暇潰しで殺された人達 (死人さん)
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探索者資料メモ

義長一族、星月一族の相関図


盛岡国広(もりおかくにひろ)

男 職業:スクールカウンセラー 26歳

 

本名、義長国広。ある財団のフィールドエージェントを務めてるっぽい人。前世が存在し、前世は刀の付喪神「山姥切国広」。

ある本丸の初期刀であり、本丸に受け入れた黒本丸出身の大倶利伽羅を支え続けた刀の一振り。初期刀、本丸の大黒柱らしく刀派分け隔てずに仲間達と仲良く接していたその姿はもはや極。しかしある日の戦闘にて、大倶利伽羅を庇い刀剣破壊。その後、それよりも過去の201×年に人間として転生する

転生したが刀剣男士としての記憶は存在せず、不運にも人間として生まれたその境遇ですら刀の頃と似ていた。自身の兄と比較される日々に嫌気がさした頃、高校のスクールカウンセラーの女性との会話で自身の我を確立し、コンプレックスを振り切る。その後、成人し自身も自身を救ってくれたスクールカウンセラーの方のようになると決意し、カウンセラーに就職。

しかし、ある日学校滞在時にある奇怪な現象に遭遇したことがきっかけで国家機密組織に所属する事となる。

 

 

 

降谷透(ふるやとおる)

男 職業:公安警察 26歳

 

本名、安室零。親友4人を過去に亡くし、悪友である沖矢秀一を心の支えに生きながらえた公安警察の人。

正義感が強く、その愛国心は並の人間より良い意味で逸脱している。

ある日、謎の教会にて目を覚ました彼は女子高生と医者を名乗る男に出会う。そこで見た様々な光景は、事実は、全て闇の中。それを唯一知り生きた少女はもう、精神は正常ではない。しかし、彼は彼女が無事に生きてあの空間から脱したか、それを知れなかったことだけが心残りでもある。

他、光道桜とは従兄弟である。

 

 

 

光道桜(みつみちさくら)

女 高校二年生 17歳

 

偽名などない、至って普通の女子高生。読書好きの博識少女で、INTは18ともはや天才の域。薬学の本を読むのがマイムーブ。非常に引っ込み思案で他人との会話を得意とはしない、文学少女。

しかし、根性と運だけは確かに存在し、例え親友と同じ顔をした何かであろうと木材で頭をぶん殴ったり左腕が無くなっても根性で逃げ切り止血したりなど中々タフな少女。そのタフさは従兄弟の安室と似ているのかもしれない

自身の従兄弟である安室と一騎打ちになり殺し殺された、ある医者とはある種の因縁がある。

 

 

 

闇達零(やみだちぜろ)

男 内科医 32歳

 

26歳多くね?ちゃんとした本名。

しかしまた、彼にも前世が存在し彼の前世はある王国の第二王子に仕えた臣下。元盗賊だったらしく、弓の腕は一級。名は「ゼロ」と言ったそう。そんな彼だが転生後、記憶は無かったようだが二年前に思い出したらしく、弓の腕や変な言い回しは健在。というか記憶思い出さなくとも健在。

兄弟達と何かが違う自分は、除け者扱いされてきた。そんな自分をお前はお前だと、君は君だよと迎えてくれた少女と同僚の青年がいた。彼はあっという間に、二人に依存していってしまう。

彼の心の支えとなった少女も青年も、二人ともどこかへ消えて行方不明になってしまった。そんな彼もまた、二人の面影を追って行方不明となってしまうが、ロストした訳では無い。

 

 

 

光道忠明(みつみちただあき)

男 警察官 26歳

 

ホンマに26歳多くね?ちゃんと本名だが、中の人の限界オタクが原因で今野忠明(こんの)に改名された。

体の弱い父親の元で育ち、体が弱いのに仕事熱心に取り組む父親の背を見て育ち、科学捜査を志す。父の体が弱いこともあり、仲の良い人の怪我や病気には敏感で、少々過保護気味。

何故だか、関西弁で話す。彼が本当に関西出身なのかは不明。

まだまだ若い警察官だが、とある特別捜査班の科学捜査担当として活躍している。その若さとは似合わず、肉親を殺された後でも比較的精神を正常に保ったまま捜索の協力に取り組む、精神的強靭さを見せるなど、まだまだ警察官としての成長が見られる。

尚、光道桜とは従兄弟関係にあるが、光道桜の自殺は地味に響いている様子。彼女が自殺した2ヶ月ほど後に、肉親が死んだことになる為、現在はそこそこ精神を消耗している様子(具体的には32)。

 

 

 

義長正貴(よしながまさき)

男 19歳 大学生

 

しがない青年ではなく、彼の前世は刀の付喪神の「山姥切長義」その一振り。記憶はあらず、とある一族の兄弟の弟として生まれ、自身の兄である義長国広の代わりに家を継ぐものとしてその努力は惜しまなかった。

卒なく何でもこなせる秀才型故か、他人にもその当たり前を強制しがちな所はあれど、情に厚い人物像ではある。

ある日、霧に包まれやって来た平安時代にて、彼は徐々に己の前世を思い出していく。やがて最期を迎える頃には全てを思い出した。何故赤子状態の昔の同僚を奮ってるのかは深く考えない事にした。何やかんや、自分自身のアイデンティティやら、大切なものが離れていく喪失感がしばしば悩みであったが、最期はそれらを克服し満面の笑みで、邪神の姿を直視し、後の未来ある人の子に全てを託して意識を閉ざした。

 

 

 

マレ・アルカヌム

女 24歳 探偵所長

 

イギリス、ロンドンのとある街に探偵事務所を構える女性、尚1920年代探索者。義長一族の先祖にあたる人。

非常に明るく元気で陽気な女性。しかしそれは演技であり、時折素でクールな一面が見える。人はそれを皆を元気づける為と思っているが、本来は本当の姿を隠す為でもある。アルカヌム家は代々、サイコメトリー能力を受け継いでいる。直接手に触れた物や者の一番印象に残っている未来を透視する事が出来る。ある事をきっかけに、未来を予知する能力も手に入れる事となる。

元々探偵事務所には相棒のカエルム・ルミノックスが居たが、ある日彼と大喧嘩をし家出をし一週間後戻ってきた際、彼は探偵事務所にて自殺した姿で発見された。しかし自身のサイコメトリー能力で見据えたのだ、彼は殺されたのだと。相棒を殺した犯人を探し続けている

ある日、とある依頼を任された。しかし命からがら逃げ延びたその一週間後、マレは見覚えのある金髪碧眼の人々に囲まれ、己のその後を悟った。

 

 

 

ミスト・アルカヌム

男 26歳 軍人

 

イギリス、ロンドンに妻子を置いてとある戦争に参加することになった元医者、一応現代探索者。義長一族の先祖にあたる人の親戚。

普段から気さくで明るい性格だが、その実は自己中心的。しかし己よりも先に、妻子が優先順位にきている。綺麗なミストさん。

ロサンゼルス決戦にて、妻子を失い彼は隠居する事となる。

 

 

 

 

星月守(ほしづきまもる)

男 精神科医 26歳

 

精神的にちょっと達観気味の陰キャ。年の離れた妹がおり、妹とゲームして遊ぶのが趣味。

高校時代、妹のいじめをかばった際に左頬に火傷跡がある為に火傷跡を隠す為に黒いマスクを装着している。現代日本の不審者であり、転生主人公である。嘘。彼の名前の由来は、「大切な人を守れる強い人になって欲しい」ということから。彼自身もこの由来を大切にしている

実は前世があり、彼の前世は「薬師寺光忠」本人。しかし記憶はあらず、彼は2回目の人間転生すらも悩みを抱えている。しかし、ある心霊旅館に泊まったりイギリスへ旅行に行った際に遭遇した奇怪な事件をきっかけに、彼の心情に大きな変化が訪れかけている。

そして七夕の日、彼は想い人と共に入籍する事となった。

 

 

 

星月十夜(ほしづきじゅや)

女 専属家政婦 17歳

 

星月守の妹。自宅警備員卒業。一応高校には所属しているが、いじめが原因で中々登校出来ず早二年。ゲームで三徹が特技になりつつある、典型的なコミュ障。

SIZが18もあり、高身長故にいじめを受けたことが理由で身長がコンプレックス。しかし、同級生二人に無理矢理連れていかれた修学旅行で遭難した際に出会った同級生や男性二人も身長が自分と同じくらい高く、少しだけコミュ障とコンプレックスが和らいだ。

 

 

 

朱国高麗(あやくにこうらい)

女 26歳 精神科医

 

朱国蘇芳という顔の似ない双子が居る。小さな診療所を持つ医者。しかしマイペースで自由奔放ゆえに、基本仕事は他の病院に丸投げする。

街中でゲーセンなどで遊び呆けるのが趣味の関西弁の女性。良くも悪くも自分を貫きたいという気持ちが強く、そして友達が欲しい。

最期は自分の意志すら曲げてしまい死んでしまう。それに対する強い後悔が残っている

 

 

 

星照桜(ほしてらすさくら)

女 21歳 大学生(生命環境学部)

 

医者の家系である星照家の一人娘。しかし前世は「光道桜」その人。小さい頃、神社に行った時に拾った鴉羽をお守りにしている

人見知り気味な性格で、消極的。家庭が少々良くなかったのもあり、本来の夢である薬学者の夢を諦めて医師関係のアニマルセラピストを志す。そんな事もあり、自己犠牲精神が少々強く、そして家にも学校にもあまり居場所は無かった。

だが高校の頃、同じ名前だという理由で声をかけてくれた少女を始めとして、四人の親友に出会うこととなる。この四人との日々が自分の居場所だと信じて疑わず、誰一人と欠けることは嫌だと思っている。

 

 

 

盛岡ナオ

男 34歳 探偵

 

本名、盛岡裕太。本当はとある一家の人間だったが、とある事件に巻き込まれ赤の他人に脳みそを移され、盛岡裕太の体で生きることとなる。普段から盛岡"ナオ"と名乗っている頑固者。一応星月一族の家系である

非常に口が悪く足癖も悪く態度も悪く性格も悪い。良いところは顔だけ。警察になれた理由は面接官がMだったから、なんて話も…?実質裏口就職。

多趣味で人間に関する知識を得ることも楽しい、多才なやつ。それ故に花の世話が好きだったが、とある事件後花をめっちゃ嫌悪するようになる。しかしまた別の事件を経て、警察をやめ探偵を始めると同時に強迫観念により人の死をきっかけにリストカットをするようになった

 

 

 

星岬闇人

男 24歳 大学生

 

明るいのか暗いのかよく分からない名前だと自分でも思っている、医療・福祉系専門の大学生。大阪出身の生粋の関西人、某京都大学在学設定になった。

気さくで明るく人当たりの良い性格にも思えるが、その本当の顔は不可思議な事件を追いその先に"物語"を求める不謹慎クズ。これでも友達は五人くらいいる。五人だけとも言う。

星照家とは密接な関係にあるようで、星照桜とは仲が良い。最近、とある事件をきっかけに日本刀集めを趣味とし始めた。




義長家思ったより少なかったのが驚きですが増えました、色々と。


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探索者資料メモ2

長谷部一族・薬師寺一族付近の相関図


繘場一充(いつばいちみつ)

男 プロデューサー 36歳

 

本名、長谷部一充。本当はある財団のエージェント。またかよ。生き別れの双子の兄を探してプロデューサーやりながらエージェントもやってる多忙な人。演技が上手くて心理学使ってもクリティカルじゃないと本音わかんないやばい人。

自身に兄がいた事など、両親から聞かされてなかった。自身より出来損ないだという理由で捨てられた兄を探すべく、両親とは既に縁を切った。他にも、年の離れた弟がいるだなんて知りもせずに。

最後まで、「平穏はあるべき場所にあるもの」と考えて自身の財団の事件に巻き込んでしまった男女三人を救おうとした末に、想い人の青年に思いを伝えられずに殉職。その意思は、義長国広へと受け継がれる。

 

 

 

千駄ヶ谷国重(せんだがやくにしげ)

男 千駄ヶ谷組組長 36歳

 

なんでやねん。本名、長谷部国重。

出来損ないだという理由で組に預けられ、物心着いた時からずっと色々やばい知識を植え付けられた故に色々グレた。自身に双子の弟が居ることも弟がいる事も一切知らない。

彼は前世、刀の付喪神である「へし切長谷部」だった。彼は義長の本丸とは違う本丸らしいが……?彼が記憶を取り戻したのは、彼が死ぬ三日前だった。

 

 

 

倅屋要(せがれやかなめ)

女 高校3年生 17歳

 

本名?、長谷部要。多分自探索者の中でも1番酷い扱いを受けてる。

まさか自分が浮気相手の子供でグレたら学校でいじめられるし酷いことされるしで精神ボロボロ状態な時に自分の特殊なあることを知ってさらに精神負荷が重くなって自殺考えてたらニャルラトホテプとかって奴に「君があるゲームで一週間生き延びれたら世界滅亡してあげてもいいよ!」と甘い言葉に誘われるがある男女四人に絆され、人間の優しさを知り自ら死を選んだ子。

ちなみに死んだのが18歳の誕生日の日。殺してくれたのは、とある大倶利伽羅さん。

色んな人達と色んな縁がある。例えば、安室零とは夜に警察沙汰でお世話になったり義長とは学校のカウンセラーとしてだったり上記二人とは年の離れた兄弟だったり闇達達とは共依存気味の仲だったり。ある意味彼女が全ての起点でもあり、終点でもある。

ちなみに彼女は深きものどもの混血児であった

 

 

 

倅屋真

女 30歳 警察官

 

倅屋家の親戚。元々はとある夫婦の子供だったが、養子として倅屋家に引き取られる。本人はそれを薄々察しているが、両親と妹の事をとても大切にしているし愛してもいる。ファミリーコンプレックス。家族愛が馬鹿でかい。いつの日か、本当の家族と会えたその時は抱きしめてただいまと言いたい、そんな優しい子に育った。

普段は落ち着いたクールな性格だが、無口なだけで話すと明るい方。あまり自ら話す事が無いゆえか、同じチームの班長にとある事件でめっちゃ疑われた。コミュ障とも言う

 

 

 

薬師寺光忠(やくしじみつただ)

男 精神科医 22歳(???)

 

なんでその年齢で?って細かいことは気にしたら負け。ダイスに言ってください。彼もまた、前世があり刀の付喪神である「燭台切光忠」だった。ある本丸の古株のような存在であり、義長とは同じ本丸だった。黒本丸からやってきた大倶利伽羅に積極的に話しかけ、仲良くなろうとした刀の一振り。しかしある日の戦闘にて、大倶利伽羅を最後に庇い刀剣破壊。ある意味大倶利伽羅に一番のトラウマを植え付けたのがこいつ。というかトラウマ生産機。

転生後、記憶は取り戻さないまま生まれた家で親父に虐待うけるし母親家出るしこのままだとやべぇ死ぬと思って勢いで親父撲殺後、色々あるも何とか改心して医者になれたと思ったら心の闇深すぎて発狂して患者大量殺人を起こす。その後、死刑囚として捕まるも某財団にてある怪奇生物の生贄要員として檻の中に閉じ込められ続け記憶喪失となる。その後色々あり、ある男女三人に助けられ共に外に出て脱出後、記憶処理を受け前世で仲良くなった大倶利伽羅のお家に居候する事になる。

しかしこいつもまた面倒な事に色々と被害者。親父も母親も実はめっちゃ良い人だけど脅された結果息子を生贄要員として捧げなければならなくなり、息子に家から逃げてくれという一心だったが息子に殺される親父。母親は精神的ショックで廃人に。

闇達、倅屋とは仲が良い。仲が良いが、彼の弱さゆえに……。

 

 

 

芽々森灯(めめもりあかり)

女 新聞記者 23歳

 

本名?、薬師寺灯。薬師寺光忠とは双子だけど似てない。似てるとしたら優しい性格な点くらい。本人達はお互いが双子だなんて知らなかったけど、灯はある資料を読んだ際に知ってしまう。その後記憶処理にて大方は忘れるが、その資料が手元にある為………。

コインロッカーベイビーだったが、優しい男性に引き取られ本当の娘のように育てられる。めっちゃいい子。自分を捨てた母親、父親と今会っても別に怒りもしないし何なら一からやり直したいとさえ思ってるが………

何故か、心にぽっかりと空いた穴の違和感が、自身の上司が1人居ないような不信感に耐えれずプロのカメラマンから新聞記者に転職した。

 

 

 

薬師寺透(やくしじとおる)

女 SM女王 24歳

 

一気に色が変わった、何故だ。実は義賊の怪盗団に所属しており、SM女王は表の顔だがどっちが裏の顔かよく分からない。コードネームは夾竹桃(キョウチクトウ)

すごくアホの子で言動から察せられるくらい精神的に幼い。幼少期、家族を火事で亡くしておりその際のショックで精神退化し始めている。年々精神的に退化している為、もって後三年ほどで廃人になる、ロスト確定探索者でもある。

SM女王やってる理由は?と聞いたら、よくわかんないけど君ならやれるよ!ってお兄さんに言われたから!と満面の笑みで答えるアホの子。知らない人に着いて行ったら行けないと、同僚の回答の子にも心の中で指摘されるほどのアホ具合は、時には怪盗団全体の雰囲気を明るくしてくれるムードメーカー的存在でもある。しかし余命は三年である。

薬師寺光忠とは従兄弟で、彼が心の支えだったが薬師寺光忠は数年前に音信不通となり、それもあり精神退化が進んでいる。彼と出会う、あるいは彼女にとっての心の支えが無い限り彼女の廃人化は止まらない。

ちょっとある沼の匂いがするカッパとかってやつに取り憑かれてた時期もあったけど問題ない。

 

 

 

千駄ヶ谷沙耶

女 高校二年生 17歳

 

千駄ヶ谷組の一人娘。年の離れた兄貴のような存在である千駄ヶ谷国重とは仲が良く、パーティ会場などの出先では護衛に指名していた。組長を護衛に指名出来るど根性は君しか無い。

最近の趣味は、ネットを用いたTRPGセッションらしく、人狼ゲームにハマってるそう。ある大規模アプリで知り合った人達と人狼ゲームをして遊んでいるらしく、近々オフ会を開き集まる予定らしい。

 

 

 

カルディア・リライト・千駄ヶ谷

男 フランスマフィア幹部 32歳

 

フランス生まれ日本育ちのフランス人。しかし日本語は片言だがちゃんと話せるようで意思疎通は取れる。

何故か片言の日本語が関西弁で話す。何故関西弁なのか、と本人に問いかけたら「え、日本語ちゃうんかー?」と返ってくる。彼にとっての日本語とは、標準語ではなく関西弁らしい。元々親の影響で日本が好きなようで、自身の髪を黒に染めるほど。

元々日本に居た時に千駄ヶ谷組に居たが、組長である国重の死亡を確認した後日本を去りフランスマフィアに所属したそう。組長である国重とは仲が良かったようで、彼の苗字に変えるほどだった。

 

 

 

大道寺ナク(だいどうじなく)

女 24歳 雑誌記者

 

日本人女性だが、一時期イギリスに住んでいたこともあり別名としてナク・インユリアの名も持つ。

お人好しでお節介な性格。時折他人を悪ノリで振り回したり、余裕が無くなると口ぶりや言動が外道に近くなる。心が無いとも言う。

あるものを探す為にイギリスに来ていたが、イギリスにてある事件に巻き込まれた結果イギリスで仲良くなった刑事と一緒に日本に帰国して絶賛日本語講座中。一緒に雑誌記者をする事となった。

盛岡ナオとは旧知の仲、悪友とも言う。彼の足癖の悪さと口の悪さはナクから継がれたものだが、ナクの足蹴りの強さはまた別の人から受け継がれたもの。薬師寺透、薬師寺天野、御宮寺優成とは幼馴染関係に当たる。

 

 

 

薬師寺天野(やくしじあまの)

男 24歳 犯罪者

 

複雑だが一応大道寺ナクの甥に当たる存在、幼馴染でもある。元々平和な一家であったが、自身の大切な人たちが不幸に見舞われた理由を知り、復讐に燃えた結果利用されて関係の無い人達をも殺してしまう。指名手配され、国外に逃げる為にとある村へと訪れる事となる。

本来は暗く地味だが落ち着いた性格で、言動はたまに男らしい。しかしほとんどが変装して過ごしていた事もあってか、あまり素を他人に見せる事はしない。変装の達人(変装技能99%)。

とある事件をきっかけに国外逃亡に成功はするが、心に大きな傷と業を背負い生きることとなる。友達ガチ勢

 

 

 

御宮寺優成(おんぐうじゆうせい)

男 34歳 ???

 

通過前故に非公開。




長ったらしい上に破滅の薬師寺一族めっちゃ人増えたよ。やばいね


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探索記録(ネタバレ注意)

彼らのセッション記録メモ。
忘れそうになる


天使は誰だ?

→安室零

 

ある教会にて目を覚まし、そこで医者を名乗る黒峰柳と女子高校生らしい赤松楓と出会う。前途多難のようであれど、そのまま三人で教会を探索する内に困難な謎ときを解明し、いざ帰ろうとした時に安室が「念の為」と称して嫌な予感がする扉を開いてしまい、ヤバい奴が黒峰に取り憑いてしまう。そんな嫌な予感に警戒を重ねるも、出口手前で不意打ちを食らい赤松は足のアキレス腱を切られ重体。

なんとか市民である赤松を教会から出そうと、憑依された黒峰と戦闘した末に、黒峰に銃で射殺に成功するが自身も黒峰の投げたメスにより刺殺される。その後、なんとか赤松だけでも逃げてくれという懇願を持つも、黒峰に憑依してたニャルラトホテプの姿を直視し赤松と共にSANCを受け、安室はSAN値と体力共に直葬し死亡。

赤松もSAN値直葬し、現実世界には帰るも精神疾患に陥り廃人になる。

安室はその事を知らないまま、心残りを残した。

 

 

 

弾丸が貫く先は

→義長国広

 

ある日たまたま街中で出会った、褐色肌の青年の伊達廣光と共に意気投合し、フクロウカフェに向かう約束をした盛岡国広。カフェに向かう最中の道中で、見知らぬ黒パーカーの青年に声をかけられ意識を失い、目が覚めると見知らぬ家の中にいた。

家の中で探索する中で、白髪の青年の三鶴永都と名乗る記憶喪失の青年と出会う。家の探索を進めるうちに心の闇に苛まれる三鶴を絆した伊達と盛岡は、三人を殺そうと追いかけてくるシャッガイから逃れ、青い海が広がる扉の先でシャッガイを拳銃で撃ち抜く。その後、シャッガイに憑依されていた現実の三鶴は正気を取り戻すと同時に、盛岡も伊達も共に現実世界に帰ったその時、前世の刀剣男士としての記憶を取り戻す。

 

 

 

サイトJP-4528の恐怖

→(義長国広、薬師寺光忠、芽々森灯、繘場一充)

 

全員NPCとしての参加。

テレビ番組の企画に、プロデューサーの繘場一充から呼ばれた伊達廣光、八雲宙、明石俊行の三人はカメラマンの芽々森灯と共に森の奥深くに佇む石鹸会社「SCP」の廃墟となった施設へ探索へ赴く。しかし、出入口のシャッターが閉じ施設から出られなくなった三人一行は出入口を開く為に施設の奥深くへと進んでいく。

繘場一充が突然行方不明となった途端、石を擦るような音が聞こえたり機械的なAIと出会ったりなどして、不思議な体験を過ごす内に牢屋の奥に閉じこめられていた、記憶喪失の青年の薬師寺光忠も連れて施設の奥へ進む。そうして出会った繘場一充と再会を果たすも、彼は正気の沙汰では無く戦闘を強いられる。しかし何とか正気に戻し、施設の最奥の部屋へ繘場と伊達と明石で挑むも繘場はその部屋にいたヒキガエルのような巨大生物によって殺害され、繘場の犠牲と引き換えに三人一行は施設のシャッターを開く。

しかし、その奥から沢山の軍隊と研究員に迎えられ、その先に居た見覚えのある戦装束を身に纏う盛岡に保護され、彼らは記憶処理を受け全てを忘れ平穏へと帰る事となる。

 

 

また、明日。

→盛岡国広

 

遠い街に住む、薬袋藤四郎へ会いに行く盛岡国広と伊達廣光と御剣一振の三人。二泊三日の楽しい旅行を過ごす為に来たが、何やら街中では空から降ってくるらしい隕石の話題で盛り沢山。

隕石を最初に発見し研究したとされる研究員の白石博士は行方不明、何やら不穏な噂が漂う隕石衝突の件、時折見せる薬袋の黒い影に三人は迫る。

そうして最終日の三日目にて、薬袋の自宅で薬袋が約五年間この旅行の三日間を繰り返し隕石衝突により免れない世界滅亡を阻止しようとしていた事を知り、三人は薬袋が居るだろう山の麓へ辿り着き、薬袋を説得し四人で隕石の名を呼び、隕石の正体であるグラーキを退散させ約五年間の葛藤に幕を下ろす。

しかし、帰りの駅へ向かう際に盛岡は知らない誰かにぶつかり謝ろうとしたが、そいつは彼ら刀剣男士と同輩であった三日月宗近とよく似た顔で笑っているのを見て、盛岡は瞬時にそいつの正体を悟る。その得体の知れない、黒い影に伊達は違和感を持ち、盛岡は胃痛に悩まされ始める事となる。

 

 

 

深淵よりの恐怖

→光道桜(、安室零)

 

約1名のみNPCとして参加。

ある高校の特進クラスに所属する光道桜と、普通クラスに所属する鈴宮京一は同じ普通クラスに所属する如月小夜と仲が良い。しかし如月は学校中の生徒から嫌われており、彼がいじめを受けている事は知っている。

そんな3人は、クトゥルフ神話TRPGというゲームを囲った事のある仲の良い三人だったが、ある日如月は学校の屋上から自殺してしまう。その日に丁度、薄氷が普通クラスに転校しに来て運悪く、自殺した如月の席に座る事となる。如月の自殺に喜ぶ多勢とは反し、自殺に悲しむ二人と薄氷だったがその日の夜、不可思議な夢を見る。

夢の中で突然、死んだはずの如月がゲームを開始した。妖達から逃げ、学校のどこかにある出口から脱出するというものだった。

夜の夢の中で繰り返される如月のゲームに挑む三人は、やがてその夢の中で出会う保険医の黒峰楠やレイとカエデを名乗る不思議な男女に出会ったりし、助けられるがその中で光道は自身の従兄弟である安室の死を、死の真相を、黒峰楠に憑依した黒峰柳本人から聞かされる事にもなる。

前途多難あり、如月の偽物や天狗の妖のケイに助けられたりなどして、何とかゲームの最終目的である出口から脱出を果たし、如月をゲームにより魂を束縛した元凶の魔の手から逃す事にも成功する。

如月を助け、三人の脱出の手助けをしてくれたケイが、実は如月の双子の兄である事を知ったのは、その直後の事だった。

そうして三人は、長い夢のゲームから脱し、平穏な日々へ帰ることとなった…?

 

 

 

約束通り(?)

→(倅屋要、義長国広、安室零、薬師寺光忠、闇達零、長谷部一充、千駄ヶ谷国重など)

 

全員NPCとしての参加、未完結。

ある日、薬師寺光忠と共通の友人である伊達廣光と八雲宙とノエル・チェルクェッティは薬師寺から「患者の子が行方不明になったから探して欲しい」と依頼を受ける。ほぼ同時刻、知り合いである闇達零から同様の依頼を受けた蜂須賀優希も他三人と共に患者である、倅屋要の捜索に出る。倅屋の後輩であるノエルを筆頭に、四人は倅屋を見つけ倅屋を説得し病院へ帰す事に成功する。

しかしその日の夜、四人は不思議な夢を見る。前日の夜にも、不思議な人影を追いかける夢を見たがそれとは違い、自分以外にも10人以上の人影が同じ場所に集い、謎の黒い影に「"奴"を一週間以内に殺さないと世界が大変な事になる」と半ば脅しを受ける夢を見る。

そんな不思議な夢をきっかけに、四人の住む街は奇怪な生物に溢れ、やがて自分達以外の人間がほぼ居なくなる。そんな街の中で、彼らは"奴"の正体を探る事となる。

……未完結ではあるが、結末としてはハッピーエンド。元凶である倅屋は、四人の人間の優しさに絆され、自ら死を選び自殺する道を選んだ。

 

 

___

 

 

 

絶望の孤島

→星月十夜

 

同じ高校出身の岡田モータス、山葵に連れられ家から出ることとなった星月十夜。修学旅行と言われ、連れてこられた船に乗るも船は大嵐に見舞われ難破し、小さな島に多田野奏士とウツロを含めた五人と共に遭難する。

小さな島に来て、島の中を探索する内に見つかる白骨死体や奇妙な文章。そして森の奥で見つけた寺院の前で、この世のものとは思えない悪魔のような存在を目の当たりにした星月と山とウツロは正気を失うも、なんとか岡田や多田野と力を合わせ悪魔の撃退に成功する。そうして寺院の奥で見つけた文章を元に、自身達が元の家へ帰る為の手掛かりを得るためにノーデンスと呼ばれる神の招来に成功する。

ノーデンスを楽しませ、なんとか帰る方法を教えて貰い五人は無事に自身の家へと帰ることが出来た。

 

 

 

豪華客船と怪盗団

→薬師寺透

 

とある喫茶店を営む薬師寺透と山崎時雨とエニアの三人。それぞれ表の顔はSM女王、スタントマン兼喫茶店マスター、自称魔法使いの手品師だが、裏の顔はお騒がせ義賊怪盗団。そんな三人はある日、資金不足で仕事に悩んでいればとある新聞に載っていた豪華客船のブラックダイヤモンド展示会に目を付け、急いで船の元へ向かい船の中に潜入する。

そうしてやがてブラックダイヤモンドを盗むも、気を失い気が付けば自分達以外の客が黒い影になっていた。そんな奇っ怪な船の中を進むにつれ、やがて山崎を中心に、この船の上で起きた事件の真の黒幕は誰であるかを当てる責任重大な難題に見舞われる。が、山崎の推理力とエニアの考察力により、真の黒幕である薬師寺…の、中に憑依していたナガアエに辿り着くことに成功し、ナガアエを撃退し無事、船の上の世界は救われ怪盗団の資金源となる宝石をたくさん受け取り、当の薬師寺は何もかも知ること無く怪盗団の活動が続けられる事となる。

 

 

 

「わだ、わだ、ががい」

→星月守

 

座敷童子が出てくると噂の旅館の予約チケットを手に入れた星月守は、現地に辿り着きさぁ旅館へ向かおうとしたら、数日前から何故かストーカーしてくる謎の明治時代不審者の紅葉谷一生と突然話しかけて来た自称占い師の中世時代不審者の國栖鬼羅を連れて旅館に向かうことになった。

旅館で出会った不思議な少女、ましろやその世話をする旅館のオーナー、旅館で働く従業員の堀野などと共に、約数日旅館で過ごす。が、ひょんな事で堀野が何やらヤバい炎の神様を招来しようとしてる事を知った紅葉谷と國栖はましろを使い従業員用の部屋への侵入を伝ったりなどして様々な工作に挑む。そんな二人に気付いた星月も一度止めようとはするも、二人の様子の違和感につられて同様に招来阻止を図るも、奇しくも旅館は堀野により爆破される。

旅館から何とか脱するも、堀野は炎の神の招来に成功し奇っ怪な存在との戦闘が起きる。が、紅葉谷の機転(?)により堀野は戦意喪失。何とか撃退し、世界平和は保たれる事となる。…以後、堀野は行方不明となっている

 

 

 

テンペスト

→星月守

 

パリへ旅行に、船に乗る星月守とその船のバイトをしていた3m越えの大男のシゾは、突然船が転覆し気が付けば不思議な暗い部屋の中で目を覚ます。部屋には一人の少女がいた

少女と共に城の中を探索するも、キッチン部屋のツボに潜む不思議な玉虫色をしてそうな肉塊や地下の牢獄に閉じ込められた魚人のような男、そして魔術の存在に彼らは悩む。そして、城の最上階にて知った、今自分達が居るこの空間は巨大な化け物の腹の中だという事実に驚くも、ここから脱する決意を抱く星月。

しかし、城から脱出するには少女を犠牲にする必要があるらしく、それを拒んだ心優しいシゾにより少女は城に残る事になる。星月は、少女に「彼に守ってもらうんだよ」と言い残し、一人少女の力により腹の中から脱出し、パリの夜空と海を眺めて虚しさに浸る事となる。

 

 

 

穴埋め(1)

→(倅屋要)

 

NPCとして参加。

夜眠りにつき、目が覚めると見知らぬ部屋で目が覚めた。それぞれ神学者の木村怜玖、ディレッタントの七親光、カメラマンの点野克明、闇医者の紫艶怜は部屋の中央にて本を読んでいた案内人を名乗る少女に突然、「屋敷を完成させてくれ」と依頼される。

それぞれ何やら疑問などはあれど、渋々と引き受け屋敷を探索する内に、やがて屋敷の中に点在する奇っ怪な存在に当惑されていく。やがて部屋を完成させる毎に増していく異常性に気が狂う事もあれど、何とか屋敷を完成させる。

しかし、食堂で見つけた手記により、少女は自分達を殺す事を企んでいるのではと危機した四人は魔術の存在により、何とか屋敷から脱出する事に成功する。

変わらず、少女は優しい人間達を助ける道を選ぶ事となる。

 

 

穴埋め(2)

→倅屋要(、千駄ヶ谷国重、獝場一充)

 

NPCとして参加。

眠りにつき、目が覚めると見知らぬ部屋で目が覚めた。それぞれ喫茶店店長兼怪盗団リーダーを務める山崎時雨、自称ヒーローの四終小弱、学生?のトゥエルス、山篭りする拳法家のシェランの四人は部屋の中で本を読んでいた少女に「屋敷を完成させてくれ」と言われる。

そうして屋敷内を探索、完成させて行く内に幾度かは命の危機に面する事はあれど、何とか無事屋敷からの脱出方法なるものを見つける。そして、少女の何十年ものの英雄譚を知り、少女に報われて良いのだと言い、少女は探索者と共に、終わらない英雄譚から出る事となる。

そして、病院で目を覚ましお見舞いに来た少女を、山崎は喫茶店のアルバイトをしないかと誘う。そうして、晴れて自由の身となった少女が彼の喫茶店へ足を向ける事になるのは、そう遠くない未来の話。

 

 

穴あき空の旅

→盛岡国広

 

フランスへ財団の用事があった義長国広と、旅行へ向かう事となったマフィア所属の用心棒ジミー・イヒトと仁那・フォウケットの三人。三人は飛行機に乗り、離陸しフランスへの旅に出るも突如眠気に襲われ眠りに着く。しかし、突然のブザー音と共に三人は目を覚ますが、何故か周りの乗客は皆眠っていた。確認すれば、自分達以外の乗客は全員後頭部に穴が空いていた。

そんな奇妙な光景を目の当たりにした義長は、また変な事に巻き込まれたのだと察しながら、平穏な世界に過ごすジミーと仁那の二人を守りながら、前線へと特攻していく。その最中、再び合間見たミ=ゴや機長の橘の協力により、なんとか無事緊急着陸に成功するも、義長は脳みそのみの状態でミ=ゴに連れられ、ミ=ゴに「意識ある脳みそに対し実験を試みたい」と半ば脅しを受けた中、「平穏な世界に住む市民を守りきれなくて残念だ(人々が紡いだ歴史を守りきれなくて残念だ)」と言い残し、ジミーと仁那の二人を無事元の世界に戻した事に安堵しながら、精神を蝕まれていった。

 

 

義心暗器

→光道忠明

 

とある不可解な失踪事件"義賊"と名づけられた事件を追う、光道忠明と八式真一と氷河無月、そして三人を率いる班長である桐ヶ谷護の"桐ヶ谷班"は朝早く発見された変死体の現場へと赴く。

しかし、不可解な点が多いという別班の班長や検視官、仲の良いジャーナリストなどの協力を得ながら彼らはそれぞれの"秘密"を抱え、やがて事件の真相へと近付く。

それらを、世間一般は「義賊の青年は素晴らしい事をしようとした」のだと賞賛するかもしれないが、それに少なからず理不尽に巻き込まれた四人は、彼を許せただろうか?

少なからず、光道は、親父の死を許せず憎み続ける事には違いないのだけれど。

 

 

行きはよいよい

→星月十夜

 

兄に無理矢理外に出ろと言われ山ツアーにやってきた星月十夜と謎の観光客の男性モジミヤはツアー中に山奥で遭難し、小屋に避難するも意識を失う。

気が付けば不思議な屋敷の中に閉じ込められ、屋敷内を探索する二人。

途中、自分達が意識不明の重体だというニュースを目にするもなんとか耐え抜き、共に元の世界へ生還し無事に目を覚ますこととなる。

尚、この件をきっかけに少し兄が過保護になったのは言うまでもない。

 

 

時代の忘隷

→光道忠明

 

奇妙な音が聞こえる、などの通報でとある鉱山に出向かされた光道忠明はふと鉱山にて気を失い、目が覚めると知らない密室にて二人の学者、七々扇と京堂に出会う。

二人と共に部屋から出ると、そこは退廃した街並みだった。

街を探索するにつれ、訪れた廃坑にて男性と出会い話をするも、意見を違えてしまう。その途端、廃坑全体が揺れに襲われなんとか探索者共々逃げ出そうとするが光道のみ瓦礫に潰されてしまう____が、その寸でとある犬神が光道を庇ったことにより、なんとか光道は生き延びて廃れた街から探索者全員は生還する事となる。

寂れたあの街並みは、時代遅れとも言われるあの街は、もうどこにも存在しない。

 

 

七色の血

→長谷部要

 

とある美術館に気分転換にやってきた長谷部要は、とある未完成らしき赤い絵に目を惹かれ、やがて意識を失うと気が付けば見知らぬ空間に居た。周りには自身と同じようにやってきたのだろう美術館の客人、影山次狼と水上渚が居た。二人と共に声のする方へと出歩けば、そこには記憶と右手と両目を失った、鎖に繋がれた男が居た。

男をファクターと名付けたりした後に、その部屋の中を探索するうちにファクターの過去や、絵空事の世界に巻き込まれたりして、やがて彼らは結末を迎えた。

そうして得たものは、目の惹かれる赤い絵と新しい絆だった。

 

 

 

偽心暗器

→薬師寺透

 

表仕事であるSM女王の仕事の帰り、真冬の暗い夜道を一人で歩いていれば、何故だか黒コートの男に眠され気が付けば一人で独房の中にいた薬師寺透。外に向けて声を出せば、他の部屋にも同じように閉じ込められたという紫艶怜、柘榴ヨミ、今世康の三人を確認する。

何とか出られないかと思案していれば、急に開いた扉により四人は合流を果たし、ここからの脱出を目論む。

進むにつれ明らかになる悲惨な実験、不可思議なエンブレム、刀武器の数々を見て回る内に四人はある部屋で銃装備の男達に囲まれるも、鞘のない刀を持つ女性に助けられる。

女性をファーちゃんと名付けたり、女性の探し物である鞘を探す内に何とか見つけるも、またもや銃を携える男達と黒コートの男に退路を絶たれてしまう。

一人で囮になるというファーちゃんを説得し、何とかファーちゃんの機転により五人共この施設から脱出する事に成功する。

その船の上から、港の麓で青い光が一瞬瞬く光った事には彼女は気付かなかったが……きっとこの運命が重なる日は、そう遠くない話かもしれない。

 

 

 

 

くねくね

→星月守

 

昔病院で知り合いつい数年前に彼の祖父の故郷へ引っ越した友人の白崎ハヤト、彼から自身の息子が何故か閉じこもってしまったから話を聞いてやって欲しいと言われ、星月守と極楽と名乗るお爺さん、三宅という女医と横堀という青年の四人がある村にやってくる。

その村への道途中に星月と横堀はバスの窓から、白い何かを見てしまいそこから事件に深く巻き込まれていく。

見てはいけない"それ"に追いかけられながら、何とかあの白くくねくねと動くそれから逃れられないかと村で聞き込みをしたり息子のキリオから詳しく話を聞いたりし、小学生からまた不審者扱いされたりなにか知ってそうなお爺さんにストーカーして話を聞こうとする女医が居たりetc……そうこう過ごすうちに、やがて彼らは神社の神主による、縁切りの儀式を受けることとなる。

儀式中、多少のハプニングはあれど無事に彼らは縁を切る事になり、元の街へ帰って元の生活に戻ることとなった。

 

 

 

涙雨

→義長正貴

 

何でもない日常を過ごす義長正貴、相川宗助、小柴由成、平野うずめの三人は突如、濃霧事件により発生した濃霧に晒され、気を失ってしまう。

突如見る不可思議な夢の後、四人の男女に「都を救ってください」と言われ、義長は誰かの記憶が頭の中に入り込む。そうして再び意識を失い目を覚ますと、二日酔いだった

平安時代の酔いどれの男に憑依した義長は、他の人間に憑依した探索者達と再会していき、同じように随分前にも憑依していた者達との邂逅も果たす。都を巡る五つの事件を解決させ、皆で元の世界に帰ろうと団結するも、その内の一つの事件を解決させようとした時、彼らは世界の終わりを見つめ、また再び同じ時を繰り返す事となる

二度目の世界で、彼らが得た情報を元に元凶であろう者以外に纏わる事件を手分けし解決させていき、その道中で自分達の体の持ち主の大切な記憶も取り戻していき、やがてクライマックスを迎える。

愛し合う二人のすれ違いにようやく蹴りが着いたかと思えば、彼らは異形の神を目の当たりにしてしまう。異形の神を討ち滅ぼし、幸せを願う二人の道筋を切り開こうとするも、一度探索者達は異形の神の破滅に失敗してしまい、白狐の彼女を結果的に失ってしまう。しかし、四人の必死の願いを聞き届けた一人の男が、その身を犠牲に四人を少し前の時に戻してくれる事となる。

そうして異形の神を今度こそ討ち滅ぼした四人だが、今度は異形の神の長である"シュブ=ニグラス"が顕現してしまう。

最後の最後、白狐の彼女が自分達の帰る道を残してくれたが、四人はその場に留まり共に戦う事を決意し、義長、平野、小柴の三人はシュブ=ニグラスの姿を見てしまい精神が崩壊してしまう。しかし、僅かに残った力を振り絞り、耐え抜いた者達のみで、退散の呪文を必死に唱えた。「かえれ」という必死の相川の言葉が届いたか、シュブ=ニグラスは「顔を覚えたぞ」と言葉を残し、消え去った。

意識が暗転し、四人が最初に出会った暗闇に戻ってきた相川だったが、相川はその暗闇でただ一人佇み、そっとひとりでに現実世界へと帰る事となった。

目を覚ませば、彼があの平安時代で旅を共にした者達は、皆目を覚ます事無く永遠に眠り続ける事となってしまっていた。唯一彼以外に生き残った者に彼は問いかけた、「間違っていたかな?」その言葉にその者は答えることは出来なかった。

こうして、都のその後を知る事も無く、三人の勇敢な者達の死を引き換えに、相川宗助はひとり、日常に戻る事となる。

 

 

 

沼男は誰だ?

→朱国高麗

 

バーで飲んでいた朱国高麗には顔見知りが居る。門矢という名のタクシードライバー、岩清水という名の警察官。二人とまたバーで飲みかわしていれば、ふと岩清水がちょっとした依頼を口にする。それを聞いて暇だから行くよと言う朱国と、有給取ってやると言う門矢の言葉を聞いた岩清水は二人にある屋敷の調査を依頼した

翌日屋敷に向かう。そして、屋敷の中で屋敷の主と対面を果たした時、全ての悪夢が始まる。

時の遡行者を永遠に追い続ける猟犬に追われながら、その屋敷で出会った夕という少女の願いを叶えるべく、その屋敷で集った堅乃、雪代の四人で街を歩いていく。そうして見えてくる、この事件の様々な闇。

それぞれ、"沼男"という存在を馬鹿みたいに盲目に信じた四人は、堅乃を初めとし、目の前で死んだ朱国を最後に皆、沼男になってしまっていた。

最期の決断で、皆は億の命を救う英雄となる道を選んだ。けれどそれは、沼男の死をも意味する言葉だった

最後まで反対した夕を宥め、門矢と雪代と朱国は夕を連れて海へ行き、堅乃は一人残りマザーとの会話を最期に迎えた。

海で星空を眺める三人は、きっと走馬灯を見た事だ。そうして、三人がやがて死にゆく未来を見届けられない夕は一人立ち去り、海の浜辺には「しにたくないなぁ」という言葉と三人分の致死量の血液が残り、沼男はこの世から消え去った。

 

 

 

ゴブンノヨン

→星照桜

 

高校の頃からの仲良し五人組の花宮さくら、鳴海優、古枝樹、雨宮みい子、そして星照桜は前々から某夢の国へ遊びに行こうという約束をしていた。

しかし当日、花宮さくらが交通事故で意識不明の重体になってしまう。病室で四人が見守る中、不意に四人は意識が暗転していく。その中で星照は、電子音が止まる音が聞こえ、花宮さくらの死を一人知ってしまう。中性的な声に「死者を送り届けるのが君の務めだ」と言われ、完全に意識を失うとそこは、高校の頃の教室だった

怪我が一切ない花宮さくらを連れ、五人は各々の気持ちを抱えながらやがて、屋上で端正な顔立ちの男と対峙する。

しかし星照は知っている、分かっている。自身がテレビで見た、白髭の男の「犯人と立ち向かう勇気を持て」という言葉を信じて、全員は男の召喚したヒキガエルのような化け物と戦闘になる。

そうして四人は化け物を倒したことで、男に「五人とも帰してやろう」と言われ、目を覚ます。

そこには、ちゃんと生きて目を覚ました、花宮さくらの姿と、誰も欠けることなく無事で居る三人の姿。

星照は親友を誰一人失うことなく、日常へと戻っていくのであった。

 

 

 

閉ざされた動物園

→星月十夜

 

ネットで知り合った点野和明、川島永伍、帯刀士雪と共に動物園でオフ会をして楽しもうと提案し遊びに来た星月十夜。

しかし四人とも動物園に閉じ込められ、人語を話すワシにスタンプラリーを頼まれチームアラサーとチームトラに別れて探索を進める四人。

地下室にて、黒ローブの男をチラ見した星月。素直に一瞬中の人の殺意が出たが、その後何事もなく自分が実験体にされると知ったり長期恐怖症引いたのにクリティカルで長期帳消しされたりと色々ありながら、四人は二人の男女の幸せを見届け、元の日常に帰ることとなる。

 

 

 

決定事項(1)

→(義長正貴)

 

NPCとして参加。

それぞれ復讐したい相手のいる交野愛美、秋雨楸、初堂やもめ、相賀将の四人は目が覚めるとそれぞれ白い床、白い天井の部屋にいた。その部屋の隅の椅子に座る男は司書、と名乗る。

それぞれ四人は自身の思惑を胸に秘め、探索を進めていくと、交野と相賀がお互い敵同士である事が発覚し、戦闘に至る。相賀が撃った弾で一度は瀕死に追い込まれた交野だったが、秋雨の治療によりなんとか命を繋ぐ。

それぞれなにか起きつつも、四人で探索を進めれば、ようやく思い出し、手に入れた真実。

いざ司書を殺そうとした時、ふと目に入ったメモを見て、相賀と秋雨は最初の部屋にあった時計を壊すことを決意する。

そして相賀の撃った弾で時計は壊れ、真犯人を殺した四人はそれぞれ、仮初の世界で真実を知りながら、平穏な日常へ戻ることとなる。

 

 

 

庭師は何を口遊む

→盛岡ナオ

 

三年前、とある事件で同僚を失っていた警察の盛岡ナオ、音無奏、鹿狩真幸、松田平輔の四人は昨夜に死んだ同僚の相模原涼の三回忌として集まっていた仕事の仲間である的場、猪狩、神童。そして情報提供をしてくれていた泉が、今朝相模原と同じ犯人である庭師と同じ殺し方をされ、発見された。

四人は捜査を進め、それぞれの過去の記憶を思い出していく中で、それぞれの確執に出会う。それは、酷く悲しいものたちばかり。

やがて真犯人である的場の元に辿り着き、四人と猪狩、神童の六人で的場を止め、庭師事件は幕を下ろす。……しかし、最初の相模原が死んだ庭師事件は、的場の犯行ではなかった。

それは、現実から目を背け、仮初の現実に逃げた四人の庭師達の罪だった。

 

 

 

庭師は何を口遊む(2)

→倅屋真

 

二週目探索者として参加。

結果的に、恐らく、全員が生き永らえて、的場は逮捕された。倅屋真は班員達や班長の仲を取り持とうとするだろう。しかし、それももうしかすると、無駄な事なのかもしれない

殺した罪は帰ってこないのだから

 

 

 

ラフへローの結末

→マレ・アルカヌム

 

ある日、ロンドンにて殺人事件が賑わう中。探偵事務所を設けるマレは、ロンドンととある寒村を繋ぐ地下鉄計画を止める為、寒村の調査に行ってくれという依頼を受ける。マレは、元々サイコメトリー…超能力者の家系で、手に触れたものの一番印象の強い過去が見えるというものがある。

その力を使い、なんとか依頼をこなそう。そう考え、彼女は寒村のラフへローという村へと赴く。その道中のバスにて、四人の初対面の男女、フローリー・トーマスやルーカス=アーバイン、山野根古やリカルド・M・ガルシアと出会う。各々ラフへローでの秘密を過ごすこととなる

村での調査は多少進み、嫌な予感がする中、二日目の朝になるとマレ達の元に、昨夜の成人式の主役であったウィリアムが殺されたという情報を聞き、マレ達は身の潔白を明かす為に調査に乗り出る。調査の最中、マレはサイコメトリーで現場に置かれてあった犯人が残したと思わしき置き手紙で見ると、その紙は顔が無い男と思しき人物が書いたものであるとわかり、マレは様々な思考を組み上げる。

そうして村の中で調査中、別行動をしていた山野とルーカスが、村の子供の秘密基地の中で村の子供のアーニーが殺されているのを発見し、村中は大騒ぎとなる。

やがて村人達に怪しまれ、宿屋の談話室に押し込められた五人は今後の方針を話し合う中で、マレはサイコメトリーで見た"アーニー殺しの犯人"であるトーマス・フローリーに話をもちかけ、彼もまた自身が殺したのだと自供した。そうして次に、ウィリアム殺しの犯人であるのは宿屋の主、ジェシカである事も話し、マレは自身はサイコメトラーであることを明かす。最初はあまり信じて貰えてないようだったが、話は進む。

そうしてマレ達はタイミングを見計らい宿屋から抜け出し、この村から出ようと模索するも大勢の村人…グールに囲まれ、マレ達は言われるがままにグール達と共に地下へと降りていき、そして、理不尽な裁判を行う。

何と話しても聞く耳を持たず、マレ達五人の中に"二人を殺した"犯人がいると言う村長の息子のウィリアム。その背後に静かに見える、ロンドンの街の権力者達。マレ達は、既にロンドンにグールという人外が潜むのだと知り、恐怖を感じる。

やがて話は勝手に切り上げられ、何故か宿屋の主のジェシカに自分達が犯人であると告げられ、村全体で生かすつもりなど無かったのだと悟った時、ジェシカは地下全体にガソリンを巻き、火をつけた。燃え盛る炎の中でジェシカはマレ達に逃げるよう促し、そしてマレ達は地下室から逃げ出す道を探す。

その時、マレは未来予知の能力を覚醒させ、その先の危機を予知し避けながら地上へと戻る。そうして、橋までやってきたが、川は氾濫しており危うい中、ジェシカが橋を引っ張り渡れるようにと希望を繋ぐ。

何とか五人渡りきり、次はジェシカだという時に、ジェシカは村のグールに足を撃たれる。先に行けというジェシカに早く来いと促す五人だが、ジェシカは最後に、ルーカスを「お兄ちゃん」と呼んで姿を消した。それぞれ胸に、その想いを秘めたまま、五人はがむしゃらに走り抜け、やがて保護される。

マレは数日の入院の後、ロンドンに戻り自身に依頼をしてきたライアーに報告しようとするもライアーは既に何者かに殺されていた。まさか、と嫌な予感を巡らせ探偵事務所に戻ろうとしたその時、マレの周りを見覚えのある金髪碧眼の若者達が囲んでいた。

マレは静かに、自身の弱さを憎みながら、ロンドン滅亡に加担することとなる。

 

 

 

杉山屋敷怪異譚

→盛岡ナオ

 

盛岡ナオはサボり先の喫茶店にて知り合った枯嶋宗一、檜皮善、沢田幸平の三人と共に檜皮の祖父の遺品整理を手伝うこととなり、田舎の海に囲まれた屋敷に赴くこととなる。

そこで四人の男女と出会う。四人で檜皮の祖父が残したというレリーフを見たり、雑談したり、ご飯を食べたりして過ごす。そうして夜中、客のひとりの佐藤の悲鳴と共にガラス窓が割れる音が聞こえる。四人それぞれ佐藤を探すも、部屋の中には誰もいない。ナオと檜皮が雨嵐の強い屋外に出て捜索すれば、外で死に絶えの佐藤が蹲っていた。佐藤は何か、遺言めいたことを呟きながら、海水のようなものを吐き出し絶命した。

何が起きたのかなど分からないまま、ナオは"他殺"の線を重点的に考えながら屋敷の探索をする。そうして少なからず見えてくる悪意に、ナオは犯人を絞っていく。

その中で、枯嶋と檜皮がたまに謎の変な、透明な泡のようなタコの触手を見たと言うも、ナオと沢田は見ておらず話の食い違いが起きる事も。

そうして二日目の夜手前、四人で集まり会議をしていると、四人の男女内の一人の藤田が紅茶を淹れたようで、ナオ以外の三人は口にする。怪しみ飲まず、飴玉を食べていたナオは免れたが、沢田と檜皮は体調を崩す。その原因を調べると、どうやら農薬が入っていたようで藤田は知らないと言う。ナオは薄々共謀の線を感じつつ、まぁ念の為と言いキッチンへ運良く難を逃れた枯嶋と共に探索する。その時、上の階から降りてきた男女の内の一人である金谷が、雨嵐の中出歩く人影を見たと言う。ナオはこれまた怪しすぎると思いながらも、職業柄無視する事も出来ず枯嶋と共に様子を見に行く事に。

そうして外に出て目星い姿はないかと探す二人の背後から、金谷はナオの首を絞める。何とか窒息に耐え、スマホを投げて枯嶋にもその危機を知らせる。そんな二人の危機の他にも、客室の方では沢田と檜皮が藤田に拳銃を向けられていた。

二箇所で同時入場危うい事態が巻き起こり、何とか逃がし逃がされを続けてナオは藤田を撃退する。ナオが金谷の方の応戦に向かおうとしたその時、屋敷から不可思議な詠唱が聞こえ、四人は導かれるように屋敷の中へ捜索する。そして部屋を突き止めたその時、屋敷全体から、泡のようなタコの触手が生え始める。

何とか逃げようとするも、沢田のみ触手に捕まる。体調的にも一番良くない檜皮には先に逃げてもらい、ナオと枯嶋で沢田を助けようと試みる。

何とか触手を倒し、死にかけの修羅を潜りまくった沢田を連れて屋敷の外に全員逃げ切れば、今度は海の方から、大きなその影が見えた。金谷はクトゥルフ様と呼ぶその影は、どこか、タコのようにも見えなくはない、かもしれない。

 

 

 

蒼穹

→盛岡ナオ

 

半年前、居酒屋の帰りに公園で迷子の少女を見かけた盛岡ナオと義長光太と陽乃小春と桑水流遼生の四人は、土屋天音と名乗る少女を家に返し帰宅する。

そうして半年後の春、とある事件を追い求める中で新しい事件が浮上し、捜索に乗り切る中でふと、ナオは足元に何かがぶつかる衝撃を感じ見ると、そこには半年前に出会った土屋天音が居た。天音はナオの足に抱きつきながら、「お母様」と呼んでいた。四人はそれぞれ困惑を見せ、天音という純白無垢な幼い子供に負け、お母様呼びを放置したまま天音を連れ回す事となる。

捜索も同時に進める中で、カウンセラーに天音を見てもらうとどうやら天音は精神的ショックの影響で健忘症を患っているのだろう、と話して貰えた。事件捜査の中で薄々、全員がどうなっていくのかを察する中、ナオ手作りのハンバーグを食べたいという天音の為にハンバーグ作りに奮闘するナオと光太。光太は焦げたハンバーグを作るも、ナオはダークマターと言わんばかりのおぞましい何かを作り上げてしまう。それを見兼ね同情した陽乃が全員分のまともなハンバーグを作り、なんとか夕飯は事なきを得る。

そうして、空が好きだと話す天音に星を教えるナオと光太の横で、陽乃は事件資料を見つめる。ナオは天音を寝かしつけ、ふと目に入ったロケットペンダントの中身を見れば、中身は天音の本当の家族の、幸せそうな写真だった。

次の日、天音の父親である上杉に話を聞き、恐らく天音宅に潜むのだろうその怪物に備え、四人は各々の武器を手に取り、天音宅に挑む。その地下に潜んでいたニョグダの落とし子との戦いに、四人は勝利し、ニョグダの落とし子…もとい天音の母親は絶命。そうして、ニョグダの落とし子を目にし正気を失っていた天音は気絶から目を覚ます。

ナオは手に、上杉の愛する家族へ宛てたその手紙を見て、葛藤し、不安になり、恐怖し、"またか"と悩みながら、天音を殺す決意をする。全員満場一致の結果となり、陽乃と桑水流は家を出る。ナオも最後に家を出ようとするが、日本刀を持ち自身に向ける光太に脅え、先程まで自身を「お母様」と呼んでいたその声は、「盛岡さん」と呼んで引き止め、助けを乞う。

ナオはそんな天音を蹴り上げ、動けなくした後に先に部屋から飛び出し、扉の前で、お父さんに助けを乞うその声を聞いたまま、その人であった天音の最期を見届ける。

ナオと光太はその後、上杉に会いに行きその事件の全貌を告げる。それを聞く上杉は最後に、確かに、二人にこう問いかけた。

「あなた方の正義とは何ですか?」、と。

 

 

コード・オブ・クトゥルフ:ロサンゼルス決戦

→ミスト・アルカヌム

 

クトゥルフを封印しに行く戦争。妻子死んだから隠居した。綺麗なうるさいミストさん。

 

 

 

羅生門、天露尋

→星岬闇人

 

大学の知り合い二人とその知り合いの作家の四人で事件に巻き込まれに行った。日本刀について詳しくなった。

不謹慎クズに若干磨きがかかった。あと発狂RP疲れた

 

 

 

嗤う人間師

→大道寺ナク(ナク・インユリア)

 

イギリスにて人間師の事件を追いかけることになり、キングを守るジャックに選ばれた。

けれどキングを守らずクイーンを守ったことにより、キングがジョーカーに殺され戦闘時は実質2対1となった。何とか倒す事に成功したが、のちにジョーカーは自殺をし、心が無い二人が呑気に昼にランチを食べながらファイルの名前や家族構成を見つめる事となった。

二人とも後日、もしかするとあの時ヨアンに誘われてたらヨアン側に着いてたかもしれないと後に語っている。心がある人たちが死んでしまったのがある種の原因にもなっている気はする。

 

 

心臓がちょっとはやく動くだけ

→義長正貴

 

生前、彼が見ていたかもしれない夢の話。

大切な人は生きてるけど、大切な親友を殺すことになってしまった。親友の心を持って帰ってきた。親友にも恋人にも愛されてるけどのちに意識不明となる事はまだ誰も知らない。

 

 

十六夜の夢(テストプレイ)

→薬師寺天野

 

とある宝を盗めば一億で売れ、それで国外逃亡ができると睨んだ天野はとある村へ訪れる。そこで出会った三人の男女と共にとある夜、竹やぶの中の光に包まれ平安時代へタイムスリップしてしまう。

自身の正体をばらさず何とか宝を探し当て、最終的に宝を手にするも自分の命惜しさと家族達の復讐の為に罪の無い者を殺すこととなった。ついでのように、想い人との約束も間接的に破る事になってしまった。

無事国外逃亡は遂げたが、一人の死と一人の殺害をずっと重く引きずったまま、イギリスに留まる事となった。




2019年9月17日時点現在までのまとめ。
途中の区切りで卓メンバーがガラッと変わりました故。

あと事細かに書くのが面倒になりつつある。ごめんな。


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小話
私はもういいよ


薬師寺透


少しだけ、ほんの少しだけ、わかってたんだよね

だってお嬢も、ママンも、いつも私と話す時少しだけ暗い顔するから。私バカじゃないから、わかるんだよ

多分、私、このまま消えちゃうんじゃないかなって

 

 

静かに落ち着いた夜に、私はガソリンの入ったタンクとマッチを片手に、喫茶店から出た。

目指すのは、私のおうち

 

 

ゆっくり、のんびり深夜の街を歩いて、少しずつ思い出していく

私と二人の出会いって、何だったかなぁ……何も思い出せないけど、でも、楽しそう!!!ってすっごく思った!だから、怪盗団に入って、宝石盗んだりして、お金貯めたり、困ってる人にあげたり〜………ああそう、一度だけ、何も覚えてないやつあったっけ

 

気が付いたら、知らないおおきな船の上に居て、私もお嬢もママンも、怪盗の時の服きてて、けどもう帰るぞってママンが言うから着いて行ったけど、二人に聞いても何も教えてもらえなくて…………けどけど、なんでか貯金箱の中に宝石がたっくさんあって!

 

よくわからないけど、あのよく分からないことが起きてから、私達の怪盗としての仕事も、喫茶店での仕事も活発になって………

 

 

そこまで考えて、少しだけ、不安に思ってたことを考えた

私って、あそこにいて、良かったのかなぁって。

 

 

もう随分歩いた街並みを見て、深夜にも関わらず光の溢れる窓を見つめて歩いた

 

心の中で、少しだけ、羨ましさが溢れて…胸が痛くなった。私は、本当のおうちは、知らないし、分からないし…本当のママも、パパも、誰なのか知らないし…ううん、知らないんじゃなくて、覚えてない、なんだろうけどね

 

でも私、これだけは言えるよ。

少なからず、本当のママとパパが生きてた時間は、私にとって最高の幸せの時間だったってこと。じゃなかったら私、エニアちゃんの兄妹の話や、山崎くんの元仲間の話を聞いて、すごく羨ましいって気持ちになること、無いと思うから

 

 

私一人だけ、誰も居なかった

その差を見て、私だけ二人とは違う世界に居るのかなって思っちゃった

私は、一つ壁を隔てた向こう側で、病院のベッドの上で、動けなくなっちゃうのかなって思っちゃった

それで、わたし、二人に忘れられて、本当にひとりになっちゃうのかなって

 

 

少しだけ零れた涙を拭って、私はスキップで夜の街を駆けて行った

早く写り変わる街並みは、まるで私にとっての走馬灯だった。テレビとかじゃよく、大切な思い出なんかを思い出していくんだろうけど、私の目には、脳裏には、何も映らなかった

 

きっと私には、なにもない

私は、何一つ、信じてもいなくて、面白さも感じてなくて、ずっと諦めてたのかな

 

走り疲れて、少しだけ立ち止まった

肩を揺らして息を整えながら歩いて、ようやく見えてきた私のおうち。おうちの前にたどり着いたら、おうちの中央には、看板が倒れていた。看板には、空き地の文字が書いてあった

 

敷居を跨いで、おうちの中に入って、私は看板の横に立った

 

 

 

「まま、ぱぱ、今行くね!」

 

 

タンクの蓋を開けて、タンクを私の真上で真っ逆さまにして、中のガソリンを浴びた。マッチに火をつけて、ゆらゆら揺らぐマッチの炎を見つめて笑ってみた

 

なにも、面白くなかった

 

 

 

「じゃあね。山崎くん、エニアちゃん」

 

 

 

右手を開いてみたけど、なにも、思わなかった




いずれ来る未来の話


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外の明るい未来について

薬師寺透と大方良樹


何も無い白い空間に、私は1人で座っていた。椅子がある訳でもないのに、何となくそこに椅子があるような気がして腰掛けて見たら、座れたから。

 

足をぶらぶらと揺らしていれば、ふと前方からかたん、と音が聞こえたから、私はそっちに目を向けた

 

 

そこには、ツリ目の男の子が居た。

男の子も私に気付いたみたいで、私を見ている

私は笑顔で問いかけた

 

 

 

「やっほー!!ねぇねぇ、ここどこかわかんない?」

 

「…さぁな。気が付いたらこんな空間に居て、何となく腰掛けたらお前が出てきた……お前は何だ?」

 

「私?私はねー、薬師寺透って言うんだよ!君は?」

 

「大方、大方良樹。………お前、実在するのか?」

 

「む、失礼だね〜。ちゃんと生きてるもん!」

 

「…の割には、見た目と精神年齢が合わないみたいだな」

 

 

大方良樹…りょーちゃんはそう言うと、足を組んで腕も組み、ため息を吐いた。りょーちゃんを見てると、ほんの少しだけ、ママンの事を思い出した

私は少しだけ感じた好奇心につられて、りょーちゃんに話しかけていく

 

 

「ねぇねぇ、りょーちゃんはなんでここに居るかわかんないの?」

 

「…さぁな。記憶がすっぽり抜けてる」

 

「う〜ん…私も覚えてない!!!」

 

「自信たっぷりに言う事じゃねェだろ…」

 

「でも、どうしよーもないよね〜。とりあえず気ままにさ、話しよ!りょーちゃんは好きな食べ物とかないの?」

 

「り、りょーちゃん………まぁ、最近はルマンドとかよく食べてるか…?」

 

「るまんどー!私はねー、ママンの作ったケーキ好きー!美味しいんだよ!喫茶店に来てねりょーちゃん!!」

 

「…何て店だ?」

 

「…………わかんない!!!!!」

 

「意味ねぇじゃねぇか」

 

 

私はケラケラと笑って足を揺らした。

りょーちゃんはそんな私を見て、少しだけ目を細めた。そんなりょーちゃんに、私は話しかけていく。

 

 

「りょーちゃんは、仲間とか、友達っている?」

 

「…嗚呼、一応」

 

「私もいるんだー!えっとね、ママンとお嬢!!

ママンは料理もできて掃除も洗濯も出来て!凄いんだよー、ママンは何でも出来る!お嬢はねー、ちっちゃくて可愛いけど、手品でこう、ぶわーって!!!!すごいんだよ!」

 

「………」

 

「でもね、私、多分なんだけどね、そこまで二人のこと好きだとも思ってないな〜って思うんだー。だって私、きっと二人が危険な目にあったら二人の事見捨てるもん」

 

「……」

 

「私、友達や仲間や豚さんがいても、何も面白くないの。けどね、りょーちゃんは楽しそう!好きな事見つかってて、仲間も居て、友達も居て、仕事にやり甲斐見つけてそー!」

 

「…」

 

 

私はりょーちゃんに向けて、笑った。

りょーちゃんはそんな私を見て、顔を顰めていた

 

 

「りょーちゃんは幸せそうだよね」

 

 

私は足を揺らしながら、りょーちゃんを見た。

りょーちゃんはそんな私を見て苛立ったように足を組みかえて、口を開いた

 

 

「…そういうお前は、呑気だな」

 

「のんき?」

 

「お前みたいに、俺は楽観的じゃない。俺はずっと、背負ってきた、隠してきた、二つの顔で誤魔化してきた」

 

「………」

 

「全部、殺してしまったから、償う為に俺は誤魔化してきた。お前みたいに手探りで幸せを探そうなんてしない、俺はもう、幸せなんかいらない。望まない。」

 

「……」

 

「腹が立つ、って顔だな。そう思えるだけお前は幸せな癖に」

 

「うーん、私そんなに幸せじゃないよー?」

 

「仲間を誤魔化してないからだよ」

 

「心は誤魔化してるよ、もう何年も」

 

「居ない両親と従兄弟の影を追って?」

 

「殺した家族と畏敬を払ってるのに幸せは望んじゃいけないものなの?別にいいじゃん、誰も嘘だらけの君なんかの事を許さないなんて事しないよ。だってみんな、りょーちゃんの事知らないもんね!」

 

「お前はそうやって、また他人を殺すつもりか?無意味な純粋を装って誰かを不幸にしてまでお前は幸せになりたいのか?他人を踏み台にして?」

 

「だって私、幸せになりたい」

 

「幸せはいらない」

 

 

揺らした足の指に、軽く水が引っかかる。いつの間にかこの空間に溢れてきた透明の水は、もう私の足元にまで来ていて、りょーちゃんの組んだ足のくるぶしまで届いていた

 

 

「………ねぇりょーちゃん、私達、何でここに居るんだろうねー」

 

「……」

 

「多分ね、こうやって、記憶が共有されてることも、ほんとはおかしい事なんだよ。でもそれが起きちゃってる」

 

 

少しだけ、りょーちゃんは目を細めて足元の水を見た。私もつられて水を見つめたら、ふとりょーちゃんが話し始めた

 

 

「………俺達、昨日の…夜に、出掛けたよな。同じように、別の仲間と一緒に」

 

「うん、そうだね」

 

「…その後俺達は、………迷子にならなかったか?…何か、声に誘われて」

 

「…こえ、」

 

「…沼の匂いがする、河童のような奴を、見た。そいつは俺を、………食べた?」

 

 

脳裏に、暗い路地裏で、私の真上から襲いかかる何かを見た記憶が掠めた。そいつは私を、私達を捉えて、こう言ってた。「あの方を復活させる為の贄だ」って、そう言ってあいつは私達を呑み込んだ

 

私も、りょーちゃんも、それに抗った記憶はある。けど、私達には無理だったんだ

だって、私達は、少なからず「自分自身が生きる事は考えていなかった」から。抵抗する意味が無いと気付かされた時、気づいたら私達は一緒の空間にいた

 

 

 

「……ッハ、ダブルフェイス?…よく言った名前だな。今の俺にぴったりだ」

 

「あはは!私もだよー、夾竹桃……花言葉は危険だとか、そんな意味があるからねー。もしかして私とりょーちゃんって、この為だけにこの24年間生きてきたりしてねー」

 

「それじゃあ何の因果だよ………"神様"でも居るってか?」

 

「さぁねー。けど、案外近くにいたりしてね、神様」

 

 

私とりょーちゃんは、椅子の背もたれに寄りかかって、空を見た。空には、大きな満月みたいな瞳と暗い夜空が見えた

 

 

「…山崎くんとエニアちゃん、生きられるかなー」

 

「さぁな。うちも、カール・ビとメザリアが心配だな……Fが特に、責任感強そうだ」

 

「ふふふ、お互い心配な仲間を持ってるんだね。まぁ、運命に身を委ねるしかないってやつだよ」

 

「………そればかりは、お前に賛成だ…薬師寺。」

 

 

少しだけ、私達は目を合わせて、この体に、運命に抗う事を決意して、彼らにほんの少しの助言を与えることを選んだ




ナガアエに乗っ取られたコンビ、ナガアエコンビの話。
ある絵を元に書き込んだので中々に変。


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船の上で

星月十夜と山葵と岡田モータスとウツロと多田野奏士


朝早く、家に誰かがやって来た。当の私は自分の部屋の中でオンラインゲームをしており、変わらない自宅警備生活を送ってたつもりだった

 

けれど突然、部屋にお兄ちゃんが入ってきた

 

 

「おい十夜、お客さんだ」

 

「え、わ、私に…?友達なんかいない私に…???」

 

「それ自分で言ってて悲しくないのか」

 

 

いつも通り、黒いマスクを身につけたお兄ちゃんに腕をひかれ、いいから早く行ってこいと背を押される。やめて、まって、私ここ数日ろくに歩いてないから転けるよ…!!!

そんな私の切実な思いなど知る気も無いお兄ちゃんに背を押されながら玄関口までやってきたら、見覚えのあるような、無いような、男の子二人が居た

 

 

「よぉ、星月」

 

「久しぶり、何ヶ月ぶりだろうね」

 

「………す、すすすすいません、どちら様ですか…」

 

「忘れるの早すぎない!?俺だよ、岡田モータス!同じクラスで、3ヶ月くらい前に手紙持ってきたじゃんか!!」

 

「諦めろ岡田、それ去年もやったろ」

 

「な、なんか、見覚えは……あります…多分………」

 

「な。そういうこった」

 

「納得いかねぇ…」

 

 

岡田モータス、と名乗った青年には確かに、薄らと見覚えはあった。金髪で青目の、外国人のような名前の男の子。…そういえば、頭が良かった、ような気は、する

そして、その隣に居たのは確か………山葵、だっただろうか?見た目の道着で思い出したが、確か弓道部だった筈だ。………何で道着着てるの?今外冬間近だよ?馬鹿なの?

 

 

「って、そうじゃない!ほら、星月さん行くよ!」

 

「え゛、ど、どどどこへ…」

 

「いいから、ほら行くぞ」

 

「えっえええ、ち、ちょ、お兄ちゃん!!」

 

 

何故か、急に腕を掴まれ引かれた。それに驚いて後ろに居るだろうお兄ちゃんに声を掛ければ、お兄ちゃんの居る方から何かが飛んできた。それに驚いて思わず無意味に姿勢を低くしたら、飛んできた何かを山くんが見事にキャッチしていた

それを見たら、ボストンバッグだった。ごめんどういう事なのお兄ちゃん

 

 

「お、おお、お兄ちゃん!?コレナニ!!?」

 

「いいから行くよ〜、修学旅行」

 

「シュウガクリョコウ!!!?」

 

「新幹線乗るぞほら」

 

「シンカンセン!!!!!??」

 

 

唐突に、参加するとも行くとも言ってないのに修学旅行に行くと言われ腕を引かれ、混乱していればボストンバッグに目を向け、ようやく気づいた。

後ろで恐らく、マスクの奥でしたり顔を浮かべてるだろう兄に向けて、私は顔だけ振り返り叫んだ

 

 

「裏切りやがったな、親父にも裏切られた事無かったのに!!!!!」

 

「星月、お前それ言いたかっただけだろ」

 

「つい…」

 

 

 

 

後にも退けず、大人しく2人に連られて新幹線に乗り、目的地へと向かった。何やら船着き場に行かなければならないらしく、しばらくの間三人で色々話していた

久しぶりに家族以外と話すから、少し緊張したけど一応何度か話したことのある相手だからか、少しだけだけど、慣れてきた。

 

そうして目的地の船着き場まで来た時には、沢山の生徒や他の客で賑わっていた。私は思わず2人の影に隠れるように身を縮ませた

 

 

「ひ、ひえ…」

 

「他の客も居るんすね」

 

「パッと見でも、500以上居そうだな」

 

「ゴヒャク…」

 

 

圧巻、といった人数に思わず復唱して船を見上げた。豪華客船、とは言い難いが…それなりの人数が沢山入るようだ

中には車だとか、食料を運ぶ為のコンテナだとかも入るんだろう。修学旅行、としか聞いていないが、どうなるのだろうか

 

 

「とりあえず、船ん中入ってゆっくりするか…あ、船酔い大丈夫か?」

 

「俺は平気っすよ、星月さんは?」

 

「わ、私も大丈夫…たぶん……」

 

「…まぁ、何とかなるだろ」

 

 

三人で並んで船の中へ入っては、船の中を散策する。船の中は広々としていて、私みたいな背の高い人が居ても普通に歩き回れる程度には天井も高かった

 

 

「幾らつぎ込んだらこんな立派な船に乗れるんでしょうかね…?」

 

「課金みたいに言うなよ」

 

「課金みたいなものじゃないです?」

 

「まぁあながち間違いではないような…?」

 

「納得するなよ岡田…」

 

 

三人で並んで話していれば、ふと岡田くんが思い出したように話を切り出した

 

 

「あ、そうだ。そういえば今回の修学旅行、なんかどっかの有名なチェロ奏者を招いたとかって聞きましたよ

もしかすると船の中にいるかもしれませんね、その人!」

 

「チェロ奏者ぁ?」

 

「総合金額で爆死しませんかね…」

 

「SSRレアくらいは出そうっすね」

 

「…まぁ、時間潰し程度にはなるかもしれねぇし、そのチェロ奏者も探しながら歩き回るか。星月の運動不足解消にもなるだろ」

 

「ヴッ申し訳ない…?」

 

 

顔を少し顰めて言えば、山くんは構わねぇよと言って歩き出す。くそぅ、優男め…こんなデカいだけの引きこもりを連れてくるなんて何て優しいんだこの優男達め………リア充して幸せになれ……(?)

そんな念のような、良心の欠片のようなことを考えては歩いていく2人に着いていく。するとふと、岡田くんが立ち止まった

 

 

「…どうしたの?」

 

「いや…音楽聞こえません?」

 

 

岡田くんに言われて聞き耳を立てると、確かに何処からか……恐らく、そう遠くない場所から、チェロの音が聞こえる

 

 

「あ、もしかして話してたチェロの人、かな?」

 

「何も聞こえねぇ…」

 

「まっ、あっち行ってみましょうよ!」

 

 

岡田くんが山くんの手を引いて小走りで歩いていく。そんな二人の後ろをついて行けば、辿り着いたのは広間だった

広間の奥には、少しの人集りがあって、その人集りの中心には、大きなチェロを優雅に弾く男性の姿が見えた。男性は楽しそうに、穏やかな音色を響かせている

 

 

「あ、いましたね…!」

 

「近くに行きましょう」

 

「だな」

 

 

三人で、無意識に小声で話しては近寄る。近くに椅子が点々とあり、私達は固まって椅子に座った。少し、足が邪魔な気がしたけれど、そんな事も気にしないくらいには、私は演奏に夢中になっていた。

チェロの長い演奏が終わると、広間には静かな拍手が響いた。そんな拍手の中で、男性は薄く微笑み「有難うございます」と呟いた

 

 

初めての生演奏に、私は少し興奮して隣に居る山くん達に凄かったね、と声をかけようとした。けど、隣に座っていたのは、山くん達じゃなくて知らない、身長が私くらい高い、紫のメッシュが掛かった男性だった。

私は少しの驚きと共に反対側の隣に目を向けると、隣には山くん達が座っていた。身長が同じくらい高いからか、見間違いをしていたみたいだった

 

少しだけ恥ずかしさを感じながら、私は二人に「凄かったね、演奏」と話しかけると、二人とも満足そうに笑って頷いた。そうしていると、また演奏の二曲目が始まろうとしていた

 

 

私はチェロ奏者の人に目を向けて、次の演奏が始まるのを心待ちにした

 

 

 

 

途端、視界が暗転した。それと同時に、体が大きく揺れた。周りの観客の悲鳴も聞こえて、何が何だと考えを巡らせる事無く、隣に座っていた岡田くんが声を上げた

 

 

「船が揺れてる!!皆さん、屈んで!!!」

 

 

岡田くんの声で、ようやく船全体が大きく揺れてることに気付いた私は慌てて椅子から降りて屈もうとした時、また船が大きな音と共に揺れた。そうして体勢を保てず、私は床に転がった。

慌てて山くんが大丈夫か!?とかける声と、大きな、壁が割れるような音と共に私達は水に流され、やがて意識を失っていった




シナリオの導入


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24歳多すぎるしつい

24歳探索者(よそ含む)達の雑談


透「わっ!!!……あれ、ここどこ?」

 

山崎「……あ?…姫?それに、誰だ、周りの奴らは」

 

大方「…デジャヴを感じる………」

 

アモル「あらあら、既視感が」

 

三義「…うぅ、なんか、…人が沢山?」

 

武田「な、なんなんだ……?」

 

夕立「………全員目が覚めたようだな」

 

 

 

 

夕立「……!紙が降ってきた…『みんな24歳です、雑談してくれたら元の家に帰すぞ。ニャル近より』…なんなんだこれは…」

 

透「雑談!?お話するの!!?しよー!!!!」

 

山崎「姫はもう少し落ち着いてくだせぇ…」

 

アモル「ふふふ、たまには良いかもしれませんよ?束の間の息抜きって事で。」

 

武田「…まぁ、グダグダ言ったって仕方ないよな。俺は武田、こっちは友達の三義だ」

 

三義「あ、三義です。よろしくお願いします」

 

大方「俺は……大方。」

 

夕立「…はぁ、仕方ない、か。俺は夕立凪だ、凪とでも呼んでくれ」

 

アモル「私はアモルと申します、以後お見知り置きを」

 

山崎「俺は…山崎です。こっちのアホっぽいのは、俺の友人の薬師寺です」

 

透「アホじゃないもん!!!」

 

アモル「ふふ、元気なのは宜しい事です」

 

武田「…ちなみに、アモルさん」

 

アモル「何でしょう?」

 

武田「貴方は、その……女性ですか?」

 

夕立「俺もそこは気になったが、どっちなんだ…?」

 

アモル「ふふふ、ご想像にお任せしますね」

 

透「なんかママンみたい!!ねっ、ママン!!!」

 

山崎「ママン言うな」

 

三義「あ、でも何かわかります!山崎さん、何となく世話焼きって感じが…」

 

大方「苦労人の間違いじゃねぇか?」

 

山崎「言ってくれるな………(そっ胃痛薬)」

 

三義「あっ…(察し)」

 

 

 

 

夕立「…おい大方、君はさっきから何をしているんだ?」

 

大方「ああ、ちょっと、スマホがな……」

 

透「おーちゃんすまほ依存しょー?」

 

大方「お、おーちゃ………ゲームが好きなだけだ」

 

山崎「うちのアホがすいません……」

 

三義「…あ、そういえば皆さん、ご職業は?」

 

山崎「」

 

大方「」

 

透「えとねー、かい」

 

山崎「俺は喫茶店やりながらスタントマンやってて、姫…薬師寺は…夜の仕事やってますね」

 

三義「よ、夜の仕事!?」

 

武田「見かけによらずやるな、あんた…」

 

透「夜?昼でもやるよ?」

 

三義「ヒルデモ!!??」

 

山崎「あ、あー、語弊がちょっとありましたね……こいつがやってるのは、正確には…その…」

 

透「SMじょーおーやってるよ!!!」

 

三義「エスエムジョウオウ!!????」

 

大方「おい、山崎…お前の友達なんだろ、道正してやれよ………」

 

透「年収これくらい!!!!」

 

アモル「下手な仕事より高いですねぇそれ。天職ってことなんですね」

 

透「財産二億!!!!!!」

 

夕立「ディレッタントやってても何も違和感ない年収と財産だなそれ」

 

大方「(使い道によってはこいつの家に盗みに入るのもいいのか…)」

 

山崎「(個人情報言いふらしすの不安ですからやめてくだせぇ…)」

 

三義「な、なんか闇を垣間見た気がする…」

 

夕立「…ま、まぁ、次は俺が言うか。俺は物理学者をやっている」

 

三義「あ、まとも…」

 

アモル「学者と言う事は、相当頭は良いのですね」

 

夕立「普通だろ」

 

武田「サラッと貶されなかったか?特に薬師寺」

 

透「え、ゆーちゃん馬鹿にしたの?!」

 

アモル「どちらかと言うと武田さんが馬鹿にしてましたね」

 

透「たっちゃん酷い!!!」

 

武田「そのあだ名本当になんなんだ…?あ、俺はボディーガードマンやってるな」

 

夕立「スタントマンといい、力仕事派もいるんだな。」

 

透「私も力仕事だよ」

 

三義「聞きたくない!!!!!」

 

アモル「ふふふ、私は有名企業の正社員として働いています」

 

三義「へぇ、社名は?」

 

アモル「乙女の秘密、という事で」

 

夕立「乙女ってか、俺達同い年なんだろ」

 

アモル「野暮、って事ですよ。守秘義務ですので」

 

透「私も」

 

山崎「三義さんは何してるんですか?」

 

三義「あ、えっと、ちょっとお巡りさん、やってたり…」

 

大方「えっ、お前もか?」

 

三義「え、大方さんもだったんですか!?」

 

山崎「(ちょっと待ってくれ)」

 

透「(やばいねー…)」

 

アモル「あらあら、では私前科あるので捕まってしまいますね」

 

山崎「!!??」

 

三義「えっ」

 

大方「……現在進行形か?」

 

アモル「いいえ、もうとっくの昔の事ですから。それに、日本国内ではやってませんから、日本の法律では捌けないはずですよね?」

 

大方「何やったんだ、その見かけで」

 

アモル「賭け事をやっていただけですよ」

 

三義「人は見かけによらずを今日だけで凄く学びそう…」

 

夕立「実質、まともな職に就いてるのは俺と山崎と三義と大方と武田だけ、ってことか」

 

武田「それでも多いぞ」

 

アモル「あら、酷いですね。私は今はちゃーんとした職に就いてますよ?」

 

大方「前科持ちが何言ってんだよ…」

 

透「私もまともだよ!!!!」

 

山崎「姫は裏が裏すぎるんですよ…」




力尽きた。ついったにあげてたものを適当に晒しただけのものです


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追ってた背中は呆気なく焼かれた

光道忠明


小さい頃からの憧れで、夢だった。そこには違いない

ただ俺は、親父の背中が好きで、仕事に熱心な親父を見て、俺は科学捜査を志した。

 

 

 

 

黒いスーツを見に纏い、暗いお通夜の中で、俺は一人で酒を飲んでいた。本当は苦手な方なのだが、今日ばかりは、班長も良いって言ってくれてたから、飲むことにした。

久々の酒は何だか甘く感じて、舌触りがサラサラとしてるような、炭酸の泡の感覚が酷く残った。こく、と喉を鳴らしコップに入っていた酒を飲み干し、ふぅと息を吐いた。

 

1杯飲むだけで、顔が火照ってる気がする。

ぼうっとした意識の中で、小さい頃の記憶を思い出した。

 

 

それは至って普通なもので、親父はいつも仕事で忙しく、身体も弱いため、あまり外に出て仕事をする事が出来なかった。代わりに、家の2階の東側の数室全部を仕事部屋にして、大抵東側の部屋を行き来して引き篭ってた事を俺は覚えている

 

小さい頃は、よく親父に遊んで欲しくて、親父の仕事部屋に勝手に入ったりもした。それで危ないからと、忙しいからと怒られるだけで、俺は何だか嬉しかった。普段、あまり話せないからと、俺はそれだけで満足していた。

たまに仕事が落ち着いて、一階のリビングに降りてきた時は、めいいっぱい沢山話をした。「父さんのすごい話、沢山聞かせて!」なんて言って、父さんは話せる仕事の話だけを掻い摘んで、小さな俺にもわかるように話してくれて。

俺にとっての科学、化学は、薬学は、医学は、生物学は、全て父さんの魔法のようなものだった

 

 

そして一度、父さんは倒れたことがあった。

仕事で無理をしすぎたからだった。元々父子家庭だったのもあって、頼れる人が父さんしか居なかった当時の俺は、すごく焦った。どうしたらいいのかなんて、散々父さんから言われてたのに、いざとなれば頭の中が真っ白になった。

 

ひたすら父さんの名前を叫んでいたら、俺の声を聞いて不審に思ったのだろう近所の人が心配して様子を見に来てくれたおかげで、なんとか父さんは無事で事なきを得た。

それ以来、少し父さんに過保護気味になった、ような自覚はあった。

 

 

俺が高校を出る頃には、父さんは病院に入院しながら仕事をするようになった。

その頃には父さんも歳で、もう、52歳だった。バイトをしながら、たまに入院してる父さんの顔を見に行ったりして、父さんは懐かしい、なんて言うような笑みを浮かべて俺を迎えてくれた。

 

 

 

「光道さん、起きてますか」

 

 

 

ふと、声を掛けられた気がして、俺の朦朧としかけた意識は現実へと戻り、少しの冷や汗と共に俺は声の主へ目を向けた。

声をかけてきたのは倉だったようで、倉は隣に座り込みながら俺の顔を伺っていた。俺は目を細めながら、コップをテーブルに置いて呟くように答えた

 

 

「起きとるで」

 

「何言ってるんですか、今寝かけてたでしょうよ」

 

「んー、まぁ、そうとも言う」

 

「寝かけてたんじゃないですか結局」

 

 

倉はそう言うと、笑ってお茶の入ったコップを飲んだ。

倉は、いや、倉が親父の教え子である事を知ったのは、気付いたのは、丁度捜索の途中だった。親父が死ぬ、直前でもあっただろう頃だった。

ふと、倉が言っていた、尊敬する師匠のような人という人物が誰なのか、津雲との電話の後に、考え付いた。病院に居る倉の先生と、というくだりを聞いて、ちょうど俺は親父が病院で働いていることを思い出したからだった

 

 

俺はその場にいた訳じゃない。

けれど、倉の様子を見ただけでも俺は、きっとあの場に居なくて良かったんだと察したような気もした。俺はあの時、自分でも信じられないくらい、気持ちが落ち着いていた。落ち着いていた故に、よく、親父が死んだのだという事実を、現実を、理解ってしまった。

 

光道という医者が死んだ、という話を共有のメールで見た時、頭が真っ白になった。

自分でも分かるくらい、冷や汗が、恐怖が、混乱が、不安が、混沌が、絶望が、感情を支配していた。ふらりと一寸だけ視界が眩んで、そのまま倒れ込んでしまおうかとさえ考えたけれど、すぐに視界は現実なまでに鮮明になって、俺の背中を支えた

 

 

耳元で、父さんが、「まだだ」と言った気がしたからだった

 

 

 

 

「…光道さんが、先生の息子だなんて、全然知らなかったっすよ」

 

「…俺も、直前まで気付かへんかったよ。ビックリしましたもん、まさか、なんて思いましたし」

 

「…俺もやわ。資料見とったら、先生の名前の苗字ん所に"光道"……って、自分の目をちょっと疑ったって」

 

「自分で言うんもなんやけど、似てへんやろ?俺と親父」

 

「……まぁ、先生のあの温厚さと比べたら似てない感じありますね、アンタと先生」

 

 

 

倉はそう言うと、コップに注ぎ足したお茶に口をつけ、飲み干した後に、俺の目元を指さして笑った

 

 

 

「でもよく見たら似てるんだよなぁ………アンタの目と、先生の目は、よく似てますよ、本当に。………真実を目にしてやるって、真っ直ぐな目は、本当に似てる」

 

「……10年来やっけ、親父と」

 

「そうっすよ。俺に検視官としての仕事を1から10まで全部教えてくれた、大師匠」

 

「…俺、独学やねんけど。羨まし〜、ちくしょう」

 

「へぇ、てっきり先生から教わったもんなんやと」

 

「親父に言うてへんかったもん、同じ科学捜査志してるとか。就いてからやし、言うたん」

 

「…反対されなかったんすね」

 

「それどころか笑顔やったよ、笑って、よくやったなってめっちゃ褒めてくれたわ」

 

「…先生も、同じなんすよ、本当…………本当に」

 

 

倉は、笑ってた表情を少し歪ませて、乱雑に短い髪を掻いた。あぁもう!!!と、雑に叫んだ倉はそのまま床に寝転がり、目元に腕を乗せた

 

 

「……なんで、先生なんだよ」

 

「…知らへんわ」

 

「なんで先生が死ななきゃならなかったんだ」

 

「俺に聞くなや」

 

「………なんで、先生なんだよ」

 

「……」

 

「…先生、この間会った時、いつもと変わんないで、笑顔で迎えてくれたんだよ」

 

「…親父、よう、笑う人やったしな」

 

「……仕事はどうだって…何がわからなかった?って聞かれて、ほんとう、全部、バレバレでさぁ」

 

「………父さん、人の心知るのに長けてる言うてたから、俺も憧れたもんやわ」

 

「…本当だよ。本当に、なんで、なんで」

 

「…聞いたって戻らへんやろ。…仕方ないやん、全部。ただ、運が悪かっただけやん」

 

 

倉は、俺に目を向けて、問いかけた

 

 

「……津雲、殺そうとか、思わなかったわけ?」

 

「…ちょっとだけ、考えた。けど、ちゃうんよなぁ……ほら、あれやで。…父さんの居る所にアイツが行くとか、そんなん嫌やん?それやったら、先に俺が死ぬって。……まぁ、そんなんせぇへん、と…思うけど」

 

「……思う、かよ」

 

 

倉はそう言うと、重たい体を起こしてから、今度は酒の入った缶の蓋を開けて、俺に向けた

 

 

「アンタが死なないでくれて、1番良かった。"根こそぎ拾ってきて"くれて有難うな、忠明」

 

「……死なれへんやん、それ」

 

 

 

俺は、空の缶を手に持って、倉の持った缶にぶつけてから缶を握り潰した




焼却炉で焼かれた骨を拾って、二人はきっと前進する。


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生まれたての赤ん坊

長谷部要(倅屋要)


「会いたくたって会えねぇ人だっている」

 

 

影山さんがそう言った時、俺はどうしても"前"のあの人達の顔を思い出してしまって、大事な時だってのに少しだけ思考が停止した。

 

 

 

 

からん、とドアに取り付けた鈴の音が聞こえて、俺達は一斉にクラッカーの紐を引いた。そうして響く高い音と共に、ファクター…もとい岡本さんは驚いたように目を見開いて立ち止まった

 

 

 

「退院おめでとうございます、岡本さん!」

 

「おめでとうさん」

 

「退院おめでとう、岡本」

 

 

そう言った水上さん、影山さんに続いて俺も笑顔で出迎える。そう、今日はファクター…もとい岡本さんの退院日だった。あれから2週間前、あの日美術館にて奇妙な出来事……っつーか十中八九ニャルラトホテプとか名乗ったあの男の遊びで始まったのだろうあの事件。

あの事件で出会った医者である水上さんと、旅人らしい影山さん、そして記憶喪失であった故にファクターと偽名づけられた岡本さん。あの奇妙な出来事は未だに夢のように忘れられないが、それでも俺達はあの悪夢から生還したのだと、改めて実感できた。

 

2週間前に、岡本さんが2週間後に退院だと聞いてなんとか影山さんを留めて、山崎さんの喫茶店でなんとか頼み込んでアルバイトって体で2週間後の退院祝いの準備を進め、そして今日に至る。

この退院祝いのために今日は喫茶店を無理言って貸切にさせて貰い、料理等の準備に山崎さんや透さん、そしてエニアも手伝ってくれた。

改めてこの三人には返し切れない恩があるなと思う

 

 

 

「ほ、本当に退院祝い、してくれるのか…」

 

「当たり前だろ!しない訳ねぇだろむしろ」

 

「なんてったって、私達"仲間"ですから、ね」

 

「友達でよくねぇか、それ」

 

「仲間の方が響きは良いでしょう?」

 

 

出入口で呆然と立ち尽くす岡本さんの背を押し、テーブル席に座らせた後に俺は笑って言う

 

 

 

「さて、岡本さん。退院祝いだ。俺は元々病院通ってた時期あっから知ってっけど、病院飯は不味かったよな」

 

「え?あ、ああ……まぁ仕方ないな。一応、"栄養失調"が原因だって話になってるが……」

 

「せっかくの退院祝いなんだし、美味い飯やケーキ食べたいよな?」

 

「まぁ、そうだな…」

 

「…って訳で、岡本。特大ホールケーキだ」

 

 

 

そう、俺の背で隠していた、影山さんが持ってきたホールケーキを見せるように俺は右に体をずらし、そのホールケーキを見せた。ホールケーキは無難な苺のケーキで、かつ岡本さんの先輩である美術館の展示主である彼女から岡本さんの好きなケーキが苺ショートケーキである事は事前に把握している。

 

 

 

「……!!!え…いや待て、でかくないか!?」

 

「あたりめぇだ、15人前だからな」

 

「食えるか!!??」

 

「安心しろ。残ったとしても店の従業員が美味しく頂く予定だ」

 

「それほぼ決定事項じゃね…?」

 

「山崎さんの作ったケーキが美味いのが悪い」

 

「ここの喫茶店のマスターのケーキが美味しい事は事前に調査済みですもんね、長谷部さんによって」

 

「なお持ち帰りも可」

 

「万能だな…」

 

「我が喫茶店、今後ともぜひ御利用ください」

 

「サラッと出てくんなよマスターさんよぉ…」

 

 

 

いつもの営業スマイルを浮かべてそれでは、と呟いて店の奥へと消えていく山崎さんを見送ると、影山さんは「忍者かよ」と呟いた。忍者っつーか怪盗なんだよなぁ………

 

 

とはまぁ言えず、苦笑いを浮かべることしか出来ない。そんな光景を流し見て、俺達は再び退院祝いを始めた。

ケーキを切り分け小皿に盛って食べては、俺達は岡本さんから美術に関するあれそれを聞き始めた。

 

俺自身はあまり芸術に関する知識は疎いのもあってあんまり興味は無かったが、まぁ以前…"前"の場所で可愛い後輩がピアノを趣味としていたという事もあり、多少芸術への関心は今の若者よりはあると思っている。…いや、精神的に若者なのかよって話は一旦置いておくけれど

 

 

 

「ふーん、技法かぁ…」

 

「まぁ、あの時のあの絵は十中八九技法云々より、"手癖"に近い所はあるだろうよ」

 

「長年描き続けてきたゆえの、染み付いた癖って訳ですね」

 

「…ああ、なんかそれ、わかるかもな」

 

 

ケーキの上に乗っていたいちごを一口で食べては考える。

例えば話は変わるけれど、俺の髪の長さもその一つに入るだろう。俺は所謂トランスジェンダーとかってもので、体は女だが心はれっきとした男だ。

そんな俺だが、髪だけはずっと伸ばしたままだった。勿論、短く切った時期もあったが………ある人にそろそろ髪を切りたいという世間話をした時だった

 

 

 

『要ちゃん、髪綺麗だよね。本人の趣味だし仕方ないけれど……切っちゃうの、なんだか勿体ないなぁ』

 

『分からなくはねぇな。よく言うもんだ、髪は女の命とかって……俺にはさっぱりだが』

 

『零くん、例え僕らが男だったとしてもだよ。身嗜みはちゃんと整えなきゃいけないよ、誰がどこで見てるか分からないからね』

 

『最早口癖だな、それ』

 

 

 

二人に褒められたのが嬉しくて、何故だか俺は、小さい子供みたいに喜んでその日から髪はなるべく切らないようにしてた。髪も態とボサボサのまま放置して、二人に櫛で解いてもらうのをいつも、楽しみにしてた

 

まぁあの"一週間"以来、長い髪を利用して耳元を隠すのも癖になってしまったが。

俺はふと、既に髪で隠された耳に気が付いた。髪の上から耳を触っても、あの歪な耳ではもうない。俺はようやく、本当の人間になれたのだと改めて認識した。

耳に髪をかけ、ケーキの最後の一口を食べ終え、隣で騒ぐ岡本さんや水上さん、影山さんを見た

 

 

三人を見てるとなぜだか、あの一週間の彼らを思い出す。

 

噴水広場で俺に目線を合わせ笑顔で話しかけくれたバンドマンの彼や、学校で馬鹿みたいな八つ当たりをしても仕方ないというような笑みを浮かべ許してくれた後輩や、俺が一人で街に出て帰ってきたのを見て本気で心配し安心してくれた大学教授の彼や、俺のさいごの我儘を赤の他人だったのに"仲間"の頼みだと言って赦してくれたハッカーの彼も

 

 

それだけじゃなかった

 

学校に閉じ込められたのにそれでも俺や後輩の心配をして外に出ようと試みた友達の彼も、喧嘩したのに何も聞かずに許してくれて俺を受けいれてくれた心療内科医の彼も、俺のことを全部話した上で大切な友達だと言ってくれた内科医の彼も、二度と生きた上で会うことが叶わなかった兄や、深夜に一人で出歩く俺の事を何も聞かずに付き合ってくれた警察の彼も、俺と最期に出会って大切な弟だと叫んでくれた兄も

 

 

みんなみんな、俺が知らなかっただけで、俺の味方だった。俺は一人じゃないんだと、人は皆が醜いわけでは無いのだと

 

それを教えてくれたあの一週間の彼ら

 

 

その彼らと何故か、三人は影が重なって見えるのだ

それは、あの屋敷で見た彼らも同じ事だけれど。

 

 

 

もう二度と、会えない

 

 

もう二度とあの場所に帰って彼らと笑うことは叶わない。もう二度と彼らと言葉を交わすことも叶わない。

何故なら彼らはもう、しんでしまったから(ころしたから)、どこかにきえてしまったから(なくしたから)、せかいがたがえてしまったから(けんかしたから)

 

 

 

それでも俺は、彼らの存在に執着し続けるつもりは無い。

だって俺にはもう、この喫茶店が、愉快な三人が、近くにいるから。

 

俺はもう二度と、間違えない。

 

 

 

「…さて、ケーキも三分の一減ったところで次のチーズケーキといくか」

 

「え、待て、まだあるのか!!?」

 

「これだけで済ませると思ったか?」

 

「…一応、私は…反対しましたからね」

 

 

 

俺は影山さんと共にニヤリ、と笑みを浮かべた。そんな俺達を見て水上さんは溜息を吐いて顔を逸らす

そんな俺達を見た岡本さんは、どこか呆気とした表情を浮かべている。けれど次第に、おかしいというように顔を崩して笑った

 

 

 

「本当、おかしいよ…」

 

「こうやって馬鹿するのも良いってもんだろ?」

 

「…ちなみに先に言うと、チョコケーキもあるぞ」

 

「……持ち帰りで関係者に配ろうかな」

 

「ええ、それが良いと思います…」

 

 

 

水上さんがそう微笑むと、岡本さんはやけ食いするようにああもう!と叫んでから、大きくケーキを一口頬張った




七色の血、後日談。
みんなおとももち


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有り得ない無いこと

薬師寺透(、薬師寺光忠)

非常になんだこれっていうぱっと思い浮かんだネタのようなものです。


自室の部屋で、突然桜吹雪とともに現れたそれを見て、何とも言えず私は呆然とした

目の前の黒の燕尾服を着た男は、床に座り込んで見上げる私を見て困ったように微笑んだ。黒い眼帯を右目に着けたその人は、よく歴史で聞く、伊達政宗のようにも見えた

 

 

 

「…おにーさん、誰??」

 

「ええっと、そうだね。まずは自己紹介をしようか…………僕は燭台切光忠、青銅の燭台だって切れるんだよ。…うーん、やっぱり格好つかないな…」

 

 

そう言った、燭台切光忠…うーん………よしみっちゃん。みっちゃんは、腕を組んで首を傾げた

そんなみっちゃんを見て、私はふと、彼がどこから来たのかを問いかけようとした

 

 

「ねーねーみっちゃん、みっちゃんはどこから来たの?突然、桜がぶわーっ!!ってなったらみっちゃん来たよね?みっちゃん、魔法使い?」

 

「魔法使いじゃないよ。うーん…そうだな、君にもわかるように言うなら……君があの施設から持って帰ってきた太刀の、付喪神とでも言おうか」

 

「……おっきー刀の?」

 

「そう。大きくて重くて、黒い鞘の刀の。ほら、これだよ」

 

 

みっちゃんはそう言うと、腰に帯刀してたらしい黒い鞘の刀を見せてくれた。その刀は間違いなく私があのへんな独房の施設から持ち帰った物で、みっちゃんも言われてみれば全体的に服装も見た目も黒いし確かにみっちゃんがその刀の幽霊なんだと思ったら、凄く納得が出来る

 

 

 

「そっか!!みっちゃんは刀の幽霊なんだね!!!あ、私はねー、薬師寺透っていうんだ!よろしくね、みっちゃん!!」

 

「う、うーん、幽霊じゃないんだけど……まぁ、君が分かりやすいんだったらいいか……薬師寺透ちゃんだね?宜しくね、"主"」

 

 

みっちゃんはそう言うと、微笑んで私に手を差し出した。私はその手をじっと見つめてから、大きく頷いてよろしくね!と言って、差し出された手を取り立ち上がった

 

 

 

「ねぇみっちゃん、みっちゃんほかの人にも見えるの?」

 

「見える人と見えない人がいる、かな」

 

「うーん、ヤママンとお嬢見えるかなぁ…?」

 

「ああ、さっき下で話してた二人の事かい?二人なら、見える類の人達だよ」

 

「みっちゃんわかるの?すごいねー」

 

「一応、仮にも神だからね」

 

「え、みっちゃん神様なの?幽霊じゃないの?」

 

「一応、だけど神様だよ」

 

「凄いねー!!みっちゃんかみさま!!!」

 

「…そうだね、神様だよ」

 

 

 

みっちゃんはそう言うと、刀を強く握りしめた。私はそんなみっちゃんの片目をじっと見てみる。目には、強い後悔とか、罪悪感ーだとか、そういうのが沢山詰まってて、何だかみっちゃんは息苦しそうにも見えた

 

 

 

「…みっちゃん、大丈夫だよー。よくわかんないけど、みっちゃんはみっちゃんだよ!ほら!!みっちゃん早く下に行ってケーキ食べよ!みっちゃん食べれる?ケーキ」

 

 

みっちゃんの手を取ってぶんぶん、と手を振って笑顔で言ってみる。するとみっちゃんはそんな私を見て少し、困ったような笑みを浮かべて食べれるよ、と頷いた

 

 

 

「あのねーみっちゃん、後悔なんてね、死んだら出来なくなるんだよ。後悔なんかしてもねー、その時はかえってこない。だから生きてるんだったらたくさん、前向いてなんでもいーから進まないと!だから、ケーキ食べよ!沢山ケーキ食べたら、なんか良いこと思い浮かぶかもしれないよ!!」

 

「……ふふ、そうだね。けど主、ケーキは一日一個までだよ」

 

「なんで!!?」

 

「健康に良くないでしょ。ちゃんと健康にも気を遣わないと」

 

「みっちゃんもママ?みっちゃんママ?」

 

「僕、一応男なんだけどなぁ…」

 

「ヤママンも男だよ?」

 

「……うん、男だね…」

 

 

 

みっちゃんはそう頷くと、方腕を組んで頭を抱えながら「苦労してるんだなぁ…」と呟いた。何だろ?と私は首を傾げて考えていれば、みっちゃんは腕組みを解いてから言った

 

 

「まぁ、行こうか。一応僕の事、ちゃんと話しておかないとね」

 

「そだね!みっちゃん!新しい友達がめっちゃ増えた!!えっとねー、ヤママンとエニアちゃんとナメちゃんとジロちゃんと…あとあの変なところで、ヨッちゃんとコンちゃんとレーちゃん!」

 

「あ、そうだ…主、柘榴さんへの呼び方は少し変えた方がいいよ。あまり可愛らしくないよ」

 

「そーう?うーん、じゃ〜………ミーちゃん!」

 

「うんうん、良いね。その方が柘榴さんも喜ぶよ」

 

「ほんと!?やったぁ!!!」

 

 

私達はそんな話をしながら、自室を出る。その時ふと、自室の扉が閉まる直前になってなんとなく私は自室の方に振り返った。

一瞬だけ部屋の中に、背の低い青年の姿が見えた気がしたけど、私は彼をもう忘れたものとして、元の方に振り返ってみっちゃんと一緒に下の喫茶店へと向かった




偽心暗器の後日談というか直後の話。

一応、薬師寺光忠と姿は似てるけど体格等全く違うので別人扱いとして接してる透ちゃんと
一応実は薬師寺光忠が本来の刀剣男士に戻って顕現されたのが自分の元従姉妹の女の子の元だった燭台切光忠くん


多分この世界線の星月守は居ないです(適当)


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涙雨の御茶会議

義長正貴


俺は少なからず、最期には自身の出自の真実を思い出していた。その上で俺は、この道が正しい歴史になるのだろうと、俺は義長正貴という人の子であるのだと、強い理由と意味を以て、俺は黒き山羊を見つめて微笑み、瞳を閉じた。

 

 

 

 

義長正貴とは、義長一族直族の子孫である、義長藤蔵の息子だ。兄に義長国広という男が存在し、その兄が本来はこの家系を継ぐ筈であったが、兄は大学に進学すると共にこの家を立ち去った

 

俺は兄と仲良くすることが出来なかった。

家の事もあるからだが、何より、兄…国広は俺よりも劣っているのだと、そうアイツ自身が卑下して居たのも理由の一つだろう。我ながら、優秀であった俺は何でも卒なくこなすことが出来た。そんな俺と国広を、親父さんは比較していた

 

 

 

兄の行方を知ったのは、つい最近の話だった

ある日、アイツは仕事の都合でフランスに飛行機で向かおうとしていた所、飛行機がエンジントラブルを起こし、緊急着陸をした。そうして飛行機の中に入れば、大勢の人間の頭に穴があいており、皆意識不明の重体だったそうだ。その中にも、二人ほど穴が空いておらず無事に生存していた男女二人が居たらしい

 

そしてその中に、アイツも居た。………頭に穴が空いていて、二度と意識を覚まさないままの、アイツが。

 

 

 

一度は仲良く、とはいかなくても、執事の淹れる紅茶はとても美味しいのだから、振舞った紅茶を一緒に飲んで、世間話をする程度にはなりたかった。

己らしさとは何なのか、そんなアイデンティティに悩まされていたが、それでも俺は一度でいいから、兄と真剣に話し合いをしてみたかったのだ。

 

その最中に、義長一族の人間である者達が次々と死んでいく話を耳にした。

 

降谷透は自宅のベッドの上で腹にメスが刺さった状態で発見され、光道桜は学校の屋上から飛び降り自殺をしたと聞き、闇達零はある冬をきっかけに失踪したと聞いた。

 

 

皆、何度か話したこともあるし仲良くもしていた人達だった。みんな、俺の手を離してどこかへ行ってしまう

大切なものばかり、離れていくこの喪失感に、俺は更に葛藤したものだった

 

 

 

 

 

そんな時だった

ある日、大学の休日に俺は一人私室で執事の淹れた紅茶を飲んでいた。まぁ一度零してしまって服を着替えたのだが、その時俺は濃霧に晒され、気が付けば意識の狭間に居た。

 

三人の男女と顔を合わせ、似た経緯でこの空間に来たという者達と少しの会話を挟むと、とある四人の男女に「都を救ってください」と言われた。それと同時に雪崩込む別物の記憶に、俺は混乱した。恐らく四人の中で一番、頭の整理に時間が掛かっただろう

 

 

 

イトウスケマサ、トウヤ

この名を受け、俺は平安時代に顕現した。酒好きの戦男に成った俺は、言われるがままに都を救う為に、仲間達と共に都を駆け回った

 

一体何度、俺は"トウヤ"になって幼馴染の彼を殴っただろうか。頬も抓った。「いい加減にしろ」と怒鳴りたい気持ちでいっぱいだった。

しかしそれもある意味仕方がなかったのだ。そういえばと、平安時代は言の葉や定義というものが強く信じられていたと思い返す。

 

俺達の時代も些か不便だったな、なんて思った時、なぜだか俺は首を傾げた。

俺達の時代、とは何の事だったか?

 

 

 

平安時代を駆け回る中で、俺達は九尾伝説というものを知る。その中で、俺達はもうひとつの九尾伝説…所謂裏九尾伝説とやらの話を聞いた

 

一匹の狐が…女が、愛する男を想うばかりに起きてしまった悲劇。山の神によって人の子に成った狐が、男に自身が狐であると気づいてもらえない悲劇。

聞くだけだと、それは間違いなく俺達が追うとある事件を解決する為のヒント足り得る話だった。

いつだったか、一度この世界が終わる頃に、白の女から聞いたのだ。裏九尾伝説の続きを

 

 

悲しむ狐は妬みや虚無から、狂い果て九尾へと生まれ変わり、愛する男や愛する都を殺し壊した。そうして九尾は、陰陽師により封印され、地獄に堕ちた。

地獄に堕ちた九尾は閻魔により、終わらない日々の中で、永遠に愛する男に己の真名を思い出しては貰えない、悪夢を見続けることとなった

 

 

 

この話を聞いて、俺はふと思い出した

いつだったか己も、本物である筈の俺が拒絶され、本来そこに居たのは俺であったであろう筈の居場所を奪われ、幾度の罵声を浴びせられた記憶。

 

俺が俺であるはずなのに、まるで、俺があいつに似ているかのような

深く、深い、自己の喪失。

 

 

 

「___________」

 

 

 

その主の声に、否定された俺は、あの日、何をしただろうか

 

 

 

トウヤでも、義長正貴でもない、もうひとつの記憶

その存在に、俺は少なからず気付き始めていた

 

 

その違和感は隠したまま、やがて、俺達は都を二つに分断した事件を解決させ、関所を取り壊すことに成功した。

あとは、狐と幼馴染の恋路を後押しするだけだと、思った時だった

 

 

九尾はこの永遠の逢瀬を壊したくない、そう、いつしか己の愛が通じる事を諦めてしまっていた

そんな彼女に、真名を思い出したと、愛を伝えようと逢いに行く幼馴染の背を追ってやって来た白銀の終わりの世界で、ようやく想いの実った二人を見つめ、これで終わりなのだと安堵しかけた時だった

 

 

 

 

しし神が、顕現した

地獄へ帰し、罪を再び償わせようと試みるしし神に、俺達は対峙した。伝燈法師から聞いた、「真名を叫び己の願いを叫ぶ」という魔法のような言葉に、俺達は安易に信じて成し遂げた

 

 

 

俺の願いは、この都の歴史を、紡ぐ事だった

その想いに身を任せ、仲間達と共に真名と願いを叫んだ。そうして、しし神はだんだんその形を崩していく

 

この手に入れた大典太光世という霊剣で更にしし神を叩っ切ろうとしたが、それも失敗に終わった。

そうした時、狐が、しし神の元へ歩み寄り、「有難う」と優しい笑みを浮かべた

 

 

 

血に染る狐を見て、幼馴染は酷く号哭した。

いかないでくれ、という叫びを見て、俺はどうしても、助けたくて、救いたくて、二人の元に駆け寄ってこう言ったのだった

 

 

「俺の真名は義長正貴……願いはこの歴史を紡ぐ事。その為に、二人の幸せを………叶えてくれ」

 

 

 

そういった俺を皮切りに、仲間達も続けて真名と願いを口走った。それなのに、狐の怪我が治らない。何故、どうしてだ、そんな困惑に呑まれた時、共に戦った仲間の一人に、やり直すか、と問われた

 

 

俺は悩んだ

そんな事をしては、それは、歴史修正になってしまうのではないか?そう考え、俺は返事がワンテンポ遅れた。しかし、仲間達は即決だった。

やり直し、また、彼女達の幸せを手に入れたいと願ったのだ

 

 

俺は少しの間考えた。そうしてふと、俺は気付いたのだ

俺は、人間なんだと。なら、義長正貴なら、この状況でどう答えるか?俺は俺に問いかけ、頷いた。「構わない」と言って、俺達は狐と幼馴染を救う為の、本当の最後の二周目へと赴いた

 

 

 

 

 

二度目のしし神を見つめ、ふと俺は思い出した。ああ、そういえばあの日、本丸で、否定された俺は、主に呪いをかけたのだと

二度と人の理に戻る事が出来ない、永遠に人では無くなり、死に続け、苦しみ続ける、呪いだった

 

あの日あの途端、あの女は喚き散らし、俺を殺そうとしたが、それは叶わなかった。何故なら、あの女もまるで、この目の前の異形の神のように、黒く鈍い肉塊へと変貌したからだった

 

 

あの日俺は、政府に戻され、そして、刀解されたのだとようやく、思い出せた

 

 

 

 

元同僚のような存在である大典太殿を手に、しし神を切り伏せる。そうして死に絶えたしし神を見て、俺達はようやく成し遂げたのだと歓喜した。しかし、現実は非常にも、そのままハッピーエンドとは迎えさせてくれなかった

 

何故なら、地母神が……豊穣神が来たからだった

俺達が時を戻し歴史修正してしまった所以なのか、豊穣神は相当お怒りのようで、このまま太刀打ちできる相手ではないとその場に居る人間全員がそう悟っていた

 

しかし、俺達を次元の狭間から逃げ出す道を、狐は与えてくれた。狐と幼馴染で、この世界を救おうと、たった二人で抗おうなどと言うのだ

 

そんな二人に、仲間の一人はここに留まると告げた。その次に、また仲間の一人も留まると告げ、また一人も留まる道を選んだ。一人だけ、酷く悩んでいた。ここに居て意味があるのかと、どうしたら良いのか悩んでいた。

しかしその仲間も、ここに留まると決意した

 

 

俺は、また悩んだ

何となく、俺が成り代わったこの体の男は、「男の決意を曲げることなんざしたくねぇ」などと言って、この場から立ち去る選択肢を俺に与えた気がした。

けれど俺は、立ち去りたくない、留まりたいと悩んでいた。「最後までこの歴史を守り抜いてやれ」と俺自身がそう叫んでいた

 

 

 

「(人の子を置いて、行けるわけが無いだろう)」

 

 

 

俺達は、狐と幼馴染と共に、豊穣神を退散させる呪文を唱える事を選んだ。お互い、手を取り合い、繋いで、笑顔で頷き合う。

大丈夫、きっと大丈夫だという、根拠の無い言葉で俺達はその場で手を取りあった。

 

 

俺と手を繋いでいるジャーナリストの男と大学教授である男は、どことなく、手が震えてる気がした。けれど、きっとそれも気のせいなのだろう。怖いんじゃない、不安なんじゃあない。武者震いだ、そう、言い聞かせた

 

 

そして、俺は、見上げた

顕現したその神を見て、俺は一目で分かってしまったのだ

 

 

ああ、力になれそうにない

 

 

けれど、例え、意味が無くとも、俺はこの場に留まる選択肢を選んだ事に何の後悔もしていない。俺はむしろ満足さえしている

 

その時ふと、脳裏に腐れ縁の幼馴染と、偽物のあいつの顔が浮かんだ

ああ、あのふたりとさいごに、はなしたかった

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺は、死んだはずだったのだ

しかしどういう因果か、俺は机と椅子だけの空間にて、椅子の上に座っていた。俺はふと、目の前の椅子に座った男の姿を見て微笑んだ

 

 

 

 

 

「やぁ、久しいね」

 

「………きみ、」

 

 

そう、嘘だと言わんばかりに目を見開き固まる彼を見て、俺は何故だか面白くて笑ってしまった。まぁそれもそうだ、死んだはずの人間がこうして、話して笑っているのだから当然とも言えるだろう

 

 

 

「…さて、あれから、おおよそ一年ほど経ったらしいね。君がちゃんと生きているようで安心したよ」

 

「……これは、夢かい?」

 

「ああ、君の夢だ。だから目が覚めてしまえば、この夢のことは何もかも忘れてしまう……そういうものだ」

 

「…………そうか」

 

 

 

そう言うと、彼は茶髪の髪に手を添え、考え込むように俯いた。俺はそんな彼を見て、テーブルの上に置かれたカップを手に取り彼に微笑んだ

 

 

 

「さぁ、紅茶でも飲もうか。ゆっくり、落ち着いて話したいだろう?」

 

「……零したりしないよね?」

 

「はは。もう、零さないよ」

 

「…もう、なんだね」

 

 

そう言ってようやく微笑んだ彼を見て、俺は安堵して紅茶を淹れに行く。そうして戻ってきた頃には、彼の様子も落ち着いてきたようだった

 

 

「さて、何から話そうか……」

 

「君、なんでこうやって話せてるわけ?」

 

「そうだね……ある男に、特別にね。こうしてまともに話せるのも最後だろう、とかなんとかで、話したい人は居ないのかと問われて……何故だか真っ先に、君が思い浮かんだよ」

 

 

俺がそう言うと、彼は呆れたようにため息を吐いた

 

 

「それ、家族とかじゃなくて良かったのかい?」

 

「……兄は、あいつはもう、死んでたからね。あともう一人居るには居たが……君に、少しだけ、俺について話したくてね。あの場で共に、戦った仲だ。」

 

 

 

俺はそう言うと、腰に帯刀していた刀を手に取り、彼に見せた

 

 

 

「俺は、あの場で義長正貴と名乗っていたけれど……本当はもう一つ、真名があってね」

 

「……」

 

「…君は、俺が元は、日本刀の付喪神だったと言ったら、信じるかい?」

 

 

 

彼はそういう俺を見て、数秒ほどじっと俺を見つめた。そうして、彼は頷いた

 

 

 

「あんな事があった後じゃあ、信じない、とは言わないよ。……何、実はあの霊剣?」

 

「残念ながら大典太殿ではないよ。俺は、あの平安よりも後に打たれた刀だ……そうだね、君に、"長義"と名乗ろう。」

 

「……流石に日本刀の事はあまりわからないな」

 

「そこそこ有名なはずなのだけどね。まぁそれは構わない………少し、話をしよう」

 

 

 

酷く一方的で、ちぐはぐで、滅茶苦茶な話だっただろう

 

俺はある場所、ある時代で、刀の付喪神として、日本の歴史を守り、改変させないよう戦うのが仕事だった。その中で俺は、俺の写しと出会うきっかけがあった。俺の写しは俺に似ていて、俺は写しに似ていた。写しは俺よりも先に仕事に出ていて、深く、愛されていた。後から来た本歌である俺が、嫌煙されていた。そうして気が付いたら、俺は主であったあの女に、俺は長義ではないと言われた。俺は狂いそうだった、あの言の葉に、言霊に、俺は一度、多分、正気を失っていたのだと思う。気が付けば、女は、本丸は、目の前から消えていた。残った俺は、人でなくなった女を見て、確かにそう思ったと、思い出した

 

 

 

「もし人の子になれたなら、俺は俺であったのだろうか?……そう考えたよ。そうして気がついたら、本当にまさか、たらればが形になるなんて思いもしなかった」

 

「……」

 

「……面白い話をしようか。俺の真名は"山姥切長義"……本来はもうちょっと長いんだけどね。…山姥切、そんな名前の癖に、俺はあの時、あの豊穣神を退く事が出来なかったんだ」

 

 

山姥は一説に、豊穣神や土地神であったという話もある。

山姥を切った事が由来である筈の"山姥切"という名は、俺にはふさわしかったのだろうか?……本当に俺は、"山姥切長義"で良かったのだろうか?

 

 

 

「うーん、君は、"義長正貴"じゃなかったのかい?」

 

 

 

彼は唐突に、そう言った。

俺はそんな彼の瞳を見つめ、俺はふと、何故だかその一言で、肩の荷がおりたような、そんな感覚におちた

 

 

 

「………本当、君って人は」

 

「え、俺何かしたか?」

 

「君、人たらしって言われないかい?」

 

「急だな?いいや、言われた事ないよそんなの」

 

「じゃあ君は今から人たらしだね。」

 

「そんな、ノリで決められちゃったよ」

 

 

 

そう言うと、彼は飄々とした笑みを浮かべた。

そんな彼を見て、俺はふと、思ってしまった。そうして少し考えてから、ふと俺は紅茶を飲み干した

 

 

 

「……さて、そろそろ時間だね。あっという間だね、人の子にとっての夜ってのは」

 

「一気に人外らしくなったね、発言が」

 

 

じわじわと、視界の端が黒く闇に滲んでいくのが見えた。もうそろそろ、この対面は終わり。一夜限りの何でもないこの対話は、何の意味があっただろう?

 

けれど、少なからず、俺は、これから先の憂鬱に耐えられるような、少しだけの勇気は、彼から貰った

 

 

 

「…ああ、ごめんね。最後に聴きたいんだ、君の名前は、何だったかな」

 

 

俺がそう問いかけると、彼は紅茶を一口飲んでから、確かにそう言ってくれた、相川宗助と。

 

 

 

 

 

おそらく現実世界では朝になっていて、彼は目覚まし時計に起こされたのだろう。この暗い空間には、俺しかいない。

 

もう二度と、陽の光を見ることは無い

 

 

 

 

「楽しかったか?」

 

「充実した時を過ごせたよ。さて、教えてもらおうか」

 

 

 

俺は背に立つ黒い男に、昔の仲間と同じ顔をしたその男に、ひとつ問いかけた

 

 

 

「君の目的は何だい?ニャルラトホテプくん」




いつか出すオリシの前日譚的なものも含んでます。ネタバレはない


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涙雨の家族会議

義長正貴


どうしてだっただろうか。俺はいつからか、自分が出来るからお前にも出来て当たり前だという思考が染み付いていた

 

けれどその所以は恐らく、自身の兄である義長国広本人から来ていたものなのだろうということを自覚したのは、ついこの間の話だった。

 

 

 

 

兄は、俺と自身を比較してくる父親のことを苦手としていて、そして自分自身を卑下していた。それは恐らく誰の目から見ても分かる話で、自然と兄と父親は距離が離れていた

 

当然、兄は比較対象である俺の事も苦手としていたようで、距離を置いていた。俺はいつも少し遠くから、白いパーカーのフードを深く被った兄の姿を見て、何故そんなに卑下するのか、全く持ってわからない。そう思っていた

 

 

 

兄は自覚していなかったが、国広は俺よりも優秀な、所謂天才だった。自分に自信が無い故に、これくらいしか出来ないのだという無意識の暗示にでも掛かってるのだろうか。しかし兄は時折、並大抵の人間には出来ないことを平然とやってのけた。

 

そうして兄は決まって、自分に言い聞かせるようにいつも小さくこう呟くのだ。「俺は、俺だ」、そう、言うのだ

 

 

俺にとっては、それすらも暗示に聞こえていた。

何を言ってるのか意味すら理解できなかった。お前がお前であることは当たり前だろう、そう考えていた。しかし俺もある日、その暗示の意味をようやく理解することになる

 

 

 

兄が大学に進学し、家を出たその日だった

父親に言われたのだ、「国広の"代わり"はお前だ」と。俺はその時耳を疑った。元々兄は随分と前から、この家を継ぐ気はないという事は言っていたし、父親もそれを聞いていたのだから当然知っているはずのことだった

 

 

だから、俺が、今まで、この家を継ぐために頑張ってるのだと

俺はそう、勘違いしていたのだ。俺は、俺じゃなかった。父親から見た俺は、兄の代わりだったのだ

 

 

 

 

 

「だから、君達に……迷惑をかけるような事は、したくないんだ…俺一人が犠牲になって都がひとつになるのなら、それで、良いんだ」

 

 

 

そう言った、トウヤの幼馴染である抄録くんの言葉を聞いて、俺は迷わず抄録くんの頬をぶん殴ろうとした。しかし、抄録くんはその俺の拳を受け止めた。それでも俺は、続けて言った

 

 

 

「君は、自分の身一つでなんとかなるとでも思ってるのだろうけれど、それじゃあ、君の周りの人間はどうなんだい!?少なからず君を失って悲しむ人間は居るよ!ここに一人、俺が!!」

 

 

 

抄録くんは俺にそう言われても、困ったような笑みを浮かべた。それは、抄録くんの癖だ。無理をしている時の、癖。

 

 

 

「それじゃあ君……"お冬"の事はどうするつもりなんだい!!?」

 

 

そう叫んだ俺の言葉を聞いて、抄録くんは驚いたような表情を見せ、そして俺の隣にいた仲間の館頭さんを見て、また悪癖のように困ったような笑みを浮かべた。

 

 

 

俺はそんな抄録くんを見て、いつかの自分を、兄を思い出していた。"自分"を誇りとしないその姿勢はまるで、今の俺のようだった。"自分"を軽視して周りを助けようと己の身を投げ捨てるその姿勢はまるで、死んだ兄のその日のようだった。

 

兄が死んだ日、飛行機で生き残った二人の男女から、警察には言わず俺にのみ、その真実を話してくれた。

兄はあの日、飛行機を無事着陸させる為に己を犠牲に脳みそをある生物に引き渡したのだという。そうして、兄の体にその脳みそを元に戻そうとしたけれど、救助に来た救助隊員の手によりその手術は阻まれ、兄の脳みそはその生物に持っていかれたまま、未だ返ってくることは無いのだという

 

 

 

そして俺はその日、初めて兄の就いていた仕事を知った。兄は、学校でスクールカウンセラーを務めていたそうだった

兄は親身になって悩みを抱える生徒の相談に乗り、大層生徒達や教師から信頼が厚かったようだった。

 

 

 

 

その時俺は初めて、兄が、義長国広は、"義長国広"になったのだということを知った。もう、暗示なんて必要が無くなっていて、未だに暗示を必要としていた弱い人間だったのは、俺だったんだと、理解した

 

その時ようやく、俺は兄の優しさに甘えていたのだと気付いた。俺は、何でも出来るんじゃあない。何でも出来るのだと思い違いさせられていたのだと、ようやく分かったのだった

 

 

 

 

少しずつ、おれは、よしながまさきではない事を知っていった。俺は、山姥切長義。

日本の歴史を、正史を守る為に顕現した刀の付喪神であると。俺は、人ではなかった存在だったのだと理解していった

 

その度に、俺は段々、おれでは無くなっていた

俺は託けて義長正貴を探して居たが、その選択肢は恐らくトウヤでもない、義長正貴でもない、おれ自身の選択肢だった。

 

 

いきたい、こわい、なんでこんな目に遭わなきゃならないんだ、なんで、なんでおれがえらばれた、なんでおれは!!くそっ、くそ、くそ、クソッ!!!!!

 

 

"義長正貴"は、勝手に選んだんだ。こいつは勝手に、歴史を紡ぐだなんていう、馬鹿みたいな理由で死ぬ道を選んだんだ

根拠の無い希望に神頼みして無駄死にしたんだ

 

 

いやだ

 

それはおれじゃない。それは、やまんばぎりちょうぎだ。それはにんげんじゃない、かみさまだった

 

 

だからあいつらは、神様に、地母神に抗おうとしたんだ。

お冬と抄録の幸せだけの為に、あいつらは死んでったんだ。あいつだけ生きて、俺は死んだ、しんでしまったんだ

 

 

 

深く、深い、後悔だった

もっと、兄と話したかった。もっと、光太と遊びたかった。勉強もしたかった、紅茶も沢山飲みたかった、家なんか継ぎたくなかった、自由に生きて、そうだ、おれは、教師になりたかった。俺は、おれが、その道を歩みたかったんだ

 

 

なぜ、偽物が、俺よりも幸せな道を歩んでいったんだ

 

 

なんでおれが、しななきゃ

 

 

 

 

 

「おい」

 

 

不意に呼ばれ、俺は俯いていた顔を上げた。目の前には、光太がいた

 

 

「……やあ、コウ」

 

「無理に取り繕うとすんな。さっきまで息荒らげてたくせに」

 

「何の事かな」

 

「変なことで悩んでんだろ、どうせ」

 

「君には関係無いだろう」

 

「うるせぇ、黙って聞け」

 

 

光太はそう言うと、俺の元まで歩み寄って、俺の額にデコピンを打った。そうして光太は俺を見下ろして、言った

 

 

「………パルクールでもして、遊ぶか」

 

 

不意に、そよ風が頬を撫でた。周りを見回せば、不自然に緑の中で、俺は木製の椅子に座っていた。ここは、どこかの山だろうか?

俺は椅子から立ち上がった。

 

 

 

「いいか?むっ……こうの大木がゴールだ」

 

「余裕だね」

 

「相変わらず腹立つなその自信…!!!」

 

 

 

俺と光太は、軽く準備運動をした。そうしてお互い目を見合ってから、勢いよく地面を強く蹴り走った

 

びゅうびゅうと、木陰の間を通り抜けて耳元で聴こえる風音は、俺を風になったような感覚にさせた。

やがて夢中になってがむしゃらに走って、目の前に見えた大木に手を触れれば、すぐ真横に同じタイミングで手に触れた光太が目に見えた

 

 

 

「ッチ」

 

「引き分けか。まぁコウなら余裕だろう」

 

「腹た…………ッつなァ本当に!!!」

 

「何をそんなに怒ってるんだい君は」

 

「お前のせいだよ!!!」

 

 

そう顔を顰めて怒る光太を見て、俺は肩を竦めて笑った。そうして俺はふと、目の前に見えた、崖の上から見下ろせるその街並みを見た

 

 

 

「……なぁ光太、これは、俺の夢か?」

 

「…そうなんじゃね」

 

「…不思議なんだ。たしか、俺は、死んだ気がするのに、夢を見てるのか……はは、変な話だな」

 

「……なぁ、正貴」

 

 

俺は街に目を向けたまま、目は逸らさない。

 

 

「なんで、目ぇ覚まさねぇんだよ」

 

 

俺は街を見下ろし、目を瞑る。

 

 

「なんで、一人で勝ち逃げしてんだよ」

 

 

「なんで、死んじまったんだよ、正貴」

 

 

 

暫く俺は何も考えなかった。そうしてふと、瞼を開いて、光太を見た

 

 

 

「……なぁ、光太。俺は、なんだ?」

 

「……何って…義長正貴だろ」

 

「義長正貴って、なんだ?」

 

「腹立つくらい優秀な秀才クソ野郎」

 

「……凄い暴言だね」

 

「…良いだろ、夢だし」

 

「……良いね、夢だから」

 

 

俺は黙って、光太の腕を引いて抱き締めた。光太の肩に顔を埋めて、俺は呟いた

 

 

 

「(あいつらをおいて、にげたかった)」

 

 

 

あの黒い山羊を見た時、俺は気が狂うほど叫びたかった。いや、実際狂ってしまったんだろうけれど。

それでも俺はなぜだか、あの時、満足したんだった。

 

なぜ満足したのか、ようやくわかった気がする

 

 

俺も兄のように、己を見つけて満足に生きれたのだと、そう思ったからだった、そう暗示したからだった

けれど実際は違ったんだ。俺はあいつのように他人の幸せを願える人間じゃなかった

 

 

おれがいやになるくらい狂えるのなら、おれいがいのあいつらも同じように死ねるのだと、思ったからだった

 

 

 

 

「おれは、おれは、ひとじゃなかった。こんなのは、ひとでなしだ」

 

 

 

そう言った俺の背を、誰かが優しく撫でてくれた。そうして俺は、この街がやがて暗くなって、誰かがいなくなって、おれひとりでこの空間に居続けることになるその時まで、ずっと泣くことになった




俺は人間だったのだった


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腐れ知能

盛岡ナオ


初めて会った時は、やけに育ちの良いガキとしか思ってなかった。いつもガキに怯えられるのはよくある事だから、気にする必要も無いと考えてた。まぁ気まぐれに、飴玉をやる程度は良いかと思って、それだけ渡した程度だった。

 

 

ついこの間の月末に変なことに巻き込まれたばっかなのもあって、少し過敏ではあったかもしれない。まぁそんなこと些細なことで、ガキにもこの仕事仲間達にも関係無い事だった。

そうして半年後の春に、また会った時には、ガキは俺をお母様と呼んだ。流石にそう呼ばれるのは、例えどんなに賢くても想像に容易い訳ではなく、俺は思わず混乱した。

 

何故こんなガキに女扱いされなきゃならんと、最初こそまぁ抵抗はしたが、訳もよく分からないためとりあえず、また女装するかと唆すババア女を制止しながら、仕方なくこのガキを、天音を連れていく事とした。

 

 

 

別に似てる訳でもないけれど、どことなく小さいやつを後ろでひょこひょこ着いて歩かせるのは、幼少期を彷彿とさせた。この世のどこかで生きている、俺の本当の家族、俺の本当の兄妹。

あの頃はよく、あいつに本を読み聞かせてやったもんだと思い出しては、連れ回された。

 

こちとら仕事中だっつのにショッピングモールに連れていけと言われ、仕方なしにあいつらの昼飯分を買うついでにショッピングモールに寄ることとなった。

そこであいつはちゃんぽんを食いたいと言い、食ってるのを付き合ってたら、バカみたいに頬に食いもん引っつけていた。少なからず俺に残ってた良心で取ってやったが、こいつはまたバカみたいに嬉しそうに笑った。

 

 

何故俺は、こんな子守りみたいな事をしてるんだと悩むが、仕方ない。こいつの引越し先がわからない以上、こいつを元の家に返すのも難しい。相手から、捜索被害届けが出てたら楽なんだが、母親が気付いてない可能性が正直高い。

半年前も、あの母親は娘が忍んで家を出ていたことに気づいてなかったようだし、どうせまだ呑気にしてるのだろう。まぁ、捜索届けが出されるまでの辛抱だ、と考える

 

 

あいつらの分の飯を買って帰ろうかとした時、また天音ははしゃいでどこかへと向かう。後を追うと、ゲーセンで、プリクラを撮りたいと言った。まぁこれ程度なら時間はそんなに取らないか、と考え仕方なしに付き合えば、何故か…多分こそばせたかったのだろうが、何故かそんな事をしてくる天音の横で、多分こいつ身長的に映って無さそうだなと思いながら、抱き抱えて映るようにしてやった。少なからずの良心だ、感謝しろ

 

 

抱っこすれば楽しそうにはしゃぐそいつは、ただの子供だった。

そんなのを見れば見るほど思い浮かぶのは兄妹の事で、何だか、いや、きっと俺は、こいつに少しずつ、気を許してたのかもしれない。じゃなきゃそう易々と、家に泊まらせる気も無かった事だ

 

寝室にはまだ、花に関する本や研究機器が残ったままだ。捨てたいのは山々だが、仕事が忙しいのもあり、あまり暇もなく正直放置している。

それを見られるのは、とても嫌だった。あれは俺にとっての罪で、悪だ。花など、もう二度と見たくないし嗅ぎたくもない。

 

それについて触れられるのも嫌だった

だから俺は、寝室だけは誰もいれたくなかった。

 

 

だがまぁ、ガキをソファに寝かせるのも正直俺の数少ない良心が痛むので、仕方なしに寝室のベッドで寝かせる事にした。

ガキにハンバーグを作ってくれと言われ、多少料理は出来たのでクックパッド見ながら作るかと思うも、何故か俺の分だけ、ダークマターと言わんばかりのなにかが生まれた…………何故だ、なぜそんなものが生まれた…?

 

 

一応ちゃんとレシピ通りには作ったはずなのだが、コポコポと音を鳴らし泡立つ黒い物体。一応ナイフで切ってみれば、中から溢れて止まらない肉汁。…いやなんかこれ肉汁っつーかもはや人の液体のような勢いだった気もする。

 

これは俺の責任だと、俺はこれを食べることにしようかと悩んだが、見兼ねた陽乃が代わりにハンバーグを全員分作ってくれた。

温情を素直に受け取ろうと思ったが、これを食べたら罰ゲームだと言う陽乃に俺はすぐハンバーグを食べる事を放棄して牛乳を飲んで落ち着くことにした。陽乃に頑なね、と言われたが知らん。誰がお前なんかに借りを作るか

 

一応、ガキが喜ぶかと思って、いつもファミレスなんかに行った時に持ち帰る小さい旗をハンバーグにさしてやった。可愛い、と言って喜ぶ姿に、どこか安堵した。

 

 

 

そうして飯を食い終えた天音は、空を見たいと言った。空、と聞いて俺は多少天文学なら齧ってるな、なんて考えてから天音と一緒にベランダに出た。それを横目に仕事に集中する陽乃を見てから、天音と共に空を見上げて、今見えた星が何座であるかを考える。…まぁ齧った程度じゃ分かることは少なく、スマホで調べながら見てみようか、と義長養子に言われ、スマホで調べた結果わかったのは、見えた星はおうし座ということだった

 

 

空に手を伸ばし笑う天音は、こう言った。

空と手を繋いでるようだ、と。実際空はそんな物質的なものではなく、……まぁ簡略化して空気の集まりみたいなもんではあるが、まぁ、比喩としても空と手を繋ぐという言葉は確かにある。

 

こいつがどういう経緯で空が好きなのかは知らないし興味も無いが、強いて言うなら、大人になったらそういう仕事にでも就きそうなタイプだ、とは思った

 

 

 

時間も時間で、もう夜の十一時だという事もあり、先に天音を寝かせる事にした。寝室のベッドを使い、天音は嬉しそうに笑う。

ゆっくり瞳を閉じていく天音を見届け、俺も仕事に戻るかと思った時、ふと天音が身につけていたロケットペンダントに目が向いた。

 

昼間見た時は、天音は大切なものだと言って見せなかったが、見るならまぁ、今しかないって奴なのだろう。

俺は自然と手を伸ばして、ロケットペンダントの中身を見た。中には、服役中の男と行方の分からない天音の母親と、天音が映っていた。三人は仲睦まじげに、みんな、笑顔だった

 

 

昼間、陽乃と桑水流が仕事の関係でこの男が服役する刑務所に行っていた。その時の話を昼間軽く聞いた時、そいつはどうも、腹の内が読めない表情の変わらない男だと言ったそう。

そして、風見探偵事務所で会った風見という女もまた、奴は元々正義感も強く部下から慕われるような良い人物だと聞いていた。

 

 

 

そこまで考えて嫌というまで浮かぶのは、奴が妻を庇っている可能性だった。

そうしてもう一つ思い浮かんだのは、昼間にこいつを署のカウンセラーに見てもらった時、何かしらショッキングなものを見た事により健忘症を患っている、という事だった。

 

 

 

見たとしたら、母親が起こした殺害現場、だろうか。

それ以上の推測は難しく、俺は黙って出ようとした時、そのまま天音の頭をそっと撫でた。別にこいつを撫でるつもりなど一切無かったのだが、家族が殺人犯であるという事実は確かに耐え難いものなのだろう、と思った結果、自然とそうせざるを得なかった、のかもしれない

 

俺自身にも曖昧な行動に、首を軽く傾げながら、リビングに戻って陽乃や義長養子、そして先に家に帰っていた桑水流と通話を繋いで資料を読み漁る。

 

 

 

 

みんな、薄々気付いてた事でもあれば、この世のものとは言い難いものでもあった。

ニョグダとその落とし子、俺には知り得ない話ではあったが、きっとあの男と関係のある関連のオカルト類の話なのだろう。

 

推測通り、奴は妻を庇っていた。それも、妻は恐らく既に異形と成り果てた、ニョグダの落とし子なるもの。

先程妻の殺人現場を見たからなのかと考えたが、恐らく天音は何も知らない、何も聞かされてないのだろう。それなら、ただの子供同然である天音がその異形を見て気を狂わせても可笑しくは無い話だ

 

 

ずっと、母だと思って接していた人が、人ではなかったのだ。それはきっと、恐らく、信じ難い真実というものに違いない。確かにその異形を母と信じず、咄嗟に街で見かけた一度だけ話したことのある俺を"母"と思い込んで接するのも、仕方ないのかもしれない

 

 

 

それなら俺は、今のあの家族に、なにと思われてる事だろうか

まぁ、考えは不要だろう。

 

 

 

しかしそこまで考えてしまえれば、嫌という程ある可能性が浮き彫りになる

その日は特別何か話すわけでもなく、自由解散という形になり陽乃は自宅に帰り、義長養子は俺の家に泊まる形になった

 

 

 

 

 

翌日も、俺は変わらず天音を連れ回す事となった。と言っても行先は変わらず、まずは俺と義長養子で刑務所に行き、上杉から軽く話を聞くだけだった

しかし刑務所は未成年は出入りが出来ないため、天音に待ってもらおうかと思ったがまぁ案の定離れるのは嫌だと言うので、義長養子に頼んで俺と天音は待合室で待つこととなった。その時、義長養子に上杉からある事を聞いてもらいたいと、そう一つ頼み事をしていた

 

 

 

上杉との面会を終え、俺達は最終目的地である天音宅に辿り着く事となった。

俺達四人はどうなるのかを容易に想像出来たのもあって、それぞれ武装して行くこととなった。義長養子は得意とする日本刀を、陽乃と桑水流は拳銃を。俺は迷いに迷って、拳銃を持ち出すだけにした

 

 

そうして天音宅に辿り着き、開いたままの玄関を開き四人で進めば、リビングが広がっていた。家の中には誰かがいる様子もない。

リビングには一冊の幼児向けの本があり、本は…端的に言えば、空が好きになったダンゴムシの話だった。まぁ簡単に、天音が好きな本なのだろうとは推測も出来た。

 

その本を読んでいると、桑水流がリビングに地下室を見つけたと言う。確かに目を向ければそこにはリビングに続く地下への扉があって、その先に居ることは容易に想像がついた

 

 

 

天音を連れ、地下への階段をおり、その先の扉を開けば……黒い、スライムのような、怪物がいた。それはよはや人とは言い難いものであり、それは俺達が半年前に見た天音の母親で良いのかは、分からない。

確かに向けられた悪意に、陽乃と桑水流は銃口を向け、義長養子は日本刀を構えた。俺は、銃口を向けることは出来なかった

 

 

 

再び母親の姿を見て、金切り声を上げ気絶した天音を守るように、四人で落とし子に対抗する。

捜査中に見つけた落とし子を弱らせる粉を使い、なんとか落とし子を殺す事に成功はした。落とし子は、まるで人の姿の時と変わらないように、眠る我が子を愛すように、天音の頬を撫でてから、死んだ。

 

 

塵となり消えた落とし子を最後に、気絶した天音に目を向ける。きっとここにいる全員は、同じ気持ちでいるに違いなかった。いや、それは結果的には正しかったかもしれないが、違うとも言えた

 

目に見えて天音と仲がよかったのは義長光太であったのは違いない。陽乃と桑水流はあまり関わりを持とうとしなかったのもあって下した決断でもあり、正解でもあっただろう

 

 

俺も、俺自身が決めたこの正義を曲げようとは、思わなかった。思えなかった

満場一致で、天音を殺すことは決まっていた。落とし子の子供であるこいつが、ただの人間である事は限らない話だった

 

天音の母親がいた付近には、ひとつの手紙が置いてあった。手紙は読み返したあとがあった

俺はその手紙を手に取り、読んだ。手紙の内容は簡潔にいえば、上杉が妻に宛てた手紙だった

 

 

 

桑水流と義長光太で、殺すのは誰にするかと一寸揉めもしたが、すぐに義長で決まった。桑水流と陽乃は先に家を出、義長は日本刀を手にし、俺も二人に続いて部屋を出ようとした。

 

しかし運が悪く、天音は目を覚ました

その時には正気は取り戻していたようで、何故自分がここにいるのかすら覚えていないようだった。目にせずとも、天音の困惑した様子や、義長の表情がよく分かった

 

 

自身に日本刀を向ける義長に、天音は純粋に恐怖した。

当たり前だ、こいつは自身の出自など聞かされていないのだから、その反応が当たり前だ。しかし義長も、こいつにその出自を明かすつもりなんてなく、こいつが人間である内に死なせてやりたいと、言っていた

 

 

天音の、助けを求める声がした

「"盛岡さん"、たすけてください」と、言ったのだ。そう言って俺のズボンの裾を掴んだ小さな手を横目に、俺は天音を蹴りあげた。人を蹴ること自体は慣れていた。だから、小さな体が簡単に転がっていくのは、見ずとも容易に分かった

 

それでも天音は生きることを諦めんと、俺が立っている地下室から出る扉へとかけ走った。それも俺は天音を蹴り飛ばすことで阻止し、俺は天音に振り返り、中指を立てて笑ってやった

 

 

 

「大人しく黙ってそこで野垂れ死ね、クソガキが」

 

 

 

義長の傍で倒れてこちらを見る天音の瞳には、恐怖と困惑と混乱と、悲しみが、沢山詰まっていた

以前にもこんな瞳は見たことがあった。けれどあの時の瞳は、そんな俺さえも許して笑ってくれていた。

 

けれど、今回は違う

今回は紛れもない事だった。俺は、この子から逃げようとしている。否、もう逃げ出している

あの時笑って許してくれたのは、俺が逃げずに向き合おうとしたからだった。けれど俺は、向き合えなかった。向き合おうとする事は出来なかった

 

 

その理由も容易に理解している

なぜなら、俺自身がこの正義に疑問を抱いているからだ。

 

この子を愛する者が居るのに、殺して良いのか?それは、本当に正しいことなのか?正義なのか?

 

 

あの時俺は死ぬことで逃げようとした

けれど俺にはこの世界のどこかに、生きているたった一人の家族がいた。だから逃げずに向き合うことを決めた、向き合う勇気をくれた

 

 

 

俺は、この子を、殺せない

あの男のように愉悦だけで、幸せな家庭を壊すことはしない。天音の母親を殺したことを正義と、正しいことであったと言うつもりもない

 

だが、この子に、この子に罪あったか?

健気にお母様と呼んでついてきたこの子に、悪意など何も無かった。有るはずが無かった

 

俺は、天音を、殺せれない。殺せないんだ

俺はこの子に向き合う勇気など、何も無かった。この子を見殺しにする余裕など無かった

 

ああどうか逃げてくれ、すぐにでも立ち上がって、俺を殺す勢いで、その足でたって逃げてくれ

どうしてだ、どうして君は、父に助けを乞うんだ。父は君達を守る為に、もう君の元には帰れないんだ。君を助けてくれる人はここにはいないんだ、もう、この世界には、君の敵しか、いないんだ

 

 

 

 

世界を敵に回してまで、君の味方でいようとした人達は、君の味方(人間)が殺したんだ

 

 

 

俺は部屋を出て、扉の前で足を崩して胸を強く叩いた。

俺の中で沢山の思考が渦巻いた。助けに行くな、それは俺のすべきことでもない、正義でもない、それが最善策なんかでは無い

 

落ち着け、落ち着くんだ

いい加減にしてくれよ、俺は馬鹿じゃないんだ。だから俺は、人間ではないのだから、冷静な思考が出来るだろう、だから、立って早く飴玉でも食って余裕こいてろ

 

 

たった一人のクソガキの死くらいで、涙流してんじゃねぇよ、クソ頭が

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、国広」

 

 

さざめく波の音を聞いて、無意味な花束を砂浜に投げ捨てて、林檎の飴玉を口の中で転がした

かり、と丸い飴玉が少しだけ欠けた音がした

 

 

「あんたはどんな感情で、平穏を守ってきてたんだ?」

 

 

ポッケから取り出した、男と小さな女が映り込んで、変な落書きを残した写真を破り、風に任せて海に捨てた

 

 

 

「俺は、あの日から常々思うよ。俺は、死にてぇんだ。」

 

 

 

俺は冷静だから、自分で自分の言動に深い理解を持てた

 

 

 

「死にてぇから、誰かに殺して欲しくて、ずっと言ってたんだ。他の誰でもない、俺自身に」

 

 

 

だからこそ理解が出来た。

俺は、生きることも死ぬことも出来ない、臆病者だった




蒼穹を経て


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不必要の存在

盛岡ナオ


あなたはどんな朝を過ごす?

A,眠さに抗いながら、何となく居ない気がするし、居る気もするような、曖昧な大切な人に会いに行かないといけない、と何となく思いながら準備する。

 

 

 

 

何して過ごそう?何が起こる?何をする?

A,何かが横切るような幻覚を見ながら、またか?なんて思いつつ。先日の事を思い出して、頭を触りつつ、昔のこと思い出して、そうだ、妹も探さないと、と思いながら。

 

 

 

 

何をする?もう昼を過ごした?だったら別の日でも良い。何をしよう。隣には相も変わらず大切な人がいる。

A,何となく眠たいような感覚が抜けないまま。きっと隣で大丈夫か?なんて問い掛けてくるアイツがいる。五月蝿いクソ__、なんて返しながら。ああ、いつもと変わらない日だ

 

 

 

 

大切な人へ伝えれば、大切な人は A.見えないような 表情であなたを見ている。

 

 

 

 

日暮れだ。何をして過ごそう。家に帰る?どこかに出掛ける?スーパー?ホテル?レストラン?夜景の見える場所でも良い。その為に移動をする?もう夕暮れを過ごしたのなら、別の日でも良い。大切な人と何をしよう。

 

A,家に帰ろう。そうだ、あの家にしばらく帰っていないな、なんて気付く。掃除ついでに、こいつに付き合って貰うのも良い。その褒美にでもオムライスを作ってやれば、ガキも喜ぶだろう、だなんて。適当なこと考えて、材料を買いにスーパーにも立ち寄って。

 

 

 

 

日は沈み、夜の帳が下りる。何をして過ごそう。ディナーは済んだ?どこかへ出かける?家へ帰る?一緒に泊まる?もう夜を過ごした?だったら、別の夜でも良い。大切な人と何をして過ごそう。

 

A,もう夜の帳も落ちた。ああ、もうこんな時間か、なんて一緒に時計を見ては、ふと相手に何気なく、今日は泊まるか、なんて問い掛けてみる。きっと相手は、一緒に寝ようと言って笑いかけてくれる。ああ、こんなにも平和な、ただの休日だ。

 

 

 

 

 

甘い匂いが鼻腔をくすぐり、ごわごわとした耳鳴りが聞こえる。大切な人の顔は水を垂らしたように霞んで見えた。それを拭うと大切な人は A.悲しいような 表情であなたを見ている。

 

 

 

 

もうすぐ深夜だ。朝は来るのだろうか。果てしなく続く闇があなたを手招いている。

あなたは何をして過ごす?隣には相も変わらず大切な人がいてくれている。

 

A,夜はいつだって、誰かの悲劇を招いてきた。けれどもうそんなことは無い。誰も彼も人を殺すようなことの無い時間だ。ゆっくり、一緒に眠ろう。何も無い。何も。何も

 

 

 

そんなもの読んじゃいない(しらないしらないうるさい)

ブルトゥームなんて存在おれはしらない(もういやなんだみたくないみたくなんか)

 

 

 

 

あなたは、この闇へ向かうひどく深い時間の中で何をする?

A,布団の中で眠ろうとしては、時折こちらを見てくる妹の姿を眺めて、どうしようもない笑みがこぼれた。ああ、離れ離れなんかじゃないんだ

 

ずっと、となりに、いる、

 

 

 

嫌という程、背中の方から、ダメだという声が聞こえた

 

 

 

 

わかってた

しってた

きづいてた

 

でも、見て見ぬふりをしたくて。だって、こんなにも都合の良い妄想が、夢が見られるのなら、ずっと永遠にここに居たいなんて思うのは良くないことなのだろうか

 

 

ずっと、たすけられなかった人達の、幸せな夢を、見てはならないのだろうか

 

 

 

 

けれど、そんな俺にずっと背中の方から、まだ来るなって言うあいつの声が、するんだ

もう二度と、交わることのない、あいつの声がするんだ。

 

白髪の、あいつの、色素の薄い笑みが見える気がするのに

でも、振り返っちゃいけないんだろう?俺はずっと、前を見て生きなきゃならないんだろう?

 

 

もう、甘い林檎の果実は掬えないんだろう

 

 

 

 

 

一緒に、前を向いて歩こう。

なあ、___。(かあさん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溺れかけた。あの、大嫌いな花の海に。

けれど、そんな俺のことを死ぬなと、誰かが背を押した夢を見た気がしたんだ。

 

俺の独り善がりな妄想だろうと。

俺に生きていて欲しいと思ってくれてる、誰かの、女の人達の声が。

 

 

俺は、生き続けなきゃいけない。

ずっとずっと、前を向いていかなきゃならない。

 

 

最後の葬式なんかにならないように。

ずっと、ずっと。




貴女との決別の為。
少しずつ、貴女との別れを噛み締めようと思います。そして、私の良くない点も含めて、ずっと理由を、その言葉を聞けないまま、私は


嫌いだと一言、言って欲しかった。


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