戦場の走り方 (ブロックONE)
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Vol.0 本番前

この作品を読むときは、これは二次創作であることを忘れず…

(シュバッ)

交通ルールを守って楽しんでくれたまえっ!!



というわけで、始まります。



第三次世界大戦後、コーラップスによるE.L.I.Dやら暴走した鉄血工造の人形たちとの戦いが始まって暫く経つ。鉄血の人形に至っては、現在はG&K社(グリフィン)を始めとするPMCが対応に当たっている現在。

 

 

…………………………………………………………………

 

ある激戦区から少し離れた林道。

 

鉄血の人形やらが警備している。そこに鉄血のカラーリングが施された追跡車両が停まっており、その通ってきた道には俗に言うブラックマークがついている。それは、先程まで壮絶な『何か』が起こっていたことを示していた。

 

 

 

停まっていたクルマには二体の鉄血人形が座っていた。この人形はエリートではなく、この辺を偵察している量産タイプである。

 

 

 

「ああ…またヤツに…逃げられた…くそう、くそう…!」

 

 

運転席側の鉄血の人形が落ち込むように吐露する。

 

 

「これで99連敗…ヤツの99連勝か…」

 

 

ナビシート側の鉄血人形も呟く。

 

 

 

 

「「おのれー!グリフィンのドライバー!!」」

 

 

 

 

悔しさで声を上げる鉄血の人形たち。

 

 

 

 

 

 

一方、第○○地区にあるグリフィンの基地にて。

 

腕にグリフィンのエンブレムを付けた、フルフェイスヘルメットを被る男が、格納庫で何やら作業をしている。入ってみると、そこには車が一台。それは、基地の周辺にあるような装甲車やらジープ等の軍用車と呼ばれる類いのものではなかった。

 

 

張り出たフェンダーに空力パーツを身に纏っているのが見える。まさに、見るからに違和感どころか異質かつヤバそうな代物であった。しかし、車体にはカバーが掛けられているので、それ以上の詳しいことは分からない。このご時世には合わない。というか、走れるところなんてあるのかと目を疑いたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は気配に気づいたのか、一度手を止め、ジェスチャーでその気配の正体である『あなた』にこう伝えてきた。

 

 

 

 

―よう、済まないが今は車のメンテの真っ最中でね。もうしばらく待っていてくれるか?……え?著者はドルフロをどこまでやってるかって?第0から7の基本までやってるそうだぞ。緊急は6-1まで、夜戦は2-4までやってる。大陸版はやってないそうだからわからないが、ネタバレは心得てるらしいぞ?―

 

 

 

そして一呼吸置き、彼は、こうジェスチャーしてきた。

 

 

 

―そういや、この前本部から、鉄血の連中からジンジャークッキーを集めてこいって任務が来たんだが、あんなの何に使う気だ?それより雪に備えて新しいスパイクタイヤが欲しいんだが…―

 

 

 

 

こ い つ が 主 役 ( 決 定 事 項 )

 

 

こうご期待!(?)

 

 




準備中なのでこれだけ…お兄さん許して

ちなみに、C95行って来ました。人生初ですw
無論、ドルフロのコスの方もいましたゾ


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Vol.0-2 本番前ii

M16A1
「よう、M16だよ。この作品はフィクションだ。一応言っておくが、この作品の派手なカーアクションを真似すると114514%の確率でお縄を頂戴されることになる。絶対に真似しないでくれ?実際に運転する場合は、シートベルトをしっかり絞めて、法律順守の安全運転をたのむぞ。……というか、作中の恐らく99%くらいは真似できないと思ってもらっていい。その方がむしろ肩の力を抜いて見れるかもしれないしな!hahaha!」

NFSシリーズではOP前に警告シーンがありますよね。

それをやってみたかった…(˘ω˘)

じゃけん安全運転しましょうね。



グリフィン基地。

内部のショップ(PX)のあるエリアにて。

 

 出入り口の扉が開くと、そこにフルフェイスヘルメットのアイツが現れた。

 

 

 「あ!いらっしゃいませ♪どうされましたか?」

 

 ―やあカリーナ。新商品が入ったと聞いてやって来たんだけど、見ても良い?――

 

 「どうぞどうぞー!今回は、かーなーり、入荷してますよ~!さぁ、こちらですっ」

 

 と言っても、彼の目的はカーパーツやら、その消耗品がメインで来たのだが…

 

 非常食やら災害対策の品がズラリ。

 そしてグリフィンの制服やら迷彩服。ポーチなどの装備品。人形向けの衣装もある。雑貨も揃っている。

 

 その横の広めにとられてるスペースは目当てとなるカーパーツ。本来なら車なら装甲車やらジープの予備品があるが、ここに入荷されるものには、スポーツ走行用や悪路走行用のタイヤに、対応するホイール、出たばかりのパワートレーン(エンジンやトランスミッションのパワーを伝達する部分のこと)の強化パーツ。エンジンオイルや不凍液などの消耗品。IOPの暇人が、趣味と実益を兼ねて作って流した自動車用の電子部品も……

 

彼はそれらを物色し始めた。

 

 

 ヘルメットの男は、ここでカリーナを通じ、又は自分のツテを使い、パーツを仕入れて愛車の整備や改修を行っている。現在のところは目ぼしいものを探すため、見て回っている。彼の給料の使い道は、ほとんど車関係。後は自分の備品の足りない分を揃えるか貯金が今のところを占めている。

 

 パーツの値札を見て沈黙するヘルメットの男。顔は見えないが、見るからにその価格には困惑を隠せなかった。

 

 カリーナのショップの物は、質が良いが、値段が割高なので躊躇う。特にカーパーツの類いは高い。軍用車の残り物を移植すれば安上がりだと思うが、彼のコンセプトにとっては一種の『用途外』となる物なので、いくら上手く整備したところで彼の求めているものを得られないため、余程必要と判断した時以外はあまり取り付けることはない。

 

 

 

それでも、退路を塞いで何か買わせようとするカリーナには多少問題があると思うが、客のニーズに極力答えてくれるのは良いところだろう。現にたまに欲しいものがあると買っている。新規の客はそれなりのスルースキルが必要になる。

 

 すると、何か気になるものを見つけ、足を止めた。

 

 ヘルメット&装備品セット ¥120

 戦術人形 -FAL- ¥120

 

 

 

 コンテナの上に置かれた商品のヘルメット、それにグローブやら備品付きのセット。俗に言うレーシングギアというものだった。よく見てみると、丁度サイズも自分の普段使っているものと同じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その隣で、座布団の上で『女の子座り』をしているサイドテールの少女が、値札を首からぶら下げていた。肩にはフェレットが乗っかっているし、名前と同じ銃器も携えている。

 

 

 

 

 

彼は思った。これは何かのドッキリなのだろうか…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は双方の商品を見て暫く考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヘルメット&装備品セット』をそっと手に取り、会計へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!待って!待ってってば~!!私はどうなるのよ~!!」

 

 

 

 




うん、まだ本番前なんだ…。

実際、レーシングギア類(ヘルメットやグローブ、シューズ、スーツにHANS)は揃えると金がかかりますが、彼には走行中の危険から身を守る為の大切な装備品なので、やはりこちらを選んだのでしょう(笑)

因みに、劣化したレーシンググローブでステアリング操作とかすると、物にも依りますが、しっかり握っても手が滑ってしまいます…(経験談)


次に、初回で課金すると貰えた☆5人形のFALですけど、その課金可能な最低額が120円…。

今回の¥120の値札をぶら下げてるというところはそこから来ています。三回グレネード撃ってくれるからレベリングする時にはよくお世話になってます(貧乏ラン)



人物紹介とかはまた今度。そろそろ記念すべき本編1話ができると思います。




それでは長くなりましたが、次の更新をお楽しみに!


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Vol.1 グリフィンのドライバー

M4A1「こんにちは、指揮官。M4A1です。この作品はフィクションです。作中のカーアクションを現実で真似すると大変危険です。絶対に真似しないでくださいね?実際に自動車を運転なさる場合は、交通ルールに則り、シートベルトを閉めて安全運転を心がけて下さいね!」

M16A1「いいぞM4!噛まずに言えたな!」


と言うわけで、第1話です。どうぞ。


時は20XX年。

 北蘭島事件で起きた世界的な汚染により生じた生活圏の縮小、それから第三次世界大戦勃発、そして戦術人形たちがあらゆる分野の代価戦力(労力)と化し、高度なテクノロジーが一般化しつつある。だが、国家の衰弱、未曾有の敵の存在、それらによる混乱により、人々の心に闇を作ることもあり、未だに完全な平和には到らない世界。

 

………………………………………………

 

 この世界は、今やそのまま完全な破滅か、或いは、新たなる世界秩序か…という分岐点に立っていた。いや、もうすでに何かしら新しいことが始まっている真っ只中のかもしれない。

 

 その中で、ある日、テロリスト襲撃によりエラーを起こして暴走した、鉄血工造の人形たちが人間の従業員を殺し回った蝶事件が起こり、各地の鉄血の人形たちは映画さながら人類に敵対し攻撃をしてきた。それ以前からE.L.I.Dの対処を優先している軍は、入札して都市運営権を勝ち取った民間軍事会社にその対処や都市の防衛を色々頼んでいる。

 PMCを雇うという事自体は、遥か昔からは続いてきた事だが、今は見ての通り、国家そのものの弱体化により、更に頼らなきゃならない現状にある。

 

 しかし。

 

 決して、『世の中という生き物』は単純なようで、案外そうではなかったりする。どんな物事にも何かしらの裏はあると考える者も少なくはない。陰謀論を唱える者だって少なからずいる。

 

 尚、人類の生活圏は、北蘭島事件の汚染のみならず、WW3での核汚染に、ELIDや鉄血などの脅威となる存在との交戦により、危険な場所が増えつつある。

 

 

 …それでも、未だに人間はちゃんと文明と共に過ごしている。技術もホントに進歩しながら。無論死屍累々の上で成り立っていたのは、否定できない。

 

 

 

 その中で、抜けのいいエキゾースト音が鳴り響いている。そう、いつ戦場となってもおかしくない、この場所で。

 

 

 

 ………………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 ……………

 

 

 

 

 「そのー、助かったよ!司令部からヘリが来る予定だったんだが、敵に撃ち落とされてさ…はぁ…」

 

 路面の凹凸により揺れる車内。そこで運転手に礼を言い、すぐ溜め息をつく、同乗していた軍人の男性。どこか頼りなさそうな顔だが、彼は兵士として現場へ派兵されたはいいものの、回収時に何かの手違いで取り残されてしまったのだ。自身の運の無さかと悔やむが、幸い無事であった。だが、徒歩で移動している途中、適当に休憩に立ち寄ったある家屋にて、『ある拾い物』をしたために、今度はどこからか聞き付けた鉄血の人形たちからも命を狙われるリスクを背負う羽目になってしまった。泣きっ面に蜂、その直後、更に雀蜂が襲ってきた様なものである。

 

 軍は直ぐ、彼の迎えにヘリを送ろうとしたのだが、生憎、手の空いているパイロットが二日酔いで健康状態に無理があるとされ飛行困難に。そこで無人操縦モードにして送り込んだのだが、AIを簡易に設定して飛ばしたためか、高度な操縦など出来ず、鉄血の放った対空兵器により無惨に撃墜され、途方にくれてしまう。

 

 そこで、対空兵器に二度もやられる間抜け面を民衆に晒したくない軍は、軍人の位置から最も近いグリフィンの基地に向け、拾ってくる様に依頼が舞い込んできたのだ。

 

 そこで、立ち上がり、駆け付けたのが運転手の彼である。

 

 

 ―大丈夫だ―

 

 そう運転手が片手をヒラヒラさせ、不安な軍人に向けてジェスチャーで返す。この運転手は、フルフェイスヘルメットを被っており、目元を覆うバイザーは透けておらず、その素顔はわからない。

 

 

 

 「な、なぁ、ところで、ちょっとスピード出しすぎじゃないか?ここは確かに速度制限は無いし、あんたが運転に自信があるのはお見受けできるけど……」

 

 違和感と不安を覚え、思わず尋ねる軍人。

 車内は補強用に使われるロールケージ。軍人と運転席の男の身体が収まっているシートはバケットシートと呼ばれるホールド性の高いもの。六点式シートベルトがくっついている。速度だって戦地で見てきた軍用車のそれとは、全く次元が違う。直線では、スピードメーターを見たら時速200kmを軽々と越えてしまっている。外見だっておかしい、

 ジープでかっ飛ばしても、こんなに軽々と出ない。

 

 早く帰りたいから迷わず乗ったは良いが、この車や運転手に違和感を感じるのは十二分だった。その軍人からの問い掛けに対し…

 

 ―そうか?道が空いてるから速度出てるように見えてるだけさ―

 

 …と、ジェスチャーで返した。

 

 どういう理屈だよ、と呟き軍人は呆れ返る。

 

 

 すると、進行方向の先に何かが見えた。

 

 ――ん?あれは何だ?――

 

 「どうしたんだ?」

 

 運転手が見つけ、軍人も気になってその方を見た。

 

 

 ……

 

 それは、鉄血の人形が乗り回す追跡用の車両であった。車内に座る鉄血印の戦術人形の二人組は、この頃、偵察や警戒中に路肩で待ち伏せを仕掛けていた。

 

 が…

 

 「はあ、やはりここのドーナツは最高だよなぁ…はむっ」

助手席の人形がそう言って、ドーナツを一口含んだ。

  

 「本当だよ…間に合って良かったー…はむ」

 それに続き、運転席の人形も一口。

 

 触感や味に舌鼓を打ち、顔を緩ませている。

 普段の鉄血の人形は女性型で、銃を持ち、人間に敵対している未来の兵士っぽいイメージが強いが、今の彼女たちは、まるで買い食いを楽しんでいる普通の女の子である。

 

 その目の前を、爆音を共に猛スピードで通過していく運転手の車。巻き上げられた埃が鉄血の車に振り掛かった。

 幸い、窓を閉めきった車内で食べようとしたドーナツは無事であり、驚いて落とすことも、舞った埃で汚れることもなく済んだ。

 

 尚、最近は鉄血人形も一部でAIを載せている者が増えており、この二体もそうである。

 

 

 「「!?」」

 

 突然の爆音で驚く。ドーナツに殆ど意識が向いていたので、何が起こったのかわからない。

 

 「何だ!?」

 「ん?256km?」

 運転席の人形が速度計測を行い表示された速度を読む。

 

 「壊れてるんじゃないの?」 

 助手席の人形が数字を見て疑問符を上げる。

 「バカ言わないでよ、この前ハイエンドモデルの人形から譲り受けたものだぞ?」

 

 運転席の人形が否定した。

 

 「それむしろ押し付けられたんじゃ…って!?グリフィンのマークだぞ!!」

 

 視界に入っていたものを映像ログとして巻き戻し、画像を認証すると、その通過した自動車からグリフィンのマークが写り込んでいた。人形ならでは、の確認法である。

 

 「あ!またアイツだ!グリフィンのドライバーだ!なんか他の奴も乗ってるけど!」

 「なんだと!?追うぞ、出せ!」

 「おうっ」

 「あ、待って!」

 

 二体は食べかけのドーナツを入れ物である紙の箱に仕舞い込み、グローブボックスに入れ、急発進させて後を追い始めた。

 

 

 その中にドーナツの領収書とポイントカードらしきものも覗かせていた。恐らく見つかるとサボったと思われ怒られてしまうからだろう。

 

 二台は市街地の方へと走っていく。ここは鉄血との戦いのせいでゴーストタウンとなっていた。これから安全確保が済み次第、人々は戻るらしいが…。

 

 

 一方、軍人と彼(ドライバー)の車では…

 

 「うわ、追ってきた!!追ってきたぞ!!」

 

 ドライバーは慌てる軍人の様子に対してこう告げた

 

 ――ああ、あいつらはいつもの遊び相手だ。いつもこの辺りで車に乗って見張ってるんだよ。いつもの仲良し二人組。ラリーで例えると、ドライバーとコ・ドライバーみたいだよな!ははっ――

 

 呑気な事をジェスチャーする。

 

 「いやいや、あれはどう見たって、鉄血工造の戦術人形たちにしか見えなかったぞ!?……っ!」

 

 その直後、軍人が腰のホルスターから拳銃を手に乗り出そうとするのだが、ドライバーはそれを制止した。

 

 ――おい、落ち着けって!やっつけたい気持ちはわかるけど、今はやめとけ!――

 

 「なんでだよ!!奴等は敵なんだぞ!?」

 

 ――いいか?この速度、それにこの場所で、無闇に撃ち合いでもしたら、射手のアンタが危ない。敵の弾に被弾する前に折れ曲がった標識やなにかの破片にぶち当たったり、下手すりゃ車から落っこちてお陀仏だ。それに変にちょっかい出して増援を余計に呼ばれでもしたらどうする?アンタと俺だけじゃ手に終えなくなるぞ?―

 

 「…」

 

 軍人は周囲を見て考える。折れ曲がった標識やら飛び出ている。それにこの速度。ブスリやドカーンなんてギャグ漫画みたいには少なくともならない。

 

 「確かにな」

 

 冷静になり、ドライバーの意見を聞き入れることにした。普通に車から身を乗り出す事自体、危険であることには変わらないが、速度からして、その殺傷力はかなり高まっているのだ。

 

 ――だろう?頼むからシートに座っててくれ。それにやっとタイヤも温まってきたしな――

 

 「へ?」

 

 ―飛ばすぞ―

 

 「え…うわっ!?」

 

 

 

 一方鉄血はというと…

 

 「待て待てー!!」

 「止まらぬなら…撃つべし!撃つべし!」

 

 助手席に座る鉄血の人形は、車載機関銃を起動させようとするが…

 

 『Empty』

 

 それは発射されることは無かった。

 

 「はああ!?」

 「ん?ああ、あれなら弾抜いてあるぞ」

 「な、なぜだ!!?」

 「だって無駄撃ちしたら代理人に殺されちゃうだろ!資源だって無限じゃないんだ!」

 

 運転席の人形の言うことは、正論だった。供給が追い付かない所は幾ら生産出来ても意味がなかったりする。次の補給が来るまでは持たさねばならないし、工場もグリフィンや暇してる軍隊の気まぐれで、万一拠点を潰されでもしたら大変だ。おまけグリフィンも最近勢い付いて来ているので、下手したら補給が断絶されてしてしまうことも懸念されていた。

 

 「確かにそうだな…しかしな、こういう時は別だ!必要経費だ!…あ、そうだ」

 

 一体は諦めて助手席に収まるが、ある作戦を閃く。

 

 

 「どうしたの?」

 

 「この先の仲間んで挟撃しよう」

 

助手席の人形がにやりと笑む。運転手も肯定した。

 

 

 ドライバーは、どうしても後ろが気になる軍人にもう一度注意を促す。

 

 ―とにかくだ、座って大人しくしてくれ。あと、その9mmも危ないからセーフティ掛けてホルスターにしまったほうがいい。落としでもしたら大変だ。それとも何か?お前トリガーハッピーとかじゃないよな?―

 

 「んなわけないだろ!あー、しまうから!…これでいいか?」

 

ホルスターにしまう。セーフティも掛けて。

 

 すると、ドライバーはオーケーサインを軍人に送り、ペースを上げていく。軍人はその時の遠心力によりシートに身体を押し付けられる様に埋められていた。そして、目の前の急カーブに差し掛かる。

 

 「う、うわ!?ぶ、ぶつか………る?」

 瞬きした途端に急接近する。それだけ体感速度は実際の速度よりも速く感じる。

 その急カーブに差し掛かる時に死を悟った。ドライバーはそこまで怯える軍人をよそに、迫りくる壁や障害物などものともせず、見事に曲がり突破してみせた。なんと車とガードレールはほんの1mmくらいであった。

 

 鉄血も続いて急カーブに差し掛かるものの、グリフィンのドライバー(彼)ほどの速度では進入できず、脱出までには速度が出せず遅れてしまい、段々と車間距離が広くなっていく。

 

 ――あいつら、少しは粘ったが、まだまだアマちゃんだな!はっはっは!――

 

 と、ドライバーはケタケタと笑っていた。どうして笑えるのか軍人にはわからなかった。むしろ追われているのに追手の事を笑い事にしていいのか、と。

 

 

 軍人は、明らかに事故ってもおかしくない速度域で事故を起こさないという状態が、何より現実的に思えなかった。下手すると恐怖で失神しそうにもなる。

 

 「悪い夢でもみてるのかぁ…?」

 

 思わず吐露する。

 

 悪い夢ならさっさと覚めてくれよ…。そう願うばかり。

 

 …が、鉄血の車が遠ざかっていくのを見て少し正気に戻る。この後数回のカーブを抜け、また軍人は遠心力を受けて顔を歪ませる。なんとも情けない顔だが、これでも持ちこたえるので必死であった。

 

 「…離れてるぞ…!?」

 

 ――この辺の道路はアスファルトだが、路面ミューが低いからアプローチする時にちょっとばかり工夫が必要なんだ――

 

 「おいおい、アプローチだって?あんたなぁ、これはレースやラリーとかじゃないんだぞ!?」

 

 ――なぁに、安心してくれよ。力任せに走らせる素人なんぞに、そう簡単に負けはしないさ!――

 

 「えええええ!?」

 

 

そのまま狭い市街地の一本道を走り抜け、林道へ。

 

 

林道は舗装された道ではあるが、少し荒れている。生い茂った木々がどこかアニメの世界に紛れ込んだのかと錯覚する。

 

 

 

現実では鉄血人形兵二人の駆る追跡用車両と、グリフィンのドライバーとのカーチェイスが展開されているが。

 

 

 

その頃。

 

 ―気分転換に音楽聞くかい?―

突如ドライバーは軍人にそう訊ねた。軍人の不安を取りたい彼の思いやりである。そんな場合ではないだろうが。

 

 「……ああ。なんか気持ちの落ち着くやつを頼むよ…」

 

 

突っ込むのが疲れたのか、諦めるようにリクエストを出した。

 

 

 ――よし……あれ?あ、カリーナのやつ、またオーディオデータにユーロビート突っ込んだな?ったく、しょうがないな…――

 

 「はぁ…。やっぱり、アップテンポで行こう…」

 

 それも悪くないな、と、ドライバーは了承し、オーディオを素早く操作した。

 

 よくそんな余裕なんてあるなこいつ。そう思ったのはあなただけではないので、どうか安心してほしい。

 

 「ってお前はタクシーの運転手かっ!」

 

 ――ははは!それってつまり、サービス精神豊富って言いたいのか?嬉しいね!こっちも仕事をしてて甲斐があるってもんだ!――

 

 機嫌が良くなるドライバー。 

 

 「よくもまぁこんな状況でメンタルが保てるよな…」

 ――そりゃあな。運転手には必要なものなんだ。変にメンタルが乱高下すると認識力や判断力に影響して事故のもとになるとされてる。まぁ、だからって調子乗りすぎるのもどうかと思うがな。一定が一番!それに、ドライビングはまず冷静にってスクールでも教わるだろ?――

 

 「お前のその変なテンションも考えもんだよ!って、逃げ切れるのか?」

 

―どうかな?あいつらはこのあたり苦手らしいからワンチャンあるんじゃないか?―

 

「苦手?」

 

―ああ、この前このあたりまでくると諦め出す。一応グリフィンもこの辺までくると、うちや他所の基地の人形たちが警備してるし、人数的に不利だと思って帰ってるか、たまに無茶してクラッシュしてるかだな―

 

「どうやって回収してるんだろうな…」

 

―さぁな…そこまでは流石に確認できてないからわからん。あいつら機械だし、徒歩でのんびり帰ってるんじゃないか?走ったところを観察したりしてさ―

 

「ならこの辺のどこかでも鉄血のやつらがいて、交戦してそうだよな」

 

―かもな。だが、きっと武装してない車を追うのに、そこまでやる気ないんじゃないか?居ても少しでかいのが一体とかな。さっきも話したように、うちのとこの人形も警備してることもあるから、迂闊には人数回せなくなってるはずだ。やつらもそこまでバカじゃない―

 

「まあ、何にせよ出くわさないのは嬉しいよ、これ以上面倒な敵とは会いたくない」

 

―同感だ、所であんた、拾いもんしたって基地から聞いたぞ?―

 

「ああ、端末とかある?これなんだけど…」

 

記録媒体を見せる

 

―あー…悪いな軍人さん、そのタイプの媒体だと、基地の端末使わないと見れないな。今は大事にしまっといてくれるか―

 

「ああ、そうする」

 

――

 

 ……

 

 「くそう、今度は逃がさんぞ!」

 

画像解析を進める助手席の人形。他の鉄血人形兵たちはこのカーチェイスに巻き込まれたくないのか、それとも他のグリフィンの部隊により始末されたのか。恐らく両方だろう。

 

 

 

 「いつもこちらが遊ばれてるからな!今日こそ、目にもの見せてやる!!」

 

 意気込む運転席の人形。

 

 追いかけてきている鉄血は、どうやら前方を走るグリフィンのドライバーに因縁があるらしい。

 鉄血の二体の言うグリフィンのドライバーと言えば、他でもない。該当する者はこのフルフェイスヘルメットを被った「彼」くらいしか居ない。しかも、他の職員はフルフェイスヘルメットなんて被っていない。

 

 戦場でもお構いなしに、サーキットやラリーのSSを駆け抜けているが如く、常識外の速度域であちこち走り回っているグリフィンのドライバー。

 基本的に陸路は現に交通手段の主となる。空は飛ばそうにも難しい状況。内陸だと海も厳しい。軍の海兵隊は動かせるのだが、管轄はグリフィンなどの民間企業が担当している。そのためにトラブル回避のため手が出しづらい。

 

 グリフィンのドライバーと呼ばれている彼は、まさに熟達…いや、常識の斜め上の領域へと達している。それだからこそ、あの二体の鉄血たちからしたら歯痒い様で。いくらラーニングしても、現に彼の領域に達することが出来ずにいたからである。そして自爆(クラッシュ)したり取り逃がしたりして墓穴を掘る。

 

 そして代理人にお仕置きをされる。

 

 「おい、急いでくれ!頼むぞ!」

 

 『リョウカイ』

 増援からそう応答が来る。

 「ふふ、これでおしまいだ…グリフィンのドライバー!」

 

 「100連勝目は阻止させてもらうぞ!」

 

 助手席の人形に続いて意気込んだ運転席の人形だが、どこかレースゲームのマルチプレイで連勝する相手プレイヤーと阻止レースをやってる様なノリである。

 

 

 「っておい真面目にやれよ!!」

 

 「何を言ってるんだ、私はいつだって真面目だ!!」

 

 運転席の人形に突っ込む。

 

 確かに、呑気なやりとりにしか聞こえないかもしれないが、これを逃すと彼女たちは実質100連敗目であり、そうなれば、まさしく代理人にお仕置き(廃棄)されるのは確実なので、一応必死なのである。

 

 

 

 だからこそ、機転を利かせて挟撃しようと仲間に連絡を入れたのだった。無論、なりふりなど構ってはいられない。

 

 そして、林道を飛ばしていると次第に何かが見えてきた…

 

 

 ―ん、あれは?―

 

 「なんだ、どうし……」

 

 軍人の顔から血の気がサーっと引いていく。

 

「終わった…」

 

 軍人が呟くように言う。

 

 目の前にはなんと…

 

 

 

 

 『ヨッコラセック…オットアブネェ』

 

 道の脇にアンブッシュしていた『ナニか』。

 間の抜けた台詞を発する対話AIの音声。なにかとんでもない台詞を吐き出しそうになるあたりいろんな意味でヤバい臭いが立ち込めていた。

  というか、こいつもAI積んでるのだろうか?

 

 多分鉄血の『作ってみた』的なノリで生まれたのだろう。

 

 『ソンナクセエカ?洗浄ハシテルゾ?』

 

 第四の壁すらぶち破らんとする、多脚のエグいやつが前方を塞がんと移動していた。

 

 

「前方にマンティコアだ!!」

 

 叫ぶ軍人。

 

 ―あ、ホントだ!しかも、この前自分から田んぼに落っこって動けなくなってたやつじゃないか!―

 

 

 「なあ、ドライバー、まさかこいつもあんたの『お友達』だってのか!?」

 

 ―まさか。通り掛かって見掛けただけだ。だが、絡まれると厄介この上ない。手持ちの得物じゃ、マンティコアは止められない。よし、掴まってろ!―

 

そういいつつ、マンティコアの出てこようとする真正面に向かい加速をしていく。

 

 「まさか、おい、嘘だろ…?」

 

しかも、このマンティコアが目の前を立ち塞がらんとしている。悪条件が揃う。しかもなんかこのマンティコア、なんか大きい。

 

 ―なあ軍人さん、あえて今言うけど、あんたのとこの兵器、うちの司令部だけでも融通してくれないか?あんなもの道のど真ん中にいらたらかなわん!―

 

 「人形たちで対処しろよ!?」

 

 ―やつらを止めるのに生半可な弾は通じない。それにちょっとこちらで魔改造するだけだから…―

 

 「それで不調起こしたなんて言って返品されても、保証対象外にして突き返してやるからな!!」

 

 …鉄血の車両では…

 

 「ふっふっふっ…年貢の納め時だ、グリフィンのドライバー!マンティコア、出発お新香!」

 

 『キュウリノキューチャン!』

 

 助手席の人形が声を掛け、それに返答するマンティコア。

 

 なにかが違う。そこはキュウリのぬか漬けではないのか。

 

 そして、ドライバーの運転する車とマンティコアとの距離が迫っていく。マンティコアは横から車道へ躍り出ようとしていた。勾配があるので足元に気を付けながら。

 マイペースに見えるが、あれでも安全に気を配っているつもりである。

 

 『ソリャソウダヨ、他所様ヲマキコンダラ、エージェントニコロサレチマウカラナ…』

 

 ママに殺される、みたいに第四の壁をもう一度ぶち破らんとする…やはりヤツは強敵だった。出発といっても、数メートル先の道の真ん中。ちょうどかっ飛ばしてるドライバーの車が微かに見え始めた。

 

 

 ドライバーは恐怖するどころか、加速させ、マンティコアに向かって突き進んでいく。

 

 ドライバーたちから見て向かって右側から一歩一歩横断してきているマンティコア。もう道に奴の砲台が見えているため、次第に道幅が狭まり始めていた。残すは片側一車線しかない。ここで車を止まれば後の祭。

 

 ドライバーはそれでもアクセルを踏みシフトを入れて向かっていく。みるみる上昇する速度。回転数を上げるエンジン。

 

 それを見た軍人は、まさか内心自暴自棄になっていて、これから車ごと突っ込ませる気じゃ…?と最悪の展開を想像する。

 

 「まてまて、早まるな!うわああああ!!」

 

今度こそ死を覚悟した軍人。 

 

 『ア、 ドッコイショ』

 

 マンティコアは渡り終え、これから展開しようとしていた。

 

 軍人はもうダメだと目を瞑る。

 

 ドライバーはマンティコアがこちらにくるりと展開した瞬間、咄嗟に右にステアを切って、その時開いたギリギリ一車線分ほど空いていた隙間をすり抜けていった。

 

『ウワッチ!?』

 

 マンティコアは驚くように片側の足を避けてしまう。そして続けて独特なイントネーションで文句を言った。

 

 『アブネェジャネェカ、フザケンナヨ!……アイツ、ゼッタイニショウキジャネェヨ…フゥ』

 

 そして向きを変え終えるとそこには鉄血の車が目の前にいて……

 

 『ア』 

 

 「「あ」」

 

 100連勝を阻止することは叶わなかった。

 

……………

…………

……

 

 背後で悲劇が起こっているのを尻目に、ドライバーは放心状態の軍人に…

 

 ―ふーっ……おい軍人さん、生きてるかい?―

 

 「う…あ………生きてる…のか?俺たち…!?」

 

 ―ああ、生きてるよ。間一髪だったが。まぁ、あいつらは……運がなかった―

 

 「何が起こった…」

 

 ―マンティコア、まぁ、あいつだけの性質を利用したってことだ―

 

 「性質?」

 

 ―あいつはたまたまAIがバカな個体なのか、対象を真正面に捕捉しようとする。あんよ(脚部)の間には砲台が回せないまたいでな。それはデカくても一緒。あの砲台が短小だったら、あのイカす装甲板のついたあんよにキスしてお陀仏か、砲台に撃ち抜かれてお陀仏か―

 

 「はぁ…なんであれ、生きてるんだな?」

 

 ―まあな。…まさか、まだお花畑が見えてるのかい?―

 

 「かもな。少なくとも、戦場よりは良いだろう…?」

 

 ―…そうかも知れないな。花粉症の奴には、ちとキツいかもしれないが…―

 

 「ああ…だな…」

 

 かくして、窮地の一つを脱したのだった。すると……

 

 

 『指揮官さまぁ~鉄血の対空兵器、無事制圧いたしました!』

 

 と、車内の無線から音が入ってきた。喋り方と声からしてM1911。

 

 「あれ?混線か?グリフィンの人形?」

 

 ―ああ、ウチんとこの人形だよ。そっちにも人形くらいあるだろう?―

 

 「ああ、でも、軍で運用してるのは、今みたいに流暢に話さないんだよな…」

 

 ―殆ど民間の人形がベースだからな。でも仕事はきっちりこなせる良い子たちだよ―

 

 軍人の見慣れてる戦術人形は武骨なロボット然とした軍用のものだ。グリフィンの戦術人形は本体内部のコアで戦闘能力を制御しているだけで、民間ガイノイドがベースだ。

 

というか、軍用の武骨な人形が「指揮官さまぁ~」だなんて甘い声で呼び掛けてきたら、その人の性癖次第だとは思うが、多分敵味方問わずトラウマになると思われる。

 

 

 (あれ?こいつ…運転手(ドライバー)ってことは、戦闘員じゃなくて輸送要員とかだよな?…ぐえっ!?)

 

 軍人は、ふとドライバーの所属について疑問に思ったが、またもや高速走行による遠心力でシートに押し付けられ、現実に戻される。

 

 この後、増援もなければエンカウントもなく、そのまま基地に向けてかっ飛ばしていく。

 

 

 

 

………

 

 

 

 某地区にあるグリフィンの基地。

 

 ここは軍人を迎えに来たドライバーも所属している基地である。林道を抜けてまた暫く走ると、基地の近くまで来ていた。無論飛ばしてるため、あっという間ではあるが。

 

途中で列になっているグリフィンのマークをつけた軍用のトラックを追い抜いていく。

 

 トラックの運転手は「今日もうちの基地は平和だな!」といった様子。いつもの事らしい。果たしてそれでいいのだろうか。

 

 

 その先のゲートから基地へ入り、司令部のある棟に止まる。

 

 その頃には、軍人は車内でげっそりとしていた。

 

 

 

 「つ、着いたのか…?」

 

 ―ああ、着いたよ!よく吐かなかったな?―

 

 ドライバーはそうジェスチャーしてサイドブレーキを掛ける。

 

 「…はは、映画じゃあるまいし…でも、ありがとう。ここでいい。……あ、司令部ってどっち?」

 

―目の前のそれだよ。そこが出入り口―

 

 ドライバーは目の前の建物を指差した。

 

 「ホントに色々あったが、ありがとう……おっと…」

 

 車から降りた途端によろける。それを心配したドライバーは、降りて軍人に肩を貸す。

 

 ―よっと…!とても大丈夫そうには見えないぞ?―

 

 「すまん…」

 

 ―良いんだ。中に案内するよ―

 

 一緒に建物に入っていく。

 

 「あ、お帰りなさいませ!そして基地へようこそ!」

 

 「や、やあ……」

 ―ようカリーナ―

 

 後方幕僚のカリーナが二人を出迎えた。

 

 ―早速だけど彼を司令室につれていく、あ、なにか飲み物を用意してやってくれ…―

 「はい、ただ今ご用意します!」

 「お、お気遣いどうも。お嬢さんも、その、ありがとう……」

 

 カリーナは、軍人のその様子から、ドライバーがすさまじいことをやってきたんだな、と察した。大体基地に連れて来たり同乗した者は、人間や人形を問わず、彼のドライビングにより、ほぼ必ずといって良いほどこうなっている。

 

 そして…司令室に。

 

 「ふう…」

 ―落ち着いたか?―

 「ああ…お陰さまで…」

 

 水を飲み、一息つく軍人。ドライバーもそこにいた。ドライバーはヘルメットの下から通しているチューブで水分を取っている。手元のボトルの中身は水である。

 

 「それ、なんだ?」

 ―ドリンク装置だ。チューブは本来のものより短くしてるけどな―

 「そうなのか…」

 

 すると

 

 「失礼するぞ」

「失礼します」

 

 カリーナと上級代行官、つまりドライバーたちグリフィンの上司であるヘリアンが入ってきた。軍人はヘリアンに入るとピシッと立つ。ヘリアンの印象がそうさせるのだろう。

 

 「ご苦労だったな。人形たちも撤収してきていたぞ」

 

 ―ああ、出る前にさっさと撤収する様に言っておいたからな―

 

 「…そうか。はじめまして。私はヘリアントス。グリフィンの上級代行官です」

 

 「ど、どうもっ…」

 

 挨拶を交わす。軍人はヘリアンの風格から何故か背筋が伸びるが、ドライバーは変わらない。 やあヘリアン。と、椅子に腰かけたまま手をヒラヒラさせて出迎えている。

 

 「お、おいっ…」

 「ああ、ええと、この人はいつもこんな感じでして~」

 

 「そ、そうなのか…?」

 

 カリーナが明るくドライバーのことをフォローする。

 

 「ええ、本当です…。それで?回収したものとは?」

 

 ヘリアンは軍人に問い掛ける。

 

 「ああ、はい!これを途中で拾いまして…」

 

 懐から記録媒体を取り出した。

 

 ―カリーナ、見てあげてくれ―

 

 「はい。では、お預かりしますね!」

 

 カリーナに渡す。すると、媒体を端末に接続し、ウイルスチェックをしてから中身を確認すると…

 

 「え…!?」

 「これは…」

 ―ほほう―

 軍人が拾ってきたデータチップの中身にヘリアンとカリーナ、ドライバーは注目する。

 

 そこで、かしこまっていた軍人は口を開く。

 

 

「自分も自身の端末で確認した際、驚きましたよ…。これは、恐らくこの前失踪したAR小隊、あなた方グリフィンと関わりがある戦術人形たちの位置情報ではないか、と…」

 

 

 ―こりゃヤバイね。こいつは鉄血のアホどもが血眼で探してる情報だ。そりゃ命狙われるわけだよ…あんた見かけによらずやるじゃないか!ははっ―

 

 「そうだろぉ?俺だって時には…って!見かけによらずってどういう意味だよ!?」

 

 ドライバーに突っ込む軍人。

 

 するとヘリアンが咳払いをして、場の空気をもとに戻す

 

 「この位置だと、もっとも近いのは…」

 「…M4A1さんですね。ここから最も近いです」

 

 「16Labのペルシカにも見せよう。失礼、構いませんか?」

 

「別におたくらのものなら良いですけど…」

 

 ―その方がいいかもな。ペルシカのやつ、AR小隊の身を案じてたからな。特にM4A1に対しては…な―

 

 

 「そうだな。指揮官、念のため、来るべき時に備えておいてくれ」

 

 ―やれやれ、了解だ…任務から帰った人形ちゃんたちにも手伝わせる―

 

 

 「ん?指揮官だって?…失礼ですが、ヘリアントス上級代行官…ここの基地の指揮官って…?」

 

 

 

 「ああ、それは、『彼』のことですが…」

 

 軍人はヘリアンの指す方を見る。そこにはボトルの飲み物をヘルメットの下から通したチューブで吸っているドライバーしかいない。近くで何者かが光学迷彩で隠れているわけでもない。

 

 そこでカリーナが続いて発言した。

 

 「そちらにいらっしゃるドライバーさんが、この司令部の指揮官様なんです!」

 

 「ははは、二人ともご冗談を…」

 

 「いえ、冗談ではなく、そこのそいつが指揮官です」

 

 そいつ、つまりフルフェイスヘルメットを被った彼である。

 

 「え……?ちょっと待ってくれ、彼が指揮官なのか!?」

 

 

 「はい」

 「はい!」

 

 そう。

 

 

 なにを隠そう、このドライバーは、ここグリフィンの基地における戦術指揮官なのである。

 

 

 ―悪いな、騙すつもりは一切無いんだ。さて、ようこそ、司令部へ!俺がここの戦術指揮官だ。俺のことは、これまでみたいにドライバーとでも呼んでくれ。以後お見知り置きを…―

 

 「えええええー!?」

 

 ドライバーのジェスチャーに、軍人の驚く声が基地に木霊していたのだった。

 

そして、彼は先程ドライバーに薦められたグリフィン印の缶詰をPXで買おうとした時、その値段に唖然としたのは言うまでもない。




ということで、記念すべき本編第一話でした。

シリアスなのかギャグなのか、これもうわかんねぇな。

ええと、軍人さん目立ってますけど、主人公はドライバーさんでございます(念のため)。

荒れた路面(一話では市街地なのでアスファルトを想定してますが)のコーナーアプローチは、結構ムズい。直前ではなく事前に減速を済ませてから曲がります。

あと、ブレーキングは先ず初期踏力(要するに踏み込む力)が重要。これが弱いと減速しきれなかったりします。よく某スクールでは、この初期踏力の感覚を掴むようにトレーニングされるそうです。私も別の場所ではありますが、練習してました。あくまで主に競技での走り方なのですが…
(上手くやれてたかどうかは……お察しください)

一応、うちの戦術人形たちがヤンデるかどうかは、その内わかるかもしれません…多分(何

では、また次回。


軍人「ねぇ、この缶詰、ちょっとお安くならない?」
カリーナ「(お安くなら)ないです」


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Vol.2 ドライバー出走まで後何分?

SOPii
「こんにちは指揮官。私はM4 SOPMOD ii!この作品はフィクションです。作中のカーアクションを真似すると大変危険だから、絶対に真似しちゃだめだよ?リアルでは安全運転してね?じゃないと…フフフ…アッハッハッハッハ!!」
 
 
AR-15
「最後何か怖いんだけど!?」
 
SOPii
「普通に注意喚起しても面白くないかなーっと思って!」


 
お久しぶりです。遅くなって大変申し訳ないですorz

日本鯖では低体温症イベントが始まりましたね。私も現在攻略中…。

 
そんなこんなでVol.2、はじまります。


「とりあえず、あんたが指揮官だってことは理解したぞ…」

 

 

 引き続き基地司令室にて。

AR小隊の位置情報をドライバーたちに見せた後、ヘリアンたちからの再度の説明により、軍人は百歩譲る様な物言いでそう言った。目の前にいるフルフェイスヘルメットを被ったドライバーが指揮官だなんてあまりに信じられなかったためだ。普通に考えて、こんなふざけた成りで指揮官など、そんなものがどこにいるのか。

 軍人の中のPMCに対しては、気難しかったりとか、またはどうしようもない堅物とか、あるいは不服従上等の軍人崩れの気性の荒い連中のイメージを抱いていた。しかし、今彼の目の前に映るドライバーに置いては、想像以上であった。ここまで仰々しさを放つのは他でもあまりいないだろう。

 

 PMCであるグリフィン&クルーガーとは、二世代戦術人形を主戦力としていることで有名になっている。べレゾヴィッチ・クルーガー氏の見た目の印象から、ここにおいては不真面目な面をしている社員は無さそうに見えたが、この様にあまりにユニークな人材が集う組織なのか、と軍とはまるで違うことに戸惑いが隠せず、最早先入観など捨て去った方が良いのでは…と心の奥底で呟く。

 

 すると、突然、軍人の端末から呼び出し音が鳴った。

 

 彼の端末のモニターからは、所属する部隊からであった。ドライバーたちは『気にせず出てくれ』とサインを送る。軍人は一言すまんと詫びてから通信に出た。

 

 「はい、私です…ええ、私は無事です。現在、○○地区のグリフィンの基地に…はい。はい?…ええ、はい。………了解しました。失礼します」

 

 通信が終わる。軍人はどこか浮かない顔で、ドライバーたちの方を向く。

 

 ―どうした?もしかして…クビにでもされたか…?―

 

 ここで『それならうちに来るかい?』と言わんばかり未開封の袋に収まっている新品のグリフィンの制服の上着をちらつかせるドライバー。ヘリアンは『指揮官、それは失礼だぞ』と叱りつけ、ドライバーは悪かったと軍人とヘリアンに詫びのハンドサインを送った。尚、この上着はカリーナのショップ(PX)で買ったものである。

 

 「確かに、今のがクビや左遷なら、喜んでそちらのオファーをお受けしたかった所だ…。だが、どうやらそれは違った。むしろ軍本部から命令が来てしまってね」

 

 ―そうか。よかったじゃないか。信用は潰えてないと言うことだな!―

 

 「ありがとうドライバー。ああ、そうそう、グリフィンの皆に助力し、前線の状況を調べてこいってお達しが来たんだが…」

 

 ドライバーとカリーナはふとヘリアンに視線を送る。彼女は「え?なぜ私を見る!?」と驚いた表情になった。結局そういう急務は、いつもヘリアンから基地にお達しが来るものであったからだ。軍からの依頼とあってはこちらの勝手に出来ない場合もある。

 

 尚、ドライバーが前線の中をかっ飛ばしてるのも、本当はある意味では勝手どころか危険であるので、余計に問題だが、特にやってはいけないと制限はされてすらないので不問扱いである。或いは仕様。社長のクルーガーは既知か、或いは知らないのか、それでも恐らく、この有り様だといい加減『嫌な予感』として感じてはいそうなので、今はもうしばらく様子見…といったところかもしれない。

 

 ―ほう。で、どうする?ヘリアン…―

 

 「ふむ…こればかりは上の判断を待つ必要があるとしか言えん…」

 

 「AR小隊の皆さんの捜索もありますからね…」

 

 となると軍人も困ることになる。すると、ヘリアンの通信端末が鳴った。

 

 「本部からだ。…もしもし?はい…了解しました…失礼します…」

 

 通信は直ぐに終わった。グリフィン本部からだったようである。

 

 「指揮官、AR小隊の捜索にゴーサインが出た。」

 

  

 ―早いな。ああ…困った、人形たちもメンテ中だ…あ、俺の車はオイルとタイヤを変えれば何とかなりそうだ―

 

 「待て!もしやまた貴官が行くのか!?」

 

 「指揮官さま正気ですか!?WRCのSS(スペシャルステージ)じゃないんですよ!?」

 

 ヘリアンとカリーナが指揮官を止めに入る。

 

 「そうだぞドライバー!二人の言う通りだ!敵に狙われたらどうする!?」

 

 軍人も、命の恩人を案じてそれに加わる。腐っても恩人だ。

 

 

 

 

 ―そんときゃ全力でブッ千切るまでだ。安心しろって!―

 

 

 「そういう問題かよ!?」

 

 ―それと、軍人、悪いけどあんたにも来てもらうぞ。その辺の状況見るんだったな?さっきのアレだけじゃ情報不足だろう。それに、この辺は警備チームも出してある。周辺にいる鉄血のアホ共はこいつらに処理させるからさ。それに指揮装置は車にも搭載してある―

 

 「時に指揮官。その指揮装置、何処から入手した?」

 

 ―え…それはそのー…ははは…―

 

 

 ヘリアンはここでドライバーを睨む。たくあんのようなジト目。

 

 ヘリアンに睨まれ隊の諸君。彼女の貴重なジト目シーンなので、どうかお納め頂きたい。

 

 無論カリーナはシャッター音がしないカメラでそっと今のヘリアンを撮影していたのは言うまでもない。彼女のファンには高く売れることだろう。

 

 「貴官、まさか『費用の水増し』などしていないだろうな…?」

 

 ―おいおい、人聞き悪いなぁヘリアン。あれは整備改修費だよ…―

 

 

 カリーナもそっと目を反らす。

 

 早い話が、先程軍人を乗せてきたあの車の改造費であった。基地の整備兵たちがドライバーと結託(悪ノリ)しての改造計画だったのは指揮官として黙っておいた。彼らは指揮官(ドライバー)の監修と命令で動いたに過ぎない。あとカリーナも。

 

 結果、こうして取り残されていた軍人を救助することにも成功している。

 

そこでドライバーは言い訳の続きとなるジェスチャーを始めた。

 

 ―第一、あの役員たちに話を通せってのが無理な話だろ。奴さんたち頭が固いから、却下されて無駄足食うだけだ。それに結果は出しただろう?―

 

 ドライバーは手で軍人を指す。

 指された軍人からすれば、確かに彼はドライバーに救われた。

 

 そしてそして、ドライバーは続けてこう伝える。

 

 ―それに、仮に水増しだったとしてもだ。他所に予算を回したところで、場所によっては自分のとこの虚栄心のためにろくな使われ方されてないじゃないか。それこそ、あんたら幹部が差し押さえるべきじゃないか。そうだろ?あと、気になるなら金の流れを調べてくれて構わない―

 

 これまで全て彼のジェスチャーではあるが、後は一種の論点ずらしをし始めていた。

 

 「他所の事情を理由に論点をずらすなっ…まあ確かに、貴官は依頼を果たしているがな…整備改修費、自腹、か…ふむ。」

 

 ヘリアンがドライバーに突っ込むが、任務をしっかり遂行してるのは事実のため、勢いが弱まる。確かに近頃の指揮官の中にはそういう下心が色々と丸出しで、尚且つろくな戦果を上げてない輩が混在しているのもまた現状であった。

 

 人形のコスチュームにコストをかけてコスプレ部隊をやろうとする、マニアな指揮官。

 

 根も葉もない噂で悪評を立てて評価を良くしようと色々悪さを企てるも「お前他人の事言えないやんけ」と関係者から暴露されて週刊誌に載ってしまい、盛大に爆死する指揮官。

 

 人形たちのフィギュアやらキャラグッズやらの製作にコストを回し、それを鉄血たちに販売し、市場的な意味での制圧を企てていた指揮官。

 

 ある意味、破天荒な方向に水増しした予算を投入しようとする大馬鹿野郎。この大馬鹿野郎というのは主にドライバーのことである。

 

 他にも色々いる。マトモな戦果を上げている指揮官からすると、彼らは同じ役職にいる者であることに困惑を隠せない。苦言を言っても右から左。結果で示して黙らせてしまう。おまけにドライバーみたいに特技に秀でてなかったりする者もいるため、その分野が得意な敵においては、彼等のようなイロモノに頼らざる得ない。

 

 

 「あ、あのー、差し出がましいようで恐縮ですが、軍でも費用使い込んで私物やら部下への労うための物やらを買い込んだりする人はいますし、それに、彼も車は仕事道具みたいですから、そこはどうか…。それに、依頼料で補填できるはずです…よ?」

 

 軍人からの一声。依頼料も払われている。

 しかし、彼は言葉でうまく包もうとするが、真面目で高潔なイメージの強い正規軍の恥態をポロっと暴露してしまってるので、結果あまりフォローとは言えない。グリフィンからして、正規軍だって用法は異なれど「おまいう」状態である。無論、彼は当事者ではないからと思わず言ってしまったのだが。これが彼の上司にバレたら厳罰ものだろう。

 

 ヘリアンは軍人のドライバーの仕事ぶりを確かに認めている様なので、話を進めようと一旦咎めるのを諦めた。確かにドライバーの手法はメチャクチャだが、依頼はこなしてきている。だからって水増しなどは許されないが、そうも言ってはいられないのも現状。M4たちの捜索と救出もゴーサインが出てしまった。

 

 睨むのを止めたヘリアンは…端末からメールが届いているのを見て、それからこう言った。

 

 「確かに…。たった今、時間差でグリフィン本部から通達がまたあった。行ってくれ指揮官。軍からの依頼の方も頼む」

 

 

 よし!とドライバーはガッツポーズを取る。

 

 「ちょっと待て!いいか?次は必ず申請を出すんだぞ!わかったな?」

 

 ―ああ、了解だ。何買ったかは領収書も込みで詳細に記しておくさ。おやつ1つでもな。早速準備して、『AR小隊お迎え作戦』と行こう。軍人、あんたの任務もな―

 

 「俺は助手席か…?」

 ―ああ。悪いな、軍人さん。あ、そうだ!あんたも準備手伝ってくれないか?手が足りないんだ―

 

 「はぁ、そうだな…確かに、グリフィンには恩があるしな。怖いけど…」

 

 やる気を見せる軍人。ここで話は着いたようだ。

 

 かくして、AR小隊お迎え作戦と、軍からの周辺調査の二つの仕事を始めることが決定した。

 

そうと決まった矢先。

 

カリーナ曰く、どうやら媒体には他にもデータが記録されてるのを見付けたとの事。何かのヒントになるかもしれないと思い、これも再生してみることに。ファイルの形式から動画の様である。

 

 

 

 ―見てみよう―

 

 再生をクリックする。

 

 『…こちら戦術人形、M4A1。現在S09地区のどこかに潜伏中。このマップ情報古すぎてホンマつっかえ。今日で逃亡70日間。散り散りになって孤立無援という状況で、こんなに頑張っても実績解除とかないってことは、現実ってやっぱりクソですね。あと、鉄血に追撃されるのは想定内とは言えど、あまりにしつこすぎてもう草生えますよ?後どれくらい持つかわかりません。早くグリフィンの方に連絡を取らないと。鉄フラでもしたら大変です。それではまた。…ええと確か…終わり!閉廷!』

 

 『鉄血だ!』

 

 『あっ…』

 

 

 鉄血人形兵かなにかの迫真の一言に対して、M4A1の察したような声を最後にビデオログは終了した。

 

 

 ―…M4のビデオログか。鉄フラして急いで切ってしまった様だが…―

 

 「所々に愚痴とスラングが…。現実がクソってのは、わかりみを感じざる得ないけど…。ところで、鉄フラってどういう意味だ?」

 

 ―『親フラ』みたいなもんだよ。うちでは、鉄血に見付った時とかによく使う言葉だ―

 

 

 

 軍人は頷いた。言葉の意味については納得していた。だが、M4の人物像が余計に分からなくなっていった。軍人からしたら、もっと真面目なイメージを持っていた様である。人は見た目に寄らない。これはきっと人形にも言えることなのかもしれないなと、軍人はそう思い始めるのだった。

 

 

そんなこんなで準備を始めることに。カリーナたちとはここで別れ、司令部前に置きっぱになっていた車をメカニックたちの方へ移動させる。

 

 ドライバーの車は、基地でいつもドライバーと協力(悪ノリ)しているという整備チームの手により、整備及び点検作業が行われていた。

 

 そのあまりの作業の早さは、まるでWRCのサービスパークにて派手に壊れた車を走れるようにするラリーチームのクルーを彷彿とさせていた。軍人はそこから『お前の基地はおかしい』と感じるのだが、ドライバー曰く、これは何時もの事であると言う。あっという間に作業が終わりを迎え、タイヤが取り付けられていた。ボルトを締めるインパクトレンチが唸る。車を担当していたメカニックの一人は、『現在使われてるインパクトレンチは締め付けトルクを設定できるから作業が楽で良い』と語っていた。

 

 

 仕上がった車に乗り、ドライバーは軍人を乗せて敷地内を走らせ、ある場所へと移動する。

 

  

 「それで?護衛の人形とかはどうするつもりなんだ?メンテに出してるって聞いたけど…」

 

 ドライバーの後について手伝う事になっている軍人は質問する。軍でも下働きの多い彼には、これくらいはどうってことは無かったのだが、これから向かう所は鉄血人形の姿がしょっちゅう確認されているエリア。警備チームも人形たちも警備中とは言えど、その手の届かない場所で敵と遭遇することも有り得る。先程、基地に来る途中の様に、その中を走るのなら、せめて護衛を同行させたり、それなりに身を守るための準備が必要になる。

 

 ドライバー本人では、先程敵に見付かったら『ブッ千切るまでだ』などと伝えていたが、彼はこれ以上ヘリアンを困らせると後が怖いと判断し、一応、今回は誰かしらを護衛に連れていくことを考えていた。

 

 ―暇そうにしてるのを連れていこう。確か『奴』なら、まだそこに居た筈だ―

 

 

 先程、対空兵器を押さえるべく出撃させていた人形たちは、現在メンテナンス中なので出せない。

 どうやら、以前にも戦闘が激化していたために度重なる出撃があった様で、基地の人形技師曰く、完全に動ける状態になるまでには時間が要るという。かと言って、下手に基地警備の人形を連れていくと手薄になったりして、万一何かあった時が大変なことになってしまう。ドライバー(指揮官)自身が自ら最前線を突っ走るのも十分に大変なことになりかねないが。

 

 

  

 そして辿り着いた先は、いつもカリーナが牛耳るPX、通称ショップのある倉庫であった。シャッターの外で停車させる。横の扉から入っていく。

 

 尚、カリーナは不在。この場合、軍人はここの物を勝手に持ち出す気ではないのか…と嫌な予感がしていた。

 

 ―カリーナには書き置きしておけば平気だろう。それに盗むって訳じゃない。元々、大半は基地(ここ)の備品だったものだからな。こっちだ。来てくれ―

 

 

 ドライバーに誘われるまま、ショップの奥へと入っていく軍人。事態が事態なので仕方ないのだが。

 

 しかし、こんなところに物資はあっても、人形なんて…と軍人は疑問符を上げていた。

 

 

 

 

 

しかし、そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なによ…?」

 ドライバーを見て喋る『何か』。それは……

 

 

 

 

 

 

  

 戦術人形 -FAL- ¥120

 

 …の姿があった。

 

 軍人はこの異様な光景に一瞬表情が固まっていたが、その一方で、ドライバーはFALの手を取り、引き上げて立たせる。

 

 「あ、ちょっと!何するの!?」

 

 ―悪いが急ぎの任務でね。力を貸してほしいんだ―

 「任務ですって?まぁ、それなら良いけど」

 

 FALは許諾する。

 すると隣にいた軍人が目に入った。彼の事はカリーナたちから話を聞いており、軽く挨拶を交わす。

 

 「話は聞いてるわ。よろしくね、軍人さん」

 

 「こちらこそよろしく……なあ、グリフィンのPXって戦術人形も売ってるのか…?ていうか、なんで二世代型戦術人形が¥120なんだよ!?しかもこいつ☆5品質じゃないか…!!」

 

 彼女の首からぶら下げてる値札を見て軍人は言った。当の本人は☆5品質と聞いて嬉しかったのか、ドヤ顔であった。

 

 

 ―それについては俺もよく知らないんだ。よし、それじゃ行くぞ~―

 

 

 と、ドライバーがFALを担いた。

 

 「あっ…離してよ!?壊れてる訳じゃないからぁ!」

 

 ―え?訳あり商品じゃなかったの!?―

 

 「指揮官…あんたねぇ…。あら、いけないっ」

 

 ―なんだ?―

 

 「忘れ物!すぐに戻るから。降ろしてくれる?」

 

 ―わかった、ほら―

 

 FALは下ろしてもらい、先程まで座ってた座布団の上になにやら看板を立てた。

 

 「これでよしっ」

 

 ドライバーたちの元へ戻っていく。

 

 次にドライバーは、空白のメモ帳にペンを走らせ、持っていく品を書き、最後に『すまない。急務につき、以下のものを持っていく。ショップのものは後で支払う』と一言添えたメモ書きを書いてレジスターのところに設置。

 

 「FALを連れていくことは分かったが、武器と弾薬は?」

 

 ―うちのを使ってくれ。弾薬は人間も人形も同じ物だ。武器庫からいくつか拝借していこう―

 

 

 

 基地から持ってくものと、PXから拝借するものを分けてメモに書き込むドライバー。こうすれば混乱は無いだろう、そう考えていた。特に武器庫から持っていくものについては、弾薬が古いわけではないので、撃たなければ撃たないで持ち帰り返却すればいいと考えていた。

 

 後、ショップでの支払いは、カリーナがそのまま後払いに応じてくれることを信じる他ない。あわよくば、必要経費として本社に請求してくれることも祈り……。

 

 しかし、必要なものを揃え終え、ショップを出ようとした矢先。背後から、ただならぬ気配を感じた。

 

 パッと振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべたカリーナが立っていた。

 

 

 

 「指・揮・官・さ・ま・?」

 

 

 瞳には$のマークが浮かんでいる様に見えた。正しく、シュセン・ドーを極めし者の目。空気が変わる。

 

 逃がしゃせんぞ…と、彼女から放たれる気迫は凄まじく、ドライバーは思わず 一歩下がってしまった。するとカリーナも一歩踏み出す。

 

 ドライバーはマズいと思い、逃走のため背後を見た。

 

 ―なっ!?―

 

 シャッターは閉められていた。これでは車に乗り込めない。

 

  

 

 「メモは見ました…で す が 、 後 払 い は 承 っ て お り ま せ ん よ ?」

 

 突如、カリーナから霊圧めいたものが解放された様な感じがしたドライバーは、また一歩引く。

 

 ―い、いつも支払ってるだろう?なぁカリーナ…そこは頼むよ…―

 

 「指 揮 官 さ ま ?」

 

 ―ヒェッ―

 

 

 (どうする…このままでは……………俺の財布が!)

 

 それどころか、ドライバーたちの霊圧が消えそうになっている。これでは、別の場所にいたヘリアンが『指揮官たちの霊圧が消えた……?』などという展開になってもおかしくはない。

 

 (というか、こういう時くらい空気読んで行かせてくれ…!!)

 

 ドライバーと軍人、FALといつもの戦術フェレットは意思が一致する。

 

 しかし、それも叶わないと悟った軍人とFALは、ドライバーに言葉を掛ける。

 

 「ドライバー…ここは払っておこう…!」

 「そ、そうよ…!最終的には払うつもりなんでしょう…?」

 

 耳打ちする軍人とFAL、彼女が連れてる戦術フェレットも冷や汗かきつつ頷いている。

 

 それにFALのささやく声がとても心地良いのは何故だろう。

 

 ―やむを得んな………済まなかったな、カリーナよ。会計を頼む…―

 

 そして、ドライバーは支払いに応じるのだった。

 

 「後で何か奢るよ…」

 「わ、私からも…!だから元気出しなさい!ね?」

  

 ―気にしないでくれ…ははは…―

 

 生気を失い掛けるドライバー。何故かFALのボイスが唯一生命線であった。

 

 「お買い上げ有難うございまーす♪」

 

 

 尚、先程忘れ物と称し、FALが急いで設置してきた看板には、こう書かれていた。

 

 

 

 『SOLD OUT』

 




カリーナが斬魄刀を解放したら、きっとソロバンが刀にくっついてそう。あと死覇装着せたら乱菊さんみたいな着方してそう。

あ、念のためですが(本作品にBLEACH要素は)ないです。


G28が出てくれて狂喜乱舞。まさか出るなんて思ってなかった…

では、次回をお楽しみに。


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Vol.3 出走開始

AR-15
 「指揮官こんにちは、コルトAR-15よ。本作のカーアクションを真似すると大変危険だから、絶対に真似しちゃだめよ?実際に運転するときは、交通ルールを守って安全運転に努めてね☆」
 
 
 M16・M4・SOPii
 「…」
 
 AR-15
 「ちょっと!?なんで無反応なの!?」
 
 
 
 RO635
 「…という訳で読者の皆さん、お待たせ致しました。Vol.3です」
 
 はじまります。
 


さて、ショップでカリーナに支払いをした後、ドライバーたちは武器庫へ行って装備などの準備を済ませ、車に詰め込んだ。

 FALは後部座席へ座り、シートベルトとなる六点式レーシングハーネスを着ける。しかもロールケージが張り巡らされている車内を良く見ると、後部座席となる位置には、バケットシートの様なものが三つも取り付けられていた。ドライバーはM4A1を乗せれば満席になると話しており、その状態で、先程基地まで連れてきてもらう道中に見せた様な走行をしたら、一体後ろはどうなってしまうんだろうか…と内心不安がる。ドライバーはそれに対して脳天来そうに『心配するな。クラッシュには気を付ける』とジェスチャーで伝えた。ショップで見せた慌てっぷりはどこへ行ったのやら。彼は元気である。

 

 

 「もっと気を付けるべきところがあるだろ!?」

 

突っ込む軍人に、ドライバーは、「もしかして搭乗員数分の重量による変化のことか?』と思い訊ねる。しかし、ドライバーからしたら、今FALたちの体重なんて聞いたら120%殺されかねない。そもそも人形は脂肪が付かないので太らない。だが、重量と聞いて、もしや体重の話をされてるのかと感付いたFALからの鋭い視線が地味に痛い。

 

 「い、いや違う。そうじゃないって!?」

 

 検討違いな方へ行ってしまった。軍人は、ドライバーに二度目の突っ込みを入れるものの…

 

 ―大丈夫だ。ルートはしっかり確保出来ている。さあ、行くとしよう―

 

 

 押しきられた軍人は諦めて助手席へ座った。

 

  

 そして、基地を出ようと近道のために基地の飛行場の方へ出た。格納庫やら倉庫やらの角を左折する時、四輪ドリフトさせていた。

 

「おい!?」

 ―済まん。タイヤを新しく変えた分、温度がまだ低くてな― 

 

 

 そんなのやる前に言って欲しかった…そう軍人は思った。けど、やはり運転は手慣れている。ステアリングを回しても指揮官とは役職柄、もっと自陣の司令部で引きこもってるイメージが強い。本当に単なる指揮官なのか?もしかして指揮官っていうのは偽装名分じゃないのか?などと考え出す軍人。

 

 

 

 その最中、ドライバーは再度テールスライドで右に曲がっていった時、コーナー時のGと衝撃で押し付けられ、軍人の思考は中断させられた。

 

 

 

 基地を出ようとしたその矢先、仲間の部隊とはぐれてしまったいうステンMk-iiに出会った。

 ドライバーはそこで思い付き、これから任務なので協力してほしい、と交渉を始めた。ステンは「お役に立てるなら!」と喜んで引き受けてくれた。

 

(輸送班の人かな…?一先ず乗っちゃおっと!)

 

いざドライバーの車に乗り込もうと視線を車に向けた途端、なんだか不穏なもの感じつつ、恐る恐る後部座席へ座り、ドアを閉めた。ロールケージの張り巡らされた異様な車内に戸惑うステン。

 

 「座席、詰めた方がいいですか?」

 ―あ、そこでいいぞ。重量配分の問題でな。―

 「そ、そうなんですか…。ええと…シートベルトは…」

 

 ―あ、FAL~教えてあげて~―

 

 「了解よ。じゃあ先ずは、これをこうして?」

 「えっと、こうですか?」

 「そうよ」

 

 FALは六点式ハーネスの着け方を丁寧に教えていた。ステンが着け終わったと合図を送り確認すると、ドライバーは車を発進させた。

 

ステンはその加速の早さに驚き、気付いた。

 

(この人、只の輸送班じゃない……!?)

 

 

 

 

 目的となる地区まで向かう途中。

 街の道路の横では、ある鉄血人形がに新入りの鉄血人形兵にドローンの使い方を得意気に教えている所に遭遇する。

 

 

 「このドローンは、攻撃だけでなく対象のスピードを計測することもできますわ。使い方は簡単。先ずドローンを道路に向ける。そして通りすぎるまで待機 わ ぶ っ ! ! ? 」

 

 

 

 それは一瞬の出来事だった。言い終わる前にドライバーの車が走り抜けていった途端、ドローンはショートする音と共に爆ぜ、風圧により吹き飛ぶ。それは堂々と操っていた人形も巻き込み、後ろへ倒れ込んだ。人形の口元を保護するマスクも外れてしまっている。

 

 

 

 

 よろめきつつ立ち上がった人形は、新入りの鉄血兵のところへ歩きつつこう言った。

 

 

 

 「だ、だけどまぁ、初めは…中古のモデルで練習するといいですわ…」

 

 

 

 

 その走り抜けていった後の車内では、それを垣間見たFALがドライバーに問いかけている最中であった 。

 

 「ねぇ指揮官、今のって鉄血のスケアクロウよね…?」

 

 ―さぁな。古い交通整理用ロボットか何かだろ?―

 

 「いや今の絶対スケアクロウでしたよ!?」

 

 これにはステンも突っ込む。

 

 ―となると、恐らくダミーだな。いつも見るアイツなら、こんな間抜けなザマは晒さない筈だ―

 

 

 通りすぎてしまったため、もう確認は出来ない。

 

 しかし…残念ながら、先程の人形ことスケアクロウは、ダミーではなく本体(メインフレーム)であった。

 

 

 ドライバーは気にせず差し掛かる丁字路やらコーナーに対し、勢いを殺さず慣性ドリフトで次々クリアしていく。しかも速度が乗ったままで。途中で基地の司令部からカリーナが『指揮官様、良いペースですよ!区間タイムを更新中です。オーバー!』と嬉々として連絡を入れてきた。ドライバーは表情はわからないが、何だか嬉しそうであった。彼女はスポッターか何かのつもりだろうか。というか、近道と言ってたし、やり取りでの言葉は色々アレでも、走りなれてるのは本当だな、と感心できなくもない。

 

 さらに、通り抜けた後に、路肩で並んで待機していた鉄血機械兵たちが、その風圧でドミノ倒しになっていたり、咄嗟に避けようとして姿勢を崩し、ひっくり返って動けなくなってしまってたりと、機械の癖にまるで喜劇を見ているかの様な面白い動きを見せている。

 

 そんな中で軍人は、現在地からして、ふと思い出したのだった。

 

 

 (ここ戦場だったわ)

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 一方、目的となる地区にある工場地帯、そこにM4A1の姿があった。ビデオログの撮影中に鉄フラし、やり過ごして移動したり、排除したり、色々と大忙しであったためか、弾薬の消耗もあるが、少し服も破れてたり汚れてしまっている。

 

 

 

 

 『ハーッハッハッハーッ!』

 

 突然、M4の背後から大声で笑う何かが現れた。

 

 

 

 「ベタな悪役の笑い方ね…」

 

 

 『うっせえ!余計な世話だ!ゲフン!』

 

 振り向き様にM4がそこに突っ込みを入れると、それに反応する声の主。

 

 咳払いをして、颯爽と姿を現した。着地の時に少しよろけたのは見なかったことにしよう。

 

 「処刑人(オレ)、参上っ」

 

 そう、鉄血のハイエンドモデル、みんな大好きエクスキューショナー(処刑人)。決めポーズを取るが、空気がシラけてしまう。

 

 「……」

 M4も無反応。 

 

 

 「おまっ…何で無反応なんだよ!!そこは盛り上がるところだろうがぁ!!」

 

 

 「ヒールなのかヒーローなのか、どっちかにして。そもそも、ポーズが違うわ…!」

 

 銃を向けつつ処刑人に指摘するM4。そもそも、お互いそんな余裕を見せている状況なのだろうか。

  

 

 『処刑人、大変です!』

 

 処刑人に向けて、部下の人形たちから通信が来た。

 

 「ああ!?何だよ…今やっと出番が来た所なんだぞ…?」 

 

 『そんなことより!グリフィンのマークの車が!ってうわちょっとこっち当たって……』

 

 突然ノイズが走り、無線が途絶えてしまった。

 

 特に爆撃されたとか、大軍が襲ってきたとか、そういう大したことではなく、ドライバーの車を発見してカーチェイスの末、追跡用車両がクラッシュして宙を舞ったり、撃ったら避けられた上に運悪く居合わせた味方に弾が当たったりなどして発見して追い掛けた者の大半は自滅していた。

 

 その現場では、正面衝突した車の上に、引っくり返った車が乗っかり、それを避けきれずまた突っ込んできたりと、カオスであった。

 

 

 

舌打ちしながら通信を切る処刑人。

 

 

 すると、突然工場の出入り口から大きな音が物凄い勢いで近付いてきた。それはドライバーが運転する車だった。車はM4の目の前に止まった。

 

 ―乗れ!―

 

 「でも!」

 

 ―そいつは放っておけ!さあ早く!―

 

 ドライバーは、自身の方を見たM4に向かってそう伝えた。M4は何かに気付いたのか、咄嗟にボンネットに飛び乗って処刑人に発砲。FALとステンに加え、軍人も援護し弾幕を張る。あくまで牽制だ。当たればいいな程度である。軍人は必死で当てようとしてるが、狙いは外れていた。

 

 処刑人が一瞬怯んだ隙に、ドライバーに車を出すように伝え、ドライバーは車を360ターンを行い工場の出口へ向けて走らせた。

 

 「コラー!逃げるなぁぁぁ!!!」

 

 処刑人は吠えつつ、拳銃を数発撃つが、ドライバーの反応が早かったため、ドライバーやM4おろか、車にすら命中することはなかった。

 

 すると…

 

 「………ん?」

 

 突然顔に何かが降りかかった。 その頭上を見た途端、大きな音が聞こえてきた。

 

 「え?なんだ?まさか崩落か…?嘘だろ、え、ちょっとまっ……うわああ!?」

 

 逃げ遅れた処刑人は、崩れた屋根の下敷きになってしまう。どうやら経年劣化によるものだった。処刑人の真上にピンポイントで崩れたのは偶然起こった『お約束』である。

 

 

 

 

……

 

 ドライバーは一度安全な場所まで待避させることを考え、速度を上げた時、M4は振り落とされないようにピラーやボンネットのダクトに手を引っかけしがみついていた。となると、M4の体は窓にべたっと引っ付けており…特にガラスに覆い被さるようになっているため、後は…お察しください。

 

ドライバーと軍人は紳士の表情でそれを拝むのだった。というより、ドライバーからしたら視界が狭まり運転しにくい。そして背後からの視線が地味に痛い。

 

 またM4は、遠心力で顔面もガラスにぐにっと押し付けられていた。下手すると彼女の髪の毛が隙間に入るかもしれないのでぶっちゃけ危ない。

 

 

 

 (M4ってあんな顔もできるのね…?)

 (す、すごい絵面です…!)

 

 今ここで映り込むM4A1の有り様は、まるでロケで女を捨てた女性タレントの様であった。

 

 

 ドライバーたちは、極力今のM4と目を会わさないようにしていた。

 

 それは、現在のM4の表情は、あまりに腹筋への破甲性能が高かったからである。しかし、M4は、あれ?どうしたの?まだ止まらないの?ねえ?と車内に向けて目で訴えていた。

 

 

 こう言うときは下手に止まるのは危険ではあるものの、このままハードなアクションをさせたまま帰ると色々とマズそうなので、工場地帯を出てから少し進んで、建物の影に停めてから乗せてあげることに。

 

 M4はボンネットから降り、FALとステンが一度降りて周囲を警戒している

 

 「詰めれば良いじゃないか」

 ―まあまあ、カタいこと言うなって!―

 ジェスチャーで返すドライバー。

 

 そして全員が乗り込んだのを確認すると、ドライバーは再び車を走らせた。

 

 

 「たっ助かりました…ありがとうございます…」  

 

 ―ああ、無事で何よりだ―

 

 「ああ…そうだな…」

 

 軍人と後部座席に座っていたFALとステンも苦笑いしつつ頷いている。M4は六点式ハーネスを戸惑うことなく着けていたのを見ると、FAL同様、こういうことには手慣れているのだと気付く軍人。しかも、指揮官と呼んでいた事からドライバーとは知り合いの様だ。

 

 

 「それにしてもM4さん…さっきの…」

 「スゴい顔してたわよ…?」

 「そ、それは…加速Gが凄くて…必死で…はうう…お恥ずかしい…」

 

 

 赤面し顔を手で隠す。

 

 

 ―しかしM4。ハリウッド女優も真っ青なスーパーアクションだったぞ。あれは誰にも真似できん!―

 

 「やめてやれよドライバー…」

 

 「そ、そうですか…?えへへ…!」

 

 照れ笑いM4。そこ照れるところか?と皆が言おうとした矢先。ドライバー途端に何かに気付いた。

 

 ―後ろに付かれてる―

 

 どうやら追っ手がやって来ていた様だ。ドライバーは、基地まで真っ直ぐの全開アタックは叶わなそうだ、と残念がっている。

 

 背後には鉄血マークの追跡用車両が複数。

 

 「逃がさん!」

 「覚悟ー!」

 「大人しくお縄についてもらうぞ!」

 

  

 

 ドライバーは、まあいいか!バトルの相手が欲しかった所だと言いたげに車を加速させていく。途中、町中を右へ左へ迂回して鉄血の車を撒こうとした。

 

 しかし…その更に後方から

 

 「ただで返すと思ったか?」

 

 先程瓦礫に生き埋めになった筈の処刑人だった。

 

 あの後、何とか部下を呼びつけて、助け出してもらい、直後にM4を乗せた車の追跡と確保を命じていたのだ。

 

 「よーし、お前ら!!見事捕まえたやつには、もれなくゴールドカラーのパーツをプレゼントだ!」

 

 

 

 

 

 

 (((((いらねぇ……))))))

 

 部下の鉄血人形たちは、処刑人からのご褒美に困惑の様子。何故なら、貰ったやつ曰く、ただ綺麗に塗っただけのパーツであったため。因みにこの前は代理人の着ているのと同じメイド服。そんなのどこから持ってきたんだと聞きたい。

 

 

 

 

 

 「指揮官、この車に武器とかは付いてませんか?まきびしとか!オ○トジャッキとか!ミサイルとか!」

 

 M4が聞いてきた。というかオー○ジャッキとかそんな古いネタをよく知っているよな、とドライバーは思っていた。というか、オート○ャッキは武器ではない。

 

 ―悪いなM4、生憎『Aボタン』は壊れてしまってるんでね―

 

そうジェスチャーでM4に伝えたドライバー。というより、そもそもドライバーの車には『Aボタン』自体搭載されていないし、そもそもこの車はボ○ドカーですらない。多分メカニックたちに頼めばそれっぽいのを作ってくれるかも知れないが。

 

この地区はさほど道幅が広いわけでもないのに、追跡車が押し寄せてくる。これではまるで突いた蜂の巣だ。

 

 前方から銃座に付いた鉄血人形が撃ってくるが、ドライバーは車体を反らし咄嗟に避けていく。直後に、荷重をしっかり掛け、まるで、ジムカーナでパイロンとパイロンの間をぐるぐる回るかの様な鋭いコーナーワークで狭い道やら交差点を素早く走り抜けていく。

 

 「おいドライバー、さっきみたいなドリフトはしないのか!?」

 

 軍人はてっきりドリフトを行うものかと思って身構えていたのだった。

 

 ―シチュエーション次第だが、こういうところは下手に滑らさない方が、安定して速く走れる事だってある―

 

 「決め手は荷重移動ですね!指揮官!」

 

 また突然M4が話し掛けた。ドライバーはその発言に、そうだ!とジェスチャーを送った。

 

 背後の鉄血兵たちも狭い道まで追ってくるが、ぶつかりそうになって減速が多くなったりして出遅れてしまう。撃とうにも揺れてバランスを崩して転倒しかけたり、明後日の方向に弾が飛び、外してしまう。終いには待ち伏せして撃った弾が仲間の車両に当たり、避けようとして横転したり、正面衝突してしまったりと散々遊ばれていた。

 

 後はドライバーに指示をもらった人形部隊が駆けつけるのを待つのみ。

 

 

 川沿いの道に出ると、処刑人の乗る追跡車両が追って来た。鉄血のマークが入っているのはさる事ながら、カラーが全部真っ黒である以外は変わらない。ひょっとしたら微妙に性能が違うかもしれないが、『ここに展開してる親玉なんだから、せめて赤いライトにボンネットにツノでもついてりゃ、まだ絵になるのにな』、とドライバーはジェスチャーで伝えてたが、その意味を理解出来ていた者は、頷いていたM4A1くらいであった。

 

 

 

 

 (見付けたぞ!!M4A1も同乗してるな…?それにありゃ『グリフィンのドライバー』だな!散々可愛がってくれた様だが…ここでまとめて一網打尽にしてやる。このまま逃がしでもしたら俺のプライドが許さねぇ…)

 

 不適な笑みを浮かべつつ、車を走らせる。二台とも速度が乗っている。車内から拳銃でドライバーの車を数発撃つもまた外れてしまう、再び撃とうとするもカーブに差し掛かったり、追ってきた部下の人形やら、その人形が運転している車や障害物を避けるなどして撃つに撃てなかった。

 追うのに夢中になっている処刑人。『何処だろうと、ぶつけてでも止めてやる』と思いつつ前方を睨む。

 

 すると、突然目の前を走るドライバーの車が急減速。処刑人の車を左に避ける様にターンを決めていった。すると、処刑人の車は横から抜き去る形で離れていく。驚きながらドライバーたちの車を見て、再び前を見ると、目の前には道が無い。下は大きな川。止まろうにもブレーキが間に合わない。ここで処刑人は悟った。

 

 

 (あ、終わった)

 

 それと同時に、一句読む。

 

 

 

 オレたちは

 そう簡単には

 消えないぜ

 

 …字余り

 

 

 

 

 

 

 

 ドライバーの車の背後で水飛沫が上がった。

 後を追ってきた鉄血人形の車も、止まりきれずに次々とダイブしていく。後は襲ってくる気配がないため、ドライバーたちはそのまま地区を離脱する事にした。

 

 『SV-98から指揮官へ、指示通り、配置につきました。どうぞ』

 

 増援としてやって来た人形部隊たちの一体からであった。RF人形は目が良いので遠くから地区を眺めている。丁度ドライバーの車が走り去っていくのを確認していた。

 

 ―こちら指揮官、了解した。こちらは今がチャンスだ。後は頼む。建物の中には崩れやすい物があるか注意しろ。それと、鉄血の追跡車両とかデータベースがあっても、"対策もなしに無闇に触れたり、アクセスしない様に"な―

 

 『了解!』

 

 SV-98との通信はここで終了。ドライバーたちは基地へ向かって走り去っていく。

 

 その後、地区ではドライバーの指示でやってきた先程のグリフィンの人形たちが入れ替わるようにして展開している。鉄血人形が先程のカーチェイスで消耗していたためか、早めに制圧することが出来た。

 

 そして現在警戒する中で…

 

 「鉄血のやつらの車がスゴいことになってますね…」

 

 「一体どうすればこんな悲惨なことになるのやら…」

 

 「なんか芸術的…」

 

 

 ドライバーを追跡していた鉄血の車両がクラッシュした際に、引っくり返ったりして見事に積み重なっていていた。

 

 

 「誰でも良いから…たすけて~!」

 『ダズゲデー 、ダズゲデー 、オウフ…』

 

 

 途中、車から出られなくなったままの鉄血人形兵と巻き込まれた機械兵たちを発見する。そして、川には処刑人と連れていた人形兵たちと追跡車両数台が発見される。力尽きてしまったのか、水面にうつ伏せの状態で浮かんでいる。

 

 

 

 

 

 

 これらのシュールな光景を目にしたグリフィンの人形たちは、「どういう事なの…」と困惑を隠せなかったそうな。

 

 …だが、今回の報告書に書くネタには、ある意味困る事はなさそうである。

 

 

 

尚、ステンは基地で改めて入隊手続きをした際、ドライバーが正規の戦術指揮官であること知り驚いていたのは、言うまでもない。

 




そんなこんなでVol.3でした。

六点式レーシングハーネスとか、単にハーネスって聞くとピンと来ないかもしれませんが、一応シートベルト事です。市販車の純正は三点式です。一応、四点式や五点式とかいうものもあります。
作者もある車に乗った時にその類いのものを着けたことがありますが、結構がっつり身体が締まりますww

ステンがシートベルト着用で戸惑ったのは、恐らく単に見慣れてなかったためという設定。FALとM4はなぜ慣れてるのでしょうかねぇ…それはまた後々に。

(米軍の軍用車は7点式とか言うのがあるらしいですね)


散々な目に遭ってる鉄血の追跡用車両は、一応FJクルーザーみたいなクロカンをイメージしております。

ちょくちょく『ドライバーの車』と表現してる彼の車は、今時のWRCのWRカー或いはラリークロスのマシンの様なものです。具体的なモデルはありません(何




さてさて、カーアクションも戦闘も、とにかく動きのある描写って普通の描写よりも難しいなと痛感…

ただ、あまり長くやってもグダるんじゃないかな、と判断したので短めになりました…。

もしかしたら短スギィ!と感じるかもしれません…モウシワケナイ…

それでも楽しんでいただけたのなら、こちらとしては救われる思いです。


ていうか、M4A1はどうしてこうなった(^ω^)

地区の設定はこちらの捏造も入ってます…

※注意点※
日本の法律では、公道の運転時は3点式をしっかり着けないと捕まりますのでご注意ください。理由は公道の場合、エアコンやオーディオの操作や、バックする時に身体を捻ったりするのに支障があるため。併用すれば捕まらないようです。ですが、しっかり着けましょう。


長くなって申し訳ありません…

では、改めてまた次回!


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Vol.4 失地疾駆

製造回すと、トンプソンさん沢山出てくることがあるんです…(困惑)


ではVol.4です。どうぞ。


M4A1救出から数日後。

 

 指揮官ことドライバーは、ヘリアンからの通信に応じていた。

 

 『指揮官、この前のM4A1の救出、見事だった。おまけに鉄血部隊の排除までやってのけるとは…』

 

 礼を言うも、現地のSV-98たちが撮影してきた、あの芸術的に積み重なった鉄血の追跡車両の写真を見て困惑した表情。

 

 

 ―どういたしまして。M4は何かしらデータを持ち帰っていた様だな。本部に送信するからって言っていたが、届いてるか?―

 

 実は救出後、戦術人形M4A1は敵である鉄血に関する重要なデータを持ち帰っていた。それを本部に送信しなければならないと話しており、作戦報告書をまとめる際に一緒に提出していたのだ。軍からの依頼についての途中経過も含めた報告書、そしてドライバーの運転時のオンボード映像も同梱しており、かなり豪華である。反面、製作を手掛けたカリーナは死にかけた様な顔をしていたが。

 

 『ああ。届いた情報については、現在解析を進めている。軍からの依頼の報告書も無事に届いた。それに、これからは大幅に戦線を広げる必要があるんだが………所で指揮官、今どこにいる?』

 

 通信先のドライバーに訊ねる。なにやら排気音の様なものが聞こえてきた。

 

 

 ―○△地区だ―

 「あ、俺もいますー」

 「私もいますー」

 

 助手席に軍人、後部座席にはM4も乗っていた。

 

 

 

 『………な、何だとォォ!!?』

 ヘリアンは驚きのあまり思わず叫んだ。

 そう、ドライバーが担当している該当地区の一つである○△地区で、敵が展開して来ているとの報告を受けていたため、その排除をドライバーに命じようとしていたのだ。

 

 一方、ドライバー一行は、その地区の田舎道をひたすら飛ばしていた。

 

 「ドライバー、次の鉄血の通信拠点は北西に2.5km先だ。道はフラット。障害物は無い!」

 

 軍人の手元のタブレットに表示された敵の拠点とされる場所の位置をドライバーに指示している。M4が索敵してくれているので、ドライバーは運転に集中出来ている。

 

 ―了解だ……あーそれで?急に叫んでどうした?―

 

 冷静にヘリアンに返すドライバー。

 

 『すまん、取り乱した。コホン、貴官の部隊に○△地区の鉄血の掃討を頼もうと思っていた所でな…』

 

 一先ずヘリアンも冷静になり、本題を伝えた。

 

 ―そうか。今は敵さんが設置した通信基地を押さえに来ているんだ。…どうやら本部の出鼻を挫いてしまったようだ。すまない。その分、報告書を楽しみにしておいてくれ―

 

 『そ…そうか。了解した。そういうことなら楽しみにしておこう…』

 

 

 ここで通信は終わる。

 

 「はぁ…」

 

 ここでため息を吐く。

 

 確かに出鼻を挫かれてしまったとはいえ、そのレスポンスの早さにおいては確かに評価できるものではあるが、やはり指揮官が自ら死地に飛び込んでいくスタイルには肝を冷やしている。果たしてどのようなオンボード映像が報告書に添付されているのか。

 

 

 

 

 「上々の様だな」

 

 突然、ヘリアンの背後から男性が声を掛けてきた。ギョッとして振り向くと、なんと最高経営責任者のクルーガーであった。

 

 

 「クルーガーさん!?」

 

 「そこまで驚くことはなかろう?」

 

 「す、すみません…」

 

 「まあ良い。さて、彼はドライバーと言ったか…」

 

 「はい…しかし彼は、あれでも任務には従順で…自ら走りに…いや現場主義と言いますか…その…」

 

 

 

 慌ててドライバーについて弁明する。ふむふむ、とクルーガーは顎に手を当てつつ頷き、一言。

 

 

 

 「彼ならば大丈夫だろう…多分…」

 

 なんとも言えぬ表情のクルーガー。

 

 どうやら、ドライバーの奇行は彼も知っていた様である。

 

 ………

 

 その頃、ドライバー一行は…

 

 

 ―後続の人形部隊に告ぐ、敵の通信拠点の位置は特定した!各チーム、配置についたら、同時攻撃を開始しろ。一気に押し込め!―

 

味方の人形たちに指示を飛ばすドライバー。人形部隊たちはダミーたちと共に雪崩れ込むように通信拠点を制圧していった。

 

 「それで…?俺たちはどうするんだ?」

 

 ふと、軍人はドライバーに問う。しかしどこか声が震えている。

 

 何とドライバーの車の背後には追跡車両が10台近く追ってきていた。まるで映画の1シーンの様な光景。

 

 

  これもう詰んでるんじゃね?と思ってしまっても不思議ではない。

 

 ―考えがある。M4、数は?―

 「10台です!」

 

 

 ―軍人、やつらの司令拠点の位置は?―

 

 「え?ああ、この先3kmの所だ!って、まさか…?」

 

 ―ふっふっふ…―

 

 「ああ…神よ…!」

 「指揮官!前方に鉄血の迫撃砲です!」

 

 ―迫撃砲…よし、『当たり』だ。速度上げるから、シートに深く座れ―

 

 ドライバーの一声で助手席の軍人と後部座席のM4A1はシートにしっかり座り直した。ドライバーはアクセルとパドルシフトを操作して速度を上げていく。

 

 一方で、鉄血の追跡車両はお構いなしに編隊を組んで追いかけ回している。追跡車両に乗っている鉄血人形兵たちは、比較的障害物の殆ど無い場所であり、大人数、そして用いている追跡車両は走破性の高いタイプであることから、撃ちすぎて弾切れしても取り囲んでしまえば良いと考えていたため、「これで勝つる!」と勝利を確信していた。

 

 

 拠点防衛のために駆り出された迫撃砲型機械兵たちの砲身がキラリと光る。装填し、武骨で凛々しい発射音と共に発射される。

 

 

 

 

 

 が、しかし、編隊を組んでいた数台の車両が突然爆風に見舞われ、爆煙を上げて吹き飛んでいく。

 両隣を走っていた鉄血たちは何事かと驚く。別になにもしてはいないし、グリフィンのドライバーも速度を上げた以外は何もしていなかった。

 

 ここで、鉄血たちは自身たちの戦略システムでマップを確認して漸く気付いたのだ。

 

 

 (これ味方の迫撃砲じゃん……)

 

 

 そう、ドライバーが速度を上げて着弾地点から離脱した際に、変わりに背後の鉄血たちに命中してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 ―残りは9台だな―

 

 

 「今のはなんだ?」

 

 「あれは鉄血工造製の迫撃砲型機械兵の仕業です。グリフィンの戦術人形の皆さんも稀に食らって修理行きにされてしまうので厄介なんですよねぇ…」

 

 ―しっかりと着弾地点から離れれば、怖くはないぞ!―

 

 と、M4の説明に続き、ドライバーはジェスチャーで伝える。

  

 あれがミサイルならどうするつもりなんだろうか…と軍人は思うのだが、今はドライバー率いる部隊の腕を信じる他ない。

 

 

 

 

 

 一方で鉄血の司令拠点では、鉄血人形兵と機械兵たちが忙しなく動いていた。

 

 「…!?敵性反応が急速接近!」

 「迫撃砲型はどうした!?」

 「発射しましたけど、外れて味方に…」

 「あーもうこれだから地雷撒いとけっつったのに!」

 「でも、後片付け大変なんですよアレ…」

 

 戦争で撒かれた地雷は戦後大きな問題となっていた。用済みになり撤去しようにもコストが掛かっており、また地雷側の故障で識別するための反応がロストしたり、それを踏み自滅したり…と鉄血側からしても問題となっていた。そのため、ここでは迫撃砲兵が使われることになったのだが、これもまた、ドライバーのせいではあるものの、現在のような誤爆被害を生んでいる。一応、不発弾にならぬように、信管は気を付けているのだが。

 

 ―あんなにバカスカ撃ちやがって、一体誰が不発弾を片付けると思ってるんだ!神経疑うね!―

 

 「同感です!戦争とはいえ、その辺はもうちょっとしっかりしてもらいたいですよ!」

 

 

 

 

 「ここ(戦場)でそんな悠長なこと言ってられるお前らの神経を疑うよ!!」

 

 

 軍人がドライバーとM4に突っ込む。実質食らったら一発で終了のオワタ式。むしろ何よりそれが問題である。

 

 刹那、着弾した。ドライバーは見事回避し、追跡車両に命中。激しく吹っ飛んでいく。

 

 そしてドライバーは車の速度を上げつつ、後続の鉄血たちを引き離していく。

 

 鉄血車両もアクセルを全開にして追い掛けていく。

 

 そして、ついに迫撃砲機械兵たちのラインを突破する。

 

 

 「突破されたぁぁぁ!?」

 

 「マジか!?くっ、全員配置につけー!」 

 

 基地の鉄血兵たちが騒ぐ。しかし時既に遅し。ドライバーの車は拠点内に入り込んでいた。それに続いて勢いよく突っ込んできた追跡車両が止まりきれずに同胞を巻き込んでいく。資材に乗り上げ横転。迫撃砲兵が『とにかく敵の方を撃つプログラム』を実行したまま発射。無論それは基地に降り注いだ。ドライバーは回避し、変わりに着弾地点に居合わせた鉄血兵たちに直撃するなど大混乱が巻き起こる。

 

 迫撃砲兵は弾が切れたのかこれ以降は撃って来なくなった。装填担当が配置されていなかったためだ。今から行って装填し、調整するのは間に合わない。

 

 

 だが、まだ為す術はある。ドライバーの車を狙い、手持ちの武器で集中砲火すれば良い。それがこの場で混乱を凌いでいた鉄血兵たちの総意であった。しかし、ドライバーから射撃許可を出されたM4が窓から発砲して無力化。こういう時に戦術人形の精密さは凄いと感じるドライバー。軍人も雄叫びあげつつ射撃するも外れている。しかし、無駄ではなく、牽制にはうってつけであった。そして、その流れ弾が運よく敵の銃口に入り込んで破損。その命中時の衝撃でよろけた鉄血人形兵に、周囲の人形兵たちが巻き込まれ、ボーリングの様に崩れる。因みにその人形兵はストライカーと呼ばれるモデルであった。

 

 ―やるなぁ―

 「すごいです軍人さん!」

 

 「だ、だろぉ!」

 

 しかし、ここは敵地のど真ん中、ドライバーは再び車を加速させて移動する。ジムカーナの如くターンを決めつつ、機能停止した鉄血の司令拠点を離脱。

 

 ―指揮官から人形部隊へ、司令拠点を押さえた。暇してる奴は座標の所まで来てくれ―

 

 人形部隊に指示を出す。数分後、人形部隊が車に乗って到着。

 

 そうして、作戦は無事に終了した。

 

 被害はゼロ。

 

 すると、制圧された拠点の片隅で、M4は誰かに通信を繋げていた。

 

 「AR……こちらM4A1、誰か聞いてるなら応答してください」

 

 AR。M4はAR小隊のメンバーに連絡を取ろうとしていたのだ。すると、誰かが応じる。

 

 『良いタイミングだな、M4。後1分遅かったら繋がらなかったぞ』

 

 「M16姉さん!」

 

 通信に出たのはM16A1。M4が姉と慕う戦術人形。

 

 M4はM16に状況を聞いてみた。どうやら敵が近くに数体いるらしく、すぐ通信機を切らねばならない状況であった。そこで、M4は手短に、ドライバーの元にいること。そして前線の近くにいるため、何時でも応援に行けると伝えた。続いて、残りのAR小隊の状況について質問する。

 

 『後ろの敵を抑えている時にはぐれてしまった。この前連絡した時は無事だったが…M4、私に構わず、先ずAR-15とSOPiiを探せ』

 

 「了解…姉さんも気を付けてくださいね」

 『ああ。ん?待てM4、お前…運転してないよな…?』

 

 突然M16から奇妙な質問が届く。少し不安げな声色。

 

 「え?…うん、今のところは、指揮官の車に乗せて貰っているわ」

 

 『そ、そうか!…それなら良いんだが…(ほっ…)』

 

 M16は何処か胸を撫で下ろしたような様子。

 

 「…?」

 

 M4は一体どうしたんだろう?少し首をかしげる。

 

 『あ、気にしないでくれ…おっと、奴等(鉄血)がやって来た。話はまた後だ。大丈夫、また会えるさ』

 

 そうして、通信は終了した。

 

 

 ―繋がったか?―

 

 ドライバーがやって来た。

 

 「はい。有難う御座います指揮官。M16姉さんに繋がりまして…姉さん曰く、先にAR-15とSOPiiを探して上げてほしいと…」

 

 ドライバーはふむふむ、と頷く。あの時、軍人が拾ってきた位置情報のデータからすると、次に近い位置にいるのはAR-15とM4 SOPMODiiだった。

 

ドライバーは早急に回収に向かう必要があると判断し、次の作戦を考えるため、ヘリアンに繋いで、本部から応援を現在地である拠点に寄越してもらい、一度撤収することにした。

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 「おお 処刑人よ しんでしまうとはなさけない」

 

 「どこかの王様みたいな言い方をしないでやってくれ、代理人…確かに情けないやられ方なのは事実だがな…」

 

 鉄血のある拠点では、代理人(エージェント)とハンターが処刑人とその部隊のメモリーを見ていた。代理人のコメントについてツッコミを入れるハンターではあるが、二人は確かにこの有り様に困惑していた。

 

 「撃たれて死ぬのならば、まだわかるが…」

 「だから、よそ見をするなと何度も話したのですが…しかし、グリフィンのドライバー…彼は厄介です。彼は一体どこであのような技能を身に付けたのでしょうか」

 

 「うーん…」

 

 ハンターは考えるも、それはグリフィンのドライバーと呼ばれる彼のスタンダードによってしまうし、会ったこともないので分からない。

 

 「ハンター、出番ですよ」

 「私はレースは専門ではないのだが…」

 

 「ええ。存じておりますよ。しかし、早く動く動物を狩るのは得意でしょう?」

 

 ハンターは、代理人の一言に「お、そうだな」と肯定する。

 

 「なるほど、それなら話は早い」

 

 「しかし、もしもに備えてドライビングテクニックのデータをお渡しします。多少の時間稼ぎくらいにはなるはずです」

 

 「ほう?…ド○キンのビデオ?これ発禁になったやつじゃないか!?」

 

 ハンターは内容を再生して驚愕する。日本ではある理由から発売禁止になったという幻の作品。

 

 もう手に入らないとされている。

 

 

 なぜ代理人がそんなレア物を持っていたのか。

 

 

 何れにせよ、ドライバーたちの前に新たなる敵が立ち塞がることには、何ら変わりはないのだが。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 また更に一方。

 M16A1は通信終了後に敵をやり過ごしつつ、途中で確保した補給ポイントとなる場所にいた。現在地では、合流できるほど、まだ近くというわけではない。ここを出ると、敵もまだ彷徨いている。

 

 ここで、先程、通信でM4A1に運転していないかどうかという質問をしていた時の返答を思い出していた。

 

 (あの指揮官の元なら、ある意味で心配はないかもな…。だが、M4が運転するとな…)

 

 

 ここで一度思考を止めた。不安なことは考えず、第一目標であるAR小隊の元へ合流することを改めて念頭に置く。

 

  おまけにあの指揮官の性質なら、きっと自分で運転してくるに違いない…と。そう期待感に似た思考に切り替える。

 

 だが、それと同時にもしも迎えに来た車のステアリングを握っていたのがM4だった場合は…という時にも備えなければならない。その時はその時で考えよう。きっと少しは…と願いつつ、周囲の安全確保の後、一休みする事にしたM16であった。




さあ、次回からはSOPiiとAR-15を助けに行くことになります。


先程、ド○キンのビデオを渡されていたハンターは、一体どの様にしてドライバーに立ち向かうのか?


そして、あのM16A1が不安になる程の、M4の『ある部分』とは…?



次回をお楽しみに。




代理人「君の心に、ブーストファイア!」


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Vol.5 あのハンターだって余裕さえあれば変態のイタ電に付き合う説

そぷ子とAR-15を助けに行く回。スタートです。

キャラ崩壊注意。




某日。

 

 天候は晴れ。

アスファルト路面の峠の下り道を攻めているグリフィンのドライバー。相変わらずその高い速度を極力キープする走行スタイルは変わらない。その後ろには鉄血の追跡用車両の別仕様と思われるものが三台背後から追い掛けて来ている。

 

 

 

 「グリフィンのドライバーめ、ついに ここにも現れたか」

 

 運転席の鉄血人形が一言。まるで悪役のような言われ様である。戦争という状態からすれば、グリフィンは自身たちを脅かす敵なのでそんな風に思われても仕方が無かったりする。しかし、カリーナ曰く、幾らなんでも目の敵にし過ぎではないか、と疑問を持っていた。それは、敵対するという明確な理由が分からないままなのだ。『致命的なエラー』という理由にしても、ここまでやってくるとなると、説明が足りないと感じるのだ。

 

 尚、ドライバーに対しては、代理人は彼を『厄介な存在』と認識し出しており、一部の人形兵たちの私怨の様なものが混ざり、 最早膨張の領域となっていた。

 

 折角自動運転やAIが発達しているのにまだ人間に負けている。

 

 そんな鉄血の彼らには、きっと彼らなりに自尊心が芽生え始めたのかもしれない。

 

 「あいつ、さっきから周辺を悠々と走っていたみたいだぞ。検問を正面から猛スピードで突破していったらしい。門番のダイナゲートたちが、みんな引っくり返ってたそうだ!」

 

 と、話すバックアップとして助手席に座る人形。

 

 「なん…だと…?ていうか、あいつどんだけスピード出してるんだ!?ていうか、いっつも思うけど、こいつホントに人間なの!?」

 

 それに返す運転席に座る人形。

 

 そう…この改良型に乗る二人組は前にドーナツを食べていたあの鉄血人形兵である。残りの二台に乗るのは別の所から応援に来た鉄血の人形兵である。

 

 「でも良かったよね、改良型のボディに換装してもらえるなんて!」

 「そりゃ100回も負けてればそうなるだろうな…」

 

 彼女たちの駆る車には『100』と数字が刻まれている。それはドライバーに100回も連敗してたから。しかし、それは彼女たちにとって、一種の良き思い出となりつつあった。

 エクスキューショナー(処刑人)が倒された後、それまで身体はマンティコアとの正面衝突で悲惨な状態にあったが、奇跡的にもメモリーチップとメンタルデータが残ってたため、そこから再び人事異動として改良型のボディに移されて受肉することになった。新しいマシンと共に。今度はキチンとブレーキングドリフトを成功させている。

 

 

 すると、通信が入る。

 

 『 いいか、やつのドラテクに惑わされるな。お前たちは自分の走りを心掛けろ。オーバー!』

 

 誰かからのズレてるようでズレてるようでなさそうな助言。

 

 

 「…狩人とは、黙って獲物を待つものだ」

 

 通信を切った後、そう一言呟く人形。背後には鉄血マークの四輪車両のライン状のフロントライトがギラリと光る。

 

 そして、その呟いた鉄血人形は、ハイエンドモデルの一つ、通称ハンター。名の通り、趣味は狩猟。

 

 そんな彼女は、まるでサバンナなどに出没する密猟者の様な目をしていた。

 

 「おい待て!あんな犯罪者共と私を一緒にするな!」

 

 すみません…。

 

 

………………………………………………

 

…数時間前…

 

 

 ―さて、諸君…―

 

 いつもの基地の司令室。

 

 M4A1と軍人が司令室に来ていた。

 

 話を切り出したドライバーは、隣で控えていたカリーナに『それでは例のものを…』と伝えると、ホログラム投影装置にある場所の立体MAPを投影させドライバーがある場所をマークし、二人に見せる。

 

 「指揮官、そこはもしかして…?」

 

 ―そう。マークした箇所は、SOP iiとAR-15の信号とされるものが確認された位置だ。信号の特徴からして、この二人のものと見て間違いないだろう―

 

 おおー、二人からと声が上がる。

 

 しかし、直後に軍人は不安そうな面持ちで、ドライバーに質問する。

 

 「し…しかしだ、こんな他よりも弾が飛び交いまくってるような所を、一体どう進むつもりだ…?」

 

 ここのエリアは鉄血との交戦が頻繁に起こっていると報告に上がっている。軍人は、出来れば近寄りたくないと考えていた。管轄内であるドライバーとしても、ここが危険であることは理解していた。SOPiiとAR-15は運悪くここに迷い混んでしまっている。結局、回収するならばその真っ只中を進んでいく他無く、軍人はその内情をまとめ提出せねばならない。 グリフィンに協力することを命ぜられ、しかもドライバー達の元にいる以上、やはり相乗りする事になる。

 

 ―たしかにこれでは弾幕が激しいな。楽しそうではあるけど…。そこでだ!途中で寄り道し、奴等の通信基地のあるエリアを制圧し、命綱となってる鉄血のネットワーク施設を制圧する事にした。敵さんらは人形部隊と共に動きつつ片付け、そこで、不用心になったところを、空き巣をするが如くサッと忍び込んで統制を断つ。さすれば攻撃も止むはず。でないと、SOPIIとAR-15を回収する側だけでなく、される側も危険だ―

 

 最初の方の『楽しそう』ってどう言うことだよドライバー…軍人は心の中で突っ込んだ。確かに奴からしたら走り甲斐のあるアドベンチャーなステージにしか過ぎないのだろう。ついこの前だって迫撃砲の降り注ぐ中を慌てることなく運転していた程なので、今回もきっと同じ感覚なのかもしれない。

 

 「あの…」

 そこで、控えめに挙手したM4。

 

 ―はい、M4君― 

 

 「指揮官、今回は私が車の運転を代行しましょうか…?」

 

 

 

 この瞬間、ドライバーは凍り付いた。

 

 

 

 確かに、指揮官に死なれると管轄内の基地スタッフや人形たちは路頭に迷ってしまうし、しかも代行を買って出たのはM4からの厚意と考えるのは、決して理解できないわけではない。まるで父親思いの娘の様な眼差しをするM4にキュンとくる事だろう。

 

 しかし、それでも易々と頼むことが出来ないのには理由がある。作戦だから公私が云々という理由以前。

 

 「えっと…指揮官…?」

 

 ―あ、いや…気持ちは嬉しいんだよM4。でも…―

 

 「ドライバー…あんたはしょっちゅう走り回ってるし、今回くらいは彼女に任せても…」

 

 

 

 軍人も、指揮官であるドライバーの決定権を尊重しつつ説得しようとする……が。

 

 

 

 

 ―軍人、早まるんじゃない―

 

 

 「え?」

 

 

 「安心してください!これまでたくさん練習してきましたから!イ○Dで!」

 

 

 軍人は、寒波入れず伝えてきたM4の発言の最後の部分を聞いて真顔になった。

 

 

 

 ん…イ○D?

 

 軍人は一瞬不穏なものを感じ取ったような感覚に見舞われた。なにかの聞き間違いではないか、と。

 

 

 ―イ○Dってそれゲームじゃんか…―

 

 

 

 「大丈夫です!秋○雪だってスペシャリストのタイムを出せるようになったんですから!」

 

 

 自信満々に言うM4。 

 雪道、つまり滑りやすい路面だってヘッチャラだZE!…とでも言いたいのだろう。そうなると、最早論外だった。恐らくM4も理解してるとは思うが、今回は雪道は走らないし、現地で積雪は無い。というか、ゲームでこれだけ出来るからリアルでも出来ると判断したM4に全力でツッコミを入れたくなる。

 

 「それに、指揮官だってお休みの日とかにSE○A RALLYとかやってましたよね?あれと同じです!」

 

 ―あれは単に娯楽目的でやってただけだし!―

 

 

 どちらもS○GAのゲームじゃないか、と軍人はツッコミを入れようとするが不毛だし話が進まなくなるので、ここは抑えた。

 

 カリーナ曰く、一応しっかりしたドライビングシミュレーターはあるとのこと。

 

 

 

 ちなみに、M4自身は基地で身体のメンテを受けた後、カリーナやメカニックたちの手伝いをしてた時はとても意欲的で、そつなくこなしていたため、メカニックたちからもかなり好印象。とても優等生然としていた。

 

 しかし、整備作業中は妙に嬉しそうだったり、カリーナにこっそり頼んでドライバーのオンボード映像を幾度となく再生して、なにか分析してたり。もはや奇行も良いところである。それでも、与えた仕事は無論、的確に行ってくれるので大変助かっている。M4は経験不足を補うために意欲的であるのだとプラスに捉えてあげるべきかもしれないが。それにイ○Dだって、きっとM4の冗談に決まっている…そう軍人は思っていた。

 

 それでもドライバーはゴーサインを出す様子はなく、現地に派遣する人形と共に動くようにとやんわりと伝える。戦闘での効率において、M4A1たちAR小隊の人形の右に出る者は現段階ではそうそう少ないのが理由。これは運転を許可しなかった理由とはまた別。事実を使って欺瞞してる様にも思えるが。

 

 M4は、ご命令なら…とそれを了承する。

 

 ―生きて帰ってくれば、チャンスは何れ与えるさ…―

 

 変に勘ぐられないようにドライバーはそう伝える。

 

 「了解。頑張ります!」

 

 その反応にドライバーは、『命拾いした…』と言いたげに胸を撫で下ろす。

 

  

 ―というか誰だ、人形用のVR訓練ファイルにイ○Dをぶち込んだヤツは!―

 

 

 ドライバーは、思い当たりそうな人物…カリーナを見る。彼女は慌てて口笛を吹きながら目線を反らした。

 

 

 …やはりお前か。

 

 

 

 

 そして、各々準備して出発。偵察として先にドライバーと共に車を出すことになった。今回彼の車には、膝を抱えさせれば人一人分無理矢理押し込られそうな大形のケースを積載している。中身については『開けてみてからのお楽しみ』とのこと。

 

 

 

 今回走る事になるエリアも、担当地域故に知らぬ道ではなかった。そう、今回もドライバーの地の理の内に入る場所。それに作戦となれば、これほどに心強いものはないのもまた事実。セッティングはドライバーがレコードを樹立したときの物らしく、それが一体何のレコードなんだろうかは、軍人はあまり想像しようとはしなかった。

 

 尚、大荷物を入れたりすると重量配分が変わるとドライバーはジェスチャーで伝えていたが、それでもセッティングはそのままで走るつもりらしい。なにか考えがあるのだろうか。軍人は車の故障について懸念して問うが『この程度で壊れるほどヤワではないから安心してくれ』とドライバーは自信を持って返答していた。

 

 

 基地を出たその途中、どうせ死地を往くのだから、と軍人は揺れる車内でドライバーに質問を投げることに。

 

 「人形って、あんたみたいによく運転するのか?」

 

 ドライバーは『まぁ、するやつはするぞ』とジェスチャーする。現にヘリコプターが出せない時は、ジープや装甲車に乗って移動せざる得ない状況になったりすることはよくあるからだ。途中までヘリ、そこから車…という感じに乗り継いでいるのだという。ドライバーはそんなことを聞いてどうする?みたいなことは言わなかった。

 

 軍人はここで、M4に運転させなかった理由をあえて訊ねてみる。先程、ドライバーがM4が運転すると言った時に固まってしまっていたのがどうしても気がかりだったためだ。察しはつくが、所詮は憶測にしか過ぎない。

 

 

 ―それならば今、ハッキリ教えとこう。特にM4のやつは、AR小隊の中で運転が下手なんだ―

 

 待ってましたとばかりにドライバーはそう伝えてきた。

 

 「そうなのか?お前の言う下手っていうのが、あんまり想像つかないんだが…」

 

 ―なら例を挙げよう。峠道でタイヤを路肩の溝に引っ掻けて、そのままスタックさせて立ち往生させるし、インベタの更にインとか言い出して、崖からジャンプさせようとするし…しかも、壁ギリギリを狙っていこうとする。動きもぎこちない。ありゃ昔のテレビ番組のギリギリマ○ターなんかに出したら優勝確実だな!―

 

 「随分とアグレッシヴだな…!?」

 

 疑問は解決した。つまり、単に危なっかしいから運転させなかっただけ。ドライバー曰く、運転してるときのM4A1は、『目がイッてる』とのこと。

 

 ―まあ、スコーピオン達とかに比べれば幾分マシな方かもしれない…―

 

 「マシって…もっとひどいのがいるってのか?」

 

 ―ああ。先ずスコーピオンだが、あいつは何もない所で車をコカしやがる。弾ばら撒くどころか、部品ばら撒いてる。こちらが何があったか聞くと、片輪走行の練習してた、とか言っててな。あいつはスポーツ走行とスタントの違いが今一つわかっちゃいない!MG(マシンガン)のネゲヴなんてもっとひどいぞ?あいつは車を必ずと言っても良いほど凶器にしやがる…。この前なんて、作戦中に乗った軽乗用車で、敵の装甲車をぶつけて止めようとしたんだぜ?ありゃもう正気の沙汰じゃないよ。装甲車に乗ってた鉄血の装甲人形兵がドン引きしていたくらいだ。しかも、帰ってきたら『あの車ガリ弱い』とか言い出すんだぜ?―

 

 

 「ドライバー…お前のとこの人形はバラエティ番組の出演者か?」

 

 それについてドライバーは…

 

 ―そんなわけ…あ、どうだろうな…あいつら大半が民生品ベースだし…まぁ中には。というか、今時バラエティでもあんな芸はやらせないよ。やっても有料放送くらいだ―

 

 ……と返すドライバー。漫画の真似とスタント走行と危険運転。どれもヤバイ。

 

 しかし、軽で装甲車をぶつけて止めようとするのは、流石に有料放送の芸人たちでもやらないのでは…と軍人は思うのだった。

 

 

 

 そして…気がつくと、鉄血製の働きアリこと、ダイナゲートたちが控える検問を突破していた。

 

  

 「今のは何だ!?」

 

 ―あれはダイナゲートだな。鉄血の機械だよ。ペットロボットみたいだよな―

 

 軍人の問い掛けに、ドライバーは皮肉を交え、ダイナゲートのことを説明しはじめた。

 

 ―たまに民間人が拾って帰ったりする事があるんだが、そこからやつらに人間側の情報を与える事になるから止めてほしいもんだよ―

 

 中身を改造して飼い慣らしたりする司令部もあるらしい。

 

 

 ―奴等は普段はうちの戦術人形のG41にかじられてるか、充電してて寝転がってるかのどっちかだな―

 

 「かじられてるって…。というか、あんなちっこいやつらに検問させてるのか?手抜きも良いところだな…」

 

 ―どうやら通信して人形兵と連絡を取って対処していた様だ。それに、数が多いだろ?―

 

 軍人は冷静に思い返す。確かに20機くらい待ち構えていた。

 

 「確かに、多かったような感じがするぞ…何か、みんな引っくり返ってたが…」

 

 恐らく、躊躇うことなくかっ飛ばしてきた車飛び付こうとするのは危険と判断し、避けようとしたらバランスを崩していったのでは…と軍人は推測する。どうみてもそれ以外考え付かない。

 

 ―RFの人形だと、対処仕切れず被害を被る事例がしょっちゅうある―

 

 「確かに…押し寄せてきたらそりゃビビるわな…」

 

 ―犬嫌いにはたまらないトラップだよ。こういう箇所はよくある。そんときゃ手榴弾投げ込んだり、フルオート可能な銃で掃射するなりするといい。小さいし動きが早いからな。AIMに自信あるならボルトアクションでも弓矢でも使って挑戦しても良いが、正直お勧めはしないよ―

 

 冗談混じりに伝えるドライバー。

 

 「よし、一応、レポートにも書いておこう」

 

 ドライバーは『是非そうしてくれ』、とジェスチャーする。

 

 というか、挑もうとする奴はそう居ないだろう。ドライバーはそのまま車で突っ込んでるが。恐らくは急いでる緊急時では有り得るかもしれないが、こんなあたかも何時ものように突っ切って行けるのは彼くらいなのでは、軍人は思う。

 

 

しかし、軍人はもしや…とドライバーに問う。

 

 「…待て、まさかもう激戦区なのか!?」

 

 

 ―そうだが…―

 

 

 「それを早く言え~!」

 

 

 ……慣れとは怖い。軍人は次第にドライバーのノリに順応しつつあると感じ、なんてことだ…と思わず頭を抱えた。

 

 

 そしてドライバーは、ダミーたちと共に配置に付いた人形部隊に号令を掛けるべく、通信装置をいじり、ジェスチャーを行った。

 

  

 ―…人形部隊の皆、配置についたか?よーし、作戦開始!―

 

 

 かくして、人形部隊の皆は拠点の制圧に。ドライバーは軍人を連れてひたすら道を飛ばしていく。人形たちの仕事の早さのお陰か、結局寄り道はしないで済みそうである。

 

 

 

………………………………………………

 

 その頃、SOPiiとAR-15はというと…

 

 「ねぇ、AR-15…」

 「どうしたの?また珍しい部品でも見付けた?」

 「それもそうだけど…じゃなくて、M4とM16たちのこと。今頃、どうしてるんだろうって…」

 

 心配そうな表情のSOPii。

 AR-15は至って冷静にこう返すも、『ていうかその手が持ってるパーツは何だろう…』と一瞬目線が行く。

 

 「そうね…取り合えず、あの先まで行ってから、もう一度M4たちに連絡してみましょう」

 「…そうだね!あ…あれ見て…!」

 

 鉄血の追跡車両が通り掛かるのを発見した。どことなく暇そうな様子。

 

 

 

 「一度隠れましょう…」

 「うん…!」

 ここはAR-15に従い、通り過ぎるのを待つ。仮に奪っても、検問でバレてしまい、厄介なことになりかねない。騒動を起こしてはグリフィンや他のAR小隊と合流どころではなくなる。

 

 物陰から様子を伺っていると、鉄血兵が降り、何か話していた。

 

 「お疲れ様。ところで…」

 「何~?」

 「さっきたまたま南の検問所を見てみたんだ。そうしたら…配備しておいたダイナゲートたちが引っくり返ってたんだ…」

 「え?あいつらはいつも呑気に寝転がってるじゃないか。何かの見間違えだろ?」

 「それならこんなことで話はしてないさ…」

 「お、おう…まさか、破られたのか…!?」

 「そうみたいなんだ…。車が通った跡がある。敵は攻撃してくる様子はなかったそうだ。そのまま突っ切って行った楊で…しかも、メモリーを見たら…やたら高い速度で通過してった様で…」

 

 すると、聞いていた鉄血人形兵が、あ…またあいつか…とその正体を察する。

 

 「グリフィンのドライバー…だっけ…」

 「そう、そいつだ…困ったもんだよ…」

 

 

 

 (指揮官じゃん…)

 (指揮官ね…)

 

 

 こんな所にも出没してるとは。となると、グリフィンの前線がここまで来ている可能性を感じたSOPiiとAR-15は、もしかしたら、タイミングよく出くわして連れ帰ってくれるかもしれない…と思い付く。

 

 

 「ねぇAR-15…もしさ…M4が運転してきたら…どうする?」

 「こっ…怖いこと言わないでよ…!」

 

 こちらが怪我してなければ、運転を変わってあげよう…絶対に。AR-15とSOPiiは誓うのだった。

 

 すると

 「ん?撤退?」

 「あ、ホントだ。こっちにも来てる…」

 「じゃあ帰ろっか。乗ってく?」

 「それでは、お言葉に甘えて…」

 

 鉄血達が突如撤収し始めた。

 

 

 

 「…あれ?」

 

 「撤退…?」

 

 落ち着くまで様子を伺う。鉄血達の撤退から少し後、その背後から車の排気音が近付いてきた。

 

 

 一方、ドライバーの車の車内では…

 

 『こちらM4A1。指揮官、各通信拠点を制圧しました』

 

 M4からの通信。人形部隊は拠点の制圧に成功。そこから敵はプログラムに則り、退いていく。

 

 ―ご苦労、よくやった!敵は面白いくらい見事に引いていってるぞ―

 

 『それは何よりです!』

 

 「はぁ…やっぱヤバイよドライバー…ふぅ…」

 

 とは言っても、前よりは持ち堪えられている軍人。

 

 ―そうか?これでも結構セーブしていた方なんだが―

 

 「本当かよ…」

 

 そして、ドライバーたちの進行方向にはAR-15とSOPiiが見えてきた。

 

 対する向こうも、ドライバーの車が近付いてきたのに気づく。

 

 ―よーう、お嬢さんたち―

 

 「あ、見て!あれ指揮官じゃない?」

 「指揮官…!」

 

 

 途端、AR-15とSOPiiは運転席がドライバーであるのを見て胸を撫で下ろす。

 

 

 ―話は後だ。一先ず乗れ。ここを離脱するぞ―

 

 ドライバーの指示に従い、後部座席に乗り込む。やはり彼女たちも六点式は着け慣れている。

 

 「着けました」

 「こっちも着けたよ」

 

 ドライバーはそれに了承したとジェスチャーを送り、バックさせ、360°(サブロク)ターンを決めて前進させる。

 

 「ひゃあっ!?」

 

 ターンの時の衝撃で、AR-15から声が漏れる。

 

 「指揮官お見事~!」

 

 

 その隣で喜ぶSOPii。

 

 

 「SOPii!あんた今の怖くないの…?」

 

 「全然!」

 

 「嘘でしょ…?指揮官…どうか安全運転で…お願いします…」

 

 

 

 AR-15からのお願いに、ドライバーは『任せておけ』と親指を突き立て返す。軍人は来た道とは違う所を通っていくことに気付いて、ドライバーに訊ねた。

 

 

 

 「どこへ行く気だ?」

 

 ―ルート変更だ。『例のプール』に向かう―

 

 

 後部座席のAR-15とSOPiiはこの発言に疑問符を上げている。こんな時期にプールだなんて、いきなり何を言い出すんだろう?と。

 

 

 ―ああ…そうそう…―

 

 

 

 ドライバーは間を置き…

 

 

 

 

 

 ―今通信するのはやめておけよ。傍受をされている可能性があるからな―

 

 「「!?」」

 

 「ちょっと待て、通信拠点は潰したんだよな?」

 

 ―そうだが、敵は、まだ全部撤収してるわけじゃない。あれはほんの一部だ。どこかでハイエンドモデルか電子戦タイプか何処かに潜んでる可能性がある―

 

 そして、コンソールをいじくる。すると、モニターからノイズ音を検知していると警告が出る。

 

 「盗聴ノイズか…?」

 

 

 ―かなり広い周波帯をカバーしてる。これ誰かが下ネタをぶっ放してたら、鉄血に丸聞こえになるところだったな。やつらに下ネタを解するだけの知能と羞恥心があればの話だが…―

 

 

 ドライバーはそうジェスチャーして車を走らせていった。

 

 ……

 

 一方。

 

 「聞こえないな~」

 「聞こえませんね~」

 

 ハンターとその部下が傍受を試みていた。通信拠点が制圧され、感度が落ちているのに気付き、部下たちと立て直しを図ろうとしていた。一先ず電子戦で情報を集めたりしているが、中々傍受等ができない。すると、ある周波数にヒットした。

 

 

 『なぁ…今日…ツ』

 

 「ん?」

 

 ハンターは何かの会話音声らしきものを拾う。

 

 さらに調節し『筒抜けだぞ?』と一言告げてやろうとした時。

 

 

 

 

 

 

 『なぁ...何色のパンツはいてんの?』

 

 

 

 

 

 男性の声。かなりねっとりしている。

 

 

 

 「うわああああ!?」

 「落ち着け!ただのイタズラだ。全くタチが悪い…」

 

 というか、この時代になってもまだその様なイタズラが行われてるなんて…とハンターは思うのだった。

 

 

 「ハンターさん、どうしましょう…」

 

 (困った。周りの部下はそんなもの穿いてなさそうなのばかりじゃないか。私も…)

 

 ハンター率いる部隊一同は、まるで刑事ドラマのネゴシエーターが対応に困っている時の様な状態にあった。

 

 しかし、遊びに付き合ってはいられない。なのでハンターは無視して切ろうとしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 『パンツの色を教えてくれたら、ぽまいらの探してるやつの居場所を教えてやっても良いお』

 

 

 

 

 

 

 

 「なん……だと……?」

 

 

 この時、ハンターたちは唐突に選択を迫られた。嘘でも良いから繋いで何色か教え、『探しているやつ』の居場所の情報を引き出す。しかし、もしこれが罠なら今後自分達の無線にあの変態がなにかといたずら無線をしてくる悪循環ができてしまう。そうなれば「作戦中に堂々と変態の戯れ言に付き合った」と他のハイエンドモデルから軽蔑されかねない。しかし、『好きなことをして生きていく精神(メンタル)』のハンターには、狩りのためならなんでもするズラ…と貪欲さがぶつかっていた。自分の名誉を引き換えに貪欲になるか、または違う方法を模索するか…

 

 (くそっ…これなら代理人からド○キンのビデオだけでなく、こういうイタズラへの対処マニュアルも貰ってくるべきだったな…しかし…現にこれはどうにかしないと…)

 

 

ハンターは思考の迷路にハマってしまう。好きなことして生きていくには代償も必要だ。考えるのはバカらしい。そこでついに答えを出した。

 

 

 

 

 

 「光沢のある黒だっ…………こ、これでいいか…?」

 

 

 

 と、咄嗟に思い付いた色を応える。

 

 

 すると…

 

 

 

 

 

 

 

 『形状は?』

 

 

 

 

 

 

 

 「…は?」

 

 

 

 『だから、どんなタイプ穿いてるん?』

 

 次なる質問が帰ってきた。

 

 

 「おい、言われた通り色を答えたじゃないか!早くM4A1の位置を教えろ!この変態!!」

 

 顔を赤くして罵倒するハンター。取り乱しすぎである。

 

 

 

 

 

 『ぐふふふ―ぐふふふ――』

 

 

 

 

 それを嘲笑うかのように、気味の悪い笑い声が妖しく響く。

 




昔こんな迷惑電話とか流行ったよね…

コミカル(?)な面が強いですけど、鉄血もグリフィンも一応大真面目ですww


Vol.6に続きます。


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Vol.6 Nice bomb...

Vol.5からの続きです。

どうしてこうなった(^ω^)


更にその頃。

 ドライバーたち一行は『例のプール』に到着していた。一同は確認のために車から降りる。

 

 「ところで指揮官、この人は誰?」

 「見た所、正規軍の方にお見受けできますが…」

 

 ―ああ、彼は…―

 

 ドライバーは軍人を改めて紹介した。先程はそんな余裕などなく、今になった。これは下手すると、このま彼のことは忘れ去られてしまいかねない可能性も考えられる。しかし、それは防げた。軍人は自己紹介をして、ここが何処かを問いただす。

 

 

 「よろしく…。それで、だ。話は変わるけど、ここが例のプールか?」

 

 見渡すが、やはりどこにもプールなんて見当たらない。中は薄暗く、水着を着た人間なんて見当たらない。というか、 もし見かけたらそれは反って問題だ。ドライバーの管轄内故、下手するとヘリアンからお咎めを受けかねない。

 

 

 ―あれはちょっとしたジョークさ。ここはな、元々空軍が使ってたバンカーだ。今となってはグリフィンが使っている。まぁ、正確には、管轄の問題で軍から貸与されてるって言った方が正しいか。殆ど俺の部隊とかが補給や待ち合わせ場所に選んで立ち寄ってるんだ。幸い、まだ鉄血の手に墜ちてなくて良かったよ。やつらに航空戦力が今のところ無いのが救いかな―

 

 確かに、この大きさなら、ジェット戦闘機が出入りできそうだと軍人は思い頷いた。

 現在は敵のジャミングの兼ね合いもあり、航空機を中々飛ばすに飛ばせないためもあり、比較的後方に基地を移転したために使われておらず、ドライバーの言うように待ち合わせ兼補給地点として使われている。周辺には滑走路とおぼしき場所も見つかった。

 

 そして、ドライバーは積んできたケースを車から降ろそうと、トランクの鍵を開ける。

 

 

 

 ―それより、中に入れてたケースを降ろす。軍人、そっち側、持ってくれるか?―

 

 

 「ああ。よいしょ…」

 

 ―そーっと降ろせよ?―

 

 言われた通りにゆっくりと地面に置く。

 

 「そういや、このケースには何が入ってるんだ?」

 

 

 出発前には『開けてみてからのお楽しみ』とドライバーは伝えており、どうしても気になっていたのだ。

 

 ―これかい?ふっふっふ…―

 

 ドライバーはヘルメットを被っててもわかるくらいに、何か企んでいるような様子であった。

 

………………………………………………

 

 その30分後。

 ハンターたちのいる司令拠点にて。突然の変態に対して悪戦苦闘している最中。

 

 色を答えたら、今度はその形状を聞いてきた。変態は心が広いのか、ハンターたちの答えを待ってくれていた。

 

 ついに考えがまとまったのか、ハンターは漸く次の一手を打つことにした。

 

 「観音開きだっ……………さっ最近、流行ってるんだよ!」

 

 (ハンターさん何言ってるの…?)

 (ついに壊れたかな?)

 (つーか通信切りゃよくない?)

  

 それに対して変態は…

 

 

 『ははっワロスww観音開きって変態かよwww』

 

 

 通信相手は茶化しだした。

 

 

 流石に苛立ち始めたハンター。

 

 しかし、途中で部下がハンターに報告に現れる。

 

 

「ハンターさん大変です!『グリフィンの例の車両』が確認されました。恐らく人形部隊も…」

 

 「やっと現れたか…。『例の車両』は、こちらの部隊と共に追うとしよう」

 

 例の車両…一際煩く速いヤツ。ドライバーのことだ。

 

 

するとそこに……

 

 

 

 

 「随分と騒がしいわね。まるで喜劇みたいだわ」

 

 背後から声が。

 

 「お前は……!」

 

 ハンターの背後に、AR-15の姿があった。服が汚れ、動きがちょっとぎこちないのは何故だろう。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 「なあ、ドライバー。ホントに大丈夫なのか?AR-15は…」

 

 ―大丈夫だ。彼女なら上手くやる―

 

 ドライバーと軍人は、SOPiiを後部座席に乗せ、M4たちと合流するべく、バンカーから出発していた。

 

 

 

 

 

…先程バンカーにて。

 

 ドライバーは車から降ろした大形ケースを開けた。

 

 そこには、何とAR-15らしき人形が胎児の寝相で収まっていた。

 

  「うわっ」

 

 軍人は思わず驚き尻餅を付く。彼の知る人形は主に武骨なロボット兵然としたもの。こうも曲線的のものは鉄血製のものくらい。というか、このでは、まるで遺体を載せて走ってた様にも見える。

 

 「これ、ダミー人形ですか?」

 

 SOPiiは、ケースの中のAR-15らしきものと、隣に立っているAR-15を交互に指す。

 

 

 「なんだ人形かよ…」

 

 軍人はゆっくり立ち上がり言う。

 

 ―ああ。予算とサイズの関係上、これしか用意できなかったんでな…―

 

 

 「あ、よく見たら、等身大のAR-15じゃないですかぁ。完成度たけーなオイ」

 

 

 SOPiiはケースの上にちょこんと座らせたAR-15のダミーに近付き、そう言った。

 

 ―予算とサイズの関係上、これしか用意できなかったんだ―

 

 「予算とサイズ…なるほど、納得です!」

 

 「あ、確かに私だわ、完成度たけーなオイ…って、SOPii!それどういう意味よ!」

 

 「べっつにぃ?」

 

 そう言われつつもいたずらっぽく笑み、AR-15のダミーの頬をプニプニとつつくSOPii。一方ダミーは無表情。

 

 ―SOPii、あんまり下手に扱わないでくれよ?普段使ってるダミーと違って、急拵え且つかなり手抜きして作ってあるから―

 

 

 「ほぇ?そうなんですか?なるほど、これがよく聞く匠の技ってやつですね!」

 

 

 「少し違う気がしないでもないが…」

 

 

 「私が言うのも変だけど、いつものダミーと変わらなく見えるわ…ところで指揮官、これで何をするつもりですか?」

  

 

 

 ―では単刀直入に。AR-15、これでハンターに近づいてほしい―

 

 「え、ハンター?まさかあいつ、近くにいるの?」

 

 「…!」

 

 ―通信装置が検知したノイズの反応から、その可能性がある。その方向を辿っていけば、確実に近づける筈だ―

 

 「待て、AR-15を一人で行かせるのか!?」

 

 ―いいや、行くのはこいつが動かすダミーだけだ。手抜きしてもこれなら恐らくばれることは無いと思うが…な。敵の位置や動向を知りたい。わざと捕まってもらうことになるが、やってもらえるか?―

 

 突然のお願いにAR-15は…

 

 「私で良ければ、やらせてください!」

 

 活躍のチャンスを与えられたAR-15はそれを引き受けた。

 

 ―わかった。おっと、リンクはこちらの指定する方式に沿ってもらう。システムの関係上でね。すまないな―

 

 「了解。では…」

 

  そしてリンクしダミーの動作確認を行った後、全員乗せてバンカーを出てから、途中でダミーを降ろす。

 SOPiiにはその間無防備なAR-15のサポート。AR-15は精密に動かすためにシートに座るが、手だけを座禅を組んで目を瞑っている。何故そうなってるのかは、先程の通り、ドライバーが持ってきた安物ダミーにつまれたシステムのせいであった。どんなシステムだよ、と軍人はツッコミを入れているのは言うまでもない。

 

 今のAR-15は、戦慄の青い大仏めいたとても安らかな表情。M4A1が見たら、きっと衝撃が走ることだろう。ドライバーはM4たちの所へ走らせる。

 

 『指揮官、今パルクールしてたら、間接がメキッて言ったんですけど…』

 

 ―おい!?―

 

 「フリーダムだな…」

 『指揮官はよく、慣らしは必要だって仰ってましたから』

 

 「あー、AR-15ってね、ちょーっとマイペースなとこがあって~…あはは…」

 

 「それのどこがマイペースなの!?」

 

 ―AR-15、壊さないでくれよ?―

 

 『安心して下さい指揮官。私は(故障なんかに)負けませんから!』

 

 ―あのなぁ…―

 

 そしてかっ飛ばすこと約十分後…

 

 『指揮官、軍人さん、応答してください。…指揮官、軍人さん………クロ○、早くし』

 

 通信拠点を制圧し、自陣の拠点にしていたグリフィンの人形部隊。

 その中で、M4はドライバーたちと連絡が繋がらず、どうしたのだろうと不審に思っていた。

 

 すると、

 

 ―誰がク○エだ―

 

 といいつつ、背後からドライバーの車が到着した。

 

 「あ、指揮官!軍人さんも!」

 

 「M4~!」

 

 早速車から降りたSOPiiが駆け寄ってきた。

 

 「SOPii!無事だったのね!…あれ?AR-15は?」

 

 「それなんだけど…」

 

 M4は、SOPiiが指す、ドライバーの車の後部座席を覗くと、そこには目を瞑り、悟りを開いてそうな表情のAR-15が鎮座していた。

 

 「いつも仏頂面だったAR-15が、恐ろしく安らかな仏頂面をしている…?」

 

 M4は変貌ぶりに、戦慄の青い大仏マークのアレを思い出した。表情がなんか似てる。

 

 『仏頂面で悪かったわね、M4』

  

 ―…M4、悪いがSOPiiと一緒に降ろすのを手伝ってあげてくれ―

 

 「あ、はい。…そう、ついに解脱したのね…AR-15」

  

 

 『何言ってるのM4、解脱なんてしてないわよ?』

 

 ここで、通信でAR-15がもう一度冷静に語り掛ける。

 

 「え、AR-15!?生きてたの!?…何故そんなポーズを…?」

 

 

この時のAR-15は、顔では分からないものの、今更気づいたのか…と言いたげであった。M4は俗に言う『天の声』か何かと勘違いしていた様である。

 

 

 『悪いわねM4。これ指揮官の持ってきたダミーのせいなの。…接続してる時はシステムの都合でこうなってしまうみたいで…正直ちょっと不便ね…』

 

 ―そう言うなよ。これでも予算内で出来る限りやってきたんだ―

 

 その様子に困惑するM4。苦笑いするSOPii。

 

 ドライバーはそんな二人にAR-15を車から降ろすサポートをお願いした。軍人とドライバーは大きなケースを車から降ろし、その上に座らせたAR-15は青空のもと、座禅を組んでいる。AR-15曰く、その方が処理速度が向上するとのことらしい。

 

そのシュールな光景を端から見たグリフィンの人形部隊の人形たちは、『AR小隊って、やっぱり変わってる子多いよね』…と、ひしめき合っている。

 

 そんな中で、ドライバーはM4に何があったのか説明し始めた。

 

 

 数分後。

 

 「そうでしたか。事情は把握しました…しかし、なぜAR-15を?」

 

 ―予算とサイズの関係でな―

 

 「予算とサイズ…?ああ…なるほど…それならば仕方ないですね」

 

 察したのか、頷く。

 

 『ちょっとM4!あんたまで何察してるのよ!?』

 「あ、ごめんなさい。なんでもないの!本当よ?」

 

 『ま…まぁ、それについては良いけど…ところで指揮官、上手く敵に捕まりましたよ。そこで得たんですが、ハンターは退却していった部隊とは別のチームでこちらを探してるみたいです。位置を表示します』

 

 

 ―軍人、タブレットを貸してくれ―

 

 「ああ…」

 

 ドライバーにタブレットを渡す。ドライバーがマップを拡大すると、ハンターとAR-15のダミーがいる位置を示す点が移動している。

 

 

 「よーし、位置も割れれば、これで漸くハンターをぶっ壊しにいけるね!殺っちゃるぜ~!」

 

 はしゃぐSOPii。

 

 ―AR-15、ダミーは現在どうしてる?―

 

 『それが、ハンターと追跡車両に相乗りしてます…人質ってやつですね。しかも、何だかこちらの司令部を襲撃するっぽいですよ?』

 

 

 

 AR-15の報告に、ドライバーは何時もと変わらない様子で、探り続けてくれ、と指示を出し、変なところで指揮官らしさを発揮している。きっと何か考えているのだろうな、と軍人は思っていたその矢先。

 

 しかしドライバーはこう告げた。

 

 ―よし、ちょっくら奴等とレースしてくる―

 

 

 

 「おいドライバー!?」

 「指揮官!?」

 「ちょっと、正気!?」

 

 

 

 ―俺がここまで引き付ける。人形部隊はここで敵の迎撃に備えてくれ。軍人、来るなら早く乗れ。どの道、あの車列は厄介だ。これ以上近付けさせるわけにはいかない。―

 

 

「…わかった。乗るよ!任務の事もあるしな!」

 

 結局、怖いのを我慢して勢いで乗ることになった軍人。任務の報告に必要な情報を集めないとならない。それにツッコミ役は必要だろうという、軍人なりの 強がりである。

 

 

 そして、車のチェックを軽く行った後、ドライバーは軍人を隣に乗せて出発した。M4たち人形部隊は戦闘の準備に取り掛かる。

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 「ふふふ、先ずはこれで第一フェイズ完了だな」

 

 同時刻、ハンターは部下たちと移動を開始。

 

 

 『こちら100(ワンオーオー)、配置につきました~』

 

 途中、部下の人形から連絡が来た。100(ワンオーオー)と刻まれた新型の追跡車両が6台停車する。

 

 「よし、お前たちには101回目のなんとやらだ。しっかり頼むぞ?」

 

 『了解!』

 

 

 AR-15のダミーは、黙って周囲を見渡す。ハンターにダミーと気付かれていないようだ。しかし、首を動かすも、カクカクしており、やはり不自然であった。

 

 ハンターはそれを見て…

 

 「ふふふ、怖いか?まぁいい、そこで見てろ。貴様は人質に使わせてもらう」

 

 

 震えていると解釈したのか、どうやら気付いてない様である。

 

 「人質ッて言葉、今ノデ114回目よ」

 

 冷静に突っ込むAR-15。少しカタコトになっている。

 

 「ふっ…何時までその余裕が続くか見ものだな…」

 

 「それヨリ前見て運転シロヨ。事故ったら賠償金フンダクルゾ」

 

 「ふん、なら大人しくしてるんだな」

 

 

…………

 

 「なんで気付いてないんだ!?明らかに首の動きとか色々おかしかったろ!?」

 

 その様子をメインフレームのAR-15を介して、タブレットに表示しているのを見て言う。

 

 ―まぁ、あのダミーのボディの中身は、そこら辺のものを無理矢理くっ付けて作ったから…そこはご愛敬だ―

 

 「なんだって!?あのダミーってそんなぞんざいな構成で出来てんの!?市販品のボディでも行けただろ!?」

 

 『軍人さんのツッコミ、キレッキレだね!』

 

 『ツッコミ役を担ってくれて助かります。これで安心してダイでハードなスパイごっこが出来ますよ』

 

 「AR-15、そんな安らかな顔でさらっと言うなよ!つーか、ダ○・ハードはスパイもんじゃねえええ!!?」

 

 軍人のツッコミが更に光る。

 

 ―さて…スタート地点に着くぞ―

 

 「お、おう…」

 

 すると、AR-15は、ダミーからなにか情報を得た様だ。

  

 『この車両…100(ワンオーオー)?ユロビですかね?』

 

 ―もしかすると、アイツらか―

 

 「あいつら?ドライバー、どういうことだ?」

 

 ―ほら、あれだよ。あんたを基地に運んだ時に追ってきたやつ―

 

 「おおーマンティコアに正面衝突したアイツらか…って、ええ!?死んだんじゃなかったのかよ!?」

 

 ―AIが生きていて、それを新しい身体に移されたのか…俺に100連敗してまだ懲りないか―

 

 『こちらM4。指揮官、敵のことが分かるんですか…?』

 

 ―ああ、あの少したどたどしい動きでな。つまり、101回目の挑戦ってことだな―

 

 

 『100連敗って…どんだけ指揮官に対してしつこいの!?』

 

 ―あいつら、いつもグリフィンとか軍の車両が来ないか見張ってるのさ。だから遊んでやってたんだよ―

 

 『指揮官って結構命知らずだよね!?』

 

 『ほっ…骨は拾ってやりますっ!』

 

 『ご供養ならこのAR-15が…』

 

 

 

 「そのポーズどっちかと言うともう仏じゃね!?縁起悪いぞ!?」

 

 

 

 『あ、間も無く100が来ますよ。備えて!』

 

 AR-15が知らせた。

 

 ―よし―

 

 ドライバーは車から出た。

 

 「あ、おい!」

 

 ―乗っててくれ―

 

 

 丁度いつぞやの追跡車両の二人組が数台の車を引き連れて迫る。

 

 そのコーナーの先の直線で、待っていたぞと言わんばかりに道路の真ん中で腕を組んで立つドライバー。

 

鉄血の車両の走行音が段々と近づいてくる…

 

 その数は6台。

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 曲がりきれず、崖に後続3台が転落していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 車両たちは、このトラブル発生につきコーナーを過ぎた辺りで停車した。前方にはドライバーとその愛車。ドライバーは鉄血たちの車両が転落していくのをばっちりと見ていた。

 

 「ああ、もう!これだから無人車両(笑)なんて笑われるんだよ!」

 

 「私たち人間じゃないから正確にはこの車も無人だよね?」

 

 『どうした?車列の信号が減ったぞ』

 

 ハンターから通信。ハンターはこの峠道の麓に回り込み待機する。司令部を襲撃し、指揮官の彼を始末すれば崩落すると思っていたが、予定変更し、『例の車両』ことドライバーを狙うことにした。

 

 

彼らを否定するがごとくドライビングのみでプライドをズタボロにするドライバーは、最早『吐き気を催す邪悪』のようにも見えつつあった。

 

 理由は追った先でアクシデントに見舞われるからだ。そして今回は、出会い頭に早速転落事故である。と言ってもドライバーは別に罠を張ったりはしていない時なので、これまでも、今回も、鉄血側の自爆である。

 

 

 「車両三台が崖から転落しました…」

 

 助手席の人形がハンターに伝える。

 

 『えー…』

 

 

 そしてこの出オチにも関わらず、ドライバーは車に乗り込み、エンジンを掛け発進させた。

 

 「あ!あいつ逃げるぞ!」

 

 100の運転席の人形が言う。

 

 「むしろアレは呆れて帰ろうとしてるんじゃないの!?」

 

 助手席の人形が突っ込み…

 

 『どっちでもいい!早く追え!』

 

 「「了解ー!」」

 

 100と刻まれた追跡車両はハンターからの指示で再び発進。追撃に向かった。

 

………………………………………………

 

 …そして現在に至る。

 

 

  100(ワンオーオー)の車両に乗る人形二人組は最近覚えた技を駆使しながらドライバーの車に追い付こうとする。

 

 「あいつら前より上手くなってるよな…」

 

 ―きっとドリ○ンのDVDでも見て学習したんだろ?だが、彼には遠く及ばないね―

 

 ドライバーは適当に伝えたが、皮肉にも正解だった。ハンターから共有されたものを閲覧し、この日に備えて学習して来ていた。しかし、必要もないところも無理してドリフト走行をしている。

 

 急コーナーに差し掛かりブレーキング。しかし、追跡車両はそこでもたついて距離が離れた。

 

 ―ブレーキングが甘い―

 

 「そうなのか?」

 

 ―レースでもなんでも、運転するやつが、その車の特性を理解してないことには、 発揮させようにもさせようがない―

 

 「あいつらはAIだぞ?道具の使い方位はデータとして蓄積してるはずだろう。しかも、お前が散々捻り上げてきた奴らだ。いい加減対策してきるとは思うが…」

 

 ―だろうなぁ。となると、その車での走行経験が単に少ない。それか、やつらは車を操作してる身体に慣れてないのかもな。或いは両方―

 

 「え?どういうことだ?」

 

 ―やつらは生身の人間と異なり、身体を取っ替え引っ替え出来る。怖いもん無しだ。だが、違う身体で精度を高めるためには、また別に稼働させてデータを蓄積していかないとならんようだ。学習速度は人間よりも比較的早いから、これは時間の問題だろう。だが、以前よりは良くなってる。前はもっと酷かった―

 

 「ということは、鉄血のやつら…確実に進化して…?」

 

 

 その背後では…

 

 「うわー!?突っ込みすぎた!!」

 「あわわわ!?そんなー!?」

 

 100の車がコーナー進入次にバランスを崩す。ハードな走行のために、タイヤの熱ダレによりグリップ力が低下してるのを気にせず突っ込んで行ったためだった。ガードレールに背後から引き連れてきた無人車両が100に突っ込んで行き、リタイヤとなった。

 

 

 「…いなかったな」

 

 ―はは、現実はそう上手くは行かないもんだよ。やつらのAIの能率次第だが、次はもっとまともになるとは思うよ。完全に破壊されてなければの話だが―

 

 『M4から指揮官へ、人形部隊のみんなとカメラから見てたのですが、鉄血の車に何があったんですか?』

 

 『急にコースアウトしちゃったよね?』

 

 M4とSOPiiから通信が来た。こいつらほんと好きだな、とドライバーは思いつつ、鉄血の車に何が起こったかを説明することにした。

 

 ―うーん、車だけを言うならば、無理しすぎてタイヤが熱ダレ起こしたんだな―

 

 「熱ダレ?」

 

 ―そうだ。自動車のタイヤは走行中に熱が発生し、その温度が適温になるとグリップ力を発揮する。しかし、それも適温を越え過ぎると、グリップ力は逆に弱まってしまうのさ。それで、やつらはアンダーステアをおこし、そこに追従してきた仲間の車も釣られてきて、結局追突されていったが。まあ、学習してたみたいだし、100単体は前より少しくらい腕は良くなってたろうね。それに、もしかしたら足回りが粗末なものだったかもしれない。後で回収出来たら見てみよう。さて、お前たち、車や運転手にもよるけど、飛ばす時はタイヤのマネジメントはしっかりな。大事な所だから、覚えておいてくれよ?―

 

 人形部隊の皆から了解!と元気のいい返事が来る。

 

 「アドバイスしてる場合か!?」

 

 ―実戦じゃないと分からんこともあるだろう?―

 

 「それはそうだが…なんか違う意味に聞こえるぞ?…じゃあこの車のタイヤは…そうか、ペースを落としてたんだったな?」

 

 ―そう言うことだ。一応、長く持つようにそれなりの物は履かせていたが、かといって無駄使いはできない。俺なりに色々考えて運転していたってことだ―

 

 100に追われるまでは『慣らし』だったのか、と軍人は呆れる。しかしペースからしていつものドライバーの走りと変わらなく見えていた。これはきっとドライバー側の感性の問題なのだろう。運転してみないと細かいところは分からない場合もある。

 

 思い返して見れば、自分を基地に連れてきた途中、『タイヤが暖まってきた』という旨をドライバーが伝えてきた後にペースを上げていた。

 

 

 

 『AR-15から指揮官へ、突然で失礼ですが、ダミーに組み込まれてるこの項目はなんです?』

 

 ―ん?―

 

 AR-15は接続しているダミーのシステムに【グリフィン曰く爆ぜろ鉄血】と記された項目を見つけた。

 

 

 ―ああ、それか。いざという時の奥の手だ。いいか、それまでは絶対に触るなよ?い い か ? 絶 対 触 る な よ ? ―

 

 

 

 

 

 『え?起動しちゃいましたけど…』

 

 ピッピッピッ…

 

 ―な、何だって!?―

 

 モニターには警告メッセージが出ていた。

 

 《加害範囲から離脱してください》

 

 ―うそだろぉぉぉ!?起動してるじゃねえか!?―

 

 「い、一体どうしたんだよ?」

 

―取り合えず100は片付いたし、ハンターから離れるぞ。位置は…やばい、痺れきらしてこっちの方に向かってきてるのか…急ぐぞ―

 

 「え?うわっ!?」

 素早くターンして、麓と逆の方へ走っていく。AR-15はその時、切断しましたというアナウンスと共にリンクが外れたため、体が自由になる。

 

 

 

 

 同時刻。

 

 「またしくじったか…」

 

 車を飛ばすハンター。こうなれば直々に出向くまでと判断していた。 代理人から貰ったビデオのお陰か、素早くコーナーをクリアしていく。ここは一本道、逃げ道はないと睨んでいた。

 

 「ハンター…」

 

AR-15のダミーは、運転中のハンターに声を掛けた。しかし…やはりぎこちない。

 

 「ん?ふっ…安心しろ、やつらはこの手で直接ころ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 ぶ っ 飛 べ !」

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ハンターの車から火柱が上がった。

 

 

 

 ドライバーたちは無事に逃げ切り、爆発した様子を眺めていた。鉄血はもう追っては来ず、また、近くにも反応はない。傍受の電波も途絶え、クリアとなった。誘い込む必要はなくなった。

 

 そして、AR-15は無線越しにこう一言。

 

 

 『キタねえ花火だ…』

 

 

 

 

 ―お前が言うなっ―

 

 AR-15の発言に突っ込むドライバー。

 

 

 「あのダミー人形、爆弾なんて積んでたのかよ…」

 

 軍人が一言。まさかダミーの人形とは言え、爆弾背負って走ってたなんて。

 

 『SOPiiから指揮官へ、一体どんな爆薬使ったの?ここから爆発してるところ見えたんだけど!?』

 

 ―基地にあったものを適当に調合したものだ。相手の動きを止められる程度でいいかなーって思ってはいたんだが…―

 

 

『むしろ、木っ端微塵の様な気が……』

 

 

 そんなSOPiiの横から…

 

 

 

 

 『指揮官、次からはキチンと計って作りましょうね?』

 

 『私も手伝いますよ、指揮官』

 

 『AR-15、突然なに言い出すの!?M4も!悪い考えならやめて!?』

 

 「さて、ドライバー。どうするんだ?」

 

 ―…一先ず、M4たちと合流。それにヘリアンたちに手土産を用意しておかないとな―

 

 そして車に戻ると通信が来る。

 

 『指揮官聞こえるか。こちらはヘリアン』

 

 ヘリアンが本部から連絡を寄越してきた

 

 『貴官の赴いた先で爆発音が確認されたそうだが。あれはなんだ?』

 

 ドライバーは一瞬軍人と目線を合わせ、再び通信機を見てこう伝えた。

 

 

 ―心配するなヘリアン。ハンターが爆死した音だ―

 

 現在地からして、爆発が確認出来るのは一ヶ所だけ。

 

 

 

 『………何だと?まさか、交戦したのか…?』

 

 ―ああ。だが一先ず片付いた。報告書を楽しみにしておいてくれ―

 

 『了解だ。そうしておく。よくやった』

 

 ―それは人形たちに言ってやってくれ。それと、AR-15とSOPiiは無事だ。報告書にも記すけど、ペルシカによろしく伝えてほしい―

 

 『わかった。それもまた伝えておこう』

 

 ―それじゃ、また後でな―

 

 ここで通信は終了。

 

 そして、ドライバーと軍人は爆発の起こったところを確認に向かう事にした。追ってくる気配はない。

 

 

 

 

 ―見てみろよ軍人、こいつを…―

 

 到着したドライバーと軍人は消火器を片手にハンターの車を見に行く。火は収まっていた様で、木々に燃え広がることなどは幸いにもなかった。AR-15のダミーは壊れた交通整理人形のように動かない。これでもし勝手に動いていたらホラーも良いところ。ドライバーは事後処理のために人形たちと基地に処理を手伝うように伝えた。人形部隊が駆け付ける途中の報告によると、お着きの追跡車両も居たらしいが、鉄血の人形兵たちは機能停止していたという。

 

 「AR-15…見るに耐えないな…」

 

 ―それは…そうだな。じゃなくてだ。ほら―

 

 ドライバーの指すのは車の方だった。

 軍人は渋々見る。火災が比較的早く収まったのは、搭載された消火装置が爆破の衝撃で作動し消火剤が撒き散らされたためだろうか。正直また爆発したら大変なのであまり近付きたくないが、軍人は恐る恐る近づいてくる。

 

 「もっと燃え広がるものかと思ったが…そういうことか。あれ?運転席のヤツは?」

 

 まさかSOPiiが話してたように木っ端微塵になったのか、と思いつつ周囲を捜索すると…

 

 

 車からは、人工血液か、人形用オイルの痕が付いている。それは車の外へと続いている。そこで、ドライバーと軍人はその痕を追っていくと、右腕と左足を失いハンターが這いずって離脱しようとしていた。

 

 

 

 

 

 この時、ヘリアンへの手土産は決まった。

  

 

 

「くっ…なんとか機能は維持してるが…」

 

 

 ―腕が片方だと動きにくいよな―

 

 「少なくとも、これでは遠くにはいけなさそうだ」

 

 

 

 

 

 

 「ああ…そうなんだ…って、なにいいっ!?」

 

 ドライバーと軍人は、何故かほふく前進でハンターの真横に並んでいた。

 

 ハンターは にげだした。

 しかし まわりこまれてしまった。

 

 

 「お、おのれー!」

 

 片腕で何とか銃を取るものの、引き金を引いても撃てない。

 

 「え?あれ?」

 

 ―これをお探しかい?―

 

 ドライバーは黒い何かの部品を見せる。ハンターは、自分のハンドガンに何かが足りないことに気付いた。 

 

 「ま、マガジン?…あっ!?」

 

 

 

 ―さて、どうするかね…。腹の中の自爆装置も壊れてしまってるみたいだなぁ―

 

 「え!?こいつらってそんな危ないもん付いてるの!?」

 

 ―ああ。敵対するヤツにデータを渡したくないからな。自壊してしまえば、回収は困難になるし、上手くいけば触れようとした相手にもダメージも与えられる―

 

 

 「ふんっお前たちに話すことなど…って何処触って…おい!?」

 

 ―軍人、そっち押さえとけ―

 

 

 「わかった…」

 

 ―悪いな。暴れられては困るんだ―

 

 「止めろ…私に乱暴する気だろ!?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」

 

 この発言にドライバーと軍人は思わず困惑した。

 

 「なんで戦闘用のお前らがエロ同人なんて言葉を知ってるんだよ!?」

 

 「知るかっ!元は貴様ら人間が編み出した言葉だろう!!」

 

 ―しねーよ!大人しくしやがれってんだ!そもそもお前にそんな機能あるのかよ!?―

 

 「え…それは…って!やっぱりそういうことするつもりだったんだな!?くっ…ころ………」

 

 がくりと動きが止まる。

 

 かくしてハンターは機能停止した。しかし、ドライバーたちはスマキにしようとした以外は何もしていない。というより、ハンターが勝手に機能停止した。

 

 ドライバーと軍人は、損傷も中まで到達していた様だし仕方ないと割り切ることにした。メモリーチップ等記録媒体が生きていれば、それを引き出して何か分かるかもしれないが、そこはその道のプロに任せておくことにした。

 

 その後、M4たちと合流し、放置された追跡車両やらハンターの車など、片付けるものを片付けてから撤収していった。

 

尚、AR-15は自身のダミーを供養するまえに確認したところ、破けたところから、胸の部分がベニヤ板で真っ平らに作られていた事に気付いて衝撃を受け、それをからかったSOPiiが怒られていたのは言うまでもない。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 「ああ!ハンターがやられた!」

 

 真顔でわざとらしく声を上げる代理人。ハンターからの信号が途絶えたのを確認しての一言。

 

 

 「どこのジャ○・ルイかしらねぇ…」

 

 鉄血のハイエンドモデルの人形が突っ込む。

 

 「…というわけで、次はあなたの出番です。……イントルーダー」

 

 

 

 「イントゥルーダーですわ」

 

 

 「…リテイクしてもいいですか?」

 

 「ダメですわ代理人。いくらハーメルンが一話につき最大15万文字まで書けるからって、甘えは禁物です。ここは一回で決めてくださらないと…」

 

 「むー。午後ローとお昼のドラマばかり見てるだけあってこういう事にはうるさいですね…」

 

 頬を膨らませる代理人。

 

 「ふふふ、ごめんあそばせ…ではもう一度。本番まで~…」

 

 イントゥルーダーは指でカウントを行いカチンコを鳴らした。

 

 

 

 

  

 「…というわけで、次はあなたの出番です。………イントルーダー」

 

 

 「 イ ン ト ゥ ル ー ダ ー

  で す わ 」

 

 

 

 …このやり取りは、興味本意で覗いていた鉄血人形兵曰く、テイク20まで続いたという。




というわけで、Vol.6は終わりです。



もう一度だけ。

どうしてこうなった(^ω^)


【補足?】
今回タイヤがどうたらこうたらって出て来てましたが、これはほんと大切です。
そして、『慣らし』はブレーキやエンジンなどの調子をみるにも必要です(ざっくり)

因みに恐縮ながら、経験談を一つ。
レーシングカートを乗っていた時、ろくに温めないタイヤでかっ飛ばすと滑りまくったことが…。
なので、車でもカートでも、レンタルでも何でも、走行時間がどうであれ、先ずはいきなり攻めず、何周か走って走ってタイヤを温めてから攻めましょう…あと、これは主に自動車でのことなのですが、タイヤの溝の残りも確認しましょうね…少なくなったら交換を(^ω^;)



ではまた次回!


代理人「君の心に、ブーストファイア!!」


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Vol.7 友人とゲーム貸し借りする時によくあること

今回からM16姉さんを助けに向かいます。






いつもの基地から、M16の信号が確認された位置へ向かう最中。

 

 

 「うおー雪だぁぁ!」

 

 「途中の拠点でスパイクタイヤ履かせて良かった~!イェッフー!」

 

 雪道を走る100の数字が刻まれた鉄血の追跡車両。結局またもや生き延び、なんとか隠れつつ逃げ帰った。鉄血の基地で身体を修復し、この前と同じ改良型車両のスペアに乗って来ている。今回は、それに雪道用のスパイクを途中の拠点で履かせ、走れるように対応させていた。

 

 とあるハイエンドモデルから、雪道の練習用として、またとあるラリードライバーのオンボード映像などのデータを貰い、学習を重ねて来ている。

 

 

 

 

 

 その前方では…

 

 「イージーレフト、オーバーライト、200、ミディアムレフト、イージーライト――」

 

 軍人は助手席で走行中の道のインフォメーションをドライバー伝えていた。まるでコ・ドライバーである。

 ドライバーは黙々とステアを握り、攻めていく。やはりまた追われていた。彼からすれば遊び相手も良いところ。しかし、鉄血の100との追い掛けっこの最中でも、手強くなりつつあるのは承知の上。しかし、やはり鉄血側は少し覚束ないところも未だにある様で、ドライバーに距離を離されつつある。

 

 しかし…

 

 

 ドライバーの車は道路脇のフカフカに雪の積もったところを乗り上げて、咄嗟に減速。凍結してるのかスピンしかけつつも、なんとか止まった。幸い車は壊れることはなく、好調にアイドリングしている。

 

 ドライバーは軍人を見た。彼は別に怒ったり蔑んだりはせず、軍人に貸したペースノート代わりのタブレットを冷静に確認している。その背後から100の追跡車両も停車した。人形兵たちがようやく捕まえた…と、勝利を確信たのか、ほくそ笑んでいる。

 

 

 

 「すまないドライバー、一行飛ばしてしまった…」

 

 刹那、ドライバーは背後から何かを感じた。それは鉄血の気配以外のものであり、彼は軍人に向け、『静かに…何か聞こえる』とジェスチャーした。

 

 「え?なんだ?」

 

 軍人は疑問符を上げつつ、ジェスチャー通りに耳を済ませた。

 

 …すると、なにかがバリバリと割ける音が近づいてきていた。それが何か分かった途端、ドライバーはシフトを入れ直し…

 

 ―急ごう―

 

 ドライバーはそうジェスチャーして車を発進させた。

 

 

 地面には大きな裂け目が走っている。それは段々と大きくなり、広がっていく。

 

 

 何と、ここは凍った湖の上。

 

 先程までドライバーたち湖沿いの道を飛ばしてしていたのだった。

 

 先程の軍人の読み飛ばしにより道を外れ、凍った湖の上に来てしまった。ドライバーは、一先ず水没から逃れるため、湖の上を飛ばしていく。

 

 鉄血兵たちは拘束具を出そうとしていた矢先だった。急発進していくドライバーに驚く。

 

 「あ、また逃げた!?」

 「…あれ?…ん?ねえちょっと…」

 

 鉄血兵たちが見ると、地面の裂け目に囲まれている。

 

 「あ…ま、まずいよ、私らも逃げよう!車を出して!」

 「わかった!」

 

 アクセルを踏み込み発進。さらに後から続いてやって来た増援のスノーモービルに乗った鉄血兵たちも、慌てて湖から退散していく。

 

 

 だが、走り出したタイミング的にドライバーの車と距離に差が出来てしまっており、中々追い付けない。スパイクタイヤをつけても、やはりここは氷の上。思ったようには中々追い付けなかった。

 

 

 

 

 「うわああ!?」

 「ちょ、ちょっと!?」

 「沈むぅぅ!!?」

 「メインブースターがイカれただと!?」

 

 スパイクタイヤの恩恵か100の車は、それでも比較的安定して迫る割れ目から逃げているが、後ろを見ると、増援のスノーモービルたちが次々と湖に水没していくのが見えた。

 

 というか、メインブースターなんてものは彼らのスノーモービルには付いてない。もしこれが浮遊型の乗り物なら話は変わるだろうが。

 

 「えええ!?皆落ちてるよ!?」

 「おのれー!グリフィンのドライバー!!アンタ今私らに何をしたァァァ!!?」

 

 思わず叫ぶ運転席の人形。

 ドライバーは何もしていない。

 叫んだ直後、割れたところから100の車も足が取られ、そこから飲み込まれていった。

 

 

 「ああああ!?」

 「溺れるぅ!溺れるぅ!?」

 

 

 

 自然とは何時の時代も侮れないものだ。

 

 

 

 

 鉄血たちを尻目に、ドライバーの車はそのまま登れそうな所を探しつつ走っている。だが背後には氷面の割れ目が迫る。

 

 

 

 

 そして、迫り来る割れ目とのレース中、ついに登れそうな所を見付けた。

 

 しかも、待ち合わせポイントまであとわずか。

 

 ―なーんだ軍人、近道してほしかったんなら、早くそう言ってくれよ!はっはっは!―

 

 「わりとマジで間違えたんだけど…」

 

 ―…ええ!?…ま、まあ結果オーライだよ!水没しなければな…―

 

 目の前はちょうどジャンプ台のようになっている。

 

 ―お、良いところ見付けた。ここから陸地へ戻るぞ―

 

 「おい、ジャンプ台みたいになってるところか!?マジかよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 その頃……

 

 「降ってきたな…」

 

私、戦術人形M16A1は潜伏先のシェルター付近に待機していた。と言っても、辛うじての補給地点として立ち寄ったところだが。グリフィンに通信も繋がったので、合流地点としてここを指定した。それまで凌げる物資もある…。SOPiiとAR-15も無事との事だ。正直ホッとしている。

 

 M4たちから聞いたが、皆が待ってくれている。生き延び、迎えと合流せねばならないな。

 

 

 

 

 

 

 

 「はーっ」

 

 息を吐くと、タバコを吹かしたみたいに真っ白。こういう時はM4たちと雪だるまとか、かまくらとか作る訓練をして…そこでのんびり冬景色を楽しみつつ呑むのも悪くないよなぁ…日本の鍋料理もいいな…うん。

 

 っておい、誰だ今サボりたいだけだろとか思ったやつは!

 

 …ははは、まさかな…。

 

 リアルタイムでそんなバラエティ番組の後付けの天の声があるわけじゃあるまいし…ははは…

 

 

 「…ん?」

 

 突如、何やらやかましい音が近づいてきている事に気付き、現実に引き戻される。私は、ふとその方向を見る。

 

 

 

 

 何かが雪の塊に乗り上げて飛んできた。

 

 「………うおっ!!?」 

 

 それは頭上を飛び越えて行った。私は咄嗟にしゃがんで避けた。一方、飛び越えて行った『それ』は見事に着地し、こちらにクルリと向いた。私は咄嗟に銃を向け、敵味方の判別をする。

 

 『それ』は雪まみれだが、グリフィンのマークとカラーリングをしていた車だった。

 

 

 私は察した。

 

 このカラーリング、そしてこの軍用車ではなくラリーカーみたいなデカいフェンダーにリアスポ・・・

 

 オマケにこのバリバリとやかましいく響き渡る排気音・・・

 

 隠す気なんて更々ない登場の仕方……

 

 間違いねえ……

 

 あいつだ……

 

 ここで、私はそのクルマに向けて呼び掛けることにした。

 

 

 「し、指揮官か?」

 

 

 直後、ドアを開け、手をヒラヒラさせるヘルメットの男……

 

 

 

 

 私は確信して、銃口を下げたんだ……

 

 

 

 

 そうさ……

 

 

 

 

 やはりあいつ(ドライバー)の車だったのさ……

 

 

………………………………………………

 

 数時間前。

 

 

 基地の司令室。

 そこにはドライバーと軍人。戦術人形のM4A1とSOPii、AR-15が揃っていた。

 AR小隊の未帰還メンバーは、残すところM16A1だけとなった。先程基地に向けて連絡があり、そこを逆探知して座標は特定し、後は迎えに行くだけなのだが…

 

 問題が生じてしまっていた。

 

 その問題とは、雪に足を取られる事であった。天気予報を見ると、現地はかなり積もっているという。おまけに、そう言うところは決まって凍結路面でのスリップやら、タイヤがはまって動かなくなる(スタック)の可能性がある。『雪国あるある』とドライバーは皆に説明していた。

 

 そこで、ドライバーは、途中△※地区の最寄りのグリフィンの拠点に寄り、雪用のタイヤに履き替え、そこから、潜伏するM16を迎えに行く、ということが決定した。ヘリアン曰く、グリフィンの輸送班の運転手でも、スタックやらスリップに見舞われることが頻発する地域のため、ここは素直に、ドライバーの運転技術と経験と見識、そして桁外れの度胸などを踏まえて総合的に判断され、結論として彼に委ねる事になったという。

 

 今回はサポートとしてAR小隊も同行。軍人は無論、軍からの周辺調査の任務の兼もあるため、ドライバーのクルマに同乗する。尚、この前の任務の報告により、不用意に身元不明のロボット(ダイナゲート)を拾ってこないように、と、広告を出してもらえるようになった。今朝のTVニュースでも、それに纏わる特集が取り上げられている。民間から回収して無力化したダイナゲートが見本としてテレビに映っていた。これにはドライバーもこれで厄介なのが減る、と安心している様だった。

 

 現在ドライバーたちは出発するに当たっての打ち合わせの最中であった。

 

 

 ―現在、M16の所在地は、雪が降り積もる△※地区の補給地点にいると確認されている―

 

 

 「そうなると…車で向かうならば、スパイクタイヤかスタッドレスタイヤが必要ですね」

 

 

 ―そうだな、M4。他にも必要なものがある。さて、それは何だ?―

 

 「えーっと…不凍液です!オイルが凍るとラジエーターの細菅が破裂します」

 

 ―正解だ―

 

 「M4、なんだか楽しそうだね?」

 「めっちゃ目が輝いてるわよ…?」

 

 「ふぇ!?そ、そう…?」

 

 照れるM4。

 

 

 ―よし、最後に。不凍液使用の際は何に気を付けなければならない?―

 

 「はい、不凍液は濃度の調節に気を付けないと、オーバーヒートをおこしたりして故障します。しかも、原料のエチレングリコールは毒性があり、下水や川に流せません。流すと環境汚染になり法的にもアウトです。おまけに人体にも毒なので、9A91やP7の手の届かない所に置いておかないと危険です。いろんな意味で」

 

 ドライバーは結構。ここまでにしておくか、とオーケーサインを出した。SOPiiとAR-15は「流石は隊長~」と軽く拍手している。しかし最後の部分には不穏さを感じさせる。P7はいたずら好き。では前者の9A91は?と軍人がドライバーに訊ねるが、彼は『聞かない方が良い…』と返した。

 

 

 ちなみに不凍液は寒冷地向けの車だと濃い目に入れられている。特に△※地区は氷点下など日常であり、付近の拠点の車両などは当たり前の様に調節されている。

 

 

 M4にこんな質問をしていたその意味は…

 

 

 

 ―AR小隊は俺の車の予備を貸す。それに乗って付いてきてくれ。M4A1、運転を頼む―

 

 

 

 

 そのジェスチャーの後、SOPiiとAR-15の背中が一瞬で凍りついてしまう。二人は、そのままではマズイ!と声を上げてきた。 

 

 「指揮官!?ちょっと待って!?」

 

 「ほ、本当にM4に運転させるつもりなの!?」

 

 

 「あら?私が運転がそんなに嫌だったかしら?」

 

 二人の発言に、ちょっとだけむくれるM4。

 

 「いやいや、そういう意味じゃないよ!?そういう意味じゃないけど…ねぇ?」

 「ええ…。ねえM4、どうか早まらないで?私たちもいるから…ね?」

 

  AR-15とSOPiiは、M4の運転と聞き、青ざめる。何とかごまかしつつ、『運転なら私たちでも出来るから』と、要するにM4A1から運転を変わろうとするも……

 

 

 「安心して!これでも練習してきたから!………」

 

 

 

 「イ○Dで、とかは無しよ?」

 

 

 AR-15が最後の部分を言い当ててみせた。

 

 「なんで分かったの!?」

 

 「あなたいつもそう言ってたじゃない。秋○雪をスペシャリストのタイムで走れるからって、現実のドライビングはゲームみたいにそう簡単にはいかないものなのよ?そうですよね、指揮官!」

 

 

 AR-15はM4のことをよく知っているらしい。流石はAR小隊、互いをよく知っているんだな…と、軍人はその点については感心している。

 

 そして、AR-15の言い分は言えていた。ドライバーはシムも現実もやり込んでるためか、そのギャップは確かにあることを身に染みて理解していたからだ。

 

 ―ああ……―

 

 ドライバーは頷いた。

 そこで、コンパクトディスクの収まるプラスチックのケースを手渡した。今回の練習教材はイ○Dではなく、ドライバーがM4に貸していたものだった。

 

 これは帰還後に書類仕事をM4が手伝っていた時、彼女の練習用にと思い、ドライバーがご褒美として、棚から取り出しそのまま貸与したそうである。

 

  

 

 「こ、これは…?」

 「なにこれ…?」

 

 「ドライバー…これって…」

 

 それを手に取るAR-15とSOPii、そして軍人が見ると、なにやらそのコンパクトディスクに収められている内容のタイトルが刻まれていた。それは……

 

 

 "W○C 7"

 

 この公式ラリーシムのタイトルを見て、AR-15とSOPiiは「お?」と一言声を上げ、少しはマシになったのかも、と多少期待するが、そこで軍人は何かを懸念したのか、AR-15とSOPiiに待ったを掛け、ドライバーに問い掛ける。

 

 「安心するのは早いぞ二人とも。ドライバー、中身を開けてもいいか?」

 

 それに対して、どうぞ、とドライバーはジェスチャーで返す。恐る恐るケースを開く。

 

 その中身のCDを見て驚愕。ドライバーにそのまま見せる

 

 そして、それを見たドライバーはフリーズしてしまった。ヘルメット越しにでもわかるくらいのリアクションである。

 

 

 

 

 中身のCDには、ある別のタイトルが刻まれていたのだ。

 

 

 

 

 

 そのタイトルは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 " バーンア○ト パラダイス "




友達にゲーム貸した時あるある(ない…?)

そして私は住んでる所ゆえか、あまり雪道の走行経験あまりないので、そこは流石に調べたりしてます…

(間違えとかあったらごめんなさい…)


さて、ついにM4A1が運転解禁されましたww


果たして、無事に雪の△※地区を走破し、M16A1の元へ辿り着けるのか……


そして、イントゥルーダーに出番はあるのか…


次のお話をお楽しみに!




M4A1「Don't Miss it...!(ネイティブ)」


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Vol.8 初めて運転した時の感動は忘れないものです! byM4A1

Vol.7からの続き。

先ず最初に。
更新遅くなり、大変申し訳ありませんでした…orz


次に、低体温症イベ、なんとか完走いたしました٩( 'ω' )و

資材の残りについては…お察しください。特に快速修復(泣)


では、どうぞ!


かくして、ドライバーたちは出発するために準備を始めた。場所が場所なので、軍人はヒートテックを身に付ける。ドライバーにお前は着ないのか?と訊ねると、彼は既に着込んでるといつも通りのジェスチャーで返した。

 

 その途中、軍人は整備エリアにて、スペアカーの収められた所だけシャッターが閉じらていることを発見。直後、メカニッククルーがシャッターをガラッと開けて出て来て…

 

「こちらの車両の準備も整いましたよ!荷物を載せてもOKです!」

 

…と、爽やかな笑顔でドライバーと彼に伝えてきた。軍人は、あのドライバーの事だし、普段は動かさないというスペアカーを点検させただけかも…と思い、荷物をトランクに載せてドライバーの車の助手席に乗り込んだ。M4たちも準備を終えて、そのスペアカーに乗り込み、ドライバーの後に続いて車を出した。

 

 そして、基地から出発していく二台を、カリーナと警備の人形たちが手を降って見送っている。

 

 その一方、本部のヘリアンたちはドライバーが最善を尽くして無事にM16と共に帰ってくることを、ただただ祈るばかりであった。

 

 

 

 

 ドライバー一行は、美しい山々を背景に、M16の指定してきたエリアへ向けて走っていく。現在走っている山岳道路は、戦争さえなければ休暇のドライブには良さそうなくらい景色が良かった。しかし、所々に戦闘の痕跡が残っているのを見ると、何だか不穏さを感じずにはいられない。ドライバーはこの辺りは既に落ち着きを取り戻している方だと軍人に伝えた。しかし、今だに警戒はされてるそうで、軍やグリフィン以外の者、ましてや民間人は安全のために入れないそうである。軍人はここよりもっと地味な田舎の方面での任務が多かったのか、この様なドライブコースを通るのは滅多になく、とても新鮮味を感じていた。

  

 因みに、ここで起こった戦闘とは、いつも通りにかっ飛ばすドライバーを見付けた鉄血の追跡車両が追い始め、そこから貰い事故などで巻き込み、また巻き込まれて自滅し、その結果、後から駆け付けたグリフィンの人形が動けなくなった鉄血を捕まえたり、または退散していったのだけなので、戦闘と言うか、顛末を除いて殆どカーチェイスである。

 

 本人曰く、負傷した人形を回収するためにここを走っていたそうで、その途中で鉄血に絡まれた、と伝えていた。

 

 

 それを知ると、軍人はこの情景もあってか、まるでカーアクション映画かオープンワールドのレースゲームのアクションシーンの様な展開だなと思えてしまった。

 

 

 この前の作戦だってそんな感じだった。自ら敵地へ赴いて通信拠点を探し当てたり、堂々と検問をぶち破ったり。だが、迫撃砲で撃たれても回避して、迷わず敵の司令拠点まで走り切るのは、最早頭がイカれているとしか思えない。普通なら自陣の拠点を設置してそこで指揮を執り、殆どを人形に任せてる筈なのである。だがドライバーはそのセオリーのようなものには該当しなかった。

 

 

 軍人は、それでよく毎回事が済むものだよな…と、つくづく思い、次の話題を降ってみることにした。

 

 

 「そう言えばさ、指揮官同士って会うことあるのか?」

 

 軍人は気になっていた。ドライバー以外のグリフィンの指揮官をあまり見たことがない。

 

 ―無いことはないぞ。だが、まぁ…余程の事がない限りは、普段其々の基地の方で任務やら報告のための書類製作で追われているわけだし―

 

 というか、こうして任務で運転してるドライバーを見ると、仕事に追われてるより、むしろ楽しんでいるかの様にも見える。

 

  

 ―それにうちに限ってしまうと、あまり来ないんだよな。周辺の立地的な問題だろうかねぇ?―

 

 

 そもそも、ここは元々の国家がしっかりしていた時からの土地柄か、乗り物での移動が重要なほどに広い。

 

 ドライバーは他の区からの指揮官が来た時の話をし始め、うねった道と長い距離で揺さぶられてダウンする者もたまにいると伝えた。それに対し軍人は、『それ仕事になるのか?』と思わず疑問符を上げている。

 

 ドライバーはこれに対し…

 

 ―さあな…G&Kの雇用って変わっててさ、基準満たせるなら兵士じゃなくてもいいんだ。それ故、元々民間人だったのも多くいる。幸いあんたはタフな奴で良かったよ。あんたに出会う前、同じ軍上がりの指揮官を乗せて走ったことがあったんだが、途中で………―

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ―もう少しで着くぞ。着いたら一先ず休んでくれ―

 

 「お、おう…」

 

 ―ん?顔色が悪いぞ?…あ、寝不足か?わかるぞ、書類が捌ききれず寝れないのな…後方幕僚に任せっきりは良心の呵責があるからつい手を出して…沼にハマる…―

 

 「あ、ああ…それもある…」

 

 ―…やっぱ途中で止まるか?この辺はうちの方で警備を出してるから、下手な敵地で束の間の休息するより、幾分安心だぞ?―

 

 「平気だ…平気…平気うっぷ!?」

 

 ―あ!おい!?せめて車の外で吐け!!―

 

 

 

 【……暫くお待ち下さい……】

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「!?!?」

 軍人は自分の座っているシートを疑った。

 

 ―安心しろ!そいつは間に合って外で吐いた。それに、一度部品全部外して洗浄と殺菌消毒してるぞ―

 

 「ほっ……」

 

 胸を撫で下ろす軍人。検査の結果、その軍上がりの指揮官に食中毒や病原体等は検出されなかったという。だがドライバーの指摘通り、寝不足はあったそうだ。

 

 ―まぁ、指揮官にも色々あるってこった。軍だって色んな奴がいるだろ?モヒカンの英国紳士やら、やたら高性能なハゲやら、髭とブーニーハットがチャームポイントなオッサンやら、懲罰部隊やら、三本線やら…―

 

 「ま、まぁな……ん!?」

 

 あれ?どこかで見聞きしたことあるような特徴だな…と軍人は疑問符を上げた。

 

 ―真っ黒いトムキャットとか…真っ赤でキャノピーどこだかわかんなくてレーザーぶっ放すやつとか…―

 

 「流石にラーズグリー○隊は居ないよ!?つーか、最後のやつ、最早人じゃないだろ!!?」

 

 軍人はツッコミを入れる。そんな敵地の赤い倉庫を破壊して回収した後、膨大な費用を払って使用可能になるヤツが何処にいるのだろうか。それに最初の方のモヒカン、ハゲ、ヒゲ帽子にしたって、ハゲは候補がありすぎるが、モヒカンとヒゲ帽子は、もう十中八九……。

 

 

 

 ―おっといけない。まぁ、タイミング次第では、何時かはこちらの関係者の顔を見ることもあるかもな―

 

 「…ああ、その日までに死ぬ事はないようにしておかないとならないな…」

 

 しかしここで軍人は気付いた。

 

 この程度で吐いてる様で仕事になるのか、と思ったり、それを口に出してしまってる時点で、既にドライバーの運転と、彼のペースにすっかり慣れていたことに。しかも、気が付けば戦場。見事に適応して見せていた。

 

 

 一方、M4の運転する、車体にアラビア数字の2と入っているスペアカーこと二号車は、トラブルなく、順調にドライバーと軍人の乗る一号車の後から付いて来ていた。

 

 軍人は皆が言うほど下手では無さそうだとドライバーに伝えるのだが…

 

 ―うーむ、この程度なら支障は…― 

 

 そうジェスチャーし、次のガードレールの無いカーブをアウト・イン・アウトで抜けていった時だった。

 

 

 

 「M4、ちゃ…ちゃんと減速しなさいよ…!?」

 

 「大丈夫よAR-15。……… せ え の ォ !」

 

 

 M4A1がドライバーのそれに続こうとし、コーナー脱出時の部分で道幅を使いすぎ、崖から後一歩で落ちそうな所まで寄せて抜けていった。あわや脱輪。タイヤも砂を拾って巻き上げている。

 

 正しく、ドライバーが以前軍人に伝えていた、『ギリギリを狙っていこうとする』という部分である。今のところは追従してるので速度はそこまで飛ばしてはいないのだが、それでも、今のSOPiiとAR-15の様に同乗者に恐怖や不安を抱かせるには、充分過ぎる効力を発揮していた。

 

 後部座席のSOPiiは目をパチクリさせて周囲を見渡す。『うん、落ちていない、落ちてなんかいないよね…うん…』と呟き、恐怖から生気が無い目をしている。

 

 ドライバーもミラー越しに二号車の様子を見てしまい…

 

 ―…無いわけでもないな―

 

 と軍人にジェスチャーの続きを行い、更に続けて、『こんな時に限ってだが、後方の現実を写し出す後方確認用のミラーやカメラの類いを外したくなる様な思いだよ…』と皮肉を伝えると、軍人は思わず苦笑い。彼も冷や汗を掻く。

 

 二号車の助手席のAR-15は、あわよくば無事に着けば良いと祈りを捧げる。人形に祈りなど必要かは別として。

 

 M4は久しぶりの運転なだけに、ちょっとだけ楽しそうである。

 

 スペアカーと言っても、あのドライバーの車であることは換わらず、中身は正しく『走りのプロ仕様』。ジープや軍用目的の車と違って、走りは非常に軽快。エンジンの更け上がりも心地よい。足回りもよく動く。M4にとっては楽しさを感じざる得ない。そこから、魔が差しそうになる中、必死でそれを押さえつけている。

 

 

 

 (自分はAR小隊の隊長で、皆の命を乗せて走らせる以上、責任がある…!あーでも踏み込みたい!ダメダメ!そんなことしたら指揮官を失望させちゃうわ!)

 

 

 …と律しながら、ドライバーの一号車に追従していく。なぜAR-15たちは運転を変わらなかったのだろう。

 

 

 

 すると、次第に雪が増えてきていた。ドライバーは、この道を行けばもうすぐ基地の近くだ、とジェスチャーしている。

 

 

 そこからかなり前方にて。

 

 この辺りに来ると、既に両脇は雪に包まれている。そこに、車が一台走っている。

 車はグリフィンのドライバーの車と比べると少し古めで、純正に近い形状のハッチバックだが、ホイールは純正ではなく、むしろ不自然な位に新しく、ライトポッドやマッドフラップが付いていたりと、見るからに戦場では先ず見ることが無い仕様であった。

 

 

 運転していたのは、これからドライバーたちが向かう拠点に属している戦術人形のスオミであった。鼻歌を歌いながら、マシンをコントロールしている。

 

 彼女は偵察がてら、近辺の道を走らせていた。それにしても、普段から真面目で大人しそうな性格と愛らしい見た目なのに、走りは生まれたお国柄もありエゲツないくらいに鋭い。一見、運転してるのが彼女だとはわからない指揮官もいるらしい。

 

 彼女は背後から車の音を検知する。

 

 (まさか…敵…!?そういえば、追跡車両の改良型が確認されたって本部から通達が来てた様な…)

 

 自身の探知機能では、確かに反応はあることしか分からず、もしかしたら、IFFを偽装してるタイプの可能性も踏まえて警戒していた。

 

 しかし、何かあったとしても、運転しながらいつも持ち歩いてる銃は撃てないし、速度を落とすと追突されたり、反って蜂の巣にされてしまいかねないので、ここは素直に増援を呼ぼうとしていた。

 

 しかし…

 

 「…あれ?」

 

 追い付いてきたのはグリフィンのドライバーの一号車と、M4A1の二号車だった。二台は四輪ドリフトでコーナーを抜け、スオミの運転してる車に迫ってきた。 

 

 二号車に乗り合わせるSOPiiとAR-15の様子については……お察しください。

 

 (グリフィンのマーク…指揮官!?何で二台?)

 

 スオミは後方から来た反応が敵ではなく、味方だったため、一瞬胸を撫で下ろす。だが、同時にどうやって追い付いてきたの…?と驚きを隠せなかった 。

 

 

 

 

 一方、ドライバー達は…

 

 「なぁドライバー、前方に怪しい車が見えてきたんだが……」

 

 ―あれか?ああ、このあと立ち寄る拠点の関係者の車だな。よくこの辺りを走ってるよ―

 

 「そうか……あの車の形は都市でたまに見かけるけど、ありゃどう見ても純正じゃないよな?」

 

 軍人は前方の車についてドライバーに聞いてみる。

 

 ―そうだな、スキー客の車にしては少々騒がしいもんな。悪いがこっちも急ぎだ。追い抜かせてもらおう。…指揮官からM4、車を追い抜くからついて来てくれ―

 

 『了解しました』

 

 速度を上げて二台は追い抜いていった。

 

 スオミは追い抜いていく二台をポカンと見つめていた。

 

 

………………………………………………

 

 「暇じゃのう…」

 「暇ねぇ…」

 

 M1895とモシンナガンの二名の人形が空を眺める。本日は偵察でスオミが出向いたが、今のところは敵の接近やら交戦はない。だが、平和をキープするのも仕事の内なので、おちおちグータラしていてはいられない。たまに人形や物好きな人間が雪山で遭難し、そこから連絡が来ると、助けに赴いたりすることもあるが、その連絡もない。

 

 すると、ドライバー一行の車二台が拠点へと入ってきた。他の軍用車の通行の邪魔にならないように駐車する。ドライバー一行の到着が珍しいらしく、一目見ようと人形たちが出迎えがてら集まっていた。これは、まるでラリーカーに群がるギャラリーを彷彿とさせている。

 

 

 ―やあお嬢さんたち!お騒がせして済まないね!―

 

 ドライバーは出迎えてきた人形たちに突然の来訪に対して詫びていた。

 

 「よく来たのう指揮官。突然どうしたのじゃ?難所前にセーブでもしに来たか?」

 

 人形たちの中の一人、M1895が声を掛けてきた。

 

 ―ははは、今はサーバーに自動でアップロードする時代だぞ、ナガンM1895。実は急務でこの先の雪山に用事があってね。一先ず、そこへ行く前にタイヤの交換と補給にな。あ、軍人、トランク開けるから、積んできたスパイクタイヤを下ろしてくれ。交換するぞ―

 

 「わかった」

 

 軍人はハーネスを外し、車を降りる。

 

 「手は足りそうか?」

 

 ―ああ。すぐ済ませるから平気だよ―

 

 

 ドライバーも車から降りる。

 

 「こんにちは、みんな。忙しい時にごめんね…?」

 

 

 M4も現地の人形たちと挨拶を交わす。応対した人形は最近は暇で来訪なんて物資搬入の人くらいしか来なかったと話していた。一方で、SOPiiとAR-15の二人はどこかげっそりしていることを集まってきていた人形の一人が気付く。

 

 「ねぇM4A1…あの二人、どうしちゃったの…?」

 

 M4は疑問に思い、助手席と後部座席を見る。

 

 

 「やっと…ついたわ…」

 「一先ず…第一関門突破…だね…」

 

 「ふ、二人とも大丈夫!?」

 

 二人の様子にM4は驚く。車から降りると、途端に回復して「うん、まだ生きてる…!」と認識しながら、ドライバーの指示に従い二号車でもタイヤ交換の準備へ取り掛かるため、トランクを開けて工具とタイヤを降ろす。

 

 ―軍人、タイヤ交換はやったことあるか?―

 

 「もちろんだ。訓練の時も散々やったけど、元いたうちの部隊だと常にね…」

 

 レンチを受けとる軍人。どうやら元々属していた部隊では、車を使った移動中にトラブルが多く見舞われていたという。ドライバーは肩に手を置いて『そうか…大変だな…』と同情の意を表していた。軍人はそれに無言で頷く。どうやら苦労が絶えなかったようである。

 

 

 

 そして、ドライバー一行はスパイクタイヤに履き替え、燃料補給を済ませた。不凍液については、ドライバー曰くこの日に備えて二台とも特別製を入れてきたため、交換の必要はないとのことだった。決して難しい作業ではないために、あっという間に作業は終わった。

 

 

 「ふう、作業が終わったな。にしてもこのタイヤ…スパイク多くないか?」

 

 ―ああ。この日のためのスペシャルタイヤだ―

 

 「しかし、こんなに細いタイヤで走れるものなのか?トゲトゲがついておるが、何だかいつも見るのよりも頼りなさそうじゃのう…」

 

 二台を見ると、いつものタイヤよりも細かった。ナガンたちの乗ったりする軍用車の類いと見比べると差異がはっきり出ている。

 

 ―心配ない。このスパイクタイヤについてだが、インチを小さくしているのは、接地面の面圧を上げ、このトゲトゲをしっかり食い込ませるためだ。そうすると、しっかりとグリップ力を発生する。…そうだな…鉛筆がタイヤ、道が手のひら。尖ってるのと平らなのを手に押し当てたら、どちらが食い込む?――

 

 「前者じゃな。だがどちらも痛そうじゃのう…」

 

 ―そういうことだ。今回のケースにおいて、ここから先の雪道をこれで走るのには最適なんだ。ちゃーんと車体のバランスも考えてチョイスしてきたぞ―

 

 ドライバーがいう『今回のケース』というのは、車の性能や道の性質などのことである。話がややこしくなるためそう纏めた。それなら誤解はしないだろう、というドライバーの考えであった。

 

 彼はおまけに二台とも搭載火器等を搭載してる訳ではないため、細くしても差し障りはないとも伝えた。そこで、ナガンはなぜ武器を搭載しないのか訊ねると、一言『用途外だからさ』とだけ答えた。

 

 ―本当はいつも雪道行くときに使ってるスタッドレスでも良かったんだが、経験上色々踏まえて、だ。それに、戻ったらまたいつものタイヤ戻してから帰る―

 

 「どうしてだ?」

 

 ―粉塵対策さ。舗装した路面を削った粉塵が環境を荒らしてしまう。グリフィンは仕事のために場所構わずスタッド付きのタイヤ使って環境を悪くした、だなんて言われでもしたら、社会的にマイナスだしな―

 

 「そこに関しては感心なのじゃ」 

 

 「なるほどな。それについてはわかるが、ならその原因となるものを使うときヘリアントス氏は納得してるのか?」

 

 ―俺に任せると言い出した程だ。それ良からぬ誤解をさせないためにも、一応こういうことは毎回書いておいてる。今回もそうするさ。許してや、カリーナ・・・―

 

………………………………………………

 

 (報告書纏めるって辛いな、サム…)

 

 その一方。

 基地では、書類仕事をしていたカリーナが心の奥底で呟く。尚、ドライバーの本名は、少なくともサムではない事に留意されたし。

 

………………………………………………

 

 

 「そうか…オンボード映像だけでお腹いっぱいになりそうだけどなぁ…」

 

 ―あれも、受け取った方に誤解をしないためのものさ。それに現地のことを知らないやつにはこれがちょうど良いし、逃走時に飛ばすんだって、道がわからんようでは思うようには離脱できんだろう?―

 

 むしろ、その豪華な報告書を受けとる上層部からしたら、ある意味でドライバーの方こそとんでもない誤解をしているのではないのか、と思っていてもおかしくはない。

 

 「そういえば、ヘリアンが言っておったそうじゃな。『先ず誰もそんなスピードでは走らないしコントロールするやつはいない』…だったかのう?」

 

 ―えー!このご時世、ハイスピードで運転する時の挙動やらコントロールする方法をここまではっきり手解きしてる奴こそ早々居ないと思うぜ?居たって民間人だから、前線なんかに来たがらないぞ?ドーナツ屋のオヤジみたいに相当な覚悟を決めた様な人間以外はな―

 

 「お主くらいしか出来そうなのがおらんじゃろ。…ここだとスオミくらいかのう」

 

 

 「うーん…軍の人間ならば自己責任の上で比較的簡単に誘致できそうな感じはするが民間人だとなー…って、ドーナツ屋のオヤジ何者だよ!?中身は凄腕のコックとかじゃないよな!?」

 

 ―まぁ、確かにただならぬ気配を感じるしなぁ…あのオヤジ、『キッチンで負けたことはない』って豪語してるし…―

 

 「あの、指揮官に軍人さん。御話し中に失礼します。こちらを!」

 

 スオミが声を掛け、あるものをドライバーに渡してきた。気が付くと先程の追い越した車が停まっている。

 

 「これはなんだ…?」

 

 ―ほう、この辺のマップとペースノートのデータが入ったチップだな。まだ持っていてくれたのか?―

 

 

 「はい!すごく参考になりました!」

 

 「ペースノート…?」

 

 ―ラリー競技で、タイムアタック区間、スペシャルステージと呼ぶんだが、その情報を纏めたものだ。コーナーの角度やら路面の状況やらジャンプやら、色々な。元はメモ帳みたいに紙に書いてたんだが、今じゃタブレットを使ってるとこもある―

 

 「ほう、やはり指揮官関連のものであったか。」

 

 ―まぁ…そう思ってくれていいぞ―

 

 ナガンは体格的に運転することが無いが、ドライバーの性質を知るものは大体が軍事目的ではなく、モータースポーツ関連のものと予測していた。自身のAIの検索結果にも該当してる項目がトップに上がっていた。ドライバーはタブレットにカードを挿入して認識させると、ロードマップとペースノートのアプリが表示され、データが表示された。走り慣れてるドライバーには必要がないが、もしもの時に備えて持っていくことにした。特に敵に追い回されたときに備えて。どのルートを走るにせよ、飛ばすならばそれなりに体勢を整えた方がいい。

 

 スオミ曰く、途中は雪崩が起こり、会敵の懸念から除雪ができないままになってる所があり、書き加えたところがあると話していた。ドライバーはその位置を確認し了承。軍人にタブレットを手渡す。

 

 ―軍人、この前の任務みたいに、ナビシートで読んでもらっても良いか?ペースノートがあると、飛ばす時、比較的安心でな―

 

 「ああ、良いだろう。俺もお前のペースノートの内容には、興味がある!」

 

 笑顔で快諾する。

 

 ―ははは、そうかい?それなら良かった。じゃあ頼んだ。あ、スオミ、M4たちにペースノートとマップは渡したか?―

 

 「はい!先程、データのコピーをお送りしました。これで雪山もバッチリ行けますよ!」

 

 M4が運転席に乗っている時点で、既に違う意味でバッチリであることに、スオミは気づいているのだろうか。笑顔なので、恐らくM4のヤバさを知らないのだろう。

 

 

 ―そうか…さて、これからが山場だ。雪山だけにな。この後、もっと雪が降るって、気象予報士のキハラさんが話していたが…―

 

 すると、M4たちがやって来て…

 

 「え?モリタさんは曇りって言ってましたよ?」

 

 

 ―な、なんだって…?―

 

 ドライバーはM4の発言に耳を疑った。

 

 ―時にナガン、誰の予報をよく聞く?―

 

 あえて現地民のM1895に訊ねる。

 

 

 

 

 「まゆ毛のアイツじゃ!この後晴れとか言っておったぞ!」

 

 どうやら、視聴してる番組には差異があるらしい。

 

 それと、もう一つスオミから受け取った。小さな箱にはこう書かれている。

 

 

 

 "サルミアッキ"

 

 

………………………………………………

 

 

 

 一方その頃。雪山の拠点に潜伏するM16は……

 

 「だぁかぁらぁ~わたしぃ~ひっく…」

 

 「…」

 

 拠点のシェルター内にある小さなキャビネットの上にはコップ二つとウィスキーが置かれている。

 

 M16は窮地に立っていた。

 

 事は数分前。ここにある人物がやって来た。それは鉄血ではなく、とある戦術人形であった。特徴としては涙のタトゥーが入っている。M16は因縁があるようで、最初は突然現れる謎キャラ的な登場の仕方で、空気も張り詰めていた感じで、M16は銃を突きつけてくるものかと思い身構えるが、なんと突き付けてきた物は、酒の入った瓶であった。警戒してスキャンするも特に細工などされてない。市販されている普通の酒である。

 

 『付き合いなさい!拒否権はないわ!』

 

 M16はこの戦術人形の事を知っているのか、断ったら拗らせそうな雰囲気を感じ、仕方なく呑みの誘いに乗った。

 

 そして、相手の戦術人形が一口付けた途端……こうなった。

 

 ベロンベロンも良いところ。

 

 「いいわよねぇ~あんたのとこには指揮官がいれさぁ~どんなひろかわからないろもぉ~あぁ~わらしたちにも指揮官がいたらいいのにぃ~ひっく…」

 

 呂律が回っていない。

 M16は翻訳機能を試してみた。

 

 すると…

 『良いわよねぇ、あんたには指揮官がいてさ…どんな人かわからないけど…嗚呼、私達にも指揮官がいたらいいのに…』

 

 となる。

 

 愚痴であった。

 

 「さぞマトモなおひとなんれしょうれぇ…」

 『さぞマトモなお人なんでしょうね…』

 

 

 (うーん……それについては何とも言えん…どうしたものか…)

 

 言い出せないでいた。現在AR小隊を預かっている指揮官が、あのドライバーだなんて。きっと彼の話を聞いたら幻滅するどころか信じないだろう。おまけに、余計に面倒なことになりかねないからそこは濁しておくことにした。

 

 M16一口飲むと、416の持ってきたのは良い酒であった。そう、酒だけは…。

 

 「なぁ、ここはバーじゃないんだぞ?」

 

 

 

 M16は、その一言の後に一呼吸起き、目の前でベロンベロンに酔っぱらってる相手の名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…416」

 

 「らによぉ、わらしはかんぺきなのよぉ~?」

 (何よ、私は完璧なのよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ダメだこりゃ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 【M16のメモ】

 よい子の皆!

 416にアルコール飲料を飲ませるなよ?

 ダル絡みしてきたり、他にも色々大変なことになる。

 

 いいか、もう一回記しておくぞ。

 

 間違っても、ふざけてても、416にアルコール飲料なんて飲ませるんじゃないぞ?

 

 お姉ちゃんとの約束だ!

 




需要は無いと思いますが…
 取り合えず用語解説してみた。
 
 ※作者調べ。
 
 【ペースノート】
 作中でドライバーが話していたのと同様、ラリー競技のタイムアタック区間の道の状況(カーブのキツさやら路肩に何があるか、など)をメモしたもの。なぜこれが必要かというと、サーキットと異なってラリーは数百キロメートルに及ぶこともあるので、運転手一人ではほぼ不可能。そこで、ナビシートに『コ・ドライバー』と呼ばれる人が座り、それを読み上げ、運転手を補佐する。因みに、ペースノートとは別にロードブックと呼ばれるものも渡されるが、これはペースノートとは別で、競技用の区間がどこにあるか等を記したもの。
 作中でスオミがドライバーたちに渡したのは、ドライバーが暗記しきったのか、拠点に昔置いていったもの。M4たちは人形故にインストールすればいいが、ドライバーと軍人は一応生身の人間なので必要である。
 
 
 
 【コ・ドライバー】
 ドライバーのサポートを勤める。ラリーではドライバーとコ・ドライバーの二人一組で挑む。ナビタイムのCMでヘルメット被った人みたいなのが隣に乗っていると思えばイメージしやすいかもしれない。
 
 コドライバーはドライバーの体調を聞いたり、打合せしたり、コース上で車が故障すると一緒に応急処置したり、色々と忙しい。競技中は、二人の信頼関係の上で成り立ってます。
 
 Vol.7の始めの方で、軍人みたいにコ・ドライバーの立場の人がペースノートをうっかり読み飛ばすと、大変なことになる。
 (作中はドライバーが上手いこと危機を回避していましたね…)
 
 ほら、時間ピッタ(強制終了)
 
 
 
【スパイクタイヤ】
 媒体により、スタッドタイヤとも呼ばれる、雪用のタイヤ。ドライバー(指揮官)がスオミたちの拠点で履き替えていたもの。スタッド、またはスパイクとは、金属またはゴムの鋲(びょう)がトレッドに打たれているタイヤ。
 
 ドライバーは軍人やM1895たちに分かりやすく伝えるために『スパイクタイヤ』とあえて呼称している。タイヤ自体が細いのは、タイヤの面圧を上げてしっかりスタッド(鋲=びょう)を食い込ませてグリップ力を確保するためである。太いと反ってグリップしないことがある。
 
ドライバーの車は火器を搭載していないため。逆にいうと、火器を発射するためにはしっかり車体を支える必要があるので、作中の様にやたらと細いタイヤは履けないからである。
 
 ※ナガンは突起してる鋲の部分をトゲトゲと表現している。
 
 ※現実世界では、スパイクタイヤのままアスファルト路面走ると、路面を削ってしまうため、その粉塵による公害が懸念され、法律や条例で規制されている。しかし、一部の車両、緊急車両、身体障害を持つ人が運転する車は適用されない。
 積雪も凍結もしてない、舗装されてるところは原則禁止。積雪や凍結してる地域はOKだったりする
 (その地域によるのでご注意下さい)
 
 ※実は1959年にフィンランドで誕生した。
 
 
 
 
 
【スタッドレス(タイヤ)】
 一般的に冬タイヤとか呼ばれたりするもの。雪国に住む方々からすれば必需品。スタッド(ナガンの言う"トゲトゲ"=鋲)の無い(レス)タイヤという意味。
 
 雪用なので無論グリップ力は確保できるが、ドライバーは万全を期してスタッドレスを選ばなかった。
 
 現実世界では、品質も向上してるので少なくなっているらしい。日本国内のラリーでは、粉塵の事もあってか、スパイクタイヤが使用禁止されてるのでスタッドレスが使われている。
 
 ドライバーがこれを選ばなかったのは、単に雰囲気で着けているわけではなく、経験上、雪道の危険さを認識してるため(過去編フラグ?)。
 
 
【サルミアッキ】
 フィンランドの飴。味は…お察しください
 
 
 
 

ラリー見てると思うんですが、フィンランド出身の選手はヤバい(語彙力)
 
 
 
 
さて、次回はM4が……


……というわけで、次話に続きますので、お楽しみに!←


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Vol.9 教(狂)材の効果

M4のキャラ崩壊注意。




引き続き、酔っ払いと化した416の酒乱に付き合わされるM16A1。

 

 すると、拠点ことシェルターの出入り口に

 

 

 

 「そこにいたのね?」

 

 

 また別の声が聞こえた。

 

 「…お前か」

 

 訪れた誰かに向けて、M16は疲れたような声で言った。

 

 「ふふふ♪…もう!416ったら…」

 

 「Zzz…」

 

 「寝てしまったよ。それで?こいつの後始末を付けに来たのか?それだけとは限らん様にも見えるが?つか早く連れ帰ってくれ…」

 

 416の様子を見る『誰か』に向けて、問うM16。誰かは考える素振りをしつつ

 

 「そうね…416のお迎えも用事のうちよ」

 

 「それで、本当の用事は何だ?UMP45」

 

 「ふふ♪そうね、今仕事を終えて帰る途中なの。ついでにそこの酔っ払いを迎えに来ただけよ」

 

 M16は指揮官いないのに大したもんだな、とため息をついて返した。UMP45は明らかに胡散臭そうな笑みを浮かべている。

 

 「この程度は『9』一人でも十分よ。あ、416には休暇を与えたの。結構頑張ってくれたからね。あと、416はあなたに殺意なんてないわ。少し気に入らないだけよ」

 

 「わかってる。だから飲みに付き合った。その結果、この有り様なんだがなぁ…」

 

 「分かってるわ。だからこちらも…ごめん、私普段飲まないの…」

 

 「ハッそりゃ助かった。じゃあ、早速私も移動しよっかな…」

 

 M16が立ち上がると、45が立ち塞がる。

 

 「待って。今帰っても命を落とすことになるだけよ」

 

 「…ほう?試してみるか?私だって16LAB製だ。それより45…」

 

 「なぁに?」

 

 

 

 

 

 

 「胸部装甲について言きゅ…」

 

 

 「立 っ た ま ま ス ヤ れ !」

 

 

 「ウワー助けてくれ416ー」

 

 M16は横にいた416を咄嗟に盾にする。

 

 「ベフゥッ!!?」

 

 45の無慈悲な一撃が416を襲う!

 

 こうかは ばつぐんだ!

 

 416は再び眠りについた。

 

 「スヤァ…」

 

 人形なので身体は無事だが。起きることはないのでそのまま寝かせる。

 

 「って、待て待て!さっきのは冗談だ!餅つけ!じゃなかった落ち着け!」

 

 45をなだめるM16。そして、落ち着いたところで話を切り出す。

 

 「今回の依頼で…何か分かったか?」

 

 「もっと近寄って」

 

 「ん?」

 

 そっと近寄る。すると耳打ちで45は言おうとするが息が掛かる

 

 「ちょ…やめろよくすぐったいな…」

 「…。いいから来なさいっての」

 

 なんか目がマジなので、改めて近づく。

 

 

 

 「『雨が降った、平原に。』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?キハラさんは雪降るって言ってたぞ?」

 

 「天気予報じゃないっての!…1500から1700の近距離で入手した通信記録よ。検索結果41960個。そのうちあれに言及し基本戦術の常識に合わない文字列は…」

 

 「8・1・ゼ…」

 

 「どこからそんな数字が出てくるの!?そんな要素はないわよ!…興味があるなら、この比較図を見て。さらに重要なのは…」

 

 「なるほど、わからん。誰でもわかるようにkwsk」

 

 

 「あなた、まさかシングルコアだなんて言わないでしょうね…?……まぁ、あなたたちを『生み出した者』なら、この意味がわかるかもね」

 

 M16は45の言っている言葉に対して「どう言う意味?」と疑問符を上げるが、45は寝ている416をかつぎ上げ…

 

 「とにかく、お先に失礼するわ。仲間さんに合ったらよろしく伝えておいて?」

 

 「お前らは死んだって言えば良いんだろ?わかってるよ…」

 

 「デュフフwwwサーセンwwwそれじゃ、ばいにー☆」

 

 45は416を担いで去っていった。

 

 

 

 

 

 「うわ寒ゥゥッッ!!?うぅ…早く帰ろ…」

 

 外の寒さに驚く45だった。

 

 一人残されたM16は、後は合流地点にグリフィンの仲間が来るのを待つのみだった。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 一方。ドライバー一行の方では…

 

 

 一般車両通行禁止の看板を通り過ぎつつ、冬景色の交差点を四輪ドリフトしながら左折していく二台の車。先行する車はグリフィンのドライバーが、そしてその彼が指揮しているAR小隊のM4A1が後続する二号車を駆る。看板を倒さなかったのはドライバーなりの思いやり。

 

 ……でもあるのだが、正直のところ、看板に当てるとそれ自体の弁償だけでなく車のバンパーを傷だらけにしてしまうことを避けたかったため。

 

 グリフィンカラーのその二台は、そのまま道なりを飛ばし、M16が指定してきたグリフィンの拠点ことシェルターを目指していく。この辺りは近道できそうな所もある。ドライバーの方では軍人がタブレットからペースノートを読み上げつつ、走らせ続けている。M4たちはデータをインストールしてあるため、単一でも走れている。

 

 

 

 

 同時刻、その先にひっそりと設置されている鉄血の司令拠点では、鉄血人形のハイエンドモデル、イントゥルーダーが待ち構えていた。お昼のロードショーを電波ジャックして視聴していた真っ最中であった。

 

 

 「ふふふ♪この大きな音は……来ましたわね。グリフィンのドライバーさん。…そろそろアクションシーンはいかがかしら?」

 

 アクションものの『御約束』を守って部下の人形兵部隊たちを送り込む事を考え付いたイントゥルーダー。微笑みつつ見据える…が、ドライバー一行からしたらありがた迷惑この上無い。

 

 一応、処刑人やハンターなどとは異なり指揮タイプの彼女からして、ドライバーと真っ向から勝負すると、一緒に攻めた部下の貰い事故に巻き込まれ兼ねないため、先ずは離れたこの位置からメガホンを取ることにした。

 

  

 

 「あら?に、二台…?」

 

 何かおかしいと感じてズーム機能で見てみると、グリフィンのドライバーの車が二台確認できた。おかしい、自身のカメラは正常だと自己診断の結果が出た。そうなると、車体に刻まれているアラビア数字を確認すると、二台体勢でやって来たということを理解する。どちらがドライバーなのかはわからない。

 

 (先頭かしら?いやいや、こういうシーンって映画とかだと本物は後続だったり、またはどちらでもなかったりしますわ…どちらなのかしら…?)

 

イントゥルーダーは、よく海外ドラマや映画で見かける、実はヘルメットや服装で変装してわからなくしていた可能性もあると判断していた。が、結局そんなことしなくてもドライバーが先頭なのだが、イントゥルーダー側からしては、どうにも勘繰ってしまい、断定は出来ずにいた。

 

 すると、部下の人形兵たちから連絡が入ってきた。

 

 『こちら100(ワンオーオー)、スパイクタイヤに履き替え、追撃準備が整いましたー』

 

 『こちらはスノーモービル部隊、スタンバイOKでーす』

 

 『ポイントブラボー、挟撃準備完了!』

 

 

 

 「よろしいですわ。では、スタント無しの一発撮りで決めますわよ。では…作戦開始(アクション)!」

 

 

 イントゥルーダーの掛け声で人形兵たちは行動を開始。100の追跡車両とスノーモービル部隊はドライバーの一号車とM4の二号車の追跡を開始。挟撃のための別動隊も待ち構えることに。

 

 

 「さあて、グリフィンのドライバーさん?どの様に魅せてくれるのかしら…?」

 

 イントゥルーダーは、ワクテカしながら正座で映像を見ることにした。

 

 

 

………………………………………………

 その頃。

 

 『M4から指揮官へ!鉄血の追跡部隊が接近中!』

 

 二号車のM4からの通信。

 

 

 ―了解だ。……うん、この絶妙なタイミング…アイツらを誰が寄越したか、検討は付いてるぞ―

 

 「一体誰なんだ?」

 

 ―鉄血のハイエンドモデル、イントゥルーダー。カタログからして指揮を専門とするタイプらしい。しかも、あいつは鉄血人形の癖して海外ドラマや映画のファンなのか、戦場を金曜ロードショーか何かと勘違いしてやがる―

 

 ドライバーのジェスチャーに唖然とする軍人。『また随分とフリーダムな奴だな…』と言いつつ、再びペースノートをまた読み上げていく。

 

 「おっと、次はミディアムレフト!500!プラス、プラス!イージーライト―――」

 

 プラスとは『加速していけ』、という意味合いで使われる用語。二つ連続すると『もっと加速しろ』となる。軍人も、以前よりもドライバーのやり方に確実に慣れてきていたのだった。

 

 

 

 M4たちも頑張って付いてくる。しかし、彼女の教材はイ○Dとバーンア○トであることを留意してほしい。

 

 

 ドライバーは先程の拠点到着後からM4が荒すぎる運転をしてないことを、ミラー越しにちょこちょこ確認している。今のところは無い。しかし敵の追跡車両が来た。しかも100(ワンオーオー)の改良型も。そのさらに背後からスノーモービルに乗った鉄血兵たちが迫ってくる。

 

 すると、前方に分かれ道が見えてきた。右は湖、左は緩やかな森の道路。

 

 

 「マップからすると、どっちへ言っても待ち合わせ地点に行けるみたいだが…」

 

 ―その様だな。M4、敵の数が多い。一旦分かれて分散させるぞ。左の道へ行ってくれ―

 

 『了解!』

 

 指示に従い、M4たちは左、ドライバーは右の道へ進む。

 

 そして、ドライバーは100を引き付けるため湖沿いを進んでいく中、M4たちの方にも、後方から追っ手のスノーモービルや追跡車両が複数追ってきていた。

 

 

 「迫ってきた!」

 

 「え、M4…頼むから無茶なことだけは…ひゃあっ!?」

 「めっちゃ押し寄せてきてるよ!」

 

 

 「心配ないわ二人とも、この日に備えて、ロードレイジとクラッシュモードをこれでもかってくらいプレイしてきたんだから!!」

 

 

 M4の発言に驚愕するSOPiiとAR-15。冷や汗が出て寒気を感じる。

 

 この二つの単語は、シリーズを知るものからして言うまでもなく大変リスクの大きな行為である。

 

 

 「余計に心配よ!?」

 

 「それに、ぶつけたら指揮官に怒られちゃうよ!?」

 

 思わず声を上げる。

 確かにそれもある。車を大事にするドライバーからの借りもの。壊して恩を仇で返す真似は避けたい。しかし、このまま何のアクションも起こせないまま敵に捕まっても、それこそドライバーの顔に泥を塗る事になる。常にヘルメットでガードしているのだが。

 

 

 

 

 前方では…

 

 「ふふふ、どうやらドライバーじゃないな!さあ止まるがいい!!ここでぶつけて免停など嫌だろう?ホラホラホラホラ~」

 

 挟撃のため待ち構えていた鉄血のスノーモービル。鉄血人形用のためのものか、軽やかな動きで翻弄しようとしてくる。というか、

 

 しかし、M4はここでアグレッシブな走りが出る。

 

 「あ、おい!からかっただけじゃないかうわなにするやめr」

 

 M4が駆る2号車は突如ペースを上げてバンパーで押してきた。押されたスノーモービルの人形兵はそれに驚いてバランスを崩し転倒する。

 

 

 挑発に乗った訳でなく…

 

 

 「すっごーい!レースしてりゅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 むしろ楽しんでいた。俗に言う目がイッている状態。助手席のAR-15と後部座席のSOPiiはM4のまさかの一面に絶句。

 

 「……ちょ、ちょっと、M4どうしたの!!?」

 

 「し、指揮官大変!M4が壊れちゃった!!」

 

 

 ある意味異常事態。SOPiiは指揮官に繋げた。

 

 

 ―ビビってないなら大丈夫だ。だが、乱高下させないように。なんでもいい、こうなれば、M4の士気を維持させるんだ―

 

 「士気を上げるって言ったって…あ!」

 

 そう言えば指揮官の車って…と、思い、ステレオシステムを開く。いろんな曲がズラリと並ぶ。多分これもカリーナってやつの仕業。

 

 『AR-15、聞こえる?』

 

 M4に聞こえないように、AR-15に通信を繋げた。

 

 『な、なによぉ…?』

 『M4を誉めて!誉めるの!』

 『誉める…?そうね…!了解よ!』

 

 「い、いいわ…ひゃあっ!?い…良いわよM4!」

 「良いよ!行っけぇM4!…それとミュージックスタート!」

 

 SOPiiが適当に選んだ曲は……

 

 

 

 

 "B'○ Fricti○n"

 

 

 

 

 「うふふふ!うふふふふふ…!」

 

 

 ((なにこれこわい…))

 

 

 

 

 「…奴の車が迫ってくぁwせdrftgyふじこlp」

 

 不意に幅寄せしてきた二号車に、鉄血の追跡車両がコントロールを失い、失速していく。

 

 「M4!い、良い感じだよ!」

 

 荷重移動や凸凹、接触の衝撃で揺れる車内。その後部座席からSOPiiはM4を褒める。

 

 「きゃあっ!?いいわM4!このまま鉄血共をぶっちぎっちゃいなさい!ひぃ!?ぁぅぅ…」

 

 恐怖で若干ゃ涙目になりつつ助手席のAR-15も続く。

 

 

 

 

 一方…

 

 「おい!なんだよいきなり!ってうわっ…!?」

 

 鉄血の追跡車両はM4に幅寄せや接触を食らい、避けようとしたが急操作によりコントロールを失い、路面の凹凸に乗り上げたり、衝撃で跳ね返ったりして、派手に横転してしまった。スノーモービル部隊の人形兵は混乱して何が起こってるのか認識しきれないでいる。

 

 続いて、挟撃するために来たが間に合わず並走しようとしてきた追跡車両に接触。接触された追跡車両は接触により、道を外れて木々に激突し、クラッシュ。スノーモービル部隊も自ら転倒したり、ぶつけられて吹っ飛んでいく。

 

 尚、接触した二号車には、塗装に傷が入っていた。

 

 「や、やったね!またテイクダウンが決まったよ!」

 

 「こ、これまでにない上手さよ!M4!(ああっ、神様ぁ~……)」

 

 無理矢理テンションを上げるSOPiiに、一方AR-15の表情は絶望の色に染まっていた。

 

………………………………………………

 

 「ドライバー、M4A1たちは…どうなってると思う…?」

 

 ―想像したくないな…だが、メカニックたちに頼んで二号車に取っ付けさせた『装甲アウターパネル』の強度を信じるしかない…―

 

 

 ドライバーは基地を出る前、メカニックに二号車に細工を施させた。本来はヘリアンの肝を冷やさないためにクルーと悪ノリして作った頑丈なアウターパネル。一応は装甲板なので、鉄血の追跡車両ならぶち当ててもビクともしない。フェンダーやバンパーが何時ものと同形状のため、空力が変わらない。しかし、重量が増加するため、あちこち強化補強してあるとは言えど、支えている足回りなどに対してデメリットも孕んでいる。本当はドライバーは速く走れないからと言って付けたがらないが、M4に渡した『アノ教材』が原因で凶行に及んでも良いように取り付けさせていたのだった。

 

 「装甲?二号車にそんなもんつけてたのかよ…!?」

 

 軍人は出発前にシャッターがしまっていたのはそれに換装していたためだったと合点が行った。

 

 「一応聞くけど、もしや、余ったリアクティブアーマーみたいなものとかじゃないよな?」

 

 ―あれは16LABから譲り受けた普通の装甲母材だ。それにこの車とスペアの車は、元から装甲板なんて付いてないから、変にリアクティブアーマー仕込むと、炸裂した時に車内も危険が及ぶことがある―

 

 「なるほど、通りで基地の二号車のところだけシャッターが閉まってたわけだ」

 

 ―ああ、準備中の時にメカニッククルーの皆に頑ってもらってたんでな。こうなりゃ、二号車が自走可能な状態で帰ってくることを祈るしかない。軍人、次のコーナーから続きを頼む―

 

 「わかった!……4ライトタイトゥーン ドントインカット!200!2レフトオープン オーバークレスト イントゥ 2ライト!80!コーション――」

 

 ―スオミのやつが新しく書き加えた所だな…良いだろう、続けてくれ―

 

 ペースノート通りに走っていると、やはり雪崩により雪でうまり、道幅が狭まっていた。スオミの話していた書き加えたところである。しかも、ドライバーのペースノートはイージー、ミディアム、オーバーとコーナーの角度を記していたが、スオミが書き加えた部分は、より細かく明記されていた。記号の読み方まではやり過ぎてるとは思うが、それはスオミの几帳面さなのだろうとドライバーと軍人は思うのだった。

 

 

 ………………………………………………

 

 「Yah○oooo!!」

 

 

 その頃、激しい走行に謎の掛け声を上げるM4に…

 

 AR-15は…

 

 「ぐ、グー○ルぅぅぅ~!!」

 

 SOPiiは…

 

 「ルナス○ープぅぅぅ~!!」

 

 と、謎の掛け声で続いていた。ドライバーの言っていた『装甲アウターパネル』と、M4が『教材』から学んだことのお陰により、追ってきた鉄血の追跡車両とスノーモービル部隊を掻い潜る事に成功していた。無惨な姿になった追跡車両と転倒したスノーモービル部隊たちがそれを物語っている。

 

 車は接触はしたが、多少の傷が入っただけで済んだ。流石に中身へのダメージは分解してみないとわからないが、今のところは無事である。

 

 

 ここまで続いていたこのノリについて、ワケがわからなくなってきたSOPiiとAR-15は、とりあえずそろそろ落ち着かせても良い頃合いと見て、BGMのボリュームを下げる。

 

 「やったよ!オールクリア!」

 

 SOPiiは敵が追ってこなくなったことを喜ぶ。

 

 

 「はあ、ヤバイわこれ…はぁ…ぅぅ…」

 

 「AR-15!?しっかりして!まだ付いてないよ!」

 「SOPii、安心して、生きてるから…ちょっと混乱してるだけ…やったみたいね?」

 

 「後は指揮官とM16姉さんと合流すること…この先にいるみたい」

 

 興奮が収まったのか、M4は冷静に言う。

 

 「と、止まってるって事は…」

 「M16の所だね!」

 「このまま真っ直ぐ行くわ」

 

 「「え?」」

 

 SOPiiとAR-15は耳を疑った。目の前の道は急な下り坂。

 

 「待って!そのまま乗り上げてジャンプは流石にマズイわよ!?」

 

 「下手したらぺしゃんこだよ!?『マジやられた!』どころじゃなくなっちゃう!!」

 

 「大丈夫、ここは任せて!今年のコ○ンズ・クレスト賞は私がもらったわ!」

 

 

 

 「「ここはスウェーデンじゃなーいッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 SOPiiとAR-15の叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 そして、現在…

 

 ドライバーたちは一足早く到着していた。目の前で銃を向けられるも、味方だとわかったのか、すぐ下ろされる。

 

 「あれは人形か?今銃を下ろした、あの黒髪で金メッシュのが …ええと…」

 

 ―そう、間違いない。アイツがM16A1だ。合図を送ってみよう。おーい―

 

 ドライバーは窓から手を出してヒラヒラさせる。

 

すると、M16がドライバーの車のところに近寄ってくる。途中、雪で少し足を取られ、こけそうになりつつも、近くまで来た。

 

 

 「やっぱり指揮官だったか!はぁ、ビックリしたぞ…?久しぶりだな」

 

 ―ああ、元気そうでなによりだ。そこから近道してきたんだ。帰りは別の道を走った方が良いが…―

 

 湖の方を指してドライバーはジェスチャーを送る。

 

 すると、M16に向けて砕けて粉になった雪が背後から降り注いだ。

 

 M16は咄嗟に背負ってるガンケースみたいなものを盾にして防ぐ、ドライバーはワイパーのスイッチを入れて払う。収まったのを確認して恐る恐る確認すると、そこにはM4たちの二号車が停まっていた。

 

 突然の登場に思わず沈黙するドライバーたち。

 

 「SOPii、AR-15、着いたわ!……あれ?」

 

 ダメージはないが、またぐったりしているSOPiiとAR-15を見てM4は驚愕する。どう見ても自身の運転が招いていたの気付いてはいなかった。

 

 「あ、姉さん!」

 

 ギヤを入れ直し、発進させる。粉砕した雪の塊が段差になっているので、車体を激しく揺らしながらM16の方を目掛け、勢いよく迫ってくる。

 

 

 

 

 「うわあ!?待て待て待て!M4か!?止まってくれ!止まれー!?」

 

 と、慌てて後ろに下がるM16。車は彼女の直前で停車した。下手するとドライバーも巻き込まれかねないため、ドライバーと軍人も肝を冷やす。

 

 

 ―ナイスブレーキング……―

 

 「どこがだよ!!危うく轢きそうになってたじゃねえか!!?」

 

 

 軍人が突っ込む。

 

 

 

 「もしかして…M4、だよな…?」

 

 M16がそう声を掛ける。すると、二号車の運転席側のドアが開き…

 

 「M16姉さん!う、寒っ……」

 

もしかしなくても…運転席から出てくるのはM4である。

 

 車から勢いよく出たは良いが、気温の低さに肩を擦るM4。SOPiiとAR-15は車内に入り込んだ外気により、寒さを感じて目が覚めた様に意識が戻る。

 

 M16を引っ叩こうと体勢を立て直すM4。しかし手を上げた途端、脇から冷風が入り込んでM4は脇を押さえしゃがみこんだ。震えている。

 

 

 

 「サムイ…!サムイィ…!!」

 

 

 

 M16本人からすれば、妹の運転する車に轢かれそうになっただけで、もう十分にお腹いっぱいである。

 

 

 

 「わ、分かったから!!私が悪かった!!だからM4、先ずは腰に巻いてる上着を羽織ってくれ、ほら…」

 

 

 

 「あうう、姉さん…」

 

 

 

 ドライバーは、カリーナ連絡しヘリアンに合流したと伝えろと連絡を入れた。

 M4とM16の今のやり取りを見て、感動的再会なのにどうしてこうも素直に感動的と思えない空気感なのだろうか。軍人はドライバーと審議をしている。

 

 一先ず降り、二人に改めて声を掛けに向かうことにした。最悪はM4が体勢を立て直して、M16に渾身のファ○コンパンチを叩き込もうとするのを取り押さえて阻止しなければならないからだ。周囲を確認しつつ背後からM4の背後にそっと回り込もうとした。

 

 ドライバーの気配に気づいたのか、目からハイライトが消え、しかも半泣きで助けを乞う様な眼差しを向けるSOPiiとAR-15と目が合うも、ドライバーは驚くも口元に人差し指を押し当て、ちょっとだけ大人しくしててな?とジェスチャーを送る。この時、バンパーやフェンダーの傷を至近距離で直視した彼は、思わず顔を一瞬伏せてしまった。それより先ずはAR小隊の事を優先しようとドライバーは割り切ろうとした。

 

 ―これで全員揃ったな―

 

 AR小隊のメンバーが揃ったのを見てジェスチャーする。

 

 「その様だな、指揮官…アンタから来てくれるとは…」

 

 「指揮官!?いつの間に!」

 

 M4は気付いてなかった様だ。

 

 ―M4、もう勘弁してやれよ。心配してたのは分かるが、さっき危うくM16を轢きそうだったじゃないか?万一轢いてしまってたら、悲しいお別れになっていたぞ?―

  

 「う、それは…はい…ご心配掛けました…皆、ごめんなさい…私」

 

 

 「はは、良いさ。今戻ったぞ、M4。SOPii、AR-15も…っ!?」

 

 M16は生気を失いそうになってるSOPiiとAR-15の様子に驚いた。タイミング的にも、ここで事の経緯をドライバーが説明した。軍人が持ち帰ったデータにより其々の位置を特定し、早めに救助に来れたことである。M16はここで改めてドライバーと軍人に挨拶し、二人とM4たちに一言礼と詫びの言葉を伝えた。しかし、気になるのはM4がどんな運転をしたらSOPiiとAR-15の目からハイライトが消えてしまうのか。知らない方が幸せかと思考したのか、あえて聞かなかった。

 

 M16は少し辿々しい敬語ではあるが、感謝の意は伝わってきていた。軍人はドライバー達のように普通に話してくれて構わないと許した。え、そうか?と、いつものフランクなしゃべり方に戻る。

 

 回復したSOPiiとAR-15も加わり、再会を喜ぶ様子を、ドライバーと軍人は静かに見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし。

 

 

 ドライバーは、体と首はAR小隊に向けているものの、目だけは、M16が潜伏していた拠点こと、シェルターの出入り口から続いている、自分達や彼女たちのものではない足跡の方を見ていたのだった。

 

 少し積っているので消えかかっていたが、ドライバーはただ静かにその方を見つめている。その様子は、ヘルメットのバイザーのスモーク、身体の向きもあってか、誰も気付いてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドライバーは、雲行きから天候が晴れつつあることを感じ、『撤収だ』と伝える。M16と合流した事で長居は無用と考え、ナガンたちの拠点へと戻ることにしたのだ。

 

其々は車に乗り込み、エンジンを始動。湖はもう氷が割れているので走れず、マップから本来通る筈だったルートの逆方向を通ることに。

 

 

 「えっと…指揮官。私はどっちに乗れば良いんだ?」

 

 M16は帰り道にどちらに乗るのか疑問に思った。どちらも空いている。しかし、片方はM4の二号車であることを知っているため…

 

 「…お!指揮官の方が空いてるなぁ!よーしそうしよう!そうしよう!」

 

 M16は二号車に危機感を感じ、うまく取り繕ってドライバーの車へと乗り込もうとするも…

 

 がしっと両腕を掴まれる。

 

 恐る恐る振り向くと…満面の笑みを浮かべるSOPiiとAR-15。一人抜け駆けは許さぬ…と言わんばかりの表情。

 

 「M16、どうしたの?こっちはまだ一人分は乗れるわよ~?」

 「そうそう!M4のドライビング、ビックリするよー?」

 

 

 「ヒェッ…」

 

 ―そ、そっちに乗るのか…?なら、M4、帰りも頼むぞ。頼むから落ち着いて運転してくれよ?―

 

 「了解しました。ほら、姉さんも早く乗って!」

 

 「「さあさあ!」」

 

 「え…ちょっとお前ら…待ってくれ…待ってくれよ!おいい!?」

 

 終わった。SOPiiとAR-15にズルズルと牽引されていく。ドライバーと軍人は謝罪と供養を込めた合掌を行う。

 

 M16はAR-15とSOPiiにより後部座席へ。ハーネスを取り付けられる。もう逃げられない。

 

 ドライバーの一号車に続いて出発。

 

 

 

 『うふふふ、うふふふ~』

 『おいM4!?ひぃぃ!?せ、せめてスピードを落としてくれぇぇぇ!!』

 

 M16は、あれから進化した(?)M4の走りに悶絶することになり、楽しそうなM4の歓声とM16の悲鳴が木霊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その背後から

 

  

 

 「ま、待ちなさーい!グリフィンのドライバー!」

 

 イントゥルーダーが追跡車両と共にやって来た。

 

 

 「完全に出るタイミングを間違えましたわ…!!皆の者、であえー!であえー!」

 

 イントゥルーダーは残りの人形兵やらを集めて追い掛けるも…

 

 

 「ん…?何です?この音は…」

 

 

 『イントゥルーダーさん大変です!雪崩!雪崩です!…もうダメ!逃げられまs……』

 

 通信が強制的に切れる。

 

 「え!?ちょっと待って!?…きゃああ!?…こんな結末いやあああああ!!!」

 

 

 

 イントゥルーダーが叫びながら雪崩に巻き込まれていく。まさしく映画のオチにありそうな敵の退場の仕方である。イントゥルーダー自身は壮大なアクションを期待していたが、これではまるで、コメディ系アクション映画に出てきそうな、間抜けな敵ボスみたいな終わり方である。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 一方、またとある鉄血司令室にて。

 

モニターでイントゥルーダーの部隊の状況をチェックしている代理人と、その背後に小柄な人形が一緒にいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「イントゥルーダーの霊圧が消えた…?」

 

 

 

 

 

 

 反応のロストに対して代理人は一言。ドライバー一行をアイスでブレイクしようとした矢先、反ってイントゥルーダーたちがブレイクされてしまうとは。

 

 尚、アイス(氷)というより、雪(スノー)。もっと厳密に言うと、アバランチ(雪崩)である。

 

 

 

 そして…

 

 

 

 

 

 

 「…これで、グリフィンのドライバーは、天変地異すら操る程度の能力があることが判明しましたね」

 

 

 

 

 「いやいや、これどう見たって事故だよね!?ロケ地での事故よね!?」

 

 小柄な人形が代理人の突拍子のない発言にツッコミを入れた。

 

 「という事で、デストロイヤー、次はあなたの出番です」

 

 

 小柄な人形こと、デストロイヤー。彼女は『一部の大きなお友だち』には大好評なハイエンドモデルの人形である。 

 

 「ええ…まぁ、いいですけど…」

 

 「そう言えば……デストロイヤー、あなたペダルに足届きましたっけ?」

 

 「あ…そうだった…!どうしよう…」

 

 代理人の指摘通り、デストロイヤーの体躯では車のペダルに足が届かない。追跡車両すら足がプラプラしていたことを思い出していた。仲間の仇討ちをしようにも、これでは追いかけることもできない。それを考え、がっくりと肩を落としてしまう。

 

 「落ち込むことはありませんよ。ちょっとお待ち下さいね?」

 

 

 

 すると代理人は一旦カメラからフケた。

 

 

 

 「ふぅ…これを使ってください…」

 

 「こ、これは…!?」

 

 代理人は何かを持ってきて見せた。すると、デストロイヤーの表情は光が差した様に明るい表情に変わる。

 

 

 

 

 

 

 果たして、それは一体何なのか。

 

 

 

 

 

 「これなら私でもやれるわ…!見てなさいよ、グリフィンのドライバー!」

 

 

 

 

 尚、鉄血のモニターがタッチスクリーン式なのにキーボードが付いている、他でもない、デストロイヤーのためである。

 

 

 

………………………………………………

 

 後日。

 

 

天候は落ち着き、M1895たちはドライバーの指揮で除雪作業と事後処理のために出向くことになった。ドライバーは除雪車を運転し、軍人と人形たちも周囲を調査していると、雪に埋もれた何かを見付けた。

 

 

 

 

 そして…その更に後日、16LABに機能停止した鉄血人形たちがクール便で運ばれてきて、研究員たちは全員真顔になった。運ばれてきたものの中には、まるでFXで有り金全部溶かした人の顔みたいな表情で機能停止したイントゥルーダーの姿もあったという…。

 





これでAR小隊は全員揃いましたね。ここで一応はAR小隊救出編は終わりです。



…というか、ハイエンドモデルの方々が倒される(?)度に、代理人が名言使ってリアクションするのが本作の定番になりつつあります()

 
  

そして、一時ながらですが…ついにM4がぶっ壊れてしまいましたね…


 
 ドルフロSSでは、ヤンデレなM4たちをよく見ますが、こんなM4たちだって居ても良いよな?と思い、執筆を続けていく内に、気が付けばこうなってしまいました………(^ω^)ドウシテコウナッタ
 

 (イ○D+バーンア○トで育まれたドライビングとかこれもうわかんねえな)


補足ですが、現実世界におけるペースノートはドライバーとコ・ドライバーとの打ち合わせの上、分かりやすいように語源等や読み上げる早さを決めている様で、一概には言えません。おまけに、コーナーとコーナーの間の距離とかも考慮しなければならないので、やはり各々の感覚なのでしょう。

コーナーの難易度を示す部分においては…


ドライバー(指揮官)の表現→イージー、ミディアム、オーバーの三段階。大雑把…?

スオミの表現→コーナーの難易度(角度)を数字で細かく記していた。几帳面…!



しかも、ここまで書き終わっておきながら思ったんですけど、ドライバーは良いとして、素人なのにいきなりペースノート読むの任され、しかもキチンと出来てた軍人、お前一体何者だよっていうwww

(それでも湖のところで読み間違えたり、読み始めるタイミングとかはドライバーが途中「次のコーナーから読んでくれ」って軍人に伝えてましたけど…)





そんなVol.9、M16と合流した途中でちょっと何かありましたけど、また次話をお楽しみに…!


代理人「君の心に、ブーストファイア!」


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Vol.10 雪景色を楽しんでもスタックしたら洒落にならない。

ピエー○瀧氏捕まりましたね…


そういえば、ドルフロ小説ではコラボが流行ってるそうですね?どうしよう…


では、本編をどうぞ。


雪山に建つグリフィンの拠点にて。

 

ここに、またドライバーの車が停まっていた。

 

 「事後処理を兼ねた除雪作業、とな?」

 

 ドライバーはナガンの返答に対し『そうだ』と頷いた。

 M16A1を救出し、一度ナガンたちのいる拠点に戻ろうとしていた途中で雪崩が発生、通行不可能な状況になったままになっていた。

 

 ドライバーはそれを予測していたのかは不明だが、タイミングよくその混乱に乗じて追っ手を振り切った。その追っ手とは、登場するタイミングを思いきり逃したイントゥルーダーたちのこと。その司令拠点が何と近くにあるため、その調査も兼ねている、とドライバーは伝えた。

 

「私たちも行くとなると、拠点はどうするの?」

 

 ―それなら心配ないぞ。寒さに強そうな奴等を連れてきたからお前たちは拠点に居てくれ…あ、来た来た。おーい―

 

 上空から輸送ヘリがやって来た。着陸すると、ドライバーの基地所属の人形達が降りてくる。それは、9A-91、As-Val、Ots-12たちを始めとするロシア製銃器を持つ人形たちであった。

 

 というか、どの人形も、如何にも寒そうな服装である。

 

 9A-91においては服の一部が肌が透けているくらいに薄く通気性が良さそうで、As-Valは前を大胆に全開にしており、Ots-12はふとカメラ目線で… 

 

 

 

 「これ人選平気?」

 

 「Ots-12、誰に話してるのじゃ?」

 

 「天の声」

 

 ―おっとティス、そこまでだ―

 

 きっとドライバーは、薄着をしてるのだから、『この程度寒くなんてないZE!水着でも行けるZE!!!』と訴えていると勘違いしているのかもしれないとナガンたちは推測する。というより、この三名は夜間戦闘に強い仕様だったはず。

 

 だが

 

 「指揮官、ここそんなに寒いですか?」

 

 9A-91が訊ねてきた。

 

 ―充分に寒いと思うけどな…―

 

 「そう、ですか?この程度なら…常温…です…!」

 

 隣のAs-Valもオドオドしつつも、頷きながらそう続く。

 

 

 (((ええええええええ)))

 

 おかしいよこの子達どうなってるの…?とナガンたちは驚愕する。と言っても、生まれの国は元より極寒で有名。M1895(ナガン)とモシンナガンたちだって、その元となる銃は同じく寒い所で生まれている

 

 「ティスちゃんはどうですか?」

 

 9A-91に訊ねられたティスことOts-12は、少し考え…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…極寒」

 

 表情を変えずに一言で答えた。

 

 正直者であった様である。

 

 「ほら私、秘密兵器だし。表情を悟られちゃまずいじゃない?」

 

 「にしては正直にぶっちゃけたな…?」

 

 軍人は突っ込む。

 

 「むしろ、この寒さで暑いとか言う方が、どうかしてるわ…」

 

 ―まぁ、確かにな―

 

 「というかティス、お主は誰に話し掛けておるのじゃ?」

 

 

 「…天の声」

 

 

 ピュー、ピュー(口笛)

 

 …かくして、ドライバーの連れてきた増援の人形たちを拠点防衛と除雪作業とで分担し、出発した。ドライバーは除雪車を運転し、軍人は補助として付いていく。先程会話に混ざっていた9A-91たち三名は除雪作業に回ることとなった。

 

 軍人は現在除雪車の助手席に座り、ドライバーの補佐をしている。

 

 「ドライバー、まもなく雪崩で道が狭くなっていたところに着くぞ」

 

 ―ここだな…―

 

 除雪車の前方についたドーザーが、雪を道路の片隅へと押し退ける。M16の回収後、雪が再び積もったのか、かなり深い。

 

 「この前通った時は一瞬だったけど、よく通過出来たよな…」

 

 軍人はペースノートで雪崩が起こって道幅が狭くなっていた時の事を思い出す。ドライバーは軍人が読み上げるペースノートを頼りに走り抜けた。

 

 ―ああ、あの時は一車線だけ辛うじて通れたからな。ならばそういうコーナーだと思って攻めるまでだ。下手に乗り上げると事故の元だしな。それに、どんだけ走破性の高いクルマであろうと、ある程度は除雪しないと走れないんだ―

 

「そうか…軍だと横着して戦車でいけるだろって無理やり道路を除雪することがよくあったな…それで結局、どこかしらにスタックさせてしまうけど」

 

 

 

 軍人は、本来所属している軍本部でかつて行っていた除雪作業の事を思い出していた。

 

 ―わかるよ…一帯を雪に覆われてると、走ってるのがどこだか分かりにくいもんなぁ―

 

 「そうなんだよ…聞いてくれ、こことは違う所を去年除雪しに行った時さ…」

 

 緊張感無く駄弁りながら作業を進める。そんなこんなで除雪は滞りなく進でいくのだが、M16を回収作戦の帰り道で通った道まで来た時…。

 

 「ん?どうしたんだ?急に停まって…」

 

 ドライバーが除雪車が突如停車させた。軍人が訊ねるとドライバーは前方を指さす。すると、そこには人の手の様なものが雪の中から見えていた。軍人は思わず驚いてしまった。

 

 

 まさか死体…!?

 

散々訓練やら前線勤務やら、つい最近はドライバーとの任務で引き金を引いてきた軍人だが、それでも目の前に現れたソレに驚いてしまう。

 

 

 ―降りて確認してみよう―

 

 パーキングブレーキを掛けてドライバーが降りていく。

 

 「え?あ、待ってくれ!俺も行く!」

 

 軍人も銃を手に車を降りる。

 

 ドライバーは、一緒に連れてきた人形部隊に援護するように連絡する。人形たちが駆け付けると、その人の手らしきものの周辺を掘り起こした。除雪車のドーザーやらで巻き込むと大変なことになるためだった。これが本物の死体なら、損壊させてしまう可能性もある。

 

 掘り起こすと、やはりそれは人の手の形をしていた。

 

 「指揮官、こっちにもありますよ!」

 

 「こちらにも…発見、しました…!」

 

 「こっちにもあるわ。なにこれ…サムズアップしたまま凍ってる…」

 

 

 どうやら、駆け付けてきた9A-91たちも周辺に埋もれてる何かを発見している。それは足だったり、頭部と思わしきものだったり…しかし、何処かで見覚えがある。そっと少しずつ掘り進めると…

 

 

 「指揮官、これ…鉄血の人形兵ですね?」

「どうしてこんなところに埋もれてるんだろう…」

 

 埋もれてるのは鉄血の人形兵たちだった。所々に機械兵も一緒に埋もれている。前方の大きな雪の塊を調べると鉄血の追跡車両。人形たちは「?」マークを浮かべる。

 

 

 「これって、指揮官がいつも遭遇してたって言う鉄血の車ですか?」

 

 ふと追跡車両を見た9A-91が訊ねる。

 

 ―少し前まではな…これは、No.100(何時ものアイツら)の車両ではない。アイツらのは、今頃湖の底に沈んでるはずだ。―

 

 「そうだな…なんか、出会す毎に手強くなってる気がするけど…」

 

 この時、9A-91は何故か「No.100…羨ましい…」と呟いていたのを軍人とドライバーは聞き逃さなかったが、面倒なので今はあえて触れない。あの時現地に居ないためにあまりよく知らなかった人形たちは、任務の最中になにがあったのか疑問符を上げている様子。

 

 だが、少なくとも、その時起こった出来事は、9A-91が想像している様な、楽しいものではない。

 

 尚、ある意味その根拠の一つとされるM4たちはというと、現在メンテのために16LABに帰すために手続きをしているため、基地で待機を命ぜられた。というより、元々は16LABからの出向組なので、こう言うときはご都合主義ですぐ帰還のヘリを手配してくれることを期待していたのだが、タイミング悪く出払っているそうである。ここは、精々その輸送ヘリたちが墜落してくれないことを祈るドライバー。理由は簡単。何かしらのトラブルでヘリが墜落する等でこちらに来られる余裕がなくなった場合、ドライバーが基地から車を出すことになるからだ。メンテくらいなら基地でも出来るはずだろうと思いきや、他の人形の様に前線基地の手持ちでは中々融通の利かないパーツが含まれているためでもある。かと言って申請が間に合わないことを想定しドライバー個人で購入すると、ヘリアンに小言を言われる以前にその金額はバカ高く、下手すれば車のパーツよりも金が掛かり、一瞬で財政が傾く。と言っても、ドライバーの車だって一台製作するとなると相当な金額が掛かっているのだが…。因みに二号車も整備中。

 

 そこでドライバーは、ナガンたちの拠点まで9A-91たちを連れてきたヘリのパイロットの事を思い出し…『確かあいつはグリフィンの本部や16LABにも寄ってるし、おまけに急な補給やら護衛で恩を山ほど売ってきてる分、きっとこちらの用件だって引き受けてくれる筈…』と人知れず思考を巡らせていた。

 

 

 そんなこんなで、雪を手作業で掘り起こしていくと、今度はハイエンドモデルのイントゥルーダーが発掘された。どうやら雪崩に巻き込まれた後、他の人形同様に機能を停止したみたいである。試しに皮膚をつつくと、凍ってしまっていた。にしてもその表情は安らかな寝顔である。

 

 

 

 掘り起こした鉄血人形たちの装備を外し、拘束具で手足を固定する。一方、人形達の方では、As-Valが取り掛かった鉄血人形たちは、何故だか亀甲縛りになっていた。ドライバー曰く、ここにSOPiiがいたら『鉄血人形解体ショーの始まりや!』と躍起になっていただろうな、軍人にジェスチャーしていた。軍人はどういう意味だ?と聞き返すのだが、ドライバーはそのうち分かる、としか答えなかった。

 

 

 ―よし、車内から人形を降ろす。手伝ってくれ―

 

 ドライバーはそう人形たちに命じ、続いて発掘した追跡車両のドアの鍵を壊して開け、機能停止した鉄血人形たちを車内から引きずり降ろし、キーシリンダーをoffに回す。その後、運転席のボンネットオープナー(レバー)を見付け、それを引いてボンネットを開き、車から出てバッテリー周辺やファンベルト等を外したりしてすぐ始動できなくした。

 

車内を確認したときにサイドブレーキの内部が凍ってるために作動していない可能性があり、不安ではあったが、車は幸いにもきちんと静止した状態のため、慣性で動き出したりはしなかった。本当ならば爆破したい所らしいのだが、今回は生憎、爆薬は持ち合わせていなかった。

 

途中のスノーモービルたちも同様に部品を外して走行不能にしておいた。これで勝手に動き出しこちらを襲っては来れないとドライバーは軍人たちに伝える。武器よりも車両整備用の工具等を持ち合わせているドライバーに対して軍人は相変わらずだな、と思いつつ、作業を手伝う。

 

ドライバーは作業中に『鉄血の車両に搭載されるバッテリーは、他の車用のよりも強力に出来ているが、他の車同様に、必ずマイナス端子から外せば大丈夫だ』と念を押して解説していた。疎い人間がよく下手に弄って感電事故を起こすことがあるという。

 

 また、今ここで追跡車両に手を加えたのは、『前に押さえた無人の車がエラーか何かで勝手に動き出し、色々と大変だったからだ』とドライバーはジェスチャーしていた。鉄血の追跡車両なら、AIを移設してこちらを轢こうとしてくることもあり得る。というか、動いてる車は危険そのものだ。

 

 

 

 

 

 そして、それが終わると再び除雪。漸く除雪作業は一段落ついた。

 

 ―ああ、一先ずはな…それに、ほら、あれを見てくれ―

 

 軍人はドライバーの指す方を見る。少し上の方。

 

 「なんだ?」

 

 ―敵さんの司令拠点かねぇ?―

 

 ここから少し離れた位置に鉄血のアジトがあった。丁度こちらを見下ろせる位置にある。軍人は持ってきた双眼鏡で覗くとそれをはっきりと確認出来た。雪が積もってるが、不自然に盛り上がってるところが見られる。ドライバー曰く、恐らくアジトの可能性があるという。理由は、あの辺りには一切建物が無く不自然で、しかもグリフィンはそこに拠点などは作ってなどいないという。

 

 「そうだとしたら、あいつら良いところに陣取りやがったな…」

 

 ―こりゃ行くにも準備が必要だなぁ。この状態で万一戦闘なんかになったら大変だ。あと、ヘリアンにもっと高いところにも拠点を作るように伝えておこう。―

 

 「そうだな…それに、また追われても除雪車(これ)では逃げられそうもないよな。敵からしたら良い的だ」

 

 それはごもっともであった。ドライバー曰く、雪を押し退くために強力なパワートレーンを搭載しているが、追跡車両の機動性には勝てない。

 

 そして、ドライバーは再び除雪車を走らせる。ドーザーで残りの雪を押せるだけ退けて、細かなところは人形たちと手作業で雪を崩し、最低限走れるようにした。そして、再び乗り込み、道幅が広いところで上手くUターンして引き返す。その際、木々などの障害物に車体が当たりそうになってヒヤッとくる軍人と人形たち。しかしドライバーは相変わらず落ち着いてターンしてみせた。追跡車両はそのまま放置するわけにもいかないので、除雪車で持っていけるだけ牽引して拠点に連れていくことにした。しかし、車よりもスノーモービルの方が多く、スノーモービルは追跡車両の車内に押し込んでおいた。

 

 

 「結局牽引して帰るんだな?しかし、よく引っ張れるな…」

 

 ―まぁな中途半端な所に置いておくと、好き放題されてしまい兼ねない。それに、通行の邪魔だから、少しでも減らしておきたい―

 

 「あんな見るからに毒々しいカラーリングの4駆なんて、一体誰が好むんだよ?」

 

 ―あれだよ、いつぞやのペットロボ騒ぎの話の延長さ。車の買えないやつらが勝手に持ち出す事を懸念してる。金の無いPMC、時代遅れの山賊、一部の悪趣味なカーマニア。鉄血工造に人間がいれば話は変わるが、鉄血の人形たちが法的に所有権を主張したり訴追することは今のところできないし、そのつもりもない。…と言うことは―

 

 「持ち出し放題、か…」

 

 ドライバーは、それに肯定した。元々軍では鉄血の製品を使ってた事もあるので、決して悪いものではない。それゆえに狙われる可能性だってある。

 

 しかし、これから拠点に持っていくものの、あまりに長い時間放置すると場所を取って邪魔になってしまうのだが、そこはナガンたちに堪えてもらうしかない。

 

 

 

 

 

 拠点に戻った時、待機していた人形たちは、ピラミッドの様に積まれた鉄血兵とイントゥルーダーたち、そして追跡車両とスノーモービル数台を見て唖然としていた。一緒に見ていたナガンは、ドライバーに思わず訊ねる。

 

 「指揮官、これは一体何なのじゃ…?」

 

 他の人形たちも略奪かなにかか!?と一瞬目を疑う。確か除雪に向かった筈なのに

 

 ―ヘリアンたちへの手土産だ。一先ず、16LAB宛にクール便で送るように手配してくれ。あ、武装や通信装置は取っ払ってあるから安心してくれよ。さて、こちらは装備を整えて、もう一度行ってくる―

 

 と、踵を返すが…

 

 「待てい!今度は何処へ行く気じゃ!?」

 

 呼び止めるナガン。

 

 ―お宅訪問だ。来たけりゃ来れば良い。ただ、少し山登りがある。ちとお前さんにはキツいかもしれないぞ?―

 

 と、ドライバーはナガンに向けてジェスチャーする。

 

 「ば、バカにするでない!そこで待っておれ!」

 

 ―ははは、わかったよ―

 

 かくして、準備を済ませ、再び雪山へ。雪崩の気配は今のところ無く、車で一気に行けるところまで行き、途中からかんじきを靴に取り付け、通り道を徒歩で進む。ドライバーは『足元に注意しろ』と注意を促している。この辺りはたまに落とし穴のように窪んでるところがあり、積雪で埋まって分かりにくくなっているためだった。

 

 「やれやれ、こんな雪山登るなんて訓練以来だよ…」

 

 ―安心しろ。もうすぐだ。さて、ナガンたちは…―

 

 後方を見ると…

 

 「ま、待つのじゃ~!」

 「ほら、もう少しよ。頑張って!若いやつには負けられん…でしょ?」

 

 「う、うむ!よいしょ…よいしょ…」

 

 モシンナガンに励まされつつ、頑張って後に続く。ナガンたちはこの軍人と指揮官(ドライバー)のタフネスに驚かされていた。彼女たちは雪は慣れているが、この二人は人間。しかも、除雪作業の後である。軍人は軍での訓練で経験しているというが、経歴不明のドライバーはどうしてこうも皆をリードできるのか。それは誰にも分からない。

 

 

 

 雪景色の中を進んでいくと、鉄血のアジトに到着した。現在そこはもぬけの殻であった。それは恐らく、除雪作業中に見付かった敵部隊が使っていたものだろうと判断したドライバーは、一先ず引き連れてきた人形たちに場所を押さえさせた。敵はこちらへ来るとは思わなかったのか、罠が仕掛けられていないのを確認すると、二人はその内部へと入っていく。

 

 「鉄血の人形たちにしては、随分ザルなセキュリティだな…お、これは何だ?」

 

 軍人は前方で怪しい光源を指す。大きなモニターの様なものが幾つか付いている。

 

 ―タッチスクリーン式の端末みたいだな。確か鉄血工造のカタログにこんなのが載ってた様な気がするぞ―

 

 「カタログ?そんなものまだ残ってるのか?」

 

 ドライバー曰く、マニアと思われるユーザーがネットに載せてる事があるため、探すと結構転がっているらしい。しかもコピペのように何者かがスレを乱立させたり、他所のスレにアフィやカタログの画像データを貼ったりするなどしている。きっと鉄血たちは敵対している筈の人間たちを上手く丸め込んで、支援してほしいのだろうと睨んでいるらしいが、一般ユーザーからは、それ以前に、見事に荒らし認定されている。

 

 鉄血人間敵に回しときながら人間に乞食とかこれもうわかんねぇな

 

 

 クソスレ乙

 

 

 デストロイヤーちゃんペロペロ(^ω^)

 

 などと書き込まれる始末。相手にはされてる感じはあるが、どうみてもそれ以上の進展はない。

 

 おまけに最近では乱立した謎のスレの一部に他の一般ユーザーから書き込みが増えているものがあるらしい。

 

 ドライバーたちは一先ずヘリアンに連絡した。すると、設備を拿捕せよと返って来た。彼らはその指示の通り、人形たちと共に機材を集める事に。

 

 

 ドライバーは調査のためにと、興味本意で手動操作を試みた。

 

 「おいドライバー!?いくら敵の物だからって、それはまずいだろ!?」

 

 思わず軍人は慌ててドライバーを止める。まるで、他人の家のパソコンの中身を勝手に覗いている様に見える。が、彼は『大丈夫、ちょっと見るだけだから!それにお前ん家のパソコン覗くわけじゃないんだから良いだろ?』とジェスチャーする、既に操作し始めているため、後はドライバーの自己責任にしよう、と諦めた。ヘリアンに叱られるのは多分軍人ではなく彼。

 

 だが、かくいう軍人も鉄血勢の生態(?)には興味があった。人に及ばずとも近い統制や仕草を取っているからである。気が付くとドライバーと一緒にモニターを覗いている。

 

 一先ずテレビアプリを開くと、午○ローやら金曜○ードショー等の映画番組や海外ドラマばかり録画されていたのを発見した。どうやらイントゥルーダーは映画やらの海外ドラマの守備範囲は結構広いと見れる。しかし、ここ最近の履歴を見ると、『戦闘描写やカーアクションがハゲしいアクションもの』が大半を占めている。しかも、『イントゥルーダー専用』のタグもしっかりと付いていた。

 

 「ステ○サムが好きなのか…?」

 

 ―傾向的にはそうだったのかもしれん。しかし、自身でのアクションシーンは、NGも良いところだったがな…―

 

 雪崩に巻き込まれていたイントゥルーダーの様を想像する。しかし、タイミングが遅れさえしなければ、ドライバーたちは再び危機に陥っていたかもしれない。

 

 「NGというか、あれじゃ事故だぞ?しかし、DVDでも借りればもっと色々見れる筈なのにな。借りてもポスト返却だってあるってのに…」

 

 ―持ち場を離れて借りに行くのはリスクが高いと判断したか。変装しても、鉄血製の人形は肌の色で分かりやすい。下手に出ていくとグリフィンや軍に見付かり、以降彼女を見たものはいない…ということになる―

 

 「差し詰め、拉致監禁され過度な尋問や拷問に掛けられる…だな?」

 

 ―そういうことだ。あとは、専門家に任せよう。長居は無用だ…人形部隊の諸君、こいつを運び出す。途中に停めてきた俺の車に積んでくれ―

 

 

 ドライバーは人形たちを呼び寄せ、端末を運び出す。どうやら通信はオフラインになっていた。イントゥルーダーは指揮を専門とする個体なので、漏洩を防ぐために万全を尽くしていたのだろう、ドライバーと軍人は判断する。もしくはイントゥルーダーが居ないとオンラインにならないようにシステムが改修されていたか…そのどちらか。ここでは細かいことは分からないので、一緒に16LABに送り込むことにした。

 

 ドライバーは、随伴してきている人形たちに向けてこうジェスチャーした。

 

 ―ゾンビになりたくなけりゃ、これには触るな。遠隔操作のアクセスもダメだ。いいな?―

 

 つまりは何があるか分からないと言うことだ。そして、運搬を開始。乗り入れてきた車に乗せる。ドライバーの車と乗り入れてきた軍用の4WDに載せる。

 

 

 ここで、軍人はこの前も敵の通信機には無闇に触るな、と人形部隊に注意を促していたのを思い出しつつ、運搬を手伝う。

 

 

 積載が終わって、各自車に乗り込み、拠点へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 ある場所にて…

 

 

 「さーて、私が建てたスレの方はどうかなっと…」

 

 「ん?またそんなことをやってるのか…」

 

 端末を操作している黒髪サイドテールの人物と、それを背後から見て呆れる銀髪ロングの人物。どちらも着ている被服に鉄血のマークが入っている。ここは鉄血の人形たちの基地であり、無論鉄血の人形であった。

 

 「この前BANされたばかりだろう。まだ懲りてないのか?」

 

 「えーだってさー!こいつら面白いんだもん!」

 

 (ダメだこりゃ…)

 

 

 「さてさて…は?うわわ!?」

 

 「何だ!?ウイルスか?はやく線引っこ抜け!」

 

 「ち、違うの!」

 

 そういって、スレの内容を見せ、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 「スレが野○先輩のaaだらけ…」

 

 

 

 これには銀髪ロングの人物も困惑している。

 

 

 すると黒髪サイドテールの人形が別のスレを開いた。そのスレタイは、『好きな鉄血人形上げてけ』。

 

 

 「ねぇこれ見て!」

 「今度は何だ…ほう?好きな鉄血人形、か…」

 

 銀髪ロングが見てみると…

 

 

 

 Re:600 名無しの人形

 1>>ゲーガー

 

 

 

 「おお!私か?ふふ、ふふふ…」

 

 

 銀髪ロングの人形こと、ゲーガーはちょっと嬉しそうにしている。

 

 

 

 

 

 だが、それも束の間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 Re:635 名無しの人形

 >>600 お前のセンスを疑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 何 で や ! ? 」

 

 

 アンカーのついたレスを見た途端に叫ぶゲーガー。

 

 

 「草wwwwwもう草wwwww」

 

 

 「何笑ってるんだアーキテクト!というか、草に草を生やすなっ!」

 

 ゲーガーの隣で腹を抱えて笑い転げている黒髪サイドテールの人形は、同じく鉄血のハイエンドモデル、アーキテクト。

 

 

 「それより!『アレ』の方は出来てるのか?」

 

 ゲーガーはアーキテクトに訊ねる。なにやら準備をしている様で、鉄血の基地の周辺は物資の運搬やら加工やらで大忙しだった。

 

 「へ?ああ、『アレ』なら今調整中だよ。まーだ時間掛かるね。まぁ、規模が規模だし~」

 

 「そうか、ならいい…おっと、これからエージェント(代理人)に渡す資料を作るんだが、今暇なら手伝ってくれないか?というか…いい加減手伝え」

 

 「えー」

 

 「えーじゃない!というか、重要なものがあってだな、お前がいないと何時までも片付かん。…って、逃がすかっ!」

 

 そそくさと逃げようとするアーキテクトの腕を掴んで引き寄せた。

 

 「ひいっ!?」 

 

 「それにだ、お前いつも私に押し付けてばかりじゃないか。たまには上司らしく仕事しろ!ほら来い!」

 

 ジタバタするので、四肢を掴むのを諦め、服を掴んで引き寄せる。

 

 「えっ!?ちょっとそこ引っ張んないで!?脱げちゃうから!?」

 

 脱げそうになる部分を押さえるアーキテクト。

 

 「ほーう?ならば、そのあられもない姿をスレにアップしてあげようか?きっと人気爆発だろうなぁ?ええ?」

 

 ゲス顔のゲーガー。

 

 「ちょちょちょ!?待ってよゲーガー!?それじゃ私、人気者どころか鉄血一の晒し者だよ!?わかったって!笑ったの謝るから!ごめんって!それに手伝うから!カメラモード解除してぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 涙目のアーキテクト(一応上司)は、そのままゲーガーに連行され……

 

 

 

……このあと滅茶苦茶資料を作らされた。

 

 

 

 

 

 同時刻、代理人の方でも、司令拠点の端末からアーキテクトの立てたスレを閲覧していた。

 

 

 

 

 

 「スレを見ても…どこにも私の名前が無い?……ゆ゛る゛さ゛ん゛‼」

 

 

 

 

この後、代理人は自演レスを連発し、その不自然な勢いから見事にBANされましたとさ。




今回は事後処理のお話でしたね。アーキテクトたちも先行して登場させました(笑)

それと、ゲームに出てくる鉄血の家具の解説が個人的に面白かった件について。

除雪車はメルセデス・ベンツのウニモグみたいなものをイメージしてます。

ゲーガーって銀髪?それとも白?とりあえず白髪じゃ可愛そうな感じするので銀髪と表現しました。


※今回はドライバーが追跡車両やスノーモービルをいじってるシーンがありましたが、現実世界ではキチンと安全面に気を付けて作業しましょう。


では、また次話で。


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Vol.11 部屋とヘルメットと私。

どうも、最近6-4nを周回しつつショコラドッグ集めに勤しんでいる作者です。

さて、グダりそうになる前に本作も物語を進めないとなりませんね…(˘ω˘;)


ではどうぞ。


AR小隊の四名を回収するミッションは、行程はどうであれ成功に終わった。現場での事後処理を兼ねた除雪作業も、追跡車両の撤去も、時間を要した分、最終的には滞りなく完了し帰還。

 

 この任務の報告書には、雪山に潜んでいたイントゥルーダーたちのアジトの事についても記され、押収したものについても書かれている。追跡車両の事もだ。

 

 ドライバーは、ヘリアンから何かしらの小言を言われるかもしれないと覚悟をしていたのだが、最終的に結果オーライということで不問となった。後日の除雪作業時にイントゥルーダーの確保とアジトの処理がそれを後押しすることになった。ビデオ通話の際、ヘリアンから、『前線を広げるための物資の輸送経路の確保にも繋がった』と話をされていた。 

 

 

 軍人は一度軍本部へと帰還させ、AR小隊の人形たちも一度16LABに移送することに。雪山でドライバーがヘリのパイロットに頼んだ結果、M4たちを16LABまで乗せていくのを快く引き受けてくれた。ドライバーは長い任務で消耗した分、彼女たちにメンテナンスを受けさせるために、休暇を与えるつもりで下した判断であった。

 

 

 

 

 そんなドライバーは、現在基地で自身が使っている執務室兼自室に来ていた。ヘルメットは自室内でも着用している。一体何時外しているのだろうか、それは誰にもわからない。

 

 この部屋には、個人用のレースシムやらゲームソフトを嗜むための設備に、ホワイトボードには鉄血を初めとする敵対勢力の図。自身の護身用の銃や装備等もこの部屋に置かれている。ここのところ、任務のことばかりであまり遊んでいないのか、ゲーム機並びにその周辺機器はカバーが掛けられていたりして片付けられていた。

 

 彼は資料を確認するために執務用デスクの椅子に座り、一先ず資料を読み終えて、机に置いた。すると、ラップトップを開く。

 

 ラップトップのメールフォルダには、16LABのペルシカからのメールが届いており、本文にはこう書かれている。

 

 『ごきげんよう!グリフィンのドライバーさん。相変わらず走り回ってる様ね?この前、依頼した鉄血製の人形と、その器材を持ってきてくれた事にお礼を言わせてほしい。本当にありがとう。すごく助かったよ。

 

ヘリアンが言ってた通りね?でも、流石にクール便で送られてきたのビックリしたけど…(笑)

 

 

 

…さて、本題だけど、こちらで色々といじくり回して調べた結果、鉄血とIOP製は造りが全く異なっていた。一体どうやって作られたのかしらね?現段階ではここまでしか分かってないわ。それと、M4のことよろしくね?他の人形たちのことも。今度コーヒーおごるわ。あなたと軍人さんに。そうね、そう遠くないうちに。それじゃ、バイビー(死語)』

 

 

 

 

 

 メールはここまで。どうやら16LABでは、ドライバーが集めて寄越した人形たちを比較した実験が行われていたそうである。これはペルシカたちがドライバーに依頼していたものだった。

 

 ラップトップにロックを掛け、続いてポケットから端末を取り出し、ある項目をタップする。

 

 

 

 それには、幾つかの音声ファイルが表示されていた。

 

 

 

 ヘルメットの内側にあるイヤホンの接続を確認し、『全て再生』をタップした……

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 『以上が、私の収集した情報だ。これで、私とスケアクロウ、エクスキューショナー、鉄血調査部隊の情報はすべてアップロードした』

 

 ハンターの声。

 

 

 

 『つまり、第3セーフハウスのデータはM4A1が持っていると言うことかしら?』

 

 続いてイントゥルーダーの声。ハンターはイントゥルーダーに報告をしている所であった。

 

 

 『随分とのんびりしているのね。グリフィンはこの『データ』の価値がわかってない様ね…【傘―Parapluie―】にせよ【遺跡】に関する情報にせよ…』

 

 

 『フンッ……どの道、私の任務はこれで終わりだ。これからまた狩りに戻るからな』

 

 

 『また狩りなの……この前リオ○ウス装備完成したじゃない……』

 

 

 

 『いや、そっちの狩りじゃなくてだな…』

 

 『どうしてわたくしの部下は、もっと優雅に振る舞えないのかしら』

 

 『お?もしやスタイリッシュなD○Cの方が好みだったか?……私はあんたとは違うからな、イントルーダー……』

 

 

 『イ ン ト ゥ ル ー ダ ー で す わ ! …だからあなたは…私の捨て駒になるしかないのよ。私の指揮を受けてきて、後悔しているのかしら?』

 

 『フンッ…どうせ選択の余地などなかっただろう。死んでおさらば出来るなら、それはそれでラッキーだしな』

 

 

 『安心なさい。皆のデータは私がきちんと取ってありますから』

 

 

 

 『え、何それこわい……』

 

 ハンターは思わず一言

 

 『何しろ、皆の最後の花道を…』

 

 『あ、代理人から連絡来た。じゃあ、またな』

 

 『え!?待って!最後まで言わせてちょうだい!………』

 

 

 ハンターは去る。

 

 『―――大丈夫よ…ちゃんとあなたたちのことを待ってますから。皆、一斉に目覚めるのよ…よし、ノルマ達成…!』

 

 

  

 続いて、もう二つ目のデータが再生される。

 

 

 

 

 

 

 『パンツの色を教えてくれたら、ぽまいらの探してるやつの居場所を教えてやっても良いお』

 

 『なん……だと……?―――光沢のある黒だっ…………こ、これでいいか…?』

 

 

 これはSOPiiとAR-15を回収に向かったときのハンターと変態のやり取りであった。 

 

 

 

 『形状は?』

 

 

 『…は?』

 

 

 『だから、どんなタイプ穿いてるん?』

 

 

 『―――おい、言われた通り色を答えたじゃないか!早くM4A1の位置を教えろ!この変態!!』

 

 『ぐふふふ―ぐふふふ――』

 

 

 

 続いて現在のところ最後の音声データが再生される。

 

 

 

 『…。いいから来なさいっての―――【雨が降った。平原に】……』

 

 

 M16とUMP45との、一連の会話の流れ。

 

 

 再生はこれですべて終了した。

 

 ドライバーは一体、いつ、どこで、こんなデータを入手したのか。

 

 彼は手に持っている端末を操作してロックをかけ、ポケットに仕舞う。

 

 ハンターとイントゥルーダーとのやり取りで出てきた、【遺跡】というワードは、ベイラン島を始めとする各地にある謎のスポット。あのコーラップス(崩壊液)の見付かった場所である。ある意味では、全ての元凶。

 

 そして、UMP45の【雨が降った、平原に】と【傘―Parapluie―】。音声データから聞き取れた事からして、鉄血たちは何かを企んでいる様であった。果たしてそれは何を示しているのか。

 

 ドライバーは、真に『無言』のまま、部屋を歩いて出ていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

 部屋の扉を閉じ、鍵をかける。

 

 

 

 

 その後、何時ものように人形やスタッフたちと挨拶等のやり取りをして、今日も車に乗り込み、走らせていく。今回はメンテを終えたばかりなので調子が良さそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は、既に皆のよく知る『グリフィンのドライバー』に戻っていた。




※それでもドライバーは筋肉痛気味。きっとストレッチとかはしてるはず…



しっかし、シリアスって難しい…これじゃシリアス+コミカルじゃんか…雰囲気欠けてるかもしれないじゃんか…()

ドライバーの部屋に置かれてるレースシムのハンコン一式は…一応ガチな奴です(笑)
…ですが、バーンア○ト等はパッドでやってる設定です(何)




では、また次話で。


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Vol.12 簡単なものこそ奥が深い

コアが足りないって辛いな、サム


では続きをどうぞ。


「もしもし、私です。お声が聞けて光栄です。……え?何か皮肉っぽい?これは失礼しました」

 

 何処かの真っ暗闇の部屋。少なくとも基地ではない。

 そこにオリーブ色の野戦服に身を包んだ男が一人。ドライバーでもなければ、彼とよくツルんでいる軍人とは別の人物。そんな得体の知れぬ男は、端末からある人物へ連絡を行っていた。

 

 「…さて、報告します。先ず始めに、紛争地における、現存する敵対勢力の調査に関しまして。……はい、『それらに』ついては、順調に追跡は進んでいます。現地に向かったとされる精鋭人形部隊は、『我々』の存在には気付いてはおりません…。…ええ…はい。AR小隊は『例の彼』の方で、全て無事に回収されました。これで漸く、グリフィンも本来の目的へ向けて軌道修正していけることでしょうが、やはり問題は残っているようです……ええ、どうやら睨んだ通りでしたよ……はい。既に先方には連絡を入れてあります…」

 

 

 淡々と受け答える男。

 

 

 「次に、S09地区にある第3セーフハウスと呼ばれていた所からM4A1たちが入手してきたデータのお陰もあり、今後における鉄血に纏わる調査の手間が省けました…これで【傘】の事に関しても…はい。次に、最も気になっていらっしゃる『例の勢力』についてですが、表だった行動は現在確認できていません。恐らくは鳴りを潜めていることかと。それでも行方不明者の行き先は、その組織で間違いはありません。風の噂によれば、それに対抗するために、軍の何者かが動きを見せているそうです。監視と調査は引き続きこちらで…。はい…報告はこれで以上となります。…はい?……そうでしたか…それでしたら『例の彼』に、こちらから仕事として幾つか上手く回しておきましょう。快く引き受けるでしょうし、彼だと、物理的に顔が割れません。それに、誰も、彼の顔を見たことがないのですから。そう、私ですらね。はい?ええ、『例の彼』には貸しがあるので…はい……有難うございます。……では、私はこれにて戻ります。失礼いたします」

 

 

 端末の通信を切る。男は無表情のまま少し考え、その後に端末をオフラインにして懐に仕舞う。

 

 

 静かに一息つき、真っ暗なところから姿を消した。そんな彼を見たものは居ない。

 

 ………………………………………………

 

 

 IOP/16LABの敷地のある場所に設置された屋外周回路にて。

 

 軽い排気音が重なって響く。その数は四台。それは、一台ずつ色違いのサイドとリヤのバンパー、そしてフロントにカウルを取り付けており、小さな屋根の無いエンジンもタイヤも運転席も剥き出しの軽自動車にも満たない小さな競技用の車。つまりレーシングカートと呼ばれるものであった。

 

 緑/黒のマシンを先頭に、黄/黒、青/桃、黒/赤の四台が連なって走っていた。

 

 運転しているのは、ボディラインからして、どれも女性。マシンと同様の配色をしたレーシングギアを着用している。念のためだが、青/桃も一応女性である。

 

 四台は左右にテールを小刻みに振ったりしてタイヤの温度を上げる。

 

 ホームストレートに差し掛かり、それを見たコースの脇にいる黄色とオレンジのオッドアイの人形が、16LABと書かれた大きな旗を構える、先頭の緑/黒のマシンがコースを跨ぐ様に引かれた白線を通りすぎたと同時に、旗は大きく振られ、四台全てが一気に加速していく。カートはカートでも、遊園地のゴーカートと異なり、その加速力と速度伸びは鋭い。

 

 オッドアイの人形は緑の旗に持ち変えた。

 

 一方、ピットエリアにはペルシカが「面白そうだから」という理由で来ていた。彼女はラップトップを開き、M4たちの様子を興味津々にモニターしている。

 

 

 

 

 四台のカートはコースの端々を使ってコーナーを次々クリアしていく。途中、緑/黒が黄/黒に抜かれたり、それを抜きかえしたり。

 

 黒/赤と青/桃が抜きつ抜かれつの攻防戦をしたり、さらに、それら四台の順位が頻繁に変わる。旗持ちしているオッドアイの人形は、そのデッドヒートを冷静に見守っている。

 

 

 

 

 

 (どうか事故など起きませんように…特にM4とか…)

 

 

 運転しているのはAR小隊の面々であった。緑/黒がM4、黄/黒がM16、黒/赤がSOPii、青/桃がAR-15である。旗持ちの人形は16LAB製の戦術人形RO635。今回はコースマーシャル役。マーシャルとは今行っている旗降りやら事故処理などを行う役職のこと。

 

 すると…

 

 四台全員スピン。理由は先頭のM4が高スピードで突っ込み過ぎたために操作が急になり、しかもステアを切りながら急ブレーキをしてタイヤがロックし横滑りした。カウンターステアを当てたが、最初のターンインの段階で滑りすぎてしまったためにクルリと回ってしまった。後続のカートたちが緊急回避で同様にスピンしていった。16LABが誇るM4たちだが、その辺はまだ未熟な面もある。お互い衝突は防げたが、そのお互いが前を塞ぎ合う形で止まってしまったため、立ち往生してしまう。

 

 M4たちは両手を振って救援要請の合図をした。

 

 RO635は黄色の旗に持ち変え振る。各セクションに設置されたポストに控えるダミーたちも黄旗を用意た。これは振られているポストがある区間の間は徐行せよ、追い抜き禁止という意味。作業している時に危険だからだ。一台でもコース外に飛び出しているのなら、旗が一本でいいが、車両はコース上で止まってしまってしまっているので、RO635はダミーとMF(メインフレーム)共に二本振る。

 

 「ROから指揮官へ、第三セクションのコース上でスピンを確認。救援をお願いします!」

 

 

 すると、グリフィンカラーである赤/黒カートに乗ったドライバーが手を上げてコースインした。そのまま、M4たちのもとに駆け付ける。ドライバーはオフィシャル兼マーシャル。

 

 オフィシャルとは、マーシャルと異なり、レースの実運営を担う役職。オフィシャルにもレース前の車検等を行う技術オフィシャル、レスキュー、ラップタイムの計時、事務局色々な部署があり、F1で言うと『スチュワード』と呼ばれる協議中のペナルティなどの審議をしている部署もその一つ。

 

 

 ドライバーはエンジンを止めて降り、 順位的に先頭のM4から順に回り、カートの後ろを持って一度バックさせ、一台ずつ再スタートをさせていく。仕様上、バックギヤが付いていないレーシングカートは、こうして物理的にバックさせなければならない。始動する直前にドライバーに各々お礼を言ってから走らせていく。

 

 

 

 四台を再スタートさせ終え、ドライバーも自身の乗ってきたカートのエンジンを始動させ、再び乗り込みROにジェスチャーを送った。

 

 ―良いぞ、再開だ。グリーンフラッグを振れ。…ブルーフラッグも忘れるなよ?―

 

 「了解。…グリーンフラッグっと…ん?ブルーフラッグもですか?」

 

 ドライバーはROの問いに対し、そうだ!とジェスチャーしている。

 

 ROは疑問に思った。イエローフラッグはペースカーが走ってたり、コースマーシャルやコースオフィシャルたちがコース内で作業している時など、競技中のレースマシンの速度を落とさせ、指示あるまでは振り続けろと国際レース規定の本ではその様に記されていたはず。ドライバーはオフィシャル兼マーシャルであるはず。

 

 

 

 

 一先ず、ドライバーの指示通りにレース再開と続行の意を表すグリーンフラッグを振って四台が通りすぎるのを待つ。ブルーフラッグというのは、後続から速いマシンが来ていることを、走行中のマシンに伝えるために振られる。

 

 疑問符をあげるROは、各ポストに配置したダミー人形を通じて、何故かドライバーはタイヤを暖めるために、わざと左右にテールを振りながら走らせているのを見つけてしまう。

 

 

 

 あ、もしや…

 

 

 

 

 ROは嫌な予感がした。

 

 

 

 四台が通りすぎ、再開を確認した途端、ドライバーがピットに戻ったか確認するが、何と戻っていなかった。

 

 

 すると、謎の 五台目がホームストレートを走って来る音が聞こえた。

 

 「ん?………あ!!!」

 

 ROは目を疑った。

 何と、ドライバーがピットに入らずそのままホームストレートをかっ飛ばしてきていたのだ。

 

 「ちょっと指揮官!!」

 

 

 まさかのレース乱入に困惑するRO。これ思いっきりルール違反ではないのか。ドライバーはそのまま勢い良くコースを攻め始めた。

 

 

 『ん?』

 

 現在最下位を走るAR-15が、自身の背後に迫っている排気音に気付く。

 

 『…私の後ろにもう一台?コーナー三つも抜ければ…ってえええ!?ちょっと皆!後ろからもう一台来るわよ!……指揮官だとォ!?』

 

 驚いてキャラ崩壊するAR-15を始め、AR小隊の皆が後ろをチラ見して異変に気付いた。ポストではROのダミーがブルーフラッグを提示していた。

 

 ドライバーの運転するカートが猛烈な勢いで四台を追い上げてきていることに全員が認知するは1秒も掛からなかった。

 

 それぞれ後ろをチラ見している。

 

 

 『あれ?指揮官じゃん!楽しくなってt…速っ!?』

 

 『つーか、どうやって追い付いてきた!?距離的に20mは離れてたぞ!?』 

 

 『す、すごい…です……!』

 

 真横に並び、ブレーキングのタイミングをずらして四台の前に出た。先頭のM4がなんとか前に出られぬ様に持ちこたえようとするが、一歩届かず、ドライバーに前へ出られてしまう。

 

 

 そのまま圧倒的な速さを見せ付けるドライバーは、最後まで前に出さず、見事にフィニッシュラインを越えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レースが終了し、車両すべてがピットに入りエンジンを止めた後のパドックにて…

 

 「もう!参加なされるなら参加すると仰ってください!」

 

 ROに叱られるドライバー。彼は『いやー悪い悪い!抜き打ちチェックみたいなもんさ。それに、走りの良い例はキチンと見せてやらないとな。しかしあれでも手加減はしたぞ?』とジェスチャーし、呆れさせる。

 

 

 「手加減ってなぁ指揮官…まるでワープでもしてきたのかと思ったぞ?まさか…ワープ装置なんて車に付けてないよな?」

 

 すると、ヘルメットを外したM16が、ドライバーの乗ってきた赤/黒のカートを指さし話し掛けてきた。M4たちもヘルメットを外して駆け寄る。

 

 どう見ても自分達と同じ100ccの2ストロークエンジン。セルスターター付き。カウルも色以外は同じ。

 

 ―ワープ装置?ははは、そんなのあれば、もっと先にゴールしてるよ!―

 

 笑ってM16にジェスチャーするドライバー。

 

 「あの、M16…残念ですが、ワープの痕跡はありません…というか、そんなのまだここですらキチンと実用化できてませんからね…?」

 

 ROはM16にそれでもマシンにおいての不正は無かったと困惑しつつも伝える。

 

 「そ、そうか…」

 

 「でもでも!すっごく速かったよ!」

 

 「ホントにびっくりよ…」

 

 ―悪かったな皆。公認レースじゃスチュワードやオフィシャルは飛び入り参加はしないぞ?しても事故の片付けくらいだからな―

 

 「わかっているのならば良いのですが…」

 

 

 

 「しかし、これが指揮官の原点って訳か?調べたところ、レースの世界だと子供の頃からこれに乗ってやって来たやつらはその筋で大成しているらしいな?」

 

 ―まあな。公式レースも色々あってな、国内選手権で勝つことが出来れば、やがてプロの道が開かれる…トップカテゴリー参加も夢ではない…―

 

 ファンタジーの世界観っぽく表現するドライバー。

 

 ―俺にとっては、正しく原点だな。これでコントロールやら追い抜く時の仕掛け方やら、色々と学んだもんだよ。上に行こうとするとどうしても金は掛かるが…―

 

 「…原点…」

 

 その二文字の言葉を呟くM4。

 

 「ドライバーの原点だって?これは気になること聞いちゃった!」

 

 ―よせペルシカ、あまり大したことはない―

 

 「ご謙遜を。あんなに速かったのに?かなり差は付いてたよ?」

 

 ―その昔、サーキットは多くの魔物のフレンズが産声を上げ、それらが巣食う魔境(パーク)だったのさ…―

 

 染々とジェスチャーするドライバー。

 

 

 皆の近くには、先程まで乗ってたカートが作業用ロボたちの手でカートスタンドに載せられており車体のチェックが行われていた。ドライバーはここにいる皆に『知ってるだろうけど、エンジンは熱いからヤケドしない様に気を付けてくれ』と注意を促していた。作業用のロボは『こちらは耐熱だから大丈夫だってへーきへーき!』と言いたげに一斉に右のアームを上げガッツポーズをしている。

 

 こんなタイヤの径もエンジン本体も小さいのに、小さくキビキビと走り回れる、簡素構造の車。『カート』という単語だけだと遊園地のあの遊具のイメージが強いが、実際経験するとこれも立派なレーシングマシンに思えてくる。いたずらにアクセルを開けたところで速くは走れない。戦術人形たちは人間の代替で、戦闘用なのだから運転くらいは幾らでもできる筈だが、実際、現場での色んなシチュエーションに対応させるためにはフィールドでの演習やら訓練は必要になるのは言うまでもない。基本的な所作やら、その物に適応するための使い方やら。車は移動手段だが、戦闘外でのアクシデントはよくある。その一つが乗り物の運転だ。いくら人形が機械故に予測は出来ても、事故は付き物。スリップやら思わぬ出来事だってあるし、予測機能がダウンしたり鈍った時はどうなってしまうのか。ドライバーの指揮下にいる故に運転や操縦の方面に傾倒している感はあるが、彼はそれらに懸念を抱いているからこそ、少しでも多くを経験させるべきと考えた。特にAR小隊の様に代わりが利かない部隊ならば尚更である。

 

  

 「さてさて、ドライバー(指揮官)?メンテ明けの彼女たちはどうだったかな?」

 

 突如ペルシカが訊ねてきた。

 

 ―走りに付いては、もっと練習が必要だが、反応その物は良かったぞ。前までのこいつらなら、バリアに突っ込んだり、接触をしていてもおかしくはなかったな―

 

 手をヒラヒラさせるも、後半はサムズアップしつつ答える。

 

 「うんうん!それはよかった!」

 

 嬉しそうに頷くペルシカ。

 

 

 そう、ドライバーはメンテ明けの彼女たちの様子を見に来ていたのだ。

 

 切っ掛けはペルシカから『メンテ後の慣らしとして、屋外でレーシングカートを使ったレースの演習をやるのでドライバーにも来てほしい』と言う依頼があったためだった。そこで、基地をカリーナたちスタッフと人形たちに任せ、16LABへとやって来ていた。

 

 今回のドライバーは、『その道』のプロという事から、オフィシャル兼マーシャルを買って出ていた…というか依頼なのでやらされたに近い。今回の場合、オフィシャルということは役割的にはスチュワードも兼任していることになるため、先程の乱入は公式の競技なら大問題である。

 

 恐らく、もしカリーナがここにいたらノリノリで実況していたかもしれない。何時か自分の基地内で催しとしてやることになった際は、是非とも起用しよう。そう思い付くドライバーであった。

 

 しかし、何かが物足りないと感じている。

 

 

 

 

 

 それは軍人だった。

 

 彼ならば「調子見るって言っておきながら、ぶっちぎってどうすんだよ!?」とか「スチュワードがレースに乱入するとかどういうことだ!?」とか、そんな感じで、比較的まともな所から鋭くツッコミを入れてくれる筈。

 

 しかし、ドライバー自身では何時までも自分のやり方に毒させてしまうのも何だか気が引けるので、今回は別行動としている。

 

 ―さて、AR小隊の諸君。暫しの休憩後、講義と質疑応答の時間だ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、そんな軍人はと言うと……

 

 

 

 

 軍本部。

 何と軍人は、帰還後早々、上司の部屋に呼び出されていた。閉じている扉の前に立ち、服をチェックしている。

 

 

 

 (よし、ボタンは掛け間違えてないな!)

 

 

 

 実は以前、ボタンが掛け間違えたまま上司の部屋に向かってしまった事があった。あんな恥ずかしい思いはしたくはないと、ボタンが正位置にあるのを見て、社会の窓の戸締まりもしっかりしているのを確認した後、扉をノックする。

 

 

 

 「入って、どうぞ」

 

 

 

 ノックすると、部屋の奥から男性の声。

 

 

 

 「し、失礼します!」 

 

 

 

 元気良く一声掛けて入室する軍人。若干緊張で声が裏返りそうになっているが、なんとか噛まずに済んだ。

 

 

 

 「やぁ…一先ずそこに座りたまえ。…アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」

 

 

 

 上司の色黒の男性は切り出す。アイスティーをコップに注ぐ。砂糖らしきものをサッーと入れ、それを軍人に勧める。

 

 軍人は嫌な予感を感じ…

 

 「お気持ちだけいただきます」

 

 電光石火の如く速答する。それを聞いた上司はクゥーン…と子犬の様な声を上げ、そうか、と返答する。軍人にとってアイスティーは決して嫌いではないのだが、この上司の男が注いだものは何か怪しいものに見えたからであった。というかいつもアイスティーしか無い。

  

 

 

 「あ、そうだ。報告書見たゾ。君、やりますねぇ!」

 

 

 

 提出した報告書から仕事ぶりを褒め出す上司。

 

 

 

 「は、はぁ…恐縮であります。殆どグリフィンの指揮官殿のお力添えもありますが…」

 

 

 

 「ふむふむ。はえ~すっごいボリューム。この前会議で発表した時なんて特殊作戦群のカーター将軍も『歪みねぇな!』って褒めてたゾ。これには珍しく俺も彼も意気投合したゾ。カーター将軍もやっぱ好きなんすねぇ~」

 

 

 

 (何が好きなんですかねぇ…)

 

 

 

 上司と特殊作戦群のカーター将軍は、普段は何故か『相性が悪い』とのことで疎遠気味らしく、そんな二人を意気投合させたのは、どちらを誇るべきなのか…と軍人は複雑な心境になる。一体何の相性なのかは考えたくもない。

 

 しかし、ドライバーが決死のドライブをしなければ踏み込めない様なところばかり。それもまだ一部分。

もっと調べなければならない所は多くある。

 

 E.R.I.Dのみならず、鉄血の人形たちも多くエリアを占拠しているし、倒したとしても現状の調査がなければ、思わぬところで命を落としかねない。それにあんな所への調査は、かなりの勇気が必要だ。敵の弾をさらっと避けて敵陣突破は当たり前、道が狭かろうと荒れてようと走り抜けていく人物は軍のはみ出し者でも早々居ない。

 

 帰還後に輸送科に聞いた時は『グリフィンにはそんな頭のイカれた野郎が居るのか?ロックだぜ…!』と謎のリアクションがあった。メカニック(整備クルー)についてだって、そんなキテレツな奴と悪ノリしたがるのも先ず居ないぞ、と返答が来ていた。

 

 ていうか、ロックってレベルじゃねぇぞ!装甲の付いてる車ならいざ知らず…いや装甲が付いてても関係ないか。

 

 そもそもドライバーが乗ってる一号車は装甲なんて皆無にも程がある。二号車はM4A1が乗ることを想定し、直前で装甲ボディパネルに替えただけだし…と、無い頭で思い返しては思考をするたび益々意味がわからなくなってきた軍人。

 

 「しかし、ラリーカーみたいなので戦場走りますかね、普通…」

 

 ドライバーの事を思いだし、上司に質問してみた。

 

 「(走ったことあるやつなんて先ず聞いたこと)ないです。そりゃあグリフィンには色んな人がいるから、まぁ多少はね?」

 

 多少はねって何だよ!?

 

 軍人は上司の発言に心の中で突っ込む。しかし、ドライバーも『グリフィンの社員には色んな奴がいる』という旨の発言をしていたのを思い出した。

 

 すると、今度は上司から切り出した

 

 「そうそう、最近会議でね、今後、グリフィンと合同で大きな任務をやるかって話が上がっている。その前に、よく基地に出向いてる君に、知っておいてほしい事がある」

 

 途端に上司が手を組み、神妙な面持ちになる。

 

 「は、はい…」

 

 「実は、あるところの情報部にいる特定兄貴からの情報で、グリフィンの組織内で指揮官の不審死が多く出ているそうなんだ…その情報部の特定兄貴は暗殺された可能性があると示唆している」

 

 

 

 

 (暗殺…!?)

 

 軍人は、あんな組織でも内ゲバなんてあるのか?クルーガー氏なにしてんの?と驚きを隠せなかった。

 

 つーか、特定兄貴って呼び名は一体…

 

 

 

 

 「怖い話、ですね…」

 

 「うーむ、困ったゾ。あちこちに司令部があるわけで、かれこれ複数名にも及んでいる。あぁ^~実に困っだゾ…これでは巻き添えを食らった場合、色々大問題不可避ゾ……こわいなー戸締まりしとこ…」

 

 更に、クルーガーは内部捜査の元、暗殺の可能性は否定している。結果は事故や自殺とのこと。下手すると軍の人間も、いやもっと多くの人間が巻き添えを食らう可能性もないわけでは無さそうだ。

 

 司令部の指揮官が死ぬと、次の指揮官が来るまでは円滑に機能しなくなる場合もある。そこを敵対勢力に攻め込まれることだってある。イントゥルーダーのような情報戦が得意そうなハイエンドとか、経験豊富な敵は特に。この前の雪山に潜んでたみたいながそれをやった場合、占領したグリフィンの司令部を映画村みたいに改築されてもおかしくはない。

 

 軍としては、E.R.I.Dの掃討で大変なのに、不足した司令部の分、鉄血の相当まで多く駆り出されると軍だって手が足りずにパンクしかねない。直ぐには片付くだろうが、予算が嵩む。おまけに権利の問題上、やたらに手が出せない。ドライバーとの出会いは軍の依頼で救助された時。しかし、改めて軍人にグリフィンと協力して調査してきて、と任務を渡すのだって、たった一社のPMCのためにそうやって人一人送り込むのもやはり苦労が無いわけがない。

 

 たまたまドライバーの基地だったからドライバーのやり方に付き合っている。死地を相乗りして一緒に駆け抜けたのを認めてくれているのか、それとも単にフレンドリーなのか、スタッフたちや人形とも安定した付き合いだ。

 他のところだと、こっちでやっとくからお前は帰れ、みたいに冷たくされてもおかしくはない筈。

 

 しかし、こういう相手方の冷遇は、時と場合次第では組織同士でのわだかまりや亀裂になり、後から大問題に発展したりする。『これがうちらなりの優しさだ』なんて釈明したって、世論的には一切通用しなくなる。

 

 つまりは、立ち入ると色々面倒だし、それなら、例えばグリフィンが権利得て管轄し運営する都市や地区なら、治安維持や防衛もグリフィンに任せてしまおうよ、という考えに到った訳である。

 

 大きな戦争で国家が力を弱めてる以上、企業が顔幅利かすのは仕方の無いことだろう…それでも、このまま放ってもよりマズイ事になりそうだからと、『それでも俺ら公務員は君らの事を見てるからね?』と言いたそうに、こんな事をさせるのだろう。

 

 しかし、この調査任務のお陰で軍の判断材料は増えた筈だ。土地勘もない何も知らない所でいきなり襲撃され、もし壊滅なんてしたら、とんだお間抜け集団だ。数日後には世界中で叩かれてしまうこともある。ネットは広大。軍の装備の写真がフリー素材にされてしまってもおかしくない所だったろう。

 

それには、少しはドライバーに感謝をするべきかもしれない。

 

 おまけに、ドライバーの居る基地は、カリーナたちスタッフ一同からも、決して邪険には扱われていない。もしかしたら空気扱いかもしれないが。どちらかと言えば柔和な方だと思う。ドライバーだって色々教えてくれるし、第一に同乗者としても怪我したりなどの被害を被っていない。精神的な被害はあるだろうけど。そりゃ同乗者に怪我をさせないのは運転手の基本的な義務なのだが、ドライバーは他の奴ならその義務を放りたくなる程の危険な時にも冷静で、決してステアリングを放すことはこれまでしていない。

 

 「しかし、よく生き残ったゾ。話だと、そのエリアを陣取ってた鉄血製のハイエンドモデルの人形も、君とその指揮官を追跡してきたそうじゃないか。とてもじゃないが、めげてしまいそうだゾ…」

 

 

 (あんな数の追跡車両なんかに追われたら…そりゃあね…)

 

 

 ふと、軍人は上司の言うグリフィン内部の問題の事を、ドライバーは知ってるのだろうかと考えた。

 

 変わり者だ。きっとレースの競争相手以外にも敵も多い筈だし。任務に追われて身内を調べる余裕も無いかもしれない。だっていつもマイウェイを突っ走ってる感じするし。

 

 

 

 「いきなり全域に言って回ると不審に思われるから、一先ずはドライバー(指揮官)兄貴だけに伝えてあげてゾ。後、こちらでも問題は山積みだから、もしかしたら、そのドライバー兄貴の基地に依頼し、君もその彼にメッセンジャーとかで付き合うことがもしかしたらあるだろう。グリフィンって人間の人手が不足してるらしいからな。調査もそうだけど、手を貸せるところは引き続き手を貸してあげてくれ。あと、万一だが、内ゲバに巻き込まれた際は、最悪は自分の身を守るんだ。…だけど、救える命は殺すなゾ。君も彼らも、人命は今や貴重だからさ。さて、再び任務に戻って、どうぞ。以上だ」

 

 

 所々の語尾はおかしいが、軍人はそれを聞いて了解した。そして話は終わり、軍人は一礼してから上司の部屋を退出していった。

 

 

 彼は早速ドライバーにコンタクトを取った。帰還前にドライバーの連絡先を教えてもらっていた。その連絡先に向けて『こちらの用事は済んだ』。と文章を送信すると、ドライバーも『こちらも済んだぞ。合流は何時ごろだ?』と返答が来たので、日時を伝えてやり取りは終わる。

 

 

 

 

 (任務の内でもあるが、やれることはやっとくべきだよな…)

 

 

 

 軍人は思う。

 

 

 

 そう彼の知る中で、最も『走り方』を熟知し、気が付けば、いつの間にか信頼している彼のために…。




唐突なカート回だったはずなのに、冒頭と終わりで色々有りましたね(震え声)
 
シリアスってなんだよ…(哲学)

 
 
ポスト………コース脇の有人監視施設。レース中はコースマーシャルが常駐しており、コントロールタワーと相互に情報交換し、走行車両に対し、フラッグ(レース旗)で、追い越しの指示、事故や路面の状況、緊急車両の有無、タワーからの指令などを伝える。各種フラッグのほか、消火器、オイル処理用の石灰、散乱物除去用のほうきを装備する。隣り合ったポスト同士は目視できる位置にあり、濃霧などでポスト間の視認が不可能な場合、レースは中断、または中止となる。
 (今回はRO635のMFとダミーが旗振ってた所です)
 
バリア………ガードレールやコンクリートウォールの前に置き、コースアウトした車両が衝突する際の衝撃を吸収するもの。
  (要するに、鈴鹿サーキットのタイヤが積まれてたりしてるあれとかもバリアの一つ。鈴鹿は以前はタイヤ。あれは使い古したタイヤは硬くなっているためクッション性がなく極めて危険であるために新品タイヤだったそう。現在ではゴムベルトを巻いた物が主流。その理由は、タイヤがむき出しだとその間に車両が食い込むため。その場合により、ショックを吸収しきれないとして、スポンジバリアと併用している)
 一応Vol.12でカートが走ってるところは、ほぼスポンジバリアという設定。






さて、また次話をお楽しみに。


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Vol.X1 春分の日

第八戦役来ましたね。チュートリアルで一つ回されましたけど、各資材500ずつ何ですね…(白目)

何が出るのか楽しみです。


さて、今回のお話は特別編です。Xが付いててもこれは話が出来た順です。


牡丹餅(ぼたもち)とおはぎの違いは、一般的にはあまり変わらず、食べる季節が違うだけだそうです。

因みに私はこしあんもつぶあんも好き(両刀使い)

ではどうぞ



3月21日。

 

 スプリングフィールドは朝早くから基地のカフェの厨房にて調理を始めていた。

 

 指揮官が何処かで入手してきた、あまり馴染みのない食材を取り出す。

 

 「よいしょっと…ふう…」

 

 大きな米袋と小豆の入った袋。米袋は重量があった。

 

 ある日ドライバーがどこかで持ってきたお米の中にそんなものが含まれていた。どうやら復興の一環で農家が栽培したものを、お礼として譲り受けてきたのだという。人形たちは馴染みの少ない穀物と豆類に興味津々だった。無論、スプリングフィールド本人も。偶々カフェの品をどうするか悩み、世界のことを調べていた際に、ある国の御菓子が目に入り、さらに調べ続けると、その国では、それを食べて過ごす日があることを知ったのを思い出し、行動を起こしたのだった。

 

………………………………………………

 

 数日前

 

 

 

 ―ふー…お、ただいまースプリングフィールド―

 

 食料倉庫に何かを車から荷卸しているドライバーとスタッフたち。本日副官を担当していたスプリングフィールドは、気になって声をかけに向かった。

 

 「おかえりなさいませ指揮官。あら?それ、どうされたんですか?」

 

 ―ただいま、スプリングフィールド。実はこの前の警備の依頼をしてきた、あのエリアに住む農家の人たちから、余ってるのをお礼として頂いてきたんだ。復興の一環で栽培されたそうだぞ。これがお米、もち米。それで、こっちは小豆(あずき)。ああ、安心しろ?全て汚染されてないところで栽培されたもので、検査もパスしてあるから―

 

 戦争以前から作物の検査等は厳格化されている。今となっては、さして特別な事ではなく、当たり前のことであった。栽培テクノロジーの進歩もあり、基本的な農法は変わらずとも、屋内外問わず色々と作られるようになった。それがMRE等の加工品の原料にもなっている。グリフィン印の缶詰も原材料はその食材から作られていたりする。

 

 ―にしては、結構もらったな~…良かったら、お前のとこのカフェで、なにかに使ってくれ―

 

 「まあ♪それでは早速…こちらをいただいても?」

 

 ドライバーは『どうぞ』とジェスチャーする。

 

 「よいしょっと…結構重いですね…」

 

 ―にしては軽々と持ってる様だが…?―

 

 「そ、そう見えますか?身体のセンサー曰く、10kg以上はありますよ…ええと…」

 

 ―台車を貸そう。持ってくよ―

 

 「有難う御座います!」

 

 

 ドライバーは米袋10kgを軽々持って台車に載せる。小豆の袋を乗せて、スプリングフィールドと共にカフェの方へと向かっていった。

 

 

 

 それを見守る整備士クルーたちは、まるで休日に買い物に来たレーサーの夫と、その妻の様な構図となっているそんな二人に、ニヤニヤが止まらない様子であった。

 

 

 

 ドライバーの立場からしたら、それはもう役得感MAXであることだろう。世界の指揮官諸君も一度は夢見ること間違いない。

 

 

 しかし、ドライバーはヘルメットで顔を覆っているため、この時の下心が100%無いとは判断できず、お礼としてドリンクを一回分無料にしてもらおう…とか

 

 

 

『あーんスプリングフィールドぉ~運転疲れちゃったよぉ~』

 

 

 

とか言い寄って

 

 

 

『あらあら仕方ないですねぇ指揮官』

 

 

 

…と言う感じで膝枕してもらおうとか

 

 

 

『直接当たってないからセクハラにはならんだろう…』

 

 

 

……とか、そんなゲスい考えをしているか否かは、ドライバー本人のみぞ知る。

 

 

 というか、ヘルメット着けたままで感触なんかわからないと思われる。

 

 

 それでも何だかんだ言って、彼は指揮官として、人形との必要な距離を保とうとしているのだが。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 そして現在に至る。

 

 カフェでは、小豆の餡ともち米の下準備が整い、後は仕上げを施すのみ。一先ず大きさはレシピや情報にあるようなぼたもちの大きさで作ることにした。

 

 

 炊飯器のもち米をすりこぎ棒で軽くついたものを、一定量を手で千切って、ボウルに入れた餡でくるむ。

 

 

 端からすれば、手つきはあくまでインストールした作り方のデータを出力しているにしかすぎないのだが、スプリングフィールドは出力しているとはいえ、完成度を高くするように仕上げていく。

 

 

 一つ目が完成。そしてまた一つずつ完成させていく。要領を掴んだ後は、それを必要数作り上げた。

 

 

 そして、調理した者の特権、試しに一つ味見をする。ほんのりした甘さを感じ取る。そして米の甘さと食間が混ざる。

 

 「美味しい…!」

 

 

 

 思わず一言。人形らしい表現ならば、メンタル抜きにしても味のスコアは非常に高かった。

 

 これなら、皆は気に入ってくれる筈…指揮官も…!

 

 

 スプリングフィールドは牡丹餅たちの収まったトレーをラップでくるみ、冷蔵庫へ。

 

 

 

 牡丹餅は人気を博し、限定メニューになった。

 

 

 カフェもバーも片付いた後、彼女はそれを二人分お皿に盛り付け、それと食器を載せたトレーを持ち、ドライバーの部屋へと急ぎ足で向かった。そして扉をノックする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「指揮官、いらっしゃいますか?もしよろしければご一緒に…!」

 

 

 

 

 

 

……END




あとがき
 
 
 今回も読んでいただき有難う御座います。

 

 あのドライバーが誰かと並走してやがる…!!



…と思ったそこの方、おめでとうございます!(何がだよ)


 
 あれもまた彼の一面…なのかもしれないですね。
 
 
 
 短いながらも駄文でごめんなさい orz
 
 
 今回は運営からの春分の日のメールを読み、思い付いたのをここまで書いてみました。結果的には、展開はメール内のものとはある意味別物になってしまっていますが…。


 
 生まれて初めてこういう落ち着いたのを書いたかも知れない…。
 

 
 だが後悔はしていない(飽くなき挑戦)。
 
 
 
 
 読者のみんな、止まるんじゃねぇぞ…(創造力的な意味で)
 
 
 
 

 
 それでは、次のお話をお楽しみに。



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Vol.X2 妖精システム

妖精システム、日本でも実装されましたね。



ではどうぞ。


ある日の事。

 

 

 『よお、元気そうだなドライバー。手柄を取った祝いとして、お前の基地に新しい装備と設備のキット一式、幾つかの支援物資を送っておいたんだが、翌日くらいに届くそうだ。もし届いたら、一先ずその届いた日の内に返信してくれ。万一の事があると困るからな。………言っとくが、面倒だからって空メはやめろよ?せめて礼の一言でも添えてからメールを寄越せ。これを手に入れるためにそれなりに苦労したんだからな…。さて、これは今後お前と、お前の所に属する人形たちの役に立つ筈だ。今後の検討を祈る。上には連絡はしてあるから文句は言われない筈だ。上手く使えよ。またな』

 

 

 

 

 

 誰かから、どこか横柄で言葉にトゲのある文章が記されたメールがドライバーの端末に届いていた。下までスワイプすると、そこには荷物の確認用のコードが記されており、ドライバーはそれを見て、どこか機嫌が良かった。

 

 

 

 そして翌日

 

 「っ♪」

 

 大型のドローンの上に腕組みをして立つデフォルメされた少女らしき何かが司令室の机の上にいた。

 

 

 「わあ、可愛いー♪」

 「ほほー?一丁前に腕組んでやがるな?へへへっ!」

 「もう、SOPii、M16、いたずらはそこまでになさいな…」

 

 

 軍人も見に来ており、興味津々であった。

 

 

 

 「指揮官、この子は一体…?」

 

 

 AR小隊の面々が興味津々と反応している中、M4A1がドライバーに訪ねてきた。

 

 ―こいつは『妖精』だ―

 

 妖精…ドライバーのその返答にM4は首をかしげた。妖精なんて童話の世界の住人だからだ。

 

 ―ああ、こいつはな?支援用のAIなんだ。そのメンタルが、自分自身を…山だの、川だの、森だの、火災だの、爆撃だの…弾薬だの…爆薬だのに宿る、空想の話に出てくるあの妖精だと思い込んでいるんだ―

 

 

 

 「な、なるほど…となると、この妖精さんが新装備ですか?」

 

 

 山と川はわかるが、後者からどんどん物騒になってきている表現に困惑するM4。しかし、その愛らしさに思わず触れたくなっている。因みにこれはホログラムである。

 

 

 

 軍人は、一部の兵士や政府関係者が今後有事で使われる予定で、現在試験運用中の汎用支援AIシステムのようなものと解釈しており、ドライバーに訊ねると、彼は『アレはホントにヤバイ時に使うための仕様もあってか、こいつほどキュートなものではないけどな』と答えた。

 

しかしなぜ、ドライバーがそんな軍用の物の存在やら情報を知ってるかは誰にも分からない。

 

因みに軍人は、そういう情報は指揮官としての仕事上、どこかで必要だから入れてる、と思っていたため、知ってそう…という判断で聞いたのだが。きっとそういうマニアなのだろう、という認識で止まっている。

 

  

 「なぁ指揮官。こいつは一体どの様にして使うんだ?新装備、なんだろ?」

 

 そこで、M16が妖精を指して質問してきた。今一使い方が分からない。

 

 ―簡単だ。使うものの上空に飛ばして、この妖精ちゃんとリンクを取るんだ。それだけ―

 

 なるほど、簡単だな…とドライバーの解説に少し苦笑いするM16。先程、彼からあるアプリケーションをインストールし、指示あるまでは起動するなと言われていたのを思い出した確かそのアプリの名前は…。

 

 ―実際に使ってみよう。皆、『妖精システム』を起動しろ―

 

 人形たちはアプリを起動させた。

 

 すると、目の前の妖精が乗ったドローンに反応し、『リンクに成功しました』とメッセージが現れた。

 

 すると、演算処理や効率が高くなっていた。

 

 

 「「「「おおー」」」」

 

 ドライバーの指示でリンクを絶つ。

 

 ―良い反応だな。起動には成功と言ったところか―

 

 うんうんと頷きながら、ドライバーはジェスチャーをしていた。

 

 すると

 

 「指揮官さん!質問!」

 

 ―SOPii、どうぞ―

 

 「この子お喋りしないの?」

 

 ―出きるぞ。ほら、そこのお姉ちゃんたちに声を聞かせてあげてくれ―

 

 妖精に向けてジェスチャーする。すると

 

 

 

 

 

 

 「こわいかくそったれぇ…とうぜんだぜ、もとぐりーんべれーのおれにかてるもんかぁ…」

 

 

 可愛い声で吐かれた発言。

 

 「一言めがクックの台詞かよ!?大丈夫かこいつのAI!!?」

 

 軍人が鋭く突っ込んだ。もし彼が居なかったら、司令室の空気はホントの意味で固まっていたかもしれない。

 

 

 その後、試験運用として、出撃が必要な際にAR小隊に預けて導入したのだが、その結果として、精度向上と、処理効率化による作戦能率向上により通常の三倍くらい迅速に任務を達成してみせた。

 

 しかし、リンクを取ったために…

 

 「「「「トランザム!」」」」

 

 妖精のネタゼリフを真似するようになった。

 

 しかし、帰還した後、妖精は目を回してドローンの上にばたんと倒れてしまっていた。技術スタッフ曰く熱暴走だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その後の司令室にて。

 

 ―こりゃ改良が必要だなァ…―

 

 「しかし、発火しなかっただけよかったじゃないか」

 

 

現在妖精はスリープ中。ドローンが投影している小さな少女は、スヤスヤと寝息を立てている。

 

 ―まぁな…軍人、そっちのはいつ実装だ?―

 

 「さあねぇ…俺のところにローカライズされるには、特殊作戦群がしっかり仕事すれば数年ほどじゃないか?」

 

 

 

 ―特殊作戦群…かぁ…確か、カーター将軍だっけか?そこの親分は―

 

 「そうだが…所でドライバー」

 

 ―なんだ?―

 

 「なぜM4たちAR小隊に任せたんだ?試験的なら他の人形でも出来ただろ?」

 

 するとドライバーは『さぁ、何故かなぁ?』ととぼけた素振りをしてコーヒーを淹れに行った。

 

 

 M4たちは戦術人形の中でも、16LAB謹製の特殊かつ高性能な人形。フレームもなにも『良いもの』で構成される。やはり比べると結果でも高いスペックを叩き出している。

 

 ではドライバーが普段から指揮しているあの人形たちでは、スペック自体が合わない?しかも記事曰く、燃えた人形の殆どがグリフィンの他所の基地でも使われていて目にするタイプ。ここにもいる。

 

 『アプリの入れすぎが原因?人形が行動中故障!発火の事例も!IOPの関係者曰く―――』

 

 ドライバーが読んでいた雑誌に、そう書かれていたのを見付ける。

 

ドライバーはもしかしたらそれを見越していたのだろうか。それか運が良かったのか?

 

 いやまて、グリフィンの人形は司令部となにかしらのリンクを取っているはずだ。だから何かしらのログが残るし、本部も探るのは比較的容易だろう。隠せば隠すだけ危険だ。立ち入って調べれば何をしたのか知られるのは時間の問題で、そうならないように下手に細工をすれば、本部から余計に目をつけられるのは間違いない。なにかのためにそういう仕様で作られたのなら、黙認されることもあるだろうし。軍にだって一つや二つある。

 

 つまりスペック隠しか?しかしドライバーの基地はパーツも多く、しかもM4たちのメンテは16LABに送らなければダメとかなんとか…。故にパーツは一般的なものだそうだ。

 

 

 

 それか、使ったというログを残さないためか?

 

 

 でも、燃えたりして損失したら、大変な事になるのは指揮官だし、それくらいは懸念してるよな…だが、嫌に徹底されすぎだ。あいつは今さっき知ったのか、それとも時期は不明だが前々から知っていたのか。 単に信用しているM4たちだから使わせたのか。それともM4たちの『強度』を知っていて…。

 

 

 ……と、軍人はどうしてなのか、ない頭で思考を巡らせる。あのフルフェイスヘルメットの風貌のせいか、時にどうも思惑を勘繰ってしまいがちになっていた。

 

 

 だが、指揮官本人はヘリアンから独断行動を叱られている。

 

 

 ソレもあってなのか、今回のは単なる思い付きによる独断なのか、それとも予め計算尽くなのか…。

 

 

 その思惑はドライバーのみぞ知る。

 

 

 

 

 

 一方、妖精については、暫くは様子見。その後改良され、余裕のあるところから実装されたそうな。そして、ドライバーのところにもその改良が施されたものがやって来ることになるのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 「そっとしておいてくれ、死ぬほど疲れてるんだ」

 「ビールでも飲んでリラックスしな」

 「もしもしポリスメン?」

 「粉バナナ!!!」

 「タピオカパン!」

 「マタピネダー!!」

 「残念だったなぁ…トリックだよ…」

 「10万ドルポンとくれたぜ(こども銀行)」

 

 「テメエナンカコワカネェェェェ」

 「ヤローブッコロッシャアアア」

 「ボールヲフットバッシテヤルゥ」

 「ただのかかしですなぁ」

 

 

 

 …と、AIたちがぺちゃくちゃと喋り(?)続けるのが大変喧しく、ドライバーも含めた指揮官たちは、しびれを切らし、この様な共通の指示を基地に言い渡した。

 

 

 

 『彼女たちに相応しい生活空間を用意しろ』




読んでいただき有難うございます。Vol.X2でした。


妖精の部屋早速レベル上げてます。多分今後酷使することもあるだろうし…ね?


今回も突っ込みどころ満載でしたが、また次回。

m(_ _)m


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Vol.13 長時間の通話ってぶっちゃけ疲れる by謎の男

スコーピオン
「私はVz61スコーピオン!この作品はフィクションだよ!作中のカーアクションを真似すると大変危険だから、真似しちゃダメだよ?オーケー?じゃあ早速…!おりゃあ!」


イングラム
「安全運転でお願いします…ってスコーピオン!?頼むからこんなところで肩輪走行はやめて!?」


ベクター
「大体5分の1の確率で横転するわ…」


????
「Vz61ちゃんがお騒がせしてすみません……」



久し振りの警告シーン。


では今回もどうぞ。


真っ暗闇のある場所にて。

 

 

 

 

 

 「…はいどうもぉ!キズ○ア…え?ミ○イアカリ派でしたか…これは大変失礼しました…はい、私です」

 

 

 

 

 

 端末を使い、誰かと通信する男。この前と同じ、野戦服を纏っている。顔も人種も分からない。男は小声ながらも裏声を使ったのだが、どうやら相手は別の人物が好みだった様だ。

 

 

 

 

 

 

「それではお待ちかねの報告コーナーです。やはり睨んでいた通り、あの噂は事実です。このままでは前線は維持以前に狭まることも予測されます。その内、『例の彼』にも手が及んでもおかしくはないでしょう。グリフィン内部にある、一部の腐敗が、各基地、各司令部同士の無差別な警戒心を生んでるのかも知れません。ご安心を、その辺においては、『例の彼』にもすぐ伝わる筈です。それに、彼も彼なりに動くことでしょうし…ええ、こちら側の障害ともなれば、こちらでもそれなりに対応を…はい?ええ…恐らく『例の彼』の場合ですと、あの風貌がそうさせてるのかも知れませんね…。グリフィンでは、ヘルメットを取った時の彼の素顔を見た者は誰もいないので。はい…ええ、その辺りの問題については、引き続き目を光らせておきます…はい。ご心配なく」

 

 

 

 

 男は一呼吸置き…

 

 

 

「続きまして、こちらで位置を特定したあの『ジャミング装置』に関し、あれは近々グリフィンが回収作戦を行い対応するそうです。……はい、『例の精鋭人形部隊』も、その作戦に…しかし、遂行には『例の彼』の力も必要になることでしょう。えぇ…『例の彼』がいなければ、ある意味話にならなくなりますから…はい。正しく、その通りです。あれがあると、我々の計画にも障害となります」

 

 男は、また一呼吸置いて喋り出す。

 

 「もう一つ…お送りしたデータを参照したかと思われますが……ええ、『ジュピター』の試験稼働と、複数の配備が進んでいることをキャッチいたしました。はい。……グリフィンの各基地に甚大な被害が出る可能性があります。…はい。了解。では、後はこちらで手を回しておきます。状況が整い次第…はい。それでは、ごきげんよう」

 

 

 通信は終了。

 だが、今回は立ち去らず、今度は違う端末で、ある場所に連絡する。

 

 

 「俺だ。また声が聞けて嬉しい限りだ。実は…ああ、ご明察、そういうことだ。なに?……わかった。なにか起こる前に、早くそこを離脱し、こちらに合流を。それと…ジュピターには注意しろ。その一部が試験稼働しているそうだ…ああ。それじゃあな」

 

 

 通信を切り、最初に使っていた端末で、更に今度は別の連絡先に連絡する。

 

「……私だ。調査していた件について、あれは本当だった。グリフィンのドライバーの基地に行っている『兵士』がいたろう?そいつの上司に俺が調べた内容を、その『兵士』に伝えてもらえる様に伝えておいてほしい。ああ…悪いが、頼んだよ。…またな」

 

 

 通信を終了。男は長電話で疲れたのか、肩を軽く回す。何時もの様に端末を片付け、その場を立ち去った。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。 

 

 

 『では○月○日の○○時に。また会おう』

 

 軍人から次の基地での合流日についてのやり取りの内容を自信の端末で確認するドライバー。

 

 画面をスクロールさせると、まだ続きがあるようだった。

 

 

 『実は、お前に伝えておきたい話があるんだ。あ、言っとくが愛の告白ではないぞ?俺にそんな趣味はない。そんなこんなで、場所を借してはもらえないだろうか。盗聴やら傍受等を防げて、出きれば安全なところがいい。ではまたな』

 

 

 メールの内容はここまでだった。

 

 

 ドライバーは『真に無言』のまま、メールの内容を確認し終え、端末にロックを掛け、ポケットに仕舞う。

 現在は基地の外に出ていた。今後の作戦のため、偵察のために担当のエリアの周辺を走り回っていたのだった。

 今は下界を広く見渡せる停車エリアに停車させている。今回は鉄血の車も見えず、ドライバーの車のブラックマークが着いている。と言っても、この辺りは今では誰も通っていないのだが。

 

 ドライバーは無言のまま、車に乗り込んだ。車のエンジンを始動させ、液体がするりと流れゆくがごとく、発進させていく。

 

 

 ドライバーの車が走り去ると、彼の車の影に隠れていたのか、煙を吹いてグシャグシャに潰れた車が止まっており、その中の人物は力尽きたのか動かなくなっていた。

 

 

 

 ―…俺だ。『事故車』を発見した。ああ、位置は送った。ん?身元も洗えるなら洗っておいてくれ。頼むぞ―

 

 

 

 フルフェイスヘルメットとバイザーにより、相変わらずドライバーの表情ははっきりとは伺い知れない。しかし、通信で見せたそのジェスチャーは、どこか含みがあるような感じであった。

 

 

 

 

 ―エンジン?ああ、とてもいいぞ。標高の高いところでもしっかりとパワーは出てる。まぁ現在地くらいなら大きな影響はない。こいつの場合、はっきり影響が出始めるのは、パイクスピークみたいなところからだろうな。そこはもう走ることは暫くは叶わなそうだが。ここら辺でも似たような所はあるから、チャレンジするなら良いぞ―

 

 

 

 ドライバーはスタッフとやり取りしつつ、基地へ向けて飛ばしていった。どうやら話題を替えていたが…。

 

 

 

 ―ん?さっきの『事故車』のことか?…いや、アレは鉄血のじゃない、どうやら…ははは…きっと運転をミスったんだろう。中の奴は…もう無事ではないかもな。もしそうならそっちも『手厚く』頼む。―

 

 

 

 

 

通信を切る。その直後、また通信が来たので応じる。

 

 

 

 

―どうしたEVO3?…なに?スコーピオンが運転する警備車両が路肩にスタック?横転じゃないのか?違うのか…ほっ…わかった。ここからなら近い。直ぐ行くから降りて周囲を警戒しろ― 

 

 

 

 

 その後も彼の車から発せられる、けたたましい排気音とスキール音が静かな山道に響いていた。

 

 

 

 

 




ということで、空襲妖精が本日大型装備製造で出たので初投稿です。

デコイ?いえ、知らない子ですね…


あ、そうそう。そろそろ主人公周辺だけでもキャラ紹介とかを書こうと思うのですが、どこに書いたら分かりやすいんでしょうか…?


では、また次のお話をお楽しみに!


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Vol.14 たまには男同士で話したい時もある。

タイトルが適当&更新遅くなり申し訳ないです…

そんなこんなでVol.14です。




ドライバーの勤務するグリフィン基地から少し離れた位置にて。

 

  

 「何だか、急に悪いな…ドライバー」

 

 そう言う軍人に対して、運転席に座るドライバーは『まあ気にするなって』と手をヒラヒラ動かすジェスチャーを行い返答した。

 

 ―まぁ、人形たちがいると話しにくい事もあるさ。喧騒から離れるのもたまには良い―

 

 軍人はそのジェスチャーに思わずそうだな、と肯定するように笑む。

 

 

 

 

 ―中には、許可なく勝手に嗅ぎ回ろうとする奴もいるみたいだからな―

 

 

 軍人は一瞬表情が固まる。ドライバーはそんな軍人を見る。軍人から見ると、ヘルメットの奥の表情は詳しくはわからないが、特に機嫌が悪いわけではなさそうなので、恐らくニヤリとしている様に見えていた。

 

 

 

 

 ―特に痴情のもつれとかな!―

 

 

 軍人は真顔になった。

 

 

 

 

 そして郊外へと車は走っていく。

 

 

………………………………………………

 

 小一時間ほど前。

 

 

 軍人を乗せた軍のヘリコプターが、ドライバーの勤務している基地のヘリポートに着陸した。この日は軍人がドライバーと合流する予定日であった。

 

 

 軍人は何時ものように降り立つと、そこに準備を済ませたドライバーの姿とその車があった。

 

 ドライバーと握手を交わし、再開を喜んだ。

 

 ―そうだ、周辺地域の調査の続きだったよな?なら、準備は出来ているぞ―

 

 そう切り出し、軍人は「わかった」と頷いた。となると後は話は早い。

 

 荷物を車詰め込み、基地を出発。スタッフたちが手を降って見送る。

 

 天気は晴れ。

 ドライバーはひた走らせており、軍人は何処に連れてかれるのか少し不安になり聞くことにした。

 

 「ドライバー…」

 

 ドライバーに問う。しかし、彼は安心しろ、と言うだけで明かさない。それどころか、『今は静かにしていてくれ』と軍人にジェスチャーを送る。

 

 軍人は、ドライバーとのチャットにて、『盗聴やら傍受等を防げて、出きれば安全なところ』と書き込んだからだ。

 

 そのための配慮か、暫く車内は無言のまま。走行ノイズと排気音だけが聞こえている。音楽を掛ける様子もない。ドライバーは走る場所を考えてるのか、今のところ、グリフィンや鉄血の人形たちとは出くわすことはなく、黙々と進んでいく。人気も人形の気配も無い。木々に囲まれたワインディングを走り続ける。

 

 軍人は、まさしく地味なドライブだと感じていた。何時もは追っ手がいたり居なかったり。味方の人形の前を通り掛かったりだ。

 

 これは嵐の前の静けさの様な物なのだろうか。

 

………………………………………………

 

 そして、現在に至る。

 

 

 

 郊外のワインディングを進み、途中で道から脇道に逸れた。

 

 ―ここからは地磁気の影響がある―

 

 突如、そうジェスチャーしてきたドライバー。

 

 ……いや違う。こいつ自分で封鎖しやがったのか。証拠はドライバーが運転中にコンソールを弄くっていた。つまり、あの地磁気がどうたらこうたらジェスチャーしていたのは、言わば口上。

 

 なるほど、彼なりに空気を読んでくれてるのか…こちらは既に切っている。

 

 

 ドライバーは、もうすぐ着く、とジェスチャーを送ってきた。一体何処まで走るつもりなのか。

 

 そこで止まった。ドライバーは、これを付けろ、と俺に四つ目タイプの暗視装置を渡し、付けろと指示された。取り合えず身に付ける。このタイプは夜間での訓練や戦地での行動時によく着けていたから、手間取ることはなかった。

 

 ―サイズはどうだい?―

 

 「ピッタリだ」

 

 ―そりゃあよかった―

 

 「お前は付けないのか?」

 

 すると、ドライバーはヘルメットのバイザーをツンツンと突いている。なるほど、バイザーに暗視機能が内蔵されてるのか。便利だなそれ。

 

 ―じゃあ、先へ進むぞ―

 

 

 

 KEEPOUTと書かれた看板の先には壁。しかし、それは隠し扉だった。扉の先には道が続いているという。

  

 だが、真っ暗闇だ。

 

 ドライバーが車のフロントライトを点灯させると前方がよく見えたので、暗視ゴーグルを頭上に上げる。しかし、車内では真っ暗なのでドライバーのジェスチャーが見えないので付け直すと、ドライバーは『これは増幅管とか色々改良してあるから多少大丈夫だ』とジェスチャーしていた。多少なのかよ…。まぁ、借り物だし壊すわけにはいかんから大切に扱うとしよう…。

 

 さて、ここで、俺はどこまで行くのか不安になった。 だが、こいつの運転なら暗闇でもどうにかなるだろう、という安心感もある。その証拠に、ドライバーは見事なステアさばきで車体をぶつけることなく、すいすいと前へ進んでいる。勾配だと少し下りぎみ。こう言ったところを運転させると、やはり腕前は流石だなと言える。途中で窮屈さを感じたり、接触するかもという心理になったりで、こうは上手くいかない。

 

 因みに少し前のことだが、俺が元々いた部隊では、こういう視界が真っ暗闇のところでフロントライトをぶつけて破損させてしまい、大変なことになってしまった事がある。しかも暗視装置も何故か故障してチーム総出で大パニックに。

 

 救援を待ってる間、仲間の一人が退屈しのぎに怪談を始めて……これ以上は思い出すのは止めておこう。最終的なオチは、みんなで仲良く始末書の提出だ。

 

 

 …さて、暫く進むと、平坦なところに出た。降りると真っ暗なので暗視装置を付けた。下を見ると『P』の文字が視界に入った。駐車場の様だ。何だってこんなところに駐車場が?デパートに作るにしては木々が生えたままだ。

 

 

 ドライバーは電源を起動させると灯りが点き、何やらジェスチャーを始めた。

 

 

 ―ここはかつて軍が使ってたシェルターの一つだ。今は払い下げされていて、それを俺が購入し、手を加えた。ここは地下の駐車場。付いて来な。案内するよ―

 

 なんだ、差し詰め、ドライバーの隠れ家か…まぁ払い下げ品ならば仕方な…ってこんなのも払い下げてたのかよ正規軍!?

 

 

 しかしまぁ、野暮だし、ここは聞かんで置いた方がいいよな…せっかく俺のためにわざわざ場所を貸してくれたし…。

 

 そして奥に入っていくと、即席の応接間らしき所へ来た。ソファーやらテーブルやら家具が置かれている。中身は薄暗いものの、案外整理整頓されていた。

 

そして、そのソファーにドライバーと俺と向き合って座る、職業らしくミリタリーな格好の俺にフルフェイスヘルメットのドライバーだけという、不穏なのかコミカルなのかよくわからない空気の中、俺は上官から預かった話を始めたのだ。

 

 

 

  

 

 ―そうなのか…わざわざ俺にそれを教えに来たってことか…―

 

 「ああ…」

  

 

 ―忠告に感謝するぞ。グリフィンの指揮官の連続不審死については、こちらもおかしいと思っていた所なんだ―

 

 ドライバーはそうジェスチャーして返答した。

 

 「ドライバー…」

 

 薄々気づいていた様だった。

 

 ―……まぁ、グリフィンの依頼の中には、そう言うブラックオプス的なモンも含まれることがあるし、それを進んで受ける奴もいる。でも、本来は余程の事がなければ身内に手は出せない筈だ。グリフィンは人形に頼りきってるイメージがあるが、実情は人間の指揮官不足で喘いでいるわけでね。下手に手駒を減らせば指揮系統の引き継ぎが間に合わないし色々大変だ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドライバーは少し間を置き…

  

 

 ―色々俺なりに調べたが、痕跡からして、恐らくやったのは人形だろう。自分の手を汚したくないって奴が差し向けたかもしれんな。そもそも、暗殺ってのは、その場に自然に溶け込まないと不味いことになる。人形だろうと人間だろうと、静かだろうと煩かろうと、命を奪うと何処かで必ず足がついてしまうもんだからな、いくら頑張っても。銃創から使われた弾の種類とかもある程度絞り込めるし、逃げ切ることは実質難しい。監視カメラが壊れようがハックされようが、あら不思議。必ず洗えば出てくる。後は時間の問題だな―

 

 「そうか…なぁドライバー、もしかして…俺が来るでの間、襲われたことは?」

 

 嫌な予感がしたので訪ねた。

 

 ―あの時のはどうだかなぁ…鉄血も含めると妙なのと遭遇することならしょっちゅうだしな―

 

 「妙なの…か」

 

  

 ―ああ。あの時はちょっとばかり『ゲーム』のお相手をしてやったよ。そいつは……そうだな…走り屋でもないやつが、突然道で走り屋に抜かれた後に急に熱くなって無理して攻めた時みたいな危なっかしい走りだったな。最終的には単独で事故ってたが―

 

 まさしくドライバーらしい対応だ。相手のクラッシュ(自滅)で決着が着いた様だが、となるとドライバーは一発も撃たずに制したことになるのだろう。

 

 というか、そこらの走り屋でも、お前の真似をしようって奴は先ず居ないだろうけど…

 

 

 ―…ただ、こういった同僚の死が増えると、これは由々しき事態だよ。被害者に何かしらの後ろめたいことがあったならばまだしもだ。罪状真っ白だったやつも複数巻き添えで死んでいた。それに、今後は更に戦線を押し広げる事にも集中することになると…やれやれ、おちおち休むことも叶わんよな…―

 

  

 「ああ…」

 

 ―あと、仮にそこらの人形がやったと仮定してもだ、人形は必ずどこかしらに行動記録やら位置情報や形跡そのものが現場に残ってしまう。そこから割れば真偽はわかる。万一、『そういう専用の仕様』の個体だったり、高度な策を使われてしまった場合、それも難しくなるがな。暗部に属してるやつらは、強盗やテロリストに見せ掛けたり、そいつの人間関係を逆手に取り、上手くターゲットが死ぬように陽動したり、それなりに色々考えるわけだ……古くさいけどさ―

 

 「まるでフィクションみたいだな…そう上手くいくのかよ? 」

 

 ―まあ、そう思うよな。成功例はある様だぜ。かといって、どこかのマフィア映画やアニメみたいに、刺客がいきなりターゲットに向けて派手にパンパカパンパカ撃とうとすりゃあ、このご時世だ。その前に警備部隊の武装した隊員やら人形やらが電光石火の如く駆け付け最悪刺客は蜂の巣。ましてやグリフィンの管理区で、指揮官が狙われてるならば尚更だ。それに、グリフィンの社員は普段は識別装置を持って歩いている筈なんだ。一種の身分証でもあるし、バイオメトリクスを調べれば、人形は狙えない。もしそれが機能してるのに認識しないとなったら…これは俺の予測だが、どこか内部に妙なのが居て、そいつの手によりセーフティを外されたか、もしくは外部に書き換えられたか、或いは…―

 

 

 「あ…或いは…?」

 

 

 

 

 

 ―何かしらの要因で、その人形のマインドマップ…即ち、AIに致命的なバグが生じ始めているのかもしれない―

 

 

 「な…!?」

 

 

 

 To Be Continued...




今回は分割しました。



次話に続きます。


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Vol.15 たまには男同士で話したい時もある。 ii

Vol.14からの続きです。

デリケートな内容…なのかもしれません。


ここからVol.15

 

 

 「つ、つまり…人形側がバグを起こし、独自判断で行った可能性があるって言いたいのか…?」

 

 ―まぁ、それが本当か否かは、分かりかねるが…だが、明らかに人形が異常な行動を起こしてる報告もあるそうだ―

 

 

 軍人は背筋が凍る様な感覚を覚えた。いつも見なれてしまっていた戦術人形がバグを起こして異常な行動?下手すると脅威となるレベルだ。時の科学者たちもそんなこと有り得ないと話していたり意見が別れていたが、現代では鉄血のAIがバグを起こして暴走している程である。そんなことがあってもおかしくはない。しかしそれでも、ついこの前まで仲良しだった人形たちに裏切られることがある可能性があるというのはいろんな意味で恐怖だ。

 

 ―それに、もしそういう個体が同じ姿の人形の中に混ざると、見分けがつかない―

 

 「そういうところは、人形(彼女たち)らしいよな…」

 

 ―だな。やつらの中身は、極論言うと、基本的に人工物の塊だ―

 

 随分と割り切るドライバー。きっとこちらにも分かりやすく伝えてくれているのだろう。しかし、俺はここで疑問が浮かび…

 

 「お前の基地の人形は平気なのか…?」

 

 ― 一応、うちの基地においては、基本的に人形にはメンテの度に最適化と同時に一定の条件付けを施してある。M4A1を助けに行った時に、はぐれたステンMk-iiがいたろ?あの後、あいつも基地で権限を上書きしておいた。AR小隊の奴等はペルシカの所のだから、アイツじゃないとその辺の調整は出来ない―

 

 ドライバーの伝えてきた『条件付け』という言葉の意味を訊ねると、セーフティ機能のアップデートで、身内を始めとする味方への誤射防止に関することだという。俺や外部から加わる協力者などに銃を向けてこないようにすることだとドライバーは一例を解説してくれた。ごく一般的な内容だと思われるが、実際これは重要事項だ。これまでの誤射誤爆の歴史がその重要性を物語っている。後は射線に出ないだけだ。

 

 だが、他所はどうしているのだろう。

 

 

 「そうなのか…それで、だ。その致命的なバグの原因は何なんだ?対処方は?」

 

 

 ―落ち着いてくれ。その所謂バグについての詳しいことは情報が錯綜しててな。だが、何れも指揮官に対する依存性が特に強い、または人間で言う独占欲の強いメンタルの構造をしている人形にその傾向が見られている。それが元々なのか、後発したものなのかは…そこまではわかっていない。ケースは多岐に渡っている…―

 

 「なるほど…独占欲?そんなもの人形にもあるのか?」

 

 ―AIの発達上、人間に近くなったり気に入られようとしたりすると…まぁ、新密度の高いやつはしっかりメンテしてやらんとダメってことさ―

 

 「結局は痴情のもつれの様なこと…?」

 

 ―まぁ、一つはそれに近い…ある指揮官は好意を持たれてる人形に下着を盗まれたり、ある司令部では、指揮官の貞操を奪おうとする人形も居るとか…他にもサイコパス化した人形にストーカーされたり…―

 

 これはもう手遅れに思えるのは俺だけだろうか…ドライバーのジェスチャーからして、ほぼフリーダム過ぎる。人間ロボット問わず、人権団体が聞いたら衝撃を受けるような内容だ。つか下着盗むってどういう性癖だ…。

 

 「そうか…そういや、一つって言ったな?ならもっとあるのか?」

 

 ―まあな。これも可能性があるってだけだが…―

 

 「それでもいい、聞かせてくれないか?」

 

 前置きを置くドライバーに、身を乗り出し、俺はそう言った。

 

 

 ―そうか………さっき伝えた独断による行動の話と被ってしまうが、指揮官に知られないように動き回ってるって可能性もある。自律行動を命令されてないのにだぜ。まぁ、人形の所属や指揮系統、他には、M4たちAR小隊みたいに人間の指揮官が居なくても独立行動できる奴も存在するから、一概には言えないんだがな―

 

 「お前のところはどうなんだ?」

 

 ―俺の指揮してるところの場合だと、警備チームがその一つだ。巡回路を指定し、その時その時に必要な指示を出してからゴーサインを出している。だが、スコーピオンやネゲヴの運転は…あれはどう説明したものか…条件付けをしても中々直る気配がないんだよな…―

 

 

 「その人形の運転を体験した覚えがない俺が言うのも筋違いだが、多分、暴走じゃないと思うんだがそれは…」

 

 むしろ一緒にしてはダメなんじゃないかと思い、俺はドライバーの返答に対して更に返す。すると、彼は驚いた様にこちらを見た。お前もしや自覚してなかったとか言うんじゃないよな?

 

 「思い当たることはないのか?」

 

 ―うーん…一体どこで間違えたんだろうか…あ!一つ思い当たるぞ―

 

 ドライバーはポケットから端末を取り出して映像を見せてくれた。それは基地の運転教導のオリエンテーションに使ったという、ドライバーによるデモ走行。何時もの彼の車でのドリフト走行やら大ジャンプやらこんなの見せたらアカンと言われる代物だ。

 

 問題のシーンに出てくる車はいつものではなく、軍用の4WDカーである。スローモーションで流れるシーンがあり、縁石や段差に乗り上げて本の一瞬だけ片輪走行の様になっている箇所がある。

 

 カメラアングルと編集はカリーナが行ったという。まるで映画とか、近年のとても綺麗なグラフィックのレースゲームのOPとかイントロの様だった。

 

 「片輪走行…ん?ここだ。もしやこれか?」

 

 先程の軍用4WDカーのシーンで一時停止貰う。ドライバーは『これ単に勢い良く突っ込んだから軽く浮いただけなんだよな…』と当時の状況を教えてくれた。

 

 いやまて、M4A1に貸した教材が間違えてバーンア○ト渡してたりもっとあると思うのだが…

 

 

 「まぁ…結局のところ、お前の所の人形は大丈夫だってことは分かったよ」

 

 ―それは何よりだ。こちらも話すことを話した甲斐がある。釈迦に説法かもしれないが、ヤバイ時はアンタ自身の身を守ってくれ。だが、最初に会った時にも伝えたが、ドライブバイだけは場所を考えてくれよ?でないと怪我しちまうからな。俺も運転中は自他関係なく気を付けてるが、同僚が昔腕を持ってかれそうになったからな―

 

 「ドライバーが銃を撃ってるところ、想像つかないんだが…」

 

 ―そうか?そうだなぁ…運転に集中しているからな……さて、そろそろ戻ろう。今回の事やシェルターの事は他の指揮官や軍の人間には他言無用にしてくれるか?良からぬ混乱を生むかもしれないからさ―

 

 「ああ、了解した」

 

 そして、戸締まりをしてから、電源を全て落とし、再びナイトビジョンを付け、ドライバーと共に車に乗り込んだ。

 

 シェルターの外に出てナイトビジョンを外してドライバーに返却する。

 外はまだ明るく、解放感を感じる。

 

 

 帰り道は山道を下る。ドライバーは少し道を変え、再び通信装置を起動した。

 

 すると

 

 『指揮官様~!指揮官様~!あ、繋がった!今どちらに!?』

 

 ドライバーは後方幕僚のカリーナが捲し立てるように言うのに対し、一言詫びてから調査と偵察をしていたら接触不良か通信装置がおかしくなっていた、他は問題ないと伝えた。

 来る時の言い訳とは二転三転してるようだが、後で調べたら、確かにここには地磁気が特別荒れてたりということはなかった。

 

 『な、なるほど…』

 

 ―それより、基地の状況は?―

 

 『はい!滞りありませんよ!ご安心をっ』

 

 ハキハキとカリーナは返す。何時にも増して表情豊かだな、軍にもそういうの居てくれたら職場もモチベーション上がるのに。しかし、購買で言い値で買わせにくるのはちょっとな…

 

 

 『ところで~指揮官様~軍人様~…新商品が入荷しましたわよ!』

 

 

 

 これ、基地まで来たら買えってことじゃんか…

 

………………………………………………

 

 

 

 一方、鉄血の基地では…

 

 

 「ZZZ…」

 

 

 「代理人さん代理人さん…出番ですよ…!」

 

 

 

 立ったままスリープモード中の代理人を鉄血人形兵の一人が呼び起こした。

 

 

 

 「ハッ…いかん、いかん危ない危ない危ない危ない…」

 

 

 

 「完全にスリープ入ってましたよ?」

 

 

 

 「すみません…不甲斐ないところをお見せしましたわ…」

 

 

 

 コホン、と咳払いし、キリッとした顔で立ち直る。

 

 

 

 「こんなに出番が無いというのは、サク=シャというやつの仕業なのでしょうか」

 

 

 

 「それは……うーん…どうなのでしょう?」

 

 

 

 「時に…デストロイヤーの方はどうなりましたか?」

 

 

 

 「実は…」

 

 

 

 ………………………………………………

 

 鉄血の特設訓練施設。

 

 

 

 「もう!何よこれ!またエンストしたわ!」

 

 

 

 ぷんすか怒るデストロイヤーに対し…

 

 

 

 「あらあら?これでは作戦開始は当分先かしらねぇ…」

 

 

 

 ハイエンドモデルの一体、ドリーマーの姿があった。

 

 

 

 「ふふふ!諦めたらそこで試合終了よ。がんばってねー?」

 

 

 

 

 「まだ諦めてないわ!見てなさいよ!」

 

 

 




急にこんな内容となってしまい申し訳ありませんでした。


このVol.14~15では、現実世界にある『AIに物事を委ねる事に関しての懸念』というのをほんの少しだけ混ぜてたりしてます。


うまく伝えられず恐縮ですが、現実世界では有益となる存在となることを信じたいところ…(˘ω˘;)



ドライバーのヘルメットのバイザーは、なんとナイトビジョンを搭載してます。ドルフロの年代ならそんなとありそうかなって思いまして。




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Vol.16 その男、オブザーバー。

週末ですね。


あの後、郊外でのドライバーとの話やシェルターの話は他言無用となり、軍人はそれを守ると約束した。

 

 今回は機器の不調により調査にならなかったとして、後日出直して調査地区の状況を纏め、報告することになった。

 

 

 そして、また数日後のことである。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 「失礼する」

 

 何時もの様に基地にやって来た軍人は、司令室の扉の前で一声かけて入る。今回は調査対象となるエリアに変更があったため、急遽相談に来る必要があり、基地にやって来たのだが、どこにも彼の姿がない。

 

それはドライバーは諸用で昨日から基地を出ていたためだった。それを知った軍人は、基地と人形たちはどうするのだろうか?と疑問に思っていた。

 

長期に渡り指揮官が不在だと有事の際に混乱が生じる。特に指揮系統。ドライバーの様な突拍子もなく奇行に走る奴でも、一応は責任者。締めるところはきっちり締めている。そのお陰か基地は滞りなく動いてるし、人形たちも適切かつ快適そうに動けている。いや、人形たちは、ドライバーでなくても、『指揮の執れる人間』が居れば、常に効率よく動く事が出来るのだ。簡易指揮機能を持たせた人形がいても、やはりその動きは複雑に思考しても、パターンが決まってしまう。敵はそこから覚えて『パターン入った状態』に陥らせ、畳み込んでくる事もある。なので人間の指揮は必要。あと、基地の運営云々も最終的な意思決定権のある人物が必須である。

 

 

 「……あれ?」

 

 司令室には見慣れない男がそこにいた。

 

 「ん…?」

 

 静かに振り向いた男は顔に大きな傷がある寡黙そうな男であった。おっさんと言うわけではないが、修羅場を潜ったような顔。

 

 「あ、えっと…」

 

 少し沈黙し…

 

 

 

 

 「済みません、部屋間違えました…」

 

 

 

 そっと出ようとする。

 

 

  

 「ドライバーなら、諸用で出頭しているよ」

 

 

 落ち着いた声で傷顔の男が言うと、軍人は『え?』と疑問符を挙げた。

 

 

 「ふむ、となると、君があいつが話していた『軍人』か?」

 

 「そ、そうだが…」

 

 一瞬見透かされたような感じがして、思わずギクッとしつつ返事をする。

 

 「あなたは?」

 

 「私の事はオブザーバー(監視者)とでも呼んでくれ。よろしく頼む。」

 

 「こちらこそ…よろしくお願いいたします…」

 

 オブザーバーと名乗った傷顔の男と挨拶を交わす。俺からは、彼の顔が傷のせいでどこか霞んでいるように見えた。婆様が昔、顔は看板だと言う話を聞いた事がある。

 

 彼は、正規軍のPMC監視委員の一人であり、奇行こそ素行と言えるドライバーの監視役を担当しているという。

 

 今になってそんなの必要なのかよ?って思うが、実はPMCは素行が悪い奴をきちんと取り締まれないことも度々ある。その結果、要らぬ犠牲を生んでしまう。

 特にG&Kの様に都市を経営できるほどに規模が大きな所では、企業ガバナンスなどが一部で形骸化しているまま操業している事もあるそうで、その調査、監視をするのが彼の部署だそうだ。

 

 ドライバーは…まぁ、ある意味で問題行動になるのだろうか。それを任務達成で上を黙らせている感はあるが…。

 

 「やれやれ…あのクソヘルメット野郎め…!アイツは立場を自覚しているのだろうか…いつも彼が迷惑を…」

 

 オブザーバーが言う。ドライバーに対する言葉に毒が混ざっている様に思えた。そして、なぜ謝るのか気になったので聞いてみると、どうやらオブザーバーはドライバーとは旧知の仲らしく、グリフィンの監査監視を担当することになり、その時、ある意味大問題児とされるドライバー専属の監視兼ブレーキ役を引き受けたされたそうである。しかもクルーガーはオブザーバーに臨時の指揮権を彼の許可の下という制限つきで委任することに決定したそうだ。異例すぎる。反対意見もあったそうだ。しかし、クルーガーの決定ならば、と周囲の役員らは引き下がったそうであるだが、ここまで大きいと、多少でも行政による監査や監視は必要なのかもしれないな。以前ならば即デモが起こって叩かれただろうけど…。おそらく情報統制だろう。それならば混乱が起きないし、目が行き届く。そこから是正したりして信頼を築ければ、クルーガー氏にとっても旨味かもしれない。

 

 しかし、あのドライバーが是正するかどうかは分からないが。

 

 この時オブザーバーはクルーガーに向けて『確かに、あのアクセルペダルしか無さそうな彼には、キルスイッチ役が必要でしょうからね』とあきれながら毒舌をぶちかましたそうである。あえてキルスイッチと言ったのは飽くまで皮肉だったそうだが。

 

 

 

 と言っても、当のドライバーは急な諸用にて基地を出ており、オブザーバーは奇しくも入れ替わるように基地につくことになったが、各権限はきちんとドライバーから引き継いでいる様だ。しかし、『あくまでグリフィンのルールに則る』、という形であり、俺がドライバーと初めて会う以前から度々あったそうである。混乱してなかったのはそのためか。どんだけ順応力高いんだよこの基地は…?

 

 

 

 しかし、オブザーバーはまさしく指揮官っぽい印象だ。ドライバーが風貌から変わり過ぎているから余計にそう見える。

 

 

 

 そんな彼は、『まあ、私も君も、同じ軍の人間であるから、同郷の友人の様に接してくれて構わんよ?』と、俺に気安い話し方を許可していた。つまり『ため口でええんやで?』って言いたいのか?

 

 「わかりま…いや、わかった。オブザーバー」

 

 「ああ。それでいいぞ、『軍人』」

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 でもね…?

 

 

 

 

 

 

 何か胡散臭ぇ…!!

 

 

 ポーカーフェイスとはいえ、多少口角が上がるも、それがホントに笑ってるのか、それともわざと笑ってるのか、ぜんっぜん掴めん…!

 

 

 「ふむ、調査任務の事だったな。ドライバーの奴からは聞いているぞ。では、話を始めようか」

 

 

 

 まぁ、とりあえず話をするとしよう。ドライバーに振り回されてる様だが、基地の設備は詳しい様だった。

 

 

 

 「じゃあ、ええと、このエリアの事なんだが…」

 

 

 

 相談内容の説明を始める俺。

 

 

うーん……なんかね、ため口許可されたってこうも風格ある感じだと反ってやりにくいんだよな…どうみたって俺より軍人っぽいし、同郷の友人つっても、リアルそんな胡散臭そうな振る舞いしないし…というか、俺あんまり同郷に友人居ない…

 

 

 

 

 

 

 

 「なるほど…それなら直ぐにでも準備して行こう。ドライバーはそう直ぐには戻れないそうだからな」

 

 

 

 「え?あんたと!?」

 

 

聞き間違えだろうか。

 

 

 「ん?妙か?ふむ、私が知る限りでは、戦術指揮官という仕事は、現場に出向くこともあるケースもある。ドライバーほど出すぎることはあまり無いが…」

 

 

どうやら、俺は聞き間違えではなかった。こいつも現場に出るのか…というかドライバーお前どれだけの権限委任たんだよお前…!

 

 

 「そ、それならオブザーバー…正直に聞くけどさ、あんたって戦えるのか?下手すりゃ死ぬこともあるし…」

 

 

 

 同郷の友人のように接してくれて構わんのなら、裏切り者ではないならば、やはり知る人たちや同胞には死なれたくない。俺は未熟さ故か、そんな不安が隠せずオブザーバーに聞くことにした。確かに風格からはそれっぽいけど、見てくれだけな人間って色々いるし…同期の顔に傷のあるコワモテな奴も、実は飼い猫に盛大に引っ掛かれて大ケガしてたためだったと赤裸々に語ってたし…。

 

 

 

  

「心配要らない。元々前線勤務だったのでな。PMCの監査と監視をする要員というのは、前線で活動することだってある。それに…ドライバーが勤めるこの基地は、その位置からして敵とはかなり近い方だしな。逆に聞くが、腰の据わらん奴が、命令とはいえ、果たして、こういう所にすんなり来ようと思うだろうか?」

 

 

 

 オブザーバーは淡々と答えた。特に怒ったりする様子はなく、そして、冷静に疑問を投げ返してきた。

 

 

 

 

 「確かに…並の神経ではここに来ようとしないだろうな……因みに、あんたの得意な戦術は?」

 

 

 

 

 

 仏頂面の彼に意表を突いてみようと思いそう聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「敵の寝床で早朝バズーカ(物理)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この発言で俺は確信した。

 

 

 

 

 うん。こいつやっぱりドライバーの友達だわ。




新キャラで顔面大破系男子(キズメン?)こと、オブザーバーさん登場。


監視役なのに、ドライバーさん専属のキルスイッチ役になった現場上がりの謎の不運な男。


オブザーバーとは本来は『監視者』とか、そういう意味です(作者調べ)。


権限与えちゃうとか…多分それはクルーガーってやつの仕業なんだ(マテ



『人物データ』に纏まり次第後々追記しておきます。



では、次話をお楽しみに。



次回、『城之内、タイキック』



デュエルスタンバイ!


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Vol.17 その男、オブザーバー。 ii

お久しぶりです。

今回は車以外に好きなもの詰めたため、長いっす。


ではどうぞ。


前回の『戦場の走り方』は…

 

 「私の事はオブザーバーと呼んでくれ」

 

 そう名乗った彼は、顔面大破系男子(キズメン)。なんと正規軍のPMC監視・監査チームの一人らしい。そしてあのドライバーの友達…。

 

 

 「――得意な戦術は?」

 

 「敵の寝床に早朝バズーカ(物理)」

 

 

 以上。

………………………………………………

 

 

 …ええと、何でこんな事になってるんだ?

 

 

 

 

 

 この俺軍人と、ドライバーの友人ことオブザーバーは、木々の生い茂る山中を徒歩で移動していた。単なる平和なハイキングやピクニックなどではないぞ。モコモコのギリースーツに素顔を隠すためのフェイスマスク、その他ゴツゴツした装備を携えているからな。人形?生憎居ないんだよコンチクショウ…。

 

 「…よしこっちだ 、落ち着いて私に着いて来い」

 

 「了解…」

 

 同じ格好のオブザーバーがいる。あんにゃろう、やけに似合ってるじゃねえか…!

 

 取り合えず付いていこう。はぐれるとマズイ…

 

………………………………………………

 

 それは数時間前の事。

 

 

 

 オブザーバーの提案で、一緒に行くことになった。堅物そうな面構えして、『敵の寝床に早朝バズーカ(物理)』とか言い出すからすごい不安だ。

 

 そりゃそうだろ、早朝バズーカって、それ戦闘じゃなくてドッキリだからな?しかも物理ってそれ危険極まりないじゃないか。再現するとなるとカールグスタフだよ?携行可能な榴弾砲だよ?自爆込みのドッキリってどんだけサービス精神高いんだよ!どんだけ至れり尽くせりなんだよ!?

 

 

 …と突っ込みたい所、オブザーバーは寒波入れずに軍本部にヘリを要請しており……

 

 

 「行くぞしんへ」

 

 

 ……と、クールに言い放ってきた。きっと映画なら、壮大なクラシック的なBGMが流れて勇ましく出陣するシーンになってる。

 

つーか『しんへ』ってなんだよ!それじゃまるで特殊部隊ゲーの動画に使われてるスラングじゃねえかよ。俺もう立派に兵卒だぞ?

 

 

 「了解だ。今行く。それに一応、俺はとっくに兵卒だからな?」

 

 

 

 

 おい、今『え!?』って顔したのは何でなんだ!?

 

 

 さて、後方幕僚のカリーナに言付けをして、出発する。カリーナは『人形を付けますか?』と聞くが、『すまない、お気遣いは嬉しいが、今回は結構だ』と、きっぱり断っていた。軍は軍で、PMCはPMCでやるっていう棲み分けのつもりだろうか?そもそも現役軍人がPMCの指揮官兼任するとかいう時点で盛大に矛盾しているとは思うが。

 

 

  

 その後、ドライバーの基地のヘリポートに、要請に応じたとされる軍のヘリがやって来ていた。機種は乗り慣れてるもの。というか、軍があっちこっちに兵士やら物資載せてるのと同じものだ。操縦していたパイロットは人間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こいつこの前二日酔いしてたパイロットじゃん…。

 

 

 途中で何故か機体がフラついたりするので…まさかの操縦不能からの墜落、そこから脱出…だなんて、かの昔から続くFPSでありがちな展開は無いよなぁ!?

 

 

……っと不安に思いつつ、ヘリは基地に到着。ハラハラしたぜ…。それでも、パイロットはしっかり仕事をしたのだから責められない。だが二日酔いは気を付けてほしいものだ。

 

 今度はオブザーバーが運転する車に乗って、ある場所まで更に移動する。空路から陸路…何処まで行く気だよ?つか目的の場所からおもっくそ逆方向じゃん。

 

 尚、運転しているオブザーバーは『普段から多忙でな。つい癖が…』と、話しているが、流石にこのライトバン(商用車)で高速道路を他所の民間企業かなにかのものと思われるライトバンたちと一緒になって飛ばすのは流石に勘弁してほしいと思う。

 

 というか正規軍の者なら、基地からジープやら借りて行けば良いだろうと指摘したのだが、下手にそんなので乗り入れれば、いざって時に基地の車が足りなくなったりすると大変だから別の車を使えとのお達しが来たため、ならば誰も乗りたがらない商用車を使うことにしたとか。しかも珍しいAI無しの車。あれ?防弾処理とかしてんのかこれ?え?純正で皆無なの!?嘘だと言ってよオブザーバー!

 

 

 

 ……そして、着いたのは郊外の地下駐車場跡地。薄暗い。うん、廃墟マニアとか居たらきっと狂喜乱舞しそうだなこれは。しかし、よくみると廃墟っぽくしてあるだけで中身は綺麗だった。

 

 車で奥へと入って行き。下層のシャッターの並ぶ所まで来て停車。どうやらここは個室型駐車場と呼ばれるところだそうだ。どこかの空港近くにもこんなのがあった様な…

 

 

 「ここだ」

 

 オブザーバーの一言の後、一度降りる。さっきの走行中の振動で痺れたのか歩きにくい。すると、察知したオブザーバーが肩を貸してくれた…。見掛けによらず、優しいんだな…。

 

 

 彼は装備をここに保管してあると言う。一々寄り道するのは、オブザーバーの立場上の問題らしく、使うものはここに保管してあるという。

 

 しかし、オブザーバーはシャッターの鍵を開けて中に入り、ハンドサインでこっちに来いと伝えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きっとそこには素敵な装備が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …何も無かった。

 

 

 

 

 「無いんかい!!何年かぶりの少年のハート返せよ!!」

 

 「まぁ落ち着いてくれ」

 

 表情を変えず手を前に出し俺をなだめる仕草をしたオブザーバーは、もう一度、何もない個室型ガレージの奥の壁を触る。何かあるのか?

 

 

 まさか、この壁……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ガラッ

 

 

 

 

 引き戸でした。

 

 

 

 (ええ………)

 

 思わず困惑する俺を尻目に

 

 「来てくれ」

 

 オブザーバーが手招きしている。

 

 

 懐疑的になりつつも入っていくと………。

 

 

 

 中は奥行きが広く、武器や弾薬等が置かれており、更に中央にはカバーの掛かった車とおぼしきものが二つある。一つは流線型で平べったいスポーツカーみたいなものであるのは判別できる。問題はもう一つの方だ。何故かシルエットがわからない様にしているのか、車の四方にポールが立っており、その上にカバーが掛かっていた。

 

 オブザーバーは装備の入っているクレートから何かを取り出しこちらに渡してきた。何とスナイパーが使うギリースーツと装備一式。訓練とかでよく着たなぁ…結局兵科としてスナイパーは選ばなかったんだが…

 

 オブザーバー曰く、今回のエリアは汚染区域ではないものの、いろんな意味で危険が一杯とのこと。服装だけみても、スカウトスナイパー同然の装備であった。ライフルは狙撃用とアサルトライフル。重装備?当たり前だろ、スナイパーは狙撃だけが仕事じゃないのさ。斥候やら偵察もやるぞ。訓練時に貰った教本にそう書いてあった。

 

 となると、今回は久しぶりに兵士らしい任務になりそうか?…なんか怖いけど…。

 

 

 「で?車はどうするんだ?」

 

 「ああ、これを使う」

 

 オブザーバーは二台のカバーの掛かっている車の間に立ち…

 

 シルエットが分からない方のカバーを取る。そして、俺は目を疑った。

 

 こんなところに隠匿してる様に置かれているくらいだから、てっきり変形したりもっと未来的な物を想像していた自分がどうかしていた様に思えてしまう。

 

 

 

 何だったのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライトバン(商用車)だったんだよ……

 

 

 

 

 

 「何かの間違いだろ…?あっちじゃないのか?」

 

 俺はスポーツカーの方を指差した。

 

 「ああ、こいつか?期待させて済まんな。これはちょっと危険なやつで、走ってる途中で少しでもバランスを崩すと盛大に滑り出す。というか、反応が早すぎて真っ直ぐ走らない。そこで今度ドライバーの奴に乗せて検証させるために、一先ずここに安置してある」

 

 

 なるほどな…ドライバーの普段乗り回してるあの車よりも低いし、荷物も乗っからなさそうだしな…。一応、レーダー欺瞞機能があるらしい。というか、何に使うんだよこの車…。

 

 

 オブザーバー曰く、隣のライトバンも改造を施してあるらしい。見たところそんな風には見えんが…

 

 そんなこんなで準備を済ませ、荷物を車に積んで出発した。うん、乗り心地はそう変わらない。つか、もう慣れたよ…。

 

 

 そんなこんなで駐車場を出る。あの隠し扉だった引き戸とシャッターの戸締まりをする。どうやら勝手に戸締まりしたりとかしないらしい。

 

 

 

 そして、都市部を出て、目標の調査エリアへと向かうことになった。また長いドライブだ…ドライバーだとあの何時もの陽気なノリに乗せられ、気が付いたら鉄血と戦場となっている区域まで来ていたりして、驚く事があったのだが、オブザーバーのノリって神妙な感じだからもう戦場にいる感じがしてならない。

 

 そんなこんなで都市部から随分と離れていく。オブザーバーはこのエリアについて、調べたいことがあると話していた。その理由は…

 

 「軍人、指揮官殺しの噂は聞いたことはあるか?」

 

 「!?」

 

 思わず驚いた。だって上司曰く、情報部から聞いたって話してたし、上司と情報部を除けば、ドライバーと俺だけくらいしか知らないはず。なのに何故?

 

 「ほう、その様子だと…既に耳に入っていたと見受けられる。私はPMCの監視と監査役。その辺の噂は知っている。あと、恥ずかしながら、情報部に知り合いがいてな…ちょっとしたお節介として情報提供を受けることがある」

 

  俺は思わず沈黙しまう。ドライバーに口外するなって言われてるし…。けど…

 

 「この前、ドライバーは交通事故により潰れた車を偵察中に回収したそうだが、あまりにも不自然だった…となると、もうアイツにも手が及んでるかもしれないな…」

 

 あ、感付いてる?

 

 「あのアホは狙われても仕方がないかもな。普段からヘルメットを付けて顔を隠しているから、要らぬ誤解だって受けるだろう…………今から言う事は、君が同胞だから話せることだ。私とドライバー以外には口外するな」

 

 俺は頷く。

 

 オブザーバーは間を置いて話しだした。

 

 「私も業務中にもあの不審死のことは色々と調べていたんだ。顔馴染みのグリフィンの社員が何名も殺されてるので、どうしても気になっていてな。上への報告のためにと銘打って漁っていた。情報部からのデータ提供を受けて更に確信したよ。そして、今回調査する地区だが……………実は、その被害が起こった司令部が存在する所でもある」

 

 

 うげ、マジかよ…しかし、軍の人間としては知っておきたい事だ。いくらPMC任せにしてる時代だからって不祥事を発見したならば、野放しには出来んものな。いくら軍が強力っつっても、よく分からん奴には誰だって弱いものだ。万一の犠牲を少なくするためにも、調べることは必要になるよな…。

 

 

 「その基地は…指揮官が亡くなった後どうなったんだ…?」

 

 「関係者筋では、統制を失い混乱。そこを鉄血に狙われ交戦。統制なしではうまく対処できず被害が出て、非戦闘員のスタッフは皆待避した。鉄血も、そこに旨味がなかったのか、そして抵抗も受けて損耗したか、占領せずにそのまま帰っていったそうだ。その後はどうなってるかは中に踏み行ってみないとわからない。犯人が人形の疑いはこのご時世のため無論浮上してるのだが、その人形がどんなタイプなのかすら掴めていないんだ。そいつが犯行現場から去ってしまってるのは確実だが……」

 

 

 オブザーバーは少し間を置き…

 

 「軍としては、PMCとの関係に亀裂を入れたくないという考えだそうだ。私も正直そう思う。いくら戦争とは言えど、それを利用し不正を無かったことにしようとするのは、放ってはおけない」

 

 PMCと軍は、かなり親密な関係だったりする事もある。グリフィンの場合はIOPとの提携が強いが、もとを正せば、軍の兵器の一つを卸している企業だ。武器だったり、他の物資だったり、融通できるのもさほど訳無い筈。軍からだと払い下げ品の購入…という扱いか?

 

 まぁ、どちらにしろ、物資を渡した先のPMCが何か不祥事を起こすと、皺寄せは供与した軍や企業にも遅かれ早かれやって来る。こんなやつらに任せていいのかってね。いざ訴求されてみろ、なにも知らないPMCの警備兵や人形たちは困惑必須だ。全体に影響は出る。隠蔽すれば更に酷くなる…。

 

 かといって、俺たちは軍。企業はどうするかは知らんが、こちらは公務員、建前上は飽くまでも奉仕者だ。そんな俺たちが確たる証拠も、警察の様に礼状もないのに、不祥事を立件するのは許されない行為だ。だからこそ、そんな不祥事を起こさせないように、起きても証拠を元に是正を促すために、こうしてオブザーバーみたいな奴等が送られてくるわけだな。

 

 しかし、職務中はトラブルもかなり多かったろうな…彼はドライバーとは旧知の仲故に、互いに関わり易い分、意見しやすかったのだろう。にしては相変わらず車でかっ飛んでいたけど……ドライバー、お前ホントに是正してるのか?まぁ、ドライバーはあれでも職務はこなしてたし、俺も隣に乗って同行したからそれは証明出来る。

 

 他所だったら、軍は軍でも、オブザーバーみたいなのが監査だ監視だとやって来たとしても、他人の家のことに口出すなって門前払いされてしまう事もあり得そうだよな…。そう言うところって後ろめたい事があったり、単に探られるのが嫌ってだけもある。

 

 ピンキリすぎるからドライバーとは比較しようがない…。

 

 

 あれ?というか、俺普段からめっちゃドライバーとかにツッコミまくってきたけど…もしや俺って厚かましいのか?やべぇ、俺、元々よそ者だし自重すべきかも……

 

 

 

 

 

 「そうか?君とアイツは、いいコンビだと思うがね」

 

 「!?」

 

 オブザーバーはふふふ、と胡散臭そうな笑みを浮かべる。

 

 こいつ読心術でもあるのか?俺そんな素振りしてないぞ?

 

 「不思議そうな顔してるな?なら当ててやろう。『自分が厚かましいかもしれないから自重すべきかも』的なことを 考えていただろう?」

 

 「まさか…今の顔に出てたか?」

 

 「ハッキリと」

 

 オウフ…いかんいかん。

 

 「だが心配いらんよ、アイツはお前を嫌ってはいないさ。君はアイツのペースノートを読まされたそうだな。それが証拠だ」

 

 雪山でのアレか。なるほど、信頼されてるわけか。俺何かしたっけ…?同行してるうちに芽生える信頼感ってやつか?

 

 「そうか…はは、どうやら杞憂だったよ。でも、一行読み飛ばしてしまったけどな…」

 

 「プロでも読み飛ばすミスはある。気にすることはない……それと、その調査任務、該当エリアの司令部についても言及されてたな。立ち寄るから覚悟を決めておけ」

 

 「え…?」

 

 行くの!?いきなりなに言い出すのオブザーバー!?それって……

 

 

 

 ん?ちょっと待て…資料を……

 

 

 

 

 

 

 

 『――該当地区の司令部の内部に入り、可能な限り状況確認も実施せよ――』

 

 

 

 

 

 本当に書かれてました。 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、現在に到る。車を麓で停めた後、カバーを軽く掛けて秘匿し、装備を確認して山中へと入っていった。森をのそのそと移動し、見晴らしのいいところへと来やって来た。しかし、こんな森の精霊的な格好して、しかもこんなコソコソやる必要があるのか?すると、先行しているオブザーバーが突然しゃがみこみ…

 

 

(伏せろ。ほふくして、ここに来い)

 

 オブザーバーが俺にハンドサインを送りその場に伏せた。俺はほふく前進し、伏せているオブザーバーの横に移動した。オブザーバーは下前方を指す。

 

 

 「あれを見てみろ…」

 

 オブザーバーが指しているその方向を見ると、警備用の小型ドローンが数機飛んでいた。

 

 「あれは?」

 「IOP製の警備用ドローンだな…似た様なものを職務中に見掛けた事がある」

 「人はもういない筈だろ?ということは、グリフィンからのサポートが間に合ったのか?…だけど、あのドローン汚れてるな…」

 

 「もしくは、放置されたまま指揮官の死に気づいていないのかもしれん。どっちにしろ関知されると不味そうだ。やり過ごそう。奴等は簡易センサーの筈だから、ここから身動きしなければ気付かれない筈だ」

 

 一先ずじっと待つ。ギリースーツになにか細工がなされてるのか、ドローンをやり過ごせた。こうも防犯設備が鬱陶しく感じるのは初めてだった。

 

 そしてゆっくりと移動すると、フェンスと建物が見えてくる。グリフィンの基地だ。

 

 「やけに静かだなぁ…」

 

 フェンスの奥は人の気配がなく、人形すらも見当たらない。サポートが間に合えば基地は稼働している筈なので、『サポート間に合った説』の線はなくなった。

 

 ドライバーの基地と比較すると変だけど、スタッフたちが作業していたり、人形が警備で巡回してたり、もっと賑やかである。

 

 鉄血が攻めてきた時に生じたのだろうか、一部建物に弾痕が残っていた。奥の司令部と思わしいところは無事だったが。

 

 

 

 

 

 「ここまで静寂に包まれていると、逆に気味が悪いな。現時刻より、ガサ入れ(状況確認)を開始する。軍人、背後を頼む」

 

 オブザーバーは淡々と告げてきた。俺は元々の調査任務と怖いもの見たさで了解するが、半分『マジかよホントに入るの?』とビビりつつも、その後ろに続き、警戒しながら一緒に進む。つか、ガサ入れってなぁアンタ…

 

 中は無人だ。どうやら基地は誰も訪れてはいない。運が良いのか…ならこのご都合主義に乗じて先に行かない手はない。電源設備はどうやら生きているので、

 

 そして、監視カメラの映像を確認するため、あちこち回るも壊れてたり電源が付かなかったりで結局警備室へ向かうことにした。監視カメラが有ってビックリするが、何と壊されていた。

 

 

 

 

 「着いたな、早速カメラの内容を確認するぞ」

 「そんなことして大丈夫か…!?」

 

 「証拠集めとしてちょっとコピるだけだ」

 

 オブザーバーは、そう言ってUSBを懐から取り出し、ポートに差し込んだ。

 

 

 「さて、後はここでデータが壊れていれば復元しダウンロードを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「……」」

 

 

 

 

 

 端末から発せられる謎の効果音に沈黙する俺たち。端末を操作するオブザーバーと思わず顔を見合った。

 

 嫌な予感がした。

 そう、もしかしなくても、端末のモニターからはエラー文が記されたウィンドウが表示されていたのだ。

 

 「エラーとか氏ねばいいのに……」

 

 オブザーバーが冷静ながら一言漏らしながら作業を行う。カリーナが居てくれるとこういう時助かるが、非戦闘員の彼女を連れてこられるほど、ここは安全とは言えない。

 

 「よし、ふう…ちょっと焦ったが、なんとか復元し、ダウンロードは成功だ…」

 

 「監視カメラの録画か?」

 

 「ああ、指揮官が死ぬ前からのを、あるだけ全部。幸いデータは生きていた様だ。消されたと思ってたが復元可能な状態で良かったよ…あと、その他のログのデータ諸々…」

 

 鑑識のヨ○ザワさんみたいな人が居てくれたらな…とこぼすオブザーバー。

 

 そういや、あの人降板したんだっけ?

 軍の同僚に昔放送された刑事ドラマが好きな奴がいて、そいつがよく話していたのを思い出す。

 

 

 「では、参りましょう、軍人くん」

 

 「…?はは、了解です、オブザーバーさん…これでいいか?」

 

 「上出来だ」

 

 こんなやり取りをしているが、俺たちは軍の人間。そして、一応ドライバーはPMC。そしてここは、いつ敵対する物が侵攻してくるか分からないエリアである。

 

 さて、程よく肩の力が抜けたところで、次は指揮官の部屋とされる執務室に向かうことにした。大半の指揮官は執務室と自室を兼用している事があるとのこと。それを信じて執務室の部屋。オブザーバーと俺は扉にトラップがないことを確認してから入る。ん?職業病だよ。もしかしたらブービートラップが敷かれてる場合もあるかもってね。何もないので、そのまま入ったが、遺体は無かった。騒乱が収まった後、誰かが持ち出した可能性があるとして、オブザーバーは実行犯か、もしくはその仲間がここに立ち寄った可能性があると睨んでいた。証拠として、血痕と思わしきものがある。こういうシチュになるとかなり生々しいと感じる。オブザーバーは部屋の状態を端末のカメラで撮影し、現場の状況を記録。物的証拠はあの血痕だけ……かと思いきや、オブザーバーは何かを発見。

 

 「見てみろ軍人…」

 「何だ?」

 

 床に溢れている何か。砂、或いは粉みたいなもの。

 

 「…アロマサンドか」

 

 「アロマキャンドルじゃなくてか?」

 

 「ああ、こいつは、火を必要としない砂タイプの芳香剤だ。グリフィン指揮官の間で流行っている嗜好品さ。……まて、嗅ごうとするな軍人。毒物が混ざってる可能性がある」

 

 「なっ!?すまん…」

 

 

 

 オブザーバーに止められ後退りする俺、いっけねぇ…危うく現場荒らすとこだったよ……ふう

 

 オブザーバーはというと、散った砂状の芳香剤の写真を取り、考え出す。

 

 「揉み合った形跡ってやつか?アロマサンドとやらを……実行犯か被害者、どちらかがどちらかにぶっかけたとか?」

 

 「可能性がないとは言えんな。採取していこう。何も無いよりは良い…」

 

 ポーチから採取するための小袋と、小さいスプーン、あと簡易検査キットを取り出し、溢れたアロマサンドの一部を入れる。軍人は荒らさぬようにその場で待機。オブザーバーの作業を手伝う。というか、ギリースーツの男二人組が現場検証紛いなことをすることになるとは…つーかオブザーバー、あんたそんなの持ってたの!?

 

 「これでよし。毒はないようだな…だが、簡易キットだから、持ち帰ってからもう一度細かく見てみよう…」

 

 他には荒らされた形跡は無さそうなので一度片付けてから部屋を出る。簡易検査キットの処分は彼がキチンと片付けた。

 

 その後も基地の中を散策する。備蓄や設備はどうやらそのままで、補給用の物資も箱詰めされたまま。

 

 すると、通路の窓の部分に足跡を発見した、オブザーバーが取り出した端末を使って調べる。見た感じは外の土のような跡が残っている。実行犯はここから侵入したのだろうか。しかし、遺体を持ち運ぶならば、ここからでは持ち運べない。ならどこかしらに痕跡だってある筈。広いところから出る必要がある。となると、表口か裏口から出てった事になるのか?表口からは絶対にばれるだろうし…それか片付けた?訳が分からない。しかし、似たような足跡があると、オブザーバーは端末であちこちスキャンしたり、また出入り口小さな霧吹きを吹き掛けたり鑑識めいた事をして調べている。今の状態では警察だってろくに入ってこれないこんな所故か、思いあたるところは何でも調べている。そこまでやって後で上に怒られないのか…?

 

 すると、突然オブザーバーが何かを発見したのか、こちらに声を掛けた。

 

 「軍人、これを見てみろ」

 

 「どうした?」

 

 俺に端末を渡してきた。これを通して見てくれってことらしい。 

 

 見てみると、端末のカメラ越しに映るの裏口の床や周辺に、なんか色がついている。

 

 「誰かが掃除をした後だ。薬品を使った痕跡がある」

 

 「薬品?遺体を運んだからか?」

 

 「かもな。恐らく、鉄血の攻撃が済んだ後に遺体を移動…その後に移動させた証拠を隠滅するためか…どうやらまだ新しい。こちらの調べによると、あの事件以降、ここにグリフィンは増援を一度も送ってはいないそうだ。物資リストの中にも、この薬品は入っていない。それに人や人形を送ってるのなら、もっと綺麗になってる筈なんだ」

 

 便利だなこの端末って…さて、ということは裏口からこっそり遺体を持ち出して行ったのだろうか。

 

 「薬品が足りなくなったとか?」

 

 「うーむ…む?」

 

 オブザーバーは警戒しつつ裏口から出ると…

 

 「軍人、どうやらその薬品の入れ物が見つかったぞ」

 

 おお、すげー俺!

 

 オブザーバーはその入れ物を証拠品として押収する。形状は霧吹き型。

  

 

 そして再び屋内に戻ろうとしたその時、車が近付いてくる音が聞こえてきた。俺とオブザーバーは建物の中へ戻った。音からして通路の窓から。 

 

 

 「マズイ状況だな軍人」

 「全くだよ…オブザーバー」

 

 

 

 「もう少し調べたいところではあるが、証拠を一度持ち帰らないとならんな…それと軍人、ここからは銃を降ろして進むぞ」

 

 突然オブザーバーは言い出す。

 

 「え、それはどうして…?」

 

 「二世代戦術人形たちは、個体差はあるが、離れたところの銃口の向きを関知出来る。最悪はそこから位置を割り出されてしまう。御祈り程度だが、今は下に向けておくんだ」

 

 「了解…」

 

 銃をそっと下に向ける。っていうことは……

 

 「もしや…なぁオブザーバー、人形……来ているのか?」

 

 「無論だ。丁度そこにいる…少し観察してみよう」

 

 オブザーバーの指示通り、銃口を下にして、物影からひょっこりと観察してみる事にしたのだった………。

 

 

 

 

 To be continued…




長くて申し訳なかったです…



ていうかプロットを作った後、自動車要素どこ行ったのよ…ってなり掛けましたので今回の様になりました(殴



さて、また次話に続きます。


お楽しみにっ


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Vol.18 その男、オブザーバー。iii

Zas M21とK5が当たったので初投稿です。

お待たせしました。

それでは続きをどうぞ…。


前回までの『戦場の走り方』は………

 

 

 

 森を進み…

 

 「―――現時刻より、ガサ入れ(状況確認)を開始する。軍人、背後を頼む」

 

 無人となったグリフィン基地に侵入。

 

 

 デンッ

 

 「エラーとか氏ねばいいのに…」

 

 

 警備室にて端末がエラーを吐くものの、なんとか監視カメラや各種ログデータを復元し回収。

 

 

 

 「――誰かが掃除をした後だ。薬品を使った痕跡がある」

 

 「薬品?遺体を運んだからか?」

 

 

 「かもな。恐らく、鉄血の攻撃が済んだ後に遺体を移動…その後に移動させた証拠を隠滅するためか…どうやらまだ新しい――――」

 

 遺体は持ち出されていたらしく、部屋には血痕とアロマサンドと呼ばれる砂状の芳香剤が床に溢れていた。

 

 

 

 自分達が入っていった表口や裏口、通路の窓。

 調べてると窓の辺りには土、表口には何もなく、裏口には掃除された後。オブザーバーから借りた端末のカメラで見てみると、薬品の反応が。外には霧吹き型の入れ物が転がっていた。

 

 すると車の音が近づき―――

 

 

 「―――人形……来ているのか?」

 

 「無論だ。丁度そこにいる…少し観察してみよう」

 

 

 以上。

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 車が入ってきた。車種は黒のSUV。俗に言うクロカンと呼ばれるタイプ。車が停車すると、SUVから、人形が降りて来た。

 

 「ふう…この頃、鉄血が追跡用の車なんて使ってるみたいだから、ここに来るまで時間かかったよ…」

 

 「鉄血どもの癖に生意気ね…」

 

 鉄血の動向に対して吐き捨てるように言う人形。

 

 「まぁ、それもそうだよね…さて、さっさと片付けを済ませて帰ろうよ。流石にこのままじゃ本部にもバレて大変なことになるし…」

 

 「そうね。早速始めましょう」

 

 

 二人は清掃用具を持って屋内の裏口へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 「なるほどな…」

 

 その会話と行動はオブザーバーが自身の端末で遠隔操作した監視カメラとそのマイクでチェックされていた。

 

 

 「オブザーバー、奴さんがこっちに来るぞ…!」

 

 オブザーバーは『静かに…落ち着け』とハンドサインを送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?それ面白いわね?私にも見せてよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「っ!?!?」

 「…?」

 

 俺とオブザーバーの間に、突然サイドテールの女の子が一緒になって端末を覗いていることに気づき驚く。黒地に黄色が入ってるジャケット。片方の目元には縦に傷が入っている。

 

 

 

 

 

 

 「ビックリしたァ…」

 

 「あらあら、驚かしてごめんなさいね?」

 

 その少女は笑みを浮かべつつ詫びてきた。

 

 「まるで、バカ殿のナ○コ姫みたいだったな」

 

 オブザーバーが冷静に対応する。そう言ってる場合かよ…!

 

 「あ、わかるう?あれ好きなのよ~」

 

 「ちょっと待て、君は誰だ?つーか一体どこから入ったんだ…?」

 

 

 「私?私はしがない戦術人形よ」

 

 「もしかしなくてもUMP45か?」

 

 

 「いきなりネタバレされた!?」

 

 なんなんだこのやり取り…全く掴めんぞ……。オブザーバーにUMP45と呼ばれたその戦術人形は、小さく咳払いをする

 

 「んんっ…えっと、もしやあなたたちって、最近巷で噂の指揮官殺しについて調べてるのかしら?」

 

 「なにか知ってるか。」

 

 「いいえ?でも、流石に私たちが元ではないわね…」

 

 

 

 「そうなのか?いつも変な任務ばかり受けてると聞くぞ…?何をしたかは問わんが」

 

 

 「あらぁよくご存じで。あ、もしかしてぇ…私の事……好きなのぉ?」

 

 

 モーションかけるUMP45。

 

 可憐な容姿だけど、ちょっとクネクネし過ぎてて、オネェに肉薄された時の様な恐怖を感じた。それに隣のオブザーバーが地味に引いているのを、俺はこの目で見てしまった。

 

 というか、信用できるのか?

 

 

 「あ、その顔、信用できるのかーって顔してるわね?」

 

 指をピンと立て俺の心境を言い当ててきた戦術人形UMP45

 

 なんで?そんなこと顔に出てた?俺フェイスマスクしてるぞ?

 

 「すまないが、いきなりナ○コ姫みたいな登場しておいて、信用しろってのは無理があると思うんだが…」

 

 声を殺してやんわり突っ込む。

 

 「ふふふ、そうよね。ならば信頼は勝ち取らなきゃね♪ここは謎の美少女人形45ちゃんに任せてくれる?」

 

 

 ああ、容姿だけは褒めてやるさ…。

 

 いきなり初見でこんな振る舞いされて困惑してるし、初見の彼女には失礼だが、剽軽通り越して寒気がするぞ…?キャピキャピしすぎて逆に引かれるパターンのキャラだなこいつは…。

 

 だが、手に持ってる獲物からして、その子が戦術人形であることは本当であった。うん、動きが良い。

 

 「ではUMP45、あいつらを捕まえるから、あいつらの目を盗んでくれるか」

 

 「了解よ」

 

 「軍人、奴らを捕まえるぞ。正面からだいしゅきホールドすると120%危険だから、背後からそっと抱き締めるんだ」

 

 「今さらっとすげー単語が聞こえたんだが…要するに捕縛しろってことだな」

 

 「何か妬けちゃうわ~」

 

 

 「君まで何言ってんの!?」

 

 咄嗟に突っ込む俺。オブザーバーとUMP45って、もしや知り合いなのか?空気的に明らかにノリが良すぎるんだが…。

 

 

 「やつらの目を盗んだわ。うん、確実にこっちに向かってきてるよ」

 

 「そうか。そのまま奴らをモニタして位置をこちらに伝えてくれ。これは無線の周波数。後は私たちが何とかする。…行くぞ」

 

 「よ、よし…!」

 

 俺とオブザーバーはUMP45にこの場を任せて部屋を出た。こちらに向かってる人形たちの整った容姿からして、背後から襲うなんて犯罪臭が漂うが、真実究明には必要だ。

 

 あれ?元々これってエリアの調査だったよな?

 

 

 …ま、いっか!

 

 

 「目標に近づくから、肩甲骨をよく回しておけよ?銃は最終的な手段だ。いいな?」

 

 「お、『ゼロレンジ』をやるのか?よし…」

 

 

 肩をグルグル回す。身体は緊張すると強ばったりして動きが鈍るために、ウェイブっていう波の動きをイメージして動かして筋肉の緊張をほぐし、動きのロスを減らし、素早く敵を制圧するという、近接格闘術だ。つーか人形に効くのかは不明だ。だからこそ、背後から接近しろとオブザーバーは言っていたのだろうけど…。

 

 

 

そして、『俺たちは狩る者だ…俺たちは狩る者だ…』と言い聞かせるのを忘れない。ただ、俺は声に出ていたのか、オブザーバーから奇特な視線を向けられていたのはここだけの秘密だ。

 

 銃を使わないとなると、逮捕って感じだろうか。オブザーバーは、直後に『一先ず殺さず捕らえろ』と小声で伝えてきたので、そう言うことで間違いはなさそうだ。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 「さーて、今は亡き指揮官のお部屋…っと」

 

 

 自律人形たちは、掃除用具片手にロビーへとやって来ていた。

 

 「本部には、指揮官の自殺ってことにしてるんだっけ?」

 

 「そうよ。私たちがやったなんて知られてしまったら…」

 

 

 

 

 

 

 「グリフィン内部はお前たちを消しに来る。そうなれば君たちの都合が悪くなるし、守りたいものが脅かされる」

 

 

 

 「「!?」」

 

 

 背後からの声に驚く人形たち。

 

 

 

 

 

 「今です!」

 

 オブザーバーの号令で接近。

 自律人形たちは銃を構えるが、手首を捻り上げ、一瞬銃を握る力が緩んだところで取り上げた。

 

 「きゃあっ!?」

 「そこまでだ。大人しくしろっ!」

 

 こちらは捕縛に成功。オブザーバーはというと…

 

 

 

 「ああっ久しぶりの人間の温もりぃ……じゃなかった!ちょっと!やめっ…へんな所さわんないでよ!?」

 

 「良いではないかー良いではないかー。ちょっと署までご同行するだけではないかー」

 

 

 オブザーバーはそれっぽい台詞を棒読みで言いながら、腰に手を回して押し倒しているだけ…というか、この自律人形のメンタルも大概である。

 

 おい、さっきの『ゼロレンジ』はどこ行った。あの肩甲骨を回す動作は何のためだったんだよ!?

 

 

 オブザーバーが自律人形から離れると、自律人形は今度は素早く銃を振り抜き、オブザーバーに突き付けた。

 

 

 

 「おいおい、そんな物騒な物はしまってくれないか。自分の立場を悪くするだけだぞ?」

 

 「うるさい!いきなり後ろから抱き付くモ○ゾーもどきの変態に言われたくないわよっ!」

 

 

 自律人形の目に涙が浮かんでいる。これでは、まるで貞操を奪われそうになってる乙女ゲーの主役の女じゃねえか……!!

 

 「おい!!武器を捨てろ!!」

 

 俺は珍しく声を張り上げた。オブザーバー両手を上げているが、嫌に冷静に語り掛けるのだった。

 

 

 「おいおい、それではモ○ゾーに失礼だろう?どうせ人間は、死んだら誰とも口は聞けなくなるんだ。なら教えてくれないか?今君に変態と罵られた私でも、ピロートークくらいは付き合ってやれる程には紳士さ……………お前たちがここの指揮官を殺したのか?」

 

 ピロートークっていきなり何言ってんだお前ぇぇぇ!?

 

 今のは紳士とはほど遠い、明らかに下心丸だしの変態だったぞ!?

 

 しかし、彼の発言はどうであれ、耳に入ったオブザーバーの話し方に少し寒気みたいなのを感じていた。確かに第一印象は鉄面皮っぽく冷徹そうな奴だとは見た目から感じていたが、ここまで感情の籠っていない話し方をする人間は、今まで見たことも聞いたことがない。

 

 「っ…!なんでそれを…」

 

 「この頃、指揮官の不審死が相次いでいる。それを知られていないとでも思ったかい?」

 

 このオブザーバーの発言にビクリと肩を揺らす人形。

 

 「一人や二人までならば、暗部の仕業と言われても納得出来ただろう。しかし、こうも短期間で複数名の被害者を出されてみろ、不審に思わない方が不自然だ。そして場所が場所だ。現に無闇に指揮官を殺してしまったために、こうして混乱を生み、敵の侵攻を許し、前線が狭まり、結果として市民の首を絞めてしまった。それが果たして、君たち戦術人形の使命なのか?」

 

 

 すると、人形の手元が震え出した。

 

 

 

 「どうした?撃ちたければさっさと私を撃てばいいだろう。君の守りたいものがそれで守れるのならばな…だが、それを私にもやれば…わかるよな?」

 

 

 「おい、あんた何言ってんだよ!?早く抑えろって!」

 

 「落ち着け、そしてソイツをそのまま捕縛して床に伏せておけ…」

 

 

 オブザーバーは振り返らず、そう言った。俺は一先ず自分で抑えた人形を床に押し付け、体勢を低くした。

 

 「さて……指揮官の死体はどこに隠した?」

 

 「そ、それは……」

 

 「まあいい、それは嫌でも話してもらうことになる。しかし、犯罪とはなんら関係のない身内殺しを行った以上、決して罪は軽くはないぞ?武装を解除しても、お前さんらはどうなるのだろうな…ま、それは心ある人間の判断だ。さあ、祈れ…!」

 

 

 

 

 

 

 「黙れっ!!」

 

 

 

 

 人形はオブザーバーの声に怯えたのか、それを振り払わんと銃を向けなおし、引き金を引こうとした。

 

 

 しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふんすっ!」

 

 

 

 オブザーバーのディザームにより武器を奪われ、バランスを崩して転倒する人形。

 

 待て、今のディザーム、早すぎてワケがわかんなかったぞ…!?

 

 

 

 オブザーバーは奪った銃を人形に向けることはしなかった。証拠を取るためだろうか…。

 

 

 人形たちは抵抗しなくなったので、ロビーに捕縛。

 

 ところが…

 

 少し目を離した途端…

 

 

 

 

 

 

 

 「「にーげるんだよおおおおお!!!」」

 

 

 

 捕まえた人形が捕縛を解いて逃げ出した。

 

 

 「あ!こいつら!!」

 「停めてある車に走って行ったわよ!?」

 

 

 「やはり亀甲縛りにでもしておくべきだったかな?」

 

「そんなこと言ってる場合か!?」

 

 「慌てるな。こんな事もあろうかとッ」

 

 オブザーバーは端末を弄る。

 

 「さて、UMP45。君はやつらの車を追跡してくれ。あのモデルにはトラッカがついている筈だ」

 

 「あのクロカンね?わかったわ!」

 

 「よし、では君たち、私に続いてくれ」

 

「私も?」

 

「そうだ」

 

 「現場は?」

 

 「心配ない。人知れず私の方で増援を呼んでおいたのさ!…やあ、私だ。今どの辺りだ?オーバー」

 

 『急行中です、オーバー!』

 

 「了解だ。私は逃走犯を追う、オーバー」

 

 『了解。現場は保存しておきます。お気をつけて。オーバー!』

 

 

 「心配要らん。後で会おう。アウト」

 

 

 

 

 オブザーバーは通信機を切った。

 

 すると、走行音が近づいてきた。なにかと思って確認すると、先程の商用車が無人で走ってきた。どういうことかオブザーバーに聞くと、オートパイロットでこちらに向かわせたそうである。

 

 どんだけ準備が良いことやら…

 

 

 「まさかこの商用車でクロカン追っ掛けるの!?あなた正気!?」

 

 「私に任せろ。二人とも乗れ。出発するぞ」

 

 UMP45と俺はオブザーバーに誘われるまま商用車に乗り込み、運転席に座ったオブザーバーは急発進させ、逃走したクロカンを追い掛けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 オブザーバー一行の出発後、兵員輸送ヘリの内部にて…

 

 

 

 「皆、指揮官の話していた通り、ヘリボーンで降下し、現場を押さえるわよ」

 

 黄色いフード付きのジャケットに黄色とオレンジのオッドアイが特徴の人形がそう伝えた。彼女が隊長各である。

 

 

 

 『間もなくぅ、降下ポイントォ、降下ポイントでぇ、ございむぁす…』

 

 操縦用の人形が車掌口調でアナウンスする。

 

 

 

 「着いた様ね?」

 

 ハンドガンを持つ戦術人形が冷静そうに話す。

 

 

 

 「なんか映画っぽくて良いよね!ワクワクする~!」

 

 LMGを持った人形が楽しそうにしており、銃をチェックする。

 

 

 

 

 「ビビっちゃだめ…ビビっちゃだめ…!」

 

 SMGの人形が自身に言い聞かせる様に呟く。

 

 

 

 

 「さあ皆、準備して!」

 

 基地に到着し、ホバリングすると、パイロットを除く機内の人形たちはヘリから垂らしたロープを掴む。

 

 

 「降下開始!」

 

 人形たちは手際よく降下し、展開していった。

 

 

 

to be continued.




ここまで読んでいただき誠に感謝します。
 
 今回のオブザーバー編についてですが……もうちょっとだけ続きます。因みに、やっと従来の『戦場の走り方』らしさにもどります(笑)
 

 尚、次回くらいでオブザーバー編は一旦終了すると思います。



 それでは、m○veのRage y○ur dreamでも聴きながらでも良いので、ごゆるりとお待ち下さいませ。
  



 
 次回
 『爆走、オブザーバー!(仮)』



 
 Don't miss it !!
 
 


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Vol.19 その男、オブザーバー。iv

お待たせしました。Vol.19です。



そういえば、平成も終わりますね。退位の日も30日ですし。


色々あったなぁ…


では、続きをどうぞm(__)m





前回の『戦場の走り方』は……

 

 

 「さっさと片付けを済ませて帰ろうよ。流石にこのままじゃ本部にも本格的にバレて大変なことになるし…」

 

 

 「そうね。早速始めましょう」

 

 

 基地に到着したクロカン。そこから自律人形たちが降りてきた。

 

 「あら?それ面白いわね?私にも見せてよ~」

 

 

 

 突然ナ○コ姫張りの登場を果たす、戦術人形のUMP45。

 

 

 

 「大人しくしろ!!」

 「ふんす!」 

 

 人形たちを捕縛するも…

 

 

 「「にーげるんだよおおおおお!!」」

 

 「やはり亀甲縛りにでもしておくべきだったかな?」

 「そんなこと言ってる場合か!?」

 

 「慌てるな。こんな事もあろうかとッ」

 

 商用車がオートパイロットでやって来て……

 

 

 「降下開始!」

 

 増援の人形部隊がヘリボーンでやってきた。

 

 

 

 以上。

 

 

 

………………………………………………

 追跡開始から5分ほど経過。

 

 助手席には戦術人形のUMP45、後部座席には俺が乗っている。急いで乗り入れた順である。人形の乗ったクロカンの位置情報をナビするにはUMP45を助手席に乗せるというのは最適だと思う。

 

 

 「45、相手のクロカンの方はどうだ?」

 「ええと…まだ目視は無理ね。前方5km先くらいかしら」

 

 オブザーバーはUMP45にクロカンの位置を聞き出していた。彼女はオブザーバーの問いに答えると、続けて、『車が違いすぎるわ、相手のクロカン、調べたけどカタログスペックだけで300PS越えてるもの。直線的な道路じゃ差が開くわ』、と語る。行動しながら並列処理できるってほんとに便利だな最近の戦術人形って…。商用車のスペックは200ps近く。便りになるのはこのライトバン特有の剛性の強いボディと専用に作られた比較的強靭な足回り。後はオブザーバーのドラテク。

 

 「ねぇ後ろのお兄さん、何か良い案無い?」

 

 咄嗟に振られる。

 

「…アイツならこういう時、どうしてたと思う?」

 

 オブザーバーからもバックミラーで俺の方に視線を送りつつ聞いてきた。

 

  

「かなりベーシックで悪いけど……そうだな、相手が苦手とする所とか弱点を純粋に突こうとするんじゃないかなって…」 

 

 するとオブザーバーは頷き、検討しはじめ、何かを思い付く。

 

 「よし閃いた。45、今から指示する所にアクセスしてくれるか?」

 

 「え?良いけど…何する気…?」

 

 マスク越しではあるが、俺にはこの時、オブザーバーの目が煌めいた様に見えた。

 

 

 

 

 

 

一方、追跡しているクロカンの車内では…

 

 オブザーバーに押し倒された方の人形が運転し、軍人にディザームされた方の人形が助手席に座っている。掃除用具も含め、持ち物は彼等に取られてしまった。かといって取りに戻るのも得策ではない。

 

 「あぁ…焦ったぁ…」

 

 「咄嗟に逃げ出したは良いけど、武器とか置いてきちゃったわね……」

 

 自律人形の二人はそう溢す。

 

 「どうする?マスターさんに謝りにいく?」

 

 「うーん…どうしよう…あの人たちから逃げられても、指揮官をやったのがもう知られてる以上、下手に逃げ帰ってもマスターさんに迷惑掛けちゃうわ。きっと私たち…」

 

 「うう…そう、だね…」

 

 可能性が高いのは廃棄されること。行き場の失った人形たちは証拠隠滅のために廃棄処分。もし、信心深い人々にお経を唱えられお焚き上げ供養されても、彼女たちは本質は機械。そんなのちっとも嬉しくないし、そもそも望んでいない。

 

 人の役に立ち、寄り添うこと。それこそ、戦術人形以前に自律人形としての喜びの一つ。彼女たちはまさにその典型だった。 しかし…彼女たちは人間で言う、罪を犯し、またはその片棒を担いだ。しかも、本部の命令ではない。

 

 そのマスターという存在が何者かは不明だが、今の彼女たちはその存在以外は、寄る辺なしと言える状態であった。

 

 だが、『マスター』と呼ばれているその存在が、今回の混乱の元か、果てはそのマスターも何かに巻きこまれた被害者なのかはわからない。

 

 ただ、マスターは彼女たちのような人形には絶対的な存在であることは変わりない。

 

 

 「あれ?そこ工事中みたい…柵が立ってるよ」

 

 「わかった。じゃあ…左に迂回ね…戦争の影響かしら?」

 

 「前線だと砲弾が飛んできたりすることもあるしね。ここも同じかな?鉄血もやって来るし整備できずにそのままになってるのかも。この前、ヘリアンさんがそんなことを話してた…」

 

 「そう…あ、この道の先も工事中?」

 

 「マジで?どんだけ道路壊されてるのさ」

 

 「しょうがないわね、お次は右に迂回っと…」

 

 そして迂回。交差点での迂回の指示に従うのは、人形としての性であった。直接指揮されている訳でもないのに、下手に無理してまで走るのは彼女たちはリスクを減らすため取ることはしなかった。

 

 

 怪我を被れば、この先のことを考えるどころではなくなる。

 

 

 そして、クロカンは峠道へと入って行く。

 

   

 「峠道まで来ちゃったね…これ追い付いて来たりでもしたら……」

 

 「平気よ。あれだけ距離が離れているんだもの…そう簡単に…………っ!?」

 

 言い終えようとした刹那、突然背後から排気音が聞こえてきて驚く。バックミラーを確認すると、商用ライトバンが見えた。

 

 「どうした?……えええ!!?」

 

 そう、オブザーバーたちが乗っているあのライトバン(商用車)である。速度を極力殺さぬ様に道幅を目一杯使い、次々とコーナーをクリアしていく。車体は荷重移動の都度、グネグネとロールしており、まるで踊るように走っていく。その存在感は、商用車という地味なイメージを大きく覆していた。

 

 「すごい!追い付いちゃったわ!」

 

 「凄いな…まさかホントに成功したとは…」

 

 「二人とも、しっかり掴まっておけ?これから更に追い上げるからな」

 

 「「…え?」」

 

 オブザーバーはそう告げて次の左コーナーに備えシフトレバーに手を掛ける。あ、そういや、ドライバーも減速する時は何時も事前に構えていた様な…。

 

 

 

 「ふふっ♪なんか面白くなってきたわ。ミュージックスタート!」

 

 UMP45はカーステレオに繋ぎ、自身の音楽フォルダからユーロビートを選曲して再生を始めた。

 

 「おい!?」

 

 「やっぱり峠はユロビよね!」

 

 

 

 「その曲か…ふむ、士気高揚と維持としては良いだろう」

 

 「良いのかよ!?」

 

 

 

 しかし、みるみる前のクロカンに追い付いていく。恐いけど、どこか面白みを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「商用車だとォッ!?」

 

 運転席の人形が声を上げた。

 

 「え?嘘でしょ?商用車!?いつも高速を走り回ってるアレ!?ていうか何でここ走ってるの!?」

 

 「ま、まさか…」

 

 人形たちは青ざめた。

 

 そう、バックミラーの写す光景から、あの運転席に座る、もさもさの服装。先程背後から襲ってきた者たち(オブザーバー一行)である事を知ってしまったからだった。

 

 「どんだけ執念深いの!?」

 

 「さっきあんな派手に押し倒しておいいてまだ足りないの…?あんな奴に私の純情なんて簡単にはあげないもん!掴まって!」

 

 「………。お、おうっ」

 

 助手席の人形は、何故か若干メスの顔になっている運転席の人形に対して一瞬困惑したような表情になるが、追い付かれて停められでもしたら、今度こそ確実にナニカサレル…と判断するのは容易かった。

 

 そしえ、先程オブザーバーに押し倒された方の人形は、ステアリングを握る力に力が入り、次第に速度を上げていく。

 

 

 

 

 

 「前のクロカン、また速度上げたわ!」

 

 「ふむ、この先は足回り泣かせの連続ヘアピンだ」

 

 「何か作戦があるってのか!?」

 

 

 するとオブザーバーは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相手があの速度で飛び込めるのならば、こちらだって同じ速度で飛び込める筈だ」

 

 

 …ちょっと待てオブザーバー、その理屈はおかしい。これが豆腐屋の3ドアハッチバックとかドライバーの車ならともかく、これは商用のライトバンだぞ。強靭とか言っても、それでもスッカスカのサスペンションだぞ。

 

 

 

 ドライバーがそうジェスチャーするならば、まだ説得力はあるが……

 

 

 

 …って!?なんで速度上げてんの君いいい!!?本気でやる気かよおおお!!?

 

 

 っておいUMP45、お前も何楽しそうにユロビの歌詞口ずさんでるんだよ!?マイペースすぎだろ!?お前のメンタルは走っている90年代かよ!?

 

 

 

 

 

 え、もう壁がそこに?

 

 

 

 待て!早まるんじゃない!!

 

 

 あ、あああ………あああああああああ!!!!

 

 

 モウダメダ…モウダメダァ…!!

 

 

 

 

 

 

そう、軍人は死を覚悟した。

 

 

 

 ……が、三名の乗せたライトバンは減速後ターンイン。イン側の側溝にタイヤを引っ掻けて曲がりきり、素早く突破していくのだった。

 

 

 (…え?ま、曲がれた…のか?)

 

 軍人は現実が理解できなかった。絶対にガードレールを破る…!そう思ってしまっていた。尚、軍人は冷や汗をだらだらと掻くが、漏らしてはいない。

 

 

 助手席のUMP45は…

 

 「すっごーい!曲がっちゃったわ!」

 

 上機嫌。おかしい程に。

 その後は荷重移動を利用した素早いコーナーワークで駆け抜けていく。

 

 尚、クロカンの方でも……

 

 

 「うわあ!?何が起こったの?」

 

 後方でタイヤを鳴かせつつも瞬く間に車間距離を詰めてくるライトバンに動揺していた。その証拠として、意識がそれて操作が急になり、左右に車体が揺れる。直線も蛇行気味になるなど、真っ直ぐ走れなくなっていた。銃はオブザーバーたちに取り上げられてしまい、おまけに回収せずにそのまま出てきてしまったため、反撃は不可能。残りはドライビング勝負となってしまった。

 

 オブザーバーの運転するライトバンとクロカンとはテールトゥノーズの状態。そして、次の右急カーブで遂に仕掛けることにした。減速時に僅かに左に寄せてからクロカンとほぼ同タイミングでブレーキング。そして再びイン側の側溝にタイヤを引っ掻けて曲がる。

 

 

 

 「ちょっと待っ…うわ!?」

 

 急カーブなのに一気に迫るライトバン。そして、声をあげる運転席の人形。助手席の人形は死を察したのか手で十字を切っていた。

 

 クロカンは強いアンダーステアを発生させており、外側のガードレールへと吸い寄せられ、ぶつかる間一髪で停車したのだった。

 

 

 

………………………………………………

 

 一方、先程オブザーバーが呼んだ人形部隊はというと…

 

 

 「これで最後よ!」

 

 と、黄色いジャケットの人形が鉄血人形兵を撃ち抜く。

 

 

 「ふぅ、これで終わりね、RO…」

 

 「そうね、92式…」

 

 ハンドガンの戦術人形92式は黄色いジャケットの人形こと、RO635に話し掛けた。

 

 ROは部隊の各員に状況を教えるように伝える。

 

 「こちらAAT-52、クリア!」

 

 

 「ステンも問題ありません!無事です!」

 

 LMGのAAT-52とSMGのステンMk-iiは各自返答した。

 

 そして92式も一言『無事よ』と伝えると、ROはそこで胸を撫で下ろす。

 

 

 到着後に鉄血部隊が接近。現場を守るために戦闘に

 

 

 

 「大した奴等じゃなかったし、数も少くて助かったよ~」

 

 「まだよAAT-52。指揮官が戻ってくるまで現場を保存。」

 

 ROがそう返すと、了解したAAT-52は、このチームで使われる私語専用の通信チャンネルに繋ぎ発言する。

 

 『ねえRO…』

 『なに?』

 『この基地って、この前鉄血に襲われて機能しなくなったんだよね?』

 『そうあるわ』

 

 『何故?抵抗はしなかったの?これくらいの規模なら戦術人形たくさん居たっておかしくないよ…』

 

 『そう言えば、そうよね…奇妙だわ』

 

 92式もAAT-52に続いた。

 すると、ROは少し神妙な面持ちで語る。

 

 『鉄血に襲われる前、ここの指揮官は既に死亡していたの。その為に、有事の統制が取れなくなって、やむ得ず人間たちだけ離脱させた。結果混乱の末、防衛に失敗。表向きにはそうあるわ…』

 

 

 『表向き?それってどういう事ですか…?』

 

 『指揮官の不審死については?』

 

 『あ、それなら知ってますよ!かれこれ二桁に及んでますよね』

 

 『そうね。噂だと、この基地に勤めていた指揮官もその不審死の一人だと考えられているわ…ここの指揮官の死因は拳銃自殺と記録されてる』

 

 『拳銃自殺って……お仕事、ツラくなっちゃったのかな…?』

 『指揮官と言えど、人間だもの…ねぇRO、それで原因はわかっていないの?』

  

 92式はそう訊ねる。

 

 『可能性だけど、やったのは私たち戦術人形を引っくるめた、自律人形のだと言われてる。でも、情報が錯綜してて、まだ確定してるとは言えないけれど…証拠があまり出てこないのよ…』

 

 『な、何で?私たちって、人間の皆に対しては、指揮官からの指示がなければ、セーフティ機能で撃てない様になってる筈なのに…それにグリフィンの規則にだって…』

 

 ステンの言うとおり、戦術人形はトラブル回避のためにもロボット三原則に則り、人間には危害を加えられないようになっている。しかし、指揮官次第では例外もあるそうで、それもまたトラブルの引き金となったり、火に油を注ぐことにも繋がるのだが。

 

 『…暗部の仕業とか?』

 『え?そんなのグリフィンにあるの?…やばくない?』

 

 『企業の秩序を維持するためってやつね』

 

 92式の言う事にはごもっともだった。都市や地区の運営や治安維持を任されている以上、企業ガバナンスはしっかりとしておかなくてはならない。しかし、ここまでやるのは流石に社員からして、波風立てないためにも反発までとは言わずとも、疑問を抱くのはおかしいことではない。

 

 

 『そうよね、暗部がしっかりと機能しているのならば、死者は限定された人数だけで済んだ筈よ…粛清だのなんだのと銘打ってね』

 

 実際、軍と契約したPMCが不祥事を起こしていた事例もその昔からあるため、大きくなる前にそれが動くはず。しかし、この様な事態となってしまった以上、近頃ではこうして軍から目付け役が抜き打ちでやって来ることは仕方がないとも言える。

 

 『怖い話だね…そういえばROって法執行機関にも居たことあるんだよね?』

 

 『ええ…でも、随分と昔の話よ?』

 

 『それでも、やっぱり勘みたいなのはあるんでしょ?推理とか…』

 

 

 

 『推理というか…これは予想なんだけど…ってAAT、今は任務中よ?』

 

『いいじゃんRO、ちょっとだけ!ちょっとだけだからさ!ほらステンも92式も気になってる顔してるし』

 

 『ちょっと止めてよお喋りトマト!』

  

 

 『じゃあ、任務の後でね?一先ず推理ごっこはここまでにしましょう。まだ任務が残ってるわ』

 

 ROもこの件には疑問を持っていた様だ。一先ず任務をこなすだけこなし、後で話すことに。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 一方、オブザーバー一行では、クロカンから人形たちを引きずり降ろし、拘束に成功。

 

 降ろされた人形たちは抵抗するかと思いきや、もう何もかも諦めたか、或いは顛末を悟りに悟りきった様な表情をしていた。

 

 「おい、オブザーバー…」

 

 軍人は恐る恐るオブザーバーに訊ねた。

 

 

 

 

 

 

 「…なぜアイツだけ亀甲縛りなんだ?」

 

 

 

 

 

 「…んっ……んんっ…!」

 

 

 オブザーバーに縛られた運転席に座ってた人形は、何故か頬を染め、ウネウネとうごめく。

 

 UMP45はその様子に少し引き気味で、口許に手を当て、どこか少し目を反らしていた。もしや、うごめく系が苦手なのだろうか?そう思う軍人。うん、確かにこれはいろんな意味で目を覆いたい。

 

 

 「あいつ、なんか嬉しそうにしてるぞ…?これって逆効果なんじゃないか?ほら、UMP45だってあんな表情だし…」

 

 「ふむ、あれはきっとそういう趣向に目覚めてしまった個体なのだろう。確かにこれは異常事態ではあるのだか、下手に暴れられるよりは良い。…ああ、そうそう、ドライバーの所にも、似た様な奴がいてな…まぁあれは…正直引くレベルだよ…」

 

 「どんなレベルだよそれ…」

 

 「さて、捕まえたけど…この後どうするの?」

 

 「こちらで連れていく。このライトバンに乗せるんだ。そうだな…こいつらの車も証拠として押さえる。どこから来たか分かるかもしれない。応援を呼んでおく。車に乗って待っていてくれ」

 

 すると、オブザーバーは何処かに連絡を入れた。その数十分後、兵士と武骨な整備ロボットが仲良く箱乗りしたレッカーがやって来て、クロカンにカバーを掛け、手早く回収していった。つか、ギリースーツ姿の俺やオブザーバーたちに何も疑問持たずに作業してたな…関係者か?まぁ、軍でも戦車とかの回収したり、この頃は道を塞いでる車の撤去作業をさせられる事とかよくあるし、特別変な事ではない。後者はIEDが仕込まれたりするから、戦車で潰したりとかして破壊してしまうけど。

 

 …て言うか、何で箱乗りしてんだよお前ら。それ普通に座れるじゃねーかよ…。

 

 

「ねぇ、『軍人』さん?」

 

 突然話し掛けられる。

 

 「何だ?UMP45…待て、今俺のこと…」

 

 おかしいな、俺一度も彼女に名乗ってないぞ?

 

 「あら失礼。私、リサーチが趣味なの。だから貴方とあの人が軍の人で、貴方がドライバーさんのところに依頼してるってことくらいは知ってるわよ?そして今レッカー呼んできたあの人がオブザーバーって呼ばれてるのも…」

 

 

 

 甘ったるく艶っぽい声にイヤらしい笑みを浮かべるUMP45に対し、俺は思わず大声で叫びたくなった。こいつは正真正銘のアカン奴だ。絶対にストーカー気質ある奴だわ。

 

 

「ま、待ってくれよ、後ろで捕まえた人形たちがいるんだぞ…聞かれでもしたらどうする…?」

 

 「ああ、それなら安心して?後ろの子達は私の方でシャットダウンしてあるから」

 

 そう言う問題か?何処かに緊急予備電源みたいなのとか着いてて、勝手に再起動してきたらどうするよ?まぁ、暫く微動だにしてないからシャットダウンには成功してるんだろうけどさ。

 

 

 

 「ほう?それは助かるよUMP45…」

 

 

 「「…っっ!?」」

 

 何時の間にかオブザーバーは運転席に乗っていた。 俺と彼女は驚く。

 

 「さあ、一先ずさっきの基地まで戻るぞ。帰還するまでが任務だ」

 

 遠足みたいに言うなよ…まあ、そうやって皮肉ったりはよくするんだけどさ。

 

 

 そして再び来た道をかっ飛ばして基地に戻る事にした俺たち。無論、ヒルクライムアタックが如く峠攻め。捕まえた人形がシャットダウンされてて助かった。これ起動してるままだったら、きっとスゲーことになってただろう。想像したくない。

 

 

 

 そして基地に戻る頃には、すっかり日が暮れていた。ここは夕焼けが綺麗に見えたのだが、俺の任務は報告書を書くと言う作業までするので、ぶっちゃけ長くは楽しめない。

 

 すると、オブザーバーと俺は、黄色とオレンジのオッドアイで黄色いジャケットを羽織った、マジメそうな人形に話し掛けられる。

 

 「指揮官!」

 

 「RO635。ご苦労だった。パレット小隊の皆も」

 

 オブザーバーは労いの言葉を掛ける。なるほど、指揮官権限はドライバーから委任されてるからな。こいつらの指揮権もなのかはよく知らない。後で聞いたら、オブザーバーの場合はドライバーから事前に許可を得れば概ね可能だという。RO635はオブザーバーに帰ってくるまでの状況を説明した

 

 「途中で近付いてきた鉄血部隊と交戦し、これを撃破しました。指揮官が予測していた通りでしたよ…数は少なかったです」

 

 おい、そんな予測何時してたんだ?ああ、人知れずって言ってたものな。

 周囲をみると、破壊された鉄血人形兵が横たわったままちらほらと。なるほど、俺たちが出発した後に出やがったのか。あと少し出遅れてたら、交戦になっていたかもしれないな。オブザーバー曰く、分断されてはぐれた鉄血人形兵たちは数多いとのこと。

 

 「それと、この基地所属の戦術指揮官のご遺体ですが…先程、発見されました。座標を送っておきます」

 

 「…そうか。後は私の方で手を回しておく。ご苦労だった」

 

 そういうと、俺とオブザーバーに向けて敬礼し、小隊とされる人形たちの元へ戻っていく。捕縛した人形はオブザーバーの方で連絡したヘリに積み込まれ、運ばれていった。

 

 「軍人さん、オブザーバーさん」

 

 UMP45がひょっこりと現れ、話し掛けてきた。俺とオブザーバーの胸元に手を回してるのは何故だ。なんでそんな手付きがヤラシイんだよ…。そして「私より…大きい…!?」とか呟いて一瞬真顔になってたのは何なんだ。

 

 「ああ。ありがとうUMP45。後はこちらで何とかする。て言うか手を離してくれ。ああ、そうだ…報酬は…」

 

 「……それは結構よ。うーんでも…そうねぇ…」

 

 

 彼女はあるものを懐から取り出した。

 

 「なら…まずこれ飲んで?」

 

 オブザーバーはUMP45から何かを貰う。

 

 

 

 

 

 

 

 「何だそれは?」

 

 

 オブザーバーが問う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ア カ マ ム シ ィ ↑」

 

 

 

 結局それやりたかっただけじゃねえかッ!!?

 

 

 

 UMP45は引き続き、懐から「私だと思って受け取って?」と、彼女の服装を模したデザインのUSBを渡してきた。うん、再現度高いな。ある意味でだが。

 

 

 

 

 さて、UMP45に触られた胸を腕で押さえているオブザーバー曰く、この事案は、グリフィンの自治区で行われたとは言え、規模や損害から軍も警察も黙っていないだろうと言っていた。元軍属も在籍してるらしいしな、グリフィンって。しかし、その事案の複雑さと被害者数の規模から、グリフィン内部の揉め事とは単に言い切れなくなっているため、下手すると当然開発元であるIOPと16LABにも追求されたり、協力させられることがあるだろうということ、しかも、これは氷山の一角に過ぎぬかも知れないのだとか。

 

 更に、UMP45は、この基地の指揮官殺しの調査を何処からか引き受けたそうで、調べの結果、ここを割り出したのだと言う。それにしても良い動きだな。本当にどこから入り込んできたのやら。ストーカー気質は除いて。

 

 先程渡してきたこのUSBは、彼女が気になって調べていたデータが詰まってるそうだ。つまり利害一致の協力者の様な立場らしい。

 

 そして、何とあのドライバーのファンだと口にしていた。アイツみたいなのにもファンが居たとはな…とオブザーバーは皮肉っていたが。

 

 ドライバー、お前背後とかに気を付けろよ?あの人形、わりとマジな目してるから。

 

 そんなUMP45に、俺は『君一人だけなのか?』と聞くと、『いつも頑張ってくれているから、今回はお休みにしてあげている』と話していた。 なるほど、仲間と一緒か。はぐれた訳ではなかったんだな…。

 

 

 

 「じゃあ、またどこかでね!ばいにー☆」

 

 …と、お調子者っぽく振る舞いつつ、どこかへ去っていった。

 

 

 その後、捕まえた人形たちは、オブザーバー曰く『専門部署』と呼ばれる所に連れていかれたそうだが、中々口を割らず、現在はバッテリー切れらしく、スリープに入ってしまっているという。軍の技師曰く、かなり休み無く活動していたそうであった。しかし、オブザーバーと俺が集めた監視カメラ等のログデータが切っ掛けとなり、再び目覚めた彼女たちは言い逃れ出来なくなり、自分達と同じ主人の元でその活動を行っていた事、危険と判断したり怪しいものは暗部がやった様に見せ掛けて暗殺したり、怪しい奴は尻尾を出すまで内部の人形に取り入って調べたこと、そして自分たちは飽くまで片付け担当の使いっ走りにされ、殺害を実行した奴はまた別にいる…と話していた。ROの送った座標曰く、遺体は付近の山中に発見。科学捜査チームとおぼしき部署と解剖医による検死の結果、遺体と被服には、散ったアロマサンドの成分が付着していたので、DNA等の照合の結果、あの基地の指揮官で間違い無さそうだ。そして、遺体から発見された弾痕から、32口径弾が使用され、暗殺を得意とする人形が仲間にいるという事が判った。となると、各地のグリフィンが隠密作戦などで使っている、戦術人形ウェルロッドMkiiの行動記録を洗わなければならなくなり、捜査は再び亀ペースとなる。こちらとしては、まずウェルロッドMkiiってどんな人形だよって所からになるのだが、オブザーバー曰く、ウェルロッドはその仕様上、ミッションに関するやり取りは複雑に暗号化されていたりするため、解析には時間がかかる可能性があるという。

 

 そして、俺は『調査任務』についての報告書を纏める作業にやっと移るのだが、捜査については現段階では混乱防止のために触れるなとオブザーバーから伝えられた。理由は、この不審死にまつわる捜査任務はオブザーバーがグリフィンとは別で軍から引き受けていたものだった。

 

 尚、今回の任務はオブザーバーに至っては公務員としての給与で十分と言うことで、表立った報酬は無いとされている。ほんとか?まぁ、俺は調査任務による危険手当は貰えたんだが…。その後オブザーバーから付き合わせたお礼として、小料理屋でウマイ食事を奢ってもらった。ということは、 それなりに手当はキチンと貰えたのだろう。オカミさんも綺麗だな?幾つだろう?オブザーバーとドライバーは常連客らしく、オカミさんが頼んだ食材を積んだトラックがテロにより交通網がダウンしたことがあり、届かなかった事があったそうで、かといってこのお店にはヘリポートも無論なく、しかもその交通網の迂回路である最短ルートは事故のリスクが高い峠の旧道以外無い状況、しかも、配送業者も旧道の荒れた路面を怖がって行きたがらない。そこで常連のオブザーバーにドライバーを紹介され、市場から注文した食材を運んでもらっていたそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 え?その小料理屋なんて名前かって?

 

 

 

 ……『Flower Village』。




閲覧有難うございます。

はい、一先ずここで一旦『おもしろ顔面大破系男子』ことオブザーバー編は終わりになります。次回からは多分いつも通りだと思います。たまーにオブザーバーは出るかもしれません。


この作品で暗殺や粛清を描く時、被っても良くないし、他の作品と差別化するにはどうしたら良いだろうかなって考えてた結果、なら刑事ドラマっぽく書いていこう、という考えに至りました。それが、『その男、オブザーバー。』です。

尚、オブザーバー(もしくはドライバー)と軍人がペアで現場に向かって調査したりする…という構想は、テレ朝の刑事二人で捜査するあの人気ドラマから影響を強く受けてます。




 正直、下手くそなりにではありますが、どんな風に展開させていくか迷いました。結果この方が『戦場の走り方』っぽくていいかな…?って思い、書いていったら、こんな感じの展開に落ち着いていきました。伏線?なにそれ美味しいn(銃撃)


 
 そして45姉のキャラとか、立ち振る舞い方とか偉いことになってますが、これはこの作品限定ということで(何)
 
 しかし、ドルフロ(少女前線)の世界観からしたら、この事件も、また小さな出来事の一つでしかないのかもしれません。
 

さて、グリフィンの問題児こと『ドライバー』、その目付けの『オブザーバー』、そして巻き込まれる『軍人』メイン主役三人が揃いました…。

果たしてこの先どうなるのやら……?

 


【ここで作中ドラテクと用語解説】

『キルスイッチ』………燃料と電源を遮断してエンジンを停止させる装置。つまり非常停止スイッチと思ってくださればよろしいかと。競技用や軍用の車両、バイクにも着いてるそうです。競技用車両では車両火災等の二次災害防止のために着いてます。オブザーバーはドライバーに対する皮肉で言っていましたね。



『カーブ内側の側溝を走る場面』………つまりは某漫画でいう溝走りです。実は現実ではラリーで使われてたりします。というかこれ、下手すると車体の側面とか足回りにダメージ与えます。オブザーバーさんはきっとその辺はわかってやったと思います。車は商用車でしたけどね?しかも武器とか載せたままよく出来たなオブザーバー…。
 


『相手と同じスピードで飛び込める筈』………これはもう某漫画が元ネタです。今回においては相手が重量のあるクロカンSUV(作中ではクロカンとも表記)故、ブレーキやタイヤが酷使されるため、タイヤも熱ダレし、ブレーキが効きにくくなってしまう。おまけに重心が高いため高速走行は路面の関係上不利。もしこの車両が改修等でキチンと最適化されたものであったり、バハやらパリダカの様な砂の上等であったなら、話は変わっていたかもでしょう。
 
【解説ここまで】
 
 
 では皆さん、また次回をお楽しみにノシ 


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人物データ

こちらは紹介です。

細部は物語の進行次第で追加されることもありますので、あらかじめご了承下さいm(__)m


【ドライバー】

 

本名:不明

 

性別:男性

 

年齢:不明(推定で20代後半だと思われる)

 

出身地:不明

 

所属:グリフィン第XX地区基地戦術指揮官。

 

 

 

 

 『基本情報等』

・フルフェイスヘルメットを被り、素性がわからないグリフィンの指揮官。性別は男性。名前の意味は運転手の意味。身分証には氏名欄に『The DRIVER』と記されている。ヘルメットのバイザーは透けておらず、その顔は一切分からない。

 

・こいつが主役(決定事項)

 

・モータースポーツ界から伝わる非常に高度なドライビングテクニックを持つ男。自動車の整備等のノウハウや経験はグリフィン内において彼の仲間の整備クルーを除き右に出る者は居ないと言われる。

 

・『整備改修費』と記入して謎の見積もりを出したり、戦場を愛車でかっ飛ばして戦場を闊歩しているのでヘリアンから度々説教を食らったりしている。しかし、何かと有効活用し任務を達成に導くので、不問にされることも。それでいいのか…。そのため、AR小隊回収作戦の際、足の取られやすい雪山に赴く際はヘリアンたちからもその腕を買われることも。

 

 

・高精度となったAIが台頭し、自動運転や人形による運転が多くなっている中で、ある意味貴重な人材だったりする。特に同じ基地の人形たちは、そんな彼の影響を受けてるのか、かなりフリーダムなドライビングスタイルをしている者も…。

  

・陽気で物怖じしない性格だと周知されているが、計算高い一面を見せたり、軍の人間でしか知らないような最新機器の情報を持っていたり、鉄血の会話ログなどを始めとする極秘データを人知れずどこかから入手していたりと、謎が多い人物。グリフィンでは人形も含め、ヘルメットを脱いだところを誰も見たことがないなど、不審な点も多くある。

 

 

 

・銃は扱えるが、運転してる方が精度は高いらしい。長時間の激しい運転にも平然としているタフさを持つ。

 

・Vol.12でAR小隊との模擬レース後のやりとりにて、彼は自身の走りのルーツは『レーシングカート』だと認めている。ドライバー本人曰く、自身の事は『大したことはない』と伝え、どうやら前職はレーサーだったと思われるも、その経歴はやはり不明。しかし、同じ規格の車で、距離を離れている中で瞬く間に追い付いては抜き去る、ブレーキングやタイヤの使い方、路面状況を見極めたり、後方でも相手の動きから、誰が乗ってるのか、上達してるか否かを見抜いたりする等を見るに、その実力は本物。また、各地を走り回ってるので道や周辺には詳しい。敵の追跡車両が複数迫り、迫撃砲が火を吹く危険な場所でも、車をコントロールして見事に回避し、敵の防衛ラインを無事に突破してみせたりもする。

 

 

・銃を握って撃ち合いをしているところは殆ど見られず、運転ばかりなので未知数。しかし、特に制限されているわけでもないので扱える。けど未知数。

 

 

・指揮官なので指揮装置を使って人形たちに指示を送ったりしている。作中では基地からではなく、殆ど現地を移動しながら現場の情報を人形たちに伝えて行動させているスタイル。

 

 

・鉄血の人形たちとは、出くわしてはぶっちぎっており、敵ではあるものの、『遊び相手』と称した。恐らく皮肉だとされる。そんな鉄血側からは、そのまま『グリフィンのドライバー』と呼ばれ、カーチェイスでいつも無惨な敗北(殆ど自滅やら貰い事故)を続けている鉄血兵たちからは、正しく『吐き気を催す邪悪』の様な存在である。

 (それは最早、鉄血側の逆恨みと膨張などが複雑にミックスされた領域)

 

 

・代理人からは『天候を操る程度の能力』があると言われるも、実際ドライバーにそんな能力は無い。

  

 

・時折、面倒を起こす人形たちをこき下ろしたりするものの、面倒見は良いため、身近な知る人、人形たちには慕われている。しかし、変わり者故に浮いた噂は一切無い。おまけに、彼は人形とは誰とも契約するつもりはなさそうである。距離感を維持しており、モーションを掛けても、ノリが良く振る舞いつつ、結果的にはのらりくらりとかわしている。

 

 

・出で立ちはフルフェイスヘルメットにグリフィンカラーのファティーグ上下、またはアサルトスーツ、もしくはレーシングスーツ。首を守るhansデバイス。腕にはグリフィンの腕章を付けている。

ヘルメットのバイザーはナイトビジョン等便利機能が付いている。

 

・実は自動車以外にも色々な戦闘用ビークルの操縦ができたりする。

 

 

 

【軍人】

 

本名:■■■■■■■■(個人情報保護のため誰かに塗られている)

 

年齢:二十代後半

 

性別:男性

 

出身地:ユーラシア大陸のどこか

 

所属:正規軍兵士(陸軍)

 

 

『基本情報』

 

・正規軍のヒラの兵士。男性。

ある日ドライバーに助けられた後、グリフィンと協力し周辺地区の調査する様に言い渡され、ナビシートに座ることになった。

 

・初めはドライバーの運転によりシートに押し付けられ顔を歪ませ、初めこそは降車後にふらつくも、吐かなかったり、体力があるなど、割りとタフガイだと思われる。頼り無さそうだが、一応前線勤務だった兵士なので、銃や装備などは人並みに扱える。ドライバーのツッコミ役。場数をこなす内に、ドライバーのナビシートでペースノートを読むことも素人ながらやる様になる。

 

 

 

・尚、彼の上司のアイスティーだけは、どうしてか嫌な予感がするため飲めない。

 

 

 

 

 

 

【オブザーバー】

 

名前:本名不明

 

性別:男性

 

年齢:ドライバーと同じくらい。

 

出身地:本人いわく『ひ・み・つ(はあと)』。

 

身長:平均的。

 

所属:正規軍。PMC監査監視委員

 

 

特徴:顔面に痛々しい大きな傷。鉄面皮。

 

 正規軍の軍人。ドライバーと相乗りしている『軍人』と同じ正規軍。表にはオブザーバーと呼ぶように名乗っているため、本名は不明。オブザーバーとは、主に『監視する者』という意味。

 

 「PMCが不祥事を起こしていないか、健全な業務遂行を行っているか」を監視監査するため、担当のセクターからグリフィンにやって来ている。

 

 クルーガーの意向により、ある意味問題児なドライバーの、主な専属監視員になっている。

 

 また、専属と言うことで、ドライバー不在時にはドライバー本人の委任という形でのみ、臨時の指揮官としての権限を得ることを許可されている。ドライバーの事をかなりこき下ろしているが、あれでも旧知の仲。ドライビングも優れる。

 

 しかし、それでも監視と監査の業務は続いており、PMC全般からしたら、ある種の天敵。

 

その顔面には痛々しい程に大きな傷跡があり、それが見る者からして顔立ちがはっきりとは見えにくい。その上、鉄面皮なので何を考えているか基本的に分かりづらい(しかし、軍人との調査任務では口許が笑っていたりする)。しかし、人間としてのユーモアが多く潜んでおり、表情変えずに突拍子もない事を言い出す。

 

 まさに、残念なキズメン(傷顔男子)。

 

 元の所属が正規軍であるため、グリフィンの臨時指揮官として振る舞っていても、グリフィンとは別に軍からの任務を受けることもある。その立場を活かし、なにかあると、こっそり介入し捜査してたりもする。そのため、作中の指揮官不審死について調べたりしている。

 

 監査や調査という任務の性質上、危険がやはり付きまとい、情報部に知り合いがいるらしく、そこから事前に情報を教えてもらう。オブザーバー本人曰く、元々前線勤務とのことで、『その男、オブザーバー』では、一体だけであったが、銃を向けた人形相手に引かずに『感情の籠っていない話し方』で問い詰めたり、そのまま近接格闘で素早くディザームを行った。(軍人曰く『早すぎて何が起こったのかわからない』とこのこと)




ドライバーと軍人、オブザーバーはフリー素材にしたい所ですが、ご使用の際はご連絡下さると嬉しいです。


2019年5月16日(木)19時43分、オブザーバーの項目を追加。これでメイン主役たちがやっと揃いました。


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Vol.X3 UMAとU.M.A

シリアル(?)なオブザーバーさんの話が一段落したので、ここいらで休憩話を入れさせていただきます。


これが平成最後の投稿です。


ではどうぞ!


ドライバーの属するグリフィン第○○地区基地。

 

 司令室にいるドライバーと軍人は、同じ列の席に座っている。しかし、二人はあまり表には出さないものの、『眼前の何か』に対してひどく困惑し、そして同時に強い警戒心を抱く。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 (どうすんだよこれ…チャカ持ってるよ?しかもこっち見てるよ?なにこれ、新手の企業圧力?)

 

 

 

 (というかドライバー、こいつもしかしてお前んところの人形じゃないのか?潜入用とか…)

 

 

 (潜入用だって…?こんなあからさまにやベーのなんて、見てくれから客寄せパンダ程度の使い道しかねえぞ?つーか、お手てのチャカ見たらキッズたち泣いちゃうよ?それにこんなずんぐりむっくりしてるやつ居ないし…あ、スパス12ならさっき食堂で見掛けたな…)

 

  

 引き合いに出されたスパス12本人が聞いたら、きっと怒るだろう。

 

 

 (じゃあ、強化スーツか?ボ○太くん的な…グリフィンはIOPと16LABにコネがあるんだろ?)

 

 (まぁ、グリフィンの企業間のコネは本当だが…つーか、そんなもの発注した覚えがないんだがな…ラインナップにもなかったぞ…)

 

 

 

 (もしかしたら、16LABのイタズラか?)

 

 

 

 (あー…あいつら時折かなり暇人だからなぁ…それにペルシカもたまーに…いや待てよ…)

 

 

 

 (なんだ?)

 

 

 

 (うちに属してる人形にイタズラ好きが居てな……)

 

 

 

 片手のみのジェスチャーによるドライバーと、小声の軍人による審議は続く。軍人は一応兵士であるので銃を身に付けており、ドライバーも一応戦術指揮官なので銃を携帯している。

 

 

 そして、『眼前の何か』…それは、全身白くてもこもこ、けも耳に尻尾。首には赤いスカーフ。手には防弾ベストを貫きそうな弾を撃てる拳銃。ホルスターを持っていないのか。

 

 

 そんなナマモノがそこに座っている。愛嬌のある顔。瞬きもする。

 

 

 これまでこの世界では、可愛いツラしてやることがエグいキャラが沢山世に出てきている事もあり、ドライバーと軍人は『油断したら殺られる』という共通の意思が芽生えていた。

 

 

 しかし…このままでは埒が明かない。

 

 

 (軍人、ここは…さいつよ正規軍として、どうにかしてほしいんだが…)

 

 

 (無茶言うなよ。ここで堂々と鎮座してるということは関係者だろ。でなきゃ、基地の外に追い出されてる筈だ。となると俺よりドライバーが適任だよ…つーか、俺元々ゲスト側じゃん…)

 

 

 (うーん……まあ一応俺も指揮官だし…よし…やってみよう)

 

 

 

 ―あーそのー、お前…誰だっけ?―

 

 

 

 ベターな質問を投げ掛ける。ジェスチャーはどこか辿々しい。

 

 

 

 

 

 

 「だーかーらー Five_Sevenだってば~」

 

 

 猫的なナマモノはそれに対して応答して見せた。

 

 声からしてFN小隊の戦術人形Five_Sevenが発している声であった。喋り方もそのまんま彼女のもの。

 

 ダミーだろうか?と思って手持ちの端末で識別すると、MFと検知されたのだった。

 

 

 ―しかし、なんで猫に?―

 

 

 

 「え?これフェレットよ?」

 

 

 「フェレットねぇ…」

 

 ―フェレットならもっと細身だろう?FALの肩に乗ってるあいつみたいに。猫じゃないのか?―

 

 「もしかして…!ドライバー、これまで猫を轢いた事は?」

 

 軍人は思い付き、ドライバー問う。

 

 

 ―猫?轢いた覚えがないな。……成る程。これはつまり、『猫の怨返し』ってか?―

 

 

 

 「何その坂道を自転車で掛け登る復讐劇みたいなの!!?字が違うわよ!!それに、ナイスバディだけどデブじゃないわよデブじゃあ!」

 

 

 

 57を名乗る白いナマモノが鋭く突っ込む。

 

 「そこ自分でナイスバディって言っちゃうんだな…」

 

  

 

 

 

 

 

 …数分後…

 

 ―…メンテを受けたら、こんなのに入ってた、と?―

 

 「そうなのよ…」

 

 

 ―技師は?―

 

 「それが…」

 

 

 「あ、居た!指揮官~!!」

 

 突如FALが駆け足でやって来た。120¥の値札がくっついているのはもはや言うまでもない。

 

 

 ―FAL?一体どうしたんだ。―

 

 

 「ああ…遅かったかぁ…」

 

 その場にへたりこむ。

 

 ―一体なんだ?―

 

 「それが…」

 

 

 FAL曰く、人形のメンテナンスルームにて何者かがイタズラし、57(MF)のコアがこの遊び用の白いナマモノのボディに移設されてしまったらしい。Five_Sevenはそのまま出歩いてしまった様である。Five_Seven本人曰く、慌てたら負けと思い、冷静を保ち、取り合えず司令室にたどり着いたという。

 

 

 

 それを聞いたドライバーは、誰がやったのか、あらかた予想が付いていた。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 別の部屋。

 

 「くっくっく…!困惑してる困惑してるゥ…!」

 

 修道服姿の人形。P7が笑みを浮かべて司令室のカメラを覗いていた。

 

 そう、十中八九彼女の仕業であった。

 

 メンテナンスルームは有事に備えて人形でも扱える様に訓練を行っている。そのために、P7もそのシステムの扱い方は知っていた。そこから、ジョーク用に購入したフェレット的なボディを仕込んで移設させた。

 

 

 「さて、そろそろネタばらしの準備をっと………」

 

 

 

 

 

 

 すると、P7は突然背後から肩を掴まれびくりと身体を震わせた。

 

 

  

 

 もしや…と思い、恐る恐る背後を見ると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―…一体いつから――お前の仕業だと気付いてないと錯覚していた…?―

 

 

 

 

 

 

 「し、ししししし指揮官!!?」

 

 P7は突然背後から現れたドライバーに驚く。

 

 

 ―P7。面白いことをしてるな?―

 

 

 

 

 「え?何のこと…ってうわあ!?何するの!?おーろーしーてー!!」

 

 

 ドライバーは『真に無言』のまま、P7を抱えて連行していく。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、FN小隊が基地の敷地で走行練習をしている時、本来の身体に戻したFive_Sevenが運転している車の屋根に張り付けにされ、悶絶していたという。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 さらに数日後。

 

 P7とドライバーがPCに向かって何かやっているのを、次の調査の打ち合わせでやって来ていた軍人は通りすがりに見つけてしまう。嫌な予感がしたのでそっと見守ることにした。

 

 

 その日は、遊びに来たモシン・ナガンが、どうせだからとメンテナンスを受けていた。バックアップを取り、予備の身体となるダミーにメンタルを移すのだが… 

 

 

 「…終わりました?」

 「ええ…まぁ…」

 「少し基地を回りますね。指揮官ところ面白いものあるし!」

 

 元気よく振る舞う彼女に技師は困惑したような様子を隠せない。

 

 しかも、モシン・ナガンの視線よりも上を向き頷いていた。

 

 「あのー…」

 

 技師スタッフは恐る恐る声を掛ける。

 

 「なぁに?なにか付いてる?」

 

 「いえ…その…お口が動いてないっていうか…」

 

 

 

 

 「ええっと…それってつまりどういうこと?」

 

 

 モシン・ナガンは問うしかし、明らかに技師は自身の視線よりも上を向いて話し掛けている。

 

 何かがおかしい。しかも姿勢が四つん這いになってるし、茶色でもふもふしている。毛皮なんて着ていないのに。この毛並みの良さは何なんだろうか。

 

 技師は苦笑いしつつ…

 

 

 「走行性能は折り紙つきです。いつものボディはメンテナンスが終わったら引き渡しますので…そ、それでは~…」

 

 

 …と引き下がった。すると、その背後の窓から、ドライバーとP7が笑い転げているのを発見し…

 

 

 「もしかして…!」

 

 馬に乗ったモシンナガンはダミー。ということは反射して映ってるのは……馬?

 

 

 それを察した途端、ドライバーたちを追った。それを察知したP7は……

 

 

 「逃げよう指揮官!」

 

 ―何時でも出られるぞ―

 

 いつもの一号車車に乗ったドライバーとP7は基地を出発。エンジンは始動済み、出るタイミング的にもエンジンが暖まった状態。

 

 基地から演習用の移動に使う道に出ると、その背後からパカパカ、パカパカ、とヒヅメを付けた動物が駆けてくる音が聞こえてくる。

 

 

 

 「待ちなさーい!!!」 

 

 

 

 

 「うわ!?もう追い付いてきた!?」

 

 

 ―P7、シートに深く座っていろ!―

 

 

 その様子を、カリーナと軍人たちは基地のドローンのカメラ映像から観戦していた。

 

 『現在トップは指揮官様です!そのすぐ後ろ、メンタルを馬型ロボットに載せ換えたモシンナガンさんが猛追している!』

 

 『端から見ると随分シュールな光景だな…あの馬は一体…ていうか、乗ってる人形が無表情なんだが……』

 

 何故か実況席に付いている軍人。

 

 『あれはU.M.Aという試作品で、モシン・ナガンさんのコアとメンタルを載せてます。』

 

 『な、なんだって!?』

 

 『元は、ある方々から騎馬隊を復活させたいというロマン溢れるご意見から開発していたものなんですが…思いの外上手く出来過ぎてしまいまして…ほら、どう見てまさしく本物の馬でしょ?』

 

 『そんなのにあいつ(モシン・ナガン)のメンタル載っけて平気なのかよ!?』

 

 

 『そこは大丈夫です!IOP製二世代戦術人形用コアの処理能力に加え、それに対応した高精度な操作インターフェースのため、元々その身体であったかのように操作が可能です!…そして!この個体は強靭なフレームと最新の人工筋繊維を採用しているので、蹴る力と瞬発力は理論上『生きた馬以上』です。蹄鉄(ていてつ)も無論専用に設計!一応全速力にすると時速200km以上は出せると実験で証明してます!耐久性も抜群!』

 

 技師はサムズアップして答えた。実に良い笑顔である。

 

 …と言うことは、万一に追い付かれた場合、ドライバーとP7はお仕置きとして後ろ足で蹴飛ばされる、或いは、頭をかじられる可能性がある。

 

 

 『直線ならまだ指揮官様に分があるみたいですね?』

 

 『確かに…しかし、そのままテクニカルセッションに来ると良い勝負になるかもしれません』

 

 『ん?どういう事だ?』

 

 『あー、実は指揮官に直々にU.M.Aの挙動監修をしていただきまして…』

 

 

 

 『あいつ監修してたのかよ!?』

 『指揮官様って乗馬出来たんですね?ていうか、何時の間にその様なことを…』

 

 ドライバーが車ばかり乗っているイメージしかなかったカリーナと軍人も、流石に驚きを隠せなかった。

 

 

  

 

 

 

 にしても、U.M.Aに乗るモシン・ナガンのダミーは、相変わらず無表情。遠心力に負けており、激しく揺さぶられるあまりヘッドバンキングしている様に見えている。こんなシュールな光景でも、モシン・ナガンのMFはマジである。

 

 

 『そんなこんなで、テクニカルセクションに突入です!』

 

 ふと映像に視線を戻したカリーナが告げる。

 ………………………………………………

 

 一方、テクニカルセクションに接近するドライバーたちは…

 

 「指揮官!?なんでモシン・ナガン(U.M.A)が追い付いてくるの!?ねえ!?」

 

 助手席に座るP7がサイドミラーを見て、声を上げる。これでは馬に追い回されている様に見えていたからだ。

 

 ―あの馬型ロボットの挙動は、俺が監修した。車では入れないところを全力疾走出来るようにするためだ―

 

 

 

 冷静にジェスチャーする。

 

 

 「嘘でしょ!?なんてもん作ってんのさぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ、行くわよ!」

 

 U.M.Aの姿のモシン・ナガンは、ドライバーの車に続き、コーナーに突入、そのまま姿勢を倒し、まるでスキーがターンしていくが如くスライドさせ、コーナー出口から再び足を動かし駆けていく。これもロボットの身体だからこそできる技なのか。

 

 

 「何あれ!?あんな滑らせて足折れないの!?」

 

 ―四足ドリフト……はははっ面白くなってきた!―

 

 ドライバーは上機嫌。しかし、彼としては前に出られるのは癪なので、正直喜んではいられないのも事実。この直後にドライバーは『少しペースを上げるぞ』とジェスチャーを送ると、P7は衝撃に備えた。

 

 

 というか、何時の間にレースになったのやら。

 

 

 『さっき勢いよくコーナー流してましたけど、何ですかあれ…!?悪い夢でも見てるんでしょうか…』

 

 『指揮官も恐らく驚いていることでしょう…』

 

 

 

 『ドライバー…!』

 

 

 手に汗握る展開。

 

 気が付くと、軍人はドライバーが何時もみたいに勝つことを願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この様子は基地に属する他の人形たちにも中継されており…

 

 

 「これだからこの基地は辞められない!」

 

 「あのU.M.Aってボディの挙動、指揮官が監修したのってこマ?」

 

 「というか、指揮官って乗馬もできたんですね?初耳です~」

 

 「P7と指揮官がなんかしてたと思ったら…なるほど…どちらも良い走りだな」

 

 

 

 いろんな意味で注目の一戦となっていた。

 

 

 一方、フィニッシュラインに勝手に指定されている直線の前では、たまたま基地に来ていたRO635がチェッカーフラッグを持ち、コース脇で控えていた。

 

 排気音と馬の足音をセンサーでキャッチすると、ROはチェッカーフラッグを振った。

 

 いち早くチェッカーを受けたのはドライバー。その少し後ろにモシンナガンのメンタル宿すU.M.A。にしても、どこかバテている様子。

 

 

 その後、ドライバーはP7と共にモシン・ナガンに説教されるのだが、彼女本人も楽しんでいたそうなので、ここはクワスのボトルを奢ることで許されたという。

 

 無論、このレースの様子はグリフィンの社内報にも『自動車vs馬型ロボ!?突然のバトルの行方は…?』と、大きく掲載されることになった。結果はドライバーの勝ち。レース中の大きな写真と内容を記した文章が載せられている。

 

 

 

 「その様なことがあったとは…あやつの基地は相変わらずじゃのう…」

 

 社内報を読みつつモシンナガンから話を聞いていたM1895は一言。

 

 「ほんと、後ちょっとだったのよね~」

 

 と、ぼやくモシン・ナガン。勝つ気でいたらしい。

 

 「なんか面白そうですね!たまには指揮官のところに行ってみようかな…?」

 

 ワクワクが止まらないスオミであった。

 

 

 

 「あら、近いうち皆でいってみましょ?スオミと指揮官のレースかぁ…」

 

 「腕が鳴りますっ」

 

 「待てお主たち!拠点はどうする気じゃあ!?」

 

 

 

 

 

 to be continued…?




閲覧有難うございました。



無理矢理終わらせた感…まぁドラマでもよくあるよね?(偏見
 
 魚を抱える白いモコモコは猫かな?って思ってましたが、お知らせよく見るとフェレットでしたかこれは…
 
 モシン・ナガンの方は、かの有名なレースゲームの隠し要素を足しました。
 
 え?はい、モシン・ナガンの件はP7と、それに悪ノリした指揮官(ドライバー)の仕業ですね。技師はただロマン溢れる意見からU.M.Aを作っただけなので多分不問…かも知れません。


尚、これが平成最後の投稿となります。本編含め、次回以降は令和になったときにまた投稿していきます。




それでは、令和でお会いしましょう m(_ _)m


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Vol.20 ドライバーからの課題

M4A1の報告:運転技術向上の鍵は………振り子の置物と………水の入った紙コップ?


それは、オブザーバーが軍人と調査に向かい、その後ドライバーが諸用から帰って来るまでに起こった事である。

 

 

 某日。

 

 狭く曲がりくねった、まるで峠道の様な演習地の一角にて。

 ドライバーから二号車を借り、戦術人形M4A1は、鍛練のために走り込んでいた。演習地として使っているので、現在は封鎖して使っている。今回は人形のみの自主練。

  

 この走行練習は、ドライバーはただでは許可を出さず、ある条件をM4たちが飲んだ上で許可を出したものであった。

 

 

 演習コースで軽快な排気音を轟かせる二号車。M4は道幅を最大まで使い、一つ一つコーナーを攻略していく。

 

 

 

 一方、他のAR小隊の人形たちは… 

 

 「ねぇ、この練習って、一体何の意味があるのかしら?」

 

 M4A1の様子を見守るAR小隊のメンバーは…

 

 「どうして?AR-15、まさか運転嫌いになっちゃったの?」

 

 「いえ、正直言って逆よ。確かに『裸の車』に乗り込んだ時の事故のリスクが減る、言わば人形側のシステムに頼らないマニュアル操縦の訓練ってことよね?でも、私たちにとっては、こういった練習ってどうも変な感じがするわ…」

 

 AR-15が言う『裸の車』というのは、人形が車両に備えられたカメラや各種操縦系統に接続し、直接ステアリングを握らずとも、電脳だけで操縦する機能が存在しない、ステアリングを握り、ペダルやシフトレバーで操縦する、従来のアナログな操縦系統を持つ自動車のことである。

 人形はデータを食わせる、つまり、作戦データをインストールさせることで、より戦闘に対する先鋭化を図る事が出来るため、彼女は人間がやるような練習を行うことに疑問を感じていた。

 

 

 「それだけ、指揮官のレベルに近づくには必要なことなんだろう。ガバッとペダルを踏み、ぐいっとステアリングを切る人形特有の力任せなマニュアル操作のままでは、これから先危険だと判断したんじゃないのか?」

 

 M16は言う。長く存在し続けるベテランメンタルの人形としては、ドライバーにも何かしら考えがある上で、条件を出して許可をしたのかもと憶測を立てていた。

 

 

 

 尚、現行の自動車は事故防止などで自動運転機能が重要視されるが、かつて開催されたとされるAIを積んだ半自動操縦のレースカーたちにあやかった触れ込みの販促を行い、市場を暫く確立していたが、結局自律人形に運転機能をつければ良いとされた。しかし、やはりある一定の速度域になったり、予想だにしない挙動からの制御になると、 M16の言う様な力ずくと表現できる操作が多かった。反応してもセンサーに接続していない場合は、スピードを上げた途端に些か乱暴になっていたり、ひどい場合はコントロールを失い、スピンをしたりぶつけたりする事もあった。乱暴かどうかに限っては、これは同乗した時の受けとる側次第かもしれないが。

 

 しかし、ロガーを見ると、どうしても一気に踏み込んでいたり、急な操作が目立ち、数値としてはっきりと結果が記録される。

 

 一部の業務専用の人形には、元よりその対策が施されていたそうであるという。

 

 「それに…特にM4はどういうわけだか、指揮官の走り方にご執心だもんな!」

 

 夢中で車をコントロールするM4を車載カメラの映像で眺めながらM16は言う、普段引っ込み思案気味な妹が、自発的にドライバーに運転の練習がしたいと申し出たのだ。彼女は、それが少し頼もしくも、嬉しく感じていた。その内、同乗した時に感じる恐怖が少なくなってくれるかもしれないと、正直期待もしている。若干の姉補正も入ってはいるが。

 

 モニターに映る二号車は、コーナー直前までに減速を終わらせ、グリップ力を安定させながら曲がっていた。以前のM4なら、この様な場所でも、まだステアリングをこじらせ危なっかしい走りをしていたが、今は別人の様になっていた。

 

 M4においては、この訓練の前からも格段と運転の練度が上がりつつあった。それはAR小隊全体に言えることであり、以前、レーシングカートでドライバーにぶっちぎられたのが、その後の走行練習の意識に影響していた様である。

 

  

 

 

その発端は、数日前のこと。 

 

 

 「あの…指揮官!」

 

 M4はドライバーの部屋の前で彼を待ち、出てきたと同時に声を掛けた。

 

 それはカリーナから自室にいると聞いたが、彼女曰く、普段はドライバーの部屋は開かずの間だとのことで、なにか考え事で籠っているのでは?と思い、邪魔はできまいと中々ノックが出来ずにいた。

 

 出待ちされていたドライバーはちょっと呆気に取られた様子で、M4を見据える。

 

 ―M4か。わざわざ出待ちしていたのか?―

 

 「すみません指揮官、驚かせてしまって…実はお願いがあってここに参りました…」

 

 ―お願い?ほう?聞かせてくれ―

 

 

 「はい。その…もっと運転の練習がしたいんです」

 

 

それを聞いたドライバーは、以前雪山へ向かった時の事を思い出し、一瞬考えた。二号車はメンテ済み。M4も手伝って何時でも走らせられる状態。しかし、もっと限界が低い車で練習させた方が良いのか、それとも、万一的な今後を考え、一号車とそう変わらない仕様の二号車を乗せ続け適応させながら練習させるかを仕事傍ら考えていた。指揮官としては、ドライバーの目線で言う『下手』な運転技術のままにはしてはおけなかったからだ。車のダメージは追跡や逃走、または移動に妨げる。走っていて壊れることもあるが、ほんの些細な接触だって著しく性能を下げることがある。軍用のビークルに乗せるんだって、今のままでは無駄にさせてしまう。それはあまりに良心が痛む。

 

 M4は自覚した上での、ダメ元でのお願いだった。だが、同じことをしたら信頼を失ってしまうと考えた。しかし、ドライバーの基地の車で使える車は今のところ二号車だけ。しかもドライバー以外で二号車を乗り回したのはM4。今の運転技術で、仲間を危険には晒せない。

 

 

 

 

 

 

 

 ―………。良いぞ?しかし、条件がある―

 

 「条件…ですか?」

 

 ―ああ。少し待っていてくれ。すまんな?― 

 

 

 

 ドライバーは再び部屋にもどり、すぐ戻ってきた。

 

 「指揮官、これは何ですか?」

 

 ―荷重移動を視覚的に、より具体的に理解するためのものだ。条件は、お前に課題を与える。それをクリアしてほしいんだ。その課題というのは、先ずこれを車のダッシュボードに置いて走らせる…―

 

 あるものをM4に渡す。揺らしたり傾けると、中央の球体が傾く振り子の様な置物だった。

 

 ―…この時、こいつが派手に揺れ動かないように、タイヤの摩擦円や荷重などを意識して走らせるんだ。言っとくがこれは難しいぞ。だから、はじめはゆっくりでもいい、少しずつペースを上げて行け。そうだ、この基地の演習区域に、峠道みたいな所があるだろ?そこで往復しつつ、やってみると良い。足回りは荷重の向きを分かりやすくするため、何時もより、少し柔らか目にセットしておく。貸してやれる車は、この前同様に二号車だ。今度はボディパネルを元の軽いやつに戻してある分、ぶつけないように気を付けて運転してくれよ?あと、道路はみんなのものだから、いざって時は合理的に、他の皆と仲良く使う様に―

 

 と、細かくジェスチャーするドライバー。彼は更に続けた。

 

 ―これから俺は、諸用で数日間基地を離れる。そして、俺が帰ったら、俺も二号車に乗り、テストを行うぞ。もし、他のAR小隊の皆も一緒にやりたいというのなら、今のうちに連絡し、もう一度ここに来てくれ。ああ、そろそろAR小隊総員の技術向上を考えていてな。それに、お前一人じゃ心細いだろう?―

 

 

 「…!了解しました。すぐ知らせて来ますっ」

 

 

 この時受け答えしたM4は、何時もより声が弾んでいた様だった。ドライバーは一人頷きながら、その背中を見守る。

 

そして、AR小隊全員の四名が訓練参加を希望したのを確認すると、ドライバーはヘリアンやペルシカ、そして目付け役のオブザーバーに連絡を入れ許可を取り付け、オブザーバーにも委任した際に置き手紙を机に置いたり、カリーナに言付けをしたり、コースを使用する時間帯を見定め、車のセットを整備クルーに頼んだりと、準備を始める。AR小隊は16LABに戻されたりすることがあるため、一言断っておけば要らぬトラブルを回避できると考えたため。ペルシカはM4とドライバーのやり取りが切っ掛けという事で、興味を持つが、ペルシカ自身の立場上、そちらへ赴いて生で見られないことを残念がっていた。

 

 

 そしてドライバーの出発当日。彼の出発後から暫くしてオブザーバーがやって来ると、『話はドライバーから聞いている。ヘリアントス氏もペルシカリア氏も知っているから、思う存分練習を行う様に』と話していた。

 

 

………………………………………………

 

 そして現在に至る。

 

 (荷重の位置、タイヤの摩擦円…それを意識しながら……!)

 

 いざドライバーの言うとおりに実践してみると、結構難易度が高いことに気付くM4。ペダルの操作ひとつだけでも、振り子は直ぐに激しく揺れ出す。道路のアップダウンやコーナリング時の横Gでの衝撃も合わさり、難易度をより高度に感じさせた。

 

 摩擦円を意識して効率よくグリップ力を引き出す。すると、少しタイヤは鳴るものの高い速度で抜けることが出来た。

 

 以前、雪山での失態の落とし前をしっかりと付けるべく、ここはM16たちの為にも、スキルを上げて一皮剥けていかなければならないと判断したM4は、感覚を掴むべく、車体の動いた時に感じる揺れや振動、自身の予測等を身体に組み込まれたセンサーで数値化し、経験値に変え、人間で言う体得を目指す。気が付くと、少しずつ慣性ドリフトを行い、コーナーを流しながら走らせられるようになった。二号車は、ドライバーのオーダー通りに足回りも柔らか目に調整されているため、姿勢変化を感じやすくなり、よりコントロールしやすい状態にある。

 

 

 

 

 そして、走行時間を終え、小隊のメンバーが待つテントへ向かう。

 

 「あ、M4おかえり~!」

 「お疲れさま、M4」

 「おかえり、M4。結構良い走りだったぞ!以前よりスムーズになっていたか」

 

 

 「あ、ありがとう皆…えへへ…」

 

 待機スペースに仮設したピットに停めて降りると、出迎えるAR小隊の面々。M4は誉められて少し照れくさい様子。これまでは怖がられたりとか、SOPiiから運転替わるよ!とか言われたり、止まるとAR-15が半泣きになってたり、この前はM16が意識を失ったりと、とんでもないことになっていた。多分、怖いのは腕だけの問題ではないと思われるのだが。

 

 

 

二号車は整備クルーから貸してもらった整備ロボットたちが即座に点検作業を行う。整備クルーの皆さんは現在スコーピオンが壊した警備チーム用のSUVの修理をしていた。

 

 

 二号車の点検が済むまでは、暫しのインターバル。これは、ドライバーから教わったこと。その間は水分を補給したり、心を落ち着けたりする時間。運転は思いの外疲れるし、蓄積した情報整理もしておきたい。

 

 

 

 

 「ふむ、その振り子…荷重移動のトレーニングだな…」

 

 

 そこにオブザーバーがM4の背後からひょこっと現れる。

 

 

 「は、はい………っ!?」

 

 「あ、ザーバーさんだ!」

 「アンタ何時の間に来たんだ?」

 「まるで気配を感じなかったわ…」

 

 「すまん。邪魔をしたくなかったものでな。登場するタイミングを見計らっていたんだ」

 

 

 そっと見守るスタンスで参ったオブザーバー。SOP iiからは、指揮官だとドライバーと混同するため、彼の事は便宜上、『ザーバーさん』と呼んでいる。

 

 

 「中々良いとは思うが…その顔だと、まだ納得がいかないみたいだな、M4A1よ…」

 

 

 「はい…」

 

 

 「ドライバーがやっていた練習法はたくさんある。そうだな…もっと分かりやすく感じるものがあるぞ?難易度は跳ね上がるが…」

 

 すると、オブザーバーは紙コップを取り出した。

 

 「今度はこれを、ダッシュボードのドリンクホルダに置き、こぼさないように走ってみてくれ。無事フィニッシュラインに到達したら水分補給が出来る…というのはどうだろうか。車の振動等もある…少し少な目に注いでおく」

 

 唐突に提案するオブザーバー。彼は半分から少し下位までに注ぐ。

 

 「え…?」

 「ドライバーに渡されたものも良いだろうが、これだと更に具体的にわかるぞ。奴の感覚に達したいと言うのならば、こうして色々な物を試すことも大切だ」

 

 オブザーバーは、目をハの字にして、まるで昔の事でも思い出しているかのような顔をしながら説明した。M4たちは、きっとオブザーバーもドライバーに振り回されたことがあるのか…?と思うのだった。

 

 

 「二号車のチェックが済み次第、先ずは私が手本を見せよう」

 

 「待ってくれよオブザーバーさん、アンタが運転するってのか?」

 

 「ふむ。その様子だと心配しているのか?その昔…あのヘルメットの男と私は、あらゆるステージで張り合っていたことがあってな…。まぁ私の昔話など、今はどうでも良い事だ」

 

 

その少しして点検が終了したと整備ロボットたちが合図してきた。

 

 

 

 M4たちを丁度チェックの終わった二号車のシートに座らせ、オブザーバーは運転席へと座り、備え付けられたドリンクホルダーに水の入った紙コップを設置した。つまり無闇に荷重を掛けたりすると、水浸し。それはもう具体的過ぎて、むしろスリリングである。

 

 

「さあ、それでは、皆シートに座りなさい。シートベルトは着けたか?」

 

 オブザーバーは全員が乗り込んだのを確認し、二号車を発進させた。

 

 基地のガードロボットたちは、その様子を見て、『行ってらっしゃーい』とアームを横に振って見送っていた。

 

 車内ではドライバーが渡した振り子と共に揺れ、紙コップの水が波打つ様に見えた。地面の凹凸を拾った際に真上に跳ね、それがまた水面へと落ちる。まるで踊っている様だ。振り子も唐突に激しく揺れることはない。

 

 連続カーブでは溢れる寸前まで水面が揺らぐ。

 

 AR小隊一同、水を溢さず二号車を走らせるオブザーバーに驚きを隠せない。

 

 そして、溢さず往復を終える。流石にスピードレンジが低めなので、AR-15は今回恐怖でメンタルが揺らいだり、声を上げる事はなかった。

 

 次に、オブザーバーは助手席に座り、その鉄面皮な顔のまま『くれぐれも、助手席の私の顔面にぶっかけないでくれよ?…ん?女の子にぶっかけられるってこれある意味夢シチュか…?』などと顔に合わない冗談混じりの注意を促してから、改めて走行練習を再会した。練習は先程同様に代わり番で行われた。人形たちは紙コップの中で揺れる水に手こずった。何せ少しでも飛ばそうとすれば直ぐに溢れそうになるからだ。振り子の時よりは比べ物にならない。

 

というか、助手席のオブザーバーにぶっかけるのは、それは多分大変なことになりかねないので、その意味では速度を出しても慎重な運転を心掛ける様に善処していた。

 

 

 そして、全員の走行が終わる。それを何回か繰り返し、時間が来たので先ほどのピットにてミーティングを行う。オブザーバーは見事にぶっかけられることはなく終了した。

 

 

 

 「ドライバーの奴は、カートから四輪へ上がった時、更なるコントロール感覚を養うべく、足回りをわざと柔らかくセットし、この様に紙コップやら振り子やらを載っけて走らせていた。無論私もな…」

 

 

 

 ミーティングの大事な部分が済み、気持ち休めにちょっとした雑談が行われていた。オブザーバーはその中でそんなことを話しており、いつも運転達者なイメージの強いドライバーにも、そんな時代があった事を知る。

 

 

 「ところで…前から気になったんだけど、ザーバーさんって指揮官とどういう関係なの?」

 

 「先程の通り、昔から張り合っていた。おまけに、ヤツとは同じレーシングスクールに通っていた事もある。まぁ、長く商売敵だった仲さ」

 

 「差し詰め、指揮官のライバルってわけか?」

 

 「そうなるかもしれんな。ドライバーが私によく絡んできて、今度は私がつれない態度を取る。するとまたドライバーがしつこく絡んで来る…という展開だった。よく周囲から仲良しコンビだとか持て囃されたものさ」

 

 「なるほどなぁ…」

 

 「レーシングスクール…?」

 

 その単語にM4が反応した。

 

 「ああ、若手のカーレーサーを育成する、自動車メーカーもしくは個人で開かれる塾の様なものだ。その スクールによっては、プロへの道が開かれ、しかも、メーカーからマシン等の手厚いサポートを受けられる」

 

 「へぇ~!面白そう!」

「メーカーから?となると相当なレベルなんですね?」

 

 

 「まあ、そうなる。だがな…時代の変化は残酷だ。コーラップスが原因で起こった戦争が激化。戦後からまた紛争も増え、汚染も後押しして社会全体は混乱の中。修行や参戦のための渡航もかなり難しくなり、AIの発達と共に自動運転が更に発達、そして、処理能力の高い自動人形が台頭したため、そこまで高度な運転技能を人間は持とうとしなくなった……」

 

 人形たちは、なんだか残念そうだった。しかし、M16はこう話した。

 

 「…だが、それでも人間の様には上手くはいかんこともあるのもまた事実だ。こればかりは、経験を積んだ人からの手厚い指導が欲しくなる」

 

 

 

 「ええ、操縦系統に直接接続して操作が出来ないアナログ車は、人形にとっては操縦がとてもシビアだから…」

 

 

 「特に、高速走行しちゃうとね…」

 

 「いくら情報があり、早く認知判断が出来ても、操縦時の加減が利きにくく、どうしてもロスが生じてしまうんですよね…」

 

 M16からAR-15、SOP ii、M4と続いていく。オブザーバーは『そうか…ふむ…』と相槌を打つ。直線で速度を出すのは誰にでも出来るが、それがタイトなコーナーだったり、曲がりくねったりする場所の場合は、別に訓練が必要で、それをやろうと考えるのは殆ど運転が好きな人形くらいであった。いつも高速度で走行するために必要なスポーツドライビングの心得に対する関心や認識が疎かったりもする。

 

 

 そこに…

 

 

 

 

 「運転技術に関するものは、単なる操縦方法等と異なり、所謂、作戦報告書の様にデータ化するのは難しく、私たちがそこで先鋭化していくためには、持ち寄ったボディ(身体)での多くの実走経験そのものが必要になる……と言うことですね」

 

 RO635がAR小隊の後ろから現れ、そう言った。

 

 「RO!貴女たちも走行練習に?」

 

 SOPiiが話し掛ける。

  

 「ええ、私たちは今来たばかりよ。ああ、ごめんなさい。いきなり話に割り込んでしまって…」

 

 「気にしないでRO。これは私たち共通の課題だもの」

 

 と、M4はROにそう返す。

 

 「だからこそ、あなたたちAR小隊には負けられないわね!」

 

 ROの後ろから顔を出しAAT-52はそう話す。…となると、92式とステンの姿もあった。AAT-52が言う台詞には、恐らく彼女の出身国に、F1やWRC等を主催する自動車連盟の本部がある事に起因してるからだとされる。本場だから他の国出身の得物と同名の人形たちには負けられない、と言うことになる。となると、RO等もそこに含まれてしまうが、AAT-52本人はあまりそこまで考えておらず、この時は単にエリートであるAR小隊にライバル心を燃やしているに過ぎなかった。

 

 

 「さて、AR小隊はこれより撤収時刻だな。総員、片付け始め。私も手伝うぞ。RO、君の部隊は、何時でも練習に取り掛かれるように、準備をしておきたまえ」

 

 「了解しました。さあ、皆準備を始めましょう」

 

 ROはパレット小隊の皆を引き連れ準備に掛かる。AR小隊も各自片付けを開始し、撤収していった。M4は、どこか物足りなかったのか、コースの方を時折眺めていることがあった。

 

尚、この日のレコードタイムが抜けないと嘆くAAT-52。ROがボードをよく見ると…

 

 

1位 NO NAME(恐らく手本で走っていたオブザーバー)

2位 M4A1

3位 M16A1

4位 SOP ii

5位 AR-15

 

6位 AAT-52

7位 RO635

8位 ステンMk-ii

9位 92式

 

 

という状態だった。というか、そもそもAR小隊とオブザーバーの乗っていた二号車はドライバーの一号車の予備なので、性能的には圧倒的な差が開くのは当然。ROはドローン映像からゴーストを再生し、比較しても比較するまでもなかった。

 

おまけに、オブザーバーは模範走行しただけなので、除外をし、車のクラス別にすると、AAT-52はそれでもROたちを差し置いてパレット小隊内外でトップを飾っていた。

 

どちらも殆どがコンマの差。嘆くAAT-52をROは『また別の機会で同じ車で挑んでみましょう?』と励ましていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 AR小隊の撤収後、基地の兵舎にて。

M4は、自分が走った後とオブザーバーの模範走行の違いを見比べていた。

 

 総合的にやはり違い過ぎると痛感、未だに勢いよく動かそうとしている傾向があり、比較的硬い動き。一方でオブザーバーは操作そのものに滑らかさがあり、たった一つの所作だけでも、車の動きも自分達がやっている時よりスマートに見えたのだ。ペダルワークも、そこからの細かなフットワーク、そしてステアリングやシフトの操作も。

 

 一先ずは本日の練習に関するレポートを纏めて提出し、一度M16たちと休息することにした。

 

 

 その一方。

 オブザーバーはというと、ドライバーから借りている執務室兼自室で、何者かと連絡を取っていた。立場上、やはり報連相は厳である模様。

 

 しかし、なぜ、ドライバーの机があるのに、ミカン箱の仮設の机に座布団という形で執務をしているのだろうか…しかも背筋もピンと伸ばしており、綺麗な正座である。それはオブザーバーのみぞ知る…のかもしれない。

 

 

 

 

 そしてその夜、M4はオブザーバーから臨時の依頼を言い渡され、再び二号車のステアリングを握っていた。滑らかな運転を心掛けており、これは昼間の反省点を意識している。

 

 

 

 その任務とは、ドライバーとオブザーバーにとってはお得意先である小料理店に向けて荷物を配達しようとしたが、遠征してきた人権団体の活動により、通行止めなってしまったらしく、沈静化させるまでに時間が掛かっていた。うかつに車も出せない。

 

 そこで、久方ぶりにドライバーたちの力を借りたいのだという。しかし、ドライバーは不在なので、ここは、オブザーバーが与えられた権限の上でそれを受理し、執り行うことにした。そこで、話を聞いた人形たちの中でM4が志願した。他の皆はもしもに備えて、基地で待機を命じる。というか、直ぐに出られるのがM4くらいしか居なかったというのもある。出先でデモ隊の関係者等に見付かると厄介なので、二号車の車体は予備として置かれていた、ホワイト一色でグリフィン等のロゴが一切入っていないボディパネルに素早く交換され、基地を出発していった。

 

 

 

 さて、M4からしたら、この旧道は安全区の一部である以前にドライバーの手伝いで走り慣れた道。そこを通って指定された荷を市場から受け取り、今度は料理屋まで運ぶ。訪問すると、女将は顔見知りの人形であるM4に暖かく迎え入れた。

 

 

 「忙しい時なのに、わざわざありがとうね?」

 

 「いえ、お礼を言われるほどでは…」

 

 「あ、そうだ!これ持っていって?」

 

 女将は手伝った人形たちに何かしら労いの品をくれる。 人形が食事を取れるのをオブザーバーたちから聞いたそうで、お礼としておにぎりやら試作のものをご馳走してくれたりする。今回は出来立ての白米で作ったというおにぎりを頂いた。屋内栽培ものらしいが、見た目から本当に屋内で栽培されたものなの?と思うほど。具は鮭。鮭は養殖物らしいが、その味はとても良かった。

 

 もし、ここにM16がいたら、配達後や休日に呑みに訪れて長居することになりそう…と想像するM4。何より、何時もはスプリングフィールドのカフェバーにて飲食するため、たまにとは言えど、こういう所に来ると新鮮味を感じる。

 

 伝票は二次元コードを読み込ませるだけで届いた事が伝わるため、後はM4が二号車と共に基地へ帰投し、完遂したことを臨時指揮官のオブザーバーに報告するだけ。

 

 そしてここから帰り道。夜道を走る二号車の車内には、よく見るとドリンクホルダーが付けたままで、そこには水の入った紙コップがあった。オブザーバーは『荷物のこともあるし、どうせだからこれで行け』と話していたのだった。

 

 まるで、今のM4は自身が影響を受けた漫画の主人公の様な状況。ただ違うのは、扱っている車種と道路の場所。

 

 夜道は視界が悪い。人形故にその辺は補正が利くが、何だか狭く感じる。

 

 昼間見たオブザーバーの走らせ方と、何時ものドライバーの走らせ方を思い出しつつ、紙コップの水を溢さぬように下り道を走らせた。

 

 旧道故に通行止めになっているため、道幅を大きく使える。ただし対向車が来なければ。

 

 ステアリングを切り、動きが固くならないように流動的なコントロールを心掛けた。

 

 効果は早速現れた。しかしまだ掴み掛けの粗削り。でも、確実に昼間よりも良くなっている。幾つかシミュレートを繰り返していた。人形ゆえに訓練の成果は早く出始めた。『これならば指揮官に合格を貰える』と、そうM4は確信する。

 

 何時も頼まれたときに走ってきたデータと比較しても、車体の挙動が安定している。セッティングが昼の訓練の時の様にワインディングを走るのを想定し、ギャップを変に拾いすぎないように比較的柔らかめになっているのも、それを手伝っているのだろうか。

 

 その矢先。

 ふと、搭載されているバックビューカメラから後続車が迫って来るのを確認した。車体は黒に黄に白、派手と言えば派手なカラー。二号車もボディパネルを換装してあるため、グリフィンのロゴは入っていないが、形状だけからしても派手な方である。

 

 

 (何だろう…こんな時間に…)

 

 

 出発したのはM4と二号車のみ。それにあの車種は基地では見掛けないし、この辺りは旧道ということもあり、M4が知る限りではドライバーくらいしか通っていない。

 

 

 「……♪」

 

 後続車の運転手は前方の二号車を捉えほくそ笑む。真っ暗故に誰が乗ってるかは、M4からはよく分からない。ただ、車内でサイドテールが揺れる。乗ってるのは女性だろうか。シフトタイミングランプが点灯し、パドル型のシフトを操作してギヤを一段上げる。

 

 M4は煽り運転かと思い、映像を記録し、速度を上げる。この状態は停まっては危険。なので振り切ろうとした。おまけに、この狭い道で運転しながら得物を扱うのは幾らなんでも危険。

 

 後続車からのパッシングによる発光信号で『バ・ト・ル』という意思表示を感じる。

 

 あれがドライバーの一号車でならば、腕試しも兼ねて望むところだと言いたいのだが、一号車ではない。

 

 それともドライバーの新しい車だろうか。少なくとも鉄血ではないので、最悪の場合は停まって処理するのも仕方無いと考えた。

 

 一先ず速度を上げる。すると、後続車も攻めの走りをし出す。だがぶつけてことようとはしてこない。追い抜こうと一種のオーバーテイクを狙っている様に見えた。そして後ろからラインをトレースされている。

 

 

 M4は攻め、後続車を離す。しかし、直ぐにテールトゥノーズに持ち込まれ、接触しないようにギリギリを保ってくる。

 

 (ああ、不味いわ…最悪な状況ね……)

 

 M4は口に出さずとも、そう思考した。メンタルが揺れ動く。

 

 こういう時、指揮官(ドライバー)ならどうするのか、普通に振り切ってしまうのか。だとしても、今の自分にそんな芸当が出来るのか。

 

 このままでは追い抜かれてしまう。それはなんだか許せない彼女は、後続車を降り切ろうと攻める。

 

 後続車は、相変わらず二号車のスリップについていた。バケットシートに包まれる乗り手の少女らしき人物は、不気味な薄笑いを浮かべており、琥珀色の目がしっかりと前方の二号車を捉えていた。

 

 ヘアピンに差し掛かるが…

 

 (だめ…相手の方が速い…!)

 

 M4は出口で並ばれる。薄暗くて運転手はわからない。しかし、車内では相手は薄笑いをまた浮かべ、速度を落としたM4と二号車を尻目に、悠々と走り去って行くのだった。

 

 追い抜いたその車にはバンパーに『45』と小さく数字が刻まれていた。車体の形状を記憶し、一先ず基地に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 「ふむ、妙な車にパッシングされ、オーバーテイクされた、か…」

 

 「すみません…」

 

 「君が無事なら、私としては言うことはない。それにこういう時、旧道とは言え安全区。発砲は難しいし、道が狭くてすぐ急カーブだ。それに、変に停まるのは危険と教わっていたものだもんな…オブザーバーさんもそう思うだろ?」

 

 謝るM4にM16は慰める。実質安全区では有事でも発砲すると大事になりかね無いこともある。

 

 「如何にも。この場合は懸命な判断と言えよう。やつもそう言う筈だ」

 

 オブザーバーはそう一言。

 

 「もう!一体誰なの!?M4煽ったやつ!」

 

 「落ち着きなさいSOP ii。憤慨したって解決しないわよ?M4と二号車が無事帰って来たのは、確かに何よりの吉報ね…」

 

 SOPiiをなだめるAR-15。

 

 

 

 「オブザーバーさん、ドライバー指揮官なら、こういう時、 どうしたと思いますか……?」

 

 「…ふむ」

 

 オブザーバーはこの問い掛けに対し、暫し考え込む。

 

 

 「ヤツなら、先ずは紙コップの飲料水を飲み干したかもな…」

 

 「……、…あっ!」

 

 M4は大変なことに紙コップの水を気にしていなかった。M4は声を上げ、皆に一言断ってから整備クルーが点検するガレージに駆け足で向かった。

 

 

 

 

 

 「そ、その…申し訳ありませんでしたっ…!」

 

 「ああ、大丈夫だよM4A1。指揮官はたまに全身水浸しで乗ったり、ヤバイ時なんて泥だらけ、砂だらけ、たまに煤だらけで乗り込む事があってね…そりゃもう大変だった」

 

 「ここの車両は防水や汚損対策は完璧にしてる。飲料水くらいなら平気さ!でも、次は一応気を付けておくれ?」

 

 「はい…気を付けます…本当に申し訳ありませんでした…」

 

 整備クルーの落ち着いた返答に、ペコリと頭を下げるM4。というか、煤まみれって、ドライバーに一体何があったのだろうか。

 

 その後、またM16たちの元に戻る。

 そして、そんな彼からの課題をクリアするためにも、AR小隊の皆と共に、戻ってきた二号車に乗って再び鍛練に励むのだった。

 

 「M4!次乗る時、私も乗せてね!」

 「そんなこと言って、あんた女将さんにごほうびもらいたいんでしょ?」

 「ひどーい!さすがに違うよ!?ちょっと合ってるけど…」

 

 SOP iiとAR-15のやり取りにM4とM16は、思わず笑う。しかし、M4自信においては、追い抜かれた事にどこか悔しさを感じていた。

 

 そして、彼女の番がやって来て、今日もステアリングを握る。まだ上達への道は長し。

 

 

 

 

 某所の地下駐車場。

 

 そこにM4と二号車をオーバーテイクした車が停車した。形状は3ドアのハッチバック。外装も内装もドライバーの一号車と形は異なれど、似通ったものである。

 

 すると…

 

 

 

 「あ、おかえりなさい45姉!」

 

 「ただいま、9」

 

 そう。この車を運転していたのは、もしかしなくてもUMP45であった。妹のUMP9がその帰りを出迎える。

 

 

 「…あら416、珍しいわね?貴女まで出迎えてくれるとは嬉しいわ♪」

 

 「そうね、てっきり負けて吠え面かいて戻ってくるものかと思ったんだけど…」

 

 憎まれ口を叩く416。

 

 「ふふっ…それ、結構相手のことを買ってるって事よね?」

 

 「な、なんですって!?別にそんなんじゃ…!」

 

 発言の裏を突かれて顔を赤くする416。

 

 そこにG11が横から現れ…

 

「あ、おかえり45。ねえ聞いてよ、416ったら心配そうにしてさ、夜遅くまで待ってたんだよ~?」

 

 にやけて語る。まさしく、『良いもん見れたぜ!』と言いたげな顔であった。

 

 「G11!?余計なことを言わないでよ!?」

 

 

 「あらら?そうだったのね。でも、ざーんねん!勝っちゃったわ♪ごめんねぇ~?ふふふっ」

 

 わざと陽気な態度で416に返す。大袈裟にダブルピースしながらにっこりと笑顔を向ける45。それを見た416は、ふんだ!と腕を組みそっぽを向いた。

 

 UMP9がふと車内を覗き込む。すると、備え付けれていたドリンクホルダーに、使い捨てのプラスチックの透明なコップに水が入っているのを発見する。

 

 「すごーい!行く前と水量が変わってないよ!」

 

 この発言に思わず、416とG11も中を覗く。

 

 「………出先で継ぎ足したとかじゃないでしょうね?」

 

 

416は、ジト目で45を見ながら問う。

 

 

 「失礼しちゃうわ。私そんなズルいことする女に見える~?」

 

 「どの口が言うんだか…」

 

 「416はこの前もポタポタ溢してたもんねフギャッ!?」

チョップをくらうG11

 

 「お黙んなさい!私は完璧よ…!完璧だもん!」

 

 

 

 

 そんな45たち404小隊とは、別の場所でM4たちと出くわすことになる。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

オブザーバーの報告:安心しろドライバー。お前の弟子…特にM4A1は着実に育ってきてるぞ。あと、車のことは大目に見てやってくれ。部品代は必ず弁償する。

 

 

ドライバーの報告:インパネ回りに水…なるほどな。把握したよオブザーバー。あんな状況じゃあ、紙コップの水まで気を配れんよな。後、お陰でM4のタイヤの使い方が格段と良くなってるぞ。これは良い傾向だ。感謝する。M4、お前はなにも悪くない。

 

 

カリーナの日報:M4さんを後ろからオーバーテイクしたあの車。一体何者なのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RO635の報告:私にも出番をください(切実)




閲覧ありがとうございました。

M4の ドラテク が 上がった !



今回はドライバー不在時のM4たちの様子でした。
紙コップに水いれて溢さず走るって、つべとか見るとやっている方もいるそうですね。私はやったことはないですがスゲー難しいそうです。真似はしない方がいいです。やるなら自己責任で。私もそうします←


振り子はドライバーの優しさ。紙コップはオブザーバーの厳しさ……だと思ってください(何のだよ)


あと、二号車の足回りのセットが柔らかくしてあるのは、かつて私がリアルで某サーキットにて練習する機会を得た際、お世話になった講師の方の解説が元だったりします。

講師の方に感謝しております。そして読者の皆様にも感謝です…!




次に、深層映写イベントが始まりましたね。
さっそく覚えたばかりの赤豆潰しをしようとしたら、タイミングが悪く見事に爆殺されました(笑)

多分イベント中は更新が遅くなるかもしれません。


では、また次回でノシ


RO635「君の心に、ブーストファイア!」


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Vol.21 営業走行(?)

深層映写、皆さんどうですか?

筆者の方では、やっと赤豆がまともに対処できるようになりました。一先ず今のところ順調です。ランキング戦は、まあ期限内にやると思います。

ではどうぞ。


この日、ドライバーはとある場所を訪れていた。

 

 

 

 

 そこはなんと軍の施設。しかも、将軍クラスの居そうな部屋に案内されている。こういう時はそれなりの服装で出向くべきであり、グリフィンの制服と言える赤いコートやスーツなのだが、ドライバーは何時もの様にヘルメットとつなぎ服であった。

 

 

 手前でボディチェックされ、護身用の拳銃等を武骨な軍用人形に小さなカゴに入れて預けた。

 

 『ア、オクビニ ツケテイラッシャル ソレモ、オネガイシヤス』

 

 なんか語尾が不思議な軍用人形が指すのは、首を守るhans(ハンズ)デバイスであった。ドライバーは『え?これもなのか?』とジェスチャーするも、念のため預けてほしいという。もしかして、これが鈍器に見えたのか…?と思いつつ、ドライバーは頷いて、ヘルメットの両脇にある金具から固定してる紐を取り、hansデバイスを首から外し、それをカゴの中に入れた。ドライバーは、それは?と聞く兵士に『これはhansデバイスといって、首を衝撃から守る物だ』と簡単に説明した。というか、これが傭兵としても兵士の装備の内なのかどうかは問われることはなかった。

 

 というか、なぜhansデバイスは外させてヘルメットは外させなかったのか。そしてなんでそれに誰も突っ込まないのか。空気を読んでるのか。そこは不思議である。

 

 少なくともあの人形は、恐らく彼を人形かロボットの類いだと誤認した可能性がある。

 

 

 ドライバーは部屋に入れてもらうと、奥のデスクに佇む男性に挙手敬礼を送る。態度的にはかなり気安い。守衛の兵士たちはそれを見て『なんだこの傭兵!?』と少し驚く気味。それだけの立場の人間の前に、ドライバーは通されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 「やあ、遠いところからよく来てくれて感謝する。グリフィンのドライバー君」

 

 デスクに座る中年男性が優しく話し掛けてきた。

 

 

  

 ―お招きいただき光栄です。ええっと、レミング将軍で合ってます? ―

 

 

 

 目の前のイケオジこと、レミング将軍にジェスチャーを送り始める。

 

 「ああ、如何にも!僕がレミングだ。よろしく」

 

 ―よろしくお願いいたします…。それにしても、俺みたいなの入れて良かったんですかい?グリフィンじゃ、ある意味でならず者扱いされてるのに―

 

 「ふふふ、君がならず者の類いではないことくらい、よく知っているよ?君のことは、君に調査任務として派遣している彼と、君がオブザーバーと呼んでいる彼の報告から色々伺っている…」

 

 レミングはドライバーに対して微笑みながら話す。そんな彼に漂うダンディズム。こりゃ女が好みそうな面構えだなと思いつつ、そうか、と頷くドライバー。

 

 ―レミング将軍、まさか…俺の走ってるオンボードとかも…見ちゃったりとかしてます?…どうでした?―

 

 

 

 「あー…輸送科のトップがとても驚いていたよ…これが人間の運転してる車なのか?ってね」

 

 映像をピックアップしてモニターに映し出し 、苦笑いしているレミング。丁度迫撃砲を避けてるシーンや雪崩、そしてこれまでのカーチェイスシーン。

 

 「なぁに、僕も君くらいの歳の頃は、あちこち飛び回っていたものだよ。砲火にまみれた所で車を飛ばしたり、色々あったものでね。あ、元々僕も速い車をより速く走らせるのは好きなんだ。ははは!」

 

 ―そうでしたかァ!やっぱ弾は当たらなきゃどうってことないですよね?俺のところは、上司からは危ないからやめてくれっていつも注意されますが…―

 

 「ふふ、それは君を心配しているのさ。その彼女はヘリアントス上級代行官…と言ったかな?いい上司を持ったね。ドライバー君。だが、若い内は冒険をするべきだ。そうだろ?」

 

 

 ―ははは!でしょ~?―

 

 「ああ、そうだとも!」

 

 どうやら意気投合したようだ。ドライバーは空気を読んだのか、レミングが何故自分やヘリアンのことを知ってるのか問うことはしなかった。

 

 

 

 「お!そうそう…頼んでおいたモノがあったんだ」

 

 ドライバーは「お、それならこちらに」、懐からゆっくりとDVDのパッケージを取り出す。

 

 

 すると、レミングが御付きの真面目そうな兵士に目線で合図を送り、その兵士はドライバーに近づいた。

 

 「では、こちらに」

 

 兵士はそう声をかける。ドライバーは「あんたに渡せば良いのか?」とジェスチャーを送ると御付きの兵士と将軍は笑顔で頷いた。

 

 つまりは不審物がないかどうかの再チェックであった。兵士は、うん…うん、と頷きつつ、レミングの「開けたまえ」という指示でパッケージを開け、その中身を確認し出す。

 

 その時の兵士の表情が完全に鼻の下を伸ばしていたを見ると、やはりそういうのが好きなんだなぁ…と思うドライバー。

 

 「異常はありません。将軍」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「特典のCDとピンナップは?」

 

 

 

 「はい、バッチリ入っています!イベント限定で配布されたタペストリーも確認しました!」

 

 この厳粛な空気に似合わず、発してる言葉のせいでシュールな光景。ここにオブザーバーが来ると更にシュールさが増すことだろう。この兵士は恐らくこういったチェックとかさせられてるうちに、この様な作品にドハマりしたのかもしれないと、ドライバーは察する。

 

 

 

……………………………………………… 

 

 事の発端は数時間前のこと。軍人は報告会参加のためにドライバーの基地を離れており、そこで諸用から帰り、オブザーバーと交代したドライバーは、自室兼執務室で今後鉄血工造の人形たちに対し、どう対処していくかを検討していた。M4たちAR小隊たちは16LABに戻っている。

 

 

 オブザーバー本人は軍での業務が忙しいため、ドライバーに依頼する事を思い付いたのかメールを送信してきた。一方で、ドライバーは軍本部のある市街地までに続く高速道で、パトロールと銘打った最高速トライアルと洒落込みたかったところ、なんともタイムリーにやって来たその依頼を快く引き受けることに。

 

 

 だが、ここでドライバーは用件を聞き、将軍クラスの人間に改めて仁義を通し、お見知りおいてもらえれば、なにかの切っ掛けで得意先になってもらい、さらに信頼がつけば仕事の依頼だけでなく、最新のテクノロジーを自分の牛耳る基地に融通してもらえるかもしれない…!そうドライバーは思い付く。おまけにオブザーバーにも誠意を見せれば、心象も良く、クルーガーに対しての体裁は多少でも良くなる。ならばこんなパシリみたいな依頼でも引き受けない手はない。彼の舵取り次第では属する人形たちの明暗を分ける事もあるため、ここは気合いを入れて車を走らせるのだった。

 

 

 

 金や物資だけでは中々得られない人との繋がり。IT全般が高性能化しても、やはり生きた信頼は欲しいところ。裏切った覚えもないのに裏切り者扱いされるリスクを下げるためだ。それでもという場合は、その疑いを晴らす証人、もしくは、それまでの時間稼ぎ等を行ってなってくれる可能性もある。相手次第では裏目にも出る可能性が孕むのもまた然り。

 

 

 

 

 それでも、ドライバーは『ヘルメットの覆面指揮官。変な見た目でも信頼はできる奴』……という、ある種のギャップ萌えを軍の将軍相手に狙いに行くつもりであった。そんなリスクがありそうなことを思い付き、実行に移そうとするのは、この時点ではドライバーくらいしか居ない。喋らずヘルメットを脱ぐつもりはないが、特に情報を変に隠すつもりはない。隠すのは何かしらの仕草や様子で簡単にバレるからだ。知られたら不味いから殺したり抵抗するだろうが、ドライバーは丸腰。強いて言うならば、部屋に通してもらうために先程預けた拳銃等の装備品くらい。結局は消耗品だし。そこまで固執はしない。しかし車は別。無論、銃一丁よりも高価なパーツで構成されているためだ。時代にそぐわない考え方の人間はこれまでも居たが、彼の様な思考回路がどこかイカれてる様な男は余り居ない。

 

 

 そんなドライバーは将軍にの詳しいことについては、なにも聞かされてなかった。オブザーバーは急いでいたのか、単にレミング将軍に渡しておいてほしいとメッセージを入力していた。

 

 

 「ありがとう。ドライバー君」

 

 ―いえいえ、お礼には及びませんよ―

 

 「ふふふ…お、そうだ、オブザーバー君にもよろしく伝えておいてくれるかな?」

 

 ―喜んで。それでは、これにて失礼いたします―

 

 ドライバーは行儀良く一礼し、将軍の部屋を退出していった。

 

 

 外に出て、駐車場に車に向かうドライバー。堅苦しい空気から解放され、運転前の準備運動として肩を回す。

 

 解放された、という表現が出来たのは彼だけではなかった。

 

 いつもドライバーとエリアの調査で相乗りする『軍人』。彼は報告のために出頭していた。そして、外の空気を吸うために、駐車場の方へ歩いてきていた。

 

 「あ!ドライバー!?」

 

 ―お?よお、軍人じゃないか。奇遇だな―

 

 基地までのロングドライブのための準備体操を終えたドライバーが、軽く手を振る

 

 「そうだな…ここに来るとは珍しい。あ、そうそう、次の調査エリアが決まったんだ。また、世話になるかも…」

 

 

 ―そうか!何時でも行けるぞ?何なら今からでも向かおうか?―

 

 

 「そうしたいが、すまんなドライバー。このところ忙しくて、まだ日程が決まってないんだ。」

 

 ご都合主義とは行かないのが世の常。これもまたやむ無し。

 

 「ていうか、今どこから出てきた?」

 

 

 

 ドライバーは軍人の問い掛けに対し、手の平で建物を指して、あっちから来たぞ?…とジェスチャーした。

 

 すると、軍人の顔色が悪くなった。

 

 「おまっ…まさか……」

 

 ―ああ、レミング将軍に―

 

 

 「ええ!?…ドライバー、その人は………」

 

 軍人は少し間を置く。ちょっと言いづらそうにしてドライバーに耳打ちしようと近づく

 

 

 ―…?なんだよ?―

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……レミング将軍は、軍の中央司令部から来た、情報将校だよ……!」

 

 ドライバーはそれを聞き、真顔になった様な仕草をする。

 

 

 

 え?待ってくれ。あそこにいたあの人が?あの人、情報将校なの?情報将校って、よくフィクションとかで出てくるミリタリーインテリジェンスの方面の人…?

 

 …と言いたげにジェスチャーする。

 

 軍人は少し青ざめた様な面持ちで頷いた。情報将校というのは、まさに軍の『ミリタリーインテリジェンス』と呼ばれる部署の関係者である。

 

 下手すると、グリフィンに対しては既に目を付けている。いや、入札して都市運営権を入手し、各地に司令部やら前線基地を敷き、正規軍程ではないにせよ、軍備力そのものを持っている時点で、既に目を付けられても不思議ではなく、言い逃れなど最早不可能。

 

 彼らは嘘と真を巧みに扱い、引き出し、またはわざと探らせて掴ませ、そこから相手の正体や性癖まで確実に暴き出す。変幻自在で、あらゆる手段を講じてくる。正しく切れ者揃いという言葉が相応しい。

 

 

  

 それについてドライバーは…一瞬口許に手を当てるが、直ぐに肩を震わせ笑う仕草をする。

 

 ―……どうやら、他の指揮官ではお会いできない様な、所謂『やべー人』に出会っちゃったみたいだなぁ…!…まぁ、仇を売った訳ではないから安心しな、軍人。今回はオブザーバーのお使いで来てるだけだからよ。じゃあ、次の日時が決まったら、また基地で会うとしよう。それじゃあな!―

 

 「ああ、またな。気を付けて」

 

 そして、いつもの飄々とした態度に戻り、軍人がまた会おうと見送るなか、車に乗って走り去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドライバーの報告:無事にお届け完了。粗相はしなかったぞ?オブザーバー。

 

 

 

オブザーバーの報告:ご苦労。助かった。この前の妖精の時連絡が遅れたことは不問にしておいてやる…有り難く思え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜。

 

 レミングは仕事を終え、自室にて、一人DVDプレイヤーにディスクを挿入すべく、手袋を着用しパッケージを開いた。毒針が仕込まれているかもしれないために、と解釈するべきだろう。たしかにそれも有るが、なによりDVDに傷が入らない様にするためである。

 

 DVDプレイヤーに他のディスクが入っていないのを確認すると、早速パッケージからディスクを挿入、再生した。

 

 そして椅子に座り、視聴する。

 

 ……が、もう一度パッケージの中身を確認し出す。すると、パッケージのカバーの裏に薄い入れ物に収まったマイクロSDと小さな紙を確認する。それらをそっと抜き取ると、手紙にはこう書かれていた……。 

 

 

 

 

 "レミング将軍へ。

 

 この手紙を見ていると言うことは、既にグリフィンのドライバーから、こちらのパッケージを受け取り、心がぴょんぴょんしている頃でしょう。

 さて、本題に移りますが、ご依頼された調査について、マイクロSDに納めましたので、お時間ある時にご確認くださいませ。

 

 PS:DVDのご感想、いつかお聞かせくださいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オブザーバーより"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミング将軍からの連絡:やあドライバー君。今後はオブザーバーくんを通じ、何か頼み事をするかもしれん。その時はよろしく頼む。

 




ドライバー の お得意先 が 増えた ?


今回出たレミング将軍のイメージは、00な英国スパイ映画のあの人。レミングが本名かどうかは不明…(オイ)

やはり何時ものノリで書くとシリアル+シュール(失笑的な意味で)という感じになってるなーって思うこの頃。バランスムズいですね。

また次回!



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Vol.22 テストの時って見回りの先生来ると身構えるよね。

二ヶ月くらいぶりに更新。

停滞して申し訳ないですorz

走行テスト回。
ドライバーからの課題(テスト)に挑むM4たちのご様子をご覧下さい。
大丈夫、RO635も何処かで出てるよ!


UMP9
「UMP9です!この作品はフィクションだから、劇中のカーアクションシーンはリアルじゃ危ないから真似しないでね。つまり何が言いたいかっていうと、皆これからは家族だっ!」

UMP45
「無理やりまとめたわね」


では始まります。



ーよーしM4、ここで一度停まってくれー

 

ドライバーのジェスチャーで車は一旦停止。この日は基地のM4A1の運転する二号車に相乗りしていた。この日は約束通り、M4たちの走行テストが行われ、最後はM4の番であった。ドライバーは期待半分、不安も半分だが、ここはM4たちの指揮官として、そして、人形たちの運転の師として堂々振る舞い不安を取り除き、運転に集中させることにした。でもやはりヘルメットの奥は不安げなのは確かで、M4に勘づかれないように『安全確認だ』と伝え、Hansデバイスやシートベルトを入念にチェックし、その間は何時ものようにジェスチャーして他愛もない会話で不安なのを上手く不安を誤魔化す。

 

 

 

 

 

 

 

 

(指揮官が隣に乗ってる…ここは頑張らないと!)

 

M4は今一度呼吸をゆっくり行いメンタルを安定させる。シフトを一速に入れて、赤のランプが青に変わるのを待つ。

 

 

 

ースタート五秒前。4、3、2、1…行け!ー

 

 

ドライバーの合図と同時に青のランプに代わり、二号車はけたたましいエキゾースト音を響かせスタートを越えていった。

 

 

 

「いよいよM4の番ね……」

 

待機所であるピットエリアにて、AR-15は一言。

 

「そうだね!でも…指揮官とM4、無事だと良いな…」

 

不安げな表情のSOP II。

 

 

 

 

 

「どうかこれが、指揮官とM4の最期にならんことを祈ろう…」

 

 

M16が突如不穏なことを言い、真顔にさせる。

 

 

 

 

「なーんてな!はっはっはっは!」

 

M16は突然パアッと笑い飛ばした。

 

 

「もう、M16ったら!!」

 

「不安になること言わないでよぉ!?」

 

思わず憤慨するAR-15とSOP ii。ジョークにしてはかなりブラックである。

 

「いやーすまんすまん!だがな、不安なのはM4も同じなはずだ」

 

憤慨する二人をなだめつつ言う。それには同意できた。M4の場合は隊長であるゆえに責任が大きい。普段から寝静まったときに一人作戦を入念にチェックしていたり、その作戦が成功し、その祝杯で呑んだくれ泥酔しているM16を抱えて部屋まで送ったり…SOP iiが分解しちらかった鉄血兵の部品を怖がりながらも一緒に片付けたり…AR-15のマイペースさに丁寧に対応したり。何かと面倒を見ている。稼働のストレスに重圧や今の様な不安も積れば、本人が可愛そうになる位である。

 

 

 

「何よりも指揮官を乗せている。私達も、さっき感じただろう?」

 

M16たちも走行テストに参加表明したために、先ほどまで一人ずつ指揮官を隣に乗せて運転していた。誰かを隣に乗せる。しかもそれが人間で、指揮官。止めに彼本人はそれで生計を立てていたプロドライバーなために、チェックは半端じゃなく厳しく、それでもいつも世話になっているために安心とは言え、プレッシャーはその分とても大きいものであった。

 

分かりやすく言うならば、裁縫の針の糸通しから厳しくチェックされている様な感覚。

 

尚、結果発表はM4の番が終わってからという、なんとも心臓に悪いやり方であった。指揮官の性格がアレなのか、それとも手の込んだ自殺か…最悪の場合ドライバーの基準のテスト故に合否が永遠にわからなくなるという事になる。そうなると、その人なら…と考えているうちに自分達の妥協が入りやすくなるために曖昧になってしまう。それはよろしくない。

 

 

 

どちらにせよ、人形たちはいざってときに指揮官たちの辞世の句を聞き届け『無茶しやがって…』の一言を添える準備だけはしておこうと考えておくのだった…

 

にしても、運転席の様子から聞き慣れた不気味な笑い声が聞こえている。特にARー15とSOPiiは聞こえた直後に冷や汗を掻いていた。どうか気のせいであってほしいと願う。

 

 

 

 

一方、M4は順調に攻め込む。以前までのぎこちなさが消え、しなやかにコーナーを抜けていく。

 

ドライバーは心地良さを感じつつチェックする。それでも最後まで平静を保てるかはM4自身のメンタルに帰属するので最後までわからない。M4の場合は、興奮してテンションがおかしくなった時点で地獄のドライブへ早変わりするリスクもある。そうなるともうテストどころではなくなる。今回は課題というキチンとした面目もあるので落ち着いているのもある。おまけに練習の成果もあって挙動が暴れだすこともなく安定している。感覚は乗ってみなければ判断がわからない。タイムの数字や三者の目線では当人の状況なんて考えてやりようがない。そのためにも、ドライバーはこうして助手席へ乗ってチェックしているのだが。

 

振り子の置物の動きからして、ここまで速度を上げられているのはドライバーも驚いた。タイヤもそこまで鳴らしてはいない。オブザーバーの水入り紙コップのお陰もあるようだ。

 

M4はというと、ドライバーの風貌から溢れる無言のプレッシャーとも戦っていた。彼はM4や人形たちにとって、走りの世界においては立ちはだかる壁。彼の領域はここに所属する人形たちの目指すべき領域。

 

そんな彼でも手こずる事はある。しかし、それは厳しいレギュレーションの中でコンマ1秒、1ミリ単位を削って戦っている世界。その熾烈な中で鍛えた丁寧な車両のコントロールは、未だに人形たちには真似できていない。例え、替えの利く身体であったとしてもだ。

 

だからこそドライバーは採点基準が高い。

 

 

(うん、効果は出ている。どうかフィニッシュライン越えるまでは壊れてくれるなよ…いや、出来ればずっと壊れないでお願い…!)

 

 

不安がぬぐえない助手席のドライバー。

 

その横でM4は繊細なコントロールを続けていく。こういう時に途端に乱れると一気に崩れてしまう。それだけは起こらない事を願うのだった。

 

そして最後のコーナーを抜けた後、フィニッシュラインを通りすぎる。

ピットに入れて停車すると二号車。

 

指揮官とM4の無事を確信したM16たちは、総出で歓声を上げて駆け寄ってきた。ドライバーは車内でテストの結果を伝えている。ジェスチャーをするドライバーに頷くM4。少し長い。内部でのやり取りは当人同士でないとわからない。

 

 

(え…?なになに…?)

(まさか………)

(おいおい、ここでまさかそれは…)

 

まさかM4だけ問答無用の再試とかいうのは止めてくれ…M16達はそう願う。

 

-----------

 

二号車の車内にて

 

ーお疲れ様。上手くなってたぞー

 

「はい…有難うございます…!」

 

ー後は、いつでも冷静に。夢中になりすぎてコース幅をギリギリに使い過ぎない様に。崖から落っこちて死んだら、元も子もない-

 

「…?はい…気を付けます…」

 

一瞬記憶になさげに疑問符を上げるM4A1。

理由としては荷重を意識しすぎてコース幅を使いすぎていることにあった。そこは注意が必要だと感じていた。場合によって位置関係上、回避するための余裕が無くなることがあるからであった。

 

 

-おい…まさか今まで自覚なかったのか…?-

 

「…みたいです…」

 

 

ー………。ま、まあ、結果発表するから降りようか…ー

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

【攻めのSOPii】

 

では、その時までのM16達の様子をお送りしよう。

 

先ず最初に誰かやるかについて話し合うが中々決まらず、結局ドライバーがくじを作り、それを引かせた結果、スタートを飾るのはSOPiiと決まった。

 

 

ドライビングスタイルはかなり粗め。しかし、攻めの走りは定評がある。

 

「指揮官さん、合格したらご褒美くれます?」

 

-アイスクリーム奢ってあげるぞ-

 

「わーい!」

 

「ずいぶんと安いわね!?」

 

ーまぁまぁ、そう言うなAR-15。下手に大きいもん得ようったってプレッシャーだろ?ー

 

「そうですか?私なら堂々イチゴショートくらいはねだっちゃいますよ?」

 

ーほう……?ー

 

「にしても、どっもスイーツだな…?」

 

AR-15のジョークに突っ込むM16。一方M4は…

 

「SOPII、気を付けてね」

 

と、オーソドックスに声を掛けていた。

 

「ありがとう!じゃあ皆、行ってきまーす!」

 

支給されているレーシンググローブとシューズを身に付け運転席へ座ったSOPiiは、楽しげな顔でクラッチを繋いで出発していった。

そしてスタートラインで転回。ランプが赤から青に代わりスタートしていく。普段の狂気溢れる戦闘に対する姿勢から、かなり乱暴に振り回していそうなイメージを持たれがちな彼女がステアを握るため、ドライバーは少々身構えていたが、すんなりとコーナーを攻略。

 

 

 

(え?本当に戦場で鉄血人形解体ショーを行うSOPii?)

 

車体の傾きを意識して荷重移動をマスターして見せていた。結果は合格なのだが、ここでは褒める言葉だけ。

そうしてピットへ向かい、停車。SOP iiの気合いを感じとるドライバー。

 

「ただいまー!」

「おかえりSOPii。次はAR-15だな」

 

「え、ええ…あの、指揮官、よろしくお願いしましゅっ…」

 

ーAR-15、緊張してるのか?ー

 

「してましぇんっ…あう…」

 

そんなこんなで準備を終えたAR-15と交代。カミカミである。

 

 

 

……………

 

【守りの走り(?)のAR-15】

 

「よし!行ってくるわ!!」

 

運転席に座った途端、AR-15はやったら張り切った様子で走らせ、スタートラインへ向かっていった。ドライバーは冷静かつ完璧主義で生真面目な彼女が一瞬見せたカミカミな一面にどこか微笑ましさを感じつつ、テストが開始される。車のキャパとラインに余裕を持たせた守りの走り。荷重の位置を考えているが、どこか攻めにもみえる走り方。

 

タイヤのグリップ力もしっかりと使えている。

 

及第点と判断し、SOP iiに続き合格。

 

しかし……

 

ーよくやった。お疲れさまー

 

「おっしゃああ!……コホン…指揮官、ありがとうございました」

 

無事走り終えた嬉しさで一瞬大きく喜ぶ。

AR-15は比較的優しくブレーキを踏むタイプであった。

 

 

ーそうだ…よし、一旦車体チェックも兼ねてインターバルを挟む。M16とM4はその後だ。整備クルーのみんな、チェックを頼む-

 

 

ドライバーの号令で整備クルーと整備ロボットたちが、待ってましたと言わんばかりに二号車に狂喜乱舞し飛びかかる。

記録係として推参したRO635は、記録をタブレットに入力している。

 

「M4、私達はインターバル後だそうだ……ぞ…?」

 

と、ここで声をかけるが、M4は半目でステアリングとシフト操作の仕草をして最後のチェックをしていた。

 

 

(ふふふ、私も集中するかな…)

 

 

次はM16A1。ここで姉キャラの威厳を見せられるか否かは、彼女に掛かっている。

 

 

 

 

…………………

 

【安定感のM16】

 

インターバル後。二号車点検は終わり、テストの続きが始まる

 

「私の番だな。では指揮官、よろしく頼む」

 

ーああ。早速乗ってくれー

 

 

意気揚々と運転席へ座っていくM16。黒い羽織は今回脱いでROに預けた。ROの雑用感が否めないのは何故だろう。

 

そして、この時見せたM16の背中から滲み出る本気出す感が格好いい。ドライバーは一応車内にジャックダニエルが持ち込まれていないことをチェックし、その後運転席へと座るように指示した。

 

 

「そうだ、指揮官…」

 

ピットを出発し、スタートラインに到着すると、M16はドライバーを呼ぶ。

 

「全員のテストが終わったらで良いんだけどな、あんたと話がしたい。だめか?」

 

ーほう…随分ウェットなおねだりだなM16~……良いだろう。しかし条件がある。先ずは走り切れ。合否も褒美も、話はそれからだー

 

「ふふっ…了解だ!上手いからって惚れるなよ?これでも負けじと走行練習はしてきているんでな!」

 

-惚れてほしけりゃ今は自分の事に集中しておくれ-

 

「了解だ」

 

 

そしてスタート。

 

M16の物怖じしなさと堅実さは安定感のある走りへとつながると言ったところか。ガサツな面はあるので多少走行ラインにはラフさがあるものの、リカバーも出来ている様であった。マシンはトラブルなく動いている。

 

今回の採点項目は荷重移動。さあどうだろうか。荷重を急に加えず安定させている。全コーナーを綺麗に曲がっていく。

 

及第点で合格。そしてM16は無事にピットへと戻るのだった。

 

「姉さん…!」

「M4、皆、戻ったよ」

 

そしてM4の出番が来る。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

そしてM4のテストも無事終了した………

 

やり取りが終わったのか、車内でM4とドライバーはハーネスを外し、ドアを開けようとしたのを確認したM16たちは、一旦二号車から下がる。

 

降りた後、いよいよ合否発表。

 

ドライバーのジェスチャーを整列して待つ

 

 

 

 

ー結果から行こう。見事、全員合格だ。ー

 

 

 

喜びの声を上げるAR小隊の人形たち。

 

 

ドライバーはペルシカから「M4は特別」という事を聞いたのもあり、よりアドバンスドな領域へ踏み込めるようにする必要があったため。突然暴走ぎみの走行スタイルをすることもあり、それにばかり頼らぬ様にするためにも、車体さばきについては厳しめにチェックしていた。

 

あの雪山でのM4の状態はまさしく『特別』なものだが、そういう意味までも含まれていない事を思いたいところ。

 

 

…しかし、上達はしていた。今後もぶっ壊れることがないように。ぶっ壊れても、しっかりコントロールできるくらいにはなってもらいたいと願うドライバー。今回は走り慣れていてしっかりとコンディションを知っている上でのトライ故、しかもコース幅いっぱいに寄せるなとも制限を設けていないしこれはこれでOKであった。今回に限っては。

 

M16たちが改めてM4を褒め称える。あの恐怖のドライビングがついに是正されたのか、と。

 

ROも拍手を送っていた。

 

 

 

 

 

ーさて、どうだった?……軍人ー

 

 

車内に向けてジェスチャーする。すると、後部座席から工学迷彩マントを被った軍人が降りて来た。まさかの登場に驚くM4たち。

まさかずっと乗っていたのか。どんだけタフなんだこの人…と思うにふさわしい。

 

「ふ~…良いんじゃないか?」

 

マントを脱いで畳む。すると、思い出した様に小さい声で申し訳なさそうに言い出した。

 

「M4の時、運転席でうっすらと笑い声が聞こえたんだが…」

 

「…え、笑ってました?」

 

ーま、まあな…ずいぶん楽しそうだったぞ?ー

 

 

(((あ、やっぱり……)))

 

AR-15たちは確信した。自分達の聴覚モジュールは正常であった様だ。

 

 

 

 

 

 

to be continued...

 




軍人はタフ過ぎた(確信)
多分ドライバーのせい。


っていうか、人形が銃使わない回となりましたね…(殴

この作品中において、M4達も上手く速くなって貰わないと今後のドラマは追えないと思いますので……(蹴


次回に続きます。


処刑人「醒めちまったこの街に、熱いのは俺たちのDRIVING……」


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Vol.23 ご褒美タイム…?

どうもです。暑中お見舞い申し上げます。

遅くなりましたが、(祝)ドルフロ一周年!

筆者の司令部にMDRとジェリコがやって来ました。

資源なんかねえよ(虚化)




それではどうぞ。




前回の『戦場の走り方』は…

 

 

 

 

AR小隊、無事全員合格。

 

軍人は軍の方が忙しいそうでまたも呼び出されて帰還。

 

 

以上。

 

 

…………………………………………………

 

 

この後は反省会と打ち上げ、そして各自のご褒美の時間がやってくる。

 

 

 

ドライバーは約束通りに、SOP iiに約束通りアイスクリームを、AR-15にはイチゴショートを奢る。

 

この時AR-15は、まさか冗談のつもりで言ったのに本当に戴けるなんて…と驚いてた様である。

 

 

 

 

 

 

その後はM16のお願いを聞くことに。

 

 

 

約束通り、その夜M16とバーで話をする事になり、スプリングフィールドに頼むと空気を読んでくれたのか、その日の夜は貸しきりにしてもらった。M4は特に褒美を考えていなかったそうで、ドライバーは折角なので考える時間を与えることに。

 

 

 

「悪いな、指揮官…酒まで奢ってもらえるとは」

 

-良いって。約束だしな。ああ、それで話って?-

 

「ああ…」

 

 

 

 

 

 

M16は少し間を開け、話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官、昔、私を乗せて走ったことあるか?」

 

 

 

 

 

 

唐突な質問。まさかの話にスプリングフィールドもドライバーに、まるで少女マンガや恋愛小説にときめく少女の様な熱い視線を向けて来た。ドライバーは呆気に取られた素振りをしてこう返す。

 

 

 

ー…いきなり何だ…?つーか、それって普通男から持ちかける話だろ。何処かで会った事あるよな?みたいにさ。これなんてエロゲ?スプリングフィールド、原作の年齢制限っていくつだっけ?ー

 

「12歳以上対象とされてますね」

 

カウンターのスプリングフィールドは、ドライバーの奢りというおつまみや酒をM16に出しつつ、その問いに答えた。

 

 

しかもアプリストアの説明欄には、『性的なほのめかし』と記されている。

 

「うわ、ホントだ…」

 

ーPEGIでいうと12+以上で、CEROだとBから上に相当か。何だよ『性的なほのめかし』って。確かに12歳過ぎてても直視できない様な格好とか、直視したくない形相になってる奴もいるが…-

 

「格好は分かるが、形相って何だよ?形相って…」

 

M16が突っ込む。スプリングフィールドもこれには苦笑い。

 

-んで?本題に戻ろう-

 

「そうだな。…昔、運転が上手いやつと戦場で出会ってさ…ほんの一時だが、作戦で急いでた時に隣に乗せていってくれたんだ。しかもオブザーバーさんから指揮官とは同じレーシングスクール出身だと聞いたもんだから、何か知っているかもってね」

 

 

しかし、ドライバーはそれを無言で頷きつつ…

 

ーほほう。願わくば、ソイツとバトルってか?ー

 

「ははっそれも悪くないな!ただ、急ぎで大事な用事に付き合わせてしまったものでさ、しっかりとお礼も言えてないまま時が過ぎてしまったんだ…」

 

M16はその乗せてもらった運転手に恩義がある様だった。

 

-良いねぇ、律儀だな。しかしM16、なにせ今は紛争やらテロやら革命、果てはERIDの対応で激動の真っ只中にある。それだけ動きも激しい。それ故、そいつは生きてるかどうかはわからんぞ。それに、もし同じスクール出身であったとしても、必ず俺とスタイルが同じだとは限らんー

 

「そうなのか?」

 

ーああ、癖だったり、標的にしてる奴の真似をしたり、得意なカテゴリーに熱中したりとかして、その経験からどこかで変容する。昔遅くても今速くなってたり、マシンの特性に合わせたり、走らせ方は千差万別。似ているのはいるが、100%完璧な瓜二つはいない…で、そいつの特徴は?-

 

「あー、特徴か…覚えているのはこれだな…」

 

メモリーの画像をドライバーの携帯端末に送った。ドライバーは少し無言で眺めつつ、ジェスチャーを始めた。

 

ー…装備からは正規軍だな。顔をマスクとゴーグルで隠しているからよく分からんな…にしても、このマシンはレアだ。軍の技術者が趣味が興じ、開発してたのがきっかけで生まれたマシンだよ。ダウンフォースを意識した車体と可変翼型リアスポイラーは、足回りの良さも相まって安定したコーナーリングフォースを実現する…あと、軍事技術者が手掛けてるのもあってアタッチメント次第でラリーレイドの様にもなる。ウェポンベイが幾つか付けられるから、重量増加を覚悟するなら、マシンガン、小型ミサイル、EMPダーツ、TOWランチャー等、正規軍が保有する火器や装備を搭載できるー

 

「結構詳しい様だな、指揮官…」

 

-ここでの配属が決まる前、一時、オブザーバーに頼んで関係者筋から一台借りてきてもらったことがあってな…他にもあるぞ?……ってすまない。これではM4が喜びそうな話になるよな。話は戻すが、つまり、灯台もと暗しだ-

 

「灯台もと暗し…?」

 

-そうだ。俺たちは戦場を駆け巡る。それに今後は軍との合同作戦だって予想されるし、そこらでもたまに軍の車を見かけるしな。既に間近などこかでニアミスしてるかもしれないってことさ。慌てて探すと離れすぎて見落とすこともある-

 

「そうか…近くか。それなら良いさ!」

 

ドライバーのジェスチャーに、M16は満足していた様子である。

 

 

「ところで指揮官」

 

ーん?ー

 

「前から気になってたんだが、そのボトルと細長い管はなんだ?」

 

 

ーこれか?これは、ヘルメット付けてても飲み物が飲めるスグレモノ。お前さんもジャックダニエルを飲む時にでも使うかい?-

 

 

「すまない…私は慎んで辞退するぞ…」

 

ドライバーは『そうか…』とジェスチャーを返す。

どうやらM16はコップに注いで飲む派であったようだ。尚、ドライバーがヘルメットにくっついているチューブを使って飲んでいるのは、スプリングフィールド特製の栄養補給ドリンクである。

 

 

満足したのか、そのあとはM16との他愛のない談笑タイムとなる。途中、自室の戸締まりやらでドライバーが席を外す事があったが、それでも戻ればまた談笑が始まるのだった。

 

話の内容では、妹たちの事。特にM4の話が中心となる場面が度々あった。それだけM16は彼女を心配している現れなのだろうか。

 

ーもっと信じてやりな。お前の言う万一の時が来たって、きっと上手くやっていけるよー

 

ドライバーはこの時、M16にそうジェスチャーを送り励ますのだった。

 

 

 

…………………

……………

………

……

 

 

その翌日、M4A1がドライバーの後に続いて演習路のショートコースで走行する姿があった。

 

どうやら、一晩考えた結果、一緒に走ってほしいというのが、彼女の欲しいもの、即ち『ご褒美』だった。

 

 

一号車と二号車によるバトルになるかと思いきや、なんと選んだのはレーシングカート。

 

 

ドライバーや整備クルーは「遠慮は要らないよ?」とか、選んだ理由を思わず訊ねたが、遠慮等ではなく「師の原点で…」と控えめな笑顔で答えており、ドライバーは『やれやれ…』と苦笑いしている素振りをして見せていた。恐らくこの前16Labでぶっちぎられた影響か。それを根に持っていたのか。というかこれ以何を見てくれというのか。

 

しかしM4曰く、まだ動機がある様で、

 

「愛読しているレース漫画の主人公がアーケード版で『今度は別のところでやろう』って言う台詞に憧れて…」

 

とはにかみながら答え、ひっくり返らせた。

 

『16LABの時に言えば良かったろそれ』とドライバーはジェスチャーするも、一号車と二号車で勝負しても面白くないかも…ということらしい。

 

正直、普通に考えたら一号車と二号車というセットが同じもの同士の同車種でやるべきだし、第一にレーシングカートは身体全体を使うために疲れる。そんなことを言っていたら、一号車と二号車でやり合ったらもっとスゴいことになるのは車の大きさ的にも想像するのは容易である。

 

 

しかし、今回はM4の褒美ということもあり、おまけに何かの任務や作戦前に車輌が整備中で使えなくなるとまずいと考え、了承するに至った。おまけに同じ性能のカートなら基地の練習コースの保管庫に何台か置かれている。

 

 

 

 

「しっかし、M4も隅に置けんよな?」

 

パドックにてM16達がその様子を見に来ていた。軍人も誘われるままにパドックに来ている。

 

「そうね、でも…今のM4にとって、あれが『欲しいもの』なら、それは悪くない選択だと思うわ」

 

「これなら私たちも後でお願いしてみる?」

 

 

「君たちって、ドライバーとレースをしたのか?」

 

 

「と言っても、指揮官は飛び入りでしたけどね…」

「遥か後方から猛烈な勢いで来てな…一瞬ワープしたのかと…」

「あ、そうだ、よかったら軍人さんも参加します?結構身体にキますよ?」

 

「げっ!?お、俺は遠慮しておくよ…」

 

誘いの言葉をかけるSOP iiに、一瞬ドライバーが猛烈に追い上げてくる様を想像して思わず遠慮する軍人。そんな中で、二台の音が近づいてきた。

 

ドライバーが先行して引っ張っていく形でM4も続き、ホームストレートに突入していた。二台はコントロールラインを過ぎた所から同時に加速し、良いスタートを切っていく。尚、各ポストではRO635とそのダミーが旗を降っている。

 

 

 

 

この時、周囲から見えたM4はどこか楽しげであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

実はM16と談笑タイムになったばかりの頃。

 

 

「そのチューブを見て思い出したんだけどさ」

 

M16がドリンクのボトルとチューブを指して話題を振る。

 

「この前指揮官がオブザーバーさんと引き継ぎして帰ってくるまで間、M4がー同じようなのを使って水分補給していたのを見たんだが…」

 

 

 

ドライバーはそこで一瞬固まる。

 

 

ー……何だって?-

 

 

「え、ああ、指揮官のそれと同じようなのを使ってたって…って指揮官、いきなりどうした!?」

 

-すまん。少しの間席を外す。今日は俺の奢りだ-

 

そうジェスチャーすると、ドライバーは立ち上がり、血相を変えた様にバーを後にした。

 

「…行かれてしまいましたね…」

 

「まあ、奢りって言うのならば…それじゃあスプリングフィールド、これ、まだあるか?」

 

メニュー表を指して注文する。

 

「はい、ございますよ。今お出ししますね」

 

………………………

 

 

ドライバーの部屋

 

「うーん…指揮官、まだ帰ってきてないのかな…」

 

と言って、M4はドライバーのものと同じカラーのボトルを持っていた。チューブに口を付け、中のドリンクを飲む。今日のお礼を言いに来たが、待っていたらセンサーが検知したのか扉が開いてしまった。そして好奇心に負けて入り込んだ。そう、つまるところ出来心で。どうやら、M4にもそういった冒険心はあったようである。なんて言ったって開かずの間であるが故に。

 

もっと埃っぽいものをイメージしていたが、掃除は行き届いているし、書類も綺麗に纏まっている。これは以前に指揮官に提出したレポートであった。きっと確認のために閲覧している途中だったのだろうか。

 

 

 

そこで不意に後ろを振り向くが、誰もいない。

 

 

気を取り直して再び中のドリンクを飲む。

 

(何だろう……?)

 

飲み物を吸いつつ、ドライバーが使っているデスクに置かれた分厚いA4サイズの本を見掛け、手に取った。それは鍵が掛けられており、開くことができない。ここまで厳重にしてあるというのは、人間で言う、卒アルと呼ばれるなのだろうか。ドライバーの少年時代であるのなら、少し見てみたい気がしなくもない。

 

鍵を開けるわけにもいかず、見るのを諦め、ファイルをもとの位置に戻した。

 

次の瞬間、不意に肩をポンポンと叩かれる。

 

 

もしやと思い、その方向をゆっくり向くと、そこには『真に無言』状態のドライバーが腕を組んで立っていた。

 

 

 

 

「っ!?し、しきか ゲホッ ゲホッ ゲッホッ!!」

 

 

驚いたショックでむせてしまった。すかさずM4の背中をさするドライバー。すると、彼女は落ち着いたのか、「もう大丈夫です…」と小さく呟き、それを聞いて彼は手を退けた。一応後日ペルシカ曰くM4たちは飲み物が入ってむせても問題ないらしい。

 

 

が、ドライバーの立場からしたら、上官の部屋に堂々入室とはまさしくも大胆不敵な犯行というに相応しかった。

 

「す、すみません…これはその…」

 

目の前に立ち塞がるドライバーは、悪役怪人めいたオーラを引き立てている。

 

肉声を発しているわけではないのだが、何処か威圧感を感じる。

 

そんな中でドライバーはジェスチャーを送る

 

ー俺の部屋に土足で上がるとは…良い度胸だなァ…-

 

「ちゃ、ちゃんと靴は脱いで入りましたよ…?初めの頃は…それにボトルだって使ったのは綺麗に洗浄して補充もしておきましたから…」

 

 

-用意が良いな…って、そういう問題じゃない-

 

すると、間を置きジェスチャーを始めた。

 

 

 

ー…………で、動機は何だ?…まさか……

 

頑張ったのに、指揮官が私と寝てくれなーい!だからお宅訪問(アンブッシュ)の時間だオルァァ!!

 

…とか言うんじゃないんだろうなM4ちゃんよぉ?ー

 

 

ドライバーは部屋を閉め、ジェスチャーしながら詰め寄る。

 

「ち、違いますっ!…って、なんで急に残念がってるんですか!?」

 

否認の台詞に何だ違うのか…と急にアンニュイな仕草を取るドライバー。M4はそれに突っ込まざる得なかった。

そして経緯を説明する。

 

「という事です…」

 

ーそうか。俺が不在時に大した事をしてくれちゃって…何故よりによって俺のドリンクボトルとチューブを?ー

 

「いつも指揮官が飲んでいらしたので…気がついたら…ふふふ…」

 

ー何が気がついたら…ふふふ、だよ…どんだけ大胆不敵なんだよお前。いくらセンサーが誤検知したからって、あれか、気になる女の子のリコーダーしゃぶってる男の子か!ー

 

「お、おお、女の子だってそう言う時あると思いますよ…?」

 

-ほう?…お前もしや思春期か?人形にもそんなのあるんだなぁ…待てよ?うちのM1911とかMk-23は思春期どころかいっつも発情期みたいなも「ブフォッ」ああああ!!?ー

 

 

 

M4は顔を赤くし吹き出した。

 

 

 

 

 

※しばらくお待ちください。

 

 

 

 

ー散らかってる部屋で悪いな…ー

 

床を拭き取った後雑巾を片付けつつ、ジェスチャーを行った。

 

「そうですか?結構お部屋綺麗だなって」

 

-結構ってどういう意味だよ。散らかってそう…とか思ってたのか?-

 

「あの、その…そう言うことではないんですよ…?普段の指揮官を知らないもので、つい…」

 

-そうか。…………………俺のプライベートを知ってどうするつもりだ?-

 

突然ピリッとした空気になる。主にドライバーが普段からジェスチャーのみで肉声を発しないのもあってやはり相応の緊張感が走る。というか、そもそもどうして声を発しないのか、何故に人形や人間にここまで上手く意思疏通できるのかが不思議なのにM4はそこについてはノータッチであった。

 

 

「それは……」

 

 

答えに困るM4。

 

-ははは!悪かったよ。一先ずそれは今日のご褒美の一つとして君に差しあげよう。…美味しいか?ー

 

 

 

 

するとM4はちょこっと口に含み、味わいを今一度確認する…

 

 

 

 

 

 

「うーんー、あんまり美味しくないですね…なんか味が薄いと言うか…」

 

-そこは美味しいって言おうよ!?-

 

 

そんなこんなで、本日は遅いので返すことに。ご褒美は一先ず休んでスッキリしてから考えることにしたそうだ。

 

 

「本日はありがとうございました、指揮官。おやすみなさい」

 

ーああ。ほんとにご苦労さま。あ、そうだ……ー

 

「はい…?」

 

ーお前が俺の部屋で見ようとしたものは、どこの誰だろうと許可するまで他言無用だー

 

 

「…!?」

 

 

狙い済ましたかのようにジェスチャーを繰り出され、M4は動揺する。

 

「か、重ね重ね申し訳ありません…」

 

ー良いんだ…俺にも落ち度はある。すまなかったな。だが気を付けてくれー

 

 

ドライバーは特に激昂する様子は無かった。

 

 

「了解しました」

 

 

M4は一礼して退室した。

 

 

 

 

 

そしてその後、しっかり施錠してからM16の酒の席に戻るのだった。

 

 

ー突然出てしまって悪かったなー

 

「何かあったのか?」

 

ー何でもない。ちょっと戸締まりの確認になー

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

……これは、M16のお願いを聞くためバーへ向かうその少し前のこと。

 

 

 

ドライバーはあの後、ヘルメットのバイザーと端末を使い、今回のテストの結果と使用した二号車のオンボード映像を自室で一人再確認していた。比較しても一目で変わっていた。

 

それを終えると、今度はそれとは異なる別のデータを表示させた。

 

 

『勢力図を表示』

『グリフィン、鉄血と交戦し、またも勝ち星。S09地区等においての脅威度が低下。兵站等も現時点では問題ありません―――』

 

それは勢力図や作戦が行われた位置を示すデータ。と言っても中には単に敵対する勢力の目撃情報も一緒に出ている。殆ど鉄血のマークで埋められているものの、グリフィンや鉄血に対応しているPMCの動きもあって侵攻を抑えられている。それでも、彼らは未だに脅威であることには変わらない。

 

しかし、ドライバーはそこから鉄血とグリフィンやPMCのものだけを除外して再表示させる。

 

すると、『UNKNOWN』と記された部位が表示された。それは未確認の勢力。グリフィンには都市運営と防衛のためにそう言った危険な存在の情報が各所から提供されている。しかし、このファイルのデータは、そのデータベースには載っていない。新興勢力か否かは不明。しかし、日付が古い写真データには、それらの確認された証拠やシンボルマークが表示されている。

 

そこで、あるシンボルマークの組織のスタッツを覗くと『一部生死不明』との一文が。他にも指揮官不審死の起こった場所が表示されているが、『関連性は不明』と出ている。また、グリフィンはこれらUNKNOWNに対して何らアクションを起こしてる気配がない。というより、気づいていない様にも見える。ドライバーは自陣から最寄りのS09地区をはじめとする周辺地区にUNKNOWNの存在が確認されたか調べる。

 

 

『該当する勢力に関する動きは、現在確認されておりません』

 

どうやら基地周辺には手が及んでいない様である。

 

そこで、ドライバーは引き出しから分厚い書物を手に取った。それは、データが当たり前となって以来今では珍しい。

中身はアルバムかと思いきや、その中身はのUNKNOWNに関する情報があった、ヘルメットのバイザー内に投影されていたそのエリアで確認された事がそこに写真と共に書き込まれている。もっとも古い写真には、倒れた兵士の身体やグシャグシャになった乗り物のボディに、傷でつぶれてしまっているが、サークル状のマークが記されている。

 

それは、PMCでも、ましてや鉄血工造でもなければ、周知されているテロ組織のものでもない。

 

 

見終わったのか、それを机の中に仕舞い鍵をかける。

 

 

 

……が、それを中断した。ふと端末を操作し、自室の監視カメラにアクセスする。

 

すると自室の監視カメラの映像の録画データがあり、それをドライバーが基地に不在で部屋を開けている間だけの録画されていた映像を再生した。するとそこにはM4が部屋に入り込んでおり、部屋を物色している様子が映し出されていた。

 

 

 

ボトル以外のものは手を付けられていなかった。

 

そこで、ドライバーは映像を見終え、次に先程見ていたその書物をわざと机の上に置き、デスクの引き出しを閉じて鍵をかけた。

 

そして、次に部屋の扉の施錠システムを確認する。解錠対象は自身とオブザーバー、そしてM4A1と記されている。

 

尚、軍人はゲスト枠なのでその気になればドライバー或いはオブザーバーの裁量判断で立ち入り可能に設定していたが。本日はもう軍人は帰ったため、解放する必要はなくなった。しかも、殆ど司令室など別の部屋でやり取りするためにあまり使わない事が多い。

 

 

ドライバーは設定をそのまま変更せず、表示してるタブを終了させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、M4は誤検知と話していたが、これは最初から誤検知などではなかったということになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドライバーは部屋の扉を何時もの様に施錠すると、また何時もの様子で、約束していたバーへと向かって行ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

Vol.23 END.




閲覧いただき有難うございます。


やはり(この作品における)M4はM4だった(^ω^)


飲み物ブホォさせるタイミングって難しい(コラ)



そしてドライバーの思惑とは…?


また次回をお楽しみに。




代理人「君の心に、ブーストファイア!」


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Vol.24 その頃、鉄血側では…

今回は鉄血側のエピソード集です。

ドリーマーあたりに注意(何

ではどうぞ。


その日、鉄血の司令部にて。司令室では音楽が響いていた。それは如何にもバブリーでダンシングかつヒーローな音楽である。

 

 代理人と、もう一体の人形が踊っている。

 

 

 

 

 「ないしてるよなんt…いたあっ!?」

 

 

 代理人より前に出た、黒セーラー服の人形が、歌い出した後に背後からスリッパ攻撃が炸裂する。

 

 「何をする代理人!?」

 

 頭を押さえる仕草をする黒セーラー服の人形に対し、呆れたような面持ちで…

 

 

 

 「『ないしてる』ではなくて、『愛してる』です。……コホン!さて、そろそろデストロイヤーの出発時刻ですが…」

 

 「ふむ…そうなると、私の出番は当分先と…」

 

 「そういうことになりそうです。申し訳ないですわ」

 

 「まぁ、グリフィンのドライバーとやらの情報収集だと思えばいいさ」

 

 「ポジティブですのね…ご了承ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

 ドリーマーとデストロイヤーたちの方では…司令室と同じ軽快な音楽が響いていた。

 

 ドリーマーとデストロイヤーが踊る。すると、ドリーマーが突然前に出て…

 

 「『な』してるよなんて~♪」

 

 (あ、手が届かない…何かないかな…)

 

 早速歌い間違えるドリーマーに、デストロイヤーは突っ込みを入れようにも 手が届かず、使えそうなものを周辺を見渡す。

 

 (あ、あれにしよう!)

 

 「誘ってくれない~♪」

 

 夢中になって歌い続けているドリーマーは、背後のデストロイヤーの姿に気付いておらず、デストロイヤーは施設の中から何かを引っ張ってきた。

 

 

 「あっち…あっちだよ…!そう、いけ、いっちゃえ…いっちゃえ…そーっとね…」

 

 それは真ん丸ボディの大きな何か。デストロイヤーの指示により、ドリーマー向かって何の躊躇いもなく前進していき…

 

 

 

 

 

 「『マ』リ・ー・ゴーランdきゃっ!!?」

 

 再び歌い間違えた所、背後からゴスン!と鈍い音を立てて追突する。ドリーマーは前に弾き飛ばされ、転倒こそしなかったが、驚いた顔で頭を押さえつつ、追突したものを見た。デストロイヤーは口許に手を当てて『嘘でしょおお…!?』と目を見開きつつ笑っていた。吹き出しそうになっている。

 

 

 

 「え!?なに!?ちょ…ちょっとぉ!やだもうデストロイヤーったらぁ!」

 

 ドリーマーに激突したのは赤いカラーのゴリアテと呼ばれる鉄血製の機械だった。

 

 「…っ…そ、そーっとねって言ったのに、そのままフゥゥゥンってwwwwww」

 

 発言するデストロイヤーと護衛の鉄血人形たちはゴリアテにぶつけられて思いきり吹っ飛び驚くドリーマーに今度こそ思いきり吹き出した。無機質な装甲人形たちも口許に手を当てたり、盾やサスマタで口を隠して肩を震わせる。

 

  

 

 「い…っ…いくらなんでもさ、流石にコレをぶつけてくるのはダメじゃない!?爆発したらどうするのよ!?…っ…もービックリしたぁ~」

 

 そう話すドリーマーも笑ってしまっている。

 

 「ごめんねドリーマー…ていうか、ないしてるじゃなくて愛してるだから!あと、メリー・ゴー・ランドね?」

 

 「わ、わかったわ…。後、あなたさぁ…さっきからカメラ目線で『え?俺、なんかしちゃいましたか?』みたいな顔すんのやめてよwwwwwなろう系主人公じゃないんだから!ww」

 

 ドリーマーからゴリアテに向けての突っ込みにより、施設は再び爆笑の渦に包まれていた。

 

 

 『んんっ…あー、こちら代理人です。出発時刻ですよ』

 

 

 

 「あらいけないわ!デストロイヤー、準備よ!」

 「その前に、とりあえず片付けよっか。あ、戻っていいよ」

 

 するとゴリアテは後退した

 

 

 フゥゥゥン…

 

 

 「あっ…そのままバックしていくのね…」

 

 

 ゴスンッ!

 

 

 「うぎゃあっ!?」

 

 背後にいた鉄血人形兵がバックしていくゴリアテに巻き込まれ、辺りは騒然。

 

 「「えええええ!?」」

 

 デストロイヤーとドリーマーの二人は、まさかの二発目のトラブルに声をあげてしまった。

 

 「え、ちょっと!あなた大丈夫!?今凄い音鳴ってたわよ! ?」

 

 思わず駆け寄るドリーマー。人形兵はなんとか這い上がる。

 

 「ハイ…ダイジョウブ、デス…www」

 

 

 「ねぇ、医務室連れてったげて?巻き込まれたとき見た感じスネが持ってかれてたから…」

 

 デストロイヤーの進言もあり、人形兵は介抱される。

 

 

 

 

 「ゴリアテ、改修した方が良いかもね…」

 「ドリーマー、やるなら今すぐ改修した方がいいよ…作戦前に事故なんて起こったら洒落にならないって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで部屋の隅で案山子のポーズを取っていたスケアクロウが荒ぶるかかしのポーズを決めつつアナタの方へ向き、こう発言した。

 

 

 

 「良い子も悪い子も、屋内でゴリアテを動かすのは大変危険ですので、決して真似しないでくださいね?」

 

 

 

 ドローン戦士スケアクロウ。

 それは、この物語においてドライバーのせいで自前のドローンが破壊されても、めげないメンタル構造の持ち主である。

 

 

 「全部直すのに丸三日ほど掛かりましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 ドローン戦士スケアクロウ。

 そのドローンには、彼女の愛と優しさが詰まっている…?

 

 

………………………………………………

 

 狙撃人形イェーガー。

 精密な狙撃と局地での堅牢さから、売れ行きが良かった人形。

 

 

 そしてポニテ!!!

 

 

 

 彼女の悩みは…

 

 

 

 「えーっと…狙撃人形の『ジャガー』さんいらっしゃいます?」

 

 『ハイ~?』

 

 「あ、あれ?迫撃砲型…おかしいな、狙撃型って…」

 

 『狙撃型?ソレナラ彼女デスネ、『イェーガー』、イマスカー?』

 

 「はーい。ああ、狙撃型?それなら私だよ~。綴り的にちょっと似てるから間違われることがあるんだ。えーっと、イェーガーだとJaeger(イェーガー)、この子はJaguar(ジャガー)。ほら、なんか似てるでしょ?混同されることがあってさぁ~」

 

 「た、確かに…なんか似てるような…大変申し訳ありませんっ」

 

 謝罪する。

 しかし、イェーガーとジャガーの二人は気にしないで、と返した。

 

 

 『因ミニ、コレマデ、エクスキューショナー様ニモ、間違エラレテマシタネ…』

 

 「あ、そうそう!あの時慌てた様子で謝りに来てたんだよ~。ところで、その当番表作ったのって…?」

 

 

 「デストロイヤーさんです…」

  

 

 「あー、やっぱり…」

 『アラアラ…』

 

 

 狙撃人形イェーガー。

 拠点防衛や支援攻撃では、結局のところ、多脚迫撃砲メカのジャガーと共に任務に駆り出されたのであった。

 

 

………………………………………………

 

 装甲人形。

 それは夜間の作戦で出てこられると命中率の低下と装甲の硬さは、準備が不十分だと苦戦を強いられる。

 

 尚、名前はアイギスだったり、エイジスだったり、イージスだったりと、読み方はそれぞれである。

 

 

 普段は無口な彼らだが…

 

 

 「ちょwwwまっwww」

 「夜間に堂々弾幕張ってくるとかこいつらイカれてやがるぅぅ!!?」

 

 「げはあっ!?…………」

 「くそっあいつら徹甲弾装填してんのか!?」

 

 「防げええええ!!!何としてでもここから先へは通すなぁぁぁ!!」

 

 

 

 装甲人形。

 彼等は毎夜、徹甲弾の恐怖と戦っていた…

 

 

………………………………………………

 

 装甲機械。

 イェーガー同様に狙撃タイプの鉄血製機械兵。

 その破壊力はかなりのもの。

 

 

 

 

 「えーっと…モシン・ナガンよ、あの装甲くっついてる狙撃型…かのう?あれなんじゃったっけ?」

 

 

 「装甲機械鉄血兵だったわね?」

 

 

 「その~あれじゃ、よく見かけるヴェスピッドとかリッパーとかみたいに名前があるじゃろ?あやつらにもそういう名前があった様な気がするのじゃ…」

 

 

 「そう言えばそうね…でもあいつらを名前で呼んだ事ってあんまりないし…ええと、何だったかしら…ごめん、私も失念しちゃってるわ…」

 

 

 

 

 尚、彼等には『ニーマム』という名前がキチンとあるのだが、グリフィンでは『装甲機械兵』や『装甲機械鉄血兵』等の呼び名で通ってしまっているため、中々名前を覚えてもらえないことが悩みらしい…

 

 

 そんな彼らは今日も黙々と稼働している。

 

 

 

 

 名前を忘れられても、負けるな!ニーマム!

 

 

 

 

To be continued...




閲覧有難うございます。

デストロイヤーちゃん出動前エピソード+その他鉄血側の小話集でした。



黒セーラーのあの子はあえて名前を出してません(オイ




ゴリアテは先行登場です。



名前を忘れられても…負けるな!ニーマム!



それでは、またのお話をお楽しみに。



代理人「君の心に、ブーストファイア!」


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Vol.25 渋滞にはまった時のメンタルダメージは半端ない。

C96、始まりましたね。
まだ私は行っていませんが、皆さんどうか熱中症や脱水にはお気をつけて。

ではどうぞ。


「ふふふ!燃えろ燃えろ燃えろ~!」

 

ツインテールの白い髪をした小柄な少女の笑い声。その直後に発射音と着弾音。そして目の前には煙を吹くグリフィンの拠点。

 

 

「もっと!熱くなれよ!!……弾の関係上、実際煙ばっかりだけど……まあ良いわ。目的果たしたし、帰ろっと…」

 

 

少女は何かの乗り物に乗り、他の鉄血の人形も速やかにその場を去っていった。

 

 

 

その拠点に属する戦術指揮官はこう言った。

 

 

 

 

 

 

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

『…と、言うわけなんだ』

 

 

通信にて語るヘリアン。その表情は浮かない。一方、ドライバーは飄々とした調子で、特に動揺している訳でもなく、『ああ、やっぱりか』と言いたげな様子であった。その理由は自信の端末から電子版の社内報を読み漁っていたためであった。軍人も周辺の調査のために再び戻ってきたのだが、いきなりこんなである。

 

 

 

ーああ、それで?ー

 

 

『それでなんだが、貴官たちに当拠点周辺の調査をお願いしたい。兵站のルートも、この際もう一度確保しておきたいので、それについてもよろしく頼む』

 

 

ヘリアンはドライバーの質問に答えとして、任務を依頼してきた。

 

 

「何つー火力だよ…」

 

 

軍人は、幸い生きていた監視カメラによるの映像から得た情報ではあるものの、家屋を吹き飛ばすには充分な破壊力を感じて口元に手を当てていた。鉄血工造なんてもん作ってくれてんだよ…と。

 

 

ー現地の指揮官の発言と、敵の火力からして、やったのはデストロイヤーだなー

 

すると、ドライバーがジェスチャーする。

 

「デストロイヤー…?どんなやつだ…?」

 

 

軍人はその名の物々しさに、恐る恐る訊ねた。あれだけの火力のある弾を発射可能なら、マンティコアばりのゴツい奴だろうと想像している。ドライバーはその様子を見つつジェスチャーを開始した。

 

 

 

ー鉄血の高火力なチビッ子。ファンからは、永遠の火力系ジュニアアイドルー

 

 

 

「ん?なに、チビッ子…?アイドル…?」

 

混乱しそうになる軍人に、ドライバーは参考として、モニターに映した映像を軍人に見せた。

そこには無邪気さ溢れる白い髪のツインテール少女のグラビアが映し出される。

本人もノリノリでポージングを取っている。バックには物々しいグレネードランチャーの様なものが接続されている。

 

 

「は……?何だこれ…!?」

 

 

驚くにも無理はない。どうみてもいつもグリフィンと敵対関係にある連中の顔とは思えなかった。ハイエンドモデルは、もっと身体も大きく、何処か殺気立っている表情。

 

 

ーこいつがデストロイヤーだー

 

ドライバーはグラビア映像の少女を指してジェスチャーを送った。

 

 

ー髪の色、皮膚の色からして明らかに人形っぽいだろ?ー

 

 

ドライバーの言う通り。この皮膚の色合いは人間の少女のとは見えない不自然さがある。

尚、大きなお友だちにはそこに魅力を感じる。

 

「まぁ、確かに…」

 

『指揮官、どこでそんな映像を…っておい!』

 

ヘリアンは訊ねようとするも、ドライバーは『そんじゃ、準備して行ってみるよ』、とジェスチャーし、軍人と共に司令室を出ていこうとするが、呼び止める。

 

 

何時もの光景なのでヘリアンはやれやれと言った様子で…

 

『はぁ……運転中に車ごと吹き飛ばされない様、くれぐれも気を付ける様にな…』

 

と言うと、『ああ、報告書を楽しみにしておいてくれ』とヘリアンにジェスチャーを送り、通信は終了した。

 

 

 

 

 

「なぁ、ドライバー……」

 

 

軍人はふとドライバーに疑問をぶつけた。

 

「俺はあんなちっこいのがデストロイヤーなんて未だに信じられないんだが…というか、そんな火力の大きなもんを付けられるのか?」

 

 

 

ーあー、確かに…どう見たって重量過多も良いところだなー

 

 

「ソレってあれか?やつらの懐事情も傾いてるってことなのか…?作るんだって鉱石やらをインゴットに加工したり繊維を紡績……ボディを被ってる人工皮膚だって、貼り合わせるにはそれなりの材料を得ないと無理だろうに…」

 

ーどうだろうな。連中、生産ラインを乗っ取っている。と言うことは、そろそろ自活していてもおかしくない頃合いだ。多分どこかで激安に仕入れてんじゃねぇか?そう言えば襲撃のあった辺り…そうだ、この辺に採掘現場があるー

 

ドライバーは車内のモニターに目的地のデータを表示した。

 

ー鉄血の人形たちが暴走してから、そこで働いてた鉄血製の民間用人形達がデモ起こして、その後武装した人形兵が占拠しちまったんだー

 

「な、なんだって?」

 

ー映像がある。カリーナ君、例のものをー

 

「はい只今~」

 

カリーナが司令室のコンソールをいじり、大きなモニターの『○○区、事故により交通規制中』と表情されている隣に映像を再生させた。

 

 

……………………………………………

 

『我々も労働者』

 

『STOP!サビ残』

 

というスローガンを抱えながら、訴えを起こすためにデモ隊を作り並ぶ人形達。これらは全員鉄血製のブルーカラー向けの人形である。

 

ヒューマノイド型も機械型も並ぶ。

 

作業員たちの困惑した表情。鉄血製の人形達が意気込む。

 

 

 

………

……………

 

 

ーああ、関係者筋やオブザーバーの話によると、待遇の問題だそうだ。兼ねてからきたない、きつい、きけんの三拍子揃った仕事だ。AIも行動の管理記録残しているから、それを蝶事件の後、ハイエンドモデル辺りがそこを利用して吹き込んだと推測している。実際、まさかの展開に人間側は困惑し、武装していることもあってやむ得なくそこには立ち寄らなくなった。グリフィンからしても、その鉱物はIOPにも卸しているから、無闇に攻めて中のもん吹き飛ばすのは、取り返した後に崩落の危険があると考えて手を出せなかったんだ。それからはわからん。恐らくだが、ストライキの後に鉄血はその辺りに拠点かなにか設置しようとしているのかもな。だから、その時に邪魔になるグリフィンの拠点を潰しておきたかったんじゃないかって思うわけよ-

 

 

 

「じゃあ、何であの拠点はやられたんだ?鉄血の人形対策はしていてもおかしくないだろ。敵が来たとしても何らかの動きはあった筈だ」

 

ー監視カメラの映像からするに、そこの指揮官は多分拠点の指揮装置をやられたのかもしれない。数の暴力…いや、火力のゴリ押しか。ソイツの見舞いに行ったんだが、聞いたところだとデストロイヤーが司令室の電力システムまで吹き飛ばしていたそうだー

 

「電力供給を絶たれて途絶か。予備電源は?」

 

ー脱出の際に重要な書類を持ち出すので精一杯だったってさ。ゴーサイン出たところだし、早速行って確認してみようー

 

 

 

 

 

……………

………

 

 

準備をして早速被害にあった拠点周辺に向かって走る一号車。その後ろをAR小隊の二号車、さらに後ろにはスコーピオン達とネゲヴ達も『ドライバーの基地仕様』のカスタムSUVで付いてきている。

 

天気は晴天。アスファルトの路面。以外とIEDやブービートラップは特になく、すんなりと進んでいけていた。鉄血も後始末について考えて設置しなかったのだろうか。

 

 

 

「ドライバー、あの後はどうだ?」

 

ーあの後?……ああ、この前のお友だちの話かー

 

ドライバーはわざと濁して返す。

 

ーそういうやこの頃はエンカウントしてないな。奴さんも一旦諦めたんじゃないか?ー

 

 

この前というのは、ドライバーの隠れ家であるシェルターで話していた彼を狙ったとされる「正体不明の事故車」ことだった。

 

実行犯が人形であることは判明しているのだが、結局はその人形を使役していた正体が不明のままだった。オブザーバーは犯行を行った一味の人形たちの行動履歴やメンタルをアップロードしているサーバーの場所を洗っている所だという。ドライバー曰く、暗殺などの汚れ任務を請け負うのは主に404小隊の仕事らしいのだが、それに乗じた、もしくは暗部の仕事と見せかけてどさくさに闇に葬ろうとする者による犯行の可能性が浮上するが、あくまで憶測の域を出ないままであった。

 

 

「そうだと良いんだが…」

 

軍人は不安げに返す。

ドライバーの運転技術ならば、陸路で逃走する際には有利かもしれない。しかし、空から来たらどうするのか。刺客の正体が明確でない以上、規模も把握できない。航空機だって無人化が当たり前であるご時世故に、何処かから航空攻撃でもして来られても不思議ではなく、その不安は決して小さくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

 

 

 

一方。

 

『デストロイヤー、そう言えばこの前の襲撃したグリフィンの拠点の事についてだけど』

 

「なによ?指示通りやったわよ?」

 

『そうね、でも潰し忘れがあるわ。一度戻ってくれるかしら』

 

そう言ってデストロイヤーに監視カメラの映像を見せる。

 

「えぇ…分かった…すぐ戻るわ…」

 

『ところで今どこ?』

 

「市街地だけど?車で移動中」

 

そう、デストロイヤーはなんと市街地にいる。しかも運転中。通信はハンズフリーどころか内蔵されている通信機を使っているため先ず捕まることはない。デストロイヤーはその証明としてアイカメラで見ているものをドリーマーに見せた。

 

 

 

 

『あ、そうなのね…ていうか何で市街地へ?』

 

「今日ね、何時も月餅(げっぺい)買いにいくところが割引デーでさ。ああ…混んでるじゃん…F○コのトラフィックレポート曰く事故だってさ」

 

『月餅は帰りがけにしたらどうかしら…調べたけど明後日までやってるそうよ?』

 

「そっか…じゃあ任務後のお楽しみに取っておくか…」

 

『それが懸命よ。次の交差点を右に曲がりなさい。そこからは空いているから』

 

 

そして10分後。

 

「……はぁ、早く進まないかな……サボりたい」

 

『サボりですって…?……ゆ゛る゛ さ゛ん゛!!』

 

「ちぇ~」

 

 

 

渋滞は想定してなかったのか、かなり気だるげなデストロイヤー。交差点まで後1km程であった…

 

 

 

 

 

 

 

 

その外では……

 

 

「おい、見てみろよあの車…」

「まじかよ…まだあんなの走ってるなんてなぁ…つかなんで後ろにグレランみたいなの二つもついてるんだ…?」

 

 

それは、道行くエンスージアストたちの視線を釘付けにしていた。

軽乗用車にしても小さすぎるその黒い車体には、デストロイヤーの携えている何時ものランチャーが両脇に付いており、鉄血のエンブレムと「SP-TYPE-P50」と銘打たれていた。

 

転回することを考え付くも、四方を大型トラックやSUVに塞がれてしまい、圧迫感がデストロイヤーのメンタルを徐々に蝕んでいく………

 

 

 

 

「…………あ!やっと動いた…!!」

 

 

デストロイヤーは渋滞からの解放の兆しに感動を覚えたのだった…

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

一方。

 

走行中のドライバー一行の様子と、市街地でのデストロイヤーとドリーマーのやり取り。

 

その双方を監視カメラやグリフィンのドローンカメラ等に侵入し、人知れず監視している何者かの影があった。

 

それが黒色の車らしきものに乗り込み去っていくと、それと交戦して力付くでねじ伏せられたのか、地面には四肢があらぬ方向を向き、首をへし折られ、無残な姿で横たわるグリフィンの戦術人形の残骸だけが残されていた…

 

 

 

 

 

To be continued.




『SP-TYPE-P50』

デストロイヤーちゃんが駆る小さな自動車。

元ネタはアイツです。

もう分かるな?(マテ



襲撃された拠点に向け道を飛ばすドライバー一行。



拠点に戻るように言われるも渋滞にはまったデストロイヤー。


そしてその双方監視していた存在……



また次回をお楽しみに。



代理人「君の心に、ブーストファイア!!」


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Vol.26 黒い車

ご無沙汰しております。ブロックONEです(瀕死)

投稿日が9月になってしまい、申し訳ありませんでした…

もう秋なのですね…(遠い目)

ではどうぞ。



 

 

前回の戦場の走り方は

 

 

 

 

 襲撃された拠点に向けて走行中。

 

 

 渋滞に嵌まるデストロイヤー。

 

 

 謎のアイツ。

 

 

 

 

 以上。

 

……………………………………………… 

 

 

 道中にて。

  

 『ねえ、指揮官、拠点まで距離もあるし、ウォームアップがてらみんなで軽くレースしようよ!』

 

 スコーピオンから無線が入る。

 

 『スコーピオン、この車と指揮官のだと、流石に車が違うんじゃ…』

 

 『あはは!大丈夫だよイングラム。四輪全部使って走らせる分なら!片輪走行だってそこまで速さに直結しないことはわかってるし!』

 『そう言う問題じゃないわよ!?あなた絶対途中で片方浮かそうとするじゃないの…』

 

 『あら良いじゃない♪たまには乱入対戦も良いわね』

 

 通信で繋げていたネゲブも賛同する。

 

 

 

 「おい、マジかよ…」

 

 と、ふと軍人が背後の二号車を見ると、このやり取りを聞いていたのか、M4の目付がマジになっている様に見えたのは気のせいだろうか。

 

 

 ―よし、やるならオーバーテイクは紳士的に。コースを速く走って先にゴールした奴が勝ちだ。鉄血どもは例にならってぶっちぎれ。車はクラス別。そんじゃ、レース開始だ!―

 

 「良いのかよ…!?」

 

 軍人はシートベルトがしっかりついているか確認する。

 

 「ドライバー、ほ、ホントにやるのか…?」

 

 ―その方が早く着くからな。これなら、スオミたちも連れてきてやるべきだったか…―

 

 そのジェスチャーした後にナビシステムにゴール地点を指定し、人形たちに共有する。

 

 「確か、雪山でペースノートを渡していた人形だったな…」

 

―そう。アイツはこういうことが好きみたいでな。基地のTAランキングでは遊びに来る度にトップ10%圏内をマークする。AR小隊含めてどの人形をも差し置くこともあるぞ。フライングフィンとは良く言ったものだ―

 

 軍人からして、その基地のTAランキングの凄さについて分かることは、少なくともドライバーの教えにより走行中のスピードレンジは別格であること。そしてスオミの出身はフィンランド。となれば、もう付け焼き刃の知識でも察しが付いていた。この前は追い越しただけだが、それは手を抜いてたという。

 

 その直後、思わず手元のタブレットの検索エンジンを使い『フィンランド レーサー』と候補が早速出てきたので、それを選んで検索すると、検索結果から確信した。

 

 ―心配するな。運転は丁寧だからな。普段は―

 

 普段とその時のギャップが激しすぎるのだ。あんな虫も殺さない様なイメージのスオミが、ドライバーみたく常識外の運転をしている様子なんて、知っている間柄でなければ想像すらしにくい。ペースノート渡してきた時、崩落事故での部分を考慮して書き加えたりするとかもうガチ過ぎる。

 

 

 ―さあ、レースはもう始まった。ビリっけつになる前に加速するぞ。舌噛まないでくれ?―

 

「ああ、わかった…」

 

 助手席の軍人は何時ものように舌を噛まぬように身構え、車たちは一斉に加速していった。

 

……………

…………

………

……

 

 

 

 

特にトラップというトラップもなく、目的地となる拠点に到着。拠点とだけ聞くと色々想像してしまうのだが、ここは正しく基地と言うべきだ。所謂表記揺れみたいなものだと思う。

 

 

尚、道中のレースは一号車がトップで、その後ろはM4たちの二号車。同じ車だから仕方ない。その後方から、ネゲヴとスコーピオンがほぼ同着という結果に終わった。

 

 

 

 

さて、拠点をこれから調べるのだが、鉄血の姿がない。ドライバーが伝えていた通りなら、鉄血の人形たちがもう陣取っていてもおかしくない筈。

 

 

交戦したのか、薬莢も転がっている

 

 

 ―デストロイヤーのヤバイところは、その携行してる火器にある。この建物の穴を見て察しているとは思うが…―

 

 

 「ああ、隠れ場所があろうがなかろうが、こういうのはイヤなタイプだな…」

 

 

呆れ気味に言う俺。

 

各自車から降りて人形部隊を随所に配置して探索させると、どうやら中も敵は確認出来ず、もぬけの殻。

 

外の地面は焼けて黒かったり、爆風で建物に穴が空いてたり。

 

 

 

 

そして、ドライバーはスコーピオンたちに電源設備のチェックに人形を向かわせた。

 

 

『電源設備をチェックしてきたけど、これはひどい有り様だね…』

 

チェックに向かわせたスコーピオンが通信を入れてきた。

 

ドライバーのバイザーにスコーピオンのアイカメラの視界が表示され、俺も彼から貸してもらったタブレットに出力してもらった。

破損状況は監視カメラの映像以上に破損は酷かった。見るからに絶対に近寄りたくない。これ下手すると感電事故が起こりそうだ。

 

ー直せそうなものはあるか?司令室に電源を繋げてほしい。出来ることなら、ここの指揮官が回収し損ねたのデータを回収もせねばならないー

 

マジかよ。人形たち行かせるのかよ…え?そういう対策は事前にしてるから平気だって?なら良いが…

 

『わかった。あ、一番奥のなら、配線をバイパスすればワンチャンそっちに送れるかもしれないよ。確認してみる…!』

 

ー了解だ。危ないから注意して作業するようにー

 

『了解。指揮官たちの方は?』

 

俺たちのいる司令室には、破損した端末が並んでいる。しかし、辛うじて無事っぽそうなものが見つかった。

アクセスできるかはわからない。電源を繋げない限りは。しかし、ショートしている可能性もある。取扱は油断できない。万一スコーピオンたちの作業から復旧不能と判断されれば、最悪は車のバッテリーを使い、器材を通して使うつもりらしい。

 

しかし、これはいざと言うとき用なのであまり使いたくないとのことだった。俺もAR小隊も手分けして周辺を捜索する。

ドライバーは俺たちや表のスコーピオンたちにも安全に行動できる様に、施工データや配線図データを表示してくれた。それを元に、司令部内をしらみ潰しに探し回った末、ここにたどり着いたが、ドライバーのやつは、どこでそんなものを入手したんだろうか…

 

すると、AR-15が給湯室の電源が幸いにも繋がることを突き止め、こちらに報告してきた。

 

給湯室を確認すると、なんでここだけが…と突っ込みたくなるが、指揮官か人形のどちらかの非常食が無事なのを見ると、補強していたのだろうか。施工データには強力な材質が使われていたという。不自然だよ。どっからどう考えてもここだけなんて。なら司令室だって補強すべきだろうに。絶対なにかあるだろこれ。ドライバーも『相当高級なお菓子なんだろうなァ』と皮肉っていたが、俺と同じくして怪しんでいるようだった。しかし、今はそれどころではないので、本命の作業へと戻る。

 

 

 

 

ー煤だらけだが辛うじて動きそうな端末が運良く見つかった。本当に動くかまでは試してみないと分からない。司令室の電源コードはどこもだめだ。でも、AR-15が見つけてくれた給湯室のを使えば、延長コードを繋げて引っ張れそうだー

 

『わかった。なんとかやってみる』

 

『ネゲヴから指揮官へ、そっちは大丈夫?』

 

ー俺たちは平気だ。それより、スコーピオンたちを手伝ってやってくれー

 

『了解。漏電には気を付けるわ。……ガリル、タボール!密かに鍛えた電気工事スキル、私たちにも活かす時が来たわ!』

 

 

周囲を警戒しつつ、こちらも作業を続けた。

あわよくば、鉄血がここに近寄らないことを祈りながら。

 

 

その小1時間後。

 

スコーピオンたちからの通信が来た。

 

『指揮官聞こえるー?』

 

ースコーピオン。そっちの状態は?ー

 

『何とか復旧したよ。今はこちらで電源オフにしてる。ネゲヴたちもありがとう。ええと、給湯室だよね?電源コードは繋がってる?』

 

ーああ、繋がっているぞ。流せるか?ー

 

まさかの配線作業をM4たちも頑張ってもらったお陰で接続可能になった。メンテナンスルームから延長コードも探し出し、接続完了。

 

ドライバーの指示で電気を流してもらう。端末1つ動かすには十分であった。そこで、安全確認の元、電源コード繋げ、早速端末内のデータを検索。M4たちと手分けして操作する。

 

作業後の後、スコーピオンたちに、直ぐに警戒を行うように命じた。電源は繋がっても、確認作業が終わるまではそれを守らねばならない。一応作業後なのにピンピンしてるのは人形クオリティとのこと。見た目で油断は出来ないもんだな。

 

 

 

すると、遠くから車両の走行音が聞こえてきたのだった。

 

 

 

「ふー、やっと着いた…」

 

 

 小さな車が到着し、そこから、小柄な少女が半ばぐったりした表情で出て来た。

 

 

 「指揮官、軍人さん、あれを!」

 

 M4たちが呼びかけ、指す方を見る。なんだあの小さい車は…?あ、これドライバーの基地で見た奴じゃないか?小さい乗り物映ってたよな、確か…

 

 

 

 ドライバーは背後から俺たちにハンドサインで『降りるぞ』と伝えたので降りることにした。ドライバーはM4たちに幾つかのジェスチャーを行い、どこかへ行ってしまった。俺は不覚にも外に気を取られていてドライバーが見当たらないことに気付いた。

 

 「軍人さん…行きましょう…」

 

 目の前のM4たちに連れられ、体勢を低くしてそっと司令室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 にしても、まさかの襲撃地点で鉢合わせ。あれがデストロイヤーか?何か降りてきたな。こちらに向かってきてる。

 

 

 

 

 あれ、ドライバーは何処に…ん?なんかあの小さい車の背後に隠れてるぞ?

 

 「あっ…」

 ―あっ…―

 

 お前までなにノリ良く偶然出くわした男女みたいな素振りしてんだよ!!

ハンドサインしたっきり居なくなったと思ったら…!

 

 「嘘!?何でグリフィンがここにいるのよ!?しかもグリフィンのドライバーまで!!」

 

 ―おお?折角ノリ良く現れてやったのにそりゃないだろ。あ!もしかして迷子かぁ?そうかぁ!済まないが、お前が通ってるホビーショップは反対側だぞ?……デストロイヤー―

 

 デストロイヤー。

 もしかしなくても、あの元気の良さそうなチビッ子がデストロイヤー。確信したよ。ホントにあのグラビア通りだった。目を丸くする俺。あれが兵器かよって思う。というか挑発的な態度だなドライバー…

 

 ―で?今日は月餅でも買いに寄り道してたのか?あの月餅屋はサービス期間中だなぁ…そうだろ?―

 

 「う…不気味な奴ね…そ、そうよ。あの味は一番好きだから買ってるの!お土産にぴったりで~」

 

 

 

 なんで微妙に乗せられてるんだよ!?

 

 様子を伺うとジェスチャーをするドライバー。どうみてもデストロイヤーが見ず知らずの男にいきなり声かけられておどおどしつつも、なんとか無理して調子を合わせてる人にしか見えないのは気のせいか…?

 

  

 「って、バカにしないでよ!私はホビーやゲームとかはアマゾ○で買ってるもん!今日は忘れ物よ!潰し忘れた物があってわざわざこんなところまできたのよ!」

 

 

 

 ―へー?お前ア○ゾンなんて使えたの?偉いねぇ~―

 

 「私だってアマ○ンくらい使えるわよ!!」

 

 

 

 お前ら伏せ字してるけど意味無くなってるよ!?ねぇ!?

 

 ドライバーとデストロイヤーのやり取りに突っ込みを入れたくなる俺。M4たちはこのやり取りを見て「少し様子を見ましょう」と言い出す。

 

 そんなんで良いのか?お前らの射撃力なら攻めるチャンスだぞ?ドライバーの位置からしたって精密に撃てば…

 

 というより、デストロイヤーはスペック的な意味で、元より単騎行動は厳しかったりするらしい。カタログデータからして、本来はこういったところにたった一人では来ない筈。というか、恐らく対策をして来ているのか、それとも今ちょこっと垣間見た意地張ってそうなメンタルが頭角を出してるのか。ドライバーをここで始末すれば良いのに、完全にドライバーによって意識を戦闘以外の別方向に持って行かれてしまっている。

 

 

 

 

 

 

 ―ところで良い車だなぁ?ピールP50か?へぇ…SP-TYPE-P50、か―

 

 デストロイヤーが乗り降りしたドアを塞ぐように立ちはだかり、ピラーを撫でる。やべぇこれ逃がす気のない誘拐犯だわ。その間にネゲヴたちが移動を開始している。良く見るとドライバーのハンドサインをして指示していたのが見えた。こう言うところはニクいくらいに指揮官らしいよな…? 

 

 『ねぇ…あのオモチャの車、なにか知ってる?』

 『Vz61ちゃん、あれはピールP50っていう世界最小の車よ…!』

 『え?子供用のオモチャじゃないの…!?』

 

 『SP-TYPE-P50…皮肉なことにデストロイヤーにお似合いね…』

 スコーピオンとEVO3の後にベクターが車を指して言う。こんなチョイスってイメージが変わる。小柄さを活かすにももっと選択の余地があっても良いはず。

 

 『鉄血って名車のレプリカも作ってたのかしら…じゃなかった、早く囲みましょ!』

 

 P50が気になる皆をイングラムが一先ず引き戻しつつ、展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『え?あれってR2の親戚じゃないの?』

 『隊長、それスバルや』

 『R2は軽で、あれは所謂マイクロカーですね…』

 

 ネゲヴたちも大概であった。

 

 

 

 

 ―ところで、潰し忘れって何のことだ?―

 

 「あ…」

 

 ドライバーの切り返しのジェスチャーに、しまった……と口許を今更両手で塞ぐデストロイヤー。

 

 

 

 

 

 直後。

 

 

 

 ―確保おおおおおおおお!!!―

 

 

 ドライバーの大袈裟なジェスチャーにより引き連れてきた人形たちが包囲する。AR小隊、更にはネゲヴとスコーピオンたちもその間に入っている。俺も一緒に銃を持って待機。

 

 「おーっと!逃がさんぜ!」

 「ここであったが百年目!」

 「骨の髄までフィールドストリップしてやるんだからー!」

 「さあ、お縄に付きなさい!」

 

 M16、AR-15、SOPii、そしてM4の順で、それぞれ見栄を切った。

 

 

 

 

 「そうはいかんざきっ!」

 

 取り囲まれるも、とりあえず逃げ場を探そうとデストロイヤーはスライディングして人形たちの股下から抜け出ようとするが、片足が運悪くM16のスネに直撃。

 

 「んぎゃあっ!?」

 

 「いっだあっ!?」

 

 

 

 

 「M16姉さん!?」

 「今の痛そう…」

 「直撃だわ…」

 

 

 「~っ!!何のこれしき…ふう…それよりデストロイヤーを!」

 

 悶えるM16。無論デストロイヤーも涙目になりつつ足を引きずっていた。これがドラマや映画の撮影なら完璧に事故である。デストロイヤーはなんとか自分の乗ってきたピールP50モドキに乗り込み、エンジンを始動させる

 

 ―M16、大丈夫か?―

 

 「ちょっと当たっただけだ。指揮官、軍人さん、私は平気だ…」

 

 

 ―十分に痛々しい感じだったがな…M4、M16を頼む。AR小隊は二号車に乗れ―

 

 「了解。さあ姉さん…」

 「すまんな…」

 

 ―…さて…奴は乗ってきた車で逃げる気だ。こっちも追い掛けるぞ―

 

 

 

 

 「あいつ、一人で来たのか…?ペダル足届くのか?」

 

 俺はドライバーに一号車に乗るように言われ、助手席に乗る。

 

 ―さあなぁ…きっとシートにクッション乗せてるか、それとも上げ底してるか、そのまま電脳接続しての操縦だろう。…さて、AR小隊と俺たちはデストロイヤーを追跡する。残りの皆は現場を押さえていてくれ。誰も入れるなよ―

 

 ドライバーたちも車に乗り追跡開始。

 

 

 かくして車格差の有りすぎるカーチェイスが始まった。にしても速いなあの小さいやつ。

 

 ………

 

 その様子を離れた位置から虎視眈々と見つめる、黒いフルフェイスヘルメットとメカメカしい真っ黒ボディの人物。そう、あの全身黒い、明らかに太陽光で暑そうな彼である。その人物は鉄血のデストロイヤーにも、ドライバーが乗り込む一号車を凝視していた。

 

 『ミツケタゾ、ドライバー………!』

 

 エフェクトの掛かったデスボイスめいた声で、彼を名を呟く。

 

 

 

 

…………………

 

 

 

一号車と二号車の出発後…

 

 少し休めるだろうと思った矢先のこと

 

 「…何か来る……皆危ない!!」

 

 センサーに何か音を検知。

 

 するとそれは物凄い速さで接近する。しかもそれはもう直ぐ近く。途端にネゲヴが叫んだ。

 

 それは真横を勢い良く通り抜けていく。紙一重で回避し、即座に発砲するが、それは被ることなくドライバーたちが走っていった方へ向かっていく。

 

 「一体何なのよ……皆、無事?」

 

 「な、なんとか無事やで…」

 「間一髪…こちらもですわ…」

 

 「スコーピオン、あんたは?」

 『こちらスコーピオン、こっちもみんな生きてる~…』

 

 人形たちは無事。しかし現状維持が命令だ。得物のチェックを行い、ネゲヴは通信を一号車に繋いだ。

 

 

 

 

 

 「ネゲヴからドライバー指揮官へ。貴方たちの方に黒い車が一台向かって行った!今からでも追えるわよ」

 

 

 

 

 

 

……………… 

 

 

 

 

 

 

 

 ―…ダメだ。『ソイツ』には手を出すな。エリア(基地)の確保を優先しろ―

 

 『…了解よ。基地の確保に努めるわ』

 

 煮え切らない。

 しかし、命令ならば…と諦めた様に言い、通信は終わる。

 

 

 ―悪いなネゲヴ……さーて…―

 

 ドライバーはM4たちに向けて通信を繋ぎ、ステアリングホイールを保持しつつ、指先でトントンと突っつく。細かくジェスチャーする暇がなさそうだった。

 

 ドライバーは一号車のバックミラーから、M4たちの二号車の更に後方から黒い車が迫っているのを確認していた。

 

 あれは形も色も見るからに不気味だが、確実に車だ。車輪がついてる。無理矢理コーナーでM4をパスしている。

 

 

すると、M4からの返信が来た。 

 

 『了解しました…どうか指揮官たちもお気をつけて!』

 

 ここで無線を終了。こんなところで説明をしてもらえる状況では無いのを分かった上で、M4は一先ず指示に従うことを優先したのだろう。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

 「何だろうね、あの黒いの…」

 

 「兎にも角にも、あれは指揮官に任せるしか無さそうね…」

 

 

 先ほどの事についてスコーピオンたちとネゲヴたちがひしめき合う。あの黒い車の事が気になるが、ここで維持するように命令されてしまった以上、それに従うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

二号車にて…

 

 「姉さん、大丈夫?」

 「平気だM4。歩行システムには問題ない。運転に集中してくれ。それとも、運転を変わってやろうか?」

 

 「冗談は止して。無茶は駄目…!」

 

 「ふふふ、そうか…わかったよ…」

 

 「…それにしても、あのデストロイヤーのスライディングには驚いたわね…てっきり懐から武器を取り出して至近距離で襲ってくるものかと…」

 「鉄屑たちも馬鹿には出来ないってことだよね?こうなったら、悪・即・バラすっ!」

 

 

 「一先ずは離されないようにしないと。みんな、しっかり捕まってて!」 

 

 

 

 M4たちはデストロイヤーと一号車の後を追いかけていく。にしても小さいくせにかなり速い。鉄血のあの車は何かへんなものをパワートレーンとして載せてるのだろうか。

 

 

 「ねえ、背後からなんかもう一台来てるよ!何だろうあれ…?」

 

 突如、車内の後方カメラになにか映り込み、SOP iiが反応した。それは次第に追い付いてきている。現在のペースよりも速い。

 

 

 

 

 「もしかしてネゲヴたちか?いやまてよ、指揮官がさっき基地の確保を命じたはずだよな…」

 

 「そもそも、あんな車、指揮官の基地にあったっけ?」

 

 「指揮官、武器と同じようにどこからか色んな車を持ってくる事あるらしいから…でもおかしいよね…」

 

 M16、SOP ii、AR-15は疑問符を上げる。黒い車はすぐ後ろまで迫っていた。画像認識で探すも該当なし。

 

黒い車が二号車に対して強引に追い抜こうとしてきて、コーナーの内側を先に入られてしまう。 M4はしっかりと空いてる車線で曲がりきり、コントロールを保っているが、黒い車にパスされる。

 

 「っ…!?」

 

 「おいおい!あいつ強引すぎるだろ!?」

 「ぶつかってくるかと思ったよ!?」

 「落ち着いて!あの黒い車、嫌に冷静そうね…」

 

 動きからして車軸を全く乱していない。それは前方のドライバーとデストロイヤーたちもごぼう抜きにせんとする勢い。

 

 「指揮官と軍人さんが…!あれ?指揮官から通信が………モールス信号…?」

 

 

 「おお、今通信ログにも残ったな。解読するぞ。えーっと…『黒い奴には手を出すな』、『ARはデストロイヤーを追え』とのことだ…」

 

 すると、またモールス信号が届いた。

 

 「またか…?」

 

 「今度のは長いわね…」

 

 AR-15が呟く。

 

 すると信号は終わり、残りの指示を再び解読し確認を終える。やることは決まった。

 

 『了解しました……どうか指揮官たちもお気をつけて!』

 

 そう、M4は応答する。

 

………………………………………………

 

 

 

 

 かくして、 二号車はデストロイヤーを、一号車は突如現れた黒い車と対峙するため、分かれ道で二手に別れることになった。

 

 

 

 

 

 

 ―聞き分け良い子で助かったな…―

 

 

 分かれ道で二手に別れた後のこと。

 

 黒い車はM4にもデストロイヤーにも眼中に無いのか、一号車に何の迷いもなく追従してきている様だった。明らかに攻撃的な態度に見える。

 

『なんだこいつは?』と軍人は呟いている。

 

 「ええと、俺たちは後ろにいるこいつのお相手ってわけか」

 

 ―そう言うことだ。乗り合わせちまった以上、しっかりシートに座っていてくれよ?―

 

 「お、おう…良いぞ、事態が事態ださかな。行ってくれ!」

 

 すると、ドライバーは車を加速させた。狭いのも手伝って瞬きするとあっという間にコーナーが来る。そんな中で速度も加速力もレスポンスも高い車を、ロスなく扱うドライバー。ドライアイな者には恐怖の光景だろう。

 

 

 

 (相変わらず…なんてGだ…!景色の流れ方も半端じゃなく速い……瞬き出来ないとはよく言ったもんだ…だけど、なんか何時もより…!?)

 

 

 普段鉄血相手に走らせているペースと何かが違った。

 

 

 久しく乗ってなかったからか?ギアが一段上がった様に速く感じる。今走ってるのが下り道だから余計にそう感じるのか?

 

 

 運転してる様子は何時もと変わらない。珍しく道幅一杯、ガードレールや崖っぷちのギリギリを攻めるため、かなりシビアなラインを走り抜けている。その現実を写し出しているサイドミラーやバックミラーを見たら失神しそうになる。あれ?M4の運転の癖ってここから来てるのか…?

 

 

 

 猿も木から落ちるみたいなオチだけは勘弁してくれよ…?

 

 

 

 

 

 

 尚、一号車と黒い車の走っていった方向には、『工事中』の看板が掛けられていた…………

 

 

 

 to be continued.




閲覧ありがとうございました。


さて、今回ついに出て来た謎の黒い車。これは果たして何者なのか…


というわけで、次回の更新を生暖かい目でお楽しみにくださいませ。

かなり亀さんペースですが、できる限り頑張りますm(_ _)m



代理人「君の心に、ブーストファイア!」



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Vol.27 赤と黒

お待たせしました。


ではどうぞ。


前回の戦場の走り方を三行でまとめてみよう……

 

 

 

 

 

 基地に来たら酷い有り様。

 

 

 

 

 そこにデストロイヤーが到着するも撤退したので一号車と二号車で追跡。

 

 

 

 謎の急襲勢力な黒い車が襲来し、一号車を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 以上。

 

 

 果たして、あの黒い車は何者か。

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 鉄血製の小さなP50モドキを運転するデストロイヤーからしたら、突然すぎるこの状況はまさしく困惑必須と言える状況であった。

 

 何せ鉄血では噂の『グリフィンのドライバー』は現れるわ、逃げたら謎の黒い車が来るわ、不幸にもデストロイヤー自身はあまり想定していなかったほだ。

 

 「あら?ドライバーのやつ、変なのと一緒に居なくなった…」

 

 『どうしたのデストロイヤー…何かあったの?』

 

 「ドリーマー、グリフィンのドライバーと遭遇したわ!基地に先に来てたのよ!でもあいつの人形たちに囲まれちゃって…ねえ、仕掛けておいた味方の人形兵たちはどうしたの?ちっとも出てこなかったじゃない!」

 

 『それが連絡がなくてねぇ、ほかのグリフィンの人形に襲われたかもしれないわ』

 

 「なによそれ!?」

 

 『兎に角、今は目の前の問題を片付けたらどう?あのグリフィンのドライバーと似たようなのが迫ってるわよ。ちょっと立て込んでて支援は出せないわ…なんとかしてね?』

 

 「うう…わかったわよ…」

 

 

 

 

 

……………………………………………… 

 一号車にて。

 

 「黒い車はお友だちか?」

 

問いかけに対してドライバーは、『さあね』と言いたげなジェスチャーを返してきた。

  

 「そういや、デストロイヤーの車は大丈夫なのか?」

 

 ―大丈夫だ。そうだ軍人、やつの車、グレネードランチャーが付いてたよな?―

 

 「え?ああ、車体の後方のキャビン部の両サイドに付いてたあれか?」

 

 ―そうそれだ。あれ、さっき撃てなくしておいたから―

 

軍人の表情が一瞬真顔になった。

 

 

 

………………………………………………… 

 

その頃…

 

 

 「じゃあ、早速足止めとして発射!……あれ?おかしいわね、発射!ええ!?車載しても発射できる様にしていた筈なのに…!?」

 

 デストロイヤーのP50に備わっているランチャーの発射システムが、原因不明のエラーで反応しない事に気付く。

 

 

 

 

……………………………………………… 

 「……何だって?じゃあ、そのためにハイエンドモデルを相手に、あんなダル絡みして来たってのか…?」

 

 ―これも陽動ってやつだよ軍人―

 

 

 そして、揺れる車内でタブレット越しに二号車のオンボード映像を見たが、前の小さい車から何かを発射してる様子は見受けられない。

 

 

 ドライバーが基地の司令室からスッと消えたのは、素早く回り込んでデストロイヤーの車についたランチャーに細工するためだったとは……。そんで意識をそらすために思い付きかダル絡み。

 

 しかし、堂々姿晒してる以上、下手すれば自分が殺されかねないだろうに…よくこんなことをやり出すよな…。

 

 「なんて無茶苦茶な…」

 

 ―しかしだ、あれで、あの車自体はもう脅威ではなくなった。ランチャーを撃ちたきゃ一度停めて付け直さなゃならない。でも後ろにはM4たちが追ってくる。デカい車に追われるからメンタルに圧力や懸念が降り掛かり、安易に速度は落とせない。後は、今モールス信号で伝えた作戦通りにやれば概ね大丈夫……問題はこっちの方だ―

 

 鉄血のハイエンドモデルを追うよりもこちらを優先するということは、それなりの訳があるのだろうか。

 

 ドライバーは相変わらず。『ギアが上がっている』と感じるけど、変に慌ててる様子でもないし、そもそも、バイザーの奥で何を考えているのかは、相変わらずこちらではわからない。

 

 ただ…分かってることは、追ってきた黒い車と対峙している。そして、離れされてはいないこと。

 

 相手も中々やる奴のようだ。

 

 「何処のメーカーだろう…あれも鉄血製か?ここからじゃ分からない…つか、どこからこんなのが出てきた…? 」

 

 ピッタリとケツに張り付いてる。

 

 ―さあてなぁ…だが、ネゲヴたちの報告からして、基地の周辺で待ち伏せしていた可能性がありそうだが…―

 

 

 俺はそこで嫌な予感がした。

 

 「まさか……あれがお前の話してた、不審死事件と関係あるやつなんじゃないのか?」

 

 ―…うーん…暗殺しに来たにしては、あまりに堂々とし過ぎてないか?こうしてAR小隊共々巻き込むってのは、殺る側としては不利にも程がある筈だ。それに、そんな事したら、直ぐあちこちにバレるし、16LABのM4たちも、本部からのネゲヴも、そんでうちの基地に属してるスコーピオンたちもいる。途端に大捜索が始まる。ネゲヴから情報が本部に渡ることもあるだろうし、本部としても犯人は邪魔だから、徹底的な特定作業が始まる筈だ。上層部もいい加減、あの事件には頭を悩ましているそうだからな―

 

 「お、おう…すまん、俺の早計だった様だ…」

 

 

 まぁ、確かに…

 これはオブザーバーの捜査の進展度合いにも依りそうだが、俺の立場では聞くのは些か野暮だ。そういう任務を与えられてるわけではないし…。

 

 

 ―そんなことはない。誰だって疑問に思っても不思議じゃないからな。それを確かめるためにも、あの黒いやつをどうにかしないとな…―

 

 連続コーナーに対し、勢いを殺さず素早く駆け抜ける一号車。背後の黒い車もそれに続いてくる。

 

 

 

 

 ―離れてくれないな…このままもう暫く走るぞ―

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 『車のバッテリー残量が尽きる前になんとかなさいよ?エネルギーは有限なんだから』

 

 「そうね。今度からは満充電にした予備のバッテリーも持ってくことにするわ

!」

 

 『偉~い♪反省できるなんてイイコイイコ♪』

 

 「褒めるタイミングかしら…?あ、それで、どこに逃げれば良いの?」

 

 ここは一本道。

 出てもはぐれた味方の鉄血人形たちに援護してもらえるかも不明。呼び掛けても反応がまるで無い。後はグリフィンの人形たちによるパトロールがある。

 

 

 『一先ず街に向かいなさい。そうすればアイツらも町中であんな風に走ってきたりはしないでしょうしね…』

 

 「そ、そうよね…やってみる」

 

 単純にながら、グリフィン側として考えると、警護してる市街地での暴走行為は、自分の首を絞める行為にもなる。暴走行為により死亡事故はかねてから多い。だからこそ町に逃げてしまえば、ご自慢の運転も意味を為さなくなると考えた。

 

 あれだけのはみ出し者だ、きっとそう評判も良くない筈…ならば傷を広げたがらない。人間とは保身に走りやすい。後ろめたいことがある時はそう……。特に人形部隊が事故を起こせば…

 

 デストロイヤーは、その様なことを思考しつつ、進路を近隣の市街地に指定し、MAPからルートを検索、早速行動に出た。その前に捕まらなければの話だが…

 

 背後からはM4たちの乗る二号車が追い掛けて来ている。車の大きさ的に、その二号車からは、強い圧迫感を感じる。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 「良いわM4。しっかり食い付いてる!」

 

 二号車の助手席に座っているAR-15が運転席のM4A1に向け、そう一言告げる。距離感はピッタリ維持しており、接触は無し。

 

 「妙だな…他の鉄血のやつらはどうしたんだ?ダイナーゲートの一匹でも出てきたっておかしくない筈だが…」

 

 「気付いた後、途中で事故ったとかかな?」

 

 M16とSOP iiが後部座席で思考を巡らせる。

 

 「ははは…それを祈りたい所だな…」

 

 「それにしても…タイヤ三つでよくグリップさせられるよね…前の片輪浮いてたし」

 

 あのモデルは後ろに一つ、前に二つ。そのため、荷重が掛かった時、微妙に曲がっていく方向側のタイヤが浮いていることを発見。

 

 あれは運転してて絶対怖そう……そうSOP iiは思うのだった。

 

 

 

 

  

……………………………………………… 

 一方、一号車は謎の黒い車とのデッドヒートが続いている。ここで、ドライバーは相手の動きを見るために車体を揺らしたりブレーキランプをわざと点滅させている。

 

  「何してるんだ?」

 

 ドライバーは『後ろを見てみな』と ドアミラーを見るように指差した。

 

 どうやら、ドライバーがわざとやっている車の動きに回避しようとしているのだとか。嘘だろ?と思ってよく見ていると、点滅させたブレーキランプに反応して車間距離を取ろうとしていた。

 

 それでも我慢してるのか、すぐに詰めてくる。すると大きな橋の上に二台は来た。すると途端、一号車はそこでスピンターンする。すると黒い車も少し遅れてターンを行い停車。対面する赤色と黒色。

 

 どちらも毒々しく悪役が乗るような車のカラーリング。ドライバーのはグリフィンのカラーの為、グリフィンのエンブレムも付いてるためまだマシには見えるのだが、相手のは正真正銘の悪。車体もどうやら少し前の『ハイパーカー』と呼ばれた車みたいな、ケレン身の強いデザイン。フロントマスクのダクトも大きく、フロントライトがどこにあるのか分からない。

 

 

 どちらも速そう………いや、先程の追い掛けられてる立場からして、ありゃマジで速かったぞ…

 

 何せドライバーの車は、ドライバーと技師と整備クルーの結晶と言えるようなレースマシン。シートは後ろにも付いてるが無駄がない。黒いやつはそれを追撃してきたのだ。

 

 

 

 

 すると、黒い車のドアが開き、そこから誰かが降りてきた。

 

 

 何だかSFシューターとかに出てくる様なメカメカしい強化スーツらしきものを着用した、全身真っ黒で、また黒いヘルメットを被った人物だった。何だこの怪人…ドライバーも配色的に悪役怪人のタチの悪そうな奴にも見える。

 

 タイヤの摩擦によって生じた煙が晴れていくと、道の先となる架橋の先が無いのがはっきり見えてきた。なるほどなそれで工事中だったのか。迷わず入ったドライバーはこれを狙ったそうだ…

 

 黒い車は間一髪と言ったところか。

 

 

 

 

 ドライバーも、そして目の前に立っている黒い奴も、無言のまま……

 

 

 すると

 

 『イキテイタトハナ…コレマデノセツジョク、ハラシニキタゾ…!!!』

 

 

 ―ほう?この俺に?ご丁寧に車の無線機に繋げてブロードキャストしてやがらぁ―

 

 「マジかよ…ホントに居るんだなそんなやつ…」

 

 

 

 

 アニメで悪役にありがちなエフェクトがかったデスボイス。

 

 

 

 

 

 するとドライバーは…

 

 

 

 

 ―差し詰め、やつは『べ、別にあんたの事が気になって来たんじゃ、ないんだからねっ!そう!挨拶回りって奴よ!』って言いたい訳か…―

 

 

 

 「待て待て、どう見ても今のアイツがツンデレぶちかましてる様には聞こえなかったぞ?つかなんか持ってるぞ!こっち向けてる!」

 

 

 

 すると、黒いヘルメットは腰から銃を抜き、スライドを引こちらに向けてきた。

 

 「やべぇ、あれ銃じゃん!!」

 

 

 

 ―そうみたいだな。………良いだろう、止められるもんなら止めてみな。軍人、行くぞ―

 

 「ああ!…っうおおっ!?」

 

 ドライバーはシフトをリバースにいれて急発進。そして360ターンで方向転換し、フロントノーズが来た方向に来た途端にシフトを入れ直し走らせた。

 弾はこちらに当たっていなかった。それもその筈。発砲を諦め、こちらを追うべくあの黒い車に乗ろうとしているのが一瞬見えた。

 

 

 

 しかし、橋が途端に崩壊。

 

 

 黒いヘルメットは、乗り込んだ黒い車と共にボッシュート。目を疑うが、ドライバー曰く、ここは老朽化してるのだとか。老朽化にも色々あるだろうけど、この運を拾えたのは俗にいう神様に感謝だな…まぁ、神様なんていたらWW3なんて起こってないだろうし。

 

 

 

 一先ず、離脱するべく来た道を戻る事になった一号車、来た道というか、そこしかもう道がなかったのが正しいか。

 

 

 

 『ドライバー指揮官、聞こえる?こちらネゲヴ、基地の周囲にめちゃくちゃに壊されたグリフィンと鉄血の人形を多数発見』

 

 ―そりゃご苦労さん。こっちも一段落だ―

 

ドライバーは車体後部についたカメラをちょくちょく見つつネゲヴの問いに答えた。

 

 『そう…ねえ指揮官、あの黒い奴は何だったの?あなたの現役時代のライバルとか?』

 

 それについて、ドライバーは『さーてどうだろうな』と、ジェスチャーで返している。知っていたらとっくに答えてるぞ…とでも言いたいのか。俺は立場的にもこの上京じゃ何とも言えない。

 

 ―そっちはどうだ?―

 

 

 『さっき話したグリフィンと鉄血の人形が見付かった以外は、変わりないわ』

 

 ―そうか…ご苦労さん。今から確認に向かう。―

 

 『AR小隊は?きっと寂しがってるわよ?』

 

 ―既に指示は出してあるから平気だよ。じゃあ後でな―

 

 そこで通信を切る。

 

 

 『ドライバー指揮官、こちらM4A1…』

 

 M4からの通信。

 

 ―よう、そっちはどうなってる?―

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 「はい。指示通りに行いました…」

 

 

 

 M4たちの二号車は、街の前に停車していた。

 

 

 

 

 「デストロイヤーが街の中に…」

 

 

 

追跡していたデストロイヤーは街中に逃げ込んでしまった。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―良いんだ。下手に刺激してはならん。奴は後の祭りさ―

 

 

 ドライバーはジェスチャーする。

 

 

 

 『どういうことですか?』

 

 

 

 ―その内わかる―

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 (あっはっはっは!ざまぁ見なさい!私だってこれくらいは出来るわ!さーて、予定を戻して月餅買いにいこうっと)

 

 

 デストロイヤーは勝ち誇った様な顔をしていた。小さい車体を活かして路地を巡り、撒いたところで市街地の駐車場に停め、外の空気を吸う。

 

 

 「ああ、 こんなところに…おーい手を貸してくれー」

 

 「ういーす」

 

 背後で作業員たちが何かを行っているのを尻目に、デストロイヤーは月餅を買いにその近くの店に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数分後……

 

 

 

 

 

 

 「さて、月餅買ったし司令部に帰ろ…って車がないいい!?」

 

 

 戻ってみると、なんとSP-TYPE-P50の姿がなかった。目の前を走り去るトラックの荷台にはまさにその車が積載されていた。

 

 

 

 「待って!撤去しないでええええええ!」

 

  

 

………………………………………………

 

 

 

 鉄血司令部にて…

 

 

 「……これもグリフィンのドライバーってやつの仕業なんだ」

 

 

 街の様子からデストロイヤーをモニターする代理人は呟いた。

 

 

 「いやそれはどう見たって間違えられて撤去されただけでしょ!?」

 

 

 代理人に突っ込むドリーマーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 to be continued.




閲覧ありがとうございました。


えーと、今回はなんと特に後書きで何を書くかまで思い付きませんでした…というわけで、さっぱりと行かせていただきやす…m(_ _)m





それでは、次回の更新をお楽しみにください。




代理人「君の心にブーストファイア!」


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Vol.28 云年ぶりに起きた朝は…

ドーモ。皆=サン。筆者です。

注意。この作品はホラー要素はありません(何)


…それはデストロイヤー出発前までに遡る。

 

 

 

 

 

 

『そんじゃあ、カウントダウン開始っ――――発射ー!!』

 

ある広い高原にて、異性の威勢の良い掛け声と共に轟音が鳴り響く。

 

『よーし、チェックいっちゃおうか!』

 

轟音の元は決して下町で作られたロケットとかではなく、そもそも明るい話題なりえそうなものではなかった。

 

それは、何と巨大なレールガン。正しくロマン砲。実用化しているのは正規軍だが、よく見ると鉄血のマークが記されている。その隣には『テスト用』の文字。

 

 

そして発射。

空気を切り裂く音と着弾音が響く。

 

 

一基だけそびえるレールガンは、その発射後まで故障はしていなかった。

 

「いよっしゃああああああああ!!」

 

少し離れた位置で、鉄血のハイエンドモデル、アーキテクトがピョンと飛びはね、歓びの声を上げる。

 

 

「やっと撃てるのが出来たよ!あたしって天才!?いやもうこれなら誰も文句ないっしょ!早速次のを建てなきゃね!」

 

『何を騒いで…っておまっ!?』

 

その様子を不審に思ったゲーガーが通信を繋げてくるとアーキテクトの背後に映るレールガンと、その設置された土地、そしてその砲台の向いている方向をモニタで確認して驚愕する。

 

『アーキテクト…そこに建てたのか!?』

 

 

「え?ゲーガー?そうだよ。あたしの天才ぶりに驚いたとか!?やだもー」

 

 

『このバカ!そうじゃない!そこはグリフィンの奴等が向かってくるかもしれんと話した方向だ!砲台の向いている先も!』

 

「……え?」

 

アーキテクトは一瞬真顔になり、改めて広域マップを開いてみる。

 

 

 

(これ敵呼び込むんじゃね?)

 

 

 

アーキテクトはそう思考した。

 

 

 

しかし、その気配は無かった。

 

 

 

…が、そのしばらく後…アーキテクトたちの元に一台の黒い車がやって来た後に、このフィールドは大混乱に包まれることになる。その中で、破壊された鉄血兵や追跡車両が転がっている中、グリフィンでもなければ鉄血でもないその黒い車が悠々と走り去っていったという。

 

 

 

『おや、もうよろしいのですか?』

 

 

『アンミンヲサマタゲタ罰ダ。ソレニ…ココニハ ヤツハイナイ…イッタイドコニイル…『グリフィン ノ ドライバー』…!!』

 

 

 

不気味なデスボイスと剽軽そうな電子的イケボAIの会話が混ざる。

 

 

---------

 

 

 

試験用ジュピター発射、着弾後。

 

 

 

 

その砲撃を受けた際、付近にて、何やら動きがあった。

 

『起動に成功。久しぶりに起動したのでインターネット規格並びに互換性をチェックします。……問題なし。理論上まだこちらはハイスペです。同期開始……成功。どうやら、緊急起動するまでもなかったですね。ギリギリですが』

 

流暢に喋るアナウンスボイスが暗闇の中で何かが起動する。ロボットアームが動き始めるが何が起こっているかわからない。すると、そのアームが離れていき、生体ポッドの扉が開かれた。

 

 

ポットの中から誰か起き上がる、それはヒトにしては少しゴツゴツしていてメカメカしい様な黒いヤツ。するとソレは、突如カメラ目線を決め込みアイカメラが灯る。頭のそれはフルフェイスヘルメット。

 

 

 

 

 

 

『おや、お目覚めですか?お元気そうで何よりです。あ、おやすみ中にやわらかスーツとアーマープレートは新品に交換しておきましたよ。黒だと塗装の手間が省けますね。ライトノベルの主人公みたいですが』

 

 

 

アナウンスをしていたAIが、黒ヘルに話し掛ける。するとその黒いのはポットから出た。すると猫背から姿勢を正し、ゆっくり歩き出す。何かの前で立ち止まる。するとAIは黒ヘルが向いた方向の『あるもの』に対し、また一方的に話し出す。

 

『ああ、こちらは現在オイルの差し替え中です。何分、久方ぶりの起動ですから。暫しお待ちを。整備性が高いと便利です。そう思いませんか?』

 

 

その間に黒ヘルは検索エンジンを起動させる。

 

 

 

『おや、検索ですか?接続感度は良好ですよ。どうぞ』

 

 

 

【検索ワード:今世紀 最速の男】

 

『検索開始…』

 

すると、結果が表示されるが、検索窓の直ぐ下にこう表示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

【もしかして→グリフィン The DRIVER】

 

 

迷わず選択して一通り情報を蓄えるために多くのタブを開いて閲覧する。その速度は最早速読も良いところ。一通り読み終えると、興味が失せたのか、一気にタブを閉じる。

 

 

 

『お待たせしました。お車は色あせてませんよ。仕様は最後に眠りに付く直前のセットのままですので、セッティングが必要ならそちらの裁量で調整をお願いしますね。車内のスイッチで何のそのです。稼働に問題なし…………』

 

 

 

AIはまた喋りだす中、黒ヘルが迷うことなく目の前の真っ黒い『車』に乗り込み、ハーネスを着用し、手元のスイッチでエンジンを始動させた。インバーターの駆動音のような音が響く中、車内で呟く。

 

 

『…………『ドライバー』…コンドコソ、キサマニインドウヲワタシテヤル…!!』

 

 

怨みや執念を感じさせるデスボイスな黒ヘルは、バイザーの奥をギラリと赤く光らせ、スイッチ満載のロマン溢れるD型ステアリングホイールを握り、そしてアクセルペダルをじわりと踏み、車を走らせていった……。

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

遂にその日がやって来た。

 

しかし、崩れた橋に巻き込まれ、それを尻目にグリフィンのドライバーの駆る一号車は去っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『記録再生完了……まるで、ドラマのゲスト出演者の演じた人物になったみたいですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂に包まれる中、AIが喋り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 『しかし………』

 

 

 

 

 

 

 

 突如、橋の崩れた所に何かの駆動音が轟く。そして欄干に向けてフック付きのワイヤーが射出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『けん引開始。デフロック起動――――。……我々は、一話完結のために用意されただけの、都合の良い存在などではありません』

 

 

 

 

 

 

 

 同時に、機械が軋み、タイヤの摩擦…それらの騒音が混ざった『不気味な音』が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうですよね?』

 

 

 

 

 

 

 

 這い上がり、漸く路上に姿を表した。

 

 

 

 

 

 

『―――同志たちへの情報共有に成功―――…それでは参りましょうか』

 

 

 

 

 

欄干に引っ掛かったフックが外れ、落下寸前に打ち出したとされる別のそれから順に車体に巻き戻っていく。全て格納し終えると、大きく口を割いたように展開したフロントバンパーが、先程までドライバーを追撃した時までの形状に戻っていく。

 

 

 

 

 

 『………"ハイドラ"』

 

 

 

 

 そして静寂の中、再びソレは走り出していった。

 

 




おしゃべりAIと共に現れた黒ヘルこと『ハイドラ』。



その目的とは一体…


では次回の更新をお待ち下さいませ…m(_ _)m




代理人「あなたのココロ、アンロッ…じゃなかった、ブ ー ス ト フ ァ イ ア ! 」


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Vol.29 またやって来た黒ヘル。

そういえば、ドルフロ日本鯖ではヴァルハラコラボするらしいですね。

前回からの続きです。

ではどうぞ。


 

あの後、俺たちはドライバーが運転する一号車に乗って、ネゲヴたちと合流した。M4たちには街に入ったデストロイヤーを街の当局に任せるように指示を出し、一度先程の基地に引き戻す。走り慣れてきたのか、かなり早く戻ってきた。尚、先程デストロイヤーのスライディングに巻き込まれたM16は、普通に歩けている。よく壊れなかったな?

 

 

 

 現在、ネゲヴが通信で話していた基地の周辺で倒れていた人形たちを調べている。

 

 

 「ひどい…」

 

 

 その声は到着後にドライバーと俺と一緒に見て回るM4A1から発せられた。

 

 

 ソレもその筈、四肢をもがれた人形の山。人間ならとんでもないことになっている。

 

 

 そこで、ネゲヴが代表して説明してくれた。

 

 

 「確かに…見るに耐えないものね。一先ず説明すると、さっき黒い車がカッ飛んで行った後、その方向を調べてきたの。そしたら、ここに……しかもこの子たち、壊されて間もないわ」

 

 

 よく見ると、まだ人工皮膚が痛んでいなかったり、露出した部品が錆びてなかったり。

 

 

 ドライバーは無言のまま。

 

 

 ―可能性があるなら、さっきの奴かもな。黒い車のアイツ…―

 

 

 「ねえ指揮官、アイツは何者?」

 

 

 ドライバーは手を翻して分からない、としか答えず、ヘリアン達に連絡をするとのこと。

 

 

 ―ヘリアン、まだ居るか? ―

 

 

 『こちらヘリアン。まだ居るぞ?先程、貴官たちのいる拠点から最寄りの街で、デストロイヤーが捕まったという情報が寄せられたのだが…』

 

 呼び出しに応じたヘリアンは、何やら報告を受けていた様である。

 

 ―ああ、だと思ったよ…拠点は想像以上だ。周辺に殺られた人形を沢山見付けたんだが、それらはどうすればいい?こっちじゃ判断に困る。しかも今日はダミーを連れてきてないから人手が足りない―

 

 『こちらで回しておく。それと、そのエリアに勤務していた指揮官から、大切なものがあるから回収をしてきてくれとの事だ』

 

 ドライバーと俺はもしかして……と先程の給湯室の金庫を思い出した。

 

 ―それは何処にあるのかわかるか?―

 

 『話によると給湯室だ。そこに金庫が設置されていて、その中にあると……』

 

 ―おお、そうかそうか。ならお安いご用だ。その指揮官に渡せばいいのか?―

 

 『出きればそうしてほしいそうだ。機密ならばこちらでも管理出来るが…』

 

 ―いや、こちらで渡すよ。そいつはいまどこに?―

 

 『ん?おい、ドライバーうしろおおおお!!』

 

 叫ぶヘリアン。

 背後を見ると…黒いヘルメットがテカっている。しかも、邪悪そうに赤く目を光らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 来 ち ゃ っ た 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ドライバアアアアアアアア!!!

 

 

 ……べふっ

 

 

 刹那、ドライバーのムエタイキックが炸裂した。黒いヘルメットは受け止めるようにも間に合わずすっ飛び、機能停止したのか、動きが止まった。

 

 

 「えええええええ!!?」

 

 

 俺…いや多分皆もだろうけど、ドライバーの見事なムエタイキックよりも、復活していきなりK.O.された黒ヘルに驚いていた。年末の笑ってはいけないシリーズでもこんな事態は起こらない。あ、 あれは加減してるからか…。

 

 よくみりゃさっきの黒い車が停まっている。おいおいお行儀よく出入り口に向けてるじゃないか……

 

 

 ―なあ、 今の見たか?―

 

 『あ、ああ…』

 「良い反応だったな?ドライバー…」

 

 ヘリアンと俺、そして人形たちに尋ねるドライバー。

 

 尚、人形たちは目を丸くして驚いているようだった。フィクションみたいに派手な技を決めておいて、直後に『自分が何したかわかってない態度』を取られるよりかは、今みたいに吹っ切れてくれた方が鬱陶しくないのは確かだ…しかしあの黒ヘル地味に防いでたよな?

 

 

 

 

 

 

 っつーか、人形たちなんで撃たねえんだよ、いや何故撃たせないんだよドライバー!…え?ああ、俺らが近くに居たから弾道予測したらこちらに命中してたってさ。そういう時にトリックショットで助けてくれそうな感じする精密射撃担当のRFの人形は連れてきてなかったな、そう言えば。

 

 こういう目に見える表面的な情報じゃあ、ドライバーの思惑は計れないけど。

 

 

 さて、倒した黒ヘルを一号車から取り出したロープで拘束する。

 

 どうか暴れてくれるなよ黒ヘル。少なくとも俺たちが帰るかお前がくたばるまで…そう祈りつつ。

 

 その後、車をよく見るとサークル状のマークが描かれている。掠れてるのは先程のカーチェイスが原因だろうか。人形たちとデータを参照するも該当情報は無し。

 

 ドライバーはそのマークを注視していた様だが、くるっと向きを変え、金庫に向かうぞ、とジェスチャーしてきて、人形たちに黒ヘルを警戒させ、俺とドライバーは 司令部の中へ入っていった。

 

 

………………………………………………

 

 「さて、さっきの給湯室に来たぞ」

 

 金庫は無事だった。

 

 ―よーし、金庫の前に来たぞ―

 

 『当エリアの指揮官からパスワードを預かっている。そちらに送るぞ』

 

 端末に送られたパスを入力する。この際この金庫は破棄するつもりなのだろうか。すると扉の鍵が解除、中身とご対面。それはデータチップの納められたケースだった。 

 

 ―なるほど、これが隠してた『お菓子』ってわけだな…よし、ああ、ヘリアンか?情報に感謝する。俺たちはもう用済みか?―

 

 『そうだが、というか…あの黒いヘルメットの人物は何だ?』

 

 ―さあね、もしかしたら追い越し車線の有無に関係なく絡んでくる自分勝手なハイウェイマンじゃねえのか?―

 

 おい、あんな強化スーツみたいなの着て襲って来るやつが、そんじょそこらのハイウェイマンなんかと同じなワケがないだろ?やつらならもっと軽装な筈だ。

 

 

 一方その頃。

 

 

 

 

 

 「ふふふ、この私と接近戦なんて良い度胸ねぇ?」

 

 表ではネゲヴたちがロープを解いて暴れる黒ヘルの相手をしていた。AR小隊とスコーピオンたちも応戦するが、現在彼女が黒ヘルを前に構える。皆バテているのは何故なんだ?格闘戦でも仕掛けてたのか?

 

 

 というかさ!何で銃を使わないんだよ!銃を!!

 

 

 いっくら格闘戦の方が距離的に有利だとか教えがあったからって、ナメプにも程があるだろ!?

 

 

 それとネゲヴ、さっきのお前の台詞は悪役が吐く台詞じゃないのか。服装は正義の魔法少女みたいなのに、それが台無しだ…!!

 

 

 

 にしても、その構えはクラブマガか?流石イスラエル製銃器と同名なだけある…

 

 無駄なく素早く動いて攻撃を加えるが防がれている。黒ヘルはパワーファイト志向か、撃たれても恐かねえって言いたげに堂々と詰め寄る。

 

 ―良いぞ、そのまま釘付けにしろ―

 

 

 『ゼェ…ゼェ…了解…』

 

 黒ヘルの中身はタフなのかヒョロイのかよく分からない。だからこそ脅威に感じていた。恐らく、人形の皆も…

 

 「あの子、ネゲヴだっけ?彼女息が上がってるぞ?」

 

 ―そうみたいだな。そうそう、街でネゲヴが出演してるヒロインショーは、特殊効果無しのリアルタイム残酷ファイトで、背伸びしたい男の子たちからは人気を博している。登場する時には、必ずネゲヴが好むコシロさんの音楽が流れるから、大きなお友だちにも人気だ―

 

 すると、端末に『爽やかな笑顔でクラブマガ使って敵を葬る、マジ狩るヒロインネゲヴちゃん』という電子社内報の表紙を呑気にも見せてくれた。所々不穏だなこのタイトル…

 

 (何が爽やかだよ!?これじゃ狂気そのものじゃねえか…!?)

 

 

 しかも見せられた映像からして、悪役の人を殺しに来てるじゃんこれ…。

 

 実際、肋骨を折られたりしたスーツアクターがいるのだとか…。

 

 尚、たまにグリフィンの警備兵がヘルプで相手役をやってきた時は、早く動くわ、負傷させようとも先ず負傷しないため、中々台本通りに行かず大変との事だった。

 

 

 負傷させる前提の台本とは一体…。

 

 

 

 さて、ネゲヴも黒ヘル相手にアクションの連続で息絶え絶えになりつつある中、ドライバーは俺にこうジェスチャーした。

 

 ―いいか、黒ヘルの背後を取るんだ―

 

 「はあ…!?あんな奴の背後をか!?」

 

 いきなりどうしたんだ、と思わずドライバーの方を見ながら俺は返した。

 

 ―お前なら出来る。オブザーバーから聞いたぞ?ゼロレンジが出きるんだってな?―

 

 あ、これれオブザーバーから引き継いだ際に知ったんだな?

 

 確かにあれはこの前やったけど、意表を突いただけだし、相手も黒ヘルみたいにこんなゴツくないし。それに俺あんまり身体柔らかくねえし…どうしても筋力任せになるんだよな…。

 

 でも、一応これは忘れない。

 

 俺は狩るもの…俺は狩るもの…

 

 

 肉食動物は緊張しない…よし。

 

 

 「やるか…!」

 

 

 

 ―その意気だ!肩回して解しておけよ?そそーっと回りこむんだ。確認だ、お前は背奴の後。俺は前。後ろの方がリスクは少ない。回り込んだら合図待て―

 

 

 ドライバーなりにリスクが少ない方を考えてくれてるのか。にしても、長引くと彼女たちもまた地獄の組手になって大変だ…

 

 

 

 

 そして、俺たちは討って出ることにした。また土壇場だが目にもの見せてやる。

 

 

 

………………………………………………

 

 その頃表では……

 

 

 『ドウシタ尖兵達ヨ、ソノ程度カ?』

 

 黒ヘルは余裕綽々。

 

 「尖兵ですって?はっ!言ってくれるじゃないの、このG…!…ゼェ…ゼェ…」

 

 『ソノ、"ゴキブリ"スラ倒セヌママ……』

 

 ―Gの意味言っちゃダメよキック!!―

 

 隙を見せた所をドライバーが勢いよくドロップキックを食らわせた。よろける黒ヘル。ドライバーは体勢を整え、俺は背後にそろりと回り込んだ。肩回そっと…

 

 ―奴は胴体の部分が柔らかい。そこを狙うんだ―

 

 

 …と、彼は俺に向けて咄嗟にジェスチャーしてきた。

 

 え、胴体が弱い?そうなの?

 

 

 なら話は早い。

 さっと回り込んで、ドライバーが合図を出したのと同時に生まれて始めてのウェイブパンチを繰り出した。

 こいつ人よりは硬い感じするぞ?太ってないが、なーんかブヨッとしてるとていうか…

 …でも一応、軍の基地帰ったら折れてないか診てもらおう…

 

 

 

 ドライバーは正面から食らわせている。あ、確かに柔らかい…でもヒトの身体よりは硬いぞ?

 

 直後、ドライバーから『離れろ』とジェスチャーを受けたので、言うとおりにして黒ヘルから離れた。すると、見た目で分かるような派手な破損はしていなかったが、黒ヘルはその場に崩れる。

 

 

 

 

 だが、爆発はしなかった。

 

 

 しかし、ドライバーは驚きの行動に出た。

 

 何と黒ヘルの襟首を掴み上げ、黒い車の助手席に押し込もうと、ドアの真ん前まで連れてきた。

 

 

 

 『グウッ…クッ……!?』

 

 

 

 

 

 ―暴れるな。悪い様にはしないさ…これ、こう開けるのか?おお、開いた開いた。誰か開いたドアを押さえてろ。―

 

 ドライバーはドアを開けてみせた。押さえさせるのは閉じ込められるのを回避するためか。

 

 すると、息を整え終えていた人形たちの中で一番近い位置にいたM4A1がすぐ立ち上がり、ドアが動かぬように押さえた。つか鍵開けっぱかよ黒ヘル…

 

 「どうされるおつもりですか…?」

 

 

 するとドライバーはこうジェスチャーした。

 

 

 ―なぁに、こいつとドライブしてくるだけさ―

 

 

 

 

 

 ………何だって?

 

 

 

 

 

 ドライバーはそのまま黒ヘルを助手席に放り込み、運転席に座ってドアを閉め走り出していった。データチップは俺が預かり、M4たちには待機を命じ、俺たちは帰りの分の体力のために一休みする。まぁ、彼女たちは格闘戦でヘロヘロだし…そして、壊された人形たちに哀悼の意を捧げ、彼の帰りを待つ…。

 

 

 そして、走り出していったその数分後、どうやら今度は鉄血マークの無人ドローンがやって来てるそうで、俺たち待機組は緊張と不安が走るも、直ぐにその無人ドローン反応がロストしてしまうという事が起こった。何かに当たったのか、故障か、墜落した模様。

 

 

 ヘリアントス氏は再び困惑に浸っていることだろう。うん、こちらもだ。

 

 

 そして最終的に黒ヘルとその愛車はドライバーの拷問…もとい、ドライブから戻ってきた。ドライバー本人も無事。

 

 一方、多分ドライバーの運転のせいだとは思うが、ヘロヘロになった黒ヘルはドライバーから漸く解放され、『貴様ァァ!オボエテロー!!』と叫んで車に乗って逃げていった。さっきまで謎の敵だったのに、一気に小物臭くなったな。

 

 

 人形たちは面倒そうなのが消えたことに安堵していた。いや面倒なら撃てよ。そして撃たせろよドライバー。なに?下手に発砲したらしたで面倒になる?

 

 

 …お前も結構闇が深い所あるよな?

 

 

 

 そして、俺たちは回収部隊も来ているそうなので、彼らに引き継いで帰路に着く事になった。スコーピオン、頼むから帰りにレースの続きやろうなんて言い出さないでくれよ?

 

 

 え?やるの!?M4また目がマジになってるよ!?

 

 

 待って…待 くぁwせdrftgyふじこlp

  

 

 To be continued.

 

 

 

 

 

 




復活してきてすぐに挟まれる(?)。狂気の黒ヘル、ハイドラ。

一日で変なやつに何度も絡まれるドライバー一行の明日はどっちだ

…といった回でした(オイ)



さて、展開的にはそろそろキューブ作戦の頃合いにしたかったのですが、実はドルフロのゲーム内では始めた時期的にキューブには参加したことがなく、その後のウサギ狩りからなのです…orz




キューブ作戦編とかは出来次第投下する予定です。



ドライバーさんたちがどんな動きを見せるのかお楽しみに。一応キューブ編は新車を投入予定です(R4並感)



イベント戦役編の他にもやりたい事やネタもありまして、それを一個一個消化しつつになると思います。



そしてなんですけど、確認しましたら現時点で6000UA越え、お気に入りが50件越え、しおりはちょうど20件もあったのでびっくり。本当に有難うございます。頭が上がりません…。


これからもごゆるりとお付き合いいただければな、と。


もしドライバーさん出したいと思ったスピード狂な方がいましたら、メッセージでお願いします。
ただ、この機能だけ使い慣れてないため、万一送ったつもりが遅れてなかった場合は……お許しを…m(_ _)m



ではまた次回をお楽しみに。




代理人「君の心にブーストファイア!」


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Vol.30 心臓が縮みあがるような瞬間を幾つも飲み込みながら、指揮官は成長していくもんだ。

前回からの続きです。


ホラー要素はありません←


ではどうぞ。



『指揮官、ここは私たちに任せて貴方は離脱を!』

 

『わかった…!頼んだぞ!』

 

鉄血の襲来。

 

指揮装置を壊され指揮統制が上手くいかず、倒れる人形。ここは非戦闘員たちを先に離脱させる。その後は人形たちも撤退させるはずだった。が、ハイエンドモデルのデストロイヤーの姿。確か火力が高い。こんなところ直ぐに壊滅に追い込んでしまうだろう。

 

 

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」

 

 

こんな状況では冗談なんて言ってられるほどの余裕は無いが、これは思わず口に出た。どうやら小さな車に乗って帰ってしまった…

 

 

 

恐らく最後になるかもしれないと思い、ここでしっかりと指示を出し、現存の人形たちを信じて拠点から脱出する。

 

途中で車が故障。どうやら弾幕の中を突っ切った際にオイルパンをやられたらしい。

 

 

 

そのまま徒歩で移動を余儀なくされた。歩きに歩く。せめて最寄りの町まで。

 

この辺りは最寄りとは言っても車がなければ…いや車でもかなりの距離がある。徒歩でなんて言ったら大変だ。

 

おまけに鉄血も出没する可能性があるし…体力もそうだが、やはり神経が張る分、メンタル面でも削られていく。

 

もっと冷静に考え、バックアッププランを事前に練ったり、その上で指揮を促せば良かったことを後悔しつつ、力尽きて倒れ、意識が薄れていく。

 

 

………………………………………………

 

 

グリフィン経営の病院。

 

VIP用の病棟の一室にて…

 

 

―よう!―

 

その威勢の良いジェスチャーを送る、赤いヘルメットのあいつがそこにいた。

 

 

しかも病室の窓から。

 

 

これは何かの幻か?俺には赤いヘルメットの不審者がロープ降下してきて侵入しようとしているようにしか見えないのだが…あれ?グリフィンの身分証じゃないか。

 

 

 

となると…もしかしなくてもドライバー指揮官だった。

 

 

 

―済まないが、部屋の中に入れてくれるか?―

 

 

ええ……(困惑)

 

 

普通に病室入れば良いだろそこ…

 

 

まぁ良いや。入れてあげよう…

 

 

―いやあ悪いね、病室のある階を間違えてしまってね…―

 

 

それより、なんで特殊部隊御用達のラペリングハーネスなんか持ってんの?…って思わず突っ込みたくなったが、こういうのもサプライズも悪くない、いや、さして友人も少ない分、むしろ嬉しい感じもする。

 

 

指揮官同士の関わりなんて余程じゃない限り薄いし…せめて最寄りってもかなり離れてるし接点もない。ドライバー指揮官とは本部時代から兵站にまつわる件で話をしていた事もあり顔見知り。というか同期だ。

 

 

「良いんだ。連絡着いた部下の人形たち以外は誰も来なかったし…当たり前か…はぁ…面目ない…」

 

 

俺は端から見たら基地を投げ出して逃げてきた腰抜けにしか見えないだろう。人形たちは人形たちなりに負い目があるのだろうか。あの時はプロトコルとは言えど、敵の部隊を押さえたり助けられた…。

 

 

―そうか?お前んとこの拠点の監視カメラの映像からだが、あの状況、自分の身を守るのは懸命な判断だったと思うがな。寧ろ、死んだら仲間の思いを無にすることになるし、これはお前の手には戻らなかったと思うぞ?ほら、頼まれたやつだ。これでよかったか?―

 

 

ドライバー指揮官は俺にデータチップの入った入れ物を渡してきた。約束していた物だ。ヘリアンを介して調査に向かっていったドライバー指揮官たちに伝えてほしいとお願いしたんだ。彼と、彼の元で一緒に任務をしている軍の人に、彼の率いる部隊…ああ、大きく巻き込んでるな俺は…

 

 

「そうこれだ…ありがとうドライバー指揮官…!急で悪かった…」

 

 

手渡されて思ったが、確かにそうだ。俺が死んでも、人形たちにはこれの所在は教えてない。いや、直接教えるのは怖かった。

 

 

―良いってことよ。あーそれで…お前の体の具合は?―

 

 

「大したことは無い。かすり傷だよ。でも一応、検査入院で、今週には終わるらしい」

 

 

ドライバー指揮官はそりゃあ良かったな…と安堵したようにジェスチャーを返してくれた。

 

 

―で、その中身についてだが…―

 

 

やはり訊ねてきたか…そうだよな。タイミング的にはどうだろうと、恩人だ。こっちも提出する報告書をまとめる前だし、知っておいてもらった方が今後役立つかもしれない。

 

 

私物として持ってきていた机のノートパソコンに、そのデータチップを挿入し、表示させる。

 

 

「これを見てくれるか?…そのお礼と言ってはなんだけど」

 

 

―それは有り難いな。だが、良いのか?―

 

 

「良いんだ、まだ不確定なことが多いし…」

 

 

そういいつつ、ノートパソコンを操作し、表示させた。

 

 

「たまたま偵察隊が発見してね…それをビデオに記録したものだ…こっちはドローンのカメラが偶然にも捉えた映像で…そしてこれらは…ある人形の不審な行動だ。他にも祈りを捧げている人形も。」

 

 

映像にはIOP製の自律人形がなにやら端末に接続したまま微動だにしていない様子が映っている。

 

 

「人形たちのフリーズなんて先ずあまりに聞いたことがない事象だ。あの大容量でその分の処理もできるコアやメモリが備わっている筈なのに」

 

 

―人形の構造上、プログラムや見聞きした情報から学び、人間の動きを覚えて真似る奴がいてもおかしくない。亡者へ祈りを捧げるやつもいる位だ。…それで?―

 

 

「今見せた人形たちの様子は、最近騒がれてる指揮官不審死事件の起こる直前に確認されたものだよ…この前被害者となった指揮官の基地に職務で向かった際、たまたま見掛けた。でも何時も見る戦術人形のものとは、あまりに妙に感じてね…」

 

 

―そうだったのか…しかし、なんで給湯室なんかに金庫を?いくら硬かろうと、危うくデストロイヤーに丸ごと吹っ飛ばされる所だったぞ?瓦礫の下に押し潰されて行方不明になっててもおかしくなかった―

 

 

「そこしかなかったんだよ…俺も悪手だったと思ってる…だが、狭い分、コーヒーや茶葉を取り出している様にしか見えないだろうって思って…」

 

 

―それでこの日までよく持ったよな…―

 

「まぁ…ね。そうだ、拠点の人形たちを見掛けなかったか?撤退させた子達を再編して、調査に向かわせていたんだが…」

 

 

ドライバー指揮官は身に付けたヘルメットのバイザーに映像を出力して見せてくれた。

 

 

「そんな…」

 

 

無惨なショックのあまり目を覆いたくなった。この前見舞いに来た部下の人形もそこに混ざっている。

 

 

―残念だが……見たところ、コアが酷く損傷している。壊された人形たちはヘリアンの方で回収したというが、アップロードした後に記録されたデータがあった場合、それについては…―

 

「ああ…分かってるさ…」

 

―落ち込むよな。こんな目に遭えば。だがな、自分の身を守ることも、指揮官において時に重要な要素だ。お前が仮に死んでもしたら、コレはお前の手には戻らず、もしかしたらなにも知らない連中の勝手で潰されていたかもしれない。知るべき事実や手掛かりも。お前の部下の思いも…―

 

 

「そう…だな…」

 

 

嫌に煽ってくるな…。

 

でも、確かに…襲ってくる鉄血たちにより証拠が消えるところだった。それが例え鉄血が狙っていたとしてもだ。

 

しかし、これは証拠になるのだろうか。生憎人間というのは全ての情報を知ることなど出来ない。これは断片でしかない。然るべき所なら、もっと分析したりしてるだろうけど。

 

おまけに、部下の人形たちは恐らく事前に記録したり残ったメンタルデータを元に、新たなボディに入れ換えになるのだと容易に想像出来る…となると、何があったのかを説明する必要があるかもしれない…。

 

 

「お前なら…何があったか人形たちに言えるか?」

 

―当然だ。使ってる側の人間がきちんと教えてやらなくてどうするのさ。言わない方こそ無責任にも程がある―

 

 

一般的な指揮官の風貌と比較して、ふざけた外見に似つかわしくない真面目なジェスチャーをしてきたドライバー。やっぱりお前も指揮官なんだなって思う…。

 

 

 

 

 

 

―それで?病院からヘリアンにどう送るんだ?―

 

 

 

「ああ、それならヘリアンからメッセンジャーが…そろそろ来るはず…」

 

 

 

―そうか…じゃあ俺はここいらでおいとまするよ…じゃあまた…―

 

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはぁ♪お加減どうですかぁ~?」

 

 

病室に丈の短いナース服に身を包んだUMP45が入ってきた。

 

 

ドライバーは見てはならないものを見てしまったかのように驚く。

 

 

すると、45はそっと拠点指揮官に近寄る。

 

 

「データチップ、ヘリアンさんから言われてきました…お預かりいたします…」

 

「あ、はい…」

 

すると、拠点指揮官はデータチップをノパソから抜いてカバーにしまい、それを渡す。

 

 

それを受けとり、45はポケットに仕舞い込む。

 

 

「あらあら、窓が開いてるわ。閉めますね~?」

 

 

と45は目を窓に向けるが、そこにドライバーの姿は無かった。ラペリングのロープも片付いていた。

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

病院の駐車場。

 

 

一号車の鍵を開けてラペリングのロープとハーネスを外して運転席に座る。ドアを閉め、今度は六点式ハーネスを装着するドライバー。

 

 

 

 

 

 

―さて、あの指揮官の処遇も気になるが、基地に戻るか…―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーヘリアンさんとこまで乗せてってよ~しきか~ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声に、思わず六点式ハーネスを着ける手が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐るバックミラーを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な ん と 後 部 座 席 に ア イ ツ (U M P 4 5)が 座 っ て い た 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

t o b e c o n t i n u e d .

 

 

 

 

 

 

 




……ってなわけで今回はここまで。



今回は多機能フォームを使ってみました。如何でしたでしょうか…?



45姉すこすこ。



さてさて、ゲームではヴァルハラコラボが始まりましたね。今回も皆様共々生き残りましょう…(˘ω˘;)



それでは、次回もお楽しみに。










UMP45「君の心に、ブーストファイア!」


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