インフィニット・ストラトス 桜踊りし希望の剣 (神近 舞)
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Prologue
Chapter Ⅰ【001】終幕


皆さまはじめまして。

神近 舞と申します。

ハーメルンでの処女作となります。

駄文、稚拙、誤字、脱字等、至らぬの多々ありますことを御許し下さい...。

それでは、どうぞ!


シャーロット(Charlotte)エインズワース(Ainsworth)

 

それが私を識別する言葉(コード)である。

 

幼い頃から知的好奇心が旺盛で、家には大量の学術本を持ち帰った。

 

小学校で2回飛び級をし、中学校でも1回飛び級をした。

 

弱冠15歳にして某有名大学に合格。

 

大学卒業後、某情報系専門学校に入学。

 

専門学校卒業後、某大手ゲーム企業に就職。

 

最初は上手くいかなかったものの、先輩や同僚の助言に助けられた。

 

そして就職から12年、私は新作ゲームのチームリーダーに就任。

 

今までの経験をフル活用し、チームリーダーとしての役目を全うした。

 

約4年の歳月を費やした新作は大ヒット。

 

その功績を認められ、次のゲームでもチームリーダーを任された。

 

......しかし、平穏だった私の生活は突然の終幕を迎えた。

 

信頼していた部下と尊敬していた上司に裏切られていた。

 

私はその瞬間を目撃してしまった。

 

ショックを受けた私は、それから1週間程、仕事に手がつけられなかった。

 

......そして、事件は起こった。

 

前に私がチームリーダーとして製作したゲームにおいて、約12万人(3%)のユーザーの個人情報が流出してしまっていたのだ。

 

不測の事態に戸惑っていた私達の元に、2人の男が現れた。

 

あの日、私を裏切った2人だ。

 

2人は言った。この状況を生み出したのは彼女()である、と。

 

このとき、私は完全に理解した。

 

主犯は彼ら2人である、と。

 

私は彼らの悪意から免れるために、必死に抵抗した。

 

しかし、その抵抗も無意味に終わり、私は解雇処分となった。

 

裁判の結果、懲役3年 執行猶予5年が言い渡された。

 

結局、冤罪をかけられ、晴らすことが出来ぬまま、私は帰宅した。

 

そこには、私を温かく迎え入れてくれる彼女の姿は無かった。

 

悲哀の涙を流した、冷たく暗い夜であった。

 

裁判から3週間が経った。

 

私に残されたものはほとんど無く、希望さえも消えかかっていた。

 

その夜、何の理由もなく外に出た。

 

僅かな電灯の光と夜を映す巨大な闇。

 

その光景は、私の今の心境を表している気がした。

 

歩いて10分が経った頃だっただろうか。

 

1人の男が現れた。

 

着ているスーツは何故か紅く染まっていた。

 

男と目が合った。

 

その男を見た記憶があった。

 

4年前に解雇処分となった元後輩であった。

 

彼は私を睨み付けながら言いはなった。

 

お前のせいで俺は破滅したのだ、と。

 

彼が解雇処分となった理由は、社員の個人情報を流出したためである。

 

偶然、私はその現場を目撃し、社長に報告したにすぎない。

 

つまり、先程の言葉は合っているようで合っていないのだ。

 

そんなことを思っていたとき、突然彼は紅色に装飾されたナイフを取り出した。

 

得物を取り出しながら彼は言った。

 

つい最近出現した、〇〇〇社所属のゲームプログラマー連続殺人事件の犯人、俺はその正体を一番よく理解している、と。

 

本能的に私は逃走を図った。

 

しかし、私の思考は逃走にばかり意識が向いていたために、後ろから放たれた殺意(弾丸)に気づかなかった。

 

殺意は私の左肩を貫き、そこで生じた痛覚に私は悶絶した。

 

あまりの痛みに、私はその場にうずくまった。

 

彼は私の下にすぐに追いついた。

 

彼はナイフと杭を手に持ち、下卑た笑みを浮かべながら、私の四肢を杭で突き刺し、私を固定する。

 

四肢から発せられる警告(痛み)を受け、私は思った。

 

......私も...終わり...か。

 

そこから意識が無くなるのは容易かった。

 

腕を切られ、脚を貫かれ、腹部を殴られ、心臓を踏まれ、最後は脳を撃たれた。

 

私が記憶しているのはここまでだ。

 

Le 15 Septembre 20XX

 

この日、私の約37年という短い人生(旅路)は断たれた。




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Chapter Ⅱ【002】理解

第3学期だぁ...。

地獄の再臨だぁ...。


私の意識は届くことのないところまで落ちて行く。

 

深い...深い...奈落の底へと。

 

私の心は届くことのないところまで落ちて行く。

 

暗い...暗い...絶壁の底へと......。

 

........................。

 

..................。

 

............。

 

......。

 

...。

 

......ん?

 

何かおかしい。

 

何故私は死んでいない(・・・・・・)?

 

いや、多分それは違う。

 

あれほどの出血量では生還出来るはずがない。

 

そもそも脳幹を弾丸で抉られたのだから、生きているはずがない。

 

ならば、今の状況(・・・・)は一体何なのだ?

 

「ようやく気が付かれましたか」

 

突然、声が響いた。

 

誰かに呼ばれたらしい。

 

声の響いた方向を振り返ると、そこには金髪碧眼の女の子がいた。

 

年は私の半分位だろうか。

 

穢れを知らない純粋な娘、と言う言葉がピッタリだな、と感じた。

 

そんなことを思っていると、突然彼女は涙を流した。

 

......えっ...どういうこと?

 

いきなり涙を流したと思ったら、今度は土下座をした。

 

......何がどうなってんの?

 

私...初対面の女の子にこんなことをさせるような鬼畜女朗だったっけ?

 

そんなくだらないことを考えていると、彼女は口を開いた。

 

「申し訳ございませんでした...! 私は...貴女の人生を...守ることが出来ませんでした...!」

 

......What do you mean?(どういうこと?)

 

「実は...」

 

 

 

 

 

Side the Girl

 

私の名前はアルシエル(Arciel)

 

新米天使です。

 

5年前に生命管理課に所属され、多くの方々の人生を見守っていました。

 

そんなある日のことでした。

 

私はいつも通りの作業をしていました。

 

皆さんの人生が正常に動いているかの確認です。

 

朝からずっと作業をしていると、ある人物の人生の書類が置いてありました。

 

そう、シャーロットさん、貴女の人生の書類です。

 

それらの書類には、幾つもの加筆された跡があったのです。

 

その上、転生後に関することまで書かれていました。

 

個人の意思に関係なく転生後の人生を決定することは、私達の中では御法度とされていました。

 

よって私は、天神さまたちに報告したのですが......。

 

「そんなことあるわけなかろう」

 

「その人間の人生は最初からそうなっておる」

 

「転生後の状態も、彼女の意思のようだが?」

 

全く取り合ってもらえず......。

 

「人生操作は行われなかった、よって無罪!」

 

貴女の人生を守ることが出来なかったのです......。

 

Side Out

 

 

 

 

 

「そう...だったんだ...」

 

私の人生...いつの間にか狂い始めたと思ったら、そんなことになっていたなんて....。

 

「私が...私が早くこの事を知っていたら...私がもっと抵抗していれば...こんなことにならなかったはずです...。 だけど...私は...!」

 

「......」

 

彼女は後悔しているのだろう。

 

私を―――私の人生を―――救えなかったことに対して。

 

だけど...。

 

「私が...全て悪いんです...。 間違っていたんです...。 昔から...天界が腐敗していたのは知っていた...。 けれど...私はそれらに対して行動を起こすことが出来なかった...。 全て知っていたのに...。 全て分かっていたのに...。 私は...何も...!」

 

「そんなことはない!」

 

だけど...それは違うはずだ。

 

「君は間違ってなんかいない。 君は正しく行動出来ていたはずだよ。 君が悪い子だったら、そもそも私の人生に対して抗議なんてせずに、放置しているはずだよ? それに、君は腐敗に立ち向かっていたじゃん。 わざわざ天神(上司)に対して抗議するなんて、なかなか出来ないことだよ? 君はよく頑張った。 私はね、君が私のために動いてくれただけで、本当に嬉しかったんだよ?」

 

「......! ...うっ...うわあぁぁぁぁぁん!!!」

 

天使ちゃん(アルシエル)は駄々っ子であるかの如く泣き出した。

 

とても嬉しそうな表情を浮かべて。




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Chapter Ⅲ【003】恩恵

資格取得検定勉強...。

大変や...。


天使ちゃんが泣き出して10分ほど経った...のだろうか?

 

この空間、どうやら近くに時計らしきものないらしく、時間の経過がよく分からない。

 

そしてさっきから天使ちゃん...アルシエルだからアルちゃんでいいや...アルちゃんが頬を染め、視線を逸らしている。

 

どうやら、先程泣きじゃくっていたことに負い目を感じた挙げ句、そのことを恥ずかしがっているのだろう。

 

...うん、かわいい。

 

「うぅっ...先程は取り乱してしまいました...。 すいません...」

 

「別に構わないよ。 私は全然気にしていないから」

 

「お気遣い感謝します...」

 

...あれ?

 

なんだろう...何か大事なことを忘れているような...。

 

「......あっ、そうだ!? 私死んだんだよ! あのゲス野郎に殺されて!」

 

「あっ、そうでした!」

 

...アルちゃん...本題忘れちゃダメでしょ...。

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱり死んでいたかぁ...」

 

「はい...申し訳ありません...」

 

「アルちゃんは悪くないでしょ? 」

 

「......はい」

 

「なら良し。 私の死の確認は終わり。 さっさと切り替えよう?」

 

アルちゃんがこれ以上気にする必要はない。

 

過ぎたことを考えていたところで、意味などないのだから。

 

「本題に入らせていただきます」

 

アルちゃんはそう言い、私を真剣な眼差しで見る。

 

「シャーロットさん。 貴女の魂はギリギリ輪廻の輪から外れずにいたため、他の魂と同様に、転生していただきます」

 

「うん」

 

「普通、人の魂は貴女のように、私達天使や、天神さまと対話をすることなく転生します。 しかし、私達のミスなどで命を落とした方、私達が注目していた方、自分たちの世界に対して一定以上の功績を残した方などは、こうして対話をし、次の人生に多少融通を利かせることが出来るのです」

 

「俗に言う、特典を持って転生する...ってこと?」

 

「その認識で間違いないかと。 特典...私達は希望的恩恵(アヴァンタージュ)と言っていますが...希望的恩恵の量や規模などは、私達のミスの大きさ、残された寿命、私達の認知度など、様々な要因が関わっています」

 

私の転生後の状態は、一部が決定されている。

 

恐らく、私の恩恵はそこに影響しないことが最低条件なのだろう。

 

「まず、転生後のデータをご覧下さい」

 

アルちゃんが手を虚空に広げる。

 

手のひらが示す場所に、ディスプレイのようなものが出現した。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

転生後のデータ

 

名前: Charlotte Ainsworth

 

種族: 人間

 

性別: 男

 

誕生日: 2020 September 15th (-18)

 

誕生地: City of Exeter, United Kingdom

 

必要世界貢献要求: 978

 

先天的技能容量: 2532

 

後天的技能容量: 2468

 

総技能容量: 5000

 

体躯: 一生涯男の娘(可愛い)

 

髪色: 金

 

虹彩: 緑 or 紅

 

精神成長: 428

 

肉体成長: 238

 

限界身長: +15

 

生殖能力: 94

 

........................

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

えぇ......。

 

まさかの性転換確定とか...。

 

私の第2の生を勝手に決めた奴殴りてぇ...。

 

まぁ、男の娘であるだけまだマシか...。

 

「...って言うか、必要世界貢献要求って何?」

 

「転生した世界に於いて、数値分の功績を残すと、次の人生で比較的良い生活をおくることが出来る、というものです」

 

「...もし、達成出来なかった場合は?」

 

「...人間に転生しない可能性が高いです」

 

......Oh, my god.

 

「ちなみにですが...転生後の世界についての情報は全て秘匿とさせていただきます」

 

「ん? なんで?」

 

「第1に、基本的恩恵などによる過剰なチート行為を防ぐため。 次に、転生後の世界を知ることで、世界貢献要求のリソースを必要以上に独占することを防ぐため。 最後に、他の魂に対する公平性を少しでもとれるようにするためです」

 

...うん、納得。

 

同じ世界に転生する人達のことを考えたら当たり前のことだよね。

 

「シャーロットさんは私の思った通りの清い心の持ち主です♪」

 

アルちゃんはそう言って微笑んだ。

 

...っていうか、アルちゃん、さっきからしれっと私の心を読んでない?

 

「気のせいですよ♪」

 

......そういうことにしておこう......。

 

「さて、そろそろ基本的恩恵を決めることにしましょうか」

 

「そうだね。 っと言っても、大体決まっているけどね。」

 

私が希望する恩恵は、次の通りだ。

 

1. 前世の記憶と此処での記憶を完全に保持する。

 

2. 魔法を使える。

 

3. 三本の剣を保持する。

 

4. 天使の翼を持つ。

 

5. 人の感情を知ることが出来る。

 

6. 世界の記憶に接続(アクセス)することが出来る。

 

こんなところだけれど...流石に欲張り過ぎだよなぁ...。

 

「このような形式にすれば可能です」

 

...いいんだ...。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

後天的技能容量: 1538/2468

 

01. 前世に於ける記憶の完全保持(0108)

 

02. 天界に於ける記憶の完全保持(0120)

 

03. 魔法の行使能力(0300)

 

04. 宝剣の所有権の保持(0234)

 

05. 天翼の保持(0168)

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

よく収まったなぁ...。

 

えっと、あとは魔法と剣の詳細かぁ...。

 

...よし、これはどうかな?

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

後天的技能容量: 0600/2468

 

[魔法の詳細]

 

01. 世界の記憶に接続する魔法(0200)

 

02. 自身を囲む球状領域外からのベクトルを反転する魔法(0144)

 

03. 人の感情の読み取る魔法(0120)

 

04. エネルギーを別のエネルギーに変換、又は保存する魔法(0090)

 

05. 肉体的ダメージを回復する魔法(0070)

 

06. 自身が認識した物質を別の空間に相互移動する魔法(0050)

 

[宝剣の詳細]

 

01. 聖剣エクスカリバー(0078)

 

02. 聖剣ジョワユーズ(0078)

 

03. 魔剣レーヴァテイン(0108)

 

[予備用の技能容量]

 

0600/2468

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

よし、これでOK!

 

「この確認を了承すると、二度と変更することは出来ません。 その設定で宜しいですか?」

 

「......はい、了承します」

 

もう後悔はない。 次の人生では幸せな最期をむかえてやる!

 

「それでは、しばらくの間、共に同じ世界に転生する方々との会話をお楽しみ下さい」

 

あっ、そういうこともするんだ。

 

アルちゃんがそう言った直後、アルちゃんのすぐ後ろから、4つの人影が現れた。




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Chapter Ⅳ【004】考察

検定嫌だぁ...。

助けてくれぇ...。


4つの人影が現れた瞬間、アルちゃんが翼を広げ、上空へと翔んでいった。

 

空の彼方へと昇っていったアルちゃんを見届けた私は、再び人影達に注目する。

 

私よりも背が高く、学校の制服を着た黒髪黒目の少年。

 

なんとなく見覚えのある銀髪蒼目の女性。

 

白髪赤目のアルビノと思われる男の子。

 

私よりも少し背が低く、学校の制服を着た茶髪茶目の少女。

 

...個性的な人達だなぁ...。

 

そんなことを考えていると、少女が開口した。

 

「あのぉ...貴女も...亡くなった方...なのですか?」

 

その言葉を聞き、私と彼女達は同類(亡者)であると分かった。

 

「...うん。 私はシャーロット・エインズワース。 転生後も同じ名前なんだ。 宜しくね?」

 

私はその言葉を発すると同時に、そっと友好の証(右手)を差し出した。

 

「あっ...はい! 宜しく...お願いします!」

 

そして、彼女は返事をすると共に私の右手を強く握った。

 

その光景を見ていたのか、残りの3人も友好的な表情を私に向ける。

 

...って。

 

「オリヴァー先輩!? 貴女もですか!?」

 

「シャルちゃん...うん。 私も死んじゃった」

 

メアリー(Mary)オリヴァー(Oliver)

 

私の勤めていた会社の先輩で、銀髪蒼目が特徴の女性だ。

 

私がチームリーダーとなったときに、私と共に協力してくれた人だ。

 

私が冤罪をかけられた時も、最後まで抵抗して下さった人だ。

 

私はその時の出来事を鮮明思い出していると、突然先輩が自身の両手を叩き、自身を注目させる。

 

「さて、此処でずっと無言ってのも何だし、自己紹介でもしましょうか」

 

先輩の提案に誰も反論しなかった。

 

「じゃあ、私からね。 メアリー(Mary)オリヴァー(Oliver)よ。 死亡時の年齢は40。 転生後はアリス(Alice)エインズワース(Ainsworth)という名前で、2014年7月1日に生まれる予定よ」

 

恐らくだが、先輩が転生後の情報まで開示したのは、他の皆に対して敵意がないことを伝えているのだろう。

 

...って、エインズワース?

 

「じゃあ、次は俺が。 俺の名前は神崎(かんざき) 悠人(ゆうと)。 17歳で死んだ。 2023年11月18日に、(すめらぎ) 龍馬(りょうま)として転生する予定だ」

 

制服の着た少年、神崎君にも敵意は無い模様。

 

「僕にも自己紹介を。 ヴァレリー(Valéry)セリーヌ(CÉLINE)です。 11歳で死にました。 2024年2月14日に、ユーリ(Youri)ドラクロワ(DELACROIX)として転生する予定です」

 

アルビノの特徴を持つ男の子、セリーヌ君にも敵意は無い...と言うより、悪意というものを知らなさそうだ。

 

「次は私が...。 成瀬(なるせ) (きょう)...です...。 16歳で...死にました...。 2022年7月12日に...夜竹(やたけ) 舞華(まいか)...として...転生予定」

 

茶髪茶目の少女、成瀬ちゃんも問題無いみたい。

 

おっと、私が残っていたか。

 

「最後は私だね。 私はシャーロット(Charlotte)エインズワース(Ainsworth)。 享年37。 2020年9月15日に、今と同じ名前で転生する予定だよ」

 

「エインズワース? もしかして、シャルちゃんと私は姉妹になる可能性がある...ってことなの?」

 

「それは...まだ断言出来ませんね...。 出生地を聞いていますか?」

 

「えぇっと...確か、イギリスのエクセター市だった気がするわ」

 

「あれ? 私と同じ出生地...?」

 

...姉妹という可能性が濃厚だな、コレは。

 

そんなことを考えていると、突然私の体が発光した。

 

...もしかして、コレが転生の合図なのだろうか?

 

そう思った刹那、私の視界は自分が発した光に塗り潰された。

 

 

 

 

 

Side Others

 

時は、シャーロットが残りの転生者と対面する前にまで遡る。

 

4人の転生者は同じ場所に集められ、天神―――アルシエルの意見を最初から聞いていなかった者―――がアルシエルの説明とほぼ同様のものを行った。

 

そして、最後にこの言葉を付け加えた。

 

『シャーロット・エインズワースという大罪人を赦すな』と。

 

天神達にとって、シャーロットの存在はとても目障りであった。

 

何故なら、彼女の存在は天界の腐敗を払拭出来る唯一の材料となるためである。

 

言うなれば、彼女は天界に於ける改革派―――天神達による天界の統治という旧体制を崩すことを主張する者達のこと―――を支える柱である。

 

先程の言葉の意図はとても簡単だ。

 

改革派は彼女を希望の象徴としている。

 

ならば、彼女を見せしめとして、深い絶望の底に叩き落とせば、改革派は心の支えを失い、勢力の縮小及び弱体化が可能なのではないだろうか。

 

そうなれば、改革派を一掃することができ、自分達による天界の統治が続く。

 

また、彼女の魂を完全に消滅させることによって、改革派の残党が現れる可能性を限りなく低くすることが出来るだろう。

 

天神達にとって、人間の魂を完全に消滅させるのはとても容易い。

 

しかし、人生改変は却って改革派の怒りを買う愚策である。

 

自分達が下界に降り、自らの手で彼女を消し去るなど論外。

 

よって、彼らは残りの転生者に期待した(・・・・・・・・・・・)のだ。

 

転生者である彼女が、他の転生者によって殺される。

 

このことに意味があるのだ。

 

何故なら、転生したという自覚のある転生者は基本的に良識者(・・・・・・・)なのだ。

 

すなわち、自覚ある転生者は正義である。

 

その正義によってシャーロットが殺されるということは、シャーロットが悪であることを示す。

 

正義の主張に負ける主張は、悪の主張以外に他ならないからである。

 

今まで信奉し続けていた存在が悪であると知れば、改革派は自分達の考えが悪であると知り、絶望し、自然な形で消滅するだろう。

 

そして、彼女の死後、自然な形で天神達の下に彼女の魂を呼び寄せ、完全に消し去る。

 

こうすることで、自分達が正しいことを証明する。

 

それこそが、『大罪人を赦すな』発言の真の意図である。

 

...だが、しかし。

 

天神達は彼らに対して、あまり期待していなかった。

 

あの4人は元々、超が付くほどの善人である。

 

その為、先程の発言だけで殺人を犯すような人間であるとは思えなかったのだ。

 

故に彼らは保険(・・)を用意していた。

 

自分達の計画を確実に成功させるために......。

 

Side Out




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Episode 0 “A New Dawn of Reincarnations”
Chapter Ⅰ【005】再誕


ようやっと原作キャラと転生者との間に関係が生まれます。

あのキャラの口調とか設定とか大丈夫かな?


〔Ⅰ〕

 

 私が新たな世界に転生して、早くも6年と4ヵ月が経った。 私は前世で学んだことをフル活用し、義務教育をほったらかしにするかのような勢いで、高校生となった。 私の両親は政府との契約で、形だけの義務教育として、私を教育施設に通わせることを取り決めたのだ。

 ...えっ? なんでそんなことが可能なのかって? ...我が家の権力です。

 私の家...エインズワース家は、かの有名なウィリアム征服王(別名、イングランド王)の子女の1人(女性)と、当時は地方を治めている貴族でしかなかったアイザック・エインズワース(男性)が結婚し、誕生した家(世間的には皇爵家と呼ばれている)で、一時期は王室の末端として数えられていた家なのです。

 まぁ、つい最近王族から除籍されてしまいましたが...。

 それはともかく、私は今、とても興奮しています。 その理由は......

 

「遂に来た...日本に!」

 

 そう、転生する前から、ずっと日本に行きたいと思っていたのです!

 あくまで、今回の来日は大学受験が目的なのですが...。

 うん、今日はおもいっきり楽しもう!

 

「シャルちゃんは日本とフランスをこよなく愛してるからね。 興奮する気持ちも分かるけど、受験生として恥じない行動をとらないとダメでしょ?」

 

「アリスの言うとおりよ? シャーロットちゃんはまだ6歳だけど、もう立派な高校生なんだから。 しっかりしないとね?」

 

 おっと、忘れてた。 少し前まで社会人だったためか、ついバカンス気分になっていた。 気を付けないと。

 

「はい...申し訳ございません...御母様...御姉様...」

 

 オリヴァー先輩は私の予想通り、アリス・エインズワースという名前で、私の姉として転生していました。 私が誕生した瞬間、歓喜のあまり、絶叫したとかしなかったとか...。 それでいいのか、先輩よ...。

 

「シャーロットちゃん、今回の貴女の大学受験は特例中の特例なの。 だからこそ、気を引き締めて挑まないよダメよ?」

 

 私の母、エレン・エインズワースは私に今回の受験の重要性を再確認させる。 無論、そのことについては人一倍私が理解している。

 

「勿論です! ...というか、貴女、ではなく貴方、なのですが...」

 

 そう、今の私は男。 一応、男性なのです。 けれど...。

 

「どうしてボクの容姿は女の子っぽいんだろう...」

 

 平均より少し低い身長。 腰まで伸びた金のストレートヘアー。 透き通った白い肌。 燃え盛るような紅い瞳(本来の虹彩の色は緑なのだが、魔力を持っているが故に紅色に見えている)。 非常に整った女顔。 細く長い手足。 ほとんどの部分が女性的な骨格。 極めつけは女子生徒用の制服。

 元女性の私からすれば、前の容姿に近い、というのはとても嬉しい。 けれど、残念なことに私の恋愛対象は前世でも今でも女性。 それ故に、逆に距離を置かれる可能性が上がるのです。

 まぁ、今はそんなことを考える必要はない。 今は大学受験のことについて考えないと!

 

「ふふっ。 今日のシャルちゃん、気合いが入ってるわね」

 

 気合いの入った私の様子を見て、アリス姉様が微笑んだ。

 

「シャーロットちゃんはこうして学問の道に進むことが確定していたのかもしれないわね」

 

 エレン母様は私の人生を見透かしているかのような発言をしながら、相変わらずニコニコしている。

 

「よし、今回の受験...頑張ろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅱ〕

 

「これにて、受験番号177876番から177880番までの面接を終了します。 皆さん、お疲れ様でした。 それでは、受験番号順に退室してください」

 

『有難う御座いました』

 

 私は日本流のマナーに則って、面接をこなした。 これで、私の大学受験は終わった。 結果として、筆記試験は結構良かった気がする。 理系科目とフランス語は95%以上の得点を取った気がする。 一応、国語も85%以上は確実...だと思う。 面接でも、緊張せずにちゃんとした受け答えが出来た...はずだ。 ...うん、後は合格発表を待つだけのはずだ。

 

 

 

 

 

Side the Examiner

 

 彼女...じゃなかった。 彼は規格外過ぎるな...。 私は今回の受験生の筆記試験の採点をしていた。 私は、中でも受験番号177878番の総合結果に驚愕していた。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

受験番号: 177878

 

名前: Charlotte Ainsworth

 

受験学科: 理学部

 

[筆記試験結果]

 

国語(日本語): 92/100

 

数学(数Ⅲ迄): 150/150

 

理科Ⅰ(化学): 150/150

 

理科Ⅱ(物理): 150/150

 

外国語(仏語): 148/150

 

合計: 690/700

 

一次試験成績: 882/900 → 294.00/300.00

 

二次試験成績: 690/700

 

総合成績: 984.00/1000.00

 

順位: 1位/8768人中

 

成績評価: S

 

[面接試験結果]

 

主張の矛盾: 優

 

聞き取り易い会話: 優

 

質疑応答: 優

 

身だしなみ: 優

 

緊張: 良

 

志望動機: 優

 

入退室: 優

 

総合評価: A+

 

[合否判定]

 

受験結果: 合格

 

特待生評価: S

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

 この成績...どう考えても異常(・・)だ。 彼は確か6歳だったはず。 それなのに他の受験生全員を抜き1位となっている...。 特に理系科目は全て文句なしの満点だ...。 また、面接試験の際、少し不思議に思ったことがある。 彼は6歳、故に面接試験を受ける機会はとても少ないはずなのだ。 そのはずなのに、彼は面接に慣れている(・・・・・)気がしたのだ。 まるで、社会人を相手にしているかのように。

 

「おや? その子...例の彼についてですかな?」

 

「学校長...」

 

 どこからともなく学校長がこちらに来た。

 

「最早、学校中の噂となってますよ、彼。 理系の星だとか、学会に煌めく黄金だとか。 既に学生の7割以上が彼の入学を希望しているみたいですよ?」

 

 そこまで期待されているのか...彼は。 しかし...。

 

「私は少し不安です...。 このまま彼を入学させても良いのでしょうか?」

 

 しかし、いくら成績が良くても、いくら面接で好評だったとしても、彼は非常に幼い。 故に、不安で仕方がない。 自己形成が中途半端な状態の人間を、社会人の卵となる者達の巣窟に入れることは、あまりにも危険ではないのか。 もし入学させたとしても、彼を助ける人間が現れるのか。 今までとは比べ物にならないレベルのストレスに耐えられるのだろうか。 こういった懸念材料が大量に存在しているというのに...。

 

「とりあえず様子見するのが一番でしょう。 私達が彼を全面的にサポートするのがベストじゃないでしょうか」

 

 ......不安だなぁ......。

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅲ〕

 

 今日は合格者発表の日だ。 私は、半年ほど前に卒業した高校の制服の袖に再び手を通し、母様と姉様と共に大学に赴いた。

 

「えっと...理学部は...っと」

 

 この大学の学部は結構多く、全ての学部の合格発表を一ヵ所で行っているため、なかなか目的の理学部の合格発表が見つからない。

 

「理学部は...あっ、あった。 ここからだ」

 

 私は理学部の合格発表を見つけ、すぐさま177878(受験番号)を探す。

 えぇっと...177512...。 この辺りから探してみよう。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

177512 177524 177638 177639 177700

 

177777 177784 177814 177839 177880

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

 ............えっ? 載ってない(・・・・・)?

 

「見つかった~?」

 

 ...いや、そんなはずがない。 もう一度確認すれば...。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

177512 177524 177638 177639 177700

 

177777 177784 177814 177839 177880

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

 ............。

 

「シャルちゃーん、見つかっ...た...?」

 

 ...う、嘘だ...有り得ない...。 私が...不合格...?

 

「シャルちゃん......」

 

 もうダメだ...。 来世での私の生き甲斐が...。

 

「そこ......一般入試(・・・・)の合格発表よ?」

 

 ......紛らわしいなぁ!?

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

177555 177634 177711 177855 177878

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

「あっ、良かった! 受かってた!」

 

 私は、一般入試での合格発表ではなく、特別入試(・・・・)での合格発表を見つけ、ちゃんと合格していたことを確認し、安堵した。

 

「ふえぇぇ...よがっだよぉ...うがっでだよぉ...」

 

 安心したせいか、私は膝をつき、大粒の涙を流していた。

 

「あらら...ふふっ。 シャーロットちゃんがこんなに喜んでいるのを見たのはいつぶりかしらねぇ?」

 

「半年ほど前、高校を卒業したとき以来です、御母様」

 

 あぁ...良かったぁ...。

 

「さて、合格したことも分かったことだし、そろそろ帰りましょうか」

 

「そうですね。 取り敢えず、合格祝いも兼ねてレストランにでも行きましょう」

 

「はい!」

 

 私達は手を繋ぎ、大学の門を潜った。

 

「今日は何を食べましょうか...」

 

「じゃあ、私SUSHI食べてみたい! 日本の魚は美味しいと聞きますし...。 シャルちゃんはどう?」

 

「ボクも食べてみたいと思っていました。 どんな味なんだろう...」

 

 他愛もない会話をする私たち家族。 平和で、普遍的で、何も変わらない。 我々にとって、それらは当たり前であり、無価値に思えるのかもしれない。 しかし、それ故に、それらはとても素晴らしいものだ。 素晴らしくて、とても美しくて、何物にも代え難いほどの価値を持つ、人類が価値を見いだした希望。 この希望は、決して潰えてはいけない。 それは、人類が生み出した希望なのだから......。

 

「それでね? あの有象無象共がウザいの何の...」

 

「全くお前という奴は...」

 

 私が思考の海に潜っていると、ランドセルを背負った2人の女子(小学生かな?)と男児1人と女児2人(こっちは幼稚園生?)の会話が聞こえ始めた。 まぁ、前世の頃の記憶を引き継いでいる私にとっては女子と言えるが、今世のボクにとっては年上のお姉さんと言えるだろう。

 

「お前はもう少し他人に興味を持ったらどうだ...タバネ(・・・)

 

「もう...本当にちーちゃん(・・・・・)は堅いな~」

 

 ......ん? タバネ? ちーちゃん? ......何処かで聞いたことのあるような呼称だけど......。 ......ダメだ、思い出せない......。

 

「チフユお姉ちゃん、束さんにそんなこと言っても無駄な気がする」

 

「私もそう思うよ、お兄ちゃん」

 

「いっくん、まーちゃん、2人共なんかいつも以上に辛辣だねぇ!?」

 

「イチカとマドカの言うとうりかもな...」

 

「ちーちゃんまで!?」

 

「姉さん...」

 

「やめて、ホウキちゃん! そんな哀れむような視線をタバネさんに向けないで!」

 

 ......チフユ、イチカ、マドカ、ホウキ、タバネ? ......あっ、まさか!

 

「IS〈インフィニット・ストラトス〉......!?」

 

「えっ!?」

 

「束?」

 

「「「「「......?」」」」」

 

 そうか......どうりでアレ(・・)の原作がこの世界に一切存在していなかったと思ったんだ......。

 この世界は........................ISの世界だったんだ。




...こんな感じで良いのかなぁ...。

本作品では、Mことマドカが例の組織とは関係を持ち合わせていません。

誤字・脱字報告、作品評価等、お待ちしております。


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Chapter Ⅱ【006】交流

学校生活忙しいです...。

圧倒的に時間が足りません..。


〔Ⅰ〕

 

 IS〈インフィニット・ストラトス〉。

 日本のライトノベルの一つで、ハイスピード学園バトルラブコメというジャンルで発売された作品だ。

 私は前世において、死ぬ2年ほど前に知り、割とハマっていた。 その為、先程のやり取りを見聞きしたことで、この世界がISの世界だと分かったのだが...。

 

「ね...ねぇ、君...。 い、今...IS(インフィニット・ストラトス)って...言わなかった...?」

 

 ......や っ て し ま っ た !

 先程の言葉と反応から察するに...この女子は...篠ノ之 束だ...。

 ...無難な返答をしておいた方が良いだろうか...?

 

「えっと...はい。 確かに言いましたが...」

 

 私が返答すると、篠ノ之 束と思われる女子は焦りの表情を見せながらも、面白そうなものを発見したかのような目を私に向ける。 割と器用なことをするな...。

 

「...君...名前は?」

 

「...シャーロット・エインズワースと申します」

 

 ...なんだろう。 イヤな予感しかしない。 だって、さっき彼女の瞳が妖しく光っていたもの!

 

「...シャーロット...ならシャロちゃんだね。 それでさ...何処まで知ってるの(・・・・・・・・・)?」

 

 最後の部分で、彼女は私にしか聞こえない音量でハッキリと口にした。

 ...やっぱりか。 この状態で誤魔化せる訳がない。 ならば、私もカードを切ろう。 とっておきの切り札(ジョーカー)を。

 

「知ってるも何も...ボクも似たようなものを持っている(・・・・・・・・・・・・・・・・)からですよ?」

 

「...!?」

 

 そう、私は転生時に3本の剣(宝剣)を特典として手に入れたのだが、それらを使っている内に、いつの間にかISのような状態に変化させることが可能となっていた。 今思えば、私が欲した剣はISとしてこの世界に顕現したのかもしれない。  ...まぁ、あくまで推測でしかないのだが。

 

「そうかぁ...。 ねぇ、シャロちゃん。 シャロちゃんはさ、今の世界をどう思う?」

 

 ...来たか。 ここでもし間違えたら全て御仕舞いだな...。

 

「楽しくあるのと同時に...退屈だと思う」

 

「へぇ...。 それは...何故?」

 

「一日の中における一つ一つの出来事は楽しいと感じる。 けれど、長期的に見ると退屈に思える。 毎日が同じことの繰り返し。 これでは機械と一緒になってしまう。 人間としての意味を持たないまま終わってしまう。 分かっていても何も出来ない。 故に退屈。 無価値で、普遍的で、必要性が皆無。 今のボクでは自分の人生に意味を持たせることが出来ない。 その為の全てが足りない。 故に退屈と思わざるを得ない。

 しかし、普遍的であるが故に美しい、と感じるものもあったりする。 家族の仲睦まじい会話。 平和の道を歩む民衆。 人類の可能性の増大。 それらは全て当たり前に存在するべきモノ。 しかし、存在しているからこそ美しい。 少なくともボクはそう思う」

 

「そっか...」

 

 まぁ、納得はしてもらえないだろうが、理解はしてもらえただろう。 兎に角、これで少なからず私と彼女が全面衝突することは無いだろう。

 

「成程...なら、束さんとシャロちゃんは似た者同士、ってことだね!」

 

 ...まぁ、確かに。 そう思われても不思議ではないのかもしれない。

 この世はつまらない。 そう思うが故に、世界を壊すことにした束。 この世を退屈だと思うものの、世界の良い側面を肯定し、守ることを決めた私。

 両者に共通するのは、世界に弄ばされ、現実における絶望を知ったということ。 しかし、私と束の違いは、絶望を知った後にある。

 絶望を認められず、人を、世論を、世界を恨んだ束。 絶望をすぐに認め、諦める選択を選んだ私。

 はっきり言って、どっちもどっちだ。 どちらも等しく、愚者である。

 

「...束。 ...それにお前も。 2人共、私たちの存在を忘れてはいないだろうな...?」

 

「「「「「............。」」」」」

 

「「............あっ」」

 

 束との会話に夢中で忘れてた......。

 

「...本当に私たちを忘れていたとは...」

 

 織斑 千冬とおぼしき女子が、私と束を現実に連れ戻した直後、織斑 一夏らしき男児が、

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん達ってどこに住んでいるの?」

 

 ...と、私達の家の場所を聞いてきたため、私は正直に話した。 すると、

 

「えっ、そこって僕の家のすぐ近くじゃん!」

 

 ...などと言いやがった。 えぇ......嘘でしょう......?

 

「じゃあさ、この子たちの歓迎会やろうよ! 勿論、皆で!」

 

 さっきまで再起不能になっていた束が突然そんなことを言い出す。 ...もう好きにしてよ...。 私は静かに思考を手放した......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅱ〕

 

 結局、彼女らの善意に勝つことなど出来るはずがなく、現在私は織斑邸のリビングに居座っている。 ...私、どこで間違えたんだろう? リセットボタンは何処ですか? セーブデータのロード機能はありますか? そもそもセーブデータってあるんですか?

 

「さて、ご近所さんということで、これから仲良くしていこうね! という訳で、早速自己紹介でもしようか! まずは私からだね。 篠ノ之(しののの) (たばね)だよ! 12歳で小学6年生だよ! 好きなことはちーちゃんたちと遊ぶことだよ!」

 

 えぇ、いつの間にそこまで進んでいるのか...。

 

「じゃあ、次は私がやろう。 織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)だ。 束と同じく12歳で小学6年生だ。 束とは同じ学校に通っていて、そこで知り合ったんだ」

 

「こんどは僕! 織斑(おりむら) 一夏(いちか)だよ! 3歳! 千冬お姉ちゃんは僕のお姉ちゃんだよ!」

 

「私の番だね! 織斑(おりむら) 円華(まどか)! 3歳! 千冬お姉ちゃんと一夏お兄ちゃんのことが大好きなの!」

 

「最後は私が。 篠ノ之(しののの) (ほうき)。 3歳だ。 束姉さんは私の姉だ」

 

 はい、原作キャラ組の自己紹介終了~! さて、観念して私たちも自己紹介をすることにしよう...。

 

「じゃあ、私からにしましょうか。 私はアリス・エインズワース。 12歳よ。 千冬ちゃんと束ちゃんとは同級生よ!」

 

「私はエレン・エインズワース。 36歳よ。 アリスちゃんとシャーロットちゃんの母親よ」

 

「「「「「えぇっ!? てっきりお姉さんだと思ってた!」」」」」

 

「ウフフ、ありがとう」

 

 そう、私の母は実年齢以上に若々しく、私と姉と母を並べると、仲睦まじい三姉妹にしか見えないのである。 ...私、生物学的には一応「男」なんだけどなぁ...。

 

「それでは、最後にボクが。 シャーロット・エインズワースと申します。 6歳です。 4月から、帝都大学理学部1年として入学する予定です。 ...このような格好と容姿ではありますが、これでも一応男です」

 

「「「「「「嘘ーーー!? 男だったの!?」」」」」」

 

 いや、そこかい...。 ここにいるほぼ全員が驚きの表情で私を見つめており、御母様だけが静かにニコニコしていた。 ...流石です、御母様。 ...って、アレ?

 

「あの...御姉様? 御姉様は何故、驚愕されているのですか?」

 

「............」

 

 ......完全に忘れていたな、御姉様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅲ〕

 

 私たちの歓迎会と称したパーティーは結果的に大成功。 私たちのことや、彼女らのこと、時にはこの世界のこと。 色々なことを話したなぁ。

 

「ところでさぁ、千冬ちゃん」

 

「どうしたんだ? アリス」

 

「千冬ちゃんの両親は何処にいるの? 私、挨拶しようと思っていたんだけど...」

 

「「「「「......」」」」」

 

 確かに私も少し気になっていた。 私がここに来たとき彼女たちの両親らしき人物はおらず、いつまで経ってもそのような人物が現れなかった。 アリス姉様がその疑問を口にした瞬間、5人が暗い表情になる。 ...アレ? 何かあったのだろうか?

 

「私たちの両親は............もう、此処にはいない」

 

 ............え? それってまさか............。

 

「...ちーちゃんたちの両親は、つい10日ほど前に亡くなったの。 父親の方は交通事故、母親の方は心臓麻痺で亡くなられた。 それで今は、2人が遺した遺産を使って3人とも生活しているの」

 

 私の知らない所で、そんなことがあったなんて...。 私はその事実に驚愕すると同時に、助けたいという思いが湧いてきた。 少しでも助けになれるのなら、私は今すぐにでもなりたい、と思ったのだ。

 

「......御母様、御願いがあります」

 

「何かしら?」

 

「親を喪った3人に、もう一度親の愛情を与えていただけないでしょうか?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「............」

 

 そう、私は『家族になる』という形で助けることを決心した。 私が出来る範囲では、これ以上のことは出来ないから...。

 

「......いいわよ?」

 

「「「えっ!?」」」

 

 良かった...。 私の言動で3人の命が救えるのなら、万々歳といったところだ。

 

「ただし! 条件があるわよ?」

 

「......条件、とは?」

 

 私は少し不安になった。 まさか、家族にしたのを良いことに、奴隷のような扱いを強いるのでは...と、一瞬思ってしまった。

 

「家族になる以上、貴女も、アリスも、千冬ちゃんも、一夏ちゃんも、円華ちゃんも、皆幸せになってもらうわ。 不幸になんかなったら、許さないからね?」

 

「「「「「......!」」」」」

 

 御母様......貴女って人は......。

 

「そういう訳ですので、改めて宜しくね? 千冬お姉ちゃん、一夏くん、円華ちゃん」

 

 私は今世最高の笑顔を3人に向ける。 すると、3人が涙を流しながら、

 

「シャーロットォォォ!!!」

 

「「シャロお姉ちゃぁぁぁん!!!」」

 

 と言いながら、私に抱きついてきた。 まぁ、こうなるのも無理はないのかもしれない。

 

「今はもうちょっと泣いていて良いんですよ? ボクは皆さんを待っていますからね?」

 

 私は、彼女たちの救いになれたのかもしれない。 そう思う私なのであった。

 ......あと、一夏に円華よ、私は男だから。




こんな形にしてみました。

最終的に、織斑一家はエインズワース家の一員となりました。

......あっ、名字は変わりませんよ?


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Chapter Ⅲ【007】諸々

教諭A「考査期間の始まりだぞー」

教諭B「資格試験も忘れないでねー」

その結果......。

学年末考査&大量の資格試験「「「やぁ^o^」」」

神近「;ºд º」

 はい、上記の通り、学年末考査と大量の資格取得試験に追われて執筆する余裕が有りませんでした。 誠に申し訳ございませんでした! m_ _m ゼンリョクドゲザー!

 それでは、本編をどうぞ......。


〔Ⅰ〕

 

 織斑 千冬、織斑 一夏、織斑 円華の3人が、私たちの家族となってから約半年の月日が経った。 私たちが家族になる前と後で、彼女たちの印象はがらりと変化していた。 千冬は、まるで憑き物が落ちたような表情となり、会ったときと比べて笑顔が非常に多くなった。 一夏と円華は、感情がとても豊かになり、心からの幸せを表し始めるようになった。

 私の判断で3人が幸せになれているのであれば、これ以上に嬉しいことはないだろう、と私は思う。 家族として、皆を幸せにしてみせなくちゃ! そう思う今日この頃。

 さて、私は現在とある場所にいる。 その場所とは...。

 

「やっぱりシャロちゃんの稼働データは面白いなぁ。 いつも私の想像を超えてくるよ」

 

「本当? ボクのデータが束お姉ちゃんの夢の実現に役立っていると良いけどなぁ...」

 

「その点については大丈夫! シャロちゃんのレベルが束さんの想定以上に凄かったから、あと一月もしない内にISの基礎データが完成しそうだよ~!」

 

 そう、篠ノ之邸の地下に秘密裏に存在している束専用のラボである。

 あの日のパーティーの後、私は束に自分が所有するIS(宝剣)の情報を提供し、束は私の稼働データを貰い、ISのデータを完成させるかわりに、私はISを用いた戦闘の経験を得て、自身の防衛力を高める。 要するに、一種の契約である。

 余談ではあるが、最近は千冬もこのラボに赴き、稼働データの提供に貢献している。

 

「さて、今回はこんなところかな。 いつも付き合ってくれてありがとうね」

 

「まぁ、元々ボクが束お姉ちゃんの夢に賛同したのがきっかけだったしね。 やっぱり気になるんだよねぇ、宇宙...」

 

 実際、宇宙が気になっていることは事実だ。 その上で、彼女と行動を共にすることは、私にとって非常に有益であるため、こうしてISの確立に協力しているのだ。

 

「そう言ってるけど、シャロちゃんは大学生なんだし、時間もあまりとれないはずでしょ?」

 

「まぁ、講義とか課題とかで結構潰れるけど...」

 

「無理しちゃダメだよ? 流石に7歳で過労死は悲惨過ぎるし...」

 

 ...何だろう、全然笑えない...。

 

「アハハ...。 取り敢えずボクはこの辺で帰ることにするね? それじゃあ、またね、束お姉ちゃん」

 

「うん! また今度ねー!」

 

 そう言って、私は束ラボを後にする。 此処からボクの家は徒歩5分圏内にあるため、家族に心配をかけることは(ほとんど)無い。

 さて、今日の夕御飯は何にしようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅱ〕

 

 あの日、私は転生する際に色々と願ったモノがある。 ISと化した宝剣もその一つだ。 他に特筆すべきものがあるとすれば、天使の翼(天翼と呼ばれている)と、6つの魔法だろう。

 まずは天翼についてだが、この天翼を操作するにあたって、苦労したことが仮想器官(私命名)の操作である。

 翼は人間には存在しない。 故に、どのように扱うのか全く分からない。 そのため、私は操作方法から考察する段階からのスタートとなった。 その後、私は天翼を展開したときに、天翼が背中から出現していることに着目し、その部分に仮の骨、神経、筋肉が存在していると考えた。 そこから、仮想器官の操作を修得するのに約半月の歳月をかけた。 その末に、ようやっと天翼の操作が可能になり、それから約1年後、空を羽ばたく鳥たちと同じような動きが可能となった。

 つぎに6つの魔法についてだが、割と特殊な魔法が多いと自分でも思う。 そもそも、この世界における魔法についての定義は、『三次元空間内に存在する魔力素子を体内を巡る魔導回路に取り込み、魔導回路内において魔法因子に変換した後、脳で想像した事象を記録した魔導記憶を呼び出し、魔導記憶を魔法因子に記録させた魔法力素を魔導回路を通じて体外に放出後、魔法力素によって生じる現象』を指す。 ちなみに、魔導回路にはインプット用とアウトプット用があり、私の場合はインプットは皮膚全体、アウトプットは虹彩となっている。 私の魔法力素は紅色のため、魔法使用時、私の虹彩は元々の緑色から紅色に変色してるように見える。 魔法の定義についてはここまで。 つぎは私が使える魔法についての説明だ。

 第1の魔法、世界の記憶に接続する魔法。 一般名は【接続】。 これは、地球などの星に刻まれた歴史や出来事を知ることが出来る魔法だ。 基本、どのような内容でも何の問題もなく閲覧出来るのだが、どうしても閲覧出来ない内容が幾つか存在する。 その一つが、2020年9月15日から2023年9月15日までの私に関する内容のすべて、である。 実は、私が私として覚醒した(即ち、私の意識がこの世界に来て、シャーロットに宿った)のは、2023年9月15日なのだ。 私の誕生日が2020年9月15日であることは、天界でも此方でも確認済みである。 ......明らかに怪しい。 恐らく、こちらにおける私の出生については、多くの秘密が存在するのだろう。

 第2の魔法、自身を囲む球状領域外からのベクトルを反転する魔法。 一般名は【防衛】。 これは、自分のいる地点を中心、自分の身長+1.5mを半径とした球状の領域を展開し、その領域外からのあらゆるベクトルを反転する魔法だ。 ただし、この領域内のベクトルは操作出来ないので注意。

 第3の魔法、人の感情を読み取る魔法。 一般名は【感受】。 これはもう、名前のままで、人が抱いている感情を知ることが可能な魔法だ。 具体的に言えば、人が抱いている感情がオーラのようなモノとその色で表され、感情を抱く対象(自身以外の特定の人物に限る)がいた場合はその人から対象に矢印が見える。 例えば、PがQに対して怒っている場合、Pの周りに赤く、刺々しいオーラのようなモノと、PからQに向かう矢印が見える。

 第4の魔法、エネルギーを別のエネルギーに変換、又は保存する魔法。 一般名は【操作】。 これは、自分が認知したエネルギーを別のエネルギーに変換したり、エネルギーそのものを保存したりすることが出来る魔法だ。 ちなみに、自分の生命エネルギーに変換したり、それを使うことも出来る。

 第5の魔法、肉体的ダメージを回復する魔法。 一般名は【修復】。 これは、自分の肉体的な損傷や疲労を回復する魔法だ。 無論、自身にも他者にも使える。

 第6の魔法、自身が認識した物質を別の空間に相互移動する魔法。 一般名は【転移】。 これは、私たちが存在する空間とは異なる特殊な空間に、自分が認識している物質を送ったり、呼び出したりする魔法だ。 ちなみに、自分が認識している物質には、自分自身も含まれている。 又、呼び出す場所は自由に指定出来るため、ワープの真似事をすることも可能である。

 さて、魔法の説明についてはここまでかな。 よし、暇潰しはこれでおしまい。 次の講義は確か、「複素数解析Ⅰ」だったかな? 準備をしなきゃ...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅲ〕

 

 あれから月日は大分経ち、私は7歳の大学2年生となった。 一夏、円華、箒は4歳の年長組になり、千冬、束、アリス姉様は13歳の中学二年生になった。

 この春、遂にISの基礎理論が確立され、束が大興奮していたのが記憶に新しい。 その3カ月ほど後、束は学会にISを発表。 無論、結果は原作通り、

 

「そんなものは机上の空論に過ぎん」

 

「現代技術でそのようなものが出来るわけがなかろう」

 

「単なる餓鬼の戯れ言だ」

 

とまぁ、散々なものであった。

 

「むっきー! なんで、どいつもこいつも私たちの発明が解らないのさ! こうなったら、実力行使するしか......」

 

「ちょっと待って、束お姉ちゃん! それは時期尚早だよ! 普通に月の岩石を採掘すればいいじゃん!」

 

「シャーロットの言う通りだぞ、束。 そのようなことをしたら、寧ろお前の夢からさらに遠ざかる結果になるぞ?」

 

 発表の翌日、私と千冬は怒り心頭の束を全力で宥めることしか出来なかった。 私たちの説得は1週間に及び、ようやく束が折れた。

 

「それじゃあ、2人は月の調査をお願い。 束さんは地上に残って援助するから」

 

 そして、2028年7月23日。 ISによる宇宙調査プロジェクトが開始。 そこで、私と千冬は、月の調査を行うことになった。

 

 千冬が乗るISは勿論、『白騎士』。私が乗るISは、私が独自で開発した、『宝剣世代IS』製造番号SS-000、『玄皇(くろおう)』である。

 

「......シャーロット、大丈夫か?」

 

「うん、ボクは問題無いよ? 千冬お姉ちゃんは?」

 

「私は大丈夫だ」

 

 短い問答。 私はこの中に、確かな家族愛を感じた。

 

『それじゃあ、プロジェクトについての最終確認をするよー。 ちーちゃんは直接月に行って岩石採掘を、シャロちゃんは万が一に備えて、地上からちーちゃんのサポートをしてねー。 その他、詳しいことはその都度束さんが秘匿回線(プライベート・チャネル)で伝えるよー』

 

「分かった。 ...頼んだぞ、束、シャーロット」

 

「......うん。 任されたよ」

 

『もちのろんだよ、ちーちゃん!』

 

 次の短い問答。 私はこの中に、強い信頼を感じた。

 そのような思いに浸っていたそのとき。

 

『2028年7月23日午前9時00分ニナリマシタ。 “プロジェクトプルーヴィング”ヲ開始シマス』

 

 ISによる宇宙調査プロジェクト、証明(プルーヴィング)の開始を伝えるメッセージが私の眼前に表示された。

 それと同時に、千冬は白騎士のスラスターを勢いよく吹かして、地上から離れ始めた。

 そういえば束が、白騎士の最高スピードはマッハ100だとか呟いていたような......。

 ......千冬、アンタ本当に何者だよ......。

 そう思いながらも、地上からの脅威が来ていないかを束と共に確認する。

 ......何も起こらないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅳ〕

 

 プロジェクト開始から約3時間が経ち、千冬がもう少しで月に到達しようとしていたときのこと。 それは、突然訪れた凶報であった。

 

『大変だよ、シャロちゃん! アメリカの軍事基地から2809発の大陸間弾道ミサイルが日本各地を目標に発射! スピードはマッハ25! 到達予測時間は今から約21分後! 突然で申し訳ないんだけど、玄皇で撃退して! ミサイルの位置は束さんが送るから!』

 

「えっ!? わ、分かった!」

 

 まさにフラグ回収である。 私がどう動いても、世界は『白騎士事件』に類似した出来事を必ず起こすように動いているのかもしれない。

 ......なんか地味に発射されたミサイルの数が増えているような......。

 嘆くしかない現状に、私は落ち込みながらも、突然の攻撃(世界の課題)に立ち向かうために、玄皇のスラスターを勢いよく吹かせた。

 

「シャロちゃん! 残り16秒でミサイル群に到達するよ!」

 

 約4分後、私は日本から約8,500km離れた地点にいる。 私はこの場所からミサイル(脅威)に対して......。

 

「反撃......するっ......!」

 

 私は自分の全力を以て、ミサイル(課題)を斬り始めた。

 そして......。

 

「これで......終わりっ......!」

 

 ミサイル破壊から約15分、ようやく私はすべてのミサイルを破壊することに成功した。 そういえば、原作通りの展開になるのだったら、多種多様な軍艦や戦闘機に囲まれることになるはず......。

 ......逃げるか。

 私は玄皇に搭載されたステルス機能を使い、その場から消えた(・・・)

 ......帰ろう。 今日は疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅴ〕

 

「シャーロット! シャーロットシャーロットシャーロット! 無事か!? 怪我は無いか!?」

 

「う、うん。 大丈夫だけど......」

 

 夕方。 無事に月の岩石の採掘に成功し、地球に戻ってきた千冬は、私の姿を見た瞬間、白騎士を解除してから約0.5秒後、すぐに私の身体を強く抱きしめた。 ......そのとき、私は一瞬姿を見落としてしまった。 いつもは、私が原因で暴走する千冬を宥める係である束は、先程の事件を沈めたISと今回のプロジェクトについての説明をするために、国会議事堂に向かった。 そのため、私は千冬からの拘束()を振り払うことが出来ずにいた。 ......うん、控えめに言っても引く。

 

「全く、姉さんも人使いが荒いな...。 何の説明も無しに...。 この場所に行って、っと言って家を出ていったし...。 姉さんは私に何をしてほしい...って千冬さん!? 何してるんですか、羨ましい! ...じゃなかった。 大丈夫ですか、シャロ兄さん!?」

 

「ほ、箒!? いや、これは違うんだ! これは...その...」

 

「羨ましいって何なの、箒ちゃん......。 それと何故、千冬お姉ちゃんが動揺してるの......」

 

 ちなみに、私の【感受】によって、箒が私に恋心を抱いていないことは既に判明している。

 でも、千冬が恋心を抱いているのは何故か......。

 

「ほら、今すぐシャロ兄さんを解放してください」

 

「うぅ...シャーロットぉ...」

 

「いや、何その残念そうな顔。 どうせ家の中でも同じことをするくせに......」

 

 ......私、なんだよなぁ......。 私、千冬に対して好かれるようなことしたかなぁ......?

 

「千冬さん...その気持ちは分かりますが、少しは抑えたらどうですか...」

 

 箒は千冬の、愛情から生まれた奇行に心底呆れている模様。

 

「うぐっ...そうしたいのは山々なんだが...」

 

 千冬はどうやら、私と共に暮らしている今の環境が、ある意味で堪えがたいらしい。

 ......ハァ。 この先、どうなってしまうのだろう。 私は心の中で嘆息せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、今回のプロジェクトによって、2つの出来事が歴史に名を残すこととなった。

 1つは、月の岩石の採掘という、ISによる宇宙開発の可能性を開くこととなった、ISの正しい価値を示すことができた出来事。 通称は、『白騎士革命』。

 そしてもう1つは、2809発の大陸間弾道ミサイルを約15分という早さで撃墜させ、1人の死者を出さなかった、ISの間違った価値を示すことになってしまった出来事。 通称は、『玄皇事変』。

 又、今回のプロジェクト、『プロジェクトプルーヴィング』をこのように言う人もいる。

 『人類の歪みの始まり』と。




神近母「ねぇ、舞」

神近「......はい、なんでしょう」

神近母「この点数は...何?」

神近「......えっと」

神近母「...おめぇの晩御飯、ねぇから!(激怒)」

神近「あぁぁぁんまぁぁぁりだあぁぁぁぁぁ......(悲痛)」

 *この茶番は、神近が考査結果を親に渡したときの問答を、三割増し(・・・・)の反応にしたものです。


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Chapter Ⅳ【008】機縁

シャーロット(以下、シャロ)「............」

神近(作者)「............」

シャロ「......約二年」

神近「......はい?」

シャロ「約二年......この小説、次の話が一切投稿されていなかったんだけれど......何してたの?」

神近「......私の想定を上回るレベルで高校生活が忙しく、執筆する時間が一切存在しておらず、まともに書ける時間を確保出来たのが一ヶ月前のことでして......」

シャロ「つまり?」

神近「......私の見通しが甘すぎましたッ! 今日に至るまで、投稿出来ず、誠に申し訳ございませんでしたアァァァァァ!」

 ......それでは、本編をどうぞ。


〔Ⅰ〕

 

 白騎士革命・玄皇事変から間もない、2028年9月15日のことだった。 この日は私の8歳の誕生日であると共に、金曜日である為、午前で講義が終わる日である。

 

「ねぇねぇ、シャロちゃん」

 

「どうしました? 唯華さん」

 

 夜竹(やたけ) 唯華(ゆいか)。 私と同じ帝都大学理学部2年生。 入学して以来、ずっとお世話になっている人で、良き友人として接している。 腰まで伸びている艶やかな黒髪や、優しげな表情を浮かべる端正な作りの顔、奥ゆかしさを漂わせる雰囲気は、現代に蘇った輝夜姫を思わせるものである。 ついでに言うとスタイル抜群。 例の双丘は......94はあるのではないだろうか?

 

「いつも以上に嬉しそうな表情をしているわよ? ......何かあったの?」

 

 ......唯華は本当によく見ているなぁ......。 この前、いつも身に付けているバッジを付けずに登校した際にも、

 

『......あら? いつものバッジが無いわね?』

 

 という風に直ぐに気付かれてしまったのである。 ......良い観察眼を持っているのだろうか? 取り敢えず、私が喜びの表情を浮かべている理由を答えなくては......。

 

「はい! 実は、今日はボクの誕生日なのです!」

 

 この言葉を聞いた唯華は、やっぱり、と、まるで予想通りと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

「そうだったのね......。 確かに、シャロちゃんのような年の子からしたら、誕生日は楽しいイベントに違いないわよね......。 ......わたしからしたら、『また1つ老けたか......』という感想の方が真っ先に来てしまうもの」

 

 ......その場合、前世の年齢と合わせたら45歳になってしまう私や、54歳となってしまう現世での姉(前世は先輩)は何と思えば良いのだろうか? ......いや、考えるのは止そう......私の精神が保たないだろうから。

 

「ボクの家では、誰かが誕生日を迎えたら盛大に祝うんです。 毎回割と豪華なパーティーを開くものだから、後処理が大変なんですよね......」

 

 エインズワース家の誕生日パーティーは豪勢、とまでは行かないが、それなりに豪華ではある。 飾り付けや、料理、渡されるプレゼントにetc......特徴的な点はたくさんある。 ......7月初頭に執り行われた御姉様と箒の誕生日パーティーのときも、私と御母様と紅葉(箒・束母)が料理係、一夏と円華と柳韻(箒・束父)が装飾係、千冬と束が余興係......という風に、細かい役割分担が存在していた。 今回もまた、似たような感じになるのだろう。 そんな懐かしい出来事を思い出していたら、突然、唯華がこんなことを言い出した。

 

「そうね......今日、シャロちゃんの家にお邪魔させてもらっても良いかしら? わたしも誕生日パーティーに参加したいわ」

 

 その言葉は、私にとって予想外のものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅱ〕

 

「......お邪魔します」

 

「じゃまするならかえってや〜」

 

「分かったわ〜」

 

「人の家で何してるんですか、貴女たちは......」

 

 あれから私たちは大学の食堂で昼食を済ませ、保育園に通っている唯華の2人の妹さんを迎えに行った。 そのときに、唯華は私の誕生日に行く旨を2人に伝えたのだが......。

 

「やだやだ! さゆかもお姉ちゃんと同じところにいたいよ〜!」

 

「......わたしも姉さんと一緒に居たい」

 

 という風に言われてしまい、急遽唯華の妹さんたちも私の誕生日会に参加することになった。

 

「わたし、夜竹 さゆか! よろしくね、お姉ちゃん!」

 

「......夜竹 舞華(まいか)......です」

 

 ......ん? 夜竹 舞華......? それって確か成瀬ちゃんの転生後の名前だったような......。 というか、さゆかちゃん...私は男なんだけど......。 因みに、舞華ちゃんの方が1学年上(現在6歳)らしく、さゆかちゃんは一夏や円華と同学年らしい(現在4歳)。

 

「よろしくね、さゆかちゃん、舞華ちゃん。 ボクの名前はシャーロット・エインズワース。 ......こんな見た目だけど、ボクは男だよ......?」

 

「え"っ......」

 

「......ッ!?」

 

 ......舞華ちゃんのこの反応...なんだか怪しいな。 夜竹という姓自体、かなり珍しいことから “舞華ちゃん = 成瀬ちゃん” という方程式は高確率で成り立っていると言えるだろう。 ......一応、【感受】を使っておくか......?

 

 ———【感受】被対象: 私。

 

 ......これで私に対する感情が分かるはずなのだけれど......。 今、私の視界には「その人が私に対してどのような感情を抱いているか」が分かる。 唯華は橙色の柔らかい感じのオーラを纏っていることから、「友愛」を抱いているようだ。 一方、さゆかちゃんは翡翠色のオーラを拡散させていることから、「驚愕」と「興味」の感情を抱いているみたい。 そして、気になる舞華ちゃんの感情だが......。

 

(......えっ? もしかして、あの(・・)シャーロットさん......? でも悪い人と決めつけるのは......)

 

 ......深青色の揺らめくオーラを纏っていた......。 どうやら彼女は私に対して「萎縮」しており、尚且つ「錯乱」状態にあるらしい。 ......うーむ、これは後で追及した方が良さそうだなぁ......色んな意味で。

 

「アハハ......まぁ、皆そんな反応になるよね......」

 

 そんな自分の思惑を胸に秘め、私たちは我が家に着いた......のだが。

 

「唯〜華〜さ〜ん? ふざけてないで、こっちに来てください!」

 

「ごめんなさ〜い」

 

 ......こんな調子で大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅲ〕

 

「「「「「「「「シャーロット(シャロちゃん/シャロ兄/シャロ兄さん/シャロお兄ちゃん)、一夏(一夏くん)、円華(円華ちゃん)、誕生日おめでとう!」」」」」」」」

 

 その後、なんやかんやあって私(15日生まれ)と一夏&円華(27日生まれ)の誕生日会の手伝いをしてくれた夜竹三姉妹。 舞華とさゆかは主に装飾の手伝いをしていたらしく、横断幕の文字が所々クレヨンで書かれている。 唯華は妹たちの加勢をしたり、余興係である千冬と束に入れ知恵をしていたりと、色んなことをしていた模様。 ......変なこと言ってないよね?

 

「「「ありがとう(ございます)、皆(さん)!」」」

 

「いやぁ、シャロちゃんは8歳に、一夏くんと円華ちゃんは5歳になるのねぇ......時の流れは早いわねぇ......」

 

「アハハ......そんなことを言うものではありませんよ御母様......」

 

 ......御母様、子どもの前でそういうことを言うものではありません。

 

「モグモグ......ほれおいひいよ(これ美味しいよ)

 

ほうははいひは(そうだな一夏)......モグモグ」

 

 ......一夏に箒、食べながら会話をしてはいけません。 はしたないから。

 

「初めて会った日と比べて随分と大きくなったな、シャーロット......今の身長はどれぐらいなんだ?」

 

「えっとね......確か128cmぐらいだったはず......束お姉ちゃん分かる?」

 

「そうだね〜私の手元にあるデータが正しかったら、127.7cmだよ〜。 初対面の時が確か115.2cm位だったはずだから......約2年で12.5cm伸びてるね!」

 

 ......そんなに変化してたっけ......? まぁ、6歳から8歳に至るまでの成長だし、それぐらい伸びてても可笑しくないのか......。

 

「ハァ......ちっちゃい頃も良かったけど......おっきくなった今も良いなぁ......」

 

「......ちーちゃん? シャロちゃんに抱きついている状態でその発言をするのは相当ヤバいよ......?」

 

 ......そう、何故か千冬は最初から私を後ろから抱きかかえた状態であり、全然私を解放してくれないのである。 ......まぁ、理由は色々と想像出来るけどね......。 決して、背後からハァハァ、といった若干艶のある声なんて聞こえていません。 ......そういうことにしてほしい......お願いだから。

 

「......むー! 千冬姉さんばっかりズルい! 私もお兄ちゃんにくっつきたーい!」

 

 そんな願いを女神———私にとってはアルちゃんだけがその存在に該当する———に祈っていると、突然円華が千冬に抗議していた。 因みに、1年前から円華は私を「お兄ちゃん」、一夏を「兄さん」と呼ぶようになり、その頃から円華は私にべったりになっていた(そんな光景の中、一夏はただ一人笑いを堪えていた......何故だ......)。

 

「......たとえ円華のお願いだとしても、それだけは譲れない。 後にしなさい」

 

「......姉さんのイジワル」

 

「グフッ......」

 

 そんな妹の口撃が効いたのか、千冬は私を抱きしめながら力尽きた......。 いや、離せや。 ......そういえば最近の円華の私を見る目が千冬のそれに似てきているような気がするのは気のせいだろうか......? 呻き声をあげている千冬を懸命に退かし、獲物を捉えているかのような目で私を見ているような気がするけれど......。 ......気のせいだよね?

 

「はーい、これからわたしたち夜竹三姉妹による即興漫才を始めまーす!」

 

 迫り来る脅威に怯えていると、いつの間にか余興が始まる時刻となっていた。 テーマは「子どもの為の漫才」であり、私や一夏、円華は大爆笑していた。

 

「この教室では、ピアノの上手なひきかたを教えているんですよー」

 

「わたし......ヴァイオリンが弾きたいですッ!」

 

「ピアノじゃないんか〜い!?」

 

 ......まぁ、こんな感じである。 因みに何故「漫才」がテーマになったのかというと、唯華とさゆかの趣味であった為である。 ......昼の玄関でのやり取りで完全に確信していたけれどね......。 ......あっそうだ、舞華のことを忘れていた。

 

「......舞華ちゃん、ちょっと一緒に来てくれない?」

 

「......ッ! ......分かりました......」

 

 私はそう言って、舞華を連れて移動するのだった......。 ......お願いだから、私の腕を離してよ円華......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅳ〕

 

Side Maika

 

 私の名前は夜竹 舞華。 少しまでは成瀬 京として人生を謳歌していた。 優しい両親や天真爛漫な妹との暮らし。 幼馴染の悠人や(とおる)、親友の灯里(あかり)恵美(めぐみ)との学校生活。 自分の趣味に没頭することの出来た環境。 まさに幸せの絶頂にいたのだが、それも長くは続かなかった......。

 

『今日も楽しかったなー』

 

『そうだね......』

 

『今日の徹の誤答には笑わされたわー』

 

『まさか“鉄血宰相”を“熱血宰相”と答えるなんてねー』

 

『ヤメてくれよ〜恥ずかしいんだからさ〜』

 

『『『『アハハハハ!』』』』

 

 私たちはいつも通りの日常を謳歌していた。 このまま何事も無く、平穏な一日を過ごす......はずだった。 ある日の学校からの帰路でのことだった。 その日は雨が降っており、周囲が見えにくい環境であった。 だからなのだろう、あの悲劇が起こったのは。

 

『京ッ! 危ないッ!』

 

 この道は交通量が非常に多く、先月にも小規模ながら交通事故が発生していた。 それ故に、突然大型のトラックが曲がってきても不思議ではなかったのだ。 私は致命的な過ちを犯した。 悠人の警告を完全に無視して静止してしまったからだ。 悠人が私を助けようと手を伸ばす。 しかし、もう間に合わない。 大型車両による圧倒的な力に吹き飛ばされ、私はそのまま意識を手放した......。

 

「......ん? 此処は......?」

 

 ......目を開けると、そこには知らない天井が映っていた。 周囲を見回すと、幼い女児の趣味嗜好が盛り込まれた物品で埋め尽くされており、子どもの頃の自分の部屋の光景を連想させられた。 ......動かなくては、そう思って起き上がると、視界がいつもより狭く感じ、思うように体が動かなかった。 ......何か異常があるのだろうか? 近くに姿見として使えそうな鏡があった為、自身の姿を確認することにしたのだが......。

 

「えっ......誰なの......この子......!?」

 

 鏡が映した私の姿は、見慣れた女子高生のそれではなく、見たことのない幼女のものであったのだ。 そのとき、私は思い出した。 成瀬 京は死に、自身は夜竹 舞華として転生した、という事実を。 それから私は自分が6歳であることを知り、懸命に幼女のふりをした。 特に、姉の唯華と妹のさゆかにだけはバレないようにするのは大変だった。 しかし、そんな努力も水の泡となってしまった......。

 

『ボクの名前はシャーロット・エインズワース。 ......こんな見た目だけど、ボクは男だよ......?』

 

———シャーロット・エインズワース。 転生前、神を名乗る老人に大罪人として認定された......らしい人物の名前だ。 目の前の美幼女......のような美少年は自身をそう名乗ったのだが......えっ? もしかして、あのシャーロットさん......? でも悪い人と決めつけるのは良くないだろう......。 実際、転生直前に会った彼女は、言動や仕草が優しさに溢れていたのだから。 そんなことを考えていると、いつの間にかシャーロットさんの家に着いていた。 そして、時は流れ......。

 

『......舞華ちゃん、ちょっと一緒に来てくれない?』

 

『......ッ! ......分かりました......』

 

 ......遂にこのときが来た。 シャーロットさんに呼ばれ、ついていく私。 リビングを離れ、着いた先はシャーロットさんの自室。

 

「この部屋の壁は防音加工が施されているから、何の話をしようと他者に聞かれることはないよ」

 

 そう言って、シャーロットさんは私の目を見つめて続ける。

 

「薄々勘づいていたと思うけれど、ボク......いいえ、私はシャーロット・エインズワース。 37年ほど前世で暮らしていた記憶があって、前は女だったけど今は男として今世を謳歌しているわ」

 

 ......やはり、彼があの(・・)シャーロットさんだったのだ。 それにしても......今は幼女のような外見だからまだしも、成長して男らしい外見になったときに同じような台詞を言われたら......なんかイヤだな......。 ......って、こんなことを考えている場合じゃないな。 彼女......いや、もう彼というべきか。 私は彼に自身の正体を明かす一言を発した。

 

「......夜竹 舞華です。 ですが......前世での名前は成瀬 京。 おおよそ17年、前世を歩んでいました......」

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔Ⅴ〕

 

 波乱に満ちた誕生日会から3ヶ月の月日が経った。 あの日、舞華が転生者「成瀬 京」であることが発覚し、私は覚えている限りの「原作」や、アルちゃんから伝えられた「神々の悪行」に関する情報を提供した。 その上で、私は皆を亡国機業(ヤベぇ奴ら)天神たち(ク◯野郎共)から守る為に行動することを舞華に伝えた。 そのときの舞華の反応は———

 

『そう......ですか......。 シャーロットさんは凄いですね......。 ......私にはそんなこと......到底......』

 

 ———といったものだった。 まるで、憧れを抱くと共に恐れも抱いていたかのような声音で言っていたのだが......彼女にも「何か」があるのだろうか......。 ......どうにか出来ないのだろうか......。

 

「......ふぅ。 やはりシャーロットの淹れたお茶は美味しいな......」

 

 今日はクリスマス・イヴ。 千冬たちの中学校や一夏たちの小学校では終業式が執り行われた日である。 12時現在、家にいるのは私と千冬のみであり、御姉様と束は一夏たちを連れて近所のレストランで食事を摂っているらしい。 因みに、千冬は自己鍛錬を理由に先に帰ってきたらしい。 ......さっきからお茶を飲んでいたり、テレビを見ていたりしていて、全然それらしいことはしていないのだが......。

 

「そう? それなら良かった。 お姉ちゃんの笑顔ってとっても可愛いから、眺めててとっても和むんだよねぇ......」

 

「むっ......『可愛い』という言葉で大人をからかうのはあまり良くないぞ」

 

「本当に可愛いから言ってるだけなのに......」

 

「......そういうところだぞ......」

 

「ん? 何か言った?」

 

「......何でもない!」

 

 そう言うと、千冬はそっぽを向いてしまった。 ......なんでさ。 それから暫くの間、この場は沈黙によって支配されていた。 ......どうしよう、なんだか気まずい......。

 

「......シャーロットは」

 

 どうにかこの空気から開放されたい、そう思っていたとき、唐突に千冬が私に話しかけてきた。

 

「シャーロットは......あの女のことをどう思っているんだ......?」

 

「『あの女』......? それって誰のこと?」

 

「......前回、シャーロットの誕生日会のときに来た......学友と言っていた女のことだ」

 

「学友......もしかして、唯華さんのこと?」

 

「......そうだ」

 

 突然、何を言い出すかと思えば......何故、そんなことを気にするのだろうか......?

 

「唯華さんは良い友人だよ。 帝大に入ったばかりの頃からの付き合いで、対等に接することが出来る人の一人......かな」

 

「......そうか」

 

 私がそう言うと、千冬がまるで何かを決心したかのような表情になり、再度私の方に顔を向けた。 そして私に近づくと———

 

「......んっ」

 

「えっ———」

 

 ———私の唇は千冬のそれによって完全に重ねられていた。 私は咄嗟のことで思考が追いつかなかった。 ......えっ? なんで私、千冬にキスされてんの......? 訳わかんない......。 体感時間で数十秒程経っただろうかというタイミングで、千冬は唇を私から離した。

 

「ふぅ......シャーロット。 よく聞いてほしい」

 

「はぁ......はぁ......な、何?」

 

「私は......シャーロット、お前が......好きだ。 お前なら、私の言いたいこと......理解出来ているはずだ......」

 

「............」

 

 ......確かに、私は千冬の抱いている好意に気づいていたし、この行動で完全に確信した。 けれど、私には......そんな資格なんて———

 

「今は何も言わなくて良い......。 だが、私がお前に何を思っているか......それだけは知っていてほしかったんだ......」

 

「お姉ちゃん......」

 

 千冬は今にも涙を流しそうな表情で、切なげな声音でそう言った。 ......ほんとに、私の何が良いんだか———

 

「先......輩......?」

 

 ゴトッ! 何かを落としたような音と共に、初めて聞く声がした。 音が聞こえた所に顔を向けると、其処には千冬が通っていた小学校の制服と思しき服を着た緑髪緑眼の少女が居り、その子の後ろから何故か御姉様が現れた。 ......オイ、子どもたちはどうしたんだ。

 

「ふふっ。 なんだか面白いことになっているみたいね〜」

 

 ......楽しんでないで、どうにかして下さい。 ......この空気を。




神近「......そういえば、本日は今上陛下の誕生日であらせられますね。 誠におめでとうございます!」

シャロ「ボクの誕生日には一切言わないくせに、日本のエンペラーにはメッセージを残すんだね......」

神近「......マジでスイマセンでしたッ! これからは投稿頻度を上げていきます! ......本気で」

シャロ「こんなダメダメな作者ですが、これからもこの作品を宜しくお願い致します!」


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