タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち (疾風海軍陸戦隊)
しおりを挟む

第一章プロローグです
出会いとセカンド(二世)たちです


始めまして。私の名前は西住りほ。高校二年生です。私は今、大洗の港が良く見える丘に一人で立ってそしてそのままじっと座っていた。なぜ、私がこんなところにいるかというと。私は家出をしたのだ。え?なぜ家出をしたかって?それはお母さんと喧嘩をしたからだ。

私のお母さんの名前は西住みほ。西住流家元の娘であり、そして私の母はかつて廃校の危機にさらされた私の母校である大洗女子学園を救った英雄って言われている。

そんな母を持つ私はもちろんみんなから期待される。しかし私はお母さんとは違う。私には自信がなかった、私はお母さんのような天才でも軍神らしさもそして戦車の才能のかけらもないただの学生である。だが、みんなからは『あの西住みほさんの娘だから』と、そう期待を込めていた。

 

そして運命の日。私は学校で戦車道の隊長を任せらることをお母さんに相談した時、お母さんは喜んだ。だけどその笑顔が・・・・逆に私を不安にさせた

 

「りほ?どうしたの?あなたは嬉しくないの?」

 

お母さんは私が不安がっていることに首をかしげると

 

「私・・・・・自信ないよお母さん。私が隊長なんて・・・・・・」

 

「大丈夫だよりほ。そんなに思いつめなくてもいいんだよ。私にもそういう時期があったから、少しは分かるよ。大丈夫、心配しなくても・・・・」

 

心配とプレッシャーで押しつぶされそうになる私を励まそうとお母さんは笑顔でそう言うが。あの時の私は帰ってそれが辛かった。お母さんのその優しさがかえって私を苦しめた。そして・・・・

 

「お母さんにはわかんないわよ!!」

 

その優しさに耐えられなくなって私はお母さんの腕を乱暴に振り解く。そして私は何かを吐き出すようにして叫ぶ

 

「お母さんにはわかんないよ!私、お母さんみたいに優秀でも英雄でもないただの普通の女子高校生なの!お母さんは天才だったからそんなこと言えるのよ!!私の気持ちもわからないで勝手なこと言わないでよ!!」

 

「りほ・・・・・」

 

涙を流し心の底から思ったことを吐きだす私にお母さんは何も言えずにいた。そして私は・・・・・

 

「お母さんの馬鹿ぁ!!」

 

と吐き捨てて家を飛びだす。そして私は学園艦を降り停泊港であった大洗の街を走り出し。そして私が立ち止まった場所は磯前神社の近くの丘で港が良く見える場所であった。そこで私は夕日に輝いている大洗の街を見下ろしながらため息をつく。この丘は私が小さい頃お母さんとよく言った思い出の場所で何か落ち込むことがあったらよくここに来ているのだ。

 

「はぁ・・・・・」

 

私は少しため息をついていたが、私はさっきのことを思い出しそして立ち上がって

 

「「「「「「お母さん(マーマ)(様)のバカァー!!!!」」」

 

と、大声で叫ぶ。すると少しだけ気持ちがすっきりした。だが・・・

 

「ん?」

 

そんな感情ともに何かの違和感を覚えた。あれ?なんか私以外にも声が聞こえたような・・・・・・私はあたりを見るといつの間にいたのか私以外に5人子たちがいた。その5人の子たちは一人一人制服が違った。そして私とその5人はしばらく唖然として互いを見ていてそして最初に出た言葉が・・・・・

 

「「「「「「こ、こんにちは」」」」」」

 

とその言葉だけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか。あなたも家出とはね・・・・」

 

「うん。私お母さんと喧嘩しちゃって家を飛び出しちゃったの・・・・・あ、あのあなたたちは?」

 

「私も同じですわよ。お母さまと喧嘩したの」

 

「私も同じ」

 

「私もだ」

 

「私もマーマと喧嘩して家出した」

 

と、今私たちは丘の傍にあった桜の木の下に座って互いのことを話していた。どうやら彼女たちも私と同じみたいだ。

 

「まったくマーマは私に次期隊長なんだから学校にいる同志たちをしっかり導きなさいとか!私にだって戦車道以外にもやりたいことがあるのよ!」

 

と、プラウダの制服を着た子がそう言い

 

「そうよ!私も母さんにお前は統帥(ドゥーチェ)なんだから、しっかりみんなを引っ張れとか隊長としての自覚を持てだのプレッシャーばっかり私にかけて」

 

アンツィオ高校の制服を着た子がそう言いサンダースの制服を着た子はうんうんと頷いて

 

「その気持ちわかるわよ。私のお母さんだって同じ事言ってた。」

 

「私も同じ意見よ。私とお母さんを比べないでって言うのよ」

 

「あら、奇遇ですわね。わたくしもお母さまにそう言われたわ・・・・・・・・わたくし。お母さまとは違うのに・・・・」

 

黒森峰の制服を着た子と聖グロの制服を着た子が紅茶を飲みながらそう言う

 

「私もそう。お母さんが戦車道の有名人だから、その娘もお母さんと同じ才能があるって決めつけられて・・・正直って迷惑な気がするわ・・・・」

 

「「「「「あ~それわかる(ますわ)」」」」」

 

と、そう言った後私たちは互いの不安がっていたところを話し合うとお互いに気が合うところが多く気が付けば楽しく会話していた。

 

「私たち意外といい友達になりますわね」

 

「そうだね」

 

と、嬉しそうに笑いあっていると聖グロの子が

 

「そう言えばまだ名前を名乗っていませんでしたね。ここいら辺でお互いに名前を名乗りませんか?」

 

聖グロリアーナの制服を着た金髪で髪の長い少女がそう言うと私は

 

「そうだね。じゃあまず私から私は大洗女子学園の西住りほ」

 

と、そう言うと5人は目を丸くし

 

「西住・・・それに大洗って言うともしかしてあなた、西住みほさんの娘ですか?」

 

「う、うん・・・・・・」

 

頷いてそう言うと5人はふふふっと笑い

 

「お互い親が有名人だと大変よね?」

 

「そうですわね。特に戦車道で活躍した母親を持つと特にね。りほさんの気持ち尚更よくわかりますわ」

 

「ええ、そうね」

 

「え?」

 

私は4人の言葉に首を貸し減るとサンダースの子がコホンと咳をし

 

「私はサンダースのケイの娘のリリー。りほ。よろしくね」

 

「プラウダ高校カチューシャの娘のアナスタシア。アーニャって呼んで」

 

「アンツィオ高校アンチョビの娘のナポリ」

 

「黒森峰女学園。逸見エリカの娘。逸見ハルカ」

 

「わたくしは聖グロリアーナのダージリンの娘のジャスミンと言いますわ。よろしくお願いしますわ。りほさん」

 

と、私に自己紹介する。その時私は驚いた。なぜなら、今こうやって楽しく話し合った相手はお母さんと並ぶあのレジェンド世代と呼ばれた名隊長たちの娘たちであったからだ

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「時震」

「ねえ、これからどうする?」

 

空が赤く染まった夕暮れに互いに名乗った後、私たち6人はこれからどうするか話し合う

 

「そうね・・・・・そろそろ暗くなったから戻る?」

 

「ナポリ。それじゃあ家出した意味ないでしょ?せめて五年は戻らないほうがいいわよ。五か年計画みたいに」

 

「アナスタシア。五か年計画ってそういう意味じゃないと思うよ?」

 

アナスタシアの言葉にリリーがつっこむとジャスミンが

 

「でも、家出したのはいいけど。肝心の住む場所はどうするんですか?わたくしたちの学園艦だとすぐにばれてしまいますし・・・・」

 

とジャスミンが困った顔をする。因みに港の方をよく見ると港には大洗の学園艦の他にサンダース、プラウダ、聖グロリアーナ女学園、アンツィオ、そして黒森峰の学園艦が停泊していた。今思えばあんな巨大な船、なんで今まで気が付かなかったのであろう。それ以前にこの6校の学園艦が同じ港で鉢合わせするといこと自体が奇跡である

 

「確かにそうね・・・・とすると陸で暮らすことになるわね」

 

ハルカがそう言うとアナスタシアが

 

「でも、そうなるとしばらく住む家が必要になるわよ」

 

「それだけじゃないわ。食料とかも考えなくちゃいけないし。それに家出をしている間私たちはどう生活すればいいのよ・・・・」

 

アナスタシアの言葉に私がそう言うとみんな困った顔をして考え込む。どうやら家出をした後のことを考えていなかったみたいだ。まあ、私も勢いに任せて家を飛び出しちゃったから人のことは言えないんだけどね・・・・・するとリリーが

 

「そうだ!じゃあ、賞金稼ぎにならない?」

 

「賞金稼ぎってリリーあんたいつの時代のことを言っているんだ?西部開拓時代じゃないんだぞ?」

 

「いいえ。そうじゃなくって戦車道で稼がないって」

 

「戦車道?」

 

「うん。噂に聞いたけど、戦車道の試合の中では賞金が出る奴もあるて聞くから、その試合に参加して勝ってお金をゲットすればいいのよ」

 

「それはいい考えですわねリリーさん」

 

「でしょ?」

 

「でも肝心の戦車がないよ」

 

「じゃあ、どっかから盗むのがよろしくて?わたくし一度でいいから怪盗みたいなことしてみたかったんですの。そう言えばサンダースは戦車の保有数が全国一位ですからそこからとるのがよろしくて?」

 

「うちの学校。前の先輩が情報屋の情報を買うために資金が足りないからってその戦車を盗んでお金に変えようとしたら私のお母さんに見つかってそれ以降、警備が厳しいのよ」

 

「プラウダもそうよ。いつも戦車を継続に盗まれているからマーマが警備を厳重にしちゃって戦車を盗もうとしようもんならシベリア送りどころじゃすまないわよ」

 

「黒森峰もそうよ。あそこ監視カメラがあるし何より警備員が24時間体制で巡回しているから無理」

 

「と言うよりなんでみんな戦車を盗む前提の話になってるのよ。それにジャスミンさん。泥棒は駄目よ流石にそんなことしたらすぐに騒ぎになっちゃうでしょ?」

 

「それもそうね」

 

「じゃあ、どうするの?りほ」

 

とナポリの言葉に私は考える。中古の戦車ショップに行けば買えるかもしれないけど。家出をした私たちの持っている金じゃあ、そこは知れている。

私はどうすれば戦車を手に入れればいいのか考えていると、するとさっきまで晴れていた空が急に曇り始め突然雨が降り始めるのであった。

 

「あ、雨が降って来た!?」

 

「どこか雨宿りするところ探さないと!?」

 

と、みんながうろたえる中、私もどこか雨宿りできるところかないか探すと

 

「あ、あそこに納屋があるよ!?」

 

と指を差す。私が指を指したところには少し傷んで苔とかが生えているが少し大きな納屋があった

 

「よし、じゃああそこに行きましょ!」

 

リリーがそう言うと私たちはその納屋の方へ走り、そして中へ入る

 

「あ~びっくりした。けど服がびしょびしょだわ」

 

「私もよ」

 

「でも運よく納屋があって助かったね。もしなかったら風邪を引いていましたわよ」

 

「確かに運が良かったわね」

 

私たちは駆け込んだ納屋で濡れた髪をハンカチやタオルで拭くと

 

「それにしてもこんなところに納屋があったなんて、りほ。あなた知っていた?」

 

「ううん。ここいら辺はよく港に着いた時お母さんやお母さんの友達と遊んだ場所だけど納屋なんてなかったわ」

 

私は春佳の言葉に首を横に振る。この場所は私が小さい頃、お母さんと一緒に遊んだ場所だが、この場所に納屋なんてなかったはずだ。もしかしたら担任の武部先生や冷泉おばさんたちなら何か知っているかもしれないけど今のところは不明だ。

 

「それにしても暗いわね・・・・ねえ、電気とかない?」

 

ナポリがそう言う。確かに外はもう暗く。電気とかの明かりがないと何も見えない。どこか明か里の装置がないか探すと

 

「アイタァ!?」

 

「どうしたのアナスタシア?」

 

「いたた・・・・・何かにぶつかったわ。それよりも誰か早く電気つけてよ」

 

「確かに早くつけないとまた誰かが何かにぶつかったりつまずいて転んじゃったりしちゃうね」

 

ハルカがそう言うとリリーがはっとした顔をし

 

「あ、そう言えば私、バックパックに懐中電灯を入れていたわ」

 

「それを早く言いなさいよリリー!」

 

「Oh、souri-アナスタシア。はいこれ」

 

リリーはそう言いバックパックから懐中電灯を出しスイッチを入れるとあたりが明るくなる

 

「これで明るくなりましたわね」

 

「うん。そうだね・・・・・・今夜はここで野宿かな?」

 

「そうね。それ以前に私たちは家出をしたのだから恐らくこの納屋が私たちの拠点になりそうね」

 

「確かにここなら雨露もしのげるしよく見るとソファーとか机とか転がっているし、少し中を奇麗にすれば住めそうね」

 

と、私たちは納屋の周りを見るとそこには古くなったソファーやいすや机が転がっていた。確かにハルカの言う通り少し掃除とかすれば済むことは可能だ。するとアナスタシアがまだぶつけた所が痛いのか頭をさすって

 

「いたた・・・・まだ、ズキズキする」

 

「おい、大丈夫か?・・・・・て、アナスタシア」

 

「何よナポリ?」

 

「あんたの後ろのそれって」

 

「え?」

 

ナポリの言葉にアナスタシアは振り向くと、そこにはでかい鉄の塊があった

 

「これって・・・・・・戦車?」

 

「戦車だよね?」

 

「戦車だね」

 

「戦車ですわね」

 

アナスタシアの言葉に私たちは頷く。アナスタシアがぶつかったものとは戦車であった。しかもその戦車は日本軍が製作した最後の戦車5式中戦車であった。

 

「これって・・・・・五式中戦車だね?」

 

「そうですわね・・・・・でも・・・・」

 

「なんか違和感があるわね?なんか主砲が大きいような・・・・・・」

 

「それに車体に37ミリ砲もついてないし‥…変なの」

 

5式中戦車を見てみんあ首をかしげる。そう私たちが見つけた5式中戦車は、写真やプラモで見たのとは違うものであった。まず変だと思ったのは車体についてある副砲の37ミリ砲が付いておらず。ついてあったのは機関銃だけ、もう一つは主砲であった。五式の主砲は高射砲を戦車砲に改造した75㎜長砲身なのだが、この五式の主砲はやたらとでかいのだ。

 

「もしかして・・・・・・88ミリ砲?」

 

「え?何言っているのハルカ」

 

「いえ、気のせいかもしれないけどこの主砲。どこかドイツの88ミリ高射砲に似ていたから・・・・・」

 

「そう言えば五式って、88ミリ砲を乗せる計画があったって話があったよね?」

 

「でも、それは都市伝説でしょ?」

 

「まあ、それはいいでしょ75ミリだろうが88㎜だろうが、これで戦車に関する問題なくなったな」

 

「そうね前向きに考えれば、これで戦車道で賞金が稼ぐことができますわね」

 

ハルカとりほの言葉にアナスタシアが疑問の声を上げるとジャスミンとナポリがそう言う

 

「でもこれ動くの?」

 

「ちょっと見てみるね」

 

アナスタシアの言葉にりほは五式戦車の方へよじ登りハッチを開けたりエンジンルームを見たりする

 

「どう、りほ?」

 

「うん。装甲も転輪も大丈夫。エンジンも見た所壊れてないから、動かせるよ」

 

「じゃあ、さっそく掛けて見ようよ!」

 

「それ賛成!!」

 

と、そう言いみんなは五式に乗り込む。そしてみんなは車体下。操縦席の方へ集まりエンジンのスイッチに手をかける

 

「みんなでスイッチを入れよう」

 

「yes!そうね私たちの戦車なんだからエンジンをかけるのはみんなで一緒にね!」

 

「そうですわね。記念すべき時は友と一緒に・・・ですわね」

 

「ジャスミン。それ誰の格言?」

 

「今わたくしが考えました」

 

「そんなことより早くかけようよ」

 

「そうだな!何事も早いのが一番だな」

 

「そうね。りほいいか?」

 

「うん。じゃあ、1・2の3で掛けよう」

 

りほの言葉にみんなは頷く。すると、納屋の外では雨がさらに強くなりところどころゴロゴロと雷鳴が鳴り響く。そんなことも気にせず彼女たちはスイッチに手をかけ

 

「じゃあ、行くよ!」

 

「「「「「「1,2-の3っ!!!」」」」」」

 

と、そう言いエンジンのスイッチを入れると5式中戦車のエンジンが掛かり始める

 

「やったぁー掛かった!!」

 

りほたちが嬉しそうに言った瞬間。雷が納屋真上に落ちる。そして納屋の中は大きな爆音と大きな揺れともに真っ白な光に包まれ、そして納屋の中にいた6人と5式中戦車もその光に飲まれるのであった。そして光が収まった時、納屋の中はまるで何もなかったかのように静まり返る、そして納屋の中にあった5式中戦車の姿は消えていたのであった・・・・・・・

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

目覚めた場所は戦国時代ではなく、20年前の大洗だった

激しい雷と揺れが起きた直後、辺りは真っ暗になる。そんな中、りほは目を覚まし

 

「う・・・・う~ん。何があったの?」

 

頭をさすり車内を見ると、そこには気絶していたみんなの姿があった。

 

「みんな起きて!!リリー!アーニャ!ジャスミン!ナポリ!ハルカ!!みんな起きて!!」

 

りほは気絶している5人を揺り起こすとみんなは目を覚ます

 

「う・・・うう…何今の揺れと音は?」

 

「地震・・・・かしら?」

 

「そう言えば、ズシンと揺れたわね」

 

「そう言えばなんか爆音みたいな音も聞こえたけど、落雷かな?」

 

「ねえ、とにかく戦車から出てみようよ」

 

「そうですわね。車内にいてもわかりませんし、そのほうがいいですわよね」

 

と、ジャスミンがそう言い私たちは5式中戦車の中を出る。すると・・・・・

 

「・・・・・あれ?」

 

「・・・・・うそでしょ?」

 

外に出た私たちが目にしたものは・・・・

 

「ねえ、これどういうこと!?さっきまで私たち納屋の中にいたわよね!?」

 

「え、ええ・・・・・」

 

「なんで納屋が消えているのよ!?」

 

「まさか雷で納屋が焼けたのか?」

 

「それだったら、そこらへんに焼け焦げた木材とかあるわよ。それに焼け焦げた匂いもしないし・・・・・」

 

と、リリーやアーニャたちが驚く中

 

「それだけじゃありませんわ」

 

「どういうことジャスミン?」

 

「私たちがいたのは大洗の海岸近くの丘・・・・・でもここは」

 

「森の中・・・・・」

 

そう、私たちがいる場所は、先ほどの納屋の中でもなくましては大洗のあの海岸が見える丘でもなく、今いる場は見渡す限りの森の中であった。しかもその森はなぜだが見覚えのある景色であった。私がそう考える中、みんなは

 

「ね、ねえもしかしてこれタイムスリップじゃないかしら?」

 

「タイムスリップ?どういうことだナポリ?」

 

「ほら、よく小説や映画なんかで米軍や自衛隊が太平洋戦争とか戦国時代にタイムスリップしちゃう話があるじゃないか。もしかしたら私たちも」

 

「えっ!?じゃあ、弓矢とか飛んでくるの!?」

 

「いや、それはまだないでしょ。まだ戦国時代と分かったわけじゃないですし」

 

「タイムスリップしたことは否定しないんですねジャスミンさん・・・・・」

 

「ええ」

 

「それよりも、もしタイムスリップなら今は何時代かな?それにここがどこかもわからないし・・・・リホーシャ。どうかしたの?」

 

アナスタシアがそう言うとりほは

 

「私、ここ知っているかもしれない」

 

「え?ほんとう?」

 

「うん。ここ。大洗女子学園の学園艦の学校の裏にある森の中だよ。私、戦車道の練習とかで知っているから」

 

「そうなんですの?でも変ですね?わたくしたち先ほどまで大洗の港にいたのですよ?それなのになぜ?」

 

「さあ、よくわからないわ?まあ、とにかく戦国時代じゃないのはわかったわね」

 

「そう・・・少し残念ですわ」

 

「なんで残念がるのジャスミン?」

 

「だってハルカさん。もし戦国時代だったら私たちとこのチリで天下が執れるじゃありませんか。戦国自〇隊みたいに」

 

「いや、ジャスミン。それ最終的にはバットエンドになりそうだからやめて。というより戦車一両じゃ無理でしょう」

 

と、そう言う中ナポリが

 

「とにかくここが大洗の学園艦だということはわかったけど、やっぱり変だよ」

 

「そうよね?いつの間に移動したんだろう?」

 

と、疑問に思う中、アナスタシアが

 

「そんなのここにいて考えるより、森を出て調べればいいでしょ?学園艦なんだから住宅地くらいあるでしょ?」

 

「そ、そうだね・・・・・・じゃあ、森を出ようか?」

 

「賛成。で、どうやってこの森を出るの?それに戦車は?」

 

「抜け方は私が知っているよ。後、戦車は・・・・・・」

 

りほがあたりをきょろきょろ見渡すと、森の向こうに丁度、戦車が入れるくらいの洞窟があった

 

「あそこに隠そう。あそこなら丁度戦車も入るし」

 

「よおし、じゃあ、私が運転して入れるよ」

 

「え!?ナポリさん。運転できるんですか!?」

 

「そりゃあ、戦車乗りだから当たり前だろ?それに私、ペパロニお姉さん・・・あ、母さんの後輩なんだけど。その人に戦車の運転習ってたから戦車の運転なんてお茶の子さいさいよ。ちょっと待っててね」

 

とそう言うと、ナポリはチリの操縦席に乗り込んでチリを動かし、そしてバック運転であっという間に洞窟の中へ入れるのであった。そしてチリを洞窟に入れた後ナポリはチリから降りて

 

「お待たせ。じゃあ行こうか。りほ案内お願い」

 

「う、うん。確かこっちのはず」

 

りほはみんなを連れて、森の中を進み、しばらく歩くと住宅地につき

 

「ねえ、まずはどこに行く?」

 

「そうね・・・・」

 

りほの言葉にハルカがそう言うとアナスタシアが

 

「ねえ、まずはコンビニに行かない?私お腹すいちゃったわ」

 

「そうね。どっちにしろ私たち家出をしたからご飯食べてなかったし、食糧調達も兼ねて買い出しに行かない?」

 

「コンビなら私知っているわ」

 

と、そう言いりほたちはまず食料を調達するため、コンビニに向かうのだがりほは・・・・

 

「(あれ・・・・変だな。確かに大洗の学園艦。それは間違いないけど、なんか建物がみんな新しような?)」

 

りほは自分の住んでいる街の様子がどことなく違うことに気付く。そんな中りほたちはコンビニにつくのだが、やはり、りほは

 

「(やっぱり、コンビニもなんか奇麗・・・・まるでオープンしたばかりのような?)」

 

「りほどうしたの?」

 

「ああ、なんでもないよリリー。じゃあ入ろ」

 

と、私たちはコンビニに入り食品コーナを見る。おにぎりに弁当にサンドウィッチ。どれもおいしそうなものばかりだ。だが、やはりちょっと違和感があった。

 

「う~ん」

 

「どうかしましてりほさん?」

 

りほのその表情にジャスミンは気づき訊くと

 

「うんちょっとこの商品.何か違和感があって・・・・」

 

「違和感?・・・・・そう言えばそうですね・・・・・」

 

「そうね・・・私もさっきから思っていたんだけど・・・?」

 

りほの言葉にリリーとジャスミンが何かの違和感を抱いているのはわかるのだがそれが何なのかわからず首をかしげていると

 

「ちょっと店員さん!!」

 

と、急にアナスタシアの声が聞こえ三人は振り向くと、そこには飲料コーナにいたアナスタシアとハルカとナポリがいてアナスタシアが牛乳を片手に店員に何か言っていた

 

「あ、あの・・・お客様?どうかされたんですか?」

 

「どうもこうもないわよ!これどういうこと!?」

 

「えっと・・・・・・牛乳がどうかされたんですか?」

 

「見ればわかるでしょ!なんで賞味期限が切れた商品出してんのよ!?てか、これ日にちが20年前になっているじゃない!!」

 

「はぁ?」

 

アナスタシアの言葉に店員は首を傾げ、その言葉に私たちは先ほど見た商品を特に賞味期限日にちを見ると・・・・

 

「・・・・・確かに日にちが20年前ね」

 

「これも・・・・このバーガーの賞味期限もそうだわ」

 

「さっきの違和感はこれだったのね・・・・・」

 

と、そう言う中、店員さんはアナスタシアの持っている牛乳を手に取り賞味期限を確認すると

 

「あ、あの・・・・お客様?お言葉ですが賞味期限、切れてないですけど……」

 

「はぁ?だって今日何年何日なのよ!」

 

「えっと、今日は20xx年の○月の×日ですけど?」

 

「「「「「「・・・・・え”っ!?」」」」」」

 

店員の言葉にアナスタシアはおろかその言葉を聞いた私たちも目を丸くして驚き、りほは

 

「あ、あのちょっとすみません」

 

「あ、はい」

 

「本当に今日は20xx年なんですよね?」

 

「ええ、そうですよ?あの・・・・お客様?」

 

と、店員は訳が分からず困った顔をしている中、りほは小声でアナスタシアに

 

「アーニャ。ここはいったん買って撤退したほうがいいわよ」

 

「そ、そうね・・・・・・・」

 

と、そう言いアナスタシアは店員に顔を向けて

 

「あ、あの・・・ごめんなさい。私の気のせいだったみたいだわ。あ、これ買います」

 

「え?あ、はい・・・・毎度あり」

 

と、その後、私たちは食材とそして情報を集めるため雑誌を買いそのコンビニから逃げるように出るのであった。一方、店員はというとなんだろあの子たち?というような不思議な表情を浮かべていたのであった。

 

 

 

場所は先ほどの森の洞窟前に戻り私たちは食事をしながら、さっきコンビニで買った雑誌を見ていた。それに乗っている記事は『全国大会近し、黒森峰リベンジなるか!?それともプラウダが二度目の優勝を果たすのか!?』と書かれていて、その他の記事を見てもどれも20年前に起きたことばかりのことが書かれいた。それを見た私たちは

 

「私たち、本当にタイムスリップしちゃったんだ・・・・・しかも20年前に」

 

「そのようですわね・・・・この雑誌といい新聞といい。間違いはありませんわね」

 

「しかも20年前といったら、お母さんたちがまだ学生だった頃だよ?しかもこの戦車道特集を見る限り、まだ大洗戦車道部が復活する前みたいだし・・・・・」

 

「はぁ~ただの家出のつもりが大変なことになっちゃたわね・・・・・」

 

みんなはおにぎりやサンドウィッチを食べながらそう言う。するとナポリが

 

「で、これからどうする?飛ばされた時代はわかっても、私たちどうやって元の時代へ戻るんだ?」

 

「そうね・・・・・タイムスリップなんて空想小説での出来事ですから帰り方は・・・・・・」

 

「小説だと、何かの役目を終えたり。ふっといつの間にか元に戻ったりするけど。私たちの場合わね~」

 

ジャスミンとリリーが困った顔をして紅茶とコーラを飲むとアナスタシアが

 

「じゃあ、いっそのことこの時代で戦車道の賞金稼ぎやらない?」

 

「え?どういうことアーニャ?」

 

「こうなって帰り方もわからない今、私たちは漂流したのと同じよ。しかも今私たちの持っているお金は少ないし元の時代に戻るまで生活するには何かで稼がないといけないわ。だから最初の目的と同じ賞金が出る戦車道の試合に出て稼ぐのよ」

 

「賞金が出ない場合はどうするのよ?」

 

「その時は交互でバイトするしかないわ・・・・・」

 

「住民票や履歴云々ですぐばれそうだけど・・・・」

 

「うるさいわね!・・・・とにかく!戦車で稼ぐのよ!リホーシャはどうなの?」

 

とそう言うとみんなの視線が私に向く。私は少し考えて

 

「確かにアーニャの言う通り、今の私たちは漂流したのと同じ、資金も食料も少なくあるのは戦車だけ・・・・生活するには戦車で稼がないといけないわね。・・・・・それに」

 

「それに?」

 

「私たちは本来この時代には存在しないイレギュラー。もし戦車道で私たちが活躍すれば・・・・・」

 

「元の時代へ帰れるかもしれない?」

 

「うんハルカ。この時代に存在しないはずのチームがその時代で暴れたら時は歴史を修復させるため私たちをもとの時代へ返してくれるかもしれない。根拠はないけど・・・・」

 

「でも映画とか小説だとそれをやった人たちって最終的に全員死んでいるじゃない?」

 

「それは戦国時代の話だろ?さすがに今の時代じゃあ大丈夫よ。妙蓮寺とか島原とかないから」

 

「なんの話しているのナポリ?」

 

「ま、とにかく私たちはこの時代で戦車で稼いで何とかするしかないわね」

 

「では決まりですわね。戦車の賞金稼ぎ・・・・・・面白そうですわ。じゃあリーダーはどうします?わたくしは元の学校では砲手でしたけど」

 

「私はアンツィオでは操縦手だったな。操縦が上手いし」

 

「アーニャは通信手ね。こう見えてノンナおばさんにモールス打ち方とか教わっているし、それに携帯とか上手いんだから!」

 

「いや、それ関係ある?」

 

「うるさいわねリリーはどうするの?」

 

「そうね私は装填手にしようかな?相手に指示とか出すの下手だしね」

 

「じゃあ、私は装填補助手になるわ」

 

「となると車長はりほさんですね」

 

「え!?私!?確かに車長の経験はあるけど…自信ないわ」

 

「大丈夫よ。あなた一人でやるんじゃないから。さっきも言ったでしょ。やるときはみんなで力を合わせてんえ!」

 

「そう、そう。肩を軽くしないとりほ」

 

「そうヨこれからは同志なんだからリホーシャ」

 

「みんな……うん。じゃあ私、車長やるよ。よろしくね」

 

と、りほがそう言うと

 

「乗員の役割は決まったしあと、名前決めようよチーム名とかさ!」

 

「それにこいつにも名前つけないとね。チリは量産型もとい試作名の名前なんだからちゃんと名前つけてあげないと」

 

アーニャはチリの装甲を叩いてそう言う。するとジャスミンさんが

 

「りほさん。どういう名前にします?」

 

と、そう訊くと私は

 

「エーデルワイス・・・・ていうのはどう?」

 

「エーデルワイスですか・・・・いい名前ですわね」

 

「yes!!私も気に入ったわ!」

 

「エーデルワイス・・・花言葉は「勇気・忍耐」っか・・・・・確かにい名前ね」

 

「じゃあ、この戦車と私たちのチーム名はエーデルワイスで決定!!」

 

とみんなが嬉しそうに言う中りほはチリことエーデルワイスに近づき

 

「エーデルワイス・・・・これからよろしくね」

 

と、そう小さな声で言うのであった。こうして時代を超えた彼女たちの戦車道が今始まるのであった・・・・・

 

 

 

 

一方、別の場所では・・・・

 

「ここが大洗女子学園か・・・・・・」

 

と転校生であろうか少し大人しめの茶髪の子がそう呟くのであった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タイムスリップライフです

夕方、大洗女子学園の学園の中、寂れた建物があった。そこは今はもう誰も使われていない旧部室棟であった。そんな旧部室等に二人の女子生徒がやってきて階段を上りそしてたくさんある部室の中から一つの部屋の前に立ちドアをノックする。するとドアの向こうから、

 

「アリサ」

 

と声が聞こえ、そして少女は、

 

「タカシ」

 

と、答えるとドアが開き、少女は中へ入る。

 

「遅いじゃないのリーほーしゃ」

 

「ごめん、ごめん。アーニャ。ジャスミン。はい食糧と水ね」

 

「学校内の風紀委員の目を掻い潜ってここまでたどり着くの大変でしたわ・・・ところでアーニャやリリーは何か戦車の試合について何かつかめた?」

 

「全然。どの雑誌や申し込みの部分を見ても賞金が出るような試合は出てないわね」

 

「こっちもよ。この時代。賞金の出る試合はどこもやっていなさそうね~」

 

「そう・・・・ところでナポリとハルカは?」

 

「あの二人ならエーデルワイスの修理に必要な部品を買いに行っているわ。もうそろそろ戻ると思いますけど・・・・・それより、りほさん。リリーはどうしたの?一緒ではなかったんですか?」

 

「うん。さっきまで一緒だったんだけど・・・・・」

 

と、りほがそう言う。今現在りほたちはこの旧部室棟の一室を借りて生活している。もちろん無断で、すると・・・・

 

コンコン

 

「「「っ!?」」」

 

急にドアからノックがする。すると向こうから、

 

「タカシ・・・・」

 

と言葉が聞こえると少女たちはほっと息をつき、

 

「アリサ」

 

と、そう言いドアを開けると、

 

「ごめん。今帰ったよ~」

 

「あ~少し疲れたわね・・・・」

 

「は~い!みんなご飯買ってきたよ~!!」

 

と、ナポリとハルカとリリーが入ってくる。そしてみんなは円を組むようにして座り夕食を食べていた。

 

「リリー遅かったけどどうしたの?」

 

「いや~なんか風紀委員の人に捕まって~」

 

その言葉を聞いてみんなは目を丸くし、

 

「えっ!?ちょっと大丈夫なのそれ!?」

 

「もしかして私たちのことバレちゃったの?」

 

アナスタシアとナポリが慌ててそう言うとリリーは笑って、

 

「大丈夫よ。私たちのことはバレてないわ。ただ、この髪の色がね~『あんた髪染めてるでしょ!!』って注意されちゃったのよ。これ地毛だし生まれついての色なんだけどね~」

 

「それは・・・・・・大変でしたわねリリーさん。紅茶はいかがかしら?」

 

「ありがとジャスミン。できればコーラが良かったけど、たまには紅茶もいいね・・・・で、アーニャ。賞金の出る戦車道の練習試合について何か見つかった?」

 

「全然だめよ。この時代、賞金が出る試合やってないのかしら?・・・・・ところでナポリ、ハルカ。エーデルワイスはどうなの?」

 

「もうちょっと、修理が必要だね。動くことは可能だけど、全速を出すのも厳しいし、何より砲塔旋回もスムーズじゃない。根気よく直すしかないわね」

 

「大丈夫なのハルカ?」

 

「大丈夫よ。お父さんの戦車の整備をしていたから。できなきゃ勘当されるわ・・・・元に時代に戻ればの話だけどね・・・」

 

と、そう言うハルカ。するとハルカはふっと何かを思い出したのか、

 

「ところであの合言葉一体何なのリリー?」

 

「アリサとタカシて・・・・誰かの名前ですか?」

 

「う~ん。私もよく知らないけどうちの学校ではアリサ・タカシの名は結構ネタになっているのよ。なんでもお母さんの世代にいたアリサさんって言う人が元ネタらしいんだけど・・・・・お母さんにその由来を聞こうとしたんだけど、その話をしようとするとナオミおばさんが口止めしちゃって、わからないのよ」

 

「そうですの・・・・それよりもわたくしたちがこの時代に来て3日。今のところ大きな出来事はありませんね」

 

「そうね…この学園の生徒に成りすまして生活しているけど、それにしても、りほはともかくよくこの制服が見つかったよね?私は家出する際、うっかりマーマが昔持ってたのを借りたんだけど」

 

「奇遇ですわね。実はわたくしもこの服お母さまのお古を頂戴したものなのよ。あなた達は?」

 

「「「右に同じく」」」

 

そう、今のりほたちの制服はりほを除き、皆の制服はそれぞれの母校の制服ではなく大洗女子学園の制服であった。

 

「それよりもなんでみんなのお母さん、大洗の制服を持っていたのかな?」

 

「りほ、知らないの?あれよ伝説の戦いの一つ大学選抜戦」

 

「大学選抜・・・・・あっ!」

 

アーニャの言葉にりほは思い出す。大学選抜戦。それは大洗女子の歴史に残る大事件。廃校回避をかけた母であるみほが率いる大洗女子戦車道チームが実力も物量も格段に上の大学選抜と試合をしたとき母を助けるために母と砲を交えたライバルたちが母を助けるべく援軍に来て結成した大洗連合。その時援軍に来た他校の選手たちが来ていたのが大洗女子の制服だったのだ。

 

「まさか、こんなところでこの制服が役に立つなんてね・・・・」

 

「そうですわね。・・・・・・・ん?」

 

と、ジャスミンは何かを感じ取りこっそり窓の方へ顔を覗かせる。

 

「どうしたの?」

 

「・・・警備の人がこっちに来ている。リリー明かりを消して」

 

「OK」

 

と、そう言いリリーは明かりのランプを消して、そしてみんなは物陰に隠れる。すると下から足音が聞こえる。夜の学園を夜回りしている警備員の足音だ。そしてしばらくすると足音が遠ざかり、アーニャが窓をそっと覗き見てきょろきょろ見回すと、

 

「・・・・・・行ったみたいだよ」

 

「「「「ふぅ~・・・・・・・」」」」

 

アーニャが異常がないことを知らせるとみんなは息をつく。

 

「いや~夜はいつも見つからないかひやひやするな~」

 

「そうねナポリ。こればっかりは心臓に悪いですわね・・・・・・それでりほさん。明日はどうしますの?」

 

「え?そうですね・・・・・エーデルワイスが完全に直るまでは本格的な戦車道はできないし・・・・明日はいつもの通り、情報収集と戦車の修理。そして戦車を動かせるだけの資金集め・・・かな?」

 

「お金なら、わたくしとリリーが家出するときに銀行から引き出した現金があるとして、戦車の砲弾と燃料はひと月ぐらい持ちそうですけど・・・・・」

 

「うん。いつまでも二人の世話になるわけにはいかないし、バイトして稼がないといけないね・・・・」

 

「そうね・・・・それにしてもこの時代で私たちのいたお金が使えたのはラッキーだったわね」

 

「そうだね・・・・・20年たっているから変わっていると思ってたけど良かったね」

 

「それじゃ、もうそろそろ寝ようよ。私戦車の整備で疲れちゃった・・・」

 

「そうね。もうこんな時間だし、寝ようか」

 

「「「賛成」」」

 

と、そう言いりほたちは家出する際持ってきた寝袋を出し、それに入って寝るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日・・・・・

 

「ふわぁ~」

 

翌日の朝、りほたちはそれぞれ分かれて行動した。まずハルカとナポリはいつものように戦車の整備に、リリーとジャスミンは戦車ショップなどに行って、賞金が出る戦車道の試合がないか、もしくは戦車の整備に必要な賃金を稼ぐために最適なバイトを探し、そしてりほとアーニャは学園の中に入りいろいろと情報を収集している。何の情報って?それは元の時代に帰れる方法がないか調べるためだ。幸い学園にはパソコンはもちろん図書館並みに広い図書室があり、もしかしたら帰る方法がしるされたものがあるかもしれないと思い、今学校の中にいるのだ。

 

 

「それにしても…アーニャさん。大丈夫かな・・・・」

 

りほは先ほどまで一緒だったアーニャを心配する。実は数分前、二人は一緒に歩いていたのだが、突如風紀委員の人に、

 

「ねえ、なんでこんなところに小学生がいるのよ!」

 

「小学生じゃないわよ!立派な高校生よ!」

 

「嘘おっしゃい!そんな背の小ささ、それに袖の余った制服を着ていて明らかに高校生じゃないじゃない!どう見たって小学三年生くらいでしょ!」

 

「失礼なこと言わないでよ!こう見えて私マーマより5cm高いんだから!!」

 

「とにかく!小学生を学校に入れるわけ行かないの!保護者に連絡するからこっちに来なさい!!」

 

「だから小学生じゃないって言っているでしょ!もう!!」

 

「あっ!逃げたわ!追いなさい!!」

 

と、アーニャは風紀委員から逃げていて、今いるのはりほだけなのだ。

 

「まあ、アーニャさんなら大丈夫だと思うけど・・・・・・・さて・・・・・図書室は確か・・・・」

 

と、そう言いりほは角を曲がろうとしたとき、

 

ドンッ

 

「「きゃあっ!」」

 

突如誰かにぶつかる。

 

「あ、ごめんなさい」

 

「こちらこそ、すみません。ボーとして・・・」

 

そう言い女子生徒が謝る。そしてりほもぶつかった相手に謝り顔を見ると、目を丸くし驚いた顔をする。

 

「あ、あの・・・・・どうかしたのですか?」

 

とぶつかった女子生徒がそう訊くが、りほは目を丸くしたまま固まったままだった。りほのぶつかった相手はりほが一番知っている人であった。

 

「(お、おおおおおお母さん!?)」

 

そう、りほがぶつかった女子生徒はなんと自分の母である西住みほであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

「会長」

 

「ん?どーした~河嶋?」

 

「実は学園内で変な噂が広まっているんです」

 

「変な噂?何それ?」

 

会長と呼ばれたツインテールの少女がそう訊くとポニーテールの子が、

 

「実は旧部室で人魂を見たとか幽霊みたいな人影を見たってうわさが広がっているんです。それだけじゃなく他にも全生徒の人数もなぜだか増えているんです」

 

「ん?幽霊はともかく、生徒の数が増えている?転校生が入って来たの?」

 

「いえ、この前転校生が入って来たのですが・・・その転校生の人数を書かれた名簿の人数より6人多いんです」

 

「ん~これは調べる必要があるかもね~河嶋、小山。旧部室棟の幽霊と名簿の人数より多い生徒のこと調査よろしくね~」

 

「は、はい」

 

「わかりましたすぐに調べてきます」

 

と、そう言い二人は生徒会室を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

若き母との出会いです

更新遅くなって申し訳ございません!!


20年前の時代にタイムスリップした私たちは情報集めのため、リリーとジャスミンは戦車ショップ。ハルカとナポリはエーデルワイスの修理。そしてアーニャと私西住りほが学校の図書室でタイムスリップについて調べることになったのだが、アーニャは生徒会の人たちに追われ、そして私はというと・・・・・・・

 

「(お、おおおおおお母さん!?)」

 

そう、若き日・・・・学生だった頃の私の母西住みほと出会ったのだ。

 

「あ、あの。すみません急ににぶつかって。怪我とかしていませんか?」

 

ぶつかって慌てて私に言う若き母。

『西住みほ』

戦車道を志す者は知らない者はいないというほどの伝説的な戦車乗りで、戦車道流派の名門中の名門と言われる『西住流』の家元の娘で20年前当時の戦車道経験皆無だった先輩たちを率い無名校から夏の大会で優勝するという華々しい功績を残し、廃校の危機に瀕した私の母校大洗女子を救った英雄としても知られていて、現在、と言っても私のいる時代では高校戦車道協会の高校選抜チームの教官をしている。そして学生時代の功績から周りから『大洗の軍神』と呼ばれている

だが、私が知っている母は周りが軍神!という風な感じの人ではなく、いつも笑顔を絶やさない明るい人でちょっと変わった趣味を持った人なのだ

 

「あの~」

 

私がお母さんと会って驚く中若き日の母・・・・・いや学生時代の母は首をかしげていると、私はすぐにはッと正気に戻り、

 

「え?ええ、大丈夫。私こそごめんなさい・・・・・あ、おか・・・・あなたの鞄の中身、零れているわ。ごめんなさい私とぶつかったせいね」

 

「え?」

 

私の言葉にお母さんは自分の鞄を見ると鞄から筆記用具やら教科書が零れ散らばっていた。

 

「あっ!本当だ!」

 

「私も手伝うわ」

 

「え?でも・・・・」

 

「いいの。元はと言えば私がぶつかったのが原因だから。だから手伝わせて」

 

「あ、ありがとう・・・・」

 

と、おどおどとそう言う母の姿を見て私は

 

「(昔のお母さんって今と変わらいな・・・・・・)」

 

今も昔も変わらない母の姿を見てそう思った。そして私と学生時代のお母さんは地面に散らばった筆記用具や教科書を拾いお母さんの鞄に入れる

 

「ありがとう。えっと・・・・あなたは・・・・」

 

「え?私は・・・・・・・」

 

私はお母さんに自分の名を名乗ろうとしたがすぐに戸惑った。ここで自分の名を出してよいのだろうか?いいや絶対にまずい。まずいに決まっている。だからと言って名前を名乗らないのも失礼だし・・・・・困った。

そう、私が悩んでいると急にチャイムが鳴る

 

「あっ!行けない遅刻する!そ、それじゃあ、みほさん!私先を急ぐから!」

 

「え?あ、ちょっと!?」

 

そう言い私はタイミングよくなったチャイムを利用して急いでこの場を走り去るのだった。そして一人残された若き母であるみほはというと

 

「あの子・・・・・何で私の名前を知っていたのかな?・・・・あ、いけない私も行かないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・あ~びっくりした・・・・・」

 

慌ててその場を後にしたりほは手に胸を当て息を切らしていた

 

「まさかお母さんに会うなんて・・・・・・20年前の大洗にタイムスリップしたとはいえこれはびっくりね・・・・・」

 

若き日の母に出会って驚いていたりほは息を切らしながらそう言うと、急に誰かが後ろからりほの肩を掴む

 

「っ!?」

 

ビックリしたりほは慌てて振り返ると・・・・・

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・やっと見つけた、りほーしゃ」

 

「あ、アーニャ」

 

りほの肩を掴んだのはアナスタシアことアーニャであった

 

「はぁ…はぁ…やっとあのおかっぱ連中を振り切ったわ」

 

「た、大変みたいだねアーニャ」

 

「ええ、でもこの私の小さい身長とすばしっこさを利用して、撒いてやったんだから。ほんと便利ねこの身長は」

 

「そ、そう」

 

胸を張って言うアーニャに私は苦笑する。アーニャって自分の背が小さいことにコンプレックスとか抱いていないんだな。てっきり母親であるカチューシャさんと同じかと思っていた。そう考えているとアーニャは私の考えていることがわかったのか

 

「りほーしゃ。今あなた私がマーマと同じ、身長にコンプレックス抱いているって思ったでしょ?」

 

「え?いや…別に?」

 

ジーと私を見つめるアーニャに私は視線を逸らすとアーニャは軽く息をつき

 

「別にいいわよ。マーマのコンプレックスは有名だしね。そう思われても仕方がないわよ。でもねりほーしゃ。私はこの低い身長は嫌いじゃないわよ。いろいろ得することが多いし」

 

「例えば?」

 

「例えばそうね・・・・・・ほら私小学生に見えるからアイスとか映画の料金半額になったり、かくれんぼなんか負け知らずだったりいいことずくめよ。まあ子ども扱いされるのは少し癪だけどそれを除いては別に気にしたりはしてないわよ」

 

「後者はともかく前者はダメなんじゃない?」

 

「いいのよ。それよりも早く図書室で元の時代に戻る方法を探しましょ。私図書室の場所わかんないからりほ案内して」

 

「え?あ、うん!確か図書室は・・・・・・」

 

そう言いりほはアーニャを連れて教師やほかの生徒に見つからないように図書室へと向かうのであった。

 

一方、ハルカやナポリはエーデルワイス号のレストアをしていた

 

「どう?ハルカ?」

 

「そうね。動くだけならまだしも、試合に出すとなると、やっぱり自動車とかそういう系の専用の工具で完璧に整備できないとまずいわね」

 

「やっぱりそこが問題か・・・・・ねえ、その道具今から買いに行く?」

 

「買いに行くって言ってもそういう系の整備道具は結構高いわよ。私たちの費用じゃ今後のことを考えると結構厳しいわよ」

 

「そっか~どこかに自動車とか整備しているところないかな~」

 

「そうね・・・・りほが戻ったら訊いてみましょナポリ」

 

「そうだな~そう言えばりほはアーニャと一緒に学校の図書館で元の時代に戻る方法を探してみるって言っていたけど、大丈夫かな。それとバイトとか賞金の出る試合を探しに行ったジャスミンやリリーたちの方も心配だし」

 

「そうね・・・・みんな無事だといいけど。それよりもやっぱりこのエーデルワイスの主砲75ミリじゃないわ」

 

「え?じゃあ、やっぱりハルカこの五式…言え、エーデルワイスの主砲って・・・・・」

 

「ええ、これ。88ミリ。しかも日本の88ミリじゃなくてティーガーと同じドイツ製の88ミリ砲よ」

 

 

 

一方、リリーやジャスミンたちも生活するうえで必要な資金を稼ぐためにバイトやそして本来の目的である賞金の出る戦車道の試合がないか探していた

 

「どうリリー?何か見つかりまして?」

 

「全然ダメ。どこのバイトも履歴書が無きゃ無理。まあ当然だけどね」

 

「そうですか・・・・」

 

「ジャスミンの方は?賞金付きの試合見つかった?」

 

「全然ダメでしたわ。どれもこれも夏の大会についての広告ポスターやらそういう系の物ばかりでしたわよ」

 

「そっか、もうそんな時期なのね~」

 

戦車道ショップの休憩場でリリーとジャスミンは紅茶とコーラを飲みながら仕事を探していたが結局見つからないままであった

 

「それに賞金付きの戦車道の試合もないし、これはもうお手上げね」

 

「困りましたわね・・・・・・・家出するときにもって来た現金はまだたくさんあるけど今後もし長い間この時代にいるのならやっぱり働き口を探さなくちゃいけませんから。仮に履歴書を偽造してお住所云々で速バレますし」

 

「そうね~それに生年月日も私たちが生まれたのってこの時代から数年後も先だしね・・・・・カードも使えないし」

 

ため息をついてそう言う中、ジャスミンは紅茶を飲むと、

 

 

「それよりもりほさんたちは大丈夫かしら?迷子になっていなきゃいいんですけど」

 

「う~ん・・・・一応、彼女の母校だし大丈夫だとは思うけど・・・・・さて、もう一度探してみようかな?」

 

「わたくしも協力しますわリリー」

 

そう言い二人は椅子から立ち上がりバイトや賞金付きの試合を探しに行くのであった。

 

 

 

 

 

一方、りほたちは図書室の中、タイムスリップ系の本を調べていた

 

「う~ん・・・・やっぱりないわね…時空を超える方法なんて・・・・」

 

「そうね。りほーしゃ。タイムスリップ系の小説はあるけど実際のタイムスリップができる方法が書かれた本なんて一冊もないわね。ま、会ったらそんなに苦労しないけどね」

 

「確かに・・・・・」

 

そう言いながら、りほとアーニャは必死に元の時代に戻るための方法を探していた。家出してきた彼女だがやはり元の時代に帰りたいのだろう。するとアーニャが

 

「ねえ、りほ。私たちこれからどうなるんだろうね?」

 

「え?」

 

真剣な表情で本を読みながらアーニャがそう言う

 

「もし、もしだよ。私たちが元の時代に帰れなかったら私たちこの時代の人間として生きなきゃいけないのかな?家出した身でこんなこと言うのはおかしいけどもうマーマに会えないのかな?」

 

「アーニャ・・・・大丈夫だよ。きっと元の時代に戻れるよ」

 

「そっか…そうだよね。確かにりほーしゃの言う通りだね。それにニーナお姉ちゃんがよく言ってたわ『絶望したりすぐに諦めたりするものはは愚か者のたとえ』だって」

 

「ニーナお姉ちゃん?アーニャ、お姉さんがいたの?」

 

「ほんとのお姉さんじゃないけど。マーマの後輩でね。小さい頃はよく戦車に乗せてくれたり戦車道で悩んだ時はいつも相談に乗ってくれたり、ほんとの姉のような人だったわ。まあそれと同時に私の師匠のような人でもあったけど。知らない?」

 

「ごめん。あまり・・・」

 

「そう、これでもニーナお姉ちゃん。大学選抜戦でKⅤ2に乗ってあの『プラウダ殿戦』でも活躍したんだよ」

 

「え!?プラウダ殿戦ってあのプラウダ殿戦!?」

 

「そ、あのプラウダ殿戦」

 

プラウダ殿戦。それは戦車道でも有名な戦いの一つ。大洗の命運をかけた大学選抜戦で援軍に駆け付けた大洗連合軍。その中で大学選抜の追撃やカール自走砲の砲撃で危うくなったひまわり中隊の副隊長であったアーニャのお母さんであるカチューシャを救うべく彼女の仲間が盾となり彼女を救ったと言われ、戦車道界では有名な話の一つである

 

「でね、マーマが卒業した後、お姉ちゃんマーマの後を継いでプラウダの隊長をして『小さき巨人(ギガント)』て呼ばれたんだけど?」

 

「へ~そうなんだ。すごいんだね」

 

「うん。マーマの次に尊敬する人なのよ」

 

とニコッと笑うアーニャ。するとアーニャは

 

「で、りほーしゃ。さっき校庭で会った時何かあったの?」

 

「え?」

 

「だって今こうして調べ物をしている時でもりほーしゃ。何かあったような顔しているじゃない。話してくれる?もしかしてしにくい話?」

 

「あ、いやそうじゃないの。実はね・・・・」

 

そう言いりほはアーニャに学生時代の母にあったことを話す

 

「そ、りほーしゃのマーマにね・・・・それは複雑な気持ちになるわね。私もマーマに会ったらきっと同じ感情を抱くわよ。そっか。りほのマーマがここに来たってことはもうすぐ大洗の戦車道の歴史が動き出すね」

 

「うん・・・・・そうだね・・・・・でも私たちがこの時代に来て。本当に歴史通りになるのかな?」

 

「さあね。それは時の神様にでも聞かなきゃわからないわよ。さ。、もう少しだけこの山済みの本を片っ端から調べよう」

 

「そだね」

 

そう言いりほたちは再び、タイムスリップについて調べるのであった

 

 

 

 

 

 

そして生徒会長室では

 

「それは一種の情報操作にあたるのでは?」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

「では、直ちに取り掛かります」

 

「あ、それと河嶋。例の件調べてくれた?」

 

「はい。風紀委員やほかの生徒に協力してもらいましたが、やはりうちの学校にいるはずのない生徒が6名います」

 

「へ~で、どんな子たち?」

 

「はい一人は、先ほど会長がリストアップしていた西住に似た子。もう一人は小学生、もう一人は金髪でお嬢様みたいな子とそしてアメリカ風な感じの生徒、そしてもう一人はグレー色の髪をした生徒とそして最後に目つきの悪い少女の6人です。その6人は目撃情報によると放課後旧部室棟にこっそりと入り込んだり森の中に入ったり、そして授業中にも関わらずコンビニや戦車ショップに通っているとの情報が入っています」

 

そう言い河嶋はひそかに撮られた6人の写真を会長に渡す

 

「なるほどね~旧部室の怪奇現象の正体はこの子たちかな?わかった。じゃあ見つけ次第生徒会室に連れてくるように」

 

「はっ、かしこまりました」

 

そう言い河嶋と柚子は部屋から出ると杏は先ほどの写真を取り

 

「何者なんだろうねこの子たち・・・・・何か世界の流れを変えちゃうような感じがするね・・・・・ま、そんなわけないか」

 

そう、ポツリとつぶやくのであった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来組、少しピンチです

若き日の母と出会い、そして私たちがこの時代に飛ばされてから早一週間たっていた。この一週間の中、元の時代に戻れる方法はまだ見つかっていない。一体、歴史は俺たちに なにをさせようとしているのか?なんてどこかタイムスリップの金字塔みたいな映画のキャッチコピーを思い浮かべてしまう時がある。だが、そんなことは私はおろかみんなにもわからない。そして現在私たちは・・・・・

 

「えっと・・・・・カップラーメンとフルーツとサバの缶詰にカロ〇ーメイ〇に飲料の天然水・・・・・ほとんど保存食ねリホーシャ」

 

「うん。私たちの住んでる部屋、冷蔵庫ないからね」

 

夕方、スーパーの中で私とアーニャは一週間分の食料を買いものをしていた。最近私はアーニャとともに行動をすることが多くなった。まあ、毎日というわけではないが一週間に4回はだいたいアーニャだ

 

「それはそうけど、たまにでいいからちゃんとした料理とか食べたいわね。ねえ、家庭科室とか使えないの?」

 

「う~ん。あそこは授業や部活以外の時は鍵かかっているから・・・・鍵も生徒会の部屋だし」

 

「そっか・・・残念。せっかくピロシキとかボルシチとか作ろうと思ったんだけどね~」

 

「え、アーニャ。料理できるの?」

 

「うん。だって私の趣味料理だし、将来の夢ロシア料理専門のコックになろうかなって思ってたもん」

 

「へ~そうなんだ」

 

と、私とアーニャはそのままリストに載ったものを買うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃ナポリとハルカは・・・・・

 

「チラリ・・・・・」

 

「キョロリ・・・・・」

 

校庭にある大きな倉庫らしきところできょろきょろとあたりを見渡しながらこそこそと倉庫の中に忍び込んでいた。その風景はまるでコソ泥。ピ〇クパ〇サーのBGMが流れてきそうな雰囲気であった。

 

「ここか。自動車部が使っているという倉庫は」

 

「そうみたいわね。自動車とかいっぱいあるし…‥あ、あれはコスモスポーツ!レア車だわ!それにあそこには三菱ジープにビートルまである!」

 

「ハルカ。詳しいんだな・・・・」

 

「父の実家が自動車整備工場なのよ」

 

「へ~そうなんだ。だから自動車系の整備上手かったんだ」

 

「前にも言ったような気がしたけど・・・・・・まあ、良いわ。あ、工具があるわ」

 

「でもいいのか?勝手に持ち出したりして?これって泥棒じゃ・・・・」

 

「違うわよこれは借りるだけ・・・そう借りるだけ。ちゃんと返すから・・・・・たぶん」

 

「たぶんって、それじゃあ、だめじゃないか!?見つかったら怒られるぞ!もっと他に良い手があるって!そうだ自動車工場の人に頼めば・・・」

 

「それだと請求とかで私たちのことバレちゃうわよ」

 

「ウっ・・・そうなんだけどな・・・・でもやっぱり黙って持っていくのはダメだよ。せめて一言言わないと・・・・・」

 

そう二人が話す中

 

「あの~さっきからなんの用?」

 

「「っ!?」」

 

急に声がし二人が驚くと二人の目の前にある車の下から一人の短い髪の少女が出てきた。

 

「やあ」

 

「あ、あの・・・・・・いつからいたんですか?」

 

「ん?朝からだよ?で、なに工具借りに来たの?それとも入部希望者?」」

 

「えっと・・・あのすみません!ほらハルカも謝れ!!」

 

「へぶっ!?」

 

ナポリは少女の前に土下座をしそしてナポリはハルカの頭を掴み、無理矢理頭を下げ鈍い音と共に、地面へと頭をぶつけてしまう。

 

「すみません!別に盗もうとかそう言うのじゃなくて、ただ借りたかったというか!!ですから警察に通報だけはご勘弁を~!!」

 

「な、ナポリ・・・・痛いてば・・・・・」

 

「あ~落ち着いて、落ち着いて。別に怒ってないから。ね。だから落ち着きなって」

 

パニック状態で土下座しながら言うナポリを自動車部のつなぎ服を着た少女はなだめるのだった。

 

 

数分後

 

「どう?落ち着いた?」

 

「は・・・・はい。ごめんハルカ。いたかった?」

 

「え、ええ…でも私も悪いからお互い様よ」

 

頭をさするハルカにナポリは申し訳なさそうに言うと自動車部の少女は

 

「仲直りできてよかったけど。で、うちになんの用?うちの工具使いたがっていたみたいだけど?」

 

「じ、実は・・・・整備したい車がありまして・・・・」

 

「車?どんなの?」

 

「えっと・・・ブルドーザーと言うかなんというか特殊車輌と言うか・・・・」

 

「私たち戦車の整備をするため工具を借りに来たんです」

 

「戦車?」

 

「ちょ、ナポリ」

 

「ハルカ。こういう時は変な嘘言わないで正直に言った方がいいよ」

 

「はあ、まったくアンツィオ出身はバカ正直ね」

 

「自分の気持ちに素直といってくれないかな?・・・・それでなんですけど。あたしたち実は戦車の整備をしているんですが細かいところは自動車の工具を使わないとできないので・・・・」

 

「それでうちの工具を借りに来たの?」

 

「は、はい・・・・すみません黙って持っていくつもりはなかったんです」

 

「う~ん・・・・・まあいいよ。使っても」

 

「え!?いいんですか!?」

 

「うん。ただし、その戦車の整備私にもやらせてね。何ならここに運んじゃってもいいからさ。ちょうど私もこの車の整備終わったところだし次はどんなのを整備しようか考えていたから」

 

「あ、ありがとうございます!あ、それとこれお願いなんですけど私たちと戦車のことなるべく秘密にしてくれますか?」

 

「え?なんで?」

 

「なんというか。秘密にしたいというか、ほかの人たちに見られるとまずいというか・・・・とにかくまずいんです」

 

「そっか・・・・・まあ、あまり追及はしないけど・・・・じゃあ、夜とかはどうかな?私たちたまにここに泊まり込みすることがあるから。で、君たちの戦車ってどこにあるの?」

 

「えっと・・・・・学校の森の中の大きな洞窟に・・・・」

 

「あ~あの洞窟か。それならそこのすぐそばに前の先輩たちが残した隠し自動車倉庫があるからそこでしよう」

 

「ありがとうございます!」

 

ナポリがお礼を言うとハルカが

 

「でも本当にいいの?あなたの部長に黙って?」

 

「ああ、それなら心配ないよ。そう言えばまだ自己紹介をしていなかったね」

 

そう言い少女はにこっと笑うと

 

「私はこの自動車部の部長のナカジマだ。よろしくね二人とも」

 

 

 

 

 

 

一方、リリーとジャスミンは

 

「ねえ、なんか誰かにつけられている気がしない?」

 

「そう言えばそうですわね?」

 

学園内を歩く中、二人はどこからか視線を感じていた。すると彼女らの傍にいる生徒たちの声が耳に入る。

 

「ねえ、ねえ聞いた?怪奇現象のこと?」

 

「聞いた聞いた。旧部室棟の幽霊でしょ?」

 

「そうそう。人魂が出たり。誰もいないはずなのに人影が見えたり」

 

「ほんと、不気味よね~なんか生徒会の人たちが調べているらしいよ~」

 

そんな声を聞くと二人は

 

「「(ま、まずい・・・・・このままでは非常にまずい))」」

 

他の人には悟られないように無表情でいる彼女たちだがその額は汗がだらだらと流れていた。そして二人は

 

「(ちょっと、どうするジャスミン。私たちのことバレそうになっているわよ)」

 

「(どうするもこうするも。困ったことになりましたわね・・・・生徒会にあそこを調べられたら完全にゲームオーバーですわ)」

 

「(そうね・・・生徒会連中が本格的に捜索する前に別の拠点を探さないと・・・・・ねえジャスミン。メールでりほたちにこのことを知らせて)」

 

「(わかりましたわ)」

 

そう目線だけで会話をし、ジャスミンはスマホを取り出しりほたちにメールを打つ。そしてリリーたちは生徒たちにバレないようにこっそりと歩くのだが・・・・

 

「なんかどんどん視線がこっちに向かっているような・・・・」

 

「当たり前でしょリリー。そんな泥棒コントのような歩き方をすれば誰だってこちらに注目します」

 

「じゃあ、髭ダンスの方が良かった?」

 

「いや、そう言う問題じゃないですわよ?」

 

「ごめん御免。冗談よ。でも、視線の原因はそれだけじゃないような・・・・・・」

 

「どういうこと?」

 

首をかしげるジャスミン。すると・・・・・

 

「あー!あそこにいたわよ!!」

 

「「っ!?」」

 

急に背後から声がし、二人が振り向くとそこには複数のおかっぱ軍団がいた。

 

「生徒会長の命によってあなたたちを拘束するわ!全員突撃!!」

 

そう言うのと同時におかっぱ軍団はこちらに向かってくる。

 

「え!?何!?何ですの!!」

 

「とにかくジャスミン。理由はわからないけど逃げよ!」

 

「そ、そうね!!」

 

「あ、逃げたわ!追いなさい!!」

 

そう言いおかっぱ軍団は二人を追いかける。そして二人が角を曲がるのを見てリーダーらしきおかっぱは

 

「しめたあそこは行き止まりよ!」

 

そう言い角を曲がると・・・・

 

「あれ?いない?」

 

角を曲がった先には行き止まりはあるのだが肝心の二人の姿はなかった。

 

「どこに行ったのかしら?」

 

そう言いおかっぱリーダーはきょろきょろと見渡すと隣に部屋がありそこには美術室と書かれていた。

 

「ここに隠れているわね・・・・・」

 

そう言い部室の扉に手をかけ勢い良く開ける。

 

「さぁ!観念しなさい!!」

 

「「ひゃい!?」」

 

「・・・・・あれ?」

 

てっきりあの金髪少女二人がいるのかと思ったリーダーだったが、部屋では二人の黒い髪と茶髪の長い髪をした少女が絵を描いていた。

 

「あ、あの・・・・ここに何か用ですか?」

 

「あ、いえ。ちょっと人を探して。ねえ、さっき金髪の生徒二人がここに来なかった?」

 

そう訊くと生徒のうち一人が窓の方を指さす。窓は空いていた。

 

「え?ああ。その人たちなら、急に部室に入ってきたかと思ったらすぐにあそこの窓から飛び出して行きましたよ?」

 

「なんですって!?」

 

「あの・・・・その二人がどうかしたんですか?」

 

「わからないわよ。ただ生徒会に連れてきてッて言われただけなんだから。後、正確には二人じゃなくて6人よ」

 

そういい、リーダーは小さなポスターを取り出し二人に見せる。そのポスターには

 

『指名手配。この6人の顔にピンときたら生徒会か風紀委員に連絡してください』

 

と、書かれていた。そしてそのポスターにはりほ、アーニャ、ジャスミン、ナポリ、ハルカ、リリーの写真が貼られていた。それを見た生徒二人はぎょっとした顔になるが、リーダーは二人に気付かず

 

「で、あなた達もさっきの二人以外人この生徒を見かけたら知らせてよね。いい?」

 

「わ、わかりました」

 

「い、イエスマム」

 

と苦笑いで返事をするとリーダーは

 

「ゴモヨ、パゾ美とその他。急いで追いかけるわよ!部活の邪魔してごめんなさいね。これも風紀委員の仕事だから!」

 

そう言いおかっぱ軍団こと風紀委員たちはその部屋から出て行くのであった。そして残された二人はと言うと・・・・・

 

「「ふうっ~~~~~」」

 

深いため息をつくと

 

「どうにか誤魔化せたわねジャスミン」

 

「ええ、そのようね」

 

そう言って二人は髪を掴むとその髪が外れ、金髪の髪が現れる。

 

「でもよかったわね。偶然、あそこに鬘があって」

 

「ええ、美術室になぜ置いてあるかわからないけど助かりましたわ」

 

そう言う。そうこの生徒たちの正体はジャスミンとリリーがそばにあった鬘を被って変装した姿であった。

 

「それにしても、ことは重大ね」

 

「そうですわね。これは早く戻ってりほさんたちと話し合わないと」

 

「なら旧部室棟に急ぎましょ。今ならまだ荷物を移動することができる」

 

「避難場は?」

 

「エーデルワイスがある洞窟にしましょ」

 

「そうね。一応そのことは、りほさんたちに伝えておくわ」

 

そう言い二人が頷き合い、そして再び鬘を被りその部室を出るのであった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな居住生活です

「ほんとにここ使っていいんですか。ナカジマさん?」

 

「うん。この倉庫、私たちもあんまり使っていないから好きに使ってよ。機材もジャッキも冷蔵庫もここにあるし」

 

「本当にありがとうございます」

 

今、私たちはエーデルワイスを隠した森の中にある古びた倉庫の中にいた。なぜここにいるかというと、先ほどリリーたちから生徒会たちが私たちのことを探しているというメールが来たからだ。その内容を知った私たちは急いで旧部室棟に置いてある荷物を纏めエーデルワイスを隠した洞窟に集合した。そして集合する際、ナポリとハルカが自動車部の人を連れてきたのだ。なんでも戦車の整備道具を貸してくれるのと一緒に整備を手伝ってくれるらしいとのことだ。そしてエーデルワイスは今の洞窟からすぐそばの使われなくなった倉庫に移したというのだ。そして私たちの拠点は旧部室棟から倉庫に移ったのだ。

 

「それにしても大きいね~。これなんていう戦車なの?」

 

ナカジマさんは興味津々で私に聞く。

 

「あ、これは五式中戦車と言って戦時中の、日本最後の戦車なんです」

 

「へ~そうなんだ。ねえホシノ。どう?」

 

「そうだね確かにこの子たちが言った通り、専門の機材で整備しないといけないところが多いよ。これは大仕事になりそうだね。ツチヤやスズキはどう思う?」

 

「そうだね・・・・エンジンはまだいいとして、これオイル交換とかしたほうがいいかもね?まあ、コーナリングは任せておいて」

 

「ドリフト!ドリフト!」

 

「いや戦車でドリフトは無理なのでは?」

 

「いや、案外できるかもしれない・・・・・ナカジマさん。もしかしてできます?」

 

ジャスミンとハルカがそう言うとナカジマさんは

 

「そうだね。ミューが低い場所でモーメントを利用すれば出来なくもないけど…雨が降ればなお良いねー」

 

「なるほど、ハイドロプレーニング現象ね。確かにあれなら・・・・・いっそのことローライダーに改造・・・・」

 

「いや、ダメでしょハルカ」

 

ハルカの言葉にアーニャがつっこむとナカジマさんは

 

「まあ、ともかく本確的な整備は明日ということで」

 

「うん。ありがとうございますナカジマさん。それと・・・・・」

 

「わかっているよ。この戦車のことと、君たちのことはみんなには内緒にしとくから安心して。ね、みんな」

 

ナカジマさんの言葉にほかの自動車部の人たちが頷く。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いいよ、良いよ。じゃあまた明日ね」

 

そう言いナカジマさんたちは倉庫から出ていき自宅へと帰って行ったのであった。

 

「あれが後のレオポンさんチームのナカジマさんたちか・・・・・」

 

私はそう小さく呟く。レオポンさんチームという自動車部のことは大洗女子学園の伝説の一つと言われている。壊れた戦車を一晩で直したり、走行中だった戦車を直したり、戦車でドリフトしたり、故障の多いポルシェティーガーをスペック以上の性能を出したりと数々の伝説を残していき、その伝説は今なお、語り継がれていて私たちの時代の自動車部の目標にもなっている。

 

「良かったね。これで私たちの戦車試合に出せるね」

 

ナカジマさんたちが帰った後、私たちはその倉庫にある小さな個室、六畳ほどの部屋に囲むように座っていた。その個室には冷蔵庫の他、洗面台やガス台もあり、十分生活でき旧部室棟より住みやすい環境であった。

 

「それ以前に賞金付きの試合見つけないと・・・・と、いうかナポリ、ハルカ。何見つかっちゃっているのよ。あなた達が自動車部の人たちを連れてきてびっくりしちゃったじゃない」

 

「「う、返す言葉もない」」

 

「まあ、良いじゃないですか。いい人そうでしたし、秘密にするというのであれば問題ないし、なにより早く戦車の修理が終わるんですもの。そうではなくてアーニャ?」

 

「それはそうだけどジャスミン・・・・・・と、言うより今はこの手配書のことよ!」

 

そう言いアーニャはちゃぶ台の上にバンッ!と一枚のポスターを出す。それはリリーやジャスミンが持ってきた生徒会たちが私たちを探すために作ったあの手配書だった。

 

「いつの間に顔写真なんて取られたのでしょう?」

 

「わからない。それ以前になんで私たちがここの生徒じゃないことが・・・・・アーニャは別として」

 

「それどういう意味よ。私の身長が小学生クラスだからバレたと言いたいわけ?」

 

「あ、ごめん。別にそういう意味じゃないわよアーニャ」

 

「ならいいのよ。で、これからどう行動するのリホーシャ?」

 

「うん。もう素顔で学校内でうろつくのは自殺行為だし・・・・・変装するしか」

 

「それなら問題ないですわ。美術室から大量の鬘を拝借してきましたから」

 

そう言い紅茶を飲むジャスミンの後ろでは、段ボール箱の中に大量の鬘が入っていた。

 

「・・・・・何で美術室にそんなものがあるの?」

 

「マネキンにたくさんついていたのでそれを・・・・」

 

「マネキンって、美容室じゃあるまいし。りほ。何か知っている?」

 

「う~ん。私のいたころはマネキンとかそう言うのはなかったかな?なんか昔、盗まれたとか何とか・・・・」

 

「え?それってまさか・・・・」

 

「まあともかく、しばらくはこの鬘を被って学校内を動かないといけないわね。私とナポリは自動車部の人たちとエーデルワイスの整備をするとして」

 

「ごめんねハルカ、ナポリ。整備ばかりやらせて」

 

「いいんだって気にするなりほ。結構楽しいわよ」

 

「私もよ。それに私、将来戦車の整備士になろうかと思っていたし、修行だと思えば別に何ともないわ。だから気にしないで」

 

「そう・・・・ありがとう」

 

「それよりも今後学校内を歩くときは慎重に行かないとね。得にあのおかっぱ軍団には要注意ね」

 

「おかっぱ軍団?ああ、風紀委員ね。確かに厄介ね。私も気を付けないと」

 

「そうね。アーニャは小学生ぽいからなおさらね~」

 

「うるさいわね。こう見えて私結構なお姉さんなのよ」

 

「え?アーニャ歳いくつ?」

 

「18、だから高校三年生。みんなは?」

 

「わたくは17、二年生よ」

 

「私も17。黒森峰の二年生」

 

「私もアンツィオでは二年生だ」

 

「私も二年生・・・・」

 

アーニャの質問にリリー、ハルカそして私がそう言うとジャスミンは

 

「わ、わたくしは16・・・・まだ一年になったばかりですわ」

 

「「「「えーーーー!!!」」」」

 

ジャスミンが少しおどおどしながら言うとみんなは驚く。

 

「嘘、ジャスミンって大人びてるから年上に思ってたわ」

 

「わ、私もてっきり三年生かと」

 

「普通に、アーニャが一年でジャスミンが三年かと思った」

 

「だからそれ、どういう意味よ!もう私の身長のことネタにするのやめなさいよ!別に気にしてはいないけど、そうしつこいと怒るわよ!」

 

「アハハ・・・ごめんアーニャ。それよりも今後はどうする敬語で話したほうがいい?」

 

「その必要はないわ。私たちは同志なんだし、歳だって一歳しか違わないしため口でも問題ないわ」

 

「そうね。確かに今から口調を改めるのも大変ね」

 

「私も今の方が喋りやすいし」

 

ということで私たちは今までと同じ話し方になったのだった。すると

 

「それにしてもエーデルワイス。見れば見るほど不思議よね?」

 

「確かに。あの子、私たちの知っている5式じゃないわね。写真を比べても微妙に違うし」

 

「そうね。全面装甲も少し傾斜してるし、副砲である37ミリもないし、主砲も88ミリだし。何より装甲を調べたら、75ミリじゃなくて100ミリだったし・・・・まさか量産型?」

 

「まさか五式は少数しか作られなかった幻の戦車よ。量産なんてありえないわ。もしかしたらこの子、別世界から来たのかしら?ほら紺〇の艦隊のような世界の戦車とか」

 

「それこそおかしいじゃない」

 

「いや、タイムスリップした私たちがいるんだから異世界からトリップした戦車が出たっておかしくないかもしれないぞ?」

 

「ナポリまで・・・・まあ、良いわ。どんな戦車であってもエーデルワイスには変わりないんだし」

 

「そ、そうね。まありほがそう言うならそうでしょ。それよりそろそろご飯にしようか?」

 

「そっか。そう言えばもう遅いし、ねえ、ちょうどこの部屋コンロあるし何か作らない?正直コンビニ弁当とかじゃ飽きたわ」

 

「えっと・・・・確か缶詰が・・・・」

 

「よし、ならその缶詰で何か作ろう!私ロシア料理作ってあげる」

 

「いいや、料理と言えばアンツィオのイタリア料理だ!」

 

「そう、それなら、わたくしもお母さま直伝の料理をふるまいましょうか?」

 

「どんなの?」

 

「ウナギの煮凝りゼ・・・・・・」

 

「はい。ジャスミンは紅茶を入れてくれる?私じゃ美味しい紅茶淹れなくて・・・・」

 

「あら?そうですの?なら私は紅茶をふるまいましょう」

 

「じゃあ、ジャスミンは飲み物として料理はイタリアかロシアね!」

 

「ロシア料理よ!」

 

「いや、絶対にイタリアだ!」

 

「二人ともストップ!喧嘩はダメよ!」

 

「そうだよ料理は楽しくやろう!」

 

と、その後話し合った結果、ロシア料理、イタリア料理の両方を出すことになった。そして肝心の味の方はどれもとても美味しくみんなで仲良く賞味したのであった。今度はリリーとハルカがドイツとアメリカ料理をふるまうと言っていた。ジャスミンもイギリス料理を振舞うと言っていたのだがなぜか皆に止められた。そしてその夜。私たちは

 

「はぁ~クーラーが効いて涼しい・・・・」

 

「旧部室にはなかったもんね」

 

あの部室棟にはなかったクーラーの涼しさを堪能しながら眠りにつくのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エーデルワイス直ります!

生徒会室

 

「西住ちゃん。ちゃんと戦車道とってくれるかね~」

 

「とってくれなくては困ります!何としても取ってもらわないと、私たちの学校が!」

 

「桃ちゃん落ち着いて」

 

「桃ちゃん言うな!」

 

「ま、とにかく、昨日オリエンテーションもやったし、今日は選択科目の提出日だし、すぐにわかるよ」

 

「もし、西住さんが戦車道を取らなければどうするんですか、会長?」

 

「その時は、脅してでも取らせるつもりだよ。ほんとはそんなことしたくないけど、状況が状況だからね~」

 

生徒会長席に座るツインテールの少女は干し芋を頬張る。

 

「・・・・で、河嶋。例の6人どうなったの?」

 

「はい。風紀委員たちが全力で探していますが、三日前に美術室で逃げられたのを機に姿を現していません。手配書のポスターも出していますが、姿を見たという生徒はいませんでした」

 

「ふ~ん・・・・・旧部室棟はどう?」

 

「はい。そこも調べたのですが、一室だけ、例の6人が生活していたような跡がありましたが、どうやら別の場所に移動した模様です」

 

「捜索してから一週間・・・・・・その6人は何者なんでしょうか、会長?まさか本当に幽霊じゃ・・・・・」

 

不安そうに言う副会長と広報に、生徒会長は干し芋をまた一つ食べると

 

「ねえ、あそこは調べたの?ほら、あの道」

 

「あそこと言いますとあのルートですか?ですがあれは我々生徒会しか知らない通路ですよ?」

 

「小山。そこに盲点があるよ。自分たちしか知らないからその道は通らないっていうのは間違いだよ。河嶋、念のためそこも調べるように」

 

「わかりました。それとなんですが、美術部の部員から盗難届が来たんです」

 

「盗難届?何を盗まれたの?」

 

「はい。スケッチ用のマネキンの鬘が多数盗まれたとのことです」

 

「鬘・・・・・・なるほど、どおりで見つからないわけだ。ま、とにかく6人の捜索お願いね。それとあれの準備も」

 

「はい。わかりました。後、自動車部にも例のあれ伝えておきます」

 

「よろしくね~」

 

そう言うと広報らしき生徒は部屋を出る。会長は例の手配書のポスターを手に取ると

 

「さて・・・・鬼ごっこもここまでにしようかな?」

 

と不敵な笑みを見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

森の倉庫

 

「これでもう大丈夫かな?」

 

「ありがとうございますナカジマさん。おかげでエーデルワイスも完璧に直りました」

 

油と埃まみれになった自動車部と未来組6人は、三日間徹夜で整備し、まるで新車のようにピカピカになったエーデルワイスを見てそう言う。

 

「いいて、いいて。私たちも珍しい分野の車を整備できていい勉強になったよ。それにしても驚いたよ。皆さんが鬘を被ってやって来た時は」

 

「あ、ごめんなさい。別に驚かすつもりじゃなかったんですが・・・」

 

「いいよ。ジャスミンさん。まあこんなポスターを出されたんじゃ素顔で出るのは無理だもんね」

 

「君たち生徒会に追われているみたいだけど何かしたの?」

 

ホシノがそう訊くと、アーニャが

 

「知らないわよ。私たち何も悪いことしてないもん」

 

「確かに。私たちこそこそ戦車の整備をしているだけで、なにも風紀を乱すことはしてないわ」

 

「私も深に覚えがないわね」

 

「右に同じだ」

 

「わたくしもです」

 

「あ、あの・・・・ナカジマさん」

 

「わかっているよ。誰にも言わない。その代わり、また何か修理とか車関係で困ったことがあったら、いつでも声をかけてよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「それじゃあ、私たちは行くね。なんか生徒会に呼ばれちゃってさ」

 

そう言うと中嶋さんたちは帰っていた。そして私たちはエーデルワイスを見て

 

「ついに・・・・直ったねエーデルワイス」

 

「そうだな。で、どうする試合申し込む?」

 

「う~ん。その前に練習しない?」

 

「そうですわね。『戦車は性能ではなく乗員のチームワークによって威力を発揮する』と言いますからね」

 

「誰の格言?」

 

「アッサムお姉さまの言葉よ」

 

「誰よ?」

 

「まあ、ともかくジャスミンの言う通り一理あるわね。試合を始める前に息を合わせて行動しないと意味ないしね」

 

「確かにな。まずは試験運転兼私たちのチームワークの育成から始めよう」

 

「そうね・・・・で、練習場所はここ?」

 

「うん。森の中なら見つかりにくいし・・・・・・」

 

6人はまず試合を始める前に、まずは練習することを決めるのであった。

 

「よし!今後の予定は決まった・・・・・あとは」

 

ナポリがそう言うとみんなは倉庫にあった時計を見るともう正午であった。時間を見た6人は互いの顔を見て頷き

 

「よし、今日のお昼ご飯はドイツかイタリアかロシアかアメリカか、それとも別か決めるわよ!」

 

リリーがそう言うと皆は片手を振り上げ

 

「「「「「「じゃんっけっんっぽんっ!」」」」」」

 

と、じゃんけんをしてお昼のメニューを決めるのであった。

 

 

 

 

一方、自動車部は、本来使っている倉庫についていた。

 

「それにしてもあの子たちすごく仲がいいね、ナカジマ」

 

「うん。そうだねスズキ。それにしても生徒会の人たち、戦車道を始めるなんてね~」

 

「うん。その戦車の整備をうちに頼むなんて、今思えばあの子たちの戦車の整備をして正解だったかもね」

 

「ホシノ先輩の言う通りだね。でもナカジマ先輩。広報の人にあの6人のポスターを見せられ訊かれたとき、よく言わなかったですね」

 

「約束したからね。それにあの6人を見ても悪い子たちには見えなかったし」

 

「それにしてもあの生徒会に追われるなんて、あの子たち本当に何者かな?戦車も持っていたし、もしかして凄腕の戦車乗りで生徒会の勧誘を断っているとか?」

 

「う~ん。あの6人の雰囲気からして違うと思うけど・・・・まあ詳しいことは考えないようにしよ。そう言うのはあまり深く追求しないほうがいいよ」

 

「そうだね。放っては置けないけど、下手に行動しちゃうとあの6人に迷惑かけちゃうしね。ね、ホシノ?」

 

「そうだね・・・・まとにかく今は生徒会に頼まれたことしようか?」

 

そう言い、自動車部は戦車道で使用する戦車の整備をする準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

場所は戻り、森の戦車倉庫の個室では6人が昼食を食べていた。因みに今日の料理は、さば味噌煮の缶詰とご飯と味噌汁。つまり和食であった。

 

「それにしても、ここの生活にもだいぶ慣れましたわね」

 

「そうね。この鬘での生活も」

 

「最初はチクチクしてかゆかったけどもう慣れっこだな」

 

「そうね。そのチクチク感を我慢したおかげで、今日まで生徒会に見つからなかったんだし。ね、ジャスミン?」

 

「そうですわね。それとリリー。今は鬘被らなくてもいいんじゃなくて?」

 

「残念。これ地毛よ。今日は髪型を変えただけ」

 

「あら、そうですの気が付きませんでしたわ」

 

「それにしてもリホーシャ。よくあんな抜け道を知っていたわね」

 

「確かにりほが教えてくれた隠れ道を通ったおかげで、風紀委員の変な追跡も難なく振り切れるし」

 

「確かにな。鬘を被っていたとはいえ、なんかあの連中変な目線で私たちを追いかけたりしてたもんな」

 

「あなたの場合、鬘がずれていたからでしょ、ナポリ」

 

「あれ?そうだったか?」

 

「それよりリホーシャ。どうやってあの道を見つけたの?」

 

アーニャがりほに質問をすると

 

「うん。あの道は昔、小さい頃、お母さんの学校を見に行ったときにね。その学校を案内してくれたとあるお姉さんに、こっそり教えてもらったことがあるの」

 

「へ~そうなんだ。どんな人?」

 

「う~ん・・・・良くは覚えていないけど、小さい時は『干し芋お姉ちゃん』って呼んでたっけ?」

 

『『『『『干し芋お姉ちゃん?』』』』』

 

「うん。そのお姉ちゃん。よく干し芋を片手にしてたから」

 

「変わった方ですわね?」

 

そう言いながら6人は食事を取り、食べ終わると皆は食器をかたずけ掃除をした後、

 

「よし!それじゃあ早速エーデルワイスに乗ろうか!」

 

『『『『「賛成!」』』』』

 

そう言うと小室からでて倉庫にあるエーデルワイスこと五式中戦車に乗り込むりほたち。そして操縦手であるナポリがイグニッションを入れると、エンジンが動き出し、まるで獣が吠えるような爆音を出す。

 

「エーデルワイス、ご機嫌に吠えてるな」

 

「ナポリ、わかるの?」

 

「ああ、操縦手の勘ってやつさ・・・・で、りほ車長。まずはどの辺走らせる?」

 

「え?そうだな・・・・・この森を走った後に開けたところがあるから。そこで練習しよ」

 

「あいよ。じゃあ、Avanti!」

 

そう言うナポリだが、アーニャが

 

「違うわよ。そこは вперед! でしょ?」

 

「あら?ここはadvanceではなくて?」

 

「う~ん・・・私はどちらかというと「Go ahead !」の方がしっくりくるわ?」

 

「号令もあとで話し合って決めなきゃね・・・・・で、りほ。いったんどうする?仮の号令は?」

 

ハルカがそう訊くと皆がこっちを向く。

 

「じゃあ・・・・とりあえずは・・・・・・・」

 

とそう言い、りほは一息つくと

 

 

 

 

 

 

「Panzer Vor !」

 

そう言い、彼女たちの乗る五式中戦車エーデルワイス号が動き始めるのであった。そして今、この物語が今、幕を開けようとするのであった。

 




次回から原作とかに入れればいいなと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

登場人物です!

西住りほ

 

【挿絵表示】

 

(cv:田中理恵)

身長:157センチ

年齢:17歳

学校:大洗女子学園

所属:普通科二年C組

誕生日:11月21日

好きな戦車:Ⅳ号Ⅾ型戦車

趣味:ボコのぬいぐるみ集め

役職:車長・エーデルワイスチームリーダー

 

本編の主人公の一人で西住みほの娘。性格は穏やかで思いやりのある心優しい性格ではあるが、引っ込み思案な性格の母親であるみほとは違い少し活発な少女。趣味はみほと同じボコのぬいぐるみとボコが大好きである。

母親と同じ大洗女子戦車道履修者であり、母親が学校の英雄であることから戦車道の隊長にと皆からは期待されているが、本人は自信がなく、みんなの期待による強烈なプレッシャーに不安を抱く。母親であるみほに相談するが、優しく接するみほと話が合わず喧嘩して家出をしてしまい、そこで同じく親と喧嘩し家出したジャスミンたちに出会う。賞金稼ぎになろうとチーム『エーデルワイス』を結成し大洗のとある小屋で発見した五式中戦車を発見するが、突如雷に打たれ気が付くと一緒にいたジャスミンたちと五式中戦車とともに20年前にタイムスリップしてしまっていた。

容姿は母親であるみほと同じショートボブの髪型。茶髪に茶色の瞳ではあるが、目つきは祖母である西住しほや叔母である西住まほに少し似ている。

 

 

 

 

 

アナスタシア

 

【挿絵表示】

 

cv:(金元寿子)

身長:133センチ

年齢:18歳

学校:プラウダ高校

学年:3年生

誕生日:12月9日

好きな戦車:IS2

趣味:料理

役職:通信手・エーデルワイスチーム副リーダー

 

本編の主人公の一人でプラウダの隊長であり地吹雪の異名を持つカチューシャの娘。愛称は「アーニャ」。性格は面倒見がよく、たまにりほの悩みの相談を聞いたりする。母であるカチューシャのことは『マーマ』と呼ぶ。とあることが原因で喧嘩をし、りほたちと同様、家出をした。身長は母親より背は高いがそれでもほかの生徒と比べると身長は低いが、身長にコンプレックスを抱いている母親とは違いあまり背の低いことにコンプレックスを抱いてなくむしろ誇りに思っていて本人はさほど気にしてはいない。プラウダ高校内では「立てばカリスマ、座れば幼女」、「プラウダのレミリア」、「カチューシャ二世」とか言われている。

子供っぽい母親とは違いどこか大人びた雰囲気がある

家出をしたメンバーの中では一番の年上なのだが本人は『同志なんだからため口でいい』と言っている。また趣味は料理で特にロシア料理が得意。彼女曰く将来の夢はロシア料理専門の料理人になることらしい。またロシア語も堪能で子供の時、クラーラとノンナに教わったとのこと。

容姿は金色のセミロングで瞳は母親似の青色。

またアーニャ曰く双子の妹もいるとか

 

 

 

 

 

ナポリ

 

【挿絵表示】

 

cv:(吉岡麻耶)

身長:157センチ

年齢:17歳

学校:アンツィオ高校

学年:2年生

誕生日:7月5日

好きな戦車:cv33

趣味:料理と戦車の整備

役職:操縦手

 

本編の主人公の一人でアンツィオ高校統帥アンチョビこと安斎千代美の娘。性格はアンツィオ高校出身のためか活発で結構ノリがいい性格でやや男勝りなところがあるが母親同様、仲間想いで対戦相手にも挑発的な態度を取らず、試合後には讃えることを心構える心優しい性格。

母であるアンチョビと喧嘩し家出をし、りほたちに出会うと彼女らとチームを組んで賞金稼ぎになろうと決める。

趣味は料理でイタリア料理が得意。そのためか食事を作るとき同じく料理が趣味でロシア料理を得意とするアナスタシアと口論になることもしばしば(ただし、じゃれ合い程度で本気で喧嘩をしているわけではない)。他の特技は戦車の整備で、幼い頃ペパロニに戦車の操縦を習うのと同時に戦車の整備を習ていたとのこと。

容姿は母親似の釣り目で、グレーのかかった銀髪をポニーテールに纏めている。

 

 

 

逸見ハルカ

 

【挿絵表示】

 

cv:(近藤唯 )

身長:159センチ

年齢:17歳

学校:黒森峰女学園

学年:2年生

誕生日:9月29日

好きな戦車:パンターⅡ

趣味と特技:戦車の整備と料理

役職:装填補助手

 

本編の主人公の一人で黒森峰女学院の逸見エリカの娘。性格は短気な性格のエリカとは違い大人しい性格であまりしゃべることは少ないが、一緒に戦車の整備をするナポリと仲がいいためか一緒にいるときはよくしゃべる。黒森峰にいたときは、車長であり、副隊長の見習いをしていたとのこと。父親の実家が自動車の整備工場のためか自動車のうんちくに詳しく、また自身も車の整備ができ、将来は戦車の整備士になろうかとナポリ達に語っている。ほかに料理作りも得意で特にハンバーグ系の料理が得意。彼女曰くハンバーグを作る際、母親であるエリカに嫌と言うほど教えられたため。ある日、母であるエリカと喧嘩をし家出をして、その後、りほたちと出会いチーム『エーデルワイス』の一員となる。

容姿は短い銀髪で髪に狼の髪飾りをしているのが特徴。

 

 

 

 

 

リリー

 

【挿絵表示】

 

cv:(三澤紗千香)

身長:160㎝

年齢:17歳

学校:サンダース大学付属高校

学年:2年生

誕生日:10月9日

好きな戦車:M10ヘルキャット駆逐戦車

趣味と特技:コーラの収集と欧州歴史が得意

役職:装填手

 

本編の主人公の一人でサンダース隊長のケイの娘。明るく強気で利発で悪戯好きな性格で、趣味はコーラの瓶やバッチをコレクションにして収集すること。また紅茶好きでもある。チーム『エーデルワイス』の中のムードメーカーでその明るい性格は母親であるケイに似ている。しかし母親とは対照的に背は少し高いが胸の方は慎ましい。サンダースではファイアフライの装填手をしていたらしい。

母親であるケイと喧嘩をして家出し、大洗でりほたちと出会いチーム『エーデルワイス』のメンバーになる。

容姿は左右肩上でまとめた金髪で額にゴーグルを付け、ブルーグレーの瞳が特徴。

 

 

 

 

ジャスミン

 

【挿絵表示】

 

cv:(明坂聡美)

身長:170㎝

年齢:16歳

学校:聖グロリアーナ女学院

学年:1年生

誕生日:6月15日

好きな戦車:ブラックプリンス歩兵戦車

趣味:紅茶淹れと読書

 

本編の主人公の一人で聖グロリアーナ女学院隊長ダージリンの娘。穏やかで心優しい性格で身長はチームの中で一番高いが年齢はチーム『エーデルワイス』の中では最年少。趣味は紅茶をいれることでその腕はグロリアーナの中ではぴか一で絶品紅茶を淹れることが出来る。料理に関しては未知数であり、彼女が作ろうとするとアーニャたちに止められる。ある日、母であるダージリンと喧嘩をし家出をした後大洗で偶然りほたちと出会いチーム『エーデルワイス』のメンバーになる。グロリアーナでは砲手をやっていたため、りほたちとの出会い後、エーデルワイス号の砲手となる。

容姿は金髪碧眼の美少女で髪は肩まで伸びた長髪である。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章大洗編
発見されます!


いよいよ原作です!


戦車エーデルワイス号の修理が終わり、りほたちが戦車道の練習を始めた翌日。

大洗女子学園グラウンドにある戦車の格納庫の中に、数十人の生徒たちが集まっていた。

 

「ではこれより、戦車道の授業を始める」

 

と、片眼鏡をした生徒会の河嶋桃が言う。今日は大洗女子学園戦車道の初授業のようで彼女の隣には同じく生徒会副会長の小山柚子、そして生徒会長である角谷杏。

そしてその生徒会の前には1年生の女子生徒が6人、歴女を思わせる女子生徒が4人、如何にもバレーボール部の部員を思わせる女子生徒が、同じく4人、そして、西住みほと武部沙織、五十鈴華と、それを遠巻きに見る癖っ毛の少女合わせて21人ほどが集まっていた。

だが、皆の表情は若干困惑した表情であった。その理由は・・・・

 

「戦車ってこれ一輌だけ?」

 

武部がそう言う。そう今ある戦車は錆びだらけでボロボロののⅣ号D型だけだったのだ。そもそも、大洗女子学園では、かなり前に戦車道は廃止されており、今日になって漸く再開されたため、当然、健全なまま残されている戦車がないのは当たり前のことである。

そこで戦車道履修者たちはまず練習を始める前にすることがあった。それは戦車を集めることであった。

 

「と言う訳で、本日の授業の内容は、我々全員が乗り込むのに最低限必要な、残りの4輌を見つけ出すことだ。この学園では、何年も前に戦車道は廃止されていた。だが、当時使用されていた戦車が、まだ何処かにある筈だ。否、必ずある」

 

「して、それは一体何処にあると?」

 

紅いマフラーをした歴女のリーダーであるカエサルがそう訊くと、

 

「いやー、だからね?それが分からないから探すんよ」

 

「手がかりは無いんですか?」

 

「うん、何1つとして無い!」

 

清々しい程あっさりと言い張る角谷会長に、メンバー全員は苦笑いしたり、こけそうになったりした。

 

「んじゃ、頑張ってねー!」

 

角谷会長が言うと、其々がグループになって探し始めた。

 

「何か聞いたのと違う~。戦車道やったらモテるんじゃないの~?」

 

武部が不満そうに言う中、角谷会長は彼女の方へ行くと肩をポンっと叩き、

 

「あ、そう言えば明日、かっこいい教官が来るらしいよ?」

 

「え!?ほんとですか!」

 

「ほんと、ほんと。紹介するよ」

 

角谷会長がそう言うと武部は花の咲いたような笑みになり、

 

「それじゃあ、行ってきまーす!!」

 

とハイテンションでみほと華を引っ張り格納庫を飛び出した武部であったのだったが・・・・

 

「………………とは言ったものの……………何処にあるってのよォーーーーッ!!!?」

 

駐車場にやって来たみほ達一行だが、全く見つからない事に苛立っているらしく、武部が大声を張り上げた。

 

「流石に、駐車場に戦車は置いてないかと……………」

 

「なんでよー?戦車って言っても一応は車でしょー?」

 

華の突込みに沙織はがっくりと肩を落としながらそう言うが、すぐに気を取り直し、 

 

「よし!なら裏の山林に行こう?『何とかを隠すなら林の中』って言うぐらいだし!」

 

「それは森ですよ」

 

沙織が言うと、華がツッコミを入れる。そして三人が歩き出す中、みほは先ほどから背後にある木に隠れてこちらの様子をじっと見ている癖っ毛頭の生徒の方をちらっと見る。とその子は慌てて機の背後に隠れてしまう。気にしない振りをしてみほが歩き出すと、その生徒も隠れていた木から出て、距離を保ちながら付いて来る。それを見たみほは何か決意したのか頷くと、

「あ、あのっ!」

 

「はい!?」

 

振り向き様にみほが声をかけると、その女子生徒は驚く。

 

「良かったら、私達と一緒に探さない?」

 

「い、良いんですか!?」

 

「勿論!」

 

笑顔で言うみほにその女子生徒は嬉しそうに笑うや否や恥ずかしそうにもじもじすると、

 

「え、えっと……………普通Ⅱ科、2年C組の秋山 優花里と申します。そ、その…………不束者ですが、よろしくお願いします!!」

 

お辞儀をすると先ほどの様子を見ていた沙織や華もやってきて、

 

「此方こそ、よろしくお願いします。私は五十鈴華です」

 

「私は武部沙織!」

 

「あ、私は…………」

 

「存じ上げております!西住みほ殿ですよね?」

 

「え?・・・・・う、うん……………」

 

優花里に、自分の名前を言い当てられて最初は驚くみほだがすぐに頷くと、

 

「では、よろしくお願いします!」

 

陸軍式敬礼でそう言うと4人は山林の中へと入っていくのであった。

 

 

 

一方、りほたちはと言うと山林の奥の方でエーデルワイス号を動かしていた。そしてエーデルワイス号は猛スピードで走り急停車すると丸い板の方へ砲等を向ける。

 

「砲塔旋回、よろしいですわ!」

 

「装弾OKよ、りほ!」

 

「次弾装填準備良し!」

 

砲塔内で、ジャスミン、リリー、ハルカがそう言うとりほはストップウォッチのスイッチを押す。

 

「急発進してからの急停車後、目標に照準を合わせるまで5.5秒。前よりも早くなった!」

 

「「「「よっしゃぁ!!」」」

 

りほの言葉に皆は嬉しそうにハイタッチする。

 

「いや~たった1日半でここまで上達するとはな~」

 

ナポリが嬉しそうに言うと、

 

「そうね。スラローム射撃や伝説のドリフト旋回に比べたらまだまだだけど、初めて組んだにしては上出来ね」

 

「いや、アーニャ。確かにそうだけど。スラロームのあれは普通無理だから」

 

「細かいこと気にしないのリリー」

 

「でも、主砲が撃てないのが残念ですわね」

 

「仕方ないよ。砲弾だってタダじゃないし、私たちの持っているお金じゃ補給できないから」

 

「そうね・・・・燃料分は何とか賄うことはできても肝心の砲弾がね・・・・」

 

と、6人は改めて今の状況を確認する。エーデルワイス号の燃料はみんなでお金を出し合って買っているのと自動車部や自動車工場の人たちから少し分けてもらっているため何とかなっているのだが、肝心の砲弾だけは数十発しかなく、補給しようにもその資金が無く補給が厳しく撃ちたくても撃てない状況なのだ。

 

「早く賞金付きの試合見つけないとね・・・・・」

 

「そうだね。とにかく今はその試合に勝つために練習しないとね」

 

「よし!今度は伝説のドリフト旋回及び射撃の練習をしましょうよ!それとスラローム射撃も!」

 

「いや、まずは行進間射撃から始めない?」

 

そう話し合っていると、

 

「そう言えば・・・・・・」

 

「どうしたのハルカ?」

 

「いや、一昨日、校内で履修選択科目のオリエンテーションやってたわよね?」

 

「あ~あれね。私たちもこっそり見に行ったけど。なんか戦車道中心に話していたわよね?」

 

「そうですわね・・・・・ということは」

 

そう言うと皆はりほの方へ顔を向ける。りほは頷いて、

 

「うん。恐らく大洗女子の戦車道がそろそろ始まる。いや、もしかしたらもう始まっているかも・・・・」

 

「と、言うことはレジェンド時代の幕開けってことになるわけね。で、どうする?」

 

「う~ん・・・・ここは山林の奥だし、私がやっていた戦車道練習場よりは離れているから発見される可能性が低いけど・・・・・」

 

「けど?」

 

「梓先輩やお母さんが前に話してくれたんだけど大洗の戦車道が始まった時、戦車は一両しかなくて初の戦車道の授業をしたとき森の中や校舎の中なんかを歩き回って戦車を探していたらしいわよ」

 

「・・・・とすると」

 

「うん。もしかしたらここまで履修者の人たちが来るかもしれない」

 

「と、なると今することは決まりね。いったん倉庫に帰ろう」

 

「そうですわね。ここで発見されるわけにもいきませんし」

 

「それに戻ったら、ほかの生徒たちに発見されないようにカモフラージュしないと」

 

「それと罠とかも張っておこう」

 

「あら、罠。楽しそうですわね」

 

「とにかくいったんあの倉庫に戻ろう。ナポリお願い」

 

「了解!」

 

そう言い、りほたちの乗るエーデルワイス号は倉庫の方へと戻るのであった。

 

 

 

 

同時刻、山林の中では、

 

「あら?」

 

山中を歩いているみほたち。すると華が立ち止まる。

 

「どうしたの?」

 

「いえ、彼方から、何やら匂いがするので」

 

「え、匂いで分かるんですか?」

 

「なんか、花の匂いに混じって、ほんのりと鉄と油の匂いが…」

 

そう言いやいなや華はその場所へと向かう。

 

「えっ!?華道やってるとそんなに敏感になるの!?」

 

「いえ、わたくしだけかもしれませんけど……」

 

そう言い、華はさらに奥へと向かうのであった。

 

「それではその場所に向かってパンツァー、フォー!」

 

「パンツのアホっ!?」

 

優花里の言葉に武部さんは驚いて、聞き返すと優花里はがっくりとする。そしてみほは苦笑して、

 

「パンツァーフォー・・・・・戦車前進って意味なの」

 

そして一行は華の後を追い、しばらく歩いていると黒い塊が乗り上げるかのように放置されているのが見えた。それを見たみほたちが近づいてみるとそれは小型の戦車であった。

 

「これは・・・・・38tのC型軽戦車」

 

「なんかさっきのより小っちゃい……傷だらけでポツポツしてるし」

 

「そ、そんなことないです!小さい戦車ですがこれはすごい戦車なんですよ!」

 

沙織の言葉に優花里がそう言うと優花里は38tに近づき頬擦りし始める。

 

「ドイツのロンメル将軍の第7走行師団の主力を務め、初期の電撃戦を支えてきた、重要な戦車なんですよ!あ!因みにですけど、38tの『t』というのは、『チェコスロバキア製』という意味であって、重さの意味ではないんですよ!・・・・・・・・・・あ」

 

「今、すごい生き生きしてたよ?」

 

「す、すみません・・・・・・」

 

沙織の言葉に優花里は正気に戻り顔を赤くすると・・・・・

 

「あれ?」

 

「どうしたのみぽりん?」

 

「し・・・・・何か聞こえない?」

 

「え?」

 

みほの言葉に皆は耳を澄ますと・・・・・

 

「あ、ほんとだ何か聞こえる。何かのエンジン音みたい………」

 

「このエンジン音に金属がぶつかるような音は・・・・・・もしかして!」

 

そう言うと優花里は走り出す。

 

「あ、ちょ、優花里さん!?」

 

走り出した優花里を見てみほたちは追いかける。そしてしばらくして優花里は音のする方へたどり着くと目を丸くした。

 

「あ、あれって・・・・」

 

「優花里さん。どうしたんですか!?」

 

そこへみほたちも追いつき、優花里が見ている先の方を見ると、

 

「せ、戦車!?」

 

「しかも動いている!?」

 

みほたちが見た先には一両の戦車が走っていたのだ。

 

「ただの戦車じゃありません!あれは幻の戦車5式中戦車チリですよ!こ、これは大変です!早く知らせないと!」

 

そう優花里が言うと、それに押されたかのようにみほがスマホを取り出し、学校で待機している生徒会メンバーの1人、杏に連絡を入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

戦車道格納庫

 

「あ、もしもし、西住ちゃんどうしたの?38tね、オッケーオッケー。ご苦労様………え、38tではない他の戦車が動いてる?ホント?………………ふんふん五式中戦車ね・・・・それはぜひとも欲しい車両だね~え?誰か乗っている?ねえ、西住ちゃん。その戦車に乗っている子の写真とか送れる?・・・・うん。ありがと。それじゃあ、回収は自動車部の部員達にお願いしてあるから、引き続き捜索よろしくね~」

 

と、そう言い電話を切る杏。そしてその直後杏の携帯にメールが届き、杏がそれを開くと一枚の写真が送られてきていた。その写真には国防色に色塗られた五式中戦車とそのキューポラから顔を出す少女の姿が写っていた。それを見た杏はニヤッと笑い、

 

「会長。どうかしたのですか?」

 

「38tが見つかったってさ。それに強力な戦車が動いているのを目撃したらしいよ?確か5式中戦車だったけ?それにその戦車に乗っている生徒なんだけどさ~」

 

そう言うと杏は河嶋たちにその戦車に乗っている少女の写真を見せると、

 

「こ、こいつは手配中の少女・・・・・」

 

「そ、河嶋。恐らく、あの6人はあの山中のどこかに潜んでいると思うから捜索よろしくね~」

 

「は、はいわかりました!」

 

そう言うと河嶋は走り出し杏はその少女の写真を見て、

 

「とうとう見つけたよ・・・・・・」

 

そう小さく呟くのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

捕まります

「あ、あの・・・・・会長。なんで私たちを呼んだのですか?」

 

放課後、みほたち4人は生徒会室に呼ばれた。そして呼ばれた理由もわからずみほが首をかしげていると杏は、

 

「やあやあ、西住ちゃんたち。わざわざ来てもらってごめんね。実はこの前西住ちゃんたちは動く5式中戦車を見たって言ったよね?」

 

「え?あ、はい」

 

「実はさ、その戦車に乗っていた子なんだけど・・・・・」

 

杏が河嶋に何か言うと河嶋は一枚のポスターを出す。それは手配書と書かれたポスターで、その文字の下に6人の女子の写真が貼られていた。そして杏は、

 

「この子なんだけどさ、西住ちゃんに似ているんだけど、親戚だったりする?」

 

と、6人の中の内、一人の少女を指を指す。それを見た沙織たちは・・・・

 

「あれ?確かにこの子、みぽりんに似てる・・・・・」

 

「目は凛々しいですけど。確かに似ておられますね?」

 

「本当です・・・・・」

 

三人がそう言う中、みほは、

 

「(あれ?この子どこかで・・・・・確か前に学校であったような?)」

 

「西住。どうかしたのか?」

 

「え?いいえ。なんでもありません。それとこの子なんですが、私の親戚にこの人はいません・・・・・あの・・・この人たちがどうかしたんですか?」

 

「最近、この学校内をうろついている謎の生徒だ」

 

「謎の生徒?名前とかわからないの?生徒会だから知っていると思ってたんだけど?」

 

沙織が訊くと柚子は首を横に振り、

 

「ううん。実はね。調べたらこの6人はこの学校の生徒じゃないことがわかったの。それでね。今生徒会と風紀委員のみんなでこの6人のことを探しているの」

 

「それで、見つかったのですか?」

 

「いや~それが見つかんなくてね~。数日前、風紀委員たちがその6人のうち二人を見つけて捕まえる寸前までいったらしいんだけどさ、結局逃げられたって」

 

「でも、顔がわかっているならすぐにでも捕まえることができるんじゃないですか?」

 

優花里はそう言うが、

 

「それがさ~その6人。変装しているみたいなんだよ」

 

「変装ってどうやって?」

 

「この前、美術室のスケッチ用のマネキンの鬘が大量に盗まれたの」

 

「なるほど、その鬘を被ってこの校内に潜んでいるというわけですね?」

 

「その通りだ。そして数時間前、お前たちが戦車とともにこの生徒たちを見つけたというわけだ。恐らくこの6人はあの山林の中に潜んでいるはずだ」

 

「山林の中って・・・・・住宅街とかじゃないの?」

 

「いや、あの6人は絶対にあの山林のどこかに潜んでいるはずだよ」

 

「どうしてそこまで言えるんですか、会長?」

 

「ん~なんていうかな?まあ、勘と言うやつかな?それで西住ちゃんたちは山林に行ってこの6人を見つけてここに連れてきて欲しいんだよ~」

 

「え?私たちがですか?」

 

「うん。河嶋や風紀委員たちにも協力させるから。よろしくね~」

 

「いや、よろしくって言っても山林て結構広いんだよ!?潜んでいる場所とか、わかっているんですか?」

 

「うん。その場所は大体わかってきてはいるんだけど・・・・まあ、学園艦内だからすぐに見つかるでしょ。それじゃあ、お願いね~」

 

そう言う杏であった。そしてみほたちは山林に潜んでいるという謎の6人組を探すことになってしまったのであった。

 

 

 

 

 

「・・・・・会長。なぜ西住さんたちも捜査に協力させたのですか?」

 

「う~んなんていうかな?さっき西住ちゃんに訊いたこの子のことなんだけど、なんか西住ちゃんと関係があると思ってね~」

 

「でも本人は知り合いじゃないと言っていましたが・・・・まさか西住が嘘を?」

 

「いいや、彼女を見る限り嘘は言ってないよ」

 

「じゃあ・・・・・」

 

「これは私の勘なんだけどさ。その子は絶対に西住ちゃんと深い関わりがある・・・・・そう思ったんだよ」

 

そう言うと、生徒会の一人が入ってきて、

 

「会長。すみません。自動車部の人を連れてきました」

 

 

 

 

 

 

 

一方、りほたちのいる山林の戦車倉庫では・・・・

 

「ねえ、なんか、ここをうろつき始めてきている人たち多すぎない?」

 

「そうね・・・・・もしかしてバレたかしら?」

 

「それならもう、ここに踏み込まれているよ。でもナポリすごいわね。こんな短時間で倉庫をカモフラージュできるなんて」

 

「短時間でのカモフラージュは歴史が証明している。墨俣の一夜城しかり、ロンメル将軍のペンキを塗り替えて戦車の大軍団がいるという錯覚を起こさせる作戦しかりだ。しかもここいら辺は少し薄暗いから見つかりにくい。名付けて『マカロニ作戦スペシャル』よ」

 

と、顔がペンキまみれになっているナポリがそう言う。そう今彼女たちが住む戦車倉庫は周りじゅう、木の絵が描かれた看板やジャングル迷彩色で色塗られた布をかぶせられていて、ぱっと見では見分けがつかないほど完璧に周囲に溶け込んでいた。

 

「・・・で、ハルカ、リリー。中に入られたときの罠はどう?」

 

「こっちも今終わったよ。ベトナムみたいな罠を張り巡らしといたわ。これで、エーデルワイスに近づこうものなら、一気に罠の餌食よ」

 

「別にいいけど、自分でかからないようにね?」

 

「わかっているよハルカ。あ、コーラ飲む?」

 

「もらうわ。ナポリも飲む?」

 

「ああ、ちょうど喉が渇いていたしね。あ、そうだ部屋の冷蔵庫にプリンがあったけ。一緒に食べよう」

 

「賛成だけど、りほたちの分も残さないとね」

 

「わかっているって。りほたちも早く戻ってこないかな~」

 

「そう言うなって、りほたちは今パソコン室に潜入して、賞金が出る試合とタイムスリップについて調べてくれているんだから」

 

と、そう言い三人は倉庫の傍の部屋へと行くのであった。

 

 

 

場所は戻り生徒会室では、会長たちの前に自動車部の4人がソファーに座っていたが、

 

「何度も言いますけど。その6人のことは本当に知りません」

 

「なっ!お前たちしらばっくれても無駄だぞ!お前たちがちょくちょく山林の方へ行く姿を見たという生徒の目撃情報があるんだぞ!それに聞いた話ではこの6人らしき生徒を自動車部で見たという生徒だっているんだぞ!」

 

「だから、どうだというのですか河嶋さん?僕たち自動車部が自動車倉庫以外のところに行っちゃいけないというんですか?それにその部室でその子たちを見たという証言も本当なんですか?もしかしたらいたずらの可能性だってあるし、もしかしたら入部希望体験者をその6人と見間違えたということだってあるでしょ?」

 

ナカジマとツチヤが河嶋に何度も尋問されるが知らぬ存ぜぬという態度を示した。

 

「き、貴様ら~。生徒会にたてつくとはどういう了見だ!正直に言わないなら部費を下げてもいいんだぞ!!」

 

「それは困りますけど。部費がさがったら戦車の整備ができなくなりますよ?」

 

「うっ・・・・貴様ら・・・・」

 

「まあまあ河嶋。落ち着きなって。ごめんね~。河嶋はちょっと短気だから」

 

癇癪を起す河嶋を杏がなだめて、自動車部に謝る。

 

「とにかく。要件がそれだけなら私たちは部室に戻りますよ。まだ戦車の整備が残っているので」

 

「今夜は徹夜しないと明日までにはできそうにないですから・・・・・」

 

ホシノ、スズキもそう言うと杏は、

 

「そっか・・・・・でも困ったね~早くあの6人を見つけないと、あの6人が危ない目にあっちゃうかもよ~」

 

「どういうこと?」

 

「実はさ~さっき警察の人が来てね。この学園艦に怪しい通り魔らしき目撃情報があってね~」

 

「「「「通り魔!?」」」」

 

杏の言葉に自動車部が驚く。そんな中、杏は、

 

「警察の人の話によればその通り魔はいまだ逃走中、他の生徒に危害を加える可能性があるから一人一人に注意を呼び掛けているんだけど。あと6人。そう肝心のこの6人はまだそのことを知らないんだよ。噂だとその通り魔は山林にいるって話だけど・・・・・ナカジマちゃん。私はこの6人を早く安全な場所へ保護したいんだよ。場所知ってたら教えてくれない?」

 

と、そう言うとナカジマは冷や汗を流し、

 

「学園の山林の東奥の旧自動車部倉庫です!」

 

「旧自動車部倉庫だね」

 

「そこにあの6人が住んでいます!だから会長!」

 

「うん。わかった。ちゃんと保護するよ」

 

そう言うと自動車部は他の生徒会役員に連れられ部屋を出ようとする。ナカジマは杏の方へ振り向き、

 

「会長・・・・・本当にあの子たちに危害は加えないんでしょうね?」

 

じっと、真剣なまなざしで見るナカジマに杏は、

 

「ああ、信用してくれ。ナカジマちゃん」

 

と頷くと、ナカジマは黙って出て行く。杏は、

 

「やっぱりあの山中に潜んでいたのか・・・・・・河嶋」

 

「はい。すぐに西住や風紀委員たちに連絡します。後、警察にも連絡します」

 

「警察?なんで?」

 

「え?だって通り魔が・・・・・」

 

「あ~あれは嘘だよ。情報聞き出すためにね」

 

「えっ!?嘘だったんですか会長!?」

 

杏の嘘に河嶋と小山が驚き、

 

「まあ、ナカジマちゃんにはバレていたみたいだけどね・・・・・・さてと」

 

そう言うと杏は立ち上がる。

 

「会長。どこに行くんですか?」

 

「ん?干し芋が切れたから購買部で買いに行ってくる」

 

「それなら私が・・・・」

 

「いいって、いいって。たまには自分で買いたいしね。じゃあ後よろしくね~」

 

そう言うと杏は二人を置いてどこかに行ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

山林の中、未来組を探すみほたち。すると沙織の携帯が鳴り、沙織が携帯を見ると、

 

「あ、今、生徒会からメールが来た。え~と・・・・・その6人が潜んでいる場所がわかったって」

 

「どこなんですか?」

 

「東の方の山奥に倉庫があるんだって」

 

「とにかくそこに行ってみましょう」

 

そう言って4人は送られたメールに書かれている場所へ向かい、数分後・・・・・

 

「ここいら辺のはずなんだけど・・・・・・」

 

「倉庫なんて見えませんね?」

 

「うん・・・・・・」

 

指定の場所についた4人だが、そこには倉庫らしき建造物はなかった。すると・・・・・

 

「あら?どこからか、ペンキの匂いが・・・・・・・」

 

そう言いうと華はまたどこかへ歩いていき3人は追いかけると・・・・・

 

「ここからですね・・・・・・」

 

そう言い華が立ち止まった目線の先には迷彩塗装や看板で隠された倉庫があった。

 

「これって・・・・倉庫だね・・・・」

 

「なんか、斑模様とか緑色に塗られていますけど?・・・・・ここからペンキの匂いがしますね?」

 

「これは迷彩塗装ですね!」

 

と、みほたちがそう言うと沙織が、

 

「あ、あそこから入れるよ」

 

と、沙織が指さしたほうにはドアがあり、4人はそこに入る。そして4人が最初に目にしたものは・・・・・

 

「うわぁ~!!五式中戦車チリですよ!!」

 

まず優花里は目を輝かせてそう言う。彼女らの前にあるのは五式中戦車であった。

 

「ねえ、ゆかりん。この戦車そんなにすごいの?」

 

「はい!五式中戦車と言えば、日本陸軍が生み出した試作車輌で最後の戦車と言われる戦車です!しかもたった一輌しか作られなかった。幻の戦車ですよ!!」

 

「そんなにすごい戦車なんですか・・・・・」

 

「でも・・・・この五式。なんか違う・・・・」

 

みほは五式中戦車を見てそう呟くと優花里も頷き、

 

「確かに、この五式はちょっと違いますね・・・・・」

 

「何が違うの?」

 

沙織が訊くと優花里は携帯に一枚の写真を出して、

 

「これが五式中戦車の写真なんですが、この五式中戦車、前面が傾斜装甲になっていますし、何より主砲が大きいです」

 

「そうでしょうか?」

 

「私、違いがよく判らないよ」

 

華と沙織が首をかしげる中、沙織が五式中戦車に触ろうとしたその瞬間。急に彼女の体が宙に飛ぶ。

 

「うわぁ!?」

 

「武部殿!?」

 

「沙織さん!?」

 

「やだもー。なにこれ~!!!

 

みんなは驚く。そしてよく見ると沙織の足にロープが付いており、それによって吊るされる形で空を飛んだのだ。そして三人が驚くのもつかの間、次の瞬間、四方八方から、水風船が飛んでくる。

 

「うわっ!?何ですかこれ!?」

 

「冷たいです!?」

 

「これって水風船!?」

 

三人がそう言った瞬間、上から網が落ちてきて三人の動きを封じる。そしてその瞬間、

 

「動くな!!」

 

「何者!?」

 

「Hands up!!!」

 

と、そこらから三人の少女が出てきて手にはモップやらフライパン、中にはスリッパを持っていた。そして銀髪の少女がみほたちを睨んで、

 

「あなた達・・・・・何者?もしかして私たちのエーデルワイスを盗みに来たの?」

 

「え、エーデルワイス?」

 

「この五式のことだよ」

 

みほの問いに金髪の少女が答える。そして銀髪ポニーテイルのこの方へ顔を向き、

 

「ハルカ、どうするこの子たち?監禁するのか?」

 

「そうね・・・・・・でも、監禁するにしてもいろいろ面倒だし・・・・・ナポリ。あんたはどうする?」

 

「う~ん。ハルカ、リリー。とりあえずパスタを茹でてから考えていい?夕飯の支度とかもあるし・・・・・あ、何なら口止めとしてこの人たちに」

 

「ナポリ。あんたね・・・・・」

 

呆れながらジト目で見るハルカ。すると・・・・

 

「あの・・・・降ろしてほしいんだけど?」

 

逆さに宙吊りになっている沙織が言うとハルカは、

 

「ああ、そうだったわね。・・・・・・リリー」

 

「わかってるよ。このままだとこの人頭に血が上っちゃって大変なことになるからね。ちょっと待てて今降ろすから。あ、ナポリ。念のために真下にマット置いてくれる?」

 

「わかった」

 

そう言いナポリは沙織が吊るされているところの真下にマットを敷き、リリーは鞄からサバイバルナイフを取り出し、はしごをかけて登り、

 

「はい。今、ロープ切ってあげるから、動かないでね。暴れたら足が傷付いちゃうから。あ、それと降りたら、悪いけど両手は縛らせてもらうからね」

 

と、そう言いロープを切り、沙織はマットの上に落ちる。そして、リリーたちはみほたちの両手を縛り、

 

「・・・・で、どうするの?」

 

「そうだね・・・・・これはりほたちに相談しないと・・・・・・ここで縛っとくのも可哀そうだし・・・」

 

と、リリーがそう言いかけた時、

 

「あ、あの・・・・・」

 

「なに?あ、ここまで来るの大変だったでしょ?喉も乾いていると思うからコーラでも飲む?」

 

そう言うとリリーはどこから出したのかコーラ四本を渡す。無論両手を縛っている縄は解いている。代わりに今度は足を縛っていた。

 

「あ、ありがとう・・・・」

 

「どういたしまして。で、なに?」

 

「あなたたちは・・・・・だれ?」

 

「そうよ。あなた達は誰なの?なぜ生徒会に追われているのよ」

 

「それになぜ、こんな寂しいところにいるのですか?」

 

「それにあの五式中戦車はなんでありますか?」

 

「それは・・・・・・」

 

四人の問いにリリーはどう返答しようか困惑した時、

 

「突入!!!」

 

『『『『『『『っ!!!!?????』』』』』』』

 

掛け声とともに倉庫に無数のおかっぱ少女軍団が突入してきた。

 

「うわっ!?何!!座敷童軍団!?」

 

「ふ、風紀委員の連中だ!?なぜバレたんだ!?」

 

リリーたちが驚いていると風紀委員のリーダーが、

 

「拘束!!」

 

と言った瞬間数十人以上のおかっぱ軍団がリリーにタックルをし、リリーたちが倒れた瞬間その上から別の子たちが乗っかり、リリーたちは目を回し動けない状態になってしまった。そしてリーダーは携帯を取り出し、

 

「こちら風紀委員。例の生徒、六人中三人を捕獲しました」

 

 

 

 

 

 

一方とある場所

 

「ちょっと遅くなっちゃったね」

 

「そうね。早く戻らないとリリーたちが待っているわ」

 

「でも残念でしたね・・・・・インターネットを調べても試合が見つかりませんでした」

 

「そうね・・・・・この時期、全国大会が近いから中止になっているのかな?」

 

「と、言うより、りほ。この通路狭いわよ」

 

「まあ、通気口ですから・・・・・りほさん。ここも秘密の通路と言うやつなんですか?」

 

「うん。これも干し芋お姉ちゃんから教えてもらったんだけど、この道、一見は通気口みたいなんだけど。それはフェイクで本当は生徒会の緊急避難口用に作られたものなんだって」

 

「へ~それは面白い情報だね~。その干し芋お姉ちゃんって、誰かな?」

 

「えっと・・・・・この学校のOGで三年間生徒会長をしていた人なんだけど、干し芋が好物なのかいつも干し芋片手に持っていた人で、子供のころは来てくれた時、よく遊んでくれた人なんだ」

 

「へ~それはいいお姉さんだね。その人の名前とかわかる?」

 

「え?確か名前は、か・・・・」

 

とその人の名を言おうとしたとき、

 

「りほ、りほ」

 

「え?何アーニャ?」

 

「誰に、話しているの?」

 

「え?だってアーニャ。私に何か質問したでしょ?」

 

「私じゃないわよ。ジャスミンじゃない?」

 

「わたくしじゃありません。それにその声りほさんの前から聞こえたようなんだけど?」

 

「・・・・・・え?じゃあ、今の声って・・・・」

 

そう言うと前の方から何かの気配がし、りほが前を向くと・・・・・・

 

「やあやあ。謎の生徒ちゃんたち。待ってたよ~♪」

 

りほたちの目の前には杏が怖いくらいににっこりと笑っていた。その顔を見たりほは顔を青ざめ、

 

「前方に生徒会!!みんな、急いで後退!!」

 

「っ!?ジャスミン!!」

 

「うん!」

 

そう言い、ジャスミンは後退しようとするが、背後に道はなく、代わりにシャッターがあった。

 

「シャッターで閉まって後退できない!?」

 

「ええ!?」

 

「ああ、そのお姉さん君に教えていなかったの?ここの通路はね、万が一泥棒や不審者が偶然この道を発見して入られた時、その人捕まえるため、ある所にシャッターが設置されていてこのボタン押すと閉って、閉じ込めるようになってるんだよね~」

 

と、杏はリモコンを見せて笑い、

 

「さて・・・・・ちょっと生徒会に来てもらおうかな?」

 

こうして未来六人組の一週間の潜伏生活は終わり、全員捕まるのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

事情聴取です

20年前の大洗にタイムスリップした私たちは一週間、秘かに潜伏生活をしていた。誰にもばれないようにひそひそとみんなで暮らしてはいたが、そんなに悪い生活ではなくむしろ楽しいくらいであった。しかしそんな生活も生徒会と風紀委員が私たちを拘束したことによって終わり、そして現在、私たちは両手を縛られた状態で生徒会室のソファーに座らされており、そして私たちの前にはなんか高そうな椅子に座った小柄でツインテールの少女と方眼鏡をかけた人、そしてポニーテイルの人が立っていた。

 

「やあやあ、よくここに来てくれたね~。ごめんね荒っぽく連れてきて」

 

「いえ、ちょっと新鮮な体験を経験できたので・・・・」

 

『同じく』

 

ちょっと皮肉っぽく言った私たちに、杏さんはにっこりと笑い、

 

「そっか。自己紹介していなかったね。私は大洗女子学園の生徒会長の角谷杏だ」

 

「(・・・・やっぱり。干し芋姉ちゃん・・・・・いや角谷理事長か・・・・)」

 

杏の自己紹介にりほはやっぱりという顔をする。

『角谷杏』

大洗女子学園で数多くいる歴代生徒会長の中で伝説的というか他の生徒会長とは違う有名な人だ。まあ、その後、後を継いだ生徒会長も癖の強い方だったらしいけど・・・・大洗女子学園で有名な生徒会長はと訊かれたらまず、角谷会長の名が出る。

角谷杏、私は干し芋お姉ちゃんと呼んでいるけど、学生時代、お母さんを再び戦車道の道に連れ戻した張本人であり、大洗女子学園廃校を全力で阻止しようと奔走した人で、他人からは「真面目にやっていない」、『豪放磊落』なんて呼ばれてはいるが、誰よりも愛校心のある方だ。そして卒業後はなんか大学でも派手にやったらしく、その後は政治家になって一時は茨城県の県知事になったが、なぜか辞任して、また不思議なことに大洗女子学園の理事長になっている。因みに理事長になってもあの人はいつも干し芋を食べているし、何より・・・・・

 

「(・・・・全然歳とってないわね・・・角谷さん)」

 

そう、私のいる時代もそして今の時代も、杏さんは身長どころか外見が全然変わっていない。なんだろ、杏さんって不老不死の薬とか飲んでいるのかな?そして縛られているほかの皆も、

 

「ねえ…なんであそこに中学生がいるの?」

 

「しかもあの人がチームトータスのアンジー?母さんが話していたのとちょっと違う?特に身長とか」

 

「確かにもっと背が高いと思ってたんだけど?」

 

「別に身長とかどうでもいいじゃない。うちのマーマも同じようなもんだもん」

 

こそこそ話す中、

 

「おい!何をこそこそと話をしているんだ!!」

 

と片眼鏡をかけた人がそう言う。ああ、この人知ってる、河嶋さんだな。たまに会うから知っている。ということはその隣にいるポニーテイルの人は恐らく小山柚子さん・・・・のちの教頭先生か・・・・・

 

「まあまあ・・・・で、君たち。ここでの生活はどう?何か不自由とかはない?」

 

『え?』

 

りほたちは、突然聞かれたことに戸惑いを見せた。

 

「あの……………いきなり何を……………?」

 

「あー、いやね?生徒会長として、一応その辺りの事については聞いておいた方が良いと思ってね~。それで、どうかな?聞けば山林の中の倉庫で住んでいたみたいだけど・・・・・」

 

「え?ええ・・・それなりに不自由はありませんわ」

 

「そうね。クーラーもついているし」

 

「確かに旧部室棟での生活に比べれば・・・・・・まあ、ましかな?」

 

ジャスミン。リリー、ハルカがそう答えると、

 

「へ~そうなんだ。じゃああの旧部室の幽霊はやっぱり君たちか~」

 

「す、すみません。騒ぎを起こすつもりはなかったんですけど・・・・・」

 

「謝って済むか!お前たちのせいで旧部室棟に幽霊が出ると噂が出て怖がる生徒が続出してパニックになったんだぞ!」

 

「怖がってたの桃ちゃんだけじゃない」

 

「桃ちゃん言うな!」

 

「そうそう、逆に心霊スポットとか言って肝試しに行く生徒が増えて、ちょっとした観光スポットぽくなったけどね~」

 

「会長まで!?」

 

二人の言葉に桃さんがそう言うと、

 

「まあ、何一つ不自由がないのはわかったよ~・・・・・・・で、ここからが肝心なんだけどさ・・・」

 

とにこやかに笑っていた杏さんだが、急に表情を変え真剣な顔つきになり、

 

「君たち6人は一体何者?」

 

今までのほほんとした表情とは違い怖いぐらいの真剣な表情に6人の顔は強張る。そして杏は何かの資料を取り出し、

 

「この一週間。君たちのことを調べてたんだけど。ここの生徒じゃないこと以外にこの大洗の子じゃないこともわかった。かといって戦車道を始めたばかりの私たちを探る他校のスパイの類でもない・・・・・・では誰かという話に戻るけど?」

 

「「・・・・・・・・」」

 

杏さんの鋭い視線に皆は黙秘する。そしてみんなは私を見て、

 

『どうするりほ・・・・・・私たちのこと話す?』

 

『でも、アーニャ。私たちが20年後の未来から来たなんてそんな馬鹿げた話信じてくれると思う?』

 

『それはそうだけどハルカ。でも変な誤魔化しは訊かないわよ。あの杏さんだし・・・・』

 

『私たちはこの杏さんのことは知らないけど、そんなにまずい人なのりほ?』

 

『一言で言えば、変な小細工は効かない策士って。杏さんを良く知っている人たちがそう言ってた』

 

『それは‥‥まずいですわね・・・・・』

 

目線でそう話す6人。するとナポリが、

 

『正直に言った方がいいよ。変なぼろ出すよりましだし』

 

『え?』

 

『確かに。まあ全部正直に話す必要はないけど、私たちが違う時代から来たことは言わないと、あと後苦しくなるわよ』

 

『ナポリ・・・・アーニャ・・・・うん、わかった。みんなもいい?』

 

『車長はりほさんよ。あなたに任せるわ』

 

『yes。嘘をついて誤魔化すよりはいいしね。私も賛成よ』

 

『私も異論はないわ』

 

みんなは頷き、私は決意し三人に顔を向ける。

 

「角谷さん。先ほど私たちが何者かって聞きましたよね?」

 

「うん。そだよ・・・・・で、君たちは・・・・」

 

「角谷さん・・・・あなたが戦車道を復活させ、そして在校する戦車道経験者及び戦車道名門家西住流の西住みほさんに戦車道を履修させたのは、学園の廃校を阻止するためですよね?」

 

「「「っ!?」」」

 

りほの言葉に今度は生徒会三人衆が目を丸くして驚く。

 

「な、なんでそのことを・・・・・」

 

「その話は我々以外だれもしらないはずだぞ!何処で知った!!」

 

「・・・・・・・」

 

柚子、桃が驚く中、杏はただ黙って聞いていた。

 

「知ったのではなく知っていたからです。小山さん、河嶋さん。そのことは大洗女子学園の最大の事件として記録されていますから」

 

「記録?それはどういう意味だ?」

 

「三人ともタイムスリップという言葉を知っていますか?」

 

「え?タイムスリップて、あのタイムスリップ?違う時代に行ってしまうという?」

 

「それと、お前たちと何の関係・・・・・・・・まさか」

 

「ええ、そのまさかですよ河嶋桃さん。私たちは俗にいうタイムトラベラーというやつなんです。そして私たちのいた時代は20xx年。そう、今から20年後から来た人間なんです」

 

「そんな馬鹿げた話を信じろと言うのか?」

 

「私たちだって信じられないですよ。ですがこれは事実です」

 

「ふ~ん・・・・タイムスリップね~。ということは君は私たちの遠い後輩になるのかな?」

 

「そう言うことになります。角谷さん・・・・・・」

 

「そっか・・・・・じゃあ、未来から来た君たちに一つ訊きたいことがあるんだけどさ~」

 

「なんでしょうか?」

 

杏さんの言葉に私がそう訊くと杏さんはニヤッと笑い、

 

「・・・・・・・この先の未来で大洗は廃校を免れるの?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タイムパラドックスを防ぎます

「・・・・・・・この先の未来で大洗は廃校を免れるの?」

 

角谷さんの質問に6人の顔は強張る。わかってはいたがやはりこういう質問をしてきた。確かに目の前に未来から来た人がいたらまず訊くのは自分のその後はどうなっているかということ。角谷さんの場合、廃校の危機に瀕している大洗女子学園が20年後まだ存在しているかどうか、それを知りたいはずだ。

 

「・・・・で?どうなの?」

 

角谷さんはまじまじとした表情で見て、柚子さんは心配そうな表情。そして桃さんはまだ疑った表情をしていた。するとアーニャが

 

「何でそんなこと訊くの?」

 

「何でって決まってるじゃん。未来に大洗女子学園があるってことは廃校の危機を回避できた。だから未来から来た君たちにはどうやって私たちが廃校の危機を免れたのか訊こうと思ってさ・・・・で、どうなの?」

 

干し芋を頬張って言う。その言葉を聞いて私は決断する。

 

「残念ですが角谷会長。その質問には答えられません」

 

私はそう言うと

 

「あれ?なんでかな?」

 

「当たり前です。未来を知るというのはかなりのリスクを背負うことになります。仮に私たちが大洗女子学園が大会に優勝し廃校を免れたなんてよけいなことを言ったら、どこか気が抜けて負けてしまう可能性があります。逆に学園が廃校になったと知れば、大会に出場する意味が無くなってしまいます。それでもあなたは知りたいのですか?角谷生徒会長?」

 

私の言葉に角谷さんはじっと私の目を見る。そしてしばらく私の目を見た後、角谷さんは

 

「そっか・・・・・それもそうだね」

 

「え?会長、いいんですか?」

 

小山さんがそう訊くと角谷さんは頷き

 

「うん。確かに彼女たちの言うことも一理ある。未来を知ることはずるをするということになるし、先知っちゃったら却ってつまんないしね」

 

「しかし、会長!まだこいつらが未来から来た証拠はないんですよ!口から出まかせを言っている可能性だって!」

 

「河嶋~、落ち着きなって・・・・・まあ確かに河嶋の言うことも一理あるけど。ねえ君たち。君たちが未来から来た証拠はあるの?」

 

「それは・・・・・・」

 

角谷さんの言葉に皆は黙る。未来から来た証拠。スマホはこの時代でもある。エーデルワイスも第二次大戦の代物だから意味がない。かといって空飛ぶ車・・・・そんなの映画の中での話。確実な証拠は学生証だけど下手に見せることはできない。特に私の名は・・・・今現在、正直言って今ある証拠は無いに等しい・・・・・・あ、

 

「あります!一つだけあります。あの私のポケットに財布があると思うんですが、とってもいいですか?」

 

「ん?いいよ。何か証拠でもあるの?」

 

「は、はい・・・・あ、これです」

 

そう言って私が財布から出したのは100円玉と千円札だった。それを受け取った三人は

 

「これがどうかしたのか?そんなもの私たちの時代でも……てあれ?この千円札、野口英世じゃない・・・北里柴三郎?」

 

「それだけじゃありません。年号を見てください」

 

「年号?・・・・・・あれ?平成じゃない令和になっている?」

 

「これは偽物じゃありません。私たちの時代のお金です。現在私たちの時代では平成の時代が数年前に終わって令和になっているんです」

 

「これが証拠だと?」

 

「はい。これが証拠です」

 

真剣な表情で言う。そしてその表情を見た角谷さんは

 

「ふ~ん・・・・・・平成の次は令和になるんだね~。もっとかっこいい年号かと思っていたけど。まあいいよ、信じてあげる」

 

「え!?会長本気ですか?」

 

「うん。ずっとこの子たちに目を見てたんだけどね。嘘言っている目じゃなかったよ」

 

「なぜ、そんなことがわかるのですか、会長?」

 

「まあ、河嶋。そこは私の直感というやつだよ。君たちが未来から来たというのはわかったよ。それじゃあさっきの話に戻るけど、答えられないなら質問を変えるよ。君たちの時代・・・20年後には大洗女子はまだあるんだね?どんな結果になってもいい。あるか、ないか、それだけ知りたいんだよ」

 

そう言う杏さん。いつも飄々(ひょうひょう)としている彼女だが、やはり自分の母校が心配なのだろう。りほは

 

「大洗女子は・・・・・・20年後もあります。しかし現時点私たちの時代ではということです」

 

「どういうこと?」

 

「小山さん。はっきり言えば私たちは本来、この時代にはいない人間です。私たちはこの時代の歴史にできるだけ干渉したくないんです。下手をすれば違う未来となって私たちの存在が危険になる可能性があります」

 

「タイムパラドックスというやつですね」

 

「どういうことだ柚子?」

 

「時間を遡って自分の父親を殺せば自分が生まれる理由がなくなってしまう。だから自分も一緒に消えてしまうか、そもそも父親を殺せないという理論よ桃ちゃん」

 

「桃ちゃん言うな!」

 

「なるほどね・・・・・・で、君たちはこれからどうするの?」

 

「私たちは、元の時代へ帰るための方法を探すつもりです」

 

「そっか。でもたった6人で見つかるの?」

 

「そうよ。それにその探す間、どうやって生活するの?アルバイトとかするにも住民票とかが必要なんだよ?」

 

「そうだ。お前たちの時代ではどうだか知らないが、この時代ではいろいろと大変なんだぞ?」

 

「そ、それは・・・・・・戦車で稼ぐつもりです」

 

ハルカがそう言うと三人はきょとんとした表情をする。

 

「戦車で稼ぐ?どういうこと?」

 

「え?ですから賞金付きの戦車道の試合に出て買って賞金をゲットしようかと・・・・・」

 

ジャスミンがそう言うと三人は顔を見合わせ

 

「賞金付きの戦車道の試合?河嶋、小山?知っている?」

 

「いいえ、知りませんが・・・・」

 

「私もです。ですがもしかしたら明日に来る教官なら何か知っているかもしれません」

 

「なるほど・・・・・まあ、詳しい話は明日にしようか。君たちはあの倉庫に住むつもりなんだよね?」

 

「そうだけど。追いだしたりする?」

 

「別に~、誰も使っていないんならいいんじゃない?でも、妙なことはしないでね。もししたら・・・・・わかっているよね?」

 

怖いくらいの笑みにみんなはこう思った。

 

『この人、敵に回したら面倒なことになる』

 

そして私たちはハイの二文字で頷き、解放される。

 

「じゃあ、また明日呼ぶから。来てね・・・・・・え・・・と。そう言えばまだ君たちの名前を聞いていなかったよね?名前なんていうの?」

 

角谷さんはまだ私たちの名前を聞いていなかったため私たちの名前を聞く。

 

「私の名前はハルカ」

 

「同じく、ジャスミン」

 

「リリーよ」

 

「同じくナポリ!」

 

「アーニャよ」

 

と私以外の皆は名を名乗る。

 

「・・・・で、君は何て名前なの?」

 

そう言う杏さん。私はこの時名乗るのを躊躇した。ニックネームで名乗ったみんなとは違い。私の場合は名字を名乗るわけにはいかない。西住と名乗れば間違いなくお母さんの子だとばれてしまう。どうすればいいか考えた時。一つの名が思い浮かぶ。

 

「私の名は・・・・・・名前は・・・・・伊庭りほです」

 

「そっか、伊庭ちゃんか。いい名前だね」

 

「あ、ありがとうございます・・・・・角谷さん・・・じゃあ私たちはこれで」

 

そう言い、私たちは生徒会室を出るのであった。そして残された三人は

 

「まさかあの謎の6人組が未来から来たなんて・・・・・いまだに信じられないな」

 

「私もだよ桃ちゃん・・・・・でも、お金と言い言動と言い信じるしかないかもしれない・・・・会長。どうしましょうかあの子たち?」

 

「そうだね~。これからのことは明日来る教官と一緒に考えよう」

 

「ですが会長。あの6人はこれから先の未来のことを知っています。ここは強引にでも彼女からどうやったら上手く勝ち進めるか聞きだすべきです」

 

「ああ、まあ河嶋。そんなに焦らない。下手に訊きだしてそれを実行したら彼女たちの帰る場所が無くなっちゃうんだからさ~」

 

「それはそうですが・・・・・」

 

「それに彼女たちは歴史を変えたくないって言ってたよね?」

 

「は、はい・・・・・まさか会長」

 

「うん。歴史を変えたくなければ、そうならないように彼女たちに協力してもらえばいいんだよ」

 

と、杏は干し芋を一口頬張り。そう言うのであった。そして杏は先ほどの6人ことを思い浮かべ

 

「(未来から来た6人か・・・・・未来がどうなっているか知らないけど。君たちはこの大洗女子学園の危機に一緒に立ち向かって……………くれるかな?)」

 

少し寂しそうな表情をするのであった。

 

 

 

おまけ

 

 

一方、りほたちは

 

「なんか面倒なことになったな~」

 

「そうですわね。覚悟はしていたのですが・・・・・・」

 

「で、どうするりほ?」

 

アーニャの言葉に皆はりほの顔を見る。するとナポリが

 

「まあ、急に決断しないでゆっくり考えればいいさ。りほ、急に決断する必要はないんだ。ここはみんなで話し合おう」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「それにしてもりほ。あなたさっき伊庭って名乗っていたけど。あれってあの映画の人物からとったの?」

 

「ううん・・・・実は伊庭っていう苗字、お父さんからとったの」

 

「え!?お父さん伊庭っていうの!?」

 

「う、うん。驚いた?」

 

「え、ええ。まさかこんな偶然があるなんてね」

 

「ちなみにジャスミン。あなたの本名て・・・・・何?」

 

「なんですかいきなり?と、言うより・・・・・言わなきゃダメですか?」

 

「いや、何となく気になって・・・・・・」

 

「わたくしの苗字は斎藤ですが?」

 

「「「「えっ!?田尻さんじゃなかったの!!?」」」」」

 

「はぁ‥‥やはり皆さんその反応ですか・・・・・・予想はしておりましたが」

 

とガックシ項垂れるジャスミンであった・・・・・

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来会議

大洗女子学園の森の中の倉庫

 

「みなさん。紅茶が入りました」

 

「茶菓子の鳥のミルクケーキも出来たわよ」

 

「ああ、ありがとジャスミン。アーニャ」

 

「あら、この紅茶いい香りだね」

 

「本当だ。これなんだろう?」

 

リリーとナポリが不思議そうにそう訊くとジャスミンが、

 

「これ、ディンブラよ。クオリティーシーズンのじゃないけど私のお気に入りのお茶なのよ」

 

「へ~これ元の時代から持ってきた物?」

 

「ええ、家出する際、急いでで鞄に詰め込んだんですの。やっぱり紅茶は欠かせませんからね」

 

「さすがグロリアーナの出身の人は・・・・」

 

テーブルに座り皆はジャスミンの淹れた紅茶を飲み、そして次はアーニャの作ったケーキを食べる。

 

「このケーキも美味しい!」

 

「でしょ?プラウダでも人気ナンバー1のお菓子なのよ。あ、それとハルカ。冷蔵庫からジャム出してくれない?」

 

「いいけど何味?イチゴ?ブルベリー?それともマーマレード?」

 

「そうね・・・・じゃあイチゴで」

 

「あいよ。ちょっと待ってて」

 

そう言いハルカは席を立ち冷蔵庫へ向かい、そしてイチゴジャムの瓶を持って戻ってくる。

 

「はいイチゴジャム。これでいい?」

 

「ありがとハルカ」

 

アーニャが遥かにお礼を言うとナポリが、

 

「それよりアーニャ。なんでジャムなんか?トーストでも焼くの?」

 

「違うわよ。紅茶と一緒に飲むのよ」

 

「あ、聞いたことがある。ロシア流の紅茶の飲み方って確か紅茶をジャムに入れて飲むんだよね?」

 

「ちょっと惜しいわね。ロシア流はジャムをなめながら紅茶を飲むのよ。一緒に入れたら紅茶がべとべとになるじゃない」

 

「それもそうだね」

 

そう言い6人はスプーンでジャムですくい口に入れ、そして紅茶を飲む。

 

『うん。美味しい』

 

どうやらロシア流の紅茶の飲み方は好評のようだった。

 

「はぁ~いいわね・・・・・こうして昼間から紅茶を飲んでお菓子を食べてのんびりするのも」

 

「Me、Too」

 

「そう言えばこのお菓子。どこで買ったの?アーニャ?」

 

「買ってない。私の手作りよ」

 

「へ~手作りでこの腕なら戦車じゃなくてもパティシエとしても食っていけそうね?」

 

「そうでしょ?いや~この料理実はアリーナ姉さんに教わったのよ」

 

と、のほほんとした雰囲気の中6人はお茶を飲んでいた。そして・・・・・・

 

「て、呑気にお茶を飲んでる場合じゃなあぁーい!!!」

 

「「「「「はっ!?」」」」」

 

りほの突込みに皆はあっとした表情をする。

 

「そ、そうだ。美味しい紅茶とお菓子ですっかり忘れていた」

 

「そうね。私たち今後についての会議をしてたんだっけ」

 

「私としたことが・・・・・」

 

「す、すみません。私が紅茶を持ってきたせいで」

 

「いや、ジャスミンのせいじゃないわよ」

 

「そうそう。かたっ苦しい会議を柔らかくするためにしたことだし、ノープロブレムよ」

 

そう言うアーニャとナポリ。そう今6人がこうしてテーブルに集まっているのは今後についての会議をしていたのだ。

 

「で、どうしよう。角谷会長に見つかった今、もう秘密裏に動くことはできなくなったわね」

 

「そうね。幸いこの倉庫はいままで通りに使ってもいいって言ってくれたし」

 

「それって単純に倉庫使わせる代わりに何かの見返り頂戴ねって言っているようなもんでしょ、あの人」

 

「まあ、角谷さん世代の生徒会って色々黒い噂とかあったからね・・・・・でも多分ハルカの言う通りだと思うよ。あの人のことだから絶対に私たちをこっち側につけたいと考えているよ」

 

「まあ確かに廃校になるか否の状態。少しでも戦力が欲しいのは当たり前か」

 

「それに私たちは今でも、資金を稼ぐ方法を見つけていないに等しい。あの会長のことだ。衣食住、そして賃金を払う代わりに協力しろなんて言い出しかねん」

 

「そうね…賞金稼ぎすると言っても肝心の賞金が出る試合が見つけられないんじゃ・・・・・」

 

「世知辛いよね・・・・・・」

 

と、6人ともため息をつく。

 

「もしかしてこの時代、賞金付きの試合がまだ出てきてないんじゃないの?」

 

「賞金付きの試合っていつ出たんだっけ?」

 

「えっと・・・・・いつ頃だったかはわからないけど、確か始まりはタンカスロンがはやり始めたころだっけ?その中で百足チームと呼ばれた二人組の戦車乗りが始めたとか・・・・」

 

「そうなんだ・・・・・でもタンカスロンじゃ私たちのエーデルワイスの出番はないわね・・・・」

 

「そうね・・・あの試合は基本ルール以外はルール無用の上、使用戦車は10t以下、豆戦車か軽戦車なら・・・・・そう言えば私の学校にMk.IV軽戦車がありましたね。あれがあれば・・・・」

 

「あれじゃ力不足じゃない。ここは足の速いT70軽戦車が・・・・」

 

「待て待て、足の速さならアンツィオのCV33も負けてはいないぞ!」

 

「でも機銃だけじゃ心もとないわよ。ここはM22ローカストを・・・・・」

 

「いや、ここは2号戦車で・・・・・」

 

「まあ、戦車についてはおいおい考えるとして、チーム名はどうする?私たちの顔はあんまり表に出せないわよ」

 

「じゃあ、仮面をつけて名前も偽名で名乗って出ましょうよ」

 

「あら、面白そうねリリー。で偽名の候補とか考えているの?」

 

「もちろんよ。りほがゾフィーでアーニャがマン。ハルカがセブンでナポリがジャック。そして私がエースでジャスミンがタロウよ」

 

「全員合わせてパンツァー6姉妹・・・てか?」

 

「リリー、それウルトラ兄弟に怒られるからまずいのでは?特にゾフィーさんとか」

 

「ゾフィーのことなんかいいよ。それに確か初代アンコウチームもどこかの戦隊もののパロディやってたみたいだし」

 

「ああ、パンツァーファイブね」

 

「それに私たち姉妹みたいなものじゃない」

 

『え?』

 

リリーの言葉にみんなは目を丸くする。

 

「え?違うの?」

 

「まあ、姉妹みたいに仲がいいという意味ならその通りね」

 

「確かにリリーの言う通り私たちは同志であり姉妹かもしれないわね」

 

「じゃあ、タンカスロンに参加する時はパンツァー6姉妹って名乗る?」

 

「確かにそれなら私たちがそう名乗っても・・・・・・て、ちょっとストップ!なんでタンカスロンに参加する話になっているの?今は私たちの今後をどうするかっていう話じゃなかったっけ?」

 

「あ、そうだったわね。話が脱線してたわ。まあ、私としては戦車で試合できるのならあいつらに利用されてもいいと正直思っているわ。無論悪い方向に言ったら止めるけど」

 

「私もハルカと同じだ」

 

「そうね。このままただじっとしているのは嫌ですからね」

 

「そうね。私も冬眠中の熊みたいにじっとしているより、歴史を変える勢いで暴れてみたいわ」

 

「私も同意見よ。りほはどうしたい?」

 

「私はみんなと一緒に戦車道ができるのならそれでいいと思う。とにかく最終決定は明日、角谷さんが言っていた戦車道の教官と会って決めましょう」

 

「「「「「異議なし!」」」」」

 

と、りほの言葉に全員頷き、会議はここで終わるのだった。

 

「それじゃあ、私、もう一度エーデルワイスの様子を見るわ」

 

「私も手伝うよハルカ」

 

「いや、ナポリは昨日徹夜でこの倉庫の偽装や罠の設置で休んでいないでしょ?点検だけだからナポリはゆっくり休んでよ」

 

「そ、そうか・・・・悪いな」

 

「いいわよ別に」

 

そう言いハルカは部屋を出て隣の倉庫に入る。

 

「パンツァー6姉妹か・・・・」

 

ハルカは先ほどのことを思い出しふふと笑う。と、すぐに真剣な表情をすると、懐から赤い眼鏡・・・・・・ではなく赤いペンチを取り出し、にっこり笑うとエーデルワイスの元へ向かうのであった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来組の朝です

翌朝、私たちは朝の8時くらいに目が覚めた。そしてりほが顔を洗おうと洗面所へと向かうとドアの前にアーニャが立っていた。

 

「おはよ~りほ~」

 

「おはよアーニャ。今、洗面所、誰が使っているの?」

 

「今、ジャスミンとハルカが使ってるわ。リリーは今ご飯作ってる・・・・ふわぁ~」

 

「そっか。今日の食事当番リリーだったね。どんな料理かな?」

 

「サンダースだから、アメリカ料理じゃないか?クラムチャウダーとか?」

 

「あ、ナポリ。おはよう」

 

「おはよう。りほ、アーニャ」

 

振り返るとそこには、寝ぐせで髪がボサボサになったナポリが眠たそうな目で立っていた。

 

「酷い寝ぐせだね?」

 

アーニャはナポリの寝癖を見て苦笑する。アーニャの今の髪型はまるで古典的な漫画の爆発シーンによく出ている爆発頭であった。

 

「ああ、朝起きるといつもこうなんだよ」

 

「「いや、何をしたらそんな寝ぐせになるんやねん?」」

 

ナポリの言葉に二人は古典的なつっこみをする。

 

「いつもはお母さんが結うの手伝ってくれたけど、もういっそのこと髪短く切っちゃおうかな?そうすれば、いちいち髪を整えなくても済むし」

 

「でもそれだとただの天然パーマの少女になっちゃうよ。例えて言うなら秋山さんみたいに?」

 

「誰よ秋山さんって?」

 

と、そんな話をしているとドアが開いて、

 

「ごめん。終わったわよ」

 

「あ、りほさん。アーニャ、ナポリ。おはようございます」

 

ジャスミンとハルカが出てきた。

 

「ああ、ジャスミン。ハルカおはよう。じゃあ次は私たちね」

 

「そう、じゃあ私たちはリリーの手伝いをするわね」

 

そう言いハルカとジャスミンはリリーのいるキッチンへ向かい、私たち三人は洗面所へと入るのであった。そして顔を洗い爆発頭のナポリも奇麗なポニーテイルの髪型を整え、私たちは部屋を出て居間に行くとそこにはリリーたちがいた。

 

「あ、おはよう。りほ、ナポリ、アーニャ。食事の用意できたよ」

 

と、リリー下顔でそういう。そして私たちは椅子に座り、

 

『いただきます!!』

 

と、そう言い私たちは朝食を食べ始める。今日のメニューはアメリカ料理・・・・・・かと思いきや。メニューはサラダにソーセージとスパムと目玉焼きとシンプルなものだった。しかし味の方は、

 

「このソーセージ美味しい!」

 

「この目玉焼きも、良い蒸し加減で黄身も半熟で美味しいわね」

 

「でしょ?」

 

アーニャとナポリの言葉にリリーは嬉しそうに笑みを浮かべる、とジャスミンが、

 

「でも意外。サンダースのリリーのことだから皆スーパーサイズかと思ってたけっど・・・・・」

 

「ああ、それね。サンダース以外の子から結構言われているけど私少食なうえあんまり脂っこいの好きじゃないのよ。どっちかというと野菜多め肉少なめ派ね。それに私の母校、さっきもジャスミン言ってたけど皆、アメリカンサイズじゃない?私みたいな少食の子って結構大変なのよ。しかもいつもパーティーとかあるし。だからいつも学校に行くときは胃薬を携帯してるのよ」

 

「なんか大変だねリリーも」

 

「ええ、皆フレンドリーなのはいいんだけど。食事だけは炭水化物だけじゃなくてもっとバランスのいい食事も出してほしいっていつも思っているわ。毎日バーガーやポテトじゃ・・・・あ、でも小松菜バーガーとか和風バーガーは好きかな?」

 

「へ~サンダースってそんなハンバーガーあるんだ」

 

「ちょっと食べてみたいわね」

 

そう言い、私たちは楽しく食事をした。するとナポリが、

 

「そう言えばハルカ。昨日は戦車の点検してたけど。異常なかった?」

 

「ええ、全く問題なし。それと時間あったから私たちのエーデルワイス号のスペックも纏めてみたわ」

 

「え?あの短時間で?」

 

「もともとエーデルワイス号を修理しながらやってたし。ノートに書くだけならそんなに時間はかからないわよ。はい。これがそうよ」

 

そう言いハルカが出したのは一冊のノートで、そこに書かれたのはエーデルワイスのスペック情報だった。

 

 

 

              エーデルワイス号(五式中戦車)

                 全長:8.490 m

                 車体長:7.407 m  

                 全幅:3.10 m

                 全高:3.049 m

                 重量:恐らく35~37トンくらい

                 主砲:56口径88ミリ砲(砲弾90発)

                 装甲:(砲塔)前面:100ミリ(前面装甲傾斜20)

                 側面:75ミリ

                 後面:50ミリ

                (車体装甲、砲塔と同じ) 

                 機関銃:九七式車載機銃×1

                 速度:38~42キロ(現時点での速度)

                 乗員数:6名

                    以下略

 

 

 

 

と、細かく書かれていた。

 

「よくここまで・・・・・しかもチリと若干大きさも違うわね」

 

「あらためて見ると最早チリとは別物ね・・・・・」

 

「これ中戦車じゃなくて重戦車じゃない?」

 

「主砲もティーガーⅠと同じ。装甲も傾斜してたし・・・・・やっぱり異世界から来た戦車なのかな?」

 

「もしくは軍が秘かに作った戦車とか?」

 

皆、ハルカの書いたエーデルワイス号のスペックと窓の外にある格納庫の大きめの窓から見えるエーデルワイス号を見て話す。確かに今思っても。私たちの乗るエーデルワイス号は不思議である。見た目はチリに見えるんだけどどこか違う。もしかしたら本当に別世界から来た戦車なのかもしれない。この時りほたちはそう思うのであった。

するとアーニャが、

 

「あ、そう言えば。今日は戦車道の教官がくるって角谷さん言っていたわね」

 

「ええ、放課後に生徒会室に来てくれって言っていたけど・・・・・なんでかな?りほ。わかる?」

 

「たぶんだけど。いや、たぶん今日は大洗戦車道部の練習が始まる日だからじゃないかな?歴史だと戦車道教官が来た日はちょうど大洗女子の本格的な練習と練習試合が始まった日だから」

 

「え?初日で試合って大丈夫なの?その教官よく試合しようって言いだしたよね?」

 

「そうね例えで言うなら『よし、今日は勉強止めてドッチボールしようぜ!』みたいな?」

 

「何その例え?」

 

「りほその教官ってもしかして・・・・・・」

 

「蝶野亜美一佐だよ…この時代だと一尉」

 

「「「ああ~あのアバウトな人か・・・・・」」」

 

りほの言葉に皆は納得した表情をする。戦車道教官で蝶野亜美は結構(いろんな意味で)有名な人だ。それはりほたちの時代でも同じなのであろう。

 

「なるほど、練習が終わった後、私たちを呼ぶって言うことね・・・・・」

 

「でも、その時間まで暇だし。ちょっと練習覗いてみない?」

 

「あ、それ賛成。伝説の大洗女子の試合がどんなものか見てみたいし」

 

「私も賛成よ。りほはどう?」

 

「実は私も。少し興味ある・・・・」

 

「よし!じゃあ校庭に行きましょうか!」

 

『賛成!!』

 

そう言いりほたちがそう言い外に出ようとすると、

 

「ちょっとまたぁ!!」

 

アーニャが呼び止める。

 

「なにアーニャ?アーニャは反対?」

 

「いや、違うわよ。行くのはいいけどまずは片付けでしょ?」

 

そう言い指さしたのは食べ終えたばかりの汚れた食器であった。

 

「あ、そうだったわねソーリー」

 

「わたくしとしたことが・・・・」

 

「それじゃあ、片づけを終えたら練習見に行こうか」

 

「そうですわね」

 

そう言い、私たちはまず食器の戦場やら部屋の掃除をした後、グランドの方へと向かうのであった。そしてグランドが良く見える駐車場付近へと到着する。

 

「やっと着いた・・・・・どうやらまだ教官は来ていないみたいだね・・・・」

 

「でも履修者の人は集まっているね。て、ジャスミン押さないでよ」

 

「あ、ごめんハルカ・・・でも隠れる必要ある?」

 

「念には念を入れる。私たちの存在は生徒会しか知らないんだからあまり目立った行動はできないわよ」

 

「顔に墨入れて頭に枝つけていても説得力ないよリリー。というよりそれ却って目立つわよ」

 

「それに私たち指名手配されてたからもう秘密も何もないよ‥‥てどうしたのりほ?」

 

ナポリがりほに言うがりほは校庭に集まる履修者を見ていた。そして彼女が見ていた人は、

 

「(・・・・・お母さん)」

 

りほは若き母みほを見ていて複雑そうな表情を浮かべていた。もし自分が母と一緒に戦うことになったら・・・・そう思っていた。

 

「もしかして、りほのお母さん・・・・みほさんを見てたのりほ?」

 

「・・・・・・うん」

 

「そっか・・・・・まあ、りほの気持ちもわかるわ。私も黒森峰で母さんと会ったらきっとりほと同じ気持ちになると思うから」

 

「それ以前に私たちがこの時代にいるということは、遅くも早くも、このメンバーのお母さん、しかも高校生時代のお母さんに会うかもしれないわね・・・・そう思うと確かに」

 

『『『複雑だね・・・・』』』

 

皆はりほの気持ちと同じなのか複雑な表情をして苦笑した。すると空から音が聞こえる。

 

「あれ?何この音?」

 

「この音って・・・・・ジェット機の音ね。しかも後ろ?」

 

ジェット音が聞こえ6人は振り向くとそこには・・・・・

 

「あれって、陸自のC2改輸送機!?」

 

「すごい!本物見るの初めて見た!!今じゃ退役して博物館でしか見られないのに!?」

 

リリーとナポリが興奮して、ナポリはスマホで飛んでいるC2改を撮影する。私たちの時代ではC2は後継機にC3輸送機に変わっているから。するとC2改の後部ハッチが開きそこから陸自の10式戦車がパラシュート降下してきた。そして10式は無事に着地成功。それを見た私たち6人は、

 

「あれって10式戦車!?しかも120ミリ滑空砲型!?」

 

「すごい!しかも初期型!!」

 

「これもかなりのレア戦車!!」

 

私たちは旧タイプの10式戦車を見て興奮してスマホで10式戦車の写真を撮りまくっていた。現在の10式はすでに次の戦車や16式機動戦闘車に変わっており、しかも初期生産の120ミリ砲型を見れるなんて夢にも思わなかったのだ。例えで言うなら10式世代に61式が目の前で動いているのを目撃しているような物だ。

すると着地した10式は駐車場でスライディング着陸したため、赤い車に激突した。もちろん40トン以上の巨体に耐えられるはずもなく赤い車はひっくり返る。そして10式がバック走行で踏みつけぺしゃんこにした。

 

「あっ、あ~やっちゃった」

 

「ポテチ・・・・」

 

「あの車、保険に入っているといいんですけど・・・・」

 

「いや、戦車に踏みつぶされたって言って保険とか降りるかな?」

 

私たちはポテチのようにぺしゃんこにされた車を見てそう呟くのであった。そして10式戦車は車を踏み潰したことを気にもせずにこちらに向かい停車した。そしてキュウーポラから人が出てきた。その人物を見た6人は・・・・

 

『あ~やっぱり蝶野さんだった・・・・・』

 

と、やはりというような顔でそういうのであった・・・・・

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コンタクト、過去と未来の交わる時代です

角谷とりほたちが最初の接触をして翌日の夕方、森の奥にある、かつて自動車部が使っていた古い格納庫と小屋。その小屋の中で、りほたちは集まってお茶を飲んでいた。

 

「はぁ~すごかったね。過去の戦車道の試合を見れて私、感動したわ。しかもあのレジェンド時代の大洗の練習試合よ!」

 

「落ち着きなさいリリー。まあわたくしも同意見ですわ。でもまだ戦車道を始めたばかりですからぎこちなかったですけど」

 

と、ナポリとジャスミンがそう言う。あの後6人はこっそりとバレずそして巻き込まれないように大洗女子の練習試合を見ていたのだ。

 

「そうね。結果的にはりほのお母さんの乗るⅣ号が勝ったけど。あれってただ単に相手が勝手に脱落したって感じよね?」

 

「まあまあハルカ。そう言わないの。歴史ではみほさん除けば、皆素人だったみたいだったし。ね。りほ」

 

「うん。武部先生たちに聞いた話だと、お母さんを除けばみんな戦車道をしたことが無かったみたいだから」

 

「そっか~じゃあこれから強くなるんだ大洗女子・・・・・歴史での話だとな」

 

「うん。一応、練習試合ではね・・・・・・・」

 

そう言いりほは考える。今のところは歴史通りになっている。だが、この後は・・・・・

 

「そろそろ来ますわね・・・・・生徒会の人たちと戦車道の教官・・・・・・」

 

「そうね。もうそろそろだね。それよりも蝶野さんってやっぱこの時代でもアバウトだったわね。いきなり練習試合って言われて生徒たち困惑していたし」

 

「そうですわね・・・・・それにしてもやはりお若かったですわね、蝶野さん」

 

「それはそうでしょ。20年も前なんだし。私たちの時代と違って五十路のおばさんじゃないんだから」

 

「でも五十路のおばさんでも蝶野さんの美しさは今も昔も変わってないわね。蝶の名は伊達じゃないってことね」

 

アーニャがお茶を飲みながらそう言う。するとジャスミンが、

 

「それよりも大洗女子はこの後どういう練習をするんでしょ?やはりみほさんがいるから西住流のやり方かしら?」

 

「さあ?でもちょっと気になるね。ねえりほ。西住流の戦車練習ってどういうの?もしかしてあれ?滝の川を切ったり、ブーメラン投げつけたり挙句の果てにはジープで追い回されたり」

 

「リリー、それ戦車道関係ないじゃない。というよりそれ西住流じゃなくてモロボシ流よ」

 

「『お願いです!やめてください隊長っ!!』・・・・だったけ?あれBⅮで見たけどノースタントだけあって役者も鬼気迫る顔してたわね。とても私にはできないわ~。それ以前に私たちジープ持ってないじゃない」

 

「じゃあ、エーデルワイスでやる?」

 

「確実に挽肉が大量にできるわよ、ハルカ。私ハンバーグの材料になるのは御免よ」

 

「私だって人肉のハンバーグなんてごめんよ。美味しくないし、それより地面や履帯にこびりついた臓物や肉片片付けるの嫌だし」

 

「突っ込むとこそこ?というよりエグイわよ、ハルカ」

 

皆が苦笑して言う。戦車に体当たりする特訓なんてどう考えても死ぬ。虎の穴も真っ青な訓練法だ。そしてナポリが、

 

「で、りほ。やっぱり西住流の訓練ってそんな感じなの?」

 

「いやいや!そんなの無いよ。お母さんやお祖母ちゃんにも聞いたけどそんな過酷なのはないよ。強いて言えば・・・・」

 

「「「「強いて言えば?」」」

 

「重い砲弾を持って大声を出してランニング・・・・・かな?」

 

『『あ~』』

 

私の言葉に皆納得したように声を上げる。どうやら私以外でも同じみたいだ。

 

「やっぱり、りほもそこは同じなんだ。私もそう」

 

「同じく」

 

「プラウダもそうよ・・・・・て、りほ。さっきお祖母ちゃんって言っていたけど・・・・りほの祖母って西住・・・」

 

「うん西住しほだよ」

 

「大丈夫りほ?噂では怖い人って聞いたけど?」

 

「え?お祖母ちゃんは確かに目つき怖いけどとっても優しいよ?小さい頃なんかおばあちゃんの家に行ったときクマの着ぐるみ着てサプライズしてくれたり、とっても優しくて別に怖くはないよ。目つき以外は・・・・・」

 

『あの怖い雰囲気から、そ、想像できない・・・・・』

 

りほの言葉に皆はそういう。するとジャスミンが、

 

「それよりも遅いですわね・・・・・・・・・・生徒会の皆さん」

 

「そうね・・・・そろそろ来ないと夜になっちゃう・・・・・」

 

と、そう言いかけた時、

 

カラン!コロン!

 

「「「「「っ!?」」」」」」

 

急にドアの傍に引っ掛けておいた多数の空き缶が揺れ鳴り出す。それは格納庫に忍び込んだ人がナポリ達の作った罠に掛かった時に鳴る音だった。

 

「りほ!」

 

「うん!!」

 

その音を聞いてみんなは護身用にプラスチックのバットやフライパンをもって、戦車格納庫に続く扉に近づく。

 

「良い、みんな。開けるよ?」

 

りほの言葉に皆は頷き、りほがドアを開けると・・・・・・

 

「うわぁ~ん!!!降ろして!!柚子ちゃん助けて~」

 

「あわわ、桃ちゃんそんなに激しく動くと危ないよ」

 

「これはなかなかの罠だね~」

 

「そうね、戦車のセキュリティはバッチリみたいね」

 

そこにはエーデルワイスに触れようとしたのか、ナポリ特製の吊るし上げトラップにかかり逆さ宙吊りになってべそをかいている河嶋さんと、その河嶋さんを下ろそうと必死になっている柚子さん。そしてそれを見る杏と蝶野さんの姿があった。

 

 

 

 

数分後、小屋の居間

 

「えー、改めて名乗ろうか、私は角谷杏。大洗女子学園の生徒会長だよ!んで、此方の片眼鏡の子が……………」

 

「河嶋桃だ。生徒会広報をしている」

 

「小山柚子です。生徒会副会長をしています」

 

「それで、私が蝶野 亜美。大洗女子学園戦車道の教官をしているわ。よろしくね」

 

蝶野さんが笑みを浮かべながら言うと、りほは、

 

「あらためて初めまして。私はチームエーデルワイスのリーダー兼車長のに・・・・伊庭りほです」

 

「同じく操縦手のナポリ」

 

「砲手のジャスミン」

 

「通信手のアナスタシア」

 

「装填手のリリー」

 

「装填手補助のハルカです」

 

と、りほたちは4人に挨拶すると、河嶋さんが、

 

「それより貴様ら、なんなんだあの罠は!」

 

「なんだって、決まっているじゃないの。私たちが作った泥棒よけのセキュリティよ。それに黙って戦車を触ろうとしたあんたが悪い。来たなら来たってちゃんと言ってくれないと困るわよ」

 

「なんだとっ!」

 

アーニャの言葉に河嶋はさらに突っかかろうとするが、

 

「かわしま~、うるさい」

 

「しかし会長!」

 

「それに伊庭ちゃんたちの言うことも一理あるからね~。声もかけずに勝手に格納庫に入って戦車触ろうとした私たちも悪いんだし」

 

「うっ・・・・」

 

正論を言われ黙る桃。すると蝶野さんはりほたち6人を興味津々で見る。

 

「話は角谷さんから聞いたけど。あなた達って20年後から来た子なのよね?」

 

「は、はい。私たちは20xx年から来たんです。信じられないと思いますが・・・・・」

 

「いいえ、信じるわ。だって戦車乗りに嘘つく子はいないんですもの。何よりあなたたちのその目。嘘をついていたらすぐにわかるわ。でも、やっぱり未来の道具とかそういうのは気になるわね。何か持っていない?」

 

「えっと・・・・お金なら持っていますけど」

 

そう言いりほたちは未来のお金を見せる。お札や小銭という物は偽造することは不可能で確実な証拠となる。それを見た蝶野さんは、

 

「平成の次は令和ね・・・・・もっと違う物だと思っていたわ。ねえ、あなたたち次の証拠っというより未来にある物とかないの?空飛ぶ車とか?」

 

「えっと・・・さすがに。後、持っているのはスマホぐらいしか・・・・・車も今の時代とあまり変わりませんし・・・・」

 

「そう、空飛ぶ車に一度は乗ってみたかったんだけど残念だわ。それよりあなたたちはどうやってこの時代に来たの?その目的は?」

 

と、そう訊くとナポリが

 

「それがわからないんだ」

 

「わからない?」

 

「はい。エーデルワイス・・・・・あの5式のことなんですがみんなでエーデルワイス号のエンジンのスイッチを入れた瞬間、雷に打たれて気が付いたらこの時代にいたんです」

 

「そうなの・・・・・・・それで、あなた対はこれからどうするの?大洗女子学園の子たちと一緒に戦車道をするの?」

 

蝶野さんの質問に6人は首を横に振る。

 

「いいえ、私たちは歴史をあまり変えたくないんです。歴史が狂ったら未来が変わってしまうから・・・・・」

 

「それにわたくしたち賞金稼ぎになるって決めましたので」

 

「ああ、昨日もそんなこと言ってたね。『賞金の出る試合に出て元の時代に帰るまで稼ぐんだ』って」

 

干し芋を頬張りながら言う杏に、蝶野さんは困ったような仕草をして考えこみ、

 

「う~ん・・・・・・あなた達の時代には賞金付きの試合はあると思うけど。この時代、特に日本ではそんな試合は存在しないし、聞いたことないわ。連盟でもそんな試合やっていないし」

 

「「「えっ!?」」」

 

蝶野さんの言葉に6人の目は点になり口をあんぐりと空けた。そしてその脳裏には『詰んだ』という文字が出ていた。そしてそれと同時に今までネットや雑誌で探しても見つからなかったということに納得していた。

そして角谷さんは、

 

「・・・・で、どうする?君たち。未来から来たんじゃ、履歴書や住民票とかうんぬんでアルバイトもできないでしょ?ここは私たちのチームに入りなよ。いろいろやりくりしてあげるよ。それに伊庭ちゃん」

 

「は、はい」

 

「君たちは歴史を変えたくないんだよね?」

 

「はい。できるだけ元の歴史のままにしたいんです。戻った時。自分のいる場所が無くなるのは嫌なので」

 

「そっか・・・・・じゃあ、そうならないように私たちを監視しながら戦車道チームに入ってくれる?もし歴史と違うことになりそうだったら止めればいいんだし」

 

「それはそうですが・・・・はいそうですっというわけには・・・・・・」

 

何か裏があると疑う6人。話が並行のまま進むと蝶野さんが手を叩き、

 

「よし!議論をしてもしょうがないから練習試合をしましょう!」

 

「「「・・・・え?」」」」

 

突然の言葉に6人はおろか生徒会三人衆も驚く。

 

「戦車乗りたるもの議論ではなく戦車で語るべきじゃないかな?それにこの試合は非公式だから歴史の表舞台には出ないし。大きく歴史が変わることはないでしょ?」

 

「え?ええ・・・まあそうですけど。いいんですか?」

 

「私たちは別にかまわないよ~。伊庭ちゃんたちはどうかな?」

 

と、いたずらっぽい笑みでそういう角谷さんに私たちは、

 

 

「ねえ、どうするりほ?私的には練習の成果を試したいから構わないけど・・・・・」

 

「私もそう。それに非公式で秘密裏にやるのなら、歴史が激しく変わることはないんじゃないかな?」

 

「私もだ。賞金付きの試合が存在しない以上。その憂さを晴らすためにもここはやるべきでは?」

 

「わたくしはりほさんの判断に任せますわ」

 

「私もよリホーシャ。あなたがどんな判断しても私はあんたについて行くから」

 

「みんな……うん。わかった。・・・・角谷さん。その試合。受けて立ちます」

 

「よーし決まりだね!じゃあ、負けたら伊庭ちゃんたちには、大洗女子学園戦車道チームに加わってもらうよ~」

 

「やはりそれが本音ですか・・・知っていましたが。ではもし私たちが勝ったらどうしますか?」

 

「そうだね~。干し芋三日分じゃダメかな?」

 

「「「「安すぎる。まじめに考えろ」」」」

 

杏の言葉に6人が突っ込み、杏は少し考え、

 

「そうだな・・・じゃあこうしよう。全員の前で、大洗女子学園戦車道チームのメンバー全員、アンコウ踊りでもやろっか!」

 

「「「っ!?」」」

 

杏の言葉に生徒会二人は固まり、そしてアンコウ踊りを知らない、りほを除いたメンバーは首をかしげるが。その意味をよく知っているりほも固まってしまう。

 

「か、会長!本気ですか!?」

 

「うん!わざわざ遠い未来から漂流して苦労しているのに、無理やりこっちに引き込もうとしているんだからこのぐらい当然だよ。無論、私も踊るからね。どう伊庭ちゃん。受けて立つ?」

 

そう言うとりほは少し黙っていたがすぐに真剣な目つきで、

 

「わかりました・・・・・に・・・戦車乗りに逃げるという道はありません。それに角谷さんがそこまでの覚悟を持つというのなら受けて立ちます」

 

「そっか。ありがとね伊庭ちゃん。じゃあ試合の日時は電話で連絡するから。これ私の番号。何かあったら連絡して。それじゃあ、6人とも試合で会おうね~。河嶋。小山。行くよ」

 

「はっ!それじゃあ試合でな、伊庭」

 

「失礼します」

 

そう言い生徒会三人と蝶野さんは部屋から出たのであった。そして残されたりほたちはその後、夕ご飯の支度をした。今回の夕ご飯はナポリ特製のパスタとイタリアン料理であった。

そして試合に向けての作戦会議をした後、りほはアーニャたちにアンコウ踊りは何かと聞かれ、りほはスマホに保存していたアンコウ踊りの映像を皆に見せる。そしてその映像に写されたアンコウ踊りをしていたのはりほの母であるみほで、その映像を見て皆はドン引きした表情になり、りほも言葉で言うよりはわかりやすいだろうと見せたのはよかったが、やはり自分の母親が踊っている姿を見て少し恥ずかしくなり、そして、そんなりほに皆が同情の目を向けたのは言うまでもなかった。

 

 

 




何とか書き終えることができました。挿絵としてりほたちエーデルワイスチームの絵とか描こうとしたのですが下手くそすぎてできず。いっそのこと他の方に募集したいとか思いました・・・・・

それはさておき、未来組。りほの母である、みほと練習試合をすることになるのか?それは次回のお楽しみに!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エーデルワイスチーム、出陣です!

大洗女子学園初の戦車道の授業であり初の練習試合の翌日の休日。戦車道履修者の生徒たちは戦車格納庫の前に集められていた。そして並んだ生徒達の前に、生徒会メンバーの3人と蝶野が立つ。

 

「えー、休日なのに呼び出して申し訳ないが、今日は練習試合を行うことになった」

 

「え、ウソ?また?」

 

「昨日模擬戦やったばかりなのに、今日もやるんですか?」

 

不満の声が上がる中、蝶野が生徒たちをなだめ、桃は、

 

「今回の練習試合は昨日の紅白戦ではなく、あるチームと試合をすることになった」

 

「どんなチームなんですか?」

 

新たな仲間である冷泉麻子を仲間に入れたアンコウチームの秋山が訊くと、桃は、

 

「相手はエーデルワイスチームだ」

 

「エーデルワイスチーム?聞いたことが無いね?」

 

「でも可愛らしいチーム名だね」

 

「どんなチームなんだろう?」

 

「どんな子が乗っているんですか?」

 

と、みなが聞くと、角谷が、

 

「その子たちはね~、ちょっと変わった子と言うより特殊な子たちでね~。絶対に大洗戦車道部の力になってくれると思うんだよ」

 

「そんなにすごいんですか?」

 

「うん。すごいよ。それこそ歴史を変えちゃうぐらいにね」

 

「そんなにすごいんだ・・・・・」

 

「私たち勝てるかな?」

 

杏の言葉に皆がざわつくと、河嶋は、

 

「試合形式だが、フラッグ戦を予定している。因みにフラッグ車は、Ⅳ号Aチームだ」

 

「ええっ!?」

 

「いきなり大役を任されてしまいましたね……………」

 

「で、そのエーデルワイスチームというのはどんな戦車に乗っているんだ?」

 

そう麻子が呟くと、杏が、

 

「ああ、彼女たちの乗っている戦車は五式中戦車だよ」

 

「五式・・・・とすると一昨日のあの人たちがそうなんですか?」

 

「そうだよ西住ちゃん。その子たちと今日、試合をしてもらうんだよ」

 

「会長・・・・・あの子たちは一体?」

 

「ん?この子たちはね、さっきも言ったように少し変わった子なんだよ。まあ、会ってじっくり話せばわかると思うよ?気になるの、西住ちゃん?」

 

「はい・・・・少しだけ。前に写真で見せてもらったんですが、六人のうち一人はなんというか…他人じゃないような気がして・・・」

 

「そっか」

 

みほの言葉に杏はにっこりと笑ってそう言うのであった。

 

 

 

 

 

一方、森の奥の倉庫では、

 

「よし!これで良し!!」

 

りほたちエーデルワイスチームは戦車の整備を終えた後砲塔側面にチームマークを付けていた。そのマークは丸い赤地の中央にエーデルワイスの花。そしてその花を囲う様に上から時計回りでヒバリ、鉄十字、ティーポット、青い星のマーク、ピザのマーク、T定規と角定規を斜めに合わせた小さなマークが描かれていた。

 

「出来たわね。私たちの・・・・チームエーデルワイスのマーク」

 

「ええ、このマークは次元を超えた友情のマーク」

 

「そう、たとえ学校や生まれた時は違えども」

 

「ともに戦う時は一緒ですわ」

 

「そうね。たとえどんな強敵が待ち受けようとも、私たちの友情の力は無敵よ」

 

少しペンキで汚れた顔をした6人はそう言う。するとアーニャが、

 

「それより、りほ。このヒバリはなんなの?大洗だからてっきりアンコウだと思っていたけど?」

 

「アンコウはお母さんたちのマークだから。だから私は茨城の県鳥のヒバリにしたの」

 

「ああ、なるほどね。それよりもみんなのマーク。自分の高校のマークの一つを使っているわね」

 

「そうですわね。アーニャはプラウダのマークの一つ。T定規と角定規。ナポリはアンツィオのピザ、ハルカは黒森峰もといドイツの鉄十字、リリーはサンダースの青い星。そして私はグロリアーナのティーポット・・・・・まさに6校全員集合ってことかしらね」

 

「そうだな。言われてみればそうだな。でもあながち間違いじゃないな。私たちは皆違う学校の出だからな」

 

「そうね。でも今は違うわ。今の私たちは心を一つにした同志であり、友であり、姉妹みたいなチームよ」

 

「そうね。それが私たちエーデルワイスチームね。それよりりほ。もうそろそろ行きましょう。たぶんグランドで大洗の人たち待っていると思うから」

 

「そうだね。それじゃあ行こうか」

 

そうりほが言うと、5人は頷き、

 

「じゃあ、戦車に乗る前にアレ(・・)やる?」

 

「あれって何?・・・・・ハカ?」

 

「えっ!?嘘!あれ踊るの!?」

 

「違うわよ。というよりそれはラグビーの奴でしょ。ほら、昨日ちょっとやってみようって言ったアレよ」

 

「あ~あれね。でも本当にやるの?」

 

「いいじゃないですの面白そうですし」

 

「そうね一興としてやってもいいわね。じゃあ、やろうよ」

 

「そうね。せっかく昨日の夜タイミング合わせの練習したし」

 

そして皆は頷くと6人はエーデルワイス号の前に立ち、りほはウル〇ラマ〇の登場する時のポーズをし、アーニャは胸ポケットからスティックカプセルのような物を空へと向け、ハルカは同じく胸ポケットから赤い眼鏡を取り出しそれをかけ、ナポリは右手を空にあげ、リリーは両手にはめた銀の指輪を合わせ。ジャスミンは腕につけたバッチを取り空高く上げる。そして・・・・

 

『『『我らパンツァー6姉妹!!!』』』

 

と大声で言うのであった。しかしいるのはりほたちだけであったので何も返事はなかった。そしてしばらくしてりほが、

 

「・・・・・・・じゃ、じゃあ、グランドに行こうか?」

 

「そ、そうですわね・・・・・。ねえやっぱりこれ、かくし芸以外でやるのは止めましょう」

 

「そ…そうだな。最初はかっこいいっと思っていたけど今思うとちょっと恥ずかしいな・・・・」

 

「そ、そうね・・・・・かっこいいと思ったんですけどね・・・・・それよりりほ今のポーズって・・・・」

 

「ごめん。私、ゾ〇ィーの変身ポーズ知らないから・・・・・」

 

「あ~確かにあの人、一回も人間姿から変身したことないよね~」

 

「そうそう。それにバードンの時もあっさりやられた挙句タ〇ウが復活するまで野晒されたりエースの時はすぐに助けに来たのにレ〇の時、セブンが負傷して変身できなくなった時は助けに来なかったりと結構、ネタの多い人だよね」

 

「「そうそう」」

 

「(ゾフィーフルボッコなんだけど・・・・・)」

 

「(タイラントとバードン以上にぼこぼこにされているんだけど・・・・)さて、ゾフィーのことはいいとして早く戦車に乗りましょう」

 

そう言いりほたちはエーデルワイス号に乗る。そしてナポリはエンジンを始動させる。そしてエーデルワイス号の発動機が轟々と鳴り響きエンジンマフラーから若干火が出る。そしてりほは、

 

「エンジンの調子はナポリ?」

 

「よし!ご機嫌に吠えている!いつでも出せるぞ、りほ!」

 

「無線の調子は、アーニャ?」

 

「問題ないわよ!」

 

「砲弾と装填器具にも異常なしよ。りほ」

 

「いつでも万全の状態よ、りほさん」

 

りほの言葉に皆が言うと、りほが、

 

「それじゃあ、グランドに・・・・・」

 

そしてりほはみんなで話し合って決めた掛け声を言う。

 

「バディーゴー!!」

 

りほの掛け声に6人の乗る五式中戦車『エーデルワイス号』は大洗女子戦車道チームの待つグラウンドへと向かうのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時空を超えた練習試合です

森の中、大きい轟音と金属のぶつかる音が響き渡り、山林の林を抜ける一輌の戦車がいた。それは国防色に色塗られた五式中戦車であった。そしてその戦車はそのまま速度を落とすことなく吊り橋や小川を渡り、試合相手である大洗女子戦車道チームの待つグランドへと走る。

そして、その五式の車内では、

 

『『『進め~桜~吹雪舞う~♪ 麗しの道~♪♪』』』

 

と、陽気に歌う、エーデルワイスチーム六人。今彼女たちの歌っている歌は、『戦車道行進曲』という戦車道をやる女子の中では流行りの歌であり、りほたちの時代では戦車道全国大会開会式に歌われる歌でもあった。

 

『笑顔と~優しさ~乙女の勲章よ!』

 

そしてりほたちの乗る戦車は吊り橋を難なく速度を落とさないまま進み、丘を越え、林の壁を抜け、そして大洗女子の待つグラウンドへと到着し、

 

『響き~響け~轟けよ栄冠~その日まで前進!!』

 

と、歌い終わるのと同時にエーデルワイス号は生徒たちの前で停車する。それを見た生徒たちが、

 

「あれがエーデルワイスチーム」

 

「なんか強そうな戦車だね」

 

「どんな子たちが乗っているんだろ?」

 

皆がそう言っているとエーデルワイス号のハッチが開き、そこから6人の少女たちが降りてきて整列する。それを見た生徒たちは、

 

「え?あれって指名手配されていた子?」

 

「どういうこと~?」

 

「それに一人、小学生が混じっているけど?」

 

一年生らしき子たちがそう言うと、りほが前に出て、

 

「え、エーデルワイスチームのリーダーのに・・・・伊庭りほです。今日はよろしくお願いします」

 

「副リーダーのアナスタシアです」

 

と、二人は丁寧にお辞儀する。因みになぜアーニャが副リーダーになったかというと、全員で話し合った結果、チームの中では一番経験が多いのと歳が上だからということでそう決まったのだ。アーニャもそれには不満の様子もなく快く引き受けている。そして二人がお辞儀する中、大洗の生徒たちの内、みほはじっとりほの方を見ていた。視線に気付いた、りほは、

 

「(お・・・・お母さん。さっきから私のこと見ている・・・・・な、なぜだろう?もしかしてバレてる?いやいやそんなはずは・・・・)」

 

じっと見てくるみほの視線にりほは顔をそむけたくなる。対してみほは、

 

「(この子・・・・・どことなくお姉ちゃんやお母さんに似ている・・・・・特に目つきが?)」

 

と、りほが不安に思っている中、みほはりほがどことなく姉であるまほや母親であるしほに似ている(特に目つき)ことを考えていた。皆が黙っていると、

 

「はいはいはい!皆注目!」

 

手をパンパンと叩きながら蝶野さんがそう言うと皆が注目する。

 

「せっかく挨拶してくれているのに、此方が何もしないのは失礼よ!ほら、大洗側の隊長も早く前に出る!」

 

蝶野さんがそう言うと角谷さんはみほを呼ぶ。どうやら戦車道経験豊富のみほを一日だけの隊長に任命したようだ。そしてみほはりほの前に立ち、

 

「初めまして伊庭さん。え、えっと……………大洗女子学園戦車道チーム隊長、西住みほです!こ、此方こそ!きょ、今日は、よろしくお願いします!」

 

そう言って、みほは凄い勢いで頭を下げる。それを見たエーデルワイスのメンバーは、

 

「(あれがリホーシャのマーマで伝説の戦車乗り、西住みほ・・・・)」

 

「(な、なんかイメージと全然違うわ・・・・・確かにお母様の言う通り面白そうな人ですけど・・・・)」

 

「(なんだろう・・・・軍神!て呼ばれているからもっと怖い感じかと思っていたけど・・・・・)」

 

「(なんだろう・・・・なんか癒されるというか、なんというか・・・・・)」

 

「(なんか私の中でのイメージ像が崩れた・・・・・)」

 

伝説(りほたちの時代で)と言われた西住みほを見てそう思う中、りほもあたふたするみほを見て

 

「(お母さん昔はこんな感じだったんだ・・・・・私の知っているお母さんと少し違う)・・・・はい。こちらこそよろしくお願いします。お・・・西住さん」

 

そういい二人は握手すると、蝶野さんが試合の説明をする。

 

「じゃあ、両チームの挨拶も終わったことだし、試合の説明をするわよ!範囲は先日の模擬戦と同じとするわ。そして今日の試合内容はフラッグ車を倒せば勝ちとするフラッグ戦とします。因みに、我々大洗女子学園戦車道チームが勝てば、彼女等は大洗女子学園戦車道チームの特別チームとして、此方に所属することになります!」

 

と、蝶野さんがそう言うと大洗女子の生徒たちは驚きそして歓声を上げたが、一年生チームのリーダーである澤梓が、

 

「あ、あの・・・・もし負けたらどうなるんですか?」

 

と、そう聞くと角谷はにっと笑い、

 

「もし負けたら、大洗女子学園戦車道チーム全員でこの子たちの前でアンコウ踊りをしてもらうことになっているから。あ、それとスーツも用意しているからみんな頑張ってね~」

 

--ピシィッ!!--

 

瞬間、大洗女子学園の生徒達の空気が、一瞬にして凍りついた。その様子を見て6人は、

 

「(な、なんかすごい寒くなった感じが・・・・)」

 

「(向こう側、零下140度の世界になっている・・・・・)」

 

「(りほが見せてくれたけど本当にあの踊りをするのか?私だったら発狂しちゃうわよ)」

 

「(なんかすごい罪悪感を感じますわ・・・・少し見てみたいですけど)」

 

「(なんかこの勝負、たとえ勝っても人間として負けそう・・・・・)」

 

「(角谷さん・・・・平気な顔してるけど。ほかの皆さん目が死んでいるわ・・・・・)」

 

いまさらながらこの勝負を引き受けて後悔するエーデルワイスチーム。そして蝶野さんが地図を広げて、

 

「さあ、各チームの隊長は此方に来てー、所定の位置を教えるから」

 

 

そういい各車両の車長を呼び、そして定位置を伝える。そして所定の位置を聞いた後各自戦車に乗り込みその場へと向かう。そしてりほもチームのもとへ行こうとすると、

 

「ああ、伊庭ちゃん」

 

「ん?何ですか角谷さん?」

 

突如、角谷さんに呼び止められる。

 

「ん?そんなに警戒しなくてもいいよ~何なら『干し芋姉ちゃん』っと呼んでもいいよ?なんてたって伊庭ちゃんは20年後の後輩なんだからさ。気軽にね」

 

「い、いえ・・・・さすがにそれは・・・・・で、何の用ですか?」

 

「うん。試合の件なんだけどさ~こんな雰囲気になっちゃったけど歴史云々は気にしないで、遠慮しないで全力でおいでよ」

 

「鬼ですか・・・・あなたは?」

 

角谷さんの言葉にりほは顔を引きつってそう突っ込む。そしてりほもエーデルワイス号に乗り込み、ナポリに先ほど蝶野さんに教えられた場所を言うとナポリはうなずいてその場へと向かう。そして向かう中、

 

「ねえ、リホーシャ。なんか重い試合になっちゃいそうだね・・・・歴史とか関係なく」

 

「そうだねアーニャ・・・・・何か悪いことした気分・・・・・」

 

「そうですわね。あの時の生徒さんたちの顔を見てもどれだけ恥ずかしいかわかります・・・・・」

 

「yes。私もよ。あんなピンクのぴっちりスーツを着てあの踊りを踊ったらと思うと・・・・いえ、それだけじゃなくもしその踊りをネットでアップされたらと思うと・・・・」

 

「私だったら、一生部屋に引きこもっているわ・・・・・」

 

「私もだ。そうなるくらいなら三食おやつ抜かれてパスタもペペロンチーノだけになったほうがましだ」

 

「え~ペペロンチーノおいしいじゃん?何がまずいの?」

 

「ペペロンチーノはイタリアでは貧乏食だ。それと同時にパスタの腕を確かめる料理でもあるけどな…で、どうするりほ?母さんのためここはわざと負けるか?」

 

「う~ん・・・・・角谷さんは手加減無用って言っていたし、それにわざと負けたら相手に失礼だよ」

 

「そうね。私の母もいつも言っていたわ『試合は手を抜かず全力でやらないと相手にもそして頑張っている仲間たちにも失礼』ってね」

 

「へ~さすがハルカの母。いい言葉言うのね」

 

「私はてっきり『わに』だけだと思ってたわラウラ・トートちゃん」

 

「それ母さんに言ったら睨まれるわよリリー。というより誰がラウラ・トートよ。確かに似ているって黒森峰の皆に言われたけど。それにそれを言うならあんたもそうじゃないカーラ・ルクシック!」

 

「アハハ~♪そうね。確かに私コーラ好きだし、髪型もそうだしゴーグルもつけているから、その人に似ているかもね~」

 

ハルカの皮肉な言葉にリリーは笑顔で返す。確かに言われてみれば二人とも少し似ているような・・・・・そうりほが思うと、

 

『それでは………………試合、開始!!』

 

蝶野さんから試合開始の合図を知らせるアナウンスが聞こえる。

 

「いよいよですね」

 

「そうね私たちエーデルワイスの初陣。そして私たちの歴史が・・・・・」

 

「今始まろうとしている・・・・」

 

と、そういうとりほは、

 

「みんな行くよ」

 

と、いうと5人はうなずき、

 

『バディーゴー!!』

 

6人一斉にいうと、エーデルワイス号が相手の戦車を撃破するために向かわんとして、勢い良く飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          こうして彼女たちエーデルワイスチームの歴史が始まるのであった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来組、初試合頑張ります!

ついに時空を超えた練習試合が始まった。そしてりほたちエーデルワイスチームは、見つかりにくい山林に入った後、停車し、りほは車内で地図を広げて見ていた。

 

「ついに始まったのはいいけど・・・・相手は5輌。対して私たちはたったの一輌・・・」

 

「フラッグ戦なら一発逆転だけど相手は伝説の大洗。この時代でまだ無名とはいえ油断はできない・・・・・・」

 

「ねえ、りほさん。相手がどう動くかわかります?」

 

ジャスミンがそう聞くと、りほは地図を見て、

 

「おそらくお母さんのことだから偵察を出すと思う。そして偵察に来るのは八九式・・・・」

 

「アヒルさんチームね。あのチームは私たちの時代でも有名だから」

 

「そうねサンダースでも偵察部隊のエキスパートとか言われているわね。カタログスペックを超えたチームなんて呼ばれていたわ」

 

「そう言えば乗員って元バレー部だったんだよねリホーシャ?」

 

「うん。車長の磯部さんに砲手の佐々木さん。操縦手の川西さんに通信手の近藤さん。だよ。小さいころよく遊びに来てバレーとか教えてくれたっけな・・・・・」

 

「ああ、その四人なら私もテレビで知っているわ。オリンピックのバレー大会で優勝した日本代表の選手の四人がその人たちだったわね。確か『二代目東洋の魔女』なんて呼ばれてたっけ?」

 

「へ~私テレビあんまり見ないからわかんなかったわ」

 

「テレビくらい見なさいよ・・・・・そう言えば私たちの住んでいる小屋にもそろそろテレビが欲しいわね。ラジオだけだとなんか物足りないわ」

 

「無理言わないでよ。家を貸してもらえるだけでも感謝しないと・・・・て、それより今は試合!」

 

と、リリーが突っ込みを入れた瞬間、

 

「・・・・・・・・」

 

急にアーニャの顔つきが変わる。

 

「どうしたのアーニャ?」

 

「しっ!・・・・・・何かが来るわ」

 

と指を立ててそういうと、みんなは聞き耳を立てる。すると微かに履帯の音が聞こえる。

 

「・・・・来た。相手の斥候ね。それよりアーニャよく聞こえたわね」

 

「雪国育ちだからね。それに私、人一倍に耳がいいの。さて誰が来たんだろ?」

 

「ちょっと見てくる」

 

そう言い、りほはキューポラから顔を出して双眼鏡であたりを見ると、二時の方角の林の中を走る戦車が見えた。

 

「いた・・・・やっぱり八九式。向こうは私たちに気付いていないわね」

 

「どうします?撃破しますか?」

 

「距離は・・・・・・500メートル十分、射程内だし、十分八九式の装甲をぶち抜けるけど。ジャスミン」

 

「わかりました。砲撃します」

 

「ジャスミン。砲弾は前の練習で三発使ったから残り六発しかないから、外さないでよ?」

 

砲弾を装填するリリーの言葉にジャスミンは頷き、

 

「任せてちょうだいな。こう見えてわたくし聖グロのチャーチルの砲手をしていたので、必ずや仕留めて見せます」

 

力強くそう言いりほは頷くとジャスミンは照準を八九式に合わせる。この時代に放り出されてから練習以外で初めて相手戦車に撃つことにジャスミンは少し緊張し、自身の心臓の鼓動が聞こえるのがわかる。砲弾は数発。一発も無駄にはできない。

緊張の中、ジャスミンはかつて母の盟友であり砲手の指導をしてくれたアッサムの言葉を思い出す

 

『いいジャスミン。砲手たるもの常に冷静さを忘れてはいけないわ。そして相手を狙い撃つ時の極意は・・・・・・』

 

「・・・・・正しい姿勢、正しい照準・・・・そして」

 

と、そう言い指を引き金に引っ掛け、

 

「月夜に霜の落ちる如く引き金を引く・・・・・」

 

と、そう言いながらジャスミンはゆっくりと引き金を引く。その瞬間エーデルワイス号の主砲である88ミリ砲から砲弾が火を噴きながら飛び出、そして500メートル先にある八九式のエンジンルームに命中する。そして当たった八九式は黒煙を出して止まり、そして砲塔の所から白旗が上がる

 

《八九式、Bチーム、行動不能!》

 

蝶野さんからの通信が、全車両に入る。その知らせを聞いたりほたちは、

 

「やりました!初撃破!」

 

「やったわねジャスミン!」

 

「ハラショー!おめでと!」

 

そう言いりほ達6人はハイタッチする。この時代に来てそして初めてチームを組んでからの初撃破。その初撃破に皆は喜んだ。

 

「よし!今日は赤飯ね!あ、大人のぶどうジュースも用意する?」

 

「何言っているのここはノンアルコールビールでしょ?」

 

「違うでしょ!ビッグサイズのコーラでしょ!ね、アーニャ!」

 

「いいえ・・・・ここはノンアルコールウォッカを・・・・・てそうじゃない!まだ一輌倒しただけ!お祝いは試合が終わった後!」

 

「「「ああ、そうか・・・・・」」」

 

まだ試合中だということ思い出し、ハルカ、リリー、ナポリがそう言う。そしてアーニャが、

 

「で、この後どうするリホーシャ」

 

「うん。たぶん今のが斥候だとして残りの車両はどこかで待ち伏せているかもね」

 

「そうかもね。向こうには三突がいるし、どこかで狙いすましているのは自明の理だな・・・で広いところに出るの?」

 

「うん。普通ならその方が手なんだけど・・・・・その入り口で」

 

「待ち伏せて倒す・・・・なるほど定石ね。となるとこのまま整備された道を行くのは危険ね。ここは・・・森の中をショートカットするしかないわ」

 

「そうだね・・・・ナポリ、エンジン音を立てないように静かに走れる?」

 

「難しい注文だけどやってみる。で、ルートは?」

 

「東の方向の森の向こうに射撃演習場の広場があるから、そこに行きましょ」

 

「もし敵車両に出会ったらレッドファイトしていい?」

 

「どこの赤い通り魔なの、ジャスミン?まあいいわ。フラッグ車がどこにいるかわからない今、少しでも敵をやっつけたいし。でも外さないようにね」

 

「わかってますは走行中、紅茶をこぼさないのと同じに慎重にしますわ」

 

「そう言えばジャスミン。貴方、聖グロの子なんでしょ?なんで紅茶持っていないの?」

 

「ティーカップを小屋に置き忘れてしまいました・・・・・このジャスミン一生の不覚」

 

「大丈夫?ウーロン茶なら持っているけど?」

 

「大丈夫です。別に紅茶のまないと死んじゃうとかそういう設定ではないので?」

 

「え?そうだったんだ聖グロの人って一日中飲んでいるから、飲まないと禁断症状が出たりとか衰弱して死んじゃうのかと思った・・・・もしくは紅茶を炙っていたりとか」

 

「麻薬中毒者ではありませんのよリリー。というより炙るって何ですか。私の母校を何だと思っているのですか?#」

 

いつもにこやかなジャスミンが珍しく青筋を立ててそういう(顔は笑っても目は笑っていない)。だがすぐに軽い溜息をついた後、何も言わなくなり、そしてりほたちは相手にばれないよう音を立てずに森の中を走りだすのであった。するとアーニャは、

 

「ねえ、りほ。その開けた場所・・・・・射撃演習場広場に行くルートなんだけど?」

 

「なに?」

 

「地図を見る限り、橋を渡んないと無理だよ?」

 

「浅瀬を通るルートもあるけど、そこは試合場外に入っちゃうし・・・・」

 

「正面突破するか?」

 

「ナポリ。それだと橋を渡ろうとした瞬間に狙撃されて白旗よ。しかも橋は足場が悪いからなおさらね」

 

「確かに・・・・・・ん?」

 

戦車を操縦するナポリが急に何かに気付き、戦車を止める。

 

「どうしたのナポリ?」

 

「あそこ11時、2時の方角に敵戦車発見」

 

ナポリがそう言いりほは目を細めてみると木々の向こうに橋が見えその前の11時方向の茂みの方にM3、2時方向の林の茂みに砲塔がにょきっと伸びているのが見えた。

 

「茂みの高さから考えて2時方向に待ち伏せているのは三突・・・・とすると」

 

そう言い、りほは地図を見て、今三突とM3がいる位置に丸をする。

 

「丁度、橋を通る道の左右にいる・・・・とすると残りの二両は正面と後ろに待ち伏せているわね」

 

「なるほど、橋を渡ろうとした瞬間左右前後から一斉射撃をして仕留める。まるでゲリラ戦法ね。ま、私たちの時代の黒森峰もよく使う手だからね」

 

「アンツィオも使うぞ?CVで包囲した後セモベンテやP40で仕留めていた」

 

「プラウダもそうよ。と、いうよりやり方が定石すぎるけどいい案ね・・・・・・でも」

 

「うん私たちには通用しない。相手の先方がわかったらこっちのもの・・・・あとはフラッグ車が前か後ろのどこにいるか・・・・・・・・・ん?どうしたのりほ?」

 

リリーがそう言うとりほはじっと道の後ろ側の咆哮にある茂みを見ていた。

 

「・・・・・後ろにいる」

 

「「「え?」」」」

 

「お母さん。後ろに待ち伏せている・・・・」

 

「なぜわかるの?」

 

「うまく言えないけど・・・・・何となく感じるの。あそこにお母さんがいる気がするのよ」

 

と、りほはそう言う。りほは感じていた。後ろの方角に母親であるみほが乗るⅣ号戦車が待ち伏せていることに・・・・・・

 

「なるほど、血筋ってわけね。やっぱり血は争えないってことかしら。まあいいわ。この試合はフラッグ戦。フラッグ車を倒せば勝利なんだし」

 

「でもフラッグ車を仕留める前にほかの車両に水差されるのも問題ですわよね?」

 

「なら。まず火力の大きいM3と三突ところから仕留める?」

 

「38tは?」

 

「大丈夫よ。38tの37ミリ砲なんて豆鉄砲よ。急接近されない限りそう簡単にはやられはしないわ」

 

皆がそう言いうとりほは頷き、

 

「リリー、ハルカ。装填速度お願い」

 

「OK。こういう時のためにハルカと連続装填の息合わせの練習したんだから」

 

「任せてりほ。このエーデルワイスがただの戦車じゃないことをここで証明するわ!」

 

「砲撃のことは任せてください。必ず無駄弾を出さずに仕留めて見せますわ」

 

「操縦については任せろ。どんな無茶な運転だって成功して見せる」

 

「通信手の私には今回、出番はないけど、機銃を撃ちまくって弾幕を張って相手が撃つのを妨害してあげるわ」

 

5人がそう言い、そしてりほは、

 

「みんな・・・・・」

 

「で、作戦名はどうするんだ?」

 

ナポリが訊くとりほは少し考え、そして、

 

「作戦名は・・・・・・・・・一乗寺下り松作戦です!」

 

そう言うのであった。果たしてりほの言った一乗寺下り松作戦とは?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一乗寺下り松作戦です!

一方、そのころみほたちは橋のそばの茂みでエーデルワイスチームを待ち伏せていた。みほはエーデルワイスチームが広いところに出ることを予想し、左右にM3と三突。橋の正面に38t、そしてその三つの攻撃を躱された時を考え、後ろから攻撃できるように待機していたのだ。しかし・・・・・

 

「エーデルワイスチーム現れませんね?」

 

砲手である華がそう言う。試合が始まって一時間が経とうとしていた。

 

「磯部さんたちが撃破されてから、もう一時間・・・・・」

 

「どこに行ったんだろう?まさかまだ森の中にいるのかな?」

 

「もしかして違うルートに行ったんじゃないか?」

 

沙織と麻子がそう聞くと秋山が、

 

「いいえ、エーデルワイスチームのいた地点から森を抜けて広場に行くには橋を渡らなければ無理です。ほかにルートがあったとしても試合場外なので出ることは反則行為になりますし・・・・・」

 

「じゃあ、まだこの森の中に・・・でもどこに?・・・・まさか!?」

 

みほが何かに気付きそう呟いた瞬間、三突が隠れている森の中から爆音と黒煙が舞い上がる。そして、

 

『Cチーム・Ⅲ号突撃砲、行動不能!!』

 

と、アナウンスが聞こえるのであった。そしてその瞬間、三突が隠れていた茂みから五式中戦車が現れるのであった。

 

 

 

 

 

 

Cチーム

 

「う~む。敵はまだ来ないな・・・・・・」

 

エーデルワイスチームを待ち伏せている三突の歴女チームはひたすら相手が出てくるのを待った。しかし今の季節は夏。湿気と熱さで戦車の中は蒸し風呂のように蒸し暑かった。

 

「熱いぜよ・・・・まるでサウナにいる気分」

 

「戦国時代だと蒸し風呂は当たり前だったんだがな?」

 

「それ今、関係あるか左衛門佐?それよりも本当に暑いな」

 

そう言い車長であるエルヴィンはハッチをあけて外に顔を出し、帽子を脱ぎ汗をぬぐう。すると風が心地よく吹く。

 

「ふぅ~風が気持ちいいな・・・・・」

 

「そうですね~今の熱い時期、こういう風は気持ちがとてもいいですね~」

 

「そうだな・・・・・それよりもなかなか来ないな?」

 

「誰かを待っているんですか?」

 

「何って、決まっているじゃないか。エーデルワイスチームだよ。何を言っているんだカエサルは?」

 

「ん?エルヴィン。何か言ったか?」

 

すると、隣のハッチが開きそこから歴女チームのリーダーであるカエサルが出てくる。それを見たエルヴィンはきょとんとした顔をすると、

 

「え?だってお前、さっき『誰を待っているんだ?』って聞いたじゃないか?」

 

「何を言っているんだエルヴィン。私はさっきまで中にいたんだぞ?それでさっきからお前が誰かとなにか話してたから変に思って顔を出したんだが?」

 

「・・・・・・え?じゃあ今、私と話をしていたのは・・・・・・・・」

 

カエサルの言葉にエルヴィンは驚く。すると背後から何かの気配を感じ、後ろを見ると、

 

「どうも~♪」

 

そこには砲身をこちらに向け五式戦車エーデルワイス号がいてキューポラからりほがにっこり手を振っていた。

 

「「っ!?」」

 

敵がいつの間にか目の目の前・・・・・いや真後ろにいることに気が付かなかったことに驚き、二人は車内に急いで入ると、

 

「左衛門佐。敵が真後ろにいる!すぐに旋回!」

 

慌ててそういうが、

 

「気付いた時には・・・・・・もう遅いわ」

 

りほがそう言った瞬間、エーデルワイスの88ミリ砲が火を噴き三突は至近距離でその砲撃をまともにくらい、撃破される。

 

『Cチーム・Ⅲ号突撃砲、行動不能!!』

 

と、蝶野さんのアナウンスが聞こえ、りほは、

 

「よし!次はM3!ナポリ、そのまま前進。アーニャ!機銃を撃って炙りだして!」

 

「わかった!」

 

「了解!7・7ミリ弾の雨を降らせてあげるわ!」

 

そう言いエーデルワイス号は前進し、茂みから出る。そしてアーニャが機銃をM3が隠れている方の茂みに向かって機銃を発射する。すると、

 

『『『キャアアアアアアアッ!!?』』』

 

何やら悲鳴が聞こえたかと思うと、M3リーが茂みから飛び出してきた。突然の機銃の攻撃に驚いて飛び出したんだろう。

 

「出てきた。ジャスミン!主砲、発射!」

 

「はい!」

 

りほの言葉にジャスミンは頷き引き金を引く。そして放たれた88ミリの砲弾はM3の正面装甲に命中し、爆炎が上がると白旗が上がった。

 

「よし、残りは38tとⅣ号・・・・・・・」

 

りほはあたりを見ると橋の向こうに38tが突然現れ、そして橋を渡る直前に発砲するのだが、38tの37ミリ砲弾はエーデルワイスには当たらず別の所に飛んでいく

 

「ありゃ?あの距離で外した?」

 

「え?そんな馬鹿な。あの距離で?」

 

「砲手はノーコンなの?」

 

絶対に命中できる距離から外した38tを見てナポリとハルカとアーニャがそう言う。そしてお返しとばかりに38tに向かって砲撃し五式から放たれた88ミリ砲弾で倒され白旗が上がるそれを見たりほが、

 

「(よかった・・・・あの38tの砲手。きっと桃さんだ。杏さんだったらきっとやられていた・・・・)」

 

りほが少し汗を流しそう言う。

 

「あとはフラッグ車のⅣ号だけね」

 

「そうね。なんかこの試合フラッグ戦というより殲滅戦ぽくなっちゃたわね?」

 

「まあ、それが作戦だからな。相手を一輌づつ仕留める。まるで宮本武蔵の一乗寺下り松の決闘を連想させるわ」

 

「うん・・・・・・・っ!?ナポリ!急旋回!!」

 

「え!?わ、わかった!」

 

ナポリは急いで急旋回すると急に金属が激しくぶつかるような甲高い音と車内が大きく揺れだす。

 

『うわぁ!?』

 

その衝撃に6人は思わず声を出す。すると茂みからⅣ号戦車が現れた。

 

「Ⅳ号!?やっぱり、りほの言う通り後ろに隠れていたのね!」

 

「危なかった・・・・急旋回してなかったらマフラーごと後面のエンジンやられてゲームオーバーだったよ・・・・」

 

ナポリがそう言う。幸いにもⅣ号の放った砲弾はナポリが急旋回することにより、昼飯角度(又はティーガーフェーベル)の側面に当たり弾いたのだ。

 

「・・・・・・」

 

りほはⅣ号をじっと見る。あのⅣ号には自分の母が乗る戦車。Aチーム。のちのアンコウチーム。一筋縄ではいかないことにりほは少し焦りを感じていた。

 

「残りは伝説のアンコウチーム。通常のやり方じゃ、仕留められない・・・・・みんな。ちょっと、イチかバチかなんだけど提案があるの」

 

「なになに?」

 

皆がりほの言葉に耳を傾け。りほ自身が考えた戦法をみんなに話す。

 

「なるほど・・それなら、何とか・・・・・でも賭けになるわよリホーシャ?」

 

「大丈夫。みんなにチームプレーがあれば、何とか」

 

「そっ。まあ私はそう言う賭け事、一番好きだわ。リリーシャ、ハルーシャ。装填の方は?」

 

「大丈夫、任せて。そのために息合わせしたんだから」

 

「そうそうオートメラーラの127ミリまでとはいかないけど、何とかやって見せるわ。ジャスミン。弾はあと2発しかないけど大丈夫?」

 

「行進間射撃でも可能だけど0・5秒だけでも停車時間がもらえれば最後の一発で仕留めて見せます」

 

「運転の方は任せろ履帯がブチ切れないように派手にしてあげるわ」

 

5人の言葉にりほは頷き、そしてりほは再び、Ⅳ号を見るとインカムで、

 

「前進!!」

 

そう指示すると、エーデルワイス号はⅣ号に向かって前進するのであった。そしてⅣ号が砲弾を発射するが、エーデルワイス号の直ぐ横に被弾し、その衝撃でエーデルワイス号の車体が激しく揺れる。

 

「撃てっ!!」

 

りほがそう言い砲弾はⅣ号の側面を掠り、そして若干だがⅣ号の動きにスキができる。それを見たりほは、

 

「ナポリ!!」

 

りほがそう言うとナポリが頷き、操縦稈を引くのと同時に急ブレーキをかける。するとエーデルワイス号の車体は大きく曲がり、ドリフト状態になりⅣ号の側面に回りこもうとするとⅣ号もすかさず砲塔を旋回する。そしてエーデルワイスの砲身とⅣ号の砲身が互いの車体に合わせた瞬間、二つの大砲から爆音と大きな黒煙が舞い上がりそして何かが爆発するような轟音と閃光が光る。そして発射時に出た爆炎が晴れるとそこにはⅣ号の砲撃で転輪が吹き飛ばされたエーデルワイス号と、砲塔の前面装甲に砲弾が命中し、白旗の上がったⅣ号の姿があった。

 

『フラッグ車、Ⅳ号Ⅾ型、走行不能!よってこの試合、エーデルワイスチームの勝利!』

 

蝶野さんからのアナウンスが鳴り、試合が終了した。エーデルワイスチームにとっては初試合のこの試合の結果は、エーデルワイスチームの初勝利となるのであった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試合終了の後です!

初の練習試合に勝利したりほたち。

 

「やったね!私たち勝ったわ!」

 

「ハラショー!やったわね!ナイス装填だったわリリー!ハルカ!!」

 

「ハルカが次の弾丸用意してくれたから、早くできたのよ」

 

「いいえ私はそれほど、ジャスミンの射撃もよかったわ」

 

「いいえ。私はただ集中して引き金を引いただけ。あの勝利はナポリの運転のおかげよ。おかげで射ちやすかったわ」

 

「いや。りほの指示とみんなのチームワークの勝利じゃないか?なあ、りほ」

 

そう言いナポリはりほの方へ顔を向ける。

 

「・・・・・・・」

 

だが、りほは複雑そうな顔をしていた。

 

「どうしたのりほ?試合に勝ってうれしくないの?」

 

「ううん。違うのアーニャ。試合に勝ったのは嬉しいの。でも私が勝ちたかったのは・・・・」

 

そう言い、りほはあるところを見て、皆もその方向を見るとⅣ号戦車があった。それを見てみんなは、りほの言いたいことを理解する。

 

「なるほど・・・・リホーシャのマーマね」

 

「なるほど…その気持ちわからなくもないわね」

 

「確かに勝つならこの時代じゃなく、元の時代のお母さんに勝ちたいもんね~」

 

「なるほど。そのお気持ちわかりますわ」

 

皆はうんうんと頷き、そしてハルカが、

 

「ま、りほ。今は私たちの勝利を喜ぼうじゃないの。だからそんなしんみりした顔をしないで。リーダには笑顔でいてほしいからね」

 

「ハルカ・・・・・ありがとう」

 

ハルカに笑顔でそう言われるとりほは笑顔でそう答える。するとナポリが、

 

「よぉーし!今日は宴会だ!自慢のパスタ料理を振舞おう!」

 

「何っているのよナポリ。ここはボルシチとビーフストロガノフに決まっているじゃない。タマネギと牛肉とサワークリームの相性は格別よ!」

 

「いや、いやここはバーベキューでしょ。後コーラもね」

 

「そこはハンバーグでしょ?。ハンバーグな嫌いな子はいないでしょ?」

 

「ではわたくしはデザートでも作りましょう。食後のデザートは欠かせませんからね」

 

と、皆は夕飯の料理、しかも初勝利のためそれを祝う料理は何にするか話し合っていた。するとりほは軽く手を挙げて、

 

「あの・・・・みんなで食べるにはやっぱりお鍋とかにしない?」

 

と、そういうとみんなはりほの方をじっと見る、そして、

 

『それだぁ!!』

 

と指をさしてそう言うのだった。その姿はカバさんチームの歴女たちと全く同じな動きで、それを見たりほは苦笑するのであった。するとハルカはエーデルワイスを見て、

 

「それよりも左転輪派手に壊れたな……これ修理するにしてもいくらかかるんだろう?」

 

ナポリが少しため息をつく。そして同じくハルカも、

 

「はぁ・・・・勝ったのはいいけど砲弾は今の試合ですっからかんになったし、残りの金も生活できるくらいの金しか残っていないからな~エンジンの調整も考えてもこれは数か月以上かかりそうだな」

 

頭を掻きため息交じりにそう言うハルカ。戦車の整備し志望で戦車の整備を人一倍にやっている彼女が言うのだからかなり深刻な状態なのだろう。ナポリの方もみると同じく深いため息をついていた

 

「あ…そうでしたわね。どうしましょう」

 

「勝ったのはいいけどね~また、タイムスリップする前の状態に・・・・」

 

「どうしよう・・・・・」

 

と、6人は困った顔でそういうと、インカムから蝶野さんの声が聞こえ、『回収班を派遣するので、行動不能になった戦車はその場に置いて、戻ってくるように』との通信が入る。

 

「戻るって・・・・・校舎まで?」

 

「まあ、私たち離れているけど。せめて戦車を回収する車があるなら私たちも回収してほしいわ」

 

「それは同感。ここバスとかタクシーないの?」

 

「そんなものあるわけないでしょ?」

 

そう言いながら勝者であるはずの6人はため息をつきながら校舎へととぼとぼと歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、お疲れ様。始めてから二日目であれだけ戦えればグッジョブベリーナイスよ!」

 

グッジョブポーズでそういう蝶野さん。それを見た6人は、

 

「(出た・・・・あのポーズ)」

 

「(この時代からやっていたのね・・・・・あのおばさん)」

 

「(あれ、審判の人たちの一発芸によく使われるのよね~)」

 

「(あれ・・・・私たちの時代だとお母さんの世代の人たちの忘年会の一発芸になっているんだよね~)」

 

「(そういえば、まほ伯母さんが酒で酔っ払ったときよくやっていたっけな・・・・)」

 

「(ローズヒップお姉様。前にお酒を飲みすぎてそれやって蝶野さんにパイルドライバーを食らわされたっけ・・・・)」

 

と、6人はチベットスナギツネみたいな表情でそう思っていた。蝶野さんは今度は6人の方へ顔を向けると、

 

「エーデルワイスチームの皆も、今日はありがとう。中々良い試合を見させてもらったわ」

 

「いえいえ、此方こそ。いい勉強をさせてもらいました(歴史的な意味で)」

 

蝶野さんの言葉にりほは微笑んでそう返す。そしてその後蝶野さんが、足回りが壊れた五式中戦車ことエーデルワイス号は学園の自動車部が無償で修理するといった。無論修理代とか部品とかは連盟が無料で提供してくれるらしい。

その話を聞いて、ハルカとナポリ、特にハルカは嬉し涙で泣いていた。その姿にりほたちは若干ひいてはいたが内心では修理が無料でできると聞いて安心していた。

そんな中で杏がふと、声を上げた。

 

「さてと………………んじゃあ、ある程度休憩は終わったことだし、そろそろ罰ゲーム始めよっか」

 

『『『『『『『『『『……………』』』』』』』』』

 

その瞬間、その場の空気が一瞬にして凍りついた。ああ、そうだ。試合に勝って喜んでたりほたちは大洗女子が負けたらアンコウ踊りをするという罰が待っていたことをすっかり忘れていた。すると角谷さんはにっこりと笑い、

 

「まあ、皆も頑張ったけど、約束は約束だもんね~」

 

その言葉に、メンバーから放たれる空気が重さを増し、全員が顔を青ざめる。その姿を見た六人は円陣を組み、

 

「・・・・どうするリホーシャ。すっかり忘れていたけど」

 

「私的には、勝負にも人間としても勝ちたい・・・・・それにお母さんがあのぴっちりピンクスーツで踊る姿。私は見たくないわ」

 

「そうね。さすがにあれを踊らせるのは。後味悪いわね」

 

「そうね。それに歴史云々関係なく。それはまずいわね」

 

「なら決まりだね」

 

「そうね」

 

そう言い六人は頷くと、りほが杏のもとに行き、

 

「あ、あの・・・・・角谷さん」

 

「ん?何、伊庭ちゃん?」

 

「あの・・・・・アンコウ踊りの罰ゲームはしなくていいですよ?もともと無理にこの試合を引き受けてくれた上に試合に負けたぐらいで罰ゲームとしてアンコウ踊りさせるのは、流石にかわいそうですよ」

 

「ほ~、結構優しいんだねぇ」

 

「別にそうでもありません。強いて言えば、先輩に対する礼儀と勝者の願いというやつです。ですからアンコウ踊りの件は無しにしてもらえませんか?」

 

りほがそう言うと杏は干し芋をほおばりながらりほの眼を見る。そして、

 

「そっか・・・・まあ勝者の頼みなら仕方ないね。というわけで罰ゲームの話はナシって事になりました~」

 

と、そういうと大洗女子のメンバー一同は安心したように息をつく。そして心の中ではアンコウ踊りの罰ゲームを無しにしてくれたりほたちに感謝をするのであった。

 

「それじゃあ解散!」

 

『『『『『お疲れ様でした!!』』』』』

 

その号令と共に、生徒達は皆、戦車格納庫から出るのであった。

 

「あ~終わったね。これから宴会に必要な食材でも買いに行く?」

 

「賛成。じゃああたしコーラ買うよ」

 

「リリーシャは本当にコーラが好きだね~」

 

「いいじゃん。コーラおいしいんだし」

 

「でも。あまり飲みすぎると体に悪いからほどほどにね?」

 

「わかっているよりほ。ちゃんとゼロのやつにするから」

 

「いや、そういう問題じゃなくて・・・・・」

 

と、皆がそう言い、その場を後にしようとすると杏さんが、

 

「あ~伊庭ちゃん達。ちょっと待った」

 

「ん?何ですか角谷さん?」

 

急に角谷さんに呼び止められる。

 

「ちょっと話がしたいんだけど、生徒会室まで来てくれる?」

 

「え?・・・・・一体、なんで?」

 

「訳はちゃんと説明するから。とりあえず来てくれるかな?」

 

と、そう言われ、りほがリリーたちを見ると皆は頷き、

 

「わかりました」

 

と答え、りほたちは生徒会三人と蝶さんとともに生徒会室へと向かうのであった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決断です!

この世で最も貴重な瞬間・・・・それは決断の時である。人は人生での分岐点にぶつかったとき、まずその決断という試練を越えなければならない。

それは別の時代から来た6人の少女たちもまた同じであった・・・・・

練習試合が終わった後エーデルワイスチームは急遽、生徒会の会長である角谷杏に生徒会へ来るよう言われて6人は生徒会室へ向かい、そして部屋で待っていた。

 

「なんだろうな~用って。私、汗だくだから風呂入りたい」

 

「そうね~ハルカが作ってくれたドラム缶風呂。早く入りたいわ~」

 

「わたくしも同じ意見ですわ。それにしてもハルカさんすごいです。ドラム缶でお風呂を作ってしまうなんて」

 

「大したことないわよ。ただ単にドラム缶に水を入れて焚火で沸かしただけなんだから」

 

「しかも?底が熱くならないように五右衛門風呂風にしてでしょ?」

 

「正解。小さいころ、よく母さんとキャンプに行ったときに母さんに教わったのよ」

 

「へ~お母さん。キャンプの心得あるんだ」

 

「うん。なんでもお母さんの知り合いの友達がそう言うサバイバル術に詳しくて教えてくれたみたいよ?」

 

「へ~」

 

と、6人はそんな話をしていると、ドアが開き、

 

「やあやあ伊庭ちゃん達待たせてごめんね~」

 

と、角谷さんたちが入ってくる。そして角谷生徒会三人衆と蝶野さんはソファーに座り、

 

「今日は練習試合、引き受けてくれてありがとね」

 

「いいえ。私たちもいい練習になりました」

 

と、そう言うと角谷さんは。

 

「・・・・・で、6人とも。この時代でそうするか決めた?」

 

「やはりその質問をしますか・・・・・」

 

「うん。20年・・・・・言葉や文字にするとたったの二文字だけど。実際の年数はかなり長い・・・・君たちは何らかの原因でこの時代に来てしまい帰り方もわからないし、ましてはこの時代にはタイムマシンなんてないから君たちをもとの時代に返すこともできない。となると帰る方法が見つかるまでこの時代にすまなきゃいけない。しかしこのお時代には君たちは生まれていない。だからバイトをするにしても戸籍がないとできない。だから・・・・・」

 

「戦車道を取って、角谷さんに協力する代わりにこちらの衣食住の生活を保障する・・・・・と?」

 

「そ、察しがいいわね、伊庭ちゃん」

 

「でも、そんなことできるの?」

 

「まあ、なんとかなるでしょ?それに無名で、どこの学校にも属さない戦車チームより、大洗女子学園の学生ということなら、戦車の燃料や砲弾は連盟側がやってくれるらしいし」

 

「え?本当なんですか蝶野さん?」

 

「ええ、さっき理事長に連絡を取って訊いたら。『異例な事だが、ほんのわずかだが、必要最低限の補給ぐらいなら何とかする』って?」

 

「その人、信じたんですか?私たちが未来から来たっていうことを?」

 

「それは言っていないわ。ただ、どこの学校にも属さないクラブチームがいるということで話したら、OKしてくれたわ」

 

「で、でも学校の方は・・・・・」

 

「それなら小山がいろいろと書類のやりくりしてくれたよ。後は君たちの返答次第だけだよ」

 

「書類のあれこれするのは大変だったけどね・・・・・」

 

角谷さんの言葉に小山さんが乾いた笑いをする。それを見た6人は、

 

「「「「「「(何をやったんだこの人たち)!!!???」」」」」」

 

と、疑問の念を抱いた。そしてりほは自分のいた時代の学園の都市伝説を思い出す。自分のいた時代の大洗女子学園の都市伝説はいろいろとある。例えば夜中学校をうろつく座敷童軍団に旧部室等の幽霊(十中八九原因は私たち)、その他、学校に突如現れるハサミを手にした妖怪だとか。一番人気の都市伝説は角谷さん世代の生徒会が学園長よりもえらく、学校を牛耳って書類を偽造したりと都合のいいことをしているというものだ。

 

「(もしかして柚子さんにまつわる、例の都市伝説て、事実なんじゃ・・・・・)」

 

りほは苦笑しながら、そう思う。口に出したところではあったがそれはやめた方がいいと判断した。

 

「それで、どうするの?」

 

角谷さんが干し芋をほおばってそう訊くと、私たちは小声で話し合った。

 

「どうします。りほ?」

 

「向こうの会長さん。廃校回避のために私たちを利用するのはすぐにわかるけど・・・・」

 

「賞金付きの試合が存在しない以上・・・・・あの会長の提案に乗るのはしゃくだけれど。ここは乗るしかないわね」

 

「そうね。砲弾が無くなった以上、いつ補充できるか・・・・それよりも資金が足りないわ」

 

「世知辛いわね・・・・・まあ、私はリホーシャの判断に任せるわ。何か危ないことになったら私たちが全力でサポートするから・・・・」

 

「みんな・・・・ありがとう」

 

りほは頷くと、

 

「角谷さん。私たちはあなたたちの要求をのみます。私たちエーデルワイスチームは大洗女子学園戦車道チームに協力します・・・・ただし。条件があります」

 

「条件?」

 

「はい。まず一つ確認なんですが本当に私たちが協力したら衣食住また戦車の燃料弾薬などの保証はしてくれるんですよね?口約束は約束ではないって言って反故にしないですよね?」

 

「ああ、約束するよ。何なら誓約書も作るよ・・・・で、もう一つは?」

 

「はい。もう一つは。私たちの名前をなるべく公表しないでください」

 

「え?」

 

予想外の言葉に角谷らはきょとんとした顔をし、りほの後ろにいたリリーたちは頷く。

 

「それまたどうしてかしら?あなたたち有名になりたくないの?」

 

蝶野さんが聞くとりほは、

 

「確かに私たちエーデルワイスは戦車道で名を残したいです。しかし。私たちは本来この時代には存在しないイレギュラーです。その存在がいるはずのない時代で活躍し名を残したら、歴史が狂います。現時点でいるだけでも危険なのに。それで新聞や週刊誌なんかに乗せられたら・・・・・」

 

「確かに、歴史が変わっちゃうね・・・・・・」

 

「はい。もしかしたらそれで時は歴史が狂うのを恐れて元の時代に返してくれると思いますが。逆に帰れたとしても・・・・」

 

「自分といた時代とは違う時代になっちゃうってわけか」

 

「そうです河島さん。ですから試合での私たちの名前と写真と記録は公表しないでほしいんです。なるべく元の時代になるように・・・・・」

 

「そっか・・・・まあ伊庭ちゃん達が心配するのも無理ないね。私も同じ立場だったらそうするよ。分かったよ、なるべく君たちのことは表ざたにしないよ。完全にとは約束できないけどなるべくそうするよ。それと君たちが元の時代に帰れる方法も探してあげるよ」

 

「ありがとうございます角谷さん」

 

「いいよ。いいよ互いに協力しないとね・・・・・でさ、一つ訊いてもいい伊庭ちゃん?」

 

「何でしょうか?」

 

「君さ・・・・・もしかして西住ちゃんの娘?」

 

「っ!?」

 

急にそう言われ驚くりほ。それは角谷のそばにいた河島さんたちも同じであった。

 

「だってさ。君の顔。西住ちゃんにそっくりだし、仕草や動きも同じだった。それに伊庭ちゃん、自分の名を名乗るとき西住の名を名乗りそうになった。しかも20年後から来た人でうちの学校出身。だとするともしかしたら西住ちゃんの娘かな?って思って」

 

『す、鋭い・・・・』

 

その場にいた6人は冷や汗をかく。するとりほは軽くため息をつき、

 

「・・・・・やっぱり。この時代の干し芋お姉ちゃん・・・・・いや角谷お姉さんも鋭いですね。敵いませんよ」

 

隠し通せないことに、りほは降参とばかり両手を挙げて苦笑して言う。

 

「やっぱり君は西住ちゃんの・・・・・」

 

「はい。私は理由あって伊庭の名を借りて名乗りましたが。本名は西住りほ。現在在校している西住みほの娘であり西住流の一人です。言っておきますが角谷さん・・・・・」

 

「わかっているよ。みんなには言わないよ私たちだけの秘密にするから」

 

「感謝します。角谷さん、これからよろしくお願いします」

 

「うん、此方こそよろしく頼むよ……………ああ、それと今日は疲れたでしょ?学園の大浴場使っていいからね~」

 

角谷さんがにっこり笑うと、6人は嬉しそうに頭を下げて部屋を出るのであった。そして残された角谷らは、

 

「会長。彼女たちが協力してくれてよかったですね」

 

「うん。これで一先ず、学園の未来も安心したものになる可能性が開けてきたかな~」

 

「でも驚きです。まさか伊庭さんが西住さんの娘だったなんて・・・・・」

 

「まあ私も最初はまさかかな?て思っていたけどね~で、小山?」

 

「はい。西住・・・・・いいえ伊庭さんたちの書類。早速作ります」

 

「頼むね~それと隠密にね。彼女たちが未来から来たことを知られないように」

 

「はい」

 

そう話し合う生徒会たちであったが、その会話を聞いていた者がいた。

 

「(生徒会のこと取材しようと来てみたけど。これはすごい話を聞きました!スクープ!大スクープです!!)」

 

と、生徒会室のドアの前で眼鏡をかけカメラを手にした生徒がスキップしながら走り去っていくのであった.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

テルマエ・パンツァーです!

大洗女子大浴場

 

カポ~ン

 

「「「「「「はあぁ~生き返る~~~~」」」」」」

 

試合が終わった後、りほたちは大浴場で寛いでいた。

 

「いや~戦車を動かした後こうして大きな風呂に入るのはいいものね~」

 

「そうね~ドラム缶風呂もいいけど。こっちもいいよね~」

 

「確かに交代交代で火をたくのは大変だしね~。アーニャは焚火の煙で一酸化炭素中毒になりかけたしね」

 

「それは言わない約束でしょナポリ!まあ、確かにドラム缶もいいけどこういう大浴槽が使えるのはいいわよね。プラウダほど大きくはないけど、日本の文化って感じで私は好きよ」

 

「そうだね~。サンダースはテーマパークみたいな浴場だったけど私はこういう日本独自の古風な風呂のほうが好きだね」

 

「わたくしもそうですわ。英国風も風呂もいいけど、やっぱりこっちの風呂のほうが少し落ち着きますわ」

 

「確かにアンツィオのローマ風呂もいいがこっちもなかなかいい!やはり日本ならこうでなくちゃな!」

 

「いやいや、外国人風に言っているけど、あなたたちも日本人でしょ?」

 

「あははは・・・・・」

 

ハルカがジト目でそう突っ込むと、りほは苦笑する。するとリリーが、

 

「ん?アーニャ。もっとこっちに来なよ。何浅いところにいるのよ?」

 

「あのね。身長を考えなさいよ。これ以上進んだら、私顔の半分まで湯につかっちゃうじゃない」

 

「ああ、そうか。じゃあ、浮き輪でも持ってくる?レミリアお嬢様?」

 

「大きなお世話よ。てか誰が吸血鬼幼女よ!」

 

「ははは!ごめんごめん!アーニャって髪をそれっぽくしたら似ているからさ~。でも金髪ならフランドール?」

 

「誰が壊れた人形のマーチよ!」

 

「アーニャ?何を言ってますの?」

 

と、そう話している。いわれてみればこのメンバーはどことなく他のアニメの世界のキャラに少しだけ顔が似ていた。それがどんなキャラかはよくはわからないが何となく似ていた。

そしてその後そんな他愛のない話をしていると、ナポリは、

 

「にしても・・・・少し大変なことになったな・・・・私たちタイムスリップしたんだぞ?20年も昔に・・・・・・・・あれ?」

 

「どうしたのナポリ?」

 

「いや、ジャスミン。今更、気づいちゃったんだけどさ・・・・20年前。つまり今いる母さんたちって女子高校生だよな?」

 

「そうね。ちょっと不思議な感じだね?」

 

「いや、リリーそうじゃなくてさ。もし母さんたちが高校生だとすると、私たちを生んだのは20代ってことになるよな?」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・あ!!!」」」」」

 

ナポリの言葉に皆は目を見開く。

 

「そう言えばそうですわね・・・・」

 

「今思うと、単純なことに気が付かなかったわ。私のマーマ、留学先でノンナおばさんの反対を押し切って駆け落ちして早婚したって話していたけど・・・・」

 

「わたくしのお母様は、留学先で出会った同じ留学の人と出会って結婚したって言っていました。ナポリは?」

 

「うちの場合大学で出会ったとか言っていたぞ?りほは?」

 

「うん。お父さんとは大学で出会ったんだって。お母さんが言うには『なんだかボコみたいな人だから』とかなんとか・・・・」

 

「何それ?」

 

と、そんなことを話していると

 

「・・・・あれ?エーデルワイスチームの皆さん?」

 

「「「っ!?」」」

 

風呂場の入り口のところから声がし、6人は振り向くとそこにはアンコウチームがいた。

 

「(お、おかあさん!?)」

 

『(げぇ!アンコウチーム!?)』

 

りほたちは驚く中、みほたちはそれに気づかず笑顔で、

 

「みんなも試合後の汗流しに来たんだ!実は私たちもなの!」

 

「あの~よろしければ一緒に入ってもよろしいですか?」

 

「あのよろしければあの五式について質問したいのですが・・・・・」

 

「zzz~」

 

と、そう言い、アンコウチーム五人は、6人のいる湯に入り、6人は顔を強張らせて緊張した顔をするのであった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

「そうなんですか。ジャスミンさんは紅茶を淹れるのが趣味なんですか?」

 

「はい。そうなんです。ほかにも英国式以外に中国式のお茶のれ方もできるのですよ、五十鈴さん」

 

「なるほど!なるほど!男子は肉じゃがが好きなのね!いいことを聞いたわ!メモメモと・・・・」

 

「いや、リリー。武部さんの言っている肉じゃがってそれは良妻賢母の象徴料理で会って、男子誰しも肉じゃがが好物てわけじゃ・・・・・」

 

「そんなことないもんアナスタシアちゃん!ちゃんと雑誌に書いてたもん!・・・と、いうよりアナスタシアちゃんって私より一つ年上だったんだね。てっきり小学生かと思った」

 

「余計なお世話よ!」

 

「zzz~いい湯だな・・・・」

 

「はいそうですね・・・・特に戦車の整備をした後の風呂は格別ですよ・・・・」

 

「へー!あの5式は88ミリ砲なんですか!!」

 

「そうよ。しかも日本製じゃなく本場ドイツの8.8 cm FlaK 18/36/37砲よ」

 

「おおー!あのティーガーの主砲の元となったあのアハト・アハトですか!!」

 

と、さっきまでの緊張感はどこへやら、みなすっかり打ち解けあって楽しく話し合っていた。

 

「みんな、すっかり仲良くなっちゃいましたね伊庭さん」

 

「う、うん・・・・」

 

みほの言葉に、りほはうなずく。そしてりほはアーニャたちと話している武部たちを見て、

 

「(お母さんたち・・・・高校生時代のころ、こんな感じだったんだ・・・・)」

 

と、不思議そうに見ていた。りほは母であるみほはもちろん、武部たちのことは小さいころからよく知っていた。まず武部沙織はまさに母性の塊というべき人であり、りほの時代ではりほの学校の担任の先生でもあり、生徒たちから『さおりん先生』なんて呼ばれて大人気の先生である。

そして五十鈴華さんはのちの二代目会長であり華道の名人であり、ほかの華道家たちと違いアクティブでそして芸術的な作品を手掛けてよくテレビに出ている。

そして風呂で転寝している冷泉麻子は、りほの時代では無敗を誇る弁護士なのだが、依頼者の依頼では夜限定しか活動しないという変わった人といわれている。ただし裁判内容が家族関係の場合、たとえ朝早くても駆けつけてくれる人だ。

そして最後に、りほが一番よく知っている秋山優花里さん。この人はりほにとって戦車知識の師匠的な人で、子供のころから彼女の戦車講座をよく聞いていた。そしてりほの時代では彼女は陸自の幹部自衛官であり、社会人戦車道チームの筆頭教官となっている。

 

「(今思うと本当に不思議な空間だな・・・・)」

 

「あ、あの・・・伊庭さん?」

 

「ひゃい!?」

 

みほに声を掛けられ、りほは驚いた表情をする。すると、

 

「あ、ごめんなさい。驚かせちゃって」

 

「い、いえ。いいんですよ・・・・・それで、お・・・西住さん。今日の試合本当にありがとうございました」

 

「いえ、私たちもいろいろと勉強になりました。伊庭さんの戦術。とてもすごかったです……あの・・・伊庭さん。変なこと訊くようなんだけど」

 

「なんですか?」

 

「あの・・・・伊庭さん、私とどこかで会ったことありますか?あ、一週間前のを除いてだよ?」

 

「っ!?・・・・・・い、いいえ・・・西住さんとは初対面ですよ。なんでそんなこと訊いたんですか?」

 

「あ、すみません。何だか伊庭さんって、他人とは違う・・・・まるで妹とか姉妹とかそういう感じに感じたんです。すみません。どうやら私の勘違いだったみたいです」

 

「(お母さん、鋭っ!?確かに私とお母さんは親子だけど・・・・)」

 

りほは苦笑すると、その後、若き母、みほと会話を続けていた。

 

「りほさんもボコが好きなんだ!」

 

「はい。ボコはやっぱりいいです。特に幻の第12話なんか!知ってます『ボコ星より愛をこめて』ていう話?」

 

「あ!知ってる!いろいろとクレームが出て今は永久欠番になっているんだよね!実は私その時のビデオ持っているの!」

 

「え!そうなんですか!?(初めて知った・・・・)ぜひ見てみたいです!」

 

と、りほとみほはボコ談義に夢中になっていたそしてそれを見ている武部たちは、

 

「異空間がありますね・・・・・」

 

「何を言っているのかわからない?ボコのどこがいいの?」

 

「まあ、マニアとはかくあるべしです。私もわかります」

 

と、首をかしげてみている。アーニャたちは、

 

「(リホーシャ楽しそうね)」

 

「(まあ、話の合う人ができてよかったんじゃない?相手はりほのお母さんだけど)」

 

「(でも微笑ましいですね~)」

 

と、微笑ましく二人を見ていた。するとみほは、

 

「伊庭さん」

 

と、りほのほうへ向くと、

 

「一緒に戦車道頑張ろうね」

 

と、笑顔でそう言い手を差し伸べる。りほは頷き、

 

「はい。こちらこそお願いします。西住さん」

 

とみほの手を取り握手をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、新聞部では・・・・・

 

「編集長!文部長!!特ダネ!特ダネ持ってきました!!」

 

「おおっ!王ちゃん!なに?今回はどんな特ダネを見つけたの!?」

 

と王の言葉に新聞部部長である射命丸文が嬉しそうに言うと、

 

「はい!今回の特ダネはあの例の謎の6人組の正体です!」

 

そう言い、王が文にレポートを渡し、彼女はそのレポートを見ると・・・

 

「これは!・・・ふふふ!これは確かに特ダネです!王さん!すぐにこれ明日の学園新聞に載せるように!!」

 

「はい!!かしこまりました!!」

 

文の言葉に王は敬礼をし、部室を出ていく。そして文は、

 

「さて!これは久しぶりの特ダネです!思いっきり大きく表紙に飾らないと!」

 

と、張り切って王の書いたレポートを編集するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大スクープの未来組です!

大洗女子学園の森の小屋

 

「ふわぁ~」

 

まだ日も昇らない朝、りほは目を覚ます。私たちチームエーデルワイスチームの朝は早い。食事当番なんかは特にだ。りほが洗面所に行くと

 

「ああ、おはようりほ」

 

「おはようジャスミン」

 

今日の朝食の当番は、りほとジャスミンであった。二人は顔を洗い歯を磨きそして髪を整えた後、エプロンをつけてキッチンへと入る。そしてりほが野菜を切り、ジャスミンは鍋に入った熱湯に煮干しなどを入れてだしを取る。今日の朝食は和食であった。

 

「へ~ジャスミンってお料理できたんだ」

 

「はい。母の友達に花嫁修業だといわれ習っていたんです。まあ、実を言うと母は料理があまり得意じゃなくて、その母の代わりに料理を始めたのがきっかけなんですけど・・・・」

 

「そんなにひどいの、ジャスミンのお母さん?」

 

「ええ、卵を割るのに床にたたきつけたり、キャベツをそのまんま、鍋に入れたり。特にウナギのにこごりぜりーを見た時、こういっては母やイギリスの人に失礼かもしれませんけど・・・あれはウナギや料理に対して失礼だと思いましたわ・・・・」

 

顔を引きつらせ苦笑いするジャスミン。そしてりほも

 

「うちも似たようなもん。お母さんは料理は上手いけど、まほ伯母さんのほうは・・・・・」

 

「まほ伯母さんっというとあの西住まほさん?あの戦車道日本代表の隊長の?」

 

「うん。伯母さん。私生活で料理が壊滅的で、特に健康にいいとくれば分量や味を考えずに入れてくれて、すぐに仕事とか迅速に戦車道できるように軽く希塩酸で溶かしたものをふるまってくれたのよ・・・・・アハハ・・・・その時の食事はまさに地獄だったわ。よく保健所が来なかったなっと思ったわよ」

 

「うわぁ‥…なんだかガスマスクつけて調理する姿が想像できますわね・・・・・」

 

と、苦笑いしあう二人。すると・・・・

 

「まほさんの料理なら私も知っているわよ」

 

「「っ!?ハルカ!!」」

 

いつの間にかハルカが後ろにいた。

 

「やあ、二人ともおはよう。何だかいい匂いがしたから起きちゃったよ。今日の朝は和食?」

 

「あ、はい。今日は野菜の味噌汁と豆腐と、それと昨日水産科の人から分けてもらった鯖を焼いています・・・・・・・で、ハルカ。あなた、まほさんのお料理を知っているって・・・」

 

「ああ、それね。私の母校、黒森峰で、お母さんとりほの伯母さん、そうまほさんの母校でもあるじゃない?だからお母さんとまほさんがOGで特別コーチとしてきてね。練習後まほさんが料理をふるまうことになったのよ・・・・で、まず先に出された料理が紫色の謎のスープでね・・・・・・・私たちが飲もうとしたときお母さんが『あなたたち早まらないで!私から先にいただく』とか言って先にそのスープ飲んだの。そしたら・・・・」

 

「「そしたら?」」

 

二人がそう訊くとハルカの顔色が少し青くなり震えだすと

 

「お母さん口から血を吐いてばったんと倒れたのよ」

 

「「ひ~!?」」

 

「それでね。みんな驚く中でまほさん『大げさだ。少しのど越しがいいだけだ』と凛とした表情で言って・・・・」

 

「いいや、のど越しっていう言葉は吐血するときには使いませんわ・・・・」

 

「まほ伯母さん・・・・自覚がないだけたちが悪いね・・・・ハルカごめんなさい、私の伯母が大変迷惑をかけて・・・・」

 

「いいえ、いいのよ、りほ。誰も怒ってはいないし・・・・・母さんも『そんなんでも隊長は素敵』だとか言っていたから・・・・」

 

「「あははは・・・・・」」

 

ハルカの言葉に二人は苦笑するのであった。そしてその後は三人一緒に朝ご飯の支度をし、残り三人も起きて、朝ご飯の手伝いをする。そして6人は机を囲んで朝食を食べていた。

 

「ねえ。今日はどうする?」

 

「そうね・・・・今日は練習もお休みだし、久しぶりにどこか行かない?なんか秘密基地みたいで冒険できそうなところ。それでおしゃれなバーとかあるところとか?」

 

「それは面白そうね。りほそう言うところ大洗にある?」

 

アーニャとリリーがそう訊くとりほは

 

「う~ん・・・・・・・あ、!一つだけあるわ。でも場所は船底なのよ」

 

「へ~面白そう。じゃあ、そこに行ってみよう・・・・・・・て、ナポリ。なにニンジンをどかしながら食べているのよ?」

 

「人参が嫌いなんですの?」

 

ジャスミンがそう訊くとナポリは箸を置き窓のところへ行くと遠目で

 

「実は・・・・私は小さいころニンジンで命を落としかけたことがあったんだ」

 

『え?ニンジンで?』

 

皆が驚きながら食事をとる中、ナポリは

 

「うん・・・・あれは私が小学生の時の夏だった・・・・給食の時間。苦手なニンジンを先生に無理やり食べされられてあまりの味のまずさにのどが通らなくて呼吸困難になった。そして苦しさに私は病院に搬送され大手術の末、何とか生還できた・・・・・」

 

「へえぇ~そんなことがあったの?」

 

ナポリの言葉にハルカは味噌汁を飲みながらそう言う。

 

「それ以来、私は一度もニンジンを口にしたことがなかった。お母さんやペパロニお姉さんたちが何とかして私の人参嫌いを治してくれようと、甘く味付けをしたり刻んだり工夫してくれたんだけど。食べると…またのどに引っかかって・・・・・・・うわあああ!!」

 

「もうナポリ。泣かないでよ」

 

「どんだけニンジンにトラウマ抱えているのよ」

 

泣き出すナポリにりほがなだめると、アーニャが風呂敷を広げてお菓子を包んでいた。

 

「アーニャ。何をしているの?」

 

「ん?昨日作ったお菓子、多く作っちゃったから自動車部の人におすそ分けしようと思ってね。ほら、エーデルワイス号の修理してくれたからそのお礼もかねて」

 

「意外と律儀なのね、アーニャ?」

 

「どういう意味、ジャスミン?」

 

「でもいいアイディアね、アーニャ。じゃあ、船底に行く前に戦車道格納庫に行こうか」

 

「「「賛成!」」」

 

と、そう言うと6人は食事を終え食器を洗って片づけた後、制服に着替えてお菓子を包んだ袋を持ち森の外のグラウンドにある戦車倉庫へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

「おはよ~河島」

 

「おはようございます会長」

 

生徒会室に角谷と河島は朝早く登校していた。理由は生徒会での仕事があるからだ。

 

「あれ?小山は?」

 

「柚子でしたら、新聞部の今日の新聞を受け取りに行ってます」

 

「ああ~新聞部か。あそこのネタはいろいろと面白いからね~去年の夏の記事を除けば」

 

「たしか・・・・『会長は実はおっぱい星人だったっ!』っていう記事ですか?確かそれを見て会長、めちゃくちゃ激怒してましたよね?」

 

「まあね~まあ、昔のことだしね~さて・・・・今日はどんな記事かな?」

 

と、干し芋をほおばりながら杏がそう言うと

 

「か、会長!大変です!!!」

 

そこへ小山が慌てて部屋に入ってきた。

 

「どうしたんだ、柚子?」

 

あまりの慌てように桃が首をかしげると、

 

「こ、これを見てください!!」

 

と、杏の前に一枚の新聞を置く。それは大洗女子学園の新聞部が発行しているものであった。杏と桃がその新聞を見ると、見出しには

 

『本当にいたタイムトラベラー!!あの謎の6人組の正体は未来からやってきた少女たちだった!!』

 

とデカデカと書かれていたのであった。

 

「なんなんだ、この記事は!?てかなんで伊庭たちのことが新聞部にバレているんだ!?」

 

「小山~どういうこと?」

 

「わ、わかりません。新聞部に行ったら、なぜかこんな記事が・・・・」

 

小山がそう言うと新聞を見ている杏は

 

「ふ~ん・・・・・・・これはまずいことになったね・・・・編集長は・・・・あの烏か」

 

と、目を細めそう言う。因みに烏とは新聞部部長の射命丸文のあだ名であり去年の夏にでたらめな記事を書いて角谷を怒らせた張本人である。そして角谷の居間の表情はいつもみたいににこにこしてはいるが目は笑っていなかった。

 

「かわしま~」

 

「はい」

 

「すぐに烏ちゃんを呼んできて~大至急」

 

「は、はい!!」

 

怖い笑みをする角谷に河島は急いで、新聞部へと向かうのであった。そして角谷は

 

「さて・・・・・伊庭ちゃんたちにはどうやって謝ればいいんだろう」

 

と困ったようにため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

いっぽう、格納庫では

 

「いや、ありがとね伊庭さん。アーニャさん」

 

「いえ、いえ。こちらこそエーデルワイス号を修理してもらっているんですからそのお礼ですよ」

 

「そうですか。それにしてもハルカさんとナポリさん。いい腕をしていますよね?自動車部に欲しいくらいだよ」

 

中嶋さんたち自動車部とりほたちは、アーニャの作ったお菓子を食べていた。

 

「それにしてもすごいですね。あれだけ損傷していた戦車を一晩で直すなんて」

 

「いや、確かに大変だったけどやりがいのある仕事だったよ」

 

りほの言葉に中嶋はニコッと笑ってそう言う。するとホシノが

 

「そう言えば、伊庭さんたちに聞きたいことがあるんだけど?」

 

「なんですか?」

 

「君たち未来から来たって・・・・・ほんと?」

 

「え?」

 

その言葉に6人は目を丸くする。誰も自分たちが未来から来たなんて言っていないのに何で?という顔をしていた。するとスズキが

 

「ああ、あの学園艦新聞でしょ?でもあの新聞、ネタは面白いけど、少しオーバーに書くし、嘘も書く時があるからね」

 

「確か、この前は『生徒会は悪の秘密結社か!』だったけ?たぶん今朝の記事もそんな感じに書いたんだよきっと」

 

ツチヤは笑ってそう言う。

 

『学園艦新聞?』

 

「うん。うちの学校の新聞部が書いている新聞なんだよ。はいこれ」

 

6人は首をかしげるとスズキが一枚の新聞を6人に渡す。そしてその新聞の内容を見た6人は

 

『『・・・・・・・・』』

 

チベットスナギツネみたいな表情をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、生徒会室では何やらドドドという足音が響き渡った。

 

「ん?小山が烏を連れてきたのか?」

 

桃がそう言うとドアがバタンと力強く開き

 

『角谷はどこに行ったあぁーーーーーー#!!!!』

 

ロケットランチャーを持ったりほたち6人組が眉間に青筋を立てて入ってきたのであった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新聞部対生徒会です!!

「はい!皆さんこんにちはあけましておめでとうございます!新聞部部長の射命丸文です!私は今生徒会にいるのですが・・・・・・・現在私は縄できつく縛られ逆さに吊るされております。そして私たちの周りには」

 

と射命丸がちらっと周りを見ると・・・

 

「さて・・・どんな焼き加減がいい?レア?それともウェルダンがいいかしら?」

 

「元の時代でサンダースからパク・・・・・借りてきたこのⅯ2火炎放射器の威力がどんなものか早く試したいわね~」

 

「焼かれて熱いのが嫌なら、このフリーガーハマーのロケット弾がいいかしら?一発で粉みじんにしてハンバーグの材料にしてあげるわよ?」

 

と、ロケットランチャーと火炎放射器を持った少女が怖い笑みをしていた。

 

「私は今、未来からやって来たと噂される少女6人のうち、二人にロケットランチャーと火炎放射器を向けておられます」

 

「烏、なぜおまえはこんな時でも冷静なんだ!?」

 

「これが文屋というものだよ、河島さん・・・・・・」ドヤ顔

 

そう文が言うと、

 

「やあやあ、烏~。久しぶりだね~。去年の夏以来かな~」

 

「これはこれは干し芋さん・・・いいえ、生徒会長さん。久しぶりですね~。突然ですがなんで私が呼び出された挙句こうして吊るされなければいけないんですか?」

 

「はい、これ?」

 

そう言い角谷が見せたのは今朝の新聞だった。

 

「ああ、今朝の新聞ですね!いや~あれは大繁盛でしたよ~。おかげで新聞部の評価も少し上がりましたし~」

 

「それはよかったね~。でもね烏。なんでこの子たち6人が未来から来たって・・・・」

 

「それは角谷会長自身がおっしゃっていたじゃないですか~。私としてはいいネタを拾いましたよ。あ、でもその情報を持ってきたのはうちの王君なんだけどね?でも彼女は責めないで上げてね。あの子は仕事しただけだから」

 

「相変わらず部員思いだね~。私は君のそこが気に入っているんだよ・・・・でもねこの記事を書いたのはちょっとまずかったね~」

 

「え?どのくらいまずいんですか?」

 

「去年の夏の記事よりだよ」

 

「あ~あの記事ですか!あの記事は私の最高傑作の一つ・・・・・」

 

「恐怖公の部屋にぶち込まれたい?」

 

「いえ、それだけは勘弁です。すみません調子に乗ってました」

 

青筋を立ててそう言う杏に、烏は参ったという表情でそう言うと。杏が、

 

「それで?何でこんなの書いたのかな?いくら小学校の幼馴染の仲とは言え、本気で廃部にしちゃうよ?」

 

と、少し脅すようにそう言う杏に烏は、

 

「いや~、昨日、取材に伺おうとしたんだけどね。ちょうど杏がその6人と話をしててしかも未来からというじゃないですか。文屋としては特ダネだと思って書いたのよ」

 

「「「「(あの時か・・・・・)」」」」

 

「それで何?何か広められて困ることでもあるの?」

 

「それは・・・・・」

 

烏の言葉に杏は少し引くが、りほは、

 

「私たちはなるべくこの時代で派手に動きたくないんです。もし世間で未来から来た子なんて広められたら。下手をしたら歴史が変わって元の時代に帰れなくなる可能性が出るんです」

 

りほが今までのことを烏に言うとその言葉に5人は頷く。それを聞いた烏は納得したように頷き、

 

「なるほど、なるほど。確かに君の言う通りだね。そう言うことを考えると私にも考えが足りなかったわね。でも発行しちゃったからにはもう後戻りはできないし。杏たちはどうするつもり?」

 

そう訊くと桃が、

 

「すぐにでも改竄させるか、その記事を消滅させる」

 

「それだとかえって逆効果ですよ。それだとそれが本当だと認めるようなものじゃない?」

 

「じゃあ、そのままにしろと?」

 

「そっ!下手に検閲して周囲から怪しまれるより、そのままスルーした方が被害は最小限に済むよ。それに自分で言うのもなんだけど私の新聞のほとんどの内容がフィクションだと思われちゃっているしね。すぐにタイムスリップ少女の話題は消えるよ。せいぜいそれを自称する転入生だと思われるだけね」

 

「自分で言ってて悲しくないそれ?」

 

「というより、それを自称する設定じゃ私たち頭の変な子だと思われるじゃない・・・・まあ未来人ってバレるよりましだけど・・・・・」

 

烏の言葉にハルカとアーニャが苦笑してそう言うと、柚子は、

 

「もしかして烏さん。それを見越して記事にしたの?」

 

「さぁ~どうでしょうね~?まあ、黙ってても近いうちにその子らの正体ばれちゃうんだし、ここで時間稼ぎになる設定つけても大丈夫でしょ。ね、杏?」

 

「本当に君は危ないところぎりぎりまでやるね・・・・下手をすれば廃部にすることだってできるんだよ私は」

 

「権限はあっても、理不尽にそう言うことをしないのが君だ、杏。まあ、内容は理解したわ。じゃあ君たち6人組については記事にしないことを約束するよ」

 

「意外とあっさり引くんですのね?」

 

「私としてはぜひじっくり取材して特ダネとして発表したいんだけど。私は無理やりなことは嫌いだし、何しろ杏がここまで庇うなんて珍しいからね。その杏に免じてそうしないわけ。その代わり・・・・・」

 

「わかっている。口止め料として部費のアップだろ?」

 

「正解」

 

「現金だね~烏は。干し芋じゃダメ?」

 

「私も慈善家じゃないからね。数倍に上げろとは言わないわ。せめて去年ぐらいに戻してほしい。それだけよ」

 

「よし、じゃあ交渉成立だね~」

 

「そうね~」

 

と、そう言い杏と烏はにこにこと笑いながら握手をする。それを見た6人と桃たちは、

 

「な、なんか。私たちの入る隙もなく勝手に解決しちゃったよ・・・・」

 

「私たちが殴り込みに来た意味ないじゃん」

 

「と、いうより会長とこの烏・・・・」

 

「ええ…案外この二人」

 

「「・・・・似た者同士かも・・・・」」

 

と、苦笑して見ると、烏は『じゃあ、部活の仕事があるので帰るね』と言い帰っていった。そして杏は、

 

「いや~ごめんね伊庭ちゃん。早速約束破っちゃって」

 

「いいえ、いいんですよ。どうやら事故みたいなものだったようですし。ですが次からは気を付けてくださいよ」

 

「うん。善処するよ」

 

「本当ですね?もし次があったら・・・・・・」

 

「あったら?」

 

杏が首をかしげると、りほは怖いくらいの笑みをこぼし、

 

「杏さんの大切に保管している干し芋のコレクションがあるR36倉庫を爆破しますので~」

 

「なっ!?」

 

りほの言葉に杏は顔を青くし、ほかのみんなはわからず首をかしげると杏は、

 

「そ、それだけは勘弁してりほちゃん!と、いうよりなんでその倉庫のこと知っているの!?」

 

「未来の杏さんに教わりました。私のいた時代のことですが、もし干し芋好きの超理不尽で横暴の生徒会長がいたらそれを使って脅せって」

 

「おのれ未来の私!!なんて余計なことをっ!!」

 

りほの言葉に杏がぐっと悔しそうな表情を浮かべてそう言うと。桃と柚子は、

 

「あんなに取り乱した会長・・・・・初めて見た」

 

「そ、そうだね桃ちゃん」

 

初めて見る杏のリアクションに驚いていた。そしてりほは、

 

「ではなるべく約束のほう。お願いしますね?」

 

「は・・・・はい」

 

そう言うとりほたちは退出する。

 

「会長・・・・・大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ・・・・まさかりほちゃんがあの倉庫のことを知っていたとはね・・・・もしかして未来の私、このことを想定して?」

 

「それはわかりませんが・・・・それにしてもあんなに狼狽えた会長は初めて見ましたよ」

 

「そうだな。最後に見たのは一年の時会長と烏が問題を起こして生活指導として恐怖公の部屋に・・・・・・確かあの部屋ってG・・・」

 

「やめて!思い出させないでくれ河島!!」

 

河島の言葉に耳をふさいでそう言う杏であった。

 

 

 

 

 

一方、りほたちは、

 

「はぁ・・・・事故とはいえ、私たちの存在、表に出ましたわね」

 

「そうね。また鬘被って生活しないと・・・・・」

 

「そうね・・・・・それよりもりほ。すごかったわよ、あの生徒会長の弱点を突くなんて」

 

「まあ、杏さんが干し芋好きだから干し芋を人質・・・いや芋質か。そうすればたいてい何とかなると思ったのよ」

 

「へ~、で、その倉庫どこにあるの?」

 

「それが知らないのよ~。(未来の)杏さん、存在は教えてくれたけど肝心の場所までは教えてくれなかったから」

 

「つまり、今のはハッタリ?」

 

「うん。そうよ・・・・さて。みんなこれからどうする?」

 

「え?そうね・・・・・少し遅くはなりましたが、りほさんの言っていた船底に行きます?」

 

「あ、それ賛成!私、早く冒険したいしね」

 

「じゃあ、決まり。りほその船底って楽しいの?」

 

「ええ、小さいころ海賊のコスプレしてたお姉さんがよく連れてってくれたから。しかもね、その場所には秘密のバーがあるのよ」

 

「まじでか!尚更楽しみだな」

 

「じゃあ、すぐにでも行きましょ!」

 

「賛成!」

 

そう言い6人組は、船底へと向かうのであった・・・・・そこで一波乱あることも知らずに・・・・・

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来組、ヨハネスブルグへ

りほたちは現在、船底へと向かっていた。理由としては探検と、りほが船底にいい店があるということからだ。

 

「ほへ~船の下ってこうなっているんだ~」

 

「私、初めてきましたわ」

 

リリーとジャスミンが辺りをきょろきょろ見ながらそう言い、アーニャは

 

「私は子供のころ、よくプラウダの船底に行ってマーマとかくれんぼしたわよ。そう言えば船底に駅みたいなのあったわね」

 

「駅?なんで?」

 

「さあ?マーマ、前にノンナおばさんに教えてもらったらしいんだけど忘れちゃったらしいわ」

 

「ふ~ん。もしかしたら昔は青函連絡船みたいに列車を乗せてたんじゃないの?」

 

「青函連絡船て・・・・・いつの時代の話よ」

 

とナポリの言葉にアーニャはジト目でそう言う中、6人はどんどん下へ下へと行く。下へ行く中6人は互いの学校の話や自分の母親の話をしていた。

 

「へ~ジャスミンのお母さんの本名って桜守っていうんだ」

 

「はい。その所為か、どっかのアイドルと間違われて大変だったそうです」

 

「は~確かに言われてみればどっかのアイドルに似ているな~って思ったけど?」

 

「なんていうか私たちもそうだけどお母さんたちって微妙に誰かにそっくりだって言われているような気がするわ」

 

「あ、それ私も思った」

 

「カップやきそば現象っていうのかな?」

 

そんな話をしているとハルカが

 

「ねえ、りほ。ずいぶん下に来たけど本当にお店があるの?」

 

「あるよ。まあ途中で不良のたまり場を通なくちゃいけないけど」

 

「ああ。途中で話してたヨハネスブルグ?だったけ?でも大丈夫でしょ?目を合わさなければ」

 

「そうそう。万が一絡まれたらやっつけちゃえばいいし」

 

「え?不良相手に大丈夫なの?」

 

リリーが不安そうに言うとアーニャは

 

「大丈夫でしょ?私こう見えて腕に自信があるし」

 

「え?アーニャが?」

 

「何よナポリ、その疑いのまなざしは?そう言うあんたはどうなの?」

 

「私はペパロニお姉さんやアマレットお姉さん直々に喧嘩術を学んだから護身程度なら大丈夫よ」

 

「ペパロニって・・・・・」

 

「言っておくけどソーセージの方じゃないわよ」

 

そうは無しながら6人はどんどん下へと進んでいくと。だんだん道が薄暗くなり、そしてその先には鉄条網が張られていた。

 

「なんなのよこれ!先に進めないじゃない!」

 

「りほ。この先にあるの?」

 

「うん。確かにこの先よ。私の時代はこんなのなかったけど」

 

「ねえ、これもしかして警告じゃない?」

 

「「警告?」」

 

ハルカの言葉に皆は首をかしげる

 

「きっとこの先は危険なのよ。たぶんどこかに『ここより先は日本国憲法は通用しません』って書いてあるのよ」

 

「犬鳴村じゃないわよハルカ」

 

「まあ、でもあながち間違っていないかも。確か船底のヨハネスブルグって生徒会の力が及ばない無法地帯らしいから」

 

「生徒会の力って、どんだけ権力を持っているんだよ、あの三人組」

 

りほの言葉にリリーが顔を引きつらせてそう言うとナポリが

 

「それにしてもこれ邪魔だな。切っちゃうか」

 

そう言いナポリは何処から取り出したのかナイフを取り出し

 

「はっ!!」

 

そう言い振りかざすと鉄条網はバラバラになる。

 

「「おおっ~!!」」

 

それを見た5人は驚いて思わず拍手をしナポリはふふんと自慢げな顔をする。そして一行はそのまま奥へと進むと不気味な笑い声と壁中落書きやらがらくたが散らばっている道へと進む。そしてところどころに長いスカートをはいたいかにも不良といった感じの女子生徒たちが屯っていた。そしてりほたちの存在に気づいたのか皆がじっとりほたちを見る。

 

「あらあら、なんか眼付けられていますわね?」

 

「まあ、こいつらの縄張りに入ったんだ。そりゃぁ睨まれるな」

 

「平気平気。リホーシャおすすめの店で飲んだらすぐに帰ればいいんだから」

 

「アーニャ。居酒屋に行くんじゃないんだから」

 

「それでりほ。その店ってこの先なの?」

 

「うん。確か何度か角を曲がってエレベーターに乗れば……」

 

そう言うと

 

「おい、あんたらちょっと待ちな~」

 

と、先の方で胡坐をかいて座っていたいかにも不良のようなマスクをつけた生徒二人が声をかけるが6人は、絶対に嫌な予感がすると思い、関わらないように無視をする。

 

「ちょいとちょいとお姉さんたち?」

 

「あたいらを無視してどこ行くの?」

 

と、挑発するように小石をりほたちのもとに投げるがそれでも6人は無視する。すると二人組はむっとした表情となり6人の前に立ちはだかる。その二人にりほは

 

「……何の用ですか?」

 

「何の用?そんなの決まっているじゃないの。勝手にあたいらの縄張りに入った挙句、好きに歩いていいと思っているの?」

 

「通りたかったら通行料払いな」

 

と、りほたちを睨んでそう言う。誰から見てもわかるくらいのカツアゲだ。そのセリフにナポリとハルカが

 

「ばっかじゃないか?そんなの払うわけないだろ?」

 

「私もよ」

 

「「なんだと!!」」

 

ナポリとハルカの言葉に二人組は眉間に青筋を立ててそう言うが

 

「それにあんたのその髪型に格好。何?世紀末のモブキャラ気取り?北斗のパンツァー?みたいな感じだけど全然怖くないわよ」

 

「そうですわね。ハロウィンの仮装パーティーのつもりなら時季外れですわ」

 

呆れ顔でリリーとジャスミンがそう言う中周りにいた不良たちが

 

『おっ!なんか今日の陸から来た連中、ずいぶんと骨のありそうだわ』

 

『これは見ものね~スマホで録画しないとな』

 

と、何やら興味津々な顔で見ていた。すると二人組の一人が

 

「てめっ・・・・・あたいらをだれだと思っている!泣く子も黙る白鼠(びゃくそ)姉妹だぞこら!!」

 

と威圧を込めてそう言うとりほが

 

「歯糞?あ、あなたたち不細工な顔を隠すためマスクつけていると思ったけど歯を磨き忘れてたの?それでマスクしているんだ~」

 

「歯糞じゃないわよ!白鼠よ!!」

 

「このアマ!黙ってればいい気になりやがって!泣いて謝っても無駄よ!覚悟し……」

 

そう二人組の一人がそう言いかけた時

 

「ええい!もう、うるさいわね!!」

 

「ふぎゃぁ!!」

 

アーニャがジャンプして思いっきりその不良の頭を殴り、殴られた一人は目を回し気絶する

 

「わっ!?姉御!!?」

 

妹分らしき一人が目を回して気絶する姉貴分を見る。そしてすぐにアーニャを睨み

 

「こ、このチビ!!子供の喧嘩だと思っているでしょ!」

 

そう言うとそばに在ったコンクリートのブロックを重そうに持ち上げ

 

「あんた死ぬんだぞ!あんたの小さい頭をカリフラワーのようにパックリと……」

 

そう言いかけ振りかざそうとした時、アーニャは何処から出したのか、ぴこぴこハンマーを出してその不良の頭をたたく。それに驚いた不良少女は思わず持っていたブロックを落とし、そしてブロックは彼女の頭に命中し、漫画のような古典的なたんこぶができた瞬間、目を回して気絶する。

 

「お~おのれ~、私ったちをだれだと~」

 

いまだにそう言う不良姉妹にアーニャは

 

「あんたら喧嘩売っていたんでしょ?喋っている暇あったらかかってきなさいよ」

 

ほこりを払うかのように手をぱんぱんと叩くアーニャ。そしてりほは気絶する二人に近づき

 

「……大丈夫。気絶しただけでたんこぶを除けば大したことはないわ」

 

「そう。でも包帯くらいは巻いておきましょ」

 

と、りほたちは目を回して気絶している二人に軽い治療をすると、その場にいた不良に念のため病院に連れて行くようにと伝えると、先へと進むのであった。そしてまたしばらく進むと今度は別の二人組、トカタとババが立ちふさがっていた。

 

「ちょっと待ちな~」

 

「断りもなく通るつもり?」

 

と、静かな口調でそう言う。それを見たりほは

 

「(あ、さっきの人よりは話が分かりそう)あ、あの私たち。この先にあるBarどん底に行きたいのですが?」

 

「なに?あそこにか?あそこに何の用?」

 

「なにって、友達と一緒にそこで飲むつもりなの。もしかして予約とか必要でした?」

 

「いや。それにしてもあんたら物好きだな。あそこで飲みたいなんて」

 

「よく言われます。それでBarどん底は……」

 

「あの店ならすぐそこを左に曲がった後、梯子を上ってしばらくまっすぐ行ったあとまた右へと曲がる。そうすると下行きの滑り棒があるからそこから降りな。そうすれば後はまっすぐ進むだけだ。後あの店の常連にはあんま挑発するなよ。痛い目に合うからな」

 

「ありがとうございます」

 

ババは丁寧に言うとりほはお礼を言いその場を後にするのだった。

 

「なんか見かけによらず、親切だったな」

 

「そうですわね。さっきのカツアゲの二人組よりは親切でしたね」

 

と、話し合いながらりほたちは目的地であるBarどん底へと向かうのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヨ~ホ~ヨ~ホ~大洗の海賊たち

「いたた・・・・・もう何なのよ、あれは・・・・」

 

「大丈夫、ハルカ?」

 

「思いっきり尻をぶつけちゃったわ。座布団じゃクッション代わりにもならないわよ。せめて段ボールを山積にしてほしいわ」

 

船底のとある場所で秘密の飲み屋に向かうりほたちは、なぜか尻をさすりながら歩いていた。

 

「りほ~どういうこと?エレベーターがあるんじゃなかったの?」

 

リリーがそう訊くと、りほもお尻をさすって、

 

「う、うん。確かにこの辺りにエレベータがあったはずだったんだけど。この時代にはまだなかったのかな・・・・いたたた」

 

「大丈夫ですか、りほさん?」

 

「う、うん。大丈夫。ありがとうジャスミン。それよりジャスミンは平気そうね。さっきもまるで猫みたいに可憐に着地していたし」

 

「そんな。たいしたことありませんわ。ただ戦車から放り出されたときの訓練で習ったことをやったまでですわ」

 

「いや、どんな訓練よ?」

 

「いや、戦車に乗っているんだし。戦闘のさなか衝撃で放り出されて怪我をするっていうのもあったし。受け身とかそう言うのもあるんじゃないか?」

 

「そういうものかな~?」

 

ぶつけたところをさすりながら、りほたちは進む。すると・・・・

 

♪~♪~♪

 

何処からか音楽が聞こえた。

 

「あれ?これって…音楽に…歌声?誰かが歌っているのかな?」

 

「なんかカリブの海賊みたいな雰囲気の音楽だね~。こっちかな?」

 

そう言い皆が音楽が聞こえるところに行くと、そこは小さく狭くそして薄暗い廊下であった。その突き当りにドアがあり、そこから音楽が流れていた。

 

「あ、ここだ」

 

「え?ここがBarドンゾコ?」

 

「うん。内装や飾り付けが変わっていたから気づかなかった」

 

「そ、じゃあ目的地に着いたということで飲みましょうか」

 

「居酒屋じゃ・・・・・まあBarだし似たようなものか・・・・でも私たちは未成年だから酒はNGだぞ?」

 

「そんなことわかっているわよ、ナポリ。ノンアルコールか炭酸ジュースにするから」

 

「あ、私コーラにしようかな~」

 

ナポリの言葉にハルカ、リリーがそう言い、先頭にいるりほは、

 

「じゃあ、入るよ」

 

そう言うと皆は頷き、りほたち6人は店に入る。そこにはまさに海賊たちが出入りするようなバーがあり、そこには店員の少女を除き数名の客らしき少女が座っていた。そして中央の開けた場所には・・・・

 

「♪~♪~♪~♪」

 

モデルのように華奢で長い銀髪の少女は奇麗な歌声で歌っていた。

 

「奇麗な歌だね……」

 

「うん。せっかくだからビデオカメラ持ってくればよかった」

 

「スマホでもできるでしょ?」

 

と、りほたちがその歌声に聞き惚れていると、店員らしき金髪でジト目をした少女が、

 

「あんたたち、店に入ったら何か注文しな」

 

「あ、すみません。え・・・・と。メニューとかあります?」

 

「そんなものないって」

 

りほが店員にそう訊くと、バーの席で飲んでいる赤毛のくせっけの少女がそう言う。

 

「あ、そうなんですか・・・・・・ここのおすすめは何ですか?」

 

りほがそう訊くと店員の少女はりほをじろじろ見て、そして、

 

「・・・・・・クリームソーダよ」

 

「じゃあ、それで」

 

「じゃあ、私はコーラで。あ、クリームソーダみたいにアイスをトッピングね」

 

「私はノンアルコールウォッカを。無ければリホーシャと同じクリームソーダ」

 

「ノンアルコールビール。無ければ同じくクリームソーダを」

 

「私は大人のぶどうジュースがあると良な~まあ、なければクリームソーダで」

 

「では、わたくしはノンアルコールラム酒をなければクリームソーダで、それと何かつまめるものをお願いできます?」

 

そう注文すると店員は、

 

「適当な席に座ってて。すぐに用意するから。それとここは居酒屋じゃないからつまみはないわよ。でも一応探してみるわ」

 

「ありがとうございます」

 

りほは店員に礼を言い、Barの席に座る。

 

「へ~ジャスミンは紅茶じゃないんだ?」

 

「ここはBarであって喫茶店じゃないですから」

 

「なるほど・・・・・それにしてもあの人の歌声、きれいだね~」

 

「そうですわね。わたくしも歌いたいですわ」

 

「今はあの人が歌っているからね。終わるまで黙って聞いておこうよ」

 

と、ハルカやジャスミンがそう話していると、

 

「はい。お待たせ。コーラとノンアルコールラム酒はあったけど、ノンアルコールのウォッカやビールとぶどうジュースはなかったからクリームソーダで我慢して。あとおつまみにどん底名物の燻製ソーセージにスモークサーモンがあったから食べてみて」

 

「ありがとうございます」

 

りほは礼を言い、そして6人がソーセージやスモークサーモンを食べると、

 

「「お!美味しい!」」

 

と感激の声を出す。するとそれを聞いた店員は無表情だがどことなく嬉しそうに笑っていた。すると彼女たちの隣にいた先ほどのラム酒の瓶を持った少女が、

 

「でしょ~桜のチップ使ってじっくり燻したんだよ」

 

「へ~そうなんですか」

 

「で、あんたら。この店に来た目的は何?」

 

「え?何って決まっているじゃないか。飲みに来たのよ」

 

「いや、そうじゃなくてさ・・・・・・あんたら見たところ陸から来たんだろ?どうやってここを知ったんだ?」

 

と、そこへさっきまで歌っていた銀髪の少女が訊く。

 

「あれ?あなたさっきまで歌ってなかった?」

 

「あいつが今歌っている」

 

「「あいつ?」」

 

銀髪歌姫が指をさし、りほたちはそこを見ると、

 

「色は~匂えど~いつか~散りぬるを~♪」

 

中央でジャスミンが歌っていた。歌は下手ではないが上手くもなかった。だが自然に耳を傾けられるような魅力のある歌声であった。

 

「でさ、さっきの質問なんだけど」

 

「え?ああ。この店のことは噂で聞いたの、船底にはいいお店があるって。だから私たちはその噂を頼りに来たってわけ」

 

「ふ~ん。噂ね・・・・そうなんだ。もの好きね~」

 

歌姫はそう言い、ジャスミンの歌を黙って聞いていた。そして赤髪くせっけの少女が、

 

「うほっ!噂ね~。私たまにしか上に出ないけど、そう言う噂が出ているんだね~」

 

とラム酒(ノンアルコール)を飲みながらそう言うと、店員さんが、

 

「それよりあんたたち、ここに来るまで絡まれなかった?ここいらの子たちは血の気が多いいから」

 

「ああ、大丈夫。二人つっかかって来た人いたけど、私がどついて倒したから」

 

「そう・・・・で、その二人は?というよりどんな奴?」

 

「頭にたんこぶ付けて気絶した。それとあいつら白鼠とか言っていたわ」

 

アーニャがそう言うと店員が納得したような表情をし、いつの間にか、さっきまでソファーで帽子を深くかぶってた大柄な少女が、

 

「あ~あいつらか・・・・まあ、あいつら、トカタやババと違って相手選ばずに噛みつく奴だったからな~」

 

「うほっ!そういや、あの二人、ムラカミに喧嘩を売ってボコボコにされたよね?」

 

「ああ、全然私の相手にならなかったけどな。それよりあんた。小学生が何でここにいるんだよ?」

 

「小学生じゃないわよ。こう見えて高校三年よ」

 

「嘘だろ?・・・・お前あれか、ホビットてやつか」

 

「誰がホビットよ!」

 

ムラカミの言葉にアーニャが激しく突っ込み、それを聞いたりほたちエーデルワイスメンバーとくせっけの少女と店員は笑いをこらえる。そして二人は何か言い争いをはじめ、

 

「勝負しようじゃないのよ!!」

 

「上等だ。なにでやる!こぶしか!!」

 

「違うわよ!女の力比べなら腕相撲で勝負よ!!」

 

「上等だ!」

 

そう言いアーニャとムラカミさんは腕相撲を始めた。その様子をりほたちは見ている。力比べをしていたムラカミはすぐに勝てるだろうと思ったが、いくらムラカミが力を入れてもアーニャの腕はびくともしなかった。

 

「なっ!こんな小さい体なのに!!なんて馬鹿力なんだよ。バケモンか!?」

 

「バケモンて失礼ね~。こう見えて私一昔前まではかーべーたんの装填手してたから力比べなら負けない・・・・わよ!」

 

「うわっ!?」

 

アーニャはそう言いムラカミの腕をあっさりと机へたたきつける。腕相撲の勝負はアーニャの勝ちであった。

 

「うほっ!おお~すごい。ムラカミに勝つなんてね~」

 

「さすが副長殿・・・・・いやレミリア・スカーレット様」

 

「ナイス勝利、おぜう様」

 

「二人ともまだ、そんなネタやっていたのかよ・・・・」

 

リリーとハルカの言葉にナポリは呆れ顔でクリームソーダを飲む。そして、

 

「うほっ?そう言えばフリントは?」

 

「あっちであなたのお友達と一緒に歌っているよ」

 

「「え?」」

 

店員の言葉にりほとくせっ毛少女は振り向くと、

 

「「踏み出した空に~走っていく光~♪」」

 

と、なぜか仲良く歌っていた。そしてアーニャとムラカミは・・・・

 

「よ~し!こうなったらもう一回だ!」

 

「フフッ!返り討ちよ!!」

 

なぜか腕相撲の二回戦を始めていた。そして時は過ぎた。

 

「あ、もうこんな時間だ・・・・・そろそろ帰らないと」

 

「ああ、本当だ。あのお勘定をお願いします」

 

ナポリが店員にそう言うと店員は頷き、金額を言う。そしてりほたちは財布を出して注文した品の料金を払うのだった。そして帰り際に、

 

「なあ、あんた。いい歌声だったよ~。また来たときはもう一度、歌おう」

 

「ええ、わたくしも楽しみにしています」

 

「おい、あんた今度は私が勝つからな。10連敗の借り、返させてもらうからな!!」

 

「ええ、その時はまた返り討ちにしてやるわ」

 

となぜか仲良くなっているジャスミンと歌姫ことフリント、アーニャとムラカミ。そして店を出た後、りほたちは、

 

「いや~いい店だったな。ソーダやサーモンも美味しかったし」

 

「そうですわね。また来たいですね」

 

「うん!そうだな!!」

 

みんなご機嫌にそう言う。そんな中りほは、

 

「(あれ?そう言えばあの店の人たちどこかで見覚えが、それにあの店の中にも何かあったような・・・・・・・・・・・ま、いいか)」

 

と、何か思い出しそうだったが、気のせいだと思い、考えるのをやめたのだった。

 

「でさ・・・・・」

 

「どうしたのナポリ?」

 

「ここから、どうやって上に行こう?エレベーターないんだろ?」

 

「それは階段で・・・・・・・」

 

そう言い、皆は階段のある場所へ着き階段を見るが・・・・

 

「あの階段を・・・・・上るの?」

 

その階段を見上げると地上までははるか遠くであった。

 

「これは……家に着くまでが大変だね」

 

りほの言葉に皆は頷くのであった。

 

 

 

バーどん底では、

「いや~あいつらにぎやかで楽しい奴だったな~」

 

「うほっ!」

 

「そうね~特にあのジャスミンていう子、また来たら一緒に歌いたいわ~」

 

と、そう話している中、バーの隅っこにいた海賊風の少女がいた。

 

「・・・・・・・・」

 

「どうしたんですか?そう言えば先ほどから彼女たちの話に入らなかったようですが?」

 

店員ことカトラスがそう訊くと、彼女は寂しそうにお気に入りのハバネロクラブを一口飲み、

 

「・・・・・・タイミングを逃した・・・・」

 

そう寂しそうに言うのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦車と個性は人それぞれです

船底に遊びに行った翌日の朝、私たちは正直、大洗のみんながいる倉庫へ行きづらかった。

 

「なんでしょうね・・・・・いつも朝はさわやかに行くところですが・・・・・」

 

「ああ、正直言って・・・・・」

 

「「「空気が重い・・・・・」」

 

ジャスミンとナポリが呟き、そして全員思ったことを言う。昨日は楽しかった。いや、本当に。さすがに帰る時の階段は大変であったが、その後倉庫に戻った時にはみんなでサンダース風のパーティをやったな・・・・

だが、そんな楽しい時間も終わり翌日になれば、辛い現実を目にしなければならない。ああ、きっと出勤前の連休の最終休日を過ごす社会人たちもこんな思いなのかと思う。

なぜ、私たちがこんな状態かというと、やはり前の学園艦新聞で私たちが未来人だという事が報道されてしまったことだ。これは非常にまずい。

たとえていうなれば、ウルトラマンの正体が記事に報道されてしまうのと同じだ。

そのため私たちは、他の戦車道の人たちに何を言われるか(まあ十中八九、未来について質問される)わからない。

 

「ねえ、アーニャ・・・・・」

 

「何りほ?といっても言いたいことはわかるわ。戦車道のみんなのことでしょ?」

 

「うん。きっと質問攻めされるわ。どうやって誤魔化そう」

 

「無理よ。私だったら、たくさん質問攻めにあったらすぐにゲロっちゃうわ」

 

「私も同じだ。私嘘つくのへたくそだからな~。すぐにぼろでちゃう」

 

「わたくしもですわ。それにあの新聞が出回っているから尚更ね・・・・・」

 

「わたしも変に嘘をついてぼろが出ちゃうより、言える範囲で質問とかに答えるまでの抑えないと・・・・」

 

私たちは重いため息をつき、戦車格納庫へと向かうのであったが、すぐにその重苦しい空気が一時的に消えることになる・・・・それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車格納庫前

 

「・・・・・・ナニコレ?」

 

昔やっていた珍百景をみた人のように私はそう言う。それはアーニャたちもそうなのか口を開けたまま驚いていた。

その理由は私たちの目の前にある戦車だった。Ⅳ号はそのままだったが、三突は何ともカラフルな塗装になり、のぼりが四本立てられ、八九式は『バレー部募集』と白い文字で大きく書かれて、M3リーはピンク色に。何より目立ったのは38tだった。全身金ぴかで輝いていたのだ。

 

「ねえりほ・・・・・」

 

「何?ハルカ?」

 

「今日、ディ〇ニーで戦車のエレクトリカルパレードの予定とかあったっけ?」

 

「いいえ。無いわ・・・・・」

 

「でもあんな派手な塗装の戦車初めて見ましたわ。一輌だけ百式ですし・・・・」

 

「まともなのは・・・・・Ⅳ号と八九式とM3ぐらいだね・・・・・・」

 

「アーニャ。Ⅳ号はともかくなんで八九式とM3はセーフなの?」

 

「八九式のように車体に文字を書くのは大戦中のロシア戦車だってあったし、それにM3はデザートピンクでしょ?」

 

「八九式のことはわかったけどM3のあれはただのピンクでしょ?目立ちすぎるわよ」

 

アーニャの言葉にハルカが突っ込むと、りほはフフッて笑っていた。

 

「なんだか楽しそうですわね、りほさん?」

 

「うん。なんか戦車をこんなにしちゃうなんて面白いなって思って」

 

「確かに最初は驚きましたけど、ああいうペイントもなかなか味があって面白そうですね」

 

「確かにある意味そうだな・・・・・・」

 

と、りほの言葉にジャスミン、ナポリがそう言う。りほがⅣ号の方を見ると、そこにはまだ若き母であるみほとその友人であるアンコウチームがいて、秋山さんは何かガックシうなだれているみたいだが、母であるみほは何やら楽しげな表情をしていた。

そして金ぴかピンの38tを見ていた杏は、

 

「いいね~河嶋。例の件すぐに先方に伝えてくれない?」

 

「はっ。連絡してまいります」

 

杏がそう言い、河嶋さんは角谷さんにそう言われその場を後にする。そしてM3リーの一年生たちが格納庫にやって来たりほたちを見ると・・・・・

 

「あ!未来人!!」

 

「あっ!本当だあの新聞の子達だ!!」

 

そう言った瞬間、その場にいた全員が、りほたちの方に集中した。その時の表情を見たりほたちは、

 

『マ、まずい・・・・』

 

少し焦った状態でそう思ったが、その予感は見事に的中し、みんな獲物に飛びかかる様に6人に群がる。

 

「ねえねえ!未来から来たって本当なんですか!!」

 

「どうやってこの時代に来たの!!」

 

「ドラえも〇っていますか!!」

 

「未来ではバレー部復活していますか!もしくはバレーの時代来ているんですか!?」

 

と、ものすごい勢いで質問攻めをする。予想はしていたが一斉に飛びかかれてはたまったもんじゃない。アーニャに至っては身長が低いせいでもみくちゃ状態で目を回している。

 

「ストーップ!一人ずつ、ね?お願いします、私たち聖徳太子じゃないですし」

 

りほが慌ててそう言うと、みんなりほに取り敢えず賛同してくれたのか一歩下がる。一年生チームの車長、梓が手をあげて、

 

「あ、あの!未来から来たって本当なんですか!?」

 

と、梓が質問をするとリリーは、

 

「yesかnoか訊かれたらyesになるね」

 

「ほう?あの新聞のことだから眉唾かと思ったらまさかここでタイムトラベラーに出会うとは・・・」

 

とドイツ軍の軍服と帽子をかぶった人がそう言う。

 

「えっと・・・・あなたは確かパンドラズアクターさんでしたっけ?」

 

「エルヴィンだ」

 

ジャスミンの言葉にエルヴィンさんは苦笑して言う。エルヴィン。本名は松本里子で欧州の歴史に詳しい歴女でありカバさんチームの車長。りほの時代では大洗大学の欧州戦史の教授であり教師を務めている。

 

「それで?私は疑うのは好きじゃないが、本当に君たちは未来から来たのか?」

 

とエルヴィンが質問すると・・・・・

 

「はいはい!みんな聞きたいことがあると思うけどね。それは後にしない~?」

 

とそこへ杏がやってくる。沙織が、

 

「あ、会長。伊庭さんたちが未来から来たっていうのは・・・・・・」

 

「うん。ほんとだよ?でもねそう言う質問は練習が終わった後にしようか。練習が終わった後、軽く伊庭ちゃんたちの歓迎会をする予定だからね~」

 

い、いつの間に?とりほたちが驚くが他の生徒たちは、

 

「ああ・・・・それなら」

 

「歓迎会ならお菓子とかジュースとか食べながら訊けるもんね?」

 

となぜか納得したように各自戦車に戻っていった。そして杏はりほたちを見て、

 

「・・・・で、りほちゃん。いいの喋っちゃって?」

 

「は・・・はい。昨日部屋に戻った後、みんなで相談して下手にぼろが出て悪い方向に行っちゃうなら話せる範囲で言うという決断を取りました。無論誰が将来何になるとかは言えませんけど・・・・」

 

「だよね~。特に西住ちゃん・・・・・りほちゃんのお母さんには言えないもんね~。自分が20年後から来た娘ですなんて・・・・」

 

「え・・ええ・・・」

 

「ま、君たちが未来人だという事が知れちゃったのは私たち生徒会にも責任があるからさ、いろいろサポートはするよ」

 

「ありがとうございます杏さん」

 

「いいって、いいって未来の後輩だしさ、助け合わないと」

 

とにっこり笑う杏さん。それを見たリリーたちは『また裏があるんじゃないか?』と少し疑いの目を向けていたが、りほは、

 

「はい。よろしくお願いします」

 

と頷くのだった。そして杏たちは戦車に戻り、りほたちもエーデルワイス号に戻る。その中、リリーとナポリとハルカは、

 

「いや~予想はしていたけど、かなりすごかったね~」

 

「ええ。これは練習後の歓迎会で質問攻めにあうわね・・・・・・」

 

「それにしてもいつの間に生徒会の人たち、歓迎会の準備していたんだろう?」

 

と、そう言いりほを見ると、

 

「杏さんて、ああ見えてイベント好きだから、たぶん私たちが生徒会につかまって杏さんたちに未来人だって言ったときから計画していたんだと思う」

 

「ああ、それならなんか納得ですわ・・・・・でもどんな質問をされるでしょう?」

 

「まあなんにしても覚悟と胃薬は持ってないとダメかもね・・・・・」

 

と、あたしたちは少し重いため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

一方、とある場所では・・・・・

 

「大洗女子学園?戦車道を復活させたのですか?おめでとうございます・・・・」

 

英国風の気品に満ちた部屋で金髪の令嬢が電話で誰かと話していた。その服装は以前ジャスミンが来ていた服と同じ青色の制服だった。

 

「・・・・結構ですわ。受けた勝負は逃げない主義ですの」

 

そう言い電話を切るのであった。そしてその少女の顔は髪形は違うがジャスミンにそっくりの人だったのである・・・・・・




次回はりほたちの歓迎会を書きたいと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いつの時代も作戦は大事

更新遅れてすみません!書こう、書こうと思ったのに気づけばもう12月!!本当に申し訳ございませんでした!
それも誠に申し訳ないのですが歓迎会の前に聖グロリアーナ戦作戦会議を書きたいと思います。
歓迎会は次回になってしまいます。本当に申し訳ございません


あの後、私たちは練習を始めた。無論、練習の指揮は河島さんがとっていた。

練習内容はいたって簡単なものだ。隊列を組んで走行したり、砲撃演習をしたりだ。

そして私たちエーデルワイスチームも練習に本格的に参加した。燃料砲弾は蝶野さんの計らいで、連盟から補給物資が届いた。無論、修理するための戦車整備専用の工具も届いた。

届いたとき、よくエーデルワイス号を整備していたナポリとハルカは泣いて喜んでいたことを今でもはっきり覚えている。

そして今・・・・・

 

「ジャスミン!砲塔旋回!」

 

「はい!」

 

「ハルカ!装填早く!!」

 

「ええ!!」

 

「ナポリ!急停車!!」

 

「おう!」

 

6人は阿吽の呼吸で戦車を動かし、砲塔を旋回させる。そして方針が的に向いた瞬間

 

「撃てっ!!」

 

りほの言葉にジャスミンが引き金を引くと放たれた砲弾は的から数ミリ離れたところに当たってしまう

 

「す、すみません・・・・」

 

「いや、ジャスミンは悪くないよ。それにあれだけ激しく動いての急停車で的に当てるのは難しいから」

 

「リホーシャの言う通りよジャスミン。気にしないで」

 

「そうそう。射撃の訓練でも的を狙って打ち込む弾もたまには外れる時だってあるよ。とあるブラックな防衛チームの一週間の歌にもあるし」

 

「ハルカ。そのネタ古いわよ。今時それ知っている人、平成の世でもいないぞ?」

 

ハルカの言葉にリリーはそう突っ込む。

 

「いまのところ順調だね。りほ」

 

「うん。そうだね・・・・・」

 

ジャスミンの言葉にりほは頷く。そして練習をしている最中

 

「そう言えば・・・・・」

 

「ン?どうした。りほ?」

 

りほが何かを思い出したような表情をするとナポリが振り向き訊くと、りほは

 

「うん・・・歴史通りならこの後、他校との練習試合があるな~って思って」

 

「あ、それ私も知っていますわ。確か我が校、聖グロリアーナ女学院との試合でしたわよね?」

 

ジャスミンが頷いてそういう。そう歴史通りならこの後、大洗女子戦車道チームは初めて他校と試合するのだ。しかも相手は準優勝経験のある強豪校、聖グロリアーナ女学院。つまりジャスミンの母校なのだ

 

「そっか・・・・・それでリホーシャ。あなたはどうしたいの?」

 

「え?」

 

「だから試合についてよ。参加するの?リホーシャ。そのことで悩んでいるでしょ?」

 

「うん」

 

アーニャの言葉にりほは頷く。りほ個人としては試合でみんなで練習した成果を発揮したい。そう思っていた。しかし、しかしだこの試合は大洗の戦車道チームの初陣でもあり歴史的にも有名な戦いの一つ。

歴史では無名だった大洗女子が強豪である聖グロリアーナに対し負けはしたのだが代わりに苦戦させるという戦果を挙げている。

この試合により大洗は聖グロリアーナに好敵手と認められ、それ以降、りほの時代では聖グロリアーナと大洗は黒森峰を除けば宿命のライバルという関係になっている。

もし、自分らが参戦し勝ちでもしたらどうなってしまうかは、りほでも大体の予想はできた。しかも最悪の方向になりかねないという予想だ

 

「まあ、りほが悩むのも無理はないな。私だって考えちゃうよ」

 

「確かに。私たち個人としては参戦したいけど・・・・そうしたら」

 

「下手したら歴史が狂う」

 

「ここは、みんなで相談しないとね・・・・・」

 

そう言い、里穂たちは練習をしながら試合に参戦するかどうか相談しあうのであった。

 

そして練習試合が終わり、夕焼けに染まる学園に皆が集まる中皆の先頭に立つ生徒会三人衆の一人である河嶋さんが

 

「今日の訓練ご苦労であった!」

 

『お疲れ様でした〜』

 

河嶋さんの言葉に皆は挨拶をする。

 

「えぇ、急ではあるが、今度の日曜日練習試合を行う事になった。相手は聖グロリアーナ女学院!!」

 

「「「(来たっ!!)」」」

 

河嶋さんの言葉にりほたちの顔は強張る。りほはちらっと隣にいる若き母・・・・みほを見ると

秋山さんが聖グロリアーナについてみんなに説明をしていた。

 

「場所は近日寄る港・・・・大洗町で日曜日の10時に試合開始のため朝六時に学校に集合!」

 

とそう言う。ここまでは歴史通りだ。すると・・・・

 

「……やめる」

 

「はい?」

 

「やっぱり戦車道やめる」

 

「もうですか!?」

 

「麻子は朝が弱いんだよ……」

 

麻子は絶望した表情で夕日に向かい帰ろうとしていくそれを見たみほたちが追いかける。それを見たナポリが

 

「ねえ、りほ。止めなくていいの?確かあの人、冷泉麻子でしょ?伝説の操縦手の」

 

「そうですよ。やめられちゃったら歴史が・・・・・」

 

ナポリとジャスミンが焦って言う中、りほは

 

「大丈夫。大丈夫・・・・・ほら」

 

「・・・・え?」

 

りほが麻子の方を見てみんながその方向を見ると・・・・

 

「それにさ、ちゃんと卒業しないとおばあちゃん物凄く怒るよ?」

 

「おばぁ!?・・・・・・・わかった・・・・やる」

 

と、冷泉はしぶしぶ承諾していた

 

「ほらね」

 

「りほ・・・・・まさか知ってた?」

 

「うん。それに冷泉さんは義理堅い人だって前に竹部先生に聞いたことがあったから、確か昔お母さんに借りがあったから戦車道をしたって本人にも聞いたことがあったし」

 

「なるほど…義理堅い人が義を返さないわけがない・・・・てやつね」

 

りほの言葉にハルカが納得する。

 

 

 

 

 

 

その後、練習が終わった後、みほ、それにほかの戦車長は角谷さんたちに急遽生徒会室に集まるように言われた。その理由は今週末に行われる練習試合に向けて対策会議をするというのが理由だった。

 

「いいか、相手の聖グロリアーナ女学院は強固な装甲と連携力を活かした浸透強襲戦術を得意としている」

 

河島さんがボードに張られた聖グロリアーナの主力戦車のマチルダ。そしてチャーチル歩兵戦車のスペックや聖グロリアーナの戦法を説明していた。その話を聞いていたのは車長であるみほ、それにM3の車長の澤さんに三突のカエサル。彼女は車長じゃないのだが歴女たちの中ではリーダー格なのでここにいる。そして八九式の磯部さん通称「キャプテン」だった。そして本来この時代にいないはずのイレギュラー。エーデルワイス号こと五式戦車車長、伊庭りほ・・・・西住りほが出席していた

 

「とにかく相手の戦車は堅い、主力のマチルダⅡに対して我々の方は100メートル以内でないと通用しないと思え」

 

まあ、河島さんに言うことは間違いではない。マチルダの最大装甲は75㎜以上。三突かうちの五式じゃないと遠距離からの攻撃は難しい。しかも丸みを帯びた装甲だから弾きやすい。その間に河嶋さんは話を続ける

 

「そこで一両が囮になってこちらの有利となるキルゾーンに敵を引きずり込み、高低差を利用して残りがこれを叩く!」

 

 

その言葉にみんなは頷いたり、勝利を確信した顔になる中、不安そうな表情をするものが二名いた

 

「西住ちゃん。伊庭ちゃん。どうかした~?」

 

そう、みほとりほであった。その二人の表情を見た角谷が二人に訊く。みほは遠慮するが

 

「いいから言ってみ~」

 

と、優しく促す。するとみほは静かにこう言った

 

「・・・・・聖グロリアーナ当然こちらが囮を仕掛けてくることは想定すると思います。裏をかかれ逆包囲される可能性があるので……」

 

「あ~確かに!」

 

と、みほの言葉にみんなが納得する。すると

 

「うるさい!私の作戦に口を挟むな!そんなに言うならお前が隊長をやれ!」

 

「・・・すみません」

 

と、みほに怒鳴りそして

 

「伊庭!お前も未来人ならこの試合の未来を教えたらどうだ!!」

 

「・・・・・」

 

河嶋さんにそう言われりほは黙る。そして皆は興味津々な顔で見るのだが

 

「お断りします。未来のことは言うことはできません」

 

「なんだと!」

 

「当たり前です。未来を知るのがどんなリスクを背負うかは前に説明したはずです」

 

「なにを~!!貴様いくらにしz「河嶋っ!!」っ!?」

 

河嶋さんが言いかけた時、急に角谷さんが珍しく声を荒げる。その声に皆は驚き、角谷さんの顔を見ると、いつも飄々した顔ではなく、真剣な表情で河嶋さんを見ていた

 

「河嶋。落ちつけ・・・・・」

 

「・・・・あ。・・・・す、すみません会長」

 

静かな声で言う角谷さんに河嶋さんは冷静になり謝ると角谷さんはいつもの表情になり

 

「まあ、河嶋の言うこともわかるけど、そう言うズルはやめようよ。伊庭ちゃんにも立場っていうのがあるし・・・・・・それで伊庭ちゃん。ほかにも何か言いたいことがあるんだよね?」

 

角谷がそう言うとりほは頷き

 

「はい。実は今回の試合・・・・・みんなで話し合ったんですけど、参戦しないことに決めました」

 

「「「え!?」」

 

りほの言葉に杏以外の子たちは驚いた表情をする

 

「ど、どうしてですか!?」

 

磯部が訊くと

 

「今回の試合は大洗女子の初陣です。そして私はこの時代にいるはずのないイレギュラー・・・・そのイレギュラーが参加したら結果はどうであれ・・・」

 

「歴史がおかしくなる。そう言いたいんだよね?伊庭ちゃん」

 

「はい。それに・・・・・・」

 

「それに?」

 

「20年前の先輩がどんな戦いをしたのかこの目で見たいんです。本での記録ではなく私自身の目で」

 

りほは力強く言うと杏は

 

「そっか・・・・・そう言う理由なら仕方ないね~わかったよ」

 

「え?会長いいんですか?」

 

「私は相手の意見を尊重する方だよ。まあ、伊庭ちゃんの言うことも一理あるしね。下手に歴史が変わっちゃたら、伊庭ちゃんたち未来に帰れなくなっちゃうしね。みんなも異論はないよね~?」

 

角谷がそう言うと皆は黙ってしまう。確かにりほたちが帰れなくなるのは自分たちにとっても責任を感じてしまう。本当は参戦してほしいのだが事情が事情のため皆は静かに頷くのだった

 

「じゃあ、異論は無いっということで。ああそれと西住ちゃん」

 

「は、はい?」

 

「西住ちゃんが隊長をやって、うちのチームを引っ張てね」

 

「えっ!?」

 

角谷の言葉にみほは驚くと笑顔で拍手をして、それに釣られる様に他の子達も拍手をする。

 

「頑張ってよー、勝ったら素晴らしい商品をあげるから」

 

「え?何ですか?」

 

「私がこよなく愛するこの最高級干し芋三日分!!」

 

と3本の指を突き出し、嬉しそうに言う。それを聞いてみんな呆れた顔をする。

 

「あの、もし負けたら?」

 

と磯部が負けた時の処遇があるのか聞くと、

 

「大納涼祭りでアンコウ踊りを踊ってもらおうかな〜?」

 

そう角谷が言うと皆が固まり顔が青ざめていた。しかしみほはアンコウ踊りが何なのか知らずに首を傾げりほは

 

「(ごめんなさいお母さん・・・・・一緒に戦えなくて)」

 

アンコウ踊りの悲惨さを知っているりほも心の中で若き母に謝った。その後、会議は終わり皆が生徒会室を出る中、りほは角谷に呼び止められ残った。そして・・・・・

 

「いや~伊庭ちゃん・・・・いいや、りほちゃん。ごめんね~うちの河嶋が」

 

「すまない伊庭!危うくお前の正体ばらすところだった!」

 

「ごめんね」

 

と、三人は謝る。りほは

 

「いいんですよ別に、わざとじゃないことはわかりましたから」

 

そう言うりほに河嶋がほっとすると、柚子が

 

「あ、あのりほさん。試合の件だけど、本当に参加しないの?」

 

「はい。みんなで話し合って決めたんです。勝敗関係なく・・・・・」

 

「歴史の入り口はちゃんとそのままにしたい・・・・そうでしょ?」

 

「アハハ・・・・干し芋姉さんにはわかってましたか」

 

杏はりほの気持ちや考えてたことを見透かしていたようだ。そのことにりほは苦笑してしまうと杏は

 

「さて、じゃあ試合についての話はこれでおしまい。この後の夜に体育館でりほちゃんたちの歓迎会をするからね。楽しみにしてよ」

 

と、ニコッと笑う角谷さん。そう言えば今朝も夜の7時に体育館に集合ってみんなに言っていたことをりほは思い出す

 

「楽しみにしててね~河嶋がかくし芸にパンプキンシザーズ音頭を踊るみたいだから」

 

「なっ!?会長!!」

 

「?」

 

角谷さんの言葉に河嶋さんは顔を真っ赤にし、りほは訳が分からず首をかしげるのであったのだった・・・・・

 

 

 

 

 

 




次回歓迎会です!
因みに河嶋さんのパンプキンシザーズ音頭は中の人つながりです
次回も頑張って書きたいと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レッツ!パーレイ!!!

皆さんお久しぶりです。書こう書こうと思ってはいたのですがなかなか内容がまとまらずに今日までかかってしまいましたが、今回はまだパーティー内容が決まっていないため、りほたちがパーティーに行くまでの話を書きました。
本当に短めです。本当にすみません


聖グロリアーナの試合についてのミーティングが終わった後、私はみんなで一緒に住んでいる家に戻て、少し休憩を取っていた。

なんでも、少し後に体育館で私たちの歓迎会をするらしい。そのため私たちはいったん家に戻り、歓迎会の準備をしていた。アーニャとナポリはアーニャ特性の鳥のミルクケーキ作り。私とジャスミンはクッキーを焼いていた

いや手ぶらじゃいろいろダメでしょ?

 

「アーニャ。生クリームはこう飾り付ければいいのか?」

 

「うん。そう。ジャスミンクッキーの方は?」

 

「もうすぐ焼けるよ・・・・て、リリー。なにしているの?」

 

「パティーグッツの整理。持って行ったらきっと盛り上がるよ~」

 

「サンダース出身はパーティーとか好きだよね?」

 

「いいじゃん。パーティーが嫌いな人はいないでしょ?ハルカは嫌いなの?」

 

「いいや。大好きよ?」

 

カバンの中にいろんなパーティー用の道具を入れてうきうきした表情をするリリー。

みんなお祭り気分だった。

そして準備が終わり、みんな荷物をもって体育館へ行こうとするとハルカが

 

「あれ?」

 

「どうしたのハルカ?忘れ物?」

 

「いや。ちょっと気づいちゃったんだけど、あそこの柱。取れかかっているわよ」

 

「え?」

 

私がそう訊くとハルカが部屋にある柱の一本を指さすと確かに柱が溝から出かかっていた。それはこの部屋を支える柱の一本だ

 

「あ、ほんとだ。この前、直したばかりなのにな・・・・ちょっと待ってて金づちで打ってはめるから」

 

「ありがと。外れたら大変だもんね」

 

「うん。住んでるところが壊れたら倉庫で暮らさないと・・・・あ、歓迎会パーティーまで時間あるジャスミン?」

 

「え~と・・・・・ここから体育館までの時間を考えますと10分ですわね」

 

「じゃ、、まだ間に合うわね」

 

ジャスミンが壁にかかっている時計を見てそう言うと

 

「おまたせー!金づち持ってきたよ~」

 

そこへナポリが金づちをもってやってきた

 

「ここだよね?」

 

「うん。そうだよ」

 

私が頷くと、ナポリは溝から外れかかっていた柱を金づちでたたき元に戻す。すると・・・・

 

ガコ・・・・

 

「「「え?」」」

 

後ろから音がし、みんな振り向くと後ろのもう一本の柱が溝から外れかかっていた

 

「あれ?ここも?」

 

「ここ結構古い建物だからね・・・・・ナポリ?」

 

「任せろ」

 

そう言いナポリは反対側の柱を金づちで叩き、元に戻す

 

「よし!これで…『ガコッ』・・・え?」

 

また後ろで音がして振り向くと今度はさっきはめたばかりの柱が溝から出かかっていた

それを見たナポリがまたその柱の元に行って叩き直す。すると今度はさっき直した柱がまた飛び出てきた

 

「ちょっと何でよ!」

 

「まるでモグラ叩きね」

 

「どうするの?時間がないよ?」

 

「またやっても飛び出すと思うから・・・・・そうだ。ハルカ、りほ。その柱出ないように抑えてくれる?」

 

「わかった」

 

そう言い私とハルカは柱を抑えて、ナポリは

 

「あれ?なんか硬いな・・・・これで・・・・どうだ!!」

 

と、強く柱を叩き柱は溝にはまるのだが・・・・・

 

ガシャーン!!!

 

急に天井から、たらいが私たち5人の頭上に振ってきて頭に直撃し、私たち五人は畳の上に倒れる。そしてアーニャが起きだし

 

「ドリフかっ!!てか、どっかからたらいが落ちてきたの!?」

 

「いたた・・・・てかアーニャ。よくそんな大昔の番組知っているよね?」

 

「ドリフはね。時代を超えた歴史上伝説の番組なのよ・・・・・・あ、ダメだ。キザな詩人風に決めたつもりだったけど、やっぱりカンテレがないとなんか閉まらないわね」

 

「継続のあの人じゃないんですよ。それより時間。そろそろ行かないと遅刻しちゃうわよ」

 

「ああ、そうだった。そろそろ出発しないと」

 

「このたらい。どうする?」

 

「とりあえず隅に置いていて。後で罠とかに使うから」

 

「お~いいね。これで侵入者は落下するたらいの餌食ね」

 

私がそう言いみんな落ちてきたたらいを部屋の隅に置いて、そして荷物をまとめて歓迎パーティーが行われる体育館へと向かうのであった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

歓迎パーティーは盛大に

「はいは~い!みんな注目!!これから未来から来た伊庭ちゃんたちの歓迎会をするぞ!!」

 

学校の体育館の中、杏が声を上げてそう言うと、すでに体育館に集まっていたみんなは拍手をする

 

「拍手~!」

 

『『『『『『『『わー!』』』』』』』』

 

「止め~!」

 

「「「「(早っ!?」」」」」

 

杏の音頭で拍手をするメンバーであったが、次の瞬間には止めさせる杏に、りほたちは内心突っ込んでしまう

 

「じゃあ、まずは軽く自己紹介をしようか~まずは伊庭ちゃんからね?」

 

「は、はい!西・・・・・伊庭りほです!」

 

「アナスタシアよ。こう見えても18だから子ども扱いはしないでよね」

 

「リリーだよ!よろしくね!」

 

「ナポリだ。よろしく!」

 

「ハルカです」

 

「ジャスミンと申します。よろしくお願いします」

 

と、りほたちが挨拶し、そして大洗女子側もあんこうチームを最初にあいさつと自己紹介をする

 

「さて自己紹介が終わったところで、パーティーを始めようっか!!」

 

杏の音頭で皆、机に並べられたお菓子やジュースを飲んで楽しく話をしていた。すると坂口が

 

「ねえねえ。伊庭さんたちって本当に未来から来たんですか?」

 

坂口の言葉に皆は伊庭たちを注目するとりほは

 

「こうして楽しくお菓子とジュースを飲んですると真実味が薄れちゃうけど。本当です。私たちは20年後の未来から来たんです」

 

りほがそう言うとアーニャたちもうんうんとうなずく。それを見たみんなは

 

「やっぱり、あの新聞本当だったんだ~」

 

「また。大げさに書いているんだと思っていたけど、まさかタイムスリップとは」

 

「そんなの映画の中だけの話だと思ったぜよ」

 

と、みんなガヤガヤ話すとあんこうチームの優花里が

 

「それで、伊庭殿たちはどういった目的でこの時代に?」

 

「いや、実は私たちにもわからないのよ」

 

「わからない?」

 

「うん。私たちいろいろあってであって結成したチームなんだけどね?雨の日に古い小屋でエーデルワイス号を見つけて、みんなで一緒にエンジンをかけたら雷に打たれて気が付いたらこの時代に来ていたんだよ」

 

リリーが説明すると麻子が

 

「信じられん話だが、タイムスリップ理論は理論上は存在が認められているみたいだが……」

 

「ということは伊庭殿たちの戦車がタイムマシンになったというわけですか!!」

 

「世の中、まだまだ不思議なことが多いのですね?」

 

「その割には華。あまり驚いていないよ?」

 

と、話す中、みほは

 

「ねえ、伊庭さん。もしかして家族は残してきたまんまなの?」

 

「う・・・うん・・・・」

 

「帰ろうとは思わない?」

 

「帰り方が分からないので。私たちは時空の漂流者・・・迷子なわけですし。だからこの時代で帰り方を探していたんです」

 

「そうだったんだ・・・・伊庭さんたちはどうするの?」

 

「元の世界に変える方法を探しつつ、この学校で戦車道をすることを条件に角谷さんに保護してもらっています」

 

「それで手掛かりは見つかったの?」

 

沙織が訊くとアーニャが答えた

 

「全然ダメ。一歩たりとも前進していないわ」

 

「アーニャの言うと通りなんです」

 

「それは心配ですね?」

 

「でも大丈夫です。自分たちのことは自分たちでやりますので、おか・・・西住さんたちにはご迷惑をおかけしません・・・・」

 

りほがそう軽く笑って言うと

 

「いけません」

 

「え?」

 

華は首を横に振って否定すると麻子も

 

「そうだ。たった5人ではできないことも多いだろう」

 

「まっかせてよ。私の情報網を利用すれば未来だろうが、過去だろうが絶対にタイムスリップについての情報をゲットできちゃうから」

 

「沙織さんの情報網は結婚情報誌ぐらいでは?」

 

「みなさん……」

 

「こんなときだからこそ、頼ってほしいな、私も伊庭さんたちの力になりたいから・・・・・」

 

「皆さん・・・・・ありがとうございますっ!」

 

りほは嬉しそうにみんなに礼を言うとそれを見たアーニャは微笑ましそうに見ていた

 

「あ、そう言えばりほさんたちって20年後の未来から来たんだよね?」

 

「う、うん。皆さんのことも大体は知っています。この学校の大先輩ですし・・・・」

 

「じゃあ、20年後の私たちってどうなっているのかな?」

 

「沙織・・・さすがにそれは……」

 

「え~だって。20年後の私ってどんな人と結婚しているか知りたいじゃない。麻子は知りたくないの?」

 

「未来を知るのはズルをすることだ。それに先のことを知ってもつまらないだけだ。自分には自分の人生があるし、他人から聞かされた可能性の一つを知っても意味がない」

 

と、麻子は沙織にそう言うとりほも

 

「すみません。私もそう言う系は言っちゃダメなので。下手をして未来が変わったら帰れなくなっちゃうので」

 

「そっか~残念」

 

「で、でも沙織さんはとっても幸せな生活をして、みんなからは女神だって言われていることだけは言っておきます」

 

「そおっ!やっぱり私にも家庭ができているんだ!!」

 

ウキウキしながら言う沙織にりほは

 

「(言えない・・・・・・・教師になっても尚、独身のままだなんて口が裂けても言えない・・・・)」

 

りほの知る沙織は

りほの学校の担任の先生となっており、女子からの人気がすごく高いのだが、なぜかいまだに独身。理由としては以前、冷泉さんに訊いたら『女子力が高すぎて周りの男たちからは高嶺の花とされて、男の方が遠慮してしまっている』とのこと。でも最近武部先生、彼氏ができたと嬉しそうに言っていたのは覚えている。

 

すると、リリーはもってきたリュックをあさっていた

 

「リリー何をしているの?」

 

「パーティーグッツ!確か元居た時代から持ってきたものが……あ!あったあった!!」

 

そう言いリリーはリュックからあるものを出した

 

「ジャジャジャジャーン『スラウター』!!!!」

 

と、リリーは単眼式ヘッドマウントディスプレイを取り出してそう言う

 

「何それリリー?それどっかの伝説的な漫画で見たことがあるんだけど。というよりそれスカウターだよね?」

 

「違うわ。これはサンダースが開発したスラウター。平たく言えば相手のモテ戦闘能力を計測できるものよ」

 

「完全にスカウターじゃない!てかモテ戦闘能力って何!!?」

 

と、ナポリがそう突っ込む中、リリーはスラウターを着け稼働させる。そして

 

「じゃあ、まずは沙織さんからね」

 

「いいよ。いいよ。私のモテ度がどんぐらいなのか見て見て~」

 

と、そう言う中、リリーは沙織のモテ度を測ると数値が出た

 

「出た。武部さんのモテ度は362M・・・・なかなかの数値ね」

 

「Mって何よそれすごいの?」

 

「あ、分かった!MってモテるのMだよね?」

 

「違うわ。桃362個分のモテ度を有しているのよ」

 

「なんで桃なの!?桃一個に何のモテ度もないと思うんだけど!?」

 

リリーの言葉にナポリが突っ込むと沙織が

 

「ねえ、リリーさん。それって高い方なの?」

 

「うん。普通の人の数値が360だから沙織さんは普通の人より二個分すごいってことになるよ」

 

「たった二個分!?私の今までのモテ修行は何だったの!?』

 

リリーの言葉に今度は沙織が突っ込む。それはそうだ、たった二個分なのだから。すると河嶋が

 

「おい。私の数値はどれくらいなんだ?」

 

河嶋に言われリリーが測定すると

 

「えっと・・・・河嶋さんのは654Mね」

 

「なんで!?なんで私より河嶋先輩の方が上なの!?納得できない!!」

 

「ふ…武部よ。これが上級生として大人としての魅力っという物さ」

 

と、河嶋は得意げに片眼鏡を食いっと上げどや顔でそう言うとその拍子に片眼鏡が落ちる

 

「・・・・あ!片眼鏡が落ちたら1Mに数値が変わったわ」

 

「なんでだっ!?」

 

「あ~河嶋は片眼鏡で来ているから。眼鏡が本体なんじゃない?」

 

「会長!?いくらなんでもおかしいですよ!1ってもはや人間じゃないですよ!!ただの一個の桃ですよ!?」

 

「これで河嶋先輩の名前の桃の字がなくなったらマイナスになったりして・・・・・」

 

「何か言ったか、澤!!」

 

「はうっ!?ご、ごめんなさい!!」

 

一年の澤がそう言いかけた時、河嶋に睨まれすぐさま黙ってしまう。その後みんなの数値を計測するとみんな沙織を除いて500~600クラスだった。

すると

 

「ん!?」

 

「どうしたのリリー?」

 

「ものすごいモテ度反応が・・・・」

 

そう言いリリーは反応のあった方を見るとそこには

 

「え?私?」

 

りほの未来の母であるみほだった

 

「す、すごい!西住さんの今の数値は一万八千!?どんどん上がっている!?2万・・・・三万・・・!どんどん上がっている!!」

 

リリーが驚くとみほの数値が9万以上に上がった瞬間アラームが鳴り響き。そして爆発した

 

「うわっ!」

 

「わっ!リリー大丈夫!?」

 

みんながリリーのそばによるとリリーは

 

「測定不能・・・・・信じられないわ。これが西住流・・・」

 

「いやいやそんな大したもんじゃないと思うよ・・・」

 

と、リリーが無事なのにみんなは安堵した。そして楽しい時間は早く過ぎてしまい。そろそろ解散の時間となっていた

 

「それじゃあ、今日はこれでお開きにしようか」

 

と、会長のこの言葉で今日は解散となった

その帰り道りほたちは

 

「あ~もうこんな時間か・・・・もうちょっと楽しみたかったですね?」

 

「まあまあ、楽しかったからいいじゃないですか?」

 

と談笑しながら住んでいる家へと向かう

 

「それより練習試合までどうします?りほさん?」

 

「そうだね・・・・試合の日曜日は明後日だし、明日はどうしよっか?」

 

と、そう訊くとナポリは

 

「何なら、聖グロリアーナに乗り込んでみないか?」

 

「「「え?」」」

 

ナポリの言葉にみんなが驚くとハルカが

 

「確か明日の明朝、聖グロリアーナ息のコンビニ船がこの学園艦に立ち寄る。そして夕方に大洗学園艦行のコンビニ船が聖グロリアーナの方に立ち寄るし、何もないなら乗り込んでみるのも面白いかも知れない・・・・ジャスミンはどう?」

 

「私ですか?私も20年前の母校がどんなのか気にはなっていましたし…アーニャさんの方は」

 

「私は特に何もないわよ。リリーは?」

 

「私は面白いことがあればいつでも付き合うよ」

 

「リホーシャはどうなの?」

 

「私も面白そうだし構わないかな?」

 

「じゃあ。決定だね」

 

こうしてりほたちは新たな目的を決めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

歓迎式が終わった後、角谷は伊庭にこう尋ねた

 

「そう言えば伊庭ちゃん。どうしても聞きたいことがあるんだよね~」

 

「何ですか角谷さん?」

 

「ちょっと聞くけど、りほちゃんの時代。つまり20年後の内閣総理大臣って誰?」

 

と聞くと、りほはこう答えた

 

「渕上〇。しかも日本初の女性内閣総理大臣」

 

「渕上〇!?あのアニメ声優の?じゃあ外務大臣は誰?中山育〇?さしずめ文部科学大臣は 井口裕〇か!」

 

「なんでバックトゥザフューチャーの流れになるんですか?事実ですよ内閣総理大臣以外は違いますけど」

 

「信じられないね~あ、あとこれさっき伊庭ちゃんたちが見せてくれたスマホなんだけどなんでこれ○○製だよね?よく壊れないね?」

 

「・・・・・何言っているんですか?いいものはみんな○○製ですよ」

 

「・・・・・とても信じられない」

 

と、こんな会話があったりなかったりした

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エーデルワイスチームの潜入録in聖グロリアーナ編

ここは聖グロリアーナ女学園の学園艦。英国海軍空母アークロイヤルに類似した学園艦に所在し、英国風の校風を持つ名門校。戦車道では全国屈指の強豪校でもあり、全国大会準優勝の実績がある学校だ。

その学校の内部に潜入する6人の少女たちがピンクパンサーの音楽とともに入り込んできた。

 

「大丈夫?気づかれてない?」

 

「だいじょうぶ。大丈夫」

 

潜入した6人組とはもちろんりほたちエーデルワイスチームだ。

 

「それにしてもコンビニ船に乗り込むのぎりぎりだったわね?」

 

「まあ、しょうがないよ。私たちの住んでいる小屋にトラップ張り直していたんだから。それで罠の方は大丈夫アーニャ?」

 

「大丈夫。大丈夫。ホームアローン顔負けのトラップ張っておいたから。と言っても火炎放射器やレンガが落ちてくるような危なっかしいのはつけてないから」

 

「グッジョブね!」

 

彼女たちは大洗女子の学園からコンビニ船を使い、ここ聖グロリアーナに来ていた。無論服装は怪しまれないように聖グロリアーナ女学院の生徒服だった。それは出発前に戦車道ショップのグッズで売っていたものを購入したものだった。

 

「それよりジャスミン。あの戦車道ショップって何でも手に入るのね?」

 

「本当に各校の制服まで売ってあるなんて?なんでだろう?」

 

「それは…わたくしも知りたいくらいですわ?なぜでしょう?」

 

聖グロリアーナの制服を着たりほとアーニャがジャスミンに訊くがジャスミンもなぜ売ってあったのか疑問だった。

 

「まあ、それも疑問だけど。まず突っ込みたいことがあるんだけど・・・・」

 

ハルカがちらっとある人物を見る

 

「リリー。ナポリ。その格好何?特にリリー!」

 

ハルカはナポリとリリーを見るとナポリはBC自由学園の、リリーに至っては青師団高校の格好をしていた

 

「え?今日は青い制服を着ると聞いたから?」

 

「確かに青いけど、ナポリはともかくリリーはそんな破廉恥な格好はダメ!」

 

「それにあの学校は巨乳の子しか着ないから!胸が慎ましいリリーには似合わないって!」

 

「ちょっとどういう意味よそれ!確かに胸はアリサお姉さん級だけどね!いつかはママのように大きくなるんだからね!!」

 

違う制服を着ているナポリとリリー。特にリリーの格好にアーニャの言葉にリリーは胸のことを気にしているのか、もしくは母親であるケイに何かコンプレックスを感じていたのか顔を真っ赤にしてそう言う

 

「ごめんごめん・・・・でも聖グロでその格好はまずいから。私の予備の服装貸してあげるから着替えなおしてきて」

 

「ほら、ナポリも」

 

「わ、わかった」

 

「すぐに着替えてくる」

 

そう言い二人はりほとジャスミンに予備の聖グロの制服を貸してもらい着替えなおすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して・・・・・

 

「ここが聖グロなのね・・・・」

 

「すごーいまるでイギリスにいるみたい」

 

「あれってビッグベン!?すごい!」

 

「あっちにはロンドン塔に観覧車がある・・・・・ねえ本当にここ日本の学園艦?間違ってイギリス行の船に乗っちゃったんじゃないよね?」

 

「それを言うなら他の学園艦だってそうじゃない?」

 

聖グロの制服に着替えたリリーとナポリ。そして未来組一行はイギリス風の校舎や建物を見てそう言う。確かに周りにはロンドン塔、ビッグベン・・・・イギリスの名物という建物がここ聖グロリアーナにあり、それを見たジャスミンを除いたエーデルワイスチームは写真を撮っていた。

そして次に向かった場所はもちろん本来潜入する場所である聖グロリアーナ女学院の学校の校舎であった。

 

「すごい・・・これが聖グロの校舎」

 

「まるでお城みたいだね?」

 

とみんなはそう言う中、

 

「・・・・・」

 

そんな中、ジャスミンはじっとビッグベンを見てあることを思い出した。それはまだ自分が子供のころ、母親であるダージリンに連れられ初めて聖グロリアーナの学園艦に来た時のことだった。

 

『見なさいジャスミン。ここが聖グロリアーナ女学院よ』

 

『すごーい!まるでお城みたい!!』

 

ダージリンに手をつながれ、小さいジャスミンははしゃぎながら学校を見て、まるでお城みたいだという姿にダージリンは、

 

『フフッ…そうねほんとお城みたいね・・・・』

 

『お母様!私いつかこの学校に行く!この学校で戦車に乗ってお母さんみたい優雅な戦車乗りになる!』

 

『あらあら…それは楽しみね。でもその前に紅茶を飲めるようにならないといけないわね』

 

『お紅茶苦いから苦手・・・・でも頑張る!』

 

『ふふ…大きくなったあなたの姿が楽しみね・・・・・』

 

そう言いダージリンは笑顔で小さい頃のジャスミンの頭を撫でるのであった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ジャスミン?ジャスミンてばっ!」

 

「はっ!・・・・な、なんでしょう皆さん?」

 

「どうしたのじゃないわよ。ボーとしていたわよ?」

 

「そうそう。まるで何か回想していたような感じだったぞ?」

 

昔のことを思い出していたジャスミンにアーニャとナポリが少し心配そうに訊く。

 

「す、すみません。つい久しぶりの校舎を見て昔のことを思い出してしまいました」

 

「そう言えばここ、ジャスミンの母校だったっけ?」

 

「どう?今と変わらない?」

 

「そうですわね・・・・・少し新しい感じですね?」

 

「まあ、20年前だしね。それより、まずは何処を見る?」

 

「おすすめは紅茶の園ですが・・・・あそこは幹部級の人しか入れないですから・・・・」

 

「幹部級って言うと?」

 

「仇名が紅茶の銘柄の名前が入っている方ですわ」

 

「ああ。やっぱりあれ仇名だったんだ。本名じゃないんだね?」

 

「当たり前ですリリー。紅茶の名が本名ってどんなキラキラネームですの・・・・病院とかで呼ばれたとき恥ずかしいじゃない」

 

「あ、やっぱりちょっと気にしてた?」

 

「紅茶の名前をもらうのは聖グロ出身にとっては名誉ある事ですが・・・・」

 

と、少し顔を赤くしそう言うジャスミン。きっと昔何かあったのだろうと皆は推測するがあえて聞かなかった。

 

「そう言えば、この学校ジャスミンのお母さんが今いるんだよね?」

 

「そう言えばそうですね。まだ学生だったお母様が今この学校にいる。不思議な感じですわ・・・・」

 

「じゃあ、あの有名な二人もいるんだよな?確かノーブルシスターズの・・・・・・えっと・・・・オポッサムさんとハラペコさんだったけ?」

 

「アッサムお姉さまとオレンジペコお姉さまですわ。ナポリ。後二人に対して失礼ですわよ」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

ジト目でそう言うジャスミン。ナポリが言ったノーブルシスターズとは聖グロリアーナ女学院のダージリン、アッサム、オレンジペコの三人の通称名であり、後にも先にもその称号を持っているのはこの三人だけである

 

「じゃあ、まずは戦車倉庫に行こうよ!イギリスの戦車見て見たいし」

 

「あ、それいい考え!」

 

「うんそうしよ!」

 

りほの提案に皆は賛成し、ジャスミンも、

 

「それはいいですわね。案内しますわ。ああ、それとティーカップを持つことをお忘れなく」

 

「え?なんで?」

 

「聖グロの戦車乗りはいつもティーカップを持っていますの。戦車倉庫にティーカップを持たないと怪しまれますわ」

 

「ああ。だからジャスミン。行くとき数個ティーカップを持ってきたのね?」

 

「そう言うこと…では行きましょう」

 

そう言いりほたちはジャスミンに連れられ、聖グロの戦車倉庫へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、紅茶の園では、

 

「・・・・あら?」

 

「どうかしましたかダージリン様?」

 

「いえペコ。茶柱が立ったのよ」

 

「茶柱ですか?」

 

「ええ。ペコ。こんなイギリスのこんな言い伝えを知ってる?『茶柱が立つと、素敵な訪問者が現れる。』」

 

「はい?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪奇!?聖グロリアーナ呪いの甲冑事件!?

都市伝説や怪奇伝説・・・・・・昔はこの手の話が多かった。

例えば口裂け女に怪人赤マント、人面犬など様々だ・・・・

そして都市伝説と言えば学校の七不思議なんかもその一つ。

 

 

 

そしてここ…聖グロリアーナ女学院にも一つの都市伝説が生まれるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたわ!!」

 

「待ちなさい!!」

 

聖グロリアーナの学校内の廊下で、

 

「各自、バラバラになって退避!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

りほの言葉にリリー、ナポリ、アーニャ、ハルカ、ジャスミンは頷き、バラバラになって逃げた。

なぜこの六人が追われるようになってしまったのかは、

少し時間を遡ること1時間前・・・・・・

 

 

 

 

 

聖グロリアーナ戦車格納庫

 

「すごーい!!これが聖グロリアーナの戦車!!」

 

「まじかで見れるなんて感激!!」

 

格納庫に着くや否やリリーやナポリがスマホで写真を撮りまくっていた。

 

「そんなに興奮すること?リリー?」

 

「いやだってさ。シャーマン以外の戦車、大量にまじかで見るの初めてだったから、ついね」

 

「私もいつもcvばっかりだったから」

 

「でもアンツィオってP40とか最近じゃM15/42中戦車が配備されているじゃない」

 

「P40は一台だけ・・・しかもちょっとボロが出てるし・・・M15/42も配備されたて言っても二両だけ・・・しかもエンジンは中古品だったから修理代の方が高くついちゃう始末だったよ…まあ今は何とか持ち直してはきたんだけど、いつ壊れるかハラハラしてるよ・・・・」

 

とため息交じりにそう言うナポリ。そのため息から彼女の苦労がみんなに伝わるのだった。

 

「あはは…大変なんだね?」

 

「うん・・・・」

 

「それにしても・・・・この時代の聖グロって、まだチャーチルやマチルダⅡが主力なんだ・・・・あっちにクルセイダーあるけど・・・」

 

「ほんと。私たちの時代だと確か・・・・」

 

「うん。私たちのいた時代の私の母校の主力はコメットとかブラックプリンスに代わってきているけど、まだまだマチルダやチャーチルも主力ですわよ」

 

そう言うとジャスミンはチャーチルに近づきそっと触る。

 

「(これが・・・・お母様の乗っていた戦車)」

 

母親が昔、乗っていた戦車を触り感慨にふけるジャスミン

 

「(ああ・・・これはあれだね・・・・)」

 

「(うんわかるわかるよジャスミン・・・・)」

 

「(私も同じ立場だったらそうする・・・)」

 

ジャスミンの気持ちを分かっているのか4人はうんうんとうなずきジャスミンを見守ると・・・・

 

「あー!あなたたち!!!」

 

「「「「っ!?」」」」

 

淑女を目指す聖グロの生徒とは思えないほどの大声に皆は驚き、振り向くとそこに赤髪の真ん中を分けたヘアスタイルの女子がりほたちを指さしていた。

 

「(えっ!?もしかして・・・・ローズヒップお姉さん!?しかも若い!!)」

 

ジャスミンが驚く中、そんなことにも気づかずローズヒップは、

 

「あなたたち!ティーカップにコーラを入れるなんて怪しいですわ!!」

 

「「「「(えっ!?コーラ!?もしかして!!)」」」」」

 

ローズヒップの言葉に皆は思わずリリーのティーカップの中を見ると、みんなが紅茶を入れているのに対し、リリーだけティーカップの中にコーラが入っていた。

 

「(リリー!なんでコーラなんて入れているのよ!?)」

 

「(いやごめんごめん…私どうしてもコーラじゃにとダメなんだよね~紅茶でも行けるけど・・・・ごめん。てへぺろ♪)」

 

「「「「(てへぺろ♪・・・じゃない!!!)」」」」

 

てへぺろ♪表情するリリーに4人は突っ込む中ローズヒップは、

 

「あなたたち怪しいですわ!きっとスパイですね!!捕まえますわ!!!」

 

「ま、まずい逃げるよ!!」

 

「「「「了解!!」」」

 

りほの言葉に皆は頷き逃げ出す。

 

「あ!逃がしませんわ!とっ捕まえますわよ!!」

 

そう言いローズヒップは、りほたちを追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。ローズヒップは応援を呼び、複数人の生徒を連れりほたちを追いかけていた。

 

「リホーシャ!ここでまとまってもまとめて捕まるだけだわ!ここはバラバラになって逃げましょ!」

 

「分かったわ!それじゃ各自、バラバラになって退避!!集合場所はコンビニ定期船が出る時間帯の船の中!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

そう言いりほたちは、バラバラになって逃げるのであった。

 

「あ!別れましたわ!追いかけますわよ!!」

 

そう言いローズヒップたちも分かれてりほたちを追いかけるのだった。

 

「聖グロ一俊足の私を巻くなんてできないのですわ!!」

 

そう言いりほたちを追うローズヒップ。そしてりほたちが角を曲がるのを見て彼女も追いかけ角を曲がると・・・・・・

 

「・・・・あら?」

 

角を曲がってみればそこには誰もいない。あるのはただ西洋甲冑4体が脇に並べられているだけだった。

 

「あらあら…変ですわ?」

 

先ほどまで追いかけていた人物が突如消えたことに、

 

「おかしいですわね?」

 

首をかしげながらローズヒップはその場を去るのだった。そして少し時間がたつと、

 

『・・・ふ~危なかった』

 

一体の甲冑が喋る。

 

『運よく、甲冑があったのが幸いね・・・・て、ナポリ!動かないでよ!!バレちゃでしょ!』

 

『しょうがないだろ!?アーニャを背負ってしかも窮屈な甲冑着ているんだから!!』

 

と、ガチャガチャ動く甲冑。その中にはりほとナポリ、アーニャ、そしてリリーが入っていた。アーニャに至ってはナポリに肩車された状態である。

 

『まあまあ、落ち着いて二人とも・・・・それにしてもジャスミンやハルカ。大丈夫かな・・・・」

 

「あの2人なら大丈夫だと思う・・・・ジャスミンに至っては母港だしうまく逃げきれてると思うけど・・・・・とにかく・・・どうする?」

 

「どうするって・・・・このまま動いたら怪しまれるでしょ?」

 

「本当にごめん…私がティーカップの中にコーラなんて入れたから・・・・」

 

「いやいや・・・リリーのせいじゃないわよ・・・ティーカップの中にコーラ入れてたのは驚きだったけど」

 

「・・・それでどうする?」

 

「どうするって・・・・・・」

 

皆がそう話し合う中・・・・

 

「ここ!ここですわアッサム様!!」

 

「ちょっとローズヒップ!!そんなに引っ張らないで頂戴!!」

 

と、そこへローズヒップが金髪の長い髪をし大きな黒いリボンを付けた女子生徒を連れてきた。それを見たりほたちは甲冑を付けたまま不動の姿勢を取りじっとしていた。

 

「ここ!ここで見失ったのですわ!!」

 

「落ち着きなさい…それで?ここでスパイを見失ったの?」

 

「そうでありますわ!!私の追尾を振り切るなんてただ者じゃありませんわ!!」

 

「でもね・・・・」

 

と、二人はいろいろと話し合っていた。それを見ているりほは、

 

『は…早く行ってくれないかな・・・・』

 

『立ってるの辛い・・・・・』

 

『私・・・・もう支えきれないかも・・・・』

 

『ちょっとナポリ!頑張ってよ!』

 

いつまでも話し続ける二人にりほたちはだんだんじっとしていられなくなると、アーニャを肩車しているナポリの甲冑が若干動く。

 

「あ!!」

 

「どうしたのローズヒップ?」

 

「アッサム様!今あの甲冑動きましたわ!!」

 

「え?」

 

ローズヒップの言葉にアッサムはナポリとアーニャの入った甲冑を見る。

 

「そう言えば・・・・・この甲冑、他のに比べて大きいような・・・・・・まさか」

 

そう言い、アッサムはその甲冑に近づく。

 

「「「ま、まずい!!」」」

 

りほたちは冷や汗をかく。そしてアッサムはアーニャのかぶる甲冑の顔の蓋に手をかけ、

 

「ローズヒップ!!そのスパイはきっとこの甲冑の中に!!」

 

そう言いがばっと開けたすると・・・・・

 

「七代、呪うぞこらぁ~~~!!!!」

 

目を血走らせ、言葉にできないような怖い顔をするアーニャの顔が現れた。

 

「きゃあぁぁぁーーーーーー!!!!!」

 

「で、出ましたわ!!!」

 

その顔にローズヒップとアッサムは顔を真っ青にし悲鳴を上げ、そしてしりもちをつく。

 

「よし!今のうちに!!」

 

そう言いりほたちは甲冑を付けたまま走り出すのだった。

 

「甲冑が!!」

 

「呪いの甲冑ですわ!!!」

 

走り出す中、他の生徒が走る甲冑を見て次々と悲鳴を上げ聖グロの校内は大騒ぎするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ジャスミンは、

 

「皆さん・・・大丈夫かしら・・・・」

 

一人、廊下を歩くジャスミン。すると・・・

 

♪~♪~♪~

 

どこからかピアノの音色が聞こえた。その音に導かれるままジャスミンは音色が聞こえてくる場まで歩きだす。そして一つの部屋にたどり着いた。どうやらピアノの音色はこの部屋の中から聞こえてくるみたいだ

 

「ここですわ・・・・」

 

ジャスミンはドアを開けるとそこにはダージリンがピアノを弾いていて、ジャスミンに気づくと微笑んで、

 

「あら?珍しいお客が来たようですわね?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホームアローン作戦です!

皆さん!お久しぶりです!何とか書くことができました!!


「・・・・あら?珍しいお客様がいらっしゃったわね?」

 

ピアノを弾いていた人はニッコリと私に微笑んだ

 

「(お母・・・・様)」

 

ジャスミンはその人物を知っていた

那覇ダージリン。本名は不明。この時代の聖グロリアーナ女学院戦車道の隊長であり、ジャスミンの母親である

ジャスミンの時代では世界有数の企業の社長であり、世界を駆け巡る富豪でもある

 

「あの・・・えっと・・・・」

 

過去とはいえ、突然の母の再会に戸惑うジャスミンに対しダージリンは

 

「あなた・・・もしかして一年生かしら?」

 

「え?・・・・はい。最近に転入したばかりです」

 

「名前を聞いてもいいかしら?」

 

「はい・・・・ジャスミンと言います」

 

「ジャスミン…いい名前ですね」

 

「はい。お母さまから頂いた名前ですのでとても好きです」

 

「ふふ・・・そうですか」

 

と軽く微笑むダージリン。そしてジャスミンをじっと見る。そして

 

「あ・・・あの・・・なにか?」

 

自分のことをじっと見るダージリンに対し、ジャスミンが恐る恐る訊くとダージリンは

 

「ジャスミンさん・・・・・・・あなた・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「ピアノを弾けますか?」

 

「・・・・・・・はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、りほたちやジャスミンたちとは別に逃げたハルカはというと・・・・

 

「ありがとうございます。ここ結構力が必要で助かりましたよ」

 

「いえいえ、こうして力になれるなんて嬉しいです」

 

戦車格納庫で、戦車の整備をしていた子たちの手伝いをしていた。

理由は逃げている途中、戦車格納庫に戻ってしまい、そこで戦車の整備で困っている一年生らしき生徒を見て、頬っても置けず、何より整備士志望のの血が騒いだのか今に至るというわけだ

 

「他に何か手伝うところあるかしら?」

 

「あ、あの!この転輪についてなんですが!」

 

経験の浅い、一年生の子たちの質問にハルカは丁寧に整備の仕方を教えていた。すると・・・・

 

「で、でたーーー!!」

 

と顔を青ざめて飛び入ってきた数人の生徒たちが入ってきた

 

「どうしましたの?」

 

一年生の一人が訊くと!

 

「か、甲冑が!一人でに動き回っているのですよ!!」

 

「え!?甲冑て記念品として飾られているあの甲冑ですよね?」

 

「動き出すなんてそんな・・・・・」

 

一念たちは信じられない表情をしている中、ハルカは

 

「(それ・・・・絶対にりほたちのことね・・・・)」

 

動き出す甲冑の正体に気づきながらも黙っていた

 

「でも・・・・まさか・・・」

 

「本当なんですって!見てください!この子の姿を!」

 

と、一人の生徒を指さすと、顔を青ざめ、ぶるぶる震えている生徒が仰向けで寝かされ、仲間に介抱されていた

 

「動く甲冑を見てこうなってしまったのよ!」

 

「確かに彼女は幽霊以外怖いものなしで有名な子ですが・・・・まさか本当に」

 

皆がざわめく中、ハルカは

 

「少しこの子と話をしてもいいかしら?」

 

「え・・・ええ」

 

一年生が頷くとハルカは震えている子の傍により

 

「わたし、よく後輩のカウンセリングをしたことがあるの。大丈夫?お話しできる?」

 

ハルカがその子に訊くと彼女は小さく頷く。そしてハルカは

 

「じゃあ、軽く質問するわね。あなたは動く甲冑を見たのね?」

 

「・・・・・」コクコク

 

「じゃあ、次の質問。これまであなたの知り合いの中で心の病にかかったことは?」

 

「・・・・・・伯父が自分のことをキリストだと・・・・・」

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

その言葉に皆は気まずそうな表情をする

 

「それはつまり・・・・・イエスってことね。ではカウンセリングを続けましょ」

 

そういいハルカは彼女のカウンセリングを続けるのであった

 

 

 

 

 

一方、りほたちは

 

「こっちに逃げましたわよ!!」

 

「逃がしませんわよ!!」

 

甲冑を着たまま逃げるりほたちを追いかけるアッサム達

 

「どうするのリホーシャ!このままだと捕まっちゃうわよ!」

 

「てかこの甲冑重い!動きずらい!昔の人。よくこれで戦えたな!」

 

「あっ!あそこに資料室があるよ!」

 

「よし!そこに入ろう!!」

 

りほたちは資料室に入り込む

 

「どうするの!りほ!ここで籠城しても捕まるよ!」

 

「裏口があるけど、このままだとすぐに追いつかれちゃうなんとか時間を稼ぐ方法は・・・・・」

 

りほは考えていると

 

「おー!ねえ、りほここにテレビあるよ!それにこれ使えるかも!」

 

と、リリーは部屋の奥にテレビとDVDプレイヤーを見つけ、そして一つのDVDを見つけた。それはギャング者だった

 

「これ、うちの先輩たちが作ったサンダースの映画。小さいころアリサ姉さんが見せてくれた奴。これで時間を稼ごう」

 

「・・・よし、それでいこう!「ホームアローン作戦」開始!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 

「こっちに逃げましたわ!!」

 

「観念しなさい!」

 

アッサム達はりほたちが逃げた資料室へと入り込むと・・・・

 

《そこを動くな!!》

 

「「っ!?」」

 

部屋の奥から女性の声が聞こえた。

 

《慌ただしく入って気品がない!!》

 

「すみません!ですがわたくしたちはスパイを探しているんです」

 

アッサムは声を聴く限り、例のスパイではなく先に資料室にいた生徒だと思い返事をする。

 

《あなただってことは・・・・・階段を上がってきた時からわかっていました…あなた夕べもここに来たでしょ!》

 

「え・・・えええ・・・資料を取りに」

 

アッサムが声の主に答えると

 

《ここで・・・・私の妹と裸で引っ付いていただろ!》

 

「え!?」

 

「・・・・アッサム様?」

 

声の主の言葉にアッサムの周りにいた、ローズヒップ。ルクリリ、バニラ、がアッサムを見るとアッサムは

 

「ふざけたことを言わないでください!」

 

《とぼけないでくださる!女とわかれば手当たり次第!アニー!メリーショー!ブロッサム‼ブ女のリー!」

 

と声の主は次々と女の生をを言う中、他のみんなは

 

「アッサム様・・・まさか」

 

「ダージリン様やオレンジペコさんと百合百合しい関係とは思っていましたが・・・まさか本当に・・・・」

 

「いや、違いますからね!本当に!!」

 

皆が呆れた視線を向け、アッサムは慌てて言う中ルクリリもやれやれという表情をするが・・・・

 

《そしてルクリリ!!!》

 

「っ!?」

 

自分の名前を出されて驚くルリリに対しみんなの視線は今度はルクリリに向けられる

 

「ち・・・違いますわ!わたくしではありません!」

 

と必死に弁明するルクリリ

 

《名前を上げたらきりがない!》

 

「お言葉ですが、わたくしたちはこの学校に潜入したスパイを探しに来たんですこの部屋にもぐりこんだと思って・・・・」

 

アッサムはそう言うと

 

《なるほど理由はわかった…だが俺は信じても!戦車格納庫から持ってきたこの機関銃は信じないわ!!》

 

「え!?武器を持ってきてますの!?」

 

「まずですわアッサム様!私たち何も持ってませんわ!」

 

とわワテふためくローズヒップたちに部屋の奥からは

 

《さあ、跪いて、『愛している』と言ってみなさい!》

 

「あ・・・アッサム様」

 

「ここは素直に従うしかありません・・・・皆さん。膝をついて」

 

アッサムの言葉に皆は跪いて

 

「あ…愛していますわ」

 

《もっと真剣に言いなさい!!》

 

怒鳴り声に皆はビックと体を震わせ

 

「「「あ、愛しております!!」」」

 

と大声で言う。と声は

 

《甘いと思いますが、いいでしょう。命だけはたしけてあげますわ》

 

その言葉に皆がほっとするのもつかの間

 

《三秒以内にこの部屋から出ていきなさい!二度と顔を見せるな!1!・・・・2!》

 

その言葉に皆は顔を青ざめ部屋を出ていこうとする

 

「は、早くドア開けて!」

 

ドアを開け出ていこうとした瞬間、銃声が響き渡り

 

「きゃあーー!!!」

 

アッサム達は慌てて地面に伏せる

 

「りほ!退路確保できたわ」

 

「うん!リリーもういいわよ!」

 

「合点!」

 

部屋の奥にいた、りほは裏口を出てリリーはテレビのリモコンを置く。実は声の主は、テレビで再生された映画のワンシーンのセリフであり、リリーがうまく止めたり進めていたのだ。

そしてリリーを最後に皆は裏口から脱出する中、リリーは口パクでテレビのシーンをつぶやいた

 

《・・・3!血だらけの記念日だ!いい日が来ますわよ!》

 

と、口真似すると裏口から出ていくのであった

 

 

「ちょっとまずいですわアッサム様!スパイよりやばいですわ!!」

 

「ええ!警察を!いや、今すぐ戦車を用意しなさい!あとダージリン様にも伝えて!!」

 

「畏まりましたわ!!」

 

と、匍匐前進しながらそう言うアッサム達だった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来と過去の連弾曲

やっと本命のエピソードをかけました


りほたちやハルカたちが逃げ回っているころ、

若き母と出会ったジャスミンは

 

「♪~♪~♪~」

 

ダージリンが見守る中、ピアノを弾いていた

 

 

 

 

 

 

 

ジャスミンSIDE

 

私の家は裕福でした。何不自由なく生活を送ってきました

母ダージリンは聖グロリアーナ女学院の伝説的な人物であり英雄でした。

そして世界有数の企業の社長であったお母様は家を空けることが多く

私を育ててくれたのは家政婦だと思っていた

誕生日でも一緒に祝ってくれたこともあまりなかった。

それでも手紙は必ず送ってきてくれた。だから少なからず、お母様の愛は感じておりました。でも母の仕事が忙しくなるたびに手紙が来ることもメールが来ることもなくなってきて、送った手紙の先にお母様がいたためしもなく良く送り返されていた

 

「(もうお母様は私を愛していないのかしら)」

 

そう思うようになったのはいつの頃でしょうか・・・・

そして中学、高校になって、私は淑女としてそして普通の女の子として過ごそうと思っていました・・・・だが

 

『あなた・・・・本当にあのダージリン様の娘?まるで違いますわね?』

 

『音楽もマナーもダージリン様と比べて劣りますわね』

 

『ほんとはあなた養子じゃなくて?』

 

『母親と比べ才能がありませんわね』

 

付きまとう母の栄光と名声。偉大な母と比べられる私にはあまりにもまぶしく重い・・・・皆は私の一人の少女ジャスミンではなく、グロリアーナの英雄。ダージリンの娘ジャスミンとしか見てくれない。

いくら努力し、練習をしても必ず皆は

 

『ダージリン様の娘ならこれくらい当たり前』

 

その一言が多かった・私はなぜお母様の子として生まれてしまったのだろうか・・・・・私は次第に母の存在や栄光が憎くなっていた。

 

『私はお母様のコピーじゃない!』

 

『私は私なのに!なぜお母様と比べられなければいけない!』

 

『お母様の娘ではなく、私自身を見てほしい』

 

どんどんそんな負の感情が膨れ上がってしまう。誰にも相談もできず、膨らみ続けるこの醜い感情・・・・

幼いころ好きだった戦車道も次第にどうでもよくなり逃げ出したくなってしまう。まるで母の栄光という呪いから逃げるように

そして私は戦車道を辞めようと思っていた。その時、そのことが母の耳に入ったのか、

 

『なぜ、戦車道を辞めようとしたのかしらジャスミン?ちゃんと説明しなさい・・・・』

 

「それは・・・・・」

 

電話越しで聞く母の声に私は何も言えなかった。もしかしたら言えばお母様もわかってくれるんじゃないか…そう小さな期待を感じていたが、お母様の子の言葉で砕け散った

 

『あなたは私の娘なのですよ・・・・・逃げ出すなんてあってはいけないのよ』

 

「っ!?」

 

その言葉が決定的だった。お母さままで・・・・

 

「・・・・・・」

 

『ジャスミン?どうしたの返事をなさい…あなたは・・・』

 

「わたし・・・・・」

 

『?』

 

「お母様は言わないと思ったのに・・・・・わたし・・・・お母様の子に生まれなければよかったです・・・・・」

 

『っ!?』

 

お母様ならわかってくれると思ったのに・・・・私は涙を流しいつの間にかそう言っていた

 

『・・・・ジャスミン』

 

「お母様の分からず屋っ!」

 

私はそう電話を切り、家を飛び出していたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・さん?・・・・・ジャスミンさん?」

 

「は!」

 

気が付けば、過去のお母さまが心配そうに私の顔を覗き込んでいました

 

「大丈夫ですか?泣いていますわよ?」

 

「え?」

 

私は自分の頬を触るといつの間にか涙が流れていた

 

「ほらこれで涙をお拭きなさい」

 

「ありがとうございます」

 

過去のお母さまは私にハンカチを渡してくれて私は涙をぬぐった

 

「すみません・・・・」

 

「いいのですよ・・・・・それよりもあなたの曲。とても悲しい音色でしたわ。今のあなたの姿みたいで」

 

「すみません聞き苦しかったですね・・・・・」

 

私はそう謝ると、お母様は首を横に振り

 

「確かに悲しい音色でした・・・・でもとてもピアノは上手かったですわよ」

 

「・・・・え?」

 

『上手い』初めてそんなことを言われた。いつもはお母様と比べられてきたのに・・・・

 

「なぜ、あんなに上手いのに悲しい音色だったのかしら?良ければ教えてくれるかしら?」

 

「それは・・・・・」

 

私は理由を話した。もちろん今いるダージリンさんが未来の母であること、未来から来たことは話さずに・・・・

 

「そうでしたの・・・・・」

 

そう言うと若き日のお母さまは

 

「親が偉大だと・・・子供が苦労するのは何処も同じなんですね・・・・」

 

「え?」

 

母の言葉に私はあっけにとられると若き母は私の隣に座りピアノを弾いた

 

「私の家は裕福で父も若くして起業しビジネスで政界まで進出した人物でしたわ。そんな父の口癖は「ナンバー1以外は無価値と思え」でした。当時幼かった私はそんな意味も知らず「大人の世界は大変」としか思っていませんでした」

 

「・・・・・」

 

「当時私はヴァイオリンが好きでいつかは有名なヴァイオリニストになることでした。コンクールでは準優勝でした。残念に思いましたが私はベストを尽くしましたきっと父もわかってくれるとそう思っていました、結果は『ナンバーワン以外には価値がないと思え』の一言でした・・・」

 

「そんな・・・・」

 

初めて知った母の過去。確かに私は祖母に会ったことがあるが祖父には会ったことがなかった。だけど、まさかあのお母様にそんな過去が・・・

 

「それで始めたのが聖グロリアーナの戦車道でした。隊長就任。全国制覇を目標に私は努力してきました。始めた動機は歪んではいましたが次第に戦車道の奥深さに感銘を受け仲間と一緒に戦車道をやり続けるにつれ、そんな思いは消えていました・・・・・・だから決めましたの私の道は私の道。お父様に何と言われようとも自分の道を行く・・・・そう決めましたの」

 

「・・・・・」

 

「ジャスミンさん・・・・私はあなたのお母さまのことは知りませんわ。ですが優秀な戦車乗りなんでしょうね?」

 

「はい・・・・まぶしすぎるくらいに・・・・」

 

「でも、あなたはあなたよ・・・・あなたは自分の道を歩んでお母様になるのではなくそれを超える存在になりなさい・・・・きっとあなたのお母さまもそう思っていますわ」

 

「‥‥‥そう・・・ですわね」

 

まさか過去のお母さまに教えられるなんて思いませんでした・・・・そうだ。私はジャスミン。私の道は私のもの。誰に何と言われようとも私は私なのだ。

 

「ふふ・・・・元気が出たようですわね?」

 

「ありがとうございます。おかげで少し気持ちが晴れました」

 

「それはよかったですわ・・・・・どうです?このまま連弾でも?」

 

「はい。私でよろしければ・・・・・」

 

そう言い私と過去の母は二人で一つのピアノを弾いた。曲名は幼いころ母がよく聞かせてくれた曲でした。そう言えば幼いころもこうしてお母様と一緒にピアノを弾いていましたっけ・・・・

懐かしい思いを感じながら私は過去の母と連弾を楽しんだ

 

そしてしばらくして、りほたちの集合時間が迫っていることに気が付いた私は部屋を後にすることにした

 

「今日はありがとうございましたダージリン様」

 

「いいですのよ。また会うことがありましたら一緒にもう一度、連弾をしましょう」

 

「はい。その時はお茶もお入れします」

 

「ふふ…楽しみにしているわねジャスミンさん」

 

微笑むダージリンにジャスミンも

 

「またお会いしましょう‥‥‥ダージリン様」

 

そう言い部屋を出るのであった。そして残されたダージリンは

 

「ええ…お会いしましょう。大洗で・・・・・・それにしても面白い子でしたね・・・・・「また」・・ですか」

 

ダージリンは彼女から何処か懐かしさを感じ微笑むのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニ連絡船内

 

「いや~なんとか間に合った~~」

 

「ほんと、乗り遅れるかと思ったわ~~」

 

船内ではアーニャたちは息切れをしながら床に座っていた

 

「ハルカは何をしてたの?来るの少し遅かったけど」

 

「ん?ちょっとカウンセリングをね。中々の好評で三、四人相手してたわ?アーニャたちは?」

 

「甲冑を着て学校内走り回っていたよ」

 

と話す中、ジャスミンは遠ざかるグロリアーナの学園艦を見ていた。するとりほが近づき

 

「どうしたのジャスミン?」

 

「りほさん・・・・いいえ。なんでもありませんわ・・・ただ」

 

「ただ?」

 

「いいえ・・・なんでもありませんわ」

 

「?」

 

そう言いジャスミンは学園艦を見て

 

「(もし・・・元の時代に帰れたら今度はちゃんとお母様と話をしよう・・・・)」

 

そう決意するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、聖グロリアーナ出は動く甲冑事件やアッサム様百合疑惑などの騒ぎが、のちの学校内新聞で報道されたとかないとか・・・・・

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。