歪みを正すために小宇宙を持つ者 (北方守護)
しおりを挟む

設定集+α

小宙 武昭(こそら たけあき)

 

赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられていた。

実は転生者が存在する為に起きた世界の歪みによって産まれた存在。

だから武昭は転生者ではありません。

 

その為、武昭は星の力とも言える小宇宙(コスモ)を使う事が出来る。

だが、五感強化や気配感知までしか使えていない。

一応だが小さい頃からの特訓によって手刀で鉄パイプ位までなら切断可能。

 

 

戯堂 踏帝(げどう ふみたい)

名も無き神によってISの世界に転生させられた転生者。

前いた世界で交通事故にあって命を落とした所を神に転生させてもらったが……

 

実は、その事故は神が暇つぶしに起こした物であり、戯堂は知らない。

 

神に転生特典を頼んだが、全て自分が望んだ物の下位互換である事に気付いていない。

 

本人としては、まだ原作が始まってないからと思っている。

 

原作キャラの家族(オリキャラ)

 

凰 流音(ファン ルウイン)

鈴の母親で店ではウェイトレス兼シェフ。

鈴とは違いスタイル抜群。

キャラのイメージはハガレンのランファンの茶髪です。

 

鷲守 恵(わしもり めぐみ)

武昭が生活してる孤児院の責任者で武昭の保護者でもある。

キャラのイメージはガルパンの小山柚子。

 

 

ヒロイン予定。

 

一夏=箒、セシリア、ラウラ。

 

武昭=鈴、シャル、本音、簪、楯無、束。

 

 

戯堂が転生する前……

 

「あぁ、暇だなぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

名も無き神が自身の能力で作り出した鏡で人間界を見ていた。

 

「おっ、この人間の欲望は面白そうだ……よしっコイツに決定だ!ハッ!!」

鏡に手をかざすと映っていた人間に落雷が当たり、そのまま命を落とした。

 

「ハハハッ、今回も上手く行ったぞ、さてとこの魂をここに呼び寄せて……おぉ、すまなかったな人間よ……」

名も無き神は自分が()()()()()()()を隠しながら呼んだ魂に説明した。

 

そして魂に転生特典と新たな命を与えると、その魂が望んだ世界……IS(インフィニット・ストラトス)の世界に転生させた。

 

だが、この神はこれから先、自身に何が起こるか分からなかった。

 

 

その後、名も無き神の事を調べると今までに幾人もの人間の命を奪い自身の暇つぶしの道具としていた事が明かされた。

 

その中には前世では親子同士だった者の戦いや普通に過ごしたい者への無断に能力を与えたりと好き勝手にしていた。

 

その為、名も無き神は冥界の最下層にあると言われてるコキュートスに送られた。

 

感想で鈴の父親についてあったので名前を原作と同じにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これから先、話が進むと設定が増えていきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編
第1話 始まり……


周りに何も無い真っ白な空間に二人の人物がいた………

 

一人は白いローブを纏った人物。

 

もう一人は20代後半の男性だった。

 

「ギャハハハ!これで俺様のハーレムが出来るんだ!!」

 

「あぁ、これでお前の望みは全て叶えたな」

 

「感謝するぜ!待ってろよ!!俺様の獲物達!!」

 

「では、お前を望んだ世界へ送るぞ」

 

ローブの人物が手を翳すと20代後半の男性の姿が消えた。

 

 

 

「ふん、人間とは欲深い存在だ……

 

では、次はどんな人間を……ガハッ!?」

 

「悪いが、それ以上お前に好き勝手やらせるわけにはいかない……」

ローブの人物が何かを考えていると何者かが後ろから剣を刺していた。

 

「なっ?!何故…あなた様が……こんな事を……」

 

「それはお前がやり過ぎたからだ……」

刺した人物は、そのまま剣を振り抜くとローブの人物を切り殺した。

 

ローブの人物を殺した者が剣を鞘にしまうと二人の人物が近寄ってきた。

 

一人は薄紫色の長髪の女性。

 

一人は水色の短髪の男性。

 

水色の髪の男性が話し掛けた。

 

「悪いな、お前に、この様な事を頼んでしまって……」

 

「気にするな……私は冥界の神なのだから……」

 

「それで、あの者が転生させた魂は、どうなったのですか?」

 

「私が来るのが一足遅く違う世界へ転生したみたいだ……」

黒髪男性の声を聞いた水色男性は悔しそうな表情を見せた。

 

「今、私たちがここで悔やんでいても何もなりません……

ですから、今出来る事をしましょう……」

女性の言葉に男性2人は黙ってうなづいた。

 

「それで、あの者が転生させた魂は、どの世界へ向かったのだ?」

 

「うむ、それはインフィニット・ストラトスと呼ばれているパワードスーツがある世界だ」

 

「そうですか、それで何故、転生した者はその世界に向かったのですか?」

 

「どうやら、転生した者の世界では、それは創作物の一つとして存在しているんだ。

そして、その中では多数の女性がいるんだ……」

 

「なるほど、自分がその世界に行き、その女性達を自分の物にする為か……」

 

「ですが、その者が存在する事で本来の物語とは違う運命になるでしょう……

いわば世界に歪みが出来てどのようになるかは私達にも分かりません……」

女性の言葉に男性達が黙ってると女性が口を開いた。

 

「だが、私は信じています、世界の歪みを正す者が現れる事を……」

 

「そうだな……ならば我らは、その者が現れた時に手を貸すとしよう……」

 

「うむ、では私がそこの世界を見ておこう……何が起きても良い様に…」

そこにいた3人は何かを考えていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 産まれし者

白い空間で魂が転生してから数年後……

 

(くそっ!一体、どうなってるんだ!?)

1人の少年が機嫌の悪い表情で街を歩いていた。

 

彼は戯堂踏帝(げどう ふみたい)と言い白い空間で転生した人物だった。

 

(確かに俺はインフィニット・ストラトスの世界に転生はした!

だが、どうして俺の知ってる通りに物語が進まないんだ!?)

戯堂は落ちていた空き缶を蹴飛ばして今までの事を思い出していた。

 

戯堂がこの世界に生を受ける

調べて織斑一夏、篠ノ之箒と同い年とわかる。

だが小学校が違った為、同じクラスでの同級生にはなれず。

 

 

「チッ!まぁいい これから成長してISを動かせればこの世界は俺様の物だ!!」

戯堂はこれから先の事を考えていた。

 

だが、彼は気づいていなかった……

自分を転生させた存在は彼が望んだ特典をそのまま与えていなかった事に……

 

戯堂は転生を受ける際に幾つかの特典を望んだ。

 

1・一夏や箒と言った登場人物達と同い年。

2・金に困る事はない。

3・かっこいい顔。

4・天才の頭脳。

5・ISの適正。

との5つだったが……

 

実は転生させた存在により少し変えられていたのだった。

1・登場人物達とは同い年にはなったが同じ学校ではない。

2・金には困らないがそれは最低限の生活が出来るほどだった。

3・確かにかっこいい顔なのだが年相応ではない物。

4・天才の頭脳とは小学校では天才だった。

5・ISの適正はCと最低である事。

と戯堂はそれに気づく事はなかった。

 


 

一方……

織斑一夏と篠ノ之箒が通う小学校では……

 

「おい一夏、今日も行くのか?()()()()

 

「ん?箒か、ああ、()()()()()()()()()()()()()()()

放課後に箒が一夏とある人物について話していた。

 

「だが、そんなに何度も行っては迷惑になるんじゃないのか?」

 

「大丈夫だよ、今回は先生に頼まれてプリントとノートを渡しに行くだけだから」

 

「そうか、なら私もついて行こう、父さんから言伝を頼まれているんだ」

 

「わかった、じゃあ一緒に行こうぜ」

一夏と箒は学校を出て行ったが箒は頬を微かに染めて喜んでいた。

 


 

一夏と箒が来た場所は数人の子供達がいる孤児院だった。

 

「あら一夏君に箒ちゃんじゃない、また()()()()()()()()()

2人が中に入ると庭にいた子供の相手をしていた女性が声をかけて来た。

 

「あっ、恵さん」 「鷲守さん」 「「こんにちわ」」

 

「はい、こんにちわ」

女性の名前は鷲守 恵(わしもり めぐみ)と言いこの孤児院で子供達のお世話をしている人物だった。

 

「彼に用事があるなら()()()()()()にいるわ」

 

「「はい、ありがとうございます」」

一夏と箒は恵にお礼を言うと目的の人物がいる場所に向かった。

 


 

孤児院の裏山の中にある竹林の中に1人の少年が立っていた。

 

だが、その少年の周りには切られた竹が落ちていたが………

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふぅ、今日はこれ位にしておくか……「おーい武昭ー」ん?」

一夏達が声をかけた少年は武昭と言う者だった。

 

彼の名前は小宙 武昭(こそら たけあき)と言い一夏達のクラスメイトだ。

 

「なんだ一夏だけかと思ったら女房も一緒だったのか」

 

「だ、誰が女房だ!!私は、その……

 

「変な事を言うなよ、俺と箒は只のクラスメイトなんだから」

一夏の言葉を聞いた箒は軽くため息をついて武昭はカッカッカッと笑っていた。

 

「それよりも、今日はどうしたんだ?」

 

「あぁ、俺は先生からプリントを持ってってくれって」

 

「私は父さんからの言伝でな、久し振りに神社に顔を出して欲しいとの事だ」

 

「そうか、ありがとうな一夏、箒 さてと よいしょっと」

武昭はプリントを受け取ると周りにあった竹を束ねて担いだ。

 

「何回か見てるけど本当に武昭は凄いよな」

 

「まぁ、一種の慣れみたいなものだけどな」

 

「そんな事くらいで()()()()()()()()()()()()()

箒は呆れながら武昭に言った。

 

「けどよ、そんなに竹を切ってどうするんだ?」

 

「あぁ幾つかは竹炭にして、あとは細かく割いて小物でも作ろうかと思ってるんだ」

 

「なら、少し私にくれないか?父さんが鍛錬に使いたいと言っていてな」

 

「そうか、なら運びやすくした方がいいな………ふっ!」

武昭が2本程空中に投げて手刀を振り回すと適度な長さの竹が地面に転がった。

 

「悪いな武昭、いつも……」

 

「気にするなよ箒。一夏、お前も持っていくか?千冬さんに」

 

「そうだな、俺も数本貰ってくよ」

箒と一夏は竹を拾うと雑談をしながら孤児院に戻った。

 


 

その頃、白い空間では………

 

「もしかして、あの少年が使っている力は……」

 

「えぇ、私達が考えている通りでしょう……」

 

「ならば、彼が………」

3人の目の前には鏡が浮いており、そこには武昭の姿が映っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 戦乙女との手合わせ

一夏達が小学2年生の夏のある日……

 

「ふむ、一夏と同い年にしてはかなりの腕前だな!」

 

「褒めてもらって嬉しいですけど、なんで俺は千冬さんと戦ってるんですか!?」

箒の家にある道場で武昭と一夏の姉である織斑千冬が手合わせをしていた。

 

至った経緯……

 

武昭が一夏、箒に連れられて道場に行くと道着に着替えた千冬がいた。

 

「久し振りですね千冬さん」

 

「あぁ、久し振りだな武昭。どれ、たまには相手をしてやろう」

 

「え?えーっと千冬さん……なんで俺が手合わせをしなきゃダメなんですか?」

 

「なーに、私が武昭の実力を確認したいだけだ!」

千冬が武昭に竹刀を頭上から振り下ろしたが武昭は数cm身体をずらしただけでかわした。

 

「ほう……今の一撃は手加減したとは言え、かなりの速さだったのだがな……」

 

「そりゃ、俺だって叩かれたくないですからね!」

武昭が千冬に殴りかかったが竹刀で防がれた。

 

「そう言う千冬さんこそ受け止めたじゃないですか?」

 

「そう簡単に私も食らう訳にはいかないからな!」

 

「だったら俺も同じ意見です!」

武昭がパンチやキックで千冬は竹刀で と互いに攻撃をし合っていた。

 

「なぁ……箒……武昭って俺達と同い年だよな……」

 

「あぁ……私も目の前の光景を信じられないからな……」

一夏と箒は自分達と同い年の少年が今までで一番強いと思われる者と戦えている事に驚いていた。

 

(ハァハァハァ……流石、千冬さんだな……一瞬も気が抜けないぜ……)

 

(以前よりも身体のキレが良くなってきているか……このままな私が負けるかもしれんな……)

武昭と千冬は互いに相手の様子を観察して距離を取っていた。

 

(仕方ねぇ……自分で鍛えてる時に何度かなった()()()()をやるしかない!)

 

(ん?何か武昭の様子が変わった……何をするか分からないが、今のこの瞬間ならば!!)

目を瞑った武昭が集中し始めたのを見た千冬は武昭に向かっていった。

 

「まずい!あのままなら武昭が!!避けろー!!」

 

「駄目だ!集中してるのか私達の声が聞こえていないみたいだ!」

一夏と箒は2人の様子を見て慌てていた。

 

「そうだ!この感じだ!!」

 

「武昭が何をしようとも、このまま私が押し切ってくれる!!」

 

「ハァー!手刀一閃!!」

千冬が上から竹刀を振り下ろして来たのを武昭は手刀で斬り裂いた。

 

「なっ!?……竹刀が……この斬れ味は……」

 

「千冬さん、これで終わりにしませんか?」

 

「あ、あぁ……そうだな……武昭、手は大丈夫なのか?」

 

「えぇ、これでもいつもの竹林で竹を斬ってますから、じゃあ俺は帰りますんで。

そうだ箒、柳韻さんに後で竹刀の弁償はするって言っておいてくれ」

 

「あぁ、分かった、それじゃあ、また来てくれ」

武昭は後ろを向きながら手を振ると道場から帰っていった。

 

 

 

一方……

 

「目の前で見てたとはいえ……素手でこれほどまでに斬れるとは……」

 

「おや〜ちーちゃん、どうしたのかなぁ〜?」

千冬が武昭の斬った竹刀を見ていると紫色の長い髪に機械のウサ耳を付けた女性、箒の姉である篠ノ之束が声をかけて来た。

 

「なんだ束か……ちょうど良かった、これを調べてくれないか?」

千冬は束に竹刀を渡した。

 

「へぇー綺麗に切断されてるねぇー これってちーちゃんがやったんでしょ?」

 

「いや、私ではなくて一夏の同級生の武昭がやったんだ()()()()

 

「いやいや、ちーちゃん……幾ら何でもそれは無理だよー その子って箒ちゃんやいっくんと同い年なんでしょ?

何か刃物を隠してて、やったに決まってるよ、まぁ、ちーちゃんの頼みだから調べてみるけど……」

 

「悪いな、どれ位で分かりそうだ?」

 

「うーん?こんなものだったらスッと終わるよ……え?嘘でしょ?……」

ポケットから何らかの機械を取り出した束は竹刀を調べると表情がみるみる変わっていった。

 

「凄いよちーちゃん!普通、刃物で斬ったら何らかの成分が残ったりしてるんだけど

これには残ってないんだ!それどころか人間の生体成分しかないんだ!!」

 

「その成分は私が触っていたからではないのか?」

 

「だったら、ちーちゃん これを触ってよ」

千冬が束の指示された機械に触ると何らかのブザーが鳴った。

 

「このブザーが鳴るって事は、この生体成分とちーちゃんの成分が違うって事なんだ……」

 

「そうか……では武昭は本当に素手で竹刀を切断したのか……」

 

「ううん……すっごい興味が出てきたよー!!」

 

(はぁ……武昭に悪い事をしたのかもな……)

千冬は武昭に興味を示した束を見て頭を抱えていた。

 




この話に出て来た切断した物に付着した物の設定は、この小説のオリジナルです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 兎に興味を持たれた者

武昭が千冬との手合わせを終えて少し経ったある日の夕方……

 

「498……499……500……ふぅ……腹筋は終わったから次は……」

武昭は近くの森で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(おいおい……本当にあの子は箒ちゃん達と同い年なのかい?)

研究室で小型飛行カメラを操作しながら束が武昭を観察しながら自分が調べた事を考えていた。

 

小宙 武昭(こそら たけあき)……赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられていた……

それから、そこを管理している女性に育てられて箒ちゃん達と同じ小学校に通う……

これまでは、そこら辺の奴らと変わらないけど……()()()()()()()……)

束は近くのモニターに今より少し昔の武昭が写っている映像を出した。

 

それは、今みたいに修業をしていた武昭の右足が上から落ちてきた岩の下敷きになっていた物だった。

 

(普通なら、あの位の年齢の子がああなったら泣き叫んだりしても良いのに、あの子は

泣き叫ぶ所か目をつぶっている……そして……)

束が映像を見ていると少しの間集中した武昭が目を開くと()()()()()()()()()()()()()

 

(どうやら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

そう言う仮説なら、今までやってきた事の説明がつく……)

束は武昭の映像を見ながら()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「よーし!これから君は束さんが調べ上げてあげるよ!!待ってなよ()()()()

研究室で束がある事を決意した頃……

 

「さてと……修業も終わったから、そろそろ……ううっ!?何だ今の!!

修業を終えた武昭が帰宅準備をしていると身体に震えが来ていた。

 

「なんなんだ?今のは……寒気と言うか悪寒と言うか……帰ったら熱めの風呂に入るか……」

武昭は孤児院に戻った……

これから長く付き合う事になる兎のちょっかいを感じながら………

 

 

更に、それから数日後、武昭が修業をしていると……

 

「えっと……あなたは誰ですか?」

 

「にゃはは、確かに初めましてだね、私の名前は篠ノ之 束(しののの たばね)って言うんだ!

よろしくね、タッくん!!」

いつもの修業場所に束がいた。

 

「はぁ、初めましてって……篠ノ之ってもしかして箒の……」

 

「うん!私は箒ちゃんのお姉ちゃんでちーちゃんの同級生だよ!」

 

「ちーちゃん?……まさか千冬さんの事ですか?」

 

「そうだよー!どうやら頭の回転が速いみたいだねー!」

 

「ありがとうございます……それで俺に何か用ですか?」

 

「うん 実はね……束さんの実験材料になって欲しいんだー!!」

束がポケットから取り出したスイッチを押すと武昭の足元からワイヤーが出てきて縛り上げた。

 

「なっ!?実験材料ってどういう事ですか?!?」

 

「うん、前にちょっと頼まれてタッくんの事を調べてたんだけどね、どうしてもわからないから直接調べる事にしたんだ」

 

「だから、こう言う事をしたんですか?……別に言えば普通に協力しましたよ?」

 

「そうかもしれないけど……私は自分がわからない事は徹底的に調べないと気が済まないんだ♪

だから、こうしたの……さぁ、私と一緒に行こうか?」

 

「残念ですけど……俺にも拒否権はあるんですよ!」

そう言うと武昭は体に力を込め始めた。

 

「うーん、なかなかの力だけど()()()()()()()()()()()()()()

 

「くそっ!確かに無理……みたいですね……けど……(修行中に何度か感じた事がある()()を出せれば)」

武昭は自分の体内に何かを感じ始めた。

 

「うん?何かタッくんの雰囲気が変わった?……(まさか、これがタッくんの……)嘘っ!?」

束が武昭を縛っているワイヤーが軋んでいる事に驚いていた。

 

「ハァーーー!!」

 

「そんなバカな!?このワイヤーは普通の人間の力じゃ……キャッ!!」

束は武昭がワイヤーを引きちぎった事に驚いた。

 

「ハァハァハァ……篠ノ之さん……俺は貴女に仕返しをしようとは思いません。

箒の家族ですから……けど、また同じ様な事をするなら……俺は……この拳を向けます……」

そう告げた武昭はそのまま気絶をして倒れたが束は近寄って膝枕をした。

 

「タッくん……あんな事をしても私を許してくれるなんて……トクン……あれ?。…」

束は膝枕をしながら自分の胸の中に何かが起きた事に軽く頭をひねった。

 

感じたそれがのちにある思いに変わるとは 今はまだ気付いていなかった……




ご都合主義です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 無限の空

武昭が束と知り合ってから2~3ヶ月経ったある日の事……

 

「束、お前にしては珍しいな、私や一夏以外の知り合いを作るとは」

 

「えっ?千冬さん、どう言う事ですか?」

束に呼ばれた武昭は先に来ていた千冬と会って驚かれていた。

 

「あぁ、コイツは自身が興味を持たなければ他人とは関わろうとしないんだ」

 

「って事は俺は何か興味を持たれたって事なんですね」

 

「そうだ、それで束、なんで私達を呼んだんだ?」

 

「フフフ、それは“コレ”を見せる為だからだよっ!」

束が何かに掛けられていた布を取ると白を基調としたパワードスーツが台座に鎮座していた。

 

「コレは束さんが開発したパワードスーツ!名付けてインフィニット・ストラトス!!」

 

「インフィニット・ストラトス……無限の成層圏って意味ですか?」

 

「うん、タッくんの意味でも合ってるけど私としては成層圏より空って方で呼んで欲しいんだよね」

 

「無限の空……まさか、コレで空を飛べるのか?」

 

「そうだよ、ちーちゃん、私はこの子と共に、あの大空を……そしてその先の宇宙に行ってみたいんだ……」

束の表情は純粋な子供の様だった。

 

「そうなのか……で私達に何をさせたいんだ?」

 

「まずは、ちーちゃんだけど、この子に乗って動作確認をして欲しいんだ」

 

「な!?何で私なんだ!お前でも良いだろう!!」

 

「うーん、束さんも最初はそう思ったけど、やっぱりちーちゃんの方が運動神経が良いからお願いしたいんだ」

 

「束さん、俺は何をするんですか?」

 

「それでタッ君にはちーちゃんが動かしてる時のデータ収集を手伝ってほしいんだ」

 

「俺は構いませんけど……千冬さんは……」

 

「そうだ束、武昭ではダメなのか?この……インフィニット・ストラトスを動かすのは」

 

「そうなんだけど……タッくんには大き過ぎるんだよ 近くに行ってみてくれるかな?」

武昭がISのそばに行くと機体の方が大きくダボダボな感じだった。

 

「うむ……その様な事情ならば仕方ないか……こうか?」

 

「うん、両手足を入れてくれたら自動的に装着されるから」

 

「それで束さん、この剣みたいな物は何ですか?」

 

「ん?剣だよ」

 

「何でこんな武器が付いてるんですか?」

 

「あぁ、それは宇宙とかのスペースデブリが接近した時とかに破壊する為の物だよ」

 

「そうなのか、それでまずは何をするんだ?」

 

「うん、最初はね……」

千冬は指示通りに動作確認をし武昭は束と一緒にデータを調べていた。

 

 

終わった後……

 

「それじゃ、また頼みたい事があったら連絡するからねー」

 

「はい、分かりました」

 

「今度は、もっと楽な事をやらせろ」

3人は、そのまま別れて帰宅した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 目覚めた宇宙(無意識)

束がISを開発してから少しして束は研究発表を行ったが他の科学者たちはISを子供の夢物語として認めようとしなかった。

 

その後……

 

「束さん、元気出してください。どうしてもああいう人達は頭が硬いんですよ」

武昭が落ち込んだ束を慰めていた。

 

「ムゥ〜……ありがとう、タッ君……けど、折角この子を作ったんだけどなぁ……」

 

「今はまだ早かっただけですよ、だからこれからもっと色んなデータを取ったり、実験をして反対した人達に見せつけてあげましょうよ」

 

「タッ君……うん!そうだね!今度はどんな事を言われても反論が出来ない様にしてやるんだから!!」

 

「そうですよ、それこそ束さんですよ。いつでも笑ってる方が可愛らしいんですから」

 

「はにゃっ!?う、うん、そうなんだ……(エヘヘ、タッ君に可愛らしいって言われちゃった)」

 

「ん?束さん、顔が赤いけど、どうかしたんですか?」

 

「べ、別に何でも無いよ!そうだ!もしかしたら風邪かもしれないから感染る前にタッ君は帰っていいよ!!」

 

「そうですか?まぁ、束さんがそう言うなら……あぁ風邪だったらちゃんと治してくださいよ」

武昭は束の研究所から出て行ったが束は暫くの間、顔を赤くして喜んでいた。

 

 

それから、数週間後……

 

世界中の軍事基地のコンピューターがハッキングされて約2000発のミサイルが日本に向けて発射された。

 

それを防ぐ為に束は千冬に頼んでISでの破壊をお願いして千冬もそれを受けた。

 

千冬のお陰でミサイルは全て撃墜出来たが、その為ISが束の考えとは違う使われ方をされる様になった。

 

その後、ISは兵器として見られ始め、それに付随して女性しか動かせないと世間に流れると女尊男卑になりつつあった。

 

 

そんなある日、武昭は束に呼ばれて研究所に来ていた。

 

「久し振りだね、タッ君……元気だった?」

 

「はい、元気ですけど……束さんの方こそ大丈夫ですか?」

武昭が見た作業をしている束の表情は目の下にクマがあり肌荒れがひどく髪もどこかツヤが無かった。

 

「うん、私は大丈夫だよ……だって“あの子達”を本来の姿を戻してあげないとダメだから……アッ」

束が作業を続けようとしたが転倒しそうになったのを武昭が支えた。

 

「束さんの言う事もわかりますけど、それで体を壊したら何も出来なくなります……

だから、今は休んだ方が良いですよ……」

 

「タッ君……うん、わかったよ……けど一つだけお願いして良いかな?」

 

「俺に出来る事なら構わないですよ」

 

「う、うん……それじゃあ………」

束は武昭に何かを頼んでいた……

 

それは……

 

「束さんも無理してたんだな……」

武昭が頼まれた事は自分が眠りにつくまでそばにいてほしいとの事だった。

 

「束さんが言ってたけど、あのミサイルをハッキングしたのは誰か分からないって……

なんだろう……この嫌な気配は……」

 

「ううん……タッ君……」

 

「眠るまでだったけど、起きるまでいるか……束さんは1人じゃないんです……

俺や千冬さんも出来る限りの事をしますから……ふわぁ……俺も眠く……」

武昭は束の手を握ると、そのまま眠りについた……

 

武昭が無意識に何かを発生させながら。

 

それから暫くして……

 

「う、うん……久し振りに、こんなに眠った……フェッ!?

目覚めた束は武昭が手を握りながら寝ていた事に気付いて顔を赤くした。

 

「な、なんでタッ君が……多分私の事を心配してくれたからだよね……ありがとう……」

 

「んあ?あぁ、束さん起きてたんですか…すんません寝ちゃって……」

 

「ううん、タッ君にそばにいて欲しいって頼んだのは私だから気にしなくても良いよ」

 

「そうですか……じゃあ俺は帰ります」

 

「うん、気をつけてねタッ君……(そっか私はタッ君の事が……好きなんだ……)」

束は武昭が帰ったと同時に寂しくなった事に気付いて自分の心に感じた想いを認識した。

 

「タッ君……今はまだ言えないけど、いつかその時が来たら……この想いを……」

束は作業を再開した。

 

 




武昭が目覚めた小宇宙は優しさから出てくる物だった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 助けられた鈴の音

今回の話には人によっては少し嫌な表現をしてる場所があります。


束が自分の気持ちに気付いてから少し経って……

 

束がISのコアを全部で467個を世界中にばらまいた。

 

そして、そのせいで篠ノ之家が【要人保護プログラム】の適用を受ける事が決まった。

 

それが理由で箒も転校する事になった。

 

その後、モンド・グロッソと呼ばれるISを使用した世界大会が開催された。

 

その大会で千冬が優勝しブリュンヒルデと呼ばれる様になった。

 

それとISの研究により女性しか動かせないが分かり女尊男卑の風潮になりつつあった。

 

そして、それから時間が経って武昭達が小学四年生になったある日の事……

 

「ハジメマシテ、中国カラキタ凰・鈴音(ファン・リンイン)とイイマス、ヨロシクオネガイシマス」

武昭達の学校に転校生がやってきた。

 

「席は小宙の横が空いてるな、それと凰は日本語に慣れてないから手助けをしてくれ」

 

「分かりました、よろしく凰さん」

 

「ハ、ハイ……ヨロシクオネガイシマス……」

凰は武昭の横に座ったが何処か怯えていた。

 

それから数日後の放課後……

 

「ハァハァハァ、ここまで来たから少し休むか……」

武昭が合計50kgの重りを両手足と体に付けて河原まで走って来ていた。

 

「これにも慣れて来たから、そろそろ重りを増やすか……「……だろ……」ん?」

武昭が休んでいると何処かから声が聞こえた。

 

「何か聞こえたけど……向こうからだな……」

武昭が声の方に行くと鈴音が男子達にいじめられていた。

 

 

 

 

武昭が来る少し前……

 

「オイッ!お前って中国から来たんだろ!?」

 

「こいつリンリンて呼んでやろうぜ!!」

 

「あぁ!だったらパンダだから笹でも食わせてやろうぜ!!」

 

「オ願イシマス……ヤメテクダサイ」

 

「だいたい日本に来たなら日本語話せよ!!」

 

「なぁ、こいつの髪の毛切ってやろうぜ」

男子の1人がランドセルからハサミを取り出すと他の男子達が鈴音の両手足を押さえつけた。

 

「イヤッ!ハナシテクダサイ!!(ダレカ……タスケテ……)」

 

「動かない方がいいぜ、それ以上傷つきたくなかったらな」

男子の1人が髪の毛に手を掛けたのと同時だった……

 

「痛っ!誰だ!?」

誰かがハサミを持っていた男子の手に石を投げていた。

 

「俺だよ……全く……転校生に何をしてるんだ?」

 

「チッ、小宙かよ。別にテメェに関係ないだろ!!いつも邪魔しやがって!!」

 

「あぁ、確かに俺には関係ないかもな……只な、1人の女の子に大勢で何かするのは許せなくてな」

武昭は話しながら鈴音に近づいていくと手を差し出して立たせた。

 

「大丈夫?凰さん」

 

「ハ、ハイ……アリガトウ……ゴザイマス……」

 

「何だよ小宙、俺達の邪魔をするって言うのか?」

 

「そうだな……お前らみたいな奴は少しばかりギャフンと言わせないとな」

 

「ケッ!デカイ口叩いてんじゃねぇよ!!」

男子達が武昭に向かって来た。

 

「凰さん、危ないから俺の後ろにいるんだ……」

 

「デ、デモ……1人ジャ……」

 

「心配はいらないよ、俺は体を鍛えてるからね……」

 

(アッ……トテモ……アタタカイカンジガ……)

武昭は優しく微笑むと鈴音の頭を撫でた。

 

 

しばらくすると……

 

「フゥ……お前みたいな奴らに負ける程、弱くはないんでね……」

武昭の足元に男子達が倒れていた。

 

「ちきしょう……テメェみたいな()()()()()()()こんな事をしてどうなるか分かってるんだろうな!?」

 

「あぁ、確かに俺に両親はいないよ……だからと言って、それがどうした?」

武昭は1人に近づくと上から見下ろす様に言った。

 

「お前らみたいな奴らの行為を見て見ぬ振りする方が俺は嫌なんだよ!!」

武昭は、そう言い放つと鈴音のそばに向かった。

 

「凰さん、危ないから俺が送って行くよ」

 

「アッ、アリガトウ……ゴザイマス……」

 

「くそっ!舐めた事してじゃねぇ!!」

 

「アッ!アブナイ!!」

男子達の1人が落ちていた鉄パイプを拾って武昭に振り下ろしていた。

 

「ふん、これでどうなっても……お前が悪いんだからな!!」

武昭は鉄パイプが当たる寸前に右手の手刀を振り上げて、そのまま()()()()()

 

「なっ!?……う、嘘だろ?……」

 

「良いか?……これ以上、何もしないのなら俺は手を出さない……だが、手を出すと言うのなら……」

 

「あ、あぁ……分かったよ……」

武昭に手刀の先を突きつけられた男子は体が震えていた。

 

その後、武昭は鈴音を家まで送っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 初めての友達

2人が帰る途中で見かけた公園のベンチで座っていると鈴音が口を開いた。

 

「ア、アノ……小宙サンハ、親ガイナイッテ言ッテマシタケド……」

 

「ん?あぁ、俺は小さい頃に孤児院の前に捨てられていたんだ……

名前と一言【この子を頼みます】って……」

 

「ソウダッタンデスカ……小宙サンハ……「武昭」エ?……」

 

「小宙って呼びづらいだろうから武昭で良いよ()()は皆名前で呼ぶから」

 

「友達ッテ……私ガデスカ……ケド……私ハ……」ポロッ

 

「転校生だとか、中国人だとか関係ないよ……俺は凰さんと友達になりたいと思ったから……」

 

「本当ニ……私ト友達ニナッテクレマスカ?……」

鈴音は泣きながら武昭に尋ねた。

 

「あぁ……俺が凰さんの日本での()()()()()()だよ……」

武昭が優しく抱き締めると鈴音が泣いたので武昭は、そのまま胸の中で泣かせた。

 

暫くして……

 

「アノ……ソノ……ゴメンナサイ……」

泣き止んだ鈴音は顔を赤くして照れていた。

 

「気にしなくて良いよ……泣きたい時に泣くのは当然の事なんだからさ……」

 

「ア、アリガトウゴザイマス……アノ……ソレデ……サッキノ話ナンデスケド……」

 

「あぁ、孤児院の前に捨てられていた話か……俺は親を恨んじゃいないし、会いたいとも思わないかな……」

 

「ナンデ……デスカ?……」

 

「うん……手紙は濡れてたんだ……多分だけど涙の跡だと思う……」

武昭の話を聞いた鈴音は黙っていた。

 

「だから俺は思ったんだ……親は俺を危ない目に合わせない為に離れたんだって……

それで俺が会う事で何か迷惑になるなら俺は会わないって……」

 

「武昭……」

 

「さてと、これ以上居たら遅くなるから帰るか(りん)

 

「エ?今……私ノコトヲ鈴ッテ……」

 

「あぁ、友達だからアダ名を考えてたらパッと浮かんだんだけど……嫌だったら何か違うのにするけど……」

 

「イエ……鈴デ……鈴ガイイデス!……武昭ガ私ノタメニツケテクレタカラ……ソレガイイデス!!」

 

「あ……初めて鈴の笑顔を見たけど、そっちの方が良いじゃん」

 

「フェッ!?ナ、ナニヲキュウニイウンデスカ!?」

 

「ハハハ!ほら、早く帰るぞ鈴」

 

「ハイ!ワカリマシタ!武昭!!(日本ニキテハジメテ友達ニナッタノガ武昭デヨカッタデス)」

鈴は武昭から出された右手を握って心が暖かくなっているのを感じていた。


その後、武昭が鈴の家に行くと中華料理屋だったので、そのまま夕食をご馳走になっていた。

 

「俺もたまに料理をするけど、やっぱりプロには敵わないですね」

 

「ハハハ、そりゃ俺は何年もやってるんだからな!」

 

「それにしても……まさかウチの鈴音が、同級生を……それも男の子を連れて来るなんてねぇ……

ねぇ、武昭君よね?良かったらウチの娘を貰ってくれない?」

 

「ナッ!?媽媽(ママ)!!何ヲイッテルノヨ!!」

 

「おっ!それは良いや!!俺も武昭君になら跡を継がせられるぜ!!」

 

「モーウ……爸爸(パパ)マデ……ゴメンネ武昭……2人ガ変ナ事ヲイッテ……」

 

「別に変じゃないだろ……2人が、それだけ鈴の事を思ってるって事だからさ……

ご馳走さまでした。 えっと、いくらですか?」

 

「あぁ、別に良いよ今日はウチからの奢りだ」

 

「そうよ、折角の鈴音の初めての友達なんだから」

 

「でも……「武昭……今日ダケハ……」分かりました、じゃあ、ありがとうございます」

 

「あぁ、いつでも来てくれよ」

 

「えぇ、私たちは待ってるから」

武昭は3人に見送られて店を出た。

 

その帰り道……

 

「父親と母親か……ううん、俺には孤児院の皆が家族なんだ……」

武昭は星空を見ながら何かを考えていた。

 




その頃……

「どうやら彼は少しずつ力に目覚めつつあるみたいだな……」

「そうだな……それに彼は優しい人間だ……」

「だからこそ、あの力を使えるのです……」
白い空間で2人の男性と1人の女性が地面に合った泉の周りで話していたが、その水面には武昭が映し出されていた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 日常

鈴が転校してきてから初めての夏休みのある日……けか

 

「998……999……1000……ふぅ、次は……」

 

「武昭、はい少し休んだら?」

 

「あぁ、ありがとうな鈴」

武昭がトレーニングをしてる所に鈴がいて飲み物とタオルを渡した。

 

「それにしても……一夏から聞いてはいたけど実際見ると凄いわね……」

 

「そうか?まぁ、俺はもう慣れたからな」

鈴が呆れているが武昭は平然と汗を拭き飲み物を飲んでいた。

 

「けど……鈴も大分、日本語が上手くなったな」

 

「それは武昭が教えてくれるからよ、ありがとうね」

 

「別に「お礼を言われる様な事じゃないでしょ?」先に言うなよ」

 

「だって武昭って気がついたら誰かを手助けしてるんだもん」

 

「鈴も知ってるから話すけど……俺は小さい頃に孤児院の前に捨てられていた……

そんな俺に恵さんや子供達は()()として接してきてくれたんだ……

時には褒めて、時には怒ってくれて……」

 

「それで誰かを手助けしてるの?」

 

「あぁ……俺は恵さんや孤児院の子達に貰った優しさを他の人にも分け与えたいって思ったら……

体が勝手に動いてるんだ……」

 

「そうなんだ……けど、それで私が今、こうしてる事が出来てるのよ……

だから、もう一度言うわ……ありがとう武昭……私にも優しさをくれて……」

 

「あぁ、今回のは受けておくよ……さてとトレーニングを再開するか」

 

「今度はダッシュよね?なら私がタイムを計ってあげるわ」

 

「分かった、じゃあ頼む……っ!」

 

(武昭……私は……あなたの事が……)

鈴は心に何かを思っていた。

 

トレーニングを終えた武昭は鈴と孤児院に帰ってきた。

 

「アッ、鈴姉ちゃんだー!!」

 

「ねぇねぇ、今日も何か作ってくれるのー!?」

2人が孤児院に入ると遊んでいた子供達がそばに寄ってきた。

 

「ほらほら、今日は俺のトレーニングに付き合ってくれただけなんだから」

 

「別に良いわよ?何か作っても。材料なら持ってきてるから」

 

「そうか、じゃあ悪いけど何か作ってやってくれないか?俺は作った竹細工を雑貨店に卸してくるから」

 

「分かったわ、じゃあ何を作ろうかしら……」

鈴は孤児院の台所に行き武昭は雑貨店に向かった。

 

 

雑貨店に物を卸した武昭はケーキ屋に寄っていた。

 

「うーん……すいません、このケーキを2ホールください」

 

「おや武昭君かい また、孤児院の子供達にあげるのかい?」

 

「えぇ、俺はあの中なら1番の兄貴分ですからね」

 

「そうかい、だったら今日は2ホールだけど1ホール分の代金で良いよ」

 

「いえ、ちゃんと代金払いますよ」

 

「ハハハ、子供が遠慮なんかしなくて良いからよ、ほら持って行きな」

 

「そうですか……ならお言葉に甘えさせてもらいます」

武昭はケーキの箱を受け取ると孤児院に帰っていった。

 

武昭が孤児院に帰ると鈴が調理を終えていた。

 

「あっ、お帰り武昭、ちょうど料理が終わった所よ」

 

「そうか、ありがとうな鈴 これ ケーキを買ってきたから食後にでも食べようぜ」

 

「わーい!ケーキだ!!」 「武昭お兄ちゃん今、食べたらダメ?」

 

「ほらほらちゃんとお昼を食べてからだ」

武昭が駆け寄ってきた子供達に言うと大きな返事をしながら食卓に着いた。

 

その後、武昭と鈴も一緒に座ってお昼を食べていた。

 

鈴が帰る時に子供達に「いつ武昭お兄ちゃんと結婚するの?」と言われて顔を赤くしていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 解き放たれた妖怪(あやかし) 水虎(前編)

武昭と鈴が知りあって幾つかの季節が過ぎて秋になった、ある日の事……

 

とある地方の山中で土地開発の工事が行われていた。

 

「ふぅ、そろそろ昼飯の時間だな」

 

「あぁ、今日は何にするかなぁ……ん?これって、ここにあった石碑か」

作業員の1人が現場の近くにあった石碑を?見つけた。

 

「確かだいぶ昔に、この辺りを暴れ回ってた化け物を封じてたって町の爺さんが言ってたな」

 

「化け物を封じてたか……けど、それって今で言う自然災害とかなんだろ?」

 

「そうかもな、それよりも早く昼飯を食べようぜ」

作業員達が、その場を離れたが、その石碑が鈍く光っていた事に気付かなかった。

 

それから数日後、武昭達は旅行に来ていた。

 

「うーん、やっと着いたわー」

 

(リュウ)さん、(ルウ)さん家族旅行に俺も一緒に来て良かったんですか?」

鈴と武昭の近くに鈴の両親がいた。

 

「あぁ、武昭君には鈴が世話になってるんだからな、私達からのお礼だよ」

 

「それに、この先武昭君もウチの家族になるかもしれないんだから」

 

「ふえっ!?な、何言ってるのよ!媽媽!!」

 

「ハハッ、そんな事よりも早く旅館に行きましょうよ」

 

「おぉ、そうだな確か迎えの車が来てる筈だけど……おっ、あったぞ」

旅館からの送迎車を見つけた皆は車に乗り込んだが武昭は山の方を見ていた。

 

「武昭?どうかしたの?」

 

「いや……あの山何か切り拓いてる様だからさ……(なんだ、この感じは)……」

鈴に声を掛けられた武昭は、そのまま送迎車に乗り込んだ。


暫くして旅館に着いたので宿泊する部屋に通された。

 

「へぇ、結構な広さなのね」

 

「ほらほら男性陣はそっちの部屋よ」

 

「ハハハッ、全くウチの妻は……ん?武昭君、これが浴衣って奴かい?」

 

「えぇ、そうですよ 劉さんが着るなら俺が着付けしますよ?」

皆は、それぞれに過ごす事にした。

 

楽音と蓮音は温泉に向かい武昭と鈴は土産物屋に来ていた。

 

「うーんと、これを二箱とこれを一袋……あとは……」

 

「やっぱり武昭は孤児院の子達にお土産を買って行ってあげるのね」

 

「あぁ、恵さんは気にするなって言ってたんだけどな 鈴はどうするんだ?」

 

「私は……一夏達に買っていくわ」

 

「そうだな、ならレジに行くか」

武昭と鈴は土産物を買うと旅館内を歩いていた。

 

そんな中、2人は廊下に飾ってあった一枚の絵を見つけた。

 

「ん?この絵って……何かしら」

 

「こっちは妖怪?でこっちは……建御雷神(タケミカヅチ)だな……」

 

「建御雷神?って何なの」

 

「あぁ、建御雷神って言うのは日本神話に出てくる神様の1人で確か雷の神様だったか」

 

「へぇー 武昭ってそんな事も知ってるんだ……けど、なんでその神様の絵がここにあるの?」

 

「ほう、若いのによく知っておるのう」

2人の後ろに1人のお爺さんが立っていた。

 

「えぇ、俺はそういう事に興味があるんです、それでお爺さんは、これについて何か知ってるんですか?」

 

「あぁ……その昔、この土地には人を喰らう水の妖怪がおっての、それを退治してもらう為に神社にて祈りを行い空から降りて来たのが建御雷神様だったのじゃ……その後、その妖怪は、あの山に封じ込めたと伝わっておるのじゃ……」

お爺さんが指し示した先には武昭が気になった山があった。

 

「じゃが最近、あの山の開発が始まってのう……今時の者は、その様な事を信じないのかのう……」

お爺さんは、その場を離れた。

 

「じゃあ、俺が何か感じたのは、その話に関係するって事なのか?……」

 

「武昭、そんな事を考えてるよりも卓球でもするわよ!」

 

「そうか、じゃあ負けた奴はジュースの奢りでどうだ?」

 

「良いわよ、私が勝つんだから!」

2人は遊技場にで卓球を始めた。




劉 楽音 鈴の父親。
凰 流音 鈴の母親。
詳しい設定は後ほど設定集を作ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 解き放された妖怪(あやかし) 水虎(中編)

鈴の母親の名前の字を蓮から流に変えました。


卓球を終えて武昭と鈴は自分達の部屋に帰ってきた。

 

「あっ、劉さん達も戻ってたんですか」

 

「私達は少し前にね、それよりも2人は温泉に入ってこなかったのかい?」

 

「私と武昭は先にお土産を買ってたのよ、その後に卓球をやっててね」

 

「3回やって俺が勝ちましたけどね」

 

「お陰でジュースを3本も買わされたわよ!」

 

「はいはい、話してる暇があるなら夕飯を食べに行きましょう」

そう言われ皆は食堂に向かった。

 

夕食を終えて……

 

「武昭、私温泉に行くんだけど、あんたはどうするの?」

 

「そうだな……俺も行くよ 今の劉さん達は危ないし」

武昭と鈴の視線の先では親達が酒を飲んでいた。

 

「じゃあ劉さん流さん、俺と鈴は温泉に行ってきます」

 

「えぇ、一応鍵を持って行って、もしかしたら寝てるかもしれないから」

 

「分かりました、行くぞ鈴」

 

「それじゃ行ってくるから」

武昭は鍵を受け取ると鈴と温泉に向かった。

 

 

男湯side

 

「ふぅ……いいお湯だな……それにしても……」

頭と体を洗った武昭は温泉に入りながら山の方を見ていた。

 

「ここに来てからずっと変な感じがするんだよな……あの山からだとしたら何で……?」

武昭は何かを感じながら温泉を上がった。

 

 

女湯side

 

「日本の温泉て始めて入ったけど、結構気持ちいいわね……はぁ〜」

一方女湯ではリボンを解いた鈴が温泉に入っていた。

 

「それにしても……武昭って、やっぱり胸が大きい方が良いのかしら……?」

鈴は自分の体の部分を見て落ち込んでいた。

 

「男子は胸が大きい方が嬉しいって聞くし……って私は何を考えてるのよっ!

 

「このままなら逆上せるから、そろそろ上がろう……」

 

〔こんな所に若い女がいるとは、ちょうど良かった……〕

 

「誰かいるの?……って私だけしかいないじゃない……」

鈴が上がろうとした時に背後から声がしたが姿が見えなかった。

 

「早く上がって寝た方が良いわね……あれ?何か温泉が粘ついてる様な……」

 

〔長い間封じられていて久し振りの若い女だ……逃しはせん!〕

 

「うそっ!?お湯が何でガボッ!」

湯船から出ようとするのと同時にお湯が勝手に動いて鈴を水の中に閉じ込めた。

 

〔このまま、この者の精気を吸い取ってくれるわ!〕

 

(ガハッ!息が出来ない……助けて……武昭……)ポロ……

鈴が呼吸困難になりつつある状況で武昭の名前を呼んで涙を一筋流した時だった……

 

「鈴に何してんだ!!」

 

〔ムッ!?なぜ人間のガキがワレに気付いたのだ!!〕

化け物は女湯に武昭が入って来たことに驚いていた。

 

「さぁな、何か嫌な気配はずっとしてたんだけどよ、その気配が変に強くなったから来てみたら、お前がいたんだよ!」

 

〔(どうやらこのガキはたまに居ると言われている力を持ちし者か……だが……)貴様の様なガキにやられるワレではないわっ!!〕

化け物は鈴を閉じ込めたまま温泉の中に入って姿を消した。

 

「待てっ!くそっ!……あいつは一体?……それよりも早く鈴を助けないと……けど……

あんな化け物の事を話しても信じてくれる訳が……どうしたら?……ウッ!?」

武昭がどうしようか考えてると頭に痛みが走った。

 

だが、その時、頭の中に短い金髪で何らかの形を模した黄金の鎧を身に纏いその手からは雷を放つ男性の映像が一瞬浮かんだ。

 

「ハァハァハァ……何とか痛みは治まったか……けど、今のは幻なのか……いやそれよりも鈴の所に向かわないと!」

武昭は急いで旅館を出ると何かを感じていた山の方に向かった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 解き放された妖怪(あやかし) 水虎(後編)

妖怪が封じられていると伝承がある山に着いた武昭は違和感に気づいた。

 

「なんだ……凄い静かだ……これだけ自然があるなら動物とかの気配が……ガサッ……なっ!」

武昭が草を分入って奥に進むと水の球に閉じ込められてる動物達の姿があった。

 

「どうやら、さっきの奴がやったみたいだけど……なるほど少しずつエネルギーを吸い取っているのか……ん?」

球をよく見ると植物の根の様の物が伸びていた。

 

「どれを見ても同じ方向に向かっている……という事は、これの先に鈴が……待ってろ!」

武昭は根が伸びている方に進んだ。

 

暫く進むと山中で拓けた場所に出た。

 

「水の根はこっちに……なんだ、これは……?」

武昭が到着した場所は周りに多数の水の球があり、その中には作業服を着た人達が入っていた。

 

「多分ここで工事をしてた人達だろうな……干からびてはいるけど、まだ息はあるな……鈴は?……っ!」

武昭が水の球を調べてると足元から棘状の水が飛び出してきたので木の上に飛び乗って攻撃をかわした。

 

〔ほう……ワレの攻撃を避けるとは、それなりの実力者という事か……〕

 

「あぁ、何か足元から気配を感じたからな、それよりも鈴は何処だ!」

 

〔鈴? あぁワレが拐ってきた少女なら、ここにおるわ〕

地面から妖怪が出て来ると同時に大きな水球が見えてきて、それの中心に目を瞑って蹲っている鈴がいた。

 

「鈴!テメェ鈴を離しやがれ!!くっ!」

 

〔ふっ、面白い だがワレに勝てると思っているのか!〕

妖怪は触手を伸ばして武昭に攻撃するが何とか避けていた。

 

「チッ!(何とか避けてはいるがこのままじゃ……)しまっ!ガハッ!!」

武昭は横から来た触手をかわせず、そのまま近くの木に叩きつけられた。

 

〔ワレが見てきた中でも、なかなかの者だったが所詮は人間の中でというだけだ〕

妖怪は触手で武昭の首を締めて、そのまま持ち上げた。

 

「ガッ!……テメェ……離し……やがれ……」

 

〔ふん、このまま貴様の命を奪ってやろう……さらばだ……人間よ!〕

 

(くそ……せめて……鈴だけでも………)

 

『俺は……諦めない!』

武昭の意識が落ちようとした時に山に来る前に見た黄金の鎧を纏った人物の映像が再び浮かび上がったが、それの場面は多数ありいずれの場面で彼は何かと戦っていた。

 

(これは?………それに……()()()()()()()()

 

〔何故だ!何故貴様は神である我の攻撃を何度も受けて立っているのだ!?〕

 

『それは……俺が女神アテナに仕えし……聖闘士だからだ!!

そう声をあげた人物の体から金色の何かが立ち上がるのが見えた。

 

(コレは?……いや、俺はコレを知っている……そうだ修行中に何度か感じた物と似ている……)

 

『そうだ……これは俺達、聖闘士が体内に宿す小宇宙(コスモ)と呼ばれてる物だ』

 

「え?……いつの間にか周りが変わっている?……」

武昭が何かに気づくと周りが暗くなり目の前に見ていた人物が立っていた。

 

「あなたは?……そして、ここは……」

 

『俺の名前はアイオリア、女神アテナに仕えし聖闘士……獅子座(レオ)黄金聖闘士(ゴールドセイント)だ』

 

「その聖闘士であるアイオリアさんが、なんでこんな所に、それにここは……」

 

『ここは世界のどこでもありながら、どこでもない場所だ……俺もよくは知らないんだがな』

 

「そうですか……そうだ、俺はこんな所にいる場合じゃないんだ!早く鈴を助けないと!!」

 

『待て、俺も多少は事情を知っている……だが今のお前が行った所で何が出来るんだ?』

 

「そうかもしれない……俺はアイオリアさんみたく強くないし、体を鍛えてると言っても、あんな化け物に勝てるとは思わない……」

 

『ならば何故……死ぬかもしれな「けど!それがなんだって言うんだ!俺は鈴を助けたい!ただ、それだけだ!!」そうか……(彼を見てると()()()()()()()()()())……』

アイオリアは武昭を見て共に戦いアテナを守った後輩たちの事を思い出していた。

 

『そうだな……守りたい者がいるならば、どんな相手だろうと立ち向かう、それが俺達聖闘士だ……そして、分かったよ、何故俺がここにいるのかを……お前に()()()()()()に俺はお前に会いに来たんだ……』

アイオリアは右手で拳を作ると前に突き出した。

 

『さぁ、俺と拳を合わせるんだ、そうすると俺は の力をお前に託すが出来る……「あぁ、分か……」ただし、俺の力を受け取るという事は、辛い道を歩む事になるかもしれない……それでもお前は俺の力を受け取るのか?』

 

「俺もアイオリアさんの戦いの歴史を見ました……だからこそ、俺が戦う事で自分の手が届く人達を守れるのなら……俺は辛い道を選びます!」

武昭は自分の想いを告げるとアイオリアの拳に自分の拳を合わせた。

 

その瞬間……

 

「うわっ!なんだ、この体内から沸き立つ物は!?」

 

『それはお前自身の中にあった小宇宙だ……俺の力を受け取った事により以前より感じる事が出来たのだろう……そして、俺の役目ももう終わりの様だ……』

武昭が自分から出た小宇宙を感じてるとアイオリアの姿が段々と薄くなっていった。

 

「なっ!アイオリアさん!なんで!?」

 

『お前に力を託す為に俺が現れたからだ……最後に言っておく……どんな状況になろうとも諦めるな……それが我ら聖闘士だ……さらばだ……()()……」

 

「アイオリアさん……分かりました、俺も諦めません……この世界で唯一の()()()として!!」

武昭が言うと周りが白くなっていき武昭も姿を消した。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 黄金の獅子

武昭がアイオリアから小宇宙を授かって……

 

「ん……どうやら、そんなに時間は経ってないみたいだな……」

 

〔貴様……なんだ!貴様から感じる、その力は!!〕

 

「お前に説明する理由はない……ただ、俺はお前を倒すだけだ!」ドゴーン!!

そう言った武昭が妖怪の触手に拳を振るうと雷が出て、そのまま砕いた。

 

〔グワァー!何故だ!何故、貴様が()()()を使えるのだ!?〕

 

「さっきも言ったがお前に説明する理由は無い!それと!」シュン!

 

〔なっ!いつの間に!?〕

妖怪は自身が戸惑っている間に武昭の腕の中に鈴がいた事に驚いていた。

 

「これで鈴を巻き込む事は無いな……さぁ……二度とお前がこの世に現れない様にしてくれる!」

 

『そうだ……俺達聖闘士は小宇宙を高める事に限界は無い……』

 

(アイオリアさん?……そうだ……アイオリアさんもあらゆる相手と戦い続けたんだ……小宇宙を高め続ける事で!)

 

「ウォォー!高まれ!俺の小宇宙よ!!」

武昭が気合を入れると同時に体中から黄金のオーラが浮かび上がって黄金の獅子を形作った。

 

〔なっ!?なんだ貴様は……一体何者だー!?〕

武昭のオーラを見た妖怪は全身から触手を出して武昭に攻撃をした。

 

「冥土の土産に教えてやるよ……俺は、この地上で唯一の聖闘士……()()()()()()()()()

 

喰らえっ!ライトニングボルト!!」ドゴォーン!!

武昭は攻撃を喰らう前に右手から雷を出して妖怪を倒した。

 

〔バ、バカな……我を……倒せる者など……いる筈が…………〕

 

「教えてやる……俺達聖闘士は小宇宙を燃やす事で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っても、もう聞こえてはいないか……」

 

「ん……あれ?……なんで、私、こんな所に?……って!なんで私裸なのよ!?

妖怪を倒して少しすると鈴が目を覚ましたが自分の格好を見て顔を赤くした。

 

「あぁ……ほら鈴、俺の奴だけど……これでも着てろ……」

 

「た、武昭!?まさか、アンタがって……どうしたのよ!そんなに傷ついて!!」

鈴は武昭が居た事に気付くが武昭が傷だらけになっているのを見て慌てた。

 

「詳しい話は旅館に戻ってからだ……ほら靴も無いんだからおぶってやるよ……」

 

「う、うん……ありがとう……(あっ……武昭の背中って、こんなに大きかったんだ……それに凄く暖かい……)

鈴は武昭に背負われながら武昭を感じていた。

 

2人が旅館に帰ると鈴の両親はお酒を飲んで眠っていたので軽く片付けをしていた。

 

「全く……旅先だからってハメを外しすぎよ……」

 

「まぁ良いだろ……ふぅ、布団も敷いたからおじさん達を寝かせるか」

武昭と鈴は両親を布団に寝かせると窓際にあった椅子に座った。

 

「それで武昭……何があったか……私に教えてくれる?……」

 

「あぁ……構わないけど……俺の言う事は突拍子も無い話だぞ?それでも聞くのか?」

 

「えぇ……本当なら聞かなくても良いのかもしれないわね……それでも私は聞きたいの……武昭の口から……」

武昭は鈴の表情から決意を感じたので話す事を決めた。

 

「あぁ、そこまで言うなら俺も決めたよ……何があったのか……」

武昭は鈴にこれまでに合った事を話した。

 

武昭の話を聞いて……

 

「妖怪に聖闘士……それに小宇宙ね……普通だったら何を言ってるのって、いつもの私なら言うけど……何となくは覚えてるのよ……温泉に入ってる時に変な奴に捕まったって事は……」

 

「そうだ、その時に変な気配を感じて俺が()()()()()と鈴が捕まってたんだ……って、どうした?鈴」

武昭は話を聞いていた鈴が顔を赤くしていた事に気付いた。

 

「武昭……変な気配を感じたから女湯に来たって言ったわよね?……じゃあ、その……私の……」

 

「あ……悪かった……幾ら鈴を助ける為とは言え……本当に悪かった……」

武昭は鈴が顔を赤くしてた理由に気付くと土下座をして謝罪した。

 

「そこまでしなくていいわよ!それに……武昭が気付いてくれなかったら私は今、ここにいなかったかもしれないんだから……」

 

「鈴……許してくれて、ありがとうな……」

 

「あ、当たり前じゃない!私を助けてくれたんだから……それで、その妖怪にやられてる時に武昭は、その聖闘士って人に会ったんでしょ?」

 

「あぁ、俺が会ったのは獅子座の黄金聖闘士のアイオリアって人なんだ……」

 

「そうなんだ……ん?ねぇ獅子座の黄金聖闘士って言ってたけど、もしかして……」

 

「鈴の考えてる通りだ……黄金聖闘士は全部で12人いるみたいだ……鈴が知ってる12星座だ……ふわぁ……ほら、そろそろ布団に行くぞ」

 

「そうね……ってねぇ……私の部屋って両親が寝てるんだけど……武昭の方で一緒に寝ても良い?

 

「あぁ、鈴が良いなら俺は構わないぞ……じゃあ、おやすみ鈴……」

 

「う、うん……おやすみなさい……って……もう寝てるの?……全く、少しは緊張とかしなさいよ……あ……」

鈴と武昭は布団が隣同士で寝る事にしたが武昭が普通にしてた事に軽く機嫌が悪かったが武昭が寝返りをした時に浴衣の間から傷が見えた。

 

「そうか……武昭は私を、あの妖怪から助ける為に戦ってたんだもんね……うん、お疲れ様……これ位、良いわよね……

鈴は武昭の左手を握ると、そのまま眠りについた。

 

次の日の朝、鈴は両親から「私は武昭君なら鈴音を任せても良いぞ」 「それで鈴音は武昭君のどこが良かったの?」とからかわれて赤くしていながら帰っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 内気な女の子

温泉から帰ってきた武昭はいつもの修行場所で石の上に座りながら精神統一をしていた。

 

(ん……あの時に……俺はアイオリアさんが戦ってきた歴史……って言える物を僅かながら見る事が出来た……)

武昭は温泉で起きた事を思い出していた。

 

(けど、あの後に俺は傷を負ったからか数日の間眠りについていたと恵さんに聞かされたっけ……)

 

「ねぇ!武昭!!」

 

「ん?なんだ鈴、来てたのか?」

武昭が目を開くと鈴が横に座っていた。

 

「えぇ、子供達に、ちょっとした差し入れを持って来たら武昭がコッチにいるって言うから。ほら食べなさいよ」

 

「おぉ、今日は青椒肉絲と酢豚か……ん?いつもの味と違うけど……」

 

「えぇ、今回のは少し辛めにしたんだけど……どう?」

 

「うん、俺は好きな味付けだぞ……それと、もう少し酢豚の肉は大きめが良いな」

 

「そうなんだ……じゃあ今度作る時は、そうするわね……ねぇ?何を考えてたの?」

鈴は武昭に尋ねた。

 

「あぁ……温泉の時に感じた小宇宙の事を考えてたんだ……フゥー……」

 

「何かしら……武昭の雰囲気が強くなったみたいな……」

 

「あぁ、それが小宇宙だ……そして俺はまだ()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()

 

「え?それって、どういう事?武昭は温泉に行った時に私を捕まえた化物を倒したんでしょ?」

 

「そうだ、確かに俺は小宇宙を使って水虎を倒した……けど、あれはただ小宇宙を使ったってだけなんだ」

武昭の説明に鈴は頭を捻っていた。

 

「分かりやすく言うと……鈴は料理をするよな?」

 

「えぇ、これだって私が作ってきたんだから」

 

「俺も料理はするけど、鈴みたく凝った物が作れない ただ軽く炒めたりするだけなんだ」

 

「うーん……何となく分かった様な感じがするわ……武昭は小宇宙は使えるけど、それを使って何かをしたりが出来ないって事なのね」

 

「その解釈で構わないよ……だから、こうやって鍛えてるんだ……()()()()()()()()()()()

 

(武昭は自分が何をしたら良いかちゃんと分かってるんだ……じゃあ、私は?……何をすれば……武昭の為に……)

鈴はトレーニングを再開した武昭を見ながら何かを考えていた。

 

それから数日後……

 

「さてと……ひとまず、ここら辺で休憩するか」

武昭はトレーニングの一環で距離にして三駅ほど離れた街まで来ていた。

 

「それに時間も時間だからお昼でも食べるか……何にするかなぁ……おっと、ごめんね大丈夫?」

 

「は、はい……大丈夫です。私の方こそ……ごめんなさい……」

武昭が店を探してると肩までの水色の髪が内巻きでメガネをかけた赤い眼の少女にぶつかって転倒させたので手を差し出した。

 

「いや、俺が余所見をしてたからだからさ、気にしないで良いよ」

 

「あ、ありがとう……ございます……痛っ!」

少女が手を取って立とうとした時、痛みから顔をしかめた。

 

「もしかして……どこか痛めたみたいだね……君が良かったら家まで送って行くけど……」

 

「いえ……大丈夫です……ウッ!……」

少女が無理をして立とうとしたが倒れそうになったので武昭が慌てて支えた。

 

「ほら、今無理をしたら治るまで時間がかかるよ?……だから……」

 

「はい……じゃあお願いします……」

 

「そうか、なら背中に乗って……」

武昭が背中を向けると少女は、そのままおぶさった。

 

「あ、あの……重くないですか?……」

 

「ん?普通に人を背負ってる感覚はあるけど、重くないよ、俺は鍛えてるしね……そうだ、自己紹介がまだだったね俺は小宙武昭って言うんだ」

 

「私は更識簪って言います……家にはお姉ちゃんがいるから簪って呼んでください……」

 

「分かったよ、なら俺も武昭で良いよ 友達からはそう呼ばれてるから」

 

「うん……(なんだろう……武昭とこうしてると何か暖かい感じがするな……)」

武昭は簪の案内で簪の家に向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 姉妹達との出会い。

武昭が簪を家まで送ると……

 

「へぇ……ここが簪の家なんだ……大きい家だな……」

 

「うん……ちょっと……家の仕事が……」

武昭は簪の家の大きさに軽く見とれていた。

 

「あっ、かんちゃ〜ん?どうしたの〜?」

武昭が見てると門から両手を服の袖で隠したツインテールの女の子が出て来た。

 

「あっ、本音……あのね……」

 

「すみません、俺が余所見をして簪さんにぶつかった時にケガをさせたので、こうやって連れて来ました」

 

「そうでしたか〜 それならこちらへどうぞ〜」

武昭は本音と呼ばれた少女に連れられて中に入っていった。

 

それから簪が治療の為、本音と離れると武昭は空いていた部屋に通された。

 

「ふーん、結構な広さだなぁ……失礼します」あっ、どうぞ」

武昭が部屋を見てると本音と同じ髪色で眼鏡を掛けた少し年上の女性がお茶を持って入ってきた。

 

「お茶になります」

 

「ありがとうございます。所であなたはさっき会った本音って子と姉妹か何かですか?」

 

「 えぇ、私は本音の姉で布仏 虚(のほとけ うつほ)と言います」

 

「ご丁寧にありがとうございます、俺は小宙 武昭って言います。簪の事はすみませんでした」

 

「いえ、簪様からも詳しい事情は聞いてますので気にしないでください」

 

「(ん?)分かりました……えっと布仏さんに聞きたいんですが「本音もいますので虚で構いませんよ」そうですか、じゃあ虚さんに聞きたいんですけど……俺の背後に隠れてる人は……誰ですか?」

 

(嘘!彼は虚ちゃんの方を見ててコッチは見えないはずよ!?)

武昭の言葉を聞いた虚と隠れてる人物は驚いていた。

 

「まぁ、こんなに大きな家だったら何処の誰かとも分からない人物が来たら用心するのは当たり前ですけどね」

 

「ごめんなさいね小宙くん、簪ちゃんが連れて来たとは言え、こういう事をしちゃって」

武昭の後ろの襖が開くと外ハネの水色の髪に赤い眼の少女が虚の横に正座した。

 

「初めまして、簪ちゃんの姉の更識 刀奈(さらしき かたな)と言います」

少女は自己紹介をすると頭を下げた。

 

「簪ちゃんから話は聞いたわ、ありがとうね家まで連れてきてくれて」

 

「いえ、俺は当たり前の事をしただけでお礼を言われる様な事はありませんよ」

 

「あら、自分がした事を鼻にかけたりしないのね。所で小宙くんは何か習ったりしてたりするのかしら?」

刀奈は微笑みながら武昭に尋ねた。

 

「特に何かを習ったりとかはしてなくて自分で体を鍛えてるだけです」

 

「そう。その鍛えたりしてるのはご両親に言われたからとか……」

 

「あぁ……俺って両親がいないんですよね……」

武昭は苦笑すると刀奈と虚に自分が孤児院の前に捨てられていた事などを話した。

 

「そうだったの……ごめんなさいね話したくない事を聞いたりして……」

 

「気にしないでください 更識さんは知らなかったんですから、それにいつかは分かる事ですから……」

 

「小宙くん、お詫びという訳ではないけど、私の事は刀奈って呼んでくれるかしら?簪ちゃんもいるから……」

 

「分かりました刀奈さん、じゃあ俺の事も武昭で良いですよ、簪のお姉さんなら俺とも友達ですから」

 

「えぇ、分かったわ武昭君」

2人は握手をした。

 

その後、武昭が帰る時に簪、刀奈、本音、虚に見送られた。




この時の楯無はまだ襲名してないので本名の刀奈にしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 猫と兎

武昭が更識姉妹達と会って数日経った頃……

 

「ふぅ……今日はここまでにしておくか……」

 

「はい、武昭。スポーツドリンクよ」

 

「あぁ、ありがとうな鈴」

いつもの場所でトレーニングを終えた武昭は鈴から飲み物を貰って休んでいた。

 

「そう言えば前に武昭は小宇宙を自由に使えてないって言ってたけど、どうなの?」

 

「あぁ、俺が見たアイオリアさんは手から雷を出して戦ってたから、俺もやってみようと思うんだけど……フッ!」バガン!

武昭は近くにあった巨大な岩を砕いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「いや普通は岩を素手で壊す事が出来ないからね……けど、武昭が知ってる聖闘士って人達はコレを普通にしてたのよね?」

 

「そうだ……だからこそ俺は強くならないとダメなんだ……あの人達みたいに……」

 

「そうなんだ……ねぇ武昭……お願いしたい事があるんだけど……」

鈴は武昭にある提案をした。


鈴が武昭にある提案をしてから数日後……

 

「ハァハァハァ……コレで10kmのランニングは終わったわよ……」

 

「そうか、なら5分休憩した後に吊るされて腹筋を50回だ」

鈴は武昭に教わりながらトレーニングをしていた。

 

「けど鈴は本当に良かったのか?俺と一緒のトレーニングをしても」

 

「えぇ……私が自分からやるって言ったんだもの……諦めたりしないわよ」

 

「そうか、頑張るのは良いけど無理はするなよ。俺だって最初からこんなに出来た訳じゃないから」

 

「分かってるわよ、私だって途中からとは言え武昭のトレーニングを見てきてるんだから……ホラ!早く吊るしなさいよ!」

休憩を終えた鈴は武昭に枝に吊るされての腹筋を開始した。

 

「鈴、何回も言ってるけど……」

 

「限界まで行ったら無理しないで止めろって言うんでしょ そんなの何回も聞いてるから分かってるわよ!」

反論しながらも鈴は腹筋を開始した。

 

「ふぅ……今じゃ鈴も分かってるか……そうだ、()()が出来るかやってみるか……」

武昭は座禅を組むと精神集中を行った。

 

(アイオリアさん……もしも俺の声が聞こえるなら姿を見せてください……)

 

『まさか再会出来るとは思ってなかったよ』

声がしたので武昭が目を開くと黒い空間にアイオリアと共に立っていた。

 

「アイオリアさん、俺も出来たら良いと思ってやってみたんです、それで聞きたい事があって……」

 

『分かっている、小宇宙を上手く使う事が出来ないのだろう』

 

「ッ!その通りです……小宇宙を感じる事は出来てきてるんですけど、そこから先に進めないんです……」

 

『ふむ……武昭に聞くが雷とは、どうやって起きているか知っているか?』

 

「え?確か……空気の摩擦だった様な……」

 

『そうか……なら、その空気の摩擦とはなんだ?』

 

「空気の摩擦って言われても……うーん……」

 

『それが分かれば武昭も()()()()()()()使()()()()()()()だろう……どうやら、そろそろ時間が来た様だな……』

 

「アイオリアさん!?」

武昭がアイオリアを見ると体が少しずつ薄くなっていった。

 

『安心しろ、必ず武昭も俺たちの様に強くなれるだろう……』

アイオリアの姿が消えると周りは暗くなり武昭も少しずつ意識を失っていった。

 

「……き…………け……あ…き……武昭!」

 

「ん……鈴?……どうしたんだ?……」

武昭が目を開けると鈴が近くで起こしていた事に気づいた。

 

「どうしたんだって……いくら呼んでも武昭が起きなかったからよ!」

 

「そうか、悪かったな鈴……アイオリアさんと話してたんだ……」

 

「そうだったんだ……それで何を話してたの?」

鈴に聞かれた武昭は話の内容を話した。

 

「はあ?何よ、その科学者が話してそうな話は」

 

「これだけを聞くと、そう思うよな……けど何か関係がある筈なんだ……どういう事か理解出来れば……」

 

「私も手伝ってあげたいけど、そっち系はちょっと苦手なのよねー ()()()()()()()()()()()()()()()っていないかしら……」

 

「俺も苦手だからな……しかも先生とかに聞く訳にもいかないし……どうしたら良いんだ?……」

武昭がそう考えていた時だった……

 

〔ふっふっふっ、タッ君が困った時はこの私に任せなさいっ!〕

 

「えっ!?誰よ!どこにいるの!?」

何処かから誰かの声がしたので鈴が周りを見るが姿が見えなかったが武昭は心当たりがあった。

 

「今の声って……もしかして……束さん?」

 

「やっぱりタッ君は直ぐに分かってくれたんだー!」

 

「モガッ!?」 「武昭!?」

何処からともなく姿を見せた束が武昭に飛びつくとその胸に顔が埋まり、鈴はそれを見て驚いた。

 

「タッ君成分を補充しようと思ったらタッ君が困ってるみたいだから助けてあげるからねー!」

 

「あのっ!貴女が誰か分からないですけど、そのままなら武昭が危ないんですけど!!」

 

「へっ?それって……タッ君!?

束が鈴に言われて武昭を見ると軽く顔を青くして気絶していた。

 

その後、武昭を目覚めさせようとして束が人工呼吸する所を鈴が止める一幕があった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 新たな聖闘士?

気絶から覚めた武昭は束と鈴に互いの事を教えた。

 

「まさか……貴女が、あの篠ノ之束博士だったなんて……」

 

「そうだよー 私があの束さんなのだー」ブイブイ

束はダブルピースをしながら自己紹介をしていた。

 

「それにしても久し振りですね束さん、元気でしたか?」

 

「ニャハハハ、ありがとうねタッ君、心配してくれて束さんは元気だよー」

 

「それは良かった……それで今日はどうしたんですか?」

 

「うん、何かタッ君が困ってる感じがしたから来たんだよー……それよりも、この子は誰?」

 

「あっ、私は鳳・鈴音って言って武昭のクラスメイトです」

 

「そうなんだ、じゃあ君はリッちゃんだね、よろしくリッちゃん」

 

「ふーん珍しいですね 束さんが身内以外に興味をもつなんて」

 

「え?どういう事、武昭」

鈴に聞かれた武昭は束が身内以外には無関心な事を説明した。

 

「うーん何となくだけど、リッちゃんとは仲良くしてた方が良いって思ったんだよねー」

 

「まぁ、束さんがそういうなら詳しくは聞かないですけど……けど、ちょうど良かった束さんに聞きたい事があったんですよ……」

武昭が聞きたい事を尋ねると束は少し考えて答えを出した。

 

「うん、簡単に言うと空気の摩擦って言うのは分子の振動なんだよ」

束の答えに武昭と鈴は頭を捻った。

 

「もっと分かりやすく言うと物質の温度が上がるって言うのは原子運動が激しいからなんだ」

 

「じゃあ逆に原子運動の動きを遅くすると温度が下がるんですか?」

 

「そう、タッ君の言う通りだよ」

 

「なるほど……『それは私が使う闘技の基本でもあるな……』え?今の声……あぁ、鈴、少し()()()()()()()()()()()

 

「そう?分かったわ、こっちは大丈夫だから……だから……ほら、ここに頭乗せなさいよ……

武昭は何処から声がしたので鈴に告げると、理解した鈴は自分の膝を叩いて膝枕を促し武昭は、そのまま眠りについた。

 

「え!?タッ君、どうしたの急に!?それにリッちゃんはなんで普通に膝枕してるの!?」

それを見ていた束だけは何が起きたか分かっていなかった。


眠りについた武昭は以前アイオリアと話した空間にいた。

 

「ここに来たのは良いけど……あの声はアイオリアさんと違う人だったな……」

 

『それは、今居るのが私だからだ……』

武昭が声の人物を確認すると緑色と青色が混ざった様な色の髪の男性が立っていたがアイオリアと同じ様に黄金聖衣を纏っていた。

 

「その纏っているのが黄金聖衣って事は……貴方もアイオリアさんと同じ黄金聖闘士なんですか?」

 

『あぁ、私は水瓶座(アクエリアス)黄金聖闘士(ゴールドセイント)でカミュと言う』

 

「そうでしたか、それでそのカミュさんはなんで俺に会いに来たんですか?」

 

『それは武昭に小宇宙の使い方の応用を教える為に来た』

 

「小宇宙の使い方の応用……ですか?」

 

『そうだ、私が使う闘技は小宇宙を高めて分子の運動を遅くする事で()()()()()を使う……』

カミュが右手を前に翳すと空間が凍っていた。

 

「なっ!?周りが……凍りついた?……」

 

『これが私の使う闘技だ……小宇宙を高めてあらゆる物を凍てつかせる……』

 

「これはアイオリアさんが使うライトニングボルトと同じと考えて……良いんですか?」

 

『あぁ、小宇宙を高めるという点については同じだ……だが私の技を使うにはある事が必要だ……』

 

「ある事……ですか?……」

 

『そうだ……それは……()()()()()()()()()()()()()()だ……』

 

「如何なる場合でもクールであれ……分かりました、小宇宙を高めてカミュさんの技を身に付けます」

 

『(そうか……私やアイオリアが、この様に出来ているのは……()()()()()()()()()()()()()()()()()())武昭、お前に私の技の中で基礎技を教えよう……』

武昭の中に自分の弟子と、その仲間達から出る物を感じたカミュがそう言うと武昭は小宇宙が高まっていくのを感じた。

 

「凄い……以前にアイオリアさんの戦いを見た事があるけど…。これはまた違う物だ……」

 

『行くぞ……これが我ら氷の闘技を使いし聖闘士においての基礎とも言えし技だ!!』

 

ダイヤモンドダスト!!

カミュが右手を振り抜くと凄まじい凍気が発生した。

 

「これが……基礎の技……」

 

『あぁ、小宇宙を高めていけば……いずれは絶対零度に到達する事も出来る……では……』

カミュの姿が薄くなっていくとそのまま消えていくのと同時に武昭も気が遠くなっていくのが分かった。

 

その後、目を覚ました武昭は束に事情を説明していた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 水と氷の闘技

武昭が束と再会した日から数日後……

 

「ハァハァハァ……まだクールにいられないのか……」

 

〔タッ君、少し休みなよ 4時間もぶっ続けでトレーニングもしてるんだから〕

武昭は束が用意したトレーニング場所に来ていた。

 

武昭から事情を聞いた束はいつでも体を鍛えられる様に場所を用意し、時間が合えば武昭と鈴はそこでトレーニングを行っていた。

 

「ふぅ、4時間もやってたのか……それは疲れるな……」

 

「何が疲れるよ ほら汗を拭きなさい」

武昭が休憩室に行くと先に鈴が休んでいてタオルを渡してきた。

 

「あぁ、ありがとうな鈴……そっちの方はどうだ?」

 

「こっちもこっちでキツいわよ」

 

「それでもタッ君の方がリッちゃんよりもキツいんだけどね」

2人が話してると束がその場に来た。

 

「束さん、すみません急に変な事を頼んだりして」

 

「ううん気にしなくても良いよタッ君。私がやりたくてやってるんだから」

 

「けど、束さんって凄いですよね、直ぐにこんな施設とか用意出来るんですから」

 

「これ位なら、この束さんからしたらカップラーメンよりも早く出来るよ」

鈴の言葉に束が“どうだ”とした表情をした。

 

そんな話してる中……

 

グゥ〜

誰かの腹の音が鳴ったので確認すると武昭からだった。

 

「あら、ちょうど良かったからお昼にしましょ 武昭、今日は何か食べたい物ある?」

 

「俺は鈴が作る料理ならどれも美味しいから何でもいいぞ」

 

「じゃあ束さんのリクエストで回鍋肉と炒飯が食べたいな」

 

「分かりました、じゃあ作ってる間に武昭はシャワーでも浴びてきなさいよ」

 

「なら束さんは軽く作業をしてるから」

3人はそれぞれの場所に向かった。

 

暫くして鈴が料理を作り終えたので3人で昼食を開始した。

 

「うん、鈴旨いぞ 昔からそれなりに食べてるけど腕前が上がってきてるな」

 

「それは、そうよ私だって頑張ってるんだから」

 

「リーちゃん、炒飯のおかわりをちょうだい!」

 

「はいはい、どうぞ 武昭は?」

 

「俺は半分で回鍋肉の方を多めにくれ」

鈴は武昭と束におかわりを渡していたが、その顔は喜んでいた。


昼食を終えて休んでると束が何かを思い出した様に何かを持ってきた。

 

「そうだ、タッ君に聞きたいんだけど、コレ覚えてる?」

 

「え?コレってもしかして前に千冬さんと手合わせをした時に俺が()()()()()()()()ですか?」

 

「うん、そうだよ。コレを見てから私はタッ君に興味を持ったんだ」

 

「束さん、私にも見せてください……うわぁ、すごい綺麗に斬れてるわね……」

 

「そうか……あの時は分からなかったけど、今なら分かる俺は無意識に小宇宙を高めて使っていたんだ……待てよ……だとすれば……」

武昭は竹刀を見ながら何かを考えていたが少し経つと考え事が終わった。

 

「鈴、悪いけどコップに水をくれないか?」

 

「えぇ、ちょっと待ってて。はい」

 

「ありがとうな鈴、さてと……(あの時の感じを無意識でしないで……意識すれば……)ふぅ、何とか出来たか」

武昭は小宇宙を高めるとコップごと水を凍らせた。

 

「へぇ……本当に凍ってるねぇ……」

 

「凄いわ……まさか本当にこう出来るなんて……」

それを見た束と鈴は感心していた。

 

「あぁ、今はまだ少し集中しないとダメだけど特訓していけばスムーズに出来る筈だ……束さん、トレーニングの続きをお願いします!」

 

「うん、分かったよタッ君」

 

「待ちなさいよ!私だって直ぐに追いついてみせるんだから!」

3人は、それぞれのやる事を再開した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 目指す最高位

束が用意したトレーニング場所の部屋の1つで……

 

ジャーッ

「はぁ……ふん!」パキーン!

武昭が左手を翳して部屋に流れてきた水を凍らせていたが……

 

「うん、大分出来る様になってきたか……そしてっ!」ドゴーン!

右手から雷を発生させてる凍らせた氷を砕いた。

 

「こっちも、普通に使えるみたいだな……おっと、今のは良かったけど俺からすればまだまだだな」

 

「あぁーっ!また負けたー!!」

武昭が自分の状況を確認してると後ろから鈴が不意打ちをして来たが難なくかわされていた。

 

「当たり前だ、一応とは言え俺の方が聖闘士としては少しばかり先輩なんだからな、さてと次は正面から来い」

 

「言われなくても……行くわよっ!」

武昭に言われて鈴は、そのまま向かってきた。


一方、トレーニング場所のある部屋では束が武昭と鈴の様子を観察していた。

 

「やっぱり、タッ君が使ってる小宇宙って力は私が初めて知る物なんだ……それにリッちゃんも……」

そう言った束がモニターに視線を移すと……

 

「ハァーッ!フッ!!」 ドゴーン!ビシッ!

 

「鈴も小宇宙が使える様にはなってきたみたいだな……だがっ!」シュン!

 

「ガハッ!……全く……女の子には優しくしなさいよ……」

鈴が武昭に殴り飛ばされておりその衝撃で壁には大きなヒビが入っていた。

 

「そうか?これでも手加減で()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うんタッ君の言う通りだよ、リッちゃん」

2人が話してると束が部屋に入ってきた。

 

「それにしても……2人とも凄いね()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

束が部屋を見回すと壁や床の所々にヒビや凹みが出来ていて武昭と鈴は気まずい表情をしていた。

 

「まぁ、私も色々と小宇宙を調べる事が出来て良いんだけどね……それでタッ君、リッちゃんはどうなの?」

 

「前にアイオリアさん達に聞いてみたんですけど、今の鈴は青銅(ブロンズ)に成り立てって所ですね」

 

「ん?ねぇ、武昭、その青銅って何?」

 

「あぁ、説明してなかったから……アイオリアさん達が言ってたんだけど聖闘士には幾つかの段階というかランクがあるみたいなんだ」

 

「そのランクって何なの?」

武昭は鈴と束に説明をした。

 

「まず聖闘士って言うのは女神アテナに仕える戦士達の名称で最低で88人いるらしいんだ」

 

「88人って、何でそんな半端なの?」

 

「多分だけど、その88人って星座の数なんじゃないかな?タッ君」

 

「えぇ、束さんの言う通りです、それでその88人の中でも12人しかいないのが聖闘士の中で最高位と言われている黄金聖闘士です」

 

「そうなんだ、それで武昭が言ってた青銅って言うのはどのくらいなの?」

 

「青銅は聖闘士の中でも低い位でその間にいるのが白銀聖闘士(シルバーセイント)と呼ばれている者達なんだ。

ちなみに青銅が52人白銀が24人らしい」

 

「へぇ、そうなんだ……面白いじゃない直ぐに白銀になって黄金まで上がってあげるわよ!」

 

「じゃあ、その為には攻撃速度をもっと上げるんだな……今の速さじゃまだまだだな」

 

「え?どういう事よ」

 

「説明するより見せた方が早いな、束さん速度計みたいなのありますか?あと何か的みたいなのがあれば良いんですけど」

 

「うん、簡単な奴ならここにあるよ、的の方も……ホイっと」

束はポケットからスピードガンを出して目の前に空間キーボードを出して操作すると人型の的が出てきた。

 

「じゃあまずは鈴があれに攻撃をしてくれ。束さん攻撃の速度を測ってください」

 

「うん、鈴ちゃん用意は出来たからやって良いよ」

 

「分かりました、ハァーッ!」 パァン! ピッ

 

「普通の人間が生身でこれだけ出すのも凄いよ」

束がスピードガンの表示場所を見ると時速300kmと表示されていた。

 

「束さんの言う通りだな……けど、聖闘士になるなら最低でもこれ位は出すんだな。フッ!」ビシュン!ピッ

 

「え?……えーっと、タッ君……時速1225kmって出てるんだけど?……」

 

「束さん、それってどれ位の速さなんですか?」

 

「簡単に言うとマッハ1……音速だよ……1秒間に340m進む速度だね……」

束は信じられないと言った表情で鈴に説明した。

 

「マッハ1は聖闘士としてはまだまだですよ、白銀聖闘士ならマッハ2〜5ですし……黄金に関しては1秒間に地球を7周半する程の速さを出せるみたいですから」

 

「本当に……聖闘士って言うのは凄い存在だって感じるよ……リッちゃんに言っておくけど1秒間に地球を7周半するって言う速さは言わば“光速”って事だから」

束の説明を聞いた鈴はどこか遠くを見ていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 悪しき熱 炎羅(前編)

週に1日ある休息日に武昭は簪の家に向かっていた。

 

「そういや、日にちが合えば鈴の事を簪達に紹介した方が……ん?」

武昭が近くに来た時に軽く慌てている気配がしたので様子を伺ってると玄関から誰かが出てきた。

 

「一体、どうしたんだ?……あ、本音、何かあったのか?」

 

「ふえっ!?あ、あきっち!あのねあのね!「本音ちゃん」あ、お嬢様」

武昭が行くと本音が慌てていたので事情を聞こうとした時に本音の背後に刀奈がいた。

 

「あら武昭君、今日はどうしたのかしら?」

 

「えぇ、ちょっと暇だったので簪と遊ぼうかなって思ってたんですけど……何かあったんですか?

 

「そうだったの、ごめんね今日は用事があって簪ちゃんはいないの、だからまた今度にしてくれる?」

耳打ちで武昭が聞いたので刀奈が答えるが右手で左袖を掴んでいたが軽く震えていた。

 

「そっか、急に来た俺も悪かったですね。それじゃ、また違う日に来ます」

 

「えぇ、そうしてもらえるかしら?それじゃ」

武昭はその場を離れたが本音の顔がどこか落ち着かない表情だった。

 

家から少し離れた所で……

 

「ふぅ……鈴や束さんと一緒にいる事が多いから分かった事だけど……小宇宙も人によって違うんだな……」

武昭が小宇宙を感じていた。

 

「やっぱり、この付近からは簪の小宇宙を感じないな……どうやら何らかの事件が起きたのか……もっと遠くまで広げてみるか……」

武昭は目を瞑ると精神集中を深くした。

 

その結果……

 

「ふぅ……微かにだけど簪の小宇宙を感じる事が出来たぞ……向こうの方からだな……」

武昭は簪の小宇宙がある方向に向かった。


武昭が簪の小宇宙を感じて着いたのは町外れの山の中だった。

 

「うん、簪の小宇宙を辿って来てみたらこんな所まで来たけど……ん?この小宇宙は……」

武昭が何処か覚えのある小宇宙を感じたので木陰に隠れるとコッチに来ている刀奈と本音がいた。

 

「どうやら2人も簪の居場所を突き止めたみたいだな……それよりもなんだ、この人間とは違う小宇宙は……」

武昭は隠れながら刀奈と本音の後をついていった。

刀奈と本音が先に進むと縄で縛られた簪と数人の黒服を着た人達、そして紺色のスーツを着た男性がいた。

 

「やっと来ましたか、刀奈様」

 

「えぇ、約束通り来たから簪ちゃんを解放してちょうだい!」

刀奈がそう言うと黒服の1人が縛られた簪の姿を見せた。

 

「カンちゃん!」

 

「おっと、そこから動くと、この顔に傷がつきますよ?」

紺色のスーツはポケットからナイフを出すと刃先を簪に近づけた。

 

「くっ!それで貴方の目的はやっぱり()()()()()ね?守屋(もりや)さん」

 

「えぇ、今現在、楯無の名を継ぐのに1番近いのは刀奈様ですからね」

 

「けど、貴方も分かってる筈よ、楯無の名前を継ぐには先代から任命されなければならないって事を」

 

「知ってますよ……ですが、先代からの任命以外に当主を継ぐ方法は他にもあるんですよ」

守屋と言われた人物は懐から巻物を取り出した。

 

「この巻物にこう書かれていたのですよ……」

守屋の話はこのような物だった。

 

今、居る山は以前に更識家の者が当主を継ぐ為に必要な試練を行う場所であった。

その試練とは、この山に封じられてる者を倒す事。

との事だった……

 

「それで、私が見つけたのですよ……この巻物に書かれている場所を!!」

守屋が指さした方には洞窟の入口に何らかの封印がされていた。

 

「それで、貴方はその封印を解くのかしら?」

 

「えぇ、そうですよ……折角ですから貴女達に私が当主に相応しい所を見せようと思いましてね。

さぁ!お前らやれ!!」

守屋の指示を受けた黒服達は洞窟の入口に爆弾を仕掛けると、そのまま爆発させた。

 

「そこで見てなさい、この私が新たな当主になる所を!」

守屋が洞窟に入ったのと同時だった……

 

「なっ!?か、体が!?グワァ!!」

体中が炎に包まれると、そのまま燃え尽きた。

 

「一体!何があったんだ!!」

 

「まさか!罠でも仕掛けられていたのか!?」

黒服達が慌てている中……

 

「簪ちゃん!本音ちゃん!今の内に逃げるわよ!!」

 

「お姉ちゃん、ごめんなさい、私のせいで……」

 

「ううん、カンちゃんは悪くないよ……」

刀奈と本音が簪を助けていた。

 

「なっ!待ちやがれ!!ウワァ!!」

黒服達の1人が気付いたが洞窟から出てきた炎に飲み込まれて、そのまま燃えた。

 

「一体、何が起きているって言うの!?」

 

〔ハハハ!この現世(うつしよ)の全てを燃やし尽くしてくれるわ!!〕

洞窟から炎が飛び出して刀奈達の前に留まると、その姿が亀の様な化物の形に変化した。

 

〔我が名は炎羅(えんら)!この全てを我が炎で埋め尽くしてくれる!!〕

炎が口から炎を吐き出すと逃げる刀奈達の後ろから迫って来た。

 

「くっ、このままじゃ私達も守屋達と同じく燃やされるわ……(こうするしか無いわね……)」

刀奈は簪と本音を守る為に2人を地面に伏せさせると上から覆い被さった。

 

「お姉ちゃん!?」「お嬢様!?」

 

「少しの間かも知れないけど、2人を守る事が出来るわ……ごめんね、こんな事に2人を巻き込んで……」

 

「お姉ちゃんは悪くないよ!!」 「そうだよ!悪いのはあの守屋って人だよ!!」

 

〔ハハハ!何をしようがそんな事で我が炎を防げると思ってるのか!!死ねぇ!!〕

 

「お姉ちゃん!私達に構わないで逃げて!!」

 

「そうだよ!お嬢様は生き残らないとダメだよ!!」

 

「そうね……けど、私にとっては2人が大切なの……だから、こうするの……」

刀奈が2人を守る為に強く抱きついた時だった……

 

「大丈夫ですよ……3人は俺が守る!」

誰かの声がしたので刀奈が見ると……

 

「ライトニングボルト!!」ドゴーン!!

 

〔グワァァ!?〕

炎羅が何者かに吹き飛ばされたので誰がやったのか確認すると……

 

「へっ、てめぇみてえな化け物の相手なら俺が相手だ」

 

「「「武昭(君)(あきっち)!?」」」

武昭が3人の前に立っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 悪しき熱 炎羅(後編)

刀奈達は武昭がここにいた事や、見るからに何も持っていないてから雷が出された事に驚いていた。

 

「武昭君!?なんであなたがここに?それに今の()は?……」

 

「さっき家に行った時に刀奈さんと本音の雰囲気が変だったから尾行させてもらったんですよ……それよりも()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「え?それって、どういう……そんな……」

簪が武昭の言葉の意味を聞こうとした時、吹き飛ばされた炎羅が立ち上がり迫ってきた。

 

「チッ、吹っ飛ばした割には手応えをそんなに感じなかったけど、少しは効いてたみたいだな」

 

〔貴様!何故、この我にこの様な事が出来た!?〕

 

「へっ、そんな事をお前に話す必要はねぇだろうよ!!喰らえっ!獅子の(いかづち)を!!ライトニングボルト!!

 

〔先程は油断したから喰らったが、また同じになるとは思うな!!〕

武昭は再び技を放ったが炎羅は口から炎を出して攻撃を相殺した。

 

「ケッ!俺の雷が効かないなんてな!だからといって諦める事はしたくないんだよ!!だったらコイツならどうだ!!ライトニングプラズマ!!

 

〔グワァァ!くっ……その様な攻撃位ならば、耐えられない事も無いわっ!!〕

 

「効かないという事は無いみたいだな!だったらお前を倒すまで撃ち続けるだけだ!!ライトニングプラズマ!!

武昭は炎羅に続けざまに攻撃を加えた。

 

〔くっ!確かに我に効いてる様だな……だが!〕

 

「おっと……火力を上げやがったのか?……」

炎羅の炎が強くなり武昭は汗を拭った。

 

〔ハハハ!いくら我に攻撃が通じようとも貴様はどこまで保つかな!?〕

炎羅は今迄よりも強い炎を吐き出した。

 

「確かに、今のお前を倒す事はキツいかもしれないな……だからと言ってな諦める訳にはいかないんだよ!!ライトニングプラズマ!!(くそっ……このままなら俺の方が先に……)」

武昭は炎羅に攻撃を加えるが、その顔には疲労が見えた。

 

一方、木陰では刀奈達が武昭と炎羅の戦いを見ていた。

 

「一体、何なの?あの化け物は……それに武昭君のあの力は……それよりも早くここから逃げましょう」

 

「お姉ちゃん!?武昭を見捨てるの!?」

 

「お嬢様!あきっちは私達の為に戦ってくれてるんだよ!?」

刀奈の言葉に簪と本音は涙ながらに訴えたが……

 

「私だって分かってるわよ!!……私だって、こんな事をしたくないわよ…けど……私達には何も出来ないじゃない……」

刀奈も自分の不甲斐なさから涙を流し声も弱々しくなった。

 

「何も出来ない事は無いよ……お嬢様、カンちゃん……あきっちー!頑張れー!!

本音は木陰から姿を見せると武昭に大声で応援をした。

 

「なっ!?本音!お前達逃げてなかったのか!!」

 

「そんな事出来る訳無いよ!私達はあきっちに生きてて欲しいんだから!!」

 

「本音ちゃんの言う通りよ!武昭君!!そんな奴なんて直ぐに倒しちゃいなさい!!」

 

「武昭!私達は信じてるから!!必ず勝ってくれるって!!」

武昭は本音がいた事に驚いていたが刀奈と簪も一緒に応援した事に驚いた。

 

「へっ……そこまで言われたら……負ける訳にはいかねぇだろうがよ!!(僅かだが刀奈さん達から小宇宙を感じる……)」

 

〔ほう、ならばその者達もろとも燃やし尽くしてくれるわ!!〕

炎羅は刀奈達に向かって炎を吐き出したが武昭が守る様に立ちはだかった。

 

「刀奈さん、簪、本音……ちょっとばかし()()()()()()()()()()()()()

 

〔喰らえ!我の最大の炎を!!〕

炎羅が今までよりも大きな炎を吐き出すと武昭達は、そのまま飲み込まれた。

 

〔ハハハ!所詮人間が我に敵う筈などなかったのだ!!〕

 

「凍てつけ……我が小宇宙よ」

 

〔なっ!?なんだと!!我の炎が凍りついただと!!〕

炎羅は自分の吐き出した炎が凍りついた事に驚いた。

 

「そうだな……やっと()()()()()()()()()()()()()()()()()

凍った炎が砕けると中から武昭達が姿を現した。

 

〔バカな!?あの炎を食らって生きているだと!!〕

 

「俺がここで命を落としたら俺だけじゃなく、刀奈さんに簪、本音達も命を落とす事になるからな……だからこそ落ち着いて自分が出来る事を考えたんだ……それが【如何なる場合でもクールであれ】の意味を……」

 

〔ならばもう一度燃やし尽くしてくれるわ!!〕

 

「お前に教えてやる!()()()()()()()()()()()()と!! 凍てつけ我が小宇宙よ!ダイヤモンドダスト!!

 

〔なんだと!?バカな!我が体が……〕

炎羅が再び炎を吐き出そうとしたが、それよりも早く武昭が右拳から凍気を放つと、そのまま凍りつかせて倒した。

 

「確かにお前の、その攻撃は強力だが、それだけ放つのに少しだけ遅くなるんだよ……それが、お前の……敗因……だ……」

 

「武昭君!?ねぇ!武昭君!!」

 

「あきっち!目を覚ましてよ!!」

 

「お姉ちゃん!本音!早く誰かを呼ばないと!!」

炎羅を倒した事を確認した武昭は、そのまま倒れて気絶し、それを見た3人は慌てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とある空間では…。

「どうやら、あの神が転生者をあの世界に送った事により歪みが発生した様だな……」

「あぁ……だが、その歪みを正す為に力を手にした者達も現れているみたいだ……」

「その様ですね……ならば私達は出来る限りの事をするだけです……」
3人の者達が泉を見ていたが、その水面には武昭以外に鈴の顔が写っていた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 混乱。

今回はちょっとしたギャグの様な物です。

それとオリキャラが出てきます。



武昭が炎羅を倒してから、1〜2日程経った頃……

 

「ん……あれ?ここは……」

 

「武昭君?……体は大丈夫ですか?」

どこかの家の部屋で寝ていた武昭が目を覚ますと虚が部屋に入ってきた。

 

「虚さん?……って事は、ここは……えぇ更識家の一室になります、ただいまお嬢様達を呼んできます」

虚が部屋を出てから少し経って……

 

「武昭君!」「武昭!」「あきっち!」

刀奈、簪、本音の3人が部屋に飛び込んで来ると、そのまま抱きついてきた。

 

その後……

刀奈が武昭を炎羅を倒してから倒れて気絶したので親に連絡をして来てもらい、刀奈家で休ませていたとの事だった。

 

「そうだったんですか……ありがとうございます、刀奈さん」

 

「ううん、感謝するのは私の方よ……小宙武昭君……私と妹の簪、布仏本音をあの化物から助けいただいてありがとうございます」

刀奈が正座をして武昭に頭を下げると後ろにいた簪と本音、虚が一緒に頭を下げた。

 

「いえ、そんな感謝される事じゃありません、俺にはアイツを倒せるだけの力があった、ただそれだけです」

 

「そうだとしても、私達がここにいる事が出来るのは武昭君のお陰なんだから」

 

「おぉ、娘達が急いでいたから、もしやと思ったが目を覚ましていたのか」

皆が話してると着物を着た男性が入ってきた。

 

「えっと、あなたは……」

 

「私とは初対面だったな私は第16代目の更識楯無と言う者だ……私の娘達を救ってくれてありがとう」

楯無は武昭に頭を下げた。

 

「いえ、さっきも刀奈さんに言いましたけど、俺にはそれだけの力があったからです」

 

「それもあるが……実はあの化物には今までの楯無が幾人か命を奪われているのだ」

 

「えっ!?お父さん!そんな事を初めて聞いたんだけど!?」

楯無の言葉に刀奈が驚いていた。

 

「それは、そうだ……あの選別方法は私の父親、刀奈と簪からすれば曾祖父が禁じたのだからな」

 

「なら、それまではあの炎羅はどうしてたんですか?」

 

「うむ、私が聞いた限りでは封印の一部を解放するだけだったみたいだ……」

 

「それを知らないで、彼は封印を全部壊したんですか……」

 

「いわば自業自得と言った所だな……時に小宙君、君の事を調べたんだが小さい頃に孤児院の前に置いてかれていたんだな」

 

「なんで、それを知ってるんですか?」

 

「まぁ、ウチの家はそう言う事を調べるのが得意なだけだと言っておこう、それで本題なんだが……」

楯無は武昭を真っ直ぐに見た。

 

「君が良ければウチの娘の刀奈か簪のどちらかと婚約をしてくれないか?」

 

  「「お、お父さん!?」」  

楯無の言葉を聞いた刀奈と簪が赤い顔で詰め寄った。

 

「お父さん!変な事を言わないでよ!!」

 

「ん?そんなに変な事では無いと思うが……刀奈が嫌なら簪はどうだ?」

 

「フェッ!?わ、私は……その……か、構わないけど……」

 

「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!!そんな事を簪ちゃんにさせる訳にはいかないわ!!」

刀奈が拒否したので簪に聞いたが刀奈が話に入ってきた。

 

「ん?だが、刀奈は嫌いではないのか?」

 

「いや、あの、その……嫌いって訳じゃないんだけど……恥ずかしいって言うか……

 

「あの〜……当主様……良かったら、私がしても構わないですけど〜……」

3人が話してると頬を染めた本音が話に入ってきた。

 

「ん?布仏の次女か……ふむ、それでも構わないかもな……」

 

「お父さん!ちょっと待ってよ!いくら本音ちゃんが良くっても、ご両親が賛成する訳……」

 

「いや、別に僕は娘が選んだなら誰が相手でも構わないよ」

刀奈が楯無に詰め寄ってるとどこか布仏姉妹に似た顔と同じ色の髪の男性が入ってきた。

 

「初めましてー 僕の名前は布仏 実(ぬのほとけ みのる)って言うんだ、宜しくねー」

 

「はぁ、宜しくお願いします……」

実が手を差し出してきたので武昭は握手をしたが何処か雰囲気が掴みづらかった。

 

「あのー実おじさんは、本当に良いんですか?」

簪が実に尋ねた。

 

「んー?そうだねー 僕は娘が選んだなら反対する事はしたくないからね……それに本音が選んだ相手なら安心だからね」

 

「ハウウ……恥ずかしいよー……」

実に頭を撫でられて本音は袖で顔を隠しながら恥ずかしがっていた。

 

「ふむ、ならば、このまま布仏の次女と婚約を……ドゴーン!!な、何だ!?」

 

「何だ!?あのニンジンは?……」

楯無が先に進めようとした時に何か大きな音がしたので、その場所に行くと大きなニンジンが刺さっていた。

 

「あーっ……すみません皆さん、俺の関係者です……」

 

「ダメだよ!たっ君と結婚するのは、この束さんなんだから!!」

 

「束さん違いますよ!私が武昭と結婚するんですから!!」

武昭が楯無達に説明してるとニンジンの横側が開いて束と鈴が飛び出て、そのまま抱きついてきた。

 

「束……!?まさか、篠ノ之束の事か!?」

 

「うーん……どうやら武昭君はウチの本音や刀奈ちゃん、簪ちゃん以外に好かれてるみたいだねー」

楯無が戸惑っていると実が状況を確認していた。

 

「たっ君!直ぐに私と結婚しようよ!大丈夫だよ!式の費用は私が出すから!!」

 

「束さん!だったら料理は私の両親に任せてください!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!武昭君は私と婚約したんです!!」

 

「お姉ちゃん!違うよ私が武昭と婚約するんだから!!」

 

「皆!私があきっちと婚約するんだからー!!」

 

「ハハハ!どうやらウチの本音は良い子を捕まえたみたいだなー」

 

「父さん、そんな事を言ってる場合じゃないと思うんですけど……」

 

「うむ……こうなったら……」

束と鈴が来た事で現場が混乱していた。

 

 

 

 

 




布仏 実(のほとけ みのる)
虚と本音の父親で刀奈と簪の父親とは幼馴染。

名前の由来。

虚実の実から。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 繋がる糸。

更識家に束と鈴が来てちょっとした混乱が起きて……

 

「なるほど……そう言う事だったんですね」

 

「本来なら貴方も当主様を止めなければならない立場なのに一緒になって何をしてるんですか?」

武昭達と言った子供達、束、楯無と実が2人の女性にお叱りを受けていた。

 

2人の女性の1人は楯無の妻で刀奈と簪の母親である更識 鞘架(さらしき さやか)と言い

もう1人の女性は実の妻で本音と虚の母親である布仏 眞子(のほとけ まこ)と言った。

 

「それで……貴方が刀奈達を助けてくれた小宙武昭君なのね」

 

「は、はい、そうです」

 

「夫からも言われたと思うけど私からも……娘達を助けて頂き、ありがとうございます」

鞘架が頭を下げたのを見て眞子も頭を下げてお礼を言っていた。

 

その後……

 

「それで……貴女達は小宙君の事を思っているのね?」

 

「はい、お母様……私は武昭君の事を異性として思っています」

刀奈が言った言葉に簪と本音もうなづいた。

 

「待ったー!タッ君の事を最初に好きになったのは束さんなんだよ!!」

 

 「ま、待ってください!私は……武昭に裸を見られてるんですから!その責任を取ってもらわないと!!」 

鈴の言葉を聞いた武昭に想いを寄せる彼女たちが武昭に詰め寄った。

 

「ねぇ?どういう事かな?武昭君?」

 

「ちゃんと理由を話してくれるよね?あきっち?」

 

「タッ君?そんな事があったなんて束さん聞いてないだけどなぁ?」

刀奈、本音、束の眼にハイライトが無い中……

 

「えっと……武昭……私なら……鈴と似た様なスタイルだから……その……

簪だけがどこか的外れな事を言っていた。

 

「ねぇ?それって遠回しに私の胸が小さいって事を言ってるのかしら?」

 

「そんな事は言ってないよ?ただ、私がそんな事があって良いなぁって思っただけだよ?」

簪の言葉を聞いた鈴は簪に詰め寄っていた。

 

「あの、楯無さんに実さん……この場合、俺はどうしたら?……」

 

「いやいやいや、私も娘達のこんな姿を見た事は無いんだが?」

 

「けど、このままなら終わりそうにないからねぇー いっその事全員とそうなったらどう?」

 

『それだー!!!!!!』

軽く言い合いをしていた女性陣は実の言葉を聞いて閃いた様になった。

 

「ちょっと待ってくださいよ!そんな事になって楯無さんや実さん達は良いんですか!?」

 

「うーん?僕は本音が選んだ相手なら誰だろうと構わないよー 眞子もそうだろうー?」

 

「はい、私も同じ意見ですよ」

 

「そうですね……少しの間ですが小宙君を見て誠実なのが分かりました」

 

「俺が……誠実ですか?」

 

「はい、小宙君、あなたはこの状況になったのは自分が責任だと、理解してますね?」

 

「そうです、俺が皆と知り合ったから……」

 

「それです……貴方は自分だと罪悪感を感じているではありませんか……他の者ならば様々な理由をつける事でしょう……」

 

「確かに……小宙君……私からも娘達をお願いする」

鞘架の言葉を聞いた楯無は武昭に頭を下げた。

 

「楯無さん、鞘架さん、実さん、眞子さん……こんな俺で良ければ……娘さん達の相手にしてください。

そして……」

武昭は刀奈達の親達に頭を下げると鈴と束に向かい合った。

 

「束さん、鈴……こうやって俺は複数の人と関係を持つ事を選びました……こんな俺で良ければ……受け入れてください……」

 

「そんなの今更言わなくても……私はタッ君と知り合ってから他人との繋がりを知って世界が広がったんだ……私を変えてくれてありがとう」

 

「武昭……最初は私が日本に来てから初めての友達だった……けど今は1人の女の子として思ってるわ……」

武昭が頭を下げて右手を差し出すと束と鈴は同時に、その手を取った。

 

その後、武昭は気になった事を楯無に尋ねた。

 

「楯無さんに聞きたいんですけど、以前はあの山で試練を行ってたんですよね?」

 

「あぁ、私が聞かされた話はそうだが……何かあるのかい?」

 

「えぇ……俺が気になったのは……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「どう言う事〜?あきっち〜」

 

「あぁ、鈴は覚えてると思うけど水虎が封じられていた山の旅館に絵があっただろ?」

 

「旅館の絵って……確か建御雷神の絵でしょ」

 

「あぁ、だから楯無さんの家にも何か伝わってると思ったんだ」

 

「お父さん、そんなのあるの?」

 

「いや、私は見た事が無いな……」

 

「もしかしたら……()()()()()()()()()()()()()()()ちょっと待っててねぇ〜眞子も手伝って〜」

楯無が簪の言葉に頭を捻ってると実が何かを思い出して眞子と2人で家に戻った。

 

暫くすると実が古い古文書を持って戻ってきた。

 

「僕が小さい頃に父さんから見せてもらった事があってね〜……そうそうここだ〜」

実が古文書の中を確認するとある場所を示した。

 

「これは……確かに炎羅の絵が描かれてますね……ん?コレって……」

 

「あら?武昭君どうかしたのかしら?」

 

「えぇ、古文書のここに書かれてる言葉が気になって……希臘より……来たる…者……」

 

「本当だ……じゃあ炎羅を封印したのは、この人って事?」

武昭が何かを見つけると刀奈と簪が横に来た。

 

「多分そうだな……けど、この希臘って何かで見た記憶があるんだよな……どこでだったか……」

 

「それは希臘と書いてギリシャって読みます」

武昭が何かを考えてると虚が答えた。

 

「ギリシャから来た人が炎羅を封印した……(待てよ確かアイオリアさん達は……そう言う事か……)」

 

「武昭?どうかしたの?」

 

「いや、なんでも無いよ、楯無さん、それじゃ俺は、そろそろ失礼グギュ〜

 

「ハハハ、帰る前にご飯でも食べていきなさい」

楯無に言われて武昭達はご飯を食べていく事にした。

 

食事の時、誰が武昭の横に座るかちょっとした騒ぎがあった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 出発。

武昭が刀奈達と出会ってから月日が経っており……

 

武昭達が小学6年生になっており春休みを過ごしていたある日の事……

孤児院の自分の部屋で武昭が何かをしていた。

 

「よし……これで旅行の用意は出来たな……」

 

「武昭、暇だったら、あれ?何してるの?」

武昭が何かの準備を終えたと同時に鈴が部屋に来てベッドに腰掛けた。

 

「誰かと思ったら鈴か。ちょっと春休みの終わり頃まで旅行に行こうと思ってな」

 

「へぇ、そうなんだ、それでどこに行くの?」

 

「行くのはギリシャだよ」

 

「ギリシャに行くんだ…。ってギリシャ!?

武昭の言葉に鈴は驚きから大声を出した。

 

「おいおい、大声出すなよ。ここじゃ響くんだから」

 

「アッごめんなさい……けど、なんでギリシャに行こうとするの?」

 

「理由か……鈴も前に聞いただろうけど楯無さんの家で炎羅の事を……」

 

「えぇ聞いたわよ、その時に……確か炎羅を封印したのって……」

鈴は何かに気付くと武昭はうなづくと口を開いた。

 

「ギリシャから来た者が封印した……アイオリアさん達もギリシャで聖闘士として修行、戦いをしてるんだ……」

 

「だから……ギリシャに行くって言うの?……」

 

「あぁ、多分だけど……俺はギリシャに行かないとダメな気がするんだ……」

 

「そうなんだ……それでいつから行くの?」

 

「用意は全部出来たから行くのは明後日だ」

 

「明後日ね……じゃあ私はもう帰るわね、それじゃ……(コレは皆に連絡しないと……あっ、私ですけど……)」

鈴は武昭の部屋を出ると誰かに連絡をしていた。


日にちが過ぎて武昭はギリシャ行きの飛行機に乗っていた。

 

「ふぅ……まさか初めての海外がギリシャに行く事になるなんてな……」

 

「すみません、隣の席なんですけど……」

 

「アッ、すみません……って刀奈さん?」

出発を待っていると隣の人が来たので見ると刀奈だった。

 

「ダメよ武昭君、()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え?私達って……まさか!?」

 

「残念……武昭の隣じゃなかった……」

 

「えへへ、あきっちの後ろだから良かったかなぁ〜?」

 

「私は前だから、まぁ良いわ。虚さんは窓側で大丈夫ですか?」

 

「えぇ、私は構いませんよ」

武昭が周りを見ると前の席に鈴、その隣に虚、後ろに本音、隣に簪がそれぞれ座っていた。

 

「何で刀奈さん達が……もしかして……」

 

「えぇ、私が教えたわよ。簪に言ったら刀奈さんの卒業旅行も兼ねてどうだって楯無さんが許可してくれたみたいよ?」

 

「私達もお父さんとお母さんが良いって言ってくれたんだぁ〜」

 

「私の時はタイミングが合わなかったので今回一緒に来たのです」

 

「まぁ、そう言う事情なら良いですけど……なぁ鈴……刀奈さん達に教えたんなら……()()()()()()()()()()()

 

「あの人って……あぁ、もちろん教えたわよ?けど……【私は違う方法で行くからー】って……」

 

「違う方法か…まぁ、あの人が普通に飛行機で移動すると騒ぎになるか……おっと離陸するみたいだな……」

武昭達が話してると飛行機が離陸した。


飛行機が飛んで暫くするとギリシャの空港に到着した。

 

「うーん……やっぱり長い間座ってたから体がバキバキ言うな……」

 

「その割には武昭君は食事を食べて眠ってたじゃない」

 

「それで武昭はこれからどうするの?」

武昭と刀奈の話に簪が入って来た時だった……

 

「アッ、貴方達が日本から来た方達ですね、私は貴方達の案内をする者です」

1人の女性が武昭達の所に来て声をかけた。

 

「え?あきっち、案内人なんか頼んでたのぉ〜?」

 

「いや、そんな事は……(ん?この小宇宙は……なるほど……)そうですか、では案内お願いします」

 

「ねぇ武昭、本当についていって大丈夫なの?」

簪が小声で話しかけて来たが武昭は普通に受け入れた。

 

「あぁ、大丈夫だよ……鈴も気付いてるんだろ?」

 

「えぇ、私は武昭みたいに早くなかったけどね」

武昭と鈴は小声で話しながら女性の後をついていった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 到着。

武昭達が空港を出ると女性が用意した車があったので皆はそれに乗り込んだ。

 

少し車が走り出してから武昭が運転をしてる女性に話し出した。

 

「それで、いつまでそんな格好してるんですか?()()()()

武昭が言うと()()()の皆が驚いていた。

 

「にゃははは〜 やっぱりタッ君とリッちゃんには気付かれちゃったかぁ〜」

 

「え!?貴女束さんなんですか!?」

簪が驚いていると女性がウィッグと思われる物を取って正体をバラし、それを見た本音が武昭と鈴に尋ねた。

 

「あきっちとリーリーは分かってたのぉ〜?」

 

「えぇ、私が知る束さんの小宇宙と同じだったからね、けど武昭の方が早く気付いてたみたいよ」

 

「これでも小宇宙に目覚めたのは俺の方が早かったからな……それで束さんが()()()()()()()()()()

 

「うーん……束さんが仕掛人といえば仕掛人だけど正確には()()()()()()()()()()()

束が言うと武昭以外の皆が気不味い顔をしていたが武昭は軽くため息をつくとどこか納得していた。

 

「まぁ、刀奈さん達がいた時点で何となくは分かってましたけどね……」

 

「にゃはは、ごめんねタッくん……それでタッくんはどこに行きたいの?」

 

「そうだよ……私達が鈴から聞いたのはギリシャに行くって事だけだよ?」

束と簪が目的を尋ねた。

 

「ん?あぁ、実は俺もどこに行くか分からないんだ?」

 

「では、何故ギリシャと決めたのですか?」

 

「それは、前に見せてもらった炎羅の……」

虚に理由を聞かれた武昭は前に鈴にしたのと同じ説明をした。

 

「なるほど……だから、ギリシャに来たと言う事ね」

 

「はい……けどギリシャに来てから僅かにですけど小宇宙を感じるんですよ……」

 

「私が感じないって事はよっぽど僅かなのね……それで武昭、それはどこから発せられてるのか分からないの?」

 

「アッ、だったら()()を使ってよ、はいウーちゃん」

束は近くにいた虚に兎のマークが書かれたタブレットを渡した。

 

「それは束さんが作った奴で色々とデータが入力されてるよ、地図のマークをタップしてみて」

虚が指示通りにタップすると今いる場所の地図と動いている矢印が映し出された。

 

「矢印は今のこの車の位置だよ」

 

「流石、束さんですね……それで武昭君、何か感じますか?」

 

「うーん、ちょっと待ってください……(アイオリアさん『まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()』え?)」

武昭が精神の中のアイオリアに声を掛けるとアイオリアはどこか懐かしそうにしていた。

 

(アイオリアさん……やっぱり俺は来るべくして来たんですか?)

 

『それは俺には分からない……だが聖闘士として目覚めたのなら、いずれは来る事になっていたのかもしれない……』

 

(そうですか……それでアイオリアさん、どこに行けば良いんですか?)

 

『ならばロドリオ村と言う場所に行くと良い……俺が言えるのはここまでだ……』

 

「(アイオリアさん、ありがとうございます……)ふぅ、虚さんどこかにロドリオ村ってありませんか?」

 

「ちょっと待ってください……ありましたが、データを見ると数年前から廃村となっているみたいです」

 

「そうですか……けど、そこに行かないとダメなんです」

 

「にゃはは、タッ君も頑固な所があるよね、じゃあそこに行くよー」

束は武昭の指示した場所に向かった。


束が車を暫く走らせると目的地のロドリオ村に到着した。

 

「タッ君、ここが目的のロドリオ村だよ」

 

「そうですか、ありがとうございます束さん……ここがロドリオ村か……」

 

「武昭……本当にここが目的地なの?……」

 

「あぁ、ここなんだ……けど……ん?」

武昭が1つの倒壊した家に入ると刀奈も後をついてきた。

 

「武昭君、この家がどうかしたの?」

 

「いや、この家から僅かに小宇宙を感じたんです……それに見てください、ここの壁を」

 

「あれ〜?この壁だけ何か綺麗すぎるんだけど〜?」

武昭が壁をコンコンすると違和感に本音が気付いた。

 

「あぁ、この壁……正確には()()()()()()()()()()()()()()

 

「タッ君、けどこの先には何も無いよ?この束さんのセンサーも何も感じてないし」

束は何らかの機械で調べるが何も反応が無かった。

 

「多分ですけど、ここは普通じゃ無理なんですよ……()()()()()()と……」

武昭は壁に右手を翳すとそのまま小宇宙を発生させた。

 

すると……

 ゴゴゴゴゴ 

壁に割れ目が出来ると、そのまま扉の様に開き始めた。

 

「えっ!?こんな仕掛けがあったなんて!束さんが調べても何も無かったのに!!」

 

「ここは女神アテナの小宇宙によって結界が張られているから普通の人間じゃ知覚する事が出来ないんですよ」

 

「そっか、タッ君は私達と違って小宇宙を使えるから……」

 

「そうです、じゃあ行きます」

 

「アッ!待ってよタッ君!かっちゃん!本ちゃん!皆を連れてきて!!」

武昭が中に入って行ったので束は後をついていき刀奈と本音は他の皆を呼ぶと、そのまま入った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 聖域?

武昭達が壁の奥の隠し通路を進んでいくと急に明るくなり皆が一瞬目を瞑ったが開くとさっきまでとは違う所にいた。

 

「嘘……私が調査した時は、こんな所は何も無かった筈だよ!」

 

「ここは……聖域(サンクチュアリ)か……」

 

「武昭君、その聖域って……ここの事?」

束が驚いていると武昭が心当たりがあったみたいで刀奈が話しかけた。

 

「えぇ……ここは俺の中にいる……ウワッ!?」

武昭が何かを話そうとした時に急に体が光り出し光が収まると皆の目の前に茶色の短髪の1人の人物が居て大体の者達は身構えたが武昭だけは分かっていた。

 

「なっ!いつの間に!!」

 

「貴方は……何故、ここに居るんですか?……()()()()()()()!」

 

「どうやら、この世界……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「俺達って……!この小宇宙と凍気は!」

 

「アイオリアの言う通り……この世界では我らもこの様に動けるみたいだ」

武昭が感じたので見ると青緑色の髪の男性が傍に立っていた。

 

「なんでカミュさんまで……ここは一体どこなんですか?聖域とは違うんですか?」

 

「ここは聖域で間違いはない……だが……」

 

「あぁ、カミュも気付いたか」

 

「何かあるんですか?」

 

「説明するよりも俺達に着いてきてくれ、ここが俺たちの知る聖域ならば()()()()()()()

 

「そうだな、アイオリアの考えてる通りならばだが」

2人が何処かに向かうと皆はその後をついていった。

皆が2人に連れられて到着した場所は1つの神殿の前で、その入り口には何らかのマークがあった。

 

「やはり……ここは俺達が知る聖域だな……」

 

「あぁ、だが小宇宙は何も感じないがな……」

 

「あのマークって……確か星占いとかで使う牡羊座のマークだったっけ?」

2人がそのマークを見て何処か感傷に浸っていると簪がそのマークの意味に気づいた。

 

「そう言えば……簪ちゃんの言う通りね」

 

「俺もアイオリアさんの戦いの記憶中で見た事がある……けど、その時は……」

 

 よく……ここまで来ましたね…… 

 

「ッ!アイオリアさん!カミュさん!」

 

「あぁ!この小宇宙の持ち主を俺達は知っている!!」

 

「我ら聖闘士が忘れてはならない小宇宙だ!!」

 

「何!今の小宇宙は!?覚えて間のない私でも分かる程、巨大な小宇宙だわ……」

 

「嘘?……今のがタッ君達が感じてる小宇宙って言う物なの?……何か私達の頭の中に直接、声が聞こえてきた様な……」

武昭が何かを2人に聞こうとした時にそこにいた皆の頭の中に何者かの声が聞こえてきた。

 

「アイオリアさん、カミュさん……この小宇宙が発せられてるのは……」

 

「あぁ……()()()()()の最も奥にある()()()()殿()からだ……」

 

「ならば、俺達がやるべき事は決まっている」

アイオリアの言葉にカミュと武昭がうなづくと目の前の最初の十二宮に向かって駆け出した。

 

「ちょっと武昭!?」

 

「悪いな鈴!この小宇宙の持ち主が()()()()()()()なら絶対に会わないとダメな気がするんだ!!」

 

「武昭の言う通りだ!行くぞカミュ!武昭!!」

 

「分かっている!アイオリア!着いて来れなくとも我らは待つ様な事はしないぞ!!」

 

「当たり前です!俺だってそれなりに鍛えてるんですから!!」

3人は駆け出して行ったが他の皆は、その速さに追いつけなかったので今の自分達が出せる速度で駆け出した。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。