テルカ・リュミレースで俺が天に立つ (夜なべ)
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テルカ・リュミレースで俺が天に立つ

 俺の名前はヴィルベルト・フリソス・ヒュラッセイン。テルカ・リュミレースは帝都ザーフィアスに住まう皇族だ。歳は原作開始直前の現在、19。ヨーデルは従兄弟、エステリーゼは親戚。転生者である。

 転生した経緯については、何も特別なことはない。本当に。いきなりポンと、気づいたらこの世界で生まれていたわけである。

前世はただのオタクの日本人であったが、そのおかげでこの世界がどこかすぐに把握できたのは幸いだったのか、はたまた頭を抱えることになり不幸だったのか……まあそれも今となっては些細なことだなと思う。

 

 さて、テルカ・リュミレースと聞いて早々にヴェスペリアやないかい! と気づいた俺だったが、このゲームに関しては、「『正義』を貫き通すRPG」というだけあって、ままならないなぁ……と思った記憶がある。正義ってのは人の数だけあって、これと決められるもんでもない、と俺は思っている。ジョジョ7部だってそんな感じだったろ? 大統領だって自分の思う正義を貫いてああなったのだ。ただしジョジョ世界観では、自分の目的のために他人を利用するのは許されず、それはどのような理由があれど『悪』なので、大統領は負けてしまったというわけだ。多分。とまあ、自分の中で心に残っていた正義についての価値観? がジョジョのものだったのでこんな話をしてしまったが、これに基づくと、やっぱりユーリは簡単に『悪』と呼べる人じゃあないな。漆黒の意思持ちってことだ。うん。あれ、考えてみたらギルドって法から外れた人たちが作るものだし、裏社会的なものか。ギャング? え、じゃあユーリだってパッショーネのギャングくらいの気概を持ってれば……やっぱり覚悟か? 覚悟の問題なのか? 「始末しようとしてるんだから、逆に始末されるかもしれない」って覚悟をすべきなんだけど、そもそも……

 

 閑話休題。

 

 つまり、この世界において政治が腐敗していることがまず問題なのだ。法が権力に屈しており、正常に機能していない。ユーリだって、まあ物語の根本から変わってしまうけれども、ラゴウやキュモールが法に基づいて正しく処罰されれば、自ら手をかけることもなかったはずだ。ギャングがシマの治安を先陣切って守らなくていいのと一緒だな。いつから帝国が正常だと錯覚していた? って感じにはなるんだが、ずいぶん前から帝国上層部には貴族主義的問題などがあったようだし、大きなきっかけとしては人魔戦争……人魔戦争がなあ……。あれが色々いかんかった。いや仕方ないことではあるし、俺なんかがどうにか出来るようなものじゃないんだけど。しっかし、昔から皇族何をしてたんだよ? って感じの無能っぷりだ。先帝陛下の記憶も先帝の弟殿下の記憶も朧げだけど、弟殿は冒険王って呼ばれてたくらいだし、なんならむしろ先帝陛下より良い評判聞いたんだけどな。

 とりあえず俺は、皇族、つまり国のトップに生まれてしまったからには、責任てものを果たさなければならんと考えているわけです。エアルの問題とかいずれ来る星喰みとか、世界全体の危機については主人公組に任せる。ていうか、主人公達でしかどうしようもねえ! まず国だ国。政治の方。そっちの危機は俺がなんとかしなくっちゃあいけないものだ。ユーリやフレンたち、帝国の民に「何とかしなくては」と思わせるんじゃあ駄目だ、民主国家じゃあないんだ。君主制なら、君主がきちっと治めなくてはいけないのだ、そういう制度だ。実は俺の髪色と瞳色が、満月の子ほどとはいかずともほんの少しだけ近いのでエアル問題と無関係とはいかないんだが、まあ置いておくのだ。世界レベルの問題の前に国レベルの、しかも自国の行政レベルの問題を何とかせねばなるまい。

 そして考えついたのが、腐敗している政治家を俺のとこでまとめて、俺ごとばっさり切り捨ててもらう方法だ。負の連鎖を断ち切るわけだな。ゼロレクイエムもどきと言うと分かりやすいのか? 他で言うなら、「銀英伝」でラインハルトが行ったように、真っ向からの貴族との対立、みたいな構図にしたいと思っている。ヴェスペリア原作じゃ、ヨーデルとエステルで十分やっていけてたみたいだし、俺の出る幕無さそうだからなあ。掃除くらいは手伝ってやらんと……。

 となると、悪役にならねばいかん。どう出たら良いんだ? とうんうんしばらく悩んだが、普通にアレクセイの仲間になるのが手っ取り早そうだ。個人的には大統領のことも尊敬してるしあんな感じも考えてはいるんだが。『正義』を貫き通すRPG、だからな。負け確だからそこはどうでもいいし。

 で、悪役になると決めたからには言ってみたい台詞がある。

 そう、あれだ。藍染様が眼鏡グシャーしたやつ。こんな時じゃないと一生言えない!! 主人公たちの目の前で、カリスマオーラとラスボスオーラ増し増しで決めてみたいのだ!! 秘奥義だって藍染様リスペクトでアレにしてしまったくらいだ。アレを再現するために術式これでもかってくらいめっちゃ勉強した、魔導器研究所にまで行ってしまった。あ、錯覚する方ではないぞ。あれは再現が難しすぎた。あと秘奥義にするにはインパクトがね……。あれだよあれ、詠唱がオサレなやつだ。演出工夫すれば詠唱破棄もどきもできる、完璧だ……。結局今世は死に向かって突っ走るような人生になってしまいそうだから、これくらいの楽しみがなきゃモチベーションが保てないんだよ。よし、藍染様ムーヴで大統領みたいになってやるぞ。

 さて、そうと決まればまずは何をするべきか? シナリオの流れから考えた。

 星喰みはこれは仕方ない、主人公達に倒して貰わねばならないので、呼び戻すことは確定だ。封印してたっていつそれが破れるかは分からんのだ。エアルの均衡が崩れてる現在ならなおさら。

 ということは、ザウデは起動しなきゃならんし、主人公たちにも旅をしてもらわなきゃならん。ここは介入してはならないところだ。

 ではその前だ。ザウデが起動する前の山場といえば、VSアレクセイだろう。あーそうかアレクセイ、アレクセイもこの腐敗した政治の被害者ではあるんだな……。だけどもザウデは起動してもらわないといかん、それにはどうしてもアレクセイが必要だ……。…………なるほど、ここだな。アレクセイに協力すればいい。『世界を共に手に入れたいと願う同志』になれば、その流れでラゴウやらキュモール等、腐敗した上層部の人間を叩ける。俺は満月の子の力も少しはあるから、実験台にでもすればいい、取引だ。それに上手く俺が手を回せば、ユーリが自ら手を汚さずに済むかもしれない。あと、アレクセイもなんか……とてもしんどい人だから、出来れば少しでも力になってやりたいんだけど。そこは追い追い考えていくしかないな。

 そして最後、俺が法によって裁かれれば、全て完了だ。

 あとは原作通りヨーデルやエステリーゼ、フレンに任せればいい。それが政に関わるあいつらの役目でもある。 

 

 と、いうわけで。

 

 目標、私が天に立つ。

 その後さっさと法によって裁かれて、帝国が少しでも是正する手助けになれたら良いなぁ、と思うのであった。

 

「ヴィルベルト、随分長い間考え込んでいましたね?」

「ああうん、今後について少しな……それにしたって」

「はい。揺れからして船だとは思うのですが……ラゴウもまさかこんな手に出るとは」

 

 そして。

 まずはカプワノールで誘拐された俺とヨーデルを、主人公組が助けに来てくれるのを待つしかない状況なのであった。

 

 アレクセイに協力し、しばらくはヨーデルの監視をしておくよ──なんて言ってこんなことになるとは。俺のマヌケがァーーーッ!!!!

 



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