[裏技]仮面ライダーゲンムVS魔法少女おりこ☆マギカ ロンリー・プレイヤー (柳川 秀)
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ファースト『私のworldを守るため VS 全ては究極のaidのため』
MOTIVE 00-00 (once:upon-a time)


灰色の空の下、崩れいく街の中。

たった数人で強大な存在に挑む少女たちを、私はただ黙って見ている。 

 

どれだけ彼女たちが多くの武器と多くの策を以てしても、倒すことはできないだろう。

古から幾度も現れ、人々には自然災害として認識されている程の存在。

数人で倒すことができるなら既にそうした者たちがいるハズだ。

 

過去には彼女たちより秀でた者もたくさんいたのだろう。

けどその誰もがアレには敵わなかったのだろう。

足掻き、挫け、絶望し、悲劇のための舞台装置に組み込まれていった。

彼女たちもまたここで敗れて呑まれる運命だ。

 

 

 

この能力(チカラ)によれば、普通の中学生【鹿目まどか】。

彼女には魔女にして世界の破壊者【Kriemhild-Gretchen】となる未来が待っていた。

 

それを未来から阻止に来た【暁美ほむら】。

だが鹿目まどかはどうしても魔法少女になることを選び、水晶(ソウルジェム)に穢れを貯める。

 

その運命もようやく転び翻る時が来た。

滅びの運命へ逆らい叛く時、救済がやって来たのだ

 

何故鹿目まどかは魔女にならずに、世界が救われるのか。

何故暁美ほむらの旅が終わるのか。

何故それを私が知っているのか!

その答えはただ一つ……。

私が――

 

おっと。先まで言い過ぎました。

ここから先はまだ未来の物語(ストーリー)でしたね。

 

 

 

 

 


 

生きる意味を知りたかった。

 

 

私は決して許されない罪を犯した、気がする。

未来か過去か……それとも現在進行形かはわからない。

 

本当は罪を犯したという感覚さえない。

それを過ちだとは微塵も感じていないから。

許しを請う気もないから。

 

私はただ純粋な願いに従って、それが人類の救済になると信じて行動していたに過ぎない。

そのために多少の犠牲は止むを得ないと考えたのは確かだ。

そのせいで大勢の人々を巻き込み傷付けたのも確かだ。

 

時には私自身も深く傷付いた。

幻の如き夢を見る程に傷が増えていくのは、何故なのだろう?

より良い未来を目指しているだけなのに、何故なのだろう?

気付けば私の周りには誰もいなくなっていた。

 

いいや、いるじゃないか……。

たったひとり、祈りを捧げ続ける者が!

※※※※※!!

 

 

 

この世界のありとあらゆるものにはストーリーがある。

1人の人生にも、1つのゲームにも。

生まれた意味、込められたメッセージ……それを探る過程こそストーリーだ。

だから、今私もストーリーを始めよう。

 

 

 

愚かで脆弱な人間には絶対に届かない運命というものがある。

しかし、その運命を変えるだけの力が私にあるのだから……!

 

 

 

滅び急ぐ世界の理を破壊するのは他でもない。

この私だ!

 



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バトル1『Whiteな私 VS Blackな私』
BATTLE 01-01 (side:magi-M.O.)


未来を望み、未来を見つめ、何を知る?


父である美国久臣(みくにひさおみ)は、汚職疑惑を警察に追及される中、それに耐えられず自殺した。

 

元々弁護士だった父は、()()()()()()()()()()に市議会議員になった。

周囲の人々も父を信頼していたし、母も応援していた。

私は――少し恐かった。

 

美国家は政治家の家系だ。

祖父は財務省の大臣で党首も務めたことのある大人物。

父の兄姉たちもまた国政を支える議員になった。

 

彼らの目が嫌いだった。

傲慢と冷徹を孕んだ目が、幼い私を見下ろしてくることが嫌いだった。

父が彼らと同じになるのが恐かった。

優しい父が殺されてしまうと感じた。

 

父が国会議員の席を狙うようになったのは、母が亡くなってからだ。

その頃にはもう、私は父を支えると決意していた。

なのに父は私を置いていってしまった。

 

 

 

美国織莉子(みくにおりこ)も落ちぶれたものよねw」

「ちょっと前までお嬢様扱いだったのにww」

「だって、犯罪者の娘よ~?w」

()()()の恥だわww」

「よく平気な顔で学校に来れるわよねぇwww」

 

白羽女学院に登校すれば、最近は毎日のようにそう陰口を言われる。

いや。私にもわざと聞こえるように呟かれるそれは、もはや陰に隠れているとも言えない。

でも私は特に気にしていないし、わざわざ反応を示す気もなかった。

そんなものに付き合うのに気力を割くのも馬鹿馬鹿しい。

 

「私だったら恥ずかしくて生きてられないわ~www」

「じゃあ死になさいよ」

 

けれど、私以外でそのことを怒る人がいた。

 

「陰口叩いて笑ってるなんて、良家のお嬢様も知れたものね!」

 

浅古小巻(あさここまき)、私と同じ中学3年生。

 

「なによ偉そうに……」「()()()のクセに……」

「私より優秀になってから文句言え!」

「小巻ちゃん、どうどう」

「すみませんねー。すーぐ怒るもんで」

 

彼女は今にも飛び掛かりそうな形相をしていて、両脇から長月美幸(ながつきみゆき)行方晶(なめかたあきら)に抑えられている。

その間にさっきまでの生徒たちはそそくさと去って行った。

 

「なぁーにが良家組・成金組よ! 勝手にカースト作ってんじゃないわ!

 この間までヘコヘコしてたクセに! 風見鶏共めっ!!」

「良家組の子たち、うちらのこと見下してるもんねー」

「気にし過ぎない方がいいよ……」

「美国も美国よ! すました顔して、なんで言い返さないのよ!?」

 

私が同じように立ち去ろうとしていたら、彼女は興奮冷めやらぬまま叫び止めてくる。

 

「私は、小巻さんが先頭に立ってやっていることだと思っていたけれど?」

「私が良家組なんかと慣れ合う訳ないでしょ! 私自身がアンタに喧嘩売ってんの!

 それに、アンタなんで私のこと下の名前で呼ぶのよ!?」

「? だって、貴女入学式の後の自己紹介で言ってだでしょう?

 小巻って呼んでくださいって」

 

小巻さんの眉間の皴がなくなって、目が丸くなって、体が固まった。

他の2人も驚いているようで、彼女の動きを押さえる力も弱くなっている。

 

「アンタ……冷淡で人に興味なさそうなのに変なとこ律儀な奴よね」

「貴女は、不格好でお節介だけど真っ直ぐな人ね」

 

それは私の……嘘偽りのない本心からの言葉。

 

「とっ、とにかく! とっとと前のアンタに戻りなさいよ!

 サンドバッグ叩きたい訳じゃないんだから!」

「――ねぇ、小巻さん。

 もし貴女の成すべきことが()()()()()()()()()()()()()()()()であったら?

 それでも、その事実と向き合って、貴女は前に進めるかしら?」

「っ!?」

「……ごめんなさい。忘れてちょうだい」

 

その時何故小巻さんにその話をしてしまったのか、今でもよくわからない。

 

 

 

父が自殺した後、私は周囲が自分を何として見ていたのか気付いた。

美国久臣という()()()()()。それ以上の価値も以下の価値もない。

 

『君には才能がある』

 

真偽など関係ない。

汚職の嫌疑が掛かった時点で父の周囲からは人が離れ、その付属品でしかなかった私に手を差し伸べてくれる人は当然いなかった。

 

『君が魔女と戦う使命を受け入れ、未来を切り開いたいと言うのなら――』

 

美国織莉子は個人としての存在価値を肯定されていなかった。

 

 

 

 

 

『僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ』

 

 

 

 

 

見たこともない謎の白い生物、キュゥべえ。

この世界に呪いと不幸を撒く魔女と戦う代わりに、何でも願い事をひとつ叶えてくれる契約。

 

 

 

「私は、私が生きる意味を知りたい」

 

 

 

……たしかに願い事は叶えられた。

私の行く末は予知能力によって示された。

でもそれは絶望の未来

 

魔法少女はその魂が体と切り離され、水晶(ソウルジェム)に形を変えられる。

まるでメモリーカードに()()()()()()()()()()()()()かのように。

そしてそこに魔法の使用や負の感情で穢れが貯まると、やがて魔法少女は魔女になる。

キュゥべえは、【インキュベーター】はその際発生するエネルギーを回収している外宇宙生命体。

 

私が見た絶望はそんなことではない。

【ワルプルギスの夜】と呼ばれる、強大な魔女の襲来でもない。

そのさらに先にいる存在だ。

 

ワルプルギスの夜さえ凌ぐ力を持つ魔女。

ピンク色の魔法少女が変身した、【世界の破壊者】の誕生。

 

誰も敵わないと一目で理解できた。

世界が終わる瞬間を、私はこの目で見てきた。

 

父が守ろうとしていたこの見滝原市が滅ぶ未来。

だが、回避する方法はある。

あの魔女が……()()()()()()()()()()()()()()

 

たったひとりの少女とそれ以外の全て。

生命に重さの優劣が存在するのかなど知ったことではない。

これは私に示された私が成すべきこと……私が生きる意味だ。

 

そうして迷いは捨てた、ハズなのに――。

まだ私の耳には覚悟を揺さぶるような幻聴が届いている。

 

 

 

「それが本当に正しいのか?」

 

 

 



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BATTLE 01-02 (side:game-D.C.)

父である檀正宗(だんまさむね)は、自社製ゲームのバグによる人間の大量失踪事件……ゼロデイの責任を追及され、服役し、幻夢コーポレーションCEOを辞任した。

 

元々幻夢コーポレーションの初代社長だった父は、()()()()()()()()()()()()()()()()()に手腕を振るっていた。

周囲の人々も父を信頼していたし、母も応援していた。

私は――利用されていた。

 

 

「彼の才能の芽を潰すことは何よりも罪深いことだ」

 

父の本性は究極の利益優先主義者だ。

あらゆる他の存在は商品として見なされる。

父にとって、息子である私すらそれは例外ではなかった。

 

「商品価値が下がってしまうからなァ……」

 

彼の目が嫌いだった。

傲慢と冷徹を孕んだ目が、私を見てくることが嫌いだった。

飼い馴らされ続けることが恐ろしかった。

私の才能が殺されてしまうと感じた。

 

「あなたは私の誇り」

 

彼と決別したのは、母が亡くなってからだ。

その頃にはもう、私は幻夢コーポレーションでゲームクリエイターとして働いていた。

そして計画を着々と進めていた。

 

「この世に生まれてくれた奇跡なのよ」

 

母である檀櫻子(だんさくらこ)の遺体は存在しない。()()()()()()()

翌年のゼロデイの原因と同じバグスターウイルスによって、母はゲーム病になり肉体が消滅した。

その感染を起こしたのは、他でもないこの私だ。

 

 

医療機器メーカーの開発部における2000年問題の仮想シミュレーション。

その中で意図せず未知のコンピューターウイルスを生み出してしまった宝生清永(ほうじょうきよなが)

ネットを漂流していたそのウイルスを檀正宗に発見され、利用され続けた男。

バグスターウイルスとは、人体に感染するよう進化したそのウイルスだ。

 

「このままではバグスターウイルスのパンデミックにより人類が危機に陥る可能性があります」

 

感染した人間は、ストレスによって悪化するゲーム病と呼ばれる感染症になる。

最終的に感染者の肉体は消滅し、バグスターは宿主を必要としない完全体として存在し続けることができる。

 

「何故私の息子にバグスターウイルスを感染させた!?」

「あれは息子が勝手にやったことでして……そういう行動に出るとはわかっていましたがね」

 

世界で初めてバグスターウイルスに感染したのは、当時8才の宝生永夢(ほうじょうえむ)だった。

それも私の手によることだが……皮肉なことに彼が宝生清永の息子だったのは偶然である。

いや、運命とも言うべきか。

 

「永夢、悪く思うな」

 

宝生永夢が感染してから10年後。ゼロデイの前年。

私は宝生清永の協力で眠っていた彼を拉致し、ゲノム研究者の財前美智彦(ざいぜんみちひこ)らにバグスターウイルス摘出手術を行わせた。

 

「誰だお前? なんで俺はここに?」

 

その結果世界で初めてバグスターとして誕生したパラドと共に、私はウイルスを進化させる計画を始めた。

母にウイルスを感染させ新たなバグスターであるポッピーピポパポを生み出したのは、その後のことだ。

 

 

ゼロデイとはバグスターウイルスを進化させるためのものだった。

 

10個のプロトガシャットから仕込んであったバグスターウイルスをテストプレイヤーに感染させる。

その責任を父に被せ、私が幻夢コーポレーションCEOとなる。

対策のためを装い、母の記憶(セーブデータ)をロックしたポッピーピポパポを衛生省に派遣する。

聖都大学附属病院に設置された電脳救命センター(CR)のバックアップを得て、バグスターと戦える装備と謳い私は前代未聞のゲームを作る。

全てが計画通りだった。

 

≪GAME OVER≫

 

しかし、その後紆余曲折を経て、私はゲーム病患者と同じく消滅した。

 

プロトマイティアクションXガシャットオリジン。

私が一番最初に開発したα版のガシャット。

その中にゲームオーバーにされた私のデータは保存されていた、()()()()()

 

 

 

産油国の首都にあるような近未来的で特徴的な建物の並ぶ場所。

聖都より発展を遂げたユビキタス社会である都市。

見滝原市に今私は存在している。

 

何故かは私にも理解できていない。

気付けばここにいたのだから。

 

それでも、私が存在する意味ならハッキリとわかる。

どんな世界であろうとも、どんな時代であろうとも。

檀黎斗(だんくろと)が執る行動はただ一つ……。

 

 

「レッツ・ゲームゥ!」

 

 



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BATTLE 01-03 (side:magi-M.O.)

――魔法少女が魔女に心の隙を付け込まれ、魔女結界に呑まれるなんてとんだ失態だった。

 

正直、私は戦闘自体はあまり得意とは言えない。

予知の魔法は自制が難しく、必要としない時であっても私に未来を見せてくる。

そのせいで常にソウルジェムの穢れに気を遣わねばならず、戦闘にはなるべく魔力を割きたくないのだ。

予知対象を絞り戦うこともできるけど、それもまた魔力の消費が激しい。

 

「バカでしょ!? アンタさてはバカでしょ!!

 私がたまたま近くにいなかったらどうなってたと思ってんの!? このバカ!!」

 

そして今、私は変身を少し躊躇っている内に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、何故かテラス席で説教されている。

私の方はまだ知られていないけれど。

 

「大体そんな景気悪い顔してるから絡まれるのよ! バカっ!」

 

なんだか一生分のバカを言われている気がする……。

 

「あいつらは魔女って言って、人間に災いを振り撒く理不尽で迷惑な奴ら!

 美国、アンタ死ぬとこだったのよ!? 私がまほ、しょ……魔法、しょ……」

『魔法少女だよ。君はいつもそこで詰まるね。何故だい?』

「うるさい! 中3にもなって魔法少女を名乗るなんて、恥ずかしいのよっ!」

 

小巻さんの近くにはキュゥべえが座っている。

その目がこちらを向いても、私は彼が見えていないように装った。

 

「小巻さん、誰と話してるの? それに……魔法少女?」

「べ、別に好きでやってる訳じゃないわよ!? 願い事叶えてもらった代わりに仕方なくやってんの!!」

「願い事? 何を叶えたの?」

「それは――別に大したことじゃないわよっ!」

 

さり気なく聞き出せるかと思ったけど、意外に手強い。

 

「あ」

「?」

「アンタ、魔法少女になろうって気じゃないでしょうね! 甘く見てんじゃないわよ!?

 魔女と戦うのは命懸けだし! 魔法少女でも喧嘩売ってくる奴もいるらしいし!

 願い事に釣られたら痛い目に――」

『小巻、少し落ち着きなよ』

 

キュゥべえが、小巻さんを見る私の視線を遮るように机の上へ移動した。

私はそれでも焦点を変えず彼を無視し続ける。

 

「……あーそっか。なれっこないかー! ()()()()()()()()()()()()()()()()

「こいつ?」

「なんでもないわよ。じゃ、私行くわ。アンタと違って忙しいし。

 ……クラスの連中には内緒にしなさいよ!」

「ええ、もちろん」

 

 

 

私は予知に魔力を取られ過ぎていて、自分からはあまり積極的に動くことができない。

世界を救う前に私自身が魔女化してしまうなんて許されることではない。

だから【協力者】は当然必要になる。

 

でも……小巻さんはきっと協力してくれない。

真っ直ぐでお節介だけど不格好な彼女は、もしかしたら魔法少女の真実を知っただけで壊れてしまうかもしれない。

私の考えに賛同してくれそうにもない。

 

必要なのは……完全な賛同とまではいかなくても、少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()

魔法少女の真実を告げても壊れない心の強さを持っている、あるいは()()()()()()()()()()

 

そんな都合の良い魔法少女がすぐに見つかる訳――あるとは、流石に予知できなかった。

 

 

 

「キミ、白くてヒラヒラだねぇ……蝶々みたい。

 月夜に蝶狩りなんて、ふふふっ! 楽しいね素敵だね! ――遊ぼ?」

 

決戦の備えのためだけでなく、予知で消耗した魔力を回復するためにもグリーフシードは必要になる。

だから魔女を見つければ当然戦うし、なんとか最小限の消費だけで倒せるように努力する。

 

今日はギリギリになってしまった……というのに。

右目に眼帯をしたその黒い魔法少女が、結界を壊した直後の私に襲い掛かってきた。

 

「なんで私がキミを襲うのかって? 私の願い事さ。

 なんでそれを願ったのか覚えてないんだよ。

 キュゥべえは願いの副作用がどーのこーの言ってたけど……。

 結構辛いんだよね、目的がわからないってさ。

 だから――うん、ただの八つ当たりだよ

 

小巻さんの言っていた通り、グリーフシードの横取りを狙って攻撃を仕掛けてくる魔法少女もたしかにいる。

でも大抵は本気で相手を殺そうとするまではいかない。どうしても躊躇いが生まれる。

八つ当たりと言っているし、襲ってくる理由は違うけどそれは彼女も同じ。

しかし私は手を抜かず、彼女の身体の破壊を目指した。

 

「特定の人物の予知を引き出すのは魔力を膨大に使うけれど、賭けに勝ったようね。

 貴女の位置と到着するタイミングは()()()()()()の」

 

自在に伸びる鉤爪と素早い動き。でも攻撃は視覚に頼っていた彼女。

それを狭くて足場の悪い食庫に誘導し、私は壁の向こう……死角からの一斉攻撃で仕留めてみせた。

 

「くそっ……予知魔法だって!? こんなところで死ぬなんて――」

「死ぬ? 何故? 私は貴女に()()()()()()()()()()()

「へっ? 人のお腹グチャグチャにしといて、何言ってんの?」

「人、ね……。死ぬなんて思わない方がいいわ。本当に死んでしまうわよ?

 魔法少女は肉の檻から切り離された存在。人ではないし、魂が輝けば朽ちることはない」

「何を……キミ、なんなのさ!?」

「私は美国織莉子。貴女はきっと役に立つ。私の駒になってくれるのなら――」

 

 

「貴女に魔法少女の秘密を教えてあげる」

 

 

See you Next round

 


 

 

既に滅びいく運命(さだめ)にあるとすれば。

まだその真実に気付けていないとすれば、君は知りたいと思うか?

白い魔法少女【美国織莉子】の瞳は、誰も知らない真実を見ている。

黒い魔法少女【呉キリカ】の心は、白昼夢のように曖昧になっている。

青い魔法少女【浅古小巻】は、まだ何も知らない。

さて、次のバトルは――

 

 

崩壊のfate VS 復活のgame

 

 

 



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バトル2『崩壊のfate VS 復活のgame』
BATTLE 02-01 (side:magi-K.K.)


友を傷付け、友を助け、何を知る?


「なんなんだよもう! モグモグ。ホントアイツ、なんなんなんだよっ!!」

 

こういう時はヤケ食いに限る。モグモグ。

このイチゴパフェおいしい。モグモグ。

あとは、ひたすらゲームしてストレス発散するとかね。

 

「貴女は今まで通り魔法少女にちょっかいを出して。

 それとグリーフシードを大量に調達してちょうだい。

 拠点としてこの私の家を使うことは構わないけど、あの部屋には入らないで」

 

では頑張ってね、キリッ。

貴族か! あ、お嬢様なんだっけ。家も豪邸だったし、通ってるのもお嬢様学校だし。

予知を司る白い魔法少女……美国織莉子は、きっと私とは生きてる世界がそもそも違う。

 

「アイツ、イマイチ信じらんないんだよなー」

 

たしかに私はお腹を思いっ切りグチャグチャにされても、()()()()()()()()()()()()()死ななかったけどさ。

どのくらいまで行くと死んじゃうんだろ? 中身が出るとアウトだろうけど。

ソウルジェムが濁り切ると魔女になるって……中に魔女の素でも入ってんの?

疑問点が多過ぎ。オマケに、人のことコキ使うクセに自分の目的は教えてくんないし。

 

「ん~~~? もしかして私、騙されてる?」

 

ていうか、あんまり目立ち過ぎても魔法少女たちに警戒されたらダメかな?

噂されたりバレたりしないように動かないと……めんどくさっ。

 

あー、なんか【キリサキさん】って怪談思い出した。

夜一人で人気のない場所を歩いてると、突然鈴の音が聞こえてきて。

どこからともなくコートを着た女が現れて、名前を聞いてくる。

で、それに答えるとズタズタに切り殺されちゃう。

 

うーん……私は絶対に相手の名前聞かないようにしよう!

キリサキさんになんかなってやんないぞー。

 

まっ、やることはいつもと変わんないんだし。

グリーフシードの取り分が少し減るけど、逆らうよりはマシかな。

 

それに、不思議な話……織莉子とは初めて会った気がしないんだ。

夢の中で逢ったような――なーんてメルヘンな感じじゃなくて。

頭の中にノイズが掛かってるみたいに、何かが邪魔して思い出せない感じ。

これ自体もすごくイライラする。

 

 

 

だからとりあえず見付けた青い魔法少女を襲ってみた。

ってところまではよかったんだけど――

 

「鈍くさいなぁ。こんな鈍い魔法少女、初めて見たよ」

 

困ったな。斧の先に付いてる盾が巨大化して、弾かれて攻撃が届かない。

 

「そんなペラッペラの刃じゃ私には勝てないわよ!」

 

煽り返されるし。

ちょっと脅かしてグリーフシード貰うつもりだけだったけど、本気でいかないとマズいかな……。

いくら攻撃しても判定のデカイ盾で防がれるし、一発もらったら即アウトっぽい攻撃を出してくる。

斧といえば近接戦! ……って訳でもなく、地面を崩して飛ばすなんて技まである。

避けてすぐ近付いても、あー、また盾だ。

 

「無駄よ! この黒カマキリ!」

「クソ……! あとそのあだ名やめてよ! ダサい!」

「ふん、お似合いよ」

 

それでも、パワー系で硬い敵はガードを解いた瞬間を一気に狙うのが鉄則さ!

 

「終わりにするよ!」

 

チャンス! 盾がどっか行った!

……盾はどこへ行った?

 

「しまっ――」

 

時既に遅し。私はゴッと生えたドームみたいなのに包まれてしまう。

盾が変化したトラップにまんまと引っ掛かった。

 

「クソっ、閉じ込められた!?」

「動きは速くても頭は鈍いわね。

 アンタのペラい爪じゃこれは壊せない。(結界)ごと粉々にしてやるわ!」

 

宙に高く跳び上がり、隙の多い大技で突進してくる魔法少女。

キミさ……ちょっと私のことナメ過ぎだよ。

 

「キャァァァァァ!?」

 

一点に集中させれば私の爪は繋がって遠くまで伸びる。

油断した相手に喰らわせるには充分な速さで、結界を一点だけ突き破るにも足りる威力だ。

 

「卑怯な……」

「お互い様でしょ」

 

肩に怪我を負った青い魔法少女は地面に落ちて、崩れる結界の中から踏み出す私を睨んでいた。

 

「キミ、厄介だね。動けないようにしとくよ」

 

もう一度立ち上がられたら、次もまた対処できる気がしない。

少なくとも追って来れないくらいにはしとかないと。

だから私はまた爪を伸ばして、脚を傷付ける程度のつもりで攻撃した、のに――

 

「小巻!!」

「晶?」

 

ドスッ、グチャ、バシャ。

 

「えっ、え? え……えっ?」

 

急に飛び出してきた女の子の背中を刺してしまった。

動かない、動かない、悲鳴すらあげずにその肉体が地面に落ちる。

 

「ほ、ホント? し……死んじゃったの……?」

 

彼女を優しく抱きかかえる魔法少女は何も応えない。

ただ斧を手に取って、顔を上げて――。

 

「あ、ああ……」

 

本当の本当に誰かから嫌われたことなんてある?

大抵はさ、顔見るだけで腹が立つくらいになっても、そこで終わりかちょっと突っかかるだけ。

もしくはあの子(えりか)みたいに、壊れた関係のまま何も言わずに去っていくだけ。

 

でも……私の前からいなくなれ、じゃなくて、今ここでお前を消してやる

そんな目を誰かに向けられたことなんて、ある?

 

「よくも晶をォォォッ!!」

「アアっ!?」

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

殺した。

殺される。

こわい。

いやだ。

 

「ヤアアッ!!?」

 

顔にピッと何かが飛び散って。

叫び声が聞こえなくなって。

目を開けると、思わず突き出した爪の先に、腸が付いていた。



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BATTLE 02-02 (side:magi-M.O.)

キリカの様子が変だ。

 

昨日の夜、急に血相を変えて訪れてきた。

体の震えを止めることができなくて、ずっと毛布に包まって部屋にいる。

何があったのか話そうとしないけど、無理に聞き出そうとしても悪化させてしまうだろう。

 

食事の用意をしに行こうとしただけで

 

「ホントに? ホントにどこにも行かない? 私をひとりにしない!?」

 

そう縋りついて何回も確認してくるし、食事を持って戻れば

 

「あっ、あそこに人が! 人が立ってる!!」

 

誰もいない場所を指差して飛びついてくる。

この様子じゃ今日は学校に行けそうもない。もうお昼過ぎだし。

あまり普段と違う行動をして目立ちたくはないのだけれど……。

特に、小巻さんに怪しまれると厄介だもの。

 

でも……キリカが怯えている理由は、洗い物中にやってきたキュゥべえの言葉でわかった。

 

『魔法少女が殺されたんだ。

 ただ、僕が駆け付けた時には、魔女にやられたにしてはまだ意識も身体も残っていた。

 犯人の手掛かりはその子が遺した()()だけ。君も気を付けてほしい』

「……ええ。わかったわ」

 

ああ、なるほど。キリカは人を殺めたのか。

 

「容易く人に()()とか()()とか言ってはいけない。

 命が……とても重いものが軽く見えてしまうから」

 

いつか母にそう言われたことを思い出す。

キリカは死を軽く口に出す子だったけれど、今まで本当に殺したことはなかった。

 

酷な話……たった一人殺した程度で心が潰れてしまうなら私の駒には使えない。

私の世界を守るために、少なくとも()()は必ず殺さねばならないのだから。

 

 

「それが本当に正しいのか?」

 

 

ドンっ。

キッチンから部屋に戻る途中、何かが床に崩れるような音がした。

玄関前の廊下に行ってみると、尻餅をついたキリカと落ちたプリントを見付ける。

 

「ヒッ」

「どうしたの? 私が離れている間に、誰か来ていたの……?」

 

チラッと窓から外を見てみると、知っている子が高級車に乗り込む姿があった。

 

「長月さん? わざわざプリントを持ってきてくれたのかしら」

「おっ、おり、織莉子ォ……!」

「キリカ、また幻でも――」

 

拾ったプリントの中、その名前はすぐ私の目に留まった。

 

 

 


 

保護者の皆様へ

白羽女学院学長

本学生徒が行方不明となっている事件及び休校について

 

 昨日20時頃から本学3年生の浅古小巻さんが行方不明となっており、御家族から相談を受けた本学3年生の行方晶さんが捜索していましたが、22時頃に五郷工業工場跡にて血痕及び体の一部が発見され、通報を受けた警察により本日11時頃にDNAが御二人の物と一致する可能性が高いと報告を受けました。

 このことを受けて本日及び明日は急遽休学としました。保護者の皆様におかれましては、急な下校及び送迎の対応をして頂き感謝申し上げます。

 警察は事件とみて捜査を進めています。本学としても非常に胸の痛む事件であり、御二人が無事に発見されることを祈ると同時に、警察への協力を惜しまない姿勢です。

 保護者の皆様におかれましては、お子様のメンタルケア及び捜査へのご協力、事件解決までの登下校の送迎を宜しくお願い致します。また、報道関係者からの取材が予想されますが、事件の重大性及び本学生徒への影響から、なるべく応じないようにお願い致します。

 詳細につきましては、警察と情報を共有した上で、明日説明会を行います。

 

     日時:10時から。2時間を予定しています。

     場所:本学第一講堂。下記の地図を参照してください。

     ※資料を配布致します。

     ※報道関係者には別個会見を開きます。

     ※撮影・録音・資料の二次配布はご遠慮ください。

 


 

 

 

「う、うあああああああああああ!!

 知らなかったんだよぉ! 織莉子の知り合いなんて!!!」

 

発狂としか言い様のないパニック状態。

目を見開いて、零れる唾液にも溢れる汗にも構わず、髪を掻き毟り、喉が潰れそうな声を出す。

 

「許して……許して……! ごめんなさい! 助けて!!」

「キリカ! 落ち着きなさい!」

 

キリカのソウルジェムが危険だ。

穢れを溜め込んで今にも孵化しそうになっている。

どうすれば、どうする、正しいのは――

 

「許すわ」

 

その日初めて、私は人を呪った。

 

「貴女を許す。私はその罪を受け入れ、未来へ繋ぐ。

 だから、終わった過ちを責めるより、これからの功績を期待するわ。

 私の役に立てば……貴女は許され続けるのよ」

 

心を硬くしなければならない。

罪の重さに潰されてしまわないように。

 

 

「それが本当に正しいのか?」

 

 

 

 

 

「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」「それが本当に正しいのか?」

 

 

 

 

 

あるいは、ああ、もう壊れてしまっているのかもしれない。

 



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BATTLE 02-03 (side:magi-A.K.)

(あーあ。あたし死ぬのかな。ニュースとか出るのかな。

 名門中学の林間学校で火災! 生徒数名が死亡! とか)

「……私たちを守って」

(え? なに頑張っちゃってんの? ムリだって諦めた方が楽だって。……仕方ないなぁ)

ハハッ

「……あんたが助けてくれたの?」

「廊下に寝てて邪魔だったから退かしただけよ。ふん!」

ハハハッ

『君は標準的な人間とは少し判断が違うようだね。大抵は()()()と願うものだよ』

「私は決めたことは必ずやるの。助かるのも助けるのも私がやるって決めてたのよ。

 だから、魔法少女ってのもやってやるわ!」

ハハハハ!

「また負けたーっ! 美国はホントムカつくわ!

 次の期末はぜっっったいに勝ってやるんだから!」

「お姉ちゃん、そんな嫌な人なら無視すればいいじゃん。構ったってイライラするだけだよ」

「なんで私が退かなきゃならないのよ! ムカつく奴は正面からやっつける。これが私の信条よ!

 大体ね! 美国は――嫌な奴じゃないわよ……」

「……お姉ちゃんってツンデレ?」

ハハハハハハッ!!

「成金の低俗一家が偉そうに! 私の家は医師なの! 協会の会長だっているんだから!」

「アンタ、すごいヤラしい顔してるよ。

 自分のものじゃないもので着飾るのはやめなさいよ。中身が余計に腐って見えるから」

「メッキはいつか剥がれるもの。その時に憫然たる自らに気付くでしょう。

 私を見ていてわからなかったの?」

アハハハハハハハハッ!!

「小巻さんはいつも怒っているようだけど、さっきのようなのは初めて見たわ」

「親のことまで言われたら流石に腹立つわ。会ったこともないクセに」

「……愛しているのね」

ブァハハッハッハァァァ!!

(仕方ないなぁ。仕方ないから1回くらいはあんたのために、頑張ってあげようかな)

ブェーハッハッハッハッハッハッハ!!!

「小巻!!」

「晶?」

 

 

 

 

 

最近、妹の小糸に夜中家を抜け出してることがバレてる気がする。

心配性だからなー。夜遊びしてるとか突飛なこと考えてるんだろうなー。

ううん。そんな風に妄想を暴走させるのは、晶の方か。

 

そういえば今日、晶にスマートフォンをなんか良くしてもらったんだっけ。

カタカナばかり並べられて何言ってんのかサッパリだったけど、ともかく良くしてくれたらしい。

 

そうそう、今日は早く帰って数学の予習やらなきゃいけないんだった。

でも魔女の気配がしたから、また仕方なくこっそり抜け出した。

ふわふわ空中に浮いて戦い難かったけど、魔女自体は全然大したことなかったし。

 

あれ? でも私、その後黒カマキリに襲われて……。

なんとか捕らえたと思ったら反撃されて。

何故か晶が出てきて、私を庇って、傷を負って、私も――そうだ。

 

「う、あ……」

 

……生きてる。

脇腹をガッツリ抉り取られたハズなのに生きてる。

 

「あ、き……」

 

声も出せた。少しくらいなら体も動かせる。

血がどんどん流れ出てるのはたしか。

でもまだ動けるなら、救急車呼んだり、魔法で晶を回復させたりすることくらい――。

 

「……あ、き、ら?」

 

ムリヤリ首を横に捻って見ても、そこに晶はいない。

代わりに見えたのは真っ黒な足と――シュワァという音と一緒に散る機械的なエフェクト。

 

「姿を取り戻すにはもう1人必要か……」

 

また少し首を動かせば、ガスマスクをもっとデフォルメしたような顔があった。

何なのかはわからない。魔法少女でもなければ人でもない。

けど、コイツが晶をどうにかして消したってことだけはわかる!

 

「か――」

 

返せ。そう言おうとした途端

 

「ぶァ!」

 

奇声と同時に、ソイツは私に何かを突き刺した。

紫色の携帯ゲーム? そこから何かが私の中に入ってきて――

 

「ッ! ア゛ア゛!? う、っぐ……」

 

熱い。頭が痛い! 喉もお腹も……吐き気も!?

インフルエンザで苦しむ数日間を一気にまとめたような辛さ。

脇腹の傷の痛みなんて思い出す暇もない程、死がすぐそこにいるような怖さ!!

 

「君の絶望は無駄にはならない」

 

私は今何をされたって言うの!?

コイツは晶にもこうしてっ!?

 

「私という存在を蘇らせる、そして世界を救うための尊い生贄となるのだから……!」

 

蘇らせる? 世界を救う、生贄……!?

 

「君にもまた、神の恵みたる【究極の救済】が訪れるだろう。心配しなくていい。さァ――」

 

 

「GAME OVERだ」

 

 

 

 

 

走るノイズ。消えていく、黒いスーツ姿になった何か。

 

『これは……?』

 

キュゥべえの登場は数秒遅かった。

 

『これは、一体……?』

 

……伝えなくては。

私は多分ここで終わる。

でも、あの意味不明な悪魔の存在を……他の魔法少女に伝えないと!

 

 

 

 

 

 

 

()()――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、私の意識がプツリと消えた。

 

 

See you Next round

 


 

 

生きている限り他の誰かを喰らう必要があるならば。

それを無意識の内に続けてきたならば、君はその罪を数えられるか?

白い魔法少女【美国織莉子】の瞳は、喰らうものを捉えている。

黒い魔法少女【呉キリカ】の心は、耐え切れず壊れている。

青い魔法少女【浅古小巻】は、もう数えることすらできない。

私は、罪を犯したという意識はない。全て自覚の上での行動だ。

さて、次のバトルは――

 

 

問い質すvoice VS 入り込むnoise

 

 

 



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バトル3『問い質すvoice VS 入り込むnoise』
BATTLE 03-01 (side:magi-K.K.)


夢を求め、夢に蝕まれ、何を知る?


私は織莉子のことが好きだ。

ううん、そんな軽々しい言葉じゃ足りない。

好きだの大好きだの、単位で表せるようなものじゃない。

 

織莉子は友人を殺した私を許すと言ってくれた。

私は思ったんだ。あの深く大きな器を満たすためには、たくさんたくさん注がなくては。

この愛に応えるためには、()()()()()()()()()

 

「……変わらなくては?」

 

屋敷の中を歩きながらそんなこと考えてると、ふと違和感を覚えた。

なんだろう……デジャヴ?

私は前にも同じように考えたことがある?

 

 

「なあなあ、帰りなんか食べようぜ。うどんとか」

「あの子さー、既読スルーするんだよー」「マジで? あの2人付き合ってるの?」

「今年の流行はやっぱアレだよね!」「ホントやめてよw」「ねぇ聞いて聞いて!」「それは恋ですなぁ~」

 

 

ガヤガヤガヤガヤ。

愛想笑いして、話合わせて、テキトーなテンションに上っ面の言葉。

ああ……くだらない。つまんない。

 

魔法少女になる前からそんなフンイキの中に溶け込めないでいるのは自覚していた。

でも、別にそれでダメとは思ってなかった気がする。

願いを叶えた後も嫌悪は変わってない。

だから多分、そういう輪に入れない自分を変えたいとは祈ってないんだ。

ならこの違和感はなんだろう?

 

「……あれ? 開いてる?」

 

考え事を止めて足を止めたのは、織莉子に入っちゃダメと言われた部屋の前。

ちゃんとドアを閉めてなかったのか半開きになっていた。

 

……私は織莉子のためにいる。彼女の言う()()()()()を手伝う駒として在る。

隠し事も全部知って役に立ちたい。

だから、ちょっとくらい覗いてもいいよね。

 

「お、お邪魔しまーす」

 

けど、その部屋はただの書斎だった。パパさんの仕事部屋かな?

壁一面の棚にはつまんなそーな本ばかり。

織莉子に関する物なんか1つも――あった。

 

背表紙にはORIKO ALBUMの文字。

子どもの頃の織莉子! きっとお姫様みたいに可愛いんだろうなぁ!

 

「ん? なんか引っ掛かってる。この、このっ、とりゃあああ!」

 

スポーン、ドサドサッ。

勢い余って打ったお尻を撫でて、床に散らばった本の間に引っ掛かってた物を探す。

手帳? グチャグチャじゃん……元からだよね? 織莉子のパパって意外と雑?

う~ん、織莉子の尊敬するパパさんか。政治家だったんだっけ。

 

「まぁ、少しくらい知ってやってもいいかな」

 

 

 


 

嵌められた。

市議会議員で満足していれば良かった。

国会議員の席をほのめかされて、私は犯罪者に貶められてしまった。

八重樫健三郎(やえがしけんざぶろう)は、はじめからそのつもりだった。

政敵である私の兄の公秀(きみひで)を陥れるために、肉親である私に汚職疑惑を被せた。

私はまた捨てられたのだ。

 

 

 

もう疲れた。逃げようと思う。

 


 

 

 

……織莉子は強い。

強くなくては、誰かの命と引き換えに究極の救済をもたらすことなんかできない。

だから織莉子には伝えない。絶対に教えない。知らない方がいい真実もある。

ただ、私は許さない。絶対に完全に一片たりとも許さない!

 

「お前は織莉子の敵だ」

 

過去の願いは忘れちゃったけど、今私は改めてここに祈ろう。

私の全てを砕いて織莉子に捧げる。

それだけじゃない。織莉子のためなら他の誰の何でも捧げてみせる。

 

愛は無限に有限だよ。

私は彼女に無限に尽くす。

たとえ私や彼女のすぐ傍の誰かを犠牲にしても、無限の中の有限に過ぎないんだ。

 

 

 

 

 


 

「やあ美国くん。奇遇だね」

「……どうも、八重樫先生」

「そんな邪険にしないでくれたまえよ。

 袂を分かったとはいえ、君の父上とは長らく戦友だったのだからね。

 しかし――弟の久臣くんは残念だったね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……」

「あの娘さんも可哀想に。ええと……ああ、織莉子くんだ。

 彼女は才がある。是非将来は政をやってもらいたいものだね」

「やめて頂きたい」

「……ん?」

「皆好き勝手を言っているが――彼女は父を亡くし傷付いている、ただの中学生です」



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BATTLE 03-02 (side:magi-M.O.)

「猛スピードで車両が歩道に乗り上げてきたため、避けられなかったようです。

 手は尽くしましたが……残念です」

「お、おか――

「うあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!

 由良子!!!! 由良子ォォォ!!!!!!!!!

 君がいなくなったら僕はどうすればいいんだ!!!!!?」

 

ああ、そうだ。

お母様がいなくなったら誰がお父様を支えるのだろう?

誰がいる? 父の兄姉たち? ダメ……あの人たちは恐い。

わたししかいない。だからわたしは泣いてはいけない。

()は、子どもでいてはいけない。

 

泣きじゃくって手が差し伸べられるのを待つだけ。

その手にしがみついて自らはなにもしない。

弱さを盾にした愚か者。私はそうであってはならない。

 

ワルプルギスの夜さえ凌ぐ力を持つ魔女。

ピンク色の魔法少女が変身した、世界の破壊者の誕生。

 

一目見て理解した。これには誰も勝てない。

世界は終わる。父が守ろうとしていたこの見滝原市は滅ぶ。

だが手段はある。()()()()()()()()()()()()()()

 

たったひとりとその他の全ての人々の命。

私の道は示されているハズなのに――

 

「それが本当に正しいのか?」

 

「私に思い出させないで!」

 

「冷淡で人に興味なさそうなのに変なとこ律儀な奴よね」

「それが本当に正しいのか?」

 

「わたしに弱さを思い出させないでっ!!」

 

母の死、父の死、小巻さん、絶望の未来。夢の中で何度も何度も繰り返す。

その度に何かが私の心を蝕んで気が触れそうになる。

いや、もう触れてしまっているのかもしれない。

キリカが壊れたように。

 

しかしだからこそ、私は繰り返すこの終末から退いてはいけない。

2人殺し1人壊した。止まることは許されない。

今止まってしまえば、これまでの全てを……私の全てを否定することになるのだから。

 

先へ、後少し、見付けた、鹿目まどか、早く、すぐに、消してしまわなければ。

 

 

「私たちに接触し(さわら)ないで」

 

 

一瞬で頭を撃ち抜かれる。

鹿目まどかはただの中学生だ。銃を持った護衛がいる身分とは思えない。

私が狙い? 違う。汚職議員の娘のためにわざわざそんなリスクは負わない。

()()を知っている者が他に――鹿目まどかの【守護者】がいる?

 

「だとすれば、私の殺す人間は2人になった」

 

もう一度最初から予知夢を始める。

ワルプルギスの夜の襲来で見滝原が蹂躙される。

見滝原中の制服を着た少女がキュゥべえと契約する。

彼女が魔女になる前に、私が殺そうとする。

頭を撃ち抜かれる。

 

もう一度最初から予知夢を始める。

ワルプルギスの夜の襲来で見滝原が蹂躙され、何人かが挑んで敗れる。

見滝原中の制服を着た少女がキュゥべえと契約する。

彼女が魔女になる前に私が殺そうとして、けど別の方向に顔を向ける。

姿を捉える前に頭を撃ち抜かれる。

 

もう一度最初から予知夢を始める。

ワルプルギスの夜の襲来で見滝原が蹂躙され、1人が挑んで敗れる。

見滝原中の制服を着た少女がキュゥべえと契約する。

彼女が魔女になる前に私が殺そうとして、けど妨げてきた少女に顔を向ける。

彼女に頭を撃ち抜かれる。

 

繰り返す、繰り返す、繰り返す。

何故何度やっても一瞬の内に私は撃たれているの?

まさか……時に関する魔法

 

「見付けた!」

 

黒と紫の魔法少女。終末の守護者……【悪魔】!

貴女の姿を私は目に焼き付け――?

 

「ブェーハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

悪魔の姿にノイズが走る。ブレて別の黒と紫の何かになる。

これは……人? それとも違う存在?

なにより、何故ここに現れているの?

有り得ない……私の予知に介入してきている!?

 

 

「レッツ・ゲ

 

 

ドサドサッ!

 

「っ!?」

 

急な物音で目が覚めてしまった。

全くもう……どうせキリカね。

 

予知に集中し過ぎても魔力をすぐに消耗してしまう。

今回は守護者の姿を掴めただけ、収穫があったと思うことにして。

私は物音がした方に……父の書斎に向かった。

 

「お、織莉子!」

「やっぱり……」

「ご、ごめなさい」

「この部屋には入らないでと言ったハズよ。

 ……間違いは誰にでもあるもの。今後気を付けてね」

「う、うん……」

 

いつもは私の話を(文字通り)食い入るように聞くキリカだけど。

さっきからソワソワしていて――机の引き出しを気にしている?

 

「……ちょっと退いてちょうだい」

「わっ! あっ! 織莉子、お茶にしようよ! 私お腹空いて死んじゃう!」

「どうしちゃったの? ……?」

 

引き出しの中にあったのは、ウサギみたいな可愛いキャラクターのキーホルダー。

お父様の机になんでこんな物が……頂き物かしら?

 

「ふふ。キリカ、これが気になっていたのね。

 いいわ、プレゼントしてあげる。もう他人の机を勝手に開けてはダメよ?」

「……うん!」



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BATTLE 03-03 (side:magi-K.K.)

「えへへっ、やった! 織莉子からのプレゼント!」

 

ちょっとゴスロリな衣装のウサギのキーホルダー。

襲う魔法少女を探しに街を歩きながら、何度も何度も掲げては跳ねて喜ぶ。

宝箱作らなきゃ! 毎日手入れして百年使うんだっ!

私たちの愛を示す永遠の証に――。

 

「……織莉子」

 

書斎にいる私を見付けた時、織莉子は疲れた顔してた。

お腹空かせてたのかな? 眠かったのかな? 学校でヤなことあったのかな?

……さみしいのかな?

 

「悲しいなぁ」

 

織莉子がお腹空かせてても、私はごはんになってあげられない。

眠たがっててもベッドに変わってあげられない。

イジメる奴らを殺してあげることも……ソイツが魔法少女じゃなきゃできない。

アイツ(父親)の代わりにもなってあげられない。

 

「私にできることしかできないのは悲しいなぁ」

 

世界はくだらない、つまらないばかりで、織莉子だけが特別で、なのにみんな織莉子を傷付ける。

私が、私だけが織莉子の完全な味方。

()()()()()()()()()()()()織莉子のために魔法少女の契約を結べたのに。

 

「……もっと早く?」

 

また自分の思考に変な引っ掛かりを覚えた。

デジャヴとは違うけど、私はなにか勘違いしてる……?

 

ドンッ!

 

「わっ!」

 

考え事してて前方不注意だったからか、女の人にぶつかってしまった。

 

「いたた……」

「すいません! 大丈夫ですか?」

「ん~、大丈夫大丈夫」

 

って、向こうも歩きスマホじゃん。

ペコペコ謝ってたから責める気もないけど、気を付けてほしいよね。

 

「まった、くぅぅぅぅぅぅ!? な、ないっ!?」

 

手の中が空っぽになってることに気付いて汗が噴き出す。

織莉子からのプレゼントが! 私たちの愛の結晶が!?

 

「うわああああああああ!!」

 

ブンブン首を振って見回しても近くには落ちてない! 吹っ飛んじゃった!?

傍の植え込みも掻き分けて、その先の公園も探すけど見付からない!

 

「ないよ、ないよぅ! もうダメだ生きていられない! 愛は死んだ!?」

「探し物は、もしかしてこれかな?」

 

パニクってる私に後ろから声を掛けてきた男。

その姿よりまず彼の差し出していた愛の結晶に目が行って、私は奪い返すようにそれを取り上げる。

 

「会いたかったぁー! もう離さないっ!」

「フフ、愛は無事だったかな?」

「うん! お陰で愛は死なずに済んだよ!」

 

愛の結晶に頬擦りするとやっと落ち着いて、私は改めて彼の方を振り向いた。

背も高いし脚も長いし顔も良いし、黒いスーツも似合っている。

モデルさんか、若くしてベンチャー企業を立ち上げた風雲児っぽい。

 

「私は呉キリカ。恩人、キミにお礼をしたい。何か私にできることはないかな?」

「ああ、なんてナイスタイミングだ!

 私はゲームクリエイターでね。丁度新作のテストプレイヤーを探していたんだ。

 もしよければ、このゲームをプレイして感想を教えてくれないかな?」

 

爽やかな笑顔で差し出してきたのは白い携帯ゲーム機。

 

「もちろん!」

 

テストプレイヤーなんて滅多にできることじゃない! 喜んで引き受けよう!

機械のロゴはGENM CORP……ゲンムコーポレーション?

私もゲームは結構するけど、聞いたことない名前だなぁ。

 

「ギリギリチャンバラCは()()()()()()()()()ゲームだ。

 操作方法についてはチュートリアルがあるから安心してほしい。

 今回のテストは戦闘だけ。その他のシステムについて複雑に考える必要はないさ。

 気構えずリラックスしてプレイしれくれればいいよ」

 

ベンチに誘導されながら説明を受けて、私は座って電源を付けた。

 

「さぁ、レッツ・ゲーム……」

 

出てきたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()。プレイアブルキャラの1人かな?

簡単なチュートリアルの後、早速バトルに入る。

たしかに一発でHPがゴッソリ削られるけど、こっちもほぼ一発で敵を倒すことができるね。

アクションも爽快だし、ハラハラと緊張感が続いて、ワクワクも止まらない……。

 

「すごい……すごいよ、コレ!」

「楽しんでもらえて嬉しいよ。だが、そろそろボスが出てくる頃だ」

 

上空から襲い掛かってきた、()()()()()()()()()

 

「へっ……?」

 

反射的に指がボタンを押していて、でも鎌は()()()()()()()()()()()()()()を貫いた。

その亡骸を抱えて青い敵はこっちに目を向ける。

今ここでお前を消してやるという目を。

 

「これは――!?」

 

≪ガシャット!≫

 

隣の恩人は立ち上がり、腰に不思議なベルトを巻いていた。

 

 

「グレード0、変身」

 

≪ガッチャーン!≫

≪レベルアップ!≫

 

≪マイティジャンプ!≫

≪マイティキック!≫

≪マイティ≫

MIGHTY(マイティ) ACTION(アクション) (エックス)

 

 

ゲームカセットみたいなのを刺して、キャラセレクトして、パネルみたいなのを被って。

黒いボディに紫のパーツ、真っ赤な目……ゲームキャラみたいなのに変身した!?

 

「恩人……キミは一体何者だいッ!?」

「奇跡を望み続けた魔法少女たち……。

 今、その願いがゲームへと引き継がれるゥ!

 祝え、新たなる檀黎斗の誕生を!!

 ブェーハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

――美国織莉子は救済を成す白い天使だ。

でも私はその瞬間、破滅を導く黒い【悪魔】の存在に気付いた。

 

 

See you Next round

 


 

 

ずっと抱いてきた信念を揺るがされたとすれば。

自分の行為を正しくないと感じたとすれば、君は抗い続けることができるか?

白い魔法少女【美国織莉子】の瞳は、遂に悪魔の正体を捉える。

黒い魔法少女【呉キリカ】の心は、鎖された記憶を蘇らす。

私は、ここから見続けよう。そして真に未来のストーリーへ語り継ごう。

さて、次のバトルは――

 

 

悲しきprayer VS 孤独のplayer

 

 

 



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バトル4『悲しきprayer VS 孤独のplayer』
BATTLE 04-01 (side:magi-M.O.)


掴む夢は幻の夢か?


「宝生永夢ゥ!

 何故君が適合手術を受けずに、エグゼイドに変身できたのか。

 何故ガシャットを生み出せたのか。

 何故変身後に頭が痛むのくわァ!」

「っ、それ以上言うな!」

「その答えはただ一つ……」

「やめろー!」

「アハァー♡ 宝生永夢ゥ!」

「ッ!」

「君が! 世界で初めて、

 バグスターウイルスに感染した男だからだぁーーーッ!!

 ハハハハハッ!!

 ヴェーハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

私の魔法は予知。だがその原理はハッキリとしていない。

ただ一つしか存在しない時間の流れの先を見ているのか。

それとも有り得る可能性を……もしくは並行世界を覗いているのか。

そもそも魔法だ。論理立てて考えられるものではないのかもしれない。

 

「16年前から君は! 透き通るように純粋だった……!

 その水晶の輝きが、私の才能を刺激してくれた。

 君は最高のモルモットだァァァァァアアアアアアアッ!!!」

「っ……!?」

「君の人生は全て! 私の、この手の上で……転がされているんだよッ!!

 ヴァーッハハハハ!! ヴーアハハハハッハッハッハ!!!!」

 

それに、魔法少女が日頃使える魔法はあくまで副産物だ。

根源となるのはキュゥべえと契約した時の願い。

私で言うのなら()()()()()()()()()()()()ということ。

だから、今私が視ているのが別の世界の過去の出来事であっても不思議ではない。

 

この能力(チカラ)によれば、私の予知夢に介入してきた男の名は【檀黎斗】。

天才ゲームクリエイターにして、その世界でゼロデイなどの事件を起こした危険人物。

()()()()()()()()()()()()()()()()()、神の才能の持ち主。

 

神と一口に言ってもその名が示すものは多岐にわたる。

この宇宙を最初に作った者、キリスト教に見られる()()()としての神。

ありとあらゆる物に宿る命、神道に見られる()()()()()としての神。

願いや呪いに応じて希望や絶望を与える漠然とした機能、神頼みに見られる()()()()としての神。

世界の理に縛られない感性と能力の持ち主、ギリシャ神話に見られる()()()()()()としての神。

そして、人でありながらその枠組みを()()()()()()()()もまた神と呼ばれる。

 

檀黎斗は正しく()だ。

ゲームの中に宇宙を創造し、キャラクターに命を灯し、プレイヤーに希望や絶望を見せ、人類の常識に縛られない感性と能力を持つ。

唯一彼の神性を否定できる点は、彼が母から生まれた人間の肉体を持つことだけ。

だがそれすらも消えてしまう。

 

「僕は、黎斗さんの笑顔を取り戻したい」

「シラけることすんなよ。それじゃあゲームは終われないんだよ。

 敗者には敗者らしい、エンディングってもんがあんだろ」

「ッ!? イヤだ、イヤだ! 死にたくない!! 死にたく、ああ……。

 ――私は神だ! 私の夢は、不滅ダアアアアアアアアアアアア!!!」

 

人間である檀黎斗はゲーム病により消滅した。

 

「随分楽しそうじゃないか、パラドォ……! ゲームマスターの私を差し置いて!!」

 

バグスターとして復活を果たし、新檀黎斗を名乗り――

 

「もはや人間の命は有限ではない。 全ての命がコンティニューできる世界になった」

 

死を超越し人類に福音をもたらす、檀黎斗神を名乗り――

 

「檀黎斗神という名は、もう捨てた……。今の私は――檀、黎斗……」

 

再びライフの尽きるその瞬間、彼は人間に戻ったのだろうか。

 

「宝生永夢ゥ!

 何故君が幻夢コーポレーションに、あんなファンレターを送ったのか。

 何故あの雨の日あの場所を歩いていたのか。

 そもそも何故バグスターが生まれたのくわァ!

 その答えはただ一つ……アハァー♡ 宝生永夢ゥ!

 君の※※※※※※ヴェ※※※※※※

 

後にまた檀黎斗Ⅱが現れたらしいけど、それは檀黎斗神が予め生んでいた存在。

神の名を捨てた男はプロトマイティアクションXガシャットオリジンの中にいる。

2人は記憶を共有していても、全くの同一人物とは言えない。

さらに言及していけば、たとえデータが同じでも人間として消滅した彼とバグスターとして復活した彼に連続性はあるのか、という話になる。

 

では――私の予知夢に介入してきた男は一体、どの時点の何である檀黎斗なのか?

 

「楽しんでもらえて嬉しいよ。だが、そろそろボスが出てくる頃だ」

 

景色が変わった。

キリカがベンチに座ったまま固まっている。

 

≪ガシャット!≫

 

黒いスーツの男が、腰にゲーマドライバーを巻いている。

 

 

「グレード0、変身」

 

≪ガッチャーン!≫

≪レベルアップ!≫

 

≪マイティジャンプ!≫

≪マイティキック!≫

≪マイティ≫

MIGHTY(マイティ) ACTION(アクション) (エックス)

 

 

 

私は、子どもでいてはいけない。

私は、弱さを盾にした愚か者であってはならない。

私は、自らの行いを信じて疑わない。

私は、私の世界を守るために全てを捧げることができる。

 

 

 

「それが本当に正しいのか?」

 

 

 

嘘だ。

捧げているのはいつも私以外の人。

 

「キリカあああああああああああ!!!!!!!」

 

夢から目覚めた私は一目散に走り出した。

私の()()()()()を守るために。



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BATTLE 04-02 (side:magi-K.K.)

嵌められた。

市議会議員で満足していれば良かった。

国会議員の席をほのめかされて、私は犯罪者に貶められてしまった。

八重樫健三郎は、はじめからそのつもりだった。

政敵である私の兄の公秀を陥れるために、肉親である私に汚職疑惑を被せた。

私はまた捨てられたのだ。

 

どうしようもなくこわいのだ。

父に捨てられた時からずっとこわい。

無能であるからと実父に切り捨てられた。

美国家の敷居を跨ぐことすら許されなかった。

私は、私が生きる意味がわからなかった。

せめて我が子を愛す父であろうと

 

由良子が亡くなって織莉子は変わってしまった。

泣き虫だったあの子が全く泣かなくなった。

なんでも卒なく熟すようになり、人望を集め人の上に立つようになった。

僕の子とは思えない程に()()()()()ようになった。

 

僕はこわい。僕は知っている。

能力高く、人望があり、微笑みの中に冷たさを湛えた人間を。

 

もう疲れた。この世(織莉子)から逃げようと思う。

 


 

 

 

「あああああああああああああ!!」

 

目が覚めるや否や、悲痛な叫び声とガシャンと何かが割れる音でベッドから跳び上がる。

ここは……織莉子の部屋?

檀黎斗とかいうヘンテコな奴に殺されそうになって、それから織莉子が助けに来てくれたんだっけ?

体には怪我一つない。きっと織莉子が回復させてくれたんだ。

 

「あああッ!!!」

 

ガシャン! パリン! ドサッ!

リビングに駆けつけると、そこでは織莉子が高価そうな壺やら絵画やらを次々に床に叩きつけていた。

一心不乱に、ううん、乱れ切っている彼女を慌てて抱き抑える。

 

「織莉子やめて! 手が血だらけじゃないか! こんなのキミらしくないよ! ……見たの?」

 

美国久臣の手帳。()()()()()()()()

絶対に見せちゃいけなかったのに!

 

「……私らしいって何?」

 

ドンッと突き飛ばされた。織莉子に拒絶された。

 

「文武両道? お嬢様? 人望厚い生徒会長様?

 くだらない。美国に相応しいお父様のため? それがお父様を殺したのに?」

「それは違うよ!」

「ねぇキリカ、私気付いたの。

 私が生きる意味を知りたいって願って視えたのは終末の魔女だった。

 これってきっと……ふふっ!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことじゃないかしら」

「織莉子……そんな、そんな――」

 

そんな悲しいこと言わないでおくれよ。

 

「私のせいで小巻さんも行方さんも死んだ! 貴女の心だって壊してしまった!

 何も知らない少女を殺して、その子を守る友達すら殺そうとしてる!

 いくら信じようとしても……何度も私に問い掛けてくるの……。

 私と同じ、独り善がりに救済を成そうとした檀黎斗が! ()()()()()()()()()()()って!!

 織莉子織莉子って……私は織莉子をやめたいの!!」

「――許さない。織莉子をやめるのは、許さないよ」

 

睨みつけてくる織莉子の目を、私はただ真っ直ぐに見つめ返す。

 

「織莉子、私の告白を聴いてほしい」

 

 

 

まだ幼かった頃、間宮(まみや)えりかという友達がいた。

席が隣だからとか家が近所だからとか名前が似てるからとか、そんな簡単な理由で相手を友達と信頼してしまう。

私は愚かな子どもだった。

 

「えりか、転校しちゃうの!?」

「多分、父さんと母さん離婚しちゃうと思う。そしたら母さんと一緒に行くんだ。

 お家も引っ越す……。あたし、転校したくないよ! キリカと離れたくないよ……」

 

遠くへ行っても私のことを覚えておいてくれるように。

離れ離れになっても心だけは繋がっていられるように。

彼女が好きそうなぬいぐるみを買って帰った、その途中。

私はえりかが手提げバッグの中に本を忍ばせるのを目撃した。

 

今思えば、両親の離婚がえりかを追い詰めていたのだろう。

止めた私を突き飛ばして走り去ったのも、ただ怖くなってやってしまったのだろう。

でもその結果、残されたバッグで私は万引きの濡れ衣を着せられた。

 

「えりかとキリカ、まるで双子みたいな名前だね。大人になってもずっと一緒だよ」

 

そう言っていたのに、えりかは私に罪を押し付けたまま黙って引っ越してしまった。

それから私は人を遠ざけるようになり、人も私から離れていった。

 

 

「大丈夫? ……これで全部かしら?」

 

後がつかえてるコンビニのレジで、財布の中身を思い切り散らしてしまって。

ブツブツ嫌味を言う人々に構わず一緒に拾い集めてくれた、ただそれだけ。

でも、それが私にとってどれだけ嬉しいことだったか……()()にはわかるかな?

 

毎朝駅でキミのことを見かけた。

その度に話しかけようと思ってできなかった。

くだらないお喋りをして何にもならない時間を過ごす()

興味ないフリをして、みんなを見下したフリをして妬んでたんだ。

 

こんな私のことを気に留めてくれる人なんていない。

彼女だって、お嬢様だからきっと私とは生きてる世界がそもそも違う。

だから――

 

 

 

『僕と契約して、魔法少女になってよ』

 

 

「私は、彼女に相応しい私に変わり続けたい」

 

 

 

 

 

私の願いは完成する。キミのためだけに叶えられる。

次は、キミの願いを叶えに行こう。



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BATTLE 04-03 (side:game-D.C.)

この世界には魔法が存在する。

 

私が生み出したガシャットや消滅者のデータ保存も、常人からすれば魔法の領域にあるものだろう。

だがそれはあくまで論理性・法則性に則った科学的技術だ。

人類はその域に達していないし、これから先理解できる者が現れるとも思えないが、紐解けば必ず一本になる。

 

この世界の魔法はどうだろうか?

たとえば 0+1 の結果を 2 にする時、私はそこに神の手を加え 0+1(+1)=2 とする。

もし本当に脈絡も注釈もなく 0+1=2 にできるとすれば、そこには理屈も規律も存在しない。

純然たる理不尽さを孕む魔法……そんなものは有り得ない。

 

 

 

この世界の魔法における(+1)の正体。

それを明かすにはまず()()()()()について語らねばならない。

 

人類は熱力学第二法則を発見し熱的死を導き出した。語弊を恐れずに説明しよう。

熱=エネルギーの往来は外部からの介入がない限り徐々に緩やかになり、やがて静止する。

冷凍庫に入れた水は氷になるが、再び熱を与え温めない限り独りでに水へ戻ることはない。

この冷凍庫=内部の規模を拡大すれば、いずれ宇宙内でエネルギーの往来が完全に静止すると考えられる。

それこそがエントロピーの飽和、熱的死だ。

 

終末の訪れより地球の崩壊、あるいは人類滅亡の方が当然先だろう。

しかし、広い宇宙には他人事ではないと捉える者もいる。

熱的死を危惧した彼らは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を生み出した。

感情を持たぬ自分たちの代わりに、最も効率良い料を地球人の第二次性徴期の少女の絶望に見出した。

 

キュゥべえと名乗る彼らと契約した少女は、願いを一つ叶えることができる。

彼女たちはその魂が体と切り離され、ソウルジェムに形を変えられる。

まるでプロトガシャットに消滅者のデータをセーブするかのように。

そして、そこに魔法の使用や負の感情で穢れが貯まると、やがて彼女たちは怪物へ変身する。

 

宇宙の終末という運命への叛逆のため、外宇宙存在が何も知らぬ地球人の少女に約束する希望と仕込む絶望。

これがこの世界の魔法の正体。私が監察して知った、(+1)に隠された真実だ。

 

 

 

正直に言おう。私は彼らに敬服している。

()()()()()()()()()()()()()()とは! 立ち上がって拍手を送らねばなるまい!!

私が見つめていたのは地球人類のことだけだった。

だがあろうことに、彼らは宇宙全体にまで考えが及んでいるではないか!

魔法少女システムは究極の救済と言える。

 

 

 

ああ……しかし、それだけではつまらない。

魔法少女システムには致命的な欠陥が存在している。

確かに魔女との戦いはスリリングでデンジャラスで、非常に心高鳴る(エキサイティングな)ものだろう。

だが、エンターテイメント性が不足しているのだ。

 

私なら魔法少女を! 彼女たちの物語をゲームにまで昇華することができる!

それを成し遂げる神の才能が、私にあるのだからなァ……!

 

既に滅びいく運命(さだめ)にあるとすれば、私がそれをひっくり返そう。

生きている限り他の誰かを喰らう必要があるならば、私がゲームとして改編しよう。

ずっと抱いてきた信念を揺るがされたとしても、どんな世界であろうとも、どんな時代であろうとも。

檀黎斗が執る行動はただ一つ……。

 

 

 

「レッツ・ゲームゥ!」

 

 

 

 

 

 

 

「それが本当に正しいのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の絶望は無駄にはならない。

 私という存在を蘇らせる、そして世界を救うための尊い生贄となるのだから……!

 君にもまた、神の恵みたる究極の救済が訪れるだろう。

 心配しなくていい。さァ――GAME OVERだ」

 

 

 

「奇跡を望み続けた魔法少女たち……。

 今、その願いがゲームへと引き継がれるゥ!

 祝え、新たなる檀黎斗の誕生を!!

 ブェーハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 

 

「もし私への勝利まで辿り着けなければ、君たちも絶望の化身(魔女)となる。

 君たちの水晶は私に打ち砕かれ、二度と輝きを放つことはない。

 それだけのリスクを背負ってでも君たちはこのゲームをプレイするか?」

 

 

 

YES……Player( 遊び手 )となるがいい。

NO……Prayer(  祈 り  )をここでやめろ。

 

 

 



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BATTLE 04-04 (side:magi-M.O.)

灰色の空の下、まだ崩れていない街の中、郊外の工場跡地、廃ビルの屋上。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

キリカを助けに行った時そう言われたが、確かに檀黎斗は私たちを待ち受けていた。

 

「鹿目まどかを殺すことも、暁美ほむらを殺すことも私は迷っている。正しいと信じきれない。

 けど……これだけはわかるわ。貴方は今ここで止めなければならない!」

「終末の魔女を生ませないのはもちろんだし、ワルプルギスの夜だって倒さなきゃだけど。

 でも……まずは目の前の悪魔祓いからだよね!」

「――引き返すなら今の内だ。一度バトルがスタートすれば、君たちにゲームの放棄は認めない。

 魔力を消費することで君たちの水晶が濁りきり、砕け散る危険だってあるだろう。

 もし私への勝利まで辿り着けなければ、君たちも魔女となる。

 君たちの水晶は私に打ち砕かれ、二度と輝きを放つことはない。

 それだけのリスクを背負ってでも君たちはこのゲームをプレイするか?

 YES、遊び手となるがいい。NO、祈りをここでやめろ」

「「YES」」

 

躊躇いもなく答えると、檀黎斗は嬉しそうにニチャアと笑みを浮かべてガシャットを構えた。

私たちも殆ど黒くなったソウルジェムを構え、それぞれに魔法少女と仮面ライダーゲンムへ変身を遂げる。

 

MIGHTY(マイティ) ACTION(アクション) (エックス)

 

「レッツ・ゲームゥ!」

 

≪マッスル化!≫

 

ゲンムは近くにあった巨大なメダルに触れた。

エナジーアイテム……使い方なら、私たちも夢のお陰で知っている。

 

≪鋼鉄化!≫

 

強化されたガシャコンヴァグバイザーの攻撃を、堅くなった私の魔力壁が受け止める。

 

≪高速化!≫

 

キリカが素早く背後を取る。

 

≪暗黒!≫

 

ゲンムが広まった暗闇に姿を眩ます。

 

≪発光!≫

 

私の体が輝いて、ゲンムの居場所を暴く。

 

≪液状化!≫

 

キリカの鉤爪が当たる直前、ゲンムは溶けてそれをかわした。

 

「そんなのアリ!?」

「アリだとも!」

「キリカッ!」

 

援護に入ろうと踏み出した私の足元に、いつの間にかあったエナジーアイテム。

暗黒状態でゲンムが仕掛けていたトラップを、勢いを止められず踏んでしまう。

 

≪混乱!≫

 

「織莉子ッ!」

「自分の心配をするんだなァ!」

 

≪巨大化!≫

 

私の視界が回っている隙に、巨人になったゲンムの一撃がキリカを襲った。

 

「ッ――」

 

地面に伏した彼女はもう呻き声を上げることすらできていない。

鉤爪も無残に打ち砕かれ、カケラが私の近くにまで飛び散ってくる。

 

「クッ……!」

 

そして私も、ゲンムのガシャコンヴァグバイザーに斬り飛ばされた。

 

「フン。中々頑張ったようだが、ゲームマスターである私に敵うハズもない!」

「貴方は……この世界で何を成したいの!? 仮面ライダークロニクルでも始めるの!!?」

「ほう、その存在まで知っているのか。

 完成した暁には、君なら伝説の戦士クロノスに変身できたかもしれないな……。

 実に惜しい話だ。しかし、ゲームはゲーム。これで君の物語は終わりだァア」

「――その伝説の戦士なら、この結末をリセットしたり世界を書き換えたりできたのかしら?」 

 

 

 

「まさか。()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

瞬間、朦朧とする意識の中で全てが繋がった。

そう……貴方は※※※※※※だったのね。

 

 

 

「祝え、新たなる檀黎斗の誕生を……貴方はそう言った。

 私の友達を傷付けた罰よ。その嘘を、当てる!」

 

 

 

≪それが本当に正しいのか?≫

 

≪はい≫  ≪いいえ≫

 

 

 

 

 

≪はい≫

 

 

 

 

 

「檀黎斗ォ!

 何故貴方が宝生永夢たちの、その後の物語を知らないのか。

 何故その程度のゲームしか思いつかないのか。

 何故キュゥべえ如きに敬服するのかァ!」

「ッ!」

「その答えはただ一つ……」

「あ、ああ……!」

「ハァハァ、檀黎斗ォ!」

「アアアアッ!!」

「貴方が! 本物の檀黎斗の、

 ead opyだからだぁー-ーッ!!」

 

 

 

非正規模造品(デッドコピー)。権利者の許認可を得ず複製された不正な存在。

どういった経緯で生まれたのかはわからない。

何らかの理由でこの世界に流れ着いたガシャットのバグか。

 

檀正宗のリセットもゴッドマキシマムマイティXガシャットも知らない。

おそらくは彼は()()()()()()()()()()()()()()()()しか持っていない。

なにより……神の才能を持ち合わせておらず、魔法少女の命への敬意も曖昧という決定的な違い。

もし宝生永夢たちに出会っていなければこんな檀黎斗も有り得たかもしれないけど――。

ともかく、きっとこの男はオリジナルの檀黎斗が意図した存在ではない!

 

「嘘だ……私は、確かに……」

 

自分でも思い当たる節があったのだろう。

動揺したゲンムの動きが固まった。

その首に、私が放ったキリカの鉤爪のカケラが刺さる――

 

「ブゥン!」

 

ことはなかった。

ゲンムは上半身を仰け反らせて避け、勝ち誇ったように嗤う。

 

「隙を晒したとでも思ったかァア!!!」

「いいえ、私の祈りは届いたわ」

 

私が狙ったのは彼じゃない、その背の向こうにある物。

雄叫びを上げるキャラの描かれた黒いエナジーアイテムだ。

私に未来を視る魔力は残っていない。

ただの直感……でも、この選択は正しいと信じられた

 

≪終末!≫

 

大気が揺れ大地が割れる。

出来た溝からマグマが次々と噴火し、ゲンムへ襲い掛かる。

まるで死者を地獄へ引きずり込む亡霊のように。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!?」

 

ププププ、プゥーン。

ライダーゲージがゼロになって、ゲンムは強制変身解除されデッドコピーの姿に戻った。

そしてその身体がピクセル化し、散り始めている。

でも……それでお終いとはいかなかった。

 

「ヴェッハァァァ!!」

 

最期の力を振り絞って、デッドコピーはキリカにバグスターウイルスを巻いたのだ!

 

「ゲームはもう終わったハズよ!?」

「そう、だからこそさ……」

 

キリカのソウルジェムの中にバグスターウイルスが溜まって、それから――何も起きない。

彼女は魔女になっていなければバグスターにもなっていない。その寸前で留まっている。

デッドコピーは私に、観念したような……悟ったような目を向けて微笑んだ。

 

「浅古小巻と行方晶……彼女たちのデータはこのガシャットの中にある。

 呉キリカも……もし水晶が濁りきっても、ゲームオーバーとなりデータは保存されるだろう」

「っ!? まさか……死にかけてる2人を、わざと貴方は――!!」

「……さぁ、どうかな。君の目で確かめればいい」

 

彼の手から差し出された小さなエナジーアイテムを、私は怪しみつつも受け取った。

 

≪回復!≫

 

ほんの僅か戻ってきた魔力が、私を予知夢へと誘う。

 

 

「おめでとう、未来を望む君たちへ」

 

≪ゲームクリア!≫

 

 

 

次の瞬間、私の意識がプツリと消えて、デッドコピーの存在も消えた。

 

 

 



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ネクスト『私のworldを守るため VS みんなのsmileを守るため』
MOTIVE X-0 (just:near-future)


それは彼方の夢。

 

鏡総合クリニック、本来存在していなかった病院に仮面ライダーたちが現れる。

何者かが呼び寄せたのか、あるいは何者かに仕組まれたのか。

異世界から来訪した彼らの中には、当然のように檀黎斗の姿もあった。

 

彼らは鹿目まどかたちに出会い、魔法少女の存在を聞き、魔女との戦いに関わっていく。

檀黎斗による魔法の解析とガシャットの修正で多くの危機を乗り越えていく。

 

けど、それだけではダメだ。必ず途中で何人かが脱落する。

ワルプルギスの夜を前に鹿目まどかは魔法少女となり、世界の破壊者になる。

そうなってしまってからではもう遅い。

世界は蹂躙されインキュベーターの筋書き通りの結末になるか、それを認めない暁美ほむらによって繰り返される。

 

檀黎斗なら――デッドコピーではない、神の才能を持ち命を尊ぶあの男ならどうにかできるかもしれない。

でも彼はゴッドマキシマムマイティXガシャットの件もあって常に監視・軟禁される。

もっと早く真実に気付かせ、運命への叛逆を発想させ、策を練らせなければならない。

そのためにはインキュベーターへ注意を向かせ、同時に全員の裏をかかせる必要がある。

 

倒れた私とキリカを横目に、インキュベーターがプロトマイティアクションXガシャットオリジンを拾う景色が見えた。

それでいい。未知の存在、魔法少女殺しの遺物を回収した気でいるのでしょうけど、これで貴方は檀黎斗に目を付けられるわ。

やがて彼は貴方からガシャットを奪い返し、運命への叛逆を企て始めるでしょう。

私たちに小巻さんたちを戻す方法はわからないのだから、ガシャットは彼やドクターの手に渡った方がいい。

 

……しかし、もし檀黎斗がまた独善的なゲームを始めたら?

世界の破壊者に至る魔法少女誕生の可能性が残っていたら?

その時には再び彼をゲームオーバーにして、そして――

 

 

 

私のソウルジェムには穢れが溜まり過ぎているし、キリカは()()()()()()()()決死の特攻を強いられる。

戦えるのは、残されたチャンスはあと一度だけ。そこで確実に私たちは私たちの救済を成さねばならない。

それまではじっと耐えて待とう。

魔法少女にも仮面ライダーにも、檀黎斗にも見付からないよう息を潜めて待とう。

 

 

 

 

 

そして――今度こそ鹿目まどか(終末の魔女)を殺そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さんには、愛する人がいますか?」

 

もしこの世界にヒーローが存在するとすれば、私の行いを認めはしないだろう。

 

「家族、恋人、友人……心から慈しみ、自らを投げ打ってでも守りたい人がいますか?

 そして、その人たちを守るに至らぬ自分の無力を嘆いたことはありますか?」

 

どんな逆境でも決して諦めずに立ち向かい、人の命を救う。

 

「世界は危機に陥っています。

 絶対的な悪意と暴力、それが形成した者が降りようとしています。

 しかし私は戦う……! 私の世界を守るために!!」

 

そんなヒーローが予知すら超えた未来にいるのなら――

 

 

 

 

 

「来るがいい、最悪の絶望(鹿目まどか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来るがいい、究極の救済(エグゼイド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

DIRECTOR

  Dead Copy

 

CHARACTER DESIGN

  Kamen Rider EX-AID

  Puella Magi Oriko Magica

  Puella Magi Madoka Magica

 

SYSTEM DESIGN

  Dan Kuroto

  Incubator

 

CAST

  Mikuni Oriko

  Kure Kirika

  Asako Komaki

  Dead Copy

 

CAST

  Mikuni Hisaomi

  Mikuni Kimihide

  Yaegashi Kenzaburou

  Namekata Akira

  Nagatsuki Miyuki

  Asako Koito

  Mamiya Erika

  Akemi Homura

  Kyubey

 

CAST

  Dan Masamune

  Dan Sakurako

  Poppy Pipopapo

  Houjou Kiyonaga

  Houjou Emu

  Parado

  Kagami Hiiro

  Hanaya Taiga

 

 

 

SPECIAL THANKS

  Dan Kuroto (Origin)

  ...and You

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Don't forget.

Always, somewhere, someone is praying for you.

As long as you play with her/him, it's not lonely.

So...See you "Next story"!!

 

 

 

 

 

 

 




lonely(ロンリー):さみしい。ひとりの。
player(プレイヤー):遊び手。
prayer(プレイアー):祈り。「プレイヤーって発音しねぇのかよ!」とか言わない。


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