将棋の世界に身をおく俺がいるのはまちがっている。 (Sオメガ)
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1話

初投稿です。
何かと至らぬ点がございますが、よろしくお願いいたします。
誤字脱字、文の間違い等を指摘して貰えたら嬉しいです。




「弟子にしてください!!!」

 

目の前の彼女は綺麗なお辞儀をきめた。

本当に美しい。彼女ほどの美人がお辞儀をすると普通の人間とはここまで違うのかと

思い知らされた。

ただ腰を90度に折りながら手を出して言うのはやめて欲しい。

だって告白してるように見えちゃうじゃん?

いや、ね?俺だって男の子だからこんな美人さんに告白されたら嬉しいよ?うん。

でもね、こんな公衆の面前ってないと思うんだー

ほらー。美人さんがこんなことするから注目集めちゃってるよ。

うん。何でこうなったのだろう。

一回振り返ってみよう。

……

………

 

桜が咲き乱れ、春の気持ちの良いポカポカとした太陽の光で思わずウトウトしてしまいそうになる。そんなある日、俺は国語教師である平塚先生に呼び出されていた。

 

「比企谷…君が呼び出された理由は何故だかわかるかね?」

 

「いえ…分かりかねますが」

 

「じゃあこれを読んでみたまえ」

 

『高校生活を振り返って』

俺の高校生活の殆どは将棋である。

          比企谷 八幡

 

 

「何か問題でも?」

 

「何か問題でも?じゃない!!!逆に何故これに問題がないと思える!?」

 

「そこに書いたように将棋が全てなんで書くことがないんですよ」

 

「じゃあその将棋について書けば良いじゃないか。確かに君はプロでしかも史上五人目の中学生プロ棋士だ。

仕事も忙しいのだろう。君はあれか?将棋界にも友達がいなく、思いでもないのか?」

 

「友達と言えるのかは分かりませんが、仲良くさせてもらっている人達は何人かいますよ」

 

「じゃあその人達との事を書いてこい。再提出だ」

 

「分かりました」

 

 

「全く関係ない話なのだが、君は学校に友達はいるか?」

 

「……いませんが……」

 

「そこで提案なのだが、学校でも友達と言える存在は作るべきだ。だから比企谷、私が顧問をしている部活に入らないか?」

 

「確かにそうですが、生憎俺は仕事があるんで…」

 

「ああ。勿論そこについては分かっている。比企谷が仕事の日には休んで良いし、部活中の勉強も許可しよう。

パソコンが必要なら持ってきても良い。それに内申的にもプラスになるぞ。君は仕事上学校を欠席することが多いのだから重要だろう?」

 

「取り敢えず今日は仮入部で、実際行ってみて決めます」

 

そうだ。ここであんな事を言わずに帰っていれば…

まあ、もう少し考えてみよう。

 

「そうかそうか!では、ついてきたまえ」

 

平塚先生と共に職員室を出て、その部活へと行く。

 

「所で、どんな部活なんですか?」

 

「行ってみてからのお楽しみだ」

 

そして部室と思われる部屋に着いた。

平塚先生がドアを開ける。あの人ノックもせずに開けやがった。

 

「先生、ドアを開ける時はノックを、と言ったはずですが」

 

「まあまあ、気にするな雪ノ下」

 

雪ノ下?ということは雪ノ下雪乃かよ。あの自称才色兼備の完璧美少女かよ。

スッゲー冷たそうだなー。

とか思っていたが、

 

「雪ノ下、今日は入部希望者を連れてきた。入って来てくれ」

 

「先生、おれは入部希望者じゃなくて仮入部しにきたんです。今日行ってみて決めるって言ったじゃないですか」

 

「まあまあ、細かいことは気にするな」

 

全然細かくないと思うんだけどなー

 

「ひっひっひっひらつか先生…そっそこにいっいららっしゃるのはもっももしかしてひっひ比企谷ろっろ六段ですか?」

 

「ん?君は比企谷の事を知っているのか?雪ノ下、君のいう通りここにいるのは史上最年少プロ棋士にしてB級2組の比企谷 八幡六段だ」

 

「わっ分かりました。比企谷 六段歓迎します」

 

「よし、自己紹介も終わったことだし私はもういこう!」

いや、平塚先生…なんで俺の事を一人にしたんですか?まずあっちの名前聞いてませんよ?

 

「比企谷 六段はやめてくれ。なんかムズムズする」

 

「では………比企谷先生?」

 

「普通に比企谷で良いし、敬語もやめてくれ」

 

「分かったわ。それで比企谷君。突然なのだけれどサインを貰えないかしら!」

 

「えっ!?俺のか?」

 

「そうに決まっているじゃない?」

 

「んじゃあ、明日で良いか?今日、会館で書いてくるから」

 

「ありがとう。とっっっっっても嬉しいわ」

 

次の日に渡した扇子を泣いて喜んでたなー

 

ここから今日まで繋がったんだよなー。

その日からアホの子がきてクッキーの焼き方聞きにきたり、そのアホの子こと由比ヶ浜 結衣が部員になったり。

 

それで今日、その由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いにららぽに雪ノ下と行ってみれば。

 

「あっれー?雪乃ちゃん?」

 

 どこかから声が聞こえてきた

 

「あ、やっぱり雪乃ちゃんだぁ!」

 

「姉さん⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「こんな所でどうしたの?───あ、デートか!デートだなっ!このこのっ‼︎うりうり」

 

「ねぇねぇ、雪乃ちゃんの彼氏?」

 

「違うわ。同級生よ」

 

「まったまたぁ!照れなくてもいいのにっ!」

 

「照れてないわよ!それに姉さんも知っている人物よ」

 

「ん?誰々?」

 

「はじめまして、比企谷 八幡です」

 

「ゆっゆっゆ雪乃ちっちちゃん。ひっひひきがや六段!?」

 

「落ち着きなさい。姉さん」

スーーフー

 

「雪乃ちゃんが前見せびらかしてきた比企谷 六段のサイン扇子って本人から貰ってたんだーうらやましい」

 

「姉さんも貰えば良いじゃない?」

 

「うん。そうだね。でもまず、弟子にしてください!」

 

 

俺のサイン扇子がそんなに彼女ら姉妹にとって価値があるということに驚いたが

でも嬉しいものだな。人にとって自分の何かが価値のあるものだと。

たっだねー弟子?なんの弟子だろう?

う~ん。腐り目?いや、腐った魚の目?

悲しくなってきた。

あっあれか?習字か?

 

 

 

 

 




皆さん、メリークリスマス


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2話

いや~まあでも分かるんですよね?

 

俺の事知っててサインで羨ましがる、んで弟子入り志願。

 

まあ将棋ですね。将棋。

 

でもなーよく分からん。俺みたいな若造よりももっとなんか島田さんみたいなねー好い人

 

がいると思うだよね。

 

二階堂とかも、いや、弟子じゃないのか。

 

じゃあ柳原さんとか、いや、セクハラしそう。うん。わかんないけど。

 

女流棋士の先生とか…でも俺避けられてるんだよなー女流棋士と顔を合わせると顔を赤くしてどっか行くしさ。

 

ハア止めよ。悲しくなる。

 

幸田さんだ!幸田さん!

 

桐山の事を育てた人だし。うん。そうしよう。さっそく桐山に電話しなければ!

 

「比企谷六段ーどうしたんですか?」

 

「ええっと…たぶん自分より歳上ですよね?タメ口で良いですよ?それとお名前は…」

 

 

 

「じゃあお言葉に甘えてタメ口にさせてもらうね?それとゴメンね。いきなり弟子にしてください、はないよね?ええっとなんとなく分かっただろうけど、雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃です」

 

「さっきの口ぶりからすると知っていると思いますが、比企谷 八幡です」

 

比企谷はそれなりに有名だが、それは眼鏡をしている姿で、眼鏡をしていなければ誰だか分からない。たまにサインを頼まれることはあるが、それもおじさんばかり。

そのなかで比企谷に一度で気づいた姉妹はさすがと言えよう。

比企谷を初見で見分けられるのは純粋な将棋ファンか比企谷ファンだけだ。

比企谷は知らないが、比企谷 八幡ファンクラブも存在している。数も多く、比企谷グッズを買い集めてるような人間ばかりである。将棋界で一番連盟に貢献しているのは比企谷じゃないか?とうわさされるほどだ。

この姉妹は両方で比企谷ファンであり、将棋ファンだ。

姉は好きで女流棋士を目指し、つい先日その栄光を勝ち取った。

実は言うと彼女らの母も比企谷ファンであり、彼女らの父親が比企谷に嫉妬するくらいファンである

 

「ここは目立つのでどこか入りませんか?」

 

「分かったよ」

 

「私も行って良いかしら?」

 

「ああ。お前は雪ノ下さんの身内だろう?」

 

「そうね」

 

もちろん向かった場所はサイゼである。

比企谷のもっともよく行く店だ。

比企谷の場合良く行きすぎるせいで店員も比企谷の事を覚えていて、いつもの、と頼めば分かってしまうくらいだ

そして比企谷が行った店の店長が将棋ファンのため、比企谷のサインが飾ってある。

そんな場所で会談は行われた。

 

「ええっと…雪ノ下さんは俺に将棋の師匠になって欲しいということで良いですか?」

 

「うん!」

 

「ええっと何でか教えてもらって良いですか?」

 

「この間研修会でB2に上がったの。だから師匠を探してて…」

 

「分かりました。それならば、幸田さんとかどうですか?桐山を鍛えた人なんで指導力はあると思いますよ」

 

「一応、島田さんとかも紹介出来るんですけど、たぶん断られますし」

 

「ちちょっと待って!!!比企谷君が教えてくれるんじゃないの!?」

 

「いや、俺たいしたことなですし。コミュ症なんで…」

 

「まず、私たちとこれだけ話せてる時点でコミュ症ではないと思うわよ?」

 

「雪乃ちゃんのいうとおりだよ!私たちと話せてるんだから!!!」

 

「でっでも…」

 

「ダメかな?(泣)」ウルウルル

 

「ええっと…」

 

ウルウルル

 

「わっ分かりました。だからその目を止めてください」

 

「ありがとう!!!!よろしく。師匠!」

 

「良かったわね。姉さん」

 

「うん!」

 

 

色々手続きも終わって雪ノ下たちと別れた比企谷は将棋会館にいた。

 

「島田さん」

 

「おう。比企谷か。珍しいな。どうした?」

 

「弟子をとったんですけど、どう指導したら良いかアドバイスを聞こうと…」

 

「はああ!!!!!!!比企谷がでしーーーーーーーー!?大丈夫か? 熱でもあるんじゃないか!」

 

「いや、本当ですし、熱もありませんよ」

 

「マジか。で、男?女?」

 

「一応女性です」

 

「しゃっ写真とかってある?」

 

「はい。どうぞ」シャシンミセ

 

「は」サラサラサラ (なにかが無くなる音)

 

島田が崩れ落ちると、今日勉強していたであろう二階堂、スミスがやってきた。

なにかを失った島田を見ると比企谷の追求を始めた。

 

「おい!比企谷!お前は兄者に何をした!」

 

「そうだぞ。比企谷!島田さんがこんなことになってることなんてない!何をした!」

 

「いっいや、何もしてないんですよ。ただ弟子の写真を見せただけで…」

 

「何?比企谷が弟子?同じB2のよしみで見せなさい」

 

「良いですけど…」シャシンミセ

 

「はああああああああ!!!!!!!!」

 

「なにいいいいいいいい!!!!!」

 

その声を聞いた他の棋士たちもやって来ては絶叫して倒れたという。

あの後藤でさえ、「はっ」と声を上げて気絶した。倒れたなかったのは日頃のトレーニングのおかげと言えるのだろう。

比企谷は気絶した棋士たちに恐怖を覚え、逃げ帰った。スマホを置いて。

その後将棋会館に来た桐山と会長が全員を看病したという。

その次の日、スマホを取りに来た比企谷は捕らえられ、尋問され、すべてを白状した。

その話を聞いた棋士たちは全員「「「「また堕としやがった」」」」と思ったという。

なぜなら比企谷は女流棋士もその優しさで堕としており、将棋界の天然ジゴロと裏で呼ばれているからだ。

そのひから、比企谷はモテない男どもからモテる方法を聞かれるようになった。



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3話

「ハアー………」

 

「どうしたんですか島田さん?」

 

「桐山か。お前も知ってるだろ?比企谷が弟子をトッタ上にまた堕としやがった」

 

「ああ。あれは凄いですよね」

 

「本当になんなんだろうなあいつ。自分がハーレム築いてることに本当に気付いてねーのか?」

 

「比企谷は気付いてないと思います。て言うか前にスミスさんが聞いたら全然検討違いな応えしてましたよ」

 

「マジか!スミススゲーな!んで?なんて応えたんだ?」

 

「それが…

 

 

……

………

…………

 

「比企谷ー」

 

「なんすか?スミスさん」

 

「お前、結局誰ねらってんの?あんなにモテてよー!それともあれか?相手がいんのか?」

 

「何言ってんすか?スミスさん。まずモテるって…モテてたらボッチになってませんよ。女子に話しかけたら

気持ち悪いって言われるますよ。

まず、ああいうリア充どもは俺の敵っすね。融が貴子に向けてた憎しみを向けてるまでありますよ」

 

………

……

 

「おい桐山よ~。やばくねーか?あいつ…」

 

「ええ。まずいですね…」

 

島田の呆れたような言葉に桐山はメガネをクイッと上げながら応える。

この仕草が似合ってしまうのが憎い。

 

「しかもあいつつえーんだよなー。何であんなに早くBまで上がれんだよ。な~桐山~」

 

「ええ」

 

「いやっ待てよ!そう言えばお前もあれじゃねーか!天才さまじゃねーか。中学生プロ棋士」

 

グッ

 

「話は聞かせて貰いました!」

 

「ん?なんだスミスか…」

 

「なんだとはしつれーな。まあ良いでしょう。それよりも問題は弟子ですよ!見ましたか?あの完璧な女性!

絶世のの美女の上にさらにあのスタイル!」

 

「まああれにはな……あいつあれでも高校生なんだよな?卒業するまでに何人落としてるか…って言うかあいつ弟子とんのもはえーしよー。俺より早いって!何自慢したいの?自分に余裕があるってさー」

 

「まあまあ島田さんも落ち着いて、比企谷も色々考えてるんですよ」

 

「ええっと…」

 

「「はあー」」

 

比企谷の今までの行いに対して愚痴を続ける島田。

何とか比企谷をフォローしようと試みた桐山も撃沈。

この後は言うまでもないだろう。

スミスと島田が愚痴を続けていると徐々に、横溝、二階堂、松本、会長、藤本、と増えていった。

何故関わりのなさそーな藤本雷堂までが?と思った人も少なくないだろう。

しかし、皆さんはお忘れではないか?この人の状況を。

妻には出ていかれ、キャバ嬢に貢ぐ日々。

何をせずしてモテる比企谷に嫉妬もする。

会長は奥さんがいたからそこら辺は気にしてはいないが、鈍感っぷりがムカつく!このモテ男!と言う理由だ。

全員少なからず比企谷に思うところがあるのだ。

だが、ここにいる全員に共通しているのはそこだけじゃない。

この話に悪意を持って参加していないと言う事だ。

比企谷は別に嫌われてはいない。

むしろ好かれている。

特にあのひねくれた性格が重鎮連中には気に入られている。

藤本が大好きな対局中のお喋りにも付き合うし、愚痴をこぼせば面白い返しをしてくる。

端的に言えば面白いのだ。

この比企谷に対する愚痴も。

いじりなのだ。

まあ弄りはどが過ぎれば苛めになる。

だが、ここにいるのはどんな人達か、ここにいるのは順位の差こそはあるがプロ棋士だ。

頭が良くなければ生きていけない世界。

そのなかで生き残っている天才たちだ。

愛の鞭とか言って人を叩く人間もいるが、この人達は違うのだ。

根本から違う。

まあ比企谷に対する嫉妬心がないか?と聞かれたら分からないが。

だがそれもそうだろう?モテるんだぞっ。陰きゃとか言ってモテるんだぞっ。

くそ、あの野郎。陰キャ代表でーす。とかイケボで言いながら彼女といちゃつきやがって。

ふざけてんのか?くそ。

ああもう良い。

そんなこんなで終わった

【第一回、比企谷がモテすぎるので愚痴を言おう】の会のメンバーはそれぞれ帰宅を始めた。

 

あるものは我が家に住む愛犬に癒して貰いに。

あるものは自分の行きつけの店に。

あるものはいつも通りのリムジンに乗り。

あるものは幸せ溢れる。自分を受け入れてくれる暖かい家族の元へ。

あるものは胃を痛めながら、フラフラと。

あるものは長く連れ添っているともと酒を交わしに。

 

しかし、その後は?

 

1つに決まっている。

 

将棋。

 

将棋。

 

将棋だ。

 

彼等の全てであり、中心だ。

 

深く、深く、彼等は沈む。

 

沈んだ先で得られるものがきっと自分にとって善だとおもい。

 

違っても。

 

潜り

 

潜り

 

潜る。

 

挫折?

 

全員がしてきた。

 

だからこそのプロだ。

 

モテたい?

 

それは男としての感情だ。

 

彼等はなんだ?

 

男以前に

 

彼等は人間だ。

 

人間以前に

 

彼等は棋士だ。

 

プロの。

 

 

全ての人間はそれぞれの物語の主人公である。

全ての棋士たちは自分の目標のため、どんなことがあろうとも研鑽を積む。

何年も、何十年も、何百年も。

その研鑽が今を産んでいる。

 

僕は、夜に夢を見るんじゃない。一日中夢を見ているんだ。生きる糧として、夢を見ている。

 

I don’t dream at night, I dream all day; I dream for a living.

 

スティーヴン・スピルバーグ 米国の映画監督、映画プロデューサーの言葉だ。

 

何が言いたいのか?

分からない。

知識をひけらかしたいのか?

違う。

 

彼等は夢中になっている。何に?将棋に。

 

魅力に取り憑かれている。

 

夢を見ている。

 

ただ、その夢は勝利のため。

 

一日の、一回の

 

勝利のため。

 

例えどんなに若くとも、老いていようとも

 

ふざけていても、おちゃらけていても

 

歩むしかないのだ。

 

それぞれの夢を掴むために。

 

内に秘めた獣を御し




うあああ!
黒歴史いいいいいいいいいいいいい!

何で?
何で?
普通に書いてたら脱線からの中2くせー台詞。
ヤバイ。
何がヤバイかって?
右手が疼くんだよ!


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4

時系列が若干?けっこう変わっちゃいました。
すいません。


分かっていた。

 

あの人がいなくなれば、彼が私から離れていくことは。

 

自分の好きだった人が自分から離れていったのを見て、いや、離れていくのを見て分かった。

 

あいつは私の好きだった人がこれから歩んでいかないといけないさみしい道、あの人がこれから暮らしていかないといけないさみしい国からきた子どもだった。

 

そんなあいつを、傷だらけのあいつをさらに傷だらけにしたのは私だ。

 

虫がいいし、

 

今更だし

 

遠くから

 

ただ祈る事に

 

意味なんてあるのか

 

わからないけれど

 

ーーでも

 

もう側には

 

いられないから

 

あなたの幸せも

 

あの人のことも

 

ここからでも

 

せめて

 

ありったけの

 

願いをこめて………

 

「ねえちゃーん~~~こんなところに独りでいたら変な奴につかまるよ~~俺らみたいな」

 

「きゃっ!」

 

いつの間にか近くに来ていた男に腕を掴まれた。

女の私は力で抵抗出来るわけもなく、連れて行かれそうになる。

 

ファン ファン ファン ファン

 

「ええ、今見えました。病院の裏手の方の川沿いです。女性が連れて行かれそうになているのでできるだけ早くお願いします」

 

「ちっ余計なことをしやがって」

 

パトカーの音にびびったのか男たちは走っていった。

 

「ケガとかはないっすか?」

 

「ええ。警察は?」

 

「ああ、あれスマホで音を出してたんですよ。さすがにこんなに早く警察はこれませんよ」

 

「でも、ありがとう。おかげで助かったわ」

 

「いや、俺がいなくても他の人がなんとかしてましたよ」

 

「えっ」

 

驚いた。助けてもらった人の声が何処かで聞いた事があると思って見てみると

 

比企谷 八幡だった。中学生でプロになってもうB2にいる天才だ。

零も凄いが、昇級スピードでいえばダントツだ。

他の棋戦でも結果を残している。

まだタイトルをとってはいないが、あと数年もすれば確実とまで言われている。

 

「比企谷先生に助けて貰えて光栄です」

 

何故か嫌みったらしく言ってしまった。

 

「俺みたいな奴に光栄なんて止めてください。名人とか土橋さんとか、雷藤さんは違うな。辺りに助けて貰って使って下さい。後、敬語も止めて貰えたら…」

 

「分かった。でも貴方も充分凄いじゃない。最速で昇級してるし」

 

「運が良かっただけです」

 

「へええ、会長おも天才と言わせた比企谷先生が運で勝ち上がってると」

 

「いや、まず俺を天才と呼ぶのがおかしいんですよ」

 

「まあとにかく気を付けて下さい。只でさえ美人なんですから」

 

「なっ///」

 

「後、終電大丈夫ですか?」

 

「うわっ過ぎてる!」

 

男に襲われるよりも

 

男に振られるよりも

 

男に助けられるよりも

 

私にとって終電の方が大事だ。

 

不味い。どうしよう。後藤の家?でもそれは不味い。

 

ヤバイ。どうしよう。 しかも財布を持ってきていない。あるのは電車代だけ

 

「ええっと……家来ます?さっき会ったばかりの男が言うのもあれですけど」

 

「いや、弟の家に行くから…」

 

ちらっと比企谷は後ろをみる。

 

「どうしてもってわけじゃないんで、たださっき会った人に自分がいない間に襲われるのもあれなんで…それに桐山もいないようですし、鍵と住所渡すんでおれの部屋使って下さい。一人暮らしで他の人もいませんし、俺はネカフェでも行くんで…」

 

後藤さんもいないようですし。そう付け足した。

 

「なんで」

 

「病院から出るときに後藤さんに会ったのと前に見かけたんで」

 

それは分かった。でもなんで、弟が零だって…

 

「覚えてませんか?何度か幸田先生の家に指しに行ったんですが…」

 

…………………思い出した!

確かに来ていた。彼は師匠に連れられて家に指しに来ていた。

零とよく指していたはず。

 

「思い出したわ。零とよく指していたでしょう?」

 

「一応、幸田さんとも指したんですがね…」

 

ええぇ記憶を漁るけどあまり覚えていない。

なんなら零と指していた頃のこともほとんど覚えていない。

答えに戸惑っていると彼から声をかけられた。

 

「答えに困ることいってすいません。それで、どうします?ああでも俺がいるのが嫌だったら、どっかのネカフェにでも行きますよ?読みたい漫画もありますし」

 

さすがにここまで言って貰えれば安全なのは分かる。いや、そもそも彼のインタビューの受け答えから彼がまともな人間であるという事は分かっている。こんなところで彼に迷惑をかける事になるとは思わなかったが、着いていくことにした。

 

彼の住んでいる場所は意外と近く、あまり歩く事はなかった。

家が千葉のため、別に実家からでもなんとかなったらしいが妹離れのために追い出された、という彼がどうぞといいながら扉を開く。

散らかってはいないだろうと思っていたが、本当に綺麗だった。

零の家は将棋以外を取り払っているようだったが、彼の部屋は零よりも物があった。

零の所と同じように広い部屋が1つと後一部屋があった。基本的にもう一つの部屋が住みかだから大きい部屋の方には物が少なかった。

彼がそう話してくれた。

「夜はもう食べましたか?」

 

食べていないと答えると、

「ご飯と麺どちらの気分ですか?」

 

料理をするのだろうか?意外だ。

麺が良いと言った

 

「簡単になるんですけど、それでよろしかったら、テレビでもつけて見てて下さい」

椅子に座ってテレビをつける。

独り暮らしにしては大きなテーブルと椅子の数だ。

 

お笑い番組を観てみたが、あまり面白く感じなかったため、情報番組に切り替える。

 

その間にも彼は黙々と料理している。

 

良い匂いが漂ってきた。

 

何か手伝おうと思い、聞いてみる。

 

そこのサラダ持っていって下さい。後冷蔵庫からお好きな飲み物。

 

何にしようかちょっと考えたがお茶にした。

 

しばらくすると料理が出来たみたいで彼がきた。

 

両手にフライパンを持っている。

 

すいません。鍋しきおいてもらえますか。と頼まれる。

見てみるとテーブルの端にコルクのなべしきがある。正確には違うのかも知れないが、

 

テーブルに置かれたものを見てみるとスパゲッティだった。

 

ちょっとテンション上がっちゃいました。食い意地はってるんです。

 

良い匂いがした。

 

皿、二枚どうぞ、好きなように食ってください。

 

えっと、こっちがキノコの和風な感じでこっちがイカとズッキーニです。

 

レシピを見て食べたかったという。

 

普通に美味しかった。

 

その後、殆ど話す事はなく私は彼のベッドを借りて寝た。

シーツを変えるところまでテキパキしていた。

 

その日は気持ちよく眠れた。

 

朝起きると彼はまだ寝ていた。どうしようかと悩む。

もともと寝てたらそのまま出ていって良いと言われたが、キョロキョロしてみるとお握りと海苔がテーブルにおいてあった。

一緒にあったメモをみると

 

幸田さん

 

お握り良かったら····

 

味噌汁台所にあるんで温めて下さい

       

            比企谷

 

とあった。

 

甘えて、お握りと味噌汁を食べ、食器をあらい、またお礼をすると書き置きを残し家を出た。

 

朝のツンとするような寒さも。

 

透き通った冷ややかな風も心地良かった。

 

何か温かいものが近くにあるように感じる。

 




比企谷じゃない。
絶対比企谷食い意地はってない。

はい、そうです。全部自分の事です。

ええ、レシピみて食べたくなって作りましたとも。


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第5話

最近、眠いです。


額から汗が流れて目に沁みる。

 

自分の呼吸が荒くなっているのを感じる。

 

このままだと不味い。頭が警報を鳴らす。

 

駄目だ。と思わず立ち上がる。

 

 

The greatest mistake you can make in life is to be continually fearing you will make one.

 

<Elbert Hubbard>

 

いつか聞いたような読んだような言葉が頭に浮かぶ。

 

意味は何だっただろうか?

 

人生で犯す最大の誤りは誤りを犯しはしないかと絶えず恐れることだ。だったような気がする。

 

はぁぁ、溜め息が口から漏れる。

 

体は何かに憑かれたように自分で上手く動かせない。

 

それなのに頭は余計な事を考えている。案外余裕があったりするのかと錯覚してしまう。

 

そんな筈は決してないのに、

 

飲まれる、体に押し寄せる波に飲まれそうになる。

 

もがいた、もがいた、もがき続けた。

 

手を足を動かし続けた。

 

陸地が見えた。

 

 

そう思った。

 

違った。

 

いや、陸地ではあった。

 

燃えていた。

 

炎が炎を呼び、暴れ狂う。

 

回り道?出来る筈がない。

 

後ろには波。

 

もう一度、行けない。

 

次こそ飲まれる。

 

行くしかない。

 

炎に飛び込む。

 

身が焼け、止まりたくなる。

 

しかし、体はチャンスにすがり付こうとする。

 

まだ、

 

 

 

 

 

 

まだ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、

 

 

 

 

 

 

 

歩いて

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼?いや、違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えた先は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盤と人。

 

 

 

 

 

 

 

ああ、やっとスタートなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挫けそうになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、まだできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の限界などとうの昔に忘れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違い?

 

 

 

 

 

 

知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までも犯し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

これからも犯す。

 

 

 

 

 

鬼の住みかだ。

 

 

腹を括れ。

 

 

 

 

 

 

腰を下ろす。

 

 

 

 

 

B級2組 六段  比企谷 八幡

                   

                   玉将戦 挑戦者決定戦 五番勝負 五番目

A級   九段  隈倉  健吾

 

 

ここまで二勝二敗

 

 

 

 

パソコンにかじりつくように目を向けていた。

 

一手一手 重く鋭い

 

胸が苦しくなる。

 

勝って欲しい。

 

身勝手だけど。

 

でも、勝って欲しい。

 

きっと君なら出来る。

 

勝って。

 

勝って。

 

 

私の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠········

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胃が切り裂かれるように痛む。

 

きっとあいつが勝つだろう。

 

 

 

そんなこと言えるような相手じゃない。

 

化物の類いに入るような奴だ。

 

寧ろ二回勝ててるだけで十分だ。

 

っていうか、美人の弟子プラスでタイトルとかとっちゃったりしたら腹立つ。

 

頑張れ隈倉さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼があのおお舞台と呼ぶに相応しい場所に立つのがここまで早いとは思わなかった。

 

後数年はかかると思っていた。

 

他の人もそうだろう。

 

下馬評は完全に相手。

 

100%負け。

 

そう思われていた。

 

思っていた。

 

彼はその下馬評を嘲笑うように先に二本とった。

 

その後、二本とられたが、

 

今も互角に渡り合っている。

 

かつて自分の父がそうだったように。

 

私の弟が望もうとしているその頂きの1つの近くに彼は来ている。

 

 

 

 

 

 

 

勝って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総手数 241手 

 

 

241手目が指された後、少し間が開き「負けました」

 

 

241手をもって挑戦者は 九段 隈倉 健吾

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、比企谷は王者への対戦券を逃した。

 

 

 

 

 

 

 

パシャ パシャ  パシャ

 

 

 

フラッシュが焚かれる。

 

 

 

 

自分が負けたのだと思い知らされる。

 

 

 

感想戦を終え、取材に答える。

 

 

 

「後一歩足りなかったのは一重に実力だと思います。自分の実力が足りていないことを改めて実感させられました。

 また、次ここに来れるように、また、次こそは勝てるように、日々精進しようと思っています。」

 

次に繋ぐ言葉が出てこなかった。

 

本心だった。

 

勝てなかった。

 

届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

明日は久しぶりにゴロゴロしよう。

 

 

そう決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A man is not finished when he's defeated ;he's finished when he quits.

<Richard Nixon>

 

 

 

 

 

歩き続けるしかない。

 

 

止まる訳には行かない。

 

 

 

そういうところに足がある。

 

 

進めなければ、

 

 

 

生きられない。

 

 

 

 

身に獣を住まわせる鬼たちの

 

 

住まう世界に彼等はいる。

 

 

食うか、喰われるか。

 

 

男だろうが、女だろうが。

 

背が低かろうが、高かろうが。

 

顔のかっこよさなど必要ない。

 

性格等気にしない。

 

必要なのは棋力だけ。

 

彼等は今日も明日もその次も

 

 

身を投げる。

 

 

ただ1つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利の味に酔いしれるため。

 

 

 




ワオ!恥ずかしい(>_<)

時間軸のズレはすいません。

ちなみに自分の最長手数は190手くらいだと思います。


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