喪次元ゲイムネプテューヌ Lost Memory’s (不知火ハート)
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2話 烈火の拳

マジェコンヌを撃退したが、同時にクロウは倒れてしまう。クロウを教会に運び込み、ベッドに寝かせ、その場をユニに任せ、ノワールはすぐにイストワールに連絡をし、事情を説明する。そしてイストワールから告げられたのは、信じ難い現実だった。


???「……。」

クロウはその場に佇んでいた。マジェコンヌを撃退した後、そこから1歩も動かず。

ブラックハート「…クロウ?」

恐る恐る声を掛けてみる。すると気づいたのか、ゆっくりとこちらを向いた。が、その目は次の獲物を見つけたかの如く赤く光っていた。このままでは、やられる!

ユニもそれを察したのか、

ブラックシスター「お姉ちゃん逃げて!」

ブラックハート「ッ!」

???「……!」

クロウが拳を振り上げた。ダメだ、間に合わない…!しかし

ブラックハート「…え?」

クロウは拳を振り下ろすことなく、膝から崩れ落ち、その場に倒れた。それと同時に装甲が粒子となって消えていく。

ブラックハート「クロウ!」

クロウの元に駆け寄り、抱き上げた。何度か揺すってみたものの、反応は無い。気絶していた。

ブラックハート「良かった、気絶してるだけみたいね…。それにしても、この結晶は一体…。」

クロウの手には、あの結晶が握られていた。さっきより色が落ちているようにも見える。

ブラックハート「…これはイストワールに説明しないといけないわね…。ユニ、帰りましょ。立てる?」

ブラックシスター「うん、なんとか。クロウは大丈夫なの?」

ブラックハート「まだ大丈夫とは言い難いわ…。今は気絶してるみたいだけど…。」

私達はクロウを抱え、教会へと戻った。

 

 

クロウを部屋に寝かせ、ユニに任せた後、私はイストワールに連絡を取り、事情を説明した。

イストワール「…なるほど、そちらの事情は分かりました。ところで、そのクロウさんは?」

ノワール「今私の部屋で寝かせてるわ。それより、イストワール…。」

イストワール「はい、例の結晶の事ですね。今調べ終わった所です。…あの結晶は、シェアエネルギーとは異なる力、ネガティブエネルギーを元に精製された物のようです。」

ノワール「…え」

ネガティブエネルギー。その単語を聞いただけで嫌な思い出が蘇る。かつてゲイムギョウ界を破滅させかけた、「暗黒星くろめ」の力の源であるネガティブエネルギー、猛争の力。その力に飲み込まれ、私はユニを傷つけようとしてしまった。だけどそれはもう存在しないはず。なのに、何で…。

イストワール「これはとても言いづらいのですが、もしかしたら、クロウさんは…。」

ノワール「それ以上言わないで!!!!」

耐えきれず、私は声を荒らげてしまった。イストワールも驚いていた。

ノワール「ご、ごめんなさい…。」

イストワール「いえ、私の方こそ、申し訳ありません。嫌な事を思い出させてしまって。」

ノワール「いいの、もう大丈夫だから。でも…。」

イストワール「ご安心を。まだそうと決まったわけではありませんので。また何か進展がありましたらこちらから連絡します。では。」

ノワール「ありがとう、イストワール。」

イストワールとの通信が終わった。

…そんな、クロウが…。まさかね。

 

 

 

クロウ「…んん?ここは…。」

いつの間にか寝てしまっていたようだ。しかし、何か妙だ。

クロウ「あれ、俺、確かあの結晶を使って…、ダメだ。思い出せない。」

あの後どうなったのだろうか。それにあのマジェコンヌとやらは一体…。

と、部屋のドアを開けてユニが入ってきた。

ユニ「あ、クロウ!目が覚めたのね!具合はどう?」

クロウ「え?ああ…、大丈夫だよ。」

ユニ「はぁ、良かった…。お姉ちゃんもかなり心配してたみたいだったし…。安心したわ。」

クロウ「それより、ユニ。俺、あの後どうなったんだ?」

ユニ「あの後?あの結晶使って変身したこと?」

クロウ「…え?変…身…?」

ユニの言っていることがあまり理解出来ない。変身?

ユニ「まさか、何も覚えてないの?マジェコンヌを撃退したことも?」

クロウ「撃退?マジェコンヌを…?俺が…?」

ユニ「本当に何も覚えてないのね…。」

クロウ「ただ…。」

ユニ「ただ?」

クロウ「ただ…、1つ覚えてることがある…。」

ユニ「それ、詳しく教えてくれる?」

クロウ「あぁ…。」

俺が覚えてる事、それは…

クロウ「自分でもよく分からない、抑えきれない殺意が湧いてきた…、それだけだ。」

ユニ「抑えきれない…、殺意…。」

クロウ「二人を守らなきゃと思ったんだ。けど、それと同時に奴を殺さなきゃという殺意が……」

続けようとしたら、ドアを開けてノワールが入ってきた。

ノワール「あ、クロウ、目が覚めたのね。気分はどう?」

クロウ「あぁ、もう大丈夫だ。そういや、イストワール、だっけ。話は終わったのか?」

ノワール「えぇ、とりあえず今回の件は全部話したわ。クロウの変身の件も、あの結晶の件も…全部、ね…。」

クロウ「…?」

ノワールが暗い表情で下を向いてしまった。何かあったのだろうか

クロウ「ノワール、何かあったのか?」

ノワール「あ、あぁ!大丈夫!何でもないから!とりあえずイストワールも今回の件を調べてくれるみたいだから、ひとまず安心だわ。」

クロウ「そうか、それならよかったが…。」

ノワール「と、とりあえずご飯用意してくるわね!」

クロウ「あっ…。」

行ってしまった

ユニ「もう、お姉ちゃんったら…。」

 

 

ノワール「はぁ…。」

言えるワケ、無いじゃない…。あんなこと…。

ノワール「クロウが…、まさか…。」

あの『暗黒星くろめ 』の分身だなんて…。

 

 

 

クロウ「ふぁ…、何故か眠くなってきたな…。」

ノワールは…、まだ仕事中か…。まあ、俺が寝付いた頃には仕事終わってるか。

クロウ「寝るか…。」

そして俺は眠りについた…。

 

 

 

クロウ「…ん?また、ここか…。」

目を開けたら目の前に広がるのは荒れ果てた街。崩れたビル群。ひび割れた空。もはや見慣れたも同然だった。

???「やぁ、またあったね。」

クロウ「またお前か…。いい加減姿を見せてくれてもいいんじゃないか?」

???「それは出来ないかな、まだ。」

クロウ「その答えが来るのは知ってた…。」

いつになったら教えてくれるのだろうか。まあ、今はどうでもいいが。

???「ただ、この場所の名前を教えてあげようか。」

クロウ「…?」

???「零次元。」

クロウ「零、次元…?…っ!」

急に頭痛が…!!くそっ、収まれ…!

???「覚えてないのはおかしいよね、君と俺の『 家』なのに。」

クロウ「お前、何言っ…て…!!!」

ダメだ、視界が……。

 

 

 

 

クロウ「っ!!!」

目が覚めた。が、決して気持ちの良いものでは無かった。

クロウ「あぁ、汗が…。…シャワーでも浴びてくるか…。」

それにしてもあの声の主…、本当に何者なのだろうか。

まぁ、今気にしても仕方ない。

 

 

 

クロウ「ふぅ、さっぱりした…。…朝飯出来てるだろうし、早く上がらないと…、うおっ!?」

不運にも足元に転がっていた石鹸を踏んで盛大にすっ転んでしまった。幸い頭は打たなかったが、背中を思いっきり強打した。超痛てぇ。

クロウ「ってぇ〜〜…。」

ノワール「ちょっと、クロウ!?大丈夫!?」

ノワールが音を聞きつけて風呂場のドアを蹴飛ばすように開けてきた。

クロウ「あぁ、大丈夫だ頭は打ってな…。」

ノワール「あ。」

クロウ「え?」

ノワールの顔が一気に真っ赤になり、

ノワール「ノワア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

絶叫と共にノワールは手に持っていたフライパンを放り投げた。フライパンは俺の右頬に直撃。

クロウ「ぶへっ!?」

ノワール「はっ!?ごめんクロウ!!」

この後駆けつけてきたユニにノワールはこっぴどく叱られた。

 

 

ノワール「うぅ、ごめんねクロウ…。」

クロウ「あぁ、俺は気にしてないから…。機嫌直して…。」

朝の騒動はなんとか落ち着いたものの、ノワールは気を落としてしまっていた。

ユニ「お姉ちゃん、テンパるとああなっちゃうからね…。何で風呂のドア開けたのかは謎だけど。」

ノワール「ヴっ。」

クロウ「とりあえず、朝食、済ませようか。」

ここで区切らないとノワールが持たないな…。

 

 

 

クロウ「さて、朝食も済んだし、どうするかな…。ノワールは仕事か?」

ノワール「うん、昨日やってた書類のサインがまだ終わってなくて…。今日はユニと出かけてくれるかしら。」

ユニ「わかった。クロウ、どこ行く?」

クロウ「んー、俺もまだあまりこの国の事は分からないからな…。ユニが行きたい所でいいよ。」

ユニ「なら、私の行きつけのガンシ(ry」

ノワール「ダメよ」

ユニ「…はい。」

クロウ「???」

何故ダメなんだろう…。気になるがダメなら仕方ないか。

 

 

 

 

 

ユニと一緒にラステイションの街に来たはいいが…、ユニがガンショップとやらに行けなくなってしょげていた。

ユニ「はうぅ…、ガンショップがダメなんて…。」

クロウ「まぁ、とりあえず適当に散策してみようか。何か見つかるかもしれないし。」

ユニ「そ、そうね…。落ち込んでても仕方ないし、色々見て回りましょ。」

ということでしばらく街を散策をすることになった。

 

 

ユニ「あ、これ良いかも!」

ユニが何か見つけたようだが…、これは洋服か。

クロウ「ん?何か良いのが見つかったか?」

ユニ「えっと、この服!どう?可愛いでしょ?」

ユニがこちらに気に入った洋服を見せてくれた。

クロウ「いいんじゃないか?似合うと思うよ。」

ユニ「ホント!?じゃ、早速試着してくるわ!」

ユニが笑顔で飛び込むように試着室に入っていった。

クロ「ユニ、嬉しそうだな。…ホントに、嬉しそうだな。」

 

 

ーラステイション教会ー

 

ノワール「とりあえず、現状クロウには何の問題は起きてないわ。」

イストワール「そうですか、それはよかったです。ところで、今クロウさんはどこに?」

ノワール「今はユニと出掛けに行ったわ。…それで、イストワールは何か分かったの?」

イストワール「はい、こちらで調べた結果、やはりクロウさんの身体の大半はネガティブエネルギーで構成されてるようです。原理は分かりませんが、ダークメガミの残滓が変質したものではないかと推測されます。しかし、1つ、気になる点が…。」

ノワール「気になる点?」

イストワール「クロウさんの身体の大半はネガティブエネルギーで構成されてると言いましたが、何故かその中に、僅かですが、シェアエネルギーの反応があったんです。」

ノワール「え?ちょっとそれどういう事!?ネガティブエネルギーの中にシェアエネルギーって…!」

イストワール「私にもどういう訳か分からなくて…。しかし、あの時マジェコンヌにダメージを入れられたのは、恐らく、そのシェアエネルギーによるものかと…。ネガティブエネルギーだけでは、攻撃は吸収されていたはずです。」

ノワール「あ…、確かに…。でもそれなら私達の攻撃だって通っていたはず…!…って、今更そんなこと思ってもダメか…。」

イストワール「すいません、これしか今は情報が無くて…。またこちらで調べておくので、判明次第ご報告しますね。」

ノワール「うん、ありがとね。イストワール。」

イストワールとの通信が終わった。ネガティブエネルギーの中にシェアエネルギー、か…。

ノワール「クロウ…、あなたは一体何者なの…?」

 

 

 

 

ーラステイション 繁華街ー

 

ユニ「さて、昼食も食べたし、また散策しましょう。」

クロウ「そうだな…、ん?」

ユニ「クロウ、どうしたの?」

ユニが不思議そうに俺の顔を見る。

クロウ「何か…、来る…。」

ユニ「…え?」

俺には分かる…。どういう訳かは知らないけど…。何かが凄まじい速度でこっちに突っ込んでくる…!?

クロウ「っ!!ユニ!危ない!!」

ユニ「えっ?きゃぁっ!?」

ユニを抱え込んで横に回避する。同時に何か刃物のような感触が腕を掠める。

クロウ「っ…。ユニ、大丈夫か…!?」

ユニ「う、うん。何とか…。って、何、あれ…!」

ユニの目線を追うと…、あれは…、ロボットか…?

ユニ「せっかくの買い物を台無しにしてくれちゃって…。容赦はしないわ!アクセス!!!」

クロウ「うわっ!?」

ユニが怒り混じりに変身した。相手はロボットだ、勝てる!

ブラックシスター「クロウは隠れてて!はあっ!」

ユニとロボットが交戦を開始した。

クロウ「…わかった、無茶は、するなよ…!」

 

 

 

クロウ「ここに隠れてれば、大丈夫か…。」

何とか交戦場所が見える所に隠れたが…、ユニは大丈夫だろうか。まあ、相手はロボット、女神が負けるはずがない…。

クロウ「…いや、苦戦してないか…!?」

ユニが押されてる…!!いや、押されているというより…、何かを守りながら戦ってる…!?

クロウ「っ!!あんなところに子供が…!逃げ遅れたのか…!?」

ブラックシスター「きゃぁっ!?」

ユニがロボットのブレードをもろにくらった。

クロウ「ユニっ!!くそっ!」

近くにあった鉄パイプを持ってユニの元に急いだ。

ロボット「ウィーーん…」

ブラックシスター「っ!!」

クロウ「こんのぉ!!」

ロボットの頭部を鉄パイプで思いっきり殴った。当然効くわけがないが、気をひかせることは出来た。

クロウ「来い!俺が相手だ!」

ブラックシスター「クロウ!?何で出てきたの!?あなたは闘えないの!!」

クロウ「闘えないとか関係ない!!!」

ブラックシスター「っ!?」

クロウ「確かに…、俺は無力だよ…。ノワールやユニみたいに強くないよ…。それでも…!」

俺はポケットに入れていた結晶を強く握り…、

クロウ「アクセス!」

ノワールが言っていた、「変身」をしてロボットに殴りかかる。

クロウ「ウオオオオオオ!」

しかし、ロボットには傷1つつかない。それどころか、ロボットがブレードを振り下ろす。

クロウ「ガッッ…!」

ブラックシスター「クロウ!!」

クロウ「グッ…、ガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」

それでも、俺は殴り続けた。ブレードでガードされても斬りつけられても、殴り続けた。護りたい人が…、護りたい国(家)があるから…。

クロウ「ここから…、ここから…ッ!!」

護りたい想いが強まった瞬間、拳が炎を纏った

クロウ「出ていけェェェーーーーーッッッ!!!」

炎を纏った拳は、ロボットのブレードを粉砕し、後方に吹っ飛ばした。

クロウ「この…感じは…!?」

俺の身体が炎に包まれる。しかし、熱くない。むしろ暖かい…。何だこれは…!?

ブラックシスター「この感じ…。まさか、シェア!?」

クロウ「いける…。ウオオオオオオッ!!!」

俺を纏う炎がさらに激しさを増す。自分でも分かる、力がみなぎってくる…!

ブラックシスター「クロウの姿が、変わっていく…!どうなってるの…!?」

ユニが唖然としている中、炎が収まっていく。

クロウ「変身、完了…ってやつか。そして…。」

俺の姿は、龍のような姿に変貌していた。そしてその両手には、業火がそのまま形になったような拳。

と、体制を立て直したロボットが突っ込んできた。

クロウ「はっ!」

斬り掛かってきたロボットのブレードを片手で止め、そのままブレードごと腕を粉砕し、

クロウ「ウオラア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」

業火の拳で怒涛のラッシュを放ち、上へ吹っ飛ばす。

ブラックシスター「クロウ!そのまま決めちゃって!」

クロウ「はあア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」

これで、トドメだ…!

クロウ「ヴォルカニックドライバァーーーーッ!!」

ロボットの胸部に向けて渾身の一撃を叩き込む。同時にロボットは派手に大爆散した。

 

クロウ「ふぅ…、疲れ…た…。」

疲れ切ったためか、変身が解け、その場に倒れ込む。

ブラックシスター「クロウ!」

ユニが急いで駆け寄ってくる。

クロウ「あぁ、ユニ…。大丈夫か…?それより、あの子供は…。」

ブラックシスター「さっき母親がすぐ駆けつけてきて、無事に帰っていったわ。それより、クロウ…、さっきのって…。」

クロウ「俺にも分からないけど…、まあ、勝てたしいいんじゃないか?」

ブラックシスター「…、ふふっ、それもそうね…。」

と、

ノワール「二人とも!!大丈夫!?」

ノワールがこちらに走ってきた。だいぶ焦っているようだが…。

ノワール「もう!いきなり戦闘が起こったっていうから急いで来たけど…。」

ブラックシスター「それならとっくに済んだわよ…、ね?クロウ。」

クロウ「ん?あ、あぁ…。」

ノワール「んー…?ま、いっか。後で聞くとして、さ、帰りましょ、私達の家に!!!」

ブラックシスター「えぇ!」

クロウ「あぁ。」

 

2話 END

 

 

 

 




かなり間が空いてしまった。(:3_ヽ)_
まだ序盤なのにネタ切れ起こしかけてましたが楽しんでいただけると嬉しいです。


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