正義の味方 (深き森のペンギン)
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第1話 出会い
嘘だろ…
俺は正しい事をしてきた筈なのに、何で不幸なんだ!
父さんの最期も看取る事も出来なかったなんて。
これでもう両親は居ない。
俺はどうすれば良いんだ!
~数時間前~
花咲川学園高等部に通う高校生である俺こと桐生正義は、いつも通りになんの変哲もない日々を過ごしていた。
「8時か、これはヤバいな。まあお婆さんの荷物を代わりに持って行った後にひったくりを追いかけてこんな遠くまで来たからな。ちょっと飛ばすか。」
こうして俺は学校に到着した。
「桐生君!まったく貴方はいつも遅刻ギリギリで学校に来て!もう少し早く来れないんですか?」
また氷川さんか。彼女はとても真面目で風紀委員に所属している。
だから遅刻ギリギリの俺の生活習慣を心配しているんだろう。
気持ちはとてもありがたいが俺は困っている人がいたら放って置けない性格で早く学校に行こうと思っても気づいたら体が動いてしまっていて気づいたらこんな時間になってるんだ。
でもこれは理由には出来ない。
「明日から頑張るよ。」
「いつもそれ言ってるじゃないですか!」
すると始業のベルが鳴った。
そうして俺は午前の授業を乗りきり、昼休みの時間になった。
「さて、いつもの所行くか。」
俺は普段から屋上で弁当を食べている。
何故なら早々に弁当を食べ終えた後に太陽の光に当たりながらする昼寝が最高に気持ちいいからだ。
俺は屋上のドアを開ける。
先客が居たようだ。
まあ気にせずに食べようとベンチに腰かけた。
その時、先客に話しかけられた。
「桐生君、一緒にお昼食べよ?」
「ええっと、君誰?」
「同じクラスなんだけどなぁ。私は丸山彩。よろしくね。」
「よろしく丸山さん。」
「桐生君って、いつもここで食べてるの?」
「ああ、そうだよ。丸山さんはなんでここに来たの?」
「なんとなく…かな。(桐生君と一緒に食べたいから、なんて言えないよ)」
「丸山さんって、ハンバーグ好きなの?」
「え、何で?」
「だってハンバーグを食べる時少し笑顔になるから、かな。」
「私そんなに笑顔だった?」
「うん。」
こうして、珍しく人と一緒にお昼を食べた昼休みは終わった。
午後の授業を乗りきって時は放課後。
俺は図書委員に所属している。
俺はいつも通り図書室に向かった。
いつも通りカウンターで本を読んでいたら、ガラガラとゆっくり戸の開く音がする。
「やあ、白金さん。」
「桐生君…こんにちは。」
白金さんは同じ図書委員の女子生徒だ。
さて、本の整理でもしますか。
白金さんも本を整理している。
高い位置の本棚を整理しようとしていたので、白金さんは、うっかりバランスを崩してしまう。
俺は咄嗟に白金さんを支える。
「大丈夫?高い所は俺がやっておくから。」
「あの…桐生君。近いから…//」
「ああ、ごめん。」
その後本の整理を終えて学校から家に帰る途中、電話が掛かってくる。
「桐生正義さんですか?」
「はい。そうですが。」
「貴方の父の桐生義章さんが、事故で今病院に運ばれて現在生死をさまよっています。」
「わかりました。すぐに向かいます。」
俺は、病院に着いた。
「父さん!」
父さんは、変わり果てた姿になっていた。
~冒頭に戻る~
「君が、桐生正義君かい?」
父さんと同年代の見た目の男性が、話し掛けて来た。
「はい、そうですけど。貴方は?」
「ああ、僕は氷川一樹。君の父親の友人だよ。正義君。君に話がある。ついて来てくれ。」
僕は氷川さんに着いていった。
病院のテラスで、氷川さんは話を切り出した。
「僕は、君の父親に彼が死んだら、息子を引き取ってくれ、と言われたんだ。」
「そうなんですか?」
「だから、君を引き取りに来た。明日の夜君の家に行くから、荷物をまとめておいてくれ。」
「はい。分かりました。」
正直状況が理解できない。急に引き取るだなんて言われても。
急に父さんが死んだのも。
この日から、俺の日常はこれから出会う人々によって、変えられて行くのを、俺は知るよしも無かった。
主人公のプロフィール
桐生 正義 (きりゅう せいぎ)
身長 187cm
体重 74kg
年齢 16才の高校二年生
誕生日 1月23日
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第2話 新しい家族
翌日。氷川さんが家にやって来た。
「正義君。準備は出来たかい?」
「はい。出来ました。」
「じゃあ、後ろの荷台に乗せてくれ。」
こうして俺は荷物を軽トラの荷台に乗せて、助手席に座った。
「正義君は花咲川学園に通ってるんだろう?」
「はい、そうですけど。」
「花咲川学園には僕の娘も通ってるんだよ。もしかしたら会ったことがあるかもね。」
「そうかも知れませんね。」
あれ?なんか花咲川の氷川って言ったらあいつしか思い浮かばんのだが…
まあ、気のせいか。気のせいだと信じたい。
こうして氷川家に到着した。
「おかえり!パパ!」
なんかスゲー氷川にそっくりな女の子が出てきたんだが。
「ただいま、日菜。」
「あれ?その人は?」
「あれ?言って無かったっけ?彼が僕の親友の息子の桐生正義君だ。」
「そうなの?正義君…なんか違うな~……うん!せーくんだ!るんっ♪ってきた。」
なんかスゲー変な奴なんだが。
「よろしく。日菜。」
「せーくん、早く来てよ~!」
日菜に言われるまま家の中に入る。
廊下を歩いてリビングに案内された。
「もうこんな時間だしご飯にしよ~よ!いいでしょ?ママ!」
「君が正義君?」
「はい、そうですけど。」
「私は氷川夕夏。よろしくね?」
「はい。よろしくお願いします。」
「紗夜ー!ご飯よ!降りてきなさい。」
すると見覚えのある少女がリビングに入ってきた。
「桐生君!なんで貴方がここに?」
「この子がお父さんの言ってた親友の息子よ、紗夜。あなた正義君のこと知ってたの?」
「知ってるも何も同じクラスよ。」
こうして、氷川家での夕食が始まったのだ。
「ふ~旨かった。」
「そう?喜んでくれてよかったわ。正義君ってよく食べるのね。」
「はい。食べないと筋肉が付きませんから。」
「正義君って筋トレが趣味なの?」
「趣味というか、習慣というか、いざというときには鍛えた身体が一番役に立つ。という信条ですかね。」
「あら、頼もしいわね。お父さんガリガリで力が無いから逞しい男の子がいればな~って思ってたんだよね~。」
「何でも言って下さい。せっかく住ませて貰ってるんですから。」
「ねえねえ、せーくんっておねーちゃんと同じクラスなんでしょ?」
「ああ、そうだけど。」
「学校でのおねーちゃんってどんな感じなの?」
クッ、いつもガミガミ怒鳴ってくるうるさい風紀委員だなんて言えない。
「ああ、彼女はとても真面目で回りの生徒の事をよく考えてくれてとても頼りになる人だよ。家ではどんな感じなんだ?」
「おねーちゃんはとっても優しくて最高のおねーちゃんなんだ!」
「へ~、おねーちゃんのこと大好きなんだな。」
「うん!おねーちゃんの事は大好きだよ!」
こうして夕食が終わった。
「正義君って将棋は指せるかな?」
「ああ、させますよ。よく父さんとやってたし。」
「さて。やるか。」
一樹さんとの将棋対決が始まった。
結果は僅差で俺が勝った。
「正義君、やっぱ義章の息子だけあって強いな。もうこんな時間だし風呂に入って来たらどうだ?」
「ありがとうございます。」
さて、風呂に向かうか。
着替えを部屋に取りに行くか。
新しい俺の部屋にはベッドとタンスとテレビとパソコンだけというシンプルな部屋だ。
部屋から着替えを持って脱衣所に向かう。
脱衣所のドアをガラガラと開けたら、ちょうど全裸の紗夜がいた。
「この、変態!」
紗夜の渾身のパンチで俺は意識を失った。
目が覚めると、何か柔らかいものが頭の下にあることに気づいた。
そっと目を開けると、紗夜がいた。
「目が覚めましたか?正義さん。さっきは取り乱してしまって、…」
「こちらこそごめんな。さっき見たものは忘れるから。てことで俺は風呂に入って来るよ。」
そうして誰も居ないことを祈って脱衣所のドアを開けた。
今度は、誰もいなかった。
風呂の中で俺は考えた。
今日1日、いろんなことがあったな。
例えば、紗夜の裸見たり、紗夜の裸見たり、紗夜の裸見たりとかって忘れろ忘れろ!
クソッ、女性への耐性が無さすぎるんだが。
こうして風呂から出て、部屋へ向かった。
「ようやくNFOが出来るぜ!」
『遅くなりました。RinRinさん。あこ姫さん。』
『大丈夫ですよ。今きたところなので、ジャスティンさん。』
『さて、今日どのクエ行きます?』
『じゃあこの期間限定のボスでお願いします。』
『いいですね~そのクエスト。』
こうしていつもの日課であるNFOが終わった。
さて、寝るか。
~一方その頃~
紗夜の部屋にて。
「うう~正義さんに裸を見られてしまったわ。でも正義さんの顔って近くで見るとなかなか格好よかったって何言ってるの私//」
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第3話 監視
「999…1000っと。慣れると大したこと無いな。さて、着替えるか。」
俺の日課は早朝の筋トレである。
俺は筋トレを終えて着替えようと服を脱いで上半身裸になったとき突然俺の部屋のドアが開いた。
「正義さん…ってええ!せ、正義さん!服…着て下さい//」
紗夜だった。紗夜も大分取り乱している。昨日の夜の俺もこんな感じだったんだろう。後、両手で顔隠してるけど指の隙間からチラチラ見てるのがバレバレだし。
確かにそうだな。服を着よう。
「おーい、紗夜。服着たぞ。」
「分かったわ。朝ごはんの時間よ。降りてきて。」
俺は紗夜と一緒にリビングに向かった。
でも紗夜って普通に美人だよな~。
なぜか昨日の夜からめちゃくちゃ意識してしまうんだが。
こうしてリビングに到着した。
やはり旨かった。これなら毎日だって食べられる。
これが母の味って奴なのかな。俺にはよくわからん。
なんせ母親なんて物心付いた頃からいなかったからな。
「正義さん。一緒に登校しましょう。」
考え事をしていると紗夜から爆弾が投下された。
「ええ!一緒に登校!?待て待て嘘だろ?嘘だよな?」
紗夜は涙目で
「私のことがそんなに嫌いだったなんて…」
「いやいや、紗夜の事が嫌いなわけ無いだろ!むしろ好き!好きだから!」
「正義君…かわいいわね。」
「せーくんかわいい!るんっ♪ってきた!」
「正義君みたいな男の子なら、僕も娘を託せるかな。」
紗夜の爆弾発言に爆弾発言で返してしまったことに気づいた俺は紗夜の方を見ると、紗夜の顔がトマト以上に真っ赤になっていた。
「せ、正義さん…こんな所で、す…好き…なんて//」
「紗夜もまんざらではなさそうだし、君達、お似合いだね。」
「と、とにかく。紗夜!早く行こうか。」
「あ、はい。そうしましょう。」
こうして、なんとかあの空気を抜け出して出発した。
「あ、あの~紗夜、さっきはごめんな。嫌だったよな?」
「別に気にして無いわ。さっきの事は忘れましょう。そうした方がお互いのためだし。」
「そうだな。なんかあそこのコンビニの所にいる奴、うちの生徒じゃないか?」
「言われて見れば、そうね。」
「紗夜。ちょっと俺の鞄持っててくれ。」
「ってええ!正義さん!」
俺はコンビニの所に駆け込んだ。何故なら、不良がうちの女子生徒に絡んでいたからだ。
「君達俺達と一緒に遊ばない?つまんない学校なんて行かずにさあ?もっと楽しいことしようよ。」
「悪いけど貴方達に構っている暇は無いの。行きましょ花音。」
「調子乗ってんじゃねえぞこのクソアマァ!」
男が女子生徒に殴りかかった。
俺はなんとか間に合い男の拳を受け止める。
「誰だ!野郎にゃ興味ねーんだよ!」
「だからさっさと死ね!」
男の仲間が鉄パイプを俺の後頭部に振り下ろした。
鉄パイプが俺の後頭部にヒットする。
その時だった。
勢いよく鉄パイプの方がグニャリと曲がった。
「ん?何かしたか?雑魚共。」
そして一瞬のうちに不良を片付けた。
「大丈夫か?」
「ええ。貴方こそ大丈夫?後頭部に鉄パイプが当たったようだけど。」
「鉄パイプ位大したこと無いよ。」
「貴方、B組の桐生君ね?」
「ああ。そうだけど。どうして分かったんだ?」
「貴方有名人よ。うちの高校の番長だとか。」
「番長!?そんな大したもんじゃあ無いよ。」
「それより、この件についてお礼させてほしいの。今週の土曜日は空いてる?」
「ああ。何の予定も無いけど。」
「じゃあ今週の土曜日の11時に羽沢珈琲店にきて。」
「お、おう。人待たせてるんで、それじゃあな。」
こうして、不良を退治して女子生徒と謎の約束を取り付けて紗夜のもとに戻った。
「ごめんな。紗夜。遅くなって。」
すると、紗夜が胸元に寄り掛かってきた。
「正義さん、心配…したのよ?」
「だからごめんって。」
「とにかく!無茶はしないで!」
「まったく無茶じゃあ無いよ。でも、心配かけたのは謝る。」
「さあ、早く行くわよ。」
こうして俺はいつもより早く学校に到着した。
紗夜と廊下を歩いていると、他の生徒の声が聞こえてきた。
「あの二人って付き合ってたの?」
「マジか。桐生の奴あんな美人と!あいつ絞めてやる。」
「いやいやお前じゃあんな怪物倒せないって。」
あいつら人を怪物呼ばわりしやがって!
まあいいや。特に害は無いみたいだし。
すると、紗夜から一つ言われた。
「今日から!貴方の学校生活を監視するわ!」
「何で?」
「貴方が遅刻にサボりの常習犯だからよ。」
マジかよ。監視はねえわ。
でも、口答えするとうるさくなるのは目に見えている。
なので、俺は口答えはしない。
でも、これが原因でとある事件が起こる事を俺は知る由も無かった。
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第4話 事件発生
俺は今日1日、紗夜に監視されている。
例えば授業中。運が悪い事に俺の後ろの席が紗夜なのである。
そのせいで授業中寝ようとしたら、紗夜にペンでめちゃくちゃつつかれる。
さらにそれを無視すると椅子の足を蹴って来る。
ようやく午前の授業が終わった。
昼休みには屋上でお昼を食べるのが俺のスタイルだ。
よって俺は屋上に向かうのだ。いつもは一人だが今日は違う。
紗夜がいる。彼女は俺を監視すると言って屋上にまで着いてきた。
「紗夜、俺とお昼食べても面白く無いぞ?」
「そんな問題では無いわ。貴方が午後の授業に遅れないようにするためについていくの。分かった?」
「へいへい。」
俺は屋上のドアを開けた。
「あっ桐生君!今日も来ちゃった。」
「丸山さん!今日も一緒にお昼食べてもいい?」
丸山さんがいた。これは嬉しい。
「丸山さん今日もハンバーグ入ってるじゃん。ホントにハンバーグ好きなんだね?」
「うん。」
「あの~正義さん?私を忘れて無いかしら?」
しまった。紗夜の事忘れてた。
「いやいや、忘れて無いから。マジで」
「正義さん酷い…意図的に放置するなんて。今朝あれほど好きと言ってくれたのに。」
まーた爆弾を投下しやがって!
「今朝の事は忘れてくれ!あれは事故だから!事故!」
「桐生君って紗夜ちゃんと付き合ってたの?」
お前もかよ。お前も爆弾発言すんのかよ。
しかも紗夜の方を見ると真っ赤になって機能停止してるし。
「い、いや~付き合って無いけど。」
「そうなんだ。すごく仲がいいと思って。」
「それほどか?」
「うん。だって今日ずっと一緒にいるよね?」
「ああ、これは俺の学校生活を監視する、って紗夜が言っててさぁ。」
「そうなんだ…桐生君も変な事しちゃダメだよ?」
「へいへい。」
こうしてお昼を食べ終えた丸山さんは教室に戻っていった。
さて、昼寝でもするか。
「紗夜、俺は今から昼寝するから教室戻ってもいいぞ?」
「やめとくわ。昼寝するのなら…」
紗夜は自分の太ももをポンポンと叩いた。
「ここで昼寝して?」
拒否する筈が無いだろう!昨日の幸せな感覚をもう一度味わえるのだから。
「じゃあ遠慮なく。」
紗夜の太ももの感覚が幸せ過ぎて一瞬で寝てしまった。
「ウフフ。正義さんってやっぱりかわいいわね。今朝の返事だけど、私も好きよ。正義さんの事。まあ今朝の正義さんの発言は事故だって分かってるけど。」
このまま昼休みは終わりへと近づいた。
「―――さ―――さん!――正義さん!起きなさい!」
「ああ、おはよう。もう昼休みは終わりか?」
「教室に戻りましょう。正義さん。」
「オーケー。」
こうして俺達は教室に戻った。
午後の授業を何度も紗夜に起こされながら、乗りきった。
「紗夜、俺今日委員会なんだが、帰り遅くなるけどいいかな?」
「もちろん。玄関で待ってるわ。」
こうして俺は紗夜と別れ図書室に向かった。
俺が扉を開けると、白金さんが先に来ていた。
「やあ、白金さん。遅くなった。ごめん。」
「桐生君…こんにちは。ううん。私も今きたところだから。」
「あの…桐生君って、氷川さんと付き合ってたの?」
「いや。紗夜とは付き合って無いけど。」
「すごく…仲良さそうだったから。」
「でも、これまで名字呼びだったよね?なんか急に…名前呼びに変わったから。」
「ああ。それか。事情があってな。」
「事情?言いづらい事?」
「いや。別にいいけど。数日前に父さんが死んでな。父さんの親友に引き取られたんだ。それが紗夜の父さんで、みんな氷川で分かりづらいから名前呼びになったんだ。」
「そう…だったんだね。(安心した。)」
俺は仕事を終えて玄関に向かった。俺が靴を履き替え外に向かおうとしたとき、紗夜の悲鳴が聞こえた。
~正義が図書室にいた頃~
紗夜が下駄箱を開けると、中から手紙が出てきた。所謂ラブレターと言う奴だ。
「こういう人達ははっきり断らないとあとからしつこいので、行きましょうか。」
紗夜は手紙の指定通り校舎裏に向かった。
相手は上級生だった。
「貴女の事が好きです。付き合って下さい!」
「ごめんなさい。貴方の事が好きじゃないの。」
「フザケルナァ!ボクハ、コンナニモスキナノニ!」
男は紗夜に襲いかかった。
「きゃあ!誰か、助けて!正義さん!助けて!」
果たして正義は来るのだろうか。
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第5話 怪物
俺は委員会の仕事を終え、紗夜と合流しようとしていたとき、紗夜の悲鳴が校舎裏から聞こえて、全速力で校舎裏に向かった。
すると上級生が10人ほどで立ちふさがった。
「おおっと、兄貴の所には行かせねえぜぇ?」
「邪魔だ。そこをどけ。痛い目に会いたく無ければな。」
「イキってんぞ、このクソガキが!」
一人が殴りかかってきた。
「避けるまでもねえ!」
拳が顔面にクリーンヒットした。ただし、まったくダメージは無い。
俺はそのまま腕を掴み片手で後ろに軽々と投げ飛ばす。
「「調子に乗りやがって!」」
今度は二人か。時間がないんだ。いっぺんに来いよ。
俺は二人の頭を掴み、思いっきりぶつけた。
二人はそのまま倒れあと7人。
「いっぺんに来いよ。もしかしてビビッてんのか?」
「チッ、ふざけやがって。」
7人一気にきた。
でも構っていたらきりがないので体格にものを言わせたタックルで全員吹き飛ばして校舎裏に向かった。
~一方その頃~
「桐生を呼んだところで奴は来ねえぜぇ?俺の部下が10人でボコってるからよ?」
「そんな…正義さんはそんな奴等には負けない!」
紗夜は正義が助けに来ることを祈った。
それも男に否定される。
するとその時だった。
正義が本気のカンフーキックを男の後頭部に食らわせた。
「桐生~正義ィ!もう決めた。紗夜ちゃんは後だ!お前から殺してやる。」
「悪いけどお前みてーな小物じゃあ無理だろ。お前に俺は倒せねえ。」
男は俺に襲いかかった。
パンチの勢いもスピードもさっきまでの雑魚とは格が違う。
でも俺は男の顔面を思いっきりぶん殴った。
男は倒れ白目を剥き泡を吹いている。
「大丈夫だったか?紗夜。ごめんな。遅くなって。」
「正義さん…う…ぐすっ……怖かった。すごく怖かった…。」
紗夜が抱き付いてきた。
「そうか。怖い思いさせちまったな。ごめんな、マジで。」
こうして紗夜の気が済むまで慰め続けた。
紗夜が泣き止んだ所で、もうとても遅い時間になっていて外はとても暗くなっていた。
「紗夜、もう遅いし外で済ませるか?」
「そうしましょう。」
「何処にする?」
「じゃあファミレスはどうかしら。」
「良いね~ファミレス。そう言えば最近行って無かったな。」
こうして俺達はファミレスに到着した。
「紗夜~何食べる?」
「じゃあこのポテトはどう?分けられるし。」
「そうだな。俺ポテト大好きなんだよなぁ。」
「そうなの?」
「ああ。週3でハンバーガー屋行く位だし。」
「私もポテト大好きよ。(貴方と食べるポテトが一番だけど)」
「じゃあポテトにするか。」
注文してすぐにポテトはやって来た。
ここのファミレスのポテトはカリカリで塩気が効いていてなかなか旨い。
癖になりそうだ。
こうして紗夜との外食を終えて家に向かった。
家に着いてそうそうに夕夏さんにいじられた。
「紗夜とデートしてきたの?」
って感じで。
今日はかなり疲れたのでNFOはせずに風呂に入って寝た。
翌日
俺が下に降りると、エプロン姿の紗夜が料理をしていた。
「夕夏さんは?」
「まだ寝てるわ。」
「そうなのか。」
その後二人で誰よりも早く朝食を済ませた。
まだ早かったので、ランニングする事にした。
「てことで走ってくる。」
「待って!私も行くわ。」
紗夜も一緒に二人でランニングする事になった。
「紗夜、大丈夫か?少しペース落とすぞ?」
「別に大丈夫だから。」
「嘘つけ。息上がってんぞ。」
少しペースを落とすと、紗夜の表情が戻った。
「この公園で一旦休憩しようぜ。」
「ええ。」
公園で休憩する事にした。
休憩を終えて家に帰った。
また、新たな1日の始まりに心を踊らせながら家に帰った。ただただ主人公が少女達を助けたり少女達に助けられたりするお話。
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第6話 初めてのバイト探し
俺はバイトを始めようと思う!
何故なら、いつまでも氷川家の人達に頼っているようではダメだと思ったからだ。
だから俺はバイトを始める。
それで求人雑誌を見ていても、何かピンと来ないんだよな~。
まあ今日帰ってから探すか。
自分の足で。
「おーい、紗夜!早く行こーぜ。」
「分かったわ。正義さん。」
いつも通り紗夜と二人で学校に行く。
心なしか昨日の事件以降紗夜が積極的にスキンシップを取ってくるようになった。
例えばこれまで隣に並んで歩いていても肩を寄せてくる事は無かったのに今は肩を寄せてくるようになった。
「おいおい、やっぱりあの二人って付き合ってんじゃないのか?」
周りからの噂が絶えない。
こうして、始業のベルが鳴る。
授業中、紗夜に起こされるせいで全く寝れない。
ようやく午前の授業が終わった。
「ふぅ~。紗夜、ペンで起こすな。チクチクする。」
「嫌よ。正義さんが寝るのが悪いわ。」
「ごもっともです。」
「あ、ここにいたんですか!師匠!」
俺の事を師匠と言うのはなんと昨日瞬殺した不良だった。
「俺はアンタの師匠になった覚えは無いんだけど?」
「じゃあ今師匠にしてください!」
更には土下座までしてきた。
「だが、断る!」
人生で一度は言ってみたいセリフを今使うことができた。
こいつにはその事だけ感謝だな。
「そこを何とか!いいバイト教えますから!」
え?
「え?今バイト教えてくれるって?よろしい。弟子にしてやる。」
「まじすか?アザ~っす。」
「で、どんなバイトなんだ?」
「Pastel*Palettesって言うアイドルバンドの握手会の警備員っす。」
何故かPastel*Palettesって言う名前に紗夜が反応したように見えた。
まあ気のせいだろう。
「で?いくらぐらいなんだ?」
「大体3万っすね。」
めちゃくちゃいいじゃねえか。
「よし。いつなんだ?」
「明日の放課後ですけど、」
「オーケー、行こう。師匠ってなにするんだ?」
「俺に、強くなる方法を教えてください!」
「旨い飯と適度な運動。これを毎日続けるだけだ。」
「そうなんすか?アザ~っす!」
そういうと、不良は何処かに行った。
「紗夜~。あいつ何だったんだろうな?」
「何だったんでしょう?」
「まあ、悪い奴じゃあ無さそうだったな。」
「そうね。お昼まだ食べてないけど、もう時間ないわよ。」
「前言撤回!あいつめちゃくちゃ悪い奴だ!俺の至福の時間を~!」
「正義さん。貴方、バイトするの?」
「ああ、バイトした方がいいかな~って思って。」
「戻りましょうか。」
俺達は教室に戻った。
午後の授業中腹が減りすぎて死にそうだった。
早く帰ってカップラーメンでも作ろう。
家に到着した。
ちなみに紗夜は一緒ではない。
委員会の集まりが有るとか。
俺はカップラーメンを食べた。
カップラーメンって何か味がもの足りないんだよな~。
と思いながらも完食した。
まだ時間も早いので何処か行くか。と思い商店街に繰り出した。
やまぶきベーカリーでパンでも買って行くか、と思い店に入ると、俺と同年代の女の子が店番をしていた。
「メロンパン3つで330円になります。」
こうして買い物を終えて帰ろうと思いきやとあるお店に興味を惹かれた。
羽沢珈琲店という喫茶店である。
そう言えば土曜日に美少女(名前知らない)との待ち合わせ場所だ。
そうおもいドアを開けるといらっしゃいませ~何握りやしょうか~と寿司屋のような感じの掛け声が聞こえた。
それとあわてて寿司屋じゃないから!とツッコミを入れる女の子もいた。
「コーヒーとケーキ一つ」
俺はコーヒーとケーキを注文し、それを待つ。
コーヒーとケーキがやって来た。
どちらも中々に旨そうだ。
少しコーヒーを飲んでみる。
旨い。中々良い香りがして淹れた人の熟練の腕が感じられる。
続いてケーキだ。
うん。これも旨い。甘すぎないホイップクリームにフルーツの甘味、スポンジケーキともマッチしてちょうどいい。
俺は中々良い喫茶店を発見してしまったみたいだ。
その後会計を済ませ家に帰った。
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