が若干少なくなった通りを走りながら僕はそうこぼした。

 

「どこかですれ違ったのかな?」

 

闘技場からは熱狂的な声が響く。

ただシルさんがあそこにいくのは何処か想像できなかった僕は、もう一度探し直そう……そう思った瞬間。

 

「きゃああああ!!!」

 

「ッ!」

 

誰かの叫び声が聞こえた。半ば無意識的に声の方に切り返し、姿勢を低くして人混みを疾駆する。

 

声がしたのはダイダロス通りの方?

 

声の方向を予想しながら人波をかき分け裏路地へ。

二つ目の角を曲がった先には、蹲る子供に棍棒を振りかざすオークの姿が!

 

「ッ、このぉ!!」

 

即座に魔法を発動させて武器を飛ばす。高速で飛来する武器はオークの胴体を切り裂き大きくのけ反らせる。

その間に僕は子供との間に割り込み、ほぼゼロ距離で胸元へ槍を投射した。

 

ゥゴォォッ

 

僅かなうめき声をあげたあと、オークは魔石を残して灰になった。

 

「……ふぅ。大丈夫?」

 

「うっ、ひっく。うん。だい、じょうぶっ」

 

パッと見特に外傷はなかったことに安堵しつつ、僕は念のために腰にぶら下げておいたポーションを手渡す。

 

「これ、飲んでおいてね?」

 

「うんっ。……お兄ちゃん、ありがと!」

 

目元をぐしぐしとこすった後、笑顔でお礼を言う男の子に、僕は破顔しつつ、立ち上がる。

遠くから聞こえる避難を呼びかける声に、僕は男の子にそちらへ行くように言い、未だ悲鳴のする方へ駆けだした。

 

「……ベル、さん?」

 

 

 

ダイダロス通りの壁を駆け上がって屋根に上ると必死に周りの音を聞く。

人々の悲鳴や怒声に交じって聞こえるモンスターの鳴き声を聞き取ると僕は恩恵を最大限活用して屋根の上を駆ける――——と自分の中の第六感が危険信号を鳴らす。

僕は速度に乗った体を無理やり後方へ飛び退かせるのと、目の前に大きな鎖が振り下ろされたのは同時だった。

 

「ッ……シルバーバック?!」

 

白い体毛の大猿は、攻撃が外れたことが面白くないのか胸を叩いて雄叫びを上げる。

そのまま両手につけられた鎖を巧みに操り中距離攻撃を繰り出してきた。

僕は慌てて槍を取り出して受け流すも、滑りやすい場所では上手く体制を取れずに吹き飛ばされてしまう。

屋根や壁に数度体をぶつけ、小さな広場に落ちる。

 

「ゴフッ」

 

口の中に広がる鉄の味を感じながらも僕は体を起こす。

両手両足の感覚はある。大丈夫、まだ戦える。

 

僕は大きく息を吐いて槍を構える。

屋根上から飛び降りてきたシルバーバックは槍を構える僕を見て鼻息をさらに荒くして叫ぶ。

 

ウガアアアァアァァァァ!!!

 

右の大ぶりを掻い潜るようにして回避して肉薄、切り上げるも浅い傷しか生まれなかった。

 

僕の力じゃ決定打にならない。

 

そう考えた僕は即座に魔法メインに切り替えて剣と槍を投射する。

飛来する二つの攻撃にシルバーバックは鎖を振るわせて対応した。

 

キィンッ!

 

硬質的な音と共に槍が弾かれる。側面からの攻撃に容易に弾かれた槍は、近くの壁に突き刺さると魔力の残滓となって消える。

しかし剣の方は弾かれずにシルバーバックの右肩へ深々と突き刺さった!

 

ガアアァァァァァ!!!!

 

絶叫をあげるシルバーバックの隙を見逃さずに駆け出し、振り回される腕を掻い潜って懐へと侵入し——

 

「フッ!!」

 

顔面目掛けて斧を投射した。

ハルバード状の斧は先端を顎下から脳天にかけて突き刺さる。

口から血を吹き出すシルバーバックに、僕は斧の柄を握りしめた。

 

「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

力の限り振り下ろす!

深々と刺さった斧は頭蓋骨を破壊し首を斜めに断切した。

 

シルバーバックは膝から崩れ落ちると魔石と拘束具を残して灰になる。

僕は尻餅をつくように地面に落ちた。

 

「……やった。僕一人で……やったんだっ」

 

確かな格上に勝利した実感が沸きあがる。

僕は噛み締めるように拳を握り、次いで襲ってきた悪寒に顔をあげた。

 

「ッッなに、この感じッ」

 

何か、嫌な予感がする。得体のしれないその感覚が、僕をどこかへと突き動かす。

僕は精神回復薬を一本飲むと悪寒のする方へ走る。ソレに近づくにつれて僕は更に加速した。

徐々に大きくなる破壊音に鼓動が早くなる。

僕は槍を握り直し、路地を曲がると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レフィーヤ(家族)さんが腹部を貫かれていた。

瓦礫にめり込み口から鮮血を溢れさせる彼女に、僕の思考は真っ赤に染まった。

 

 

 

 

ベルが駆けつける数分前、ティオネ、ティオナ、レフィーヤは脱走したモンスターを討伐中に、地中から現れた何かに襲われていた。

 

「ッくぅ!! 何よコイツ! 硬すぎ!」

 

「ウルガがあればなぁ!」

 

突如として現れた未知のモンスター。触手のような見た目のモンスターはヒリュテ姉妹の力をもってしてもビクともしない強靭な硬さを持っていた。

魔法職であるレフィーヤは二人が苦戦を強いられるモンスターを前に、委縮していた。

あの二人が苦戦する相手に、自分の魔法が通用するはずがないと。半人前の魔法では二人に迷惑をかけるだけだと。

震える足で戦闘を見ていると、二人が叫ぶ。

 

「レフィーヤ! ちょっと助けて!」

 

「魔力馬鹿のあんたが何縮こまってんのよ!! それでもロキファミリアかお前!!!」

 

「ッ……わ、私だって」

 

仲間の(救援)に、叱咤()に拳を握る。

そうだ、私は、私の役目は!

自らへの叱咤を力に変え、目を吊り上げる。

 

「詠唱入ります!!」

 

力強く叫ぶ後輩に、先輩は頬を吊り上げた。もう彼女は心配ない。そう思って二人は戦闘に集中し、レフィーヤは詠唱へ……そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

レフィーヤは眼前に迫る塊を見た。

地面を潜って接近していた触手の一撃がレフィーヤの腹部に直撃する。

 

「ッッゥ!!?」

 

レフィーヤの身体から、メキリと生々しい音がする。

そのまま吹き飛ばされるようにして建物へめり込む仲間の姿に、姉妹は決定的な隙を見せる。

 

「レフィーヤァ?! ってあぐぅ!」

 

「ちょ、きゃあ!!」

 

腕ごと縛られるティオナと足を掴まれ投げ飛ばされるティオネ。

ギリギリと締まり続ける触手に、ティオナは汗を垂らす。

 

「っこんのぉ! レフィーヤ!! レフィーヤ!?」

 

「クソ野郎がぁッ!!!」

 

何とか抜け出そうともがく間にも、触手が壁にめり込むレフィーヤへと再度迫り………………腹部を貫いた。

二人はもがくことも忘れレフィーヤを見た……腹部に突き刺さる触手を真っ赤に染め、吐血する家族を。

 

『ッッ!!』

 

二人が激情にかられ触手を引き千切る。ティオネのスキル「憤化招乱(バーサーク)」によって激情した力のアビリティが触手を二つに裂き、ティオナはスキル「狂化招乱(バーサーク)」と無意識的な肉体のリミッターが解除され片腕を外しながら抜け出る。

 

 

そして二人による蹂躙が——————始まらなかった。

極限まで上がった激情は、背後からの恐怖(圧力)によってかき消される。

第一級冒険者の二人ですら恐怖を感じるその存在感に、触手モンスターも金縛りにあったかのように動けなくなる。

 

二人は顔を青ざめ小鹿のように体を震わせ、後ろを振り返った。

そこには、全身から金色のオーラを迸らせるベルの姿があった。しかし、彼から放たれるソレは、威圧とは生ぬるい程の圧力だった。そう、まるで、神威のような…………。

 

 

 




悩みに悩んでの次話へ持ち越すという......。

どうもっていこうかなぁ(゜゜;)(。。;)


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英雄の欠片とスキルの…

悩んだし罵倒が来るのも覚悟している。だが後悔はしていない。

……罵倒は控えめでお願いしますm(__)m



ベルは威圧的なオーラを漏らしながら、一歩、また一歩と触手モンスターへと近づく。

彼の顔を正面からとらえていたヒリュテ姉妹は、表情の抜け落ちたベルに震えながら声をかけた。

 

「べ、ベルっだよね?」

 

ティオナの呼び掛けにベルは答えない。しかし、ぼそり、とベルが言葉を漏らす。

 

「——なきゃ

 

「え?」

 

戸惑うヒリュテ姉妹に、もう一度……今度は確かに聞こえた。

 

()さなきゃ」

 

ベルのは背後に広がる5つの波紋。ヒリュテ姉妹は更に顔を青ざめ、即座に飛び退いた。

 

ガガガガガッッ!!!

 

波紋から投射される武器はモンスターを串刺しにする。

剣が触手を引き裂き、斧が抉り、槍が貫く。もはや蹂躙と呼ぶべき惨劇に、二人は絶句した。

何よりも……「自分たちが射線に入っていても構わずに撃とうとした」ことが信じられなかった。

ベルが家族になって僅かな時間ではあったが、彼の人柄を知るには十分な時間だった。

何処までも純粋で、打たれ弱くて。誰よりも努力して、誰よりも謙虚。コロコロと変わる表情はどこか幼くて、でもたまに男の顔になる……そんな優しい男の子。

そんな彼が今、二人の事を考えず、倒れているレフィーヤを放置して、モンスターを八つ裂きにしていた。

 

「あれ、ほんとにっベル、なの?」

 

「分かんないわよっ……でも」

 

ティオネは、混乱する感情を何とか押し込めてレフィーヤの元へ向かう。

「ごめん」と気を失っているレフィーヤに謝るとポーチを漁り、高等回復薬を傷口に振りかけ、もう一本を飲ませる。

僅かに呻くレフィーヤの腹部はゆっくりと治っていき、呼吸も安定した。

安堵したティオネは、レフィーヤを抱き上げる。

それと同時に再び地面が揺れ始める。

ティオネが慌ててモンスターの方へ振り向くと、そこには地面を割りながら新たな触手……いや、蕾を開き開花した植物モンスターの姿があった。

 

「花!?」

 

ティオナがモンスターの正体に驚いている間にモンスターのうちの1体が醜悪な口を開けながらベルに食らい付こうと猛スピードで飛び掛かった!

襲い来るモンスター。眼前に迫るそれに対し、ベルは————

 

「……ハハッ」

 

嗤った……。

ベルは右手をそのモンスターに掲げ、虚空を握った。

 

パァァン

 

花弁が散る様に、モンスターの頭は弾け飛んだ。

ドシャッと、音を立てて崩れるモンスター。徐々に灰になっていく姿をベルは嗤いながら見ていた。

そして全てが灰になると、グルンっと、もう二体のモンスターに視線を移し、

 

「シンじゃエ」

 

そう零した。

叫び声をあげるモンスターに大量の武器で返答する。

 

再び始まった蹂躙劇だったが、突然ベルがよろめいた。体がグラつき、顔を伏せるベル。攻撃は続けられる中で起きた変化に、二人の視線が吸い寄せられる。

暫くして俯いていた彼が、顔をあげると……片眼から血が溢れていた。

そして、それが引き金であったかのように、次々とベルの身体に異常が現れる。

身体のいたる所が内出血を起こし、青黒い痣が産まれ、衣服が血を吸っていく。

呼吸も荒くなり、咳き込むと血の塊が溢れた。ボタボタとドス黒い血が地面を紅く染めていく。

 

一方的に蹂躙している本人が、一番死にそうな状態だった。

ティオナは目尻に涙を貯めながら駆け出す。彼を止めるため。助けるために。

背後から飛び掛かりベルを抱きしめる。むせ返る様な血の匂いとぬるりとした血の感触に、今度こそ涙が溢れた。

 

「もういい!! もういいよ!!?」

 

ティオナの悲鳴が木霊する。しかしベルは攻撃を止めない。既に先のモンスターは灰となっていたがそれでも攻撃を続けていた。

ティオナは血まみれのベルをさらに抱きしめる。

 

「大丈夫だから! もう……これ以上傷つけないでっ……自分を責めないでよっっ」

 

「…………ティオ……ナ、さん?」

 

攻撃が止む。ゆっくりとこちらをふり返るベルに、ティオナは涙をこぼしながら笑う。

 

「うんっ……レフィーヤも無事。だから」

 

ゆっくりとオーラが霧散していき、ベルはティオナにもたれかかる様に脱力し、気絶した。

ティオナはベルを抱き上げると全力で駆け出す。

 

「レフィーヤお願い!!」

 

ティオネの頷きを視界の端に捉えると、ティオナは更に加速する。

血だらけで、今にも消えそうな呼吸をする家族を抱えて……

 




英雄壇が大好きで、夢見がち。大雑把でも優しいティオナだから、こうなった……のかな?

次回はベルの治療と事後処理かな。あと原因追及?

あとアイズが借りているレイピアは折れてません。


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英雄の欠片の現状と新たなスキル

アンケートのご協力本当にありがとうございますm(__)m
予想以上の回答にうれしい限りです

アンケートの締め切りは2019/06/30までとさせていただきますのでよろしくお願いします。


そして今回のタイトルにある様に新スキルの登場。
スキル取りすぎだろとか、そんなんで取れるの? みたいなのはあると思いますが何卒寛大なお心でお願いします。
(いつかやりたいベル無双の為に!……できるかなぁ)



菱形の魔法陣を輝かせながら、オラリオ最強の治癒師「アミッド・テアサナーレ」はベッドに寝かされている少年を見つめる。

 

真っ白だったであろう肌は黒い痣が全身に刻まれ、口からは真っ黒な血が溢れ続けている。

既にエリクサー(・・・・・)をかけた後だとは到底思えない状態の彼は、ほんの数分前にアミッドの友人「ティオナ・ヒリュテ」が泣きながら連れてきた子だった。

 

ホームの扉を突き破って入ってきたときは何事かとアミッドは目を白黒させたが、抱きかかえられた少年を見た瞬間。常備していたエリクサーを振りかけ、彼女らをベッドへと案内した。

ティオナに何にやられたのかと聞いても、彼女は分からないといって首を横に振るだけだった。

エリクサーをかけたのに全く回復しない少年に、どこまでやればこうなるのかと、怒りが沸くが頭を振って詠唱に入る。

 

菱形の魔法陣が広がり、淡い光がベルへと降り注ぐ。細い呼吸が次第に安定し、痣も徐々に消えていく。

暫くして魔法陣が消えると、ベルは静かな寝息をたてていた。

 

「ふぅ。これで大丈夫なはず。それで、何があったか説明してください」

 

目元をこすりながら安堵の息を漏らしていたティオナは、ビクッと肩を震わせると目を泳がせ……

 

「ロ、ロキ呼んで来るね!?」

 

と言って壊れた扉から脱兎のごとく逃げ出した。

取り残されたアミッドは、団員の視線を一身に受け、がっくりと項垂れるのだった。

 

 

 

 

 

「あんの発情女が……」

 

レフィーヤを抱きかかえ、ティオネから事の詳細を聞くとロキが神威を漏らしながら顔を憤怒に歪める。

 

「ロキ、取り敢えずはディアンケヒト・ファミリアへ行くぞ」

 

私がそう言うと、ロキはぶつけどころのない怒りを押し込んでから「せやな」とつぶやく。

 

「アイズたんと、ティオネはホームに戻っといてくれんか?」

 

「……わかった」

 

「了解……って、あれティオナ?」

 

ティオネが目を見開き通路を指すと全速力でこちらに走って来るティオナがいた。

笑顔で走って来るティオナの様子から、取り敢えずは無事なのだろうと当たりを付けたロキや私は、安堵の意味も含めたため息を漏らす。

 

「ちょっと、あんたなんでここにいるのよ!」

 

ティオネからの言及にたじろぐティオナ。

なんとか言い訳を必死に考えているのか頭から湯気が上がり始めたところで私は止めに入る。

 

「ベルは無事か?」

 

「あ、うん! 今はアミッドと一緒にいるよ! ……そうだ! それでロキを呼ぼうとしたんだよ」

 

手を叩き思い出したと笑うティオナに、ロキが「ほんなら行こか」と言って歩き出す。

私はホームに戻ることを渋り、食い下がろうとしてティオネに連れ去られるティオナに苦笑した後、ロキの後を追った。

 

 

 

 

ディアンケヒト・ファミリアに着くと扉が壊れているのを見て、大方ティオナが破ったんだろうと見当をつけた私は、レフィーヤを見てもらうついでに、団員に請求はロキ・ファミリアに回しておくように伝えた。

 

 

「なるほど、大体の経緯は理解しました。ありがとうございます」

 

「ええよ、気にせんで。んで、ベルは大丈夫なんか?」

 

ロキがそう聞くとアミッドは若干眉を寄せた後、苦笑するように笑って「大丈夫です」と答えた。

 

「そか。ありがとうな」

 

「いえ。ただ、彼は相当無理をしたのでしばらくは絶対安静にさせてくださいね」

 

「そういえばエリクサーが効かなかったと言っていたな」

 

「えぇ。彼は生命力を使ったみたいなので」

 

彼女の答えに私は眉を寄せる。ロキは合点がいったのが「あちゃぁ」と言って空を仰いだ。

 

「えっと、魔法は普通精神力、まあ魔力を使うんですけど、彼は生命力。つまりは寿命を使ったんです」

 

彼女の説明に私は自然と眉間にしわが寄ったのが分かった。

 

「ごく稀にいるんです。魔力がなくなっても魔法を行使しようとする冒険者が……」

 

「しかし、生命力を使うというのは相当に身体を酷使するのです。彼のように」

 

悲痛そうにベルを見つめるアミッドは、こちらへ向き直ると真剣な眼差しで私たちを見つめる。

 

「これだけは約束してください。彼にこれ以上、絶対に生命力を削る様な魔法行使はさせないと」

 

彼女の言葉に、私とロキは黙って頷いた。

その後、レフィーヤの様態も見てもらった私とロキは明日また来ることを伝え、ディアンケヒト・ファミリアのホームを後にした。

 

 

 

 

 

 

『努々忘れるな。ソレは容赦なくお前を飲み込む……我はそう言ったな? ベル』

 

はい。すいません

 

真っ白な、ふわふわとした空間で、僕は英雄王さんの前で正座をしていた。

気がついたらここにいて、冷たい目で僕を見下ろしている英雄王さんに、僕は自然とこの体制を取っていた。

 

『本来なら切り捨てているところだが、我を楽しませたことに免じて、今回だけは許してやろう!! フハハハハハハハ!!』

 

そう言って笑う英雄王さんは、僕の記憶があやふやな理由とその間にあったことを上機嫌に語ってくれた。

 

どうも僕は王律鍵に飲み込まれかけたが、ティオナさんがそれを必死に止めてくれたらしい。

それで今僕の身体は昏睡状態で二、三日は目が覚めないのでここで英雄王さんを楽しませなければならない……らしい。

 

『しかし我が財をあのように使うなど、お前でなければ極刑ものよのう! ハハハハハ!!』

 

ひぇ! こ、怖いこと言わないでくださいよぉ

 

何処からか取り出した杯でお酒を飲みながら笑う英雄王さんは、僕を見るとニヒルに笑う。

 

『しかし、まだまだわっぱよのう。槍捌きなど赤子のままごとよな』

 

ま、ままごと……あ、あの! どうやったらいろんな武器を扱えるようになるんですか!!

 

僕の問いに英雄王さんは、さも当然のように答えた。

 

『それは我だからだ! すべてを統べる我だからだ!! …………だが』

 

英雄王さんは杯に注がれた酒を数滴たらす。それは波紋となってこの真っ白な空間に広がっていく。

徐々に霞み始める視界。薄れていく意識のなか英雄王さんは立ち上がり、

 

『お前はお前(ベルクラネル)だ。 我の足元にも及ばない雑種の中で、我はお前を選んだ……そのことを忘れるなよ』

 

そう言って笑った。

 

 

 

 

 

「……目が覚めたみたいだね」

 

目を覚ますとそこは僕の部屋だった。声のした方を向くとフィンさんが壁に寄りかかっていた。

僕は体を起こす。英雄王さんから聞いてたほど体は重くはなく、すんなりと起き上がった。

 

「今日あたりに目覚めるんじゃないかと思ってね」

 

「えっと、すいませんでした」

 

僕がそう謝ると、フィンさんは首を横に振った。

 

「僕らこそすまない。君に負担をかけてしまった」

 

「そんな、謝らないでください」

 

フィンさんは苦笑すると「病み上りですまないけど、ロキの部屋まで来てくれるかな」と言う。

僕は頷いて着替えるとフィンさんに続いて部屋を出た。

 

 

 

 

 

「ロキ、入るよ」

 

「失礼します。神様」

 

僕たちが部屋に入ると、リヴェリアさんも神様と一緒に待っていた。

 

「お、お疲れやなベル」

 

「はい。ご迷惑をおかけしてすいませんでした」

 

頭を下げようとすると神様は手を振って僕を止める。

 

「ええて、気にせんといてな。そんでいきなりなんやけど、ステイタスの更新、しよか?」

 

「? はい」

 

僕は上着を脱ぐと奥のベッドに横になる。リヴェリアさんとフィンさんは一旦部屋の外に出ていった。

 

「ほな、いくで~」

 

暫くして神様がため息を一つ着くと背中をポンポンと叩かれる。

 

「ほい、終わったで~」

 

「ありがとうございます。どうかしたんですか?」

 

「ん~~。とりあえずフィンたちにも見てもらおか」

 

そう言って神様はフィンさんたちを呼び戻すと、机の上に僕のステイタスの書かれた紙を置いた。

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : E 451

耐久 : E 410

器用 : D 512

俊敏 : E 479

魔力 : B 701

 

 

【スキル】

 

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

・王律鍵 H

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

「うわぁあ!! 新しいスキルですよ!」

 

『ちがう。そこじゃない』

 

「え?」

 

「あ、いや気にしないでくれ。いやそれもだけど……ステイタス……大分上がった、ね」

 

「そ、そやなぁ! 魔力なんかBに届いとるで!?」

 

なんだかフィンさんも神様も様子が変だけどどうかしたのかな。

 

「あの、どこかおかしいですか?」

 

「いや、おかしくは、ないぞ。なぁフィン」

 

バッとフィンさんがリヴェリアさんを見る。二人はしばらく見つめ合った後フィンさんも「あ、ああ。素晴らしい成長だね」と褒めてくれた。

 

「これからも頑張りますね! それで、この新しいスキルんだんですけど」

 

僕がそう言って『器用貧乏』を指さすと神様は難しそうな顔をする。

 

「たぶんやけど、魔法でいろんな武器を出してたせいやと思うで」

 

「おそらくはそうだろうね。しかし、武器の扱いに補正か……まぁベルには喜ばしいスキル……かな」

 

「経験値の一部消費とはどの程度かにもよるが……」

 

「ま、そこは問題ないやろ」

 

問題、ないのかな?

神様はそう言うと紙を片付ける。その間にフィンさんは何か考えるようなそぶりを見せた後、

 

「ベル、明日からいろんな人の武器の扱いを見てほしい。そして見よう見真似でもいいから使ってみてくれ。勿論普段は槍で構わない。唯せっかく発現したスキルだからね」

 

と僕を見ていった。

僕は「はい」と返事をするとフィンさんも笑顔で頷いた。

 

「その前にベル。お前は防具の新調からだ。このままいけば戦い方も変わるだろうからな」

 

「はい!」

 

 




アミッドの部分雑かなぁ

アミッドの詠唱文が分からなかったのではしょりました。
所々雑ですけど許してくだしあ



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英雄の欠片と防具

アンケートへのご協力ありがとうございました!
総数417票が集まりました。内訳は以下の通りです。

18階層での殺人事件を書いた方が良いか
当たり前…               61
レイピア折れてないし書かなくていい…  70
ベルくんも連れていこう…       237
別にどちらでもいい…          49

という事でベルくんも連れていくことになりました。本当にありがとうございました。
原作と多少日数がズレていますが辻褄合わせだったりするので目を瞑っていただければ


「へぇ! バベルにこんなところがあったんですね!」

 

ダンジョンの上にそびえるバベル。

神様とリヴェリアさんは、僕の身体が完治してから装備を新調させる方向で合意し、あれから四日後の今日、リヴェリアさんとバベルに来ていた。

ケースに飾られている武器や防具の数々に目を輝かせているとリヴェリアさんが苦笑しながら僕の頭を撫でる。

 

「喜んでいるところ悪いが今日用があるのはもう少し上の階だ」

 

それに値段は見たかと言われて、値札を見てみれば0が片手の指では足りないほど並んでおり、僕はケースから飛び上がるように離れた。

 

「ほら、行くぞ」

 

そう言って昇降機の方へ歩いていくリヴェリアさんを僕は慌てて追いかける。

昇降機でさらに上の階へ行くと、そこにも沢山の武器や防具が並んでいる場所だった。

 

値段も7400ヴァリスなど僕でも手が届きそうなものばかりだ。

 

「私は今日はただの付き添いだ。防具はベル自身が選べ」

 

「はい!」

 

片目を瞑りながらそう言ってくるリヴェリアさんに笑顔で答えてから、僕はお店の奥へと繰り出していく。

全身を覆うような全身防具(プレートアーマー)や厚手の革で作られた防具など、様々な防具が飾られている中で、ふと、部屋の隅に置かれた木箱に目が留まった。

中身は白を基調にした軽量級防具(ライト・アーマー)だった。胸当てや籠手など、要所を守る様に設計されたその防具に、僕は一目で引かれるものがあった。

 

「ヴェルフ・クロッゾ、かな?」

 

胸当ての裏に刻まれていた名前を覚えると、箱ごと持って店員さんの元に向かう。

 

「すいません! これください!!」

 

「はいはーい! あれ、君は!」

 

僕よりも身長が低いその女性は、頭の両側で結んだ髪を揺らしながら僕を見ると、表情をパッと明るくさせる。

 

「はい?」

 

「君、この前の怪物祭でモンスターを倒してくれた冒険者だろ? その白い髪が印象に残っててね」

 

そう言って「ありがとう」と手を差し出してくる女性に、僕ははにかみながらその手を握った。

 

「僕は神ヘスティア。君は?」

 

「僕はベル・クラネルです」

 

「へえ、ベル君か。……ところでさ、ベル君。君うちのファミリアに入ったりはしないかい?」

 

耳打ちするように聞いてくるヘスティア様に、僕はドギマギしながら「すでに神様がいるので」と答えると、

 

「だよねぇ。君みたいな優秀な子を他の神がほっとく訳ないし、そもそもモンスターを倒してる時点でどこかのファミリアに入っているのに……」

 

と言って項垂れてしまった。

 

「ああ! ごめんよ無茶なこと言って、それでその防具を買うのかい? なら9900ヴァリスだね」

 

しかしすぐに頭を振って笑顔に戻るヘスティア様に、僕は慌ててヴァリスを数えると机に出す。

 

「ありがとうございます。見つかるといいですね! ヘスティア様の家族になってくれる子が!」

 

「ああ! 君みたいなかわいい子を見つけてみせるよ!」

 

笑顔で手を振ってくれるヘスティア様に手を振り返しながら、僕はリヴェリアさんの元に走って行く。

 

「ん? それでいいのか?」

 

「はい!!」

 

僕が満面の笑みで言うとリヴェリアさんは僕の頭をポンポンと叩くと、「なら行くぞ」と言って歩き出す。

僕は防具の入った木箱を抱えながらリヴェリアさんの後をついていくのだった。

 



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英雄の欠片とダンジョンへの誘い

ダンジョンに行くまでにいったいどれだけかかってるんだろうかw

一部修正


「20階層ですか!?」

 

「うん。今の君なら十分に着いてこれると判断したうえだよ」

 

フィンさんの言葉に少しの嬉しさと大きな不安が入り交じり、僕の中で暴れまわる。

 

 

 

 

午前中、リヴェリアさんとの買い物を終えた僕は自室で早速防具の試着……というか待ちきれなくてダンジョンに潜る準備をしていた。

白を基調とし、赤色の模様が施された防具を付けていく。

脚や腕の防具を付け、ベルトを締めて胸当てを固定する。

防具をすべて着た後、体を捻ったりして全身を見回してみれば、思わず笑みがこぼれる。

そうやって自室で一人ニヤニヤしていると扉がノックされたのでニヤニヤの状態で扉を開けた。

 

「やあベル……似合っているよ。それに、嬉しそうで何よりだ」

 

いつもとは違った格好のフィンさんが若干の苦笑交じりに微笑む。

僕は恥ずかしさで顔が赤くなるけど、フィンさんの格好に気づいて首を傾げた。

 

「あれ、フィンさんもダンジョンに行くんですか?」

 

「ああ、最近ダンジョンに潜っていなくて、体も鈍っているからね」

 

ならなんで僕のところに来たんだろうと僕が悩んでいると、フィンさんは「それで」と前置きを言ってから

 

「ベルも一緒に行かないか誘いに来たんだよ」

 

そう僕に告げた。

硬直する僕。フィンさんと、一緒に? ダンジョンへ?

 

「どうだい? 一応は日帰りだから20階層辺りまでは予定しているんだ」

 

「に、20階層ですか?!!」

 

仰天する僕にフィンさんは朗らかに笑いながら話し続ける。

 

「うん。今の君なら十分に着いてこれると判断したうえだよ。それにリヴェリアやアイズ。ティオナたちも一緒に行くつもりだしベルの安全を考慮したうえで動く。それにベルにはいい勉強にもなると思う」

 

「えっと……」

 

フィンさんの言葉に少しの嬉しさと大きな不安が入り交じってすぐに返答できない。

そうして言いよどんでいる僕に、フィンさんは改めて僕の目を見ていった。

 

「この前、色々な武器の使い方を覚えるように言った手前もある。実戦での戦いを見ていたほうが得るものも多いと思うんだ。無理にとは言わない、けれど君の目標のためなら利用できるものを利用しない手はないんじゃないかな?」

 

その言葉にはっとする。僕を思うフィンさんの言葉に胸が熱くなるのを感じながら、深く頷いた。

 

「ッ……いきます。連れていってください!」

 

「……それでこそだ」

 

フィンさんは「それじゃあ門の前で待っているよ」というと先に歩いていく。

僕はすぐにポーチを腰に巻き付けると、精神回復薬などを入れて急いで玄関へと向かった。

 

 

 

 

「あ、ベルじゃん! ベルも一緒に行くの?」

 

「はい! よろしくお願いします」

 

「ちょっと待て、フィン」

 

ティオナさんが笑顔で「任せてね!」と騒いでいる中でリヴェリアさんはフィンさんに詰め寄ると首根っこを掴んで端の方へ引き摺って行く。

フィンさんが笑いながら「苦しいよリヴァリア」と言っているのを僕は口元を引きつらせて見ていることしかできなかった。

 

ふわりと誰かが僕の前に立った。正面に視線を戻すと――

 

「確か……ベル、だよね?」

 

金の髪をなびかせながら、小首をかしげる女性がいた。

色白の肌に美しい金色の瞳に見惚れていた僕に、女性は反応がなかったからか、さらに近づくように前屈みになって顔を近づけてくる。

余りの近さに僕がりんごのように真っ赤になっていると、横から山吹色のエルフが割って入った。

 

「アイズさん近すぎです!! ベルも離れるなりしてください!」

 

耳を赤くしながら大声で叫ぶレフィーヤさんに僕はぺこぺこと頭を下げて謝る。

アイズ? さんは首をかしげるだけでなぜレフィーヤさんが怒っているのか理解していないようだった。……まあ僕もよく分からなかったけど。

 

「えっと、ごめんね。ベル、レフィーヤ」

 

「え、いやえっと」

 

僕がまたしどろもどろになるとレフィーヤさんはキッと一睨みした後、大きく項垂れる。

 

「はぁ……もういいです。ベルはアイズさんに直接会うのは初めてでしたよね」

 

コクコクと頷く僕と若干疲れたように肩を下げるレフィーヤさんという構図にティオナさんは笑い、ティオネさんは苦笑をこぼすだけだった。

アイズさんは終始首をかしげていたけど。

 

僕とアイズさんが、取り敢えずの自己紹介を終えたタイミングでフィンさんとリヴェリアさんが戻ってきた。

まだ僕が中層に行くことに納得がいっていないのか不満顔のリヴェリアさんに、僕は不安になって眉尻を下げる。

 

「えっと、リヴェリアさん……ダメ、ですか?」

 

その言葉に大きくたじろぐリヴェリアさん。

……? なんでリヴェリアさんがたじろぐのだろう

 

背後でレフィーヤさんが「ベルも天然ですか……」と呟いた気がする。

僕がそんなことを思っているとフィンさんがリヴェリアさんに「君の負けだよ」と言うとリヴェリアさんは眉間を抑えて頷いた。

 

「もういい。わかった、連れていくから」

 

パアっと明るくなる僕に周りは生暖かい表情を浮かべるのだった。

 

「ただし、道中でもう一度教えた事の復習をするからな」

 

「はい!」

 

そうしてようやく僕たちはダンジョンへと向かい始めるのだった。

 




次回、道中をちょっとはしょるかもしれませんがいよいよ18階層です。


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英雄の欠片と第一級冒険者

ちょっと無理矢理ですが18階層までです。

この作品のレフィーヤのアイズ愛は抑え目です(今更)……たぶん


目覚めよ(テンペスト)

 

目の前で切り刻まれていくキラーアントの群れに、僕は乾いた笑いしか出てこなかった。リヴェリアさんも眉間を抑えながらため息をこぼしている。

どうしてこうなったんだろう?

僕は少し前の出来事を思い出しながらそんなことを思った。

 

 

 

 

「えっと、キラーアントは瀕死になると特殊な鳴き声で仲間を呼ぶ……でしたっけ」

 

7階層から出現するモンスターを思い浮かべながらリヴェリアさんの問いに答える。

 

「そうだ。さらに言えば上層の中でも上位に入る硬さを持っている。だからこそ新米冒険者は仕留め損なうことが多く、そのせいでキラーアントの大群に襲われることも少なくない」

 

だから十分注意するように、そう念を押すリヴェリアさんに頷いて、僕は目の前で行われている戦闘に目を向ける。

そこではティオナさんが大双刃(ウルガ)でウォーシャドーの群れを薙ぎ払い、ティオネさんが投げナイフで残党を処理するという連携を繰り広げていた。

リヴェリアさんやレフィーヤさんは魔力の温存と云う事で戦闘には参加していない。一応、僕も魔力で武器を取り出すので温存させるという名目の上、リヴェリアさんの特別講習を受けている。

ちなみに、アイズさんは戦闘に参加しようとしていたが、僕の勉強の為に二人の戦いぶりを見せたいということで、フィンさんに見張りのごとく隣に立たれ戦闘に参加できずにいた。

あれからずっと無表情なのにどこか機嫌が悪い人特有の雰囲気を感じた僕は恐る恐るアイズさんに話しかける。

 

「えっと、アイズさんはそのサーベル? を使うんですか?」

 

僕に話しかけられたのが意外だったのかアイズさんは僕でもわかるくらいに目を見開く。

隣りにいたフィンさんは僕の行動に笑みを受けべるだけで成り行きを見守っている。

アイズさんは目をパチクリとさせていたが、やがてサーベルを抜いた。

 

「うん。使いやすかった、から。……触って、みる?」

 

「わぁ! いいんですか!!」

 

僕が笑顔で頷くと、アイズさんはサーベルを一度鞘にしまってから僕に手渡してくる。

スキルで出した武器以外を触るなんて久しぶりだなと思いながら僕はサーベルを抜き放つ。

細く長い刀身がダンジョン内の光を鈍く反射した。暫くサーベルを振ってみたり鞘にしまったりを繰り返した後アイズさんに返す。

 

「ありがとうございました!!」

 

「ううん。いいよ」

 

ちょうどそのタイミングで魔石の回収を終えたティオナさんとティオネさんが戻ってきた。

 

「いやぁ、暴れたよ~」

 

「まったく、サポートするこっちの身にもなりなさいよね」

 

ご機嫌なティオナさんにティオネさんが愚痴を溢す。ただティオナの「暴れた」の部分に反応した人がいた。

アイズさんだ。羨まし気な視線をティオナさんに送り続けているとフィンさんは苦笑をこぼしながら槍で肩を叩く。

 

「はぁ。良いよアイズ。ちょうど次のお客さんが来たようだし」

 

そう言ってフィンさんは正規ルートの方に視線を送ればそこからキラーアントの大群が現れる。

その中の数匹が顎先に滴る液体を付着させていた……

 

「他の冒険者がやられたのか」

 

リヴェリアさんが目を細めながらそう呟く。僕は無意識に槍を取り出すと固く握りしめた。

ティオナさんやティオネさんも自身の得物を構え——

 

「私が行く」

 

アイズさんが一歩前に出た。

呆ける僕を置いて他の人たちは武器を下げてしまう。

混乱する僕にフィンさんが口を開く。

 

「いいかい、ベル。よく見ておくんだ」

 

そう言っている間にもアイズさんはサーベルを抜き放ち、一言

 

「「目覚めよ(テンペスト)」」

 

「彼女の剣技を」

 

そう零した。

突如として暴風が吹き荒れ、アイズさんを中心に風の帯が産まれる。それは彼女に襲い掛かろうとしたキラーアントを粉砕し絶命させた。

 

「いくよ」

 

そう言って駆け出すアイズさん。次の瞬間にはその姿を捉えることができなくなった。

目の前でいつの間にか切り刻まれ灰になっていくキラーアントの群れに、僕は乾いた笑いしか出てこなかった。

リヴェリアさんも眉間を抑えながらため息をこぼしている。僕に見ているように言ったフィンさんも「これじゃあ見れないね」なんて呟いてるし。

 

遠いなぁ……でも、何時か追いつきたい、追いつかなきゃ。

 

拳を握りしめながら、僕は新しくできた目標に静かに闘志を燃やしていく。

 

 

 

 

 

その後、調子に乗った(鬱憤を晴らすように)アイズさんがほとんどのモンスターを僕が視界に入れる前に倒してしまい、碌に確認もできずに17階層前まで来てしまった。

 

ミノタウロスの鳴き声が聞こえた気がするけど次に聞こえたのは断末魔だったよ。

 

「ベル……道中はアイズがすまなかった」

 

いつもより肩が下がっているように感じるリヴェリアさんの謝罪に僕は遠い目をしながら首を振った。

 

「いいんです。アイズさんが満足そうなので……」

 

因みに、件のアイズさんとティオナさんは、フィンさんが安全確認と言う名目で先に18階層に行かせ、ティオネさんもフィンさんからのお願いで後を追っていった。

 

「……本当にすまん」

 

もう一度、本当にすまなそうに謝るリヴェリアさんに流石に見ていられなくなったのかフィンさんが僕に声をかけてくる。

 

「えっと、ベル。次の17階層には何がいるのか知っているかい?」

 

フィンさんからの質問に正気に戻った僕は慌てて答える。

 

「最初の迷宮の孤王(モンスターレックス)、ゴライアスが出現する階層です」

 

「そうだ。今はまだインターバル中でゴライアスは居ない。が、これからここへ来るようになったらインターバルのサイクルには注意しておくように」

 

「はい!」

 

僕の返事に軽く頷いたフィンさんは、次に苦笑を零し「それじゃあアイズたちと合流しようか」と言って先頭を歩きだした。

リヴェリアさんも眉間に手を当てながらついていく。その苦労人の背中に僕とレフィーヤさんは心の中で謝るのだった。

 

 




次回、リヴィラ殺人事件です


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英雄の欠片と殺人事件と

久々の投稿……ちょっと違和感があるかも

もうすぐUAが10万を越えますね。
良くここまで伸びたものだと自分でも驚きです。
…………特別編みたいなのしようかな。ネタみたいなやつw


「ここが、18階層。迷宮の楽園(アンダーリゾート)……」

 

辺り一面の緑に、太陽のように輝く結晶(クリスタル)がこの階層には満ちていた。

この景色を奇麗だと感じる一方で、どこかやるせなさを感じている自分もいた。

……自分の足でここまで来ることができたのなら、と。

顔を見て、僕が考えていることを察したのかフィンさんとリヴェリアさんが苦笑する。

 

「いつか自分の足でここまで潜れるようになれば、また違った景色に見えるさ」

 

フィンさんは、アイズたちと合流しようかと言ってここから見える湖畔のそばにある町へと歩き出した。

 

 

 

 

有り合わせの素材で作られたかのような看板に「リヴィラ」と書かれた門へ近づくと、なぜか胸の奥がチリチリと燻った。

門のそばで慌ただしく動いている人たちを見て、フィンさんたちもなにかを感じとったのか真剣な表情になる。

 

「何かあったのかい? 町の雰囲気がいつもと違うけれど」

 

「あ? お前知らねえのかって、ロキファミリア!?」

 

ギョッとした男性は、若干顔を青くしながら慌てて、今この街で起こっていることを話始めた。

 

 

 

「殺人事件、ですか」

 

表情を曇らせながら、そうこぼすレフィーヤさんにフィンさんも顔を険しくしながら言う。

 

「取り敢えずはボールズの所まで行こうか。アイズたちとも合流しないといけないからね」

 

町のなかに入っていくフィンさんに続きながら、僕たちはアイズさんたちを探し始めた。

 

 

 

幸いにもアイズさんたちはすぐに見つかった。ボールズさんという人がいる宿屋の前にいたからだ。

しかしティオネさんが片目を失った男性(この人がボールズさんらしい)と揉めているようで、僕たちは慌てて駆け寄る。

 

「――てめえらのその腐った物引き千切ってブタに喰わせんぞ!!」

 

「まぁまぁ、落ち着いて!」

 

「ティ、ティオネさん?!」

 

物凄い形相で男性に食って掛かろうとするティオネさんを、ティオナさんが宥めようとする構図。

というかティオネさんの様子がいつもと全然違うんだけど。

フィンさんたちは見慣れた光景だったのか、二人――フィンさんはティオネさんを避けてる気がする――を無視してボールズさんに話しかける。

 

「やぁ、ボールズ。きな臭いことを聞いたんだけど、詳しく聞いても良いかな?」

 

勇者(ブレイバー)⁉ ちょうどよかった! コイツを止めてくれよ!? 怒蛇(ヨルムガンド)、悪かったからちょっと落ち着いてくれ!」

 

フィンさんが片手を上げ、静止の合図を送るとピタリと止まるティオネさん。さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返り、普段の様子に戻るティオネさんにティオナさんはげんなりとした様子で肩を下ろす。

ボールズさんは冷や汗を垂らしながらもどこか安堵した様子だった。

 

「それでボールズ、聞かせてくれるかな」

 

「お、おう。ついてこいや」

 

そう言って宿屋に入っていくボールズさんに僕たちは続いて入っていく。

案内されたのは宿の一室のようで、床には男性が無惨な姿で横になっていた。

まだ匂う血の匂いに、僕は眉を顰める。村で生活をしていたので血の匂いには慣れているが、人が殺されたことに対して僕の中で黒い感情が蠢く。

——と、僕の背後でレフィーヤさんが顔を背けた。

 

「フィンさん」

 

僕は、顔色が悪くなったレフィーヤさんの前に立って死体を見えないようにしてからフィンさんに声をかける。

フィンさんも僕の意図に気づいたようで、小声で「頼むよ」と言ってきた。

 

「レフィーヤさん、行きましょう」

 

僕はレフィーヤさんの肩をそっと触る……触ってしまう。

途端にレフィーヤさんの肩が跳ねた。青かった顔が一気に真っ赤になり驚愕に目を見開く。僕は一瞬の間をおいて自身が何をしたのかに気づいた。

 

レフィーヤさんの、エルフの、肩を、抱いた。抱いてしまった

……語弊が生まれた気がする。ってそうじゃなくて!!

 

「な、ななな!?」

 

「ご、ごめんなひゃい!!!」

 

僕が慌てて謝るのと、レフィーヤさんの平手が飛ぶのは同時だった。

 

 

 

 

「あ、あの、ごめんなさい」

 

宿屋の外へ出ると、尖った耳を垂らし、顔を真っ赤にしながらレフィーヤさんが頭を下げてきた。

僕はじんじんと響く右頬を抑えながら、歪に笑い返す。

 

「いへ、だいしょうぶでふ」

 

大きく腫れた頬の所為でうまくしゃべれない……。流石Lv3の力。魔法職でも馬鹿にできない。

僕は宿の近くにあった広場の石段に腰掛けてから、ポーチに入っている回復薬を取り出して少量口に含む。

 

ゆっくりと引いていく痛みに心の奥で安堵しながら、僕はもう一度レフィーヤさんに謝る。

 

「急に触ったのは僕ですし、レフィーヤさんが怒るのは当然ですよ」

 

「いや、別にいきなりでなければッッて!??!!」

 

エルフはそういうことに敏感だってリヴェリアさんにも教えてもらったのにね。

と、一人反省していると隣からボンッ、という音を立てて湯気を噴いているレフィーヤさん。

僕が慌てるとレフィーヤさんは、ブンブンと頭を振り、

 

「何でもないです!!」

 

という言葉と一緒に僕の左頬に平手が飛んできた......。

 

なんでですかぁ。

 

「ああ?! すいませんすいません!!」

 

正気に戻ったレフィーヤさんに謝られる。

僕はさっきと同じように回復薬を飲みながら痛みが引くのを待つのだった。

 

......エルフの女性って恐い。

 

そう思った僕は悪くないと思う。

まぁ、僕の知ってるエルフの人は皆いい人ばかりだから、怒らせるようなことをした僕が悪いんだけど。

 

 

そんなときだった。その『人』が視界に入ったのは――

行き交う人の中、深く被ったフードから包帯を垂らしているその人に。

 

「ッ......」

 

理性がその人を不気味と判断し、本能が過去最大の危険信号を発する。

 

僕は咄嗟に武器を取り出そうとした右手の動きを止めた。

魔力の動きを感じて何人かが僕を見る。大概の人は訝しげに見るだけでそのまま去っていった。

ただ、レフィーヤさんにも当然察知されて驚いたような表情で僕を見ている。

でも僕はその人が路地裏に入っていくまで身じろぎできなかった。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

僕の突然の様子に、どこか不安げなレフィーヤさんの顔を見て漸く体が動くようになる。

僕はスッと立ち上がるとレフィーヤさんの手無意識に掴んだ。

 

「へ?」

 

「フィンさんのところに戻りましょう!」

 

あの人のことを早くフィンさんに伝えないと。

僕は呆けるレフィーヤさんを引っ張って宿へと戻った。

 

 

 



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英雄の欠片と恐威

気づけば夏も終わる/(^o^)\

今回はかなり独特回です。お気をつけください



僕たちが宿屋に入ると、丁度フィンさんたちが降りてくるところだった。

 

「ふむ。ローブに包帯を巻いた男か」

 

「おいおい、白髪の坊主、この辺にゃそんな奴ゴロゴロしてるぜ?」

 

僕がさっきの人のことをみんなに話すと、フィンさんは思案気に顎に手を当て、ボールズさんは何を馬鹿なと一笑する。ティオナさんやティオネさんも大して気にしていない様子だった。

 

「分かった。これから街の住人を集めることになったし、ベルの言う男にも気を付けておこう」

 

「ベル、もし何かあればリヴェリアかティオネ。アイズの側にいるようにしてくれ。三人も頼んだよ」

 

「分かった」

 

「はい! 団長!!」

 

「……うん」

 

三人が頷く(一人は全力で)のを確認すると、フィンさんは外の広場へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「よ~し! お前ら、脱げぇーー!!!」

 

『うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

「ふざけんじゃないわよ!!」

「誰があんたらなんかに見せるもんですか!!」

「引き千切るぞ!!」

 

「は、ははは」

 

リヴィラの中央にある広場じみたところに集められた冒険者たち。

最初は集まることに渋っていた彼等も、リヴィラへの出入りを制限すると言われては集まらないわけにはいかなかった。

レベル1・2ならおのずと、レベル3以上でも。大規模ギルドであっても、ダンジョン内で物資を調達できるこの街に入れなくなるのは死活問題になるからだ。

そうして渋々集められた冒険者たちは、この街のまとめ役であるボールズの次の言葉に真っ二つに割れた……男性と女性に。

 

ヒューマンやエルフは当たり前、その手のことに緩い(寛容)なアマゾネスであっても、訳も分からずいきなり脱げと言われれば殺気立つのは仕方のないことだ。

彼女らからの殺気を一身に受けているボールズであったが、その顔には笑みが残っていた————若干引きつっている気もするが。

 

「う、うるせー! この指示はロキファミリアの団長からの指示だ!! 文句あるやつは勇者(ブレイバー)に言いやがれ!!」

 

「こんなことになってしまってすまない。男性は僕とボールズに。女性はリヴェリアとレフィーヤのところに……」

 

フィンが言い終わるよりも前に集まる女冒険者(ショタコン)たち。その眼は野獣のごとく光り輝いており、さしもの第一級冒険者でも、語尾が尻すぼみになっていいく。

 

『フィンさま~~、私の全てを見てぇ♡』

 

あんの雌豚どもがァッ!!!!!!!!」

 

「ティ、ティオネさん落ち着いて!?」

 

「落ち着きなって!」

 

暴走するアマゾネス(恋に燃える女)をティオナとベルが何とか押しとどめるも、ベルは終始引き摺られていく。

ようやくティオネが止まるころにはベルの顔面は砂埃にまみれていた。

 

「べ、ベル大丈夫?」

 

「は、はいぃ」

 

顔面が擦り傷まみれでちょっとした放送事故になっているベルに、ティオナが自前の回復薬を取り出して頭へ振りかける。

 

「ありがとうございッ……!」

 

頭から煙を上げながらお礼を言いかけたベルが動きを止める。

目を大きく見開き、ピクリとも動かないベルに首をかしげるティオナだったが、ベルは別の人を見ていた……路地裏へ消える少女とローブの男を。

 

 

 

 

 

 

「あ、ちょっとベル!?」

 

僕はティオナさんの声を振り切って彼らが消えていった路地裏へ駆け込む。

路には迷わなかった。曲がるたびに謎の不快感と恐怖が増していったから。

そして僕は目にする————女の子が男に首を絞められているのを

 

「ッ放せ!!!」

 

全身の加速力を使い、槍を男目掛けて投擲する。

 

「! ……チッ」

 

男は槍に気がつくと、女の子を投げ捨てるようにして放し跳躍でそれを躱した。

僕は更に何本か武器と投射しながら投げ出された彼女の元へと走る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ンゲホッ!ゲホ! あ゛り゛がどっ!」

 

彼女は紫色の手跡がついた首元に手をやり、涙を溢れさせてえずいていた。

僕はポーチに入っている回復薬を取り出そうと手を下げる。しかし——

 

「随分と余裕だな」

 

「ッッ!!?」

 

気づいたときには肉薄されていた。ポーチに手をかけようとしていた僕は、碌な防御もできずに吹き飛ばされてしまう。

訳も分からぬうちに何枚もの壁を突き抜け、全身が引き裂けるほどの激痛に意識が何度も飛びかける。

 

「ゥッ……ゴフゥ」

 

喉奥からこみ上げてきたのは血の塊だった。どろりとした真っ黒なソレは瓦礫に落ちるとバチャリと音をたてる。

気絶することも許されない激痛に襲われながら僕は、冒険者になってから大怪我を負ってばかりだなと頭の片隅で思った。

 

「ほう、まだ息があったか。思ったよりも丈夫だな」

 

フードの男がそう言いながら僕の方へゆっくりと歩いてくる。

僕は必死にリヴェリアさんから貰ったエリクサーを取り出そうとするが、右腕はあらぬ方向へ折り曲がってピクリとも動かないでいた。

男の影が僕の頭へかかる。男は懐からナイフを取り出すと、それを大きく振りかぶって——

 

「させない」

 

暴風に吹き飛ばされた。

霞む視界の先、僕の前にはいつの間にかアイズさんが立っていた。

 

「これ、使って」

 

アイズさんは全身に風を纏った状態で、レイピアを構えながら僕にエリクサーを渡してくれた。

僕はそれを左手で受け取ると、ゆっくりと飲み干す。なんとも言えない痛みが内側からするが、耐えられないわけじゃない。僕が薬の痛みに耐えていると吹き飛ばされた男が瓦礫の中から出てきた。

 

 

フードが破れ……顔の皮が破れた状態で!

 

「次から次へと面倒な……だが、良いものを見つけた」

 

男はそう言ってフードを取ると自身の顔を剥ぎはじめる。その下からは真っ赤な髪と黄金色の瞳が現れた。

すらりとした体に、シンプルな軽装。腰には鈍い光を放つ長剣が一本あるだけだった。

そんな彼女は首を鳴らしながらアイズさんに問うた。

 

「お前、アリアだな?」

 

「ッ! その名をどこで!!?」

 

「さあな」

 

彼女の呟きにアイズさんの様子が激変した。

暴風を纏いながら突進し力任せに薙ぎ払う。しかし、その攻撃は女性の長剣に易々と防がれてしまう。

それでも剣戟を緩めることなくがむしゃらに切りつけるアイズさん。

その鬼気迫る様子はさっきまでとはまるで別人のようだった。そんなアイズさんを僕が何もできずに見ていると、背後から足音が聞えてきた。

 

「ベル! アイズさん!!」

 

「レフィーヤさん!」

 

杖を両手で握りしめながら走ってきたレフィーヤさんは息を切らしながら僕の所までやってくる。

 

「ベル、あの人は一体? それにアイズさんのあの様子は!」

 

アイズさんとあの女性を見てレフィーヤさんが困惑と驚きに目を見開く。

僕はレフィーヤさんにこれまでの事を簡単に話す。

するとレフィーヤさんは目を吊り上げて怒鳴り散らした。

 

「何をやってるんですかベルは!!? 一人で勝手に行動して!!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

杖を振りかざし地団駄を踏むようにして怒るレフィーヤさんに僕は反射的に謝る。

しばらく頬を膨らませて僕を睨みつけていたレフィーヤさんは、諦めたように溜息を吐くと僕に精神回復薬を押し付けてきた。

 

「まったくもう……それで、あなたはなんであの人に狙われていたんですか?」

 

レフィーヤさんが先ほど僕が助けた女の子に聞くと、彼女は何度か躊躇する素振りを見せたあと渋々といったふうにしゃべりだす。

 

「実は、依頼を受けて……それを、探してたみたいで。……報酬が、良かったから...」

 

「一体! な ん の! 依頼だったんですか!!」

 

怖!

 

「ひぃ!? こ、これだよ!!」

 

そう言って泣きながら彼女が取りだしたのは————水、しょ、ぅ   ?

 

 

 

 

 

「何ですか、これ」

 

それを見た時、アイズさんが戦っていることを一瞬忘れてしまった。

あまりにも不気味な胎児が浮かぶそれに、嫌悪感が沸いてくる私は一瞬受け取るのを躊躇したが、団長の元へ持っていくために意を決して手を伸ばし

 

ドサッ

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

「え?」

 

一瞬何が起こったか分からなかった。いや、数秒経った今でも理解できない。

水晶を見たベルが、いきなり蹲りながら顔を真っ青に染め、大粒の涙を零している。その尋常ならざる形相に私は慌ててベルに近づいて肩を揺すろうとする。

 

「べ『ミつけタァ』る…?!」

 

「うわぁ!!!??」

 

しかし、突如として不気味な声が響いた。声のした方を見ると、ベルが助けた少女の持っていた水晶が宙に浮いていた……怪しい光を放ちながら

 

『アリアァ。あ、アリ@¥*;%   **はい、ミツケタ』

 

狂ったような声が響くと、次に聞こえたのは酷く妖美な声が響く。

胎児の瞳がギョロギョロと首位を見渡し、私たち——ベルを捉えるとカッと目を見開いて水晶が砕け散った。

 

『私のカケラ、ようやクミツけたァ嗚呼嗚呼嗚呼アアアアア!!!!!』

 

「ッ—―――!!」

 

ベル目掛けて飛び掛かってくるソレ。

私は咄嗟にベルを押し倒して回避すると、胎児のようなものはそのまま近くにいた食人花へと張り付いた。

 

でも、それに構っている余裕は私にはなかった。ベルを押し倒した瞬間、狂ったように響いてくる謎の声に私は呑み込まれかける。

 

憎い、辛い、救けて、殺して、憎い、死なせて 生きたい 金が欲しい女が欲しい美貌を力を知識を憎憎財を名誉を忠義を憎憎憎憎憎誇りを勝利を屈辱を殺せ壊せ憎憎憎憎呪え呪え呪い呪い呪い呪い呪呪憎憎呪呪呪呪憎呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪

 

「な、何なんですか一体!!??」

 

咄嗟にベルから手を離すと怨嗟の声も途切れる。私は詰まっていた息を吐き出すと同時に座り込んだ。

ベルには未ださっきの声が聞こえているのか頭を抱えたまま呻いている。

目を見開き、悲鳴のような嗚咽を漏らすベル。

 

「ッベル! しっかりしてください」

 

私はベルを避難させるために抱き上げるとレベル3のステイタスを最大限活かして湖の方まで逃れる。女性の方は数秒迷った後涙目で追いかけてきていたが今の私にはどうでもいいことだった。

私は未だ荒い呼吸で泣き続けるベルを覆うように抱き着くと、耳元で言い聞かせるように囁く。

 

「大丈夫。大丈夫ですから。私がいます」

 

背中を撫でながら、ゆっくりと呼吸を落ち着かせていく。

なんだか手のかかる弟みたい。ふとそんな考えが浮かんで、私は少し笑ってしまった。

 

「あぁ、ああぁ。  ぁぁ、ぁ。れ、れふぃーや、さん?」

 

「そうです。ゆっくりでいいので、呼吸してください」

 

背中を撫でながらベルへ言い聞かせると、ベルは焦点の合わない目で私を見る。

私はベルの頭を撫でながら、汗で張り付いた前髪を梳いていく。

 

「はぁ、はぁ。 ぼくは、さっきの」

 

「今は忘れてください」

 

「でも」

 

起き上がろうとするベルを抑えて頭を私の膝へ降ろさせる。段々と意識がはっきりしてきたのか、もう一度起き上がろうとするベルを押さえつけながら、自分でもびっくりするぐらい優しい声で言う。

 

「いいから、今はゆっくり、休んでください」

 

「……はい。ありがとぅ、ございます」

 

優しく微笑えむベルに、私も微笑みを浮かべるとベルはゆっくりと瞼を閉じていく。

安全に眠ったのを確認すると、もう少し撫でていたい衝動をぐっと抑えて隣で空気になっている女性に声をかけた。

 

「ベルの事、頼みます」

 

「え! ちょっとぉっ!??」

 

 

杖を握りしめながら、私は街の方へと走る。

さっきの声のこと、ベルのこと。気になる事は山ほどある。アイズさんの事も気がかりだ。

でも今は——

 

「ベルの安眠の邪魔はさせません!!」

 

可愛い(家族)の為に、張り切っちゃおう。

 

 




レフィーヤかあいい。

次回はアイズやフィンがメイン


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英雄と山吹妖精

フィンさん要素がすくねぇ


『アアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

荒れ狂うように叫びながら、周囲のものを手当たり次第に破壊していく巨大なモンスター。

それに敵味方の区別はなく、冒険者や食人花を等しく吹き飛ばしながら、何かを探しているように徘徊を続けている。

 

「何あれ!?」

 

「はぁ。やっと粗方倒したってのに」

 

「どこから現れた……よりも先に倒す方が先決だな」

 

「そうだね。でも、その前にもう一方にもよらないと」

 

そんなモンスターに、道化の眷属は各々の反応を示した後、そのモンスター目掛けて走り出した。

 

 

 

 

 

「! アイズさん!!?」

 

アイズさんが戦っていた場所まで戻ってくると、そこには全身傷だらけで額を血に染めたアイズさんがいた。

 

「はぁ、はぁ。レフィーヤ、逃げて」

 

息の荒いアイズさんは、短くそう言うと赤髪の女性目掛けて切りかかる。しかし、女性はアイズさんの攻撃を鬱陶しそうに眉を曲げるだけで平然と受け止めて見せた。

 

「いい加減にしろアリア。まったく、あれはあれで役に立たなくなった。お前だけでも連れて帰るぞ」

 

女性は街のはずれで暴れている大型の人型モンスターを忌々しげに睨みつけながら吐き捨てる。

 

アイズさんを連れてなんて行かせませんから!!

 

「『解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり』 アルクス・レイ!!」

 

「……邪魔だな」

 

「嘘!? 魔法を素手で!!?」

 

私の放った魔法を素手で受け止めるなんて! ……ベルみたいに非常識です。

 

女性は先に私を仕留めるつもりなのかアイズさんを払いのけると私へ飛び掛かってくる!

私は咄嗟に回避しようとして背後から割り込んできた人物に目を見開いた。

 

「僕の仲間にそれ以上の手出しはさせないよ」

 

「フィンさん!!」

 

フィンさんが私の目でも追えない速度で槍を振るうと、遅れて三回の金属音が響き女性が吹き飛ぶようにのけぞる。

 

「レフィーヤ、アイズを頼むよ」

 

「は、はい!」

 

フィンさんは油断なく女性を見つめながら、私に声をかけると女性へと攻撃を仕掛けた。

激しい剣戟に体が縮みそうになるが、私は足に力を込めて倒れているアイズさんのところへ向かう。

 

「アイズさん! 直ぐに治療しますから!!」

 

「……ごめん。レフィーヤ」

 

私が回復薬を取り出して額へ振りかけると、アイズさんは顔を歪めたまま私に謝ってくる。

私は首を横に振って「大丈夫です」と言いながらアイズさんの口元へ回復薬を傾けた。

 

「レフィーヤ、あとは私が変わろう」

 

「リヴェリア様! いえ、アイズさんは私が」

 

「レフィーヤは、あれの相手を頼めるか」

 

私が食い下がろうとすると、リヴェリアさんは視線を未だ暴れ続けている巨大なモンスターへと向けた。

 

「お前ならやれるはずだ。それに、早くしないとベルが来てしまうかもしれないぞ?」

 

何処か可笑しそうに笑うリヴェリア様に、私はムッとして立ち上がる。

ベルは今休んでいるんですから!

 

「分かりました! あれは私一人でやります!!」

 

私がそう言うとリヴェリア様は微笑を浮かべながら「頼むぞ」と頷いた。

ベルやフィンさんたちから遠ざけないと。

 

私はそう思いながら中央樹の方へと駆けだした。

 

 

 

 

 

「君が何者なのか、教えてくれるかい?」

 

「答えるとでも?」

 

僕は彼女の攻撃を弾きながら問いを投げた。まあ、答えてくれるとは思っていない。

数度打ち合ってみて彼女のレベルは大体5の上位から6の下位だとわかった。

 

ただ、アイズが力負けしていたのを考えるとまだ不安定要素があるか。

 

「戦闘中に考え事とは随分と余裕だな」

 

「失礼。ただ仲間の事が気になってね」

 

ベルは一体どこにいるのか。レフィーヤが付いていってたみたいだから大丈夫だとは思うけど。しまったな、先に聞いておくべきだったか。

 

僕が槍で彼女の攻撃を捌きながら追い込んでいくと徐々に彼女の顔が歪んでくる。

 

「……チッ。やはり分が悪いか」

 

そう言って大きく跳躍し逃げようとする彼女に、僕は詰め寄る様にして妨害する。

 

「逃がさないよ」

 

「ウザイ! 食人花!!」

 

彼女がそう叫ぶと僕の足元から3本の触手が付き出てきた。僕はそれを後方へ避けるがその隙に彼女は滝壺へと飛び込んでしまった。

 

「逃がしたか」

 

「……まだ街にもモンスターが残っているし、追うのは難しいか」

 

僕はアイズを抱きかかえたリヴェリアと合流するとレフィーヤが走って行った方へ視線を向ける。

そこでは巨大な人型モンスターと死闘を繰り広げるレフィーヤの姿があった。

 




次回はレフィーヤVS巨大モンスター!!……かなぁ?


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英雄の欠片と山吹妖精

今回はレフィーヤvs巨大モンスターだといったな・・・・・・あれは嘘だ。


いや、一様描写としてはあるんですけどね。いかんせんベルのが伸びちゃった。

あと、リヴェリア様の魔法詠唱。フルで載ってるサイトとかってないんですかね?
アニメでも確か所々切れてたと思うし……。


「『解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の名手なり』アルクス・レイ!!」

 

「アアアアアア!!」

 

私の攻撃を食らったモンスターは、表面が軽く抉れた程度で何事もないように再生していく。そしてそのお返しと言わんばかりに、幾つもの触手が鞭のように私に襲い掛かってくる。

 

地面をえぐり砂埃をたてる触手を何とか回避しながら、私は現状に苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。

私が対峙した時、散々暴れまわっていたこのモンスターはなぜか執拗に私を狙い始めた。そのせいでまともに詠唱に入れずに回避一辺倒になってしまった。

 

もっと強い魔法なら倒せるかもしれないけど!

 

「この状況じゃ無理です!!?」

 

先程から続く鞭の嵐は、止むどころかどんどん激しさを増してきている。

さっきまでは避けれた攻撃も段々と避けきれずに体に掠るようになってきた。

 

やっぱり私じゃ無理なのかな。

 

「レフィーヤ!」

 

私が諦めかけた時、巨大な斬撃と共にティオナさんが割り込み、触手を数本まとめて切断した!

 

「頑張ってるねぇ! 私も手伝うよ!」

 

「馬鹿ティオナ! 一人で突っ込むなって言ってるでしょ!」

 

笑顔でこちらに手を振るティオナさんに、遅れてやってきたティオネさんが罵倒と拳骨を飛ばす。

私は胸が熱くなるのを感じながら叫んだ。

 

「ティオナさん! ティオネさん!!」

 

「レフィーヤ! 前は私たちが抑えててあげるから、デカいの頼んだわよ?」

 

そう不敵に笑って触手を捌きにかかるティオネさん。

私は目元に溜まったものを拭いながら立ち止まって杖を構える。

 

大丈夫。攻撃はあの二人が止めてくれる。私は私にできることをするんだ。

 

『ウィーシェの名のもとに願う 森の先人よ』

 

私の持つ、第三の魔法。

 

『誇り高き同胞よ 我が声に応じ草原へと来れ』

 

『繋ぐ絆 楽宴の契り 円環を廻し舞い踊れ』

 

私が唯一、リヴェリア様に勝てる魔法。

 

『至れ 妖精の輪 どうか ― 力を貸し与えてほしい』

 

私を中心に膨大な量の魔力が溢れかえり、それが大きな魔法陣へと変化していく。

私はそこで詠唱を止めることなく、紡ぎ続ける。

 

『ウィーシェの名のもとに願う 』

 

自分の中で暴れ出しそうになる魔力を抑え込み、私は詠唱を続けた。

私の詠唱が続くにつれて周りの食人花までもが魔力につられて集まってくる。

恐怖に止まりそうになる自分に叱咤をかけ詠唱を続ける。

 

大丈夫、仲間を信じるんだ!

 

『三度の厳冬  終焉の訪れ』

 

『焼き尽くせ、スルトの剣  我が名はアールヴ』

 

「『レア・ラーヴァテイン』!!!」

 

詠唱が完了し広範囲殲滅魔法が放たれる。

ティオネさんとティオナさんは魔法が完成する直前に離脱している。

私はありったけの魔力も込めて巨大モンスターをまわりの食人花ごと焼き払った。

 

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!?!!!

 

絶叫。複数の火柱に全身を貫かれ、再生すら間に合わない速度で全身を焼かれもがき苦しむモンスター。

 

「やるう!」

 

ティオナさんの賞賛の声が朦朧とする意識の隅で聞こえた。

 

 

 

 

 

憎い。辛い。悲しい。痛い。苦しい。

 

『煩いぞ、亡者めが』

 

煩わしそうに彼の人が一括すると、僕に纏わりついていたドロドロの塊はパシャリと弾けた。

 

英雄王さん……僕。

 

『ええい、顔を伏せるでないわ!』

 

不機嫌そうに眉を顰める英雄王さんに、僕は伏せようとした顔をもう一度上げた。

 

『今のお前ではアレの相手はできん。我でもアレの相手は骨が折れるからな』

 

さっきのは、いったい何なんでしょうか?

 

『その前にこれを飲め』

 

そう言って英雄王さんは何処からともなく杯を取り出すと僕に渡してくる。中には少しとろみのついた液体が入っていた。

 

『アレの呪いは強力だ。早く飲まねば死ぬぞ?』

 

死ぬ?!

 

僕は驚愕の事実に慌てて中の液体を煽る。ほんのりと甘い液体が喉を通り過ぎていき、気のせいか体が軽くなった気がする。

 

『いいか、アレに触れればお前の周りにいる雑種程度では一瞬で飲み込まれる。アレはそういった類のものだ』

 

そう言ってから英雄王さんは苛立ちげに髪の毛をかき上げると、深い溜息を吐いた。

 

『本来ならお前の道化っぷりと成長を座して見るつもりであったが、アレは我の不始末でもある』

 

英雄王さんがそう言うと僕の持っている鍵が光始める。

 

『火種はくれてやる! それを生かすも殺すもお前次第よ……ベル・クラネル』

 

 

 

 

 

重い瞼を開けると遥か高くに水晶の天井が見える。すると犬人(シアンスロープ)の女の子が僕の視界に飛び込んできた。

 

「あ! 起きたのか!?」

 

「……ぁなたは」

 

「あたしはルルネだ。お前はもういいのか?」

 

僕は数秒の間を空けて飛び起きると当たりを確認する。

 

「あのモンスターは!? レフィーヤさんたちは何処ですか!!」

 

「うわああぁ!!? 落ち着け、落ち着けって!? あのエルフならお前をここに降ろした後戻って」

 

彼女が言い切るよりも早く、中央樹の方が劫火に包まれた。至る所から上がる無数の火柱がモンスターを焼き灰へと変える。

僕は反射的にそちらへ疾駆した。

背後でルルネさんの叫び声が聞こえるがそれを置き去りにして走る。あれだけじゃあ倒せないから!

 

木々の間を縫い、岩を飛び越え崖を駆け上がった。

 

 

 

「ッレフィーヤさん!!」

 

僕の視界の先、そこには倒れているレフィーヤさんを守る様に立つティオナさんとティオネさん。そして全身の至る所を炭化させ、その胴体に開いた大穴から黒い泥を垂れ流す人型モンスターの姿があった。

 

「ベル! あなた今までどこに!?」

 

「ティオネさんティオナさん! 絶対にあの泥には触れないでください!!」

 

僕がレフィーヤさんたちのところへたどり着くとティオネさんの問いに答えずにそう叫ぶ。

レフィーヤさんは気絶しているだけだったようで静かな寝息を立てていた。

僕が安堵の息を漏らしているとティオネさんは泥を垂れ流すモンスターを指さした。

 

「ベルはアレが何かわかるの?」

 

「……分かりません。でも、分かります」

 

「ちょっと、どういう意味よ」

 

「まぁまぁ。確かに私もアレには触りたくないから」

 

ティオネさんが尚も僕に聞こうとすると、間にティオナさんが入ってきて溢れ出した泥を見て眉を垂らす。

そこには残っていた木々を腐らせながら広がる泥の池が広がっていた。

 

「はぁ。まあいいわ。私も触りたくないのは一緒だし。それで、ベルはどうしたいの?」

 

ティオネさんは諦めたように首を振ると僕にもう一度聞いてくる。

 

「なんとかあの泥ごとモンスターを倒したいんですけど」

 

今の僕には無理だ。そう思っていると背後から声がかかった。

 

「なら、私がやろう」

 

「リヴェリア!」

 

「リヴェリアさん!!」

 

そこには大きな杖を片手に持ったリヴェリアさんが立っていた。

 

「あのモンスターを倒せばいいのだろう? ここまであまり働いていないんだ。一度ぐらいはしっかりと働かないとな」

 

そう言って杖を掲げるリヴェリアさんに僕は覚悟を決めると武器を取り出しながら言う。

 

「僕があのモンスターの魔石を砕きます。そのタイミングでリヴェリアさんは周りの泥を」

 

「ちょっと、ベル一人で突っ込むつもり?」

 

「私も行くよ!」

 

僕の提案にティオネさんとティオナさんが待ったをかけるが、僕は首を横に振る。

 

「お二人にはレフィーヤさんとリヴェリアさんをお願いします」

 

僕はまっすぐティオネさんを見つめる。譲らないと僕を威圧していた目は数秒後呆れたように緩んだ。

 

「まったく、あんたも変なところで頑固よね。ま、嫌いじゃないわよ? そういうの」

 

「ちょっと、ティオネ!」

 

姉であるティオネさんが折れた事に驚くティオナさんに、ティオネさんは「諦めなさい」と言って

 

「ティオナも、後輩が男見せようとしてるんだから、邪魔しちゃ悪いわ」

 

と妹の肩を叩いた。

そんなことを言われては断れないとティオナさんは唸っていたがティオネさんは改めて僕の方を向くと真剣な表情で口を開く。

 

「……ただしベル、絶対死ぬんじゃないわよ」

 

拳を突き出してくるティオネさんに僕も笑顔で拳を突き出す。

 

「はい! いってきます!!」

 

 




次回、英雄の欠片と宝具……ベルの放つ宝具とは?!

宝具撃てるかなぁ


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英雄の欠片と宝具

戦闘描写……うん、もうあきらめたよ。



ヒリュテ姉妹を押し止め、未だ謎の泥を出し続けるモンスターへと歩いていく白髪の少年に、私は思わずため息を零す。

 

「止めなかったのかい?」

 

背後からの声に、私は呆れ交じりの声で返す。

 

「本当なら縛ってでも止めるべきだろうな」

 

私の隣で同じようにベルを見る小人族の団長に糸目を送ると、彼は自身の親指を舐めて言った。

 

「大丈夫。ベルならやるよ」

 

「……帰ったら説教だな」

 

「ははは、それは大変そうだ」

 

「お前もだ。フィン」

 

「……それは勘弁してほしいなぁ」

 

彼の頬を一筋の汗が垂れるのを眺めながら、私は詠唱へと移った。

 

 

 

 

 

 

 

アアアアアァァ   ァアァァ  

 

全身が崩れ、泥に体が沈んでも、それはまだ生きていた。

未だ蠢き続ける泥を前に、僕は立ち止まる

 

僕は大きく息をすると、目を瞑り胸元の鍵を握りしめる。

ゆっくりと周りの音が遠ざかっていく。心臓の音がゆっくりと延びていき、次第にその音すらも聞こえなくなってきた。

時間が止まったような感覚のなか、英雄王さんが言っていた言葉を思い出す。

 

『お前の英雄としての一端。見せてみよ』

 

今から僕がするのは、僕がなりたい英雄の欠片、憧憬、願いの顕現。ベル・クラネル(英雄願望者)が目の前の脅威に立ち向かうために、真の英雄(憧憬)が授けてくれた可能性の欠片。

握った鍵から伝わってくる熱に耳を澄ませる。

 

頭の中に声が響く。僕を見定めるような口調で――——お前はどうしたい、と。

僕は答える――——守りたい、と

 

『誰を?』

 

皆を

泣いている人を、苦しんでいる人を

 

『赤の他人なのに? 血もつながっていない。家族でもないのに』

 

冷たく突き放すような声に、僕は首を振った。

関係ないよ。だって

 

鍵が熱く燃える。胸が、背中が熱い。あの人の姿が、あの人の言葉が僕を掻き立てる。

僕は胸の内にある狂おしいほどのうねりを、その『人』にぶつけた。

 

「僕は、誰かを守る。あの人(英雄)たちを越える英雄になるんだから」

 

『……やっぱり、僕は僕だ』

 

引き延ばされた時間が引っ張られるようにして戻っていくなか、最後に聞こえた声は何処か呆れた様な、うれしそうな声だった。

目を開けた時、眼前には泥が迫っていた。ボコボコと気泡を作りながら槍のように伸びる泥は、僕を串刺しにしようと迫る。

 

「フッ!!」

 

僕は手の中にあるソレで迎撃する。

フィンさんとの訓練で染み付いた動きで、腰を落としながら右足を後ろへ。重心の下がった下半身で体を支え、振り上げと一緒に腰を捻る。

切っ先が地面に擦れて土ぼこりを上げながらが、僕に迫る泥へ吸い込まれるようにして接近し――――弾け飛ばした。

パシャッと音を立てて飛び散った泥は、空中で蒸発するようにして消えていく。

 

アアァァァアアアアァァァアァアアァアアッ

 

唯の泥であるはずのそれは、激しい痛みに悶えるように激しくうねりはじめた。

今までとは全く違う反応に僕は自分の手の中にあるそれを見た。

 

「これって…」

 

僕の手に握られていたのは使い慣れた槍だった。しかし、それは槍の形をしているものの酷く不鮮明で水晶のように透けていた。切っ先は矢尻のような形をしているものの、ぼやけて見える。

 

でも、僕はこれが未完成なものなんだと漠然と理解する。

これが、あの人が見せてくれた僕の可能性。

 

「いつか、これも自分のものにしなくちゃ」

 

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!

 

そんなことを呟いていると、泥は再び僕を貫こうと槍を飛ばし始めた。自身を傷つけられる僕を脅威だと感じたのか、その攻撃はさっきよりも速く、大きかった。

僕は槍を片手に駆け出す。

 

迫りくる致死の槍を自身の槍でいなす。僅かな抵抗の後、さっきと同じように崩れる泥を置き去りにして、さらに加速していく。前から、側面から何度も襲ってくる泥を、いなし、回避し、弾き返す。そうして接近していくと泥が大きく波打ち始めた。

 

ズリュッ ドォッ!

 

大きな水柱が上がり、僕をこれ以上接近させまいと天高く上がった飛沫が雨となって僕へと降り注ぐ。

 

「ッッ!!」

 

僕は慌てて盾を何枚も取り出し進行ルートへと配置する。

龍の鱗を模した盾や丸い鋼の盾。純白の盾など大小さまざまな盾が道を作る。

自分の中で一気に魔力が減ったのを自覚しながらそれでも走り続けた。

 

ベシャッ パシャ

 

ボタボタと大量の泥が降り注ぎ僕が取り出した盾は瞬く間に崩れていった。

純白の盾が真っ黒に変色し炭のように崩れ落ちる。

僕は無我夢中で盾を新たに取り出す。魔力不足でふらついても気力で持たせる。

 

前からも泥の槍が迫る。だめだ、止まれない。

 

槍で弾き、盾を取り出して片手で防ぐ。一瞬で朽ちる盾を投げ捨て更に前へ。

 

目眩がひどい。脚がふらつく……でも、絶対に止まれない!

 

最後の一際大きな攻撃を大楯のフルスイングで弾く。腕が悲鳴を上げ体が引っ張られる。それでも、これで!

 

「届く!!!」

 

大楯を捨て体を無理矢理引っ張る。槍を強く握りしめ、思いっきり振りかぶって——

 

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!!」

 

投げた。

 

瞬間、一筋の光となったそれはダンジョンを震わせる。

 

ドオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!

 

その一撃は泥を焦がしモンスターの胸部を貫き、あまつさえダンジョンの外壁を大きく抉った。

槍が突き刺さった部分は大きなクレーターができており、その大きさは18階層の壁の高さの約半分。更には巨大な亀裂が蜘蛛の巣のように走っていた。

僕は目の前の光景に開いた口が塞がらなかった。

 

こんな威力だなんて聞いてませんよ!

 

「ベル、しっかり捕まって」

 

「ぇ?」

 

背後から聞えた声に振り返ってみると、アイズさんが僕の左手を掴んでいた。うまく思考がまとまらない僕は突然のことに素っ頓狂な声を上げるだけだった。

ぐん、と視界が加速するのと僕の絶叫、そして氷塊が泥を凍らせるのはほぼ同時だった。

 

 




色々不満はあると思いますが許して

未完成のベルの宝具、うん威力が上手く伝わんねえや。

とりあえず、第一級冒険者でも壁は破壊出来てなかったはず。その辺を考えてもらえれば


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英雄の欠片と…

間のつなぎというか、落ちというか。なんかレフィーヤの罪悪感を取り除くために書いてたらこうなりました。


「なんじゃありゃあああああッ!!!!!!????」

 

「……何が起こっている」

 

ベルが放った槍の衝撃は、18階層にいる冒険者やダンジョンを管理する神にまで届いていた。

リヴィラの街を統括する冒険者は食人花そっちのけで度肝を抜かし、神はダンジョンの上げる悲鳴に幾年かぶりの冷や汗をかく。その叫びは5年前の災厄にも近いものであった。

 

また、道化の眷属たちは自身たちの家族の行った光景に目を剥いていた。

 

 

「リヴェリア、詠唱を途切れさせないでくれよ」

 

『み、三度の厳冬  終焉の訪れ』

 

「ベルすっご!」

 

「どうなってるのよ、あれ」

 

「い、いったい何の音ですか!?」

 

眼前で起きた光景に動揺したエルフを窘めながら、英雄と呼ばれる小人族は背筋を伝う感覚に冷や汗を垂らし、褐色の姉妹は驚愕を露わに。

そして山吹のエルフは叩き起こされた。

 

その中で、金色の髪を持つ少女は、何を思うのか。

 

「・・・・・・」

 

強く握りしめられた拳は渇望故か、震える瞳からは希望を幻視した喜びか、それは少女のみぞ知ることだった。

ただ、それでも件の少年は自分の家族に変わりないのだから――

 

少女は駆け出し、少年を救う。

 

 

 

 

 

アイズがベルを抱えて戻ってきた後、リヴィラの街へ向かいながら僕はベルの安否を確認する。

 

「ベル、無事かい?」

 

「はい! 精神回復薬も飲んだから大丈夫です!!」

 

ベルは笑顔で両拳をぐっと握ってみせた。しかし、その表情には疲労の色が隠しきれていなかった。それは誰が見ても明らかで、その虚勢は王女の反感を買ったようだった。

全身からうっすらと魔力を漏らすリヴェリアからそっと距離を取っておく。

 

「ベル、帰ったらフィンと一緒に説教をくれてやる」

 

「なんでですかぁあ!!!??」

 

それにフィンさんもですか!? と半泣き状態のベルに僕は苦笑いしか返せない。なぜなら自身もエルフのお怒りを受けることになったのだから。

と、そんなベルに声をかけるエルフがもう一人。

 

「……ベル」

 

「あ! レフィーヤさん目が覚めたんですね!!」

 

遠慮がちに声をかけるレフィーヤは酷く落ち込んでいる様子だ。

それも無理はない。彼女は責任感が人一倍強くて、あの時自分が倒しきれていればと今も悔いているんだろう。

 

「ごめんなさい」

 

「なんでレフィーヤさんが謝るんですか?」

 

案の定というべきかレフィーヤはベルに、僕たちに頭を下げてきた。

僕からすればレフィーヤは最善手を打ち十分な働きをした。でも彼女はそうは思っていないだろう。そして、その責任感からくる罪悪感は、僕たちの言葉で拭えるものじゃない。

 

ベルの言葉にレフィーヤは裾を握りしめる。

 

「私が、ちゃんとモンスターを倒していればッ」

 

「レフィーヤさん」

 

双眸から涙が溢れる寸前、ベルはレフィーヤの手を取った。

ベルは、優しく笑っていた。

 

あぁ、ベルは—―――

 

「レフィーヤさんがあそこまで傷をつけてくれたおかげで倒せたんです」

 

「でも」

 

「でも、僕も一人じゃ何にもできないから、だから」

 

レフィーヤの否定の言葉を遮って、少女の手を強く握りながら、少年は言った。

 

「一緒に強くなりましょう?」

 

相当の、お人好しみたいだ。

 

 

 

僕たちは先に歩いていく。

今の彼女に、あれ以上の言葉は無粋だった。

それに、背後から聞えてくる少女の嗚咽は、今の僕には純粋過ぎる。

 

「彼は、強いね……」

 

「あぁ、そうだな」

 

「どうゆこと?」

 

「あんたは気にしなくていいの」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

この日、確かに少年は一人の少女の心を救い、余多の冒険者を守った。

 

しかし一方で――――――――――底知れぬ闇もまた、育ててしまった。

 

 

 




レフィーヤ√が確定したので次回からタグを増やしておきます。

次回からは第3章「小人族の少女」編です


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英雄の欠片と爪痕

別段悪い意味とかじゃなく、ベルの頑張りと天然による周囲(主にエルフ)への影響です。


白髪の少年が眷属の仲間と18階層から帰還してはや一週間。

 

「9階層!!!??」

 

「ヒィッ!」

 

ギルドの受付、そこでいつものように白髪の少年から近況報告を聞いていたエルフの女性は彼から聞かされた到達階層に手元の資料を引き裂いてしまう。

しかしエルフの女性はそんなことが気にならないほどの怒りを少年へとぶつける。

 

「私はあれほど! 冒険者は冒険しないようにって言ったよねぇ!!!!!!!!!」

 

「ごごご、ごめんなさいい! でも僕あれからステイタスもだいぶ伸びたんです!魔力なんてAですよ!!」

 

「……は?」

 

A。彼はステイタスの一つがAになったと、そう言ったんだろうか。

 

そんなバカなとエルフの女性は少年の言葉を虚偽と一喝しようとするが目の前の少年が嘘を言うような性格にも見えない。

暫くの葛藤の後、エルフの女性は少年の手をひったくるようにして掴むとそのまま個室の相談室へと向かう。

 

「ベル君、ちょっといいかな」

 

「へ、あのエイナさん!?」

 

エルフの女性は少年の慌てようなど意に返さずに突き進む。

……同僚や他の冒険者の視線に気づかずに。

 

 

 

 

 

 

「うそぉ……ほんとにAになってる」

 

エイナさんに個室に連れてこられた僕は、半ば強制的に上着を脱がされ(一応は自分で脱いだ)ステイタスを見られている。ステイタスに掛けられたロックはギルドが管理している薬で解除された。

エイナさんはあり得ないといったような声を上げると、僕の背中に手を触れて食い入るようにステイタスを見ている。

 

僕はというとエイナさんの細い指がくすぐったくて悶えるのを必死に我慢しているところです。

 

 

「こんなに早く……でも嘘じゃないし……………ああ、もう!!」

 

エイナさんはソファーに座り直すと疲れたように頭を押さえながら言った。

 

「確かに、ステイタス的には問題ないけどベル君はまだ冒険者になって一月の新人なんだからね!! それと10階層から下に降りるのはパーティを組んでから! これは絶対だからね。わかった!?」

 

「は、はいいぃ!!!」

 

エイナさんの有無を言わせない目に、僕は泣きながら頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました。あれ、神様? どうかしたんですか?」

 

僕がホームに戻ると神様はリヴェリア様の目の前で突っ伏すようにして床に倒れていた。

僕の疑問にリヴェリアさんは眉間を抑えながら手を振る。

 

「気にするな。二日酔いだ」

 

「あぁ、いつものですね」

 

倒れた神様から「ちょ! ベルまで辛辣すぎへんかぁ!!?」という声が聞えたがスルーした。

 

四日連続で二日酔いになってたらきっと優しいアミッドさんでもこういう反応になると思いますよ? 神様

 

「それでベル。この駄神に何か用だったか」

 

「えっと、僕のアドバイザーのエイナさんからパーティを組むようにって言われて」

 

「ふ。エイナらしいな」

 

「そういう話やったらうちに任せときい!!  頭いたぁ

 

そう言って神様は青い顔で頭を押さえながらどこかへ行ってしまった。

リヴェリアさんは神様が出ていったあと、もう一度ため息を吐いて「薬を買ってくる」といって出て行ってしまう。

 

リヴェリアさん、そういう所が母親(おかあさん)って呼ばれる原因だと思いますよ

 

「じゃあ僕も訓練場に行こっと」

 

ダンジョンから戻ってきてから、僕はいろんな人にいろんな武器の使い方を教えてもらっている。これはフィンさんに言われたことでもあるし僕自身、もっと強くなりたいからだ。

今日は誰から教えてもらおうか。そんなことを考えながら僕は訓練場へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

「レフィーヤたん。おるか~?」

 

うちが扉をノックすると中から「はーい。今行くので待っててください」と声が聞えた。

中を覗いてみようかとも思ったがママが恐いからやめておく。

 

しばらくしてキィっと音を立てて扉が開く。そこからちょろっと顔を出したレフィーヤは周囲をせわしなく確認した後ゆっくりと出て来た。

 

……やばい。ごっつう可愛い

 

「どないしたんや、ベルはおらへんで?」

 

うちが「ベル」といった瞬間、レフィーヤが跳ねた。物理的に

 

耳を限界まで立て、顔は真っ赤に染まる。

そのままレフィーヤは手で顔を仰ぎながら早口に言い訳を始める。

 

「べべべっべつにベルがいるかどうかなんて関係ないですよ?! た、ただそう! 虫! 虫がいるかなって思っただけで」

 

「あ、ベル」

 

バタンッ!!!

 

なんやこれ、ちょーおもろいやん!!

 

「冗談やて、レフィーヤ。ベルはおらんて」

 

数秒後、ドアがゆっくりと開き、隙間からレフィーヤが顔を覗かせながら

 

「……天界に送還しますよ?」

 

「ヒッ!!!」

 

と呟いた。

 

あかん。目が本気(マジ)や!

 

二日酔いなんか吹き飛んだうちは、そのままジャンピング土下座を繰り出して謝る。

 

「ほんますいません!」

 

「……次はないです。それで、いったい何に用ですか」

 

隙間から覗く目がとても冷たい。じゃが丸くん取り上げたアイズたん並みに冷たい。

うちは土下座のまま本題を切り出すことにした。あの目を見てなんか話せへんで。

 

「実はな? ベルと」

 

カッッ!!

 

首元にナイフが刺さりおったーー!!!

 

顔を上げると二本目を投擲しようとしているレフィーヤと目が合う。うちは反射的に飛び退きながら壁際まで逃げた。

 

「ままままってくれーなレフィーヤ!! 話は最後まで聞いてんか?!」

 

「……」

 

「実はベルとパーティを組んでほしいんや! ベルも成長できるしレフィーヤも誰かとマンツーマンで組んだことないでちょうどええやろ?! な? な? な?!」

 

うちが第二射がこないことを祈りながら用件を伝えるとさっきまで漏れ出ていた殺気が消えていた。

 

恐るおそる正面を向いてみても扉は半開きでレフィーヤの姿は見えない。

いや、レフィーヤの部屋のベッドが盛り上がっとる。

うちはそっと扉に近づいて中を覗くとレフィーヤは全身をシーツに包んでごそごそと動いていた。

 

「む、無理です! だ、だって……ベルの顔が見れません!!」

 

「うわぁ」

 

うわぁ……むっちゃ弄りたいねんけど、弄ったら殺されてまう。

 

「と、取り敢えずは考えるだけでええから、頼むで?」

 

触らぬ神に祟りなしというか、触ったら殺しに来る乙女やなぁ。

そっと扉を締めながら、うちはそんなことを考えていた。

 

 

自室に戻ってから、レフィーヤの部屋をもっと見とけばよかったと後悔したんは内緒や

 

 

 




悶えるレフィーヤは可愛い。

次回は訓練の様子を見せた後ステイタスの更新、そしていよいよ裏路地での事件へ


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英雄の欠片と裏路地での遭遇

ここ最近の投稿頻度が高いのはシンフォギアのおかげ←要はモチベ

哲学兵装に浪漫を感じる今日この頃……全く関係ないですねハイ





「ハァッ!」

 

「甘いっす!!」

 

キィンという金属音と共に僕の持っていた短剣が弾かれる。

手に残る痺れが力負けしたんだと教えてくれると男性は長剣を腰にしまって駆け寄ってくる。

 

「大丈夫っすか?」

 

「いえ、気にしないでください!」

 

「本当っすか? それにしてもベルさん! 随分うまくなったっすね」

 

「ホントですか!」

 

僕が喜びに震えていると男性は「でも、まだまだっすよ」といって僕の肩を叩く。

彼は僕に短剣の扱いを教えてくれている人でラウルさん。他にもハンマーの使い方を教えてくれるアマゾネスの女の人や大剣に刀、長剣を教えてもらっている人だっている。

最初は訝しんでいた人たちも事情を説明すると快く承諾してもらえた。

因みに大剣はティオナさんに教えてもらっている。アイズさんにも教えてもらいたかったけど、18階層の事件の後フィンさんと深層の方に行ってしまった。

 

 

やっぱりいい人たちばかりだ。

僕はこのファミリアに入って良かったと思いながら、ふと訓練場の入り口から僕を見ている人を見つけた。

 

「……フン」

 

「ベートさん」

 

ただ、全員が首を縦に振ってくれたわけじゃない。ダンジョンに行かなきゃいけない人もいたし一部の女性からはなぜか邪険にされたりしている。その中でもベートさんには、口すら聞いてもらっていなかった。

 

僕が何かしてしまったのかと神様に相談してみても

 

「別に嫌っとるわけやない」

 

としか教えてくれなかった。

神様との会話を思い出しながら僕がベートさんの方を見ているとラウルさんが首をかしげていた。

 

「どうかしたんですか? ベルさん」

 

「あ、いえ、続きお願いします!」

 

「いいっすよ! 自分もいろんな武器を使うベルさんのおかげでいい訓練になるっす!」

 

今は訓練に集中しなきゃ!

僕は気持ちを切り替えて短剣を取り出すと、砂地を蹴ってラウルさんへ疾駆した。

 

 

 

 

 

 

「ほい、ステイタスの更新完了やで」

 

「ありがとうございます、神様!」

 

昼食を終えた後、僕は神様にステイタスの更新をお願いした。

三日ぶりの更新で訓練での成果が出ているのかが気になったからだ。

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : D 571

耐久 : D 523

器用 : C 689

俊敏 : D 540

魔力 : A 886

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

・王律鍵 G

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

「もうすぐで魔力は900になりますね!」

 

「せ、せやな。今調子で頑張るんやで?」

 

「はい!」

 

僕が上機嫌で浮かれていると神様は何かを思いついたように手を叩いた。

 

「そや! 久しぶりに宴開くんやけどベル、お酒飲めるか?」

 

「お酒ですか? 飲んだことがないので」

 

僕が上着から顔を出すと神様は楽しそうに笑った。

 

「ほな今晩、豊穣の女主人ちゅう店行くで!」

 

「わかりました。それじゃあそれまでちょっと僕買いたいものがあるので出かけますね!」

 

僕がそう言って扉に向かうと神様は手を振ってくる。

 

「気いつけてや~」

 

「はーい」

 

僕も神様に手を振り返して消耗品の買い物へ出かけた。

 

 

 

 

 

「回復薬に携帯食料、あとは……ん?」

 

冒険者通りからホームの方へ歩きながら紙袋の携帯食料を数えていると、裏路地の方から何かが聞えてきた。

僕は紙袋を閉じると陰の射す路地へと歩いていく。

 

「……めて……さい!」

 

「うる…え!!」

 

段々と聞えて来る声に僕は歩調を速めていく。そして

 

「ッ!! 何をやっているんですか!!」

 

小人族の少女に武器を振り下ろそうとしている人がいた。

僕は一気に加速して間に割り込むと地面につき立てるようにして槍を取り出す。

振り下ろした剣が槍に阻まれ驚愕に顔を歪めた男の人は更に激昂する。

 

「誰だてめえ!!! その餓鬼を庇うってのか!!」

 

「一体この子が何をしたっていうんですか!」

 

僕は後ろの少女を庇いながら目の前の男を睨みつける。

少女は突然のことに驚いていたが僕の槍を見た瞬間、目が座った気がした。

 

「そいつが俺の金をちょろまかしやがったんだよ!!!」

 

「……リリは、そんなことしていません」

 

「どちらにしたって武器で切りつけるのは可笑しいです」

 

そう言うと男性は我慢の限界がきたのか再び武器を振り上げた。

僕は迎撃できるように槍を引き抜いて下段に構え——

 

「何をしている」

 

男の背後から声がかかった。

何処かで聞いたことがあるその声に僕が覗き込むとそこにはリューさんが立っていた。

 

「リューさん!? どうしてこんなところに」

 

「クラネルさんでしたか。私は買い出しに出ていたところです。が」

 

そう言って言葉をきると、普段のリューさんからは想像もできないような殺気が男性に放たれた。

男性はいきなりの殺気に冷や汗を垂らすが虚勢をはってリューさんに怒鳴り散らす。

 

「う、うるせー! 邪魔すんなら」

 

「吠えるな」

 

「ッ……」

 

「私はいつも、やりすぎてしまう」

 

袖口からナイフを取り出したリューさんを見て男性は数歩後ずさると舌打ちをして逃げていった。

僕は軽く息を吐き出して槍をしまうとリューさんが僕の方まで歩いてくる。

 

「ご無事ですか」

 

「はい。ありがとうございます。君も……あれ?」

 

振り返るとさっきまでいた少女は忽然と姿を消していた。

 

「どうかされましたか?」

 

「あ、いえ」

 

「そうですか。そう言えば本日ご予約されていたのはロキ・ファミリアでしたね。クラネルさんも?」

 

リューさんが思い出したようにそう言ったので僕は笑顔で「はい!」と答える。

 

「良かった。シルが喜びます」

 

リューさんは「それではまた」と言って軽くお辞儀をすると冒険者通りの方へと歩いていった。

 

「……僕も急がなきゃ」

 

先程の少女の事が気になりつつも、僕はファミリアのホームへ慌てて帰るのだった。

 

 

 




次回、再び豊穣の女主人へ。そしてベル、初の飲酒


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英雄の欠片とお酒 上

完全なネタ回。というかやりすぎた感が否めない。

色々と疲れたので一度フィーバーします。キャラ崩壊がありますので苦手な方は読まないことをお勧めします。本編にはあまり関係がない……はず。


「だ、誰かベルを止めろー!!?」

 

「私は団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋」

 

「ッ待てぇ!! シルやリューまでやられてんじゃないかい!!」

 

地獄絵図。第一級、第二級。そして泣く子も黙る店の店主ですら彼を止められない。

なぜこんなことになったのか、フィンは目の前の惨劇をある種達観の域に達しながらしながら考えていた。

時間は一時間前に遡る。そう、宴が始まったその時まで。

 

 

 

 

 

 

「今日は久々の宴会や! 思う存分飲めぇーー!!!」

 

『『『オオォォォォォ!!!!』』』

 

各々がジョッキをぶつけ合う中、僕は幹部メンバーの席に座らされていた。

 

「あの、僕がここで本当にいいんでしょうか?」

 

「気にするな。他の団員たちが遠慮した結果、お前になったのだ」

 

僕が委縮しているとリヴェリアさんが嘆息しながら言った。

 

「別に誰も気にしないって」

 

「……ケッ」

 

「あうあうあぁぁ」

 

「若干名、は置いておいて、ベル改めて18階層ではご苦労だった」

 

つい先ほどダンジョンから帰ったばかりのフィンさんの言葉に、僕はむず痒いのを感じながら笑顔で答える。

 

「フィンさんたちも、間に合ってよかったですね!」

 

「……うん」

 

「リヴェリアとロキから聞いたよ。パーティを組むように言われたそうじゃないか」

 

「んぐぅッッ!!??」

 

フィンさんの言葉に先ほどから一心不乱に野菜を食べていたレフィーヤさんがむせた。

僕は慌てて水を持っていくとレフィーヤさんに手渡す。

 

「大丈夫ですか!? これ水です!」

 

「んんむ! んッ……んッ……はうぅ。助かりましたぁ」

 

「もう、気を付けてくださいね」

 

僕の指摘に顔を赤くして明後日の方向を向くレフィーヤさん。僕は首をかしげているけど他の皆は暖かい目を送っていた。

 

 

「まぁ、そのパーティの候補にレフィーヤが挙がっているんだ」

 

「レフィーヤさんがですか!? 僕まだレベル1なんですけど」

 

レフィーヤさんはレベル3だ。どう考えても釣り合わないだろう。

僕が顔を若干青くして首を振っているとリヴェリアさんが苦笑しながらフィンさんの言葉を肯定した。

 

「いや、悪くない考えだと私は思ったぞ」

 

「リヴェリア様ァ!!?」

 

「確かにレフィーヤはレベル3だ。それに魔法職としてはレベル4にも届くだろう。だが、レフィーヤはあくまで魔法職。今後下層への遠征に参加していけばモンスターとの近接戦闘もあり得ない話ではない。そしてレフィーヤのソロでの戦闘能力は良くてレベル2の中級だ」

 

リヴェリアさんの言葉にフィンさんが「彼女は生粋の魔法特化だからね」と補足を入れ、引き継ぐようにして話し続ける。

 

「これからランクアップを果たしていけばベルにも遠征に参加してもらうことがある。だからこそ、ここでベルには前衛としての心構えと役割を理解してもらいたいんだ」

 

「それにレフィーヤは腐ってもレベル3。ベルの潜る階層で後れを取ることはないじゃろう」

 

僕はフィンさんやガレスさんの言葉を受けて、拳を握りしめると大きく頷いた。

 

「はい!! レフィーヤさんもよろしくお願いします!」

 

「わ、私は……やるなんて、一言も……」

 

「いいなぁレフィーヤ。ねね、いつか私とも一緒に潜ろうよ!」

 

レフィーヤさんの声はティオナさんの声にかき消されてよく聞こえなかった。

それに僕が訪ねようとしたタイミングで、シルさんたちが追加のお酒を持ってきたことでうやむやになってしまった。

 

 

「ほれベル! これはうちからのおごりや!! じゃんじゃん飲めぇ!」

 

「は、はい。いただきます」

 

神様が僕の目の前にドンと置いたのはエールが並々と入ったジョッキだった。それもリヴェリアさんたちよりも一回り大きく、ガレスさんたちが飲んでいるのと同じ大きさのものだ。

 

僕は初めてのお酒に緊張し思わず喉を鳴らす。そうして僕が飲むのをためらっていると神様が見かねたように声をかけてきた。

 

「あかんあかん。ええかお酒っちゅうのは一気にググッと飲むもんやで!」

 

「馬鹿者! 初めての——」

 

ググッと……よ、よし、いくぞぉ!

 

僕はジョッキを勢いよく掴むと中身を思いっきり煽った。

 

 

 

 

 

 

「馬鹿者! 初めて酒を飲む者にそんなッ!? ベル待て!!」

 

リヴェリアの静止むなしく、ベルは大ジョッキを一気に飲んでしまう。ロキ自身もまさか本当に一気に飲んでしまうとは思わず、酔いが引いていくのを感じていた。

それはロキだけでなく、この時テーブルに座っている冒険者たち——一名を除いて——全員が数年前のとある少女の騒動を思い出していたからだ。

 

酒場全体が盛り上がっている中、妙に静かな幹部席周辺。その幹部たちの視線を一身に受けている白髪の少年は煽っていたジョッキを口から離すと—―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

机に叩きつけた。

 

バアァァン!! という音が響き、周囲の冒険者も何事だとそちらを見る。

店の店主は既にこの時、嫌な予感を感じ取っていた。

 

「べ、ベル?」

 

俯きながら頭を左右にふらふらと揺らすベル・クラネルにロキが代表して声をかける。

数秒ほど静かな空気の後、ベルが顔を上げる。そしてロキは気づく「やってしまった」と。

 

「かみしゃまあぁ・・・おさけっておいしぃですねぇぇ」

 

頬を真っ赤に上気させながら、とろんとした瞳で笑みを浮かべるその姿は、酷く魅惑的で妖艶な雰囲気を溢れさせていた。

思わず団員たちが二度見してしまうほどに。

 

「ベル? 大丈夫?」

 

普段とは全く違うベルの様子にティオナが恐る恐るといった様子で声をかける。

ベルは体を左右に揺らしながらゆっくりとティオナを見ると

 

「えへへ。ティオナしゃんはすきですよ~?」

 

「はぅ!?」

 

純粋無垢な笑みを向けた。

その笑みが繰り出した一撃は、オラリオでもトップクラスの耐久ステイタスを貫通し、アマゾネスとしての性をも突き破って少女のハートにクリティカルヒットした。

ベルの言葉に胸を抑え見悶えながら撃沈するティオナに姉のティオネが駆け寄る。

 

「ちょっとティオナ!? ベルもあんた酔いすぎ」

 

「ティオネしゃんは~、おねえさんみたいでかっこよくて~すき」

 

「ぐふっ。だ、ダメよ。私には団長という」

 

ベルの暴走は止まらない。今度は妹を助けにきた姉にその純粋な瞳がむけられる。

ティオネは内から湧き上がる保護欲のようなものに襲われながらも、己の愛する人を支えに何とか首の皮一枚で踏みとどまった。しかし、ベルは非常にも追い打ちをかけた。

 

「ティオネしゃんは、ぼくのこときらい、ですか?」

 

「うぐっ……別に嫌いじゃないわよ」

 

「やった。ティオネおねえしゃんだいすき!」

 

「ッカハ!!」

 

涙目の上目使いからの花が咲いたような満面の笑みのコンボに、ティオネは口から吐血しながら撃沈した。また、その小動物を思わせるような愛くるしい表情と目尻に溜まった涙に他の団員——主に女性冒険者——も共に沈んでいった。

 

リヴェリアたちが戦慄しているなか、ベルはというとニコニコしながら追加のお酒を飲みはじめる。

ここでこれ以上被害が出てはまずいとリヴェリアは慌てて動き出す。

 

「ま、待てベル。それ以上の飲酒は」

 

「ぇ……」

 

ベルが口を付けようとしたジョッキを取り上げるとベルは笑顔から一転、絶望に染まった顔でリヴェリアを見る。

先程ティオネに見せた以上に悲し気な表情に、リヴェリアは一瞬たじろぐが多大な精神力を消費して険しい表情のまま首を横に振った。

 

「そ、そんな顔で見てもダメだ」

 

「……うぅ」

 

「すまない、リヴェリア。君は正しいはずなのに僕には君が鬼のように見えてしまうのはなぜだろうか」

 

「うちもそうみえるんやけど」

 

「な!? 私はベルの事を思って! 大体これはロキの悪ふざけが原因だろう!!」

 

突然のフィンとロキからの横やりに今度こそ表情を苦悶に歪めるリヴェリア。更に周りからも同じような視線を幾つか感じるリヴェリアは自身の中に暴れまわる感情を制するのに精一杯になる。

 

因みに、フィンやロキ以外の視線は、別段自分たちに害はなく普段ではまず見られないような幹部たちの一面が露見しているので、今それ(ベルの暴挙?)を止めないでくれという娯楽的思考からくる視線であった。

 

そんなことは露知らず未だ葛藤の中にいるリヴェリアに豊穣の女主人の店員であるシルが駆け寄っていく。

 

「リヴェリアさん、ちょっとそのお酒、貸してもらえませんか?」

 

「む。いや、もう任せよう」

 

一瞬躊躇ったリヴェリアだったが、この状況から抜け出せるのであればと半ば思考を放棄してジョッキをシルへと手渡す。

その時、リヴェリアは見ていなかった……シルの浮かべていたのが悪魔的笑みであったのを

 

 




書いててあまりにも長くなったので半分に切ります。


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英雄の欠片とお酒 下

はい。後半です。

いろいろキャラ崩壊とかあります、はい。


「ベ~ルさん♪」

 

「うぅ、シルしゃん?」

 

くッ、ベルさんそんな弱々しい姿を見せないでください! 思わず襲いたくなってしまいます。

でもだめよシル、ここは我慢して愛でるだけにしないと。

 

「はい。リヴェリアさんからお酒を取り返してきましたよ」

 

「なッ??!!!!」

 

「わぁあ!!」

 

あぁ、そんな笑顔で……

 

私は手に持ったジョッキをベルさんへ手渡そうとした。でも、あとちょっとのところで横からスラリとした手が伸びて掴まれてしまう。

 

「シル、それ以上はいけません」

 

私の親友であるエルフ(生真面目)が若干眉を寄せながら私を止めてきた。

 

「リュー」

 

「お酒の弱いクラネルさんにそれ以上飲ませるのは危険だ」

 

真っ向から正論でこられたら反論が難しいじゃない。

 

そう思った私だったがここに第三者……というか当事者から思わぬ攻撃が始まった。

 

「りゅーしゃん。だめなんですか?」

 

「クラネルさん……そんな顔をしないでほしい。これはあなたのためです」

 

あの滅多に表情を変えないリューが、ベルさんの涙目を前に、眉を下げ心底困ったような表情をした。

リューの決死の説得のおかげか、若干ふてれくされながらも承諾するベルさんを前に、リューさんは疾風の勢いでお酒を戻していく。ゆっくりやっていたらまたベルさんが駄々をこねるかもしれないからだろう。

そんな風に高速で動き回るリューを涙目——というか泣いてる——ベルが見つめているとリューがお酒を戻しきり、ベルの元へと帰ってくる。

と、ベルが突然リューに抱き着いた。

 

「りゅーしゃん」

 

「ッ……?!」

 

他の誰かがやれば一瞬で叩き潰しそうな行動を前にしてもリューは動かない。いや、動けない。

ベルさんを払い落さなかった自分自身に驚いて未だ状況がつかめていないリューに対して、ベルさんはリューの細い腰に手を回しお腹辺りにぐりぐりと頭を擦り付けている。

 

……羨ましッッッんん! 羨ましすぎです!

 

「ク、クラネルさッこ、こういうのは……困ります

 

状況を段々と理解してきたリューが耳まで真っ赤にしながら首を振ってもベルさんは止めません。

 

「ちょ、ちょっとリュー!? 抜け駆けはだめよ!!」

 

「そうにゃ! その白髪頭のお尻はミャーのものにゃ!!」

 

「クロエは黙ってて!」

 

「シル……わ、私はどうすれば」

 

目をぐるぐると廻しながら私に助けを求めるリューだがその右手はしっかりとベルさんの頭に乗せられている。

思ってもみない伏兵に私が地団駄を踏んでいると山吹色の風がベルさんのところに舞い降りた。

 

「ちょ、ちょっとベル! いい加減にしないとだめですよ」

 

そう言ってウィリディスさんがリューからベルさんを引きはがそうとする。

流石のベルさんもランクが上の冒険者と云う事もあってすぐに引きはがされていた。

ウィリディスさんはベルさんの首根っこを掴んだまま、引き摺っていく……ウィリディスさんの頬が若干膨れているのは気のせいでしょうか?

 

ずるずると引き摺られていくベルさんは現状をあまり理解できていないのか「えへへぇ」と笑っていた。そうこうして先ほどベルさんが座っていた位置まで戻されたベルさんは

 

「りゅーしゃんって、いいにおいがしますね~。れふぃーやしゃんみたいれふ」

 

盛大に爆弾を投げつけた。

 

「「なッッ!!?!?」」

 

ボンッ  と音を立てて固まるエルフ二人。ベルさんはウィリディスさんの手からするりの抜けるとウィリディスさんの頬をつつく。しばらくしてにへらっと表情を崩すとブレた瞳が私の方を見た。

言動がさっきよりも不安定になってきたベルさんが一歩一歩近づいてくるたびに、先ほどとは違った雰囲気を感じた私はゆっくりと一歩後ずさる。

 

「しーるしゃん」

 

ベルさんは私の前に止まってニコニコにへらっと笑うと、

 

「おねーしゃんってよんでいいですか?」

 

と言った。

…………刺さった。今、私の中の何かに、手遅れなほど深く刺さった。

私は鼻の奥から何かが垂れてくるのを感じながら意識を手放した。

 

 

 

 

赤い雫を垂らしながら撃沈したウェイトレスを見て、ロキファミリアの団長のフィンは暫くは出禁かな。などと半ば思考を放棄していた。

軽く見渡せばベルの言動によって主に女性が気絶し、店内は混沌に満ちている。ベルにはお酒を飲むと発動するような魅了スキルでもあるんじゃないかと疑うレベルだ。まぁ、それはスキルなどではなく天然のものだが。

ちなみに、当の本人は自分の席に戻るといつの間にか手にしたお酒をクピクピと飲み、しばらくすると満足したのか満足そうな寝顔で寝ていた。

 

その後、事件の首謀者は店主に物理的な説教を食らい眷属からは一週間の禁酒が言い渡され、ベルへの飲酒は少女と同様禁止されることになった。

が、今後も隠れて誰かしらがお酒を飲ませることになるのは、また別のお話。

 

 

 




次回は真面目にストーリーが進みます。

次回は小人族の少女との再会です。



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英雄の欠片と犬人の少女

今回は愚駄りました……最近難産が続いている。


 

「お兄さん、お兄さん、白髪のお兄さん。サポーターを探してはいませんか?」

 

ダンジョンへ向かう途中、大通りの噴水のある広場で。僕は少女との再会を果たした。

 

 

 

 

「えっと、僕?」

 

「はい! リリはお兄さんに話しかけていますよ」

 

レフィーヤさんとパーティを組むことになって最初の日。

僕は先にダンジョン入り口まで行ってしまったレフィーヤさんを追いかけていた。

そんな僕に背後から声をかけてきたのは、大人が入りそうなほど大きなバックを背負った少女だった。

 

「……君って、あの時の小人族だよね?」

 

「私はお兄さんとは初対面ですよ? それに私は犬人(シアンスロープ)です」

 

そう言って目の前の少女がフードを取り去ると、深い亜久里色の髪に二つの山がひょこりと生えていた。

その山はピクピクッ、と動いて本物であることを証明しているようだった。僕は首をかしげながらその耳へと手を伸ばす。

ふわっとした手触りで、触られるのに慣れていないのかピクピクと動くその耳に、僕は夢中になってさわ……もふり続けた。

 

「うわあぁ! すごいね!!」

 

触ったことのない感触に僕は感動していた。

だからだろうか。目の前の少女が今どんなことになっているのかしばらくの間気づかなかったのは。

 

「ふぅ。あぅ……んんっ。そのっ……やめっ!」

 

「…………ッ!?」

 

バッ、と手を引っ込めたがすでに遅い。

解放された少女は頬を上気させ、両手で耳を守りながら座り込んでしまった。

 

「ママ、見て~」

 

「こらッ、見ちゃいけません!」

 

……いたたまれない。

 

いや、僕が原因なんだけど!

僕は慌てて神様から教わった土下座を繰り出す。

 

「ご、ごごご、ごめんなさい!」

 

僕が必死に頭を下げていると少女は瞳を潤ませながら呟いた。

 

「い、いえ……ただ、あんなことまでされたのに、雇ってもらえないとなると」

 

「ごめんなさいぃ! 雇います! 雇いますからぁ!!?」

 

僕が罪悪感に押しつぶされてそう言うと、少女は一瞬俯き次には満面の笑みでほほ笑んだ。

 

「これからよろしくお願いします!」

 

……は、嵌められた!?

 

もしかして背が低い人は策士が多いんだろうかと、ファミリアの団長を思い出しているなか、目の前の少女は特に気にした様子もなく契約内容の説明に移っていった。

 

その頃、とあるファミリアのホームでは小人族がくしゃみをしていたとかなんとか。

 

 

 

 

とりあえず犬人、リリルカさんから仮契約でいいと言われたので僕はそれに頷き、リリルカさんを連れてダンジョンに向かった、んだけど……

 

「で、誰なんですか? その子」

 

「えっと、その、すいません」

 

そこには顔から表情の抜けたレフィーヤさんが仁王立ちをしていた。青い瞳から光が抜け落ち、背筋を凍り憑かせるような死線を送ってくる。

 

因みに僕は正座だ。

 

「リ、リリはリリルカ・アーデと申します! 失礼ですが千の妖精(サウザンド・エルフ)のウィリディス様ではないですか?」

 

「はい、そうですが。で、貴女はなんでベルと一緒にいたんですか?」

 

「リリルカさんはサポーターで」

 

「ベルには聞いていません!」

 

「はい! すいませんでした!!」

 

レフィーヤさん恐い

 

「その、リリは弱いサポーターなのでお強そうな冒険者のベル様やウィリディス様のサポートができたらなぁ、と」

 

レフィーヤさんの謎の見幕に押されながらもリリルカさんがそう答えると、レフィーヤさんは脱力したように大きなため息を吐いた。

 

「はぁぁぁぁぁ。わかってました。わかっていましたよ。朝から胸騒ぎはしたんです」

 

「あの、レフィーヤさん?」

 

「ベル!」

 

鬼の形相でこちらを見るレフィーヤさんに僕は背筋を限界まで伸ばした。

 

「あなたがリリルカさんと契約したんだから、あなたがこのパーティのリーダーです! 無責任な行動はしないでくださいね!」

 

「はいい!!!」

 

「何時まで座ってるんですか!? 早くいきますよ!!」

 

「ご、ごめんなさいいぃ!!」

 

足早にダンジョンの方へ歩いていくレフィーヤさんの後を僕は慌てて追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張って稼いでくださいね? ぼうけんしゃさま」

 

————その後ろで、誰かの嗤い声が聞えた気がした。




この作品のリリは結構ドライというか暗めです、はい。

次回はもしかしたら今日中にあげられるかも(*´艸`*)←フラグ


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英雄の欠片とエルフの決意

なぜか数話ごとに無駄なシリアスガガガ

そもこれシリアスか?

もうシリアスという言葉がゲシュタルト崩壊しそう。


10階層。霧の立ち込める草原のような空間で私は声を大にして叫んだ。

 

「ベル! 前に出すぎです。サポーターや後衛の事もちゃんと考えてください!」

 

「ッすいません!」

 

私は突出しすぎたベルを叱咤しながらリリルカさんを守る様に立ち、杖で迫りくるインプを吹き飛ばす。

 

慌てて元の定位置に戻るベルを見ながら、私は苦い顔を隠せずにいた。

今のような叱咤がすでに4回は起きている。初めてパーティを組んだのだから仕方がないし一緒に潜るにつれ連携も整ってくると思う。しかし、ベルの動きにはどこか違和感があった。

 

どことなくベートさんに近いものがあるのだ。いや、ベルとベートさんでは似ても似つかないが。

 

 

仲間を信じていないというか、仲間を頼りにしていないというか。

 

 

決してベルやベートさんが仲間に頼らないと言っているわけじゃない。

ベートさんだって遠征の時や怪物の宴(モンスター・パーティ)が起こった時には、後衛の魔法職の為に時間を稼いだりする……命令によって渋々ではある面がないとは言わないが。

 

でも、今のベルの戦闘はすべてを自分が請け負っているようにも見えた。おそらくそれは、ベルが私たちを守ろうという心からくるものだとは思う。

それでも、ちらつくのだ。遠征の時のように役立たずだった私の後ろ姿が。まるで守るべき、守られるべきものだと言われている気がして。

 

「レフィーヤさん、すいません。大丈夫でしたか?」

 

「ッ……」

 

「お、お二人ともお強いですね!」

 

インプの群れを倒し終わったベルはそんなことを私に言ってきた。私は思わず杖をきつく握りしめる。

リリルカさんは私が杖を握りしめたことに気がついたのか、慌てて話を逸らそうとするが私は構わずにベルを睨みつける。

 

「えっと、レフィーヤさん?」

 

「……どうして」

 

「え?」

 

「どうしてベルは、私を頼ってくれないんですか? 私は守るだけの存在なんですか?」

 

睨んでいた瞳に熱がこもる。

私自身、どうしてこんなに感情的になるのか分からなかった。

 

「私だって戦えます。ベルよりレベルだって高いし、ベルの魔法の先生です」

 

「……」

 

「どうして黙ってるんですかッ! 私、わたし」

 

「うれしかったんです。ベルにすごいって言われたとき」

 

思い出すのはベルが私に魔法を教えてほしいと頼んできたとき。あの時、ベルのまっすぐな瞳が私を救ってくれた。

ごく普通の言葉だったけれど、半ば諦めていた心に火をつけたのは間違いなくベルの言葉だ。

 

「だから、18階層でもリヴェリア様に負けないぐらいの魔法が撃てたと思います」

 

「なのにっ」

 

ぽたぽたと零れる涙に、ベルは黙って私を見ていてくれる。

 

私は、ぽつりとつぶやいた。

 

「悔しいんです」

 

瞬くような速さで強くなっていくベルに追いつけないのが悔しかった。

 

苦しんでいるベルを救えなかったのが悔しかった。

 

守られるだけの存在だと、なによりも自分で(・・・)決めつけていたことが悔しかった。

 

私がスカートを握りしめ、俯きながら嗚咽を堪えているとベルの優しい声が響く。

 

「僕は、大切な家族を失いました」

 

私は顔を上げた。ベルは変わらず私も見つめている。

それは、今まで聞いたことがなかったベルの過去だった。

 

「あの人の手は優しくて、あの人の背中は何よりも大きかった」

 

自分の手を見つめながら笑うベルは酷く寂しそうだった。

 

「ある人は僕の夢を笑ったけれど、それでも僕の夢に賭けてくれた」

 

胸元にある鍵のようなものを触りながら可笑しそうに笑うベル。

 

「そんな人たちに笑われないように、誇れるように、頑張るって決めたんです」

 

もう一度私を見つめるベルの瞳には、ゆるぎない決意が輝いていた。

 

「皆を守る英雄に、僕はなるんです」

 

あぁ、あの時と同じ。まっすぐな瞳。

 

私は握りしめていた手から力を抜くと涙を払う。

 

「あの、レフィーヤさん」

 

先程と打って変わっておどおどとした調子のベルに私は指を突き付けながら宣言する。

 

「だったら私はベルを守る英雄になります!」

 

「ええ!?」

 

「勝手に私を守ったんですから私だって勝手にベルを守ります。ベルも守られる側の気持ちを知ればいいんです」

 

私の言い分に苦笑いを溢すベルに満足した私は、

 

「だからベル。一緒に強くなりましょう?」

 

そう言って手を差し出した。

一瞬キョトンとしたベルは満面の笑みで私の手を握り返した。

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夫婦喧嘩は終わりましたか?」

 

「ふっ!!??」

 

「な!? 何を言ってるんですか!! わ、わたしがべべべべベルとなんてッ!?」

 

リリルカさんの事、すっかり忘れていました。

 

 




ま、まだまだあげるぜぃ

次回は換金を終えて+1週間をダイジェスト的なやつ……かな?


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犬人の一週間

良い題名が思いつかん

今回は殆どリリの視点です


「それではベル様のその槍も魔法によって生み出したものなのですか?」

 

「うん。本当はもっといろんな武器を試したいんだけど何だか癖で、まず槍を出しちゃうようになったんだ」

 

僕はリリルカさんの疑問に肯定いながら槍を霧散させる。此処はダンジョンの1階、既にダンジョンの出入り口が見えてきたので問題ないだろう。

 

「……そうですか。……残念です

 

「え? 何か言ったリリルカさん?」

 

「いえ、それよりもリリの事はリリと呼んでください。それとさん付けも不要です」

 

「でも」

 

「でももへちまもございません!」

 

へちま?

 

「ま、まぁリリル……リリがそう望んでるなら」

 

「えっと、私はリリさんと呼んでもいいですか? 呼び捨てというのがどうにも慣れなくて」

 

「はい。構いませんよ」

 

僕とレフィーヤさんは終始リリに話題を回してもらいながらダンジョンから帰った。

 

 

 

 

 

『17万ヴァリス!!?』

 

ベル様とリリの声がホールに響き渡りました。慌ててリリたちは口を抑えますが顔がにやけるのが止まりません。

ウィリディスさんは流石に平然としていてどこか微笑ましいものを見るような雰囲気になっていました。

 

「すごいです! これもベル様とレフィーヤ様のおかげですね!!」

 

私がいつものように冒険者様を持ち上げるとベル様とウィリディス様は予想外の事を言ってきました。

 

「いえ、リリさんが効率よく魔石を拾ってくれたおかげですよ」

 

「そうだよ! リリのおかげでこんなに稼げたんだ!」

 

一瞬、何を言っているのか理解できませんでした。

リリのおかげ? 何のことでしょうか。……ああ、さては私を持ち上げて気分を良くして報酬は無しという事でしょう。

私は崩れ落ちそうになる仮面をかぶり直しなるべく角が立たないように今日の分け前を要求してみます。まぁ殴り飛ばされて終わりでしょうけど。

 

「え、えっとですね。それで今日の分け前の方を」

 

「ああごめんね。 えっと、はい!」

 

そうしてベル様は3つに分けた袋の内一番大きい(・・・)袋を差し出してきました。

 

「え?」

 

わ、渡す相手を間違えていませんか?

そう思っているとベル様がしまったというような顔をされました。やはり渡し間違えでしょう。

 

「レフィーヤさん。今日はリリに迷惑かけちゃったから大目に渡そうと思ったんですけど、だめですか?」

 

ナニヲイッテイルンデスカ?

 

「まったくベルは」

 

そ、そうですよね! ベル様の独断で

 

「それじゃあベルが一番少ないじゃないですか。私が一番少ないのでいいですよ」

 

は?

 

「は?」

 

「いえ、今日は僕が迷惑をかけたんです。それにレフィーヤさんはわざわざ僕に合わせてもらってるんですから」

 

私は慌てて二人に声をかけます。

 

「い、良いんですか私がこんなに貰って!?」

 

「うん。さっきも言ったけど僕だけじゃこんなに稼げなかったから。だから」

 

ベル様は私にお金の入った袋を手渡しながら、

 

「明日からもよろしくね!」

 

と言って笑った。

 

その笑顔に、私は何も言い返せずに頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

それから一週間、私はベル様とウィリディス様と一緒にダンジョンに潜りました。

潜り始めて数日で、ベル様は大変なバ……お人好しであることが分かりました。

そしてウィリディス様も換金の際や分け前の分配についてはベル様に一任しているようで少々ちょろまかしてもバレません。

 

最初はベル様から金目のものを巻き上げるつもりで近づきましたがこれは飛んだ誤算。既に数十万ヴァリスは稼げています。

 

そして今日も今日とてダンジョン10階層。

初日のベル様の連携は酷い物でしたが最近は随分とウィリディス様との息もあってきました。

 

ベル様が前衛としてモンスターの注意を引きながら、後衛に流れそうなモンスターや危険度の高いモンスターを積極的に倒します。そしてその間にウィリディス様が魔法を詠唱し、タイミングを見計らってベル様の正面へ魔法を叩き込む……これが最近では板になってきました。

 

特にここ数日はベル様の動きが格段に良くなり、ウィルディス様が詠唱している魔法のタイミングを見て、瞬時に後退したりと熟練の冒険者のような動きを見せたりもしています。

 

ただ、少しひやりとするのはベル様が槍以外の武器を使い始めた時です。

素人のリリから見ても槍捌きは中々のもので、一本の槍で複数体のモンスターを相手取れるほどです。

なのにベル様はたまにいきなり武器を捨て、全く別の武器を取り出します。

 

片手剣を持ったと思ったら次の瞬間には大剣、なんてこともありました。

モンスターとの距離感や状況に合わせて、武器をとっかえひっかえするなんて正気の沙汰とは思えません。

それでもうまくいっているということは、それがベル様にあっているという事でしょうか?

……まぁ、毎回ひやひやさせられるこちらの身にもなってほしいものです。

 

「まったく、ベル様のような戦い方を見せられたらこちらの命が幾つあっても足りません」

 

「あはは、ごめんね」

 

「そう言っても聞かないので、私は諦めましたけどね」

 

ウィリディス様、できれば諦めないでほしかったです。私のためにも。

私は換金所前の椅子に座っているウィリディス様にジト目を送りながら、そんなことを私は思いました。

 

「リリさんは、私たちと潜るのにも慣れましたか?」

 

「え? ええ、まぁ」

 

いきなりのウィリディス様からの質問に、私は曖昧な返答しか返せませんでした。

 

「最初はリリさんも暗い顔をしていたんですけど、最近は笑えているようなので良かったです」

 

笑う? 私が?

 

何を言っているんだろうと、言い返したかった。

私は作り笑顔を浮かべながらウィリディス様の方を見る。

 

「私は別に——」

 

「ただいま戻りました。今日は19万ヴァリスですよ! 新記録です!」

 

私の言葉はベル様にかき消され、ウィリディス様に届くことはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

「ほーん。犬人の女の子なぁ」

 

「はい。ベルが連れてきたんですけど、ちょっと様子がおかしくて」

 

ロキファミリアのホームの一室。ファミリアの主神であるロキは子供からの相談に糸目を更に細める形で反応を示す。

 

「そん子のファミリアは?」

 

「ソーマファミリアだそうです」

 

その言葉に、ロキは苦虫を噛み潰したような表情になった。

 

「ソーマかぁ……ソーマかあ」

 

その神に思う所のあるロキは首をがくりと倒す。一方のレフィーヤは訝し気に眉を顰めるだけだ。

 

「ソーマ様の眷属には何かあるんですか?」

 

「んー。ちょーっとな?」

 

「……はぁ。ベルに何もなければいいんですけど」

 

「ふーん。ベルになぁ」

 

「な!!?!? し、失礼しますッ!!!!」

 

ニヤニヤしながらこちらを見つめてくる主神にレフィーヤは顔を真っ赤に染めながら退散する。

その後ろ姿を見つめながら、主神は渦中の少年を思い浮かべるのだった。

 

 

 




次回、英雄の欠片と本


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英雄の欠片と本

大分はっちゃけたぜ☆

そして収まりきらんかった


ダンジョンからの帰り道、リリから明日の探索には来られないと言われた僕は仕方がないと言ったふうに眉を下げた。

 

「そっか。それじゃあリリもなんだ」

 

「も? ウィリディス様も明日は来られないんですか?」

 

リリがこてんと首をかしげる。その様子にレフィーヤさんは苦笑すると申し訳なさそうに話した。

 

「はい。明日は杖の整備にいかないと行けないんです」

 

「そうですか。なら明日はベル様も一日お休みになられたらどうでしょうか」

 

「……うん。そうだね。久しぶりに読書でもしようかな」

 

そんな会話を僕たちはしながら、帰路についた。

 

 

 

 

 

翌朝、いつもと同じように目が覚めてしまった僕は軽いトレーニングの後、街へと繰り出していた。

 

「オラリオにきて大分経つのに、本屋の一つも知らなかったな」

 

そう呟きながら僕は大通りを歩く。

オラリオについて神様の眷属になってからは街の散策なんてしてこなかった僕は、これを気に色々な場所を巡ろうと足を動かした——————はずだったんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助かりましたベルさん♪」

 

「なんで僕がジャガイモの皮むきを!?」

 

あれから街を探索していた僕は、豊穣の女主人の前を通り過ぎようとしたときに困り顔のシルさんと鉢合わせてしまった。

僕を見つけて喜色満面で近づいてくるシルさんに、嫌な予感を感じた僕は逃亡しようとして失敗。厨房の裏手でジャガイモの皮むきをさせられていた。

シルさんはこの前の僕たちが宴で来たとき以降、こうしてジャガイモの皮むきをさせられているらしい。

 

この前の宴で何かあったのかな?

 

涙目で僕を見つめてくるシルさんを突き放すこともできずに、僕が仕方なしにジャガイモの皮むきを進めていると、シルさんも僕の隣に腰を下ろして同じように皮むきを始めた。

 

「あの、ありがとうございます。手伝ってもらっちゃって」

 

「あはは、気にしないでください」

 

僕がそう言って笑うとシルさんもほんのりと頬を染めながらはにかむ。

その顔が余りにも可愛くて、一気に顔が赤くなるのが分かる。僕はパタパタと仰ぎながら話題を逸らそうと必死になった。

 

「ええと、そうだ! シルさん。この辺りに本屋さんってありませんか?」

 

「本屋さんですか?」

 

キョトンとするシルさんに僕は、非番なので久しぶりに読書がしたいと伝えると、両手を合わせて花が咲いたように笑った。

 

「それならいいものがあります! ちょっと待っていてくださいね?」

 

そう言って立ち上がったシルさんはパタパタとホールの方へと駆けていくと、しばらくして両手で抱えるほどの分厚い本を持ってきた。

 

「これ、お客さんが忘れていったものなんです。よかったらどうぞ」

 

「え? 悪いですよそんな」

 

「読んですぐ返してもらえれば大丈夫ですから、ね?」

 

本を盾にこちらを覗き込むようにして上目使いをするシルさんに、僕は頭を掻きながら敵わないなと零す。

 

「すぐにお返しします」

 

「はい。お待ちしています」 

 

それからジャガイモを1かご剥き終えた僕は、シルさんにお礼を言ってホームに戻った。

 

 

 

 

 

ホームに戻ってきた僕は自室に戻ると机のランプに火をつける。オレンジ色の光が部屋を照らし、ベッドに置いた本を明るく照らし出す。

僕はベッドに腰かけるとシルさんから預かった本を手に取った。

 

「えっと、『ゴブリンにもわかる古代魔法』?」

 

はたしてゴブリンにも文字が読めるのだろうか、という疑問は置いておいて、僕はページをめくっていった。

 

 

 

 

『じゃあ、始めようか』

 

真っ白な空間で、何処からともなく聞こえてくる声に、僕は英雄王さんと対話する空間みたいだなと思った。

 

『僕にとっての魔法って何?』

 

御伽噺に出て来るような、不思議なもの。

窮地を脱する一発逆転の手。

 

『僕にとって魔法って?』

 

どんな強敵でも、どれだけ数で負けていても、家族を守るため(・・・・・・)の絶対の力。

どんな時でも使っていいわけじゃない。決して譲れないからこそ輝く光。

 

 

『欲張りだなぁ……でもそれが————』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。これがこの世界の魔導書か? なんとも矮小な」

 

真っ白な空間に響く高飛車な声に、僕は思わず眉を捻り上げた。

 

…………んんん?

 

「ん? ハハハハハ!! なんだその顔は! 我を笑わせようとしたならば大いに成功したぞ?」

 

僕は「どれ、褒美は何がいい?」などと言いながら笑っている英雄王さんを二度見してから目を見開いた。

 

「なんでここにいるんですか!?」

 

「俺の玩具に手を出そうとする神風情がいたのでな」

 

が、玩具……?

 

苛立ちげに顔を歪めた英雄王さんだったが、次の瞬間には髪をかき上げて笑っていた。

 

「だが、それを赦すのも王としての度量よな」

 

度量……なのかなぁ?

 

「何か言ったかベル?」

 

なんでもありません!!

 

「ふん。まあよい」

 

英雄王さんからの流し目に冷や汗を垂らしていると意識がぼんやりとしてきた。

 

「む? もうそんな時間か」

 

僕の様子を見た英雄王さんは露骨に眉を顰めると「やはりこの程度の本では長時間の会話は無理か」と呟いた。

 

どうかしたのだろうか?

 

僕がそんなことを思っている間にも意識は遠のいていき、辺りの景色も見えなくなってくる。

英雄王さんには僕の意識がどういう状況にあるのかわかるようで苦々しい表情になると、

 

「許せとは言わん」

 

と呟いた。

 

どういう意味なのか聞こうとしても、既に僕の意識はそこになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル、ベル。何時まで寝ている」

 

「ぅん……リヴェリアさん?」

 

いつのまにか寝てしまっていたのか、僕は本を抱き枕にして眠っていた。

僕が目元をこすりながら体を起こすと、リヴェリアさんは苦笑しながら僕を小突いてきた。

 

「既に夕飯の時間だ。いったい何を読んでいたんだ?」

 

「ふぁああ。えっと、シルさんから「なぁっ!!!!!??」どどど、どうしたんですか!?」

 

リヴェリアさんのいきなりの叫び声に僕は飛び退きながらそちらを見る。そのリヴェリアさんはというと、僕が読んでいた本を掴みながら目を有らん限りに見開いていた。

 

「べ、ベル。お前これをどこから持ってきた?」

 

「え、えっと......シルさんに」

 

借りました、と言いきる前にリヴェリアさんに腕を捕まれ、引きずられるようにしてつれていかれてしまう。

 

突然の事態に、僕はなにか不味いことをやってしまったのでは、と顔から血の気が引いていった。

 

 

 

 

 

 

「ロキ!!!」

 

バァン!! という音と共にリヴェリアが食堂へと入ってくる。リヴェリアにしては珍しく切羽詰まった顔を隠そうともしないことに、僕は思わず溜め息をついていた。

 

先程から親指が疼くのはリヴェリアに連れてこられた(ベル)が原因かな......。

 

彼が入団してからこういうことには本当に事欠かないね、などと僕が思っている間にも事は進み、リヴェリアはロキの元まで行くと一言、

 

「ベルが魔導書(グリモア)を読んだ」

 

と呟いた。

食堂の空気が凍りつき、団員たち――特に上級冒険者に成ればなるほど――が一斉にベルを凝視する。そして一瞬の静寂のあと絶叫がホームに響き渡った。

 

『はああああ!!!??』

 

「ひぃ!!? ごごご、ごめんなさいぃ!!」

 

「ベル! 一体どこでそんなもの拾ってきたんですか!!」

 

「ティオネー。グリモアってなんだっけ?」

 

「......あんたねぇ」

 

 

本当に、ほんとーに、彼がいると問題が次から次へと......あぁ、今度ロキに胃薬を分けてもらおうかな。

 

他の団員たちも騒然としているなか、天を仰ぎ続けているロキに、リヴェリアの諦めと疲労の混じった声が投げ掛けられた。

 

「ロキ、すまないが今すぐにベルのステイタスを更新してくれ」

 

「......ベルはほんとにおもろいなぁ」

 

「現実から目を背けるな」

 

リヴェリアは空いている手でロキを掴むと、ベルと同じように引きずっていく。

 

そうしてリヴェリアが食堂の入り口から出る寸前、僕の方に視線を飛ばす。その目には「お前も来い」と言いたいのがありありと伝わってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きたくないなぁ。

 

僕はロキと同じように天を見上げ、深い溜め息を溢すのだった。

 

親指の疼きは収まらない。




次回、ベルのステイタス公開!

なんやかんやあってしばらくステイタスを出せていなかったので(話数で見るとそうでもないか?)公開。

レフィーヤたちとパーティを組んでからの成長具合やいかに



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英雄の欠片と新たな魔法?

「ほ、ほな、いくで?」

 

ロキファミリアの主神の部屋では、今まさにベルのステイタスが更新されようとしていた。固唾をのんで見守る団長と副団長の視線にベルは酷く緊張する。

 

ロキはベルの背に馬乗りになると自身の指を切りつけ神の血を一滴たらした。

 

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : C 649

耐久 : C 601

器用 : B 796

俊敏 : C 668

魔力 : S 942

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

・王律鍵 F

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

 詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

英雄の号砲

 神聖特攻宝具

全ステイタス、レベルを魔力に統合

使用後、レベルに応じた王律鍵の一時封印、及びステイタスの一時固定化

 

<詠唱文>

 顕現せよ。今は遥か過去の偉業。時の水面に沈めども願いは劣らず、腐敗せず。民を守るは我が勤め。友を救うは我が願い。顕現せよ、世界を統べし王の残滓よ。

 我求むは他の命、他の未来。血違えども一筋の灯り、絶えることなかれ。来たれ、燃えよ、幾千万の輝きもって敵撃ち滅ぼさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あかん」

 

「なんだこれは」

 

「これは……」

 

三人の声が静かな部屋に響く。

ベルを除く全員がこの魔法に対して思う事があったのか顔を険しいものにした。

 

通常、魔法には詠唱文が存在し、それが長ければ長いほど魔法の効果は強力になっていく。例を言えば今この場にいるリヴェリアがまさにそれだ。

彼女の魔法もかなり珍しく、詠唱を連結させることで多様な効果の魔法を発動させることができる。そんな彼女の詠唱も長文であり、だからこそそれに見合った効果が得られるのだ。

 

そしてベルの魔法は超長文詠唱。威力は未知数だが、そんなことは関係なしに危険だと思わせる文がその後に続いていた。

神ロキはまた別の部分に目が言っているが、フィンとリヴェリアはその文章の内容を吟味していた。

 

「まるでお前のような魔法だな?」

 

「うんまぁ。君の部分も引いているようだけどね」

 

リヴェリアと同じ様な長文詠唱に、フィンと同じようなステイタスの変動。まあフィンの場合は加算であり、ベルの場合は統合ではあるが。

 

自分以外の反応があまり良くないことに、ベルはおずおずとロキに声をかける。

 

「あの、どうして僕に新しい魔法が出たんでしょうか。さっきリヴェリアさんが魔導書って」

 

ベルの言葉にロキは困った様な表情をするとベルを宥めるようにベルの頭を撫でた。

 

「あ~~、それはあんま気にせんでええ。指し向けたやつも大体わかっとんでな」

 

小声で「どうせあの色ボケが原因やろ」と呟くロキにベルは首をかしげた。

 

「そうなんですか?」

 

「おう。だからベルはあんま気負わんといてぇな?」

 

ロキの言葉に何か迷惑をかけたのではと思っていたベルは、とりあえず安堵の息を漏らした。

そんなベルは次に新しく発現した魔法に目を向ける。

その眼には好奇心と興奮がありありと浮かんでおり、ロキとリヴェリアは苦笑するしかなかった。

 

「えっと、これが僕の新しい魔法なんですよね?」

 

「ん~、まぁそうなんやけどな?」

 

「?」

 

歯切れの悪いロキに首をかしげるベル。

そんなベルにフィンは難しい顔をしながら言った。

 

「喜んでいるところすまないが、場合によってその魔法の使用を禁止するかもしれない」

 

「どうしてですか?」

 

眉を顰めてむっとするベルにフィンは苦笑しながら理由を述べる。

 

「色々と不安要素が多すぎてね。君一人で使うと危険すぎる。ベル、明日は僕とリヴェリアと一緒にダンジョンに潜ってもらうよ」

 

フィンからのいきなりの誘いに目を白黒させるベルだったが、続いてフィンが言った理由に納得する。

 

「長文の魔法は威力が高いことが多い。だから問題のないダンジョンで試そうと思うんだ」

 

「はい。わかりました」

 

「よろしい。それじゃあベルは夕食を食べてくるといいよ」

 

「フィンさんたちは行かないんですか?」

 

「僕たちは少し話さないことがあったからね」

 

フィンの言葉にベルは「分かりました」と笑顔で答え部屋を後にした。

 

 

因みにベルはその後食堂で質問攻めにあい、大して夕食を食べれなかったのは蛇足である。




速攻魔法を期待していた人はごめんなさい。

この後の展開的にどうしても必要だったのです。


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英雄の欠片と試射会

なんかタイトルがネタっぽい

今回は長めです。


「……なんですか。この大所帯は」

 

「えっと、ごめんね?」

 

頬を引きつらせピクピクと痙攣するリリに、僕は苦笑交じりの謝罪しかできなかった。

 

なぜリリがこんなふうになっているかというと……はい。僕の後ろにロキファミリアの幹部が勢ぞろいしているからです。

 

僕の後ろにはパーティメンバーのレフィーヤさん以外にも、魔法の確認にとフィンさんにリヴェリアさん。

面白そうだからとティオナさんとティオネさんにガレスさん。

興味があるとアイズさん。そしてなんとベートさんまでもが付き添いとしてついてきていた。

 

皆さん暇なんですか?

 

「ケッ。俺はこんな雑魚に用はねぇよ。ただ行先が一緒だってだけだ」

 

「そんなこと言ってほんとは興味ある癖に」

 

「ア゛ァ゛!? なんだとバカゾネスが!!」

 

「なによ!!」

 

「はぁ。いい加減にせんか」

 

「リリさん。何の連絡もなしにすいません」

 

「い、いえ、リリは構いませんが」

 

未だ喧嘩しているティオナさんたちを横目で見ながら、そういうリリに僕とレフィーヤさんは苦笑しか溢せなかった。

と、フィンさんが徐に前に出るとにっこりと笑いながらリリに手をさしだす。

 

「やぁ。僕はフィンディムナだ。いつもベルたちが世話になっているね」

 

「……いえ。こちらこそ」

 

笑顔のフィンさんにリリも笑顔で手を握る。でもその笑顔は何処か硬かった。

 

「これからも、ベルをよろしく頼むよ?」

 

「はい。勿論です。リリはサポーターですから」

 

二人が笑顔で手を握り合っていると僕の背後からものすごい殺気が放たれた。

僕が慌てて振り返ると、そこには笑顔で全身から黒いオーラを吹き出すティオネさんが……

 

僕はそっと道を開ける。

 

おじいちゃん。笑顔の女性って怖いね。

 

「団長。行きましょうか?」

 

「……そうだね。わかったから、ティオネはその手を離してくれないかな?」

 

フィンさんがそう言っても、ティオネさんはフィンさんの肩に食い込ませた手を離すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「どこで魔法を試すんですか?」

 

ダンジョンに入り、前回と同じように会うモンスター会うモンスタ―が、ティオナさんたちに瞬殺されるのを見ながら僕は隣を歩いているリヴェリアさんに尋ねた。

僕がそう尋ねるとリヴェリアさんは一度思案気に目を瞑る。

 

「そうだな。10階層が妥当だろう。あそこならそこそこの広さがあるし正規ルートから逸れれば他の冒険者の迷惑になる事もないだろう」

 

「分かりました」

 

まぁ僕の出る幕なんてないんだけどね。

リリも案の定ティオナさんたちの無双っぷりに終始目を瞬かせていた。

 

そうこうしているうちに僕たちは10階層まで辿り着き、正規ルートから大分離れたところまでやってきていた。

 

 

「さて、それじゃあベル。あのあたりに向けて魔法を放ってみようか」

 

フィンさんはそう言って遠くの方に見える枯れ木を指さした。

 

「普段から魔法を使っているので問題はないと思うが、魔力制御には気を付けろよ?」

 

「はい。魔力暴発(イグニス・ファトゥス)ですよね?」

 

「そうだ。……レフィーヤも最初は爆発させていたな」

 

何処かからかうようなリヴェリアさんの視線に、目を逸らすレフィーヤさん。

 

「うっ……最近はしませんよ?」

 

何処か気まずそうなレフィーヤさんの雰囲気に、緊張のほぐれた僕は詠唱の準備に入る。

 

狙いはあの木一本だけ。

 

他の人たちが一歩下がった位置で事の行方を見守っているなか、僕は一度深呼吸する。

 

「ふぅ……」

 

初めての詠唱に心をドキドキさせながら、僕は詠唱を始めた。

 

 

『顕現せよ。今は遥か過去の偉業』

 

最初の一説を唱えた瞬間。僕の中で今までに感じたことのない量の魔力が暴れまわる。

身体を突き破って出ようとする魔力を、必死に抑え込みながら詠唱を続けた。

 

『時の水面に沈めども願いは劣らず、腐敗せず。民を守るは我が勤め。友を救うは我が願い』

 

あれく荒れ狂う魔力を制御しながら詠唱していると、僕の身体から光の粒が流れ始め僕の目の前で凝縮しはじめた。

突然のことに驚きながら、なんとか詠唱を続けるとそれはだんだんと形を成し、石板のような、本のような形になった。

 

『顕現せよ、世界を統べし王の残滓よ』

 

石板は僕の手の中に納まり、光の流出は止まったようだ。しかしまだ詠唱は終わらない。

僕は額から汗を垂らしながら続きを紡いでいく。

 

『我求むは他の命、他の未来。血違えども一筋の灯り、絶えることなかれ』

 

突然、ものすごい勢いで魔力が吸いつくされていくのを感じた僕は、高等精神回復特効薬をポーチから取り出し一気に煽る。

消費と回復が拮抗するのを感じながら僕は最期の一節を詠唱した(うたった)

 

『来たれ、燃えよ、幾千万の輝きもって敵撃ち滅ぼさん』

 

直後、視界が白銀に染まり、僕は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠唱を開始した直後は問題なかった。

初めての詠唱でしっかりと魔力を制御できていることには関心したぐらいだ。

 

が、詠唱が進むにつれて私の眉間には大きな皺が刻まれたいった。

 

まずいと思ったのは、ベルが板のようなものを手に取ってから。

そこから、普通ではありえない量の魔力がベルから溢れ始めた。レベル1が持てる魔力を優に超えた魔力の奔流に、魔力暴発が起きるのではとも思ったが、そんな様子でもなかった。

 

溢れ出た魔力は、ベルの背後に普段武器を取り出すときと同じような波紋を幾つも作り出していく。

それも十や二十ではない。百に届きそうなほど無数に広がる波紋に、私は喉を大きく鳴らす。

 

 

ベルの詠唱はいよいよ最期の一節だけとなり、そして————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法は放たれた。

 

 

波紋から放たれた黄金の閃光は、レフィーヤの「ヒュゼレイド・ファラーリカ」を彷彿させながら、只一点フィンが指さした木(・・・・・・・・・)目掛けて飛来した。

 

閃光。そして轟音。

 

10層全体にかかっている濃霧を吹き飛ばし、ダンジョンが軋むほどの揺れを起こしたベルの魔法は”ダンジョンの階層を突き破る”という結果をもって終了した。

 

 

「嘘……」

 

レフィーヤが目を見開きながら信じられないように口元に手を当てる。

リリルカ・アーデは腰を抜かし、フィンは頬に汗を垂らしながら、アイズは目を見開いたまま硬直していた。

あのベートでさえ、今目の前で起こったことから目が離せないでいた。

 

「まさか、ここまでかッ」

 

あのベルが発現させた魔法だ。何かあってもおかしくはないと思っていたが……ここまでとは。

 

私は大穴の前で倒れているベルを抱き起しながら、深い溜息を吐いた。

 

「ベルは?」

 

「ただ気絶しているだけだ。しかし——」

 

「うん。これは僕にも予想外だよ。ロキとも相談だけど、使用は控えさせるべきだね」

 

フィンはそう言って頬を掻きながら「この穴、治るかなぁ」と呟いた。

 

……ここがダンジョンで良かった。でなければホームが消し飛んでいたところだ。

 

「ベルは私が連れて帰ろう。アイズたちはこのまま潜るのだろう?」

 

「え、うん」

 

「いや~、すごかったねえ!」

 

無邪気にはしゃぐティオナに連れられ、11層へと向かうアイズたちを一瞥した後、私は残った3人に目を向ける。

 

「フィンは聞くまでもないが、レフィーヤにリリルカ・アーデの二人はどうするんだ?」

 

「私も戻ります。ベルにも聞きたいことがありますし!」

 

ふんす、と鼻息を荒くしながらそういうレフィーヤに苦笑し、隣に座り込んでいるリリルカ・アーデへと視線を向ければ、彼女も「ベル様たちがお戻りになるなら私も戻ります」と言って立ち上がった。

 

辺りにはモンスターの気配はなく、しばらくこの階層にモンスターが沸くことはない。

私はベルを背負いながら、ダンジョンを出るべく歩き出した。

 

 




ベルの宝具(賢ギル仕様)でした。

ベルのレベル的に威力可笑しいんじゃないの、という意見が出るかもしれませんが、その辺は次回解説されます。(気づく人は気づいてると思います)


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ダンジョンと英雄の欠片と…

 

ロキファミリアのホーム。その主神の部屋は普段の騒動が嘘のように静まり返っていた。

そこにはソファに体を預けるように座るリヴェリアとフィン。対面には空になった酒瓶を片手に硬直したロキが座っていた。

 

先程戻ってきたリヴェリアからもたらされた情報に、頭の処理が追い付かなくなったロキは空瓶を抱きかかえながら再度聞き返す。

 

「…………なんやて?」

 

「ロキ、現実から目を背けないでくれ」

 

「……もっぺん言うてもらってええ?」

 

「ベルが発現した魔法で階層に穴を開け——」

 

「あああああああああああ!?」

 

瓶を放り投げ(フィンがキャッチした)、ソファの枕に顔を突っ込むロキ。

その主神の心を支配しているであろう感情に、二人は同意しながらも話を進めるべく口を開いた。

 

「私やレフィーヤですら階層に穴を開けるのは難しい。不可能ではないだろうが、それはレベル6やレフィーヤのスキルあってこそだ」

 

「だが、ベルはレベル1にしてそれをやってのけた。そのことについてロキなら何か知っているんじゃないかなと思ってね」

 

リヴェリアの言葉を引き継ぐようにしてそう言ったフィンの目には、確信にも近い何かが宿っていた。

フィンと視線を交わすロキ。数秒か、或いは数分の沈黙を破ったのはロキの諦めにも似たため息だった。

 

「心当たりはある。んでも確信は持てん……かった」

 

目を細めながらそう呟いたロキは、立ち上がるとベッド横のタンスから紙を一枚取り出した。

 

「ベルの魔法が階層を破ったのは多分これの所為や。でも納得はできんけどな」

 

意味の分からないことを言いながらロキは机にベルのステイタスが書かれた紙を広げるとある一点を指さした。

 

「神聖特攻宝具……前見た時にも思ったが、これはどういうことなんだい?」

 

フィンの言葉にロキはドカッ、とソファに座りながら答える。

 

「まんまや。宝具の意味は分からんけど神聖特攻。ようは神、あるいはそれに近いもんへの威力補正っちゅうわけやな」

 

「……まさか」

 

先に答えにたどり着いたであろうフィンが顔を上げる。ロキはフィンに頷きながら続ける。

 

「そや。でも可笑しいんや。ダンジョンにこの補正が乗るはずがない(・・・・・・・)んや」

 

何時になく真面目な雰囲気のロキを前に、リヴェリアたちは口を挟むことができない。

 

「確かにダンジョンはあるもんを閉じ込めるためにできたもんや。でもそれは”神なんて”もんやない」

 

「んでもベルが階層に穴を開けれるんはそれぐらいしか説明がつかん。ってことは……」

 

部屋を支配するのは先ほどと同じ静寂。しかし、先ほどとは全く違った緊張が全員に走っていた。

 

「ダンジョンに何かが起きとる。それも、うちらが想像もつかん何かが」

 

生唾を飲み込む音は誰のものだったか。ロキは「18階層でのこともそれが関わっとるんかもしれん」と呟きながら新しい酒瓶へと手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「禁止、ですか……」

 

「すまないね。ただこれはベルの身を案じた決定だというのを理解してほしい」

 

翌日、目を覚ました僕を待っていたのはフィンさんからの『新しく発現した魔法の使用を禁止する』という言葉だった。

昨日魔法を打った僕は精神疲弊(マインド・ダウン)を起こしダンジョンで気絶したらしい。

長文詠唱によって隙が大きく、更に発動後気絶してしまうようではダンジョンでの使用は許可できない、ということだった。

そのことを説明したうえで頭を下げてくるフィンさんに、頭を上げてくださいと僕が言うと、フィンさんはもう一度「すまない」と言って頭を上げた。

 

「フィンさんが謝る事じゃないです。もっと僕が強くなって、魔法を撃っても倒れないようになれば問題ないですよね!」

 

僕がそう笑顔で言うと、フィンさんも笑顔で「その通りだ。そのための協力は惜しまないよ」と言ってくれた。

その後僕はフィンさんと模擬戦をしてからリリの待つ広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強くなるには、どうすればいいのかな」

 

「……ベル様はまだ強くなるつもりなのですか」

 

僕が無意識のうちに呟いた言葉に、リリはげんなりした様子で僕を見つめる。

 

周りの人がどうかは分からないけど、僕は恵まれているんだと思う。

毎日、いろんな人から武器の扱い方を教わって、模擬戦やアドバイスを貰ったりしている。

第一級冒険者であるフィンさんやリヴェリアさんたちにも指導してもらえているのだ。

でも、その人たちに僕は何ができているだろうか。何を返せているだろうか。

 

もっと、もっと強くならなくちゃ。

 

僕は槍を握りしめながら、結局いつもの考えにたどり着いてしまう。

 

「……ベル」

 

レフィーヤさんが何かを呟いたようだったが、その声はモンスターの生まれる音に消され、僕に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「それではベル様、ウィルディス様。お先に失礼します」

 

リリはお金をバックにしまうと、僕たちに頭を下げてからスタスタと去っていった。

 

「それじゃあ僕たちも帰りましょうか」

 

「はい。————ッ! アイズさーん!!」

 

帰路につこうと一歩踏み出したレフィーヤさんは、次の瞬間には僕の視界から消えていた。

薄らと映った残像と後に残った砂埃を追うとレフィーヤさんは、僕らと同じようにダンジョンから帰還したであろうアイズさんと一緒にいた。

 

レフィーヤさん。速すぎない?

 

満面の笑みでアイズさんに話しかけるレフィーヤさんに、僕は苦笑を溢しながら彼女たちの元へと走っていった。

 



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英雄の欠片と剣姫

漸くというか、ベルとアイズとの絡みです

今回は読みにくいと思います。すいません(´・ω・`)


「行くよ」

 

「はい!!」

 

僕が返事をするとほぼ同時に、アイズさんの姿がブレる。

注視していたにもかかわらず、ほとんど捉えられない動きに僕は一瞬気圧されたが、負けるものかと槍を滑らせるように走らせた。

 

 

 

 

 

 

「ベルとレフィーヤも、今から帰るの?」

 

「はい! アイズさんも一緒に帰りましょう!」

 

アイズさんの問いに元気よく頷くレフィーヤさん。

終始興奮状態のレフィーヤさんに引っ張られる形で、僕たちはホームへの帰路についた。

 

 

「あ、そうだ」

 

道中、アイズさんが突然そう零すと僕の方へ首を回した。

 

「えっと、この前の魔法。すごかった、よ?」

 

「あ、えっと、ありがとうございます」

 

第一級冒険者であるアイズさんからの賛辞だったが、今の僕は素直に喜べなかった。

 

「? どうかしたの?」

 

「えっと、アイズさん。実は——――」

 

僕の表情が曇ったことに首をかしげるアイズさん。

そんなアイズさんに、事情を知っているレフィーヤさんが僕を気にしながら事情を説明してくれた。

 

「あの、ベル。ごめんね」

 

「いえ、アイズさんが謝る事じゃないですよ」

 

そう言って笑顔で答えるが、無理をしているのがバレバレで3人の中に気まずい雰囲気が流れてしまう。

レフィーヤさんもオロオロとして、視線を僕とアイズさんで行ったり来たりさせている。

 

そんな雰囲気がしばらく続く……と思ったとき、アイズさんが再び口を開いた。

 

「えっと、強くなりたいの?」

 

「え?」

 

「……戦い方。教えようか? 私、教えるのあまりうまくないけど」

 

アイズさんから言われた言葉を理解するのに、僕は数秒の時間を要した。

突然立ち止まった僕に、アイズさんたちも歩くのを止める。

 

それから数秒後、

 

「ほ、ほんとですか!」

 

「えっと、ベルさえよければ」

 

「よろしくお願いします!!」

 

僕はアイズさんからの提案に飛びついていた。

フィンさんとは違う第一級冒険者。なにかが掴めるかもしれない。

そう直感にも似た何かが僕を突き動かしていた。

僕が衝動のままに頭を下げると、今まで蚊帳の外だったレフィーヤさんが、

 

「ま、待ってください! だったら私も! 私も一緒にお願いします!!」

 

と頬を赤くしながら叫ぶ。

目をぱちくりとさせるアイズさんは、数秒後「うん。いいよ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

アイズさんに稽古をつけてもらうことになったが、今すぐというわけにもいかないので翌日の早朝に三人でやることになった。

 

いつもと同じ時間に目が覚めた僕は訓練場に行き、軽い運動ということで槍を取り出す。

槍を構えた僕は、フィンさんの動きを頭で思い浮かべながら槍を振り始めた。

 

そうこうしていると、訓練場の入り口から近づいてくる人影が薄らと見えた。

月明かりに照らされて金色に輝く髪を靡かせながら、アイズさんは言う。

 

「おはよう」

 

「おはようございます! アイズさん」

 

アイズさんは暫く僕の全身を眺めたあと、ぽつりと呟く。

 

「ベルは早いね」

 

「早い、ですか?」

 

「うん」

 

僕の呟きにアイズさんはこくりと頷く。

 

速い? フィンさんに比べれば全然だと思うんだけどな

 

アイズさんの言葉の意味が分からなかった僕は首をかしげるばかりだ。

と、足早に近づいてくる人影がもう一つ現れた。

レフィーヤさんだ。

 

「遅れてすみません!」

 

「ううん。大丈夫だよ……それじゃあ、始めよっか」

 

そう言ったアイズさんに、僕たちは大きく返事をして頷いた。

 

 

 

 

 

 

「えっと、ベルは普段槍を使うんだよね?」

 

ベルの戦闘スタイルは以前フィンから教わっていたため、確認の意味合いでベルへと尋ねるアイズ。

ベルはその問いに頷きで答え、手元に一本の槍を取り出して見せた。

 

「他にも出せるんですけど、どうしても慣れてる武器が最初に出るので」

 

そう言って笑うベルにコクリと頷き返すアイズ。自身も一般的な武器は使えるようにしているが、やはり自身が愛用している武器種、しいては愛剣の方が数倍も戦いやすいというものだ。

 

しかし一方で多様な武器を使い分ける相手は手ごわいものだということをアイズは理解していた。

団員の中ではティオネが比較的にその傾向がある。場面、相手に応じて多様な武器―——―ティオネの場合投げナイフか肉弾戦かのどちらかが多いが—――—を使いわけ、リーチを自在に変化させる相手というのはとても戦いづらいのだ。

そう言った相手との戦闘では一瞬の油断が致命傷へとつながる。

 

ベルの魔法はその点において、誰よりも脅威であるとアイズは思っていた。

魔法なので精神力に依存する部分は確かに存在するが、逆にいえばそれさえ何とかしてしまえば自分でも対処が難しくなる。

さらに、最近は槍以外の武器も扱えるように模擬戦を繰り返しているようで、全く触ってこなかった武器を数日で、振るえるようになるその成長速度は異様だった。

 

できるならば、どうやればそれほどまでに早く強くなれるのかを知りたい。というのがアイズの心の奥にあった打算なわけだが、ベルやレフィーヤがそのことに気づくはずもない。

 

アイズは訓練場の倉庫に入れてある古びた槍を取り出すとフィンを姿を思い浮かべながら構える。

しかし、普段使わない武器を持ってみても様になるはずがなく、アイズの構えは何とも言えない不格好というか、慣れていない新人感丸出しの格好になってしまった。

 

「……」

 

「……」

 

「……やっぱりやめよう」

 

二人の痛い視線を受けて、アイズは構えを解くと倉庫へ武器を戻しにいく。

戻ってきたアイズは自身の腰から愛剣を鞘ごと抜くと剣本体を遠くへ放り、鞘を構えた。

 

「戦おう。これが多分、一番いいと思う」

 

そう言うとアイズはベルとレフィーヤを軽く威圧する。

 

「「ッッ!」」

 

突然の事だったが、二人は直ぐに体勢を整え、アイズと対峙する。

想像よりも素早い動きに、アイズは軽く目を見張るがすぐに微笑を浮かべた。

 

「行くよ」

 

「はい!!」

 

アイズはレベル1でもぎりぎり視認できる速度でベルたちへ肉薄していった。

 




原作よりも早くアイズとの特訓が始まりました。

次回はアイズとの特訓+リリの変化です


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英雄の欠片と特訓と

新年あけましておめでとうございますm(__)m
今年もよろしくお願いいたします。


全開の投稿から随分と間が空いていましたが私は元気です。
インスピレーションとネタ探しの旅(ネット)に出ておりました。

まぁ、そんなことを言いながら今回のは今まで以上の難産(壊滅的)でしたけどねw



冒険者……それは自分の願いを叶えるための職業だと、私が出会ってきた人たちは皆言いました。

莫大な富を得るため、女性からモテたいから、名誉と自尊心を刺激され敬われる存在になりたいから。

理由は多岐に渡りましたが、そこに想いはなく、ただ漠然と冒険者になれば願いが叶うと思っている人たちばかりでした。

 

冒険者になる人たちは『冒険者』という”言葉”に一種の願望と欲望を押し付けているようです。

そして思い通りにならないことはすべて、冒険者のサポーター(成りそこない)へ。夢を叶えるだけの力がなかった半端ものへと。

 

ステイタスという絶対の壁に守られた彼らにとって、壁の下にいる私は格好の餌……せめてもの救いはこれ以上下がないことでしょうか。

 

サポーターという絶対弱者を作ることで、自分を守る存在。

そんな彼らから身を守るため、私は今日も冒険者をこう呼びます――――冒険者様――――と。

 

 

 

 

 

 

「フゥッ……!!」

 

鞘を滑らせるようにして槍でいなそうとしても、即座に迫る第二第三の刃が僕を襲う。

眼前に飛び散る火花を無視して切り結んでいると、背後で風の流れが変わったのを感じた。

僕は、アイズさんの攻撃を無理矢理弾いて即座に後方へ飛び下がる。

 

すれ違うようにしてアイズさんに接近するのはレフィーヤさんの魔法。二日前よりも詠唱速度が上がっていることに驚きながらも、魔法に追従する形でアイズさんへ肉薄————

 

「ここで気を抜いちゃダメ」

 

する前に、アイズさんの回し蹴りが僕の顎を捉えていた。

 

ダメだッ! 槍じゃ間に合わな——

 

その一撃が当たる瞬間、何かが僕の中で引っかかった気がした。

 

 

 

 

 

アイズは目の前で気絶する少年と、肩で息をするエルフの少女の成長に驚きを隠せないでいた。

 

冒険者になっておよそ数カ月で出来るはずのない動きを、少年は——――ベルはして見せたのだ。

ベルはアイズとの戦闘の最中、常にレフィーヤの位置に気をかけていた。アイズがベルの隙をついてレフィーヤの方へ向かおうとすれば、ベルは透かさずレフィーヤとの間に身体を捻じ込みアイズを引き付ける。

得物一本で、本気でないとはいえアイズの攻撃を自身に向け続けたのだ。

 

一方のレフィーヤも、数日前の彼女とは比べ物にならないほど成長していた。

それは純粋にステイタスが、と言う意味ではない。

彼女の場合、心の在り方。覚悟が違ったのだ。

 

戦闘中、アイズは何度もレフィーヤにリヴェリアの面影を見た。

 

彼女は戦闘中の一度も、詠唱を止めなかった。たとえアイズの剣先が自身に向こうとも、彼女は絶対に詠唱を止めなかった。

その瞳に怯えはなく、前衛(ベル)が必ず攻撃を防いでくれるという信頼の炎が宿っていた。

そして彼女は全霊をもって、最速の詠唱を前衛に届け続けた。

 

それがいかにすごいのかを、少女は理解しているのだろうか?

 

アイズは数日前の彼らを思い出しながら、うっすらと賞賛のほほ笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

「二人とも、随分強くなった、ね」

 

「「ありがとうございます!!」」

 

僕はレフィーヤさんに支えられながら頭を下げる。

 

怪我は回復薬で治ったと思うけど、まだ頭がぐらぐらする。

 

「ベル、部屋まで行きますよ」

 

「ありがとうございます。レフィーヤさん」

 

僕はそのままレフィーヤさんに連れられて自分の部屋にたどり着くと、ベッドに腰かける。

レフィーヤさんに再度お礼を言った僕は倒れるようにしてベッドに仰向けになった。

 

「ふぅ。アイズさん、強いなぁ」

 

今日の戦闘を思い出しながら、しみじみと呟く。

 

アイズさんは本当に強い。今日も防ぐのが精一杯で攻撃できなかった。

 

一つ一つ今日の教訓を思い出していると、最後のあの瞬間のことを思い出す。

あの時、何かが引っかかった。でもそれが何かは分からない。

 

コンコン

 

考え事をしていた時、扉が叩かれた。

僕が首をかしげながらも扉を開けると、そこにはフィンさんが立っていた。

 

「フィンさん?」

 

「やあ。ロキからアイズと模擬戦をしていると聞いてね。近況の方を聞きたくてね」

 

笑顔で片手を上げるフィンさんに、僕は苦笑交じりに話す。

 

 

「その時、何かが引っかかった気がするんですけど、よく分からなくて」

 

正直に打ち明けると、フィンさんは何故か可笑しそうに笑いだした。

 

「ハハハ。いや、すまないね。まさかそこまで進んでいるとは思わなくて」

 

「早く、フィンさんたちに追いつきたいんだけどなぁ」

 

そう、ぽつりと呟いたとき、一瞬だけフィンさんから表情が抜けたことに僕は気がつかなかった。

 

フィンさんはふぅ、と一呼吸おいて口を開いた。

 

「ベルがそこに気がついたのなら、答えはもうすぐそこだと思うよ。ただ、ヒントを上げるなら、君だからこそできることを考えてみるといいかもね」

 

フィンさんはそう言い残してスタスタと部屋を去ってしまう。

残されたのは、不可解なヒントを残されて顔を捻る僕だけだった。

 

 

 




次回、漸くベルの戦闘スタイルが決まる??

ひ、批判は何卒少なめにしてくださいm(__)m
豆腐メンタルなんでふ


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英雄の欠片の答

本当は出すべきじゃなかったのかもしれない。だが、出したかったから出した。後悔はしていない
(`・∀・´)エッヘン!!


次の日、いつもの場所にはアイズさんだけでなく、なぜかフィンさんも一緒に立っていた。

僕とレフィーヤさんが首をかしげると、フィンさんが代表して話し出す。

 

「やあ、おはよう。突然で悪いのだけれど、今日は僕とアイズの二人で君たちの相手をしようと思うんだ」

 

「え!? お二人とですか!!!??」

 

狼狽える僕たちに構うことなく、フィンさんは続ける。

 

「大丈夫。僕は木刀を使うしアイズも鞘だ。それに今回はレフィーヤも使用する魔法に制限はかけない」

 

「そ、そういう問題じゃ」

 

「それに」

 

尚も食い下がろうとするレフィーヤさんに、フィンさんは被せるように僕らの目を見ながら告げた。

 

「二人ならできる。君たちの力は団長として保証するよ」

 

……ずるい。そんなことを言われては断れない。

 

レフィーヤさんも「うぐっ」と呻いたあと、口を開けては閉めてを繰り返している。

僕は一度大きく息をした後、緊張と興奮とが入り交じった表情でレフィーヤさんを見つめる。

 

「レフィーヤさん、やりましょう。大丈夫です。僕がレフィーヤさんを守ります」

 

「っっ……ずるいです。はああああぁぁぁ、分かりました! こうなったらやけです。やれるところまでやってやります!!」

 

何かを呟いたレフィーヤさんは、盛大にため息を吐いた後、気合を入れるように拳を握りながら闘志に燃えた瞳をフィンさんたちに向ける。

フィンさんはそれに対して、微笑みながら頷いた。

 

 

 

 

 

「アイズ、君のタイミングでいいよ」

 

「……ほんとに、ふたりで、するの?」

 

僕の言葉にそう聞き返すアイズの顔には、うっすらとだが憂慮の色が透けていた。

だがそんな彼女に僕は首を振って見せる。

 

「心配ないさ。それに彼らの強さは、君が一番実感しているんじゃないか?」

 

ある種の確信をもって言うと、アイズは数度瞬いた後、微笑む。

 

「……うん」

 

鞘を構えてベルたちを見つめる彼女を見ながら、僕は木刀を抜いた。

 

願わくば、可愛い後輩が自分の可能性に気づきますように————。

 

そんな風に祈りながら。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、行くよ?」

 

ゆっくりと歩いてくるアイズさんに槍の矛先を向けながら、僕はレフィーヤさんにだけ聞えるように声をかける。

 

「レフィーヤさん、僕が精一杯引き付けている間に詠唱お願いします」

 

「はい」

 

レフィーヤさんが詠唱を始めるのと、アイズさんが仕掛けてきたのは同時だった。

 

「ッ!」

 

槍のように鋭い突きに対して、僕は弾くように槍を振るう。

ガァンッ と鈍い音と共に弾かれた鞘は即座に方向を変え、左脇腹へ迫る。

僕はそれを抑えつけるように下へ弾き、半歩前へ。

振り下ろしを体で捻って交わすアイズさんへ更に——

 

「僕を忘れてもらっちゃ困るな」

 

「ッッァグ!?」

 

畳みかけようとして、腹部からの衝撃に数メートルほど吹き飛んだ。なんとか空中で身体を捻り、衝撃を逃がしながら着地すると眼前には木刀が

顎下からの衝撃に意識が明滅するなか、王の財宝を呼び出し、目の前に無作為に放つ。

五つの波紋から投射された武器は僕の目の前にズダダッ、と突き刺さったあと光の粒子となって消えていく。

体勢を立て直したときには目の前からフィンさんは消えていて、代わりにアイズさんの剣戟が迫ってきていた。

 

僕はなんとかアイズさんの攻撃を弾こうと槍を引っ張って、背後からの声に凍り付く。

 

「ダンジョンは狡猾で残酷だ。目の前の相手にばかり気を取られていては、君はパーティメンバーを失うかもしれないよ」

 

「ベル!?」

 

「ッ! ハァ!!」

 

レフィーヤさんの聞いたことがない叫び声に、僕が咄嗟に振った槍は空を切る。

フィンさんは僕の振った槍を、体格を生かして潜り抜けカウンター気味に僕の右手首を跳ね上げた。

 

「ぅぁッ」

 

僕は、手先から肩先まで走る激痛に呻く。

動きを止めた僕に、フィンさんの足払いが容赦なくささる。

 

軽く宙を舞った僕は、背中から叩きつけるようにして地面に転がった。

 

「不愉快だね」

 

苦痛に顔を歪めながら目を開ければ、フィンさんの木刀が僕の喉元に添えられていた。

肝心のフィンさんは……瞳に憤怒を宿らせていた。

 

今まで見たことがないフィンさんの表情に僕が呆然としていると、フィンさんは木刀を構えたまま続ける。

 

「ベル、なぜ君は槍を使っているんだい?」

 

「ぇ?」

 

「なぜ他の武器を使わない? ティオネやラウル、他の団員からも武器の扱いを習っているんだろう? そのうえでなぜ槍にばかり拘る?」

 

「それは…」

 

貴方のようになりたいから。

 

その言葉は出せなかった。それを言ってしまっては、僕は何かを決定的に間違えてしまうと、そう思ってしまったから。

 

言いよどむ僕に、フィンさんは決定的な一言をこぼした。

 

 

「君は何になりたい? 何を成したい? 君の望む先は、”ここ”じゃないだろう?」

 

フィンさんのその言葉に、僕はハッと息を呑む。

 

ここ最近ずっと考えていたこと。アイズさんとの模擬戦の最中に引っかかったこと。

 

そう、ここ最近の僕は、”早く、フィンさんたちに追いつきたい。フィンさんたちのようになりたい” そう思うようになっていたのだ。

 

思わず奥歯を噛み締める僕に、フィンさんは構えを解きながら、何処か楽し気に語りだした。

 

「君は入団試験の時、何と言ったか覚えているかい? 無意識だったのか分からないけど、君はこう言ったんだ。『英雄になりたい』とね」

 

「初めてだったよ。いや、正確には二人目(・・・)かな。英雄を目指して此処(ロキ・ファミリア)に来たのは」

 

頬を掻きながら語るフィンさんは、けれどしっかりとした瞳で僕を見た。

 

「僕には僕の成したいことがある。そして君にも成したいことがあって、ただそれは誰かの摸倣で成せるほど、簡単なことではないだろう?」

 

「僕は僕の持てるもの全てをもって、ここまで這い上がった。だから、僕より高みを目指そうというのなら、そこで止まってはだめだ」

 

 

僕は、いつの間にか驕っていたのかな?

 

フィンさんの努力を軽く見て、同じ武器を使えばいつかはたどり着けると。

あの人に鍵を託されたのだから、僕は凄いのだと。

 

僕は奥歯を噛み締め、腹部の鈍痛を振り払って起き上がる。

 

これで何度目だろうか。

ダンジョンを甘くみて、絶望に打ちのめされた。

家族を守る力が欲しいと渇望し、ちらついた力に呑まれかけた。

そして、自身の可能性に酔った僕は、フィンさんを侮辱した。

 

どうしようも、本当にどうしようもない。

どれほど僕は愚かで、傲慢なんだろうか。

 

立ち上がった僕は、血が滲んだ拳で自身の頬を殴った。

ゴッ という音と口の中に広がる鉄の味にブレていた思考がクリアになる。

 

フィンさんが怒るのも当たり前だ。

僕はフィンさんが築き上げてきたすべてを馬鹿にしたのだから。

 

どうすればいい?

今の僕に何ができる?

 

レベルも足りない。技も、駆け引きも。何もかも——。

 

「ちがう。足りないのはそれじゃないっ」

 

口元の血を拭って前を見据える。アイズさんもフィンさんも僕を待ってくれている。

後ろを振り返れば、杖を握りしめたまま固唾を飲んで見守るレフィーヤさんがいる。

 

まだ、何も失ってない。

まだ、やり直せる。

 

「ふぅぅ。もう一度、お願いしますッ」

 

「うん」

 

「……いい目だね」

 

武器を構え直すフィンさんたち。

 

もう一度チャンスをくれたフィンさんに、答えるために。

 

「『王の財宝』」

 

僕の呟きに、背後に5つの黄金の波紋が浮かび上がる。

それぞれに多様な武器が現れ、警戒するフィンさんたちに僕は告げた。

 

「行きます!」

 

身体を前へ倒すようにして急加速する。

素手で向かってきた僕に対して、フィンさんとアイズさんは一瞬のためらいの後、迎撃に入る。

アイズさんが正面で迎撃の構えをとり、フィンさんが瞬時に背後へ回る。

全く隙のない二人の連携に、僕はそれでも直進し、油断なくこちらを捉えるアイズさんへと一投目を投射する。

 

アイズさんは光速で迫る武器を難なく弾き落とし————次の瞬間、その瞳を驚愕に見開いた。

 

「ッ!?」

 

弾き落としたはずの武器が、その軌道を変えて再度襲い掛かってきたのだ。

 

ジャラジャラと音を立てながら蛇のように軌道を変え、弾かれても即座に反転するソレは、意志を持っているかのようにアイズさんに襲い掛かる。

 

未知の攻撃に不利を悟ったアイズさんは一度引こうとするが、すでに遅い。

 

「ッ!! アイズ! 後ろだ!!」

 

「!!?」

 

アイズさんが一投目に気を取られている間に放っておいた二投目が、”僕の意図を組んで”アイズさんを逃すまいと鎖を何重にも重ね、アイズさんの退路を断った。

 

僕は走りながらアイズさんを一瞥すると、波打つ鎖に飛び掛かる様にして跳躍し空中で反転、鎖を足場にフィンさんに切りかかる!

 

「ッ! まさかこんな隠し玉を持っていたとはね!!」

 

「フィンさんが気づかせてくれたんです! だから僕は、僕の持つ全てであなたに答えます!!」

 

僕は両手に短刀を持ち、三つの波紋から次々と武器を投射させながらフィンさんへと切り結ぶ。

 

打ち合いになったら負ける。同じ土俵に立たせるなッ。数で押し切れ! 後手に回させろ!!

 

切り上げ、袈裟斬り、切り払い。

一手でも手を止めたらやられる!

 

木刀を振るい、飛んでくる武器と僕の剣戟とを的確に受け流し弾きながら、フィンさんは不敵に笑う。

 

「僕にはあの鎖は使わないのかな? それとも二本が限界か。それに、恐らくだけどアレは魔力を消費し続けるんじゃないかなッ!」

 

図星を吐かれたことに、思わず喉の奥から変な声が漏れる。

 

まさかこんな短時間でバレるなんて。

 

コレが、王の財宝の中にあることに気がついたのは魔導書を読んでしばらくしてから。

何気なしに取り出して、遊んでいたその場で気絶したのはまだ記憶に新しい。

 

フィンさんが言うように、この『天の鎖』は伸ばせば伸ばすほど、顕現させている時間の分だけ魔力を消費し続ける。

それも尋常ではない程に。今の僕では持って数十秒――——だからこそ、速攻あるのみ!

 

双剣を、投げナイフの要領で投げつけ、フィンさんが弾いている一瞬の隙に次の武器を取り出し攻め続ける。

 

槍、短刀、盾、曲刀、大剣。

 

今まで習ってきたすべての武器で、最適の攻守を選択し続けろ!

 

「いい攻撃だけどッ、甘い!!」

 

フィンさんは木刀をしならせ、大振りの隙をついて僕の手に打撃を与えた。

痺れる手元から大剣が転がり落ち、武器をなくした僕の顔面に鋭い蹴りが迫る。

今からじゃ避けられない。投射も間に合わない……なら!!

 

僕は身体を捻る様にして滑らせ、強引に腕を割り込ませた。

クロスさせた両腕を貫通して伝わる衝撃に、僕はのけ反りながら数十メートルほど後退した。

 

「グウゥゥッッ!!!」

 

重い身体を引っ張りながら、倒れかけた体を引っ張り直す。

 

明滅する視界の中、フィンさんはなぜか木刀を下ろし、にこやかに僕を見ていた。

 

「ふぅ。少し発破をかけすぎたかな? 大分無理をしてるみたいだね、ベル」

 

「フゥッ、フゥッ。まだ、行けまぁ——」

 

まだいけます。そう言いかけたところで、僕の視界が回った。

ドサッ、と言う音と、僕が空を見上げているのを自覚したのと、どちらが先だったか。

 

「限界みたいだね」

 

そう言ってフィンさんは木刀を腰に刺した。

僕に近づき、右手を差し出すフィンさんに僕は————

 

「僕たちの、勝ちです」

 

彼の右足を掴んだ。

 

「ッ!!?!!!?!?」

 

僕の言葉に笑みを消し、焦った様に背後を見るがもう遅い。

 

僕は前衛、その仕事は敵を引き付け…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後衛の為に時間を稼ぐこと。

 

「今まで散々無視してくれたんです!! 団長とは言え遠慮はしませんから!!!」

 

僕とフィンさんの視線の先では、咲き乱れる薔薇のような魔法陣を、幾重にも展開させたレフィーヤが毅然とした表情で立っていた。

 

「しまっ!! このままだとベルも巻き込むよ!?」

 

焦った様に僕の腕を振り払おうと藻掻きながら、フィンさんは本気で焦ったような声色で叫んだ。

 

でも、

 

「僕には、これがありますから」

 

僕には『王の財宝』がある。

なけなしの魔力を絞って腕以外を覆うように盾を顕現させると、「それはずるいんじゃないかな!?」というフィンさんの叫び声が聞こえた。

 

「使用する魔法に制限をかけなかった団長が悪いんですからね!! 『ヒュゼレイド・ファラーリカ』!!!!」

 

「ッ!!!」

 

盾の隙間から紅蓮の輝きが漏れたあと、とてつもない轟音と共に僕の意識は吹き飛んだ。

 

ただ、最後の一瞬、一陣の風が吹いた気がした。

 

 

 



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英雄の欠片と魔導の担い手

「ッ……そんな」

 

レフィーヤの驚愕と悔しさの混じった声を耳にしながら、フィンは頬に垂れる冷や汗を意識せずにはいられなかった。

 

「危なかった……助かったよ、アイズ」

 

フィンは目の前に立つアイズにそう告げると、半ばから炭化した木刀を手放す。

先のレフィーヤの攻撃、アイズが咄嗟に付与魔法(エアリエル)で迎撃しなければフィンも無傷ではいられなかった。

フィンは幸か不幸か、ベルの精神疲弊(マインドダウン)によって拘束を解かれたアイズによって直撃を免れたのだ。

ただ、それでも完全に防げたわけではなく、結果的にフィンの持つ特注の木刀が消し炭になったが。

 

フィンの言葉に、魔法を解除したアイズは拾った細剣を鞘にしまいながら首を振った。

 

「ううん。私も、ベルの鎖が消えなきゃ動けなかった」

 

あの瞬間、フィンはレフィーヤの存在を忘れていた。いや、ベルに注意を向けすぎていた。

本来指揮官であるはずの自分が、ベルという存在に確かに釘付けになっていたのだ。

そのことを今更ながらに自覚したフィンは、苦々しい想いを飲み込み、嘆息した。

 

「僕もまだまだ、か……後輩の成長は早いものだね」

 

アイズはフィンの言葉に頷きながらも、気絶したまま倒れているベルへと視線を向ける。

 

……あの鎖、本気で振り払ったのにビクともしなかった。

 

少年の今しがた見せた強さと、その未来になんとも言えぬ思いを残しながら、アイズは瞼を閉じた。

いつか少年が自分たちと共に戦う日も、そう遠くないのかもしれない。

 

 

 

 

防がれた。

 

私はその事実に奥歯を噛み締めた。

自分が情けなくてしょうがない。ベルが必死に稼いだ時間を無駄にしてしまったのだから。

 

「レフィーヤ」

 

私が自分を責め立てていると、憧れの人からの声がかかった。

俯いていた顔を上げると、頬を伝って何かが滴り落ちた。どうやら気づかない間に泣いていたらしい。

そんな私の様子に動揺したアイズさんは、瞳を揺らし「え、えっとね」と呟いた。

 

「レフィーヤの、魔法。すごかったよ? 私でも、抑えきれなかったから」

 

「え?」

 

アイズさんの言葉に私は目を見開いて固まる。

 

どうして? だって私の魔法は防がれたはずじゃ…

 

「アイズの言う通りだよ。ほら、こことここ」

 

いつの間にかアイズさんの隣にいた団長の方を見ると、右肩と太もも辺りの衣類が若干焦げてなくなっていた。

 

「レフィーヤ。君の事だからまた自分を卑下していると思うからあえて言うよ。君は誇るべき魔法使い(メイジ)だ。なぜなら君たちは僕たちの”本気を引き出させた”んだから」

 

「うん。私も、全力で防御したよ」

 

フィンさんの言葉に私は目を見開く。

団長の言った言葉が信じられなくて、憧れた存在からの賞賛が嬉しくて。

 

私はふっと足から力が抜け、ぺたんとその場に座り込んでしまう。

何も考えられなくなった頭で、それでも、私は囁く。

 

「……るでしょうか」

 

「……」

 

「私も、ベルや皆の役に、立てるでしょうかっっ!?」

 

小さな囁きは叫びへと変わり、私は不安を先輩へぶつけた。

 

 

ずっと不安だった。私なんかがリヴェリア様の後釜になれるのか。王族の後釜だと言われるのが恐かった。

ずっと嫌だった。ただ守られるだけの私自身が。なんの役にも立たない私自身が。

 

でも、羨ましかった。

どこまでもまっすぐ前を見続けるベルが。

何度でも食らい付くその姿が。

小さな背中で抱えきれないほど大きな夢を追う彼が。

 

とても——――

 

「既に僕らは何度も君に助けられてきたよ。君の魔法のおかげで僕らは窮地を脱してこれる。君がいてくれるからアイズやティオナは安心して前に出れるんだ。それに」

 

そう言って、団長は楽し気に頬を掻いた。

 

「僕らは家族だ。役に立つ立たないじゃない……ベルならそう言うと思うよ」

 

「……ぁ」

 

その言葉が、何故かすとん、と音を立てて自分の中に嵌まるのを感じた。

 

そして、私は笑いをこらえられなかった。

 

「っぷ、あはは。あははははははは!」

 

全く尽きることのない笑いに、涙が止まらなくなる。

暖かな表情で見守る二人に気づかないまま、私は暫く笑い続けた。

 

 

 

 

ふいに、何かが髪の毛に触れる感触で僕の意識は戻ってきた。

 

どうなって、頭の後ろが柔らかい?

 

まだはっきりとしない思考のまま、重い瞼を持ち上げてみる。

 

「あ、起きましたか?」

 

ずれた焦点が定まってくると、僕の視界にはレフィーヤさんの顔が映った…………ものすごく近くに。

 

「ぅわぁッ!? いっつぅ!!??」

 

「あわわ、動かないでください! 精神疲弊で倒れたばかりなんですから」

 

慌てて飛び退こうとするも、酷い頭痛とレフィーヤさんの拘束によって僕は起きた時と同じ体制に戻されてしまった。

 

え? え? え? 何これどうなったの僕どうしたのなんで膝枕!!?!?!!?

 

頭の先まで一気に血が上る。

意識が沸騰し顔中から蒸気を吹き出す。

 

突然の出来事に、僕が錯乱しているとレフィーヤさんの細い指が僕の髪に触れた。

妙に艶っぽい笑みを浮かべ、髪を弄るようにして遊ぶレフィーヤさんに、僕は上ずった声色で呼び掛ける。

 

「あ、あの、れ、レフィーヤさん?」

 

「ふふふ、ベルの髪、ふさふさですね」

 

「あぅあぅぅ・・・そ、そう言えばフィンさんたちとの模擬戦はどうなりましたか?」

 

なんとか羞恥心を紛らわせるために話を逸らすと、レフィーヤさんは満面の笑みで言った。

 

「負けました」

 

「え」

 

あまりにもきっぱりと、清々しく言うものだから変な声が漏れてしまう。

 

「かすり傷もつけられなかったです。ベルも倒れてしまうし、私は魔法を撃った後で役立たずでしたから」

 

「うっ」

 

「だから」

 

そこで言葉を切ったレフィーヤさんは、朗らかな、それでいて熱い闘志を燃やした瞳で僕を見た。

 

「一緒に、強くなりましょう?」

 

団長たちをぎゃふんと言わせてやるんです! そう宣言するレフィーヤさんの顔は何処までも前を見つめていた。

だから、

 

「はい!」

 

僕も力強く頷いたのだった。

 

 




次回からリリとの話が動き出します。

べ、別にリリの事を忘れてたわけじゃないよ?


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亜久里を蝕むは貪色の瞳

前半はベルのステイタス更新。後半はリリ視点です。


「神様、ステイタスの更新、お願いします」

 

「ベルの後は私もお願いします!」

 

「かまへんけど、二人ともどしたん? 傷だらけやんか」

 

回復薬のおかげで楽になった僕たちは、その足で神様の部屋へと訪れていた。

ただ、回復薬によって体力と精神は回復しても防具のダメージまで消すことはできない。

ボロボロの僕たちを訝し気に見つめていた神様だったが、僕らが二人して苦笑いを浮かべたのを見て「まあええけど、ちゃんと新調しときいや」とだけ呟いてベッドへと僕を促した。

 

「ほな、まずはベルから行こうか」

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : B 707

耐久 : A 844

器用 : A 879

俊敏 : B 738

魔力 : SS 1072

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正

 

・王律鍵 E

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

 詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

英雄の号砲

 神聖特攻宝具

全ステイタス、レベルを魔力に統合

使用後、レベルに応じた王律鍵の一時封印、及びステイタスの一時固定化

<詠唱文>

 顕現せよ。今は遥か過去の偉業。時の水面に沈めども願いは劣らず、腐敗せず。民を守るは我が勤め。友を救うは我が願い。顕現せよ、世界を統べし王の残滓よ。

 我求むは他の命、他の未来。血違えども一筋の灯り、絶えることなかれ。来たれ、燃えよ、幾千万の輝きもって敵、撃ち滅ぼさん。

 

 

 

 

「……トータル500オーバー」

 

あ、相変わらず狂っとる。

 

「? 何か言いましたか?」

 

「な、何も言ってないで。ほい、これが今回の奴やな」

 

どないな無茶したんか聞きたいのはやまやまなんやけど。

 

目の前で無邪気に喜ぶ眷属に、うちは肩を竦めるのに留め、それ以上の詮索を止めた。

 

家族の成長を喜ぶことはあっても訝しむもんやないわな。

 

「ほな、次はレフィーヤたん行こか」

 

「はい! お願いします」

 

「あ、じゃあ僕は先に食堂に行ってます!!」

 

ひゅっ、と扉から外へ飛び出していくベルを横目に、うちは次の眷属のステイタスを更新する作業に移った。

 

 

 

 

 

「……今日はベル様たち、遅いですね」

 

ほとんど無意識の呟きに、私は次の瞬間にはハッとし首を振った。

 

所詮はあの人たちも冒険者。自尊心ばかりの高い屑です。だからあの人も他の人のように————。

そこまで考えたところで、脳裏に映るのは白髪の少年と山吹色の少女の笑みだった。

 

「よう、アーデ」

 

「ッ……カヌゥ、さん」

 

私に影を落とすように現れたのは、やっぱり冒険者。彼らは私を囲うように佇みながら、まるでゴミを見つめるように私を見ていた。

 

「お前、最近ロキファミリアの奴らとつるんでるんだってなぁ。良いご身分だぜ、俺たちが必死こいて金稼いでいる間に、お前は甘い汁すすって楽しやがってなぁ?」

 

ずいっと顔を寄せ、ニタァ、と笑う冒険者はまるで死神のようにその鎌を肩へと這わせた。

 

「その金、俺たちにくれや?」

 

「こ、このお金は——」

 

必死に抗おうとする私に、死神の鎌はズズッと這い上がり、首筋を撫でる。

 

「俺は知ってるんだぜぇ? お前がいろんな冒険者から金品をくすねてるのをよぉ? その事実を知ったら、あのロキファミリアの冒険者たちはどんな反応をするのかねぇ?」

 

「ッッ……やめて! わ、分かりました。私の持ってるお金はあげますから……だから」

 

この時の私は、お金を失う事よりも、首筋に当てられたナイフよりも——————彼らに嫌われることを恐れた。なぜだかわからない。でも、彼らから軽蔑の目を向けられるのが堪らなく嫌だった。

自分でもわからない内に私は首元にかけた鍵を取り出し、彼等へ渡す。

 

「の、ノームの隠し金庫の鍵です。中に換金した宝石が入ってます」

 

私がそう呟くと冒険者は下卑た笑みを浮かべたまま鍵を奪い取り、嗤った。

 

「まだ、あるんだろ?」

 

「え」

 

「ロキファミリアと一緒にいて、これだけなわけないもんなぁ?」

 

「こ、これだけです! リリが持っているお金はこれで全部です!!」

 

悲鳴交じりに叫べば、冒険者は数秒私を見下ろした後、肩を竦めた。

 

「なら仕方ねえか。アーデ、ちょいと手伝えや」

 

「な、なにを」

 

「なあに、ちょいとお前の稼ぎを良くしてやるだけだよ」

 

怯える私を、冒険者は淀んだ瞳で見つめる。何処までも沈んでいくような光のない瞳に、私はずるずると引き摺られるように路地へと連れていかれた。

 

 




カヌゥさんがとんでもない悪人に見えてしまう。
まあ事実救いようのないやつだとは思っていますが。


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女神の思惑とギルド職員の思い

今回は(も)短め。




「あぁぁ、いいわぁ」

 

ダンジョンの上に鎮座する白亜の塔。その最上階で、美の女神は甘いため息を溢す。

細い陶器のような指を唇で噛み、火照った身体を上下させる彼女の姿は、妖美で儚く、肉食獣のように獰猛だった。

そんな、見た者すべてを虜にしてしまいそうな彼女は疼く身体を抱きしめながら目の前の光景に酔いしれていた。

 

「どこまでも透き通りそうな……それでいて内に燃える黄金の炎。あぁ、好い色……この手で抱きしめられたらどれほどのものかしら?」

 

「あなた様が望めば、直ぐにでも」

 

そんな彼女に声をかけるのは、彼女の背後に佇む猪人。かの女神の眷属であり、オラリオ最強の座を有するLv7冒険者——「猛者(おうじゃ)」オッタル。

自らの至高の存在の呟きを拾ったオッタルは、その望みを叶えるために動き出すがそれに女神は待ったをかける。

 

「今はやめておくわ。もっとあの子が輝くのを見ていたいもの……ただ」

 

一旦そこで言葉を切った女神は、己が眷属を見つめながら含みのある笑みを浮かべた。

 

「ほんの少し、ほんの少しだけ淀みがあるのだけれど……」

 

女神の呟きに、オッタルはしばらくの沈黙の後、歴然とした口調で断定した。

 

「冒険しないものに、殻を破ることなどできますまい」

 

「ふふふ、妬けちゃうわ。貴方の方があの子の事、詳しいんだもの……貴方に任せるわ」

 

「……御意」

 

オッタルは深々と腰を折ると、女神の護衛を他の眷属へと任せ、ダンジョンへと潜っていった。

 

 

 

 

古びた店内に少し埃の被った商品棚。骨董品から使い道の分からない小道具まで、様々な品が並ぶ店内で、私は目の前の棚を凝視する赤髪の女性に声をかけた。

 

「神ロキ、お話があります」

 

「うん? ギルドんとこのエルフのねーちゃんやん。急にどないしたん?」

 

ギルドの用事で訪れた雑貨店。そこでベル君の主神である神ロキと遭遇した私は、気づいたときにはそう声をかけていた。

 

神ロキはそんな私を見ると、「まさかとか言わんよなぁ。うち悪いことなんかしとらへんで?」と大げさにおどけて見せながら、糸目を細めた。

まるで、内心を見透かさんとするような目に思わずたじろいでしまうが直ぐに頭を振り、ベル君のためだと、私は思い切って話を切り出す。

 

「ベル・クラネル氏のサポーターについてです」

 

そう言った瞬間、神ロキの目が変わった。飄々とした雰囲気が消え、より一層研ぎ澄まされた視線が私を射抜く。

数秒か数十秒か。しばらく私を見続けた神ロキは、ふっと力を抜いて先ほどまでと同じ笑みを浮かべた。

 

「ほーん。……自分、この後時間あるんか?」

 

「へ? え、あ、はい」

 

突如として変わる雰囲気に戸惑い、遅れて返事をすると、神ロキは「ほな行こか!」と歩き出してしまう。

……なんだか、変わった女神様だな。

ふらふらと動くさまは無害そうで、でも瞳に宿る光はどこか鋭く。パラパラと変わる雰囲気と表情はまさに道化師のそれ。

そんなことを思いながら、私は先を女神の後へついていった。

 

この神だからこそ、ロキ・ファミリアはここまで大きくなったのだろう。そんな、ある種尊敬にも似た感情が私の中で沸き立ち————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、リヴェリア様の脚にしがみつく彼女を見てその思いは砂の城のように消えていった。

 





最近ルータを買い替えたんですが、それからというものネットが繋がったり切れたりが毎時間あって描いた作品が度々消えるという事態が多発。
モチベだだ下がり状態なので更新速度はかなり遅くなると思います。(今更か)

ルータ、変えた方がいいんですかね?
流石に数千文字が消えた時は一週間触らなかったですはい。

言い訳やめい




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