何故こうなった。 (Big Versa)
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一話

日記形式に乗っかってみた。ガバゆるして何でもしますから。


f月o日

 

 

 気が付いたら代理人になってた。多分トラックに轢かれて転生したんだろう。

 いや待てよ夢なら覚めてくれマジで。何で俺が代理人に転生しなきゃならんのだ。しかも足がスースーするし、つまり俺は今あのメイド服を着てるってことだろ?恥ずかしくて死にそうだぞおい。

 ともあれ頬を抓ったら痛かった。現実じゃん、代理人好きだけど。

 これからどうしようか。

 

 

g月n日

 

 

 夜を三回迎えてようやく原形を保ってる建物を見つけた。ちなみに空腹感はまだない。嘘でしょ怖くなってきたぞこの身体。

 とりあえず手頃な廃墟にお邪魔してまずは鏡を探した。代理人の姿になったとはいえ一応確認する必要がある。これでただのメイドコスプレだったら発狂する。そんで飛び降りてやる。だが全身鏡に映った全体像はまさしく代理人そのものだった。黒髪のお団子ヘアもちゃんとある。顔も端整な女性だ、やったぜ。そしたら両脚の太腿に違和感を感じたのでスカートの上から触ってみると、あのサブアームが収納された状態で取り付けられていた。あーそういえばスカートたくし上げて攻撃するんだったよな。一回やってみるか。

 

 

 

 

 

 恥ずか死

 

 

r月w日

 

 

 そうだ昨日書き忘れてた。俺が今いる建物の中だが、どうやら集合住宅だったらしく同じような部屋が何個もあった。壁は壊されていて隣人が居たらプライバシーもクソも無いが、今は俺一人の根城だ。しばらくはここで身を潜めるしかない。

 というのも、代理人は鉄血の人形だ。助けてとグリフィンの人形に見つかったが最後、多分殺されるだろう。いや絶対殺される。しかも中身が戦争未経験ド素人の俺なもんだからあれのように単騎で圧倒することなんざまず無理、やる度胸も無い。つまり食料が欲しければこそこそスニーキングで行動するしかないのだ。同じ鉄血の誰かに見つけてもらえたなら話は別だが。

 まさか人類の敵として転生することになるとは。めちゃくちゃ後悔してる。せめてグリフィンの誰かだったんなら普通に生きれる可能性も十分あった筈だ。あ、カリーナは勘弁な。誰があんな書類仕事やるか。

 

 

q月p日

 

 

 屋内の探索で一階に降りると、まさかの食料品と飲料水を見つけた。これは神マップ、しばらくの間困ることは無いだろう。そして現在地から真っ直ぐ北に進むと工場があることも分かった。しかも一瞬だけだが装甲車の残骸が見えたので当たりだ。まさか軍需工場を引き当てるとは都合がいい。これで何かしら電力を確保できたり武器を手に入れたりすることが出来るかもしれない。

 すぐに工場に走っていったが、速い。全速力の速度が尋常じゃなかった。多分ロードバイクを追い越せそうなぐらいには出てたと思う。途中で怖くなったので急ブレーキをかけたらかかとが熱かった。こわ。

 シャッターの横にある扉から入るといきなり鉄血の人形の残骸が転がっていた。しかも少し血生臭い、久々に吐きそうになった。人形だから吐けるかは知らないけど。でもまあ、臭いが酷いのは入り口付近だけで奥に進むとそれなりに新鮮な空気が吸えた。

 どうもここは製造ラインらしく、殆ど、というか全部が機械化されているせいか大型の機械が複数コンベアに跨るようにして佇んでいた。すげえなこれ、鉄血の工場か。鉄血人形の残骸が足元に落ちていたりしたので生産工場といったところだろう。それで近くにあったレバーを引いたら動き出した。しかし素材がないのかただ稼働してるだけで生産される様子は一切ない。人形を作っても仕方ないので手頃な武器を作ることにした。とりあえず素材をぶっ込んでタブレットで適当に図面引いてっと。まあ何かは出来るでしょ。

 

 

j月x日

 

 

 面白半分で図面引いただけなのにマジでスナイパーライフル出来た。しかも重量感っていうか何かこう、すごい。

 簡単に言うとやってたゲームで使ってた銃を想像して図面引いたわけだが、現実に見るとヤバさが際立つ。無難にM4とかにしとけばよかった。それで特徴なんだが、まずボルトハンドルがレシーバーの左側にある。つまりコッキングする時に左手で操作しなきゃいけない。しかもコッキングの動作も特殊だ。引いて、上に上げて、引いて、押して、下に下げて、押してと手順が多い。素早くコッキング、なんてことは出来ないだろう。定点から迎え撃つのにこいつは適している。弾薬も作ったがこいつもまた曲者だ。何で12.7mmの劣化ウラン弾が出てくるんだよNATO弾でいいだろそこは。いくら人形でもオーバーキルだぞこれ。

 今度は人形の残骸も投げ入れて同じようにやってみた。

 書きたくもないゲテモノが出てきた。おえっ。

 

 

d月v日

 

 

 しかしこの工場、よくよく見れば人為的に壊された跡がたくさんある。まあグリフィンの部隊が突入して壊したんだろう、あそこは鉄血と分かればすぐに撃ってくるからな。でもそれは鉄血の方も同じなのだが。

 武器の威力を知るため簡単な的を作って一発だけライフルを撃ってみたが、まあ結果はお察し。厚さ5cmを簡単に貫きやがった。なにこれ怖い。今後は万が一の時以外は撃たないように自分で取り決めた。そうじゃなきゃスコープを覗いた先が全部R-18Gなことになる。となると通常時の武器は自動的にスカートたくし上げ機銃攻撃になるのだが、それもそれで恥ずかしいから却下。まあ戦わないに越したことはないから隠れて過ごすことにしよう。

 でも今日帰る途中にグリフィンの部隊が巡回してるっぽかった。しかもいつも行き来してる道を通っていたものだから、仕方なく迂回して帰ることにした。結果から言えば見つかることは無かった。っていうか見つかってたら日記を書く余裕なんてない。それに今日は鉄血のデータの一部が手に入った。役に立つとは思えないが、今後使う時は来るだろう。流し見したが、けっこう大事な情報っぽい。

 かーっ文字が多い!しかも暗号みたいなのあるし、すぐ解読できたけど。人形ってすげえわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

k月p日

 

 

まずい、AR小隊が中に入ってきた



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二話

s月i日

 

 

 生きてる、大歓喜。こうして日記を書けてるということはまさに生きてる証だった。

 っていうかめちゃくちゃ怖かったんですけど。何もういきなり手足縛られて尋問だぞ?何か皆銃口向けてくるしさー。めっちゃ泣きべそかいたぞ。しかしまあ、あのデータが役に立つとは思いもしなかった。内容全部暗記して知ってる情報という体で喋ったら案外納得してくれた。世の中何があるか分からんね。

 でも一つだけ気掛かりなことがある。ずばり記憶が飛んでる。一部がすっぽり無くなったように思い出せない。あの四人の名前も当然分からないので、一日一人ずつ覚えることにした。(一気に覚えるのは心情的にでき)ないです。

 

 

p月b日

 

 

 何で起きたらお前が抱き着いてるんだよSOP。正確な名前はM4 SOPMODⅡだが長いし他の子からもSOPと呼ばれているらしいのでそう呼ぶことにした。でもお前には警戒心がないのかよ。小学生でももうちょっとは距離を置くぞ。しかも俺一応敵サイドの人間人形だし。まあ何とか離れてもらって事は解決した。しかしまあ子犬みたいなやつだ、頭をわしゃわしゃ撫でてやると、SOPは「えへへ~」と笑っていた。四人の中では一番早く懐いてる。純粋な子だ。

 

 

 

 

 

 前言撤回。誘うようにニーソを脱ごうとするのはやめなさい。

 

 

l月e日

 

 

 またSOPだ、またSOPだ!(ピネガキ)何か抱きしめる力強くない?若干きしむ音がしたんですがそれは。いくら人形と言えど痛いものは痛い。まあよく懐くし甘えたがりの妹みたいな感じなのは分かるけども。しかも黒い義手(指が全部尖ってるやつ)が首に触れるのでビックリする。っていうかビクッてなった。SOPはげらげら笑ってたので仕返しにくすぐってやった。大人げないと思うがしゃーない。

 それで今日覚えたのはAR15。この子もST AR-15という名前だが縮めてもあれなのでスターと呼ぶことにした。でもこれ悪手だったかね、一回呼んでみたらあからさまに嫌そうな顔を向けられた。でも呼びやすいのこれしか思いつかなかったんだ、受け入れてくれ。そういやピンクの髪って珍しいな、人形だから普通かもしれないが。

 性格はまあ、俺からしたらちょっとなーって感じ。何かしら俺が手伝いをしていると隣でそれ以上のことをやる。負けず嫌いなのか努力家なのかは知らないが、「私の名誉のため」とか言ってやるべき以上の事をしたがる。余裕は持った方がいいぞ?

 でも他の子のことは俺も含めけっこう心配してるらしい。俺が工場に部品漁りに行く時もついてきた。「私も手伝いたいの、やらせて」って澄まし顔で言っていた。

 手伝ってくれるのは嬉しい。でも何故か俺が行く予定の場所にいたり音もなく傍を歩くのやめてくれ。そんでもって極めつけには、誰にも見られないで外に出たのに「どこ行くの?」とか言って一階で待ち伏せされた。デッドサイレンスでも付けてるのかお前は。怖いわ。

 

 

f月q日

 

 

 ところで何故俺の(元)根城に四人がいるのか聞くことにした。

 四人はAR小隊というエリート部隊であるらしく、色々な場所に赴いているらしい。それでこの近辺での長期派遣が決まって巡回していたところ俺と出くわしたということだ。まあ運が悪かったわな。でも助かっただけマシだ。SOPの力加減が間違ってなければの話だが。でも俺と一緒に和気藹々としてるのがバレたらやばくないか?代理人なわけだし。その旨を言ったが、スター曰く「嘘の報告をしておけば大丈夫」だそうだ。なるほどずる賢い。

 今日はM16A1を覚えた。黒い眼帯を着けた男勝りなやつだ。何故か少女とは思えなかったがまあ女性でもいいだろう。要するに姉御肌だ。今日もビールを一気飲みしてたし、酒が好きなのだろう。実際誘われたが物資云々の問題もあるのでやんわりと断っておいた。ところでライフルより背中に背負ってる長物の方が強そうだがあれは使わないのだろうか。聞こうとしたら酒の飲み過ぎだとスターに取り上げられていた。待てこの世の終わりのような顔で俺に縋るんじゃない。悪いが味方はしないぞ。

 

 

t月y日

 

 

 

 

 

 急募:SOPの対処法について

 

 

 

 

 

 何で知恵の輪みたいになってるんだよ寝相悪すぎだろ。っていうか確信犯だろお前口笛吹いても無駄だぞ。しかも吹けてねえし。人形特有のパワーで両手拘束されてるし痛い。そんでもって息を荒くして押し倒すんじゃない、そういうシチュはやめてくれ。

 今日覚えたのはM4A1。癒される。健気でちょっとおどおどしてるのが可愛げがある。とはいえこれでも部隊長の立場であるらしい。こんな個性豊かなメンバーだと苦労しそうだな。そう言うとM4は「それでも楽しいから大丈夫ですよ」とはにかんでいた。可愛いから撫でてやった。M16からはよく絡まれるらしい。姉妹だからそういうスキンシップもあって当たり前だろうな。

 ところでよく見ると両手の小指の部分が武骨な機械になっていた。というのも銃のフォアグリップを握るのに手が小さいので改造してもらったらしい。やってもらった人の名前を聞いたが機密情報だったからか教えてもらえなかった。気になるなぁ。

 

 

h月b日

 

 

 しばらく日が空いてしまったが、ペンが壊れてしまった。今はもう新しいものに変えてあるが、中々書き心地がいい。

 それはそうと備蓄品について問題が発生した。同居人が複数増えたわけだから今後足りなくなる可能性が浮上してきたのだ。というよりも絶対に足りなくなる。過度な節約はちょっと後ろめたいし。というわけで工場とは反対方向、3ブロック進んだ辺りには鉄血の部隊が通過しているらしいのでちょっかいをかけることにした。四人が制圧してる間に俺が物資を盗んでくるという至ってシンプルな計画だ。

 それで初めてやったのだが、結果としては上々の出来だった。M4とM16も持ち前の射撃精度で敵をけん制してくれたお陰で物資集めも捗った。だがSOPはグレネードランチャーを撃とうとするのをやめなさい。俺が巻き添えになる。そしてスターは囁くように言うのをやめてくれ。「怪我したらちゃんと血を舐め取ってあげるから……安心してね?」とか言わないでくれ。マジで青ざめるわ。

 

 

w月s日

 

 

 今日は昼過ぎに皆で工場の方に行った。なんでも予備のアタッチメントやら弾薬やらが欲しいというので、適当にタブレットで図面を引いて材料をぶち込んだ。弾薬は全員が5.56mmを使っているのでとりあえずたくさん作っておいた。

 問題は外骨格だが、これは人形のサイズに合わせて作るしかない。というわけで全員の上半身の採寸を測ることになった。最初はSOPからにしておいた。お前この前俺に素っ裸で襲い掛かって来たもんな。何とか諭して服は着させておいたが。

 改めて見るとちゃんと実ってる。肌白いなー。

 M16とM4に関しては理性が吹き飛びそうだった。あんなん直視するとかムリゲーやん。M16に至ってはニヤニヤしてるし、絶対バレてる。これ男だったら勃起してるからな、俺は今女だけど。

 

 

 

 

 

 ところでスターは嘆きのかb【塗りつぶされている】やばっ。



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三話

r月t日

 

 

 随分とホラーな体験をした。昨日の日記を書いている途中に肩に手を置かれて振り向いたらスターがいたんだよ。随分と笑みを浮かべていたが、まあ俺は冷や汗しか流れない。笑顔は威嚇表現だからね、しょうがないね。

 「だいりに~ん?」なんて間延びした声がもう怖い。しかも背後からゆっくり抱き着かれたぞ。抵抗できないように俺の両腕も封じられていたしPTSDになりそう。

 それでタイミングも悪いったらありゃしなかった。慌ててスターのことを書いていた部分を塗りつぶしたはいいものの本人から耳元で問い詰められたので白状することにした。やましいことは何も書いてないからな、絶対書いてないからな。ところがスターは俺の日記を一通り見て「可愛い趣味あるのね」と言い残して部屋を去っていった。こマ?検閲ガバガバすぎるだろ……

 

 

 

 

 

「最後の文は不問にしておくわ」じゃない、笑顔が怖いわピンク髪。

 

 

s月p日

 

 

 何で昨日の日記がスターとのリアルホラー体験しか書かれてないんだよ。どうせなら天使であるM4のことについて書くべきだった。

 まあそれはそれとして、今日もいつもの場所で鉄血の部隊にちょっかいをかけに行った。途中までは良かったのだが、物資を漁ってるときに運悪く敵と出くわしてしまった。相手は武装していなかったので不幸中の幸い、しかも俺は鉄血のハイエンドモデルである代理人なわけだから負けることなど考えもしなかった。お前はもう死んでいる、なんつって。

 前が見えねぇ。ちくしょうぼっこぼこにされたぞおい。あいつら容赦ってもんがない。一応俺が立場上上のはずだぞ?あれか、既に俺裏切り者扱いか?そりゃねえぜ。しかも全身痛いわ歩けないわで帰りはM16におぶってもらった。こいつ身長高いもんな、俺と大体同じくらいだ。俺の身長っていくつだ、185くらいか?

 

 

f月o日

 

 

 毎夜恒例のレズ知恵の輪にスターが参加しやがった。「もうSOPったら怖がりで仕方ないわね!私も一緒に寝てあげるわよ」って俺の寝床に入ってくるんじゃない。SOPといちゃついてろ。緩い笑顔で俺に絡みついてくるな。何が俺は私だけのものだアホ。どう足掻いてもSOPと一緒に近づいてくるのでその日は諦めることにした。こいつら可愛いんだけどなー。それを遥かに超えて恐怖しか感じなかった。だって力強いんだもん、しかもスターも加わったもんだから完全に身動きも取れない。

 しかし途中でM4が来たので、これはチャンスと思い協力してもらうことにした。内容は俺がM4を抱いて寝る事。簡単だが重要な案件なので頭を下げて懇願した。M4がむしろ逆効果なんじゃないかと言っていた気がするが俺には聞こえなかった。失敗はあり得ないと考えてたからな。

 なお結果はSOPに首を足で絞められ、スターに雁字搦めにされたりと散々だった模様。想定外も考えなきゃな、痛い。

 命からがら脱出して二人を部屋から追い出した後、痛みが引かないので外出は避けることにした。M4は残って俺の肩をほぐしてくれたりした。ありがと、お前には感謝しきれないわ。それでまあ、やったことといえばまだ使ったことのないサブアームの簡単な点検とM4と談笑したぐらいだ。

 でも意外と趣味が合うもんだな。好きなものと嫌いなものが一緒だったし、映画にも興味を示しているらしい。やはりエリート小隊だけあって休む暇も無いのだろうか。余裕ができたら連れていきたいけどな。それに俺の好きな銃や好きな女性のタイプを当ててきた。

 

 

 

 

 

 俺そんなこと言ったかな。

 

 

g月a日

 

 

 俺がM4を抱いて寝ても効果がないことが分かり、M4からは流石に無理なのではと打診された。まあ昨日が昨日だったしな。早急に次の対策を考えなければならない。でも肝心の対策を練るのを忘れたまま夜を迎えてしまった。やべえよ、案の定痛いし。これ翌朝死んでてもおかしくねえぞこれ。

 痛い朝を迎えた後、M16の提案で廃墟内でパルクールをやることになった。久々に体を動かしたいのと実戦にも備えたいからという理由だったが、実際は鉄血の物資をちょろまかす作業にも飽きてきたのだろう。俺もちょうど飽きてきていたところなので喜んで参加することにした。高スペックなこの身体も制御したいからな。この前みたいな悲劇は繰り返したくない。

 最初はM16からやったが、やはりと言うべきか難なくこなしていた。特に一本橋状態の鉄骨を走って渡ったのは驚いたな。さすが姉というところだろう。これはドヤ顔してもいい、ただやってる途中に酒を飲むのは駄目な。酔って銃を撃てないとかは冗談きつい。M4も無難にこなし、余裕のある顔で完走した。ご褒美に頭撫でてやる、うーん、高さピッタリ。後ろでM16が消沈しているが何も見てない。後でお前に譲るから。

 スターはちょいと問題ありな様子だった。足場を外して落ちかけるし何もない所で躓いたりと危なげない。挙句の果てにはバランスを崩して服を少し破いてしまっていた。ああパンツ見えてる、白か。

 悪くない。

 気にしてないふりしてそれとなく見ていたのだが、後ろからマガジンを差し込む音が聞こえたので慌てて別の方を見た。怖い怖い怖い、間近で5.56mmとか蜂の巣確定だ。俺の顔台無しになっちゃう。M4が服を修繕すると言い、俺は代わりの布を巻いてやった。俺の心情がバレたのか「私と二人きりになれば貰ってもいいわよ?」と顔を赤らめて言ってきた。お前はもうちょっと相手を選べ。

 SOPは、うん。何してるんだお前は。コースじゃないところ走ってどうする。怪我したら危ないから戻りなさい。あとトリプルアクセル決めながらショートカットするのも駄目だからな。

 さて最後は俺だ。華麗なる代理人の演舞をとくと見やがれ!

 

 

j月p日

 

 

「まったく代理人はしょうーがないなぁ!私がいないと寝れないのか、ほれ!」

 やめてくれ股関節が痛いんだ。鉄骨の上でカッコつけてスピンなんかするんじゃなかった。M4に付き添われながらも何とかゴールしてやった。いてぇ。

 

 

f月b日

 

 

 M4が三人とも謎の薬を使って引きずり出してくれた。ありがたいけど睡眠薬はヤバくね?あ、違うの?



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四話

f月a日

 

 

 結局無事だったのはM4が引きずり出してくれた日だけで、今日の朝も知恵の輪が出来上がっていた。服だけ溶かすスライムを護衛につけた方がいいのかねこれ。いや駄目だな、真っ先に俺の服が溶かされそう。外見女だけど性格はまんま男だから凌辱なんてされたら正気を保てない。それにしても日が経つにつれて拘束が固くなってきてる気がするんだが気のせいか?

 いっそM4と別室で眠るという苦渋の決断も必要なのかね。でもあいつの齎してくれる癒し効果は言葉では表せないものがある。うーん、悩む。

 まあそれは後々考えるとして、今日もパルクールをやった後にSOPが「かくれんぼしたーい!」と手を上げて俺に言ってきた。いやお前、パルクールは一種の訓練みたいなものだからな?お前だけだぞ戦術度外視の走りをしてるのは。それで理由を聞いたら覚束ない口調と身振り手振りで「隠密も重要だ」ということを言っていた。まあ、そういうことにはしておいた。娯楽もなきゃ駄目だしな。

 それで全員でかくれんぼをすることになった。

 ルールは鉄血対グリフィンを考慮して、俺とAR小隊に分かれて鬼と隠れ役をやるというものだ。鬼と隠れ役は交互にやり、見つかった時点で無力化判定で負け。今日は俺が鬼をやることになった。要は四人全員を見つければいいわけだ。

 廃墟をすべて使ってのかくれんぼだったが、一時間もしないうちに三人も捕まえてしまった。最後まで隠れ切ったのはSOPだけ。因みに小柄な体格を生かしてかそこそこ小さな箱に隠れてやり過ごしていたらしい。時間切れになった途端出てきて俺に抱き着いてきたので頭を撫でてやった。気持ちよさそうだなこいつ。

 問題はスターだ。またお前か。俺が近くに来たことを察知して後ろを尾行しようとするんじゃない。お前が躓かなきゃ気づかなかったぞマジで。しかも怖かった。ありゃ獲物を捕らえる目だ。

 

 

p月n日

 

 

 朝起きたらSOPが服の中に手を突っ込んで胸を揉んできやがった。気持ち悪い感覚に襲われるからやめてくれ。それとスター、お前は何俺の股に太腿を擦りつけようとしてるんだ。変にビビるからやめなさい。それに俺も大変なんだからな理性保つの。中身男で傍から見たらレズとか心こわれる。

 それで今日は俺が隠れる番だった。しかし正直言うとキツイな。結果論からすれば俺は無事逃げ切れたわけだが、何回かマジで焦った場面もあったしやはりそこはエリート小隊ってところだろうか。

 特筆すべきことといえば、チームワークがすごいことだろう。

 二手に分かれて隅から隅まで捜していたものだから正直驚いた。一人ずつで分かれるかも思っていたが。でも幸いだったのはルールに『隠れ役は動いてはいけない』ことを入れてなかった事だろう。そのおかげでこそこそ隠れ場所を変えることが出来た。俺も負けたくないんでな、本気でやったわ。

 だが気になることはないわけではない。まずスター、「待っててね……すぐに私しか見れないようにしてあげるからぁ……」って言って確実に俺の隠れ場所を突いてくるのやめろ。何が「代理人の匂い……あはぁ」だ。そんでもって顔を赤らめてモジモジするな、見てるこっちが恥ずかしい。

 SOPは「あはは、私がずーっと抱いてあげるから!」って言いながら息を荒くするんじゃない。しかも笑い方が怖い、ロッカーに隠れてるときに間近で見えた時は死ぬかと思ったわ。しかも隣のロッカーひしゃげてたし。何あの怪力。

 この訓練ちょっと考えものだな。いかんせん捕食者二名のせいだが。

 

 

j月z日

 

 

 もうどうやってもレズ知恵の輪には勝てないと悟ったので全員同じ部屋で寝ないかと提案を出してみた。まあ案の定すんなり承諾してくれたのだが、珍しくM4が喜びを表面に出していた。小声で「やったやった」って言ってたし嬉しかったのだろう。大人しい感じだと思ってたんだがな、喜ぶ時もあるよな。

 するとSOPが寒いのは嫌だと言い、いかにも暖かそうなふかふかの毛布を持ち込んできた。何それいつの間にそんなもんあったんだ。

 聞いてみれば、一階の倉庫の奥で眠っていたらしい。それで持ってきたんだとか。それにしてもデカい。俺含めて横に並んでも軽く入る。まあこれからは横並びで寝るとするか。眠いし今日はこれで切り上げる。おやすみ。

 

 

s月r日

 

 

 何で俺が真ん中のポジションなんですかね(震え声)

 

 

w月p日

 

 

 そういえば今日の仕事帰り、仕事っていうのは物資盗みのことな。それをやった帰りにスターから「貴女って変わった喋り方よね」と言われた。今更だが俺も気づいた。確かに身体は代理人だしそうなる以上女の身体の構造なわけだ。だが喋り方はそのまんまである。それどころか一人称も『俺』だしな。今思えばギャップが凄い。

 そういや普通にあぐらもかいてたなぁ。もうちょっとおしとやかにした方がいいのか?これメイド服みたいだし。そんなことを言ったらM4から「今のままでも可愛い……ですよ……」と恥ずかしげに返された。あーお前可愛い。抱きしめてやりたい。っていうか抱きしめた。当の本人はびっくりしてたが許してくれ、お前もこうされるの好きだろ?

 M4は「代理人の、好みは……全部知ってましたので……」と耳まで赤くさせていた。俺の理性が吹き飛びそうだったが、後ろからのM16の喚きで現実に引き戻された。助かったのかどうなのかこれもう分かんねえな。

 SOPとスターは捕食者の目で俺を見ていた。俺だけを見ていた。これがあれか?ヤンデレなのか?身近にそういうのがいるのは初めてなのでよく分からない。でも俺が危険一歩手前なのは確かかもしれない。

 

 

 

 

 

ところで何でM4は俺の好み全部知ってたんだ?言ったとしても好きな食べ物とかだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ代理人」

「何だ?」

 

 

俺は一旦酒を飲むのを止めた。何か神妙そうな顔してるなお前。

 

 

「ああ、何てことないんだ……明日ちょっと本部に帰らなきゃいけなくなってな。しばらくしたらまた戻ってくるんだが」

 

 

うおいマジかよ。

 

 

「嘘は付けねえしな。データベースの何やらとか装備の何やらで色々あってな。詳しいことは機密情報で言えない」

 

 

まあそれは仕方ないわな。でもいざとなると寂しいな。俺なんてまた一人暮らしだ。

 

 

「ハハハ、メイドが一人廃墟に佇むか。しかも鉄血だしな。ホラーものだ」

 

 

鉄血なんて知らねえよ。普通の兵士にやられた時点で、向こうにとって俺は敵だしな。

 

 

「確かに。でもあまり落ち込むなよ?また帰ったら遊んだり盗み働いたりしようぜ?」

 

 

ああ、それまではちょいと体を休めとく。

 

 

「んじゃ、私はそろそろ寝るかな……あ、そうだ。何か壁に変な穴が空いてたって、AR15が直しておいてくれてたぞ」

 

 

そうなのか、分かった。おやすみ。

 

 

「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だろ、お前ら



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五話

t月q日

 

 

 今日の朝はAR小隊が帰る日だったので見送ることにした。個性的だし寝起きも地獄だったが、毎日暮らしてると情が湧いてくる。一応廃墟を出るところまでは同伴したが、それ以上は俺が鉄血の代理人だという事情も兼ねてやめておくことにした。SOPも寂しそうにしてたなそういえば。どうせ一週間もしたら戻ってくるんだ、そんな顔したいのは俺だって同じだ。M16ともまた皆で盗みやらパルクールやらやろうと約束を交わした。

 これからしばらくは暇になるな。

 

 

o月m日

 

 

 案の定暇になっていた。しかもめっちゃ静か。まあ四人も一気に人が減ったらそりゃそうなるわな。でも退屈でしょうがない。

 誰もいないので外に散歩しに行くことにした。もちろんグリフィンの巡回コースは避けて通るようにしている。とはいえパルクールをやって身体の制御が効くようにはなってきているので逃げようと思えば逃げられる状態だ。一番は見つからないことだが。あいつらどんな武装してるか分からねえし、そもそも俺自身はぶっ飛ばすなんてことしたくねえしな。無闇に女の子に武力行使するのはいけないって、はっきり分かんだね。

 

 

y月e日

 

 

 あいつらが本部に帰って三日ぐらい経った。それで今日の朝に起きたら体に違和感を覚えていた。何か軽い感じだったが、その原因はすぐに分かる。毎日知恵の輪状態だったから普通の朝に違和感を感じてるわけだ。そう思うと変に物足りなさを感じた。二度とやられたいとは思わないけどな、あんなの毎日続いたらマジで死んでしまう。お前らの事やぞSOPとスター。特にスター、お前がけっこうヤバかったぞ淫乱ピンクまな板。

 何か生き残ってた窓が割れたんですけど。何これ怖い。ぼく怪奇現象は無理。

 でも一人暮らしに戻ると食料に余裕が出てくるな。あいつらが来る前の生活に戻っているが、けっこう贅沢な使い方だ。やっぱり節約の反動なのかね。

 それで昼食を食べた後は、いつもの工場に行くことにした。スナイパーライフルも使ってないし重いしでそれを素材として新しい武器でも造ろうかと考えていた。しかし着いた後で何の武器にしようか迷うな。5.56mmはあいつらが全部持って行ってしまったし。かといって新しく弾薬も造るとなると材料が足りない。鉄血の物資を盗む作戦はあいつらと連携して初めて成り立つものだ。まさか工場に着いてからそれに気づくとは、少し後悔の念にかられた。とはいえ何かしら自衛用の武器を造らなきゃいけないことには変わりないので、同じ弾薬のリボルバーを造ることにした。それならせっかくついてきた劣化ウラン弾を無駄にすることもないしライフルより嵩張らないので一石二鳥だ。

 というわけで完成したリボルバーがまあデカい。劣化ウラン弾を撃つために大口径化を考慮して図面を引いた結果、とんでもない武器が出来上がってしまった。それで試しに一発撃ってみたのだが、反動は見た目通りに大きい。手のしびれとかは無いのだが、それでも何かと手が震えたりしていた。これも万が一の時以外は使わないようにしないとな。これ撃って腕を壊したなんて状態は洒落にならない。

 そういえば奥の方にパソコンがあったのであいつらの上司とかグリフィンについて調べてみることにした。M4が上司の存在を示唆していたのを思い出したので鉄血が独自に調査したらしいグリフィンのデータベースを見ることにした。考えてみればグリフィンも鉄血もやってることは同じだなこりゃ。領地奪い合って情報を盗んで、俺は鉄血の立場にあるわけではないが、鉄血の方もそれが正しいと思って行動に移してるんだと思う。

 何か俺の持論書いちゃったな。長々と。まあそれはそれとして、調べてはみたが一つだけ有力な情報を得られた。それはAR小隊に言えることだが、電脳の中に鉄血人形を破壊するようなプログラムを仕込まれているらしい。深層心理みたいなものだ。

 こりゃマズい。非常にマズい。

 

 

p月v日

 

 

 眠れない。しかも手がふるえる、なんでだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

k月z日

 

 

 マジでふざけんなよグリフィン。ほんとクソ企業にも程があるだろ。

 急に帰ってきたあいつらに殺されかけた。何で撃ってくるんだよ俺を騙したのかあいつらは。普通に一緒に過ごしてただけだってのに。あれか、元からなれ合いは嘘だったってか?なら尚更グリフィンが許せねぇ。あいつらの上司とやらを気の済むまでぶん殴りたい気分だクソッタレが。

 あいつらが俺を殺そうとしてるとなると、スターの言ってた「嘘の報告」とやらも全部バレていたのかもしれない。それでパソコンで見たあのプログラムを表に出るようにして俺を始末しようって算段だ。そうに違いねえ。ああクソ、何でだよマジで俺が何をしたってんだ。理不尽すぎんだろ、危害加えてねえのに畜生が。

 塞がれていた壁の穴は昨日のうちに開けておいたので、逃げ道は確保できた。後武器と食料がちょっと。振り向かずにとにかく走って逃げた。あんなん振り向けねえよ、しかも腹と両脚にけっこうな数をもらってしまった。今も血が出てる。いたい。

 もう歩けそうにないから近くの空き家の地下室に逃げ込んだ。っていうか血で文字がにじんでる。



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六話







ひっさびさの投稿です()ゆるして。








q月o日

 

 

 逃げ続けて三日、俺は今知らない空き家に身を潜めている。特に追ってくる様子は見受けられなかったのでとりあえずは一安心というところだろう。

 しかしまだ止血が十分じゃない。貴重な飲料水を消毒液代わりにして持ち出しておいたボロ布で一応の処置はしたが、闇医者でもいいから本格的な治療はした方が良いのかもしれない。いや、人形だから修復か。

 

 

h月y日

 

 

 俺がない頭で考えてみたが、まあ状況は芳しくないな。うん。いくら物資を持ち出したとしても極端に少ない。配給は一度三日三晩食わなくても異常は無かったので問題視するほどでもないんだが、いかんせん弾薬が少なすぎる。シリンダーに装填されている6発分しかないものだから敵に遭遇したとしても撃てない。というかこの弾薬は火薬が多く、撃った時の音も大きいものだから周りにバレる可能性が高い。鉄血からは裏切り者扱いされ、グリフィンからは専ら敵、そんでもってAR小隊に絶賛追われているわけだから俺はもう逃げるしか選択肢がない。クソゲーかな。

 日記で愚痴っても仕方ないので移動の準備をしておいた。此処もいつ調べられるか分からないしな、油断なんてこれっぽっちも出来やしない。あ~早くのんびり休みたいわ。

 

 

i月y日

 

 

 空き家が見つからなかったので使い古されたシェルターに身を潜めることにした。今までよりも狭いが屋根と壁がある分マシだ。それに狭い方が保温性が保てる。このシェルター自体も人目につかないような場所に位置しているので余程のことがない限り見つかることは無いだろう。

 しかし肝心の弾薬の調達問題はまだ解決していない。それどころか今後の見通しすら何も立っていない状況だ。鉄血の部隊からちょろまかそうにもあいつらがいなきゃそもそも行動に移せないし、近くに鉄血の工場があるわけでもない。一回グリフィンの基地から物資を盗もうとも考えたが、そんなことしたら確実に捕まる。セキュリティシステムもどうなってるか分かったものじゃないからな。つまり思いついたどの作戦も実行不可能という結論に至ったわけである。絶望的過ぎて草も生えないぞこんなん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい、こりゃどういうことだお前ら?」

 

 

荷物の整理をしていたら足音が聞こえ、振り向けば俺は4つの銃口を向けられていた。どれもこれも見覚えがある銃だし、何より俺が散々見知った姿が立ち並んでいる。何だよこれは。あれか、騙して悪いがみたいな展開か?

 

 

「……」

「いやぁ、困ったなぁ!いきなり銃向けられるのは流石にビビるぞ。確かに俺は鉄血だが正面切って戦えるわけじゃないし……そもそもお前らに敵意なんて微塵も持ってないし「代理人」……えっと、SOP?」

 

 

急にSOPが『普段の声』じゃない声で俺の名前を呼んだ。何か、その、目が怖い。前みたいな人懐こい子犬みたいな目付きなんかじゃなかった。捕食者、というよりも……

 

 

「私……鉄血の部品とか大好きなんだ……」

「あ……?そう、なのか。そりゃあ初耳な趣味だな、うん。あー、あれか。コレクション、か……?」

「すぐに壊してあげるからね?」

「まあまあ待て待て。そりゃやりたい気持ちもあるだろうが……ほら、あれだ!鉄血兵もいるだろ?そいつをぶっ壊して遊ぶ~なんてな。ハハハ……ハハ……」

 

 

今更かもしれないが明らかにおかしい。SOPだけじゃない。M16もM4もスターも、皆殺意を隠そうとしていなかった。マジで俺を殺すつもりなのか?いや、よく考えろ。そもそも俺は何も恨みを買った覚えは無いし、こいつらも俺を嫌っていた様子もない。それに俺を嫌っていたならば毎朝俺に絡まってくるのは何だったんだって言う話だ。何だ、何が原因なんだ?

 

 

それよりもまずは説得だ。

 

 

「いやぁ、そうだ。ほら、M4、注意してくれよ?無邪気っつっても加減を知らなきゃアレだしさ……M16もさ、酒でも飲んで水に流そうぜ?俺も何したか分かってないけどな……」

「悪いな代理人。今はそんな気分じゃねえんだ。任務が最優先だ」

「あー……スターは?小隊を補佐する立場なんだろ?ここは一言説得させておいて……」

「グリフィンの上位権限によらない限り上書き及び抹消は行えません」

「えっと、M4は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アハハハ、あ、命令しなきゃ―――えっと、皆さん、殺してください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やべえな、これ。

 

 

「クソがッ……!」

 

 

すぐに振り向いて穴を突き破って飛び降りた。高さ何mだ?ああいや、それどころじゃねえな。

 

 

「痛ッ!?いってぇぇ……!」

 

 

着地のせいなのか、はたまた撃たれたのかは知らない。でも痛い、物凄く痛い。あれ、どうやったら痛覚切れるんだっけ……?

 

 

ああもうクソが、クソが、クソが!とりあえず遠いところに逃げよう。あいつらも人形とはいえ限界がある筈だ。それに俺は鉄血人形のハイエンドモデル、そう簡単にやられてたまるか。

 

 

「逃がさないわよ!」

「待てェ!!」

「姉さん、足を狙ってくださいね」

「任せろ……これが運の尽きだ」

 

 

クソ、あいつらも追ってくるか……!このままじゃ……

 

 

 

 

 

直後、視界が揺れた。

 

 

 

 

 

「あー……あ……?」

 

 

痛い。色んなところが痛い。焼けるように痛い。何だ、撃たれたのか……?よくわかんねえや。

 

 

「逃がすわけねえだろ」

 

 

M16が歩いてくる。こいつ、眼光鋭いな……やべ、めっちゃ血出てるし。っていうかどうしよ。まだ死にたくないんだけどなぁ……

 

 

「冗談、よしてくれよ……」

「これが冗談に見えるってか?それは違うな、お前は死ぬんだ。それで任務達成だ」

「……」

 

 

―――馬鹿野郎が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奥の手があるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閃光だ。これでいい、目を潰せたら時間は稼げる。ちょっと博打っぽいが……死ぬよりはマシだ。



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七話







ぬわあああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおん!


q月h日

 

 

 待ってヤバい。これはマジでヤバい。AR小隊が近くにいる。このシェルターに近くにいるんだが何でなんだよちくせう。あれか?匂いでやってきたのかお前ら。

 朝起きて何か声聞こえるなぁーって思って隙間から覗いたら例の四人が歩いていた。警戒している感じじゃないのが救いかね、SOPに至っては空き缶でリフティングしながら歩いてた。いっつも変な特技開花させてんなお前な。それはそうとM4は「早く会いたいです……」と珍しくしょんぼりしながら言っているのが聞こえた。M16も慰めてるからもう殺意みたいなのは消えたのかもしれない。いや確証はないけどな。でもそうであってほしい。スターは相変わらず俺を求めているみたいだった。あのさぁ……

 うーん、まあ戻ってくれてるんならそれはそれで俺は嬉しいけどな。

 

 

 

 

 

「……ハッ!四肢を切断すればずっと私達と一緒に……フフフ、フフ」

 

 

 

 

 

 ふざけんな!(文字だけ迫真)

 なんか異常な奴いるじゃねえかお前のことだぞスター。何が四肢切断だヤンデレ代表がこの野郎。この数日でさらに覚醒しちゃってる感じだった。しかも何が「身体が熱いよぉ……」だ、っていうかSOPに抱き着いてるし。うわぉディープキスしやがったぞ。マジかよ。いやSOPもまんざらじゃないって顔になってるし。あれ、これもしかして百合?ええい描写だ!とにかく描写しなければ!(一般百合好き代理人)

 ……じゃなくて。そうだ、こいつらの会話から情報を得てみよう。思わぬ発見があるかもしれない。そして聞き耳立てた成果がこれ。

 

 

「手錠と足かせはこれで大丈夫でしょうか……?」(M4A1)

 

 

なに?インペルダウンに閉じ込めるつもりなの?

 

 

「ペルシカには誰でも甘え系体質になるクスリを注文してっと」(M16A1)

 

 

頼むからそれは鉄血にでも使ってくれ。下手すりゃ戦術兵器だぞそれ。

 

 

「目玉とかでおまじないをすれば代理人も一緒にいてくれるよ!」(SOP)

 

 

え、何それは……(困惑)

 

 

「待っててね代理人……私が気持ちよくしてあげるからぁ……」(スター)

 

 

申し訳ないが公でのレイプ予告はNG。

 

 

駄目みたいですね(絶望)

 

 

w月k日

 

 

 どうも俺の逃亡先を嗅ぎつけたのは本当の事らしく、この地域周辺に滞在するらしかった。本格的に捜索する気だなこいつら。

 とりあえず隙を見て俺はシェルターを離れることにした。あんな狭い場所で見つかったら確実に捕まって何されるか分かったもんじゃない。ああ、レズ知恵の輪が懐かしいなぁ……

 何はともあれ、ようやっと空き家を見つけた。しかもけっこう新しいやつでふっかふかのソファとふっかふかのベッド付き。これ以上ない幸運に俺は久しぶりに歓喜の涙を流した。オゥ、ジーザス……。とりあえず来た道とシェルター付近の痕跡は一応消してきた。飲み水全部ばら撒いてきちゃったけど、まあ俺は人形だから大丈夫でしょ(適当)

 このままこの空き家で隠居と思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

 はぐれ人形がいた。あ、鉄血兵の方です。名前、というより個体名はドラグーン。識別番号はNM-39176らしい。うーん、長いからゼクスって呼ぶことにしよう。本人もそれでいいと了承してくれた。

 どうやら前に侵攻作戦があってその時に放置されたらしい。それで指揮官クラスの人形もいないのに乗り物も壊れてしまったそうだ。ちなみに武器もないらしい。よく生き延びてこれたなお前。当の本人はソファに座っててへぺろみたいに笑っているが状況がまずいことに変わりは無い。

 いやでも流石に武器無しは可哀想だったのでリボルバーを譲り渡すことにした。けっこう気に入ったみたいで何よりだ。おいこら銃口向けるなやめてください。

 とりあえず俺が来ても状況はまずいままだというのは伝えておいた。スカートめくって攻撃は嫌だからな?

 

 

g月p日

 

 

 起きたらおっぱいが目の前にあった。何言ってるか分からねえと思うが俺も何が起こったか分からねえ。

 目の保養になるかっつたらそうじゃない。心臓止まりそうになったわ。ところで人形って心臓あるの?それか似た部品とかあったりするのかね。

 ちなみにゼクスは笑顔で「おはよう」って言ってきた。まるで近所のお姉ちゃんみたいなやつだ。こいつ本当にいい顔してるよなー。まるで人間みたいだ。しかしまあ、何で兵器重視の鉄血がこんな感情豊かなんだか。別に俺は構わない。元々トラック転生して代理人になったわけだから鉄血に思い入れなんてものもないし忠誠心だってない。ただゼクスが話し相手になるのは嬉しいことだった。

 それはそれとして朝のことについてなんだが……

 

 

 

 

 

「フフ、びっくりした?こういうのも悪くないでしょ?」

 

 

 

 

 

 本人はそう供述して起訴内容を全面否定した。いやおっぱいはちょっと……こう見えても心は男の子なわけで。しかも背丈が俺と同じくらいなもんだから若干お姉さん味が増してる。しかも屈託のない笑顔を向けてくるものときた。あんま強く出れねえな……

 そう書いた俺を殴りたい。セクハラまがいのことしてくるのはやめーや。チョップ食らわせるぞ。

 それで今日は一日中家の中で過ごした。娯楽があるわけでもないので食料食って二人で話して時間を潰しただけだが。仲良くしておきたいのと情報収集も兼ねて鉄血についての話を聞いたが、何と言えばいいのやら。こいつは放置されて正解だったのかもしれない。何でもゼクスみたいな下級の人形は俺みたいな上級人形を守らなければいけないらしい。それも今のAR小隊のように深層心理みたいに刷り込まれているのだとか。要は自由に扱える駒扱い、使えないと判断されればあっさりと捨てられるのである。

 そりゃ酷い話だ。俺はそんなことしないから安心してくれと言っておいた。絶対守らなきゃ(使命感)

 

 

f月z日

 

 

 スキンシップ激しくな~い?(押し倒された模様)



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八話







鉄血とグリフィンって戦ってるけど、グリフィンに勝ち目ってあるんですかね。鉄血のハイエンドモデルは何度も復活するそうですから。


r月l日

 

 

 何だろう、普通に起きただけな筈なのに感極まって泣いてしまった。空き家の中にはベッドが一つしかないわけだが、ゼクスはAR小隊のようにステルスで来るわけでも翌朝に忍び込んでいたとかもなく、「隣、いいかしら?」と許可を求めてきた。断るわけない。バッチコイ。あれ、となるとあいつらってただの捕食者……

 いややめよう。あの日々ほど寝ることに恐怖を覚えたことはない。

 でもまあ、案の定だが距離が近い。俺を妹だか弟っぽい扱いをしてくるのもあるのだが、物理的にも近い。ふと寝返りを打って反対側を向けばゼクスの寝顔が目の前にあるものだからびっくりする。寝つきが早いのが幸運だった。もし起きてたりしたら絶対にからかわれるに違いない。ま、バレないっしょ!

 

 

 

 

 

「何か嫌なことあった?泣いてたけど……」

 

 

 

 

 

 (そんな重大なことでは)ないです。からかわれるかと思ったら予想外に心配された。そんでもって朝から抱きしめられて頭を撫でられた。恥ずかしいからやめてくれと口では言ったが実を言うと満更でもないのが本音だ。何だかんだで俺もゼクスに甘えてるのかね。何かあの時に引っ越した近所の姉ちゃん思い出すわ……

 それで起きて何しようか二人で考えたが、そもそも最優先で食糧を調達しに行かなきゃいけないのを思い出した。いくら俺達が人形と言えども腹は減る。っていうか食わなきゃ体内のエネルギーに変換されず各部機能に行き届かないらしい。やっぱり鉄血の人形もそんなもんなのかとゼクスに聞けば「食べ物じゃなくて直接補給する方法だけどね」と苦笑いしていた。人形は人形ってことか。

 

 

o月p日

 

 

 昨日から始めた食糧調達だが、今のところは上手くいっている。と言ってもまだ昨日今日としかやっていないわけだが、収穫は上々だ。レーションらしき缶詰もけっこう手に入ったしこれでしばらくは何とかなりそうだ。ぶっちゃけこれから先は一日で缶詰一個消費すればエネルギーにはなるだろう。ゼクスもそれっぽいこと言ってたししばらくは安泰だ。危険な外に出なくていいっていうのはこんな平和なことだったのか。あいつらから逃げ続けてからの日々、初めて心の底から喜べた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

q月t日

 

 

 今押し入れにいる。誰かが来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー全然見つからないよー!!」

 

 

SOPが欠伸をしながら現状に嘆く。AR15はそんなSOPの頭を撫でながら優しく宥めていた。

 

 

「慌てないの。ちゃんと見つかるはずだから」

「だってぇ~。早く会いたいんだもん……」

「だから、諦めないで捜しましょ?」

「うん……」

 

 

それは私、いや、この場にいる全員が同じ気持ちだ。特にSOPなんかは一番懐いていたので失った反動も悲しみも人一倍大きいのだろう。AR15だって宥めてはいるが、表情は悲しみに満ち溢れている。しかしそんな状態になったとしても、現状は未だ変わらず。居場所の手がかりさえ殆ど掴めていなかった。これは紛れもなく私の責任だ。

 

 

「ねえM4……このまま見つからなかったらどうなるのかな……」

 

 

SOPの発した言葉に、私の妹であるM4はただ黙っていた。黙々とマガジンに弾を込め、ホログラムで周辺地域を確認している。

 

 

「ねえM4……」

「……移動しましょう」

「え?」

 

 

紡ぎ出した言葉はそれだけだった。数日前に滞在したばかりなのに少しばかり早すぎるんじゃないだろうか。思わず私もその疑問を声に出していた。

 

 

「どういうことだ?まだこの地域に数日しか滞在していないんだぞ」

「でも、手がかりも何もありません……もう別の地域に逃げた可能性があります」

「逃げた……」

 

 

何で代理人は私達から逃げる必要がある?ただ私達は一緒に過ごしたいだけだと言うのに、何があったんだ?少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一緒に物資を盗んだり五人で遊んだりしただけである。それなのに何故……ああクソ、代理人の逃げる行動に納得できない。何が不満だったんだ?一体何をすれば戻ってきてくれる?頼む、代理人。戻ってきてくれ……

 

 

「……分かった。別の地域に移動しよう」

「必ず見つけ出しましょう」

「そうだな」

 

 

私はただ、お前と一緒に暮らして酒を飲みたいだけなんだよ……

 

 

だがそんな弱音を吐くのは見つけた後だ。今は任務中である以上弱音を吐くことは許されない。当たり前だ、私がへなちょこになったら誰が代わりを務めてくれるんだという話だ。

 

 

「さて、移動するか……ん?」

「どうしたの?」

「何か歩いてきてるな……」

 

 

AR15が隣に来たが、私の視線は前方を向いていた。四人ぐらい歩いてきてるが……人形か……?

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー♪AR小隊のみなさん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな時にか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

404小隊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗めの茶髪をサイドテールにした髪型、左目に出来た大きな傷、そして理解不能な笑み。まさしく404小隊の隊長であるUMP45だった。今忙しいってのに……

 

 

「何しに来たんだ」

「あら、そんな怖い顔しないでよ。416と同じような顔になってるわよ?」

 

 

416の方を見れば、並の人間人形ならばとっくに腰を抜かしていそうな程私に睨みを利かせていた。何だいつも通りか。隣の寝坊助G11は416の真似事をしているのかタバコを吸いながら同じように睨んでいる。お前タバコ吸ってたんだな。9は……SOPと意気投合してるな。けっこう二人は仲がいい。

 

 

「あー……皆いつも通りだな。それで、何しに来たんだ。哨戒任務……って感じじゃなさそうだけどな」

「鋭いのね。でも分かり切ってるでしょ?私達は存在しない部隊、そして私は……」

皆の汚点だろ?」

「ご名答~」

 

 

ったくいつまでも笑った仮面を被りやがって……

 

 

「まあ、この地域に来たのは捜し人がいるからね。ちょっとグリフィンから依頼が入っちゃって」

「依頼?」

「いつものことよ。報酬が普段より少ないことを除けば、ね」

「誰を捜してるんだ?」

「詳細は漏洩しないようにって言われてるから名前は言えないけど……そうね。鉄血の人形だったわね、確か」

「ッ!?」

 

 

私は察した。否、察してしまった。

 

 

まさか、嘘だとは思いたい。人違いだと思いたい。

 

 

「……その人形、メイド服を着てないか?」

「データベースで見た限りは。変装してる可能性も無くはないわ」

「じゃあ……私達もちょうど鉄血の人形を捜してるんだ」

 

 

これは予想外の事態だぞ……まずいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同じ人形じゃないだろうな」

「肯定したら?」



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九話

どうやら私の予想とやらは当たっていたらしく、目の前のM16は必死に無表情を取り繕うとしていた。でもそれだけじゃ駄目、微かに泳いでいる視線を私が見逃さないとでも思ったのかしら?何にせよ予想が当たったらこの任務はもうじき終わりを告げる。

 

 

「……フフ。ねえ、知ってる?」

「……何がだ」

 

 

AR小隊はいわば、16Labから派遣されている存在だ。そして16Labの主席研究員はペルシカリア。つまりペルシカは彼女達の親という立ち位置になる。ここで私はさらに揺さぶりをかけておいた。

 

 

「子が知らない人と遊んできたと言ったら、親はどう思うかしら?」

「……お前、あいつも巻き込む気か?」

「そんなわけないじゃない。もしそんなことしちゃったら私達404は世界中を敵に回さなきゃいけなくなるわ。デメリットだらけの作戦を私が立てると思う?」

「思えないな」

「そう。でもあなた達が築いた関係を戻すのはとても難しいことよ?それこそ世界平和を実現する程度には、ね」

 

 

M16はまるで意味が分からんとばかりに眉を顰めた。やっぱり、覚えてないのね。人形が物事を忘れることや認知症になることなどあり得ないので、この場合は記憶モジュールに何らかの干渉をされたと言っていい。そして一部の不都合な記憶が全て消え去ったということだ。16Labやグリフィンのことで脅しておけば捜索は中止せざるを得ないだろう。それに、仮にも表舞台に立つエリート小隊が鉄血の人形と関係を持ったとすればグリフィンの名声にも関わる。そして名声が落ちれば私達に飛び火する可能性もある。つまり私達はこれから貢献するのだ。誰も悲しむことのない、それこそ平和な結末を敢行するのだ。

 

 

そうじゃなきゃ報酬が増えないからね。へリアン(石頭)には成果を強調しておくとしよう。

 

 

「……」

 

 

沈黙を貫いている。かつて一緒にいた頃にも見た、不安要素を無理矢理握り潰している目だ。どうやら416もそれに気づいているようで、僅かに口角を釣り上げて得意気な表情をしている。彼女からしたら憎むべき相手が不利な状況に立っているという事実だけで歓喜しているのだろう。しかしまだ任務は終わっていないため、時間をかけることも出来ない。彼女達の追跡の足は根元から断ち切るに限る。

 

 

さあ、これで終わり……

 

 

 

 

 

「そうそう、これへリアンから貰ったんだけど」

 

 

 

 

 

この紙を渡せばいい。

 

 

 

 

 

「既存任務の打ち切り通告よ」

 

 

 

 

 

わざわざ9が発行してもらったもの。偽物なんかではないわ。

 

 

そしてM16は声を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、そうか。分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覇気のない声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェックメイトよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、AR小隊にはM16が知らせたようで、全員が諦観を抱いていた。それでいい。グリフィンに影響があれば、私達にも影響が来るのだから。

 

 

とはいえ一人だけ放っておけないのは人形の性と言うべきものかもしれない。私は声を殺して泣いているSOPの元に歩いていった。私に気づいてあげた顔は涙でぐちゃぐちゃ、喜々として鉄血人形を解体している同一人物とは思えなかった。

 

 

「……心配?」

「だってぇ……だってぇ……!もう、代理人と、ひぐっ、あえ、会えなく、なるから、だか、ら……」

「人違いなのを願いましょう。それに万が一同じだったとしても、ずっと遠ざけるなんてことは無いと思うわ」

「ほんと……?」

「本当よ。涙は出会ったときに取っておきなさい」

 

 

SOPを優しく抱きしめて頭を撫でる。私の柄じゃない筈なのに……まあ、いいや。嫌いなわけではないし。

 

 

「うぐっ、ひぐっ……」

「よしよし」

「ぜ、絶対、えぐっ、み、みつけ、てね……?」

「約束するわ」

 

 

そしてSOPの額にキスをしてから立ち上がった。まだ子供だから希望は持たせてもいい。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

AR小隊と別れて移動していると、416が不機嫌な様子で言ってきた。嫉妬かしら?

 

 

「何余計なことしてるのよあんたは……」

「あら、子供に希望を持たせることは駄目だった?」

「別に言わなくても良かったでしょ」

「いいのよ。あの子素直で可愛らしいから。貴女も見習ったら?」

「ハァ!?」

 

 

さて癇癪を起こした416はG11に任せて……まずはこの家ね。

 

 

「9、念のためフラッシュバンの準備。ブリーチングのタイミングは任せるわ」

「オッケー45姉。いつでもいいよ」

「416、この家を捜索するわよ。爆薬を設置して」

「分かったわ。ドアに恨みはないけど八つ当たりさせてもらうわよ」

 

 

416が悪い笑みを浮かべて爆薬を設置する。ああ怖い顔。怖い怖い。

 

 

設置し終え、扉の横に張り付く。

 

 

「……やって」

 

 

416は笑みを浮かべたまま合図した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……KABOOM」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

y月p日

 

 

 二階に逃げ込んでおいてよかった。そうじゃなきゃマジで死んでいたかもしれない。

 空き家の外から複数の足音が聞こえたから、俺達は急いで二階に上がって押し入れの中に隠れた。ゼクスと密着している体勢のため何か柔らかいもの同士が当たってるが、今はそれどころじゃない。爆発音が聞こえてからずっとビビりっぱなしだった。今だって手が震えている。ああもう、早くふるえおさまってくれよ。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいおれこんな怖がりじゃなかった気がするんだけどな

 

 

 

 

 

 ああいや、うん。だいじょうぶだ、大丈夫。書いてる途中にゼクスに抱きしめられた。あったかい。少し落ち着いてきた。しかも俺、泣いてたみたいだ。男なんだけどなぁ、恥ずかしいや。でも嫌な気分じゃなかった。むしろいいっていうか、もっとこのままがいいっていうか……ゼクスは隣でずっと笑みを浮かべている。すごく優しい顔だ。やべ、また涙出てきた。

 やっと震えが収まってきた。よかった。ゼクスが「ほら、大丈夫よ」と寝る時に抱きしめてくれた。まだ日記とペンは持ってるがそろそろ寝なきゃな。あったかいや……

 

 

 

 

 

 おやすみ、姉ちゃん。



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十話

n月p日

 

 

 困った。二日前もそうだったのだが、謎の集団が空き家のドアを吹き飛ばして侵入してきたものだから外に出られないし一階にも降りられない。あの時は二階まで探されずに済んだが、これからは警戒しながら過ごす必要があるだろう。この空き家を取り払って別の地域に逃げることも視野に入れなければいけない。

 しかし何なんだよあの集団。俺が思うにあれは多分AR小隊なんかじゃない。会話の一つも聞こえなかったし、別の小隊がいるのだろうか。

 どちらにしろ見つかるわけにはいかない。

 

 

k月r日

 

 

 これ堕落一直線じゃね?

 危険だからという理由はあるものの、それを考慮しても外の空気を吸えていないのは如何なものだろうか。俺は訝しんだ。いや、人形だから食料も少ししか摂らなくていいし外に出なくても何ら支障が出るわけではない。ゼクスだってベッドで気持ちよさそうに寝ている。窓を開けようとも考えたがスナイパーがいる可能性があるため没。一階に降りて玄関から出るのは待ち伏せの可能性があるので没。というよりゼクスがそれを許してくれないだろう。

 でも何とかしないとなぁ。

 それで今日はご飯食わないでまた一緒に寝た。改善せず(いつもの)

 

 

j月b日

 

 

 

 

 

「排熱が間に合ってないわね……冷却装置に異常があるのかも」

 

 

 

 

 

 開口一番ゼクスから言われた言葉がこれである。要するに、俺は風邪を引いてしまったらしい。風邪と言っていいのかは怪しいが、熱があることは確かだった。あと体がだるい。

 ゼクスが説明してくれたが、どうも人形には動作の際に熱が発生するらしく、それを逃して機能を快適にさせるように冷却装置が搭載されているとのこと。その冷却装置に異常が生じているのではないかとゼクスが近づいて額に手を当てたがすぐに離した。どうやら相当熱を持っているらしい。今日は一日いっぱい横になってるとするか。

 

 

 

 

 

 それで何でお前はすり寄って足を絡ませてくるんだ。何が「そうしなきゃもっと具合悪くなる」だバカ姉。

 

 

r月w日

 

 

 人形用の風邪薬も無いせいか直りが遅い気がする。ゼクスも近くの川で濡らしてきたタオルを置いてくれているが、俺は情けなさでいっぱいだ。

 そもそも鉄血のハイエンドモデルだっていうのに冷却装置の異常云々でベッドに寝込む羽目になるのはとてもよろしくない。それに世話をしている姉ちゃんことゼクスは、仮にも鉄血のノーマルな人形だ。同じ見た目で量産されるタイプの人形で地位で言ったら俺よりも下である。

 つまりは部下にこんな姿を見せているというわけで……罪悪感が湧いてくる。この風邪が直ったら恩返ししなきゃいけないな。何をすれば喜ぶだろうか。肩たたきとか……いや、何か物をあげるのもいいかな。本人に聞くのが手っ取り早いが、多分あいつは「俺と一緒に過ごせればそれでいい」とか言いそうだからやめておいた。そう考えるとゼクスってマジであの時の姉ちゃんにそっくりだな。姉ちゃんかぁ……そうなると俺はどっちなんだ?中身男だから弟か、それとも見た目こんなだから妹なのか。うーん、聞いてみるか。

 

 

 

 

 

「どっちかって言うと……妹ね。性格が男でも、私からしたら可愛い妹よ」

 

 

 

 

 

 そう言って頭を撫でてくれた。

 嬉しく思ったのは俺だけだろうか。

 

 

t月e日

 

 

 ゼクスに冷却装置を点検してもらったが、完膚なきまでに故障してた。取り外して見せてもらったが何じゃこりゃ。黒焦げでブスブスって音が聞こえてるぞおい。とりあえず使い物にならないということで外に捨てておいた。新品の部品があればいいんだがいかんせんいつグリフィンの部隊が来るか分からないし、俺自身も冷却装置が無いから排熱されなくて過度な動きは出来ない。

 というか今はゼクスがいない。

 タオルを濡らしてくると外に出ていったっきりまだ戻ってきていない。今はベッドで横になって日記を書いているが心配だ。まあ全く動けないわけじゃないのでちょっと捜しに行こう。グリフィンの部隊がいるかもしれないが、あいつの安否の方が大事だ。あと外の空気吸いに行きたいしな。

 

 

q月m日

 

 

 結論から言おう。捕まった。熱が許容量を超えてうつ伏せで倒れてたら誰かに担がれて意識を失った。そして目が覚めたらこの檻の中である。ちなみにゼクスは無事だった。寝てるし、お前マイペース過ぎるだろ。

 少し温度が低いのか熱が下がった気がした。とりあえず普通に歩ける程度には回復したし座って逃げ出す方法を考えることにした。何かこう、映画みたいな脱出方法がある筈だ。無いのはあり得ない。

 

 

 

 

 

【悲報】代理人ワイ、逃げられなくなった模様。

 

 

 

 

 

 壁の綻びとかも無いしほんまつっかえ!しかも部屋の隅にあからさまな監視カメラあるし。映画泥棒になる気はないぞ。

 でもこの状況はちょっとヤバいかもしれない。ゼクスは格子を掴んで残念そうに顔を俯かせているし、もしかしたら殺されるかもしれない。それか運が良くてヤバい実験の被検体か。どちらにしろマズイ選択肢であることに変わりは無い。最悪の中から最善を探せってのかよ……ちくしょう。

 こんな時でもゼクスは俺を心配して優しく抱きしめてくる。これから死ぬかもしれないのに何であんな笑顔になれるんだよ……でも素直に受け入れる俺も罪ではある。今何時なんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが報酬だ」

「ありがとうね」

 

 

私はへリアンから手渡しで報酬を受け取った。予想通りだ、成果を強調したら何の躊躇いもなく上乗せ金を支払ってくれた。合コンの負け犬もチョロいものね。

 

 

「どうかしたのか?」

「何でもないわよ」

 

 

鋭いのね、フフ……

 

 

部屋を出ると9が待ってくれていた。

 

 

「45姉、どれくらい貰ったの?」

「ん?まあまあの額よ。これぐらいなら……ケーキが買えるわね」

「え、ケーキ!?」

 

 

ケーキという単語を聞いた途端、9が犬のように私に顔を近づけてきた。もう、すぐ食いつくんだから。

 

 

「慌てないの。ちゃんと買ってあげるからね。それで何食べたい?」

「うんとね……ショートケーキ!」

「ショートケーキね。私もそれにして……あとは416とG11ね」

「うん。ケーキなんて久しぶりだなぁ……45姉ありがと!」

「どういたしまして」

 

 

はしゃぐ9の頭を撫でる。本当に可愛らしいわね……フフ。



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十一話

a月p日

 

 

 片眼鏡を掛けた女が三人の人形を引き連れて歩いてきた。こいつはまあ、何とも堅苦しい顔してるんだ……普通に美人さんの部類に入るが俺とゼクスを連行すると知ったらそんな考えは吹き飛んだ。施錠が外されると俺達は銃を突き付けられながら立たされて連行された。

 何とか情報収集をしたいと思ったが、少し横を向いたら銃口を強く押し当てられた。クソ、一切情報を与える気が無いってことか。ゼクスはジッと前を見据えていた。でも気が気じゃない筈だ。どうすれば生き延びれるんだ……

 それで連れてこられたのは、あろうことか社長室だった。何これ、俺何されるの?怖くなって足が震えてきた。されるがままに豪勢で近未来的なデスクの前に立たされ待っていると、顔を見せたのは屈強な顔つきの男だった。髭も生やして目元が怖い。ヤバい、マジでヤバい。ゼクスは無表情を取り繕っているが俺にはそんなこと出来やしない。自己紹介を求められたので俺とゼクスは名前を言った。ちくしょう、声も震えて全然出ねえよ……

 

 

 

 

 

「そんなに緊張しなくても良い。座ってくれ」

 

 

 

 

 

 何か予想外に俺達はソファに座らせられ、社長、クルーガーの話を聞くことにした。頭真っ白だったけどな。要点をまとめると、まず俺とゼクスは404小隊という部隊に連れてこられたこと。404小隊というのは人形だけで構成された傭兵部隊らしい。例外を除いて関わった人形はその小隊に関する記憶を部分消去されるそうだ。怖いなおい。

 そして次に、俺は代理人であって代理人ではないということ。いや、分からない。俺は代理人の筈なのにな。でも詳しい話をする程度にはクルーガーは意地の悪い人ではなかった。というのも俺はあくまで自我を持った代理人の予備素体であるらしく、鉄血のハイエンドモデルである本物の方の代理人は健在しているとのことだ。あれ、てことは俺けっこうヤバい立ち位置じゃね?

 それで内心慌てているとゼクスが強気にもクルーガーに質問した。「殺すんだったら私だけにしてちょうだい」って、何てこと聞いてるんだよ……ゼクスが死ぬのは嫌だぞ。それでクルーガーは数秒考えこむようにして、笑いながら処遇について答えた。

 

 

 

 

 

「そのことだが、グリフィンとしては君達を雇うことにした」

 

 

 

 

 

 俺は泣いた。

 

 

s月y日

 

 

 昨日書き忘れたが、俺とゼクスは普段は二人一組として雑用をして、ごく稀に大きな仕事をやることになった。ちなみに二人一組というのはゼクスの希望が通った結果である。ただでさえ精神が弱い俺を一人にはしたくないんだと。まあ精神的に疲れてるのは事実だし、俺も何やかんやで姉ちゃん……ゼクスを頼ってるしで反対はしなかった。

 でも部屋まで同じっていうのはどうなのか。

 そりゃ俺も見た目女だよ?でもさぁ……精神的には男だってことを理解はしてほしい。部屋には当然風呂もついてるが、ゼクスのことだ。俺と一緒に入りかねない。AR小隊の時でさえ色々とマズかったんだ。これ以上はベニヤ板ぐらいの隔壁オーラを出さなければいけない。

 

 

 

 

 

 結果?気づいたら一緒に湯船に浸かってました(かいめつ)

 

 

u月n日

 

 

 あーもう!何で普通に風呂に入っちゃったかなぁ!?今日もちょっとした仕事があったけど俺はもう恥ずかしさで顔をうずめるしかなかった。倍プッシュだ……!(やけくそ)

 しかし当のゼクスときたらいつもと変わらない朗らかな表情で俺の手を引いて通路を歩く。手が温かかったけど俺はそれ以上に自分の体温が高いわゼクスの顔を直視できないわである意味大変な目に遭った。しかもこいつお姉ちゃん力が上がってないか?俺をさりげなくリードするのもそうだが、朝起きたら俺の目の前にそれなりに実った胸があったり昨日の風呂だって俺の背中を流してくれたり……何かもうマジであの近所の姉ちゃんにしか思えないぞ。お前本当は俺と同じ転生者だろ?

 

 

 

 

 

「テンセイシャ……?」

 

 

 

 

 

 ゼクスはシロだった。まあ、そりゃそうか。転生者っていう単語を知らない辺り鉄血の人形なんだろう。うーん、こういうこともあるのか?俺にはよく分からないから考えないことにした。よくよく考えたら俺が転生した理由も不明なままだしな。

 へリアンに書類を届けるために歩いてたら、前方からM4が歩いてくるのが見えたので急いで迂回路を通った。こえーよ、この中でもエンカウントとか勘弁してくれよ。

 それで書類を提出したついでに雑談をしていった。よかったここに居る限りは安全だ。あいつらの魔の手も来ないだろう。それで話をしていると、髪型を変えないかと提案された。考えてみれば俺は予備素体。今は本物と容姿が瓜二つだからグリフィン内で勘違いする人がいるかもしれないとのことだった。まあそれなりに整えてもらうか。後は名前も変える必要がある。色々ネットで調べたりして決めることにしよう。

 部屋から出るとちょうどいいタイミングでM4と出会った。

 俺はゼクスの手を引いて急ぎ足で部屋に戻った。

 

 

g月v日

 

 

 俺とゼクスが住んでいる住居は本部に隣接している寮で、空き部屋はあるがそれなりに人形も住んでいるらしい。にしても人形と職員で建物が違うって地味に凄いな。グリフィンってどれだけ金持ってるんだ。

 俺達は二人で一つの部屋をシェア、左右四部屋ずつはまだ誰も入居していない。今日は仕事が無い日だが、ゼクスは相変わらず寝ている。マイペースなのは別に構わないが寝ぼけて俺を引き込もうとしないでくれ。ビックリするし恥ずかしいんじゃコラ。でも強くは言えない。まあ、いいか……

 そういえば八人ほど団体で入居してくると他の人形から聞いたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子ロックキーを二つほど買って玄関のドアに取り付けた。



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十二話

r月h日

 

 

 うん、何でだ。何で電子ロックキーが二つとも解除されてるんだ?しかももう一度ロック掛けようとしたら認証できない判定になってロックできなくなってしまった。不良品か?それとも誰かが開けたのか?急に怖くなったので姉ちゃんに相談したら「偶然よ。あ、なら寝る時に抱きしめちゃおうかしら?」と言われた。ちゃうねん工藤、そうじゃないねん。

 とはいえ壊れてしまったものは仕方ないのでとりあえずゼクスと一緒に本部に出勤。今日は書類の不備の確認だった。

 部屋で作業していたらサイドテールの茶髪の人形がチョコケーキを持ってきてくれた。名前はUMP45と言うらしい。どっかで見た気がするが思い出せなかった。ゼクスも初対面みたいだ。

 話をしながら電子ロックキーが壊れたことを知らないかと伝えると「あら、誰かさんのイタズラかもね」と笑みを浮かべて言われた。ものっそい怪しいぞおい。不審に思ったころには45は姿を消していた。逃げたのかね、絶対逃げたろ。

 

 

k月i日

 

 

 新しく買った南京錠が何故かものの見事に開錠されていた。二日続けてとかマジで怖くなってきたぞ……

 でもこれ以上新しく鍵とか買っても金の無駄になりそうな気もするのでやめておいた。まあ備え付けの鍵でも何とかなるでしょ。

 そういえばゼクスから聞いたが、AR小隊と404小隊が両隣の部屋に引っ越してきたらしい。うっそだろお前。それで施錠を確認してから寝転がったら天井にスターが張り付いていた。んでそっからスルスルと俺に跨るようにして下りてきた。ふざけんなコラ。ちなみに俺はスターの右隣で日記を書いている。ゼクスも反対側で俺の日記を眺めていた。恥ずかしさで悶え死にそう。姉ちゃん助けて(切実)

 

 

 

 

 

 書き終わったので風呂入って寝る。え、スターも入るの?姉ちゃんマジで?

 

 

w月c日

 

 

 起きたらクッソ久々な百合知恵の輪が出来上がってた(定期)痛くはないけどゼクスが俺の胸に顔うずめてるわスターが足を絡めさせてきてるわで脱出するのが面倒だった。仕事には無事遅刻してカリーナっていう金髪の姉ちゃんにからかわれた。何でも戦術人形の戦闘技能の効率化を促す作戦報告書というフロッピーディスク型の書類を作成しているらしい。他にも購買をやってるんだとか。

 俺の気のせいじゃなければ一瞬目が死んでいた。今度スイーツでも買おうかな。

 作戦報告書を作った後は食堂の掃除を任された。ルンバみたいなのがやっていたらしいのだがとあるゲームが好きな人形がごり押しで貰っていってしまったとのことだ。何する気なんだろうか。それで清掃員として俺達が指名されたという経緯だ。それで色々と人形や職員がいたが、噂を聞いたのか二人ほど話しかけてきた。

 一人がピンク色の髪のNTW-20、通称ダネル。それでもう一人が自称秘密兵器のOTs-12、通称ティス。

 まあダネルは頼りになる姉みたいな感じかな。初対面で妹扱いされたけども。無論ゼクスだって頼りにしてる。主に精神的な面で。ティスは同年代みたいな感じで接してきたのでそれに応じることにした。自分を秘密兵器と言う程なので他に秘密兵器があるのか聞いたら、少し迷った顔をしながらその名称を言った。

 

 

 

 

 

 何でハインド持ってんの?(震え声)

 

 

h月j日

 

 

 誰にも邪魔させない~♪

 今日は仕事が休みだったのでゼクスと一緒に敷地内の庭に行くことにした。ぶっちゃけ部屋にいても暇なだけだしな。それで目的地の庭だが、しばらく見惚れるぐらいに自然がたくさんあった。グリフィンに保護されるまでは花の一輪も見かけなかったというのに、この差はすごい。

 それでベンチに座って景色を眺めていたら後ろから急に声を掛けられた。ビックリするわ。そして声の主はM4A1……うん、M4だった。俺は即座に立ち上がろうとしたが肩を掴まれて座らせられた。ついでに腕を這わしてきた。ひぇ……

 開口一番「また一緒に居られますね……えへへ」だった。初期の俺の感性だったら可愛いって思ってたかもしれないがなぁ……今となっては悪寒を感じるんだよ。しかも耳元で囁くように言うものだから変にくすぐったいし意識してしまう。身体も強張るわこんなん。

 ゼクスはそんな光景を微笑ましそうに見ていた。ちょっとは援護して、どうぞ。

 

 

k月b日

 

 

 今日は404がいないので部屋の状態をチェックすることにした。絶対あの鍵壊したの45だろ。騙されんぞ(ジョージィ並の感想)

 AR小隊はいるが、まあ、何とかなるでしょ。それよりもゼクスと一緒に部屋のセキュリティを確認しなきゃいけない。さーてまずは玄関の鍵だ。

 あ い て た 。

 次にクローゼット。何ということでしょう。見事に壁がくり抜かれて出入りできるようになっているじゃあありませんか。やめてくれよ……(絶望)しかし悲観してるわけにもいかない。木の板で穴を塞いで鎖でグルグル封鎖しておいた。呪いのあれみたいな感じになったけど俺の安全に比べれば安いものだ。まあこれはあれだ、インテリアの一環だ。うん。()

 そんなこんなで過ごしてたら風呂場からSOPが素っ裸で出てきた。色々言いたいことはあるがまずは服を着てくれ頼む。そう言ったがパンツしか穿かなかった。胸はちょうど首に掛けたバスタオルで隠れてる。タオルグッジョブ。

 詳しい状況を聞き出したが、どうやら遊んで汗をかいて、そんでもって部屋を間違えてこっちの風呂に入っちゃったらしい。嘘つけたわけ。そして感想が「サッパリしたぁ~」とのこと。もうちょいマシな弁明しろよ。それでSOPは冷蔵庫からジュースを三本出して「遊びに来た!」と笑顔で言いきった。しゃあねえ許したる。でも流石にブラは着けような。ゼクスが着けてくれたが、SOPは何で身体を捩らせてるんだ。それと甘い声を出すのはやめなさい。「んん……んぁ……ぜく、すぅ、お姉ちゃ……ふぁぁ!」じゃないわこの野郎。白昼堂々部屋の中で百合の華を咲かせようとするのは理性が吹き飛びかねない。思わず手で顔を覆ったが指の隙間からチラチラ覗いてた。姉ちゃんにはバレてた。ちくせう。

 まあSOPがブラ着けた後は普通に話をしたりした。訓練でM16が酒を隠し持ってたり、スターはSOPのことを撫でたり抱きしめたりしてること、M4がエムフォエルなんて言われた時期があったことなど。大天使エムフォエル?ハハ、ありゃ悪魔だよ……

 SOPはゼクスにめちゃくちゃ甘えていた。そんでもってゼクスも可愛がっていた。まあ微笑ましい光景だこと。

 何故か俺も巻き込まれた。何でや関係なかったやろ!



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十三話

d月y日

 

 

 俺達の部屋の左側四部屋にAR小隊の面々、右側四部屋に404小隊の面々。カリーナの所に匿ってもらおうかな俺。いや、報告書書かされるから駄目か。どうしたらいいんだよこれ。

 欠伸しながら清々しい朝を迎えたと思ったらスターとSOP、それに茶髪のツインテールの人形が俺を使って百合知恵の輪を作り上げてた。どうして。そして45と水色髪の人形はゼクスに絡まってた。お前が巻き込まれるのか……(困惑)

 とりあえず脱出してスターとSOPを追い出してから404の奴らを問いただすことにした。危険はAR小隊だけかと思ってたらお前らも本当にもう……溜め息しか出なかった。それで茶髪のツインテールの人形がUMP9、バツが悪そうでも笑っている。第一印象は明るい子っていう感じだが何故か家族認定された。マジで何で?そんで水色髪の人形が416、何で忍び込んだのか聞くと「完璧だから侵入する最適な時間帯も分かるのよ」とのこと。待てこらてめえどういうことだ。何で勝手にプライバシー把握してんだこら。注意しようとしたら視界から消えてて押し倒されてた。鉄血の野良人形でも捕まえてやって、どうぞ。ていうか少しは気にしろ。胸ばるんばるんしてるぞ。

 45が死んだ魚の目になってた。9で我慢して。あ、イチャイチャしだした。よし、平和だな!(平和じゃない)

 とりあえず準備して404の面々と一緒に出勤。416はG11という人形をおぶっていた。随分眠そうだったが寝不足なんだろうか?

 

 

 

 

 

 あ、データルームにぶち込まれた。ご愁傷様です……

 

 

a月g日

 

 

 普段のお仕事に416が加わることになった。何でもゼクスに「手伝いたい」と頼み込んだらしく、気づけば食堂の掃除要員になっていた。でもまあ清掃員が増えるのは単純に俺の負担が減るし、ゼクスも話し相手が出来て嬉しそうだった。でも白昼堂々ゼクスの胸を揉みしだくのはやめような?そしてゼクスも喘いで無抵抗になるんじゃない。え、「こういうの好きでしょ?」だって?姉ちゃん言わないでくれ……416も何か察したような顔になってるし。恥ずかしいわ。

 昼休憩ということで三人で昼ご飯を食べることにした。416はカレー、ゼクスはハンバーグ定食、俺は416と同じカレーにした。ちなみに甘口。辛いのは食えないからな。中辛とかマジで無理。一回だけ食ったことあるっけ、その時は死ぬかと思った。食べてる途中で416が「辛いの食べれないの?」と聞いてきたのでそのことを言ったら、少し笑われた。まあそりゃそうだろうな。これでまた妹扱いのタネが一つ増える……でも416は辛口のカレーなので反論なんて出来やしない。

 食べている途中、M4がチャーハンが盛られた皿を持って俺の向かいの席に座ってきた。そして次の瞬間には416が隣の席にいるM4を見てムスッとしていた。何か喧嘩でもしたのかね。意を決して聞いてみたが、416があまりAR小隊のことを好いていないらしい。一方的な嫌悪は流石にあれなんじゃないかと伝えようとしたが、416がM4の髪を触ってM4がそれに気づいて声を掛けたら416が慌てて弁明して頭を撫でるという珍百景的なものを見れたので言わないことにした。その後も416が可愛がってM4を抱きしめたりとかしてた。お前好きじゃないとか嘘だろ絶対。大好きに限りなく近い好きだろお前。

 背後に45と9がいたのは言わないでおこう。世の中知らなくていいこともある。

 昼休憩も終えて今度はのんびり敷地内の巡回だった。

 何か異常が無いかだとか警備システムに問題はないかだとかの確認が必要だと説明はされたが此処はグリフィンの敷地内。なーんにも事案が起こらない。まあ、要するに簡単に確認だけして後は散歩というわけである。それで歩いてたらスコーピオンに出会った。この前仲良くしてもらってそこから友人になってる。明るい子でグリフィンに来る前は商店街の看板娘をやっていたらしい。だから結構活発なのね。それでグリフィンの寮があることを伝えると入るか検討してくれた。

 すまない。騙して悪いが俺の今後の為だ。

 

 

d月p日

 

 

 スコーピオンが来ることで彼女がクッション的な役割をしてくれるのはほぼ間違いないだろう。その為に寮のことを言ったんだ。申し訳ない。

 朝起きて目に入ったのがゼクスの一糸まとわぬ姿だった。思わず目をそらしたが振り向いた先にはM4が俺に抱き着いたまま眠っていた。マアァァァァァァ……!!目のやり場を落としちゃった!!!なお今回の百合知恵の輪には45と9、そんで416にM4にM16という動物タワーバトル状態になってた。M16は起きて自分からどいてくれたがニヤニヤしながら眺めている。ライダー助けて!

 何とか時間をかけて脱出したがこれ皆で出勤ですかね……?さぁてM16の答えや如何に。

 

 

 

 

 

「皆で行った方が楽しいだろ?」

 

 

 

 

 

 FATALITY(ネイティブ)

 結局寝間着から着替えて皆で行くことにした。スターとSOPは後から来たが、SOPはスキップしたりスピンしながら廊下を歩いていた。M16から聞けば、鉄血のハイエンドモデル達に会いに行きたいらしい。しかも解体とかそういうのじゃなくて友達になりたいとのこと。大丈夫なのそれ?めちゃくちゃ心配だぞおい。これにはSOP以外全員が驚いたし心配したりしたが、当の本人は「だって皆お姉ちゃんなんだもん」と楽しみと妄想に耽っていた。まあ俺達で何とか手引きするしかないか……

 AR小隊は特殊な目を持っている指揮官がいるという地区への遠征任務で別れ、俺達は404と共に食堂に向かった。途中でG11と合流したが、喫煙所でタバコを吸っていた。

 何でも給料の二割を煙草に費やしているらしい。すげえな。










特殊な目を持った指揮官は、ナガンおばあちゃんがいて最近人形と結婚した少女です。勝手に出しちゃったけどゆるして()


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十四話







しきかぁん、見ててください……これが、私があなたに捧げる勝利です……これからも私のことを……もっと見ててくださぁい……(ねっとり)



あの子やぞ()


e月o日

 

 

 俺達が任されている雑用係というのは基本的に前日に内容が組み込まれていて、当日にそれらの仕事をこなす仕組みになっている。やる内容というのはその日その日で違うため、予定を渡されるまで分からない。そして今日は休みだったのでゆっくり寝ていようかと思ったが、百合知恵の輪には狸寝入りも通用しませんでした(敗北者)

 目閉じて誤魔化そうとしたけど45が耳元で「イケない子ね……」って囁いてきたから飛び起きてしまった。くすぐったいんじゃこの野郎。隣を見ればそれはそれはニコニコとご機嫌な45の姿があったので仕返ししようかと考えた。同じことすれば多分誤解を招きかねないので却下。どうしよ。

 そういや45ってけっこう胸小さいよな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねえ何で!?ねえ何で!?何で言ってないのに殺されかけなきゃいけないの!?

 今はデータルームに身を潜めて日記を書いている。カリーナにはちょっとした小遣いを渡して口止めしてもらった。これで何とかなるやろ。うん。でも怖い。外に出たら確実に見つかるから別の出口を探さなきゃいけない。何かダクトとかあったらなぁ……

 あ り ま し た 。

 こいつは好都合!じゃあなカリーナ早速使わせてもらうぜ!ダクトの中に入って蓋を閉じた途端、45が扉を蹴破ってきたああぁああああぁあああぁ!?銃持ってるー!?それはまずいですよ!ヤバいやばい404とAR小隊全員が押しかけてきてるよ……カリーナ大丈夫かな。

 

 

 

 

 

「え、代理人?い、いえ!ここには来てませんよ……?」

 

 

 

 

 

 ようしよくやった!百万年無税だ!そんじゃ早いとこさっさとダクトを通って別の部屋に逃げ込んで窓から外に脱出しなきゃな。雑用係舐めんなよ?こちとら色んな所行き来してるから隠し部屋とかも知ってんだぞ。絶対捕まってたまるか。ダクトを通って着いたのは薄暗い倉庫だった。埃っぽくは無いが少し見えづらい。暗視機能は……流石にないか。グリフィンって人形の改造とかやってんのかな。あったらやってもらいたいけど。あ、そんなこと書いてる場合じゃない。窓ないかな。そっから脱出したいけど……

 駄目だったな俺ってバカだよ。ここけっこう高い階層だったのを忘れてた。一階に下りてから外出るしかないな。

 そういえば何か気配感じるんだけど……

 

 

r月h日

 

 

 昨日は大変だった。本当にヤバかった。

 倉庫で45に捕まって壁に追いやられた。笑顔が怖かったです。いやマジで怖かったよホント。泣きながら何度も謝ったわ。半殺しにされるかと思ったが、45はティッシュで俺の目元を拭ってから俺の手を掴んで45の胸に当ててきた。頭が真っ白になったし今も思い出すと顔が熱くなる。そして「……私だってちゃんとあるのよ」と恥ずかしげに言われた。倉庫には二人だけだったので他の皆は知らないが、俺は45の胸に顔をうずめた。そりゃあいつの言う通りだ、申し訳ないな……今日は45に、というか404にケーキを買ってあげた。これぐらいしなきゃ俺の気が済まない。

 

 

t月k日

 

 

 百 合 ジ ェ ン ガ

 俺達の部屋の中に全員いた。いつか俺死んじゃうんじゃないのこれ?脱出するのに時間かかったぞこれ。連日の休暇があってよかった。今日は404が任務でいないためAR小隊やゼクスと一緒に出掛けることになった。暴れんなよ……暴れんな……

 

 

 

 

 

「ねえねえゼクス、代理人って辛い物食べれないの?」

「そうよSOP。でも可愛らしいわよ?一人称は俺なのに甘口を食べてる姿……きゃー!」

「代理人可愛いー!」

 

 

 

 

 

 俺の心は天元突破。恥ずかしかったのでM16に助けを求めた。急におんぶされて下ろされなかった。AI二回行動はNG。M4は微笑ましそうにしていたし主犯格三人は乗り気だった。スターは鼻血を垂らしながら「ああ神よ!深淵に引きずり込まれし我が心に救いを!!」と叫んでいた。プラカードどっから出したお前。

 まあそんなこんなで歩いていたら見覚えのある人形に出会った。というのも食堂で働いている時によく端の席で一人でご飯を食べているのを見たことがあったからだ。何となく視線には気が付いていたのだが、こちらから目を合わせると向こうはすぐに目をそらしてしまうので何でだろうかと気になっていた。服は……まあメイド服だからまだいいか。一番最初に見かけたときの服なんかすごかったからな。黒いパンツ見えてたからな。それで9A-91という人形は相談してほしいということで俺達を近くのカフェに案内してくれた。はえーすっごいオシャレ〜……

 コーヒーがオススメらしかったが俺は飲めないのでココアにしておいた。ちなみにSOPも同じ。ココア仲間だな、へへ。それで9A-91はテーブルに黒い箱を出してから悩みを話し始めた。何でもスオミという憧れの先輩がいるらしいのだが、普段からの感謝もあってかアクセサリーをプレゼントしようとしているが中々渡せないでいるとのことだった。そのアクセサリーがドッグタグの形をしていて『先輩、好きです』と彫られている。要は告白なんじゃないかと思ったが、当の本人は俯いて「前から好きで……」と呟いていた。でも中々行動に移せない理由があるから相談に来てるわけで。その先輩のスオミがロシア嫌いなのである。それで9A-91自身もあまり好かれていないらしい。うーんこの。でも相談されたからっていうのもあるがこの気持ちを無化にするわけにはいかない。色々と案が出たが、SOPが「ちゃんと伝えきれば分かってくれるよ!」と言いきった。けっこう大胆に行くんだな。でもそれで迷いがなくなったのか、9A-91は笑顔でお礼を言った。まあ解決できるならそれでいい。そして二人で寮に入りたいことも言ってくれた。クッションが増えるぜFoo^~

 そんじゃもう寝るか。おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふふ、日記書いてたんですね。文字も丸っこくて可愛いです。とりあえず全部拝見したので次が楽しみです……楽しみだなぁ



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十五話

p月x日

 

 

 ひ ろ が る ヤ ン デ レ

 誰だよ昨日の日記に赤ペンで書き足してた奴は。日記帳開いたらビビったわ。しかも内容が妙に怖いしこれ絶対今までの中身見ただろ。でもこれ誰が書いたんだ?姉ちゃんに聞いても分からなかったし……

 今日も仕事は食堂の掃除だった。相変わらずルンバは返ってこないらしい。もう借りパクされてるんじゃないのかなそれ。それで掃除をしてたらダネルが欠伸をしながら一人で昼ご飯を食べていた。ティスは一緒じゃないのかな。

 

 

 

 

 

「ああ、ティスならアパッチでテロの鎮圧に向かったぞ?」

 

 

 

 

 

 うん待て。何やってんだティス。鎮圧じゃねえだろそれ、皆殺しだろ。でもまあグリフィンの敵は何も鉄血だけじゃないから致し方ないのかね。鉄血だけが敵対すべき存在なら軍にでも任せれば済む話だ。こうやってPMCが担当して膠着してるってことは色々厄介な存在もいるってことだろう。となると鉄血が掲げている人類殲滅も割と普通の理由なんじゃないか?人間ってけっこう戦争してるからな。過ちを繰り返すってこういうことかね。そのことをダネルに喋ったら怪訝な顔をされた。そりゃそうか。

 今日手伝ってくれたのはM4だったのだが、まあ歩くときに腕を絡めてくる。別に歩きにくいって程じゃないんだが恥ずかしい。胸当たってるし。白昼堂々はやめてくれよ……あ、ゼクスは相変わらず微笑ましそうに見ております。部屋に帰ったら姉ちゃんに甘えたいんだけどなぁ。まあいいや。

 食堂の掃除が終わった後は倉庫の資材整理。行き先はこの前45に捕まったところだった。また思い出しちゃうやばいやばい……M4は奥の方で資材の数を確認してたからバレなかったが、ゼクスに顔が赤くなってることを指摘されて直視できなかった。それでゼクスに散々可愛がられた。ああもう、恥ずかしいけど嬉しいしどうすりゃいいんだよこれ……

 ちなみに夜はM4も一緒に風呂に入った。物理的に距離感が近くて判断力が鈍ったぞおい。

 

 

y月u日

 

 

 何で404がいるんですかね……(困惑)俺は45とゼクスと9とG11に知恵の輪にされた。45は寝てると思ったが起きてて俺のことを抱きしめてた。ビックリしたっていうか意識しちゃってるっていうか……だって真正面に45の顔があって「おはよう」って優しい声で言われたんだぞ?それで俺は何故か45を抱きしめてた。何か変な気持ちだわ。416はM4を抱きしめてた。もう完全に妹を可愛がってるお姉ちゃんじゃん。俺も人のこと言えないけど。

 それで着替えてる時に9から「代理人って今日ペルシカさんのところに行くんだっけ?」って言われて用事を思い出した。そう、今日は16Labという研究所に行ってペルシカさんという人に髪型を変えてもらう約束だったのである。ゼクスも髪の色を変えたいと言っていたので、監修という名目でスターに連れられて食堂に向かうことにした。

 朝ご飯はコンソメスープに目玉焼きとベーコンのセットにご飯。パンも別にいいけどご飯の方が好きなんだよなぁ。それで食べてたらスターが「あ~ん」って一口サイズのパンを差し出してきた。断れるはずもなく食べる羽目になったが美味しかった。ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが16Labよ」

 

 

スターに案内されて研究所の敷地内に来たが、予想よりもけっこう建物が大きかった。何て言うかこう……グリフィン本部よりも近未来感が半端ない。ゼクスもこれには驚いて周囲を見渡している。

 

 

「すげえな……」

「ペルシカさんはあそこの建物にいるわ。普段は引き籠ってるけど……」

 

 

引き籠りって……まあ研究者気質でそうなんだろうか?

 

 

「でも実力はすごいわよ。髪型も色々バリエーションがあるんじゃないかしら」

「髪型かぁ……どんな感じにしてもらおうかな」

「フフ、貴女ならどんな髪も似合うわよ」

 

 

スターが抱き寄せてきて耳元でそう囁かれた。ひぇ……

 

 

それで目的の建物に入ってペルシカさんが引き籠っているという部屋に入った。うわ、めっちゃ散らかってる部分あるじゃん。でも最低限寛げそうなスペースは確保されてるっぽいな。あーあ、紙も落ちてるし……

 

 

「ペルシカさーん!連れてきたわよー!」

 

 

スターが名前を呼ぶと奥から白衣を着た女が歩いてきた……って顔色悪いなおい。目のクマとか大丈夫かよ。それでペルシカさんは俺とゼクスを交互に見てから、

 

 

「あ~そういえば約束してたね!ごめんごめん、準備は出来てるよ」

「ペルシカさん、もしかして昨日ご飯食べてないんですか……?」

「ん?あ、あ~……あはは……」

「もう、そうだと思ってお弁当作ってきましたから……」

「わぁ、ありがとう」

 

 

そう言ってペルシカはスターの手作り弁当を受け取って食べながら俺とゼクスの頭に器具をセットした。フルフェイスのヘルメットか、これ?

 

 

「ああ、それに画面が表示されてるでしょ?それで髪型があるからそれを選んでやればいいよ」

「ああ、分かった」

「分かったわ。どれにしようかな~」

 

 

どれにしようか。迷うな~……

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

結局数十分ほど悩んだ末、

 

 

「どれどれ……おー、けっこういい感じじゃん」

「そう、かな……姉ちゃん、似合ってる?」

「うんうん、いい感じね。可愛いわよ♪」

 

 

ゼクスが笑顔で俺の頭を撫でてきた。よかったぁ~。ちなみに俺は髪を全部下ろして銀髪に変更、ゼクスは髪型はそのままで赤色に変わっていた。けっこうイメージ変わるもんなんだな……

 

 

「でもこれ、まるっきり別人だな……」

「ならお団子型のオプションパーツでも着けておく?同じ髪に見えるけど、中身は高性能なレーダーだけど」

「あ、それお願いしていい?原型は残しておきたいから」

「はいは~い」

 

 

この後お団子ヘアー型のレーダー装置を二つ着けてもらい、とりあえず代理人としての髪型の特徴は残してもらった。後で名前も考えなきゃな……



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十六話

g月t日

 

 

 夜に寝ないで検索しながら考えた結果、俺の名前は晴れて『スィストラ』になった。この単語自体はロシア語で、意味は姉妹となっている。ゼクスの妹だからという理由でこの名前に決めたのだが、他の皆に伝えたら好評だった。徹夜した甲斐があったわ。ってことで今日から俺はスィストラとして生きていく。

 

 

l月j日

 

 

 今日は午前中いっぱい倉庫整理だった。というのも新任指揮官がまた数名前線に配属されるので、その基地分の物資が追加されていたからだ。それなりの量はあったものの時間はあったので三人で終わらせることが出来た。今日の手伝いはM16。酒を盗むのは駄目だぞ?ちょっと待て地球の終わりを見たかのような顔で俺に縋らないでくれ。

 さぁて次はいつもの食堂の掃除だ。今日はダネルとティスが二人でご飯を食べている。そういえばティスってテロの鎮圧に行ってたんだよな……大丈夫だったのかな。

 

 

 

 

 

「おお、よく聞いてくれたね……!人間なんて目じゃないね。撃てなかったのが残念だけど、見ただけで逃げていったよ」

 

 

 

 

 

 めっちゃ嬉しそうに語っていた。そりゃアパッチで飛んでくれば誰だって逃げる、俺だってそーする。本人は燃料の無駄遣いだって愚痴っていたが、まあそれが平和な証拠になるわけで。でも悲しきかな。ダネルも秘密兵器とやらが欲しいとティスに食いついていた。やめろせめてお前だけは正常でいてくれ。あ、パンフレット出した。しかも兵器の選定まで話が進んじゃってる。あふん。

 甘口カレー美味しい。

 

 

p月k日

 

 

 今日は休みで、しかもAR小隊と404小隊が任務でいなかったため、部屋でゴロゴロしていた。いや~知恵の輪がないのは楽でいいわ。身体が軽いし変に意識しないで済むしいいことばっかやな!

 姉ちゃんが抱き着いてた。いい匂い……じゃなくて!とりあえず動けないので離し、起こしてから買いだめしておいたチョココロネを二人で食べた。っていうか姉ちゃんと二人で暮らすのすごい久々な気がするな。へへ、嬉しいや……

 それで朝ご飯を食べた後はしばらくゴロゴロしてたが、本棚の中からゼクスが数冊の冊子を持ってきた。どんなものかと見れば、表紙には『G&K社内報』と書かれており、戦術人形がモデルとして掲載されていた。発行日はけっこう前。まあこの頃はまだ逃亡生活を続けていたし情報なんて全くなかったからな。うつ伏せに寝転がって見ることにした。隣ではゼクスも同じ体勢でページを捲っている。色々あるんだなぁこれ、前線の指揮官の特集とかやってるし。特集を見ている途中、姉ちゃんはカリーナの購買の商品一覧を見ていた。おっ、綺麗な指輪じゃん。でも高いな……

 ページを捲っていくと、人形と指揮官が結婚したというニュースが掲載されていた。何でもゲストをたくさん招いて披露宴をやったらしい。お~……お?もしかして指揮官って中央に写ってる女の子か?うわぉ百合……んでずっと見てたら姉ちゃんが隣でニコニコしていた。違う違う違う。誤解しないで。説得に成功したのか頬にキスされた。別の意味で失敗したんですがそれは……

 にしても小っちゃい子だなぁ、160もないんじゃないか?名前は載ってなかった。まあ俺なんかよりもよっぽど頼りになりそうだし今後も大丈夫だろきっと。そして次に目に入ったのがD08地区というところの紹介。ここは……HK417?聞いたことない人形だ。前の休みの日に戦術人形のカタログを見た時があったんだが、その一覧にない名前だ。見た目はまあ、416をちょっとマイルドにした感じだった。可愛いな、化粧もしちゃって。でも文面から推測するに指揮官は変態らしい。よくセクハラで訴えられなかったな……

 

 

 

 

 

「あら?スィストラ、後ろの方にもあるわよ」

 

 

 

 

 

 後ろの方にも大きくない見出しで新しい支部の情報が載っていた。鉄血から奪い返したってことかね。お、指揮官の写真もあるな。ちょっと渋くてカッコいいじゃん。解像度が粗いけど判別できない程じゃない。40代くらいかな。名前はタクティス・コピーっていうらしい。アメリカ人っぽいな。こういうおじさんとか憧れるわ。コピーおじさんって、へへ。

 社内報けっこう面白いな。姉ちゃんも楽しそうに見てるし、次から買おうかな。値段も安いし。

 えっと次は……銃の整備だ。ガンスミスっていう人がそういう類の仕事をしているらしい。ラジオもやってるんだな。でも俺と姉ちゃんって銃撃たないしな。ラジオ興味あるから聞こうかな。姉ちゃんも賛成してたし。

 それで読んでたら時間はとっくに昼を過ぎていた。昼ご飯食いに行かなきゃな。

 

 

o月a日

 

 

 あーもうめちゃくちゃだよ(定期)

 百合知恵の輪に404小隊がいるのはいつものことだからいいんだ。いやよくないけども。俺の命的によくないけども。でもさぁ、

 

 

 

 

 

 何で9A-91がいるんだよ!

 

 

 

 

 

 こえーよ!俺が起きたら目ェ開けて服脱がそうとするのこえーよ!逆レは趣味じゃねえぞ!ええいどきやがれこの野郎!

 しかも脱出する時に汗をかいてしまった。とりあえず皆追い出してから風呂に入ることにした。仕事は遅れそうだと思ったけど姉ちゃんが代わりに行ってきてくれた。嬉しい……嬉しい……でも安楽の時間は訪れることはなく、先客として9が入ってた。そっ閉じしようとしたけど抱き寄せられたし当たってるしもうほんま。しかも家族認定してるからか俺の立ち位置は妹で確定らしい。ハァ……恥ずかしい。

 その後はとりあえず9と一緒にゼクスのところに向かった。んでこのツインテールは俺と手を繋いでる。なんで?(困惑)










「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」
・焔薙 様

「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」
・カカオの錬金術師 様

「戦術人形と指揮官と」
・佐賀茂 様

「ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー」
・通りすがる傭兵 様


社内報という形で登場させてしまって申し訳ございませんでした(土下座)許してください何でもしますから!

皆やってたしやりたかったので……とにかくお詫び申し上げます。


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十七話

d月f日

 

 

 

 

 

【急募】姉の手足が増えた場合の対策

 

 

 

 

 

 朝食堂に向かったらゼクスがとんでもないことになってた。何じゃあれは。普通に騒ぎになってたしお前何やらかしてんだ。ゼクスを引っ張って使われてない部屋に連れ込んでから状況と経緯を説明させた。

 どうやら昨日の夜中に16Labに呼び出されて行ったらペルシカさんが改造を提案してくれたらしい。もう怪しいなうん。そんで改造の内容は何も知らされていなかったとのこと。少しは疑えバカ姉。ついでにその場に監修としてSOPもいたとのこと。もう駄目なパターンだこれ。そして結果がこのザマ。具体的には腕が四本に増えて指は四本で細長くなってた。そして脚が四本に増えてた。蜘蛛やんけお前。何が機動性増して動きやすいだこの野郎。しかも脚が長いせいか関節がもう一つ追加されてるし先端が尖ってるしで人外もいいとこ。でも収納すれば普通の長さの四本の脚に見えるという不思議。こりゃ俺と同じ長いスカート買わなきゃいけないな。

 

 

 

 

 

 待て歩くときの足の動き尋常じゃねえぞ。

 

 

p月y日

 

 

 とりあえずペルシカさんに苦情は入れてきた。姉ちゃんの同意得たからってあの改造は色々アレだろ。でも肝心の張本人は試作品による改造の成功が嬉しかったらしく、気づいたら俺は何故か厚さ5cmぐらいの札束を受け取ってた。口止め料かな?でもまあゼクス自身が喜んでるからそれはそれでいいのかな……いいのか?

 仕事に戻ればゼクスは早速持ち前の四本の腕を活かして大量の荷物を運んでいた。ああそうだ。指の関節もめちゃくちゃ多いから鷲掴みに出来るんだ。それでいて四本足でバランスが崩れることも無い。意外と実用的な使い方してるんだな。でも通りかかった人形が怖がってた。ごめんな俺の姉ちゃんなんだあいつ。それで食堂で昼ご飯を食べてたんだが、ゼクスは新しい腕を使いたいのか飲み物をたくさん持ってきた。コーラにリンゴジュースにオレンジジュースに……爽健美茶ってまだあったんだ。しかしまあ、よく使いこなすこと。俺だったらまず確実に卒倒してるぞ。それで食べ終わった後に散歩しているとティスとダネルの秘密兵器コンビに出会った。案の定ゼクスの姿を見てフリーズしてたが事情を説明したら納得してくれた。ダネルは「う~ん……」と唸っていたが、ティスが新手の秘密兵器だと説明したら完全に納得したような顔をしていた。お前それ関連なら分かるんかい。ゼクスも誇らしそうに脚を展開するんじゃない。金属音が余計に恐怖をそそるんじゃ。

 部屋に戻って404の皆に見せたら反応はそれぞれ違った。416は泡を吹いて卒倒、G11はめっっっっっっっっっっっちゃ困惑してた。9は興味を示したようで腕とか指を触っていた。45は何かを解析するように電子戦モードに切り替わってた。さりげなくモニターの中に世界最大の動画共有サービス入れてるのな。あとスカウター絶対いらないでしょ。でも45は「カッコいいでしょ?」と首を傾げながら言ってきた。そんな顔されたら言えないだろうが……めちゃカッコいいと言った。言うしかなかった。

 あ、416医務室に運ばなきゃ。

 

 

k月a日

 

 

 あのとんでもない改造から一週間が経ったが、ゼクスはもう三個ぐらい拳銃が欲しいと言ってきた。確かにゼクスが持っている武器は俺があげたリボルバー一丁だけだし、元々の搭乗兵器であるドラグーンもない。つまるところ残りの三本の腕が手持無沙汰になってしまうわけなのだが、俺達はもうグリフィンの所属で逃亡しているわけではない。そう簡単に武器を製造するわけにもいかないのでゼクスの手をベースに改造してもらうことにした。行き先は16Labのペルシカさん。先の改造については苦情を言ってしまったが今日は俺の懇願である。

 それでペルシカさんに頼み込んだらあっさりと了承してくれた。何でも最初のゼクスの改造は時間が無くて構想の最後まで出来なかったらしい。しかもその最後の構想というのがゼクスの手を変えるというものらしい。しかしペルシカさんは「成功するかどうかは分からないが、失敗した時の保証は考えてある」と言った。それでいい。どちらにしろ良い方向に転がってくれるのなら願い下げる道理も断る道理も無いからな。でもこんなこと日記に書いておいて結果は失敗だった。どうもあらかじめ用意しておいた手の部品が適合しなかったらしい。そのお詫びなのか、ペルシカさんは俺がゼクスにあげたのと同型のリボルバーを三丁譲り渡してくれた。いつの間に作ったんだ……でもそれらは素直に受け取っておいた。姉ちゃんも喜ぶだろうなぁ。

 

 

y月q日

 

 

 今日は仕事が休みの日だったが、姉ちゃんに起こされて射撃演習場に行くことになった。あのマイペースが早起きしたと思うとそれは驚きでしかない。それで今日は416がついてきたのだが、やっぱり珍しそうにゼクスの腕や脚を見ていた。まあしゃーないか。今は脚を収納しているが、展開するとマジで蜘蛛の足にしか見えないからな。そしてゼクスは待ちきれないのか四本使って416を抱き上げていた。ほら、416の顔赤くなってる……

 射撃演習場に着いた途端、ゼクスは手前のレーンに立って四丁同時に発砲した。とりあえず音が凄い。でも的には全弾当たってるという射的得意な小学生もビックリな所業をやってのけた。これには完璧を語る416もあ然。

 俺?俺は腰を抜かして416に縋りついてた。すごいと怖いが混ざり合ってもう色々と縋るしかなかった。










ゼクスの改造の詳細


・腕は四本に増えた。指も四本だが、一本ずつの関節が五つに増えている。

・脚は四本。先端は尖っている。関節がそれぞれ一つずつ追加されていて、収納すれば通常の長さになるが、展開すれば蜘蛛の足みたいになる。

・ペルシカ曰く、機動性が増したとのこと。


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十八話

g月p日

 

 

 ゼクスの腕が増えたせいか抱きしめられてる時にさらに密着される羽目になった。胸当たってるし朝から理性が吹き飛んだので甘えた。大好きとまで言って甘えた。そしたら姉ちゃんが「スィストラったら甘えん坊ね」とニコニコ笑っていた。やっぱ姉ちゃん好きなのかな……

 今日は珍しく食堂の掃除が入っていなかった。それで秘密兵器コンビに会わないと思っていたらダネルが嬉しそうにスキップして俺に飛びついてきた。背が大きいから俺とダネルの胸同士がぶつかるという事態になったが当の本人は気にしていないようだ。俺は色々大変だったんだけどな。しかし冷静沈着な雰囲気を醸し出しているダネルがスキップしているほど嬉しそうにしているのは初めてである。それで理由を聞いたら、

 

 

 

 

 

「ティスから秘密兵器を貰ったんだ!新品だぞ!」

 

 

 

 

 

 やっぱりティスだった。薄々感付いてはいたがまさか本当にティスから兵器を貰うとは思っていなかった。それで仕事が終わったら見せたいと言っていたので、俺とゼクスで夜にガレージに行くことにした。

 それでまあ、ガレージに佇んでいたのは何とも立派な戦車だった。しかも米軍で採用されているらしいレーザー砲搭載のやつだ。そういえばロシア軍もレーザー戦車を持ってたんだっけ?しかし何で普通の戦車じゃないんだろうか。ダネルに聞けば「正規軍はELIDっていうゾンビと戦ってるからな。戦車砲は弾き返されるらしいぞ」とのこと。え、マジで?正規軍ってそんなヤバいのと戦ってるの?ってことは鉄血の反乱も相まって世界やばくね?人類滅亡じゃね?俺人形だけど。そう思ったがダネルは俺を宥めるように手を振って補足してくれた。どうも鉄血が反乱を起こした事件自体がそれほど危険視されているわけじゃないらしく、むしろ正規軍が本気を出せば鉄血は三日で鎮圧できるとのこと。まあ仮にも軍隊だしな、鉄血はただの軍需工場を持つ企業な訳で。でもELIDというゾンビもどきに対応してるために鉄血の処理はPMCに任されているとのことだ。うーん、そう考えると納得だがもっと強い兵器も欲しくなってくる。404やAR小隊の皆から聞くところによると、戦況は長い間膠着しているみたいだし。そうなると状況の打開策としてティスの秘密兵器やらはけっこう有効な手段なのでは?

 操縦方法とかは既にダミーにインプットしているらしく、各々の工具を持って点検や整備を行っていた。そういえばティスも二番席にダミーを乗せているって言ってたな。となるとダネルの場合は戦車だから……あれ、全員じゃね?

 

 

k月o日

 

 

 百合知恵の輪がないのはいいけど何で9がとおりゃんせを歌ってるんですかね(震え)

 つまり状況はこうだ。朝起きたら俺の耳元で9が「とお~りゃんせ、とおりゃんせぇ……」って囁いてた。もう無理。怖い。朝から恐怖で泣いてたら45が慰めてくれた。ほんとありがとう。9も想定外だったのかよしよしと頭を撫でてくれた。ああぁもう優しすぎてまた泣きそう。泣いた。

 それで今日の仕事は休み。となると部屋にいても暇なので404とAR小隊と一緒に外出することにした。総勢10人の団体だが全員休みが重なったので仕方がない。まあこいつらと一緒にいて楽しいし損はない。(俺の貞操は考えないものとする)ところで9A-91はいつの間に紛れ込んでたのかな?

 

 

 

 

 

「スィストラさんの匂い……うふ、フフフフフ……アハぁ」

 

 

 

 

 

 やめろ怖い怖い。もじもじするんじゃない。しかも俺より背が小さいことを利用して胸に顔をうずめるんじゃない。服越しに息遣いがしてきて変な感じになるわ。一応416が抱っこして離してくれたものの、9A-91はもの悲しげに416に身を寄せていた。よーしそれでいいぞステイステイ……

 それで帰ってきたら9が「ホラー映画を見よー!」と宣言しだした。待てやめろ日記書いてる途中だから待ってくれ頼む。ん、何か逃げ道封鎖されてね?あ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめてくれ頼むお願いだ助けて」

「だ~め!ちゃんと皆で見るんだから。ね、45姉?」

「そうそう。ゼクスも見るって言ってるしスィストラも見なきゃ損よ」

「あふん」

 

 

逃げ道を封鎖されて全員でホラー映画を見ることになった。どうして。幸いにも同じ理由で逃げられなくなったSOPが隣にいるので恐怖を分け合うことが出来る。いや二人で逃げた方が最善だと思うけどさ。

 

 

「じゃあ始まるよ~」

 

 

元気のいい9の声が合図になり、カウントダウンが始まる。そして3カウントの後、映像が流れ始めた。どうやらビデオカメラでの撮影をしているようである。お、この男が撮影者か……?車を走らせていくが、どうやら森の中でエンストしてしまったようだ。

 

 

「スィストラ、大丈夫だよね……?」

「何もないことを願おう……」

 

 

何とか安心させようとするが俺だって怖い。今は歩いている途中だが、一貫して視点がビデオカメラの映像だからもう気が気じゃない。

 

 

屋敷……うわぁマジかよ……

 

 

それで扉を開けて部屋を調べて、まだ何も起きてない……うん、起きてない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああぁァァァァあぁぁっァァァァああああぁぁ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒィィ!?」

「イヤぁ!」

 

 

何だよ今の叫び声ぇ!こええよ!ビビらせるなよマジで!!思わずSOPを抱きしめてしまったがSOPも同じように俺を抱きしめてた。やだもう怖い……

 

 

 

 

 

「なに、あれ……ひゃあ!」

「やだやだ何あの化け物!?」

 

 

 

 

 

「こないで、来ないでよぉ!」

「向けないで、ホントに向けないで!」

 

 

 

 

 

「何か大きいのがいるよぉ……やだぁ……」

「こわい……もうやめて……」

 

 

 

 

 

「って二人とも大丈夫!?」

 

 

9があたふたしてる。

 

 

「姉ちゃん……こわい……えぐっ、ひぐっ」

「ゼクス、一緒に寝て……ひぐっ」

 

 

「あらあら、ちゃんと一緒にいてあげるわよ」

 

 

 

 

 

こわかった……



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十九話(コラボ)







『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』とのコラボ!スィストラとゼクスが向こうの基地に遊びに行きます。



「……それで、俺達にS09地区に行けということですか?」

《ああ、どうせなら外部と交流を持った方が良いだろうし。それにいざという時のコネはけっこう大事なもんだよ》

「そう、ですかね?」

《大丈夫、君達に行ってもらう基地は堅苦しい所じゃないから》

「はあ……」

 

 

ある日の朝に電話がかかってきてスィストラが応答したと思えば、ペルシカからそのようなことを言われた。要は長期休暇を出しておいたから他の基地とも親睦を深めてこいということ。スィストラからすれば納得する理由しかないわけで。

 

 

「まあ、いいですけど……」

《決まりっ!じゃあなるべく早く準備してヘリポートまで来てね。ヘリはもう準備してあるから。じゃあね》

 

 

通話が切られる。が、スィストラは迷ったように視線を泳がせて既に準備を終えているゼクスに歯切れ悪く言った。

 

 

「あ、えっと、姉ちゃん……?」

「どうしたの?」

「えっと……大丈夫かな……俺達」

 

 

そう呟いてスィストラは寝間着姿のままゼクスに抱き着いた。どうやら鉄血の人形だということもあって行き先の基地に悪い印象を持たれるのではないかと心配しているらしい。それもその筈、予期せぬ事態だったとはいえ一度仲間に撃たれているものだから心配しない方がおかしかった。しかしゼクスはそんな様子のスィストラの頭を優しく撫でて、笑みを浮かべながら言った。

 

 

「大丈夫よ。皆優しくしてくれるはずだから、笑顔で行きましょう?」

 

 

そしてスィストラが顔を上げれば、ゼクスはその頬にキスをする。

 

 

「フフ、じゃあ早く着替えて行きましょう?」

「……うん!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

《スパロー、こちらガンスリンガー1。報告をしてくれ。オーバー》

《こちらスパロー。今のところ未確認機及び敵機は確認できていない。のどかな空の旅だよ、オーバー》

《了解。油断するなよ。お前しか護衛機はいないんだ》

《分かってるよ~。スパローアウト》

《ガンスリンガー1、アウト》

 

 

予定された針路を航行し続ける輸送ヘリの中でスィストラは外の景色をずっと眺めていた。隣に座っているゼクスは微笑ましそうに見ている。

 

 

「すごく興奮してるわね」

「だってすげえよこの景色……姉ちゃんも見た方いいって!」

「どれどれ……お~、これは絶景ね」

「だろ?こんな高いとこから見渡したの初めてなんだよなぁ……すげえや」

「あら、ということはお姉ちゃんよりも好きってこと?」

「え?」

 

 

突然聞かれたスィストラがゼクスの方を見れば、彼女は悪戯な笑みを浮かべて人差し指を咥えていた。『お姉ちゃんよりも好き』という言葉が脳内で反芻してしまっていたスィストラは顔を赤くさせながら弁明する。

 

 

「あ、あぁいや!そういうのじゃなくて!えっと……あぁっとその……そりゃ姉ちゃんは好きだし……好き、だけど……」

「ぶ~、不正解」

 

 

するとゼクスはスィストラを抱きしめて耳元で囁く。

 

 

 

 

 

「だいすき♡でしょ?」

「~~~~~ッ!!!!????」

 

 

 

 

 

もはやスィストラは耳まで赤くして脱力するようにゼクスに身を委ねた。しかし囁いた犯人であるゼクスは「あらあら」と体温を下げるために持ってきた水を飲ませている。パイロットもそれは聞いていたようで、

 

 

「仲がいい姉妹だな」

 

 

そう呟いて見えてきた基地のヘリポートに向かっていった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

《こちらガンスリンガー1、予定通り着陸する》

《ああ、こちらからも見えておる。客人は二人かの?》

《とびっきりのイレギュラー二人だ。腰抜かすなよ?》

《呵々、ただでさえアーキテクトがいるんじゃぞ?もう何が来ても驚かんわい》

 

 

パイロットと基地の副官らしき人形が会話していると、輸送ヘリのスライドドアが開き、スィストラとゼクスがヘリポートに降り立った。

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

基地の副官である『M1895』通称ナガンが客人である二人を見て言葉を失う。既に鉄血のハイエンドモデルが一人仲間になっているため代理人そっくりのスィストラはまだ良かったのだが、問題はもう一人の方だった。

 

 

「貴女が副官さん?初めまして、ゼクスよ」

 

 

四本ある腕のうちの一本を差し出され、握手を求められる。そこでナガンはハッと我に返ったのか、驚愕の面をひた隠しにしながら握手を返した。

 

 

「よ、よく来たのじゃ。お主がゼクスで、もう一方が……」

「スィストラといいます。よろしくですね」

 

 

スィストラもまたナガンと握手を交わし、ようやくナガンの心も落ち着いてくる。しかしそこで湧いてくるのがゼクスに対しての疑問。腕が四本ある人形なんて事例は一切聞いたことが無いのである。

 

 

「しかしまあゼクス……こんなことを言うのも失礼じゃが、腕が四本とな……?」

「ペルシカさんに改造してもらったのよ。ついでに脚も四本あるわよ?見てみる?」

「まあ、見てみよう」

 

 

ナガンの了承を得てから、ゼクスはロングスカートの下に収納していた脚を展開させた。折りたたまれていた脚はみるみるうちに伸びていき、スカートからは逆関節が見えており、機械的な脚と尖っている先端も相まって下半身は多脚戦車のようだった。ついでに脚を動かせば『カチャ……カチャ……』と音もするので歴戦の戦術人形であるナガンも呆然と足を触るのみである。

 

 

「しかし何故ペルシカはこんな改造を……」

「でも機動性が上がったから感謝してるわ」

「全くあの科学者は……理解できん」

 

 

そりゃそうだろうなと納得するスィストラだったが、奥から小走りで来る少女を見てこちらからも歩み寄る。まさかとは思ったが……

 

 

「ハァ、ハァ……ごめんなさい。書類仕事がやっと終わって……」

「えっと、大丈夫か?」

「はい、大丈夫……って客人じゃないですか!あわわわわ……」

「うん落ち着いて素数を数えて」

 

 

何度か深呼吸をしてようやく落ち着いた少女。外見に似合わぬグリフィンの制服を着ており、そこでスィストラは彼女が指揮官だと気づく。

 

 

「もしかして、君が指揮官?」

「あ、はい。それと貴女がスィストラさんですよね?」

「ああ。あと敬語じゃなくていいよ。フランクに行こうぜ」

「あ、うん……じゃあよろしく、スィストラ」

「よろしく」

 

 

二人で握手を交わしていい雰囲気になったが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、く、クモが……クモが……あわわわわわ……」

「姉ちゃん何してるの!?」

「意外と怖がられちゃった。てへ」

「戻せ!足戻せ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官がゼクスの姿を見て腰を抜かしたのは言うまでもない。










あ、そうだ(唐突)これ何話か続くゾ。コラボ先の作品も面白いから読めよ読めよ^~(ダイマ)


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二十話(コラボ)

指揮官に案内されながら通路を歩いていると、スィストラは忙しなく周囲を珍しそうに見渡していた。それもその筈、グリフィンの前線基地は此処が初めてなのだから全ての光景が珍しかったのだ。

 

 

「すげえ……」

「基地を見るのって初めてなの?」

「ああ。俺と姉ちゃんは本部の方にいるから前線基地なんて見たことも無かったんだ。でも色々設備とかあるんだなぁ……お、あれって中庭か?」

「うん、そうだよ。あそこでお昼寝すると気持ちいいんだ~」

 

 

スィストラが指を指した先には今の時代では到底見られそうもない自然の空間が佇んでいる。指揮官曰く高度な技術で整備されているとのことだが、ただの本部勤めの雑用であるスィストラにはその肝心の技術がちんぷんかんぷんだった。

 

 

そしてこの基地は今日が休日であり、

 

 

「それにしても、大丈夫なの?前線基地で休日を設けるって……」

「あ~確かに……S09地区って激戦区だって聞いたことあるけど……」

 

 

どうもこの基地には一週間に一度、最低限の業務だけこなして後は自由に過ごすという日が設けられているらしく、二人は心配そうに指揮官に訊ねる。噂では前線基地には休みが無く、毎日のように鉄血と戦闘を繰り広げていると聞いていたのだが、訊ねられた指揮官は首を傾げた後に笑みを浮かべてから答えた。

 

 

「大丈夫だよ。問題は起きなかったし、皆も慣れてるから」

「そうなのか、おばあちゃん?」

「ああ、そうじゃ……っておばあちゃん!?」

 

 

ナガンが神速の如く後ろを振り向けば、無意識下で喋ってしまったのか顔を赤くして俯いているスィストラの姿が見えた。それからスィストラは小声で「あ、ごめんなさい……」と謝っていたが、ナガンは顔を綻ばして、

 

 

「まあよい。わしもかなりの年寄りじゃからの。ほれ、頭を上げい」

「あはは……恥ずかしいな」

「こんな大きい娘におばあちゃんと呼ばれるのは初めてじゃ。five-seveNでさえもわしのことを副官と呼んでおるからな」

「Five-seveN?って誰なんですか」

「この基地にいるハンドガンタイプの人形じゃ。お主らよりも背は大きい筈じゃが……指揮官、あやつは何cmぐらいだ?」

 

 

指揮官は数秒考える素振りを見せ、

 

 

「えっと……確か2m近いんじゃなかったっけ?」

 

 

当然スィストラとゼクスは驚きを隠せなかった。特にスィストラに関しては手で覆っているものの、開いた口が塞がらないでいる。

 

 

「ってことは姉ちゃんよりも大きいってことかな……?」

「すごいわね……世の中色々な人形がいるってことかしら」

「あそこまで高身長な珍しいけどね。今は訓練所にいるんじゃないかな。行ってみる?」

「お願いするわ。私も試しに撃ってみたいし」

 

 

指揮官からの提案にゼクスが了承し、四人は射撃訓練所に行くことにした。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

射撃訓練所に着けば、そこには複数のレーンが設けられており、中央部分のレーンに例の高身長のハンドガン人形が一定のリズムで的を撃っていた。そして後ろのベンチにはもう一人、変わったファッションの人形が座ってその様子を見ている。

 

 

しかしちょうどターゲットを撃ち終えたのか、二人はスィストラ達の様子に気づいて、近づいてきた。

 

 

「あら、指揮官に副官じゃない。珍しいわね、此処に来るなんて」

「ねえねえ見てよFAL。可愛い子がいるわよ?リボンでも着けたらすっごく似合いそう♪」

「初対面でしょ。やめておきなさい……副官、この二人は?」

「ああ、客人のスィストラとゼクスじゃ。メイド服を着てるのがスィストラでもう片方がゼクスじゃな」

 

 

副官がそう紹介すると、FALはスィストラに対して手を差し出した。

 

 

「ようこそ。私はFAL、第一部隊のアタッカーを務めているわ」

「えっと、俺はスィストラ……その、よろしく……」

 

 

スィストラは握手を交わすが緊張しているせいかどこかぎこちない。しかし突然、後ろから抱きしめられた。

 

 

「ひゃあ!?」

「スィストラちゃん可愛い~♡私はFive-seveNよ、気軽にセブンって呼んでね!」

「あわわわ……せ、セブン……?」

「そうそう、よく言えました♡」

 

 

抱きしめられて豊かに実った胸が当たっているせいか、スィストラは顔を真っ赤にして身動きできないでいた。が、FALがセブンを引き剥がして事なきを得た。

 

 

「やめなさい、困ってるでしょう?」

「え~、だって可愛いもの。FALもそう思うでしょ?」

「だとしてもよ。全く節操のない……」

 

 

セブンが諭されてから、FALは改めて指揮官に聞いた。

 

 

「それで、何しに来たの?」

「あ、ゼクスが此処で試し撃ちしたいって言ってるから連れてきたんだけど、いいかな?」

「いいわよ。私達も暇だし見ようかしら。そこのレーンを使ってもいいわよ」

 

 

ゼクスは指定されたレーンに立ち、四丁の大型リボルバーを一斉に出した。既にその姿に圧倒されたのか、FALとセブンは困惑の表情を浮かべている。

 

 

「四丁って……すごいわね」

「え、何あれは……(困惑)」

「俺も最初はビックリしたけど……すげえのはここからだよ」

 

 

スィストラがそう言うと、ゼクスの周囲に様々な照準やHUDが表示され、機械的な音声が静寂に包まれた訓練所に響く。

 

 

《ターゲット捕捉。反動吸収機構の作動及び照準安定システムの起動プロセスを開始……アンブッシュモードの設定完了。発射準備完了》

 

 

瞬間、

 

 

 

 

 

ドガガガンッ!!!

 

 

 

 

 

四つの銃口から一斉に銃弾が吐き出され、真っ直ぐターゲットに向かっていく。そして的は下半身を残して粉々に粉砕されていた。スィストラ以外が呆気にとられる中、ゼクスはリボルバーをホルスターの中に仕舞い、笑顔で振り返る。

 

 

「どうだった?ちゃんと当たってたかしら?」

 

 

静寂を破ったのはFALだった。

 

 

「すごいわね……威力も精度も桁外れよ」

「あれがリボルバー……?」

「おばあちゃん、的が粉々になってるよ?」

「……イレギュラーと言ってたのはこのことか。パイロットめ」

 

 

続いて言葉を紡ぎ出したセブン、指揮官、ナガンも驚きを隠せないでいた。しかしその反応も無理はない。ゼクスの持っているリボルバーは全長で言えばM500リボルバーと同等であり、口径で言えばナガンの持つリボルバーよりも大きい。セブンは困惑しながらもゼクスに聞いた。

 

 

「それってどれぐらいの口径なの?的が無くなるって相当だと思うけど……」

「ん~っと、確か12.7mmだった気がするわ。簡単に言えば劣化ウラン弾よ」

「劣化ウラン!?」

 

 

そして指揮官はポカンとしながらもスィストラに聞いていた。

 

 

「ねえ、れっかうらんだんって何?」

「ウランっていう密度が高い金属を使った弾薬のことだな。貫通力とか威力が高いことで有名だぞ」

「お~」

 

 

説明を聞いた後、満足したらしいゼクスを連れて一行は通路を歩いていった。

 

 

 

 

 

「……世の中って広いわね」

「私も改造して火力主義にしようかしら」

「やめなさいセブン」










Five-seveNのキャラが崩壊した気が……()


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二十一話(コラボ)

指揮官に案内されて次に来たのは、基地内のカフェだった。

 

 

「やっほ~スプリングフィールド」

「あら、指揮官じゃないですか。それとスィストラさんにゼクスさんですね。はじめまして」

「あ、よろしく……」

「よろしくね」

 

 

静かな雰囲気を漂わせシックなデザインに包まれたこの部屋は休日限定でカフェとして営業しているらしい。スィストラ達はそれもまた珍しそうに見てからカウンターの席に座った。スィストラも顔を綻ばせながら中を見回している。

 

 

「すげえ……店の中みたいだな……」

「フフ、驚きました?実は私の趣味なんですよ」

「趣味で!?ってことはこの基地に来る前はどんな仕事してたんだ?」

「う~ん……」

 

 

それからスプリングフィールドはスィストラにウィンクをしてから、

 

 

 

 

 

「貴女の想像した通り、ですよ♪」

 

 

 

 

 

前職をぼかされて、スィストラは「想像した通り……」と上の空で考え続ける羽目になる。そしてそれを横目にスプリングフィールドはゼクスらと楽しげにお喋りをしていた。

 

 

「噂には聞いていましたが、便利そうな腕ですね」

「おかげで仕事も早く終われるからペルシカさんには感謝しかないわよ。指揮官は最初怖がってたけど……」

「それは……うぅ……」

「まあ指揮官は虫が嫌いじゃからの。腰を抜かすのも無理はない……ああ、そういえばメニューがあったんじゃ。色々なメニューがあるぞ」

 

 

ナガンがスプリングフィールドから受け取ったメニュー表を見せれば、ゼクスは早速『おすすめ』と書かれたものに食いついた。そして餌を待ちわびた犬のようにスプリングフィールドに訊ねた。

 

 

「ねえスプリングフィールド、このマフィンってもしかしてすごく美味しいの!?」

「えぇ、自慢できるほどではないですが好評みたいで」

「じゃあこれにするわ!見た目だけでも美味しそ~……」

「呵々、それじゃあ休日ということで……わしらもマフィンを食べるとするかの。のう、指揮官?」

「うん!じゃあおばあちゃんと私と……あ、スィストラもマフィンで!」

「フフ、分かりましたよ」

 

 

満場一致(スィストラは指揮官が決めておいたが)で皆がマフィンを注文し、後は飲み物を選ぶことになった。しかし……

 

 

「むむむ……」

「あ~……ゼクス。これっきりってわけじゃないから……目も血走ってるし」

「スプリングフィールド、悪戯で全部をおすすめにするのは誰でも迷うじゃろうに……」

「ごめんなさい。でも選んでくれることはとても嬉しいですよ?これは想定外ですけどね」

「全くじゃ……あ~ほれ、ゼクス。オレンジジュースが一番美味しいぞ?」

 

 

オレンジジュースを勧められたゼクスは即座にそれに決め、後はスィストラだけになった。しかしスプリングフィールドの前職についてまだ思案しており、ぶつぶつと何かを呟いている。そんなスィストラの肩をスプリングフィールドが優しく叩いた。

 

 

「スィストラさん?」

「わひゃあ!?あ、えっ?す、スプリングフィールド?」

「飲み物、何を頼みますか?」

「あ、の、のみ、飲み物……えっと、あ!お、オレンジジュースで!」

「承りました。ぼーっとしてるなんてイケない子ですね?」

 

 

笑顔で言われたスィストラは俯いて「ごめんなさい……」と謝罪する。するとスプリングフィールドは笑みを浮かべたまま身を乗り出し、スィストラの頬にキスをした。

 

 

「ッ!!!???」

「可愛らしい妹ですね。ね、ゼクスさん?」

「えへへ、自慢の妹よ」

「ね、姉ちゃん……」

 

 

そしてスプリングフィールドは準備に取り掛かる。終始状況を眺めていた指揮官は似たような経験があったのか、ほんのりと頬を赤く染めていた。当然隣に座っていたゼクスが見逃す筈もなく、左腕で指揮官を抱き寄せる。

 

 

「あら、貴女にはまだ早かったかしら?」

「……そ、そんなことないよ。でも、何か恥ずかしいっていうか……」

「もう可愛いわね!お姉さんがぎゅーってしちゃう!」

「ひゃ!?」

 

 

ゼクスに抱きしめられた指揮官はビックリしながらも、どこか満更でもなさそうな表情を浮かべている。ナガンはそんな光景を微笑ましそうに見ていた。そして注文しておいたマフィンと飲み物が並べられると、ゼクスは「おひょ~」と目を輝かせてマフィンを眺めている。そこから一口食べれば、

 

 

「うんま~い♡」

 

 

幸せを具現化したような笑顔でマフィンを味わっていた。スィストラもマフィンを食べてオレンジジュースを美味しそうに飲んでいる。

 

 

「どうですか?」

「美味しい……こんな美味しいの初めてだ!」

「フフ、喜んでくれて何よりです」

 

 

そして食べていると他の人形達もやってきてわいわいと騒がしくなっていった。スィストラの口調と全く違う性格に群がる小さな人形達や可愛がる人形達。

 

 

ゼクスの腕や脚の構造に驚きつつも触ったり抱っこされたりする者達。ちなみにPPKも担がれた模様。

 

 

そんなこんなでカフェで談笑していると、スィストラがジュースを飲んでから指揮官にあることを聞いた。というのも、名前である。

 

 

「そういや指揮官ってどんな名前なんだ?社内報見ても載ってなくてさ」

「私?私は、ユノっていう名前だよ」

「ユノちゃんか。いい名前だな」

「そ、そうかな?照れるなぁ~」

 

 

指揮官、ユノが照れくさそうに笑っているとナガンに肘で小突かれる。

 

 

「ほれ、次は何処を案内するんじゃ?」

「あ、そうだった。二人とも、次は何処を見に行きたいかな?」

 

 

ユノからの問いに二人が悩んでいると、ふとスィストラが手を叩いた。

 

 

「そうだ。この基地ってハイエンドモデルがいるんだろ?せっかくだから会いに行きたいな」

「ハイエンドモデル……あぁ~アーキテクトのことじゃな。なら案内先は開発室じゃな。さぁ指揮官、行くぞ」

「あ、待っておばあちゃん!まだジュース飲み切ってない……よし!行こう!」

 

 

急いでジュースを飲み切って「ごちそうさま!」と言い、ユノはナガンと一緒に二人を開発室に案内していく。歩いて数分、部屋の前に着けばいかにも科学的ないしSF的な雰囲気が漂っており、マッドサイエンスな何かを感じ取ったのかスィストラは怯えた様子でユノの後ろに隠れていた。なお身長が大きいため隠れ切れていない。

 

 

「スィストラ、どうしたの?」

「怖い……」

「へっ?」

「ちょっと何か、こう……怖い雰囲気が……」

「……あ~そのことか」

 

 

言いたいことを察したナガンが隠れていたスィストラの手を引っ張る。

 

 

「ふぇ?」

「大丈夫じゃ。中にいるのはお気楽で敵意など無いお調子者しかおらん。だから堂々と入ればフオォ!?」

「っておばあちゃん!?」

「ちょっと大丈夫……?」

「おばあちゃんもしかして……」

 

 

ユノが駆け寄ればナガンは腰を押さえて膝をついていた。スィストラとゼクスも薄々と感づいていき、最終的にナガンの一言で確信に変わった。

 

 

 

 

 

「ぎ、ぎっくり腰じゃ……」

 

 

 

 

 

「とりあえず私がおんぶするわ、よいしょ」

「す、すまぬ……こりゃ車椅子が必要じゃな、はは、は……(遠い目)」

 

 

何かとショックだったのか、ナガンの目は存在しない筈の遠い地平線を見つめていた。ユノに至ってはフォローしようとあたふたしている。

 

 

「お、おばあちゃん……大丈夫だよ!きっとすぐ治るようん!」

「お主は優しいのう指揮官……じゃがわしも初老の身、そろそろ引退時かもしれん……」

「おばあちゃーん!?」

 

 

 

 

 

スィストラは苦笑を浮かべながら開発室の扉を開けた。










勝手にぎっくり腰要素追加しちゃってごめんなさい!何でもしますから許して!!(スライディング土下座)


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二十二話(コラボ)

意を決してスィストラが扉を開ければ、壁一面に張り巡らされた設計図が目に入ってきた。その殆どがダイナゲートやプラウラー、さらにジュピターなどの図面も引かされている。そして奥には猫背になってモニターを見ながらキーボードを叩いている鉄血のハイエンドモデル、アーキテクトがいた。

 

 

「あ、あの~……」

「ん?」

 

 

スィストラの声に反応して振り向けば、彼女は数秒フリーズして、

 

 

 

 

 

「な、なななんあななあんあな何で代理人が!!!!????」

 

 

 

 

 

テンプレとも言うべき反応で驚かれたスィストラは申し訳なさそうに歩み寄る。それが功を為したのか、アーキテクトは困惑したように立ち上がってスィストラの顔をまじまじと見つめる。

 

 

「あの……」

「……あ~!そういえばユノっちが言ってたね、客人が来るって!いや~ごめんごめん。ビックリさせちゃったでしょ?」

「あ、だ、大丈夫だけど……」

「ねえねえ!何ていう名前なの?私はアーキテクトだよ!」

「あぅ、えっと……」

 

 

じりじりと壁際まで詰め寄られて再び怯えだしたスィストラだったが、ナガンがアーキテクトの背中を小突いて引き離した。となるとアーキテクトは不満たらたらなわけで。

 

 

「むぅ~!何で引き離したのさ~!」

「お主はもう少し距離感を考えろ。スィストラが怖がっておるだろう」

「むぅ……は~い」

 

 

バツが悪そうにナガンに軽く頭を下げてから、にへらとした笑顔でスィストラの方を振り向いた。そして手を差し出す。

 

 

「えへへ、さっきはごめんね?改めてよろしくっ!」

「う、うん……よ、よろしく!」

 

 

スィストラも思い切ってアーキテクトの手を握り固い握手を交わす。そしてアーキテクトは嬉しそうに両手を広げて部屋の中を見せた。設計図が張り巡らされた壁に大小様々なケーブルに繋がれた鉄血の小型兵器など、他の基地の施設とは一線を画していたその雰囲気に、スィストラは言葉も出なかった。

 

 

「すげぇ……」

「でしょでしょ?色んなダイナゲートを作れて楽しいんだよね~」

「ダイナゲートって……さっきから俺の足元にいるちっちゃいやつか?」

「うんうん……ってわぁぁ!まだメンテ終わってないでしょ~!」

「( ゚Д゚)」

 

 

メンテナンスが完全に終わっていないのがバレたのか、ダイナゲートは即座にスィストラの背後に隠れてしまった。アーキテクトがしゃがみ込んで頬を膨らませて怒っているとアピールするものの、全く効果が見受けられない。

 

 

そしてアーキテクトは困ったようにスィストラに助けを求めた。

 

 

「あ~ん……スィストラ~その子を説得してぇ~」

「えぇ、出来るかな……」

「大丈夫だよスィストラ、出来る出来る!」

「ユノちゃんまで……」

 

 

今度はスィストラが困ったような表情を浮かべたが、取りつく島はない。仕方ないと腹をくくったのか、スィストラはしゃがみ込んでダイナゲートを抱えた。

 

 

「(..)」

「ほら、怖くないから。ちゃんとメンテナンスは受けようね?」

「(´;ω;`)」

「大丈夫、アーキテクトも優しいし痛くはしないから」

「(*´ω`*)」

「アーキテクトが優しいのは事実だしお前も可愛らしいがその顔文字は流行らないし流行らせない(条件反射)」

「\(^o^)/」

「はい……アーキテクト、大人しくなったよ」

 

 

スィストラから手渡されたダイナゲートを見れば、先程とは打って変わって大人しく掌の上で座っていた。いつでもメンテナンスの状態に入れるダイナゲートを机の上に置くと、アーキテクトはスィストラに抱き着いてお礼を言う。

 

 

「ありがとー!スィストラちゃん大好き!」

「ッ!!!???だ、大好きッ!?」

「うん、可愛いし好き!」

「ああぁいや……嬉しい、けど……いくら何でも急すぎるんじゃ……??」

「……駄目?」

 

 

スィストラよりいくらか背の低いアーキテクトは抱き着いたまま、上目遣いで見上げてくる。元より甘えたがりで理性の制御が弱いスィストラに別の手段やら抵抗できる術はある筈もなく……

 

 

 

 

 

「す、好き、です……///」

「えへへ、私も!」

 

 

 

 

 

抱き着かれたままスィストラは耳まで真っ赤になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、セブン……!」

「なぁに?」

「は、恥ずかし……」

「ふふ、離さないわよ?ちゃーんと可愛がってあげるんだから。ね、FAL?」

「ええ、こんな可愛いもの」

 

 

宿舎を見学している途中、FALとセブンに見つかったスィストラは逃げる暇も与えられずに抱きしめられる羽目になった。ちなみにセブンが後ろから抱きしめているので、吐息が直接かかるほど距離が近くなっている。

 

 

スィストラは恥ずかしさからか逃げようとするものの、身動きできないように両腕を這わされて逃げられない。それに背中に大きな胸が当たっているせいで力も入らなかった。

 

 

「そーれーに、貴女も嫌いじゃないでしょ?お姉さんたちにこうされるの」

「で、でも……」

「好き?」

「……うん」

 

 

抱きしめられただけで逃げる力を失うスィストラの様子を見ていたナガンは苦笑を浮かべるしかない。しかしそれは自身の孫にあたるユノも同じようで、ゼクスに抱っこされて根本まで甘えていた。

 

 

「えへへ~、お姉ちゃん……」

「ちっちゃくてかわいい子……ねえナガン」

「駄目じゃぞ?」

 

 

先手を打たれたゼクスは落胆した顔で言う。

 

 

「な、何で……まだ何も……」

「大体想像はついておる。ちなみに養子になるのもお断りじゃからな?」

「ふぇえぇ……」

「……お主にはもう愛らしい妹がおるじゃろう。それに、指揮官に二度と会えぬわけじゃなかろうて。お主の愛は妹に捧げるとよい」

「……そうね。アドバイスありがと」

「呵々、大したものでもない」

 

 

 

 

 

そして時間が過ぎていき、迎えのヘリがヘリポートに着陸していた。

 

 

「また遊びにきなさいよ。その時はFALと一緒にまた可愛がってあげるんだから!」

「ありがとう姉ちゃん達!また遊びに行くからな!それとユノちゃんにおばあちゃん!」

 

 

二人を呼んだスィストラは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

 

「また一緒に遊ぼうな!すっげぇ楽しかったよ!」

「私も楽しみにしてるよ!」

「また来るとよい!今度はちゃんともてなさないとな!」

 

 

そしてナガンが振り向いて基地に帰ろうとした時、ゼクスに呼び止められた。

 

 

「何じゃ?」

「……ユノちゃんのこと、ちゃんと支えてやってね」

「何を今更。あやつは昔とは違って強くなっておるぞ?」

 

 

そう言って笑うナガンだったが、対するゼクスの表情は真剣そのものだった。

 

 

「いずれグリフィン……ユノちゃんが対応する相手は鉄血だけじゃなくなるわ。それこそあの子に背負わせるには大きすぎる事柄だって必ず来る」

「……鉄血以外の敵が想像つかんが、わしらは指揮官を守るだけさね。して、それは誰から聞いたんじゃ?」

「スィストラよ」

「……あやつが?」

 

 

そしてゼクスはヘリに乗り込み、ナガンに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、転生者だもの」










これにてコラボ終了!



転生者ってことは、そういうことやで……


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二十三話

r月q日

 

 

 我が家に帰ってきた。わぁい。何ということでしょう、404が出撃でしばらくいないらしい。そんなぁ。そんなわけでAR小隊が全員突撃してきた。まずSOPが扉を開けて俺に抱き着き攻撃。っていうかだいしゅきホールドじゃねえか。バランス崩すところだったぞ。そして姉ちゃんは何どさくさに紛れて俺の胸を揉んできてんじゃコラ。揉むんならスターのをだな……

 

 

 

 

 

「FBI Open up!!!」

 

 

 

 

 

 はえーよ。ミーム叫びながら窓割ってくるんじゃねえよピンク髪。いや直すんならいいけども。二度と割らないでくれ。え、修理経費はへリアンさん持ちだって?ヤバくね?それ俺の方に飛び火するやつじゃね?でもそんなことお構いなしにスターは俺を抱きしめて息を荒くさせてくる。懐かしきヤンデレ代表格の精神攻撃。俺は二度と体験したくなかったんだがなこんちくしょう。っていうか明らかに締め付ける力強くなってません?胸のことだよな、絶対そうだよな。そしてSOPは俺の腹に頭を擦り付けてマーキングみたいなことをしていた。やめなさい、他の奴らに誤解される。

 そしてM4は大人しいふりして誤魔化すな。俺がいない間に寝間着と枕盗んだだろ。しかも念入りに新しい寝間着が部屋の中央に畳んで置いてあったしこれもう動かぬ証拠だろ。めっちゃ挙動不審になってるやんけ。

 それでM16はというと、俺があらゆるR-18要素を所持していないか部屋の隅々まで探していた。何を企んでいるのか知らんがそんなものどこにもないぞ。自分で言うのも何だが健全……な筈。周囲がどえらいことになってるが。

 ただM4は瞬きもせずに俺の方をジッと見つめていた。はっきり言ってここ最近で一番の恐怖だわ。おめぇ最近大人しいと思ったら不意打ちを仕掛けるようにそうしてきやがって。おまけにうっすらと笑ってるもんだからマジで全身に悪寒が走った。

 

 

l月k日

 

 

 ああ懐かしの百合知恵の輪……

 物理的免疫が低下したのかSOPに抱きしめられていると気づいて理性が重傷を負った。快速修復ないの?(懇願)それにSOPの寝方のせいなのか寝間着がはだけて谷間やらへその部分が見えてしまっていた。生活壊れちゃ^~う。

 それで何とか引き剥がそうとしたが力が強い。生半可な力では全く動かない。これ絶対起きてるだろ。狙ってやってるだろ。脇をくすぐってどかそうとしたが「ん……んん……」と甘い声を出したのでやめておいた。これじゃ俺が襲ってるみたいじゃねえか。あちょっと待って姉ちゃんがぎゅってしてきて【文字が途切れている】

 

 

h月o日

 

 

 大変だった。数日姉ちゃんとかAR小隊とかに可愛がられて俺の理性が修復不可能になりかけた。これ下手したら皆にこうやられるんじゃないかな。まさか姉ちゃんだけじゃなくてAR小隊からも妹と見なされてるのか俺?だとしたら俺の尊厳って……しかも今日ときたらその懸念が具現化したかの如くSOPがお姉ちゃんムーブをしてきた。具体的には何かと俺をリードしたり仕事で滞るようなことがあった時に一緒に解決してくれたりといった具合だ。いやまあそれだけだったらよかったんだけどさ。何を思ったか昼ご飯を食べてるときに急に「あ~ん」ってやってきたり風呂に入ってると「背中流してあげる♪」って言って洗ったりしてきた。

 もしかしてSOPにも妹として見られてたりするの?

 

 

o月w日

 

 

 404小隊が任務から帰ってきた。そして45と9が知恵の輪に参加していた。何でや。両隣を占領されて目が覚めると隣に9がいて慌てて寝返りを打つと反対側に45がいるという阿鼻叫喚。しかも45は相変わらず悪戯な笑みを浮かべて優しく抱き着いてくる。やんわり離そうとしてもこいつは何故か離れない。戦術人形特有の馬鹿力は任務中にでも使ってくれ。中身が男なの知ってるだろ。

 それから脱出して着替えて食堂に行ったら9A-91がテーブル席で俺を待っていた。しかも何故か残り三人分の朝ご飯が用意されていた。え、なにこわい。姉ちゃんと45は抑止力にならなさそうだしもう座ってたしで俺も諦めて朝ご飯を食べることにした。まだだ、まだ戦術的撤退に過ぎない……!

 

 

 

 

 

「えへへ、あの時のアドバイス、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 予想外に9A-91の一言は俺達への感謝から始まった。そういえば前に相談されたんだっけか。ロシア嫌いのスオミっていう先輩に告白したらしいのだが、感謝している辺りどうやら成功したらしい。それでスオミは9A-91を妹だと見ているとのこと。まあこんな小さい子だったら誰でも妹として見るよな。え、俺?姉二人とヤンデレ一人とかいう地獄のご飯タイムを過ごしましたとも、ええ(王者の風格)うそです気が気じゃなかった。

 しかしまあ、俺が言っちゃなんだが背が大きいのに妹として見られるのはどうなんだろうか。偏見かもしれないが兄弟とか姉妹って姉や兄の方が背が大きかったりするのに俺に限ってはそうはならないらしい。新手の因果関係か何か?でも姉ちゃんは優しいし何だかんだ言ってAR小隊とか404小隊も好きなのかもしれない。loveじゃなくてlikeの方な。誰が勘違いするか分からん。特にG11なんて過度に干渉するわけでもなく、ぐっすり寝てたり百合知恵の輪の脱出劇を見て楽しそうにしてるからな。後タバコ吸ってる。正直小隊の中で一番の常識人である。でも高みの見物をしている(落涙)たすけて。

 部屋に帰ってきて風呂に入ったら先客としてM4と416がいた。待てこらお前ら。何で416が背中を流してるんだ。前も洗おうとするな俺の色々がこわれる。そんでもってM4は抱き着いてくるんじゃない。直に当たってヤバいしくすぐったいし力が入らない。

 なお寝る時は416がM4を抱きしめてた模様。よしそれでいい。俺は姉ちゃんと一緒に寝た。あったかい……










明日方舟(アークナイツ)のオープンベータが大陸版の方で始まったのでやってみたら、これまた面白い。重厚な世界観に可愛いキャラにもう最高。アーミヤちゃんかわいい。

あ、ジャンルはタワーディフェンスです。


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二十四話

a月y日

 

 

 最近、誰かに見られている気がする。AR小隊や404小隊じゃないのは確かなんだが、もっと何ていうかこう……変な感じだ。俺を見ている奴の視界を俺は見ることが出来る。ものすごく分かりづらいが、そうとしか言いようがない。それには俺の姿をはっきりと見ることが出来た。おかしい、本当におかしい。相談した方が良いのかもしれないが、姉ちゃん達を面倒事には巻き込みたくないので様子を見ることにした。

 仕事や昼ご飯を食べている時などには、既にそういうことがなくなっていた。ただ少しバランス感覚がずれていたような気がする。

 

 

h月l日

 

 

 また変な感じだ。昨日と全く同じ。俺の視界が他の奴の視界に成り代わっている。しかもこの感じ、まるで遠くから俺を見ているような気がする。しかもその時に俺が手を動かせば連動して他から見た俺の手も動いてるときた。でも続くのは朝の数分間だけ。

 今日の仕事は久しぶりに倉庫での資材整理だった。いつも通りの量の資材を姉ちゃんとSOPと俺で整理していたが、やけにパーツの量が少ない気がする。貼ってある伝票を見ても、実際にはそれ以下だ。姉ちゃんが担当者に問い合わせてくれたが、どうやら向こうの方でも把握が出来ていなかったらしい。となると、向こうからこっちに来るまでの間に誰かがパーツを盗んだことになる。規則云々の以前に盗ってしまったら重罪だろうに。仕事を終えた俺達はSOPの提案で犯人探しをすることにした。書き方が悪いが、SOPのような子供っぽいのはやたらと正義感に首を突っ込む。まだ大人とは言えないから仕方のないことなのだが、それで何かあってしまっては遅い。無闇に突っ込まないことを教えた方がいいのかね。

 それでまずは聞き取り調査だ。それも人形ではなく職員の方に。パーツやらの資材が送られてくるのはIOPからの筈なので、カリーナが何か知っているかもしれない。

 

 

 

 

 

「パーツ?いやぁ、私が確認した時はいつも通りでしたけどね」

 

 

 

 

 

 そう言ってデータルームの扉を閉じてしまった。そして数秒後にはゾンビのような呻き声。ちなみに彼女、後方幕僚というそこそこ偉い地位に就いている。グリフィンはもしかしなくてもブラック企業なんじゃないか?クルーガーさん、あんた刺されても文句言えねえぞ……

 人気企業の裏を見たところで、次はへリアンさんにコンタクトを試みた。資材は少しの間だけ別の倉庫で保管されている手筈なので監視カメラを確認すればいい。そんなことを言って頼んだら、あっさりと了承してくれた。へリアンさんも事態を把握していたらしい。

 それで監視カメラを確認したらダネルとティスが思いっきり映り込んでいた。お前らまさか兵器の為に使ったんじゃないだろうな。案の定二人とも捕まって起訴内容を全面的に認めた。でもこいつらが活躍してるのも事実だし、へリアンさんは情状酌量の余地ありとして不問にしていた。これからはIOPに問い合わせて専用の注文ルートを設けるとのこと。二人は泣きながら喜んでた。どれだけ命かけてるんだ……

 

 

j月o日

 

 

 最悪だ。朝から調子が悪い。着替えるのに立とうとしたらバランスが保てなくなって姉ちゃんの方に倒れてしまった。姉ちゃんは心配していたがいいのか悪いのかが分からない。でも頭の中がかき回されている感じがするのは確かだった。今こうして日記を書けている分には大丈夫だが……でもいいや。今日についてのことを書こう。

 休暇申請を伝えようとはしたのだが、立って歩くことすら無理そうだったので姉ちゃんが代わりにへリアンさんのところに行ってきてくれた。とりあえず布団を用意して横になっていたが、隣では45が心配そうに俺の方を見ているものだからずっといる気かと聞いたら迷いなく頷いた。自分らの仕事もあるだろうに……

 

 

 

 

 

 え、長期休暇?AR小隊も?そんなぁ。

 しかも俺は横になっていると言っても微塵も眠くない。つまり45の顔を見ていることになるわけであり、簡単に言えば恥ずかしい。でも寝返りを打ってしまえばそれはそれで何か罪悪感がくる。どうしようか。

 結果、45と一緒に横になることにしました。どうして。そんな提案を出したのは紛れもなく45である。「一緒に入ってもいい?」って甘えた声で聞いてくるものだから毛布の中に入れたら途端に悪戯っぽい笑みを浮かべて「引っかかったね~スィストラ?」って言われた。こりゃ悪魔だ。魔女の罠だ。対する俺なんて恥ずかしさでいっぱいだった。あーもう、本当に変な感じだ。でも45が抱きしめてくれる。何か温かくて落ち着いてくる……本当にどうなっちまったんだ俺。

 そして昼頃に9が車椅子を押して来てくれた。精密検査をするために16Labに行くらしい。それで俺は45に支えられて車椅子に座り、そのまま16Labに行くことになった。

 それから検査をしてもらったが、一部の機能にハッキングされた痕跡があるとペルシカさんは言っていた。とりあえず抗体プログラムを組み込んでもらったが、理由を聞けば俺が代理人の予備素体であることに原因があるらしい。変な視界のことについても予備素体であるが代理人であるため視界を共有することが出来るんだとか。さらに二人同士で近くにいれば互いの考えていることも分かってしまうらしい。プライバシーガバガバじゃねえか。

 

 

k月t日

 

 

 今日はスコーピオンが入居してきた。やったぜ。

 

 

 

 

 

 だまして悪いが(企業並感)










ス コ ー ピ オ ン よ 。 地 獄 の ヤ ン デ レ に 焼 か れ て も ら う ぜ 。


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二十五話







エイプリルフーるぅ^~


r月h日

 

 

 45が猫になってた。朝方だけど眠気が覚めたぞオイ。とりあえず対策を講じなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもどうしたものか……」

「にゃ~」

 

 

スィストラが悩んでいる間にも、隣の45は鳴き声を発しながら身体を摺り寄せてきている。そして他の者に助けを求めようにも部屋には誰もおらず、運が悪いことに残りのメンバーは出撃していて連絡も取れない。

 

 

スィストラは解決策が何も思い浮かばず、溜め息をついた。

 

 

「ハァ……」

「にゃ?」

「ハハ、すごく懐いてくるんだな」

「にゃ~にゃ~」

 

 

45は鳴きながらスィストラに笑みを浮かべる。45は何も本当の猫になったわけではなく、姿は普段のままなのだ。それに茶色の猫耳と尻尾が追加されただけのことなのだが、言葉を発しないことは勿論の事、異様に懐いてくるようにもなった。

 

 

とはいえ猫耳と尻尾を付けた45が抱き着いてきたりするのでスィストラからすれば気が気ではない。あたふたしている今も理性が吹き飛ぶか吹き飛ばないかの狭間を漂っている。しかし45は、

 

 

「んにゃ」

「ひゃあ!?」

 

 

 

 

 

スィストラの首筋を舐めた。

 

 

 

 

 

「45……?お、お前……」

「にゃ?」

「あ、あの……いきなりそういうことはだな……」

「にゃ~にゃ」

「……ちゃんと喋れって?」

「にゃ!」

 

 

口に出すのも恥ずかしいことをやられたのだが、45は首を傾げてスィストラを見つめている。そして純粋な瞳で上目遣いをされているのだからスィストラは顔を真っ赤にして口をパクパクとさせるしかなかった。

 

 

「でも、その、恥ずかしいし……」

「みゃあ~……にゃん?」

「え、えぇっと……」

「みゃあ……」

 

 

45が悲しそうな顔をして身体を密着させてくる。その瞬間、スィストラの理性は木っ端みじんに砕け散った。そのせいか、スィストラは45を抱きしめて声を震わせながら言った。

 

 

「あ、あの……首を、舐める、のは……は、はず、かしい、から……」

「みゃあ?」

「で、でも!その……嫌いじゃない……っていうか……」

「うみゃ」

「……す、す、好き……です……」

 

 

スィストラがそう呟けば、45は途端に笑顔になった。それにつられてスィストラも顔を綻ばせ、さらに抱きしめる。

 

 

「にゃあ!?」

「本当に大好き……ごめん、甘えさせて……」

「……にゃ」

 

 

スィストラの震える声に、45は頷いて優しく抱き返した。

 

 

 

 

 

その瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイプリルフール!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然部屋に入ってきたのは9だった。笑顔で扉を開けてスィストラに抱き着く。

 

 

「ふぇ……?」

「スィストラ~!今日はエイプリルフールだよ!」

「エイプリル、フール……?」

 

 

9に言われても、スィストラはいまいち状況がつかめていないようで顔を赤くしたまま困惑していた。そして隣を見れば、45はいつも通りのイタズラな笑みを浮かべるばかりである。

 

 

「えっと、45……?」

「なぁに?かわいいスィストラちゃん♡」

「か、かわ……!かわ、いい……!?」

「ええ、そうよ。嫌だった?」

「い、いや!その、あの……嫌、じゃない、けど……えっと……う、うれ、しい」

「……フフフ。だ、か、ら、皆の妹なのよ」

 

 

45に甘い声でそう言われ、スィストラは顔を真っ赤にして涙目になりながら45の胸に顔をうずめた。他の人ならば挑発行為と判断されるのだが、45は怒ることなく、むしろ優しくスィストラの頭を撫でた。

 

 

「すごく甘えたかったのね」

「うん……うん……!」

「今日はエイプリルフール。騙しちゃったからちゃ~んといいこいいこするわ。お風呂も、寝る時も、ね?」

 

 

優しく、甘い声での誘惑にただひたすらに頷くスィストラ。隣でずっと様子を見ていた9は微笑ましそうに45に話しかけた。

 

 

「ねえ45姉」

「どうしたの?」

「私もスィストラのお姉ちゃんになっていい?」

「……いいわよ。今日は特別に二人で可愛がってあげましょう」

「やったぁ!」

 

 

9は万歳をして45に後ろから抱き着いた。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「どう?痛くない?」

「うん……」

「スィストラまだ恥ずかしがってる~!」

 

 

夜、夕食も食べ終えて部屋に戻ればスィストラは唐突に9と45から一緒に風呂に入ろうと提案された。いや、そう言われた時には既に45に手を引かれて部屋に連れられていた。エイプリルフールのネタ晴らしは既に終わっていたのだが、風呂まで一緒に入ることになった事態にスィストラはただただ困惑するしかなかった。

 

 

そして現在は風呂に入っているが、今は45が背中を流している。

 

 

「よぉし終わり」

「あ、ありがと……」

「じゃあ次は前も洗うわよ」

「ッ!?ま、前も!?」

「そうよ?」

 

 

45がキョトンとした顔で怪訝そうに訊ねるが、スィストラにとっては大問題であること甚だしかった。そもそも前を洗うということは45に裸体を見せるわけであり、スィストラにとっては一緒に風呂に入っていたとしても絶対に避けていたことであった。

 

 

「……駄目?」

「う、あぅ……」

「……大丈夫、45お姉ちゃんを信用して?」

「うぅぅ……」

 

 

45にそう言われてしまえば断るわけにもいかず、スィストラは俯きながら自身の裸体を45に洗わせることになった。そして洗い終わり、湯船の中で45はスィストラに言った。

 

 

「今日のスィストラ、すごく可愛かったわ」

「お、俺……だ、だ、だいすきって……」

「びっくりしちゃったわよ」

「ご、ごめん……」

「でもね……」

 

 

45はスィストラの耳元に近づき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがと♡」



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二十六話

f月o日

 

 

今日の朝は見事な弾力のある実が俺のあちこちに当たっていた。何でだよちくしょう。見えただけで416とM4と9A-91が俺を軸として絡み合ってた。何か嫌な予感がしたのでいつもよりも急いで脱出して着替えて食堂に向かった。何であいつが部屋にいるんだよ怖すぎるわ。

そもそもの問題として数日前に新たに入居してきたスコーピオンが何らクッション的な役割を果たしていないのである。たかだか数日だけなのだが、俺にとってはされど数日。毎日百合知恵の輪や百合ジェンガに巻き込まれていてはいつ限界が来るか分かったものではない。それに加えて運が良かったとするならば、スコーピオンは戦場に出撃しているわけではないという事実だ。俺や姉ちゃんと同じで雑用をやっているらしい。すまないスコーピオン、巻き込まれてくれ(切実)

 そういえば今日食堂で掃除をしていたらヘリアンさんが浮かない顔をしてラーメンを啜っていた。いかにも近寄りがたい負のオーラを全方位に発していたのだが、俺に気づくと泣きそうな顔で両肩を掴んで隣に座らせられた。

 

 

 

 

 

「また失敗したぁ~……」

 

 

 

 

 

 開口一番がそれである。他の人形や職員の話を流し聞きしているので十中八九合コンのことだろうとは思っていた。もうね、あんたね。でもはっきり言ってしまえばヘリアンさんは普通に美人だ。仕事中の表情は堅いが頼れる人だし、何より笑っている時が見ててこっちも嬉しくなる。うん、頼れる姉貴分みたいな感じだ。

 あれ、姉貴分じゃへリアンさんも……

 

 

t月p日

 

 

 久々に朝風呂を楽しんでたら後ろから胸を揉まれた。後ろを振り向けば何ということでしょう、お前かスター。最近大人しいなと思った矢先にこの仕打ちだよ。しかも光学迷彩で隠れてたとか16Labの支給品で何してんの。そして耳元で「私が奪ってあ・げ・る♡」とか言うんじゃないバカピンク髪。お前に関しては理性云々の問題じゃなくて恐怖が先に来るんだよ。

 それから寝間着のまま今日は部屋でゆっくりしてようと思ったのだが、押し入れからM4が出てきた。待てこら。それで引っ張って引きずり出したら416も出てきた。芋づる方式が効率良いとは聞くがこんなことに効率を求めたくはなかった。しかも416の方は寝起きだったようで、完璧を自称する彼女にしては珍しく寝癖だらけで温かさを求めているのかM4にゆっくりと抱き着いている。姉ちゃんはいつの間にか起きてて押し入れからSOPを引きずり出してきた。ねえ何で壁に穴開いてるの?朝からホラーはやめてくれよ。引っ張られてきたSOPは俺を見るなり、「おはよ~」って言って頭を撫でてきた。落ち着くんだけどさぁ、ヤンデレの巣窟の中での癒し要素なんだけどさぁ……俺を完全に妹扱いするのはどうかと思う。でも怒ることはできるわけないし、SOPも柔らかな笑みを浮かべているのがまた……なので受け入れるしかない。でもこう見るとSOPってあまりはしゃがなくなった気がする。姉としての自覚でも芽生えたのかね。

 駄目だ期待した俺が馬鹿だった。黄色い狐耳の人形が来たら走って遊びに行ってしまった。俺の前でだけお姉ちゃんぶってるのはうーん……まあしゃーないか。他のメンバーからしたらSOPも妹だしな。一番下?多分俺ですよ、ええ(貫禄)

 暇だし社内報を読もうと取り出したら隙間から大量の手紙が出てきた。めっちゃ多いし十枚くらいあるぞ。ハガキを買った覚えはないんだけどなぁ……

 

 

 

 

 

 もうほんとこわい。

 

 

p月j日

 

 

 何で知恵の輪が無い日に9A-91がいるんですかね(震え声)

 目が覚めたら息遣いが聞こえてくるわ俺の両腕を掴んで身動きできないようにしているわで色々と大変だった。しかもこいつ下着だけときた。メイド服か寝間着だったらまだよかったのに。よくないけども。そして俺の足を封じていたのはまさかのスオミだった。え、お前も?嘘だって言ってくれよ頼む。でもこの二人は、っていうか9A-91は俺の首を甘噛みしてきた。くすぐったいのと恐怖のせいか絶対反応に敏感になってる。そしてスオミは空席になってた俺の右手の指を咥えて舌で弄っていた。そのせいでまともに動けなかったので姉ちゃんが身体を起こして着替えさせてくれた。ありがとう。でも9A-91とスオミは今日の仕事を手伝うらしい。いやぁ。

 でも9A-91は何もヤンデレだけではないらしく、スオミと手を繋いで歩いたり仲良く話していたりする。要は普通のカップルにしか見えないのだ。スオミもロシア嫌いとは思えない程9A-91を好いているし見ていて微笑ましい。でも二人して俺にロックオンするのはやめてくれ。あとどさくさに紛れて姉ちゃんも俺を狙うな。

 

 

l月q日

 

 

 今日は食堂に新しいキャラがお目見えした。まあ車椅子に座ってて戦えそうには見えなかったのだが。

 スターと同じピンク色の髪で、名はネゲヴ。それで車椅子に座っているのだが、目に見えて傷が痛々しかった。というのも前の任務で敵に捕まって快楽目的での拷問を受けたらしく、パーツを復元できないようにウイルスで電脳を犯されたと言っていた。具体的には右膝から下が切断されていて、腕や脚にも大きな裂傷が包帯で見え隠れしていた。そして二度と銃を撃てないようにするためか、左目も潰されていて右手の中指や左手の薬指と中指も根元から切断されていた。何と声を掛けたらいいのか分からなかったが、ネゲヴは「大丈夫よ、まだ銃は撃てるから」と笑顔で言った。

 それでネゲヴはもう一人とハンバーガーを食べていた。ちなみにもう一人とはネゲヴの車椅子を押していたタボールという人。割と奇抜な格好をしているが面倒見は良さそうだった。まあ幸せそうなら干渉する必要もないか。

 

 

 

 

 

 視線を外したら急に寒気が襲ってきたので走って部屋に帰った。なにあれ。



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二十七話







大型建造三連で姉カノ、KSG、AA-12が来ました。こうして新たな仲間を無事迎え入れられたのも普段から作品を読んでくださる読者の皆様方のお陰です。本当にありがとうございます(火種)


y月a日

 

 

 

 

 

「「「「「おはよう指揮官!」」」」」

 

 

 

 

 

 M16がダミーを全部引き連れてやってきた。ちょっと待て理解が追い付かん。しかも何で丁寧に全員酒瓶を持ってるんだ。とりあえず話が進まないので部屋に入れてから聞くことにした。ちなみに部屋にいた416はM4を抱きしめてM16を恨めしそうに見ていた。M4も満更ではなさそうだったので放っておいた。

 それで話を聞いたのだが、どうやら16Labに行ってダミーの最適化率を最大限まで上げてもらったらしい。最適化率とは人形のあらゆるシステム面を円滑に動作させる際の数値であり、その数値が高ければ高いほどダミーリンクというシステムに良い影響を与えるとのこと。ちなみにダミーリンクシステムはダミー人形を扱うために必須のものである。そう姉ちゃんが説明してきた。戦術人形もそう単純な作りではないらしい。

 それはそれとしてこいつが来た理由だが、ペルシカさんからの通知を届けに来たとのことだ。何でも現在16Labで新しい人形の各種調整を行っているらしく、明日には全て終わるらしい。新しい人形って誰なんだろうか。妹……いや、お姉ちゃんがいいな。えへへ、無性に楽しみになってきた。

 

 

k月o日

 

 

 何でウロボロスがいるの?しかも俺を見るなり飛び掛かってきてボールペンを俺の喉元寸前にまで刺そうとしてきた。多分めちゃくちゃ泣いたと思う。正直言ってその時の状況はペルシカがウロボロスを宥めていて姉ちゃんが俺を抱きしめて慰めてくれた。何でいきなり襲われなきゃいけないんだ。でも怒ることなんて出来ないしウロボロスも事情を説明されたら申し訳なさそうな顔をしてこちらを見ていたので不問にしておいた。いちいち言ってもキリが無いからな。面倒事になるよりかはその場で鎮火しておいた方がいい。ウロボロスも俺と同じ鉄血の人形だしな。でも見た目は麗しいって言えばいいのか?それは分からないが、すごく強そうな人だ。姉ちゃんがひたすらに優しいタイプとするなら、ウロボロスは頼れる姉御肌といったところだろうか。どちらにしても俺の姉ちゃんになるのは確定なんだろうけど……

 そんな一悶着があった後、姉ちゃんが何故ウロボロスを復活させたのか聞いた。そうか、姉ちゃんは俺と違って鉄血兵だったからウロボロスの存在を知ってたのか。ペルシカさんは資料を読み漁っているウロボロスの頭を撫でてから復活の経緯について説明を始めた。まあ要約すると、SOPがボロボロのウロボロスの素体を持ってきて復活させてほしいと頼み込んできたからだそうだ。普段は鉄血のパーツをもぎ取って遊んでいるSOPが土下座までして生き返らせてほしいと頼んだんだぞ?俺はそんな光景なんて微塵も思い浮かばなかったが、ウロボロス本人がいるという事実はそういうことを表しているに違いない。ただ、ウロボロスはプライドが高い。生き返ったことに一応の感謝はしているものの、感情としては高い自尊心の方が大きいように思えた。足を組んで美味しそうにコーヒーを飲んでいるものだから声を掛けようにも掛けづらかった。唯一面白そうだったのが、ペルシカさん特製の泥水コーヒーだと気づいていないことだった。言ったら怒りそうなのでやめておいた。

 

 

j月a日

 

 

 百合ジェンガを辛くも脱出した後に庭を散歩していたら、ウロボロスが缶ジュースを二つ持って歩いてきた。調整が終わって退屈だったので散歩していたと言っていたが、景色が珍しいのか楽しそうに周囲を眺めていた。楽しそうにとは言っても不敵な笑みを浮かべているということなんだが、まあそれは昨日からだったので気にしていない。

 しかし一緒に歩いているとどうにも不思議な感覚になる。時々顔を見ても、不敵な笑みというか余裕がある表情を一切崩さない。おまけに何を考えているのか分からないときた。一度笑顔だってことを伝えたら「ああ、景色が綺麗だからな」と答えるだけである。別に相手の心理なんて分からなくてもいいことなんだろうが、俺としてはかなり気になるところだ。うーん、バレない程度に模索でもしてみようかな。

 ウロボロスが16Labに行ってくると言ったので途中で別れたら、直後に光学迷彩仕様のマントを羽織ったM4が草むらから出てきた。怖いわお前。しかも何アイマスクと手錠を持ってるんだ。え、俺の近くに不審者がいたって?うるせぇ間違いなくお前が不審者だろ。しかもちゃっかりスターがいるじゃねえか。何でギリースーツを着てるんだよお前は。それとペルシカさんが作ったなんとか技術を使ってあげなさい。銃じゃなくて変なカプセル持ってるし。絶対元気になる薬とかじゃないだろ。クスリの方だろ。そんなことを追求したらスターは冷や汗をかいて露骨に目をそらした。ほら見ろ、絶対普通の薬じゃない。俺は飲まないからな。

 そこから適当にあしらって部屋で少し姉ちゃんと昼寝した。毛布と姉ちゃんに包まれて幸せだ……ずっとこうしていたい。

 

 

h月g日

 

 

 巡回をしていたらウロボロスが「背を小さくする気はないのか?」と聞いてきた。身長か……あまり、というより殆ど考えたことがなかった。困っているわけでもないし、コンプレックスというわけでもない。でも何でそんなことを聞いたのだろうか。するとウロボロスは「大きい妹というのもおかしいだろう?」と返してきた。そういうことだったのか。でも俺に姉ちゃんがたくさん(?)いるのは事実だし、姉より背が大きい妹に違和感を感じているのも俺だ。断る道理はないのだが、流石にすぐ行動に移すわけにはいかない。そんなわけでウロボロスには考える期間を伝え、一緒に昼ご飯を食べに行った。

 

 

 

 

 

 ……何かあーんされたので大人しく食べた。美味しい。



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二十八話







装甲妖精が出たので初投稿です。


「Remember - no Russian」








w月q日

 

 

 気づいたらウロボロスの部屋にいた。なんで?

 いや俺はちゃんと自分の部屋で姉ちゃんと寝てた筈なんだよ?そうだというのに何で俺はウロボロスの部屋で寝てるんだ。しかも抱きしめてる力が強いのか脱出しようとしても動けない。何だよこれすげえ甘い匂いもするし災難だぞこれ。人災だぞ。しかし運が良かったのかウロボロスが寝ぼけながら起きたのでその隙に脱出することにした。部屋の施錠はちゃんとするべきだった。いや、したのかな?したと思うけど……

 今日は珍しく9が仕事の手伝いに来てくれた。家族認定して知恵の輪に参加してくることを除けばまあ、常識人だ。いつでも上機嫌だし45のことを慕っていたりと普通に明るい。でも運動不足だからといって逆立ちしながら歩くのはやめなさい。しかもそれを見越してかスカートがめくれても中はスパッツだった。いやそういう問題じゃねえけども。とりあえず怪我とかしたらいくら人形でも洒落にならないので姉ちゃんと協力して普通に歩かせた。それでも「えへへ~」と笑っている辺り戦車の主砲を使って懸垂でもやりそうな気がする。元気があるのはいいことなんだけどな。任務があれば暴れてくるんだろうか。

 食堂の掃除を終えた頃にはティスが大きなあくびをしながらやってきた。聞けばアパッチの整備や荷物の搬入などで徹夜をしていたらしく、一睡もしていないと言っていた。しかも夜戦の支援部隊に駆り出されるとぶつくさ言いながらまたあくびをしていた。眠い上に夜戦とは運が悪いとしか言いようがない。そういえば俺は実戦は一度も経験してないな。姉ちゃんはドラグーンとしてグリフィンと戦闘したことはあるんだろうけど、今度そういう基本とか聞いてみようかな。

 

 

j月y日

 

 

 押し入れからスターが這い出てきて俺の足首を掴みやがった。あの光景は一生記憶に残るタイプのやつだ。もう怖いなんてもんじゃない。何とかSOPの機転により引きずり込まれることは免れたが、もう二度とあんな経験はしたくない。でも部屋を出る直前にSOPが引きずり込まれていった。そして次の瞬間には甘い悲鳴が聞こえてきた。ごめん、俺じゃ力になれない……

 今日は久々に新しい仕事を頼まれた。本部にある射撃訓練場の掃除や各種機器の調整らしい。それで職員に連れられて現場に来てみるとまあ綺麗とは言えない。常時自動清掃の設備を起動させているのだがどうしても間に合わないのだそうだ。まあグリフィンの本部なんて前線基地よりも人形が多いから仕方ないよな。空薬莢とかめちゃくちゃ落ちてるし。そんなわけで掃除をしようと思ったのだが、箒を取った時にはまだ訓練場の利用時間だった。流石にその時間の中を掃除するわけにはいかないので端にあったベンチに姉ちゃんと二人で座って利用時間が終わるのを待つことにした。まあその間は割と退屈しなかったし色々な銃種の人形も来ていたので新鮮な感じだった。

 新鮮な感じというと、ネゲヴが伏せ撃ち専用のレーンに乗って軽機関銃を撃っていた。指やら足やらが欠損しているのに大丈夫なのかと訊ねたら「手と指がある限りは戦場に出れるわよ」と笑顔で返してきた。どれだけの自信家なのかは知らないが、巻かれている包帯と滲んだ血が痛々しい。目をそらすのが良くないことだとは思っているんだが、慣れるには時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

「もう終わりの時間ね。じゃあね。スィストラ、ゼクス」

 

 

 

 

 

 結局終了時間までネゲヴは居座っており、帰り際に手を振って車椅子で去っていった。しかし人形だとしてもすごい腕前だったな。本人は命中率が下がったと言っていたが、実戦未経験の俺からしたらすごいとしか言いようがない。でも軽機関銃の欠点は空薬莢が大量に落ちるところだ。掃除なんて大変の大変。

 初めてで色々と手間取ったせいもあってか、完全に仕事を終えたのは午後の九時を過ぎた頃だった。とりあえず売店で食べ物を買ってから部屋に帰って食べた。

 もう眠いのでここで終わり。おやすみ。

 

 

k月n日

 

 

 俺が休みの日って大体ろくでもないことが起きてる気がする(確信)

 起きて伸びをしたと思ったら押し入れの穴からSOPが顔を赤くして倒れ込んできた。しかも息が荒いし寝間着も汗でびしょびしょ。何事かと思って意識があるかを確認したら受け答えは出来るみたいだった。これで意識が無くなったりしたら16Labに行かなくちゃならない。それで話を聞いたが、SOPは途切れ途切れで起きたら既にこんな状態だったと言っていた。やっぱり熱があるのかと思ったが、気まずそうにしながら外に走って逃げていくスターを見て確信した。ヤンデレキチ姉は戦慄が先に来るのでNG。

 とりあえず冷却シートを額に貼って様子を見たが、SOPは身を捩らせて足をもじもじとさせるばかりだった。しかも「ここらへん……じんじんするぅ……」と下腹部の辺りを擦っていた。スターあの野郎。あいつもしかしなくても媚薬飲ませただろ。俺に襲い掛かってSOPにも襲い掛かるとか何やってんだあいつ。とりあえず服を脱がせた方がいいのだが服をずらすたびに甘い声が聞こえてくる。これは非常にマズい。

 だが上はまだいい方だ。問題は下である。ズボンを優しく脱がそうとするのだがSOPの全身には既に媚薬の効果が循環しているらしく、少し布が擦れただけで身体を震わせるのだ。しかも仰向けで押し倒されているような体勢だから余計に目のやり場に困る。そこからズボンも脱がせてSOPは下着だけになったのだが直視すると俺の体温も上がってきた。目をそらそうにも姉ちゃんと一緒に介抱しないといけないものだから逃げ場はない。どうすりゃいいんだよこれ……

 

 

 

 

 

「スィストラぁ……なんか、へんだよぉ……」

 

 

 

 

 

 同感。俺も変な気分だ()



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二十九話







ペルシカって普通に義体とか電脳とかにして生き延びてそう()








w月u日

 

 

 武器を持って戦いたいと姉ちゃん達に喋ったら、殆どの人に拒否された。唯一許可を出してくれたのは姉ちゃんだけだ。俺も人形の力は制御できるようになってきたしそろそろ頃合いだと思っていたんだが、どうも俺は素人だと思われているらしい。まあそれに関しては何も言えない。戦術に関しても、射撃に関してもだ。

 しかし予備素体なのでオリジナルと同じく射撃システムは備え付けられている筈である。ということで射撃訓練場には連れていってもらえた。流石に許してもらえなかったらどうしようかと焦ったが運が良かった。

 ウロボロスに促されて武器を選ぶことになったのだが、一通り見比べた後にFALを選んだ。確かバトルライフルの種類になるんだっけかな。7.62mm弾を使う銃で弾薬はフルサイズ。射程が長いと聞くが使うまで実感は分からない。FALを選んだ理由はすっげえ単純だ。社内報に掲載されていたS03地区というところにFALという戦術人形がいるらしく、実力を伴う問題児だと噂されているそうだ。ぶっちゃけどれほどヤバいのかは少しばかり興味があるし、そういうヤバい場所にいる人形ってかっこいいと思ってる。こう、何だ、ダークヒーロー的な?中二心だけはよくくすぐられる。

 とりあえずウロボロスが後ろから抱き着く形で射撃の構えなどをフォローしてもらったが違和感は感じなかった。ウロボロスの胸?もう慣れたよ()それで一発撃ったら的の端に当たった。ウロボロスが笑みを浮かべて頭を撫でてくれたが嬉しかった。うーんこりゃ甘えてるな。別にいいけど。

 しかし技術というのは成長させなければならないのは人形も同じだった。その証拠に二発目以降は全く的外れのところに当たり、フルオートに至っては手が痺れるわ発砲音がうるさいわ硝煙の匂いがきついわで三重苦だった。手が痛い……

 

 

u月l日

 

 

 ここのところ射撃訓練場に通っているのだが、一向に成果が出ない。こりゃ思っていた以上にクソエイムだ。ゲームなんかとまるで勝手が違うから当たり前なのだが、にしても当たらなさすぎるんじゃないだろうか。戦闘用に作られた鉄血人形ということを込みにしてもだ。ちなみに結果は1マガジン撃って当たったのが0。これにはウロボロスも困惑しながら俺に慰めの言葉をかけるという事態になった。そんな落ち込んではいないんだけどな……

 でも銃のセンスが無いと分かった以上、何かしら扱える武器は見つけておきたい。俺だっていつまでも雑用係をやっていくわけにはいかないし、何より自分の身は自分で守れるようにもしたい。俺を助けに姉ちゃん達が重傷を負うなんて状況はごめんだ。そんなわけで急いで16Labに向かってペルシカさんに頼み込んだら心配された。でも俺はそんなので引く気はない。守られっぱなしなのは俺が嫌だと伝えたら了承してくれた。今度コーヒー豆でもあげようかな。そこからペルシカさんは「どんなのがいいかな~」と奥の部屋から試作品を漁っていた。ん?んん?ちょっと待ってペルシカさん。何で家庭用青狸のひみつ道具がめっちゃあるの?何でちきゅうはかい爆弾が置いてあるの?え、緊急用?あぶねえんじゃバカたれ。

 ソファに座って待っていたらペルシカさんが白い球体を二つ引き連れてやってきた。衝撃の事実だがどう見ても俺の頭に付いてたお団子ヘアーもどきだ。何でもこっそり取って持ち込んだらしい。うっそだろお前。お陰で俺の髪型はまあ、銀髪のストレートロングなわけだけども、もうこのままにしておこうかと考えた。だって俺代理人じゃないし。なんだったら予備素体を使った完璧別人だし。他の奴らからの反応は……大丈夫か。流石に分かるだろ。それで球体型のドローン二つは改造されて収納スペースとマイクロ波増幅装置、そして小型のパルスレーザーを搭載したらしい。何気に攻守万能になっている辺りペルシカさんの技術力は頭おかしい(褒め言葉)それに自動で浮遊して俺についてくるようになっているので便利なことこの上ない。お礼として部屋に遊びに来ないかと誘ったら快諾してくれた。こりゃ明日が楽しみだ。久々に平和な人が来るんだからな。

 

 

u月y日

 

 

 ちくしょう、ちくしょう。

 何でペルシカさんも知恵の輪に参加してるんだよしかも難易度上がってんじゃねえか。そんでもって姉ちゃんとAR小隊が強化パッチとして追加されてる始末。俺もう抗えねえよ……

 まあ、部屋に誘ったのが間違いだった。いや、ペルシカさんは至って普通の女性だったんだよ?普通じゃないけれども。そこから何故か聞きつけたAR小隊が全員玄関と押し入れの穴から侵入してきてまあ大所帯。しかも人数分の弁当とかも買ってきてたし準備早くなぁい?M16に至っては酒瓶を三つほど持ち込んでいた。ウォッカ、ジャックダニエル、麦焼酎……全部銘柄で高いやつだ。どれぐらい高いかというと、グリーンゾーンの富裕層しか飲めないような値段だ。聞けばこんな答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

「密造酒を作ってる組織から盗んできたんだ。へへ、全員ブッ殺したけどな」

 

 

 

 

 

 お前もうGTA5の世界に転生しろよ。絶対生き延びられるぞ。それにこいつは単身で乗り込んで壊滅させてきたらしい。怖いわお前。酒盗むのに何人殺したんだよ。それからM4は楽しそうにペルシカさんと談笑してたり、SOPはスターにあ~んされたり、俺は何故か姉ちゃんにあ~んされてた。突然の便乗はびっくりするのでNG(迫真)

 しかしまあ、ペルシカさんは割と子供っぽいところがある。風呂に入ってる時なんかはSOPと一緒に歌を歌ったりしていた。うん、微笑ましい。でもノーブラ主義なんだなこの人。巧みなトラップだよこんちくしょう!ノーブラで白いTシャツを着てるだけとかどこに目線やればいいんだよ!唯一救いだったのがサイズが大きくてちょいブカブカだったことだろうか……いや駄目だな。ちらちらパンツ見えてるし。やっぱり目のやり場に困る。何度も言うけど中身は男だからな?そんな耐性俺にはありません()

 しかも寝る時に俺に密着してくる。理性が吹き飛ぶ5秒前。嘘ですとっくに吹き飛んでました。

 いい匂いがするし優しく抱きしめてくるし耐えられるわけがない。まぁた甘やかされてしまった。でも嬉しかったのも事実だ。

 

 

 

 

 

 ペルシカさんがそのままの状態で俺と一緒に16Labまで歩いた。色々と恥ずかしくて死にそうになったぞおい。



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三十話







堕ちかけます(唐突)








e月y日

 

 

 別に身長を小さくしても構わないとは思っていたが、まさか寝ている間に小さくされるとは予想外の極みだった。しかも目が覚めたら16Labとかどんなドッキリだよ。固い台の横ではペルシカさんがヘッドホンを着けて音楽を聴いていた。何の曲か聞いたら『Grievous Lady』という曲だった。俺がやってた音ゲーの曲じゃん。想起率、ハードモード、うっ頭が……()

 それで俺の身体が小さくなった顛末を聞いたのだが、やはりと言うべきか俺が寝ている間に16Labに送り込まれて義体を改装されたらしい。身長は185から170に、そして胸も小さくなってた。ペルシカさん曰く45よりかは大きいらしい。別に俺はどうとも思ってないが45本人にこの会話を聞かれてしまえばちょっとまずいかもしれない。9から聞いた話だが、45もけっこう気にしているらしい。まあ俺が冗談交じりで思ったことを察知して追いかけてきたのもあってかああ、そうなんだなと思った。あの殺気をぶつけられるのはごめんだ。しかし立ってみれば確かに目線が変わった感じはある。180ちょいはあるウロボロスからは撫でられたし姉ちゃんに至っては俺に抱き着いてきた。そうだ、妹なのを忘れてた……

 とはいえ動きが軽くなった気がするのでそれはそれでよし。

 部屋に帰って姿を見せたら45が安堵してた。あれ、バレてないよね?大丈夫だよね?夜に襲われるのはいやだぞ?

 

 

k月o日

 

 

 本部の地下にある大型のキルハウスでドローンの性能テストを実施することにした。装備が最先端なのは間違いないだろうが、それでも一応の性能は知っておきたい。戦場で急に故障されても困るからな。というわけで早速使ってみたのだが、レーザーの威力がおかしい。何で一発撃っただけなのに的が消し飛んでるの?強すぎない?でもクールタイムは必要らしく、一機あたり20発も連続で撃ってしまえば5秒ほどは冷却しなきゃいけない。まあ節約して撃っていけばそれでいいかのかもな。連射して撃つほど切迫した状況ならその時に俺も詰んでいる筈だ。

 つまるところメインとしての使い道は防御と荷物運びになるのだが、防御の面は申し分ない。なんでもマイクロ波を増幅させてバリアを作り出すらしく、銃弾や瓦礫をある程度無力化してくれるとのこと。にしても銃弾を確実に防ぐってすごいな……そもそも鉄血側の装備に実弾が使われてるのかは怪しいけども。でも機能自体は特に違和感が無かったのでテストは切り上げることにした。

 それから夜ご飯を食べに食堂に向かったらダネルとティスがラーメンを啜っていた。それで向かいの席に座って新しい武器を作ってもらったと話したら「本当か!?」とダネルが身を乗り出して食いついてきた。やっぱ兵器全般に興味あるんだな。最近は戦車の整備とかで忙しいと聞いてはいたが、自分の銃の方は大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

「まあそれは何とかなるだろ。なんたって戦車の方が強いからな!」

 

 

 

 

 

 対戦車地雷置かれても知らねーぞ。ダネルはダミー全部を乗員に費やしているから随伴歩兵がいない。一番の問題はそれだ。戦車は確かに人形なんかよりも遥かに強い火力を持っているのだが、その代償のせいか接近された時の対処法が何一つ存在しない。その埋め合わせとして随伴歩兵が必ずいるわけだが、ダネルはそれを分かっているのだろうか。ティスがいつか教えてくれると信じて俺からは言わないでおいた。楽しそうに喋ってたしな。なおウロボロスも興味を持ってた模様。あんた素でも強いだろうに……え、スピード重視?俺に言われても困る。

 

 

u月p日

 

 

 あーもうまた誘拐されたよ。

 二回目のウロボロスによる抱き枕化によって俺は恥ずかしさで身じろぎすら出来なかった。だってすごくあったかいんだもん。俺が起きてるのに気づいたのか、ウロボロスはそこからさらに「お主は可愛いなぁ~」とか言って足を絡ませたりしてきた。色々と重なって抵抗できなかったのだが、姉ちゃんが寝間着のまま俺とウロボロスをいったん引き離してくれた。いやぁ~何とかなった!

 

 

 

 

 

「ねえウロボロス、やっぱり可愛いと思う?」

「当たり前だろう。素直で可愛い仕草で妹だからな」

 

 

 

 

 

 お前らグルかよふざけんな。でも否定なんて出来ない。何でかって言ったらこうされるのも悪くないというか俺も姉ちゃん達を悪く思ってないっていうか……どう表現すればいいのかな……いやマジで表現の仕方が……あーもうみんな大好き!!!

 少し取り乱した。恥ずかしいこと書き殴っちゃったがどうせ俺の日記だ。見られるなんてことは無いだろう。朝ご飯を食べてる時なんか姉ちゃんに「顔が赤いわよ?もしかして……」といたずらな笑みを浮かべて言ってきたからめちゃくちゃ焦った。大好きって書いてからそれがずっと意識されてていつものように話すことも難しい。ほんと何なんだよこの感覚……顔が火照っているのは分かるがずっとこの調子だ。しかも歩いてる時なんかは無意識に姉ちゃんと手を繋いでいたときた。慌てて手を離してしまったが距離も心なしか近い気がする……ウロボロスが小声で言ってくれたが、俺の方から姉ちゃんに近づいたらしい。おかしい。今までこんなことは無かったんだけどな……

 とりあえず冷たいジュースをたくさん飲んで寝ることにした。これでいつも通りに戻ってくれたらそれでいい。じゃあおやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふふ、可愛らしい寝顔ね。何か悩んでたみたいだけど、実を言うと私分かってたの。気づいてなかったみたいだけど仕草も女の子らしくなっちゃって♡でも怖がる必要はないわ。ちゃーんと全部受け止めてあげるから、ね?おやすみ、可愛いスィストラちゃん♡『ゼクス』










Arcaeaっていう音ゲー面白いから皆やってみて♡っていうかやれ(豹変)


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三十一話







404との実戦初日。








t月q日

 

 

 404小隊が任務に赴くというので、俺も参加してもらえるよう45に頼み込んだ。案の定反対されたがそれで土下座を解くつもりはない。最悪クルーガーさんに直談判してでも戦場に出るつもりでいた。戦術とか戦略とか何も分からねえけど鉄血を殺すことぐらいは出来る筈だ。俺はもう代理人の偽物とか鉄血の裏切り者なんかじゃない。俺は俺だ。

 

 

 

 

 

「……分かったわ。でも、無茶はしないで」

 

 

 

 

 

 言質は取った。任務は一週間後だと言われたので調整は完璧に仕上げておかなきゃな。性能のテストには416が付き合ってくれた。自分の分の調整もあるのに大丈夫なのかと聞いたら「私は完璧よ」といつも通りの答えが返ってきた。よかった、安心できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員乗ったわ」

《ガンスリンガー1了解、離陸する》

 

 

夜、一機の輸送ヘリが五人を乗せて作戦区域に向けて飛び立った。

 

 

機内では45がホログラムを表示して全員に作戦内容を復唱する。

 

 

「いい?今回の作戦は敵の機甲部隊奇襲による補給路の分断、及び敵司令部のネットワークダウンよ。ハイエンドモデルの反応は未だに確認できていないからいないと考えていいわ」

 

 

要は雑兵しかいないことになる。その報告に9とG11は喜びをあらわにしたが、隣にいた416がG11の頬を抓りながら言った。

 

 

「あいででで……!」

「でも油断はできないわよ。特にイントゥルーダーはね」

「イントゥルーダーって……誰だそれ?」

「鉄血のハイエンドモデルよ。電子戦が得意分野の、ね」

 

 

スィストラにそう説明する416の表情は改めて戦術人形と痛感させるには十分すぎる効果を持っていた。そこでスィストラは思い出す。今この場にいるのは水面下で暗躍する特殊部隊であることを。

 

 

45は416からの問いかけに笑みを含めながら答えた。

 

 

「ええ、油断はできないわね。噂によればS09地区の指揮官も死にかけたらしいわよ」

「なあ45、その指揮官って……」

「詮索を止めることはしないわ……生々しいうわさ話だったけど」

「ッ……」

 

 

普段とは打って変わって冷徹な目をしている45に、スィストラは何も言葉が出なかった。しかしこんな緊迫した状況だというのに、9はいつも通り楽しそうに笑っているし、G11は眠たげな目を擦っている。その二人を見れば日常だと錯覚しそうになるのだが、45や416……いや、正確には416に視線を向ければそんな妄想はすぐに取り払われた。完璧を語る彼女は瞬きすらせず、微動だにせず外の状況に全ての注意を向けていた。

 

 

《こちらガンスリンガー1。間もなく着陸ポイントだ。準備しろ》

「了解……各員、装備点検。降りるわよ」

「了解、45姉」

「りょうか~い……」

「了解したわ」

「あ、了解……」

 

 

四人に続いてスィストラがドローンを抱えて最後に降りると、輸送ヘリは瞬く間に上昇して本部の方に飛び立っていった。そしてスィストラが手を離すと、二機のドローンは浮き上がってスィストラの周囲を回り始めた。

 

 

「あ、あれ……?」

「同期してる途中ね。大丈夫よ、いなくなったりしないから」

「う、うん……」

 

 

その言葉と同時にドローンは周回を止め、スィストラの周囲にただ浮遊を続けていた。一見すると頼りない、白い球体だが、その中身はスィストラを守るために必要な武装が施されているのも事実だった。本当に、一見すると信用できないのだが。

 

 

「さて、それじゃあ全員進むわよ。それと臨機目標に遭遇した場合は例外なく殲滅して」

 

 

45の指示を出す声は、やけに冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f月n日

 

 

 作戦の開始日から二日ぐらいが経過した。今は廃墟に身を潜めていて監視を続けているが、敵の一人すら見える気配がない。こんな状況も久しぶりだ。これがAR小隊だったらお喋りやら何やらしてたんだろうが、あいにく一緒なのは404小隊。じゃれ合いも無ければ雑談の一言すらない。しかもお互いの情報交換には電脳内のみの回線を用いて行われているので誰も口を開くことはない。

 まさかこんなに緊迫した状況だとは思ってもいなかった。唯一マイペースなのを表に出しているのはG11くらいだろう。廃墟に着いた途端に眠ってしまった。そして情報端末は9が弄っており、416はライフルの整備、45は救援物資として持ってきたリモートスナイパーを設置して端末で照準などの調整をしていた。俺はただドローンを見ている。やることが無いのもあるが、何より緊張を和らげることが出来ない。覚悟してた筈なのに何やってんだよ俺……

 

 

k月z日

 

 

 まだ敵が来ない。しかし45達は黙々と時が来るのを待ち続けている。正直言ってその忍耐力には驚かされた。もう何日経ったんだ?一週間か?いや、それ以上なのかな……もう何日経ったのかも分からない。一応スリープモードに出来たことが唯一の救いだ。これで寝れないとかだったらマジでどうしようかと思った。俺のドローンも相変わらず部屋の中をゆっくり飛んでいる。

 でも今日は珍しく416が仮眠をとっていた。この日より前は一度も寝ていなかったのだが、少し疲れたのだろうか。詳しくは分からないが、寝ている時もしっかりとライフルを握っていた。戦場って怖いな……でも鉄血さえ殺せば平和になるかもしれない。勿論俺の命に忍び寄る危険も無くなる筈だ。そう考えるとイラついてきた。前にボコボコにされたこともあって無意識に舌打ちをしてしまった。駄目だ、今日もあと少しで終わる。寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

r月q日

 

 

 いいかげん死ねよクソスナが



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三十二話

g月q日

 

 

 今まさに予想外の事が起きている。確かに私は臨機目標は全て殲滅しろと指示を出したが、あれだけ不安を表に出していたスィストラがまさか一番乗りにキルゾーンに突っ込むなんて考えてもいなかった。今は416と9を陽動に出して私とG11で狙撃に徹している。二人はなるべく敵を引き寄せるように動いているが大丈夫だろうか。とはいえ今はリモートスナイパーで頭数を削っていくしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ッ……!こちら416!45、スィストラは見つけた!?》

「まだよ。タグ付けが追い付かないわ」

《早くして!敵味方構わず攻撃してるのよ!》

《416危ない!!》

 

 

通信機越しから連続した爆発音が聞こえた。

 

 

「416、9!?応答して!」

「45、通信機器が全部ダウンしてる……もう復旧できないよ」

「まずいわね……各員プランBにチェンジ、スィストラ及び支援ドローン二機を無力化するわ」

《無力化って……殺すつもり!?》

「殺すわけないでしょ。動きを封じさえすればどうとでもなるわ」

《……了解》

 

 

416から通信が切られ、45は再びリモートスナイパーの端末を注視した。メインカメラには絶えずスィストラの姿が映し出されているのだが、一切止まることのない機敏な動きに照準が追い付いていなかった。

 

 

「全然ロックできない……G11、そっちは?」

「無理に決まってるじゃん!誤射しちゃったら元も子もないよ!」

「そうよね……」

 

 

45は思考を巡らせるが、上手くスィストラの動きを止める方法が思い浮かばなかった。

 

 

「クソ……」

 

 

 

 

 

いや、一つだけ方法はあった。

 

 

 

 

 

味方を巻き込むリスクも十分にあるのだが。

 

 

 

 

 

「……G11、ヘルストームを要請するわ」

「え、まだ416と9がいるんだよ!?」

「二人には撤退してと伝えておいて」

「でも、スィストラは……」

「……命令よ」

 

 

45は歯を噛み締めて赤いフレアを射出した。閃光弾は放物線を描いて飛んでいき、やがて416と9が戦闘を行っている場所へと着弾した。瞬間、404小隊全員の電脳に直接的に指示が送られる。

 

 

「きたわね……」

《ヘルストームミサイルを投下。着弾まで十秒》

「G11、指示を送った?」

「うん、二人とも撤退してるよ」

 

 

リモートスナイパーの端末を覗いてみると、確かに416と9が撤退しているのが見えた。

 

 

後は着弾を待つのみだった。

 

 

 

 

 

《到達を確認》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

t月w日

 

 

 スィストラは未だに目を覚ましていない。技師が言うには強制スリープの状態で必ず起きるとのことだが、もし起きなかったらと考えてしまう。スィストラがほぼ毎日日記を書いているからその日記帳を借りているが、最後に書かれていた日付の部分には殴り書きで何かが書かれていた。解読は出来なかったが恨み節だろう。もしかしたら相当きていたのかもしれない。

 だから私は反対したんだ。9も、416も、G11も。誰もスィストラが傷ついた姿なんて見たくなかったのに。AR小隊も悲しんでいた。特に一番の遊び相手だったSOPに至っては大声で泣いてメンタルの制御が一層不安定になった。ゼクスも責任を感じていたのか眠るスィストラの手を握ってごめんなさいと呟いていた。私も手を握ったけど、人形みたいに冷たかった。

 

 

c月j日

 

 

 今日もスィストラの日記に書きこんでいる。長い期間目を覚まさないことは覚悟していたが、それでも何かが足りなかった。日常から大事な何かが欠けてしまった気がする。そんなことを考えながらスィストラの看病を続けていると、スターが見舞い品を持って部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

「私には、これくらいしか出来ないから……」

 

 

 

 

 

 少し笑っているが、どこか寂しそうな顔だった。

 あれ、なんか泣きそうになっちゃった……変な私。

 

 

a月p日

 

 

 今日は看病の手伝いとして416が来てくれた。服装もジーパンに縦縞模様のセーターという若干人妻じみた格好だったのだが、当の本人は「そうかしら?」と気づいていない様子だった。反則よそんなの……ちょっと母親みたいに見えてきちゃったじゃない。

 416は手慣れた様子でスィストラの寝ているベッドのシーツを替えたりスィストラの髪を梳かしたりとやることなすことが完全に母親のそれだった。私がやった時よりも早かったし本当は家政婦タイプの人形なんじゃないかしら?何故そんなことを思うのかって?

 ……やられたのよ。416に髪の手入れをされた。

 別に嫌ってわけじゃないのよ?ぼーっとしてスィストラの寝顔を眺めていたら急にゴムを外されて櫛で梳かされたのよ。確かに最近は任務があったし髪もぼさぼさになりかけていたけど……それにしても密着し過ぎている気がする。胸が当たってるのよ胸が!お陰で私の体温は馬鹿みたいに上昇して落ち着くのに大変だった。んもう!ただの髪の手入れなのに何で距離が近いのよ!私より背が大きくて胸も大きいからって……

 

 

 

 

 

「そうだ。今日は一緒にお風呂に入りましょう?」

 

 

 

 

 

 とびっきりの笑顔でそう言われた。私の方が隊長なのに、これじゃスィストラと同じじゃない……

 

 

j月r日

 

 

 スィストラの代わりに知恵の輪に巻き込まれる人物がいるらしい。ええ私よ。ぐすん。

 そもそも昨日だってヤバかったのだ。416と一緒にお風呂に入ったのだが、完璧を自称して私の身体を洗ってきたし、湯船に浸かったら後ろから抱き寄せられた。あんなの恥ずかしくて死にそうよ……朝目が覚めたらそれを思い出して悶えた。しかも416とゼクスが両隣にいるしもう動きたくない……

 

 

 

 

 

 416にお姫様抱っこされてスィストラの病室に向かう羽目になった。もしかして私も妹扱い……?










45姉、416によって妹扱いされる()


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三十三話

q月u日

 

 

 技師の予想よりも早く、スィストラが目を覚ました。変わらない起きたての顔に小さな欠伸。ああ、やっとだ。やっと日常が戻ってきた。皆喜んでいる。怪我も無くて本当に良かった。今は皆寝静まっているが、私はこうして日記を書いている。明日からはスィストラに返すつもりだが、どうせなら何か書き残していこうと思う。別に別れるつもりはないけどね。殿で死に様を晒す兵士じゃないんだから。

 

 

 

 

 

 スィストラ……一言だけ……

 

 

 

 

 

h月o日

 

 

 どうも俺が寝ている間に45が日記帳を借りていたらしい。別にそれが分かったからって咎めるわけじゃないが。でも朝起きたら45が俺を抱きしめて寝ていたものだから少しびっくりした。抱きしめ返したら頬を緩ませてさらに密着させてきた。はぁ、あったかい……

 

 

y月p日

 

 

 今日は朝早くから16Labでの精密検査が待ち受けていた。寝間着のままウロボロスに抱きかかえられて検査用の台に寝かされてそのまま始まった。俺何もした覚えがないんだけどな……普通に寝て起きただけなんだが、AR小隊や404小隊、それに姉ちゃんやウロボロスまで心配してたから初めは何事かと思った。それで詳細を聞こうとしたら誰も話してくれないときた。それで検査が終わった後、ペルシカさんに聞いたのだが「知らない方がいい事実よ」とだけ言われてスリープモードにさせられた。

 とはいえそう言われてしまえば気になるのが人の性。いや人形の性か。もしかして俺記憶喪失なタイプ?いや待てそう考えたら怖くなってきたぞ。しかも書いてる時間が夜だから何か怖さが倍増されてるような気がしないでもない。ホラーは苦手だからやめてくれよな~頼むよ~(懇願)

 にしても最近仕事してないな。まあ起きたと思ったらヘリアンさんから「しばらくの間は休んでおけ。気分転換でもしてくるといい」って言ってたし当然休むしか選択肢はない。まあ記憶云々の件も忘れて休んだ方がいいのかね。でも急に休みを貰ってもやることがない。せいぜい社内報を読み漁るくらいだ。書いていいのか分からないが、俺はけっこう昔の記事やら流行を漁る癖がある。社内報だって、俺がしばらく読んでいないのもあるが数日前とか数か月前のものを読むくらいだ。でも皆の反応からして俺が寝ていた期間はけっこう長かったみたいだから前線基地の状況も変わってるだろう。ユノちゃんとか大丈夫かな。

 前みたいにページをめくっていくとD08地区の情報が飛び込んできた。ん?何か指輪着けてね?しかもこの子417じゃん。前の記事で見たちっちゃくてでっかい子。どこがとは言わないけど。指揮官とゴールインしたわけか、めでたいな。あれ、ってことはセクハラも合法化してるってこと……?待て待て待て急に怖くなってきたぞ。胸小さくなってよかった……

 それに加えて基地に新しい人形が配属されたらしい。名前は……ヴィオラ?聞いたことないな。でもでかいし、これ鉄血の人形か?やけに色白だと思ったら記事の方にも鉄血のハイエンドモデルだと書かれていた。すげえなもう。鉄血とかどんどん鹵獲されてるじゃん。まあダミー素体だと考えれば向こうの戦力は減ってないと思うけどな。

 そしてユノちゃんの方の記事にはダイナゲートの新種モデルが掲載されていた。姉ちゃんから聞いたけど通販番組を収録してるらしい。それにキャラ名が可愛いらしく、調べてみたら『アーちゃんうさぎ』に『ユノっちおねえさん』だった。ストローロケット、発射ァ!(WKWKさん並感)

 あそこ部下もたくさんいるみたいだからなぁ……そのうち代理人とかを総戦力でぶっ殺しちゃいそうな勢いだぞ。それに基地間のつながりもあるらしいから完全にオーバーキルですね(諦観)

 

 

 

 

 

 そこからあれでしょ?戦闘機とかガンシップで生産工場も全部潰しちゃうんでしょ?まああり得ないけどな。グリフィンにそんなこと出来る人がいたら軍から文句が来てるだろうし。

 

 

 

 

 

r月f日

 

 

 知恵の輪でいつもの日常だと実感する俺ってもう末期なのかな()

 でもここ数日で変わったことがある。何と知恵の輪に45が巻き込まれているではないか。しかも絡まっている状態なので必然的に俺と45が抱き合ってる形になる。何じゃこりゃ。45は目が覚めたら顔を赤くして急いで俺から距離を取ってたし、やっぱり恥ずかしいのだろう。俺も同じくらい恥ずかしいが。それから45は呟くように「えっと……その、恥ずかしい……」と視線を左右に泳がせながら言った。俺も恥ずかしさでどうすればいいか分からなかった。だってマジで恥ずかしかったもん……

 聞けば45も、というか404の全員が長期休暇を貰っているらしく、416が朝ご飯を作ると意気込んでいた。姉ちゃんはダネルと一緒に戦車でGOをやりに行った。脳筋かな?

 でも416の服って何かこう……お母さんっぽい。水色の縦縞模様のセーターにジーンズを着こなしているのだが、本当にお母さんだ。しかも髪型はポニーテール。404小隊と俺でテーブルを囲んで朝ご飯を食べることになったのだが、45の顔が妙に赤い。それで聞こうとしたら416が先に45の名前を呼んで、

 

 

 

 

 

「いっぱい食べてね。45ちゃん♪」

 

 

 

 

 

 人差し指を口の前で立ててそう言った。なお45は耳まで真っ赤にしてご飯を食べていた。うん、分かるわ45の気持ち。俺も変にドキッてなったから分かる。9とG11はいつも通りだった。羨ましいよ、そういう割り切り方が……

 しかも416はM4がいないせいか45を可愛がってた。俺も巻き込まれた(定期)

 俺は後ろから来る胸の感触に陥落して45はいつの間にか愛娘のように甘えていた。今度からママって呼ぼうかな……



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三十四話

w月p日

 

 

 最近姉ちゃんが帰ってこない日が続いている。いなきゃ寂しいのだが、9から聞いた話によるとどうもダネルやティスと一緒に秘密兵器にハマっているらしい。三バカかな?でも対鉄血の戦力としては機密と言えど十分すぎるし、何より歩兵戦力しかいない鉄血にとって陸上と航空兵器というのは地獄以外の何物でもないだろう。まあ姉ちゃんは楽しんでるみたいだしそれでいいか。

 朝から知恵の輪からの脱出に時間がかかったが、45はどうも抜け出せない様子だった。それもその筈、隣に俺がいて反対側に416がいるのだから45は顔を赤くして縮こまっているしかない。それで俺が脱出したら45も俺の方に来ようとしたのだが、俺の手を掴む寸前で「あ、えっと……ご、ごめん!」と部屋を飛び出していってしまった。俺何かしちゃったの……?これには流石の416も困った表情をしていたし相談は出来そうもなかった。あいつまだ着替えてなかった気がするんだよなぁ……つまり猫の模様の寝間着を着たまま本部の方に……大丈夫かあいつ?

 

 

k月e日

 

 

 んーやっぱり45の様子がおかしい。普段と全然違うし。具体的には俺と関わろうとすることを避けるようになった。何か思いつめたような顔だったし別に相談くらいは出来るのだがそんなことはしようとしてこない。というより明らかに距離を置かれているので挨拶すら出来ていないのが現状だ。体調不良だとも考えたが、そもそも人形が風邪を引くことはあり得ないのでその可能性は無い。いくら人間に似せていると言えどもそんなオプションパーツは一部の界隈に需要があるくらいだろう。だとしたら何が原因なんだか……俺にはよく分からないし、嫌われたのか?そうじゃないとは信じたいが……

 416と一緒に昼ご飯を食べに行ったが、どうも胸の内が収まらない。何だろう、食欲も湧かないし何か変だ。無性に45に会いたい。何か理由があるわけでもないのに会いたい。そのことを416に話したら頭を撫でられた。

 

 

 

 

 

「皆家族だから、45も会いたいって思ってる筈よ」

 

 

 

 

 

 そんなことを言われると少し元気が出る。それで食べ終わった後は二人で庭を散歩していたが、やっぱり本部付近は鉄血の脅威が全くないので平和である。こうやって416とのんびりしている間にも前線基地は鉄血の対処に追われているのだろうか。そう思うと罪悪感が湧くが、ぶっちゃけ俺は命をかけてまで前線に行こうとは思わない。俺としては本部で十分に装備を整えて、安全な場所から狙撃する方がいい。

 でも416からは「あの時とは真逆の考え方ね」と言われた。多分記憶喪失の部分だろう。全く覚えていないが一体何があったんだか。そんなことを考えながら部屋に戻ったが、45はいなかった。寝ているG11を起こして何処に行ったか聞いたら「分からない……むにゃ」とだけ言ってまた寝てしまった。9も「45姉どこ行ったんだろうね……」と心配している様子だ。居場所を隠しているとは思えないし、誰も知らないことに違いはない。でも45単独での任務もあるとは本人から聞いていたのでそれかもしれない。まああんまり心配することもないかもな。数日ぐらい経ったら帰ってくるでしょ。

 

 

j月n日

 

 

 AR小隊が任務から帰ってきてしまった。おたすけぇ。

 どうやら夜中に帰ってきたらしく、俺が起きた頃にはM4が力強く俺を抱きしめてた。しかも背後からはスターの呼吸が聞こえてくる。こいつ俺の服に顔をうずめてスーハ―してやがった。何堂々と犯行に及んでるんじゃワレ。ええ度胸じゃのう……そんなことを電脳内で呟いたらスターが俺の耳元で「うふ、あはははは……」とヤバい笑い方をしてきたので動けなかった。怖いよほんとお前さぁ……朝からSOPに媚薬飲ませるあたり確定次項でやべー奴なんだけども。そしてSOPは9に可愛がられていた。やっぱSOPって恥ずかしがり屋なのかね。知り合いとは遊んでたりするけど初対面じゃ人見知りらしい。以前は、っていうよりAR小隊結成時はガチガチに緊張して終わったと同時に解放されて泣き出してしまったとか。なお証言者はスター()ヤンデレサイコレズとかこわいなーとづまりすとこ。あ、ここが家か。うわぁい。地獄だー(無邪気)

 いやでもスターはまだSOPを標的にする可能性があるからまだいいよ?問題は我らがエリート小隊の隊長であるM4なんだよ。歩いてる時なんか俺に腕を絡ませてきて離れなかったからな?しかも反対側には416も同じようにしてくる始末。何これどうすりゃええの?スィストラわかんないよ……最終手段としてSOPに助けを求めようと振り向いたが、SOPはスターに愛でられていた。うん、愛でられていた。とりあえずこれが一部始終。

 

 

 

 

 

「もう、SOPったら可愛いわね。チューしてあげる♪」

「んむっ!?んん、んちゅ……れろ……」

 

 

 

 

 

 舌まで入ってるディープなやつだった。そういうの嫌いじゃないけどな、でもやるんだったら昼はやめて(切実)見てる俺が恥ずかしい。いや、だってSOPの状況に自分のことを当てはめると……うん。今416が隣で見てる。でも416は「私とキス……する?」って聞いてきた。違うそうじゃない。にしても45は今どうしてるんだろうか。早く会いたい。会ったら何しようかな。散歩とかしたいな。街とかに行くのも悪くない。ああ早く会いたい。まあ、そろそろ寝るか。あ待って416何で抱き寄せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たくさん甘えてもいいのよ、フフ♡-416

 ……えっと、ママ。-スィストラ



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三十五話







お気に入り300越えとかこマ?嬉しいですねぇ!何かリクエストあったら書いてもいいゾ。








w月q日

 

 

 さすがに長すぎやしないだろうか。45はまだ帰ってきていないのだが、416がペルシカさんに連絡していた。俺も9と一緒にへリアンさんにそのことを報告したが向こうでも発信し続けているらしい。連絡がつかないことは薄々感付いてはいたが、どちらにしろ捜さなきゃいけない。何処に行ったんだろうか。不安だ。

 でもヘリアンさんからは「捜索は許可できない」と言われた。一刻も早く45を見つけなきゃいけないってのに。大声で訴えたら二人に連れられて連行させられた。情も無いのかアイツは。クソが。仲間を見殺しにする気か。

 

 

y月y日

 

 

 頭を冷やされて俺は部屋に帰った。9とか416が心配してるけどそれどころじゃなかった。こうしている間にも45はどこかで彷徨っているのかもしれない。助けを求めているのかもしれない。早く会いたい。寂しい。すごく辛い。そうしたら416が俺を抱きしめて慰めてくれた。どうやら泣いていたらしい。416も泣きそうじゃねえか……そりゃそうか。あんなに可愛がってた45が急にいなくなったら泣きたくもなる。

 落ち着いた後は404小隊やAR小隊と協力して情報収集に励むことになった。表向きで行動できないなら手がかりだけでも掴んでおいた方が後々楽になる。そう思ってやったのだが、一日中やっても成果はゼロだった。つまるところ何も手がかりがない。作業が終わった後に9から聞いたことだが、45は特殊部隊の隊長であるから痕跡を残すことは殆どないらしい。何だよそれもう、ってことは絶対見つけられないじゃん。それを知ると何かもう脱力してきてしまったので風呂に入って寝ることにした。416はM4の部屋に突撃していったため9と一緒に布団に入った。かぞく……

 

 

l月p日

 

 

 スターがいた。施錠はしっかりした筈なんだけどなうん。押し入れの穴も鉄板で塞いだんだけどな。

 だから45に早く会いたいんだよ!気が気じゃねえわ!こええよ!こいつホラーとヤンデレがコラボレーションしてるから普通に怖いんだよ!!飛び起きて逃げようとしたら両肩をがっちりと掴まれて抱き寄せられた。っていうか痛い。ちょー痛い。え?「スィストラ大好き、すごく大好き♡」だって?寝言は寝て言えヤンデレピンク。とりあえず駆け付けたM16が引き剥がしてくれたから一命は取り留めた。でも何で天井から来たの()しかも俺の部屋の上ってあれだよね?最近入居してきたゲパードの部屋だよね?大丈夫かなあいつ……まあ無傷なことを祈ろう。南無。

 スターはM16によってミノムシみたいに縛り上げられたが、気づいた時には脱出して敷地外へ逃走を図っていた。なおペルシカさん特製のゴキブリホイホイに引っかかって連行された模様。一瞬だけペルシカさんが猫耳と尻尾持ってるように見えたが気のせいだと思いたい。面倒事は勘弁してくれ。まあ朝にどったんばったんあったが朝ご飯を食べることにした。にしても9って甘いもの好きなんだな。朝から一際高いメロンをスイカみたいに食べていた。この時代じゃ自然由来とか無添加が珍しいだろうに、でも人形の士気を上げるのには贅沢も大事なのかね。ちなみにG11は寝ながら食べるという曲芸を披露してた。どっちかにしろよ……

 朝ご飯を食べた後は再び情報収集をしようとしたのだが416に止められた。本人曰く「無い物を探してもどうにもならないわ。祈りましょう」ということだが、よくよく考えれば確かにそうかもしれない。無いものはないのだ。そうとなると気分転換でもしようかと考える。でも本部の敷地内で散歩するところって大体決まってるからなぁ、困った。9と一緒に悩んでいるとたまたま通りかかったカリーナから近くの公園がおすすめだと教えてもらった。そうと決まれば俺達二人で無人タクシーを捕まえて行くことにした。まあ結果は公園と呼べるものじゃなかったがな!遊具は撤去されてるわ草がねえわ近くに廃墟があるわでどう考えても団地跡だった。料金は9の電脳による水面下の交渉でタダ同然になった。姉妹揃って電子戦得意とか爆弾が不安定すぎる定期。これ近い内に俺の頭もハッキングされるんじゃないですかね……?

 まあやることもないので散歩していたら9が懐からおにぎり二つを出してきた。準備する時に作ってきたらしい。そういえばちょっと時間かかってたもんな。しかも美味しそうですぐに腹が鳴った。鉄血の人形でも腹って鳴るんだな。前々から思ってたが妙に人間臭い。それでおにぎりを食べたらめちゃくちゃ美味しかった。あぁ^~いくらの音^~()勿論合成食材だが転生前に食べた高級ないくらと殆ど変わらない味わいで夢中になって食べた。食べ終わった後に9の方を見れば頬杖をついて笑みを浮かべていたのでありがとうとだけ言っておいた。もう幸せですほんと。

 その後はお喋りしたり何故か走り回ったりしてそのまま寮に戻った。最高速で走ると気持ちいいには気持ちいいが怖い。9は澄まし顔だったし慣れるのかな……

 

 

j月o日

 

 

 ウロボロスが男性職員五名ほどにナンパされたらしく、蹴り上げてきてやったわあのアホ共と食堂で語ってきた。納豆ご飯に焼き魚に味噌汁とかめちゃくちゃ和風だなおい。まあ要するに、男五人を締め上げてきたらしいのだが表現が生々しい。全員のタマを蹴りあげたとかやべえやんそれ。思わず震えあがってしまったわ。でもウロボロスって胸もあるしなぁ……

 

 

 

 

 

「ほほう、わたしの身体に興味があるのか?」

 

 

 

 

 

 そんなことを耳元で囁かれた。もうやだ今日はずっとウロボロスといる!



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三十六話







ほうら新鮮なスィストラちゃんだよ。堪能して(はぁと)








t月e日

 

 

 45が戻ってきた。でも目が見えなくなってしまったらしい。いや、正確には視覚センサーの色素調整のプログラムが破壊されたとのこと。つまり、45の視界から全ての色が無くなってしまったということだ。今45に見えるのはぼやけた黒い線画のような景色だけ。そのせいか誰かが付きっきりじゃないと生活することも難しそうな様子だった。ちくしょう、何で45がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……

 

 

u月p日

 

 

 16Labでの検査があったのだが、ペルシカさんの努力も空しく得られた情報はゼロに等しかった。鉄血の仕業であることは確かなのだが、誰にやられたのか、そもそもどんな方法で破壊されたのかも分からずじまいだった。それでこれ以上の検査は無駄だと判断され、俺はとりあえず45の手を引いて部屋に帰ることにした。道中、45は不安そうに俺の手をずっと握っていたが、表情が怯えていたし目の色も心なしか薄くなっている気がした。俺がちゃんと捜していればこんなことにならなかった筈なのに。一人で風呂に入ってからは悟られないように泣いた。

 

 

l月p日

 

 

 三日目でシリアスから日常に戻るとかバグまみれかな?????

 45は目がほぼ見えないから仕方ないよ。でもなぁんで他の奴らがいつも通り知恵の輪を作ってるのか俺には理解に苦しむ。たすけて姉ちゃん。ぐっすり寝てないで助けて。あとスターは俺の胸を揉むな。変な声出ちゃったじゃねえか。そして416はSOPとディープキスしてるし朝からそれは理性が壊れるのでやめてくれ。M16お前酒臭っ!?何時まで飲んでたんだよお前!?そんでM4はナチュラルに俺の股に顔突っ込んでスーハ―するなコラ。変に悶えちゃったしいつの間にか来ていたウロボロスに見られちゃったしで姉ちゃんに甘えることにした。無理もうほんと……恥ずかしくて無理。

 しかもウロボロスから言われたけど、どうにも俺の仕草が女の子っぽい感じになってきてるらしい。は?え?嘘でしょ?9とかG11に聞いても「女の子っぽくなってるね~」って言われた。おいおい待て待て待ってくれ。俺は男だぞ?いくら身体が女とはいえ精神は普通に大学生の男だぞ?俺女になったらどうするんだよ、数日ぐらい寝込みたい気分だよ畜生。

 でも仕事は舞い降りてくる。へリアンさん許して亭許して。朝から射撃演習場の掃除とか勘弁してくれよ……しかも昨日はマシンガンを使う戦術人形による制圧射撃訓練があったらしく、床には大量の空薬莢が落ちていた。これほんと集めるの大変だからなー……とりあえず俺と9で落ちてる空薬莢を回収して、G11は新しい的の設置を担当して二手に分かれて作業した。終わった頃にはG11が死んだ魚の目をしていたので仮眠室にぶちこんでおいた。あそこふかふかの毛布があるから大丈夫でしょ。そして部屋に帰る途中、45がM4と一緒にリハビリをしていたので声をかけたら「ふぇ!?す、スィストラ!?」と驚いた様子だった。まあ、だろうな。俺もガチガチに緊張してたけど……

M4から話を聞けば、数日リハビリをすれば作戦行動をする分には問題ないとのこと。でもそれはあくまで一例であり、45の視力は殆ど無いようなものだから銃を持って戦線に参加することは難しそうだった。

 

 

p月s日

 

 

久しぶりに社内報を見てみたらS09地区の情報が掲載されていた。ん、んん!?え、ユノちゃん刺されたの!?これちょっと前の情報っぽいけど大丈夫なの!?今度お見舞いに行こうかな……

 

 

 

 

 

「あ、そうそう。D08のところの人形、妊娠したらしいわよ」

 

 

 

 

 

そう言ってきたのはいつの間にか背後から俺を抱き締めていたスター。やっぱ怖いわお前。実力据え置きのヤンデレとかシャレにならん()姉ちゃんだけど恐怖で俺がヤバい。

にしても人形が妊娠って……まあ、すごい時代になったもんだな。確か風俗用のモデルでも妊娠って出来ないんじゃなかったっけ?しかも二人、417とヴィオラが妊娠してるらしい。わぁお、おめでとう。ぱちぱち。

でも俺なりの心配事もある。人形と人間の間に生まれた子供ってどっちなんだろうか。勿論生物学上では人間になるんだろうけど……差別する奴とか普通にいるからなぁ。何やかんやでいちゃもんつけてくるだろうし、ネットに書き込まれたらほんとヤバいからなぁ……

ちょっとしたお土産でも持ってD08の方に遊びに行こうかな。ヘリアンさんも友好関係は大事だって言ってたし。なお本人は合コンに行く気満々だった模様()また失敗しそうだなぁ……

書いてる途中にヘリアンさんから電話が来てビビった。マジで怖かった……バレたかと思った……

 

 

 

 

 

「スィストラ、これに乗じて私達とも」

 

 

 

 

 

しねーよアホンダラ。突然何言い出すんだ。何よだれ垂らしてやがる。しかも寄ってくるな押し倒すな待って!?こいつ止まれ!?絶体絶命と思ったがSOPが通りかかった瞬間にターゲットを切り替えてSOPのことを抱き締めてた。すまんSOP、本当にすまない……(メタルマン)

部屋から脱出した後はティスの部屋に逃げ込んでなでなでしてもらった。本人の性格も相まって非常に心休まる場所だ。何か包み込んでくれるような……こう、ほわぁぁぁってした感じ。お姉ちゃんみたい……今書いてるけど思い出したらさらにやってもらいたくなる。風呂に入ってもあの感覚が忘れられないし、しかも9に抱き締められた。やっぱりいい気持ちになる。もっとぎゅーってされて、なでなでされて、耳元で囁かれて……きゃー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

gがつaにち

 

 

上から代理人だいりにんってずっときこえてくる。こわいたすけてねえちゃんタスケテ



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三十七話







堕ちろ!堕ちたな(確信)








u月q日

 

 

 朝起きたら押し倒されてた。何を書いてるか分からねえと思うが俺も何が起きてたか分からねえ()

 とりあえず猫じゃらしをあげてから話を聞けば、つい最近引っ越してきた人形でTMPというらしい。俊敏さに長けていると言っていたので多分気づけなかったんだろう。ってそうじゃない。感心してる場合じゃない。何で俺を狙って部屋に侵入してくるんだこの寮の奴らは。しかもこいつ妙に懐いているせいか、俺に頬を摺り寄せてくる。ええいやめんかこの猫。何とか隙を見て部屋から逃げ出したが、後ろから「いつでも待ってますからね……フフ、アハハハハ……」とか聞こえてきた。やだもう怖い。

 そのことを姉ちゃんに伝えたら「あら、TMPも元気でいい子ね」と微笑んでいた。ちょっと待って。俺にとっちゃ死活問題だぞ。え、姉ちゃんが勧誘した?うっそでしょ……

 

 

f月k日

 

 

 私……じゃない。俺だ。何で書き間違えてんだろ。前まではこんなこと無かったんだけどな……それにしても今日の朝は危なかった。姉ちゃんが指摘してくれたのだが、俺のメンタルモデルの思考が女の子になってきてるらしい。やだよ?俺は男だよ?いくら身体が女だからっていっても精神まで女になるのは流石に理解が追い付かないし理解したくもない。同性になっても理性を保ち続けなきゃいけないのは変わりないだろうしそもそも変わってしまったら俺はただのか弱い人形になってしまうわけで……

 そんなわけで俺は男であると意識して生活したいのだがまあ難易度は高い。油断するとすぐ女の子座りになるわ言葉遣いや一人称も『わたし』になっちゃうわで大変苦労する。勿論書き言葉も私って書いてしまうこともある。俺の思考どうしちゃったんだろうなほんと……それに昼寝した時も何か俺の方から姉ちゃんに近づいていったような気もする。うーん、どうしよ。

 

 

r月p日

 

 

 

 

 

「ねえウロボロス、やっぱりこうなっちゃったみたいよ?」

「わたしはそれで構わんぞ。何せ可愛いからな!」

 

 

 

 

 

 何で勝てなかったのよ私……具体的に説明すると、私、スィストラは無事に女の子になってしまいました。どうして。っていうかどういうことなのよ。精神も女の子になって日記の書き言葉も女の子っぽくなってどうしろっていうのよこれ。でもこうなってしまっては手遅れに近しいものを感じ取ったので抵抗手段は全て放棄することにした。だってもうその手段も不可能なんだもん……ぐすん。

 それに姉ちゃんやウロボロスも嬉しそうだったので私としても女の子になって悲しいなんて言える筈がない。でもまあ、複雑な気分で仕事にもあまり手が付けられなかった。カリーナからは心配されたりダネルやティスからは驚かれたりと、とにかく一段と疲れた。でも姉ちゃんのなでなでとハグで癒される。ぎゅーってしてもらうの大好き……えへへ。

 

 

q月p日

 

 

 女になっても襲い掛かる百合知恵の輪。私ってこのポジションで確定なの?(震え)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、45……おはよう」

「あ、えっと……おはよ」

 

 

何とも言えない雰囲気の寝起きである。いや、原因は分かってるのよ。憶測にすぎないかもしれないけど分かってるのよ?でもいざ普通にしようとすると、もどかしさを感じるというか……

 

 

「ね、ねえ45」

「何……?」

「任務とかって、出てる?」

「……」

 

 

あ、黙っちゃった……どうしよ……怒っちゃったかな?

 

 

「え、えっと……」

「……」

 

 

あわわ、どうしよう……黙り込んじゃったよぉ……姉ちゃん達は任務でいないし休みは私と45の二人だけだから……ど、どうしよ「……出てない」……え?

 

 

45は確かに、私に出てないと言った。よかった、怒ってるわけじゃなさそう……

 

 

「あぅ、ご、ごめん!変なこと聞いちゃって……」

 

 

それもその筈、45は殆ど目が見えない状態である。全盲じゃないだけマシなのかもしれないが、それでも戦闘に参加できないのは当然のことだった。それを忘れて私は安易に聞いてしまった……

 

 

「ううん。スィストラは何も悪くないから……私が勝手に行ってやられちゃったことだし」

「でも……」

「でも見えてるだけ私は運がいいのよ。ほんの少しだけど……今もスィストラの姿はちゃんと見えるから」

「ッ……」

 

 

薄まった色の瞳が私を見つめている。それは泣きそう目でも怒っている目でもなく、ただ嬉しそうな目をしていた。表情も微笑んでいて悲しみも、哀愁すら微塵も感じさせない。何でそんな顔が出来るのか、それを追求せずとも、私の目には既に涙が溜まっていた。今にも決壊しそうな程、心が締め付けられる。

 

 

当然と言うべきか、電子戦モデルの45は笑みを浮かべたまま私の目元を拭った。

 

 

「ふぇ……?」

「バレないとでも思った?ざ~んねん、泣きそうな事は分かってるわよ」

「うぅ……」

 

 

涙が溢れてくる。止めなきゃと思っても、どれだけ拭っても、次々と溢れてくる。でもその手は止められ、私は45に抱き寄せられた。

 

 

「我慢なんてしちゃ駄目……こういう時は、泣いてもいいんだから」

「よ、よん、ごー……」

「それに、わ、私も……泣いてあげるから……」

「……うぁぁぁぁぁぁ……!」

 

 

私と45は抱き合ったまま、泣きじゃくった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

「……うん」

 

 

泣いたら少しだけすっきりした。45はいつの間にか元の顔に戻っていて、目元も泣き腫らした跡がなかった。本当、いつの間に処理したんだろ……やっぱり特殊部隊の隊長だからこういう部分も完璧なのかもしれない。

 

 

……その割には416にいいようにされてたけど。

 

 

「スィストラ~?変なこと考えてたでしょ~」

「え、ち、違うよ……」

「私の方がお姉ちゃんなのよ~ほれほれ」

「ふにゃあ……」

 

 

45ずるいよ……ぎゅーってされると動けなくなるんだからぁ!嬉しいけど弱点みたいな感じだし、でも暖かいから拒否したくない……むぅ。

 

 

「そういえば社内報で何か載ってたりしたの?」

「ん?いや、姉ちゃんから聞いた話ならあるけど」

「どんなの?」

「417とヴィオラが妊娠したって話」

「ッ!?」

 

 

45は肩をビクッと震わせてた。そりゃそうよね。人形が妊娠なんてあり得ないことだったから仕方ない。

 

 

「何か送るとかする?」

「うーん……そうだ!45と二人で遊びに行くとか!」

「二人で?」

「うん!」

「向こうにも45っているだろうし……それに名前とかはどうするの?」

「あっ」

 

 

すっかり忘れてた……でもOKはしてくれたし行けるには行けるよね?いつ頃に行こうかな~♪



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三十八話







深層映写に出てきたデール君とシーアちゃんかわいい。公式ショタとか草生えますよ()








t月p日

 

 

 はろはろ~。って9に教えてもらった挨拶だけどいい感じ。気に入った♪

 でも知恵の輪には45と一緒に巻き込まれる。45と一緒に抱き合って寝てることが幸いして前みたいに死にかけることはなくなった。だけど恥ずかしい……だって45と抱き合ってるんだよ?色々当たってるし、息とかもすごく近いしいい匂いするし……でも今日は休みじゃないので脱出して着替えてからいつもの様に食堂に向かった。今日のお手伝いさんはSOPとM16みたいなので平和に過ごせるだろう。よしよし、やっと平和な日が訪れる。ずっとSOPと一緒にいようかな~。

 

 

 

 

 

「お~いスィストラ~、エロ本見つけたぞ~!」

 

 

 

 

 

 めった刺しにして冷水にぶち込んでやろうかこの野郎。平和に過ごせそうだなと思ったらこれって運悪すぎない……?何があったかと言うと、M16が倉庫の奥から五、六冊ぐらいの薄い本を持ってきた。純愛と百合……ふへへ。じゃなくて!そうじゃないそうじゃない!今思い出してにやけちゃった……バレてないよね?うん、バレてない。

 休憩中でよかったが、SOPは顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。そりゃそうなるよね。まあ、隣にいた私もちょっと火照った感じがしたけど……それで仕事は何とか(SOPは動きがぎこちなかった)終わらせて部屋に帰ったけどSOPが9と一緒に寝ることになってた。というより強制的にSOPが連れていかれてた。まあスターよりかは平和になりそうだから大丈夫でしょ。スター怖いもん。M4?あれは怪物()

 それじゃおやすみ~。

 

 

w月y日

 

 

 やっぱ安易に自分を二の次にするもんじゃないよね()

 目が覚めたらスターが入り込んでた。毛布の中に入り込んでた。怖い怖い怖い。しかも笑って逃げられないようにしてくるし……泣きそう。っていうか泣いたわよ。でも、怖いけどぎゅーってしてくれるからどこかで嬉しく思ってたりもした。スターってヤンデレの筈なのに、でも私の姉ちゃんだし……私ってやっぱり姉ちゃん達が好きなのかな……

 考えてもキリがないので食堂に行った。朝ご飯でも食べて気持ちを切り替えなきゃ。と思ったけど9A-91とスオミのコンビがいた。待って、ニコニコ顔で待ち構えないで。両腕に絡みついてテーブル席の方に連れていかないで。いまさらだけどこの日記リアルタイムに変えてもらったから恐怖が倍増されてるのよ。そして9A-91はスカートの裾をギリギリまで持ち上げて誘わないで?スオミも微笑ましそうに見てないで止めて?ああ、待って!止まれ!?ちょ、ぎゅーってされちゃうと……!やっ……!

 

 

 

 

 

「えへへ、スィストラさん可愛いです……」

 

 

 

 

 

 もうやらこれ。理性が壊れるの何回目よ……まぁた妹ムーブになっちゃった~……何これ、私と関わった人って皆私の姉ちゃんになっちゃうの?呪いの類だと思うの。たすけて姉ちゃん。

 でもこれって便利ね。日記帳じゃなくて私の電脳に直接書き込めるような感じだから感覚はあまり変わらない。要はリアルタイムで日記帳に書き込んでいるような感じ。容量の問題で全部がリアルタイムなわけじゃないけどね。でもちゃんと自動で保存してくれるしすごい(小並感)それで改造してくれたペルシカさんにお礼を言ったらまたぎゅーってされた。えへへ、あの時は気持ちよかったなぁ……柔軟剤の匂いとかすっごく気持ちよかった♪よし、日記帳に書いてたのはそのまま保管するから、今日からリアルタイム日記を書くことにしよう。何書こうかな~……あ、早く執務室に行かなきゃ。へリアンさんに呼ばれてたんだった。

 

 

 

 

 

「それにしても、スィストラは愛されてるな」

 

 

 

 

 

 書類整理をしてる時にそんなことを言われた。自覚はあるけどやっぱり恥ずかしいなぁ……ほら、姉ちゃんもいるし。でも愛されてるかぁ……今の時代って孤児とかも多いから恵まれてるのかな。まあ、私は姉ちゃん達が好きだから、そういうのは変わらないけど。でも何でそんなこと聞くんだろ?母親が娘を心配するみたいな感じかな?

 

 

 

 

 

「ああ、いや……ほら、私もゴールインしなきゃな~って思ってだな……アハハ、ハハ……」

 

 

 

 

 

 また失敗したのか……(困惑)

 そういえば思ったけど、何でいつも合コン失敗するんだろ?へリアンさんって綺麗だし美人さんだしキャリアも良いしで三拍子揃ってると思うんだけどなぁ……やっぱり堅苦しい態度が駄目なのかな。でも私と話してる時はユーモアが溢れてるし優しいし……スタイルもいいし。えっと、スタイルは嫉妬とかじゃなくて私の理性に関わる話だよ?だってへリアンさん胸あるんだもん。何かそこに意識がいっちゃうっていうかなんていうか……

 そうしたら名前を呼ばれて、見るとヘリアンさんがいつの間にか隣に座ってた。待って待って!近い近い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何やかんやあって私は今へリアンさんの自宅にいる。え、何でかって?拉致られたのよ言わせないで恥ずかしい()

 

 

「あぅ……」

「そんな緊張しなくてもいいぞ。ほら、リラックスリラックス」

「ふやぁぁ……」

 

 

そんなことを言われてぎゅーってされた。あぅ、弱点だってことバレてるよ……でも好きだから嫌だって言えない。というかもっとやってほしい、かもしれない……しかもへリアンさんはこれからお風呂に入るらしいので上に着ているのは白いワイシャツだけなんだよね。目のやり場に困る。

 

 

まあ一緒に入るとかは流石にないよね。だって今日が初めてだからそんなことは……

 

 

 

 

 

「スィストラ、一緒に入るか?」

 

 

 

 

 

は?(素)

 

 

気づけば背中を流されてた。何を言ってるか分からねえと思うが(ry

 

 

何でこうなるかなぁ……しかも当たってるし!胸が当たってるっていうか押し付けられてるから集中できないよ……!それから湯船に浸かっても距離感が近い気がするし……恥ずかしくて死にそうなのにぃ!

 

 

「あ、あの……」

「ん?どうかしたか?」

「そ、その、えっと、む……」

「む?」

「む、む……む、ねが、あた、当たって……」

「……ほほう?」

 

 

そんな言葉を聞いた瞬間、私はまたぎゅーってされた。だからそれ駄目だってぇ……動けなくなっちゃうからぁ……

 

 

「可愛いやつめ。今日はたっぷり可愛がってあげるぞ?」

「え、で、でも……仕事は」

「ちょうど休みがあってな。君の姉にも伝達済みだ」

「うひゃあ……」

 

 

 

 

 

へ、へリアンさん、優しくしてくれるかな……?



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三十九話(設定集)







メインキャラ4人の設定集です。基準はオリジナルとは全然違う性格なので。








スィストラ(旧:転生代理人)

 

身長 170cm

 

胸 45よりちょっと膨らみがあるくらい。

 

好きなもの

・抱き締められること

・お姉ちゃん達

・オレンジジュース

 

嫌いなもの

・炭酸

・怖いもの

 

中身はトラックに轢かれて事故死してしまった男。転生先は廃棄された筈だった代理人の予備素体だが、中身は男、見た目や声帯は完全に代理人のものに変化するというイレギュラーな事態になってしまった。自分の身体が予備素体だと知って以降は髪型と髪色を変えて新しい名前(スィストラ)もつけた。そしてつい最近、思考も女のそれになってしまった。

 

性格は恥ずかしがり屋でちょい臆病。

 

容姿

・髪はすべて下ろしている。

・銀髪っぽい髪の色。

・特徴を残すため、お団子ヘアーがあった部分には銀色の球体を二つ着けている。中身は半自律式汎用ボット。

・上記以外は全て代理人と一致。

 

 

ゼクス(旧:鉄血兵ドラグーン)

 

身長 185cm

 

胸 Cぐらい

 

好きなもの

・スィストラ

・マフィン

 

嫌いなもの

・スィストラが傷ついてしまうこと

 

元々は鉄血のノーマル人形。作戦中に捨てられたが奇跡的に再起動を果たして廃屋に身を潜めていたところスィストラと出会った。初対面の時からスィストラを妹とみて接触していたが、グリフィンに保護されてからは完全に姉として振る舞うようになる。名前の由来は製造型番から。初めは普通に人の形だったがペルシカの改造によって腕と足が増えた。

 

容姿

・紫のロングストレートに同色の瞳。

・紫色のバイザーを着けている。

・腕は四本。それぞれ自由に動く。

・指は四本で、一本あたりの関節は五つ。

・脚も四本。先端は尖っている。

・逆関節が脚一本に一つずつ追加されており、収納することで通常の長さになる。展開して直線上に伸ばした場合の身長は2m30cm。

・服装は黒のレザージャケットにロングスカート。ジャケットの下はブラだけ。

 

 

45

 

404じゃない方の45。スィストラが放浪生活をしていた頃に捕まえてグリフィン本社に送りつけた張本人だが、情は持ち合わせている。つい最近、鉄血に捕まった際に視力の殆どを失ってしまい、以前までのような作戦遂行は不可能になってしまった。そのせいか、瞳の色がオリジナルや同型機に比べて薄くなっている。

 

性格

優しく、恥ずかしがり屋。

 

 

416

 

404じゃない方の416。オリジナルと同じようにM16を敵視しているが、当の本人には受け流されている。でもM4にはかなり優しく、45に対しても娘のように接している。料理とかもよく作る。私服は縦縞模様のセーターにスキニーのジーンズで、普段の髪型はポニーテール。面倒見がよく、優しいので45はあっさり堕ちた。そしてスィストラも堕ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コラボとかしたい方は参考にしてどうぞ。



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四十話(コラボ)







『元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん』とのコラボ!スィストラちゃんと45がD08地区に遊びに行くゾ!あ、あと数話ぐらい続きます。








「どんなところなんだろうね、楽しみだなぁ~」

「きっとのんびりした場所よ。D地区は平和だって聞いたことがあるし」

 

 

そんなことを話しながら眼下に見えてきたのはD08地区の基地にあるヘリポートだった。少しだけ全体像が見えたけど前線基地って大きいね……ユノちゃんのところとあまり大差ないんじゃないかな。

 

 

そんなことを考えていると45に肩を叩かれた。

 

 

「スィストラ、もう着いたわよ」

「あ、えっと……手、握ろっか?」

「ううん」

 

 

でも手を握らないと、45が転んだら大変だし……

 

 

 

 

 

「えいっ♪」

 

 

 

 

 

45が腕を絡ませ……え?えぇ!?

 

 

「私、こっちの方がいいかも♪」

 

 

45は嬉しそう……じゃなくて、そうじゃなくて!これじゃ恥ずかしいよぉ……!なんか、その、恋人、みたいじゃん……

 

 

「だぁ~め。早く下りるわよ」

「うぅ……」

 

 

でも譲歩してくれたのか手をつなぐだけで留めてくれた。それでもすごく恥ずかしいけど……でも45は目が見えないから、ちゃんと支えてあげなくちゃ。

 

 

ヘリから降りれば、グリフィンの制服を着た指揮官らしき男性と、隣には社内報の写真で見たHK417がお出迎えしてくれた。見たところ日系人かな?

 

 

「ようこそD08基地へ。ここの指揮官のタカマチだ。よろしく」

「妻のHK417だよ。ようこそ、D08基地へ歓迎するよ♪」

 

 

二人とも手を差し出してきたので、私と45はそれぞれ握手をしてから自己紹介をした。さぁて、気合入れちゃうぞー!

 

 

「えっと……スィストラといいます。よろしくですね」

「UMP45よ……て言ってもこっちにも居るんでしょ?」

 

 

どうして()な、何でここで緊張しちゃってるのよ私~!そこは、ほ、ほら!もうちょっと爽やか系っていうか……可愛い系っていうか……よ、417も優しい笑顔だし!ふぇぇ……

 

 

「それじゃあ早速案内するからついてきてくれ。417は45のエスコートを頼む」

「はいは~い。それじゃ45、はい」

「え?だ、大丈夫なのに……」

「いいのいいの♪」

 

 

417の押しに負けたのか、45は流され気味に417の手を握って歩いていった。私はタカマチさんの後ろを歩いているけど、ユノちゃんとはまた違った印象を受ける。何ていうか……すごい頼れる中堅ポジションみたい。会社で例えると課長クラスかな?

 

 

ん~……

 

 

「……」

「どうかしたのか?」

「ふぇ?あ、いえ!何でもないです!」

 

 

……やっぱり緊張しちゃうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂には色んな料理が並んでいた。えへへ、お腹空いてきちゃった。隣を見れば45も料理を眺めながらすでに席に座っている。

 

 

「ささ、スィストラもおいでおいで」

「あ、はい……」

 

 

417に引っ張られて45の隣に座ることになった。さらに私達の両隣にはここの基地に所属している45と9がいる。そして白いツインテールのお姉さんが45に説明をしていた。というよりかは自慢かな……でも美味しそうだしいいや♪

 

 

「日本の料理が得意なの?」

「ああ、ヤーパンの料理が恋しくてな。でもスィストラが気に入ってくれたようで何よりだよ」

「美味しい~」

「ハハ、料理は逃げないから安心してもいいぞ」

「うん!」

 

 

肉じゃが好きだからね。近所の姉ちゃんの味を思い出すなぁ……今どうしてるんだろ。会えないのは分かってるけどちょっぴり気になる。

 

 

そうしたら45が笑みを浮かべながら私との距離を縮めてきた。あぅ、恥ずかしい……

 

 

「ねえねえ、スィストラ~。何で今日は遊びに来たの?」

「あ、えっと……」

 

 

む、胸が近い……!み、見ちゃ駄目なのは分かってるけど……でも、どうしても入ってきちゃうよぉ!ど、どうしよ……私の方の45は9とお喋りしてるし……

 

 

「あわわわ……」

「あら、このおっぱいが気になる?」

「え、えっと、その……」

「……触ってもいいのよ?」

「あ、あ……」

 

 

さ、さわ……!い、いくら女の子同士でも……む、むむ、胸を触る……あぅ、あわわ……か、顔が熱くなっちゃってるし、どどど、どうすれば……さ、触っても……いい、のかな?

 

 

「こらー、あまりからかわなーい」

「世話役は私がやるべきよ」

「え!?あ、ちょ……ひゃん!」

 

 

思考回路がショートする寸前で416が45を引き剥がしてくれた。思い切り胸揉んでたけど……45も変な声出ちゃってるし。その数分後に416が隣に座ってきた。後ろでは45が顔を赤くしてスプリングフィールドに慰めてもらっている。恥ずかしがり屋なところはうちの方の45と一緒だね。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「えっと、す、スター?」

「どうしたの?」

「な、何で私、ぎゅーってされてるの……?」

「何か抱きしめなきゃいけないって思って」

「ひぃぃ!?」

 

 

な、何で宿舎に行ったらスターがいるのよ!?しかも背後から音もなく近づいてきてぎゅーってしてきて……!怖いのに動けない……

 

 

もうかれこれ五分はこの状態だが、スターは全然離してくれそうになかった。うぅ……

 

 

「ぎゅーってされるの好きなの?」

「す、好きだけど……」

「フフ、じゃあもっとぎゅーってしてあげる♡」

 

 

え、いや、これ以上されたら……!あ、やっ……!

 

 

「ひゃあぁ……」

「……M4、一緒に可愛がりましょう?」

「え……」

「スィストラちゃん、可愛くて我慢できないかも……」

「ひゃ、待って……ひゃん!」

 

 

む、胸!あ、ああ当たってる当たってる!スターもちょっと膨らんでるから前後に柔らかい感触が……ひ、やぁぁぁ……

 

 

「あ、当たってるよぉ……」

「フフ、純情な子ね。大丈夫、優しくしてあげるから」

「私もお姉ちゃんですから、しっかり可愛がってあげますよ?」

「よ、よんごー……」

 

 

45どこ……?あ、あんなところに……

 

 

 

 

 

「ママ……」

「いい子いい子、たくさん甘えちゃってもいいのよ?」

「えへへ~……」

 

 

 

 

 

……私達ってどう抗っても妹になっちゃうの?ふぇぇ……



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四十一話(コラボ)







数話続きって言ったのに二話で終わるという()ほんとごめんなさい!それに加えてさりげなくスィストラちゃんの武器製作をお願いしてしまうという()許してください!



でも本部にいるからいつでも会えるよ。




「おうてめえら、加減を知ろうや」

「「誠に申し訳ございませんでした」」

 

 

えっと、417がすごい形相で二人を委縮させてるんだけど……で、でもぎゅーってされるのは嫌いじゃなかったし……むしろ好きだけど。二人も反省してるみたいだし、そろそろ止めようかな……

 

 

「あ、あの……二人も反省してるから……」

「でもスィストラも迷惑だったんじゃ……」

「その……ぎゅーってされるのは、好きだから……」

 

 

言っているうちに顔が赤くなってくる。でも、本当にぎゅーってされるのは好き……スターとM4は私の方を見て感謝に浸ってるけど……

 

 

「えっと、だから、その……」

「……」

 

 

ちょ、ちょっとだけ、素直になら……

 

 

 

 

 

「えっと、だ、抱きしめて……?」

 

 

 

 

 

その瞬間、私は417に優しく抱き寄せられた。

 

 

「フフ、これで私もお姉ちゃんなのかな?」

「……えへへ、大好き」

 

 

優しくて癒される~……前線基地の方が本部より平和ってどういう原理なのかは疑問だけど。それにしても417のお腹も大きいなぁ。中にいる赤ちゃんも元気そうで何より。

 

 

「ねえ417、お腹触ってみてもいい?」

「いいよ~。45も触ってみる?」

「ええ、触ってみたいわ」

 

 

45も手招きされて隣まで来て、417のお腹を触ってみた。すると赤ちゃんが動いている感覚が掌を通して伝わってくる。す、すごいよこれ……

 

 

「えへ、えへへ……」

「す、すごい……こんな感じ初めてだわ」

「まだ生まれるまで時間はかかるけどね。でも毎日元気そうだよ。ね、ヴィオラ?」

「そうだな。嬉しい限りだ」

「「ッ!?」」

 

 

いつの間にか背後にヴィオラが立っていた。び、びっくりしたぁ~……45は目が見えないから余計にびっくりしちゃってるし。最近45も臆病になってきてる気がするけど私の気のせいなのかな?あまり人のこと言えないけど……

 

 

同じようにヴィオラのお腹も触ってみればまあ元気に動くこと動くこと。こりゃもう産んだ後が大変そうだね~。元気に育ってほしいなぁ。

 

 

「今はまだ実験段階みたいだけど、これが安定するようになったら貴女達もこういう子供を儲けれるかもね」

「私も子供を作ることになるの?」

「ん~、好きな人が出来たらとか」

「好きな人……」

 

 

ふと45の方を見れば、45はニヤニヤした表情で私の方を見ていた。えっと、まさか……

 

 

「よ、よんごー……?」

「なぁ~に?好きな人、いるの?」

「い、いるにはいる、けど……」

「誰なのかしら~?」

「あぅ……え、えっと、ちょっと耳貸して」

 

 

45が近づいてきたので耳打ちでひそひそと喋る。すると45はほんのりと頬を赤らめて目をパチクリさせていた。い、言うのはまずかったかな……?でも、本当のことだし……と、とりあえずバレないようにしなきゃ

 

 

「どうしたんだ?こそこそ話して」

「「な、ななな何でもないわよ!!??」」

「そ、そうか……」

 

 

ヤバいやばいヴィオラにバレるところだったよ!?と、ととととりあえず45とこれからの対策を考えなきゃ今後の生活があわわわわわわ……!

 

 

(ど、どうしよ45!これバレちゃったら色々おしまいだよぉ!)

(おおお落ち着いてスィストラ!わ、私は隊長よ!?ピンチをチャンスに変えられるのよ!?)

(ヴぃ、ヴィオラと417は誤魔化せそうだけど本部でバレちゃったら……)

(ひ、広まっちゃう……)

 

 

後ろを振り返ってみたけど二人が気づいてる様子は無さそう……よかったぁ~……ちゃ、ちゃんと平静を装っていればバレない筈……っていうかバレたくない()その証拠にヴィオラが少し困惑した様子で言ってきた。

 

 

「まあ、何だ……本部で暇を持て余すのならば、いつでも遊びに来てみるのもいいだろう」

「それもそうだけど、可能なら戦闘員としても援護に行きたいわね」

「あれ、45ちゃんは目が見えないんじゃ……」

「そう……だからスィストラが戦闘員になるのよ!」

「ふぇ!?」

 

 

え、ちょ!?45急に何言ってるのさ!?せ、戦闘員にするつもりだったの!?

 

 

「ま、待って45!私戦った経験なんか……」

「貴女の記憶にはないわ。でも私や他の人はしっかり覚えてる。それに……いつかは戦わなくちゃいけなくなるから、ヴィオラ、417、お願い!スィストラの武器を、いつか作って!もう私は戦えないから……これしか出来ないけど……でもお願い!私個人の財産でも全部あげるから!お願い!」

「ま、待て待て!そんな、頭を下げるなんて……」

「そ、そうだよ!45ちゃんはお客さんなんだから!」

 

 

417とヴィオラが大慌てで頭を上げるように促す。顔を上げた45は目を潤ませて今にも泣きだしそうだった。私は何も言えずにただ45を見つめていることしかできない。

 

 

「……分かった。必ず指揮官に具申してみよう。一応電脳に保存しておきたいから要求を喋ってくれないか?」

「分かったわ。まずは低反動であること、それからエネルギー弾の使用、見た目はスナイパーライフルでいいわ」

「よし、保存した」

「ごめんなさい……全部じゃなくてもいいから「大丈夫だ」……え?」

 

 

ヴィオラは笑みを浮かべて45に喋る。

 

 

「関わりがあるのなら、協力するべきだと考えてるからな。それに45がスィストラのことを気にかけてることもよく分かったからな」

「……あ、ありがとう!」

「ほ、本当にいいの?」

「ああ、スィストラの武器だからな」

 

 

……この基地は、いい人ばかり。ユノちゃんの基地と同じように、すごく、すごくいい人ばかりだ。いや、いいお姉ちゃん達かな?でもどっちにしろ関係を持って損はないよね。それに新しい武器かぁ~……楽しみ~えへへ。

 

 

 

 

 

「やったぁ!また私の勝ち~!」

「ふぇ、負けちゃった」

「な、何故だ!?ちゃんと計算され尽くしてる筈なのに……」

「45ちゃん強いよ~……」

 

 

45って目が見えないのにどうしてボンバーマン強いの()



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四十二話







45とスィストラ、移住する。
あ、あと書き方変えました。








q月e日

 

 

「んん……」

 

 

眠い目を擦って隣を見れば45が既に目を開けて私の顔を見ていた。ちょっとびっくりしたけど45は私を胸の前まで抱き寄せてくれた。いい匂い……

 

 

「おはよ、スィストラ♪」

「おはよ~……」

 

 

はふぅ、45で癒される……でも流石に起きなきゃいけないからとりあえず着替えて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、スィストラぁ……ウフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけないでよ何でスターが覚醒しちゃってるの!?目がヤバかったし一日いなかっただけでああなるってどれだけ飢えてたのよ!今部屋から大慌てで逃げて倉庫に隠れてるけど怖いったらありゃしないわよグリフィン本社!私も怖いし45も怯えてるしでどうすればいいか分からない。しかも寝間着のまま逃げてきちゃったから別の場所に行こうにも目立っちゃうし……

 

 

ちなみに45はいつもの猫がプリントされた寝間着である。それに私もペアルック……

 

 

「ど、どうしよ……」

「……こわい」

「え?」

 

 

ふと隣を見れば、45が小さく肩を震わせて私の方に身を寄せていた。私もスターに追いかけられて恐怖に駆られているけど……でもそんな怖がり方じゃない。もっと何かこう……トラウマみたいな感じだった。

 

 

「怖いよ……」

「だ、大丈夫?」

「暗いところが、怖いの……何も見えなくて……」

「あ、あの……手、握る?」

 

 

私がそっと手を握ると、45は身体を密着させてくる。しかし震えは収まらず、時折嗚咽も聞こえてくる。多分視力をやられてから怖がるようになったのかもしれない。鉄血にやられたこと以外は何も分からない。ハイエンドモデルの誰がやったのかさえ情報は皆無なので45のために復讐に走るなんてことも出来るわけがない。

 

 

でも……そんなの、あんまりだよ。

 

 

「えっ……」

 

 

気づいた時には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は45を優しく抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、怖がってあげるから……大丈夫、一人じゃないよ」

 

 

そこから皮肉?なことに、スターに45を介抱してもらったのは言うまでもない。エリートなのは確かなんだけどなぁ……オフの時はどうしてもエリート()になってしまう。勿体ないよ、スター。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「45、大丈夫かな……」

「信じるしかないわ……ペルシカ、45はどうなの?」

 

 

スターが腕を組みながらペルシカさんに45のことを訊ねた。全然関係ないけど今のスターはすごく頼りになる。ずっとヤンデレが鳴りを潜めてたらいいんだけど……まあそれは無理でしょ。うん。そしてペルシカさんはツールを弄ってから身体をこっちに向けて検査結果を話した。

 

 

「結果としてはPTSDだね。スィストラも知っての通り、45の視力の殆どは鉄血によって奪われたわ。しかも夜戦用のセンサーも丁寧に破壊されているから昼はともかく夜間の視力なんて……」

「全盲と同じ、ってことですか?」

「夜はね。あとは暗い所」

 

 

そう言われると、妙に納得してしまった。だから暗い倉庫の中で怯えていたのね……それに今も45は不安そうにペルシカさんを見つめている。その光景は特殊部隊の隊長ではなく、一人の少女だった。

 

 

「それに加えて、メンタルモデルも相当脆くなってる。45のことだからすぐに壊れてしまうことは無いだろうけど……多分、ハイエンドモデルにも縋るかもしれないよ」

 

 

その言葉を聞いていた45は肩を震わせてから反論した。

 

 

「ど、どういうことよ……それって、鉄血に助けを求めるってこと!?」

「それもあり得るかもしれないってことよ。貴女のメンタルはそれこそそこらの民生人形よりも脆くなってしまってるから、少しのはずみで甘えたくなってしまう、こともあり得るのよ」

「あ、甘えるって……」

「あら、自覚があるの?」

 

 

ペルシカさんがそう言えば、45はそれっきり顔を赤くして黙り込んでしまった。それ、私にも当てはまるんだけど……でもここはグリフィンの本部、鉄血が無闇やたらに攻めてくるはずも無いし、それに私達は非戦闘員だ。戦場に出ることも無いので此処にいれば安全ということになる。

 

 

そしてペルシカさんは私に伝えた。

 

 

「既にヘリアンには伝えてあるよ。それから本部の寮からS09地区の離れに住まいを設けたって言ってたね。45とスィストラはそこで暮らした方が良いんだってさ」

「え、でもそこって激戦区なんじゃ……」

「アフターケアっていうか……上層部が発案したテストっていうか……まあ、さっき45がハイエンドモデルに甘えるかもしれないって言ったよね?」

「はい」

「それを利用してコミュニケーションをとれないかってテストすることになってね。その、二人には申し訳ないけど。ごめん」

 

 

そ、そんな、ペルシカさんは何も悪くないのに……

 

 

「あ、あの、謝らなくても……」

「ああ、ごめん……でも、死なないことが一番だから、もし捕まったりしても挑発的な態度は一切とらないで。とにかく、君たち二人が死んでしまったら皆が悲しんでしまうから」

「……大丈夫です。出来る限りで気を付けます」

 

 

私と45で互いに支え合わなくちゃいけない……それがどれだけ大変だとしても、ずっと一緒にいるんだ……覚悟しなきゃ。

 

 

いつ襲われるか、いつ捕縛されるか分からない。

 

 

「45……ずっと、一緒にいよう?」

 

 

 

 

 

「……うん!」

 

 

 

 

 

45はとても眩しい笑顔で私を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f月p日

 

 

あれからけっこう経ったけど、私と45はS09地区の離れでひっそりと暮らしている。ヤンデレもいないし静かだしもう人生の勝ちが確定したんじゃないかな私。でも相変わらず私は45に、45は私に甘えているようで……

 

 

 

 

 

「ハグされるの気持ちいいでしょ~?」

「もっとぎゅーってして~……」

 

 

 

 

 

こうして抱き合ってる状態である。戦う術があるといっても417のところから送られてきた四丁ほどのスナイパーライフルで、しかも私はそれを使っての訓練をしていないので抵抗手段がほぼないに等しい。でも今が幸せだからそれでいいかな……45と一緒だとすごく安心できるし♪

 

 

「これだけ静かだと銃を使わなくても大丈夫そうだね」

「油断しちゃ駄目よスィストラ?鉄血なんていつ来てもおかしくないんだから……」

「あっ……で、でも下手な真似はしないでってペルシカさんも言ってたから……」

「もしもの時ね。抵抗できるのならするだけのことよ」

 

 

そう言うと45は私の手を掴んで一階に下りる。さぁて、今日も朝ご飯作らなきゃ♪



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四十三話

r月q日

 

 

 何で朝起きたらM4がいるの?夢であってほしいし夢じゃなきゃヤバい。

 

 

「フフフ、おはようございます……」

 

 

 夢じゃなかったもうやだ。何か押し倒されて両腕動かせないし押さえつける力強すぎるでしょ。しかも何でいるの?家の場所伝えてなかった筈だけど……

 

 

「な、何で……」

「姉の勘は鋭いんですよ……でも関係ないことです。ようやく二人きりになることができますねぇ。うふ、ウフフフフフフフフ」

「ヒェッ」

 

 

よんごー何処なの……これじゃまたぎゅーってされちゃう……怖いのやだよぉ……

 

 

「よ、45……」

「フフフ、45さんなら今頃一階で……」

「こら!M4離れて……!」

 

 

背後から45が掴みかかってM4を引き剥がそうとしてくれていた。でもアサルトライフルの人形の出力はトップクラスに強い。そのせいでM4はいとも容易く45を後ろ手に縛り上げてしまった。え、待って。縄どこから出したの?持ってた?もうやだこのヤンデレ用意周到すぎる……っていうか45怖がってるじゃん!ただでさえ目が悪いのにこれトラウマものだよ!?

 

 

「ちょっと待ってM4!45だけは見逃して!」

「え、スィストラ……?」

「そ、その……や、やや、ヤンデレをするのは……わ、私だけでいいから!」

「ちょ、ちょっとスィストラ!」

 

 

45が状況を掴めていないようだけどそこも大丈夫。M4って意外と動きが鈍い時があるからその隙を見て一気に脱出すれば……

 

 

 

 

 

「じゃあスィストラにしますね♪」

「ふぇ?あ、ちょ!ぎゅーってされるの……!」

 

 

 

 

 

ヤバいやばいやばい!?弱点の事すっかり忘れてたよー!!やだぁー!誰か助けてぇ!!っていうか45何で逃げてないのー!?

 

 

「えっと……手、握ってないと歩けないから……」

 

 

ヌッ!(絶望)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局M4に色々されかけて心が死にました()ぐすん。

っていうかここ田舎の筈じゃん、誰にも家の所在教えてない筈じゃん、ヤンデレがいない平和な生活だった筈じゃん?なのに、それなのに……

 

 

「何でM4がいるのよー!うがー!」

「フフ、でも味噌汁美味しいでしょう?」

「あったかくて美味しい~……じゃなくて!すんごく美味しいけども!」

「スィストラ、M4の料理美味しいから住み込ませるのは……」

「ついさっき襲われかけたの忘れたの!?」

 

 

ええいまともなのは私だけなの!?M4と一緒にご飯食べちゃってるし45に至っては恐怖感なんて最初から無かったみたいにM4と仲良くなってるし!んもう!やっと平和になれたと思ったのに!

 

 

「全くもう……あむっ」

「スィストラ~もしかして怒ってる?」

「怒ってない……卵焼き美味しいだけ」

「その割には美味しそうに食べるのね、フフ」

「むぅ……ごちそうさま~」

 

 

ふ~んだ。45は私のものなんだもんっ。でもM4の料理美味しかったなぁ……卵焼きに味噌汁……また食べたいなぁ~。

 

 

「ふへ、えへへへ……じゅるる……」

「スィストラ~、トリップしちゃってるわよ……」

「えへへ……ってわぁ45!?いつの間に!?」

 

 

び、びびびビックリしたよぉ!そ、そんなにトリップしてた、のかな?何か自覚ないけど……でも卵焼き美味しかったなぁ~。

 

 

「もう、顔に出てるわよ?」

「そんなに出やすいかなぁ」

「だって出てるもの。ま、そんなスィストラも可愛いけどね♪」

「か、かわ……!?」

 

 

ウィンクされて言われた……そ、そんな可愛いって、そんな……でも私って元々男だしぶっちゃけ女の子ってどうすればいいのか全然分からないし……あぅ。

 

 

で、でも……45が言ってくれるのって、嬉しいな……

 

 

「……そ、そんなことないよ。よ、45だって、か、かわ……かわ、いいし……その……」

「あら、いきなり口説くなんて」

「ッ!!そ、そんなんじゃないよ!でも、本当の事だから……」

 

 

あぅ、言葉が思いつかないよ……45ずっと笑ってるし……

 

 

それで迷っていた瞬間、

 

 

 

 

 

「でもね、私、スィストラのこと好きだよ?」

 

 

 

 

 

抱きしめられ、耳元でそう言われた。

 

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

だめ、恥ずかしすぎて……もう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、これどういう状況なんですか……?」

「私のせいです……」

 

 

まさか恥ずかしさで気絶してしまうなんて想像もしてなかったわ……まあ、あんなこと言っちゃった私も私だけど。何で言っちゃったのかしら、ハァ……

 

 

「言うべきじゃなかったかな……」

「何のことですか?」

「うぇ!?あ、いや!うん、何でもないわ!何でもない!」

「そ、そうですか……」

 

 

危ない……もう少しでバレるところだったわ。一応私は404小隊の隊長なんだから気づかれないようにしないとダメね。前線に出れなくなったって言っても電子戦の技術は衰えていないんだから。

 

 

「ねえ、話が変わるけど9達は大丈夫なの?」

「9さん達ですか?それなら大丈夫ですよ。416さんがちゃんと指揮を執っているみたいですし」

「よかったわ……私、もう前線に出れないからどうしようって思っちゃって……でもちゃんと任務をこなしてくれて安心したわ」

「45さんは後方支援なんですか?」

「後方……だけどちょっと違うわね。戦場での援護はするわよ。電子戦はお手の物だからね」

 

 

そんなことを言ったらM4が目を輝かせていた。そんなに珍しいのかしら?

 

 

「45さんすごいです……!指揮能力だけじゃなくて電子戦も出来るなんて!」

「そうかしら?まあ、でも褒められると照れるわね……」

「私なんてまだまだ未熟ですから……」

「そんなことないわよ。貴女も隊長なんだから、自身を持てば任務を遂行できるわ」

 

 

それにAR小隊はペルシカのところで作られてるから性能面でも優秀だし……そう考えれば私の方が未熟よね。自虐はしないタイプだけど、今回ばかりはそう思う。私は、というより404小隊はあくまで裏方に専念しているから成果も、性能も表に出ることは無いし外部に漏らすこともない。

 

 

「これじゃあスィストラと同じよね。弱くなっちゃって、暗い場所も怖くなっちゃうし……」

「……でも愛されてますよ」

「えっ?」

「今まで裏方だった分、45さんはすごく可愛がられているので……スィストラと一緒に幸せそうにしてるのを見ると、皆癒されるんですよ」

「そ、そうなの?」

 

 

私が困惑していると、M4はそうだと言うように頷いた。心なしか私の顔が赤い、ような気がする……

 

 

「あ、私買い物に行ってきますね」

「え、ああ、行ってらっしゃい」

 

 

M4がいなくなる。

 

 

 

 

 

「……愛されてる、かぁ」



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四十四話







ひっさびさの投稿だオラァ!!








t月o日

 

 

今日は新しい発見があった。と言っても外とかじゃなくて家の中なんだけど……でもこれがまた驚き。

 

 

「まさか地下にこんなスペースがあったなんてねぇ……」

「わぁ……」

 

 

というのも、家に地下スペースがあったらしく更にそこは綺麗な射撃場になっていた。流石に本部の射撃演習場ぐらいの広さとはいかないが、それでもレーンを四つ完備している辺り力を入れたんだなと分かる。45は辺りを見回してから手触りで確かめたり機械を弄ったりして楽しそうだった。

 

 

「すごいわね……こんな高性能なもの中々ないわよ」

「そんなにすごいの?」

「ええ、よほど金をかけたんでしょうね。これもグリフィンのテストとやらに必要だったのかしら」

「……」

 

 

そんなことを言う45は物悲しげな顔をしていた。やっぱり上層部で勝手に決められた方針に納得していないんだろう。それもその筈、いくら此処が離れだとしても結局は激戦区のS09地区である。鉄血が来ないとも限らないし、言い方が悪くなっちゃうけど私も45も鉄血にとっては好都合な厄ネタであることに違いはない。

 

 

私はそもそも代理人の予備素体だし、45も鉄血の拷問によって視力の殆どと強い精神を奪われてしまっている。

 

 

もし私が狙われたら。45が再び捕まってしまったらと考えるとこのテスト自体リスクが大きすぎる。でも、私達が上層部に逆らうなんてことは出来ない。な~んか本部から厄介払いされちゃった気がしないでもないから腑に落ちないなぁ……

 

 

「あ、45。私あのライフル使えるようになりたいからさ。だから今から取ってくるね!」

「ええ、いいわよ」

「楽しみ~♪」

 

 

まあ、悩んでも仕方ない。いざって時に45を守ることが大事だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず送られてきた4挺全部を持ってきたけど、どれから撃とうかな……一応ショーケースに並べてみたけどどれも流線形で未来的なデザインになっている。でもエングレーブの彫刻が彫られていてちょっとおしゃれな感じだ。

 

 

「これは……ノーブル・スタイン?」

「あら、フルオートで撃てるのね」

 

 

ノーブル・スタインというライフルが他の3挺よりも全長が短く仕上がっている。カービンライフルの部類に入るのかな?セレクターもセミ、フルは勿論のこと、3点バーストで撃つことも出来る。そして特徴的なのが、ピストルグリップの左側面がカバーで隠れていることだ。多分デザインの一環だろうけど、怪我の防止にも繋がりそうだし便利だね。

 

 

じゃあまずはノーブルでも撃ってみようかな。マガジンを抜いて……ってあれ?

 

 

「ぬ、抜けない……うぬぬぬ……」

「違うわよ。これエネルギー弾だから一回ここまで引っ張ってからまた入れれば……ほら」

「あ、本当だ」

 

 

マガジン交換はしなくてもいいんだね。そしてレールに取り付けられてるスコープも等倍から12倍まで切り替えることが出来るみたい。そういえば付属でスカウターも送られてきたけどそっちは使わないかな。どちらかというと戦闘支援に必要ということで45にあげた。スコープの視界を共有して情報を整理するのに使うらしい。

 

 

「じゃあ撃ってみましょうか」

「そうだね」

 

 

ちゃんと構えてっと……まずはセミオートで。お、反動がすごく軽い。しかも的を確認してみれば割と中心に近い所に当たってる。普通の実弾武器を使った時とは大違いだ。鉄血のハイエンドモデルであるお陰かスコープを覗いた際の手ブレも殆ど気にならないし実戦でも活躍できそう。いやー417ちゃんのところには感謝しかないね♪

 

 

んじゃ、残りの3挺も軽く試射してみよーっと!

 

 

 

 

 

「ん、これで最後ね。スィストラ、大丈夫?」

「腕痛いし緊張して力が入らない……ふぇ~ん……」

 

 

結果?使いこなせるまでかなり時間がかかる模様()

いや待って。ノーブルが普通に扱えたから油断してたよ完全に。油断はしてたけどここまでだとは思わなかったのよ。

 

 

「流石に癖が強い銃はまだ無理か~……」

「これから少しずつ慣れていけばいいのよ。それに守ってくれる仲間もいるんだから、ね?」

「うぅ……よんごー……」

 

 

思わず45に抱き着く。はふぅ、癒されるよぉ……このままふにゃふにゃになっちゃいたい。でもずっとこうしてるわけにもいかないので一旦離れてからちょっとした反省会を始める。まあぶっちゃけ45の総評なんだけども、ためになる意見なのでちゃんと聞く。

 

 

「それじゃあノーブルはちゃんと扱えてるから良しとして……まあ一番問題だったのはメテオライトね。超火力っていうのもあるけど、銃に振り回されてる感じがしたわ」

「やっぱりそうかー……」

 

 

まあ制御できてないのは事実だよね。あんな火力扱える人形がいたら是非とも紹介させてほしいところ。しかもあの火力ってたぶん対物ライフルの勢いだよね……?射撃場はとんでもなく頑丈だから良いとしても、あれ扱えるのって同じ対物ライフルを持ってるダネルぐらいなんじゃないかな。でも戦車がメインウェポンになってるっぽいんだよねー……

 

 

「そしてアガトラムはあまり長くない期間で扱えるようになると思うわ。誰か呼んで訓練に付き合ってもらえばいいんじゃないかしら?」

 

 

訓練ねぇ……でも時間合う人っていたかなぁ。404とかAR小隊は任務もあるから忙しいだろうし。かといって45が付き合うとしてもあまり負担を掛けさせたくはない。

 

 

「誰がいいかなぁ……」

「M4とかAR15とか」

「駄目です(戦慄)」

「あ、9Aとかどうかしら?近距離に関してはスオミもいるじゃない」

「スターに次いでヤバいやつなんですがそれは」

「ここはあえてクルーガー社長に……」

「えぇ……(困惑)」

 

 

何か段々変な方向に傾いてきてな~い?ヤンデレ四人に加えてムキムキ社長が候補とか私の精神がこわれる。しかも45は腕を組んでちょっと真剣に考えてるときた。マジで候補だったの……?

 

 

それで反省会は続いて、残りのムーンライトについても時間をかけて慣れさせるという結論に至った。まあ、自衛に使うのはノーブルでも十分かな。他は用途に合わせたり緊急用に使ったりすれば問題ないと思う。あ、そういえばノーブルってアタッチメントも付けれるっぽいんだ。スコープはそのままでいいから……後はグリップとサプレッサーかな。

 

 

「アタッチメントを付けて3点バーストにすればかなり強そうだね」

「バースト銃のサプレッサー付き……けっこう嫌われてる武器よ?特にVRの模擬戦だと尚更よ」

「え、そんなに?」

「とりあえずそのカスタムで模擬戦をやってくるわ。じゃ、電脳世界にレッツゴー♪」

 

 

そう言って45は電脳の世界に入り込んでしまった。電脳で模擬戦なんてすごいなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「45、どうだったの?」

「案の定よ。匿名とはいえ、死体撃ち、ファンメ。想像以上ね」

「……ま、まあ、相手は鉄血だから大丈夫かな?」

「フフ、スィストラが言ったカスタムは強いわよ。後でその銃を持って写真でも撮りましょう?そしてD08の基地に送るわ」

「タイトルはどうするの?」

「『最強害悪カスタムの完成!』でいいわ。まあ、銃自体は最高傑作だから3発キルは仕方ないわよね」

 

 

どうやら私の提案したカスタムで、ノーブル・スタインが3発で敵を殺せる武器になってしまったらしい。つまり敵に向けて一回引き金を引けば、その3発で敵が死ぬってこと。しかも装弾数がそれなりにあるからヤバい。まさかこうなるとはね……










ノーブル・スタイン

D08地区の基地(HK417がいるところ)から送られてきたライフル。エネルギー弾使用。リロードはマガジンを引き下げてから再び差し込む形。セミ、フル、3点バーストのセレクターにスコープは12倍までズーム可能な高性能スペック。

アタッチメントは
・サプレッサー
・フォアグリップ

全ての弾を腰から上に直撃させれば、3発で殺すことが出来る。


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四十五話

e月q日

 

 

朝の射撃訓練を終えてリビングに戻ると9が家にお邪魔していた。わお、朝から騒がしくなりそう。それにお土産を持ってきたのか大きな袋をテーブルの上に置いて中身を次々と出していく。

 

 

「これって、戦術教本?」

「そう!45姉とスィストラの役に立つだろうなって思って!」

 

 

そう言って9はイヒヒと笑う。見たところ五、六冊はありそうだけど……ん?これ全部電子戦用のやつじゃない?あれ、普通の行軍のやつとかは?あれ、あれれ?

 

 

「ねえ9、普通の作戦のやつは……?」

「……そ、そういえば今日は用事があるからこの辺で~」

「おい待て」

 

 

誤魔化して逃げるなコラ。45は電子戦が得意だからともかく、私に電子戦の心得なんて一切ないのよ?しかも普通の行軍でさえも何も分からないのに……

 

 

「まあまあ、スィストラが銃を使うのはよほど追い詰められた時だけだと思うからさ、その時が来ないように私達で一生懸命守るよ」

「えっと、銃は最後の手段にしておけってこと……?」

「そういうこと。可能なら、スィストラと45姉は平和に暮らせるようにしたいからね……それに、皆もそう思ってる筈だから」

「平和に……」

 

 

9がこれほどまでに神妙な面持ちで話している姿は見たことがない。でも、それが本気で願っているという証拠なのだろう。もしかしたら私が戦場に出たいというのは間違いだったのかもしれない……

 

 

45も納得したように小さく頷いていた。

 

 

「ごめんね、まさか妹に心配かけさせちゃうなんて……」

「ううん、45姉もスィストラも悪くないよ。悪い奴らはよく分からないけど、私達が守るから!安心して!」

「フフ、9ったら……」

 

 

そんな自信満々の笑顔は、さすが404小隊のムードメーカーを背負ってきただけある明るい表情だった。いつも笑っていられるのが羨ましいなぁ……

 

 

「あ、そうだ!今日やりたいことがあってさ~……じゃーん!」

 

 

9が袋の中から取り出したのは髪留めと櫛だった。もしかして私の髪の手入れをするのかな?今のままでもいいと思うんだけど……

 

 

「今のままでも可愛いけど、とか思っちゃだめだよ!45姉と寝間着もペアルックなんだから髪型も一緒にしちゃわないと」

「ふぇ!?な、9……何でそのこと知ってるの!?」

「え?だって本部にいる時から45姉とスィストラって猫柄の寝間着だったでしょ?」

「い、言わないでよ……恥ずかしいじゃない……」

 

 

45が顔を赤くして両手で覆ってるけど私は穴の中に入りたい。これじゃ好きだって公言してるようなものだよ……っていうか9もニヤニヤしてるし。むぅ、あまりからかわないでよ……

 

 

「あれ、45姉まさか~?」

「あ、あまりからかわないで……!」

「二ヒヒ~」

「ちょっと9、45のことからかい過ぎるとおやつ食べちゃうよ?」

「うげっ、それは勘弁して……」

「ならやらないの」

 

 

んもう、ただでさえ恥ずかしいんだから……そんなことを考えているうちに9が櫛で私の髪を梳かし始めた。優しい感触に思わず身体が震えあがったけど、少し経つともう慣れちゃって顔が緩んでくる。45と同じ髪型ってことはサイドテールにしてくれるのかな。髪留めも45と同じものだったし……

 

 

終わるまで退屈だったので寝てようか迷っていると、9がリビングを見回して呟いた。

 

 

「それにしてもここら辺ってすごく平和だよね。同じS09地区とは思えないよ」

「あー、S09地区って激戦区なんだっけ?」

「うん、指揮官たちには煙たがられてる地区だって話だよ」

 

 

9曰く、グリフィンが統括する中でもS地区は一、二位を争う激戦区であるらしい。鉄血の襲撃も激しくて一夜で機能を失った町もあるみたい。避難した人たちは住所を変えて住んでいるが、逃げ遅れた人達の末路は……まあ、想像に難くない。そんなわけで望んで配属されたがる指揮官はほぼいないとか何とか。

 

 

「それにユノちゃんのことを良く思ってない人もいるみたいだよ」

「酷い……そんなの許されるわけないよ」

 

 

ユノちゃんを嫌っている人たち、か……確かに未成年だし成果もたくさん上げてるって聞くけど……むぅ、やっぱり許せないや。いい大人があんなに純粋な子を嫌うっておかしいよ。妬む暇があったら成果を上げればいいのに。

 

 

「むぅ……」

「でも私達じゃその理由で具申なんて出来ないからねぇ……それにその指揮官達も何かやらかしてるってわけじゃないし」

「でも……」

「スィストラの気持ちはよく分かるよ。現実はそう上手くいかないもんだけどさ、でもユノちゃんも417ちゃん達の周囲も強い味方が守ってくれてるから。もしスィストラ達が襲われるようなことになっても私達が守る」

「……うん、ありがとっ!」

 

 

そうだ。守ってくれる仲間、家族がいるんだ。今じゃ本部からこの離れの一軒家に住んでいるけど、ちゃんと皆で見守ってくれてる。それがどれだけ安心に満ち足りているのかは言葉にしなくても分かること。うんうん、本当に私は恵まれてるなぁ……

 

 

「あれ、スィストラ泣いてる?」

「うおォん……」

「スィストラ、それじゃ何とかのグルメのセリフよ……」

「人間火力発電所……(嗚咽)」

「ッ!そ、そこで思い出させるのは卑怯でしょ……飯テロよ飯テロ」

「45姉お腹空いてきちゃった~」

「お昼どうしようかしら……」

「富裕層のところで焼肉食べようぜ!」

「待ってM16あんたいつからいたの!?」

 

 

45がビックリしてソファにしがみ付いてた。まあすごい格好だことで……ってそうじゃないそうじゃない。何かM16が富裕層の地区に行くとか言ってたけど駄目だからね?416から聞いたところAR小隊とペルシカさんが一度富裕層の焼き肉店に行ってとんでもない額の分を食べてきたらしい。ペルシカさんが全額払ったらしいが、SOPは会計を見て青ざめていたとのこと。それで真っ先に泣きながら416に謝ったんだって。まあSOPは純粋だし素直でいい子だからね。それにM4も謝罪したみたいだし。でも問題は残りの三バカ。全員45に吊し上げられたみたい。当然だよね。

 

 

でもまあもう一度行くって発想が馬鹿って言うか能無しって言うかエリート(笑)って言うか……

 

 

「待てスィストラ、けっこう私のこと貶しただろ」

「だって事実でしょ。45に吊し上げられたって聞いたけど……」

「あれぐらいで倒れるようなら酒飲みを名乗ることは出来ん!私はAR小隊の長女!周囲に敵などいるわけがない!」

「45、やっちゃって!」

「鳩尾パーンチ♪」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

M16、あえなく撃沈。それと同時に私の髪のセットも終わったみたいで、9が手鏡を渡してくれた。どれどれ……

 

 

「わぁ……」

「これで45姉とお揃いだよ!銀髪だけど可愛くなってるじゃん!」

「えへへ……ありがとう9!」

「どういたしまして~」

 

 

45の方を見ると、45も笑みを浮かべて私の髪を撫でてくれた。えへへ、似合ってるってことかな……?う~ん、いい気分♪

 

 

「45とお揃い……ねえねえ、ぎゅーってして?」

「あら。いいわよ、たくさんぎゅーってしてあげる♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう両想いってことかね、9」

「だと思うよ。二人とも幸せなのが一番だからね」










スィストラの髪型は45姉と一緒になったゾ。


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四十六話







ついにあの人形が来る!!








u月a日

 

 

 

 

 

「らんら~らら~ん♪」

 

 

 

 

 

朝起きたら45がリズムを口ずさみながら朝ご飯を作っていた。しかも既に着替えていることを考慮すると普段よりもけっこうな早起きという事になる。何かいいことでもあったのかな?う~ん、心当たりがない。

 

 

「あ、おはようスィストラ♪」

「おはよ~。いつもよりもすごく機嫌いいね」

「ええ、今日から新しい家族が増えるもの。楽しみ~♪」

「新しい家族?誰なの?」

 

 

誰なんだろう……404小隊とかAR小隊に新しいメンバーが入ったって情報も聞いてないし。それとも全く新しい人とかかな。

 

 

そんなことを考えていると、45は笑顔でその名前を言った。

 

 

 

 

 

「UMP40、40姉よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その40姉という人がどんな人物なのかは45が教えてくれた。何でも規格外のパーツが複数箇所に渡って使用されている電子戦特化型の戦術人形であるらしく、長い期間45も会っていないらしい。でも今日になってこの家に住むことになったとのことだ。

 

 

UMP40かぁ……そういえばグリフィン本部のデータベースにも掲載されてなかったけど、やっぱり規格外のパーツが使われてるってことだからI.O.P.製じゃないのかな。どっか別の人形を作っている会社とか。となれば元の銃の生誕地にちなんでドイツの企業で作られた可能性がある。

 

 

「どこの会社なのかな~……」

「あら、何か調べもの?」

「あ、45。40がどこで作られたのか気になって」

「あー、私も詳しくは分からないのよね。ライセンスを取った企業ならそれなりにあるんだけど……あ、こことか」

 

 

45が指を指した先にはパソコンの画面に映る企業の名前。えーっと……『ベルリン・エレクトロニクス』かぁ。ドイツ国内では大手の人形製造メーカーだね。I.O.P.社に比べればシェアは小さいものだけど。というよりもI.O.P.社がほぼ独占状態だから比べても仕方ないけどね。主にドイツの銃器を使用する人形のライセンスを取得してるみたいで、40の他に45や9、それに416とG11の404小隊のメンバーも勢ぞろいでラインナップに掲載されている。

 

 

「種類多いね~」

「フフ、私もたくさんいて嬉しい?」

「え、それは……でも45は45だし……」

「ラインナップにも45はいるわよ?」

「えぇっと……私と一緒にいる45がいいっていうか、一番、かな」

 

 

あ、45からの返事が来ない……ちょっと気まずい……

 

 

「……あ、ありがとっ」

 

 

あ、めっちゃ顔赤い。私も真っ赤だけど。

 

 

「……えっと、お水飲む?」

「……うん」

 

 

とりあえず身体を冷やそう……うん。

 

 

 

 

 

あれから昼ご飯を食べて調べものの続きをしてるけど、やっぱりどの企業もライセンス製品という扱いだった。オリジナルは流石に見つからないか~……まあ副産物として色々な種類の人形を知れたのでそれはそれで良しとしよう。つい最近だとIWS2000っていうライフル人形が製造開始されたみたい。ライフルがけっこう大きいから対物用かな?それにしても表情が凛々しいね。

 

 

その他にもパソコンじゃなくて社内報を二人で見たり……あ、みらくるふぁくとり~だ。やっぱりダイナゲートが人気だね~。色々種類あって可愛いなぁ。アーちゃんうさぎこと、ハイエンドモデルでグリフィンの捕虜であるアーキテクトも楽しそうにしてるのが写真から分かる。

 

 

「ユノちゃんも元気にしてるね」

「あの子には笑顔が一番似合ってるわよ」

 

 

でも姉ちゃんの蜘蛛形態にはフリーズしてたね……まあ、しょうがないか。

 

 

そして社内報のページを捲っていると45がタブレットを差し出してきた。んーっと?D08地区の最新情報?ってこれまさか……

 

 

「45、ハッキングしたの……?」

「足はつくけど無害よ。それに謝罪のメッセージとツーショットの写真も添付しておいたわ」

「大丈夫かな……」

「大丈夫よ。向こうにも諜報部がいるけど私なら侵入は容易いわ。それにいざとなったら痕跡を消すことも出来るからね」

「……なら安心だね」

 

 

タカマチさんに怒られないことを祈ろう……にしても諜報部かぁ。D08の基地も随分強化されたみたいで保有戦力が凄いことになってる。戦車あるってヤバいでしょこれ。それにハイエンドモデルのダミー素体もあらかた、というよりコンプリートして仲間に引き込んだみたい。普通に代理人とかいるし、何じゃこの面子。ELIDと戦うつもりなの?クルーガーさん把握してるのかなぁ……

 

 

その他にも大半が大きな胸をお持ちだったりドリーマーが色々開発していたりと技術面でも目を引くものばかりだった。でも45はドリーマーの名前を見た途端、何かを諦めたような表情だった。

 

 

「45、どうしたの?」

「ちょっと気になってね」

「……目のこと、とか?」

「もう気にしてないわよ」

 

 

そう言う45だけど、多分45から視力を奪ったのは……ドリーマーだろう。これ以上の詮索はやめることにして、玄関のチャイムが鳴らされたので対応することにした。45が先に靴を履いて扉を開ける。

 

 

「は~い」

「やっほー45!あたいだよ!」

「40姉!久しぶり~!」

「スィストラも初めましてだね!あたいが40姉、本名はフィーアだよ。よろしくね!」

「よ、よろしく!」

 

 

UMP40ことフィーアから手を差し出されたので握手を交わす。一目で明るい人だと分かるけどSOP並に笑顔も絶えない。とりあえずフィーアをリビングに案内して談笑することにした。

 

 

「あ、そうそう。D08地区の基地って二人とも知ってる?」

「ええ知ってるわ。この前遊びに行ったもの」

「そうだね。けっこう楽しかったよ」

「それはよかったね。それでその基地なんだけど戦車二両に偵察戦闘車両三台、そして戦闘ヘリ一機っていう大所帯でさ~。スローターも若干気にしてるんだよね」

「スローター?」

 

 

何のことだろうと思ったら45が説明してくれた。なんでも地上部隊とドローンによる航空兵器を主体としている多国籍部隊とのこと。そして地上部隊の兵士は殆どが強化外骨格やら義肢やらを装着していること、ドローン兵器にはA-10も含まれていること、フィーアはドローンオペレーターの統括する地位にいることを話してくれた。とんでもない戦力だけど、フィーアが此処に住むってことは実質的にその戦力が私達の手元に来るってことなのかな?

 

 

「何かスケールがでかいや……」

「アハハ~。でも最近は無人機での偵察しかしてないから意外と暇してるよ?グリフィンの社長には許可を取ってるから色んな基地の上空を飛んでたりするよ」

「公式チートだよこれ……」

 

 

フィーアは笑いながら話してるけど私からしたらとんでもなくスケールの大きい話になってしまう。45は元々知っていたのか楽しそうにお喋りしてるなぁ。

 

 

「ねえねえスィストラ、なでなでしてもいい?」

「ふぇ?い、いいけど……」

「それじゃ遠慮なく~♪」

 

 

あぅ、何か抱き寄せられてる……でも気持ちいい……

 

 

「はふぅ♡」

「可愛いなぁ」

「フフ、40姉。私も~♪」

「いいよいいよ~」

 

 

45も混ざってきて二人してなでなでされた。えへへ、フィーアのなでなで気持ちいい~♪










スローター
・正式名称はタスクフォース『スローター』であり、米露中を主導とした多国籍部隊。戦力は地上部隊複数とドローンによる航空兵器多数。輸送ヘリ以外は半自律式AIが搭載されており、ドローンオペレーターとの連携によって遠隔操作される。UMP40ことフィーアはドローンオペレーターを統括する地位にある。基本的にはドローンによる航空支援の後に地上部隊による掃討が行われる。


虐殺の意味を持つスローターという言葉通り、拮抗する銃撃戦すら発生させない虐殺を敵に対して実行する。


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