ようこそ淫蕩な教室へ (サリエリキキ)
しおりを挟む

少し先の話
少し先の話①


チバチオさん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


 ちょっとスランプ入ったので活を入れるために、坂柳の後でするつもりだった話を、少し未来の話を投下します。
 一之瀬の話を楽しみにしている方には申し訳ないのですが、忙しくなったけど、ここまでは頑張ろうと自分に言い聞かせるために、お付き合いしていただければ幸いです。


「小柄だが均整のとれた──」

 

 静かな図書館。斜め向かいの席に陣取った少女が、本を読みながら此方に聞こえるようにポツリと呟く声を無視して、目下の本に意思を傾ける。

 

「ベッドの上の嵐を知っているのは──」

 

 今読んでいるのは情報技術の専門書だ。綾小路に敗北してから、今まで軽視していた知識、それもありとあらゆる知識に手当たり次第に手をだし始めた。

 知識を得始めて、直ぐに自分はこういう知識を持った連中を『使う者』と看破したが、飽きもせずに続けている。

 知識を得る度に見えてくる綾小路の遠い影を掴む為に、飽きるなどと思考にすら上らない。

 

「二人は軀と軀で語り合ったようで──」

 

 徒然と続く声がうざったく、気晴らしに、綾小路と手を組み桔梗を破滅させたことに思いを寄せる。

 綾小路が桔梗を拾ってモノにしたことに、思うことがないわけでない。

 確かに容姿の良い女だが、俺ならばあそこで後腐れなく始末しただろう。

 ある意味、失望を覚えたと言って良い。綾小路には、性欲などに判断を左右されない超然としたモノを期待していた。

 

「充分すぎるほど充分、受け入れる準備が整ったところで──」

 

 桔梗に個人情報を握られた馬鹿な連中の危機感を、一人一人に桔梗に謝罪させて和らげた上で、絶対に情報を漏らさないと保証するまではそうだった。

 クラスの連中の立会人として立ち会うまで気付かなかった自分に笑えてくる。

 あいつは、性という名の鎖で桔梗を縛り付け完全な手駒にしたわけだ。

 それも、桔梗の手札である個人情報を完全に握りしめて。

 これ以上は漏れなくとも、今までに桔梗に秘密を漏らした連中は、漏らした情報が軽いやつはまだしも、重いやつはいずれ始末する必要がある。

 手駒が少なくなってしまったわけだ。

 

「意を決して、すでに赤くふくらみきった──」

 

 桔梗という善人に対する信頼が崩れた所でパニックに陥った連中をフォローする人身掌握に動いた結果、クラスの連中から俺の信用は高まったのは狙い通りだったが、後手に回ったことは否めない。

 いや、だからこそ綾小路の奴は俺を巻き込みやがった。

 クラスメイトから信用を得るためには、俺の悪行を知る桔梗を始末した上で、桔梗に秘密を漏らしてしまった連中をフォローしてやる──わざわざクラスの連中と桔梗との話し合いに立ち会い、それとなく探る桔梗からこれ以上個人情報を漏れないようにした──必要があったから手を組んだが、その『信用』を得た連中のうち何人か始末するなら、今回で得たものは僅かに+という程度だ。

 してやられたことには変わりない。不快な思いと愉快な思いを同時に抱く。

 

(信用、信用か)

 

 かつての自分とは違い、今の自分はそんなあやふやなモノが必要と理解し、それを得るように振る舞うようになった。

 結果、恐怖だけで支配していた時よりも、クラスの連中は俺の指示に従うだけでなく、進んで協力するようになった。

 真っ先に表返った石崎などは「やっぱり綾小路と組みましょうよ」と進言しているが、「綾小路がいざというとき裏切ったらどうするんだ。奴と組むのは、裏切らないよう互いの利害を一致させた時だけだ。一時的がせいぜいだ」と返すと大人しく、いや、さらに俺を信用するようになった。

 

「生身の男と女が裸で触れ合っている、一代かぎりの知恵であり、文化である──」

 

 以前とは違い、ある程度説明して納得させる。情報が漏れる可能性(ならないようにしているが)と面倒というデメリットを得たが、スムーズに物事が進むメリットも得られた。

 信用させつつ支配する道が見えたのだから、今回の件は総合してプラスで終えることが出来たと言える。

 今回の明らかな失策、一つしかしていない失策を除けばだが。

 斜め前に陣取る少女(失策)に目を向ける。

 

「朝の光を遮光したベッドのなかで──」

 

 信用されるということは頼られるということでもあり、頼られると言うことは面倒なことを背負いこむことでもある。

 だからと言って、底知れないのに静かという矛盾したオーラを漂わせて、淡々と浮気心中本を人前で音読するクラスメイト、椎名ひよりを「何とかしてくれ」といわれるのは、たまったものではない。

 

(伊吹は大した奴だったな)

 

 惜しい奴を亡くしてしまった悔恨を覚える。

 一昨日寝込んでしまった伊吹が相手をしている間は、学校に居る時のひよりはマトモだった。

 少なくとも、俺には不自然な所は見えなかった。

 だが、違った。伊吹が己の身を必死に削っていただけだった。

 

「ギー・ド・モーパッサン『女の一生』が……スタンダール『赤と黒が』……ジュリアン何て名前のフランス人は死ねば良いのに。『一粒の麦もし死なずば』……いや、男も女も奔放にイケるアンドレ・ジッドをどう思うかって言われても……」

 

 伊吹が倒れた日に電話しても、会話にさえならず、延々とうわ言でこんなことを言い続けられ「養生しろ」と電話を切った瞬間全てを理解した。

 

「──のものを受け入れてからは、悦びを訴えながら、何度も上体を起こして鏡を覗き──」

 

 毎晩、ひよりに国内外問わない不倫小説を音読されて聞かされてから感想を答える苦行をこなして、ひよりのメンタルを安定させ続け、限界が来たのだと。

 今、それをやられているからわかる。たまったものではない。

 何が嫌だと言えば、ひよりの音読はおそろしく巧いのが嫌で仕方ない。

 滑舌は滑らか、それでいて込められた情感が溢れる言葉の奔流は、まるでその情景に自分が居るかのように引き込まれて止まない。俺でさえそうなのだ、ひよりに甘い伊吹では一溜りもなかっただろう。

 気付けば沼に引きずり込まれるように抜け出せなくなっていた──いや、ひよりを見捨てられなくなっていた。おそらくは、ひよりの目論見通りに。

 

(金田は逃げだした。アルベルトと石崎はこういうことで頼りにならない。女子どもは)

 

「龍園くん」

「何だ」

 

 クラスの女子の誰を生け贄にするかと脳裏に浮かべていると、突如音読をやめたひよりが静かに語りかけてきた。

 

「ここまで来ていただけたのに、益体もないことを聞かせるばかりでごめんなさい。不快に思われたでしょう。でも、恥ずかしながら、私は友達が少ないんです。同じクラスで同性の友人と言える相手は伊吹さんしか居なくて」

 

 すまなさそうにしながら、俺が相手をしなければ伊吹──自分が与え続けた心労で倒れた伊吹の所に行かざるをえないと、伊吹を人質にするひより(悪魔)

 思考を読まれたことなど、もうどうでもいい。俺を逃がすつもりはないことに比べれば些事だ。

 

「お前でも、違うクラスに友人くらい居るだろうが」

「確かに居ますが、ご覧の通り今の私は不安定です。他クラスの友人に、何かしらの秘密を漏らしてしまうかも知れませんし、そもそも今の私を受け止めてくれる相手は限られます……誰にでも優しい人。例えば、櫛田さんとかに」

 

 ここで騒動を起こしたばかりの桔梗の名前を出す辺り、こいつは本当にイイ性格していると思う。

 

「桔梗に情報が漏れないようにするために深く会話をしないようにすると、クラス全員で注意し合うことにしただろうが、お前も納得したことをひっくり返すな」

「はい。龍園くんが、そう指示して、あの時は受け入れました。でも、今の私には」

 

 無理なんです、と自分と俺に言い聞かせるように呟くひより。

 櫛田が、綾小路のモノになったと確信してからひよりはこうなっていた。それが、伊吹の奮闘で表には出なかったのは、色々な意味で幸いだったが、同時に俺の未熟を突きつけられた。

 

(綾小路のヤツならこんな無様はやらなかった)

 

 ヤツとの差に歯がみしながら失策を認める。

 今回、ひよりには何の役割も与えなかったのは失策だった。遠ざけておくか、いっそのこと最前線に使うべきだった。ひよりが綾小路にどういう感情を抱いているのかわかっているから、放置したのだが。それは、ひよりの性格を読みきれなかった俺の失策だった。

 いや、櫛田一人ならまだ良かった。ひよりなら、奪い取れば良いと割りきり動いただろう。しかし──

 

「軽井沢さんに櫛田さんに一之瀬さんに堀北さんに坂柳さん……そうそうたる面子ですね」

 

 指を折りながら一人一人の名前をあげていくひより。

 綾小路の馬鹿が、短期間で面倒臭い連中に連続で手を出してんじゃねえ。そこまでしたなら、ひよりにも手を出せよ。

 心の中で毒づくが、俺には綾小路がそいつらに手を出した確信がない。ひよりにはあるのとは大きな違いだ、これでは踏み込めない。

 

「一対一なら各個撃破可能なのですが、現状は本丸に近づくことさえ厳しいと言わざるを得ません。並大抵の策で仕掛けては敗北するのは私でしょう。

 場所を問わず血を流すことを厭わなければ、勝利する道筋も有るのですが。それをした場合、本丸の心証を害する恐れがあるので実質不可能です。

 本丸に、綾小路くんに、近づくことも出来ずに敗れては意味がありません」

 

 いや、綾小路相手に証拠どころか確信さえ持たずに、ちょっかい出すのは愉しそうだからやっても良いが。

 既に撃破が容易い順番を決めている上に。

 ──全く同感の順番だ、一年、いや半年前なら一之瀬と鈴音の順は逆だったが、鈴音の成長には驚かされる。

 

 容易い順に名前を読み上げなから、具体的にどう仕留めるかまで想定して、血を流さない理由を綾小路の理性にだけしか求めていない。

 ──人前で流血騒ぎを起こす奴など、綾小路は理性で切るからこれも同感だ。

 

 そんな、並大抵の手段でなければ勝利してのける自負を持つひよりの為にわざわざ労力を割く必要が

 

(チッ)

 

 ある。クラスの連中からの信用を得るためには、誰にでも「流石は」と思われる必要がある。最近、クラスに目に見える貢献をしたことで目付きを変えさせたとはいえ、その程度だ。まだ足りない。

 クラスの雰囲気を悪くするひよりを何とかするのは必須だ。

 

(クソが)

 

 

 

「龍園くん──」

「何だ?」

「あなたがどう思うか、感想を聞かせてください。

 女体の肉と壁に吸い寄せられ、巻きつけられたまま最後の精が火玉とともに散っていく──

 いよいよここからは、ともに死へ旅立つための最後の饗宴である──

 いかがですか感想を聞かせてください?」

 

 前振り無く話題を変え、浮気心中本を手に持ちながら澄んだ視線で俺を見つめながら、心中のシーンを巧みに語り、感想を要求する恐怖の存在(ひより)

 言葉遊びをせずに素直に答える。

 

「たった一つしかないモノを、意味無く捨てる阿呆だろう。語る意味もないな」

「伊吹さんと同じことを言うのですね。意味はあります」

 

 伊吹(看護者)の苦労に思わず同情した。

 

「……ハッ、何が意味だ。死んで何の意味が──」

「最後の瞬間、互いだけを見て想い温もりを感じる。それ以外に何も無く、他の誰も何も必要としない。二人だけの世界。

 その世界の終わりの一瞬に形容できない全ての意味が詰まり、至福のなかに人生のクライマックスを迎える。残るのは、二人の失われていく温もりだけ。

 これ以上の意味を、今の私には想像さえできません」

「……」

 

 言葉を遮り静かに浮気心中の感想を語るひよりの瞳に、何らかの感情があれば無言では無かった。

 だが、ひよりの眼差しには、怒りも、妬みも、絶望も、喜びも、希望もなく。

 ただ澄んだ、曇りなど一切ない澄んだ、何色にも染まらない透明な光だけがあった。

 この光がどう染まるかと想像するだけで、綾小路に敗れた時以来の恐怖に背筋が震える。

 

「これを読み上げた後で、最近そう思うと言ったら、伊吹さんがずっと側に居てくれたんです」

「だろうな……伊吹の奴は何だかんだ言って甘いからな」

「違います。優しいんです」

「ハッ、そうかもな。俺には真似できねぇよ」

 

 言外に俺はやらない、と答えると、ひよりは生け贄を逃したことに残念そうなため息をついた。

 

「……そうですか」

 

 伊吹には少し優しくしてやろうと決意しつつ、理解したのは二つ。

 ひよりは俺にはどうしようもないこと。

 ある意味でいい機会だということ。

 

「その伊吹さんが倒れてしまい、看病しに行っても遠慮されてしまって部屋にも入れてもらえず、途方にくれてしまうんです……こういうとき、よく一緒に本を読んでいた綾小路くんは、忙しい……そうです。忙しいそうなんです。最近、ここ一ヶ月は、私と本を読めないくらい()()()忙しいらしくて」

 

 手に持った浮気心中本を優しい手付きで撫でながら、綾小路(五股野郎)のことを気遣うように静かに語る、澄んだ目の色を変えない恐怖の存在。(ひより)

 

「ああ、そうだな。忙しいだろうぜ。()()()()

「……よく、ご存じですね」

 

 何かに気付いたようにハッと目を見開く。

 

「まさか、平田くんだけでなく龍園くんも……」

「お前は馬鹿か、んなわけねえだろ」

「でも、平田くんは……」

「俺と平田を一緒にするな。平田は夢中になった奴が、掛け替えの無いたった一人になった奴が、たまたま同性だっただけだ。俺とは違う」

「でも、龍園くんも綾小路くんに夢中ですよね」

「確かに綾小路を打倒することには夢中だが、俺と綾小路の間にはそんな感情は入り込まねえ。俺からも、何より綾小路からもな」

「……断言、出来るのですね」

 

 冷静さを失い、アンドレ・ジッドを含めた様々な浮気本に染まったひよりは、男にさえ情愛を交わしたのかと疑い、理解しあっていることに嫉妬している。

 俺が綾小路となどと、おぞましいことを想像していやがる。

 

 だから、今から言う言葉を口にだすと考えるだけで、吐きたくなるが仕方ない。

 ああ、愉しくて仕方ない。

 

「ククク、これでも友人だからな。あいつのことはそれなりに理解しているし連絡も取っているぜ。さもなきゃ友人と呼べるわけないだろう」

「……そうですか、龍園くん()()連絡を……何時か覚えていますか?」

 

 一瞬表情を引き攣らせるひよりと、綾小路を友人呼ばわりした気持ち悪さには構わず、愉しく笑う。

 

「ククク、わざわざ思い出す必要もない。つい昨日のことだ」

「き……き、の、う」

「ああ、昨日の夜だ」

「昨日の夜、昨夜、ゆうべに……何の話をしたのですか?」

 

 ククク、おいおいひより、本を持った手が震えているぜ。

 何てことは言わずに、綾小路との会話を思い返す。

 

「特に面白いことは話してねえな」

「は!?」

 

 遂に瞳に光が灯る。嫉妬の光が。

 俺を嫉妬の眼差しで見つめるひよりをからかうのは愉しくて恐いな。病み付きになりそうだ。

 争いごとを嫌うひよりは、能力はあっても手駒としては不適だった。

 

「今日の夕飯は自炊かとか、無料食品なんだったとか、そんな話だ。面白くもなんともない話だろう……友人同士の他愛もない駄弁りだ。そんなものわざわざ覚えておく必要ねえな。違うか?」

「そうですか……そう、ですね」

 

 だが、今、俺に対してすら、恋の心意を燃やし嫉妬するひよりは違う。

 友人の伊吹を人質に取り、恋敵を破滅させるために非道な手段を是とするくらいに手段を選ばない。

 極めて好ましい変化だ。

 ならば、俺がすべきことは。

 

「何だ、お前は違うのか」

 

 それはそれとして、最近男との会話に飢えているとしか思えない綾小路が、ひよりに態々連絡するはずが無いと知りつつからかってやる。

 

「……」

 

 ひよりは、綾小路が連絡一つしてくれないことを無言で唇を横一文字にして肯定した。

 まあ、当然だろうな。今あいつが求めているのは、モノにした女達との交流と、男友達との会話だ。そして、あいつの本性を知る男友達は少ない。

 だから、女友達のひよりとは道行く途中で会った時に会話くらいはするだろうが、能動的にはしない。

 

「クックック、そうかそうか、そうだろうなあ」

「っ……」

 

 からかう声に、激情に任せて唇を噛み締めたひよりは、次の台詞で目を丸くした。

 

「なら仕方ないな。貸し一つで、泥をかぶってやろう……「え?」……用件があるからと人払いさせた綾小路の部屋に俺が一人で入った後、お前を呼び寄せて、適当な理由をつけて俺だけ帰ってやる。本丸に直接あたってからはお前次第だ」

「素晴らしい、それでお願いします。龍園くん、貴方は素晴らしい友人です。喜んで借りにさせてもらいます」

 

 俺がすべきことは、愉悦を覚えながらひよりの策に乗り、様子が変なひよりに何かあったら綾小路に教える、という昨夜綾小路と結んだ合意に解釈の余地を設け、実質的に綾小路を売ることだ。

 俺に今の発言をさせるために、伊吹に頼み込んで口裏を合わせ、クラスの雰囲気を悪化させたひよりの策に乗ってやる。

 本当に憔悴はしていたが、伊吹はまだ壊れてはいない。ひよりに壊れる半歩手前で踏み留まらされて、壊れた演技をしているだけだ。クラスの有象無象ならともかく、友人を壊さない一線をひよりは護っている。

 

 伊吹を憔悴させて協力しなければ止めを刺して壊すと、人質にはしたが。そうでなければ俺を動かせない打算によるものだ。その程度の打算は誰でもしているし愛嬌さえ感じられる。

 

 だからこそ、このまま突き進んでもらいたい。理性が切れていても、良識を保ちながら、ダーティに対応出来る知恵者は欲しい。

 貸しを明言させた時点で得るものは得た。口約束を破るなどという俺からの『信用』を失くすような愚行はひよりは犯さない。

 恋敵がいる限りはひよりは『信用』できる。

 ひよりが闇落ちして俺にはどうしようもなかったなどと、本当に真実でも綾小路には通じないだろうが、幸いにしてその綾小路はこの場には居ない。

 ならば俺とひよりとで話を詰めて、ひよりと一対一になる場を用意してやり、俺はただ恋のキューピット()()をしてやろう。

 

 それがどう転んでも一番愉しめそうだ。

 

 俺の黒い笑顔に、ひよりも憂いを取り除かれた満面の笑みを咲かせた。

 

 まあ、ひよりがとち狂って初手心中を強行しても、奴なら死なないだろう。自分のまいた種だ、せいぜい苦労して刈ってもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 ──一方その頃、綾小路の部屋で

 

 

「うぐっ……くっ……うっ……こ、こんな、ところで……こんな格好っ……」

 

 便座の上に拘束されて座らせられた少女の苦悶の声が響く。

 便座の上に膝立ちの姿勢になるように膝を閉じ合わる形で縛られた縄の数々、それらの縄のうち足首の縄が手首と繋ぐように結ばれたことで、股間を広げたままピクリと動かせない。

 その上で、亀甲縛りで乳房から股間まできっちりと縄目も綺麗に縛り上げられ、便座の上に座る様は、肌の美しさも相まって彫像のようだ。

 まあ、彫像というにはあまりにもいやらしすぎるが。

 

「うあっ! い……痛っ、いたい」

 

 股を閉じようと試み、すらりとした健康的な太ももに毛羽立った荒縄がギリギリと縄目を刻み付けるように食い込み、鈴音の端正な顔が苦痛に歪む。

 

「もがけばもがくほど食い込むぞ。それとも、食い込ませたいのか?」

「っ……」

「こんな風に」

 

 ふいと、唯一動く顔を横に向けて意思表示に変える鈴音に、オレは胸の谷間あたりの結び目を上に持ち上げる。

 

「ああっ!!」

 

 ぎしり、という軋みを立てて荒く毛羽立った荒縄がさらに乳房に食い込んで、鈴音が苦痛の悲鳴を上げる。

 

「ひっ!」

 

 ぎし

 

「いっ!」

 

 ぎし

 

「痛いっ! 痛いからやめてっ!」

 

 辞めるわけなくへその上あたりの結び目に手を伸ばす。

 

「ま、待って、本当に、まっ……んっ!」

 

 腰から秘所に回った縄が、かすかな音を立てて秘所に食い込んで、処女を失って大分たつのに未だぴたりと閉じた大陰唇の割れ目の間に滑り込んでいく。

 

「ひっ……だめぇ──っ!!」

 

 敏感な部分を毛羽立った荒縄にこすられる恐怖に鈴音が悲鳴を上げる。

 身動きの出来ない者をなぶっている状況はたまらないものがある。聞こえる悲鳴に背筋をぞくぞくさせ逸物を滾らせる。

 

「あそこの毛がないとくっきり見えるな」

「あ、あなたが……あなたが剃ったんでしょう……ひぐっ!」

 

 言葉責めの羞恥に体を反らそうとして、大陰唇の割れ目に滑り込んだ縄が食い込んで敏感な粘膜に触れ、くちゅりと音を立てた。かあぁと音を立てて全身が朱に染まり、羞恥に目を見開き体をくねらせる。

 

「いっ! いやっ! いや、痛っ……痛いっ……!」

 

 痛みにもがけばもがくほど、ぎしぎしと音を立てて、体中の縄が白磁の肌に食い込んでいく。

 

「動かないほうがいいぞ」

 

 そう言いながら、今度は胸と股間の間、へその上にある一際大きな結び目に手を伸ばしつかむ。

 

「ひっ……や、やめっ」

 

 引きつった悲鳴を上げる鈴音と目を合わせ、目を細め

 ぎしっ

 

「いっ……やぁぁぁっ! 痛っ! いたいわっ!! あっあぁぁっ!!」

 

 一際強く引っ張られ乳房と秘所を同時に絞られた痛みにのたうつようにもがき、そのお陰で全身をさらなる苦痛にさらす鈴音。

 

「もう一度言う。動くな」

「うっ……ううっ……うっ……」

「返事は?」

「うっ……この、サディスト……はい……」

 

 ぎしっ

 

「ひぃぃぃぃっ!!??」

 

 遂に大陰唇の割れ目に食い込んだ縄の上の結び目を持ち上げられてしまい。敏感な粘膜を毛羽立った荒縄にこすられた刺激に、鈴音は全身を震わせながら股間から透明な汁を垂らす。

 

「……ぁ……ぁ…………」

 

 こんなことをされているのに快楽を感じていることに信じられないと見開いた目で語りながら、ビクビクと全身を震わせる鈴音の耳元で囁く。

 

「返事になってないな」

「は、はい……うごか、ないわ」

 

 荒い息を吐きながら従順であるふりを始めた鈴音に満足げに頷き離れる。

 ふりに騙されたようにした方が後々楽しめるからな。

 

「ああっ!? ま、待って、触らないでっ!」

 

 荒縄で根元から搾り上げられ、中に詰まった肉が搾り出されてパンパンに張り詰めた乳房に触られ、鈴音が悲鳴を上げるが。

 

「はっ……はううっ」

 

 流線型の形が美しい乳房が荒縄で紡錘形に搾り出されたのを、脇のほうから添えるように、搾り出された肉を更に持ち上げながらやわやわと優しく揉まれると、ついつい甘い吐息を漏らしてしまう。

 

「んんっ……んっ」

 

 亀甲縛りで搾り出される痛みが、優しく揉まれるだけで痛みが和らぐだけで収まらず、快楽を感じてしまう自分の体。その姿をオレに見られていることに、鈴音は恥ずかしそうに俯き、せめて嬌声をあげまいと唇を引き締める。

 

「んぁ、んっ……んんんっ」

 

 さっきよりもちょっと強めの愛撫。

 決して巨乳と呼べるほど大きくはないが、形が良くて見掛けよりもたっぷりとした肉が詰まり、なおかつ弾力に富んだふくらみをこねまわすように愛撫する。

 ぐにゅぅ、と指をめり込ませても、反発するようにすぐに押し返して元の形に戻り

 

「あっ、んっ、んぁっ……んっ」

 

 下から弾き上げると、弾力を持って跳ねて元の形に戻るのがたまらない。

 

「柔らかくて弾力の有る胸だな。本当によく弾むから見ても触っても愉しい」

「んっ、んぅっ」

 

 言いながら両手で、縄で膨らまされてぱんぱんの二つの乳房を弄ぶ。

 揉めば弾けるように跳ね返し、しっとりとした肌をさすれば、ぷるんっと震えて応えてくれる。

 

「縛られて硬くなるはずなのに、前より一層柔らかくなった。感度も上がっている」

「んんんっ、んっ、んっ」

「唇を引き締めても、揉む度に可愛い声が漏れているぞ」

 

 それでも唇を引き締め続ける鈴音に、いじめたくなる。

 根元から先端に向けて荒縄で圧迫されながら縄型を刻み込まれている乳房を揉みしだいていると、手のひらにつんと浮いた硬い突起が触れる。

 

「ひゃん! ……っ……んっ、んふっ……んっ、んんっ」

「感じているな鈴音」

「っ……んっ」

「唇を引き締めても、しっかりと乳首が立っているぞ」

 

 時々、指と指の間に挟まり、ひっかかるように、ぷるっ、ぷるっと揺れる慎ましくピンと勃起した淡いピンク色の突起に鈴音の注意を寄せて、鈴音の胸の谷間に顔を埋める。

 

「ちょ、ちょっと……! な、何、何てところを嗅いでっ」

 

 今まで胸はもちろん腋どころか秘所の匂いも何度も嗅いだのに、未だに慣れることなく抗議するほど純情な鈴音の甘い香りを胸いっぱい吸い込む。

 

「相変わらずいい香りだな。落ち着く匂いだ」

「そ、そう、ありが、とう」

 

 自分の体臭を褒められ、思わずかあっと頬を火照らせて、もぞもぞと体を動かそうとしても縄によって動きが封じられている鈴音は、何時ものようにオレの動きを制することができない。       

 

「ぁんっ!? ……だめっ、いきなりそこは……だめよっ、あぁ……っ!」

 

 プクリと張り詰めた乳首を唇で挟み込み、表面を舌でなぞりながらコリコリと唇で圧迫する。

 

「ぁあっ!? す、すっちゃ……だめぇっ、んんっ」

 

 搾り出された乳房をやわやわと揉みながら、先端で硬くとがった乳首に吸い付くと、鈴音の口から驚きと悦びの喘ぎが漏れる。

 冷たいと思われることもある硬質の美貌が押し寄せる快楽にゆがみ、肢体から発情した女の香りを漂わせ始める。

 いつもは冷静かつ理知的な鈴音が自分にだけ見せる牝の反応に、オレは何度抱いても心を震わせられる。

 

「だ、だめよっ、ち、力が抜けてっ、……体から力が抜けたらっ……縄が食い込んじゃ……あっ! うんっ、あ、くぅっ!」

 

 便座の上で鈴音の腰が怪しく動くのに合わせて、乳輪ごと音を立てて吸引すると、ぽたりと便器の水溜りで音が鳴る。

 

「ち、ちがっ!」

 

 羞恥で真っ赤になった鈴音の制止より早く、指で赤く染まった大陰唇を左右に開く。

 ピチャッぽたぽたっと淫らな音を立てて、鈴音の秘所の本堂を隠していた最後の扉が開き、桃色のヒダと柔肉の小陰唇、その奥にある膣口が覗き見える。

 

「ぽたりぽたりと奥から奥から垂れているな」

「み、みちゃ、見ちゃダm……あうぅっ!?」

 

 身動きした途端に最後の扉がなくなった秘所に荒縄が食い込み、敏感な秘肉を毛羽立った荒縄に刺激される衝撃で均整の取れた肢体が跳ね上がり、背骨がきしむほどのけ反った。

 

「あっ、ああっ……あっ……」

 

 あまりのことに、鈴音は端正な容貌を醜く歪ませながら、下半身をガクガクと小刻みに震わせる。

 

「こんなに濡らすとはな。縄が気持ちいいのか」

「ち、違うわっ……違う、違うっ、違うわっ! こ、こんなの、気持ち良いわk……いっ、ひぃ……!!」

 

 縄を掴んだオレによって、充血したクリトリスを皮ごと縄で擦りあげられ、鈴音の背がぐうっと仰け反る。

 その行為でまたも全身の縄が締め付けられ、苦痛に呻きながらも

 ぽたりぽたり、鳴り響く水音が、こんなことで快楽を感じているのだと他の誰よりも鈴音にそう思わせる。

 

「体中縛られて乳首を舐められて、ついにはまんこまで縄で撫でられて、腰震わせながら水音するくらいの大粒の愛液垂らしておきながら、違うといわれても信じられないな」

「そ、そんなっ、あぁぁっ! ……違うのっ……違うわぁっ!? ふあぁっ、あっ!? ぁあぁあっ!?」

 

 縄で秘所を擦られ続けると、鈴音はその肢体を震わせながら、何度も甘い鳴き声をトイレに木霊させた。

 

「あああっ!?」

 

 緊縛した体を左手で抱えながら、口で乳首を交互に吸い付き、右で秘所を縄で刺激すると、鈴音はつま先までピンとして刺激に溺れる。

 自由になる顔を上下左右に動かしながら、高まる性感に確実に追い詰められていく。

 

「だめっ……だめよっ!?」

 

 上気した顔で自分の乳首に吸い付くオレを見詰めて、首を振るがどうしようもない。

 クリトリス、膣口、秘肉という最も敏感な部分を擦りあげる縄責めの快感に抵抗しようとしても、びちゃびちゃぽたりぽたりと大きな音が股からしている。痛いほどしこった乳首が乳輪ごと吸引され、ざらざらとした舌で舐めあげられている。

 

「一度イッておけ」

 

 その様を見て取ったオレは、鈴音の愛液で毛羽立った縄が濡れてしまい責める効果が薄くなった秘所に顔を持って行く。

 

「いやいやっ!? い、今っ、そこっ、縄の毛が付いてる、かもしれないし、何より汚っ……あうぅっ、な、舐めちゃ、駄目ぇぇっ!? ……ひぃぃんっ!?」

「確かに汚れているな、白く粘つくようになった愛液が全体にこびりついているからな」

 

 軽くぺろりと舐めると、端的に品評して縄で大陰唇が閉じないようにして、芳しい牝の香りが充満している秘所に舌を突き入れ、ヒクヒクと蠢く秘肉から白く濁るようになった愛液を舐め取るようにして愛撫する。

 

「ああ、いやっ!? 舌が、入って……ああ、くちゅくちゅ音がしてっ……だめよぉっ、音立てないでっ! か、かき回したらだめぇっ!」

 

 腰の疼きがどんどんと強まり、全身が燃えるように火照り、心臓がうるさいほどに鼓動を鳴らす。

 それが何を意味しているのか、ここ一ヶ月で思い知った鈴音の秘所は、秘所を掻き回されて鳴り響く水音と、ねっとりと秘肉を這い回る舌の愛撫に応える。

 鈴音の秘所は絶頂の予感に、生き物のように、ねじれ、ゆがみ、蠢き、収縮して蜜を後から後から垂れ流しながら締まりだす。

 

「だ、だめっ! こ、これいじょ……っ! いっ、あっ、ぁぅ!」

 

 オレがクリトリスを皮ごと押しつぶすように吸い付いた途端、鈴音の緊縛された美しい裸体がピンと突っ張った。

 

「あ、い、いやっ……あぁぁっ!!」

 

 ガクリと全身をオレに委ね、鈴音は痙攣のように震えながら、ぽたりぽたりと秘所と便器の水溜りで伴奏を奏でた。

 

 

 

 

 

「……ぅ……ぁ……」

「縄だけでは絶頂しなくても、快楽は感じられるようになったな」

「……ここで縛られる前、三回もイかせられたからよ」

 

 この期に及んで、ふいと横を向いて反抗できる鈴音は大したものだと思うし滾らせてくれる

 

「もう良いでしょう……縄をほどきなさい」

「何をいってるんだ。何のために便座の上にいると思っている。お楽しみはこれからだ」

 

 鈴音からは見えない廊下に置いた物を持ってきて並べ出す。

 

「……何よ、それ?」

 

 高性能パーツで作った自作ノートパソコンや何時もの黒い鞄等、目に引くものは他にも有ったのだが。鈴音の目は、オレが手に持った無色透明な医療用ボトルと、オレの足元に置いた新品のポリバケツから外れない。

 鈴音の勘が、あれが一番危険だと叫んでいるからだ。

 そんな鈴音の勘に敬意を払うために、医療用ボトルの中身をポリバケツに空けながら端的に答える。

 

「グリセリン浣腸液だ」

「……ぇ」

 

 何を言われたのか理性が拒み、炭酸が抜けたような声を出す鈴音に、バケツに移したグリセリンを水で薄めながら再度答える。

 

「グリセリン浣腸液だ」

「……じょ、冗談よね」

 

 見る見る鈴音の顔が青ざめていく。

 

「そ……そんなのっ……そんなので……何をするつもり、なの、よっ」

 

 鈴音の怯えを含んだ震え声に直ぐには答えず、鞄から巨大注射器を一本取り出し、ポリバケツに容れたグリセリン浣腸液を吸い込ませる。

 太さ直径3cmある注射器の黒いゴム製の先端は、その太さを肯定するように、かなりの勢いでグイグイと浣腸液を吸い込んでいく。

 

「これから、この注射器に入ったグリセリン浣腸液を鈴音の尻穴に挿入して、腸壁を刺激して蠕動を促進させて排便を促す」

「……や、やめっ……」

 

 具体的に言葉にされ、蒼白になる鈴音の前で注射器が満杯になる。ポリバケツにまだ半分ほど残したまま。

 まだ薬剤が残っているポリバケツと注射器とオレの顔に視線を回すして額から汗を垂らす鈴音に尋ねる。

 

「浣腸の経験は?」

「あ、あるわけ、ないでしょう……わ、私はっ、そんな物の世話になる必要なんてないわっ……」

「快便とは健康的で結構だな」

「そ、そうよ。だ、だから、やめて」

 

 一人の少女として「うるさい」と否定せず、恥を忍んで肯定した鈴音の必死な声にそうかと頷く。

 目を細くする。視線に温度があるならば氷点下だと思える鋭い眼差しに、身を捩って逃げようとしても荒縄で拘束されているため身動きさえ出来ない鈴音が竦む。

 

「注射器の容量は1L。最初にしてはキツいだろうが、漏らしてもなんの問題もない。その為の便座の上だ」

 

 市販のグリセリン浣腸液が120mlだと言わずに、最早言葉もなく引き攣った顔を振るだけの鈴音に向き直り宣言する。

 

「さて、本日のメインイベントの準備だ」

 

 耳をつんざく悲鳴が部屋に轟いた。

 




大体3話くらい書かせていただきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

少し先の話②

FREETさん、評価付けありがとうございました

 こういう話を書いていると、心の奥底から熱い物が、空っぽな心にやる気が湧いてきます。


「ばっ、馬鹿っ! やめなさいっ! こ、この変態っ……! ……ひっ」

 

 悲鳴を上げながら首だけしか振れない鈴音の顔を息がかかるほどの近さから覗き込む。

 

「さて、初浣腸に悶えるお前の綺麗な顔をじっくり愉しませてもらうか」

「そ、そんな……ひぃっ」

 

 綺麗と言われて僅かに頬を染めながら抗議しようとする鈴音の言葉が悲鳴に変わる。

 オレの手が尻の谷間をグイと無慈悲に押し開き、手に持った縄で谷間の尻肉を引っ掛けながら輪を作ると足首と手首を合わせている結び目に取り付け、尻の谷間が開いたまま固定したからだ。

 ただでさえ股を広げた格好の上で、さらに尻肉を割り開かれ、鈴音の秘所と尻穴は丸見えだった。

 

「いい眺めだな」

「いやあっ……こんなの、いやよっ」

 

 これ以上なく恥ずかしい格好をさせられ、気丈な鈴音と言えど言葉が震える。

 

「お願い。こ、こんな格好は、無理よ……はうっ」

「別にいつもと変わらないだろう」

 

 プリンとした鈴音の綺麗な尻肉を鷲づかみにしながら応える。柔らかく張りのある弾力が、感触を楽しむ手全体を押し返してくる。

 

「い、いつも、より酷いわっ! そ、それに、触らないでっ!」

 

 身を捩ろうとする鈴音だが、不自由な姿勢で完全に拘束されているためそれすら満足に出来なくなった。それでもオレの手から鈴音が逃れようとする度に、搾り出された形の良い胸が誘うようにプルプルと震える。

 

「ぁ……」

「胸も股間も丸出しのまま全身を縛られて便座の上に座って胸を誘うように揺らすなんて、なかなか出来ることじゃないな」

 

 自分の胸がいやらしく揺れていることに気付いて羞恥の吐息を漏らす鈴音を、間髪入れずに言葉責めする。

 

「な……ひいっ」

 

 言葉責めに言い返そうとする鈴音の言葉が悲鳴に変わる。

 剥き出しになった肛門のプクリと膨れた蕾の中心に、太さ直径3cmある注射器の黒いゴム製の太い先端がピッタリと添えられたからだ。

 

 くぷっ

「ひいっ!?」

 

 浣腸されることはもちろん、触られることなどオレとこういう関係になるまで想像さえしていなかった褐色の肉の蕾にゴム管を押し入れられ、つんざくような悲鳴を上げて、鈴音が全身を震わせる。

 

「いくぞ」

「ひっ、いやっ、や……やめてっ……やめっ──」

 

 弄ばれていると理解していても、肛門に異物を注入される異様な挿入感に、肛門を今までで一番押し広げられたせいで体が固まってしまい、悲鳴を上げて首を振り続けるしか出来ない鈴音の姿に熱いものがこみ上げてくる。

 

「てっ、ふぁああああああぁぁぁぁ!!??」

 

 ブジュルルルルッ──

 こみ上げる衝動のまま、ゆっくりと注射器のポンプを押して1リットルの容量の中身の注入を始めると、鈴音が白い首筋を露にしながら顔を仰け反らせ、絶叫じみた悲鳴を上げた。

 通常、浣腸をするときは40度くらいの水に浸して体温よりも高い温度にして注ぎ込むのに、室温と同程度の冷たいまま注ぎ込まれたのだから当然だ。

 

「いっ、いやぁっ!? かはっ……つっ……冷たっ……ひっ! く、くはっ! はぅぅぅううぅぅっ!? ……ぁ、はぁ、ぁっ」

 

 腹の中に冷たい液を流し込まれ、しばらく大きな悲鳴を上げ続けると、酸素がつきてガクリと俯き荒い呼吸をつく。

 

「あっぐ、うううぅぅ、入って、……あっ、あぁぁぁ……や、やめっ……も、もうっ、無理よっ……」

 

 最初のうちは眉を顰め顔を歪めながらもグリセリン浣腸に耐えていた鈴音だが、300mlを超えた辺りから苦しそうな様子を見せ、これ以上入れないように懇願してくる。

 温めもせずに冷たいまま入れられている上に、浣腸に望ましい姿勢ではないのだから当然だろう。

 

「大丈夫だ」

「はぐっ!? くっはぁぁぁっ!? ……冷た、い……、んぐっ、あぐうっ……まだ、入って……」

 

 ぐぎゅるるるるる

 

 浣腸液を詰め込まれた下腹部から、雷のような不穏な音が響く。

 その音に羞恥を感じる余裕さえなく、ブルブルと全身を震わせる。額には脂汗が浮かび、足の指先がピクピクと痙攣している。

 

「ひぐぅぅぅ、あぁぁっ! あぁぁぁっ! お、お腹、お腹っ……がっ! おな゛か、が、ぐるじぃ! ……あ、いや、まだ、あるの!!?」

 

 変わらぬペースで注ぎ込まれ続ける注射器には、まだ半分近く液体が残っていた。

 

「ふあぁぁぁぁっ! お゛ァっ! ひぐっ! ふぐぅぅぅっ!」

 

 注入開始から約10分、残り500mlを切ったあたりで、少女の額だけでなく全身に大粒の汗が浮かび始める。

 

「後少しだぞ」

「ダメっ……!? だめよぉっ!? 本当に、こ、これ以上はっ……!! ……あっ! あ゛っ! ああ゛っ! …………あああっっ!!」

 

 既にペットボトル1.5本分以上のグリセリン浣腸液が鈴音の腹に収まっている。初めて尻穴に浣腸を入れられる少女にとっては、標準の120mlでも辛いであろうにそれの約6倍だ。

 妊娠六ヶ月目の胎児とほぼ同じ容量を注ぎ込まれ、鈴音の腹はぽってりと膨らんでいる。

 びくっびくんっと拘束された体が打ち震える。

 

「あっぐっ! かはっ!? ぐっ! うっ! ううっ! うぁ、うぅぐぅぅっ……」

 

 腹の中で暴れまわる便意に、歯を食いしばって必死に耐える。

 そんな鈴音の姿にオレの興奮はさらに高まる。

 

「後もう少しだ」

「……ぃぃっ、うぐぁぁ、もう……無、理……限界……ぃ…………こ、これ以上入らない! や、止めてぇぇぇ……」

 

 残り2割。最早悲鳴を上げる余裕さえなく、口を空けたまま舌を突き出してえずくようなか細い声をあげ続ける。

 そんな哀れな姿に、オレのサディストとしての歪んだ興奮はさらに高まった。

 

 ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるうううぅぅぅぅ

 

「これで最後だ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あ……あっ、あっ、あっ! んぐぇぇぇぇぇぇぇ…………!」

 

 100mlをきったところで、最後の一押しは一気に注入した。

 断末魔の悲鳴を上げて体をびくんびくんと震わせる鈴音。目を今にも零れ落ちそうなほど大きく開き、開け放たれた口から突き出された舌が、暑い日に冷水をかけられた犬のように痙攣していた。

 

「ぅぅうぁあぁああぁぁっ……」

 

 拘束された体は玉のような汗を浮かべながら震え、そのせいでさらに全身を苦痛にさらしてしまい、必死の様相で呻き声をあげる。

 

「1L、一滴残さず全て入ったぞ。なかなか経験できない飲み心地だっただろう」

「はぁ……はぁ…………はぁ…………はぁ…………」

 

 額に脂汗を浮かべながら、必死に息を整える鈴音。

 意思も強く鍛えられた肉体をしているとはいえ、内蔵まで鍛えられるはずがない。

 1L、単純換算で七ヶ月目の胎児と同質量もの液体を注ぎ込まれた鈴音の腹は、見事に丸々と膨らんで下腹部を圧迫してくる。

 

「うっ……ぐっ! くっ! んっ! あっ……はぐっ! ほ、ほどい、ほどいてぇ……うっ! ううっ!」

 

 さらに全身を拘束した縄の一番大きい結び目が腹を圧迫する上に、拘束した腿が膨らんだ腹をさらに圧迫してくる痛みは、よほどの訓練を受けていない限り耐えられるようなものではない。

 

「でも、本当に愉しいのはこれからだ」

「ひゅっん……ん、んんっ……!」

 

 尻穴から注射器を抜き取り、奇妙な声を上げた鈴音の弾けるような尻をやさしく撫で上げる。

 

 ぎゅるるるるる

 

「あ……ぐっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

 

 抑えが無くなり、競うように外へ飛び出そうとする液体を、唇をきつく引き結んで人間のものとは思えない呻き声を上げながら、尻の筋肉に力を入れて体内に押し止める。

 そうすることで、腸の中に押し留められた薬液に刺激された腸壁が蠕動を促進させ始めた。

 

「かはー、かはーっ、あっ、あぐっ!? ……ぐっ、ぐはっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……はぐっ……!」

 

 ぐるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる

 薬液が腸を洗い、腸内の固形物を溶かしながら蠕動させる渦を巻いて不気味な音をならす。下腹部を貫くような痛みとともに、尻の最奥からこみ上げてくる便意に、鈴音はただ震える。

 

「お、お願い、と、トイレ、トイレ、に、行かせて」

 

 浣腸の知識しかない鈴音には、まさかこれほど早く何より激しい便意を促すとは思いもしなかったのだろう。有無を言わさず吐き出させようとする便意の高まりに、壮絶な表情で必死に訴えてくる。

 

「ここが、トイレだ。変に我慢しなくてもいい、何の遠慮も要らない」

「そんなこと、出来るわけがっ、ないで、しょうぅぅっ、ぐっ、ぐぅっ……あ、あなたが、みてる、のよ……うっ、ぅぅうっ……」

 

 言葉の途中で言葉にならなくなり、食いしばる歯の間から苦しげに呻き続ける鈴音。

 注ぎ込まれた液で腹は大きく膨らみ、身震いするたびに大きく震えている。

 美しい肌はびっしょりと脂汗に濡れ、ひくつく尻穴は今にも噴出しそうに強張っていた。

 そんな中、蛍光灯の元にさらけ出された秘裂が、とろりとした蜜をたらしながら生き物のようにヒクヒクと震えている。

 快楽を、自分さえ気付かない程度の快楽を感じている。こんなことをされて、口では抗っていても心と体では受け入れてしまっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな鈴音を見ながら、携帯端末を取り出しノートパソコンに取り付け、自分でプログラミングしたアプリケーションを立ち上げながら、改めて思う。

 こんな愚行をするほど、オレは愚かになったのだなと。ある種の満足を覚えながら思う。

 

「ま、まさか、録音、しているの?」

 

 きゅー、と尻穴に向けて周りの筋肉全てを行使して締め付け、なんとか流出を食い止めながら、オレの様子を見た鈴音が聞いてくる。

 

「そ、そんなことをしたら、う、うっ……ぐっ」

 

 ぐるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる

 腹部が大きな音を立て、全身に新しい脂汗が浮く。

 

「で、出るところに出るわよ」

「ほう、例えば?」

「ちゃ、茶柱先生に伝えるわ。あなたが、能力を十全にクラスの為に使わないあなたが、こんなことをしていると茶柱先生が知ればどう動くか、あなたなら分かるわよね」

 

 当たり前だが、クラスのリーダーとして成長した鈴音は、茶柱がAクラスを渇望していることを理解して手を組んでいる。

 その為に、利害が一致した鈴音と茶柱が度々私的に交流して居ることもオレは鈴音から聞いている。

 つまりは──

 

「茶柱のことだから、お前のことを伏せてオレを脅してくるな」

「ええ、その通りよ……わかったでしょう。お、脅しじゃ、ないっ……わ。証拠を残したのだから覚悟して、も、もらうわよ。ぐっ、ぅう……わかったなら、録音を止めて縄をほどいてトイレの扉を閉めなさい」

 

 グリセリンを1リットル容れられた便意をこらえにこらえ。脂汗を流しながら脅してくる鈴音の勘違いを解く。

 

「何か勘違いしているようだな。録音何てしていない。それでは、つまらないしな」

「……え、なら、何を?」

「もう少し待て」

 

 鈴音から視線を外してパソコンの画面に目を向けるオレに誘われたように、鈴音がパソコンに目を向ける。

 

「……貴方、それ、ぐぅ、その、パソコンで、何をしているの?」

 

 画面一杯に幾つものウインドウが開いては閉じ続けるパソコンを見つめながら、鈴音が苦痛ではない恐怖に震えた声を出す。

 何が起こっているか具体的に理解できなくとも、いや、だからこそ、嫌な予感が止まらないだろう。

 

「お前とこういう関係になってから手掛けていたことにようやく目処がついてな。今から御披露目というわけだ。もう少し待ってくれ」

 

 これは愚行だ。かつてのオレならば負わなかったリスクだ。

 確かに、オレはあの時あの場所で、鈴音の立派な行動に敬意を持ったし、オレなりに慰めもした。だが、ここまでしようとはやる気さえ湧かないどころか考えもしなかった。必要のない愚行でリスクだからだ。

 幾つかのウインドウがタイムアウトせず、応答時間を計り始めた、あと少しだ。

 

「だ、だから、何を?」

「お前が望んでいることだ」

 

 だが、あのランジェリーショップで決めた。目の前で便意に耐える少女を綺麗だと言って抱きしめたときに決めた。愚かになろうと。

 その結実の一つを今この場で表に出す。

 応答が始まった。呼び出しを始めた。

 

「今の私の望みは一つよ。この縄をほどかれて、トイレの扉を閉めた後、あなたを殴る。それが唯一ののz「よし」っ、何が?」

 

 強気に発言していても、オレの発言一つでビクリと震える可愛らしい反応をする鈴音に滾りながら答える。

 

「……開通した」

「だから、何をしてる、のよ……ひっ……あっ、ひっ、ひぐぃ」

 

 どこか透明感さえあるサディズムに溢れたオレの眼差しと目が合い、思わず軽い悲鳴を上げてしまい力が抜けてしまう。漏らすまいと慌てて尻穴を締める鈴音を見ながらおもむろに尋ねる。

 

「鈴音、プレゼントの肝は何だと思う?」

「な、何を、何をいきなり言っているのよ。ぐっ、ぅぅっ……も、もう、縄はいいから……早く、扉を閉めて……」

 

 最早縄をほどかれる刺激ですら止めとなってしまう鈴音に淡々と言葉を返す。

 

「オレは、プレゼントの肝はサプライズにあると思う。ずっと心の底で望んでいても手が届かないとあきらめているものを突然渡す。それこそがプレゼントの肝だ」

 

 ピッと携帯が相手と繋がる音がした。

 

「今からお前が、ずっと望んでいたことをプレゼントする。我ながら気が利いていると思う贈り物だ。受け取ってくれ」

「だ、だから、ぷ、プレゼントって? 贈り物って?」

 

 質問に答えず、画面をタップしスピーカーに切り替えた。

 

「久しぶりだな」

「久しぶりって……」

「この番号を使うとはな。鈴音も居るようだが、何があった綾小路」

「っ……! に、兄さん」

 

 卒業まで諦めていた声に、思わず喜びの色を浮かべるが、直ぐに息をのみ驚愕に目を見開く。

 何故自分も知らない番号をオレが知っているのか? 

 外部に連絡することは出来ないはずなのに何故できるのか? 

 オレは、自分とこういう関係にならないと自分を兄に連絡させてくれなかったのか? あの日涙を流すように促して、あんなに優しく(側に居て)慰めてくれたのに! 

 いや、このサディストがそういう人だとは分かっていた。なのに、何時心変わりしたのか? あの日、ランジェリーショップで、隠れていた一之瀬さんに見られながら抱きしめられたときなのか? ……なら、少し、そう、少しだけ許せる、かも、知れない。

 様々な疑念が湧くが、分かるのはただ一つ、今自分は全裸で拘束された挙げ句、浣腸され便意を必死にこらえているのに、兄に繋げられてしまったということだ。

 あまりのことに、畏れ戦いた視線をオレに向ける鈴音に眼を細め、声を出さずに口を動かす。

 

『お前への贈り物、メインイベントの開始だ』と。

 蒼白になる鈴音を見ながら、懐かしい声に話しかける。

 

「用があるのはあんたの妹だ。数分くらいなら学校を誤魔化せる。ログにも、オレはこの時間別の相手と電話しているとしか残らない」

「ほう……どうやってと聞きたいがそんな暇は無さそうだな。後日聞くとしよう」

「話が速くて助かる。専用回線を使ったデザリングのようなものだと考えてくれれば良い。後日連絡は難しいな、ハードルが高い」

「技術的か状況的か?」

「技術的だ」

「なるほどな。残念だが、お前と話し込む暇はないか。本題を聞こう。鈴音に代わってくれ」

 

 技術的と聞き、余裕がないと即座に判断して本題に入る。話が速くて本当に助かる。

 

「ああ、勿論だ。ただ二点問題がある」

「なんだ?」

「あくまでも短時間、数分だけだ。ピッと電子音が一度鳴った時が、三十秒前だと覚えておいてくれ」

「承知した」

「それとスピーカーでしか繋げられなかった。それも心得ていてくれ」

「心得た」

「構わないのか? オレが、あんたと妹の話を聞いても」

「俺達兄妹のことで、今更お前に秘密はない」

「そうか。なら、代わる」

 

 蒼白の堀北に視線を向けると、ふるふると首をふりながら「扉を閉めて出させて、その後にして」と視線で語られた。

 返事として『出している間に時間切れになるぞ。次、兄と連絡出来るのを卒業まで待てるなら好きにしろ』と、用意しておいた文章を呼び出して画面を見せた。

 一瞬、鈴音にとっては永遠と思える葛藤の後、絶望の表情を浮かべながら頷き、極上の贈り物を受け取ると意思を示した。

 

「安定しているから急に切れることはない。もう心配せずに、話しても構わないぞ。鈴音」

「まて、『鈴音』だと」

「言いたいことは分かるし、オレからも報告したいことがあるが、今はあんたの妹が優先だ。まあ、そういう関係になったとだけ伝えておく」

「そうか、何だ……こう言っては何だが、ありがとう」

「何であんたが感謝するんだ。それは俺の台詞だろう。違うか?」

「違わない……そうだな。なら……おめでとう。清隆」

「ありがとう。学。鈴音に代わる」

 

 声に喜色を混ぜて祝福する兄と和気あいあいと話をするなか、限界を超えて便意をこらえる妹の顔色はすでに紙のように白い。

 

「きゅ、急に連絡して、ご、ごめんなさい。兄さん。じ、実は──」

 

 ギュルギュルとお腹を鳴らしながら、必死に平静な声を出す。

 脂汗で全身をテカらせながら、羞恥、歓喜、憤怒、悲哀がブレンドされた表情の鈴音は、その健気さも相まって凄絶な美しさがある。

 

「じ、実は、あ、あや、っ、き、清隆くんが──」

 

 口を閉ざして言葉を切り、何かを堪えるように目を閉じて開き、唇を開く。

 さて、鈴音がどうするのか。

 兄に泣きつくか? 兄に訴えるか? それとも隠して会話するか? 便意にただ呻くのか? それとも他か? はたまたその全てか? 

 おそらく、想定通りになると思うが、それが一番オレ好みの流れだ。

 何より、どれを選ぶにしても未知を既知にするのは何時だって心踊る。




 龍園くんが情報技術を勉強している時に、端末をクローニングして開通を実施する綾小路くんの巻。
 ホワイトルームの存在意義からしてITスキルは必須でしょうから、ハードさえそろえば綾小路くんに出来ないはずがない(確信)

 リスクを負う『必要』さえ認めることができれば、でしょうけど。

 
 やる気が戻ってきたので、年末くらいに一之瀬の話を再開させます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

少し先の話③

ashbrainさん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

年末の日常は強敵ですね。久しぶりに帰ったのなら、尚更。
おかげで時間がまったく取れない。


「清隆くんが、兄さんに……つぅ……学校に感知されずに連絡出きると聞いて……証明させようとした……いいえ、違うわ。半信半疑だったけど、兄さんと話せるなら話したくて、繋げて、もらったのよ」

 

 予想通り隠して会話する選択肢を選んだ鈴音は、拷問じみた腹痛に襲われながら死力を尽くして平素の、否、兄が在校時にしていた敬語ではなく普通の妹が兄に向ける口調で言い切ると涙を流した。

 今日、初めての涙。

 

『この鬼畜、兄さんと連絡出来る手段があるのを黙っているならまだしも、この状況で繋げるなんて、後で覚えてなさいよ』

 

 美貌を歪め、歓喜と怒りと恥辱と哀愁に満ちた涙を流した。

 あまりにも滾らせる涙目の鈴音の顔に

 

『お前に話したら意味がないだろう』

 

 と、眼を細めてかえす。

 

『そう、これは、復讐なのね。あの時の、一之瀬さんと櫛田さんの三人であなたを追い詰めた部屋の一件の復讐……なんてことをするのよ……この非道、鬼畜──』

 

 ありとあらゆる罵詈雑言で埋めつくした瞳で睨み付けながら口パクで懸命に意思を伝えてくる鈴音には悪いが、少し前の完敗の復讐なわけがない。

 確かに、あの一件で女の面を全面に出されてしまうと抗いようがないことを学んだが、江戸の敵を長崎で討つような真似はしない。意味がないからだ。

 これは、ただ純粋にしたいからしていることだ。

 後から殴られるだろうが、愛液を垂れ流す鈴音の秘所とどこか明るい顔色、何よりも殺意まで込められていない眼差しを見ればこの行為を(ギリギリ)受け入れてくれていることが分かる。

 

 それに、『兄と話させている間に浣腸したい』だとか『兄と話させてやるから浣腸させろ』とかの『~したい。~させろ。後で覚えてなさい』と言うのは、所詮は願望であり弱者の遠吠えでしかない。無駄に相手を警戒させるだけの意味の無いことだ。

 浣腸の苦痛と羞恥を味わわせつつ兄と話す歓喜に満ちた鈴音を見るのならば、こうするしかなかった。

 ただ、それだけのことなのだ。

 

『表面上の理由は理解したわ。後で、フライパンでそのおかしい思考の頭を殴って正常にさせる。で、本音は?』

 

 最近、普段の無表情ではある程度とはいえ思考を読まれてしまうな。困ったものだ。

 

 ……本音は、鈴音を兄と連絡させて喜ばせてやりたくとも、今の鈴音なら浣腸でもして追い詰めなければ、兄と繋げた途端に兄公認のお墨付きを得た上で周知を図って外堀を埋めるという確信があり。五股かけている今、それに抵抗する術が見つから無いためについた男の嘘と卑劣なのだが。

 そんなことを明かせるわけがなく、心の中の別の棚に上げて鍵を閉めてしまっておく。

 

『無表情になっていないで答えなさい。本音は?』

 

 心の別の棚の中を知られれば、凶器(フライパン)片手にした鈴音に頭をパックリと割られるため、睨み付けてくる鈴音を意識して作った鉄面皮で見かえす。

 何時も以上に表情を変えなければ、流石の鈴音もオレの意図が読めない。

 

『普段通りの表情に戻して本音を出しなさい。可愛げが無いわよ』

 

 命じる視線に無言で首を振ると、ギロリと音を立てて睨み付けてくる。とても、恐い。が今の内心を知られるわけにはいかないので、鉄面皮で通す。

 さらに睨んでくる。

 鉄面皮。

 そんなやり取りをしているとトイレに学の声が響く。

 

「そうか、清隆くんか……それに、懐かしい口調だ。別れたとき、大丈夫だと確信していたから、ひょっとしてと期待していたが、昔に、いや、ただの妹の頃に戻ってくれたんだな。いいや、すまない。俺のせいで拗らせたのだから、こんな言い方は違うな」

「いいえ、違わないわ。戻れたのよ。兄さんのせいで、大分遠回りしたけどね」

「そうか。そういう風に言えるようになったんだな」

 

 感慨深げに感動を噛み締めたせいで若干口調が覚束無い兄の声に、睨み付けたまま喜びと感動を混ぜ合わせた声を出す器用な妹。

 どちらともなく言葉を途切れさせ、ただの兄と妹として笑って会話する自分たちを想い合い。二人の間で流れる心地よい沈黙の時間を味わう。

 

 ギュル、ぎゅるるるるる。

 

 心地よい時間が異音によって消える。

 

「っ!!??」

 

 ゾワッと、鈴音の白磁の肌が粟立つ。

 ビクッと、緊縛されたせいで何時も以上に出るところが出た裸体が可哀想なくらい揺れ。

 ギシリと、空気を凝固させるような目で睨み付けられた。

 

 ……死の香りを嗅いだ。

 

 想定どおりとはいえ、やはり愚行だった。学に連絡して兄妹で話させるならば、鈴音に外堀を埋められるのを覚悟する。否、鈴音だけと付き合うところまで状況が動いた場合のみ連絡すべきだったな。と思ってももう遅い。

 一瞬、後でフライパンで殴られることを覚悟したが、すぐに違う流れに切り替えた。

 

「季節外れの雷か? そっちは天気が悪いようだが雷まで鳴るとは、よほど荒れているんだな」

 

 学の疑問に、答えて答えてと視線で語る鈴音を無視して、携帯端末を持ち上げ鈴音に向けた。

 学の声を聞いてある確信にたどり着いた。ならば切り替えた流れに沿うために鈴音をさらに責めるべきだ。まるで妊婦のように膨れ上がった腹に向ける。

 

 ぎゅるるるるる

 

「そ、そうよ。ちょっと、天気が荒れていて」

 

 自らの腹の鳴る音を兄には聞かせまいと、縄が食い込んだ裸体に脂汗をたらしながら顔面蒼白で歯を食い縛って、平静な声を出す鈴音。オレに散々縛ら上げられた経験から痛みが走っても緊縛された体を動かさないことも含めて健気なものだ。

 

「そうか、なら良い。しかし、付き合ったのなら清隆の能力を知る機会など幾らでもあっただろう。貴重な機会を使って証明しなくても良かったんじゃないか?」

「付き合っているからこそよ。兄さん」

「ん? ああ、そうか。清隆の秘密主義は相変わらずか」

「ええ、相変わらずよ。プレゼントとか言いながらこんなことが出来るとは明かすけど、それだけなのよ。何が出来て何が出来ないのか、一つ一つこちらから調べないと、さっぱり分からないわ。

 分かるのは目的達成の手段として、それが必要かつ合理的なら何でも肯定するドライさがあって、その目的の核心を他人には明かさないことだけ。

 だから、ある程度目的が一緒ではないとクラス争いではあまり使えないのよ。パッと見だと協力的に見える分、高円寺くんよりたちが悪い困った人。端的に言って可愛くない人だわ」

「なるほど、相変わらずだな。まあ、清隆の目的が何処にあるにしろ、しばらく話せないと覚悟していたお前と話せることは素直に喜んでおこう」

「私もよ兄さん……もちろん、次があるんでしょうね?」

 

 もちろんに底知れない圧を入れて、脂汗を流しながらこちらに聞いてくる鈴音。

 拷問のような腹痛と便意に兄と話せる歓びに身を浸しているのに、呼吸するがごとく自然と、どれほど自分がオレを理解していることをアピールしながら兄の言葉を補強して、外堀を埋めるように付き合っていることを事実とする手腕に少し戦慄する。

 どうやら、もう一本、それもキツいのが必要のようだ。

 

「努力するが、さっきも言った通り技術的に困難だ。個人技は瞬間的には組織を上回るが、あくまで瞬間的にだ。だから、次は何時になるか分からない。全てが上手く行っても二ヶ月はかかる。最悪の場合、これが最初で最後の連絡になると覚悟しておいてくれ」

 

 保冷剤と注射器をタオルで一緒に巻き付けながら答える。

 

「ね、これだけのことを、学校の穴を突いて二ヶ月後にはリスク無く連絡できるかもしれない、なんてとんでもないことを、当たり前のように抑揚の無い声で言うのよ。この可愛げの無さ、相変わらずでしょう」

「ハハッ、そうだな……しかし、お前がここまで成長するとはな。これも、清隆のお陰か」

 

 オレをクラス争いではあまり使えないと評したことから、鈴音が他者に強くそして優しいリーダーをしているのを理解できたことも喜ばしいが。

 敬愛の対象の兄に、卒業まで会えないはずの兄と、電話出来たのに寂しさのあまり縋り付きも寄りかかりもせず、遠慮なくただの妹として振る舞う鈴音の在り方にこそ、()は柔らかな声で喜ぶ。

 

「き、清隆くんのお陰? 確かに、最近は表情が少しは出るようになったけど、この無表情冷徹女たらしの無節操のお陰のはずが無いじゃない。確かに、思い返してみれば、色々手助けしてくれて背中を支えてくれたから、自分の内面を見て変わることが出来たこともあったわよ。でも、それは、少し、いえ、かなり、いえ、殆どしか関係無くて……最近は、優しいところが出てきたし、私のことを、き、綺麗とか平気で恥ずかしいことを連呼するようになったけど、そんな当たり前のことを連呼されて嬉しいわけはないわ。冷徹非道でたまに信じられないほど優しくて頼りになる彼に言われて喜んだり、胸が高鳴ったり……緊張して、恥ずかしがったりなんてするはずがないじゃない。こんな可愛げのない人のお陰で私が変わることなんて有るはずが無いのよ。

 そうよ。この無節操非道鬼畜冷徹鉄面皮女たらし男に絆されるなんて……あるわけないわ。わかるでしょう、兄さん」

「そうか……お前がそんなに拗らせたのは俺のせいだ。すまないな清隆」

 

 半オクターブ高い声の早口で猛然と捲し立てる何処から突っ込めば良いのか迷う妹の拗らせっぷりに、本気で謝ってくる兄。

 いや、正直なところ、今やっていることの非道さからすれば、こういう反応を示す方が一人の少女としては不味いと思うんだが。下地があったとはいえ、何と言うか染まったなと感慨深く思う。

 

「どうして清隆くんに謝るの。謝るのなら私にでしょう?」

「……ああ、そうだな。本当にすまない、鈴音、清隆」

 

 兄の謝罪の対象に、オレの名前が入っていることに納得いかずに言い募ろうとする鈴音を遮り答える。

 

「気にするな、最近それが楽しく思えてきた」

 

 自分を変えてくれたのはオレのお陰だと早口で言ってしまう鈴音の有り様は、とても可愛いらしくて弄りたくなり弄ってしまう。今のようにたまにやり過ぎてしまうのが、困ったものだ。そして、とても愉しい。

 

「成る程、お前たちはお前たちらしく巧くいっているようだな。安心した」

「清隆くんに言われて、どうして兄さんが安心できるのか疑義を呈したいのだけど」

「気にするな。で、二ヵ月後には連絡できるのか?」

「でm」

 

 ギュル、ぎゅるるぐぎゅるぎゅぐるぎゅる

 

「~~~~!! ……っ!!??」

 

 話を変えようとする兄を追及しようとした妹の腹から、一際大きな音が響いた。グリセリンの薬効が浸透仕切ったのだ。

 猛烈な便意がもたらすあまりの苦痛に、僅かに血を滲ませるほど唇を噛んで耐える鈴音の目に信じられない光景が写り、驚愕に眼を見開き固まる。

 

「一応言っておくが、二ヶ月後に確実に連絡できる訳ではない。どうしてもリスクが有るからな」

 

 体中の汗腺という汗腺から汗を流しているかのように汗だくに成りながら固まった鈴音の間を埋める為に言葉を紡ぐと、学が真剣な声で話してきた。

 

「リスクか……清隆」

「何だ?」

「お前が自らの能力を隠していた一因はリスクを負わないためだと、俺は理解している。なのに、何故今リスクを犯す?」

 

 答えが分かっていても、妹の為にあえて聞く兄心に端的に応える。

 

「鈴音の為だ」

「……良い答えだ。俺にとってはこれ以上ない答えだ。良い方向にお前も成長したな」

 

 感慨深く吐息をつく学。

 オレの即答に偽りはない。

 万感の涙を流した鈴音とこういう関係になったからこそ何とかしてやりたいと思い、兄と連絡させるためにリスクを甘受したことも。

 脂汗と涙と涎を垂らしながら便意を必死に堪える鈴音の姿に情欲を抱き、兄と話させることでさらに追い詰めていくことも。

 オレの中では何の問題もなく両立する。

 

「そ、そうね。驚くほど、か、変わったわ」

 

 ポリバケツに入った残りのグリセリン浣腸液を、保冷剤をタオルで巻き付けた注射器に入れるオレの姿を見ながら、鈴音は兄と同じく一聴して感動したような震えた声を出す。

 今オレが抱いている思いを正確に理解したから出た、感動と怒りと羞恥と絶望と制止に満ちた声に、学は気付いているのだろうか。まあ、どちらでも構わないな。

 

「そうか、そうだろうな」

 

 ゆっくりと満たんに容れた冷えたグリセリン浣腸液を再度鈴音の尻に再度近づけながら、そう呟く。

 

「あっ、あなっ」

 

 鈴音の普段のなだらかな腹とは違い、1Lもの液体が注ぎ込まれ見た目にわかるほど少し膨れ上がった腹には、もう冷やしたグリセリン浣腸液を入れられる余裕などなく。あまりの事に声に出してしまいかける鈴音の目の前に、端末の画面をかざす。

 

『兄にバレるぞ』

 

「~~~~~!!??」

 

 爛熟した林檎のように顔を朱に染めて唇を食い破りかね無いほど噛み締める鈴音の尻穴に、再度注射器の先端が刺し込まれた。

 

「うっ……ぁ……ふあぅぅ……っ! ……っ!!」

 

 中身が漏れないように懸命に閉めていた括約筋を無理やり押し広げられ、鈴音の口から奇妙な声が漏れる。

 冷たい先端から注ぎ込まれる冷やされたグリセリン浣腸液の挿入感に、鈴音の顔がぐんっと仰け反った。

 刺激に大陰唇が開き、だらだらと愛液が股間を伝って便器の中に垂れ落ち水音を奏でる。

 

「何だ、今の音は?」

『どう説明するんだ?』

 

 兄の言葉に被せるようにかざした端末の画面を読み取った鈴音が、顔を仰け反らせたまま悔しそうにオレを睨む。

 

「な、何でもないわ……その、す、水道が」

「水道?」

「だ、台所の水道が、か、雷で、変になってぇ……っ! し、シンクが、み、水、水浸しに……あ……ぅぅぅっ……あっ……く、くぅっ……! は、はいって……はいって、く……る……」

 

 兄との会話に気を取られている鈴音に身構える余裕を与えることなく、注射器のポンプを押し込んだ。

 ジュルルルルーッ。凄まじい薬液の奔流が腸内にほとばしる。

 

「あっ……は、入ってくる……あぁあぁぁぁっ……うぅっ……んぐ……んぅぅぅっ……ぅぅぅっ……」

 

 冷たく冷やされたグリセリン浣腸液が与える内臓に突き刺さるような刺激に、鈴音が仰け反った顔を振りたくって、悲鳴を歯で食いしばりそれに耐える。が、キリキリと腸がきしむ刺し込むような痛みと共に突き上げてくる便意が、食いしばった歯から悲鳴を出すのを止めさせてくれない。

 

「んはぅっ……くはぁっぅぅぅっ……う、ぐっぅぅっ……うぅうぅぅぅぅっ……くふんっ……ぁぁぁぁっ」

 

 最後の一滴まで、オレは注射器の中身を鈴音の中に流し込んだ。

 鈴音の尻穴から注射器を引き抜く。

 きゅぽん

 

 抑えが抜かれた尻に鳥肌が立ち、冷え切った浣腸液を追加された鈴音の声にならない悲鳴が空気を切り裂く。

 

「っ~~~~~~~!!!!」

 

 抑えがなくなり、外へと飛び出そうとする2Lの液体を目を見開き歯を食いしばった必死の形相で押し留める。

 きゅううと尻穴に向けて周りの筋肉が全て集められるように締め付けられ、発達途上の縦に丸みを帯びた向き卵のような尻がぶるぶる震えながらえくぼを作り、総身からドッと冷たい脂汗を滲み出させながら、なんとか流出を食い止める。

 だが、薬液で燃え盛る生理的な欲求が意志の力でねじ伏せられるはずが無かった。

 それも2L、ほぼ妊娠九ヶ月の浣腸液、一般的な量の16倍以上を入れられ今にも弾けそうな勢いで腹が膨らんでいるのだ。

 腹の膨張感と便意に口を小さく開いて喘ぐ鈴音が、こらえようとすればするほど便意は高まっていき、少しでも尻穴から力が抜けれてしまえばあっけなく崩壊するに違いない。

 

 ぐごきゅぐきゅぐごきゅぐごきゅ

「~~~~~っ!!」

 

 腹部が大きな音を立てる度に、今までの人生で初めて味わう猛烈な腹痛に身を震わせる。

 このままでは、人前で漏らすという乙女には耐えられないことをしてしまう。それも

 

「どうした鈴音? 何が入ってくるんだ? シンクがどうなった?」

 

 何度か小さい方を見られたオレだけでなく、敬愛し親愛な兄に聞かせてしまうなど鈴音に出来るはずがない。

 決死の表情になり、声音だけ平静を装う。

 

「ううん、なんでもないわ。し、シンクは、今、清隆くんが、やってくれているから、大丈夫よ」

「そうか」

「ええ、に、兄さんは最近どうなの?」

「そうだな。お前に報告しておきたいことがある」

「な、何、か、しら?」

「橘を覚えているか」

「ええ、に、兄さんの生徒会で、しょ、書記だった……た……たち、橘先輩よね」

「そうだ。その橘と、茜と付き合っている。お前が卒業した時、一緒に正門の前で待っているからその時に会わせる。その時を楽しみにしていてくれ」

「そ、そうなの、おめでとう兄さん、た、楽しみに、たのしみにっ……待ってるわ」

 

 凄絶な便意と兄との会話に夢中な鈴音は気付かないが、この時間が無いときに態々『紹介する相手』。

 その上で、学の言い様と橘の性格を鑑みると、かなり後のことまで想定して付き合っている仲のようだ。

「まだ二人の時間を大切にしたいから、後3年は子供は作る気はありません」そんな橘の声が聞こえた気がした。

 

「ああ、ありがとう。お前もおめでとう。で、どうだ」

「ど、どうだっ、て?」

「鈴音、お前は今、幸せか」

「え? そ、そうね、私h」

 

 ぴゅー

 ごろごろごろごろぎゅるぎゅる

 

「~~~~っ」

 

 兄と会話を弾ませたせいで、押し止めるのが精一杯だった尻穴から、一瞬だけ力が抜ける。

 少しでも尻穴から力が抜けてしまえばあっけなく崩壊しそうだった尻穴から力が抜けてしまい、尻穴から液体が噴水のように飛び出し、そのまま流れ出ようとするのを決死の覚悟で締め付けて押し留める。

 

「ひどい雷だな。新しく水音がしたが、シンク以外にも何処か漏れているのか」

「ええ、そうね。ひどい雷、ね。ど、どこも、も、漏れていないわ」

 

 全身を脂汗でぐっしょりと濡らし呼吸を絶え絶えにした鈴音には、もう余力は残っていない。次力が抜けたときが終わりだ。

 それを甘受するはずがなく、なんとかしなさいと視線で語る鈴音に大きく頷き、ゆっくりとアナルプラグを手に持ち端末の画面に文字を打ち込んで見せる。

『蓋してやろうか』

 

「~~~~~~~!!??」

 

 壮絶なまなざしで画面とオレの顔と先っぽがやや尖った細型の半透明な物体を睨み付ける鈴音だが、駆け巡る便意と膨張感に腹どころか全身がびくびくと震える表情には、余裕の欠片も無い。

 こくり、と頷いた。

 

 

 

「そ、そうね。幸せで、じゅ、順調だと思うわ。一つを除けばだけど」

「清隆の奴がお前を順調にさせてくれないか。ハハッ、良い事だ」

「そ、そうなの。あまり──」

 

 二人の会話を聞きながら真っ白な尻肉の間でひくりひくりと蠢く尻の穴を見つめる。色素沈着がほとんど無く、放射線状に広がる皺まで美しい形の尻穴。

 そこを見ながら、自作のアナルプラグにたっぷりとローションを塗りたくる。

 

「ひっ」

「どうした?」

「な、何でも無いわ。じ、実は──」

 

 視線に可虐の色を滲ませながら固く窄まった尻穴の周辺にローションを塗ると、鈴音が悲鳴を上げて話を変えていく。『早く塞いで』と恥らう余裕さえなく必死に口パクをする鈴音には、弄る時間さえないことに残念半分興奮半分の衝動を覚える。

 

 ローションでテカテカと光るか細く震える尻穴へ、ローション塗れにしたアナルプラグを近づける。

 みちっ、ぐっ、ぐぐぐぐぐっと音を立てて、硬く引き窄められた尻穴をアナルプラグが貫いた。

 

「ひっ、んんっ、ぐうっうぅ……!」

 

 今まで指しか入れられてなかった排泄器官の肛門にアナルプラグを捻じ込まれた羞恥と汚辱に、鈴音は全身を震わせて苦悶の声を上げる。

 

「ひんっ……ぁ……ぅ……は、はぁっ……!」

「前振り無しでため息とは、恋煩いか?」

「ち、違うわよっ」

「ハハッ怒るな怒るな」

 

 が、

 限界以上に窄め続けたせいで、括約筋はおろか、むっちりした内ももにさえ筋肉の線を浮かび上がるほど酷使した尻穴を塞がれ、思わず安堵の吐息が漏れてしまう。

 それを兄にからかわれ反発する鈴音の横顔と声は、年齢以上に幼く感じさせる。

 そんな妹の声に楽しそうに笑う兄の声を聞きながら、優しい思いを感じつつアナルプラグに空気ポンプを取り付ける。

 

「ひぐぅぅうううぅうっ……!! あぁああ!!!」

 

 腹の中で卵形に膨らんでいくアナルプラグに、鈴音が驚愕と苦痛の声をあげる。

 通常時の形では便意を堪えるために硬く窄まった尻穴を無理に捻じ込むと、間違いなく裂ける。それをさけるための一工夫だったが、教えられていない鈴音には奇襲でしかなく、あまりの痛みと圧迫感と被虐感に悶絶する。

 

「う、うそ……うそ、よね……は、はいっ……ふ、ふくらんっ……うぐっ……ぐぅう……!!」

 

 腸内を圧迫感された尻穴が、その括約筋が異物を押し出そうと限界までに緩まり、ひくひくと収縮を繰り返すが、そうさせないための形状をしたアナルプラグは、容赦なく収縮するたびに奥へ更に奥へと埋没した。

 

「あ、ぁあっ……あうっ……うっ、ぅうぅっぅ……ぅあっ……」

 

 食いしばった奥歯から漏れる鈴音の呻き声を聞きながら手を離しても、アナルプラグは抜ける様子はない。半透明のアナルプラグは、蓋のある根元まで完全に潜り込み、尻穴の栓となった。

 

 ぐご、ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

「あ、ぁあっ……あ゛ぐっ……ぐっ、ぐはっ……はぁっ、ん、んぐっ……!」

 

 そして、アナルプラグで出口を塞がれたといっても強烈な便意が収まるはずがない。否、出口が塞がったことを感じ取った堀北鈴音という少女を構築する本能が、排便への欲求に屈して理性を破壊するごとく排便への要求を突き上げてくる。

 追い詰められた理性が便意を抑え込もうとして、鈴音は息みとともに全身をこわばらせ、ギュッと肛門を休めていた括約筋引き窄める。

 その行為が、肛門から直腸に掠めるほど深く埋め込まれたアナルプラグを食い締めてしまい、異物を肛門に捻じ込まれた恥辱と被虐を際立たせる。

 

「ん……んんんっ……あ、ああっ……」

 

 胎内から湧き立つ熱い衝動に、遂に鈴音が兄の前で口を開き嬌声を上げようとする瞬間

 

 

 

 

 ピッ、と終わりを示す電子音が鳴る。

 

「盛り上がっている所で悪いが、そろそろ時間だ」

「そうか……またな鈴音。話せて良かった」

「え、ええ、兄さん、私もよ。き、清隆君の尻を叩くから、なるべく早く、また話しましょう。話したいことがたくさんあるの」

「俺もだ。頼んだぞ清隆」

「努力しよう。オレもあんたと話したいからな」

「そうか……ではな」

「ええ、兄さん、また」

 

 苦痛に苛まれていても、やはり兄との会話は別格だったのだろう。柔らかな笑顔を浮かべ、バレなかったことに何処か安堵したように鈴音が別れの挨拶をかわした瞬間

 

「ああ、そうだ。鈴音、清隆、これは、兄でもなく先輩でもなく。一人の人生の先達として言わせてもらうが」

 

 意識の隙間を縫うように、厳しい色を宿した学の声が響く。

 

「性欲に滾って色々試したくなる年頃とはいえ、俺を出汁にしてアブノーマルなプレイに盛り上がるな。少しは良識と常識を弁えて品位を保て」

「ぇ? ……」

「その通りだな。すまなかった」

 

 呆然とした妹の声とオレの謝罪の声に、厳しい色を宿していた学の声が笑みを含んだものに変わる。

 

「今回だけはお前たちの仲の良さの証として受け取る。だが、忘れるな。今回だけだ」

「肝に命じておく」

「……ぇっ? ……」

「そうか、ならば良い。またな、鈴音、清隆」

 

 きっかり30秒で妹に止めを刺した兄の言葉が終わると同時に、ピーと長い電子音が響く。

 

「切れたな……逆探はされていないな。安心しろ、学校にはバレていない」

「……」

 

 ぎゅるるるるる

 パソコンを確認して安心させるために声をかけても微動だにせず、笑顔のまま腹を鳴らす鈴音。

 

「やはり、学には浣腸プレイがバレていたな」

「…………」

「しかし、流石だな。言うタイミングを心得ている」

「…………ぇっ?」

「このままだと次会う時か連絡がついた時には大変だな」

 

 あのシスコン、鈴音が浣腸されて便意を堪えているのを隠そうと必死で健気に会話しているのを承知の上であの言葉運びか。

 明らかに便意をこらえる音がなった時に雷ととぼけた瞬間に確信していたが、即興でこれとは、熟練の業さえ感じさせてくれる。

 在校中の鈴音(とオレ)への態度で理解していたが、今確信した。学はサディスト。しかもドがつくレベルのようだ。ならば、本人も言っていたように、鈴音との仲が拗れた大きな原因は学にあるし、鈴音がサディズム行為を受け入れる下地が整っていたわけだ。

 橘は苦労しているかもしれないなと、完全な他人事として考えながら自分にとってはどうかと考える。

 ……考えるまでもない、学(鬼畜兄)とは色々な意味で良い仲を築けそうだ。

 それが分かっただけでも、鈴音に浣腸した上で学に繋げ選択肢と言う名前のボールを投げた甲斐があった。

 

 予定通り鈴音もオレが股をかけているとは言わず、学の怒りを買わなかった。

では、楽しむか。




堀北兄って絶対ドSだと確信しています。妹に対する態度と何より綾小路に対する態度がドSのそれ(笑)

もう一話書いた後、一之瀬です。
次は年を越した後になると思います。

皆様、よいお年を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

少し先の話④

新年あけましておめでとうございます。

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。




 ぎゅるるるるる

 

「ま、待って! 兄さん! 待ってぇ! ち、違うのっ! 私は無理やりっ! 縛られて無理やりっ……つ、繋げて、直ぐに繋げっ、え!? ま、待って、や、いやあ!?」

 

 腹の痛みで意識を取り戻し悲痛な否定の言葉を上げている最中に、腹にある荒縄の一番大きな結び目を切り裂かれたかと思うと、流れるように濡れそぼった秘所に亀頭を当てられた鈴音は制止の悲鳴を上げるが、たっぷり濡れた膣口は慣れ親しんだ亀頭に歓喜して吸い付くように受け入れた。

 熱く濡れてうねる秘肉の感触を、亀頭で味わいながら鈴音を抱き寄せて囁く。

 

「兄と話ながら、ぽたぽたぽたぽた、愛液水面にずっと垂らしておいて何が無理矢理だ。お前がそんな様だから、学に何も言わなくともアブノーマルプレイを楽しんでいるとしか思われないんだよ」

「そんな、そんなことっ」

「随分と淫乱な体になったな」

「違う、違うわ……誰の、せいで、こんな風に……あんっ!」

「違うのか。自分のせいではないと?」

「そ、そうよ。あ、あなたが……わたしを、こんなふうに、し、したんでしょうっ……んぁあっ!」

「ついに人のせいにするとはな。落ちるところまで落ちたな」

 

 心の中では鈴音の言葉を肯定しつつ、口ではそんなことを言って形のいい耳たぶをしゃぶる。

 

「だって、私は、淫乱なんかじゃ……変態なんかっじゃ、ひっ、ひいっ!? は、入ってきちゃう……お腹、いっぱい、なのに……」

 

 浣腸されながら兄と話すという異常極まる行為に、鈴音は興奮を覚えてしまっていた。

 秘所は厭らしく濡れそぼり湧き水のように愛液を染み出し続け、亀頭がのめり込むと同時にぼちょぼちょとトイレの水音を奏で続ける。

 

「大洪水だな」

「い、いやっ、ち、ちがっ──」

 

 真っ赤になって首を振る鈴音の声に被せて言葉責め。

 

「こんな様だから、学に話しても拘束浣腸プレイの一端としか受け取られなかっただろうな……それとも、口とは違ってお前の体がどれだけ正直なのかを知ってもらいたかったのか? なら、協力することもやぶさかではなかったが」

「だめ、駄目よ。協力したらだめっ……お願い、言わないでぇ……」

 

 自身のみだらさを弄り回され指摘され、可愛くマゾヒズムの啜り声をあげながら真っ赤になって首を振っている内に、縄がほどけていく。

 

「どうしたものかな」

「な、何もせず、すぐに扉を……ひぁっ! し、閉めっ、ひゃあああ!!」

「扉か、どうしたものかな」

 

 拘束から開放されプルンと可愛らしく震える乳房をこねるように優しく揉みながら言葉責めして、鈴音を追い詰める。

 

「ちょ、ちょっと! いきなり、むねっ、んぁぁっ!?」

「本当に反応がよくなったな。昔の乳首をいじってもくすぐったいとしか言わなかった頃と比べれば雲泥だ」

「だ、だから、あなたのせいで、こんな、からだっ、ん、んっ、は、はさんだらっ、あぅ……っ!!」

 

 充血して真っ赤になって尖りきった先端を指で挟みながら、優しく乳房を揉む。

 むにむにと縄の痕が残った白い脂肪が形を変えるたびに、乳首を同時に刺激された鈴音は首を振りながら喘ぎ声と唾液と汗を唇から垂らし、秘所から愛液を垂れ流す。

 

「あ、はぁ……ん、ん、んぁ……あぁぁ……」

 

 そうしているうちに遂に鈴音を拘束していた縄が全て地に落ち、鈴音が思わず吐息を漏らす。

 

「いくぞ」

「だめ、今はやめて、入らないっ……それだけはやめ……はぁぁぁぁっ!!??」

 

 拘束を解かれた解放感に体が緩んだその瞬間に、胸に抱きしめられながら一気に逸物をぶちこまれ、鈴音は限界まで押し拡げられた秘裂から愛液がぶちゅりと溢れさせ、丸太を押し込まれたような衝撃に絶叫した。

 

「あああああ!? っああああああ!?」

 

 膣がある程度馴染んでしっかりと濡れているから痛みは無くとも、挿入するときに呼吸が止まるほどの衝撃が走る巨根。

 そんなものを、違う内臓とはいえ腹の中に2L、ほぼ妊娠九か月目、否出産直前の水量を入れたまま挿入された鈴音は、内臓が押し圧される圧迫感に口を閉じることも出来ずに、両目を飛び出でんばかりに見開き、ただ声を上げ続けながら手近なもの──オレだ──にしがみ付く。

 

「っ、凄いな」

 

 そんな鈴音の様子に滾り逸物を挿入したオレだが、鈴音の秘所の有様に三分の一ほど入れたところで一度動きを止め、思わず呻く。

 ただでさえ膣内の襞が異様に多い上に、何か別の生き物が住んでいるような独特の秘所。それも一匹だけでなく、何百匹、何千匹と蠢く、ミミズ千匹の名器が、必死で括約筋に力を入れているせいか、何時もよりも遥かに強く逸物を締め殺さんばかりに隙間なく締め付け、蠕動して、ぬめりながら、精を吸い取ろうとのたうっている。

 まだ青さが残っているものの、処女の硬さが薄まったある程度経験を積んだ少女特有のどこか硬さが残る、ぴったりと逸物に絡みつきながら締めることを覚えた甘い甘美な秘所。

 もし、最初の相手が今の鈴音なら、オレはとっくの昔に、精を放っていただろう。鈴音の中に入った途端に、呻いて射精してしまったに違いない。

 動かなくてもこうなのだ。今の、浣腸で強制的に締め付け続けさせられている鈴音の、甘美な生き物でひしめいている蜜肉で自在に出し入れ出来たら

 

「どんなに気持ちいいんだろうな」

 

 心地好さに、思わず欲望に我を忘れてしまい、メリメリと音を立てて逸物を押し進めてしまった。

 

「あ゛あ゛あぉぉぉぉっ!? ……ぁ゛」

 

 気づいた時には半分ほど収まめてしまい、限界に達した鈴音が悲鳴のような嬌声を上げて失神する。

 不味いな。今の妊娠九ヶ月の腹を抱えた鈴音は欲望のままでなく丁重に責めなければならなかったのに。

 

 ぐるぎゅるぎゅるるるるる

 

「ぁ……ひぐぅぅぅぅっ!?」

 

 腹を鳴り響かせる便意が失神を許してくれない鈴音は、思わず尻穴に力を入れてしまうことで、アナルプラグとオレの逸物を締め付けてしまう。

 すると、出産直前にまで拡張された腹が破れそうな痛みと衝撃に仰け反る。

 

「はっぁぁぁっ! ぐっ、ぎっ、ひっ、ひぅぅっ」

 

 予定通りとはいえ、あまりの様相に方針を変える。このままでは鈴音を意味なく苦しめてしまう。

 一度、奥までぶち込んでから抱きしめて落ち着かせよう。

 鈴音が知れば間違いなく頭を割る畜生極まりない決意と共に声をかける。

 

「奥まで入れるぞ」

「な!? だ、だめよっ!!?? 今だけはだめぇぇっ!? お願いやめ……ひぁ、んん゛ん……っ」

 

 容赦なく、断末魔の悲鳴を上げながら手でオレの胸を押さえようとする鈴音のぷりんとした尻をむんずと掴み、処女の時よりも強く締め付ける膣を、杭を打ち込むように叩きつける。

 その拍子に目論見通りに鈴音の手が俺の胸ではなく空を切り、しばらく空を遊ぶと掴みやすいところ、オレの首に巻き付くような形になる。

 

「あ、ああああっ!!?? ……っ、あああっ!? ……あっ、ぁぁ、あ!? ……あ……」

 

 逸物に加わるこれまでにないほどの抵抗を屈伏させながら、足を宙に浮かせまいとオレの腰に巻いた鈴音に三度の気絶と覚醒を繰り返させると、オレの腹と鈴音の膨れ上がった腹が密着した。亀頭に感じる鈴音のコリコリした子宮口に満ち足りた気分になる。

 鈴音の蜜壺に道を開通させた悦楽は、何時感じても格別のモノがある。

 

「う……うっ……ううっ……」

 

 あまりの衝撃と苦痛、何よりもこんなことをされても感じるようになった僅かな快楽に、ピクリピクリと白目を剥き体を痙攣させながら呻く鈴音にさらに滾るが、落ち着かせるために鈴音がピクリともしないように強く静かに抱きしめる。

 駅弁の姿勢で抱きしめる。

 

(気持ちよすぎて腰が溶けそうだな)

 

 動いてしまえば間違いなく口に出てしまっていた、口に出したら何をされるか分からない言葉を口の中に押しとどめながら、きつく締め付けながらとろける粘膜に包まれる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ぁっ、はぁ、はぁっ」

 

 腹を圧迫させないように抱きつき、意識が朦朧とする頭をオレの肩の上に置いて頬を擦り付けながら熱い吐息をはき続ける鈴音の呼吸を聞いていると、獣欲ともいえる欲望が体の奥底から湧いてくる。

 

「鈴音」

「はぁ……はぁ……あ、ん……清隆、くん……」

 

 意識が朦朧とする鈴音の腹を圧迫させずに腰を一つにさせて呼び掛けると、抱き合いながらこちらから唇を合わせる。

 かなりアブノーマルなことをしてからこそ、愛想を尽かされないように女性として優しく接するところを隙間に入れなければならない。

 

「あっ……んっ……」

 

 そんな男のずるい計算も鈴音が漏らす甘い声と吐息によって頭の隅に追いやられる。

 

「んふぁっ、あふぅっ、んっく、んんん……っ」

 

 熱を持った甘い香りに浸されながら舌先で鈴音の歯茎をつつき、内頬をなぞりながら舌を吸い上げ唇で鈴音の舌をしごく。

 

「はっ、はえっっ、はふぁっ」

 

 やられ放題だった鈴音の舌が蠢き、オレの口内を舐め上げ始める。柔らかい内頬を硬い舌で舐めあげられる何ともいえない感覚を味わいながら、鈴音と目を合わせる。

 

「んふっ、ふあぁ……っ」

 

 どろどろに蕩けた目になった鈴音が全身をオレに委ねてくる。首根っこに腕を回し柔らかな乳房をオレの胸板に押し付け、硬く尖りきった乳首を胸板で擦り瞳をさらに潤ませる。唇を自分から押し当てて視線を絡めあい唾液の交換を行いながら舌が溶け合うほどにねっとりと絡ませてくる。そして唇を離し、舌でオレの唇をなぞり始める。

 

「……んっ……んんっ……あっ」

 

 そこで意識を取り戻し、酷いことをされているのに少し優しくされただけで絆されてしまった自分を認識した鈴音が頬を赤らめ、なぞっていた舌を離し絡めていた視線を外して肩の上に頭を置いたままプイと目を反らす。

 兄と話したことで出てきた普段よりも幼い仕草に笑みが零れそうになる。

 

 ぐぎゅるるるるる

 

 過程がやりすぎているし、今も鈴音の腹は膨らみ腹をぐるぐると鳴らして、その度に鈴音が羞恥と痛苦で頬を朱に染めている。

 それでも、挿入してしまえば唇を合わせ抱き合う──一般的なセックスになることにおかしくなる。

 結局、お互いのつながりをより深めようとどちらもが思っているとこうなるのだろうな。

 そんなことが、愉しくて可愛いと思う。

 無いだろうが妊娠線が出来ないようにケアしないといけないと考えてしまう。

 

「鈴音、動くぞ」

 

 そんなサディスティックな喜びを深めるべく、返答も聞かずに鈴音の中をかき回す。

 今まで、幾つも見つけた性感帯の一つ一つを擦り、突き上げる。

 

「だ、だめっ、ひ、ひあぁ──っ!! い、今、お、お腹がっ、ふあぁぁっ!! で、でちゃ……あ、あぁぁぁっ!? い、ぁっ、でちゃ、ふぁ……んあぁぁぁっ!!」

 

 両腕でオレの頭を抱きしめ、両脚でオレの腰を抱きしめ、膣内でオレの物を抱きしめ、自力では便意を抑えられない尻穴で抑えてくれるアナルプラグを抱きしめる。

 制止を確信的に無視された鈴音は全身を使ってオレを抱きしめながら悲鳴染みた嬌声を上げ、オレは全身で堪能する。

 部屋に響く水音さえ律動と一致した、お互いの心と体が溶け合って一つになったような性交特有の快楽。

 

「はっあ!? あっ……くはぁっ! あっ……ああっ! あっ、はっ、はうっ」

 

 じゅぶじゅぶと水音を立てながら、締め付けの強さに歯を食いしばる。

 愛液がたっぷりと分泌されているため律動に支障は無いが、それでも力が要ることには代わりが無い。

 

「尻の下までびしょ濡れだな。浣腸はそんなに興奮できるのか?」

 

 じゅぶじゅぶ

 

「あひっ!? あっ、かっ、はっ、あっ、ふっ……そ、そんな、わけっ、ないで……ひいんっ!?」

 

 充分に濡れて形を覚えた膣は膣口が限界まで開ききり、巨根がもたらす圧倒的な肉が普段よりきつい自分の膣を埋め尽くしていく圧迫感に耐えられるものではない。

 逸物が、自分の体の中心を押し下げながら埋め尽くしていくことで与えられる快楽と圧迫と苦痛に圧倒されながらも、浣腸されながら感じるなどとは認められず、何とか耐えていた鈴音だが、搾り出した否定の言葉とともに子宮口まで一気に叩き込まれ、背中を仰け反らせる。

 

「無理……無理よっ!? く、苦しい……あうっ!! ……う、動かないでっ……あうっ……お、お腹が壊れるっ!!」

 

 浣腸されながら同時に膣を犯されていては、流石の鈴音も悲鳴を上げること以外は出来ないらしい。

 そのことにサディストとしての喜びを充足され満足げに頷くと、今の鈴音に合った抽挿を開始した。

 

「ま、まって、ちょっ、まってぇ」

 

 尻を持ちながら体を持ち上げて逸物を抜き上げ、体を下げてゆっくりと開通した膣を再度割り入っていく。

 その度に膣壁がずりずりと擦られながら引っ付いていき、締まりかけた穴をオレの逸物の形に合わせていく。

 そうしていると、ぴたん、びたん、鈴音の秘所への出し入れがリズミカルになっていく。

 

「力を抜いてくれ。そんなにギュッと締め付けていたら動き辛い」

「あっ! だ、誰の、せいで、んっ! し、締め付け……させら……くうぅぅぅっ!! ……あっ! えっ!! だめぇ! そこ、擦ったらっ!」

 

 深呼吸をするようなゆっくりしたペースで、逸物の長さを生かし、根元から先端まで擦り上げる。そんな、ゆったりとした抽挿に乳房を上下にぷるんぷるんと跳ねさせながら翻弄されていたところに、膣の上っ面、Gスポットを突き上げられた鈴音が、背中を仰け反らせながら悶絶した。

 尖らせた先端を朱に染めた形のいい乳房が一際大きく揺れ、全身に滲んだ汗が飛び、黒髪が翻る。

 

「はっひっあっあっ!? あうっ、あぐっ、かっはっあっあっあっあっあっあっ!!!」

 

 そのまま本格的に抽挿する。まだ未成熟なハイティーンの肉体には、体重がもろにかかる上下のセックスは厳しい。その上、今の鈴音は腹に2Lの質量を入れられているのだ。

 そのため、ほぼ真横に股間を割り広げられ、可憐な秘所の子宮口までをこれまでの何倍もの速さで容赦なく逸物で抽挿されると、息をする余裕も無く嬌声を上げ続けることになる。

 

「ひうっ! あっ!! だ、だめっ、あっあっあっあっ、こ、こすっ……い、ぃぃ、イくぅぅ!!」

 

 張り切った肌を紅潮させ、白い喉を仰け反らせ喘ぎ、強烈な打ち込みに耐えていた鈴音だが、膣の薄壁から限界以上に詰められた腸を圧迫され絶頂に達した。

 鈴音の体がびくんびくんと大きく震え固まる。膣もまたきつく締め付けてぶるぶる痙攣する。

 

「自分だけイクなよ」

 

 その強張りを崩すように力強く抽挿する。

 

「あっ、はっ、はんっ!? な、なんっ!? う、動かない、でっ!? わ、私、今、イッて……ひぁあああぁぁっ!!??」

 

 浣腸されて締め付けの力が増した絶頂最中の膣は、たまらなく気持ちいい。あまりにもきつい締め付けに、腰の動きが強く早くなり激しくなる。

 

「む、むりっ!? こ、こんな、のっ、むりよっ、あひぁあぁぁっ!!」

 

 まるで苦痛を耐えるように固く目を閉じる鈴音。

 しかし、言葉と顔とは裏腹に、オレの腰に巻きついた鈴音の脚は、強くオレの腰を締め付けながら、逸物を深く受け入れている秘所を擦り付けるように動き出す。

 

「うぁ……すごい……ん……はぁぁっ! あひっ! あはあっ!」

 

 鈴音の柔らかい太股が蠢き、その度に半開きのままの唇から熱い喘ぎ声が漏れてきた。

 

「スイッチが入ったな」

 

 絶頂とともにスイッチが入った。

 

「な、何を、馬鹿なこと、はぁっ! んんっ!?」

 

 自分の中に急角度で入っている逸物の異物感、それが上下に抽挿するたびに生み出す快感、汗で濡れた肌が強く擦れるたびに感じる女には無い鍛え上げた男の肉の硬さ。

 

「あっあっあっあっ……んあぁっ!? ああっ!?」

 

 言葉では否定しても、それらのものが交じり合い、強い快楽となり、鈴音の理性を溶かしてしまう。

 鈴音の紅潮しきった顔が緩み、オレを見上げる瞳が艶かしいものになる。

 

「あぁ! すごい、あっあっあっあっあっ、で、出ちゃいそうなのに……いい、とってもいい、気持ち、いい……」

 

 声を上げながら、鈴音の声が淫らに蠢く。

 最初はぎこちなかった動きも、快楽に教えられオレに導かれ、快楽を貪欲に貪る女のものに変わっていく。

 

「んんっ、あっ、動きが……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

 

 腰を押し引くピッチを速くすると、体を仰け反らせた鈴音がそれに応じるように腰を振り、膣壁を勢いよく擦られる快感に、覚えた深い喜びのまま体をよじるように身悶えする。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

 

 リズミカルに喉の奥から搾り出される熱く快楽にたぎった鈴音の声。

 硬く閉じた瞳の下で、荒い呼吸を繰り返す小鼻が震え、何筋も涙の後がついた頬は真っ赤になり、半開きになった唇から何筋ものよだれが垂れ落ちる、鈴音の発情しきった顔。

 この声も顔も、学に見せるプレイはしない。これはオレのものだ。

 

「そら」

「あっ、ひっ! あっ、はっ、はっ、あっ、はっ、はっ、はっ!!」

 

 昂りのまま、イキっぱなしの鈴音の体を上下にしながら腰を打ち付ける。

 熱く火照りほぐれきって真っ赤に充血した鈴音の膣を味わう。

 逸物の硬さを溶かすように貪り、締め付け、蠕動して、ぬめりながら、精を吸い取ろうとのたうつ女の肉が生み出す快感にこちらも溶けたような気分になる。

 

「ふああっ!? ……あっ」

 

 鈴音の乳房を両手で掴み、芯に硬さを残した脂肪が手の中で大きく歪む感触を味わいながら、ビンビンに突き立った乳首を口に含み歯で扱き上げると、鈴音の裸体がピンと張り。

 全ての力が抜け、くてっと寄りかかってきた。

 

「また、先にイッたな」

「はぁっ、はぁっ、だ、だって、ぇ、な、何を……っ……」

 

 ぎゅるぎゅるぎゅる

 

 虚ろな瞳で荒い息をついていた鈴音が、自分の尻穴に振動を感じて視線をそこに向け息を呑む。

 

「鈴音」

 

 そこで、いつもより冷ややかで嗜虐をこめたオレの声が吐かれる。

 

「なっ、なに……? なにっ、なんなのっ、なにっ、なにする」

 

 快楽で火照りきり幾度もの絶頂でろくに体を動かせない鈴音が上げる悲鳴に、サディズムを満喫しつつ大きく広がった鈴音の尻肉を片手で広げる。

 

「何度も何度も先にイクのは蓋をしているからだ」

「ちがっ、ちがっ」

 

 普段の気丈さを消して涙目で蒼白になってしゃくりあげる鈴音の声に滾りながら、アナルプラグの根元の空気穴を開ける。

 

 ぷしゅーと気の抜けたような音を立ててしぼんでいくアナルプラグ。

 

「やめっ、やめっ、と、とらな……うぅっ……あうんっ」

 

 鈴音も理性ではやめて欲しい取らないで欲しいと言おうとしているのだが、感じすぎて疲弊した体では意味のある単語を口にすることさえ出来ない。

 

「ぁ……」

 

 息を呑んだ鈴音が目の前にあるものを見て絶望の色を浮かべる。そのまま。脱脂綿に包んでポイとオレが後ろに投げたそれは、鈴音の腹を決壊から塞いでいたアナルプラグ。

 

 

 

 

 ぎゅるぎゅるぎゅる

 

「がっ……あっ……はぁっ、はぁっ……はっ、はっ、はっ……く、くるしっ」

 

 再び訪れた急激な便意が鈴音を襲い、ギリギリと奥歯をかみ締めながら必死で息む。

 が、図らずも逸物を食い締める膣は、痺れるような快楽を生み出し全身を駆け抜けさせてくる。

 それによって、鈴音を弛緩させ嬌声を上げさせるたびに尻からピュルッと浣腸液を漏れさせる。

 

「中腰になって正解だな」

 

 それらの液が全て便器に収まるように対面のまま中腰になり、鈴音を斜めにぶら下げたオレの勝手な言い草に反論する余裕も無く鈴音はただ呻き哀訴する。

 

「お、ね、が……と、とい、れ……」

 

 限界以上に追い詰められ、冷たい脂汗を流しながら体を火照らせるという矛盾したことを強いられている鈴音は、それを口にするだけで限界だったのだろう。言い終わると、荒い呼吸で熱い吐息を吐き続ける。

 

「トイレか、わかった、お前を一人にして扉を閉めよう」

 

 願いを聞き入れられるとは思わなかった鈴音が顔を上げると同時に、続きを言う。

 

「オレがイッた後な「んんっ」」

 

 手の中の尻肉がさらに蠢き、尻穴が窄まるように収縮する感触さえ手に伝わる。

 膣の中の逸物がさらに締め付けられる。

 

「くっ」

「ああっ」

 

 突然のことにオレが上げた声と、極限まで締め付けた膣で逸物の硬さどころか形さえ感じた鈴音が上げた声が同時に発せられた。

 

「うご、いて、イッて」

 

 条件を受け入れても自力では動くことさえ出来ない鈴音の哀願が耳に入ると同時、腰を前後に動かす。

 

「あひっ、んんっ、あぁあぁっ!!」

 

 強く締め付けるというより絞り上げてくる膣、熱くぬめり、蠕動する、ざらついた秘肉に擦り上げられる逸物。

 火照りきり発情しきった秘所から与えられる焼け痺れるような快楽を感じながら、便意をこらえるために官能に飲み込まれないよう必死で締め付ける鈴音の汗まみれの顔。

 ここまで健気にされては、出させながら射精する予定を変更せざるを得ない。

 

「あひいっ、んんっ、ああっ、だ、だし、んんんっ、だして、ひいんっ、なかに、あぁぁっ!!」

 

 発情しきった声でよがり嬌声を上げながら、快楽に焼け溶け、官能の深みに蕩けそうな腰と尻に懸命に力をこめて、肛門を引き窄めて便意を押さえ込み、意味のある単語を口にさえ出来ない体で精を強請る。

 肛門と連動しギュウッと締め付ける膣を硬い逸物で抉りぬかれる甘美と肉の愉悦に、理性はとっくに屈していても、汚辱を見られることだけは避けようと品性をふり搾った嬌声を上げ続ける。

 

「くっ」

 

 そんな健気な鈴音に対し、腰を大きく振り、突き上げ、芯を抉り、掴んだ尻肉を強く掴み、目前で大きく揺れる乳房にしゃぶりつく。

 

「あぁぁっ!? あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ!」

 

 鈴音は後ろに仰け反りながらがくがくと震え、叩き込むような律動の度に震え上げる声にすすり泣きを混ぜて嬌声を出し続ける。

 便意と快感が臨界点まで高まったその瞳は半ば正気を失い、白目をむいている。だらしなく舌をダラリと垂らして、涎をあちこちに撒き散らしている。

 その普段の冷静沈着とは程遠い姿に、オレの中の快楽が一歩上のものになり、ジワリとした射精の衝動へと変わる。

 

「あ! あっいっいっいっいっいっあっあっあっ!!!」

 

 オレの変化を胎内の最奥で感じ取った鈴音が、まるでそれが女の本能だというように、強くしがみ付き秘所を強く逸物の根元や陰毛に擦り付ける。

 

「出すぞ。出したらすぐに扉を閉める」

 

 一際強く腰を突き上げながら掴んだ鈴音の腰を自分に向かって押し付け、鈴音の最奥、こりっとした子宮口に亀頭を押し当てる。

 

「んぁぁぁぁっ!!!???」

「くっ」

 

 鈴音の甲高い声と、オレの重い声が同時にトイレに響き渡り、オレは鈴音の子宮に熱くたぎった精を放出した。

 

「ふぐぅぅっ!!??」

 

 どくんどくんという脈動と共に精を注ぎ込まれ、子宮が満たされる快楽に絶頂に上りつめる鈴音。

 

 ぐ、ぎゅるるるるる

 

「っ!」

 

 抱えられた腰からくたりと背後に折れた鈴音は、痙攣しながら便座カバーの上辺に頭を預けたまま愛液と精液が混じった白濁液を膣穴から垂れ流した半失神状態になる。

 が、迫る便意によりギリギリで意思をつなげ、汚濁を人前で尻穴から吐き出さないよう最後の力を振り絞った。

 

 その後、膣痙攣に等しいほど締め付けてくる鈴音の秘所から逸物を抜き取り、くたりとした鈴音を便器に座らせて扉を閉めて耳を塞ぎながら片づけをした後、便座の上で半分寝ていた鈴音の体を浴室に連れて行き、綺麗にして妊娠線が出来ないようにケアして、そのまま何もせずに同じベッドで寝た。

 

 

 なお、当たり前だが、起きた鈴音はオレの腹を思いっきり蹴とばし、凄絶な眼差しでオレの目を睨みつけながら両頬に爪を立てて引っかいた後、兄との連絡方法以外では頬の爪跡が消える5日間オレと口を利かなかった。

 頬の傷で周りの視線を集めてしまい、噂されて苛まれるのは苦痛だったが、想定通り怒りをぶつける対象に留まり、鈴音が離れることは無かったから甘受すべきだろう。




アナルセックス前夜でした。

次回から一之瀬さんに戻ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

淫蕩な教室へ
堀北鈴音①


初めまして。



 高度育成高等学校に入学して約一年、櫛田の退学を除いた様々な面倒事を処理し終え、求めていた平穏な学園生活を満喫していたある週末、クラスメイトが突然訪ねてきた。

 で、こうなっている。

 

 ベッドに腰掛けながら無遠慮な視線で、目の前の下着姿の少女を見つめる。

 白の上下の下着、レースなども特に使われていない、ありていに普段着といっていいそれは無駄な肉のないしっとりとした少女の白い肢体に似合っていた。

 これが狙ってやっているのなら大したものだが、おそらくそれは無いだろう。彼女には良くも悪くも裏が無い。

 下着姿なら入校してまもなく時に見たのに以前見たときよりもあの時感じなかった色気を感じるのはなぜだろうか。

 肉付きはそこまで変わっていないような気がする。多少良くなってはいるがまだまだ青い果実というべきだ。

 鎖骨のくぼみから胸へと続く曲線はしっかりと描いているが成熟した女と呼ぶほどのものはない。

 ほっそりとした腰はしっかりとくびれているが健康的と呼ぶべきだ。

 白いショーツに覆われている秘所から太ももから下りていく足はむしゃぶりたくなるような肉付きだったが、これから先どうなっていくか楽しみにさせるほうが強い。

 全般的にしっかりとした筋肉の上に柔らかな肉があるからだろう、総合して程がいい体。つまりは

 

「そそるな」

「っ……」

 

 思わずもれた一言を聞いた少女はか細い悲鳴を上げながら反射的にブラとショーツを両手で覆い隠すように身をくねらせ顔を朱に染めてこちらをみる。

 普段はきつめの表情で固定されているような少女だが今は羞恥に染まっている。

 

 それらの様子が俺、綾小路清隆の獣性をさらに駆り立てる。

 入学早々に事故で見たときは、羞恥心をあらわにすることなく手早く服を着て攻撃してきたから色気云々より命の危機だった。

 だが今、恥ずかしさに体を火照らせている少女からは可愛らしさすら感じる。

 通りで色気を感じているわけだ。

 

「堀北、誘惑するのに、普段つけているような下着はどうなんだ?勝負下着とは言わないがもう少し色気があったほうが俺としては嬉しかったんだが」

「……っ、あなたの、自己評価はいつからそんなに高くなったのかしら?誘惑なんてはしたない真似を私がするはずが無いことくらい、あなたは知っていると思っていたのだけど、過大評価だったようね」

 

 今まで聞いたことがない早口は尻すぼみになっていった。

『勝負下着なんて、色気って』と唇だけを動かしながら顔を僅かに俯かせる。聞こえなかったかと安堵の息を漏らしつつ誰の目から見てもわかるほど紅くなる少女は、俺が読唇術を習得していると知ったときどうなるのか試したくもあるが止めておこう。

 堀北に対してここまで可愛らしさを感じることがあるとは思っていなかった。

 

「夜に男の部屋に来て下着姿になる女が、はしたなくないとは知らなかった。過大評価というなら、オレこそお前を過大評価していたのかもな。それなりの貞操観念はもっていると思っていたよ。今このときまではな……」

 

 舐めるような視線に、本能的に怯えて身体を震わせながら目元を染めて睨んでくる

 

「──っ……ポイントも何もかも受け取らずに、私の身体で、ようやく櫛田さんを退学させないことと実力を出してクラス争いに参加することを同意して置いてよくも言えたものね」

「おいおい、忘れるなよ堀北、オレがお前に要求したんじゃない。お前がオレに条件を出してオレが受け入れると、お前は服を脱いだ。オレが脱げとも言わないうちに……順番を間違えるなよ」

「……それは、でも……、いえ、そう、その通りね」

 

 弱弱しく頷いた堀北に威圧感を感じさせるようにゆっくり近づく。

 

「お前は誘惑したんだよ、オレを……なのに両手で、身体を隠しているのはなぜだ」

「それは……」

 

 近づく俺に怯えながら、堀北は後ずさろうとして覚悟を決めたように両腕を横にした。

 清純な下着姿を羞恥と恐怖で震わせているが、視線はオレを見定めている。

 

「他にも言うべきことがあるだろう?」

「……卒業まで、私の、身体を、好きに……して」

 

 羞恥に肌を赤く染め上げ、言葉を途切らせながらもしっかりと言い切る。

 なぜなのか、さっぱりわからない。常識的な堀北にとって今の状況は、身を切るような痛みさえ感じるほど恥ずかしいもののはずだ。

 渇いたのどを真実という塩水で潤し続けさらに渇いていったことに気付いていない櫛田と一通りの問題が解決してフェードアウトしたクラス争いの協力程度で、体を卒業まで差し出してくるなど収支があってないにもほどがある。

 携帯や盗聴器などは一通り調べたから罠ではない。罠でないからわからない。

 じりじりと距離をつめながら、何度も今後をシミュレートしても、目の前の極上の身体を好き放題にできるという結果しか帰って来ない。

 

「……一ついいかしら?」

「ん?なんだ」

 

 触れるか触れないかお互いの体温さえ感じるところまで近づくと、堀北が話しかけてきた。内心で感嘆と疑問を抱く、相手の熱と香りを感じさせてから要求を出すという一見男の心理を知り尽くした行動。

 お預けを食らわされたきつさは尋常ではない、石鹸のかすかな匂いを感じながら思う。

 が、男が理性をなくして襲いかかれる距離でもある。携帯の電源を切って、盗聴盗撮系統全てを確かめたのだから何の意味も無いが、有ったら文字通り嵌められる状況、だが今回は意味が無い。

 あるとすれば、堀北が男を誘惑するための行動の一環?──ありえんな

 

「……私……初めてなの。優しく、して……」

 

 上目遣いの女の子が頬を染め潤んだ瞳で言われると、男はひとたまりもない。抵抗できなくなる。

 さっきまでの自分の思考の愚かさと欲望を同時に抱いて答える。

 

「わかった。出来る限り優しくする」

「あっ……」

 

 ほっと吐息を漏らしながら顔を綻ばせてくる。

 そう()()()()()優しくするのだから安心してくれ堀北。

 

「じゃあ、そろそろ始めるぞ」

「……ええっ……ぁ、あ、綾小路君っ!最初は、キ、いたっ」

 

 堀北の膨らみに手を伸ばした。柔らかな肌と下着の感触が手のひらに伝わる。

 ちょうど手の中におさまる乳房。

 形がよく、弾力に富んでいる。

 

「──ッツ」

 

 堀北は呆然としたように目を瞑りただ呻く。

 柔らかさの中に芯の残った硬さがある、発展途上の青い果実。

 グニグニと自分の思うように形を変えていく乳房。

 真っ白で中々揉みごたえがあり弾力に飛んでいる2つの乳房が楽しく、ぐにゅと指をめり込ませると押し返してくるのがまた楽しい。

 

「ぅあ……いた……つよ、すぎる、んっ」

「ああ悪いな。もう少し優しくする。そのためにもっとわかりやすくしないとな」

「わかり……やすくって、ちょっと、あなた、なに、待って、やっ」

 

 わかりやすくするためにはもっとよく見るべきだ。だから幸運なことに前フックだった邪魔なブラジャーをはずす。

 ブラジャーをはずしてなおツンと上向いた形の良い乳房が目に入る。

 

「だ、だめ」

 

 反射といっていいほどの速さで下を隠していない右手で胸を隠してしまう堀北。

 顔をさらに紅めながら、緊張と羞恥でじっとりと体を汗ばませている。

 

「手をはずして見せろと口で言わなければわからないのか?」

「ま、待って、ちょっと待ちなさい。少し、待って」

 

 今までにないほど顔を紅く染め上げ一呼吸置くと、何か覚悟を決めたようにこちらを見上げて羞恥に顔を染め蚊の鳴くような小さな声で懇願してくる。

 

「……まず……電気を消して」

「駄目だ」

「……え?」

 

 断られると思わなかったのか、堀北がこちらをみてキョトンとした顔で驚いたように聞き返してきた。

 今まで見たことのない堀北が今日だけで何度見れたのだろうかと感慨すら抱きながら、羞恥のためか僅かに潤んだ綺麗な眼を見ながら断固として答える。

 

「駄目だ。といったんだ堀北」

「なにを言って……」

「最初だからこそ、その綺麗な体を見せてくれ、お前の全てを見て、触って、嗅いで、舐めて、存分に味わって、イかせて、俺の名前を鳴かせた後お前を抱く」

「……え、えぇ、え、あ、あなたなにを、イかせ?えっ……ちょ」

 

 人類の限界に挑戦しているくらい紅くなり隙だらけになった堀北の両腕を、それぞれの腕で押さえ頭の上に持っていこうとすると当然のように抵抗してきた。

 重心をずらし体のバランスを崩して力を込められないようにして爪先立ちにさせる。

 

「嘘でしょ……そんな……」

 

 虚を突かれたような声を出す堀北の前腕の中ほどを纏める。

 細くともしっとりとした感触のなかに筋肉を感じる良い腕に感心しながら感謝した。

 この細さなら二本とも片手で纏められる。

 

「あ、あなた、どんな体捌きしてるのよ。わたしは……んぅ」

「合気道やってるんだろ。知ってる」

 

 兄がやっていたこと、伊吹のこと、堀北は手の内を見せすぎる。何をやってくるかわかっていれば、対処するための難易度が下がる。

 爪先立ちになり体を強制的に張らせた痛みに呻いたので、ピンと張りながらもまだ痛まない姿勢へ持っていく。

 

「ある程度わかってたけど、あなた道化もいい加減に……あ……っ」

「余計な詮索はしないとさっきも約束しただろ……へえ」

 

 今度こそはっきりと目の前に晒される乳房。

 細くしなやかな体を張らせているだけあって出るところがさらに強調された。

 ジロジロと視姦する俺の視線から逃れるように体をくねらせるが、ふるふると乳房がゆれ腰が誘うように動くだけだった。

 

「だめ、恥ずかしいから見ないでちょうだいっ。離し……て」

「実に綺麗な体だな。しなやかで張りのある良い身体だ、スレンダー美人だと思っていたが予想以上だ」

「あ……」

 

 嬉しそうに頬を染めて俯いた堀北の身体をじっくりと観賞する。

 自分でも強引で鬼畜なことをしていると思うがそうしたくなるくらい堀北の裸体は魅力的だった。

 白磁の肌といいバランスのよさといいその硬質な美貌と良い女神像を思わせる。

 わずかにみえる青い静脈、ピンク色の可愛らしい乳首、羞恥に染まった肌、それよりも濃い先程つけた胸の手形の赤み、そしてまだつけている白いショーツが堀北鈴音という少女が芸術品ではなく血が通った少女だと示している。

 じっくりと体を舐め回すような視線を堀北にもわかるように送る。

 

「見ないで、お願い。はやく、電気を消して」

 

 恥じらい急かすように言ってくる堀北に答えず、裸身をそのまま視線で犯し続ける。

 上から下へ下から上へ、そのたびに身を捩り視線を逃れようとするが、そのたびに自身の自身の体が弾むように揺れ俺を楽しませていることに気付いたのか

 

「────ぅ」

 

 言葉にならない羞恥のうめきをもらしながら顔を伏せてかぶりを振るだけになっていった。

 

「あ……まって、見ないで、これ以上見られたら、私っ」

 

 灯りの下で体を男に視姦し続けられた堀北の胸に変化が起こり始めた。

 先程触られていたときも起き上がらなかった乳首が隆起し始めた。

 

「これ以上見られたら、どうしたんだ堀北」

「ううっ……」

 

 一切視線を隆起し始めた乳首からそらすことなくとぼける。

 わざわざ指摘して堀北の羞恥心をさらに煽ってもよかったが、こちらの方が堀北の良い反応を引き出せると判断したが、予想以上だった。

 眼に僅かに涙をためてこちらを潤んだ視線で上目遣いに見てくる。

 

「ひゃう」

 

 思わず息を右乳首に吹きかける。

 

「あっ」

 

 右だけでは足りないかと思い左にも吹きかける。始めて快楽の色がある鳴き声をあげてくれた。

 揉んだときには羞恥と痛みしか感じていなかった。予想以上に開発されていない体だ。

 堀北のことだから、同性との猥談もしていないと思っていたし自慰しているかも怪しかったが、ここまで初心だったとは。

 まず快楽という存在を体に教え込まないとならないな。

 

「くぅっ、あっ、んっ」

 

 眼を瞑り体をよじらせるたびにふるふると揺れる乳首に息を吹きかけ続ける。

 

「ひっ、くあっあっ、ふ、うんっん」

 

 あるときは左を強く吹き、右を弱く吹く、交互かと思わせて右だけを吹き続けたりしてランダムに飽きさせずに

 

「あっあっ、ょ、こ、ふっ……ひゃっ」

 

 普段聞くことができない女の子らしい声。わずかに快楽に、今まで縁遠かった色に染まる声。

 

「あうう……そ、そんなところ……ひああああ!?」

 

 七分立ちした乳首から、うっすらとした毛が生えた脇へと対象を代え吹きつけ、舐める。

 

「な、何してるのよ。このへんた」

 

 狼狽したように腕を下ろそうとするが、がっしりと固定してある上に姿勢も悪く、ピクリとも動かせない。

 

「くっ」

「汗ばんでるな。しょっぱいぞ」

「きゃああああああああああ!?」

 

 堀北の目の前で、口の中に残った堀北の味を味わうようにしていると、絹が裂かれたような悲鳴が室内に轟いた。

 

「止めて、止めなさい!」

 

 暴れようとしているのか体をくねらせる堀北の脇をのくぼみを丹念に舐めあげる。

 艶やかな髪が大きく踊って、汗と甘酸っぱい臭いが鼻先をくすぐる。

 柔らかな毛の感触が汗の味とともに口の中に入ってくる。

 生来のものだろうケアをしている様子があまり見えないのに綺麗と評していい腋を舐める

 

「あ、あなた……正気なの!なにを考えてぇぇぇぇ!」

 

 しょっぱい汗は、甘露のように自分の唾液を呼んでくる。

 唾液と汗を交換するように、汗を舐め取り唾液を毛にしみこませる。

 交互に両脇にそれを行う。 

 

「んっ……いっ、はぅ……」

 

 不快感と驚きが薄まって僅かに快楽が混じった湿った声に変わり始める。

 そんな自分に驚いているのか、脇で快楽を感じてしまった自分を否定するように黒髪を揺らして頭を振る。

 堀北の味がしなくなった脇から顔を離し自分の唾液で濡れた脇の毛をくすぐるように動かす。

 

「あ、あぁ」

 

 呆然としたようにそれを見る堀北。

 ショックのあまり恥じらいが吹き飛んでしまったようだ。

 初心な堀北がどういう性交渉を思い描いてたのか知らないが、少なくとも胸に息を吹きかけられ腋を舐められるのは、思考の外だったに違いない。

 

「あ……っ」

 

 再び乳首に息を吹きかけた。

 刺激に半ば放心状態だった堀北の意識が俺の指から顔に向けてきた。

 

「うう、はぁ、はぁ……あ、あなた、いい加減に……ひぅぅあう」

 

 息には慣れてきたのか反応が変わらなくなってきたので、一呼吸置かせて意識をこちらに向かせたあと乳房全体に吹きかける。

 羞恥と快楽による熱を持った乳房に突如訪れた冷たい感覚に肩にかかるまで伸びた髪を振りかぶりながら身を震わせる。

 

「ううう、駄目よ、これ以上は……駄目」

「どうして」

「だって、これ以上は……とにかく駄目」

 

 左眼からたまっていた涙を一筋流しながら、駄目、駄目と言いつづける堀北。これ以上するとどうなるか知っているらしい。

 快楽を知っているとは意外だが、それにしては胸を揉んでも痛み以外の色がなかった。

 まあこの疑問はおいおい解決するにしよう。

 

「そうか、駄目か」

「そうよだめ」

「わかった。これ以上は息を吹かない」

「……え」

 

 こちらが納得するとは思わなかったのか見上げてくる。

 

「そろそろ、降ろす。いいか」

「え、ええ。降ろしてちょうだい」

 

 ゆっくりと堀北の踵を地面につける。

 

「あっ……あれ」

 

 快楽と体をピンと伸ばし続けたため体のバランスを崩す堀北を抱きとめる

 

「あっ、ありがとう」

「気にするな。優しくするって言っただろう」

「えっ、ええ。そうね、そうよね」

 

 体と共に頭も火照らせたのかかなり鬼畜なことをし今からもしようとしている俺に、普段ではありえないくらいにしおらしく抱きついてくる。

 服越しとはいえ堀北の体の柔らかさを堪能する。

 ゆっくりと背中をなでる。しっとりとした手に吸い付く肌をじっくりと愛撫する。

 

「はあっ、あっ」

 

 堀北の心地いい吐息を首筋に感じながらゆっくりと左手をショーツにかける

 

「脱がすぞ」

「……ええ……明かりは、……んっ、そう、そうか、消さないのね」

 

 自身の胸に顔を埋めながら尋ねてくる堀北の首筋を吹きかけることによって返答とした。

 諦めたように頷く感触を服越しに感じる。

 右手を剥きだしの太ももの裏に滑らせる。すべすべでむっちりした肌の質感を感じながら、裏側から外側そして内側へと手のひらで味わいながら滑らせていく。

 

「ふぅううぅぅ、はあっぁ」

 

 背中や脇もそうだが敏感すぎる部分ではなくある程度敏感な部分を優しく触られるのは心地いいのか快楽の混ざった声を出す。

 ある程度の快楽を体が認識したことに安堵が混じった喜びを感じる。これなら色々弄り回してよがらせられそうだ。

『教材』のなかには処女もいたが、痛がるばかりだった。いや、処女じゃなくとも自分の巨根では痛がらせてしまう。

 橋本が言ったように経験豊富ではないと苦痛のうめきしか聞こえない。

 今まではそれでも気にならなかったが、今回は何故か嫌だと感じている。

 何故かはわからないが、じっくり時間をかけて未踏の性感を開発してから挿入を愉しみたいと思っている。

 こんな感情が自分にあったとは思わなかったが、自分の胸で体をひく付かせながら荒い息をする堀北を見ているとそのほうが勝った気がする。

 

「あっ……や、やっぱり」

 

 両手をショーツにかけ引き下げ始めると、太腿をぴったりと閉ざし胸に埋めた顔を左右に振り先程の前言を取り消すような堀北の態度を可愛らしいと感じてしまう。

 

「股を開け、堀北」

 

 あえて冷たい声で命令する。俺の言葉に堀北がどう反応するのか確かめたくなったのだ。 

 下着に手をかけたまま動かさずに堀北の黒髪を見ながらじっと待つ。

 反応があるまでどれくらいかかるかと思っていたら、予想よりも頭が茹っているのか意外なほど素直に従った。

 堀北は一度潤んだ眼で俺を見上げて吐息を漏らしながらゆっくりと足を開いた。

 安産型の柔らかい尻の途中で止まっていたショーツをするりと落とす。

 ひろげていた腿の途中で止まったショーツ。じっと堀北の眼を見続ける。

 眼を閉じゆっくりと腿を閉じた堀北の足元にショーツが落ちた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音②

前戯その2です


 ベッドの上に堀北を仰向けに横たえると、恥じらい両手で裸体を隠そうとしながら体をこちらから背けようとするが

 今から性行為をするのだと思い出して

 覚悟を決めたように体をこちらに向けようとして

 また恥じらいが上回ったのか背けようとする。

 その男の獣欲を誘う姿を横目で見ながらとりあえず上半身を脱ぎベルトをはずし、堀北の体の上にのしかかる。

 

「……」

 

男がやる気になって肌を見せて上にのしかかったのに堀北からは動じた気配がしない。

 何故か堀北はオレの上半身を食い入るように見ている。

 

「やっぱり、凄いわね。この体、どうすればこうなるのかしら」

「前にも言ったが、両親から恵まれた身体貰ったからだ」

「それだけじゃないわよね。この身体は」

 

 そう言いながらオレの前腕や胸をさすってくる。

 

「男の人の身体なんて触ったことほとんどないけど、あなたの体は少し違う気がする。計画的に鍛えているのにそれが自然な形になっているって変だけど……自然に鍛え上げたってイメージになるわ」

 

「バランスの取れた栄養、適度な運動、それだけだ」

 

「……そう、やっぱり答えるつもりはないのね。まあ、いいけど」

 

 堀北が腕を動かすたびに形を変えながらふるふると揺れる乳房を楽しみながら答えたのに、どこか不満そうだった。

 正直揺れている胸を見ているだけでこっちはたまらないのに

 

 「じゃあ、そろそろ続けるぞ」

 

 そう言って堀北の乳房に再び手を伸ばす。

 

 フニュと柔らかな感触が触れた手から伝わってくる

 

「んっ……変態」

「ずいぶんひどい言われようだな」

「本人の断りも得ずに、声を一声かけただけで、女性の胸を掴む人間を変態と呼ばずになんと呼ぶのかしら?んんっ……」

「それなら勝手にするだけだ」

「……ええ、勝手にしなさい。私の身体は……んっ……あなたのものなのだから、あうっ」

 

 オレから目線をそらして前腕にしがみつきながら嬌声をもらす。

 先ほどまでと違い、堀北が快楽を感じ始めたことに満足しながら揉む。

 

「んっ、痛く、ない」

 

 堀北は素直だ。気持ちがいいときは顔を綻ばせ、痛いときには顔をしかめる。

 

「んんっ…っ」

 

 顔をしかめない程度の強さでゆっくり優しく揉む。

 

「あ、んんっ、はぁ…」

 

 堀北の胸を両手で揉みほぐす。オレの手で歪んでもすぐに元の形に戻る乳房はオレの目を楽しめる。

 次第に今までしかめていたときの強さや場所でも顔を綻ばせるようになる。

 

「やぁ…ぁ、綾小路君」

 

 両手で両方の乳房を握りこむ。白磁の乳房がオレの手形の赤で染まる。

 強弱の緩急をつけて優しく揉みしだく。

 

「堀北の胸、まだ硬いところがあるが凄く柔らかい、もっと柔らかくするからな」

「な、や、優しくして、んっ、あぅ…」

「そうしよう」

 

 乳房の形に沿って指を這わせながら、乳房全体を包み込むようにしながら、軽い振動を与えつつ揺さぶるようにする。

 プルプルと可愛らしい反応をしてくれる。

 

「あぁ、やぁん、ん、あ…」

 

 ぴくん、と身体を震わせる堀北の反応を楽しむ。

 少しずつ敏感になっていく、火照りにより柔らく

 

「んっ、んうう」

 

 それでも芯の固さを失わない少女の乳房

 暖かいというよりも熱くなっているその乳房を手で包む。

 

「あっ、ぅうぅぅ」

 

 触れるか触れないかの強さで優しく触ったかと思わせ、一度手を離し急に荒々しく乳房をつかむ

 

「いっ、うぁ、…あぁぁ」

 

 痛みに顔をわざとしかめさせて、また優しく揉みしだく。

 今度は今までよりも優しく世に一つしかない宝物のように丁寧に揉む。

 

「あ、いゃぁ…あっ、う、ふぅぅぅ」

 

 一度手を離すと、先ほどの痛みを思い出して顔を強張らせていやいやと首を振る堀北の乳房に再度手を伸ばす。

 少し強めに、堀北の顔を綻ばせるくらいの強さで優しく揉む。

 思わず安堵の吐息を漏らして心地よさそうにする堀北。

 

「ぁ…うん、それ、いい、あっ」

 

 顔を綻ばせる堀北は気付いているだろうか、今の気持ちいいと感じる強さは少し前まで痛みを感じていたことに

 

「気持ちいいか?」

「んっ、んっ…はぁ…むねが…んっ、熱いっ」

 

 あたたかく吸い付くような乳房を揉みながら順調さに唇をゆがめる。

 今まで全体を揉むようにしていた動きから指と指の間に肉を挟みこんで揺らす。

 堀北が痛くないくらいに細心の注意を払いながら、絹糸のような黒髪を汗で張りつかせ、唇の端からよだれを一筋たらし、目尻に涙をため潤ませた少女の顔を見る

 

「は……うっ…んん…ふあっ」

 

 目を合わせると、気をよくしたようで柔らかな笑みを浮かべてくる。

 とろけたような堀北の顔は扇情的で、滾らせる。

 その気持ちのまま乳房を揺らし、手のひらで今までわざとよけていた先端の乳首ごと乳房を押しつぶした。

 

「あ、んぁっ、な、なに、あ、熱いっ…くぅぅぅぅぅっ……んっ」

 

 軽い絶頂を迎えたらしい堀北。

 

「はあっ、はあっ、あっ、あ、私」

 

 未経験らしい感覚を覚えさせ染みこませるために少し息を整えさせる。

 なだらかな腹をなでているうちに、意識を覚醒してこちらを見て顔を赤らめる。

 

「私…今、頭の中が白くなって、何、今の?」

「イったんだ」

「イった?いったってどこに?」

 

 本気でわからないらしく小首をかしげて少しぼんやりした口調で尋ねてくる。

 

「性的に絶頂したんだ」

「……?絶頂……?」

 

 さらに首を傾げていく堀北だがハッとして顔どころか耳まで真っ赤にした。

 

「…え、うそ、え、わたし…あっ、じゃあ、イかせてってさっき言ってたのは…あなた、私を」

 

 絶頂に心当たりがなかったらどうしようかと思っていたが、さすがにそれはなかったらしく理解したようだ。

 ついでにオレがさっき言った言葉を思い出して、これから自分がどうされるかを理解し頬を染め身体を震わせた。

 

「ああ、そうするつもりだ」

「……あ、綾小路君!あなたは、処女を相手にしようとしているのよ。もっと、そうよ、普通にしようとは思わないのかしら?」

 

 いつものように睨みつけようとしているのだろうが、上気して涙をため快楽のためゆるんでいる顔は全く恐くない。何よりも

 

「お前の全てを見て、触って、嗅いで、舐めて、存分に味わって、イかせて、オレの名前を鳴かせた後お前を抱く、普通だ」

 

 おかしなことを言う堀北だ。処女だからこそそうしたいと思うのは当然ではないか。

 

「何より、お前は卒業までオレとセフレになるんだ。お前の身体はオレのものだ違うか?」

「……ケダモノね、あなた」

「こんな良い身体を好きに出来るんだケダモノで結構」

「……わかったわよ。許可するわ、あなたの好きにしなさい」

 

 何が琴線に触れたのか知らないが、かすかな笑みさえ浮かべてうなづく堀北の言葉に甘えて好きにする。

 さっさまで触れていなかった小さめの薄いピンク色の乳輪から飛び出ている乳首を指頭でふれて繊細にくすぐる。

 すでに固く膨らんでいる乳首をつまんで弾き転がす。

 

「ひゃあぅっ!……っ!」

 

 可愛らしい声を上げる堀北を楽しく眺めながら開いているもう片方の乳首をくわえる

 

「うひゃあうっ!ああっ!」

 

 舌でくるむようにしごきあげ、たまに歯をあて反応を見定める。

 まだ噛むのには早い、この反応だとまだまだ擦るくらいにしておいたほうがいい。

 

「あひっ!んあうぅ……あうう」

 

 腰を跳ねオレの腹に身体をこすり付けるようにする堀北の背中に空いている手を伸ばして撫で下げる。

 

「だ、だめ、だめ、このままじゃ、またきちゃう、ああっ…またあっあっ、いっ、うっ、くっ……っんう、あうう、あっ」

 

 再び軽く絶頂するが今回は休めはしない。

 しこり切った乳首を甘噛みしてこそぐようにしながら揺らし、乳房全体のゆれを楽しんでから一度離して咥えなおす。

 たまらないのか手でオレの頭を自分の胸に押さえつけるようにしてきた。

 顔全体で柔らかい乳房を感じながら匂いを嗅ぐ、汗のにおいとともに漂う甘いミルクのような匂いを堪能する。

 

「ん、あっ…おんなじとこばっかり……そんなに、しないで……」

「……ああ、わかった」

「ふぇ……ああっ」

 

 ほぼ無意識だったのか呆然とする堀北の攻めていた乳首から唇を離し反対側にしゃぶりついた。

 

「ひっあ、な……ん……なにをして……」

「片方だけじゃ物足りないんだろ?」

「ば、かぁ、そうじゃなくて……んっ……ぁ!」

 

 まだ綺麗な乳首を同じように舐めて甘噛みする。

 さっきまで玩んでいた乳首は手でいじる。

 今くわえている乳首に比べて完全に起き上がっているためつまみやすく、まぶした唾液のおかげですべりがいい。

 

「あっ!ああ、んゅう……あっ!」

「いい尻だ張りも申し分ない、手に吸い付いてくる」

 

 下げていた手で柔らかい尻を揉み始める。弾けるような柔らかさを堪能しながらさらに両の乳房をいじる。

 

「お、おしりまで……うん、はぁ……んっ……あぐっ……お、うぅむねが……がぁっ」

 

 徹底した胸の攻撃で、軽い絶頂は何度も経験している。

 胸の突起はこれ以上ないくらい隆起して、目と指と舌を楽しませてくれる。

 体内時計からして数十分むしゃぶりついているのに飽きが来ないそれを貪る。

 

「う、あっ、ひっ、いっ、つ、強すぎる、わたし、どうなっ、あたまが、ぼうっとして、かんがえがまとまらなくなって……だめぇ、おねがい……なんとか、して」

 

 本能的にこれ以上があるのだとわかるのだろう。 

 汗に塗れ涙で潤んだ眼差しで最後を懇願してくる堀北を見てこのまま本当の意味でイかせるかを迷う。

 

「なんとかしてもいいぞ、堀北」

「ほん……とう」

「ああ、さっき、オレが息を吹いたとき駄目といった理由を話したらな」

「!!……っ」

 

 凄いな、一瞬で堀北の目に理性が戻った。

 いや、顔と耳どころか、首筋、まで羞恥で赤く染まっていく姿は理性とは違う気がするが

 しかし、そこまで恥ずかしいことなのだろうか、現在進行形で恥ずかしいことをしているのに

 顔をそらして小さな声で『……あっ、えっ』と可愛らしい声を身を震わせながら発する。

 思考の邪魔にならないように鎖骨や脇などを優しくなでながら待つ。

 くすぐったいのか『ひっ……うっ……』と身体をひくつかせながら睨んできた。

 

「……そんなに、っう……知りたいの、かしらぁ」

「話したくなければ、話さなくてもいいぞ。こうやって触ってるだけで、オレは楽しい」

「……へ、変態……うぅ……変態ぃ……あなたのお陰で、こんなにっ、敏感になっているのに、さわられて、話なんて、出来るわけっ、ないわよ」

「じゃあ、触ってなければ話すのか」

「……話すわよ、例え、変態のっ、サディスト相手でもっ、話すわ」

 

 本人は罵ろうとしているのだろうがオレの胸に顔を埋めて、身体全体を震わせながら言われても恐くない。

 愛撫をやめしばらく荒げていた息がある程度整うと、愛撫再開を警戒したのかオレをホールドするように抱きつきながら堀北は話し出した。

 

「…須藤くんの暴力事件のときよ。あなたはよりにもよって兄さんの前で、あれだけの人がいる前で、私を辱めたわ」

 

 その件はきっちり蹴り飛ばされて許すと言われたはずだったが、そのまま聞き続ける

 

「あの時、私は最初にあなたが脇腹をつかんだときは、もう立ち上がって意識を取り戻していた。なのに、あなたは、とても面白そうに攻め続けて半泣きになるまで今みたいに嬲って玩んだわよね。おかけで神経をすり減らしながら私はあの場で発言して戦ったわ……なのにあなたからは感謝どころか謝罪さえなかった。私が蹴るまでどうでもいいことだったのよ、あなたにとってあの行為はね」

 

「あ、ああ、確かにあれは悪かった。謝る」

 

 確かにどうでも良かったのだが、それは言えずとりあえず謝罪の意を示す。

 

「もう、怒ってないわよ。あのとき、ああされなければ私は無様をさらしていただけだったから」

「……じゃあ、あの時の脇腹に他に何かあったと?」

「ええ、そうよ。そして、それは」

 

 さらに強くしがみつき蚊の鳴くような声になっていく堀北の唇に耳を寄せる。

 

「あの時、凄く恥ずかしかったけど……。--気持ちがよかったのよ。私」

「……んん?」

 

 思わず疑問の声を漏らして堀北の方を見る。

 さっきよりもさらに赤くなり涙ぐんでいたが言葉を続ける。

 

「私が息を吹かれたとき駄目って言ったのは、それが理由よ……あの時と同じ感覚を感、じたから、だから」

 

 ここまで話すのが限界だったのか顔全体を横に向けて言葉を続ける。『私、変態じゃないかって悩んで、あんな多くの人の前で、兄さんの前で、あんなことされて、気持ちよくなってしまうような……綾小路君の前で』

 読唇術を習得しておいて初めて良かったと思った。

 横目でこちらをチラチラ見ながら、オレの目に軽蔑の色がないことを確認して、ほっとした顔をする堀北を見ながら心底思う。

 この堪らない感情のまま行動するのも良いかもしれない。

 

「じゃあ、確認してみるか」

「え……?」

 

 抱きついたままの堀北の両脇に両手を置いた。

 確かあの時はこうやって掴んだ。

 背後からでないから工夫が必要だが、なんとかなる

 

「ひゃぁっ!?」

 

 あの時と同じようで違う、先ほどまで散々愛撫しただけ快楽よりの声。

 より強く、くすぐるように脇腹を押えながら指先を動かす。

 

「ちょ、な、や、やあっ」

 

 あの時とは違い服越しではないから感じる柔らかな素肌を押して反発を楽しみ、なでてその滑らかさを楽しむ

 

「あ、あなった、あっ、ふ……ぁ……」

 

 あの時は声を我慢していたのだろう、今回はまだあの時の三分の一も愛撫していないのに、可愛らしい嬌声をあげてくれる。

 

「な、に、かんがぇ、はっ、くぅ」

 

 熱を持ち熱いくらいの脇腹をゆっくり丹念に揉む、指と指の間に挟まる肉の薄さがくびれのよさを表している。

 

「あっ、ひっ、やっ、あっ、またこんな、わき、なんか……やぁ、だめ」

 

 オレの胸に埋めてイヤイヤをするように顔を振りながら、堀北はさらに腕と足を絡ませてくる

 

「うっく、あぅぅ、きもち、いぃ、だめ、だめ……よく、なぃ……脇なんかぁ」

 

 そろそろあのときと同じくらいの時間だ。

 腹の辺りに押し付けてくる堀北の乳房を感じながら達せさせなければならない使命感とともに、止めとして右を早く、左を遅く、全ての指で掻くように描くように愛撫する。

 

「ひっ、あぅ、あっく、きちゃ、うぅぅ……っ!」

 

 軽い絶頂とともに抱きついた姿勢を解きベッドに身体を落とす。

 

「あっ、はぁっ……はぁぁぁ」

 

 ベッドの反発で跳ねると同時に全身を震わせ弾む乳房が愛らしい。

 

「堀北、確認した結果だが、確かに感度がいい。これだけの感度なら、あの場でああなるかもな」

「はぁっ……はぁっ……この、変態の、サディストっ」

 

 ベッドに身を投げるようにして脱力した堀北に声をかけるが、ジト目で睨みつけられる。

 その可愛らしさに思わず頭を撫でようと伸ばすが、プイッとよけられてしまった。

 幼さすらかんじるその可愛さに辛抱できなくなった。

 

 

 

 オレは堀北の下半身のほうへと回り込み、オレの目から秘所を隠している両脚に手をかけた。

 

「やっ、まって、そこは」

 

 反射的に両脚に手をかけたオレの前腕をとめようとする。が、ほとんど添えるような力でしかない。

 両脚の力も、ほとんど入っていない。すぐにでもこじ開けることができそうだ。

 少しずつ、ゆっくりとその両足を横に広げていった。

 

「……んっ」

 

 ついに秘所を見られた堀北は一度だけ羞恥にブルっと体を震わせた。

 恥ずかしげに目をそらし、オレの視線から少しでも隠れるように体をよじらせ両腕でシーツを掴み顔を隠そうとする。

 

「ほう……」

 

 目の前に広げる薄桃色の秘所を見て思わず感嘆の声を上げる。

 しっとりとした肉付きのいい太ももから股間にかけての朱に染まった白い素肌がまぶしい。

 輝くばかりの白さの秘所の周りで、恥丘の緩やかな盛り上がりにある一つまみ程度の毛の黒い色と、閉じられた筋から愛液の流れる分だけ僅かに覗く薄桃色の肉壁だけが違う色をしている。

 先程までの愛撫で濡れて僅かに誘うように開く薄桃色の瑞々しい果実のような秘所にかぶりつきたくなるが抑える。

 念入りに性感を刺激し多少手荒くしてもよがらせるくらいの準備をしたのだ、じっくりと料理しなくてはもったいない。

 

「や……綾小路君。そ、そんなに……見ないで……」

 

 やけどしそうな視線を感じたのか、恥ずかしそうに堀北が言ってきた。

 男が自分の両脚のあいだに体を入り込ませ自分の秘所を間近で凝視していたら、たいていの女の子なら恥ずかしがるだろう。

 恥ずかしがる堀北を見ていると徹底的に可愛がりたくなる。

 

「綺麗だな。堀北のまんこは」

 

 しっとりと濡れた秘所に吸い寄せるように首を伸ばすと、ツンとした酸っぱい匂いがする。

 中まであまり洗ってない処女の香りだった。

 

「綺麗なピンク色で小さめで形がいい。匂いも……堀北の匂いだな」

「ば、ばかっ!そ、そんなところをそんな風に、に、匂いなんて嗅ぐなんて、あなた何考えてるのよ」

 

 赤らんだ顔で睨みつけながら、言葉とは裏腹に僅かに腰を前に出してくる。

 すかさず二本の指で色素沈着を起こしていない花びらを開く

 

「あうっ!」

 

 外気にさらしただけでピクンッと腰を跳ね上くらいに準備が出来ている堀北の割れ目ををさらに広げていく。

 膣口のすぐ内側にあるフリル状の薄い処女膜が見えるところまで開けた。

 鼻を近づけ、くんくんと匂いをかぐ。酸味が強いチーズのような芳醇な香りを楽しみながら舌を伸ばした。

 

「ふぁっ!うそ、でしょう……綾小路君の、舌が、わたしの中に……んっ!」

 

 両腕で頭の横のシーツをつかみ、堀北は白い喉を突き出すようにして嬌声を上げながら、電流が走ったように腰を跳ね上げた。

 

「ちょ、うえ、なめないっ!でぇ!あっ、ああっ、あうああ!」

 

 ねちょ、ねちょと音を立てながら薄桃色の粘膜を味わうように舌を躍らせる。

 割れ目に隠れて堀北が洗えなかった部分にたまった白いカスを舐めとり、酸味が強く舌先に残る味を味わうように嚥下する。処女の味だった。

 残りを探しながら大陰唇の裏を小陰唇の回りをこそぐように舐めとる。

 

「ひっ!だ、駄目、やっ、うそっ、何っ、して、ひあぁっ!?」

 

 疑問に答えるために、ずずっ、ずずっ、と音をたてながら、中から溢れだしてくる蜜をすする。

 顔を上げ 聞こえるようにごくりと飲み込む。

 視線の先で、信じられないものを見たように堀北が目をむいて絶句していた。

 

「美味いな」

「---っ、いやぁぁ、なんてもの、のんっ、んぐぅっ!のむなぁぁ」

 涙声で身を捩らせ、足をばたつかせ、手で頭をつかんできた。

 その動作を利用することにした。

 秘所を隠そうと内股をすり合わせるように身を捩りながら足をばたつかせていた堀北の重心をずらし、尻もちを突いたような形になると股は豪快に開かる。

 

「――え、きゃ……ち、ちがうわ!」

 

 一瞬の空白、羞恥の色に染まった叫び声を聞きながら身体を動かす。

 さっきよりも楽に開けられるようになった花びらを片手で開きながら、尻に手を伸して、太腿でオレの頭を挟むような体勢で固定させる。

 なんとか頭だけでもどかそうとするが今の上半身が半分浮いた体勢では彼女の手はオレの頭を秘所に押し付むことしか出来ない。

 

「なかなか大胆だな、堀北」

「ちがうの、あふぁ、わたし、そんなっ、つもりっっ、くあぅ!なぁぁぁぁぁっ!」

 

 肌と熱と蜜のお陰で、くぐもった声になってしまった。

 尻を揉みながら、秘所をさらに舐め蜜をすすって飲み干せば少しはましになるだろう。

 なのに、後から後から溢れ出す。仕方がない飲むしかないか。

 

「いゃぁ、やっ、いゃぁっ!だめぇ、のんじゃ、やぁ、あひいっ!」

 ごくりとごくりと響く音に恥ずかしさの限界に達したのか堀北は涙をためた目を閉じ、いやいやと首を振りながら両手で耳を隠してしまった。

「あっ、ふぁ、なんでぇぇ!あひんっ!さっき、よりもぉ!あひぃぃぃ!やだぁっ!なんでっ、ずるずるって、きこえ、いやぁ、ふぁっんっ!」

 

 結果、視界と聴覚を自分で制限し、他の感覚がさらに鋭敏になってしまった。

 蜜を口に含み花びらの内側に舌を捻り込む。

 ずるずるとすすり、ごくりと飲み込む振動を舌を経由して堀北の体に響かせる。

 

「やぁぁぁ!もうっ、もう、いやぁぁ!」

 

 耐えられなくなった堀北の手が頭から離れると同時に、身体を揺らし手でシーツをつかませてさらに攻める

 

「だめっ、やめっ、ひうっ!あひんっ!なんでぇ!あぁぁぁっ!」

 

 涙と汗と涎で顔をぐちゃぐちゃにしながら泣き叫び獣のように絶叫する堀北。

 形のいいお尻をこね回しながら抑えていなければ、何度も飛び跳ねている腰を逃していただろう。

 周囲の肉壁をざらざらとした舌の腹で舐め上げ蜜と唾液をまぜていく

 

「んはあっ!あっ!あっ!あっ!んああああああ!」

 

 ベッドのスプリングで、白い裸体が汗を弾き飛ばしながら跳ねる。下半身をがっしりとオレに抱え込まれているため、跳ねるのは堀北の上半身だけになる

 結果としてブリッジのように背筋を逸らし、頭をベッドにえぐりこむようにしながら裸体をビクビクと跳ねさせる。

 股間にはオレの髪、秘所にはオレの舌、下の毛につきこまれた鼻頭は堀北の体勢次第でもっとも敏感な肉芽に触れる。

 

「ふっっっ!……んあううぁっ!ひっんっ!……噛んじぁぁぁ!はぁんっ!……ううう、だめぇぇ!あっんっ!……嫌あああーーっ!」

 

 肉芽に触れたらすぐに鼻から逃そうと体勢を動かす堀北、そうはさせまいと秘所の壁を甘噛みし舐めしゃぶり肉芽が鼻頭にあたるようになると舐めるのを控える。

 が、また肉芽からの刺激から堀北が逃げようとするため秘所をいじめる作業が始まる。

 困った、とても楽しい悪循環だ。

 

「うああぅあああっ!だ、だめええ!わたしっ!あううううっ!」

 

 そうこうしているうちに、舌先で収縮を激しく繰り返す膣内の感触から絶頂の時が迫っていることを感じる。

 

「堀北、聞こえているか、さっきの約束だ。なんとかするぞ」

「ひああああっ!うぅ、ふぁんっ! だめ! もうっ!」

 

 防音設備が整った部屋なのに隣人に聞こえていないかと心配するような嬌声を叫び続ける堀北からは、返答が期待できそうにない。

 

「……最後はイクといえ、こういうとき普通はそうするのが礼儀だ。わかったな、わかったら頷け」

 

 オレの嘘に無我夢中でコクッコクッとうなづく堀北を、これ以上待たせるのは忍びない。

 愛撫を加速させながら止めをどうするかを考え、自分からはわざと触らなかった肉芽を見て料理法を決める。

 

「区切りだ。イっていいぞ堀北」

 

 オレの唾液と堀北の愛液で蜜を塗りつけた花びらみたいになっている小陰唇を歯で甘噛みして二本の指で肉芽を挟むようにして捕らえ、きゅっ、とひねるようにしてつまみ上げながら弾くように離した。

 

「っーーーーっ!!」

 

 吸い込むような叫びとともにカッと目を開きブリッジの体勢で堀北の裸身が硬直し

 

「んああぁぁぁぁ!! ん、んんっ、イ、イクッ、くうぅぅぅっっっ!!!!」

 

 部屋中に響きる嬌声を上げながら、噴出するように愛液をオレの顔にかぶせ、ベッドに倒れこんだ。

 

「ふあぁ……あ、んんっ……はぁんんん……あふぅぅぅ……」

 

 ビクッ、ビクッ、とおこりにでも掛かったかのように、堀北の体が断続的に跳ねる。

 逃さないように堀北の腰を両手でしっかりとつかみながら、顔にかかった愛液を舌ですくうように口に入れ嚥下した。  

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音③

俺YOEEさん、誤字訂正ありがとうございます。


堀北さんの心情書いていると長くなってしまいました 
 


「うぅぅ……あ、あっ……はぁ……はぁぁ……」

 

 最後に一度、身体を踊らせたあと、ぐったりとベッドの上に身体を投げ出している堀北。

 全身を汗まみれにしてはぁっ、はあっと大きく胸を上下させぼんやりと天井を見つめている。

 オレはタオルを取ると堀北の顔を上から見下ろす。

 眼を半開きにして口からは涎をたらしながら、初めての絶頂にどこかうっとりした顔をしていた。

 

「あ……あ、あや……綾小路君」

 

 タオルで汗だくになった堀北の身体をぬぐっていると、まだぼんやりした表情で彼女は俺の名を呼んだ。

 まだ完全には意識が戻ってないようなのでそのまま身体をぬぐうと「ふぁっ」と心地よさそうに目を細めた。

 

「さっきお前が言っていたようになんとかしてみたが……どうだ、今の気分は?」

「え……あ……あっ」

 

 一通り拭き終えたずねると、見開いた瞳が少しずつ焦点をとりもどし、オレの顔をはっきりと認識し、先程までの乱れに乱れた己を思い出したようだ。

 

「あなた、あんなっ、ううう」

 

 顔を赤く染め、裸身をオレに見せないように狂乱ではがれたシーツを身に纏おうとしているが、力が入らず腰の上に乗せるくらいしか出来ていない。肝心の胸や秘所を隠せずにその両手で隠そうと身体をくねらせる姿は

 

「……エロいな、お前」

「──-っ……うぅ」

 

 反論しようとこちらを一度睨みつけるが、今の自分の格好に視線を這わせた後、情欲に満ちたオレの視線と合うと目を瞑りうつむいて横向きの体勢で背中を向けてしまった。

 今までの恥ずかしいことを思い出しているのか、頭を振りながら全身を羞恥に震わせる姿を見ていると、さらにいじめたくなる。

 

「っくぅ!」

 

 背後から抱きつくように取り付き、その乳房に手を伸ばす。直接触らずに縁を優しく愛撫すると、絶頂直後の堀北の身体はそれだけでピクリと身体を震えさせる。

 

「っんうぅ」

 

 ひとしきり乳房の縁を愛撫しながら舌で耳を愛撫する。

 舐め始めたときピクンとこちらを見てきたがすぐに目を瞑って顔を背けてしまう。

 そのまま耳周り、耳たぶ、耳穴の入口を吐息で愛撫しているときも嬌声をあげずに身を震わせるだけ

 太腿についた堀北の愛液で手を湿らせ、そのままへそまでゆっくりと手でなぞるように愛撫する。

 ピクリとピクリと震わせながらも声を出そうとしない。

 だから、今度は脇腹を、腋を、首筋を、鎖骨を、蜜が足りなくなったら決して秘所には手を出さずに近くの場所で蜜を補充して、優しく丁寧に塗る。

 

「──はあっ」

 

 火照った身体に自身の体液を塗られるなんともいえない感覚と敏感な部分を触れるか触れないかの強さでねっとりと這わせる心地よいくすぐったさに、堀北は頭を振る。

 滑らかな髪から漂う汗のにおいとジャンプーとリンスの匂いが混じった匂いを音を立ててかぐ。

「ぅぅぅ」と呻きながらこちらに振り向きそうなそぶりを見せるがそのまま羞恥に体を振るわせるだけ、ただくすぐったそうに身体をくねらせ、秘所と胸だけはさわらせまいとするように両手で隠す。

 

「んひゃあ!?」

 

 髪から出てきた、白いうなじをぺろりと舌先で舐めてやると素っ頓狂な声を上げてこちらを見、はぁとどこか物足りなそうな吐息を漏らす、背中からうなじを舐めあげる。

 背中越しから見える隆起しきった突起に触らずに、控えめな乳輪をくすぐり円を描くように嬲る。

 円をじわじわ狭くするように描きその突起へと触れる寸前で、また円を拡げるように指を躍らせる。

 乳首への刺激を予想して期待に強張った体が自然と脱力して、ぴくり、ぴくりと震るえる。

 身体の持ち主からオレに向けられる求めるような視線を無視して逆のうなじを舐めてもう片方の乳房も同じように愛撫する。

 

「……あっ、むねが」

「胸が、どうした」

 

 数分後、思わず漏れてきた言葉を逃さずに問う、堀北の逡巡は一瞬だった

 

「……むねが、たまらないのよ」

「わかった、胸だな」

 

 力強いオレの頷きに、ほっとしたような笑みを浮かべた堀北は胸を反り返し、二つの乳房を天井に向かって突き出してきた。

 はしたない格好をとると、誘うように身体を揺らす。自らの行動に、羞恥に染まりきった顔で揺らす。

 ふるふると揺れる乳房をもみしだく。若々しい張りのある乳房は心地よい反発を指先に返す。

 

「……ふぁっ、はぁぁぁ」

 

 安堵しきった吐息を漏らし、しばらく身を任せるように愛撫を受けていたが、次第に不満そうで切なげな顔をしてきた。

 足りないと横顔が語ってくる。

 オレの手で下乳を弾ませるように揉まれほよんほよんと揺れる自身の乳房、正確には塗った蜜と汗を先端からぴゅっと飛ばす充血しきった先端を親の敵のように睨むと、視線でこちらを問いかけるように見てきた。

 ゆっくりと頭を振り否と伝えると、弾けるように身体をこちらに向けてきた。

 

「あなた、私に、どうさせたいのかしら? 正直なところ、わりと、限界なのだけど」

 

 我慢をし続けて怒りと情欲と羞恥に染まりきった目で、一言ずつ区切る様に言ってくる。

 

「そうだな、お前の意をある程度組むことは出来る……だが俺は、お前に恥ずかしいことでも言わせたい。下劣だが、お前の意を汲んでするよりも言葉で恥ずかしいことを言わせたいんだよ」

「確かに、下劣ね。自分の欲望しか話していないわ。ふぅ……わかったわ。ええ、わかった。出来る限り、やってみせる……お願い。乳首も、さわって」

 

 わりと鬼畜な発言だったが、堀北はため息をしたあと吹っ切れたような微笑みを浮かべて乳房を突き出してきた。

 快楽と羞恥で上気していた肌は、恥ずかしい台詞と同時に乳房を男の目前に突き出しているというさらなる羞恥で元の肌の白さをなくすくらいの赤さになっている。

 

「はぁぅ! ……きゃ」

 充血して尖りきった乳首を、舌先で舐め上げた。堀北が嬌声をあげて仰け反る。

 待ち望んでいた刺激に、堀北は顎を反らし紅潮した綺麗なのどを見せてくれたので音を立てて首筋に吸い付きしゃぶる。

 思い切りキスマークがついてしまうが、堀北の交友関係からすれば絆創膏を首筋につけても怪しむ者はいないだろうし、運がよければ明日からの休日で消える。

 

「あっ、ばかっ、あとついちゃ、たらっっ──っ!」

 

 甘い堀北の匂いを嗅ぎながらちゅうちゅうと下品な音を立てて先程とは逆の首筋を吸う。

 顎を反らせたまま可愛らしい嬌声をあげる堀北の乳首を両方ともつまんでしごき立てる。

 

「あっ、ぅぅ……ん、あっ」

 

 痛みを与えかねないほど強く乳首を握りつぶしたかと思えば、次は指の腹でくすぐるように嬲り、二つの指で交互に擦ってやる。

 優しい刺激に堀北が落ち着いたところを見計らい。

 

「あっんんああああっ! んんんんっ! いっくぅぅぅ!」

 

 爪を立てて乳首を軽く潰してしごきあて弾き強い刺激を与えてやる。

 絶頂したばかりで散々玩ばれて性感を高められ刺激を待ち望んでいた場所を刺激された身体は、乳房での絶頂を覚えた。

 

「はぁっ、はあっ、あっ……にゃ」

 

 首筋と乳房に意識の大半を持っていった堀北の隙をつくように秘所に手を伸ばすと、猫の泣き声のような声を出す。

 寸止めをし続けて絶頂させた後なだけあり、花びらのような大陰唇を開くとむわっとする熱が濃い匂いとともにオレの顔にまで届き、ドロッと流れる愛液がシーツにシミを広げていく。

 シミが堀北の尻にまで届くと絶頂の余韻に浸っていた彼女に反応があった。

 

「トロトロのぐしょぐしょだな。シーツまでぐっしょりにじゃないか。触れていると火傷しそうなくらいに熱い。感じきった女のまんこだぞ、これが……どうだ触ってみて」

「……あ、あつ、い」

 

 シーツを濡らしていく蜜と自身の女の匂いに、呆然とする堀北の右手を彼女の秘所に持ってきて膣壁を触らせてやると唖然とした声を出した。

 堀北のことだ、触るどころかこうなった秘所を見たこともないだろうと考えると同時だった。

 仰向けにした堀北の足を一瞬跳ねあげ、股の間に身体をねじりんでのしかかり立ち花菱と袈裟固の合わせ技に近い形で抑えこむ。これで堀北の身体である程度動かせるのは右腕の前腕部のみとなった。

 腰の下にひざを置く事で、堀北の顔をほぼ同じ目線にした秘所とご対面させる。

 

「……──-っ!」

 

 あまりのことに一瞬呆然とした後恐ろしく高い悲鳴を上げてきた。

 抵抗して振りほどこうと身体をゆすりたてるが、完璧に技が決まっているし、唯一動かせる右腕は秘所のうえだ。何も出来ない。

 

「乳首が当たってくるな」

「ううっ……、ひいっ、くっ」

 

 体ごと押し潰した堀北の乳首が胸板で擦れる。隆起した硬い乳首が胸板で潰れる感覚はなんともいえない楽しさがある。敏感な部分を刺激される堀北が、ぴくぴくと震えるのもまた格別だ。

 

「自分から擦り付けてくるとは、さっきまでそんなによかったのか?」

「──っ……はっ、ふぅ」

 

 このまま抵抗してもどうなるか悟った堀北は、快楽の呻きをあげて力を抜いて頷いた。それがオレの問いの返答になっていると悟り身体を羞恥に染め、首を振る。

 言葉で責めるのもよかったが、愛液を溢れさせている秘所で責めることにする。

 目を瞑って首を振り続ける堀北の目を開いて頭を掴んで、自分の秘所を見せた。ピンク色の粘膜を堀北の網膜に映させる。

 

「……あっ……すごいわたしの、こんな風になってたのね、知らなかった……」

 

 恥ずかしいのだろう声を震わせている。

 そんな堀北の手を互いの小指を絡ませて秘所に誘導する。

 

「どうすごいんだ」

「……こんなに、熱くて、ひうっ、ピリってきた、敏感なんだ……いつっ……綾小路君がしてくれたときとは違うのね。自分でやっても、痛いわ……どうすればいいのかしら?」

 

 痛みに顔をしかめて聞いてくる。

 

「少し力を抜いて、オレに任せろ」

「ええ、お願い」

 

 堀北の指を優しく誘導する。

 

「あっ、気持ちいい……さっきみたいにピリッとするけど、痛くなくて気持ちいいわ。んあっ、ゆっくり、やさしいと、気持ちよくなるのね。んんっ、あっ、声が出ちゃう、恥ずかしい、ひんっ、もっと熱くなってきて、んうっ、液がもっと出てきたわ。恥ずかしい、んうっ、綾小路君が見てるのに、もっと溢れて来ちゃったぁ、んんっ恥ずかしい……」

 

 羞恥の涙を流しながら自分の秘所の状況を言い続ける。

 

「白いのが流れて、あうっ、透明なのがでて、粘ついて、んんっ、あっ、混ぜるの、なんでっ、あっ、透明が、しろくなっ、うんっ、あひっ、そのっ、びらびらしたところっ、もっと敏感でっ、はずかしいっ、頭くらくらして、うぅ……やめっ、ひろげちゃ、うぁん、また、たれちゃっくうっ」

 

 小陰唇をさらに開けて溜まった蜜を落とした。

 堀北にもっとよく見せるために少し呼吸を落ち着かせて涙をぬぐう。

 

「……二つ、あながあるのね、一つは小さくて見えないくらいね、もう一つからは……液がでて……うぅ、うぅぅ」

 

 そこまでで羞恥の限界に達したのか、うなり、こちらを見てくる

 

「……綾小路君」

「なんだ?」

「……あなたが言ったように、恥ずかしいことを言っているのだけど……あなたこういうのが好きなの?」

「大好きだ」

 

 普段クールで硬質な美少女隣人の堀北が羞恥と快楽に顔をぐしゃぐしゃにして恥ずかしい言葉を口にしているのに、それ以外の答えがあるのだろうか。

 言ったときは多少のおねだりをさせたいくらいにしか考えていなかったが、こういう冷静に解説しようとしながら出来ずに恥らう姿も良い。

 オレの逸物はすでにズボンを破ってしまいそうなほど滾っている。暴発しないよう刺激を与えないようにして堀北の肌にはあてないように気をつけるのも限界に近い。

 

「……そ、そう、そうなの……それなら、その、続ける……わよ」

「続けてくれ」

 

 珍しいことだと思う。普段よりも、今のオレは本能で動いている。堀北が性行為の相手として魅力的なのは確かだが、それだけで、ここまでになるものなのか

 一度離していた手を再度近づけていく堀北の手を見てそんなことを思う。

 

「どうした?」

 

 秘所の前で堀北の手が止まっていた。

 

「……はずかしいのよ」

 

 顔を真っ赤にしてそんなことをつぶやくと、こちらに顔を向けてきた。

 

「……一人で、手で、私のあそこに、あなたの目の前で、触るのが、恥ずかしいのよ」

 

 視線を合わせて一言ずつ区切るように言ってくる。

 

「……さっきみたいに、あなたの手を感じさせて、でないと、わたしには出来ないわ、あっ」

 

 あまりにいじらしい姿に堀北の手を掴んだ。堀北の安堵の吐息を聞きながら再度秘所に手をやる。

 

「やっぱり、熱い、んっ……二つの、あな、うんっ、どっちが、その、あなたと、っん、……するときに、使うのかしら?」

「上の穴だ。愛液をいやらしく垂れ流している方のな」

「──っ、変態、変態、この変態」

 

 わかりやすく教えたのにこちらを睨みつけてくる。

 へそにまで垂れて来た愛液の感触に「ひゃん」と鳴くとこちらから目をそらして触らずに見始めた。

 

「はぁ、はぁ……こんなに、小さいのに、ふぅ……本当に、入るのかしら?」

「大丈夫だ。女の身体はそもそも入るように出来ている。それに、ちゃんと入れるための準備の前戯を今もしているからな」

「そう、そうよね。前戯か、そうなんだ……皆こういう風に前戯しているとは思えないのだけど?」

「千差万別だ。人によって違う。他の誰かから聞いたり見たりして、何か心当たりでもあるのか」

「いいえ。母からも聞いたことはないし、見たこともないけど……」

 

 そこで母親が出てくるあたり、こいつの性知識は下手したら義務教育だけかもしれない。妊娠は知識があってもセックスの知識がない可能性がある。いや普段読んでいる本で触りくらいは知っているだろう。

 

「でも、あなたみたいにこんな風に女性を拘束するのはないわよね」

「いや、少数派だろうがあるぞ」

 

 手錠、縄、テープ、革、拘束具、布、人の欲望は果てしない。「……え?」と幼げな顔をしてこちらを見る堀北には、想像もできないのだろう。 

 物があれば、こんな風に身体で拘束しなくてもよかった。布テープしか置いてないのは失敗だ、あれは肌が荒れてしまう。縄とテープを用意して部屋に置いて置こう、こいつの白い肌には黒でも赤でも茶でも似合う。 

 邪な思いを感じ取ったのか鋭くなってきた堀北の視線から逃れるために、堀北の手を秘所に誘導する。

 

「続けてくれ、堀北。前戯しないと後がきつい」

「わかったわ……ここに入れるということは、ここが膣口なのね。んっ、ここも、ピリってする」

 

 素直に膣口の縁をなぞり始めた堀北からは、今まであった行為に対する疑問の空気が薄くなっている。

 こいつ、前戯という言葉を知らなかったのではなかろうか。後で間違いなく調べるだろうな。まあ、問題ない。前戯の範囲はあまりに広大だ、いくらでもごまかせる。変態呼ばわりはされ続けるだろうが

 

「……この白くて薄い膜みたいなひだはなんなのかしら?」

「処女膜だ」

「これが、そうなの……あっ……いたっ」

 

 いきなり薄いひだに手を伸ばしてなで始めるが、人差し指では太すぎて膣口との間に挟んでしまい痛みに顔をしかめた。

 

「……これから、あなたに奪われてなくなるのね、この膜、生まれてからずっと一緒で、今日始めて見たのに今日にはなくなってしまうの……あっ……忘れて、お願い」

 

 堀北はオレを殺すつもりなんだろうか、股座がえらいことになっているんだが

 耐え切れなくなってきた、膜を優しく慎重になでる堀北の指をもっとも敏感な肉芽へと膣壁をなぞりながら連れて行く。

 

「……ひゃ、はあっ、あうっ、あっひぃぃ、な、なにそこっ、だめ、そのっ、だめっ、なに、そこ?」

「クリトリス、もしくは陰核だ。剥くぞ」

 

 多少肉芽からの先から露出していたとはいえ、今まで剥かれてない亀頭を露出してやる。

 

「むくって、ひっあぅう、やあっ、つめたっ、あつっ、だめぇ、そこだめ、そのしろいとこ、まっ、まって、空気にふれただけでぇ、こうなるところ、に、ゆびっ、あっああああ」

 

 堀北の指を真珠みたいな部分においてやさしくなでさせる。

 短時間に絶頂を2度経験した身体はそれだけで限界に達した。

 

「んあっ、またあついのきちゃったぁ、わたし、イっちゃう」

「イきたいなら、イかせてくれと──」

「イかせてえ! あ、は、はずかしいぃ、でも、あつっいのぉ、イかせてえ!」

 

 俺の言葉に喰らいついてくる堀北の指で真珠をつまませた。

 

「あ、ひっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 抑えこんだ身体をバウンドさせるようにしながら、堀北は3度目の絶頂に達した。

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」

「少し休むぞ」

 

 一度身を離し堀北の荒い呼吸が収まるまで、休ませることにする。

 スポーツドリンクを冷蔵庫から取り出しておく、堀北の蜜をのんでいたオレはともかく堀北は脱水症状になる可能性がある。

 呼吸とともに身体を上下にさせる堀北の顔を見る。涙と汗と涎でぐちゃぐちゃにしても綺麗な顔だ。

 

 さらに隆起しようとする逸物がさすがに窮屈になりズボンと下着を脱ぐ。

 堀北に脱がさせたかったが、冷蔵庫に行っている間に軽い眠りに落ちたので次の機会にまわす。十分くらい眠らせてやろう、夜はまだまだこれからだ。

 

 

「堀北」

「……あっ……綾小路君」

 

 呼び声に堀北がうっすらと目を覚ます。ベッド脇に立つ俺の姿を見て柔らかく笑ってきた。

 

「おはよう、堀北」

「えっ……あっ、ごめんなさい、私寝てし……えっ!?」

 

 起き上がった堀北が、目の前に曝け出された俺の逸物に目を奪われている。

 目の前のものが現実かどうか疑ったのだろう、一度目をこすり再度目を向けてきた。

 割と今まであったので慣れてしまった。この後おそらく上げる悲鳴も含めて

 

「うそ……すごい……えっ、なにそれ……な、何なのそれっ!? 男の人の、男性器ってそんなに大きいの!?」

 

 でも、驚きのあまり羞恥心がどこかに飛んでいって、いきなり掴まれたのは初めてだ。暖かく柔らかな手が気持ち良いが

 

「……うそでしょう、太い……片手でこれだけ余るから……そんな、わたしの手首より太いわ、これ、私平均サイズの太さなのに……信じられない、……それに熱くて、硬いし、びくびくって震えて……長さも……両手でたりない、三つなら……うそでしょう? ありえないわ。三つでたりないなんて、あれ、わたしの手の幅、7cmちょっとだから、えっ……まって、そんな、ちょっと」

 

 散々人の逸物をいじくったあと、おもむろに両手で擬似的なオレの太さの輪をつくり、秘所に押し当て始めた。亀頭ギリギリを触るとかあいつわかってるな。

 堀北の顔からさあっと血の気が失せる。

 

「……あ、あなた、私を、こ、殺す気、なの!?」

 

 ぽろぽろと涙を流し青ざめた顔で震え怯えきった声を出す堀北。間違いなく、想像して混乱している。

 どうもめんどくさいことになった。無理やりやってもいいが、堀北相手にはあまりやりたくない。

 

「さっきも言ったが女の身体は男を受け入れるように出来ている。確かにオレは大きいほうだが、大丈夫だ。今までも大丈夫だった」

 

 過去と比較するのは他の女と比較していることに他ならないが、混乱状態の堀北がそこに思い当たらないことを願う。

 

「ほ、本当でしょうね。本当に、大丈夫だったの?」

「本当だ、本当に大丈夫だった」

 

 願いは通じた。オレの断言に堀北は安堵の息を漏らして再び逸物を握る。

 

「……あっ、熱い、こんな熱くて、硬くて、大きいものが、もうすぐ私の中に、綾小路君のが、入って……こんなすごいの、どう考えてもねじり込まれるわ。絶対痛いじゃないの、信じられない、こんなのねじり込ませて、私をどうするのかしら、でも、これが、綾小路君のなのよね……すごい匂いだわ……あっ、わたし、なんてはしたないこと、でも、におい、すごい、あっ、頭が、くらくら、する」

 

 うっとりした顔ですんすんと匂いを嗅ぎながらこんなことを言われて我慢できなくなってくるが、まだ早い。挿入するときはイかせつづけて訳もわからなくなってからだ。堀北のためにもそのほうが良い。

 

 

 

 

「やっ……ん、んっ、あ、あやのこう、じゃぁ、んっ!」

 

 乳首を甘噛みしながら、秘所にいれた指を描くように回す。

 

「あっ、あぁぁん! あっ、いたっ、うっ、ひんっ」

 

 膣口の縁はともかく奥へ入れようとすると痛がる。

 指先にかすかに触れる薄膜を破らないように気をつけながら、膣口の周りを軽く押しながら愛撫する。

 

「はあっ、あっ、中で、かきまわっ、ふぁぁぁぁ!」

 

 中をかき回される刺激にもだえる堀北。

 

「は、あっ、そこ、そこだめぇ、んぁぁぁっ!」

 

 今までで掴んだ堀北の感じるポイントを集中攻撃する。

 

「もう一本、いけるな」

「やっ、そんな──っ! はぐっ!? あ、んっ! んんんっ! あっあぁぁぁ!?」

 

 おもむろにもう一本入れて、咲いた花びらになっている小陰唇をつまんで閉じてこすり合わせて弾き、堀北を絶頂させる。

 

「はぁ、あっ……やっ、もう、あ、あやの、こうじ、あうぅ」

 

 休ませずにすでに何度も絶頂させ意識を朦朧とさせ秘所もほぐしにほぐした。これなら次イかせれば挿入してもすぐに痛みで泣き叫ばないだろう。

 やけどしそうな堀北の秘所に、欲望を滾らせた逸物を叩き込めることに口角を吊り上げる。

 

「も、もう、あぁっ、わた、しっ、だあぁぁぁ!」

 

 散々泣かせ真っ赤な濡れた瞳を俺に向けてくる。ぺロリと瞼を舐めると恐ろしく熱い。

 その熱さを滾りに変えて秘所に入れた二本の指で優しくかき回す

 

 じゅぷっじゅぶっ、ぐちゅっぐちゅっぐちゅっ

 

「んっ、あっ、んんんっ! くあっ! もっ」

 

 下と上で奏でられる心地よいデュオは耳を楽しませる。

 締めは、乳首を噛み切るような強さで噛むか、それとも肉芽をつまんでしごきあげるか、露出したクリトリスを弾き飛ばすか

 迷う。

 

「あっひぅぅ、あ──っ! イっちゃう、イっちゃ、ひああぁ────っ!」

「……え?」

 

 絶頂の叫びとともに堀北の身体が跳ね上がり秘所から潮を噴出す。

 顔に当たる堀北の乳房と指に感じる秘所の蠢きが、堀北が確かに達したことを教えてくる

 

「……嘘だろ、何でこんなに速い」

 

 ここ数時間弄んだ経験が俺に教えてくれる、まだ絶頂に到達するときではない。

 そんなに強く攻めていないのだ。これからかき回すのを強くしたり速くしたり、真っ赤に変色するほど弄りまくった乳首も攻めたり、首筋に吸い付いても脇腹を攻めてもいないのに、堀北は達してしまった。

 

「あはぁ……うぅぅ……はぁぁぁ……ぁぁぁ……」

 

 堀北の唇から静かな泣き声が漏れる。

 その身体からは完全に力が抜け切っている。

 

「ぅぅぅ……はぁぁ……あぅぅぅ……ぁぁぁ……」

 

 胸の中に抱き上げるが反応はない。

 今まで絶頂させたあと、触れば全身をぴくり震わせ、抱きしめれば照れたように視線を合わせようとしない堀北の可愛らしい反応がない。

 もはや意識のかけらすらなく、閉じられた瞳は開く様子はない。

 

「堀北」

 

 呼びかけても反応しない。

 オレはそんな彼女を抱きしめながら、どうしたものかと考える。

 何せ自分の逸物は今から本領を発揮するのだとやる気に満ちているからだ。

 だが、さすがにこの状況の堀北に逸物を挿入するのは気が引ける。冗談抜きで屍姦に近いだろうさすがにそんな趣味はない。

 

「……自業自得ってやつだな」

 

 大分思考がめぐってしまった。認めたくないのだ、この昂りが果たせなくなったことを。堀北の膣に叩き込んで中に出して一晩中犯すということが出来ないということが認められない。

 まあ、誰が悪いというと間違いなくオレなのだが

 性的に初心だった堀北を何度もイかせるのならともかく、堀北の反応があまりにも楽しかったせいで焦らしたり、拘束したり、恥らわせた。

 恥ずかしいことを言わせていたとき堀北は出来るだけ平静であろうとしていたが、平時と比べれば雲泥だった。全ての精神的負担はかなりのものだったろう。

 スポーツドリンクも飲ませなかった、というより途中から忘れてしまった。全身からあれだけの体液を流させて補給なしだ。むしろよく持ったというべきかも知れない。

 どう考えても初体験でやるには濃厚すぎただろう。

 

「でも、楽しかったんだよなあ」

 

 堀北の髪を撫で付けながら言葉を漏らす。

 身近な人間と性行為をするのがこれだけ楽しいとは思っていなかった。

 最初はもっと酷いことをするつもりだったのに、割と優しくしてしまったのはそのためだろう。

 

「はあ……」

 

 ため息が漏れるが、仕方ない切り替えよう。

 今日は休ませて、明日朝一から犯そう。寮のカメラは明後日まではごまかせるから何とかなるが、この8時間は人生で一番長くなりそうだ。

 

「はぁぁ──……」

 

 虚しい、本当に虚しくてつらい。

 

「あ……ん、あっ……あ、あやの、こうじく……ん?」

 

 うっすらと堀北が目をあける。どうやらため息が大きすぎたようだ。

 

「大丈夫か、堀北?」

「え……あ……い、いいえ」

「だよな」

 

 やはり水分が足りてなかったようだ声が枯れている。そんなことにも気付かなかったとは

 

「あ、ごめん、なさい、わたし」

「いや、いい、ちょっと待ってろ」

 

 とりあえず堀北にスポーツドリンクを飲ませるため堀北を降ろそうとすると止められた。

 

「……でも、あやのこうじ、くんの……まだ」

「ん……ああ、まあ、大丈夫だ」

 

 あまり大丈夫ではないが、8時間の辛抱だ頑張れる。いや、頑張る。

 そんなオレを堀北は見ていた。

 

 

 

 

 隣人の綾小路清隆を問われれば私は良くわからないと言う。

 

 無気力の事なかれ主義者──-これも一部本当。

 高い能力を持ち他者を操るクラスの黒幕──-これも一部本当。

 冷静沈着で律儀なところがあるクラスメイト──-これも一部本当。

 でも、おそらく、それら全てが上辺だけの見せ掛けだろう。底知れないという言葉が、これほど似合う人を初めて見た。

 それでも一年以上見ていて、ただ一つだけは言える。彼は恐い人だ。

 本当の彼は、私を歯牙にもかけていない。何の関心も持っていない。いや、誰のこともなんとも思っていない。必要が無くなれば捨てるものでしかない。それがたまらなく悔しかった。赦せなかった。

 

 だから、抱かれに来た。櫛田さんもクラスのこともただの言い訳。

 私はただ身体だけでもこの恐い人と繋げようとしただけだ。

 馬鹿な行動をする愚かな女だと自分でも思う。

 

 うっすらと開いた目に綾小路君が映る。

 いつものように人形のように表情を変えていない。

 でも、瞳の中には違う色がある。いつもにはない情欲の色が、食事のとき以外全く読めなかった今までとは違う、感情の発露。

 私を欲することで見える感情。

 気のせいかもしれない、妄想でしかないかもしれない、でもそれでいいと思う。

 どこまでも愚かな女だ、私は

 ここまでひどいことをされたのに、あの綾小路君が、私を情欲の対象というだけでも、色をもって見てくれていると喜んでいる。

 少しでも彼の何かになれたと思えることが嬉しい。

 

 兄さんごめんなさい。あの日、兄さんとの別れの日にああ言ってくれたけど、いいえだからこそ、兄さんは私の理想の一つでした。兄さんみたいに賢く正しく優しい人に成ろうと目指していました。

 でも、もう兄さんのような人には成れません。

 私は、もっと愚かな女でした。

 こんな恐い人の近くに居たいだけで身体を預ける愚かな女です。

 こんな恐い人を知りたくて執着してしまう愚かな女です。

 ──―でも、こんな自分が嫌いではありません

 

 堀北鈴音という少女は、兄より優先するものを知った。

 誰かへの恋より先に誰かを愛した。

 

 

 

「あやの、こうじ、くん」

 女として使われたいのに、疲れきった身体は言うことを聞いてくれない。それでも

 顔には力いっぱいの笑みを、動かない手足を出来る限り開いて彼を迎えよう

「……きて……」

 

 

 

 

 もう辛抱たまないけど、相手に気を使ってなんとか抑えたときその相手から

 涙を流しながらうっすらと誘う様な笑顔を浮かべ

 上気しきった乳房と突起を震わせながら手を広げ

 開けた太腿と太腿の間に蜜で出来た橋を見せ付けるように

「きて」とか言われた

 

 頭の中のどこかで理性が弾けた。

 秘所の花びらをあけ膣口に逸物を押し当てる

 逸物から出たカウパー液と愛液が混ざり卑猥な音を立てる。

 腰に力を入れると、唇に柔らかさを感じた。

 

「さい、しょは、キス、でしょ……馬鹿、ね……おんな、の、こよ……わたし」

 

 柔らかな優しい笑みと掠れた声に頭の中で弾けていたものが戻った。

 

 




 独りで何かに打ち込み続けた人の性知識の乏しさは恐いくらいです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音④

私見ですが、高円寺の相手をした女性は勇者だと思います。


「ん……ふっ」

 

 堀北の渇いた唇の裏を舌で愛撫する。キスを返してくるとは思わなかったのか驚いた顔をした堀北だがそのままうっとりと目を閉じた。

 何故か閉じたままの歯を舌でノックする。少し迷っていたがゆっくりと開いてくれたのでそのまま渇いた口内を蹂躙する。

 

「は……ちゅ……あむっ!」

 

 堀北の唇の柔らかさを感じながら舌を絡める。どうすればいいのか解らずおずおずと絡めてくる舌、優しくキスを教え込んでいく。

 

「んちゅ……ちゅ……ごくっ、はぁ、はぁ」

 

 息苦しそうになってきた堀北に唾液を送り込み嚥下させて唇を離す。

 唾液が透明な橋となって堀北との間にかかった。

 

「はぁ、これが、キスなのね……綾小路くんとの、キス」

 

 抱き上げたままの姿で初めてのキスに唇をなぞる堀北を胸に抱く。

 オレと堀北の体液が混じって溜まった、オレの鎖骨に唇が来るように、

 唾液を飲ませたとはいえ、軽い脱水状態にある堀北に塩気がある液を認識させた

 

「……あっ、ちゅ、こく、ちゅ、こく、はぁ、んっ、こく」

 

 無我夢中で舐めてくる。舌全体で舐めとろうと小さい舌を精一杯伸ばして舐めてくる。少しでも溜まったら喉に流し込む。なくなったら顔を動かせる範囲で探して舐める。

 そうしているうちに顔が動かせる限界の左の肩先に到達した。

 左側を舐めきってしまったのに、多少湿らせたおかげでさらに渇いてしまった。悲しいそうに形の良い眉を寄せる。

 哀れに思い、身体を動かす力も残ってない堀北の身体のバランスを変えて右側に頭を移してやる。

 

「……あっ……ちゅ、ふあっ、こく、あっ、はぁ、ちゅ、こくっ……ふうっ」

 

 オレの汗を、また再び舐め尽して来る。ほんの僅かな雫すら逃さないと舐めてすする。

 肩先まで舐めとりようやく一心地ついたようにため息を漏らし、堀北はそのまま横顔を俺の肩に預け

 視線の先にある鏡の中のオレと視線を絡ませた。

 

「……えっ、あっ」

 

 鏡の中にはベッドの上で抱き合う堀北とオレの横姿が全身で映っている。

 

「やっ、うそっ」

 

 見られていた、男の鎖骨から上を舌を伸ばして犬のように舐めまわしていた自分の姿を、鏡越しで見られていたのだと理解した。

 羞恥に全身を真っ赤にする堀北の視線が降りていき、オレの右手に所在無さげに握られていたスポーツドリンクのペットボトルを捕らえて目を見開く。

 オレがスポーツドリンクを飲ませようとして胸元に頭をもたれさせたのに、いきなり舐め始められ戸惑っているようだと傍から見たら思えるだろう。

 凝固してうごかない堀北のように

 

「ぁ……」

 ──人の善意を足蹴にして情欲にふける犬女

 呆然と目を見開く堀北から読み取れた。

 そんな堀北を慰めるように頭に手をやり優しくなでる。

 

「なかなか変わった性癖だな、堀北」

「……ぁ……ぁぁ」

「オレは他人の性癖には寛容なつもりだ。とはいえ、自分がいきなりやられると戸惑う」

「……っ……ぁぇ」

「一言言ってくれれば何とか対応したが、驚いていて何も出来なかった……悪かったな」

「……ぇ……ぇう」

 

 苛めすぎたらしい、本気で泣き始めようとしている。

 頭を撫でながらスポーツドリンクを口に含んで、静かに涙を流し始めた堀北の唇を割り嚥下させる。

 

「……ひっく……ごくっ……ちが……ごくっ……わたし……ごくっ」

「ああ、そうだな。わかっている。安心してくれ誰にも言わない。ここだけで終わらせる」

 

 誠意ある回答の返答は、背中に立てられた爪だった。

 

「……ぅぅ……ごくっ……わすれて……ごくっ……さもないと……ぷはぁ」

「わすれる、いやもう何のことか忘れました」

 

 今までよりもはるかに強い攻撃色を湛えた堀北から、コンパスや蹴りが可愛らしいバイオレンスの匂いを感じ取り誓う。

 

「……そう、おかわり、頂戴」

 

 了解の意を示して足元においてある新しいペットボトルに手をやる。そのまま口にためて堀北に飲ませる、何故か直接飲ませようとは思わなかった。

 

 

 避妊薬を飲ませ水分を補給して休ませた後、太もも辺りがしっかり密着した正上位の体勢をとり逸物を堀北の秘所に押し当てる。くちゅっと音を立てたそこはたっぷりと濡れている。

 

 堀北は秘所に押し付けられた肉棒の感触にびくりと大きく震えた。

 堀北の意識がしっかりしているから痛いだろう、そう考えながら俺が目を向ける

 堀北は、柔らかな薄桃色に染まった肢体を恐怖に小刻みに震えさせながら覚悟を決めたように小さく頷いた。

 

「いくぞ、堀北、お前を貰う。力を抜いて置けよ」

「ええ……いいわ。あなたに私をあげる」

 

 ミシ……リと堀北の膣口をこじ開ける。

 

「──―っ」

 

 堀北は歯の奥をガチッと噛み合わせて、痛みに耐えようとする。

 健気だと思いながらそのまま膣口の縁を広げていき、ジワジワと逸物を推し進めるたびに赤く上気していた堀北の肌から汗が引いていき白くなっていく。

 

「……い゛ぎっ、あ゛、あ゛がぁっ、ぐっ」

 

 耐えられなくなり、堀北は目をカッと見開いて苦悶の声を出す。

 まだ膣口は亀頭の先を迎え入れただけだ、これからさらに痛くなる。

 

「あ゛っお゛、お゛、ぐぅ」

 

 指ですら痛くて顔をゆがめていた堀北の膣口は限界以上に開かれオレを受け入れてくる。

 亀頭がようやく入ろうとするときだった

 

「お゛、ぎっ、──―っ……あ゛」

 

 声にならない断末魔の叫びを上げて堀北が意識を失う。

 逸物に力をやり堀北のぎちぎちの膣内でピクリと動かした衝撃で目覚めさせ再度苦悶させる。

 強い刺激を与えれば意識は覚醒する。堀北には破瓜の痛みを存分に味合わせる。半分朦朧としたところから覚醒させるプランを破棄したのだ。最初から最後まで味わいたい

 鬼畜そのままの思考で、鈴口に伸ばしきった堀北の処女膜を感じるところで一旦腰を止めた。こうすれば意識がある堀北の苦悶の顔と声が存分に楽しめる。

 

「あぁ、ぎうっ、あ、あ、はぁ、い゛だ、い゛だい゛」

 

 少し慣れたのか言葉に意味のある言葉が混ざり始めた。

 激痛から逃れようと身体を動かそうとするが、その痛みでさらに悶絶する。

 オレの背中に思いっきりしがみついて痛みに耐える。

 

「わかるか? 堀北、今オレのチンコが処女膜を破ろうとしているのが」

「ぁぐぅ、ぅ、ぇ、え、ええ」

 

 涙を流しながら俺の顔を見て頷く。

 せめてオレの顔を見ようとする健気さにさらに滾ってくる。

 

「お前の処女を貰うぞ、堀北」

 

 堀北の眼を見ながら逸物の進入を再び始めた。

 みしみしと身体を引き裂くような痛みに堀北は襲われる。

 僅かに抵抗を見せた膜はその圧力に耐え切れず、プツリと破れてしまった。

 

「いっいぎゃあぁぁぁっ!! いだ、い゛だぃぃぃぃっ」

 

 破瓜の痛みに泣き叫ぶ堀北。

 背中を仰け反らせ、脂汗を掻き、背中をそらせた反動が膣を刺激してさらなる痛みに涙を溢れさせる。

 堀北の膣が主の危機を感じ取ったのか恐ろしいほどの愛液を出す。

 堀北の破瓜の血の赤がすぐに薄まっていくと思わせるほどの量。

 逸物とぴったり引っ付いた膣口からは一滴も外に出ないから、見えないのが残念だ。

 

「あっ、あっ、がっ、──―っ……がぁっ」

 

 大量の蜜が潤滑油になり痛みを軽減できた堀北だが、そのことが仇になった。

 痛みだけしかなかったところに少し余裕が出来てしまい、オレの逸物を進入させる衝撃に耐え切れずに意識を失う。さすがにやりすぎているから堀北の意識が戻るまで待つ。

 だらだらと流れていく汗を見つめる。

 拭いてやりたいがもしオレが少しでも動くと、それだけで堀北には耐えられない苦痛をもたらしてしまうから待つ。

 逸物を奥に進める以外の刺激に彼女は耐えられない。

 腰を止めて、堀北の意識がはっきりするまで待ってから腰を進める.

 

「あっ、まだ……はっぐっ」

 

 ようやく三分の一弱しかはいってないオレの逸物を見て絶望する。堀北の感覚では最後まで入っていると信じたかったのだろう。

 

「あっ、はっ、いっっ、ぐううぅぅぅ」

 

 痛みにのたうつ堀北の動きに合わせて、ゆがんだ膣口からゴポッン、ゴポッンとシャンパンのような大きな音を立てて愛液と破瓜の血が入り混じった液の塊を弾きだす。

 

「やぁ、い、や、ぁぁぁ、あっ──ーっ」

 

 のたうった反動の痛みとあまりの音に羞恥の入り混じった苦悶の声を上げ、またしても意識を飛ばす。逸物に力をやり堀北の膣内でピクリと動かして起こす。 

 そのまま奥へ進入させようとすると堀北が俺の胸に噛み付いてきた。

 

「どうした」

「──っ、す、少し休ませて、お願い」

 

 眼を瞑り涙を流して懇願してくる堀北。

 

「わかった」

「あ、ありがとう……はぁ、はぁ、はぁ」

 

 あまりの痛さに動かせない身体をピクリとも動かさず、に泣きながら礼を言った後荒い呼吸をする。

 まだ半分くらいしかオレの逸物を納めていない、堀北の膣内を味わう。

 膣内のヒダヒダが多く、逸物に痛いほどきつくまとわりついているが、一定のものではなくランダムに不随意にうごめいている。愛液も充分な量だ。処女特有のきつさがなくなったときを想像する。

 ──名器だな。

 これからのこの膣を自分専用に作り変えていく日々に口角を上げていると堀北の呼吸が落ち着いた。

 

「……少し、楽になったわ。続けて」

「そうか、力を抜いておけ」

「ええ……はっぁぁぁっ!」

 

 アドバイスどおりに脱力しようとしても強張りが抜けない膣を、じわじわと推し進める。

 変わらないきつさに力を入れて一気に入れたくなるが耐える。

 そんなことをすれば堀北の膣を壊してしまいかねない。

 苦悶の声を叫ばさせ涙させるのは鬼畜とはいえまだ性交だが、壊してしまっては拷問だろう。

 もっとも女性の手首くらいの太いものを秘所にいれるなど拷問の領域なのだが

 オレは性交をしたいのであって堀北を拷問したいわけではないのだが、生まれ持ってしまった逸物はそれを強いてしまう。

 

「がぁっ、ぐっ、ぎっ、ぃぃぃ、あぐぅ」

 

 だから細心の注意を払って、じわじわ逸物を進出させる。壊さないように、痛々しい悲鳴と苦悶を聞きながら

 

「あっ──―かはっ」

 

 子宮口に突き当たるがまだ捩じ込む。後二割弱がまだ入っていない。

 腰に力を入れて子宮を押し上げながら奥に進める。みしみしという軋みが逸物越しに伝わる。身体の奥底で感じている堀北の恐怖はいかほどか

 

「ひっ……ひっ」

 

 微動だにせず結合部を見開いた目で見て呻き声しか出せない堀北を見ながら、さらに腰を推し進める。

 柔肉のトンネルを押し広げながら、貫通させようと腰を推し進める。

 

「ひっ……あっ、ひゅ」

 

 膣や子宮を突き破り内臓にまで来るのではないかと、恐怖におびえた悲鳴とともに堀北が息を呑む。

 ゴリッと内部でなにかが押しあがり、こじ開けたような感触とともに逸物がすべて堀北の中に入った。

 オレは思わず満足の吐息を漏らすが、堀北はそうは行かない

 

「──かぁ……ハッ、あぐ」

 

 肺を直接押されたかのような苦しげな息を漏らして、喉を大きく反らした形で固まった。

 カッと開かれた眼は血走り焦点が合っていない。鼻からは鼻水がだらだらと流れ、大きく開かれた口からは舌がだらりと垂れている。肌はろうそくのような白さで汗が全て引いている。

 押し上げられた子宮はへその上にまで達していて、そこから下の滑らかな白い肌は逸物の形に変わってしまっている。

 視線で見れるのはこれで限界だ。動きでもしたら堀北が危険だ。 

 

「──っ」

 

 ぎちぎちと堀北の膣がオレの形に変わっていくのを感じる。

 巨根により拡張されてしまったこの膣は、この先他に誰かと性交渉しても、比較して物足りない思いを抱く。

 例え経験者だろうが上書きして自分のモノになっていく快楽。

 見下ろし、この女は自分のモノだと愉悦に浸る。

 ──これくらいしか巨根のメリットってないんだけどな。

 衝撃のあまりに引っ込んでいた涙を流し始めた堀北をみながら虚しさと大きな征服欲を得た。

 

「──っ……っ、はっ……はっ」

 

 苦悶の声に荒い息が混じってきた。膣がほぼオレの形になり、無意識とはいえ余裕が出てきた証だ。

 堀北が呼吸をするたびに、小さく開閉する余裕すらなく爪を立てると千切れてしまうのではないかと不安なほど張り詰めている大陰唇がひくりひくりと痙攣する。

 

「──あっ、め、はっ……まえ、あか、ぐろ」

 

 あまりの衝撃に血が頭に上りきって目の前が霞んでしまっているのだろう。

 ピクリピクリとしか身体を動かさない。呼吸がはっきりしているし瞳孔も問題なかったとはいえ休ませないと危ない。

 亀頭の先に感じるこりっとした子宮口と痛いくらいに締め付けてくる膣を感じながら待つ。落ち着いたら少し引いて子宮を元の位置に戻さないと、このまま飛んだまま帰って来ない可能性がある。

 

「……ガハァ、あぐっ、ヒュー……ヒュー……ガ、ハァ……ヒッ、ヒッ、フー、すぅ……ヒッ、ヒッ、フー、すぅ……」

 

 堀北の様子を見計いながら、少しずつ腰を戻し二割ほど出す。

 ある程度意識が戻ると、ラマーズ法の呼吸法を始めた堀北に感心する。今の手持ちで膣内に巨大な異物を入れているとき心身を緩めるのに適している。

 しばらくして、通常の呼吸で問題なくなったのを見計らい、動作で痛めないように静かに堀北の強張った身体をマッサージする。

 

「ふっ、はぁ、ふうっ……あっあぁっ!」

 

 強張り固まった身体に血を巡らせるようにゆっくりと優しく

 腕や肩などから強張りが抜けた後乳房や肉柱や腹など堀北にとって敏感な場所を愛撫する。

 

「……ふうっ、苦しっいっ、あぁ、いたっ」

 

 敏感な部分を愛撫されていても、快楽を感じるほどの余裕と慣れがまだ堀北には無い。

 圧倒的な圧迫感と痛みだけしかない堀北に、焦らずに丁寧に身体をゆっくりじっくり愛撫し続ける。

 

「うっ、くぅ、いたっ……あぁっ! やぁ綾小路くんっ!」

 

 数分後、少しずつゆっくりと快楽を感じ始めた。

 しばらく逸物をなじませながら、優しく愛撫し身体をなじませる。

 

「ああっ、はぁっ、あんっ」

「くっ」

 

 ギュッと締め付けてくる。ただ締め付けるだけだった膣はオレの愛撫されたときにさらに締まるだけの変化を持ち始めた。

 

 

「んぅっ……ああっ」

 

 快楽の声とともに身体を弾ませ始める。柔らかな乳房をぶるぶると大きく弾ませても声に痛みは無い。

 

「ひっ、うぅぅんっ、きゃん」

「……ぐっ」

 

 そうしている内に膣のきつさが緩まり、生来の名器を発揮し始めた。膣壁が数多のミミズがうごめくように動いてくる。一匹ずつ違う強さ違う向き違う速さで、逸物に絡みつく。それらのミミズが愛撫したときに同時に強く締めてまた別々に動き出す。

 まずい耐えられない。すでに挿入してから半時間は過ぎている。力を入れて噴出を押さえ込むのも限界だ。

 

「うごくぞ、堀北」

「……えっ、あ、あ、あぐぅっ! ……あぐぅぅぅっ!」

 

 痛みと快楽が入り混じった咆哮のような叫びをあげる。

 円を描くようにゆっくり逸物を動かす。

 

「ゆっくりやるからな」

「え、ええ、お願い、いぐぅっ! ……はぅっ、これくらいなら、大丈夫、よ」

 

 逸物に慣れさせるための動き、堀北が何とか耐えられるくらいの速さで動かしてやる。

 堀北の膣口がぐちゅ、ぐちゅと音をたて始めた。伸びるだけだった膣にほんの僅かでも隙間を作る余裕ができた。

 

「気持ちいいぞ、堀北。きつくて良い感じだ」

「あっ、ぅぅん、あっ、綾小路くんっ、のも、熱くて、ああっ、深いわ、くっ、おおきっいっ」

 

 だんだん痛みが表情から無くなっていく。あせらずに少しずつ、堀北の伸びきった膣を慣らして余裕を持たせるようにゆっくりと動かす。

 初めての堀北が快楽のよがり声を出せるくらいの強さで腰を回す。

 

「はあっ……は、はずかしいっ、音だしてっ、ふっ、うぅぅん」

 

 ぐちゅ、ぐちゅと白く泡立つ蜜の音をききながら頬を染める顔からはすでに痛みがない。膣の強張りも抜け、その分絡みついてくる。

 

「くっ、余裕出来た分だけからませてくるとか、どうなっているんだおまえは」

「あっく、わ、わたしの、全部は、今、綾小路くんで、埋って、ってる、わ……んんん、はぁ、綾小路くんに、あなたに、かえられて、しまう、はあっ……気持ち、いいわぁ」

 

 ついに快楽一色に変わった堀北の顔を見ながらゆっくりと引き出すように動かす。

 

「あっ! おぁぁぁぁぁぁぁっ」

 

 ゆっくり引き戻す逸物に吸い込まれるような嬌声を上げる。

 ひょっとこ顔で鳴く堀北の恥骨の裏、まだまだつるつるのところまで引き戻して、亀頭でえぐるように動かす

 

「ひっ、ぁぁおっ!」

 

 ベッドから身体を跳ね上げるように跳ばす。一般的なGスポットは彼女の有効な弱点のようだ。試した甲斐がある。

 

「んぎぃぃぃぃ! だ、駄目、そこ、は、んぐっ、ぐりぐりしちゃ、だめぇ、私、変よ、変になってしまうわ、ぁおおっ」

「ああ、変になるんだよ、堀北」

 

 亀頭でぐりぐりと敏感なところを抉られ顔を激しく振って泣き叫ぶ。乳房が大きく弾んで先端から汗を迸らせる。

 さらに締まっていく膣をよりよく楽しむために奥までいれていく。

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁっ、ひっ、あぐぅ……ぅぅ」

 

 入れるときも長い嬌声をあげ、子宮口を押しつぶすように刺激すると、痛みに啜り泣く声に代わる堀北の声。

 それを聞きながら逸物で蹂躙する。

 

「いっ、ひっ、あがっ、奥っだめ、痛っい、わぁうっ、止め……んんんっあっぁぁぁぁ!」

 

 子宮を押し込んでいた逸物を堀北が耐えられる限界まで押し込むと先程より速く腰を引く、それを繰り返す。

 少しずつ速く、それでも堀北の限界ギリギリでゆっくりとした速さで

 

「んんっ! ひぁっ! おっぱい、あつくて、溶けちゃうぅ、ああぁ……ひあぁぁ、ひぁっ、あっ……くぅんっ!!」

 

 腰をゆっくり律動させる。まだかたく蜜を溢れさせる秘所を堀北の胸を掴みながら犯す。

 愛撫するたびにきゅんきゅんと締まり逸物を押さえ込もうとする膣をそれ以上の強さで抉る。

 そのたびに耐え切れないと堀北は顔を振り続ける。

 

「ひゃんっ! こんなのっ、だめっ、堪えられない、んっ、んあ、はぁ、あぁん……あっ、綾小路君っ! わたしっ、もうっ」

 

 泣き叫び限界を訴えてくる。俺も限界に達した。

 

「ああ、オレもいくぞ。出すからな、子宮の奥まで」

「……だ、出すって、なにを?」

 

 どうやら、堀北は本当に知らないらしい。小刻みに誘うように揺れる堀北の腰に合わせて腰を律動させる。

 

「染め上げるんだよ、堀北、お前をオレの色にな」

「え、ええ!? ……ならっ、いいわ! ひあうっ!」

 

 黒い髪を振り乱し乳房をいやらしく弾ませる。

 

「はぅぅっ! もうイっちゃうっ! イっちゃぅぅぅぅぅーっ!」

「こっちもそろそろだ。一緒にイくぞ」

 

 深々と犯した逸物が膨れ上がり、限界まで圧迫していた膣をさらに圧迫する。ぎちぎちと音を立てるように膣を広げる。衝撃に顎をあげ白い喉を震わせながら、堀北は鳴く。

 

「出すぞ。体の奥に」

 

 最後の楔を膣の奥底、子宮口に打ち込む

 

「くうっ」

「も、もう駄目ぇぇぇぇー! はっ、はぅぅぅぅぅーっ!」

 

 子宮口に亀頭をめり込ませて溜まりに溜まった射精を開始した。大量の精を叩き込む中出しの快感は堀北を絶頂の高みに連れて行った。

 

「イッ、イくぅぅうーっ! イっちゃぅぅぅぅぅーっ!」

「あぶなっ」

 

 絶頂の快楽にベッドから落ちそうになる堀北を胸に抱きながら、どくんどくんと逸物を震わせて精を子宮の奥底に流し込む。

 

「ぁぁぁ……なかで、あつい、あぁぁぁ……まだ……どくんって……イってる、私、またっ……ビュクビュク、中に熱いのがぁ、あっ、体から出て……そう、これ……が……おとこのひと、の……なのね……」

 

 絶頂するたびに締め付けてくる堀北の膣は貪欲に精液ををむさぼり飲み干し、オレが出し切れていない残りを求めて膣奥にしごき上げてくる。

 どくりどくりと残りの精液が堀北の胎内に送り込み、そのたびに堀北は絶頂に至りびくりびくりと震える。

 堀北を抱きしめながら空になるまで精を注ぎ込んだ。

 

「は、はあぁぁ……綾小路君……っ」

 二度、三度と精を出しているうちに膣内に収まりきらなかった精液が小さくなっていく逸物によって出来た隙間によって出てくる。

 

「私、知らな、かった……あんな風に……精子って」

 

 朱の色に染まった白濁液を見た堀北は何度か身体を小さく震わせ。全身の力を失ったようにぐったりとした。

 初体験の処女を性交で絶頂させた征服感に浸る。

 

「……はぁ……はぁ」

 

 オレの胸に顔をうずめ、堀北は幸せそうに荒い気を吐く。

 心地良い疲れに体を浸したまま、そのまま深い闇に沈もうとしているのだろう。その顔は安らぎに満ちている。

 

 

「え……っ」

 

 だが、一度精を放ったくらいでは満足しないオレの逸物は、硬さと長さを維持していたままだった。もちろんオレも満足していない。

 初体験を終えたばかりの女に二回戦等と人として間違っているのは重々承知だ。

 が、鈴音の息が整ったから良しとする。

 控えめに言ってクズの心境に、逸物は歓喜して硬くなり堀北の膣はうごめきを再開する。

 オレと自身の体に裏切られた堀北は呆然としている。

 

「も、もひゅ……むりぃぃぃ、むりよぉぉぉ、やめぇぇぇ……」

「下の口はそう入ってないぞ」

 

 呂律の回らない堀北の言葉を無視して力強い律動を始める。

 精液が更なる潤滑油と化して堀北が慣れたおかげでようやく普通にピストンできるのだ。

 これからが本番だ。

 

「だ、だって……そんなぁ、大きいの、いつまでも、いれているかぁぁぁ、なんでぇ、私、もうっ」

「上の口は素直じゃないな。もうちょっと付き合って貰うぞ。安心しろ、それなりに自重する……下の口が限界になったらやめる」

「ちょ、ちょっと待っ……あっ、また大きく硬くっ……ぁぁぁぁぁぁっ」

 

 後から後から蜜を湧きだせながら締め付けてくる格別の膣をむさぼるように、何度も何度も子宮に向かって打ち付ける。

 天井知らずの快感を上乗せられ絶え間なく送られる堀北は何度も意識を飛ばすが、腰を打ち付けて意識を強制的に戻す。俗に言うイきっぱなしの状況だ。

 

「あぅぅ──! ふぁ──あんっ! あぅぅぅーっ! ……壊れる、わたしっ、もうっ」

 

 イきっぱなしに狂ったように身体を暴れさせる堀北を、暴れ馬を抑えるようにピストンで押さえ込む。

 ずぽっ、ずぽっ、ずぽっ、と膣圧の強さと巨根による淫らな音が部屋いっぱいに響く。

 

「良い身体だ。優しく締め付けてくるな。くっ……」

「ひあぁ──っ!! あ、あぁぁ──んっ! あっァァァァ!! ……またっあ、つ、い……」

 

 密着した柔らかな堀北の身体を堪能しながら二度目を噴出する。絶頂し続けた後に胎内に熱い迸りを叩き込まれた堀北は昇天して全身を震わせる。

 

「はぁ……あっ……はぁっ……あっ……」

 

 どくんっどくんっと最奥に強く浴びせられて、完全に意識を飛ばした堀北を抱きしめる。

 

「……あ、ぁぁぁぁ、な、なにぃ、あなたっ、なに」

 

 ぐったりとした堀北の身体を抱えあげて対面座位の体位になる。

 今までよりも深く子宮を押し上げられる衝撃で意識を覚ました。

 

「……よし、大丈夫だな」

「な、なにが大丈夫、なのよ。このケダっ、あぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 オレにしがみつくのが精一杯で、抵抗する余力がない柔らかな堀北の尻を鷲掴みにしながら腰を突き上げる。

 身体を起こしたお陰で別の箇所と箇所が絡み合い新鮮な味を味合わせてくれる。

 

「あ、あぁぁぁぁっ……奥に、さっきより、奥にぃ、深っ、おあぉぉぉぉぉ」

 

 ぬっぷ、ぬっぷと突き上げる。堀北が上気して桃色になり、上下に激しく揺れる乳房の先端は痛々しいほど尖らせる。

 

「あついっ、おくっ、あついっ、あぁ、胸が、痛ぃ……ああっ、駄目ぇ、太いのをびくびくさせないでぇ。おかっ、おかしくなってしまうっ! 駄目っ、わたし、だめよぉ、なんとかっ」

「どうして欲しいんだ。止める以外なら聞くぞ」

「うっ……ぅぅぅさ……わって、胸を……乳首を、さわって」

「よく言えたな」

 

 一度律動を止めて乳房を愛撫する。

 揉むたびにぴくっと震える堀北と同時にうごめく膣内を感じていると欲望が再度放出されそうになってきた

 

「イきそうだ。またたっぷり出すから、受け止めろよ」

 

 乳房を揉みながら再び下から突き上げる。

 押すときには胸を握り、引くときに緩める。

 ……

「ひぃっ、あぁぁんっ! あぁ、綾小路、くんっ……わたしわたしぃっ」

「イキそうなのか?」

「う、ん……っ、あ、はぁっ……わたし、もっイッ、ちゃ……」

 

 胸をオレの手に擦り付けながら抱きついて、限界を告げてくる。

 

「あんっ、おっぱいがぁ……あんっ、ひっ、中に、頂戴っ、いっしょにっ……あぁ、わたし、もうっ」

 

 湿った女の喘ぎをもらしながらねだるように腰を揺ってくる。

 膣と胸から襲ってくる快感に抗えずに泣き叫び締め付けてくる堀北の尻の奥に指を伸ばし窄まりに蜜で濡らした人差し指を押し付け第二間接までねじり込む。

 

「──ぇ……っひっ、い、嫌ぁぁぁぁぁ、何して、いるのっ、あうんっ、駄目よっ、そんなっ、ところ、さわらないでぇぇぇ……あ、あぁぁぁ」

 

 不浄の穴を指で抉られる感覚に目を見開いて、今までで一番切羽詰った声を出してくる堀北の顔を見ながら放出した。

 

「きゃ……あああぅ、熱いっ、だめっ、おしりに、入れられてるのに、わたしっ……あんんぅぅぅぁ!」

 

 何かに縋るように虚空を掴むように手を握り締めるが、逸物と胸の快感に翻弄され、尻の穴で痛いほど締め付ける男の指を感じながら絶頂する。

 精液を浴びせられる感覚を正確に感じ取った堀北は、よりいっそう膣内を締め付ける事で俺に応えてくる。

 きゅぅっ、と、そこだけ真空パックになったように締めつけて精を搾り取っていく。

 どくん、どくん、と精を送り込むたびに大きく震えながら全ての精を飲みこみ

 そのままオレの胸に全身を投げ出し、瘧にかかったように痙攣して崩れた。

 

「あ……あ……あ……あ……」

 

 身体を優しくなでても、痛いほど指を締め付けてくる尻の穴以外反応しなくなった。あれだけうごめいていた膣もぴくっとしか痙攣するくらいの反応しかない。

 

「よく、がんばったな」

 

 脱力しきって胸に顔を埋める堀北の頭をなでながら限界を迎えたと判断した。まだまだオレは出来るが相手がこれではどうしようもない。

 

「よっと」

「ぁぁぁぁ……はぁ」

 

 逸物を抜き出すと圧縮された空気がポンッと音を立て、うっすらと破瓜の血に染まった白濁液が流れ出してくる

 。自分でも恐ろしくなる量の精液、膨れ上がっていた堀北の腹が普段のなだらかさを取り戻すのを見ながら、タオルを何枚も使って拭い取る。

 清楚に閉じていた秘所は、ぽっかりと大きく開いて白い白濁液と赤く充血した肉壁を見せている。堀北を起こさないように後始末する。

 最後に優しく堀北の身体をタオルで新しい拭いて後始末して、堀北を左に抱きかかえて横になるとしがみついてきた。

 

「んっ」

 

 あどけない信頼しきった童女のような笑みを浮かべる堀北に、再び情欲を刺激されるが続きは堀北が目覚めてからだ。

 

 

 オレはまだ、満足しきっていないのだからな、もっと付き合ってもらうぞ堀北。

 

 目覚めた堀北に拳を鳩尾につき立てられるとは露ほどにも思わず、オレは暖かい堀北の体温を感じながら眠りに落ちた




次回は当分先になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音⑤

shineさん、サンド1295様さん、knightraywriterさん、アレクサンドルさん、クロクロ@さん、プリウスさん、a092476601さん、評価付けありがとうございました。

 読んでいただきありがとうございます。


「鳥ももはあったか」

 堀北のメモに『無料にあれば優先して購入』欄で書かれているものを、買い物籠にいれようとするとかすかな痛みを感じた。力が入っていない上にとっさにポイントを外したとはいえ痛いものは痛い。

「身体が、痛くて起きられないの。起こしてもらえないかしら」としおらしい態度で、抱っこをせがんできた堀北に騙され鳩尾をえぐられたオレは買出しに来ていた。

 あれだけ嬲った上にオレの逸物を受け入れた堀北が動けないのは当たり前だと信じたし、出たときはまだベッドから動けなかったのだが、それでも攻撃してきた。

 確かに昨日やりすぎたのは認めるが、目覚めてすぐにとは容赦ない。

 まあ、食事作ってくれるから許すが、以前食べたことがあったが堀北の食事は美味かった。メモ片手に買い物するのは苦ではない。オレの部屋の冷蔵庫の中身と各種調味料の有無と掃除道具を、オレの口から確認した堀北の蔑み呆れた視線は痛かったけど。

「こんにちわ、綾小路くんっ」

「ああ、こんにちわ、櫛田」

 

 知人とばったり会った。

 

「荷物多いね。どうしたの?」

「買出しをサボっていたんだ」

 

堀北にせめてこれだけは買っておけと叱られ、安い場所が書かれたメモの通りに買った総量は買い物袋にして4個ある。

 「ふうん」と言いながら櫛田は一番手前の袋の中を覗き込む。普段他人と絶妙の距離感を保ち、他人に不快を与えないようにしている櫛田らしくない。距離感が近いな櫛田

 

「これテープとロープと棒?何かに使うの?」

「日曜大工にはまってるんだ」

「ふーん、綾小路くんに似合ってるといえば似合ってる趣味だね。一人でもくもくと作業しているところとか」

「……悪かったな、暗くて」

「あははは、それも綾小路くんの味だよ。そういえば……」

 

 周りに人気がないからか、最近オレに見せるようになった表でも裏でもない素の彼女と取り留めない話をしながら、オレは櫛田をなんとかすべきだと考えていた。

 堀北のお陰で普段身近な相手の顔を歪ませ啼かせる悦楽を覚え、櫛田を味わいたくなってきたこともある。

 特に櫛田は本人が思っている以上に、弱みをオレに握られている。

 今すぐ脅して部屋に呼び出して股を開かせるくらいはなんとでもなるくらい、人気者で居たい彼女では受け入れるしかない『真実』を出せばどうにでもなる。

 堀北と約束したから退学はさせられないが、無力化はさせなければならない。

 完膚なきまでに壊してからにするかそれとも余裕を持たせたままにするか、違いはそのくらいでしかない。

 

「……もし、皆が今の私を見たら幻滅するし裏切られたって思うよね。だって、本当の私は理想の善人じゃないから、人に優しくするのに裏がある女だし」

 

 聞き流しながら、適当に頷いていると櫛田が弱弱しくつぶやいていた。なんだが最近多いな。

 

「他の皆がどうするかは知らないが、オレは自身の欲求を満たすために、善行を行うことの何が悪いのかわからないな」

「……え」

「テストで良い点を取るために努力することも、スポーツで良い成績を取るために努力することも、他人に好かれて他人の秘密を握りたくて努力することも、何の代わりもない、同じ自分のためだ」

 

 当たり前のことを当たり前に言ったが、櫛田は足を止め「……だから綾小路君は変わらないんだ」何事かを呟いたようだが残念ながら唇が読めなかった。

 

「どうした?」 

「ううん、何でもない……それじゃあ、またね。綾小路くん。また部屋に遊びに行くから、連絡するね」

「時間を考えて、オレが許可してから来いよ。前みたいに押しかけては来ないでくれ」

「それは、綾小路くんがどれだけ相手してくれるか次第かなぁ、またね」

 

 協力関係を結んでからよく愚痴りにくる櫛田が、今部屋にいる堀北を呼び出したときに顔を合わせないようにする方法を考えなくてはならない。

 堀北と情事に耽っている時に来られる前に、出来る限り早く対処する必要がある。

 この前の嬉々として俺に秘密を話す姿と、部屋で愚痴り続けてスッキリした顔で帰っていく櫛田を思い出しながら帰路に着いた。  

 

 

 

「おかえりなさい」

「……ただいま。まだ、痛いだろ、座っていてくれ」

 

 股に何か挟まったように歩いて玄関まで迎えに来た堀北の姿に、一瞬意識を飛ばしたが何とかそう答えられた。

 

「ありがとう。でも大丈夫よ。食材と調味料だけ置いておいてくれるかしら」

「……わかった、頼む。他の荷物片付けてくる」

「ええ、お願いするわ。少し待っていてね」

「……ああ。なにか手伝うことはあるか」

「冷蔵庫には飲み物とサラミだけ調味料は塩コショウと砂糖だけの人が、何を手伝うつもりなの?あなたはくつろいでいて、はい、ココア」

 

 しっしとばかりに追い払おうとする堀北に、とうとう我慢が出来なくなった。

 

「……堀北」

「なに」

 

 痛みに身体を屈み気味にしているとは思えないほど、てきぱきと必要な食材と調味料以外のものを冷蔵庫に片付けながら堀北は答えてきた。

 

「……その格好なんだが、着ていた服はどうしたんだ?」

 

 裸ワイシャツに男物エプロンに髪を軽く後ろに纏めた姿は、あまりにも眩しすぎる。

 

「……下着はあなたにめちゃくちゃにされたから、今洗っているわ」

「いや、昨日着てた私服は」

「私服も一緒に洗っているわ、あなたの溜めていた洗濯物も一緒に洗っているから心配しないで、これからは洗濯はもっと短い間隔にするのよ。しばらく様子を見させてもらうわ」

「……ありがとう」

「他に何かあるの?ないのなら黙ってくつろいでいなさい」

「いや今お前が着ているワイシャツ」

 

これ?というように片腕をあげる。軽く折り畳んでいた袖がずれ落ちて白い腕を露にした。

 

「ごめんなさい。黙って借りてしまって、あなたの衣装ケースを開けるのはマナー違反だと思ったから、掛けてあったワイシャツを借りたのよ。ちゃんと後で洗うから、少し貸してもらけどいいでしょう?」

「ああ、大丈夫だ。料理楽しみにしている」

「期待していて」

 

 狙ったものでは無いことが少し残念だが、せっかくなので観賞させて貰うことにする

 ぶかぶかのワイシャツから覗く白く輝く生足もだが、作業するたびに見えたり見えなくなったりする秘所の縦筋と、痛みによる屈み気味の姿勢により強調されエプロンから覗く谷間がたまらない。

 

「……できたわよ」

 

 親子丼に豆腐の味噌汁とサラダという食事が並べられた。

 堀北の姿を見ているだけで時間が過ぎてしまっていたらしい。サンドイッチもそうだがそのまま店で出せるレベルの見た目をしている

 

「いただきます」

「はい、召し上がれ……いただきます」

 

 空腹も手伝い見た目を裏切ることのない美味さだった。

 ほどよい甘辛さの具をご飯とともにかきこみながら、しっかり出汁の取れた味噌汁をすする。サラダもドレッシングを最低限にして、それが素材の味を引き出している。

 美味い、本当に美味い。美味しそうに食べるオレを堀北は顔を綻ばせながら見ていた。

 

 気付いたら平らげて堀北の淹れてくれた茶をすすっていた。

 

「……ご馳走様。美味かった」

「そう、よかったわ。あんなに美味しそうに食べてもらえると、作り甲斐があるわね」

「そんな顔してたか」

「ええ……綾小路くん。美味しかったのなら提案があるのだけど」

「提案?」

 

 オレが飲み干したお茶を淹れてくれながら、静かに言ってくる。しかし、堀北の雰囲気がなんというか優しくなったなあ。

 

「一人分も二人分も手間は変わらないし、これからあなたにお弁当を作ってあげようと思うの。誰かに食べてもらって味を見てもらうのは私の練習になるから、あなたからは月に一度費用分のポイントの半額をもらうだけで他には何も要求しない前提で、どう?」

「……続けてくれ」

 

 あまりにもオレに旨すぎる話だ。どういうことだろうか

 

「……毎日だと、今までお弁当を作ってこなかったあなたを不審に思う人がいるかもしれない。だから週に一度作ってあげるわ。朝、朝食を作った後、お弁当をここで渡す。登校は別々にするから心配しないで。お弁当箱はあなたが持ち帰る。その後お弁当箱も洗う必要もあるし、その日は、ここで夕食も作るわよ」

「なるほど、しかしお前の弁当と同じメニューなら、そこからバレるんじゃないのか?」

「細部のおかずや詰め方を変えて彩を変えれば、そうそうわからないわよ。あなたのを炊き込みご飯にして、私のを普通のご飯にしてもいいけれど」

 

 良い案だ。これだけの美味いものが週一で食えた上に朝も夜も食える。ついでに堀北も貪れる。

 目立ちたくないオレの思いも汲んでくれている。今までの堀北ではありえないくらいの案だ、処女ではなくなり何か心境の変化でもあったのだろうか。と下世話なことすら考えてしまう。

 だが、これならば頷いても良い。

 

「細部は任せるが、それで頼む。しかし、本当に良いのか?」

「良いわよ。……週明けから始めるわね」

 

 今までになかった行動をするとき週明けは違和感が薄いため頷く。でもそうなると

 

「……どうしたの?」

「これから部屋に来ることも多くなるし、お前にカードキーを渡したほうがいいかと思ってな」

「あなたの部屋のカードキーなら、池君から貰ったわ。これも渡そうと思って昨日は来たのよ」

「そういえば、前に作っていたな……そのまま持っていても構わないぞ、堀北なら無断で立ち入ることも無いだろうし、入る前に連絡してくれれば自由に使って良い」

「わかったわ。でも、あなたが居ない時に入る事なんて無いから安心して」

「ああ」

 

 そこまで言うと堀北は顔を赤らめた。

 

「……あと、こういう関係…になったのだから、苗字で呼び合うのは他人行儀過ぎるから……名前で呼び合うようにするべきよね。長谷部さんたちもあなたは呼んでいるし、忌避するべき理由は無いでしょう?あなたはどう思う?」

 

 確かにその通りだ。堀北に名前を呼ばせながらしがみつかせたいし、家の中や二人のときはそれでいいかもしれない。

 

「では、鈴音と呼ぶことにする。人前では堀北だがな」

「……私も清隆君と呼ぶわ。人前では綾小路君で……」

 

 気恥ずかしくなったようにオレの食器も一緒に片付け、オレの手伝いを断り、堀北はキッチンに行ってしまった。

 去り際に見せられたかすかな笑みに思わず見惚れて茶をいっぱい飲み干して落ち着く。

 突き出すように歩いているお陰で、ぷりぷりと揺れる形の良い尻を見ているうちにさらに欲望が滾ってきた。

 

 

 

 

「……あっ……痛い」

 

 食事を終え、少しくつろいだ後、全裸にになった俺たちはベッドの上に移動した。

 鈴音が裸ワイシャツに男物エプロンをためらい無く脱いだときはなんともいえない気持ちになったが、ワイシャツのボタンを一個一個目の前で外させて恥らう鈴音の姿を見れたのでこれはこれでと満足した。

 

「やっぱり、痛いか」

「……ええ……ごめんなさい。まだ何か挟まっているみたいに感じるわ」

「いや、無理させるつもりは無いから仕方ないさ」

「……ありがとう……」

 

 鈴音の膣内が出血しそうなほど赤く腫れて充血していたことから想像していたとはいえ、やはり落胆する。

 昨日犯してからまだ半日も経っていないから、いくら若い身体でもこうなる。自身の逸物を恨むしかない。

 そんなオレに、羞恥で真っ赤に染まった堀北がおずおずと話しかけてきた。

 

「……もう見終わったのなら、足を降ろして指をあそこから離してもいいかしら?」

「いや、まだ見終わっていない。裂傷がないか確認する必要がある」

 

 断固としてそう言った。

 

「……こんな格好、恥ずかしいのだけど……」

 

 まんぐり返しで秘所を自分の指で開いて男に見せている鈴音が、恥ずかしがるのは仕方ない。

 

「もし裂傷があって酷いものなら、産婦人科に行く必要があるかもしれないんだ。我慢してくれ」

 

 懐中電灯で膣内を照らしながら長い綿棒で検査されているなど、死にたいくらい恥ずかしいだろうが鈴音には耐えてもらうしかない。

 

「……でも、長すぎるわ……何時まで、こんなことっ、痛っ」

「すまん。少し荒れているところがあったから、確認しているんだ……愛液でふやけすぎたな。次だ」

 

 これで7本目かと鈴音に聞こえるようにつぶやきながら綿棒を取り出す。綿棒で優しく触られているのに痛みを感じているお陰で、恥辱の涙を流し身体を震わせながらも鈴音は耐えている。

 膣内を鏡に映して自分で確認するか、オレが確認するかの二択で鈴音本人に選ばせたのも耐えている大きな要因だろう、その律儀さが可愛らしい。

 充血した粘膜に綿棒だから痛いのは当たり前のことなのだが、直接見ていなければなんとでもなる。

 やはり鈴音に確認させる前にオレが確認するように誘導して正解だった。

 

「愛液が多いな、鈴音……まさか、見られて気持ちよくなっているのか」

「……まさか、そんなことあるわけが無いでしょう?これは痛いから防御反応を起こしているのよ。合理的に考えて欲しいものだわ。ケダモノのようにすぐに女性の生理反応を性的に考えるような、あなたと一緒にしないことね」

 

 恐ろしいほどの早口で言い切られた。息を荒くしている姿は誰が見ても性的快楽を感じているが、見られているだけで気持ちよくなっているなど、鈴音がまだ認めるはずが無い。今は頭の片隅で、もしかしてくらいに考えさせておけば良い。今は、まだ。

 

「確かにそうだな。すまない、変なことを言った」

「……わかればいいわ……恥ずかしいから、速く…みて」

「善処する」

 

 無意識の誘う言葉を聴いて痛いほど勃起した逸物を、鈴音に当てないように気を付けながら、オレが満足するまで恥辱を与え虐め続けた。

  

 

 

 

「うぅぅぅ……」

 

 解放するとともに同時に身体をうつ伏せにして、恥辱に身体を震わせている。昨日まで処女だった少女が、十数分にわたって膣を照らされ検査されればそうなるだろう。

 

「膣内に塗る薬なんて市販で売っていないから、裂傷が無くてよかった。軽い炎症だから、このまま放って置けばすぐ治るぞ、鈴音」

「ーーっ!」

 

 腐れ外道な発言にも反論せずに、羞恥のあまりびくっと身体を震えさせて、壁際に頭を向ける鈴音は可愛らしいと思う。少なくとも大きな裂傷が無いことは確実だったが、念のため見て虐めておいてよかった。

 今突っ込んだら粘膜が破れて血だらけになるかもしれないが、炎症ならこのまま自然治癒に任せるれば良い。数日もすれば完治する。

 裸ワイシャツ男物エプロンと、恥辱で虐め続けた可愛らしい鈴音の反応で高められたオレの欲望解決は遠のいたが

 

「はぁ……」

 

 膣が無理だとしたら、他で何とかするしかない。それはそれとして、鈴音の名器を味わえないのは残念だ。思わずため息が出てしまう。

 ため息を聞いて振り向きそんなオレと勃起した逸物を見た鈴音が、恥らいながら話しかけてきた。

 

「その……清隆くんが居ないときに少しネットで勉強したのだけど、女の人が……昨日の清隆くんがしてくれたみたいに口でするオーラルセックスというのがあるんでしょう?……よければ、して、あげましょうか」

「ぜひ頼む」

 

 極上の餌になると言ってきた鈴音に、逸物を突き出す。興奮のためカウパー液が出てきた。

 鈴音は身を起こしベッドに腰掛けて、オレの逸物と顔を付き合わせた。

 

「あっ……やっぱりすごい。こんなのが私の中にはいったなんて、信じられないわ」

 

 上気した表情でで柔らかな手で竿をなで始める。 

 口調と表情とは裏腹の、怯えたような手つきが、嗜虐芯を煽りオレを興奮させる。

 

「もっとしっかり握ってくれ」

「わかったわ……痛くないかしら」

 

 オレの顔色を見上げながらそう言ってくる。

 

「痛かったら、痛いというから大丈夫だ。握るだけじゃなく、動かすんだ。ゆっくりと上下に」

「ええ……」

 

 オレの指示に頷きゆっくりと手を動かし始める。なんともぎこちない動きをしながら、ちらちらとオレの表情と逸物に交互に目をやる。

 痛くないかと気を使っているのだろう。そう思うと、むず痒い快感が下半身を包む。

 

「あっ、先端から…垂れて」

「鈴音、その液を舐めとって口に含んでくれ」

「!……清隆君…ふぅ、そうね口でするのよね。んっ、んちゅっ……ぺろっ」

 

 一瞬驚いた表情をしたがすぐに先端をぺろぺろと舐め始めた。

 亀頭の先をぺろぺろと……ただするだけ

 勉強したといっていたが、学校のネットは年齢規制がある。堀北が規制を破るとは思えないから知識不足は仕方ないと思い苦笑しつつ、指示しようとしたときだった

 

「ごくっ、苦くてしょっぱい……んっ、――っ」

 

 カウパー液を飲み干した堀北が唾液をとろりとたらして逸物を擦り始めた。

 

「ぺろ、ぺろ……んくっ、ぴちゅ……はう、あっ、ぺろっ」

 

 手で雁首や竿までゆっくりとオレの反応を見ながら擦り、気持ちよさにピクリと逸物を動かしたところを舌で舐め始める。

 まだ、恐る恐るといった感じではあるがその拙さと、オレを気持ちよくさせたいという思いで自分で考えながら奉仕する姿は興奮させる。

 雁首を嘗め回し、鈴口を舌先で突きながら竿に舌を這わせる。

  

「んむっ、くふ、ぴちゃ、んっ、あふ……くぅっ、ちゅむ……」

 

 鈴口から溢れた カウパー液は鈴音の舌へと纏わりつき、ぬるぬるとしたカウパー液と鈴音の唾液が混じり、銀色の糸を引いて逸物と舌を繋げる。

 舌の刺激以上にオレの欲望を掻き立てる光景だ。

 

「鈴音……そろそろ咥えてくれ……大きいからな、ゆっくりでいいぞ」

「ちゅ、ん、わかったわ」

 

 羞恥に頬を染め薄桃色の唇を限界まで大きく開けて、亀頭を飲み込んでいく。ここまで口を開けたことは無いのだろう、痛みに涙を目にためている。

 

「は、はぷっ、くっ、んっ、むぐっ」

 

 雁首の部分で一度止め、目から溢れた涙を一筋流すとさらにオレの逸物を飲み込む健気な姿は、興奮させる。思わず髪を撫でてしまった。

 

「なかなか良いぞ、鈴音。いい気持ちだ」

「ん……んぐっ、ちゅ、ちゅぷっ、んふぅ……ちゅくっ……」

 

 頭を撫でられる感触に照れたように目を細めると、鼻で息をしながら鈴音はさらに口内に逸物を飲み込んでくる。が、亀頭にのどちんこを感じ止める。健気なのはいいが、最初はここまでで良い。

 

「鈴音、口に入れるのはここまでで良い。さっき手にしたように口で前後してくれ。歯を当てないでくれよ」

「ん。んぐっ……ちゅ、ちゅぷっ、はふぁ……ちゅくっ、んっ、くむっんっ」

 

 唇を前後し舌が口の中で逸物の表側をなでる感触に、興奮して腰を動かしたくなるが我慢する。鈴音の健気さを無にしたくない。イマラチオは別の機会だ。

 

「むんっ、ちゅ……くっ……んくっ……んちゅるっ、はぅ……うんっ」

 

 涙を流して逸物を懸命に咥えながら、右手で口に入りきらない竿を撫で、左手でやわやわと睾丸を揉み解す姿がさらにオレを興奮させる。射精欲求が急激に高まり、逸物をさらに硬く大きくさせる。鈴音の頭を掴み射精感を開放させる。

 

「鈴音。出すぞ、口の中に」

「んぷっ、あっ、んんっ……んんんっ」

 

 いざ放出という瞬間、鈴音はオレの腰に腕を回し身体を固定させるようにした。

 激しく脈打たせながら、鈴音の口の中に精液を流し込む。

 

「んぐっ、こくっ、はぷっ、ごくっ!ぐぷっ、んっ、こくっ……」

 

 大量の精液を流し込まれ、鈴音は多少詰まらせはしたものの全て嚥下していく。苦しくなったら吐き出せるように頭から腕を離す。

 鈴音は腕で体を固定して、羞恥に赤らめ苦痛に顔をしかめながら、こくりこくりと白い喉を動かす。大量の精液を一滴たりともこぼさずに飲み込む。

 

「んくっ、んっ、こくっ」

 

 鈴音の口内に全ての精液を射精して逸物を口から出す。

 鈴音は最後に口の中に残った精液を飲み込むと、オレが何も言わずに精液と唾液にまみれた逸物に唇を寄せて、ぺろぺろと舌先で舐めとって熱心に綺麗にしていく。

 

「んんっ……れろっ、んくっ、んっ、ちゃぷっ……んちゅ、ぺろっ、れろれろ……」

 

 羞恥に赤く染まったその様は、思わず息を呑む程、美しく淫らで清楚だった。矛盾したそんな姿を見ていると、また逸物が大きくなっていった。

 

「ぺろっ、……あっ、また大きくなってるわ……」

「悪いな、お前を見ていると我慢できなかったんだ」

「そう、なら仕方ないわね……ちゅ、はぁっ……」

 

 オレの一言に嬉しそうにはにかむと、逸物に最後に着いていた精液を舐め取る。

 

「苦しくなかったか?」

「はっ、はっ、ええ、苦しかったし、多くてとても苦かったけど、オーラルセックスってこうするのでしょう?」

「その通りだ」

即答の返答に、鈴音は、こほこほとむせながら「それに、あなたのものだから」と優しく微笑んだ。

 欲望が滾りを増していく。

 

「鈴音、もう一度出来るか」

「こほっ、はぁっ、はっ……っ、ええ、なんとか」

「なら頼む、全然足りないからな」

 

 頬を恥じらいに染めながら頷いてくれた鈴音の目前に、逸物を出す。

 

「顎を外さないように気をつけろよ」

「……危ないと思ったら止めてくれるでしょう」

「そのつもりだ」

「……なら大丈夫よ、んっ、ぺろっ……」

 

 そのまま鈴音の顎が疲れきるまでに、口の中にもう一度放出した。

 

 

 

 

「んんっ、くっ、ふぁ、あうう、くふ……っ!私たち、今、何っをっ」

「素股だ。これなら痛く無くて、気持ちいいだろ」

 

 口に出したのに、未だ欲望が納まらないオレが選んだのはこれだった。

 オレがベッドに腰掛けた対面座位の体位で、両太腿と秘所に包まれ擦られる逸物。

 弾力のある太腿と、どこまでも柔らかな秘所が挟むように逸物を刺激し、オレの上で敏感な太腿と秘所を擦られ、堪え切れない快感に悶えている鈴音の姿とともに興奮させてくれる。

 

「出来れば、昨日、これを……んんっ、したかった、っ」

「……なかなか積極的になったなっ……痛い」

「う、るさい、わよ、この、鬼畜!昨日、本当に……く、くふぅっ……痛くて、死ぬと、思った、わ……くぅっ、あっ……これならっ……あなたの男性器に、少しでも……慣れぇ、んんっ」

「あまり効果は無いと思うが、考えておく。今は喘ぎながら、太腿を締め付けろ」

 

 素股に移行する前に二回ほど絶頂させたためか、恥じらいながら「喘いだりなんて」と口を動かしジト目で睨みながらも鈴音は素直に従う。

 

「んんっ、ひぁ……こ、こう……?んんっ」

 

 オレの指示に従って、鈴音がキュッと太腿に力を入れて逸物を強く挟みあげる。さらに硬さと大きさを増した逸物が淫肉をさらに割って食い込ませた。

 

「はぅっ!、ふぅんっ!あ、……熱いのが……熱くて、硬いのが、食い込んできて……駄目っ、こんな、の」

「ほら、腿を緩めるな……仕方ないな」

「や、やめっ、腕を、私の、腿から、離っ、ぅぅんっ……くぅっ、ひっ、食い込ん、でっ、あなたの……がっ、わたし、のところ……グリグリ押し付け、あぐっ、擦れてっ……」

 

 悲しいことに鈴音が腿を緩めてしまったので、オレの腕で固定することにする。

 強制的に足を地から離した鈴音は、オレに覆いかぶさる体勢になった。

 秘肉に自重でさらに食い込み擦れて、敏感な粘膜を刺激していく。

 その快感は鈴音の腰を震わせ、先程まではオレが腰を動かして鈴音はマグロ状態だったのに、刺激から逃れようと鈴音が動くたびに、さらに擦れて腰を震わせ、結果的に互いに腰を動かすという循環が生まれ始めている。

 

「うくっ、はっ、はふっ……んうっ、くひ、ひあっ、ぁぁぁっ!恥ずかしいっ、駄目っ、擦れてっ」

 

 悲鳴に似た嬌声を上げ、ビクビクと襲い掛かる快楽に身体を震わせて、駄目といいながらより強くオレにしがみ付く。

 

「やっ、こんなに……擦れて、ひぅっ、はっ、私のあそこが熱く……っ!あなたので熱くなっ」

「鈴音、オレの目の前に何があるかわかるか?」

「……えっ、――っ!」

 

 快楽にぼんやりとした鈴音の目は見下ろした先にあるオレの顔の前に

 いやらしく揺れ動く自身の乳房と充血した乳首があることを視認して、顔を青褪めさせる。

 とっさに乳房からオレの顔を離そうとしたのだろう、手を伸ばしてオレの肩に掴まろうとして来た。

 腰を今までよりも大きく動かし、鈴音のバランスを崩してあげる。肩を掴もうとした手は宙を切りオレの背中に

 オレの顔は、柔らかく弾力のある乳房に包まれる。少し顔をずらして

 

「……待っ」

 

 紅く染まった突起を、力強く噛んだあと刮ぎ取るようにする

 

「てぇぇぇぇぇぇ!」

 

 秘所に挟まれた逸物に飛沫がかかり、触れている粘膜がうねる心地よさ。目の前で仰け反らせる白い裸体と乳房でさらに興奮していく。

 あれだけの媚態をオレの前で見せてくれたのに、鈴音はまだまだ初心者だ恥じらいが強い。未だに男性器の名前も女性器の名前も口にしないし、絶頂を見られ聞かれるのを恥ずかしがる。

 絶頂直後でもとまらない腰を見ながら、乳房を揉んで鈴音をいじめながらそんなことを考える。

 

「……はぁっ、はあっ……あっ、待って、あんっ、動かないで、少し休ませて」

 

 逸物をぐっしょりと濡らす愛液が、汗やカウパー液と混じり合って潤滑液となり、ぬめりを良くしてくれる。腰の動きがさらに速くなる。

 

「……あっ、どうして、私、イったばかりで、敏感っ、だからっ、動かないでっ、ひあっ……はふっ、くうっ、ふぅっ!」

「……気付いていないのか鈴音」

「……えっ」

 

 オレの言葉に動きを止めたから、気付いたのだろう息を飲む。

 

「お前が絶頂してからオレは動いていないぞ」

 

 羞恥に真っ赤になる鈴音を見て、虐めたくなる。

 

「ち、違っ……そんな……ひぅっ!はひっ、うぁっ、ぁぁぁっ!駄目っ、動いちゃ……はぅっ!あそこ擦っちゃ……」

 

 下から腰を突き上げる。逸物と秘所が擦れあい、ぐちゅぐちゅとした大きな音が部屋に響く。

 

「今から動き出したんだよ、オレはな。さっきは否定されたが、お前は積極的になっているぞ」

「うくっ、ふぇっ、私、そんなっ……んぅっ、くひ……ひあっ、ぁぅぅ、駄目よ、私っ、恥ずかしいわっ」

「恥ずかしがるな、悪いことじゃない鈴音。少なくともオレにとってはな」

「はっ、はふっ……んぅっ!くひ……くふっ、はっ、ああっ……!そう、あっ、なら、良いっ!」

 

 オレの言葉が何処か琴線に触れたのか、嬌声をあげて腰を動かし始めた鈴音にあわせて、腰を動かす。

 

「イっ……ふっ、はっ、あくっ、ふぁんっ!イくっ、また、もう……っ!あそこが熱くて溶けちゃい……そうっ」

「いいぞ、イっても。オレもそろそろ出すからな。避妊薬はさっき飲んだだろ、膣にかけるぞ」

「あうっ、えっ、駄目、そんなの……あうっ、ふ、ふはっくぅっ!あんなに熱くて、どろどろなものをかけられたら、あそこが本当に溶けちゃうわ……あぁっ!」

 

 イヤイヤと身体を捩るたびに秘所の中に逸物が埋もれてしまいそうなほどに押し付けられ、熱く火照る秘所の熱でこちらも高まる。

 

「イくぞ……くぅぅぅ…っ!」

「はひっ、うあっ、うっ、やぁっ、あそこが溶けちゃうっ!清隆くんの、熱いので、溶け……っ!ひぃ……いぃぃぃぃぃんんっ!」

 

 オレが亀頭を秘所に押し付け精を吐き出すと、その迸りを浴び鈴音は絶頂した。

 

「あ……あ……熱いのが、清隆君のが、中に……」

 

 絶頂の快感で身体を震わせ快感に酔いしれた表情から、虚ろな呟きを漏らして鈴音は昇天した。

 

 

 

 鈴音を休ませてシャワーに入ってもらい、食事(余りは明日も食べれるからとシチュー)を作ってもらい夕食を伴にして見送ると、その日は終えた。

 

 

 

 その次の登校日、学校の掲示板アプリに、櫛田桔梗が龍園翔と南雲雅に『堀北鈴音の退学』を条件に裏切りを持ちかける音声ファイルがアップロードされ、大きな騒動になった。

 櫛田には、その日の放課後オレ櫛田堀北の三人で集まったときに堀北が提案したように、堀北の指示に従ったダブルスパイだったという選択肢がある。

この場は凌げるだろうが、クラスのために必要ならばダブルスパイになる女というレッテルが貼られる。完璧な善人とはもう思われないだろう。

 あくまで櫛田は従っただけでも、櫛田に対して何でも話せる人は格段に減る。仲良くしていても自身の秘密を話すことは無いだろう。今まで秘密を話した人間も櫛田に疑念を抱く。人気者ではあっても自分を曝け出せない相手になるのだ

音声ファイルが偽物だとしても分析して分かるのは何ヵ月も先だ、真偽どちらにせよ櫛田は耐えきれないだろう。

龍園と南雲に頼んでそんな話しは無かったと、文章にしてもらえれば良いのだがな。櫛田も否定していたから、関係者全員が否定すれば音声ファイルが偽者だと持っていける。そうすれば、櫛田達は誰かに嵌められそうになった被害者だ。そうだな、難しいか。

 

 どれだけ積み立てても、信用は一瞬で崩れる。特に積み立てていたものが高ければ高いほど。

 

 龍園と南雲のそんな話は無かったという内容の直筆誓約書を片手に櫛田に語りかけた。




原作をざっと読み直して櫛田さんの執着に驚きました。
でも、ダイジェストで落とします。

次回は何時投降できるかわかりませんが少しずつ書いていきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

櫛田桔梗①

天女と天狗さん、ハラールさん評価付けありがとうございました。
えいとくさん、高山流水さん、のぶはすさん、誤字訂正ありがとうございます
ダイジェストにしたはずなんです


 一つ意外だったのは、櫛田がオレの部屋にいたことだ。ほぼ真直ぐ帰ってきた俺よりも速いということは学校から直接この部屋に来たのだろう。制服姿のままベッドの横の床の上に俯いて座り込んでいる少女は、若干ホラーだったがそれはいい。

 追い詰められたとき人は『聖域』に逃げ込む。本だったり、ブログだったり、美食だったり、家族だったり千差万別だが、櫛田はどうやら今はオレを聖域にしていたらしい。

 オレが入って傍に立つと同時に、愚痴り始めた。

 

「……滑稽でしょ。自分の生活を護ろうとして、首筋にナイフあてつけながら傷つけないから協力してとか言うふざけてた奴排除しようとして、協力頼んだ連中に裏切られた女は」

「……」

「あんたに分かる?私はいつもビクビク怯えていた!もし、あんたと堀北の口から私の事が漏れたらと思うだけで気が気がじゃ無かった!だから堀北を退学させたかった!……綾小路くんも退学させたかったけど、あんたは契約してくれたから安心した。あの時どれだけホッとしたか分からないでしょうね!あとは堀北に少し良い顔見せて油断させて、退学させれば、それでよかった」

 

 悪鬼の表情で涙を流しながら悪辣なことを言っても、可愛いと思える櫛田は魔性だろう。

 

「……」

「そしたら、龍園と南雲が裏切って、中学みたいに皆が敵になった。生理的に無理でも仲良くしてあげた子も皆、私を疑って罵って陰口叩いてくる。ふっざけんじゃないわよ!あんたらの陰口や嫌な事どれだけ私が聞いたと思ってんの!私が誰にも話さずにいつもニコニコしてるからって!ゴミ箱みたいに感情を捨てて、そんな子だと思ってなかったとか何様よ!……秘密とか隠してることでも劣情とか黒いドロドロを花の女子高生に吐き出すんじゃないわよっ!」

 

 綺麗に整えている髪をかきむしりながら、オレをゴミ箱にしていることについて物申したい。

 

「………」

「……そんな私を護ってくれたのが、平田君はともかくとして、あの堀北よ、堀北ぁ……『落ち着いてまずは真偽を確かめましょう』ですってぇ!あの女ぁ!私の姿を他のクラスメイトから隠して護るように立ってーーっ……」

 

 そこで言葉にならなくなり、ギリギリと鳴る歯の音が恐い。ぎろりと睨んできた目はもっと恐い。

 

「あんたは、いつも通り我関せずってすかした態度で見てるだけだしさぁ、本当にあんたはさぁ」

「オレに何か期待するのは筋違いだ。堀北の案は検討したのか」

「案?ああ、私が堀北のスパイとして働いてて龍園と南雲にはスパイしに行ったって奴だよね。全部!堀北の!指示で!動いてたって奴でしょ!」

「そうだ、悪くない案だったと思うぞ。あれなら」

 

 そこまで言うとさらに睨みつけながら言ってきた。 

 

「あんな良い案を()()()()()()()()()()()()は知らないけど、確かに、堀北にはメリットしかないよ。アイツが私に求めていたこと全て手に入るから……でも、私にとっては違う。あの案なら私はクラスのために辛い任務をした人気者のままでいられると思う。他のクラスの人も理解して納得してくれるよ。でも、私はただ人気者で居たいんじゃない。人気者になって、私にだけ打ち明けてくる秘密を知りたいんだよ」

 

 櫛田の禁断の果実だ。誰かの秘密を得ることで、自分がその人の全てを手に入れた気になる多幸感。

 それこそが一番櫛田が求めていることであり、オレが役に立つと理解しつつ危険視している理由でもある。

 

「なのに、たとえクラスを護るって理由があるとは言え、スパイする奴に誰が秘密を教えてくれるの?皆思うよ。あの人は良い人だけどちょっとって、純白のままじゃなきゃ皆は心の一番深いところ曝け出してくれないよ……」

「では、他に方法があるのか。龍園と南雲に証言でもしてもらえば別だと思うが」

「分かってて言っているよね。一応当たったけど、嘲笑われた。死ねばいいのにあいつらぁ……あの二人は証言しない。龍園は何か他の事に夢中で南雲も最近何か決定的に変わった、あの二人からしてみれば、私の利用価値なんて無いんだよ、もう。色々備えてたけど、同時だと何も出来なかったなあ」

「……」

「だから、私は、堀北の、案を、受け入れるしか、ない。ここ以外居場所が無いもの……堀北の奴隷でも、人気者で、居られるなら、さっき……ありがとう、ちょっと考えさせてって、言ったから……()()堀北に、言ったから……」

 

 一言一言血を吐くように言いながら、肩を震わせ始めた。

 

「警戒していた堀北とあんたから過去をばらされるんじゃなくて、堀北をどうにかしようと手を組んだ奴らに利用されて捨てられて裏切り者になって、過去と同じ目にあって……堀北に助けられるとか、私、どれだけ、ピエロなのっ……よっ、ぅぅぅ」

 

 ついに泣き出してしまった。それなら止めを刺すべきだろう。ゆっくりと二通の書類を取り出した。

 

「……えっ……あ、綾小路、くん、それって」

 

 無断で部屋に入り床の上を体育座りで座り込みピクリともしなかった櫛田の目前に、龍園と南雲直筆の宣誓書を見せる。

 先程まで紙のような白さだった顔色に赤みが差す。

 彼女にとって今日は最悪だったろう、朝から裏切りの証拠を突きつけられ、恵が先頭を切ったクラス全員に責められた。鈴音と平田が止めていたからこそある程度収まったものの、終日疑いの視線を向けられるなど、普通でも酷なことなのに彼女にとっては拷問だった。

 しかも、よりによって彼女を助けようとして放課後に現実的な案を出したのは嫌いぬいている鈴音だけ。

 あの場で、鈴音に感謝の言葉を述べるのにどれほどの葛藤があったか想像だに出来ない。

 

「それ……って」

 

 震えて書類から目を話せない櫛田。いきなり現れた救いの手が信じられないのだろう。視線は二枚の紙を交互にやっている。食い入るように読んだ内容が櫛田の頭の中に入ったと同時に言葉に出す。

 

「龍園と南雲がお前にスパイ行為を持ちかけたことも持ちかけられたことも無いという宣誓書だ。直筆のな」

「あ、ぁぁああっ、あ、あ」

 

 笑顔で涙を流しながら這ってオレの足にしがみついた。

 

「し、信じてたよ。綾小路くん、ありがとう。本当にありがとう。やっぱり流石だね。綾小路くんは」

 

 さっき意訳して役立たずと罵ったあとにこれだ、足に胸を押し付けているのもわざとだろう。

 櫛田の私物を確認して録音録画を一切していないことを確認すると話を切り出す。顔が引きつっていた気がしたが、櫛田は素直に従ってくれた。

 

「後で文章にするが、条件がある。一つは堀北とオレを退学させるのを諦めることだ。それに伴いプライベートポイントをオレがお前に差し出すのも止める。今まで渡した額はそのまま渡すが」

「……今までの額を返した上に、これから私が手に入れるプライベートポイントの半額を綾小路くんに渡すから、堀北は外して欲しいなあ。堀北は綾小路くんの隠れ蓑だよね。私でも出来ると思うよ」

「確かに、櫛田のコミュニケーション能力はこの学校有数だろう。学力も身体能力も高いが、堀北の代わりはならない。同時に堀北も櫛田の代わりにはならない。念のために言っておくが、どの条件でも破ったら覚悟してもらう」

「……………ふぅぅ、わかったよ」

「二つ、今回どうやって龍園と南雲から宣誓書を手に入れたか詮索するな。忘れろ」

「……うん、忘れる。あいつらのことなんか思い出したくも無いしね。私が覚えておくのは綾小路君に助けてもらったことだけ――」

「それもだ」

 

 瞳を重ねて僅かに闇を覗かせる。冷たい声音と空気に櫛田が凍りついた。

 

「ぁ……わかった。全部忘れる」

「……三つ、オレの味方になれ、オレに前と同じく生徒の個人情報、秘密を教えろ。全員じゃなく、オレが生徒を指定した時だけでいい」

「流石に、それは……」

 

 文字通り彼女の生命線を差し出すのは、躊躇うのか。

 

「その代り、櫛田が人気者であり続けるように手を貸そう、お前はオレの庇護の下に入るんだ。このようにな」

 

 誓約書をヒラヒラとする、今一番彼女が欲しいものを当たり前のように用意したオレに対して畏怖の感情を覗かせる。

 

「う、うん。そうだね。この学園の生徒で綾小路くんに勝てそうな人なんて居ないと思うし……うん。わかった、それって堀北も含むのかな?」

「当然だ。優先して情報を集めておいてくれ」

 

 肉体関係を結んだからこそ警戒すべきだ鈴音は。あれだけ良いオンナだとは思っていなかったが、だからこそ恐い。

 

「……ふぅん、なんかイラってしたけど、そうか堀北も綾小路君にとっては警戒対象なんだ……他には?」

 

 鈴音の裸身と具合を思い出していた気配を感じ取ったのか、櫛田が一瞬険しくなったが、すぐに機嫌よさそうな表情になった。

 

「……最後だ。オレの部屋の、カードキーを返せ。ストレスが溜まってどうしようもない時は今まで通り遠慮なく俺の部屋に来て愚痴を溢せばいいが、オレが許可しないときは入るな」

「嫌」

「……なんだと?」

「嫌っていったんだよ。返さない」

 

 カードキーを仕舞っていると思える左内ポケットを押さえる櫛田。

 部屋に立ち入り禁止にするわけでもなく愚痴を溢すときには入れてやるといっているのに、こいつは。

誓約書を見せ付けるようにする。

 

「……お前は、今どういう状況か分かっているのか。この二枚を破いてもいいんだぞ」

「……たとえ破かれても渡さないといったら」

「そうか、それがお前の決断か」

 

 

 

 

 

「そうか、それがお前の決断か」

 

 そう言った綾小路くんの冷徹な目は私の背筋を寒くさせた。私が次何を言うかによっては躊躇いなく破くだろう、すぐに誤魔化し――は通じない。何とかしないと

 

「……わ、私は綾小路くんが嫌い!大嫌い!」 

 

 ……え?

 

「……いつも根暗の地味な奴にしか見えないのに話すと面白くて頼りになるところが嫌い!イケメンで本当は凄くて人気者に成れるのに、他の人に手柄を譲ったりして目立たないようにしているところが嫌い!」

 

 ……私は何を

 

「……あれだけ嫌な奴だった堀北と仲良くして堀北の良い所引き出したのが嫌い!私が苛立って八つ当たりしてる所を見ても軽蔑したりせずに当たり前に受け入れてくれたところが嫌い!」

 

 ……してるんだろう

 

「クラスメイトも先生も両親も私を蔑んでバケモノを見る目で見たのに、他の人と同じ普通に見てくれるのが嫌い!初めて胸を揉ませたのになんとも思ってないのが嫌い!」

 

 ……こんな

 

「お願いを聞いてくれたら大切なものあげるからって言ったのに、流したのも嫌い!船の上で抱きついたのに抱き返してくれなかったところなんか大嫌いっ!」

 

 ……ことして

 

「二人三脚のときクラスを裏切ったこと気付いたのに、どうでもよさそうにしていたことも嫌い!私の過去を話したときも驚いていた堀北と違って平然と受け入れてくれた、そんなことどうでもいいってあの時誰もしてくれなかった顔して嬉しくて大嫌い!」

 

 ……命請いを

 

「……テスト結果がああなって、これから綾小路くんを狙うっていったのに面倒くさいくらいにしか思ってなくて嫌い!……久しぶりに部屋に入れてちゃんと取引してくれて、嫌ってない避けてないって言ってくれたのが嫌い」

 

 ……しないと

 

「……堀北より胸が大きくて魅力的だと思うのに、いつも堀北に味方するところが大嫌い……愚痴を聞いてくれても何も脅したりせずに受け入れてくれて大嫌い……綾小路くんの部屋の鍵持っているたった一人の女の子なのに、取り上げようとして大嫌い」

 

 ……

 

「もう駄目だって時に白馬の王子様みたいに現れて助けてくれたことが、女の子が、恋した女の子がどう思うか、まるで分からずに、交渉とか言い出すところなんて……もう大っ嫌い」

 

 ……あれは無いだろう、無いよ。絶体絶命のピンチに気になっていた男の子が助けてくれるなんて憧れの場面で、真っ先に録音録画の確認して交渉だよ。殴らなかった自分を褒めたいよ。あそこで抱きしめるでも頭を撫でるでも何でも良かったけど、外すんじゃないよ。本当……

 

「……唐変木で私よりも他の女の子を優先して、私を見て相手をしてくれない綾小路くんなんて、大っ嫌いっ」

 

 限界だ……私の馬鹿。

 ベッドの上の枕を手に取り顔を覆う。綾小路くんの顔なんてまともに見れなかった。

 呆れているのだろうか、いやいつも通りのポーカーフェイスだろう。もう、どうすればいいんだろう。めちゃくちゃだ私。

 啜り泣きながら枕の匂いをかぐ、綾小路くんの匂いがする。暖かい気持ちにさせてくれる匂いだ、それと……あれ、これ……どうして

 

「堀北の匂い……!?」

 

 

 

 

 溜め込んでいた全てを吐き出すように叫ぶ櫛田に、想像以上にオレは櫛田の聖域になっていたことに対して口角を上げる、使えると。

 しかし溜め込みすぎだろう、あそこまで嫌いと言われ続けると少し凹む。言葉に気になる所があったが、後にする。櫛田をもう少し落ち着かせてやらないとならない。

 そう思い近づいて抱きとめて慰めることにする。「言いたいことがあるなら言えばいい。受け止めてやる。オレにぶつけろ」辺りで良いか。そうすれば櫛田は、さらにオレから逃れなくなる。一歩踏み出したときだった。

 

「堀北の匂い……!?」

 

 今までの人生で、これほど鬼気迫る声を聞いたことは少ない。枕を嗅ぎスカートから下着が見えていることにも気にせず、立ち上がりベッドを嗅ぎ始めた。

 出来る限り呆れたようなため息を吐く

 

「馬鹿なことを――」

「間違いないよ、この匂いは堀北の、女の匂いに間違いない。枕の……ちょうどこっち側に頭を預けて寝たんだ。ここで、堀北が」

 

 匂いとはなんだとかベッドの上を嗅ぐなというようなことを言っても意味は無い、理性とか合理性を超越したところで確信している。これが女の勘という奴なんだろうか、今の櫛田にはどんな説得も効果ないだろう。

 

「そうか……そうだったんだ――あいつっ」

 

 おもむろにベッドを嗅ぐのを止めて枕をベッドに放り投げると、制服のボタンを外して衣服を脱ぎ始めた。

 突然の行動だが、どう進もうとオレにとって美味しくなりそうなので、制止の言葉を出しながらストリップを見物することにする。

 

 瞬く間にブレザーを脱ぐ。畳むことをせずに投げ捨て、オレが目を背けずに見ていることを確認すると、身体の正面をこちらに向けた

 

「――っ」

 

 俯き恥じらいの表情をしながら、ポロシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外す。身体を赤く染めているが演技が入っているだろう、相手に見せようとする気持ちが伝わってくる。

 巨乳と美乳の中間の乳房を支えるライトオレンジのストライプブラジャー。

 しっかりとくびれた肉付きの良い腰周りだが、色気よりも健康的なイメージが先行する。

 ポロシャツを脱ぎ捨てるとぶるんと乳房が揺れるのが楽しい。

 

 スカートに手をかけてファスナーを下ろして足元に落とす

 上のブラジャーと揃いのライトオレンジのショーツ。を見せて

 立ったまま靴下を脱ぐ、胸の谷間を見せつけながら両方の靴下を脱いだ。

 

「どうかな、堀北よりも良い身体でしょ」

 

 据わった目つきでこちらを見てくる。恐怖と羞恥のために身体を震わせているが、強く押さえ込んでいるお陰でよく見なければ気付かないほどにしか身体を震わせていない。

 

「なんのことだ」

「いいよ、もう分かっているから、堀北としてるんでしょ、綾小路くん。何時からかわからないけど付き合っては無くても、身体だけでも関係があるよね。あの初心な堀北がそこまでやるとは思ってなかったから、油断した。道理で、私よりも堀北を優先するわけだよ」

 

鈴音と肉体関係を持った時期など色々突っ込みたいことがあるが、鈴音と肉体関係があるという大きな事実があるので変わりはしない。

 

「だとしたらどうする」

「……私ともしてよ」

「何?」

 

 終着点は目論見どおりに言っていることに、暗い愉悦を感じながら櫛田を見る。度胸のある櫛田と言えども、男の前で下着姿一つで誘うのは恥ずかしいのか声が小さい。

 

「……私とセックスしてって言ってるの。さっきの条件に私から差し出すものに身体を加えて欲しいって言ってるの。綾小路くんも私の水着姿とか見て、胸とか腰を視てたよね。それなりに魅力的ってことでしょ、私。卒業まで、綾小路君は私の身体を好きにしていい。どこでも、どんなことでもする、その条件でさっきのこと考え直して……それとも」

 

 そこで一瞬目に尋常ではない光を灯した。

 

「堀北は抱けても、私は抱けないくらい魅力ないのかな」

「いや、充分魅力的だな。どこでも、どんなことでも好きにしていいんだな?」

「……身体に傷をつけたりしなければだけど」

「わかった。条件を詰めよう」

 

 最初に胸を触らせてきたときもそうだが、櫛田はパニックになると頭の回転が弱くなるな。下着姿を視姦しながら、条件を書面に明記しながらそう思う。鈴音を匂わせると、あまりにもこちらに有利すぎる条件で纏まった。

 この条件なら、櫛田を使って誰かをハニートラップしにいくことが可能になってしまった。

 先程の四つ目の条件を取り下げて他はそのまま、肉体関係のことは別の書面に記入した。尤もこちらは後で燃やすが

 

「……燃やすんだ。証拠にしなくてもいいの?私の弱みだよねそれ」

「それと同時にオレの弱みにもなる。肉体関係を結ぶなんて文章を残してみろ。そういう契約を結ぶ人間だと思われるだろ。分かっていて言うんじゃない」

「残念だなあ、流石だね綾小路くん。それならどうして今は私に書かせたの?正直、とても恥ずかしいんだけど」

「一度書いたら忘れ難くなるのが一つだな。もっとも、お前が反故にした場合、他の条件と同じくお前を潰す。今日なんて可愛いものだと叩き込んだ後でな」

 

 分かっているな、と冷たい視線を送ると櫛田は怯えて震えながら頷いた。今日一日は彼女のトラウマになったのだろう青褪め、それを振りほどくように笑顔を浮かべてきた。

 

「……じゃあ、そろそろ、するんだよね。それじゃあ、その、シャワー浴びて来――」

「もう一つ、後で燃やすのは、今からお前に教え込むためだ……どんなことでも好きにして良いと言う意味をな」

「……えっ」

 

 思わず後退りした櫛田に、威圧的に一歩踏みこむ。今まで櫛田に梃子摺らされた仕返しというわけではないが、多少手荒く身体に教え込むとしよう、どこか甘く考えている少女に好き放題されるということを。最初が肝心だ。

 肉体関係を結ぶと櫛田に書かせた書面を突きつける。

 

「読め、口に出してはっきりと読んで契約内容を心に刻みこめ」

「……え?」

 

 信じられないような表情で固まる。

 

「読めないのか」

「……だって、こんな、恥ずかしいこと」

「なら、契約違反だ」

 

 有無を言わさずに、櫛田の両腕を後ろ手にして掴みゆっくりと玄関に向かって歩き出す。抵抗しようとする櫛田だがビクともしない。

 

「や、嫌。なんで、こんな……」

「もし、今日悪い評判が広がった人気者が下着姿で男性居住区の廊下で目撃されたとしたらどうなると思う?」

 

 オレの言葉に想像して顔面蒼白になる。

 

「言ったはずだ、櫛田。契約を反故にした場合、今日なんて可愛いものだと叩き込――」

「読む!読むから……止めて」

 

 その言葉を聞き手を離す。床に倒れ込み苦痛に顔を歪める櫛田の目の前に、書面を落として一歩下がった。

 女の子座りでこちらを見上げながら怯えて震える櫛田。

 

「……こ、これを……読むの?」

 

 まだ何か希望を抱いているのか見上げてくる櫛田に手を伸ばそうとすると、ビクッと震えて話始める。

 

「わ、私、櫛田、桔梗は」

「声が小さい。オレをしっかり見て一字一句しっかりと読め」

 

 もう一度大きく震え、恨みっぽい視線でオレを見上げると、震える唇を開いていく

 

「……誓約書、私、櫛田桔梗は……高度育成高等学校を卒業するまで……綾小路清隆の……せ、性処理の相手を……務めることを……誓います。

 一、過度の損傷以外の全てを……受け入れます。

 二、あ、綾小路清隆に……満足していただけるように……務めます

 三、私、櫛田桔梗の、身体を、味わって、楽しんで、くだ、さいっ……ぐすっ

 以上に反した場合、綾小路清隆は、すんっ……櫛田桔梗に対する一切の庇護を、止めます……。っ櫛田桔梗」

 

 時々言葉を詰まらせながらも、どうにか櫛田は最後まで大きな声ではっきりと読み上げた。

 何度読んでも頭のおかしい阿呆な文章だ。意訳して『卒業までセックスフレンドになります』という文章が、櫛田が恥ずかしがりながら書くのを見て、鈴音ならどうするかを匂わせたら櫛田の手でこうなってしまった。櫛田の中で鈴音がどうなっているのか知るのが恐い。

 涙でぬれた文を焼却する決意を固める。残した場合櫛田よりもオレの危機だ。

 

「酷い……酷いよ。こんなこと、しなくても、私、こんな……酷いこと」

「今まで何度も裏切ったのは酷くなかったんだな」

 

 裏切るのではなく相手を裏切らせて一見被害者になりながら勝利するのが正道だし、そもそも櫛田が自分で考えて書いたのだが、それは置いておく。

 

「……だってっ、私……っ」

 

 俯き泣いている櫛田の髪を掴みオレと目を合わせる。

 

「オレを満足させるんだろう、ただ泣いているだけで満足すると思うのか」

「……っ、痛いっ……」

「勘違いしているようだな、櫛田。お前はオレと交渉したんじゃない。オレのモノになるための条件を受け入れてオレのモノになっただけだ」

「うぅ……ひっ」

 

 櫛田の左乳房を鷲掴みにして揉む。手で掴み切れない柔らかく弾力のあるふくらみを強く揉まれ、櫛田はびくんと震えた。

 

「聞いておこう、この胸は誰のものだ?」

「……あ、綾小路くんの……」

 

 怯え羞恥に顔を染める櫛田の掴んでいた髪を離して軽く撫でる。ただそれだけで安堵した表情を見せる櫛田。

 

「自分がどうなったのか良く理解できたな?」

 

 コクリと幼さすら感じるほど素直に櫛田は頷いた。正直もう少し抵抗されると思っていたが、まあ、良い。

 

「あっ、両方……んっ、んっ、あっ」

 

 立たせて、櫛田の乳房を少し楽しむことにする。もちのような柔らかさと下着の感触がする。

 一見成熟していると思える大きさだが、少し力を入れると芯に硬さがある少女の乳房。

 指をめり込ませた分だけ押し返してくるだけの弾力がある。先程とは違い優しく丁寧に解すように揉んでやる。

 

「んっ、んっ、くっ」

「敏感だな。揉まれるだけで気持ちいいのか?」

「ちが……感じてなんかぁ」

 

 顔を背ける櫛田の顔は上気している。それなりに快感を覚えているようだ。

 何人くらいの経験有りか確認しておくか。

 

「今まで、何人の男と寝たんだ?」

「えっ!?」

「男性経験だ、櫛田は今まで何人と犯ったんだ?」

「……――っ」

 

 顔を俯けて黙り込んでしまった。何かを投げ捨てたようにあまりにも反応が薄い、少し挑発するか

 

「処女かどうかなんて、俺は気にしない。秘密を護るために嫌いな男に胸を触らせるくらいしたし、今も身体を売っ――」

 

 思い切り太ももを蹴り飛ばされた。そこまで痛いわけではないが覚えがある痛みは続けて何発もきた。

 

「バカ言わないでよ!初めてだよ!処女だよ!未経験だよ!そんな軽い女じゃないよ!だれも寝取ってない!誘惑していない!」

 

 顔を怒りで真っ赤にして、一言ずつ怒鳴りながら蹴ってきた。最後の言葉に櫛田の過去が透けて見えた、挑発は上手くいったが痛い。

 

「綾小路くんのモノになったからって、何でも言うこと聞きはしない!決めたからね、私は嫌だということは嫌だと言うし抵抗する!……処女だって、信じられないのなら信じなくてもいいよ。私を犯した後処女だったんだって言わせて、腹の底から笑ってやる」

 

 肩で息しながら気合入ったことを言ってくる。

 

「ああ、それでいい。よほどではない限り、オレも契約を破らない」

 

 言いなり人形犯しても何の楽しみも無いからな。

 

「でも、どの程度で破るかを決めるのは綾小路くんなんだよね」

「無論だ」

「……最悪、絶対に生殺与奪権握られたらまずい人に握られた」

 

 櫛田らしい返答に口角を上げる俺を見て、櫛田が怯えたように一瞬眉をゆがめるが目は逸らさない。

 

「普段人形みたいに表情変えないのに、こういうときだけニヤリとするのは恐いよ。悪人みたいというか綾小路くん悪人だよね。女タラシの唐変木の極悪人」

 

 怯えながらも震え声で強がる櫛田に威圧させるように一歩踏み込む、顔が触れてしまいそうな距離。

 心臓を握り締められてなおここまで頑張れるとは思っていなかった、それとも握っているのがオレだからかと埒も無い考えを抱きながら次の行動に移る。

 櫛田が身体を一瞬震わせ顔を背けた瞬間、顎を掴んで目と目を合わせて念を押すように訊ねる。

 

「本当に、お前は処女なんだな?嘘だったらどうなるか判ってるよな?」 

「……当たり前だよ」

 

 弱弱しく肯定する櫛田、恐怖と羞恥に身体を震わせている。

 

「それなら、証拠を見せてもらおうか?」

「しょ、証拠、って……ど、どうやって、そんな……」

 

 櫛田は後ずさろうとするが、オレに顎を掴まれていてどうしようも出来ずに震えを大きくする。そこにいるのは、年齢相応の恐れ怯える少女でしかない。

 追い詰めた櫛田を見ながら、上着を脱いでベルトを外し、準備を整える。

 露わになったオレの上半身から目線を外し、櫛田は僅かにうつむいた。

 

「なんだ、男の上半身くらい見たことあるだろ」

「……こんな時はないよ。下は脱がないんだ」

 

 ちらちらとオレの上半身を見ながら顔を赤らめて聞いてくる

 

「ああ、お前に脱がしてもらう予定だからな。」

「……最低……ところで、証拠って?」

「ああ、それなんだが」

 

 櫛田の腕を逃がさないようにがっちりと掴む

 

「膜があるか目で見て確かめる」

「――ぇ」

 

 許容限界を超えた一言だったのか、目を見開いた後暴れ始めた。

 

「嫌、嫌だぁ、そんなの嫌ぁっ、変態っ、変た――」

 

 必死に抵抗する櫛田をベッドに押し倒す。

 

「きゃあっ」

 

 太腿をがっちり掴み、まんぐり返しのポーズをとらせる。

 さらに太腿と手を非粘着固縛テープでグルグル巻きにして櫛田の動きを封じる。

 巻いた上に棒を置きさらにテープを巻いて足を閉じられなくして動きを封じた。

 堀北に使わずに、まず櫛田で使うことになるとは思ってはいなかったが、非粘着固縛テープの赤い色は櫛田によく似合う。

 

「いやぁぁっ!こんな格好させないでぇぇ!」

 

 あまりに恥ずかしい姿勢を取らされた櫛田は恥辱の悲鳴をあげた。まだ膜確認の一合目にも達したばかりでこれからが恥辱の始まりだというのに

 

「良い格好になったな、櫛田」

「嫌っ、見ないでよっ、バカ、うぅっ、ほどいてっ!恥ずかしいから、ほどいてっ!」

 

 完全に拘束されているために、暴れることも出来ない。彼女に出来るのは身体を揺すり、顔を振るだけで精一杯だ。櫛田の豊満な身体が揺れ動いて俺を楽しませること以外何も出来ない。

 

「そんなに恥ずかしいのか?」

「恥ずかしいに決まってるでしょ!私っ、初めてなのにこんなことされてっ!明かりも消さずに、シャワーもなしでっ、酷いよ、酷い……っ!」

 

 堀北もそうだが櫛田も明かりを消して欲しかったようだ。しかしシャワーか

 

「私、学校から帰って着替えてもいないしシャワーも浴びてないから、すごい匂っえっ」

「確かに汗臭いがそこまで気にしなくても大丈夫だろ」

 

 そう言いながら、秘所のあるあたりをツンツンとパンティの上から突きながら匂いをかぐ。ツンと汗の臭いがしたが気にするほどとはとても思えない。

 

「ひゃっ、やっ、やぁぁっ臭い嗅がないでっ、触らないでえっ!」

「ここももうオレのモノだろう。自分のモノの匂いと感触を確かめて何が悪い?」

 

 腐れ外道なことを言いながら、これはオレのモノだと主張するようにあちこち突く。

 

「あっ、やっ、駄目っ、んんっ」

 

 本当に処女なのか疑わしいほど櫛田は敏感な声を上げる。こちらに向けてくる視線もマイナスな感情は羞恥や怯えや怒りなどはあるが、嫌悪の色がほとんど無い。

 一言で言って、オレがする行為を受け入れてしまっている。抵抗のしようも無い危機的な姿勢を取らされているのが原因かと思ったが、最初から櫛田は行為自体は受け入れていた。

 

「まぁ、いい。櫛田のまんこ、しっかり奥までみて処女膜を確認しないとな」

「あ、ぁぁ、うぅ……」

 

 きゅっと眉をよせて、羞恥に赤く染めて動きを止めた。身体を震わせているが抵抗はない。

 このまま脱がせるとショーツのゴムが伸びきるかもしれないがそのときは弁償しよう。ショーツに手をかけた。

 

「ひっ」

「櫛田の大切なところ見せてもらう」

 

 ゆっくりと嬲るか一気に引き剥がすか迷ったが、櫛田の短い悲鳴を聞いて決めた、一気に引き剥がす。

 

「これが櫛田のか」

 

 大きく脚を開いているのにもかかわらず、愛液がまだ溢れていない薄桃色の秘所はぴったりと閉じていた。

 この年齢の少女の平均的な量の栗色の恥毛はしっかりと手入れされ綺麗に刈り込まれている。

 わずかに大陰唇の入り口周りに色素が沈着しているところが、自慰行為を示しているが良く見なければ分からないくらいでしかない。

 十中八九処女の秘所だった。

 

「そ、そんなに見ないでよ」

 

 恥じらい顔を背けながら櫛田は言ってきた。拘束され恥ずかしいところを男に見られるというアブノーマルな状況も手伝い、羞恥の極致に達している。

 

「わ、わかったでしょ、私……処女だって、だから離して」

 

 弱弱しく哀願してくる。当たり前だが、聞き入れることなく、視姦しながら続ける。

 

「確かに、形も色も綺麗だな、ここだけ見たなら未使用に見えるかもしれない。毛はよく手入れされている。いや、でも少し黒ずんでるな、ここ」

「ひぅっ……」

 

 割れ目をなぞるとピクリと震わせ、恥ずかしさのあまり唇を噛む。実際は黒ずむほどではなく僅かに赤く濃くなっている程度だが

 

「処女なのにここが黒ずむとか、どれだけ触ればこうなるんだ?」

「……」

 

 だんまりを決め込んだらしい。顔を背けている。背けた先に時計を置き、きっかり三分待った

 

「分かった質問を変えよう――普段おかず……オナニーするとき何を頭に思い浮かべているんだ?」

「…………」

 

 段々質問内容が酷くなっていくことに気付いたのだろう、泣きそうな目で睨んできた。最後まで答えなければどうなるのか、想像出来ない櫛田ではない。

 身体を震わせだらだらと汗を流す。時計とこちらを見て、懇願するように見てくる。

 二分過ぎたときガクリと全身の力を抜いた。ぼそりと呟く。

 

「……あんた」

「は?」

「……あんたに、胸掴ませた、ときのっ、ことっ、思っ……思っぅぅぅ」

 

 羞恥の限界をはるかに超えて、耐えられなくなったのだろう泣いている。素で泣いている。

 色々な意味で居たたまれない気持ちになってきた。

 堀北は脇腹揉まれた時だからお前ら気が合うなあ、なんて言ったら間違いなく殺される。

 まさか櫛田がとは、櫛田から感じる感情が愛里や佐藤のものとは違っていたから油断していた。

 今日櫛田が来てからのことが、走馬灯のように過ぎる、鬼畜過ぎるだろうオレ。反省しないし、必要ならまたやるけど。櫛田はピクリとも身体を動かさずに涙を流すだけだ。 

 何もかも馬鹿らしくなり櫛田の割れ目を舐め上げる。

 

「ぅぅぅ……ひゃっ」

 

 こちらに顔を向ける櫛田の顔は呆けている。涙に潤ませる櫛田の目を見据えて口を開く。

 

「櫛田……何度も言うが、お前はオレのものだ。お前がどう思うと、オレはお前を手放したりはしない」

「あっ……ふ、ふん、そう……あうっ!」

 

まだ湿り気を帯びているだけの柔らかな秘裂を軽く撫でる。

 

「とりあえず、お前をじっくり味わう」

「……ふんっ、わかったよ。優しくしてよ、この鬼畜」

 

 ふっと表情を緩めた櫛田の目を見返しながら、秘所の花びらに指先に力を入れてゆっくり左右に割って行く。

 

「……なあっ、だ、だめぇぇぇぇぇ!」

 

 さらに力を入れて大陰唇を拡げて櫛田の全てをさらけ出す。別に鬼畜と言われたから、鬼畜なことをしているわけではない。

 

「見えてきたぞ櫛田……明かりに照らされて綺麗なピンク色だ」

「……あ、あんた、さっきの、今でっ、こんなことっ、どこまでっ」

 

 開かれて白灯に照らされる粘膜がキラキラとピンク色に光る。自分でも腐れ外道なことしていると思うが、やられて最も恥ずかしいところ見られている櫛田の比ではないだろう。怒りと羞恥で沸騰しそうなほど顔を赤く染めている。

 

「お、見えた」

「駄目っ、ああ、見ちゃ、駄目っ――……」

 

 部屋の明かりに照らされて、ピンク色に光る粘膜の先、膣口のすぐ内側にあるフリル状の薄いひだの処女膜を確認する。

 

「本当に処女だな、しっかり処女膜がある」

 

 そういいながら櫛田の顔を見る。ただでさえイベント盛り沢山だった一日、気力体力ともに削っていたときに極限の怒りと羞恥で精神の限界が来たのだろう

 

「……ぁ……はぁ……」

 

 櫛田は意識を完全に飛ばしていた。

 とりあえず拘束したまま、準備したりして待つとする。

 最初はキスをしよう。櫛田の穏やかな寝顔を見ながらそう決意した。

 

 




エロ薄めですいません。
次回は本当に何時になるか分かりません。
読んでいただきありがとうございます。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

櫛田桔梗②

アゆスさん、Seltsamさん、麺喰さん、高山流水さん、らぴすさん、デスイーターさん、ぎゃんぐすたぁさん、ケチャップの伝道師さん評価付けありがとうございました。

原作の独白で親でなく保護者と呼んでいる櫛田さんに闇を見ました。


「あっ、あっ……え」

 

気怠げな声と共に櫛田は目覚めた。気だるさの残る身体を起こすようにして、周りを見回そうとする。

 

「きゃっ……え、私……」

 

 動かそうとしても自分の身体が動かないことに呆然として、自分の身体を見上げる。

 

「いっ、いやぁ!」

 

見上げて秘所を直視し、自分の格好を思い出して櫛田は悲鳴をあげた。自分のもっとも恥ずかしい場所を見せている姿を隠そうとするが、拘束されたままの身体はまったく動かない。

 

「一時間くらい寝ていたな。おはよう櫛田」

「あ、綾小路くん、あんたっ……あっ」

 

 怒りと羞恥で顔を背ける櫛田の身体を拘束したまま抱き上げる。柔らかな櫛田の身体を抱き寄せて、顔を唇に近づける。

 

「ちょっと、待って、私まだ」

 

 櫛田は腕を動かそうとしてピクリと身体を震わせた。

 

「駄目、こんな格好……身体がさわれないのは嫌、ほどいて……」

「櫛田」

 

呼びかけさらに唇を近づけると、求めるように頬を染め目を閉じ顔を上向きにする。

 

「最低、だよ……綾小路……くん」

 

 薄紅色の唇を覆うように唇を重ねて、触れ合う唇と唇。柑橘系の香水と汗と櫛田本来の微かに甘い体臭が混じった櫛田の匂いがふわりと広がる。

 

「ちゅ、ちゅ……んっ、んんっ」

 

 唇を突き出し唇をついばむ……真似をするようにぎこちなくオレの唇をついばんできた。

 二度三度とついばむ側を変えると櫛田の唇から強張りが抜けてきた

 

「ん……んむっ……ふんっ……んっ」

 

 口内に舌を差し入れる。答えようとおずおずと舌を伸ばして絡めようとするが、知識だけで慣れていないのだろう鼻息が荒く舌の絡め方が分かっていない。仕方なく一度舌をほどいて歯の裏の歯茎を愛撫する。

 

「あっ……んっ、ちゅ……」

 

 一度落ち着かせた後、舌の舌先だけチロチロと絡める。

 自身が慣れていないことを自覚したのだろう、櫛田は舌の力を抜きこちらに任せた。

 

「ちゅむっ、はぷ、ふぅっ、んっ……」

 

 舌先からゆっくりと柔らかくぬめる舌を覆うようにして吸い込むように櫛田の舌を愛撫する。

 

「ちゅっ、んむっ……んはっ」

 

 完全に脱力した櫛田の乳房が胸板に潰される。二つの大きな丸い形の柔らかさを胸板で感じる

 櫛田の舌をオレの舌でこそぎ上書きするように愛撫して、唾液を櫛田の口の中に送り込む。

 

「ん、んむっ、んくっ、こくっ……ぷはぁ」

 

 蕩けたような眼差しでこちらを見ながら、呼吸を整える。

 

「な、慣れてるんだね。キスってこんな感じなんだ。皆嘘つきか知ったかぶって、全然違うよ」

「誰に聞いたかは知らないがこんなもんだ。息苦しかったりしたのか?」

「ううん。そうじゃないけど、ファーストキスだったから、駄目だね聞いただけじゃ……」

 

 自分が何を言っているのか認識したらしく、顔をさらに羞恥に染める

 

「……私のファーストキスは高いからね。レアなんだから本当に……こんな格好で、奪われるなんて想像もしてなかったけど」

 

 耳まで赤く染めて視線を逸らした櫛田を見ながら、これからさらにレアなものを貰うことを思い出す。

 

「……でも、ちょっと意外だったかな」

「何がだ」

「綾小路くんがちゃんとキスしてくれたのが、正直あのまま犯されるんじゃないかって恐くて仕方なかったんだよ」

「……まさか」

「何か今考えなかった?」

「いいや」

 

 鈴音に修正されていなければ情欲のまま襲い掛かっていただろう、疑わしく思う櫛田を誤魔化すために掴んだ太腿を強く握った。油の乗った柔らかな腿がオレの手の形に沈む。

 

「あ、痛い……そろそろ、これ解いて……もう、私が処女だって、確認したんだからいいよね?」

「駄目だ」

「え?……なんで?あ、あんた、まさか」

 

疑問は一瞬、太陽も凍らせそうな目付きで睨んでくる

再びベッドにまんぐり返しの姿勢をとらせる。

 

「このまま犯すつもりじゃないでしょうね!この鬼畜!……ぁ」

 

 再度の恥ずかしい姿勢に、羞恥に耐えながら櫛田は抗議するように叫ぶが、自分の秘所も同時に見てしまい、すぐに恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「このまま犯すのも有りか……キスで濡れているしな、櫛田」

 櫛田の頭を掴んで自身の秘所に目を向けさせる。明かりの下かすかに濡れた秘裂は、僅かな愛液の分だけ膨らむように開いて雫をたらしている。

オレの様子と、自らの秘所の様子に本気で犯されると思った櫛田は、オレの腕を震わせるほどに怯えた

「……酷いよ……そんなことしたら、一生恨むよ。そんなの、もう、レイプだよ。レイプ、は嫌だ……」

 

湿った声で最後に「誰よりも綾小路くんには」と唇を動かす櫛田に興奮してしまう。自分がサドとは思っていなかった。

「悪い、冗談だ」

「……バカ。本当に恐いんだから、縛られて身動きできないって」

「もう少ししたらほどくつもりだ……キスで濡れているのは、冗談じゃないがな」

 

恐怖によってか被虐の快楽かまた一筋愛液が流れ落ちるのを見ながら嬲るように言う。

羞恥に震える櫛田。

「……だって、あんなに優しくキスされたら」

「そうか」

 

 言葉と同時に指を割れ目に沿って柔らかく擦りあげると、くちゅとかすかな水音を立てる。そのまま触れるか触れないかくらいの力で大陰唇外側を撫でる

 

「ひっ……あっ、んぅっ、うそっ、ふぁっ、あっ」

 

手を鉤状にして間接の部分で、恥丘から秘裂までぐりぐりとマッサージするように愛撫して、身体に快楽を響かせるように与える。

 

「はっ、んっ、あっ、自分で、するよりっ、んあぁっ」

 

 凹凸のほとんどない秘裂の縁を指先でほじるように優しくゆっくり撫で上げる。櫛田の下半身に雷が走ったように震え、腰全体が痙攣する。

 

「それなりに弄っているが、まだまだ青いな」

「ひっ、ひぃぃぃ、ど、どうして……」

 

 皮の上から陰核を軽く優しく撫でて秘裂をツボを押えてぐりぐりと愛撫すると、櫛田が自分で弄るより遥かな快感が下半身で爆発して嬌声を上げる。

 

「あ、綾小路くん、あんた、今まで何人っ、泣かせてっ」

「知りたいのか?」

「――っ、ううんっ。比べないで、堀北とも、はんっ、誰とも、私だけみて」

「セックスしているときに、他の女を浮かべるほど最低じゃない。お前もわざわざ口に出すな、お互いに興ざめだ」

「だって、こんなにっ、あふっ、んっ、いれないでっ」

 

 秘裂に指を入れ蠢く肉壁をソフトタッチで愛撫する刺激に、櫛田は唇を噛み声を出さないようにする。

 

「我慢せずに、声を出していいんだぞ。部屋の防音は確りしているからな。そろそろ、気持ちよくなってきただろ?」

「うっ、ふぅぅっ……こんな風に縛られてっ、女の子が、あっ、気持ちよくなる、わけっ、あっ」

 

 トロンと発情した顔で涎を垂らしながら、言ってくる。

 縛られようが情がある相手と性行為したならば気持ちよくなるのは当たり前なのだが、櫛田の中での女の子像は違うらしい。

 

「……分かったよ櫛田」

「えっ……そう、やっと、分かったんだね。すぐに解――ひいっっ!」

 

 秘裂を開いてピンク色の膣壁をなぞり小陰唇をくすぐる。顎をあげて白い喉を見せながらよがり啼く。

 

「もう少しと言ったな。縛ったままでイかせてからほどく」

「バ、バカ、ひっ、このバカ、私は、あんっ、普通に、抱き合って欲し……」

 

 どうやら櫛田は理解していないらしい。櫛田の頭を掴んで目を合わせる

 

「処女を縛ったままイかせる機会なんてそうそう無いだろう?オレも初めての経験なんだ。やってみたい」

 

 何を言われたのか解らず一瞬櫛田は凝固して爆発した。

 

「こ、この変態、ド変態、ふざけないでよっ!ほどっけぇ」

「嫌なのか、櫛田?」

「当然だよ!こんなことされて受け入れる女の子なんていない!」

「そうでもないぞ」

 

 そういいながら上の階を見上げるように天井を見る。しばし訝しげにこちらを見た後の櫛田の反応は劇的だった。

 

「……う、そ、嘘でしょ、え、堀北って…………あ、ああ……そ、そういえば、綾小路くん、前、袋にこのテープと棒買って……ロープも、堀北、あいつ、受け入れてるの?縛られるの……ううん、自分で縛ってって、ねだってるんだ……堀北……あの売女……あいつ、清純そうな面して、とんだ変態だったんだ……男誘惑するぐらいお手の物じゃない……騙されてたっ」

 

 驚愕呆然羞恥焦燥怒気、ありとあらゆる感情の百面相を見せた後、櫛田は納得した。まだ縛っていない鈴音が聞いたら間違いなくオレを殺しに来るだろう。ただ天井を見上げたら勝手に櫛田が納得しただけなのだが間違いなく通じない。

鈴音を二三日中に縛って虐める必要が出来てしまった、楽しみだ。

 鈴音との情事を心待ちにしている自分に驚く、こんな風に何かを楽しみにしていたことなんて無かった。

 決然とした意思を宿した眼差しを、他の女のことを考えていた最低なオレに向けてくる櫛田。

 

「……綾小路くん」

「なんだ」

「……処女を縛ってイかせたこと無いって本当?」

「ああ」

「……堀北って処女だった――ううん、答えてくれないよね……いいよ」

「何がだ」

 

 答えがわかっていてもあえて問う。櫛田の口から決定的な言葉を言わせたくて

  

「……私を、縛ったままイかせて、私のおっぱいと、おまんこと、クリトリスを可愛がって、たくさん……イかせて、お願い…」

 

 羞恥に顔を真っ赤にして身体を震わせながら、確りと言い切った。鈴音ならこれくらいやると櫛田の顔に書いている。櫛田の中で鈴音はどんな淫乱になっているのだろうか、二人の意識のギャップを責めるために、何時か櫛田と鈴音の三人でしようと決意しながら責める。

 

「櫛田。おねだりしているうちに感じたのか?愛液が垂れてきたぞ」

 

 つぅーと櫛田の腹を伝っていく愛液を指差す

 

「そ、そんな、こと」

「正直に認めないとイかせないぞ」

 

 意地悪く言いながら櫛田の秘所を息で吹く、また一筋垂れていく。

 

「処女の癖に、縛られて絶頂させてくれなんて、はしたなくおねだりして、感じるような女の子なんだろ?櫛田は」

「ぅぅ……っ!」

 

 流石にこれは認められないのか、イヤイヤと首を振って顔を背けようとしたので恥毛を軽く摘まむ、痛みにはねる櫛田の身体。

 

「警告だ櫛田、以後オレが許可するまでまんこから目を逸らしたら毛を抜く。量から見て10回位でつるつるになるな」

「や、やだ」

「なら見ろ……おや、また溢れてきたな。毛を摘まれて痛いのが気持ちいいんだな。櫛田は」

「ち、違う」

「なら、処女の癖に、縛られて絶頂させてくれなんてはしたなくおねだりして、感じるような女の子なのか。いや、見ているだけで溢れてくるなこれは」

 

 涙を一杯に目に溜めてフルフルと震える櫛田の腹に手を置く、じわじわと手のひらに溜まっていく愛液を櫛田に見せ付ける。

 

「櫛田、おねだりして痛くて見られるのがのが気持ちよかったのか、ちゃんと言うんだ」

「…………はい……」

「ふぅー」

 

 失望したように大きなため息を吐きながら櫛田の恥毛に触れる、「ひいっ」と小さく悲鳴をあげる櫛田をさらに虐めたくなる。

 

「はい、だけなのか」

「……わ、私は、しょ、処女の癖に、縛られて絶頂させてくれなんてはしたなくおねだりして、毛を摘まれる痛みと、綾小路くんに見られて、気持ちよくなる、お、女の子……です」

 

 言葉使いがなぜかものすごく丁寧になっている。

 あれだけの人間を虜にした下に、こんな可愛らしい姿があったとは愉しくなる

 承認欲求を満足させるために、よく出来たと髪を撫でてやる、満足げな吐息を漏らす櫛田を見ているうちに我慢が出来なくなった。

 

「よく言った、イかせてやる」

「……うん。はぁっ、あっ、あああっ、そこはっ!」

 

 指で開いた秘所の中を指先を震わせるようにして撫で回す。まだまだ開発されていない膣壁を痛めつけないように優しく愛撫する。開いた片方の手でブラジャーをずらす。

 

「きゃっ」

「綺麗だな」

「……ふふっ、そうでしょ、あっ」

 

 弾けるようにブラジャーから解放され揺れる乳房。

 高校生としては十分に大きく乳輪も大きめだ。

 仰向けに近い体勢でも形崩れせずに張りのある美しさを保ち先端を尖らせている。

 五本の指を乳房に食い込ませて、優しくやわやわと揉む。

 

「学校の奴で櫛田の裸見たいと思ってる奴どれだけ居るんだろうな」

「うっ、エロい目で見てくる、はぅ、奴らたくさん、いたけど、くぅ、綾小路くん、以外に見せないからね……んっ」

「ああ、オレにだけ見せておけ」

 

 オレの思う通りに柔らかさと張りを併せ持つ乳房が震えながら形を変えて、指の間でピンク色の乳首がピンとそそり立っていく

 

「乳首、硬くなってるな」

「あっ、ああっ、ひっ、ひぃぃんっ!」

 

 じっくりと乳房の縁から根本から頂上に向かって揉み解し、突き出た乳首の先端を指の腹で潰すようにすると、顔を仰け反らせて軽く絶頂した。

 

「う、そ、私、こんなのっ、だめっ」

「気持ちいいのか?」

「う、うん……ここまですごいの、初めてっ、ああっ、んっ」

 

 もう片方の乳房を愛撫し始めると同時に秘所の愛撫を再開する。上と下同時の刺激に耐えられないというように頭を振る。

 

「うっ、うぁんっ、うんっ……」

 

 焦らずに胸と秘所を交互に、あるいは同時にせめて、櫛田の未発達な感覚を育てながらじっくりと追い上げていく。何分も嬲る。

 

「ひゃぅんっ、いいっ、んんぁっ!私っ!」

 

 まだ尖りきっていない櫛田の乳首を摘み徐々に隆起させて、充血して敏感になったところを普段隠れている根本から刺激していく。痺れたように身体を震わせ櫛田の汗が飛び散り、櫛田本来の微かに甘い体臭が混じった匂いが漂う。

 

「気持ちいいのか、櫛田」

 

 口角を上げて少女の顔を覗き込む。櫛田が切なげに眉を顰めて頷くのを見て、乳房に吸い付き勃起しきった乳首を思い切り吸引する。

 

「んあううぁっ!……乳首っ、吸っちゃあ、はぁぅんっ!」

 

 部屋に響く嬌声をあげる少女を一本の指で秘所の粘膜を刺激しながら、もう一つの手で紅い肉芽の皮を剥いて陰核を露出したあと被せて撫でるように愛撫する。

 

「あひぃぃっ……そこは、何でぇ、信じられないっ、はぅぅっ!」

「何が信じられないんだ?」

「あっ、私がしても、敏感で、痛いのにっ、あひっっんっ!何で、綾小路くんっっっ!」

 

 性感が発達していない場合、敏感な部分は直接弄るよりも薄皮を隔ててソフトに愛撫しなければ快感を感じない。櫛田は直接触って刺激が強すぎて敬遠していたのだろう。

 そんな櫛田に目を合わせて頭を軽く撫でてやる

 

「お前の身体のことは、オレのほうが良くわかるんだ。このままオレに委ねろ」

「んっ……うんっ……ひぁっ、わかったよ、私の、身体は、綾小路くんのモノなんだから、好きにして」

 

 一呼吸置いて櫛田は顔を赤らめる。秘所の膣奥からとろみのある汁が漏れ出し、快楽に目覚め始めた膣が膣口を呼吸するようにぱくぱくと開き閉まる。

乳首を甘噛みしながら、秘所にいれた指を大陰唇内部の凹凸をなぞるように撫でる。

何分も続けると、顔から汗をしたらせ唇から涎をたらしながら櫛田がねだってくる。

 

「そろそろ、イかせて、こんなにじっくりされて……もう……狂っちゃいそうだから」

「わかった」

 

 皮ごと肉芽を摘んで軽く捻るようにこね回す。小指のさき位に充血した櫛田の肉芽は、愛液で表面をぬめらせオレの指の間でひくひくとわななく。

 圧倒的な快感で、櫛田が目を見開き瞳を充血させる。

 

「あ、あひぃぃーっ、……だめ、だめ……私っ、もう駄目っ!」

 

 拘束された身体を大きく震わせる。秘所の蠢きはさらに盛んになり蜜をしたらせる。汗の臭いのほかに発情した女のツンとした匂いが櫛田からより濃く漂う。

 

「いいぞ。駄目になれ、櫛田」

 

 拘束された不自由な身体で、待ちきれないとばかりにたおやかな腰を揺する櫛田の乳房の根本を掴み頂点へと手をやりながら、秘所に口を持っていく。

 

「イっていいぞ櫛田」

 

 充血して紅くなった乳首を潰れるかと思うかの強さで潰して、歯で肉芽の根本を軽く甘噛みして先端までこそぐ

 

「あっ、あああっ、あひぃぃーっ……」

 

 櫛田の目の中で無数の幻が瞬いているかのように瞳の中が揺れる

 

「いっ、いくっ!イクッ!……あっああーっ……駄目っ、も、漏れちゃっ!」

 

 言葉が終わらないうちに膣口から透明なしぶきが勢いよくほとばしりオレの顔を打つ。

 

「潮吹きか」

「見ないでよっ!は、恥ずかしいーっ……」

 

 

 

「起きたか、櫛田」

「うぅぅ……はぁ……はぁぁ、あ、綾小路くん」

 

 顔のありとあらゆる所から体液を漏らして、夢と現の境をさまよっていた櫛田は目を覚ますと手を何かを求めるように蠢かせるが動かない。

 唇をかんで不満げな顔をする。

 

「あっさ、触りたい、触りたいのっ、あっ、ああっ」

「なにをだ?」

「女の子の、お願いを察しないから……綾小路くんは綾小路くんなんだよ」

「……そうだな」

「あっ、そうやって、んっ、女の子を弄って、誤魔化すのって……ひっん、最低」

「知らなかったのか」

「知ってたし、今日思い知った。女の子をこんな風に縛って酷いことする最低な奴だって……あっ」

 

 櫛田の緊縛を解いていく。強張った身体を伸ばし荒い呼吸で、揺れる乳房や腰が目を楽しませる。

オレに手を一度伸ばして途中で止めてさ迷わせながら、拗ねたような切ない顔で櫛田が話し始める。

 

「……ありがとうなんて言わないから」

「ああ……そうだ、下着は大丈夫か?」

 

 絶頂の余韻で動けない櫛田の代わりに、身体に残っていた下着を剥ぎ取ってやると顔をしかめた。

 

「下着は駄目だね、伸びきっちゃってる。あ~あ、これお気に入りだったんだよ」

「弁償する、何ポイントだったか教えてくれ」

「……今度、下着売り場で一緒に買ってくれたら許してあげる」

「わかった」

 

 女性下着売り場に行くのはハードルが高いが仕方ない、オレの返答に櫛田は機嫌を良くしオレの腕に手を置くと、自分の身体を確認し始めた。

 

「跡になってるじゃない。どうするのこれ、一生残ったら責任取ってもらうからね」

「心配するな、残らない」

「本当かな?」

「なんならマッサージして血行良くしてやるが?」

「……目つきが厭らしいから止めておくね」

「あれだけ厭らしいことしたのにか?」

 

 無言で蹴られた。荒れた呼吸で会話といいよくやるものだ。

 櫛田の体調も落ち着いたので、タオルを渡し水分補給と同時に避妊薬を飲んでもらった。

 そろそろオレのズボンを降ろしてもらうことにする。

 櫛田が要求に頷いて了承してくれたので、櫛田に腕をとられたままベッドから降りる。

 

「まって、その前に」

 

 櫛田がオレの首の後ろに両手を回して抱きついてきた。

 

「抱きしめて、私を。今度はしっかり」

 

 船上では抱きしめなかった少女の背中に手を回して、お互い裸で抱き合う。

 心地よさそうに、ここが自分の場所だと主張するように、櫛田がオレの胸で頭を擦る

 

「もし、もし、あの時綾小路くんがこうしてくれたら、裏切らなかったよ。星空の下でこんな風にしてくれたら、そんなこと忘れた……きっとね」

「かもな」

 

 強く抱きしめながら肯定するが、それは無いと思った。この学校の知人の中で、彼女ほど過去に縛られている少女はいない。

 鈴音のことをあれだけ悪し様に言っているが、鈴音という少女そのものは櫛田はそこまで嫌っていない。いや、どちらかといえば相性がいいだろう。

 だが、鈴音は櫛田にとって形をした『過去』だ。

 過去、櫛田はクラス崩壊を起こした。

 櫛田と鈴音の情報源しかないが、30人以上の人間に囲まれ一斉に怒鳴られ罵られ物を攻撃され始めた。

 あのとき真実をバラして身を護らなければ櫛田はただでは済まなかっただろう。だからオレは櫛田が悪いとは思わない。

 櫛田にとって本当の試練はその後だっただろう、身近な人間全てが櫛田を異質なものとしてみたはずだ。学校だけではなく、隣近所、親戚……おそらく親ですらも、何年も一緒に居た理想的な娘が数十人を壊してのけたのだ。

 今まで善良でありすぎたがゆえに内面の闇を実物よりはるかに多く感じて、恐れ遠ざけただろう。

 

 今日櫛田が真っ先にオレの部屋に来ていなければ、オレに曝け出さなければ、本気で壊す必要があると判断し、オレは櫛田の耳にこう入れるように状況を動かすつもりだった。

『違う止めてよさみしいよなんでどうして私はお父さんお母さん皆信じて違うそんなつもりじゃ信じて捨てないで追い払わないで苦しい恐いモノじゃない止めて嫌だ止めて嫌だ止めて止めて止めて私を私は私は私を―――そんな目で見ないで』

 十中八九これだけでも壊せただろうが、()()するつもりだったから確実に壊せた。

 

 鈴音を見るたびに、櫛田は恐怖を感じていたはずだ。鈴音という形をした周囲全てから断絶した過去。

 櫛田は鈴音を退学させれば恐怖から解放されると考えていたのだろうが、例え退学させても櫛田は安心できなかったに違いない。

 人気者となり他人の秘密を得ても、過去を覚えている限りどこか満たされない渇望を抱き続けただろう。

 櫛田に必要なのは彼女そのものをリセットするか、誰かに表と裏を知った上で泰然と受け入れられ、素の彼女の居場所になってもらうかだ。

 今、オレの肯定に安堵して抱きつく力を増した櫛田は恐怖から開放されたように見える、いや少なくとも軽減されている。誰かの秘密を知っても渇いていくだけで得られなかった安堵を、オレから得ている。

 見えないように口角を上げる。

 追い詰めてぼろぼろにした後助けて、拘束して嬲りオレに触れられない恐怖を味わせた意味があった。触れたかったものに触れ受け入れられた今、櫛田の感じる安らぎはどれほどのものか。この安らぎがある限り櫛田はオレのモノになった。

 

「ふわぁ……」

 

 背中から腰までのなめらかで柔らかな未だ未成熟なラインを撫でる。満ち足りた吐息を櫛田が漏らす。

 壊した時は、意識があるままでは手に入らなかった。この身体をモノに出来てよかったと、雄としての喜びに耽る。

 

「綾小路くんは暖かいね」

「そうか?」

「うん、そうだよ」

 

誰かに受け入れられている喜びに、いつもとは違いはにかむ様に笑う櫛田を見てそろそろ我慢できなくなってきた。




冷酷な人間は、根のところで他人を維持管理する存在としてみるから何股でもかけられる。
他人を道具としてみている綾小路くんはやれそうで恐い、相手が遊びで済む相手ならですけど


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

櫛田桔梗③

ルートさん、夜刃神さん、評価付けありがとうございました。

高山流水さん誤字修正ありがとうございます


「櫛田そろそろ脱がせてくれ」

「うん………………わかった」

 

 名残惜しそうに腕を解くがそのまま腕をオレの身体から離さない、いや離せないままズボンに手を下ろす。

 

「ちょっ、ええっ!」

 

 オレの逸物を見て驚愕のあまり身体から手を離してしまった。

 

「嘘でしょ、前、雑誌で見たのと全然違う。チンチンってこんなに大きいのっ!? 大きすぎるよ……本当にこれが、私の中に?」

「ああ、お前が処女だから少し大変だが入るぞ……そういう雑誌見るんだな?」

「勘違いしないでね。他の子が持ってきたのを皆で見たことがあるだけだよ」 

 

 別にエロ本読んでも普通だと思うから隠さなくてもいいと思うのだが、櫛田はそうではないらしく瞬時に否定してきた。

 

「でも、嘘でしょ……あ、そうか、堀北の奴がいれることが出来たから、だから、大丈夫……だよね」

 

 そう言いながら、膝を着いてオレの逸物に手を伸ばしてくる

 

「熱っ、熱くて、硬い、すん……すんすん……臭いもすごい。えっと確か、こう」

 

 ごつごつとした竿を撫でてくる。片手では到底足りずに両手を使って雁首を撫でてくる。

 知識はあるからか男の弱い部分を触ってはいるのだが、適切な力加減かわからない上に拙い為、気持ちいいというよりこそばゆいものでしかない。

 それでも、櫛田が涙の跡が残った上目遣いで誠心誠意オレへと奉仕してくる姿はオレを興奮させる。

 頭をつかみ逸物を唇に当てる。ここまでするつもりは無かったのだろう、ぴくっと体を震わせる。

 

「櫛田、先端を舐めろ」

「んむ……んん……」

 

 逆らわずに亀頭に舌を伸ばして舐め始める。

 顔を羞恥に染め、可愛らしい舌でチロチロと舐めていく。

 溢れだすカウパー液を口に含めて嚥下する

 

「こほっ、こほっ……経験者だって言ってた人達、嘘ばっかりじゃない。何が大したことないのよ。苦くてしょっぱい。こほっ」

 

 愚痴ると唾液を垂らしてオレの逸物にまぶして伸ばしていく、たらたらと唾液を垂らして逸物全体をてかてかにする。

 

「何してるんだ?」

「……初めての時って痛いんでしょ」

「そうだな」

「こうすれば、少しはましになるって先輩が……初めてだから出来ること全部しておきたくて……ふうっ、終わった」

 

 ホッとした顔をする櫛田のいじらしさに頭を撫でてやると心地好さそうに頭を手に擦り付けてくる。

 唾液の分の水分補給を終えた櫛田をお姫様だっこしてベッドに連れていき、仰向けにして覆い被さり、秘所に手を伸ばす。

 

「あっ、ひぃんっ!」

 

 オレを奉仕している間さらに濡れていたそこは、男を受け入れる準備が出来ていた。が、まだ足りない。もう一度絶頂させておくべきだと、肉柱を皮の上から指で震わせる

 

「ひあうっ! あうんっ!」

 

 舌で秘裂を割り、小陰唇に舌を差し込んで膣口の縁をマッサージしてやる。溢れだす愛液をすする。

 

「嫌ぁっ! ひあぁっ! 汚いよ、んはぁっ、の飲んじゃダメっ!」

 

 オレの頭を掴んで秘所から離そうとする櫛田。あまりの羞恥にこれ以上なく紅くなっている。

 両手で乳房を時には強く時には破裂しそうな風船のように優しく触れる。決して乳首には触れずに

 

「あぃっ、胸が、あっ、んんんっ!」

「こんなに乳首を尖らして、どうして欲しいんだ?」

「ひぃんっ、はっ、はぁっ、んぁあっ! ……あっ! さ、触って、乳首触って! 綾小路くんの好きにして」

「いいだろう」

 

 両手で乳首を捻りきるような強さで捻り、口で櫛田の陰核を露出させ舌で弾き飛ばす。

 

「あっひっっ、あ──っ! イっちゃう、イっちゃ、ひああぁ────っ!」

 

 姿勢を変え櫛田の愛液の飛沫を逸物に浴びさせる。櫛田の唾液と合わさり充分な潤滑液を馴染ませ、櫛田の準備も整った。

 短時間の続けての絶頂に顔のありとあらゆる所から液を垂れ流した櫛田の目を見る。

 

「あっ……」

 

 正常位の体位で、度重なる絶頂とオレからの刺激に紅く変色した秘裂に逸物を宛がう、潰れるように開いた大陰唇が愛液を溢れさせ発情した雌の匂いが漂う。

 

「あ、綾小路くんのおちんちんが私の所に」

「今からお前の中にいれるんだ」

 

 櫛田は押し付けられた逸物を敏感な秘所で感じとり、今まさに犯されるのだと実感してびくりと大きく震えた。

 逸物に自分の秘所から垂れていく愛液が、絡みつくように流れるのをみて小さく頷く。

 

「ほ、本当に、光栄に思ってよ……私の処女なんだからね」

 

 恐怖に怯えて震えながらこれだけ強がれれば上出来だ。

 

「ああ、光栄だから美味しく貪らせてもらう。力を抜けよ」

 

 怯えた顔を歪ませたくて、亀頭の先端を潜り込ませていく。時間をかけて愛撫した秘所は媚肉全体で逸物を受け入れようとする。

 力をいれ亀頭の先端が膣口に触れたとき

 

「あ゛、あ゛がぁっ」

 

 巨根により拡げていく秘裂の引き裂かれるような痛みに耐えられなくなり、櫛田は目をカッと見開いて苦悶の声を出す。汗がぴたりと止まり、赤く上気していた肌から血の気が引き蝋燭のような白さになっている。

 

「 あ゛っぎっぎぎっ……あ゛っ」

 

 先程までオレを迎えようとしていた秘所は蠢きながら痙攣し始め。痛みを少しでも和らげようと、櫛田は俺にしがみ付いてきた。

 膣口は少しずつオレを迎え入れようと開いていくが、巨根の太さに追い付いていない。もう少し、ほぐしてやるべきだったかもしれない。

 亀頭が締め付けられながら膣口から僅かに櫛田の中に入った時

 

「があ゛っ──っ……あ゛」

 

 声にならない断末魔の叫びを上げて櫛田が、背中に爪を立てたまま意識を失う。

 痛いほどの締め付けと女の本能で奥へと引き込もうとするうねりを感じながら動かずに待つ。

 

「──っ、──っ、い゛がっ」

 

 数分後意識を取り戻したが、痛みを感じる以外脳の機能が無くなっているかのようにオレに抱きついたまま焦点の合わない目を見開いたままだ。

 逸物を千切りかねない強い締めつけに得もいれない快感を覚える。

 

「あ゛……があっ……い゛い゛、だっ……」

 

 ドッと涙が溢れだして頬を伝わる。人語に近い叫びを上げられるだけ、少しだけ身体が慣れてきた。

 

「いだい゛、い゛だいぃぃ……」

 

 幼子のようにただ涙を探して痛みを訴える櫛田。締めつけが僅かに弱まる。奥へいれることは可能だがまだ早いもう少し待つ

 

「あ、あ、ひぐっ……ううっ……うあ゛っ」

 

 櫛田の目の焦点が合う。

 

「櫛田、きついならここで止める。無理はしなくていいんだ」

 

 我ながら非道だ。鈴音への対抗心やオレが仕向けた櫛田の精神状態から、どう答えるか解っていてこんなことを言う。

 予想通り櫛田は微かにゆっくりと頭を横に振る。そんな微かな動作すら痛み、顔を歪め汗を噴き出させる。

 

「わかった、続ける。ゆっくり休みながらするが、最後までやる。いいな?」

 

 微かに櫛田が頷く、少し間を開けて動かし始める。

 櫛田にしがみつかれた背中から血が流れてきた。鈴音につけられた傷のかさぶたが破れたのだろう。

 一週間も経ってないのにクラスメイト二人の処女を奪っていることに逸物がさらに滾る。

 亀頭が膣口を抜けようとして先端に処女膜を感じて止める

 

「ひぐっ、う……はっ、かはぁっ」

 

 その動作を膣の最奥に到達したのだと思い込み、櫛田は安堵の吐息を漏らす。

 

「櫛田、今お前の処女膜当たっているんだ」

「……え? ……うぅぅぅ」

 

 理解したくないように呆然とするが、恐怖に涙と鼻水を流しながら覚悟を決めたように頷く。

 

「お前を貰う……行くぞ」

 

 櫛田の目を見ながら逸物の進入させる。

 櫛田は身体を引き裂くような痛みとともにプツリと自分の中で何かが破れるような音がした。

 

「──―がっ、──あ゛がっ」

 

 脳天を貫く痛みに、櫛田は意識をとばした。

 櫛田の膣が硬直して、膣の危機を感じ取り恐ろしいほどの愛液を出す。

 亀頭が溺れるかと思えるほどの愛液に亀頭が浸り、腰が痺れるほどの快感を覚える。

 隙間なくぴったりとした結合部は、破瓜の血も流れず固まってピクリとも動かない

 

「────」

 

 櫛田の意識が戻るまで待つ。 準備したとはいえ、ただでさえ痛い初体験の相手がオレの巨根なのだから仕方無い。

 麻酔で麻痺させたり器具で拡張したりする必要さえあるのに、オレの逸物で処女を奪う我儘を叶えてくれるのだ、待とう。鈴音にそうしたように。

 だらだらと流れていく汗を見つめる。

 拭いてやりたいがもしオレが少しでも動くと、それだけで櫛田に耐えられない苦痛をもたらしてしまうから待つ。

 逸物を奥に進める以外の刺激に彼女は耐えられない

 

「……ぁっ、かはっ……はあ゛っ、はあ゛っ……」

 

 目覚めて細かい荒い息を続けて酸素を必死に取り込み

 

「ひ、ひぃぎぃぁっ、い、いだ、いだぃぃぃぃ! 」

 

 慟哭に近い絶叫を部屋に響かせた。

 

「あぁぁあっ! あ゛っ、抜い、ダメっ、抜かないでぇー!」

 

 櫛田が泣き喚く度に秘所は蠢く、意味ある言葉を話せるようになったことから腰を推し進める。 

 じわじわと逸物を進めると、慣れてきた櫛田が自分の秘所に目を向けるだけの余裕が出てきた

 

「ひあっぐっ……う、動いて、る……まだ、あんな、に」

 

 三割程度しか入ってないことを確認した櫛田は、覚悟を決めたようにさらに強くしがみついた。

 

「……いひぃぎ、っあ、痛い! はぅ……あうっ」

 

 櫛田が痛いと言う度に一度休めて、更に奥に進む。ミリ単位でゆっくりと中に入れていくと、うわ言のように話しかけてきた。

 

「ひ、いっ……一気に……したほうがっ……痛く、無い……って」

「場合による。未経験でこの狭さのお前だと、オレのもので、もし一気にすれば裂ける可能性が高い」

「ひいっ」

 

 想像して蒼白になる、可能性が高いと言ったがそうなるとほぼ確信している。

 

「だから、ゆっくり休みながら、お前の中をオレに馴染ませて拡げながら進める。これが一番、いや唯一の手だ。信じろ、櫛田」

「……うん……わかった。信じ……る、あぐぅ、痛いっ」

「……少し長く休むぞ」

「あ、ありがとう……はぁっ、はぁっ」

 

 あまりの痛さに動かせない身体をピクリとも動かさずに、泣きながら礼を言い荒い呼吸をする。

 まだ半分くらいしかオレの逸物を納めていない、櫛田の膣内を味わう。

 

 処女特有のきつさもあるが、入れた段階から強い吸着感がずっと続いている。多少身体を動かしたのに、膣口が全く歪まない。

 破瓜の血と愛液で、入れている逸物は溺れるかと思うくらいなのに

 ──こいつも名器か

 感嘆していると櫛田の呼吸がある程度収まり、腹を圧迫された声で呼びかけてきた。

 

「大丈夫……少し、楽に、なったから」

「そうか、力を抜いておけよ」

「うん……はぁっくっ」

 

 十分近い長い休憩のお陰で多少強張りは抜けたが、狭く暖かい膣は恐ろしくきつい、細心の注意を払いながら腰を進める。

 

「がぁっ、ぐっ、ぎっ、あぐぅ、あ゛あっ」

 

 痛々しい悲鳴と苦悶を聞きながら、痛いと言わない限り推し進める。

 

「あっ……んぅぅっ!」

 

 こりっとした子宮口に当たり、腰を止める。まだ二割ほど入っていないが、すべては入れない。

 鈴音から学んだ、もっと慣らしてからだ。欲望のまま全て入れても限界を超えてしまう。

 限界ギリギリを続けていく。

 

「かはっ、はっ、はっ、はっ」

 

 奥にまで届き俺が止まったのを感じ、極限の緊張を解いた櫛田からドッと汗が流れる。

 呼吸が多少速いペースに落ち着くまで待つ。

 頭から順に櫛田を優しく撫でていく。顔、胸、腹の順に毛にしか触れないくらいに優しく

 

「はっ、あっ……痛っ、ううっ」

 

 敏感な部分を愛撫されて、少し顔を緩めるが直ぐに痛みに顔をしかめる。

 優しく何度も撫でる

 

「あっ、あふうっ……あっあぁっ!」

 

 七度撫で終わると痛みと圧迫に慣れてきた、蒼白になっていた肌に赤みが帯びる。

 焦らずに乳房の輪郭にそって指を這い回らせる。強張る乳房にもとの柔らかさを取り戻すように

 

「あんっ……あ、綾小路、くん」

 

 刺激にずっとぼんやりしていた櫛田の瞳の焦点が合いオレの輪郭を捕らえた。

 

「入ったんだ……裂けたって、絶対、裂けたって……あ」

 

 視線を降ろしていく櫛田の目が、自分の腹を映す。

 

「私の、お腹……綾小路くんの、形に……あぅっ」

 

 恐る恐るオレの逸物の形に膨れた腹に手を当てて、さすり出す。痛くないように触れるか触れないかの力で

 

「妊娠、してないのに……お腹、こんな……どこが……少し、大変……」

 

 腹越しに逸物を撫でられると同時に、櫛田の膣が蠢き締め付けてくる。痺れるような快感が背中を走った、いい加減我慢が出来ない。

 

「櫛田、動くぞ」

「え……ひぁっ、あっ、ひっぎぃぁぁ!」

 

 力を逸物にいれただけで、櫛田は快楽の混じった苦悶の声を部屋に響かせ身体を跳ねさせる。

 

「だッ、うごか……あうっ! いたぁ……動かないでぇ! 優しくしてぇ!」

 

 上目遣いで泣きながら懇願する裸の美少女のお願いは、恐ろしい破壊力がある。優しくしないなど人非人だ。

 今までの櫛田との思い出が頭を過る、それを思うと答えは決まりきっている。

 

「はぐぅぅぅっ! こんなっ! ……んぐぅ、い、痛くて……苦しい、のっ……」

 

 ぱあんっと互いの腿が打ち合わせた音と共に櫛田が絶叫する。 結論が出た虐めよう。痛み一色にならない限り犯す。

 ある程度馴染ませた膣は、急激な刺激に強張りながらも何とか蠢かせてくる。強張りごと貫く勢いで腰を桃尻に叩きつけて逸物を全て叩き込む。

 

「んぎぃぃぃぃ! あ、あぐぅ、痛いぃ! 動いたらっ……いだ痛いよ! 痛いぃぃ!」

 

 白目を剥いて金切声のような叫びを上げる櫛田、微かに快楽の響きがある限り引いて突く。あまりのきつさに膣を抉り込んで引き摺るようになってしまう。

 最初はミリ単位くらいのピストンで、徐々に腰を動かす幅を広げながら痛みが変わらないように調整して

 

「ああぁぁっ! ……あぐっ、い痛い! いひぃいいっぃぃ!」

 

 何度か意識を飛ばしても、腰を動かしてすぐに戻す。櫛田の泣き顔を見ながら涕泣を聞く。愉しいと思うオレは可笑しいのだろうか

 

「ひぃぃっ! 痛い! 痛いよ! あうっ……くううっ! ……駄目! 私、壊れちゃ……」

 

 激しくかぶりを振って全身を引きつらせる櫛田。ついに通常の幅で抽送できるようになった、ゆっくりと雁首を突くたびに膣壁の微細な凹凸とこすれあい、快楽をオレに叩き込んでくる。

 痛苦の叫びを上げても、ただの一度も「止めて」「嫌」とは言わずに受け入れる少女を貪る。

 

「あ、ぁぁぁぁっ……」

「櫛田見てみろ」

「ぇ……えっ……うそ、あ、あれ……」

 

 声に快楽が混じり始めたとき、腰を限界まで引き櫛田の頭を掴んで結合部を見せる。逸物の雁首に引っかかり、秘所から盛り上がるように露出している充血した粘膜の正体が何なのか理解して蒼白になる。

 

「私の……あそ……ひわぁぁっ! ……ううっ、っ、あぁっ! ……違っ」

 

 理解すると同時に今までよりも速い速さで、客観的に見るとゆっくりと腰を叩き込む。

 秘所の膣壁を白日に晒された衝撃と同時に快楽を感じてしまった櫛田は否定するように頭を振る。

 

「気持ちいいぞ、櫛田。こわばりが抜けて絡み付いてきている。お前も感じていないとこうはならない」

「ぅぅ、ぅ、ひぃっ、ああっ! 違う、わ、私、こんな乱暴にっ、されて……」

 

 ピタリと腰を止める。膣で快楽を感じ始めたときに動きを止める。痛みが引き始めて、これからどうなるのか期待と不安を持ったときに止められる焦燥。求めるように腰を動かし始めた櫛田の腰を腕で止める。

 

「──―あっ……っ! ぅ……!」

 

 ぽろぽろと大粒の涙を流してオレを見上げる。涎を横からたらした唇が震えるが声にならない。

 

「こんな乱暴にされて、何だ?」

 

 櫛田の表情に絶望の色が一瞬過ぎるが

 

「わ、私、こんな乱暴にされて……気持ちいいの……このまま私を犯して欲しいっ」

 

 ──―やりすぎたかもしれない、羞恥よりも被虐の快楽を感じている。愛液がさらに湧き出してきた。

 滅却してオレは乳房に片手をやり指を食い込ませるように揉みしだきながら、もう片方の手で櫛田の腰を子宮が下になるように上向きに固定して腰を動かし始めた。

 

「ひぐぅ!? 胸までそんなに乱暴にっ、ああっ! そんなに乱暴にしたらっ、あとが残るじゃないぃっ! ああっ、はあっ、ああっ、動くのもっ、速くっ!」

「いい胸だな。さっきも味わったが、犯しながらだと格別の揉み心地だ」

 

 かなり力を押し込んでいるのにもかかわらず指を押し返してくる張りの良さや、手になじむ柔らかさが実に心地いい。

 揺れる美乳を視覚だけでなく触覚で味わうことによりオレの興奮は高まり抽送をさらに速くする。

 

「あうっ、んぅっ、ああっ! 一番奥に届いてるっ! うぅ貫かれちゃう、私っ貫かれっ!」

 

 子宮を余裕で突けるようになると、膣はほぐれてきて締まるだけではなくうねり締まる。

 オレの逸物になじんで段違いに心地よくなった膣の具合に合わせる様に、櫛田の声から苦痛は消えた。

 

「ひぃっ、ああっ! あうあぁっ! 突かれちゃって、引き摺られてっ、私変になっちゃってる」

 

 櫛田が快楽を感じられている強さで子宮口を突き、引く、その次は様子を見て遅くしたり速くしたり、傍から見たらまだゆっくりといえるペースで律動する。まだまだ経験が浅いこなれてない身体に手加減する

 

「そうだな……このまま胸を揉むとどうだ」

「んんっ! ひぁっ! おっぱいが、あついよ、すごいぃ……! ひあぁぁ、変に、ひぁっ、はひっ……くぅんっ!!」

 

 腰がぶつかるたびに嬌声を上げ、全身をビクビク震わせる。二度絶頂させ逸物になじませた身体は全身が敏感だ。オレの愛撫に櫛田が狂ったようによがり啼く。

 

「んはっああっ! そんな、まだ速くっ!? んはっ、あひっ、はひぃぃんっ! だ、駄目、これ以上、私、もう」

 

 絶え間なく与えた肉の喜びに櫛田は決壊寸前だ。さらさらの髪から汗を飛ばして頭を振る。うねる膣は絶頂が近いことを物語る。長い間櫛田の膣に入れていたオレももう限界が近い。

 

「ああ、オレもそろそろだ。出すぞ、このまま」

「う、うん。綾小路君の、私の中に、ちょうだいっ」

 

 言葉に合わせる様に限界まで広がっている膣は物欲しげににうねり、逸物を逃がさないと根本から締め上げてくる。子宮口がオレの亀頭の先端、鈴口に吸い付く。

 

「だすぞ、櫛田!」

「う、うんっ、来て、来てぇ!」

 

 俺は全身で櫛田を逃がさないとばかりにベッドに押し付けながら腰を打ち付けて、一番奥で射精を開始した。

 

「ひゃあああっあああっ!?」

 

 子宮口に食い込む鈴口から迸る精子を浴びて、櫛田が嬌声をあげながら絶頂する。

 

「ああっ、イクぅぅうーっ! またイクぅぅぅーっ!」

 

 オレの身体を跳ね飛ばしかねない勢いで身体を震わせるたびに、子宮で精を飲み干しさらに絶頂する。

 

「あひっ、あついよ、ああぁんっ! な、なにこれ! なにっ!」

 

 初めての膣内射精と絶頂に恐慌状態になったように悶え、悲鳴をあげる

 

「私の中が、溶けちゃうっ、ひゃっぁぁぁーっ! 綾小路、くんで、溶けちゃうっ」

 

 だが下の口は歓喜して、精を吐き出し続けるオレの逸物を膣で固定して一滴たりとも逃さないとばかりにごくごくと吸い取っていく。

 

「あぁあっあーっ! ……また、イク……お腹、痛いよ、もう、私、むり、むり、だよ」

 

 オレが腰を抱えていたため子宮が飲み込む以外に逃げ場のない精子を限界以上に溜め込み腹を膨らませて、息をする余裕もなくなってしまった櫛田、舌をだらりとたらして膣内射精の衝撃と絶頂の快楽に限界になっている。

 

「……よっと」

「ふぁぁぁぁぁ──っ!」

 

 力を入れて逸物にとどめておいた、一塊の精子を櫛田の子宮に送り込み、櫛田に止めを刺した。

 一度大きく跳ねるとベッドに崩れ、普段の完璧な外面からは想像できない、舌を突き出しだらだらと涎をたらしながら緩みきった顔をさらしている。

 

「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ」

 

 射精した分しぼんだ逸物の分だけ、溢れるピンク色に染まった互いの体液をごぽりごぽりと吐き出す秘所を涙で濡れた瞳でぼんやりと見つめる。

 

「おなか、あんなに……綾小路くんの、たくさん」

 

 弛緩してぐったりとした櫛田の汗をぬぐってやる。

 

「はぁ……お腹が、はぁ……」

 

 精液で膨らんだ腹を心配するが、櫛田の顔は安らかだ。

 

「はぁ……んっ、私の、一番大切なもの、綾小路くんに、あげっちゃた……はぁぁっ」

 

 もうこれで終わりで、オレが姿勢を元に戻してくれると信じているのだろう。このまま穏やかな眠りにつこうと目を閉じている。

 

 

 

「ひい……っ」

 

 冗談ではない、今まで散々手加減して遠慮して細心の注意を払ってギリギリを狙ったのは何のためだと思っているのだろう。

 壊さないようにオレになじませて膣で快楽を覚えさせたのは、ある程度本気で動いても支障がないようにするため以外の何者でもない。

 脱力しきってほぐしきった今が、ようやく本当の意味で逸物を抽送させる時だ。

 鈴音といい櫛田といい男は一発で済むような生き物だと思っているのだろうか、こんな魅力的な身体を初体験だから後一発いや二発で我慢しないと壊してしまうと断腸の思いをしているのに。

 

 初体験の女に二回戦を挑む心根は我ながら下衆だった。と後で思った。

 

 呼吸のように自然と膝立ちに、なり櫛田の両膝裏を肩に担ぐ屈曲位の体位をとる。

 

「ぐえっ」

 

 押し込むような姿勢で勃起していく逸物に圧迫された櫛田はかえるのような悲鳴を上げた。

 そんなオレを迎え入れようと櫛田の膣は締め付けてくる。

 

「むりぃ、むりぃぃぃ、むりだよぉぉぉ、やだぁ、止めぇぇ」

「悪いが、一回では収まらない。安心しろ、お前の身体はオレのモノだ……壊しはしない」

「……むり、嫌だ、止め、止めてっ、お腹、私、こわれちゃ……んぐぁぁぁっ!」

 

 痛苦の叫びを上げてもただの一度も「止めて」「嫌」とは言わずに受け入れていた少女が、怯えた表情で「止めて」「嫌」と泣き叫ぶ姿にさらに滾り抽送する。体位に従い上から押し込むように抉ると、苦痛と快楽の絶叫を上げる。

 

「な、なんでぇ、痛いのにっ、気持ちい……よくないぃ、よくなっあっァァァァ!! ……」

 

 限界以上に膨らんだ子宮を圧迫され痛みを感じながらも、絶頂直後の身体はそれすらも快楽として櫛田を苛む。

 

「もっと素直になれよ。そうしたら今より気持ちよくなる」

「違うぅぅ……こんな無理矢理にされて、感じちゃ駄目ぇ、駄目なんだからぁぁ」

 

 痛みさえも快楽と感じてしまう自身を否定しようと、頭を振って認めようとしない。

 どうやらもう少し押す必要があるようだ。

 

「そうか、なら仕方ないな」

「……え? ……駄目、そこはぁ」

 

 手を伸ばして櫛田に見せ付けるように肉芽に手を伸ばす。

 

「んはぁぁぁ! だめぇぇぇ!」

 

 ただでさえ敏感になっているときに皮越しとはいえ敏感なところを愛撫されてはどうにもならない。

 櫛田の身体は電撃が走ったかのように震える

 

「あ、あぅぅぅーっ! う、動かないで! 敏感なところっ、触りながらぁ! うわぁぁぁぁんっ」

 

 内側と外側から同時に攻められて、さっきまで処女だった櫛田が耐えられるはずがない。狂ったように泣き叫ぶ。

 

「素直になれないなら、強制的に素直にさせるだけだ。イカせ続ける」

 

 肉芽をいじっていた指先を皮の内側に潜り込ませる。充血しきっていた部分はそれだけで解放される。

 赤く尖りきった陰核がその姿を現す。

 

「ひィィィっ! ……そこ駄目、むいちゃ……あひィいいィっ!」

 

 指先で神経が集中した部分を突かれ悶え泣く櫛田を見ながら、腰を大きく引いて子宮口まで櫛田が壊れない程度の速さで一気に打ち付ける。

 

「いひィィあィあああーっ!」

 

 あまりの衝撃に、人間の言葉とは思えない咆哮を櫛田は上げる。

 

「んぁぁぁあぁぁ! ぉお、なか、おなかがぁぁ! ……っ、ぁっああぁぁ!」

「まだまだ、何も考えられなくなるまでやらせてもらう」

「ひぃ、ひィぁっ、あああっ、だっ、だめぇ、もっ、突くのぉ! あっ! そこ、さわらっぁぁぁっ!」

 

 乳房と陰核と膣を同時に攻撃され前進をガクガクと振るわせる。

 震えに合わせるように逸物を抽送させ、櫛田の官能をさらに目覚めさせる。

 

「やっぁぁぁっ! ……くはぁぁんっ! ……くひぃぃぃんっ!」

 

 獣の咆哮を揚げる櫛田は一突きごとに絶頂して意識を落とし、また一突きで意識を取り戻す。

 そのたびに一気に緩んで締まるを繰り返す膣の刺激と、人目に晒せない顔になった櫛田を見ているうちにオレも限界になってきた。

 

「そろそろ、出すぞ櫛田」

「ひぁぅぅ──っ! うぁぁあぁーっ! あぅぅぅーっ! ……わたしっ、もうっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 オレの言葉に反応もできずにイキっぱなしに陥った櫛田に止めを刺すように射精に至るべくラストスパートをかける

 

「このまま、奥に注ぎ込む、だすぞっ」

「ん、んぁぁぁっ! あ、あついようっ!」

 

 どくんどくんと櫛田の中にオレの精が注がれ、魅惑的な身体が注ぎ込むたびに跳ねる。

 快楽の声を上げながら震えて膣内を埋める精の暖かさに翻弄される。

 

「ふぁぁっ! あぁぁっ……」

 

 上から圧し掛かる体位で犯された櫛田は、逃げることもできずに精を注がれるままだ。それがわかっていてもオレは櫛田を逃さないという意思を示すために腰をがっしりつかんで、思う存分注ぎ込んだ。

 

「かひゅ、ひゅー、ひゅー……」

 

 最後の一滴まで注ぎ込まれた櫛田の腹は、まるで妊娠しているかのようにぽっこりと膨れている。

 ありとあらゆる体液でぐちょぐちょになった顔からは、タイヤから空気が漏れるような細い呼吸音が聞こえる。

 見るだけだと限界に見える、いやほぼ限界だろう。だがそれはあくまでほぼであって、搾り取れば余力はある。

 そして、満足していないオレは搾り取らないつもりは一切なかった。

 

 

「ひぃっ……!? 待って、待ってぇ! あ、明日、学校、だよ。わ、私、こんな、泣いて、酷い顔だから、早く休まないと」

 

 オレの逸物が勃起していく感触に、櫛田は泣きながらオレの腕を掴んで学生の義務を起死回生の一手とばかりに言ってくる。普段ならそうなのだ、普段なら

 

「櫛田、普段通りの顔で無罪になるのと、泣き腫れ憔悴した顔で無罪になるのと、どちらがいいと思うんだ?」

 

 だが明日、櫛田は裏切り者ではないことを証明するのだ。周囲からの同情を考えると、どうすればいいか解らない櫛田ではない。

 

「……あ、あんたぁ、あんたって、奴はぁ」

 

 櫛田は快くオレの腕から手を離してくれた。泣き叫んでいるように見えたが嬉し泣きだろう。

 そのまま櫛田に応えるためにピストンを開始した。

 

 

 

「ひぅぅ……ぁああっ……うぅ……」

「出すぞ、櫛田」

「……ぁぁっ」

 

 あのまま屈曲位で抽送しながら櫛田に告げるも、虚ろな瞳で憔悴したようにか細く答えるだけになってしまった。

 あの直後は元気に嬌声をあげてくれたのに、あれから三発中だしするとこうなってしまった。

 櫛田の膣はオレの精で満たされ、抽送する度に膣口から白濁液を吐き出す。

 

「くおおっ」

「あぁっ!? ……ぁっ!」

 

 腰を思い切り押し込んで櫛田の膣に五度目の精を吐き出す。微かに痙攣しながら受け止める櫛田の身体に五度目とは思えない大量の精が注ぎこまれる。

 膣口を上向きにされて犯され続けたために、櫛田の子宮はすでに限界まで拡張して、腹を妊娠4ヶ月くらいに膨らませている。

 その白い腹を見ているとさらに欲望がたぎってくるが

 

「限界だな……ふぅ、仕方ないか」

「……かはっ……っ……」

 

 気力と体力の限界を迎えあれだけ締め付けてくれた櫛田の膣は、もうわずかに痙攣するだけになってしまった。暖かいオナホールとしてならまだ有効だがそれ以上ではない、櫛田の余力の底の底まで搾り取ってしまった。

 

「まだ全然足りないんだよな……」

 

 名残惜しく櫛田の乳房を揉んだりするが身体も膣も反応してくれない。気力体力の限界を迎えた櫛田は気絶してしまった。

 処女にあれだけのことをやってもまだ尽きない欲望が、脱力しきってさらに柔らかくなった乳房を揉んでいるうちに蘇ろうとしている。

 

 が、流石にこれ以上は非道だろう。後一発で終わりにしようとしていたところを、まだいけるまだだと言いながら四発だ。

 それも初体験の少女に、オレの巨根でやってしまった。

 

「ふぅっ」

「……ぁ……はぁ」

 

 逸物を抜き出すとポンッと音を立て、うっすらと破瓜の血の色にに染まった白濁液が流れ出すというより決壊したように出てくる。

 タオルで秘所を拭きながら思ってたよりも早く体液が流れなくなったことに、不思議に思い櫛田の腹を見た。

 

「おいおい」

 

 ずっと固定された姿勢で注ぎ続けられた子宮口が急に逸物から解放されて痙攣して閉まってしまったのか、ぽっこりと腹を膨らませたまま子宮から精が出てきていない。

 

「悪いな」

「……ぁっ」

 

 子宮口の上辺りの腹を軽くこぶしを作ってぐりぐりと刺激してやる。無事子宮口が開いたらしく流れてきた。

 せっせと後始末に励む。

 最後に新しいタオルを取り出し人肌より少し温かいくらいの湯で濡らして、全身を拭いてやる。

 

「んにゅ」

 

 心地よさげに顔を緩ませる櫛田を見て口か胸ならと欲望に駆られそうになるが抑える。

 現在時刻は23時過ぎまだ間に合うだろう。五時間以上犯し続けたことからは目を逸らす、

 龍園と南雲直筆の宣誓書片手に、性臭で生臭い部屋から出て後始末を付けに行く。

 

 

 

「……どこ行ってたの?」

 

 一時間ほどしてオレを迎えたのは枕を抱きしめて不安そうにオレを見る櫛田だった。

 

「宣誓書を学校に提出してきた。明日には──」

「なんで、置いていったの? 私を何で置いていったの?」

 

 カラカラに掠れた声で聞いてくる。思っていたより重症だ。聖域に固執するだろうと思っていたが、人気者に戻れることを一時的とはいえ無視するほどとは

 

「櫛田」

「私を捨てるの? 要らないの? 必要ないの!?」

「櫛田」

「あんなに酷いことして、処女奪って出すもの出したら、要らないってふざけないでよ!」

「櫛田」

「嫌だ、捨てな──」

「少し黙れ」

 

 ビクッと怯え竦んだ櫛田の目の前に行き抱きしめる

 

「あっ」

 

 呆然と抱き返してきた櫛田の意識が戻るタイミングで、刷り込むように囁く

 

「そんなに心配しなくていい、捨てたりはしない。お前はオレのモノだし使い勝手のあるいい女だ……捨てはしないさ」

「……堀北は」

「堀北もオレのモノだ。お前と同じように必要なとき使う。不服か?」

「…………ううん。わかった、チッ、一年近く喘がせてた奴は捨てないか……でも、あんたが私を放っておいたら、私に構わなかったら、私はあんたを裏切るからね、ただじゃ済まさないから……いいよね」

「ああ、お前もオレに切り捨てられないようにしろよ。お前がオレにとって必要な存在である限り、オレはお前を捨てない」

「うんっ、これからも、よろ、しくっ……」

 

 そこで力尽きたのだろう、笑みを浮かべた櫛田はオレの胸に凭れかけて眠りに落ちた。

 これだけ限界だったのによくあれだけ話せたものだ。抱きついた腕を離そうとしない櫛田とそのまま抱きしめあって眠った。

 

 

 翌日朝4時に櫛田を起こし互いのスタンスを確認した。櫛田は外では今までと変わらない態度を取るということだ。特別な誰かを持った場合、純白な人気者ではなくなる。

 その理由を聞き、オレは櫛田の場合メンテナンスが必要だがそれ以上にメリットが大きいことを確信した。

 情報収集の分野においてだけではなく、他者への交渉能力も充分にある。目立ちたくないオレとも利害が一致していて、利用価値が非常に高い。

 股に何かを挟んだように歩く姿も、憔悴のあまりでごまかせるだろう。櫛田を見送りながらそう思った。

 

 




綾小路くん「手札がもう一枚増えた」


次回は時間がかかると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音⑥

そんべんさん、アンドリュー123さん評価付けありがとうございます。
244さん、kizitoraさん誤字修正ありがとうございます。


堀北さん「膝枕というのだから服越しは違うわね」


櫛田を見送り六時五分前になったとき、呼び鈴が鳴った。五分前行動を当たり前にする彼女に、感心しながら開ける。

 

「おはよう、清隆君」

「おはよう、鈴音。悪いが頼む」

「ええ、任せて。昨日櫛田さんのことで中止した分も腕によりをかけるわ」

 

 期待すると返しながら鈴音を招き入れる。昨日早朝から騒動になった櫛田の件で一日遅れになったが、今日一日は鈴音の手料理を満喫できる日だ。楽しみに心を弾ませながら先導すると、鈴音が眉根を寄せているのに気づいた。

 

「どうした?」

「芳香剤の臭いが強すぎないかしら……」

「そうか?……そうかもな、これから気をつける」

 

 ええ、と頷く鈴音にばれなかったことに安堵する。換気しても性臭が取れなかったからな。

 

「先に渡しておくわね。はい、お弁当」

「ありがとう」

 

 まだ暖かい男物の弁当箱のずっしりとした重さに顔がほころぶ。

 

「あなたが、そんな顔をしてくれているだけの味は保障するわ」

「美味い昼食が食べれて助かる、今日一日が楽しくなるからな」

 

 そう、と微笑み鈴音はキッチンに向かい朝食の準備を始めた。

 味噌汁のいい匂いが鼻を刺激し、何かしら焼いている音が耳を刺激する。

 こんな時間を過ごすことがあるとはホワイトルームに居た時には想像すらできなかった。

 

 そもそもホワイトルームで美味い物が出てくることは無い。人間の能力を高めるときは、能力を高めるもの以外を排除するのが一番だ。美食など真っ先に排除され、出されるはずが無い。

 人体が糖分を必須としている以上甘いものを食べたことはあるが、甘味とは到底呼べない代物だった。

 

 それに比べると鈴音の今日の朝食は雲泥の差だった。出汁がきいた卵焼きにほうれん草とえのきの和え物に大根と油揚げの味噌汁に鳥の焼き物。正味二十分ちょっとでこれだけのものを作ってくれるとは、美味い美味いと言いながらすぐに平らげてしまったのがもったいないくらいだ。

 

「ごちそうさま」

「お行儀よくないわね。でも、今日も美味しそうに食べてくれて良かったわ」

 

 ずずっと茶を啜りながら礼を言うと鈴音は微笑んでくれた。

 何故か耳の辺りが詰まったように痒くなり、掻いていると

 

「耳がどうかしたの?」

「いや、少し痒いというか詰まったような気がしてな」

「指じゃなくて、綿棒を使いなさい」

「ああ……しまった、前、お前に使い切った」 

 

 探したが普通サイズはすでになく、長いものは鈴音の膣を点検するのに使い切ってしまっていた。

 そのときのことを思い出したのだろう、鈴音は真っ赤になるとこちらを睨んでくる。

 怒鳴るかと思い身構えると、自分のカバンから綿棒を取り出しベッドに座った。

 

 ぽんぽん。

 太ももを露出させるために、スカートをたくしあげてニーソックスを下げて整えると白い太ももを叩いてくる。

 

「さあ」

「……え?」

 

 何言われたのか理解できなかった。いや、正確には理解は出来たのだが信じられなかった。

 固まるオレに鈴音は察しが悪い者を見る目で見ると

 

「掃除してあげるから、来なさい」

「いいのか」

「嫌ならやらないわ。来るの?来ないの?」

「お願いします」

 

 羞恥で赤くなっている鈴音のところに、直ぐに向かい横になろうとする。

 

「待って」

 

 鈴音側に顔を向けようとしていたオレの頭をつかむ

 

「逆よ」

「はい」

 

 太ももを露出させるためにスカートをたくし上げた姿を見て、自然とスカートの中が見える姿勢に向いてしまったオレを誰が責められるというのか。

 仕方なく右側頭部を柔らかな太ももに乗せる。

 膝枕をしてもらうのは初めてだが、こんな風に素肌の上に頭を乗せられるようにするのかとしっとりした肌を味わいながら思う。

 

「どう?清隆君」

「うん、なんか落ち着くな」

 

 微かに甘い匂いがして、目を細めて小さな欠伸をする。

 

「そう、なら始めるわよ」

「ん」

 

 鈴音の手が髪の毛を少しよけて耳に息を軽く吹きかけてくる。丁寧に耳掃除を始めた。

 

「頭を撫でてもいいかしら?」

「ああ」

 

 頭を優しく撫でてくる。

 柔らかな太ももの暖かさと耳をくすぐられる感覚と頭を優しく撫でられる感覚が混じり、何とも心地よい。

 今まで生きていて初めてのむず痒いような心地よさ。

 次第にうとうとし始めてくる。

 ありえないことだった、人前で一方的に身体を触られながら眠くなるなど、知らない。

 

「こっちは終わったわ」

「……そうか」

 

 信じられないくらいに落胆していた。

 

「もう片方の前に少し待っていて」

「……ああ」

 

 そうか、もう片方があるんだ。そのことがそれだけのことが暖かなものを心に呼んでくる

 

「待たせたわね。もう大丈夫よ」

 

 頭を反対にして右耳を上にした姿勢で鈴音の方を向く。

 見えるのは下着を見えないようにスカートの裾を太腿で挟んだ鈴音の姿、あなたの考えはお見通しだと得意げに小鼻を蠢かせている。

 白い太ももが露出されるまでスカートをたくし上げ、下着だけを隠すようにスカートを腿の間で挟んだ姿は、下着を見せるよりもエロい。

 ぶっちゃけ襲いたくなった。

 鈴音といい、櫛田といい処女だったから加減して溜まっているのに

 煩悶するオレに構わず、鈴音は優しくオレの頭をしっとりとした太腿に乗せ、耳を押さえて丁寧に耳掃除を始めた。

 

「汚れているわね。もっと気をつけなさい」

「ああ」

 

 こんな風に優しく注意されたことなんてない。欲望がすぐに引っ込み眠気を伴った暖かな気持ちが押し寄せてくる。

 なんだろうなこの気持ちは

 気付いたときには安らいだ表情で、規則正しく胸を動かして浅い眠りに付いていた。

 

「もう」

 

 くすりと鈴音は笑い、清隆の頭を撫で続ける。人形のように表情が変わらない顔が幼い顔をしている。

 そしてずっと彼を撫でてやる。

 

 

「……悪い。眠っていたか?」

「いいえ…五分くらいよ」

「……そうか、終わったのか」

「いいえ、もう少し残っているわ、続けるわよ」

「……頼む」

 

 まだこの心地いい時間が続くことに嬉しくなる。そうか、嬉しいのかオレは

 

「終わったわ……清隆君?」

「なんだ」

「櫛田さんは……」

 

 優しく撫でながら聞いてくる。耳掃除はもう終わってしまった、答えなくとも鈴音はこのまま撫でてくれるだろうか。頭によぎったのは一瞬だった。

 

「昨日連絡はなかったのか?」

「ええ、なかったわ」

「そうか……なのに心配するのか?」

「ええ、クラスメイトだし、何より、変かもしれないけど私は櫛田さんのこと尊敬しているから」

「尊敬?」

「彼女ほど努力して頑張っている人はそう居ないわ。彼女は勉学やスポーツじゃなくて学校生活……人生を努力して頑張っている。入学したころの私ならそうは思わなかったけど、今の私はそう思う」

「……そうか」

「努力して頑張っている人を嫌いになることは難しいわね。彼女は私を嫌っているし、私も彼女が好きではないけど」

「……なら」

 

 一度言葉を切る。自分でも信じられない言葉が出てしまうから

 

「オレは?お前が実力を隠していると思っているオレは?」

「……よくわからないわね」

 

 苛立ちと凶暴な衝動を覚える。柔らかい太ももに歯をたてて鈴音を犯して

 

「でも、嫌いじゃないわ。そうじゃない人に抱かれたりしない。どんな理由があっても、私は抱かれたりしないわよ」

「……そうか」

「ええ」

 

 ゆるりゆるりと撫でられる。そのまま少し時間が、心地よい時間が流れる。

 

「……時間も少なくなってきたし片付けるわね」

「……そうだな。ありがとう」

 

 ゆっくりとオレの頭をベッドにおくと鈴音はキッチンへと行ってしまった。名残惜しい気持ちが信じられずにてきぱきと片付ける後姿を見ている。

 

「――っ」

 

 キッチンに立つ鈴音の後姿を見ているとつい手が伸びてしまい腰に触れてしまう。鈴音はピクリとするがそれ以外の反応は無い。調子に乗って臀部へと

 パシッと手が叩き落される

 

「朝から盛ってどうするつもり、登校時間は迫っているのよ」

 

 睨まれすごすごと引き下がる。その通りだ、オレは何をしようとしていたのか

 裾が引っ張られる。

 

「――そういうのは、夜にして、まだ何か挟まったように痛いけど、頑張るから」

 

 鈴音は顔を俯かせて、小さな声でその言葉を言った。そのまま手早く片づけを再開する。見える横顔は朱に染まっていた。

 

 

 

 

 

「―――それで、どういうことかしら」

 

 昼休み弁当を広げていると鈴音が話しかけてきた。意味がわからずに弁当のふたを開ける。

 色彩豊かな一口サイズのおかずと炊き込みご飯。早速一口食べる。冷えても美味しい。咀嚼して飲み込む。

 律儀に飲み込むまで待ってから話しかけてきた。

 

「――櫛田さんのことよ」

「櫛田がどうかしたのか?」

 

 クラス全員というより、学校中の生徒が代わる代わる立ち寄り謝罪していく。その度に化粧でも隠せない憔悴して泣き腫らした顔に精一杯の笑顔を浮かべて対応する櫛田の姿は、痛ましくも健気さに満ちている。

 朝一で櫛田の悪評の原因である音声ファイルが、南雲たちの直筆で否定されたことを学校側が公表してから休み時間のたびにこうなっている。

 因みに真っ先に謝罪したのは軽井沢恵で、その謝罪は恵の株を上げたほど見事な謝罪だった。

 このままだと今週は櫛田フィーバーだな。常時誰かと一緒に居るだろう。

 

「……ありがとうって言っておくわ。気に食わないし苛立つけれど」

「何のことかわからないな」

「……ふぅ、私はあなたが約束を守ってくれたことには感謝するだけよ。腹立つけれど」

 

 感謝の気持ちが全く感じられず苛立ちしかない鈴音に答えずに、弁当の魚の竜田揚げを掴む、一口サイズに切り分けられたそれを口に放り込む。美味い。柔らかな身に濃い目の味付けがあってる何の魚なのか

 

「さわらよ」

「ん?」

「その魚」

「そうなのか、美味いな」

 

 周囲には聞こえないような小さな声で教えてくれる。櫛田の周りでわいわい騒いでいる今、間違いなく周りには聞こえていない。

 そのまま無言で互いに食べ始めた。朝、鈴音が用意してくれた水筒から茶を啜る。

 無心に弁当を頬張る。たまに隣から視線が来るが、美味そうにオレが食べているのを確認するとすぐ逸れる。

 

 そうこうしている内に平らげてしまった。小型タッパーに入ったデザートに取り掛かると周りが騒がしくなっていることに気付いた。

 

「綾小路くんがお弁当なんて珍しいね」

 

 視線を向けると周囲を囲まれた櫛田がにこやかに話しかけてきている。

 

「気分転換に始めてみたんだ」

「へえ~遠目で見たんだけど、とても手間がかかってそうなお弁当だったね。冷凍食品なしで作ったのかな?」

「ああ、そうだ」

 

 視界の隅で鈴音が頷いているのを確認して肯定する。

 

「ふぅ~ん、綾小路くんがこんなに料理が得意だなんて知らなかったなあ。私も料理するけどこれだけのものを作るの大変だよね?」

 

 何故そこで鈴音を流し目で見るのか知るのが恐い

 

「毎日ならともかく、週一で作るつもりだからな。だから何とかなる」

「へぇ、そうなんだ」

 

 櫛田からあまり穏やかでない気配が、オレにだけ向けて発せられる。器用なことをする奴だ。

 そんな櫛田を他クラスの女生徒が引っ張る。

 

「あの、桔梗ちゃん……そろそろ行かないと間に合わなくなるよ。席取ってもらって待たせるのも悪いし」

「あっ、うん、ごめんね……またね、綾小路くん。堀北さんも色々ありがとう、あとでちゃんとお礼を言うから」

「気にしなくていいわよ。櫛田さんの疑いが晴れて良かったわ」

 

 オレにだけ一瞬冷たい目を向け、鈴音に満面の笑顔で礼を言うと去っていった。

 何故だろう、股に何かを挟んだように歩く姿が大袈裟になっているような気がする。

 

「綾小路君」

「なんだ」

「櫛田さん、痛そうね」

 

 一瞬心臓が止まったかと思った。

 

「そうだな、何かあったのかもな」

「何だと思う?」

「女子の顔のことを言うのは悪いと思うんだが、あの顔から見ると一晩中泣いていたのかもな。それで憔悴しているだけじゃないのか」

「そうかしら、私には普通に歩いているつもりでもああいう風に歩いてしまう理由に心当たりがあるのだけど。何かが入ってるみたいで、とても痛くて苦しくて大変なのよ。私は今でも気を抜くと櫛田さんみたいになってしまうから、とても困っているわね」

「そうなのか、何か手助け出来ることがあれば言ってくれ……女性特有のことならオレに出来ることはないが」

「セクハラね。それ」

 

 ちらりとこちらを見るがオレのポーカーフェイスから何かを読み取ることなど出来るはずがない。

 あきらめたように力を抜くと、一度下腹を見せつけるように撫でて食事を再開した。

 オレも残ったデザートであるフルーツヨーグルトに手を伸ばす。手が震えていないことに、我ながら感心する。

 

「綾小路君、帰りに少し付き合ってもらえないかしら?無料食材を手に入れる頭数が欲しいの」

「ああ、いいぞ」

 

 遠くで、波瑠加が顔を覆いながら親指を立てている姿と、恵が何とも言えない目で櫛田と鈴音を見比べる姿が目に付いた。

明日は祝日だ楽しみだな。

 

 

「あぁっ!……くっ、はぁぁっ……はぁぁーっ、入ってる。私の中に、また……んくっ」

 

 夕食後、ベッドの上で鈴音を正常位で犯していた。

 二度前戯でイカせた膣は十分すぎるほど濡れていたが、膣肉はまだ硬く逸物を沈めていくたびにゴリゴリと引っかかりむず痒い刺激が伝わってくる。

 

「鈴音の中は熱くてトロトロだな。まだ硬いところがあるが気持ちいい」

「そう……でも、これ、ぅぅっ、ぁぁっ……いっ」

 

 推し進めると膣の半分で顔をしかめる

 

「まだ痛いか」

「ええ、でも、まだっ、大丈夫。私の中が広がってるのがわかるからっ、あなたの形を覚えようとして、んんっ!」

 

 嬉しいことを言ってくれる。最初はきつく締め付けるだけだった秘所は、オレの形を覚え込み始め痛みだけでなく快楽を伝えるようになった。

腰をその場で動かしてきつい膣内の浅いところを擦り上げるとさらに快楽が混じった声になった。

 

「くはっ……あうっ!ひっぁぁっ!そこっ、やっ、あっ!」

 

 浅いところといえばGスポットだ。

腰を動かし亀頭がその部分を擦れるたびに鈴音は快楽の叫びを上げ、離れようとすると切なそうに見てくる。そんな自分に気付いてすぐに顔を引き締める。

 我慢できなくなり、ゆっくりと腰を奥へ進めていく。

 

「はっ、ああっ!はあっ……んんっ、奥にまで、んぁっ」

 

 腰を奥に動かすたびにくちゅぬちゃと淫らな水音が響く、まだまだ男に慣れていない膣をゆっくりと進める。

 

「あ、ああっ……私の、あそこ、変な音、だしちゃってる……んあっ」

「鈴音が良く締めているからな」

「わ、私の、せい、だと、んあっ、いうの?」

「そう言っている」

「前は、こんなに、いやらしい音してなかったわ、はぁぁっ、もっと下品で、私を、壊して、しまうような……あううっ」

 

 頭を振って自分の顔からよだれと涙と鼻水と汗が飛んでいくのを見て顔に手をやる

 

「私っ、どんな顔……して」

「かなりだらしない顔だな。鏡持ってこようか」

「持ってこないでぇぇっ!恥ずかしいわっ、あなただけ、見ていいからっ、んぁぁっ」

 

 自分がどんな顔をしているか自覚があるのだろう、嬌声を上げて潤ませた目で懇願してくる。興奮してさらに奥へと逸物をゆっくりと進める。

 さらに結合部から水音がしてくる。

 鈴音が言ったように、オレの逸物が膣を限界以上に拡張していたため、僅かに膣口に隙間が出来た時に体液を迸らせながら響かせていた爆音ではなく。

余裕を持ったどこか優しい淫らな水音。

 

「こんなに、いやらしい音……わたしのっ、せいかも、知れないっ、なんだか、気持ちいいのよ、お腹の中っ、広がって……あぁ、気持ちいい……はぁっ、はあっ」

「どうして欲しいんだ。言ってみろ」

「気持ちいいからっ、もっともっとって、私の身体が、言ってるっ、のよ、だからっ……」

「だから?」

「もっと奥まで入れてっ、動いて、お願いっ、もっと、気持ちよくし――ぁぁあああ!?あっ、はっ、あっあああんっ!」

 

 我慢できずに鈴音の言葉の途中で奥にまで逸物を叩き込む、子宮口のコリッとした感触が亀頭をおそう。

 そのまま、ピストンではなくかき回すように腰を回す。

 まだまだ開発途中の鈴音にはこの方がいい。

 

「あっ、ああっ!ひんっ、ひぁ、んんっ、お腹の中……すごいぃっ、あひんっ!」

 

 最後に鈴音の嬌声と水音が一際大きくなる。鈴音のイイトコロに当たったらしい。

 鈴音がハッとしたように此方を見る、口角を上げてしまうオレを見て顔を引きつらせる。

 

「この辺かな?」

「ま、待って、待ってぇ、ダメっ、んっんぁぁぁっ!ぁぁぁ」

 

急所にかするように亀頭を擦り付ける。絞り出すように嬌声があがる。

 

「ああ、こっちのほうだったかな?」

「待って、さっきイッちゃっ、ああっ、怖いから、止めっ、あぁぁあっ!」

 

急所が当たらないところを虐める。耐えるような嬌声があがる。

 

「悪いな。ここだった」

「ひゃぁぅっ!人を、おもちゃ、んんひぁっぅっ!あっ!あっ!」

 

 彼女のイイトコロを擦り上げる。あまりの快楽による刺激に、身体を硬直させて嬌声を叫ぶ鈴音。

 膣がうねり強張りが抜けて、膣壁が数多のミミズがうごめくように動いてくる。一匹ずつ逸物に絡みつき、締め付けてくる。

 

「気持ちよくしてくれって言っていただろう」

「だ、だって、こんなに、んはぁ!痺れるなんてぇ、知らないもの、あぁぁんっ!」

「なら、これから知っていけばいい。教えてやる」

 

 腰をかき回しながら抽送を始める。奥というよりも腹に向かって突き上げた方が鈴音は歓喜の涙をこぼす

 

「あっ、ああーーっ!……ぐりぐりしながら、ぐりぐりっ、しながら……ダメっ!動いたらぁっ!ひぁああぅんっ!止めっ!あひぃぃぃーっ!」

 

 何度も絶頂させながら動かすと、鈴音は泣きながら止めようとしてくる。

 

「だめっなのにぃっ!……なんで、強くするのよぉっ!速くもダメぇぇぇっ!」

「上の口も下の口も」

 

 言いながら鈴音の顔に張り付いた鈴音の髪をよける。焦点の合わない快楽に蕩けきった顔が現れる。

 焦点が合いオレの表情から、自分がどんな顔をしているのかを悟り手で顔を隠す。

 すかさず手を外して視線を絡ませる。

 

「何よりオレが見て発情しきった顔が、もっとって言っているからだ」

「ぅぅぅ……だって、あんなに、されたらっ、私、もう、真っ白になってぇ、あんっ、まだ、まってぇ、んあぁっ!」

 

 ぽろりと一筋涙を零すと吹っ切れたように自分で腰をねだるように動かそうとして、何かを思い出したように止める。

 

「あっあっああっ!待って、溶けちゃう……私の、あそこが、とけちゃいそうなのよ」

「もう十分溶けているぞ。鈴音のまんこがドロドロでオレを包んでいる」

「でも、私っ、このままじゃ、またっ、イッちゃいそうでっ、あなたより先にっ」

「我慢するな、先にイッていい」

 

 何を気にしていたと思ったらオレと一緒にイキたかったのか。あまりの健気さにまた口角が上がってしまう。

 オレはまだまだ絶頂しそうにないが、鈴音は限界だったのだろう安堵したように力を抜き

 

「あっ、ああっ、あああんっ、そこだめ、ダメぇぇ……ぁぁあああっ!んんんんーっっ!」

 

 びくびくと身体を震わせて絶頂する。

 

「はっ、はひぃ、はぁっ……あぁぁっ、すごぃ、なんだかすごいわ、これぇ……はぁっ」

 

 膣が恐ろしい勢いで逸物を抱きしめるよう締め付けてくるが耐える。

 

「くっ、すごい締め付けだな」

 

 思わず腰を動かしてしまう。恐ろしいほどの締め付けでは、それだけで膣壁が追いかけるようにうごめくので快感になる。その上

 

「駄目よっ、まだ離れないでぇ……あひぃんっ!」

 

 鈴音がオレが離れていくと勘違いしたのか、追いかけるように腰を動かしてくる。自然と抽送する形になり可愛いらしい嬌声を上げる。

 

「鈴音、お前は本当に天然にエロいな」

「はぁ、はぁ、……え?なんて?」

「オレも出したくなってきた。動くぞと言ったんだ」

「ええ、いいわよ。ふぁんっ、避妊はちゃんとしているから、はぁっ、私の中に出して」

 

 言葉とともに膣が精を求めるように蠢きだす。

 さっき見つけたばかりの鈴音の急所に抉るように逸物を進める

 

「あっ、ふぁあっ!ひんっ、深いっ」

「可愛いぞ、鈴音」

 

 手で乳房を愛撫すると、鈴音は顎をあげて白い喉を見せながら喘ぐ。

 

「あぁぁっ、あんっ!む、胸、揉んじゃ、いやっ」

「何いってる。揉む度にお前の中、締まって汁が溢れて来ているぞ」

「ああっ、は、恥ずかしいっ!」

 珠のような汗を幾つも浮かべた鈴音が頭を振る度に、秘所がきゅっと逸物を奥に向けて収斂させる。中だしを自分から言えるのに言葉責めには恥ずかしがる。

 

「硬さがとれてきたな。覚えが良い身体でオレも嬉しいぞ」

 

 巾着のように巻き付く膣肉を味わいながら、鈴音の体を抱きしめる。

 

「はぁっ、はひぃ、深いっ、はぁ、ひゃぁぅっ!」

「もっと深く味わわせてやるからな」

 上体を起こしながら胡座をかいた真ん中に鈴音を落とす。柔らかな尻が組んだ足の上で弾む。

 

「あっああーっ!?この格好、まえにっ!」

 

以前この体位でどうなったかを思いだし戸惑う鈴音に声を掛ける

 

「お前の脚をオレの腰に巻き付けろ」

 

言いながら両手で鈴音の太腿を抱え込んで巻き付かせる。秘所を貫く逸物の角度と自重でさらに深くオレを感じて嬌声を上げる。

 

「ひぃぃぃぃっ!深いっ、きついわぁ!こ、こんな格好、恥ずかしいっ!」

 

すっぽりと下半身をオレの胡座の中に落とし込んだ鈴音の背中に、手を回し抱き合う。

 

「あひぃっ!胸がっ、擦れちゃ……あああっ!やっ!あぁっ!」

 

桜色に尖った乳首を胸板で擦られ快楽の声を上げ、震えが止まらなくなる。

長く白い脚と腕をオレの背中の上と下でクロスさせて、身体をこれ以上震わせないようにする。

 

「鈴音の柔らかい身体が全身で感じられて気持ちいいぞ」

「あっあひぃっ!はぁ、あんっ、わ、私もっ、ふぁっ、あはぁっ、ひぁんっ!」

 

身体を密着させたまま膣肉を上へと突き上げ、鈴音の重さで落ちてきたらまた突き上げる。

子宮の入り口を硬い亀頭で小突かれ鈴音の理性がなくなっていく。

 

「私も、なんだ?」

「私っ、んひぃっ、わ、わからないっ、はぁぅ!もう何も、考え、られなくっ!」

 

自分から腰を動かして逸物をさらに奥深く咥えこんでいく。彼女の乱れた息遣いに刺激された劣情をぶつけるように鈴音の乳房を鷲掴みにした。

 

「わ、私っ、もうっ!おかしくなっちゃうっ!」

 

体内で荒れ狂う快楽の嵐に曝け出す。身体をオレに擦り付けてくる、お互いの身体が密着しあい、互いの汗が混じりあう。

互いの陰毛が体液に濡れて擦り合い、ぐしょりぐしょりと淫らな音を奏でる。

 

「そうか、オレも射精そうだ…っ! 中に射精すぞ、鈴音」

「え、ええっ!ああっ!ひああっ!一緒にっ」

 

腰を持ち上げて突き立てると鈴音の腰が捩れて背中が折れそうなほど仰け反る。

乳房を握りしめて溜まりに溜めたものを鈴音の中で放出する。

 

「ああああーっ!ま、またっ……いくわっ!イクうぅ―っ!」

 

全身を震わせる少女の子宮に最後の一滴まで注ぎ込む。

だらりとオレの胸に頭を預けてくる。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ……そう、中で出したの」

「え?」

 

秘所から流れ落ちる白濁液を見ながら、鈴音は透き通るような笑みを浮かべた。

 

「はぁっ……ふふっ、中でね」

 




私見ですが
恋は、相手と何かをしたい、何かしてほしいもの
愛は、相手に何かをしたい、何かを与えたいもの

だと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音⑦

ルートさん、バタ水さん評価付けありがとうございました。
244さん、高山流水さん誤字修正いつもありがとうございます。



 鈴音の呼吸が収まり、情事の後の気怠い余韻の中、対面座位のまま膣からたらたらと白濁液が流れるのを見ながら話しかけた。

 

「鈴音、話がある」

「何かしら?」

「櫛田を抱いた」

 

 今日の昼の櫛田の様子からどうなるかは解らないが、話しておいた方がリスクが低い。

 鈴音は一つため息をつくと

 

「ええ、知っているわ。昨日でしょう」

「……何故そう思うんだ?」

 

 あまりに意外な返答に間が空いてしまった。

 

「あなたは気付いていなかったと思うけど、櫛田さんは今日ずっとあなたを意識していたわ。茶柱先生が宣誓書を皆に見せたときも、軽井沢さんに謝られたときも、周りを囲まれているときも、何時もね」

 

 それはないだろう。櫛田の様子を見ていたが、そんなそぶりは見せなかった。

 唯一、オレに意識を向けたのは昼のときだけだ。

 

「────と考えているのでしょうね」

「ああ、そうだ」

 

 もう一度ため息をついた

 

「解るのよ、櫛田さんは視線はほとんど向けていなかったけど、あなたから意識を外していない。いえ、外せなかったわ。彼女の意識を向ける最優先の相手は、今日一日ずっとあなただった。昨日まではそうじゃなかったのに、今日はずっと……だから、気付いたのよ。ああ、櫛田さんはあなたとって」

「……今日のいつ頃からだ」

 

 何故か喉が乾く。何年ぶりに抱く理解できないモノに対する恐れ。自身に害をもたらすかもしれないという恐怖。

 

「朝には気付いていたわね」

「本当なら大したものだな、他に誰か気付いていた奴はいるか?」

「解らないわね。いないと思うけど、あなたが言ったように櫛田さんはあなたに視線をほとんど向けていなかったから」

「なら、何故お前は気づいた?……答えてくれ」

 

 問に鈴音は顔を赤らめ躊躇うが、二度問うと答える。

 

「私もそうだったから……私もあなたに抱かれた後の最初の登校日、櫛田さんの事件が起こった昨日はあなたをずっと……」

 

 そこで顔を横に俯かせる。そんな勘のようなもので気付かれるとは信じられない所があるが、現に鈴音は気付いた。

 

「そうか……もうひとつ聞くがいいか?」

「何かしら?」

 

 少なくともオレには理解できない。対処方法もない。女の勘の凄まじさに、これから行動するときに面倒が一つ増えたことに吐息混じりに言うと鈴音が再び顔を上げてきた

 

「もし、気が付いている奴がいるとすればどういう奴だと思う?」

「……そうね……とても鋭い人か、あなたに好意を持っている人……あなたとしている人が居たら気付くかも知れないわね」

「最後は居ないし、他は心当たりがないな」

「そうなの……」

 

 心当たりを思いだし、鈴音の柔らかい腹に当てたままの逸物が隆起し始める。その感触に赤くなりながら、鈴音は意を決したように話してきた。

 

「清隆君に聞きたいことがあるわ」

「櫛田のことなら捨てない」

「ええ、わかってる。昼も言ったわよね。複雑だし気に食わないし苛立つし腹が立つけど、納得したって」

 

 微妙に変わっている気がするが、気にしないでおこう

 背中に回されていた鈴音の手足が、締まってきたことも関係ない。

 

「聞きたいのは、櫛田さんで終わりかってことよ。あなたが、これから卒業まで他の人を毒牙にかけないのかを知りたいわ。私たちとこうなった以上、あなたは普通の恋愛をするとは思えないしどうするつもりなの?」

 

 その答えは決まっている。オレが身近な人物との性行為を楽しいと思っているのだ。何年かぶりに抱いた、何かしたいという衝動を否定はできない。

 

「合意を前提にするが、何人かセフレにしたいと思っている奴が居るからな。相手が心底嫌がらなければモノにしていく。一人は直ぐにでも」

「……誰か教えるつもりはあるかしら?」

「いいや」

 

 過程によっては強引に合意させることが有るかもしれないが、魅力的な少女が多い。今までの人畜無害をしているメリットも薄くなった。安全を確保して狩っていく。

 尤もオレに好意を持ってくれている相手などそうはいないだろうが。

 それは置いても恵には手をつける必要がある。自分以外の誰かと肉体関係を持ったことを、恵は何れ気が付く。いや、すでに気が付いている公算が高い。

 そうなれば、彼女は自分が不要になったのではないかと焦るだろう。早急にセフレにしなければならない。オレが身体を必要としていることが、恵に安定をもたらす。

 何より恵の身体は魅力的だ。

 まあ、その前に少し熟成するが

 鬼畜の思考と発言だった。

 

「あなた、世間一般の良識や倫理を何だと思っているのよ。ある程度、そうだとは思っていたけど予想以上ね……二つ約束して貰いたいわ。そうしたら私は納得する」

「お前がオレに出した条件を受け入れる理由も義理もない」

 

 にべもなく断る、鈴音との契約上オレは鈴音に何ら縛られることはない。

 そんなオレを腐れ外道を見る目で睨むと、鈴音はオレの手を掴み子宮の上辺りの腹に手を置かせる

 

「さっき中に出したわよね。私が避妊薬今日飲んでいなくて危ない日って言ったら、どうするつもり?」

「副作用があるが、アフターピルを無理矢理飲ませる。十二時間後にもな。それでも駄目なら……なるほど手間がかかるな、それを念頭に置けば許容できる条件と言うわけか」

 

 堕胎は手間とリスクが高いように見えるが、受精したばかりの時はそうではない。仮に腹が大きくなっても、必要ならやるまでだ。病院なしでも可能なスキルがオレにはある。

 そもそも危険日だからと言ってそうそう妊娠はしない。鈴音の体温が極端に低くなる前日は危ないが今回は無かった。

 鈴音、オレにそんな脅しは通じない。

 暗に堕胎を躊躇わないと闇を見せたオレに、蒼白となっている鈴音に話を促す。

 

「……ええ、そうよ。その前にごめんなさい」

 

 居ずまいを正してオレを見て頭を下げた。

 

「さっきのことは安心して、ちゃんと毎日1日1錠、同じ時間帯にあなたからもらった避妊薬を飲んでいる。あなたが約束しなくてもこれからも続ける。……何よりも妊娠で脅迫するなんて卑劣で愚かなことをした、二度としないわ。ごめんなさい」

「いや、こちらこそすまなかった」

 

 心底恥じ入って謝る姿に、此方も言い過ぎたという姿勢を取る。オレとしてはそう悪い事だと思わなかったが、鈴音にとっては許されるラインを越えていたらしい。留意しておこう。

 

「……私の条件はまず手を出した相手を教えて貰うこと……もし教えなくても、今日のように自分で気付くわ」

 

 怯えか自責の念のためにか声を震えながら強がるのは大したものだし、確かに鈴音は櫛田に気付いたから隠す意味は薄い。

 

「良いだろう、その条件は受ける」

「もう一つは、私と櫛田さんみたいにする相手にあなたが複数の相手と肉体関係をもっていることを話してもらうわ。性行為の前によ。他者に対して最低限守るべき一線だと私は思う、だからそれすらしないのならあなたを許さない」

「……」

 

 確かにそうかもしれない。常識人の鈴音がこう言うのであれば、その意見は考慮するべきだ。具体的に何を話すかはオレが決めるがそれは折り込み済みだろう

 

「良いだろう、両方受け入れる」

「そう……やっぱり、あなたは恐い人ね」

 

 緊張が切れて脱力しオレにしなだれかかる。

 恐怖から解放され力が抜けきった時、人は心の底を曝け出すことが多い、丁度今の鈴音のように

 朝はわからない人で今は恐い人か、気にしている訳ではないが……鈴音の無意識下を引き出すために囁くように聞く、軽い催眠術だ。

 

「わからなくて恐い人に、抱かれるのは嫌いじゃないのか?」

「……いいえ」

 

 透き通るような笑みを浮かべた

 

「あなたに抱かれるのは、好きよ」

 

「まだ、恥ずかしくて痛くて恐いけど、あなたに抱かれるのは好き。あなたがわからなくて恐い人でも」

 

 なんの衒いもなく言い切った。

 ……何故かまた耳を掻きたくなった。

 

 

 自分が半分無意識で何を言ったのか理解して羞恥に真っ赤になった鈴音を見ていると、恐ろしいほど滾ってきた。

 情欲のまま、オレは鈴音の唇を奪った。

 

「……え、ん、むっ……んっ」

 

 唇だけを合わせる優しいキス。

 前回はいきなり舌を捩じ込まれた鈴音は、うっとりと目を閉じる。

 発情した雌の匂いが鼻をくすぐる。

 

「ちゅ、ちゅ……ちゅっ、ちゅっ、んんっ」

 

 鈴音の唇を何度か啄んで一拍空ける。どうすればいいかわからず無反応な鈴音にもう一度繰り返す。

 おずおずとオレの唇を啄み始めた、それで良いと意思を込めて背中を撫でる。

 

「あっ、ちゅ、ちゅ、ちゅっ、んっ、ちゅ」

 

 夢中になって啄んできた。

 落ち着いた時を見計らって舌を捩じ込んだ。

 

「んむぅ……っ! むぅ、んっ、ちゅむっ、んちゅ」

 

 絡めてくる舌を吸い取るように愛撫して、背中を優しく撫でる。

 幸せそうに本当に幸せそうな表情でキスを受け入れている。

 用意しておいたロープを手に取る

 

「んんっ!!むむっ!?ふむぅ!」

 

 自身の肌に触れた異物を訝しむように目を開ける。

 ぐるぐるとロープで拘束され始めていることに気付いた。

 狼狽した悲鳴をキスで塞ぎながら、ロープで背中に回った足首を拘束して首の後ろに回った手首を拘束する。

 拘束した二つの場所を十センチくらいの幅で結ぶ

 

「んむっ!?んふぅ!んんっ!」

 

 オレの胸板に、白い柔らかな二つの乳房を擦り付けながら背中に長い足を巻き付ける姿勢で固定した。

 その間ずっとキスをし続けている。

 目の前にある鈴音の瞳から、驚愕怯え怒り羞恥の感情が主に読み取れる。

 鈴音の顎を片手で掴み、舌を噛まないようにする。

 もう片方の手で鈴音の腰をつかむ。

 

「んんっ!……ん……んひっぅ!」

 

 まださっき出した白濁液がぽたりと落ちている秘所に逸物を当てる。ぽかりと開いた秘裂はスムーズに膣口に亀頭を当てることができた。

 驚愕に目を開ける彼女を見ながら腰から手を離す。

 慌てて拘束された腕と足に力を入れる。何度も絶頂して中に一度射精され力の入らない腕と足で。

 

「ふむぅ!ふうんっ!?んっ」

 

 抵抗もむなしくじわじわと鈴音の自重で逸物が入っていく。

「なぜ、抵抗するんだ」と目で問えば、「こんな風にロープで縛られて犯されようとしているのに、抵抗しないわけないでしょう!」と目で返してくる。おそらく合っているだろう

 一度唇を離して、顎を動かせず喋れない鈴音の目を見てゆっくり言う。

 

「わかった、鈴音が頑張る限り犯せないようにする。ちんこが入らないように踏ん張れよ」

「ふむぅ!?んむっ!んふぅ!」

 

 再度唇を重ねてしばらく待つことにする。必死に腕と足で踏ん張り逸物が入らないように頑張る鈴音。

 縛った両腕と両足が白くなりがくがくと震えても鈴音は頑張ろうとしているが、とめどなく溢れてくる愛液と鈴音の自重には勝てずにぐじゅと音を立ながら少しずつ入っていく。

 鈴音の鼻息の暖かさを顔で感じながら、「止めて」と彼女の舌によって優しくノックされる口内と「いやいや」と潤ませる瞳と、少しずつ暖かい膣に包まれていく亀頭からの痺れるような甘い感覚が混じり合い。たまらなく心地よい。

 腰に回していた手を尻に回した。

 

「んふぁっ!!?」

 

 鈴音の反応は劇的だった。そういえば以前この体位でイカせたときに、アナルに指を突っ込んで虐めたことがあった。

 それを思い出したのだろう。「お尻はイヤ、お尻はイヤ」だと涙を流しながら目で懇願してくる。

 勉強の結果、どうやらアナルセックスというものが世の中にはあると知ったらしい。 純白の存在を汚した喜びが湧く。

 が、鈴音の恐怖は的外れと言って良い。オレにアナルセックスをするつもりが、今のところないからだ。

 あの時は指一本だったから入ったのだし、鈴音は衝撃だけで快楽を感じてはいなかった。

 

 アナルセックスは手間がかかる。鈴音を何度も浣腸して腸を綺麗にした後、コンドームをつけた上にローション代わりの乳液あたりを塗った道具を入れる。短時間では効果がないから数時間は入れておきたい。最初は小さいもので拡張していきだんだん大きくしていく。

 半月はかかるな。しかもその間鈴音は抵抗するだろう。

 

 想像してみる。

 拘束して何回も浣腸をして泣き叫ばせた後、アナルを出る液から原液しか出なくなるまで綺麗にされた鈴音の表情。

 そのアナルを拡張するために、コンドームをつけてローションを塗った道具を無理矢理入れて学校に行かせる。ここ数日のように、股に何かが挟まっているように歩く姿。

 鈴音が取ったりしないように、錠をつけたり、圧力がなくなると大音響が出る仕掛けを道具に内蔵する。仕掛けを見せたときの絶望した顔。

 耐えられない便意に学校で外してくれと、羞恥に染まった顔で懇願させる。

 

「んんむぅ!?」

 

 不味い、想像して逸物に力を入れてしまった。

 お陰で雁首どころか幹の太いところまで膣の中に潜りこんでいる。

 これでは自重でじわじわと潜り込ませられない。

 

「んはぐぅ!?」

 

 仕方なく子宮まで一気に入れると、鈴音は目を白黒させて震える。顎を押さえていなければ舌を噛んだだろう。

 唇を離し、そんな彼女と目を合わせる。

 びくりと震えた熱いくらいの鈴音の柔らかい身体が、気持ちが良い。

 そんな彼女の耳に囁く

 

「鈴音、オレは決めた。お前の身体をオレがいないと耐えられないような、エロい身体に作り替えるからな」

「え、ちょっ、ちょっと、待っ、ああっ!深いっ!」

 

 鈴音の制止を無視して、鈴音が言葉を発した瞬間腰をふり始める。

 

「どろどろだな。何時もよりも濡れているぞ。縛られたらこんなに濡れるのか?鈴音は」

 

 泡立ち白濁した愛液を掬って鈴音に見せてやる。

 キスをあれだけした後に逸物がじわじわ入るような前戯をしたのだから、濡れているのは当たり前だが経験の浅い鈴音にわかるはずがない。

 

「そ、そんな、わけっ、ひぅっ!うっうっ……」

「上の口は素直じゃないな」

 

 怒りの表情が奥を突かれて快楽の色に変わる。

 二つ折りに近い体勢のおかけで子宮がせりだしているところに逸物を叩き込む。ぷしゅっと潮をはく。

 

「下の口は素直だな、ぴったりはまった」

「う、うぐっ……あっああ!あうんっ!」

 

 逸物を甘美な粘膜が極限まで絞りこんでいく。ここまで結合が完璧になれば、男側は射精感に悩まされることが少なくなり、甘美な粘膜を味わえる。

 

「あぅぅっ、こんなっ、いやっ、縛らないで、普通にっ、いやっ」

「なぜそんなに嫌がるんだ?鈴音」

「なんでって……ひあっ、だって、こんなのっ、普通じゃないでしょう。手足を縛るなんて……こんな」

「割とよくあるプレイの一環だ。お前が勉強した媒体が何かは知らないが、書いてあっただろう」

「……ええ、確かにっ、でも……ああっ!」

 

 僅かに納得した鈴音に腰をうちつけて嬌声を上げさせる。このまま刷り込むように鈴音の瞳をじっと見つめる。

 

「だろう……それとも、嫌なのか、鈴音」

「そ、そんな目されたら、んひぃ……でも、さっきまで見たいに、優しいほうが、私っ」

「でも、嫌じゃないんだな」

 

 言葉尻を捉えた発言に、赤く染めた目元を下げると言い始めた。

 

「……清隆君は、どうなの?」

「オレはこうするのが好きだ、鈴音の白い肌に赤いロープがよく映えている……ここも」

「ひんっ」

 

 乳房を掴むと上下を指でなぞる。上下できっちり縄でくびり出すとどうなるだろう。

 ふるえる耳たぶを甘噛みしながら、乳房を優しくなでまわしながら耳元に囁く。

 

「縛りたいんだがな……」

「あぁ……そ、そんなの、ダメ……あっ、ずるい、わよ……はぁ」

 

 乳房と耳を同時に責めると、ピクピクと身体を震わせながら非難して吐息を漏らした。

 

「……胸を縛らないなら……いいわ」

「つまりどことどこを縛るんだ?」

「──ッ、本当に性格悪いわねあなたっ!今縛っている手と足なら許してあげる……それ以上は許さない」

「もうちょっと言い方があるんだが、縛ることを受け入れてくれたんだと前向きに認識する。これからもな」

「……あとで……憶えておきなさいよ。覚悟しておくことね……あひんっ」

 

 縛りを否定しない鈴音の許可が下りたので、指が沈み込む尻を抱え込んでゆっくりと突き上げる。

 

「ひあっ、ダメよ、そこは、いやっ!……あ、ああっ……うぅっ、はっ、はふっ」

 

 尻を掴まれたことで薄茶の窄まりを刺激されるのではないかと怯える鈴音。指をじわじわとアナルに進めて触れるか触れないかのところで遠ざける。

 

「そこってどこなんだ?」

「ひっ……そこよ、その、お尻の……だめっ、またっ」

 

 再びアナルに向けて尻を揉みこむようにしながら進めて、アナルに触れるか触れないところまで近づき、指を二本尻から離した。次に指を下ろすところはもちろん

 

「お尻の穴よっ!触っちゃダメ、止めて、触らないで……あっ」

 

 鈴音の叫びに答えて指を尻に下ろして手をアナルから遠ざける。人前で尻の穴を叫んだことに恥ずかしそうにもだえる鈴音。

 その姿をみて、何時かアナルプランを実行することを決める。鈴音の快楽の入り雑じった羞恥の顔は、可愛いからもっと見たくなる。

 

 堪らなくなって鈴音の名器にリビドーを腰の動きに変えてぶつける。まだ固さの残る膣の固いところをぐりぐりと亀頭で柔らかくしながら抉る。

 

「あ、あああっ!だっ、だめぇ、はぁ、あぁん!」

 

 鈴音の首筋まで上気して桃色となり、胸板で擦られる乳房の突起が痛いほど固くなる。尻の奥から漏れる水音は

 さらに大きくなり、発情した雌の匂いを強くする。

 

「あひっ、ああっ!うそっ、またっ、なかで、太いのがびくびくしてっ、おかしくなっちゃうっ!」

 

 常にどこかを愛撫されていた鈴音の身体は絶頂に追い上げられていく。

 ありのままのことを夢中で声に出し、拘束された身体から汗を垂れ流しながら、淫らにくねらせ踊らせる。

 

「イキそうだ。そろそろ射精すぞ」

 

 宣言して下から逸物を突き上げる。汗に濡れた乳房が胸板と擦れ合い、じゅぽじゅぽと恥ずかしい音をたてる

 

「あんっ、ああっ!おっぱい、あつくて、溶けちゃぅ、ああぁ、音っ、恥ずかしいわっ、あひぃぃ!」

 

 数時間さんざん虐めて膣内射精して蹂躙したとはいえ、まだ経験はほとんどないため、その締め付けは非常に強いものだ。

 巨根を動かすのは難しいが、逆に挑みがいがある。Gスポットとイイトコロを抉りながら固いところを解す。

 

「あっはあああああ!?」

 

 絶頂して、何度もはいた潮以外のツンとしたアンモニア臭の液体が飛び出す。

 

「小便か」

「いやぁぁぁ!?ごめんなさいっ、みないでぇ!後で綺麗にするから、みないでぇ!」

 

 粗相をしてしまったことに気付いた鈴音が、発狂したように哀願してくる。が、構わずに腰を思い切り打ち込む。

 

「かっ、かっはぁ、あっ、あっ、あっ、おしっこっ、ひぃあぁぁぁっ!」

 

 はじめての本気の打ち込みに、耐えられずにまた尿を漏らし涕泣をもらす。

 

「出すぞ、一番奥にっ」

「駄目ぇぇ!今は駄目ぇぇ!ひいっ、おしっこ、また出ちゃうっ、あひんっ、これ以上辱しめないでぇ!」

 

 羞恥の極致に幼さが入り雑じって泣き叫ぶ鈴音は、いい加減学習するべきだ。

 その姿がオレを昂らせることを、何時でも出せたのに決定的なタイミングを待っていた射精を開始する。

 

「出すぞっ、くっ」

「やっ、ああっひああっ!?イッちゃっ!やぁあああっ!熱いのがっ入って、出ちゃ……」

 

 射精と同時に噴水のように愛液と小便を吹き出した鈴音は、拘束された手で虚空を掴む。逸物に翻弄されて何かにすがるように伸ばしても、なにも掴めず絶頂する。

 

 受け入れられる限界を超えて、がくりと全ての意識を飛ばしてしまった。

 

「……大丈夫か、これ?」

 

 胸板に頭を置いてはあっはあっと深く重い呼吸をし、全身に尋常ではない汗の量を浮かび上がらせて、股間から白濁液と黄色い尿が垂れている鈴音の姿は酷いことになっている。

 つい撮ってしまった写真が広がりでもしたら自殺しかねない。じぶんでみるだけにしよう。

 

 深い微睡から覚めた鈴音に、スポーツドリンクを飲ませる。 余りの醜態に胸板に顔を擦り付けて泣きっぱなしなので、大変だったが何とかした。

 

「お風呂入りたいわ」

 

 未だ胸板から顔をあげずに、──というより粗相した相手のオレに顔を合わせられないのだろう──ポツリと呟いた。

 

「お風呂入って……もう休ませて……ロープもほどいて」

 

 普段とはかけ離れたしおらしい態度で言ってくる。

 だがオレはさっき決めたのだ。

 

「鈴音、さっきオレが言ったことを覚えているか」

「……え?」

 

 真っ赤な目で不思議そうに見上げてくる。やめてくれ鈴音、そんな目で見つめられたら

 

「お前の身体をオレがいないと耐えられないような、エロい身体に作り替えてやる、と言った。お前の膣はまだオレの形さえ覚えていない」

「……え?は、え、だって私まだ二回目よ」

 

 何を言われているのかさっぱりわからないのだろう、少し見当違いの疑問を抱いてしまっている。

 

「回数の問題じゃない。問題なのはお前のまんこが、オレを咥えこんだ時間が短いということだ」

「あ、あなた、まさか……」

 

 ようやくオレが何をしようとしているのか悟ったのだろう。手足を動かそうとする。拘束されている手足を。

 絶望の表情をする鈴音に口角が上がっていく、ひっと短い悲鳴をあげる少女。

 

「幸運なことに、明日は祝日……一日とはいえ休みだ。食料も買い込んだし、犯し続けていれば、オレの形を完璧に覚えてくれるだろう……楽しみだな」

「あ、あなた、まさか、本当に今日明日私をずっと犯すつもりなの……!?」

 

 鈴音は戦慄した。たった数時間でもうすでに自分を見失いかねない快楽を叩き込まれた。粗相までしたのだ。それが日を跨いで続く。

 壊れる。間違いなく壊れる。

 逃げようと思っても拘束され逃げられない。

 

「さあ、続けようか」

「いやぁ!いあああっ!!?兄さん、兄さんっ!助けてぇ!私、清隆くんに縛られて犯されて壊されるっ、助けてぇ!」

 

 めちゃくちゃに暴れて泣き叫ぶ鈴音。

 あのシスコンが聞いたらオレを殺しに来るだろう。これだけ素直になれるのなら、もっと早くなれば良かったのに。

 そんなことを思いながら挿入して腰を動かし始める。

 ならすために、粘膜を傷つけない抽送をして疲れたらつながったまま休んで射精したいときに射精するプランでいく。

 

 少しして、肉の打ち合う音、粘っこい水音、女の甲高い嬌声が部屋に轟いた。

 それは、つながったまま重なり合うようにして眠るという隙間を除いて翌日の夜まで続いた。




10巻発売されましたね。本当に面白かったです。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

櫛田桔梗④

俺YOEEさん、誤字訂正ありがとうございます。

naiaさん、糖尿病予備軍さん評価付けありがとうございました


ふと、目が覚めた。

何故かと問われれば何となくと答えただろう。

数瞬後、ドアが開く気配と人の気配を感じた。

思考が覚めると同時に、薄目を開けて目を慣らし、微細に身体を動かして暖めた。

これで、明かりを照らされても暗闇でも動ける。

ホワイトルームで寝込みを襲われ慣れ、自然と出来るように訓練された身体は瞬時に体勢を整えた。

空気の振動、匂い、足音、気配から相手の素性を弾き出す。

女一人、背丈150半前後、体重50半前、肉付きが良い、素人、気配を感じてから一秒強でここまで理解し準備を終えることができた。だから、調子は不調ではない。分析が正しければ対処可能だ。

違ったら、オレの対処できる相手ではない逃げを打つ。

 

 今、女は扉を閉めている。本人はそっと閉めているつもりだろうが、気圧気温の変化と音で目に浮かぶ。

 ゆっくりと細心の注意を持って扉をしめるだけに注力している女が

 背後から襲えば仕留められるが目的が解らない、オレが襲った途端に第三の人間が出てくる可能性も含めていくらでもある。

 様子見だな。

 幸いなことに恵は昨日の夜帰した。朝から弄んだから息絶え絶えだったが、無事着いたと連絡があったから良しとする。挿入こそ出来なかったが口と股は良かった、羞恥に泣き叫ぶ恵もまた。

 サディストだの鬼畜だの散々言われながら、嬲り尽くした身体を思い出しながら、今度は高ぶらせて最後の止めに傷痕の刺激で絶頂させようと決意する。最大のコンプレックスによる絶頂、恵はどうするだろう。

 

 そんなことを考えていると女がベッドのそばにやってきた。

 こちらの様子を伺っている。寝ているかを確認し終えたのだろう、ほっとため息を漏らす。

 スルスルと衣服を脱ぐ音がする。下着に手をかけたものの脱いだ気配はない。こいつ、あの時もそうだが良くも悪くも女の子なんだよなあ。

 下着姿でオレの足元に来て布団に手をかけた。

 

「えっ」

 

 体内時間3時前、こんな時間に男の部屋に来るとは襲ってくれといっているものだ。いや、夜這いをかけられたのだから襲っても何の問題はない。この女にオレの身体能力がある程度ばれたとしても問題はない、カメラの対処はしている、オレを止めるものは何もない。

 布団を女の頭から被せる。

 

「ふえっ」

 

 パジャマを脱いで全裸になりながら、流れるように布団を頭からはずそうともがく女の腰を捕まえて、180度ひっくり返す。体をこちらに向けた逆立ちの姿勢になる女。

 膝の間に一度女の頭を固定して、股に顔を突っ込んで一舐めする。

 

「んひィ」

 

 ベッドに腰掛けて、両腕で女の腰を掴んで女の下腹がオレの顔にくるまで上げる。抵抗しようにも逆立ちの姿勢、特に鍛えていない女の足は自らの重みで動きを制限され、暗闇の中で白い足がなまめかしく動くだけだ。

 乳房を支えるブラジャーが邪魔だから剥ぎ取るが、特に動きはないパニックになっている。

 

「ああっ……あっ、あっ」

 

 ゆっくりと女の身体を下ろしていく。乳房がオレの身体で擦られて突起が隆起しているのを感じる。

 

「ひぃっ。ヤ、ヤダっ!……ああっ」

 

 顔を下ろした先に逸物があるのに気付いたのだろう。顔を背けようとする女の顎を掴んで口を開ける。

 

「んっ、んぐっ」

 

 まだ半立ちの逸物を根本まで突っ込むと、生温い口内に刺激されすぐに勃起してきた。

 

「むぐっぅっ!」

 

 口内で膨れ上がる逸物に女は何もできない、歯で噛み付こうにもすでに歯を動かせるだけの余裕は口にはない。

逸物で喉まで串刺しにした、もう頭を抑えておく必要はない。

 シックスナインの逆立ち版の姿勢に満足してパンティに手を掛ける

 

「んんっ!んんんっ」

 

 嫌だと抵抗するように足を動かそうとして、自重により限界を迎えた。重力と人体の構成に従って大股開きの姿勢で足が固定される。秘所どころかアナルまで丸見えの、女性として隠しておきたいところをすべて男の前に明かしてしまった格好。

 パンティをはずす指を、秘所とアナルを掠めるように動かして今自分がどういう姿勢なのかを教え込みながら、最後に足を押すようにして脱がした。

 

「んんっ、んっ」

 

 涙か汗か熱いものがオレの太股にかかる。女のパンティを丸めて固定してボールのようにして明かりのスイッチに投げる。命中。

 

「んむっ!?んふぅ!」

「おはよう櫛田。夜這いをかけられたからな、手荒く迎え入れさせてもらった」

 

 明かりの下で改めてみるとすごい格好だ。

 逆立ちブリッジの姿勢で固定された櫛田の足は開脚に大股で開いて地面に足先を向けている。

 関節をオレ側ではなく櫛田側に曲げたため、うっすらと開いた秘所と、ピンクのアナルがせり出すように俺の目の前にある。

 腹のところで潰れる乳房が心地良い。

 櫛田の両手はオレの太股を掴んでいるが、力がほとんど入っていない。

 逸物による圧迫とと逆立ちで血が上っているからだろう、喉まで突っ込まれた顔は後ろ頭しか見えないがここから見ても苦しそうだ。

 

「あぐぅぅぅ」

 

シミひとつない見事な尻を片手で弄り回す。年齢からしたら張り出しているが、発達途上というように縦にくりっと丸みを帯びている。

秘処からトロリとした蜜が流れてきた。

 

「濡れてきたな」

「んぐぅぅっ」

 

 我ながら鬼畜なことをしていると思うが、愉しい。櫛田はどう思っているのだろう。まあ、どう思っていようがオレのやることは変わらないが

 

 

 

 数時間前、櫛田桔梗は電話から逃げていた。

 今は留守電設定にしているがそれでもちかちかと通知を光って教えてくる。いっそ壊してしまいたい。

 

「どいつも、こいつも」

 

 曰く「あんな噂を立てる奴がいるなんて恐いわね。私もだまされたわ。だから、私は悪くないの。それに、私たち友達でしょう、許してくれるわよね。これからも仲良くしてあげるから、仲良くしましょうね(意訳)」

 こんなのが先輩同級生男女関係なく押し寄せてきて、よく笑顔で対処できてるなって自分でも思う。

 

「どうなってんのよ。本当に……私もそうだけど皆面の皮厚すぎるでしょ」

 

 いや、今までは対処できていたのだ。今までは無理なく――でもないが何とかした、だけど今は無理だ。心も身体も限界になったから少しそっとしておいて欲しいのに、皆自分の想いを優先して突っ込んでくる。

 そうしても私なら嫌がらないと思って、嫌がることなんてないと信じて、あれだけ罵倒しても許してくれるという理想を押し付けてくる。

 確かに今まで皆にそう思われる自分を創ってきたし維持してきたから、やらざるを得ないんだけどさあ

 

「もう……無理」

 

 最初の一日はまだましだった……顔を泣きはらして身体を引きずるように動かす私に同情してかまだ大人しかった。

 夜10時過ぎまで女子だけのパジャマパーティにもつれ込まされたとはいえ、まだましだった。

 それからの水木金土は思い出したくない。分刻みのスケジュールであちこちに呼ばれたり押しかけられたり、無理をしすぎてよく倒れなかったと自分でも思う。

 私が無理しているのを察して休ませるとか、そういう心の機微とか思いやりを持って欲しい。

 万人に気を遣えとまではいかなくてももう少し、こう

 

「いや、皆がそんなことできるんだったら、私が人気者になるわけないよね。一之瀬見習えとはいわないけど、軽井沢レベルさえ求められないとかどうなってんのよ」

 

 私が目指す理想を体現してムカつく女だが、一之瀬は流石だった。私の疑いが晴れたことを一言だけ祝福した後は、それとなく周囲に注意して私に無理をさせないようにしていた。

 軽井沢の謝罪も見事だった。「私は悪くないよね」と暗に言っていたほかの連中と違って、疑ったことを自分の責任として素直に謝罪した。真っ先に彼女の謝罪がなければ、もっと陰湿な謝罪という名のナニカを聞かされただろう。彼女に対する評価が私の中で革新といっていいほど上に変わった。

 

「堀北を……マシに思う日が来るとはね」

 

 相対的にだがあいつはマシだ。いや最初から最後まで一本筋が通っていたのは好感すら持てるというか

 

「堀北って嫌な奴じゃないっていうか好きなタイプなんだよね……今更だけど」

 

 ああいう不器用な真面目ちゃんは、扱いやすいのもあるが決して嫌いなタイプではない。性格的に利害が一致しやすいし、自分がコミュニケーション能力で優れていることが確認できて優越感を与えてくれるから、相手をしてもストレスがほとんどない。

 私の過去を知っていなければ、良い関係を保てただろう。いや、過去の焼き直しのような今回の件で終始味方になったこともあるし、何よりも私が前より過去を気にしなくなったから今からでも遅くはないんだけど

 

「綾小路くんは、さぁ、本当にさぁ」

 

 こいつがネックなんだよね。本当に。堀北と関係改善とかは、この無表情鬼畜非道男に比べればまだ易しい気がする。

 

「むかつくむかつくむかつく」

 

 普通さあもう少し私をフォローするよね、普通。あいつ自分が私の男だってこと、忘れてるんじゃないのかな。

 少しは期待していたのだ、少し――いや、かなり……とても期待していた。助けてくれるって、期待していたんだ。また魔法みたいに何とかしてくれるんじゃないかと。

 

「私が、散々苦労して苦しんでるときに、堀北とよろしくやりやがって、電話してもお前がまいた種だ自分で刈り取らないと意味がないとか、最悪。まじで意味わかんない」

 

 毎晩いつ呼ばれてもいいように、体を綺麗にして下着もお気に入りのを着けて待っていたのに、連絡なし。心身ともに限界なのに眠気を抑えて待っていたのに、こちらから連絡しないと返さない。

 ……改めて思うと自分の健気さに泣けてくる。

 そんな私を放っておいて堀北としっぽりとかどうなってるんだろうあいつの頭の中は

 

「盛りのついたケダモノの色情魔のくせに」

 

 誠心誠意相手するとか勿体ないくらいのいい女とか言ってくれたのに、堀北っていう性欲解消手段があるとこれだ。

……私の身体が辛いから今は癒してくれとかメールじゃなくて、直接会いに来てお茶でも飲みながら言うことだよね。

 数日間何もしなかったから、まだ股に綾小路くんが入ってるみたいだけど痛くはない。

 そう、何もしてくれなかった。何かするべきでしょうが

 これだから男って奴は

 

「あいつ私のファーストキスと処女奪ったってこと忘れてんじゃないでしょうね」

 

 しかも、あんなとんでもないものでだ。

 裂けると思ったアレのことを、経験者(自称)の先輩に話を聞いたら「桔梗ちゃん、冗談上手いねー。そんなデカイのある訳ないじゃない。仮にあったとしてもそんなの入れられるなんて無理。裂けるわマジで。愛しても受け入れられる限度ってあるよね(意訳)」

 

「ありえないでしょ。ホントに裂けたと思ったんだから、教えてくれた一番デカイサイズあいつの7割くらいじゃない……」

 

 一人の先輩が「高円寺君じゃあるまいし」とか言って皆が盛り上がっていたが、綾小路くんのサイズが規格外だということは理解した。ついでに続けて5回も射精したりなんてまずないということも

 それ以前に初めての女の子を縛るとか、酷すぎてあり得ない。

 

「あのサディストのド変態、女の子をおもちゃにしてあんなものを私に入れた挙句に、放置とか何様のつもりなのよ、あの馬鹿……」

 

 復讐しよう……静かに決意した。

 深夜に寝込みを襲うんだ。

 綾小路くんのカードキーを握り締める。私が勝ち取ったカードキーを。

 これは数日放っておかれた私の正当な権利だ。

 

 一眠りして準備することにした。

 軽く化粧してお気に入りの下着に身を包んで、綾小路くんの部屋に向かう。

 男の人の部屋に深夜に行くという行為は、ドキドキする。

 

 ――振り返れば、疲れとストレスで私はおかしくなっていたのだ。

 

 AVでも見ないような死にたくなるほど恥ずかしい格好で、綾小路君のペニスを捻じ込まれて息できなくなりながらそう思う。

 

「んぐぐっ」

 

 死ぬっ死んじゃうっ

 巨大すぎるペニスで口をふさがれて鼻で必死で呼吸をする。濃い男の匂いが私を襲うけど、死にたくなければ鼻で呼吸しないと……臭いっ

 あ、顎がはずれちゃう、喉が犯されてる……男の人のペニスっていうか綾小路くんのって……なんて硬くて大きいのよ。

 お尻を掴まれていやらしく弄られて苦しさに目の前が霞み始める。このままだと意識が……

 

「むっ、むぅぅっ」

 

 身体が上に持ち上げられていく。喉からペニスが出てきて楽になるかと思ったときに、身体を下に動かされてまた喉奥まで突っ込まれる。ジョリジョリとした陰毛とムッとした男の匂いで頭がくらくらする。

 小さく悲鳴を上げて、激しく腰を揺らす。苦しさに目を白黒させるが構いはしない。抵抗しないとこのままじゃ、とんでもないことをされてしまう。信じられない、この変態このまま私で……

 

「櫛田」

 

 綾小路くんの足が何かを引き寄せる。引き寄せたものをみて、私の力が抜けてしまう。

 テープとロープだ……なんて奴、信じられない。

 縛られるんだ、また、私縛られて酷い事されて泣き叫ばされて……イカされるんだ。

 

 ジュンと私の胎の中が――

 

「むぐむぐむぐむぐ」

 

 違う違う違う違う、私は期待してないから、変態じゃないから、発情してないから、溜まってたストレスが減ったりしてないから、こんなに酷い事されて怒っているから、違うから

 馬鹿な想いを振り払って、抵抗を再開する。少しでもいい身体を離さないと

 

「んっ、むぐっ」

 

 ――無理だ。逆さにされて腰に腕を回されているだけで、私の体力は消耗しきっていたからもう何もできない。頭は血が上って男の匂いでくらくらして何も考えられなくなってきた。

 諦めと絶望が私の心を覆う。 

 

「夜這いの罰だ、櫛田。しゃぶってくれ。射精すれば解放する。イエスなら舌で舐めろ」

 

 腐れ外道のサディストが悪魔みたいな脅迫をしてきた。舐めたことも前の時が初めてだったのに強制的に咥えさせられた女の子が従う訳なんかない。

 私のプライド、怒りはそんなに安くはない。

――ペロリとペニスを舐めた。

 

 

 

「もっと唇をすぼめて、頬の内側で擦るようにしろ。舌を動かすんだ」

 

 かなり酷いことを言ったのに、すぐに大人しく受け入れた櫛田にあれこれと指図する。櫛田は初めての行為に目を白黒させながらも唯々諾々と従う。限界以上に開かれた口では困難なのか苦痛の鼻声が聞こえる。

 掴んだ腰を上下にして唇の先から喉の奥まで、いきり立った逸物を出入りさせる。

 

「ん……んぐ」

 

 じゅぽじゅぽと唾液とカウパー液が潤滑油となって逸物の出入りがスムーズになっていく。雁首の出っ張った部分が口内と喉内の粘膜を擦る。逸物の根元まで差し込まれるたびに黒々とした陰毛が唇を嬲って、亀頭が喉奥を抉る。

 

「むっ……むぐっ」

 

 酷いことをされている。文字通り性欲解消の道具のようにぞんざいに扱われる怒り、口の中を犯される屈辱……綾小路への複雑な想い……それらの感情が混じり合いながら、もう一つ湧き上がってくる衝動がある。

 

「んぐ……んぐぐっ」(嘘でしょ……何で気持ちいいのよ)

 

 膣と子宮が疼いているのを感じる。オレの固い腹筋で擦られる乳首は尖り火照って快楽を送り込んでいく。

 櫛田は限界まで開いた口の端から涎を垂れ流して、必死で唇をすぼめて体を持ち上げられていくときには逸物の亀頭に舌を這わせる。舌先で鈴口をくすぐり溢れ出すカウパー液を飲み干しながら舌先で敏感な先端をなでてくる。

 

「その調子だ……何も言われなくても歯を当てずに舌をうまく使ってる」

「んっ……んんっ」

 

 櫛田は、頭を撫でられると苦しさに涙がたまっていた目を細める。生来の承認欲求の強さはこういうときにも働いてしまい、拙い奉仕の力がさらに入る。口の中で広がる塩味のおかげで、唾液は後から後から湧いてくる。

 口の中や唇が性器になったように敏感になっている。綾小路のものを愛撫しているとむず痒い快感を覚えてしまう。

 かすかにほころんだ秘所から愛液が分泌され溢れていくのを自覚した。自身の陰毛を濡らしている液体の正体を認めたくなくて、櫛田は甘酸っぱい濃厚な匂いを漂わせる場所をせめて太ももで隠そうとする。

 

「んんーっ、んんっ」

 

オレが舌先でぷっくりと膨れた秘所の大陰唇に触れると、櫛田が悲鳴じみた呻き声を上げる。

 

「驚きすぎだ。そろそろオレも目の前で発情している部分を、弄ろうとしているだけだ。気にせずにしゃぶってくれ」

「んんーっ」(ふざけんなこの鬼畜)

 

 舌を大きく出してクリトリスのすぐ下辺りから会陰に向かって舐め上げる。

 

「んんっ」

「ちゃんと洗ってるな。へんな味はしないし、ボディーソープのいい香りが残っている。発情して出てきた愛液の匂いでほぼ消えているがな……愛液の味も酸味が少し強いだけで変じゃないから安心していい」

「んーーっ」

 

 殺意に溢れた呻き声を上げる櫛田の大陰唇を舌先で開いて、雌の香りを楽しみながら丹念に舌を這わせる。

 

「んっ、んんーっ」

 

 無理矢理奉仕させられているのに濡れていることを知られるのがよほど恥ずかしいのだろうか、羞恥にまみれたうめき声を上げながら豊かな尻をくねらせて太ももで頭を挟もうとしてくる。力が入らずに太ももで顔を擦ることしかできず、オレに心地良い感覚を与えるものでしかないが尻を少し離れさせることに成功した。

 櫛田の体重なら、体を上下に動かすのには片腕で十分だ。

 ぱあんっ

 

「ん、んんーっ!」

 

 逃げようとする尻を軽く叩く。白い尻に赤い手形が出来る。

 

「どこへ行く」

 

 尻の赤い手形を撫でながら温度を低くした声で呟く。太ももに櫛田の涙と思える雫がかかる。

 

「……んっ」

 

 大人しく腰を突き出して、秘所を目の前に捧げるように突き出してきた。それでいいと櫛田の頭を撫でてやると安堵した鼻息を漏らした。

 ――我ながら最近タガが外れている気がする。

 少し悩むが切り替えて陰核にへとしゃぶりつく。

 

「むうんんっ!」(ダメェーー!)

 

 敏感な部分を刺激された途端、櫛田はビクンッと腰を震わせながら大きなうめき声を上げる。

 

「んんっ、んんっ」

 

 舌の動きに過敏に反応して細かく痙攣しながら、まだ慣れない官能にもだえる櫛田。

 初々しくも淫らな反応を楽しみながら舌の先で陰核を覆う皮を捲る。

 敏感な部分を軽く舌で転がされ、甘いうめき声で制止してくる。

 

「んーーっ、んーーっ」

「舌が止まってるな櫛田、ちゃんとお前がしゃぶらない限りこのままだ」

 

 淡々といいながら、露出させた陰核を唇で挟んで強く吸い上げる。

 

「んんーーっ!!」

 

 刺激の強い部分を吸い上げられて櫛田が絶頂する。

 押し寄せる快楽に秘所がヒクヒクと蠢き、ドッと愛液が溢れてくる。

 

「……んっ……んっ」

 

 ぱあんっ

 昇天して意識が朦朧としている櫛田の尻を、再度先ほどよりも強く叩く。愛液が飛び跳ねて顔に当たる。

 

「しゃぶらないと、いつまでも終わらないぞ。お前が何度絶頂しても、オレが射精するまではこうする」

 

 本気だとわからせるために、櫛田の耳元で軽く腕を素振りしながら舌を動かして秘所を舐め始める。

 

「んんーーっ!」

 

 慌てて唇をすぼめて舌を動かし始める。呻き声をあげるたびに頬裏と喉の粘膜が逸物を刺激して心地よかったが、やはり能動的にやってくれたほうが気持ち良い。

 鼻息を荒くして逸物に舌をくねらせて唇と頬をすぼめることで、自然と強く吸い上げる形になる。

 拙くとも懸命な奉仕の姿は、オレの嗜虐心を煽り立ててくる。

 

「んんっ、んんっ」

 

 コツを段々とつかんで来たらしく、体を上下に動かしているときの何時唇と頬をすぼめる力を入れたり緩めるタイミングが的確になっていく、舌の動きもオレの感じるところを適度な強さで巧く刺激してくる。

 

「巧くなっているな櫛田、お返しだ」

「んんっ」

 

 お返しと聞いて、期待するように乳房を腹にこすりつけてくる。火照り押しつぶされた乳房と隆起しきった乳首が、一定の速度で擦られ続けてたまらないのだろう。何とかしてほしいとねだる姿は淫らで初々しく可愛らしい。

 

「んふぅぅっ!?」

 

 膣口に舌をねじ込んだ瞬間、絶頂した櫛田の身体が派手に震えて腰をくねらせる。

 

「……むぅぅっ」

 

 すぐに意識を取り戻して、当てが外れたといったうめき声を上げて乳房をさらに擦りつけてくるが、しっかりと快感は感じている。突き入れた舌を痛いほど締め付ける膣から、舌を伝って大量にこぼれてくる愛液がその証拠だ。

 

「熱いなお前の中はやけどしそうだ。汁も溢れて止まらない」

 

 口いっぱいに広がる愛液の味と舌を締め付ける膣の感触に興奮する。櫛田の身体を上下に動かしながら、じゅるじゅると音を立てて思い切り舐めていると、櫛田がそれに答えようとするように一心不乱に逸物に奉仕してくる。

 その奉仕で櫛田自身の興奮も再び高まっていっている。舌をくるむ膣と肛門がヒクヒクと蠢いていて、快楽をねだるように胸をこすりつけて、尻を左へ右へと振る。

 そろそろたまらなくなってきた。

 

「そろそろ出すぞ櫛田」

「んんっ!んんっ」

 

 一瞬慄いたように身体を震わせたが、すぐに口の中で膨れ上がる逸物を逃さないように唇をさらにすぼめてくる。

 ラストスパートに、櫛田の身体を少しだけ速く動かす。ギリギリ耐えられて奉仕できる速さで

 

「くっ……出る」

「んんんぶぅうっ!!」

 

 勢いよく噴出した精液を喉奥に受けて、その衝撃で同時に絶頂に達した櫛田が、くぐもった嬌声を上げる。

 射精に合わせてびくびくと身体を震わせて、膣口からは潮を噴出す。

 

「んっ……あつ、いっ……!んんんっ……!」

 

 飲みきれなかった白く濃い精子が櫛田の顔に降りかかり、明るい美貌から栗色のショートヘアにまで飛び散り、視界を白く濁らせる。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 射精が収まると同時に逸物を櫛田の口から抜き取り櫛田の身体をベッドに寝かせる。同時に絶頂も収まり身体の痙攣が落ち着いてきた。

 急激な疲労感に襲われた櫛田は荒い呼吸を繰り返す。

 

 

 

「わたし……あんなことされて……何度も……イッっちゃって……口に出されて……顔も髪も汚されたのに……どうなっちゃたのよぅ」

 

 長時間の逆立ちフェラチオで呼吸は詰まり、顎が痛い。おまけに複数の絶頂により薄いフィルターを被せたようにぼんやりとした意識で呆然と呟く。

 濃厚な精液で顔も髪もべとべとに汚されている。顔よりも手間暇かけている髪を汚されたことに、怒りたくても気力がわいてこない。

 

「ふあっ」

 

 呆然としていると、綾小路くんが暖かい濡れタオルで丁寧に拭いてきた。心地良い気持ちよさに目を細める。認めたくないが、綾小路くんは丁寧に優しく後始末してくれる。他の人に聞いた話だと、自分だけとか後始末さえしないような男さえいるのだという。

 こんな風に、私が世に一つしかない宝物のようにするなんて聞いたことがない。普段の人に無関心というか自分が興味ないものに一切興味を持たない態度とのギャップが凄い。というより酷い。

 性行為のときの熱情も含めて、それだけ自分に興味を持ってくれたのだと思ってしまわない女の子が居るだろうか

 ……これが計算ならまだ良い……でも、もし素なら犠牲者がこれ以上増える前に

 

「こいつ、刺し殺したほうがいいんじゃないかな」

 

 思わずぼそりと呟いてしまう。

 

「?なんだ、櫛田」

「ううん、なんでもない。もう少し髪拭いてほしいな」

「任せておけ」

 

 くそぉ、信じられない、こいつ私がするよりも髪のケアが巧い。ホント何なんだこいつは、世間知らずなところがあるのにこういう技術みたいなところは完璧以上だ。

 探ると何が出てくるかわからないから怖くて探れないけど、そのギャップも好奇心を刺激される。どうしようもないほどに女の敵だ。何とかしたほうが良い、絶対に。

 

 色々考えたけど疲れきっていた私は、コクコクと渡されたスポーツドリンクを飲み終えて、丁寧な後始末に目を細めて眠ってしまいそうになる。

 油断したといえば油断したんだ私は裸で男の前で、綾小路くんの前なのに

 

「さて」

「ひぅっ」

 

 突然、うつ伏せにされて突っ伏してしまう。大きく股を開かされて膝立ちにされて腰を上げさせられる。

 背中がたわむほどにお尻を突き出されて覗き込まれる。顔を伏せて高く掲げたお尻を後ろから覗かれて恥ずかしいところを全部見られる。

 こんなに恥ずかしいことがあるだろうか

 

「あっ、あっ、あっ、あっ」

 

 あまりの恥ずかしさに声が出ない。しゃっくりあげて震える私のお尻を綾小路くんの手が掴んだ。

 硬くて熱いものが私のあそこにあてがわれて、グチュっといやらしい音を立てる。本能的に逃げようとするが指一本動かない。恐怖に顔も上げられず、目を閉じて布団に顔を押し付けて震えて叫ぶことしか出来ない。

 

「いや、いや、やめて!いやだ、こんな格好っ!」

「上の口も開けておいたほうがいい、そのほうが通りがいいからな。舌を噛むなよ」

 

 じんわりと突き進んでくる巨大な気配に一瞬凍りつく。夢から覚めたようにハッと顔を上げると同時に一気に突き入れられた。

 

「あぐっ、痛あ!」

 

 それ以上は叫びにもならない。

 固く閉じていた目をカッと開いて、まるで杭を打ち込まれたように、私の身動きが止まる。

 二回目だ。一回目と比べれば確かに痛くないと思いたいけど無理だ。

 衝撃のあまり、体中の毛穴がいっぺんに開いてしまうような感覚に襲われる。口が、自然と開いてふるふると震える。

 自然と俯き、目から涙がハラハラと流れていく。

 

「動くなよ。まだ全部入ってない。下手に動くと裂けるぞ」

 

 脅しじゃない。直感で理解した。

 大きな雁首がやっと入っただけでペニスの太さに形を変えてギリギリまで広がった膣口を綾小路くんは慎重に見る。

 

「いくぞ」

 

 意味を理解してハッとして顔をあげた途端に内臓が抉られたような衝撃が胎内に走る。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、ごめんなさいィィ」

 

 自分のものとは思えない絶叫。意味も分からず謝って、泣き叫び続ける。

 

「ひぐぅ!」

 

 口から胃が飛び出るんじゃないかと思う衝撃に、意識が遠くなる。同時に女の本能は、綾小路くんの――男の全てが入ったと理解した。

 ふらりと身体が傾きそうになるが、綾小路くんに掴まれた体にはそんな自由もない。

 

 しばらくそのままの姿勢で慣らしていたのだろう。

 私は何とか息をして声が出るようになった。

 

「た、助けてぇ!」

 

 綾小路くんに向けたものじゃない。何か大きなものでもなんでもいい。今の状態から解放されるなら悪魔にでも助けを請う、そんな叫びだった。

 

「動かすぞ」

 

 当たり前だけど綾小路清隆という名前の悪魔は、私に余裕ができたと判断してゆっくり腰を動かし始めた。

 

 

 

 その日、私は昼まで散々犯された。

 

「……んっ、助け……う、あんっ!……」

 

 きしむベッドの上で抑えようとしても零れ落ちる泣き声。

 

「……はぁっ、あっ……つぅっ!……」

 

 痛み一色には決してせずに快楽を混ぜながら攻められる。

 

「……ああっ、胸っ、潰さないでぇ……」

 

ずっと放置されていた胸を嬲られてイカされてしまう。

 

「……あぅぐっ!……やぁ、もう……だ、め……」

 

 泣き叫んでも何度絶頂しても離してくれない。

 

「あ、綾小路くんっ!私……もうっ、え、清隆くんって、呼んで、いいの?」

 

 気力体力の限界に達したと思ったら回復させられ

 

「わ、私のことも、桔梗って、お願いっ……っ!!」

 

 言葉は優しく、身体は激しく

 

「あぁっ……! 清隆くん……っ!!」

 

 最後に甲高い声を上げて、私はベッドに崩れ落ちた

 

「……はぁ……はぁ」

 

 身体が痺れて動かない、もう、無理――深くて心地よい闇に沈み込む。

 

「……え?」

 

 ……何で、まだ硬くて大きいの

 

「……ちょ、ちょっと、待って、あんた、もうっ」

 

 …………5回も出してっ

 

「……や、やだっ、何でっ……ひあっ」

 

 ……お尻叩かないでっ

 

「う、ぅぁぁっ……私、叩かれっ、てっ……」

 

 ……イッてない、偶然だよ偶然

 

「清隆……くん、おねがい、ゆるし、て……」

 

 ……だれか、たすけて

 

「ひぁぁぁぁっ!!!」

 

 ……ここで私の意識はなくなった。

 

 

 

 

 丁寧に後始末されて部屋に戻って準備する。来客を迎える準備だ。見せたい物も用意できたから、準備は完璧だ。

 ふらふらとして目の下にはうっすらと隈が出来ているが気にはしない、私も、相手も

 と。そこで来客がチャイムを鳴らした。玄関まで迎えに行く。

 

「こんにちわ。堀北さん座って」

「……こんにちわ。櫛田さん……体調が悪いのなら別の機会にしたほうがいいと思うのだけど」

 

 こいつ最近甘くなったな、心配そうにこちらを見てくる。それとも堀北がそう思うほど私の体調が悪そうなのだろうか。部屋の中に招いてテーブルを挟んで座ってお茶を出す。

 

「気にしないで欲しいな。これでも自己管理は出来ているつもりだから」

「そう……呼び出したあなたがそう言うならそうするわ……で、話って何かしら?」

「堀北さんと言葉遊びしても仕方ないからはっきり言うね……堀北さんって綾小路くんにいつもどういう風に抱かれているの?」

 

 真っ赤になった堀北というレアなものが見れたが気にはしない、目に力を入れる。

 

「な、何を!?」

「別にいいじゃない今更カマトトぶって恥ずかしがらなくても」

 

 そんなこと言う私の頬も染まっているだろう、同じ男に抱かれていることもあってかとても恥ずかしい。

 改めて思うと、とんでもない関係だ私達。マウントとるために仲良くしようとして、お互いに嫌いだと確認して嫌いあってから、一方的に必要だから仲良くしようとされて、色々あって同じ男に抱かれている。

 何だコレ。掴みあいになっていないことが信じられない。

 

「勘違いしないで欲しいんだけど、私はあんたのこと責めようとしてこんなこと聞いてるんじゃないの。そりゃ、ちょっと――ううん、すごく複雑で苛立ってムカつくけど、それがわかってあいつに抱かれたんだから、文句をいまさら言っても仕方ないって感じだし」

「……私も、複雑だし気に食わないし苛立つし腹が立つけど納得しているわ。少なくとも納得は」

「そう、なら良かった」

 

 なら何の問題もない、いや問題がありすぎてどうしようもないのかもしれないけど深くは考える必要はない。どうやら堀北も同じ考えのようだから大丈夫。

 

「だから、純粋に聞きたいのよ。綾小路くんって、堀北さんに対してはどうなのかなって……あっちのほうが」

 

 堀北の目に深い理解の色が浮かぶ。彼女は一言

 

「酷いわ」

「酷いよね」

「ええ」

 

 今まで生きていてこれだけ共感できた一言はない。これ以上ないほど堀北とシンパシーしているという確信がある。

 

「やっぱり、そうなのね」

「うん、そうなの」

 

 同時にため息をつく。堀北との間にあった断絶が埋まったと確信する。堀北もそうなのだろう僅かにあった警戒心が消えている。

 そのまま、私たちは見つめ合って黙り込んでしまった。 




ようやく書きたかったところのさわりまでこれました。これも皆さんのお陰です。

次回まで時間が空くと思いますが、良ければ見てください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗①

オトゥールさん、評価付けありがとうございました。
えいとくさん誤字修正いつもありがとうございます。


共通の敵の存在こそが彼女たちには必要なんだろうなあと


「実はね……」

 

 沈黙を破ったのは櫛田さんだった。疲れきった表情でぽつぽつと話す。いつもと違って抑揚が少ない、これが素の彼女の口調なのだろう。

 

「今日の昼まで、私綾小路くんに抱かれてたんだ」

「そんな!?駄目よ、起きていたら、すぐに横になって」

 

 なんて無茶をしているんだろう。今日の昼といえばまだそんなに時間が経っていない。清隆君のことだ何時間もずっと犯したのだろう、すぐに横になって身体を休めないと倒れてしまう。

 

「ありがとう……でも、大丈夫、ううん、ちょっと辛いから晩御飯作ってもらってもいいかな?」

「もちろんよ」

「本当にありがとう。今度堀北さんがされたときには、呼んでね。私がご飯作るから」

「お願いするわ」

 

 儚い笑みを浮かべる櫛田さんの頼みに快く頷く。今度は私も甘えさせてもらうのだ。清隆君に壊されないためには助け合わなければ。

 

「今日来てもらったのは困ってるってことなんだ」

「困ってる?」

「綾小路くんが、その、酷すぎるというか、サディスト過ぎるというか、強すぎて」

 

 わかるわ。とてもよくわかるわ、櫛田さん。

 

「私、綾小路くんが初めての人だから分からないことがたくさんあるけど。明らかに異常だよね彼」

「私も綾小路君が初めての人だけど、彼が異常だということに全面的に同意するわ」

「だよね。体力お化けだし、あっちは凄く巧いし、その……あそこも大きいっていうか恐竜みたいで異常だし」

「やっぱり異常な大きさなのね彼」

 

 私の母も含めて世の中の女性はあんな恐竜を相手にしているのかと戦慄したこともあったけど、当たり前だけど違った。ガチガチして先が妙にテカテカしたあの赤黒い怪物、人体の癖に軟らかくなったり硬くなったり自由自在と別の生き物としか思えない。

 おそらく何度入れられても、最初は痛みと衝撃で息が出来なくなるだろう。あそこが彼の形を覚えさせられた私が言うのだから間違いはない。

 今更知ってもこれから何度も犯される私の救いにはならないけど、覚悟は決めることが出来るだけありがたい。

 櫛田さんは無知な私を笑いもせずに、澄んだ眼差しで頷く。

 

「堀北さん……今まで綾小路くんが一回したときにどれだけ出したか覚えてるかな……ちなみに私は覚えてる限りで最大5回」

 

 言われて数える。たしかあの日

 

「私も覚えている限りで最大5回かしら」

「覚えている限りなんだ」

「ええ、覚えている限りよ」

 

 どうしてだろう目の前がぼやけて来た。

 おかしいわ、何で櫛田さんの声が震えているんだろう。

 

「毎回、何回も失神させられて、正確な、数がわからないのっ」

 

 私の声も震えている。

 

「私もだよ。でもね、聞いた話だと、普通はそんなに出したりしないし、量もっ、あんなにっ」

 

 そこでテーブルに突っ伏して声にならなくなる。

 震える櫛田さんの姿が見えない。だって私も手で顔を覆ってしまっているから

 お互いに異常なほど涙もろくなっているが仕方ない、初めて悩みを共有できる理解者が居ると分かったのだから

 

 数分後、お茶を飲めるくらいに回復した私たちは、お互いの醜態を見なかったことにして、話を続けることにした。

 

「率直に言うね。堀北さん、綾小路くん相手に組もうよ。クラス争いにもこれからは協力するから」

「……願ってもいない事だけど、正直疑わしいわね。散々歩み寄る努力をしたのに袖にされ続けた。私としては」

 

 彼女に対して共感するし同志的な絆を感じるが、背中を預けられるかというとまた別の話だ。

 

「……やっぱり、あれもこれも、あんたにとって歩み寄りのつもりだったんだ。高度な嫌がらせじゃないかと思ってた時もあったけど」

 

 とても失礼な事を言ってくる。確かに私に経験が不足しているのは認めるけど、そんな受けとり方をする彼女にも問題がある。

 

「あ、ごめん。喧嘩を売るつもりはないんだ。堀北さんとはいろいろあったから、ちょっと気が立っちゃってつい言い過ぎちゃう。ごめんなさい」

 

 少し引っ掛かる言い草だが謝ってくれるとは思っていなかった、私も彼女とはいろいろあったからここは流すべきだろう。

 

「気にしなくて良いわ。私もいろいろあったから、割り切れないところがあるのはお互い様ね」

 

 ……同じ男に抱かれているなんて、複雑な関係だから少しくらいの棘は仕方ないだろう。

 信じられないくらいに友好的なのだ。お互いこれでも。

 

「それに、誰が悪いといえば綾小路君だから、仕方ないわよ。複数の女性に同時に手を出す彼が一番悪い」

「本当だよね。もやもやするだけで受け入れてる、私達に対してもっと尊重すべきだよ」

「全くその通りね」

 

 自分から抱かれると言い出した事について、少女ふたりとも心の中の別の棚だった。

 

 

 

 清隆君に対する苛立ちを抑えるために、お互いに一服して気持ちを落ち着かせる。

 

「疑わしいのは仕方ないから、私の話を聞いた後でどうするのか、決めてもらって良いかな?」

「ええ、構わないわ」

「先に言っておくけど、今回私には裏がない。そんなことしている余裕もないから。正直な話、ここ数日を思い出して、堀北さんには危機感が足りなくてイライラしているくらい。私もそうだったから、尚更」

「危機感?」

 

 何を言っているんだろう櫛田さんは、確かに清隆君との性行為は酷いけれど……

 

「まず、確認させて欲しいんだけど、このままだと私達壊されるよね。肉体的にも、精神的にも、ぶっちゃけ性癖とか性に関しているところが」

「その通りね」

 

 その点に疑問の余地はない。あれだけの事をされれば誰でもそうなる、何の不思議もない。

 あれ?私何でそんな風に?

 

「うん。そこまでは色ボケしてなくて良かった。何でそう思うのか深く考えてみて貰えるかな」

「?ええ、構わないわ」

 

 別におかしなことはないはずだ。半月前は絶頂さえ知らなかった私の身体と心は、清隆君に塗り替えられてしまっているだけ。

 彼にじっくりと嬲られて、今まで知らなかった官能を体に教えこまされながら長時間責め続けられる性行為を、思い出すと今でも体が震える、というか熱くなる。

 夜寝ているとき、清隆君のあれを入れたあそこがじんじんと痛むのに、たまらなく疼いてしまい、どうして清隆君がここに居ないのだろう犯してくれないんだろうなんて考えたことさえある。そのときは耐えられたが次は自分で慰めるだろう。その次は押し掛けてから

 あの情欲の色を灯した目に見つめられて……

 

「ねえ、ちょっと堀北さん」

「……え?」

 

 言われてハッと気づく。意識を取り戻して胸の辺りに行きそうだった右手を慌てて下げる。おまけに身体が少し火照ってきている。気付いてしまった。

最近ずっと何をやっていたんだ私は、清隆君に縛られて犯されて壊されてそれを受け入れていたんだ。信じられない、何て醜態を。

 

「いや、あの、これは……」

 

顔を真っ赤にしてしどろもどろになる私を見ても、櫛田さんは馬鹿にした様子を一切見せない、いや真摯というべき眼差しで

 

「まずいよね」

「ええ、まずいわ」

 

 赤くなっている櫛田さんを見て理解する。彼女も同じなのだと、清隆君の色に染められてしまっているのだ。

 どうやってかはわからないけど、今日抱かれて自分の状況に気付くことができた。そして、危機感を抱いて色ボケしていた私を呼び出した。

 櫛田さんが苛立つわけだ。私は――いや、私達は気付かないまま、進んではいけない坂道を転げ落ちていたのだ。いや、清隆君に転がされていた。

 咳払いを一つして、同じく真摯な眼差しで櫛田さんを見つめる。

 

「だから手を組もうって言ったのね」

「そう、どうかな?」

「賛成するわ。私達の尊厳を守る必要がある」

 

がっしりと櫛田さんと握手する。

もう、私には彼女に背中を預けることに不安はない。櫛田さんとのいざこざ等、清隆君という脅威に比べると取るに足らない。

認めよう、私は危機感が足りなかった。半月足らずでこの有り様、卒業までは二年近くある。卒業後も考えたら何年いや何十年も、このまま行けば自分がどうなってしまうのか想像するのが恐い。

清隆君に抱かれた時の事を思い出して、ぼうっとしている場合ではない。

決して負けられない。

 

 

 

「結論から言うけど、このまま綾小路君のやりたい放題にさせるわけにはいかないと思うんだ」

「それは……まったくその通りだけど」

 

 でも、具体的にどうやってと言う問題がある。

 

「念のために言っておくけど、力づくだとどうしようもないわよ。彼」

「そんなに?」

「私が5人居て同時に仕掛けても負けるイメージしか湧かないわ」

 

 今まで見てきた中で三本の指に入ると思っていたほうが良い。それなりの自信があった私のプライドはすでに粉砕されている。今思えばそれを狙って最初のとき拘束してきたのだろう。

 

「……策略とかは?」

「何時も安全なところをキープしていて、決定的なときは当たり前のように勝利を鷲掴みにするような相手に?」

「……だね」

 

 櫛田さんも、言ってみただけなのだろう。

 改めて入学してからの彼を思い出しても恐くて仕方がない。

 彼は自分が必要と思ったことだけをしていた。必要ではないものはすべて切り捨てて――いや、この表現は間違っている。必要でないものはそもそも眼中にない、表面上は興味があるように見えても……

 

「……自惚れじゃないけどたぶん私達は必要としているよね。綾小路くん」

 

 同じことを考えていたのだろう、顔を青褪めさせながら櫛田さんは言ってきた。

 

「ええ、一番のウエイトを占めているのは性の欲望の対象としてだと思うけど」

「同感、うん、そこが違っていたらどうしようと思ってたから良かった」

「どういうこと?」

 

 高校生の私たちが、相手が性欲の対象で自分たちを必要としていることに共通認識を持って安心しているとは、入学する前の私が今の私たちを見たら狂人だと判断するだろう。

 そのくらいの腹が据わらないと、清隆君を相手になんて出来はしないからこうなったことに後悔していない。

 

「綾小路くんと交渉する必要があると思うんだ。もう少し、優しくと言うか、例えば回数制限してもらうとかして……手加減して欲しいって、私達をめちゃくちゃにしないでって……まだ、高校生なんだよ私達」

「同意するけど……具体的にどうやってするつもりなの?綾小路君を納得させるのは骨よ」

 

 正直不可能に近いと思う。櫛田さんがどういう条件を出したのか知らないが、手加減してくれるような条件はなかっただろう。

半分パニック状態で抱かれに行った私が言えたことじゃないけど、悪党だけど義理だけは守ってくれる彼が手加減しないとはそういうことだ。

 

「まず、私たちの現状を認識すべきだと思う」

「現状とは?」

「私たちは程度の差こそあっても、そういったことに対して経験不足で知識も足りない。それに比べて綾小路くんはどこで覚えたのか知らないけど両方ともある」

「その通りね。知識もそうだけど、人体に精通していると言えば良いかしら。すぐに私たちの身体の……敏感なところとか弱いところを見つけてくるわ」

「うん。どうやってかは分からないし知る必要もないけどそうだよね。何より綾小路くんにまだ交渉というかお願いできるのって、性行為しかないよね」

「ええ」

 

 彼から見て、一番私たちの価値が高いところはそこだ。だから、そこの価値を押し出して交渉するのは間違っていない。他の事だと彼に響かなくて、どうしようもないからそれ以外の選択肢がないといっても良いけど

 

 ―――つくづく堪らない人だ。

 何かを決めて優しい物が不要だと思ったら全く出さなるとはいえ、底には優しい物があることがまだ救いと言える。

 尤も、最大の問題として今回の私たちのケースでは、優しい物を基準にしている可能性がとても高い。

 彼の性行為はサディズムに溢れて過酷ではあっても優しさを感じる。

 性的に開発されて調教されていたことに、気付いてしまった身としては泣きたくなるけど

 

 私の考えを伝えると櫛田さんもまったくの同意見だと、私と意見が一致した安堵に顔を緩ませて一度大きく頷く。

 

「だから、私たちの価値を少しでも高める必要があるよね」

「同感だけど……経験不足を埋めるつもりなら無理よ。私は、綾小路君以外の人に抱かれたくないわ」

「私もだよ」

 

 嫌悪感を隠さない私の言葉に、櫛田さんも顔を歪めて即答する。

 私も櫛田さんも、清隆君以外の人に体を許すなんてありえない。考えるだけで身の毛がよだつ。

 

「でも、何とかする必要がある。だから、これを用意したんだ……」

 

 そう言うと櫛田さんは部屋の隅にあった大きな袋を持ってきた。中に色々と入ってるらしく形が歪んでいる。

 

「それは?」

「ネットは学校に規制されてるから、先輩から借りてきたんだ。知識だけでもって思って」

 

 そう言うと、結び目を解いて袋の中身をテーブルの上にぶちまけた。

 

「こ、これって……」

 

 テーブルの上にある品々を見て、私の思考は一時停止してしまった。

 

「お、思ったより凄いね……ハードなものをお願いって言ったけど予想以上」

 

 それは紅潮して固まってしまっている、櫛田さんも同じなのだろう。

 

「ハードって」

 

 裸の女性が表紙に写った雑誌のような大きさの本、四角いケースにも外国人らしい女性の裸が写っている。

 初めて見るけど、これが、エロ本とかエロビデオと言われるものだろう。

 ただ

 

「どうやって入手したのかしら」

「そんなことどうでもいいと思うよ。店員の人とかに多めにポイントを渡して私物を譲ってもらうとか色々あるし、そもそも堀北さんが気にしているのは別のことだよね」

「……そうね。ごめんなさい。自分を誤魔化すのは止めにする。私が本当に気になっていたのは」

 

 分かっていると櫛田さんが頷いて一番上の一冊の本を取る。表紙を見ると間違いない。

 

「……この人縛られているのよね」

 

 それも、私みたいに手首とか足首とか胸の上下だけじゃなくって全身を

 

「……そうだね……えっと亀甲縛りって言うらしいね。表紙に書いてある」

 

 痛々しくも気持ち良さそうにしている女性の写真を見て、思わず清隆君に縛られたところを手でなぞってしまった。

 私もいずれこんな風に縛られるんだろうか、縛られて身動きもできずに彼のもので……

 ハッとして前を見ると、櫛田さんも同じことを考えていたのだろう、ハッとした表情でこちらを見ている。

 

「……次行こうか」

「そうね……ところで」

「何かな?」

「これって……ハードなのよね。つまり、普通じゃありえないということで間違いはないわよね」

「……先輩も、プロの人がしているから素人は真似しちゃだめだって言ってたね。あっ、次はこれにしようよ」

 

 お互いに何も見なかったことにして次に取り掛かる。櫛田さんも内心は羞恥と清隆君への怒りで一杯だと思うけど。

 なんて人なんだろう、当たり前のような顔をして私たちにアブノーマルなことをしていたのだ。まだ、処女を奪われて間もない私たちに。噂半分で、縛るという行為があると信じた私が馬鹿だったとはいえ怒りは収まらない。

 

 怒りに震える手で櫛田さんが持ち上げたのは

 

「…………」

 

 思わず絶句してしまった。

 男性が女性に入れている写真だった。しかも――そこは

 

「あ、アナルセックスかぁ」

「…………」

「いや、こんなのプロの人じゃないと無理だよね」

「…………」

「お尻の穴だよ、お尻の穴。信じられないよ」

「…………」

「うわぁ、道具なんてものがあるんだ。痛そう」

「…………」

「こんなところで気持ち良くなるなんて……」

「…………」

「あの……堀北、さん」

 

 何か、答えないと……櫛田さんが変に思ってしまう。

 なのに何て言えば……清隆君としたときに前と一緒に弄られてイッてしまったと言えばいいのだろうか。

 それとも……手を縛られて犯されているときに、ビー玉くらいのシリコン玉をお尻の穴に入れられて、お尻に力を入れて泣きながら出したと同時にイッたとでも言えと。

 それとも……まだ写真みたいに犯されてないから大丈夫だと

 そんな、ことを、言うなんて、どうすれば、出来る筈が……

 

 ぽんと肩に暖かいものが置かれた。

 ハッとしていつの間にか俯いていた顔を上げる。

 涙で霞む視線の先に優しい笑顔を浮かべた櫛田さんが、何も言わなくて良いと首を横に振るのが見えた。

 

 

 

「こ、この本はもういいよね」

 

 さっきのことを忘れることにする。アナルって何のことだか私も堀北さんも知らないことになった。

 清隆くんに対する絶対許さないポイントは溜まったけど、いや本当に刺したほうがいいんじゃないだろうか、あの男。

 ぽいっと捨てて次の本に手を伸ばそうとすると、堀北さんが手を伸ばしてきた。

 

「ありがとう。もう大丈夫、次は私が探すわ……これなんかどうかしら?」

 

 憔悴しているはずの、堀北さんの健気さに泣けてくる。何で私はこんな娘を邪魔な奴だと思って、退学させようとしていたのだろう。

 どれどれと言いながら堀北さんが差し出した本を見て固まる――

 

「SM?」

「…………」

「スパンキングって、手で女性を叩くなんて」

「…………」

「これは?鞭に蝋燭って痕が残るじゃない」

「…………」

「上級は、嘘でしょう、逆さ吊りにして男の人のを女性の口に」

「…………」

「駄目ね。これは参考にならないわ。時間を無駄に……」

「…………」

「あの……櫛田、さん」

 

 何か、答えないと……堀北さんが変に思う。

 なのに何て言えば……清隆くんとしたときに犯されながら、お尻を叩かれてイッてしまったと言えばいいのだろうか。

 それとも……手を縛られて乳首に洗濯ばさみをつけられながら犯されて、泣きながらイッたとでも言えと。

 それとも……道具なしで逆さ吊りにされて、全部ついさっきまでやられたんだとでも

 無理。視界が、潤んで、前が見えない……

 

 暖かくやわらかい感触が私の顔を埋めてくる。

 ハッとしていつの間にか俯いていた顔を上げる。

 優しい笑顔を浮かべる堀北さんの胸の中で溢れる涙をすべて出した後

 

 私たちはお互い吐き出すものを吐き出した。

 

 

 

「動画は止めておこうか」

「そうね……」

 

 今更だけど、刺激が強すぎるものはなるべく避けたほうが良かったかもしれない。いや、それでは駄目だ。

 清隆くんが相当酷いことをしていると、分かっていたつもりだけだった。

 知識を得て甘かったと悟る。清隆くんのことだ、身体に傷が残らなければ良いくらいに考えていると想定しておいたほうが良い。

 

「……いえ、見たほうが良いわ。少なくとも心構えだけでもしておきたいから」

「……だね」

 

 堀北さんも同意見か、とりあえずここにある資料の内容はされるかもしれないと考えておいたほうが良い。

 大人のおもちゃなんて手に入らないだろうから、それ系はないだろうけど他はするだろう清隆くんなら

 それはそれとして、覚悟を決めるためには口に出すのが一番だ。

 

「じゃあ、もう一度言っておくね。私は……SM行為を清隆くんにされたことがある……軽いものだけどね、まだ」

 

 顔を背けて、最後のほうが早口で小さくなったがこれくらいは許して欲しい。素面だと、恥ずかしいなんてものじゃない。

 

「私も、もう一度言うわ。お尻の穴を清隆君に弄られたことがある。犯されてはいない……まだ」

 

 堀北さんも覚悟を決めたのだろう、小声の早口で顔を背けながら言い切った。同じく真っ赤だが突っ込まない優しさが私と彼女にはある。

彼の名前をお互い口に出すことが、深まった私達の絆を表している。ぶちまけた甲斐があった。

 

 改めて聞くと酷すぎる。堀北さんも私と数日違いで、初めて犯されていたと知ったときには驚愕した。

 お互い初めてを失ってから今日に至るまで、ありとあらゆることを、それもひどく短期間で経験したんだと。しかも、そのことを堀北さんは知っていて私が知らなかったとか、もう何も言えなかった。

 間違いなく清隆くんは私たちに知らせずに、認識の違いを責めて苛め抜くつもりだったと堀北さんと意見の一致を見た。そうやって仲違いさせて私達を苛めるつもりだったんだ。

 私達はその思惑から逃げられずに嬲られていたに違いない。危なかった、間一髪で逃げられた。

 あの野郎の誤算は私たちが手を組んだことだろう。

 共通の敵の存在は、些細ないがみ合いなんて吹き飛ばすんだって実感した。この問題は共通の敵があまりにも強大すぎることだけど、何とかするしかない。今は片方しかされていないけど、間違いなくこの先されるに決まってる。

 ……お尻の穴とか考えたくもない。せめて軽いSMなら、まだ、なんとか……

 いやいや、堀北さんを変態みたいに考えるなんて間違ってる、悪いのは全部清隆くんだ、私達は悪くない。それよりも

 

「本当に信じられないよ。最初から縛るなんて……うん。しかも、こんな恥ずかしいこと言わされて……そうだよね。ありえない……」

「信じられないけど、キスもしないで……そう、いきなりお尻の穴に指を……いえ、殴ったのだけど、急所を外されて……」

 

 そうやって三十分ほど愚痴って更に仲良くなった私達は、そういえば動画を観ようとしていたんだと思い出した。

 

「じゃあ、動画見よっか」

「ええ」

 

 思考を切り替えて動画に臨む。

 さて、何が出てくるのか。これはあんまりハードじゃないって言っていた先輩を信じよう。

 

――十五分後

 

 短い一本を観終わった私達は顔を見合わせる。

 

「「羨ましい」」

 

 何でだよ本当に

 

「AVを観て思ったんだけどさ。セックスって普通はああするんだよね。気絶しないのが当たり前だよね?」

「そうよね。入れたまま何度もしないなんてと訝しんだり、十分もしないで終わるなんてありえないと思う、こっちが異常なのよ……あれのサイズだけじゃなかったんだわ」

「そうだよ。私達って、普通はもっと優しく抱かれていいはずだよね。これみたいに。抱き合ってキスして胸とかあそこを触ってもらって、あれを舐めたあとで、一回くらいした後抱き合ってビロートークするのが普通だよ。Tレックスは諦めるけど、他はさあ……なんでAV女優を羨んでるんだろうね。私達」

「職業で差別したくはないけど、全くだわ。胸やあそこを弄られて失神させられた後、何度も出されて何度も失神させられるのは違う。認められない。最低でもシャワーくらいは浴びてからよ……なのに、初めての時から」

「そうだよ!初めてだったのに、あんな酷いことして!」

「そうよ!女心を何だと思って!」

 

 堀北さんもか、私達が年頃の女の子だと清隆くんはわかっていない。ここが一番の問題なんだよね。

 匂う体でケダモノのように泣き叫んでから貪られるように犯されるなんて、思い描いていたセックスとは違いすぎる。少女趣味とか言われても良い。女の子なんだよ私達は。優しくしろよ本当に。

 清隆くんに抱かれるのは好きだし溜めたストレスがどうでもよくなるし気持ちいいから、したいんだけど。やり方がさあ。

 

 

 

 ヒートアップした私達の愚痴はまだ止まりそうにない。だけど動画の続きが流れて自然と黙った。

 お互い、真剣に動画を睨むようにして観る。

 少しでも知識を得て価値を上げるために

 

「胸で挟むんだ」

「何かで濡らす必要があるわね」

「うん……乳液でいいのかな」

「良いと思う、これなら私たちも出来る」

 

 互いの胸に目をやって頷く、十分な大きさが私たちにはある。

 

「うわ、フェラチオって玉も舐めるんだね」

「そうね。手で触ったことはあったけど、口ではしたことがなかったから今度やってみるわ」

「そうだね。私もやってみるから、後で意見交換したいな」

「喜んで」

 

 目を合わせる必要はない、私たちは分かり合っている。

 

「身体にボディソープをつけて、相手の身体を洗うんだ」

「大変そうだけど、これはやってみたいわね」

「お風呂でか、私したことないなあ……」

「私も……」

 

 あの筋肉質な身体に自分の身体を擦りつけることを想像して、二人とも顔を俯かせる。

 

「男の人の上に乗るとこうなるんだ」

「騎乗位って言うらしいのだけど、男の人の視線で見ると恥ずかしいわねこれ」

「うん……それよりも、綾小路くんの自分で入れる自信はある?私はないよ」

「……私も自分で入れて失敗したら裂けると思うから自信はないわ」

 

 多少慣れても入れるときは全て身を任せたほうがいい、Tレックスに壊されると共通認識を改める。

 

「「……あっ」」

 

 場面が変わって思わず、動画を止める。そこには三人の人物が映っていた。二人の女性が一人の男性を責めていた。男性の顔は恍惚とした面持ちで、とっても気持ちよさそうで嬉しそうにしている。

 清隆くんにもこういう顔をしてもらいたい。

 ――違う。これなら何とか交渉できるかもしれない。

 

「「これよ!!」」

 私たちの声は見事なほど綺麗にハモッた。

 これなら参考になるというか、手持ちでどうこう出来そうなのはこれしかない。

 今日は休んで、明日の夜二人で責めるしかない。それでも、多分負けるだろうけど意地は見せられる。

 それで、もう少し普通に優しく抱いてもらえるようにねだろう。

 

「確かに三人でなんて恥ずかしいけど、そうすれば、少なくても――」

「学校や外で何てことは避けられるわね」

 

 間違いなく清隆くんにされる近い未来を回避しなければ、女の子としてというより人としての尊厳が無くなる。

 確かに私は何処でもとか言ったけど言葉の綾だ、本当に外で犯されるなんて考えていなかった。信じられないほど恥ずかしい文書も読まされたけど、甘く見ていた。

 甘かった、清隆くんはやる。もう時間がなくなっている気がしてならない。

 彼と一緒に過ごすのは好きだ。壁を作る必要のない相手としていつの間にか受け入れていた。だから、せめて室内でとどめて欲しいと思う。

 資料にあった全裸首輪付散歩なんてされてたまるか。そんな時間があるなら、普通にデートさせろ。

 基準が壊れていると自分でもわかる。でも仕方がない、私たちは必死だ。

 

 清隆くん以外の人に見られたくないから、外で裸は止めて欲しいという願いだけはかなえて欲しい。

 

 

 

資料を全て読み終えて知識を仕入れて満足して、明日どうするのかの話し合いが終わると、ふと思った。

 

「そういえば、綾小路くん今何してるのかな?」

「え?多分自分の部屋にいると思うけど、連絡してみましょうか?」

「……さすがに今日はちょっと……」

 

 まだ犯されてから三時間も経っていない今は無理だ。声を聞くだけで、散々虐めぬかれたことを思い出してしまう。

 完全にトラウマになっている私を見て、堀北さんは理解した人間特有の顔をした。そう、彼女もつらい思いをしているのだ。

 

「……そうね、もう横になったほうがいいわ。夕ご飯は作って冷蔵庫に入れておくから」

「ありがとう……ちょっと思ったんだけどさ」

「何かしら?」

「綾小路くん、さっき堀北さんが言ってたもう一人のところに行ってたりしないよね」

 

 堀北さんにぶちまけられたときに、最低でもセフレがもう一人増えると聞いて、複雑で苛立ってムカつくけどその対象は清隆くんだ。増える子は私と堀北さんの二人で誰なのか調査するけど、怒りさえわかない。

 きっと酷いことをされているだろうし、あんなTレックスの相手をさせられるとか、僅かに同情さえしてしまったし、私たちの負担が少なくなるという実利面もあるからだろう。

 もし優しくされていたら?清隆くんの罠に決まっている。一人に違う待遇を与えて、潜在的な裏切り者にするなど清隆くんは呼吸のようにすると二人で話し合った。

 妬ましいけど、女の子は許せる、たぶん、きっと

 

 あの野郎は、本当に何とかしないと犠牲者が加速度的に増えていく気がするけど

 

「……さすがにそれはないと思う。あなた相手に何時間もして、すぐに次なんて人間じゃないわよ」

「だよね。ごめんね変な事言って」

「疲れているからよ。さあ、すぐに休んで」

「ありがとう」

 

 お礼を言ってベッドに入るとすぐに眠気が襲ってくる。そのまま私は意識を手放した。明日の決戦を思い浮かべながら

 

 




手遅れな二人による同盟でした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗②

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

短めですがキリがいいので投稿します。


 複数を相手する時の鉄則は、無力化させるということに尽きる。故に、最も確実で効果的なのは殺害だがリスクが高すぎるため選ぶことはまずないだろう。

 それ以前に今回の相手にそんなことを考えはしない。

 だから、こうする。

 

「はぁっ、あっ、ダメぇ」

「いやっ、触らない、っんん」

 両手を後ろ手に縛り乳房の上下ごと腕を縛った、鈴音と桔梗はロープで絞り出された乳房を弄られて悲鳴を挙げている。

 オレの膝の上で対面させられた二人、同性とはいえ性行為をしているのを見るのは恥ずかしいのだろう。三人でと言い出したのに、互いに顔を合わせようとはしない。

 ブラを剥ぎ取られ白い身体を赤いロープで縛られた、ショーツ一枚だけの少女二人は舌なめずりを抑えきれないほどそそる。

目線をこちらに向けるまで乳房を弄る。

 

 

「あひっ……んんっ」

「ひぃっ……あうっ」

 

 括りだされて、普段よりピチピチと弾む乳房を揉み何とも言えない極上の触り心地を楽しむ。

 愛撫に首を振る彼女達が、こちらに顔を向けたときだけ弄るのを止める。どうすればオレが手を止めるかを理解した二人はほぼ同時にこちらを向き、自身の格好に恥じらい朱に染まる。

 その姿を見て、二人同時に訪ねてきていきなり脱ぎ始められて混乱した態を装い、下着姿になると同時に襲いかかったことを思い出しながら乳房から手を離す。

何を考えていたのか知らないが、3Pが出来るだけの経験を積んでいない今は、縛って動きを制限しないと大変なことになる。

 二人がどう思っていたのかは知らないが複数プレイは互いに経験豊富か、せめて人数が多い方の性別が経験豊富でないとまともにできない。

 経験が薄いと、何時もと勝手が違いすぎて傷を残したりすることもある。

 そういった事を懇切丁寧に言い、だからお前達を縛って楽しむと言ったら罵倒の限りを尽くされた。

 当然だろう、自分でも酷い事をしている自覚がある。

 でも、朱に染まった白い裸体は、慾望を抑えきれない魅力に満ちている。

 

「どうしても駄目か?」

 

 威圧するように、二人の顎を掴んで目と目を合わさせる。逸らそうとしても万力のような力で押さえ込まれてはどうしようもない。

 情欲に満ちた眼差しで二人を見る。

 怒り、怯え、恐怖、情欲。二人の眼からは読み取れる。

 ならば――

 ――二人とも条件付きで了承してくれた。

 

 

「や、約束だからね。私達を裸で外で犯さないって」

「もちろんだ、人目に見られるリスクを考えてみろ。普通はやらない」

「「……え?」」

 

 心底不思議そうに聞いてくる。コイツらの中のオレはどうなっているのだろうか

 

「何でそんなことを考えたのかオレが聞きたいくらいなんだが」

 

 ベッドに腰かけて、膝の上に乗せた二人の背中や腹を撫でながら聞く。それよりも、二人が仲良くなっていることの方が驚いたのだが、それは出さない。

 二人に何があったのか知らないが仲良くなって「今日は二人でしたい」何て言ってくるとは思いもしていなかった。嬉しい誤算だ。

 それはそうと何でそんなことを考えるんだ、人目のあるところで裸ではしない。

 

「いや、だって首輪付き全裸散歩とか」

「何を考えているんだ、お前らは」

 

 ドン引きだよ。

 

「いや、だって今まで酷いことしてきたよね。他の人に私達の裸見せたりしないの?」

「何でオレの女の裸を他人に見せるんだ」

「……お、おぅ」

 

 ハッキリと言うと桔梗は顔を真っ赤にして俯いた。

 鈴音も真っ赤になりながら聞いてくる。

 

「……本当に外ではしないの?カメラの死角くらいはあなたなら見つけてるわよね」

「特殊な趣味があるならともかく、固い地面の上で虫に纏わりつかれる趣味はオレにはない。お前らにあるなら応えるために一度くらい――」

「「いいえ(ううん)。私にもない(よ)わ」」

 

 全く同時に出した言葉は、うねりさえ起こした気がする。見られるかも知れない恥辱を与えて、いじめることはあってもなあ。

 ちらりと桔梗が鈴音を任せるというようにみる。コクリと頷く鈴音。

 

「そう、外で犯さないから三人でなんて条件は、条件でさえ無かったわけね。私達が過剰反応しすぎたのか……」

 

 大きなため息と舌打ちが部屋に響く。

 

「……良いわ。今日は、三人でしましょう。だから、これからはもう少し優しくするように心掛けてもらいたいわ。確かに勘違いしたのは私達だけど、その原因はあなたにあるのだということを、その鬼畜な頭で認識しておきなさい。だから、今日は、その、えっと……」

「私達二人で色々するからね。勉強したから期待して欲しいな。それと、最初は諦めたから後でいいからロープほどいてよ……恥ずかしいし手を使いたいから……」

 

 本当に仲良くなったなコイツら、どちらが外で何て言い始めたのか知らないが、二人の責任として二人で受け入れている。

 その上羞恥で話せなくなった鈴音を、自然と桔梗がフォローした。自分も顔を真っ赤にしながら大したものだ。

 そのまま二人を見つめていると、これから三人ですると改めて認識してたのだろう。

 

「あっ」「んっ」」

 

 顔を真っ赤にして身動ぎしようとして、縛られている乳房を刺激してしまい快楽の声を漏らして、そんな自分を否定しようと頭を振る。

 

「あぅっ」「んぅっ」

 

 その動作で、括りだされて普段より飛び出た乳房が跳ねるように動いてしまい、羞恥に真っ赤になって俯いたままチラチラと視線を送るだけになった。

 チラチラとオレかもう一人に視線を送り、縛られた二人は互いの格好を確認して、互いに目が合うと全身を赤く染めて動かなくなった。

 今日も欲望のまま貪ろうと決意する。

 尻の柔らかさを感じながら、こんな二人を見て勃たないはずがないじゃないか。

 

「「あっ」」

 

 下着を押し上げるような盛り上がりを見て、ガン見しながら腰を引き気味にするという器用なことをしてくる。尻が腿の上で動く感触と、そんな愛らしい姿を見ているとさらに勃ってきて、二人から引いた気配を感じる。

 誤魔化すつもりではないが、返事をしておこう。

 

「オレが原因で、鬼畜だということに異論があるんだが」

「女の子を裸で縛っておいて?」「私達を辱しめて勃起させておいて?」

 

 同時に半眼で言ってくるが、気にせずに続ける。

 

「ロープは後でだ。色々に期待しているが、その前にそうだな。まずはオレの前に直立で立ってくれ。直立だからな」

 

 暗に直立しなければどうなるのか、二人とも今までの経験から悪いほうに考えるだろう。オレが何も言わなくとも、勝手に忖度して自縄自縛に陥ってしまっている。

 ひょっとしたらこういう行動が、今回の誤解を生んだのかもな。 

 羞恥に赤くなりながら、文句を言わずに隣り合って直立して立ってくれた。

 

「やっぱりいい身体しているな、お前ら」

 

 鈴音の眩いほど白いぜい肉のない身体と、桔梗の肉付きのいい健康そうな象牙色の身体。どちらも極上だということをオレは知っている。いや、オレだけが知っている。

 信じられないほどの執着心が湧いてくる。人を全て道具だと教えられながら育て上げられた自分にとって、恵を含めた三人は替えがない極上のものだ。

 手に入れるまで色々あった過程が、今までとは違って長く楽しかった。

 少なくともオレが飽きるまではこの女達は、オレのものだ。オレ以外に渡さないし、裸体を見せたりはしない。

三人に何か非常事態があったら、オレは万難を廃して救うだろう。手間を惜しむつもりはない。

 こんなものはもう手に入らないのだから

 

 我ながら非道な考えを振り払って裸体をみる。

 

 つんと上を向いた張り詰めた美乳と、上向きの一回り大きな美乳が縄で括りだされて並ぶ。さっきの愛撫によりぷくりと膨れ始めた乳首が可愛らしい。

 鈴音の鍛えられ削いだように窪んだ腹、桔梗の女性らしいまろやかな脂肪がついた腹、どちらも少女の青みを宿して魅力的だ。

 ショーツごしの秘所の盛り上がりを隠そうともじもじと太股をこすり合わせているのが、可愛らしい。

 立ち上がって二人の周りを一回りする。

 

「あっ」「んっ」

 

 ピクリと身体を震わせるが、指示通り直立の体勢を崩さない。

 羞恥で、白い肌を赤く染める二人。

 鈴音の引き締まった腿、きゅっと上がった尻。桔梗の肉付きの良い腿、安産型の尻。

 桔梗の方が全般的に肉付きが良いが、鈴音の鍛えられたしなやかな身体も良い、甲乙つけることなどオレには出来ない。

 後ろから見ても最高だった。

 

 前に戻って少し悩む。このまま責めるか二人に色々してもらうか、どっちが良いだろうか。

とりあえず

 

「そろそろ下も脱がすか」

「だ、駄目っ」「やあっ」

「「あっ……ひっ」」

 

 ショーツに指をかけて引き下ろそうとしたら、反射的に防ごうとした二人は、腰を引いて身体を折り曲げてしまう。

 恐る恐るオレの顔を見て、仲良く引きつった悲鳴をあげる。失礼な奴等だ、つい口角が上がってしまっただけなのに。

 横に置いたボストンバッグから、ゆっくりと見せつけるようにテグスを取り出して目の前で伸ばす。

 ふるふると目の前の光景を否定するように首を振る桔梗と、縛られて普段と違っている重心を後ろにしようとして体勢を崩しかける鈴音。

 

「あ、あぁ」「ま、待って、今のは」

「直立」

 ……二人が過剰反応してしまった原因は、鈴音の言う通りオレに少しあるかもしれない。

 直立体勢に戻る彼女達を見ながらそう思った。

 

「最初だから軽いものにする」

「軽いものって……それ釣糸よね。私達をどうするつもりなの」

 

 桔梗を庇うように鈴音が尋ねてくる。

 オレは罰を与えるなんて一言も言っていないのに、当たり前のように罰を与えられると認識して受け入れている彼女達に嗜虐心が刺激される。

 

「直立体勢を維持できるように、お前の右の乳首と」

 

 輪っかを作るようにして見せる。

 

「桔梗の左の乳首を括って結び付ける」

 

 二人とも脳が理解するのを拒否したように、無表情になる。

 

「隣り合っているから、50cm位でいいな」

「いやあああっ」「ふざけんなああっ」

 

 魂消る叫びを叫ぶ二人、律儀に直立を止めていないのがオレを滾らせる。

 もう一つ鞄から取り出して手にもって二人に見せつける。迷ったが両面ギザギザケーブルタイではない方を

 

「動かなくて良かったよ」

 

微動だにせず、オレの手にある瞬間接着剤を凝視する。

 

「一滴のつもりだったけど、それでも風呂に入って溶けるまで20分はかかるからな」

 

固まった二人の指定した乳首をゆっくりとなでまわす。もう二人とも直立を解こうとはしないだろう。

 

「あああっ、触ったら、立っちゃうから……駄目っ」

「ひんっ、あんたはぁ、本当に……あうっ」

 

 二人は括られるために乳首を立たされようとしていることを悟り、直立体勢のまま身体を震わせて抵抗しようとする。

 上の口からは熱い吐息を下の口からは牝の匂いを漂わせながら、羞恥を忘れずに抵抗してくる。

 鈴音の硬く張り詰め弾くような乳房と、桔梗の柔らかい中に少女の固さがある乳房を揉み比べる。

 

「前と比べてなんとなく重くなったな。乳首も一回り大きくなったか」

「だ、誰のせいだと思っているのよ」

「清隆くんが散々いじったから私達こんな体に」

 

 恨みがましくこちらを見てくるが、目元が赤くなって発情しているのでかわいらしいとしか思えない。

 手の中で乳首が隆起していくのを感じる。あまりに短期間で女の悦びを教え込まれた二人の身体は、ちょっとしたことで乳首が勃起しやすくなっている。

 

「あっ、駄目よっ、何でっ」

「立っちゃったら、紐でっ」

 

 だから紐で縛られるのを避けようと立たないように必死で念じていても、今まで何度もオレに女の悦びを教え込まれた乳首は直ぐに隆起して、主の想いに従わずにオレの愛撫に素直に従った。

 

「準備は出来たな」

「あっ、ヒィィィッ!」

 

 いきなり桔梗の乳首の根本を括る、ナイロンではなく絹製のテグスで三重に括った。

 どこか甘い悲鳴を上げる桔梗。

 

「んっ、いっ、あああっ」

 

 続いて鈴音の乳首の根本を括る。

 出来る限り幅広で優しく括ったため普通にしている限りはそんなに痛みはない。

 

「ううっ……」「ひっんっ……」

 

 もっとも縛られて乳首の根本を括られて羞恥に呻く二人には、何の慰めにもならないが

 

「あっ、こんなっ……あっ」

 

 自身の乳首から出ている糸の先を見て、鈴音の隆起した乳首を見つけて視線をそらす桔梗。

 

「ち、違うわ……これはっ……あっ」

 

 否定しようとして、同じく糸の先を見て、桔梗の隆起した乳首を見て視線を逸らす鈴音。

 性的反応を見せている同姓など今まで見たことがないのだろう。

 両目を妖しく光らせて悩ましい呼吸をしながら乳首を尖らす姿に、己の姿を見て羞恥に全身を赤く染めて動かなくなる

 

 微動だにしなくなった二人のショーツの中に、手を滑り込ませる。右手で鈴音、左手で桔梗を

 

「ひあぁっ!? や、うそ、そんなとこ今したら、あうぅっ……!」

「だ、ダメェェ!?今されたら身体が動いちゃう、あああっ……!」

 

 中でぷっくりと膨れた陰核を強く摘まみ、中指と薬指をすでに濡れきった膣内に入れて、好き放題に肉襞をかき回す。指の周りでコリコリした肉がよじれるように淫靡に蠢いて、オレの指を歓喜して受け入れながら激しく収斂する。

 

「「んあぁぁぁぁっ!」」

 

 プシュプシュと潮を吹きながら身体を震わせながら、直立体勢を維持しようと懸命な二人。

 懇願するような目でこちらを見つめてきた。

 

「オレの指だとわかっているのかな。お前らのここはすごい締め付けで奥へ奥へと飲み込んでいくぞ。他だとどうなるのかな」

「や、やめて、私、あなた以外、入れたくないからっ……ああっ」

「わ、私も、清隆くん以外の人なんて知らないっ……知りたくもないっ」

「ああ、男はオレ以外知らないで喘いでおけ」

 

 暗にお互いに責めさせるつもりだったんだが、斜め上にかっとんだ返答をしてきた。もちろんだ、他の男になんてやりはしない。

 衝動に動かされて、指を今まで見つけてきた彼女たちの弱点に擦りつけて責め立てる。

 

「あっ、ひぁっ、あっ、えぁっ」

「ひんっ、あっ、あっ、ふぁっ」

 

 小さい絶頂を何度も愛液を吹き出しながら、震える足を踏ん張って直立体勢を維持する。括りだされた乳房がいつもより大きく揺れて、先端から汗を飛ばす。

 たまらない思いと止まらない情欲、悶える少女達を誰にも渡したくないという今までに感じたことがない独占欲、に従って責める。

 

「も、もう、お願い、イってるから……」

「何回もイってるから、お願い……私達このままじゃ」

 

という声を聞き流して、膣内の指を激しく出し入れする。二人の上下の口が奏でる四重奏をもっと大きくするために。

細かな膣壁が一匹ずつ意思を持ったミミズのように蠢きながらしごきあげられる右手と

強い吸着感で引き込むように絞りとられそうになる左手。

指を折り曲げて膣壁をえぐる度にぐちゅぐっぷっと淫らな水音を出して、その度に軽い絶頂に震える二人。

 

「うっ、うっ、うっ」

「あっ、あっ、あっ」

 

声を出せば崩れてしまうのだろう。唇を血が出そうなほど噛み締めて耐えている。

ショーツはもうびしょびしょで伸びてしまっている。もう穿くことは出来ないだろう。

 

「ひぐぅっ……!もう、や……あーーー……っ、あーーー……っ!」

「あああっ……!ダメっ、だ……めぇーー……っ、うぁぁっ……っ!」

 

 止めに陰核を捻り上げながら、二人の乳首をつないでいるテグスを咥えて思いっきり引っ張ると長い長い嬌声を断続的に上げて、涙をぽろぽろと零しながら、二人は一際大きな絶頂に達した。

 

 耐えきれずに、崩れ落ちてきた。俺の肩に額をのせられるように抱き止める。

同時にイクように合わせたお陰で、乳首を痛めずに済んだ。不味いときはフォローするつもりだったとはいえ、安堵する。

 

「きよ、たか君、お願い……瞬間、接着剤なんて、いやよ」

「お願い、許して……私達精一杯、奉仕するから、だからぁ」

 

オレの両肩で息も絶え絶えに羞恥に身体を震わせて許しを乞いながら、秘所から新しい愛液をぽたりと床に垂らす二人を見て悟る。

 

……二人が勘違いした責任の大半はオレだな、と

 

 

 

 まあ、いい。どんな形になるか知らないが、責任は取ろう。

 この二人はオレのものなのだから




欲望の赴くまま自然にしていたら調教していたという


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗③(奉仕)

長くなりそうなので分けました。


「「あっ……んちゅ」」

「巧くなったな。二人とも気持ちいいぞ」

 

 二人に対する今まで感じたことがない気持ちがさらに高まってから数十分後、ベッドに腰掛けて床に膝立ちの二人によって一緒に逸物を舐められる快楽に目を細める。

 奉仕に邪魔かもしれないが乳首のテグスを含めて縄を解かれていない、鈴音と桔梗は赤い舌を出し合い、逸物に沿ってゆっくりと上下に動かす。二人は正確な機械のように一本の逸物の両側を一人が下から、もう一人が上からじっくりと舌を這わせる。

 

「んちゅっ、ぐちゅ、くぷくぷ、ずずず……」

 

 鈴音が亀頭全体を舌で舐め回し、雁首の部分を何度も往復して吸うようになぞり、尿道を舌先で幾度と無く小突く。

 

「もきゅ、もきゅ、ちゅちゅ、んむんむっ……」

 

 その時に桔梗が睾丸を舐めしゃぶり大きく口を開けて玉を転がしていく。

 

「「ん……んむっ、んん……っ」」

 

 しばらくすると桔梗は舌を突き出したまま上に向かってなぞり上げていき、それにあわせるようにして鈴音が茎を軽く唇で甘噛したまま顔を下ろしていき、ちょうど逸物の中間あたりで二人の顔がすれ違う。

 やがて桔梗の唇が亀頭にたどり着き岩のような亀頭を口中に収めようと口を大きく開けると同時に、鈴音の顔は睾丸にたどり着き、垂れ下がった睾丸を舌でぺろぺろと持ち上げるようにしゃぶる。

 花びらのような桔梗の大きく開いた唇が、横に張り出したえらの部分をなんとか口内に納める、二度目とはいえ口を大きく開けすぎて痛いのだろう、目に涙をためながらも裏筋に舌を当てて拙くとも丁寧に奉仕してくる。

 

 オレのつぼを抑えた奉仕は、気持ちがいい、拘束した白い身体を躍らせて奉仕する二人の健気な姿はこれ以上なく興奮させてくるのだが

 

「……お前らが観たAVってこんなのがあったのか?巧すぎるんだが」

 

 思わず尋ねてしまう。絶頂の後、昨日AVで勉強したと聞いてはいたがあまりにも対オレに特化している。

 

「……ぷはっ……清隆君が気持ち良さそうにしている所を櫛田さんが教えてくれるから合わせたら、こう言う風になっていただけよ」

「……ぷはっ……はぁ、うん。普段ないくらいに清隆くんが感情露わにしてくれるから、こっちとしてはとてもやりやすいよ。後は堀北さんが方針決めてくれるからそれに合わせれば良いだけ出から」

「……そうか、気持ち良いから続けてもらえるか」

 

 了承の声とともに、視線で会話をしながら奉仕を続けてくる二人に戦慄する。

 鈴音の他者愛の頭の良さと桔梗の情報収集能力が合わさるとこうなるのか、再び上下を逆にしながら奉仕してくる。

 唾液の糸を引かせながら根元と先端を奉仕する二人を見ているうちに、もっとめちゃくちゃにしたくなってきた。

 乳首はまだ括ったままだ。軽く引っ張ってやる。

 

「ふああっ」

「きゃんっ」

 

 自動的に身体ごと逸物に引き寄せられて悲鳴を上げながら、逸物に身体ごと寄せるように懸命に奉仕してくる。

健気な姿に、さらにいじめたくなりもう一度引っ張る。

 苦しさに涙を浮かべながら、顔を赤くして快楽の喜びに一瞬目を細める二人だがすぐに振り払うように吸い付いてくる。

 

「んちゅっ、ぐちゅ、くぷくぷ、ちろちろ」

「んぅ、じゅぷっ、ちゅぅぅ、ふっ、じゅるるるるっ」

 

 引っ張られたことで快楽を感じてしまったことに気づかれないようにするためにか、同時に細かく亀頭と睾丸を突いて唇を押し当て吸い上げる。

 

「おおっ」

「ひんっ」

「あうっ」

 

 あまりのことについ呻き声を出して、さらに糸を強く引っ張ってしまった。

 

「……ぷはっ……ちょっと、さすがに痛いんだけど、いい加減ほどきなさいよ」

 

 桔梗が非難するように言ってくる。瞳の奥に情欲の炎が見えてなければ、ほどいたのかもしれない。

 

「オレは緩めに結んだんだが覚えているか?」

「――っ、それがどうしたのよ」

 

 暗に俺が言おうとしている事を悟ったのだろう、羞恥に顔を染めて目をそらす。

 

「いや、あれから乳首が少しでも収まっていれば、自然と落ちたのに引っ張っても落ちないのは、なあ」

「ぅ――」

 

 ずっとほぼ最大限に勃起しっぱなしの括られた乳首に目をやり俯かせてしまう。

 もう一つも括くろうか片方だけだったら寂しいんじゃないのか、と言おうとしたとき。

 

「……仕方ないでしょう」

 

 黙っていた鈴音が呟くようにいう。

 

「……あなたとこういう事しているんだから、仕方ないじゃない」

「うん……だよね」

 

 二人は消え入りそうな声で言うと、何かを願うような目で見上げてきた。

 

「…………そうか」

 

 

 

 

「んむぅっ……はぁっ、ピクピクしてるね。私たちの舌と手が気持ち良いんだ」

「れるっ、本当ね。ピクピクして硬くなってるわ。匂いも濃くなってる」

 

 時折お互いの手が触れ合いながら奉仕してくる。熟慮の末、乳首以外のロープをはずした。

乳首のテグスはこだわりとしてまだ解かないとはいえ、身体の自由が増した二人は、裏筋や竿を優しくなでながら亀頭と睾丸を舌と口を奉仕してくれている。

 女の子座りで上目遣いで見てくる鈴音と桔梗があまりにも可愛らしかったから、縛ったままかほどくか熟慮の末ほどいたのは正解だった。

 ――決して絆されてはいない。オレにそんな感情は、ない、はずだ

 

「んはぁ……櫛田さん、こっちを、れぅっ、れちゅるれっ、ちゅっ!」

「ん、わかった、堀北さんは、その辺を、ちゅるるるっ、ちゅぅ!」

「本当に仲良くなったというか、息ピッタリだなお前ら」

 

 熱のこもった声でお互いの絆を深めるように互いの名を呼びながら、オレの逸物を舐めしゃぶり撫でてくる。

 犬猿の仲だった二人が何かを共同して行う姿はクるものがある。しかもその目的はオレへの奉仕だということが、これ以上なくオレを高ぶらせていく。

 

「ふぁぷ、ぷはぁ、ちろちろっ、じゅぷっ、じゅぷっ、先っぽ、ヌルヌルしてる、ずずっ」

 

 亀頭にたっぷりと塗られたお互いの唾液とカウパー液が混ぜ合わさった液体を、桔梗が尖らせた舌をストローのようにしてすすりとる。

 

「鈴音は、すすらずに涎でべとべとにするだけなのか」

「ぅ……ふぁっ……ずずっ、こくっ、こくっ、はぁっ、んっ」

 

 睾丸を舐めている彼女には難しいことを言って辱めると、一度息を呑み睾丸のしわに溜まった液体をこくこくと飲み干すと亀頭に顔を向けた。

 

「んんっ、ちろちろっ、じゅぷっ……はぁ、ふっ、櫛田さんの唾液と清隆君のが、私の口にっ、ちゅる、ちゅぴっ」

「ふはぁっ……堀北さんの唾液もっ、ちゅっずっ……あふっ、ああっ」

 

 奉仕に高ぶりきった二人は、無我夢中で亀頭を舐め唾液をすすり続ける。そうなると必然として

 

「「あっ……」」

 

 お互いの舌が触れ合い一瞬動きを止める。

 

「あ、櫛田さんの舌が、唾液……んむっ、はむっ、はむっ、はむっ」

「堀北、さんの舌……ちゅろろ、ちゅぴっ、ちゅぴっ」

 

 普段なら何らかの動作をしただろうが、発情しきった二人はすぐに動きを再開する。端正な二人の顔立ちが、並んで口淫によって卑猥に頬をすぼめて舌を突き出す痴態をみているとさらに高ぶる。

 舌同士が触れ合う中、三人から分泌された液体をすすりあうことで二人の奉仕は激しさを増す。

 

「っぅ……」

 

 並んだ発情しきった牝の顔と、熱い吐息と、淫らに動き回る舌がもたらす快感に思わず呻いてしまう。

 

「んんっ、ピクッて大きく震えて……えっ、るぅぅんっ……」

「はぁぁっ、そっか清隆くんもう少しで……んぅっ、んんん……」

 

 逸物がしなると二人は無意識に手と舌で押さえつけ、左右非対称の動きで舐め撫で上げる。

 鈴音が亀頭を吸い取るようにしているときは、桔梗は雁首や裏筋を舐める。鈴音が舐めるときは桔梗が吸い。鈴音が吸うときは桔梗が舐めると交互に繰り返していく少女たちを見ていると欲望がさらに高まる。

 

「っ、鈴音、桔梗」

 

 思わず二人の名を呼ぶ。理由はわからないが、こんなに頼りない声で人の名前を呼んだことなどないのに、呼べるということが嬉しいと感じてしまう。

 

「んっ……」

「ふぅ……」

 

 オレが射精しようとしているのに気付いた二人はうっすらと目を細めて優しげな笑みを浮かべたかと思うと、鈴音が亀頭を口内に滑り込ませた。

 

「むぐっ!んぷぅぅーっ!」

 

 唇を捲り上げて滑り込んでいく亀頭、巨根を銜え込み目からぽろりぽろりと涙を流しながら、苦悶の呻きをもらしながら喉奥まで逸物を入れた。その健気な姿にオレはさらに高ぶってしまう。

 

「鈴音、動くぞ」

「んっ」

 

 同意を受けて、ゆらゆらと腰を揺すって肥大した先端を口内粘膜に擦り付け、蕩けるような熱い感触を味わう。

 オレの無遠慮な腰使いにも、わずかに首を揺すって歯を当てないようにしながら、オレの動きに身を任せる。

 ゆっくりと鼻で呼吸をする。あの鈴音がフンフンと鼻を鳴らしながらオレの逸物を銜える姿は、それだけでいっそう股間が滾ってしまう。

 

「んんっぷぅっ!ぶじゅる……んんぅうっ」

「そっか、鼻で息しながら、口をすぼめて口からこぼさないようにして、清隆くんのを舐めるんだぁ」

「んっ、そうっ、はむぅ……ちゅずっ……じゅるるるるっ」

「うん。息が苦しくならないくらいに気を付けるんだね。ありがとう堀北さん、私清隆くんに逆さ吊りなんて酷いやり方でしかされてなかったから」

「んんっ、きにしなっ、んくっ……じゅちゅむるっ」

「……うわぁ……すご」

 

 そういえば、鈴音にしかまともにフェラチオさせてなかったなあ

 疲れたあごで必死に搾り出すように言葉を出す桔梗の声を聞きながら、腰をゆっくり動かしてそんなことを思う。

 腰の律動に鈴音は白く濁った唾液の泡を口の端から溢れさせ、喉の奥に届かせている抽送を懸命に受け止める。

 鈴音は苦しげな表情をしながら、自分から頭を前後に揺らし、舌で亀頭を舐め鈴口を舌先で刺激して口をすぼめて吸い付いてくる。

 激しい口淫に限界だった逸物にさらに精が送り込まれる。

 

「鈴音、出るぞ」

「……んむっ、んん……っ」

 

 一際、強く吸い付かれた瞬間、下半身に渦巻いていた欲望が逸物に集中して溢れ出す。

 

「……えっ?」

 

 呆然と見ていた桔梗の頭と鈴音の頭を掴む。

 逸物を鈴音の口内から抜き出し、精液を受け止めるつもりで構えていた鈴音と目を丸くしている桔梗に噴出する。

 

「「きゃああああっ!?」」

 

 鈴音の口内から飛び出した逸物から噴水のように放出される精が、ボタボタと勢いよく二人の顔に降り注ぐ。

 

「あ、熱いっ……熱くてっ、ネバネバの清隆君のがっ!私の顔と髪にっ!」

「ちょ、また、かけられちゃってるっ!うぅっ、顔と髪に清隆くんの匂いが染み込んじゃうっ」

 

 顔と髪を浴びせられる白濁液に二人は少し違った反応を見せた。

 今まで口淫後にかけられたことがなかった鈴音は素直に驚き、経験がある桔梗はどこかオレの匂いで染められることを喜んで受け入れている。

 

「うううっ、すごい匂いっ……んんんっ」

「うぁぁっ、前よりいっぱい……うううっ」

 

 一通りの射精が終わると、辺りには精液の臭いが立ち上り少女たちをさらに蕩けさせる。

 

「あぁっ。はぁっ……はぁっ……」

「はぁっ、はぁ……はぁ……」

 

 長時間の口淫で喉まで銜えこんだ鈴音は息も絶え絶えの様子だ、呆然と自分の黒髪を染めた白濁液を見てぼんやりとしている。いや、意識を飛ばしている。

 桔梗は疲れきっているがまだ少し余裕がある。それでも顎が疲れきっているのだろう、髪や顔よりも顎を撫でている。それでも、まだ余裕があるならばやることは一つだ。二人の奉仕によってオレの欲望はこれ以上ないほどに高まってしまっている。

 

 

 

 

「ふあっ」

「――っ」

 

 鈴音と桔梗を抱き上げてゆっくりとベッドに寝かせる。桔梗を下にその上を鈴音にして、互いの手を合わせるようにして結ばせる。

 

「ちょっと、こんな姿勢……ひぅっ」

「ぁぁっ」

「あっ、ごめんっ。堀北さん、大丈夫……うぁ」

 

 鈴音の身体の下から出ようと身体をひねろうとして、互いの乳首を括ったテグスに引っ張られ悲鳴と謝罪をした後、元の姿勢に戻り、体液でどろどろの鈴音の顔を見て引きつった声を漏らす桔梗。

 

「ちょっと、清隆くん、タオル、タオル寄こして、いつもの暖かい濡れタオル」

「わかった」

 

 このまま精液をつけたまましたかったのだが、桔梗からは有無を言わさない圧力がある。

 タオルを渡すと手入れを始めた。自分よりも先に鈴音の顔と髪を手入れする辺り、今までの癖なのか桔梗の素なのか

 

「堀北さん、動かないでね……あー、意識がないか、綺麗にしないとだめだからね、拭くよ……うん、睫長くてバランス取れてるなあ……清隆くんもボーとしてないで、私の顔を綺麗にしてね……鼻もちょうどいい高さだし……唇もプルプルしてる……あ、タオル追加ね……髪はサラッサラ……ちょっとぉ!」

 

 綺麗にした鈴音の顔を見て面白い悲鳴を上げる桔梗。

 顔を綺麗にしてなければ、大口を開けた途端に精液が口に流れ込んで面白い反応をしてくれただろうに惜しいことをした。もう少しゆっくり拭くんだった。

 

「うわぁ、女の人ってこんな顔になるんだ……まさか、私も」

「どうだかな」

 

 鈴音の蕩けた牝顔を見て戦慄したように呟いて、オレが綺麗にした自分の顔を撫でて自分は違うと確認する桔梗の牝顔を見ていると耐えられなくなってきた。

 二人の姿勢を調整して秘所と秘所を合わせるようにする。ぐちゅりと水音を立てて合わさる秘所。

 

「清隆くん、あんた……何する気……ひっ」

 

 快楽と羞恥に顔を真っ赤にした桔梗がこちらを見てオレの逸物に目をやると青ざめる。

 

「鈴音が力尽きたからな。回復するまでは桔梗、お前だ。もう、ぐちょぐちょだからこのまま入れるぞ」

 

 貝あわせをしている二人の秘所を見ていると、欲望が抑えきれない。柔らかな二つの秘所は、二人の体重に挟まれて花開くように開いて蜜を垂れ流している。

 当然自分の秘所がどうなっているのか桔梗は理解しているのだろう、勃起しきったオレが今からどうするのかもまた。

 

「ちょ、ちょっと待ってね。本当に待ってね……あんな顔は……えーと、清隆くんの部屋って埃落ちてないんだね。うん、前よりも綺麗になってる。綺麗な部屋はポイント高いよ」

 

 ……こいつ鈴音のアヘ顔をみてビビッてるな。このまま犯されたら、自分がどういう顔をするのか認められないのだろう。性行為よりも、自分が牝顔をしていると認められない心理に首を傾げたくなるがそういうものなのだろう。

 

「ああ、前より掃除に気をつけているからな」

「どうして?」

「性行為をするのに衛生状態を綺麗にしないのは問題だろ。埃でも落ちてると、口や性器から入って病気の元だ。どうでもいい奴ならともかく、自分の女を変な病気にさせるつもりはない」

「……う」

 

 詰まったようにうめくと顔を朱に染める。

 

「どうかしたのか?」

「……いや、うん、もう、いいかなって」

「いいとは?」

 

 鈴音が意識を無くしていることを確認するとぼそりとした声で言ってくる。

 

「……して良いってことだよ」

「何をだ?はっきりと言ってくれ」

「それは、その……セックスを」

「ほうセックスか、具体的には?」

 

 桔梗の大陰唇をくにくにと弄びながら促す。オレの意図を察した桔梗は軽く睨んでくるが、鈴音の体温を感じながら敏感な部分を擦り合わせて発情しきっているため可愛らしいとしか思えない。

 

「え、あ、うぅぅっ……その、私の、あそこに、清隆くんのを、入れて……ひぁぁぁっ!や、やぁ、ああっ」

 

 あまりに抽象的過ぎる桔梗の発言が許しがたく、人差し指をずぶりと膣口に入れる。三人の中で一番吸い付きと締め付けが良い桔梗の秘所は、逃がさないとばかりに吸い付き締め付けてくる。

 

「あそこ?オレの?そんな答えで本当に良いと思っているのか?もう一本増やしたほうが良いのかもな」

 

 指を大きく動かして、まるでもう一本のスペースを作っているようだと桔梗に思わせる。

 

「だ、ダメぇぇぇっ……うん、わかった、わかったよ、ちゃんと言うから……わ、私の、その、ヴァ、ヴァギナに、清隆くんの、あの、ペニスを……ひぃぃぃっ!何でぇ、私っ、ちゃんと」

 

 中指を入れて二本の指でぐりぐりと軽い絶頂はさせても、大きな絶頂は与えずに寸止めして責める。

 

「何で英語で言ってるんだ」

「だ、だって、そんなこと、恥ずかしくて、言えないっ」

 

 桔梗の真っ赤に目を潤ませた顔を見ていると、さらに虐めたくなる。秘所の中に入れた指をさらに蠢かせながら、ちらちら様子を見ていた気絶したままの鈴音の頭に手を伸ばす。オレだけならともかく同姓の鈴音に聞かれるのは耐えられないだろう。

 

「鈴音にも聞いてもらうか」

「だ、ダメぇ……ああっ」

 

 顔を横に振ると被虐の吐息を漏らす。桔梗の膣からはさらに蜜が零れ落ちて、欲しいと我慢ができないと蠢いている。羞恥快楽の狭間で、煩悶する桔梗の顔はこれ以上なく淫らだ。

 

「わ、わたしの、お、おま、おまんこに、清隆くんの、お、おちんちんを、入れて、下さ……ああああっ!」

 

 できる限り鈴音の耳から顔を離して、ささやくような声で言ってきた桔梗に我慢ができずに逸物を挿入した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗④(本番と言葉責め)

あまり進まないです


 濡れた粘膜に吸い込まれるように亀頭が呑み込まれる。

 

「ひぃぃぃっ!痛いっ、いきなりされたらっ、無理ぃ……」

 

 完璧にオレの形を覚えてオレだけに合わせるようになった桔梗の膣とはいえ、規格外の巨根を捻じ込まれるとみちみちと引き攣るように蠢いて必死に広げていくことしかできない。最初が痛いのはもうどうしようもないと諦めているが、彼女たちに申し訳なく思うときがある。

 目を見開いて、衝撃にぽろぽろと涙を流しながらヒューヒューという呼吸音を響かせて必死に受け入れる桔梗を見ながら腰を進める。

 削岩機のようにたっぷりと濡れた狭い膣を抉るように突き進む。

 

「あ゛あああああっ!!奥がみちみちって!んんっ……」

 

 鈴音の尻を腹で感じ、桔梗の尻を睾丸で感じ、奥まで届いたことで少し休む。桔梗は逸物に貫かれた衝撃をシーツを強く掴んで耐えている。

 

「桔梗の中、凄く熱いな……それにキュウキュウに締まっている」

「だって、こんな、すごぃぃ……んんっ!……はぁ、はぁ、硬くて、熱くて、大きくって……あっ!あっあっあっ……指と、違いすぎてぇ」

「そんなに指と違うのか?」

「全然違うよ、うぅんっ!ぅぅあっ!はぁ、はぁ……お腹の中で、好きな人を感じられるのって、凄すぎるよぉっ……んんぅっ!」

「……そうか」

 

 逸物の衝撃から回復して快感を覚え始めたから、半分朦朧としているのだろう。気絶した鈴音の顔を左肩に置いた桔梗は、発情しきった顔でとんでもないことを言ってくる。

 

「やっぱり私、こっちが良い。んんっ……清隆くんの指も好きだけど、奥の奥まで好きな人の体温を感じられなくて切なくなっちゃう……気持ち良いけど物足りないのっ、だから、指よりおちんちんが好きだよっ……んっ、あんっ!」

 

 熱く滾った膣が逸物に吸い付くように奥へと誘うように締め上げながらこんなことを言われて、まだ動かしてもいないのに震えるような快感が俺の身体を襲う。

 

「動かすぞ、桔梗」

「うん――っっ!ぁ私っ、なんて事っ!うぅっ!」

 

 ゆっくりと腰を引いて桔梗が耐えられる速さで腰を進めて叩きつける。衝撃で朦朧とした意識から桔梗が戻って、真っ赤になって慌てているのが少し残念だが、それ以上の快楽がオレを襲う。

 

「あひぃっ、ほ、堀北さん、行っちゃダメっ、ああっ!動かないでぇ!あうあぁっ!」

「っ―――」

 

 なんだこれ今までの挿入と全然違う。

 膣を抽送する単純な快楽だけじゃなく、奥に叩き込んだとき二人の少女の肉感での快感が段違いだ。

 気絶したままの鈴音の尻が、オレの腹で弾み押されようとするのを、糸で乳首を引っ張られるのを恐れた桔梗があわてて掴んでほっとした表情がたまらない。

 もう一度腰を引いて進めて抽送をはじめる。

 

「ダメぇ!堀北さんの乳首とあそこがこすれあってぇ、んぅっ、堀北さんっ!ああっ、ダメぇ!ひっ、待ってぇ!突かないてぇ!」

 

 二人の少女の張りのある柔らかい尻が、同時にオレに当りなんとも言えない心地よさを与えてくる。桔梗が泣きながら鈴音を揺さぶる姿がオレの心に熱いものを注ぎ込んでくる。

 

「やぁぁっ!あっ……んっ、んんんーーっ!ほ、堀北さん、起きてぇ、あひぃんっ!私、力入らなくなって」

「桔梗」

「ひぅっ」

 

 腰を止めて呼びかけただけで、どうしてそんなに追い詰められたような悲鳴と表情をするんだろう、ちょっと優しく虐めようとしているだけなのに。

 

「取引だ。鈴音の身体を、今の乳首と秘所を合わせた姿勢で抑えている限り大人しく抽送する。もし、離れたら今までお前にしたことがない本気で突く」

「ほ、本気って、何よそれ!これ以上、何をする気なの!?」

「そうだな。一度やって見せたほうがいいな。安心しろ、今回だけは鈴音の身体はオレが抑えておく」

「ひっ!?い、要らない、必要ないっ、普段から堀北さんの身体抑えてくれればっ!やめてっ、ひどいことしないでっ!」

 

 怯える桔梗の反応を楽しみながら大きく腰を引いた。そして腰を手加減無しで思い切り子宮めがけて容赦なく打ち込む。

 

「くひぃぃいいいぃぃっ!!?」

 

 亀頭が最奥に到達して、押し込まれた子宮により腹がボコリと膨れ上がる。壮絶な衝撃により桔梗は鈴音の身体ごと背を逸らして、ガチガチと歯を鳴らして感電したように全身を痙攣させる。

 失禁しなかったのは大したものだが、もう一度これをするか子宮をぐりぐりとすれば失禁すると桔梗の膣の具合から算段する。

 

「あぃぃっ、ひぃっぐっ!ひぃっ、ぃぃっ、ひぃぃっいいいいっ!」

 

 ぼろぼろと涙を流しながら叫ぶ桔梗の耳に口を寄せる。

 

「このまま鈴音の身体に挟まれた子宮をぐりぐりと動かしてみようと思うんだがどう思う」

「だめだめだめだめ、鈴音さんの身体抑えるからぁ、止めてぇ、ひぅぅぅっ、ひっ、ひぐぁっ!?」

 

 ガシッと鈴音の身体を両手だけではなく両足で挟もうとして、さらに奥深くオレの逸物を咥え込み悶絶する桔梗。その可愛らしい姿と膣からさらに愛液が増えていくことに満足したオレは、ゆっくりと逸物を後退させて、最初よりもずっとゆっくりとしたやさしい速さで抽送に移行した。

 

「は、はっ、んんっ!これなら、大丈夫っ……んんっ!お腹の中、引きずり出されるみたいでっ、凄いようっ!」

 

 鈴音の身体にしがみついて嬌声を上げる桔梗。

 

「んん……ぁぁあっ!抜くとき、引き摺られてっ、ああっ!気持ちいいっ!あひぃぃっ」

「こうやって奥にしてみたらどうだ」

「えっ、あっ、あーーーーっ!それっ、ああっ、それだと、入り口から、奥までっ、こしゅられてぇ!お腹一杯に、清隆くんが感じられてっ!きゃぁぁぅああっ!?」

 

 急所を突いたことで、ビクッと大きく跳ねる桔梗の身体、同時に漏れる獣のような声。

 

「……今の声だが」

「はぁっ、はぁっ……何のことかな?空耳だと思うんだけど」

 

 鈴音の長い髪で顔を隠しながら誤魔化すように言ってくる。散々今まで叫んでいるのに、まだまだ恥ずかしいのだろう隠そうとしている姿がいじらしい。

 そういう反応をしてくれるかなと期待通りの反応に嬉しくなる。

 鈴音と桔梗と恵の弱いところは、全てオレが把握していることを教えていない甲斐があるというものだ。

 

「確かに聞こえたんだが」

「はぁ、はぁ、しつこい、なあ……はぁ、はぁ」

 

 真っ赤になって睨んでくる彼女の身体に確認するように、オレは急所を亀頭でぐりぐりと擦る。

 

「あひぃぃっ!?そこっ、ダメっ、ダメダメっ!……あぅあぅあぅぅ、お願いだから、ひゃああぁぁっ!」

「この声だ、間違いない。オレの聞き間違いじゃなさそうだな桔梗」

 

 意図して低い声に変え、何かお仕置きされるのではないかと焦らせる。

 

「待ってぇ!違うからっ、誤魔化そうとかしたんじゃなくてぇ!あひぃぃっ!恥ずかしくてぇ、待ってぇ!そこそんなにされたらぁ!私っイッちゃ――」

「櫛田、さん?……」

 

 桔梗の絶頂への絶叫によって鈴音が意識を取り戻した。いいタイミングだ、陰毛で鈴音の秘所を擦った甲斐がある。

 さてどう虐めようかと、心の中で舌なめずりをする。意識を取り戻したばかりだ、すぐに起き上がろうとして身体を動かすだろう。取引を破ったことにして力一杯突くのも良いか、それとも鈴音の身体ごと桔梗を押しつぶすように――

 

「ひぃっ!ほ、堀北さんっ!何でぇ、こんな時にぃ、中で、変なところにあてちゃぁ、っ、ぁっああぁぁ!イッちゃっうぅぅっ!!……あっああっ……」

「え……私、何で、こんな格好?」

「……ぷはあっ!堀北さん!清隆くん!清隆くん!」

「!っそう、わかったわ、どうすれば良い?」

「このまま思い切り抱きしめてぇ、乳首とあそこ一緒に当ててぇ!じゃないと清隆くんがぁ!」

「任せて、あぅっ、擦られてっ、んんっ、こんな格好を強制するなんてっ、ああっ!」

 

 ……何でオレの名前だけでここまで理解して行動に移せるんだ。取引を守られるとこちらも守らざるを得ない。

 擦られる快感に白い背中を震わせながら、絶頂した桔梗としっかりと抱き合って乳首と秘所をこすり合わせる鈴音を見て自身の過去を思った。

 まあ、いいか。なら、やり方を変えればいいだけだ。

 絶頂直後に無理に叫ぶだけの力を絞り出してしまった桔梗は、喘ぐので精一杯だ。各個撃破といこう。

 乳輪ごと隆起してイチゴのように充血した乳首がこすり合わせる姿と、濡れそぼった秘所がくちゅくちゅと水音を立ててこすりあう音と、桔梗の巾着による高ぶりをぶつけるように桔梗の膣を抽送する。

 

「痛っ」

 

 鈴音の背中に手を回していた桔梗の手が、犯され続けたことで力の加減が出来なくなり軽く引っかいてしまう。

 

「ああっ!ごめんっ、堀北さん、んあああっ!私、このままだと、背中引っ掻いちゃうから、んはぁ!手を、ベッドに、置くっぅ!ひぁぁぁっ!悪いけどっ、何とか押さえてぇ」

「だ、大丈夫よ。引っ掻いても」

「ばかぁ!女の子の肌に、傷付けられるわけ、ないっ、でしょっ!あんたもう少し、大事にぃ!ダメェ、そこ、ダメェ!んはああっ!」

「く、櫛田さん……分かったわ、あなたの分まで私が」

 

 感動的な光景だ。つい数日前まで、すれ違っていた二人が助け合い心配しあっている。

 鈴音の肌に爪痕を残さないようにシーツを掴む桔梗と、しっかりと桔梗を抱き締めて爪をたてないようにする鈴音の、男の劣情をぶつけられて守り合う光景に

――股ぐらがいきり立って仕方がない。

 

「そ、こっ……本当にダメ……んひいっ、おっきくなってぇ!んああっ……あああっ!」

「あっ、櫛田、さんっ……ああっ」

 

腰を押すとき陰毛が鈴音の秘所を擦り、秘所を濡らすが、鈴音は嬌声を桔梗に聞かせないように声をあげるのを我慢する。

 

「あっあっあああっ!はぁーーっ!グリグリされたらっ!私ぃ!堀北さんっ、お願い見ないでぇ!またイッちゃうよぅ!んああああっ!!」

「ああっ、櫛田、さんがっ」

 

 意識を取り戻してからまだ間がなく、びくりびくりと絶頂に震える桔梗の身体を抱きしめながら、乳首と秘所を擦りあわせている鈴音に、突然の絶頂から目を逸らす余裕などなく、初めて同姓の激しい絶頂を目の当たりにした。

 涙、涎、汗で顔中をべとべとにして目を見開いて荒い息を吐いている同年代の少女は

 

「ひぃぃぃっ!」

「え?」

 

すぐにそのべとべとにした顔――牝の顔で嬌声をあげて泣き叫び始める。

 

「あぁぁっ、待ってぇ!イッたばかりで動かれたらぁ!」

「え?え?ちょっと、嘘でしょう」

「んんっ!んんんんーーーっ!だめぇ!ほんとにだめぇ!私っ、もうっ」

「き、清隆君、あなたっ。まだ、するつもりなの!?」

「鈴音」

 

 こちらを睨みつける鈴音の頭を軽く掴んで目を合わせる。乳首と秘所が擦られ続けた顔はすでに発情しきっているが、瞳の奥に情欲を燃やしながら眼はまだ澄んでいる。

 

「オレが今まで絶頂しただけで止めたことがあったか」

「な……それは、無かったけど、はぅぅっ」

 

 鈴音の膣に人差し指を突っ込みながら、桔梗の急所を抉るように擦る。

 

「わかってるよ。寂しいんだよな、桔梗の後はお前だから、待っておいてくれ」

「ば、あなた、私は、そん「ひぃぁぁぁっ!!」櫛田、さん」

 

 また絶頂した桔梗の痴態に目を捕らえられ、魂消えたように呆然とした鈴音から指を引き抜いて抽送する。二人の最大のミスは、互いの痴態を全く見ていなかったことだ。AVの痴態で大丈夫だと踏んだのだろうが、生での知人の痴態は次元が違う。

今の鈴音のように固まるしか出来なくなる。

 

「んんっ、んんんーーーっ!はぅっ、んあっ、ほ、堀北さん、見ないでぇ、私の顔見ないでよぉ……あっ、ううっ、お願い……お願いぃ」

「いいや、見てもらうからな。しっかり目を開けて全部見てもらう。鈴音を犯しているときは、桔梗が見る番になるだけだ」

 

 二人に釘を刺しつつ、逸物で桔梗の膣をぐちょぐちょと掻き回しながら抽送する。

 

「ひぃぃっ!んはぁぁぁーーっ!ぐりぐりえぐられるとっ、もうっだめぇぇぇ!ひゃはっぁん!」

「見られて興奮しているんだな。まんこのぬめりがもっと良くなってきた」

「ち、違うぅ、だって、だってぇ」

「何が違うんだ」

「こ、こんなに、こしゅられてぇ、何度も、イかされてたらぁ、だれだってぇ、ドロドロにとけっちゃ……ぅぅああっ、そこそこはぁ!」

「確かにどろどろだな。陰毛が糸まで引いてる。いや、これは……」

 

 鈴音の秘裂をあけるとどろりとした愛液が流れ落ちる。そのまま指で掻き出すように粘膜を愛撫する。

 

「くひぃぃんっ、あぁっ、いきなりっ!」

「桔梗もそうだが、鈴音の垂れている愛液も混ざってるな。見られて興奮している奴だけじゃなく、見て興奮している奴もいるとは、なかなかエロくなったな、お前ら」  

「う、うるさいわよ、馬鹿! あ、あなたが……私たちを、こんなふうに、したんでしょう……そろそろ櫛田さんを解放しなさい。限界じゃない、彼女」

 

 あまりの言い草に、視線を交互に桔梗とオレに送って呆然としていた鈴音が噛み付いてくる。

 

「そうだな……そろそろ一発出そうとしていたところだ。出すぞ、桔梗」

「ひゃっ、か、確認なんていらないっ!はやく、はやく……私、またイッちゃうからぁ!」

 

 発情しきった桔梗は、誘うように腰をくねらせる。

 

「いや、確認しておく。どこに出してほしいんだ?」

「おまんこ!私のおまんこのなかにぃ」

「く、櫛田さん」

 

 絶頂直後の敏感な体をそのまま犯され絶頂直前まできて蕩けきった桔梗は、恥じらいよりも快楽を優先して淫語を叫び、鈴音の驚愕した声と顔で意識を少し取り戻す。

 

「ほ、堀北さん!?っ違うのっ!今のはぁ!んぃぃっ!?ああああーーー!……えっ?何でぇ、腰止めるのぉ」

「何が違うんだ?」

 

 絶頂直前に腰を止められてお預けされてしまった桔梗はぽろぽろと涙を流す。

 

「違わないぃ!おまんこに熱いの頂戴っ!むりぃ、私もうむりぃ!イクイクイク、私またイキたぃっ!ぅあああんっ!」

 

 きゅうきゅうに締めながら精子を欲してうごめく肉壺へ、畳み掛けるように腰の律動を再開する。

 

「よく言えたな」

「ああああぁぁ……らめ、おちんちん、しゅごぃ、わたし、もぅ、ひぃあぁぁぁっ!」

 

 完全に発情して意識があちらに行った桔梗が、どこかおかしなしゃべり方になるほど蕩けきったことに満足する。

 

「くっ、出すぞ」

「ああああああーーーーーー!!」

 

 桔梗は精液が膣内を一杯に満たしていく感覚に身震いしながら、顔を振って絶叫する。

 

「ああっ、でてる……いっぱい、でてぇ……んんっ」

「まだ、出るからな」

「うん、きてぇ……ああっ、あついよぅ」

 

 絶頂した桔梗の肉壺で、逸物が精を搾り取るように締め付けられる快感を味わいながら、桔梗の子宮に全ての精を注ぎ込む。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……もう、わたし、おかしくなる、イカされすぎて、頭の中、ぐちゃぐちゃになっちゃって……はひっ、はぁーっ、はぁーっ」

「うっ、あっ、櫛田、さん」

 

 桔梗のイキ顔に鈴音は呆然とした呻きしか漏らせない。

 

「ほんとに、すごいよぅ…………ぅぇ?まさか、まだ」

 

 腹の中の逸物が硬度を失っていないことに気づいた桔梗が、顔を引きつらせてこちらを見てくる。

 

「オレが、これくらいだとまだ満足できないことは知っているだろう。次だ」

「ちょっ、まっ、ほんとに、だっっっ……めぇぇぇぇぇーーーーんんんんっ!」

 

 再び逸物が抽送を始めたことで、絶頂直後の敏感な膣内を攪拌されて桔梗はすぐに絶頂に押し上げられる。

 

「ま、待って、く、櫛田さんがぁっ」

 

 ありとあらゆる体液でぐちょぐちょになった顔で泣き叫ぶ桔梗を見て、あせったように鈴音がオレの身体を止めようとしてくる。

 つまり、身体を動かして離してしまったのだ。

 

「取引を破ったな」

「おほぉおおおおおっ!!」

 

 子宮を派手に突き上げられ子宮が盛り上がるほどの衝撃を受けた桔梗は、獣のようなよがり声をほとばしらせ衝撃に震える。

 

「ひぃっ、櫛田さんの……お腹がぁっ……ああっ……くっ、ごめんなさいっ、櫛田さん」

 

 子宮を突かれてポッコリと腹を膨らませた桔梗の姿に、驚愕して目を剥いて声を引き攣らせた鈴音だったが、すぐに自分を取り戻し元の姿勢に戻った。

 それと同時に抽送の速さを元に戻してやる。

 

「あ、ああっ、ぉぉっ……ぐるじっ……んぁ、ああっ、苦しくなく、だめぇ!もう、むりぃ、くるしくないけど、もうっ、おちんちん、止めっ……あ、っ、あっ、あっ、うぁぁあぁーっ!あぅぅぅーっ!」

 

 イキっぱなしになった桔梗を犯す。

 鈴音は身体を震わせて桔梗に抱きつき、桔梗の中を律動するたびに敏感な部分を刺激されて、よがり涕泣を口内でもらす。嬌声を聞かせないことで、少しでも桔梗に対する刺激を少なくしたいのだろう。桔梗の嬌声を聞くたびに、身体を震わせて新しい愛液を垂らしているとは思えないほど仲間思いな奴だ。

 虐めたくなるが今は桔梗だ。

 

「なんで、こんにゃに、硬くて、大きいぃ、んぐぅっ!ひああああっ!」

「もっと締めてくるとはな」

「む、むりぃ、だめぇ、んんっ、ズボズボ速くなってぇ!んっんっ!ひぃあああっ!」

 

 腰を引いて抽送のペースを速めて、今まで当てていなかった急所を抉るようにする。責めのパターンが変わったことに敏感に反応して桔梗がイキ狂う。

 

「あっあっあっあっ、むりっ、こんにゃのっむりっ、ふぁぁっ!とんでっちゃぅ!わたしどっかイっちゃ」

「出すぞ」

「ん、んぁぁぁっ!あ、あちゅいようっ!」

「ああぁ、櫛田さんが」

 

 いやらしく悶える桔梗に激しい抽送をお見舞いして再度の射精を果たした。

 

「ふほぅぉぉっぁおおおっ!!」

 

 再度子宮に射精を受けて、桔梗は人の声とは思えない絶叫を上げて絶頂してぐたりとベッドに倒れ付す。一時間以上犯したのだ、気力体力ともに磨り減っている。

 

「はひゅ、はひゅ、はひゅ、くひゃあぁっ」

 

 荒い呼吸で焦点が合わない目でまともに喋れなくなった桔梗を見て、鈴音が泣きそうな声で懇願してくる。

 

「……も、もう、無理よ。お願い、許してあげて」

「……」

 

 そうじゃないんだよ、鈴音。

 

「桔梗」

「ま、まってぇ、だめだめぇ、これいじょう、されたら、死んじゃうぅ、しんじゃぅよぉ」

 

 叫ぶ力も無くなった泣き声をBGMに律動を再開して

 

「ま、待って……!わ、私が、するから……私が清隆君の、相手をするから……櫛田さんには、もう」

「ほう」

 

 興味を惹かれたように律動をやめて鈴音を見る。

 狙い通りと口角を上げたくなるがポーカフェイスを維持して鈴音を見る。

 覚悟を決めたような眼差しで桔梗を隠すようにする鈴音を見ながら、バックで鈴音を犯すのは初めてだな。と鬼畜なことを考える。

 

 

 

 

「鈴音」

 

 少し声を落として冷たい印象を与えるようにする。

 

「ひっ、は、はい……」

 

 薬が効きすぎたのか鈴音は怯えきった声で返事をする。

 ゆっくりと、鈴音の白い背中をなでる。

 

「お前が何をするって言うんだ?」

「あ、あなたの相手を」

「何の相手をするのか言ってみろ」

「あ、あっ、えっ、そ、それは」

 

 意識が朦朧とした桔梗を見てオレを見ると、首まで赤くする。何て虐めがいがあるんだろうか。いつも以上に棒読みで話す。

 

「何の相手だ」

「え、そ、それは」

「何の相手だ」

「だ、だって、そんなこと」

 

 ふぅと吐息を漏らし桔梗の膣に入れたままの逸物に力を入れる。

 

「ひぅっ」

 

 消え入りそうな悲鳴を上げる桔梗。

 

「だ、駄目、櫛田さんが」

「何の相手だ」

「あぁぁっ!あっ、言う、言うから、言うからぁっ」

 

 泣きそうな声で懇願されると背中が震えてしまうじゃないか。

 

「何の相手だ」

「あ、あなたと、その、あの……うぅっ」

 

 ちらちらと桔梗の様子を見て悟ってほしいと願うようにオレを見る。

 オレだけならともかく桔梗には聞かせられないということだろう。さっき言った桔梗は鈴音が気絶していたが、桔梗は朦朧としているとはいえ意識があるのだ。

 ただでさえ初心で二人だけのときでさえ淫語を言ったことがない、鈴音には到底耐えられないだろう。

 

「何の相手だ」

 

 つまりオレにしてみれば、なんとしても言わせたいということになる。

 

「うっ……ぅぅっ……あ、あなたに、だ、だ、抱かれる……あ、相手を」

「ほう、具体的には?」

「え……ぐ、具体的にって、い、言われても、そんな事」

 

 ふぅとまたため息を一つして、ビクリと震える鈴音の下の桔梗を見る。

 

「具体的には」

「あ、ぁぁぁぁっ!そ、そんな」

 

 絶望したような声を漏らす鈴音を見ていると、たまらなくなってきてしまう。

 

「あ、う……そ、その、私が、あなたのを入れて、することです……んあぁぁぁっ! だ、だめ、そこは、だめぇ……っ!」

 

 がっかりだよ鈴音。普段の一割でも歯に衣着せられないお前が、可愛くて仕方ない。愛液をまぶすと人差し指の第一関節まで尻の穴に埋めた。ビー玉くらいの小さなボールで少し慣らしたそこは、指を痛いほど締め付けてくる。が、以前と違って無理なく入れることは出来た。

 満足気に吐息を漏らしていると、鈴音はふるふると首を小さく振りながら懇願していた。

 

「それが、お前にとっての具体的か」

 

 言いながら尻の穴を広げるように、指をくるくると回すように動かす。ぎちぎちに閉めながらもピンク色の窄まりが動くたびに鈴音の尻が動き

 

「ひぃぃぃぃっ!」

 

 取引を破られたため桔梗の子宮をぐりぐりとして、か細い悲鳴を楽しむ。経験上まだ桔梗には余裕があるということがオレにはわかるが、鈴音には分かるはずがない。

 

「!や、止めてぇ、櫛田さんが、本当にっ!わかった、わかったから、動かないから、お願い」

「それが、お前にとっての具体的か」

「あ、ああああっ」

 

 ぽろりと大筋の涙を両目から一筋流す鈴音の姿は、とても魅力的で胸が躍る。

 

「ああっ、あぅぅぅっ……わ、私の中に、き、清隆くんの、ものを……」

「ものって何のことだ?」

「そ、その、ペ、ペニ――」

 

 最後まで言わせずに大きなため息を吐いて、尻の中の指に力を入れて桔梗を見る。

 

「ものって何のことだ?」

「うあぁぁ……!お、おちん、ちん……おちんちんです。おちんちんですっ……うぅっ」

 

 真っ赤になって震えながら涙を流す鈴音を見ていると、堪らない。

 

「おちんちんをどうするんだ?」

「えっ!?わ、私……そんなこと、恥ずかしくて言えなぃっ」

「おちんちんをどうするんだ?」

「あ、う、……うううっ……わ、私の、あそこに、い、入れて」

「あそこってどこだ?」

「あっ……うぁっ……」

 

 ぽろぽろと涙を流しながら喘ぐ。眉を寄せて苦悩する顔があまりに色っぽくて可愛らしく滾らせる。

 

「あそこってどこだ?お前のどこがオレのものを咥え込んむんだ」

「く、咥え込むなんて、私っ、言ってな」

「あそこってどこだ?」

 

 言葉を途中で止めさせる。はぁはぁと桔梗の荒い呼吸を耳にしながら、涙で潤んだ目で鈴音に見上げられるこの状況はいつか演じる役者を逆にしてやってみたいな。

 

「あっ、あぁっ、も、もう……」

「もう?あそこってどこだ?って聞いてるんだがわからないようだな」

「……もうっ……」

 

 きちんと言うでもなく、躊躇するでもない言葉を続ける鈴音に違和感を覚える。桔梗には視線を送ったし、尻の穴の中の指に力は入れているのに、さすがにおかしい。

 何事かと思っていると、鈴音がこちらを見つめてきた。涙で揺れる瞳には、懇願の色が浮かんでいる。

 

「……もう、許して……お願い……」

 

 あまりに儚い表情、あの鈴音が涙で揺れる媚びた目で見上げながら涙声で懇願してくる。

 逸物をぶち込みたくなったが、耐える。最後まで言わせてからだ。

 嗜虐心が今までで一番に煽られて燃え上がる。

 

「あそこってどこだ?」

「ああっ、あああっ……うぅっ、ひっく」

 

 本気で泣き始めた鈴音。やりすぎたかもしれないと少し後悔する。仕方ない、ここまでにするか。

 

「お、おま、おまんこ、私の、おまんこに、清隆君の、お、おちんちんを、咥えこませてくだ、さいっ……うぅぅぅっ」

 

 信じられないが達成感を感じる。まだ小さな子供の頃には感じていつしか感じなくなった達成感が

 

「よく言えたな。鈴音」

「うぅぅっ、ひどい、本当にひど」

「それじゃあ。お前が言った通り、自分で咥えてもらおうか」

「――え?」

 

 ゆっくりと逸物を桔梗から引き抜く。はぁっと大きく息をつくと桔梗は寝入ってしまった。オレの逸物の圧迫感で意識をつないでいたから、そうなるのは当たり前だろう。

つまり鈴音の恥ずかしい言葉は全て聞こえていたということなのだが

「……そんなぁ、櫛田さん、聞いていたの」

 

それは真っ赤になって涙声で呻いている鈴音が対処することだ。

 静かに鈴音の秘所に腰の高さを合わせる。

 

「桔梗から抜いたから取引は終わりだ。紐も取るぞ」

「え?……ひあぁっ!」

 

 紐を解いてやる。緩くとはいえ長い間括られていた乳首は充血しきって紐が解かれる感触だけで軽く鈴音を絶頂させた。

 くたりと桔梗の上に倒れこむ鈴音。腕を桔梗から避けようとして、ちょうど乳房で桔梗の顔を覆うような姿勢になる。

 

「さて、咥え込んで貰おうか。まずはまんこを広げて穴を露出させろ」

「――あ、ぁぁぁっ」

 

 自分が無我夢中で何を言ったのか理解したのだろう。絶望の涕泣をもらした。

 

 その余りに儚く誰もが助けたくなる姿に、深い満足感と達成感と愉悦を得て、もっと無茶苦茶にしたいという気持ちを覚えて理解する。

 自分でも理解できていなかった自分の一部分

 

 あぁ、オレは好きな人を痛めつけ、おびえさせ、泣き声をあげさせたりするのが好きなタイプの人間なのだ。

 

 サディスト――人を傷つけ、痛めつけることで快感を得る性格。

 自分はそれだったのだ。




堀北さん櫛田さんのタッグにより、無色だった綾小路君がサディストとして覚醒しました。
以降、今まで天然だったのが自身の性を理解した責めになります。


信長の野望発売までに、後一話を目指します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑤(覚醒慣らし運転)

 とろぉ……愛液の糸を引く秘所を、俺に見せるように震える手で開く。

 小さな穴の奥……ピンク色の粘膜の奥から、透明な愛液がどんどん溢れていき、下の桔梗のなめらかな腹でぽたりぽたりと水音を立てる。

 

「そこだけだと上手く咥え込めないぞ。もう少し内側に薄いビラビラの粘膜があるだろう。そこを開くんだ」

 

自らのアレな性を自覚したオレは、表面上無表情で胸を弾ませながら責める。

 

「――っ」

 

 顔を伏せて高く掲げたお尻に両手を伸ばした鈴音は、全身を真っ赤に染めている。膝が桔梗に当たらない姿勢を取ったことで、股を大きく開いて恥ずかしいところを全部見せた上に自分で広げて、自分の愛液が友人の腹に垂れる音を聞いているのだ、恥ずかしさのあまり声にさえならないのだろう、しゃくりあげるだけだ。

 散々犯したのに、こうまで羞恥を忘れないというのは、鈴音の天性だろう。

 つまり、これから快楽の虜になったとしても、恥じらいを忘れずに法悦に飲み込まれるまでは口答えしたりするということだ。

 

「次の日になると、新しい気持ちでプレイできるってことか。すごいな、こいつ」

「――ぅぅ」

 

 男を飽きさせない天性というかなんというか。いや、エロくなってすぐに股を開く女の子も好きだから問題ないのだが、それはそれとして滾ってくる。

 思わず呟くと、内容はわからなくても何か言われたことで動かないと、弄られると思ったのだろう。指示通りに小陰唇ごとさらに大きく指で秘裂を開ける。

 同時に、明かりに照らされて白く輝く艶やかな尻を軽く誘うように揺らす。

 

「色気がついてきたな」

 

 意識してやっているわけではないだろうが、ちょっとした動作でこういうところが最近出てきている。好い兆候だ。

 ……妹をここまで調教してしまったことを堀北兄が知ったときは想像したくもないが

 ゆっくりと鈴音の尻をつかむ。オレの手の形に柔らかく沈み込みながら弾いてくる。逸物は、血管を浮き上がらせながら荒々しく波打っている。

 

「やっ……!」

 

 何度も膣に入れたのに勃起した逸物を俯いたまま横目で見た鈴音は、雄の本能をまだ知らない処女のような反応を示す。

そんな姿を見ていると、さらにいじめたくなるじゃないか。腰を屈めてじっくりと鈴音の濡れきった秘所を見る。

 

「……や、あっ……!」

 

息を敏感な部分で感じて跳ねて、奥から愛液を垂れ流す。恥じらいの混じった嬌声をあげる鈴音。

 

「準備は、万端だな。桔梗のイキ顔を見たり嬌声を聞いただけで、濡らしていたことはある。」

「……は?……だけ?」

 

一瞬ポカンとした後、鈴音は発情で揺れる眼差しからいつものジト目になって大きくため息を吐いた。法悦が薄くなり口答えが始まる前振りに胸が高鳴る。

 

「……呆れた、あなたはもう少しマトモな考えをしていると思ってたのに、年頃の男の愚かな思考体系から逃れない考えしかしていなかったのね」

「どういうことだ?」

「分からないの?」

 

ため息をつきながら鈴音が顔をあげ、指を秘所から恐る恐る離す。その事にオレが気付きもせずに、顔を見合せたままだと確認して話し出した。

 

「仮にだけど、あなたが平田君や高円寺君の裸をみたり、性的快楽を感じているところを見たりしたら、あなたはどう思うかしら」

「何とも思わないか、少し居たたまれないな」

「それと同じよ」

「なるほど」

 

 確かにその通りだ。同性の性的快楽を感じている姿をみたら、居たたまれない気持ちになってUターンだ。見られた方は恥ずかしくて仕方ないだろう、鈴音に見られていた桔梗がそうだったように。

少なくともオレには、同性だけでは余程の必要がなければ無理だ。そこに異性がいてこそ意味がある。

 

 お酒を飲む目的で、お酒を用意せずにつまみだけ食べているようなものだよ。男に見られないと、同性愛者でもなきゃレズプレイには意味がないよ。

 ……頭にそんな言葉が何故か聞こえた。

 

 あ、セックスレスとか旦那が忙しいとかで相手をしてくれないってのは、お酒だから間違えないでね。

 ……何故か桔梗に似た声に背筋がさむくなる。

 

「なるほど、確かにオレが間違っていた。すまなかったな」

「っ!随分物分かりが良いのね。これからも心掛けなさい」

 

 ふふん、とオレをやり込めた喜びに鼻歌でも歌いそうな鈴音。羞恥の限りを尽くされて脳味噌が溶けたかのように知性が低くなっている。

 

「お前なら答えられることで、もう一つ分からないことがあるんだ。どうしてもわからないことなんだ。教えてくれないか?」

「もちろんよ。あなたもやっと言葉遣いが分かったようね」

 

 今までに無いくらいに下手に出ると、普段より頭の回転が鈍い鈴音は機嫌よく頷いた。

 

「なら――」

 

 ぐちゅり、と鈴音が秘所から手を離したせいで陰唇に貯まった愛液を掻き出す。

 

「――どうしてこんなに濡れているんだ?」

 

 瞬時に真っ赤になって顔を突っ伏す鈴音にぞくぞくする。堪らないな、これ。ずっとこうしていじめていたいが、鈴音のことだ、慣れるか快楽で蕩けている頭が回り始めたら、その分愉しいが時間がかかってしまう。

 もう逸物を突っ込みたくて、堪らない。今日は、いじめるのはそこそこにして犯そう。

 

「桔梗のへそから溢れるくらいに垂れ落ちているぞ鈴音。どうしてこんなに濡れているんだ?」

 

 質問に答えず震える指で秘所に手を伸ばして陰唇を開く鈴音。これで、許してと言いたいのだ。伏せた顔から、横目で縋るように見上げてくる。

 男を知り男の精を身体の奥底に注がれ女の悦びをしった鈴音は、性行為の場で発情しているときだけとはいえこんな顔を見せてくれるようになった。

こんな愉しくて幸せな時間を短くするなんて、オレには出来ない。

 

「もう一度聞くぞ。どうしてこんなに濡れているんだ?」

「ひああっ、ひあああっ!」

 

 尿管裏の膣内をグリグリと人差し指の先でえぐりながら、皮から剥き出しになった敏感な肉の真珠を、中指の先で小刻みにコリコリと転がしては、二本指でキュッと挟みこみ絶頂直前で止める。

 ぷしゅと噴いた潮が桔梗の腹に被る。「ううっ」と啜り泣く鈴音。

 すでに鈴音の膣をどう責めればどう反応していつ絶頂するのか、細かいところまでオレは把握している。

 そんなオレに絶頂を寸止めにされる辛さ、桔梗の肌を愛液で汚し続ける辛さ、恥ずかしいことを言わされようとしている辛さ、さっき刺激されて――

 

「前回の経験からすると、もう一度同じことをすると……どうなるか解るだろう……さて、どうしてあんなに濡れていたんだ?」

「あ、あああっ」

 さっきの刺激で尿意を一瞬とはいえ感じてしまったことが、オレに知られて気付かれている――いや、オレがその気になれば、いつでも粗相させられることが容易いことを、理解してしまった鈴音は、桔梗の上で粗相など出来るはずがない絶望に呻く。

抵抗しようにも、今の姿勢で腰をオレに押さえ込まれてはどうしようもない。振り向いて囁くように懇願する。

 

「お願い、止めて」

 

 あまりに可愛くて、ぞくぞくと腰が震える。

 

「質問に答えないつもりか……なら」

「ひぅっ」

 

 尿管裏の膣内を押さえ込んで、いつでも刺激出来るようにする。いつでも粗相させられることに青くなる鈴音。

「選ばせてやろう。このまま桔梗の上か」

 

 鈴音の柔らかい右太ももを掴んで上にあげる。

 

「ひゃんっ、あっ……こんな、格好が、鏡に、映って……やあっ」

 自然と右を向き、ベッド脇に新しく買った姿見に映る自身の姿を見て涕泣をもらす。

 

「このまま犬のような格好で床にするか」

「いやあっ」

 

 恥ずかしさのあまり、顔をベッドに伏せて見えないようにしようとする鈴音。

 

「鏡に映った顔と目を合わせなかったら、お前のまんこに入れている指を、今すぐ抉るように動かす」

 

 ぞくぞくが収まらない。ぽろぽろと涙を流して鏡越しにオレと目を合わせる、鈴音が可愛いくて仕方ない。

 オレに見られて鏡に映る秘所から新しく流れる愛液を、無言で指差した時に見せる羞恥に満ちた反応など射精してしまうくらいの愉悦。

 このままずっといじめたいが、膣内に挿入したい衝動にオレが耐えられない。

 

「それとも、質問に答えて指ではなくオレのものを銜え込むか?どれにする?」

 

 鈴音に選択肢はない。人前で小便するか犯されるかの2択だ。怒りと羞恥に頬を上気させて少し苦悩すると、震え声で囁く。

 

「……あなたのをお願い」

 

 ふうと思わずため息をついてしまう。こうやって羞恥に顔を真っ赤にして、淫語をしゃべらないようにする鈴音のささやかな抵抗はとても可愛らしくて困ってしまう。

 膣内で射精するよりも、もっといじめたくなってしまう。本当に困るが、今回は少しだけで我慢しよう。

 

「さっき、あれだけわかりやすく言ったのを忘れたのか」

 

 鈴音の潤みきった瞳を覗くようにして指に軽く力を入れる。桔梗の腹の上で小便を漏らしてしまう恐怖に、小鹿のように震えながら鈴音は言ってくる。

 

「わ、私の、お、おまんこ、に、清隆君の、おちんちん、を、く、くわ、咥えこませてください」

「よく言えたな。どうしてこんなに濡れているんだ?」

 

 鈴音としては決死の覚悟といっていいほどの覚悟で恥ずかしい台詞を二度も言わせられたのに、あっさりと受け止められ次を要求されてしまう。

 

「……っ。ううっ」

 

 縋るようにオレを見てくるが、断固として拒否する思いをこめて視線を返すと、諦めたようにポツリポツリと話し出す。

 

「……あなたが、櫛田さんとしているとき、あなたの毛で私のあそこを擦られて、櫛田さんの中であなたが動く度に振動が敏感なところに伝わって、背中越しにあなたの体温を感じられて、あなたの、裸が視界に、入って」

 

 後半になるに連れて声に震えと湿り気が強くなる。

 

「櫛田さんみたいな顔を、私も、抱かれているとき、しているんだって思って、あんなに、言葉で嬲られて、は、恥ずかしい所を、広げ、させられた、ら、ぬ、濡れる、のは、し、しかたないじゃない。あなたが、私を、そういう、からだに、うぅっ……恥ず、かしいっ……ひっくっ……」

 

 二度の言葉責めはやりすぎだった、本気で泣き始めた。流石にこれ以上追い詰めればプレイの範疇を超えて、完全に女の子を玩具にしてしまう。そうなったら、鈴音はオレを嫌い許さないだろう。鈴音に嫌われてしまうのは本意ではない。

 泣きじゃくる女の子はそそるというか、女の子の涙は結構好きなんだが。

 

 泣きじゃくる鈴音から指を引き抜き、鈴音を泣き止むまで泣き言を黙って聞いて一度落ち着かせた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……は、あぁ…………」

 

 十数分後、一度落ち着かせた後、限界ぎりぎり、臨界点を完璧に見切ったオレの愛撫を受けた鈴音は、元の姿勢に戻り断続的な吐息を漏らす。

 当たり前だが絶頂はさせていない。高ぶるだけ高ぶらせて、逸物を咥えこむまでは、お預けだ。

 

「……鈴音、片手で開いたまま、片手でオレのを掴んで咥え込むんだ」

 

 顔を寄せながら聞くと、鈴音がどこか怒ったような表情になる。睨みつけてくるが、それに力が無いような気がする。……まあ、ここまでの事を考えるとあたりまえか。

 文句を言いたいのだろうが、自分ではどうにもならないところまで発情して追い詰められている鈴音が出せる言葉はいくつもない。

 

「……はぁ、あぁ……そ、そんな、自分で入れて、失敗したら、裂けちゃうわ」

 

 この期に及んで咥えるといわずに、少しでも抵抗する姿は獣欲をどこまでも燃え上がらせてくれる。

 

「……入れる?」

 

 だから、こんな些細なことでもいじめてしまうオレは、自覚したとはいえやはり酷い奴だと思う。今までと違って、気持ちよく自らの性を受け入れられるのが違うが。にしても、回復したらすぐにいじめてしまうのは自分でもどうかと思う。

 

「――っ、く、咥え込むのに、じ、自信がないの、あ、穴までもっていくから、お願い」

「良いだろう」

 

 オレの逸物が鈴音の繊細な手で触れられて膣口へと誘導される。

 

「ひぅぅっ」

「違うな。もう少し上だ」

「んあっ!あっ、うっ!……ああっ、あひっ、痛っ!」

「……そこは尿道だ、もう少し上」

「あっ、あっ、ああっ!濡れて滑って、あっ、うっ!」

 

 自分の愛液で滑らせて一度手を離すと竿を掴んで再度……陰核へ

 

「やっ、あっ!熱くて硬いのが!ここっ、敏感っ、なのにっ、だめっ、ひあぁぁーーっ!」

「…………」

 

言葉で否定しながら、自らのただれた粘膜にオレの逸物を擦り続ける。

 

「んっ、あっ、ああっ!あ゛っ!私っ、イっちゃ」

「……なあ、鈴音」

 

 びくぅっと全身を固めて動かなくなる。

 

「お前がオナニーすることを止めはしない。だが、あれだけ恥ずかしいだの酷いだのと泣きじゃくった直後にオレのものを使ってしないで欲しいんだが」

「な、何を言っているのよ。私は、ただ、あなたの、お、おちんちんを、くわ……い、入れようとしているだけよ。こんな酷いことをさせている疚しさがあるから、そんな風に見えるのよ。あなたの頭がおかしいのは理解していたけど、まさか目までおかしいとは思っていなかったわ。いっそ取り替えてしまったらどうかしら」

「……そうだな」

 

 言い返して言葉責めしてもよかったが、真っ赤になってプルプルと震えて言い訳してくる鈴音があまりにも可愛らしかったので流すことにした。それはそうと、オナニーは否定せず、咥えこむと言わず、おちんちんと言う所を恥ずかしがっているのは高ポイントだ。

 鈴音の媚肉は真っ赤に充血して秘裂はパックリと口を開き、愛液を絶え間なく吐き出しテラテラと光っている。

 絶頂直前に止めたときに、鈴音が一瞬見せた残念そうにする顔は可愛くて仕方ない。発情させて燃え上がらせるだけ燃え上がらせて絶頂という冷却を与えずに弄り続けて焦らしたのだから、オナニーするのは狙い通りだ。

 それを知らずに恥ずかしがる鈴音を見ると、楽しい、とても楽しいと感じる。消えていたと思っていたが、オレにも喜怒哀楽の感情が残っていたとはな。

 

 愉悦に口角を上げるオレに気付いていない鈴音は覚悟を決めるように、ふぅと呼吸一つ入れると愛液で濡れた逸物をその水源である膣口に宛がう。

 

「あっ!ああっ!?やっ!」

 

 今の鈴音は、セックスの感覚を知らない処女ではない。男の逸物を掴んでオナニーするだけの経験を積んでいる少女だが、巨大な逸物を迎え入れようとすることに慣れてはいないしそもそも不可能だろう。

 

「ん゛、ん゛ん゛っ……!!ぐっ!ふっ!あ、大きい……やっぱり無理よ、裂けちゃう」

 

 亀頭の先端を膣口当てて挿入する向きを少し間違えて、痛みに手放す。やはり無理だったか、最初からここから先は自分でやるつもりだった、下手な向きで挿入したら冗談抜きで裂けてしまう自身の巨根を呪う。

 

「分かった。後は任せろ、入れるがその前に」

 

 鈴音の太股を抱え込み、真っ赤に膨らんで皮からプックリと飛び出した陰核を二本の指で摘みあげると、親指の腹で転がしながら、耳に息を吹きかけるようにして囁く。

 

「ほら、いやらしいおまんこに咥え込ませてください、って言ってみろ、鈴音」

 

「ひゃうっ!」

 

 快感の津波が押し寄せてきて理性を押し流していく。全身が勝手に痙攣し、桔梗の上で何度も反り返ってしまう。

 

「そ、そんな」

 

 躊躇うと、少し距離を置いて鈴音の赤くなった背中を見下ろすだけで何もしない。桔梗を犯していた時間も合わせて、すでに二時間以上経つ、オレの逸物でオナニーしてしまうほど飢えに飢えた快楽が今すぐそこに迫っている。

 

「そんなぁ」

 

 普段の鈴音を知るものが聞いたら絶句しそうなほど甘えた声を、腰をクネクネとさせながら出す。どうにもならないところまで追い込んだ甲斐があった。

 

 止めに膣口につけている逸物を少し引いてやると泣き叫びながら咆哮する。

 

「く、咥えさせて……いやらしいおまんこ咥え込ませて!」

 

 全身をブルブルと震わせて、屈辱的なセリフを口に出す。散々嬲られて理性は麻痺しているが、羞恥は消えない。

 

「よく言えたな。いれるぞ」

 

 オレの言葉に、枕の上に腕を組んで、顔をその上に置いて衝動に備える鈴音。桔梗のへその上にある鈴音の安産型の尻を掴み、中心部に肉棒を突き立て、少しずつ、逸物を締めあげる幾層にも重なった肉襞をこじ開けながら、奥へ進む。

 

「い、いたあっ……痛いっ……いたっ……いあっ、これ、やっぱり、私、おかしく、なっちゃ……ぅぅぅぅ……んあぁっ!?」

 

 すさまじい収縮力と戦いながら、鈴音の身体に斜め方向に体重をかけて、逸物を奥深くにじりじりと進めていく。

 バックから犯しただけあって、普段よりも入り辛い。

 痛みと快楽に呻く、鈴音の乳房に手をのばす。

 

「はあうぅっ」

 

 以前よりも、乳房が少し膨らんだ気がする。大きさもそうだが張りが違う、まるでパンパンに張り詰めているように、鈴音は普段感じているだろう。

 青かった尻も薄皮のしたから豊潤な匂いを漂わせ始めた。

 ――オレの手で、女として熟れていきながら少女の青さを持ったまま開花してきている……オレの女

 

「あ、ああっ、ひあんっ」

 

 重力で下向きになった乳房を下から弾くように持ち上げて揉む、オレの手の中で乳房は様々に形を変えながら、さらに張りと柔らかさを増していく。

 カチカチに尖った乳首をつまみあげると、ピンと鈴音の全身が反り返り、ブルブルと全身を震わせる。

 

「ああっ、胸がっ、駄目っ、イッちゃ、イクわあああああっ!……かはぁっ」

 

 鈴音が待ち望んだ絶頂に合わせて、逸物をゆっくりと叩き込む。絶頂と同情に逸物を締め殺そうなくらいに締めた後、脱力したときに一気に突っ込む。

 

「あ、か、かはっ、かはっ、かはぁっ……んっ」

 

 衝撃に呻く鈴音の唇に唇をあてる。一瞬固まる鈴音だが、オレがかるく唇を吸うと、そこから強張りが吸い取られているみたいに脱力していった。

 

「……あっ、うっ……ひっ、ひぅっ」

 

 唇を離すと悲しそうに見てくる鈴音、口角を上げて体を起こして鈴音の長い髪が汗で張り付いた背中を見ながら、逸物を奥深くにじりじりと進めていく。

 

「いっ……ひいっ……ひああっ!あっ!あっ!あああっ!いひいっ!」

 

 鈴音は真っ白な喉をのけぞらせて、肉棒が擦れながら奥に進むたびに、絶頂に達して悲鳴のようなよがり声をあげる。子宮にまで逸物を届かせて止める。

 

「はあっ、はあっ、はあっ、は……」

 

 後背位は始めてということもあるが、そもそも上つきの鈴音に後背位はかなりの負担だ。すぐに動けば失神してしまう。待たなければならない。自身の巨根を知っているからこそ控えるところは控える。

 鈴音の荒い呼吸を聞きながら待つ。

 次の準備をするために鞄を引き寄せて中身を確認して、呼吸が落ち着くまで待つ。

 

「はあっ……はあっ」

「落ち着いたか?」

「ええ、もう、動いても大丈夫よ」

 

 健気に僅かに笑みを浮かべてくる鈴音。

 彼女に満足して頷いて

 鞄から卵型の小さな道具を取り出し鈴音の秘所へと近づけていく。

 

「ふああっ!?何ぃっ!?ふあああっ!」

 

 逸物を入れて膨れ上がった土手に直接ローターをあてがってやると、その鋭い刺激に鈴音の腰が大きく震え上がり逸物を締め付ける。

 

「うああっ、くはああっ!?やあっ、な、なによっ、これぇぇ!ふぁっ、ひんっ、ビリビリするっ」

「こいつはローターって言ってな。こうやって敏感なところに振動を与えるんだ」

「ろ、ろーたーっ?くひっ、ひあっ!……っておとなの、おもちゃ……どこで、そんなの……やぁっ、しびれるっ……ここじゃ手にはいらっないぃぃぃ!」

 

 体験したことがない鋭い振動にさらされて鈴音は逸物をくわえ込んだ秘所を蠢かせる。ただでさえミミズ千匹の名器がさらに蠢いて、逸物をしごかれてたまらない。

 

「あれだけ初心だったお前がよく知っていたな。桔梗との勉強会のお陰か。ああ、心配しなくても変な方法で手に入れていない作ったんだ」

 

 シリカ系粉体充填剤の添加量が多いシリコンゴム製のローターだ。両端に小さな輪を備えている。柔らかくこれだけで乳首や陰核を包むように挟むことができる。無線式で、両先端と真ん中に静粛性抜群の小型モーターを取り付けた。最大パワーでも充電なしで連続60時間は使える。ユニット式にしているから充電も部品交換も楽にできる。材料費一つ当たり約400pp。

 欠点として通常のローターの、最大レベルよりも強いレベルで振動してしまう。16段階の内8段階は今のところ封印している。

 

「つ、つくった!?ひあうっ!……あ、あなた、あなたね、そんな時間とスキルが、あるなら、もっとおおおっ!」

 

 鈴音の責めるような口調に、ついついレベルを上げて振動を強くしてしまう。

 

「今最弱から1レベル上げた。全部で16段階で、今は2だ。」

「う、うそっ、弱いなんて、嘘でしょうっ。ひっ……ああああっ!だめぇ、そんなところは駄目ぇ」

 

 腰を引いて逸物の雁首に引っかかった、秘所から盛り上がるように露出している充血した箇所をローターが細やかに振動する。

 

「いや、いやああああっ!あ、ああああはああっ!?」

 

 後ろからオレに犯されたまま必死にもがいて、無機質な振動から逃れようと身をよじると同時に絶頂して潮を噴出する。

 

「……あっ」

 

 絶頂しながら噴き出した潮が桔梗の顔にかかり桔梗が顔を歪めて吐息をもらす。

 

「く、櫛田さんっ、ご、ごめんなさあああああっ!ひぃいいィイイィいぃぃ!!」

 

 鈴音が泣きながら謝罪する声に合わせて、ゆっくり腰を引いて白い尻に叩きつける。ガタガタとベッドを揺すりながら、悲鳴のような嬌声を張り上げる。

 

「潮を浴びせられて、こんな絶叫を聞かされて起きないとは、桔梗はよっぽど疲れているんだな。鈴音もそう思わないか?」

「ひィっくっ、あ、あなたの、ひああっ!せいで、しょう、そんな馬鹿なこと、言わなっ!やあっ!潮……声……やああっ!も、もうっ、これ無理ィっ、やめてぇ、櫛田さんの上でだけは、ひゃああああっ!!またぁ、お願いィ、櫛田さんの上では、許し……いやはあぁっ!」

 

 後背位により鈴音を組み伏せて、潮を桔梗の身体に噴かせ続け泣き叫ばせることで、征服しているような満足感が、オレをたぎらせる。

 結合部のローターの振動は、膣内に入れているオレにも伝わってくる。膣内の粘膜が激しく蠢き、オレに動いて欲しいと言って請い願う。

 

「そこまで頼まれたら、動くしかないな」

「え!?くはあっ、あひああっ!な、何を言って、私何もゥ!」

 

 オレの腕で腰を回すように掴まれている鈴音は、上半身を宙ぶらりんのようにして、抽送を始めると絶頂して蕩けて潮吹きを繰り返している。

 

「だ、だめぇ!?ローターだけで、私はぁ!む、むりなの、に……き、清隆君のが……そんなっ、ずんずんって、いやぁ、櫛田さ、ん、ごめ、ひやっはあっ!」

 

 散々絶頂を止められていた鈴音は、もう自分の意思では絶頂を止められない。それでも、抵抗しようとするが、弱点をいつもと違って背後から突かれれてしまい絶頂して、口をだらしなく開いて舌さえ仕舞えない。桔梗の身体に潮を噴き出すだけだ。

 

「そうは言われてもな。さっき動いても大丈夫だと鈴音が言ってくれたから動き始めただけなんだが」

「きひィっ!あぁああ!?ひ、酷いっ!わ、わたし、こんな、ローターっなん、て……しらな、ひぅぅぅっ!あっ!やめてぇ、止めてぇぇぇ!」

 

 いやいやと首を振って、泣きながらローターを止めてと懇願する。

 さっきまでよりも必死に言ってくる訳は、膣の蠢きから解る。

 

「鈴音、どうしてやめてほしいんだ?」

「……え」

 

 でも、鈴音の口で言わせていじめたいから問う。

 

「今、言ったとおりだ。ローターだけならお前はそんなに嫌がっていなし止めてほしくないと思っているんだが、どうだ?」

「ひうううっ、いえ、止めてほし」

「本当にだめなら、なんでこんなにオレのモノを締め付けているんだろうな。いや、ローターなしでも締め付けるな。お前は」

 

 律動を止めて、ローターを一度秘所からはなして鈴音の目前に置いてやる。

 

「……っ。そ、そんなこと……っ!」

 

 鈴音がローターから視線を振り払いこちらをにらみつけた瞬間、膣壁が逸物をきゅうと締め付ける。

 

「すごい締め付けだな。今の締め付けは何なんだろうな」

「あ、あぅ、ち、ちがうわ、今のは、その、振り向いたせいよ。だから……」

 

 鈴音が慌てて言い訳し終わると同時に、ミミズ千匹の膣壁がぐねぐねと蠢いて締め付けてくる。

 なお、今回鈴音はまったく動いていない。

 

「ほう、じゃあ、今回は?」

「――っ」

 

 真っ赤にして視線を逸らそうとする鈴音

 あまりにも可愛らしくてそそる反応に腰を大きく引く

 

「ひぁぁぁっ」

「話をするときは相手の目を見てしようと教わらなかったのか」

 

 ガクガクと体を震わせる鈴音に、ゆっくりと差し込んで子宮口に亀頭を押し当てて圧迫する。

 

「うぁぁぁっ!だ、駄目ぇ、出ちゃ―――」

 

 言葉の途中で口を押さえて、ぷるぷると頭を振る鈴音。「お願い、言わないで」と哀願の視線を鈴音に向けられるとは思っていなかった。もちろん――

 

「鈴音、何が出るんだ?」

 

 このままいじめてやる。目に新しい涙をためてふるふると頭を振る鈴音の前で、手に取ったローターのスイッチを入れる。

 ぶぅぅんと無音で震えるローターを、目を見開いて凝視する鈴音があまりにも可愛くてもっと追い詰めてしまう。

 

「鈴音、何が出るんだ?」

「や、やめて……」

 

 そう言いながらさらに膣壁をきゅうきゅう締め付けてしまう。

 真っ赤にしてさらに顔を振って「言わないで」と目で哀願してくる。

 

「相変わらず下の口はなんて素直なんだろうな」

「ひっ、あくぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ローターを当てて一度抽送してやると鈴音は体全体を大きくびくつかせた。

 膣の蠢きが覚えておいたものとまったく同じになる。

 

「だめ、こ、このまま、だと」

 

 一番思い出したくない記憶を刺激された鈴音が、口元を震わせて今にも泣き出しそうな顔をしながら懸命に言葉を紡いだ。

 

「そうだな。このまんこの蠢きは覚えがある。前も同じことがあったな」

 

 右手で鈴音の蕩け始めた乳房を愛撫しながら聞いてやると、ひっひっと悲鳴をあげながら嬌声を耐えて縋るような目で見てくる。

 もう、何かしら動けば漏らしてしまうのだ。仕方なくローターと律動を止めてやる。尿意を耐えてきゅうきゅうにしめる鈴音をもっといじめたかったが、ここまでか。無念だ。

 

「鈴音、慈悲だ。どうして止めて欲しいのか、一度だけ聞いてやる。本当の理由を言えよ。オレの意見と一致したらお前の望みをひとつだけ叶える。先に紙に書いておくからな」

 

 ローターを一度脇に置き、鞄に入れてあった紙にペンで一文字「尿」と書いて鈴音の顔の右側にゆっくりと伏せる。

 多分見えなかっただろう、真っ赤に染まり目を見開いて表情を固めた鈴音を見て心にもないことを思う。

 

「こ、この……ひああっ!ろ、ローターっ、またぁぁ!」

 

 怒鳴ろうとする鈴音の秘所にローターを押しあてて、紙が透けて何が書いてあるか見えてしまっているのを見る。これで万一さっき鈴音が紙を見てなくても間違えることはない。

 

 限界以上に追い詰められた鈴音の様子を見る限り、次言わなければ漏らしてしまうだろう。

 意識を戻し始めて呻く桔梗の身体に尿を。

 嗜虐に口角を上げる。

 鈴音が恥を取るか友情を取るかが愉しみだ。

 

「お、おしっこよ。このままだと、櫛田さんに、おしっこ……お願い、トイレに、行かせてぇ」

「良いだろう」

 

 躊躇いなく友情を取り、泣きながら小声で言ってくる鈴音に、意外の念と感心の念を同時に抱く。ここまで仲良くなるとは一年の始めには思っていなかった。

 感情で裏付けされた関係は、金銭や利害での契約関係を凌駕することがある。だが、そんな関係を結ぶのはハードルが高い。特に桔梗と鈴音の間のハードルは、極めて高かった。二人は乗り越えたのだ。

 

 オレは鈴音の子宮口に亀頭を当てた状態で、鈴音に振動を与えないように身体を確りと抱き止めて歩きながら、そんなことを思う。

 勿論抵抗はされたが、限界の尿意、逸物を膣内に挿入されていてはどうしようもなく。両膝をオレの腕で抱えられた背面座位の姿勢で、身体に回したオレの腕に諦め混じりの嗚咽を漏らしながら手を絡めていた。

 

 目的地に着いた。

 

「さあ」

「――――ぇ?」

 

 便座をあげて男がする姿勢になって促す。凝固剤でも身体に塗ったかのように鈴音が固まった。

 

「なんだ、出さないのか……なら、戻って続きをするぞ」

「――――っ――――ぃゃ―――こんな、の」

 

 固まったまま、掠れる様な声で否定する鈴音に心が震える。

 

「じゃあ、どんなのが良かったんだ。言っておくが、お前は何度もイッたから良いかもしれないが、オレは未だだ。だから、オレがイクまでは抜かない」

「―――なんでぇ、こんな格好…ここでぇ」

「トイレ以外で何処でするつもりだ。ベッドか?前、オレの前で小便した時は四回漏らしてくれたお陰で、マットごと交換したんだ」

「―――っ」

 

 不味いな、手加減が上手く出来ない。最後の台詞は酷すぎたかもしれない。口元を振るわせて、必死に声押し殺して泣き始めた。とても可愛い。

 ――心が震える自分のアレさが嬉しく思う。自分が道具ではなく血の通った人間だと理解できた……もう少し別のことで理解できたかもしれないが仕方ない。

 

「泣いていて良いのか」

「――あっ、ゃあっ」

 

 そうしているうちに限界が来た。ブルブルと身体を震わせる。

 

「う……う……うぁ」

 

 脂汗が全身から流れるなか、ぽろぽろと涙を流して男の前で放尿することに抵抗する姿は可憐だと思う。

 

「さ、さっき、願いをかなえるって」

「叶えただろう。トイレに連れて行った」

「――っ――そ、そんな」

 

 悪魔を見るような目で鈴音に見つめられてぞくぞくする。

「あ……ああっ、抜いたら――」

 

 逸物を膣からゆっくりと引き抜き始める。鳴きながら止めてくる鈴音は解っている。

 逸物により広がった膣が尿の蓋をしていてくれているのだと。

 

「だめ、だめだめだめだめぇぇ」

 

 普段とは遠く離れた幼子の様な泣き声で、止めようとする。殊更ゆっくりと引き抜く。

 ポタリと便器に水滴が一つたれた。

 

「や、やだやだやだやだやだぁぁ」

 

 童心に還ったのだろう。まるで力の入らない腕で、ぽかぽかと腕を叩いて止めようとしてくる。幼いとき鈴音は兄にこんな可愛らしいことをしていたのだ。

 堀北兄がシスコンになるのは当然だろう。

 

「やぁ、やぁやぁやぁぁぁっ」

 

 幼いころからかったりしてこんな反応をしてもらえたのだ。

 素直に羨ましい。

 

 半分抜いた時だった

 

「い、やあああああっ!!?」

 

 プシュっと鈴音の秘所で音がした。

 

「あ、ああ、あああ、ああああっ」

 

 数十秒後、オレは丁寧に茫然自失した鈴音の後始末をし終わると。

 

「さて」

「んはああああっ!」

 

 トイレの背もたれに両手を置いて、信じられないように抽送をはじめるオレを見たのは一瞬だった。

 すぐにトイレに水が流れる音がする。

 力を振り絞って流した鈴音の勘のよさと経験に感心する。

 便座をおろし、立ちバックの状態に持っていく。

 

「あぁっ!なんでぇ!ふあぁっ!こんなぁ、ところで、ひぃぃんっ!」

「すまん、限界だ。一度出させてもらう」

 

 鈴音の腰を掴み、律動するたびに膣壁が絡みつき快感を与えてくれることをオレは堪能しながら、鈴音のバックでの最初の一発をトイレですることに決め、腰を打ちつけた。




予定よりはるかに長引いてしまいそうです。本来なら今回で3Pやめるはずだったのに
今まで天然にSだった人が理解してSになったため上手くコントロールができずに堀北さんが酷いことになりました。

次回までかなり期間が開くと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑥

アルミラージラビットさん、男魂さん、カツ丼Qさん、一人ボッチの犬さん、IT06さん、評価付けありがとうございます。
高山流水さん誤字修正ありがとうございます


もっと短くしなければならないと思うんですが、長くなってしまいました。


「あぁあああああッ!」

 

 ミチミチと秘肉を押し広げられ、あまりの逞しさに一発で絶頂へと導かれてしまった。鈴音はピンと伸ばした四肢を突っ張らせ、背を弓なりにして顎をのけ反らせる。

 そのままくたりと便座に倒れそうになる鈴音を突く。

 

「あぅっ、あひっ! あっ、あうっ、やっ、ひあぁっ!」

 

 便器の上で鈴音に腰を強く打ち付ける。鈴音は口の端から涎を垂らし、逸物が律動する度に真っ赤に染まった裸身を震わせ、汗を飛び散らせる。

 

「……ああっ、わたし、もぅ、だめぇ……どうにかなっちゃう」

 

 快楽に硬質の美貌を蕩けさせ、嬌声を叫ぶ。

 長時間の言葉責めの後、尿意をこらえての道具を使っての恥辱の数々に、焦らしに焦らされた痒みが快感で癒される悦び。止めに言葉に出来ないほど恥ずかしい放尿。

その連鎖的な責めにあって、鈴音の理性は麻痺し、被虐の性感が燃えあがる。

 

「スッキリしたのが良かったようだな。さっきよりも締め付けてくるぞ」

「やぁぁ、ちがう、私はぁ……ひっひいっ!」

 

 酷い言葉の責めに僅かに理性が戻り、目を見開いて否定しようとするが、腰を回しながら抽送すると声は喘ぎ声に変わる。

 

「ぐちょぐちょだな。オレのが溶けてしまいそうだ」

「いあぁぁっ!……あっ……あっ……ああっ!」

 

 鈴音の背中がぐいんとのけぞり、汗で張り付いた黒髪の先端からたらたらと汗をたらす。秘所から流れ落ちる愛液がぽたりぽたりと便器の水溜りに落ちて音を立てる。

 さきほど鈴音が漏らした尿のような音を。

 

「駄目ぇっ……駄目よっ!」

 

 恥辱に真っ赤になった顔から出た可愛らしい声がトイレに響き渡る。その声に囃し立てられたように抽送するたびに、柔らかな胸が背もたれでぐにゃりと変形する。

 

「そうか、駄目か。ならもっと駄目にしてみようか」

「あぁぁっーーーっ!!?」

 

 深々と子宮を突き上げられて鈴音のたおやかな上半身が限界まで仰け反り、宙に浮いて痙攣する。

 真っ赤に染まった美しい顔が仰け反り、オレの顔の近くまで来る。

 すかさず抜ける寸前までぬらついた逸物を引いて、鈴音の耳を甘噛みながら腰を掴んで叩き込む。

 

「ひああっ!……あひいっ……ああッ!……むねぇ……あひあひィィっ!」

 

 激烈な抽送が、後ろから膣壁を抉るようにずぶずぶと貫き引きずられる。

 打ち込むたびにびしゃんと肉と肉のぶつかり合う音が響き、引き出すたびにじゅるじゅると濡れた肉が引きずり出される音が響き、鍛えられた鈴音の体が体操選手のように柔軟に反り、跳ね上がる。

 

「胸かわかった」

「あうっ……ああっ……うああっ!」(こんな!こんなの!無理よ!)

 

 背中ごとオレの身体に倒れこむようにしてきた鈴音を、背面立位の体位で逸物を叩きつけると、鈴音の震えがこちらに伝わる。

 発情しきった熱い身体が、すっぽりとオレの胸の中に入ると、平均的な体格の少女の折れてしまいそうな白くて細い肢体を実感して、なんともいえない庇護欲と獣欲が滾る。

 

「あ、あひぁぁっ!」

 

 勢いに乗ったオレに乳房を揉まれ、ピンと尖った乳首を転がし、扱き、ギリギリと押し潰すようにして刺激されると、あられもない嬌声でよがり狂い、いっそう腰をくねらせる。

 

「ああっ……ひぎぁっ!……うぐっ……あがっ……ふあっ!」

 

 抽送の速度をさらに上げると、一突きごとにピチャッピチャッと粘度の高い愛液の弾ける淫らな音と鈴音の動物のような嬌声がトイレに響く。

 完全に脱力した身体をオレの背中に預けて、突かれるたびに背筋をしならせ腰をくねらせて快感の虜となっている。

 

「あうっ……ああっ……もうっ……だめぇっ……」

 

 美貌を上気させ、鈴音はもう耐え切れないと首を振る。小さな絶頂で潮を吹き、便所の水溜りが音を立ててももう気にしていない――否、できない。

 

「あっ……もうっ……だめぇっ……」

 

 硬質の美貌を蕩けさせ、鈴音はもううわごとのようにあえぐことしかできない。

 思考はかすみ、結合部には感覚がなくなり、子宮にズンズンと鈍く重い痺れが溜まった。今まで何度もあった感覚、綾小路清隆に犯された時にしか感じられない感覚、自分の男に深く愛されているという女の喜びの感覚。

 

「そろそろイカせてやる」

 

 その声に鈴音の思考は少しだけ色を取り戻す。雌としてミミズ千匹の膣を期待に蠢かせ、女として男を案じる。

 

「ああっ!……だめよっ……あなたも……ずっと……私の中で出してくれないとっ!」

 

 手で俺の上腕を掴んで囁くように言ってくる姿は途轍もない健気さと淫らさを併せ持ち、オレの限界を誘発する。

 

「安心しろオレも出す」

「なら……お願いっ……一緒にっ!」

 

 トイレの中で、性感を男に完璧にコントロールされ、大粒の涙と涎をたらし普段の品のある態度からは想像も出来ないほど淫らな姿で、鈴音は健気に笑う。

 散々いじめるオレの精を注がれるのが幸せだというように。

 

「あっ!あ!あ!あ!」

 

 ギアをあげて短い抽送で鈴音の膣穴を責め立てる。

 普段と角度を変えた逸物がGスポットを連打する。その瞬間、しなやかな裸体が電撃を浴びせたように震える。

 

「出すぞ」

「あ、あああああっ!だめえええええええ、イッちゃうぅぅ!」

 

 頭を仰け反らせて鈴音が絶叫する。胎の奥に精を放出されてがくがくと全身を震わせて、尻をはねあげギリギリと痙攣した。

 

 

 

「はあっ……はあっ……はあっ」

 

 荒い息を吐いて舌をたらす鈴音。とろとろに蕩けきった顔は、情欲を煽られて仕方ない。

 オレは、ズッポリと鈴音の秘所にハメたまま、鈴音をぐるりと体を半回転させる。

 

「ひぎゃあああああっ!!?」

 

 突然、巨根でかき回され悲鳴混じりの嬌声をあげた鈴音。俗に対面立位と呼ばれる体位になった。

 身長差で鈴音の身体が浮いていることが違い、衝撃にビクリビクリと震える鈴音にさらに追い打つ。

 

「今からベッドに戻る。このままでな」

 

 言いながら一歩を踏み出す。

 自然と鈴音の身体が軽く浮いて、何が起こるか理解しハッとして止めようとする鈴音。

 

「ひがぁぁぁぁ!」

 

 足を踏み込むと同時に落ちた身体が、逸物に勢いよく子宮を抉られて悶絶する。

 鈴音の名器たるミミズ千匹がさらに逸物に絡み付いて、歩いてここまで気持ちよくなったことはない。

 いつもこうして歩きたいくらいだ。……着衣下着なしは、他人に裸を見せないからアリだな。検討しよう。

「さて、早く戻らないとな」

 

 さらにもう一歩

 

「待って!しがみ付く、だから、お願い、待ってぇ!」

 

 鬼気迫る声に足を止める。

 両腕でオレの首にしがみつき

 両足をオレの腰に回してしがみつく。

 

「こんなに大胆に鈴音に抱きつかれる日が来るとはな」

「い、言ってなさいぃ……ひああっ!……ここに来るまで、あなたが、抱き締めてくれたから、油断してたわ。鬼畜サディストに油断するなんて――く、あ、あ、あ」

「乳首が立っているな。胸に擦れて気持ちいいぞ」

 

 一歩踏み込むと、鈴音の柔らかな乳房の先端が、オレの胸と擦れ合い、グミのような硬さのものが体をなぞり上げて心地よく。こすれるたびに快楽に顔を歪める鈴音がさらにたぎらせてくれる。

 快楽に耐えて体を必死で固定しても、逸物で串刺しにされていることは変わらずに、自然と抽送される。

 情を交わしあった男に抱きついた身体は、自然と燃え上がり胸の鼓動を速くして、オレにもうるさいくらいに聞こえる。

 接触部全てから快感が送り込まれて、悶え泣き叫ぶ少女を見て情欲がたぎる。

 

「う……う……うぁ」

 

 それらを理解した鈴音はぎゅうと抱きついて、少しでも刺激を少なくして耐えることにしたらしい。目をつぶる。

 いじめなければならない使命感を滾らせて責める。

 

「お前の乳首が擦れる度に、お前のここはよく締――」

「ちゅ……んぅ……ん」

 

 言葉責めの途中で突然キスされる。

 選択肢が直ぐに浮かぶ。このままキスをするか、キスを止めていじめるか。

 チラリと鈴音をみる。言葉責めを止めるつもりで必死でキスをしたのに、オレとのキスの心地よさにうっとりとしてしまった鈴音を。

 決断は直ぐにした。応えて鈴音の好きな啄むような恋人のキスをする。

顔を綻ばせ、きゅっと縮こまってオレに身を寄せ、濡れたような視線をオレに向ける。何てイジメたくなる姿なんだろうか。

 

「んんっ!」

 

 今度は一歩進んで半回転し、トイレのドアを閉める。

 振動にピクリと身を震わせながら、唇を離さずに男の劣情を受け止める。

 

「喉が渇いただろう。まずは冷蔵庫に行こうか」

「んっ、そこで一回休ませて、はぁ、はぁ、ベッドまでは無理よ」

 

 いけるいける。飲み物を飲んでいるときも、この姿勢のままだ。鈴音の柔らかい身体と名器の組み合わせが気持ちよすぎるから、変えたくない。とりあえず三歩くらい歩いてみれば解る。

 

「ひぁぁぁぁっ!」

 

 ――甘かった。鈴音の絶頂の声と愛液を浴びながら思う。

 散々嬲った鈴音に力が入らない今、この姿勢だと常に子宮を押し上げて、ぽこりとお腹を膨らませている。

 まだまだ、それほど身体がセックスというか性的快感に慣れていない鈴音には酷だろう。

 

 でも、オレには気持ちいいんだよな。

 それに、鈴音をもっと俺の色に染めるためには必要な課程だ。

 

「……あひっ、なんで、歩くのっ、もうっ……無理っ……」

 

 躊躇わず一歩踏み出した。引き攣った悲鳴を聞きながら、ゆっくりと歩こう。飲み物飲む時は休ませれば、大丈夫だ。

 ……きっと

 

「あっ……ひっ……んっ……や、あっ……」

 

一歩踏み込む度に、ピチャッピチャッと粘度の高い淫汁の弾ける淫らな音と、動物のような絞り出すような嬌声が聞こえる。羞恥で震える鈴音を見ながら、スキップしたり、跳んだりしたい衝動を堪える。

 いつか、着衣で入れたまま階段を昇降しよう。人目につかず監視カメラもない場所は、いくつかピックアップしているのだから。

 来る未来に決意を改めていると、時間は掛かったが、何とか冷蔵庫に辿り着いた。

 冷蔵庫に着いた時、鈴音は腕も脚もだらりとしてオレにもたれ掛かり、全ての体重を逸物にかけている。

 

 ペットボトルに入ったスポーツドリンクを何本か取り出し、床の上に胡座をかいて座る。

 

「ああぁっ」

 

 脚はオレの腰を挟んでM字型に大きく開かれた対面座位で、身体ごと凭れ掛かっているために腰は深くオレの上まで引き寄せられている。

 ぽこりと逸物に押し上げられた子宮で膨れた腹を見ると征服欲が満たされる。

「ほら」

「ん」

 

 ペットボトルの蓋を外し、口を付ける。グビグビと飲んでから、口に含んで鈴音の唇を割り口へ流し込む。

 鈴音にも桔梗にも恵にも、いつもやっているから癖になっている。相手が嬉しそうに、コクリコクリと喉を動かしているから悪くはないのだろう。

 

 子猫のように目を細めて、スポーツドリンクを飲み込む鈴音を見ていると、鈴音を床へと下ろして立ち上がる前に一発しておきたくなった。

 

「休憩は無しだな」

「え?」

 

 ピンク色に染まった鈴音の尻を掴むと、呼吸を整える。時間はたっぷりあるし、鈴音が力尽きても桔梗が居る。普段と違って加減せずに情欲の限りを尽くせる。

 我ながら鬼畜以外の何者でもないな。

 

「ああーー!?」

 

 べっとりと汗をかいた整った顔が、歪んで獣のような嬌声をあげる。

 その姿に口角を上げてゆっくりと秘所から逸物を引いていく。

 

「う、あっ、あっ……出ちゃうぅ!」

 

 長時間圧迫し続けた逸物が引き出される。

 痺れるような、ずるずると排泄が続いているような快楽を感じて、鈴音は泣きそうになった。

 鈴音にはまだ任意に締め付けるような技はないが、短期間で犯され続けた天性の名器はピッタリと男の逸物に絡み付く。

 

 

 

「あ、ああっ!こんなぁ、こと、されていたら、私っ」

「こんなことってどういうことだ」

 

 いつもの私を徹底的に責める時の眼差しで、清隆君が見据えてくる。胸の奥と清隆君のモノを入れている私の胎がキュンと締め付けられてたまらない気持ちになる。

 彼には恥ずかしくて絶対言えないし、それどころか心の中で思っただけでも恥ずかしくてたまらないのだけど……清隆君にこうして力強く抱きしめられたり、体重をかけられたりするのは、なんだか彼に包み込まれているみたいで安心する。

……一番安心するのは、今みたいに清隆君の精で子宮が満たされている時なのは、認めるのはまだ早いからあまり考えないようにしている。

 

「そ、そんなことっ、言えないぃ」

 自分の声とは思えない濡れたような声が出る。清隆君に抱かれるまでは出したことのない声、今では出さない日の方が少ない恥ずかしすぎる淫らな声。

「ほう、そうか」

「ふぁぁっ!」

 

 清隆君に子宮の近くを突かれて、頭の中で弾けるように火花が咲いた。イッたんだと、頭の中で冷静な声がする。彼とするまで知らなかった、私の身体に眠っていた快感に支配される。

 気持ちいい。最初は子宮の近くが気持ちいいかなと思っていたくらいだったのに、お腹、下半身に広がっていって、今はもう、気持ち良さが身体全身を塗りつぶすような身体に、清隆君にされてしまった。

 

「はぁ、はぁ……あっ……はぁ、はぁ」

 

 そのまま、ふらりと横に倒れそうになるけど、清隆君が、肩に置いた手のお陰で頭をくらりともせずに済んだ。

 そのまま、私の回る視界が少し落ち着くまで離さないのは、私が今まともに背筋も伸ばせない位、身体に限界がきていることを知っているからだ。

 さっきトイレの中でも、トイレから此処に来るときも、いつも、私を手酷くいじめる清隆君だが、さりげなくフォローして私に無理はさせないようにしてくれる。

 こういったさりげない優しさも、前から頭では理解していたけど、素直には認められていなかった。今なら解るとても好きだと。

 

「あっ、あひぃっ、かき回したらぁ、ひぁっ」

 

 前、彼に近づいたら自分がどうなるか不安で距離を置こうとしたのは、正しかった。

 排卵の時期に身体が影響を受けて、ムズムズした性衝動を抱いていた時に、清隆君の顔が浮かんで、考えるなと頭から消して否定していた時のように、正しい反応だった。

 私らしくないが、女の勘が働いたのだ。

 これ以上近づいたら、自分が壊れて自分でなくなってしまうと

 

「かはっ、駄目っ、今、敏感でぇっ、ふぁぁっ!」

 

 予想以上に、近づいたらこんなにも乱れて、淫らになってしまった。

 あの頃は自分で慰めなかったし、清隆君に責められて性欲が満たされている今も慰めていないが、こんなことを真剣に考えている時点で、私は駄目だ。

 心と身体の両面を清隆君に可愛がって欲しい。そう強く思うようになってしまった。

 倫理観、貞操観念、羞恥心よりも清隆君を求めてしまう。

 

 だから、あんなに激しくひどくて優しい責めを、受け入れてしまい。最後には溺れて深みに嵌り出られなくなる。

 ――今の私のように、ベッドで微笑んで眠る櫛田さんのように。

 援軍欲しさに櫛田さんを起こしたくなる危機感と、このまま寝かせて清隆君を独り占めしたい独占欲と、少しでも櫛田さんを休ませたい優しさがぶつかる。

 そんな想いも、清隆君の一突きで消えて快楽一色になるくらいに、私は堕ちてしまった。

 

「ああっ、い、いつもよりっ、キツイわぁ!」

 

 今までよりも、かき回す円を大きくして責めてくる。

 最初は痛みと痺れしか感じなかった私の固い膣は、清隆君に柔らかくされて、今では清隆君のモノの血管の脈動さえ感じられる。

 ……限界ギリギリを責めて、耐えられる範囲を次第に拡げているのだと解っている。これは、もう調教とか開発とか育成と呼ぶべきだと解っている。

 恥ずかしいことを叫ばされた後、子供みたいに駄々をこねたことや、放尿を含めて、今日させられたことを思い返すだけで羞恥で死にたくなるけど、もう無理だ。離れられない。

 

 もう認めよう。所詮、私も一匹のメスだったということだ。

「はぁ、ああぁっ、胸がっ!あぅぅっ」

 

 腰を止めると、絶頂直後の敏感になった乳房を弄られる。清隆君に抱かれてから、揉まれ弄られた乳房は発達して、最近下着のサイズがキツくなってしまった。

 サイズを上げるかずらさない限り敏感になった乳首が刺激されてしまうから、買い換えないといけない。

 ……上だけでなく彼のモノを挿入されて腰周りが発達してきた下も

 

「ふぁぁぁぁっ!乳首っ、くすぐらないてぇ!」

 

 何か別のことを考えれば快感が薄くなるのは嘘だ。本とネットに騙された。

 ぷるんと、私の乳房を下から横からさするように弾ませて、乳首を優しくくすぐられると、乳房の芯がしこりジンジンと感じて、発情した猫のような嬌声を出す。

 

「あ、あっ……なんでぇ」

「何がだ」

「っ……何でもないわ」

 

 何分も胸を愛撫されるだけで、硬く逞しく私のお腹の形を変えて串刺しにしている彼のモノは、動いていない。疑問が口からでる。

 間髪いれずに応え、嗜虐の色を瞳に浮かべた清隆君をみて、背中を震わせて誤魔化す。

 知っている目だ。私を快感で狂わせて、はしたなくて死にたくなるような恥ずかしいことを、言わせて、させる時の目。

 きゅぅぅと胸の奥が締め付けられる。身体の奥底を貫かれて、乳房を弄られ、理性も思考も溶けていくのにあんな目で見られたら私は抵抗のしようがない。

 だから、いつもこういうときは、一思いにして欲しい。

 なのに

 

「何でもないか、そうか」

「うぅっ……あぅぅっ」

 

 胸を愛撫されるだけしかしない。余裕綽々でじわじわと嬲りながら責めてくる。

 ……私には余裕なんてとっくになくなっているのに

 余裕のある責めが憎らしくも、もどかしくも感じてしまう。

 

「うぅっ、ひあっ……ああっ」

「どうした鈴音?残念そうだな」

 

 鈴音と彼に呼ばれる度に跳ねる胸の鼓動と、感じる暖かい安心感が、清隆君に知られていないことを願う。

 この、正真正銘のドSに知られたら、何をされるか知れたものじゃない。

 

「な、何でも、何でもないわ……あぅぅっ」

 

 まただ。清隆君は、胸を刺激するのを絶頂する直前で止めてしまう。

 何をさせたいのか解っている。また、はしたないことを言わせて、私を辱しめたいのだ。かれのドSが段々酷くなっているような気がする。このままだと、いつか責め殺されてしまうかもしれない。

 その前に、このまま全身がどろどろに蕩けきったままじわじわと嬲られていたら狂ってしまう。

 

「なるほど」

 

 突き放すような声に、火照りきった私の身体は我慢の限界だった。動きたくても嬲られ続けた身体は疲労で動かないし、自分で動くやり方はよく解っていない。清隆君のように私の弱い所、感じる所を、腰を捻りながら的確に突いてもらうことなんて出来はしない。

 体内の清隆君は、最初と変わらない硬度を保ったまま、私を貫いて、存在するだけで私を追い詰める。

 昂ぶらせるだけ昂ぶらせて、止めをさしてくれない清隆君。

 情欲と嗜虐に満ちた獣の目付きで、見つめられる私は、どんな顔をしているんだろう。

 きっと、とてもはしたなくて、清隆君が際限無く興奮するくらいに、いやらしい顔をしているんだろう。

 さっきの櫛田さんのような。

「お、おちんちんを、わ、私の、お、おまんこで、う、動かして下さい」

 

 恥ずかしさで目が潤むけど、仕方ない。正気なら絶対に口に出せない言葉を口にした。メスなのだから、もう、私の意地は一時だけ止めてしまおう。

 後はもう、好きなように、清隆君に溺れてしまおう。さっきの櫛田さんみたいに。

 櫛田さんは友人だけど、プラスの対抗心みたいな良性の想いを抱いている。

 微かに残っていた理性が櫛田さんへの対抗心が引き金になって取り払われた時、私の心はふわりと軽くなった。

「よく言えたな」

 

 満足そうに頷くと清隆君は抽送を開始した。

 異常者レベルのサディストが快楽を叩きこんでくる。

 彼しか知らない私だが、清隆君がこういう行為に慣れていることだけは解る。

 その癪な想いと、清隆君のたまらない匂いに混ざる櫛田さんと私のメスの不快な匂いが無ければ、私は今思考さえ出来ていないだろう。

 

「あっ、ひあぅぅっ!こすられてぇ、あぅぅっ!」 

 

 腰を持たれてゆっくりと持ち上げられ、胎の中のモノが抜けるに従い、快感と圧迫からの解放と――清隆君の暖かさが少なくなる寂しさに鳴く。

 

「ひィィィ!きつい、キツイわぁ!出ちゃうっ」

 

 下げられるときには、ゆっくり肉襞を割り盛られて、締まりかけた穴を清隆君の形に広げられて、快楽と圧迫に呼吸さえ困難になり――清隆君の暖かさで埋められ染められる悦びに鳴く。

「あ、ああっ、うぁぁぁぁっ!くひィィ!」

 

 その度に腰を回転させて、私の弱い所を的確に責められると、私はどうしようもなく乱れ鳴く。

 観たAV男優より間違いなく彼は巧い。動画では、こんなに女性を狂わせるような腰使いじゃなかった。

どういう人生を送ればこうなるのか、頭の片隅で彼に対する疑問が湧くが、検索するつもりはない。

 清隆君はここに居るのだから、しがみ付くようにして嬌声をあげる。

 

「相変わらず、凄いなお前のまんこは」

 

 快楽の波にもまれるなか、聞こえた感嘆の声に様々な感情を同時に感じる。

 清隆君が滅多にしない感嘆で誉めるくらいに、私の身体は、清隆君を満足させているんだと、喜び。

 もっと気持ちよくなって欲しいと、願い。

 他人よりも、清隆君を気持ちよくさせられる身体に生まれついたことに対する、感謝と昏い優越感。

 これなら、清隆君に棄てられない、安堵。

 

「あっ、あひぃィィ!あっあっあっ、あぁぁっ!」

 

 そんな女の情感は、清隆君の浅いところを中心としてたまに深く突く抽送で、混ざり弾けて快楽しか残らない。

 私の思考など、清隆君の一突きで流れるものでしかない、情欲のままに快楽でメスとして鳴き叫ぶ。

 清隆君のモノにされた圧倒的な幸福感で、獣のような嬌声を上げて清隆君にしがみつき身体を擦る。少しでも清隆君を感じたい。

 濃密な、綾小路清隆の、息吹で、匂いで。むせかえるほどに、私を抱擁して欲しい。

 

「ああ……ああっ!きたっ!すごいのが……気持ちいい!気持ちいいィ!」

 

 きもちいい、すごい、だとかそんな幼稚な思考しか頭に浮かばない。

 普段、あんな風にならないと思っていた、頭の悪い女にされてしまった。

 

「あ゛っ!あ゛っ!あひあっ!もっとっ!突いてっ!突き上げてっ!すごいっ!気持ちいいっ!」

 

 頭の中までドロドロになって、ずっぷりと清隆君のモノをはめ込まれた私のあそこは、痙攣して、ぷるぷると蠢いて、咥えこんだそれを無意識に、締め付けていくのがわかる。

 

「腰を動かすのはいいが、合わせろ。こんな……風に」

 

 無意識に腰まで動かしていたらしい。不安定なリズムのまま、清隆君が打ち付けるときに腰を引いたりして清隆君の抽送が不発に終わったりしたのだろう。

 私の腰をつかむ力が大きくなって、清隆君の抽送に合わせられる。

 ぐぽぅっ、ぐぱんと清隆君との結合部から、人間の出す音とは思えない音が響き渡る。自分が犯されているのだと身体全体で感じる。

 

「ひああぁぁっ!う゛あ゛あ゛あ゛あっ!……あっ、あっ、いぎっ!あひあぁぁっ!」

 

 獣の咆哮で泣き叫ぶ。

 頭の中は、真っ白で、チカチカと光り続けている。

 イカされて、意識が飛んで、犯されて戻って、イカされて……を繰り返してただ清隆君に縋りつく。

 もう、気持ちいいという考えと中に出してほしいという繁殖欲しか私には残っていない。

 清隆君に育てられたあそこのひだひだが、清隆君のモノに絡んで、懸命に奉仕しているのがわかる。

 そんなひだひだを抉るように清隆君のモノが進んでいって、子宮口の近くポルチオを突き上げられて叫ぶ。

 好きな人に、犯されて、発情しきって息を漏らしてただ悦ぶ、一匹のメスでしかない。

 

「き……やっ、きよたかっ、くん、わたし、もう、もう、いっしょに、いっしょにぃ……っ!」

「そうしたいが、締りが少し緩くなったな。きっちり締めてもらうぞ」

「……え?……ひィィっ!?だめぇ!あひィィィあーーっ!!?」

 

 聞き覚えのある清隆君の口調に、背筋が震える。

 私のお尻を掴んでいた右手の人差し指がお尻の穴に入れられて、私の身体をぐいと持ち上げられてめり込んでくる。泣き叫びながらお尻に力を入れる。

 

「いい感じだ、鈴音。締りが元に戻った。これなら一緒にイケる。動かすからな、一緒にイクぞ」

「あっ、あ、あっ、あーっ、あっ」

 

 涙で潤む視界の向こうにある嗜虐的な目で見られながら、言葉の意味を理解してしまい、何かを言おうとしても衝撃と快楽で言葉にならない。

 自分がイクまでお尻の穴に指を突っ込みながら動く、射精すればその刺激で私の意識は飛んでしまうから、結果的には一緒に絶頂する。と清隆君は言っている。

 

「――――っ!!!」

 

 根元まで埋め込んだ中指を上のほうに――つまり、膣口のほうへと折り曲げられて声にならない悲鳴。

 清隆君のモノでギチギチのあそこをお尻から刺激されて、耐えられるはずがなく視界が暗くなる。

 清隆君に抱かれて、まともに意識を保っていることなど私にはとうてい出来ない。今から考えてみると、もしかしたら初めて彼に抱かれたときが一番まともだったかもしれない。

 

「ひっああひあいいぁ!!」

 

 律動とともに、お尻に入れられた指を折り曲げてひねった、のだと理解できたのは後のことだ。この時の私は何も考えられずただ獣の様に鳴き叫ぶ声を聞いて、自分の意識が戻ったのを知ることしかできない。

 

「あっああっ、あぐあっ!……うぁっ、かはっ!あひあっ」

 

 清隆君の指で、お尻を蹂躙されながら膣の急所を突かれているのだろう……多分。

 なにもかもめちゃくちゃだ、火傷しそうなくらいに熱くなっているお尻の穴で気持ちよくなっているようにさえ感じてしまう。

 一突きされるたびに絶頂して意識をなくしそうになり、また一突きか尻穴を弄られると意識を戻されると、もうどうにもできない。全身を硬直させ、清隆君にしがみ付きながら、ひいひいと呻いて泣き喚く。

 

「あひぁっ!ひッ、ひいッ……あ、ああッ」

 

 清隆君の指がリズミカルに尻穴をえぐるのにタイミングを合わせて、膣が清隆君のモノでえぐられる。

 そのたびに私の肛門と膣が勝手に入っているものを締めあげ、味わったことのない淫靡な快感が全身をゾクゾクと走り回る。

 指が薄皮を隔てた清隆君のモノをなぞるように動かされると、女自身と肛門で快感が乱反射して増幅され、全身が勝手に痙攣して意識が飛んで戻される。

 

「あひっ!あ、あ、あ、あひあっ」(出してぇ、お願い、出してぇ)

 

 この地獄のような天国から解放されるには、清隆君に出してもらうしかない。祈るような想いでただ請い願う。

 

「あっ……ぎっ」

 

 清隆君のモノがさらに一回り膨れ上がって、苦悶と期待の入り混じった呻き声を出した。

 

「そろそろ……中に出す、ぞ……っ!」

「あ、ぁ、いっく、いくっ、あッあ゛っお゛っ!イクううぅううぅううあああああ!!」

 

 ゴツン、と最奥を強くつきこまれて、弾けた。身体が無くなって心だけになってしまったような浮遊感。

 あ、あ゛っという、ふだんの生活では絶対に出さないような下品な喘ぎ声と、ほぼ意識がなくとも教え込まれた身体は勝手にイクと叫び声を上げる。

 ぼやけて曇った視界。チカチカと頭の中で光り、周り全てが歪んで、何もかもまるで他人事のようで現実感がない。

 ひくひくと断続的に腰が震えて、びくんと時折跳ねる。あそこで清隆君のモノがふるえるたびに、こじ開けられた子宮口から熱い液体が流し込まれる。

 そうして子宮から爆発するみたいに強烈な快楽が弾けて、胎から全身の神経へと浸透していくように、性の快楽が、染みわたる。

 

「あっ……ああっ……はぁ……あっ」

 

精を流し込まれながら、快楽に浸る。ぬるま湯につかったような心地よさに抗えない。体から心まで丸ごと清隆君に支配されたかのように、気持ちいい。 

ほんとうにだめになってしまう。そう思うのに、子宮に精液をどくどくと流し込まれると、安心して何も考えられなくなってしまう。

 

子宮に精を注ぎ込まされる、汚されて満たされているのだという、相反する独特の感触。

なにをやっても、どこか満たされていなかった堀北鈴音という器が、今満たされるかのような、不思議な感覚。

 

好きになった男の人に、女として、全てを支配されているのだという被虐が混ざった快感。

清隆君の身体に包まれて、抗えないまま、清隆君は精液を私に注ぎ込みながら、モノになるように屈服を強制してくる。

 

―――もう、とっくの昔に私は彼に屈服して、清隆君のモノなのに。……こんな風にいじめずに犯してくれていれば、もっと受け入れるのに。

 

 いや、その、こういう風にされるのも、正直なところを言うと、清隆君に知られたくはないから、隠し通すつもりだけど、それほど――――嫌なわけではない、のだけど、受け入れるのは困難なのだ。とても。

 

 そんなことを思考の片隅で思いながら、脈動して射精し続ける脈動する清隆君のが、子宮口と触れ合い、最後の一滴までもしっかりお胎の中に注ぎこまれた。

 

 精を注ぎ込まれた子宮が膨れ上がって痛いくらいなのに、子宮に栓をするかのように、射精した後も硬くなったままの清隆君のが入ったままだ。

「ふぅ……はぁ……ふぅっ……はぁ……」

 

頭のてっぺんから脚の指の先端まで、快楽の余韻にうっとりと浸りながら、震える。

このままずっと、包まれるように抱かれ、繋がったままで、一生離れないでもいいと、本気で思ってしまった。

 

「はぁぁっ……っきもち、いい。」

 

私の身体の一番大事な所の子宮の中で、清隆君の精子が元気いっぱいに泳ぎ回っているのを感じ――妄想かもしれない――て、ふわぁっと私は愚かな女として蕩けきった顔で笑った。

 

 

 

 冷静な思考が出来るようになり、言葉を出せるまで息が落ち着くまで二、三十分かかった。

 彼とこんなことをするようになってから、加速度的に増えているが、今まで考えていたことは、墓場まで持っていくつもりだ。

 

「あれだけ、辱しめて、休憩させずに、また犯すなんて」

「ああ、お前の身体が魅力的すぎて我慢できなかった」

 

 清隆君の肩に頭を預けながら愚痴を漏らす。あんなところを弄られながら、意識が何度も昇天仕掛けたのだから、一言くらいは欲しい。

 なのに、あっさりとした口調で返され、フツフツとした思いが沸いてくる。これが彼の地だとは解っているけど、もう少し何かこうあっても良いでしょう。

 魅力的と言われて喜んだりしていない、私は。

 羞恥と快楽で頭が茹ってしまっているまま言葉を続ける。

 

「もし、私を棄てたりしたら――」

「なんだ」

「あなたを殺して私も死ぬわ」

「解った。言っておくが、お前みたいな魅力的な女をそう易々と棄てたりしない――」

 

 自分でも驚くほど凄いことを言ってしまった。一切の他意が混じっていない、本気の言葉を言ってしまう。普通ならかわされるか引かれるだろう。

 

「もったいないからな」

 

 でも、清隆君は自然と受け入れた。私の言葉を、うわ言でも戯れ言だとも判断せずに本気だと認識した上で、当たり前のように。

 もし、彼が少しでも躊躇ったり否定したならば、私は心の奥底を抉り抜かれただろう。それくらい心の弱いところを曝け出し吐き出してしまった一言だった。

 彼の器の大きさと怖さを思い知るのはこういうときだ。普段はぼんやりしているように見えるのに、ここぞと言うときは間違えず誰よりも頼りになる。

 この人なら、きっと何とかしてくれる……そう思える。

 思考の方向が、どこまでも畜生というか、人をまず道具としてみているが仕方ない。これも彼の味だ。

 

「……そう」(何を考えているのよ。私は)

 

 静かにこちらを見据えている清隆君を見返せず。自身の動揺を振り払うようにして、そっぽを向いた。

 自分がこんなにも動揺しているのに、彼はどこまでも落ち着いている。その差が腹立たしくて仕方ないが、あまりにも子供じみている。

 呆れてられているのではないかと横目で見ようとして

 

「あっ……」

「成程」

 

 私の女の象徴の部分は、清隆君のモノを締め付け始めた。

 少し体力が戻った途端にこれとは、あまりの羞恥に顔をさらにそらしてしまう。

 

「こんなにいやらしくなったお前を堀北兄が見たらどう思うかな?」

 

 どこか楽しげに言う清隆君だが、何を考えているのだろうか。

 

「兄さん?兄さんは関係ないでしょ。兄さんに見られたら兄妹揃って居たたまれなくなるとは思うけど」

 

情事の時に家族の話題を出すなんて清隆君は何を考えているのだろうか、まさか

 

「……わざと見せられたなら、あなたを殴るし兄さんに説明するときに付き合ってもらうけど」

「そ、そうか……いや、見せないんだが」

 

 情事を家族に見られるなど、冗談抜きで責任を取ってもらわなければならない。首根っこ捕まえても、彼を兄と両親に紹介しなくてはならない。

 そういう意図があっての言葉かと思って、期待を込めて清隆君を見る。

 何故か彼は焦ったように否定した。普段とは違って一瞬とはいえ本気で焦っているが、責任を負うことを恐れてはいない、当てが外れたというか思っていたのとは違うという色だ。

 何を想定していたのか解らない。ポーカーフェイスに戻った、彼の顔色からこれ以上読むのは不可能だ。

 でも、責任を恐れていないのなら仕方ない、少し残念だけど、ここは引こう。

 

「なら、いいでしょう。こんなときに兄さんのことを言うなんて呆れるわ」

 

そういえば、兄さんのことを思考の隅でも考えたのは久しぶりだ。

あれだけ私の頭を占めていた兄さんのことも最近考えない。考えるとしたら、兄さんと清隆君と仲が良いと喜びを抱いたときだ。

 

「あなたが兄さんに挨拶でもするかと思ったけど」

 

 清隆君ならあっさりと兄さんは受け入れるだろう。将来を考えて兄さんと清隆君と仲が良いことがプラスになると、心を満たされて呟く。

 

 料理をしていても清隆君に食べさせたらと考えながら作るのは楽しい。兄さんの妹として完璧にと切迫した思いを抱いて、どこか苦しかった頃とは違う。

 勉強も料理も掃除も日々の生活に張りが出て、最近楽しくなり、全ての技量の力量さえあがってしまった。

 兄を尊敬しているが、目標としなくなったことで、私は自分が成長しなくなるか衰えると思っていたのだが、逆に自分でわかるほど成長している。

 ひょっとしたら兄はそれがわかっていたから、自分から遠ざけようとしたのだろうか。

 清隆君と兄は自己愛型で、私は他者愛型だったのだと今ならわかる。

 誰かに復讐しようとすれば、二人とも他を一時的に無視したり忘れてあっさりするだろうけど、私は周りを全部忘れて、復讐に臨んでいる自分をイメージ出来ない。

 どちらが優れているかではない。方向性が違うだけだ。

 真逆の方向に行こうと足掻いている妹を、兄は心配してくれたんだと今なら理解できた。

「あ…あっ、また、大きくなってぇ」

 

 兄さんよりも今は此方の方が大事だ。

 呼吸さえ苦しくなるほどお腹を圧迫されて、嗜虐的な色を目に浮かべた清隆君を見ると、ただでさえ力が入らない全身の力が抜ける。

 どんな風に犯されるんだろうと、何となく櫛田さんのほうに目を向ける――向けてしまった。

 

「~~っ!!」

 

 自身の失策に全身の血の気が引いていく。

 

「鈴音を犯しているときは、桔梗が見る番になるだけだ。だったな。……すまないな。自分の言葉を忘れていた」

「ひぁぁっ!ちがっ、まってぇ!」

 

 立ち上がりながら言われて、子宮を押し上げられながら半狂乱で喘ぎもだえる。

 ぽろぽろと涙を流しながら、穏やかに眠りについている櫛田さんに心中で謝り続けながら、清隆君にしがみ付く。

 清隆君がゆっくりと足を踏み出す。振動に被虐の快感に悶えながら近づいていく櫛田さんを見つめ続けた。




 綾小路君、お兄さんに絡めていじめようと思ったのに、堀北さんが成長していたために不発に終わりました。なので違う方法でいじめます。
 ある意味、最悪のタイミングで櫛田さんは起こされます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑦

ロワクタさん、六道仙人さん、唯依さん、Ma-sanさん評価付けありがとうございます。
後半櫛田さんが偏見に満ちた意見を漏らしていますが、あくまで櫛田さんの意見です。



 どさりと鈴音の身体を桔梗の上に覆うように置く。

 ただ、先程とは向きを変えて、鈴音の顔の前に桔梗の秘所、桔梗の顔の前に鈴音の秘所とした。

 

「かはあっ……ああっ……はあぅっ……お、お願い、一度抜いてぇ」

「駄目だ」

 

 ここまで散々犯され続け未だに秘所に逸物を入れている鈴音は、息も絶え絶えになっている。

 長い黒髪が張り付いた汗だくの身体、内腿には大量の粘液が流れた筋が白く残り、うつ伏せの姿勢になったことで新たな精液が流れ落ち、桔梗の愛らしい顔に垂れる。

 

「あ、ああっ……こ、こんな、格好、もう、無理……な、なにするの!?」

 

 鞄から新しいローターを取り出す。

 桔梗用と判りやすくするために、青みを帯びた紫色――桔梗色の小型ローターを、鈴音の目の前にやり彼女が息を飲み何をするのか理解したことに満足する。

 そのまま、桔梗の肉芽の皮を剥き、陰核を露出させ、陰核をローターで包み込み、両面ギザギザケーブルタイで固定しようとする。

 

「駄目ぇ、それは、だめ、そんなの、ひどい、だめぇぇぇ」

 

 鈴音が目の前で行われる行為を止めようとするが、身体に力は入らず、叫ぶことも出来ない。悲しげに呻くだけだ。

そのまま固定を続ける内に陰毛が邪魔になってきた。

 

「邪魔だな。剃るか」

 

綺麗に整えられた、桔梗の髪の毛と同じ色の陰毛を撫でながら呟く。しゃりしゃりとした手触りが何とも言えない心地よさ。

五枚刃カミソリもシェーピングクリームも軟膏も用意している。綺麗に剃れるだろう。

 

「だ、駄目よ。な、なにをいって、剃るなんてぇ、そんなことしてなんにっ……かはあっ」

 

 血相を変えた鈴音を一突きすると、快楽の呻き声を出して沈黙する。

 鈴音の秘所から溢れ出た愛液が、内腿を伝わってしたたり落ちていくのがわかった。女は感じてくると、その体を支えられなくなる。鈴音はもう、ひじですら上体を支えきれず、何とか桔梗の体を避けて、官能を肩で受け止めていた。

 鈴音を無力化したことに満足して、ケーブルタイを締めるために絡み付く陰毛を避けている時、腕に重みが加わった。

 

「なんのつもりだ」

 

鞄に伸ばした腕に、添えられるように置かれた鈴音の手に手を止めて、声を低くする。力が入らないが、止めているつもりなのは解る。

ギュっと目を瞑り、口を開くと喘いでしまうため口を閉じ、止めてと首をふるふると横に振り、力を振り絞って剃毛をやめさせようとする姿は、とても愛らしくそそる。

 半分冗談だったんだが、こんなに可愛らしい反応をされたのなら迷ってしまう。

 出会った頃には想像も出来ない愛らしさ。出会った頃、鈴音に五枚刃髭剃りを見せて、汚物を見るような目で凄まれた時とは雲泥の差だ。

 鞄の中の五枚刃髭剃りを見る。

 ――剃ろう。

 

 意趣返しではなく、二人の可愛らしい姿を見るために剃ることを決意した。同世代の異性を剃るのは初めてではない。

 

「なんのつもりかと聞いているんだかな?」

「……っ。ひ、ひう……あ、あうう……」

 

 冷たい目で睨みながら逸物に力を入れると、くたりと力を抜いて男の劣情を受け入れる構えになる。

 犯されながらオレに睨まれると、自然とこうなるように仕込んだ甲斐があった。

 鈴音の身体は、どうしようもなく屈服している。

 満足して、桔梗の陰毛を再度わしゃわしゃと鈴音の目の前で弄る。

 

「あっ……だ、駄目ぇ」

 

 鈴音は身体は屈服しながらも、非道な行為に対し奮起して抗う。

 ぽたりぽたりと涙を流しながら首を振り、腕から手を離さない鈴音に、劣情が燃え盛る。

 心を落ち着かせる為、瞼をゆっくりと閉じて、深く大きく深呼吸する。

 そして、息を吐き出す際、今までこういう時に答えない鈴音をいじめた溜息をこれ見よがしにする。

 溜息の意味を正確に理解した鈴音は、怯えながらも手を離さない。

 そんな反応をするからいじめるんだと、我ながらゲスな想いを抱く。

 

「どうやら、最近優しくしすぎたようだ。何度も訊ねたのに答えずに、子供の我儘のように駄目とだけとはな。在り来たりだが身体に教えるとするか」

 

 鈴音の髪をゆったりと撫でて、あごを手でくいと上げる。

 

「や、やぁ、やぁっ、止めっ、止めてぇ」

 

 迫り来るサディスト行為に、ぽろりと涙を流して震える鈴音。このままでは桔梗は、剃られてしまう。

 女の翳りを剃りとるのは、止めてくれと懇願してくる。

 秘所の毛を剃られのは、仮令他人でも流石に受け入れられないようだ。

 自分も剃られると知ったときが楽しみで仕方ない。

 

「そんなに、毛を剃るのは嫌か」

 

 こくりと頷く。

 

「解った。なら、お前が言う通りにすれば剃らない」

 

 快楽でぱんぱんに張り詰めた乳房を弄る。

 まだ硬い芯が残っているが、柔らかく手の中で形を変えるのを楽しみながら鈴音を責める。

 

「言ったはずだな。鈴音を犯しているときは、桔梗が見る番だと」

「はい……」

 

 腰を痙攣させ、手でベッドのシーツを強く掴んでいる鈴音にのしかかりながら目を見て話すと素直に頷く。

 法悦に浸っている証だ。この状態なら大抵のことを恥ずかしながら受け入れる。

 

「だから桔梗を起こしてやるんだ。あれだけ鈴音が良い声で鳴いて、顔には鈴音のまんこから垂れた液体を被って臭いだろうに――」

 

 あまりの言い草に濡れた目で睨みながら涙をこぼす。

 

「――まだ、起きないからな。だから、二つほど考えた」

 

 揺するか呼びかけて起こせよ。と睨んでくる両方とも――体力消耗した上に逸物を入れられているから――自分では出来ない鈴音。

 

「――目覚まし代わりにこれを使うか」

 

 可愛らしいお姫様に刺激をプレゼントしようか。と鈴音にオレが考えていると思わせるように嗜虐的に目を細める。

 ビクリと震える鈴音に見せつけるように、手に持ったスイッチをふる。

 

「ま、まってぇ、お願い、待ってぇ、そ、そんなところをローターでなんて、櫛田さんが壊れちゃう」

 

 皮を剥いた陰核に直接の刺激。陰核にはローターを当てていなかった鈴音だからこそ想像して怯える。蒼白の顔で、必死に懇願してくる。

 狙い通りの姿に口角をあげたくなる。

 

「なら、もう一つだ」

「もう一つ?」

「お前が桔梗を起こすんだ。桔梗のまんこを舐めて綺麗にして刺激してやれ。刺激してやれば起きだろう。オレのモノを舐めている時のように、優しく丁寧に舐めてやれよ」

「……え?そ、そんな、ど、同性の何て、他の人の性器なんて、嫌よ……」

 

 命令すると、桔梗の白濁した秘所をみて目を剥いて絶句してから、食って掛かる鈴音。

 オレの逸物をあれだけ熱心に舐めたのに、他人は出来ない姿は、男心を刺激され逸物がいきり立つ。

 

「ひああっ!」

 

 子宮を押し出すように突き、舌を口から垂れさせる。

 どうすればどう反応するか、鈴音の身体を知り抜いているオレには容易い。

 

「こちらを選んだ場合、もし、お前が舐め終わったときに――」

 

 くちゅりと桔梗の秘所を撫でる。よほど疲れていたのだろう、このくらいの刺激では目覚める気配さえない。

 指で桔梗の秘所から、少し固まってゼラチンのようになった白濁液を鈴音の舌に擦り付ける。

 

「あっ……え、おぁ」

 

 若干ざらついた生暖かく湿った舌の感触を堪能しながら、白濁で舌を白くする。

 こんなことをされても、逸物を子宮口に押し当てられた鈴音は抵抗しようともしない。

 たらたらと、唾液を三人の体液が染みたベッドカバーにたらす。

 

「桔梗のまんこにコレが残っているか少しでも飲みこまなかったら――」

「あっ……あぁっ」

 

 怯えて舌を口に戻すこともできない鈴音の心の底に、響かせるように鷹揚に話す。

 

「お前らのまんこから毛を全部剃る」

「………………」

 

 目を剥いて凝固剤を流し込まれたように固まる鈴音。

 手入れではなく性行為の一環で陰毛を剃るなど、育ちの良さそうな彼女には頭の片隅にも浮かばず、桔梗との勉強にもなかったことだ。

 それを自分だけでなく桔梗もされてしまう。

「で、どっちにする?ローターか舐めるか」

「………………」

 

 桔梗の秘所を舐めて失敗した場合、そんな辱しめを二人ともされるかもしれないことをするか、ローターの刺激で泣き叫ぶ桔梗を見るか。

鈴音の表情は、苦悩という表情の代名詞としたいくらいだ。

 それでも美しい彼女はそそる。その表情が見たかった。

 のだが、少し悩みすぎている。

 

「何か言ったらどうだ?黙ったままなら、ローターで起こしたあとに剃るぞ」

「……ほ、本気、なの?い、いくらなんでも」

「今までで、解っているだろう。オレはどんなことにも責任をもって、本気で取り込んでいたことが」

「…………全力は、尽くさないし、尽くそうともしないけどね……」

「その通りだ」

 

 この状況で言い返してくるだけの気概には感心する。

 

「ちょ、止めっ、さわら、ないで」

「生えかけだなお前のココは、これなら手入れをする必要もないだろう。生えるまで随分時間がかかったんじゃないのか」

「………………」

 

 薄いところもあるが、股間の前から後ろまで生え揃って、手入れをして綺麗な形を作って、ふっくらとしたやや大きめな陰唇を覆い隠している桔梗と違い。

 恥丘の上だけ、それも三回も摘めばなくなってしまいそうな鈴音の陰毛を、撫で付けるように撫で回す。

 

「でも、失敗したら今日でお別れだ。さて、次生えてくるまでどれだけかかるのか」

「うぅ………………」

 

 荒い息をつきながら涙を流しながらジト目でオレを見るだけになった鈴音。

 少し強引だが、彼女の意思をオレなりに理解することにした。

 

「黙りこんだままか。なら、両方ともするとしよう」

 

 仕方なく、手にローターと五枚刃髭剃りを持つ。どんな理由があっても、黙りこんだのは変わりない。

 キラリと光る髭剃りの刃の光に青ざめる鈴音。

 

「ま、待って、待ちなさい。そんなのダメっ………」

「……舐めて綺麗にして桔梗を起こしたなら、剃らないし、ローターもなしだ」

「―――っ」

 

 嫌だとふるふると涙を流しながら首をふる鈴音の姿に、尽きない性欲がさらに高まる。

 ゆっくりと桔梗の秘所に鈴音の顔を近づけて、桔梗の陰核にローターを添える。

 

「舐めて綺麗にするか、ローターかどうする?」

「……」

「返事は?」

「ひっく……わか、り、ました……なめ、ます」

 

 涙目で命令に従う鈴音を目の当たりにして、ひどく心がざわついた。

 犯されために桔梗の赤く充血した秘所に、鈴音のピンクの舌が近づいて、ペロリと舐める。

 

「お、女の……ちゅっ、人の……なんてぇ……ちゅっ」

 

 あまりの恥辱に体を震わせて咽び泣く鈴音は、本当に可愛い。

 言葉に出来ないという意味を思い知った。

 

「いい答えと動きだ。制限時間は十五分のところを二十分にしてやる」

 

つい優しく制限時間制度を追加していじめてしまう。鈴音は絶望の涕泣をもらしながら、桔梗の秘所にこびりついた白濁液を舐める舌の動きを加速させた。

 

 さて、愛液が空気に触れてかき回すと白くなることに何時鈴音は気づくかな。それとも、気づかないままかな。

 どちらにしても力尽きるか時間を過ぎて剃るけど。

 剃毛の趣味はないはずだったが、二人がどう反応するかを考えただけで、胸がドキドキと高鳴るのを感じた。

 自身がサディストだと理解しただけで、こんなに酷いことをしても爽快な気分になっしまうな。

 

 

 

 夢をみているのだと、私は理解した。意識があるままに見る夢ってあるんだと驚きながら夢に浸る。

 私は、『特別』に強く憧れていた。その為に、誰もに認めてもらいたい、誰よりも上になるナニかが欲しかった。

 でも、勉強でもスポーツでも私は上位にはなれても一番に成れない。

 だから、誰よりも尊敬されて信頼される『特別』になって証である『秘密』を求め続けた。

 そのために必死に信頼される人物の仮面を作って被り続けた。もし、家族から仮面を被っていると話されたらと思うと、家族の前でも仮面を被るしかなかった。 

 心に莫大なストレスを抱えたまま。

 

 結果、私は一度周囲全てから拒絶された。笑ってしまうことにあれだけ私が努力して優しくしたんだから、ある程度の悪口をブログに叩いても誰か一人くらい助けてくれると信じていた。我ながら甘かった。

その甘さは変わらず、新しい生活を始めたここでも全てから拒絶されかけて、清隆くんに助けられた。助けてくれたんだ、ずっと願い続けて何時しか諦めていたのに、助けてくれて抱いてもらえた。

 今回で、私は謀略とか策略には向いてないことと、手段が目的に変わっていたことを痛感した。

 いや、前者は薄々解っていたのだ。だから、最初のころ切れ者の側面を見せた清隆くんに近づいて、彼と交流した。

 そして、彼が私の本性を知っても負の想いを抱いてないと理解できたときから、思い返せば彼に夢中だった。

 『特別』になるために人気者になり、証しとして他者の秘密を求めていた時の私はその事を解っていなかった。

 いや、解ってて気づかないように全力を尽くしていた。

 

 当時の私のスタンスからしたら、恋愛はNGだから距離を置いていたのだとつい最近気づいた。私は自分の人生で、ここまで誰かに焦がれるなんて想像もしてなかった。

 私の本性を知っても態度を変えず、裏で動いてDクラスを導き、私の策の悉くを潰して、私と協力関係を結んで、止めに私を救ってくれた清隆くんは、私にとって今まで見たことがない『特別』になった。

 私が抱かれた一番の理由はそれだった。堀北さんに抱いていた対抗心なんてスパイスでしかない。

 そして、抱かれた結果は控えめに言って最高だった。

 あの清隆くんが私を抱いて、私の身体に夢中になって気持ち良くなってくれているだけで、今までの優越感など比べものにならない優越感が私を満たした。

 いや、優越感じゃない。初めてこんな言葉に出来ない想いに満たされた。今までずっと欠けていた自分の何かが埋まった。

 私は『特別』になった。

 

 つくづく私は手段だけしか見ていなかった。人気者なんて『特別』になるための手段だったのに、拘泥して人気者になることだけしか見ていなかった。

 

 清隆くんに抱かれて『特別』になって冷静になった今なら解る。

 あのまま人気者を続けていたら私は破滅していた。

 大学まではどうにかなるだろう。

 社会人の最初の方もなんとかなるかもしれない。

 でもそれ以降は?

 25になったのなら、周りに紹介できる恋人の一人くらいは要るだろう。

 私の容姿と表向きの性格と能力で、そんな相手も居ないと誰も信用しない。

 性格が良くて、仕事もかなり出来て、家事万能で、美人の二十代後半の処女。

 

 地雷だ間違いなく地雷。私から見ても引くというか、今まで何してたのか裏に何があるか疑問で恐い。

 

 私がそうなる可能性が高かったことに泣きたくなる。

 恋人を作ったとしても問題は多い。

 恋人が出来た時の人間関係に与える影響を考えたら、遊び人か、普段の人間関係とは関係してない相手だろう。

 遊び人?私の信用を捨てるのと同義だ。まずない。

 じゃあ後者なら?周りに紹介できるそれなり以上の男と恋人になればどうなる?

 表向きの性格で、完璧に恋人役をする自信はある。でもその場合、私の溜まるストレスは尋常ではないだろう。

 何で解消すれば良いんだ。

 日記?スマホのメモ? 物証を残してどうするんだ、私。

 誰もいないところで愚痴る? 恋人が居てプライベートをどうやって保てば良いんだろう。表向きの私に執着しない相手はまずない。そういうキャラクターを作ったし、作ってしまうだろう。私だし。

 教会にでも懺悔しに行く?神父も人間なんだ。あり得ない。

 

 ――駄目だ。二ヶ月も持たずに素の性格がバレてしまうか、半年経たず私がストレスで壊れる。

 

 恋人は別れる時に、私のことを周りにバラして別れるだろう。中学であっという間に私の悪評が広まったように、広まる。

 人間関係の崩壊再び。

 恋人がバラさず別れるような聖人でも同じだ。

 そんな良い相手と別れることがマイナスになる。

 清隆くんにアドバイスもらって、巧く平田君と別れた軽井沢さん――処女だけじゃなくファーストキスを平田くんじゃなく、清隆くんに捧げるなんて、よく解ってるピュアビッチな人、今日来る前に調べて堀北さんと三人で話し合い今は友人――とは、状況が違いすぎる。無理だ。

 

 じゃあ、龍園見たいに裏の私を知ってる相手なら?

 そもそも裏の私は素の私じゃない。表の私は好きだけど裏の私は嫌いだったんだ私は。今は、両方とも嫌いだけど。

 そんな私を見て付き合ってくる相手は、ビジネスライクなら相手できるけど深い関係は無理だ。

 龍園や清隆くん見たいな悪党を知ったからこそわかる。私はああはなれないし出来ない。秀才であっても化物にはなれない。

 リーダーも軍師も無理。

 誰かの補佐やバックアップをする時に能力を発揮するタイプだ、私は。

 だから、策謀を無理してする裏の私は、龍園見たいな奴には、良いように使われて使い捨てられるだけだ。

 そもそも龍園みたいな奴と付き合ってもストレスが溜まるだけ、間違いなく壊れる。

 だから、これも無理。

 割り切って、男は自分を飾るものでしかないとして、常に二股、三股かけるようにすれば?

 ある種の女性からは支持されるだろう。開放的だとか。

 

 ――泥沼から回避するのに崖から飛び降りてどうするんだ、私。

 

 素の私は補佐タイプ。表向きの私の性格でも、複数を相手にしてもそこそこできるだろう。

 つまり、補佐される相手からしてみれば自分だけ補佐して欲しくなる。複数の男だけで奪い合うだけなら良いけど、間違いなく私にまで火種が飛ぶ。

 ……駄目だ。想像するのが恐い。最悪の最悪まで行くかもしれない。

 そもそも、そんなことしてマトモな人間関係の人気者なんて無理。

 なのに、私は追い詰められると、やりかねなかった辺り救えない。

 

 その上、三十そこそこ越えたら、人気者のスタンスを続けるには、結婚と出産が必須だろう。結婚も子育てもしていない三十路越えのぱっと見完璧な美女に、誰が秘密を漏らすと言うのか。少なくとも距離を置いて遠目から見る、私ならそうする。

 結婚した相手が、本性知って受け入れて、私のやり方を応援しなくても許容してくれる奇跡のような相手。

 つまり、清隆くんみたいな人の可能性はまず無い。

 外面よく結婚しても何時かバレるか、私に限界が来る。そうすると、中学と半月前の焼き直しだ。相手によっては命の危険さえ起こるだろう。

 

 ――つまり、私が将来も人気者であり続けるには

 

 表でも裏でもない素の私を理解して、ストレス解消のための愚痴を聞いても表に出さずに受け入れてくれる上に、周りに紹介できるだけの見映えもよくて収入があって、人間関係を壊さないだけの聡明さのある安定した性格をして、いざとなったら助けてくれる能力があるリーダーか軍師タイプの恋人か夫。

が、必要と………。

 

 馬鹿じゃないかな?

 どう考えても破滅していたよね私。自覚出来たからこそ寒気がする。

 清隆くんくらいしかいないよ。私の人生で会った人のなかでも。

一生独身も考えたけど、二の足を踏む。

最近独身で一生を過ごすと言う人が多いが、実際に一生を独身で過ごす人が多い世代が人生を全うしてない今日、結論を出すのは早計だ。

というか清隆くんみたいな人と私は結婚したい。

 

「高校生になったのなら、相手の人格とか将来どうなるかある程度分かるから、男を探すなら高校で探しなさい。少なくともその後出会う人から探すより良いわよ」と教えてくれてありがとうお母さん。色々あったけど、卒業したら色々話し合おうね。

 

 理解者無くては、三十までは無理だと結論するしかない私の今までの生き方は。

 理解者足りうる清隆くんという怪物と出会い。触れあい、犯され、嬲られたことで、よく解った。

 

 だから、今の私は人気者に拘泥していない。むしろ鬱陶しいのだ。

 彼の側にいて、彼にとっての『特別』になったままなら、私は私のまま生活することが出来るんじゃないかと夢想している。

 清隆くんの『特別』というだけで、満たされる私は、偽りの笑顔、偽りの優しさ、偽りの関係をする必要がない。

 少しずつ偽りの関係を精算していけば良い……特定の男が出来たなら人気なんて落ちるのは自明の理だ。私は巧くやれる自信がある。

 私は『特別』になったのだから、これからの人生は楽しく生きられる、今までよりもずっと。

 

 ただ、誤算があった。

 一つは、清隆くんが私の情報収集能力を高く評価して、彼の側に私を置いている大きな割合を占めていることだ。

 もし、ここで今の優越感と同時にストレスが溜まる人気者の仮面を外せば、清隆くんにとって私の価値は極論身体だけだ。

 認められない。決して認められない。

 私は私として清隆くんの傍に居たい。ただの肉欲解消手段としてなんて想像することさえ耐えられない。

 それに、飽きられたときが怖すぎる……良くて、ハニトラ要員。悪ければ、私を抱かせて録音か録画でもして相手ごと葬られる。清隆くんは躊躇わないだろう。

 清隆くんのような人の傍に居るならば、私の価値を維持するだけでは駄目だ、これまで以上に高めなくてはならない。

 だから、仮面を外せないし嫌な相手でも仲良くしなくてはならない。

 そして情報を収集して、生徒の性格や特徴を把握して、対人能力が低い清隆くんをサポートしていく。

 清隆くんの指示で、仲良くしてやっているなら大丈夫。耐えられるというか、清隆くんのためだと考えると心の中の黒いドロドロが少なくなる。

 ――ぶっちゃけ、大切な人にだけ素を見せて、有象無象には仮面の良い顔するってシチュはたまらない。

 だから、一つ目は苦しいし大変だけど楽しくもあるからなんとかなる。

 

 二つ目は、私以外の女の存在。今は、堀北さんと軽井沢さんと私の三人。つまり清隆くんは三股かけてる最悪なクズだけど、もうそれはいい。

 何でよりによってウチのクラスでトップクラスのレベルの奴らなんだとか。

 堀北さんすらっとしたスレンダーであのアンダーでDカップとかロケットふざけんなだとか。

 軽井沢さんギャルっぽく遊んで見えるのにピュアとかギャップがずるいだろうとか。

 二人とも性知識お子様で止まっていて、普通のはずの私がエロく見えるとかどういうことだとか。

 色々あるけど、不安だけど、まあ、いいのだ。ここまでは。

 

 ここからだ、私が収集した情報からしたら、ほかにも怪しい女はたくさん居る。

 坂柳さんに一之瀬さんに椎名さんはガチだ。後は伊吹さんは怪しいけど安牌っぽい、長谷部さんと佐倉さんは互いに友情の枷があるけどそれでも危ない。

 私の見るところ後者の三人はまあ大丈夫だ、外から突かない限りは爆発しない。問題は前者の三人だ、放って置いたら、確実に爆発する。というか導火線に火がついている気がする。

 堀北さんと軽井沢さんといい、どいつもこいつも恋愛感覚がしっかりしてるから下手に手を出したら、遊びじゃすまない連中だ。女として私と同格かそれ以上の娘達。

 いや、本当に、とりあえずイケメンだから付き合ってみるか、なんて娘が一人も居ないとかどういうことなんだろう。下手したら全員初恋が清隆くんなんて可能性が高い。

 この年で初恋とか(私もだけど)碌な相手が居なかったという訳じゃない。しっかりしているというより重いのだ。恋愛感が重くなければそんな風にはならない。

 下手したら高校の恋愛なのに、一生モノの付き合いを考えているかもしれない。

 何て重い娘たちなんだろうか、どうして清隆くんなんだ、見る目ありすぎるだろう。

 清隆くんが板ばさみになろうが、ちゃんと相手をしてくれるなら知ったことじゃないけど、どいつもこいつも敵とするにはあまりに強大すぎる。同学年でこれはと思っている連中ばっかりだ。

 少なくとも分かり合って仲良くなんてこと出来ないだろう。おそらく、いや、きっと。

 頭が痛い。堀北さんと軽井沢さんとは信じられないが、いろいろと分かり合って仲良くなってしまったからもっと頭が痛い。

 

「………んっ………」

 

 アソコが痒くなるような刺激があったような気がする。夢でこんな風に思うなんて私もエッチにされてしまった。清隆くんにされてしまった。

 

 三つ目の、いや最後にして最大の問題。じゃなくてすべての問題はこいつに収束されている。

 私の生活の――というより私の人生において、その存在を徐々に巨大化させているひとりの人間。

 綾小路清隆くんだ。

 一言で言って化物。能力において、大人顔負けというか勝てる人居るのと聞きたくなる。なのに、世間知らずというか人間慣れしていない。なのに人間心理を読むのには長けていて、人間ではなくて道具を動かしているように動かすとか常軌を逸している。他人に無関心なのはそのせいだろう。

 なのに、義理だけは守ってくれるから、傍に居て安心できる。それすらも計算かもしれないが、そういう計算高い優しさのほうが私、いや私たち三人(多分)には心地よい。

 だから、彼を探ろうとは思わない。

 虎穴に入らずんば虎子を得ずとか言うけど、何が出てくるか解らないし、常に生き残り勝ち残る相手の傍にいれるのだ。獣でさえ腹を見せて転がるくらいの知恵はある。そして、私たちは馬鹿じゃない。

 彼が凡庸の仮面をかぶるというならばそれに付き合い秘密にするまでだ。

 

 そして、それだけの『秘密』の共感だけならば私達三人は仲良くなっていない。

 

「あっ……」

 

 また、刺激が走る。夢の中なのに身体が疼いて仕方ない。清隆くんに抱かれてそういう身体にされたというか、自分の身体の欲求を持て余すことになるとは思ってなかった。

 する前はあんなに怖かったし、した後もまだ怖いというか恥ずかしいけど、なんというか自分の身体の取り回しがいろいろと変化したのがわかるっていうか、すごく気持ちいい身体になったのが嬉しいっていうか。

 開花したっていうのだろうこういうのは、堀北さんも軽井沢さんもそうなのだろう。

 何というか男に良い刺激をされると、女の身体はこうも変わるんだなと思う。

 まさかこれほど急激に変わるとは想像もしていなかったから、私は動揺して腰を抜かしそうになる。いろいろな意味で。

 最初から今までずっとイニシアチブを握られ、獣のように犯され嬲られて、ついさっきも友人――いや盟友が辱められているのをまどろみながら聴かされた後、アソコからペニスを抜かれて気絶するとか、アレすぎる。

 

 私達三人がいろいろと分かり合って仲良くなってしまったのはこれが原因だろう。間違い無いのは、これのおかげでわたしたちはお互いを分かり合えることが出来たということだ。おなじ悩みを持つものとして。

 清隆くんが満足するまで、何時間も獣のようにぶっ続けで犯されながら付き合わされて死にかける女の悩みを。

 つまりあれだよ。

 敵の敵は味方。

 ひょっとしたら坂柳さん達とも仲良くなるかも知れないという予感がするほど、清隆くんはあっちでも化物だったということ。

 

「ひぅんっ」

 

 そして、認めなければならない。私は、今敏感な部分をいじられて起こされようとしていることを。

 そして、耳に聞こえる何かを舐めてコクリと飲み込む水音に混じって聞こえてくる啜り泣きは盟友の声だと。

 ――目を開けよう。

 鉛のように重かった体も少しはマシになった。

 盟友は今一人で抗っているから助けないといけない。

 

 私が耐えられる範囲のプレイでありますようにと祈りながら私は目覚めた。

 




なお、櫛田さんは自分は重くないと思っています。
次回はかなり間隔が空くと思います。

もし、良ければここが悪いとか、ここを何とかしたほうがいいとか感想を頂けたら幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑧(69)

lancer398さん、『ウル』さん、怠惰な奴さん、ゴレムさん評価付けありがとうございます。
高山流水さんいつも誤字修正ありがとうございます。

全般的にかなり駆け足になってしまったような気がします。



「はぁっ……えっ!?」

 

 気怠げな声と共に私は目覚めると、目の前の光景に思わず目を剥く。

 清隆くんのアレの形に盛り上がった白いお腹と何度も腰を打ち付けられて腫れたように真っ赤になったおしりは、衝撃的だけどまだ耐えられる。

 でも、真っ赤に充血した堀北さんのあそこは無理だ。

 頭上にさらされた盟友の女性器に、青筋を浮かべた赤黒いアレが打ち込まれ、盟友の女性器をぎちぎちと押し広げて、出血しそうなほど赤い粘膜が押し出されぶるぶると震えて、ぽたりぽたりと隙間から白濁液を垂れ流して私の顔に落としていく光景は耐えられない。

 充血して、性感神経を揺り起こされた膣が、どれほど気持ちよくなっているかわかるから、どれほど被征服感を駆り立てられるかわかるから。

そもそも、女の子のあそこを私はこんな風に見たことがない。

 

「あっ……あっ……ほ、ほりきた、さん……そんなっ」

 

 何か言おうと思っていたのに、私は目の前の女がどうしようもなく男に征服されてしまった光景から目を離せずに、ガチガチと歯を噛み鳴らして全身を震わせ、虚ろに呟くだけ。

 

「鈴音、そろそろ時間が半分過ぎるが、出来そうか?」

「ぅぅっ、んむっ、むむっ」

「返事がないな」

「ぅぅぅっ、むぁぁっ!んごぉおおぉおぉ!?う、動かないでって言ったあぉぁぉっ!」

「言葉は正確に使おうな鈴音。あまり動かないでと言われて動かないでいたんだ。なのに、お前から返事がないから仕方ないだろう」

 

 返事なんて無理に決まってるでしょう。あんたもう少し、自分のがどれだけでかいのか理解しなさいよ。後ろから犯されると冗談じゃなく目が霞んで口から飛び出そうになるのよ。それに、あんた堀北さんをどれだけ犯したの。声が掠れて限界じゃない。今すぐ止めてよ。

 そう言いたいのに、清隆くんのアレは所々こぶのようになっていて、それが性感スポットを同時に、それも異様な具合に責めたてるのを知っている私は、目の前で二回ずぷずぷと抽送されて堀北さんの子宮が盛り上がり、堀北さんが獣のようなよがり声をほとばしらせ、鮮烈な衝撃の様な快感に打ち震えるのを見るだけしか出来ない。

 

「桔梗も、まだ起きないしな。失敗だったかなこれは」

「あ゛あ゛ぁーッ!んむぅ、んあっ」

 

 びくりと名前を呼ばれて子鹿のように震える。起きる前の決意はどこかにいってしまった。ぐりぐりと子宮を押し込まれ泣き叫ぶ堀北さんを助けるなんて考えられなくなる。

二回で動かすのを止めても堀北さんのあそこは、じゅくじゅくと大慌てで愛液を分泌し、ピチャピチャと結合部の下にある顔に溢れ出た白濁した体液を浴びる。

 清隆くんのたまらないオスの匂いに混ざるメスの不快な匂いを嗅ぎながら、怯えて体が震える。

 

「何だ、起きてるじゃないか」

「ひっ」

 

 頭を掴まれて持ち上げられて結合部にさらに近づけられる。振りほどこうとしても犯されタガが外れてしまった四肢はただされるがままだ。

 女の子の髪を掴むなとかなにか言おうとも思えない。ドアップにされた結合部はそれだけの衝撃を視覚と嗅覚と聴覚に与える。

 

「いつから起きてたんだ。鈴音がまんこを舐めている甲斐があったな」

「ふぇっ」

 

 思わず視線を股に向ける。堀北さんのフルフルと揺れる重力に引かれて釣り鐘のようになった形の良い乳房の間に、確かに堀北さんが私のあそこを舐めている姿がある。

 

「ふぁぁっ」

 

 視認すると同時に衝撃が私を襲い、身体がのけ反る。今まで貯められた刺激が一気に襲い掛かってきた。

 身体をくねらせて、堀北さんの舌から逃れようとして腰を泳がせる。しかし驚いたことに堀北さんは私の股間に吸い付いて離れない。清隆くんも特に堀北さんの頭を押さえつけても居ないのに。

 

「んっ、んんっ、むっ、じゅっ」

 

 ぴったりと口をつけて懸命に啜る。啜り泣きながら懸命に啜る。清隆くんのそれと比べてあまりに拙くても懸命に啜る。

 ふつふつと怒りが湧き起こる。

 

「こ、このド変態!」

 

 自分に言われたかと、びくりと身体を震わせる堀北さんにかまわず続ける。

 

「清隆くん!あんた、堀北さんに何したのよ!?こんなこと、堀北さんが自分からする訳ない。どんな風に脅したのよこのサディスト」

 

 そう全ては、この無表情ドSのせいに決まっているのだ。

 同姓の性器を舐めるなんてこと私も堀北さんも出来るわけがない。

 

「いいや、鈴音が自分からしたんだ。なあ、鈴音」

「ぅっ……うぅ、ずっ」

 

 悲しげに呻きながらこくりと頷くとまた舐め始める。どう考えても脅迫されている姿だった。

 清隆くんもそれを理解したのだろう。無表情のまま一度軽く頷く。

 こんな時に、無表情無言をされると恐くて仕方ないから止めて欲しい。

 演技力のない堀北さんを切り捨てたのか、それとも私にどんな酷いことが待っているのかさえさっぱりわからないから、不安で仕方なくなる。

 涙を流しながら必死で啜る堀北さんみたいに、恥も外見もなく泣きたくなる。

 

「いや、大したことじゃないんだ。これを使おうとしたら色々あったたけだ」

 

 そう言いながら何かを取るために体を傾かせて、結合部を歪ませ、堀北さんの白いお腹も歪ませる鬼畜野郎。

 堀北さんは、汗まみれの全身をくねらせて、横隔膜が突きあげられて呼吸が妨害されて息苦しいと錯覚させるほどの圧迫感に悶える。もう、それしか出来ないのだ。と同じ女だからこそわかる。

 本当は泣き叫んで少しでも身体を楽にしようともがきたいのに、そんな力はないから、男の獣欲に曝されて受け止めることしか出来ない。

 そんな堀北さんに何かをしてあげたいのに、何かをしたら堀北さんが壊れてしまいそうで、何も出来ない私の目の前に清隆くんが桔梗色の物を見せた。

 

「ぇ?」

 

 変な声が出る。だって、それって、そんな、ここって、隔離された学校で

 

「自作のローターだ。お前らをもっと可愛く鳴かせてくれる。確認するか?」

「この、馬鹿っ!何考えっ!……っだめっ、堀北さんに当てないでぇ」

「んぅぅっ!」

「だ、大丈夫。堀北さん私が押さえとくから」

「ぅぅっ、ずっず……」

 

 止めなければ、結合部に当たるところだった。

 止めた清隆くんの腕越しにローターの震えが腕に伝わる。こんなものであそこを、刺激されたら、どうしようもない。安堵で力を抜いてすすり泣く堀北さんはされたんだ。

 

「ほ、堀北さんをこれで脅すなんて何考えてるのよ。これで私を起こしたくなければ舐めろとか言ったんでしょ。何考えてんのよあんたは!最低だよ、清隆くん!」

「ぅぅっ」

「え、違うの。堀北さん、なら何で――」

 

 清隆くんが視界の片隅に映ったものに手を伸ばしたものを見て絶句する。それって、髭剃り、何で、そんなの。

 

「少し違う。ローターで起こすか、桔梗の膣から白濁液を舐め取って起こせといったんだ。舐め取れなかったか吐き出したら、二人の陰毛を剃るというルールでな。そして、鈴音は舐める方を選んだだけのことだ」

 

 こいつは何を言っているんだろう。頭が耳から入った言葉の理解を脳が拒否する。

 

「ルールには制限時間がある。後約十分で終わりだ」

 

 どさりと私の身体がベッドに崩れ落ちる。堀北さんが必死で剃られまいとしゃくり上げながら啜る音が聞こえる。道理で何も喋らないはずだ。

 自分の膣に暖かい粘着質のモノがこびり付いている。それを舐めとるのに嘔吐きながら啜る堀北さんにはしゃべるなんて余裕はない。

 何が大したことないだ、耐えられないプレイだったじゃないか。

 こんなことをするやつは、相手のことを人間と思っていないに違いない。女の子だとは思っていないに違いない。相手を、ただのモノだと思っているに違いない

 と思いながら、プレイの範疇に含めている自分も含めて、どうしよう。どうすればいいんだろう。

 視界が涙で潤みだす。自分でも信じられない弱弱しい声で懇願する。

 

「止めてぇ、な、なんで、そんなことするのよぅ?」

「体を傷つけない限り好きにしていいんだろう。今、オレがお前らの身体でしたいことだからだ」

「そんな……ひ、人に見られたらどうするのよ。どうやって誤魔化せって」

「股を見せる何てどんな所だ」

「た、体育、体育の着替えのとき!どうしろっていうの!?」

「わざわざ同性の股を見るのか?」

「見ないよ!」

「……」

「見ないよ。見てないからね。で、でも、偶然見えることもあるよね。急に陰毛を剃った姿なんて、男の趣味に合わせていると思われるよ。皆そう思う。清隆くんが疑われるかもしれないんだよ」

「何でだ?」

「わ、私が親しくしてるから本当の意味で親しくしてるから、勘の良い子はもう気付いてるんだよ!」

「ほう」

 

 無表情で目を細めないでよ本当に。

 

「だ、だから剃らないで、私そんなの無理」

「これだけ綺麗にしてるのに桔梗は剃って無いのか?」

「剃ってるわけないでしょ!?カットならともかく、剃るわけ――っっ」

 

 死にたくなるほど恥ずかしいことを暴露してしまった。これも清隆くんが、無表情でいつもと視線の熱さ以外変わらないからだ。

 美少女二人裸にして、良いようにもてあそんでるくせに、無表情で声の抑揚も変えない男というのは正直どうしようもない。ずるずるとまずい方向に嵌ってしまう。

 

「うむぅぅっ」

「ほ、堀北さん」

「安心しろ。今回はカットなんかしない。端から端まで剃り上げて、赤子のようにつるつるにしてやる」

「だから、そ……そらない……でぇ」

 

 堀北さんの薄い陰毛を撫でつかせながら酷いことを言われる。そんなことをされても堀北さんは、ただただ舐めて苦しそうに飲み込む。私たち二人の尊厳を守るために。

 堀北さんがさらに私のあそこをなめる速さを速める姿を見て、満足げに清隆くんは少し目を細めた。

 ドSだ。何て奴なんだろう。今までよりもドSになっている気がする。

 

「剃るのは、鈴音がお前のまんこに着いているこれを舐めとらなかった時だ」

 

 戦慄して固まった私に、ねちゃあと堀北さんのあそこにこびりついた白濁液を見せる。間違いなく清隆くんの精液だ。臭いでわかる。あれ、でも。

 

「……愛液って空気に触れて掻き回したら白くなるよね」

「そうだな」

「うむぅ!!??そ、そうなの!!??」

 

 待って、待って欲しいんだけど、盟友。あんた、ひょっとして知らないまま約束したの?いくらド下手でも、あんたが舐めてるから少しくらい分泌してるんだよ、私。

 でも、堀北さんを責められるわけない、何時間も一人で責められ続けながら同性の性器を舐めさせられるなんていう恥辱を与えられながら最善を尽くそうとしている友人を責められるわけがない。

 知識は後で仲良く猥談して叩き込んでやる。だから今を考えないと、まずい、このままだと愛液が白くなっているのを見せて時間切れとか言って剃られる。

 抗うべきだ。たとえ泣き叫んでも意味はない、この畜生は言葉では同情的なことを言っても心の底では波紋ひとつ起こっていない。

 それでも何か言ってやらなければ収まらないと清隆くんを睨み付ける。

 顔を上げた堀北さんも睨み付けて口を開こうとしているからそれにあわせて。

 

 ぱあんっ

 

「……鈴音、サボるな。時間がないぞ、良いのか剃られても」

「あ゛!あ゛あ゛っ、むぐぅぅぅ!?……ぅっ、ぅっ……ちゅっ、ずずっ」

 

私のなけなしの勇気は、私のあそこから顔を離して文句言おうとした堀北さんを、おしりを引っぱたいたような音をたてるほどの思い切りの一突きの後ぺちゃりと私のあそこに沈めた清隆くんに消された。

 恐い。無表情で、声に抑揚なしで、眼にだけ欲望の色のある男に、こんなことをされて気概なんて保てない。

 堀北さんの反抗の意思を宿した睨んだ顔も、直ぐに被虐と被征服の快感に変わって、二度しゃくりあげると、私のあそこを舐め始めた。

 

「ひっ」

 

 目の前で子宮を突かれた白いお腹の膨らみが動いて、結合部からだらだらと白濁液を垂れ流して顔にかけられて悲鳴をあげる。

 清隆くんの臭いが頭の中に押し寄せてくる。

 

 清隆くんの精液のこの独特なにおいはなんなんだろう。

 一言でいえば「生臭い」だけで、嫌悪こそしても好きになることなんてありえない。

 なのに、嗅いだときに感じるのは決して嫌悪ではない。

 もわっと頭の中に充満して脳をじゅくじゅくに溶かしてしまうような毒々しさなのに、毒だとは思えない不思議なにおい。

 頭がボーッとして、普段ならバカらしくて恥ずかしくてとてもできないようなことまで、その臭いの中では「やってもいいか、やるべきこと」になってしまう。

 私の心と肉体を虜にして、感覚を麻痺させ、人間としてのあり方を壊してしまうものが『麻薬』なら、まさしく清隆くんの精液の臭いは私にとって『麻薬』だ。

 臭いに包まれていると、剃られるくらい大したことないよね。と心の中で――

 

「駄目ぇ!?」

 

 両手で顔を張る。駄目だ。何時もみたいに蕩けてる場合じゃない。

 剃られてたまるか。女の尊厳がかかっている。この歳でパイパンなんてあり得ない。

 産まれつきならまだ良い、でも、合宿のお陰で私が生えていることを知ってる人は何人もいる。もし、同級生に見られたら格好のゴシップだ、噂になる。しかもかなり偏向した悪い噂になる。何をしても私は『男にあそこを剃られた女』と呼ばれる、間違いない。

 

「いきなり叫んで顔を引っぱたくとは、なかなか豪快な目覚め方だが、大丈夫か」

 

 自分でも驚くような醜態を見せても清隆くんは何時も通りだ。それが私に冷静さを取り戻させる。

 清隆くんは、愛液の問いに答えた後、それがどうしたのか?とも聞いてこない。当たり前のように流している。

 つまり、このままだと流れるままに剃られる、と清隆くんとの付き合いから確信した。

 

「大丈夫。うん、大丈夫」

 

 でも、残り時間は少ない。このままだと、蒼くなって啜り続ける堀北さんと目を合わせる。

 ――そう、間に合わないんだね。決心を固めよう。

 

「清隆くん」

「ん?」

「今、私に出来ることで、何かして欲しいことないかな」

 

 経験上、何らかの条件の追加が必須。足掻こう。

 

「そうだな。鈴音の中で動きたいんだが、鈴音にあまり動かないでくれと言われて少ししか動けないんだ。それと長い間挿入し続けたから締め付けが弱くなってきたから少し物足りなくなってきてな」

 

 当たり前だよ、この畜生。バックで、あんたのを胎に入れられたまま、あそこを舐め続けて体液飲み込むとか拷問だよ。

もし、動かれたら意識が飛びかけて舐めるどころじゃない。

 

「決の穴に指でも入れようと思っていたんだが、桔梗が丁度いいときに目覚めてくれたら止めた。桔梗、お前が結合部を舐めて鈴音を刺激して気持ちよくさせてくれ。そうすれば鈴音はオレをいつものようにほしがって締め付ける」

「うぐぅぅっ!!?ずずっ、ちゅぅ、ごくっ」

 

 あまりの言い草に、ブチ切れながらも啜るのを止められずに呻く堀北さんを慰めたくなるが、それよりもこの畜生、今。

 

「……なんていったの?」

「鈴音に舐めてもらってるだけだとバランスが悪いだろう。お前も鈴音を舐めるんだ」

 

 同性のを舐める?え、何言ってるのかなこの畜生。あんたもクラスの女の子が話題にしているように平田くんに舐められることを想像してよ。あんた攻めで平田くん受けで確定したこと教えたらどんな気分になるのよ。

 

「っ、そ……そんなの、無理に決まって」

「制限時間を後十五分増やす」

「ぅっ……ううっ、あ、あんたって奴はぁ」

 

 悪魔と話している気分だった。つまりこう言う事だ。女の尊厳を守れる可能性に賭けて恥辱に耐え悪魔に魂を売るか、直ちに女の尊厳を売り飛ばすかだった。

 

「それとその場合だけは、愛液が白濁することを認めるからな。オレの精液じゃない限り条件を満たしたとして剃らない。判別は二人が舐めて味で判別しろ。もう味を覚えただろう」

「ど、どこまで、あんたって奴は、どこまでぇ」

 

 頭をかきむしりたくなるが耐える。もう、制限時間は五分しかない。このままだと愛液も込みにされてしまう。

もう一度堀北さんと目を合わせる

 ――無理だよね。解ってる。いや、悪いのは清隆くんだから謝らなくて良いよ。

 今私は、清隆くんの精液で発情して濡らしているのに。このままだと詰みだ。剃られる。

 

「念のために言っておくが、嘘をついたら永久脱毛にするからそのつもりで判別しろよ」

「うううっ」

「で、どうする?」

「……な、なめるよ。舐める……だから、お願い」

「お願いしているようには聞こえないんだが、何処を舐めるとも言わないのが、お前のお願いの仕方か?」

「お、お願いですから、ほ、堀北さんのを……な、なめさせてください」

 

私は魂を売った。

 

 

 

 

「ふぅっ……ああっ……あふっ」

 

 貪るような鈴音の吸い付きに桔梗はしゃくりあげる。発情して充血した粘膜は吸い取られる行為でも刺激されて多少は快楽を感じている。オレの精液が効いているのだろう。

 隠そうとしていてもオレの精液で発情していたのはお見通しだ。

 桔梗がまた1つオレの女になったことに満足して、腰を落とし桔梗の口の上に結合部をやる。ぽたりと白濁液が桔梗の口を襲う。

 

「な、なんて「くぅぅっっ!」堀北、さん……ううっ」

 

 体勢を変えたせいで、こらえきれずに叫んでしまったという感じの叫びが、なんとも逸物に心地よく響かせてくれる。いかにも悲痛でサディズムをくすぐる叫びをあげた鈴音を見て桔梗はコクりと唾を飲む。

 

「……やっ、やっぱり、無理っ、き、清隆くんのだけ、なめるから、近づけないで」

 

 それが精一杯の抵抗だったのだろう。強い口調で拒絶する。

 やれやれといった様子でこう宣告した。

 

「追加条件を断るつもりか。なら、それなりの対処をする」

 

 たった一言だが、それは桔梗に今自分が置かれている立場を理解させるのには十分な言葉だった。

 慇懃な言い方で遠回しでもあったが、要するにこういう事だ。

 桔梗に口答えする権利はない。命令だ、舐めろ。

 オレは特に凄むわけでもない。しかしオレから聳え立ち鈴音の中にある逸物は強大な威圧感を放ち、目の前の少女に無言の圧力をかける。

 

「う、あっ…ううっ、女のこの、なめる、なんてぇ」

 

 桔梗は犬がミルクをなめるように、鈴音のただれた秘所を舐め始めた。

 悲しいくらい心がこもらない義務だけの愛撫。矯正すべきだな。同じく啜るだけで桔梗を性的に責めない鈴音を含めて。

 

「一つ言っておくが」

 

 一気に話さずに区切りをつける。相手に今から話すことが重要だと意識させる。

 重い口調、女の象徴である二人の子宮の上を撫で付けることで、二人はマイナスの認識を持つ、どんな酷いことをされるのかと。

 

「ルールに負けて剃ることになったとして、どちらから先にすると思うんだ?」

 

 ピタリと二人の動きが止まった。

 

「お前たちは制限時間延長という権利を得た。権利と義務は表裏一体だ。一人が剃られている時、もう一人にも見せる。だが、それだけでは足りない」

 

 やはり、父親のやり方は有効だな。普段なら、いや法悦に浸っている今でも噛み付いてくるだろうが、制限時間延長という救いを与えた後、同性の性器を舐めさせられている今は違う。

 前提も何もかも無視したオレの戯言を聞いてしまう。

 

「幸いなことに、今同時に相手のまんこを舐めているからな。わかりやすくこれで決めてしまおう」

 

 小鹿のように震え始めた二人を見ていると滾って仕方がないが耐える。

 

「先にイッた方を剃る。今淹れたままだと鈴音が不利だからな桔梗の胸を揉む」

「ふぁぁっ」

 

 発情して熱いくらいの桔梗の乳房に手をかけて優しく揉み始める。桔梗の快楽を呼び覚ますための優しい愛撫。

 まだ、動こうとしない二人にはもう一押しする必要があるな。

 

「もし二人ともイカなかったら追加のペナルティだ。相手をイかせるまで、このままの姿勢で剃る。先にイッたほうは相手がイクまで愛撫しながら毛を剃るつもりだ。だから、どちらでも良い。制限時間中にイかせるつもりで舐めろよ」

 

 言い終わる前に、二人が夢中で舐め始めた姿に満足して眺める。

 いざとなったら桔梗の子宮を押してそこから精液を出すつもりだったがその必要はなさそうだ。

 

 

 

 

「ん……ぴちゃ、ちゅるっ」

「んんっ……んっ、ぴちゅ……んぶっ」

 

 部屋に淫靡な水音が響き渡る。鈴音と桔梗が、互いの股間を責め合っている音だ。

 

「ほら、もう少ししっかりやれ」

「んぐうむぅっ……!」

「ぶふっ……!」

 

 逸物に力を入れて鈴音の頭を、手で桔梗の頭を、それぞれ相手の股間に押し付ける。息をするのも惜しむように相手の敏感な箇所を責める二人。

 あれだけ同性の性器を舐めるのを嫌がっていた二人がこうなるとは、ちょっとしたゲームの効き目は思っていた以上だった。

 

「んぐぅっ!んっ、ちゅぶっ、はふぅ……く、櫛田さんっ、本当に、いいのっ」

 

 鈴音が桔梗の小陰唇に手をかけて涙ながらに聞く。

 

「あふぅっ!い、いいよ。き、清隆くん、中に出したから、そうしないと……中に残っちゃうぅ!んっんんっ」

「そうだな、必死にやれよ。頑張らないと、あと十分ちょっとでつるつるになるからな。さて、どっちが先か」

 

 煽られて、さらに強く頭を股間に押されると鈴音は意を決したように桔梗の小陰唇を開き、塞がれていた膣口から愛液とともに噴出した精液を舐める。

 

「んっ!んんっ!お、多い……っ!ちゅぶっ、くちゅ、んんっ!ぴちゅ、ちゅぶぶっ、ぴちゅっ」

「あふぅっ……んっ、んんっっ……や、やっぱり、そこ、び、敏感っ……やっ……やめっ……やめないでぇ……私も」

 

 桔梗が涙目になりながらも静止の言葉を止め、鈴音の秘所を舐め、挿入されたことで盛り上がった粘膜を刺激する。

 

「ひあぅ!?あひぃっ!」

 

 犯され続けて充血しきった粘膜を舐められ、鈴音がさすがに声を漏らして仰け反る。

 

「そんなことをしていると間に合わなくなるが、いいのか」

「あ゛!?あ゛うぶぅっ!?」

 

 仰け反って口をお留守にしてしまった鈴音の膣を一突きして、鈴音の頭を再び桔梗の秘所に押し付ける。

 

「んっ!……ふぅっ……んぶぅ……ふぅっ、ちゅ、ちゅぅっ、じゅるるるっ、ぴじゅるっ、じゅぶるるるっ」

「ぷあっ!あっ、きゃふあっ!?」

 

 溢れ出した精液に顔を染められ、鈴音に陰核を撫でられながら秘所を舐められた桔梗が、ビクリと腰を震わせて仰け反った。

 

「かっはっ!?やめっ……そこはぁ……!あっ……ぐっ!きひぃっ!?」

 

 二本の指をグリグリと動かしながら桔梗の陰核を刺激しながら、鈴音は懸命に舐め啜る。

 

「ぴじゅ、ぴじゅ、ぴじゅるるっ」

 

 舌先を小刻みに動かして、膣口から愛液とともに溢れ出した精液を啜る。愛液で奥の精液が溶けて流れ出し、精液自体も飲み込め易くなると気づいた鈴音は、桔梗の陰核の皮さえ剥き始めた。

 

「くっはぁっ……!?きひっ……!?ダメッ……!あひぃっ!?」

 

 ビクビクッと腰を痙攣させ、桔梗が頭を振る。

 

「このままだと先に剃るのは桔梗になるかもな」

「……っ!?うむぐっ!ちゅ、ぶじゅるっ、ちゅぅぅぅっ!」

「あひぁっ!?ぶはっ、はひっ!?だ、駄目ぇ!?そこ、舐めるのは……やめっ……!」

 

 オレの言葉にまるでヤケを起こしたかのように、桔梗が鈴音の陰核を吸う。涙を流しながらちゅうちゅうといやらしい音を響かせながら吸い立てる。染み出した愛液が精液とともに桔梗の白い首筋を流れていく。

 

「かっは……!?あふっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!じゅじゅるるっ」

 

 荒い息をつきながらも、鈴音もまた指と口を使って桔梗の秘所を責める。

 

「ぶふっ……!ふっぐっ!んっ、んんっ……ぺろっぺろぺろ」

 

 皮を剥かれた陰核を指で刺激され、膣口ごと吸い取るように吸い付かれながらも、桔梗は負けじと必死で舌を動かしながら鈴音の体にしがみ付き鈴音の尻に手を回す。

 

「ふっく!あひああっ!だ、駄目よっ……櫛田さんっ!そこだけは、止めてぇ!?」

 

 上にいる鈴音の体にしがみ付いた姿勢のため、尻の穴に指を入れられると桔梗の体重を尻の穴で支えることになる鈴音が断末魔の悲鳴のような絶叫を咆える。

 

「あ゛っ!あ゛あ゛っ!んあぅぅぅぅぅ!!?ひがっ、あああっ」

 

 尻の穴に指を入れられた鈴音が身体全体を震わせながら絶叫する。

 オレの愛撫とは違って力任せの挿入、それも愛液などの潤滑油を一切使っていない挿入なのに、痛みだけでなく快楽を感じている自分を認めたくないと泣き叫ぶ。

 桔梗の背中を支えるオレにとっては、尻穴を穿られた鈴音の膣がたまらなく蠢く快楽に加えて快楽混じりの悲鳴のBGMを合わせたこの行為に桔梗を褒めたくなる。

 

「うぐぅっ!んんっ!ふぁぁっ」

 

 お返しとばかりに、鈴音もまた舌先を蠢かせて桔梗の陰核を責める。

 

「うぶっ……!くふっ、はあっ!ひああっ!歯、歯はダメぇ!!?……っ!……ちゅっちゅちゅ」

 

 軽くとはいえ陰核を噛まれて刺激された桔梗も、さらに鈴音の尻穴に指の第二関節まで入れる。

 

「あふっ!んふぅっ!んんっ、ちゅちゅ、んっんっんっぶちゅちゅっ!」

「んはぁっ!ちゅるちゅる、んんっ!んぐうっ」

 

 二人とも身体をくねらせ、腰をビクビクと震わせながら、必死に相手を翻弄する。

 最初にあった同性の性器を舐める迷うのようなものはもうない。相手を必死に責め立てる。

 初めて同性の性器を舐め合いながら快楽を感じるという状況に我を忘れた二人は、桔梗の秘所から精液を舐めとらなければ剃られるという条件のためではなく、相手をイカせるためだけに責め立てる。

 

「ぷじゅじゅっ、じゅぶぶっ、じゅるるっ!んっ」

「きゃふぅっ!?」

 

 相手を責めることに必死になりすぎたのか、突然桔梗の防御が崩れて、腰をビクリと大きく跳ね上げて身体をベッドに横たえる。

 

「や、やめっ!……やめてっ、やめやめっ、はひぃいいいいいいっ!?」

 

 その隙を逃さずに桔梗をさらに責め立てる鈴音。

 鈴音の舌が刺激しているところは、桔梗の快楽のツボのひとつだ。そんなところを刺激されながら、陰核を指で挟まれてしごかれて髪を振り乱してもがく桔梗。

 

「……っ!」

 

 その様子に思わずためらってしまう鈴音。

 ぱあんっと鈴音の尻を叩く、肉付きの良い尻が肉を震わせ、腰を打ち続けて紅い尻はさらに濃い手形のアカに彩られる。

 

「良いのか、お前が先に剃られて、それに」

 

 尻穴の縁をなぞると尻穴をほじられた恨みを思い出し、鈴音は迷いを振り払う。

 

「ひっ……ふぅっ」

 

 慌てて止めを刺しに行く。

 

「ふっ、じゅぶぶっ、じゅるるっ」

「いひゃあああああぁぁぁぁっ!!?」

 

 下から上に責めるという姿勢だったから一度崩れると桔梗にはもう立て直すことができない。

 鈴音は、逃げ腰の桔梗の尻肉を掴み、様々な体液を垂らしながら尻穴をほじられた恨みを晴らすように唇と舌と指を使って責め立てる。

 ただでさえ性交後失神し寝起きで疲れている身体、ここまで尻を鷲掴みにされては身動きも碌に取れなくなる。

「桔梗ももっと頑張れ」

「あぶぅっ!?はふぅっ!きゃひぃっ!?も、もうっ!?や、やめっ!?あひぃぃぃいいいぃっ!?」

 

 それはそれとして桔梗の頭を掴んで鈴音の秘所に押し付けてみるが、桔梗はすぐに仰け反ってしまう。

 押し寄せる快楽の波によって、一切余裕がない。そんな桔梗を鈴音が責め立てる。

 

「ちゅちゅじゅるじゅるっ、はふっ、んっんっんっんっんっんっじゅるじゅる」

 

 桔梗の膣口に舌を突っ込んで体液を掻きだしながら激しく啜りながら、陰核をグリリッと捻る。

 

「いひゃぁぁああああぁぁっ!?」

 

 段々押し寄せてくる快楽の波に耐えるのに必死だった桔梗に陰核の刺激は耐えられずに、その身体を極限まで伸び上がらせた。

 

 ぷしゃあああっ

 

「うぶふっ」

「あああああああっ!?やっ!やぁぁぁああああぁぁっ!?」

 

 我慢しきれずに潮を吹きながら桔梗が絶頂する。噴出した潮は、激しい勢いで鈴音の顔に叩きつけられる。

 

「イッったか」

「ふぅぁぁぁぁっううっっ」

 

 腰をビクンビクンと痙攣させながら、無様な泣き顔になった桔梗の髪を掴んで見下ろす。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 散々犯された後同性を責めたことによって、荒い息をつきながらぐったりと頭を垂らしてはいるが、やり遂げた表情をする鈴音。

 

「ふぅっ」

 

 ピピッ

 

「ぇ……え……あ……あ、あぁっ……あぅぅっ」

 

 電子音とともにやり遂げた表情は忘れていたことを思い出したかのように驚愕に変わり、伺うようにこちらを見る。

 

「よくやったな鈴音。お前の勝ちだ。剃られるのはお前は後だ」

「……あ、ああぅ……い、いやぁ」

 

 頭を撫でてやると、興奮に頬を上気させたまま絶望に身体を震わせる。

 

「はふっ……あっ……ああっ……はっ……はあっ……はぁっ……」

 

 同じく力なくグッタリとして荒い息遣いだった桔梗も、電子音を聞いてから表情を絶望に包んでいる。

 

「さて……」

「あひあっ!?」

 

 ポンっと音を立てながら鈴音の秘所から逸物を引き抜き、くたりと倒れこむ鈴音の身体を桔梗の横にうつ伏せで横たえる。

 

「ひあっ」

 

 鈴音の顔を向かせながら桔梗の上半身を起こすと、くちゅりと桔梗の秘所を撫でて、絶頂により奥から吐き出された白濁液を指に絡める。

 カタカタと全身を震わせながら、オレの指先を見つめる二人。

 快楽で頭が茹って、最初の条件を忘れたかのように相手をイカせるのに夢中になった二人。

 今から繁みを刈り取られる二人に白濁液を見せ付ける。

 

「確認の時間だな」

 

 震える二人の頭をつかんで口内に白濁液がついた指を捻じ込んで舌に擦りつける。

 絶望の色をさらに濃くする二人の表情にたまらず逸物がさらにそそり立つ。

 チュポっと二人のの口から指が引き抜かれ、唾液で濡れた指からは白濁液はついていない。

 

「で、味見した結果はどうだ」

 

 飲み込み味を確認し顔を青ざめさせると、荒い息遣いをしながら時計に目をやって時間が過ぎていることを確認した鈴音は、すぐさま近づいて懇願してくる。

 

「はぁっ、はぁっ……ま、待って!お願い!待って!」

「チャンスは与えたが不意にしたのはお前らだ」

「だ、だって、あなたが追加で条件を」

「確かにな。同性の相手をイカせることに夢中になって、大前提を忘れるほど変態とはオレも思っていなかった。お前らを買いかぶりすぎていたな」

「―――っ!」

「すまなかった」

 

 ある程度冷静になり、なんであんな口車と呼べないような出鱈目に乗ったのか自分でも理解できないのだろう。だから、ギリリと鈴音の口からすさまじい音がしたのは自分への怒りもあるはずだ。九割がたはオレへの殺意だろうが、これで誰の目にもオレが鈴音を挑発して苛めていると見えるだろう。

 

「桔梗の毛を先に剃る。よく見て「いやぁぁっ!」おけよ」

「ひぁぁぁっ」

 

 ビシィ!

 

 鈴音を苛めているのに夢中と見たのだろう。予想通り、逃げようとした桔梗の背中に縄で打擲する。絶頂直後の火照った背中に一筋の紅い跡が走る。

 

「まさか逃げようとするとは思っていなかった……仕方ないな。ペナルティだ。縛るぞ」

 

 痛みと衝撃に床に崩れ落ちても、少しでも逃げようと這うようにオレから遠ざかろうとする。ポタリポタリと床の上に愛液、汗、涙を流しながら、乳房と秘所を床に擦らせて身体をくねらせる桔梗の両腕を後ろ手に組み合わせて縛る。

 

「い、いやぁ……ひっう、うぅぅっ………また、こんな格好っ、やあ………!」

「やめっ………駄目っ………縛るなんて、いやっ!やあっ」

「何言ってるんだ。逃げようとしなければこんなことをする必要はなかったんだ。往生際が悪すぎるぞ大人しくするんだ」

 

 床の上に仰向けにさせられた桔梗はもはや嗚咽を繰り返すだけになった。床に同じく嗚咽するだけの鈴音を抱え込んで降りる。

 脚を強引にM字に開脚させると身体を割り込み、まんぐり返しのポーズをとらせ、桔梗の右足首と鈴音の右手首、桔梗の左足首と鈴音の左手首を固縛する。そのうえに上に棒を置きさらにテープを巻いて桔梗は足を鈴音は腕を閉じられないようにする。

 ぱかっと開いた秘所を目の前に晒されるあまりに恥ずかしい姿勢、疲れきった身体は鈴音の重みで動かせない。

 完璧に拘束した二人に満足して新たな道具を取り出す。

 

「な、なに、何、何してるの!?」

「持続時間と強さをいじった。低周波治療器のパッドだ。」

「ど、どこに取り付けてるのっ!?」

「見て感じているだろう。お前らの胸だ」

 

 乳腺を刺激するならこことここだな。当たりをつけて、少々手に余るみっちりとした量感を持った白い双丘にパッドを取り付ける。

 

「もう一つ、いや二つ取り付けないとな」

「んぅっ!あっ、うぅっ………摘んじゃ、ダメだよっ………!」

「っっっ!?ひぅっっ!」

 

 ほんのりと朱に染まった乳房の真ん中でぴんと突き立っていた乳頭を指先でキュッと摘み上げると、絶頂した桔梗は言葉を返す余裕があるが、鈴音はただ太ももをもじり合わせながら身体をくねらせる。

 

「これだけ尖っていれば大丈夫だな」

 

 乳首を挟んだ指に軽く力をこめて、オレは赤く膨らんだ鋭敏な突起に乳首用ローターを取り付け始めた。桔梗には桔梗色、鈴音には青色の小型のローターを

 

「なっ!?なにしっ!?ああぁっやぁぁぁぁっ!?」

「ほ、堀北さんっ、い、痛いっ、う、動かないでぇ!?」

 

 乳房をふるふると振って抵抗しようとする鈴音の低周波治療器のスイッチを入れる。改造された治療器は乳房の表面ではなく中の乳腺を小刻みに刺激して、鈴音はあまりの刺激にただ泣き叫び身体を丸くしようとして腕を引き、繋がった桔梗の足を引っ張り顔に秘所をくっつけかねないほど限界以上に身体を丸くさせて苦悶の声を上げさせる。

 

「いやっ……いやっ……ああっ」

 

 胸の中で何かが這い回るように刺激される。不規則に低周波を送る治療器が鈴音を容赦なく責め立てる。

 

「ぁああっ……ぃやぁ…ぁ…ぁ……ぁ……ぁ」

 

 乳腺への直接刺激に鈴音は身体を震わせて桔梗の苦悶の声さえ聞こえない。

 

「そろそろかな」

「ぁ……ふぁ……あぁ……ふぁあ……ぅ……な、なにか……何か、で、ちゃう、むねから……なにか」

「いや、まだ早かったか」

 

 全身にじっとりと汗を滲ませて、鈴音はふうふうと息をつきながら、か細い声で喘ぐ。

 そこで、スイッチを切る。このままだと出す前に絶頂する。まだまだ刺激が足りないようだ。そろそろ避妊薬に混ぜている成分が効いてくるから乳腺を刺激すればあわよくばと思ったが、まだ成熟途中の女の身体だ仕方ない。

 剃るのはシェービングクリームでだな。母乳陰毛剃りをしてみたかったのだが残念だ。

 

 そんなことを考えながら、力尽きた二人の乳首にローターを取り付けた。

 




堀北さん対櫛田さんの勝負の結果は堀北さんの勝利です。



最近時間が取れないので更新がこれからも遅くなると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑨(剃)

おはDIさん、reier1357さん、赤坂サカスさん、ルナルナさん評価付けありがとうございます。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


 出産、育児は祝福されるべきことです。育児休暇も必要不可欠な制度であることは間違いありません。
 ただ、仕事場で何人も同時に育児休暇に入り、彼らの分の仕事をする上に、復帰後のマニュアル作成して、睡眠時間4時間、休日出勤当たり前になり
 顔色が黒い上司に「君のところは二人ともまだ若いんだから子育て待って欲しい……うん、パワハラだよね。忘れて」とか言われる日々を過ごすと
 祝福できなくなってしまう。人間当事者になると考えが変わるなあと思いながら日々を生きています。

 更新できなくなったら潰れたんだと見做してください。 


 全裸で処女膜を確認されたときの姿勢で固定され、羞恥のあまり桔梗の頬がりんごのように紅潮する。

 

「う、ううっ…またこの格好…何で」

「剃りながらお前に見せるのに、この格好が最適だからな」

 

 芯から嫌がっているならば攻めを緩めようと思ったが、反応からある程度は受け入れているからこのまま責めよう。

 

「うっ……ち、近づかないて……あ、乗せられ…て」

「近づかないでどうやって剃ればいいんだ」

 

 桔梗の腰を胡坐をかいた自分の膝の上に乗せて腰を抱え込むような格好になる。

 

「だ、だから、剃るの止めて……やだっ、撫でないでよ……っ」

 

しょりしょりとふんわりと秘所を覆う陰毛を撫で付けながら決める。

 

「そこまで言うなら仕方ないな。撫でずに、この綺麗に手入れされているモノを剃るとするか」

 

 オレはそう言うと2、3回シェービングクリームの缶を振り、それを桔梗の恥丘のあたりに押し付ける。

 

「ああ……そんなぁ……イヤ、イヤだよ……っ」

 

 もう何を言っても剃られる。恥辱に身を震わせ涙を流す桔梗だが、拘束されまんぐり返しにされた上に足首には鈴音の体重がかかった状態ではどうすることもできない。ふるふると首を振って助けを求めている。止めるはずがない。

 

「うあ、やめて、やめて……ひいっ!?」

 

 ふんわりと陰毛が茂った恥丘に噴出ボタンを押して泡を出し始めた。

 

「ひあああああっ!」

 

 吹き付けた瞬間、ピクンと桔梗の身体が冷たいクリームの不慣れな感覚に身体を震えさせる。

 そのまま泡の噴出口を下にずらしていき、桔梗の股間全体が泡で隠れるぐらいに、シェービングクリームを塗った。

 べっとりと塗れて寝かされた陰毛が白い泡に完全に隠れると同時に、缶が空になった。それを放り投げる。軽い音を立てて、缶が床に転がった。

 

「あ、あぁっ、く、櫛田さんの……が」

 

 女の象徴とも言うべき場所を白く染められた様子に、鈴音が悲しげに呻く。

 

「よし、これくらいでいいか。どう思う鈴音」

「っ――」

 

 プイと横を向く鈴音。普段からこういう可愛らしい姿を見せればいいのにな。

 

「桔梗の股間から目をそらさずに、見たままの状態を話せと言ったことを忘れたのか。それとも言おうとしないだけなのか……どちらにしろ、手間をかけさせる奴だ」

「言うわ!言うから、もう……まだ、痛いの…何か、胸から何か…出てきそうで……低周波は、やめて……」

 

 スイッチに手を伸ばすと、怯えきった表情で懇願してくる鈴音。あの鈴音があれほど怯えるものを、同じく取り付けられている桔梗の顔の血の気が羞恥の赤から青に変わる。心配しなくても剃るときにはまだ押さないが、二人の可愛らしい姿を見るためだ、言うつもりはない。

 

「なら、言うんだ。桔梗のここはどうなっているんだ。そして、クリームは適量か?それとも少ないか?」

「く、櫛田さんのあそこは」

「あそこ?」

「く、櫛田さんの、お、おまんこは、泡だったクリームで真っ白になっていて、量は……」

 

 ここで、言葉を切って悲しげに桔梗の秘所の上にあるオレの顔を見上げる。無言であごをしゃくって続きを促す。

 

「い、今まで、シェービングクリームを、使ったことが、ない、から、適量か、わから、ない、わ」

 

 恥辱のあまりしゃくりあげ言葉をつっかえながらも何とか言い切った鈴音に、追い討ちをかけるために桔梗をさらに追い詰める。

 手に髭剃りを持ち、刃先を桔梗の恥丘にむける。

 

「ひっ……お願い……無理、ゆ、ゆる、して、お願い……やめてぇ」

 

 可愛らしく整った顔を歪ませて泣きながら懇願する桔梗。

 

「駄目だ。剃られたくないのなら、さっきの条件をクリアすべきだったのに結果はあれだ。剃るぞ。動くなよ」

「ああっ……いやぁ……」

 

オレの言葉に桔梗はすすり泣く。辛くて悲しくて恥ずかしくて堪らないのに、体は嬲られることを求めるように愛液を流し出す。

そんな自分の姿を見られたくなくて逃げ出したいのに、縛られて逃げ出せない現実に、桔梗から力が抜け動きが止まる。

 

「さて、鈴音」

 

 同年代の少女が追い詰められる光景を息を飲んで見ていたところに声をかけられ、硬質の美貌をピクリと震わせて、怯えを含んだ目で上目づかいで見上げてくる鈴音に、男の獣欲を刺激される。顔の下に感じる桔梗の秘所の体温とクリーム交じりの女の匂いと合わせると極上だ。

 

「話の途中だったな。シェービングクリームの量はお前の私見だとどうだ。足りそうか、感じたまま言ってくれ」

 

 もし足りると言えば即座に桔梗は剃られる。でも、もし、足りないといってもそれが何になるのだろう。新しいクリームを使われて嬲られるという恥辱の時間で桔梗を苛むだけだ。ならば少しでも桔梗に恥辱を味合わせる時間を少なくしてやりたい。

 

「た、足りっ……ご、ごめん、なさい。ごめんなさい、櫛田さん」

「い、良いよ。解ってる、解って……る、からぁ……うぅっ」

「ひっく、ひっ…く……た、たりる、と、思う、わ」

 

 ガクリと全身から力を抜き、ぽろぽろと涙を流しながら鈴音は声を絞り出した。その声に満足して頷きビニールーシートを敷いて、桔梗の驚くほど軽くて柔らかい体を上に乗せる。

 

「さて、いい加減始めるぞ」

「ひいっ……じょ、冗談だよね……ほ、本気であそこの毛なんて……剃らないよね……何の意味もないって、わかってるよね」

 

 ビニールシートの冷たさに、いよいよそのときが迫ったことが耐えられず引きつった笑みで懇願してくる。

 

「もちろんだ」

 

 オレの言葉に救われたような表情を浮かべ

 

「冗談なわけがないだろう。桔梗のまんこから毛を綺麗さっぱり剃り落とす。その後は鈴音もな」

「ひっ……お願い、やめてよ…」「っ――うぅっ」

 

 オレの回答に絶望して引き攣った二人に背筋が震えるほどの快感を覚え、髭剃りの刃先を桔梗の恥丘にあてがう。

 

「ああっ!」

 

 髭剃りの刃の金属製で冷たい感触が恥丘に触れて、桔梗の身体がビクンと震えた。

 

「桔梗、まんこを見詰めたまま動くなよ。動いて大事なところが傷ついたら、病院に行くしかない――お前は目立つからな、どんな噂が立つか……試してみたくはないだろう?」

 

 実際は安全ワイヤー入り五枚刃のT字髭剃りだから、多少動かれても大丈夫だろうが、念には念をという理由と自分の陰毛が剃られていくのをじっくりと見せたいという理由で、あえて口にしていない。

 

「あぁっ……ひぅっ、ひど、酷いぃっ、うぅっ」

「なら、震えを止めろ」

「だ、だって怖くて恥ずかしいからっ……ひぅっ」

 

 一番敏感な部分に感じる刃に、震えをとめようと全身に力を入れるのだが、羞恥と恐怖でうまくいかない。特に固定していない頭がひどい。このままでは震えで傷つく。

 

「鈴音、桔梗を押さえて膝の間に頭を置いてやれ。このままだと秘所を切るかもしれないからな」

「……ええ、わかったわ。櫛田さん、じっとしていて」

 

 どういう状況かよく理解しているため文句も言わずにこくりと頷いた鈴音が、器具を取り付けられ普段よりも先端に重みがあるせいで形の良い乳房を淫靡に揺らしてしまい「あっ……」と恥じらい動作を止める。

目元を朱く染めた瞳にオレが顎をしゃくる姿を写すと、恥辱に紅く染まった身体をゆっくりと起こし、固縛された手で桔梗の手首を体重で押さえ、膝を桔梗と床の間に挟み込み膝の上に頭を置く。

縛られ制限された身体は、白い裸体をくねらせ柔らく弾むように動き、酷使したことで同時に吐かれる熱のこもった吐息と合わせて、目を細めながら堪能するだけの青い淫らさを出す。

 

「はぁっ……はぁっ……櫛田さん、頭の位置はここで良い?」

「うん……ありがとう」

 

股の間に頭を固定しただけでなく、鈴音の重みと暖かさで桔梗の震えがおさまる。先程互いの秘所を責め合ったとは思えない暖かな空気が漂う。

責めているときには不要な空気だな。

「それでいい。続けるぞ」

 

 言葉と同時、二人の間に流れた優しく弛緩した空気を切り裂き髭剃りを躍らせる。

 恥丘に当てていた髭剃りをそのまま柔らかな肌を傷つけない絶妙な力加減で、ジョリっという淫靡な音をたてながら肌に沿わせて手前に引いた。

 

「ひぃっ……い、いきなり……ああっ」

 

 手に持つ髭剃りから、確実に桔梗の整えられた恥毛を剃る感触が伝わってきた。

 シェービングクリームが、髭剃りの刃渡りの分だけ削げ落ちていく、その下から桔梗の赤く火照った肌が現れた。

 

「あっ……ああっ、剃られ、ちゃた。私の毛、本当に、剃られ…無くなっ…うぅっ」

 

 毛が生え始めて以来見ていなかった肌を衆目に晒され、恐怖に息を止めていた桔梗が、恥ずかしそうに顔を背け涙を流す。

 鈴音は息をするのも止めて桔梗の秘所の剃り跡を注視し、自身の未来の姿を重ねて青くなる。

 

「鈴音、今一剃りしたが桔梗のまんこはどんな状態だ。綺麗に剃れているか」

「うぅぅっ……ひっくっ」

「あ……そんな、ああっ……櫛田さん、くっ……」

 

 剃毛された恥辱のあまり、背けた顔から涙を流す桔梗を申し訳なさそうに見ると、言わなければどういう目にあうかよく理解している鈴音は声に出す。

 

「その、まだ……そ、剃り残しが、ある、わ」

 

 オレの使っている髭剃りは、普通の短い髭を剃るために作られたものだ。平均程度に生えている桔梗の毛相手では、すぐに毛が刃の間に挟まって剃れなくなってしまう。

 

「そうか。綺麗にカットして手入れをしている上に、絶頂で噴出した愛液で濡らした毛をシェービングクリーム一缶丸ごと使ったものを最新の五枚刃で剃って剃り残しか。

 ふぅ……簡単に剃れると思っていたんだがな。夢中で責めてイカせて、先に桔梗を剃られるようにした鈴音としてはどうすればいいと思う?」

「あなたが用意した傍の洗面器の、お湯を使って、髭剃りを、洗って、も、もう、もう一度、綺麗に、剃れば、良いでしょう」

 

 嬲りに嬲るオレに対して、羞恥と怒りに震えながら、つっかえながら正確に答えてくる。答えなければどうなるか理解したのだ、何時間も時間をかけて教え込んだ甲斐があった。

 桔梗の毛を剃るやる気がさらにたぎっていくのを感じる。

 

「そうだな。続けるからさっきも言ったとおり目を背けるなよ桔梗。お前の大事な所の毛が無くなるのをしっかり見ておけ……見なかったときは……言わなくてもわかるだろう」

「「……っ」」

 

新たに追加したペナルティを暗示され息を飲む二人が視線を秘所へと向けたのを確認して、オレは唇を一度舐めると湯を張った洗面器で髭剃りを洗い、桔梗の剃毛の続きをする。

 毎朝やっている髭剃りとはまったく勝手が違う。毛の硬さと密度に注意しながら、上から慎重に剃っていく。

 

「うあっ……ひっ……」

「力を抜けよ。手元が狂う」

「あ……ああっ……」

 

 オレの言葉にも桔梗は力を抜かない。尻の肉まで緊張で引き絞り固くなっているのが、尻を乗せた脚から伝わってくる。

 ゆっくりとしょりしょりと剃って刃に毛が溜まると髭剃りを洗う。ちりちりとした縮れ毛が、水面に無数に浮かぶ。

 

「あ、あの……あの、ね……」

 

 髭剃りが離れたのを感触に、桔梗がオレの様子を伺う。

 

「どうした?まだ始めたばかりだここで止めたらこんなみっともない状態だぞ」

 

 手鏡で櫛田に真ん中の一部だけ剃った状態を見せる。

 

「う、っ…あぁ」

「ここで止めてほしいのか」

「止め、ないで」

「何を止めて欲しくないんだ?」

「う、ううっ……このまま…剃って」

「自分から剃ってくれといいたくなるくらい。みっともないのは嫌か」

「ううっ」

「そうか。よくわかった」

「ううっ……は、恥ずかしい……ううっ……」

 

 恥辱に震える桔梗に、オレは口元をゆがめてからかうような台詞で返すと、続きに取り掛かった。

 

 ぞり……ぞりっ……ぞり……ぞりっ……

 先ほどのペナルティ発言の後、目を逸らしても直ぐに凝視するようになった二人に見せつけながら剃る。

 

「ひっ……や……やぁっ……んんっ」

 

剃毛され次第に地肌を露出していく恥辱にまみれながら、抵抗することもできずに内腿を小刻みに痙攣させる姿が牡の興奮を煽りたてていく。

 

ざっと剃ったところを更に丁寧に剃り取っていく。

しょりジュリゾリゾリゾリと音をたてる度に桔梗が啜り泣き、鈴音がギュっと目を瞑り慌てて開く。その姿にゾクゾクと興奮し、加虐の欲望がどんどんエスカレートしてゆく。

そして、それを5,6回繰り返すと、桔梗の秘所の上、いわゆる土手のあたりを剃り終えその姿を現すようになる。

 

「あ……ああっ……う……はぁ……」

 

 オレはそこまでくると一度その手を休める。それを見た桔梗は胸を上下させて荒い息をつく。体を緊張させ続けたことにより疲れていた体を休ませようとしているのだ。

 

 つまり、今桔梗は隙だらけで体のありとあらゆるところに力を入れるのに時間がかかるということだ。例えば

 

 沸き上がる加虐心のまま、髭剃りの刃の部分の、側面の角で桔梗の陰核を触る。

 

 チクッ

「あ!ひあっ……き、切れちゃうっ!!……だめぇ!!?」

 ぷしゃあぁぁぁぁっ

「おっと」

 

 極限の緊張状態の中、最も敏感な部分に薄い刃が触れ、陰核が切り落とされるのではないかと恐ろしさを感じた桔梗は、耐えきれずに秘所の奥から恐怖の証を溢れださせる。

 急いで手に持ち桔梗の胸の上に着けたバケツに、熱い黄金色の体液を。

 普段なら耐えることができただろうに弛緩した今では耐えられなかった小水を。

 

「み、見ないで!見ないでぇ!!?」

「小便の落下地点を見てバケツを動かさないと、そのまま落ちてお前に被ることになるんだが、いいのか?。少なくともオレはお前の小便をかけられたくないんだが、お前が自分の小便を自分で被る趣味があるならどけ――」

「いや…いやぁ……いやあああああっ!?」

 

オレの鬼畜な発言を掻き消けさんとばかりに悲鳴が轟く。

半分陰毛が無くなった白く泡立った股間から、細い白糸のような水流を流して桔梗は泣き叫ぶ。

 

「……いやあぁっ!ご、ごめんなさい……ごめんなさいっ!堀北さん、汚しちゃって、ご、めん、な、いぃぃっ!」

「……いいのよ。櫛田さん。怖かったなら、仕方ないわ」

「ひ…っく……ひぐぅっ…ひっく、うぇっ……ほ、堀北……さん…うぁ…清隆くん、鬼畜……酷い……堀北さん、ごめんねぇ、泣いて…なさけ、ない」

「気にしないで、この人非人のせいよ。あなたは悪くない、こんなに酷いことをされたら泣いても仕方がないわ」

「ひっく……ごめん、ごめんね。堀北さん……」

 

ぽたぽたとバケツの水面を叩く水音が響く中。

子供のように泣きじゃくる桔梗を鈴音が、僅かに弾けた水滴が自分にかかったことに触れずに優しく慰める。泣き止みグズグズと鼻をすするまで鈴音は優しく言葉をかけ続け桔梗を落ち着かせた。

恥辱と恐怖にまみれた時間の中で、ほんの少し和める時間が訪れる。

当たり前だが、恥辱責めの時間にそんな余裕を与えたりはしない。

 

「綺麗になったな、続けるぞ」

「そ、そんな、待って、もう少し落ち着くのに時間が要るから、待ってあげて、本当に辛いのよ」

「人前で放尿した人間の気持ちが良くわかるんだな。鈴音も人前で放尿したことでもあるのか?」

「っっ!あ、あるわけ、ないわ……!」

「なら、黙っていろ」

「う、ううっ――っ」

 

股間についた尿を拭き取り再度桔梗の秘所を覗き込みながら、安らぎの時間の終わりを告げ、桔梗に自分も放尿したと知られたくない鈴音の制止を弾く。

桔梗を放尿したことで責めたかったが、これ以上はどう考えても精神的許容値を超えてしまっている。残念だ。次はいじめ抜くためにここは流そう。

仕方がなく今回は、髭剃りの刃の部分の側面の縁で泣き咽ぶ桔梗の陰核をつつく。

 

「ひゃっ」

 

 悲嘆にグズグズと鼻をすすっていてまったく予期してなかった、突然襲ってきた感覚に、桔梗は全身をビクンと震えて恐怖の根源のようにオレを泣き濡れた瞳で見る。

 

「い、いや、わ、私、もう、やだ……あんな……」

 

 お漏らしした羞恥心で小鹿のように震える桔梗を見ながらオレは言う。

 

「桔梗、動くなと言っただろう。力も入れるな。力を入れすぎていたからちょっとした刺激でああなったんだ」

「だ…だって……酷いよ……あんなの、酷い…」

 

 桔梗が涙目で俺を見上げる。

 

「ほら力を抜け。まだまだ剃るところは残っているんだからな」

 

 困ったように言いながら、短い剃り残しがある跡を、右親指で毛が剃りきった場所に向けて撫でる。

 

「あっ!あぅぅっ!…………」

 

 陰毛で守られている肌と守られない肌の敏感さの違いに桔梗が驚きの声を上げる。

 

「チクチクするな……よっぽど硬い毛だったんだろうな。毛が硬い女はいやらしいという言葉は正しかったな。剃られて小便か」

「い、いやあっ」

 

 じょりじょりとさすりながら呟く。桔梗は涙を新しく頬にたらしながら呻くだけだった

 

「もっと綺麗にしてやる。まんこがくっきりみえるようにな」

 

 じょりじょり 

 今までとは刃の向きを逆にしてゆっくりと桔梗が剃られているとわかるように少しずつ剃る。

 

「ああっ、やっ、やめてぇっ!!……ひいっ」

 

 縛られた体でもがこうとする桔梗の乳房を掴む。柔らかさの中に少女の硬さを残す極上の逸品に五指を沈める。

 

「動くなよ……動いたら……本当に手元が狂うかもしれないぞ」

 

 じょり……

 桔梗の乳房に手をやりながら、もう片方の手で髭剃りを滑らかに動かし、一度軽く剃った場所の陰毛を綺麗に剃り落とす。

  

「ひう……ううっ…」

 

 皮膚に直に感じる冷たい金属の感触に、生物的な恐怖だけでなく放尿した羞恥を掘り起こされピタリと動きを止める。

そのままゆっくりと見せつけながら剃り続ける。

 じょりじょりと毛が剃れる感触が髭剃り越しに伝わる。当然桔梗にも伝わっている。

 

「うぅっ……」

 

 涙交じりのうめき声が桔梗の口からもれる。しかし、刃物を当てられている恐怖は、桔梗の動きを完全に封じた。動くのは自分の無くなっていく陰毛を見つめる目から流れていく涙と呻き声をもらす唇だけ。

 

「そうだ。そうやって動かずにしっかり見続けろ」

 

 じょりじょりと順調に剃毛作業が進んでいく。桔梗の体から離れた陰毛とクリームが混じり合った白い塊が、下に敷いたビニールシートへ落ちていく。

 

 

 

 順調に剃っていると、桔梗の秘所から、放尿で減ったとはいえ十分白く覆っているシェービングクリームを洗い流してしまうほどの量の愛液が流れ始めてきた。

 時間がたつにつれて最初にあった刃物への恐怖は薄らぎ、代わりに羞恥心が際立つようになった。

 その羞恥心が開発されかけの体を刺激し、性的快感に感じる頃合だから何の不思議もない。

 

「桔梗……お前もしかしたら、毛を剃られて感じているんじゃないのか?」

 

 オレは、硬く強張った桔梗の腰を押さえつけそう言った。

 桔梗がはっとしたような顔をして俺を見上げる。

 

「そ、そんな……感じてだなんて」

 

 その言葉に答えるように桔梗の秘所から垂れた愛液を掬い上げて、桔梗の目前でくちゅくちゅと指と指で擦り合わせる。

 

「なら、この白く泡立った液は何なんだろうな」

「うっ…………」

 

 恥ずかしそうに目をそらした桔梗に追い討ちをかける。

 

「よく考えてみろよ、オレは今、お前の毛を剃っているだけなんだ。それなのにこれだけ愛液を垂れ流すほど身体が過敏に反応してるんだ……お前が剃られて濡らす変態としか考えられないんだが?」

 

 俺は桔梗の陰核の包皮を、空いている方の手でめくり上げる、そして今度は髭剃りを縦に持つと柄の部分、すべり止めのためザラザラとした凹凸がついている部分をあてがい、陰核を擦り上げ始める。

 

「ひひぃぃっ……止めて、そこはだめぇっ!…ひあっ……ごりごりっ……擦らないでぇ、ひゃっ……ううぅ……」

「こんなことすれば濡れるのはわかるんだがなあ」

 

ビクビクと身体を震えさせ頭を振る桔梗。

 

「や……だ…だめぇ……」

 

 軽くイッた桔梗の愛液の量がさらに多くなる。 

 

 本格的にオレの愛撫に反応して愛液を垂れ流し始めた桔梗だが、……このままだとせっかく塗ったクリームが全部流れてしまうな

 よく考えたらもうシェービングクリームはもう空になってしまった、代わりは鈴音用の物しか無い。少量の鈴音といえども、精液と愛液だけで綺麗には剃れない。

残りのクリームの使い道を鈴音に「桔梗に使わせてくれ代わりに私は体液で剃る」と懇願させるのは辞めておいたほうがいいな。

 

 物足りなさを感じたが、俺はそう思い、陰核を嬲っていた髭剃りを桔梗から放す。

 はあっ、と桔梗の口から安堵のため息が漏れた。

 そんな桔梗を見下ろしながらオレは言う。

 

「なんだ、桔梗。ハッキリと否定しないのか? 剃られて愛液をクリームが流れるくらい垂れ流すほど感じたって事を。毛が硬い女はいやらしいという言葉は本当に正しかったな。ああいう俗説をこれからは信じることにしよう。こんな実例を見れたんだから」

 

 触ったとき人並みよりずっと柔らかい毛でオレを驚かせてくれた桔梗は、目を閉じて俺から顔を反らすように横をむく。

 他人と陰毛の柔らかさを比べたことがないから、オレの言葉を真実だと思ってしまい、自分の体の秘密をオレと鈴音に知られた恥辱に震える。

 その目から新たにポロリと涙がこぼれる。

 

「ひど、ひどいよ……だって…だって……」

 

 桔梗がこれといった反論もせずにうわ言のように呟く。

 ぱぁんっ。

 

「ひああっ!?」

「顔を逸らして良いなんて何時言ったんだ?」

「う、うぅっ……うあうっ」

 

 尻を一叩きすると桔梗は涙で腫れた目でオレを見上げる。その目には隠しきれない被虐の快楽がある。

 桔梗がこんな反応を見せるとは……どうやら俺が思っている以上に桔梗は傾いているようだ。

 あともうひと押しか。

 俺はそう思うと、桔梗の愛液でぬめっている髭剃りの柄を握り締め

 

「ぬめっていてやりにくいな。桔梗、口を開けろ」

「な、なんでっ」

「お前の愛液で柄がぬめっていてな。このままだと、手が滑って皮膚を傷つけかねない。自分のものだ自分で舐めとれ」

「……うぅっ……この、サディスト、誰のせいで……じゅっ…じゅっ……ひっくっ、自分のっ……始めて……ごくっ……うぅっ……」

 

 少し寄り道して桔梗の剃毛を再開する。

 

「何度も言うが動くなよ。今からが一番繊細な所だ」

「う…は……はい…」

 

 恥辱のあまり消え入りそうな桔梗の声を聞きながら、オレはいよいよ秘所の割れ目周辺、大陰唇外側に髭剃りを当てた。

 

「ふっ」

 

 一呼吸置き、割れ目の周辺、ふっくりとした肉付きがいい部分からそ剃り始める。安全ワイヤー入りとはいえここは注意しなければならない。それまで以上に慎重に手を動かす。

 

「あ……あ……あ……」

 

 チラリと二人の顔色をみると、剃られている桔梗はもちろん、無言で凝視しながら汗をたらたら流していた鈴音も仲良く蒼白になっている。

 

「あひっ!?」

「おっと」

 

 オレが割れ目のすぐそばと下を剃るのにヒダを一枚掴むと、ビクリと桔梗の腰がはねる。注意していたため髭剃りは当てていないが危ないことには代わりがない。

 

「動くなといっただろう」

「い……いたいっ」

 

 ヒダを少し強くつまむ。苦痛の悲鳴の後何か言いたげな桔梗に、いらだったようなふりをして言う。

 

「慎重にせずに、一気にやってやろうか。その代りお前のまんこは血まみれになるが」

「う……う、ううん……大人しく、する」

 

 目の前に突き出された自身の陰毛と体液とクリームがこびりついた髭剃りを桔梗は震えながら見つめ、血の気が引いた唇を開いてかすかに答え、ぎゅっと体を今まで以上に緊張させた。

 緊張させることで尻に出来たえくぼを見て、名器の女はうんぬんを思い出す。本当にああいう俗説は信じてもいいかもしれない。

 

「よし」

「はぁ…うぅっ…ひっく」

 

 気を取り直してヒダを摘みめくり、その下にわずかに生えている毛を剃る。

 髭剃りを握る方向を変え、握る手を変え、顔を近づけてよく観察しながら剃る。

 

「い、いや、うぅ、はぁはぁ、そんな、こんなの、もう、無理っ」

 

 そうしているうちに細々とした桔梗の追い詰められた声が聞こえる。

 それはそうだろう。

 オレの目の下、鼻息がかかるほどの至近距離に明かりを照らされた秘所がある。鼻で息を吸うと桔梗の秘所の匂いがわかるような距離。それを自分の目でずっと見せられて恥ずかしがらないはずがない。

 

「ま、まだぁ、まだなの……清隆くん、まだ…ひっく」

「もう少し、あと少しだ」

 

 言いながら剃るスピードをゆっくりにして、時間をかける。

 恥ずかしがり、整った可愛らしい顔を涙で濡らし弱々しく懇願する桔梗の姿がそそるからだ。

 

 

 

 丸出しになった自分のもっとも恥ずかしい場所に、オレの鼻息がかかる度に桔梗は啜り泣く。シャリシャリと音がする度に、段々と息がかかる面積が増えていくことが視界だけではなく聴覚と触覚で解ってしまう恥辱。

 

「鈴音、ここはどうだ?」

「も、もう、綺麗に、なったわ」

「ほう」

 

柔肉を指で引っ張り、大陰唇と足の付根の影になっていた一本の陰毛を見逃さずに引っ張る。

 

「ひうっ」

「鈴音、これは何だ?」

「見逃したわ。わ、私の責任よ。だから、櫛田さんには」

 

プチッ

桔梗の陰毛を一本抜く。

 

「あひあぁっうっ」

「鈴音、これは何だ?」

「……あ、つ、付根の所に、剃り残しがある、わ。もう一度丁寧に、剃って……指で抜かずに、髭剃りを使って、剃って、あげ…て」

「それで良い。鈴音が桔梗の毛を剃る手伝いの義務を果たす限り、髭剃りで剃ってやろう」

「う、くっ……い、いやっ……も、もう、ダメ……や…あっ」

 

 同性に剃られている所を見られ、剃り残しを確認され剃り方を助言される恥辱。恵はこれがなかったから耐えられたが、されている桔梗には耐えられない……失敗したな。恵もこうすべきだった。

その分桔梗と鈴音はちゃんといじめよう。

 

そうやって手を変え品を変えていじめながら剃り続ける

 

「うあ、うあぁっ…も、もう、許して、、あぁ、ダメ、ゆるひてぇ、あぁ、もう、た、耐えられ、ない、あぁ、許して、く、ください、あぁ……」

 

ほぼ剃り終える頃には、桔梗はうわ言をあげながら涙と愛液を流すだけになってしまった。

その儚くも可愛らしい姿にオレの逸物は滾りきっている。

すぐにパイパンの秘所に挿入し、陰毛があった所を撫でながら言葉でいたぶりたくなる。

 

――が、まず最後まで剃り、次に同じように鈴音を剃ってからだ。

 

「あとは尻穴周りには産毛みたいな毛と会陰にぽつぽつ生えている毛を剃れば終わりだ。尻穴周りは尻の肉に隠れるからな。刃をうまく当てないとうまく剃れないんだ……よっ」

 

 縛られたことにより、ある程度広がっていた白桃のような臀部の谷間をさらに手で広げて桔梗の尻穴をまじまじと見る。

 

「ああ……ふう…ぅ……あ、あんな、ところ、見られちゃってる……見られるだけじゃなく……剃られるとか……私……もう、もう、どうすれば……うぅっ」

 

 指や小さなボールを突っ込んだ鈴音のそれと同じく綺麗な色合いをしている。尻穴調教していないだけあって、まだ肉が盛り上がり始めていない尻穴周りに髭剃りを当てる。

 

「あひあっ……あぁ、いや、いやぁ……うぅっ」

 

 桔梗の体温で暖められ刃物の冷たさはもう感じない。その分、金属の硬さを皮膚――それも尻穴という年頃の少女にとって最も触れられたくないところで感じて、尻穴を収斂させながら恥辱に咽ぶ。

 

 

 

「ひっっく、うぅ……この、鬼畜、サディスト……ぅ……」

「よし、これで出来上がりだ」

 

 会陰に残った最後の泡を丁寧に剃り取り、秘所全体を一通り暖かいタオルで丁寧に拭く。生まれたままの姿を剥き出しにされた桔梗の秘所が目の前に現れた。

 つるつるの秘所は唾を飲むほど清純だ。

「隠すものがなくなった割れ目がはっきりと見えるな。ふうん、まだまだ綺麗なものだ」

 

 桔梗の秘所は、数時間前には犯され大胆に足を開いているにもかかわらず、まだピッタリと閉じ合わせている。

 

「そろそろ、小陰唇が伸びて、このままでもビラビラが見えるようになっているのかと思っていたんだが」

「はぁ…はぁ…っ、どこを見てそんなこといってるのよ……この、変態ぃ」

 

 涙で腫れぼったくなった目で睨もうとしたのだろうが、秘所の上にあるオレを睨もうとすると剃りあがった毛一つない自分の秘所を見ることになり、ぐすぐすと悲しみで鼻を鳴らす。

 

「これからそうなるお前のまんこを見ながらいっている」

「ぅぅっ……ひくっつ……答えるなんて、本当に、変態っ…ひくっ……あ、止めて…だめっ、もう見ないでよ」

「見せてもらう代わりに少し詳しく言ってやろう。そうだな何度もオレのものを銜え込んだせいで、膣口の部分が少しはれぼったくなっている他は、ピンク色の色彩に彩らてるから、まだまだ少女の色合が濃いな。毛を剃ったおかげでその辺りがよく見える」

「あ……あんっ……あんた……何、言って」

「これからだんだん色が濃くなり肉が盛り上がって、ビラがはみ出る。丁度今指差しているからわかりやすいだろう。この閉じた貝みたいになっているところだ」

 

 そして、内部がオレの形に作り上げられていくのだと思いながら、剃り跡に手を伸ばす。

 

「うっ、あぁ、いや、いやあぁああぁあぁ!! やめ、やめて、もう、言わないで、ゆ、ゆるしてぇ……あ、て、手を伸ばさないでぇ、あっ!!」

 

 自分の剃られた秘所を講評されるという恥辱の中、伸ばされていくオレの手を止めようと懇願してくる声を聞きながら、ツルツルになった桔梗の剃り跡に指を滑り込ませる。ぷよぷよと柔らかな感触を味わいながら上から下へとまさぐり、剃り残しがない確認する。

 

「はぁ……ん、ん……っ……ああっ!あ、あっ、くぅん――っ!」」

 

 剃毛されて露出し敏感になった肌を撫でられ、いつもと違う感覚に戸惑いながらピクリピクリと腰を何度か飛び跳ねさせる。両手両足を拘束された桔梗にできる意思表示は声をあげて鳴くことだけだ。

 

「毛根のところが少しデコボコしているが、剃り跡だと言われない限りわからないな。つるつるで綺麗だ。桔梗の可愛らしいまんこが丸見えだ」

 

桔梗の秘所は、まるで最初から陰毛がなかったようにつるつるの皮膚を晒している。

 鞄から用意しておいた手鏡を取り出して桔梗の秘所に掲げる。醜い剃り跡もなく、白くてきめ細やかな肌は普段から手入れしている顔に劣らない。

 

「うぅっ、そんなとこばかり……褒めないでよ」

「いや、うん、似合うな。桔梗のまんこは剃っておいたほうがいい。ほら、目を開けて鏡を見て自分で確認してみろ」

「…………」

 

 桔梗は言葉に従い鏡を目を見開いて凝視し

 

「いっいやぁ!何っ、そこ!?」

 

一瞬で、鏡に映りこんだものが何かを理解して桔梗は悲鳴をあげ目をつぶる。

 

「目をつぶって良いと言っていない。この言葉をあと何度言わせる気だ……まあいい、尻の穴だよ。お前の尻の穴だ」

「な、何で、そんな、とこ」

「剃ったところだからな、確認させるのは当たり前だ……まさか、初めて見たのか」

 

 オレの言葉に、涙をためた目を開いた桔梗は、虚ろな声で呟く。

 

「当たり前でしょ。そんなところ、どんな理由があって見るのよ」

 

まあ、手入れする奴は少数派だろうな。

 

「そうか。なら良い機会と思ってよく見ておけ」

「や、やだよ。そんな、そんなところ、見たく、ないよ」

「オレも嫌自分も嫌なら鈴音に解説してもらうか。自分の目ではなく、同姓の鈴音にねったりと見させて細やかに――」

「やだっ!」

「そんなことしないわよ!」

「なら、拘束を解いてやるから良く見るんだ。ツルツルに綺麗になって顔と同じようにきめ細かい肌をな」

 

 桔梗はオレを睨もうとしたが、下の毛を失ったせいかどうにも気力が萎えてしまっている。羞恥と屈辱に目を伏せるだけだ。

 そんな桔梗の股は、全てをさらけ出していた。

 脚の拘束を解かれ、きっちりと脚を閉じて合わせていても秘所の割れ目の先端がちょこんとのぞいている。幼子のように割れ目を常に見せてしまっているのだ。

 ピンク色割れ目の下からとろとろと流れていく愛液を確認して、剃毛というアブノーマルプレイでもその気になるようにしたことに雄として満足しつつ責める。

 

「何時でも割れ目丸出しだ。まるで子供みたいだな。子供の頃に戻ったような気分にならないか桔梗」

「ひっくっ、あんたが、剃ったん、でしょ……」

 

 オレは剃り終わったそこに息を吹きかけた。クリームに含まれていた成分が、冷たい刺激を与える。

 

「あひああっ!?……う…」

「ああ、オレが剃った。ここまでは巧く剃れたから、一番難しいところは終わった。残りは大したことはない、後少しだ」

「――の、残りって……ぅ……さ、触ったら……ダメ…だよ……っ」

 

息を吹きかけられてああなってしまった剃り後に再度触れられ身体を震えさせる桔梗。

 

「剃った後アフターケアをしないでいいのか。赤くなっているだろ、炎症になるぞ。肌荒れして、ひりつき、痛み、赤み、湿疹になって人前で股を掻いて」

「なぁっ…やだよ、そんなのっ!?」

 

赤くなっているのは違う理由だし、そうならないようにするためにクリームを塗ったのだが、本格的に剃ったことなどない二人にはわかるはずがない。

 

「そういった炎症にならないために軟膏を用意したのにな。まあ、触るなと言うなら仕方ない。人前で股を掻く女になればいい」

「……触って、いいよ」

「人の善意を弾いておいて、それか?」

 

 自分の秘所の上に位置するオレを睨もうとして綺麗に剃られた跡を見、くすんと桔梗は悲しげに鼻を鳴らす。

 

「軟膏を、塗って、下さい」

「5W1Hを知らないのか?」

 

ちょっと特殊な軟膏右手に至極自然に尋ねると、桔梗は目に涙を浮かべる。

 

「う……うあああああんっ!! も、もう無理ぃ……無表情…声、抑揚、なし……やること、鬼畜…とか……無理、私、もう、抵抗、出来ないよ…ぐすん…無理っ……どうしようも…うぅっ……ないじゃない……」

 

 うにぷにとアフターケアをきちんとしていないから赤く肌荒れした剃り跡をいじりながら、桔梗の泣き言を聞き流す。涙を流しながら、桔梗の瞳は荒れ始めたように桔梗には見える自分の肌を捉えている。年頃の少女には耐えられないだろう。

 ひっく……ひっく……という桔梗の泣き声が、静かな部屋の中で切なく悲しげに響いている。

 

 

「……わ、たしの……」

 

 そして、ゆっくりと……股を開きながら桔梗が言葉をつむぐ。

 

「んっ、ぁ……わたしの……き……」

 

 声が震え、広げた両脚が震え、赤く染まった体全体が震えている。

 

「わたしの……綺麗にそってもらえた……剃り跡に、肌荒れしないように……軟膏を、塗って、アフターケアを、丁寧にしてください……お願い……します――」

 

 羞恥で赤くなって震えていても桔梗の表情からは「ようやく終わる」安堵がある。

剃毛プレイはここからが本番なのに、剃るのはあくまでも前段階だと桔梗は今から理解することになる。

楽しみだ。




剃毛プレイの前半、剃るだけでこんなに字数使っちゃいました。もう少し考えます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑩(剃後)

 綾小路君の人間が一生分かけて習得する以上の知識はえぐいと思います。
 サイバー、薬物もそうですが、信用商品券みたいなポイント制度の学校は特に。

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


「いいだろう」

 

 言いながら、握り締めて怪我をしないように広げた手ごと後ろ手に縛られたままの桔梗をゆっくり撫で、大きく足を開いて床のクッションの上に座らせる。医療用ゴム手袋をつけ、人差し指の先を湿らせる程度に軟膏をつける。

 

「ま、待って!ねえ、何その手袋!やめっ」

「いいからじっとしてろ」

「そんなの無理っ……あっ、ひんやりして…はあっ」

 

 手袋をつけるというオレの行為に血相を変えて止めようとする桔梗だが、縛られていてはどうにもできず、へその下、剃ったために赤くなった下腹に指一本ほどの範囲に線を描くように塗られる。

 火照った肌にひんやりとした感触が心地よく吐息を漏らす。

 

 変化は数分後、訪れた。手袋なしでは男の厚めの手足の皮膚さえ浸透する成分は、桔梗の剃られて産毛さえなくなった繊細な部分の薄い皮膚など、あっという間に通過する。

 

「あの……」

「ん?」

「そろそろ足閉じていいかな。恥ず……あ…え?……何、これ……あ、あえああっ!?」

 

 丁度足を大きく広げた姿勢が恥ずかしく、もじもじと太ももを震わせて閉じようか迷っていた桔梗が怪訝な顔をした次の瞬間だった。

 

「あひあぁぁぁっ!?……つ、つめたぁっ!痛っ!熱っ!やっ、な、なんこえ、なんえええええ!?」

 

 桔梗は涙を引っ込め体を跳ね上げながら絶叫する。

 桔梗が自分では何なのか識別できない刺激の波が体を襲う。

 

「な、何っ!何を塗ったのおあああっ!」

 

 薬を塗られたところを手で押さえたくとも縛られているから出来ず、太ももを勢いよく閉じ合わせて、クッションで高々と持ち上げられた腰を上下に揺する。

 何かというと、市販の軟膏にカンタリスやメタンフェタミンやインドメタシンやアポモルヒネなど数種類を混ぜ合わせた薬を塗った。つまり、軟膏の効能を保った媚薬だ。

抽出して中和することなく互いに効果を高める調合、人体に悪影響を与えずに持続的に各種刺激を与えた上に、視覚では変わらないようにするのには主に設備面で苦労した――能力を得るために人間性を殺す場所だったとはいえその意味ではホワイトルームは恵まれていたな。

 

「ただ、軟膏を塗っただけだ。どうしたんだ?桔梗」

「ち、違っ、これ、ぜったいひああああっ!?」

「違うといわれてもな。そこらの薬局で売っているものだぞ、これ……どうだ?鈴音」

 

 同じく後ろ手に縛られて、桔梗の絶叫と体の動きにドン引きしていた鈴音に確認させる。

 

「……確かに、市販の薬の容器に入っているわよ、ね」

 

 今まで鈴音を隠れ蓑にしていただけあって、市販の容器を見せてもまったく納得していない。オレがやることはまず疑えが鈴音の脳裏には刻み込まれているようだ。失礼な話だ。

 

「疑い深いな。容器の中身でもすり替えたとでも言いたいのか?よく見てみろ」

 

 中身を詰め替えたのかを確認するために容器を確認していた鈴音だが、わざわざ見せるものに素人に見られてばれるような作業をするわけがないじゃないか。念の為に鈴音の腕を縛っているしな。

 

「……少し、中身を見せてもらえる?」

「構わないが……で、どうだ」

「……確かに、半透明の微黄色、スチ○○○○ールの色だわ……でも、いえ、そうね……市販の薬ね、見た目だけなら」

 

 疑い濃くとも自分の目で確認したことは覆さずに認める鈴音に、桔梗が食って掛かる。

 

「ほ、堀北さん、良くみて良くみてぇ!あんた、次っひああああっ!」

「わかってる……わかっているわ。でも、信じられないのだけど、本当におかしい所ががないのよ……未開封のを開封していたから、中身を入れ換えてもいないようだし継ぎ目もないわ」

 

 サイバー関係ほどではないが、現代において、瞬間的にリラックスしたり相手を朦朧とさせ軽度の検査で反応しないようにする薬物は交渉時には必須だ。

市販口臭清涼剤の中身だけ別物に取り替えることなど日常的と言っていい。

当然ホワイトルームでは薬物を学ばせ投与させて自力で調合を含めた対処をさせた。

 

「う、嘘でしょ。なら何なのっ、この冷たくて痛いのわあっ!?」

「……l-メントールが含まれているから、おそらくこれよ」

「なんでっ、あんな少し塗られただけでっ!こんなあっ!」

「……言い難いのだけど、その、櫛田さん剃られた直後だから、肌が」

「う……分かった後は言わないでぇ」

 

 後ろ手に拘束されて、器具つきの形のいい乳房を震わせながら確認する鈴音の姿と、健康的な色香の裸身を弾ませて悶える桔梗との会話を聞きながら獣欲を滾らせて待つ。

 話が一段落したときに、丁度一度薬効が収まる時間になったことに満足して口を開く。

 

「とことん疑い深いな。最初はひんやりしたかもしれないが今は大丈夫だろう」

「……う、確かに今はマシになったけど、塗る前に一言言ってよ」

「悪かった善処しよう……まだ、本の少ししか塗れていないから大したことないからな」

「え?今、何――っ」

 

 桔梗の体にゆっくりとした異変が起きたのはその時だった。

 

「ふあっ!?」

 

 陰毛一つない下半身を、身を悶えさせる。呼吸がせわしくなり、汗をじっとりと滲ませて腰をくねらせる。

 

「な、何っ、あ、あそこが……あそこが熱い……ううんっ、か、痒いっ!?」

 

 顔を顰め泣きそうな顔で訴えてくる。最初は衝撃、次は灼けるような感触。熱みを帯びた、こらえようのない掻痒感を与えるように調合している。

 

「あっあっあっあっ、かゆ、痒いっ、あぁ、はぁはぁ、痒いっ、はぁ……あうあうぅぅっ」

 

 大きく溜め息を吐きながら舌をだらりとたらしながら汗をしたらせる。喉がひどく渇き、灼けるような感触が全身に広がる。火照った体に床の冷たい感触が心地よく、体が自然と床の上に仰向けになって擦りつけようとする。

 そんな、桔梗の肩を抑えつけて動きを封じる。

 

「どうしたんだ?床に体を擦り付けたら汚れるぞ」

「うぅぅぅっ……な、軟膏じゃ、ない、っ…これ、絶対違うっ…な、何を塗ったの!?」

 

 汗まみれの顔で恨めしげに見上げてくる。

 

「もちろん軟膏だ。鈴音が確認したのを見ただろう」

「ち、違うっ違う違うぅぅあああっ!?……痒いっ……うぅっ、うあああっ!?」

 

抑えつけられた格好で脂汗を流しながら、痒みから逃れようと必死にもがいて悶絶する。

 

「まだほんの少し塗っただけで、ここまで過剰な反応をするとは思っていなかったな。掃除しているとはいえ、床の上は衛生面で問題があるからベッドに行くか?特に今の床は」

 

床の上に指を滑らせ、桔梗が悶えたせいでくしゃくしゃになったブルーシートから零れた二、三本の毛を掴み桔梗に見せる。

 

「こんな風にお前の陰毛がこびりついているか――」

「な、何てもの掴んでるのよ!?この、馬鹿ぁ――――っっ!!!……あ゛っ!!……ひいっ!!……痒いっ…うぅっ…痒いっ…」

 

桔梗の咆哮による軽い耳鳴りに耐えながら、目を見開いて悶絶する桔梗を膝立ちにさせ痛めないようにクッションにひざを置き、股間とベッドの間にはこぶし二つほどの隙間を開けて、へそから上の桔梗の上半身をベッドにうつ伏せに置く。

 

「あっ!?」

 

 かすかな悲鳴を桔梗はあげる。皆の体液が冷めたせいでしっとりと濡れたシーツが火照った乳房に一瞬安らぎを与えて

 

「う、うぐぐぐっ」

 

 ニップレスのごとく乳首を覆い、ニップレスとは違う硬度で固定されたローターにより、乳首の隆起を抑え込まれ痛みを同時に与えられる。

 

「あ゛あ゛っ、ぐっひんっ!」

 

 隆起を抑えこまれた乳首をシーツに押さえつけてしまい、自重の重さを加えて押し潰し耐え難い痛みに脂汗を流す。

 少しでも乳房に安らぎを与えようと、後ろ手に縛られた肩を左右に振り、乳房をシーツにこすりつけながら乳首を押し潰さない姿勢を探し、裸体をくねらせる。

 後ろ手に括り上げられたことで、まだまだ少女の青さの印象が強い肩甲骨が何かを訴えるように蠢く。

 そうしているうちに何とか乳首をつぶさないましな姿勢を保てるようになり、乳房を歪めた姿勢で桔梗は一息つける。

 だが、そうしているうちに軟膏を塗った下腹部を熱さを伴った急激な刺激が襲う。

 

「あうっ!あうあああっ!!?」

 

 桔梗はキュっと尻の双丘を絞る。膣の巾着ぶりを示すように二つの丸いふくらみにえくぼのような窄まりが出来て、あられもなくもたげられて左右に振られる。

 オレにとってそれは目を細めて鑑賞するべき光景だった。

 

 剃毛されたばかりの少女が、ためらいがちに乳房を歪ませながらシーツに擦りつけローター付の乳首の部分を常に衆目に晒し、まだまだ青さを残しながらも肉付きのいい尻をものいいたげにせわしなく上下左右させている。

 あられもなく身をくねらせる姿が、どれほど男を愉しませるかまだ桔梗は知らない。

 

「そそるな」

「く、櫛田、さん、え、そんな……うそ……あんな姿……が…いいの?……え……」

 

 理解してしまった鈴音は完全に竦んでしまっている。後で、鈴音を悶えさせて桔梗に見せなければならない。百聞は一見に如かずだ。そうすることで、この続きの一考も一行一果一幸一皇と彼女たちなら続けてくれるだろう。

 こういう風に体をくねらせて誘ってくれれば、オレも彼女たちも皆幸せだからな。

 

「あっああっ!痒い、痒いっ!痒――」

「おいおい、塗ったところを擦るなと言っただろう」

「だ、だって―――な、何を……」

  

 耐え難い掻痒感に襲われる桔梗は、下腹部に塗りつけられた薬を少しでも擦り落とすことしか考えられない。

 そのため、オレの言うことを聞かずに、股間を擦り付けようとする。そんな桔梗の体を、股間とベッドの間にこぶし二つほどの隙間を開けて、そから上の桔梗の上半身をベッドにうつ伏せに置く姿勢に戻し、両膝を片足ずつ括ると、それぞれの膝下をテーブルの足に括りつける。

これで、股間をベッドにも腿で擦り合わせることも出来ない。

 

「これで足を閉じられなくなったな。残りを塗るぞ」

「ああっ、いっいあああ…はあっ……え?えっ?……の、のこりって」

 

 痒みに耐える中、信じられないことを聞いたように桔梗が聞き返してくる。オレは軟膏の容器を見せ付けながらゆっくりと手を突っ込む。

 

「剃ったところを全部塗らないでどうするんだ」

 

 さっきは指先を湿らせただけの薬が、こらえきれない刺激を与え続けている。なのに今、オレの手には手のひら一杯に軟膏が蓄えられている。年度の高い液体をくちゃくちゃと音を立てて両手をこすり合わせていくうちに桔梗の顔色が赤から白に変わる。

 

「……ま、まって、ねえ、待って、よ。剃ったところって、その、あ、あそこ、の周りも?」

 

 怯えた表情になるだけの余裕もなく、固まったような笑顔で確認してくる。

 

「あそこ?」

「う……あ、うぅ…お、おまんこの、周りも?」

 

 恥ずかしいことを言っていても羞恥心も表情に出てこず、固まったような笑顔のままだ。

 さっきオレが塗ったのは敏感な部分の外れの場所、わき腹程度の感度さしかない。それなのに、この掻痒感。もし、こんなものが大量に秘所に塗られたらと想像したくもない。

 

「当たり前だろ。尻穴の周りもクリームを吹きかけて念入りに剃ったんだたからな。塗るにきまっ――」

「ほ、堀北さんっ!!助け、助けて!?そんなのっ!むりっ、絶対無理ぃっ!?助けてぇ!?」

「あっ、き、清隆君っ、あなた、いい加減に―――!」

「……危ないな」

 

 固まった笑顔の表情から出た桔梗の唯一の味方に対する悲痛な絶叫に、茫然自失から反射的に呼応して後ろ手に縛られたままタックルを仕掛けてきた鈴音を肘で捕獲する。鈴音は割と衝動的なところがあるところが可愛いところだが、今回は違う。

 本当に危ない。疲弊した身体で後ろ手に縛られたままあれだけの速さで突っ込むとは、怪我をしたらどうするつもりなのだろうか。せっかくきれいな顔と体に生まれついたのだから大切にしてほしい。

 そんな感じ畜生極まりないことを言いながら、手袋を取り外し、とりあえず胡坐をかかせて膝周りを固縛することでうつむき加減の姿勢で固定られながら「あなたが言うな」と抗う鈴音を無力化する。

 

「さて、危ないことをしたお仕置きといこうか」

 

 予想していたいくつかの動きの一つをした鈴音に対して、用意しておいた道具を引っ張り出す。

 

「な、なに、そのマット、何で、盛り上がって……ちょっ、止め、私の体持ってなにす……くぅうぁぁっ!!?」

 

桔梗を括ったテーブルの上に山のように真ん中が盛り上がり頂上が足つぼの凹凸で出来ているゴムマットを敷き、盛り上がりの部分に鈴音の秘所を置いた。

股を攻める部分が広範囲の初心者向き木馬くらいの広さが有る上に、膝が机に少しだけついているため大分ましとは言え、自重を敏感な股で支え、粘膜を足つぼ凹凸で刺激される衝撃に悶える。

 

「こ、こんな格好っ……なに、このマット、変なでこぼこがっ、あんっ…っ――清隆君、あなたって人はどこ、まで変態なのよ」

「ずいぶんな言われようだな」

「女性の毛を剃った挙句に変なものを塗った挙句、裸にして縛って変なマットに乗せる人物を他に何て呼ぶのよ、この変態。人を辱しめるのもいい加減にしなさい。こんな、格好耐えられ――」

「魅力的だぞ鈴音」

「――ぅ、あ、あなたね」

 

 オレは縛り上げた鈴音にわざとらしく視線を向ける。

 見つめられる視線に恥じらい赤らむ顔。

 見ているだけで張りのある柔らかさが想像できる乳房は、その乳房を彩る低周波発生装置と乳首を覆う小型ローターの重さに負けずに上向きを保持している。

 縛られた膝から柔らかな太ももを経て、前屈み姿勢により肉感的に突き出した尻。

 足首はマットの山裾を挟むように大股を開いた姿勢になるように縛った。

 その上で、右上腕からテーブルの下に縄をくぐらせ左上腕に縄をかけることで、前から縛っていた両手と合わせて動きを封じた。

 結果、秘所をゴムマットの足踏みマットのような凹凸の表面の上に置いた前屈みの姿勢で固定。秘所に目を向ける。

「床の上に垂れているのは何だ?」

「――っ、あ、汗、よ」

 

 自重で凹凸表面のマットの上で秘裂が開き、広がる割れ目からたまっていた愛液が溢れて落ちていく数本の水筋と水溜りに向けた、オレの舐めるような視線と言葉責めに耐えられずに、鈴音は顔を背け真っ赤になった身体を机の上で縮める。

 

「そうか」

「……え?……それ、だけ?」

「ああ」

「――っ、そ、そう」

 

 物足りなそうに呟いた後、何かを振り払うように頭を横に何度も振る桔梗との69から絶頂してない鈴音から、背後で行われた余りにも畜生過ぎる一連の流れを悪夢をみるように凝視する桔梗に視線を向ける。

 さて、初心者用木馬(凹凸あり)に乗せた鈴音がどうなるか、桔梗次第だな。

 

「さて、続きだ……愛液が垂れすぎているな。塞ぐぞ」

「ひいっ……な、何それっ!や、やめてっ、やめてよ……清隆くんの以外、いれっ……やめ……ああぁぁっ!?」

 

秘所にタオルの先を親指の大きさにして軽く丸めて一結びして捩じ込む。真珠色の体液が吸いとられていくのを見ながら、秘所周りのだらだらと垂れていた愛液をを拭う。

 

「あ、あああっ!いやっ、気持ち悪いっ!……」

 

膣内にタオルを捩じ込まれ桔梗は嫌悪に身体を震えさせる。しばらくタオルを追い出そうと必死で腰をゆするが、その奮闘も痒みに覆われていく。

 

「や、痒い、痒い、痒いっ!……やだぁ、清隆くんのじゃない……気持ち悪いっ……やだよ」

 

 鈴音の重さが加わったテーブルに脚を封じられ、僅かに腰を揺することしかできずに、オレの逸物を覚えた身体はタオルに嫌悪感と同時に物足りなさを覚え心を追い込んでいく。

しかし、ここまで嫌がるとはな。薬のお陰で今は呼吸が精一杯で言葉を発するのさえ苦しいはず、なのに意味ある言葉で拒絶するくらいに嫌か。

 桔梗の反応を当たり前と受け入れている鈴音も含めて、秘所はオレの肉体以外嫌悪の対象か。

 男心としてはたまらないが、準備したアイテムの数々が無駄になってしまった。

 ……切り替えるか、バイブはアナルのほうで使おう。新しい手袋を取り出して装着、軟膏を手に塗りつける。

 

「や、やめてっ!も、もう許して。ああっ、虐めないで。そ、そんなに塗られたら……ひィッ!」

 

 切羽詰った息を吐きながら、ひくっひくっと嫌悪痒み切望に震える桔梗の柔らかな尻をべたりと掴む。びくっと震える身体と尻肉に沈み込んでいく指と染み込んでいく軟膏が支配欲を掻き立てる。

「塗るぞ」

「ああ……いや……痒いっ……あっ、何でっ…今度は、熱くなって、きたっ、痒い……むり、だよ……」

 

 必死に唯一自由に動かせる首を振って懇願する桔梗に有無を言わず、強制的に尻をぐっと突き出した股間に軟膏を塗りこむ。

 

「あひあああっ!?」

 

 熱く火照った肌に最初だけひんやりとした感触を与えられる軟膏を塗られ、紅潮しきった顔をのけぞらせながら刺激に耐える桔梗の尻穴回りから塗りこむ。

 

「ああっ……冷っ……痒っ……熱っ……んひうううっ!」

 

 最初だから粘膜を避け大陰唇の外側を塗りこむ。感じやすい陰核の周囲の皮膚を引っ張り念入りに塗りこむ。

 その間、丸出しに剃られた性器を息がかかるほど近くでオレに観察される。

 羞恥で全身が赤く染まり、赤貝の身のように濃いピンク色をした秘所が息づくように開いて閉じる。

 剃り上げた箇所を摘み、秘所の呼吸を止めると同時に塗りたくる。

 

「やあっ!やああっ!」

 

 少しでも塗られまいと、不自由な体を跳ね躍らせ、のたうち体液を跳ね飛ばしながら抗う桔梗の姿を見ながら、悠々と尻の谷間に手を差し込み、ぐじゅると音をたてながら尻の谷間で薬を拭い取る。

 

「柔らかくて暖かい、拭い取るのにいいところだな」

「う、うあああっ!うああああんっ……ひいっ」

 

 軽く言葉責めをしながら、新しく軟膏を掬い取ると尻の谷間をぐっと開いて会陰をなぞるように薬を塗りこんで桔梗をのけぞらせたりしていじりながら、満遍なく塗り終わった。

 

 

 

「あ、あああっつ、ああっ……やだあっ……」

 

 薬を塗り終わり、薬が浸透するまでの間、これからどうなるかと怯え恐れる桔梗の苦悶の声を聞くだけでは芸がない。

 

「あ、あなた……何すっ…むぐぅ」

 

 桔梗の秘所に入れたタオルのもう一方の端を一括りして鈴音の口に捻じ込む。

 

「……ごほっ……何馬鹿な……こ、と」

 

 吐き出し睨み付けた先にスイッチを手に持ったオレの姿を捉え、蒼白になっていく鈴音。無言でスイッチを押す。

 

「ああぁっやぁぁぁぁっ!?……いやっ、もう、これ……ぁ…ぁ……ぁ」

 

 乳腺を再度刺激され鈴音は体に電気が走ったように、体を痙攣させながら弓なりにそらそうとして、テーブルに回した縄に動きを封じられガタリと机を揺らす。 強制的に体を丸めさせられ目からあふれる涙がテーブルに落ちる。

 後ろで大きな物音を立てても、薬の効果に怯える桔梗には振り向くだけの余裕さえないようだ。

 そんなことを思いながら、カチリと乳首に取り付けたローターを低レベルで振動させる。

 

「あっ!!」

 

 悲鳴ではなく鈴音は驚いたような声を上げ、その瞬間表情を変えた。肌を濡らしていた汗が一度止まり、

 

「ひああいあいあいっ!?ひゃああぁぁっーーー!?」

 

 絶叫とともに汗を噴出させ、鈴音の股間からこんこんと愛液がゴムマットの凹を下ってテーブルに落ちていく。

 一人の少女として堪えられない恥ずかしい姿、鈴音はそんなことどうでもいいとばかりに叫ぶ。

 

「あ゛っ……あ゛う゛う゛うううああーーー!?」

 

 乳腺を低周波で刺激された上に、乳首に覆い包み込んだローターが乳首をこねくり回すように振動するのだ。その上、隆起しようとする乳首は押さえつけられて、敏感すぎる場所が隆起しきれず中途半端なところで押さえつけられる痛みと快楽。

 

 鈴音が鼻水たらして泣き叫ぶのも無理はない。

 

「ぐうっっ!……うっぐっ!?……あひああっ!……うぎぃっ!!」

 

 処女をもらったときも、こんな夜行性の獣が発する奇声のようなつらそうな悲鳴を上げていた。

 今は、苦痛一色ではなく快楽の色が時々混じっているあたり鈴音も成長したのだ。サディストとして育て慣らしてきた充足感が湧き上がってくる。

 

「あい、ひ、ひあ、あい、と、とめ、とめ……ぁ…ぁ……」

 

 右手で呂律が回らない鈴音の両方の乳房を掴む。人差し指中指の間と中指薬指の間に、それぞれの乳首を覆ったローターごと挟み込み、ぶるんぶるんと大きく揺れる乳房を握り締める。

 

「はぐうっ!」

 

 指を食い込ませれば、それを押し返そうとする弾力がある乳房の感触を楽しみながら、指に挟んだローターの振動を抑えるように力を入れる。

 

「……あ、ああっ、はああっ……はあっ……はあっ……」

 

 呼吸さえできずに叫び続けた鈴音は、どうして振動顔が弱くなったのか理解すると大きく息を吐くと荒い呼吸を繰り返す。

 

「はっ……はっ……あ、ああ……ううっ……お願い、お願い、離さないで、おっぱいから手を離さないで」

 

 乳房の大きさからこの姿勢だと、弾力のある乳房を引きちぎりそうに伸ばすことになるが、乳首の振動がオレの指で押さえられているだけましなのだろう。

 上気しきった顔、苦痛の中の快楽で蕩けきった目から安堵の涙を流しながら懇願してくる鈴音の顔は、端的に堕ちる寸前の顔だ。堕ちる直前の顔というのはどうしてこうも男心をくすぐるのだろうか。

 そんな鈴音に開いた左手で、桔梗の愛液がしみこみ先ほど吐き出したタオルの端を持ち、この責めをするときに唯一口に出すつもりだった言葉を吐く。

 

「銜えろ」

「っ――んむっ」

 

 一瞬の躊躇の後、桔梗の愛液が染み込んだタオルを顔を乗り出して白く輝くような歯で銜えこむ。それと同時に鈴音を苛めていた器具のスイッチを切る。

 

「んんっ……んふぅーーっ」

 

 安堵の色濃い息を塞がれた口ではなく鼻から漏らす。その様は滑稽というよりただ可愛らしいと思えるあたり、美人は得なのか、それともオレが絆されたのか。

 

「これから桔梗がどんなに暴れても、タオルをお前の口と桔梗のまんこから出さないようにしろ。いいな」

「んっ」

 

 割と酷い指示を軽く頭を下げて受け入れる。この素直さというより必死さ、無言攻めを貫いた甲斐があった。

 人間、無言のまま酷いことをされると少しでも楽に見えるほうに手を伸ばすからな。

 ポタリポタリ 

 流石にタオルに染み込んだ桔梗の愛液を飲み込むことはできないのだろう。鈴音の唇の端から筋をたらして唾液と愛液が混じった液体が垂れていく。

 「飲み込め」と言おうとしたが、目を半ば閉じ酸素を得るために鼻息を荒くしながら疲労と快楽で蕩けきった表情を見ているとこれはこれでいいかと受け入れる。

 

「しかし、はしたないというか。女の顔になったな、鈴音」

「んっ!……ん?………んんんっ!?」

 

 その代わり手鏡で今の鈴音の表情を映してやる。涙汗涎鼻水を垂れ流しながら、誰もが淫らと評するほど蕩けきった顔を。

あまりに淫らな顔に自分の顔だと信じられずに、まじまじと鏡を見詰めその動作で理解した鈴音の顔がりんごのように赤くなる。咄嗟に鈴音は見たくないというように顔をそらそうとして

 

 ズルッ

 

「んむっ!……んふぅーっ」

 

 あわてて首を元に戻し、今の音がタオルが少し張ったことで生じた音だと確認して安堵の吐息を鼻でつき

 

「……はぁ……そこまで引っ張るなら落としてくれよ鈴音」

 

 オレが残念だとため息をつきながら手に持ったスイッチのボタンから指を離すことで、鈴音は安堵して拘束された体から力を抜いて一息つく。

 隙あらば押すつもりだったスイッチを残念そうに弄るオレに、どうすれば口をふさがれたまま手からスイッチを離せと伝わるかと少し思案する。

 

「ん……ん「はっ!……ひっ!……はひゃああああああーーーー!!!」ん、う?」

 

 思案が終わり、どうやって伝えるか決めた鈴音だが、さっきの鈴音の叫び声など叫びではないと言わんばかりの咆哮じみた音によって、視線を桔梗に向けて驚愕に目を向いて固まる。

 

 

 

「アヒ、アヒ、アヒ、アヒ、アヒ、アヒぃぃーーーっ!!」

 

 そうこれはもう声で無く音に分類すべきだ。

 

「ヒア、ヒア、ヒア、ヒアヒアヒアぁぁーーーっ!!」

 

 何かの人形のように全身をガクガクと揺らしながら、桔梗はその口から音を発し続ける。

 

「アッ!アッ!アッ!アッ!アッ!……イッ……イアイっ……イアヒアヒアっーーー!!!…………アヒっ……」

 

 鈴音と片足立ちのオレが上に乗った机――桔梗の力と姿勢ではビクともしない――をガタっ小さく揺らし、このまま立つのではないかと思えるくらい背を弓なりに仰け反らせ、頭を振って音を出し――

 ――桔梗は仰け反ったまま、時間が止まったかのように動きを止めた。

 

「あ………あ…………あ……………にゃ……にゃに……これ……しゅご………しゅごい………」

 

 言い終わると同時どさりとベッドに倒れこむ。ピクリとも動かず呼吸の音さえしない。

 ……意識が朦朧としているだけか。計算通りだ。粘膜を避けたとはいえ、初めて剃毛したあとの敏感な皮膚だから効きすぎるのではと少し心配したが、調合は巧くいった。

まあ、オレが何かをして失敗することはない。していたら今頃ここにはいない。

 

「……は……はへ……はへっ……はふっ……あそこ……あそこ……やけ……あちあちっ………」

 

 音ではなく言葉を発するようになったが、その声からは知性も理性も感じられない。

 

「はぁはぁはぁ……はぁっ……はぁっ……ひあうっ!!?」

 

 何度も深呼吸をして、ようやく息を整えたように見えた桔梗が、いきなり体を弓なりにして絶叫する。

 ……ここまではうまく調合できたな。

 

「うあああああっ!!?あひあああっ!?まっ!またっ!!またあああっ!!?ひゃあああっ!?やぁあああっ!!!」

 

 あまりの刺激にシャットアウトした脳と神経が、肉体が落ち着いたことで感覚をまた繋げた。桔梗に塗った薬は塗ったまま中和もしていないのだから当然だ。

 

「やああああっ!!?やああああ!!?いやああああっ!!?」

 

 さっきまでとは違い桔梗は人の言葉を絶叫する。獣の咆哮に近いとはいえ人の声だ。

 体が薬に慣れたのではない。この薬は浸透した直後十数秒だけ最大の刺激を与え、その後は何とか耐えられるようになるだけのことだ。

 ……一番難しいところだったがうまく調合できたな。

 

「やあああ………ぁ………ぁ……」

 

絶叫途中で途切れ、またベッドに突っ伏す。脳がシャットアウトして失神したな。

可愛らしい顔を白目を剥いた絶叫の表情で固まらせたまま僅かな呼吸音だけをたてる。

ドッと今まで止まっていた。汗涙涎鼻水愛液、全身の穴という穴から――膀胱が空になり流せない尿を除く――体液を流しながら痙攣する。

年頃の娘として絶対に見られたくない状態。この状態が、音・映像何らかのデータが流れたら死にたくなるような格好を他者に見られている恥辱さえ桔梗には感じる余力さえない。

そんな恥辱の中でも、それでも桔梗の肉体は休めた。

脳が感覚を繋げる数秒間は。

 

「あ……あが……あがあ゛あ゛ああーーっ!?まだ!?あひあああっ!!」

 

 薬が効いている限り桔梗に安らぎの時はない。

 男の前では口にすることがはばかれる部分が灼けて痒い。軟膏を塗られた女の命の部分から、体の奥底を経て全身に痒みが染み渡っていく。

 もう、さっきまでの少量のものではない。少量のときあった、一時潮が引くように緩んでいた灼熱の痒みは、もう間断なく桔梗を襲い苛む。

 

「いッ、いいいいいッツ!!あああーーぁぁぁあーーっ!!」

 

 達成感に浸るオレの鼻腔にツンとした匂いがついた。潮を吹いたかと一瞬思うが、桔梗ではない、この薬は刺激し高めるだけで薬だけでは絶頂出来ない、イキたければ自他どちらにせよ外部刺激が必須なのだ。

 そもそもアンモニアの匂いだ。膀胱を空にしておいた桔梗のはずがない。

 

「鈴音……漏らすのはいいが後で拭いておけよ」

 

 桔梗のあまりな姿にかたかたと全身を震えさせ、ゴムマットからテーブルに水溜りを広げていく鈴音に告げる。

 まるで幼い少女のように、怯え竦む鈴音の意識がこちらに向くのを待ってからもう一言告げる。

 

「お前の陰毛を剃るまでにはな」

 

 あえて剃った後鈴音にもこの薬を塗るとは告げずに、暗に伝える。その方が効果的だ。

 

「んんーっ!んんっ!!んー!んんっ!んっんっ!」

「すまんが、何言っているのかわからない」

 

 恐怖と絶望と混乱で本気で涙を流す鈴音が何が言いたいのかをこれ以上なく理解しつつ、鈴音が口からタオルを離せない原因のスイッチをいじりながらそう言い放つ。

 

「んんっ!んーーん!んっんっんっんっ!んうっ!」

 

 それでもぽろぽろ涙を流しながら、桔梗の絶叫が響く中ぐぐもった声で必死にオレに伝えようとする鈴音。あまりにも可愛すぎてもっと苛めるしかないじゃないか。

 体重を預けていた机から足を離す。これで机には鈴音しか、そう擬似的な三角木馬初心者バージョンに拘束されて跨った鈴音しか残らない。

 

「あああっ!!ひあああっ!!だめっ!……だめえっ!!」

 

 こうなると、仮令非力な桔梗でも刺激に狂ったように叫びながら踊れば大きく机を揺り動かせる。

 

「んうぐっ!?んんんんっ!んんん!!」

 

 体重を両足とゴムマットに分散しているとはいえ、股間がゴムマットの凹凸に食い込み粘膜をさらけ出していることには変わらない。敏感な粘膜が凹凸に食い込んだ上に擦られ、目を見開いて痛みを伴う快楽に鈴音がくぐもった悲鳴を上げる。

 

「あああああっ!!だめっ!……だめえっ!!」

「駄目か、……何が誰をどういつどこでどうして駄目なんだ?」

「あ、ああっ!きよ……たかくんんんっ!……ごめ……ごめんなひゃい……ごめんしゃひ……わらひ……わひ……あああああっ!!……あひあひああっ!」

「んっ!んんっ!んぐ………っ」

 

 そんな鈴音に気付く余裕さえない桔梗は、周囲に気を配る余裕がなくとも耳打ちをすれば脳に届くことを把握しているオレの声に、地獄の底でくもの糸を垂らされたような顔をする。そのまま、呂律が回らない声で懇願し始めるが、薬の刺激に耐え切れず奇妙な音を口から出しながら泣き叫ぶ。泣き叫びながら、肉付きがよくても青さが際立つ少女の体をくねらせもがく。

 その動きで机を揺すられ、鈴音が秘所に受ける苦痛と快楽に美貌をゆがませながら、くぐもった苦悶の声を出す。

 

「……二十秒待つ、その間に言いたい事があれば言ってくれ」

「あ、あああぁぁーーっ!?ひあいひあああ、むっ……むりいいいあいあいいっ!!?」

「んっ!んんっ!んぐぅぅーーっ!!?」

 

 追い詰められた叫びをあげる桔梗、その様子を見ながら口に出して二十数える。が、二十秒たっても桔梗は絶叫しながら乳首の隆起を押さえ込まれる痛みさえ気にすることが出来ずに仰け反り、鈴音はその動作で木馬責めをされて快楽交じりの苦悶にすすり泣く。

 

「意識が彼方此方に逸れているか……意識を集中させる手伝いをしてやろう」

「ふあひあああっ!?にゃ、にゃにをああああ!!」

「たいしたことじゃない。人間は、視界で情報の八割を得るからな。そこを塞ぐだけだ」

 

 桔梗の目にアイマスクを被せ視界を覆い隠す。

 

「あひあっひあっ……にゃ、にゃに……なんで、めか……あひあああっ!」

 

 視界を覆われた分感覚が鋭敏になる。繊細な部分が薬効でたまらなくむず痒く、まるで無数の蟻に這い回れ齧られているところに熱い熱湯を注ぎ込まれたような状態の今、鋭敏になる。鋭敏になってしまった。

 

「や、やあああっ!?やめっ!やめっ!やめてぇええーーっ!……あひあひああああっ!!?……ああっ……あっ…だ、だめ……もう、だめ……ぇ……ぁ…ぁ…」

 

 鈴音にくぐもった悲鳴を上げさせながら、もう一度大きく仰け反りながら泣き叫び脳がシャットダウンして力尽いてベッドに倒れ伏し、ビクビクと全身を戦慄かせるところまで見届ける。

 残念ながら、桔梗は言いたいことをちゃんと言えないらしい。

 

「待っていても時間の無駄だな。桔梗、何かいいたいのなら、何がどう誰かいつどこでどうして駄目なのか言えるようになってからにしてくれ。のどが渇いた」

 

 そのまま踵を返して、わざと足音高く冷蔵庫に向かうオレの背中に、脳が復活して全身をさいなむ痒みに焙られながらの絶望したような叫びが届いた。

 

「あ、あっ、ああっ!ああああっ!と…とって…とって!とってぇぇ!ひあああっ!うぐぐああーーっ!!」

 

 あまりにも悲痛すぎる哀願の叫び、これで足を止めないのはどうかしているだろう。

 

「飲み物の前にトイレに行ってくる。その間で話す事を纏めておいてくれよ」

 

 そのまま足音高く歩く。

 剃られ薬を塗られ縛られた諸悪の根元と言うべき相手でも、鈴音が縛られている今、桔梗にとっては唯一の救いだ。その救いが行ってしまう。

 

「い、いやあああっ!おね、おねあいっ、ああっ、へんにに…ゴホッゴホッ…ゴホッ…へ、へんにぃぃぃああああっ!!?」

 

 咳き込んでも、言葉を絞り出して必死に呼び掛ける言葉に足を止めず、ゆっくりと一歩一歩

 

「ひゃあああーーあっ!!やめて!とみゃってぇ!いかな――」

 

 バタン

 

「いで……」

 

 足音が部屋から消える。

 

「…あ……あ…ああああーーっ!?あいいっ!ああっっ…たしゅ……たしゅけぇぇぇっ!!た、す、けてぇぇぇ!?」

 

 この悲痛な叫びを可愛いと思える自分のアレっぷりが少し愉しい。

 扉の開け閉めだけして冷蔵庫に近いていくオレを、一連の流れを見届けたせいか、木馬責めで悶絶しながら悪魔を見るような目で見つめる鈴音の視線を受け、視線で桔梗との間に架かるタオルを指しながらスイッチを弄ぶ。

 慌てて意識をタオルに戻し、口枷木馬責めに合いながら、必死で桔梗の動きに合わせて白い裸体を踊らせる鈴音の姿を見ながらそう思う。

 

 さて、しばらく見学するか。劇薬を塗っておいて放置するはずがないのもあるが、快楽に悶える二人は見たいと思える題材だ。

やはり、剃毛後は羞恥プレイか快楽プレイが王道だな。恵のときは羞恥素股だったぶん、二人相手は快楽プレイをじっくりしよう。

 




 今回綾小路君が使った薬ですが、後半はともかく前半までの効果なら、布状でねっとりと薬がついた白い湿布だと代用可能です。
 剃毛プレイ後、女性の秘所の形が湿布越しでくっきりと見える上に女性も見ることができるため意外と互いに高まります。楽しいですよ。

 注意事項として、ちゃんと縛らないと暴れて互いに怪我する危険性があるということと、事後に市販の軟膏塗ってアフターケアをしないと病院行くことになりかねませんが。
 女性のあそこ診察するので、女医さんにちくちく何やってるの何考えてるのって責められるのは結構心にくるのでちゃんと準備してプレイしましょう(笑)


 後、堀北さんはダイジェストで済ませます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑪(発情)

opantuさん、モジーさん評価付けありがとうございます。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

最後まで彼女にやらせてあげるべきだったかなあと少し後悔しています。


「あひああああっ……ああっ!……あああっ!?」

「ん、んぐぅ、んむむむっ!んむむ……んんっ……んっんん……っ(く、櫛田さんっ、揺すらないでっ!揺すられると……ひあうっ……あ、あそこ、擦れ……て)」

 

 もう誰にも頼れない今、唯一の対処方法は股間を布か何かで拭くしかないと決意したのだろう。想定通りだ。

 何としても股間をベッドに擦り付けようともがく桔梗と、ガタガタと机を揺すられ秘所を凹凸ゴムマットに擦られジュルッと音をたてながら必死に桔梗の秘所からタオルを落とさないように奮闘する鈴音。

 

「あああっ…―っ―っ」

ガタッ

「んアウッ!」

ジュルッ

 

 薬による激甚なショックに悶え続ける桔梗が身体を揺らし絶叫する度に、揺れるテーブルの上の三角木馬凹凸にピンクの粘膜を擦られ、口にタオルをくわえ込んでいるため響かずにくぐもる喘ぎ声を漏らしながら、鈴音が痛みを伴う快楽を噛み締める。

 

「あぐっ…ああっ……あぐぅぅっ!……ぁ…ぁ……ひあうっ!」

ガタッ、カタッ、ガタガタッ、カタッ

「ん…んんっ…んぐっ…んんっ!……ん?……ん、んぅ…」

ジュルッ、ポタ、ジュリッ、ポタッ

 

 ショックのあまり意味ある言葉を話せず、パクパク開いた口から叫び声を上げ、激しく体を悶えさせ続ける桔梗。少しでも、前に進んで股間をベッドにこすりつけようとするが、膝を痛めないようにとにしかれたクッションと鈴音が乗ったテーブルがさせてくれない。

 大きな悲鳴とともにテーブルを大きく揺らしながら脳がシャットダウンして力尽きる。

 倒れ伏したまま白濁した意識の中びくん、びくんっ、と痙攣しながらテーブルを小さく揺らす。少したって脳が復活し薬の刺激で意識を強制的に戻されると同時に仰け反りながらも必死で前に進もうとあがく。傍から見ればピクリとも移動できていなくとも、ベッドに擦り付けて薬をぬぐおうとあがいてまた力尽きる。その繰り返しだ。

 そんな桔梗の動きで振動する擬似的な初心者用三角木馬に乗せられている鈴音は、秘所をこすられながら絶頂できない苦悶に満ちた快楽のうめきをもらす。

 そう、絶頂できない。こんなリズム感もなく、鈴音の様子を見て的確な刺激を与えてもいないただ秘肉を擦るだけのものでは、今までオレが丁寧かつ執拗に与えてきた快感しか知らない鈴音には、愛撫とは程遠いただの刺激にしかならず絶頂できるはずがない。

 縄で固定された体では、自分で動いて慰めることさえできない。そもそも鈴音は自分で絶頂したこともないからどうしようもない。

そんな状況は、オレの与える快楽に溺れ始め、女として開花しはじめた鈴音に堪えきれるものでなく、低く重いあえぎ声を漏らす。

 

「あいあいああっ」

「ひんっ」

「んっううっ」

 

そんな鈴音に気づく余裕などない桔梗が涙を飛ばしながら背中を仰け反らせる。ぶるんと器具がついた乳房が揺れる。

三角木馬を揺らされて秘肉を抉るように擦られ、鈴音も体を捩るように悶える。

 

「くぅぅっ」

「んんっんぐっ」

 

桔梗は仰け反ったまま、何かを振り払うように体を振る。ぶるんぶるんと千切れて飛びそうなほど揺れる手に収まらない瑞々しく実った乳房から汗が飛び散る。

その動きに合わせて、前屈みの姿勢に縛られ固定されスレンダーな体に似合わない大きさが強調された鈴音の乳房が上下に揺れ秘所を木馬で責められる。

 

「ひいっひいいっ」

「んぐっ…んんんっ」

 

 乳房を大きく揺することで、少しでも刺激から気を逸らせることに気付いた桔梗が、一度前進をあきらめて必死に乳房を大きくふり少しでも股間から送り込まれる暴力的な刺激から逃れようと足掻く。

 その度に自重がかかった秘所を凹凸に擦られながら上下に揺すられ、鈴音が苦悶の涙を流しながら快楽にならない刺激の波に咽ぶ。

 

「イっ!アヒっ!うああっひああぁっ」

 

 軟膏はすでに乾き、秘所をぬらしているのは自分の体液だからもう擦っても意味はないということさえ桔梗は気づけない。薬が浸透しきった体で、乳房をゆすりながらありもしない軟膏を拭い取ろうと前へ進もうとあがく。半開きの唇から涎をしたらせながら、あがく。

 

「うあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁっ……、あぁぁぅぅうぅっ!」

 

アイマスクに覆われているせいでその下がどうなっているのかと想像を掻き立てさせながら、他者の視線を日常では常に意識していたのに気にも留められずあがく。

意味ある言葉など話せずただ絶叫しながら、柔らかな乳房を千切れそうなほど振りながらあがく。

 

「んっ…んっぐぐっ…んっ…んむうっ……ん、んっ…(あっ…あっ…櫛田、さん…かわいそう…でも、うううっ…だめ…こんな…こと考えたら…でも、揺らされて擦られて…気持ちいいときがあっても……イけ、ない…イかせて、くれるの、は……)」

 

 そんな桔梗の姿に哀れみを覚え、それなのに快楽を感じ絶頂できないことを優先して考えてしまう自分。嫌悪混じりの小さな涕泣を漏らしながら冷蔵庫の横で観戦するオレを見つめる瞳が、如何に潤んだ光を湛えているのか、鈴音は気がついていないだろう。

 そんな二人の姿が、男の目にはどう映るのかということも。

 

「旨い」

 

 自分だけが見れるそんな二人の媚態を眺めながらごくりと飲み干す冷えたスポーツドリンクは旨い。今までマトモでなかった半生がこの一杯のためにあったのなら誇らしい。ただ甘いだけでなく、体の奥底から湧き上がっていく昂りの味。

 これが、サディストとしての喜びの味か。今まで悪辣非道なことをしてもこんなことはなかった。

 もっと味わいたくなるが……プレイの範囲で留めていられるか怪しくなってきてしまうな。気をつけよう。

 ――さて、そろそろなんだが

 

「あっ…ぁ…ぁ…ひあっ…ぐっ……はあっ…」

「んんっ、んっ!んぐっ……ん」

 

 体を仰け反らせながら乳房を揺するなんてことをして体力が尽きた桔梗はベッドに倒れ伏す。もう自分ではピクリとも動けないのだろう、りんごのように紅潮した体で荒い息をつきながらぐったりとしている。木馬で嬲られ続けた鈴音も一度大きく体を震わせ、力尽きたようにガクリと頭を下ろす。

 

「…ぁ…はっ…はっ…はっはっは……あ?…ぁ…おわ…った…たすか…っ…な…あ?」

 

 ドクンと一際大きな鼓動が呼吸の音しかしない部屋に響いた。同時に、荒い息を吐き続ける桔梗の顔色が二度変わる。薬による衝撃が薄れ楽になった安堵の表情へ。そしてすぐに目を見開く。

 薬は第三段階に入ったか、乾くと同時に薬効が全身に回るように調合したからわかりやすくていい。

 

「かはっ……!」

 

 重い吐息が、今まで感じた事の無いような色情と共に吐き出される。

 発作と呼んでしまっても差し支えのないような、異常な昂り。股間の奥深くから焼けるような熱い疼きが一瞬で体全体へ回る。

 

「な…な…な……あっ!あぁあっ!あっ…熱い…!」

 

 薬が今まで与え続けていたのはただの衝撃だった。そんな刺激に慣れきってしまった体に痛みと感じるような熱い快楽がズキンズキンと性感を叩き込んできてしまう。

 

「う…うそ……や…やあ……私……も…う…たす…け…あひぃ…」

 

 あまりに強烈な刺激に汗すら流さず全身で抗い続けた体は、ぬれたようにじっとり汗ばんできている。疲弊しきった体はあっさりと刺激から快楽への変化を歓迎して屈服し、熱のこもった吐息を漏らす。

 

「あうっ!うっ…な、なんで…あ……どうして……なんでっ……ああっ…さっきの…薬…が……」

 

 目隠ししたまま、ぼんやりと呟く桔梗。その太ももに力が入り、筋が浮かぶ。タオルの先端をねじ込まれた秘所の最奥をじりじりと炙られ、シミひとつないこんもりとした尻の左右の双丘が互いに擦り合わされるようにムクムクと動く、疲弊し縛られて秘所を擦り付けたくとも擦れず揺すり上げられるその姿は、少女の青さをふんだんに残す桔梗とは思えないほど妖しい眺めだ。

 

「ふっ……んん……ぁ、ふっ……ぅっ……うそっ…ウソでしょ…わたし…こんなの、清隆くんに入れられてイカされる…ときにしか…」

 

 アイマスクに覆われた顔で宙を見上げた桔梗は、力なく顎をさげて開きっぱなしにした口から涎とともにうつろなうめき声を漏らしている。

 そんな桔梗の股間を見続けていた鈴音は、股間に異常を発見して驚愕の声を上げる。

 

「んぐぅっ!?」

「ひ、ひあっ……ちがっ……ちがうの……違うの!堀北さん……違うの……ああっ……こ、こんな……これは、薬のせいで……」

 

 腰から下を小刻みに震わせる桔梗の股間から後から後から愛液が洪水のように分泌され、桔梗の秘所と鈴音の口をつなげるタオルをぐっしょりと濡らしぽたりぽたりと愛液がたれていく。

 視界が覆われ他の感覚が鋭敏になった桔梗はそれが手に取るようにわかり、見えない分想像を掻き立てられ羞恥にもだえようとするが、薬はそんな桔梗の可愛らしい恥じらいさえ許さない。

 

「ふっ……んんっ……ぅぁっ! あっ、あぁぁ……!こ、これっ……」

 

 桔梗の体にここ半月足らずで刻み込まれた感覚が迫ってくる。頭の中が白くなりふわりと天に浮かぶようなあの感覚が迫ってくる。

 

「んひゃあっ!!……あぅぅ……んっ、ぐぅ……」 

(薬なんかでイクなんて……でも清隆くんが悪いんだし…これで…楽になれる)

 

 身体がビクッと跳ね上がり、ぴくん、ぴくん、と収縮する秘部と後ろの蕾が艶めかしくうごめく。背をのけぞらせ天井を見上げた桔梗は、自分が絶頂しかけているのだろうと理解した。

 縛られ強力な薬に責められ絶叫しながら体を動かし続けたために、今では能動的には指一本動かせない桔梗は、見捨てて出て行ったとオレを恨み、薬物で絶頂して意識を飛ばすことを受け入れる。

 

(…………え?)

 

 しかし、桔梗の身体に絶頂が訪れることは無かった。

 あと、もう少しだった。本当にあと少し何か一押ししてくれれば絶頂できた。

 桔梗の体の中で、絶頂しそこねた溜めに溜まったものが放出できなかった気持ち悪い感覚がぐるぐる巡り、絶頂直前で膨れあがった疼きが残る。

「な、何で…だ、だって…あ…ああっ……」

 

 戸惑う桔梗の声が次第に大きく艶を帯びていく。薬による耐えられない刺激が桔梗を襲う。

 ぽちょんと、桔梗の秘所と鈴音の口に橋をかけたタオルが薬で刺激された膣が収縮することで絞られ、床に愛液を流して音をたてる。

 

「あ……ああっ…あひっ…あああっ…」

 

 薬の暴力的とさえ言っていいほどの刺激は強烈に絶頂を促す。ベッドの上に倒れこんでいてもわかる、つんと突き出した胸と尻をはさんでバランスよく括れた腰から電流が走ったように身をくねらせる。今度こそ

 

「…あっ…あっ…くる……ああっ!…………ぁ…はっ…あっ」

 

 またも楽になる寸前に止められる。薬による刺激はある。あるのだ。ただ、絶頂へのあと一歩、止めというものがない。この薬にはない。

 

「あ…あ…」

 

 二度の寸止めによりそれを理解した桔梗のりんごのように紅潮した顔から血の気が引く。

 

「や…や…やあっ……そ、そんなの……ああっ……く、ふっ…はっあぁ……んはぁあ!……」

 

 発情しきり、体のありとあらゆる穴が性の刺激を求め蠢く。

 

「おかしくなる…ほんとうに、おかしくなる…はあっ…はあっ……うぅうぅんっ……はあんっ……」

 

 ぬれた唇からだらりと犬のように舌をたらしながら熱い吐息を漏らす。充血しきった大陰唇は厚ぼったく膨らみ、割れ目からドロドロの本気汁を垂れ流し続け、直下の床とタオルを通した鈴音の口の下の床に水溜りを作る。

 

「あっあうっ…くひっふああうん……だめっあっあ……ぁっぁっあ……もう、わ、わたし、もう……うっくぇんっ……ぁ……ぁ」

 

 火照った体を完全に持て余し疲弊しきって微動だにできない桔梗が、力尽きたように顔をベッドに突っ伏しヒクヒクと震える。薬の刺激で気絶したくてもできず、絶頂のために刺激を与えようにも、縛られ指一本動かす余力も残っていない。

 

「お、お願いっ!清隆くん戻ってきてぇっ!!どうにかしてぇ!痒いの熱いの何とかしてよお!!?疼くの!疼くのっ!あそこが疼くのぉっ!!!」

 

 最後の力を振り絞った絶叫がとどろく。

 

「うああっ……あああっ!!も、や…こんなの……おかしくなる……むりっむりっ!?壊れちゃう!?…体が…熱くてぇ…狂っちゃうよぉっ!!?清隆くんっ、お願いお願いします。疼いて……死にそうなのっ!?いいのにィ、イクのにぃぃいぃ!!?」

 

 さらに体液を股間から垂らしながら狂ったように叫ぶ。全身から体液を流しながら、オレの名を唯一の助けだと叫ぶ。サディスト冥利につきる姿だ。

 

「ど、どうにか…どうに…あ…さ、さわってぇ……あそこ…さわってぇ…熱いところ…さわってぇ……」

 

 ある程度絶頂を知っているから、桔梗はどうすればいいのか理解している。

 桔梗の姿をみていると、本当の意味で絶頂を知らないような女相手ならどうなるのか試してみたいという欲求が沸きあがる。何かしたいという欲求、最近になるまで感じていなかった欲求、叶えたいが……

 まあ、そんな機会そうそうあるはずないが、初体験が異常だと一生引っ張るだろうしな。 

 

「あっあああっあひっ触って触って……あ、あ゛あ゛……」

「桔梗」

「…え……んっ…んぐっ…んくっ…ん…ん…んふぅ……あ…ああ…あああっ…清隆、くん…」

 

 叫び続けて喉が嗄れはじめた桔梗に口付けしてスポーツドリンクを飲ませながら、荒れた喉を舌で優しく舐める。

 ごろごろと喉を鳴らしながら飲み干す桔梗の幾度も涙が流れ赤く腫れた顔を見つめながら、何度も飲ませ唇を離すと同時にアイマスクを取る。

 暗闇から取っ払われたさきにいるオレを、絶頂しか考えられなくなり茹った頭で見上げ、口から涎を垂らし、目を潤ませうっとりと救世主を見るように見つめる。真実桔梗には救世主なのだろう。今の桔梗を何とかしてくれるのはオレしかいない。そのオレが桔梗からしてみれば自分の絶叫で帰ってきてくれたのだ。救われたような笑みと視線は当然のものだ。

 オレがすぐそばで一杯やりながら見ていたことを知っている鈴音の視線は形容する言葉が見つからない。あえて形容すれば「コロス目」だが、今はどうでもいい。

後が怖いが。本当に怖いが。

 

「どうして欲しいんだ。はっきり言ったらどうだ」

「か…体がっ熱くて…奥から後から後から…なのに…だめで……もう、無理なのに……溢れてるのに……うぅぅっ…あ、頭の中が、ひとつしか、考えられなくて」

「…もう、5W1Hなんか求めはしないが、何をして欲しいか位は言ってくれないか」

「……だ、だって…うあっく…こんなとき…ふぅんっ…な、何、言えば…いいか…あっああっ」

 

 まだ羞恥で詰まるだけの余裕が少しあるな。もう少し追い詰めるか。

 

「鈴音とAV見て勉強したんだからどう言えばいいか解っているお前が、そう答えるのか……新しいスポーツドリンク取ってくる」

「あ…あひああっ…ま、まって…あっ…ぺろっ」

 

 ゆっくりと体の向きを変え始める。ちょうど桔梗の目の前に逸物が突きすようにして一瞬体を止める。亀頭に生暖かい感触が触れ、完全に動きを止める。

 

「ぺろっ……ぺろっ…これ、これ、これこれこれこれ、ちょうらいっ」

 

 誘いに乗り、疲弊しきった体を必死に伸ばして俺の逸物をなめる桔梗。不自由な体を限界に伸ばしても、舌先しかオレの亀頭に触れられない。

 それでも、目の前に剥き出しになった亀頭から漂う男の臭いを吸いながら、反り返りビクンビクンと脈動するオレの逸物に全神経を集中して、ぺろぺろとなめる。

 

「ひっっぃっ……あぁっ…!らめなのっはっ…はっ…はっ…イひたいのっ…はひっひい…」

 

 逸物を見て舐め、男の臭いをかいだだけで軽くイッたようだ。

 せわしなく秘肉が収斂してタオルを絞って出来たコップをひっくり返したような水音と、あふれ出した愛液により途切れない小さな水音、乳首に取り付けたローターが小刻みに震える姿を見て確信する。

 

 嬌声を上げながら鼻をヒクヒクさせて、逸物の臭いをかぎながら舐める桔梗に強い満足感を覚える。もう追い込む必要はないな。

 

「おちんちんちょうだい…あひっ…おちんちんおちんちんおちんちんちょうだい…私のおまんこに…おちんちんちょうだいっ…はああっ…ちょうだぁい」

「その前にすることがあるから待て」

「ふぇ」

 

発情して酩酊した口調で 、普段の魅せるものでなく素で童女のように小首を傾げる。

 

「それに、まだ軟膏は効いてない。肌が荒れ――」

「いいよぉ…あれてもいい…人にみしぇられなくても…きよたかくん以外にみしぇる人いないんだから、あかくて…がさがされもいいっ!…あひあひあっぅっ…だから、イカせてっ!おねがいっ!」

 

薬で剥き出しになった素の性格が一番男心をくすぐるとは桔梗はどうなっているんだろうなあ。

 

「どうするかな」

「やだあっ!やっ、あっあっ、なんとかっ、あっ…してえっ…やること…あとにしてぇ…もう、やだあっ」

 

童女のようにわがままを言う。発情しすぎると退行するタイプだったようだ。

 

「いか、イカせてぇ!おねがぁい…ぶちこんでぇおねがい犯して…イカせて…ひあっぅぅっ…何でも、するから」

「何でもだな」

「うんっ。なんでもする…だからぁ…おねがい」

「なら、鈴音の陰毛を剃れ。それがオレがやろうとしていることなんだ」

「ふわぁ…くひっいっ……ふああうん…堀北、さんの?」

「んぐぅ」

 

いきなり飛び火した鈴音の顔が青ざめているのが解る。

 

「……そ、そんなの…むり…あ、あああっ!?」

 

 全身に薬効が浸透した今、もう薬は邪魔でしかない。

 断ろうとする桔梗の秘所に中和剤を塗った指で、剃った後を中和剤を塗りながら擦るように愛撫する。

 触れられた瞬間、狂うような熱さと痒みが快楽へと変異し、膣口から愛液ほとばしらせながら全身をピンとして悦楽に悶える。

 

「あう、うわわあっ」

 

待ち望んだ刺激による快楽は、すぐに電撃のように全身をめぐり桔梗を上らせ始める。ここまでは今までも昇れた。この先が昇れずに、長い間寸止めさせられた桔梗は怯え請うような視線を向けてくる。その姿を見ながら産毛も剃ったスベスベツルツルの滑らかな熱い肌に指を走らせる。

 

「んあああっ……あひあうぅぅっ!」

 

 嬌声をあげていても桔梗の脳裏から不安は消えない。

 無毛の肌をなでこすりつけ刺激してくれる手を止めるのではないか。

 鈴音の毛を剃ると誓わなければ絶頂できないのではないか。

 指の刺激がないと痒みで気が狂いそうなのに、指の刺激があるところが気持ちよすぎて、そのギャップで狂うのではないか。

 その心配を考えるたびに、さらに発情し愛撫による快感が強まる。気持ちいい、もう快楽を味わうことしか考えられない。

 

「やめにゃいでぇぇ!?あはぁぁぁっ!!ひああうぁぁっ!?」

 

 不安のあまり涙をぼろぼろと流す。

 そんな、桔梗の不安は当たらない。そのまま、痒みを掻き取るような愛撫は続き、桔梗を上り詰めていく。

 クリトリスどころか秘所の粘膜にも触れず、剃り跡だけをなぞりこすりくすぐる愛撫が、どうしようもない快感をもたらす。

 

「あ!?なんかきてるぅ…のぼってくるうぅ!!」

 

興奮に熱い吐息を言葉とともに漏らしながら、すべての力が抜けた全身に至福の感情だけをほとばしらせる。

 

「きもちいぃっ!いひよぉぉっ!きよたかくあんっ!?」

 

綺麗に手入れされた眉がハの字を作り、両目の視点は定まらず黒目が浮遊した三白眼になっている。

――これは、爆発するな

 

「イクッ…ああっイケるのッ!イケルんだっ!イクッイクイクっ!いアアアアアアっ!!?」

 

桔梗が見事な白目を剥き出して、体を一度大きく跳ね上げ、ベッドに倒れ込む。

 

「イってるううぅぅ………ぁ……ひっひっひっひっ」

 

声とともに間欠泉のような潮が、秘所から吹き出して鈴音の顔と回りを濡らしていく。

 

「あう…あう…ああっ」

 

そのまま瞳を閉じ意識を落としそうになる桔梗の顎をつかむ。

 

「剃り跡を撫でられただけで絶頂か。どこまでいやらしくなるんだろうな」

「あ……あ…う…だって…くすり…う…あぅぅぅぅっ」

 

涙を流しながら、恥ずかしげに俯く。一度絶頂して僅かなりとはいえ理性を取り戻した今、どれだけ自分が醜態をさらしたか理解し、羞恥に潰れかける。

 

「ふあっ……あ、なんでっ」

 

まあ、薬の薬効が体の芯まで浸透した今、そんな余裕はないがな。刺激がない限り痒みで気が狂いそうになる。2時間くらいは。

 

「う、うそ……イッたのに…さ、触って、清隆くん、あそこ掻いて…か、噛まれてる…なにか小さいのに噛まれて痒い…掻いて」

「鈴音の陰毛をそるのか」

「あ、ああ…そ、そんな…私…そんなの」

「んむうっ…むぐぅ…むむっ」

 

鈴音の苦悶の声に桔梗は迷う。だが、その哀願する発情に濡れた目を見れば誰でも屈服していることが解るだろう。

 

「ほ、堀北さん…うぅっ……出来ないよ…そんなの」

 

しかし、抗う。喋るのもやっとで、喘ぎ喘ぎしながらそれでも精一杯抵抗する。汗が全身からドッと噴出した。

「なら、そのままだ」

「…ううっ…うあひあうぁっ…やあっ……あっ…ああっ」

 

 放置され喘ぐ最中、桔梗は体を痙攣させながら、たまに意識をしっかりさせようと、体に芯を入れるように背筋を伸ばし、すぐにくたりとなる動作を繰り返す。

 絶頂したいのに絶頂出来ない。あれだけ、夢想していた絶頂は一度現実のものになった。なのに、今は絶頂出来ない。鈴音を庇っていては絶頂出来ない。

 知らなければ、想像のままならば、桔梗はまだ耐えられたろう。だが一度身をもって、薬に侵されている絶頂を経験した今、その欲求は抑えきれるものではない。

 

「……ごめん。ほりきた…しゃん……ごめん…ね」

 

寸止め地獄再開から数分後、絶頂させてもらうために桔梗は鈴音の陰毛を剃ると誓った。一度餌を与えられてお預けされたにしては頑張ったな。

 その意思に敬意を服して認めよう。塗った薬は間違いなく軟膏だが、媚薬としての効果もある薬だ。

 

 

 

 

そういうわけだから、大人しく剃られるべきだと思うんだが

 

「なにが、よっ!い、いやぁぁぁ!櫛田さんっやめてぇぇ!?」

 

 まんぐり返しにして両方の手首と足首を拘束してなお、体を揺さぶって抵抗する鈴音に優しく告げた返答は絶叫だった。

 あまりにも秘密主義だったことを反省し、薬の真実をあんなときに言ったのだから当然だが。

 

「堀北さん…ごめんね…ふはあっ…ごめんね」

 

発情と疲労による酩酊した口調で桔梗が鈴音の尻を掴み、ぺちゃりと右横顔を左尻に置いて固定する。ふらつき揺れる視線を同姓の尻で固定したことに気にも止めずにシェービングクリームを手に持ち、鈴音に向けた時に悲鳴を上げ続ける。

シェービングクリームのノズルの先が安定せずにフラフラしていることでも気にしているのだろう。フラフラするたびに引きつる鈴音の顔がオレには良いのだが、それは言うべきではないな。

 

「散々犯したのに綺麗なものだ。桔梗のほうは絡みついて吸い込んで離さない、鈴音のは絡み付いてうごめいて離さない、違いがあっても色素の沈着は未だないのは同じだな」

「あ、あなた、どこを比べているのよ!……そんなところ…櫛田さんと…いいえ。誰とも、比べたりしないで……恥ずか…良識を疑うわ」

 

 膣の具合を比べられ噛みつきそうな顔で紅くなりながらも、女のプライド故にか、自身の膣を誇示するように鈴音の腰がたわみ膣壁がうごめき愛液を垂れ流す。

無意識下とはいえそんな反応をしているのに、恥ずかしいと素直に言えない鈴音をさらにいじめる。

 

「安心しろ。敏感さと気持ちよさはどっちも変わらない。どっちもいい体だ。まあ……」

 

 鈴音の秘所にもう一度目をやる。白く透き通るような太ももの谷間に薄ピンク色の粘膜が覗いている。鈴音はそれほど毛深くなく秘所の割れ目の周辺には何もない。というより纏まった陰毛が恥丘にしかない。

 

「尻の穴の周りに立派な陰毛が、所々に一本だけ生えてるのが違いといえば違いだな。どんな手入れをしてるんだ?おざなりになっていて正直みっともない。桔梗ではなく、オレに剃って欲しいと言えば綺麗にするがどうだ?」

「な…っ…っど、どこ触っているのよ。この鬼畜。そもそも、そんなところ誰も見ないしどうやって手入れ……あっ待って!櫛田さん、落ち着いて冷静に……ひああああっ!?」

 

 無言のまま桔梗がノズルを押す。火照りきった肌に与えられた、冷たいクリームのさすような傷みに鈴音はガクンと身体を弾ませた。泡が滲み出すような感覚に眉がゆがみ、眉間に深いしわが刻まれる。

 

「桔梗、もうちょっと左だ。左」

「ひだりぃっ?」

 

 酩酊状態の桔梗がふらふらとノズルを動かし、また押す。

 

「あひああああっ」

「まだ左だな」

「あう、もう少しぃ」

 

 またふらふらとノズルを動かし押す。

 

「ひうううっ」

「今度は右だ。右」

「みぎ…うん、みぎぃ」

 

 ノズルを押してもクリームが出てこない。シェイクする必要がある。真っ赤な顔でとろんとした目をした桔梗から受け取りシェイクし始める。

 

「待って!お願い待って!?さっきのことであなたに言いたいことがあるのよ。だから、待って」

「ふあぁっ…なに?」

 

 下腹と左太ももを白く染め上げた鈴音が叫ぶ。

 叫び声に反応し、とろんとした目で自分を見つめる桔梗にオレの畜生行為を話そうとする。少しでも桔梗に冷静さを取り戻させようという腹だ。

 

「櫛田さん、清隆君さっきあなたを見ながら一杯や「そんなの…知ってるよ…清隆くんだもん……」って……」

 

 知ってたのか?キレて殴りかかられても仕方ないし、受け入れるべきことをした。なのに理性的な桔梗の発言にマジマジと桔梗をみる。

 

「サドだけど……こんな危ない薬……塗って……ほうちして、どこか行くなんて…あふぅ…壊れちゃうかもしれない……だから、しない……だからどうでも…いい」

「それはそうだけど」

 

乱れる姿を見たかったのもあるが、確かにそれが残った一番の理由だ。この状況で感じるべきではないが、二人に理解されている喜びを感じてしまう。

 

「最初…殺意…湧いたけど…もう…どうでもいい…ぷはぁ…でも…もう、むり…ほしいの……あつくて…んんっ…おおきいの…ああっ……で、イきたいの……」

「櫛田、さん」

 

 発情しきっていながら、瞳に僅かとはいえ知性の光を宿し始めた桔梗に気後される。鈴音もオレも。

 

「8回だよ」

「8、回」

「イカせてくれた後……あふぁ……あと少しでイケたのに…イけなかった回数…はうぅっ…自分で…触ろうとしても…清隆くんが止めてイケくてさあ……なのに」

「い、痛いっ、櫛田さんっ…痛っ…何す…ひっ」

 

おもむろに自らの顔の左横、鈴音の秘所に指を突っ込む桔梗。愛撫ではなくただ突っ込まれた痛みと恥ずかしさに抗議しようとして、桔梗の尋常ではない眼光に息を飲む。

 

「あんたさあ……縛り直されてるときも……テーブルから移動させられてるときも……くはぁ」

「く、櫛田さん……やめっ……」

「ぐちぐちぐちぐち……なんか抵抗してさあ……清隆くんに苛められて…はあっ…イチャイチャして」

「痛っ……やめっ…爪たてないて……いちゃついてなんか…」

 

ぐちぐちぐちぐちから鈴音の蜜壺を思い切りかき回す。痛みだけで快楽なんて感じるはずがないし、桔梗の目的は愛撫ではない。桔梗の目的は、今まで嬲って溜まった愛液だ。

 

「それでも……ようやく……あんたが…んっ……横になってもう少しと思ったら……くはぁ…あんたがさあ…暴れてイケない時間が長引くんだよ…くすっくすくすあははぁ……剃るの抵抗してかばった相手がさぁ……笑えるよね」

 

鈴音の蜜壺から抜き出した指にこびりついた愛液を鈴音の秘所に塗りたくる。

 

「しかも、私より毛短いし少ない、いや、これ……あんた」

「ひっ」

 

鬼気迫る眼光と声音で、愛液を塗りながら鈴音の陰毛を引っ張る。

 

「手入れしてないでしょ」

「て、手入れ?」

「何カマトトぶってんのよ……んっはぁぁっ……水着とか着るとき短くしたことあるかって聞いてんのよ」

「な、ないけど…ひいっ」

 

がぶりと鈴音の尻をかぶりながら陰毛をいじくり回す。かぽっと音をたてて尻から口を離す。自らの歯形がついた鈴音の尻を舐め、唾液を塗って一息。

「……神様って不公平だよね」

「ふ、不公平?」

「安いシャンプー、安い洗顔料で……くふうっ……サラサラの髪にスベスベの肌だけじゃなく……毛まで……手入れ要らずかあ……あはっ、あはははくはぁぁぁっ」

「く、櫛田さん…大丈夫なの大丈夫なのよね」

 

 桔梗のあまりの姿にドン引きしてあわてて確認してくる。大丈夫だ。脳細胞を破壊する薬効はない、間違いなく。発情お預けしすぎて、一周半した桔梗の素だ。理性が飛んでる素。

  恐い。女性という存在は暴力も暴言もなく、ただ感情を発露するだけで男に恐怖心を抱かせる時が多々ある。今がそれだ恐い。オレのせいでこうなったから目を背けるわけにはいかないが、恐いのは仕方がない。

 

「だいじょうぶ…あはあっ…あんたも……おんなじになるから……すごいんだよ、今……んふぅ……あたまの中、ぜんぶ溶けそうなのに…すこしだけ、冷静なところが…はずかしいはずかしい、とんでもないことしないで……はふっ…って泣き叫んでるの」

「あ、う…」

「それがね」

 

ペロリと舌で唇を舐める。

 

「とっても…はぁぁあっ…とってもきもちいいんだ…」

 

 桔梗の淫蕩な表情に、鈴音は完全に飲み込まれた。ついでに、オレも飲み込まれる。調合したとおり一部分だけ冷静な部分を残す姿に、一瞬自失すらして飲み込まれる。

 

「だからね……あんたも、私みたいに剃って薬塗って一緒にしてやる」

「あ……」

 

 自らの尻の上から睨み付ける桔梗の座りきった尋常ではない眼差しに鈴音は腰を抜かしてしまう。

 ヘタリと無防備になった鈴音を見、ガシリと音を立てるように桔梗の手に髭剃りが握られる。

 

「大丈夫、死ぬほど恥ずかしいのに……はあっ……髭剃りがあそこの皮膚の上…うむぅ……剃られてる……うちに……毛がなくなっていく…うちに…気持ちよくなって……変態みたい……くすっ……堀北さん…も、ね」

「く、櫛田さん」

「お尻のしわ、なぞりながら一本ずつ数えられて数えさせられて…ふはぁっ……しわの間に毛があるか確認されてぇ……私は46本だっけどぉ…最初は恥ずかしくて泣き叫んでも…くふぁ…後のほう気持ちよくなってぇ……あんたは…全部でぇ…はあぁっ…何本あって、何本目から気持ちよくなるのかな。ちゃんと言ってね……でないと…ううあはぁっ……手で…ひっこぬくよ」

 

 オレがやったことを口にされると、とことん畜生だな。

 

「く、櫛田さんっ」

「はぁぁっ……あそこの毛…剃られてぇ……あんなところのしわ数えられて……自分でも見させられながら数数えさせられて……こんな薬塗られて…さんざん恥ずかしいこと叫んで……ふふっ……どこの誰がこんなことやってんのよ…ふああぁぁっ!?……ふぅぅっ……思い出してこんなときも少しイッちゃうとか……もう、堕ちるとこまで堕ちたよね」

 

 いや、割とよくあるプレイなのだがな。まあ、初体験から半月弱、かなりウブの二人にするプレイではないだろうが、まだ尻の穴もSMも母乳もだしてないし、何よりまだまだ二人の体は開発の端緒についたばかりなのにそう思われては先々が不安だ。

 

「ふうぅっ……一人だけじゃ…もうむりだよ……ね。いっしょに……あははははっ……ね」

「く、櫛田さん。櫛田さんっ」

 

 イッタ笑みで笑いかけてくるキラリと光る刃よりもギラつく瞳の桔梗に必死で呼び掛けても、もう届かない。

 酩酊しているせいでふらふらと揺れる髭剃を鈴音の陰毛に当てる。愛液だけ、シェービングクリームなしで。

 

「ひっ」

 

 血まみれの自分を想像したのか、思いっきり引きつり悲鳴を上げる鈴音。

 

「さっきは……私がイカされたからさあ…あはぁっ…今度は、私が……だよね…剃られて、イッちゃえ」

「で、鈴音」

「ああん」

 

いざというときに横から声をかけられて、ドスの効いた声で睨め付けるとか。桔梗、チンピラかお前は。それでも可愛いと思わせるのは流石だ。それ以上に恐いが。

 

「もう一度聞くが、オレが剃ろうか?」

「き、清隆君っ、私のあそこの毛、綺麗に剃って、剃ってお願いっ」

「薬は?」

「塗って、薬を塗って、塗りなさい。お願いっ、速くっ!!?」

 

 このままでは取り返しがつかなくなるとあわてて懇願する鈴音。

 

「あ?あんた何言って……いまさらぁ…渡すわけないでしょ……こいつは、私が……あひああああっ――――」

 

 今の桔梗と問答などできるはずもなく、髭剃りを取り返して、暴れる桔梗を二度絶頂させ気絶させたオレは、桔梗を後ろ手に縛り目覚めるのを待ってから、鈴音を桔梗と同じくなぶりながら毛を剃った。




 いい加減長引きすぎているので次で3Pは終わらせます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堀北鈴音&櫛田桔梗⑫(3P)

 高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。



11巻、面白かった。しかしホワイトルーム、一生幽閉とか人体実験場そのものじゃないですか。
不要品を有用品に処理させるとかありそうで怖い。伊吹を叩きのめした綾小路の地文にある「殺し合いをしに来たわけじゃない」がさらに重くなりました。

一通りの問題が解決したこのSSでは退場してますが、月城理事代行いいキャラですね。
上の綾小路父からは「遅すぎる。息子速く連れ戻せ」と突付かれ。
下の教師陣からは「代行のくせに好き勝手するな」と突き上げられ。
11巻の挿絵で笑顔ですが、「子供に付き合っていられるか」と逆シャアのアムロがクェスに怒鳴っているように怒鳴りたいのを抑えて笑顔になっているように見えて仕方ありませんでした。
実際彼からしてみれば、子供のワガママで仕事邪魔されましたからね。
アクシズの周りで、強力な兵器乗りながら飛び回られてるようなもんです。あくまでも月城視点では。
ああ、中間管理職の悲哀が見える(笑)

そんな仕事に励んでいるだけの人が、ホワイトルームという人体実験としか言い様の無い場所からの刺客なので、文句なしに悪役になれるから、本当にいいキャラです。
あの人体実験場を否定せず、有用な所と言い切ったあたり、悟ってるというか声聞にある綾小路もまた際立ちましたが。

これから、どうなるのかな。
7.5巻で理事長クラスでも、ハニトラで仕留められると綾小路の地文。
山内と手を組み、綾小路を退学させるようにして暴露させられるように誘導され、純白ではないと疑われ着々と追い詰められている櫛田。
うーん。と変な妄想してみたりしました。

――長文失礼しました。


 開いたカーテンから差し込む眩しい太陽の光が、朝を伝える。晴れ晴れとした天気になるだろう。

 時刻は今7時を指している。思い返せば半日以上、気絶して意識を何度か失った二人はともかく、オレは小休憩以外していないな。

 半日以上休みなしで淫行に耽っていても、正直――――まだまだ、犯し足らない。

 

「――――っ!!っくひィィっ……ひっ、ひいいっ……あっ――っあぁあぁっあィィっ……っ!!」

 

 挿入と同時に潮を吹きながら絶頂した鈴音の秘所が、オレの逸物をギュウギュウと締め付ける。

 薬物によって発情した鈴音の媚肉は普段の少女の固さがなくなり、蕩けるような柔らかさのまま一つ一つのヒダが自在に動き扱き上げ、奥の筋肉によって裏づけされた強い締りで締め付けてくる。

 男を受け入れ強張りなく受け止め柔らかく包み込む媚肉は、鈴音がそう遠くない未来に至るオレによって開発しきった膣だ。

 

「これが目的だったとばれたら殺されるな」

 

 嬌声で聞こえないと知りつつ一人ごちる。

 薬をぬったのは、端的に二人の膣の将来を知りたかったからだ。まだまだ、固い少女の媚肉が悪いわけではない。好ましいと思うが、このまま開発しきった二人の膣がどうなるのか一度知りたかったから薬を使った。

狙い通り、オレの逸物しか知らない膣は、オレの精液を搾り取ることに特化した膣になった。

成熟していない二人では、犯し続けても半年はかかる筈の、オレの快楽のポイントを知り尽くしているかのように蠢く膣を味わう。

 

「あっひあああああっ…あはあっ…うっくあうあうんっ!!?」

 

 熱く蕩けきった媚肉を舐め上げると同時、オレの顔に潮を吹きかけながら桔梗が絶頂する。舌をしごきあげ奥へ奥へと締め上げながら誘う媚肉はただ熱くて柔らかい。こちらも経験不足な少女特有の硬さがなくなり舌を蕩けさせる。

 

 ベッドに横たわったオレの上で、太陽の光に照らされ美麗な裸体を輝かせ、体液をきらめかせる鈴音と桔梗は、乳房に器具をつけられ乳首を覆うローターに括られた淫らな格好で抱き合い、それぞれ快楽の喘ぎ声を漏らしている。

 一度の絶頂である程度理性を取り戻した二人には、桔梗の醜態で作られた溝はない。

「私に剃らせろ」とぶつくさ言っていた桔梗だが、鈴音の毛をジワジワと嬲りながら剃っているときの羞恥の泣き声を聞いているうちに真顔になっていき。

拘束され何度もオレに強請っても愛撫してくれず、薬の刺激に耐えきれなくなり「櫛田さん、おまんこ舐めて!」と涎をたらし喘ぎながら絶叫して泣き叫んだ鈴音に、「私が舐めるから堀北さんをイカせてあげて、お願い」と懇願したとき溝は埋まった。

 

「ほ、堀北さん……っ」

「く、櫛田さん……っ」

 

 お陰で互いのモヤモヤは吹き飛んだが、抱き合ったまま羞恥で真っ赤になり、互いの目を見合さない。

 だが、薬により肉欲に憑かれた体は刺激を欲して蠢く。

 

「うああ、あっ、こんな、格好…窓が、外が見えて…恥ずかしい……清隆君のが本当に大きすぎて、壊れちゃいそうっ……んぁ……う、う、うぅ」

 

 初めての騎乗位で、鈴音は力加減がわからないようだ。ぎこちない動きで、腰を上げては沈めた。腰をあげすぎて逸物を秘所から抜きそうになってしまい、あわてて動きを止める。そして、再度腰を沈めて逸物を入れられるところまで飲み込んでいく。

 

「はぁ…あぁう、はああ……い、いつもより……きつくないけど……お、押し上げられ……ひぐぅ……う、う、擦れ……っ」

 

 普段はオレがしている加減が自分では出来ずに子宮を押し上げられ、剃られた跡にオレの陰毛が擦られて、鈴音はぷるぷると可愛らしく震える。

 蕩けきった膣とはいえ怖くてピストンをためらう鈴音は、オレの逸物の付け根に股間の秘所を押し付けて、腰を回す事を選んだ。

 さらに深く、子宮を硬い肉で押し上げられる味わいと、膣口の際の剃り跡に陰毛がこすれる快楽に、鈴音が身を震わせる。

 オレは、そんな鈴音の名器を感じながら、顔の上に乗った桔梗の尻を掴んで、秘所に向けて舌を伸ばしていく。

 

「あっ、あっ……そんなところ舐めちゃ、汚いよ」

 

 桔梗はオレの顔にぺたりと尻を乗っけて、恥ずかしいところがすべて見られる恥じらいに、しきりにもじもじしている。

 

「そうでもない。鈴音が綺麗に舐めとってから、オレが突っ込んでないからお前の味しかしない綺麗なものだ」

 

 顔をずらして、くぐもった声で桔梗に答える。

 

「ぅぅっ……」

「堀北さん、気にしないで、清隆くんが悪いんだから……はぁぁっ」

 

 桔梗の陰部に口をつけ、オレが出したモノをすべて舐め取らされた恥じらいに呻く鈴音を、理性を取り戻した後自分の醜態に悶絶していた桔梗が慰めたところで責める。

 触れた舌先で、桔梗の秘所をなぞるように舐め上げ、小豆のような小粒の陰核の際を嬲ってやると、膣穴が内部へキュッと音を立てるように窄まり、体臭以外の臭いが鼻腔をくすぐる。

 

「鈴音、もうこの姿勢になってからずいぶん経つのにまだ上下に動かないのか。あれだけねだっていたオレのものだぞ。動いたらどうだ。こんな風に」

「うぅっ!」

 

 一突きすると、鈴音が喉の奥から搾り出すような悦びと痛苦が混ざった声を上げて、オレの下腹に跨っている腰を、挿入した逸物が身体の中で動く感触を受け入れるように、ゆっくりと上下に動かし始める。

 少しコツを掴んだのか動きはスムーズになりリズムよく上下して、オレの巨根に押し上げられて悶える。

 

「いっ、いあ、痛、痛…い。押し上げ、られて……ひっぅぅっ」

 

 痛みと衝撃と快楽にぽたぽたと流れた涙がオレの下腹部を叩く。強く締まる秘肉に合わせて腰を少し動かしてやる。薬で蕩けているとはいえ膣そのものが発達しきってない。慎重に行かねば。

 

「ひぅっ!や、やあっ、あ、ああっ!」

 

 かすかな痛みと同時に比較にならないほどの快楽を感じている。気をよくして、ここぞというときにだけ軽く突き上げてやる。それを続けていくうちに、痛みよりも声に快楽の色が濃くなってきた。鈴音の腰の動きもスムーズにリズムよく上下する。

 オレが動く必要はなくなったと判断して、無我夢中で腰を振る鈴音の動きを感じながら桔梗の秘所を見つめる。

 

「ほ、堀北さん……どっちかが抱き締めている限り腰に手を回してくれるんだよね」

「ああ、もちろんだ」

「ほ、本当だよね。こんなに確り乳首固められてるから……へ、下手に私たちが別々の方向に倒れたりしたら」

「千切れるか、変な形に伸びるな」

 

 恐怖に怯えきった眼差しで約束を確認してくる桔梗に答える。なんともないような口調で酷いことを言われ絶句した桔梗だが、自分の左腰と鈴音の左腰に回されたオレの腕を見て覚悟を決めたように頷く。

 

「そんなに不安なら、これを使えばよかっただろう」

 

 柔らかく頑丈な素材で作った手枷を示す。これで互いの背中の後ろに手を回して拘束すれば、背中に回した手で互いを傷つける心配もないというのに。

 

「これ以上、そんないやらしい物着けられるわけないでしょうがっ!何考えてるのよ!何より、鍵がないから一度つけたら外せないってどういうことよ!それ!堀北さんが気がつかなかったら、私たち「ふぁぁぁぁっ!おっ…す、すごっ…おくぅ奥にまで届いてっ……イイ、イイッ!」ううっ、堀北さん」

 

 長時間お預けされ薬で蕩けた膣に、逸物を深く淹れられた鈴音はまたすぐに絶頂してしまう。可愛らしく淫靡にあえぐ様子は普段の冷静さなど微塵も残っていない。

 オレは、鈴音のキュッと抱くように締め付けてくるぬめった膣穴の感触を楽しみながら、手をだらりと下ろしてしまった鈴音の分まで、確りと鈴音の身体を涙ながらに抱きしめる桔梗の尻肉を押し分けるように左右に広げる。

 更に大きく剥き出しになった秘所と、その上でヒクヒク震える小さな尻の窄まりを見つめる。

 

「し、舌が、、私のあそこを……そ、そんなところに指入れちゃ駄目ぇーっ!」

「はぁ、はぁ……あ、ああっ、櫛田さん」

 

 絶頂から意識を取り戻し、桔梗がどこを弄られているのか理解した鈴音が、抱きしめながら痛ましげに桔梗を見る。

 

「く、櫛田さんっ。ち、力を抜いて、難しいと思うけど、そうしないと――あっひあああっ!あっひあああっ!んあっああっ!!おちんちんがぁ、イイっ気持ちいいィィっ!!」

「人の心配をしている暇はないぞ。聞こえてないだろうが」

「堀北さんっ駄目っ向こういっちゃったら…ひぅぅぅっ」

 

 桔梗のアナルに指を突っ込みながら、鈴音を突き上げる。一突きごとに絶頂して細い喉を逸らして仰け反りそうになる鈴音を必死に抱きとめながら二人は可憐な声で鳴き交じり、淫靡な空気を部屋中に拡散させる。

 媚薬により蕩けきった秘肉は、未だ未熟故に苦痛しか感じさせられない突きながら動かす動作に耐え、男にも女にもたまらない快楽を味あわせて、淫らな嬌声を途切れさせない。

 抱き合いながら淫靡な空気を振りまく少女たち、これだけ顔を合わせてもキスをしようとしない。オレとこれだけ見詰め合えば互いの唇を貪り合い、挿しいれた舌を絡みつかせるのだが

 

「お互いにキスしたりしないのか」とでもいった自分を想像する。

 全く同時にオレは太陽も凍りつくような冷たい視線で睨まれ、逆鱗に触れて言われる言葉すらも想像できる。

 

「同性とキス?」ならともかく

「レズでもさせたいの。なら、あんたもキスしてきなよ。平田君あたりと、あいつならしてくれるんじゃない」とか

「龍園くんあたりは、無理かも知れないけど試してみないうちに決め付けられないわね」とか

「男って何で女の子同士なら絡ませても大丈夫とか思うのかなあ。男同時で絡んでから言ってみてよ。ほら」とか

「同性愛は、良くも悪くも知らないから何とも言えないけど強要するとは、あきれるわね」とか

 

 言われるな。仕方ないか鈴音と桔梗のキスしているところを、少し見てみたかったんだ。

 強制すると、平田や龍園とキスさせられるかもしれないからあきらめよう。

 その猛りを二人にぶつけることにする。

 

「ふっつひああっっひィあィぁあっ!!んあっんあああっ!!あそこの中ズボズボってぇ」

 

 ずぶんっ、逸物から密着して絡み付いて離れない膣壁を引き剥がしながら、一気に奥に叩き込み子宮口へ押し当てる。

 

「や、ふひあぁぁっ!お、おくっぁ―――――――!!?」

 

 人の耳では聞き分けられない甲高い悲鳴を上げながら絶頂する鈴音の、子宮口をこじ開ける。

女性の急所に入り込んでくる衝撃に目をカッと開いた鈴音の全身がぴんとなり、薬で蕩けきった膣は今まで巨大すぎて淹れらなかった最後の聖域に侵入を許す。

 

「ようやく、最後まで淹れら――」

「んはっはぁはあああっ!!?またぁ!イクぅぅぅっ!!」

「あぅっ!堀北さん、大丈夫っ、だよ、私が支えるからぁ」

 

 ようやく逸物を根元まで膣に入れることができたオレの満足の吐息を掻き消す絶頂の叫びとともに崩れ落ちる鈴音、支える桔梗のまだ狭い膣口の入り口付近を舌先でくすぐるようにして舐めてやると、奥からジワリと真珠色の愛液が滲み出してくる。

 濃い愛液が、肉ひだの間に溜められている薄い愛液と交じり合って、長い糸を引きながら滴り落ちる。

 

「感じきった膣だな。桔梗」

「あ、あんた、私たちは…んはぁぁぁっ!!?この薬のこと忘れないからね。いつか目にもの――」

「びしょびしょというよりヌルヌルだな。剃ったところがツルツルザラザラして舌で舐めると心地いいぞ」

「ぅぅっ……ひぁやぁっ……」

 

 口では強気でも羞恥の極致だった桔梗が、恥ずかしさに思わず尻を揺さぶった。

 たまらない光景を目に焼き付けながら、いつしか動かなくなった鈴音を突き上げる。

「ひあぁぁっ、あっ、はぅっ、いぎっ!」

 

 子宮の奥底を叩かれ、白目を剥きながらもとろけきった鈴音の声の調子がさらに昂ぶる。逸物に感じる膣壁もまた、ヒクヒクとした痙攣を繰り返しながら懸命に締め付けてくる。

 

「散々犯したのによく締めるな。本当にたいしたものだ」

 

 微かにざらつく鈴音の膣の急所を亀頭をでこすりながら、そこで生じる快楽混じりの声を漏らす。

 下から突き上げるように腰を動かし急所を抉りながら奥へと腰を突き進める。これも薬で蕩けてなければ鈴音の膣が軋みをあげていた。

 

「あっああっ!とどいているの、ふぁぁっ!、お腹の中までとどいているのっ!も、もう、もうっだめぇぇぇ!……あ、なんで、腰、止め」

「物欲しそうにしている桔梗がいるだろう。一人だけ勝手にイクなんて許さない。次イクときは桔梗と一緒にだ。桔梗の胸でも揉んでやったらどうだ」

「そ、そんなっ……」

 

 自ら動くだけの余力がなくなり、白目を剥いて昂ぶった鈴音にお預けしながら同時にイカせるために桔梗を責める。

 

「ち、ちがっ、私、そんな顔っ、してない、ぃあ、ああっ、あああっ!」

 

 目の前の桔梗の秘所に舌をさらに伸ばして、内側の小陰唇を左右に開ける。

 桔梗の開かれた肉襞の奥で、ヒクヒクと浅く呼吸をするようにうごめきながら愛液を流す膣口に舌を伸ばし、柔らかく盛り上がっている膣口周辺の柔らかな粘膜を尖らせた舌先で刺激する。

 溶けるように窄まりが緩んで、奥の複雑な突起に覆われたピンク色の膣壁がその色を覗かせた。

 オレは桔梗の尻を引き寄せて、膣穴の中に深く舌を差し込む。

 舌のような細いものでさえ、桔梗の巾着は絞るように締め付ける。

 

「んんっ!……あひああっ!そ、そんなに深く、舌が、うああぅっ!」

 

 桔梗の膣穴の蠕動する動きがオレの舌を包み込むように締め付け、押し広げられる快感でさらに愛液を滲ませる。

 愛液で粘りつく舌を動かしながら、桔梗の膣穴の快楽の急所と、膣口の浅い敏感な部分を音を立てて舐めあげる。

 

「ひあああっ!あひぃぃっ!」

 

 舌と桔梗の膣穴がぴちゃぴちゃとみだらな水音を立て、目前の広がった尻が快楽に震えもどかしげに震える。

 

「うっうっうっ……ああぅっ」

 

 桔梗も絶頂が近いが、力の入らない身体で少しでも快楽を得ようと、すすり泣きながら動こうとして力が入らずに身体を震わせる鈴音の様子を見る限り、このままでは同時に絶頂しない。鈴音は逸物の脈動だけで絶頂してしまう。

 ――仕方ない。切り札を切ろう。カチリとスイッチを押す。とりあえずレベル6で

 

「ぇ――ぇ――ぇ――」

 

 一瞬何が起こったのか解らずに桔梗の身体が固まり、汗が止まる。

 

「あっひあああああっ!!ああっ!あひあっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」

「く、櫛田、さ、ん」

 

 一瞬の停止後、ぷしゃあと潮を盛大に噴出しながら絶頂して、涙を流しながらイキ続ける桔梗に満足する。一瞬で鈴音が素面に戻って蒼白になるとは、どんな顔をしているか今は見れないのが残念だ。

 まあ、いい機会はいくらでもある。

 皮を剥いた陰核を覆ったローターが市販の最大レベルクラスでいきなり動いてイキっぱなしの桔梗が踊っているうちに鈴音の子宮を打ち抜いて溜まりに溜まった精を放出する。

 

「ひっ、ああああああーーーーーー!!」

 

 艶のある黒髪を左右に打ち振りながら、精液が子宮内を一杯に満たしていく感覚に身震いして失神する鈴音を見ながらローターのスイッチを切る。

 糸が切れたように反方向の横に倒れようとする二人を抱きとめて、ベッドに寝かせる。

 鈴音は少し休ませないと無理だ。あれだけうごめいていた膣は、ぴくっとしか痙攣するくらいの反応しかない。暖かいオナホだ。

 だが――

 

「はあっ、はあっ、あん、あんた、ろ、ローター動かすなんて、ひいっ」

 

 涙を流しながら荒い呼吸をして胸を大きく上下にしていても、桔梗は元気だ。少なくとも、まだ相手をしてくれる。鈴音から抜き取り桔梗に逸物の向きを変える。

 

「あ、あ、あ、何で、何でぇ、もう、大きくっ、今まで、こんなっ」

「3Pだからな。」

「……え?」 

「一人が力尽きてももう一人が相手をしてくれるから今までと違って手加減する必要がない」

「「…………え?」」

 

 感慨をかみ締めながら、鈴音と桔梗の乳首と陰核に取り付けたローターを話しながらはずしてやるうちに鈴音の意識が戻る。予定変更、二人同時に相手をしてもらうか。

 何故か蒼白になっていく二人。

 

「て、手加減、していたの?い、今までずっと」

「ああ」

「それが、3Pでする必要が無くなった…って、こと」

「その通りだ」

 

泣き笑いの表情で、紙のように白くなった二人。今日のはじめのときと違い、桔梗の体を上に鈴音の体を下に置く。

 

「長い、そして全力でやれる一日になりそうだな。正直なところ、自分がどこまで出来るか興味があったんだ」

 

 言葉もなく怯え震える上下に重なり合った二人の股間を覗き込む。半日以上犯され嬲られ続け腫れている二つの女性器が、触れ合いそうなほど近づいている。

 

「ひっ……み、見ちゃだめ」

「っ……」

 

 あまりの恥ずかしい姿にあわてて足を閉じようとする桔梗。

 膣内射精絶頂直後で力の入らない鈴音は、恥ずかしさに顔を真っ赤にして一度ギュッと目を閉じ開ける。

 

「さて、と」

 

 上に乗る桔梗の尻を押し下げ、二人の性器を触れさせる。

 今日まで同性の性器と触れ合うなど想像していなかった二人に、二度目が訪れる。くちゅりと音を立てて二つの濡れた秘所が合わさり、前回と違い腫れて熱を持った互いの性器の感触を味わう。二人は気恥ずかしそうに視線を交わしあい、すぐに目を逸らす。

 

「二人同時だ。剃ったところを味あわせてもらう」

 

 触れ合った秘所同士の間に逸物を押し込み、腰を動かす。

 

「んああああぁぁっ!?」

「あふぁぅぅぅっ!?」

 

 グジュリと音を立てて逸物が二つの秘所の間を滑り、重なり合った二人の腰がはねるように震える。

 押し付けられた大陰唇が大きく左右に広がり、上下から逸物を包むように挟み込み二人の絶頂を示すように蜜をもたらす。

 腰を動かすと、挟み込む大陰唇が逸物と擦れて気持ちがいい。

 

「あっ、ああ、あっ、んっくっ!んあぁっ!こ…こんなぁ……ああぁっ!?」

「ふあっ!あふっ!んっ、そ、剃られた…ところ……までぇ…はぅっ!?」

 

 ビクビクと腰を震わせる二人。

 剃られて守る毛一つなくなった性器を、擦り合わされる恥辱の刺激に、秘所から溢れる蜜はとめどなく流れ、逸物の動きに従って白濁した色彩で二人の滑らかな体を染める。

 

「ぬるぬるに濡れて、気持ちいいな。毛を剃った分敏感になってたまらないだろ。それに、このクリトリスも」

 

 腰を動かすたびに、薄い皮から露出してピンとそそり立ったクリトリスが擦れて逸物の上下をコリコリと刺激してくる。

 産毛ひとつ生えてないスベスベの滑らかな肌、熱く腫れている大陰唇、プリッとした絶妙な弾力のある粒が逸物を同時に擦る。

引くときにはクリトリスを雁の所に当てられる所まで引き、押すときには雁がへそを感じるところまで押し込む。

 たまらない気持ち良さを俺に与えてくれる。

 そして、敏感な性感の塊を同時に擦られる二人は、オレ以上の快楽を味わっていた。

 

「はっ、はっ、は、はぁぁっ!?んああっ!?んあっ、あっ、あっ、あくあぁっ!?ま…待って、そんなに擦られ……ふあぁぁっっーー!!?……あっ……なんっ」

「んはぁっ!あうぅっ、んっ!んくはっ……お、お願い…やすませ…あひぁぁぁっーー!!?……はっ……う、嘘っ」

 

 絶頂に次ぐ絶頂に息を整える暇さえない二人。なのに、発情しきった体は、快楽を求める。

 そろそろいいか。

 オレは重なり合った秘所の間から逸物を引き抜くと、前置きなく桔梗の膣に突き入れた。

 

「はぐぅうううううううぅぅぅっ!?」

 

 突然の侵入に、背を仰け反らせ愛液を噴出させる桔梗。

 背後からオレに貫かれ、内臓を突き上げるような重い喘ぎ声を上げ、シーツを掴む手が白くなる。

 オレの目の下に突き出されている桔梗の丸い尻。

 二つの尻肉はオレのした腹に押されて大きく歪み、開いた尻肉の狭間では、剥き出しになった毛ひとつない秘所を押し広げて深々と逸物が埋まっている。

 

「くっ」

 

 逸物を包み込んでくる、桔梗の柔らかで熱い秘肉にも強張りはない。だが、滴るほどに濡れていながらも痛みさえ覚えるほど締め付け吸い付いてくる膣の感触に、思わず快楽のうめきを漏らす。

 

「あぁぁぁっ!?う、うしろから…なのに、痛く……ふあぁっ!?」

 

 骨盤のお陰で、少数派の上付きの桔梗(と鈴音)にとってバックは痛みと衝撃が先に走り、快楽はそこまで感じていなかった。なのに今は気持ちよさが先立っている。桔梗の腰が、受け入れている逸物を、貪るように動き始める。

 

「あっ……きもちイイよ……とっても気持ちイイ」

 

 欲望に取り付かれた桔梗が、尻を逸物の付け根に押し付けて振り始める。その動きに合わせるように動く。荒々しくこう動けと教え込みながら腰を律動させる。

 

「いっひあああああぁぁっ!!?」

 

 絶頂に達して強く膣を締め付けながら、鈴音の上にガクリと突っ伏す桔梗の秘所から逸物を抜き取る。

 濃く粘った愛液に濡れそぼったそれは、蛍光灯の明かりに照らされてオレにさえ凶暴な印象を与える。

 

「あっひぁああああっ!!?」

 

 桔梗から抜き取られた逸物に畏怖と欲情の視線を向け、今挿入された鈴音もそう思うのだろう。

 細い喉をそらしながら絶頂して、強く締め付けてくる秘所を味わいながら動く。

 

「ひっ!……ああっ!……すご…あ、ああっ!?あぁぁあああっ!!?」

 

 桔梗の体を跳ね飛ばしながら、鈴音の体が反り返り、跳ねる。

 とてもそんな力を秘めているとは思えない、細く華奢な体が快楽に震え、唇から淫らな喘ぎと絶頂の叫びを繰り返す。

 くたりと鈴音の力が抜けた。

 

「じゃあ、桔梗だ」

「はぇ?えおっおはぁぁあああっ!!?」

 

 絡みついたまま痙攣する膣肉を剥ぎ取るように、大陰唇を裏返しながら引き抜いて、跳ね飛んだ時に意識を取り戻した桔梗に突き入れる。

 

「あひぁぅっ!?あ、あんったぁぁぁぁっ!?なんてことぉぁあぇぇっ」

 

絶頂から間を置いていない膣は直ぐにイキっぱなしに桔梗を追いやる。

 

「くぅっ、桔梗のも良く締まるな。鈴音といい勝負だ」

「あはぁっ!?……そんなとこっ、比べないでぇ、はっ恥ずかしいっ!?」

 

 そう言いながら桔梗は下半身をいきませ、膣の肉を逸物に絡ませていく。膣壁がひくひく震え、痺れるような出強さで扱きあげる。

 

「っ……どうした、そんなものか?鈴音は奥まで締りが良かったんだがな」

 

 奥に引きずり込むように締め付けてくる桔梗にわざと煽る。

 

「わ、わたし……私だって……でも、どうすればっ!?」

「尻の穴をオレが指を入れた時のように閉めてみろ」

「お、お尻の穴を……えっ……と」

 

 オレの求めに応じてその部分を振り絞る。天性の巾着が、中から奥までの部分をきゅぅっと窄ませる。

 

「ふ、ふぁぁーっ!!?き、きもちいいよぅ!?ほ、堀北さんっ……いつもっ、こんなことぉぉぉー!!?」

 

 自分で締め付けることで、えも言えぬ快感が全身を駆け抜けることを覚えた桔梗。

 同時に、激烈な締め付けと、のたうつ壁が超絶な吸引力を持ってオレを襲い。オレが顔をしかめ吸引に耐える姿を見て口角を自然に上げる。

 

(失敗したかもしれない)

 

 やられっぱなしで終わる桔梗ではない。自分の体でオレに一矢報いたのを心に刻んだろう。そのまま、どうすれば自分の膣がオレを気持ちよくさせるかを強弱をつけて締め付けながら一つ一つ確認する。その健気さに満たされながら桔梗が一定のやり方を覚えるまで待つと辛抱がたまらなくなった。

 

「うごくぞ」

「あっ、ひゃぁぁぁっ!!?……待って……もう少し、覚えぁあふあぁぁっ!?」

 

 締め付けてくる桔梗の膣の中で腰を引くと、桔梗は四つん這いの体を犬のように揺さぶり、腰から下が崩れそうになる。

 そんな中を逸物で、肉ごと抉るような強い力で最奥に叩き込む。

 

「あっ、アーっ!!?ひぁいいィィーっ!!?も、もうだめぇ!!?」

 

 ガクリと自身の上に崩れ落ちる桔梗に鈴音が目を覚ます。

 

「なら、鈴音だな」

「あ、な、何?にぃひぁぁぁー!!?」

 

引き抜いた時、ポンとシャンパンを開けた時に似た音を立てて締め付けの力を示す桔梗の膣から鈴音へと。

 

「…ほ、り、北さん、自分で……お尻……閉め、て」

「な!?そんなぁぅっ!?そんなことしてないぃぃっ!?」

 

 夢現を漂う桔梗の呟きに、尻穴をほじられ締め付けを強制され続けた鈴音が、悲痛な嬌声をあげる。

 

「桔梗は閉めたぞ。気持ち良かったな」

「……っ!あっ、あひぃぃーっ!?これ、凄いっ……私駄目になっちゃう!?……お、おかしくなるっ!?」

 

耳元で囁いた魔法の言葉に、同じく尻をきゅっとすぼめ膣壁を連動して収斂させ、快楽に嬌声をあげる。

 

「くっ…締まる……」

 

 思わずうめいてしまったオレに、鈴音は「?」ときょとんとすると、すぐにふふんと笑みを浮かべる。桔梗と同じく、やりたい放題されていた性交でやり返せると理解したのだ。

 

「あっ……これ、いいの?いいんだぁ!?」

 

 鈴音の学習能力は高い。地頭が良い上に努力を欠かさない。結果、オレの全身を観察しながら尻の穴を締めるタイミングや力を調整して、自分の秘所の具合を高めていく。

 

「……ここらでいいか」

「へ?うっく!?」

 

 鈴音が自在に膣を締めるコツを掴んだあたりで、ざらつく壁を逸物に絡ませて万力のように締め付けてくる秘肉を抉り抜き、子宮口を叩く。

 桔梗も鈴音もようやくスタートラインに立ってくれたのだ。なら、今までよりも快楽を与えてやらなければならないと思う。

 女性には月経や妊娠など、体に負担をかけることが色々ある。自身の知識はそれらがどう作用して体をつくり感じやすくなるか理解しているが。

 いまこの場では、負担の代わりに男性より十倍の快感を覚えられるのだろうと思いたい。それならば、一回一回しっかりと感じさせてあげなければ、とオレが想い動けるから。

 薬効が薄くなって硬さを取り戻し始めた鈴音の膣を押し広げながら突く。

 

「ま、待って、今、あなたを気持ち良くさせるコツ……ふぁぁぁっ!?」

「気持ちはありがたいが、お前たちが気持ち良くなってくれたら、オレも気持ち良い」

 

 健気な鈴音の声を聞きながら押し込む。

 逸物の根元で濡れた肉壁がひしゃげ、睾丸にぽたりぽたりと白濁した愛液をたれてくる。亀頭の先端に鈴音の子宮口が触れた時、膣がそこに捕えた男を味わいつくすかのように絡み付いてくる。

 オレも挿入した女を貪るために一度動きを止め、鈴音を見つめる。

 

 挿入の衝撃にとめていた息を吐き出し、荒い呼吸をしながら、一筋の涙を頬を伝わらせながら見つめてくる。

 

「オレの感触が分かるか。今まではっきりとは分からなかっただろう?」

 

 問いかけると、鈴音が途切れ途切れの息の中で答える。

 

「……は、はい。

 硬い、とっても硬くて大きい……硬くて熱いの、わたしの中のあなたのものが……どんな形なのかが分かる……こんな形なのね……とっても硬くて、とっても、とっても気持ちイイわ……ああっ!!?」

 

 巨大すぎて今までは女体を守るために脳があえて麻痺させていた分まで、今この時の鈴音は感じられる。

 その事実に耐え切れなくなったオレは腰を動かし始める。

 

「あああぁー!お、奥に、清隆君のが、当たってぇ!!?本当に、おかしくっ!?」

 

体の上の桔梗に構わず腰を無茶苦茶に振る。全身は凄まじい快楽で侵し尽くされ、理性など欠片も残っていない。なのに、覚えたばかりの方法で膣を自在に締めていく。

 体のよじれによって揺れる乳房、そんな乳房の上に時折浮かび上がる肋骨の線。

 

「あっひぁぁぁぁーーっ!!?」

 

 絶頂してのけぞり力尽きた鈴音から抜き取り、桔梗に挿入する。

 

「ひぅっ!?」

 

 ある程度馴れ朦朧としていたとはいえ意識があった桔梗は、喉の奥から声を上げ体を反り返しながら、膣を自在に締めながら目で「自分にも聞け」と誘う。

 

「オレの感触が分かるか?」

「う……うん。わかる。わかるよ。

 今までどこか痺れてわからなかったところまで……こんなにゴツゴツしてるんだ……硬くてゴツゴツして大きい……こんなので、されたら……恥ずかしい声出す……よね」

 

 自分がおかしいのではないかと不安そうに見てくる。

 

「当たり前だろ。そのほうがオレも嬉しい」

「そっか……うあぁっ!?」

 

 はにかむように笑う姿も、淫蕩さを感じさせる桔梗にたまらなくなり動き出す。オレが激しく動き出すと桔梗が大きく声を上げた。

 体をくねらせ懸命に膣を締めながら何かに耐えるように強く閉じらている桔梗の瞳。

 奥を突くほどに深く貫いてやると、内側からの圧力で腹がオレの形に盛り上がり、秘所が犯される悦びにヒクヒク震える。

 柔らかくオレを包み込み、それでいてうねるように桔梗の意思でさらに強く締め上げてくる膣。

 

「ああっ!!あぁぁっ!?」

 

 激しく腰を振るオレに操られるように、桔梗が体をよじり快楽の叫びを上げイキっぱなしになる。

 

「また、鈴音にいくぞ」

 

 桔梗から鈴音へ。二人の愛液にまみれた逸物を突き入れる。

 

「ふあぁぁっ!?きたぁっ!!イイっ!?すごいっ!!」

 

 切羽詰った叫びを上げながら同じくイキっぱなしになった鈴音。

 

「ふぁぁ?」

「イイっ、イイわぁっ!?え?」

 

 嬌声を上げる二人の顔に一瞬戸惑いが浮かぶ。

 

「これからは、交互でいくぞ」

 

 桔梗の尻を掴みながら、鈴音、桔梗、鈴音、桔梗と交互に秘所を入れ替えて突き入れる。

 

「あうんっ!?……んあっ!……あふっ、んっ!?……くぁっ!……んっんあっ!!」

「はひィっ!?……んはぁっ!……あうっ、くはぁ!?……あひっふあっ!!」

 

 抱き合い、体をビクビクと震わせる二人。

 

「上と下で違う感触ってのはいいな」

 

 二つの異なる具合の膣に扱かれ、痺れるような射精の疼きを感じながら二つの穴を犯し続ける。

 異なる締め付け異なる肉感、愛液の水音と嬌声だけが部屋に響く。

 

「はぅっ、ひああっ!?……あっあひィ!!……ほ……堀北さんっ……!ひああっ!!」

「はぁっ、はぁぁっ!?……くっはぁっ!!……な、なにィィっ!?……あうぅっ!!」

 

 一段と太く大きくなった逸物を膣で感じ取った二人は見つめあう。

 ぐっしょりと濡れた秘所は触れ合い、互いがどれほど感じているのかを伝える。

 少女二人を犯す快楽は激しく高まり、今にも爆発しそうだ。

 

「お、お願いっ!……清隆くんの精子……私に……」

「え、ええ……いいわ……さっき、私だったもの……」

 

 あまりに必死な桔梗の声に鈴音がうなずく、精液を流し込まれた鈴音にはある僅かな余裕が桔梗にはまったくない。男の精液を長時間受け入れていないからだ。

 

「分かった出すぞ……!」

「う、うん……んっ!きて、私の膣内にだしてぇ……」

 

 一際強く桔梗の秘所に打ち込み、下腹に押されて大きく歪む尻。

 尻の弾力を味わいながら、両手を鈴音と桔梗のあわされた乳房の間に入れる。

 

「ふあっ!!」

「あふっ!!」

 

 四つの柔らかな乳房の手触りの中から、鈴音の乳首を探り当てて捻り上げる。

 

「あひぁぁっーー!!?」

 

 開発途中の乳首とはいえ火照りきった今ならば、敏感に反応して強い快楽を感じられる。鈴音の絶頂の叫びを聞きながら、桔梗の秘所を射精に向けて大きく腰を振り、秘肉を抉り突き削る様に引く。

 

「あうっ!んあっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あひっ!ひぐっ!あっあああっ!!」

 

 快楽が逸物全体を包み、疼きが腰の辺りに広がる。抑えきれない疼きのまま、オレは桔梗の奥深くに突きいれ、子宮口へ押し当て、ぴったりと張り付いた子宮口に力を入れてこじ開けた。

 

「あひィイイイイイイイイイイィィぃぃぃっ!!!?」

 

 あまりの衝撃に白目をむいて快楽の絶叫と共に意識を途切れさせて崩れ落ちようとする桔梗。

 

「くっ」

 

 熱い白濁の奔流が、桔梗の子宮内を満たしていく。

 

「ぃぃぃぃーーーーっ!!?」

 

 ごぽり、ごぽり、とペットボトルをひっくり返すような音を立てて注ぎ込まれる精液は、桔梗の意識の途絶を許さず最後の一滴まで注ぎ込まれるのを脳裏に刻み込んだ。

 

「あっ……あっ……あっ……かはっ……ぁ……はぁぁっ…………」

「櫛田……さん」

 

 桔梗のあまりのオンナの顔に見上げる鈴音は息を呑む。

 そして桔梗は、糸が切れたようにガックリと鈴音の上に倒れ込んだ。

 

「ふぅっ」

 

 快楽の吐息と共に逸物を引き抜くと、広がった穴からゴボリゴボリと白濁液が溢れ出して、鈴音の秘所に滴り落ちる。

 

「く、櫛田さ……ひぃっ」

 

 その光景を見ているうちに再びそそり立った逸物を見て、快楽に赤く染めた顔色を白くしながら鈴音が息を呑む。

 

「次は、鈴音だな」

 

 ごくごく自然に言うオレから逃れようとして、自分の上にぐったりと被さる桔梗が邪魔で逃れられない鈴音の股を開く。

 さて、オレの精が尽きるのが先か。二人が力尽きるのが先か。

 3Pは良いものだな。倒れた一人が回復しているときにもう一人が出来る。出来れば精が尽きて欲しいものだ。

 鈴音の静止の声を聞き流しながら、内側の膣口のピンク色を覗かせるほどに陰唇を開いている入り口に、オレは張り詰めた亀頭を当てた。




 これにて3Pは終わります。恐ろしく長くしてしまい申し訳ありませんでした。
 そろそろ南雲を出すつもりなんですが、内実がよくわからないのである程度独自解釈させていただきます。
 「ちょっとひどい遊び人」の解釈にします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話(買い物)

鬼畜な鬼作さん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

 ここに買い物行くのは予定通りだったのですが、その前に3サイズどんな感じなんだと調べたところ

 堀北鈴音 156cm 79(D)/54/79
 櫛田桔梗 155cm 82(D)/55/83

 で、これどんなもんなのと身近な女性に聞きました。

「櫛田って子は華奢すぎるけど大変で済む。堀北って子は、日常生活が修行みたいなもん」

 具体的にどう大変なのか聞いているうちに、長くなりました。これでも、二人がそこまで苦労していない見積もりなんです。


なめていた。侮っていた。下着専門店が、男性お断りと知っていただけで理解してなかった。

色彩豊かな下着で埋め尽くされた棚の間で、後ろの楽しげな声を聞きながらオレは無心になりつつある。

 

「堀北さん、これどうかな、当ててみて?」

「……サイズはいいわね。他に色ないかしら」

「うーん、それなら……あ、清隆くん、試着の時見るんだから、今はアッチむいててね」

「キョロキョロして変質者扱いされないようにしてちょうだい。もし、通報されたら見捨てるわよ」

「はい」

「にしても、さすがにプロだよね店員さん」

「そうね。誰かさんが揉んで舐めてしゃぶって引き絞ったお陰で、あれだけ赤く腫れあがっていても正確なサイズを算出できるなんて、してもらった今でも信じられないくらい」

「うんうん、胸元脱いだ時は恥ずかしかったけど、その甲斐はあったよ。これくらいのキツさなら腫れがひいたとき丁度良いって、感覚で他人に教えられるものなんだね」

「ブラジャー着けていないことと、縄と器具の痕も納得してくれたわ。これも、張本人を連れていったからよ。試着も他人に見られない所を案内してくれるらしいわ」

「そうみたいだな。安心してくれと言われた」

 

 なぜか店員が俺の手を握りながら言ったがな。

 

「うんうん。店員のおばちゃん凄く優しくしてくれた上に、交換期間も長くしてくれて割引きもしてくれるなんてね。秘密にしてくれるって言ってたし、下着取り扱ってる店は元から口が固いから、清隆くんも安心だね」

「そう願う」

「何より一人用の椅子まで個別に用意してくれるなんて、本当にありがたいわ。合わせるとき、背筋を伸ばすだけですむもの」

「掴まる人も居るし、取りに行くときに立ち上がって歩くだけで良いからね。お陰で顔色もよくなって普段通りになったし感謝感謝。あれだけとんでもない事されたから、2、3日歩けないって覚悟してたんだ」

「まったくその通りね……清隆君、どうして距離を開けたのかしら。私たちの声から聞こえないところに行ったら叫ぶわよ。喉を痛めてカラカラの声で叫ぶわよ。咳き込むかもしれないけど叫ぶわよ。

その声を聞いて、店員の人たちはどう思うのかしら。ほら、二歩後ろに下がりなさい」

「自身の世間体に気を配った方がいいと思うんだが」

「もちろん、気を配ってるよ。あ、下がるの一歩にして……よいしょ、うん。このまま、寄りかからせてね。やっぱり、これいい感じ。あ、これも良さそう……」

「櫛田さん、次はもう二歩下がらせて私が寄りかかっても良いかしら?」

「もちろん。でさ、その後……向こうの棚も見たいんだけど良いかな」

「でも向こうの棚は、その」

「確かにあれだけどね。試しだよ試し」

「……そうね。私も試してみようかしら」

「そうそう、せっかくなんだよ。チャレンジチャレンジ」

「じゃあその時には椅子ごと運んでもらいましょう。いいわね」

「……二人同時にか」

「そうだよ。私達の持ってる下着見ずに、二人同時。何処かに、ぶつけたりせずに丁重にエスコートしてね」

 

笑みを深くして圧をかけてくる。

 

「出来るよね。清隆くんなら」

「……はい」

 

罠に嵌まった。店員の視線が冷たければ、伊吹と共に閉じ込められた時のように、何らかの対処をして切り抜けただろう。

しかし、店員の視線からは一切の負の気配がない。

どんな会話があれば、同時に二人の少女の肌に痕をつけまともに歩けないほど憔悴させた男を見る目が、こんなに生暖かく微笑ましいモノを見る目になるのだろう。

今も、通路を歩み去る店員がにこやかに笑い手まで振っている。

 

「なんでだ」

 

 会釈を返しながら呟く。どう見ても二股だぞ。二股。世間一般の良識は何時変化したのだろうか。

 この状況を変えるべく何かしようにも、刺激すれば店員の視線と対応がどうなるか見えない今、何をしても藪蛇だということしか分からない。

 オレに出来るのは、下着が店列された棚の間で二人に背中を向けて、二人の話と下着の布が擦れる音を聴き、たまに寄りかからせたとき二人の姿勢が崩れないようにするだけだ。

 その上で、着ても肌が透けて見えるだろうと突っ込みたくなる下着の棚に、椅子ごと二人同時に丁寧に運ぶ。が、今追加されてしまった。

 奥の方以外に客の気配がない今、店員にしか見られないとはいえ、二人同時に運ぶ姿がどう見えるか想像したくない。

 何故こうなったかを振り返る。

 

 

 

 残念ながら二人が先に力尽きたとはいえ、満足した淫蕩な時間の後、貪るように眠り食事して一息ついた後だった。

 

「これも無理ね。はぁ、もうブラがないわ」

「うん、私ももうないよ。どうしよう、無くなるなんて」

 

 下着を着けようとして何か不味いことがあったのか、ベッドを背もたれにして周囲にブラジャーを置いて鈴音はどんよりとした口調で言った。俯く鈴音に同意してこちらも暗い表情の桔梗。

裸体にバスタオルだけを纏い、扇情的ではなく愛らしいと思わせる二人を見ながら疑いを晴らすべく口を開く。

 

「オレは盗んでいないからな」

 

 ブラジャーを身動きのできない二人に持ってきたのはオレだが、盗んでいない。

 

「清隆くん、中身にしか興味ない人だもんね。分ってるよ」

「人の下着を丸めて部屋の明かりスイッチ切り替えに使うような人が、盗むなんて思わないわよ」

 

かなり釈然としないが、疑われていてはいないらしい。じゃあどうして下着がなくなるんだ。

 

「どっかの誰かが下着を着けたまま、まさぐったりして生地が伸びて下着として使えなくなったのも少しあるけど、これは、まあ、良いわ。いい加減、ちゃんと脱がしてからしてもらいたいけど」

「まったくその通りだな。お互い気を付けるべきだ」

 

脱がしている途中に恥ずかしがって、身動ぎしたりうつ伏せになったりして伸ばしている自覚があるのだろう。二人とも、言葉に詰まる。

 

「ま、まあ、それで使えなくなった下着は本当に少しなんだよ。ただね、胸が大きくなったからキツくなって入らなくなったんだ」

 

 その言葉に確かに一回り大きくなった乳房を見つめる。オレが弄ったせいで赤く腫れた乳房と未だに充血した乳首と乳輪、真っ赤な果実のようなそれがフルフルと揺れるのは、口に含みたくなる欲望に駆られる。が、抑える。さすがにこれ以上は二人が持たない。

 しかし、合わないのはそれだけ膨らんでいるからじゃないのか。

 視線に込めた疑問に、バスタオルで乳房を隠しながら半眼で桔梗が答える。

 

「あぁ、腫れて膨らんでるの関係ないから、そんなの関係なくキツいんだよね。下はMサイズのままでいけるんだけど上がさぁ」

「特に私はD60だったから元々取り扱いがないのよ。無料の試供品は当然無いし」

「あー、もしかしてって思ってたけどアンダー60なんだ。なら、ないよね。ひょっとしてって思ってたけど自分で調整?」

「いいえ。○○に頼んでいたのよ。D60は特注で高いから、C65かB70をホック調整したものをね」

「店で調整して貰ってたの!?」

「ええ、私は細すぎるから自分で出来ずに全部頼んでいたのよ……はぁぁっ……全部、着れなくなったわ」

「それは……」

 

鈴音がどんよりと重いため息を吐き、怨念が込められたように呻く。それを聞いて、何故か息を飲んで目を丸くする桔梗。

 

「大変だね。私はD65だったから無料の試供品でもあったけど、下着の試供品はね。丁寧に調整しても動くとき擦れちゃうんだ」

「やっぱり合わないのね」

「うん。あれ絶対サイズさえ合ってれば大丈夫か、サイズに体を合わせろって考えてお終いにしてる。安物の下着タダで配られても困るよ。まだ育つ子たくさんいる女の子の事考えてない」

「もしくは、そうなりたくなければポイントを手にいれなさい。という学校の意図でしょうね。それでも、年頃の女の子のことを蔑ろにしていることは間違いないけど。胸が脂肪だと知らないのかしら、流れやすい脂肪なのよ」

「だね。生理用品も無料なのは数揃えただけだし……まあ、それはそれとして計り直さないと、どうやら一回り大きくなったっぽいなあ。もしかしたら」

 

乳房を持ち上げる桔梗に思わず目をやる。

 

「まさかE。Eいったかあ。高いんだよねEになると。今はいってないだろうけどまだ育つだろうし、覚悟しといたほうがいいかな」

「高いのか?」

「Dからは型紙も需要も違うから上がれば上がるほど高いよ」

「へえ、男物も3Lから高くなるから同じだな」

「3L?清隆くん、そんなにウエスト……あー、うん。だよねえ」

 

股間を見て、納得した桔梗。トランクスだと会社によっては4Lじゃないと収まらないからな。

少し遅れて鈴音も理解したらしく頷いている。

 

「下着で悩んでいるなら分かるでしょ。高いし、なによりも私の体格でEはバランスがさぁ。D65って小ぶりな胸なんだよ。だから、色んな服着れたのに」

「小ぶり?」

 

手に丁度よい大きさで握っても確かな質感がある胸が、小ぶり。

 

「アンダー65じゃ体つきが華奢だって事だからDだと小ぶりだよ。だから私普段Cの70着けてる。その方が脇がすっきりして見えるしね」

「櫛田さんは良いわ。D60なんて市販がないのよ。セミオーダーならあるけど、学生が手を出せる値段じゃないし、アンダー65に成っていれば良いのだけど」

 

祈るように目を瞑る鈴音。ふと桔梗を見る。

 

「……そう言えば櫛田さんはお直しは?」

「……安いのは自分でして、それ以外はなんとか」

「っ……してないのね。しないで、そのまま、着れて――」

 

目を逸らす桔梗に、息を呑んだ鈴音が妬ましい者をみる目を向ける。

 

「違うんだよ。堀北さん」

「何が違うというの。あなたはお直しなしのブラでそんなに胸の形が綺麗で――」

「聞いて……安いの以外、なんだ」

「……あっ」

 

 悲しげな桔梗の声に鈴音が詰まる。

 

「……私、堀北さんはスレンダーの均整とれた体で良いなあって思ってた。化粧水とかシャンプーも安物で済ませてるのに綺麗で羨ましいって。でも、ひょっとして化粧水とか安物にしてるのって」

 

 ぽつりぽつりと悔恨するように呟く桔梗。

 

「……化粧水も昔は興味なかったのよ。本当に。でも、ほら」

「うん。そうだよね」

 

 ちらちらこちらを見る鈴音に、何もかも心得ていると桔梗は頷く。生々しい話にオレは置いてきぼりなんだが。

 

「ええ、いざ買おうとして、下着にかける必要なポイントが幾ら必要か考えるとね。とてもじゃないけど手が出せなくて」

「そっかあ……嫌味に聞こえてほしくないんだけど」

「ええ、何?」

「私はね色んな人と会うから、色々考えてコーディネートするんだよ」

「あなたならそうよね」

「服もだけど……つけてる化粧品が安物だとね。その程度って値踏みされてカースト下げる人居るし、何よりあまり安いと肌がね。そこそこの品を色々な時に備えて揃えたらポイント使っちゃって……その分下着がさぁ、タダの試供品自分で縫って調整して使ってるときがあるんだ……」

 

 カースト辺りから深い闇を覗かせる桔梗の闇がさらに深くなる

 

「安物じゃない下着なんて、私はプールとか合宿とか、誰かに見られそうな時くらいしか着けなくてさあ。しかも目ざとい子は、それ前着けてたとかよね下着に気を配らないのとか蔑んでくるから、ある程度量も必要で、だから普段着けてるのは……」

 

「そうだったの」

 

 桔梗の怨嗟の呻き声に、鈴音が何もかも理解した眼差しを向ける。

 

「はは……そうやって大切に着てた、いいブラ。全滅したよ……はぁぁ、化粧品安物で綺麗な堀北さん良いなあって思ってたんだぁ」

「好きで安物を使っていないのよ。少なくとも、今の私は」

「だよね……ごめんね変な嫉妬して」

「櫛田さん、私もあなたの女性的な柔らかな容姿が羨ましかったのよ。可愛いのも派手なのもどんな服も似合うなんて、羨ましくてたまらなかった。私は顔立ちが硬質だから可愛いのが着れないのに、あなたはって……あなたが見えない所で努力する人だって知っていたはずなのに」

「あはは、裁縫の腕は堀北さんに負けない自信があるよ」

 

そのまま愚痴ともつかない話を続ける二人。この二人本当に仲良くなったな。

しかし、コイツらその垂涎もののスタイルで他人を羨んでたのか。大概の女性を敵に回すぞ。

 

 しかし、桔梗ならまだしも鈴音までとはな。

 周囲に居る女性達と比較して、女性的な魅力を比べるほど成長していなかったのに。オレとこういう関係になってから色々思うことがあるらしい。色づいた姿は正直魅力的だ。

 堀北兄が今の妹を見たら、赤飯くらい炊いたかもな。

 生々しすぎる会話から逃避して、感慨に耽るオレに慰め合っていた二人が矛を向けてきた。

 

「私なんてパッと見られたならDと思われないでしょうね。あなたは違うだろうけど」

 

 何故、化粧品の会社の話題からブラのサイズに話が飛ぶのだろうか。という疑問は脇に追いやり答える。

 

「ああ、質感か」

 

 話を向けられて思い返すと、二人とも立派な質量があった。小さめのグレープフルーツくらいの質量が。触ってこんなにあるのかと鈴音には特に驚かされた。

 なるほどと頷くオレに「口に出さないのがエチケット」だと指摘しつつ話は続く。

 

「まあ、今は何よりも正確なサイズを知らないと。最悪Eだったとしてもアンダーが一回り大きなDなら大丈夫だから……はぁ、ホックの調整が面倒なんだよね。D70なら良いなあ。安いのないかなあ」

「私もD65なら有り難いわ。並んでる下着を手にとって自分で調整出来たら……はぁ理想的ね。それ」

「堀北さん、理想は調整なしで着れることだよ。安いのは調整しないといけないけどね。まあ、まず計ってからだよ。今月だと下着にいくらも使えないなあ」

「そうね。これから、店で測ってもらって試着してちゃんと合わせて、私も下着に使うポイントは余裕ないけど、1着いえ2着……店までか、今ブラが無いのに外へ行くのはね」

 

月にいくら下着に使えるか家計簿をつけているしっかり者の二人は、何故かオレをジロリと見る。

 

「……あなた、まさか櫛田さんに借りればとか思ってないでしょうね」

「あはは、まさかあ。いくら清隆くんでもさあ、下着だよ下着。常識を考えてみてよ。合わない下着着るとどうなるかくらい知ってるよ。だよね」

「当たり前だろ」

 

 威圧感さえ感じる笑顔を向けられて、これ以外に何が言えるのだろう。口に出さないがD60だの65だの70だのは理解できないし、合わない下着がどう酷いのかも知らない。

 そもそも他人がつけている下着を借りるときに気にすることは、衛生面や気分的に気持ち悪いのではないのかだと思うのだが、聞けるはずがない。

 ただ、大変だとは理解した。男と同程度だと思っていた。不味いな。

 

「にしても、胸大きくなったのこの経口避妊薬のせいじゃないよね。飲みやすくて効果あるうえに即効性抜群。吐き気も頭痛も気分悪くもならないなんて……何かあるとしか思えないんだよね」

 

 桔梗が、薬のビンを振って疑わしげにオレを見てくる。胸が大きくなったのはこの薬のせいではないかと疑っている。勘が良い。

 

 その薬は、受精卵があると着床前に確実に排卵させる薬だ。確実に避妊できる。

 代わりに乳腺を発達させ母乳を吹き出す体質になる副作用がある。

 まだなっていない二人にはバレていないが。二人とも乳腺が発達している段階のはずだ。

 希に飲んだ後すぐ、乳腺が刺激され母乳体質になる人間もいるが二人は違った。正直、良かったと思う。

 乳房が大きくなっている大きな要因は、母乳を噴出そうと成長しているからだからな。

 

「公表したら間違いなくピルを市場から駆逐するわね。この薬、どうして知られていないのかしら」

「ピルを駆逐してしまうからだ。だから、細々としか流通していない」

 

鈴音と桔梗は聡明だ。これで自分なりに咀嚼する。鈴音は怖いときがあるが、今回は疑っていない。

嘘はついていないからな。ホワイトルーム製とはいえ副作用さえなければ、父親は適当な会社をダミーにして流通させただろう。

 

「社会の闇だね。じゃあ、何でこんなに胸が大きくなるの?」

「20前の健康な女子が、毎日女性ホルモン分泌量を増やすことをし続けて体に出ないはずないだろう。胸だけじゃない。腰も腿も尻も女性的になっている」

「あーうん、確かにそうだね」

 

納得して、頷く二人。良かった。薬で、乳腺刺激されて胸が大きくなっていることをばらすのは母乳出した時と決めていたからな。

 どんな反応をするか楽しみにしているのに、楽しみが減ってほしくない、と思っていた。

 

自分が不味いことをしてしまったことに理解した今、冷たいものが背筋を流れているが。

さっきまでの会話の最中、ブラがキツくなった要因を隠していることに心臓が何度も跳ねたか。

二人がそんなに苦労してたなんて知らなかったのは、言い訳にもならない。避妊薬として完璧で副作用は知らなかったと言ったら、試薬段階のものを飲ませたことにされる。桔梗はともかく鈴音には間違いなくされる。後者よりは前者の方がマシだ。

二人が身動き出来ない今、ばらせば一番傷が少ない、今までのオレならそうしたが。

母乳を突然吹いた時、二人がどういう反応をするのか見たい欲望の方が強い。

人間的になったというより、碌でなしに成っている気がする。

 

「あ!」

 

何か思い出したように手を叩く桔梗に、自己探求を止めて意識を向ける。

 

「そういえば、下着駄目にした時、今度、下着売り場で一緒に買ってくれたら許してあげるって話したよね」

「ああ、話したな」

「半額持ってくれるんだよね」

「ああ、オレの責任が大きいようだからな。出させてくれ。良ければ全額出す。二人ともだ」

 

助け船に飛び付いたオレの言葉に、二人は目を見合わせる。

 

「堀北さん、今日ロングスカートだよね。上は薄手の濃い藍色」

「櫛田さんは、ズボンね。上は薄手の白だけど」

「……この服も着れなくなるのかな。幅広く着れるの自慢だったのに」

「私も着れなくなるかも知れないわね。色々試したかったから良いけど」

 

 二人とも良い意味で特徴的な所がない美少女だ。服は選ぶことができる。

 鈴音はああは言ったが、中背のため可愛らしい服装も似合うし、胸元もしっかりしているから胸元を強調する服も着れる。

 取り分け桔梗は服装の使い分けが巧い。自身の魅力を過度にアピールするのではなく、場に合わせた服装をしながら魅力を印象付ける。

男好きする服を着ている時もあるが、みーちゃんのように恋をしている女性の前だけだ。こんな服もあると明に暗にアピールして、興味を引かせ反感させないようにしている。

人の歓心を買いながら嫌われず。真似できないな。

男好きな服装はあまり好きではない、コケティッシュなように魅せるのも辞めたとはにかんでいた桔梗は普段より遥かに魅力的だった。

 鈴音は兄の着てきた服に似せていたが、最近変化し始めたようだ。

 色々試す、自身の発言に鈴音は赤面し咳払いして話を戻す。

 堀北兄が見たら感涙するほど可愛い。

 

「今は下着よ」

「もう部屋にもないよね」

「これが手持ちで一番ゆったりしていたものよ。だからこの部屋に置いていたの。駄目だったけどね」

 

オレの部屋にいつの間にか私物を置いているのは、突っ込めない、いや突っ込みたくない。

 

「……まだ店は空いてるね。下着専門店の〇〇……ああは言ったけど、下もきついときあるし、不揃いはあれだし。上下で欲しいな。安くても」

「まだ、大きくなるとしても三着は用意しておきたいわ。安くても」

 

 安くても、の強調に罪悪感がちくちくと刺激される。

 

「それ以外も〇〇で買っておきたいものがあるから……結構な量を運ぶことになるわ。私、格闘技経験あっても力ある訳じゃないし、何より」

 

 立ち上がろうとして腰砕けに倒れかけた鈴音を支える。足元が生まれたての子鹿のようになっているのは無理しすぎだろう。

 

「無理をするなよ」

「ええ、ありがとう。はぁ、やっぱりそうね。今腰が抜けたわ。意識があるのに感覚がマヒして筋肉が萎えて、かすかに力を注ぐ事さえできなくなるなんて初めてだわ」

「堀北さんすごいね。まだ立てないよ私。ほら動かない」

「あー、なんというかすまんな」

 

 確かにやりすぎたので謝罪の意を示すと、二人とも唇を引き締めもごもごしだした。何を言おうとしているのだろうか。

 

「……いいわ。これから慣れていくから、今回こうなったのは、今まであなたは最後までしていなかったということだから」

「うん。清隆くんが加減してくれたのはありがたいけど、せっかく……するんだから満足してほしいし」

「そ、そうか」

 

 二人の顔は真っ赤になっている。全身に力を入れすぎてふるふると震えながら上目遣いに微笑む二人に、一瞬見惚れた。

 

 ごほんと咳払いして「話を戻しましょう」とオレの胸の中で目を逸らしながら言った鈴音の言葉に桔梗が再起動する。

 まだまだ、オレも含めてこういう空気に慣れていないな。

 

「うーん。やっぱり動けないや。堀北さんは、今どんな感じ?」

「足が震えて、清隆君が支えてくれなければ立つことさえできないわ。もう少しこのままで居れば感覚が戻ると思うのだけど、櫛田さんは歩けそう?見ている限り無理そうだけど」

「腰がとってもだるい、完全に抜けて立ち上がろうとしても足がピクリとしか動いてくれない。でも、感覚が戻ってきたから、内股で誰かが支えてくれたら頑張れると思う。もう、夜だから暗闇に紛れればブラつけてないのもわからない筈だよ」

「やっぱり、今日行くしかないわよね」

「今の時間、週に一回の丁度人が居ない隙間なんだ。この機会逃したら、ノーブラ姿で人目がある中で買うことになる。何より成長期にブラなしで数日過ごしちゃうね」

「絶対に避けましょう」

「同感……でも、私たちじゃ行けないね」

「確かに、誰かに連れて行ってもらわないとどうしようもないわ。歩けない」

「もう一つ手はあるけど。やっぱり直にみたいね。何処か居ないかなあ。私たちの体をこんなにした人に、連れて行って欲しいなあ」

 

チラチラと見てくる二人にどう抗えというのだろう。下着専門店か。

 

「分かった。オレが背負って途中まで人目につかないように連れて行こう」

 

 流石にプレイでも無いのにノーブラはな。

 何より成長中にブラなし、せっかくの美乳が崩れでもしたらと思うとな。

 手の中に吸い付くような二人の乳房をチラリと見る。タオル越しでも分かるつんと上向きの形の良い乳房。これを崩すわけにはいかないな。

 

「背負うって?二人よ。ケヤキモールまで割と距離があると思うのだけど背負えるの?」

「出来ないことは言わない。ケヤキモールくらいの距離で二人背負うくらいなら、丁寧に運んでみせる。人目とカメラ映らないように暗い道を歩くことになるが、それでいいか?」

「ありがたいわね。それでお願いするわ」

「さっき、下着代出してくれるって言ってたけど、半分だすからね」

「いや、今回は俺のせいだ。全額ださせてくれ」

 

 副作用を知らなかったと言ってもおそらく通じないだろう。母乳を噴出したときのために保身の材料は一つでも確保しておかなければ。

 

「そ、そう。買ってくれるの。そう」

「清隆くんも気が利くようになったよね。本当に」

 

 心底嬉しそうに見てくる二人を見ていると、後ろめたい思いがわいてくる。

 保身のための行動に、こんな表情をさせた自分に対する嫌悪感をごまかすように言葉をだす。

 

「ただ、条件がある。せっかくだ、試着した下着で色気のあるポーズのひとつでも見せてくれ。どうだ?」

「あ、うん……恥ずかしいけど、見て買ってくれるってことかあ、そっか」

「ようやく、デリカシーを覚えたのね。なら下着姿を店で、見られても……ええ、良いわ」

 

顔を見合わせ頷き合う。

 

「「で、予算は?」」

 

振り向き言葉端が違えどはもる二人の声。こちらに向ける目は爛々と輝いている。

 

「一人、20000ポイント。端数切り捨て」

 

かなり痛いが、保身のためだ。ポイントなら、なんとかなる。仲良く20000と声をそろえた二人は考え込む。

 

「下着だけで、20000……か。3組買うとして、1組7000弱……いいね。結構良いの選べる。いや、高いの1つ買って後は安いのも有り……下着を選べる。まず値段じゃなくて、デザインと肌触りで」

「セミオーダーで好みのデザインにして、付けていて楽なフィット感をこだわっても、3組はいけるわ。いえ、もし測ってもらったときにD65だったら、生地にこだわっても」

 

聞いていて泣けるようなことを言いながら、目の輝きをさらに増した二人に、話し合って着替えるから出て行けとオレは追い出され着替えた二人を背負い店の近くまで来た。

で、今に至る。

 

 

 

 いや、どう考えても避けられた。二人を店の前で降ろし、試着時間まで店の近くで時間を潰せば避けられた。「歩けないから店の中まで連れていって」とねだられ従った結果だ。これは。

 入ったとたんに何故か店員が心得たような笑みで頷き、店の奥に誘われたことなどどうでもいい。

 「お客さんあなたたちの他に一組だけだからゆっくりして行ってね」と微笑みながら言われ「はい、ゆっくりさせてもらいます」と声を合わせて二人が答えたのも、どうでもいい。

 不用意に一歩踏み込んだ時点で、勝敗は決していたのだから。

 前、鈴音に食事に誘われた時、用事があると誤魔化さずに行って嵌められた時を思い出す。

 今思えば、俺は内心心を弾ませて鈴音の部屋に上がりこんでいた。

 ひょっとしたらオレは、引っ掛けて欲しかったのか。鈴音と桔梗と話ながら背負いながら歩いて下着専門店に入り、二人の声を聞きながら女性の下着に囲まれて佇む今が楽しいのか。

 人気が少ないとはいえ、下着専門店の中で二人の少女と一緒に男一人になるほど、鈴音と桔梗が自分のものだと言いたいのか。

 ……いや、流石にこの晒し者はキツイ。他はともかくこれは楽しくない、拷問だ。

 一対一のカップルならまだしも、男一人、女二人の女性用下着売り専門店をオレは舐めていた。

 

「……針の筵だ」

「清隆くん、こういうこと疎いよね。男一人で女二人連れてこんなところに来たんだから仕方ないよ」

「確かに疎いがそれ以前の問題だ」

「?」

 

 椅子に座って可愛らしく小首をかしげるんじゃない。

 

「どう考えても、連絡してここに来ていたよな?」

「疑っているの?私たちを」

「入店してから、ここまでの店員の手際といい。このもてなし。連絡一つ入れていないのはありえないだろう」

「うん。連絡したよ。下着専門店に男の人一人で女の子二人で入店するのにしない理由がある?どうかしたの?」

 

 思わず鈴音に目を向ける。

 

「私があなたの問を何時否定したのよ。誰か他に客がいたらどうするつもりだったのかしら。今いる一組とは離れたところに案内してもらうように、他に客が増えたら都度対応してもらえるようにしたの。誰かと顔を会わさないためにね。あなたのことを考えた私たちの配慮に問題が?」

「そうだな。そのとおりだ。ありがたい配慮だ。確かに連絡しないほうがおかしいな」

 

 全く持ってその通りだ。言っていることには道理しかない。何でオレに説明一つしていないのかが問題なのだが、それを言うと昨晩から今朝にかけて説明なしでいろいろやりすぎた。藪はつつかないでおこう。

 

「なら良い。今度から一言言ってくれればな。だがな」

「何か気になることでも?」

「いや、店員のオレを見る目がな。何か生温いモノを見る目なんだが、どうしてか分かるか?」

「……当たり前でしょ」

 

何故か呆れたようにオレを見る桔梗。同じく鈴音も呆れたようだ。

 

「あなたは本当にバカな時があるわね」

「いや、でもな」

「3Pした挙句、縛って剃った上に、これから常にあそこを剃っておかないと全身を剃ると脅した人が、冷たい目で見られないのが疑問なのかしら?」

「その上、薬でイロイロしたあと散々してくれて、後始末とか言って動けない私たちの体の隅々まで、何処洗ってるか一々言いながら洗ってくれやがったよね。死ぬほど恥ずかしかったんだから」

「しかも素手でね」

「お前らの肌が傷つかないように慎重に洗うためには素手が一番なんだ」

「言いたいことはそれだけかな」

「あなたって人は」

 

男としての当然の答えに、二人とも半眼で見てくる。

 

「縛った事と器具以外、店員さん知らないけど。教えたら冷たい目で見て――いや、見ないね。私たちも生暖かく見られるかも。でも、これなら、噂にはなるね。どうする、社会的に死んでみる?私たちと一緒に」

 

不味い。本気だ。

 

「……やっぱり怒っているよな?」

「今の話のどこに怒らないところがあるのかな」

「恨まずに、これで一旦区切ることにした私たちに何か言いたいことがあるとでも」

「いいや……これからも色々あるだろうが、話さないでくれると有難い。オレたちだけの秘密にしてくれ。頼む」

 

サディストとして開眼してしまっただけでなく、母乳噴出が待ち構えている。迷惑をかけてしまうだろうしな。

 

「ええ、いいわ。こうして付き合ってくれたんだから、店の中まで私たちを背負ってね」

「私も。清隆くんが、下着専門店に来て選んでくれるなんて思いもしなかったし、しかも、買ってくれるしね」

 

 どう聞いても碌でなしの発言に、何故かくすりと二人は笑って、下着選びを再開した。

 何というべきか、その笑みは魅力的だった。

 照れを誤魔化すように気になっていた事を尋ねる。

 

「そう言えば、さっきもう一つの手があると言っていたが何なんだもう一つの手って?」

「ん。ああ、あれはね。取り敢えずアンダ一1つ上のブラを、清隆くんに買いに行って貰おうとしたんだ」

「は?」

 

事も無げに言われたことに固まる。

 

「非常手段だけど、数日だけなら安いものでなんとか済ませようと思ったのよ。まさか、二人背負って来れるなんてね」

「ほとんど揺れなかったしね。足腰凄いね清隆くん。あっ、これ良いな。値段も手頃」

 

そのまま、背中越しで下着選びを再開する二人。待て、待ってくれ。

 

「オレが女性用の下着を買いに行くのか」

「そうだよ。ブラ1枚ずつ、合わせて2枚」

「オレ一人で」

「ええ」

「……どうやって?」

「私たちが、あなたが買いにいくから渡してほしいと店に連絡するわ。あなたはブラを受け取って会計を済ませて帰ってくれば良いのよ。簡単なお使いでしょう」

「…………」

 

悟りの心境とはこういうものをいうのか。下着専門店に男一人訪れ、2枚のブラをレジで受け取り会計を済ませる。

苦行だ。

こうして、二人と買い物に来た方が間違いなくマシだった。

決めた、貝のように黙ろう。

そうして、新しい下着を着た二人を見て目の保養をして癒され全てを忘れよう。

二人に椅子ごと運べと言われる数分前に決意した。

 

 

「あれ、この声」

 

 桔梗と鈴音を椅子ごと移動したオレたちの耳に人の話し声が聞こえた。

 

「――――だな」

「――――ね」

 

「男の声か」

 

 こんなところで聞こえた男の声に視線を向ける。

 

「もう一組に、清隆くん以外の男居たんだね。女性用下着専門店に来るなんて、カップル以外ないと思うんだけど誰かな」

「カップルでも、こんな所に来るなんて中々胆が座っているわね。二股で来る人ほどじゃないけど。それより、こっちに歩いてきてるわね。このままじゃ目が合うわ」

 

 鈴音と桔梗の容赦ない言葉に心の柔らかいところをグサグサ刺され削られて居る場合じゃない。心に負った痛みに耐えながら視線を前に向ける。駄目だ。隠れる場所などない見つかる。

 誤魔化せるか、と桔梗に視線を集める。

 

「清隆くんが居るからね。正直厳しい。誤魔化せる人だと良いんだけど」

「そうか」

 

 男一人、女二人で女性用下着売り場に居る。知られた奴によっては対処しなければならない。

 そう思いながら通路に姿を現した二人は、ある意味意外である意味納得の二人だった。

 

 

 

「じゃあ単刀直入に、すげえ興奮したぜ。エロくて見ただけで興奮した」

「それ……なんの評価」

「その下着を着けたなずなの評価に決まってるだろ」

「それさあ。私以外に言ったら幻滅されるよ」

「ハッ、こんな直球なこと、なずな以外に言うわけないだろ。だからいいんだ――」

「雅。それ、まっちゃんとくーちゃんと島田さんに言ったことあるでしょ。知ってるんだよ。私は……あんた、私と約束したことも守れないんだ」

 

 やさしく穏やなと評して良い声。だが、恐ろしいほどのナニカが込められた声に背筋に寒気が走る。凍りついた世界で、ナニカの対象となった南雲が済まなそうに言葉を吐き出す。

 

「……あ……あー……でもな。そうなると似合っているとしか言えないな」

「え?」

 

 凝固した空気が溶け、背筋の寒気が消えた。

 

「悪いな。遊びじゃない言葉を使うって時に、ありきたりな言葉しか言えなくて」

「いい。うん、それ。いいよ。もう一度言って」

「こんなのでいいのか。似合っている。なずな」

「もう一度」

「似合っている」

 

 朝比奈が南雲の腕の中に体を預ける。

 

「……うん、もう一度、このままで」

「似合っている。なずな……これでいいのか。もっとうまいこと言える――」

 

 指を南雲の唇に当て、首を振る。何も言わないで欲しいと。

 

「……そうか」

「うん」

「そうだな……そうだよな。似合ってる」

 

 

 

「おぉー」

「成る程」

 

 視線の先の通路上で止まり抱き合う二人に、桔梗と鈴音は出歯亀となった。椅子に座ったまま前屈みになる二人が転げ落ちないように支えながら、内心でそこで止まるなと叫ぶ。

 今までは興味無かったのに、出歯亀とは二人も変わったな。南雲の姿を視界に納めると同時に舌打ちした桔梗が、今それを全く表に出していないのは今までのままだから良いとしよう。

 しかし、知人の中では、鈴音と桔梗とそういう仲だと知られた今早急に手を打つ必要がある組み合わせだ。最悪ではないが、悪い組み合わせにため息を漏らす。

 

「あれ、綾小路くんじゃん、久しぶりー」

「櫛田に堀北先輩の妹か。それと……ちっ綾小路か。書類を渡して以来だな」

「桔梗と鈴音も会うの久しぶりだねー」

 

 南雲の奴、一時期の平田のように潰れかけていたのに、オレに舌打ち出来るくらいには立ち直ったか。

 かなり手酷く相手をしたため、未だ傲慢なまでの自尊心が傷つけられ、無気力な気配が濃厚とはいえここまで立ち直れるとはな。

 大したものだな。と感嘆する。

 朝比奈の献身故だろう。

 周囲から人が居なくなった南雲を、たった一人で献身的に支えて立ち直らせつつある朝比奈の姿に「凄い。本当に凄い。あの時、私に出来たらなあ」と言っていたみーちゃんだけでなく、色々な奴が感動し尊敬しているほどだ。

 

 本格的に手を組むとき南雲の目を覚まさせるために南雲を負けさせて欲しい。と言った朝比奈の姿を思い出す。

今の雅は本当の雅じゅない。あいつの目を覚ませるなら私に出来ることならなんでもする、か。

 ――悪い組み合わせだな。本当に。




 朝比奈さん大勝利ルートです。
 彼女、原作読む限り一貫して本当の意味で南雲くんの味方なんですよね。

 店員が生暖かいというか好意的な理由は。
 店員さん「下着で困っている彼女たちを、寮から店まで背負ってきて、ちゃんと試着を店で見てあげた上で、20000ポイント分の下着をプレゼント。良い男の子ねえ(ほっこり)」
 綾小路君が保身6割で行動してたことがばれない限り、行動を列挙すると遊びじゃないと一目で分かりますから二股くらい気にならないでしょう。下着は本当に喜ばれるプレゼントの一つです。
  まあ、ありとあらゆるプレゼントと同じく状況によりますが、今回はクリティカルです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人でなし

as123さん、評価付けありがとうございました
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます


おかしい。綾小路くんが何股かけたときのことを話せる相手が南雲くんくらいだから出して、一度叩き伏せてから起き上がらないと南雲くんだと相談一つもしてくれないなと書いていたら、こんなに長く。それも終わりませんでした。


 抱き合い終わり、オレたちと目があっても多少紅くなったくらいで流そうとする朝比奈の努力に応え、抱き合った姿を目撃したことも出歯亀したことも流す。朝比奈が「うわっ、この二人かぁ、この子、やっぱ雅の同類か。ほな」とか唇を動かしたが気にしないでおく。

 

「ちっ……こんにちは。朝比奈先輩」

「お久しぶりです。朝比奈先輩、南雲先輩」

 

 しかし、桔梗はともかく鈴音はいつの間に朝比奈と仲良くなったのか。

 後一歩で潰される所まで追い詰められた桔梗は、南雲とは距離を置き挨拶どころか目を合わせない。オレはもっと色々あったが仕方ないか。

 

「意外と元気そうだな」

 オレのぶっきらぼうな発言に、二人は何かを察したらしく、様子を伺い始めた。

 

「なずな。綾小路と話がある。少し良いか」

「鈴音、桔梗、オレも少し離れる」

「うんOK。じゃ二人ともどんな下着選んでるか先輩に見せてみようかー」

「わかったわ……先輩、同性でもセクハラになるんですよ」

「うん。行ってらっしゃい。いやいや男の目がなくなった今、見せ合おうよ」

「そうそう。女は女だけで楽しくやろうよ。あ、雅、あまり遠くに離れると女の子バリアなくなるから見える範囲に居てよ。女の子の秘密の話声聞いたら容赦しないからね」

「ああ、わかってる。見えても声が聞こえないところに行く」

「それなら、そこの角がいいわね」

「あー、あそこなら誰かに声かけられてもフォローできるね。じゃ、あそこで話しててよ。あ、椅子あるんだ座って良い?」

「あ、はい、どうぞ」

 

 周囲の店員が「あの子の後輩か。道理でね」と納得した視線を向けてくるのを不本意に受けながら移動した。

 

 

 

「ふぅ」

 

 思っていたより気疲れしていたようだ。周りがカラフルな下着に囲まれたとはいえ男だけの空間に、安堵の吐息を漏らしてしまう。

 

「大分お疲れじゃないか」

「ああ、男一人、女二人だからな。周囲からのプレッシャーが半端じゃない。あんたは違うんだな」

「今回は一対一のカップルだからな」

「他のパターンがあるのか」

「男一人ってのは無かったが、男女複数はわりとな。男一人でこんなところに女複数は、俺でもしない暴挙だぜ。危うく爆笑するところだった」

「なら、こう言うときどうすれば良いか聞いて良いか」

「聞いてどうする気だ」

「参考にする」

 

 答えず、南雲は静かに三人が居るところを見つめる。

 

「桔梗に鈴音か、また遊びで済まないのに手を出したな。特に桔梗の後始末としては下策だろ」

「桔梗については考えがある。それと、遊びではないつもりだ。二股だがな」

 

 恵については伏せる。

 

「そうか、ならあんまり参考にしない方がいいな。俺のは遊びだった」

「それでも、あんたにはこういう店にきた経験があるだろう」

「まあな」

「経験のない、可愛い後輩にアドバイスをしようとは思わないのか」

「可愛い後輩はここに居ないな。居るのは能力隠した挙げ句オレを叩きのめした奴だけだ」

 

 南雲から拒絶、いや空虚な気配がする。身が入っていない。それでも、大概の奴に比べて厄介な奴だ。

 オレも桔梗と鈴音と居る今出会ったからには、空手では不味い。何らかの約定を目指すべきだが、今の南雲にはその気力さえなさそうだ。

 ――活を入れるか

 

「あんたが、オレに隔意があるのは理解している。それでも、普段から異性と遊び慣れていて場慣れしているんだ。場馴れしていないオレにアドバイスの一つくらいくれないか」

 

 下手に出ると、南雲は気に食わないと一度唇を歪めて話し出した。

 

「勘違いしているな」

「何がだ」

「慣れているから大丈夫?下着専門店だぞ。男子禁制の場所に入り込んだ今のお前ならわかる筈だ。女子とマンツーマンじゃない下着専門店がどれだけ面倒だったか。俺も今日なずなとマンツーマンで来て始めて理解したほどだ」

「今マンツーマンではなく来ているんだがな。一つ聞かせてくれそんなに面倒なのか」

「ちっ」

 

 舌打ちして眉根を寄せるか。これ以上、下手にでるのは辞めた方が良いな。南雲に響かない所か逆効果だ。

 

「ああ、面倒だ。多人数だと一人への褒め言葉一つで他の視線が変わる。一人を褒めすぎると残りが不満そうにして目をあわさないようにするならいいんだが、大抵の場合、自分もあの女より褒めろと群がる。

 それで、自分が思ったより褒められなかったりアピールポイントを褒められないと、がっかりしてふてくされる。それでいて、自分がよりいいと思うやつを見せてくれと言えば、探してくれないんだ私はどうでもいいんだとぶつくさと。なりは育っていても子供だな」

「……そういう時あんたはどうしたんだ」

「複数の男で来たといっただろう」

「ああ」

「カーストが低いやつを手招きしてそいつに擦り付ける。そうすると女はおとなしく俺の言うことを聞く」

「なるほど、参考にならんな。それが分かっただけでもありがたい。感謝する」

「お前に礼を言われるとはな」

 

 駄目だな。この流れでは、南雲と実のある会話はできない。

 話を変えてみるか。こいつとの共通の話題なんていくつもない、心の中で対象の一之瀬に詫びる。

 

「遊びで思い出したんだが」

「なんだ」

「あんた、何で一之瀬口説いたんだ。一之瀬も遊びですませられる相手じゃないはずだが」

「……帆波?」

 

 この場で聞いてはならない名前を聞いたように、目を見開いてオレを凝視する。

 

「……この状況で帆波の名前を出すか。お前は本物の鬼畜だな」

 

 オレから目を逸らして買い物を楽しんでいる鈴音と桔梗を見ると、ドン引きしながら無礼なことを呻く。

 

「……まあ、つまらない疑問だな。解ってて聞いているのが特につまらない」

 

 一度周りを見回し朝比奈を含めた誰もこちらを見ていないことを確認して話す。

 いや、朝比奈だけを見た。朝比奈には聞かれたくないらしい。朝比奈は良い首輪になっているな。

 

「今の帆波は遊びでは済まされないのは確かだが、あの時の帆波は違う。そんな関係になっても最後には……解るだろう?」

 

 流石に決定的なことは言わないか。答えなければこれで話は終わりだ。

 選択肢がある。南雲に踏み込むか、反らすかだが。

 

「へー、鈴音はサイズ…だったんだ。よくあったね」

「ええ、割りと苦労してましたけどデザインにさえ拘らなければ……なんです?」

「うーん、くんくん、これは最近下着を着飾るのが気になるようになった匂いがするね。どうしてかなー。先輩しりたいなあ」

「や、先輩、何す…櫛田さんも」

「おっきくなったの色気付いたのもあるよね。きっと」

「それはあなたもでしょう。あと先輩、サイズを口に出さないでください」

「あれだけ小声で言ったのに?」

「それでもです。南雲先輩に聞こえたらどうするんですか……何で、笑うんです?」

「いやあ、綾小路くんには聞こえて良いんだなあってね」

「っ」

「そっかー、ごめんね。知ってるのは言う必要ないよねー」

「せ、先輩、何を」

「うんうん、わかったわかった。で、綾小路くん二人の新しいサイズもう知ってるのかな。それとも、まだ?」

 

 きゃっきゃっ……ほとんど聞き取れないが、後が完全男子禁制空間になったことは理解した。南雲に活を入れて話し合いをして約定を結ぶには踏み込むしかないか。

 

「捨てても一之瀬の自滅で終わると言うことだな。万引きの時のように」

 

 オレが同意して踏み込んだことで、録音なしと判断して話を続ける。

 

「そう言うことだ。帆波はそこまで持っていくのが面倒なだけで、遊んで捨てる相手としては極上だったんだ。

オレは、あいつから万引きして半年自分を責め続けたことを聞き出していた。あいつが、中学卒業のタイムラインがなければまだ引きこもっていた確信と共にな。なら、解るだろう」

 

 状況としては、船で恵を追い込んだ時に近いくらいの急所を握りしめたからな。

 当時のオレが知ったら、Bクラスを崩壊させるために利用する可能性もあった。

 

「たとえ捨てても、方法さえ間違わない限り、一之瀬は自分を責め続けて殻に籠り、あんたを恨むことはない。そうするのは容易か」

「その通りだ。幾つか手を考えていたが、本命は、帆波に飽きた頃帆波が適当な男と仲良くしている時に糾弾して別れ話を切り出す予定だった。男を用意した上でな。帆波を抱けると言えば候補には困らない」

「罪悪感にさいなまれる一之瀬とそこまで行くのは難しいと思うがな」

「それは、そいつ次第だ。傷心を抱えていると紹介されて、そこまでいけないならその程度だろう」

 

 その程度の奴をけしかけ、一之瀬をさらに追い詰めただろうに。合理的だな。

 

「一之瀬には周囲に人が居る。誰か助けた可能性があるが」

「人はな。ただの有象無象だ。帆波を助けられる人材じゃない。実際、お前という人材が介入しなければ坂柳の時、終わっていた。そのお前も、俺の色に染まった帆波を助けない。俺を強化するだけだからな。解りきったつまらない事話すなら、話を切り上げるぜ」

 

 苛立ち混じりの南雲は、下手なことを言うと話を切り上げ引き上げるな。

 

「確かに、その状況なら一之瀬を助けないな」

 

 そもそも、助けたのは桔梗の情報力の確認の手段だ。一之瀬が南雲のモノになった後なら自滅させるべく放っておくか、南雲を恨ませ――るかだろう。素直に認めると、南雲は陰がある目を細める。

 

「あの容姿と性格の女を道理で切り捨てられる。お前はやっぱイイな」

「男に言われたく無かったな」

「安心しろ。そんな意味は欠片もない」

 

 信じるぞ。最近洋介からの感情が友情だけだと信じられないときがあるからな。

 

「まあ、あの容姿だ。殻に籠っても、しばらくは気が向いた時可愛がっていただろう。食料とか日用品を手ずから持っていって、口先だけで励ます。そうしているうちに、帆波は外部と接する相手をオレだけに限定して依存する。

完全に捨てるのはその辺りだな、陰気になりすぎて萎える。タイミングとして悪くないタイミングだ」

「捨てるのは確定か」

「この流れだと、あいつはオレに依存するが恋はしない。そうなるように仕組むし、そうさせる。遊びと依存だ。長くは続かないし続ければ俺が破滅する」

「なるほど」

「遊びで済まない相手には手を出さず、別れるときには此方に害なく別れるのが遊びの基本だ。その点、あの頃の帆波は捨てるタイミングと流れを間違わなければ、捨てても捨てられた自分を責め続けて殻に籠る。坂柳が少し小突いただけでああなったように。遊び相手として最適だろう」

「そうなるだろうな」

「他人事のように言ってくれるな」

 

 陰険な目つきで責めるように俺を見てくる。

 

「あの時、俺は二年三年は元より学校側で帆波を救える奴を封じていた。残るは一年だけだが、一年で帆波を助けられる能力を持っていたのは、高円寺と坂柳と龍園くらいだ。高円寺は論外。坂柳は仕掛人。龍園は帆波が潰れてメリットしかない。何より、あの頃は傷心中だったからな。介入しないと確信していた。勝利の喜びを欠片も発露させない奴にやられた無力感というか咀嚼しきれない気持ちはよく解るぜ」

 

 目が笑って居ないが、ようやく笑みを浮かべるくらいには余裕を取り戻したようだ。

 オレの反応はどうでもいいと話を続けてくる。

 

「女々しい思い出だな。あの時、俺は詰みの段階だった。後は過去を知っている者として帆波を慰め、モノにして飽きたら捨てるだけだった。お前が居なければな」

 

 睨み付けてくるが、まだどうにも力がない。

 

「助けて依存させるのではなく、自力で立てるようにするとはな。そこまでとは思っていなかった……堀北先輩の目は俺より確かだったな。今なら、認められる」

 

 自らの過ちを認める。一皮剥けたと言えれば良いが、南雲の場合腑抜けただけだ。何らかのきっかけはないかと耳をすます。

 

「うーん」

「あの、どうしたんですか先輩。そんなに首筋を覗いて、何かありました?」

「いやね、二人とも見えない服の下にキスマークたくさんあって、どう見ても昨日今日のなんだよね。これ。……あー、二人同時、なのは、まだ、見慣れてるから………その、良いんだけどさあ。この手首の痕とか……あの、もしかしたらと思っちゃって」

「あははは、まっさかー。手首に痕があるからって、変な想像しないで欲しいんですけど。まさか、先輩そういう趣味が」

「いや、でもね。桔梗……あー、そっか、雅よりヤバイところあるのか、綾小路くん」

「あれだけの女性と浮名を流した南雲先輩よりはましだと思うんですけど、先輩が今南雲先輩と付き合っているの信じられないくらい酷かったじゃないですか」

「ああ、雅のあれはね。フォローしようがないし、するつもりもないんだけどさ。ほかの人はともかく私は許した。だから、私の前では言わないでほしいな」

「……先輩が、そう言うのなら」

「だからさ。私も二人が二股かけられてること秘密にするし、綾小路君も悪く言わないよー」

「ちょ、先輩。抱きつかないでください」

 

 今あっちから得られるものはない。危険だ。ごく自然に南雲と同類のカテゴリーに入れられてしまっている。

 ――その通りだが。

 

「その上、やられるその時まで気付かなかった。自分の無様さに笑えてくるぜ」

「自分語りはそのくらいにして、一之瀬についての話を続けたらどうだ?」

 

 自身の中にもぐられても南雲は立ち直らない。外に向けさせなければ。

 

「まだ帆波か?最後には、すべてを拒絶して自己嫌悪の中に終わる奴だ。多少面倒見れば、こちらに迷惑をかけないようにしてな。自分で自分を始末してこっちに火の粉がかからないようにするんだ。私物の遊び相手としてこの上ない相手だった。そうならないと思う?か」

「いいや。そうなるだろうな」

 

 同意すると影かある笑みを浮かべる。

 

「やっぱり、お前は人でなしで俺好みだ。今の言葉を聞いて、相槌打つでも、追従するでも、嫌悪するでもなく。理解だけで留めるところが特にな」

「いや、一之瀬の友人として不快だ」

「だが、その不快な情を理性の上には置かない。有象無象の上に立つなら必須の人でなしの資質を、お前は堀北先輩より持っている。そして、帆波は人でなしにはなれない奴だ。あいつは私物止まりだプレイヤーじゃない」

 

 あまりにも簡単に一之瀬を切り捨てた南雲に、きっかけを掴んだ確信と同時に、呆れ交じりの苦い感情を覚える。友人を罵倒され怒りを抱いたのかもしれない。

 

「あんたは、一之瀬を過小評価しているな。一之瀬が作り上げたクラスの団結力は、オレにもあんたにも出来ない。人でなしにはなる必要がないと評価すべきだ」

「違うな。あんな仲良しごっこはやる必要がないだけだ。実際、戦えば潰せる。人でなしになれない奴は事が起こったとき脆い。どこまでも私物にしかならない」

「戦えば、な。有事に弱いということを平時の安定よりも過小に評価しないほうがいい」

「この競争社会で安定か」

「競争社会だからこそ、平時の安定に長けた一之瀬のような誰もが善良と認める人材は必要だ」

 

きっかけは完全に掴んだ。踏み込む。

 

「一応聞いておく、お前の私物扱いは能力を見ていないんだな?」

「ああ、外面だけの評価だ。人でなしに、いや人の上には立てない帆波には正当な評価だろう」

「確かに、一之瀬はリーダーではないな」

「だろう」

 

 肩をすくめる南雲を見ながら思い出す。

 

 南雲がポイントと交換に付き合えと言われた時に、自分を犠牲にしてクラスを守ろうとした。

 本人は、自分もリスクを負うだの言っていたが、必要のないリスクを負うのは自己犠牲以外の何者でもない。

 あれは補佐役の決断だ。リーダーではない。

 あの時、あれだけの団結力があるクラスでのリーダーとしては、最悪の決断だった。裏切ったと言っても良い。

 

 一之瀬の決断は、Bクラスの崩壊を先伸ばしにしただけだ。

 後々「一之瀬がクラスメイトを救うためのポイントのために南雲と付き合った」とばらされれば、BクラスはBクラスたる団結力が故に崩壊した。

 同学年に限っても、坂柳、龍園、状況によってはオレも躊躇わずにやる。

 

 Bクラスのリーダー足りえるのなら、一之瀬は共有すべきだった。南雲に口止めされていたとしても、オレや朝比奈のように知っていた者は居たのだ。手段を講じれば共有するのは容易かった。

 南雲にポイントと交換で付き合えと言われていると、クラスメイトと共に悩み苦しむべきだった。

 他の誰でもない、クラスメイトのためにそうすべきだった。

 間違いなくリーダー失格の決断だ。だが、それは一之瀬帆波と言う人材が補佐役を天性としていると判断するべきものでもある。

 

「お前がオレに敗北した理由の一つが知れたな」

「……なに」

 

目を細めてくる。ようやく響いたか。

 

「人間は、疲れもすれば磨り減る。一之瀬は誰かが疲れていたり磨り減ったならば、間違いなく気付く。そして助けようとする。その前にそうならないように努力する。お前の言う通り仲良しごっこでな」

「意味がないように聞こえるが」

「そう聞こえるなら、あんたは平時云々以前に本当の意味で組織を理解していない。特に人材を育成できないな」

「何?」

「あんたはまぎれも無く有能だが、他人には自分ができる高度な分析や戦略立案はできないと信じて疑っていない。違うか?」

「違うな。お前のような奴が居ることを理解した。ある一面いや複数の面で、俺と同等かそれ以上の奴が居る現実を今の俺は理解している」

「なら、そういうあんたが思う組織とは何だ?」

「何を問題としているのかわからんな。だが、答えてやる。優秀じゃない奴が圧倒的な多数だ。お前のような優秀な人材が機会を得て、権限を得、働く。その責任を俺のようなリーダーシップが優れた人間が取る。優秀ではない凡人の下々は、その下であくせくだまって働く。それが俺の思う組織だ」

「生徒会長就任演説の通りだな。言っておくが、それは優秀な人材の活用法でしかない」

「……」

 

 にらみつけてくる南雲を流す。

 

「優秀な人材に、仕事を割り振っているだけだ。最初から優秀なんだから、複雑な面倒なことも出来るだろう。あんたの生徒会のようにな」

「優秀な人材を活用しているのが、間違いだと言うのか」

「間違いだな。生徒会の誰かが病気になったりして動けなくなったら終わりだ」

「優秀な人材がもっと必要だと言うことなら、俺は改革したぞ」

「あんた、その優秀な人材に当たるまでに何回生徒会役員を除名させたんだ。オレが知っているだけで9回はしただろう」

「……何を問題としているのか分からんな。除名した連中は能力に欠けていた凡人だから外した。代わりに優秀な奴を入れて厚遇した。何の問題もない」

「問題だらけだ。あんたが除名した奴等は普通の人材だ」

 

 気概が戻ったのは分かったから、睨むなよ。

 

「普通の人材を凡人と切り捨てるのと、普通の人間として組織で活用するのとでは話がぜんぜん違う。

 確かにあんたみたいな優秀な奴が一人で何でも仕切れば、話は早い。だが、他の人間にはあんたが、どういう前提で、どういう理屈で、どういう筋道の上で、その判断を下したかがわからない。

 ……指示をしているから大丈夫だと思ったな。なら、あんたの指示が途絶えてその間に状況が激変すればどうする。状況が変わり結末が見えなくなれば、あんたの考えている組織は優秀な人材が四分五裂に動くか、あんたに盲目に従った普通の人材が何もできずに機能不全だ」

「……そうか。あの時、お前はそうやって俺を潰したのか」

 

 血走った目で殺意を込めて睨まないで欲しい。

 

「要素の一つではあるが、それだけだ」

「……話を続けろ」

 

 呼吸一つで屈辱を噛み締められたか。近い未来苦労するかも知れない。

 

「あんたが言っている優秀な人材に仕事を丸投げして責任を、というのは単なる甘えだ。普通の人材の組織的活用に無関心といっていい。

あんたはあんたが思うほど組織運営者としては優れていない。

破綻しなかったのは、地味に組織的仕事をする連中が居たからに過ぎない。

 普通の人材の苦情、要請、疲弊それらを纏めて調整していた奴が居た心当たりがあるだろう」

「……生徒会では、帆波と桐山だった……そうか、そういうことか」

 

 片手で顔を覆う南雲は、敗北し屈辱と恐怖に震えたあの時と違い自身への怒りで震えている。面倒な名前が出てきた回避しなければ。桐山にはまだ使い道がある。南雲が疑っているからこその使い道が。

 南雲に桐山を疑わせるように誘導したことを、心の中の別の棚にしまい込んで続ける。

 

「桐山はよく知らないが、一之瀬ならそうだろうな。一之瀬は補佐タイプだ。幅広い分野で能力が高く。性格温厚で情緒を解し、他人のミスをカバーすることを厭わない。だから、周りがこの人なら信用できると頼る。それでいて、トップの決断に異を挟むことは少ない。補佐役として適任だろう。

 端から生徒会を観ていた限り、巧く一之瀬も機能していなかったが」

 

 一之瀬は補佐役だ。参謀役でも一部門のリーダーでもない。

 外部交渉と内部調整。特に後者は未熟な高校生相手に現実的な財貨貯蓄の内部調整をしてのけたほどに適正が高い。労多くして功少なく大抵の奴がストレスを感じ避けることを、苦にせず喜びとすることができる。トップと機能を同化させる天性の補佐役タイプ。

 女房役と言い換えてもいい。

 本人に華がありすぎるからリーダー格になってしまうのが欠点だ。

 

「優秀な人材活用を怠ったと言いたいのか。凡人と優秀の両方を必要としろと?それなら俺の意見と同じだろう」

「違うな。組織という仕組みに、性格の異なる人材を適材適所に配置するのとは違う」

 

 退学した山内にも使い道はあった。当時のクラスが組織として機能せず、適所にすえていなかっただけだ。

 

「一之瀬には悪いが、一之瀬を例にする。一之瀬はあんたに、意図を教えて欲しがったり、他者に寛容を求めたことがあっただろう。それをあんたは流したか煙に巻いた。違うか?」

「確かに、そうした。だが、俺が命令して巧くいくのを帆波は見続けた。ならば、意見せずに指示範囲の中で工夫した方がいいと判断するだろう」

「意見じゃない。補佐しようとしただけだ」

「補佐だと?」

「一之瀬は優秀だ。あんたがしたように一部門を任せても、あんたが満足する働きをしただろう」

「実際、帆波の働きには満足していた。が、お前から見たらあいつは本領を発揮できて居なかったということか?」

「その通りだ。あんたは絶対の自信を持って揺るぎなく前へ進むが、その分あんたが言う普通の人材の不満や反骨心は目に入らないし、入れようとしない。綻びが出来る。突ける奴がいれば突ける綻びがな」

「お前のように?」

 

答えるのかと探るように見てくるが、南雲に活を入れようとしている今は答える。

 

「オレのようにな。そんな些細な綻びを一之瀬は取り繕うとしていた。綻びを取り繕るとは平時の安定と同義だ。

組織を理解しているという点において一之瀬はあんたより上だな」

「……クラスメイトと悩みと苦悩を共有せず、仲良しごっこのお友達は居ても仲間さえ居ない帆波がか」

「それは一之瀬の天性が補佐役なだけで、クラスにリーダー不在だったたけだ。違うか」

「……違わないな」

 

 仕掛けただけに、南雲はよく分かっている。

 あの時、Bクラスにリーダーが居たならば、やるべきことは明白だ。オレがしたことをすればいい。

 美味しい話に疑問を抱いて情報収集し、サシで一之瀬を呼び出し真実を突きつけて吐き出させ、龍園のポイントを得た伊吹なりひよりと交渉して解決の道筋をたてた上で、クラスで共有すればいい。

 オレがやったことをやればいい。が、誰も居なかった。

リーダーが居た場合に、一之瀬がすべきことも明白かつ安易だ。

普段通り善良であればそれで良い。それだけで良い。クラスメイトの不安を聞いて、リーダーに話を持っていき補佐する。リーダーがクラスメイトに意図を説明する横でリーダーの方針を信じていると笑顔を浮かべながらクラスメイトの不安を一つ一つ見つけて砕いていけば、それが補佐になる。普段通りだ。

 一之瀬も、もしオレが同じクラスだったならば吐き出した後に頼っただろう―――

 

「なんだ?」

 

 固まってしまったが仕方ない。天性の補佐役の前でリーダーがすべきことをしてしまっていた事に気付いた。

 最近、一之瀬がオレの部屋にまで来て愚痴るわけだ。

 

「いや、何でもないんだ。で、あんたは一之瀬の補佐にどうしていた?」

「……凡人の我儘に構うなと遠回しに伝えた」

「おそらく生徒会で、一之瀬は黙ることが多くなっていたんじゃないか」

「……黙っていたな。確かに。仕事を黙々と確実にこなしていたから、ようやく俺の意図が通じたと認識していたが、違ったか」

「違うだろうな。オレは一之瀬ではないから、一之瀬が補佐役としての役目をあんたにしないことにしたとしか分からないが」

 

 本人に散々愚痴られたから知っているんだがな。

 南雲に話す前と後に、どれだけ一之瀬が他者の意見を聞いて汲み上げ、受け入れられず謝ったことも。

 本当の意味で、自分の意思が反映されることはないと諦観して、まだマシな選択肢を選ぶ方にシフトしていったことも。

 一之瀬が上司としての南雲に「補佐させてくれない人」と見切りをつけたのは何時だったか。

 愚痴りながらの苦笑から本人はまだ気付いていないが、あくまでもまだだった。誘導すれば一発だろう。

 

「……俺は、帆波の最大の長所を殺したのか」

「一部門を任せたのはそこまでではないだろうが、あんたと付き合った場合は確実にそうなっただろうな」

 

オレが何を言おうとしているのか理解して舌打ちする。

 

「一之瀬が補佐役として徹底できるのはあの人格によるものだ。あんたの思い通りにあんたと付き合う流れでは、一之瀬の人格が変貌して長所は消えた。それどころか害になるだけだ」

「……そうなるだろうな」

「適切なときに適所に置かなかった好例だ。失敗したな。一之瀬を巧く使えばオレはあんたを仕留めるのに苦労しただろうに」

「お前の存在が無くとも、組織運営に失敗していた俺は何時か躓き崩壊させた。それをフォローできる奴を私物扱いで使い捨ててしまった上で、か。

 ……確かに、帆波、いや、色々な奴の使い方を失敗したな。俺のミスか……負けたわけだ……俺も所詮凡才だったか。なずなに面倒ばかりかけるだけの……お前と違って」

 

俯く南雲。勘違いしたまま、崩れ落ちられては困る。

 

「何か勘違いしているようだな。客観的に見て、あんたはオレと比べ物にならない優秀な人材だ」

「あ゛あ゛っ゛!?「雅?」悪い何でもない気にしないでくれ」

 

大声で奇声を上げた南雲に、心配そうな視線を向けた朝比奈に笑顔を向け安心させると、オレを睨み付けてくる。

言っちゃなんだが、保護者と被保護者だな。患者と看護師からは前進したが。

 

 

 

「……どういうことだ」

自明のことに、額に血管を浮かばせて目を血走らさせなくても良いだろうに。流れには乗っているが面倒だ。

 

「どうもこうもそのままだ。

人材を評価するとき、主に二つで評価する。信用と信頼だ」

 

血管を蠢かせながら続きをと目で促してくる。

 

「信用は、今まで成した実績からくるものだ。文武に優れた生徒会長と、平均的な無名の一般生徒。どちらが、信用に値する?」

「……生徒会長だ」

「信頼は、信用から相手がどのくらいのことをやってくれると推し量り、どれだけのことを任せられるかという期待だ。信用も信頼も、オレはあんたよりどう考えても下だ。オレはあんたより人材評価で遥かに劣る」

「確かに……いや」

 

一度頷き首を振る南雲は、納得してはいるが受け入れていないな。

 

「俺はお前に負けたぞ。あの時のおまえは確実に俺より上だった。それは、俺よりお前が優秀な人材だというなによりの証明に――」

「ならないな。仮に(強調)あんたより俺の方が優秀な技能を持っていたとしても、あんたより評価が高くなることはない。オレ個人があんた個人より上のスキルを納めているだけの話だからな」

 

南雲の額に蠢く血管が増えている、切れないか心配になるくらいだ。

 

「個人で出来る範囲は驚くほど狭い。だから、組織という仕組みを人類は発明したんだ。個人と組織。どちらが、上か。生徒会という組織を運営し、学年一つ支配したリーダーだったあんたなら自明だろう」

「……組織運営経験がある俺とないお前では、評価されるのは俺か」

 

 急所を貫かれたように、呆けた顔でぼんやりと呟く。

 

「はっきり言って比較対象にもならないな。ケチがついたとはいえ一つの組織を巧妙に運営したあんたと、綻びを見つけてそこをついただけのオレ。生徒も教師も理事会も国も、オレよりもあんたが優秀な人材と判断する。後ろになればなるほどな」

「そうか、そうだ。そうだ、な。あれだけ俺を完膚なきまでに叩きのめして土を舐めさせた奴は、評価では、俺の遥かに下か……はっ……ははっ、はははっ」

 

うつむき肩を震わせて笑い続ける南雲。保護者の朝比奈を呼ぶべきだろうか。

 

「二つ聞かせろ」

「答えられることならな」

 

 座っているが穏やかな眼差しで俺を見つめてくる。朝比奈を呼ぶ必要はないな。

 

「お前、あの時地べたに這わせた俺を踏みつけて言ったな「オレに直接手を下させただけでお前は十分優秀な奴だ。負けたことを悔しいと思う必要はない。お前が俺より劣っていた。それだけのことだ。泥の味と共に噛み締めておけ」と、あの台詞の意図は何だ?」

「あんたを無力化するための止めだ。意識を刈り取るより効果的だっただろう」

「そうか……」

 

 何かを振り払うように軽く首を振る。あんな戯れ言を一字一句覚えていたとは、どうやら予定以上にトラウマになっていたらしい。

 惜しい。このトラウマ、色々と利用できただろうに。

 こんな所で桔梗と鈴音と一緒に居るところを見られたのが、つくづく痛い。

 

「……で、偉そうなことを言っておいてお前はやらないのか?」

「帰宅部の取り立てて実績のない一生徒に何を言ってるんだ。今さら、オレが表に出てもクラスには害にしかならない」

 

 鈴音と洋介がうまくやって、クラスは組織として動いているのに俺が出る幕は無い。混乱を招くだけだ。

 なのに、胡乱なものを見る目で南雲は俺を見てくる。

 

「……思うんだがよ。お前とサシでやりあって血まみれにするほど殴れるんなら、退学くらいしても良いな」

「あんたが、一対一でオレに暴力沙汰で勝てる道筋が見えないが。そもそも、やらんぞ」

「わかってるよ……」

 

 重い吐息を吐き出すと、どこか南雲が晴れ晴れとした表情になった。

 今の南雲となら交渉できるな。

 

「……なるほどな。負けたわけだ……今度こそお前を警戒してからやりあいたいんだが、俺と遊ばないか?今、俺のこの学校での目標の一つはお前と遊ぶことになった」

「オレに利がないだろそれ。話に出た坂柳と龍園にでも相手してもらうんだな」

 

 と、坂柳と龍園を売る。高円寺は頭数に入っていない。

 

「龍園は、本命がつれない時の相手としては選択肢に入るな。理事長代理が居るときは坂柳もアリだったんだが、今のあいつは駄目だ。色ボケしやがった。ごく一部とはいえ、理と情で情を取る」

「そうなのか」

「……ああ、そうだ。そうなんだ」

 

 何故か達観した表情をする南雲。

 

 つい先日、将棋をした時はそんな素振りを見せなかったな。

 経験があるオレによる指導対局だったが、何度かやるうちに急激に腕を上げていく坂柳との時間は楽しいものだった。経験者に、未経験者が何度もヒヤリとさせたのは坂柳の優秀さ故だろう。

 ――思い出しても、あまり変化は見当たらない。

 ハンデのある体で有りながら、旨い食事でもてなしてくれたのも。

 片付けだけでもと共にさせてもらったのも。

 終わると深夜に女子フロアを歩くためにカメラに対処をしたのも。

 月城が居なくなってから割とあることだ。

 体にハンデ持ちの理事長の娘。しかも他クラスのリーダーの部屋に泊まっていけと言われても、リスクを考えると泊まれるはずないことくらい解っているはずなんだがな。色々あって心境が変わった今なら、泊まって楽しむが。

 

ふと、思った。

 そういえば鈴音と今の関係になったのは、その次の日だったな。と。

……ぞくりと背筋が震えた。

 ――――何故か、とても、不味いことを、順番を間違えてしまった予感がする。

 

 最近鈴音と桔梗と恵を抱いてばかりで、坂柳の部屋に誘われたり一之瀬に部屋に行って良いかと言われた時に、断っていることが関係しているのだろうか。

 




 一之瀬さん、彼女には間違いなく「幸運」スキルみたいなのがあると思います。
 9,10巻で助かりましたけど、綾小路くんの状況か判断によっては地獄へ直行していたとしか。
 死神が味方してくれるタイミングで良かったです。

 一之瀬さん勝手に補佐役にしましたけど、華がありすぎる彼女の場合、同じく華のある南雲くんは補佐しにくいんですよね。下手したら主役を食ってしまうから。
 
 逆に、綾小路くんだととても相性良いんですけどね。
 優しいところがあるけど陰のある冷徹非道な主役に、温厚篤実な華がある補佐役は。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人非人

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

何で、エロ書いてるのに、男同士の話し合いで一話使ったのだろう。

綾小路くんに女性との交際で納得させられるのが、南雲くんか高円寺くんか龍園くん位しか居なくて、高円寺くんは斜め上に行って龍園くんは他に役があるって、南雲くんしか居ないからなんですけどね。


背筋の震えが収まった。何なんだろうなこれ。

 

「仕方ないな。お前に利を見せてから口説き直そう……ああ、帆波で苛つくことを思い出した」

「何をだ」

「ミスをしたんだよ。昔のままの帆波なら、私物として最適だった」

「そうだろうな」

「お前が立たせるまではだが」

 

 オレを責めるように見てくる。

 

「そう言われてもオレはオレの都合で動いただけだ」

「それは分かっているし苛つくが。俺が苛ついてんのは俺の認識の甘さだ。それで」

 

 そこでもう一度鈴音達三人、いや朝比奈先輩を見つめる。

 

「なずなに助けられて、借りを作ったのが何ともな」

「助けられた?」

「帆波にポイント引き換えに付き合おうとした時、お前になずなが相談して、お前が帆波を助けただろう……ああ、否定する必要はない。裏取ったからな」

「裏を取らなくても今となってはあんたに隠す必要はない。否定する必要もない……しかし、朝比奈先輩はクラスと一之瀬を助けるために数撃ちで話したと思っていたが、違うようだな」

「お前にだけ相談したんだよ。助けられるのはお前だとな。半分賭けと勘だったようだが、結果正解だった」

「それでクラスと一之瀬を助けられたのだから大したものだな」

「勘違いするな。あの時なずなが助けたかったのは俺だ。他を軽視していたわけじゃないが、俺を助けることに重点を置いていた」

「クラスと後輩ではなくあんたをか」

 

 あの流れだ。一之瀬とクラスの為だと思っていたが、南雲のためとはな。

 

「そこがあいつの可愛いところだ。あのころの俺は、なずなに何を言われても自分の認識に固執していたからな。外から結末を変えるのは正しい。男の為にあそこまで動いてくれたなずなは良い女だ。お前のことを言わなかったことも今なら納得している」

「オレがしたのは、仲介しただけだ。だからあんたに言う必要はないと判断したと思わないのか?」

「なずなは、あの状況で手段を考えて実行する奴を過小評価する奴じゃない

 なずながお前と密かに手を組んでいたことも、俺は知っている。そしてそれに感謝している。なずなにはなずなの考えがあった、そしてそれは正しかったそれだけのことだ」

「朝比奈先輩の考えとやらに満足しているようだな」

 

 まいったな。自分の過ちを率直に認めるとは、以前にはなかった安定感が南雲を包んでいる。なんらかの争いをすれば負ける可能性がある。

 相手の感情を揺さぶるのは交渉の基本であるが、先程のは効きすぎたか。面倒だな。

 

「あいつの考えはただ一つ、俺と遊びではなく真剣に交際することだ。常にその為に動いてくれていた。

なずなは、俺と遊びでなければ付き合っていいとずっと言っていたのに、遊びで誘い続けてなずなを傷つけていたのは俺だ。色々な女に『愛している』と囁きながらたったひとりの女の恋心にさえ気付かなかった俺は、愚かだった」

 

 こいつ、本当に南雲か。朝比奈先輩が首輪になればと思って手を組んだのは確かだが、ここまで効果があったとは。

 本格的に手を組む時、南雲と本気で付き合いたい。と言っていたが、望みを叶えたのか、大したものだ。

 何故か背筋が寒く、股間が竦み上がるが。

 

「お前と組んだのも、俺と遊びではなく本当に付き合おうとしているためだった。これで喜ばないのはどうかしている。実際あの時危なかった」

「そうか?」

「あの時の俺は堀北先輩に夢中で、帆波はあくまで暇潰しの私物だった。だから、帆波の変化にも気付いていなかった」

「変化?」

 

 そういえば、あの頃から一之瀬は挙動不審になり始めたな。

 

「ああ、なずなが気付いた変化だ。あの頃、お前と帆波が朝共に登校したときなずなが話しかけたな」

「ああ、あったな」

「あの時、なずなは帆波の態度から直感した。帆波の変化と俺の愚行をな。お前に俺のことを話したのは、それもあったらしい」

「勘を根拠にしているように聞こえるな」

「なずなもそう言っていた」

「勘とは大したものだな」

 

 呆れ混じりの言葉に、南雲は昔どおりの上から目線のふてぶてしい言動で答える。なんか、懐かしいな。

 

「教えてやる。女の勘というのは二つある。文字通りの勘と、男にはない観察力で得たいくつもの兆候を独自の理性と合理性で分析した結果を説明するのが面倒で勘と言う時だ。なずなのは後者だ。内容を聞いたのはつい最近だがな」

「なるほどな。なら女の勘と言われても信じるな」

 

 愛里とかがそうだな。

 

「まあ、そこまで勘が冴えることは余りないらしいから当てには出来ない。なにより、あの時話されてもリスキーで女とセックスするために、都合のいい屁理屈を並べ立ててそれを『愛』などど飾り立てて相手を誤魔化し見下していたころの俺は、帆波をポイントで買い付き合っていただろう。始末の仕方は分かっているとな」

 

 重い溜息をひとつ吐く。

 

「あのまま付き合っていたら、命が危なかった。なずなには感謝しかない」

「大袈裟だな」

 

 何故か一度瞑目する。

 

「綾小路、お前こういうときバカでアホで残酷だな」

「いきなりなんだ」

「そのままだ。もしだ。もし、オレがあのまま帆波と付き合っていても、お前帆波との付き合い変えたか?」

「いいや」

 

 一瞬宙を仰ぐ南雲。

 

「やっぱ、命が危なかったな。あのまま付き合っても、帆波はなんだかんだ理由つけて逃げていただろうよ。モノにした女に袖にされたんだ、俺は無理矢理にでも犯しただろうな。で、お前はどうする?」

「どうするも、友人とはいえ他人のプライベートだ。話くらいは聞くだろうし相談にも乗る。訴えるにしろどうするかは一之瀬次第だ。それが?」

 

 南雲と一之瀬を互いに消滅させるか、どう転ばすにしろそれがベターだ。

 

「他人、他人ね。成程、お前の事がまた一つ分かった。お前は情緒に欠けた奴だ。他人をロジックで認識してリリカルを認識できていない」

「否定できないな」

「悪いことは言わん。そう認識して行動しろ。面倒ごとをふやしたくなければな」

 

 顔に手を置いて呆れたような溜息を吐く。オレが世間一般と呼ばれるものに弱いことは否定できず南雲の話をそのまま聞く。

 

「変わった帆波をモノにした場合、帆波は潰れそうになったときにはお前のところに行くだろうな。あいつの唯一の救いだからな

 ……磨耗しきった心で会うのは、いつも態度を変えずに受け入れる綾小路。たとえ俺に犯されたことを話しても、綾小路は変わず話を聞いて相談して受け入れるだろう。

 ……帆波なら、俺が愛してると言いながらその実セックス人形として扱っているといずれ気付く、そんな俺と変わらず受け入れる綾小路」

 

 喋り始めたと思えば、ブツブツ呟きだし手で隠れた表情が悪くなっていく。

 

「……自分を見てくれるのはどちらなのか……別れたくとも、付き合ったら別れると言い出せないらしい帆波だ

 ……負の感情を向けてくる帆波をモノにしようと俺はさらに色々やる。疲弊し悄然とした帆波を変わらず受け止める綾小路。

……俺とポイントを引き換えに付き合ったと、クラスメイトにバレてクラスが崩壊した時がタイムリミットだな。体と心を汚された自分では想いを告げられず、犠牲にした意味さえなくなったと感情を爆発させるのは。

 ……思い詰めて、衝動的に万引きして成功した帆波だ。腹だと思いたいが、確実を狙って首だろうな」

「あんた大丈夫か」

 

 遠い目をしたと思ったら、いきなり腹の辺りと首を刺されたように押さえる。顔の下半分が見えないから唇も読めない。

 おかしくなるなら話終えてからにしてくれ。

 

「いや、もういい。俺も相当非情だと思っていだが、お前より有情だということがわかった」

 

 失敬なことを言ってくる。

 一言言いたいが、命の瀬戸際から離脱した表情をしているこいつを刺激する必要がない。

 

 

 

「そうか、なら、一之瀬と付き合うつもりはもうないのか」

「遊びで済まない相手には手を出さないのが、遊びの秘訣だと言っただろう。今の帆波は遊びじゃすまない。なら答えは自明だ。なずなもいることだしな」

「そうか」

 

 何故か安堵するオレに、にやりと笑みを浮かべてくる。

 

「そうだな。例え話だが、俺がそこの二人と付き合うと言ったら、どうする?」

「後悔が出来るならお前は運が良いな」

 

 反射で返した自分とは思えない言葉に自分で驚く。南雲は愉しそうに笑みを深めた。

 

「はっ、なかなかいい感じになっているな。なら一つアドバイスだ」

「なんだ」

「お前が何股かけているか知らないし知るつもりもないが、自分が何股もかけるのならば、相手も何股かけても仕方ないことを納得しなくとも理解しておけ」

「……当然だな」

 

 さらに愉快そうに笑顔を深める。

 

「ははっ、お前のそんな顔を見れるとは今日の俺は運がいい」

「放っておけ、話の続きはどうした?アドバイスは?」

「アドバイスしてもらう側の態度じゃないな。まぁいい。実例で話そう。俺が以前六股をかけていたときの話だ。ああ、全員他に股をかけていると教えた上で股をかけた。で、その内の四人がほかに付き合っている男がいた。二人は付き合う前から二人は付き合った後の違いがあるがな。他二人は男は要らないといった、俺だけで良いんだと。で、最後の二人が今どうしているかわかるか?」

「最後の二人は、今は学校に居ない。大方、あんたが以前退学させた中に居たんだろう」

「正解だ」

 

 ぱんぱんと気のない拍手をする南雲。

 

「どうして退学しているとわかった」

「あんたが朝比奈先輩とだけ付き合ってから、あんたと付き合っていた奴が事を起こした話を聞かないからだ。他に男が居たり見つけた連中はともかく、あんただけで良いと言っていた連中は、居れば朝比奈先輩に危害を加え得る明らかな邪魔者だ。

なのに、あんたがその二人どころか、誰かを排除したという噂さえ聞いていない。ならば、もう居ないと考えるのが一番合理的だ」

「お前の読みはあってる。ポイントか他の男で済むやつ以外は、お前に負ける前には処分していた。遊びで済まないややこしい相手を早めに処分しないほど俺は馬鹿じゃない。あいつらも他に男を紹介した時に逆らわなければ、退学はしていなかったんだがな。馬鹿な奴等だ」

「盲目過ぎる連中か。処断したのは英断だな」

「そうだろう」

 

 そこで、真顔になる南雲。

 

「やっぱり、俺と遊ばないか。お前に比べれば堀北先輩も情に傾きすぎていたぞ。あそこで橘先輩を救ったからな」

「そう決め付ける必要はないだろう。橘先輩というピースが、当時の3年Aクラスに必要不可欠だけだった可能性のほうが高い」

 

 頼むから肉食獣のように笑うな。付き合っているのが、馬鹿らしくなる。

 

「で、アドバイスからかけ離れているが話は終わりか」

「いや、ここからだ。他の四人、どうして他に男が居るままで放っておいたと思う」

「リスク軽減と処分先確保、後は男への報酬のためにじゃないのか」

「それもあるが、一番は女に選択させるためだ。誰がいい男なのかをな」

「……おい」

 

 思わず突っ込む。

 

「他の男とベッドの中で同衾しているときに俺の名前を呼び、俺と同衾しているときに相手の男と通話させて電話を放り投げさせ、相手の男が居るときに俺に腕を絡ませさせる。そこまでされても、相手の男が捨てられないよう、俺に媚びた笑みを浮かべながら女と俺が同衾しにいく姿を見送らせる。分かるか、雄としての快楽はここにある」

「……今はやらないのか」

「快楽はあったが、今ほど楽しくなかった。なずなと過ごしている今はそう思う。俺が堕ちた今、あの四人以外の連中も他の奴の上で腰を振っているだろう。正直清々している」

「……とりあえず、朝比奈先輩の身に気をつけろよ」

 

 ひと風呂浴びたようにスッキリとしたこいつを復活させたのは間違いだったかも知れない。

 

「一通り始末はつけているからな。お前が心配する必要はない。第一、同学年に残っているのは面従腹背するか。誰かと協力しないと俺とやり合おうともしない奴だ。桐山のようにな」

「何故桐山先輩の名前を出すのか分からないな。にしても、邪魔者は排除していたか。朝比奈先輩は、あんたがオレに話したことを知っているのか」

 

 桐山の名前を出すことで、揺さぶろうとしたが、オレの表面に波紋一つたつ筈がない。何時も通りに返す。

 南雲を信頼している朝比奈に自身の汚い部分を見せたのかと。

 

 

 

「お前は桔梗に俺と組んで桔梗を嵌めたと伝えたか」

 

 

 

 一段と声を落とした南雲の問いに、肩を竦めて返答にする。笑みを深めるなよ。

 

「恋愛に秘密は当たり前の事だ。バレたときに、相手が許してくれるように積み上げればいい。そうだろう」

 

 許すか。理解でも納得でもなく許す。相手に許してもらう。

 こいつ、朝比奈先輩に本気だな。そして

 

「ああ、オレも許して貰えるように積み上げないとな。あんたと同じく」

「お互い頑張ろうぜ」

 

 口約束とはいえ、不可侵条約を結べたな。

 笑みを深め、そうと分からないくらいの警戒に張っていた力を抜いた南雲を見て確信する。

 今の南雲はオレにとって、ややこしいことをするだろうが、本気で害になることはしない。

 互いの弱点をさらけ出し、そこに手を出さないと明言したからには、今まで言い続けたように「遊び」で終える。

 あちらが一人、こちらが二人なのが、問題だが大した問題ではない。

 

 

 

 

「逸れて良かったとはいえ、また、話がそれたな。

 お前なら分かるだろう。他の奴に報酬として女を宛がい普段の管理を任せ、必要なときにだけ愉しみ、捨てるにしても手短に済む有用さが。俺が長年複数の女と付き合って得た一番のやり方だ」

 

 南雲は、後宮のようなものを手持ちで組み立てたわけだ。もちろん、南雲の影を極限までに薄くしただろうが、その辺りはオレが気付くと理解しているな。

 確かに有用な手段だ。

 

「性交の快楽だけでなく。手駒としても役立つか。確かに有用だな」

「流石だ。お前とは会話になる」

 

 似たことをやろうとしたしな。ある意味、南雲以上に非情なことを。

 昔、ハニトラ要員を必要としていた時を思い出しながら答える。

 

「参考になった。だが、あの二人をそうするつもりはない」

「だろうな。まあ、俺にとっての答えを当て嵌める奴は面白くもない」

「これが、あんたのアドバイスか」

 

 暗に、本命の不可侵条約を結べたからもういいだろうと告げる。当時、互いに邪魔だった桔梗を処分するときには結べなかった不可侵を結べたのは、オレにも南雲にも上等な結果だ。

 

「ん?いや、有益な話だったが、アドバイスは違う」

「……そうか」

 

 意外だ。アドバイスをくれるらしい。

 

「そうだ。この話で肝なのは、股をかけるということはごく自然に比較し選択するということだ。男も女もな」

 

 話の流れが益がある方向へ流れた感覚がする。

 

「比較と選択か……」

「そうだ。当たり前だが、複数股をかけるとどうしても一人当たりの時間は減る。それは解るな」

「ああ」

「つまり、女は一人か別の誰かと過ごす時間が増えるわけだ。その時間、女がぼんやりとお前のことを想っているとは思わないだろう」

「それはな」

「女は比べる。最初は自分と同じく抱かれている女を見て、自分との優越を比べ始める。相手よりルックスでどこが優れているか。男と過ごす時間は長いのか短いのか、何をどうされたかをな。

 ああ、他の女の存在を隠しても無駄だ。何時かバレるからな。その前にお前から言っておけ」

 

 心当たりに深くうなずく。恵が鈴音と桔梗に気付かれたのは、オレの気配がしたとかの理解できない理由だからな。隠しても害にしかならない。貴重な教訓だ。

 

「そこまでは女同士の内ゲバだから楽だ。優越感を適度に擽れば良い。

だがそれで、比較することに慣れた女は、次に男を比べ出す。あの男は今の男より自分を見てくれる。一緒にいてくれる。自分が一人でいる間、今の男は他の女といる。なら他の誰かに情を移すのは必然だろう」

 

 どうだと見てくる。正論だ。頷くしかない。

 

「そんな時間でも、お前を脳裏に浮かべさせる方法は一つだ。お前を他の誰よりも上だと相手に刻み込むしかない。他の男と居るときでも女にお前のことを想わさせるように。相手を観察し欲する言葉行動状況を組み立てていけば、一人で居たり別の誰かと居る時間でも、お前を想わせられる」

「騙すということか」

「遊びならそうだ。俺がやったように劣る男を宛がうなりなんなりして、これ以上の男は居ないと錯覚させる必要がある。だが、本気なら辞めておけ。惨めになるだけだ」

 

 その言葉を聞いて思い出す。

 

「さっき、あんたが朝比奈先輩に似合っている以外言えないと言った様にか」

「あれは、俺のテクだ。言葉に偽りはないが、タイミングと場所は計算している」

 

 どう考えても嘘で強がりのような気がする。あのときの南雲の必死さからはそんな余裕は感じ取れなかった。

 

「それを教えてほしいんだが」

「俺のテクをお前が得たところで模倣だぞ。恋に落ちた女は鋭く敏く重い。こいつは自分に本音をぶつけていないと判断すれば、恋慕の対象でなく遊び相手として点数をつけてくる。そこの二人に、そう見られていいなら教えてやってもいいが」

「いや、ならいい……成程、こういう場所でどうするかを聞く自体が間違いか」

「間違っていない。相手が遊びで済ませる相手ならな。王道はある程度誰にでも効果があるから王道なんだ。向こうも王道で返してくれるから、楽しく遊べる」

「……遊びでなければ、下手に知ったようなことをせずにオレの自然体のままでいろということか」

「そうやっても上手くいかない相手とはどうせ上手くいかない、やめておいたほうが良いな。その点、今回の下着をプレゼントするために試着を批評するのは俺から見てもなかなかだと思うぞ」

「……自分でも良く考えたと思う」

 

 言われてみれば、そうだな。これはプレゼントだ。全く気が付かなかった。恵の誕生日プレゼントとは違って、端から見ても喜んでいたプレゼントだ。

 そうか。女性の試着する姿を見て下着を贈るのはアリなんだな。

 

「……前言撤回だ。お前は情緒に欠けた奴だった。お前には、まず一般的なやり方を教えたほうがいいな。まず、今がデート中だというところから説明するか――」

 

 南雲はオレの様子にため息一つ吐くと、デートなのか今と衝撃を受けているオレを胡乱な眼差しで見つめながら具体的なやりかたを教え始めた。

 




11.5刊で、堀北兄が橘さんと付き合って、綾小路くんに恋愛の刺激を与えて欲しい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

燃料投下

あおみずさん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます

ショートカットしたはずなのに、何だかんだ一万字近く行ってしまいました。



「――こんな感じだ。どういうことか分かったか?」

「……オレにはデリカシーもムードも無かったんだな」

 

 南雲にアブノーマルなプレイを除きながらぼかして相談した今、表には出さないがさすがに少しショックを受けた。

 

「その通りだ。お前のセックスはどう考えても技巧だけで情感が無い。相手を玩ぶのならそれで良いが、違うんだろう?」

「ああ」

「なら、相手に感謝しておけ、おまえの技術だけのセックスを相手が情感で埋めていなければ間違いなく破綻していた」

「感謝する。今まで以上に」

「キスしたときには手ぐらい絡めてやるか。首に手を回しあうんだな。胸や股間を刺激するのはその後だ、真っ先に性感を刺激してどうする。嫌悪に顔をしかめることも逃げることも無かったのは、ただ相手がお前に情を抱いていただけだ。荒々しいセックスのときは荒々しくするのもありだが、緩急をつけるか荒々しいセックスで通すと一言くらい言ってやると未熟な相手に余裕ができる」

「余裕を与えるのか?」

 

態々立て直させる必要の有無を問うオレに、南雲は違うと首を降る。

 

「リラックスさせてやると思え。相手のセックスの技巧が未熟でも、余裕があれば情感に回せる。互いに楽しめるし、慣れるまではそうしてやったほうがいい。そこの二人のためにもな」

「心に刻んでおく。あんた、女の後輩には優しいんだな」

「当たり前だ。男と女の後輩が居る時、条件なしなら女に天秤を傾ける。少なくとも俺はそうだ。心に刻んでおけ」

「そうか。刻んでおく」

 

 そういうやり方しか知らなかったとはいえ、巧みに性的快楽を与えるかを追求するかが普通と認識していたオレに南雲の具体的なセックスのハウツー法は刺激的だった。

 サディストと覚醒したからといって情を交わすのは当たり前だ。レイプしているのではないのだから。

 優しくいじめなければ、と益のある会話によって身勝手な決意をするオレに南雲が語りかけてくる。

 

「なら、テストだ」

「なに?」

 

顎で鈴音たちの方を示すのに合わせて意識をあちらに向けて耳を澄ます。

 

「え?鈴音、そんな安い化粧水使ってるの?ちょっとこれ試してみて」

「はい。あ……全然、違う」

「でしょ。これこの店の化粧品売り場で買ったんだ。鈴音と桔梗も店員さんに言ってさ。色々試してどれか買っていきなよ」

「でも、高そうですよね」

「何のために男連れで来てると思ってるのさ。一つくらいプレゼントしてもらう気持ちでなきゃダメだって。綾小路くん、それくらいの甲斐性あるでしょ」

「ええ、ある、と思いますけど、下着を買って貰うんです。流石にそれ以上は」

「下着以外にプレゼントしてもらうなんて、清隆くんに悪いですよ。私も下着だけで十分すぎます」

「二人とも自分を安売りしすぎて、分かってないね。綾小路くんは、下着代だけで二人の下着姿見れるんでしょ。しかも綾小路くんが好きそうなのわざわざ選んであげたのを」

「せ、先輩声が……」

「イエス、ノー。どっち」

 

オレたちに背中を向けたまま、頷く二人。にんまりとした笑みを朝比奈がオレたちに見えるように浮かべる。

 

「加・え・て、初デートでしょ。初デート。なら、プレゼントの一つくらい義務だよ義務。綾小路くんはそれくらい理解してる子だよね」

「そ、そうですね。確かに」

「うーん、義務かあ。思いつかなかったなあ」

「桔梗も本当にデートしたことなかったからねー。でどうする?」

「じゃあ、後で買って貰えるか探ってみます」

「私も、清隆くんに選んで買って貰えるか探ってみます」

「OKOKそれでいいよ。相手の懐も考えてあげないとね」

 

無言で視線で南雲に問う。

 

「初デートで買い物に来ているんだ。当然だな」

「そ、そうか」

「念のために言っておくが、100パーなずな達が正しい。ここでプレゼントしないとか、人として最低の線を割ってる。最低限の良識だ」

「そうなのか」

「ああ、見てみろ」

 

鈴音と桔梗の姿を見る。

 

「嬉しそうにしているじゃないか。期待どころか想像もしていなかったプレゼントをしてもらえるかもしれないだけで、あの喜びようだ。なずなを見ている気分だぜ」

 

いちいち惚気ないと済まないのかこいつは。そんな反発さえ沸いてこない。

 

「欲しい物持ってねだって買ってやればヤれる奴とは違うな。お前に情を抱いてなければああはならないぜ。

で、どうする?あの二人なら、プレゼントなしでも納得するだろうな」

「……試しにつけてもらってから、オレが嗅いでオレ好みの匂いがした化粧水の中で肌に合ったものを二人に選んでもらう。どうだ?」

「その行動に値段つけるのは、あの二人だ。俺じゃない。あの二人が喜んだら合格だろうよ。よく観察して行動に移すんだな。本気ってのはそう言うことだ」

「……そうだな」

「一つだけ言っておくが、ポイント、予算範囲は伝えておけ、あの二人は言われない方を気にするだろう」

 

そこまで見抜いたか。

 

「言えば言うほど遊びですまないということが分かってくるな。今から、試着らしいが、お前が思ったことを率直に伝えてやるんだな。変に飾り立てるほど拙いことはない」

「……ああ」

 

おそらく、鈴音あたりが化粧水を連想させる動作をした。それに南雲は気付き朝比奈と組んでフォローした。オレは気付かなかった挙句に、フォローされたか。

 相手の気持ちを見抜いて、適切な対応を取る。当たり前の事を出来ていなかった。

 南雲に対して敗北感を感じる。心地好い敗北感だ。

 

「面倒臭いだろう。だが、本気で複数股をかけると、相手が増える度に、加速度的に時間がなくなる。何だかんだ相手しないとお前を刻み込めないからな。それが嫌ならば他の男に管理させるんだな。手を出したいときに出せて楽だぜ」

「あいつら相手で楽をしようとするつもりはない。」

 

 もう嫌だと泣いて言われたが、3Pいや4Pは必須だな。

 

「他に重要なのは」

「腰だ。腰以外にない。指、舌、おもちゃ、ベッドテクは、相手を究極的に満足させることはない。最後は腰が男の値段だ。確たる腰があってこそ、セックスは充実する。セックスが充実していれば自信も付く」

 

 何度か頷く。

 

「正直、初めてあんたのことを先輩だと思えた」

「俺も初めてお前が後輩だと思った」

 

 発言中ずっと、チラチラなずな先輩に聞こえていないか、なずな先輩がどうしているか確認していたから、生暖かい気持ちで見ていたが、今は先輩への感謝がある。

 

「なら、後輩。なずなにずっとちらちら視線を送るな。あれは俺のだ」

「あんたも、鈴音と桔梗をオレの許可なしで名前を呼んでちらちら見るなよ。先輩」

 

と、いうわけで先輩と後輩として誓約する。

 

「分かった。なら、これでいいな。堀北、櫛田」

「は、ははい」

「わ、わた私もそれで」

 

ちょうど下着を選び終わって近づいてきた二人は、突然の奇襲を喰らい慌てふためく。

オレたちの誓約が聞こえていたのは、反応ですぐ分かる。

背後の二人に振り向いて止めを刺す。

 

「もし、名前で呼ばれたら教えてくれ。文句言いに行く」

「っ~~~~」

 

 顔を合わせると、喜びと恥じらい、幸福感と感激、驚愕と仰天で、可哀想に顔を真っ赤にして眼を潤ませていた。緊張の余り、未だろくに力の入らない足はプルプル震えている。

 タイミングを南雲と合わせた甲斐があった。こんなやり方もあったんだな。とても楽しい。良いアドバイスだった。

 

「朝比奈先輩も誤解させてすいません。オレは鈴音と桔梗の様子を見ていただけなんです」

「あー、うん。君がどういう子なのか、よく、解ったよ……ひゃっ…ちょっ、雅」

「見せつけてんだよ。良いだろ」

 

 これは俺のモノだと、朝比奈先輩を後ろから抱き止め体をまさぐり始めた姿に、視線を逸らして意思表示をする。鈴音と桔梗がそわそわしているが品物を持っているから難しいな。手だけでも繋ぐか。

 

 

 

「待たせたな」

 

 手繋ぎから腕組みに移行した時に後ろから声をかけられる。

 右腕に鈴音、左腕に桔梗。柔らかく暖かな感触の心地よさを堪能しながら、振り向くと、荒い息の朝比奈先輩と店員と南雲が居る。

 

「それじゃあ、何時もの所をお願いします」

「はい、どうぞこちらへ」

 

 南雲が「面白い時間を過ごせた礼だ。俺が何時も使っている。更衣室がある」と言ったので二人を誘い、南雲たちと別れ付いていく。

 店員が案内しようとした場所と同じのようだが、せっかくの厚意だ。口に出す必要はない。感謝だけを口に出す。

 店外から見えず店内からも死角になる試着室に連れて行かれながら、これ以上手を広げるのはやめておこうと決意する。鈴音と桔梗と恵、十分すぎる。南雲との会話は良い刺激になったな。

 そんなオレの視界の隅で、朝比奈が携帯を握りしめた姿が見えた。

 

 

 

「うーん、うーん」

「まだ、迷ってんのか。お前が好きな奴、最低二股かけてるぜ。同じクラスの奴だ。やっぱり付き合うのなら同じクラスだよな。違うクラスの帆波はどうする?って伝えるのがキツイなら代わろうか」

「そんな風に伝えるわけないでしょ。伝え方はこっちで色々考える。

 それに、そのくらいなら辛くはないんだよね。好きな人が、友人知人関係なく遊びで手を出して、私にも遊びで口説いてくるから、遊びじゃなきゃ付き合うって何度も伝えたらさ。

 いつも、じゃあ良い。って返してきた挙句、他の娘と遊んでるのを見せつけてくるだけなら耐えられたんだけど。

 何もかも巧くいっちゃうもんだから、段々調子に乗って傲慢に成って、好きな人が好きな人じゃ無くなっていくのを見続けるのに比べたら」

 

ほぼ一息で言いきり、逃さないと見つめてくる。

 

「辛くないんだ」

「……お、おう」

「まあ、そんな雅が嫌だから壊すために綾小路君と組んだから、裏切ったって言われても仕方ないけどさ」

 

ここで、逃げ道を作るなずなに俺は転がされているかも知れない。

 

「いや、綾小路には絶対知られたくないが、正直、負けて良かった。なら、何を気にしてるんだ?」

「うん……もしかしたら、帆波とも好い仲かも」

 

自分でも信じてないことを祈るように言う。俺と付き合うようになってから「帆波に相談されることが出来たんだよね、内容は秘密」と、嬉しそうに話していたなずなにはキツイだろう。

 

「それはないぜ」

「う……」

 

 断言して止めを指す。

 

「負けたから分かるが、綾小路は徹底したリスク回避を主眼に置いている。まず、安全を確保する奴が他クラスのリーダーに手を出すか?そうすりゃ、俺たちなら噂くらい聞こえるはずなのに聞こえない。答えは、明らかだろ」

「だよね……桔梗と鈴音も今の今まで知らなかったし、こんなとこに男独りってことは本気かあ……はぁ、綾小路くんには義理あるんだよね。鈴音と桔梗も可愛い後輩なんだよ。本当に」

 

そう言いながら、迷いながらも携帯で通話しようとする。

 

「でも、帆波には義理も恩も借りもあって相談もされてるから比べられないんだよね」

「そこで区切りを付けられるところも好きだぜ。綾小路の撒いた種だあいつに刈らせれば良い。」

 

 帆波のは、純粋な恋慕だ。初恋らしい。なずな曰く、男と女は互いに愛し合う相手だけを愛するべき。そんな価値観を持つ奴の初恋。

 ――今そこで二股していた奴に対しての初恋。疲れに溜め息をつきたくなる。

 

「ありがと……まあ、股かけてるけど、不誠実じゃないからそれは良しとしていいか。股かける奴にはなれてるし」

「だろうな」

「そうそう、私の好きな人がそうだからね。遊びで散々股かけた挙句、私もその一人に誘い続けて、帆波までその一人にしようとした奴。それに比べたら遊びじゃなくて誠実だからマシだよ」

「今はお前一人だ」

「じゃあさ、さっきから連絡先尋ね回ってる相手教えてよ。女の子でしょ」

 

 言葉に角が有ったのはそれでか。

 

「坂柳だ。連絡先知ってるか?」

「あーあの娘かぁ。昔は超然としてたとこ有ったけど、回りに良い意味で愛着もつようになった娘だよね。恋をすると女は変わるね」

 

 後輩の成長に、嬉しそうに目を細める。坂柳が綾小路にとはな、なずなに教えられなければ気付かなかった。

 数年越しの特別な想いが最近恋になったらしい。もちろん初恋。

 ――重い。その相手が二股かけている所に立ち会ってしまった。運がない。

 

「あ、連絡先はないや。あの娘のクラスの何人かはあるんだけどさ」

「いや、良い。今連絡先が分かった」

「そう、でも雅、どうしてあの娘にも連絡するの?私が帆波を応援してるって知ってるよね」

 

帆波派のなずなとしては気になるだろうな。

 

「二つある。一つは、綾小路への嫌がらせだ」

「本気」

 

衝撃に真顔で固まる。

 

「雅、あの子は怖い子だよ……導火線が何処にあるか分からないし消す方法も分からない、そもそも導火線があるかさえ分からない。正直、得体が知れない。

それでいて、理知的で、義理堅いし、人格は安定している。怖いよ。本当に」

「……」

「私さ。何時、用済みで消されるか不安だった。だから、今日の鈴音と桔梗と過ごす姿見て心から安心した。私たちのこともだけど、帆波をぶつけても大丈夫だって、本気の想いには答えてくれる子だって安心した。でも、あんたはあの二人じゃない。綾小路くんを心から好きな帆波でも坂柳でもない。嫌がらせなんて止めて、どうなるか分からない」

「安心しろ。俺もそう思っている。あいつが怖い。露悪的な言い方をしてすまないな。ただのお節介で終わる話だ」

 

 今日それなりの本性と話して確信した。

 間違いなく、あいつは他人の痛みを理解して情を抱いていても、躊躇わず理性で踏み潰せる奴だ。それも、行き着く先までやりかねない。

 あの野郎、帆波を使って俺を始末しただろうと聞こえるように言っても、視線一つ動かさず流しやがった。

 最大の禁忌の殺人に、表情どころか視線さえ動かさずに受け入れた男。修羅場をくぐった経験は間違いなく俺より上だろう。

 あいつとは「遊び」で止めるべきだ。不戦を結べて良かった。

 

「……どうするつもり?」

 

 それでも、不安なのだろう眉を寄せて怯えている。好きな女にさせるような顔じゃないな。

 

「綾小路に聞かれたら後輩の応援と答える。男よりも女の後輩を優先しただけだ。どうだ、ただのお節介だろ」

「あー、それは確かにそうだね。帆波と坂柳本気だからさ。先輩として応援してあげたくなるよね」

 

 心から安堵した笑みを浮かべ、何時もの調子を取り戻したなずな。

 

「……でも、本音は嫌がらせなんだ」

「俺だからな」

 綾小路の事だ。俺たちに知られた今、リスクを計算し始めているはず。これ以上手を伸ばすことはない。

 向こうからつつかせる必要がある。

 俺の有り難いアドバイスをタダで聞いた奴には良い嫌がらせだ。

 嫌がらせで済むんだここまでは。

 

「あはは、それでこそ雅だよ。間違いなく雅。それならお節介だね。うん、お節介」

 

 俺が復活したことに喜び目端に涙を浮かべて俺を見てくるなずなに、愛しさを覚えるが今は抱きしめられない。その前にやることがある。

 

「で、こっちがメインなんだが、女の情念を湛えた坂柳と帆波の相手をしたくない。ここで会って話をしたことも何時か耳に入る。拡大変色した形でな。女はそんな時、誰にヘイトの矛先を向けるんだ?恋する男か、デートしていた女か、交流があるのに教えてくれなかった先輩か」

「教えてくれなかった先輩。恋敵はまだ敵だから敬意を持てるけどさ、裏切り者にはそんな価値さえなくなるね」

 

なずなは笑みを消して同じ女として答えると、どこぞにメールを打ち始めた。

 

「裏切り者か。帆波は兎も角、俺とお前は坂柳の連絡先さえ知らないんだがな」

 

裏切りにはならないのではないか、儚い願いに女としてなずなは明確に答える。

 

「それが?」

「だよな」

 

 儚い、あまりに儚い望みを潰したなずなは、どこぞにメールを打つと帆波にコールする。

 

「…………あっ、帆波。今、大丈夫かな」

「――」

「あ、うん。そうそう、今雅と買い物してるんだよね。なんで分かるかなあ」

「――」

「えっ、そんなに嬉しそう。まいったなあ」

「――」

「んふふ、下着を買いに来たんだよ。下着専門店の〇〇でね。い・っ・しょ・に、見てもらって……やー帆波は可愛いなあ。真っ赤になってるでしょ」

「――」

「あはは、ゴメンゴメン……うん?いや、違うよ電話したのはね。店で珍しいというか有り得ない顔見てさ」

 

 俺には聞こえないが、帆波らしい反応に浮かべていた笑みを消しガラリと口調を変える。

 

「帆波、ごめん。帆波に自分で自覚してもらうのを優先して下手打っちゃた。気をしっかり持って二つ聞いてほしくってさ。電話したんだ」

「――?――」

「まず、深呼吸して……うん、よろしい。一つはね、綾小路くんがここに居る」

「―――?」

「そう、綾小路くん。綾小路くんが〇〇に居るの。下着専門店の〇〇に」

「――――?」

「ううん。一人じゃないんだ。女の子と一緒に来てる」

「―――……?」

「女の子と一緒に、閉店間際の下着専門店に居る……この意味、分かるよね?」

「――!??――!!!」

 

 電話越しでもわかる金切り声の悲鳴をスルーして、携帯に集中する。坂柳の奴、鳴り続ける知らない電話番号を調べているな出やしない。

 

「ごめんね。誰って教えられない」

「――!?」

「何で教えてくれないかって?他人のプライベートだよ。話して良いことかくらい帆波なら分かるでしょ。逆に聞くよ、何で帆波は知りたいの?」

「――」

「でも、だって、か。うん。帆波は興味本位で聞いて良いことか理解してるね。理解してて、それでも知りたいんだよね。帆波はどうしてか分かるかな…いや、それは重要じゃないか。今重要なのは」

 

 一拍だけ置くと話を即座に続ける。見事だ。あれなら余計な事を考える余裕がなくなる。

 

「今帆波がどうしたいかだよね」

「――?」

「うん。帆波が今どうしたいかを教えて欲しいな」

「……――」

「分かってる。直ぐに決められないよね。でも、どうしたいか考える時間はあるから大丈夫」

「――?」

「何でって。綾小路くんが彼女と店の奥に行ったからだよ。試着には時間かかるでしょ。だから、時間は気にしないで迷えるじゃない」

「――!?」

「もちろん、私も待ってるよ。だからさ、焦らずに帆波が今したいことを教えて」

「――」

「うん。待ってるよ……ううん。気にしないで、先輩をドンと頼りなよ」

 

 坂柳はまだ出ない。なずなが耳から携帯を離した姿を見て疑問をぶつける。

 

「なあ、なずな」

「何」

 

耳から離した携帯から目を逸らさないなずな。

 

「何で燃料投下したんだ、あれがお前の考えた伝え方か?」

 

 帆波が、あの態度で自覚無かったのかよりもこれが気になる。

 自らの内面に問いかけ想いを確認し始めた瞬間に、急がなければどうなるのか不安を煽りながら行動を迫る。

 今、帆波は身を焦がすような焦燥感に駆られているはずだ。

 来る。間違いなく来る。

 あれだけ焚き付けられて来ない奴は居ないだろう。俺のからかい混じりの露悪的な言葉とは違う。燃え盛る炎にガソリンをぶっかけたようなものだ。

 下手すると此方にまで飛び火しかねない。

 

「そう、あれが私の考えた伝え方。私のお節介なんだ」

「……綾小路に何か恨みでもあるのか?態々修羅場にする意味があるとは思えないんだが」

 

 修羅場がほぼ確定した場所から速く逃れるため。坂柳に伝えて逃げなくてはと内心焦る俺に、なずなは静かに目を向けてきた。

 

「雅ってさ男だよね」

「は?」

「帆波には必要な事なんだよ。あの娘我慢しちゃう娘だからさ。ひたむきすぎるから……間違った道を進んでも後戻りしないで傷ついちゃう。

夢は一つしかかなわないって思い込んで多くを望まない娘だからね。本当に、欲しいならぶつかることを知らないと」

「帆波が遠慮するのを避けるために、まず綾小路に突撃させるのか。女が二人居ると言わなかったのはそれでか」

「うん。二人居るなんて聞いたら帆波のキャパ越えちゃうからね。知るのは、突撃したあとで良い。それに、綾小路くんは本気でぶつければ受け止め――あ、もしもし、帆波。うん、まず落ち着いて息吸って…吐いて」

「はぁ、はぁ」

 

 電話越しにでも聞こえる帆波の荒い呼吸から、意識を逸らす。

 綾小路が修羅場になろうがどうでも良いが、俺たちが無事に出るためにも、坂柳には速く出てもらいたい。

 

「あ、そうだ」

 

 帆波が落ち着くのを待っていたなずなが、唐突に声を掛けてきた。

 

「綾小路くんに恨みはないけど嫉妬してる」

 

「雅を元に戻したのは、綾小路くんだからね。女としてモヤってしちゃう」

「……お前の献身があったからだ」

「うん、分かってる。それでもさ。あっ……帆波、慌てないで、どうするか決め……来るんだね!」

 

 グッとガッツポーズしながら歓喜に声をワンオクターブ上げる。そりゃ、そう仕向けたから来るだろうよ。

 

「ううん。綾小路くんは迷惑に思わないって」

「――」

「夜道を女一人で歩くんだよ。まず落ち着いて、服装は動きやすくても可愛いので……あー、走るから靴は運動靴か……ダメダメ、もう少し服に合ったのにして、見せる相手は綾小路くんだよ。その辺分かってる?」

「――」

「よし、分かった。私が直前にチェックして身嗜み手伝ってあげる。制汗剤とか一通り持ってるからさ。汗だくでもいつもどおりのかわいい帆波にして見せるから、帆波は身一つで来なよ。場所は?店の前?」

「――」

「ケヤキモールの入り口でね。何だったら雅も付けるよ。男の人の視点欲しいでしょ「おい」あ、ちょっと待ってね……何?」

「なずな、さっきも言ったが女の情念抱えた奴の相手は、厄介で面倒――」

「雅」

 

 花が咲くような満面の、しかし底知れない何かを込めたなずなの笑みに気圧される。

 

「私と、女の情念抱えた帆波、どっちが怖い?」

 

 坂柳、三度目の呼び出しだぞ。いい加減とってくれ。

 

「……帆波には面倒をかけた借りがある。返しても良い頃合いだな」

「だよねー」

 視線が携帯に逸れたお陰で圧迫感が消え――

 

「雅、ひとつ覚えておいて」

 

「あんたが言った女の情念ってやつは、女の子のひたむきな想いの結晶。厄介でも面倒でもない。次言ったら承知しないから……ごめんね~帆波。雅も俺でよければだってさ」

「――」

「ああ、お礼は直に言ってあげてよ。帆波が此処に着いたときにさ」

 

 坂柳、まだか、速くしてくれ。今の俺にはお前の礼儀正しく愛想のない声が必要だ。

 

「うん、待ってる。帆波、二つ聞いてほしいって言ったの覚えてる?着替えながらで良いから聞いてもらえないかな」

「――」

「ありがと。もう一つはね。帆波、まだ勝負も何も決まってないよ。まだ、女の子と下着専門店に来てるだけなんだからさ」

「――?」

「私と雅を思い出して。雅がどれだけ色んな娘に手を出して、私と――」

 

 予想通り、話が飛び火した瞬間、待ち望んでいた声が聞こえた。

 

「はい」

 

 待ちわびた声に、逸る心を呼吸ひとつで落ち着ける。

 

「坂柳か。南雲だ。今話したいことが有るんだが時間はあるか?」

「連絡先を教えても居ない方が、夜中に何度も電話をかけてくるとは不躾ですね。今私は(夢のような時間の、棋譜を思い返すのに)少々忙しいので、後程お会いした時にでもどうでしょうか?」

 

 迂遠に断ってくる坂柳が、この後どう反応するかを想像して声に出して笑えればいいんだが。修羅場になりつつある場所に居る今は、笑えない。

 

「そうか、実は綾小路の事で至急教えておきたい事が有ったんだが、忙しいなら仕方ないな」

「……手短にお願いします」

 

 何故俺から綾小路の名前が出るかと問わず、腑抜けていた俺をからかわずに、直截に聞く辺りこいつも女だな。

 電話越しさえ感じる聞き漏らすまいと張り詰めた空気。綾小路の野郎、放置しているな。

 モノにした女を優先する。男として正しい。本当に正しい。

 が、俺は男と女の後輩を並べた時、躊躇わずに女の後輩に味方する。心に刻んだだろう。

 

「実はな――」

 

 坂柳はどうするか。俺の知る坂柳ならまず情報収集に走るだろう。そして、出遅れたことを認識して手を打つ。

 ――いや、まさかとは思うが来ないよな。体が悪いあいつは来ないはずだ。




ここ数話で、一番女性として強かにしたのは朝比奈先輩のつもりです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖(間に合わない)

でこりっちさん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます

坂柳さんって理性的過ぎて、本能だけではあんまり動けないイメージなんですよね。
綾小路くんに手を握って人肌の意味を教えるのもかなり頑張ったような気がします。




 南雲達が店から去って一時間後、閉店した店の近くのベンチに腰掛けた少女に一人の少女が話しかけた。

 

「駄目ね。店員、口が固くて客が居たくらいしか分からなかった」

「そうですか……真澄さんがそれだけで切り上げたとは思えませんね。他には?」

「あんたマジ可愛げないわね……向かいの店員から聞き出したわよ。綾小路の奴、外見に特徴らしい特徴ないから確定じゃないけど、背格好が綾小路と一致した奴が女二人背負って店に入ったかもってさ」

「それだけ目立つ状態で、かも(強調)ですか?」

「一瞬目に入ったらしいわよ。で、自分が見たもの信じられなくて、もう一度見たときは見えなかったらしいわ」

 

 まるで忍者ね。と呻く神室。

 

「……なら、綾小路くんの可能性も僅かとはいえ否定できませんね」

「あんたさぁ……そんな化物みたいな身体能力もってんのは、高円寺か綾小路くらいでしょ。あんたが綾小路みたいにほとんど知られてない奴、他に知ってるなら違うけどさ」

 

 溜息のあと呻き「居るのか?」と視線で問う神室に、視線をあさっての方向に向けて坂柳がつぶやく。

 

「……成程、相変わらずですね。高円寺君は。複数の女性と浮名を流すのもいい加減にして欲しいものです。ここまで酷くては、一人の乙女として憤りを覚えてしまいますね。

 このようなデマを夜分に流してきた南雲先輩と合わせて、何か特別な贈り物の一つでも差し上げなければなりません」

「現実逃避するんじゃないわよ。高円寺の特徴的な外見なら、向かいの店員が見間違えるわけないでしょ」

 

 目を合わせようとしない坂柳に、神室は畳み掛ける。

 

「特徴的な外見じゃなくて化物じみた身体能力の持ち主、十中八九綾小路ね。夜中に、人目避けて女二人背負ってランジェリーショップに連れてくるか。

 マトモな感性してたら試着した下着姿見た後で、女と綾小路が気に入った下着をプレゼントくらいするわね。あの綾小路の行動とは思えないけど、よっぽど大切にしてるのね」

 

 言葉を切り、顔を背けた坂柳に言い放つ。

 

「股かけてるみたいだけど、本気みたいね……御愁傷様」

「……」

 

 嘲る台詞に、俯き沈黙で答える坂柳。余りにも似合わない珍しい弱弱しい姿に興が乗った神室が攻撃する。

 夜中にいきなり電話一つで駆け回されたのだから当然だろう。と言い聞かせながら

 

「何、ショック受けてんの? あんたが、いつもすかしてたあんたが、手遅れになったことにようやく気付いてショック受けてんの?」

「……」

「大体あんたさあ。綾小路と一緒に遊んでいただけでしょ。気の利いた小学生のほうが進んでるくらい健全にね。

 それで、最近誘っても袖にされ続けたのに疑いもしなかったとか、どれだけ色ボケてたのよ。その間、当の綾小路は他の女と股かけてよろしくやってたとかさ。

 ──ざまあないわ」

「………」

「まあ、当然の結末ね。言ったでしょ。綾小路みたいな警戒アンテナ常に立てる理性的な奴には、捨て身で裸になって抱きつく位のことしないと反応しないってさ。

 どこの誰かは分からないけど、あの無表情冷徹非道男に裸で抱きついた奴は大したものね」

「…………」

「それに比べてあんたと来たら綾小路が告白してくれるか抱いてくれるのを、穢れを知らない初心な乙女みたいに待ってばかり。処女っぽいっていうか、そのままの考えでずっと過ごしてたわよね」

「……………」

「ああ、あんたが言ってたこと思い出した。あの時、私が後ろから押した時。いい加減、処女臭い考え捨てろって言った時よ。

 あんた『真澄さんだって処女じゃないですか。綾小路くんをどうすれば良いのかは私がよく知っています。今は、ひと時の逢瀬を楽しみながら互いに感受性を育む時です。真澄さんの助言は必要ありません』……自信満々の台詞吐いてくれたわね」

「………………」

「その結果が、これよ。これ。夜中に南雲先輩の電話一つで私を呼び出して駆け回させた挙句、ショックで項垂れてるだけのあんたよ」

「…………………」

 

 ピクリとも動かない坂柳の姿に、神室がヒートアップしていく。

 

「無駄だったわ。今までのあんたのお花畑話を聞いてた時間考えなくても、今日だけでも無駄だった。

 風呂入ってるときにいきなり焦った声で呼び出されて、生乾きの髪のままあんたの部屋に着いた時に大きな音がしたから慌てて入って、寝間着姿でスッ転んでじたばたしてたあんたを立たせて、寝間着で出ていこうとするあんた宥めて、着替えさせて、身嗜み整えて、靴履かせて、杖持たせて、連れ出したことが!」

「……………………」

「呼び出した理由聞いて、何も聞かずに付いてこいとか偉そうに言って寮出たすぐ後よ後。あんたが、体悪いあんたが、急ぎ足で進んだせいで立ち眩みして倒れかけたの受け止めて介抱したのは。

 水飲ませて落ち着いたと思ったら、急がないととか言い出して無理して起き上がって転びそうになったのを支えたわね。

 それでも歩こうとするあんた見てっ、体悪いのに無理するあんた見て、見かねちゃったからっ、あんたを背負ってゼイゼイ言いながらここに来たのも!」

「………………………」

「足、棒にしてようやく着いたと思ったら、万一でも綾小路がランジェリーショップで女連れてる姿見たくないって、ビビって店入ろうとしないあんたとグダグダしたわ! 

 仕方ないから飲み物持たせたあんたをここに置いて、休憩なしで調べに行って、顔色土気色の私にまず冷えたお茶飲まさせて休ませてくれた店員の優しさに泣きたくなったのも!」

「…………………………」

「そんな店員に、個人情報聞きだそうとしつこく聞いた。私なら、苛立って追い出すくらいにしつこくね。それでも嫌な顔されずに相手してもらえたわ。で、諦めて謝罪して引き返そうとした時よ! 

 割引券受け取りながら『今度は、外でこっちを見てるお友達と一緒に来てね』って言われた時! 振り向いたら何を見たと思う!?」

 

 堪えきれないものを吐き出す前に一呼吸。

 

「あんたよ! あんた! 

 体悪いから座って待っとくように言っておいたのに、細い柱の裏でこそこそ隠れてこっち見てるあんたよ!! 

 へったくそな子供のかくれんぼみたいに、柱が細すぎて体を隠せてないあんたと目があって逸らされた時、頭の中ぐちゃぐちゃになって何年かぶりに涙が流れたのも!!」

「……………………………」

「全部、全部無駄だった!!!」

 

 たー……たぁー……たぁぁー……。

 何時しか肩で息をしながら湿った声で絶叫していた神室の叫びが、人気のないケヤキモールに木霊して。

 

 荒い呼吸音だけが響く、地獄のような沈黙が訪れた。

 

 

 

 

 荒い息を収めた神室真澄は、体をめぐるアドレナリンを必死に片付けながら思う。

 

 私は、こんな絶叫するようなやつじゃないでしょ。私ってさもっと無口無感動なのよ。何で人気のないモールで叫んでるのよ。

 こんな醜態さらすなんて、よっぽどストレスたまっていたんだなと自己分析する。

 それよりも、改めて振り返ると私は何をしているんだ。

 坂柳は好きな相手ではない。はっきりと嫌いなタイプだ。人の弱みに付け込んで扱き使うだけ扱き使う。能力優秀なドS。

 いや、確かに最近気を配るようになったからマシな奴になったけどそんなのは何も関係ない。

 なのに何で母親かと問い詰めたくなるような事やってるんだろう。

 

「はぁ」

 

 溜息を吐いて坂柳を見る。相変わらず石像のように動かない。あれだけ挑発して激情叩きつけても反応なしか。

 ……これからどうしよう。

 こいつ置いて一人で帰る……無理だ。こいつを連れてここまで来たのは見られているだろうし、理事長の一人娘で体の悪いクラスのリーダーを放置とか、私の将来がない。

 何よりも、こんな容姿の優れた傷心の女の子を置き去りとかない。危険すぎる。

 本当にさ、こいつは女の子なのよね。超然とした冷徹な奴で、人より頭脳明晰で、考えが高所にあって、少し先が見えたとしても、生まれて初めての恋をする皆と一緒の女の子。心の奥底に傷心で脱け殻になるくらい綾小路のことを想う一面がある女の子。

 好きな人の事ここまで想える女の子。

 

 はぁ、恨むわよ綾小路。警戒するの分かるけど、性欲に負けて襲ってくれてもいいじゃない。外面だけじゃなく内面もお勧めできるんだからさあ。この子任せられるの綾小路くらいなんだしさあ。

 

「坂柳。聞こえてる坂柳」

 

 分かってたけど反応はない。連れて帰るしかないか。連れて帰った後どうしようか。

 何年越しの初恋に破れた女の子を慰めるとか、恋をした事がない私には荷が重い。

 なら、恋愛経験のあるクラスの女の子を呼び出すか。

 ──駄目だ。恋愛してるクラスの子、どいつもこいつも坂柳を嫌っているか嫉妬している。

 恋に破れたこの子を嘲笑う奴はいても慰める奴は居ない。

 クラスを掌握するときの手腕は問題じゃない、坂柳の容姿が良すぎるのが原因だ。彼氏が「あの子可愛い」と褒めるような奴を好きになれるはずがない。それで別れた奴も居るから尚更だ。

 そんな連中に、いつもの存在感を失って妖精じみた儚さしかないこの子を預けられるはずがない。

 餓えた獣にエサを与えてしまえば、酷いことになる。

 

 だから、私が連れ帰って慰めるしかない。

 

「どうやってよ」

 

 結局のところ、そこに行き着く。連れ帰る方法は、もう仕方ない背負おう。筋肉痛で数日動けないだろうが覚悟を決めた。

 坂柳、慰める、失恋。ぐるぐると頭の中で単語が回る。

 めぐる思考は坂柳との出会いに行き着いた。

 飲ませるか、酒を。賞味期限切れてるけどまだあったはずのビールを。

 ちらりと坂柳を見る。酒飲んで気分転換とか、学年の担任教師の喪女たちを連想してしまうが仕方ない。

 茶柱はともかく星之宮の「嫌なことは飲んで寝て忘れれば良いの♡」発言を思い出すと呆れる。朝一の授業で言い放ったのだからもっと呆れる。あいつら多分十年たっても独身だろう。

 ……ああはなるまいと、決意していた喪女たちと同じことをするのはプライドが傷つくけど背に腹は変えられない。今こそ、飲んで寝て嫌なことを忘れる時だ。

 

「仕方ない。切り替えるか」

 

 よし、飲ませて飲もう。確か棚の奥に置いてあったはず。先天的心疾患の坂柳の体の様子を見ながら少しずつ飲ませて酔わせて寝る。これしかない。

 背負うために、あちこち痛む筋を伸ばしながら坂柳の方を振り向く。

 

「それじゃ、帰るわよ。坂柳……ひっ」

 

 心身の過度の疲労のあまり頭が回らず。先天的心疾患の相手に酒を飲ませようとした神室の暴挙は、振り返り思わず出た悲鳴とともに止まった。

 

 

 

「切り替える……そう、その通りですね。流石です。真澄さん」

 

 無様な姿を見せてしまった友人に謝罪の意思を込めて賞賛する。

 

「さ、坂柳……あんた、顔っ」

 

 他者に求められないゆえに沈着冷静であり続けられる友人が、見てはならないものを見たように表情を引き攣らせています。どうしたのでしょうか? 私の顔が何か? 

 

「おや」

 

 いけませんね。普段意識せずに微笑みを形作る私の唇が、食い破りそうなほど引き締まっています。笑顔笑顔。

 

「お待たせしてすいません」

「いや、その、あの」

 

 何故でしょう。普段どおりの笑顔を浮かべているはずの私と、真澄さんが顔を合わせようとしてくれません。精一杯揉み解したのですが。

 今、自分がどんな顔をしているのかなど、思考の片隅に上らせる必要もないどうでもいいことなのに。真澄さんにとってはそうではないようです。

 そのことが少し残念ではありますが、冷静さを取り戻した今ならば認められなかったことを認められますね。

 

「南雲先輩の情報は正しかった。綾小路くんは、間違いなくそこの店で女性とともに居ました」

「そ、そうね。そういうことね」

「ええ、南雲先輩が名前を教えられないと言っていた事は気に入りませんが仕方ありません」

「問い詰めないわけ?」

 

 ようやく私と視線を合わせてくれた真澄さんに嬉しくなり、笑顔を向けるとなぜか真澄さんはまた視線を逸らしてしまいました。

 まあいいでしょう。そこは気にするべきことではありませんから。

 

「南雲先輩の現状では後輩に構っていられないでしょう。以前と同じく芯が入ったようですが、だからこそ南雲先輩は朝比奈先輩を優先します。教えられないという発言は最大の譲歩でしょう」

「……綾小路の相手の名前をあんたにばらした事が綾小路の相手に知られたら、朝比奈先輩に危害を与えられることができるだけの能力の持ち主ってことか」

「綾小路くん本人が危害を加える可能性もありますが、おそらくそうでしょう」

 

 フフ、大丈夫ですよ真澄さん。気を遣って頂かなくとも、今の私は綾小路くんがお相手の泥棒猫を守るという可能性を受け入れています。

 だから、目を合わせていただきたいんですが。

 

「い、一応前者ってことにしとけば、だいぶ絞られるわね」

「その通りですね。堀北さん、櫛田さん、一之瀬さん、椎名さん。第一候補としてはこの辺りでしょうか」

 

 泥棒猫候補その一の名前を挙げていく度に、真澄さんの顔色が悪くなっていきますね。流石真澄さんです。敵の危険度を理解している、こんな味方がいることに幸福さえ覚えてしまいます。

 

「……厄介な連中ね」

「ひょっとしたら第二候補もこの中に居るかもしれません。いえ、居るでしょう。女の勘ですが」

「…………その可能性は高い、か」

 

 フフフフ、真澄さんは心配性ですね。私が綾小路くんが二股かけてることを認められないほど狭量だと思っていたのでしょうか。

 それはそうと、私のお誘いを断り始めたときから逆算すると、どう考えても半月足らずで二人をモノにしたことになりますね。

 

「不思議ですね」

 

 気付かず声に出ていました。聞こえているはずなのに、真澄さんは私に一切目を向けようとしません。

 本当に不思議です。真澄さんではなく、綾小路くんが。

 どうすれば、半月足らずで二人の貞操観念がしっかりしている女性をモノに出来るのでしょうか。月城元理事長代理が居なくなり、お父様が復帰されたとはいえ、リスクを負わないことを第一に考える綾小路くんらしくありません。

 

「同時に何人もの女性に粉をかけていなければ不可能です」

 

 第一候補四人とも、真澄さんの仰るように全裸で抱きつくようなふしだらなタイプとは程遠いのに、二人。

 これだけでも、泥棒猫が綾小路くんにどれだけ好意を抱いていたか、伺えます。

 無論、私ほどでは無いでしょう。

 数年越しで彼を想い続け、あの帰り道で恋をしていたのだと自覚した私ほどでは。

 

「それと、綾小路君の行動も妙です」

 

 下着専門店に何らかの理由で歩けない少女二人を背負って下着を買いにくる。

 何故、体の不自由な私にそうしてくれなかったのは重要ではありませんね。

 

「胸か、胸ですか? それとも、腰まわり? お尻から太もものラインは自信があります。なら、いえ、貧相な体つきそのもの?」

 

 カツカツカツ。

 

 おや、いつの間にか杖でアスファルトを叩き続けていましたね。この杖は大切なもの、傷つけるわけにはいきません。

 

「真澄さん。杖を持って頂きたいの──」

「ほら、貸しなさい」

 

 友人に一時預かって貰おうと言葉に出している途中で、真澄さんが杖を預かってくれました。まるで殺人犯から凶器を奪い取るように慌てていましたが、どうしたのでしょう。

 まあ、些事です。今は綾小路くんのことに集中しましょう。 

 

「しかし、同時に二人の女性に下着をプレゼントですか。片方を褒めすぎてもいけませんし、絶妙なバランスが要求されますね。その為には、試着した姿を評価しなければならないでしょう……どのように評価したのか気になりますね。相手の良いところを強調したのでしょうか。それとも、悪いところ、私の貧相な体のような欠点をフォローするようにしたのでしょうか。

 どちらにしろ、女性の半裸の姿を店で見て似合うと褒めた後に購入して手渡しで渡す……なるほど」

 

 その光景がありありと目に浮かびますね。綾小路くんのことを思うと全身が心地良い熱さに包まれるのは何時ものことですが、今日は特に焼けるような熱さです。

 

「フフッ、フフフフッ」

 

 女性に、下着をプレゼントと考え付くなんて。綾小路くんの行動から今まで無かったものを感じます。

 ただの優しさではなく女性に配慮した優しさ。他者の、女性の暖かさを知った者の優しさと呼ぶべきでしょうか。

 

「ずるいですね」

 

 それは、私が引き出してそうしてもらうものだったのに、どこの泥棒猫なんでしょうか。

 

「あ、あのさ」

「なんでしょう」

 

 身を焦がすような熱さを心地良く感じる私に、真澄さんが遠慮がちに声を掛けてきました。

 何故か私との距離がさらに開いていますが、些事です。ええ、この身を焼き尽くすような熱に比べてしまえば些事でしかありません。

 

「これからなんだけどさ。結局あんたどうするつもりなのよ?」

 

 ああ、何てことでしょうか。私としたことが、味方に自分の意図の説明さえしていなかったとは。

 

「すいません。思考を切り替えたことを説明していませんでしたね」

「切り、替えた」

 

 何故か私に起死回生の一言をくれた真澄さんが顔色を悪くしています。

 

「はい。まず、綾小路くんは今二股をかけています」

「……そう、よね」

 

 まるで私が何か見逃しているけど、指摘できずに飲み込み気分が悪くなった。

 そんな気配を出しながら、ますます顔色が悪くなっていく真澄さん。

 

「そして、真澄さんのおっしゃるとおりでした。私はあまりにも受身でありすぎました」

「うん。正直、呆れてた。好きな人部屋に呼んでやる事がゲームと料理だけで、寄り添って座ったことさえないとかさ。小学生の方がマシでしょ」

「…………おほん」

 

 …………切り替えましょう。

 綾小路くんと最も劇的に結ばれるタイミングを測り、ここぞという時で結ばれる。そんな考えを私はしていました。

 何て愚かで甘い考えでしょうか、自分に対する誤魔化し以外の何物でもない。

 私の知らない面を次々に魅せてくれる綾小路くんと過ごす時間が幸福すぎて、その時間を壊すことを恐れた私は踏み込んでいなかっただけです。

 いえ、これも違いますね。何てことでしょう、心の中でさえ自分を誤魔化すなんて初めての醜態です。

 綾小路くんは本当に悪い方ですね。こんなにも私を変えてしまうなんて。

 

「いい加減、自分の奥底を見据えましょうか」

 

 ……なるほど。

 心の奥底を見据え理解しました。少し、いいえ、かなり特徴的な自分の体に自信がなくて、もし、を考えるだけで尻込みしていたのですね私は。

 駄目ですね私は。側に居て隣に座ってほしい。こんな簡単な言葉さえ口に出せませんでした。

 人肌のぬくもりを手を繋いで伝える。ずっと胸の奥に、大切にしまいこんでいたことをすることで、満ち足りると同時にかすかな不安を抱いて踏み込んでいなかった。

 私は臆病でした。その間に泥棒猫が入り込まれるまで気付かないほどに、ならば。

 

「というわけで、私も行動しなければなりません。真澄さんも協力お願いしますね」

 

 まず、私も同じラインに立たなければ。全てはそこから始めていきましょう。

 あの、一切揺れずに淡々と何もかも処理していく色のない瞳が、私の好きな瞳が、情欲の色に染まるのか染まらないのか。

 想像するだけで、夢心地に体が火照り熱くなります。

 

「何がというわけなのか、中身が全く分からないんだけど。それに、なんで私が協力──」

「お願いします」

 

 頭を下げて頼む私に真澄さんが息を飲んだ。

 

 

 

「──分かった。協力するわ」

 

 最初からそうしろとため息混じりにぼやく神室真澄。

 すばやく周囲を確認する。坂柳が何かを殴り殺すように振っていた杖は回収している。

 今もしている年頃の女の子がしてはならない表情。鬼気迫った凄絶な色を浮かべて口角を上げた表情は、顔立ちが整っているだけに怖すぎるがそれはもう仕方ないあきらめよう。

 こんな顔しながら思考を切り替えたと言われた時には、血を見ることを覚悟したことに比べれば、見なければいいだけだ。あきらめられる。

 

「で、具体的にどうすんの?」

 

 もしや坂柳は変わったのかと、僅かに期待を抱いて訊ねる。人間は成長して変わるものだ、ならばきっと。

 

「数日以内に綾小路くんの部屋に行き想いを遂げようと思います。その時に、誰も邪魔が入らないように仕組むために情報収集しましょう」

「……そう」

 

 期待は裏切られた。人なんかそう簡単には変わらないと再確認。

 

『このへたれが。

 何周遅れなのか数えるのもうんざりするくらい周回遅れしてるこの期に及んで、お行儀よく情報収集かよ。

 今こそ本能に身を任せて、勝負下着着込んで綾小路の部屋に突撃するか、綾小路のベッドに全裸で潜り込むときでしょ。

 その平均より遥かに上のルックスは何のためにあると思ってんのよ。情報収集とか意味のない賢しいことするから、あんたは処女なのよ』

 

 と、まるで子供のように思ったことは言わない。神室は大人なのだ。

 坂柳と出会い、色ボケした坂柳と交流すればするほど成熟していくのを神室は実感している。

 たまに、坂柳と出会う前に戻りたくなるが。

 

「──を把握して置く必要があります。よろしいですね」

「ええ、そうね」

 

『坂柳の事だから勝負下着さえ持ってないわね。ドギツいのは無くても少しエロい透けたネグリジェくらいあるかな』

 

 と貰ったばかりの割引券の使い途を決めていた神室の思考は、半ば聞き流していた能天気な話(神室視点)をしていた坂柳がこちらに水を向けたことで現実に戻された。

 で、次の発言を聞いて戻りたくなかったと後悔した。

 

「成就の日は数日中に決めます。当日に、二人の邪魔が入らないように真澄さんもご協力お願いしますね」

「……分かったわ」

 

『今日、いやせめて明日決断せずに数日かけるとか。どうしてそこでへたれるのよ。

 あんたって奴は恋愛にはとことん初心ね。

 そんなだから、部屋に呼んで二人っきりで過ごすってゴール直前まで先行しといて、差し切られるのよ』

 

 とは言わず、坂柳には今余裕がないのだと受け止めてあげるだけ神室は大人だった。 

 大人だから、恋敵を二人と断定してそれ以上居るとは想像しない、いや、出来ない坂柳には黙っておける。

 向かいの店員が閉店準備中に見たと言う、店に入ろうとする特徴的な少女。ピンクに見える赤毛混じりの金髪──ストロベリーブロンドの長髪の少女のことを、今は黙っておく優しさが神室にはある。

 話すのは、坂柳に受け入れる余裕が出来てからだ。罵られるくらいは甘んじて受け止めよう。

 

 坂柳を見つめる彼女の表情は「自身より優秀で何でも出来るのに、恋愛に関しては頭が良すぎるために考えすぎて踏み込めずもじもじ尻込みする愛娘をみる母親」のソレだった。

 ──8割くらいは。

 

「まあ、あんたが、店に入るときみたいにビビってへたれない限りはね」

「あれは、恋をした乙女の愛らしい反応ではないですか。へたれたなどと言われるのは心外です。しかし、綾小路くんと、ですか……そう、ですか……」

 

 残り2割、友人としての神室真澄は、目の前で白皙の肌を初心な小娘そのままに朱に染め指をいじくる少女がいざその時にへたれた場合「綾小路の部屋のベッドに全裸で縛り上げて放置する」と決意していた。

 それくらいして綾小路に捕食させないと、もうこいつはどうしようもないと見限ったとも言える。

 

「ま、ここに居ても何だし帰るわよ」

「真澄さん、ひとつお願いが」

「……私の部屋に来る?」

「お願いします。色々話し合いましょう」

「……いいわよ」

 

 何かを訴える坂柳の眼差しに屈し、今日はこいつ帰らないなと諦観して、何か作ろうかこいつ食細いから軽いもので大丈夫ね、枕の予備どこしまったかな、こいつ抱きついてくるから暑いのよね、とごく自然に思考が流れていく神室が後者の判断をするかは、坂柳次第。




さすがに、身体能力とアドバイザーの二つのハンデは覆られませんでした。
神室さんが朝比奈さんの半分でもスパルタなら間に合っていたんですが。

間に合わなかったので、こちらは平穏に終わっています。


次回はかなり期間が開きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波の混乱

カレンはルルーシュの嫁さん、評価付けありがとうございました。

以前頂いたアドバイスのとおり五千文字前後にしてみました。
しかし、出来ないと思ってたのに、人間二時間強で書けるものですね。

一之瀬さんは最初からクライマックスの心境でパニック状態です。


 店員の案内してくれた場所は完璧に近い。店の隅の死角となっている場所。外からはもちろん店内からも近づかなければ見ることはできない。

 サイズごとでコーナーの区切りをしているこの店ではこの周りは、Fカップ以上Lサイズ以上の大きいサイズ専門で隔離されている。

 二つの試着室が高い棚に向けて斜めに立って、丁度試着室と棚が三角形を形成している。

 棚のすぐ前のここでなら試着する姿を男が見ていても、誰かが近づかない限りばれない。というより試着した女性を相手の男だけが、見れるようにしている専門の場所だな。

 ふうと吐息を漏らす。女性下着売り場に男一人のシチュエーションの精神的圧迫感が安らぐ。

 Fカップ以上などという恵体など早々いないし、そもそも客さえ居ない。店の配慮に感謝しよう。

 

「綾小路くん……」

 

 シトラスの香りとともに例外の恵体、しかも知り合いがどこか覚束無い足取りで出てこなければ店への賛美だけしていれたのに。

 

「ああ。奇遇だな一之瀬」

「うん、そうだね……本当に居たんだね。本当に綾小路くんがここに、いるんだね。」

 

 どこかぼんやりした眼差しできょろきょろと自分が今いる場所が正しいのかと周りを見渡す一之瀬を見ながら、思考を高速で回す。

 男が一人で女性用下着専門店の死角に居る。どう考えてもアウトだどうしようもない。こうなったら、二股男と呼ばれようと桔梗と鈴音に声をかけるしかないか。いやまて。

 

「本当に居た?」

「ケヤキモールの入り口で会った朝比奈先輩がね。教えてくれたんだ。綾小路くんがここで困ってるみたいだって」

「困っているみたい?何のことでだ?」

 

 静かに聞き返すが、内面では硬い意識を固める。

 確かに困っているが、それは「鈴音と桔梗の試着した下着姿をどうやって評価するか」の一点でしかない。

 ここで、一之瀬の助言など聞けるはずもない。それが分からない朝比奈ではない。生徒会の一員で人望の厚い一之瀬に、女性の下着専門店で二股をかけている姿を見せるなど狙いは明らかだ。

 一之瀬のオレに対する評価を下げる。これしかない。

 今まで、あの手この手で積み立ててきた信頼は一瞬で消え去るだろう。

 致命的ではないが、かなりの痛手だ。

 

 裏切られたか。

 南雲と付き合うために手を組んだのだから、オレはもう用なしだ。南雲戦で見せたオレの一面に脅威も感じただろう。

 先手を取られるとはな。何より、俺が困っているとそれだけでは嘘はつかないように言葉を選んでのけた。

 ここまで、綺麗に裏切られるとは。朝比奈の評価を内心で急上昇させる。

 

「具体的には分からないけど、朝比奈先輩にはそう見えたんだって。

綾小路くんが、ランジェリーショップに居るからじゃないかな。女の子じゃないのにこんなところに居るんだから。何かトラブルでもあったのかと思うよ」

「確かに男がこんな所に居ると邪推してしまうな。心配かけてしまってすまない。特にトラブルというわけではなくて、少し用があってここに居るんだ」

 

 用か、と一之瀬の唇が動くと、得たりとばかりに顔の前で手を叩く。

本人としては嬉しそうにしているのだろうが、張り詰めた気配が僅かに見える。注意深く見ないと分からない程度の気配が。

 

「そっか、トラブルじゃなくてよかったよー。朝比奈先輩はそういうのほっとけないからね。気にしてたみたいだよ。デート中だからあまり手助けできなかったって言ってたから私が来たんだ」

「態々来てもらってすまないな。こんなことになるなら、朝比奈先輩と挨拶したときに一言でも言っておくべきだった。連れの南雲先輩とは少し話をしたんだが」

 

 南雲の名前を出す。不戦を結んだはずの南雲がどうしたかによっては手を打つ必要がある。

 暗に南雲から聞いてないのかと言われて、一之瀬はどうするか。

 

「あ、そうだったんだ」

 

 ぽんと手を合わせて得心した表情になる。自然な表情だが、違和感ほどではない引っかかるものがある。

 

「南雲先輩から話を聞かなかったのか?」

「南雲先輩は朝比奈先輩と居たけどあまり話してないよ。彼女と一緒に居る彼氏と話し込むなんて変だからね。挨拶ぐらいはしたけど」

 

 おかしなことは何一つ言っていない。一之瀬の様子からは嘘をついている気配もない。

 だが、引っ掛かりが違和感へと変化する。

 

「そりゃ、そうだよな。朝比奈先輩とは何か話をしたのか」

「うーん、いろいろお話したんだけどね。一つだけおかしなこと言ってたから、それが気になってるの。帆波出遅れすぎ。取り敢えず突っ込みなさいって言ってたんだけど、心当たりある?」

「いや、さっぱりだ」

 

 何処か違和感があったが、ようやく得心した。普段通りの無邪気な笑みを浮かべていても、一之瀬の表情がどこか固い。

 最近の視線を何処か合わせない一之瀬とはまるで違う。内面の抑えきれない感情を必死に抑えた固さが徐々に浮かんできている。

 

「あ、うん……そっか……そうなんだ。やっぱり、綾小路君はそう言うんだね」

 

 さっきの「帆波出遅れすぎ。取り敢えず突っ込みなさい」がなんらかのトリガーだったのだろう。

 オレの返答に、笑みを消して傍目で分かるほど張り詰め硬くなっていき何か覚悟を決めたような表情に変わる。

あり得ない、こんな表情を浮かべるようなことは言っていない。世間話の範疇のはずだ。

 

「……そっかあ」

 

 朝比奈が何を話したのか知らないが、今の一之瀬は水が溢れる直前のコップのようなものだ。下手に刺激すると不味い。

 この有り様ではオレの言葉もそこまで響くことはない。煙に巻くことはできないか。やってくれる。

 

固まったままではいられないと、一之瀬はぶんぶんと頭を振って意識を取り戻した。

 

「ま、まあ……何時までもこんな所に居ると不味いよね」

 

 どうやら朝比奈は、鈴音と桔梗のことは言わなかったようだ。

 教えられているのなら、視線を泳がせ二つの試着室から同時に人気があることを確認する必要がない。

 確認した結果、一之瀬はオレが一人だと認識したようだ。

 当たり前か、下着を手にとって似合うかどうか聞いているならともかく、二人とも着替え中だ。

 マン・ツー・マンのデートならともかく二人が試着のために着替え中、その試着姿を堪能するなど一之瀬の性格では思考の上にも上らない畜生の所業だろう。

 覗きでもしているかと疑うのが関の山だろうな。そして、そんな疑いを抱かれない程度の好感は得ているはずだ。

 

「迷ったん、だよね」

 

予想通り、戸惑ってはいるものの覗きではなく迷ったと判断したか。

依然として表面張力の限界ギリギリなのは変わらないが。

 

「いや、迷っていない。心配して来てくれたのはありがたいが、此処でやるべきことがある。女性用下着専門店にオレが居ることに違和感を感じるだろうが、罪になるようなことはしていないししない。

気になるならば何時か話す。だから、オレを信じて見なかったことにしてくれないか」

「……っ、此処でやるべきことは、そんなに大事なことなの?」

 

 何故か話の持って行き方を失敗したようだ。一之瀬から重い張り詰めた気配が僅かにこぼれ落ちた。このまま溢れてしまうかもしれない。

 だが、ここは肯定すべきだな。

 

「ああ、そう「でもっ!」一之瀬?」

 

オレの肯定の一言を打ち消すように、一之瀬が大きな声を出す。

 

「でも……でも……」

 

 溢れ出すこらえきれない感情を押し殺して必死に言葉を探す姿は、あまりにも似つかわしくない。

 何なんだ?かつてないこの一之瀬の姿は?あまりにもらしくなさすぎる。朝比奈が突いただけではここまでにはならない。

 何かを見落としたか。

 

「でも……その、……ランジェリーショップで一人だよ。きっと、好奇の目で見られるだろうから、一緒に居よ…ううん、一度、店から出て私と入り直そうよ。そうすれば、変な目で見られることはなくなるから」

 

 縋るような眼差しと声。あの一之瀬にこんな姿をさせていると知られた場合、オレの平穏な学園生活は消え去る。何とかしなければ。

 一之瀬がただ自分と一緒にいて欲しいと絶叫している気がするが、それは自身を過剰評価しすぎだろう。

 

 

 

 一之瀬の提案に乗る。一之瀬を落ち着かせるだけならばこれが一番だろう。

 一之瀬の提案通りにすれば、確かに奇異の視線にさられることはない。これだけならアリに思える。

 閉店時間が迫っていることと、そもそも鈴音と桔梗を背負って入店しておいて他の女と出て入るなんてのは論外な上に、目撃された場合一之瀬とそういう関係だと思われる可能性があるゆえに選択肢にも浮かばないが。

 

 迷うが、ここは、後々を考えても素直に話しておく一手を打つべきだな。

 

「いや、実はな――」

「準備できたわ」

 

 鈴音の準備が出来たか。良いタイミングだ。

 鈴音に顔だけ出して貰い、一之瀬に見せれば一之瀬なら空気を読んで引いてくれる。

 これなら、二股だとバレることもない。鈴音と恋人と認識されるだろうがそれは仕方ないな。一之瀬なら噂にすることもないだろう。

 瞬時に流れを組み上げ、まずは鈴音に聞こえるように一之瀬に声をかけようとしたオレの耳に、発言者の性格からは想像出来ない負の感情が込められた呟きが聞こえた。

 

「そっか、そうだよね……やっぱり堀北さんか……やっぱりっ!」

 

 何故か全てを理解した表情になると、近くのオレにしか聞こえない声で吐き捨て始めた。

 どうしてこうなったのか分からないが、二つ理解した。

 堀北と付き合っているルートは選べないこと。

 一之瀬が決壊して激情に飲まれたこと。

 

「付き合っていないって、ただの隣人だって言ってたのにっ!」

「……」

 

 情けない。言葉が出てこない。

 脳裏では言い包める手段がいくらでも浮かんでくるがそれは出来ない。

 一之瀬の雰囲気が違う。激情に飲まれていても一之瀬は本気だ。

 オレは、策謀や陰謀を容赦なく用いるし、苛烈な手段もとるが、本気の人間には本気で応えたい。

 三人の少女とそういう関係になっておいて何を言っているのだと自分でも思うが、正直な思いだ。

『確かにそう言ったこともあったが、あれから肉体関係を結んだんだ』などど開き直れるはずがない。男としての一線を越えてしまっている。

 

「私は、私はね……し、信じてたのに!」

 

 ここだ。と本能が絶叫する。一之瀬の言葉が途切れたここで何らかの行動をするしかない。

 

 どうするか。脳内で先程の南雲のアドバイスを思い出しながら、アドバイザー南雲に問いかける。

 

『こう言うときは何も言わずに「すまなかった」と言って抱き締めろ。

 帆波の中では、お前は堀北と付き合っていたのに教えなかったと断定(強調)している。

 ありとあらゆる言葉はほとんど無意味どころか逆効果だ。ただ行動しか許されない。

 あの激情を何も言わずに可愛いと飲み込んで、初めて男は男になる』

 

……名前こそABCで言っていたが、何でこんなに具体的なアドバイスがあいつは出来たんだ。

 

『ワンポイントアドバイスとしては、抱き締めるときはただ抱き締めるだけに留めろ。

髪を撫でるのもNG、尻や腰のように性を連想する場所に手を当てるのは論外だ。

お前の誠意(笑)が試されている時だ』

 

 間違いなく有効な一手だ。一之瀬に通用する可能性は非常に高い。

 ……それが出来れば苦労はしない。この手は採れない。

 

「一之瀬……」

 

 こうなったら、ほぼ無意味でも、正直に二股かけて下着専門店に来ていまから試着姿を見るところだと、正直に聞かせられる部分を言うしかない。

 

 覚悟を決めたオレの前で、パァァーンと木製の巨大な棚が叩かれた。

 あり得ない光景に目を剥く。

 一之瀬が、店の棚を叩いた?あの一之瀬が?

 

「お、おい……」

 

 あの一之瀬から想像だにできない姿にぎょっとなって一之瀬の顔を見る。一之瀬のほほを、涙が伝っている。思わず凍りついたオレに止めの一言がやってくる。

 

「……嘘つきっ」

 

 キッと睨みつけられた。

 唇を噛み締めながら踵を返し棚の脇に一之瀬が隠れる。

 

 おい、待て、待ってくれ、隠れるんじゃない。何がなんだか分からないうちに自己完結しないでくれ。

 いや、それよりも、普通帰るだろう。何で隠れるんだ。

 予想の斜め上にかっとんだ発言と姿に一瞬自失した内に、一之瀬はしっかりと隠れてしまった。

 あれでは一之瀬からはこちらの姿が見ることができても、こちらからは見えない。

 不味い。

 引きずり出そうにも、店員の視線がたまにこちらを向いている状況では、女性用下着を掻き分けて同年代の少女を引きずり出す何て事はできるはずがない。

 説得する時間もない。

 こういうときは、南雲が教えてくれた通りに、すべてを飲み込んでただ一言「すまないな」と言って抱きしめるべきだがそれはできない。

 

「物音がしたけど、何かあったの?」

 

 カーテンの先で声をかけてくる鈴音の存在が説得を許してはくれない。

 情と精を交わした鈴音(ともう一つのカーテンの裏でごそごそ着替えている桔梗)の前で「ただの友人」を抱きしめるなどこれも男としての一線を越えている。

 

 どちらを優先するかだ。

 鈴音と一之瀬か。

 自分の女か友人か。

 

 迷う必要はないな。

 

「いや、何でもない。待ちかねてしまってな。うろついた時に棚を蹴飛ばしてしまった」

「ドジね。まるで、子どもみたい」

「それだけ、楽しみにしてると受け取って欲しいな」

「……バカね」

 

 振り返り、躊躇わず笑みを含んだ声を出す鈴音を優先する。

 

「っ……」

 

 背後の気配が剣呑なものになったが、もう一之瀬のことを鈴音に言うことは出来ない。

 一之瀬の尊厳を守るためにも一之瀬のことは言えない。

 

 同級生が下着の棚の裏に、下着を迷彩にして隠れて試着デートをしているこちらを見ているなどと、どう言えば良いというのか。

 

 後で、鈴音と桔梗には殴られても良い。ここは黙っておくしかない。

 

「そう、なら、出るわね」

 

 とろりとした声を出して顔だけカーテンから覗かせる鈴音は、何時もにも増して魅力的だ。

 首筋まで真っ赤に染めてわずかに伏目にしている姿が仄かな色気さえ漂わせてくる。

 

「首だけか?」

 

 そのままもじもじと胸の前で合わせたカーテンを弄る鈴音が、可愛らしすぎてついからかう。

 

 内心は同時に嵐が吹いているが。

 

 一之瀬に見られながら、鈴音と桔梗の下着姿を鑑賞して感想を言うとか、どんな羞恥プレイだ。




なお、南雲くんに教えてもらった方法なら一之瀬さんは何とかなりました。
一之瀬さんは。


次回は、一週間くらいかかりそうです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(一杯目)

木時眼さん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます

綾小路くん割とピンチです。



 一体何故こんなことになったのだろうか。

 ランジェリーショップで自分の女の下着姿を鑑賞して、プレゼントする。ただそれだけのことが変わってしまった。

 原因の、背中に焼きつくような情念がこもった視線を送ってくる一之瀬の気配に溜息をこらえる。

 

「…っ……そうだよね。私より、堀北さんを取るよね……っ」

 

 分けがわからん。正直な感想はこれに尽きる。

 一之瀬の涙の詰問も、隠れたことも、熱を持った視線もすべて理解不能だ。何らかの策という可能性は低い。一之瀬は善良な人間だが馬鹿じゃない。こんな奇行を人目に晒す意味は理解している。なのにこれだ。

 正直なところ、一之瀬がストレスか何かでおかしくなって奇行に走っている可能性が最も高い。

 来店したときからおかしかったし、下着を迷彩にして下着棚に隠れるとかそれ以外の可能性を考える余地が非常に少ない。

 そうなると精神的異常を抱えた友人をどうするかという問題が生起してしまう。

担任の星之宮を呼び出すべきだろうがどうしよう。自慢の生徒がなんらかの精神的な病気だというのを、やんわりと教えてあげることが出来る便利な日本語は無いものか。

 憂鬱だ。

 

「あ、開けるわよ」

「ああ、開けてくれ」

 

 鈴音は一度目をつぶり開くと、意を決して胸の前で重ね合わせたカーテンを離した。そうすることでカーテンに隠れていた鈴音の下着だけを身につけた裸体が目に飛び込む。

 憂鬱な思いは鈴音の下着姿で吹き飛んだ。

 

「赤か」

 

 ぼんやりと、それだけ呟く。

 

「赤……赤って……そっかあ、そんな扇情的な下着着るんだあ……堀北さん」 

 怨念が籠もった声が耳朶を打つ。特に堀北さんの部分は裏切り者を弾劾しているようにしか聞こえない。が気にもならない。

 長く艶やかな黒髪。

 整った顔立ちに、浮かべられた色気を帯びた表情。

 白磁のごとき肌が、ほんのりと朱に染まり、下着の色の赤を映えさせている。

 普段はフルカップの色気より機能性を重視したブラをつけているのに。四分の三カップにして美しい谷間を強調している。

 鍛えられひきしまった腰。見事なくびれだ。かわいらしい臍は今は鈴音の手で見えない。

 白い滑らかな肌が、蛍光灯の灯りを反射している。

 染みひとつなく、鍛えられた上に油がのった完璧なまでの腰。

 ハイレッグのショーツがしなやかな太ももを露にして目を惹きつけ、今すぐにでもしゃぶりつきたくなる欲望を掻き立てる。

 普段の強気な態度の裏に隠された、オレの手で育てられている途中のこの魅力的な肢体。

 そのギャップに加えて、普段と違い恥じらう表情のギャップが合わさり、なんともいえない色気をかもし出しているのが、またなんとも。

 

「堀北さん……プール行った時より、あちこち育ってる……ふぅん」

 きいぃ、と重低音が耳に届く。

 まるで。そう、まるで、木製の棚を爪で引っかけばこんな音がするのだろう。一之瀬がそんなことをするはずがないし、してもどうでもいい。

 

「ね、ねえ……」

「……」

「ちょっと!清隆くん」

「あ、ああ?な、なんだ、鈴音」

「ひとの下着姿を見た途端固まっておいて、何って何よ……そんなにこの格好、おかしかったかしら?」

「い、いや、そうじゃないんだ。実はな」

 

「堀北さんと綾小路くん名前で呼び合ってるんだ……そっかあ」

 後ろからおどろおどろしい気配がするが、今は前の鈴音だ。器用にオレにしか聞こえない声を出す一之瀬は後で対処しよう。

 

「実は、何かしら?」

「お前に見惚れてたんだ、鈴音」

「え?わ、わたしに、見惚れたの?」

「出るところは出て、引っ込むところは引っ込む……そのスタイル、見惚れないほうがどうかしている」

「っ……な、なにをいうかと思えば……いやらしい。あなた、今まですぐに押し倒すなり揉むなりしゃぶるなりしておいて、今更誉めるなんて」

「仕方がないだろう。健康的な男子のオレが、目の前で魅力的な女の子が据え膳でいるなら襲い掛かるだろう」

「……そう言えばそうよね。あなたも同年代の男子生徒だったわね」

 

 頬を染めて照れていた鈴音が疑い深げに言う。

 

「ああ、魅力的な女子の下着姿で虜になるくらいには健康的な男子生徒のつもりだ」

「魅力的?わ私が?」

「ああ」

「……そう、そう言われると悪い気はしないわね」

 

 体を隠すようにしていた手を髪にやりくるくるし始める。可愛さに目を細める。

 

「押し倒す?……揉む?……しゃぶる?……ぁっ!!??……ほ、堀北さんの肌の赤い虫刺されみたいなのって、うそっ!?」

 振り返らなくてもわかる。今一之瀬は真っ赤だ。オレも表情には出していないが情事の痕を他人に見られる羞恥を堪えている。

 

「しかし、赤とは思わなかった。あの鈴音がな」

「いろいろ考えたのだけど、今の私の肌にはちょうどいいと思って」

「ああ、確かにな」

 

 一晩中、散々嬲りつくした肌には痕がついていない場所のほうが少ない。

 滑らかな首筋にポツリポツリと吸い付いた痕が残り、鎖骨、胸元はもちろん、脇腹と腿にはいくつかの歯形さえクッキリと残っている。

 特に――

 

「うっ血してはいないようだけど、縄で縛られた痕がひどいでしょう。こんなところにまで残っているなんて、背中がどうなっているか怖くて見れなかったわよ」

「確かに胸の谷間にくっきりと残ってるな。肩に回して、胸の谷間を通したときのが」

「……変態」

「お前が指差したんだろう」

「それでもよ」

 

 ドサリ

「縄?……縛……る?……縄?縛っ……縛りって何?なんで?」

 棚に音をたててもたれ掛かりながら、理解不能の言葉を聞いたようにおうむ返しに呟き続ける一之瀬。

 先程まで発していたオドロオドロした気配は、驚愕で吹き飛んだようだ。

 お陰で、ここまで知られてしまったのもあって、意識は切り替わった。

 一之瀬を気にせずに、鈴音の下着姿を堪能して鈴音と楽しむ。

 これしかない。

 

「それにしても……嫌だわ、こんなところにも痕があるわね」

「痛むか?」

「痛みはないのだけど、誰かさんが私を倒立の姿勢で空中で固定した挙句、あそこを舐めさせながら吸い付いてくれたところがね」

 

 腰を折りショーツの尻の部分をめくって試着室の鏡に映す。真っ白で柔らかいとよく知っているお尻にもいくつもの赤い点が。

 エロい。下半身が起き上がるのを必死で堪えるくらいエロい。

 

「おできみたいになっているわね。どれだけの力で吸ったのかしらね。誰かさんは」

「酷いことをするやつが居るんだな。血が上って眩暈をさせながら尻にそんな痕をつけるなんて」

「まったくよね。もう嫌だ吸わないで吸ってる音聞かさないでって何度も言ったのに、言うたびにあそこを大きくする誰かさんは酷い人よ」

 

 快楽混じりの悲痛な叫びを思い出しながら、鈴音の尻に刻み込んだ痕を見て得もいえぬ心地好さを堪能する。

 

「吸って?……吸わないでって……音?痕?あそこ???」

 どうやら、一之瀬はあまりこういう知識がないようだ。パニックになっているだけなのかもしれないが。

 

「確かにそうだな」

「ええ……で、どうかしら?」

「どうとは?」

「このポーズよ。あなたが言っていた色気のあるポーズとして合格?」

 

 腰を折ったことで、赤いブラに包まれた白い双丘が柔らかさを強調するようにたゆむ。

 細い腰にわずかに浮かんだ筋肉の筋がなんともなまめかしい。

 白い尻にいくつもついた赤い痕が、大事な部分を包んだ赤いクロッチと合わさり、匂いたつような色香を匂わせる。

 何よりも、羞恥のあまり真っ赤にして視線を合わせず逃げまわせる鈴音の整った顔。

 

「合格だ。その姿勢のままでいて欲しい」

「この姿勢、立っているので精一杯の私には辛いのだけど」

「頼む」

「……少しだけよ」

 

 顔をさらに染めて了承してくれた。目の保養として有り難いが。

 

「ほ、堀北さん。え、堀北さんって。もっとこう、え?え?え?」

 勝手に追い詰められていく一之瀬はどうしたのだろうか。……まさかな。

 

 

 

 数分後。辛くなった姿勢を戻して裸身を手で隠しながら鈴音が言う。

 

「そろそろ、肝心の下着がどうなのか。あなたの意見を聞かせてもらえるかしら」

「そうだな。多少目立つ色合いには間違いないが、悪目立ちしてるわけではない。リボンのワンポイントもあるから鈴音的にも悪い気はしないだろう」

「……私の下着にリボンがついているの覚えていてくれたのね」

「あれだけ何度も見ていればな」

「そう、その、リボンなんて子供ぽいとは思わないのね」

「当たり前だろ。個人的な感想だが、お前の場合女の子っぽいのがよく似合っている」

「でも、色気がない、とか思わないの」

 

 何故そんなに不安そうにするんだ。

 

「確かに赤でリボンだと色気にはかけるな。だが――」

「そうよね。やっぱり、これは」

 

 残念そうに下着を見下ろす。

 

「最後まで聞けよ。個人的な感想といっただろう。お前のことをよく知らないやつならまず色気だのなんだので判断するだろうな。

 オレは、お前の女の子らしいところをよく知っているからな。逆に女の子らしいのが好きだし似合っていると思う」

「あ、あなたね……い、いきなりなにを」

 

 視線が絡み合い、鈴音が頬を染めて目を逸らす。

 

「何と言われても率直な感想だ。お前に可愛らしい服はよく似合う」

「ず、ずいぶん口が巧くなったじゃない。何かあったの?」

「ちょっとした心境な変化があってな」

 

 無言で続きを促す鈴音に応える。

 

「さっき南雲と話していただろう」

「そうね。何の話をしていたかは聞こえなかったけど……あなたひょっとして、南雲先輩に教わったとおりにしているんじゃないでしょうね」

「まさか。他人の言葉で話すのはやめろと言われた。何より」

「何より?」

「俺が南雲の言うことを素直に聞くと思うか」

「……聞かないわね」

 

「そっかあ、あの人が、アドバイスしたんだ。そうだったんだ。しかも、ついさっき……へぇ」

「あの人」呼びか一之瀬。親愛の情がある「先輩」「南雲先輩」でもなく尊敬の念がある「南雲生徒会長」でもなく、どうでもいい人カテゴリー「あの人」。

 何故か知らないが一瞬で一之瀬の中で南雲の好感度がゼロになってしまった。

 

「それでも実のある会話だった。どんな話をしたのかは言えないが気づいたことがある」

「何に?」

「オレにはデリカシーもムードもなかったということに」

「うそ……気づいたのね。やっと」

 

 目を丸くして感嘆する鈴音。半裸の体を隠していた手さえ下ろすほど、驚いている。

 やはり、そうだったか。感極まった鈴音は他の何より雄弁だ。

 

「正直、あなたは人のこと娼婦か何かと認識していると思っていたわ」

「流石にそこまでではない」

 

 酷い評価に言い返すがジト目で睨まれる。

 

「あなた、最初の時私にどうしたか忘れたのかしら。キスもせずに胸とあそこを、いいえ全身を嬲り尽くしてから犯そうとしたわよね。最後の力を振り絞ってこっちからキスしなければ、間違いなくファーストキスの前に処女を奪われていたわ」

「確かに、でもな」

「デリカシーとムードを覚えようとしているのよね」

「……ああ」

「なら、私が魅力的だったから暴走したとか。デリカシーの欠片も無いこと言うはずがないわよね」

 

 疑問な形をとった確認に、やはりこの台詞はだめだったかと思いながら、素直な思いを正直に誤魔化さず目を見て告げる。

 

「……勿論だ」

 

 オレの想いを鈴音は見抜く。

 

「そう言おうとして躊躇った……とこかしらね」

「いや、そんなことは――」

「違うの?最近、あなたのポーカーフェイスがある程度読めるようになったから間違いないわ」

 

 見抜かれ詰まるオレに容赦なく止めを刺す。

 

「呆れたわ。情を交わすより欲望を優先させる対象でしかないと、公言しようとしてどうするつもりなのよ。私でなくとも、よほどの聖女か馬鹿でなければ娼婦扱いしていると受け取るわよ。あなたのことをある程度理解していなければ、間違いなくね」

「……すまなかった。猛省する」

 

 反論するような愚を犯さず、素直に謝ると鈴音は表情を緩める。

 

「猛省して。正直トラウマに成りかけたんだから。でも、猛省するなら許すし掘り起こさない」

「良いのか」

 

 正直かなり尾を引っ張ると思っていた。笑って許せるほど鈴音は寛大で慈愛に満ちていただろうか。

 

「あ、綾小路くん。そんなっ」

 オレのあまりの鬼畜行動に驚く一之瀬に衝撃が走っているようだが……気にしないでおこう。

 

「朝イチで一発殴ったから気は済んだわ」

「あの一発は、それが理由だったのか」

 

 オレの回答に頭が痛いと鈴音が額に手をやる。半裸でそんな姿勢をされると、強調された谷間がクッキリとした上で豊かになった双丘が揺れて目に毒だ。

 目をそこに向けると、鈴音に冷たい目で睨まれる意味で。

 

「あなた、まさか初めての私を気絶させて足腰立たないようにまでしたから殴られたと思っていたの?」

「正直、そう思っていた」

「そういうところが、デリカシーもムードもないのよ」

 

 ふぅと一息ついて耳元の髪を一度撫でる。オレのポーカーフェイスが読まれたように、オレも鈴音の癖を読めるようになった。

 これは、鈴音にとって恥ずかしいことを言おうとするサインだ。

 

「あのね。確かに思うところはあるけど、あなたと……その、そういうことをしたから嬉しい気持ちの方が強かったし、あれだけシテもらえた充実感もあったし、なにより次の日無理強いしなかったから、それはまだ許せたわ」

「そうだったのか」

「何より、何時も気絶するのは私が不馴れだからよ。覚えたてだから、色々下手だしごめんなさい」

「いや、そう考えてしてくれるだけで嬉しい。ありがとう」

 

 嘘偽りはない。つい半月前まで処女だった鈴音が、性知識を覚え実施してくれている。その気持ちが嬉しかった。

 

「……今のは少しデリカシーがあったわね」

「そうか?」

 

 軽く驚いた後、オレの返答にくすりと鈴音はかすかな笑みを漏らす。

 

「毎回……え、そういうのって、気絶して、足腰たたないものなの」

 あまりの衝撃に一之瀬はグロッキーになっているが。

 

「ええ、そうよ。初めて家族以外の異性に手料理を振る舞ったのに――違う男子の名前を出した頃とは隔世と言っても良いくらいに違うわ」

「すまん。本当にバカだった。今もバカだが」

 

 改めて聞くと酷い。酷すぎるだろうオレ。ここで須藤の名前を言わない気配りが出来る鈴音が、恋愛に重きを置いてないと認識していた辺り救いようがない。

 

「そっかあ……そんなこともしてたんだ」

 現在進行形で酷いことをしているから、弁護する気も起きない。

……南雲と一之瀬のことで会話したとき鬼畜呼ばわりされたこと。オレの驚異を知っているはずなのに一之瀬を突撃させた義理堅い朝比奈。様子がおかしすぎる一之瀬。

 そういうことに少しだけ気を配るようにしたオレはある程度予想付けた。

……まさかとは思っていたが、そうなのか。

 

「分かっているなら良いわよ。デリカシーもムードも欠けていることを自覚したのは、一本前進したと認める。後で南雲先輩にお礼でも言ったほうがいいかしら」

「必要ないと思うがな」

「ええ、そうね。あなたの許可があるか、あなたと一緒じゃなければ南雲先輩とは話せないのよね」

 

 そう言った覚えはないが、嬉しそうな鈴音に水を差すのは野暮だな。

 

「で、具体的にどうするつもりなのかしら」

「一言で言えば、踏み込むことにした」

「踏み込む?」

「ああ、相手が嫌がらなければ、踏み込む」

「……それだけだと分からないわね。行動の一つでも見せてもらわないと」

 

そこで、フフンと鼻で笑う。

 

「まあ、あなたのデリカシーとムードに満ちた行動なんて、大体推し測れるから期待は出来ないけどね。やってみたら」

 

表情豊かになった鈴音は可愛いが、流石に少しいらっとした。

一之瀬が観ているからある程度遠慮するつもりだったが、一之瀬に対する推測を確定するためにも加減しない。

 

「そのつもりだ」

「え?」

 

 無意識のうちに会話を分析して精査していたオレは、利用できるか利用できないかだけで判断するあまり、リスクを持って会話をするのを忘れていた。

 なので、踏み込もう。

 

「き、清隆くん……」

 

 物理的にも一歩踏みこみ鈴音の目の前に立つ。

 そのまま更衣室の壁におしやるようにして、触れるか触れないかの距離を保つ。

 相手の体温が感じられるか感じられないかの距離を保つ。

 

「き、清隆くん、ち、近い、近いわよ」

「でも、お前は嫌がっていないな」

「そ、それは……ひゃっ……あ……あ……」

 

「ほ、堀北さんの顔を、綾小路くんが」

 

 鈴音の輪郭をなぞる。柔らかな頬、弾力のある唇、スッとした鼻梁、大きめの瞳を覆う瞼、線で書いたような美しい眉毛。

 

「だ、駄目よ……お店の中は駄目……あなたの部屋なら……まだ」

「安心しろ。体力の限界のお前に、そういうことはしない」

 

「駄目って言ってるのに、何で堀北さん綾小路くんに体寄せてるの……それに、綾小路くんの部屋って……私には……何もしてないのに」

 

「前から、お前には言っておきたい事があったんだ。それを言いたい」

 

顎を撫で、耳の裏をかくと、頬に手を当てしっかり固定する。

 

「な、なに!なにを言うつもりなの!ちょっと!ねえっ!」

「見ただけでなく触ればよく分かる」

 

 完全にパニック状態に陥った鈴音の瞳を見る。瞳に映る、相変わらず無表情なオレの顔、苦心して笑みらしいものを作る。

 これで限界だな。情けない。

 

「あ……きよたか、くん……」

 

「鈴音、お前は綺麗だ」

 

「~~~~~っ!?」

 

 すとんと力を抜いて崩れ落ちそうになった鈴音を抱きとめる。

 軽く柔らかな肢体。

 嫌がる素振りを見せない肢体を全身で味わう。

 

 愚かな行動だと思う。こうして執着を示した今、鈴音との関係はオレの負けにならなくとも不利になる可能性が出てきた。

 それ以前にオレの強さのうちの一つは周りに興味――執着を持たないが故のものだった。

 わざわざ強さを手放したオレは、間違いなく愚かだ。父親ならば切って捨てただろう。

 

「~~ぁ~~ぁ~~あ、え、そ、そんな、こといきなり、い、い言っても、私がど動揺するとでも――」

「美少女だよ。お前は」

「~っ……」

 

 鈴音の顔に当てた手が感じる心地よい熱が強くなるたびに、心が沸き立ち執着する。執着とは煩悩だ。

 煩悩がないゆえに、オレには束縛を脱した智慧があった。

 煩悩に身を焦がすということは、智慧を手放し苦難を背負う愚かなことだ。

 

 だが、と思う。

 

「う、あ、うや、ちょ、ちょっと、あなた、そろそろ、そう、そろそろ、そその辺で」

 

 手に伝わる湯気が出るほどの熱を感じながら、視線を彷徨わせ決して視線を合わせない鈴音を見ているとそれでいいと思う。

 愚かでなく智慧がある人生に生き甲斐はなかった。

 何かに煩悩するからこそ、人はそれを動機として、野心を抱き、意思を持ち、活力として、何かをなす。

 オレには人として大きな欠陥があった。取り戻そう。

 

「最初あったときから美少女だと思っていた」

「ひぅぅぅっ」

「今はもっと綺麗になったな」

「や、やああぁぁ」

 

 俺の胸に顔をぽすりと埋めて、顔を真っ赤にしたままぷるぷると震える。

 どうやらオレの、ひょっとしたら生まれて初めてなのかもしれない先を見据えていない言葉は受け入れられたようだ。

 

「綺麗だぞ……鈴音」

 

 一拍おいて名前を呼ぶときに力を入れると、耳を手でふさいで言わないでとばかりに胸に埋めた顔を恥ずかしそうに擦り付けている。

 ヤバイ。可愛すぎる。

 

「何で耳を塞ぐんだ。鈴音」

 

 サディストとしての心をこれ以上なく擽られてはいじめるしかない。

 

「……い、意外というか、驚いたからよ。あなたがここまで恥ずかしいくらい女性の容姿を誉めるとは思ってなかったわ。いえ、これは正解ではないわね。あんな安直な言葉ひとつしかいえないことが、あなたの限界を示しているわ。そうよ。一年以上身近にいて、いえ、こんな関係になって半月も経つのに、獣欲だけで良い体以外には誉め言葉の一つも言わないで、今更綺麗だなとか美少女だとかの一言で済ませるなんて人としてどうなのかと思うわよ。ええ、人としておかしいわ」

「悪いな。今から取り返す」

「……っ、た、確かに以前よりはましになったけど、これでデリカシーを覚えたとは思わないことね。む、ムードはす、少しはあったと認めてもいいけど。あ、あんなに顔を撫で回した挙句、え、笑顔を、初めて笑顔浮かべて……き、綺麗だとかはずるいというか卑怯というか」

 

 耳を塞ぐ手を少し強引に剥ぎ取ると、ぷはあと息を吐き出しながら顔を上げてすさまじい早口で目を合わせないあたり、照れているのか嫌がっているのか。今までのオレはリスクを考えて嫌がっていると、受け取っていたが照れていると考えよう。いや、考えたい。

 

「で」

「も、もちあげ、ないでぇ。ダメよ。見ちゃダメよ。今の顔見たら――」

「綺麗な顔だな。本当に美少女だよお前は」

「~~~~~っ!!??」

 

 潤みきった目尻から緩みきった頬と唇を撫でる。

 

「いや、これだけ緩んでると、可愛いと言った方が良いか」

 

「にゃ、にゃに、やあ、ち、近い。顔、近い」

 

 泣きそうな声で言うが、嫌がってはいないな。しっかりと立たせて腕の中に入れて胸に顔を埋めさせる。

 

「……どれくらい時間が欲しい」

「あ……いっ一分、一分だけ、顔……顔見ないで、お願いっ」

「分かった」

 

 一之瀬の声がしない、無言で呆然としているようだ。パサリと商品が落ちても取りもしていない。……まさかの可能性が高くなってしまった。

 取り敢えず、鈴音の荒い呼吸が収まるまで待つとするか。

 南雲のアドバイスの通りだった。こういうのもありだな。




 綾小路くんを一歩進ませてみました。
 女心に配慮しないというより、物事に執着心が薄すぎることが彼の強さであり欠陥だと思ったので。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(ちょっと多目で二杯目)

あまりにも忙しすぎて、なかなか投稿できずすいません。


「これから、こうしていくが文句はあるか」

 

 呼吸が収まるまで二分くらい待ってから声をかける。

 抱き締めただけで愛撫は勿論、頭を撫でることなくただ体温で包み込み続けた。

 

「い、いいえ。な、ないけど、あ、あなたにそういう風に見られていたなんて思わなくて、す、少し、そう少し驚いてしまって」

 

 結果、鈴音は頬を赤らめ、視線を斜め下に下ろして左右にさせ、緩みそうな唇をきゅっと結んでいる。

 このまま、ベッドに放り投げて愛でたい。

 頭の中で走る思考から意識を逸らし、口を動かす。

 

「なぜ、事実を言っただけなのに驚くんだ」

「だ、だって、い、いきなり……っ……そ、そう……そう、そうよ!あ、あなたがこんなことをするなんてまだ信じられないわ!あ!?まさか誰にでもこんなことを?」

 

 早口で目を泳がせて、私は焦っていると全身で絶叫する鈴音は愛らしいな。今までは感じなかった想いが自然と浮かび上がってくる。

 

「オレが好みと見たら口説きにかかったり、ボディタッチしていくのか?その姿が想像できるのか?」

 

 前に似たようなことを言ったような気がするが、あの時とは違い、鈴音は顔を強張るのではなく可愛らしく頬を染めていく。

 他者によるものではなく、自分によって引き出される可愛さとはここまで高揚させてくれるものなのか。

 

「……想像つかないわね。なら良いのだけど、どうして、こんな……」

 

 いい加減目を合わせないか鈴音。真っ赤になったまま目逸らして、何時もの強引さと理不尽さを織り混ぜた強気な態度に恥じらいを混ぜるのは反則に近い。

 オレの欲望が抑えきれない。

 素直にならない鈴音を素直にさせるためにも、ちょっとだけ気分転換しよう。

 

「切り替えたと言っただろう。鈴音、ちょっといいか」

「な、なに?」

 

 腕の中で緊張に全身を強張らせながらも、鈴音は無警戒に聞いてくる。問いかけるように、少し上目遣いに見上げてくる幼さが含まれた眼差し。緊張しながらも、オレに対して信頼を寄せている想いが伝わってくる。

 そんな鈴音を、オレは有無を言わさず強く抱きしめる。

 幼さが残る中にもしっかりとした肉付きをもつかなり大きな成長途中の乳房が、ムニュと音を立てて形を変える。

 

「ひゃああああっ!?」

 

 女としての色気皆無な、悲鳴を上げて暴れようとする鈴音を押さえ込んで、驚くほどくびれている腰をなでるようにきつく抱擁して抵抗の余地を奪う。これだけの細さだからこそ、平均よりやや大きい乳房のしっかりとした谷間が強調されたまらない。

 首筋に顔を埋めて、購入したばかりのオードパルファムのすずらんの香りに混じった鈴音の甘い香りを吸い込み、腹のそこで味わいながら、軽いいたずらを仕掛ける。

 

「ひゃんっ!?あ……あぅっ、やっ……ちょっ……」

「いい匂いだな。失礼だが何かしたか?」

「え?プレゼントしてくれた香水つけたけど……それが?」

「いや、ただでさえいい匂いが、信じられないくらいいい匂いになっていてな。素材が良いとここまで引き立つか、流石だな鈴音」

「ふぁっ!?」

「みずみずしく可憐で清楚なすずらんの香りは、お前によく似合っているな。プレゼントした甲斐があった」

「あありが──っ」

 

 流されかけて唇を噛み締めて流されまいとする。そんなことをされると責めるしかない。

 

「花言葉は、『純粋』『純潔』か、お前に相応しいな」

「な──っ……い、いきなりっ……す、すずらんの花言葉はそれだけじゃ──っ、ひゃぅっ──っ」

 

 鈴音の口から、最近よく聞く艶めいた声が漏れる。その声を周囲に響かせまいと唇をきつく結んで抵抗してくる。

 当然、オレは不埒な行為を止めはしない。触感だけでなく、匂いを嗅ぎ嗅覚を満たして、紡がれるくぐもった声を聴覚で堪能して、好き放題にもてあそんでから腕から鈴音を解放する。

 が、腰砕けになった鈴音が耐えられるはずもなく。崩れそうになり手近──オレの腕にすがりつくように戻ってくる。

 

「おかえり」

「あ……あう……あぅぅ」

「そんなに縋り付かなくても、オレはどこにも行かないから心配するな」

「あ、あなた、あなたねえ……い、いきなりっ…いきなりぃっ」

 

 あまりのことに、ぷるぷると震えることしかできない鈴音に囁く。

 

「いきなり?何がいきなりなんだ?。声が小さくて聞こえないな」

「い、いきなりっ……じょ情欲にまみれてっ、ここっ、外で」

「やっぱり聞こえないな」

 

 静止の言葉を、聞こえないとアピールしながら顔を近づけると逃げようとする。逃がすわけないだろう。

 

「……あっ……ダメっ」

「何が駄目なんだ。ちゃんと声に出して聞こえるように言ってくれないか?」

「さっき、ついさっき、体力の限界の私にそんなことはしないって言ったわよねっ。あれは!?」

「すまんな。前言撤回する。あれは無しだ」

 

 男らしく言い訳などせず、断固とした口調で方針の転換をしたと伝える。

 

「ふ、ふざけっ……だ、駄目っ、耳噛んじゃ……やめっ、しゃぶら……あんっ……んっ、ぅぅ」

 

 怒りと羞恥と快楽に、顔どころか全身を赤く染めてぴくぴくと震えながら身をよじろうとして、試着の下着を皺にしてしまうと気にしてよじれないあたり、鈴音は鈴音だな。この下着、気に入らないとか言っても有無を言わさず買ってプレゼントするつもりなのに。

 

「しっかり声に出して言えないなら仕方ないな。すぐ近くに店員が居るのに、このまま首筋か頬っぺたに吸い付いて、衆目に晒すくらいのキスマークを作ろうか」

「あ、あなた、そ、それは駄目よ。高校生がして良いことじゃ…ふあっ」

 

 散々やることやったのにこの反応。こういう可愛らしいところを周囲に見せれば、鈴音を人気者として取り巻く者も増えていくだろう。

 でも、そんな誰も知らない鈴音の顔を独占していたい気持ちしかオレにはない。誰にも明かす必要はない明かしたくない。

 責めなければ。決意を新たに攻め手を変える。

 

「なら、こっちにするか」

「ひぁっ……ダメっ耳っ、耳、息吹き掛けっ」

 

 長い艶やかな黒髪から見え隠れする透き通るようなうなじが、息を吹けば筋を盛り上がりながらぷるぷると震える。

 

「ひあっ!? ど、どこに舌を入れて……っ!」

 

 鈴音の耳を舐めていた舌を、するりと耳の中へと侵入させる。空洞でなければいけない空間を異物が占拠し、唾液にぬめった舌は細かく少女の耳奥を犯す。耳に感じる違和感は、そのまま背筋を走って体全体に拡散していく。それが気持ち悪いのかくすぐったいのか、鈴音には判断が出来ないほどの刺激。

 

「っ……ひんっ……やめ……っ」

 

 艶っぽい顔で目を閉じるなよ、お前の幼さが含まれた硬質の美貌でそれをやられるとたまらないだろう。

 

「お前、本当に可愛いな。うなじは血管見えるくらい白くて透き通って、髪は艶やかで絹のような肌触りで耳の中まで旨い」

「あ、あぁ、うぅ」

 

 顔を胸に埋めて「何よ。いきなり、酷く、いえ、えぐくなって」とかぼそぼそ言っている。可愛すぎるだろコイツ。

 熱い吐息がかかる度に煩悩が増していく。

 ふぅぅと、強く息を吹き掛ける。

 

「あっ……やあっ……お……願い」

「で、どっちにする?ああ、吸い付きながら息を吹きかけることも出来るが」

「……こ、この鬼畜、鬼畜にもほどがあるでしょう……ひゃあっ……く、首筋っ吸い付いっ」

「声が小さいな」

「あ、あなた、ここが何処だと……あぅ、うう、んんんん……!」

 

 店で衆目があると分かっているから、責めるんだ。

 

「面倒だな……両方いくか」

「……だ、駄目、店じゃ駄目よ。店員に見られたらどうするつもりなの?」

「今の発言、店員が見てなければ良いと受けとるが構わないか」

「……は、離しなさい」

 

 ぬけぬけと尋ねると、鈴音は真っ赤な顔で解放を命じてくるが、声に力はなく足腰にも力が入らずにガクガク震えている。

 無論、そんな状態の鈴音に従う必要はない。頭を回し、静かに店内を見回す。

 

「店員は、見ていないようだな」

 

 滑らかな背中を撫でながら言い放つオレに、危機感を抱いた鈴音が慌てて懇願してくる。

 

「……まっ、待って……し、下着が汚れるかも」

「汚すのか?何で?どうして?」

「────っ」

 

 自身の体液でなどといえるはずがなく、声のない悲鳴を上げる鈴音をさらに責める。

 

「……声が小さすぎるな。両方だ」

「──ゃっ……ひぁっ」

「匂いだけじゃないな、肌触りも極上だ。このままずっと抱きしめていたくなるな」

「だ、ダメっ、ひ、人が見てっ……いひゃぅっ」

「誰も居ない」

 

 間髪入れずに返した言葉に、パクパクと口を開いては閉じるだけになった鈴音を責め立てる。

 この半月ほどに与えた凄まじい淫行で快楽を覚えたばかりの体は、生来の抜けるような滑らかな柔肌をしっとりとオレに馴染ませて離さない。

 女として入り口に立ったばかりの性感は、そこを優しく刺激されることでしか快楽を感じられなかった秘所などの性感体よりも、背中などをソフトタッチされた方が受け入れやすい。刺激に身悶えする度に快楽のボルテージを跳ね上げていく。

 

「やっ、やぁっ、ここじゃ、やめっ……ひぁぁっ」

 

 男が抱く劣情に一々付き合っていては女の身が持たないと抵抗するが、昨晩に溺れた情欲の残り火が愛撫によって燃え盛ってしまい身悶えする。

 開発され花開いていく少女だけに与えられた絶妙な反応に酔いながら責める。

 

「や、ぁっ…~~っ」

 

 嬌声を上げないように、唇を噛み締めてオレの胸により強く顔を押し当ててくる。

 試着室の鏡を見ると、息を吹いたり吸い付く度にぐなぐなになった体を、鈴音が時々ハッと意識を戻して力をいれて、すぐに力が抜け淫らにくねらせる。

 熱を持ち、じっとりと汗ばんでいく体を丁重に愛撫する。女の熱と男の熱が混じり合い、言い知れないもどかしさに震える裸体。

 陥落直前だな責めなければ。

 

「やっ、駄目っ、そこは、だ、駄目っ、まだ、買って……あ、ぁぅ」

 

 下着越しで臀部を掴む。鍛えられた鈴音の臀部は女の油で盛り上がっていながらも引き締まっていて、やわらかさと同時にしなやかさを感じられて、顔を埋めてしまいたくなる。

 

「やっ、やあっ、あっ、っ~~」

 

 昨晩、顔をうずめたときの感触を思い出しながらもみしだくと、嬌声をかみ締め声を出さないようにあがく。

 無駄なことを。

 

 ──盛りに盛った獣同然の思考に苦笑混じりの思いを抱く。

 南雲が言っていたようなデリカシーのある行動ではないだろう。

 煩悩を抱いてみれば、性欲に従順になる自分、他人に見られるリスクを考えない愚かさ。

 だが、停滞していた自分は間違いなく前に進んでいる。愚かな生を謳歌している。

 腕の中の柔らかな感触に、オレは生の喜びを存分に感じ取っている。

 

「う……ひうっ!……胸っ触ったら……んんっ」

 

 決して胸の先端には触れない愛撫。 鈴音の乳首がまるで刺激を望むように、オレの指が近くに来る度下着越しで分かるほど硬くなっていく。

 乳房の周囲をなぞり、しっかりとした丘を登らせてその中央へと指を走らせる。その頂点へと触れる寸前で。

 

「あっ!?ふぁぁっ……ひんっ!?」

 

 指は離れていく。乳首への刺激を予想して期待するように強張った体が自然と脱力していき、その隙を突いてオレの舌は鈴音の耳奥へ侵入して彼女を責める。

 

「だ、駄目っ……んっ……も、もうっ」

 

 快楽と恥辱と怒り、何より声を出すのを抑えるのに必死で呼吸をせずにいたために、紅くなった顔で思い切りオレの胸に埋め服を噛みしめてくる。

 絶頂の声が少しでも漏れないようにすると、諦めたように来る絶頂を少しでも味わおうと、絶頂の前兆に激しく悶えながら乳首への刺激を請うように胸をそらす鈴音――生を与えてくれた象徴の一人である少女を、店の中で絶頂させて凌辱するために止めを。

 

「誰も……居ない……私…は…?」

 いざというとき、背後から夢遊状態から僅かに回帰した声――深淵の底から相手を引きずり込まんとするかのごとき底冷えのする声とともに感じる苛烈な気配。絡みつくような視線に意識を戻す。

 

 そういえば居たな一之瀬。

 もし、口に出せば挽回不可能なことになった台詞を飲み込んだ。忘れては居なかった。ただ、一之瀬が呆然として背後からの威圧感が消えた後は、その間ずっと鈴音を攻めることに重きを置いて優先順位が下だっただけだ。

 まあ、問題はない。一之瀬がオレにどういう思いを抱いているにしても、今までやったことは悪い手ではなかった。

 

「……そっか、私なんて、忘れて、たんだぁ……そっかぁ」

 

 ――そう問題はない。今までの人生で聞いたことがない、底冷えするほどの情念を込められた声と視線による背筋の震えなど大したことはない。

 




島送りになる前に、もう一話投稿したいなあ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(味付け変えて三杯目)

明日から、また島送りなのでしばらく更新できません。


 今対処すべき至急の問題は、絶頂直前の鈴音に余裕を与えてしまったことだ。

 

「はぁはぁ…あっ、なんで……あっ」

 

 名残惜しげにつぶやくとすぐに顔が紅潮する。羞恥ではなく怒りで。

 

「っ!?……あなたねぇ」

 

 わずかな隙間を縫うショートアッパー。コンパクトだが強烈な一撃を難なくいなす。

 やったことを考えれば以前のように当たっても良かったが、初動から推定される威力で止めた。

 

「あ、あなたねぇ」

 

 怒りのこもった声とは違い、鈴音の瞳に怒りの色は薄い。おそらく、照れ隠しの一撃だったのだろう。

 当たらなかったから良かったが、堀北兄と父母に文句のひとつくらい言いたくなる。特に影響を与えた堀北兄に。

 どんな育て方をすればそれなりの関係を結んだ相手に、照れ隠しで躊躇いなくアッパーする奴になるんだ。しかも、直撃すれば意識を刈り取られる威力で。

 あいつ、妹に幻想抱きすぎというか。妹のイメージ可愛い子供時代で固まったままな気がする。

 

「あなた、あなたって人は、こんなところで……はぁぁっ、今は止めて」

「了解」

 

 深呼吸一つで絶頂間際の心身を抑え、ギロリとした眼差しで見上げて有無を言わさない鈴音に否応なく頷く。確かにやり過ぎた。

 でも、少しばかり「好き」とかの言葉が欲しいと思うのは贅沢か男のエゴなのだろうか。

 

「堀北さん……殴りかかった腕で綾小路の首にすがり付いて……やらしい……あんなにあざとかったんだ」

 ――贅沢なのだろう。

 

「考えたのだけど」

「何をだ?」

 

 これ以上店内で責められるのを回避することを意図した鈴音の発言に、あえて乗る。

 

「外であんなにぺたーってくっついちゃって……やらしい、いやらしいっ……仲が良いんだねえ……」

 後ろのぼんやりと押し殺した低い声から逃れたいからだ。

 半分無意識の発言だからこそ、己をビビらせる威圧感に冷や汗が背中を伝う。

 

「あなたがデリカシーに気を配るようになった理由をよ。南雲先輩と相談するにしても、何かきっかけがあったはず。そうでしょう?」

「確かにあったな」

「それがどうしてか、色々考えたのだけど。今一つしっくりとこないの。言えないことではないなら教えてもらえるかしら」

「ああ、構わない。オレは、少し前まで女とそうこうするよりもリスク回避に重点を置いてただけだ。女に恥を掻かせていたこともあっただろうな」

 

「……えっ!?」

 夜一人で部屋に来たのに、手を握るどころか隣に座りもしなかった一之瀬の驚倒の声が聞こえる。どうやら意識をハッキリと取り戻したようだ。

 ……今のところ予定通りだ。

 

「リスク回避……下種で屑すぎて、女として一言言いたいけどあなたらしくはある……恥をかかせていたって、女性の気持ちを一応とはいえ考えてはいる」

 

 普段通り、歯に衣着せずに言いながら問うように見上げてくる。

 

「綾小路くん……確かにそういうところあったよね。私にはあんまり見せてくれなかったのに……ううん、それよりも、なんで」

 それはそうだろう、一之瀬にはそういう面見せないように振舞ったからな。ところでなんでって何だろうな。

 他人事のように客観的な思考をする部分と、それを冷静に見つめる部分に思考を分割しながら鈴音の相手をする。

 

「……今、違うなら私は納得するけど、その辺りどうなの?」

 

 鈴音の口調は冷静さを取り戻したが、姿勢は冷静さのかけらもない。

 視線を上目遣いでオレに向けながら、鼻から下の顔半分をオレの胸板に隠した姿勢が冷静なものであっていいはずがない。

 これならば、紅潮した顔を見せることなくオレと目を合わせられる適切な姿勢と本人は思っているのだろう。本人は。

 オレからしてみれば鈴音に抱きつかれながら身を預けられて、柔らかな女の体を擦り付けられながら、上目遣いで声を出す度に胸板に、絶頂直前の熱がこもった気だるげな熱い吐息をかけられているのだ。

 正直理性の限界に挑戦している。

 こういう可愛さがあるのに、好きとかは言ってくれないのは何故だろう。

 それよりも、この姿勢は、傍から見ればどう見えるか言うまでもない。

 

「なんでかな……?綾小路くんと堀北さん見てると、なんだか、無性に腹が立ってきて……こう……」

 やはりなんでの内容は、今現在鈴音からオレに抱きつく様――『ただの友達』では決してありえない姿を見ての想いだったようだ。

 ぎしぎし、まるで何かを縊り殺そうと締め上げる音が聞こえる。何か布を絞めなければこんな音はしない。

 まさかな。

 一之瀬の身近に布なんかなかったはずだと、疑いを弾き飛ばす。

 ……商品の下着を握り絞めているなんて、良識の欠片もない行動を一之瀬がしていたら話は別だが。

 凄まじい凶悪な気配を背中に感じながら、思考を回転させる。

 流石に、一之瀬がオレに対してどういう想いを抱いているかある程度理解した。ここまで来たら、確定まで持っていくしかない。

 

 正直、恐い。

 背後から迫る余りの威圧感に、忘れていた久方ぶりの恐怖を感じている。

 今まで身に付けた身を守る術が通じず、自分が痛みを覚えると確定したことは恐い。

 

 出来る限り最小限の痛みにしよう。

 

「今は多少のリスクくらいなら気にせずに口説いて押し倒す。一般的だな。ためらったり、相手から誘ってもらうのを待つなんて馬鹿げているだろう。幸運の女神は前髪しかないからな。躊躇うくらいなら状況整えて押し倒してでも受け入れさせる努力に力を注ぐべきだ。今も力を注いでいるから分かるだろう」

「いや、その、どう…いう」

 

 理性をあえて下げた欲望を込めた言葉に、鈴音は目を泳がせオレのワイシャツを掴み顔を覆う。少し下に傾いた首、真っ白で綺麗なうなじが目の前にある、えもいわれぬ感覚。

 襲いたい。

 が、ここまで言っても、オレに告白とかしてくれないのだろうな。してきたら付き合ってやる、くらいのことしか言ってくれないんだろうなと考えて欲望を抑える。

 鈴音にしても桔梗にしても、そういう可愛げは無縁だ。そこが可愛くもある。

 

「一般的?……すごいこと…言ってる…堀北さん…真っ赤……声、踊ってる……ひょっとして……私も、口説いてもらえて…お、押し倒っ……」

 そして、何より一之瀬の存在が許してくれない。それでも、一之瀬に発言の意図は伝わっているようだ。

 これからは、そうやって行くという意図が。

 もう少し押すか。

 

「自分の女の容姿を誉めるのに力を注いでいるだろう。約束なんてどうでもいい。違うか、誉めているのに途中で耳を塞いだ鈴音」

「あの、もう少し……ここ、外で、こんなに明け透けに」

 

 顔を埋めながら目をわたわたと踊らせてくる姿は愛らしいの一言だ。

 

「時と場所は心得ている。さっきも恥ずかしいとか言っていたが、人目が無いところでそんなこと気にしていてなにか意味あるのか」

「確かに誰もいない…けど……そう、そうよ。変わるにしても極端過ぎるのよ」

「そう言われてもな」

「だ、だから、その」

 

 聴覚をずらし思考を分割して鈴音と一之瀬の声を同時に聞きながら、もじもじとしだした鈴音をこのままにして一之瀬のほうに意識を向けていいと判断する。

 

「で、でも、それは好き合った人同士でないと、ふ、二股とか駄目で、でも綾小路君なら。ううん、やっぱり駄目、それに──」

 意図は通じたが、どうやら一之瀬には股をかけることを許容することは出来ないようだ。

 そして、ここまで来たら、オレに理解できるくらいに確定できた。

 告白してくれた佐藤、好意を向けてくれる愛里、関係を持った鈴音桔梗恵、ついでに南雲のアドバイス。

 これでも、女子の好意がそれなりには理解できるようになったつもりだ。

 坂柳のときに助けた後の、一之瀬の態度の変化が頭をよぎり理解する。理解してしまった。

 

「それに、綾小路くん、今までずっと、ずっと何もしてくれなかった──なのにっ……あの人がアドバイスした今っ」

 一之瀬がオレに好意を抱いていたことが。

 

 義理堅い善人の一之瀬には、貸しを与え続け重みで判断を鈍らせ寄り掛からせながら都度利用する方針を採っていた。だから、一之瀬が困ったときある程度手を伸ばしていたから好感を抱いてもらっているとは思っていた。とはいえ、恋愛感情を抱かれるとは思っていなかった。

 そもそもそんな意図さえなかった。が、好意は好意だ。一之瀬のような人物にそんな想いを抱かれたことを光栄に思おう。

 もし、早めに気付いていればいくらでも利用できただろうにな。とも思うが、今思うことは一つだ。

 

 今、気付きたくなかった。

 勝手だが、それに尽きる。

 

 

 

 一之瀬の目の前でやったことを推測を混ぜながら、一之瀬視点でどうだったかと思い出す。

 世話になっている先輩の朝比奈(とついでの南雲)に、好意を持つオレがランジェリーショップでデート中だと教えられ混乱して尻込みするも「あきらめるな」と背中を押されて勇気を振り絞って店に向かう。そんな一杯一杯の心境で好意を持った相手のオレに「邪魔だから帰れ」と言われ、怪しんでいてはいたが付き合っていないと言われて信じていた女――鈴音とデート中だと判明する。

 感情のリミッターが弾けとぶな。通りであんな醜態を見せるわけだ。

 逃げなかったのは、朝比奈から逃げるなと言われたのだろう。追い詰められた限界の心境でこの場に残れば、いちゃついているところを延々と見せられた。オレから抱きしめて盛りに盛る、そんな関係以外の何者でもない姿を。後ろで一之瀬が見ていることを気にしないどころか忘れているとしか思えないように。

 一之瀬からしてみれば、好意を持っているオレが一之瀬が隠れて見ていると理解した上で、乙女心をズタボロにしたわけか。

 

 刺されるな。いや、商品のごとく絞められるか。

 一瞬顔が引きつるのを自覚した。

 

 本気で殺そうとする人は多くないだろうが、笑って許してくれる人なんてほぼゼロだ。

 これを許せたのなら、そいつは天使か聖女かただの阿呆だ。

 そして、一之瀬は阿呆から程遠い。

 

 いや、一之瀬は天使か聖女に近い人格者だ。もしかしたら。

 

「今っ、綾小路くんっ、堀北さんと……生徒会の女子の先輩皆と付き合ってて、私のこと好きって言ったあの人だけじゃないんだ。綾小路くんもなんだ……堀北さんと付き合っているのに……私を部屋に上げて……男の人ってっ!?……」

 

 ……分かっている。そんな天使か聖女は幻想の世界にしか存在しない。判っていたけど再認識。

 よりにもよって、朝比奈辺りが南雲の所業をバラしていたらしい。

 身近な男性が続けて裏切ったと受け取るよな。と、他人事のように思う。

 

 こうしてみると、南雲のアドバイスは有り難かった。閉鎖された世界で育ち、恋愛がどんなものか理解できていない。例えるなら、ハイハイしか出来なかった赤ん坊のような状態だったオレを、絵本を読むくらいにまでは育ててくれた。

 だからこそ、理解できた。不味すぎる。今までオレが一之瀬にしてもらってたことの数々が不味い。

 

「ごはんを作らせてくれた時、部屋に食器置かせてくれたのに……一緒に遊びに行ったときも、人目につかないように隠れたときに、手もつないでくれなかったのにっ!なのに」

 

 ……そんな状況で、何もしなかった自分を殴り飛ばしたい。

 一之瀬に手を出した場合のリスクだけしか考えていなかった。人気者の一之瀬とそうなった場合に、目立つデメリットを甘受できるメリットを見出していなかった。

 

 ──なら、まだ良かった。オレは、一之瀬の行動に感謝しつつ楽しみながら罠を疑っていた。手を出すなんて欠片も考えていなかった。

 恋愛に対しては、猿とかの動物の方がましだった。

 

「……堀北さんと私っ、何が違うのっ!?」

 

 ギリィと歯を食いしばる音と共にブチリと切れてはならないモノが切れた音が響く。

 おそらく、一之瀬の理性とか平常心と呼ぶべきものが千切れたようだ。

 

「男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 肺にたまった空気を吐き出すような音が途切れると、抑揚のない声でリピートし始めた。怖い。オレをビビらせる威圧感を纏った一之瀬が怖い。抱き合う鈴音の存在がなくとも、どんな顔をしているか確認できない。

 

「男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 不味い。男性不信三歩手前くらいに弾けてしまっている。このままだと、どこへ向かうのか分からない。

 誰が悪いと言えば、タイミングや巡りあわせを仕組んだ朝比奈と南雲は悪くない。悪いのはオレだ。

 

「……男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 朝比奈は後輩の恋を応援しただけ。状況からすると同じく応援した南雲は、オレにアドバイスしたお陰で裏切り者扱いされているからこれも(どうでも)いい。

 

「……男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 問題なのは、一之瀬から見たオレの所業だ。

 今まで割りと良い仲まで行っていても、機微を理解しないオレのせいで関係が進展しなかった。

 なのに南雲にアドバイスをしてもらったオレは、ちゃんと(?)機微を理解した行動ができるようになった。

 

 それを証明するように、疑わしいと思っていた鈴音といちゃつく姿を見せつけられた。

 

 理解してしまった。

 南雲は一之瀬にアドバイスする直前、オレにアドバイスしたことを言わなかったと。

 理解してしまった。

 南雲のアドバイスをされたオレならば機微を理解してくれたのに、その相手が一之瀬ではないことに。

 理解してしまった。

 現時点で、オレの中で一之瀬は鈴音よりも下だと。

 

 その通りだが。

 

「……男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 ……この状況を何とかするには腹を括るしかない。一之瀬を抱く。抱いてモノにする。

 発想が色事師のそれだが、仕方ない。

 このまま一之瀬を帰せば、間違いなく一之瀬の様子はおかしくなる。オレに疑いが行く可能性が十分にある。いや、そもそも流血沙汰を避けるために手を打たなければならない。色々と情報提供してもらっている相手を失うのは得策ではない。

 そのためには。

 

 ──愚かだなオレは。

 この期に及んでやくたいもないロジックを第一に考える。いや、考える振りをする自分の愚かさを腹の底で嘲笑う。

 一之瀬を何とかするのに性交を手段とする必要なんてない。厄介なら壊すなり何なりすればいい、理にも利にも適う。

 なのに性交を手段としたのは、オレの煩悩故にだ。

 

 オレが一之瀬が抱きたい。

 魅力的な、少なからず好意を抱いている少女を組み敷しいて喘がせ、どんな顔、どんな声を出すのか知りたい。

 それだけだ。

 意図してなかったとはいえ、好意を貰うまで一之瀬に割いた労力を回収する。この女をオレのものにする。

 それだけだ。

 

 一之瀬に抱いている感情は、恋ではない。中身が不明の衝動ではなく、どこにたどり着きたいか明確にすぎる。

 だが、一之瀬の善良な性格、普段の行動も今のような妙なことをして黒い想いで押しつぶされそうな行動も好ましいと感じている。情愛を抱いている。

 想像する。一之瀬の隣に、背の高い青年が立っている。一之瀬が青年を見上げ何か言う。青年が返事をして一之瀬が楽しそうに笑う。

 イラッとするな。

 鈴音、桔梗、恵でもイラッとする。この胸の苛立ちを抑えるなら、股くらいかけて全力でその環境を保持する。

 だから、鈴音たちとも付き合うことを納得させた上で、豊満な体を抱いて情愛を満たす。そのために壊す。

 

 我ながら畜生としか言いようがない動機。どこまでも愚かで、人間的過ぎて世の常識を無視しきった欲望。だが正直な想い。今までならば心の奥底に抑え込んでいた衝動で動く。

 それでいい。それでこそ生きていると実感できる。

 

「……男の人って……男なんて……女なんて……」

 

 腹は決まった。

 もはやくだらないロジックも、思考も不要。

 澄み切った夜空のような穏やかな心境で、胸の中の柔らかな鈴音の肢体を味わい、理性が弾けとんだ一之瀬の声を聞きながら、それをなすために何をすべきか頭を回転させる。

 前提として、一之瀬は多人数と同時に付き合うなど許容どころか念頭にも置いたことがない。納得させるのは至難、飲み込ませる。価値観を破壊する。

 そのためにどうするか幾つかルートを組み立てる。

 ……最低でも、今晩中にベッドインまで持ち込む必要があるな。

 

 そのためには、一之瀬を混乱させて追い詰めなければなにも始まらない。

 精神的圧迫――否、精神的に調教するか。今のままの流れでさらに追い詰めて壊すとしよう。

 

「……男の人って……男なんて……女なんて……」

 

「あ、あの……黙らないで、欲しいのだけど」

 

 胸の中でわたわたしている鈴音は、一之瀬の地獄の底から響くような声が聞こえないほど混乱している。

 ────とてもかわいい。

 一瞬だけ罪悪感に駆られる。こんなかわいい娘を褒め称えるのを一之瀬を混乱させるための手段にするとは、オレの繊細な神経が傷つく──ようなことはなかった。

 こんなかわいい娘を褒め称えながら、一之瀬を混乱させ壊せばいいだけだ。

 

 マッチポンプで追い詰めるのがオレの好みだが、まあいい。たまには、流れに乗ろう。

 さて、壊した後優しい顔して治すか。恵のときと同じだ。そうすれば離れられなくなる。

 




畜生としか言いようがない決断をしました。
今まで欲望を抑え込まれていたから弾けると酷いことに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(そろそろ満腹な四杯目)

スマホでポチポチ打ってみました。

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


「悪いな。お前が何を言いたいのか正直分からなくて考えていた」

「え、その、私が言いたいのは……も、もっと段階を踏む必要があると思うのだけど」

 

 目を踊らせて顔を振られ、鈴音の顔が鎖骨に擦り付けられる。火照った滑らかな肌の心地良い感触に目を細める。

 

「そうか?」

「そ、そうよ。だって、心の準備が……」

 

 胸元でスリスリしながら、上目遣いで見上げてくる。

 つられた様に手を伸ばして鈴音の頭を撫でる。

 ぽふぽふ、ぽふぽふ。

 

「んっ」

 

 心地よさに鈴音も目を閉じ、キスをねだるような表情をする。

 

「堀北さんっ……目細めて、あんなにっ……気持ち良さそうにっ……私にはしてくれなかったのに……男の人って……女の人って……男なんて……女なんて……」

 たらりと、背筋に冷たい汗が流れる。

 まったく意図していない無意識の行動だったが、一之瀬はある程度理性を取り戻し、オレの方に感情をむけ始めたようだ。

 怒りと憎しみの感情だが、呆けられたままでは何をしても無駄だった。一歩前進したと思おう。

 

「心の準備?そんなの必要か?もう知らない仲でもないのに」

「確かに、そういわれてみれば……そうよね」

 

 キスをしない非難を込めたボーッとした目つきの僅かに理性を戻し始めた鈴音(と一之瀬)をさらに言葉で責める。

 

「だろう。恥じらうお前は可愛いが、途中で耳を塞ぐな。ああいう時は俯くくらいで、耐えろ。恥じらう可愛い姿をオレに見せて耐えて欲しいな。もちろん、お前が嫌ならお前の意思を尊重する」

「な、何言っているのよ……あ、あなた。知らない仲と言ってもまだ半月しかたっていないのに」

 

「は、半月って、綾小路くんが部屋に行って良いって聞いたら……忙しいって…え?……ああ?そっか、そうだったんだ……うらぎってたんだ。綾小路くん…………男なんて……女なんて」

 ……いい加減に落とした商品を拾うべきだぞ一之瀬。

 

 はぁ、と吐息を漏らすと鈴音が静かにこちらを見つめてくる。

 

「あ、あなたが、変わったというかマシになったから、話したいことがあるのよ。聞いて」

「お前のことか?」

「リボンのワンポイントに拘る理由を話そうと思うのだけど……聞きたいわよね」

「気になるからな。聞きたい」

 

 いつも通りの、強引さと理不尽さを混ぜた強気な姿勢も愛らしく思えるものだ。

 

「堀北さんって……男の人に興味ないって顔して、あんなっ……抱きついて体すり寄せて……男なんて……女なんて」

 

「そ、そう。聞きたいの……私って兄さんの真似ばかりしていたわよね。いえ、依存していたわ」

「そうだな」

 

「はっきり言うのね。正直、ありがたいわ」と、くすりと自嘲をこめた笑みを浮かべる。

 

「昔は、何で私が男じゃないのかって時期さえあったわ。男なら兄さんに少しでも近づけるのにって」

「なるほど」

 

 驚くほどのことではない。鈴音なら納得しかしない。

 

「その時でも、体の一部にはリボンを着けていたのよ。当たり前だけど、兄さんはつけていなかったのに」

「兄貴につけている姿を誉められたのか?」

 

 首を振って否定する。

 

「兄さんは関係なくずっと体の何処かにリボンをしていたのよ。ずっとね。兄さんに近寄るなって言われる前も後もずっと。体が育って女らしくなって、明らかに兄さんと違うようになっても、リボンだけはずっと」

 

 体に鈴音の重みがかかる。まるで、自分の大切なものを渡すように。

 

「今ならわかるわ」

 

「私にとってリボンって、私が女の子だという証みたいなものなのよ。昔も今も」

 

 変でしょうと微笑む鈴音に首を振って否定の意を伝える。

 

「そう、そっか……変じゃないの。あなたはそう思ってくれるの」

 

 一度目を閉じ、目を開けて顔をほころばせる。

 

「あなたに誉めてもらえて、女の子だって受け入れてもらえて……その……嬉しかった」

 

 堀北兄、あんたの気持ちがよくわかった。 

 確かに、この笑顔をみると何もかも理解できる。

 

「ありがとう」

 

 はにかんだ笑みは百の言葉よりも雄弁だ。

 

「ふぁぁっ……堀北さん可愛いよう……これじゃあ、綾小路くんだって……ううんっ……男の人って……女の人って……男なんて……女なんて……」

 良いところで水を差される。

 ……勝手だが、ついに女性不信の気さえ持ちつつある一之瀬が居なければと思わずに居られないな。悪いのはオレだとしても。

 

「にしても」

 

 自然と浮かべた笑顔に戸惑ったのか、咳払いひとつすると鈴音が視線を合わさずに切り出してきた。

 

「あんなに、あなたが私の容姿をほめるとはね。昔から、び、美少女だと思っているのなら言葉に出さなくても、態度に出してほしかったわ。ほかの男子はともかく、あなたときたらいつも無表情だったし」

 

 どこか責めるように言ってくる。

 

「お前の容姿を誉めたのはお前が喜ぶようになったからだ。入学した頃は誉めなかっただろう」

「……今は喜んでいるとでも」

「ああ」

「……断言するのね。私が、容姿を誉められて喜ぶようになった根拠でもあるのかしら」

「お前、兄貴みたいな一見して完璧な存在になることしか興味なかっただろう。あの頃、清潔であることと体裁が整っていること以外自分の容姿に興味なかった。ほかの男子にそんな目で見られても何とも思っていなかっただろう?」

「うざったいとは思っていたわね。今もだけど」

「いいや、今は違う。少なくともオレに褒められてうざったい以外の感情を覚えるだろう」

「……」

 

 プイと横を向くなよ。子供かお前は。いや、情緒面は子供だな。オレと同じく。

 

「良い女になったってことだ」

「良い女ね……あなたに抱かれたから…そうなったと言いたいの?」

「別に処女じゃなくなったから女になる訳じゃない。内面が変わらない女は腐るほど居る。ここ数日で、自分の内面が変わったことをお前が一番解っているだろう」

「確かに……そうね……あなたと同じくらいには変わったわ」

 

 兄を理想ではなくただ兄と受け入れた少女に問われ、リスク回避を最優先にしていた少年は答える。

 

「そうだな。オレも変わった……で」

「ん?」

「喜んでいるのか?オレに可愛いと誉められて」

「……っ……」

 

「堀北さん、真っ赤になって俯いてぷるぷるふるえてるのに…何で、聞くの?」

 後ろからなにか聞こえる。そんなの自分の口で言わせたい以外の理由が必要なのだろうか。

 

「…知りたいの?」

「当たり前だろう」

「そう、わかった教えるわ……これで、どう、かしら?あなただけよ。見て良いのも。さわって良いのも」

 

「胸に、綾小路くんの、手…」

 一之瀬のぼんやりした声を聞き流す。

 柔らかく暖かな感触が手に浸透する。ふるふると震える体と上目遣いで微妙に目を合わさない。手に振動として伝わる鼓動が想いを伝える。さらに想いを知ろうと手に力を込め。

 

「ダメよ。これ以上シワにしたら…」

「……試着じゃなければいいのか」

「……ええ」

「この下着を買わないか。お前によく似合っている」

「買うわ…だがら、その手を一度離して頂戴」

「お前がオレの手を押さえている手を離した上に」

「上に?」

「綺麗と言われて嬉しかったかの答えを言えば離す」

 

「…………」

 

 後ろから息を吸い続けている音が聞こえる。どう考えても、肺活量の限界を超えていると思うのだが大丈夫だろうか。

 

「…認めるわ。ええ、認める。あなたに綺麗と言われて嬉しくて喜ばしいと感じているわ…変わったわね、私」

「オレにとっては嬉しい変化だ……だから、次見せてくれないか。もっとオレを楽しくさせてくれ。お前の可愛い姿を見たいんだ」

「……待ってて」

 

 シャッと音を立てて紅く染まった鈴音の姿が消える。再度の、鈴音のはにかんだ笑みに思わず見惚れてカーテンの音がするまで呆けてしまった。こんな関係になって笑顔を何度か見たが、ここまでのは初めてだな。堀北兄が見れなくなったのを悔いていたわけだ。

 

 

 

 

 さて──

 

 余韻を飲み込んで振り向く。

 

 下着に隠れ、目以外、花のような満面の笑顔を浮かべた少女と目があう。

 

「忘れられていた女の子は思いました」

 

 人食い鮫のような鋭い視線と目を合わせる。

 

「たとえ恋人であっても、他人の前で猿のようにいちゃつくのはどうかなって」

 

 棘しかない言葉を冷静に流して呼び掛ける。

 

「一之瀬」

 

 一之瀬はオレを睨みながら、手につかんだ下着──もちろん売り物をぐしゃぐしゃにしだした。

 

「っ……女の子は恐ろしいものを見ました」

 

 弁償の必要があるな。オレが。

 

「恐怖、衆目の中でクラスメイトの胸とお尻をもみしだく変態男」

「一之瀬」

 

 責められても、波風一つ立てずに冷静な口調で話すオレについに耐え切れなくなり、花のような笑みを崩す。

 若いな。まだまだ経験不足だ。いや、元々感情を素直に発露する一之瀬にしてみればよく持ったと言うべきか。

 

「えっち」

「一之瀬」

「綾小路君は、えっちだね」

「一之瀬」

 

 語気を強めると一之瀬に変化が訪れる。 

 

「な・あ・に」

 

 一字一字区切りながら気合いの入った笑み──綾小路が知るはずがないが神室が見た坂柳と同じ笑み。

 俗に言うコロス笑みを深めて、夫の浮気を咎める妻のような口調。

 今、一之瀬に話して効果的な言葉を脳裏で探す。破裂して理性が飛んだ状態の相手だ。長くては意味がない。一言で致命的な、獲物をしとめる言葉を。

 

「鈴音だけじゃない」

「………ふぇ」

 

 予想通り目と口を丸く。額縁に『仰天』と題して飾っておきたい表情で固まる一之瀬に背を再度向ける。

 

「桔梗」

「…………ふにぁ?」

 

 ゆっくりと振り返りカーテンの閉まったもう片方に声をかけると、背後から人間の声とは思えない一之瀬の鳴き声が聞こえる。

 

 ガタン

「なっ、何っ」

 

 驚き何かにぶつけたような声が響く。

 

「え?…………この声……まさか……うそ、うそ、だ……よね」

 

「大丈夫か」

「だ、大丈夫。大丈夫。だいじょうぶ。わ、私はね、堀北さんと違って、今まで色んな人に誉められてるからね。そう簡単にはいかないからねっ。綺麗とか可愛いとか言われ慣れてるから。堀北さんみたいにはいかないからね」

 

 静かだと思っていたら、鈴音に対する称賛をずっと聞いていたようだ。それを、自分に置き換え、軽いパニックになっているらしい。

 

「色々誉めた奴をお前はどうとも思っていなかっただろう」

「ま、まるで、じ、自分は違うみたいだね。自意識過剰じゃ──」

「そう思っている」

「っ」

「いや、そう思わせてくれ」

「っ~~!?だ、誰っ、あんた誰っ!?」

「綾小路だが」

 

 返答に重いため息がひとつ聞こえる。

 

「はぁ~~っ……まあ、いいか。清隆くんだもんね。驚いていたらキリないし」

 

 いいらしい。

 

「……え?……え?……き、桔梗ちゃ……ん」

 驚愕のあまり抑揚さえも消え失せ『無』と評すべき一之瀬の声を聞きながら、桔梗に意識を向ける。

 

 さて、桔梗とのいちゃつきをして、一之瀬に対する精神的調教の段階を上げるか。

 




ちゃくちゃくと壊していきます。

 
卒業前に、堀北兄が堀北さんの笑顔を見ることができますように(祈


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(容赦なく盛り付ける五杯目)

モジーさん、taniさん、ふきふきさん、評価付けありがとうございました。
高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。



忙しい。
台風のお陰で一度被災地行ってまた島送り。
そろそろ新刊出るんですよね。本屋なんて洒落たもの島にはないし、雑誌と漫画しかおいてない港の購買に置くわけない。
でも、電子書籍って便利なものがあるから生きていられます。


「ふうっ、うんっ……下着の上下バラバラだとズボラとか萎えるとか思われると思うんだけど、清隆くんは?」

 

「……桔梗、ちゃん。何で?」

 今から下着姿を見せるために吐息と共に気合いをいれた桔梗の台詞で桔梗の存在を認識はできてはいても、そこで一之瀬は限界のようだ。桔梗がここにいる理由には、認識できても理性が理解を拒んでいる。

 結果、一之瀬は身動きすらしなくなった。

 思惑通りだ。

 今までピンチなのは、一之瀬ではなくオレだった。

 一之瀬が叫び声の一つでも上げれば、駆けつけた店員は保護能力を持つ担任教師を呼び、ひいては学校の介入を避けられなかった状況だった。

 三股が明るみになるのは間違いないだろう。

 坂柳理事長、茶柱、星之宮、辺りが何をするか知れたものではなかった。危なかった。その時でもどうにでも出来たがボールが相手にあるのは気分が悪い。

 だが、今の一之瀬の精神状態では現状を咀嚼するので手一杯。咀嚼して理解するのは不可能だ。

 叫ぶ余裕さえ消え失せた。

 

「男は基本不揃いだからな。どうとも思わないが」

 

 後は一之瀬の倫理観を壊し、鈴音と桔梗に納得させるだけだな。

 無理矢理にでも納得して飲み込ませる。そうでなければ許されないだろう。

 ここまで女心を傷つけることを現在進行形でしているのだ。謝罪や誤魔化しで済むラインは、とうに超えている。

 三人の反応も蔑みや怒りで済みはしないだろう。傷害に行きつく可能性もある。

 いや、オレにぶつけられるならマシだ。オレが恐れているのは絶交されること。

 三人が離れていくのが恐い。

 

 弱くなったな。

 周りの人間に興味がなく路傍の石のように思ってた頃には考えられない思考だ。

 だが、悪い気はしない。

 

「ふうん。清隆くんってそうなんだ。私もたまに下着の上下バラバラにするけど何とも思わないの?」

「桔梗の下着上下バラバラは見たことがないから評価し辛いが、見れたら新鮮ではあるな」

 

 執着するようになると弱くなるなと思考しながら、脳裏に暖色系の色合いで揃えていた桔梗の下着姿を浮かべながら答える。

 

「ふうん。なら、組み合わせ次第でだけどバラバラもありかなあ」

「そこまで気にすることなのか?桔梗は今までいつも揃いの下着だったよな」

「そこで聞くとか女心がわかってないなあ。女の子ってのは、そういう時には一番綺麗な自分を見せたいんだよ。私だけじゃなくて堀北さんも女の子は皆」

 

 なんでこんなこと言わせてんのよと呻くと続けてくる。

 

「男の子もかっこつけようと──あー、そうだよね。清隆くんに普通求めても意味ないよね。まあ、お揃いがデフォで不揃いは冒険だって覚えといてればいいよ」

「そういえば、最初の時もお前は揃いの下着だったな……お前はあのまま俺に抱かれると想定していたのか」

 

 今思えば男の部屋に一人できていたのだ。そう思わないのは難しい。

 

「抱かれる?……桔梗ちゃんが抱かれる?堀北さんとはそういう関係になってるから……ただ、抱きしめるだけ、だよ、ね……うん……ででも、桔梗ちゃんも下着、綾小路君に見せようとしているから……そういう関係、じゃないと……二人と、そういう関係……桔梗ちゃんと堀北さん仲悪くなるはずなのに……今、一緒に下着を買いに来た……桔梗ちゃん、堀北さんを悪く言ってなかった……ううん。心配そうだった……だから、その、これって、ふた、また?……それも、三人、どうい、で?」

 まったく抑揚なく深夜男の部屋に来たのに何もされなかった一之瀬が呟く、今目の前で起きていることを少しでも認識するために自分に言い聞かせるように噛み砕いていく。

「は?」

 認識しても理解できず、魂が押し出されたようにポツリと呟いた。

 当たり前か、改めて言葉にされるとオレがしていることが酷い。恵のことをいつ言うべきか悩むくらい酷い。

 

 

「減点。デリカシー覚えようとしてもまだまだだね」

「そうか」

「そうだよ。清隆くん頭良いんだからさあ……あー違うか。頭良いからか。その上、前よりマシになっても他人に興味ないから、他人の行動ををまず悪意ありで判断するからなあ」

 

 ふうとカーテン越しにため息が聞こえる。桔梗も前より踏み込むようになったなと言うのは野暮だな。

 

「そんな清隆くんだから、私のこと変な風に誤解するだろうから言うね。一度だけだよ」

 

 一度だけに力を込めて、オレに告げる。なお

 

「は?え?二股、同意の二股、仲良しの三角関係……は?」

 一之瀬は現状を理解しようとするも良識が拒み続け、意識があっちへいってしまっている。

 

「清隆くんの、気になる男の人の部屋に行くんだから、お気に入りの揃いだよ当然」

「……そうか、すまない。いや、ありがとうというべきだな」

 

 過去のことを話していないのに、内面を見透かされるようになったことに心地良ささえ覚えながら返すと、笑みを含んだ声が返ってくる。

 

「お、上等上等。本当に少しはマシになったね」

 

 そこでカーテンを明けてくる。

 一之瀬はオレの陰に隠れるようにしたから、桔梗からは死角だ。

 ……桔梗が話すたびに息を飲む音が聞こえていたが今は気にしない。

 

「……で、どうかな?」

 

 赤いストラップの白いレースの下着姿の桔梗が目に映る。

 余りの姿に意識を取られ

 

「……レースか。似「ごめん。無理」

 

 シャッ

 

 そして、すぐ見えなくなった。

 

「おい」

 

 見えたのは一瞬だけだが。

 

「し、し、下着?あれ、下着?す、透けて、ほとんど、見えて、あれじゃあ……は、は、は裸だよ……桔梗ちゃん」

 余りの姿に、一之瀬の意識が現世に戻ってきた。

 

 白い下着の布地は乳首や秘裂が透けるほどに薄かった。それが肌にぴったり密着している。

 そのため、乳首は色だけではなく形までが浮かび上がり、ストラップだけ赤い色合いなお陰で、白い肩をより鮮やかに見せ、乳房を包み込むカップがおっぱいを搾りおっぱいとしか表現できないほどに強調させている。 

 下も、見えている。上と同じく見えている。

 両脚の間の縦の割れ目が、陰毛ひとつない形を露にしてしまっていた。

 それが足の付け根と腰に食い込み、未成熟ながら美しい女性の体のラインに絶妙なアクセントを付けている。

 

 一言で言って、勝負下着だった。有体に言って攻めすぎていた。特に。

 

「き、桔梗ちゃん、桔梗ちゃぁんっ!?あんな下着恥ずかしくないの……あ!?体のあちこちに、赤い虫刺されみたいなの……が……あ……あ、あ、ああっ!?」

 男に刻み込まれた痕が、白のレースを身に付けた肌にはよく映え訴えていた。

 櫛田桔梗の体はこの痕を刻み込んだ男のものだと訴えていた。

 

「き、桔梗ちゃんの痕と、ほ、堀北さんの痕、赤い痕。色も鮮やかさも……お、同じ?……お、おな、お、同じ、だった」

 オレに訴えていた。

 

「まさか、一緒に、そういう、こと……したの?た、た、多分、多分昨日、昨日そういうことしたの!?さ、さ、さ、さ、三、ぴP……そ、そ、そ、そ、そ、そんな、さ、さ、さ三人でなんて、な、何考え……あ!綾小路、くん」

 パニック状態の一之瀬はそのまま追い詰めておくために放置し、驚愕の声を背後に聞きながらカーテンに手を添える。

 

 シャッ

 

「ひゃうっ」

 

 あんなに訴えられては、外から声をかけて出るようにするなど考えられない。直接乗り込むと桔梗が息を呑む。

 鈴音くらいのちょっと冒険してみた感じの、黒とか紫とか派手なややカップが小さめで谷間をくっきりレベルでなら見せられたのに。

 勝負しすぎたために、羞恥に全身を紅くして蹲って「私、何で、こんな、見られて」と呻きながら頭を抱えている桔梗を立たせる。

 

「ま、まって、やっぱりこれじゃ無理、着替えさせ──」

「あんなに綺麗なものを一瞬だけ見せられるのはたまったものじゃない。それ以上に桔梗の顔が見られないのは寂しいな」

「だ、だからって、こんな無理やり、無断で入ってきて、力ずくなんて」

「力ずくか。桔梗、力ずくとはこういうものだ」

 

 ドンッ!!

 

「ひうっ」

 

 と音を立てて桔梗の顔の横の壁に腕をつきたてた。

 心臓を跳ねらせながら悲鳴をあげて反射的に逃れようとする桔梗の顔の反対側にもう一本の腕を置いて道を塞ぐ。

 

「あうっ」

 

 最後の止めとして桔梗の股の下に足を入れる。

 膝に感じる下着越しの柔らかな肉。昨晩、嬲り続けられて熱を持ち紅く腫れ膨れている女性の急所の肉を桔梗に痛みを与えないぎりぎりまで食い込ませて、柔らかさを味わいながら桔梗の体を壁に押し付け身動きが取れなくさせる。

 

「壁……ドン」

 一之瀬の茫洋とした声を聞きながら羞恥に体を抱きしめる桔梗の顔を覗き込む。

 

「冷た……っ、ちょっと、何す!?……るの」

 

 自分の体の火照りが伝わっていく壁の冷たさに、桔梗が茫洋とした意識を取り戻す。

 乱れる心のままに泳ぐ視線を、顔に手を添えて半ば無理やりに押さえお互いの息を掛け合う。

 

「純白の上下、ここまで遊び抜きの本気の下着を着てくれるとオレも興奮して鼓動が早くなる。触ってみないか」

「そ、そんなっ!?!あぅっ……うぅぅ……近い、近いよっ」

 

 意外に──いや、なんとなくわかっていたが、男に攻められる耐性がなく整った愛らしい顔を羞恥に染め視線を泳がせる桔梗の顔を見つめる。

 まだ幼さが残しつつも急速に女の色を濃くしている顔立ちからはこちらを触る余裕が見られない。

 

「化粧をしたのか」

 

 切り替えた、突然の問いに目を丸くして照れたようにほほを染める。

 

「え……あ、うん。ちょっとだけだけどね……変、かな?」

「いや。下着も気合入ってくれているし……」

 

 言葉を切り、桔梗が自分の格好のあまりの恥ずかしさに手を体に巻きつけるのを待つ。

 

「普段は可愛いのに、化粧すると綺麗になるのは反則だな。今みたいに余裕がなくなると可愛くもなる。綺麗と可愛いが同居するのは少しずるいと思うぞ」

「!?!?ぅ……あう……あ、あははは」

 

 視線を互いに絡ませる。桔梗の瞳に安堵の色が走り、体を隠していた手をわずかに緩める。

 普段見せる辺りを魅了するための笑みではなく、オレにだけ向ける胸に宿る暖かさを表すような柔らかな笑みに眼を奪われる。

 

「桔梗ちゃん……何時もと違う……そっか……皆が言ってた恋人と過ごす時に変わるってこういう……ふ二股、なのに」

 同時に、素の桔梗を一之瀬に知られる時被るデメリットを考えていたが、男といるときには女は変わると一般的な理解で済んでよかったと思考する。

 

「初めてだなあ」

「…………」

 

 嬉しそうにはにかむ桔梗の視線にあわせたまま無言で言葉を待つ。

 

「男の子に褒められて自信とか優越感じゃなくて……こんなに暖かい気持ちになるなんてね」

「そうか」

「うん。何かぽかぽかする。こんな風に、男の子と過ごしてこんな気持ちになるなんて思わなかった。隙見せて襲われないように何時も気を張っていたからね」

 

 どいつもこいつもちょっと近寄っただけで厭らしい目で見てきやがって、と毒づく桔梗をよりぎゅっとされど優しく抱きとめて返答する。

 桔梗に対して下心だけでなく真摯な想いを抱いていた奴も居たが、教えはしないし桔梗なら気付いている。

 あえて言わない桔梗の想いに、こいつはオレのモノだと応える。

 体を隠したまま身をゆだねる桔梗の背中に手を回し体温を交換し合う。

 穏やかな優しい想いを交換し合う。

 隣の試着室から聞こえる包装紙を破く音が、鈴音がプレゼントした化粧品を取り出したのだと知らせてくる。

 自身も化粧をすると思い立ったのだろう。

 化粧した鈴音を初めて見れると思うと暖かな想いが強くなる。

 

「き、き、き、き、桔梗ちゃん。ふ、ふ、ふ、二股。二股だよ。い、い、良いの?そ、そ、それで良いの?本当に良いの?桔梗、ちゃん」

 順調に壊れている一之瀬が更に暖かな想いを吹き上げる。 

 幸福ってこういうものなんだな。

 

「でも……堀北さんも……桔梗ちゃんも幸せ……そう」

 ああ、幸せだ。

 

 

「カモミールの香水つけてくれたんだな」

「う、うん。トップノートだったからね。すぐに嗅いでもらえるから、その、つけたよ」

 

 どうかなと柔らかい体を擦り付けてくる。ぎゅっと抱きしめ引き寄せる。

 甘い香りが立ち上がる体が大きく震えた。

 

「いい香りだ。桔梗によく似合っている」

「そっか」

 

 改めて桔梗の顔立ちを互いの息が届く距離で見つめる。

 何度見ても、整った愛らしい顔だ。

 桔梗が見上げ、オレが見下ろす。

 ゆっくりと二人の間の空気が凝縮され熱くなり、桔梗の心臓が早鐘のように鼓動する音と振動を味わっていると、下着の恥ずかしさに耐え切れず桔梗が顔を下に向ける。

 有無を言わさず、桔梗の顎に触れ、クイッと少し強引にやさしく元の位置に戻し、少しずつ顔を近づける。

 

「う、う、う、うそ、嘘だよね。こ、こ、こんなところでまさか」

 一之瀬が熱視線でかぶりついている。

 

 ゆっくりと顔を近づける。

 

「ま、まって、この格好は、ね。その、背伸びしすぎたから、変えさせて──」

「確かに背伸びしすぎたな」

「で、でしょ……次もその次もあるから、待ってて欲しいんだ」

 

 一瞬目を伏せ傷心する桔梗にさらに顔を近づける。互いの熱どころか吐息に含まれる水気さえ感じる距離。

 

「話しは最後まで聞いてくれ。確かに背伸びしているが、駄目だなんて一言も言っていない」

「え???」

「遠まわしすぎたな。ハッキリ言うぞ。似合っているし、さっき言ったとおり興奮している。背伸びしている桔梗の気持ちがうれしい」

 

 平均より大きくとも、ようやく膨らみきったばかりという綺麗な乳房。生硬さを感じさせる隆起。幼い少女のものとしては隆起が目立ちすぎて、成熟した女のものではない。大人の女へと変化していく境目の美しさが羞恥か興奮か薄桃色に染まっている。

 肉がつき始めた下半身にもいえる。腰まわりや太ももはどこまでも華奢でほっそりしているのに、股間と尻は悩ましい肉がついている体。薄桃色の体。

 その体が、勝負下着によって、女へと一歩踏み込むことで怪しい色気を漂わせる。

 

「まだ、着られているというべきだろうが、着れるように努力してくれているのが伝わってくるからな。オレのためにそこまでしてくれるということが、うれしいんだ」

「っ~~!?!?!?」

「だから、試着で着ているならまだしも普段からこんなのはつけてほしくないな。誰かに見られたら遊んでいると思われる。コミュニケーション能力が高いだけで、貞操観念がしっかりしているお前をそう見られたくない。特別な時にだけ着てくれないか」

 

 桔梗が胸に飛び込んでくる。

 

「うん、大丈夫。清隆君の前でしかつけないよ。約束する」

 

 しっかりとオレの背中に手を回して誓う桔梗の顎に手をやる。

 

「……当たってるよ。私のお腹に」

 

 桔梗が、もぞもぞと腰を動かす。隆起し始めていたオレのモノが擦られ、腰にジンとした痺れが走る。

 

「ああ、悪いな。だが、仕方がないことだろう」

「仕方ないこと……なの?」

「オレのために着飾ってくれたかわいい女の子を抱きしめているんだ。仕方ない」

「そっか……そっかあ」

 

 恥じらいと喜びに全身を染める桔梗にかける言葉は

 

「ああ、そうだ。目を閉じてくれ、桔梗」

 

 できる限り甘くささやく。

 

「こんな、ところで?」

 

 そんな風に言いながら桔梗が目を閉じようとするほどに甘く優しく。

 

「あ、あ、あ、綾小路君っ。き、き、き、桔梗ちゃん」

 崩壊直前の一之瀬の悲鳴を聞き流しながら再度ささやく。

 

「桔梗、目を閉じてくれ」

「こんな、格好で?」

 

 抵抗を見せるが、本気で抵抗はしない。

 戸惑い嫌なのに辞めてほしくない。して欲しい矛盾が矛盾を生む。

 頭の中が色々な想いに占められていき、次第に理性が本能に押されていく。

 そうして桔梗は──。

 

「桔梗、もう一度言う。目を閉じてくれ」

 

 もう桔梗に抵抗する力は残されていなかった。ゆっくりと目を閉じる。

 

「んっ」

 

 柔らかな唇にオレの唇が触れた瞬間、桔梗が小さく声を上げる。

 それをきっかけとして何度も唇を重ね、甘く柔らかな感触を存分に味わう。

 

「ひっ、ひっ、ひっ、ひうっ、ふああ~っ」

 奇声を上げながらかぶりついてこちらを見つめる一之瀬が壊れるのは、後一歩だと考えながら甘さを堪能する。

 

「んっ。ぷはあ……ふふっ……舌、入れないんだ」

「入れたかったんだが、外だしな」

「今更だけど、うん、私もそれで良かった」

 

 軽いキスに満足げな吐息を漏らし、鈴が鳴くような声で静かに桔梗がオレの右耳に顔を寄せ

 

 

 

「で、一之瀬どうするの?カーテン開けて変な声聞こえたからよく見たらさあ。下着の中に埋もれるみたいに隠れててドン引きしたんだけど」

 

 幸せいっぱいな顔をまったく変化させず誤魔化しは許さない圧をかけて聞いてきた。

 

「アイツが居なかったら、そのまま下着見せたよ」

 

 一之瀬、桔梗が出てから声抑えてなかったからな。

「何してるの」ではなく「どうするの」か。普段通りの笑顔を浮かべながら黒いところを見せる桔梗も成長したんだな。

 そんな風に思考しながら口は自然と動く。

 

「モノにする」

「ちょっ……おい」

 

 舌打ちひとつ、地獄の底から響くようなドスの効いた声を出しながら笑顔のままなのは大したものだ。何より

 

「桔梗ちゃん、キスして……綾小路君にしがみつくように抱きついて……綾小路くんの体で、桔梗ちゃんの胸、む胸が横にはみ出るくらい強く抱きついて……本当に、そういう関係、なんだね……さ、さ、さ、三股、受け入れて……るん、だ」

 オレの意図を僅かとはいえ読み取って、一之瀬を追い詰めていくのが高ポイントだな。

 

「ちっ……具体的には?」

 

 舌打ちひとつで何とか切り替えた桔梗に飲めるかどうか、かなりギリギリな提案をする。

 

「股かけるのを到底承知してくれそうにないから、今理性と常識を削っているところだ。我ながら余りにも非道なことを言うが、お前も手伝ってくれ」

 

 一之瀬の前で話していることを考え、言葉を圧縮せざるを得ないが桔梗なら理解してくれるだろう。

 

「最低。サイテー。さいっていっ」

 

 当たり前だが、理解はできても納得はできない。

 同性の女の子に対する非道、自分の乙女心を踏みにじる非道、何よりも勝負下着で着飾った自分を一之瀬に見せたことを非難される。

 他はともかく最後だけは本当に申し訳なく思う。

 

「はぁっ」

 

 ジトリとした視線で睨みつけられたオレが桔梗の意思を逸らしたり受け流せば桔梗は許さなかっただろう。凪いだ視線で微動だにせず受け止められた桔梗は、ありとあらゆる罵詈雑言を飲み込み軽い吐息を漏らす。

 

「何で話してくれたの?いつも勝手に踊らせてくる清隆くんらしくないよね」

「切り替えた。少なくとも意図をお前たちには知らせる。いや、知らせたい。これからそうさせてくれ」

「そっか……うん、それで良い。安心した。その方がよっぽど良いよ」

 

 それなら怖くない……まだ。と安堵に顔を綻ばせながら口ずさむ桔梗を見ながら、自分の決断が合っていた意を強くする。

 そんなオレに桔梗が呟くように囁く。

 

「週一」

「ん?」

「週一、昨日みたいな3Pもせずに私だけをみて私だけを考えて相手して」

 

 それが自分の条件だと、桔梗の口から出す前に軽く唇を合わせる。

 

「勿論だ。桔梗を蔑ろにしない」

「なら──あぷっ」

 

 そのまま、何度も唇を重ね、舌を桔梗の口の中へと差し込んだ。

 

「でぃ、でぃーぷ……ディープ、キス」

 呆然とした一之瀬の声を耳にしながら、オレの舌を迎え入れようと開いた桔梗の口から漂う唾液の匂いをかぐ。

 香水の匂いに染まった体臭とは違い、櫛田桔梗という少女の生々しい匂いの甘さが、鼻腔から脳へとたどり着き理性を焼き焦がす。

 取り付かれたように舌を絡め、互いの唾液を混ぜ合わせ粘膜を刺激する。

 

「ふあぁっー……」

 

 唇が離れた瞬間、桔梗は長く息を吐き、恍惚とした瞳をオレに向けた。

 

「さ、さっき入れないって言ったのに。こ、ここで舌入れるとか……さいっていっ……ホントさいっていっ。清隆くんって女の敵のゲス野郎だよ」

 

 言葉とは裏腹に体をさらに預けてくる桔梗の顎を上げる。

 

「嫌か?」

「……もう一回」

「ん?」

「も、もう一回して、もちろん舌入れて」

 

 

 顔を逸らしボソリと呟く桔梗の声が聞こえないとアピールすると、恥ずかしげに頬を染めて顔を合わせ一之瀬に聞こえる大きさで呟いてくれる。

 

「一之瀬に聞こえるぞ」

「やだなあ……だからイイんだよ」

 

 一之瀬に聞こえない囁きに、淫蕩な笑みを浮かべて囁き返される。

 勝負下着を見られるのは恥ずかしいが、優越感を得るためのいちゃつきはOK。

 あまりにも生々しい雌を見せてくる姿に、堪らず舌で桔梗の口内を蹂躙する。

 目をうっとりと閉じて、その瑞々しい唇を惜しげもなく押し付けてくる。

 ねっとりと舌が絡み合い、唾液を交換し合う。

 

 離した唇から垂れ落ち互いの唇を繋げる糸の橋になっていた唾液を、桔梗が淫靡に啜り飲み込む音が酷く大きく響く。

 

「~~~~~~」

 そんな様を見せられて、ただ、息を吸い続けることしか出来ない一之瀬の音を聞きながら、桔梗の腰にまわしていた右手にそっと桔梗が手を重ねる。

 

「いいよ、協力する。だって」

「だって?」

「あんな良い子ちゃんで、悪いことしても周りに許される奴だからね。苛めるのは正直大歓迎なんだ」

 

 当たり前と言えば当たり前だが、万引きという咎をして法的だけではなく周囲の人間の良心において許された──あくまで、一之瀬の地元ではなくこの学校においてだが──一之瀬は桔梗の逆鱗に触れるに十分な存在だ。

 あの時「帆波ちゃん良かったね」と天使の笑顔で祝福していたが、内面では自身が得られなかったものを得た一之瀬に対して嵐が吹き荒れていただろう。

 今までは鈴音憎しを優先していたのと一之瀬を攻撃した場合のデメリットが大きすぎてやらなかっただけに過ぎない。

 そのふたつがない今、絶好の機会に舌なめずりしているのだろうな。

 その辺りを考慮した上で協力を要請したのだが。

 

「うわ、うわ、うわぁ~……そ、あ、そ、そ、く、き、キス……ディープ……ディープ……ふ二股、さ3P……あ、う、ああ、うわあああぁぁう」

 この年頃の少女を壊した経験が何度もあるという自負が仇になった。一之瀬の精神耐久を高く見積もりすぎた。

 すさまじい勢いで良識常識精神が崩壊して、言葉を紡ぐことも出来ず、壊れた楽器のようになった今、必要なのは後一押しでしかないが。

 

「容赦しないよ」

 

 許される奴当たりから目をギラつかせ苛立ち混じりの闇を見せる桔梗からは、寛容や容赦と言う単語は消え、とことんやると言う意思しか見えない。

 このままでは、やり過ぎるな。

 

「構わない」

「良いんだ?」

 

 許可するとは思わなかったのか意外と歓喜の光を目に灯す。

 上げるのはここまで、下げて釘を刺す。

 

「お前がしたことを評価するのはオレだと理解していればな」

 

 威圧を込めた視線に桔梗の表情に怯えと畏怖が走り呼吸が止まる。

 正直、何故ここまで怯えられるか理解できない。

 オレは龍園や坂柳や南雲とは違い、直接手を下す所だけでなく間接的に手を下す所も衆目に見せないように気をつけているのだが。

 ただ、崖から落ちそうになっても声をかけず、相手の進行先に落とし穴を掘ったのを悟らせていないだけだ。

 なのに、オレの本質を見せた相手は誰もがオレの方が恐いと言う。

 

 ある程度恐れられるのはメリットの方が大きいとはいえ、恐れられすぎるのはデメリットのほうが大きい。さじ加減が難しいな。

 

「っ……はぁ……意図教えてくれないと怯え竦んで動けなくなりそう。もう、怖いんだから」

「それだけで流せるお前も大したものだ」

「ああはいそうだね」

 

 半眼になりながら頬を染め「ま、一之瀬が清隆くんどう想ってるかを考えれば悪くないか」と唇を動かし意を改めた。

 

 

「とりあえずやってみるね。合わせて」

 

 無言で先を促す。

 一之瀬に聞こえる声量に切り替える。

 

「そりゃあ隠れるよ。流石にこれは責めすぎたからね」

「似合っていてもか?」

「似合っていてもだよ」

「そういうものか……そういえば、普段は暖色系の色合いで纏めていたな。女の子らしい雰囲気が出ていて可愛らしくて似合っていた」

「年頃の女の子だからね。自分が似合う色合いくらいは知ってるし予算が許す限り揃えるでしょ……普通はだけど」

「だな」

 

 あまり気にしていなかった鈴音のことに思い至り言葉を濁す桔梗に同意する。

 

「今の下着もエロチックな中に清純な可愛らしさが見え隠れしてたまらないんだがな」

「ありがと。まあ、今回こんな下着にしたのはさあ」

「ああ」

「昨日、どっかの鬼畜に二人して剃られたでしょ。あそこの毛」

「そうだな。だからそんな下着にしたのか」

 

「剃……った」

 ドサリと脚から力が抜けて床にへたり込む音が聞こえる。自分の耳がおかしくなったように頭を振る音も。

 一之瀬と同時にオレのことを攻撃し始めた。

 何とか即座に切り返したが危うく切り返すのが遅れるところだった。当たり前だが、昨日のことを怒っているようだ。

 

「だってこれ剃った人用の下着だよ、縛られてあそこの毛剃られるなんて、死ぬほど恥ずかしかったし今も恥ずかしいんだからね。その上、パイパンの状態を維持しろとか鬼畜すぎるよ。けど……折角だからね」

 

 あまりの台詞に店員の気配が近くにないか探してしまう。これは結構くるな。

 

「剃っ……た……し縛って、あ、あ、あ、あそこ……の……毛……剃……った……ふたり……ふたり、って、桔梗、ちゃん……と、堀、北、さん……いっしょ、に……さ、さ、さ、3P……さんぴい……しば、しばっ、そり、しばぁぁぁああああ!?」 

 一之瀬には結構どころではなく心臓を鷲づかみにしたようなダメージを与えているが。

 一之瀬の良識が粉砕されてしまった。もう、今までの良識は戻らないだろう。

 

 一撃でこれほどとは、相手の感情を掌をさすように把握しておかなければ出来るものではない。場を整えるのは苦手でも場に乗るのが巧い桔梗の真髄を見た。

 殊勲者の桔梗は、あまりの羞恥に体を小刻みに震わせながらりんごのように紅くなっているとはいえ大したものだ。

 

「ふぅ」

 

 一之瀬への悪感情を解消できた達成の吐息を漏らす。許されなかった自分に対して慰めになったのだろう喜悦に唇がゆがんでいる。

 無論、客観的に見て一之瀬が許されて桔梗が許されないのは道理にかなっている。が、あくまで道理だ、感情ではない。

 桔梗の感情も、それを利用するオレにとっても考慮すべきものではない。

 これだけのことをしてくれるならば、桔梗の感情こそを考慮すべきだ。

 

「……あ~、駄目だね。恥ずかしすぎて一之瀬さんの面白い姿楽しめない。エロいのは私が水向けるから清隆君からはしないでね」

「わかった」

 

 それはそうと手綱をきっちり握り締めなければと思うが。

 ひょっとして桔梗の手を借りたのは失敗だったのかもしれないな。捨て身で一之瀬を攻撃するとは思っていなかった。

 

「き、き、桔梗ちゃんが綾小路くんの胸に顔、うずめ、て……剃られて……うずめて……しばられ……さんぴい……あ、ああ、あれ、ふた、また……あああ」

 へたり込んだまま頭を抱える一之瀬の姿。もう十分壊した、これ以上何もする必要がないだろう。が

 

「(一之瀬はもういいよね)いちゃつこうよ。初めて……だから、本気……で着飾って、私の体、見せたい人に見せたくて見せる……の……どうかな?」

 

 一之瀬のことを思考の片隅に追いやり、羞恥と喜びに体を赤く染めながら一歩引いて下着姿を見せて言ってくれた桔梗を蔑ろに出来はしない。 何よりも桔梗とオレがいちゃつきたい。

 

「今までの桔梗で一番目を奪われたな」

「そっか……えへへ……って目だけ──?」

「ああ、訂正があった」

「えっ!?何がっ!?」

「目だけでなく、心まで奪われた」

「……っ、もうっ……やっぱりクズになってるよ……バカ」

 

 仕方ない、一之瀬にはもう少し耐えてもらおう。




 櫛田さんが9巻の一之瀬さんを見て心穏やかに居れるとは到底思えない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(優しく口に捻じ込む六杯目)

セデスさん、評価付けありがとうございました。



スマホで打っていると、遅すぎて打つ前何打とうとしていたか忘れてしまいます。
そろそろエロに入らなければと思うのに。



 ──想定外だな。

 

 満足感と遁走願望という相反する感情を抱きながら、素直に認める。

 予定では、今頃一之瀬と部屋で二人きりだった。

 そう、予定では。

 端から見れば動かしていると思えないくらいに、さりげなく視線を動かす。

 目の前には、自室の新しく購入した大きめの丸テーブルとその上に置かれた食事が写る。

 ひつまぶしとあさりの吸い物に大根と油揚げの煮物。セロリとツナのサラダ……とても旨そうだ。何故か精がつく食べ物で統一されているような気がするが、気のせいということにしておきたい。

 それが都合4セットテーブルの上に並べられている。

 

 右手、にこやかな鈴音と桔梗。

 左手、無表情の一之瀬。

 ちなみにオレは部屋の奥側。万一にでも逃げようとするならば、どちらかを押しのけなければ逃げられない場所に陣取っている。

 そう、逃げられない。

 

「材料は買いだめしておいたし、懸念は食器だったのだけど……一之瀬さんの食器があってよかったわ。食器棚にあった食器セット、正直誰の食器と思ったことがあったのだけど、分かってしまえば謎でもなんでもなかったわね」

「……そうだね。何でか知らないけど棚の奥に行ってたけどね」

「それは仕方ないんじゃないかな。最近(強調)使ってなかったからさ。ついつい邪魔だから奥にやっちゃうのは当たり前だよね」

「……ふうん」

 

 ズズッと一之瀬が大きな音を立てて吸い物をすする。

 

「……吸い物なのに味付け濃いね。塩使いすぎてないかな。あんまり体によくないと思うよ」

「私もそう思うのだけど、清隆くんの好みなのよ。作らせてもらってるんだから、部屋主の趣味に合わせないと」

「……メニューもあからさまだよね。こんな精つくものばかり食べさせるなんて、いやらしすぎるんじゃないかな」

「うーん、確かにそう受け取られても仕方ないけどね。これは、必要に駆られて、かな」

 

 ウインクする桔梗は可愛い。ひつまぶしはとても美味しい。

 なのに心は冷たい鉄を飲み込んだように重苦しい。三人がオレを石の置物ように扱っていることも理由の一つではあるが、一つでしかない。

 

「……へー、必要に」

「ええ、必要に」

 

 何がとは言う必要も聞く必要もないとばかりに、静かに目を合わせる一之瀬と鈴音。一方はにこやかで一方は無表情。普段とは浮かべている人物が間逆の構図だ。

 普段の二人からは想像さえできない表情に、こんな表情を浮かべられたのかと、新鮮な驚きさえ感じられても可笑しくないが、今のオレには圧迫感しか感じられない。

 一之瀬の声はひたすら平坦で、鈴音と桔梗は愛想のいい声の違いがあれど、共通して得体の知れない重さがある。

 が、それだけだ。そう、それだけなのだ。

 自分に言い聞かせ続けていると、ふう、と話題を切り替えるために一之瀬が吐息を漏らす。

 心持ちはほぼ互角、知性にもそんなに差はないが、やはり一之瀬が押されているな。

 二対一なのだから数は無論のこと──

 

「……それにしても、二人ともずるいよね」

「ずるい?」

「……こんな料理作るだけの体力あるのに、帰り道綾小路君に背負わせたよね。昨日酷いことされたから足の感覚がなくて立って歩けないとか言って。荷物を含めてどれだけの重さになったと思うの?綾小路君がかわいそうだよ。綾小路君、優しいから運んでくれたけど、少しは遠慮したほうがよかったと思うよ」

「私たち二人の間に押し入って真ん中で背負われてた帆波ちゃんがそんなこというんだ……」

 

 ──異性と肉体関係を持った経験の差が大きすぎる。

 だが、互いを無視して険悪になるよりも、言いたいことを言って睨み合う方が遥かに健全だ。ああして意見を言い合うのは良いことだ。

 少なくとも、主導権がこちらにある限りにおいてそう思う。

 まだまだ続く会話を聞きながら、少し前、桔梗の試着を見た直後を思い出した。

 

 

 

「で……他は」

 

 一通りいちゃつくと、羞恥と悦楽と優越感に体を火照らせた桔梗がカーテンを閉める前に胸に密着して聞いてきた。

 

「あは……少しドキドキしてるね。スケベ」

 

「桔梗……ちゃん……綾小路くんの腕……胸で……はさんで……はさ、んで」

 無論、後ろの一之瀬からはまだまだいちゃついているように見せている。

 実際いちゃついているな。柔らかな乳房に挟まれた右腕が心地良い。

 

「あたり前だろう。これでも思春期なんだからな。店でなければ押し倒している」

「そっか」

「もっと聞いてみるか」

「うん……」

 

 手を伸ばすと、桔梗はためらいがちに手を伸ばす。重なった手のひらから、微かに筋肉の緊張を感じる。

 表面上おくびにもださないが、一之瀬の目前でのいちゃつきは緊張の連続だったらしい。女というのは凄いものだ。

 その手を引き寄せる。

 

「あっ」

 

 僅かにあった隙間さえなくなった完全な密着。

 乳房に挟まれた腕に神経を集中すると、産毛の感触さえ感じられる。

 

「桔梗も鼓動が早いな」

「当たり前でしょ。思春期なんだよ」

 

 発言者が逆転した台詞に面白みを抱いたのかクスリと笑う桔梗の耳に口を寄せる。

 

「鈴音に連絡して欲しい。気付いて居ない可能性がある」

「気付いてるから、連絡の必要はないよ」

「?」

「あれだけ可愛いところ見せたんだよ」

「……ああ、成程な」

 

 察したオレに教え諭すことに優越感を感じながら桔梗は言葉を続ける。

 

「あんたに好意持ってる女の子が傍で見てたら、自分を可愛く見せたいのは普通だよ。忘れないでね、堀北さんも女の子なんだよ」

 

 シャッ

 

 柄にもないことを言ってしまったことに恥ずかしさを覚えたのか、弾けるように体を離すと桔梗の姿がカーテンの後ろに隠れた。

 

 

 桔梗の香りと火照った熱の余韻を味わった後。

 再度、振り返りへたり込んだままの一之瀬を見下ろしながら問う。「此処でやるべきことがあるから後で話さないか」と。

 つい先程拒絶された言葉を淡々と言う。

 ここまでされた一之瀬が到底頷かないと知りながら言った。

 

「ううん。私は、ここで待つよ」

 

 言葉に感情は無い。怒りも怯えも哀しみさえ無い。それらの感情が消え失せた、ただ無と評すべきモノだけがある。

 

「だって、私は堀北さんとも桔梗ちゃんともお友達なんだよ。私が待ってて何か変なことあるかな?」

「……ないな」

 

 変なことがあるとすれば、極稀に違う表情をしていても普段笑顔を絶やさない一之瀬が無表情だということだ。

 瞳孔が開ききった目にすらも感情はない。

 腰が砕けるようにしてヘタリこんだ姿勢のまま、項垂れることさえできず視線も目前に固定したままピントを合わせることなく──まるで壊れたゼンマイ人形のように虚ろな声で呟くのみ。

 一見して、一之瀬は壊れている。どうしようもなく壊れている。

 誰もが、一之瀬帆波という少女の残骸に目を剥き圧倒され、何らかの行動に移すことを躊躇うほどの虚無。

 オレ以外の誰が見てもそう判断するだろう。

 

 だが、オレには、そう仕向け、流し込んだオレには、一之瀬の心の奥底に冷え込んだ感情。マグマ溜まりのように煮えたぎる感情を掴みとっている。

 それを、噴出させるために躊躇わず動いた。

 

「一之瀬」

「あ……」

 

 跪き、一之瀬の頬に触れ、親指を唇に這わせる。

 春休みのとある一日、あの雨の日、約束を結んだ日、オレに好意を持つ一之瀬にとって宝物のように想う特別な日、その日を想起させる動作。

 何時かのことを思い出した一之瀬の瞳に、理知の光が僅かに灯り、あの時はなかったことに気付き問うてくる。

 

「あ、綾小路くん……あの、その、え、と、その、手」

「この手か?」

 

 触れていた手を一之瀬の目前にかざす。

 

「病気でもない、寒いわけでもない」

 

 カタカタと微かに震える手。みっともないほど震える手を一之瀬に見せ弱さを曝け出す。

 

「……恐いんだよ」

「え?」

「オレは恐いんだ。今から言うことがお前にどう受け止められるか」

 

 我ながら最低だが完璧だ。追い詰めてから弱さを見せつつ相手の好意につけこむ。

 

「あの時──あの雨の日、オレの部屋でお前と約束したことを、今伝えたい」

「!?」

 

 あの時、あの場所で、言った言葉は一之瀬がオレに信頼を持っていたから高い効果があった。

 

「あの時伝えようとした言葉を今さら伝える。それを聞いてお前がどうするのか……怒りや蔑みなら良い」

「わ、私は、そんな……あっ」

 

 善良すぎるがゆえに、反射で此方をフォローしようとする一之瀬の唇をなぞり言葉を止める。

 顔をさらに近づけ拳一個分の空間だけを開ける。お互いの吐息がかかる距離で、一言一言区切りながら言葉を出す。

 

「オレは、お前に、拒絶されることが、恐いんだ」

「あ」

 

 あの時かけた言葉は、絶望の中、好意を持っている相手にかけられた約束は、まさしく一之瀬には救いだっただろう。

 あの時よりも、深く、他者を想うのではない己の欲に満ちた絶望に打ちのめされた一之瀬に、甘い蜜を垂らす。

 

「すまないな。約束を破る」

 

 好意を持った相手に気持ちを弄ばれたと認識し、絶望に沈みきっていた一之瀬にもしかしてと希望の光がさす。

 

「一年たっていないが、伝えさせてくれ」

 

 あの時は違うことを言うつもりだった。だが、一之瀬に情欲と愛着を持った今、言うことは決まっている。

 虚言ではない、状況に応じたのだと心底から言い聞かせ、意思を総動員して口角を上げ出来る限り柔らかな表情──ぎこちない笑顔を浮かべる。

 一之瀬に誠心からしていると解るように、精一杯なぎこちない笑顔を。

 表情を変えないオレが、一之瀬に初めて見せる表情を笑顔にするために。

 

「一之瀬、オレはお前が好きだ。お前が欲しい」

「!!!???」

 

 オレの言葉を理解した一之瀬の瞳に希望と疑念が浮かび上がる一瞬だけ待って続ける。

 

「軽蔑するよな」

「あっ」

 

 一之瀬の瞳に思考の色が浮かぶ時に言葉を綴る。

 こうすることで、一之瀬には立て直す余裕がなくなり、オレの言葉──想いだけを受け取らざるを得なくなる。

 瞳を合わせ想いを伝える。一之瀬との良好な関係は、瞳を合わせれば直截な想いを伝えてくれる。

 

「鈴音と桔梗、それに恵も好きだ。抱いている」

「だいてっ……け、恵っ!?」

「軽井沢の事だ」

「かっ軽井沢、さんっ!?」

 

 嘘も誤魔化しなど一切ない自身の心に浮かんだ思い、誠意と呼んでいい思いを、今ならば、恵を混ぜられると確信しながら伝える。

 

「半月前からそういう関係になった……最初は打算と利益。いや、情欲と快楽の為に抱いた」

「じょ、情欲と快楽っ」

 

 自身の黒い感情を肯定する。

 

「ああ、情欲と快楽だ。それを満たし、今も満たし続けている。何度も何度も互いの体温と想いを交感した……そうしている内に情愛を抱いた。一之瀬、オレは──」

「っ」

 

 お前ともそうしたいと、情欲を抱いた視線で一之瀬を見る。びくりと大きく震えても一之瀬は顔に置いた手から逃げない。逃げられない。

 一之瀬にもそうしたいとオレが──一之瀬が好意を持つオレが視線で伝えているから逃げられない。

 

「こんな多情な性欲塗れのオレがお前を欲しいなんて、言葉にするどころか考えることさえ愚かで許されないことだ」

「あっ」

 

 意図が伝わり、明らかな男の獣欲に曝され戸惑う一之瀬の瞳を見たまま真摯な言葉だけを口に出す。

 

「理解している。ありとあらゆる言葉で罵られるべきだと理解している。それでも……」

「綾小路、くん」

「それでも言わせてくれ」

 

 頭を下げ、ただただ真心だけをぶつける。

 神仏に請い願うほどに切願する。

 

「お前が好きだ。抱きたい。オレの女になってくれ」

 

 今、オレの態度に嘘はない。

 それが一番『優しく』効果的だからだ。

 ──何よりもオレがそうしたいからだ。真摯な想いをぶつけたい。

 今までならば前者だけで動いていたが、一之瀬相手では無理だ。

 

 人間にあるべきもの。どうしてもこれ以上はやれないという限界、『品性』というもの。

 それを知ったからやれない。

 まあ、問題はない。必要なことはこれで十分だ。

 

「………………堀北さんと桔梗ちゃんと……話させて……後で、軽井沢さん、とも」

 

 長い沈黙の後、オレの言葉を身に刻むように深呼吸した一之瀬は、静かに呟くように確かな芯を入れて言った。

 あの時と同じ潤んだ瞳。あの時は違い、唇と頬にあてたオレの手に自分の手を重ねて言った。

 

 獲った。と、確信した。

 あの時、あの雨の日、春休みの雨の日。あの時、弱味につけこんで抱いて一時的な快楽を得られたとしてもこれは決して得られなかった。

 

 一之瀬の想い。

 善良すぎるがゆえに、どこか遠慮してしまう少女が圧し殺していた嫉妬心と執着心と独占心。

 それらを表に出さず圧し殺したから、一之瀬は坂柳に秘密を吐き出してしまった。警戒心を覚えても何れ誰かに騙された、善良ゆえの欠陥。

 だが、理性と良識という名の蓋を粉砕した今、嫉妬心と執着心と独占心は噴出し、率直な想いとなった。

 一之瀬が心の底からオレを欲し、欲しいモノのために誰とでもぶつかり合う決意をした想い。

 善良すぎる一之瀬帆波という少女の闇の部分を曝け出した本当の想い。

 

 女の情念。

 一之瀬帆波という女子そのものの想い。

 

 これが欲しかった。

 

 これで、一之瀬はオレのモノだ。オレが棄てない限り離れない。離れられない。

 一之瀬帆波という少女は熟柿のように熟れ、オレの手の内に自然と落ちた。

 

「…………少し……少しだけ……待って」

「勿論だ。こんなタイミングで言ったんだからな。当たり前だ」

 

 絞り出された懇願に何処までも優しく受け入れた。

 余りに畜生な行為。それに、愉悦を口で噛み締め悦楽と歓喜と愛着に心を震わせる。

 後ろめたい思いは皆無だ。

 

 赤心から言えるこれこそが優しさなのだと。

 本当の優しさとは、合理的なものだ。

 何故なら物事を正しく行うに必要なのは結局のところ『それ』なのだから。

 優しさとは理論的に構築され、理論的に行使されねばならない。

 そうでない限り、それは甘さでしかない。

 ホワイトルームを経てこの学校に入学してからの学生生活、その半生でオレが見出した答え。

 

「そ、それと……それと……」

 

 一之瀬の様子を見れば答えの正しさは証明されている。憂いが溶けたように瞳を潤ませる一之瀬が、服の上から豊満な乳房を押さえる様からは、絶望も錯乱もない。

 これからへの渇求だけがある。

 ムニュと、音をたてるかのように形を変える乳房に気を逸らさず瞳を見つめ続ける。

 

「両手で、両手で包み込んで……私の顔を固定して……綾小路くんを……綾小路くんだけを……見させて」

「ああ」

「……何か、寒い、寒いんだよ……さすって」

「これで良いか」

 

 土気色だった頬を桜色に染めて行われた懇願に、有無を言わず従う。

 柔らかな一之瀬の頬とぷるんと弾けるような弾力のある唇が、オレの手で歪み蠢く様がたまらない。

 

「あとね……あと……服の上──」

 

 一之瀬は、一切瞳を逸らさない

 

「服の上からで良いから、私も……その、下着……試着するから」

 

 無表情のまま、桜色に染まった頬。

 

「見て、欲しいな」

「勿論だ。出来れば一之瀬にもプレゼントしたい」

「じゃ、じゃあ……どうかな」

 

 間髪入れずに、手に持ち続けくしゃくしゃにした下着を胸や股間に重ねて似合うかどうか聞いてきた。

 それも、そっと押し当てるのではなく体のラインが浮き出るように押し付けながら。

 

「サイズが少し小さめだが、それ以外はおかしな所はない」

「本当?」

「本当だ。目を奪われるくらい結構なものを見せてくれているんだ。不安そうな顔をしないでくれ」

「不安だよ。不安に決まってるよ。堀北さんと桔梗ちゃんみたいにできないんだよ」

「じゃあ、単刀直入に言う。浮き出たラインがエロくて興奮する。他の男に見せたくないな」

「……他の人?」

「いつもいつも一之瀬は距離感が怪しいからな。そんな格好されると襲ってくれって言ってるようなものだから見せたくない」

「……ぇ?」

「一応聞いておくが、襲ってほしいのか」

「う、ううん。まだ、まだ、そんなことないよ。うん、まだ……私ってそんなに、距離感、怪しいかな」

 

 無表情のまま上目遣いとか器用なことしてくる。

 

「怪しいな」

「うっ、即答なんだ」

「一之瀬くらいの美人でそれだけ巨乳だというだけで目を引くんだぞ。それなのに全体のバランスが崩れない肉付きのいいスタイルで、そんな距離感を取るところを見せられれば、はっきり言って不安だ。勘違いした奴に襲われた何て、何時耳にするか不安で仕方ない」

「!!??」

 

 あまりにあからさまな発言に顔を赤く染めた。

 

「う、うん。そうなんだ。私、そうだったんだ」

「信じるのか?」

「前にも言ったよね。私が一番信頼しているのは綾小路君だよ……割と最低なことしてるけど、信じてる」

 

 一之瀬が下着を重ねている間も、その頬と唇に添え続けていた手の上にまた重ねられる。

 そのまま、強く自分の押さえつけてくる。オレの手を自分の顔から逃さないと言う様に。

 

「信じる……信じさせて」

 

 今までと違い、直ぐに距離を詰めずに一息置き

 

「だから、だからね……私に教えて欲しい。他の人にしないといけない距離感と」

 

 触れるか触れないかの距離、互いの体温が伝わりそうで伝わらないもどかしい距離まで詰めて言った。

 

「綾小路くんとの、距離を」

 

 関係を結ぶと、一之瀬は割りと甘えてくるな。と確信した。

 




11.5巻色々見所がありました。
この話で一之瀬さんを口説くところが、あまりにアレだからプロット変える必要あるかなと思ったけどそんなこと無かったですね。
綾小路くんが、部屋で一之瀬さんに手を出さなかったところを見ていると特にそう思います。
彼、一時的な快楽より一年間自分のことを頭の中に居させて執着させることを選びやがった。
後、綾小路くんがやった付き合う条件に適合する相手だからと理性で判断して理性だけで口説くのは、もう少し年食ってからしたほうが良い恋愛ですね。
あの年頃でしか、衝動に従った恋愛の酸いも甘いも味わうのは楽しめないのに。その上、失敗も成功も笑い話になるしそれが成長させてくれるのだから。
衝動的に恋に落ちた軽井沢さんとの、認識の齟齬が酷いことになりそうです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

精神的調教(敗北の味の七杯目)

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。



 二ヶ月ぶりに本土に戻れることになりました。
 台風復興のために人手が居ないから急遽呼び戻されます。
 現地では、若者は居ないか糧を得るための仕事せざるをえず、ご老人が復興のための力仕事をしているらしいですね。
 余りの末期的な様相に、一週間のはずが二ヶ月に延びてさらに延びる離島送りを嘆くよりも、この国大丈夫かと背筋に冷たいものが流れています。
 これから先、復興作業に若者が従事できる地域が『都会』出来ない地域が『田舎』と呼ばれるようになるような気がします。
 現実に対する悲観と逃避で、初心に戻りました。何でも良いから凌辱モノを。綾小路くん闇落ちさせて凌辱モノ書きたいなあと頭を過るくらい、初心に。
 この子、闇落ちさせやす過ぎて困ります。

 ……二千文字くらい打っているうちに正気に戻りました。こっち書かないと




 一之瀬の下着の試着を見た後、新しい下着に着替えカーテンを開けた──見計らったタイミングだった──鈴音と一之瀬は無言で会釈だけをした。

 鈴音の下着を称賛した後、桔梗が新しい下着に着替えカーテンを開けて、初めて一之瀬に気付いたように会釈したときも無言だった。

 鈴音と桔梗に送った意図を示したチャットには、待ち構えていたのだろう直ぐに既読がついたのだが、呼吸するがごとく自然と無視された。

 お陰で人目のある店内である程度カタをつける都合の良すぎる甘い目論見は消えた。

 店の中は勿論、荷物を手に持った三人を苦心して背負った帰り道も、部屋に帰ってから食事の準備をしているときも桔梗と鈴音と一之瀬の間には一切の会話がなかった。

 まるで、噴火前の火山のような腹の底に違和感のような淀みを感じさせながら、無言だった。

 

 ──で、食事が始まってからこうなっている。

 

「……そもそも不純異性行為自体が良くないことだよ。今までは兎も角として、これからは辞めた方がいいと思うんだ。ほら、生徒会の一員として見過ごせないし」

「生徒会長の南雲先輩は?今は朝比奈先輩一筋とか言っても、少し前の南雲先輩が色んな娘と遊んでいたことを、一之瀬さんも知ってるよね」

「……たとえ、あの人がそういうことに奔放だったとして、私たちがして良いことにはならないよ」

「その通りね。流石よ、一之瀬さん。生徒の見本としての姿を体現してるということは素晴らしいわ。私にはできないわね」

「そうだね。流石、生徒会って感じがするよ。生徒の見本なら少し固いくらいが正しいね」

 

 鈴音と桔梗は誉めている。

 嫌みではなく心底誉めている。

 まるで、幼い子供に頭を撫でて偉いねと言うように。

 

 一之瀬では出せない女の笑みを浮かべて。

 

「──っっっ!!??」

 

 ガチャンと一之瀬の方から物音がする。

 まるでコップを手から滑らせて落としてしまったような音だ。

 

「大丈夫、帆波ちゃん」

「大丈夫だよ。気にしないで桔梗ちゃん、堀北さんも気持ちだけで大丈夫。ありがとう」

 

 直ぐに桔梗がハンカチを取り出しながら、一之瀬の手を拭こうとするが、身を乗り出した鈴音と一緒にやんわりと一之瀬が止める。

 

「そう、解ったわ。でも、追加は必要ね。清隆君、あなたも新しいのがいるでしょ。紅茶でいいわよね。ミルクなし砂糖ひとつ」

 

 直前まで、オレを石の置物のように扱って放置していたのに、こんなことをする鈴音が恐ろしい。

 

「どっちかというと黒糖の方が清隆くん気に入ってるよね。私が持ってきたの」

「そうだったわね」

 

 自然と合わせながら一之瀬を攻撃する桔梗も恐い。

 オレが何一つ言葉を挟むことなく、目前にぬるめの紅茶が置かれる。

 飲まないと選択するのは、勇気ではなく蛮勇だろう。

 ──旨い。好みの味と丁度良い熱さに思わず顔が綻んでしまう。これを飲んだら引き戻せなくなると分かっていても、長いホワイトルーム生活で味覚が死にかけていた舌が旨さに踊り表情に出てしまう。

 

「……二人とも、綾小路くんのことよくわかってるんだね」

 

 半月で遅れに遅れた差を見せつけられ、焦燥感と危機感にカタカタとカップを鳴らしながら一之瀬が平坦な口調を崩さずに話しかける。

 

「積み重ねた時間が違うもの。入学当初からの隣人でこういう関係になったんだから、当たり前じゃないかしら」

「……ふうん」

「あはは、下世話だけど、ベッドの中の癖もしぐさとか、喜び方と喜ばせ方を知るようになったらね。知ってるかな、抱きしめられたまま突かれ続けたら意識飛んじゃうんだよ。で、突かれた衝撃で意識取り戻してまた飛んでを続けられた時なんか……もう、言葉に出来ないよ」

「……へえ」

 

 カチャンとゆっくりと一之瀬が静かにカップを置く、てっきりカップとソーサーがカタカタうるさく鳴り響くと思ったが、物音ひとつ立たない。

 一之瀬が落ち着いたのだろうか。

 

「寝たら綾小路くんの全部を知ったことになってるんだ?それって都合のいい女っていうんじゃないのかな?知ったんじゃなくて知ってるつもりなだけだと思うよ」

 

 頭の中でコングが鳴り響いた。

 

「あはは、後半から答えるね。知ってるんだよ。知ってるつもりじゃなくて知ってるんだよ。清隆くんの冷たいところも、怖いところも、暖かいところも、優しいところも。全部。で、何だっけ……ああ、そうそう都合がいい女だよね?ありがとう一之瀬さん。清隆くんのこと何も知らないって公言するなんてね」

 

 桔梗は笑顔だった。優しい笑顔だった。何も知らない幼子に向ける笑顔だった。

 

「……さっきも店で私が見てる前でエッチなポーズしてたよね。ポーズもだけど、体に残るロープの痕を私に見られて恥ずかしいとは思わないのかな?正直、変態だと思うんだけど」

「もちろん恥ずかしいけどなんの問題もないよ。これは私が清隆くんに愛された証拠だからね」

「……っ!?そんな風に考えるんだね」

「ええ、牽制だから」

「牽制?」

 

 一之瀬の疑問の眼差しに、鈴音と桔梗は一度目を見合わせて、何かを確認するように頷き合う。

 

「分からないなら良いわよ」

「一之瀬さんは本当に可愛いね」

 

 またもや女の笑みを浮かべる。今度は意味が分かった。

 女として「あなたと違って愛されたのよ」と言ったのに一之瀬が未成熟すぎて通じなかった笑みだ。あれは。

 

 ……それを一之瀬も理解した──してしまった。

 

「……性欲に塗れた同い年の女の子って初めてみるけどさ。正直、見ててキツいよ」

「そんな風に考えるのね」

 

 普段の一之瀬を知る者ならば目を剥く辛辣な言葉に、ふう、と鈴音は一口茶を飲む。以前にはなかった艶かしさを見せつけながら。

 一之瀬にはないモノを見せつけながら。

 

「あなたは本当に善良な良い子なのね。一之瀬さん。部屋に来てもベッドに誘われない。そして、自分からは傷つくのが怖くて誘えないのね、あなたは。自分が可愛いだけで、口を開けて清隆君が振り向いてくれるのを待つだけの良い子」

 

 教え導くような優しい声だ。

 紅茶を淹れてもらった後、置物のように放置されている身としては、重苦しいモノを飲み込んだような気分になる声だが。

 

「男の都合の良い女にさえなれない良い子ね」

「っ」

 

 あからさまな罵倒に、無表情のまま一之瀬が遂に眉を上げた。

 

「分からないなら、教えてあげるわ。他の男は知らないけど、清隆くんってこんな風に無表情だけど穴に突っ込みたくてサルみたいに発情しているのよ。突っ込まれて胎の底で理解したわ」

 

 ……三股かけていることが露呈している時点で紙屑になっているとしても、オレの名誉を考慮してもらいたい。それでも、腹の底の間違いではないのかと無粋な突っ込みをしないのが、たしなみだ。

 一之瀬もモノにしたいとチャットで伝えたのに返答がなかったから程度荒れると把握していたが、ここまでになるとは、想定の範囲とはいえ結構キツいな。

 

「……綾小路くん、そんななの?」

 

 食い付く一之瀬に鈴音が即答する。

 

「ケダモノよ」

「……具体的には?」

「突っ込まれて責められると、圧迫されて呼吸が出来ないわ。吐き出せても吸う余裕がなくなるの、それが何十分も続いていくのよ。泣いても懇願しても止めないどころか楽しそうに責めてくるわ。

 だから酸欠にならないように、隙を見てキスしたり胸に手を誘導して意識を反らさせて、タイミングを計って酸素を求めるのよ。呼吸を僅かな時間で最大効率でする練習は必須ね」

「……は?」

 

 想像するも理解できずにポカンと一之瀬が口を大きくあげる。

 突然始まった女の猥談に、居たたまれないオレを横目に桔梗も参戦した。

 

「言っとくけどしてる時って、普段の半分も頭働かないからね。目の前が白くなって、上下の感覚がなくなって、身体が宙に放り出されたような浮遊感……そうだね。高熱で意識が朦朧としている時が近いかな」

「違いは、高熱の時は気持ち悪いけど、している時は気持ち良いわね……慣れてきたから、胎内に入ってる圧迫感さえ心地よくなるわ……押し広げられる痛みが薄くなれば、だけど」

「そ、そんなに、痛いの?」

「痛いし酷いよ。口でしたらアゴ外さないと全部入らないくらいのモノ突っ込まれているんだよ。喉までくるのに全部飲み込めない」

「の、喉っ」

 

 喉元を抑えて戦慄する一之瀬。

 あまりにも生々しい話に、流石に辟易してきたな。何時まで続くのだろうか。

 

「ええ、口でするときはするときで、吐いたり窒息しないように出来るまで長かったわ……本当に死ぬかと思ったわね」

「……」

「出した後のインターバルも短くて、ほっとくとすぐ回復するんだ。だから、長引かせるために手と胸を駆使するんだけど、そういうの知ってる?」

「……知らない」

 

 理解不能の存在を見る目で、一之瀬がオレを見詰めてくる。

 目を反らさずに受け止めると、他者をそんな目で見詰めたことを悔いるように善良な一之瀬は目を反らした。

 そんなオレたちには目もくれず鈴音が言葉を続ける。

 

「そこまでしても、最後には前後不覚にされるわ。今まで意識を保てたことはなかった。いつも、体液まみれの体を暖かいタオルで拭われる感触で目を覚ましているわ」

「っ!?」

「目を覚ましても、意識は朦朧としててピクリとも動かせないんだよ……男の人に体の隅々を後始末される恥ずかしさには慣れないよ」

 

 そういうときの可愛らしい反応に何時もそそられているのだが、そんな事を黒い瘴気さえ見せるこの場で考える訳にはいかず蓋をする。

 確かに、ここまで言われても加減しようなどと考えもしないオレはケダモノだな。

 

「一之瀬さん。よければ、貴女が私達が言ってることどれくらい理解できたか教えてもらえるかしら?」

「……三分の一、くらいかな」

 

 悔しげな気配を出しているが、正直なところ想定より理解している。最初の時の鈴音と比べれば余程上だ。

 そんな風に考えていると、鈴音が柔らかな声音で語り始めた。

 

「……一之瀬さん、私はあなたよりも性に疎かったわ」

「え?」

「と、言うより興味がなかったのよ。けど最初に抱かれた時に理解したわ。性を忌避していたらやってられない、学ばなければ体か壊れるかもしれないと」

「こ、壊れるって」

「本当だよ。一般的な男と女の関係云々じゃなくて、私達が相手してるのは清隆くんだからね。他の人知らないから、聞いた話で判断するしかないけど、かなり特殊だと思うよ清隆くんは」

「特にあなたは元陸上部だから私みたいに鍛えられているはずよ。だから締め付けが違うと思うわ……大変よ」

「締め付け?」

「うん?ああ、そっか、それもわからないか……まあ、直にわかるから気にしなくていいよ。さっきの話だけどさ、一之瀬さんが言ったこともあながち間違ってないんだよ。相手しているうちに、性に塗れたと自分でも思う。官能って、動物みたいに貪られるんじゃなくて、愛し合う心の優しい交歓だなんて甘い妄想してたんだけどね……ああ、そういえば、一之瀬さんも甘い夢見てそうだよねえ」

「でしょうね。現実を厭忌して想像さえしないあなたは、都合の良い女にさえなれない良い子でしかないわ」

「っ」

 

 男には理解できない所で一之瀬は負けたらしい。鈴音の断つような言葉に悔しげに顔を歪めると、俯き目を逸らす。

 が、直ぐに顔を上げた。

 溜め込んでいたモノを表に出した一之瀬がこの程度で壊れるはずかない。

 

「意外と頑張るわね」

「結構芯脆い方だと思ってたんだけどなあ」

「……綾小路くんのお陰でね」

「都合の良い女にさえなれない良い子でも、男の人にすがりつけはするんだね」

「良い子だから、すがりつくのが上手なんじゃないかしら」

「っ!?……現在進行形ですがり付いてる二人が言うと説得力が違うね。一つ勉強になったよ」

「へぇ」

「一つ、で良いのかしら」

 

 細める目から嗜虐的な色さえ見える二人は、本気だ。本気で一之瀬をなぶり尽くすつもりだ。

 疑いすぎだったな。

 鈴音と桔梗に何らかの企みが有るのか疑っていたが、一之瀬と絶交さえ有り得る所まで諍うならば企みなど意味がない。

 無表情のまま息を飲んだ一之瀬も、予定通り折れない。

 ならば、今ここでオレがやるべきことは一つだ。

 ……聞き流そう。聞き流しながら彼女たちの様子を見て、決定的な時にだけ口を挟もう。

 二人が一之瀬を落とすだけ落としたあと、オレが浮かばせれば良い。この場合の落差は良い印象を与えるからな。

 そう考えながら、これからも続く女の争い──諸悪の根源はオレだが──に英気を養うためにカップを口につけ気を緩める。一瞬、ほんの一瞬緩めた。緩めてしまった。

 

「そうそう、清隆くん。そろそろ一之瀬さんに四股目の白羽の矢を立てた理由を聞かせてもらえないかしら、聞かせてくれたら今日はお暇しようと思うのだけど」

 

 だから、一之瀬を叩いたまま間髪をいれずに鈴音が発した言葉に隙を突かれて一瞬固まってしまった。

 

 

 

 当たり前だが、自分以外の女を恋人?に愛されるということを快く思える女性は少数派だ。堀北鈴音という少女も例外ではない。否、兄しか見ていなかったお陰でそういった情感の芽生えが遅かったため、許容できない情は強いほうだと言っていい。

 それを押しとどめていたのは綾小路という男の倫理観が、例えば、堀北鈴音が「他に好きな人が出来たから股をかけたい」と言えば、認められる相手なら是とする倫理観だからそれを尊重して

 ──なわけがない。

 綾小路が他に手を出した最初の相手である櫛田桔梗の事を、よりにもよって手を出した後で情事の時──しかも絶頂した後男の胸に顔をうずめ荒い息を吐きながら気だるげな幸せを味わっている時──に告白するなどという、生ぬるい感情など吹き飛ぶような馬鹿げたこと(確信的)をしたお陰で、一周半感情が回り冷静になれたからだ。

 後日、櫛田と肝胆相照らせたのもこれが無ければ危うかった。

 が、当たりまえだが互いに嫉妬を覚えているし、何とか飲み込めているだけだ。綾小路が思っているように、了承しているわけがない。というより、同じ男と関係を持つ女同士の関係が巧くいくはずがない。それなのに。

 

 それなのに、昨晩3Pして身も心も搾り取られた後デート──初めてのデートだ!なのに3人で!──でようやく、そう本当にようやく『絶妙なタイミングで卑怯なくらいハートを鷲掴みする言動をしてのける女の敵、綾小路清隆』もデリカシーもムードを少しは覚えてくれたのを実感

 ──(顔が綻ぶから思い出さないようにしよう)して、これで犠牲者が減る、本当良かった。

 と思っていたら、前から粉かけていた内の一人、学年でも評判の美人で性格の良い一之瀬にも手を出したいとかチャットで連絡してきたかと思えば、どうするか思案しているうちに耳を疑うような悪辣な手段で口説き落とした。

 確かに、以前説明すれば納得するとは言ったがこれは無い。そもそも一人二人ならまだしもこの短期間で三人とはどういう事だ。

 そう追及したとしても、綾小路のことだから以前の言質を武器にして押し返してくるに違いなかった。

 

 前一度泣いて弱さを見せてしまったからだろう、泣きたくなった。

 といっても泣けるわけがなかった。

 以前のような、やっと過ちに気付いて兄と心通じしばらく会えないと理解して見送った時、初めて流した所を見せた万感の想いの籠った涙なら、冷徹非道で優しい綾小路と言えど心を動かし慰めてくれる。

 だが、ここで取り乱して、泣いて勝とうとするならば、綾小路は堀北鈴音を見切る。口では慰めようが、内心でその程度の女と値札をつけ見切る。

 そして、性欲解消の手段のみとして情愛を消す。残るのは理性だけだ。

 綾小路清隆の理性のみの判断。想像するだけで背筋が冷たくなり戦慄する。それこそ、泣いて過ごさなければならないだろう。

 すがり付いて泣いたのでは、私──堀北鈴音の負けだ。

 これだけは確信できた。

 

 だから、自分のやるべきことは泣きわめくことではない。

 女の意地を示すしかない。

 そう思い定めたならば、やることは明らかだった。綾小路に、技能という点ならば兄さえ超える存在に、自分が特別な存在だと刻み付ける。

 綾小路みたいな男の相手をするならば、意地でも肩を並べて伸びなければならない。その伸びの止まった時には、玩具か軽視すべき利用物と見なしそれにふさわしい対応をしてくる。

 

 それだけは我慢ならない。

 

 私は今の『隣人及び、こ、恋人?』の座から、知識・理解力・先見性・その他の分野でも比類ないのに行動力(というより動機)が伴わない不可思議な存在である綾小路清隆がどう変化するのか見ていたい。

 向こうにも見てもらいたい。

 全てを見透かし動じないくせに、たまに葛藤と寂寥に陰る瞳で見てもらいたい。

 ようやく、私の前で感情を表すようになった瞳で見てもらいたい。

 失意の時になぐさめてなぐさめられて、脱線したら補われて叱っていく。振り回されたっていい、ぶつかり合ったり、励まし合うのもいい、利用し利用されるのもいい。

 だが、事理よりも情で訴える「語るに足らない相手」

 そんな辱しめだけは受けられない。

 ただでさえ、自分の女心をそこまで考慮する必要はないと決めつけ、次から次へと女に手を出しているほど舐められているのだ。

 ──表面には出さないが間違いない。

 歯噛みするだけで、初めての男女関係の戸惑いと楽しさで甘い顔を見せてしまったことが過ちだった。

 

(目にもの見せてやるわ)

 

 燃え盛る心意の炎に炙られながら思考する。

 だが、どうするか。

 学力で敗れ。

 身体能力でも敗れ。

 策略でも敗れ。

 大局観と戦略立案能力でも敗れた。

 以前私の方が上だと断言したが現実は違った、認めよう、家事以外の技能で私が清隆くんに勝るものはない。

 あえて言えば大衆受けしない彼に対して、私はまだ大衆受けはするだろうが、軽井沢さんという大衆受けする駒が居るから意味がない。勝てない。

 だからといって舐められてたまるか。

 自分を磨いて、何れ追い付いてみせるし、清隆くんを人間として成長させてみせる。

 長い間兄を目指して居たときと違い、清隆くんに負けたくないと意地を張りながら自分の道を驀進する時に感じる、心地好い快感に似た熱を味わいながら思案する。

 

(必要なのは、今一矢報いる、いえ勝つこと)

 

 それくらいのことをしなければ、清隆くんは特別に思わないし、何より

 

(寂しがるわね)

 

 内心でウダウダ考えているのだろうが、色々あった私から見た清隆くんは、周りの世界に予測を超えた驚きなどなく、人生は予定調和されているものでレールに乗っていてもたまに寂しく感じるだけで降りるほどの衝動を持たない人。

 つまり、寂しがり屋だ。

 寂しいという響きは可愛らしいが、たまにこうして彼の予測を越えたことをして感性を刺激し調教しなければ、何をするかわからない辺り可愛くない。

 入学の時テストの点数を50点で統一するような遊びならまだしも、レイプや暴行等の非道を理性的に『必要』──どうしようもないときだから仕方ない、だからやろう──と判断出来てしまう、寂しいから必要に傾いてしまいそうな困った子なのよね。

 そんな、高すぎる能力を十全に発揮できる冷徹な人格を持っているのに、理性という名の怪物に飲まれそうな寂しがり屋な側面を持っているから、私──堀北鈴音は恋をした。

 

(決めたわ)

 

 自分の手札を確認していく内に気付いた。

 自分は女で、女性という性を行使した盤面に引きずりこめれば手はあると。

 そういうわけで、櫛田さんと連絡を取り合い、罪悪感と快感──嫉妬をぶつけるのは快感なのだと覚えた──を感じながら一之瀬さんをいたぶり、怒りのあまりそれに夢中なのだ──怒りの限界を超えると逆に視野が広くなることも知った──と清隆くんに思い込ませた。

 あまりに生々しい女の争いに、男の本能で忌避した清隆くんの虚を突いた。

 すべてはこの一撃のために。

 

(これで、どうするかによっては、私が棄ててやるわ)

 

 ここまでして、口先だけで何とかしよう等とする誠意のない男なら、私が肩を並べる価値がない。

 

(私も、意地が悪いわね)

 

 身体の奥底で感じ取った、今までの学校生活で育まれた綾小路清隆という少年にある品性が、そうしないと確信している。

 それでも、男の性根と器を見据えたい女の本能に苦笑を噛み殺す。

 

(不思議なものね)

 

 男の性根を見極めようと決意した瞬間から、心が落ち着き、一之瀬さんの限界を見極めていじめることが容易くなり、視線を向けなくとも普段はまるで理解できない清隆くんの心の動きさえ感じられた。

 

(さて、と)

 

 目を逸らさず微笑みを作り柔らかな声で、唖然とした──初めて見る──表情に心を踊らせながら、清隆くんに優しく語りかける。

 

「どうしたのかしら。一之瀬さんに四股目の白羽の矢を立てた理由を聞かせてくれたのなら、あなたがして欲しいようにお暇するのよ。さあ、理由を聞かせて」

 

 時間不足で軽井沢さんを呼べなかったことが残念だわ。可能ならばこのタイミングで部屋の呼び鈴を鳴らしたかった。

 いえ、わざとらし過ぎて清隆くんが冷静になってしまうから無理ね。

 まあ、止めは用意してあるから些事よ。

 

 

「白羽の矢を立てたのは──」

 

 いきなりの事態の自失から回復するための時間稼ぎにおうむ返しに言いかけたのと、桔梗が玉を転がすような弾む声で笑いながら手を上げて止めるのは一緒だった。

 

「くすくす……うん、分かってるよ。ねえ清隆くん、たとえどんなきっかけからこういう関係になっても、男子と女子の間には情の絆はきっとあるよね。なのに、好きだからもう一つ股かけようとしてるのに、店のこともそうだけど、一杯やりながら私たちと一之瀬さんの話を聞いて機会をうかがうなんて、そんなのはただの卑怯だよ。さあ、私たちの前で、男らしく、思いのままを言ってよ。そうしたら私も帰るからさ。帆波ちゃんもそれで良いよね」

 

 ぐう、の音も出なかった。男の嘘と卑劣を鮮やかに二人は抉り出して見せ付けてきた。

 これだけ鮮やかにやられては、オレのような人間であっても──否、だからこそ、二人が自分にとっての特別な存在だと無視できない。

 見事だった。間違いなくこの場は、いや、店からオレは負けていた。

 負けたのだオレは。

 

「私もそれで良いよ」

 

 爽やかさえある新鮮な驚きを味わってしまい数瞬自失してしまったオレを他所に、桔梗の言葉が空間に染みると間髪入れずに一之瀬が望むところだと受けとる。

 一之瀬にはメリットしかない選択だ。自分への好意を他の女の前で言わせる。

 この場面で即座に最大利益を得る挙に出たのは流石と言っていい。第三者ならそう言える。

 ……当事者としては逃げ場が完全に無くなったわけだが

 

「ありがとう。それなら、私たちもここで聞いているわね。綾小路くんに言われたことに思うことを返してあげて」

 

 解けた氷を溶かしそうな優しい声で鈴音が言い終わると、鈴音と桔梗と一之瀬はオレを見据えた。

 

「「清隆くん、どうぞ」」

 

 かつてない危機を迎えている。恋人?の前で、ほかの女を口説けとは……

 真剣な眼差しで見つめる一之瀬は、目が覚めるようなあでやかさだった。

 それに加えて、悪戯っぽい微笑みを浮かべる鈴音と桔梗が眩しすぎて、何故か緊張してしまう。

 

 ──もし、綾小路清隆があと数年マトモな人生を送っていれば理解できただろう。

 この微笑みが、一瞬にして豹変して手が出る時の前触れだと。対処を間違えれば般若に豹変すると。

 未だ少女であっても、女性がこういう表情をするときは、とても怖いことを考えているのだと。

 残念ながら、未だ綾小路には経験が不足していた。しかし、直感に従い対処を間違えなかった。

 ──一之瀬に対してだけは。

 

 呼吸を一つ、濡れているような三対の視線に、自身のエゴをこれ以上なく掘り起こされ抉り出されながら言葉を出す。

 

「一之瀬──」

 

 包囲下に居る、退路はない。いや、退路など要らない。血路を開き進んで欲しいモノを得るのみ。

 

「お前が──」

「ちょっと待ちなさい、一之瀬?」

「この場面で名字呼び?」

「綾小路くん……」

 

 屑を見る目と呆れた目と悲哀の目で睨まれた。

 何時のまにか、二対一傍観一から三対一になっていた。

 

「初めて名前を呼ぶのは二人きりの時にしたいんだ」

 

 さらに包囲が狭まるが抗う。流石に恥ずかしすぎる。

 

「分かったよ……その代わり、情熱を込めて笑顔で言ってね」

「……」

「股をかけていても名前呼ばなくても、本気ならそれくらい出来るよね。やれるよね。冗談や遊びでないなら、そうやって男らしく想いを言えるよね」

 

 問う一之瀬は真剣な瞳だった。空気を呼んでなにも言わない鈴音と桔梗も。

 本気で応えるしかない。

 

 オレが立ち上がると、一之瀬もそれに合わせて立ち上がる。

 恐怖と動揺と願望と渇望で染まった縋るような瞳を真っ直ぐに見つめ返して、オレは一之瀬の肩に手を乗せた。

 

「一之瀬、お前が好きだ。抱きたい。オレの女になってくれ」

 

 余計な言葉では着飾らずに、ダイレクトに思いを伝えた。

 

「遅いよ……あの日、あの春休み、言ってくれると思ってたのに……」

 

 普通はそうしただろうな。いや、本当に。南雲が言ったように鬼畜だった。

 

「だから……今、気持ちが溢れちゃて……整えるから……少し、待ってね」

「ああ」

 

 肩に置いた手で優しく一之瀬を撫でた。

 恐ろしく疲れた、これ程の羞恥が半生で有っただろうか。でも、終わったのだ。

 

「それじゃあ次は私ね。私も、まだあんなに情熱的に言われてないから、楽しみだわ」

 

 ……え?

 

「うーん、次は私だと思うんだけど」

 

 ──好機

 

「なら──」

 

 いがみ合う隙を突こうとした言葉は、鈴音の鞭を鳴らすような声で遮られた。

 

「私達で決めることじゃないわ。清隆くんに決めて貰いましょう」

 

 ……待て、待ってくれ。

 

「そうだね。そうしよっか」

 

『悪戯っぽい笑顔』の鈴音と桔梗。オレはこの時、女の怖さを学習することになった。

 

 

 

 

「う~ん、スッキリしたね。堀北さん」

「ええ、これが勝利の美酒というものなのね。……正直、私は少し複雑だけどね。櫛田さんは?」

「悪くない。ううん、最良だと思っているよ」

 

 清隆くんに一撃喰らわせた帰り道、盟友にして宿敵の堀北さんが周囲を見回してから話しかけてくる。

 

「このままだと一之瀬さんが清隆君に抱かれるのが?」

「そうだよ。一之瀬さんみたいな子を、あっさり壊して堕とすとか、清隆くんは清隆くんだなあって思うけどね」

 

 視線を別れた二人がいる部屋の方向に向けてすぐ戻す。

 私も堀北さんも一之瀬も、大抵のことは自分で出来る。

 そんな私達が頑張ってもどうしようもないことを、清隆くんは私達が想定する最上以上の結果で助けてくれるかアドバイスしてくれる。

 熱をあげるのは当然だろう。

 結果、堕ちてしまった。あっさりと、完璧に。女としてこれ以上ないくらいに辱しめられたのに、もうダメだ、私。

 ……あのままだと、一生独り身か、社会に出て躓いて壊れただろうから、軌道修正出来たと思えば、なんとか、受け入れる。いや受け入れようと思う。 自分が破滅に一直線だったことと、それを気付けたのが、男に散々犯され辱しめられたから。

 ……我ながら、自身のダメさに頭痛がしてきた時に、盟友が聞いてきた。

 

「今から清隆君に抱かれるかしら、やっぱり」

「傷心と混乱で頭ぐちゃぐちゃになって、他の女と一戦交えた後で、気になってる男の子と二人きり。本能が欲しいって叫ぶね。私はそうだったよ」

「……ええ、確かにそうね。でも……不満はないの?」

「あるよ。もちろん……正直、複雑だけど、最良の流れだよ間違いなく」

「そうかしら?」

 

 知性の差ではなく思考の方向性の違いだろう、盟友は納得していない。

 盟友は何だかんだ言って、根が善良だから思い付かないのだ。清隆くんみたいな悪党と比較したら、私も善良にカテゴリされるけど少しは黒いことを考えられる。

 

「堀北さんって一之瀬さんのこと嫌いかな?」

「いいえ。偽善者と疑っていた最初はともかく、彼女を嫌うのは無理よ。特に今日ぶつかったから尚更好ましいわね」

 

 帆波ちゃんではなく一之瀬さんと呼ぶ私に、誤解してしまったようだ。暗に、私が一之瀬を嫌いなのかと疑っている。

 私の中で一之瀬に対する好感度は初めてプラスになっているのに

 

「私もそうだよ」

 

 好き嫌いで言えば、一之瀬を嫌いになれる奴なんて、そうはいないだろう。そんなところが癪だから、私にとっては過去を知る堀北さんを除けば、一番嫌いだった。

 今までは。

 

「なのに、その対応……さっき一之瀬さんが私達を睨んだことを気にしているの?」

「ううん?清隆くんに見せないように、最後にだけ表情膨らませて睨んできた一之瀬さんは可愛いよね」

 

 先に意中の男に抱かれた優越感、あの一之瀬に優越感、それも完全無欠の優越感を抱けた。嫉妬に濁った瞳に睨み付けられたあの時あの瞬間、私はさらなる至福の中に居た。

 盟友が思っているようなマイナスな感情を抱くはずがないじゃないか。

 それだけでも後々まで楽しめたのに、あれが前菜とデザートでしかなかったとかさあ。

 メインディッシュ、あの清隆くんに私と堀北さんどっちを先にするかを選ばせた時、あの時の清隆くんの苦悶と決意と告白ときたら──絶頂ものの特別感。

 あんな風に表情が変わるとは想像さえ出来なかった。てっきり、無表情だと思っていたのに。

 最高というものは更新されていくものだ。幸福には上限はない。

 

「一之瀬さんが清隆君に抱かれるとどうなると思う?」

「どうなるって」

「当たり前だけど清隆くんは私達を捨てないよね……死ぬかと思ったけど」

 

 意識があるときは犯されているときだけってどういうことなんだろうね、本当に。

 二人だと手加減する必要がないとか殺されると思った。あの無表情で目だけ情欲の色を灯してドSとかどうしようもない。

 

「そうね。嫌と言うほど昨日理解したわ……代わりに腹上死の可能性を想定したけど」

「だよね」

 

 二人がかりだと加減なしで犯してきた畜生を思いだし同時に頷く。あいつは私達を壊すかもしれないが、飽きて捨てはしない。絞りかすまで食べると胎で理解した。

 一撃喰らわせたお陰で、何だかんだ言ってもまだ他人に関心が薄い清隆くんの、私達に対しての興味が深くなったことも捨てられない要因になった。けれども、清隆くんが異常性欲者ということは変わらない。

 

「だから、私達が嫌いじゃない一之瀬さんとは手を組めるし、最低でもローテーションが組めるよね」

「────」

 

 盟友が全てを理解した目でみてくる。

 

「一之瀬さんは好きな人に抱かれて、清隆君は一之瀬さんみたいな美人を抱けて、私達には仲間が出来る。道徳や感情を無視して、理性だけで見れば有りだわ」

「生理の日とかどうしようって、思ってたんだ。私」

「オーラルセックスか、短い間隔で誰かが抱かれていたわね」

「軽井沢さんに一之瀬さんが加わると、これで四人」

「余裕が出来るわ。清隆君に抱かれてから……勉強を少ししたらすぐ限界になって、ベッドに倒れて泥のように眠る生活から解放される」

「出来合いの物でご飯を済ませるのは、栄養とカロリーと肌がね」

 

 目を見合わせて清隆くんの部屋の方向に視線を飛ばす、 盟友は生贄の羊を見る目で見ているが、私もだろう。

 

「一之瀬さんには複雑だわ」

「同感、申し訳なくてありがたくて」

「……そして癪ね」

 

 その通りだよ盟友。

 

「軽井沢さん、部屋に居るらしいよ」

「行きましょう」

 

 結論として、明日の昼に一之瀬さんを救出して恩を売ることで私達三人は同意した。




 個人的に、ハーレムものは男が痛い目みる時って必須だと思います。
 ここで、誰が一番なのかと綾小路君を責めない二人はまだ優しいのです。
 綾小路君が面倒臭がらなければ、ですけど。
 と、いうわけで綾小路くんに対する精神的調教はおわり、復興(仕事)の後で次へ行きます。

 文章ろくに確認していないので、誤字脱字や意味不明なところがあるかもしれません。指摘していただければ、修正するのでご指摘お願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波①

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。



 最後の方を書いてから、ここまで行くのにどうすれば良いのか考え始めて書いてみようかと決めたのが、この二次創作の始まりでした。
 半年以上かかるとは思いませんでした(遠い目)



 ぱたん……

 耳に残るドアが閉まる残響を聞きながら座り込みたくなる衝動をこらえる。

 鈴音と桔梗が去る前に食らった一撃で精神的疲弊の極致にいるが、俯いた一之瀬の相手こそを優先すべきだ。

 

 くい、と一之瀬の手を引っ張ってベッドに座るように頷いた。

 

「あっ」

 

 そっと座らせた横に、音を立てずに腰を下ろす。

 ブラウスにフレアスカートの一之瀬は身じろぎせず、きゅと膝の上で手を握り締めた。

 

「あっ」

 

 俯いた一之瀬の頬に触れる。

 

「あ、綾小路、くん……っ──」

 

 こちらを見上げ自分の腕をきゅっと掴むと体をこちらに預けてきた。

 

「考えが止まらないんだ」

 

 手を頬から離さず抱きしめもせずに黙って聞く。

 

「一年後に話すっていったのに、今話すんだとか。堀北さんと桔梗ちゃんと軽井沢さん、どうしようとか。もっと早く告白してれば良かったのにとか。三股とかどうなってるのとか……色々なことが、考えると、止まらなくって……」

 

 当たり前だが、オレがほとんどを占めている。

 

「幸せな気持ちとムカついた気持ちが溢れそうになって……怖くなるんだ」

「なら、少し、話をしてみるか」

「お話?綾小路くんと?」

「ああ、何でもいい。いろいろな話をしないか?今頭の中を占めていること以外の話を」

「……どういうこと?」

 

 疑いの色を瞳に宿す。今現在一之瀬の頭の中を占めている男の後ろめたさを隠すのではないかと語る視線を受け止めて返す。

 

「三股かけたことを誤魔化すつもりはない。今から四股目をかけることも」

「……最低だからね」

「わかってるよ……。少し、オレのことを聞いてくれないか」

「綾小路くんのこと?」

「ああ、昔、アメリカへ行ったときなんだがな……」

 

 疑い深げにしていた一之瀬だが、いつしか話に没頭していく。

 頃合良しと見て、くいと一之瀬の手を引いてベッドに横になるように頷く。

 

「あっ……いや、その」

「怖いか?」

「こわ……怖がってはいないよ?ただ……」

 

 反射的に身を捩り俯く一之瀬を、再度くいとベッドに横になるように頷き誘う。静かに一之瀬が横になる。

 オレも静かに、一之瀬と並んでベッドの上に横たわった。

 

「両親とな……」

 

 不安げにしていた一之瀬だが、静かに話しの続きを語り始めるうちに緊張が解けていく。

 ふわり、と柔らかな匂いが鼻を擽る。自然と一之瀬が近寄ってきたのだ。

 

「にゃ、にゃはは」

 

 困ったように笑う一之瀬と目を合わせ、何も言わず肩に腕を伸ばす。

 

「ふあっ、ひゃっ……!?」

 

 体温が伝わるように身体を密着させ、離さないように腕に力を込める。

 

「考えは落ち着いたか?」

「ゃ……ぃ、いやぁ……その……こんな風にされたら、初めてだし、あんまり、逆に、落ち着かな……」

 

 しどろもどろする一之瀬からは暗い様子が少し消えた。

 

「でも、話し合うことはできるだろう」

「そ、それはね、うん」

「俯いていると気分も落ち込む。顔を上げて、今度は、一之瀬の話を聞かせてくれ」

「うん……その、ね。私、昔ね……」

 

 そのまま、柔らかな抱きしめながら一之瀬の話に相槌を打ち続けると、一之瀬の憂いは薄くなりいつも以上に素敵な笑顔になっていったが。

 

「あ……その、何か当たってる」

「……すまん。正直に言わせてもらうと昂ぶって仕方ない」

 

 生理現象とはいえ柔らかな体に反応した下半身が一之瀬の腹を圧してしまっている。

 硬直する一之瀬の体をさらに強く抱きしめ耳元で囁く。

 

「いいか?」

「にゃ……あ、あはは、その……綾小路くんがどうしてもっていうならだけど、その……ね。ほら」

 

 ビクッと体を震わせ怯えの表情を見せるが逃げはしない、このまま押しても押し切れるだろう。が、一手打っておくか。

 心の中で南雲に詫びる。

 

 

 

 

「すまないな、これじゃ南雲と一緒だ」

「あっ」

 

 そっと離れる綾小路君の言葉に、すとんと心に落ちるものがあった。

 南雲先輩──あの人の目当ては私の……身体だったんだと。

 吐き気がするほどの嫌悪感が私を襲う。あの人ではなく私に対しての嫌悪感。

 裏切り者のあの人に対しての尊敬と感謝の念は全く薄れない。

 それでも、それはやってはいけないことだ。お金──ポイントでそんなことをしてはいけない、という良識からでもある。

 それ以上に、好きでもない人とそういうことをしたら私は私でなくなる。心の底から笑えることはもうないだろう。

 

 だから、今離れてくれた綾小路君に感謝しないと、彼は一度あの人と同じことをしようとしたけど辞めてくれたんだ。

 あんなに熱く想いを告白してくれた上に、落ち着かせてくれるために同じベッドで寝転んでお話してくれて、あそこを、その、堅くしても……無防備な私のことを想ってくれたんだ。

 ──だから、今日は帰ろう。帰って頭を冷やして冷静にならないと……

 

 ……何で私、綾小路くんの腕、私の肩に伸ばした腕、掴んでるの?

 

「一之瀬?」

 

 綾小路君が不思議そうに言ってくる。

 不思議だよね。私を大切に想ってくれたから、辞めたのに私が掴んだりして可笑しいよね。

 謝って手を離して身体も綾小路君から離さないと……暖かい綾小路君の身体から

 

「いいよ」

「ん?」

 

 にゃ?

 

「綾小路君なら……いいよ」

 

 にゃぁぁぁぁ────!!?

 何言ってるの、何言ってるの私!?

 

 内心パニックになりながら、私の口からは自分の言葉とは思えないような、艶のある言葉が出てくる。

 

「今日の桔梗ちゃんや堀北さんみたいに、出かけたり……デートしてくれるんだよね。なら……私、綾小路君に抱いて欲しい」

 

 私こんなに色気がある口調で話せたんだ。そんな馬鹿なことを考えないと、私の内心はパニック一色になる。

 何で、綾小路くん、私の身体が欲しいって言ってたのに。割と最低な事言ってたのに。

 

「南雲と同じことをしているんだ。一之瀬にとって嫌な思い出だろう。あの流れで身体を求めるなんて、殴られても仕方ないような非道なことをしている」

「あの人とは違うよ……綾小路くんならイヤじゃない」

 

 何で私は頭を綾小路くんの胸に預けてるのかなー。

 そんなことしようなんて少しも……少し、いや、とても、したかったし、今凄く幸せだけどね。

 綾小路くんが私の身体を目当てにしてくれて嬉しいし幸せ。

 

「ううん……綾小路くんじゃなきゃ、やだ。綾小路くん以外に抱かれたくない。だから、セックス、して欲しい……綾小路くんの、女に、して」

 

 拝啓お母さん元気ですか。あなたの娘、私、一之瀬帆波は素直な自分でいられたと思っています。

 でも、少し素直すぎたような気がします。せっかくなんで、綾小路くんの前であれだけ醜態さらしてどうすれば良いか、アドバイスが欲しいなあと娘は思ってたり。

 まぶたの裏のお母さんが、嬉しそうに親指を立てている気がする。「今日はお赤飯ねー。奇妙なことをするのは年頃なら良くあるわね。でも、その男の子なら、受け止める器あるわ。だから、気にする必要ないわよ突撃しなさい」とか言ってる。

 お赤飯は勿体無いような気がするけど、ありがとう。変なことしたの、良くあるなら仕方ないね。気にしないことにする。ありがとうお母さん。

 

「だから、お願いできないかな」

「今からか」

「うん。今じゃないと臆病な私は尻込みしちゃう」

 

 濡れ場っていうのかな、女の人がこんな声出すときのこと。本当に、声が濡れているみたいに聞こえるんだよ。お姉ちゃん初めて聞いて驚いてるよ。

 聞き覚えがある声だよね。私の声なんだ。ビックリしたでしょ。

 まぶたの裏の妹はGOサインを出してる。

 全くまた変なドラマ見たのかな。夜更かししないようにそれとなく注意しないと。

 

「わかった」

「あっ」

 

 綾小路君にまた抱き締められて。頭を撫でられる、

 男の人ってこんなにたくましいんだ。硬くてバネのある筋肉や骨格から、私とは何もかも違う。

 朧気な記憶のお父さんのことを少し思い出した。

 

 ……あ、私綾小路君のこと、好きなんだ。

 

「あ……」

 

 脈絡無く理解した。今好きな人の腕の中に居るんだ。

 パニックになって視線を綾小路くんの顔から逸らして身じろぎする。

 それだけしか出来ない、身を引いて綾小路君の腕から出ようとしたのに出来ない。完全に身体が硬直している。

 だって好きな人に抱き締められて居るから

 

 私……私……

 綾小路君のことが好きなんだ。

 ううん、ずっと前から……好きだったんだ。

 

「にゃー」

 

 頭の中がボーッとする。初めての経験──いや、綾小路君のこと考えるとよくこうなってたよね、私。

 うわー、皆変に思って無かったよね。

 股かけられてもいいなんて、馬鹿なこと言うわけだよね。他の人なら耐えられないけど、綾小路君なら嬉しい。

 だって私が好きな人に、私を好きでいてくれる人に抱かれるんだから

 

「うわぁ」

 

 好き!好き!好き!?

 誰が、私一之瀬帆波が

 誰を、綾小路清隆君を

 

 綾小路君のことを考えるだけで鼓動が速くなる。

 呼吸が早くなって、頭をさらに預ける。暖かくて弾力があって硬い安心できるところに

 ……あれ、私何処に頭を?

 ……気持ちいいから良いか

 

「あー、一之瀬」

 安心できて気持ちいいところから、何か優しくてたまらないずっと聞いていたい「音」がするけど、今は私の想いを、ようやく気付いた想いを考えよう。

 

「ふわぁ」

 

 初恋だよ、私。今まであの人素敵だなとか格好いいなとか思ったことあるけど、こんな気持ちは初めて。

 恋は盲目とか、のぼせるとか、正気を失うとか、聞いていたけど本当なんだ。

 一体何時から意識してたのかな。額を暖かく弾力のある硬いところに擦り付けながら、綾小路君とのことを思い出す。

 

 

 最初は、冷静沈着な頭の切れる少し恐い人だと思っていた。佐倉さんと千尋ちゃんのことがあって、悪人ではないと思ったし年上のような人で安心感があったから交流は楽しかった。

 

 その認識が変わったのは、あの一件だった。

 部屋に籠っていた私の下に、毎日通い続けてくれていた

 皆元気付けたり心配してくれるのは嬉しかったけど、申し訳なくて……少し苦痛だった。

 でも、綾小路くんだけは違った。扉の前に座ってただそこに居て、私を受け入れてくれていた。

 誰かがそこに居てくれるというだけで安心できた、何時もの私を見失わないでいれたのに。

 あの後、お礼に──ううん、今なら分かる好きな人に初めてチョコを渡したときに

「もしも自分を見失いそうになったら、またオレに声をかければいい。その時は──そうだな。話を聞くくらいならオレにも出来る筈だ」

 

 綾小路くんは、そんな口約束を守ってくれた。

 ううん。話を聞くだけじゃなくて、私が困った時や弱くなった時心の拠り所になってくれた。へ、部屋に連れ込んで私を立ち直らせてくれたこともあった。

 ほ、他にも、他にも……ほか、にも……

 

「にゃー」

 

 ぷしゅーと顔から火が出そう。

 反則だ。私にあんな風に言って頼らせて甘えさせてくれた人、今まで居なかった。

 皆私を頼ってくれた人ばかりで、お母さんも私なら大丈夫って言ってくれるのが、誇らしかった。

 ……でも、本当はね。私も誰かに頼りたかった。甘えたかったんだよ。

 ずっと、ずっと、欲しくてたまらなくて、諦めてたことを綾小路くんはくれたんだ。

 うわぁ、うわぁぁぁあ

 

「すーはー……すー……はー……うわぁ、落ち着くー」

 

 大きく息を吸って目を瞑ると全身の力が抜けて暖かいものにもたれ掛かる。

 誰かに言われなくても私の心がそうすべきと訴えることをすると、こんなにも落ち着いて甘えた声が出る。

 

「スンスンスンスン」

 

 匂いを嗅ぐと、女の子には出せないこんなにも力強い匂いが……──何か他の女の子の匂いがする。ムッとした。

 

「すりすりすりすり」

 

 暖かいものに顔から髪、髪から胸、胸から上半身を擦り付ける。上書き上書き。

 

「一之瀬、聞こえているか一之瀬?」

 

 暖かい音がまた聞こえてきたよ。

 聞きながら私の中に潜り込もう。

 あ、そうだ。私、クラスのリーダーだから、他クラスの人と付き合うの支障あるから、他のクラスの人と付き合うのってどうすればいいのか情報集めてたんだよね。思い返せば、聞いた皆ニヤニヤしてたなあ。

 それで、綾小路くんとも色々話して、色々聞いて、好きな人のこと少しずつ知るのが楽しくて幸せで。

 ……よ、夜、綾小路くんのこと考えて、その、敏感な所、初めて弄って、電流が走って、びっくりしちゃって、次の日、綾小路くんの顔、見れなかった時とかあって、でも幸せで、一年後胸を張って会えるようにしようとして……

 ──で、そうこうしているうちに同じクラスの堀北さんと桔梗ちゃんと軽井沢さんにかっさわれたんだよね

 

 ボフボフボフボフ

 

「一之瀬、鳩尾に、頭突きは、痛いんだが」

 

 つい、暖かくて幸せなものに八つ当たりしちゃった。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ」

 

 ……落ち着こう。

 体勢を変えて、全身で暖かいものに抱きつく。

 少し前屈で、腕を相手の首に回して、自分の胸を相手の胸に思い切り押しつけて、首筋に頭を。

 

「すがりついてるみたいだね」

 

 ううん。すがりついてる。私が家族以外に初めて見つけた信頼できる人にすがりついてる。

 堀北さんや桔梗ちゃんに罵られたように、すがり付いてる。

 そんな自分が、嫌で、愛おしい。

 

「あの時出来なかったけど、したかったんだよ」

 

 さっき綾小路くんが言った南雲先輩──あの人に付き合えって言われた時。尊敬はしていても好きでもない人に付き合えって言われた時。

 あの時私は笑っていたけど

 本当は──泣きたかった。泣き声で話をする訳にはいかなかったし、皆のために何で私だけがって思いたくなかったから耐えてたけど泣きたかった。

 

「あの時と同じだったんだよ。私」

 

 万引きした時と同じ闇に飲まれてた。Bクラスの皆私が好きじゃない人と付き合おうとしてるのに呑気に笑ってとか、本当は私のこと好きじゃないのに私と付き合おうとしないでください南雲先輩とか、考えるだけでおぞましいことを思って潰されそうだった。

 

「ずるいよ」

 

 そんな時に綾小路君は助けてくれた。

 話ぐらいは聞くって言われてたのに、話をしようとしなかった──ううん、好きな人に知られるのが恐くて隠そうとした臆病な私を。

 夜遅く訪ねた時、あの人と付き合う条件を話したとき、真剣に相手をしてくれたのに、助けて欲しいって言えなくて、もう綾小路君に頼れないと勝手に諦めた私を。

 

「なのに」

 

 もう駄目だって思ってた。私が私じゃなくなるって諦めたときにメールしてくれのが、付き合ったら自分から別れるなんて言い出したくなかった綾小路くんだった。

 あの時、こんな風にすがり付いて思いっきり抱き締めて欲しかったことが、綾小路君は解らないのが。

 

「本当にずるくて……大好き」

 

 うん。私は綾小路くんが大好き。付き合いたい。

 でも、付き合うなら好きな人同士でないと意味がない。片方からだと意味がない。

 でも、綾小路くんは私が好きなんだから良いよね。好きになってもらおう。

 もっと、私のことを好きに──

 

 ポフッ

「え?」

 

 どうしようか考える私の頭に置かれた温もりが、総身を巡り理性を取り戻す。

 

「手?」

 

 そう、手だ。その先に視線を向けて目に映す。

 

「綾小路くんの、手?」

「ああ、俺の手だ」

「………………にゃ?」

 

 そのまま、優しく撫でられていく内にだんだん今の状況を理解していく

 

「ふぇっ」

 

 ここには、私と綾小路くんしか居ない。

 で、私は綾小路くんに、だ、抱きついていて

 な、なら、なら、その……

 私が今まで頬を擦り付けたり、全身で匂いを擦り付けたり、頭突きし続けたのは──綾小路くん?

 好きな人の綾小路くん?

 あれ、それじゃ、今まで、私は、好きな人に……

 

「ふ、あああああぁぁぁあ!!??」

 

 あまりの自分の醜態に絶叫する。

 頭の中がこんがらがって言葉にならない、早くしないと綾小路くんに誤解される。これ以上の醜態を見せられない。

 で、で も、どうしよう、どうしたら……

 

「ぴあっ!?」

 

 いきなり、綾小路くんに強くお尻を掴まれて痛みに声をあげる。

 

 

 

「痛いか」

「……っううん。痛くないよ。ちょっと驚いただけ」

「そうか」

 

 綾小路にお尻を掴んでもらってるんだ。と思うと掴まれている部分から熱くなってる。

 そっちが気づかれてないか不安だよ。

 

「今からするが、何かして欲しいことがあるか?」

「あ、その、どうすればいいか分からないから、全部任せてもいいかな。私を綾小路くんの好きにして」

 

 さっきまでの醜態をスルーしてくれる綾小路くんに甘え、想いをのせて呟く。

 

「わかった。そうさせてもらうが、オレからもひとつある」

「え、何かな」

 

 お尻を掴んでから気付いたのかな。やっぱり私の体、変なのかな。堀北さんや櫛田さんみたいに魅力的じゃないのかな。

 不安に駆られる私に綾小路君は

 

「我が儘になれ」

 

 ────え?

 私の何処か抑えていた蓋を開けた。

 

「あの、それって」

「今みたいに痛みを押し殺して笑顔で流すなと言っているんだ」

「え……いや……」

 

 私、そんな……

 

「一之瀬、お前は善良だ。相手に対して善意の行動を計算することなく出来ている。皮肉で言っていない。お前のあり方には敬意を抱いている」

 

 それはわかる。綾小路くんからは負の気配が一切しない。淡々と話す言葉が私に刻み込まれている。

 

「でも、少し疲れるときがあるだろう」

「っ──」

「普段はそれでいいだろう。でも、今からオレとお前はそういう関係になる」

「あ……うん」

 

 改めて言われると……正直、怖い。

 

「なら、一息つけてみたらどうだ。オレとこうしているときくらいは、痛いときは痛い嫌なときは嫌だと自分が思ったことをオレに訴えればいい」

 

 駄目だよ。だって、そんなことしたら、お母さん大変で、妹も甘えたいのに甘えられなくなっちゃう。

 それに、クラスのリーダーとしてリーダーの態度をしないと……

 でも、今私の傍にいるのは、綾小路くん。

 信頼できて、今から、そういう関係になる人

 なら、甘えていいのかな。

 

「……いいの……そんなことしても」

「ああ、大丈夫だ。例え全部叶えられなくても、必ず聞いて受けとめる」

「……迷惑……だよ、きっと」

 

 情けないくらいに声が震える。

 

「あ……」

 

 綾小路君は私の手をとってやさしく握り締めてくれた。不安な空気が消える。

 

「オレにも実利がある」

「え?」

「自分を押さえ付けている相手を抱いてもつまらないからな。せっかくセックスするんだ。楽しませてくれ」

「あ、あはは……うん……私、は──誰かを頼って甘えても……良かった、のかな……」

「困ったらこうやって手を繋ぎに来い。オレの手ぐらいなら、いつだって一之瀬のために空けておく」

 

 震える私の言葉を、綾小路くんは当たり前のことのように受け入れてくれた。

 自分を頼って甘えてもいいと。

 

「っ……」

 

 思い切り綾小路くんの胸に顔を埋める。今まで誰かに言って貰いたかったこと。好きな人に言って貰えた。それが嬉しくて涙が止まらない。

 

「私っ……お姉ちゃんで、お母さん大変でっ……お父さんいなくて……っ!しっかりしなきゃ、って、心配かけちゃだめだって、近所の人もみんな優しくてっ……万引きしても……皆っやさしく……っ!だから、失敗しちゃだめだって……皆仲良くしてなきゃ駄目だって……そのために……頑張らないとって……お母さんと妹がっ……て!」

「そうか」

 

 どこまでも優しく綾小路君は許して受け止めてくれた。

 

「うぁぁっ~~~っ、ぅ、うぅぅ、うぅぅぅうぅぅうぁぁ~~~~……っ!」

 

 ぽんぽんと背中が優しく撫でられる。私が、妹にしてあげたように……何時か、お母さんが私にはする必要なくなったように。

 ずっと昔、朧げな思い出の中で、きっと、お父さんが、してくれたように。

 

「うあ、うあああ~~~っ!」

 

 ぽんぽんぽんぽん

 優しい鼓動と同じリズムで撫でられ、涙があふれてあふれて止まらない。ぎゅっと、綾小路くんのもう片方の手を胸元で抱きしめる。

 ぽんぽんぽんぽん

 涙が止まるまで綾小路くんはそうしてくれた。

 

 

 

 

「なら、早速わがまま言うね」

「ああ」

「いきなりお尻掴まないで、痛いし恥ずかしい」

 

 最初がお尻鷲掴みなんて許さないよ私。結構ムッときてるんだから。

 

「男の人に抱き締められるの初めてなんだよ私。いやらしいところ触らないで、普通に抱き締めて」

「わかった」

 

 そのまま、綾小路くんは私の腰に手をまわして抱き締めてくれた。

 包まれる暖かさに目を閉じてしまう。

 

「それはそれとして」

「何」

 

 蕩けきった声で答える。綾小路の暖かさ優しさが心地いい。

 

「全部任されたんだ。お前をオレの好きにさせてもらう」

 

 にゃ? あれ、綾小路くんの声がなんか……あれ?

 

「とりあえず、ストリップしてもらおうか」

「すとりっぷ」

 

 にゃ?にゃ? ちらりと目をあげて綾小路くんと目を合わせる。

 ──食べられる。

 目を合わせた途端に走った直感の電流に、きゅううと心臓だけじゃなく全身が音を立てる。

 

「オレの目の前で自分で服を脱げ」

「え?」

 

 にゃ──ぁ!?

 え?何、服、脱ぐ、何で、いきなり、え、そんなの無理。

 

「好きにしていいんだろう。痛いとか嫌だといくらでも言ってくれ。オレが好きにするだけだ。脱げ」

「え?え?……ま、まって、……その、まだ早いよ」

 

 そう、まだ早い。まずデートしたりしてから、キス、したりしてからそういうこと、その……

 

「ぴあっ!?」

 

 ──ぎゅっと強く抱きしめられ、耳元に綾小路君の呼吸が聞こえる。

 

「一之瀬、今から俺達何をするかわかってるか?」

「え、その、せ、セックス……です」

「一般的にセックスするときはどういう格好だ」

「は、裸?……え?」

「ああ、だから、とりあえず脱いでくれ」

 

 脱ぐって、え、下着も?下着になるには服脱がなくちゃいけなくて、服脱げば下着姿になって

 ……下着姿?し、下着姿!?

 

「にゃ──!?!?」

 

 わ、わたし、今、下着上下違う。しかも安いの!大きいサイズで動きやすいのを組み合わせたから、色も柄も違う野暮ったい奴!

 それを見せるの!?堀北さんと桔梗ちゃんの綺麗で艶やかな下着姿を見た綾小路くんに?

 無理、絶対無理。

 

「あ、あの、綾小路くん、その、あの──」

 

 そ、そう、そうだよ。綾小路くんに買ってもらった下着がある。あの下着なら見せられる。

 ──そんな私の声は、綾小路くんの指で唇をなぞられて止まる。

 暖かくて硬い指先でなぞられると心臓が破裂しそうで、顔が熱くなって

 ……抵抗、出来ない。

 

「まず、脱いでからだ。話はその後にしてくれ」

 

 綾小路くんこんな風な目で見てくれるんだ。情熱的というか獣、いや、失礼だよ。いや、でも、そんな恥ずかしいこと、でも、セックスって、裸で、いやでもでも

 

 ぐるぐる頭の中が回って沸騰しそう。

 そんな私を綾小路くんは一声で断ち切った。

 

「脱げ、帆波」

 

 ──初めて名前、呼ばれた。

 

 確信した。

 綾小路くん、絶対悪い人だ。

 こんな時に、初めて名前呼ばれたら私が抵抗なんか出来ないって、知ってるんだ。

 頭が冷えたんじゃなくてさらに熱くなって湯だったまま答える。

 

「は、はい、脱ぐ、ね」

 

 

 

 

 

 帆波は甘えるのが下手だ。

 何でも頑張って出来てしまう彼女の欠点だろう。誰かに頼られることには慣れていても頼ることには慣れていない。

 万引きも、他者に甘えられず爆発してしまったのが一面だろう。彼女なら誰にでも金を借りられたのに出来なかった。

 彼女が渇望していても、得られず諦めてしまったものが無かったからだ。

 

 ──許可。

 

 甘えて良い許可。

 それがなかった。

 故に、今、それを与えた。

 

(そうしたら、もう少し順調に行くと思っていたんだがな)

 

 林檎のように紅潮し絶えずぷるぷると震える帆波を、ベッドに座って見ながら一人ごちる。

 震える指を何度もブラウスの第一ボタンに引っ掛けてはこちらをちらりと見て、ぐるんっ!と体ごと背ける。で、少しもじもじしてまたこちらを見て、ぐるんと俊敏に体を戻す。

 あまりに俊敏な挙動で、発育の良い体がぶるんと震え、翻ったスカートからムッチリとした白い太もも近くまで露になるのは、これでこれで見ごたえはあるが、ストリップにはなっていない。

 

「どうした?まさか冷やかしで、抱いて欲しいだのセックスしてだの言ったわけじゃないだろう」

「…………」

 

 自分の発言で斬りかかられ、帆波は愕然として言葉を失う。

 縋る色の視線に、情欲の色を乗せて絡み合わせ責めて返す。

 

「発育が良いな。バストサイズはどのくらいあるんだ帆波?かなり大きそうだ……九十は超えて、カップはF辺りか」

 

 いきなりの言葉責めに、一之瀬はりんごのようだった顔をさらに紅く染め俯いてブラウスのボタンを弄繰り回す。

 

「あ、あのっ……ちょっと……ちょっと待って、わ、私、そんなの、答えられないっ」

「答えなくて構わない」

「え?いいの」

「脱いだ後、この手で確かめるからな」

「にゃ、にゃぁっ」

 

 両手で自分の体をかばうように抱きしめながら、俯き今にも泣き出しそうな表情で呻く。

 人気の美少女の追い詰められた風情に、ゾクリとする色気を感じる。

 おずおずと顔を起こし再度絡む視線、無言のまま会話を交わす。

 艶やかな長い髪がひと筋、指先に垂れ落ち、それをぎゅっと握り締める。

 踏ん切りをつけるために、はあっと鉛のように重いと息をひとつ吐き出すと、再度ブラウスのボタンに手をかける。

 

「……っ」

 

 ゆっくりと、ためらいがちにボタンをはずしていく。

 ひとつ、ふたつ

 だんだんはだけていくブラウスから、薄い茶色のストラップと官能的な谷間が覗き始め

 

「や、やっぱり……駄目っ」

 

 ぎゅっと目を瞑り、体をかき抱く。決意や踏ん切りなどは羞恥で蹴り飛ばされてしまった。

 

「はぁっ」

 

 思わずため息が漏れた。失望されたのかとビクリと一之瀬の体が震える。

 ……これは、無理だな。

 流石に飛ばしすぎたと心の中で悔いながら立ち上がる。

 入学してから、その美貌とスタイルと内面に惹かれていた少女をモノに出来るとタガが外れていた。

 どう考えても未経験な少女には酷だった。反省しなくてはな。

 

(いや、あれこれ考えるのは後にしよう)

 

 今は、俯き体を振るわせ続ける一之瀬を慰め立ち直させるのを優先──

 

「ぉ……」

「?」

 

 声をかけようとしたオレの動きを被せるように、一之瀬のつぶやき声が響いた。

 そして、これが、この日一番の驚きの始まりだった。

 

 

 

 

 好意を持った相手の腐れ外道としか言えない所業が明らかになったストレス、南雲と朝比奈によるアドバイスの感謝、鈴音と桔梗との諍いに対する反発、今まで積み重ねたオレに対する信頼、最初からいきなりストリップなどさせられている羞恥、ため息によって綾小路に失望されたのかという不安──

 それらが、綾小路に与えられた『甘えて良い許可』と一之瀬帆波の中で混ざり合い激烈な反応を産んだ。

 

「ぉ――お、おにいちゃん!」

「は?」

「帆波が脱ぐの見て!」

 

 絶叫とともに、すぽんと、あれだけ手間取っていたブラウスが抜き取られた。

 豊乳だからだろう、薄い茶色のフルカップですっぽりと乳房を覆っている。健康的にふっくらと締まった腹としっかりとした括れも目に写り、たまらない思いを抱くべきだが今のオレは欲情を忘却している。

 

「………………」

 

 あまりの発言に沈黙しか出来ない。

 今、何て言った?

 

「や、やったっ!?やったよ!おにい……ちゃん」

 

 そんなオレを余所に、達成感に薄い茶色のブラに包まれた巨乳を弾ませながら飛び上がり、満面の笑みを向けていた帆波が固まった。

 ピクリとも動かない。

 

「……ぁ」

 

 徐々に自分の言葉が浸透してくると、帆波の顔が真っ赤に染まる。

 

「い、いや、これは、その……」

 

『ギギギ』と壊れたロボットのような動きで視界にオレを入れる。

 

「何だ?帆波」

 

 できる限り優しく微笑ましいものを見る目で慣れない微笑(畜生)を浮かべる。

 一瞬の底知れない静寂、釣られるように引きつった笑顔、驚愕、愕然、憤怒、悲哀、哀泣、ありとあらゆる感情に表情を変え

 

 ──帆波は絶叫した。

 

「ち、ち、ち、違うんだよ!?あ、綾小路くんは落ち着いて頼りになって、冷たくてっ優しいからっ!?その、そう、年上みたいで……う、ううん、同級生だってちゃんと分かってるよ。けどね……ただ、私、余り甘えること知らなくて、甘えられたらなあって、それが綾小路くんなら素敵だなあって!?……だ、だから、お兄ちゃんって呼びたくなって……いやでも、でもぅ、綾小路くんの気持ちとか都合とか考えなくて」

 

 下着姿に構う余裕さえ無く、ブンブンと手を振りながら泣き声でまくし立てる帆波だが、支離滅裂で何が言いたいのかわからない。分かるのは完全にテンパっているだけだ。

 

「ああ、そうだな。わかってるぞ帆波」

「にゃ、にゃあ、あぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!??」

 

 というわけで慈愛に満ちた肯定を与え、ちょっと苛めてみる。

 耐えきれずに、しゃがみこんで頭を抱えてぶるぶると震えだす。限界を超えた羞恥の灼熱で一之瀬が焼き尽くされる。

 肉付きのいい体でそんなことをやられて、股間と心にぞくぞくとした熱を宿しながら考える。

 甘えてくると想定していたが、まさか「お兄ちゃん」と呼んでくるとは思ってなかった。

 

(取り繕う余裕もないな。無くなったのはオレが止めを刺したからだが……さて、どうするか)

 

 取り返しがつかない醜態に、泣きわめく帆波を何処か冷めた目で見つめながら、その意味を考える。

 感情を揺り動かされていないわけではない。帆波の悲痛で愛らしい姿を見ているうちに抱き締めたくなっている。

 だが、常に多角的、相対的に働く頭脳は冷徹な思考を止めはしない。

 帆波の狂態は何を意味するのか?

 決まりきっている。

 このまま行けば、肉体成長が著しい同級生の女子に「お兄ちゃん」と呼ばれながらセックスすることになるかもしれない。

 ため息をつきたくなる。

 

(ありえないだろう、それ)

 

 なんて非常識で悪徳と背徳に塗られた道だろうか、まともな人間ならどんな風に思うのかは明らかだ。ならばどうするか明白だ。

 

「見ないでぇぇぇえええ!?こんな私をそんな優しい目で見ないでぇぇぇぇええ!?お願い、おにいちゃ……にゃ?……にゃ!?にゃぁぁああああああ!?」

 

 ごく自然に「お兄ちゃん」呼びをしかけ、限界を振り飛ばした羞恥に泣き叫ぶ帆波の声に聞き惚れながら、優しい(鬼畜)目付きでその姿を見る。

 真っ赤に染まったまだ幼さが残る整った顔立ちと豊満な肉体。改めて下着姿になったからこそ優れた容姿が際立つ。挙げ句、内面まで優れている少女。

 パニックに陥っていてもそれは変わらない、いやさらに際立って魅力的に魅せてくれる稀な存在。

 こんな存在の狂態を静めればどれ程の愉悦と至福を得られるだろうか。

 オレならば、いやオレだからこそ、パニックに陥った帆波を冷静に出来る。そんなところに位置していると認識するだけで沸き上がる思いがある。

 ならばどうするか。

 改めて帆波を見る。

 両手で服越しにわしづかみにした尻は、成熟した見た目とは裏腹に脂が乗り気っておらず引き締まって硬くむき卵のように滑らかで、成人女性の柔らかな脂肪とは明らかな違いがあった。背丈や体重は同じでも、骨格が未発達なため全体的には細身と受け止められる。

 端的に、青い果実と評するべきだろう。

 胸板で味わった、男の目を引く九十センチを超える重みのありそうな乳房も、大きくともまだ蒼く硬い芯があり少女特有の強すぎる張りを保っていた。蒸気した首筋から肩にかけてのラインも色っぽさよりも清らかさしかない。

 腹は運動を好むため締っているが、筋肉が過度に出ていない滑らかな少女のライン。健康的に日焼けするところは焼けて白いところは白いコントラストがたまらない。

 手足は長く、そして筋肉によって引き締まっており、その上を柔らかい脂肪が覆っている。

 そんな体つきで蹲りながらイヤイヤと頭を振られると、あちこちが健康的に揺れて目と心と下半身を楽しませてくれる。

 

 ……こんな子を「お兄ちゃん」と呼ばれながら味わう非常識を取るか、冷静さを取り戻させて味わう常識を取るのか。

 

 

 ……迷う必要などないな。

 非常識とは普通やらないからこそ非常識と呼ぶのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帆波」

 

 優しい声をかけるとびくっと震えてくれる。たまらんなこれ。

 ぽんっと頭に手を置く。

 

「構わないぞ」

「……ぇ?」

 

 涙目のまま恐る恐る見上げてくる。

 

「構わないといったんだ」

「か、構わないって」

「おにい「い、言わないでぇ!?」オレのことを、そういう風に呼んで構わないといったんだ」

 

 同級生に「お兄ちゃん」などと呼ばれながら初物を味わえる機会がこれからの人生であるとは思えん。ならば、オレの選択など決まっている。

 

「……い、いいの?へ、変じゃ」

「確かに変かもしれない。でもな」

 

 非常識をとる。

 半月前ならリスク回避を優先した可能性もあるが、踏み出した今は違う。四股かけて同級生にお兄ちゃんと呼ばれる屑になろう。

 

「ああ言えば、脱いでも恥ずかしくないんだろう」

「う、うん……あっ?」

 

 下着姿を男の目に晒したままだと気付いて、慌てて体に腕を巻きつけながら問うてくる。

 

「……うん、恥ずかしいけど我慢できる……でも、良いの?お兄、ちゃん、なんて……呼んでも?」

「構わない」

 

 頷き許可を与えると、顔を紅く染め涙を浮かべた帆波が安堵に顔をほころばせる。

 うん。少なくとも、挿入するまでは呼ばれていたい。

 

「帆波がオレをお兄ちゃんと呼ぶことで、恥ずかしさが抑えられるのなら、オレも耐える」

 

 帆波と違って耐えるのは恥ずかしさでなく、心と体から競り上がってくる熱い衝動にだが。

 

「ほ、本当?本当に、良いの?」

「多少は恥ずかしいが耐えられない訳じゃない。出来れば速めに慣れて欲しくはあるが」

 

 後々正気に戻ったとしても、恥ずかしさにのたうつのは帆波だけだ。オレにダメージはない。

 

「そ、そっか……なら、その、お願い、します」

「ああ、とりあえず慣れるためにもう一度呼んでみないか」

「えっと……お、お兄、ちゃん」

「何だ帆波」

 

 間髪入れずに返すことで受け入れられた喜びに帆波の顔が綻び、ぱああっ!と破顔し、童女のような笑みを浮かべる。

 

「お、お兄ちゃん」

「ああ、何だ帆波」

 

 肉感的な下着姿を腕で抱くように隠す同い年の少女に、お兄ちゃんと呼ばれる度にこの背筋を撫でる背徳的な快楽。

 こんな感覚があったんだな。

 

「お兄ちゃん、よ、よろしくねっ」

「ああ……ちょっといいか」

「え?……や、やっぱり……だ、駄目なの、お兄ちゃん」

 

 少し押し止めた途端、満面の笑みから涙目鼻声に急降下する帆波にゾクゾクと背筋を震わせる。

 

「いや、呼ばれることは問題じゃない。ただな」

「ただ?」

「お兄ちゃんだと、アクセントが血縁者のそれだから、少し背徳的すぎると思わないか?」

「そ、そっか、確かに……今から、その、するんだし、ね……なら、お義兄ちゃん、とか」

 

 何て切り返しをしてくるんだよ、こいつは。

 

「顔を可愛く真っ赤にした帆波が耐えられるのなら、それでいい……いや、良くないな。もう少し、お前が恥ずかしくないようにしてくれ」

 

 オレが耐えられない。流石に処女相手だから少しは優しくしなければならないのに出来なくなってしまう。

 

「じゃ、じゃあ……おにいちゃん」

 

 舌足らずな子供が、近所のお兄さんを呼ぶように言ってきた。

 幼い子供ならともなく、しっかりした性格で豊満なスタイルの帆波がやると酷い。凄いのではなく酷い。

 ──新しい世界の扉が自分の中で開かれた音が響くくらいに酷い。

 

「ど、どうかな……おにいちゃん、は?」

 

 性格から素だと分かっていても、期待するように上目遣い・潤んだ瞳・艶やかな声でおどおどした態度をする帆波は狙っていると思えてしまう。

 まあ、どうでも良いか。

 

「それで頼む」

 

 この全身を走る、快楽と衝動に比べればどうでも良い。

 おにいちゃんプレイか。新しい世界を楽しく学べそうだ。

 大歓迎だ。

 

「……普段は、普通に名前で読んでくれよ」

「勿論だよ。任せて、おにいちゃん」

 

 ぺかーとした幼い笑みを浮かべる帆波は、放っておいたら人前で呼びそうだ。追々、釘を刺しておく必要があるな。

 ……巧くやらねば。




と、いうわけでおにいちゃんプレイです。
長かった、ここまでくるのに。
今回の話もかなり圧縮したのにこの字数になってしまいました。
巧く手短に情景を書ける人が羨ましい。


次回更新はかなり先になる予定です。
ところで、甘やかすのとS気強いのだとどっちがいいですかね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波②

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

エロの書き方を忘れてしまいました(汗
お陰で余分なことを書いている気がします(汗



「お、おにいちゃん、こんな格好で、ひ、膝の上なんてっ、やっぱり恥ずかしいよ……」

 

 ベッドに深々と腰掛けたオレの耳に帆波の恥ずかしそうな声が聞こえる。

 有無を言わさずスカートを剥ぎ取られ下着姿になった帆波は、背中からオレの膝の上に抱え上げられ両手で下着を隠しながら縮こまってちらちらこちらを見ている。弾き返すようなしっとりとした帆波の裸体が服越しに感じられてたまらない。

 

「いや、嫌じゃないんだよ。どっちかというとね嬉しいんだよ。男の人に膝に乗せてもらえるなんて覚えてる限りなかったことだからね。お母さんのは妹の占有場所だったから、やってもらったことほとんど覚えてなくて、だから新鮮で、でも懐かしいというか、男の人の膝ってこんなにしなやかで引き締まってるんだ恥ずかしいというか……せめて、スカートをはかせてほしかったというか。強引に脱がせるなんて酷いというか」

「帆波」

 

 静かに呼びかけ、自然と帆波の体を抱き寄せる。帆波は一瞬体をこわばらせ、怯えを含ませた視線を緩めるとゆっくりと背中を預ける。緊張でかすかに体を震わせる帆波の顔を振り向かせて、頬に手を当て唇に親指を当てる。

 かつて部屋でやったように、けれど決定的に違う熱を持って。

 少し体を離し、オレは腕の中の少女を目に捕える。

 帆波もオレを見る。

 ピクリと体を一度大きく震わせた後、背中越しに伝わる鼓動を早めながらゆっくりと目を閉じた帆波に顔を寄せ唇を重ねる。

 ぴくりと一瞬震えるが、その後は静かだった。

 ただ、背中に回された帆波の手が、オレのシャツを掴んで、強く掴みすぎたかと一度離し、逃したくないと言うようにもう一度掴み、離さなくなった。

 柔らかな弾力のある厚めの唇、ボディーソープとシャンプーの香りに混じって、汗ばんだ帆波の匂いが鼻腔に広がっていく。

 

「んっ……んっ……んっ……」

 

 何度目かの唇を重ねるだけのキスを終えた瞬間、帆波が小さく声を上げる。

 そのわずかに広がった隙間を縫うように舌を帆波の口内に差し込む。

 

「むむ……っ」

 

 驚きに目をむき唇を閉じる帆波、容赦せず吸い付き甲斐がある厚めの唇をついばむように舐める。

 抵抗しても意味がないと悟り、おずおずとオレの舌を迎え入れようと唇を開く。至近距離からキスしている相手の顔を見るのが恥ずかしいようで、頬を染めて目を瞑った。開いた口から息が漏れ、生々しい帆波の香りが濃くなる。

 

「んっ……んっ……んんっ」

 

 甘いと感じる少女の体臭に脳をチリチリと焦がされながら、舌を突っ込み歯茎を舐め回し口蓋を軽く押すように舐め回して愛撫するとビクリビクリと震え熱い吐息をもらす。

 帆波の味を堪能して、そのまま舌を絡めようとする。が、帆波はどうすれば良いのかさっぱり知らないらしく、舌を口内で躍らせ逃がすばかりだ。

 だからガシッと首の後ろを掴んで逃がさないようにして、上体を強く抱きしめる。

 

「んっ!?んんっ」

 

 強引かつ唐突な動きに、目を見開いて凝固した帆波の舌を吸い取るように固定して、こちらの舌で絡み取る。

 経験がない帆波の棒立ちした舌を、舌先で舌根から舌尖までなぞり上げしゃぶり上げて貪る。

 

「むっ!?むふっ……あっ……んちゅっ……くちゅ……」

 

 未知の行為に驚きに体を強張らせた帆波だが、舌と舌が絡み合うじんわりとした快感に頭が痺れ理性が薄まり、強張っていた表情を緩ませ全身の力を抜く。

 脱力したまま、オレの愛撫を受け続けることで、恥ずかしさが増しても自分なりにキスのやり方を理解したのだろう。

 膝の上に居るため動きが制限された状態で、目をぎゅっと強く閉じしなやかな腕を首に巻きつかせ、無我夢中でしがみついてくる。

 ピチャピチャと音を立てて舌を絡ませあい、ジュルジュルとオレが音を立てて生暖かい帆波の唾液を啜り嚥下すれば、恥ずかしいのかポカポカと肩をたたいてくる。そんな反応がかわいい。

 

「ふ──……っ」

 

 ようやく唇を離すとオレと帆波の間に糸ができた。帆波は長く息を吐き、うっとりと睫毛を閉じ合わせてはぁはぁと熱っぽく喘ぐ。

 唾液でできた糸を唇の端からたらしながら、拭うことに気付く余裕もなくぼんやりと熱っぽい吐息とともに言葉をこぼす。

 

「舌、入れるんだ……これが、キス……こんなキス……いきなり、こんなのなんて……」

 

 我を忘れてしがみついてきた白い細腕、ひしゃげるほどに押しつけてきた乳房を味わうオレに、全身を官能に震わせながら恍惚の瞳を向けてきた。

 唾液も吐息も汗も、帆波の体から出るものは旨い。が、まだ、もっとも味の濃いもの、官能の汁を味わっていない。

 味わわなくては、義務感のように熱い衝動に従い手を伸ばす。

 

「はっ、はぁぁ……にゃぁぁ~~っ……にゃあっ!?」

 

 呆然としたままの帆波のすべすべした脇腹を右手で軽く擦ると、くすぐったさにビクリと帆波は体を跳ね上げ体を震わせて膝の上で距離を取る。

 

「お、おにいちゃん……にゃっ!?」

 

 素肌に触られ怯えたように見詰めてくるが、膝の上から逃げないことを良いことにもう一度触り首筋へと顔を寄せようとすると帆波はさらに距離をとった。

 

「だっ、だめっ!?」

 

 膝の隅まで逃げると、こちらを見てぷく~と膨れた。

 

「お、おにいちゃんっ、さっきのキスもだけど、いきなりお腹触っちゃダメだよ」

「へえ?どうダメなんだ?」

「それは……きゃんっ!?」

 

 さわさわと何度も脇腹を撫でる。膝の上に置いた帆波の腿が汗ばみ、呼吸が荒くなっていく。

 

「にゃっ……はっ……お……はっ……んっ……おにい、ちゃん……」

「どうダメなのかさえ言えない帆波にはおしおきが必要だな」

 

 からかう様に告げると、帆波は不機嫌な声で頑なに言い返してきた。

 

「やだ」

「は……」

「絶対やだ」

 

 そんな頑なな態度も長続きしない。

 

「やだけど……おにいちゃんが私の言いたいことを聞かずにおしおきなんて酷いことしたいのなら……我慢する……我慢するよ」

 

 声に涙をかぶせながら、感情を隠せない少女が必死に悲しみを押し殺そうとしていた。

 今までと同じように。

 やはり我侭を言えないのかと、本当の我侭を言わずに押し殺そうとしていた。

 

「悪い……」

 

 つまらない慰めの言葉を言わずに思い切り抱きしめる。帆波が膝の上で方向を変えて瞳を潤ませながら抱き返してくる。

 

「ダメなんだよ……おにいちゃん」

「何がだ」

「初めてのキスなんだから、もっと、こう……」

 

 どうやら先程のキスがお気に召さなかったらしく、胸の前で輪っかを作りながら、ああでもないこうでもないとわたわたさせる。

 しばらくして、説明するよりも実施しようと決意したらしく、顔を耳まで赤く染め覚悟を決めるようにキュッとオレの胸元のシャツを握りしめる。

 

「おにいちゃん、もう一度しよ……」

 

 帆波の背中に手を当てて静かに待つ。

 下着姿の少女に抱きつかれていても、情欲のまま行動しないのは「おにいちゃん」と呼ばれているからだろうな。

 

「今度は、私が、帆波がおにいちゃんにキスするね……帆波がしたいようにキスさせて……だから」

 

 熱を孕んだ眼差しと視線がぶつかる。

 

「……する、のは、その後にしてね」

「わかったよ。……来てくれ」

「んっ」

 

 腕をより強く巻きつけて顔を近づけてきた。抱き合ったまま二度目のキスを交わす。

 唇も割らず、舌を伸ばすこともせずに、帆波の好きにさせる。

 

「ん……」

 

 かさついていない厚めの唇と軽く触れただけの稚拙な口づけ。舌も入れず唾液も交わさずにただ熱だけを交感し離す。

 

「にゃはは……これが、きっと、キス、だよね。おにいちゃん」

 

 はにかみながら熱く潤んだ視線を絡めてくる。

 

「そうか。そうかもな」

「にゃはは……なんだか照れちゃうね」

 

 帆波は照れ隠しのように、目を伏せ声に出して笑った。オレも小さく笑みらしいものを作る。

 

「でも、すっごく楽しい気持ちになれちゃうね」

「そうだな」

 

 彼女の言うとおり情欲の混じらないキスは……楽しかった。

 楽しくて、せつなくて……今まで情欲交じりのキスだけをしていたことに申し訳なささえ感じられた。

 

「帆波」

「あっ……にゃ、にゃはは」

 

 帆波を胸の中に抱きしめる。

 何の抵抗もなく胸の中に収まった帆波が幸せそうにはにかむ。

 

「……あったかいね」

「ああ、あったかいな」

 

 このまますれば、間違いなく幸せなセックスが出来るだろう。

 

 ──だが、それだと愉しくない。

 

「にゃはは……ひあんっ!」

 

 突然視界が変わったことに帆波は悲鳴を上げる。帆波を膝の上でぐるりと半回転させ、後ろから抱き止めたからだ。

 悲鳴を聞いて確信する。

 そうだ、愉しくない。

 好きな人を辱めて、いじめて、泣き声をあげさせて情欲の限りを尽くさなければ愉しくない。

 

「だから、これからは責めないとな」

「にゃ、にゃにっ!?……あんっ……あ、やだ。私、は何っ」

「気にするな、オレは嬉しい」

 

 再度背後からさわさわと脇腹を愛撫されたことであげた嬌声、初めて上げた嬌声に帆波が真っ赤になる。

 止めようと重ねられた帆波の手が汗ばみ、呼吸がまた荒くなる。帆波の白くなだらかな肩にあごを乗せて見下ろす。

 

「……大したものだな」

「にゃ?」

「胸が大きくて太ももが見えない」

「にゃ、にゃあっ!し、仕方ないでしょ、勝手に大きくなったんだもん」

 

 自分の胸元を腕で覆い隠す。

 

「……おにいちゃん」

「なんだ」

 

 耳まで赤くなりながら、視線を手で隠した胸元からそらさないオレに尋ねてくる。

 

「あの、その、ね。ど、どこ見てるの?」

「お前のブラジャーに押さえ込まれた育ち盛りのおっぱいを見ている」

「お、おっぱ……あの、あ、あの。もしかして、触りたい……の?」

「ああ」

 

 即答に帆波は少し笑い、真顔になるときゅうと体を硬く抱きしめ絶叫した。

 

「にゃああっ!えっちぃぃ!」

「そう言われても、触らないことには始まりもしないぞ」

「さ、触るって……私の……お腹、とか、肩とか、だよね?」

「そこも触るが、まずその立派なおっぱいを触りた──」

「にゃああ!」

 

 連続するあからさまな発言に、真っ赤になった帆波は自分の胸と股を隠すように両手を交差させて一歩あとずさろうと──

 

「ふにゃ!?あわわわっ」

 

 オレの膝の上から転げ落ちそうになりあわててバランスをとって手近なものに縋り付く。

 

「ふぁぁっ……ありが……にゃあああっ!?」

 

 思い切りオレの首にしがみつき、礼を言おうとして、情欲に満ちたオレ(ケダモノ)の視線と目が合ってしまい絶叫しながら仰け反りまた落ちそうになる。

 極度に狼狽した様子は、衝動を駆り立てて仕方ない。

 強引にでも触りたい。

 

「や、やだよ……そんなの恥ずかしいよ。触らなくても出来るでしょ」

「出来るわけない」

 

 帆波の中にあるセックス像はどうなっているのか覗いて見たい。

 

「そんなところ、他人に触らせるところじゃないよ。赤ちゃんにあげるところだし」

「他人でなくなるために触るんだ」

 

 何でこの場で赤ちゃんなんだ。

 

「触ってもべつに楽しくないと思うよ。ただの脂肪の固まりだし」

「楽しいかどうかはオレが決めることだ」

 

 このやり取りをオレの膝の上に居るスタイルの良い美少女としているオレに限界が迫ってきている。

 帆波がもじもじと言い訳しながら身をよじるたびに弾力のある張り詰めた尻や、しなやかな筋肉さえ感じられるくらいに柔らかな脂肪を歪ませた腿が、オレの膝を擦りあげて欲情を駆り立てていく。

 

(面倒だな。遠慮せずに強引に責めるか。いや、いっそのこと縛るか)

 

 鈴音と桔梗と恵、思い返せば誰一人として一筋縄ではいかなかったが、まだ帆波と比べれば与し易かった気がする。

 

(まあ、あの三人とは心持が違うか)

 

 何だかんだ言って性交に腹をくくった三人とは違い、流れで来てしまった帆波はまだ腹をくくっていない。その差か。

 

「オレはいやらしい気持ちだけで言ってるんじゃない。帆波が好きで抱きたいから頼んでるんだ。これからの愛の営みのためにな。分かるだろう。まずは愛だ、愛が先にある」

 

 そんなことを考えながらも口は動いていた。

 

「愛……愛かぁ」

 

 帆波は腕を下ろし、柔らかく幸せそうに微笑んだ。

 

「そっか、愛か。うん、愛なら……い、いいよ。触っても」

「そうか、じゃあ」

 

 おもむろに大きく盛り上がった乳房に手を伸ばすと、その手がガシリと掴まれた。

 

「帆波?」

「何でいきなり胸なの?」

 

 どういうことだと抗議する視線に、ジトリと睨み返してくる。そうか、罠だったか。

 帆波が罠を張るはずがないという過信があったにせよ見事に嵌ってしまった。

 いや、原因は違う。

 視線を合わせたまま視界の隅に写るモノを見る。帆波の動くたびにゆっさゆっさと擬音が聞こえるくらいに揺れる白い二つの双丘、餌として上等すぎた。

 

「抱きしめたりキスもせずに何でいきなり胸なの?」

「もう膝の上で抱きしめてい──」

「おにいちゃん!」

 

 言葉を遮って叫び、キッと視線を鋭くさせる。

 

「今、すっごくいやらしい目つきだった。普段はあんまり変わらない、変わらなすぎて正直ちょっと怖くて怪しい顔が、愛とは程遠い野獣みたいな目つきしてた」

 

 どうやら『おにいちゃん』になった瞬間、帆波の辞書からはオレに対する遠慮とか謙虚とかそういう単語を消したらしい。

 

「何を言うんだ。確かにオレは表情を変えたが、それはお前と心が通じ合った安堵と喜びによってだ」

「通じあってないよ!快楽とか悦楽とか、そんな喜びと安堵だったっ!」

「あのなぁ」

 

 表面上は珍しい妹の我儘に困る兄の呆れ声をあげながら、頭の中では決断していた。

 これは、駄目だ。

 縛ろう。縛って容赦なく犯して現実を見せよう。

 甘やかすのは構わないし約束したが、ここまで恥ずかしがられると、マトモに性交できるとは思えない。

 天秤をSの方に傾けていると、帆波がうなだれて小さな呟きをもらす。

 

「ごめんね……」

「どうした?」

 

 しょんぼりとした帆波が俯いたままつぶやく。

 

「やっぱり……怖くて……」

 

 睫を伏せ震える指先を、待ってと掴んでいたのに容赦なくオレに剥ぎ取られたスカートを探すように動かす。

 

「さっき、良いよって言ったし……おにいちゃんならって……覚悟は出来てるはずなんだけどね。だ、だからスカート剥ぎ取られて膝の上に乗せられても、キス、できたんだけど、ね……やっぱり……いざってなると……ご、ごめんね。覚悟できてるって思い込んでいただけみたいで……」

「いや……こっちこそいきなりで悪かった」

 

 後ろ手に引き寄せていた縄を見えないように放り投げ、そのまま帆波の頭に手を置いた。

 いきなり縄で縛れば、帆波との関係が崩壊したかもしれなかったな。少しずつ染めていこう。

 それでも収まらないのか、暗い顔で俯いたまま重い吐息を吐き出した。

 

「堀北さんと桔梗ちゃんと軽井沢さんは……ちゃんと出来たのに、ごめんね。本当に、ごめん」

「そういうのは人と比べるものじゃない。オレは帆波が悪いとは思っていない」

「本当?」

 

 怯えが含まれた上目遣いの瞳に──縄うんぬんを心の中の別の棚に棚上げして──誠意を込めて頷く。

 覗きこむ帆波は、感情ではなく理性によって表情を変える訓練を受けたオレの瞳に嘘がないと理解して綻ばせるが、それでも安心しきれず呟くように愚痴る。

 

「さっきの店で、堀北さんと桔梗ちゃんはあんな風に、その、おにいちゃんと……仲良くできたのに。やっぱり駄目だよね。どうして私には出来ないのかなあ。おにいちゃんにわがまま言ってばっかりで、素直な私はどこいったのかなあ」

 

 辛そうに目を伏せると、今から言うことで関係が変わるのではないかと怯えながら搾り出すように言葉を出し始める。

 身動ぎして、オレの股間近くの腿に、弾力と柔らかさを兼ね揃えた重量のある尻をこすりつけながら。

 

「おにいちゃん」

「何だ?」

「ひょっとして、今、私が、おにいちゃんの言うこと聞かなくて怒ってるの、かな?」

「嬉しいとは思っているが怒っていない」

「え……」

「帆波、お前は素直に人の過ちを許し、人の悲しみをわがことのように悲しみ、人の幸せを願うことができる人間だ。その善良な素直さは間違いなく美点だが、同時に危うさを内包している。誰かにぶつけるべきものをぶつけない危うさがな」

 

 わがままになれといったのに、目を見開いてまだ遠慮する少女の頭を優しくなでる。

 

「今のお前にはそれがない。緊張はしていても、どことなくリラックスできているだろう」

「う、うん。心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてるけど、何か……軽いと思う」

「わがままになれた、危うさが薄くなったということだ」

「……わがまま言ってる、今の私は、帆波は、おにいちゃんにとって本当に嬉しいと思えるの?」

「ああ、好きな女が普段よりも何倍も魅力的になっているんだ。喜ばないわけがない」

 

 帆波が顔を真っ赤に染めて顔を手で隠すが、耳まで真っ赤に燃えた顔を隠す役目を果たしていない。

 

 一之瀬帆波の内面で、抱かれる経緯が経緯のために、どこか燻っていた燃料が火を入れられ想いを燃え上がらせて──愛しさが心を満たしていく。

 

「……やっぱりおにいちゃんはだめだね。絶対だめでずるい。女の子の扱いがだめでずるい」

「いきなり何を──」

 

 割と恥ずかしいことをいったのに明後日の方向にそらされ戸惑うオレに、帆波はガバっと顔を上げて全身を火照らせながら睨み付けてきた。

 

「いきなりスカート剥ぎ取って膝に載せたり初めてキスしたのにいきなり唇入れてきて、酷いって思ってたことがどうでもよくなった!」

「…………」

 

 鬼気迫る帆波の眼差しに沈黙する。一体どうしたんだ。

 

「おにいちゃんっ!覚えておいて!」

 

 叫びながら、オレの膝の上で方向転換してこちらに向き直りガシリと肩を掴んで真剣な眼差しで目を合わせてくる。

 陰部をかすかに覗かせるほどパンティがめくれ上がらせ、白く輝く美味そうな太ももの付け根をあらわにしながら、脂の乗った太ももと尻を淫らにオレの太ももで歪ませながら、オレの股間にパンティのクロッチを触れるか触れないくらいの距離を置いて、

 目を合わせてきた

 ──下半身に熱いものが溜まってくる。

 

「おにいちゃんは、絶望したりピンチな時に助けてくれるだけじゃなく、体に芯をいれて立ち直らせて、私たちを自分でも驚くくらいに良い方向に変えてくれてから、自然体のまま包容力見せて受け入れてくれるだけじゃないんだよ。

 そういうのを全部見透かすような目で見透かしてるのに、私たちを自分とは縁遠いものだから自分は手を出したらいけないみたいな寂しい色を時々一瞬だけ浮かべるなんてことしてっ」

 

 怒濤のように止まらなかった言葉を止め、はぁぁっ、と耐えきれないものを吐き出すように大きな溜め息をつく。

 

「頼りになるのに、助けたいっ、傍に居たいっ、見たいっ、知りたいって、人の心を鷲掴みにしてから……」

 

 想いが高まりすぎて割と滅茶苦茶な言葉を吐き出し続ける。熱い吐息を吐きながら顔を赤くする帆波がふと愛しくなる。

 滅茶苦茶でも彼女は必死だ。必死で想いをトンと胸に頭を当ててポツリポツリとつぶやきながらぶつけてくる。

 

「……本性出してくるんだよ。実は我儘で、気に入った相手は自分の手でどうにかしてあげたくて、傍に居させたいから手段を選ばないって……エゴイストの本性を出してくるんだよ。そんなね」

 

 耐えてきたが我慢の限界だとばかりに、目を血走らせるほどに力をいれて言葉に力をいれ叫びだす。

 

「ど~~~しようもない女の敵なんだよ!その辺を女の子がどう受け取るか、いい加減自覚しないと取り返しがつかないことになるからね。これ以上、犠牲者が増えてからじゃ遅いんだからね」

「オレに、そんなつもりはな──」

「おにいちゃんになくても受け取る人には大問題なの!分かって!分かりなさいっ!」

 

 おにいちゃん呼びから言葉遣いが幼くなっているのはもう慣れたが、容赦さえ辞書から消して女たらしと罵倒して来るとは余程不満が溜まっていたのだろう。

 それは良い。今日あった経緯から当然のことだし、必死で想いをぶつけられて悪い気はしない。だから怒りはしない。

 しかし、話しながら指を立てたり大きく首を振って肉感的な下着姿を弾ませて男の欲望を誘い滾らせながらブレーキをかけてくる帆波は良くない。頭の中でブチリと何かが切れる音がした。

 

「だから、まず私に紳士的に優しくしてみて」

「……そうか、なら、これでどうだ」

 

 何故あの話の流れで、そうなるかを指摘せずに優しく帆波を後ろから抱き締める。俗にあすなろ抱きと呼ばれる姿勢だ。

 

「あっ……にゃはは、うん……えへへ」

 

 嬉しそうにはにかんで、胸と股間を隠したままオレの腕に頬を擦り付ける帆波に決意した。

 少しずつ染めていくつもりだったが止めた。

 このまま帆波に合わせていては、オレが耐えられない。早急に何かの手を打つ。

 

 帆波がこうまで紳士的だの優しくだのに、拘る理屈は分かる。

 女性はそもそも雰囲気が8割以上を占めるものであり──鈴音達はオレが酷いことをしたが──女性である帆波の理想は先程のフレンチキスのような欲ではなく情を交感するものなのだ。だから、デートどころか付き合いもせずにいきなりベッドインなどと本来は帆波に許容できることではない。

 なのに、あまりにも不本意な流れで情欲のまま抱かれそうになっている。

 だから、デートなどは諦めてもせめて本番くらいは理想で、という気持ち理解できる。

 おにいちゃんとして、ある程度はそれに付き合っても構わない。

 が、ここまで無防備かつ欲望を煽り立ててから無邪気にブレーキをかけられ続けてはたまったものじゃないし、

 何より、それでは帆波がよくても俺は愉しくない。

 帆波が楽しく幸せであれば、こちらも楽しく幸せなどという上等な人間ではない。

 身勝手極まりないが、もっと獣欲に満ちた行為、恥辱を与え羞恥に呻かせ快感を得る愉しみを得たい。

 その為には、マウントを取る必要がある。

 そんな決意を固めるオレをよそに帆波がぽんと手を叩く

 

「……あ……堀北さんたちと比べちゃうなんて失礼だよね。後で謝らないと」

「どうやって話題に出す気なんだ。辞めておいた方がいいぞ」

「あはは、そうだよね」

 

 後ろ暗いモノを一切感じられない天真爛漫な帆波の笑顔を見て確信する。

 鈴音と桔梗と恵と同じだ、間違いなくどんな初体験だったか情報交換し共有すると。

 キスもせずに押し倒し喉が枯れるまで蹂躙した鈴音も。

 縛り上げて恥辱を与え続けた桔梗も。

 丁寧に優しくした恵も。

 帆波におにいちゃん呼びさせていることも。

 全てバレる。

 やはり、帆波も女だ。いや、女になった。

 恵だけ優しくしたことを責められたのは精神的に苦しかった。鈴音と桔梗だけでなく恵にまで、恵だけ特別扱いして互いをいがみ合わせる企みを責められたからなおさらだ。

 また同じことになるなと覚悟を決めておく。

 

 ……四人がそう思う限り、肝心なことはバレないから構わない。

 他にも手を打ち悟られないようにしていること。

 鈴音と桔梗を抱いたことを恵が気付くように誘導しながら、こちらから連絡を取らないようにしたり、話しかけないようにして、話すときもそれとなく距離を置いたことを匂わせて恵を少しずつ追い詰め、部屋に呼び出した時に喜んで抱かれるように仕向けたことはバレはしない。

 

 畜生極まりない思考を他所に、笑い終わると帆波は頬を染めて頷く。

 

「うん……それなら……い、いいよ」

「そうか」

「……ぅん。良いって入ったから、さ、さわってもいいけど、恥ずかしくて怖いんだからね……だから、気配りしないで、女の子をモノみたいに扱ったら駄目だよ」

 

 ちっちっと、たわわな乳房を揺らしながら指を振る帆波。その体はカタカタと小刻みに震えて視線をこちらと合わせようとはしない。

 ふざけようとしなければ震えを隠せない少女、あまりに恥ずかしすぎてわがままをいうことさえできない少女、どこまでもか弱い少女に欲望が抑えきれない。

 もう、駄目だ。

 

「ああ、もちろんだ」

 

 帆波の頭に手を置く、ゆっくりと撫でていく、震えが収まるまでゆっくりと。

 

「おにいちゃん……」

 

 振っていた指を口元に当てて、艶っぽく潤んでいるが情欲の色は一切なく怯えの色しかない、見上げてくる少女の瞳と視線を絡ませる。

 軽く、苛めて情事の主導権を確立する。

 オレの予想が正しければ、あのときの帆波はオレに好意を持っていたはずだ。ならば──

 

「触るぞ、良いな」

「っ……うん、優しくしてね」

 

 あえてゆっくりと、息を飲みぎゅっと目を瞑る帆波の大きく盛り上がった乳房に右手を伸ばしていく。

 女では決してならないと、以前帆波が評した無駄に筋肉を付けてない細身の肉質の腕が、自分の乳房に伸びてくる気配の圧に帆波がこくりとのどを鳴らす。

 誰にも言うつもりはないが、一番自負しているのは指先だ。よほど困難な姿勢でなければ薄い鉄板くらいならば傷一つなく貫くことができるくらいには鍛えている。

 今自分に迫っている腕が凶器だとは知らなくとも、女の本能で迫る腕が自分では抗しようもない存在であり、それに嬲られるのだと理解した帆波は、再び怯えて体を細かく震わせ始めた。

 右手を近づけては遠ざけ近づけては遠ざけると、帆波は近づけたときにピクッと背筋を伸ばし、遠ざけたときには力を抜く。

 膝の上で踊る帆波が楽しくて、それを何度も続ける。

 すると、目を瞑っていた”はず”の帆波が、優しくするって言ったのに女心を弄ぶどころか嬲るなんてと柳眉を逆立ててきた。

 

「おにいちゃん「そういえば帆波」にゃ?」

 

 文句を言おうとしたときに機先を制され帆波の動きが固まる。

 そのまま自然と手を帆波の青色のパンティに手をかけると、慌てて帆波がその手を掴んで、上のはずでしょと抗議の視線を向けて言葉を出そうとしたときに再度機先を制する。

 

「お前は、下着上下バラバラなんだな」

 

 ピクリと帆波が痛いところを突かれたように、悲しみで顔を歪める。

 明らかに着古して色が薄くなったうす茶のブラと青色のパンティの帆波は、桔梗が言ったような「そういう時には一番綺麗な自分を見せたい」のとは間逆だ。

 悲しい顔をする帆波としては絶対に突かれたくなかったことだろう。わがままになっても、ここで男の無神経さではなく自分を責める生来の善良さが帆波の可愛いところで──いじめたくなる。

 

「普段からこうなのか」

「ち、違うよ。普段は……普段は……普段も、プールとか体育みたいなとき以外は……こう、だけど、ね。こういうときには、うん、こういうときには可愛い下着で揃えるんだって、私も……知ってる……だから、おにいちゃんに買って貰ったので……」

 

 慌ててまくし立てながら段々声を小さくしていき、それにしたがって体も丸めていく帆波、どうして下着を可愛いのにしてこなかったのか自分を責め立てている。

 

「……すまなかったな。情欲のまま急かせてしまった」

 

 ぽんぽん頭を撫でると顔を綻ばせる。

 

「う、ううん。いいよ、怒ってない……後で着替えさせてくれたら怒らないよ」

「ああ、着替えてくれ。楽しみにしておく」

「うん、楽しみにしていてね」

 

 心にしこりとして残っていた最後のことを受け入れられ、ぱあっと満面の笑みを浮かべる帆波からは薄暗い想いは消え失せたようだ。

 思えば、帆波にしては当たりが強かったのはその辺りを突っ込まれたく無かったこともあるのだろうな。

 ならば憂いなく、いじめようか。

 

「……そういえば」

「何、おにいちゃん?」

「いや、大したことじゃないんだが」

「え~、そこで止められたら気になるよ。最後まで話してよ」

「ちょっと、帆波に聞きたいことがあったんだが、教えてもらって良いか」

「うん、いいよ~」

 

 ぺかーと幼い笑みを浮かべてくる。甘えているせいで、大分知性が溶けているような気がする。

 

「一年のクラス内投票の時──」

 

 逃がさないように、あごと膝と腹に回した腕でさりげなく体を拘束する。

 

「──オレの部屋に来たときは可愛い下着で揃えていたのか?」

 

 反射的に逃れようと体をじたばたさせる帆波に、想像が当たっていたことを確信する。

 

「まさかとは思うが」

「っ」

「夜中の十一時過ぎに男の部屋に呼ばれたときに、下着の上下を可愛いので揃えていたことはないよな」

「っっ」

「そういえば、石鹸の良い香りがしていたな。まさか呼ばれてからシャワー浴びるなんてことはしていないよな」

「っっっ」

「シャワー浴びた後、可愛い下着に着替えるなんて、抱かれることを期待しているとしか思えないことをするはずがないよな」

「っっっっ」

「今、散々人のことを快楽と悦楽しか考えていない女心が分からない女の敵と罵った品行方正な帆波が、そんな変態みたいなことをするはずがないよな」

「っっっっっ」

 

 じたばたじたばたじたばた。

 言葉を紡ぐ度に息をのみながら暴れ続ける。

 だが、多少運動能力が優れた程度の帆波がオレの拘束に勝てるはずがなく、突如として電池が切れた人形のように動きを止める。

 ぜえぜえぜえぜえと短時間でフルパワーで動いて限界を迎えた人間特有の、汗だくの体と荒い呼吸の帆波の柔らかな体を味わいながら予想が当たっていたことに口角を上げる。

 愛していない相手にポイントによる交際を脅された後、気になる相手に夜部屋に呼ばれた年頃の女の子としては非常に健全な思考なのだが、そんなことを態々教えるつもりはない。

 自分の奥底に封じ込めていたことを暴かれ、それに対してオレが軽蔑するのではないかという恐怖で、俯いて長い髪を床にまでたらしカタカタと体を大きく震わせて怯える帆波の耳に唇を近づけ責め立てる。

 

「意識してやったのか」

 ふるふる

「無意識だったと」

 こくこく

「つまり帆波は、オレが夜部屋に呼んだときに無意識でシャワーを浴びて勝負下着に着替えるような女の子なんだな」

 ………………こくん

「……さっき、店でオレのことをえっちとか言ったよな」

 ……じた……ばた……

「ついさっき、オレをえっち呼ばわりして、えっちなことは優しく紳士的にしないといけないとも、言ったよな」

 念を押すように「言ったよな」に力を入れて耳許で囁くと、遂に帆波は力尽きた。

 残された力で、ふるふると頭を振りながら目を潤ませて横目で見上げ許しを請うてくる。

 あまりに弱々しく欲望を沸き立たせる姿、素直に欲望に従う。

 許さず責める。

 

「……んっ!?」

 

 がしりと帆波の乳房に右手をあてがい力を込めると、圧力に反応して帆波の汗だくの肢体が震える。

 生硬い張り詰めた感触を柔らかい生地越しに、手一杯使っても収まらないどころか手が沈み込む熟していない果実を味わいながら耳に囁く。

 

「えっちなのは誰だと思う?」

「…………っ!?」

 

 ふるふると首を振って抵抗する帆波の乳房に少しずつ力を入れる。乳房は大きくても張りがなければ味気ないが、帆波のものは若さだけでない、みっちりと肉が詰まったものだ。揉みしだけば揉みしだくぼど味が出てくる未開発の乳房。

 これを好きなだけ味わう瞬間のために、今は味わわずに舌なめずりしながら追い立てる。

 

「部屋に呼ばれただけで勝負下着に着替えるような、紳士的に優しくする意味があるか疑問になるようなえっちなのは誰だ?」

「……ほ……っ……んんっ」

 

 大切な乳房を、優しく愛されるのではなく暴力的に弄ばれながら責められる羞恥に「ほ」と呟いた後、視線を反らして唇を噛み締め黙り込む帆波の、生硬な乳房を下着ごと握りしめ手を埋もれさせる。快楽を与えるのでもなく労わるものでもない、モノを扱うような揉みように苦痛と羞恥に呻く。

 

「い、痛いよ……許し……んんうっ」

「ほ?何だ?」

 

 さらに強く握りしめると、ガクリと何もかもあきらめたように俯き、りんごのように耳先まで真っ赤に染め、まるで悪戯をして窘められた幼子のように帆波が涙声で呟く。

 

「ほ、帆波……です。おにいちゃん……」

「丸くなって手で隠しているから胸がよく見えない。もっと見えやすいように胸を張れ、えっちな帆波」

 

 あまりのセリフにぱくぱくと口を開け、肩にあごを乗せたオレの輪郭を許しを乞う視線で一巡させる。

 が、微動だにしないオレを見て覚悟を決めたようにギュッと目を瞑り手を降ろし震えながら胸を張る。

 楔を打ち込んだ、これで全うに性交ができる。




今回は、甘やかして?あげました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波③

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

何とか日曜日に投稿できました。


「もっと見えやすいように胸を張れ」

 

 そうオレに指示され、帆波は泣きそうな表情でギュッと唇を噛んだものの、言われるがまま背筋を伸ばして胸を張っていた。

 背中をオレの胸に預けた帆波を後ろから抱きしめ胸に触れる。

 

「んっ……」

 

 痛みしかなかった先ほどとは違い、ただ置かれた手のひらからは熱しか感じられず、帆波は切なげな吐息を小さく漏らしただけで手で振り払おうとはしない。

 降ろした手を握り締めふるふると震わせながら迫るときに覚悟を決めた。

 

「触るぞ」

 

 耳元で囁くと、帆波は目を閉じて小さく頷く。手に力を込める。

 乳首を避けるために隙間を開けて掴んだ二つの手のひら越しに、衣服越しのたっぷりと量感が伝わる。下着の柔らかな手触りとカップの硬さ、それらを吹き飛ばす下着越しでもわかる、ふにゃふにゃとした肉感的な柔らかさ。

 そっと押し込むと、指を押し返すような張りが伝わる。その感触が、この乳房の持ち主が未だ18にもなっていないと教えてくれる。

 

「お、おにいちゃんっ……ど、どうかな」

「いい胸だ。揉み甲斐がある」

「そ、そうっ……」

 

 指を曲げると、指先が下着のふちに引っ掛かり、その内にある素肌に埋もれていく、下着に覆われた場所とは違うマシュマロと呼ぶには柔らかすぎる、胸の脂肪。少し指が沈み込ませばゴムまりのような弾力で返してくる若々しい張り。

 透き通った美肌も相まって、ずっともみ続けても飽きない絶妙な触り心地の乳房だった。

 乳首を避けてしばらくこねる様にもみ続けると、帆波がオレと視線を合わさないまま呟くようにいって来た。

 

「あ、あの……おにいちゃん」

「何だ、帆波」

 

 指を帆波の乳房に埋もれさせたまま動かしながら答える。あまりにも楽しすぎて、到底やめる気にはなれない。

 

「えっと……こういうのなの?」

「何がだ?痛かったのか」

「ううん、ちょっと熱いくらいで痛くないんだけど……楽しいのかなって?飽きたり、しないの?」

 

 乳房は、そもそもあまり性感帯ではない。9割がたが脂肪の塊で通っている神経が少ないからだ。だから、帆波のような巨乳は神経の間が開いている上に脂肪が厚いからなおさら感じにくい。

 俗に、巨乳の女は感じにくいといわれる所以だ。

 これで少しは開発されていれば話は別だが──

 

「……?」

 

 不思議そうな顔の帆波は予想通り全く開発されていない。

 だから、強く揉むと痛みしか感じられないと見込んで優しく丁寧に揉んでいる今、なにも感じない帆波には何の意味もなく自分の乳房を触り続けるオレが疑問にしか思えず、羞恥と呆れを混ぜ合わせた表情になっている。

 

「とても楽しい。だからもう少しさせてくれ」

「うん……」

 

 呆れの色を濃くしながら帆波は、素直に頷いて安心したような息を漏らす。

『えっちな帆波』呼ばわりされ恥ずかしい姿勢を強制的に取らせれたのだから、どんなことをされるのかと未知の世界であるセックスへの不安が増大していたのに、現実は夢中になって優しく胸を揉むオレでしかない。

 自分の乳房を揉まれて熱いし恥ずかしいが、痛くも痒くもない。正直、拍子抜けしているのだろう。

 全身からこわばりが抜け、どこかホッとした『なあんだ、セックスってこんなもんか』と安心した空気をまとっている。

 余裕が戻ると、飽きることなく夢中で自分の乳房を触るオレの手に愛しさ混じりの可笑しみを覚えたらしい。頬を紅潮させて、くすりと笑い熱い吐息を漏らす。

 

 その吐息を感じ、そこそこ準備ができたと判断できた。頃よし、さて本気で触るか。

 

「ぴあっ」

 

 ただ鷲づかみに揉むのをやめ、手をドーム状にして乳房を下から掬い上げるようににたぷたぷと触り始める。

 突然手の動きが性感を刺激するものに切り替わり、甘美な刺激を与えられた帆波が目を丸くして驚きの声を上げる。

 まったく開発されていないし鈍めだが、性感帯はちゃんとある悪くはないな。

 畜生なことを考えながら心配げな言葉を出す。

 

「どうした帆波」

「な、なんでもない……ちょ、ちょっと、ピリって……にゃ?そ、そんなとこっ!?ひんっ」

 

 深い胸の谷間に手を突っ込み、柔らかな胸圧で手を押し潰されながら谷間の間を優しくさするように撫でると、今度は膝の上で弾みながら口を覆って押し殺した悲鳴を上げる。

 

「本当にどうしたんだ帆波?」

「ど、どうしたって、何か痺れて……ひぅっ」

 

 すっとぼけながら、ブラの上からうっすらと浮いた青い血管をなぞるように外周から内周へ優しく螺旋を描くように触っていくと、痺れのような痒みのような甘美な違和感が生まれては消える感覚に帆波は少し鼻にかかったような悩ましい喘ぎ声を上げて悶える。

 

「にゃ、にゃにっ、何なのっ?こんなところでっ……痺れて痒っ……くふぅっ」

 

 乳首の敏感な部分では知っていたとしても、ここまでのは体験していなかったようだ。乳房を触られて生じる、生まれて初めて知ったむず痒い違和感に帆波が怯える。

 

「何だと思う?」

「ひんっ……んっ……わからっ、ひゃんっ……」

 

 オレが触る度に違和感がシンクロして強くなり、呼吸が乱れ声が高く嬌声へと変わる。

 少女の色を強く残した女へと咲きかける蕾の甘く熱い声が、部屋に響き出す。

 

「あっ! んぁぁんっっ!」

 

 ついに外から内に寄せるように揉まれて快楽の喘ぎ声を上げた。さっきまで同じことをされても一切の快楽を得られなかったのに、今は違うことに戸惑うがもう遅い。

 背後から乳房の下を支えるように揉むという、女性が一番乳房を揉まれて感じられることをされ続けた帆波の体は快楽の味を覚え身に染み込ませたのだから。

 

「教えてやる」

「ひあっ……にゃ、にゃにっ?……ひんっ」

「こういうの何だよ。セックスはな」

 

 セックスを甘く見て安心した所に快楽を焚き付けられ、パニック状態で悶え続ける帆波の乳房を掬い上げるように愛撫しながら、さっきの疑問に優しく答えていじめてやる。

 

「お、おにいちゃんっ、へ、変な……変な、感じがっ……あんっ……んっ……こ、怖いっ……んんっ」

 

 波のように続く性感に答える余裕さえなく、帆波は白くて張りのあるぷりんとした尻を膝の上で揺すりながら悶える。

 潤んだ眼差しの帆波は喘ぎ声を聞かせまいと必死に口を押さえるが、更に優しくネットリとみっちりと肉が詰まった乳房を愛撫され声が漏れ続ける。

 

「ひうっ……んっ……」

 

 だが、まだ官能の入り口に入っただけだ。直ぐに脱け出される。

 責め手を変えようと左手で乳房の谷間の間をくすぐるように愛撫しながら、右手を括れたウエストを撫で上げる。

 

「ひゃっ……くすぐった……ひんっ!」

 

 刺激の変化球に、むっちりした腿を跳ねて高い嬌声を上げる。

 思った通り、最初の鈴音と同じく性感はまだまだ発展途上だから、単純にくすぐった方が刺激として素直に受け入れられるようだ。

 

「なるほど、ここが、いいのか」

 

 膝の上に乗せたまま柔らかなウエストを両手で鷲掴みにして揉み込んだり、撫でて滑らさを堪能する。

 

「にゃ、お、おにいっ……ひゃんっ!」

 

 爪の先で撫でるように掻いてやると、帆波もムチムチとした抱き心地のいい体を悶えさせる。

 

「ひっ……ひっ……」

 

 乳房と尻があれだけ発育が良いからウエストもと思えば、ほんの少し掴める程度のものだ。肉がつくところにはついて付かないところには付かない極上の身体、そんな身体の持ち主に「ひっ、ひっ」と泣きが入った情けない声を上げさせる愉しさ。

 

「お、おにい、ちゃん……脇は止めっ「わかった」にゃ?ああっ!?……」

 

 要望通り、ウエストを愛撫していた両手をそのまま肌に滑らせて二つの乳房を掬い上げ、根本を擦り出す。

 ブラジャーに包まれているのもあるが、揺さぶっても上下もしない。それほどの幼い硬さを併せ持つ柔らかい乳房を揉み込む。

 じんわりと熱を持ってきた乳房は、ブラジャーを湿らせるほど汗ばんできた。

 

「まあ、まだ硬いが、一晩も揉み続ければ柔らかくなるな」

「に、にゃあっ……ひあっ、そんなことしたら、んんっ、私、壊れちゃうよ……や、やめっ……んんっ……」

「うん、間違いないな」

 

 まるで物か何かのように自分の体を品評されながら弄られるのを、制止しようとする帆波の機先を制する。

 そんな状況で、いきなり間違いないなどと言われ息を飲む帆波の乳房の付け根の乳腺を、指先でアンダーバストから肩先までゆっくりと擦るようにフェザータッチしてやる。

 

「あんっ……な、何を?」

 

 その刺激に快楽にたゆたい始める意識を、首を振ってこらえた帆波がおずおずと聞いてくる。

 

「宣言通り、手で確かめたお前の胸の重さと推測されるバストサイズだ。おおよそ、800g強。小玉スイカくらいか……Fカップのアンダー70だな、当たっているだろう?スイカの帆波」

「にゃ、にゃあぁぁっ!?ひ、酷っ……ひゃんっ……ひんっ!」

 

 持ち上げるようにずしりとした重みを味わいながら、帆波の乳房の大きさを当てていじめてやり、頭の中のガードを崩してやる。

 建て直せず、快楽を感じやすくなった帆波は、スイカスイカと耳に囁く度にむっちりした脚まで赤く染めて悶えイヤイヤと首を降る。

 

「あっ、ひっ、やっ、あっ、あんっ……ひんっ、またっ脇っ……なのにっ、なのに、むね、むねがぁっ、ひゃんっ!?」

 

 擦られピクリピクリと身体を震わせれば、ブラの中で起立した乳首がその度に擦られ快楽を帆波に叩きつけ、身体を跳ねさせ大きな桃尻を膝の上で弾ませる。

 

「や、やだっ、な、何か、何か、身体の奥から、何か、来ちゃうよ、お、おにいちゃん……ぁ……」

 

 未体験の衝動に怯え、ピンと張った腕をすがるように伸ばされ、優しく手を取ってやる、

 

「帆波」

「お、おにいちゃん……んっ」

 

 救われたような笑みを浮かべる帆波に、優しい一言を添えてやる。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「お、おにいちゃんのば、か……ひんっ、んっ、んっ……お、おっぱい、さ、さわったら、何かが来ちゃう……よ」

 

 何故か怒鳴りそうになる帆波を、おにいちゃんとして落ち着かせる。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「ひあぁぁっ!?む、胸っ、潰れっ、ひんっ!?」

 

 乳房を手の側面で中央に寄せるようにしてグリグリと押し込むと、隙間なく一つの塊になった乳房が搾り出されるように尖らせた形になる

 

「つ、潰れちゃう。潰れちゃうよ、おにいちゃ、んぁんっ!」

 

 手を離す。

 若い乳房はブラ紐をたゆませながらブルンブルンと音が聞こえるように弾ませながら、すぐに形をもとの美しい形に戻す。

 それを何度も続け、帆波に圧迫快楽を教えていく。息を荒くして悶える少女の乳房を揉み押し潰す。

 その度に涙を流しながら許しを請い助けを求める少女の嬌声。それに聞き惚れながら、ブラに包まれているからこそ痛みを抑えて育てられる愉悦を味わう。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「ひんっ、ね、根本、ねもと、こすっちゃ?……え?あ、あうっ!?あうぅんっ!んぁぁあぁっ!にゃ、にゃにいっ!?」

 

 乳房の根元付近に指先を沈めて身体の中心に振動を与えるように掬い上げるようにリズミカルに刺激してやると、背中を弓なりに反らせてたまらないとばかりに長い髪を翻し汗を飛ばしながら首を振る。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「お、おにいちゃん……ひぅっ……ん……っ、ひあっ!だ、だめぇっ……だめっだめ……」

 

 言葉では嫌がっているが、丁寧に快楽を与えられた女体は明らかに悦んでいた。

 締まった腰をオレの膝の上で悩ましげにくねらせる帆波の手を埋もれさせるほどの白い脂肪の塊から、早鐘のような鼓動が伝わってくる。経験したことがない暴力的な快感に帆波の甘い喘ぎがもれる。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「…………ふぁぁっ!?……ぁ……そ、そこ、ダメっ、きた、汚いよぉ」

 

 帆波の汗で湿らせた指先で、臍を擦ってやり、指先に付いた垢を見せてやると真っ赤になって顔を俯かせる。

 

「うぁぁ、あっ……」

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

 

 全く口調も変えずに同じ言葉を繰り返しながら自分の体を弄り続けるオレに、ついに抵抗をあきらめた帆波が口を開く。

 

「……は……はぃ……んっ」

 

 小さい声だ。どうやら帆波は声の出し方を忘れたらしい。

 仕方ない、思い出させてやらなければ。

 優しく乳房を愛撫され快楽に踊る帆波の華奢な肩に乗せたオレの唇に、帆波の垢が付いた指をこのままお前の垢を舐めとると言わんばかりにゆっくりと進めながら抑揚を変えずに平然と言う。

 

「で、カップFのアンダー70で合ってるか?」

「は、はいっ!?そうだよっ!そうですっ!帆波はカップFのアンダー70のトップ95です……だ、だから止めっ……」

「よく言えたな」

「……にゃっ!?……んっ……な、なにっ!?あっ、あっ、あふあうっ!」

 

 顔を林檎のようにして慌てて絶叫しつつ答えを言ったご褒美として、未知を贈る。

 脇の下から乳房の裾まで、ゆっくりと押し上げるような軽い圧迫をしながらなぞり、脇腹まで優しくなぞってやると、肢体がビクンビクンっと跳ねた。

 軽いものとはいえ、とうとう絶頂したのだ。

 パンティに広いシミが広がっていく。

 

「んぐっ!?ぐっ!んんっ!」

 

 咄嗟に口を手で覆い、歯を食い縛るが、それでも隙間から獣のうなり声のような嬌声が噴き出す。

 お尻を何度も震わせ、腹筋が、太ももが、二の腕が、張り詰め痙攣して波打つ。

 突然白くなった視界に自分の身に何が起こったのかと帆波が苦しそうに息を荒くする。

 

「んっ……な、なにっ……これ?」

「イったんだよ。絶頂したんだ」

「ぜ、絶頂……?」

「さて……次だ」

 

 帆波の軽い体を揺らさずに持ち上げて、座る位置をずらす。壁に立て掛けてある姿見に向かってベッドに座り込む姿勢を取り、ぼうっとした帆波に声をかける。

 

 

 

「にゃ……次ぃ?」

 

 ぼんやりして反射的に言葉を返した私、一之瀬帆波の瞳に焦点が合い、湯気が出るほど火照らせた肢体を下着で包んだ少女が男の膝に乗った姿が映し出される。

 フルカップのブラジャーは肩にかかっていたストラップが上腕に落ちたために、はだけてしまい薄ピンクの乳輪が見え隠れしている。ピンと尖った乳首がカップ上辺に引っ掛かっていなかったら、そのまま落ちていただろう。

 パンティもずれ、尻が大きいため引っ掛かっているが、ふっくらと盛り上がった白い恥丘と、ピンクに見える赤毛混じりの金髪の陰毛が見えかけている。だけじゃない、何かヌラヌラと光る液でパンティ越しに股の割れ目がうっすらと透けているほど湿っていて、湯気のようなものが上がっている。

 汗だくの肢体が荒い息を吐く度にそれらが揺れ落ちてしまいそうでしまわない様が酷く淫靡だ。

 あまりにえっちな姿に目を背けたくなるけど、出来ない。

 蕩けたようにぼんやりした顔に見覚えがある。これって、この、恥ずかしいなんてものじゃない、えっちな格好、してるのって、まさか……

 鏡に映る少女が目を剥き、顔色を赤白青と切り替えている姿に、信号機みたいだと現実逃避した時。

 鏡に映る少女の股に、少女を膝に乗せた少年の手が伸びて陰毛を引っ張る。痛い。

 くいくいと濡れた陰毛を引っ張り根元の色を確認した少年は、得たりと頷く。

 

「やっぱり地毛なんだな」

 

 どっからどう見ても鏡に映る痴女は、おにいちゃん綾小路清隆くんに陰毛を好き放題に引っ張られているのは、

 私、一之瀬帆波、です。

 

「にゃあああああああああ!!!???」

 

 一之瀬帆波、今までの生涯最大の悲鳴だった。




鏡プレイです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波④

Kosugi1305さん、評価付けありがとうございました。

週一でなんとか頑張ってます。



「降ろしてええええ!?やだああああぁっ!?鏡やああああだあああぁ!?」

 

 防音工事(自作)をしていなければ、間違いなく隣近所に怒鳴り込まれたほどの絶叫。それを上げてからずっと泣き叫びながら暴れる帆波。

 鏡に映る可愛らしい顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら必死に訴えかけてくる姿に、逸物を勃起させるほどの興奮を覚える。

 

「何度も言わせるな。大人しく鏡を見るんだ、すごい格好で体液垂れ流しているえっちな女の子を見れるぞ」

「だめぇぇ、見ちゃだめぇぇ!?見せちゃだめぇ!?」

 

 渾身の力を入れていても、オレが女の細腕に微動だにするわけがなく、淡々と帆波の顔を鏡に向くように固定して責める。

 オレの軽口は帆波にとっては絶望的な言葉だったらしく、血の気が引いた表情で鏡から目を剃らしながら全身を震わせ暴れまわる。

 

「何より、暴れてだんだん下着が脱げていって大切なところが見え始めているところなんて……たまらないぞ」

「ばかああっ!おにいちゃんのばかああっ」

「こら、下着を直そうとするんじゃない」

「やだああああっ」

 

 ひんひんと泣き叫びながら必死で下着を直そうとしても疲れきった手ではうまく直せず、見ながら直すしかないと仕方なしに鏡を見る。すると見てはならないものが映っていて、肢体を紅潮させ涙をあふれさせる。

 荒い呼吸を吐きながら瞳を潤ませ、汗でべっとりとした裸身に髪を張り付かせているのはまだいい。上はピンク色の乳輪の上辺さえ見え始め、下は開いた股の先に白い恥丘を覆う薄めの陰毛の上半分をさらしている。

 そんな下着がはだけてしまった恥ずかしい姿を。

 それも、男の膝の上に跨っているあられもない姿をさらすことは、清い乙女に耐えられるものではない。

 

「にゃ、にゃあああっ……胸っ、おにいちゃんに、胸とあそこ……見られちゃたぁっ……」

 

 自分がどんなに恥ずかしい格好なのかはっきりとわかり、膝を閉じ下着を手で覆って悲痛な声を出す。

 一度イカせても、半裸の姿を見るだけで、顔を真っ赤にして引き攣らせるほど帆波はウブだ。

 無防備ともとれる距離感の理由の一つはこのウブさなのだろうな。

 

「帆波、綺麗な体だぞ。隠す必要なんてない」

「あ、ああぅっ、ばかぁっ」

 

 そんなことを考えながら酷いことを言い、膝を割り股を開いて胸を隠す手をどかす。帆波が顔を真っ赤にして必死に隠そうとしても、万力に挟まれたように腕も膝も動かない。

 しばらく足掻いて居たが力尽きてしまい、荒い呼吸で懇願してくる。

 

「……おにいちゃん……お願い、下着、直させて」

「大人しく鏡を見るか」

「……見る、見るから、お願い」

「なら、鏡越しでオレと目を合わせろ」

「ぅぅっ」

 

 鏡越しで目が合い、自分の淫らな格好とそれをオレに見られていることを改めて認識し、身悶えしながら健康的な白い肌を上気させ桜色になる。

 

「にゃああっ、こんなっ、こんなのっ」

「肌が段々紅くなっているな。恥ずかしいのか?」

「は、恥ずかしい、よ。だから、もう、明かりを、消して……」

 

 願いに答えず、視線をオレから反らせず時間がたてばたつほど肌を紅く染めていく少女を存分に視姦する。

 顔から胸、胸から腹、腹から股間へ、視線を下ろす度に帆波はピクリピクリと震えて紅くなる。

 

「う、ぅぁあっ」

 

 胸と股間だけでも隠そうと下着に手を伸ばす。

 それは止めない。が

 

「ひんっ」

 

 腕で胸を覆うように隠したり膝を閉じて股を隠そうとすれば、無言で帆波の腕を止めて視線で促す。見え隠れするエロチズムは愉しくても、全く見えないのは愉しくない。

 そんなオレの行動に帆波は、ふるふると首を振って嫌だと意思を示したから、言葉で命じる。

 

「明かりは消さない。このまま、下着を直せ。鏡から目を逸らすなよ」

「……うぅっ」

 

 まだ、いやいやと首を振る帆波の腕を万歳させる。ぶるんと鏡の中で乳房が大きく揺れてブラジャーを引っ掛けていた片方の乳首からブラジャーが外れそうになる。

 このままでは明かりの下で裸を晒すことになる、鏡に映し出されながら。

 さあっと血の気が引いた帆波にごくごく自然に話しかける。

 

「返事は?」

「……は、はぃぃ」

「良い返事だ。鏡を見たまま、ちゃんと胸を反らして股を開け」

「……は、い」

 

 大人しく従わなければ段々酷くなると理解した帆波が、胸を反らして乳房を揺らし膝を開き股を晒すと、拘束していた腕を解放する。帆波は、ぐすぐすと羞恥で新しい涙ををあふれさせながら何とか下着を整え始める。

 ブラジャーを直そうとするときに、自分の乳房がどれ程イヤらしく歪むのかを知り熱い吐息を漏らし、乳首を擦らせ表情を肉悦に歪ませる自分の顔を見てしまいオレに見られているのだと羞恥の涙を流す。

 が、ブラジャーはまだ良かった。

 

「ひゃんっ」

 

 パンティを直そうとして、くちゅりと小さな音を立ててしまいびくりと全身を震わせ、鏡越しにおずおずとオレを見る。気付いていない振りをするオレに安堵の吐息を漏らす。が、その代わりに、音をさせないように細心の注意を払うことになってしまった。

 

「あ、あぅぅっ、ぅんっ、ひぅぅっ」

 

 少しでも音を誤魔化すために鼻声ですすりながらパンティを整える。

 オレの膝の上で自分の恥丘が歪ませながら陰毛をパンティの中に音がしないようにしまいこみ。ウエスト部分を腰にまで上げるために、オレの膝の上で腰を浮かそうとする。

 すると、股を開いた姿勢のために鏡に大切な割れ目が映りかける。

 

「ひっ!?」

 

 一瞬凝固したが、何とか冷静になって、何とか映らないように音がしないように、体液で湿ったパンティをずり上げる。尺取り虫のように身悶えして、少しずつ柔らかい脂肪が乗った股をイヤらしく歪めながら、自分の尻がオレの膝の上で歪み、尻の割れ目が呼吸をするように僅かに開いては閉じるのを繰り返しながらパンティを上げきる。

 

 その全てを鏡越しで自らの目で見た帆波は、整えたときには全身を火照らせて汗だくで息も絶え絶えとなった。

 

「はぁ、はぁはぁ、はぁ、はぁっ……」

 

 荒い呼吸音を聞きながら、くちゅりと音がした時に無視した自分の判断に満足する。

 見応えのあった光景もだが

 

「はぁ、はぁ、はぁっ、はぁはぁ……」

 

 もう帆波には、抵抗する力どころか叫ぶ力さえない。残り少なかった体力と気力は、初めての絶頂と鏡越しで肢体を見せられて嬲られているうちに、空になった。

 今の帆波は男に好きにされるだけの、まな板に乗せられた材料となってしまった。

 聡明な帆波がそれに気付かない訳がない。

 

「お、おにいちゃん……鏡、やめてよぅ……明かり、止めてよぅ……恥ずか、しいよぅ……見ちゃ、だめだよ……見せてもだめだよ……優しく、してよぉ」

 

 羞恥と緊張と疲労と恐怖で身体をカチカチに固めて、唯一出来ることをしてくる。下着を直した後も、言い付け通りに鏡越しに視線を合わせて、涙ながらに慈悲を請うという唯一の出来ることを。

 帆波にはそれしか出来ない。

 ついさっきの鈴音達の言葉の意味が今の帆波なら分かる。

 オレとのセックスがどういうものか、情欲のまま貪り喰われ嬲られるものだと、帆波は正確に理解した。

 止めようとしても「えっちな帆波」と言質を取られ気力体力が尽きた今は、止める術がもうないということも直感した。

 だから、おにいちゃんとしてのオレに懇願する。

 それならば、まだ希望があるからだ。

 

「お願い……おねが、い、おにいちゃん、お願いっ」

 

 追い詰められ、上目遣いの潤んだ瞳で懇願する帆波は気付かない。

 オレは、そんな帆波におにいちゃんと呼ばれるたびに心が沸き立ち、もっといじめてやらなくてはと思いを新たにしているのだと。

 

「仕方がないな」

「お、おにいちゃん」

 

 希望にぱあっと表情を緩める帆波だが、直ぐに凍りつく。

 

「少し落ち着かせてやる」

「……にゃ?……や、やああっ」

 

 何をしようとしているのか理解し、残り少ない力でオレを止めようとする帆波を、難なく無力化しながら肩越しに乳房に手を伸ばす。

 

「ああうっ!ひゃあっ!?」

 

 いきなり乳房を鷲掴みされ、甘い痺れを感じてしまった帆波は誤魔化すように悲鳴を上げながら前のめりになった。

 

「掴まないでぇぇっ……ああっ、ひィあんっ!?胸つかんじゃやだあああっ!?」

 

 帆波の柔らかな肢体が、腕の中でもがく感触を楽しみながら乳房を鷲づかみしながら一気に握り締める。

 

「っぁぁぁぁああああっ!?」

 

 さっきまで優しく揉まれていたのとは違って、最初の時のように強靭な握力で乳房を握られたからたまらない。

 帆波が全身をひくつかせながら痛みの混じった悲鳴を上げる。

 構わず、ぎゅうっと乳房を押しつぶすようにもみ続ける。鏡の中で手の力で形をオレの意のままに変えていく帆波の手が埋もれるほどの乳房。

 

「ゃ、ゃぁっ……い、っ、つぁ!ひっ……!」

 

 その光景を鏡越しで見てしまい、口元に手をやって目を丸くする息を呑む帆波の耳元で囁く。

 

「すごく、えっちな姿だろう」

「ゃっ」

「この、胸が形を変えて」

 

 言葉と同時に、乳房を揉むというより絞り上げる。手の中でぐにゅうううっと音を立ててとがらせていく乳房。

 

「ひあああああっ!?い、痛いっ!?だ、だめっ、おっぱいちぎれ……あうあっ!?

「元に戻る時なんて、特にな」

「あ、ぁぁぁぁっ!!??……い、痛いっ」

 

 ぶるんとたゆませながら、引っ張られた乳房が元の形のいい巨乳へと戻る。一連の行為を鏡に映され、強制的に見せつけられながら嬲られる帆波が腕の中で震える。

 もがくのでもなく怯えでもなく痛みに耐えるものでもない震え。

 

「震えているが。本当に痛いだけか」

「ひ、っああああっ!?や、やぁあああっ!?」

 

 火照り熱くなった柔らかな肉を強く握りしめると、どこか甘い色の籠った悲鳴を上げる。

 

「乱暴にされているのに、声が甘いな」

「っ……」

「感じているんじゃないのか。さっき優しく揉んだ時みたいにな」

「そ、そんなわけないよ!こんなに酷いこと、思い切り胸を握りしめられて感じるわけっ」

「ほぅ、思い切りか。なるほど……」

 

 目を細めるとビクリと帆波が震える。

 見せつけるように、帆波の胸の前で手を一度パーにする。怪訝げな視線を帆波がオレの手に集中すると同時に、

 

「ふっ」

 

 全力で拳を握りしめる。急速に圧縮された空気が手から逃れる時、パンッと爆竹が破裂するような音をたてる。

 

「ひいっ」

 

 どれ程の握力があればそんな馬鹿げたことが起こり得るのか、想像だに出来ないものを見せられた帆波が目を見開き悲鳴をあげて固まる。

 

「折角だ、帆波の要望に答えてやろう。思い切り、だったな」

 

 再びパーにしたオレの手が、ゆっくりと胸もとに迫るのを鏡越しで視線で追いながら、一瞬で青白い顔になり引き攣りながら首を振り続ける。

 

「や、やああめえてええっ!!??……お、おっぱい、おっぱいちぎれっ……」

 

 ぴたりと柔らかな乳房に触れると、絹を裂くような悲鳴が轟く。

 

「ひっ、ひいぃぃっ!?……あひんっ!?」

 

 今度は握りしめず──やわやわと柔らかな感触を楽しむように愛撫して甘い声を上げさせる。

 

「んっ……んんっ、あ……えっ?」

「甘い声だな。女の感じた声だ。痛いのを心待ちにして優しく触られたギャップを堪能する女の声だな」

「そ、そんっ……」

 

 勢いよく乳房を握る。全力ではなくとも強く、帆波の乳房に埋もれた指と指が互いに分かるくらいに強く握りしめる。

 

「つああああああああっ!?」

 

 目をカッと開いて大きな絶叫。

 恐怖から快楽を経由して安心してからの痛みと恐怖のジェットコースターを味あわせる。

 こんなことをされては心と体が耐えきれない。ガタガタと身震いし、フッと脱力したと思えば、全身蒼白となる帆波。

 あまりにそそる姿に、勃起した逸物をぶちこみたくなるが堪える。今は帆波を開発して快楽を覚え込ませるときだ。

 人は快楽には敵わない、いけないダメだと思っていても快楽の虜になってしまう。

 だから、性の快楽に帆波を溺れさせ抜け出せなくする。オレが性の快楽を味わうのはその後だ。

 そう、帆波をマゾヒズムの快楽で溺れさせた後で良い。

 

 ツン、と鼻をつく少量のアンモニアの香りを嗅ぎながら、自分が何をしてしまったか理解しガタガタと震えっぱなしの帆波の肢体を抱き締める。

 

「ひっ……ち、ちが、違うの、ちがうのっ……」

「何が違うんだ帆波?」

「ゆ、許して、許してぇ」

 

 ガタガタと震えながらポロポロと大粒の涙を溢す帆波。帆波の膀胱がほぼ空でなければオレの膝にまでかかっていただろうが、帆波のパンティを湿らせるくらいしか漏らしていない。が──

 

「ちがうのっ、ゆるして、ゆるしてぇ」

 

 そんなことは、男の膝の上で粗相をしてしまった帆波にはなんの救いにもなりはしない。

 百人が百人オレが悪いと口を揃える状況でも、人前で粗相をしたことに、ただ謝り泣きむせぶ。

 叫びすぎて枯れた声で、上半身を上下させるほどの荒い呼吸が、体力の限界を示していても謝罪を口にし続ける。

 

「気にするな」

「でもっ!だって……だってぇ!?」

「胸を強く握りめられて絶頂するほど気持ち良かったことを、誤魔化して謝る必要はないぞ。そんなことは恥ずかしいことじゃない、少し帆波がえっちなだけで良くあることなんだ」

 

 あれだけの精神ジェットコースターを食らって失禁しないほうがおかしい。極めて普通だと内心でだけ思う。

 

「……にゃ?」

 

 絶望・悲嘆に染まっていた帆波の顔色が、驚愕と懸念に染まり、希望と疑問の色が出てきたときに言葉を続ける。

 

「違うのか?胸が強く握りしめられてパンティを湿らせたんだ、それ以外にないだろう。それとも──」

 

 帆波の腹の膨れ具合から膀胱が空だと確信したからこそああしたのだ。膝の上で小便をさせて、小便臭くなる趣味はない。

 畜生極まりない思考をしながら、「それとも他に心当たりでも」と続けようとしたオレの言葉は予定通り遮られる。

 

「そ、そう、そう……えっと、痛いのに、何かへんで……お、驚いちゃっ、て、その」

 

 しどろもどろに、どっちつかずの言葉を並べ立てる帆波の背中を押す。

 

「気持ち良かったんだろう。気持ち良くて絶頂したならイッたと言うんだ」

「っ……!!」

 

 固まった帆波の顔に凄絶な色が浮かぶ。

 魂を売るか勇気をとるか。痛いことをされて気持ち良くなる変態と認めるか、男の──人様の膝の上で失禁するような形容も出来ない存在になるか。

 

 帆波にとっては無限とも感じられる、一瞬の葛藤の後、

 

「い、い、イッちゃってぇ……ぅぅっ……ひいいいんっ」

 

 嘘をつく後ろめたさに襲われながらも、魂を売り飛ばした帆波の乳房を握りしめる。

 

「可笑しいな、気持ち良いならさっきまでみたいに喘ぐはずなのに、まるで悲鳴のようだぞ?」

 

 疑問計の形をとった確認に、帆波は華奢な肩を揺らすが何とか平然とした表情を作る。

 

「う、うんっ……痛くて、気持ち、良いよ……ま、まだ、喘ぎ声ってよくわからない、から」

「そうか……なら、今から強く揉み続けてやるから、気持ち良いと言い続けろ。そうしていけば自然と喘ぐようになる」

 

 優しく教え諭しながら、細心の注意を払い乳首と乳輪をさけて、乳房を握りしめる。

 

「にゃぁぁぁっ!?……ひぃぐッ!?」

「また、悲鳴に聞こえるな。ひょっとしたらさっきは気持ちよくなかったのか?」

 

 また押し潰す。鏡に指の間からブラジャーに包まれた脂肪がはみ出し、汗だくの帆波の顔が歪むのが映る。

 痛い、だが痛いとは言えない。

 ここで痛みを訴えれば、膝の上で失禁したことが明らかになる。

 年頃の少女にとってこれほど耐え難い恥辱があるだろうか。それを避けるためには、痛め付けられて快感を口にする恥辱を自ら進んで口にする。

 

「ひぃあああああっ!?……き、気持ち、い、い」

「そうか」

 

 帆波は、枯れた涙声で詰まらせながらも粗相を知られたくないと健気に言葉を絞り出す。

 ギュウッと握り締めたまま、グリグリと柔らかな乳房を抉るように潰す。

 

「あぃぃぃぃぃっ!?……き、気持ち、いいっ」

「目を瞑るな。オレと目を合わせろ」

 

 指示に従わなかった仕置きに、帆波の乳房に手を当てて、グーを作って豊満な乳房の脂肪が指と指の間からはみ出て鬱血したように紅くなるまで絞る。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!!??」

 

 帆波は、今までと一線を画したあまりの激痛に、ピクンピクンと全身を震わせ意識を落としかけるも、痛みで意識を落とせず、口から涎を垂らしながら目を見開き視線をオレに合わせる。

 蹂躙され嬲り尽くされる自分の体を鏡で見て、パクパクと唇を開き首を振り必死に快楽を訴える。

 

「つぅぅぅぅっ!?き、気持ち、いいっ!?」

 

 パーを作り解放して帆波の荒い呼吸を聞きながら、ブラジャー越しでもオレの手形に紅く染まった乳房を見る。

 痛みでヒクヒクと震える帆波は、鏡越しで紅く染まりあれだけ苦労して整えたブラジャーがぐしゃぐしゃにはだけたのを見て、悲しげに目を細める。

 見せつけるようにゆっくりとグーを作って乳房を鷲掴みにして、外に開くように乳房を引っ張る。

 普段は、深い谷間の間に隠されている真っ白な肌が露出し、体を洗うときにしか見ない部分を鏡に映された帆波が頬を染める。

 そのままゆっくりと絞り出せば、引き伸ばされたブラジャーの前中心がミシッと音を経てて破けそうになる。

 

「にゃあああっ!?や、破け……っ!」

「ん?」

「……っ!いいっ!気持ち、いいっ!?」

「そうか、気持ち良いか。痛いのが気持ち良いなんて中々無いぞ。流石はえっちな帆波だな」

「っ……ぅ……き、気持ち、気持ぢいい゛っ、きもちいいよぉっ」

 

 鬼畜責めに、むせび泣きながら粗相を知られたくないと耐える帆波。

 健気な帆波に、パー、グーを繰り返し強い愛撫を続ける。

 

「ひぐっ、うぅっ、き、気持ち良いっ」

 

 帆波の乳房が紅く染まってパンパンに腫れたように膨れ上がり、手形の赤で白い肌が見えなくなっても「気持ち良い、気持ち良い」とうわ言のように帆波が啜り泣き続けている。

 鏡に映った自分の姿を直視する。

 そこには、半裸で扇情的な身体を愛撫されて悶える女の姿があった。

 表情をみる、痛みに歪めた顔だ。

 痛々しくも、それは救いでもあった。

 もし、そこに映る己の顔が優しく愛撫されたときのように優しく蕩けていたとしたら、帆波の心はどうなっていたか。

 

 そんな、痛みしかなかった時間は何時か終わる。

 10分ほど乳房を強く揉み続けると、ついにその時が来た。

 

「つぁぁぁぁぁぁんっ!?……っ!?」

 

 痛み混じりだが、痛みとは違う明らかな感じた声に帆波は口を押さえ蕩けた目を白黒させる。

 

「喘いできたな」

 

 そう、気持ち良いと言葉で言い続ければ、身体はそうしようと認識して適応してくるのだ。

 性的絶頂にはまだまだ未完成の軽いものとはいえ、激しい感情の高揚を味わい、息を荒く体を上下にしてぼんやりと呟く。

 

「喘、ぐ?」

「言っただろう。本気で感じてきたんだよ」

「っ!!??……し、知って」

 

 粗相を知られていたことを悟り蒼白になった帆波の唇に指をたてる。何も言わなくて良いと。

 

「帆波が強く揉まれても気持ちよくなるようになった。今起きたのはそれだけだ。それ以外何も起こっていない」

 

 オレの言葉を帆波は正確に理解した。

 酷いことをしたが、それは粗相という一生の恥になりうる取り返しがつかないことをお互いの心の棚に上げるためにしたことだったと。

 目を潤ませた帆波は、こくこくこくと頷き、感謝と感動と尊敬の色を視線に乗せた。

 

「お、おにいちゃんっ」

 

 目をきらめかせスッと筋の通った鼻の下の唇を震わせて抱きついてきた。

 

「いきなり鏡に映して酷いことし始めたから、鬼畜だと思ってたよ」

 

 抱き締めたまま背中を叩く。

 

「思い切り握りしめたら空気が破裂するなんて漫画みたいなこと出来る身体能力隠してたから、隠し事ばっかりの鬼畜っていうどうしようもない凄い人だって」

 

 バシバシ。

 

「その後も、恥ずかしくして痛い酷いことずっとしてるのに、鏡越しで合った目が凄く嬉しそうだったから。

 ああ、おにいちゃんってサディストだったんだって、とんでもない人好きになっちゃったなあ。正直、早まったかもって思ってたけど」

 

 ぎゅっと抱き締めて頭を胸に乗せてくる。

 

「でも、やっぱり優しいところもあるんだね。ありがとう……大好きだよ」

「何で畏まるか分からないが、おにいちゃんなら当たり前のことだ。気にするな」

 

 言いながら頭を優しく撫でてやる。

 

「うんっ。にゃはは、にゃはははは」

 

 これで帆波の中で、オレは粗相を明かにせず腹の中にしまい込んで納めてくれた相手として信頼を深めた。サディスト行為をしても受け入れるだろう。

 帆波にマゾヒズムの快楽の第一歩を教えて溺れさせるのも巧く教え込めた。

 まさに一挙両得だろう。

 ……オレが粗相をさせ嬲るのは、もう少し慣れてからにすると知る鈴音たちが見たら殺されそうだが。

 

 気にせず、帆波に水分補給をさせながら避妊薬を飲ませる。

 

「えへへへ」

 

 その間、頭を優しく撫で続けると帆波は童女のように無垢な笑みではにかんだ。

 豊満な身体とのギャップがあるはずなのに、目に見れば違和感なく可愛らしいと思えるのは、帆波の魅力なのだろうな。

 

(そういえば、鈴音が挿入の前に素股をして欲しかったと言っていたな)

 

 布地が伸びボロボロになってしまい捨てるしかない下着に包まれた魅力的な肢体と、壁に嵌め込まれた姿見を見ながらそう思った。




まだ、下着さえ脱がしていないことに戦慄しています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波⑤

オールナイトオークションさん、評価付けありがとうございました。

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


駆け足になった気がするので、二話に分けるべきだったかと後悔しています。



 少し休ませたあと、今度は優しく乳房を愛撫する。

 ただ自分の欲望ばかりをぶつけるようなものでなく、いたわりさえ感じられる手つきに、絶頂を知り性感が敏感になった帆波は蕩けた笑みを浮かべる。

 

「ひあんっ……うぅんっ、ああっ」

「優しい方がまだ気持ち良いか?」

「うんっ、胸が熱くて、ピリピリするのが気持ち良い」

 

 鏡で自分がどんな風に胸を揉まれているかを見せられても、もう帆波は誤魔化さない。快楽の欲望を積極的に満たすまでいかなくとも、受け入れるようになった。

 粗相を腹にしまい込んだ甲斐があったと満足し、一転して強く握りしめる。鏡の中で絞られるように歪む乳房。

 

「ひぃぁぁんっ!?」

「こっちはどうだ」

「あ、あうっ、ビリッて強いのが弾けてじわじわ熱くなるのが気持ち良い……けど、やっぱり痛いよ。優しい方が良いな」

「そうか。なら、優しい方を多くする」

「にゃ、にゃはは、うん、お願い。おにいちゃん……はぁぁっ」

 

 緩急をつけて愛撫すれば、帆波は素直に快楽に浸る。

 今の帆波には、羞恥はあっても拒絶はない。

 強く握りしめられ歪む乳房と、優しく揉まれ形を変える乳房、鏡の中での乳房の形は違えど表情は蕩ける姿を映され続けた帆波のセックスに対する認識は変わった。強制的に変えた。

 

「んむぅっ!?」

 

 満足し、右手を離し帆波の顔を押さえて、強引に唇を奪う。鏡の中の帆波が目を見開いてるのを視線で犯しながら、畳み込むように唇をねじ込む。

 

「んっ……んふ……んあ、んっ、んんん……っ!?」

 

 悩ましげな声を上げながら、オレの首に手を回す。横目でちらちらと鏡を見ていたのはほんの一瞬、初めて自分から舌を動かしてくる。

 ただ夢中でオレの舌を舐めるだけの拙い舌使い。汗で薄くなったシトラスの香水と帆波の若葉や朝露にも似た体臭が混ざり漂う。

 芳しい香りを嗅ぎながらディープキスのやり方を教える。舌を咥えるようにして帆波の緊張が緩むと同時に絡めて、オレの口の中に連れ込み、上あごや歯茎に帆波の舌を連れていき、上あごを何度も舐めさせ、歯茎を歯列をなぞるようにぐるっと一周させて舌を開放してやる。

 

「んむぅっ!?んんっ、んん……」

 

 舌は解放しても唇は解放しない。じっくりと唇を触れ合うだけのキスを繰り返しながら、乳房をこねくりまわしてやる。

 

「んんんっ……!?」

 

 ピクリと体を震わせ手をだらりと垂らす。その手を絡ませ視線を絡め、正面に身体を向き直らせ抱きとめて次へ。

 

「ぷはぁっ、はっ……んむぅっ?んんっ、んん……」

 

 とろとろに火照った帆波の口内に舌を差し入れ、教えた通り、上あごと歯茎を愛撫して心地好い快楽を実感させ、視線でオレの舌を絡めるように促す。

 おずおずとオレの舌を舐めていくうちに、火照った表情は蕩け、目はうっとりと潤む。

 

「はふぅ、んむっ、んんっ、あぅっ……」

 

 キスのやり方を理解した帆波は、教わったやり方と独自のやり方をやってみようと挑んでくる。

 ちろちろと味わうように舌を舐めては、小鼻を膨らませ口内をすぼめてオレの舌を頬で揉み解し、口全体でオレの舌を味わう。

 それで良いと優しく頭を撫でてやると、心地好さげに目を細め、何度もキスをしてくる。

 教えたものと独自に考えたキスで、まるでオレを自分に繋ぎ止めるように帆波は何度も舌を絡め口内を舐めしゃぶる。

 

「んっ……こくっ、ん……っ、んくっ……」

 

 ぴちゃぴちゃと、室内に水音を響かせながら、オレの唾液を当然のように飲み込み喉を鳴らす。

 絡みつき、交わいあう。

 舌を絡めあうキスを積極的に押し付けあい、唾液がオレの膝にかかる。帆波の膝にもかかっているはずだが、気にも止めず、はしたないくらいに情熱的に、呼吸が苦しくなるくらいに柔らかい唇と舌を合わせ味わいあう。

 

「んんっ、んちゅっ、ちゅんっ、んふっ……はぁぁっ」

 

 帆波の身体から徐々に力が抜けていく、緊張と恥辱で強張っていた身体が、キスの快楽で脱力してオレにもたれ掛かる。

 そんな帆波の背中に回した手で、崩れそうになる豊かな身体を支えながらキスを楽しんだ。

 すうっと、互いの唇がどちらともなく離れる。

 

「帆波……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁっ……」

 

 十分近く夢中になったキスを止めた途端、だらりと舌を垂らしたまま荒い息をついて不足した酸素を取り込む帆波。

 落ち着くと、ゆっくりと帆波の瞳が開かれる。請うような視線を受け止め、薄桃色に染まった頬に右手を触れる。

 

「あ……お、おにいちゃん……」

 

 心地よさげな声が漏れる。

 帆波の軽い体重が胸にかかる。頬をオレの胸にすりつける帆波をそのままにして耳元に囁く。

 

「で?こういうキスはどうだ?」

「にゃっ……にゃああ……」

 

 フレンチキスこそキスだと、自分が主張していたことを突かれ帆波が照れたように頬を緩ませ染める。

 

「これも、キス、だよ……おにいちゃん……すごく楽しくて、嬉しくて……幸せ……」

 

 耳まで真っ赤にしながら答えると、不意に無我夢中でキスをしたことに恥ずかしくなったのか視線をそらして鏡を見る帆波。

 

「ぁっ」

 

 鏡に移る帆波は、全身を紅く火照らせ、半開きにさせた口から垂れた唾液が透明な橋となっているほどに蕩けきっている。

 思わず首を振って橋を途切れさせても、新たなよだれが溢れ口端から垂れるほど欲情している姿が鏡に映されている。その上、オレに体重を預けて断続的に荒い呼吸をつくたびに垂れていく汗が恐ろしく色気を強めている。

 そんな自分の姿を鏡で見て、戸惑ったような呟きをあげて恥ずかしげに顔を隠す。薄く開けた指の間から、ちらちらと鏡越しでオレの様子を伺う帆波の頭を優しく撫でる。

 

「あ……えへへ」

 

 恥ずかしい姿でも受け入れられると、安心して大きく息をつき、無垢な笑みを浮かべてオレにさらに体重を預け目を閉じる。

 まだ前戯の途中だというのに、安心しきった様子で目を閉じるだけならまだしも、そのまま寝てしまいそうな帆波を揺すりながら声をかける。

 

「さて、次へいくぞ」

「つ、次っ!?」

 

 目を見開き悲鳴のような甲高い声、というか悲鳴に、思わずため息をこらえる。

 いや、二人きりになるまでの濃すぎるイベントの数々と、二人きりになったらなったで、下着姿を鏡で映しながら色々やって絶頂させた挙句、失禁までさせたのだ。

 少し休ませたとはいえど気力体力が限界に近く、一杯一杯なのはわかる。

 帆波としては、キスで一段落ついたから休んで、後は明日にでもという気分なのだろう。

 寝かしてやりたいとは思うが。

 滾りに滾った股間に意識を集め。次に、膝の上の帆波の柔らかな肢体に意識を集める。

 ……駄目だ、我慢できないな。

 仕方なく帆波に何をしようとしているのかを思い出させる。

 

「なあ、帆波、最終目的をわかってるよな?」

「あ……」

 

 乳房に手を当てて目を合わせてから目の力を強めると、何かを思い出したように一瞬固まり頷く。

 

「も、もちろんわかってるよ。まだ次があるんだよね」

 

 どこか怯えたように急いで言う帆波。今までの淫行で、余程のことでなければ嫌がっても逆らえなくなっている。順調にMに染まっていっているな。

 

「その通りだ。帆波が、気持ち良くてびしょびしょに濡らしてしまった下着を脱がす。その後、何度もイカせて解したまん──」

「わ、わぁぁぁっ!?そんなこと言っちゃ駄目だよっ」

「仕方がないだろう。帆波が何度も止めようとするから、具体的にどうするか教えてやろうと思ったんだ」

 

 真っ赤になってアワアワと手を振り言葉を止めようとする帆波を、加虐的な視線で見つめる。

 自分をいじめて愉しんでいるオレに帆波は膨れるが、口では抗議していても背筋に震えが走ったようにピンとさせている様子から、マゾヒズムを僅かに感じているようだ。

 

「おにいちゃんの意地悪」

 

 膨らんだ顔で、少し目を合わせ、すぐに逸らす。頬を赤らめて、手で髪をいじりながら、ちらちらもぞもぞとしている。

 自然と男を誘う姿に、いじめて意地悪しなければと心中決意する。

 

「意地悪なのは嫌いか」

「うっ……ううん。おにいちゃんなら意地悪なこと言われたりされるのも……好き、だと思う。でもね」

 

 そっ、とオレの首筋に手を当ててオレを見上げるように見つめる。

 

「でもね、優しくされるのが、一番好きだよ。おにいちゃん」

「そうか。なら、これはどうだ」

「にゃ?……にゃあぁっ、お、おにいちゃんっ」

 

 いじめられても嫌ではないと脳内で意訳した返答に満足し、お姫様抱っこで帆波を抱き上げる。

 突然高く変わった視界に驚いたような声を上げ肩を緊張させた帆波が、何をされているのか理解し、すぐ近くにあるオレの顔をまじまじと見つめると、うっすらと頬を染めて胸に頭を預けて「えへへー」と嬉しそうに笑った。

 

「わあっ……!お、おにいちゃん……えへへー……」

 

 弾力のある乳房を押し付けるように抱き着き、好きな人にお姫様抱っこをされる幸せを堪能する帆波の歓声を耳にしながら、姿見の前にたどり着く。

 

「にゃ……?あの、おにいちゃん、ベッドは向こうだよ。鏡の前で、なに、にゃああっ!?」

 

 お姫様抱っこでベッドに寝かせてもらえると認識していた帆波を、天国から地獄へ突き落とす。

 帆波を降ろし、グイッと押しやるように、強引に上体を倒し鏡に手を付かせ尻を上げて脚を肩幅くらいに広げ、立ちバックの姿勢にさせる。

 

「ひっ!?や、やだぁっ、こ、こんな格好。やだあっ!?」

「こんな格好か。どんな格好だ?よく見てオレに教えてくれないか?」

「どんなっ、て…………ぁ……ぇ……」

 

 無理やり押さえつけられ、帆波はオレにされるがままの姿勢を取らされ、映ったその姿がどれだけ酷い格好なのかを力説しようとして、その淫靡さに沈黙する。

 鏡に映る上体を屈まされた裸身。

 身動ぐ度に、たゆんたゆんと揺れる度に揺れるみっちりと重そうな乳房が、ブラ越しに尖らせた先端を明らかにしながら、重力にも負けずにつんと張り出している。

 細い肩の丸みから急角度をつけて落ちていく腰のくびれへのライン。そこからパンティに包まれたキュッと伏せの姿勢なのに弛まない肉が上を向き、ハートを逆さにした形を作るお尻の頂点へとかけ上がるライン。

 見事なS字曲線を描いたラインが自分の体なのだと、理性が拒む。

 真っ白な太ももは、しっかりとした肉がついていながらら、すらりとしたと呼びたくなるものだ。それが肩幅くらいに広がった脚のせいで、秘所を隠したクロッチ部分だけが乳房に隠れず鏡に映してしまっている。もし、パンティを剥ぎ取られれば秘所の秘裂だけが映し出されるだろう。

 膝から下は真っ直ぐに伸びて、ふっくらしたふくらはぎを経た足にも皺一つなく輝いている。

 しっかりと脂肪が乗ったどこまでも柔らかそうな肉つき、けれども青い硬さが込められた、未成熟な体。

 そんな体が、おにいちゃん(綾小路)の愛撫によって、顔だけでなくうなじを経て乳房、果ては腰のくびれまでが、紅を塗ったかのように赤く染まり、上半身だけを愛撫され火照るほどの快楽を覚えているのだとわかる。

 

「にゃあぁぁっ……私、私、こんな……」

 

 未成熟な体が、兆し始めた官能の芽生えに揺さぶられ、少しずつ熟れ始めている様に、言葉にならず喘ぐ。

 その度に、珠のような汗が白い肌を濡れ光らせ、淫猥極まりない光景となっていた。

 

「こんな体……見ちゃったら」

 

 未だ乙女とはいえ、帆波は自分の体がどれだけ男を夢中にさせるものだとわかった。

 

(おにいちゃんの言う通り、男の人との距離感、気を付けなきゃ)

 

 はぁっ、と吐息をつくだけで、乳房を微かに震わせ、小股の切れ上がった所を震わせ、どこまでも艶かしいのに清らかさを匂わせる矛盾。

 これもまた男を惹き付けて止まないだろう。

 

「……うん、気を付けよう」

 

 おにいちゃん(綾小路)の責めによって、身動きすらままならないほどに憔悴し切った身体を見ながら決意を呟いた。

 

 

 

「体を見られるのを気を付けるのか。一体、どんな格好ならそんな風に思うんだ?」

「ぴあああっ!?」

 

「にゃああ」とか「ふあぁ」とか劣情を刺激させる喘ぎ声をあげながら、自分の体を見ていた帆波の内面を手に取るように掴み、乳房を掴む。

 自分の身体の魅力を認識し、切ない想いを抱いていたところに性感を刺激され、背中を反らして帆波が嬌声をあげた。

 鏡に映るオレの手の中で乳房が形を変えるたび、ぱりぱりと帆波の脳裏に火花が散る感覚が襲う。

 自分の意思で動かないものによって、自分の意思の奥底に眠る何かがくすぐられ、呼び覚まされるような深遠な感覚。

 力強く握られても、もう、痛みは少しもない。

 揉まれる度に胸全体が乳首に向かって段々と痺れを増していき、感覚が鋭くなっている。

 オレの視線が乳首へと突き刺さるのが、鏡越しでわかり、ジンジンと疼かせるほどにまで昂り始めている。

 精彩を失っていく瞳が捉えたのは、たのしむようなオレの視線と開く口。

 

「答えたくないか?」

「ふぁぁ……ぅんっ……ぅん」

「そうか、なら仕方ないな」

「お、おにいちゃん……」

 

 甲高く甘い嬌声を上げながら頷き、あまりに恥ずかしすぎて答えられない意思を示した帆波の意思を理解したように優しく頷くと、帆波は安堵に瞳を輝かせる。

 

「なら、その代わりに何をするんだ」

 

 当たり前のように、間髪いれずに責める。

 

「え?」

「代案も無しに答えないなんて出来るとは思っていないだろう」

「……え、ひあっ、あ、ふぅぅっ、う、うん」

 

 乳房を愛撫され続ける火照った頭では冷静に考えられず、恥ずかしいことを言わなくて良いのならと、思わず頷く。

 希望を与えられ選択肢のようなものを与えられたように見える帆波に、力を込めた視線で問いかける。

 もし、代案がなければどんな恥ずかしいことをさせようかと情欲に満ちた視線で脅す力を込めた視線を込めて問う。

 

「答えたくないから、答えなくてもいい。なら、どうするんだ?」

「あのっ……う……んっ、あっ、うぅ……」

 

 視線の意図を正確に受け取り、迫る危機から逃れようとして反射的に何かを言おうとするが、何も言えず俯き迷い焦る帆波の乳房を揉みながら、聞こえるように生唾を飲む。

 音にハッと頭をあげた帆波は見た。劣情の視線で恥ずかしい姿勢をとる自分の姿を見つめるオレの姿を。

 オレが自分に欲情していると理解すると同時に、帆波の口は開いた。

 

「な、なら、私はこの姿勢でいるよ。なら、どうかな?」

「その姿勢で、か」

 

 帆波の意見に迷うように乳房から手を離し、つぅと指を帆波のなめらかな背中に滑らせる。変化球の刺激に、ふるると背筋を震わせる帆波を気遣うように語りかける。

 

「辛くないか?結構辛い姿勢だと思うが?」

「だ、大丈夫だよ。私、頑丈だから」

「帆波」

「ぁ……」

 

 恥ずかしいことを言いたくないと食いついてくる帆波の頭を、優しく撫でる。

 

「お前は、女の子なんだ。体力的に辛いなら辛いと言えば良いんだぞ」

 

 あくまで体力が辛ければあって、恥ずかしいとかそういう逃げ口は潰す。

 

「へ、平気だよ。おにいちゃん、わ、私、平気だから。おにいちゃんも、え、遠慮しないで、ね」

 

 頭を湯立て、上げて、落として、選択肢を与えたように見せかけて強制的に選ばせる。交渉の基本だ。今までのように、こうやって積み上げていけば逆らえなくなる。

 帆波は恥ずかしそうに俯むくと顔をあげて笑みを浮かべて答えた。恥ずかしい姿勢を選んだ恥辱に悲哀を感じつも、恥ずかしいことを言わないで済んだことに安堵して必死で健気な笑みを浮かべる帆波にぞくぞくする。

 

「ああ、遠慮しない。だから、オレの許可無しでその姿勢を崩すと、お仕置きだ……たっぷりとな」

「……にゃ?そ、そんな……」

「返事は」

 

 背中を撫でながら返事を迫るオレを、悲しげな、泣きそうな、切なげな、いろんな要素が混じりあった何ともいえない顔で帆波が見上げ、口を開いた。

 

「う、うん。わかったよ、お仕置き、してもらうね」

 

「される」ではなく「もらう」か帆波。自覚はないが、火照らせたマゾヒズムをじわじわと感じてきているな。

 

 

 

「やっぱり帆波はえっちだな。こんなに乳首を立たせて……」

 

 帆波の羞恥心を掻き立てるためにわざわざ口に出しながら、乳房を掴んで揺らしてブラジャー越しにもわかるほど乳首を尖らせている様を見せつける。

 

「ち、違うよ……っ、私そんなことしてない」

「なら、この尖った場所はなんなんだ?」

「……ブラジャーのシワだよ」

 

 目を逸らして口をきゅっと結んで誤魔化す。そうか、そういうことをまだするのか。

 

「なら、確認するか」

「確認?」

 

 帆波の乳房を両の手でつかみ指を一本ずつ立てる。

 そのまま立てた指を乳房の上で円を描くように動かすと、帆波の息を飲む音が聞こえ、熱いくらいの視線を指に感じる。じわじわと立てた指が、外周から内周へと肉の丘に埋もれながら進んでいくことを理解したからだ。

 

「あっ……だ、駄目っ、ん……ぁ」

 

 やがて、ブラジャー越しに起立した乳首の直前まで指が迫ると、帆波が思わず制止する。が、止めずにそのままなぞり続けるとかすかな吐息が聞こえた。

 ずっと愛撫されていたのに、わざと触れなかった乳房の中心部へと指が向かうだけで快楽を感じ、期待に震えてしまうほど今の帆波は敏感だ。

 

「あ……あ……んっ……」

 

 なぞり続け、乳輪を掠めるような所まで来た指先に、今までブラジャーで擦られる刺激しか与えられなかった乳首をついに直接触られるのだと、覚悟と期待に帆波が息を飲む。

 

「……ぁっ……え?……ん、ん、はぁ~」

 

 触れる直前に乳首を逸れ、そのまま指で描く円を広げていき乳首から離れていく様を、鏡で見た帆波が吐息を漏らした。その吐息には、安堵だけではなく、期待を裏切られた悲しさと寂しさがたっぷりとブレンドされている。

 

「帆波」

 

 呼び掛けに、期待を裏切られた悲しさと寂しさを見抜かれたかとビクリと華奢な肩を震わせる。

 心配しなくても、今はそっちは責めない。そう、今は。

 

「何で、安心したんだ」

「そ、それは」

「確かに、オレはブラジャーの尖った場所から指を離していった。なのに、どうして安心したんだ。尖らせた場所がブラジャーのシワならどうでもいいはずだ。なら、安心した吐息を吐く必要なんてないはずじゃないのか。乳首立たせてなければオレが指を逸らした所が乳首だなんて分からないよな」

「あ、あの」

「このポツリと立った所が乳首でないなら触る。構わないな」

 

 立て直す暇もなく叩きつけてくる言葉に反論する暇もなく、「構わないな」という言葉と同時にオレが乳首に手を伸すと、狙い通りに反射的に声をあげてしまう。

 

「だ、駄目だよ。そこ、今、敏感……っ」

 

 今何を口走ったのか理解して口を押さえる。

 

「ほう、敏感なのか」

「……っ」

「何で、敏感なんて知って……ああ、そうだよな。えっちな帆波のことだオナニーくらいしてるよな。毎日」

「し、してないよ。毎日なんてしてないっ、ホワイトデーの時、いっ一回だけっ……!!??」

 

 長時間の快楽と羞恥の奔流の中で、帆波は冷静ではいられない。これまでの性の経験を口に出してしまう。

 自分が何を言ってしまったのか理解し、ピタリと凝固した。顔や耳どころか、首筋、胸元まで赤く染まっていく。ここまであっさり釣れるのは、性格もあるがオレに対する信頼の厚さゆえにだろう。

 

「ホワイトデーか」

 

 そんな帆波に、優しい口調で温かい思い出を語るように言ってやると、目を泳がせる帆波。

 

「え、えっと、ね、その、ね……」

「確か寮のポストで、ばったり会った日だよな。何であの日にオナニー何てするんだ?」

 

 優しい口調を全く変えずに責め立てる。

 

「いや、その、それは……」

「答えられないのか」

「いや、だって……」

「答えられないなら仕方ないな。ブラジャーの尖らせたところを握りしめて乳首かどうかを確かめようか」

 

 軽く拳を握りしめるところを見せつけると、オレの馬鹿げた握力を思い出した帆波が引き攣る。

 

「……あの、ね。その、お、おにいちゃん、とばったり、会ってね……なのに、香水忘れてて……部屋に帰ったとき、布団かぶって悶えて、ね……そしたら、おにいちゃんに貰った、お返しが、見えて、変な気分になっちゃって……つい」

 

 一瞬の葛藤の後観念し、ぷるぷると体を震わせながらもじもじと呟く。

 

「つい、つい、ね」

 

 言葉で嬲る度に、ビクッと上体を倒し手を鏡にもたれさせたまま大きく震えて「やああ」と呟く様がたまらない。

 

「帆波。お前は、つい、で、人様のお返しで盛り上がるわけだな」

「ぅぅ……」

「盛り上がって、オナニーしたわけだ。乳首をいじって、パンティの上からこんな風に」

 

 薄桃色の太ももの間にある帆波の秘所に手を伸ばし、スタイルの良い体と比べて、意外なほど薄い秘裂を優しくまさぐり、うっすらと愛液で浮かび上がった秘裂の縁をなぞるように擦りあげる。

 

「ひゃぁぁんっ!?」

 

 驚きと快楽が混じり合った声を上げ、海老反りになってぶるると尻を激しく揺すりたてる。

 絶頂に達するまでは行かないものの、快楽を覚え始めた体は、初めて秘所をさわられ相当の刺激を感じた様だ。

 

「ここもこういう風に触ったんだな」

「そ、そんな、とこ、触って……なんか……」

 

 俯き、聞き取れない声でゴニョゴニョと誤魔化すなんて許せるはずかない。

 

「なら、こっちか?」

「ぴあぁぁっ!?」

 

 目を見開き尻に火でも押し付けられたかのように猫のような悲鳴をあげて背中を反らせる帆波、声といい表情といい滾らせてくれる。

 

「初めてのオナニーで尻の穴は、流石にレベル高すぎないか?」

 

 そう言いながら、双丘の谷間を割り、青色のパンティに隠されたひっそりと息づく窄まりを布越しでゆっくりとなでる。

 

「っ……ひっっ!?……そ、そんなこと、し、したこと、ないよ」

 

 パンティ越しとはいえ、排泄の穴をいじられるなど帆波の想像を超えた行為に違いない。鏡に当てた手を震わせ、首を振りながらカチカチと歯を噛み鳴らす。

 

「そ、そんなとこ、さ、さわっちゃだめぇ、ぬっちゃ、塗っちゃだめぇ……」

 

 触れると想像したことさえない尻の窄まりに、秘所を湿らせたトロリとした愛液を塗りこまれ、硬い蕾をコリコリと指の腹で揉みほぐされる恥辱に声が震え、オレの手を振り払うようにガクガクと激しく揺すられる青いパンティに包まれた白い尻の毛が逆立ち鳥肌が泡立つ。

 こんなことをされても、消耗した帆波にもう逃げる力などない。きつい姿勢を、自分が望んで誓った姿勢を保つので精一杯なのだ。その証に、鏡についた手だけでは自重を支えきれず、上腕全てで鏡に体重をかけ支えている。

 

「硬くて弾力のある尻の穴だな」

「……だ、だめっ、そ、そんなところ、さわっちゃだめだってばあ……ひぃぃんっ、な、なぞっちゃやだあ、ひあっ、んんっ」

 

 揉み解していた指で、しわの一本一本を、縁までまくり返すようにしてなぞりあげられ、ヒクヒクと肛門を窄めると同時に、腰骨が砕かれるような衝撃が背中を駆け抜け、帆波は今までで一番甲高い声を上げる。

 立ちバックになっている全身が震え、無意識に尻を持ち上げ揺すりたてる。

 

「ああっ!?ひんっ、んくっ、んぅっ!?……ふぅっ!?」

 

 帆波の驚愕と怯えを愉しみながら、秘所を隠すクロッチをさらに濡らす愛液を掬い取っては窄まりに塗りこむように擦りつけ、執拗に肛門を揉み解していく。

 

「おかしいな。オナニーしていない割には、穴がほぐれていくのが早いぞ。穴が拒むどころか、オレの指に吸い付いてくる」

「そ、そんなことっ、ないよっ!?う、嘘ついちゃやだあっ!?」

「嘘か……これでも?」

 

 尻丘を掴んで広げ、いまだ堅さが残るもののそこそこほぐれた窄まりの中心に指を当て、そのままぐっと指を押し当てる。

 

「えっ!?……ひ、ひくぅぅあぅっ……」

 

 まさかという思いがあったのだろう、プクッと盛り上がった窄まりは、わずかな抵抗だけで吸い込むようにオレの人差し指の指先を秘められた場所に入れてしまった。

 

「これは間違いなく尻穴オナニー経験者だな。そうでなければこう易々と入ったりはしない」

「あっ、あっ、あっ」

 

 不浄の穴を初めて掘られた衝撃に、帆波の顔が仰け反り目を見開き、自然と開いた唇からだらだらと涎をたらしながら、尻を掲げた裸身をぴくぴく震えながら強張り緊張させてしゃくりあげる。

 秘所にさえまだ指さえ入れられていないのに、排泄の穴に指を入れられ、その姿を鏡に映され見せられる。あまりの羞恥で、涙があふれ零れ落ちた。

 

「どんな風にいじったんだ。こうやって入れた指を回したのか」

「ま、まって……そ、そんな……ひううっ!?」

 

 木綿の薄い布越しに帆波の熱さを感じながら、中を探すようにぐりんと回転させる。弾けるように帆波が背を反らし、ストロベリーブロンドの髪が踊り、柔らかな脂肪に覆われた透けるような太ももにじわっと汗がにじみ、上半身だけではなく下半身も赤く染まった。

 

「それとも、こうやって周りを揉みほぐしたのか」

「……あうぅっ!?んっ、ぁぁ……んっぁ……っ……」

 

 言葉通り指で揉み解してやると、その度に声を一オクターブ上げて鳴き声を上げる。

 快楽の嬌声ではなく、気持ち悪いのにその刺激が無視できず自分を変えていくことに恐れおののく声。

 そんな声をあげながら、尻穴をほじられて全身を火照らせる自分を見まいと、帆波がぎゅっと目をつぶり嫌々と首を振る。

 そういう顔を見せられるともっといじめたくなる。

 何の開発もしない状態でどこまで指が入るか試すか。

 

「それとも、こんな風に根本までいれたのか」

「っっっああぅぁっ!!??」

 

 パンティの布が裂けそうなほどピンと張って引き締まった大きな尻をきつく締め付けるほど、深く指を窄まりに突き込む。

 くちゅりと秘所から垂れた愛液が、引き伸ばされるパンティのお陰で立てる甲高い音を聞きながら指を一気に突きこんだ。

 帆波も無抵抗ではなく、括約筋を閉めたようだが、嬲られ続け疲れきった上で上体を倒し尻を掲げた姿勢をとらされ、力が入るはずがない。

 初めて入れられた異物に反応した腸が、指を追い出そうと括約筋に命じて、上下左右からきつい締め付けを与えてくるのが心地いい。

 

「ここまであっさり入るとはな。中は指を食いちぎるように締め付けてくるが、どこか余裕がある。初めてのオナニーで、尻穴オナニーをどれだけやったことやら」

 

 言葉とは裏腹に、指をピクリとも動かせないほど締め付けてくる天然ゴムのように硬く弾力のある肛門特有の感触を味わいながら、一度

 

「ひぎゃあっ!?」

 

 二度

 

「んぐああっ!?」

 

 三度

 

「ひいいっ!?」

 

 肛門を壊さないぎりぎりの力で大きく指をピストンして、帆波に甲高い悲痛な悲鳴を上げさせる。指が力強く出入りする度に、鞭で打たれたように豊かな体を悶え、跳ねさせ、引き攣らせ、仰け反らせる。

 健康的な肌が、噴き出た汗で油を塗ったように照明を反射する。

 反射される照明の灯りと沸き立つ愉悦で目を細め、もう一度大きく指を打ち込む。

 

「っっっっ!?」

 

 クチュと秘所のシミが鳴らす音と、パンティのどこかがビリッと裂ける甲高い音が響くなか、大粒の涙をぽろぽろとこぼし、言葉にならない嗚咽を何度もこぼした帆波の全身が仰け反り裸身が固まり、涙交じりの言葉を搾り出す。

 

「っ……んっ……んんっ……はひ、ひぅぅ、さ、裂けちゃう、拡がっちゃうよぉっ」

 

 閉じているのが自然な窄まりを指で穿たれ、腸壁に異物を打ち込まれ続けた帆波は息も絶え絶えだ。膣とは違い、肛中は敏感ではない。だが、窄まりを開かれると、排泄の時の何ともいえない開放感を擬似的に与えられ、それが快楽のような不思議な刺激を感じられる。

 ……尤も、今の帆波は、言葉通り、肛門裂けるか拡がる危機感に怯えきっており、そういう刺激を感じる余裕がほとんどないようだ。

 なら、これ以上責めても無駄だな。

 

「はっ、はぁぁぁっ……」

 

 指を抜き取られ、しきりに尻を振りながら開放感と安堵に大きく息をつく帆波が落ち着くと、最初の話題に戻る。

 

「こんなにスムーズに出し入れ出来るとはな。いじってなければあり得ないぞ……まさか、本当に尻の穴でオナニーしているとはな……正直、ちょっと引いた」

 

 反応から間違いなく初めて入れられたのだろうが、パンティが裂ける根本まで指を飲み込めるとは思っていなかった。おそらくは天性の資質なのだろうが、本当にオナニーしていたのではないかと疑ってしまう。

 

「はぁっ、そ、そんな……はぁぁっ……そ、そんなことしてない、よ……後ろもだし、前のあそこだってお風呂で洗う時以外に触ってないよっ!?ホワイトデーの時も、乳首触ってビリッとして体が跳ねちゃったから、驚いてその後何も……ぁ」

 

 疑いの視線と声に耐えきれず、またしてもあっさり釣られ、吠えるように叫び、かああっと真っ赤になる。

 成る程、帆波には資質があるのか。ならば、自作のアナルビーズとアナルバイブと浣腸の出番がついに来たのだろうか。

 ……いや、流石に初めてでそれはやりすぎだろう。今でさえやり過ぎているのに。

 気を取り直して帆波に質問を再開する。

 

「で、その後、どうしたんだ?」

「……い……いじ……わる……おにいちゃんの……いじ、わる」

 

 尻穴を嬲られた後オナニー経験を吐かされた帆波は、恥ずかしさに視線を反らし僅かに唇を尖らせる。

 それが、体力が尽きて鏡に上腕でもたれかけないと姿勢を維持することさえ出来ない帆波に出来る最大の抵抗だった。

 こういう風に可愛らしい抵抗をされると、興奮で身体がぶるりと震えてしまう。

 

「で、その後、どうしたんだ?」

「あ……う、ぁ……」

 

 何一つ変わらない口調で責められると、顔を真っ赤にして口をもごもごとさせ反論しようとしたが、尻穴を見つめるオレの視線に諦めたようだ。

 ガックリと俯き、ポツリポツリと呟く。

 

「……そ、その後、何もしてないよ……お、おにいちゃんに触って貰えるまで、あんな、むず痒い、みたいな感覚、知らなくて……」

「なるほど。で、今、前も後ろも弄られたよな。尻穴とまんこのどっちが良かったんだ?」

 

 恥ずかしい言葉を絞りだしてもなお責められ、限界を超えた恥辱に、帆波が目から涙を溢れさせた。

 

「……もう……もう、やだあっ、止めてよっ、おにいちゃん……」

 

 帆波のキャパシティを超えた責めに、反射的に逃げようとして腰を浮かそうとしても、力が入らずそのままどさりと膝から倒れこむ。

 

「あ……」

 

 自分が選びとった体勢を崩した様を鏡で見てしまい、オレとの約束を破ったことでお仕置きされると絶望に蒼白になり、体をカタカタと震えさせる。

 そんな帆波を立たせ、支えながら同じ姿勢を取らせ、後ろから優しく抱き止める。

 

「帆波」

「や、やああっ……お尻、もう、やだぁぁっ」

 

 今までの経験から、とんでもないことをされると、カタカタと怯える帆波に劣情を催しながら、首筋を撫でて囁く。

 

「オレのお返しで、オナニーするお前は可愛いぞ」

「えっ?……んんっ……んっ……」

 

 限界を超えたのならば、北風と太陽だ。優しくキスをする。

 何をされるのか怯えていた所に、唇を重ねるだけのキス。絶望からの解放が信じられない帆波は、確かめるように目を見開いて視線を姿見に送る。

 体を隠す役に足っていないほど下着がはだけてしまい、あまりに淫らな格好をして座り込んだ自分が、オレと唇を重ねている姿。片手であすなろ抱きに優しく抱き締められて、もう片方では髪を優しく梳かすように撫でられる。

 自分のふしだらさの限界と情を交感する愛の極致が鏡に映っていた。

 ぼうっと恥辱と快楽が混じった愛着の色に頬を染めて、手を絡め自身の姿を受け入れる。

 最初のキスの時には決して受け入れられなかった恥ずかしい姿を受け入れた。

 今までの行為の賜物だ。

 

 恋人のようなフレンチキス。

「えっちな帆波」発言を強制。

 優しくブラジャーの上から乳房を愛撫され初めての絶頂。

 鏡に映されながら恥辱を与えられ続け、オレの膝の上で失禁。

 自分からした情を込めた深いディープキス。

 鏡の前に立ちバックの姿勢を取らされ、オナニー経験を吐かされながらアナルを弄られる。

 止めに、優しい愛撫をされながら淫らな姿を見せられる。

 

 上げて下げてを何度も繰り返され、気付けば低い場所に突き落とされてしまった。

 帆波はもう、初体験なのに恥辱の限りを尽くされても性交に幻滅してオレから離れることはない。口と体では抵抗しても心の何処かで受け入れてしまう。

 そんな風に壊した。

 

「はぁっ、はっ、はぁっ……」

 

 そんな帆波にもう一度キスをして、乳房を揉みながら、舌を首筋から肩先に滑らせる。

 

「ひあっ!」

 

 舌先が筆のように、帆波の華奢な肩に線を描く。

 自分がマーキングされてオレのものになっていくのを目と肌で感じさせられる帆波の肢体は、悦びに震え赤く染まった肢体に吹き出した汗が艶やかに彩る。

 汗でしこった乳首がブラジャーを透けて見えるようになり、下着越しにうっすらと見えていた秘所の割れ目は湧き出てくる蜜によってさらにくっきりと見えるようになった。

 

「あっ……」

 

 荒い呼吸を吐きながら、そのどこまでも淫らな姿を、鏡越しに自らの眼で見せられた帆波の体から力が抜けた。

 散々責められ気力体力が限界になった帆波は、鏡に預けた上腕に白目を剥いた頭を乗せて、息を吐く度に断続的に幾度となく痙攣する。

 準備は出来たな、本格的に責めるか。

 

 

 

「さて、姿勢を崩した罰だ。帆波、下着を脱げ」

「……にゃ?」

 

 ごくごく平然と言ったせいで認識できなかったのか、火照った頭で聞き逃してしまったのか。どちらにせよ聞こえていないことに変わりはない、もう一度言う。

 

「姿勢を崩した罰だ。ブラジャーとパンティを自分で脱げ」

「……え?……え!?ゆ、許してくれたんじゃないの。だって、あんなに優しくキス──」

「オレのお返しでオナニーするお前が可愛いいからキスをしたんだ。何も許していない。罰は罰、当たり前だろう」

「……そ、そんなっ……今っ……私っ」

 

 今度はちゃんと聞こえたようだが、目をさ迷うように動かし自分の姿勢を見る。

 鏡に上腕をつき、肩幅くらいに脚を広げ、尻をオレに掲げるほど上体を倒した立ちバックの姿勢、その姿勢に頬を引き攣らせた。自分の格好を強く認識した帆波は、オレと目を合わせ何かを訴えるように目を潤ませる。

 言わんことは理解した、安心しろと頷く。

 

「心配しなくて良い。姿勢を保つようにオレが支える。だから、安心して、ブラジャーとパンティを自分で脱げ」

「ち、違っ、今っ、ぬ、脱いだら、脱いだらっ」

 

 このまま脱げば、間違いなく帆波の股間は灯りの下で丸見えになってしまう。

 脚を広げているせいで、秘所だけでなく、あれだけ弄くられ未だにパンティが入り込んでしまっている尻の窄みまでもが見えてしまう。

 家族以外に誰にも、いや、自分でさえ見ることのない部分が、灯りの下でみえる。見られてしまう。それも、獣のような姿勢を取りながら。

 

「脱いだらっ、み、見え、見えちゃう……せめて、電気を……」

「断る」

「……にゃ?」

 

 帆波がこちらを見て驚いたように聞き返してくる。

 オレはその揺れる瞳を正面から見据えて、もう一度はっきりと答えた。

 

「断ると言ったんだ」

「な、なんで……」

「帆波のスタイルの良い綺麗な身体を見たいからだ」

「そ、そんな、き、綺麗なんて……」

「帆波は本当に綺麗で可愛い。そんな身体を見れないなんて、勿体ないことはオレには出来ないな」

「そ、そんな……そんな事、言ってくれても、恥ずかしくて、出来ないよ」

 

 あたふたしても、心の何処かで受け入れ強く拒絶出来ない帆波に熱い衝動が溢れてくる。

 

「そうか、これだけ言っても無理か、なら仕方ないな」

「にゃ!?そ、その、て、手鏡でなにっ──」

 

 傍らの鞄から手鏡を取り出し、左手で持つと帆波の尻の後ろに移動させる。

 さああっ、と音を立てて帆波が青白くなった。

 オレが、恥ずかしい姿勢を取らせた上で、恥ずかしい部分を手鏡に映して、鏡越しで帆波に見せようとしているのだと理解したからだ。

 普段洗うときにみる秘所だけでなく、見ることのない尻穴までも。

 

「や、やだっ!?……そんな恥ずかしい事、やだぁっ」

「帆波」

 

 乙女の全てを見られ見せられることに抵抗する帆波の華奢な肩を、右手で万力のような力で掴みながら優しく一言一言区切って囁く。

 

「今、ここで、灯りの下で、この姿勢のまま、ブラジャーとパンティを脱いで、お前の全部をオレに見せろ」

「ぁ……あううう」

 

 鏡越しでオレと目を合わせたまま、口をパクパクとさせて言葉にならない音を出す。

 ふるふると首を振りながら視線で許しを請う帆波、それに対して視線を強める。

『闇』は覗かさなくとも、同年代に比類がない意志を叩きつけられた帆波はひっと息をのみ怯む。が、恥辱に抗するため、最後の望みを託して口を開く。

 

「お、おにい、ちゃん……は、恥ずかしくて、無理、だよぅ」

 

 それ以上は精根尽きて言葉にならず、ただふるふると首を振る帆波に、ふっと視線を緩める。

 一瞬、許しが得られるのではと期待する表情になった。

 

「速く脱げ、帆波」

「……!!??」

 

 希望が砕かれたのが止めとなり、観念したように、帆波はがくりと一度頷いた。

 

「そうか、なら、最初はブラジャーとパンティどちらにする?」

「お……おにいちゃん……」

 

 すぐに追い討ちの命令を下しながら、手鏡を鞄にしまう。

 鞭と同時に飴をふるわれた帆波にはもう何もできず、小鹿のように体を震わせるだけだ。

 年齢離れした優れたスタイルの少女に、子供のように震えさせながら幼い表情で恥ずかしがらせると、たまらないものがある。

 

「……じゃ、じゃあ……じゃあ、ね……ぶ、ブラジャー、で」

 

 抗えば抗うほど飴がなくなり鞭だけになると学習した帆波は、逆らわずにブラジャーに手を伸ばす。失禁して濡れた上に尻穴に突っ込まれて端が裂けた上に穴に布が入ったままとはいえ、流石にパンティは後回しにしたようだ。

 

「ああ、もちろん隠すなよ。脱いだら手は鏡につけろ」

「っ!……にゃ、にゃぁっ……」

 

 手で胸を隠しながらブラジャーに手をかけた帆波に釘をさすと、泣くのを堪えるような表情で両手をブラジャーに手をかけた。

 




綾小路くんが(非道な手段で)一之瀬さんを完全に手中に収めた上で、限界を見切りながら徐々にハードルを上げているからそうはなりませんが
普通、初体験でこれだけ酷いことしたら間違いなく振られます(笑)


次回、ようやく、脱がします(白目)
そして、更新遅くなると思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波⑥

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


 全裸にした時に彼女の心の内を明かそうと思っていたとはいえ、長くなりすぎて分けることになりました。
 エロが進まない。

 本人は悪と思っていても客観的には善良。


「にゃ、にゃあ……」

 

 ホックを外して、ブラジャーを取り外す。極めて日常的で、目をつぶっても出来ることが、今の帆波には涙混じりの呻き声をあげるほど恥ずかしくて出来ない。

 何も言わずただ見つめているオレと、ちらちらと何度も視線を合わせては外しながら、カチ、カチとホックを外そうとしても、なかなか外せない。

 ただ、焦りだけが心を逸らせ、指一つまともに動かせない瞬間に声をかける。

 

「どうしたんだ帆波」

 

 絶妙のタイミング。しかも、無表情ながらも瞳には優しさを湛えている。散々嬲られた後で静かに優しげに言われると、恐怖を掻き立てられ精神的に従属していくと理解しきった上での行為だ。

 帆波も例外ではなくビクッと大きく一度震え、ふるふると震えながら涙目でにゃーにゃー鳴いている。

 

「脱げないのか、なら、オレが脱げやすくしようか」

「いま脱ぐっ! 脱ぐよっ!」

 

 後ろに置いてある手鏡をしまった鞄を見ながら脅すと、あせったように帆波が答える。ぎゅっと一度思い切り目を閉じ呼吸とともに目を開ける愛らしい動作に、背筋がぞくぞくと震えてしまう。

 ……我ながら処女にすることではないと思うが、愉しくて止められない。こういう風に人間性を獲得してしまうとは思わなかった。

 

「あ……」

 

 カチリとブラジャーのホックをようやく外す。散々揉まれ肩紐が緩んでいたブラジャーは、思わず押えようとした帆波の腕をすり抜けるようにはらりと地面に落ちる。

 ブラジャーから解放された乳房が、ブルンと大きく弾む。

 しかし、帆波はブラジャーを取ったと同時に、手で乳房を隠してしまう。刹那。

 

「隠すつもりなのか?」

 

 静かに優しげに問いの形を取って命令する。

 

「ぁ……ぁぅぅ」

 

 涙目でこちらを見つめながら、ふるふると震える腕を鏡に乗せる。帆波の乳房が露になった。

 

「ほう」

 

 思わず感嘆の声が出る。

 体に不釣り合いな大きな乳房が、上体を倒しているため釣り鐘の形になっているが垂れることなくピンと張っていた。

 活動的に動いているはずなのに、その肌はまるで白磁のように白く、瑞々しく張りがある。

 上端はなだらかな隆起で盛り上がり下端は弧を描いて持ち上がっている。女性の乳房の造形で一番美しいとされる、ツンと上を向いた乳房。みっしりとした重たさと重たく、少しのたるみもない、柔らかさと乳房独特の張りを兼ね備えた最高級の乳房。

 先端には乳房からしてみれば小さい普通サイズのベビーピンクの乳輪があり、その中心部には快楽で充血していても未だ薄桃色を保った乳首が尖っている。

 そんな乳房にオレに揉まれた赤い手形が刻まれているのが、生来の肌の白さを引き立てオレを興奮させてくれる。

 

「お、おにいちゃん……ど、どうかな?」

「魅力的で綺麗な胸だぞ帆波」

「そ、そう……」

「どうかしたのか?」

 

 不安そうに俯いて無言になった帆波に尋ねる。

 

「え、あの、ね……わ、私の……その、その、ね。お、大きいでしょ」

 

 呼吸する度に、ゆっさゆっさと揺れる乳房を鏡越しで見詰めながら言ってくる。

 男を滾らせる姿を見せながら、いきなりそんなことを言われても、オレにどんな返答を求めているか分からずとりあえず誉める。

 

「あからさまに言わせてもらうが、大きくて張りがある綺麗なおっぱいだな。それがどうかしたのか?」

「……う、うん。お、大きいの嫌だっている人居るらしいから、おにいちゃんも、ひょっとして大きいの嫌かな? 気持ち悪いかな? って思ったんだけど……正直、足元が見辛くなって躓いたりするくらいに動くのに邪魔だし、バランス悪くて仰向けで寝ると息苦しいし……いっそのこと小さくしたいなあっ、てね……でも、小さいのを大きくする話はよく聞くけど、大きいのを小さくするのは手術しか方法ないかr「帆波」にゃ?」

「オレはお前の大きなおっぱいが好きだ。ずっと見ていたいくらいに好きだ。だから、大きくて綺麗なおっぱいが似合っているバランスの良いスタイルと一緒に見せて欲しい」

 

 まさか、帆波が自分の乳房にコンプレックスまでは行っていなくても、嫌われるのではないかと考えるくらいに邪魔に思っていて、小さくしようなどと考えていたとはな。

 巨乳が苦労するとは理解しているが、この豊かなのに美しい乳房を小さくするなんて許せるはずがない。

 歳を取っても垂れないように、手軽に胸筋を鍛えるための器具を幾つか考え作ろうというオレの決意を無にはしない。出来るわけがない。

 そもそも、人類が巨乳好きなのは綿々と脈打った歴史が証明している。太古の昔から巨乳好きでなければ、生存の足を引っ張る巨乳遺伝子が伝わるはずがない。

 だから、オレが帆波の巨乳を護ろうとするのは雄の、否、人類の本能だ。抗う必要もなく、抗えるはずがない。

 

「ほ、本当?」

「ああ、オレは帆波の大きいおっぱいが大好きだ」

 

 頭の中で馬鹿なことを考えながら、らしくなく食い付くオレに帆波は若干引いたようだが、オレに自分の巨乳を受け入れられたことに安堵の色を灯す。

 まあ、帆波の豊かな乳房も、桔梗の大きめの乳房も、手の平から少しはみ出る鈴音の乳房も、恵のすっぽりと手に収まる乳房も、情を交わした女性の乳房は全て好ましいのだが、それは言ってはいけない。

 

「そ、そう、なら、どうぞ……」

 

 ホッと吐息をつくと羞恥に耐え切れず、ぎゅっとまぶたを閉ざした帆波をいいことにじろじろと視姦しながら言葉で責める。

 

「ずっと、見たくて堪らなかったんだ」

「え……?」

「ただでさえ優れた容姿をしているくせに、いつもいつも無防備に近づいてきては、いい匂いを漂わせて腕や肘とかに当ててきた部分だからな。服の下がどうなっているのか、ずっと見たかった」

「そ、そう、だったんだ……」

「いつもいつも歩くたびに重たげに揺れるおっぱいを見たかった、触りたかった」

 

 責めているつもりが色狂いの愚痴になってしまった言葉を、帆波はどう解釈したのか言い返すように口を尖らせる。

 

「……バレンタインデーの後なら、言ってくれれば見せたよ。それが私だけならだけど」

 

 暗に四股を責められ、ぐうの音も出ず思わず沈黙してしまったが、帆波は責めるつもりもなく自然と言葉に出したらしく、そのことを気にせず続ける。

 

「それに、今まで人に当たったことあっても……触らせたのはおにいちゃんだけだし……男の人に見せたのもおにいちゃんだけだよ」

「そうか……」

 

 見当違いでかなり凄いことを言っているが、これはこれでぐっと来る。

 

「なら、オレがお前の最初で最後の男だ」

「おにいちゃん……」

 

 優しく帆波の輪郭をなでながら、形の良い耳元で真剣に囁くと、帆波はぎゅっとつぶった目を開いた。半眼になってジロリと睨み付けられる。

 

「ちょっとグッときたんだけどね。堀北さんたちにもそういうこと言ったでしょ」

「ああ、言った。最低だよな」

「うん、最低だよ……あ……」

 

 ランジェリーショップでの一幕を見られた帆波に否定などしようがなく、あっさり認めて、そっと腰を優しく抱きしめて言葉を続ける。勿論、性的な箇所には一切触れずに抱きしめる。

 いい機会だ。脱がせる前に帆波に返事を貰おう。

 

「それでも言わせてくれないか」

「……」

 

 鼻と鼻がくっ付きそうな距離に帆波と顔を近づける。ぼぅと赤くなっても、呆れと疑いの色を消さない帆波を可愛く思う。

 

「さっき言ったきりで、ロクな返事も聞かずにお前の体を弄んだ多情な性欲塗れの最低なオレに、もう一度言わせてくれないか」

「おにいちゃん……」

 

 鏡に映る自分の露出した乳房に一切視線を向けず自分の瞳を見続けるオレに、帆波の呆れと疑いの色が薄まる。

 

「お前が好きだ。オレにお前の最初で最後の男にならせてくれ」

 

 こちらがなってやると上から目線の言葉を、さりげなく変化させ、出来る限り真摯な表情にして真摯な言葉だけを口に出す。

 

「……………………二度目だね。表情が硬いけど無表情じゃなくて、少しだけでも言葉に感情が込められてる……精一杯のことして貰った……二度目、か」

 

 長い沈黙の間、オレの視線を受け止め続けた帆波の瞳が、ふっと優しく揺れた。

 無表情無感情ではなく一歩進んだ事を、帆波に噛み締めるように喜ばれたことが嬉しいと思う。思えるようになった。

 そんな取り留めない思考は、オレの言葉を受け止めた帆波によって片隅に追いやられた。

 

「おにいちゃんに好きって言われるだけで、私からはこんな風に顔見てハッキリ言ってなかったよね」

「……何をだ?」

 

 返事が分かりきったことでも、聞かなければらならない時がある。それが今だ。

 花が綻ぶような柔らかで幸せでどこか硬い満面の笑みを、帆波が浮かべる。

 

「私、一之瀬帆波は、おにいちゃん、綾小路清隆くんが好きです。兄みたいな意味じゃなく、異性として男の人としての綾小路清隆くんが、好きです……」

 

 さっきまで何度か口にした「好き」とは決定的に違う恋慕を言葉に込めた。

 

「……本当に、私と、するんだよね? おにいちゃんと私がするんだよね」

 

 オレの頭に頬をすり寄せ、帆波がどこか畏れ戦くように囁く。

 決定的な関係を結ぶ直前、ようやく帆波の全てを吐き出させることが出来ると理解し答える。

 

「勿論だ。オレもお前が好きだから、抱きたい」

「そうしたら、もう元には戻れないよ……怖くない?」

「帆波は戻りたいのか」

 

 パンティの両脇に手をかけ躊躇わずに下ろす。汗が籠り、じっとりと蒸れた香りが、一瞬、漂い、消える

 尻たぶから布が抜け落ちるとき「んっ……」とくすぐったそうにしながら、プリンとした尻を露出した。

 吐息を一つ、ゆっくりと腿を閉じた帆波の足元に、トロリとした愛液の糸を引きながらパンティが落ちる。

 それが、答えだった。

 

 

 

 帆波の生まれたままの姿に、思わず息を呑む。

 努力だけでは決して得ることができない、見事な体。

 それは光り輝くような、美しく魅力的な裸身だった。

 他人には決して晒されない、水着や下着に包まれていたところ。

 僅かに日に焼けた珠のような肌。その肌に確固とした色彩を与えているのは、二つの色彩のみ。豊満な乳房の頂にピンと立つ、桜色の乳輪にあるピーナッツ大の乳首。その豊満な肉体と比べると、ひっそりと盛り上がった恥丘に茂るピンクブロンドの繁みだけ。

 その二つの色彩が、見れば見るほど赤く彩る帆波の肌を何倍にも美しく演出していた。

 

「恥ずかしくて、死んじゃいそう……」

 

 明かりの下で獣のような立ちバックの姿勢で初めて男の前で全裸になった恥ずかしさに震える帆波の唇が、そう言葉をつむいだ。

 直接視認できる背後からと鏡に映る前から、何一つ隠すことの出来ず羞恥に赤く染まった帆波の秘所を余すことなく見る。

 

「は、ぅぅ……」

 

 背後にいるオレが大事な所に熱い視線を向けていることを鏡で見せられる帆波が恥ずかしさに呻くような声を出す。

 大事なところをくまなく見られていると思うと、下半身が激しく震わせて隠そうとしてしまう。

 

「なんだ、帆波。足が疲れたのか? なら、支えてやろうか」

「にゃ、にゃぁあ」

 

 その途端に始まる言葉責めに、ビクリと全身を震わせしゃんと下半身をたてる。

 遠慮せずにしゃがみこんで帆波の秘所を覗き込む。

 

「ほ、本当に、死んじゃうよぅ」

「もっと尻を高くあげろ。まんこがよく見えない」

「ひ、ひんっ」

 

 羞恥に震える帆波に要求をさらに上げる。

 

「も、もう、これくらいでいいでしょ、おにいちゃん……そ、そんなにじっくり、見ないで……」

「……無理だ。帆波が綺麗すぎて目が離せない」

「はぅぅ」

 

 羞恥のあまり泣き出しそうな自分と、オレのモノとして征服されていく喜びに浸る自分。心の中で相反する感情がせめぎあい絡み合い、帆波の理性は崩されてしまい。

 耐え切れないと、額を鏡に擦り付けるようにして必死で腰を持ち上げる。そんな帆波に、興奮のあまり逸物が服を破りかねない昂りを覚えながら答える。

 

「そのままの姿勢を保つんだ」

「う、うん」

 

 薄い肉付きのヒダなどは一切はみ出ておらず色素の沈着もない大陰唇の上部の低い秘丘は、濃いピンクブロンドの茂みが覆っている。鈴音と同じく手入れをしていないようだ。鈴音よりは濃いとはいえ、こちらの方も薄めだから必要ないのだろう。

 愛液に濡れた薄めのピンクブロンド色の繁みは肌に張り付き、クリトリスを隠している。

 陰毛から除く隙間から、陰唇の左右に均等の取れたふっくらとした肉形の良さが伺える。

 肩幅に開いていている上に、幾度か絶頂をしていても薄桃色の綺麗な直線を描いた細いスジは、ビタリと閉じていて、注視しなければ、大陰唇の間にあるツヤツヤしたピンク色の粘膜を見ることが出来ないほど開いていない。

 豊満な肉体と比べてあまりにも幼い秘所。

 そのピタリと閉じた陰唇から垂れる粘度の高い無色の液体が、雄の衝動を掻き立てて止まない。

 

「ふぅぅ、ぅぅっ、はぁぁっ」

 

 総合して、熱い吐息を吐き続ける帆波の年齢から考えれば、幼いという意味で、歳不相応な裸体だ。

 一見して少女をとっくに通り過ぎ、成熟した女の体をしているこの体が、よく見ると未だ青い未成熟な硬さを残し過ぎたものだということも、雄の衝動を掻き立てて止まない。

 

「ぁ……」

 

 そんな自分の裸体の全てをさらけ出した帆波の体を、華奢な肩を覆うように背中から抱きとめ髪に顔を埋めてまさぐる。ピンクブロンドの髪から覗いたうなじから、帆波の香りが立ち上ってくる。

 むっちりした肉の奥にある良質の筋肉が、抱きとめたオレの体に反応して強ばる様も愉しい。

 男の獣欲を刺激する芳しい香りを嗅ぎながら、視線を下げて手を伸ばす。

 

「んっ」

 

 右手の人差し指をプリンとした唇にあて形の良い顎を経て喉元を通してさらに下へなぞり、豊満な体を指で思うように描く。

 そんな動作を鏡に映されて見てしまい、頬を火照らせ呼吸を荒くする帆波の可愛いらしさを、目と指と耳と鼻で味わいながらさらに下へ。

 

「ふんっ」

 

 鎖骨から乳房の谷間に流れていくオレの指先を鏡越しで見つめる帆波の熱い視線を感じながら、モデル顔負けのほっそりした括れを経てさらに指を進める。

 

「んっ……お、お尻っ」

 

 ほっそりとくびれた腰に不釣り合いなほど、ぎっしりと肉が詰まっている弾けるようなキュッとお肉が上を向いた、ハートを逆さにしたかたちの臀部は、僅かに汗をかいている肌と合わせて剥き卵のようにプリンとしている。

 優しく撫でてやると帆波はふるふると震えて恥ずかしげに呻く。

 

「んあっ……」

 

 尻肉に手のひらを添えて握りこむと、指が沈み込んだと思うと弾き返してくる。乳房とはまた違う、凝縮された若々しい肉特有の感触。

 水を垂らせば弾き返しそうな張りのある縦に丸みがおびた尻を、加減しながら揉みしだく。

 すると、少し上向きになったお尻は、揉む度にたっぷりと蓄えた肉を歪ませ、割れ目の奥にある弄られて赤く充血した尻穴の皺を丸見えにしている。

 

「ひんっ、あっ、んんっ、んっ」

 

 その光景と、たしかな弾力が心地よく、こうしていつまでも揉んでいたくなるが、この鍛えられた引き締まる大きな尻は叩いてこそ、意味がある。

 後で思う存分叩こうと決意しながら、帆波の火照った頬に顔を近づける。

 

 

 

 

「ま、待って……」

 

 そのまま口付けしながら胸と秘所を愛撫しようとするオレを帆波が軽く押して止めた。何気ない風を装っていたが、やけによそよそしい。尻を叩く邪な想いが感づかれたのではない。

 今まで愛撫をしていた時もあった、何処か距離を取っていた部分が遂に露呈したのだ。

 セックスは多分に精神的なもの大きい。なのに、帆波はどこか肝心なところでセックスにのめり込めず──雌に成りきれなかった。その部分を露呈した好機に問う。

 同時に、帆波に『おにいちゃん』などと呼ばれてオレが浮き立っていたとはいえど、抱いて欲しいと言って何度も性欲を高めておきながら、いざこれからと言う段階で何時も焦らしてのける帆波の天性の男殺しっぷりに戦慄する。

 

「どうした?」

「……もう戻れないよね」

「オレは戻りたくない」

「うん。私も戻りたくない……だから、戻れなくなる前に言っておかないと駄目だよね……私の全部を」

 

 髪をなでながら露呈させるための俺の言葉に、帆波は自分の奥底に隠していたことを表に出すために、囁くように言葉を返してきた。

 

「おにいちゃんから見て私ってどんな子かな」

「……忌憚のないところを言わせてもらうが」

 

 当たり障りの無い評価をする選択が一瞬脳裏をよぎったが、帆波の何処か淀んだ目を見て止めることにした。

 

「うん」

「頭が切れて責任感もある上に腰が据わっている優しすぎる善人だな。明らかな美点の反面、他人に冷徹になれず甘えることを知らない欠点を持っている。だから、まず周りを傷つけない方向へ思考を向けてしまい、肝心なことを一人で抱え込んでしまう。それなのに、能力と人望が高いせいで周りに自然とリーダーとして扱われて拒絶できない。

 つまり、ほとんどのことを巧くやっても、最後に大きな失敗をして周りを巻き込んで取り返しがつかなくなってしまう──単独でのリーダーとしては毒でしかない補佐役タイプだ」

「そっか……にゃはは。やっぱり、おにいちゃんは凄いね。欠点は大当たりだよ……でも、美点は、違うよ」

 

 長所が4つも5つも有るというのはそれだけで欠点だ

 とまでは言わないにしても、割と加減しない評価をしたのだが、帆波は欠点を指摘されたことが嬉しそうにちょっぴり舌を出して笑った。

 

「……私ね、皆が思うような綺麗で優しい心の持ち主じゃないんだ。本当はその逆で、もっと醜くて浅ましい面倒な女の子なんだ。甘えることを知らないんじゃなくて、甘える必要がないんだって強がって生きていた面倒な子。

 お母さんと妹の前では聞き分けの良い、素直で強い子……友達の前では、優しく思いやりのある頼れる子。そうでいようと思ってずっとそうしていたんだ……そしたら、いつの間にかそれが自然にできてて、自分でも自分はそういう人間なんだって思うようになった……でもね」

 

 二人きりの部屋の中で、心の奥底を露呈した帆波の声が虚ろに響く。

 

「でもね、私の胸の奥では、いつでも、私のことを嘘つきって詰ってた。少しでも、悪いことを考えるとそれが溢れてしまいそうで、押さえ込んで、考えないように見ないようにしてた……」

 

 龍園くんに負けるわけだよねと弱弱しい声が部屋に響く。

 

「……苦しかった……誰も、自分をわかってくれないことが。万引きしたときもそう。妹のことを理由にして、妹思いな自分を維持しようするためだって心のどこかで囁いてた……お母さんに叱られたときも、普段妹より私を後回しにしていたお母さんが私を見てくれて嬉しいって心のどこかで思ってた。

 その事を、あの時クラスメイトにも言わなかった。言わずにいたんだ。言えばもう取り返しがつかなくなると思って……結局、私はみんなを信じてしていなかったんだよ。全部さらけ出せなかった」

「それは人として当たり前のことだ」

「うん、()()()()はそう言ってくれるよね」

 

 おにいちゃんでなくオレの名前を呼んで、帆波は吐息をついた。

 

「やっぱり……そう言って受け入れてくれる。だから、私は、清隆くんが好き。私の黒い想いも何でもないことのように全部受け止めて、私を甘えさせてくれるから。

 ……ずっと、待ってたんだ。私の真実をさらけ出せる人が現れるって、理解してくれる人が現れるって……ずっと探してたんだ。そんな人が居て、きっといつか巡り合えるって。そう信じて生きてきたんだ……」

 

 オレにもたれかけながら、指でオレの髪をまさぐり絡めとる。逃さないというように。

 

「あの時、扉の向こうでただ黙って受け止めて助けてくれたときから、私の心の中には『綾小路清隆』って言う名前の男の子が……ずっと、君が、いたんだ……」

「……」

 

 帆波の想いを受け止めるために無言で髪をなでていても、帆波は温もりに自分を委ねない。まだまだ、語らなけらばならないことがあると。

 

「それなのに、私は愚かだった。心ではいつも清隆くんを思って、清隆くんばかり見つめていたのに、その想いが何か気付かなかった。私は恋をしたことがなくて、どうすればいいのかわからなかったから

 ……ううん。それだけじゃなくて、私は恐かった。清隆くんなら受け止めてくれるだろうって思ってたけど。もし、自分の真実を見せたら……嫌われてしまうかもと思ってたら、恐かったんだ」

 

 微かに、帆波が震えた。

 

「そうしているうちに気付いたんだ……私のほかにも、清隆くんに特別な思いを抱いている女の子がいるって……それもひとりふたりじゃなく、何人もの女の子がそうだって……それがわかったとき、私はね」

 

 帆波の震えがとまり、オレの髪を絡めた指も止める。これから、一番つらい想いを打ち明けようとしているために、全身を止めた。

 

「その子達を憎んだ……私が生徒会やクラスのリーダーを頑張って、一所懸命頑張って自分の時間を使っている間にみんなっ

 ……みんな、みんな、清隆くんに近づいていく……同じリーダーなのに同じクラスってだけで堀北さんがいつも清隆くんと一緒にいるのも、桔梗ちゃんが色んな男の子と同じようでどこか違う態度をとるのも、平田くんと別れてすぐに清隆くんにすりよった軽井沢さんも、佐倉さんが純粋に清隆くんを慕うのも、フられたくせに未練たらたらで清隆くんを見つめる佐藤さんも……全部、嫌で、憎くてたまらなかったっ!」

 

 ゆっくりと顔をこちらに向けようとすると抵抗してあちらを向く帆波の横顔を見つめながら、帆波の生々しい感情の叫びをただ聞いて受け止める。

 あの日、扉の向こうで声を押し殺して泣いていたときと同じように。

 

「特に軽井沢さんは許せなかった。平田くんで良いじゃない、何で別れたの……何で別れた後、よりによって清隆くんに擦り寄るの。ずるいじゃない、私が、想う直前に、別れて擦り寄るなんて、ずるいっ! ……そう思うと、彼女が許せなくて……でも、軽井沢さんは、まだ許せないだけですんだ」

 

 帆波の瞳に光るものが浮かんだ。

 

「ごめんなさいっ」

 

 帆波は突然、謝った。

 

「私、見てた。あの雨の日の次の日、堀北先輩と清隆くんが話したの見てた。偶然、清隆くんを見かけて、嬉しくなって遠くから付いていって見た。

 堀北さんが髪切っていて遅れてる間、清隆くんが堀北先輩と話し合って間に合わせてあげたお陰でっ。堀北さんと堀北先輩が兄妹らしく抱き合って仲直りするのを、この目で、遠くからずっと隠れて見た。見ちゃいけないって分かってたのに見てたっ」

 

 血を吐くように叫ぶ帆波。

 そうか見られていたかと、他人事のように思う。

 他人のプライベートを言い触らすことの無い帆波に見られていたのならば、鈴音と学にはそこまで問題ではなかっただろう。

 今、この場、つまり個人的には問題だが。

 

「……その後、堀北さんを、泣くのを耐えて意地を張っていた堀北さんを清隆くんが泣かせてあげたのも見たんだ。距離を開けてたから、何を言っているのか分からなかったけど、清隆くんは何か優しい言葉をかけて上げたんだよね」

 

 質問の形を取っていても、実質確認の言葉に頷くと帆波が唇を噛んだ。

 

「やっぱり、そうだよね。そうだったんだよね……私ね、泣きながら蹲る堀北さんを、ただ傍に居て受け止めてあげた清隆くんを隠れて見てたんだ……それで思ったんだ。その時、心の底から思った」

 

 ギリッと、歯ぎしりの音が部屋に響く。

 

「妬ましいって……堀北さんが、お兄さんと仲直り出来て良かったなんて欠片も思わなかった。人のプライベートを覗き見て申し訳ないなんて思わなかった」

 

 帆波は唇を噛み、流れる涙をぬぐうこともせず言葉を続ける。オレに裸体を預けてオレの体温を余すことなく吸い付きながら続ける。あの時とは違うと全身で叫びながら。

 

「ずるい。ずるい。ずるいよっ! ……私は扉越しだったのに、自分はすぐ傍で、体温感じられるくらいのすぐ傍で! いつもは隣人何て言っているのに、肝心なときでは心の柔らかいところを曝け出して受け止めてもらってっ! あんなときに泣かせてくれた上に、黙って横に立って受け止めてくれるような人がどれだけ居ることも知らずにっ! 感謝もせずにふてくされてっ! 

 ……そのあと軽口叩き合って、いつも通りの絶妙な関係に戻ってっ。遠慮のいらない妬ましい関係に戻って……清隆くんがそうしてくれるってわかってるから、知ってるんじゃなくてわかってるからっ! 感謝もせずにふてくされて……っ、甘えてっ!」

 

 あの時のことはそんな色気のあるものではなかったはずだ──いや、誤魔化すのは辞めよう。一歩進んだ今なら誤魔化すことはない。

 どうでもいい他人ならあんなことはしなかった。

 鈴音だからあんな行動を取ったのだ。

 帆波のときに、色々心を砕いたように。

 好意を持っているからこそ、簡単に抱きしめるようなことをせず、見守りながら側で好きなだけ泣かせた。

 そうすれば、後々、一瞬抱きしめるだけの関係で終わらないと確信していたからだ。

 鈴音が欲しいから、ああしたのだと今なら分かる。

 

「なのに、なのに、何時も、いつだって、綾小路くんのことどう思っているのか聞いたら『彼とはただの隣人よ』なんてっ、答えて……っ!」

 

 何時も何処でもそう答えてっと吐き捨てる帆波に、そっと頬に手を当ててオレの方を向かせようとすることを、帆波はもう止めなかった。

 

「そんな、堀北さんが、今日、あの時、下着姿で、更衣室から、出た時、私は思ったんだ」

 

 オレの目をみながら激情に一言一言噛み締める。

 

「堀北さんなんて居なくなればいいのにって……」

 

 帆波の体からふっと力が抜け、瞳を包んだ光が零れ落ちる前に、その肩を抱き寄せる。

 

 

 

 

「さっき、色々な女の子の名前を出したよね」

「ああ、言ったな」

「佐倉さんと佐藤さんはあからさま過ぎたから清隆くんでも気付くと思ったから言ったけど、今言った子達以外にも清隆くんを好きな子達が居るんだよ。……でも、私は絶対に言わない。その子達が諦めてしまえばいいから」

「そうか」

 

 髪を撫でながら、俺は言葉を返す。

 

「……わかったでしょ……私が、甘えたがりの面倒な子だって。清隆くんみたいな甘えられる人に、一度でも抱かれたらきっと清隆くんのこと一生忘れない。いつも清隆くんの傍に居たくて、束縛しようとする。皆が思ってるような。物分りの良い子じゃない。

 ……面倒臭いよ、間違いなく」

「安っぽい女よりは、そっちの方がいい」

 

 受け止めるというオレの言葉に、帆波は思いつめた目になる。

 

「堀北さんたちと表面では仲良くできても腹の中で舌を出すよ。私だけ見て欲しいってね。

 ……さっきまでもね。私、わざと恥ずかしがって焦らした時もあるんだ。

 そうすれば、堀北さんや桔梗ちゃんも軽井沢さんもして貰って無いことがしてもらえるからって……お尻の穴なんて他の子は最初にされなかったよね?」

 

 肯定の意を込めて頷くと、帆波は優越感に満ち足りた笑みでやっぱりと呟く。

 

「私はね。自分の願望をかなえるために清隆くんを利用したんだ……」

 

 瞳を思いつめた色にしたままで。

 

「こんな面倒な私を清隆くんはどう思う? まだ、抱きたい? 本当に、受けとめてくれるの? ……無理しないでいいんだよ」

 

 無理しないでいいと涙を零した。

 が、

 

「いや、どう思うも帆波は善良で可愛いくて抱きたいから受け止めるとしか思わないが」

「にゃ??」

 

 これほど容姿が優れた少女が全裸で立ちバックの姿勢で居るのに、ここで男が止められるかという点については、後ほどじっくりと帆波に教え込むとして本題を話そう。

 帆波としては真っ黒な自分を曝け出し距離を置かれても構わないつもりで言ったようだが。

 オレとしては、愛撫しても、割りと酷いことしても、ジワジワとしか染まらず、今一つセックスが踏み込み切れなかった大きな理由が、帆波の心にあったと明らかになっただけだ。

 だから、それを受け止める。

 

「帆波」

「あ」

 

 指先でそっと涙を拭い、後ろからすっぽりと帆波の体を腕の中に入れる。

 

「いいんだ。それでいい。帆波に悪い所なんて、ひとつもない。人を好きになったら、独占欲や所有欲が沸き起こるのは当たり前だ。好きならば好きなほど、自分を、自分だけを見つめて欲しいと思うのが人間だ。違うのは、そういう感情を表に出すか出さないかで、誰もが周りに嫉妬して相手を支配したいと思っている」

「……清隆、くんも?」

「ああ、オレもだ。帆波のことをそういう風に想っている。嫌か?」

「んっ、ううん」

 

 そっと帆波の顎に手をやりこちらを向けても、もう帆波は抵抗せずにしなだれてくる。

 

「だろう。だから、オレは帆波にそこまで想われて光栄だ」

 

 人間は自分が傷つくのを恐れ忌避するようになっている。己の過ちや黒い感情を認める前に、「あいつが悪い」と他人のせいにする安易な道に逃げる。

 オレの胸の中でしゃくりあげる帆波の頭をできる限り優しくなでる。

 他人を傷つける前に、まず自分を傷つけることができる帆波が善人ではなくて、誰が善人だと呼べるのだろうか。

 

「本当? ……」

 

 己の暗闇の部分と向き合い、羞恥と自己嫌悪に苛まれ続ける帆波は、本当の意味で美しい心を持っている。

 

「ああ、本当だ」

 

 これを否定するのは、ただの独善だろう。

 

「なら、今から、一日の間だけでも、私以外の女の子を想わないで、私だけを見てくれるの」

「当たり前だ」

「本……あっ」

「帆波のこと以外見ていないし考えてもいない」

 

 そう言いながら帆波の乳房を握りしめて優しく口付けると、帆波は「そっかあ……」と切ない瞳を細めて受け入れた。




 この話、半分くらい椎名さん用で書いていたのですが。
 椎名さんは、こんなに易しく(誤字にあらず)無いので流用しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波⑦

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


ようやくセックスになってきました。


「んっあっ」

 

 舌と舌を絡み合わせ唾液を交歓しながら、ゆっくりと帆波の乳房に手を置く。

 裸体に直に初めて触られピクリと体を震わせるが、今までとは違って受け入れてくる。口づけしたまま真っ赤になった顔を俯けながら、帆波はオレの要求通りに立ちバックの姿勢を守る。

 手からこぼれるほどの白い脂肪の塊から、心臓が破裂するのか心配になるほどの速まった鼓動が伝わってくる。

 

「んんっ……んっ……んんっ」

 

 帆波の乳房に掌を埋もれさせ、その柔らかさと重さを堪能する。

 まさに房と呼ぶべきこぼれ落ちそうな乳房だった。触った感触がまた素晴らしい。たとえようもなく柔らかいのに魔法の水でも入っているように固い芯がある。

 

(収まりきらないな)

 

 大きく、温かく、柔らかい。俺の手では全てを覆うことはできない。ここまでの巨乳はさすがにはじめてだ。

 握ればむにゅんと指が沈んで、ぷるんと押し返してくる。

 肌は信じられないほどすべすべで、軽く汗ばんでしっとりと指に吸い付く。

 白い膨らみの中心部には、二つのベビーピンク色の乳輪とその中心部で控え目に主張している淡い突起が尖らせてぷるぷると小刻みに震えている。

 おっぱいの揺れは小刻みどころじゃないが。

 

「んっ……んんっ」

 

 帆波が呼吸するたびに、ゆっさゆっさと揺れる揺れる。

 ここまで、でかいとこういうことになるのか。すごいな。

 持ち上げればずっしりと手に重たく、手のひらの隙間からプルンとこぼれていく感触もたまらないが、乳房が艶めかしく形を変える光景こそが、雄の劣情を刺激してくれる。

 これだけの巨乳でしか味わえない視覚の悦楽を充分に楽しみ口づけしながら、固く尖って赤みが増した乳首に手を伸ばす。

 

「んっ、んんっ!?」

 

 敏感な神経が集まっている乳首を触られ、ピクリと一度帆波は体を震わせる。

 精神が受け入れ、少しだけマシになったといえども、まだ全く性感らしい性感が発達していない帆波にはくすぐったさしか感じられないが

 

「はぁぅぅっ!?」

 

 強めにキュッと摘ままれれば話は違う。

 今までの愛撫で違う場所での快楽の初歩を知った帆波は、唇を離して弾けるように背を仰け反らせて甘美な声を漏らす。

 

「にゃ? わ、私、なに……ひうんっ!?」

 

 あまりのことに動揺する帆波が立ち直らないうちに、乳房を鷲摑みにして持ち上げてから、顔を埋めるように乳首に吸い付く。

 

「ひあああっ!?」

 

 驚きと悦びが混じった喘ぎが帆波の口から漏れ、乳首を転がされるたびに帆波の肢体はビクリビクリと震える。

 

「んっ、くうっ、ぅうううんっ」

 

 鷲摑みに持ち上げられ下乳を露わにした乳房を鏡に映されながら乳首を責められ、真っ赤になった帆波は首を振って喘ぐ。

 当たり前だが、オレは乳首から口を離さない。

 舌先に乳首を適切に当てるために、口を大きく開けて、乳輪の周りの脂肪ごと唇をつけて、軽く歯を当てて力を込めて固定する。

 

「あっ! あああぁぁっ!」

 

 自分の乳首がオレの口に食べられるような光景を見せられながら、頂点から下のほうへ円を描くように、硬い乳首と柔らかい乳輪の境界をなぞりながら舐め回される。

 

「あぅっ、う、うぅ──っ!!」

 

 見たくないという感じで首を振る。

 しっかり見ろ。と意思を込めてコリっとした乳首を甘噛みする。

 

「ひあぁぁ……っ! あっ、あぁ……」

 

 それだけで軽く達してしまった甲高い声を上げながら鏡に視線を戻す帆波を、さらに責めたてるために適切な箇所に的確な摩擦と圧をかけて乳首をなめしゃぶりながら、固定するだけだった乳房に当てた手を怪しく蠢かせる。

 

「んっ、あぅっ……! んっ!?」

 

 口のなかで固くなっていく乳首が震える度に、柔らかな帆波の美貌が押し寄せる快楽に歪み、肢体から発情した香りを漂わせていく。

 そんな帆波の雌の様子をもっと見たくなり、舌で乳首を転がし唾液で絡めながら、手のひらを押し返すほどの張りを持つ乳房に指を沈め込めさせ、乳首から胸の谷間まで脂肪の下に隠された乳腺に沿わせながら圧迫するように指を走らせる。

 

「ああんっ!?」

 

 脳髄まで走った甘美すぎる痛撃に帆波の背がさらに仰け反り、喘ぎ声がさらに甘いものになる。

 

「あぁ、だめ。そんな……シャワー、浴びて、ないのに……んんっ、そんなっ、したら……だめ、だ……んんっ」

 

 胸をオレの手と顔に押し付けてくる帆波の制止のような言葉を聞きながら、乳首から顔を離す。

 

「硬くしこってきたな」

「あっ……」

 

 唾液でてかてかと光る自分の乳首を見て、帆波が恥ずかしそうに、それ以上に物欲しそうに呻く。

 

「こっちも張り詰めてきた」

「んっ、あっ、んっ」

 

 さっきの圧迫とは違い、今度は帆波の乳房の形状を探るようにゆっくりと指を這わせてから、やわやわと揉みしだくというどこまでも優しい愛撫をする。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 たっぷりとした帆波の乳房を、両手と十本の指でゆっくりと愛撫する。

 脳髄まで走る甘美な痛撃、すなわち快楽を乳房で知ったばかりの帆波には、感じるポイントを見つけ出しては優しく撫でるという、焙るような愛撫がもどかしい。

 物欲しそうな目で見てくるが、知らん顔を貫く。

 

「張り詰めていても柔らかいということが矛盾しないな。帆波の胸は」

「あぅ……ん、ん、あ……」

 

 じれったくなるほど優しくゆっくりと、ほんのりと桜色に上気した帆波の豊満な乳房を、帆波が唇を引き締めたり瞼を瞬きして無言のサインを出すところを重点して撫でつける。

 唾液でてらてらと光り瑞々しく朱色に尖っている乳首どころか乳輪にも触らず、乳腺が刺激されるほど指を沈み込めたりもしないただ撫でているようで、性感を休めないだけの刺激だけは与え続ける愛撫。

 

「どうした背中が張り詰めてきたぞ」

「あ……あう……」

 

 それをずっと続ける。

 

「ん……あ……んぅ……」

 

 一時間近く、何十分も続ける。

 

「喘いでばかりじゃ、何もわからないんだが」

「あ……ぅ……ん……う……あ……あう……ぁ!? ……」

 

 何十分もじりじりと性感だけが高まるだけでそれ以上の刺激が与えられない帆波は、答える余裕もなく息も絶え絶えになりながら鏡に映る自分の可哀そうなくらい充血して尖り切った乳首にオレの手が近づくと蕩けるような目になる。

 が

 

「ぅ!? ……ううっ……うんっ……ああ、も、ぅ……また……」

 

 当たり前のように乳輪を掠めるようにオレの手が逸れていくと、眉根を寄せながら目を潤ませる。

 気持ちよくないわけではない。今も帆波ですら愛撫されて初めて気づく女体の僅かな反応を見透かして張りで刺すように肉悦を与えてくる。

 帆波の乳房の感じるポイントはオレの手により隈なく優しく愛撫され、背中には自分のものとは決定的に違うオレの鍛えられた体を感じて、耳元では帆波のスタイルへの感嘆や賞賛を囁かれて、体は火照り焙らせられる。

 ただ、決定的な刺激が無い。足りないのではない、無いのだ。

 快楽、性の快楽、胸の快楽を知ったばかりの健康的な体に、無い。

 

「残念そうだな」

「ぅぅっ、ひ、ひんっ、お、おね、んっ、ううんっ」

 

 せめて自分からより強い刺激を受けようと、立ちバックの姿勢で鏡に手を当てたままの不自由な体をくねらせて、自分の乳房を揺らしてオレの手を求めてくる。おそらく無意識で求めているのだろうが、帆波のような内面も可愛い女の子に求められるとグッとくる。

そこまでして求めても、不自由な姿勢、何よりも性に不慣れな帆波には何も出来ない。そんな様子がサディズムを満たしてくれる。

 

「いやらしく体を振って何がしたいんだ?」

「きゃぅ、っうぅ……」

 

更に焦らすために乳房の裾を指先でなぞりあげる。帆波はきゅううと目をつぶり、か細い嬌声を上げ

 

「ぁ……はぁ、はぁ……んっ……」

 

ビクリビクリと体を震わせた所で、またゆっくりとたっぷりとした乳房をもみ始めると、遂に帆波が耐えられなくなった。

 

「どうしたんだ?」

「う、うんっ、お、おね……が……うんっ」

 

 高まる切なさに耐えきれずじれったくなった帆波が一度指を噛んだ後、恥じらいで真っ赤に顔を染めておねだりをしようとすると

 

「う!? ……んんっ、ん……ふあっ!?」

 

 強く乳腺をぐりぐりと刺激してやる。すると、帆波は待ち望んだ刺激がようやく来たと嬌声を上げる。

 

「ふあぁっ!? ひぅんっ!? ぁ……はぁ、はぁ」

 

 そのまま大きくビクリと何度か体を震わせるだけの刺激を与えられると、またもどかしいほどに優しくじりじりと焙るように乳房を愛撫し始める。切ないどころか悲しげに帆波の顔が彩られる。

 

「ぁ……ひゃぁぅっ!? そ、そこはっ、や……ぁ……」

 

 それと同時に指で二つの乳首をしっかりと掴み、ぷくりとふくらんでいる乳首を根元からこすり上げ、帆波の暴れだしそうになる体を抱き留めながらぐりぐりと乳首をいじる。

 

「最初のころの柔らかさが無くなったな」

「あぁっ!? や、ん、ち、ちぎれちゃう、よぅ……んああっ!?」

 

 オレの腕の中でビクビクと震える帆波の体。

 なめらかな肌から汗がにじみ出て、発情した雌の匂いが高まっていく。

 

「あっ! きゃ! きゃぅんっ!?」

 

 オレの指が唾液のおかげで滑り良くコリっとした乳首を弄る度に、帆波の理性は焼き尽くされ陥落直前になる。

 焙り火照らせ続け徹底的に乳首を責められる肢体は自由を失い、帆波は恥ずかしさに真っ赤になり首を振りながら、陥落を待ち望み瞳を潤ませる。

 

「あっ、あっ、ひぅぅっ、いっ! あっ! ああっ──!?」

 

 ぐううっ、と体を反らし、帆波が今まさに陥落、達しようとする瞬間

 

「……ぁ……?」

 

 オレは手を止め、名を呼ぶ。

 

「帆波」

「はぁ、はぁ……え?」

 

 オレに立ちバックの姿勢のままオレに後ろから抱かれた胸の中で、荒い息を吐き続ける帆波が不思議そうに見上げる。

 

「オレからもお前に言っておくことがあった」

「い、いま、そ、そんっ……いまぁ……っ」

 

 帆波にしてみれば散々焦らされてから、いざこれからという時に、鼻先に扉を閉められた気分なのだろう。信じられないものを見る目だ。

 だからこそ意味がある。

 

 

 

「実はな」

 

 帆波の善良さは、矜持と忍耐があってこそのものだった。そんな帆波は、今までオレに語ったことは家族にさえ話したことがないだろう。

 そんな誰にも語ったことが無いことを語った帆波に、オレが語れることはない。

 ホワイトルームのことを語っても帆波を混乱させるだけで意味が無い上に互いにデメリットしかない。何よりオレに話す気がない。

 そして、ホワイトルームを除けばオレの半生には語ることが無い。

 そんな自分にどこか苦い思いを抱いたが、直ぐに切り替えた。

 帆波に対しては口に出して受け入れさせてから責めるという、他の少女たちには出来なかったことをすればいいと決めた。

 だから、今ここで言う。

 

「さっき帆波が言ったように、オレはサディストと呼ばれる人間なんだ」

「……はぁ、そ、そんなの、どうでも、うん? ……サディスト……ぇ?」

 

 突然言われたことが理解できなかった帆波は、オウム返しに言いながら、いきなり何言ってるのこの人とまだどこかトロンとした視線で語ってくる。

 そんな、帆波に言い聞かせるように話す。

 

「SMのSなんだ」

「はぁ、はぁ……え、SMっ」

「具体的なイメージがつかないのか。好きな女を縛ったり鞭で叩いたりするあれだ。そうやって痛めつけることで快感を得て愉しいのがオレなんだ」

「はぁはぁ……ぇ? ……ぇ? ……ま、まさか……」

「ああ、そうだ。つまりな、こうして──」

 

 自分の内面を受け入れられ本格的に性交し始めた直後の唐突なカミングアウトに、混乱のあまり咀嚼できないながらも、本能が忌避して咄嗟に逃げようとしても絶頂前まで嬲られ力が入らない帆波を捕まえ、立ちバックの姿勢のまま、腕を振り上げる。

 

「ま、待って──」

 

 待たない。

 躊躇わずに、むき卵のようにつるんとした尻を平手で叩いた。

 

「ひぁぁぁぁっ!!??」

 

 ぱしんという小気味のよい音と共に柔らかい肉が詰まった白い尻たぶが踊り、もみじの模様がくっきりと浮かんで帆波の絶叫が鳴り響く。

 痛みを与えるのではなく、音が鳴るように工夫して打ったとはいえ、いきなりの打擲の驚きに帆波は鏡に覆いかぶさるように前につんのめり眼を白黒させる。

 

「なっ、何っ、い、いきなり、な、なにすっ……」

 

 当てたままの手の下で尻がギュッとすぼみ、しっとり柔らかくひんやりとした手触りの豊満な膨らみが帆波が身動きする度に踊る。

 

「いい尻だな」

 

 叩いた瞬間だけ大きく揺れ直ぐに元の形に戻る大きくともしっかりとした張りがある尻に、思わず呟きながらもう一度。

 

 パァン

 

「ひんっ!!??」

 

 再び手を振り下ろす。

 

「あぁぁっ!!??」

 

 さらに続けて二回。

 

「きゃんっ!!?? ……ひっ、いっっ!!??」

 

 痛みではなく衝撃と音で、喉を引きつらせた帆波の白い背中が反り返り硬直する。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 くたりと頬を鏡に預けながら、荒い息をつき続ける帆波。その尻の上に再び当てたままの手の平の下で、尻が熱く熱を持ちとろりと脂肪を柔らかくして手を包むように受け止める。

 

「ま、待って……ひんっ!?」

 

 その艶かしい弾力を味わいながら、帆波の呼吸が落ち着き鏡から頬を外して口を開いた途端にさらに叩く。

 その度に帆波の口から悲鳴が上がる。

 痛みを与えないように工夫したとはいえ、こう何度も叩けば痛みを感じる。表情にすぐに出す帆波の顔から、ジーンとした鈍い痛みが消えそうになるとすぐに打擲する。

 

「はぁ、んひっ!? ひぃっ!? あひんっ!?」

 

 その度に帆波は嗚咽交じりのたまらない悲鳴を響かせながら、自分の裸体が打擲される姿を鏡で見てしまう。

 肉感的な裸体が揺れるように震え、あちこちから汗を飛び散らせ、見慣れた顔が紅潮して瞳を潤ます光景は、絶頂直前で止められた体をこれ以上なく刺激して焙らせる。

 目論見どおり帆波は、尻を叩かれるたびに痛みだけでなく妖しい感覚を覚えていく。

 股間がむずむずと疼くのだろう。内ももをすりあわせ始めた。

 

「いやらしいな。なに尻を振ってるんだ」

「あうっ!? 違っ、ひんっ!? ……も、もう叩かないっ……あひんっ!?」

 

 そんな自分の姿を鏡で見せられる帆波は、さらに昂りスパンキングで性的な悦びを覚え始める。

 腫れぼったくなった尻を打たれて、秘所の奥が濡れていくのを理解し、あちこちに目をやって混乱する。

 

「あっ!? ひんっ!? あんっ……っ」

 

 そうしているうちに、帆波の大きくて弾力のある尻が真っ赤に腫れ上がる頃には、こらえきれない甘い声が漏れてしまうようになり、帆波が驚愕に目を見開く。

 その声を聞くとようやく手を休め、驚きのあまり目を丸くしながら床に崩れ落ちて痙攣していた帆波を持ち上げ、再度手を鏡に付けさせた。

 ひんやりとした鏡の冷たさに、惚けていた帆波が顔を上げて鏡に映るこちらと目を合わせ哀訴する。

 

「ひ、酷いよ、い、いきなり、お、お尻叩くなんて、酷いよぉ……」

「見ろ」

「ひゃんっ」

 

 帆波の嘆きに答えず、帆波を持ち上げながら頭を下に尻を上にして、何度も打擲され白い肌を桃色の手形にくっきりと染めた尻を鏡越しで見せつける。

 

「やっ」

 

 自分の紅く染まった尻と――尻を叩かれながら蕩けた表情を浮かべる自分が鏡に映り……帆波は思わず目を反らした。

 

「目を逸らすな」

「そ、そんなぁ」

「こういうのが好きなんだ」

 

 帆波の顔を鏡に向けながら、帆波の目尻に浮かんだ涙を舐めとるように頬にキスして脳裏に刷り込む。

 

「帆波の可愛らしい白い尻が赤くなって、うっとりとした涙目で見つめてくるのが可愛くて仕方ないんだ。特に」

「ひぃんっ!!??」

 

 言葉を切り、中指で帆波の秘所を撫で上げると、くちゅりと水音を立てる。

 

「ぁっ……」

 

 スパンキングされて感じていたことを示され、かああと羞恥で林檎のように顔を紅くする帆波の耳に呟く。

 

「こうやっていじめていい声で鳴きながら濡らしてくれると。サディストのオレは、愉しくて仕方ないんだ」

 

 ぱくぱくと口を開きながら、鏡に映る自分お顔とオレの顔に視線を交互に送り、サディストという意味を理解した帆波は喉から声を絞り出す。

 

「ま、まさか、ほ、堀北さんと、桔梗ちゃんが、縛られて、そ、そ、剃られたって」

「ああ、オレが泣きわめく二人を縛り付けて剃った。ここをな」

「ひんっ!?」

「ここを剃って、大切な所を丸裸にしていく時の悲しみと羞恥に満ちた顔も、オレは好きだ」

 

 帆波の陰毛をワシャワシャしながら言う。

 

「ま、まさか、わた、私、も?」

「今日は剃らない」

「きょ、今日は?」

「ああ、いずれ剃る」

「ひ、ひんっ……そ、そんなのっ……だ、だm」

「帆波」

 

 目を回してあたふたしだした帆波の名前を、一段階声のトーンを低くして呼ぶ。

 

「はっ、はいっ」

 

 スパンキングされて感じたことを明かされた直後にそんなことをされて、帆波は背中をびくりと緊張して泣きそうな声で答えてきた。

 

「そんなオレでもお前を抱いて良いか」

 

 声のトーンを判段階和らげて、許可という名の要求をする。

 スパンキングされて快感を感じてしまった後ろめたさを持ち

 

「ううっ、うんっ……」

 

 瑞々しい尻を撫でまわされるたびに、未だ火照る体が再び焙られ自分では制御できない衝動がこみ上げてきて、スパンキングの刺激でさえ求めている帆波がどうするか確信しながら。

 

 帆波は長い沈黙の後念を押すように聞いてきた。

 

「………………合意、だよね?」

「勿論だ」

 

 少なくとも結果的には。

 

「……傷……残さない、よね?」

「無論だ」

 

 剃毛レベルならまだしも、証拠を残すことはしない。

 

「そっか……」

 

 ならいいよと帆波の口が動き、こちらを振り向いた。

 

「私ね……毎日悶々とした時間を過ごして何度も何度もこの思いが何なのか確かめようとしても、フワフワし過ぎて、想いが何なのかわかったのはついさっき、おにいちゃんって呼ぶ前に()()()()に抱き締めて貰った時くらいに鈍いんだけど」

 

 裸の肩を竦めて笑いかけてくる。

 

「あなたが好きです。だから、おにいちゃんが、清隆くんが、私の、帆波の、最初で最後の男の人になってください」

 

 帆波は耳まで真っ赤になりながら

 

「抱かれるのを何度も止める駄目な帆波を、おにいちゃんの、好きに、して……たくさん可愛がってください。それで、今から一日他の女の子を考えないで……お願い──」

 

 ついさっきまであどけなさを残していた同級生が、女の顔をして必死の想いを視線を逸らさず言い切った。

 

 

 

 そんな帆波の想いを受け入れる言葉を返し抱きとめながら思う。

 

 間違いなくオレは帆波に好意を抱いている。それも、どちらかと言えばなどという曖昧なものではない、男として好きだと断言できるものを。

 だが。

 オレの好きと帆波の好きは、全く異なる。

 帆波だけでない、鈴音、桔梗、恵、彼女らも同じだ。

 すべての人間を『道具』として見ているオレの中では、この学校、否、今までの半生で、彼女ら以上に好意と執着を持った存在はいない。

 だが、それらの想いは極論同じものだ。想いに煩悩するようになっても優先順位を付けることは容易いもの。

 

(だから、股をかけられるんだがな)

 

 どれほど情愛を抱いても煩悩に苦しんでも、彼女たちはたったひとり──かけがえのない世界中のたった一人ではない。代わりは居ないが、それだけだ。だから、その情愛を多数に向けることは矛盾しない。

 

「ふぅ」

 

 吐息を吐く。

 たったひとり、かけがえのないただ一人に向ける情熱をオレは知らない。知る機会がなかったのだから、知れるはずもない。

 だから、胸の中にいる少女のような情熱をぶつけることはできない。

 

「お、おにいちゃん」

 

 オレの吐息を心配する善人の少女を見つめる。

 

 オレは帆波のような善人である必要はない。

 オレは世間で何が善とされるかだけは知っておけばいい、そして善人っぽく振る舞った方が得だと認識して、最低でも害を与えないように見えるように振舞っていればそれでいい。

 だが──

 

「結局、おにいちゃん呼びか」

 

 彼女たちと過ごしていると、オレの心に言い知れぬ感情が浮かび上がってくる。

 まだ恋も知らないオレにとっては、この感情を理解して受け止めて整理を付けろというのは無理難題が過ぎる。

 だが──

 

 

「う、うん、だ、駄目かな」

 

 かけがえのないただ一人に向ける情熱をぶつけてくれる少女達には、

 戸惑うことなく受け止めて煩悶しながら踏み込み、オレなりの精一杯を返そう。

 

「いや、構わない」

 

 これからただ一人に向ける情熱を知るにしろ知らないにしろ、どうなるにしても、まずはそこからだ。




 一歩進んだおかげで自分のあり方に葛藤している綾小路くんです。
 なお、本作における綾小路くんの精一杯は、普段はサイコパス系紳士ですが閨ではドSのことを言います。


次回は遅くなると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波⑧

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

ちょっと駆け足になってしまったので、修正するかもしれません。


「え、ええっ、と……」

 

 鏡に手をつけた立ちバックの姿勢のまま、自分の股の間に突然出された異物に帆波が目を白黒させる。

 

「…………う、え? ……」

 

 一瞬で帆波が目どころか思考まで奪われたモノ。

 

「だ、だって、そんな……そんなの、おおき、くて……」

 

 鏡越しで帆波に見られながら脱いだオレがトランクスから出された巨大な肉棒。

 黒々とした剛毛の中心から隆起した竿は、どれだけ使い込んだのか赤黒色に染まっている。

 肉棒の周囲にはいくつものぶっ太い血管をぼこりと浮き上がらせて、逸物だけが独自に呼吸するようにピクリピクリと脈動していた。

 鉄球が付随しているのかと二度見しても変わらない、傘を広げたような高く鋭くエラの張ったカリ首と亀頭。そのあまりの形状は、刺されば吐き出し萎むまで獲物を決して逃がさないと連想させる。

 

「……も、銛……」

 

 パンパンに膨れあがるまで充血したそれは、くすんだ赤紫色の輝きを放ち、ピクピクとうごめいていた。

 その先端にある割れ目からは、白く濁った粘液が、あふれ出て一筋垂れる。

 

「うわ……すごい匂い……」

 

 距離があっても発情した体は濃厚な雄の匂いを嗅ぎ取り、沸き起こった本能的な衝動で帆波は無意識の内に若々しく張りのある尻をもぞもぞと動かす。

 処女の本能で、何とか壊れないように規格外の逸物を受け入れるための最適な姿勢を探してしまい、後背位ではどうあがいても壊れてしまうと無意識下で認識して遂には静止する。

 

「帆波」

「ぁ……え? ……」

 

 肉棒とともに姿を現した、巨大な二つの睾丸。それなりの経験者でも唖然とする代物を自分の股にピタピタと当てられながら呼びかけられても、帆波は茫然としたままピクリとも動かない。

 いや、動いたらどうなるかわからず動けない。

 それほど、帆波にとってはグロテスクで理解できない生き物でしかない。

 なのに、その姿を見て匂いを嗅いでいると、今までの人生で一度も入らなかった生殖本能のスイッチが入ってしまう。

 

「帆波」

「にゃ、にゃぁ……」

 

 再度の呼びかけにもぞりと帆波の腰が蠢く、無意識のままに内股になった腿を擦り合わせながら荒い息を吐き続だすだけで、視線さえ鏡に映った逸物から動かさない。

 

(荒療治が必要だな)

 

 これでは進めない、強制的に進める。

 今までの一方的にオレが愛撫してばかりではセックスとは言えない。何もかも始めての帆波に強制して口に含ませたりはしなくとも手で握らせるくらいはしてもいいだろう。

 片手でぼんやりとしたままの帆波の顎を掴み、顔を直接オレの逸物に向けさせる。

 

「あ……う……」

 

 そそり立つ男根が鏡越しではない視界に入ると意識を取り戻し、すぐに視線を泳がせ顔を背ける。

 帆波の顎を掴んだ手で再度視線を逸物に向けさせ、もう片方の手で帆波の手首を掴み帆波の瑞々しい太ももに挟まれた股間の逸物へ導いた。

 

「帆波、これを握ってくれ」

「ふ、ふえ?」

 

 その指示に、帆波は目を丸くして、羞恥と戸惑いの色を顔に浮かべる。

 

「握るんだ」

 

 もう一度言って、掴んだ腕を逸物に近づける。帆波は逡巡したあと、恥ずかしそうに逸物をおずおずと握った。

 

「あ……熱い……っ!?」

 

 帆波の柔らかな手で握られ、ただでさえ巨大な逸物がさらに逞しさと大きさを増したことに、驚いたような怯えたような声を出す。

 男の象徴を直視するのも初めてなら、手で握るのも初めてなのだ。手から感じる熱さと硬さ、何よりもその濃い赤黒い先端だけで自分のこぶしより一回り小さいだけの大きさだと言う事が信じられない。

 

「指が……回らない……」

 

 肉竿をしっかり握りしめていても本当に指が回らない。中指と親指の間にできた間隔の広さは、回した部分の半分ほどにあることに帆波が驚愕して手を離してしまう。

 

「熱くて……硬い……それに、大きい……こんなのが私の中に入るの? ……ううん、堀北さんも桔梗ちゃんも入ったから、大丈夫、だよね……?」

「ああ、大丈夫だ。しっかり準備をしたからな。二人とも大丈夫だった」

「そ、そうだよね……平気、だよね……準備ってどうするの?」

「そうだな……例えば」

「……あっ!?」

「帆波、手をこうやって」

 

 上目遣いで見てくる帆波の手首を掴み上下に動かす。

 

「握りしめた後、上下に動かしてくれ」

 

 帆波は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうな顔を強める。

 が、準備の一貫だと素直に認識し、言われるがまま、手で肉棒を包むようにしてゆっくりと先端へと動かす。

 

「う、うわ……」

 

 ゆっくりと指を滑らせて先端に向けると、指の間隔は僅かに縮んで行く。

 が、その隙間が半分くらいになった所で、巨大なカリ首に到達してしまい、両手で包めるのではないかと思いたくなるほど親指と中指の間が広まったことが信じられないと、帆波がまた手を離してしまう。

 

 くちゅり

 

「あっ」

 

 同時に内股に擦り寄せた帆波の股の間から水音が響き、かああと真っ赤になる。巨大すぎる逸物を肌で感じた体が、受け入れようと愛液を分泌させて準備を始めたのだが、処女の帆波にそんなことがわかるわけがなく羞恥に震えて固まってしまう。

 

 そんな帆波の姿を見ながら、柔らかく暖かい腿に性器で触れていると我慢が出来なくなった。

 愛液で濡れそぼっていても、未だ帆波の膣はほぐしたりない。挿入するためには、何度か絶頂させる必要がある。

 

 初めて鈴音とした次の日、鈴音が言った言葉が脳裏に浮かんだ。

 立ちバックの姿勢で鏡。帆波の可愛い顔を見ながら後ろから責めることができる。改めてそう認識した瞬間に、体は動いた。

 

 

 

「ひんっ!?」

 

 両の太腿をさらに広げ、内腿の間に逸物をねじ込む、両端からむにゅっと太ももの肉が挟んできて、帆波の閉じた秘裂の筋をなぞり上げる。

 焦らされ感度が上がっていた帆波は、秘所に逸物が擦り付けられる刺激に敏感に反応して嬌声を上げながら、いきなり犯されるのかと全身を震わせる。

 

「あわてるな。これもまた準備の一貫、素股だ、帆波」

 

 帆波のこんもりと盛り上がった熱く火照った陰唇にカリ首の裏側を優しく擦り付けながら言う。

 

「す、すまた……!? あ……」

 

 昂っていた未発達な秘所が開いて逸物に覆うように開き、愛液がどぷっと吐きだしてオレの逸物に幾つもの筋を作る様を鏡で見せられた帆波は、自分の性知識にない単語を言われた驚愕と合わせ、目を白黒して羞恥の余り人類の限界レベルに紅くなる。

 

「そうだ。帆波のまんこと手とオレのちんこを擦り合いながら、互いに気持ちよくして体液を分泌させて入れやすくするんだ」

「そ、そんなこと言っちゃだめ……ひああっ!?」

 

 あからさまな言葉に帆波は、真っ赤になったまま、ろくな余力が残っていない体で器用に片腕で両耳を塞ごうとする。

 許さず腰を前後にゆっくりと律動させて逸物を帆波の陰唇を擦り付けると、生まれて初めて敏感な粘膜を、性器同士で擦れ合わさせられた帆波は、火照った体に与えられた刺激にぐにぐにと腰をよじらせて嬌声を上げる。

 

「太ももをギュッと強く締めろ……そうだ、いいぞ。それから、脚からはみ出たちんこを、お前のすべすべの手で撫でるんだ。優しく、いとおしむようにな。そうじゃないと素股にならない」

 

 腰をよじらせると同時、反射的にぎゅっと太腿を引き締めて逸物をしっかり挟み込んでしまい、あたふたする帆波の性的な知識が薄いことをいいことに、素股+手コキを強制する。

 

「にゃ、にゃああ…… うわ、お、おへそ、まで」

 

 自分の太腿を経ても余裕で先端がへそまで届く逸物の威容に声が震える。本当にこれが入るのかと顔を驚愕の表情で固めたまま鏡についた右手ではない左手を自分の股間に持っていく。

 

「ふぁっ」

 

 こわごわと帆波のしなやかな指が亀頭に触れると同時に、ゆっくりと溝をカリ首でなぞると、くちゅくちゅと粘着性の水音がする。

 自身が興奮している証のいやらしく官能的な音に、帆波が熱い息を漏らし小刻みに震える。

 

「うっ、うぁっ……! ひうっ! ……ぁっ」

「喘ぐのもいいが、オレのもいじってくれないか」

「……ぁ……う、うん……」

 

 オレが腰を急に止めたことに不思議そうな顔をしていた帆波は、指で亀頭をつまむようにして、ぎこちなく指を動かし始める。敏感な粘膜に帆波のほっそりした指が触れ動くたびに腰が蕩けるような快感が走る。

 

「腿ももっと閉じてくれ」

「う、うん……」

 

 もちろん締めつけは膣にかなわないが、竿が柔らかい肉に包みこまれている感触はこれも格別なものがある。ムッチリした太ももとムニムニした秘所は、肉厚感と柔らかさを楽しませてくれる。

 帆波の温かい愛液が逸物に絡みつき、後から後から尽きずに溢れていくのも楽しい。

 その先を帆波の手がそっと包みこみ、手のひらで亀頭をスリスリと撫でる。いじらしいほどにソフトで拙い愛撫であるが、そうであるが故の心地よさがある。

 

「なかなか上手いぞ帆波」

「ひゃぅんっ!? お、おっぱい、んっ、んんっ」

 

 褒めながらツンと先端が上を向いた乳首をつまむと、帆波は鼻にかかった声を上げ、大きく目を見開いて背を仰け反らせる。充血してこりこりと硬くなった乳首を根元から優しく撫でながら豊満な乳房をもむと、元々豊満な乳房がちょっと張り詰めてきた。

 帆波が発情したことで、手応えが指を跳ね返すような弾力に変わった乳房を優しく乳腺を刺激しながら揉む。

 

「ぅんんっ! にゃ、にゃああっ……そ、それっ、だめぇっ!?」

 

 開発されていない乳房に一番効く愛撫をされて、甲高い声が目をつぶった帆波の唇から上がる。ぴくん、ぴくん、と細く括れた背がオレが乳首を撫で豊満な乳房を揉むたびに跳ねて、未知の快感に悩ましくくねりながら元に戻り、耐えようと全身に力を入れる。

 太腿に一層力が入り、ふっくりと柔らかな陰唇が逸物に密着する。

 

「はんっ! にゃ、にゃぁぁっ……そ、そんなにいじっちゃ、だめぇ……あぅぅっ……」

 

 自分の性器に硬い逸物が触れた感触で、帆波は目を開いて鏡を見る。愉悦の声を上げながらよだれをたらし、体をいやらしくくねらせ、頭を振って快楽から逃れようとする自分の姿を見て、竿に密着した陰唇が一層熱を帯び、愛液を垂れ流す。

 

「ぁぅぅっ! にゃ、にゃあぁっ、や、やあっ……」

「駄目とか嫌とか言いながら、ずいぶん気持ちよさそうだな。そんなにいいのか?」

 

 自分のあまりの艶めかしい姿に羞恥で視線をそらそうとしたところを、すかさず言葉責め。

 

「そ、それは……」

「どっちがいいんだ? こっちか?」

「ひうぅぅっ!?」

 

 コリコリとした両方の乳首の先端を弄られ、帆波は大きく括れた背を仰け反らせる。

 

「あっ、んっ……っ、ひぅっ……だ、だめぇ……さ、さき、さきっぽ、そんなにされちゃ……うぁああぁぁっ!」

 

 感じにくい巨乳といえども、繊細な神経が集中した乳首、それも乳頭部をほじられ、帆波は首を振って嬌声を上げる。

 限界まで起立した乳首を弄られ喘ぐ帆波の乳頭部を人差し指で優しくほじりながら、乳房を揉む力を強める。

 

「ひんぁぁっ!? ……それっ……だめぇ……へ、変に……」

「それとも、帆波が弄るのを忘れたこっちか」

 

 乳首からくる快楽が全身に駆け抜けたせいで、亀頭をこね擦る手を休めていた帆波に、奉仕を再開するように促す。

 

「へっ? ……ひゃうぅぅんっ!?」

 

 さっきまでの当てるだけのものではなく、オレは本格的に腰を動かし、反り返った逸物を帆波のぴったりと合わさった二枚の花弁を開くように秘所に擦りつける。

 

「あぁっ!? そ、そん、な……ふぁぁっ! ひぅぅっっ!?」

 

 すっかり充血してぷっくりと膨らんだ陰唇を割り広げると、膣口から新たな愛液が溢れてくる。ねっとりとした粘液を使ってスムーズに逸物を滑らせる。

 

「や、やっ、やっ、ま、まっ、わ、私、そ、そこ、初め……ひぅぅんっ!?」

 

 小さな秘裂、初めて他人、いやこの反応からして自分でも押し広げたことがない秘裂。それが指ではなく男性器でされることに、帆波は上ずった悲鳴を上げようとするが、その途中で擦り上げられ仰け反る。

 

「そ、そんなところ、だめぇ……こ、擦っちゃ、だ、だめだよ……ぁあんっ!? んはぁぁっ!?」

 

 丸いオッパイが2つ、発達しきっていない桜色の乳首も性的興奮とともに、固く起立し赤くなりプルプルと揺れている。オレが一突きするたびに、オッパイが揺れ、乳首があっちこっち向いて、アゴが上がる。

 

「そうか、両方がいいんだな」

「ひぅんっ!? お、おっぱ、おっぱいも、あぅぅっ!? ど、同時なんて、だめ……えぁあはぁぁっ!?」

 

 帆波の開いた陰唇の内面のヌメヌメとした粘膜の感触が気持ちよく、処女の帆波ではどちらがいいのか決められないだろうと決めつけ同時に責める。

 

「んぁぁっ!? ひっ……ひゃぅぅんっ、つ、摘まま、ひゃうぅっ!? ……う、動いたらっ!?」

 

 蝶の羽が開いたような陰唇が竿が移動するたびに竿の太さに合わせて形を変えてオレの逸物を包み込み。

 つきたての餅のような乳肉を両手で味わい。柔肌の頂点の桜色の乳頭を人差し指でほじる。

 

「あくぅっ!? くうぅぅぅっ!?」

 

 もう言葉にならず、帆波は顔をくしゃくしゃにして、肢体をよじらせた。

 

「可愛いぞ。体全体でオレのちんこにしがみついてくる」

「んぁあぁっ!? ひっ……ひんっ、そ、そん、んぁぁああぁぁっ!?」

 

 オレの素股責めに驚きと興奮と快楽で、はあはあと荒い息をついて喘ぎ悶え、鏡の中で快楽の混じった哀切の表情になる帆波。ヒクンヒクンと何度も眉を震わせ背を仰け反らせる様が、オレの嗜虐心を刺激してやまない。

 

「こうするとどうだ」

 

 嗜虐心のまま、姿勢をわずかに変える。

 

「あっ、んっ、ひぅんっ? ……ぁ? ……んはあああぁぁっ!?」

 

 カリ首がグリっと包皮に包まれたままのクリトリスを擦り上げた瞬間。帆波は甘ったるい悲鳴じみた声を上げて体全体を仰け反らせた。

 

「あぁっ! にゃ、にゃに、そこ……ひぁんっ!? やっ、あぁっ、そ、そこ、だめっ!? ひあぁぁっ! くぁぁああぁぁっ!?」

 

 淫らな悲鳴を上げまいと必死に唇を結んで、帆波は頭を振って初めて感じる噴火のような快楽に耐えようとする。

 快楽から逃れようと、オレの下で括れた腰と豊かな尻をくねらせる帆波の姿に、オレは滾りを抑えきるつもりもなく、未熟な、初めて触れられる粘膜を、さらに激しく、ぐちゅぐちゅと逸物で擦る。

 

「そうか、此処か。此処がいいんだな」

「ふぁぁんっ!? そ、そこ、だめっ、そこだ、んゃぁぁあぁっ!?」

 

 勢いよく腰を律動させ、亀頭からカリ首までで常にクリトリスを擦り上げる。手に余る乳房を揉みしだき、乳頭から乳首を押し潰すようにして責めたてる。

 

「あぁぁっ!? ふぁぁっ!? にゃ、にゃ……にゃあぁ、お、おにいちゃ……こ、こすれ、つぶれ……ぇあぁぁぁっ!?」

 

 未だ異物を入れたことがなく開発のかの字もされていない膣内を除く、オレの陰毛で擦られるアナルも含めた女の敏感な快楽神経が集った場所を容赦なく責められ、帆波の秘所は絶え間なく蜜を溢れさせる。

 

「んはぁぁっ! んぅぅっ! はぅぅぅっ!?」

 

 大きな尻にガツンガツンと乱暴に腰をぶつける。鏡に映る帆波の顔を見ると、目をつぶって歯を食いしばり、襲い掛かる快楽に耐えている様子。まるで嫌がる女を無理やり犯しているような感覚。獣じみたセックスにも思えた。

 

「ひんっ、ふあぁぁっ! ふぁああぁぁっんっ!」

 

 オレは腰のバネを使って若く未熟な陰唇に、本格的なピストンで赤黒い逸物を激しく擦り付ける。

 睾丸が帆波の腿裏に当たり、愛液にまみれてぐちゃぐちゃと湿った粘膜音を立てる。

 パン、パン、パン。

 尻を打つ音が大きく響き渡る。

 そんなことに気に回す余裕さえなく、次から次へと送り込まれる快楽に軽い絶頂をつぎつぎと味わう帆波は、目をつぶったまま嬌声を上げ続けるだけだ。

 目を開かせなければな。そう思い、腰と手を止める。

 

「帆波」

「ひゃぅっ! ……ぁ……ぁ……ぇ?」

 

 いきなり止まった快楽に帆波はビクリビクリと全身を震わせながら、吐息を吐くように疑問の声を上げる。

 

「目の前に映っているお前の顔を見てみろ」

「え?」

「可愛い顔をしているぞ」

 

 耳元で甘くささやかれたオレの言葉に、帆波はくすぐったそうに身を捩り目を開く。

 そして見た。目を潤ませ、涙を頬に垂らし、涎を唇から垂らし、荒すぎる鼻息で鼻水さえ垂らしている、自分の淫らな表情を。

 忘れていた恥ずかしさがよみがえり、瞬時に耳から首まで真っ赤に染まった。

 そんな帆波の火照り切った頬に軽くキスをする。

 

「そのまま鏡で自分の顔を見ておけ」

「え……んぁぁああぁぁっ!?」

 

 火照り切った体に、再び刺激を与えられ帆波は言いつけ通り鏡の中の自分の顔を見ながら悶える。

 

「ぁあぁぁっ!?」

 

 乳首を押し潰され、乳房が形を変えて歪みながら、眉を寄せて喉奥から声を出す自分の顔。

 

「ふぁぁんっ!?」

 

 クリトリスごと陰唇を大きくこすられ、首を振りながら涎を宙に飛ばす自分の顔。

 

「ひゃぁぁっ!? ……ぁ……」

 

 オレが腰を引いたことで、陰唇から逸物が離れてしまい、悲哀の表情を浮かべながら熱い吐息を漏らす自分の顔。

 

「あっ! くうぅぅっ! やっ! やっ!」

 

 そんなものを見続けながら快楽の源泉を責められ続けた帆波は、迫りくる限界にビクビクと強張る全身から逃れすがるように、オレの逸物に添えた手をぎゅっと押し潰すように握りしめる。

 その拍子にクリトリスが包皮から剥け出て上を向くくらい露出するのを見て取った。

 腰を大きく前後して、パンパンに膨れ上がった亀頭から竿の根まで幼い膣粘膜と露出したクリトリスに擦りつける。

 すると

 

「ふあああああぁぁぁぅぅぅっ!!??」

 

 咆哮のような絶叫とともに、鏡に顔をつんのめるように押し付けた帆波が、引き締まった背筋を弓のようにして伸びあがり絶頂すると同時に、オレの股間に熱い塊が限界を超えて、迫りあがった。

 

「だすぞ」

「あ? あ、あぁっ、ぁぁっ……」

 

 逸物から勢いよくほとばしる白濁が、鏡の中の帆波の無垢な白い体に飛び散っていく。

 

「ふっ、あぁ、はぅ、はぅ、はぅぅ……」

 

 激しく脈打つ亀頭から何度も放出される精が、痙攣する帆波の乳房と顔と膣を白く染めていく。

 

「ぁ」

 

 精を放出したままのオレに、くらりと腕の中に倒れこもうとする帆波を何とか優しくベッドに横たえながら精を放出する。

 

「はっ、はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……ふぁぁっ……」

 

 何度も逸物を波打たせて精の放出を終えると、帆波は硬直を解き、初めての本格的な絶頂による快楽と衝撃でぐったりとシーツに体を横たわらせたまま、不規則に痙攣し続け止まる。

 

「は、はぅぅっ」

 

 快楽の熱でボンヤリした表情の帆波に対して後始末をしようと、ベッドの横に置いた保温ボックスから濡れタオルを手に取って振り向き、動きを止める。

 

 

 

「にゃぁ」

 

 トロンとしたままの帆波が、豊満な乳房の谷間に潜り込んだ精液を掻き出し、くちゅくちゅと手の中でかき混ぜすんすんと香りをかいだかと思うと

 

「これが……精子」

 

 少し口内で味を確かめるように転がしてからごくんと飲み込んだからだ。

 

「変な味、でも……あったかい」

 

 酔っぱらったように、ふわりと柔らかな笑みを浮かべて頬に手を添えながら、豊満な胸を揺らしながらもう一度掻き出して嗅いで味わい飲み込む。

 

「ふぁぁっ」

 

 そこでまた顔を蕩けさせて目を細める帆波。

 

「あっ」

 

 そこで、自分を見ている視線に気づき、羞恥に真っ赤になる。

 

「にゃ、にゃぁっ、ご、ごめんね。そ、その、タオル。そう、タオル……使わせて……ほ、欲しいなあって」

「……」

 

 誤魔化そうとしたのだろうが、無言で見つめるオレに誤魔化せないと諦めたのか。それとも、気だるすぎて身動きさえろくにできない疲労感で諦めたのか。

 おそらく、その両方で諦め、帆波は両手を合わせて指と指を弄ぶ。

 

「にゃ、にゃああ。ごめんね。へんな事しちゃって、引いちゃった……よね」

 

 現在進行形で、手に精液擦り付けて指と指の間に橋を作っていながらそんなことを言ってくる帆波。

 

「でもね、おにいちゃんの……が、暖かくて、なんか安心しちゃって、ここがね」

 

 そっと胸を押さえる。乳房のにこびりついた精液を手に浸しながら。

 

「なんかポカポカするんだ……へん、だよね」

 

 柔らかな笑みをさらに深くして鼻にかかった精液を啜り、目を伏せ悲しそうにつぶやいた。

 

「帆波」

「は、はい」

 

 そんな帆波に対する静かな呼びかけに、変態とでも罵られると思ったのか帆波は全身をびくりとさせる。

 

「心配しなくていい。帆波は精液に興奮するタイプなだけだ」

「え!?」

「精液を飲んだり匂いを嗅いだりするとたまらなく興奮する人間は割とよくいる。だから別に変なことじゃないんだ」

「ほ、本当!? 本当に!? う、宇宙で、私だけなんじゃないの」

 

 帆波は興奮気味に拳を作った。

 誘導しないで自分は精子で興奮しますと認めるあたり帆波だなあと思いながら言葉を続ける。

 

「こんなことで嘘はつかない。帆波が思うほど気にしなくていいことだ。ちょっとした個性でしかない」

「そっか、そうなんだあ」

「ああ、そうだ」

 

 そう言いながら、オレは内心で『そうか、帆波は精液で興奮するのか』とサディズムの喜びに身を浸しながら、絶頂直後の桜色に染めた肌で安堵に大きく息を吐く性交の準備が整った帆波を見た。




次回本番ですが、遅くなります。


試し読みに憎悪うんぬんとありましたけど、ホワイトルームの刺客が、綾小路くんの子供を産んだ経験有りみたいなことにならないように祈っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一之瀬帆波⑨

高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

リバチさん、コバクマさん、評価付けありがとうございます。


本番を二度に分けるとは思っていませんでした。

2年生編1巻面白かったですね。

手の骨と神経と筋を避けるようにして貫通されながら抑え込むとかいう、特殊部隊でもやらないようなことをしてのけた綾小路くん、感染症の危険があるからちゃんと病院行ってくれればいいのですが。

看病イベントあるかなあ。


 水分を補給して休ませる間、帆波にこびりついた精液を拭おうとすると帆波が悲しそうな顔をするため、そのまま精液で顔パックした帆波をベッドに横たえ覆いかぶさる正常位をとる。

 精液と愛液と汗が入り混じった独特の匂いが漂っているが、意識しなければ気にもならないことに過ぎない。

 素股であれだけ擦られ赤く火照っていても、帆波の秘所は割れ目からビラビラもはみ出していない固い蕾を思わせるぴったりと閉じた綺麗なもの。そんな陰唇を、改めて指でそっと開く。

 絶頂直後だけあり、ぐちゅりと音を立てて開いた陰唇から帆波の発情した匂いが漂う。

 

「あ……」

 

 自分でさえも見たことがない聖域をまじまじと見られ、精液の味と匂いに酔ったかのように顔を真っ赤にして息を乱していた帆波が頬をさらに赤らめる。その姿は、今まで見た中でも一番色っぽく感じる。

 精液に過度な反応を示す体質なのは、正直ありがたい。理性が薄い方がやりやすいからな。

 

「ひゃんっ」

 

 顔を股の間に突っ込み、帆波の秘所を検分する。

 豊満な体とは裏腹に、恥丘は薄く、膣口も狭い。かなり狭そうな上に、肉壁が発達していない。

 評して年齢不相応に未成熟な膣だ。

 そのギャップが堪らない時もあるが、今は違う。

 精液パックのお陰で発情している上に絶頂の快楽を知った帆波の秘所は、期待に粘膜をひくつかせながら後から後から愛液を湧かせているが、これではオレの巨根は厳しいと判断せざるを得ないからだ。

 ……もう少しほぐすか。

 

「や……お、おにいちゃん。そ、そんなに……見ないで……はずかし「トロトロだな」……ぅ」

 

 帆波にも見えるように帆波の尻を持ち上げるようにしたオレの膝で秘所の位置を高くされた帆波は、オレの言葉通りの秘所に可哀そうなくらい頬を赤らめる。

 うぅーと、唸りながら両手の人差し指の指先を弄り合わせる帆波の可愛さを堪能するためにさらに顔を近づける。

 

「恥ずかしがることはない。宝石みたいに綺麗に輝いていて形がいい」

「にゃぁぁ」

「それに……これが帆波の匂いか」

 

 自分の女の源泉を好きな人に褒められ照れ隠しのような羞恥に襲われる帆波をさらに責めるべく、くんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。

 ツンと鼻がつくのに瑞々しい果実のように甘い香りに感じる帆波の秘密の蜜が、滴り落ちてシーツにシミを作る度にオレの脳髄を蕩けさせる。

 

「や……お、おにいちゃん。そんな、ところの匂いなんか嗅いじゃ、ひゃんっ!?」

 

 ペロリと絶頂による過敏さを保った秘所を舐められ脳髄まで走った甘美な痛撃に、匂いを嗅がれるのを止めようとしていた帆波は快楽で痺れ切り鉛のように重い腰を浮かし、横たわっても形崩れしない豊満な乳房を大きく揺らす。

 

「にゃ!? にゃに、して「帆波のまんこを舐めている」にゃぁぁぁぁぁあああぁぁ!?」

 

 あまりの恥ずかしさに絶叫する帆波の頭に手を当て、薄いヒダの一枚一枚の白いカスを舐めとり味わうように口の中に転がす一部始終を見せつける。

 口内にチーズのような味が広がるとともに、帆波が目を丸くしてピクリピクリと震えて跳ねる姿がオレを滾らせる。

 

「やぁぁっ!? な、なに、なにし──」

「お前の恥垢を舐め取っている」

「ち、恥垢?」

「帆波が何時も綺麗に洗わなかったから、まんこに溜まってしまった垢のことだ。それを舐めて飲み込んで、帆波の代わりに綺麗にしているんだよ」

「ぴぁぁぁぁぁあああぁぁっ!!?? ……ふあっ!?」

 

 あまりの発言に泣きが入ったかすれた悲鳴を上げて暴れようとする帆波の両腿をしっかり抱え、秘所を丹念に舐め上げる。

 ぬるっと舌を狭い膣に入れ処女膜のひだを舐め上げると、喘ぎ声がさらに高くなる。

 秘所と太腿の柔らかさに反して、帆波の疲れ切った体に再び力がこもりピンと張る。

 

「美味いな。帆波のまんこは。愛液にはしっかり酸味があって、愛液で溶けた恥垢はチーズみたいに濃厚な味わいだ」

「はぅっ、ぅんっ、お、おとっ、ふあんっ!? ……おとたてないで、ぇ……はずかしいこといわないでぇ……んぁ! んぁぁひんっ!?」

 

 発音が定かでないこもるような声は、今自分が恥ずかしいところの垢を舐め取られながら快楽を感じていることを否定するようだった。

 だが、膣の中にうごめく舌が恥垢を舐め取りながら溢れ出す愛液を舐め取り、それをゴクリゴクリと鳴らして飲み込むオレの喉の音が否定してくれない。

 

「や、やあっ……」

 

 自分の淫らさを見せつけられるだけでなく聞かせられ、帆波は必死で顔を覆うとするが、疲弊しきった腕はそんな事さえする余力も残っておらず、手を浮かすだけに終わる。

 

「可愛いぞ帆波」

「あんっ、うぁんっ……み、みないで、おにいちゃん……わたしのこんな、かお……ふぁぁっ、んあんっ!?」

 

 舌が蠢くたびに帆波の豊満な乳房がブルンブルンと上下左右に揺れ、先端の充血して尖りきった乳首が朱色の影を作りながら汗を飛ばす。

 どれほどの快楽か、肌は濃い桜色に紅潮し、口からは嬌声を出し続け、瞳からは悲しみのものでない快感という欲求が満たされて溢れ出した大粒の涙を流す。

 

「はんっ、ひんっ、んあっ、あぁんっ!?」

 

 薄い陰毛に突き込まれた鼻先が、時々皮が剥けたクリトリスに触れる。

 疲弊しきった体には力が入らず、腿はがっしりとオレに掴まれ、膣はオレに舐めしゃぶられる。

 碌な身動きもできず、帆波に出来ることはシーツの上で豊満な肢体をくねらせて声を上げて鳴くことだけだ。

 そんな帆波を見ていると、心の内からある言葉を帆波に言わせたい衝動が芽生え誘導する。

 

「本当に可愛い。帆波の顔、帆波の感じて蕩けている顔は本当に可愛くて……好きだ」

「にゃ、にゃぁぁっ、あぁんっ!? ……だ、だめだよぅ……そんなこといわれたら……んんぁっ!? かお、みないでっていえなっ……ああっ、あっああっあぁぁあっ!?」

「可愛い顔をよく見せてくれ」

 

 上気し切った頬をオレに向けて切なげに眉を寄せる帆波の顔を見つめながら責める。

 美人というより可愛い寄りの整った顔が、緩んで舌と瞳から透明な雫を垂れ流すのがたまらない。

 そんな顔を見たくて帆波の秘所を激しくむしゃぶる。

 

「あんっ……わ、わたしも……」

 

 膣道が狭く、秘肉の収斂も激しい、これは貫通に手間取る。

 だが、秘肉は舌先でなぞるとしっとりと柔らかいのに、少し押せば弾き返すような弾力があるいいモノを持っている。舐めるだけで挿入して慣れさせる未来に心躍らせてくれる肉質だ。

 帆波の痛みを弱めるためさらにほぐす。

 

「んあああああっ!!?」

 

 膣口からすぐ上のざらついた所を、舌先でゆっくり往復させると帆波が顔を仰け反らせる。

 こなれていなくてもキク所を愛撫された帆波は、汗だくの顔で私も私もと口をパクパクさせながら、これだけは口にしようと言葉を絞り出す。

 

「わたしも、おにいちゃんが、すきっ……んぁぁあっ!?」

 

 全身があまり感じたことがない、こそばゆいような心地良さを感じる。

 誘導しておいて、なおかつ好意があると確信している相手でも言葉に出させるのは格別だ。

 沸き立つ衝動に従い、更に帆波を責める。

 キク所を愛撫していくと、うねり張り詰め膨らみ、膣のざらつきの間隔が広がる。

 今だ。

 

「あ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!??」

 

 舌先に少し力を入れてグッと押し込んで愛撫すると、膣口がギュウゥッと舌を締め付けながら膣穴が脈動する。

 それと同時に帆波は顔を仰け反らせ白い喉を震わせながら獣の叫びを上げて秘所から潮を吹き出す。

 高められたところに止めを刺されて絶頂したのだ。

 膣肉がさらにほぐれ、愛液でぐしょ濡れになった。

 

「ふあぁっ……はぁ……あふっ、はぁ…………」

 

 ぴくっ、ぴくっ、と荒い呼吸を吐きながら帆波が身を震わせる。

 ひくつく膣口からはこんこんとと呼びたくなるほど愛液を垂れ流してシーツにシミを作っていく。

 

「はぁぅっ……んんんっ…………」

 

 顔を離し、疲労困憊して脱力しきった帆波の秘所を見下ろす。

 濡れはもう十分だ。

 が、まだほぐしたりない。

 帆波の膣の肉襞は、全く開発されていない上に、年齢不相応に未発達なのだから。

 

「ふぇ……え、ちょ……にゃぁっ!?」

 

 オレが舌を離すと、直ぐに閉じてしまったぐっしょりと濡れている帆波の陰唇を撫でると、達したばかりで敏感になっている帆波の上の唇から猫の鳴き声のような声が漏れる。

 

「ふああんっ!? あ、頭ちかちかしてるのにっ!? ま、まだぁ!?」

「取り合えず後二回絶頂しよう。それで様子を見る」

「よ、ようしゅってぇ? ま、まってぇ、わ、わたし、つかれて、もうm、むぃあ゛ぁっ?!」

 

 慣れない快楽を叩き込まれ失神しかけていた帆波は、過敏になっている秘所を擦られることで無理やり意識をつなぎ留められてしまう。

 息も絶え絶えな帆波の懇願を聞きながら、陰唇を両手でつまむ。

 柔らかくぷにぷにした感触はオレには心地よいが、絶頂直後の帆波には次への快楽へ誘うものでしかなく、それを嫌がるか欲するかだが。

 疲弊しきっているのに切なげな帆波の表情から、情欲の昂りを見て取り欲していると判断して少し責め方を変える。

 

「……ぇっ?」

 

 右手の小指を立てて陰唇の間に押し当てる。ほぐれた膣口から膣道へと。

 

「やっ、やぁっ!?」

 

 自分の胎内に、舌よりも固い異物を埋め込まれ、帆波は声と体で拒絶する。

 押し出そうと激しく締め付けてくる膣壁の強張った肉を押しのけるようにして、第一関節までを帆波の中へ沈みこませた。

 

「だ、だめっ!?」

 

 ピンと背筋を伸ばせて全身を強張らせる帆波、敏感な柔肉を侵入した指で快楽を感じていても恐怖と緊張が先立つ。

 

「指はまだ早かったな。わかったよ」

「ぇ……んぁっ、舌ぁ、舌がっ……そんなっ……ひああっんっ!? ま、またぁ、入ってきちゃぅぅっ!?」

 

 指で帆波の陰唇を左右に広げ、陰唇の裏側を唇をすぼめて吸いつきながら縦横無尽に蠢かせる。

 

「あっ、んあっ、あぅ──ーっ!? やぁ、んあぁっ、らめっ、舌、うごかしちゃ……んぁぁっ!?」

「なんだ帆波、よく聞こえないぞ。じゅるじゅる」

 

 帆波の粘膜に口全体を押し付けながらくぐもった声で答えながら、あふれ出す愛液を飲み込みながらわざと擬音を口にする。

 

「しゃ、しゃべりながらぁっ……ひぁあぁっ……そんなとこにっ……あっ、あ、あ、ぁぅぅ、押し付けたらぁ、だめぇぇぇ、えええっ!?」

「そんなところに押し付けるなと言われても、どこか分からないんだが。ごくっごくっ」

「んぁぁぁっ!? あっあっあっあっ、あそ、あしょこ、うあぁぁぁ──ー!!??」

 

 待っていても言葉にできない帆波、ここまで来たら理性を蕩けさせた方が手っ取り早い。 

 膣口から湧き出してくる愛液を啜り、垢を舐め取り、つるんとした肉壁をざらざらした舌の腹で舐め上げると、初めて知ったばかりの絶頂の味を再び脳髄に叩き込まれた帆波が全身をびくりびくりと震わせる。

 

「ひゃぅぅっ──!? あ、あっくぅん──っ!? ま、またぁ!? な、なにか熱いのがっ!?」

「こういう時にはイクというんだ分かったな帆波」

 

 一際顔を秘所に強く押し付けて語りかける。すると、今までの経験で素直に従わなかった場合より酷いことになったことを十全と学習していた帆波はコクコクと激しく何度も頷く。

 帆波が素直に頷いたため酷いことはせず、小陰唇を交互に唇で強く挟んで引っ張りながら舌で舐めしゃぶると、帆波は腰を浮かせて悶え鳴く。

 

「あっあっあっ────!? きちゃう、きちゃうよおっ!? い、いっちゃ、いっちゃうぅぅっ!?」

 

 激しく収斂する膣内を舐めしゃぶり、腰が何度も飛び跳ねそうになる帆波の零れんばかりの巨乳に手をやり、指を沈みこませてその弾力と柔らかさを味わいながら抑え込む。

 

「む、胸ぇ! そんなに……ああっ!」

 

 抑え込んでも、絶妙な力加減で痛くしないようにやわやわと優しく揉んで快楽を送り込んで、帆波の意識が胸に行った瞬間、愛液で光り輝くクリトリスを軽く唇で噛む。

 

「っぃぁ────っ!!」

 

 処女に対する愛撫としては少し乱暴な行為に、帆波は声にならない声を叫びながら、体全体から男を狂わすような濃密な香りを発散して硬直する。

 

「ぁ……はあああああああぁぁぁぁ!! あ、ああぁぁっ……イ、イクッ、いっうぁぅぁぅぅっっっ!!!!」

 

 体を仰け反らせ硬直しながら小刻みに全身を震わせ、部屋全体を震わせるような嬌声とは呼べない甲高い悲鳴を上げて、愛液をぴゅぴゅっと何度か間欠泉のように噴き出して二度目の絶頂を迎えた。

 

 

 

 

「帆波」

 

 そのまま、さらに続けて一度絶頂させられた帆波には呼びかけに応じる余裕もなく、ビクッ、ビクッ、とおこりにでも掛かったかのように、体を断続的に跳ねさせる。

 顔にかかって固まっていた精液は汗と混じり合い帆波の額を白濁に彩り、膣内からは大量の愛液が垂れ流されシーツに大きなシミを作る。

 そんな帆波の強張った腰から手を離し呼びかける。

 

「ふあぁ……あん、んんっ……はぁ……んんん…………」

 

 はぁはぁと豊満な胸を大きく上下させ、ぐったりとベッドの上に体を投げ出している帆波。

 オレは愛液で汚れた口元を軽く舐め取ると、帆波の体に体重をかけないように気を付けて覆いかぶり、もう一度呼び掛ける。

 

「帆波」

「……ぁ……あぁ、おにいちゃん」

 

 深い絶頂に微睡み脱力していた帆波の焦点が合い、ぼんやりとオレの顔を認識すると、ふにゃっと笑った。

 つい先程までの淫らさを感じさせない無垢な笑みに、少し見惚れる。

 

「乱れたな。精液パックの効果は抜群か」

「にゃ? ……ぁ……にゃああ……」

 

 からかわれて先程までの痴態を思いだし、もぞもぞとしながら視線をあちこちに向け、何かに気づいたようにどんよりとした声を出す。

 

「やっぱり、私の体、変なんだね?」

「? なんでだ?」

「だって……あんな……ことして、お漏らし……また……するなんて」

「違う。そうじゃない。よく勘違いすることが多いんだが」

 

 出来る限り優しくかつ帆波が自分を無知だと下に見ないように心がけて丁寧に解説する。

 オレの舌が触れて噴き出たのだから場所からして尿とは違う。そのことが、冷静になって考えてみれば理解できる。

 茹だった頭で冷静さの欠片もなかった帆波も最後には「なんだそっかー」と恥ずかし気に笑って受け入れてくれた。

 

「でも、可愛いかったぞ。あんな風に顔を蕩けさせて大きな声を出す帆波は新鮮味があって抱き締めたくなる」

「……んっ」

 

 話の流れを変えたオレの誘いに、柔らかい笑みを浮かべて無言で手を広げる帆波の体を抱き止めると、火照った体を擦り付けてくる。

 そうすると、自然と帆波の可愛さと淫らさに滾った逸物に帆波の柔らかな腹が触れる。

 

「ぁ……」

 

 勃起しきった凶悪なまでのオレの逸物に目を向け、改めてオレが覆い被さっていることを認識して、問うように見つめてくる。

 

 コクリ、と一度頷く。

 

「いいか?」

 

 それを聞いて帆波はそっと目を閉じ乞うように唇を尖らせた。

 

「んっ」

 

 柔らかく唇と唇を合わせるだけのキスをしてそっと離し、帆波の小さな膣口に亀頭を押し当てた。

 先端が柔らかな粘膜に触れ、この少女をものにする予感に快楽が走った。

 

「あっ」

 

 そんなオレに対して、熱く硬いモノに触れられた帆波の肢体は目に見えて硬くなり、震え始め腰をずらして膣口から亀頭を外す。

 小指一本さえ碌に入らなかった場所に、人並外れて巨大な逸物を今から入れられる。

 今から自分がどうなるか。リアルな恐怖で想像できるがゆえに、帆波は一度だけ瞳を閉じてつばを飲み込み目を見開く。

 

「お、おにいちゃん」

「なんだ」

「よ、よろしくおねがいしまっす」

 

 緊張のあまり言葉が変になっている帆波に一度頷き、その体にオレは乗った。また、帆波は激しく震えだす。身悶えして、腰をずらして、逸物が、男が自分の胎内に侵入するのを拒否した。

 

「ご、ごめんなさい」

 

 謝りながら、必死に恐怖を抑えようとするが、逸物の威容が目に映る度に震えが止まらない。

 だがそれは仕方ない。自分で言うのもなんだが、こんな馬鹿でかいものを胎内に入れることに、恐れるなということが無理な話だ。

 あまりに言うことを聞かない自分の体の情さに、遂には涙を流そうとする帆波。

 何も言わずに目元の力を緩め、帆波の目に映るオレの表情を出来る限り柔らかくして帆波の頭に手をのせて撫でる。

 

「ぇ? ……」

 

 汗で湿った絹糸のような髪をゆっくりと撫でる。

 

「はぁ……」

 

 帆波の頭から伝わるオレの温もりが、総身を駆け巡る恐怖を和らげるように撫でる。

 

「にゃぁ……」

 

 ただゆっくりと、歯を鳴らすほど震えていた帆波の震えが少しマシになるまで撫でた。

 

「お、おにいちゃん」

「どうした」

 

 自分の醜態を、オレが何も言わずに飲み込み咀嚼してくれたことに、帆波は強張り切った頬に僅かに笑みらしきものを浮かべる。

 

「わ、わたしっ、が、頑張るね」

「そうか……その意気だ。初めは確かに痛いだろうが我慢できないほどではない」

 

 帆波の緊張をほぐすために、今までした処女の相手をことごとく気絶させてしまったことを棚上げしながら嘯くと、帆波は「えっ?」と呟いて軽口を叩いてくる。

 

「私は、ものすごおおおく、痛いって聞いたけど?」

「個人差がある」

「あー、ひとごとだー。絶対他人事だよー」

「まさか」

「本当ー? 本当かなー?」

「これから他人じゃなくなるんだからな」

「そっかあ、うん、にゃはは、そうだねっ」

 

 本能で怯えすくんでしまい、オレが何度膣口に逸物を当てても逃げて外してしまう体を抑えるために、必死で軽口を叩く帆波に合わせると、帆波の強張が僅かにとける。膣口に逸物を当てても、大きく震えて体を強張らせるが、逃げはしない。

 逃げようとする本能を理性で何とか押しとどめた帆波の意地。それに応える。

 

「帆波、お前をオレのモノにする」

 

 意を決しても怯える帆波に、優しくキスをして耳元でささやく。

 

「うん……私を、おにいちゃんの……清隆くんのモノにして……」

 

 オレが欲しいからお前をこれから犯すと、あくまでもオレが責を持った宣言に、帆波は僅かに頬を緩め、はにかんだ笑みを浮かべた震えた声で応えて目を閉じる。

 オレに対して疑いの欠片もなく、すべてを預けると目を閉じた。

 

「んんんっ!」

 

 再度陰唇を開き、鈴口を膣口に当てる。くちゅり、と音を立てるほど濡れていたが、狭い膣口と未成熟な膣壁は、異物の侵入に激しく抵抗して、ほんの僅かな侵入であっても異物感を訴える。

 強張った全身を大きく仰け反らせて、帆波は異物感に対するマイナスの感情の呻きを押し殺す。少しでも、オレが遠慮せずに入れられるようにと。

 その健気さに、未だ触れているだけでしかなく、これから膣口を広げていき痛みが発生することが申し訳ないとさえ思う。

 腰に力を入れ、出来る限り慎重に、気の遠くなるような速さで推し進める。

 

「くうぅぅぅっ!? ……い、いたっ」

 

 帆波が、膣口をじわりじわりと押し広げられる痛みに苦悶の表情をしながらオレの体に強くしがみ付いてくる。同時に挿入を止めて、帆波の頭を優しく撫でて落ち着かせる。

 

「だ、大丈夫、大丈夫だ、からぁ……つ、続け、て」

 

 強張った表情に笑みらしきものを浮かべて濡れた瞳でオレを見上げる帆波の頬に手を添える。

 

「ああ、続ける。帆波がどれだけ苦しんでも最後までする。だから……」

「……」

「帆波も遠慮せずに苦痛を訴えてくれ。痛みを和らげるとは限らなくても、どれだけ小さい声でも聞き逃さない」

「うん……」

 

 帆波の顔から僅かに強張りが抜けるのを見届けて、そのまま、腰を奥へとゆっくりと進める。

 帆波の熱く湿った膣口がじわりじわりと広がっていく。

 

「あ゛、あ゛、あ゛……あ゛っ」

 

 膣口を限界近くまで広げていくたびに、秀麗な眉が歪んで眉間に刻まれた深い皺に汗が流れ落ちる。

 軋むような痛みに、帆波の口から断末魔の声が漏れた。

 桃色に染まっていた肌は青白くなり、毛穴が閉じたように新しい汗が流れてこない。

 

「あ゛い゛い゛い゛っ──お゛、ぅ」

 

 獣のような唸り声しか出てこない帆波の声を聴くまでもなく、帆波は限界に近い。

 出産のときの女性のように手近なもの、帆波の腰の横についたオレの手首を全力で握りしめながらひゅーひゅーとか細い息を漏らす。

 

 なのに、これ以上入れると裂けるところまで広がった膣口でさえオレのカリ首どころか亀頭の中途以上を通さない。

 逸物から伝わる帆波の粘膜が蠢く感触に、痺れるような快楽を感じながら、一度腰を押しとどめて膣口を圧迫しながら入ってくる異物に膣口が自然と広がるのを待つ。

 オレには至福の時間だが

 

「い゛い゛い゛ぐっ──―っ」

 

 ミシミシという音が聞こえそうなほど自身の膣口を逸物が割り開こうとする痛みを与えられている帆波には地獄でしかない。

 少しでも安心しようとオレの首に手を回してしがみ付き、その動作でさらに痛みが増してしまい、それ以上は何も出来ずに痛々しい悲鳴を上げるだけだ。

 

 腕に食い込んだ帆波の手の爪からの出血を感じながらそうしているうちに、めりっと肉が軋む感触を感じると同時に膣口がわずかに広がりカリ首が入った。

 

「あ────っ……」

「帆波」

「…………」

 

 その衝撃に、帆波が目を見開きこれ以上ないくらい背筋をのけぞらせて意識を失う。

 白目を剥いたまま涙を眼球に張り、愛らしい顔を強張らせたまま固まった顔。人前では到底見せられない。もし、何らかの手段で衆目に晒されれば、帆波がまた籠ってしまうことが間違いないほど、年頃の乙女としては恥ずかしすぎる表情。

 直してやりたいが、そんな動作さえ帆波を苦しめてしまう上に、自分しか見れない表情なのだと、独占欲が湧いてしまうのが止められない。

 

「……」

 

 無言で細い呼吸を続ける帆波の凄絶な表情を見ながら下半身に響く甘い痺れを感じる。

 痛いほど締め付けながら、規格外の異物を押し出そうと蠢く潤沢に濡れた膣壁。

 敏感な亀頭が、帆波の熱い粘膜に包まれ蠢かれ、腰が痺れるほどの快楽がオレに与えられる。

 その快楽を味わいながら待つ。帆波の目覚めと、膣がこれから入ってくる異物に耐えられるように蠢き拡張していくのを感じながら待つ。

 愉悦を感じながら待つ。

 

「──―っ……」

 

 それは、帆波の膣が、今侵入しようとしてくる異物をようやく男性器であると認識して、受胎の為に本能的に受け入れるための蠢きを始めた時だった。

 

「あ゛い゛っ──っ」

 

 帆波が意識を取り戻したのは。

 尤も取り戻したのは意識だけだ。今自分が何をしているかさえ理解できず目の焦点さえ合っていない。

 しかめた顔、開いた瞳の端からあふれた涙が筋となって伝った。

 オレが抱き留めている帆波の柔らかい身体が、ぎしぎしと軋むように震える。

 

「い゛い゛、だっ、う゛う゛う゛……」

 

 オレの腕をつかんだ帆波の手が赤く染まるほど、オレの腕からは出血している。

 

(帆波が見る余裕を持つまでには隠さなくてはな)

 

 シーツを赤く染める雫を見てもそんなことしか思い浮かばない。

 

「う゛う゛う゛……」

 

 体が発汗する余裕を取り戻し全身から脂汗を垂れ流して、少女のものとは思えない掠れた声で苦痛に呻く帆波の健気さにはそうしなければならないのだから。

 

「し……しんぱい……しないでぇ」

 

 目の焦点が合うと同時に、健気に笑みのようなものを浮かべてそんなことを言ってくる帆波。

 頷き、巨大な逸物を推し進める。

 何度も絶頂させてほぐして濡らした膣は、強烈に締め付けオレに快楽を与えてくれる。

 

「ぁぐぅ、ぅ、う゛う゛うぅ……」

 

 過剰とも思えるほどに絶頂させてほぐしたが、その甲斐はあった。

 今までの少女たちと比べると、帆波の膣は逸物を受け入れていて、途中で膣が拡張するのを待つ必要なく、ミリ単位とはいえ逸物を奥へ進められる。

 一際膣道が狭くなると同時、亀頭に生硬い感触を感じる。処女膜に到達したのだ。

 狭さゆえに一気に貫通することは出来ず、ギチギチと締め付けてくる膣が拡張するのを味わいながら侵入を止める。

 

「う゛、あ゛あ……はぁぁっ……」

 

 帆波は、それが膣の最奥に到達したのだと思い、僅かに安堵の吐息を漏らすが

 

「帆波、処女膜に着いたぞ」

 

 信じ難いオレの言葉を聞かされ硬直する。

 

「う……え……ぅうん」

 

 オレの言葉を嘘だと全身で訴えるが、ちらりと開けた瞳で未だ先端しか入っていないオレの逸物を視認すると覚悟を決める。

 

「はっはっはっはっ」

 

 言葉を発するために絶え絶えな息を整えて一度頷く。

 涙と鼻水とよだれと汗で人に見せられないことになっている顔で、健気な笑みを作り両手をシーツの上に広げるようにして開く。

 

「ふぅ、ふぅ……ん、ぐっ……だ、だいじょう、ぶ、き、きて、はやく、き、て……う゛ぐ」

「もう少し、我慢していてくれ」

 

 帆波の両手にこびりついた血を拭いながら手を優しく繋げる。俗にいう恋人つなぎをしながら、逸物を阻む障害を腰を押し付けることで破る。

 

「──あぐっ──ぐっ──!?」

 

 たっぷり濡らしてほぐし過剰なまでの準備をしていても、脳天を貫くような痛みに、帆波は白目を剥いて半分意識を飛ばした。

 膣口をこじ開けて出来た結合部から溢れる破瓜の血を見ながら、これからが本番だと腰に力を入れる。

 と、同時に気付く。

 

「ん?」

 

 急激に狭くなった膣道に思わず声が漏れる。

 ひょっとして奥行きがない膣である『皿』かと思ったが、亀頭の先端には子宮口のコリコリした弾力は感じられない。

 ならば……

 

「二段構造か」

 

 思わず呻いてしまう。あれだけ潮吹きした上で二段構造とは、帆波が名器の素養十分だと証明しているようなものだ。

 潮吹きの女性は感受性が高く素晴らしい名器の持ち主の場合が多い。それに二段構造は、狭くなっている部分が逸物を痛いほど強く締めてくる上に、その部分の奥と手前は柔らかな秘肉が絡み付きながら控えめに締め付けるという、律動すればするほど二重の締め付けを味わえるものだ。

 この二つを合わせた帆波は、慣れればほぼ間違いなく滅多にない極上の名器の持ち主だろう。

 犯すオレにとっては良いことしかないが……

 

「はっはっはっはっはっはっはっはっ」

 

 汗だくで荒い息を吐く帆波をみる。

 犯される帆波にとっては地獄でしかない。ひだでしかない処女膜を抜かれるのとは違い、狭く壁になった膣道を強引にこじ開ける痛みは、膣口や処女膜の比ではない。

 どれ程痛いかといえば、この構造の女性は、出産時に医師から経腟分娩に適さないと判断され帝王切開を勧められる可能性が高いということが全てを物語っている。

 オレの巨根では、挿入した途端に下手したらショック状態になるか、膣痙攣を巻き起こす可能性があるだろう。

 

 それでも、挿入はまだ問題はない。局部麻酔をしてしまえば何とかなる。

 問題は抜く時だ。

 オレの逸物の形状と帆波の処女のこなれていない膣。帆波が言った通り銛のように狭くなっている膣壁に引っ掛かって抜けないだろう。

 それを避けるには精の全てを出し切るしかない。昨日の3Pで、普段よりは残量が減ってはいるが

 

「はぁはぁはぁはぁはぁ……」

 

 瞳に映るのは、僅かに整った荒い呼吸とともに揺れる豊かな乳房と、苦痛に満ちていても何処か幸せそうな愛らしく整った顔。

 見ているだけで欲望が滾り、逸物がさらに膨張してしまい、帆波に苦悶の声を上げさせてしまう。

 駄目だ。出しても出しても尽きず湧き出してくる年頃のオレが欲望を全て吐き出すのに一晩中はかかる。

 鈴音も桔梗も恵も、本来処女にしていいことではない三人の体力の限界が来たら辞めるなどど鬼畜なことをしたのに、オレが欲望を吐き出しきるまで付き合わせるなど論外でしかない。

 

(今なら、止められるな)

 

 名残惜しいがどうするかという決断は一瞬だった。

 局所麻酔では痛みを麻痺させるだけで、膣構造の問題は解決しない。抜く時の問題は解決しない。

 一度抜いて、細いバイブを入れて貫通させて日常的に入れて徐々に広げながら慣らしていくしかない。

 

(そうしよう)

 

 我ながら鬼畜な決断をして、ゆっくりと帆波から抜こうとするオレの腰をそっと掴むものがあった。

 

「約束……破ら、ないでぇ」

 

 体液で濡れた顔に非難の色を込める。

 

「やめ……ないで……最後まで、してよぉ……」

 

 それは、オレをおにいちゃんと呼んで甘えようとする少女(帆波)が初めて口にした、『願い』でも『羞恥の制止』でもない、本当の意味での『我儘』だった。

 




巨根な男性が性交して、膣の構造か膣痙攣で膣から抜けなくなり、救急車を呼ぶのはよく聞く話ですね。
都市伝説として(笑)
私も都市伝説のたぐいだと思っていました。いれたんです。
病院で仕事した時、実際に目撃するまでは。
なので、Tレックスなんて凶器を持っている綾小路くんには避けられない、局所麻酔セックスの時間です。
今までの相手は必要ありませんでしたが、これだけ相手がいれば必要になる相手が出てくる可能性は高いので一之瀬さんに役を担ってもらいました。

本当に、巨乳には巨乳の巨根には巨根の悩みがあります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ①

ヨードホルムさん、ヤミちゃんさん、評価付けありがとうございます。

お久しぶりです。
コロナ関連で多忙なため続けられるか不明となったため、書き溜めていたものを上げさせていただきます。


「大したものですね」

 

 綾小路くんの部屋のカードキーを自分に渡し、綾小路くんの不在時に制服姿の私を入れてのけた真澄さんの手際に感嘆する。

 異性の部屋に潜り込んでいるはしたない自分に高揚したような熱い思いを抱きながら、携帯端末に口をつける

 

「どうやったのですか真澄さん」

「それ今詳しく聞く必要があるの? あんたは今からの初体験のことだけを考えた方がいいと思うんだけど」

「……だからこそ聞きたいんですよ、真澄さん」

「はぁ?」

「今から意識もからだも乙女では無くなるのです。そんな友人の気を少しは逸らせてあげようとは思いませんか?」

「………………」

 

 緊張のあまり、熱く火照り強張り痙攣する頬を必死に動かし言葉を外に出した。すると何故か、真澄さんは深い、とても深い沈黙で答えた。

 

「真澄さん?」

「綾小路と同じクラスの池って奴がカードキー持ってたから、篠原を経由して貰ったのよ」

 

 何故か、優しい声音だった。ずっと年上の、まるで母親のような優しい声音で、幼子に語り聞かせる口調になる真澄さんに、生来の負けん気が呼び起こされる。

 

「成る程」

 

 精一杯上品かつ明瞭に言い返す。

 

「確か、あの二人は交際していましたね。綾小路くんのカードキーを返すことで、篠原さんに池くんが勝手に人の部屋に入るような人物ではない。人としての器量があると見せるように仕向けた。と言うわけですね」

「そうよ」

「お見事です。真澄さん」

 

 言い返すと痙攣が止まっていることに気付いた。真澄さんがわざと自分の負けん気を揺らし頭を働かせて気を逸らしてくれたことに感謝する。

 何時か返そう。そう決意した自分に真澄さんが変わらす母親のような口調で言った。

 その口調に、負けん気を呼び起こされても苛立ちを感じない事に少し驚く。

 

「……前から聞きたかったんだけど、あんた綾小路の何処が良いのよ」

 

 珍しい、自分からはともかく綾小路くんのことを真澄さんから振ることなど今まで無かったのに。何か企んでいるのではないでしょうか。

 幾つかのアプリケーションを起動させたままの携帯端末の画面を確認しても、録音もスピーカーの兆候さえ探知出来ていないことを示す数値しか出ていない。

 どうやら、気を逸らす一環だったようですね。

 無二の友人を疑ったことに、僅かな罪悪感を覚えながら疑念に答える。

 

「あら、綾小路くん素敵ではないですか」

「確かに、能力が高くて頼りになりはする「確かにそういう、遠回しでも直接でもビシッと決める所も好きですが、あまり加算するところでは有りませんね」……例えば? あの無表情無感情じゃ、ロマンスは期待できないわよ」

「確かに、ロマンチックな台詞もムードも期待できませんが、人格に一本筋が通っています。冷徹非道ではありますが、外道でも悪辣でもありません。利害がぶつからなければ信頼出来る人です」

「……つまり、あんたの趣味に合ったのね?」

「簡潔かつ直截に言わないでください……そういうことはオブラートに包んで頂かないと、恥ずかしいではありませんか」

「……ああ、はいはい。まあ、何となくわかったわ」

「何となくではいけません。もう少し詳しく教えましょう」

「いや、10回は聞いたからもう良いんだけど」

 

 綾小路くんのことを思い出しながら話すと、自然と頬が上気し指を曲げ唇で甘く噛んでしまう。

 誰も見ていないから構わないとはいえ、癖になってしまった。

 

「綾小路くんの瞳、綾小路くんの声、綾小路くんの変わらない表情「話すのね。聞かせるのね私に」……近くに腰かけたときの背筋の線から、盤面を挟んだときにうっすら開く瞼に、私の食事を食べるときに僅かに綻んでうっすら開く唇の形まで、すべてが新鮮で、愛おしいんです」

「ぞっこんな訳ね……あんたさあ」

「はい?」

「もしかしてさあ。最近、綾小路のこと以外何も考えて無いんじゃないの?」

「失敬なことを言わないでください。私だって綾小路くんが側に居ないときは、他のことを考えていましたよ」

「……例えば?」

 

 例えば? そう、例えば……例えば。

 

「クラスのことを考えていました。葛城くんが龍園くんと手を組んだのは率直に言って脅威ですので」

「ああ、そう、クラスのことね。クラスのことをね……で、綾小路の側に居るときは、クラスのことも考えていなかったのね」

 

 数秒間必死で頭を回転させて出した答えに、何故か真澄さんは一層疲れきった声で応えてきました。まるで、世界平和を他人に説く前に「平和とは何か?」を逆に突き付けられた哲学者のような疲れ切った声。

 いけませんね。電話越しとはいえ、人前で出していい声ではありません。遠慮のいらない友人関係とはいえ、礼儀を忘れるとは。

 一度真澄さんに注意した方が良いのではと、一瞬だけ頭を過りました。

 が、真澄さんの話の内容と比べれば些事ですね。

 

「当たり前でしょう。せっかく綾小路くんの側にいるのですよ。クラスのことなど思考の隅にも昇りません」

「……じゃあ、何考えてたのよ」

「一緒に過ごすふとした瞬間を、切り取って心の奥に仕舞い込んで、自由に出せたらなどと何時も思っていたりしているのです……」

「ああ、そんなこと言ってたわね」

 

 ほう、とため息をつく。

 綾小路くんの部屋に居るからだろうか、普段はこの辺で話すのを止めるのに、舌が動いてしまう。

 

「綾小路くんが警戒してしまうので、録画も録音も出来ないのが、残念で仕方ありません……ああ、食事のときに綻ぶ表情や、何気なくかけてくれる言葉のひとつひとつを記録することが出来れば……慣れることも出来るのですが」

「……慣れる?」

「綾小路の側に居ると、動悸がまして、血潮が沸き立ち、身体中を火照らせてしまうことにです」

「……体は大丈夫なのよね?」

「体は大丈夫なのですが、変なんです」

「……変って?」

「途方にくれてしまうのです。綾小路くんの、近くにいると、動悸が速くなり、血潮が沸き立って……どうすればいいかと途方にくれて、何をすれば良いかわからなくなるんです……なのに、綾小路くんは何時も平然としていて、ずるくて」

「……ああ、だから、何時も、ボードゲームして食事しかしなかったんだ。何かして体動かしてたら少しは気が紛れる上に、話題も出来るから。そうでしょ?」

 

 はい、と呟くと、真澄さんが「あんた、告白以前の問題だったのね」と慄くように呻きました。

 

 色々な意味で普段の冷静沈着さを保てない坂柳は気づいていないが、今の真澄の発言は、学生やクラスのリーダーや策略家として極めて冷静で有能な人間ある坂柳が、色恋沙汰になると全く感情制御が出来ない不器用な少女だと、アピールしているものだ。

 それに気付かず、坂柳は自分が色恋沙汰に感情制御できない人間だと言葉を取り繕うこともせずに口に出し続ける。

 

「ですから記録が欲しいんです。普段から見て慣れれば……途方に暮れることなく、綾小路くんと向き合って……だ、抱き合うくらい、出来る、はずなのに……」

「……正直に訳話して、綾小路に頼んだら?」

「真澄さん」

 

 何て困った人なんだろうか。それでは痴女か変態ではないか。せめて誰かが盗撮したものを何らかの手段で入手するくらいの工夫がなくてどうするのだろうか。

 これだから恋をしたことが無い女は駄目なのだ。首を振りながら答える。

 

「そんなはしたない真似をして、変わり者だと思われたらどうするのですか。綾小路くん相手では評価を巻き返すのは至難ですよ。本当に易しくない難しい人です」

「いや、今のあんたは誰がどう聞いても変な奴だから。話があっちこち行って合わせるのも大変な変な奴だから……まあ、綾小路が簡単な奴じゃないのは同意だけどさ」

「もっとも……そういうところも良いんですが」

 

 火照った頬を冷やすために手を当てても冷めてくれません。手まで火照ってしまっていますね。困ったものです。

 

「……切っていい?」

「切らないでください」

「あー、はいはい、切らないからそんなに慌てないでよ」

「最近の真澄さんには思慮というものが欠けています。私は慌てていません」

 

 あーそうね慌ててない慌ててない、と真澄さんは吐息交じりに答える。何故でしょうか、最近真澄さんの私に対する扱いがぞんざいなものになっています。私が真澄さんを葬れるのだということを、もう一度思い知らせるべきで──

 

「……で、今から、抱かれるんでしょう。セックスするのよ。なのに、はしたないとか言ってる場合なの?」

 

 ──今真澄さんを攻撃してもデメリットしかありませんね。

 

「真澄さん、そんな直截な言葉は止めてください」

「はぁ? 直裁っていわれても今からあんたは綾小路とセックs「真澄さん」……何よ?」

 

 いい機会です。頭痛を抑えるような疑問の声を上げる真澄さんに釘を刺しておかねばなりません。

 

「電話越しといえども言っていい言葉と言ってはいけない言葉があります。誰かに聞かれる恐れがあるかもしれませんし、人として礼儀を忘れてはいけません」

「……まあ、それはそうよね」

「そうです。そして今真澄さんが口にした言葉は後者です」

「いや、男の部屋に入って二人っきりになってベッドに誘うことを他に言い様が「後者です。恥じらいがありません」……」

 

 電話の向こうで真澄さんが黙り込んだので話を続けましょう。

 

「礼儀、すなわち恥じらいを持って他人と会話するのは人として当たり前の──」

「ちっ」

「……真澄さん、人の話を遮って舌打ちなどと、女性としてではなく人として「黙りなさい」は?」

 

 地獄の底から響くような声に知性の欠片もない言葉が出てしまう。

 

「何時までもウダウダ、ウダウダ煩いのよ」

「私がいつ煩くしましたか。私は礼儀を弁えない友人に、友人として礼儀を嗜めようと──」

「あんたこの期に及んで、綾小路の部屋にスペアキーで入り込んでるこの期に及んで、どうやって綾小路を誘うか決めてないのね。話の持って行き方間違えたら、不法侵入で訴えられかねないこの期に及んで、決めてないんでしょう。違う?」

 

 私の理論的な言葉を真澄さんにバッサリと斬られ、ツウと背筋に汗が流れたのを自覚しました。

 

「……まさか」

「ヒビって、部屋の中で途方に暮れて何しようかさえ決めてないんでしょ。さっき言ってたみたいにね。

 今のあんたは、自分からじゃセックスどころか綾小路に抱きつくことさえ出来ないんじゃない? だから、礼儀だの何だの言って直截な言葉から逃げてんのよ。違う?」

「……」

「無言は肯定ととるわよ」

 

 今や、真澄さんは駒ではなく掛け替えのない友人ですが、力関係は私が上位で居るべきだと思います。なのに最近そうではないんじゃないかと疑ってしまう時が度々あるのが困ります。

 

「……綾小路くんが悪いんです」

「はぁ?」

「綾小路くんが、泥棒猫たちの相手をせずに私だけを相手にした上で、動画や音声を録らせて私を慣れさせてくれればこんなことには……」

「色ボケて人のせいにしてグダってんじゃないわよ!」

 

 一喝。

 

「肝心なのはあんたがどうするかでしょう! グダグダしてたら、綾小路のことだからあんたの所業をあんたの父親含めた経営陣に連絡するわよ! あんた、自分の父親が理事長だって忘れてないわよね! 理事長の娘が男の部屋のスペアキー入手して勝手に使用して部屋に不法侵入なんてことがバレたら、どうなるかわかってんの! どう見ても理事長が権力乱用してるとしか見えないわよ! 私には理事長に『貸し』にするくらいしか想像できないけど、綾小路は何するか分からないのよ!」

 

 息を継ぐ今もなく叫び続け長口上を終えた後、電話越しではぁぁっと大きなため息が響きました。

 

「そもそも綾小路はあんたのものじゃない、告ってもないのに他の女を泥棒猫扱いするな」などと言って坂柳を追い詰めず、坂柳が受け入れられる理寄りの事柄のみの言葉を神室は続ける。

 

「あんた、今打つ手間違ったら終わるわよ。あんたも私も最終学歴高校中退で前科者よ。わかってんでしょうね」

「わかっています……ごめんなさい」

 

 そう、今私は賭けに出ている。私だけではなく真澄さんも巻き込んだ賭けに出ている。

 道連れにしてなお助けてくれるだけでなく、叱りつけてくれる真澄さんに見えないと分かっていても頭を下げた。

 

「……」

「……」

 

 妙に心地好い沈黙を誤魔化すように、一度咳払いをしてから照れの色を含めて真澄さんが問い掛けてくる。

 

「ならいいわ。で?」

「はい?」

 

 ふっと吐息をつくと、また優しい口調になる真澄さん。

 

「正直に言いなさい。どうしたいのよ?」

 

 その問いに対する答えは決まっている。

 

「綾小路くんに抱かれたいです」

 

 綾小路くんの前では言えなくても真澄さんにはこんなにも簡単に言える。なのに、綾小路くんの前では途方に暮れて出来ない。

 でも、何度問われても心の奥底の答えは決まっている。

 

「抱き締められてキスされて……最後までして欲しいんです……抱かれたいです」

 

 もう一度、自分の思いを確かめるために強く言う。

 

「……わかった」

 

 沈黙の後、何処までも優しい真澄さんの言葉が耳朶を震わせました。

 

「なら、私がお膳立てするわ」

 

 先程と同じく、幼子に対する口調なのに、反発する気持ちが起こらない。

 

「あんたは、ビビって途方にくれてるけどさ。それでも、自分が何をしたいのか。その為に何をすべきなのか把握してるだけでマシよ。何も出来ない人はそんなことさえ出来ずに自分の殻にこもるの」

 

 綾小路の動画とか考えるのはどうかと思うけど、と真澄さんは苦笑した。

 

「……良いんですか」

「良いも何も、あんたは綾小路の部屋にもう居るのよ。スペアキー使ったことを学校に記録された上でね。

 今さら逃げ出せないし、逃がさないわよ。

 だから、もしあんたがこの期に及んで怖じ気付いたこと言ったときは腹括ってたわ」

「……どのように腹を括ったんですか?」

 

 淡々とした口調の下に煮えたぎるマグマのような熱を持っている気配がする真澄さん。そんな彼女の様子から急激に膨らむ嫌な予感に思わず口をはさんでしまった。

 

「ああ、大したことないわよ。

 あんたを裸に剥いて猿轡して後ろ手開脚で縛り付けて身動き出来なくしてから『綾小路くんを思うと毎晩慰めるイケない有栖を好きにしてください』って書いた貼り紙でも組んだ脚に張って綾小路のベッドに放置しようと決めてただけよ。

 やる必要無くてよかったわ。疲れそうだし」

 

 …………

 

「真澄さんにはジョークのセンスが有りませんね。笑えません」

「冗談じゃないわよ。知ってるでしょ、私が冗談嫌いなの」

 

 即答には冗談の欠片もなかった。

 この女は本気だ。返答を間違えていたら真澄さんはやった。いや、私が少しでも迷えば今でもやる。違う、見誤るな。

 

 今でもやるつもりだ。

 

「……そうね。やっぱりやるべきかしら。こんな風に話してるんだったら、そのぶん行動すべきよね」

 

 ボソリと呟く真澄さん。声には本気の色しかない。

 想い人に対してそんなことをされるなど、想像するだけで死にたくなる。

 真澄さんに甘え過ぎていた。ちょっと(真澄:毎日計四時間くらいがちょっと?)愚痴りながら相談して、少しばかり(真澄:胸焼けするほどのが少し?)のろけただけで、強行手段を取る必要が有るとまで決意するほどストレスが溜まっていたとは。

 不味い、何とかしなければ。

 

「私がそんなことをすれば綾小路くんは罠だと判断して間違いなく手を出してきません。そのまま扉を閉めて父に連絡しかねないのですが──」

「そうかしら、やってみなきゃ分からないわよ」

「その場合、真澄さんを共犯として──」

「好きになさい。私よりあんたの方が恥かくんだからさ。一生ものの恥をね」

 

 理で説いても無理だ。

 

「……どうやら、真澄さんは誤解しているようですね」

「何がよ?」

 

 情に訴えよう。心の裡を打ち明ける恥ずかしさはあるが、真澄さんなら構わない。

 

「これでも努力はしているんです。普段、表情は勿論のこと、見せ方も自分が魅力的に見える角度を常に意識して綾小路くんに向き合っていたんです」

「確かにそうね……山内の時のあんたは鼻について気持ち悪かったけど、綾小路の時は好感もてて可愛げさえあったわ。一応聞くけど、わざとよね」

「当たり前ではないですか。本命には自然なままの一番の魅力を。どうでもいい他に対しては、その相手が妄想する自分を見せる。

 女として、いえ、人として当たり前のことです」

「まあ、そうよね……で、効果あったの? 綾小路に。あの綾小路に」

「勿論、あの無表情を最近は──」

「端的かつ客観的に見なさい。効果あるの? 誰の目にも分かるような効果が?」

「……ありません」

「……結果の伴わない努力は努力って言えないとはいえキツイわね」

「……ええ」

 

 吐息混じりの真澄さんに返す声が震えているのを自覚します。渾身の笑顔を向けても全く引っかからないということが、ここまで辛いとは。

 本当に綾小路くんは困った人です。確かに、再会した途端にホワイトルームの事を言及した私に警戒しなくて誰に警戒するのかと思いますが。

 私の性格を熟知するように仕向けてから、かなりの時が過ぎたのだから、もう少し踏み込んでくれても良いではないですか。

 正直、一人の乙女としても淑女としても有り得ない行動ですが、たまに綾小路くんを殴りたくなります。言うつもりが無かった言葉が漏れてしまうくらいに自分を保てません。

 

「堀北さんたちを抱いてからの変化と比べると効果がないとしか言えません」

「キッツイわね。それ」

 

 ……まあ、今は、同情してくれた真澄さんの様子から、先ほどの言葉を実施する可能性が消えただけで良しとしましょう。

 これならば──

 

「仕方ないわね。あんたが綾小路に好意持ってて抱かれたいってのは伝える必要あるけど、それでよければ仲立ちするけどどうする?」

 

 狙い通り、吐息混じりに真澄さんは私にとっての福音を告げてくれた。

 

「それでお願いします」

「……自分で言わなくて良いのね? 初恋でしょ、自分で想いを伝えたくないの? 途方に暮れても勢いで言えるかも知れないわよ」

 

 冗談めかした言葉が、どれ程、私の心を暖かくしてくれるか、真澄さんは気付いているだろうか。

 私は何時からこんなに弱くなったのだろうか。それすらも愛おしい。

 

「お願いします。思っていたよりも、私は臆病で乙女ですから」

「ああ、はいはい、あんたは乙女よ……わかった。そうするわ」

「ありがとう。真澄さん」

「礼は巧くいってからにしなさい」

 

 頭を下げた私の言葉に、世話焼きの才能のある真澄さんは、私の絡まった心を安心させて電話を切った。

 自分がどうしたいのか、一番大切で簡単にわかることなのに、特定の人の前に出ると言葉に出せなくなる。

 

(こんなにも甘く苦しいのですね)

 

「……ふふ」

 

 自分の奥底に根付いた暖かな気持ち。どういう想いなのか頭では理解できても口に出せない想いを宝物のように抱えながら坂柳は微笑みを浮かべた。

 いつもの不敵なものではない。どこにでもいる少女が浮かべる自然な笑みを浮かべて心を落ち着けた。

 

 

 

 

 お陰で、数分後「上手く行ったわ。後でもう一度向こうから電話して貰ったら、綾小路はそっちに行くわ」と真澄さんから連絡があったときには、自分でも驚くくらい心が落ち着いていた。

 

「そういえば、綾小路に今から抱かれるんだけど、なんか要望ある? 伝えるかどうかはこっちで決めるけど」

「特に何もありません。真澄さんと一緒に知識は習得しましたし、好きな人に抱かれるのですから特に何も……いえ」

「何?」

「いえ、その……」

「何なの?」

「お尻の穴などは、し、しませんよね」

「あんたは綾小路をどんな変態だと思ってんのよ。初めての女に無理矢理で飲ませたり尻の穴で何かするなんて、独り善がりで相手のこと考えないクズ野郎よ。そんなことされたらぶん殴って来なさい、私が許すわ」

「で、ですよね」

 

 私の返答に真澄さんは柔らかくなった口調で聞いてきた。

 

「じゃあ、何もないのね」

 

 ……いえ、一つ真澄さんに預けておきたいことがありました。あまりにも恥ずかしくて、綾小路くんにさえ言えるかどうかわからないことが。

 すうと息を吸う。

 

「これは、見っともなくて綾小路君には決して言えないので、真澄さんだけの胸にしまっていただきたいのですが」

「……言ってみなさい」

「…………出来れば、優しくして欲しいんです。わたし、その……キス、どころか、異性と手を合わせたことはあっても、繋いだことさえ、一度しかない、ので……それも、綾小路くんと、だけ、で……」

「……」

「贅沢なお願いでしょうけど……優しく抱いてほしいんです……私は、自分で言うのもなんですがこんな、貧相な、つまらない体ですから」

「…………」

「綾小路くんの情欲を刺激できずに、苛立たせるだけでしょうけども……でも、最初だけでも、父以外の男性に優しく名前を呼ばれて……優しく抱いて欲しいんです」

 

 こんな弱気な自分をどうして綾小路くんに見せられるだろうか。

 可憐だとか可愛らしいと思われたのなら良い。でも、理性もなく情念しかぶつけられない小娘と思われるわけにはいかない。

 彼と共に歩くために。

 

「……自分で、言いなさい。あなたが自分で言うべきことよ」

 

 深い吐息と共に吐かれる何処までも優しい真澄さんの言葉。その言葉に少し勇気づけられた。

 

「……出来る限り頑張ります……」

「……綾小路から連絡が来たわ。備えてなさい、心も体も」

 

 母親のように優しく暖かい口調と言い草で話すと、返事も待たずに真澄さんは電話を切った。

 

 

 通話が切れた携帯端末を片手に独りごちる。

 

「……お願いします。真澄さん」

 

 坂柳有栖は恋していた。

 ただし、それは綾小路清隆に対してではなく、綾小路清隆に挑戦し戦い自分と同じ天才なのかを知った上で、打ち勝つことに恋い焦がれていた。

 端的に言えば、綾小路の能力に焦がれていたのであって人間性ではなかった。

 

(それが変わってしまったのはいつでしょうか)

 

 綾小路の枕を抱きしめ鼻腔に綾小路の体臭を入れながら、潤んだ瞳を細め口元に笑みを浮かべて坂柳は思う。

 学校で再会したときは……おそらく違ったはずだ。

 月城旧理事長代理に蹴られ抱き止めてもらったときは……危ういが、きっと、まだ違ったはずだ。

 チェスの前は……頬が火照るのを自覚していた。

 

(そうですね。あの時、綾小路くんと図書館で打った、あの時から、私は)

 

 綾小路には決着を着ける必要はなかった。自分の我儘に付き合う必要はなかった。

 なのに付き合った。非合理で不必要な愚かしい判断以外の何者ではなく、どうしようもなく『人間』だった。

 

(無機質な部屋で育ったのに、あんな一面を見せてくるなんてずるいです)

 

『人間』としての綾小路に触れたあの瞬間、坂柳は恋に落ちた。挑戦して打ち勝つ相手としてではなく、異性としての綾小路そのものに。

 

(いえ、多分、ようやく気付いたのでしょうね)

 

 ホワイトルームで人の温もりも知らず、只淡々と課題をこなし能力を高めていた綾小路、彼を見て自分は最初にどう思ったか。

 称賛するでもなく、ねじ伏せるでもなく、人肌に愛情に触れられない彼を哀れみ、温もりを与えたいと……

 それで、手を触れて包み込んでみたら、色々と……込み上げて来て……

 淡い感情が明確な想いに変わった。

 

(ああ、何だ。私はずっと恋していたのですね)

 

 なんて、乙女。

 言葉を交わすこともなく、一度だけ見ただけの人をそこまで想っていたなんて。

 茶色の男物のハンカチを握りしめて微笑む。

 あの夏の日、助けてくれたのが綾小路くんならと想像までしておきながら気付いていなかったなんて。

 その事に抱かれようとする直前まで思い至らず、綾小路のベッドに横になりながら、枕を抱き締め匂いを嗅いでようやく気づくなんて。

 他者がすれば失笑しながら、攻撃の札にする愚かさ。

 それが……どうしようもなく、愛しくて、恋しい。

 

(綾小路くんも気付いてくれれば良かったのに……いえ、あの、ロマンチックの欠片も無い人には望めませんか)

 

 割りと容赦ない評価を内心で下しているのに、体は違う反応を示す。熱いほど火照り耳元までうっすらと紅く染めてしまうのが恥ずかしくて、綾小路の枕に顔を埋める。

 じっとりした熱さが体を覆う、心臓がうるさいくらいに鼓動を早め、耳鳴りするほど頭が湯立つ。

 コントロールが効かない熱。

 

(いけませんね)

 

 枕を抱きしめ綾小路の体臭をかいで落ち着かせる。

 傍から見れば変態に見えるだろうなと頭の片隅の冷静な部分が告げるが、衝動を抑えられない。鼻腔を通し、腹の底まで綾小路の香りで満たしても、もっともっとと体が欲する。

 こうではなかった。自分はこんな焦がれた衝動だけで動くようではなかったと思えども動いてしまう。

 愛着、慈愛、愛憎、情愛、ありとあらゆる愛を綾小路に抱いていると思っていたのに、自分は肝心な思いを抱いていなかった。いや、気づいていなかったのだと坂柳は理解する。

 

(愛慕……いいえ、恋慕……を、何時の間にか)

 

 ほうと艶かしい吐息を吐く。そこまで想う相手と、今から情事を行うのだと思うと、普段通りに「フフフッ」と笑うことさえ出来ずにギュッと綾小路の枕を抱く。

 

(怖い……ですね)

 

 いつかはすることだと理解していても恐怖を抑えきれない。

 俗に言う良家のお嬢様である自分は貞操と妊娠に関して高い観念を持っているからでもある。

 自分の体を委ねる相手はそれ相応の相手でなければならない。

 

(綾小路くんならそういう意味でも不足はないのですが)

 

 怖いのはそれが理由ではない。

 自分で言っては何だが、自分はかなり乙女だ。

 ファーストキスと処女は本当に好きになって結婚を考えるような相手に捧げるものだなどという乙女チックな想いを、本気で信じているくらいの乙女。

 

(だからこそ、怖いのですね)

 

 家柄・能力・外見に何の不足もない綾小路。

 結婚相手として不足なく、したいと考える相手の綾小路。

 何より、自分が初めて恋をした綾小路。

 

 その相手に──

 自分はちゃんとできるだろうか。

 自分の幼い体は彼を満足させられるだろうか。

 不安で怖くて仕方ない。

 自分は…………彼に、満足されずに嫌われてしまわれないだろうか。

 

(困りましたね……関係をステップアップする前に、何か特別な思い出が欲しい、流れに流されてロマンチックな流れではないことに気をとられるならともかく……怖い、ですか……)

 

 自分が優れた容姿をしていることは理解しているし、磨いている。

 だが、客観的に見て自分の体は幼く未成熟だ。

 そのことを自分は理解していた。

 だが、理解しているのは、納得するのとも平然としていられるのとも違う。

 

(もう少し、もう少し余裕が持てると思っていたのですが)

 

 彼が関係を持った女性と比べられ、失望されたらどうしよう。

 そう思うと震える体を誤魔化すことさえ出来ず、綾小路の枕を全身でかき抱くようにして丸くなる。

 綾小路の香りを吸っていると少しだけ気分が落ち着き、震えが収まる。

 まだ、綾小路は部屋に来ないだろう。なら──

 

(もう少し、抱いていても……)

 

 数分間香りを堪能するつもりで枕の香りを吸い始める。

 すっ。落ち着く

 すぅっ。落ち、着く

 すぅぅっ。落ち着……く。

 この枕に比べれば、愛用の抱き枕は……ゴミだ。

 

(綾小路くんにお願いして普段使う抱き枕に出来た……ら、いいの、ですが……そうですね。性交した相手が我儘を言えば綾小路くんがどうするか知る良い機会です。やってみましょう。

 巧くいけば私の枕と交換することが出来るかもしれません。そうして、私は綾小路くんの綾小路くんは私の香りを堪能出来ます……そうすれば、他の泥棒猫を抱いた後でも、眠りにつく時には綾小路くんは私の香りを最後に嗅ぐことに……一週間で交換し合うのを目指しましょう

 ……あ、いえ、その前に、綾小路くんに、見せる身体に、変なところはないか、鏡で、かくにん、しない、と……)




続けたいです(真顔)
コロナが収まったら続けたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ②

 書き溜めはここで最後です。
 コロナ収束までごきげんよう。


「ここまで、言わせるつもりはなかったのよ」

 

 四股に分かれた端末の先端、イヤホンの一つを耳からはずすと、神室は自分の部屋の壁にぐったりもたれて両手で顔を覆った。

 今までのやり取りをすべて聞かされたオレは何も言えず、耳につけていたイヤホンのもう一つをはずして、3個目の端子で録音していたレコーダを取り出しへし折る。

 

「……」

 

 無言でオレの行動を注視する神室の前で、最後の端子に繋がれた手の平大の黒い装置を取り出す

「例えどれだけ優れたソフトウェアでもハード(携帯電話)の性能以上の事はできない」と声に出し、神室の目の前でへし折る。

 息を飲む気配。有線の必要があるとはいえ、携帯端末では盗聴されていると捉え切れない効果を生み出した装置。素人目にも並大抵な物でないと分かるそれを躊躇わず破壊したオレに、驚嘆しているようだ。

 

「……いいの?」

「何をだ。オレはお前の部屋で世間話をして帰るだけだ。自分の部屋にな」

 

 普段の坂柳ならば、盗聴されていないと確定しても、あそこまで心を曝け出さなかっただろう。

 そこまで神室を信頼していて、心を曝け出して構わないと思うほどにほどオレを想っているのだ。

 そんな坂柳を結果的に裏切ってしまった神室は悔恨の念で押しつぶされそうになっている。

 ならば、製造困難な装置であっても壊すことに躊躇いはない。

 音波接合が出来ないから同じ大きさは無理でも、同じ性能ならば製作(製造ではない)は困難ではあっても不可能ではないしな。

 

「……そう」

「ココア旨かった。ご馳走さま」

「……ええ」

 

 片手で顔を隠しながら、もう片方の手で壊れたレコーダーと装置を受け取り「確かに一本筋は通っているわね」と呻く神室から踵を返し神室の部屋を出るために歩み始める。

 実父と何らかの関係を持つ理事長(父親)のことや、何股もかけている現状を鑑みて、相手の想いが薄々わかっていても手を出さないようにしてきた。

 だが、此処までのひたむきな想いを口に出されては考えを変えるしかない。認めよう。坂柳に対して情が湧いたと。

 今までの自分では浮かぶことさえなかった情を噛みしめながら、一歩踏み出す。

 自分の部屋で待つ少女の想いに応えるために。

 ……健康な一人の男として、神室が坂柳に発破をかけるために言っていた『全裸で縛られて貼り紙を貼られた坂柳』を見てみたかったという残念混じりの想いを押し殺して。

 

「じゃあ……」

 

 邪念を押し殺しながら片手をあげて通り過ぎようとすると、神室の手が信じられないほど素早く延びてあげた腕を掴んだ。

 その動きは、武道の「ぶ」の字さえ無いのにオレの虚をつかんでのけた。

 

「……分かってるだろうけど、避妊だけは気を付けなさいよ」

 

 邪念がバレたかと内心驚愕していると、腕をつかみながらうつむいたまま言ってくる。

 邪念がバレていないのは助かったが、正直なところ避妊云々を突かれるのならば邪念がバレた方がましだった。

 論理武装して誤魔化すことは出来る。だが、ここで誤魔化すことが出来ても坂柳経由でバレるだろう。今の坂柳が初体験の報告相談を神室にしないとは思えない。

 激昂されることを前提として、仕方なく神室に本当のことを言う。

 

「ああ、勿論だ。避妊薬を用意している」

「避妊薬? あんた……まさか」

 

 神室は目をあげた。懸念通り、こいつ何言ってんだという、凄まじい気迫の籠った血走った眼で睨みつけてくる。

 

「……生でするつもりなんじゃないでしょうね?」

「ああ、生です──」

「なに考えてんのよっ!?」

 

 言葉を遮り咆哮。

 視線に殺気がこもる。

 

「あの子、先天的心疾患なのよ! 杖をつかないと歩けないくらいの先天的心疾患なのよっ!? ……もし、もし、もし……」

 

『もし』の後を想像して眩暈さえ覚えたらしく一度大きく深呼吸した神室は、意を決して人を殺せそうな目付きで睨んだ──オレを。

 

「もし、に、妊娠っ……に、妊娠なんかさせたらっ……堕ろさないと母子ともども──ってことになりかねないのよっ!!?? あんた、それ、分かってんの!?」

「ああ、分かっている。ゴムをつけないのはその上でのことだ。ゴムをつけないのには訳が有るんだ。聞いてくれないか」

 

 怒鳴り付けながら胸ぐらを掴んで頭を揺さぶる神室が、冷静さを取り戻してくれるように誠意を込めて答える。

 この誠意に裏は無い。

 神室の手に引っ掛かって揺れる防犯ブザーと、ベッドの脇に立て掛けられた金属バッドは、人を誠意にさせる。神室の部屋──女生徒の部屋に居れば猶更。

 

「訳、訳ですって……ふっざけんじゃないわよ!? 避妊に気を付けてる奴が、ああ……る……何て生返事で済ませるわけないでしょうが!」

 

 そして、そんな誠意など、坂柳の体と心を心配する神室には何の効果もなかった。

 

「分かってんでしょうね!! ゴムと避妊薬両用しないと避妊って呼ばないのよ!? 出すもの出せば済む男と違ってね、女は出された後があんのよ! 出された後のこと、色々なこと気をつけないとならないのよ!? 

 只でさえ反対なのよ! 何人も股かけて粉かけて平然としてる人間のクズなんて選ばなくていいじゃないっ!? そんな人間のクズよりも良い奴がふさわしい奴が居るって、何度言って聞かせてもあの子があんたがいいって望むからしょうがないって頷いたのにっ!?」

 

 否、逆効果だった。完璧に、火に油を注いでしまった。ヒートアップしてますます昂る神室。その姿に普段の冷静さなど欠片もない。

 

「──やっぱり、私が間違ってたわ、頷くんじゃなかった! ……出なさいよ。どうしたのよ、坂柳……くっ」

 

 手元の端末を操作して坂柳に連絡しようとしたようだが、電話に出なかったようだ。坂柳の身に何かあったのかと慌てて自分で行こうとしている。

 ……好都合だ。このまま神室の焦りを加速させ、体力の限界を迎えさせよう。

 

「……何のつもりよ」

「話を聞いてくれ」

 

 神室の進路をふさぐと同時に、ブラブラと目の前で揺れていた防犯ブザーを奪い取って後ろに放りながら話しかける。

 

「………………まさか、あんた」

 

 部屋の出口に立ち神室が出るのを邪魔するオレを、殺意混じりの悔恨の表情で睨みつけてくる。狙い通り、オレが何か仕込んでいて坂柳がそれに引っ掛かり電話に出れないのだと受け取ったようだ。

 

「……何てこと……何てことしたのよ」

 

 神室の脳裏で坂柳がどうなっているのか。先ほどの『全裸で縛られて貼り紙を貼られた坂柳』より酷い目に合わせているのだと神室の目が言っている。

 切羽詰まった表情で『どきなさいよ。どけっ、どいてよっ』と言いながらさらに強く激しく揺さぶりながら怒鳴ってくる。

 頭を揺り動かされるのは慣れていても、鼓膜が痛くなってきた。

 神室の全力でも微動だにしないオレに、嘆きと絶望と怒りで顔を般若にした神室が言い放つ。

 

「あの子に、あんな健気な一途な娘に何かあったら、あんたを許さないわ! 膜破ってあんたにレイプされたって訴えて言いふらしてやるっ!」

 

 神室は本気だ。坂柳に居場所を与えられただけの時とは違う。今の神室は、坂柳に何かあれば自らを犠牲にすることを辞さないし、オレと神室自身を許さないだろう。

 これほどの絆を築き上げるとはな。二人の間に何があったのか興味はあるが知る必要はない。だが、神室が今の坂柳との関係に満たされていて、坂柳を裏切ることは無いことは刻み込んでおく。

 それはそうと、神室が坂柳を心配する気持ちは非常によく理解できるが、世の中には出来る事と出来ない事があり、これは後者なのだ。

 そして、それを今の神室が冷静に受けてくれる可能性は非常に低い。

 やはり、想定通り息を切れさせてから話すか。

 坂柳の危機的な状況(状況証拠)と手元から消えた防犯ブザーによって精神が追い詰められた神室ならばもう直ぐだ。

 

「坂柳は無事だろう。どうして連絡が出来ないのかはオレにも分からない」

「ぬけぬけとっ!?」

「それと」

「なによ!?」

「すまない。ゴムを使うのは無理なんだ」

「何が無理なのよっ!! まさかあんたっ! この期に及んでコンドーム買いに行くと目立つとかいうんじゃないでしょうねっ!? あんたっ、何処までクズなの……ぁっ……ひゅっ……あっ……げほっげほっ」

 

 オレが挑発するたびに全力で暴れながら叫んだせいで、体力の限界を迎えぜえぜえと息を吐くようになった。ならば、これ以上の挑発は必要ない。まだ叫ぼうとする神室を刺激しないようにできる限り静かに言う。

 

「神室、落ち着いて聞いてくれ」

 

 正直、この事実を隠しておく必要はない。わりと不名誉なあだ名をつけられたことが憂鬱なだけで、今の神室相手には隠す必要なんてない。

 神室が受け入れて聞いてくれるだけの手間が此処まで掛かるのが面倒だっただけだ。

 

「だ、だから、何がっ、げほっ、よっ!? 先天的心疾患抱えた妹みたいな子が、男の部屋に閉じ込められていてっ……ごほっ……今からろくな避妊もされずに犯されるって言われてっ……げほっ……んなこと言うクズ野郎が目の前に居て……はっ……助けようとしても助けられなくて……ひゅ……落ち着ける奴がいたらお目にかかりたいっ!? ……げほっがはっ」

 

 狙い通り肩で息をするくらいに消耗した。これならばオレの言葉を聞く余裕がある。いや、オレの言葉を聞かないだけの余力が消え去った。そんな神室に、ごくごく静かに告げる。

 

「コンドームの合うサイズが売って無いんだ」

 

 天沢に貰ったものを桔梗に言われて試したのだが、行為中に破れてしまった。天沢がオレのサイズを知らなかったことに「はっ、サイズも知らないでイキってたとか」と口角を上げる桔梗を見ながら、桔梗の柔らかな手の感触がわからないほどの痛みに耐えるのは辛かった。

 

「はぁはぁ……は?」

 

 何を言われたのか理解できずに、ぽかんと口を開けた神室の記憶を呼び覚ますように話を続ける。

 

「一年の混合合宿の後で噂が立たなかったか? ……男子のアレのサイズのことで、女子にもそれなりに噂になったと聞いたが?」

「……あ、Tレックス」

「ああ、だからコンドームの合うサイズが売って無いんだ」

 

 神室もやはり聞いていたか。性別どころか学年を越えて噂になってしまっていたことに、当時は軽い頭痛を覚えたが今はもう慣れた。

 桔梗が舌を出しながらウインクしつつ「ごめんねー、私が広げたんだ。女の子の好きな話題だったし、清隆くんがどんな反応するか見たくてさ。あと、清隆くんの噂話がどこで膨れて誰が止めるか知りたくてね。噂話陰で広げない良識持った清隆君と仲良い奴が誰なのかを知りたくて」と言われ後者の情報を教えてもらったから、妥協したとも言うが。

 桔梗曰く止めた一人である神室はキョトンとした表情で何度かその目をぱちくりさせると、オレの股間に一瞬目を向け──神室としては一瞬のつもりなのだろうが、見られたこちらとしてはガン見だった。異性の視線というものはこれほど敏感になるのだ、オレも女子へ向ける視線を気を付けよう──赤面して目を逸らす。

 

「……噂って、マジなの?」

「マジだ」

「………コンドームってサイズあるの?」

「ブラとか下着にサイズがあるのと同じ人体に対するものだ。あるぞ」

 

 アルベルトから借りたXLすら使えず、発注するしかない現実に嘆きながら──どうやって発注すればいいんだ。薬局に行ってもそんなサイズ在庫が無いと言われてしまったのに。この学校のシステム上、ECサイトで発注など無理なのに──端的に答えると、神室が天を仰いだ。

 かなりの時間、たっぷり一分近く思考して考えを纏めて視線をこちらに戻した後、口を開く。

 

「…………優しく出来るの? 何て言うかさ、物理的に」

「確実にとは到底言えないが、出来る限り努力する。坂柳をあれだけ想うお前に誓う」

 

 なんかもう坂柳の母親か姉と話している気分になるほど、自分よりも坂柳を優先するほどに坂柳を想う神室に誓う。

 

「そっかぁぁぁぁ~~っ………………」

 

 大きな大きな溜め息をついて俯いてたっぷり1分近く葛藤し

 

「……分かったわ。出来る限り優しくしてあげて」

 

 オレに対する疑いを解きながら仕方ないとばかりに諦めて頷いた。

 

「出来る限り優しくする」

 

 あの妖精のような肢体を好きにして良いことに好奇心と欲望を滾らせていることを、欠片も表に出さず誠意を持って誓う。誠意をもって誓うのはタダだ。

 同時にタダより高い物もないが。

 

「ところでさあ」

「なんだ」

「本当に、坂柳に何かしてないの? 呼び出しは出来ても、繋がらないんだけど」

「本当に何もしていない。心配なら今から見に行くか?」

「そうね……いや、良いわ。何で繋がらないのか分かったし」

 

 チラチラとベッド脇の金属バッドを見ながら迷っていた神室もようやく納得して──『本当にあの子はもう……男の部屋よ』と唇が動いた──頷き、最後の懸念を問うてきた。

 

「そう、ところで……」

「AEDならここにある。何度か使用して蘇生させた経験もある。今ここでは口頭でしか証明できないが」

 

 掲げたAEDに神室は一度頷いた。

 

「それじゃ駄目よ。そこの座布団で試しなさい。今ここで直ぐに。少しでもトチったらこの部屋から出さないから」

「ああ──」

 

 心配症な神室に、近くにあった座布団で手順を一通り見せ納得させると部屋を出た。

 オレがエレベーターに行くまで扉を薄く開けて見続ける神室(母親)の視線を感じながら。




 坂柳さんとの通話内容を全て綾小路君に聞かせた神室さん。
 瞬間的にとはいえ坂柳さんを掌の上で転がしてのけました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ③

恵梧さん、ぺすとさん、ヨードホルムさん、ないん2021さん、わっしょい山崎さん、taniさん、田村高さん、ヤミちゃんさん、評価付けありがとうございます

高山流水さん、ザキトシさん、いつも誤字訂正ありがとうございます。

時間が取れないので短いです。ご了承ください


すぅすぅすぅ

 

「さて、どうするか」

 

部屋にもどったオレは目の前の光景を見て独り言ちた。

オレのベッドでオレの枕を抱いて丸くなりながら童女のような笑みを浮かべ幸せそうに寝ている坂柳を見て独りごちた。

 

「想定外だ」

 

部屋に入ると同時に坂柳が出迎えてくるか、隠れて驚かせようとしてくるかのどっちかを想定していたのに、現状はコレだ。

すぅ、すぅ、すぅ、とても気持ち良さそうな寝息を聴きながら、二度見した。寝ている坂柳。枕を抱き締め、手に見覚えのある男物の茶色のハンカチを握りしめて熟睡している坂柳しか見えない。自分の視覚が異常をきたしている可能性は消え去った。

 

「何でだ?」

 

あの電話の後に、男のベッドの上で熟睡。制服と何時ものガーター姿という格好で熟睡。スカートがめくれて桃が見え隠れしている姿で熟睡。

色々な意味で、ありえないだろう。

無防備すぎるというか、何で制服なんだというか、今から性交すると宣言していたのに寝るのかとか、何から突っ込めば良いのか分からない。

無防備さだけでも、ありえない。今から坂柳とオレが性交するという段取りを神室がつけた今、オレが部屋に戻り次第性交するのだ。そのことを本当に認識しているのかという疑いしか抱けない。

緊張感は無いのか、男のベッドで寝ていれば襲われるという危機感はないのか、性交する段取りをつけているのに。

 

「寝たままで、このままで貪ってくれってことか」

 

もしやと思い口に出すが、童女の笑みを浮かべた坂柳からは安らぎしか見えない。

このまま貪れば必死で抗ってくると確信ほどの安らぎしか。

ならば

 

「オレのベッドで寝ていてもオレが襲わないと思っているのか」

 

そうとしか考えられない。

そこまでオレを信頼しているのか?こういっては何だが、自分でも信頼できる人格をしているとは到底思えないのだが。

神室が頭を抱えるわけだ。

あまりの据え膳っぷりに、正直オレも少し頭痛がする。

神室が出来る限り優しくしてくれと言っていたのは、これも見越していたのだろう。

神室と誓わなければ、外堀どころか内堀まで埋めた相手への滾りに任せ寝込みを襲い貪ったかもしれない。

 

「しかし……」

 

溜息交じりに『まずは起こそう』と意識を切り替え、ベッドの脇まで歩いて坂柳を見下ろす。今から性交する少女を見下ろす。獣欲を意識して込めた視線で見下ろしながら覆いかぶさる。

 

「可愛いな、こいつ」

 

寝返りを打った姿勢のため、太腿が見えるところまで制服のスカートが捲れた坂柳を見てだらしないという言葉さえ頭に浮かばなかった。

坂柳有栖という少女が可愛らしい少女だということを再認識する。

人によって好みは異なるが、顔立ちの造形だけ見れば、坂柳の容姿はオレにとって好ましい。

では、首から下はと言うと。

静かに首から下に目を向ける。

小柄なため腕を組んだり抱き合うのに難儀しそうであるが、その程度の難儀は男女の性別の違いで括るべきものだ支障にすらならない。小柄で細身な体はマイナスではなくプラス要素だ。

胸は、彼女自身が貧相と言っていたように、率直に言って服の上からでもはっきりと貧乳とカテゴリーすべきものだ。この胸に顔を埋めて――他の少女たちのように――柔らかな感触に包まれて楽しむというのは少し厳しいだろう。が、特に気にならない。

坂柳のような性格の少女を、貧乳ぶりをイジメてやるのは楽しめるだろうし、僅かに触れる肌の感触が乳房の大きさなどどうでもよく思える。

 

「すごいな」

 

恐ろしいほどすべすべしているのに、しっとりと湿っているように柔らかい。端的に言ってプルプルしている。

それが幼さによるものか、運動が困難な坂柳の資質かは分からないが、ベビースキンの肌はオレにとって好ましい。

乳房の方も小ぶりではあるが張りと弾力があった。成長期の硬さが僅かに残るのも良い。

そのまま視線を下半身に向ける。

運動不足なせいか、それとも生まれつきのものか、はたまた両方か、太腿はむっちりしている。触れてみると指が沈み込んでいきそうだ。

 

「う、ぅん」

 

太腿の刺激に呻く坂柳の声は女の色がある。

それに、太腿だけではない。ふくらはぎはスラリとしていて、足首は引き締まっている。丸くなった姿勢の為に強調された臀部も、よく見れば骨盤のしっかりとした安産型へと育っていっているものだ。全般的に幼いと言って良い坂柳だが、性に関するところはしっかりと女になりかけている少女のものだ。

日焼けから程遠く、血管が透き通るほどに透明な肌。白すぎて健康的ではないと思える未成熟な儚さに反する良好な肉付きが、逆に坂柳を魅力的に見せている。

外見よりも性格の方がはるかに重要だ。

強かさと超然さと冷徹さを持ちながらの明晰な頭脳は、オレも幾度か感心したほどのモノ。だが、それは表面でしかない。

攻撃的や冷たいともとれる心の奥底に、神室との電話の時見せた純粋すぎるほどの純な少女の可愛らしさを持っている。

 

「………………良い娘だな」

 

総論としてそこに落ち着く。少なくとも抱くことは大歓迎だ。抱いた後で行きつくところの数々のことにも不満など欠片もない。逆にオレでいいのかと申し訳ないと覚える。

さらに、一歩近づく。

うっすらと目を開ける坂柳。

屈んだ視線のオレと目が合う。

 

「綾小路、くん……」

 

へにゃり、そんな音を立てたような気がするほど坂柳の顔が柔らかく綻び、ぽすんと胸に重量を感じた。

すぅすぅすぅ

 

「……さて」

 

抱き枕を放り投げてオレに抱きついた坂柳。腕を首に回して首筋に顔を埋めるようにギュッとオレを抱きついてくる。

胸板に伝わる柔らかさに貧乳では胸に顔を埋められないという自分の愚かな決めつけを撤回する。胸の鼓動が他の娘より大きく感じられる特色を含めて、これは揉みしだいて舐めしゃぶりたい乳房だ。いや、坂柳の全身が柔らかい。少女らしい芯を持ちながら柔らかな肢体。肉付きが良くなくとも柔らかになる女体の不可思議さに、それを確かめようとーー

すぅすぅすぅ

 

「……」

 

下半身を撫で付けようとした手を止めてしまう。あまりに幸せそうな寝顔に情欲はブレーキをかけさせられた。

制服で男のベッドに寝転がりあられもない姿を見せてから抱き着いてくるとか、誘っているとしか思えないが、寝息を立てているのだから違うのだろう、きっと。

 

「……どうすべきか」

 

抱き着かれた姿勢のままベッドに体を移し坂柳に体重をかけないように覆い被さると独り言ちる。眼下にはオレが作った陰の中、無垢な顔で寝息を立てる少女の顔。少し、悪戯心が沸いた。

この状態で目を覚ました坂柳がどうするか試してみよう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ④

 最新刊のネタバレがあります。注意してお読みください



 十秒あればキスくらいできるよなあ、でもいいかぁと思いながら書き上げました。


「すぅ……ん、ぅ……」

 

 抱きしめられた俺の目の前にある気持ちよさそうな坂柳の寝顔。

 未だ成熟していない少女のあどけなさが一際強まって愛らしい。

 

「ん、んぅ……んすぅ……んんぅぅ」

 

 気持ちよさげに頬をオレの首筋に擦り付けてくる。ふくよやかですべすべした頬が首筋に擦られるたびに、柔らかな感触とともに何とも言えない甘い香りがする。

 

 無防備だ。

 恐ろしいほど無防備。

 

「このまま、剥くか」

 

 たぎりが下半身に集まり、逸物が張り詰めていくのを感じる。

 寝ている坂柳に抱きしめられてから既に半時間あまり。柔らかな感触と甘い香りは、起きるまで待っていようという決意を揺らがしてきた。

 

「くぅ……ん、んん、んふぅ」

 

 坂柳の唇から心地よさげに吐かれた吐息が、オレの首筋をなぞり背筋に甘い感触が走る。同時に嗅覚を刺激する甘い香りと、視界には心地よさそうな坂柳の顔。その顔が、すりすりとオレの首筋に擦り付けられ蕩けそうな表情に変わる。

 

 もう、いいや。このまま剥こう。

 

 心の声に従い方針を転換する。ここまでの据え膳を我慢するのに半時間は長すぎた。

 つきたての餅のようなフニフニと柔らかな頬の感触を味わい、よく潤った唇が蛍光灯を反射して煌めくのを見続けるながら耐えるのは拷問だ。

 

「すぅ……ん、んんっ」

 

 さて、剥くにしてもどこにするか。

 抱きしめられているからには上半身は無理だろう。いや、自分さえ騙せない言い訳はやめておこう。前々から坂柳の姿を見るたびに興味を刺激された所がある。そこを剥きたい。

 

「ガーターベルト、だな」

 

 やはり、そこだろう。ガーターベルトだけ取ってしまうのが面白そうだ。

 最初は行儀良く閉じられていた脚。体重移動によって、坂柳の脚が自然と開くようにしていたのはそのためだ。

 今ならば、体を入れるだけの隙間がある。

 では、さっそく。

 坂柳の脚の間に体を滑り込ませる。起こさないように細心の注意を払いつつしっとりと脂ののった太ももに手をかける。太ももを覆うストッキング。ガータベルトとを結ぶ器具に手をかけてとりあえず外そうと──

 

「んんっ、うぅん……っ、ん、んふふっ……」

「……おい」

 

 思わずぼそりと呟く。

 その上からショーツをはいているガーターベルト。ショーツの下から抜き取るために外そうとした瞬間、坂柳は小さく唸りながら身じろぎして、両腕だけでなく両脚も使って抱き着いてきた。

 オレの身体に。

 両腕だけでなく両脚でもしがみついてきたのだ。このお嬢様は。そして幸せそうに笑った。

 不自由な姿勢なためにまったく力が入っておらず柔らかさしか感じないが。あまりのことに声が出てしまった。

 

「ん、すぅ、すう……ん、んんっ」

 

 そして、それ以上に不味い。

 小柄な坂柳がオレに抱き着いた姿勢が不味かった。坂柳の秘所が丁度オレのへそのあたりにぶつかる姿勢。内ももの柔らかな肉と、ショーツ越しとはいえ女性の大事なところの柔らかな肉がぶつかってきた。男にはないふっくらとした柔らかな感触。ほのかな弾力を持ちながら、マシュマロのようにどこまでも柔らかな女肉。

 心地よい女の証を味わうことで、ズボンの中での逸物がいきり立ってしまった。

 

「んっ……ん? んん、んんっ」

 

 柔らかな尻肉を逸物で強く圧迫され、坂柳の目が瞬く。

 

「ふ、ぇ……」

 

 しょぼしょぼと目をぱちくりさせて焦点を戻していく坂柳。

 ……ガーターベルトは、まだだな。

 無念の思いを飲み込み、静かに腕を戻して坂柳の目が覚めるのを待つことにした

 

 

 

「……え」

 

 坂柳に抱き枕されること数十分。うっすらと目を開き寝ぼけ眼を瞬かせていた坂柳の目に焦点が宿りオレの姿を捕らえた。

 坂柳に覆いかぶさるような姿勢のオレの姿を。坂柳の両腕どころか両足でしがみつかれているオレを。

 

「えっ……何?」

「起きたか?」

「……」

 

 あまりのことに、あどけないと言っていい顔でもう一度疑問の声を上げる坂柳。視線が彷徨い自分がどんな姿勢でいるのかを認識し、その白皙の顔が朱に染まっていく。

 

「起きたか?」

 

 それに合わせた再度の呼びかけにパッと万歳するように坂柳の手が離れる。慌てたせいか心持のけぞってしまう。

 

「ひゃあ」

 

 勢いのまま、ふよん、と坂柳の乳房がオレの胸板につぶされる。その刺激に可愛らしい声を上げる坂柳。

 いまだオレの体に巻き付いたままの自分の脚を含めて、自分が何をしていたのかを認識して平静ではいられなかったのだろう。仄かにではなく、花が咲くように頬を赤らめる。

 反射的に逃げようとする坂柳の体。逃がさないという意思を込めて覆い被さったまま互いの体温を交歓しながら重心を変えて動けないようにすると、股を広げた姿勢で異性と密着している事に焦りを浮かべる。

 いや、羞恥か焦りか、はたまた両方か。

 どれにしろやることは変わらない。

 すかさず責める。

 

「部屋に戻ったら、お前がベッドに寝ていてな。近づいたら抱き締めていた枕を放り投げて抱き付いてきた」

「っ」

 

 平静さを装うとしても限度を超えてしまい羞恥に可哀想なくらい首筋まで朱に染める。そっとその頭から左頬を経て顎まで手を落とし、俯きがちになった顔をこちらに向ける。

 

「あ」

 

 未だ寝起きの混乱の色を残す整った顔が、赤に染まる。

 互いの息がくすぐったく思えるほどの近距離。男に覆いかぶされた逃れられない姿勢。互いの体温の温もりが相乗する。少しでも動かれれば唇を奪われかねない体制に坂柳の瞳に若干の焦燥が浮かぶ。

 それ以上に口付けへの覚悟を決めて顔を強張らせる坂柳の瞳を見つめながら囁きすかす。

 強張ったままでは口付けする意味がないから。

 

「なかなか暖かかったな」

「……そうですか。この状況で暖かいなどと言うなんて綾小路君には情緒がありませんね」

 

 キスを覚悟した意思を躱された苛立ちにより少なくとも口調は冷静になる坂柳。少しでも近づけば口付けしあえる距離のまま見つめる顔が真っ赤なままなのが可愛らしいと思う。思えるようになった。

 

「確かに、オレには情緒がないのかもな。男の部屋で寝転がって抱き着いてくるお前と同じくらいには」

「あら、では似た者どおしということですか。私は確かに粗相をしましたが、それは意識のないときにです。意識があるのに、乙女の唇に触れ合える距離を保ったまま触れ合わない方と似ていると思われるのは少し心外ですね。情緒がないのは仕方がないとはいえ、綾小路くんが狭量だとは思いたく有りません。一人の乙女として失望という感情は遠いものとしておきたいのですが」

 

 覆いかぶさるのは二度目とはいえ、以前は密着はしていなかった。その分なのか緊張に体を硬直させ、恥じらいと焦燥で体を小刻みに震わせながらも何処までも挑発的に話す坂柳。

 これ(理性)の内面が、さっき神室と話していた時のそれだというのは滾らせてくれる。

 奇襲に成功した柔らかな肢体を味わいつつ、たぎりのまま顔を近づける。

 今度こそ口付けされるのか。僅かに緊張にこわばらせながらも、受け入れようと目を閉じる坂柳が愛らしく、柔らかな肢体が心地いい。

 そのまま、口付けるのではなく頬と頬を合わせて、わざと音を立てて鼻腔に空気を吸い込む。

 

「良い匂いがするな」

「っ……まっ」

 

 清潔を心掛けている年頃の少女特有の甘い香りが、石鹸の香りと交じり合って何とも心地よい気持ちになる。

 フェロモンというのは知識にはあったが、体験するのはまた格別だ。体の下に柔らかな体があるとより格別なものとなる。

 キスを受け止めようとした坂柳にとっては怒りさえ覚えただろうが、体臭を嗅がれるという行為に覚える羞恥こそが強い。

 

「ま……匂いを嗅ぐなんて、しつ「本当にいい香りだ」……っ」

 

 心の底から褒めながらクンクンと鼻を鳴らして嗅ぎ続けると、あまりのことに「待て」とか「失礼」とかを言おうとした唇が閉ざされ愛らしく震える。

 そのまま、坂柳の首筋にオレの唇を押し当てると、「ひぅっ」と短い悲鳴を押し殺して坂柳の唇が震える。生来の負けず嫌いは悲鳴を上げるなどとしたくないのだろう。

 

 なら、悲鳴を我慢できる限界まで責めよう。

 

 透明とさえ言えるほどの滑らかな肌に少しだけ吸い付く。

 唇の先にだけ摘んだ坂柳の柔肌。しっとりとした柔らかな肌に吸い跡をつけたくなるが、我慢する。

 

「っ……っ……っ……」

 

 弾力のある唇を震わせる坂柳が耐えきれずに悲鳴を上げてしまうからだ。

 喋んだまま、すんすんと音をたてて香りをかぐ。

 

「ま……く、んっ」

 

 静止の言葉を噛み殺し、リンゴのように赤く染まった頬が震える。

 予想通り、この程度ならば耐えられるようだ。

 

「良い香りだな」

「っ……っ」

 

 肌を甘噛されながら、自分の体臭を嗅がれていることに、恥じらいと、褒められた喜びが坂柳に交じり合っている。少女のたまらない香りを味わうように、何度も鼻で空気を吸い込む。

 褒め言葉と甘噛を交互にしながら。

 

「ひ……っ……っ……ぅ」

 

 そのたびに、ぴくりぴくりと坂柳の肢体が跳ねるように強張る。その度に、オレの身体の下で弾む柔らかな肢体を味わう。

 横目に映るのは、熟れるような熱さになった頬。そして、その向こうで閉じられた瞼のまつげが震える様。加えて万歳したままの手がシーツを掴みながら震えるのが愛らしく艶めかしい。

 何か言葉に出そうとすると、静止か悲鳴になってしまう唇を閉ざす様が愛らしい。

 反応から鑑みて、身体を手で愛撫するような直接的なことをすれば、上げたままの手を慌てて下ろして止めてくる。

 だから、身体の重点を変えて愛撫する。

 

「……ぅ、ぅぅ」

 

 その度にピクリピクリと身体を震えさせながら何かを口にしようとして開こうとしては、言葉にできずに閉じる坂柳の唇。その唇の戦慄きを見ながら甘い香りを吸うと、体全体が強張る。甘噛すると掴んだままのシーツが握りしめられ、全身を緊張に震えさせるが。その目は全てを受け入れるとばかりに閉じられたままだ。

 そうしているうちに身体の下で震える肢体が、合わせたまま火照りに火照る頬のように熱が籠もっていく。

 このまま剥ぎとってむしゃぶりつきたいが、まだその時ではない。

 見るからに弾力の満ちた唇が強張り震える様をもう少し見ていたいが、そろそろ次に進めよう。

 

「まあ、いい。神室から話は聞いた。今度こそ特別授業といこうか」

「はぁっ……」

 

 言いながら体を離すと、睫毛を小刻みに震えさせながら目を開いた坂柳の唇からわずかに安堵の声が漏れる。額に浮かんでいた汗と煩いくらいに跳ねていた鼓動が示すように、ずっと極度に緊張していたようだ。この様子だと、前押し倒した時に平静だと判断したのは早計だった。直接触れれば違ったのだろうな。

 体を離しはしても、密着して覆いかぶさった姿勢のままのオレに迷うような視線を向けてくる様は、明らかに未経験な少女のものだ。最も、性行為関係なく、思ったよりもずっと責められるのには慣れていないようだ。

 それでも、こちらに視線を向けて男の情欲を受け入れようとして瞳は揺らいでいない。それと同時に、シーツを掴んだ手だけ緊張か怯えに震えさせる姿は、男心をたぎらせるたまらないものがある。もっと見たい。

 だから、少し方向性をかえて責めよう。

 

「ひゅうぅぅ……あら、今度こそですか。前は十秒で引いておいて、今度も引いたくせに「今度はひかないさ」……え」

 

 唇を細めたまま、肺を膨らませて大きく一呼吸。出来る限りオレに呼吸を継いだことを知らせまいとする強がり。

 普段通りの不適な態度なのに、一皮剥けるとあれだけ可愛らしい内面があるのだと思うと愉しくなる。これがギャップというものか。

 

「えっ」

 

 だから、問答無用で踏み込む。坂柳に覆いかぶさった姿勢のまま、自分の服に手をかける。

 

「……何故、服を、脱いで……上半身、裸になるのですか」

「お前が寝ぼけて抱きついたお陰で汗をかいたからな。拭こうと思ったんだ」

「何度も女性の揚げ足を取るのは紳士とは言えませんね。……まあ、良いでしょう。それなら、一度、離れてもらえませんか。このままだと脱ぎにくいでしょうし「離れる? 何でだ」……ぇ」

 

 自分では顔を引き締め続けているつもりなのだろう。その実、チラチラと視線をオレの裸体へ向けては顔を引き締め、直ぐに目を逸らしては裸体を見て頬を染める坂柳の生娘っぷりに滾りながら責める。

 

「きゃっ」

 

 どっかりと腰をベッドに落とすとその振動に可愛らしい悲鳴をあげ、それを恥じるように口元を押さえる。いじめがいがある反応だ。

 やはり、坂柳は攻め続けよう。

 

「待って下さいなにを」

「拭いてくれ」

「は?」

「お前が起きるまでベッドを占拠したうえで抱き着かれたお陰で汗をかいたんだ。身体を拭いてくれ」

 

 ベッドの中央に仰向けで寝ている坂柳に覆いかぶさった姿勢のまま、ゆっくりと言い聞かせるように言葉を締める。

 反発の色が浮かぶタイミングで、他の少女と比較して言葉を締める。

 

「それとも、坂柳は(強調)してくれないのか」

「前言を撤回します。他の女性と比べるような人は、紳士とは正反対の最低な人と言うのですよ……でも、良いでしょう。その安い挑発に乗りましょう」

 

 この時になって、ようやく坂柳の理性は生まれついての勝気を取り戻した。

 今までの一連の流れは、こちらに対してマウンティングをとろうとする奇襲だったのだ。

 ならば負けていられない。

 負けるものかとばかりに、負けるものかとばかりに、自分に背を向けた綾小路の背にハンカチをあてる。

 茶色の男物のハンカチ。普段使っているものではなく、思い出の品を取り出したのは何故なのかと思う間もない。

 

「では、拭かせていただきます。動かないでくださいね」

「ああ、頼む」

 

 いそいそとハンカチで、ごしごしと綾小路の背中を拭き始めた。

 自らの手の中にある男物の茶色いハンカチに目をやり切ない眼差しを一瞬だけ向けるとハンカチを握りしめ、ベッドの上に胡座をかく背中の後ろに座りその背中に手をやり、鍛え上げられた肉に瞠目する。

 一度首を振り普段どおりの強きと余裕を何とか貼り付けると、背を拭い始めた。




 ふきふきプレイである


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ⑤

 ちょっとリアルが洒落にならなくなったので、切りのいいところまで上げます。


 ふく。

 ただふく。

 何時しか無言となってただふく。

 

「っ~~~」

 

 何事か言葉に出そうとしても出せずに、唸るに似た吐息を漏らすだけになってしまう。

 拭く度に蠢く柔らかさと強靭さを感じる隆々と締まった筋骨の裸身は、生娘には眩しすぎた。

 あまりに安っぽい挑発に(負けてなるものか!)と思っていても、目のやり場に困っていき手を動かす範囲が狭くなっていく。

 自分は何をしているのか。

 こんな風にするつもりではなかったのに。

 自分が寝てしまったせいか。いや、どう考えても綾小路くんが悪いだろうこれは。

 なんで好きな異性とベッドの上にいて、やることが背中をハンカチで拭うことなんだ。

 キスくらいしてくれれば。

 私の体臭を嗅いで。

 この状況からどうやってひっくり返せばいいのか。

 前宣言した通り負けるわけにはいかないのに。

 もう無理じゃないか。

 いい香りがするって褒めてくれて。

 様々な情念が渦巻いて、色々な意味で灼熱に火照る頭が働いてくれない。

 不味い。綾小路君くんのペースに囚えられてしまっている。

 

「背筋が好きなのか?」

「そうですね。前々から、自分には無い体つきがどのようになっているのか興味があったので、目を奪われています」

 

 声を掛けられ、綾小路の背中の一部分、背筋の辺りを赤くなるまで擦っていたことに気付かされる。

 初めての異性の肌、それも綾小路の肌を、今自分が必死に擦っているのだということに、坂柳という少女を構成している理性とかの部分がゴリゴリ削られていき、羞恥とかの部分がガンガン膨れ上がっていく。

 

(何をやっているのですか、私は)

 

 可哀そうなくらいに顔を真っ赤に染めた坂柳はそれでも懸命に拭う。SEXする前に好きな男性の裸を拭う。そんな背徳さを持つシチュエーションにえも言えぬ思いを抱いて

 

(いいえ、抱いてません)

 

 ゆっくりと動いているのに、早鐘のように打つ鼓動、汗ばんでいる肌、初めて味わうジクジクとした下腹部の疼きから目を逸らそうと視線をあちこちに向ける。

 下手をすればこんなことで立ち眩みを起こしてしまう自分の身体に少し寂しさを抱きながら

 

「ふぅ」

 

 それにしても、何て体。鍛えられない自分が思わず羨望してしまうほどの、合理的な理論を基にした綾小路清隆という少年に合った鍛練の結晶。

 それがホワイトルームを出て一年以上経つのに、維持どころか体格が成長した分だけ進化しているように──綾小路本人にして見れば衰えた──思える。

 この場で言うべきでは無いと分かっていても疑問が口についてしまう。

 

「綾小路くん一つ聞いても良いでしょうか?」

「何だ?」

「ホワイトルームから出て一年以上経ちますが、どのようにして体を維持しているのですか? ここには設備も教官も居ません。何よりあなたが外で自主的に運動をしていると耳にしたことも無いのですが?」

「ああ、室内トレーニングを──」

「だけ、では無理ですよね」

「室内トレーニングにもよるだろう」

「……天井」

 

 不躾な質問に何でも無いように答えた綾小路くんの指が空を指す。

 それに従い天井を見つめても意味が分からず、目を細めた。

 いや、天井によく見れば何か跡がある。

 何度も跡をつけて濃くなったような跡が。

 ……まさか? 

 

「天井に手の平か足の裏を押し付けて懸垂運動、を……?」

「自分で調整出来る全身運動だからな。足の時は重りを持つが」

「……何故、特殊部隊の鍛錬をしているのですか」

「知っているのか」

「話に聞いただけですが」

「そうか、まあ。その通り特殊部隊員の鍛錬方法の一つを実践しているだけだ、本物の特殊部隊員ほどではないがな。本物は海上で揺れる船の中で同じことをやってのける」

「……実物を見たことが?」

「ああ、船上を模した部屋の中でな。見た当時のオレには出来なかったが。揺れない陸の上とはいえど、体が出来上がるとできるようになるものだな」

「そう、ですか?」

 

 窪みもない天井に手の平か足の裏だけでぶら下がることに信じられず、声が震えているのを自覚する。

 そういった特殊な訓練が実在すると読んだことが無ければ信じられなかっただろう。

 突っ込みたかったのは、高校生が特殊部隊の鍛錬をしていることなのだが、綾小路が日常だと受け止めているなら何も言うまい。ホワイトルームにはある種の呆れを感じるが。

 

 

「あっ」

「どうかしたのか?」

「……いえ、何でもありません」

 

 肉体を観察してさ迷う視線が、つい先程寝ていた時に残した自らの手形にいき思わず声が出てしまった。

 無意識下のそれは、一目で分かるほどに綾小路の体を自分に擦り付けさせようと求めて食い込ませた痕を残していたから。

 

「~~~」

 

 抱き枕を使わなければ気持ちよく寝れない自分の子供っぽさと、寝ながら綾小路を求めた自らのフシダラな想いを、刻み込まれた痕が突き付けてくる肉体から思わず目をそらしてしまう。

 

「有栖、見ないで大丈夫なのか」

「い、今なん──」

 

 そんな自分の想いを貫く突然の奇襲に面を上げると、首筋。眠りながらでも綾小路を欲した証である手形の後が色濃く残る首の裏が視界に映り、全身が紅潮するのを自覚する。

 

「こういう事をしているのに何時までも苗字呼びは他人行儀過ぎるだろう」

 

 違うか、とごく自然に語りかけてくる綾小路。

 綾小路くんに名前を呼ばれた。

 綾小路くんに名前を呼ばれた。

 有栖。有栖。ありす。ありす。頭の中でエコーが響き渡る。

 ……未だ冷静な頭の一部は綾小路くんの策だと絶叫するが、それ以外の部分は策で良い、このまま体を委ねたいとさえ願う。

 なんて愚かしい願いだろう。それでは愚かな女ではないか。

 何とか切り返さなければ。

 そうしようとしても言葉が出なかった。

 

「あ……っ──」

 

 返答しようとする自分が、どれだけ紅潮してふにゃりと蕩けた顔をしているかが見なくても分かる。

 こんな顔見せられない、建て直さなければ。と頭によぎると同時に一瞬の浮遊感を感じ視界の変化に目を白黒させる。

 ぺたりと尻に感じる温かく筋張った綾小路の足を感じる。

 

「あ……」

 

 ベッドの上でくるりと回って自分をその腿の上に置いた綾小路くんの手が自らの豊かな両頬に添えられ視線の先を固定された。

 目元だけでなく顔中を真っ赤にして愛おしげに蕩けきった表情を浮かべる、自分のものとは思えない顔が映る綾小路君の瞳に固定された。

 

「有栖」

「……はい」

「表情が華やかになったな」

 

 名前を呼ばれた瞬間、綾小路くんが言う通り表情が華やかになり、 知性の欠片もない声が、さらに紅潮した口先から漏れる。

 見られた。こんな顔を綾小路くんに、目を愉しげに細める綾小路くんに。

 

「なるほどな。お前を表するときに使うのは、美しいより可愛いだな」

 

 さわさわと綾小路くんの瞳に映る私の頬が撫でられる。

 綾小路くんの膝の上で、乱れた着衣ですがり付く私の頬が撫でられて、顔がもっと熱くなって蕩けていく。私の腿に鍛え上げられた綾小路くんの足が食い込むようになって熱を伝えてくる。

 

「……そんな、言葉を、いったい何人に囁いているのでしょうね」

 

 その熱が恥ずかしくて愛おしい。

 

「何人目だと思う」

「女の口からそんなことを言わせるなんて悪い人ですね」

 

 だから、恥ずかしいのに綾小路くんの瞳から目が離せない。

 

「まぁ、過去の詮索をしても面白いものではありませんし、──「お前だけだ」っ」

「少なくともこの瞬間、お前だけを可愛いと思っている」

 

 自分の観察力をもってしても臆面もなく可愛いと言っている。その事に裏がないと分かってしまったから

 一瞬の自失。自分ではそのつもりだった。

 だが、違った。

 火照った素肌に風を感じ、胸元を見る。

 制服の上着が脱がされシャツブラウス一枚になってしまっていた。

 

「ゃ……」

 

 上着がいつの間に腕から抜き取られたのかさえ分からない。あまりのことに上半身を隠すように腕を巻き付ける。

 持ったままのハンカチの冷たさがシャツ越しに火照った体を冷やし、自失から意識がハッキリしたものにする。

 

「こんなに可愛らしい表情を浮かべていると、やっぱり可愛いとしか言えないな」

「~~~~っ」

 

 意識がはっきりした瞬間止めを刺され、真っ赤になってうつむいてしまう。チラチラと薄着になった坂柳は上目遣いで綾小路を見つめ、このまま引き込まれるように

 

(ダメです)

 

 ふにゃりと蕩けていた表情を引き締め理性を取り戻す。

 今までのは奇襲に次ぐ奇襲だったのだ。試されている私は。

 意識してハンカチを握る手に力を入れて、意識に活を。

 

「薬だ、飲んでくれ」

 

 意識の隙間を縫うように、綾小路の右手が自分の肩に当たるように乗せられたことに気づいた。ほっそりした肩が大きな手につかまれる。

 そのまま綾小路の顔が近づいてくる。

 それが何を意味しているのか分からないわけではない。だが、直前に発せられた言葉が坂柳の脳裏に空白の隙間を生んだ。

 え? 薬? 抱き寄せずに? 顔近づけて? 

 

「え……んむ」

 

 隙間を抜くように唇に押し付けられた綾小路の唇。意外に柔らかな感触が唇に重なる。肩に置かれた綾小路の右手が自分を逃がさないように.後頭部に回された

 口づけされている。初めて、

 そこまでされて今自分が初めて異性とキスをしていることに気づく。

 味わうように唇をなぞる生暖かいモノは舌か? 真っ白になった頭。いやではない抵抗もない。自然と開いてしまう唇は綾小路を迎え入れてしまう。

 

「んった…………あむっ」

 

 ぬるりとした生暖かいものが舌だとわかる。差し込まれる舌が滑らかに自分の舌を絡み取る。

 ただ唇と唇を重ね合わせるのではない、キス。知識としては知っていたそれは、何とも言い難くて、ただ力が抜けて、全身にしびれるような喜びを与えてくれた。

 

「んっ……んんっ!?」

 

 のどに何かが押し込まれる感触に、坂柳の脳裏は灼熱して目を白黒させてしまう

 抵抗さえ出来ずに嚥下する。

 

「ぷはっな、なにを……」

「避妊薬だ」

「っ……」

 

 端的な言葉に自分が何を飲んだのか理解し、これから性交するのだとより強く痛感させられる。

 意識に活を入れるどころか、緊張や恐怖ではない何かの感情に小刻みに体が震える。

 何をするべきか全く浮かばない意識の空白。

 それでも、自分がキスされたということだけは認識する。薬を飲ませるためなど、キスとカウントしたくない口付けをされたのだと。離れた綾小路の唇と自分の唇をつなぐ唾液の橋を見ながら理解する。

 混乱したままの思考回路。何らかの感情に阻まれ、冷静になろうとしてもなれない衝動は怒りへと結びついた。

 

「本当にかわいいな」

 

 そして、あまりのことに鋭くなった視線を受け止めた綾小路が前後関係もないつぶやきをするだけで、怒りが霧散してしまった。

 そのまま今度は抱き寄せられながら顔が近づいてくる。引き締まった広く熱い胸板。背中と首の裏に回された綾小路の両手。目を閉じずまっすぐに見つけてくる綾小路のまなざし。自分を可愛いと本心から思ってくれている眼差し。

 

(ずるい。これでは、怒れないではないですか)

 

 脳裏が熱くなる。鍛え上げられた肉体に抱擁され、全身が女の本能に染まり、ただ男の肉体に包まれることを望む。もとからそんな距離がなかったのに、互いの吐息がかかる距離だと認識するだけで熱にとろけてしまう。

 

「ちゃんと」

「ん?」

「今から、ちゃんと、キスしてください……」

 

 だから、冷静になろうとしても唇が勝手に動いて、こんな愚かしく衝動的なことを発してしまう。

 キスをして何か違うと思ったから別れたと言っていたクラスメイトの話など参考にならない。

 だって、こんなにもキスがしたくてたまらない。綾小路くんの温もりを感じたい。

 欲していたものが埋まったようだ。それが恥ずかしくてうれしくてたまらない。が、それは自分の奥底から湧き上がる何かの感情ではない。

 

 羞恥と闘いながらどいこか陶然とした坂柳が魅力的な唇を震わせると、綾小路はゆっくりと──

 

「言い忘れていた」

「何ですか」

「実は、前覆いかぶさった時にそのままことに及ぶかを迷っていたんだ。あの時、十秒で離したのはそれ以上長くお前を捕まえていたら我慢できなかっただけだ」

 

 ああ、本当に綾小路君はずるくて意地悪だ。寝起きで覆いかぶさるわ。背中を拭かせるわ。口付けしながら避妊薬を飲ませるわ。想定通りのことを何もしてくれないのに。

 

「……私も」

「ん?」

「私も、そのままことに及ばれてもいいと思っていました」

 

 そんなことを言われては、こう答えて抱き縋るしかないではないか。理性も冷静もなく衝動しかない愚かな女になるしかないじゃないか。でも、悪くありません。

 

「そうか」

「ええ」

「さっきの特別授業は取り消す。だから──」

 

 何かの感情を、自分の愚かさを受け入れた笑みを浮かべて、そっと、綾小路くんの言葉を指で止める。

 

「はい、勝ち負けとかそういうのは無しでしましょう、清隆くん……あっ」

 

 ──初めて自分の名を読んだ少女と唇を重ねた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

坂柳有栖 ⑥

 長ったらしく書いてますが以下の二点に要約できます

・キスシーン
・坂柳の持病は性交に問題なし


「ん、あむっ」

 

優しく重なる唇。互いの熱を交換するソフトキスに、坂柳の脳裏が熱くしびれ唇が自然と開く。

そのまま、舌をねじ込むことなく、手をつなぎ唇と唇を何度も重ねてくる。

あまり圧迫することなく、互いの唇の弾力を教え合うようなキス。

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

「有栖は髪もサラサラしていて、撫でていて気持ちがいいな」

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

「有栖は肌も滑らかで、撫でていて安心するな」

 

触れ合うはざまにそんなことばを差し込まれ続ける言葉は坂柳を蕩かせる

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

「どうぞ……私も撫でてもらえると心地いで……んっ、ちゅ」

 

有栖の唇を挟んで自分の唇の間に残った柔らかな肉をついばむ。痛みを与えぬように、軽く前後左右に頭を動かしながら唇の端から端まで。

唇の真ん中をついばむと鼻と鼻がふれあい、端へ進むと鼻が有栖の柔らかな頬に食い込む。不摂生と縁のないつるつるした肌に鼻を食い込ませると弾むように受け入れてくれる。

鼻だけではない。啄む場所を変えれば頬と頬が触れ合うこともあり、さらさらとした髪の香りが鼻腔を優しく刺激してくれる。

 

「いつ、まで……ちゅ、あっ、ちゅ」

「有栖の唇は柔らかくてカサついていないからな。色々な口付けを楽しみたくなるんだ」

「……ちゅ、ちゅ、ちゅ、んっ」

 

無言でキスにこたえるだけになった有栖。朱に染まった顔が愛らしい。半開きの口の中に入れたい。心に沸いた衝動のままに動く。

 

「鼻で息をしろよ」

「あ、は……んっ、んんっ!?……ぁ……んっ、ふぇ……んぅ、ぁ、ふっ……」

 

浅いキスから、深いキスへと変える。坂柳の舌にからみついていく綾小路の舌。坂柳は一度だけ驚きの声を漏らし、教えられた通り平然と鼻で息をしようとする。

 

(あ……舌、が)

 

だが、出来なかった。

ぬめりと差し込まれた生暖かいものが舌だというのはわかる。だが、生温さが口肉に触れるたびに熱くなり、息が上がるのはわからなかった

 

「んっ……んん……っ」

 

甘い声が漏れる。自分の声とは思えない、甘い女の子の声。わずかな惧れと弾けそうな喜びに彩られた声。その声を聴きながら、常に第三者の視点を持とうと心掛けている自分が観察する。

どくん、どくん、と人並外れて弱い心臓が高鳴るのを観察する。自分でもわかるたどたどしい動きに清隆くんが、優しく導いてくれるのを観察する。当たり前のように自分からも舌を伸ばし、粘膜と粘膜がこすれ合うむずむずとした疼きを味わうまでは観察できた。

 

「あっ……ちゅ……んふぅ……」

 

観察はそこまでだった。清隆くんの舌と自分の舌を絡め合わせるのがこんなにも心地よく艶めかしいなんて知らなかった。ただ圧倒的な刺激に翻弄され、自分の脳内が蕩けていく。

 

「はぁ……ちゅ……んんっ……んぅ、ぁ……はぁ……」

 

男の子の唾液がこんなにも甘いとは知らなかった。綾小路が巧みに息継ぎをさせていることに気づく余裕さえ失くした坂柳はキスにのめりこんでいく。

 

「ぁ……は……ちゅぅ……はぅ……んっ……」

 

今自分が、息を吸っているのか吐いているのかもわからない少女の茹で上がった顔。わけもわからず、湿った音を立てながら子猫が甘えるような声を漏らす坂柳の頭に、ふわりと綾小路が手を乗せた

 

「ぁ……ちゅ、はっ……ちゅ、れ……ろっ」

 

優しく撫でてくれる綾小路の手つき。瞳をぎゅっとつぶって体ごと綾小路に包まれるように坂柳はキスをする。鍛えられた体に包まれる体が熱い。石鹸の香りに混じる雄の匂いが際立って思考が蕩ける。体ごと、全身を包むように愛してほしいという想いが弾けそうになる。

おずおずとした、されど飢えたように求める少女。強く抱きしめられるのが心地いい。粘膜を触れ合うのが気持ちいい。唾液が甘く美味しい。体が火照ってたまらない。

 

「はぁ……んっ……はぁ……」

 

おずおずと舌を伸ばす。まだ怖いから、どうにでもしてほしいから。未だ生娘の少女の矛盾した求め。

一人の男としてその求めにこたえる。

息が苦しくないように観察しながら、有栖の舌を己の舌で絡み取る。舐めしゃぶり、吸い、歯ではなく唇で優しく甘く噛む。

そうされているうちに、舌だけだったしびれは有栖の頭の芯を犯し、全身をふわふわと宙に浮いている気分にさせた。清隆の愛撫がもたらす熱だけが鮮明で、熱が届くたびに全身をしびれさせ、体の末端からすべての力が抜けていく。

 

「くふ……んっ、んんっ……ん」

 

おずおずとしたものだった舌の動きが大胆なものになる。少女の切ない溜息と女を貪ろうとする男の吐息が混ざり合い、甘やかな快楽を与え合う。

くちゅぴちゃという粘った音が部屋にしばらくの間響き合った。

 

「んっ……ふぅ……ふぁ、ぁぁぅ……」

 

最期に、ざらりと口蓋を素早く舐め上げられた有栖の背が反射的に反られる。男の腕の中で逃れる場所などなく反れる少女の中では、続々とした何かが延髄と子宮から上へ下へと押し上げ駆け下り、全身に甘い疼きが広まった。

 

「はぁ、はぁ、はぁはぁ」

 

軽く達した少女を柔らかく抱きとめる。柔らかな有栖の後頭部を抑えたまま胸元へやり、厚い吐息が胸板を叩くのを歓迎する。

二人のキス経験は歴然だった。様々な少女を陶酔させたテクニックを駆使できる清隆と、つい先ほど初めてのキスと呼べない口付け嚥下を果たした有栖の歴然とした差。

だが、そんなものは有栖にはどうでもよかった。

無我夢中で貪ったことに対する逃避なのか、それとも本能のなすがままなのか。頬を胸板にこすりつけ吐息を漏らす。

 

「かた、い……」

 

早鐘のように煩く鼓動する自分の心臓と違う、ゆっくりとした鼓動。安心を覚えそうな確かな鼓動に頬をこすりつけるように身を委ねる。

煩く心臓が鳴っていても体に異常がない。遠のくはずの意識ははっきりとしている。清隆の胡坐の上でズボン越しにゆがむ自分の太ももの感触が分かる位にははっきりしている。普段ならば立ち眩んでも仕方がないほどに心臓が速く家鳴り全身が悲鳴を上げているのに立ち眩まない。

思考が回転するまで清隆との口付けで達するまでかかった自分を受け入れながら有栖は思考をまとめる。

 

(避妊薬のおかげで、しょうか)

 

恐らくそうだろう。それしか思いつくものが無い。立ち眩みを覚えないほどのナニカを体に与えてくれた薬。自分が欲してやまなかった薬。

無粋と知りつつも火照りを預けたまま問うと、あいまいな肯定と驚きが返ってきた。

 

 

 

 

 

「あなたがこの避妊薬を作ったのですか?」

 

すでに実践段階にあるオレに対して、僅かに焦りを覗かせたようなくちぶりになった。

 

「オレ個人ではなく、チームでという意味でなら肯定する」

「ホワイトルーム内で完結したとしても限度があります。法に抵触しませんか」

「しない」

「何故言い切れるのですか」

「入学するまでの間に、年齢制限で取ることのできない物を除いた国家資格と国際資格は全て習得しているからな。合法的な立場で参加したんだ、法に抵触するはずがない」

 

言っていることを理解した有栖が少しだけ目を丸くする。

 

「……学位は、どのあたりを?」

「日本で言う修士だ」

「海外の大学院で卒業済みということですか?」

「ああ。残念ながら、現地には一度も顔を出したことはないがな」

「それは残念でしたね。でも、だからこそ、清隆くんが目新しいこの学校での生活を楽しく過ごせているのだと思うと、率直に嬉しいです」

「そうか。何で嬉しいかと聞くのは野暮か」

「はい、野暮ですね。ですが答えましょう。私があなたのこの学校での生活を構成する一部だからですよ。違いますか」

「いいや、お前は重要な一部だ」

「フフフ……では、医師免許は持っていないのですか?」

「いや、日本ではない国のものを持っている」

「年数制限が引っかからないものを?」

「ああ」

「チームでの参加立場は?」

「研究員だ」

「……なるほど」

「どうした?」

「いえ、天才を育成するというホワイトルーム最高傑作の意味の一端がようやく理解できまして、まさか学習5段階の無意識的有能に意識的有能。有効活用の段階だとは……率直に言って呆れています」

 

……そうでなければ人間が一生分かけて習得する以上の知識をもつなどと豪語しないさ。

現代において資格ほど「その人物が何を出来るか」を誰の目にも理解させる手段は無いのだからな。

 

「そうなると、すこし残念でしたね」

 

滑らかな頬を胸板に擦り付けるようにしながら、有栖がいたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

「何がだ」

「この学校は著しい結果を出した生徒にはプライベートポイントを出すシステムです。それだけの資格ならかなりのポイントになったでしょうに。2000万ポイント、可能だったかもしれませんよ」

 

お互いAクラスに拘泥していない身だが、興味は有るのだろう。そのことは、オレにとっても少しばかり残念だったことでもある。

 

「調べたが、併せれば2000万ポイントを超えていたな」

 

イザとなれば、愛里を退学させないだけのポイントを手に入れられる可能性はあったからな。だが

 

「……まあ、過ぎたことだ。薬に話を戻そう」

「ええ……この薬を改良することはできますか」

 

愛撫され息を荒くしても意識を失わなくさせるだけ心臓が補強される効果のある(避妊)薬。有栖にとってどれほどの価値があるか自明だ。真剣な眼差しで見詰めてくる。

 

「正直、難しいな。同じものを作るすることさえできないだろう」

「人員は当然として、設備面の問題ですか?」

「いや、材料の問題だ。ホワイトルームは医療機関を内包してしていたから――幼少期から人間の子供を管理してどんな食事や教育や薬を与えればどんな結果になるかという生きたデータが取れる『状況』が、 どれ程の富と利権を生むかについて有栖には説明する必要はない――な。高品質かつ専門的な材料を容易に扱えた。言っておくが、高品質の材料はコンマ7桁から1桁違うだけの純度の差が決定的な違いになる」

「……多少質が悪いか合わないというのはそこまで問題が?」

「ハッキリ言って、問題の次元が変わる。

一度高品質の材料を使ってそれに慣れてから低品質のモノを使うのは愚行だ。完成品の質だけでなく、設備面でもデメリットしかない、マニュアルの変化を含めた人事に関わる。低品質の原料ではまともに操業出来ない」

「成る程。高品質の材料を扱うそれは低品質の材料を扱うそれと世界が違うのですね……量産を考えずに研究室レベルでも?」

 

イザとなれば自分の分だけでもと腹をくくったらしい。

 

「と、いうより研究室レベルを前提とするべきだ。オレの頭にあるのはそれだけだからな」

「……全て、覚えているのですね」

「当然だ。ことこの薬に関するものだけは、頭にあるものを全て提供しよう。だからこそ、設備が欠けていて、材料が合わなければ悲惨なことになると断言する。事が人体に直結する医薬品だからな。賭けるか?自分の体で?」

「御免被ります……お父様に設備と材料と人員を手配してもらいます。その上で何か条件がありますか」

「オレも一研究員として参加させろ。まだまだ学ぶことがいくらでもあるからな。その条件なら受けよう」

 

一瞬希望の色が瞳に写り唇があどけないほどに綻ぶが、話を詰めるべきことがあると思い出して直ぐに引き締める。

普段のうっすらとした余裕の笑みを浮かべる余裕は無くとも、杖無しで歩ける可能性を目前にしたハイティーンの少女としては驚嘆すべき意思だ。

 

「……主要成分と構成式も?」

「無論教える」

「……今の権利は何処が?」

「ホワイトルームの講師の一人を代表としたチームが所持している。そのチームの中にオレの名前も入っている。ホワイトルーム内において、だが」

「……成る程、ホワイトルームは公的機関ではありませんからね。構成も発表できず、医薬品認可は不可能ですか」

「ああ、認可されていない」

「なるほど、なら」

 

返答に有栖は一度頷くと、指を折りながら返答する。

 

「独自に生産はしても、研究結果の公表はしない。研究をして何らかの大きな結果が出たときには、あなたのお父様に私の父から連絡する。勿論あなたの名前で。生産した薬はあくまであなたの立ち会いの時に使用する、私に投薬する際も。生産もあなたが立ち会った時のみ。いかかです?」

「お前相手だと言葉を重ねなくて済むな」

「私もです、で、返答は」

 

満足気に頷くオレに、有栖はしなだれかかりながら確実な言質を要望してきた。

 

「基本はそれでいい」

「基本、ですか?」

「追加がある。今からの情事の時間、オレの問いに素直に答えろ。どれだけ恥ずかしいと思ったことでもな」

 

くるんと瞳を回す。

 

「……恥ずかしいことを、私に言わせるするつもりですか?」

「そうだ。オレからしてみれば恥ずかしくなくとも、お前にとっては恥ずかしいと感じることを聞いて言わせる」

「どうして、そんなことを」

「オレがしたいからだ」

「……恥ずかしいと言うのはどういう、いえ、誰にとって」

「そういう主観の問題で振り回されたくないんだ。聞いたことに答えれば良い」

 

マウント取るから好き勝手にヤラせろ。そう言われたに等しい有栖は一瞬詰り、上目遣いになる。

山内の時とは違い、演技の色は一切ない上目遣いで。

 

「……体の問題もあって、私は家族以外の異性と手を繋いだことさえ、あの帰り道であなたと繋いだのが初めてなのですが。清隆くん、あなたは、こんな箱入りに恥ずかしいことを言わせる気ですか?」

「お前が箱入りなことや体の問題と何に羞恥を感じるかに関連はない。オレが配慮する必要はない」

 

羞恥で白皙の肌を紅く染め僅かにかすれた声で「これが限界ですよ」と意思表示してくる有栖に断固として返す。

一瞬戸惑いの色を浮かべ俯き苦悩する有栖。羞恥責めは嫌だというより、

 

「何で……普通に……」

 

漏れ聞こえてくる声からして、普通に優しく抱いてほしいようだ。

薄々理解していたが、有栖はかなり乙女らしい。

素直に可愛いと思うが、有栖は、有栖だからこそ、イジメたい想いを掻き立てられる相手だ。それが初物ならば貪らないのは失礼だろう。

そんな畜生なオレの思いを他所に苦悩していた有栖は、自分の体を改善しうる可能性には勝てず、俯き「分かりました」と蚊の鳴くような声で呟く。

ここで、声が小さいと嬲るのはアリだが、もう少し後にする。熟成させた方が旨そうだ。

 

「……それにしても、特上の餌を見せて試してからなんて……やっぱりあなたは素敵です」

 

何とか気を取り直した有栖は、何時もの笑みを浮かべて細くしなやかな指でオレの頬をなでる。

 

「もちろん、今回の返答次第では、でしょう?」

「当然だろう」

 

有栖があの条件を提示しなければ、オレが本気で打ち込まず自分の体は改善されなかったことを飲み込んだ上で、さらりと、自分に一番効能がある薬を研究できる道筋を整えた有栖が胸に顔を擦り付ける。

 

「お前相手なら遠慮する必要がないからな」

「……そして、ずるいですね」

 

頬を染め視線を泳がせる有栖の背中を撫でる。

 

「ひんっ……あ、清隆くんっ」

「試したあとのお返し、報酬は態度で示すものだろう」

 

服越しでも伝わる柔らかな暖かさを堪能しながら、目を合わせ、顎でしゃくる。

 

「報酬……私から、するの、ですか?」

 

頬を染め目を白黒させる少女は余りにも初々しい。

 

「勿論だ。奉仕の一つもせずに、ただ施されるだけで平気ならばしなくてもいいがな」

「本当に安い挑発が好きですね」

「挑発なんかしていない。思った通りのことを言っているだけだ」

「欠片も信用できませんが、まあ、いいでしょう」

 

呆れたような口調で挑発して、坂柳の負けん気に火をつける。

 

「分かりました……では、その……そうですね」

 

ギュッとオレの首に手を回して、顔を近づけてくる。

 

「……続きをさせていただきます」

「ああ、前はまだ拭いて貰ってないからな。丁寧に拭ってくれ」

 

キス直前に身を離してハンカチを握りしめた有栖に返した。




 仕事が修羅場になったため、しばらく更新できません


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おしらせ

昨今、挑発的なコメントやヘイトコメントが多発し、それに対処しているうちにこの作品を書くのが苦痛になりました。

 

よって、この作品はこれで終わりとします。

 

 

 

追記:色々な方が再開を望んでいらっしゃるのはありがたいのですがもう無理です。

 

以下のような流れでしたので無理です。

 

一之瀬あたりでヘイトコメント続出。自分の書き方が悪いのかと思いダンまちの二次創作をやってみる。

ダンまちの二次創作でヘイトコメント無し。それどころか暖かなコメントばかりで、書くつもりが無かったエピソードを書く。

エピソードでもヘイトコメント無し。

仕事が多忙になってきたので、後ろ髪を引かれつつキリのいいところまで終わらせる。

仕事が一段落ついたのでこの作品を再開。ヘイトコメント多数。

普通のコメントをしてくれる方もいるし、落ち着いたら再開しよう。

ダンまちの二次創作で英気を養い再開。

ヘイトコメント多数。

それどころか、ヘイトコメントを除けばコメント無し回有り。

「あ、もうこの作品を楽しんで読んでくれる人は居ないんだ」と悟る。

 

三度までは耐えましたが、もう無理です。お釈迦様だって赦してくださいます。

 

 

再追記、ヘイトが一際酷かった軽井沢の話はpixivFANBOXに投稿しています。

 

 

暖かなコメントを下さった方々や読んでくれた方々のために、下書きの一部を公開します。

 

 

 

 

 

「くっ……あっ……くっん、ふはぁ」

 

苦痛で汗の流れてない所が少ない顔で、懸命に眼を薄目で明けると有栖は笑った。

どこまでも優しく柔らかで愛おしげな笑みを。

 

「やっと、見えました」

 

何を言いたいのか分からず瞳を見つめ返す。

 

「ガラスの向こうで、どんな課題をこなしても……うぅっ……どんな事が起きても……ひぐぅ……何時も、見透かすだけで……あぅっ……何の感情も浮かんでいなかった……男の子、の目」

 

喋るだけで苦しいことが、苦痛の呻きと止まらない脂汗が物語る。

それでもオレの目から瞳を逸らさない。

 

「何度も夢見て想像しました……そんな風に、なるのですね」

 

「優しさと情欲に満ちた目」

 

「ずっと、ずっと見たかった。見たくて仕方なかった……ああ…どの夢の中よりも素敵です……ひぎぃぅ」

 

手をオレの顔に伸ばそうとして、膣が引きつられる苦痛に呻く。

 

「す、すみません。もう少し私の体が、成長して……うっ……あ…」

「前にも言ったがそんなことは謝ることじゃない」

 

有栖の体に影響がない範囲で優しくなでる。

手の温もりに力を抜こうとするが、抜いた分、限界以上に胎内を広げ軋ませる逸物を感じて痛みに顔をしかめる

 

「すまな「止めないでください……あなたの手を感じさせて……ぐぅっ、お願い」……わかった」

 

 

 

「清隆くん……聞かせてください」

「何だ」

「まだ、高校生活を終えれば、ホワイトルームに、戻りますか」

 

「…………わからない」

 

「この学校を卒業をすれば、父親は尋常の手段を取ってでも、オレはホワイトルームに連れて行くだろう。それに対抗するのは至難だ。それにホワイトルームの日々には得るものがあった。

 繰り返す毎日、ただただ自分を鍛えていく日々、その日々の中で育っていくのが体感できるホワイトルームは、オレにとって必要不可欠だ。それでも」

「それでも?」

「こうやって、外にいてお前たちと同じ時間を過ごすのも悪くない。だから、迷っている」

「そうですか……そう考えてくれるのですね」

 

汗だくの顔で幸せそうに笑った。

 

「ふふっ、ひぐっ」

「おい」

「だ、大丈夫です……そんな風に思ってくれるようになったのですね。だから、嬉しくて幸せなんです。きっとホワイトルームに戻って、敷かれたレールに乗ると断言するとばかり思っていましたから」

 

「……父親の理事長に聞いたのか?」

 

「……舐めないでください。私は、あなたを見続ける恋する乙女ですよ。そのくらい分かります。あなたはまるでこの学校のことも、生徒も教師も、どこか遠くから眺めてました。

 嫌っていないけれど好いてもいない、執着するものでもなくする必要もない。ただの風景、自分の糧になるかならないかの違いの風景みたいなものでした。そういう雰囲気でした」

「……違わないな。だが、最近は違う」

「ええ、違います。あなたは関係を持った人々に、私も含めて執着するようになりました。

それまでのあなたは、全ての能力が高い天才であってもも、何も想わず焦がれもしない人。

つまりは、何もかも出来ても何も成せない人でした」

「……」

「あなたをガラス越しにみるまでの私のように。予想外のことは起きず、何事も淡々と処理出来てしまうが故に、迫る問題に対処するだけの、自分からは何かを起こさない人でした。だから、目的を成し遂げる力において私はあなたより下です」

「ずいぶんハッキリと認めるな」

「ええ、与えられた目的だけですから。でも、あなたは目的を見出だす点では私より下です。違いますか?」

「そうだ。だから、ホワイトルームを出て未だ戻らない」

 

言葉にしてようやく理解した。オレは与えられた目的しかなかった。だから、与えられた目的に満足できなくなりホワイトルームを去った

 

「ええ、そう、そうです。今のあなたは与えられるだけの存在とは違います。ホワイトルームに戻るのを抗う苦難の道を進むことを考え方策を練る、あれほどの権力を持つお父様に抗おうとする至難の道を進もうと迷う目的を見いだした愚かな人。

私と同じ、周りの誰かに愛着していまい智慧を無くしてしまった人」

 

くすり、と坂柳は宝物を見るように微笑んだ

 

「人です、綾小路君。今のあなたは、愚かな、ですが生を謳歌しようする人。人として足掻こうとする、私が恋い焦がれる人です」

 

苦痛に顔を歪めながら荒い息をつくと、両手でオレの両手を包んで胸に乗せる。

二重の手越でも破裂するほどの鼓動が聞こえる。

 

「暖かいですか。私の鼓動は不快ですか」

「暖かい。不快どころか気分が落ち着くな」

 

幸せに頬を緩ませる。鼓動がさらに速くなり愛おしいものを見るように目を細めた。

 

「人肌は悪くないでしょう」

「悪くない、どころか……その、だな」

 

言葉にならずにぎゅっと坂柳の手を握るオレの手を坂柳は撫でてくる。

どうしていいかわからず、戸惑うオレに

 

「忘れないでください……例えあなたがホワイトルームに戻っても……戻ったとしても」

 

一言一言、刻むように坂柳は語りかけてかた。

 

「私は、あなたに会いに行きます。そこで、また、勝負しましょう。チェスでも将棋でも数式でも何でもいいから勝負しましょう。そうして私の才幹を認めさせます。……あなたのお父様に、あなたの子を孕む母体としてでも私を認めさせます」

 

それこそが坂柳の他の少女に対するアドバンテージ。彼女だけは綾小路がどんな形で高校生活を終えても、確実に先がある。

例え綾小路がホワイトルームに戻っても、再び会うことが出来る。

 

「絶対に忘れないでください。あなたが卒業しても中退しても繋がり続けたいと想う人が居ることを」

 

愛しい眼差しで綾小路を見る。

 

「家柄でも能力でも、あなたのお父様も無視できない存在が、ここにいることを」

 

家を合わせればと静かな自負――確信を込める

 

「政略結婚でも、あなたの妻になりうる人がここにいてこれからも過ごすのだということを」

 

坂柳にすれば、その可能性は極めて高い。

坂柳は将来はともかく今はそうではないが、坂柳父は綾小路父にとって今現在の手強い相手だ。

ならば、手強い相手なら身内にしてしまえというのは常識と言っていい。

この情報化社会だからこそ、閨閥は役に立つから尚更だ。

綾小路の父の目的からすれば、間違いなく候補に自分は入っていると確信を込める。

 

「確かに、お前と結婚する可能性は高いな」

 

綾小路もアッサリと、けれどどこか嬉しそうに受け入れた。

 

「あら、閨閥をうけいれるのですか」

「閨閥は結果だ。結婚すれば敵対は愚行でしかない。夫婦間で政敵関係は隙を作るだけだ。お互いに上手く夫婦関係を構築するべきだろう」

「ふふっ、わかっているのですね「でもな」え」

 

上流階級と呼ばれる存在が閨閥を作る理由を答えた綾小路に、確りと上流階級常識を教育されていることを理解した坂柳は、

 

「夫婦という意味究極の絆を結べば、よほどのことがなければ上手くやろうと努力するとはいえ」

「え、ええ」

「お前となら、そんな努力は必要ない。お前とならいい夫婦になれそうだ」

「――――――」

 

花のように綻ぶと、何もかも受け入れる透き通る笑みを浮かべた。

 

「なら、好きなだけあなたの……を私の胎内に出してください。高校卒業する、いえ、私のからだが耐えられるまでは出産は困りますが、その後なら」

 

精子とは恥ずかしくて言えない自分の乙女っぷりに、坂柳は思わず視線をそらす。

いや、坂柳はもっと別の理由で目を反らした。

このままでは耐え続けた想いを吐き出してしまいかねないと、オレの前でこれ以上は醜態を見せられないと。

 

「どうした。言いたいことが有れば話せば良い。長い付き合いになりそうだからな」

「……癪です」

 

隠そうとした意図を暴かれた坂柳は、ぐったりと力を抜き、オレの手を握りしめる。

 

「私だけで貴方に……変わったと言わせたかった……ふふっ、本当に私も愚かな女です」

「……」

「好きって、どういう気持ちだと思いますか?…………清隆君」

 

坂柳は、オレの手を握りしめたまま、熱い光を宿して見上げると、返答を聞かずに続ける。

 

「熱くて、冷たくて、どきどきします。あなたを考えるだけで、幸せになったと思えばひどく苦しくて、せつなくなり、暖かくなって、理論的に考えられなくなるんです」

 

ほぅと吐息をつき、自らの白磁の腹をみる。規格外のモノを入れられて、弾け破れるのかとオレでさえ危惧を抱く膨らんだ腹を愛おしげに一度見て、オレと目を合わせる。

 

「眠れなくもなるんです」

 

言葉を切り、一番目を閉じて開くと、ぽつりぽつりと想いを紡ぐ。

 

「あなたに負けられないと思った時のことです。あなたを初めて見た日のことです。

小さいころから幽閉されて、親の暖かさを知らず、服は患者衣で、裸足だった。素足を鍛える意図があったのでしょうね。でも子供の小さな足が、フローリングの床の冷たさで赤くなっていました。

そんな生活を、ほぼすべての時間を監視されてサンプリングにされていたあなたを、体に障害があっても周囲に恵まれていた私は哀れみもしました。

そして、あんな仕組みで育てられた子に負けてなるものかと。マジックミラー越しで淡々と課題をこなしていた一番優秀な人に勝たなくてはと。ふとしたときに目が合って一方的に知っている人に負けたくない勝ちたいと。

今まで見てきたなかで、唯一、同い年で、自分と比肩するどころか勝る課題をこなしてしまえる子に勝って壊さなければと。

そうでなければ、同じ風景を見れる天才の子には……何の意味も、何のために秀でた能力を使うのか、才能ある者がすべき生き方を、生きるための暖かさを教えられないではないですか」

「……オレは、成功と呼べる人間だとお前もいったはずだ」

 

それは、止めるべき言葉ではなかった。なのに、止めてしまったのはそれがオレの根幹だからだ。

有栖は何もかも承知した眼差しを返し、唇を歪める。

 

「ええ、あなたは成功例です。それは間違いありません。

けれど才能ある人間の生き方をしていない。

才能ある人間の生き方とは、他者にとって努力を必要とすることに対し、平然としている姿を見せることです。日々食事をしたり眠ったりすることと同じ扱いで、他社が出来ないレベルの仕事や勉学を行うのを見せることです。

それが、日常に必要な行為で、かつ、なくすと体に支障をきたしてしまうほどに楽しいことだから。努力しているわけではなく、楽しい。ただそれだけで、際限なく学び、試し、寝る間も食事も惜しめる。努力ではないから辛くない。それでいて傑出した結果を出せる。

それこそを、才能というのです。

あなたのように強制されて傑出した結果を出せるようになったことは、才能のある生き方ではありません。

だから、私はあなたに生きる暖かさと楽しさを教えたかった」

 

無理矢理に微笑んだ有栖の頬を、涙の粒が滑り落ちる。痛みでもなく悲しみでもなく哀れみでもない涙。熱い怒りの涙。

 

「そんなことを、思い出していたんです。忘れた日はありませんでした……けれど、何時からか、夜、夢の中でも見るようになって。この学校であなたに会うまでは、時々、会ってからは頻繁に、チェスをした日から、ずっと……それで、眠れない時もあって」

「……有栖、お前は」

「助けられたときに、もっと早く意識を取り戻せればよかった。あんな生活を過ごしていても、見返りなく人を助けてくれるような善性を採れる人間味がある人だともっと早く知りたかった」

 

乙女の勘だったのでしょうね、と唇が動く。

 

「そうすれば、あの時のハンカチがそばにないと嫌な気分になって……そばにないと不安で、お守りのように、夜も、枕元に飾っていた時に、もっと幸せな気持ちになれたのに、なんて勝手なことを思うんです。これからではなく、もう何も出来ない過去に悔恨するなんて愚かでしょう。

堀北さんたちのおかげで踏み出したあなたを、才能ある人間の生き方へ踏み出そうとするあなたの手を私だけで握り締めたかったと、勝手なことを思うんです」

 

有栖は顔を両手で隠した。

 

「でも、いいんです。これでいいんです。そうでしょう清隆君。どれだけ望んでいても相手の都合も考えないなんてどうしようもない……愚かな女ですよね。

私は愚かな女なんです。あなたを見たあの日から愚かな女になったんです。

チェスで負けてしまったのに、あれだけ勝たなければと思っていた勝負を台無しにされて、あなたの器量に許されて再戦して負けてしまったのに」

 

両手の間から涙が頬を伝い続ける。声が掠れている。

 

「あなたと互角の真剣勝負が出来たと、自分を高めていた意味があったと、あなたが私と同じ天才だと知れて、暖かさを知らなくとも、冷徹でも、人として優しい判断が出来る人だと。

夜毎に、思い描いていた人よりもずっと好ましい人なんだと知ることができたから、悔しいなんて欠片も思えなくて、嬉しくて愛しくって……

……そこで、初めて、認識してしまった自分の想いに、頭が真っ白になって、他に何も考えられなくなってしまって」

「……」

「私はあなたをずっと愛していて、あの瞬間恋に落ちてしまったのだと、能力だけでなく綾小路清隆君という優しくて冷徹な人を知って、好きになったのだと」

「……」

「愚かな女でしょう、長い間ずっと、自分の気持ちを誤魔化すばかりで、形作っていなかったなんて、それなのに汲んで欲しかったなんて、そんなことをあなたにぶつけるなんて」

 

と覆い隠したせいでくぐもった声で坂柳は呻く。想いに圧し潰され言葉を纏められない少女の呻きに、耳も目も全身が反らせない。

 

「私が好きな人と同じ場所で同じ時間を過ごせたことが幸せで夢中になって。

もっと知りたいと仕方なくて、壊さないまま暖かさを教えようとして手を繋げたのが、幸せで、切なくて、帰り道、自然と足を合わせてくれたことが……いえ、これでも無いんです。今、あなたに伝えたいことは違うんです」

 

普段の理論的な聡明さを少しでも取り戻そうと、ふぅと熱い吐息を漏らす。

 

「この期に及んで自分の想いだけをぶつけるなんて。理性ではなく感情だけで動くなんて。

……また謝罪することができてしまいました。私は、本当に愚かな女です」

 

顔から手を避け、手を伸ばす。それだけで規格外のものを体内に入れた体から脂汗が流れるが気にもとめずに、必死に、伸ばし、掴む。

男物のハンカチ。かつて、オレが彼女の首筋を冷やしたハンカチ。性交の邪魔で、オレが放ったハンカチ。オレにとってどうでも良い風景のハンカチ。

 

「言わなくてはならないことを言っていませんでした」

 

ハンカチで包むように両手でオレの左手を包みこみ、人肌の温もりをくれながら、視線を合わせる。

 

「あの時、助けてくれてありがとうこざいます。お陰で無事助かりました。それと――」

 

ぼんやりと無価値だったそれをみる。

 

「ハンカチ、いただきます。大切にしますね」

 

それをこれ以上の宝物はないと、オレの手と共に、乙女は胸に抱き締めた。

蒼白な坂柳の顔に、両親さえ見たことのないような表情が浮かんでいた。

無垢な笑みに浮んだ。

ただただ、ハッキリとした愛慕と恋慕。

 

「あと、もう一つだけ、勝手な想いをぶつけても構いませんか」

「ああ、何だ」

 

震える有栖の言葉に、乾く喉から声を絞り出す。

 

「先ほど薬を求めた本当の理由、私が薬の効能を知った時に何を思ったのか、聞いてください」

「……」

「この薬から発展させれば、こんな私でも、あなたの子供を、好きな人の子供を産めます」お腹の中の子を連れて会いに行けます。速く出ないと子供に他人扱いされると言ってみせます

 

それは、杖をつく必要があるほどの先天的心疾患の少女では望んでも常用薬で胎児を殺害してしまうゆえに諦めた願い。

己の体が悪いことはまだしもそれだけは良くなることを願っていた願い

 

「産めるんです」

 

ささやかで誰でも望める幸福を掴んだ笑みを浮かべた。

 

「……好きです」

「……」

「語彙が貧しくてすいません……好きとしか言えなくて……」

 

何時しか無意識で、坂柳の髪を右手で撫でていたことに気付き震えた。

 

「あなたが好きです……清隆くん」

 

有栖は心地よさげに笑うと、もう一度、真っ直ぐにオレの瞳と瞳を合わせた。

 

「返事を頂けますか」

 

苦痛の脂汗が垂れ流され続ける少女の滑らかな肌を見ながら、少女が言った言葉を理解して咀嚼した。

――ここまで、オレに恋焦がれ愛している少女がいると。その少女とはこれからも付き合うことになると。

溢れんばかりの衝動で心が軋みをあげ、衝動をぶつける先を求める。

探して

探して

――見付けた。

 




では、これにて失礼します。
また別の作品でお会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。