9連撃を決めたくて (鋭利な刃)
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始まりは9連撃
クエストで突進斬り始動9連撃を決めたい片手剣使いのお話(の予定)
地面を思いっきり蹴り、目の前に向かって突進する。
足を細かく動かすのではなく、右足を支えに左足を全力で前に出すイメージ。
そして体が前に向けて進み始めた瞬間から左手も大きく振りかぶり、左足が最大まで前に出た瞬間に振り下ろす。
突進斬り。
左手に持つ小型の剣と、右手に装着しているこれまた小型の盾がセットになった、片手剣と呼ばれる武器の一撃目として最適な技。
片手剣を極めたプロのハンターなら5m以上も距離を詰められるらしいけど、自分の技術では最大でも2mちょい。
至って平均的な値しか出せない。
でも、さほど問題にすることではない。平均値を出せるということは、同業者たちとそう変わらないってことだから。
競争したいわけじゃないのだし、これで十分だ。
突進切りはソイツ……皮膚は紫色、頭に大きなエリマキのようなビラビラがあり、二足歩行だけど上ではなく縦に大きくなっているソイツ、『ドスジャギィ』の足辺りに当たる。
血は出ているがさほどダメージは入ってないのか、ドスジャギィはケロッとしているが、片手剣という武器は一撃重視ではなく手数で攻めるタイプの武器だ。
もちろん突進斬りだけで終わる訳はなく、そのまま左斜め斬り上げ、右斜め振り下ろし斬り、左水平斬りと続けたら、片手剣を肩に担ぐような姿勢をとる。
それと同時に右手を左側に持ってき、盾で殴り全力で振り下ろす。
『盾コン』と同業者間で呼ばれている技だ。
最後の振り下ろしが、今は居ないがもし同業者と一緒に狩りをしていてその同業者に当たってしまった場合、大きく吹っ飛ばしてしまう危険な技。
ここまでで6連撃。
振り下ろしが当たったことにより、ドスジャギィはその大きな体を1歩だけ後ろに下げる。
怯んだ。
その隙を逃さず、さらに連撃を重ねる。
7撃目。左水平斬り。
8撃目。垂直斬り上げ。
そして9撃目。回転斬り。
体を左に回転させ、体重とか遠心力とかそこら辺を全部のせでの一撃。
それが、丁度噛み付こうとしていたドスジャギィの頭に当たった。
手にずっしりとした斬りごたえがかかった。
ドスジャギィは大きく後ろに吹き飛び、小さく掠れた鳴き声をあげ、そのままピクリとも動かなくなる。
そのまま1秒、2秒……大体10秒経ち、ふぅっと息を吐き、肩の力を抜いた。
「討伐完了……あー疲れた」
そのままドサッと腰を下ろしてしまいたいが、ぐっと堪え、剥ぎ取りをする。
狗竜の皮が2枚に爪を1つ、手に入れた。
ポーチにしまい、今度こそ腰を下ろす。
体には結構な疲労感。
それもそのはずで、15分は掛かってないが10分以上はドスジャギィ相手に立ち回っていたのだ。
しかし、そんな疲れをあまり感じないぐらいに、高揚感があった。
「9連撃、決まったなぁ」
ニヤけが止まらない。ゾクゾクが止まらない。
ああ、今ものすごくーー
ーー楽しいって、感じてる。
盾コンにはデメリットがある。
パーティーでの狩りの際、仲間に当たれば吹っ飛ばしてしまうし、動きの関係上、1度盾コンを始めたら意地でも振り下ろしまでやらなければならず、大きな隙になる。
メリットなんて、連撃数が増えるだけ。
しかもその連撃も、2撃増えたところでさほどダメージは変わらず、大きな隙を晒すぐらいなら盾コンを省いて7連撃に抑え、相手の攻撃の回避に専念した方が良いと断言される始末。
しかし。
だがしかし。
何故か俺は、その1連の動作に……9連撃に、どうしようもないほどの奇妙でアホらしい『ロマン』を感じてしまっていた。
……これから書き記すのは、そんなアホな奴の割とどうでもいいような些細な物語。
世界になんの影響も残さない、1人の人間とその周辺の小さな小さなお話。
世界を救うなんてとんでもない。小心者で愚かな男の、些細な些細な冒険譚。
……のような何かだ。きっと。
先に言っておきますと、このお話はオンラインで片手剣を使う際に盾コンを推奨するようなお話ではありません。
片手剣、良いですよね。
自分も初めてやったモンハン3の頃から愛用してます。
そこから大剣の奥深さを知って、太刀の難しさを理解して、ハンマーの面白さを体感して、片手剣に辿り着きました。
とりあえず、かける所まで書いてみようと思います。
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狩り後とその周辺
あとあけましておめでとうございます。
ドスジャギィを討伐し、集会所へと帰ってきてそのままの流れで加工屋へと足を運ぶ。
目的はソルジャーダガー。あわよくばそのままコマンドダガーまで強化できないかなぁとか思いつつ。
「とりあえずいらない武器は全部売って、コマンドダガーを作ったらセルタスフォールド作って……ああ、砥石とかそこら辺も調達しなきゃ」
お金、足りるかなぁ。
自分を語るのに、ごちゃごちゃと並び立てる人が嫌いだった。
だからまぁ、サラッと簡潔に自分の事を語ろうと思う。
自分今、モンハンの世界にいます。
「おお坊主。強化か? 生産か?」
「強化。これよろしく」
加工屋のおっちゃん。
4の加工屋は物静かな相棒だったけれど、我らの団所属じゃないし、後見当たらないのでこのおっちゃんにお世話になっている。
渡したのはハンターナイフ改。初期中の初期武器。
弱っちくて、この武器で続けていくなんてとてもじゃないが出来ない。
だからまぁ、武器を強化して強くしていかなきゃいけないわけで。
ハンターナイフ改を強化し、ソルジャーダガーに。
つまりドスジャギィの片手剣になる。
切れ味は黄色から緑へ。攻撃力はハンターナイフ改の1.5倍近く。
序盤の片手剣と言ったら、これかアサシンカリンガだと思う。
「おお素材も充分だな。そうだな、明日の夕方辺りには完成してるだろうよ」
「ありがと。……ちなみにあとこれだけ素材あるんだけど、さらに強化出来そう?」
これで足りてたら楽なんだけど……
「いや、皮が1枚足りないな」
出たな妖怪1足りない。
まあ仕方ない。もう一度ドスジャギィ行かなきゃね。
「そっか。まぁとりあえず、強化よろしくね」
「おう」
さて、明日まで暇な訳です。
ゲームと違い1回か2回叩いただけで武器やら防具やらが完成する訳もなく、早くても半日はかかるらしい。
お金の為に他の初期武器は全部売ったので、現在手持ち武器無し。
つまりクエストには出れません。闘技場なら行けるけど。
「いや、明日は1日グダグダしよう。そうしよう」
別に焦る必要は……いや、あるかもしれない。
元の世界に帰れるのなら、まあ帰りたい訳で。
……ああヤバい。なんか急に家が恋しくなってきた。
「……とりあえず飯食おう。んでもう寝ちまおう」
めんどくさい。なんかもうひたすらにめんどくさい。
こんな時は、美味いものを食うに限るはず。
……はず。
さて、そんな訳で飯を食うため集会所に戻って来ました。
ゲームではテーブルはひとつしかなかったけど、まあそんな訳はなく、結構な数のテーブルと、カウンターだってあります。
集会所内はハンター達で溢れてる。
とは言っても、精々2桁ちょいくらいの数だけど。
急に肩にポンと手が乗った。
「おいっす。今1人か?」
「ああうん」
「なら飯一緒に食おうぜ」
急に現れたのは『テッチ』。俺の数少ない知り合いです。
ちなみにテッチというのは本名ではなくハンターネームで、本名は知らない。
そういう俺も、『みたらし』というハンターネームを名乗り、本名は教えてない。
なんて言うか、ハンター間での伝統というかなんというか。まあそういう感じのやつらしい。
カウンター席に並んで座り『モスポークとドテカボチャの煮込み』を頼む。食事スキルは確か、攻撃アップに氷属性得意だった。
クエストに行くわけじゃないから意味無いけど。
ちなみに頼んだ数秒後に届きます。
……なんか中途半端にゲームっぽいね。
「んでどうよ、最近は」
「ボチボチかな。やっとドスジャギィの片手剣が作れた」
「おおやっとか、おめでとさん。順当に行くと、次はアルセルタスか、頑張れよ」
そういうテッチはHR6。つまり上位ハンターで割と上の方にいる。
知り合った時は5に上がったばっかりって言ってたけど、まだ知り合って2週間も経ってない。
なのにもう6に上がるとは……知り合えてほんと良かったかも。
「テッチは次何行くの」
「リオレウス亜種だな。閃光玉フィーバータイムだ」
ああうん、レウスだもんね。仕方ないね。
「じゃあなみたらし。頑張れよー」
ヒラヒラと手を振って、テッチはクエストへと出発して行った。
知らないハンターと喋りながらだったので、おそらくパーティーを組んでいるのだろう。
「俺もパーティー、組みたいなぁ」
でもパーティーを組むと、間違いなく盾コンはご法度だ。
協調性が大事な訳で。
「ガンナーでHR1の人とかいないかな……」
そんな事を呟きますが、そううまい話がある訳もなく。
1人寂しく、飯を食うのでした。
飯を食い終え、帰宅途中。というか家の目の前。1人のハンターとすれ違った。
ブレイブ1式にヘビィボウガンの青熊筒を担いだ女性ハンター。
そのハンターが、後に俺の相棒的な存在になるのだけど。
まぁしばらくの間は関係の無い、些細な話です。
みたらし団子がたまらなく好きなんです。あとテッチリ。
ヘビィボウガンのハンターさん。出したはいいけどまだ大して構想を練ってなかったり。
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