プリキュア 仮面の異形譚 (慟哭の愚行)
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普遍を覆す神話論 神話語り、だが異形は何処か?

多少のネタバレがあるので注意。
時系列が混乱しています。


 時間は数十億年以上に遡る。

 地球誕生の始まりは隕石同士の衝突による物では無い。とある世界が分散し、その欠片から出来上がったのが地球だ。

 

 正式名称、花の海(フラワー・オーシャン)

 様々な種族が手を取り合い、繁栄に栄えた、大いなる理想郷。そして、その世界の化身である母神様が見守っていた楽園であった。

 

 そんなお伽噺な世界が崩壊するのは絶対であり約束であった。

 侵攻した、彼方より理想郷を察知した混沌なる存在。眷属を従えて暴虐の限りを尽くしたその力は安定を崩壊させるには十分過ぎた。

 

 大地母神、存在消失。

 

 花の海、分離による崩壊。

 

 多種族、分散。

 

 大打撃を与えた三つの被害は混沌を太陽に封印する偉業の引き換えだった。

 だが、この封印は何れ破れる。

 

 故に、未来に希望を乗せて母なる神は最後に二つの魔法を宇宙と惑星に施した。

 

 一、世界再編術式『プリキュア』

 

 二、矛盾時空機構『■■■■■』

 

 二つの術式を遺した彼女は最後に没した。その魂の残滓を未来で見た最先端道具を模くしたアイテムに宿しながら。

 

 更に遡って宇宙開闢。

 その創生爆発によって生じた、混成した光と闇の超越現象が宙を静かに漂っていた。

 だが、揺蕩う超越存在は混沌と大地の戦いの余波で分離してしまった。

 

 光は金色の巨人へと新生した。

 

 闇は暗黒の巨躯へと変異した。

 

 故に自然であった。

 彼女と彼が衝突、戦いに発展する事は。 

 理由や経緯は不明、だが確かに戦いは引き起こされた。

 

 光と闇の衝突は様々な惑星に環境変化を与え、空間を歪ませて幾多の異空間を形成し、数多の悪意を惹き付ける根源となった。

 後に戦いは互いの構成部位不足により鎮圧。 

 

 超越存在の二体は自身の身体に適した世界に身を置いて、眠りに着いた。

 だが終わる訳が無い。

 始まったのだ。

 

 闇と混沌の構成残滓達は各惑星に飛び散り、悪意を取り込み、成長を繰り返す。

 大地の化身の残滓らは光と融合、生物の想念を取り入れて、戦士達へと変貌させる秘宝を形成、各世界に飛び散り、その姿を隠した。

 

 やがて時を経て。

 宇宙と同等と捉えられる異空間『星空界』が誕生、その異空間を支える柱である十二星座の姫達が生まれたのはまた別の話。

 

 千年前、赤き惑星と地球に飛来した地球外生命体が神を名乗る。 

 地球に飛来した奴は国を建設、子孫を残し、妖精を模くした眷属を創造、戦士達の秘宝を見付けて自身の都合の良い様に改造、巫女と恋に落ちて、その結果により地球の危機が迫る。

 

 赤き神は見事に惑星全体を支配するが隕石襲来により生命は全滅。死の星となった自らの領地を呆然と見詰め、後に地球に目移りする事で憎悪に堕ちる。その憎悪が人類に牙を剥いた。

 

 だが、安心すると良い。彼等を討つ神殺しが達成されるのだから。

 

 さて、無駄話は終わりだ。

 説明した所で、この物語を見据えるしよう。

 嘗ての友との約束。

 人類を見守る闇の神様として。




次話は3000文字を突破しています。
近日に投稿したいと思います。

後、最新作のプリキュアでプロトが崩壊しました。


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序章に通じる審判 プロローグ

真プロローグ投稿完了。

それと同時に前話は全て消去しました。理由は話せませんが物語上として不利益になる事が発覚した事です。

ですが、『鏡の国』の話はリメイク投稿するつもりなので宜しくお願いします。


────AD2004年。

 

「ウザイナー!!」

 

 振るわれる黒い豪腕。

 常人なら容易く死に至らしめる怪力と速度は地面を粉々に砕き、砂へと変える。

 

 身を揺らす黒き戦乙女(・・・・・)は難なく回避。その後に瞬発。地面を強く踏み締めて異形の懐に入り込んだ。

 

「だっ!!だだだだだだだだだっ!!」

 

 主要武器を構えて思考を一点に集中。

 拳を血が滲むと錯覚するほどに握り締める。

 そして、殴る(・・)

 

 何度も繰り返される基本動作たる拳の連戟。身体に染み込んだこの動きは異形を苦しめる一手に繋がる。同時に踏みつけた枯れ葉が破れる音が鮮明に耳に伝わる。

 

「……はあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 汗が類を伝って身体から離れ、地面に接触する刹那。身体のバランスを崩さないために脚に力を込める。それに応じるようにして彼女の体躯を張り巡る異能が更に活性化する。

 

「だぁっ!!」

 

 地面に不自然な亀裂が走り崩壊。それと共に拳を真上に振るう。その到達地点は異形の黒い顎。

 

「ザケンナーッ!?」

 

 憤怒の顔が歪む。呻き声を上げながら回転を繰り返し空に舞い上がる。漆黒の体躯を朝日が照らす。

 

「やぁぁぁぁっ!!」

 

 だが異形を照らす光が遮られ、高い声が響き渡る。その発信源を異形は見据えた。

 

 その目線には曇り空で遮れていない唯一の陽射しが照らす角度を隠す白い戦乙女(・・・・・)が美躯を回転させる姿。鬼気迫る覇気に異形はたじろぎ致命的な隙を生み出す。

 

「やぁっ!!」

 

 『ドゴン!!』とありがちな打撃音が異形の頭を貫き凹ませる。それを受け入れた巨躯は真っ逆さまに落下。失敗を表した着地点に小規模な岩盤一つと舞い散る枯れ葉が数多。

 

「行くわよ!!ブラック!!」

 

「うん!!ホワイト!!」

 

 白黒の戦乙女達は数メートル離れた場所で平行に並ぶと互いの絆を表すようにして強く手を握り締める。ブラックとホワイトは空いている片手を上空に掲げる。

 

「ブラックサンダー!!」

 

「ホワイトサンダー!!」

 

 彼女達の頭上から黒と白の稲妻が迸る。黒の稲妻はブラックの左手に、白の稲妻はホワイトに落ちる。二人の体は虹色の光を纏い、その周りに黒白の雷エネルギーがスパークを繰り返す。

 

「プリキュアの美しき魂が!!」

 

 力強い声が木霊する。

 

「邪悪な心を打ち砕く!!」

 

 それに続くようにして彼女の声が響き渡る。

 

 互いに握っている手に更に力を込めて、片手を前方に翳して突き出した。

 

「「プリキュアマーブルスクリュー!!」」

 

 突き出した彼女達の片手から黒と白の雷撃が放出された。それは異形に向けられた必殺技。

 漆黒と純白の雷撃が螺旋を描いて融合し、異形に迫り来る。

 

「待ち望んだ」

 

 声が静かに語る。

 突如、影が雷撃と異形を遮る形で姿を顕す。

 その光景にプリキュア達は目を見開く。

 

「平成に転換したこの時代で仮面ライダーに変わる時代の守り人」

 

 彼女達は攻撃を中断しようと両手を離そうとするが影は

 その一連より素早く右手を異形に、左手を雷撃に翳す。

 

「だが、未完成だ」

 

 両手から鈍い光が滲む。

 そして、未知なる現象を彼女達は見た。

 

「ザッ、ザケンナー!?」

 

 漆黒の巨躯が灰色の砂に変わり果てる異様さを。白黒の雷撃が制御を失い、地面を幾多くも抉るが、その動きを静止させ、霧散を果たす。

 

「そんな……ザケンナーと私達の技が一瞬で敗れるなんて…!あの影は何者なの!?」

 

 戦闘で生じた汗とは別ベクトルの汗を流し、彼女達は身体を強張らせる。そんな中でも影は聳え立つ東京タワーの如く、不動を体現。一切動こうとはしない。

 

 だが、時は待つ事を許さない。

 曇り雲で隠された太陽の日差しが木々をすり抜けて、影だけにスポットライトを浴びせるとその姿を鮮明に彼女達の目に焼き付けさせた。

 

 それと同時に彼女達の思考は一瞬の隙間を生み出す。それほどまでに驚愕で有り得ない者だ。生きている事を実感させない無機質な戦士がそこには立っていた。

 

「…お会いできて光栄だ。プリキュア諸君」

 

 漆黒に満ちた下半身。白い装甲に覆われた上半身。煌めく黒い複眼。甲虫を思わせる短い金角。

 

 曰く、我等が祖先たるリントの言葉で戦士。

 霊石『アマダム』を力の源にした武装『アークル』で変身する者。平成仮面ライダーの原点。

 

 未確認生命体四号と人間に称された仮面ライダークウガは有り得ぬ世界にその一歩を踏み出した。

 

「……あんた、ドツクゾーンの仲間なの?」

 

 だが、そんな真実も情報も知りえないブラックはそれが生きている者か怪しく思いながらも真っ先に自分達の敵ではないかと問い質す。

 

「俺をあの組織だと勘違いされては困る。まぁ、少なからず因縁は存在するが」

 

「なら、身体から溢れる闇はどういう意図があるのかしら。敵でもその異質さは可笑しいわ」

 

 クウガの否定をホワイトが揉み消す。

 確かに『闇の五人』とは違う気配を感じるがそれを超越する程の闇と異質さを光の使者に転じた身体はピリピリと感じ取った。

 

「光に触発された『火』が感じ取ったのか、それともマザーの一端となった姿が俺を覚えているのか。まぁ、良い。質問に答えるならこの身が『究極の闇を齎す者』だからとしか答えようがない」

 

「『究極の闇』…」

 

「そうだ。光と表裏一体である闇。そして、君達が倒すべきであろう敵だ。さて、早速明かしたところで──戦いだ。心の準備が出来るまで待つが、逃げる事は許さない」

 

 精神を静寂から闘争に切り替える。

 その意思を読み取り、アークルが唸り声を上げる。

 

「先ずはお詫びを。本来であれば戦う筈のない君達を巻き込んですまなかった」

 

 思い浮かべるのは光と対を為す闇。

 原初の時代にて人間が火を手に入れる前に最も恐れた暗闇。

 

「──そして、自ら戦いに投じたその生半可な勇気に怒りを」

 

──意思と『天飛』が合致し、起動に至る。

 

 全身に浮かび上がる。

 身体にアークルを通じて全身に黄色のラインが沸き立つ。まるでアマダムから伸びる強化神経に類似していた。

 

「君達は嘗めすぎた。本来の戦いの本質は殺し合い。つまり君達が今やっている戦闘は死ぬリスクを背負っていると言う事だ。それは承知の故か」

 

 白躯が点滅する。

 白い身体を塗り替える様に薄暗い闇が覆い、鼓動する様に白から黒へと転換を繰り返す。

 

「更に言えば光の園の妖精よ。自らが勇者だと自惚れていれるが彼女等がいるからこそ、その光は役立っているのだ。彼女達と出会わなければ君達が野垂れ死にする事を考えた方が良い」

 

 話掛けられた妖精達は震えながら、身を隠した。その震えは地面に立つ彼女達にも伝わる。そして、暴風が巻き起こり枯れ葉が彼女等の視界を刹那に奪うと、姿は一変。

 

「戦う者としての責任を、死を承知とした覚悟を、普通な日常に一生として戻れぬリスクを、光の使者としての責務を……君達は持っているのか?」

 

 純白の肉体は不気味な漆黒を帯びて、より洗練され刺々しい肉体に変化。不完全さを象徴した角は完全さを顕す黄金の四角へと進化。身体の隅々に脈動する黄金のライン。

 

「だが、言葉で語らう必要はない」

 

 そして、清み渡る青空を想像させるブルーアイ。

 

「我が戦いで答えよ。闘争を以てして汝らの全てを見極めようじゃないか」

 

 究極の闇を齎す者(アルティメット)は深々と光の使者を見定め、青き深淵を覗かせた。




辻褄合わせが矛盾だらけになった時間軸。
幼児向けなのに設定が複雑過ぎて考察しずらい。まぁ、独立した世界だからしょうがないか!!と開き直り無理矢理にもくっ付けた。

音の少女達が扱う変身アイテムは人間に残った(エル)が声調の妖精の影響で進化した代物だとか(黒猫の妖精には先祖で人間と交わった妖精がいると言う複雑設定)

霊石と魔石がキングストーンのスケールダウン品だとか(尚、最高純までに高まれた両石が揃うと完成する模様)

グロンギ『ガミオ』が先代の『究極の闇』である存在で『ダグバ』に敗れて死んだ事とか。

は関係ないですね。はい(黒い笑み)


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第一話:『原点』

手直して再投稿。

ぶっちゃけると違和感だらけだったので、特に初代プリキュアが。


全てを歪ませるプレッシャー。

恐怖で顔が歪む感覚を私は感じた。

それ程に、漆黒を体現した存在が荘厳を奏でて私達の視界に佇んでいた。

 

鎧と見間違う完成された身体。

隅々に蔓延る血管に流れる、未知のエネルギー。

だが、私が危険視したのは戦士を覆うが如く揺らめく視覚化された闇の波動。

 

比較さえ烏滸がましいと言うように闇の波動は風に乗って、私達の顔の横を通り過ぎて行く。それを感じると共に悪感が再び走った。

 

数分経て、身体に血が通って冷たい身体を熱くする。恐怖で震えていた両手はプリキュアに変身して、感じられた高揚感で相殺され、ある程度は自由に動けるものとなった。

 

見え過ぎるのも考え物。

脳裏に過った言葉に思わず同意してしまう。

 

光の使者に変身した私達は人間の運動能力を軽々と超えていた。それは動体視力も同義と言えるだろう。

 

相手の呼吸法。眼球の動き方。関節の動かした方。次に移ろうとする動作。そして、癖。

目に見えるだけで隅々まで分かる眼力を私は時々は愛用していた。力任せなブラックとは違って。

 

だが、それが仇になるなんて数分前の私に蹴り飛ばして教えて上げたい程に後悔していた。

棒術を教えた“彼”も言っていたじゃないか。目に頼り過ぎたらいけないと。

 

その教えを身に染みて、私は横に並んでいたブラックをチラ見した。表情は髪に隠れて窺えないがそれでも右手を左肩を掴んで震える様子を見て私は安心を抱いた。

 

だが、今は思考に己を注ぎ込む事にした。今の状況は最悪の一言に尽き、逃げられる雰囲気では無い。もし逃走を図ったならば私達の全身に血が咲いてズタボロになるだろう。

 

だが、疑問が浮かぶ。

何故、先に仕掛けようとしない。

 

……彼自身の言葉が本当ならば、私達の力量と覚悟を問う戦いが目的で勝利に執着など無い。

そもそも、私達を倒すならば目の前に現れず不意討ちで事足りた筈だ。

 

ならばこの沈黙も言葉通りを意味した。

私達が戦える状態まで待っているのか。

ならば、尚更逃げられる可能性は───

 

「ホワイト…」

 

微かに聞こえた声が耳元に残響、思わず右横を見た。その目線の先には異形を鋭い目付きで見詰めるブラックが居た。

 

───フフッ。

 

思わず笑みが零れた。

そうよね。貴女は決して諦めるなんてしない。

壁があるなら突撃する勢いで叩き壊す私の相棒。

 

ならば私は此処で逃げられない。

逃げたら必ず後悔するから。

 

ならば、戦って異形を倒せる可能性を模索するまで。それには最低限の情報整理が必要。

 

武器は持っていない。

ならば、無手による近距離戦が得意なのか。

 

能力は相手を砂に変換する代物か。

ならば私達の技を無効化した現象は何なのか。

 

───出た結論は接近戦。

即決過ぎると思うが情報が少な過ぎるから仕方無い。

大体、目の前に立つ存在は簡単に自分の戦い方を教えてくれるほど、馬鹿ではない。

 

逃げる事が出来ないなら最初から接近戦で闘いを繰り広げるしかない。遠距離用の武器は持てず、唯一の技も拡散されたら意味が無い。

 

あの現象を引き起こしたのが彼の両手だと言うのなら受け止めるのでは無く、全力で回避する他無い。

 

「行くわよ…ブラック」

 

「うん!!」

 

決意の火花が飛び散る。

もう、後戻りは出来ない。

 

私達は斯々の思いで疾走した。

不動であった漆黒の異形は構えを取っていた。

 

───そして、激突。

 

 

■■■

 

仕掛けたのはブラック。

 

「ダダダダダダダダダダッ!!」

 

拳先を捉え、拳で弾く。

 

轟音に等しい打撃音。

軽快さを思い浮かべさせる動作をしながら、その実は死闘紛いな嵐の衝突。

 

右拳と左拳が擦れ合い、互いの頬を通り過ぎる。

 

後退する両者。

沈黙の空間が広がり、聞こえる来るのは風の息吹きが巻き起こす木々の枝の囁き声。

 

地面を蹴り飛ばし、接近。

七つの亀裂に分け隔てられた地面が盛り上がり、その荒々しさを象徴として岩石へと成り変わる。

 

真正面から来たる拳の嵐。

更に高められた豪力の一撃一撃は巨躯を吹き飛ばす程の威力を保持。生半可な力の持ち主で捌く事は不可能だろう。

 

「無駄だ」

 

──十九手目となる右脇腹を狙った拳が容易く捕まる。そして、謎の怪力で捩じ伏せられ、身動きが出来ない状態になる。顔に苦悶が窺えた。

 

「怪力に身を委せた攻撃法では格上には通用しないぞ。まぁ、汝の場合は彼女とのコンビでその欠点をカバーしているらしいが」

 

拳を離したと同時にブラックの視界からクウガは影の如く気配を遮断。首を振って、己の全方位を視認しようとはするが背中に生々しい感触を悪感と共に感じる。

 

だが、脳裏に過った死の可能性は突き放すような漆黒の手が否定した。小突かれた感覚と共に彼女の足取りは前進する。

 

「せいやぁぁぁ!!」

 

距離を開けたと同時に炸裂を予測させる蹴り。

それを身体を屈して回避。

結果は空振り。

 

だが、繰り出した右足蹴りを地で踏み締めて一回転し、左足での踵落としを披露。

脈動する両腕を十字に交差させた直後に接触。

地盤が揺れ、草木の葉っぱがパラパラ落ちて行くが漆黒の身体には傷一つさえ残らない。

 

「フンッ!!」

 

踏ん張りを訊かせて立ち上がり、ホワイトの脚を払い除ける。それを察知した彼女は数歩の後に距離を離す。

 

「力が足りぬ、成る程。やはり、お互いの欠点を補っているのか」

 

角をなぞり、彼は片手を前方に翳し、下に下ろす意味深な行動を取って超加速。その行動に裏があると見てホワイトが警戒心を向上させる。

 

そして、間合いが十分な位置に保たれた。

彼女は迎撃しようとした瞬間。

 

「ならば、これはどうだ」

 

───黒色を帯びた軌跡が虚空を裂いた。

 

切り裂かれたのは彼女が数秒前に立っていた位置。ホワイトの額に汗が滲む。その汗で視界が潰れないように拭うとクウガの手元を確認した。

 

「嘘……」

 

驚愕が口から漏れる。

紫の宝玉が嵌められ、刀身は黒色を帯びて黄金の古代文字が刻印された大剣。

人命を容易く葬り去る凶器の柄を手元に握り締められていた。

 

思考に停滞を求めるが黒刃は疾走する事で身体を無理矢理にも動かした。

現出したのは袈裟斬り、左薙ぎの二撃。

 

それを後ろに退いて回避。

だが、次の刃が振るわれる。

 

防戦一方。

今の状況を的確に表した文字が脳内に思い浮かび、それに苦虫を噛む。状況は好転しない。

 

下段に振られた刃を靴裏で蹴り飛ばし、勝負に持ち込む。体勢を最適化し、クウガを見据える。

そして、大地を蹴って弾丸と化す。

 

「セイヤッ!!」

 

クウガに近付き、蹴りを主体とした攻撃方で攻める。右蹴り、下蹴り、上蹴り、右蹴り、左蹴りとランダム性が容赦が無い蹴り技。しかし、刀身で悉く弾かれて行く。

 

「この程度の力で倒せると思ったか」

 

十六手目が刀身から接触したところを今までよりも力を込めて相手を押し出す形で弾く。すると彼女の身体は思わぬ力に対抗出来ずに木に貼り付けになる。

 

駆け出し、黒色の大剣を再構築して龍の黒棒へと変化。封印エネルギーが漲る一撃を木に倒れこんだホワイトに一突きを狙う。

 

(いいか、武器相手には武器で対抗するしなかい。うん?武器が無い……なら、)

 

頭に過る誰かの言葉、それに感化されて彼女は全身を動かす。

 

(───奪えば良い)

 

だが、その棒の予測方向を分かっていたのか目を開いて回避。そして、右手で棒を掴む。

ホワイトの行動に驚くがそれだけで終わらず棒を全腕力をクウガから取り奪い、それを薙刀の様に振るう。足元に転がった木の枝で構築した黒剣で防御。

 

「ダッ!!」

 

──背中からの衝撃。

笑みを浮かべた彼女はクウガの背中を打ち壊す勢いで殴り飛ばす。クウガは空中を跳び、大地に何度も打ち付けられるが刃を地面に突き刺して勢いを止めた。

 

彼女達は一斉に近付き、己の武器を振るう。

それに対して、刃を振るい前方への侵略を静止させて体勢を整える。

 

振るわれた右薙の棒術を宙返りでホワイトの後ろに着地して回避。直ぐに喉を狙った突きをするがブラックのアッパーカットで遮られる。

 

その瞬間を狙い、右足でブラックの足を払う。予想外の攻撃に彼女は尻餅を付く。

 

「ハアッ!!」

 

上がった剣を振り下ろし、脳天を真っ二つにする唐竹を決めようとするが黒棒が防御し急死に一生を得た。

 

拮抗。

甲高い火花が四散し、数度の打ち合いが暗い空間を照らす灯火となる。

 

数度の刺突を剣閃の横薙ぎで払う。

荒れ狂う武器同士の衝突は地面を抉り飛ばし、枯れ葉を無残な形に変える。

 

「ハァァァァ──!!」

 

そこにブラックが介入。

彼女の鉄拳が右肩に炸裂し、打ち合いを中断させ、右横に後退。それを好機と捉えてブラックが疾駆し拳を構える。

 

「ダダダダダダダダダダッ!!」

 

幾多の軌道を描く拳。

それを反らし、重い一撃を与えようとするがブラックの肩から現れたドラゴンロットが胸部に突き刺さり。その反動でクウガは後ろに退く。

 

そして、鳩尾にブラックの黒拳がヒット。更に仮面にドラゴンロットが激突しクウガの身体を何度も転がせる。

 

「ハハッ……先より動きが良くなってじゃないか。ならば、」

 

タイタンソードを杖代わりにして立ち上がり、不敵な笑い声を溢す。それに寒気を察知したが彼女達のお腹に添えられた手がそれを阻止する。

 

「──ギアを上げても良いだろう?」

 

宣誓と共に添えられた手に異様に力が籠った掌が彼女達を吹き飛ばして地面の砂土を撒き散らさせる。

 

「やっぱり、強い!!」

 

立ち上がる彼女達。

力量を一部だけ解放したクウガに対して、思い浮かぶ事はあるが口ではなく行動で示すため、再び駆け出した。

 

「まったく、諦める気配がないな」

 

「それはお互い様でしょ」

 

漆黒の右振り。

これをホワイトが蹴りで受け止め、その隙を縫うようにして脇腹に一撃を叩き込もうと豪腕を振るうが身体を左横にずらされ失敗。

 

棒術の一撃が仮面を捉えるが青眼の構えで放った薙ぎ払いが軌道をずらす。横から現れたブラックの打撃が横腹を叩き込もうと迫る。

 

右腕で防御。

同時に両手で斜め右横に振った剣閃がブラックを威嚇して、後ろの地面へと移動させる。

 

だが、ランダム性を宿した足取りでクウガを撹乱して迫り、脇に近付けると銃口に装填された弾丸の如く発射を待つ。

 

ロットを利用した棒高跳で威力を増した、蹴撃を兼ね備えたホワイトが再戦。

死角から迫る蹴翔がクウガの後ろ頭部を正確に撃ち抜こうと回転を加えて迫り来る。

 

前後から来る敵影。

それに対して、クウガは思考を繰り返してある答えの壁に到着するとそれを行動へと移行。

 

ブラックは自分が待ち望む結果を欲する。

脳天を狙った鋭い一撃。

それに合わせて、足技から繰り出される一撃。

同時の二撃。

 

──風が捻る音と共に足を通じて衝撃を感じた。

対抗していたのは漆黒の右手に有り得ぬ筈の二振りの黒剣、ブラックの拳も脳天を貫く前に刀身で受け止めていた。

 

彼は器用に拮抗し合う両者を弾き飛ばし、自身を軸に変えて剣を巻き込み一回転。刃の独楽(コマ)が彼女達の顔に襲い掛かる。

 

ホワイトは靴裏で軌道を反らし、ブラックは前髪の数本を代償として紙一重で回避。彼女達はクウガの間合いから外れる。それと同時にホワイトは落ちたドラゴンロットを広い上げた。

 

そして、奇襲。

再び迫ってお互いの得意技を実演した。

ブラックは風を裂いた鉄拳に。

ホワイトは棒を生かした薙ぎ払い。

 

「同じ手が──」

 

クウガは両剣を空中に投げて、無手の状態に。

拳を振りかぶり。

 

「二度も通用すると思うな」

 

地面に衝突させた。

地が割れて巨大なクレーターが出来上がるが彼の目的はそれでは無い。舞い上がる枯れ葉が狙いであった。

 

「くっ!!」

 

「枯れ葉で目眩ましを!!」

 

舞い上がる枯れ葉に視界を妨げられたブラックの拳は対象者に入り込む事が出来ずに空振りに。ホワイトは薙ぎ払いを炸裂させようとするが視界を奪われ敢えなく不発。

 

クウガは枯れ葉の雨から脱出して跳躍。

その後に空中に投げた両刃を回収し、交差させて分解、そして設計図通りに再構築。

 

天馬の黒弓。

それを構築し終えると空中で持ち手を鉉の様に力強く引く。持ち手が伸長し、銃口に空気が収束。収束された空気に瞬時に封印エネルギーを流し込み、封印空気弾を構築。

 

「フンッ!!」

 

──持ち手を離す。

空気弾が発射。狙いはホワイト。

一直線に迫る空気弾は枯れ葉の雨を吹き飛ばして彼女は迎撃しようて棒を深く振るう。

 

「はぁっ!!」

 

振りかぶり、接触させた。

 

「───!!」

 

激しい暴風が発生し、空気弾が彼女を巻き込んで爆発した。それと同時に木々の枝達に亀裂が走り分裂、更に地面の土が抉れる事態に発展した。

 

「ホワイト!?」

 

悲痛な叫び声を上げたブラックは灰色の豪腕に捕らわれ、身動きが一切取れない状態に変化。彼女はこの異質な腕を作り出した仮面の戦士に目を向けた。

 

「これで一人。残念───覚悟が足らぬ」

 

剣を携え、青い複眼を鈍く光らせるクウガ。

黒色の大剣には更に黄金が纏わり付いて、刀身が増していた。

 

「っ……!!」

 

じわじわと蝕む恐怖に比較的にならない怒りを表す歯ぎしりを起こして、戦闘衣装に皺を付ける程に握る締める。

 

肩に剣を担いで、足音を鳴らして間合いを詰め寄せるクウガ。青い瞳がブラックの表情を写す。

 

「……私をどうするつもり」

 

問う。

近付いたクウガの目的は何かと。

それは酷く冷静で先程のブラックの様子とは違い過ぎた印象を与える。

 

「出来ればその人命を刈り取りたくは無い。故に最後の交渉を、話し合いを」

 

「ホワイトをあんな風にしたのに?」

 

流れるように、そして違和感を覚える会話。

クウガは殺気を納めていた。

ブラックも同様であり、冷静な目付きでクウガを睨んでいた。

 

「あれは汝と話し合いをするため。既に彼女には断りを入れられた……だが、汝はどうだ。私の話を聞くか?」

 

「話によっては殴り飛ばす」

 

「随分と荒々しい答えだ……単刀直入に言おう。その得体の知れない力を捨てて、普通の日常に戻る気は無いか?」

 

甘くて魅力的な誘惑。

有り得ないIFの光景が彼女の道を遮ろうとした。

 

「ありふれながらも愛しい時間に。妖精は預かろう、闇の組織も喜んで潰そう、釈然だが光の園も救おう。そうすれば汝達は光の使者の使命から解放されて───」

 

「────嫌だ」

 

否定の言葉。

交渉は決裂を意味した。

 

「……どういう意味だ?」

 

「──私達は別に使命感でプリキュアになったんじゃない。私達はあんたが言う日常のために戦っているの。大体、此処で逃げたら女が廃るわ」

 

「……交渉決裂。まぁ、これが交渉と言えるか分からないが漸く分かった様な気がする。では、さようならだ。キュアブラック」

 

振り上げる紫刃。

陽光に照らされた剣は彼女の視界を一変に覆う。

 

「汝は道を間違えた」

 

振り下ろされた閃き。

彼女を真っ二つに切り裂こうとする刃は脳天寸前までには吸い寄せられていた。

 

「───私“達”が何時、道を間違えたと言うの?」

 

──投擲飛翔。

ブラックは肩を通り過ぎた物体と空気が裂ける音を聞いた。そして、クウガの胸部に何かが衝突し後退りする姿を見せた。

 

「御生憎様。方向感覚ならちゃんとしてるわ」

 

聞こえる声。

ブラックはその声が発せられた向きに顔を動かし、クウガは自らに飛翔したドラゴンロットを拾い上げた。

ドラゴンロットをモーフィングパワーで原子として分解して、土煙が晴れた地面を見詰めて自らを攻撃した彼女を探った。

 

「まさか、空気弾を地面に叩き付けたのか」

 

そこには砂塵で汚れた不敵な笑みを浮かべたホワイトの姿があった。

 

「ホワイト!!」

 

ブラックを拘束していた豪腕を粉々にして脱出。ホワイトに接近し彼女の安否を確認した。

小さく漏れる呼吸に土で汚れた装飾衣装を動かす仕草。確かに生きていると言う実感の元に抱き付こうとするがホワイトの目線がそれを静止させた。

 

「常人が死ぬ程の一射。それを受けても尚、立ち上がるなんて不気味でしょうがない。全く、マザーも余計な物を作り出したものだ」

 

紫色の剣を塵散させ、仮面越しで彼女達を見詰めてくぐもった声で話掛ける。

 

「さてどうする、プリキュア達。そちらは満身創痍でこちらの体力は万全─────汝達を容易く葬り去る事など本気を出せばコンマ数秒も掛からない」

 

「あんたね。私達を嘗めて───」

 

「──実際の結論を言ったまでだ。キュアブラック」

 

青く滲む眼光と具現化した殺意の衝動。

その迫力はブラックを騙すには十分であった。

 

「だから、逆転の一手を与えようとしているのだ。私と汝達の差を一気に縮める裏技。私は片手一つ、汝達は最高の力で。どうだ、良い提案だと思わぬか?」

 

コテンと首を傾ける仕草は不気味さをより引き立てる。ブラックはその提案を無視しようとするが、

 

「乗ったわ」

 

「ホワイト!?」

 

突如のホワイトの言葉に仰天。

思わずブラックは否定を口に出した。

 

「何を言ってるの。これが罠だって可能性が──」

 

「なら、今生きている私達は何?もし彼が私達を殺そうとしたなら、ザケンナーを倒して油断している私達をあの剣で殺せた筈よ。何よりもあの宣言を忠実に守ったて事は嘘を付くような人じゃない。だいたい、私達を心配している時点で悪い人じゃないでしょ」

 

「……私は別に良いけど、ホワイトはそれで良いの?」

 

「えぇ、正直言って勝てる可能性なんてゼロに等しいけど諦めないだけマシ。だったら、抗って足掻いて戦い続ける事がよっぽど私達らしいわ」

 

「なら、やろうかホワイト」

 

「分かったわ。ブラック」

 

決まったら即決。

ブラックとホワイトは距離を置くと並列化して両者の手を強く手を握り締める。そして、空いている片手を天に掲げる。

 

「あんたの賭けに乗って上げる!!」

 

「それでも負けた気にはならない!!」

 

彼女達の頭上から黒と白の稲妻が迸り、黒の稲妻はブラックの左手に、白の稲妻はホワイトに落下。二人の体は虹色のオーラを身に纏い、その周りに黒白が稲妻が満ちて閃きを何度も繰り返す、

 

「何度だって!!」

 

力強い声が木々を揺らす。

 

「立ち阻もうとも!!」

 

続くように彼女も唱えた。

 

「ハァァァァ!!」

 

クウガは血脈を象ったラインに流れ込む封印エネルギーの全てが右拳に集束。それは視認化出来るまで強大になり彼女達を威圧した。

 

震える身体を誤魔化して互いに握っている手に更に力を込めて、片手を前方に翳して正拳突きのように大きく突き出した。

 

「「っ!!───私達は絶対に諦めない!!」」

 

───突き出した彼女達の片手から黒と白の雷撃が地面を抉り、螺旋を描いて融合し、クウガに荒れ狂う。

 

成る程、それが汝らの覚悟か(・・・・・・・・・・・・・)

 

右足を深々と地に鳴らす。

左足を前に出して土を良く踏み付ける。

 

脳内で描く想像図。

血肉を切り裂くようにナイフの様に。

人を殺し切るように刃物の様に。

封印エネルギーを研ぎ澄ませる。

 

やがて、拳は刃の如く鋭さを完全とする。

小さく息を吐く。

それだけで思考は目の前に集中。

ただ、迎え入れる事だけを考える。

 

迫る、迫る、迫る───そして、

 

「ライダーパンチ」

 

──激突。

振り翳した漆黒の豪拳と雷撃の奔流。

木々が散々する雷に貫かれ、地面に転がる石は粉々に砕かれ塵へと還る。

 

肉が焼け焦げた異臭がする。

その感覚にクウガは仮面の奥でほくそ笑んだ。

 

「くっ!!」

 

「ホワイト!!」

 

一方の彼女達の状態は真逆。ザケンナーの戦闘ダメージの蓄積も相まって後ろに押されていた。終いにホワイトは膝を付く始末。

 

「大丈夫…だから!!」

 

全身に稼働する苦痛を我慢して、立ち上がって、ブラックを慰める。それと同時に威力を増大させた雷撃。

エネルギー同士の衝突は波紋が広がる現象と同じく拡大。だが今尚、終わる事は許されないでいた。

 

「「ハァァァァァァアァァァア──!!」」

 

最後の力を振り絞った雄叫び。

その声に応じて雷撃は勢いを良くして放出威力を増大させた。その後───常闇を照らす爆発が彼女等を包み込んだ。

 

原点同士の戦いは幕を下ろした。

 

 

■■■

 

 

「フッ!!」

 

木々の隙間を抜けて樹頂に辿り着いた。

 

目に写ったのは常黒の夜空。

既に光は途絶え、星々が煌めく暗闇。

 

彼女達の傷や怪我は超能力で直し、家にテレポートさせて寝かせた。

傷だらけの舞台も修復し、白い砂に成り果てた怪物も一応回収した。

 

そして、彼女達を狙った神の御使いたる光輝の豹(パンテラス・ルテウス)の軍団も始末した。

 

「彼女達の恐怖につけ込んで神柱を終わらせようとしたが、恐怖を呑み込んで、覚悟をより強固とした」

 

勝負には勝って、そして負けた。

 

第一案は『究極の闇』による精神的戦意喪失。

だが、二人がお互いの心を読み取り、覚悟を汲み取った事で跳ね返させた。

 

第二案は圧倒的な力量による肉体的戦意喪失。

しかし、これは第一案が失敗した時点で成功する確率は0に等しい。……俺がそう言う事は苦手だからだ。

 

躊躇いなどなかったら『凄まじい戦士の目は青では無く黒』に切り替わる筈だ。切り替わっていないところを見ると俺は随分と甘くなったらしい。

 

「未来はこれでより強固となった。これが吉と出るか凶と出るか」

 

白い息が暗闇で一層際立つ。

数秒立つと言葉を紡ぎ出す。

 

「異形を殺す俺と怪物を浄化する彼女達。分かっていたが此処まで違うとは。俺の戦いもこんな壊すやり方じゃなかったら良かったのに」

 

だが、根本的な部分は同じだ。

だから、心配することなど無い。

 

「……彼女達に失礼だな。全く、何億年と過ごす内に彼女等に感化されたか?フンッ──有り得ない」

 

自嘲。

自らの罵る言葉は風に揺れる木々の音に書き消されたが彼の顔は晴れる事を許さなかった。

 

「……君達は気付くべきだ。世界の守護を担がれた戦士の末路を。その道に君達は躊躇わず踏み込んだ。もう、後戻りは出来ない」

 

少女達がいずれ知る事となる誕生経緯。

自らのルーツを知らない彼女達が真実を知った時、どんな感情を抱くのかな。

 

「狂い哭け、君達の末路は英雄だ」

 

だが、変わらない。

全てが遅すぎたのだ。

 

───風が吹いた。

 

……どうやら、俺は風にとことん縁があるらしい。




一応、戦闘描写を付け足しましたが難しいですね。
これで違和感を払拭出来ればいいなと思います。

後、次回はハートキャッチ編を出したいと思います。主な内容は原作終盤から。


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第二話:『約束』

昨日に続き投稿。

今回は戦闘描写は無しです。


 AD2010年

 

「……此処が」

 

 パリ郊外山中の古びた研究室。

 研究資料と研究道具が乱雑に踏み荒らされ、埃に埋もれている光景は人間の立ち入れの無さを物語る。

 そんな独特な空間を歩み出し、目的の代物を探すため行動する。

 

「あれから数年。家族の元を去った君が人類の滅びに加担するとは……人類の幸福を願った君を知っている身からすれば信じられないよ」

 

 数式や日本語の羅列に覆われた資料。埃を被ったそれを手に持って書かれた内容を目に通す。

 ある程度の内容を読み取ると思わず強く握り締めて多数の皺を生じさせ、目を伏せてしまった。

 

「心の大樹解明には至らなかったか……天才的な頭脳でも始まりから見違えたならば意味が無い」

 

 資料には心の大樹の研究調査成果が隅々まで万年筆によって書かれていた。

 ──だが記された情報は何れも決定打に成り得ない。それもそうだ、彼は着眼点を間違えてしまったのだから。

 

「さて一通りの研究の進み具合は把握した。次は此処で何があったかだな」

 

 資料を古びた机に配置、それに向かって手を翳して目を瞑る。

 ──引き起こすは超能力と呼ばれる現象。

 非科学、魔術、空想。

 人間が引き起こした有り得ない事象の枠組みを総じて超能力と呼ぶ。

 

 私がその中の一つとして使用を試みるのは共感能力の亜種。物に汲み取られた感情を読み取る力。

 物に汲み取られる感情は微小だ。しかし溜まりに溜まってしまえばそれは一種の命を得てしまう付喪神現象へと至る。

 

 これはとある実験中に超能力と試した時に判明した事柄、と言ってもこの超能力事態は火の天使に授けられた恩恵(呪い)だと知っている身からすれば思わず笑みを浮かべてしまうよ。

 

「後悔、焦り、怒り……悪感情のオンパレードだ。しかし、人間の感情は何時見ても恐ろしい。だから、悪魔にも利用されやすいのだが」

 

 追い詰められた人間は冷静さを失い、何かに縋り付こうとする。

 最も分かりやすいのは神話や伝承に登場する神格存在だろう。最高位の偶像、人間が崇め奉る姿が何よりの証拠と言っても良い。

 

 だが、月影英字が縋り付いたのは悪魔と相乗りした砂漠の王。家族を殺害、数々の惑星砂漠化を成し遂げた堕ちた者。

 嫌な話だ。

 巡り巡った奴等の過去が反動として無関係な人間に背負わされるなんて吐き気がする。

 砂漠の王もその被害者と言うならば尚更、何せ奴に力を与えたのは闇の巨人の構成部分の一つなのだから。

 

 私の心中は最悪に尽きた。

 

「本当に最悪だ……月影ゆり(・・・・)のためにも私のためにも未来修正が必要だ」

 

 千里眼で視た分岐点の一つ。

 悪意に踊らされた月光の戦乙女の末路へ至る、最悪の可能性。

 未来は曖昧、それ故に無限に等しきフィルム(未来)を私は見続けた。

 

 それは安息して逝った妖精の消滅であった、悲しみに涙を溢した母親の姿であった、敵であった筈の妹との死闘であった────そして全ての元凶によって殺害された父親の後ろ姿だった。

 

 嗚呼、確かに彼女は絶望を乗り越えて愛を謳う未来は存在した。だが、それは無数に張り巡らされた樹枝の一つだ。

 

 もし彼女が憎悪に堕ちる未来が確定したのであればこの青い惑星は地獄と化す。

 友情、愛、勇気などの言葉では片付けられない。実際に憎悪に至る可能性が憎悪を乗り越える可能性よりも広がっているのだから。

 

「酷い話だ。救いなんてまるで無い三流舞台……真実を知る者ではないと回避出来ない正真正銘のバットエンドへの道のり。本当に余計な事をしてくれたな、我が友(馬鹿野郎)

 

 握り締めた手から血液が垂れる。

 滴る血は床に水溜まりを作り出した。そこに映る私の顔は憤怒に染まっていた。

 

「……終わりにしよう。これ以上、君達の因縁(神様)のせいで人類が災厄に犯されるのは真っ平だ」

 

 感情を吐き捨てた私は一冊の使い振るされた本を机から発見すると片手で持って、ポケットに仕舞い込んだ。

 これは彼女にとっても彼にとっても必要な代物。

 真実を知るための一手。

 

「──だから、邪魔をしないで貰えるか」

 

 振り替えた先には不気味に蠢く外惑星より飛来した侵略者。曰く、戦闘員スナッキー。

 何処ぞの悪の組織を真似た様な格好に吐き気と苛立ちが全身を巡る。

 どうやら奴等は彼の元研究所の監視役を引き受けているらしい、御苦労な事だ。

 

 これから自分達が破壊される事も知らずに。

 

「……邪魔をするならしょうがない」

 

 手に取って触れる硬い感触。

 無機質で奇怪な形状をしたそれを腰部に当てる。すると黄色の帯が腰に巻き付き、固定。

 手を離し、親指と人差し指で持つ切り札(カード)を奴等に見せた。

 描かれているのは破壊を意味する紋章、私自身も躊躇いそうな地獄の片道切符。

 

覚悟は良いか(Are you ready )?」

 

 正体は長い因縁の末に開発された正義の系譜(仮面ライダー)残滅兵器、十年紀の意味を持つライダーシステムの初期型。

 資格ある者を破壊者として祀り、並行世界で闘争を繰り返す仮面騎兵達の力を操り、法則を捻り曲げる、残滅を齎す災厄の象徴。

 

「……そんなに命令が大事か、良いだろう」

 

 人は幾つもの仮面を被っている。

 本性を隠し、本音を隠し、本当を隠す。彼も今や仮面を被り、自らの心を隠している。

 

「──此処が貴様らの廃棄場だ」

 

 故に私も第二の仮面を被る。

 

「……変身」

 

『KAMEN RIDE DECADE!!』

 

 月影英字(サバーク)博士、君の仮面を破壊するために。




次回:『再開』
世界を破壊し、全てを繋げ。


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第三話:『再開』

昨日に続き投稿です。

これで連続投稿は品切れです。


「……」

 

心の大樹に一つに纏めた花束を。

亡き妖精には黙祷を。

 

月影の研究室から心の大樹までの移動はそう掛からない。しかし、邪魔な砂を掃除していたせいで時間が掛かってしまった

 

「あの時から数年……早いものだ」

 

合掌の手を離して、目の前に聳え立つ大樹に触れる。神秘さに溢れた大樹は静かに枝や葉っぱを揺らし、静寂ながらもそれに相応しい音楽を奏でてくれる。

 

「……居るのだろ。出てこい、コロン」

 

そんな時間を楽しんでいただが、背後を振り返って私はその存在を視認する。

非現実な存在。一言で表すならばそんな言葉だろう。何故なら彼は人類が空想と仮定した妖精なのだから。

 

『──久し振りだね』

 

妖精から声が発せられる。

 

心の大樹の妖精コロン。

嘗てはプリキュアのパートーナーであり、とある戦闘でプリキュアを庇い死亡した存在。

だが、その魂は大樹に回収されて幽霊として現世に滞在している。

 

その証拠に彼は透明さを浮き彫りしながら、浮遊している。そんな彼は私の目の前に近付くと険しい顔付きで見詰めている。

 

『……遂にこの日が来てしまたんだね』

 

「そうだな…真実を話す時が遂に来た。ムーンライトは君の死を受け入れ、仲間を得て、身体的にも精神的にも成長を遂げた。ならば今しかあるまい」

 

私達の思惑を知らぬ者なら首を傾げるだろう。

だが、我々は共犯者。

この会話は私達の最後の確認を意味する。

 

『……正直、不安で堪らないよ。ムーンライトがこの真実を受け入れた上で先へと進めるかどうか』

 

「確かに不安だろうな。だがその上で成功させないといけない。これ以上彼女に背負わせてみろ。今度こそ壊れるぞ?」

 

『……ハハッ、そうだったね』

 

恐怖と不安がごちゃ混ぜになった感情が超能力を使わずに私に伝わる。身体と言う殻に遮られていない影響だろう。

確かに今回の件でそうなるのは当たりだ。

一歩間違えれば彼女が再び、大切なものを亡くしてしまう可能性があるんだから

 

だが、それ以上に彼女を信じるべきだ。

……私の言えた事じゃないが。

 

負の感情の嵐が止まる。

どうやら決心は着いたようだ。

 

『なら頼んだよ、ムーンライト…ゆりを』

 

「あぁ、承った」

 

私の答えを聞くと妖精コロンは黄金の粒子へと変換されて、心の大樹に回還する。その光景を私はただ眺めるだけだ。短い会話だった。

私は大樹から離れ、歩もうとした。

 

───君の旅路に幸あらん事を。

 

「……馬鹿。私の旅路に安らぎなんてないよ。幸が有ったならば既に私は死んでいるさ」

 

最後に聞こえた声に反応するが其処には花の中心に揺れる大樹の様子しか映らない。

そして、数十秒後。

私は白い帽子を被って、花の大地を歩み出す。

 

この地での用は済んだ。

残るのはもう一つの再開のみ。

 

後方で自然が蠢いていた。

燦々と降り注ぐ太陽の日差し。

花達を揺らし続ける風の唸り声。

そして、葉っぱの擦れ合う心地良い音。

 

どうやら大樹達は何処までも俺を送り出してくれるらしい。その事に無意識に笑みを浮かべて私は歩き去る。

 

今日は良い一日になりそうだ。

 

 

■■■

 

 

寒い吹雪が伝わる町『希望ヶ花市』

聖なるクリスマスが近付く日の中で四人の少女達は賑やかな風景を楽しみながら歩んでいた。

 

「お祖母ちゃんが言うサプライズは一体何なんでしょうか?どう思いますか、ゆりさん」

 

「分からないわ。もしかしたら砂漠の使徒関連の話かも知れないわ。最近になって動きも活発化しているから……」

 

「もぉーー!!そんな暗い話よりもっと明るい話にしようよ!!例えば、新しいプリキュアが誕生しただとか」

 

「えりか、そんな突拍子な話じゃないと思うよ」

 

『えりか』と呼ばれた少女は黄色の髪をした同じ年の少女に突っ込まれ、顔を風船の如く膨らませて、不貞腐れる。

 

その光景を見て、ゆりと呼ばれる女性はクスクスと笑う。その隣に居たマゼンタ色の髪にツインテールをした少女は呆れ果てていた。

 

「ちぇっ!!せっかく盛り上げようと思ったのに!!」

 

「───そんな大声を出すなよ。お前達がプリキュアの関係者だって事がばれるぞ」

 

突如として低い声が彼女達の空気を乱し、直後に黒い影が彼女達の視界を覆う。

視界に写るのは黒いコートに身を包み、白い帽子を被った骨格的にも声質的な普通な男性。

……彼女達の目の前に顕れ、プリキュアと言う単語を喋りさえしなければどれだけ普通であったか。

 

「貴方、何者!!」

 

いち早く反応したゆりは構えを取り、三人の少女を守ろうとする。

気配を直前まで気が付かせない程の手慣れ。

言葉から溢れたプリキュアの単語。

それだけで彼女にとっては脅威になり得る者であり、警戒心を顕にした理由。

喪う事に彼女は人一倍に敏感なのだ。

 

「そんな警戒しなくても良いだろうに?」

 

「御生憎、貴方を警戒しない理由が無いわ。貴方の様な存在を何度も見た事あるんだから」

 

ゆりが放つ言葉は冷徹さを秘め、言葉による牽制を生み出していた。

男性は表面からは気楽そうに。だが、裏側は真剣さを内包している事に彼女は気が付いた。

 

「ふむ……ならば、私自身を教えよう。君ならきっと分かる筈さ。警戒するだけ無駄だとね。ゆり」

 

「!!」

 

ゆりは警戒を強め、男性は帽子に手を取る。

これに数秒後。

しかして、その数秒後に認識を変革させる。

 

「久し振り、数年分ぶりかな──」

 

帽子に隠された素顔が明らかになり、

 

「──ゆり」

 

ゆりは驚愕を顕とする。

男性の右手に持った白い帽子は吹雪に晒され、空中に舞い上がる。

運命の分岐点まで残り数日。

彼女が選ぶのは生存か死亡か。




戦闘パートは後二話を越えたら、出せると思えるのでそれまでお待ちください。


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第四話:『真実』

連続投稿は品切れだと言ったな。
……あれは嘘だ。


キュアパレス。

幻想の自然景色と雲上に存在する境界の城が入り混じった試練の間。伝説が集いし、記録の地。

 

そんなキュアパレスに配置された城内で私と紫色の髪を輝かせてムーンライトが歴代守護者達を象った銅像に見守られ、立ち尽くしていた。

 

「……どうでしたか、数年間の旅は?」

 

話を振ってきたのは彼女の方だった。

声は凛とした物だったが弱々しい声質から緊張している事が分かる。

 

「あぁ、休憩を取れるぐらいには満足出来た」

 

相対する私は簡潔に、だが感情を込めて彼女に伝える。その一部始終を目に留めた彼女は静かに笑う。

 

「父の行方は分かったんですか?」

 

躊躇っていた本題を彼女は口にした。

それに驚き、彼女の顔を見詰めるがその顔は真剣みを帯びて並大抵の事なら動じないと言いたそうだ。だが、それは上面であり本当は恐くて堪らないと私には何故だか理解する事が出来た。

 

「そうか……気付いていたのか、サバーク博士の正体が月影博士。自分の父親であることに」

 

沈黙を貫く彼女、それと同時に肯定を表す。

 

「君にこれを見て欲しい」

 

私はポケットを探り、手に持って、取り出す。

取り出したのは使い古された日記。

随分と染みが媚り付いた代物だが、彼女にとっては深い逸品だろう。

 

ゆりに見せると驚愕を顔に表していた。

実に分かりやすい。

 

「……父さんの日記」

 

「彼の研究室から見付けた物だ。この日記には彼の日常や研究の進み具合……挫折と砂漠の王との契約が淡々と書かれていたよ」

 

彼の日記をゆりに手渡す。

それを持つと彼女は食い入る様にして日記のページを淡々と捲り、脳内に自身の父親の文字と感情を脳内に刻み続けている。

 

「……っ!!」

 

唐突にムーンライトの目から涙が零れる。

涙を流す理由は父親の無事か、それとも敵になってしまった悲しみか……或いは両方か。

 

数分後。

彼女の涙を私のハンカチで拭き取って、落ち着きを取り戻した。涙跡が目立つが彼女の為にも気にしない方針とする。

 

「君にもう一つだけ話すべき真実がある。ダークプリキュアについての出生についてだ」

 

髪で隠れた目で私を視界に納めている事が分かる。そこには恐怖が渦巻いていた。

だが、私は知らせなければならない。

 

「───予想は突いているだろう。ダークプリキュアは……君の細胞によって作られた人造人間であり妹だ」

 

──時間が止まった錯覚に陥る。

余りにも、余りにも酷い真実に静寂を選択した。だが、硬直した時間が直るまで私は待ちきれない。次の言葉を吐き出そうと口を動かそうとした時、ゆりは動いていた。

 

「ッ!!」

 

彼女の足取りが覚束ない様子を見た。

直ぐに彼女に寄り添い、支える。

どうやら、思考が情報量の多さに処理が追い付けないよう様子。私は一旦、彼女を休ませようとするが腕を掴まれた。

 

「続け、て下…さい。私は真、実を知、りた…いんです」

 

たどたどしい言葉。

何がそこまで彼女を突き動かすかは私には分からないがその言葉に籠められた覚悟に呑まれ、言葉を続く様にして再生させる。

 

「──更に近いうちに来る未来。君が決着を告げるためには父親と妹と戦う事は必然だ。もし真実を知らない状態で倒してみろ」

 

ムーンライトを通じて見通した未来。

仮面の中で見えた父の顔、静かに眠った敵だった筈の妹、再開した父親の拒絶、砂漠の王に殺された父親。

 

そして、憎しみに塗り潰された彼女の顔。

 

「何もかも遅すぎた事になる。君は家族を傷付けた罪悪感を一生背負う事になり、父親は目を覚ますも自分の娘達を戦わせた事に自責の苦悩に陥り、何よりもダークプリキュアは最後の戦闘で確実に消滅する」

 

「……ダークプリキュアが…消滅?」

 

「……元々は対プリキュア用で急造で作られた戦闘兵器。薬品投与による調整と無理矢理の成長。身体にガタが来ていても可笑しくは無いだろう。そんな状態で戦闘をしてみろ。身体が耐えきれずに死ぬぞ」

 

父親に抱かれ、光の塵と成った最期。

あれは肉体の限界値を超えた故に起きた現象だろう。嘗て、新世界創造を目指した黄金のソルジャーと紫のローグが消滅した現象と同じ。

だから、その原理を察する事が出来た。

 

「戦闘の回避は諦めろ。彼女がそれを許すと思うかい?彼女と戦い続けた君達なら分かる筈だ……あれは玩具が側に無いと眠れない幼子と同義。月影博士を取り戻すなら戦闘は避けきれない」

 

話し合いによる相合理解など不可能。

彼女は愛に飢え、大切な人を手離したくない幼子なのだから。

 

それを聞いて、彼女は私の黒コートを強く握り締める。まるでその姿は雷に怯えた幼児。

そんなところまで似ているとは思わなかった。

 

「過去は君達親子を逃さない。君がプリキュアになった時点で、彼が砂漠の王に付き従った時点で戦う運命だった」

 

だから、選ぶしかない。

 

「月影ゆりとして問おう。悪魔と相乗りする勇気、君にはあるかい?」

 

それは始まりの夜。

地球の本棚に接続出来る権利を持った青年が、死んでしまった師匠に託された白い帽子を被った青年に問うた言葉。

 

「君の父親は私に君を守ってくれと言った。だがそれでは不十分だ。君を守るためには全てを取り戻さなければならない」

 

自分の娘を泣かせたんだ。

 

「今だけ、私は君だけの悪魔となろう。これは君の父親の約束では無い、私の意思だ。故にもう一度問おう」

 

覚悟は出来てるだろ。

月影博士。

 

「悪魔と相乗りする勇気……君には在るかい?」

 

 

■■■

 

 

砂の惑星と定義された星。

悪魔と契約した王が父親を侮辱するために開始された『惑星砂漠化』は地球と人類を蝕んでいた。

 

タイムリミットは数時間。

そんな数時間で抗おうとする伝説の戦士と呼ばれる四人のプリキュアは侵入し、大本を叩こうと進行していた。

 

「私は貴方を倒し、『先』を貰う」

 

「私は貴様を殺し、『後』を戴く」

 

戦場の火蓋と化した砂漠の惑星にて最期の姉妹喧嘩が始まろうとしていた。

誕生した姉は、未来の為に。

誕生してしまった妹は、過去の為に。

 

「時間は掛けられない、私も介入しよう」

 

その空間に介入を試みる者は、仮面を被り、白銀の髪を舞い上がらせる、悪魔と相乗りしてしまった彼女達の父親だった人物───サバーク博士。

 

「──いいや、君は私と戦って貰おうか。サバーク博士」

 

「誰だ!!」

 

隠していた姿を現出。

ゆりの妹は驚愕を顕とした上で憎悪を委ね、月影は仮面に隠れているがそれを粉々にして表情を無理矢理にも見よう。

 

「まさか此処に来るなんて」

 

「悪いが彼の方は譲らせて貰う。私だって散々に迷惑を掛けられたんだ……この鬱憤を晴らさないと気が済まないんだ」

 

ゆりは私の言葉を聞くと笑みを浮かべる。

そうだ、それで良い。

父親を救う代償は、支払われた。

ならば私達も仕事を全うしよう。

 

破壊の帯を取り出し装着。

ベルトは自動的に固定、いつも通りに手札は私の手元に現れる。しかして、その手札に描かれた戦士は破壊では無く、『永遠』であった。

 

実に面白い組み合わせだ。

偶然や運命さえも凌駕する、必然さを感じるよ。

 

「どうやら、必然的に──」

 

『KAMEN RIDE』

 

白い悪魔の手札を認識。

破壊を齎す帯が静かに主人を待ち望む。

 

「─俺は切り札を惹いたらしい」

 

『ETERNAL』

 

破壊の宣誓。

その後に両手は動き、バックルを元の位置に戻す。赤光が照らし、黄金色の電流が散らばり、白い粒子が周囲を取り囲む。

 

周囲の粒子が全身に集束。

新たな仮面鎧を構成し粒子の全てが尽きし時、赤光と流電はその役目を終えて赤い波動を発生させた。

 

純白に覆われた全身、両腕に帯びた燃え滾る赤炎の刺青、悪魔の如き三叉角、黄金色に輝光する複眼。

 

「さぁ、地獄を楽しみな」

 

変質した第三の仮面で悪魔の契約者を見据え、サムズダウンを告げた。戦火が切り下ろされた。




これで本当の本当に最後です。
次回の投稿は三週間後かな?


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微睡みの夢 踏み躙るprologue

劇場番とVシネを主な軸とした番外章。
本編にも深く関わります。

一話目はあのお方から。


無機質で生活観が漂わない一室。

研究資料、研究材料、機械、椅子と机が覆い尽くしていた。そんな中心で立つのは私。

 

「“私自身の才能に不可能は無い”」

 

手に保持する懐中時計に似たデバイス。

紫と黒で塗装、年代は2016年、表す紋章は幻夢の証。それを強く握り締めて横に振るう。

 

「なら、証明して下さい」

 

瘴気がウォッチから排出。

排出された瘴気は一定の空間に留まり、一つに集約。やがて変形して人形に姿を変えた。

電脳変異ウィルス『バクスター』

或いは2000年問題の淀み。

 

「?」

 

生まれた生命は産声を轟かせず、私を見詰めて首を傾げる。無垢なる者……だが私はその生命を踏み躙る行為をやり遂げなければならない。

 

『GENMU』

 

ウォッチを180度回転、絵柄が変わる。

天面上に配置されたボタンを押して起動。

室内に響く無機質な音声はこのウォッチの名前を表し、この世界に名を知ら示す証明となる。

 

「微睡みから醒めて下さい」

 

顕現化したバクスターに起動したそれを右腕ごと捩じ込んで、体内に設置。刹那に広がる波紋の如き現象を無視して右腕を引っ張って脱して、その場から数歩離れる。

 

『!?』

 

数秒後。私の目の前でバクスターが金属製の床に倒れ込み、苦しみを表現するように転がり回る。人が全身に燃え上がる炎を鎮圧化しようとする無意識の行動に類似していた。

 

───浸食。

体内のウォッチがバクスター単体の自我を上書きし、その身体さえも作り変えようとする現象。

簡単に言えば私の体内に存在するアークルが及ぼす現象と同じ。

 

『!?!?!?!?!?!?!?』

 

立って、震え、全身を揺らし、次の一秒が刻まれた時には幾つかのノイズが迸る。

それは時間が経過する度に多く広がり、やがて全身に行き渡る。

 

「……私は」

 

ノイズが覆い、姿は漆黒の帯に包まれた。

だが一瞬の内に帯は肉体から離れ、拡散を遂げた。

 

「私は───」

 

顔立ちが整った冷静な男性だと誰もが第一印象と抱くだろう。目を閉ざす姿は知的さを内包したまま一種の芸術にも匹敵する美しいを秘めるだろう。

 

「不滅だ────!!」

 

自我讃歌の奇声、最大限まで開かれた眼、全身で表された荒ぶる姿。その知的さと冷静さの第一印象を見事までに崩壊させた。

だが私はその姿に安息の溜め息を吐き出した。

実験は完了した。

 

靴を地面に接触する旅に音を細かく鳴らし、狂喜乱舞する彼に近しい距離まで詰めると肩を数度叩き、視線を私に誘導させる。

 

「久しぶりですね。檀黎斗(・・・)さん?」

 

「───嗚呼、君が此処に居ると言う事は実験に成功したようだね」

 

彼は先程までとは明らかに乖離した様子を見せる。またもや食い違う印象。何処から何処まで彼だが分からなくなる。

 

「えぇ、ライドウォッチに貴方のデータを保存、バクスターとの接触時にその肉体を奪い、現世に復活する。貴方が望んだ願望通りに事は進みましたよ」

 

「そうだろう、そうだろう。やはり私の才能は未来さえも超越……今の私は神さえも超えたのさ!!」

 

「ハイハイ。凄いですね」

 

棒読み。だが彼は私の返答に満足げな状態を更に高跳びして変な笑い声を木霊させる。その姿を見て、私が得たのはやはり安息。

 

「早速だが…この世界にはどんな未知が広がっているんだい?私自身の才能で最大限にゲームとして盛り上げようじゃないか。誰もが笑えるゲームを作るためにもね」

 

瞳を紫色に塗り替えて、彼は笑みを浮かべる。

あの日、母を象った我が子(ポッピー)との約束。

それを果たす為、この地表に顕現した。

 

「ならば手伝って下さいよ。まだ報酬を貰ってないんですから」

 

そんな彼とは利用し利用される関係。

断じて仲間ではない共犯者。

故に遠慮は無用だ。




近い内にこちらの二話目を投稿します。


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Pの再演/Dの鼓動

鏡の国リメイク編。
尚、映画終了後の模様。


暗転を繰り返す視界。

朧気に霞み掛かる頭。

糸を失って動かない四肢。

重力に逆らう黄金の粒子は私が現世に散る時間をうんざりと見せ付けて消耗して行く。

 

「ハハハハハッ!!」

 

「ダークドリーム!!」

 

嘲笑いを喉から鳴らす主。

敵対していた筈の私を抱き締め、主を憎悪の目で見定める本物(ドリーム)

その光景は数分前の私なら驚愕ものだろうが現在(いま)では簡単に受け入れられる。

 

「何で…私を」

 

「──何故かしらね。大好き…だからかな?」

 

本心が口から零れた。

短期間だった、翻弄された、困惑した。

だが私は彼女を友達と思う程に毒されてしまった。もう後戻りは出来ない。

 

「私達、違った形で出会ってたら良かったかな。だめかな?私、偽物だし…」

 

「本物とか偽物とか関係ない!!貴方は貴方で、私の友達だもん!!」

 

感銘を受けて、純粋な言葉の矢に僅かな後悔は払拭された。主の忠誠に逆らって、とんだ末路を晒した私だけど後悔は無い。

彼女の本心を聞けただけで満足だ。

 

「私、どうしたら笑うことができるか判らなかったけど───」

 

満面の笑みと感謝を籠めて。

最後の別れに宝物を。

言葉を遺しましょう。

 

「──貴方と出逢えて良かった」

 

口に出した言葉の後に私の視界と、音が途絶えた。

真っ黒に覆われた意識で最後に見たものは私を包む闇と火だった。

そして結晶へと回帰した。

 

 

■■■

 

 

鏡の国で起きた決戦。

彼女の遺志は結晶の微睡みに消えた筈だった。

だが、何の因果かその結晶は鏡の異界に誘われた。

 

「此処は……?」

 

消失した筈の肉体の四肢を確認し、辺りを視認する。

違和感に気付いた。

反転。

建物が、街灯が、空が、模様が、景色が。

何よりも彼女の手に触れている子供が描いた兄妹の絵が逆転している。

 

「消えた筈の身体に異常なし、結晶の罅も修復され、五体満足で生きている。しかも現実世界とは何もかもが反転した世界、まるで鏡だわ」

 

現状を把握。

それ故に今の状況がより異常に尽きる。

光の粒子として消失した彼女の復活。

罅割れた結晶の修復。

不可解な反転世界。

 

誰かが意図的に仕掛けたとしか思えない。

裏に何かがある、彼女が知らぬ何かが蠢いている嫌な感覚が。

だから、その気配に気が付く事が出来た。

 

「誰!!」

 

後ろから殺気。

一度の闘いで研ぎ澄まされた直感が後ろに居る者に対しての警告を言い放つ。

後ろに存在するのは水を噴く源泉。

だが、それとは異なった影を彼女は見詰め、驚愕を迸らせた。

 

マゼンタ色で編まれた、鮮やかな髪の毛。

日光に照らされた整った顔立ち、

ピンクに輝く宝石を思い浮かばせる眼。

風には翻る白いワンピース。

 

相対する形で見詰める両者。

しかし、一番驚きなのは両者の容姿が寸法違わず合致している事だろう。ある者は無表情、ある者は目を大きく見開く事でこの結果に答えを出した。

 

「ドリーム、なの?」

 

不安定な足通りで無表情な『夢原のぞみ』に接近、数秒すると両手で確りと両肩を掴み、意識疎通が出来るか確認を取った。

だが、少し軽率な行動である事を考えるべきだった。

 

「ドリーム、私よ!!ダーク───」

 

彼女(夢原のぞみ)は私、だけど貴女(ダークドリーム)は彼女じゃない」

 

「何を言って、キャッ!!」

 

突き飛ばした右手、吹き飛ばされた身体。

彼女は足元で転んで呻き声を上げる。

 

「どうしてこんな……こ、とを」

 

突き飛ばされた彼女は再び、目線を嗤った夢原のぞみに移す。しかし先程とは違う点、無手であった右手で翳されたUSB型アイテムに視線が無意識に誘導された。そのメモリに秘められた力に惹かれた結晶がそう彼女に働き掛けたのだ。

 

「私は貴女が知る彼女じゃない」

 

人差し指でメモリの起動ボタンの部位に軽く接触、音声が鳴り響くと同時に言い放つ。

 

「私は鏡異界(ミラーワールド)の夢原のぞみ。彼女の望みの為に貴女を浄化する」

 

『PrettyCure!!』

 

己の正体を告げて空中に不規則に漂うメモリ、のぞみは受け入れようと手を差し出した。その奇怪な行動の果て、変異が約束される。

メモリが手に触れて体内に異物として入り込む。その影響で身体は多くの罅が刻まれ、崩壊。

毒煙を漂わせ、人類と怪物の中間点が誕生した。

 

「──そんな」

 

異形との遭遇と、強い感情を抱くのはこれで三度目。

一度目は人類に『妖精』と定義された可愛らしい存在には憐憫。

二度目は世界を脅かす彼女自身の主で、『科学』によって齎された異形には忠誠。

だが三度目は邂逅の果てに驚愕を得る。

 

混沌とした異形と人類の境界線、その在り方を内包した一種の混沌種(キメラ)の視線が彼女の脳内をグチャグチャにしようする邪視へと変換された。

 

自らに置かれている状況と相まって、彼女の思考は混乱の一言に尽きた。

不可解な再誕、反転した世界、友達だった筈の少女の第二変異、そして放たれた殺気。

 

「──早く」

 

声がした。

静寂に響き渡る不快和音。

老若男女が一斉に地獄に落とし、阿鼻叫喚の再現の如しき声。

 

「早く変身しないと──」

 

彼女の視界に隙間が生じる、それが意味するのは消失。前方に聳え立っていた異形が姿を眩ませた。

焦る心、彼女の内側から警戒のベルを最大限まで鳴らせる。虫の知らせとも言える現象。

 

「───死んじゃうよ?」

 

想像し得る最悪が背後に顕現。

虫の知らせは遠からず、その知らせを果たした。

──寒気を感じた。

 

「──えぇ、そうね」

 

身を焦がす筈の紫色の業火が一瞬。

確かに身を焦がした。

『夢原のぞみの鏡像』の立場から『キュアドリームの鏡像』と言う立ち位置、疾駆する脚蹴りと共に。

 

「うじうじ悩んでられない。貴女が誰か何なんて考えたって仕方ないし、勝ったらその面を剥がして上げる」

 

反転した鏡世界に二人の来訪者。

一の打撃音が鏡を割り、闘いの火蓋を切った。

だが、呑み込みが早過ぎじゃないかな───ダークドリーム?いや、シャドウ(・・・・)と言った方が良いかな?

 

第三者の視線が彼女達を射止めている事を知るのは本人たる世界の破壊者だけだった。




作中に出てきたガイアメモリですが、誕生経緯を執筆した話をこの番外章の区切りとして何時か投稿しようと考えております。
何気に本編に関わる重大な要素の一つなので。

大体、死神博士やケツァルコアトルのガイアメモリが有るんだからプリキュアのメモリが有ったて平気平気(震え声)


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微睡みのD/嘲笑うS

投稿が遅れて申し訳御座いません。
納得が出来るまで試行錯誤してどうにか完成しました。
尚、本編の投稿はまだ先となります。展開上ではこちらの今話と戦闘描写が類似してしまうので。

そして今話の最初の辺りでダークドリームの言動に違和感を感じるとは思いますがその原因は最後まで読まれたのなら分かる筈です。


「はぁぁぁあ!!」

 

 白い肌を晒す掌から放出、無数の閃光が弾道を作り出す。それによって赤黒の弾幕が異形の周囲を包み、逃げ場を封鎖する塞ぎ場と化す。

 

「実に厄介ね」

 

 異形は生々しい手から淡く透ける蝶の群れを生成。視界全域に広がる光弾の軍団に向かって見境なく解き放つ。

 

 その三秒後、衝突。

 爆音を轟かせる炎が照らし、二つの人影を地面に作り出す。撃ち終えた後には跡形も無く、綺麗さっぱりと消失していた。

 戦乙女(ダークドリーム)に転身した彼女はその光景を見詰めると手を固め。

 

「ふっ!!」

 

 地面を蹴り壊して瞬発。

 適度な間合いに至る瞬間、弱々しさを連想させる細い腕を振り放つ。

 だが振り翳す速度は風を裂き、疾駆する。

 

『……』

 

 紅色の手甲で拳を弾き返し、空いた右手を握り締めてからのストレート。

 現実味を帯びない速度が鮮やか顔立ちを捉えるが遮る右掌が受け止め、瞬間的に握り締めて異形を逃さない様にありったけの握力で封じる。

 

 掌を通して伝わる異常な体温に彼女はより一層、警戒が募る。それに比例して異形に対する僅かながらの不気味さが目立つ。

 

「貴方は何者?」

 

 意を決して口から吐き出されたのは敵への問い掛けであった。現状の把握にはこれだけの手立てしか無い。

 だが相手が答えるかは別だ。

 

「───、暑い」

 

 異形の手の体温が上昇、共に右腕に淡い桃色の粒子が溢れ出る。

 異様な状態に彼女は異形の思考を読み取り、対抗して右腕に胸部の結晶からエネルギーを循環。赤黒いオーラを纏う。

 

「やっぱり、答える気は無いか」

 

 歪み、欠落した浄光。

 汚染、上塗りされた浄光。

 大地に電流を撒き散らし、大気は震え、双方の光は膨張する。

 

「なら徹底的に痛み付けてから、じっくりと吐き出させてあげる──!!」

 

 融合、縮小、拡大、爆発。

 球体状に混ざり合ったエネルギーは破裂。それによって起きた爆風に伴い、彼女達は爆発地点とは数十歩離れた地点へと別々に弾き出される。

 猛威的に後方へと下がる肉体を両足で地面を抉り取りながら、停止。

 下げた顔を前へ、視界に映ったのは同じ体勢を取る異形の姿。

 

 地面を踏み締め、適切な体勢へと整えると一踏み。脚がバネの役割を果たして、彼女を異形へと近付ける。

 間合いへと侵入した彼女は異形の横側面に蹴りを入れようとする。

 

 身を屈んで回避。頭から通り過ぎる足を確認し負えると足払いを仕掛ける。

 彼女は跳躍して躱す。

 重力に逆らい、空中に跳ぶ身体は一瞬停滞すると地面に落ちて行く。失陥位置には異形が佇む。

 

 片足を突き出し、ドロップ。

 踵落としが異形の肥大した肩に突き刺さる。

 更に両足で首を絡め締め、全身を右に捻って地面に頭部から激突させる。

 大規模な激突音と小規模のクレーターが一瞬で周りに深く刻まれる。

 

 数歩の後に岩盤が出来た場所から遠き、構え直す。岩盤先を両目で凝視───刹那。

 岩盤から残影が飛び出し、助走を付けて彼女に拳を振るった。それを予測した彼女は美しき美貌に届く瞬間に顔を反らし、カウンターとして左拳を振り抜く。

 残影を残した異形もまた顔を反らして反撃を回避。

 

「ふっ!!」

 

『──!!』

 

 引き伸ばした片腕を両者は引き戻し、全身を駆使した回し蹴りへと移行攻撃。

 彼女は時計回り、異形は反時計回り。

 一周回した蹴り技同士は衝突。

 散らばる砂粒が空へ浮く。

 

 だが。

 

「──、クッ」

 

 力負けしたのはダークドリーム。

 無用に大地を転がり、建物へと引き寄せれるが如く衝突。口から強制に空気が吐き出され、身体に衝撃が響いた。

 そして異形は建物に寄り掛かる彼女にオーバーハンドを大振りで追撃。両腕で防御の体勢を取るが威力と圧力で建物にのめり込んで吹き飛ぶ。

 

 更なる反撃に撃ち込もうと人外の脚力で吹き飛ぶ彼女の背後に回り込み、最大の必殺で捉えようと腕を伸ばした。

 吹き飛ぶ彼女は身体を半回転、視線が交差した瞬間に指先に溜めた光弾を腹部に炸裂させる。

 

 地表を水平に飛ぶ異形は家内を壊して不時着。瓦礫に埋もれた身体を起こそうと立ち上がるが光弾の荒雨が降り注ぎ動作を制限する。

 

「これで倒せる───訳じゃないか」

 

 数百に及ぶ光弾を異形に浴びせた彼女は突き出した両手を下ろして、瓦礫から抜け出したそれを見詰めた。

 

『適合値、五十突破』

 

 背中に携えた蝶翼。

 それは蛹から孵った異形の何処までも歪な姿であった。故に彼女は警戒を高める。

 

「────早い!!」

 

 ───だが無駄だった。

 視覚内で不規則に動いた桃色の残像、背中に感じた圧倒的な気配。

 その後の行動は素早かった、身体を半回転した勢いを乗せた裏拳で顔を狙うが醜態な片腕がそれを阻む。

 

『……いい加減にして』

 

「!!」

 

 男性と女性の声が混ざり合った殺意は視線で彼女を射止める。まるで化けの皮を剥がしたが如く。

 

『その身体から離れて。その身体は貴方の物じゃない、その心は貴方の物じゃない、その記憶は貴方の道具じゃない────彼女を返せ!!』

 

 異形の片手が彼女の腕を掴み、拘束。

 悪霊に似た執念さが異形からは感じられた。

 

「───フフッ」

 

 だから彼女は嗤い、眼を閉じた。

 

「なんだ、バレてたのね」

 

 二重旋律を奏でる、悪意を暴け出した声。

 

「まぁ、どうでも良いか」

 

 彼女の姿がぶれる。

 胸部の結晶が淀み、右側の下半身と左側の上半身が結晶に侵食。更に髪は深青に染まり、身体はより病的までの純白な肌を晒す。

 

「貴方を此処で殺して、ドリームコレットを奪って───」

 

 眼が開かれる。

 

「──プリキュア達の絶望する光景を見れば私にとってはどうでも良い事なんだから」

 

 桃色の宝石は深緑色に堕ちていた。

 

「このシャドウ様にとってはねぇ!!」

 

 全ての元凶は此処に有り。

 シャドウ、復活。




・彼女の復活原因はシャドウでした。
シャドウの目的は自身を倒した者達への復讐と願望を叶える装置の回収。
彼女を復活させたのは自身の都合の良い隠れ蓑、或いは彼女の友達の絶望した顔を見るためと言う悪趣味極まり無いもの。

・シャドウは何故生き残っていた?
極端に言えばシャドウの遺志の欠片です。プリキュア達に浄化される一秒前に危機を感じた彼は偶然にも転がっていた結晶に自らの一部を移植。
その結晶がダークドリームの物だっただけの話。

・復活方法
シャドウ自身が結晶に潜伏していた期間で溜めた数年間のエネルギーを使って肉体を一時的に復活。
気付いた人は居ると思いますが復活した時点で本編は終了しているので願望器回収は不可能。
哀れ。

・余談
彼女の結晶は破壊された。
破壊されたのだ、決して浄化された訳では無い。
浄化の意味は悪いものを取り除くと言う事。
ならば、悪いものが取り除かれなかった結晶は?
だからダークドリームの遺志は微睡みに眠りながらも結晶内に残留しました。
浄化された他四つの結晶とは違って。


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