仮面ライダー龍騎×IS ~孤高な少年がおりなすドラゴンとの宿命~ (ギンガ)
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第一章 イギリス国家の御令嬢セシリア・オルコット編。
前編(その1)


20××年 四月 某日

 

その日、とある天才(天災)科学者の手によって地球上の男女の価値感は塗り潰された

世界中の殺人兵器用のミサイルがジャックされて日本に放たれたところを、その天才科学者が造り上げたインフィニット・ストラトスと言う兵器が撃ち落とした事が原因らしい。

 

ーーーーーーー

 

元々宇宙開拓専門に開発が決行され、科学者もその一員として取り組んでいたパワードスーツを、何時の間にか科学者がその権利を独占し、ほぼ自作自演のお披露目会を繰り広げたのがその事件のきっかけ。

 

それが世間に公表されると、世界中の女性の殆どは男性を一気に蹴落とすようになり、今正に全ての人間関係は不景気を迎えている。

 

後に天才科学者はISの設計図や燃料とされているコアを残して失踪、自分で解放したミサイルを自分の兵器で撃ち落とすと言うあの異例なテロ事件は、そのミサイルを撃ち落としたISの色より『白騎士事件』と称されるようになった。

 

インフィニットストラトス、通称ISと呼ばれるその兵器は、その当初予定していた宇宙開拓という分野を離れ、女性限定のスポーツをするためのパワードスーツとして活用されるようになり、それは正に女性が男性より勝っている事、『女尊男卑』のワードを表している様子。

 

しかし俺の生きざまからすれば、その全てがどうでも良かった・・・はずだった。

 

ーーー

ーーーーーーー

 

それから十年後 日本から南東に離れた人工島 特別機構私立IS学園

 

俺は今、IS操縦者を育成する為の学園に入学し、教室の席に座りながら他人に注目されていた。

 

「・・・・・・」

 

すぐ左隣の奴と一番左後ろより一つ手前の席に居る幼馴染とは違い、俺に緊張と言うものは無い

しかしこうも視線が集まると、気にしてはいられなかった。

 

なので一つ後ろの列に居る者だけ鋭い目つきを立てて威嚇してみる。

『おい、何見てんだよ!?』と言うかのように威嚇した。

 

『!』

 

するとその列に居た全ての生徒は跪くかのように顔を伏せて見ないふり。

とても今の世の中を生きる女性とは思えない光景だった。

それから俺は前を向くと、突然誰も居なかった筈の電子黒板の前に、一人の女性が細長い棒を片手に仁王立ちしていた。

 

「!」

 

その女性はとても小柄、それは俺が席を立てば同じくらいか若しくは身長を越せるんじゃないかと思うほどだった。

 

「はーい皆さん、おはようございま~す!」

 

しかし女性は俺の思考を読む事も無く軽いノリで自己紹介した。

 

「この度一年一組の副担任を務めさせていただきます、山田 真耶(やまだ まや)と言います。」

「皆さん、どうか宜しくお願い致しますね!?」

「・・・・・」

「はい、それでは生徒さん達の紹介に移らせていただきます。」

 

自分が鹿とされたことは察しても、何もコメントを付け加えないところに俺は軽く感心した。



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前編(その2)

ーーーーーーー

 

俺を含めた生徒たちの自己紹介は『あかさたな順』に行われるらしいので、俺が自己紹介するのは少し後になる。

しかしあかさたな順と聞いて、真っ先に視線を向けたのはさっきまで緊張の嵐の中だった隣の席に居る奴だった。

 

「・・・」

 

織斑(おりむら)くん、織斑く~ん?」

 

「!」

 

「あっあの織斑君、貴方が自己紹介する番ですよ?」

 

「・・・えっと、それは何故でしょうか?」

 

この時、俺は隣の席に座る織斑と言う少年の台詞に絶句、そして周りもその雰囲気が感染したかのように伝わり、皆驚愕の表情で織斑を見つめる。

 

「あ、あのですね織斑君、あかさたな、そしてあいうえおから始まるので最初が『お』の織斑君の番はすぐに来るのですよ?」

 

「・・・・あっ!自己紹介!?」

 

今度は俺以外がズッコケそうになる

しかし織斑はそれを気にする事無く立ち上がってから一言で自己紹介をする。

 

「えーっと、転入生の織斑一夏(いちか)です・・・・以上です。」

 

『!?』

 

もう、彼の天然に対して誰もリアクションはしない

しかし沸々沸騰するヤカンのように怒りの表情を見せる者が後ろの列に居た。

 

因みに幼馴染は、ふと視線を送った瞬間にすぐ気が付いて何事もなかったかのように窓の景色を眺めていた。

 

 

・・・バシン!

 

突如、隣の織斑からそう空気砲のような音が鳴り響いたので、すぐさま俺たちは織斑に視線を集中させる。

そうするとその織斑の目の前に俺より背が高い黒いスーツの女性がいかつい顔を見せつつ教科書を片手に仁王立ちしており、呆れた表情を浮かべながら次のように口を開いた。。

 

「まったく、お前の天然の台詞は聞き飽きたぞ。」

「・・・なんだ、姉ちゃんか?」

 

『バシン!』

 

「学校で姉ちゃんは止せ、ここでは『姉弟』ではなく『教師と生徒』なんだからな?」

 

「はーい。」

 

タンコブを二つ付けても織斑は反省する態度を取らず、それどころか織斑の姉の姿を見た生徒が全員立ち上がり驚愕する。

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

『千冬さまああああああああああああああああああああああ!』

 

「!」

 

「憧れの千冬さまよぉぉぉっ!」

「素敵、観劇、私ほれぼれするゥ!?」

「私、千冬さまに憧れて、埼玉から来ました!」

「千冬さまぁ私を叱ってぇ、若しくは褒めてぇぇ!」

 

その憧れの目線と大声は流石に俺は驚く

ふと窓側に居る幼なじみを見れば頬杖を付きながら窓の景色を眺めていた。

 

「お前ら、静かにしろぉっ!!」

 

そしてこの織斑の姉の一言で、生徒たちは一斉に静かになる

これぞ『台風のように暴れて、嵐のように立ち去る。』の如しだった。

 

「・・・・自己紹介する必要は無いかもしれないが、一応しておこう。」

「私が千冬さま改め一年一組担任の織斑千冬だ、今日からお前達を一人前にするために積極的に指導する、だからお前達もそれを覚悟の上で取り組め・・・解かったな?!」

 

『はい!』

 

「よろしい、では先生、後の自己紹介をお願いします。」

「解かりました。では自己紹介に戻らせていただきます。」

 

織斑の姉は一度去って行き、次の授業まで帰って来なかった。

そして山田先生は何事もなかったかのように生徒達の自己紹介を続けた。

 

ーーーーーーー

 

さっきの騒動が嘘のように生徒の自己紹介は順調に進んで行った。

そしてさっきまで見て見ぬふりをしていた幼馴染は、山田先生に名前を呼ばれてハッとしてからすぐに立ち上がる。

 

「では次にシャルロット・デュノアさん、お願いします。」

「はっ!・・・・シャルロット・デュノアです。国家代表候補生としてフランスからやって来ました・・・皆さん、三年間程よろしくお願いいたします。」

 

ようやく名前が明かされたのは気のせいだろうか

幼馴染のシャルロット・デュノアはビシッと姿勢を正すと静かにお辞儀してまた姿勢を真っすぐにし、それから静かに座る

 

その右隣に居る生徒が強調された胸の部分を見て『おっきい!』と呟いたのは、気のせいでありたい。

 

「はぁいお辞儀もして偉いですねぇ・・・皆さんも見習ってほしいですねぇ?」

 

山田先生は手をお行儀良く合わせつつ、目と鼻先の合間に影を作りながら皆を笑顔で見つける

これで山田先生がさっきの騒動にキレ掛けていた事を、俺たちは良く理解した。

 

ーーーーーーーー

 

その時俺は、シャルロットの後ろの席に座る女子生徒が、シャルロットを見てからこちらを見て鋭い視線を送っていた事に気が付かなかった。

 

ーーーーーーーー



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中編(その1)

二時間目と三時間目の合間

 

一通りの授業を終えた俺は、教科書を机の中に閉まってからため息をつく

正直、周りの女子が隙あらば俺に注目していた事と、織斑の天然な回答に千冬が叱る場面に直面する事にかなり疲労していたからだ。

 

「・・・・・」

 

今、その織斑はシャルロットの後ろの席からやって来た金髪ロングヘア―の少女と何やら揉め事をしてるらしい。

しかし今の俺にはどうでも良いので、その会話に突っ込む事は無かった。

 

ーーーーーーー

 

ドガシャア!?

 

ーーーーーーー

 

・・・また織斑の天然が働いたのか、俺以外の殆どの生徒が机の上や横にズッコケる。

そして先の金髪ロングヘアの少女が織斑を指して叱った。

 

「信じられませんわ!あなた代表候補生が何か知らないですって?」

 

「(ブッ!?)」

 

「し、仕方ないですよセシリアさん。僕ISが何なのか良く解からな無いし、ましてや女性じゃないからISに乗った経験が無い。」

 

織斑が自分の事をそう語ると、セシリアと言う金髪ロングヘア少女は、拳を胸の少し下まで持って行きながら怒りの感情を露わにする。

 

「搭乗経験が無いにしても、代表候補生が何なのかくらいわかるでしょう!?」

 

するとそれにムッとしたのか、織斑はこう返した。

 

「知らないのは知らない、それに貴方が代表候補生自身なら説明できるのでは?」

 

「はっ!?」

 

確かに織斑の言う事は的確だ。

代表候補生である癖してそれが何のか相手に語らないなんて、正直その相手をイジメている様だ。

 

「・・・解かりました。」

 

その事を把握したセシリアは、咳を掃って一度怒りを鎮めてから、『良いですか?』と自分の言葉で代表候補生の事を一言で語る。

 

「代表候補生と言うとは、世界各国での厳しい試験をクリアし、それぞれの国の代表を任されたエリート中のエリートなんですのよ?」

 

「へぇ~、そうなのか?」

 

「そうですのよ。」

「つまり、そんなエリート中のエリートに声を掛けられた貴方はとてもとても幸運なのです!」

 

「は?」

 

今、織斑は首を傾げながら『それとこれとは話が別だろ?』って表情を浮かべたのは、俺が周り込んで見なくても大体分かった。

 

「・・・・・」

 

しかしセシリアは万弁の笑みを浮かべながら、胸に手を当てて話し続ける。

 

「そして何より、私は入学試験で教官を倒したのですよ?」

 

すると織斑はまた自分の天然を発揮する。

 

「あーその教官って奴、僕もやっつけたぞ。」

「へぇーそうなんですの・・・えぇっ!?」

 

セシリアの万弁の笑みは行き成り驚愕の表情に変わる、そして俺はセシリアの表情を見てこう思った。

 

「(今の間って必要かな?)」

 

ーーーーーーー

 

その後セシリアは青ざめながらだらけた姿勢で自分の席に去って行った。

そして織斑は教室のドアから一部始終を眺めていたらしい千冬先生に平手打ちを受けて、それから何故平手打ちを受けたのか解からない表情を浮かべた。

 

俺はそれに額に手を付きながら哀れみ、そしてシャルロットは除夜の鐘のような姿勢で睡眠中。

 

「スーッスーッ・・・スーッスーッ」

 

俺はそれを見てから電子黒板に顔を向けた後、頭の中でシャルロットの母に手紙を送った。

 

『天国のシャルロットの母さん、貴方の娘が無責任すぎてこの先が思いやられます。

                                    ~俺~』

 



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中編(その2)

当然のことだが、その手紙に返事は無い。

先を事態を把握した千冬先生により織斑はガムテープで口を大きく塞がれると、授業はスムーズに進んだ。

 

ーーー

ーーーーーーー

 

それから四時限目が終わり、昼食の時間になった。

女子生徒による周りからの視線に何かしら反応することもなく、俺は食堂へ足を運ぼうとした。ところがガムテープを外したらしい織斑に後ろから声を掛けられた為にその足は一旦立ち止まってしまう。

 

「おい、そこの男子高校生、これから食堂で一緒に食べねぇ?」

「・・・は?」

「実はさっき箒って言う僕の幼馴染に誘われたんだけど・・・女子と二人っきりってのが妙に落ち着かなくて。」

「それで、俺にも同行すれば心配いと?」

「そうなんだ、頼む!」

「・・・最後に手を合わせてそれを要求するとは考えたな。しかし駄目だ、と言うかこっちにも先約が居るんでね。」

「えっ!」

 

織斑が俺の発言に驚いていると、窓の方からシャルロットがこちらにやって来て俺の左腕に自分の両腕を組んだ。

 

「お待たせ・・・それじゃあ行こうか。」

「あぁそうだな、食堂に()()()

「ま、待ってくれよ、僕はどうすれば良い?!」

「さぁ?とことん勝手にしやがれ!」

 

織斑に背中を見せた後、俺は何事も無かったかのようにシャルロットと食堂へと向か

 

「「・・・・・」」

 

その為、そんな俺たちを睨んでいたのは織斑だけではなかった事など、知る由もなかったのだ。

 

ーーー

 

食堂

 

「いらっしゃい転入生、早速だけどどれにするかい?」

 

食堂のゲートをくぐると、白装束姿のおばちゃんがテーブル越しにメニュー表を僕たち渡す

メニュー表はファミレスと同じくらい分厚い本だったので、それには少し驚いてしまった。

 

「そうだな、ふりかけおにぎり四つセットでお願い。」

 

「じゃあ僕はハンバーグカレーが良いな。」

 

「承ったよ・・・あっそうそう!」

 

「何?」

 

「金髪じゃない方の転入生。今おにぎりセットって言ってたけどほんとにそれでいいのかい?」

 

「どうしてそんな事を言うの?」

 

「実は私も、高校生の時に学園で授業受けていたんだけどここの実技は結構ハードなの。だからあんちゃんのような細身の場合はおにぎりだけじゃあ足りないと思うから。」

 

そうテーブルより奥の調理場に向かうとしたおばちゃんがぐるりと一周して俺に問うと、今度はメニュー表を閉じたシャルロットが続ける。

 

「そう言えば午後の授業は体力テストが入ってたような。」

 

「そっか、ならヒレかつでお願いします。」

 

「承ったぁ!なんならテーブルで待っといてくれや!?」

 

「りょっ了解。」

 

「解かりました!」

 

おばちゃんは両手をパンと叩いてから、面白いくらいに腰を曲げながら調理場へと向かった。

 

「「・・・・」」

 

テーブルの席に座ると、俺たちは一言ずつ本音を漏らした

 

「今のおばちゃんのテンション、ほんとの定食屋みたいだったね?」

「そうだね。」

 

それから俺はシャルロットに聞きたかった事を聞いてみる。

 

「それにしてもシャルロットよ、さっきなんであの状況で無視できたの?」

「え?」

「ほら、織斑が自己紹介した時とか千冬先生が現れた時とか窓の景色を眺めていただろう?あれバレないと思ったら大間違いだぞ?」

「あぁ・・・・やっぱり、君には隠し事ができないようだね。」

「そうだよ。」

 

そうやって俺が不気味な笑いを見せると、シャルロットの顔は段々青くなる

するとそこでセシリア・オルコットがこちら側からやって来て僕たちに話しかけて来たのだ。

 

「ちょっと宜しくて?」

「?」

 

僕が頬杖を付いた状態のままでその顔を見上げると、セシリアは少しイラついたように下唇の横側だけを開けつつそれを閉じてから言った。

 

「いえ、私はもう一人の男性操縦者がどんな人か気になっただけですわ。」

「本当にそれだけか?」

「・・・本音を言うと、少し忠告を言いに来たのです。」

「「忠告?」」

 

彼女の台詞に俺がシャルロットと共に反応すると、セシリアは先ほどの苦い表情が嘘だったかの様に笑顔の表情になりながら髪の片方を靡かせてからすぐに腕を組んで言葉を続けた。

 

「先の話しを聞いているなら分かるかもしれないですが、私はイギリスの国家が認める実力を誇る代表候補生なり、ですから貴方の力がどれだけであろうとも、私と言う『山』を越えることはほぼ不可能なのですわ!」

 

「・・・それはどういう事だよ。」

 

セシリアが言い切ると、俺とシャルロットはバレない限りに「(何コイツウザイ!)」と言う視線を送った。

しかしセシリアはことごとく気づいておらず、更に俺たちへ見苦しい追い打ちをかけてくる。

 

「そう言えば貴方も見る限り日本じ、日本猿のような顔立ちですけども。もしかして実力はそれほどの事だと言いたいのですか?」

「!」

「言うなれば日本とは、ISを作り出した天才科学者の『篠ノ之 束』を生み出した国と称されていますが。今では女尊男卑の激しい世の中のせいで変な猿が多いと称される国になってしまいました。」

「「・・・・・」」

「まっ私が住むイギリスもさほど変わらない離島なのですが、日本と比べれば面積、」

「ちょっと、おしゃべりはいいかげんにして!」

 

セシリアが俺たちの侮辱から日本とイギリスの違いについて語り出したところで、シャルロットが机の天板を強く叩いてから立ち上がる。

 

「シャルロット?」

 

それからシャルロットは下唇を噛みしめながらセシリアの顔を睨みつける

セシリアもそれに気が付くと、さっきとはまた違う表情に変化した。

 

それは何故だろう、在り得ないものを見て恐怖する人のようだった。

 

「な、何ですの貴方?今私はこの男子生徒とお話をしているのです。関係ない人は下がっててください」

「言い訳になってないよ!」

「ひっ!?」

 

この時、俺は軽く冷や汗をかいた。

そしてシャルロットはブチぎれる場面は、近くで見ると怪物やお化けよりも怖い事を()()()理解した。

シャルロットは息切れしたのか、一先ず間を開けてから泣き顔のままでセシリアに問い詰めていく。

しかしその口から吐く息はまだ荒いままだった。

 

「セシリア・オルコット、あんたサイテイだよ。」

「な、何がですか?」

「貴方、さっきからていうか教室の時から思ってけどさ、兎に角自分の事しか頭に無いみたいじゃない?」

「!?」

「それに日本人ツラしているからと弱い判定するところがかなりムカついたよ。もし僕の幼馴染が日本人じゃなかったら、それで赤っ恥かくのは君じゃないのかい?」

「それにさ、ISの博士を生んだ島、後で侮辱するところもムカついた、ISが無かったら君は只の凡人だったんだよ?」

「!??」

「そして僕が遮っちゃった所、あそこの辺イギリスの方が日本より大きい島って言いたかったのかな?あれは。」

「それって結局、『自分の島と貴方の島はやや同じですが、何か?』って話してるのと一緒じゃないの?」

「!!??」

「結局、君はこの幼馴染に何の抗議も出来ていないんだよ。解かる?」

「・・・・・くっ!」

 

シャルロットが涙をスカートのポケットから出したハンカチで拭いてから下唇より上の歯を離して元に戻すと、セシリア・オルコットは何も言いだせずにただ両手拳を固めた。

二人の間に座る俺は、只シャルロットの抗議の内容が殆ど的確である事に驚いている

そう言えば十年程前にも同じようにシャルロットがブチぎれて抗議した事もあったのだが、余りに年齢とか身長とかが小さすぎて俺以外は誰も気にしなかったのである。

そして気が付くと物事に気が付かないフリをしておばちゃんが、ホカホカの煙を上げるとんかつ定食が乗ったトレーとハンバーグカレーが乗るトレーをそれぞれ片手に持って来てくれた。

 

「ほらよ、あんまり来ないもんだからこっちから来ちゃったよ。」

「あっどうもありがとうございます。」

 

ここでおばちゃんが器用な人なんだなと感心してしまった俺は、後で自分がどうかしていると思ってしまっていた。

 

ーーーーーーーーー

 

するとセシリアは、涙目を浮かべてながら割り箸を半分に割ろうとしている俺を指して大声で一言吐いた。

 

「解かりました

今日の所はこの辺にして‥‥といきたいのですが、抗議したい事が一つあります、それはこの人の実力についてですわ!」

「私、この人がどれほど強いのかはわかりませんけども、恐らく実力は私よリ劣っていますわ。」

「・・・それは、何の実力?」

「決まってます、ISです。」

 

無理矢理気合を入れた台詞だったのだろう、セシリアは台詞を言い切ってから急に呼吸が荒くなる

それに合わせて俺も少し間を開けながらため息を吐いて、かつ丼のかつを一口頬張りながらこう発言した。

 

「クラス代表戦、なんだいそれは?」

「・・・本当に何も知らないのですね?」

 

セシリアがまた嫌な顔をしたのでそれがなんなのか聞いてみると、次の様に説明した。

 

「良いですか?クラス代表戦とは一ヶ月後に開催大会の事で、そこでは学年別クラス代表の一名ずつが違う代表と実力を競うのですわ。」

「ほう、国家代表とは違うのか?」

「それは名で察し出来るでしょう?しかしその国家代表との違いを強いて言うなら自薦して通る場合があると言う事です。」

「なるほどなぁ~」

「しかし自薦するとしてもその実力が周りに評価されない限りは通りませんし推薦されると断る事も出来ません。つまりクラス戦代表の選ばれ方にもリスクもあるという事です。」

「・・・・要するにセシリアは、自薦しても通る自身があるとでも?」

「その通りです、わ!?」

 

バシン!

 

少し調子に乗ったセシリアに天罰が下ったかのように頭上から拳骨が落ちる

その犯人は後ろに立った千冬先生であった。

 

「ったく。まともに食事も出来ん奴がイギリス代表とは、お前を推薦した奴を抗議してやりたい」

 

「お、織斑先生!?何時からそこに居た?」

「そうだな、お前がクラス代表戦について熱く説明していた場面からかな?」

「全く、気が付かなかった。」

 

千冬先生はセシリアの一言にニヤついてから一言で問う。

 

「・・・それでセシリア、お前は推薦される自信のほどがあるのかい?」

「あります!ありますとも!」

「そうか、ならばそれを証明してみろ?」

「は?」

 

セシリアの微妙な反応を他所に、千冬先生は息を吸ってからそれを吐くように大声で叫んだ。

 

「よぉく聞け皆のもの!これから一週間後に、男子生徒代表とイギリス代表が、クラス代表戦の一年一組の枠を賭けてバトルをすることになった。」

「制限時間は五十分、エキシビションマッチルールに乗っ取らせていただく・・・他の者も観戦は自由だ、但し面倒事は起こすなよぉっ?!」

 

『はい!』

 

千冬先生が皆に訊くと、条件反射的に女子生徒達は立ち上がって全力に答えてからまた座った。

 

「・・・・・・」

 

俺はそのペースに完全に取り残された

何故ならクラス代表戦の事も知らなかった俺が無理矢理それに参加されるような形に成ってしまったからだ。

 

・・・・チラっ?

 

気が付くと自分はふと後ろを振り向いて、窓際の円形の席にて織斑がポニーテール少女を横にうどんを食べていた事に腹を立てていた。

 

「(あの野郎、他人事だと思って油断しすぎだろう!?)」

 

コメカミに血管を浮かべる俺は、クラス代表戦で必ず殺してやると言う殺意を胸に席に座ってかつ丼を食べ始める

この時、午後の体力テストではその殺意が功を制したのか、成績が他をぶっちぎり追い抜いて一位になる事をまだ知らなかった・・・。



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後編(その1)

秋山さんの会話から一週間後までの下りは前回にでも加えたかったが、バランスが悪くなりそうだったから今加えました。


ーーーーーーー

 

放課後 アリーナから寮に向かう途中。

 

「・・・やれやれ、体力テストをぶっちぎりでごうかくしちゃったよ。なのに織斑の野郎は、中学の時とテストほとんど変わらないって感じだったのに不合格になるなんておかしくね?」

「しっかし、わざわざ本校の外通らないと寮に行けないとか、学園が広すぎてこういう時に困るんだよね?」

 

俺は心と体が疲労しきっているせいなのか、少し台詞に自分らしさを感じられなかった。

その為に次に呟いてしまった怠けの一言も、すぐに自分自身で否定してしまうのである

 

「あーあ、こんな時()()()がつかえたら楽なのに・・・ハッ!」

「な、なな、何を言ってるんだ俺は?()()()はこっちの世界では動けねぇんだよ?またそう言う怠けた事考えて、あの人に叱られるのがオチだよーーー!」

 

ピリリリリリリ・・・・ピリリリ・・・

 

「おっ噂をすれば!」

 

突然ズボンのポケットから鳴り響く携帯の着信音に気が付き、恐る恐るポケットから取り出すと着信の相手は正しく『あの人』だった。

 

「・・・・立ち止まって、これに出るしかないか。」

 

俺は本校の少し手前の辺で今まで進んでいた足を止めてから、その携帯を開いてから出るボタンを押してそれを耳に当てる。

 

「はいもしもし・・・・」

 

『「もしもし、もしもし・・・俺だ、秋山 蓮(あきやま れん)だ。」』

 

「知ってます。それは誰よりも知ってますよ秋山さん。」

 

『「そうか、本人の確認をしたかったからそれで宜しい。」』

 

「・・・電話をしたその要件を聞かせて下さい。」

 

『「あぁ、今日晴れて高校に入学した意見やら感想を聞かせてほしかったのだ、何せ俺とタイマン勝負してばかりだったから小学校中学校とかはろくに思い出なかったかもしれないからな。」』

 

「まさかあなたから『タイマン勝負』の言葉が出てくるとは思わなかったよ。」

 

『「すまない、携帯はやはり慣れなくてな。」』

 

「いえいえ、そういうのも知ってますし問題無いです。」

 

『「・・・・それで、どうなんだ?そのIS学園っていう所は?」』

 

「うーん。初日なので具体的な表現は出来ないのですが、周りの生徒とか先生とかが性格に癖が強くて、合わせるのに苦労しました。」

 

『「成る程、女尊男卑って奴かな?」』

 

「それは違うと思う。」

 

『「そうか。因みに要件と言うのはもう一つある。」』

 

「?」

 

『「・・・・ミラーモンスターが、また動き出した。」』

 

「!」

 

「ミラーモンスター」と言うそのワードを聞いて、俺の両目は大きく開いた。

 

『「奴らの事を聞いて驚いているだろう?恐らく入学試験の時の様にそちらにも現れるだろうから、くれぐれも注意してくれ。」』

 

「りょ、了解。」

 

『「ミラーモンスターに関してはシャルロット父と共にこちらで調べる。何かしら詳細が解かり次第また連絡する。それではな」』

 

ピッ!

 

突然の事に動揺してしまったせいなのか、秋山さんからの通話はこちらから切ってしまう。

しかしその罪悪感により先に出たのは、ミラーモンスターが活動を開始した事に驚いた事だった。

 

「(・・・・何故またミラーモンスターが?数カ月程目立つような事は無かったのに?)」

 

ミラーモンスター、それは俺が生きる理由であり、俺が()()理由を生み出した生物の事。

彼らは鏡の世界と現実を大体行き来して人間や他のモンスターを食らう事からその名が付けられている。

 

俺は秋山さんと『仮面ライダー』と言う特殊変身能力を使いモンスターを倒しまくり、最近まで姿を現さなくなってホッとしていた。

 

しかしそのモンスターが急に活動を再開したと秋山さんから伝えられて頭がパニックに陥ってしまう。

 

「・・・・」

 

その時、後ろから誰かが声を掛けて来た。

 

「ねぇ。電話、誰からだった?」

 

「うおぉう!?」

 

「・・・ど、どうしてそんな驚くの?」

 

俺はミラーモンスターの事を耳にしていた為、突然シャルロットに後ろから声を掛けられたので激しく驚いてしまう。

 

「何だシャルロットか?驚かせやがって。」

 

「それどういう意味!?」

 

「いや、実は秋山さんから連絡が入って・・・・」

 

俺は何故シャルロットの声にオーバーリアクションしたのか一通り説明した。

 

「へぇ、ミラーモンスターってのがまた現れたのか。」

 

「うん。ここ数カ月目立たなかったのに、まるで冬眠から目が覚めた獣みたいに復活したみたいなんだ。」

 

「・・・獣か、なんか嫌だな。」

 

「シャル?」

 

シャルロットは突然背後に回り込むと、その背中に隠れるようにそこに自分の身を任せた。

 

「ねぇ・・・・十年前に僕がミラーモンスターに食べられそうになった時、君がそのモンスターに剣で挑んだ事を覚えてる?」

 

「・・・あぁ覚えてるとも、殆ど未熟だったころだから忘れられないぜ。」

 

「良かった、だってあの事件は、僕にとっても忘れられないよ。まさか普通の人には入れない鏡の世界に迷い込むだなんてね。」

 

「そうだな・・・・シャル、あの時お前を守れてよかったよ。」

 

「僕も、あの時君に守られて良かった良かった・・・・。」

 

「「ハハハハハハハハ!」」

 

愛する幼馴染に甘えられた影響で、俺の中の不安や緊張が無くなる

それと同時にそれが馬鹿馬鹿しくなって、大きく高笑いし始めてしまった。

 

ピンポンパンポン

 

『本日の授業は終了しました。まだ表に出ている生徒、又は本校に居る生徒は速やかに寮か実家に帰宅してください。』

 

このアナウンスによって初めて現実に帰り、二人で手を繋ぎながら寮へと向かった。

 

「「・・・・・」」

 

ーーー

ーーーーーーー

 

そして時は早かれ遅かれ一週間が経過する。

 

一週間後 IS学園 第三アリーナ

 

俺は何気ない表情でブレザーと長ズボンを着こなしたブーツ姿で現れると、自分より先にスタンバっていたセシリアに言った。

 

「よう。待たせたな?」

 

するとセシリアはまた食堂の時のような嫌気が差す表情を見せてこう放った。

 

「待たせすぎですよ、遅れた五分間一体何をしていたのですか?」

 

「いや、ちょっと自分の部屋の鏡が少し汚れていたから少し磨いてたんだ」

 

「あなたそう言うキャラでしたの?」

 

「違うよ。けどなんかそう言う雰囲気になっただけ。」

 

「どういうふんいーー」

 

『おい、ごちゃごちゃ言ってないで早くISを纏え!』

 

「織斑先生・・・チッ!」

 

セシリアは千冬先生にアナウンスで割り込まれたことを解かりやすく舌打ちした後、少ししてから左耳の青いピアスを太陽に反射させて光らせる

そしてスカートを両手で摘まみながら少し持ち上げるとそれを放してからくるりと一回転してからこう叫んだ。

 

『「御出でなさい、ブルー・ティアーズ!」』

 

オオオォォォ・・・ジャキン!

 

ピアスが一瞬だけ眩く光り輝いたと思えば、セシリアは青い煌びやかな装甲を身に纏った。

しかしぶっちゃけ、ISの具体的な箇所は良く解らないので説明できない自分が居た。

 

「・・・それがお前の専用機って奴?」

 

それを隠すためにかっこよく反応すると、セシリアはまた鼻を伸ばす。

 

「そうですよ、これで一週間前の恨みを存分にはらして差し上げますわ。」

 

そこで俺は考えていた事を一言聞いた。

 

「あのさぁ、前から思ってたけど怒りぶつける相手間違っている気がするぞ?」

 

「え?」

 

しかしセシリアには無意味だった事を悟り、すぐにブレザーの右側のポケットに右手を入れる。

 

「まあ良い、俺もそろそろ変身するとしよう。」

 

「変身、ですって?」

 

「・・・・。」

 

俺はセシリアがフリーザ様の決めポーズの体制で浮かんだ状態を気にせずに、ブレザーのポケットから四角くて幅が小さいケースを、右手の親指と人差し指で上手く摘まんで取り出した。

 

それからすぐに横側を左手全体で掴む様に持ち直し、龍の形をした表面を前に出す。

その表面がブルーティアーズのヘッドパーツにそれが反射するのが目視で確認すると、バックルが外れたベルトのような物が宙に現れてそれが腰に装着した。

 

「な、ななな何が?!」

 

パニックなセシリアの反応を他所にして、俺は一度ケースを持った左手を奥に引かせて左腕を右横斜め上に伸ばしながら一言叫ぶ。

 

「変身!」

 

それから俺は右手に持っていたケースをすかさずそのベルトの空いた部分に装着すると、謎の鎧に身を包み込む。

 

・・・・シャキン!

 

胴体が筋肉を模した形に成っていて、色はグローブと両脚などと同じ銀色。のショルダーと肘とグローブから露出している箇所は赤が良く目立っていた。

ドラゴンのような形をしたヘルメットの紅い複眼は、まるで折れ曲がったブラインドを模したような部分に隠れているよう見える。

 

「・・・・。」

 

そして何よりドラグバイザーと言う赤いドラゴンの頭のような大きなガジェットが目立つだろう。

額にあるケースと同じ形の龍が日光に反射して光ってから、セシリア短く息を吸いながら問う。

 

「専用機、それも全武装(フルスキン)・・・・一体何者なんですの!?」

「名乗るのも面倒くさいから、終わったら名乗る事にするよ。」

 

俺は正直にこう答えると、簡単にセシリアの逆鱗に触れてしまう。

それからすぐに試合開始のブザーが鳴り響いてからに、セシリアは右手に持っていた青いライフル銃を素早く俺に標準を向けてビームを放った。

 

「さようなら、永遠にさようなら!」

 

ビームが胴体に当たった瞬間、アリーナ全体が爆風に巻き込まれた。

幸いステージと外側に二つシールドバリアを張っていたので観客には届かなかったらしい。

 

しかしその為爆風は俺のいたところだけ渦巻く霧の様になっている。

 

「ふっ他愛もないですわね!?」

「・・・・フン!?」

 

そこでセシリアの少し余裕そうな表情が見えたので、片腕でその土煙を掃ってやった。

 

「なっ、直撃したはずなのに微動だにせず無傷?」

「在り得ない事では無い、と言うか一撃で勝負は決まらないから勝負楽しいんだよ?」

「・・・・なら、すぐに勝負を決めてやるまでですわ!」

 

セシリアは更に怒りを露わにして、セシリアはライフル銃からビームを何度もぶっ放す。

しかし軽やかに避けながら一歩ずつ前進し、ライフルをあてに間合いに入る。

 

ギュン・・・!

 

一か八か土煙を上げながらのビームの攻撃は、ドラグバイザーで防ぐ。

その真ん中に巻き上がった土煙から滑り込む様に抜け出すと、セシリアを口元をへの字にした。

 

「きいぃぃ、何故当たらない!!」

「反論を受けるとすぐに苛立つのは、イギリス人の癖なのかい?」

「!」

「良いかいセシリアさん、君はイギリスの国家代表候補生と言うプライド兼重大な責任を背負っているんだ。もし君が今みたいな自分の島から抜け出せないと言うならそのイギリスと一緒に変なレッテルを貼られてしまうんだよ?」

「はっ!」

「自分の故郷を傷つけられたくなければセシリアさん、一度深呼吸をしたらどうなのかい?」

「・・・・・・」

 

数秒程に間を開けた後に、セシリアは更にブースターで浮かんでから瞳を閉じて深呼吸をする。

その瞳が開いた頃にはさっきまで浮かんでいたコメカミと赤くなっていた頭の先は元の白い肌に戻っていた。

 

「失礼、少し調子に乗りましたわ。」

 

「よろしい・・・さっきブースター吹かしたお蔭で土煙も収まったし、続けようか?」

 

「はい!」

 

セシリアの大声の返事を聞いて満足した俺は、すかさずバックルのケースからカードを右手で取る

そのカードの表面には剣が写っていて、それをすかさずドラグバイザーのヘッドパーツを前に倒してからそのカードを装填した。

 

『SWORD VENT!』

 

ドラグバイザーのヘッドパーツを元に戻すように中身を閉じると、すぐに高く挙げた右手はその画像と同じ剣を装備していた。

 

周りの観客はどこからその剣が出て来たのか不思議に感じていたらしいが、セシリアは違う

 

「やっと武器装着ってところかしら?」

 

「あぁそうさ、一気に決めるつもりって事さ!」

 

「そんな事はさせません、私とてイギリス代表候補生なのですから!」

「美しく舞え、そして戦場を煌びやかに染めなさい。ブルー・ティアーズ!」

 

セシリアは太ももの後ろ、または翼から小型ビーム兵器のようなものを展開する。

俺はそこから放たれるビームを全て剣や舞う両足などで跳ね返していった。

 

「・・・うおおおおおおおお!」

 

しかし彼女が言うブルーティアーズは、ビームを跳ね返して隙を見せない、と言うよりは先の予想より数が多かったのだ。

 

「少し手ごわくなったな!」

 

「私が居ることも忘れないで下さい」

 

「成る程、偶に同じ方向から来るビームはお前のか?」

 

俺が弱音を吐いた台詞に気を良くしたのか、セシリアは小型兵器に苦闘する俺を見ながら自分の武器を説明し始める。

 

「正解・・・故郷のイギリス国のビーム兵器の研究やその成果を最大限に生かす事を可能にした、『スターライトMARK.2』!その威力射程距離はまさに2000メートル!」

 

「射程距離が2000メートルだって?!」

 

「そして今貴方を囲っているのが私をサポートしてくれる小型ビームが打てるピッド。又の名を『ブルー・ティアーズ』!」

 

「ISの名前の元はその兵器からか?」

 

「それも正解、そしてスターライトは違えどブルーティアーズの命名したのはこの私です!」

 

そう叫んだセシリアは、またスターライトMARK2と言うライフルをこちらに向けてビームを打ち込む。

 

ほかのティアーズとは違い、スターライトのビームは太くそして威力も土煙が上がる程なので当たればどうなるか溜まったもんではない筈だ。

 

「また撃って来た、これは本当にキリが無いな!」

 

心無しかティアーズもどんどん間合いをつめてきて、ドンドン避ける範囲を狭くしている気がして仕方がない。

隙を見てソードを刺して逃げ転がり込む様にその範囲から逃げると、バックルのケースからカードを引いてドラグバイザーに装填する。

 

「防御は最大の攻撃、行くぞ!」

 

『GARD VENT』

 

龍の腹の様な盾が俺の両手に装備されてからすぐに突進を仕掛けると、セシリアはハッとして僕の存在に気が付く。

 

「しまった何故か刺さっている剣に攻撃を加えていたのか!」

 

「隙を見せた今がチャンス!」

 

俺は走り出してから、先に差し込んだソードをバネにして跳びあがり、その両手に持つ盾をセシリア本体にぶつけて体当たりした。

 

『キャアアアアアアアアアアア・・・・!』

 

セシリアの体は宙に浮いた状態だったのが不安定に飛ばされたした為、そのまま壁に激突するかに思えた。

しかしセシリアはその思考のさらに上を行き、ぶつかる直前に壁を右足で蹴り飛ばしながら回転しつつ着地、それから体制を立て直したのだ。

 

「!」

 

「ふふふっ我が故郷(イギリス)に生まれたからには体当たり程度でそう簡単に負けませんわ!」

 

セシリアはティアーズを自分の方に移してから、それを自分を守るように散らばらせる。

そしてスターライトを今度は片手で撃ちながらまたブースターで前進した。

 

「もう一度舞いなさい円舞曲を、はあああああああ!」

 

「やべぇ、油断も隙も無くなって来たぞ!?」

 

俺はスターライトから放たれるビームを急いで両手の盾防いだが、セシリアの突進と重なって威力が上がったビーム発によって弾かれてしまった。

 

「しまった盾、が!?」

 

「チェックメイトですわ・・・。」

 

手から離れて後ろに転がる二つの盾。

それから急いでセシリアの方に振り向くと、その眼前にスターライトの銃口の先が見えた。

 

「・・・・」

 

俺はその時、在り得ないくらいの恐怖感に落されてしまった。

そう、俺は目の前に銃口を突き付けられても平気でいる程肝が据わっていない為、頭が真っ白になる。

 

「(どうすれば・・・?)」

 

その時だった、俺の中にある赤い龍が『まだ諦めるな!』というように雄叫びをあげる

 

『グオオオオオオオオ!』

 

その次の瞬間、俺は自分の右後ろに剣が刺さっている事を思い出し、急いでその柄を右手で掴む。

セシリアが引き金を引いた時には姿勢を低くしながら左に回転していて、それと剣を一周しながらセシリアの顔面を横から蹴っていた。

 

「ぐっはあ!?」

 

自分が勢い良く姿勢が上がったせいで剣は気持ちいい程に簡単に抜け、俺の右手に強く収まっていた

片膝を着いた姿勢で着地すると、セシリアは壁にぶつかりそうになりながらまたあと一歩でブースターを吹かして堪える

 

「まだまだ!」

 

そして全速力でこちらに近づきながらスターライトを打ち放って来る。

そろそろそのパターンを止めてほしいと思いながら、俺は剣の刃でビームを氷に移る日差しの様に全て跳ね返して行く。

 

「このパターンは緊張感があってきついが、もう同じ()()は踏まない!」

 

「なっ!」

 

跳ね返していく内にセシリアが間合いに入った途端に剣を振り上げてスターライトを空高く打ち上げた。

 

「す、スターライトMARK.2が!?」

 

「おっと、胴ががら空きになったようだぜ!?」

 

「くっ近接武器(インターセプター)!」

 

俺がソードを振り下ろす時、セシリアは上がった右腕の代わりに左手で右腰の隠し鞘からビームサーベルのような物を取り出してその殺陣を防いだ。

 

「うおお何故か知らないけど凄く眩しい。」

 

「こういった鍔迫り合いは日本では常識じゃなくて?それより隙アリですわ!!」

 

「ティアーズの連撃!?そちらはすっかり忘れたぜ!?」

 

間合いを詰め過ぎたせいか、ティアーズの連撃をもろにくらってしまった。

余談かもしれないが、これが今日初めてくらったダメージである。

 

「くっ、こうなったらあれを使うしかない!」

 

セシリアがまた間合いを遠ざけた隙を狙って、バックルのケースからまたカードを抜き取る。

 

「ドラゴンマークのカード・・・・ドラグレッター!」

 

『FAINAL VENT』

 

すぐに引いたカードをドラグバイザーにセットすると、ドラグバイザーからそう音声が鳴り響いてからシールドから二本の髭を生やした赤く細長い龍の生き物が姿を現した。

 

『グオオオオオ!』

 

「キャアアアアアア謎の龍が私の横をすり抜けてたぁ!?」

 

「い、いま目が合った、ひょっとしたら呪われるーー!!」

 

誰もかその存在に驚く中、その龍は俺の周りをぐるりと回りセシリアを威嚇する

それに合わせて俺はドラグバイザーを頭にするように両腕を上下に延ばしてから複雑の動きを披露してから、最後は龍本体の顔と横に合わせた。

 

「・・・・・」

 

『グルルルル・・・!』

 

セシリアの少し怯えた表情を見た後、俺は両腕を一度下げて高く跳びあがり、体全体をくるりと回転させながら竜が吐いた炎を纏いながらセシリア目掛けて片足跳び蹴りをした。

 

「うおおおお、タアアアアアアア・・・・・!」

 

「!」

 

ーーーーーーー

 

セシリアは何を思ったのか、それとも条件反射だったのか

彼女は何故か無邪気に泣き叫びながらビームの雨を食らわせ続けた。

 

しかし、その威力は俺が纏った炎に全てかき消されてしまい、セシリア本体は竜、ドラグレッターと俺のコンビネーション攻撃に敗れ去った・・・・。

 

ドガァンドガガァンンン・・・・!

 

セシリアの背後がすぐ壁だったこともあり轟音はすぐに響き渡り、土煙りはシールドを突き破って敗れた穴から観客の女子生徒達を巻き込んでいく

 

「ゲホッゲホッゲホッ!」

 

俺が足元に着地した後、ドラグレッターは周りの状況を気にしないままシールドの中に消えて行った。

 

『・・・・ゴアアアアアアアア!』

 

「・・・・・・」

 

俺は戦いが終わって初めて疲労を感じ取り、すぐに後ろに倒れ込んだ。

試合終了のブザーを聞いたのは、意識が飛ぶ前の事だった。

 

ブーーーッ!

 

『そこまで、試合終了!』

『セシリアオルコット側のエネルギー消滅、そして本人の戦闘不能により、勝者・・・・・!』




まさかの7000文字突破!

一話にここまで書いたのは初めてでした。
(他作品と同様に感想や評価をお待ちしております。)


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後編(その2)

ーーー

ーーーーーーー

 

その後 IS学園保険室

 

気が付くと、俺の目の前にタイルの天井が見え、隣にはセシリアがカーテンを通す溝越しにセシリアがベットに寝ていた。

 

「・・・・?」

そして何故運ばれてきたのかもすぐに理解してから、自分の寝るベットから上半身を起き上がらせた。

 

「そうか俺はセシリアに勝ち、それから疲労で倒れたんだ。」

「・・・ところで、ここは何処だろう?」

 

『ここはIS学園の東楝にある第一保健室だ、お前達はあの試合の後すぐに気絶した為そこに運び込まれたのだ。』

 

「千冬先生?何処から話しかけているのです?」

 

『アリーナのアナウンスから通信してそちらの天井スピーカーに繋げている、ちょっとアリーナの後処理の為そちらに行けないのでな。』

 

「あとしょり?」

 

『・・・お前達が戦ったせいでシールドと壁がイカレたのと、『男子が勝つなんてあり得ない!』などと観客らが騒ぎ立てた事を何とかするのに大分体力を使ったのでそちらに行く勇気がないと。それだけだ』

 

「成る程、頭が下がります。」

 

『・・・・因みに男子操縦者には翌日に織斑と同じアリーナで試合してもらう。修理を急がせる分通知表に響くと思え?』

 

「解かりました。」

 

『・・・プツン!』

 

千冬先生の通信が終わると俺はすぐ右を向いてセシリアが起き上がっているのを確認した。

 

「セシリアさん、目が覚めたのかい?」

 

「えぇ、織斑先生の通信が入った辺りからですわ。」

 

「そうか。」

 

「・・・あの。」

 

「?」

 

セシリアはシーツを自分の足元に退かしてからベットの上で正座すると、こちらを向いて土下座をした。

 

「申し訳ございません!これまでの私は何たる失望者であったか!?」

 

「えっと、セシリアさん?」

 

「先の貴方の台詞で気づきました。私は国のイメージが自分に掛かっている事に分からぬまま貴方達にとんでもない無礼を働いていたことを!」

「どんな仕打ちも受ける覚悟は出来ていますわ。このセシリアオルコットに、それまでの無礼に値する罰を与えてください!」

 

「セシリアさん・・・・。」

 

この時の俺は、セシリアの覚悟がどれ程のものかをセシリアが土下座する姿勢から伝わってくるのを感じ取った。

そして脳裏に甦ってくるこれまでのセシリアとの会話に、何か深い()()があったのだろうとふと思うようになった。

 

「・・・・」

 

許してくれるまで土下座を止めないつもりなのだろう。

その姿勢から顔を上げないセシリアに対して、俺は一言だけ話した。

 

「取りあえず、顔を上げてよ()()()()。」

 

「!?」

 

「セシリアが悪いのか決めるのはまず俺じゃない、それはクラス全員で決める事だ。」

 

「!??」

 

「皆に許してもらう時には俺も協力するからさ、織斑とバトルする前に一緒に謝ろう。」

 

「・・・・はい、ありがとうございます!」

 

気を許した俺の台詞に顔を上げたセシリアは、驚愕を表す表情から涙をうかべる表情に変化、そしてまた土下座の姿勢になりながら白い病人用のベットを汚して行ったのだった・・・・・。

 

ーーー

ーーーーーーー

 

その翌日

 

アナウンスから一部始終を観ていたらしい千冬先生が『セシリアが皆に謝りたい。』と口火を切り、それからセシリアと俺が前に出て皆に謝罪する事になった

 

結果、セシリアは見事生徒達と和解する事が出来た

他の皆も女尊男卑の渦に頭が飲み込まれていたらしく、自然に『自分こそ王様』気分だったからである。

 

「・・・」

 

セシリアが半泣きして皆に抱き付くところを見て俺は頷き、シャルロットは拍手してからセシリアと抱き合った。

 

只。織斑(弟の方)だけは何故か親指の爪を噛みしめながらこちらを睨みつけていたのが気になるのが俺だけだろうか?

 

「・・・・ガリッ!」

 

(第一章 イギリス国家令嬢セシリア・オルコット・・・完結)




※注意

前に第一章とありますが、次のおまけの一夏戦を書いたら終わると思ってください。


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第二章 魂を燃やす(燃やさない?)織斑一夏との初戦編。
その1


『・・・拝啓、天国に居るシャルロットの母よ。

 

俺はこの度クラス代表に選ばれ、そして最近まで嫌気が差していたセシリア・オルコットの改心、そして何より貴方の娘であるシャルロット・デュノアと共に学校生活を送れている事にとても嬉しく思います。

 

先日に貴方の娘はとても無責任と言った事をここで謝罪させてください

そしてクラス代表決定戦を終えた筈の俺は、何故かもう一度それに参加せざるを得なくなりました。

                                                                心の奥の手紙『俺からシャルロットの母へ』より。』

 

 

ーーー

ーーーーーーー

 

事の始まりはクラス代表を掛けたセシリアとの戦いが終わったその翌日

副担任の山田真耶先生が皆に訊いた時の事だった。

 

「・・・セシリアさんがこれまでの事を反省している事は理解しましたし、一年一組クラス代表は二番目の男性操縦者という事で何か意見はありませんか?」

 

『・・・・・』

 

「では、本人はこの事に異議はありますか?」

 

「特にありません。」

 

山田先生の問いに俺がプロレス選手のような返しをすると、その先生は健やかな笑顔で一言言う。

 

「そうですか?では一年一組のクラス代表、頑張ってくださいね?」

 

「はい、わかりました」

 

この俺の二つ返事によって、一連の騒動が終結したと皆がそっと胸を撫で下ろしただろう。

しかし、一人だけ空気を読まずに異議を唱える者が居た。

 

「それでは、クラス代表戦についてはこれで終了とさせて、」

 

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『!?』

 

さっき千冬先生トイレに行っていた筈のクラスメイト、織斑一夏が轟音が如く足音を鳴らしながら、開いた自動ドアの前に現れた。

 

『・・・?』

 

指を全て開かせた片手を伸ばしながら反対の手を耳元に当てて『待て!』と言わんばかりのその姿勢に、他の生徒は山田先生たちは呆然と立ち尽くしている

しかし俺はまだ騒動が続くことを予知して、机の天板の上に顔を乗せて寝たフリを見せた。

 

「・・・・・」

 

暫く沈黙が続く中、このままだと話が進まない事を悟った山田先生が織斑に問う。

 

「あの織斑君、どうかされました?トイレは?」

 

「それなら引っ込みましたよ、それにどうかされましたじゃないですよ山田先生!??」

 

「えっえっと、何を言っているのか全く理解が追い付かないのですが?」

 

「すまない山田先生、私がつい口を滑らせてしまったせいで」

 

「織斑先生!?何故謝るのです!」

 

「・・・実はな。」

 

山田先生が神妙そうに問えば、織斑の後ろから現れた千冬先生が口火を切る。

それは先ほど織斑とトイレに向かった最中、千冬先生が織斑にクラス代表決定戦についてこう訊いた。

 

ーーーーーーー

 

※回想

 

「なぁ織斑よ、クラス代表決定戦に関してなんだが。」

 

「ん。どうかしたの千冬姉?」

 

「お前の目線から見て、セシリアともう一人の男性操縦者の戦いはどう思った。」

 

「・・・う~ん上手い事は言えないんだけど、まず疑問に思ったのが長距離射撃を使えるセシリアさんが何故あんな近距離で砲撃を行ったのか、それとピットを撃つ時に微動だにしなかったのかかな?」

 

「ほう?」

 

「それとあの男性操縦者が使っていたIS・・・全武装(フルスキン)って言ったっけ?やや旧式のISが専用機に勝てたのかも疑問だったよ」

「あとは~バックルから引いたカードをあの左腕に付けたガジェットみたいなやつに差し込むと、武器が現れる所とか。」

 

「・・・上手い事が言えないと言った割には、丁寧に解説してくれたな。あとここではまだ織斑先生と呼べ?」

 

「了解。」

 

ーーーーーーー

 

現在 IS学園 一年一組

 

「そんな事があったのですね?けど、今織斑君が怒り心頭なのと関係性が無いように思えるのですが?」

 

「そこまではまだよかったんだ、只、学園のトイレが迫って来るとついこう言ってしまったんだ。」

 

「『織斑。実はお前にも参加する権利があったのだが、参加しなくてよかったのか?』」

 

「すると織斑は『そんなことは誰からも聞いていない!』と大激怒し、今に至るという訳だ。」

 

「そ、そうだったんですか?」

 

「あぁ、私はてっきり織斑も自分も参加できた事を知っていたと思っていたのでな。」

 

「それは所謂エゴって奴ですか?」

 

「・・・・返す言葉が見当たらない。」

 

千冬先生は回想を説明し終えると、鬼の形相でこちらを睨んでくる織斑を差し置いて俺にこう言い放つ。

 

「おい、そこのお前よ、織斑の怒りを止めるのに協力しろ。」

 

こうして俺は、また千冬先生の勝手な提案に巻き込まれてしまったのでした。

 



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その2

ーーー

ーーーーーーー

 

IS学園 第一アリーナの手前

 

あの後、俺は午後の授業を潰して半ば強引に織斑と勝負させられる事になった。

何故すぐではなく午後にやる事になったのかと言うと、実は織斑のISは先日届いたばかりで、しかも学校側での調節が午前中に間に合わなかったからだと千冬先生が説明してくれた。

 

「(・・・全く、情報量の少なさに感激だよ!)」

 

そう下唇を少し上げながら内心愚痴っていると、付き添いに来たセシリアが聞いてきた。

 

「あの、どうかしたのですか?」

 

「え?」

 

「いえ、アリーナを目の前にして急に立ち止まったのでビックリしましたの。」

 

「・・あ、あ~相変わらずアリーナって何処も巨大なんだなって思ってよ」

 

「あらそうでしたの?けどそれって以前に私と戦った時にも同じ発想でしたんじゃあなくて?」

 

「・・・・そうだな。」

 

俺はセシリアにこれ以上怪しまれない為にアリーナの奥へと進んで行った。

 

「・・さん。」

 

その時、セシリアが俄かに頬を赤くしながら手を握ってもらいそうだった事に、俺は全く気が付かなかった。

 

ーーー

 

IS学園 第一アリーナ

 

「遅い、俺を何時まで待たせるつもりだ?!」

 

俺がステージに姿を現すと、すぐ向かい側に居る織斑が大声でそう叱った

 

「・・・待たせたな、アリーナが多すぎて見分けが良く付けられなくてよ。」

「(何だこいつ?入って来るなり俺を怒鳴りやがって。)」

 

「見分けが付けられないって、セシリアが同行させたんじゃなかったのか?」

 

俺は少しどういう言い訳をしようか考えたのだが、千冬先生がどうのこうの言うとまた言い返してくると把握しうなじを左手の爪でかきながらそう叫んだ。

 

「うーん・・・えぇい考えるのは止めだ!兎に角始めるぞ。」

 

「・・・」

 

そしてその手をうなじから下ろして前を見ると織斑が少し納得が行かない表情をを見せたのだが、周りから声援を浴びるとすぐにその表情を固くしてからすぐ右腕を前に出しながら肘曲げて顎の下に持って行く。

 

「織斑くーん、頑張って~!」

 

「もしソイツ勝ったら、私貴方を推薦するわ!」

 

「必ず勝って!そして熱く抱きしめて~!!」

 

成る程、こいつの強気の理由が分かった。

一方、織斑はそんな事を機にしない振りを見せたいのか、その右腕の袖まくりながらを幅が太いガントレットのようなものを見せつける

 

「来い、白式(びゃくしき)!」

 

一夏がそう叫んだ途端、ガントレットが光り輝いてから彼の周りを囲うように渦巻き突風が出現し、彼の周りを砂煙で覆っていった。

 

『!?』

 

ーーーーーーー

 

数秒後

 

ーーーーーーー

 

織斑がその砂煙の竜巻を自身の腕の力で掃い除けると、彼は少し足が浮かんだ姿勢で新しい姿に変化しているではないか。

 

「お前、その姿?」

 

「これは、これこそが俺の専用IS、その名も・・・『白式(びゃくしき)』だ!」

 

「・・・白式?」

 

「あぁ、『白い』に儀式の『式』と書いて白式と読むんだ!」

 

「・・・へーーー。」

 

俺は織斑の首から下に纏っているISを見て、まずどの辺が白いのか目を疑った。

何故なら彼のISは太陽が反射しているせいで少し白く見えるのだが、反射していない箇所を見てみると、森の中にあるような清らかな湖と同じ色をしているからである。

 

「(白と言うより、水色なのでは?)」

 

そして両方の二の腕に重りがあるようで、胴体を守るプロテクターが良く目立つ

次に目立っている彼の腰に生えたレザーマントのような装甲と、頭のコメカミ部分にあるクワガタの『アゴ』ようなアクセサリを見るに、彼のISが何なのかを理解する。

 

「(って、あれはまさか・・・・白騎士事件の時に使われたやつじゃ!?)」

 

俺は最悪の予想をしてしまう、彼、織斑一夏はかのISの開発者兼現在国際指名手配犯である篠ノ之博士と手を組んだのではないかと

 

「・・・おい、さっさとISを発動させろ。」

 

「!・・・解かった。」

 

織斑の一声でふと我に帰ると、俺はそれから自分が考えている妄想がバレないように一度頷いて動揺を隠してから、ブレザーのポケットに左手を入れてその中にある龍のデッキを持ち、それを取り出した。

 

「・・・・・・」

 

横長なデッキを後ろから掴んだ左腕を、静かに織斑に見せるその方に伸ばしながら見せる、するとまたセシリアの様に自分の腰にベルトが装着された。

俺はすかさず左腕を少し下に引っ込めてから反対の腕を左斜め上に伸ばしてから、デッキをベルトの表面側に装着する。

 

「変身!」

 

・・・バックルに差し込んだ途端に龍のデッキから少し眩い光が発光して俺の体を銀と赤の鎧が包み込む。

俺はこの瞬間から、仮面ライダー龍騎になったのだ。

 

『では両者、一歩前へ・・・・試合開始!』

『ブーーー!』

 



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その3

ーーー

ーーーーーーー

 

???

 

『・・・さま、織斑一夏と例の二番目操縦者の試合が今始まりました。』

 

「うん、今丁度見ているよ」

 

『そうですか・・・ところで、様は何方が勝つとお思いですか?』

 

「う~んどうだろうね?片方は私の妹の初恋相手、もう片方は私がマークした不思議ちゃんだし、両方とも頑張ってほしいとはおもうけども?」

 

『思うけども?』

 

「・・・やっぱ私が作ったIS使ってるんだから、織斑くんに勝ってほしいなぁ!」

 

『・・ですか・・・では、様・・・次の予定は・・・・』

『ピ――――!』

 

「あれれ?クロエちゃん?」

 

「おっかしいなぁ、また電波障害かな・・・まぁいいや、また直せば。」

 

少し仲間との通信が途切れたのに戸惑う表情を見せたが、それ以上は気にする事なくキーボードを打つこの女性

 

「さて、お手並み拝見だよ!」

 

それが造り上げた科学が世界を塗り替えた事から、人は彼女の事をこう呼んでいる。

『天災科学者・篠ノ之 (たばね)』と・・・・

 

ーーーーーーー

 

数分後

 

「・・・くそっ何で当たらないんだ!?」

 

「・・・・」

 

試合開始のブザーが鳴ってから暫く経つが、正直期待外れだな。

最初はこちらが構える前に織斑がブレード片手に攻めて来たから避けるのに慌てたが、こちらも剣を召喚し装着してからではそれを受け流しながら避けるだけの作業に早変わりしている。

 

織斑の慌てぶりを観る限り、ISが今日届いたのは本当だった様子

しかしそんな小さい事、俺はどうでも良かった。

 

ガキン!

 

だから俺は彼のブレードを自分の剣の『しのぎ』で受け流していた場面を、一気に弾き返して距離を取らせる事で軽く変化させてみる。

 

「うおっ!?」

 

するとどうだろう、織斑は一瞬よろけそうになるがブースターで持ちこたえ、それをさっきまで面倒くさそうに眺めていた観客の女子生徒の表情も小さな驚きへと変化してしまう。

 

暫くブースターで浮かんでいた織斑が着地した後、俺は間髪入れないで織斑に訊いた。

 

「よう、おもったより操縦が難しいから苦しそうだな?」

 

「だ、黙れ!お前に何が解かる?」

 

「そうだな。確かに俺のはブースターやらエンジンやらで浮かぶことが出来ないから、()お前がどんな気分か解らないかもしれない。」

 

「・・・?」

 

「だがな、お前が天然のフリをして実は少し腹黒いって事は解かってるつもりさ!」

 

『!?』

 

俺が放った一言で、軽かった周りの空気がドスンというように重くなる。

それから織斑は両目の瞳を白くしながら暫く微動だにせず、観客の方から困惑する声が次々と聞こえてきた。

 

「・・・・」

 

「え?何?どういう事?」

 

「お、織斑君が腹黒いってどういう事?」

 

「?」

 

すると、この観客から聞こえてくる安否の声を耳に入れていた織斑が一言俺に訊いて来た。

 

「ちょっちょっと待てよ!なんで俺が腹黒いって決めつけるんだよ!?」

 

俺は剣を下ろしながら何も動揺はせずに二言答えてから追い打ちをかけるように続ける

 

「何故って色々あると思うが、まず昨日の朝セシリアが皆に謝罪した回があっただろう?」

「あの時、皆がセシリアと打ち解けるのを他所にお前は俺の事睨みつけて来たじゃねぇか。」

 

「あっ!」

 

「・・・それによ、そのISに乗るのは初めてかもしれないが、それが届くのは事前に誰かから聞いていたのだろう?」

 

「恐らくそれでお前の頭の中ではクラス代表戦が始まる前に自分専用のISがちゃんと届く予定だったかもしれない、しかしそれはクラス代表決定戦が始まっても届かなかった、だからお前は自分が参加できなかった恨みで俺にあの視線を送りつけていたのだろう・・・?」

 

「!!」

 

「右脚が一歩引きずり下がった辺り図星らしい?やはり俺が睨んだ通りだったか。」

 

「・・・けど。」

 

「けど?」

 

「けど、俺が自分専用のISが届くなんて情報。それを手に入れたと言う証拠はねぇじゃねぇか?!」

 

「・・・」

 

この時俺は織斑に対し、『おーコイツ的確な異議唱えて来たぞ?』と思ったので思考がフリーズする。

しかし残り20分を差すタイマーが表示された斜め右上にある電子版を見上げると、俺は溜め息をついてからまた口を動かした。

 

「それは簡単な話さ、俺はお前と同じ天に選ばれた世界初の男性IS操縦者だからだよ!」

 

「?」

 

「今の一言で気づいていないのか、つまり俺はお前と同じ扱いで動かされたんだと言いたいんだよ。」

 

「実を言うとな、入学試験の時に織斑先生から訊いたんだ。『お前より先に動かした男性操縦者。それは私の弟だ、学園で会ったら仲良くしてやってくれ』と。」

「良く考えるとあれってさ、『お前も弟同じような立場に立っている』といっているようなものじゃねぇのか?」

 

「!」

 

「だからよ、さっきISが届く情報を知っているのではないかとお前に訊いたのは俺とお前が同じ立場、つまり同じ扱いを受けているうえでそう訊いたまでの話しさ。」

 

「・・・」

 

「どうした?口が歪んでいるぞ?」

 

俺が得意げに推理を説いているうち、自分の目には織斑が目を細くしながら口角の片方をヒョウタンの下部の様にして歯茎を見せているのが見えている

 

俺はそんな事お構い無しに推理を続けた。

 

「何が遭ってIS動かしたのかは敢えて言わねぇが、俺はその後日にIS協会を名乗る方々に呼び出しくらって色々質問された事があって、その最後にこう告げられたんだ」

 

「『安全の為に君はIS学園に転入せざるを得なくなった、その代わりに君の身体能力をはかり次第それに応じたISを用意しよう。』とね」

 

『!』

 

「そう、同じ立場に立っているのだと推測した上で考えるとするならば・・織斑一夏、お前も同じ受け答えしたのちにそう言われたのではないのか?」

 

「ぐっ!?」

 

「俺はその事以前にこの『龍騎』を手に入れていたから断ったが、お前の場合は違う!」

「そしてこれらのことから推測するに断言出来る、お前は専用のISが届くのを事前に知っていた、いや事前に知っていたに違いないって事がね!」

 

「・・・・。」

 

「どうした、何も言い返せないのか?」

 

ひね曲がった口が元に戻り足元を見下ろす織斑に対して、俺は勢いよく指した腕を下ろしながら言った。

すると次の瞬間、突然微動だにしなかった織斑はブースターを吹かせて突進をしてくる

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

『この時の奴は一体何を考えているのだろうか?』

そんな思考が脳裏へと回る前に、俺は剣を横に投げ飛ばしながらバックルよりカードを引いて、ドラグレッターに装填する。

 

『・・・AD VENT!』

 

『グオオオオオオオオオオ!』



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その4

次の瞬間、突如赤と白の細長い龍が俺の後ろから現れ、先に飛ばした剣に怯みながらも突撃する織斑に向かって体当たりを仕掛けた。

 

『オオオオオオオ!』

 

それは見事に彼へ命中し、彼は剣とぶつかった後だからか勢いよく遠くへ突き飛ばされてしまう

ステージの白い砂に転がったせいでISの装甲と自分を汚し、それでも立ち上がる織斑、しかし龍の突進が効いているのか、フラフラとよろけて直立不動がやっとの如くらしい。

 

「その立ち方はヒーロー気取りのつもりだろう・・・しかしここにはもうお前の味方は居ないんだよ。」

 

「・・・なに!」

 

「クラスメイトとして残念だよ、あのまま落ち込んでいたらそれ以上痛い目見ずに済んだのに。」

 

その台詞と裏腹に俺は投げた剣を拾おうとする織斑を他所にカードを引いてから、ドラグレッタ―の上部分を開放してその引いたカードを装填する。

 

『STRIK VENT!』

 

それから俺の右手にはさっき現れた龍の顔と同じグローブのようなものが装着されて、俺は一度右腕を引いてからそれを前に着き出した。

 

「最後に一つ言っておく、俺が今使っているのはISなんかじゃねぇ・・・仮面ライダーだ!」

 

「はぁぁぁぁ・・・!」

 

『グオオオオオオオオオオ!!』

 

次の瞬間、それに合わせて龍が俺の横で炎を二回吐き出して織斑を火だるまにする

 

ドジュウ!ドシュウ!

 

織斑は剣を拾う前にそれを諸にくらってしまい、余りの熱さのせいか大声で叫んでしまった。

 

『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・!』

 

それから一瞬でISが解除されるのが炎の中で見えたのだが、それより凄かったの彼のもがきっぷりだろう。

織斑はISが解除されて胴体から両足がタイツ姿になったとしても、頭を両手で掴みながら横に転がり始めて、それが止まった時にはすでに全身が焼き焦げになってしまっている。

 

『ブーーーー!』

『そ、そこまで!織斑一夏IS解除により・・しょ、勝者、仮面ライダー龍騎!』

 

千冬先生が鳴らしながら試合終了を告げた後、観客に座っていた女子生徒らは小さな声でざわざわと騒ぎ出していた。

 

「・・・・」

 

しかしその時の俺には、織斑を倒せてスカッとした気持ち以外は何も残っていなかった・・・

 

ーーーーーーー

 

何故なら女子生徒達はいくら騒いでいても、今ここに近づいてきているミラーモンスターによって、それよりも大きく悲鳴を上げるだろうという事を確信していたからだ。

 

そして俺の知らないところでは、もっと大きな陰謀が膨れ上がっていた。

 

ーーー

ーーーーーーー

 

??? 

 

「・・・あらら、あっさり負けちゃった、ちょっと残念。」

「まぁいいや彼にはまだまだ実験材料にする事は出来そうだし・・・ね?」

 

天災科学者の篠ノ之束、彼女が見つめるモニターの先には、担架で運ばれている真っ黒こげの織斑一夏の様子。

 

それから自分が座ってる椅子を半回転させて後ろの方を観ると、そこには金色の日本角を生やした他全身が茶色い甲冑のような者が透明な縦長のケースの中に入っている

 

そしてその甲冑の足元には金色の表面のタイトルにこう書かれていた。

 

『試作品ISシリーズ・INPELER(インペラー)

 





次回はついに学園に侵入したモンスターと戦いますが、投稿が何時になるのかわかりません。


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中国からの刺客者・鳳 鈴音、そして・・・。
その1


ーーー

ーーーーーーー

 

早朝 IS学園校門前

 

青い海から届く潮風にさらされて、『カーッ!カーッ!』とカモメの鳴き声が鳴り響くように聞こえて来る

 

そんな中、表面がピンクカラーのショルダーバックを肩へ斜め掛けした少女が一人、門より手前の歩道にて仁王立ちに学園の全てを見上げていた。

 

「ここね、ISの技術やらなんやら学ぶ学園ってのは?」

 

「待ってなさい織斑一夏、そしてもう一人の転校生とやら!」

 

二つ結び目が飛び出したそのツインテールと、他生徒とは比較的小柄なその体系はかなり目立つだろう

 

「・・・・・」

 

彼女の名前は鳳 鈴音、15才。

中国政府から送り込まれた、この世では数少ない専用IS使いである。

 

「早速、迷った!?」

 

ーーー

ーーーーーーーー

 

現在 IS学園 一年一組

 

クラス代表決定戦から数日後の早朝、俺たちは俺との戦いで負傷した織斑君に関しての情報を山田先生から言い聞かされた

 

「朝のホームルームの時間ですが、少しお知らせをさせてください。」

 

「え~、先日行われたクラス代表決定戦の騒動のせいで、皆さん大分落ち着きが無いようですね?」

「・・・はい。皆も知っての通り、織斑君はあの龍騎と言うISではないスーツに身を纏った二人目のIS男性操縦者との戦いで深い火傷を負いました。」

 

「さっき学園に入って来た情報によりますと織斑君は島の病院で治療を受けて何とか意識を取り戻しましたが、午前中の授業には参加できない方針のご様子。」

 

「・・・そしてこれ以上の被害拡散を防ぐ為に、一年一組の生徒はクラス代表戦が全て終わるまで外出禁止兼アリーナの使用を禁止する事が職員会議で決まりました。」

 

ざわざわ・・・・!

 

この山田先生の報告は、生徒達の動揺を更に湧き上がらせた。

しかしその一年一組に俺の姿はない、何故なら今俺が居るのは・・・・・

 

ーーー

 

同時刻 IS学園 学園理事長室

 

「という訳で、先日のクラス代表戦のペナルティとして一年一組は苦労するわけだが、それで君はどのような処分がお望みなのかね・・・・君。」

 

「それでは一つお聞きしたい、何故処分前提なのですか?」

 

「当然だろう!」

 

室内の真ん中でパイプ椅子に座り込んでいる俺が放った質問に対して、何処ぞの開発室長をしていそうな学園長がブラインドと社長椅子を後ろにしながら手前のデスクの天板に拳を強く当てながら怒鳴り散らした。

 

(因みにこの時俺の後ろのドアには警備員二人居るらしい。)

 

「・・・・!君は自分のやった事を、そしてその責任をまるで理解していないのか!?」

「君が世界初の男性IS操縦者に深い火傷を負ったせいで、折角変わろうとしていたものが戻ってしまったではないか?」

 

「ほう。それは学園長に『女尊男卑社会』を消したいと言う思いがあるから?」

 

「口答えは無用だ、そして暫くしゃべるな!」

 

「了解。」

 

更に興奮した学園長に指しつけされると、俺は椅子に座ったままの姿勢で背を伸ばしつつ学園長の話を聞いた。

 

「・・・・、君にとってこの学園をどう思っているのかは知らんが、私はこの学園長として考えている事がある。」

 

「今や世界中に広まったISと呼ばれる殺人的兵器の影響にて、ISを乗りこなせる女が男を貶す時代になってしまった、しかし、今は男にもISが扱えるからと騒ぎだしている国や地域も多くなっている。」

 

「つまり、私は君と千冬の弟が活躍すれば、そんな腐りきった世の中を変えてくれるのではないのかと思っていた、しかし君はその片方でありながら自らを尽く潰してくれた・・・私はそれが許せないでいるのだ!」

 

「・・・・・」

 

「私からの説明は以上だ、何か質問はあるかね?それとも処分については」

 

「必要ないですね。」

 

「!」

 

俺が処分が必要ないと決めつけると、さっきま表情を『クワッ!』としていた学園長の顔が一気に緩まってしまう。

 

次の瞬間、沈黙を破った俺は学園長を責め始めた

 

「お言葉ですが学園長、貴方に二つ程言っておきたいことがある。」

 

「な、何だね?」

 

「まず・・・今貴方が説明した理想は大変すばらしいものだ、表現はやや単調だが、自分の言いたい事を真っすぐと伝えられている気がするよ。」

 

「そ、そうかい!」

 

「但し、」

 

「?」

 

「本当にそう思っているのであるならば、何故それを入学式の時に言わなかった?」

 

「はっ!?」

 

「とぼけても無駄ですよ?入学式の時貴方はこう言ってたじゃないですか?」

「『諸君。IS学園の入学おめでとう、そしてこれからも張り切ってくれたまえよ。』」

 

「あんな一言で済ませたあと、貴方はすぐに他の職員に混じった席へと戻って行ってしまったではないですか?」

 

「み、観ていたのか?」

 

「えぇ、一部始終全てをね。」

 

何時の間にか両腕を組んでいた俺は、驚愕を露わにしたまま顔が戻らない学園長に対して言葉を続けた。

 

「黙り込んだようなので追い打ちを掛けますね?これはあくまで俺の憶測などと言えるでしょうが、貴方多分、ヘタな事を言って女子生徒達から非難を浴びるのが恐かったのでしょう?」

 

「そりゃそうですよね?今さっき貴方が言った通りこの世界はISのせいで女が貶す時代になってしまった、さっき貴方はそれを変えたいとか動向とか言っていたが、それ実は貴方自信が学園長としての威厳を保つ為にかっこよく言い放っただけなのでは?」

 

「ガァァァァ!?」

 

「入学式の時の貴方の様子を知る者だったら、なおさら気づきますよ。もう片方の『計算する天然野郎』とかね。」

 

「・・・・ちっ!」

 

「(舌打ちしたってことは図星か。ならば!)」

 

学園長はまた机の天板に拳を強く押し付けながら舌打ちを繰り出すと、俺からは笑顔がこぼれる。

 

「最後に・・・処分を検討する件ですが学園長、今の話を教室に公開しても宜しければ考えますよ?」

 

「!」

 

「恐らくは今、うちの教室では僕ともう片方の事件のお話しで持ち切りでしょうよ?だから今この会話の事が全てバレれば貴方はどうなりましかねぇ?」

 

そう言って俺は懐からメタル色のペンのようなものを取り出す

するとそれを盗聴器と判断したのか、学園長は椅子にもたれかかるかのように気絶してしまった。

 

「「学園長!?」」

 

泡を吹いて白目を向いた学園長に対し、ドアの前に居た警備員二人寄りかかる。

俺はもうこれ以上居ても仕方がないだろうと思いこの部屋を後にした・・・

 

ーーーーーーー

 

・・・そしてこの時の俺は知らなかったんだ、学園理事長がまさかとんでもない所でとんでもない外道なる計画を用意していたという事を。

 



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その2

ーーー

 

一年一組 

 

俺が教室に戻って来ると、周りの生徒達が不思議そうな眼でこちらを見て来た。

 

「・・・・」

 

その中には俺を恨む様に睨みつけている者も居る

逆にそれを見返しながら俺は『恐らく教壇の前に居る山田先生が俺のせいでペナルティを受けた事を教えたのだろう?』と把握したが、徳に何事も無いような姿勢で俺は自分の席に座った。

 

「・・くん。」

 

因みに当の山田先生は他の生徒たちと同様、出席簿を片手で抱きしめながらこちらをチラチラと見つめいている始末である。

俺は先生の立場を把握しながらあえて先生を見つめ返すことはなかった。

 

「・・・。」

 

それよりも気になるのは、同じ横一列の窓際に居るポニーテールの少女が先日の一夏の様に睨みつけている事だった。

 

ーーーーーーー

 

それからというものの、一時限目の中間休みに事件は起こった

始まりは丸縁眼鏡を掛けた短髪林檎色の少女が話しかけて来たことで繋がる。

 

「ねぇ君、転校生の話題もう聞いた?」

 

「はぁ??転校生?」

 

「知らないの?ついさっき二組に転校生が来た噂。」

 

「・・あぁ、ここに帰ってくる途中やけに隣が騒がしいと思えばそう言う事か?」

 

「そう!しかもその子はまた国家代表なんだって!しかも中国の!」

 

眼鏡少女が顔を引いてから『中国』と叫んだ途端に、ピ〇チュウの衣装を身に纏った少女が乱入して来る

 

「ワーイ。新たな友達の予感なのだーー!」

 

俺はそれに少しビビりながら、少女に『何故俺に伝える必要があるのか?』と訊いてみた。

すると少女は簡単にこう返してくる。

 

「え?・・そりゃあ君がここのクラス代表だからだよ!」

 

成る程、『云わば単純にソイツも同じ立場なのだな。』と俺は理解した。

 

「それで、そいつの名前は何て言うんだ?」

 

俺が加えて質問すると、突然ドアの向こうから大声で誰かが叫ぶ

 

「ねぇ、一年一組の代表は誰!?」

 

『!?』

 

俺がゆっくりとそちらの方向を見れば、服の袖やスカートのサイズが若干合ってないツインテール少女が、大きく口を開けて仁王立ちしていた。

 

「・・・成る程、理解した。」

 

俺が『理解した』と呟くと、その少女は何かを見つけたように俺を見てからあざ笑うかのように睨みつける。

 

「ふーん、君が噂のクラス代表って訳?」

 

「そうだとしてもまずこちらから訊きたい、お前は何者だとね?」

 

「それはちょっと回りくどい気もするけど、良いわ、ちゃんと答えてあげる。」

 

「私は今日転校してきた噂の転校生の(ふぁん)鈴音(りんいん)・・・そして()()()()()()()()()()()()!」

 

ツインテールがまた股の幅を広げながらそう叫んだ途端に、ウイテいた周りの空気がガラリと重くなってしまう

そして俺は鳳鈴音を名乗る少女がクラス代表生ある事に疑問を抱いた・・・。

 



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