元踏み台転生者物語 (サクサクフェイはや幻想入り)
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空白期
プロローグ兼第一話


そんなわけで第一話になります。 リフレクション見たんでね、書きますよ。 

にしても、リフレクションいいところで切ったなおい


にしても、立てるだけ立てて、更新無くてすみません。 本当は昨日の夜にはできてたんですよこれ。 そのね? 予約投稿の時間帰るの忘れてまして(汗

そんなわけで、許して!

追記:リリィなので、カリバーンにしました。 レッド・ラーヒット様、アイデアありがとうございました。


「選定の剣よ、力を!」

 

「呪層界、怨天祝奉!」

 

「カリバーン!!」

 

「呪層、黒天洞」

 

極光が俺を覆うかと思われたが、間一髪のタイミングで黒天洞が発動した。 大部分は吸収できたが、その最中

 

「油断大敵ですぞ、マスター殿」

 

死角からハサンからの攻撃が。 なのだが

 

「甘いのはお前だ、ハサン」

 

「ぬぅ!?」

 

幻影魔法。 普通にやれば俺の魔力では持たないが、普通の方法で運用したわけではない。 黒天洞の魔力をそのまま幻影魔法に回していたのだ、なのでハサンの攻撃も無意味。 俺はハサンの戦闘不能にし、サーヴァント達に向き合う。 玉藻の宝具でリリィは宝具を撃てるだろうが、今回の黒天洞で撃つことを警戒するだろう

 

「面倒だな......」

 

「いやいやいや...... 私たち四人が本気でやってるのに、それをどうとでもできるマスターがおかしいだけですからね?」

 

「・・・・・・」

 

玉藻が何か言っているが、それを無視しシューターをいくつか作る。 この程度はマシュに防がれてしまうだろうが、問題ない。 それを撃ちだし、様子を見る。 予想通りにマシュが防ごうとするが、盾に当たる直前で閃光がマシュたちを包む。 今回のシューターは攻撃に使うわけではなく、閃光弾だ。 そのまま突っ込み、玉藻を戦闘不能にしようとするが

 

「呪相、氷天!!」

 

「呪相、炎天」

 

こちらの位置を正確に掴んでいるのか、後ろに回り込んで刀を振るっている俺に向かって氷天を放ってくる。 だが俺は炎天で相殺し、そのまま刀を振るう。 ただまぁ、玉藻もただではやられてくれず拳を振るってくる。 いやアイツ、敵だと金的やってくるから油断ならないんだよな。 それにしても、いくらマシュの盾で閃光を防いだと言っても、まだチカチカするはずだ。 目を閉じているにもかかわらず、正確に迎撃......

 

「耳か」

 

「ばれてしまいましたね」

 

てへぺろみたいな顔をしているが、そりゃあバレるだろ。 そのころにはリリィも完全に復活したのか、こちらに剣を振るってくる。 このまま乱戦になるのは避けたいが、この距離を離せば玉藻の呪術が飛んでくる。 やるしかない。 宝物庫(ゲートオブバビロン) から剣を出し、リリィを応戦する

 

「玉藻を相手しながら、私の相手をするとは舐められたものですね!」

 

「効率的に考えた結果だ!呪層界、怨天祝奉」

 

なんの呪術を使うにせよ、警戒をし離れようとするリリィだが俺が逆に距離を詰める

 

「ちょ、リリィさん!?」

 

「あー、これはだめですね」

 

接近戦が得意でない玉藻は必然的に距離を離したい、なので俺が攻め入れば引きながら戦う。 今回はそれを利用した結果だ。 別に玉藻が接近戦ができないとは言わないが、位置取り等は、俺には及ばない。 なので、玉藻をリリィが移動したい場所に誘導したわけだ

 

「呪相、氷天」

 

「ぐぅ、不覚です」

 

「マスター、さむいですぅー」

 

これで玉藻、リリィは戦闘不能だ

 

「・・・・・・それで、マシュはどうする?」

 

「遠慮しておきます。 それに、玉藻さんたちもかわいそうですし」

 

マシュに聞いてみれば、苦笑いでそう答える。 俺は息を吹き出し、声をかける

 

「だそうだ、クロノ」

 

「了解した、エイミィ」

 

「はーい。 みんなお疲れ様ー」

 

エイミィさんの声が響き、建造物は姿を消していく。 ここはアースラのトレーニングルーム、今回は実戦訓練という形で貸してもらっていたのだ。 というよりも、発端はクロノだがな。 玉藻たちの氷を溶かしつつ、そんなことを考えていると

 

「流石、というべきかな?」

 

「それは嫌味ですかねぇ、クロノ執務官?」

 

「いやいやそんなことは」

 

ジト目でクロノを見る玉藻だが、肝心のクロノは苦笑いで軽く流していた

 

「解凍終了だ。 服も濡れてるし、シャワールームでも行ってきたらどうだ?」

 

「すみませんがそうさせてもらいます。 終わったらご飯ですね!」

 

「あはは...... それじゃあマスター、私たちは先に」

 

「頼んだマシュ...... それと、そこで気絶してるハサンも頼む」

 

そうしてサーヴァント達が退出し、残るは俺とクロノだ

 

「それで、なんで今更こんなこと?」

 

「なに、改めて君の実力を測れとうるさくてね」

 

「俺が隠れてリミットを外してると? 小うるさい連中だな」

 

「ま、仕方ないんじゃないか?」

 

「それもそうだな。 元々覚悟もしていたしな」

 

あの花見から少し経ち、俺たちは模擬戦という名のを行っていた。 まぁ、結果は予想した通りうるさいお上の連中だったようだ。 クロノが直属の上司と言えど、俺も色々制約がある。 レアスキル自体珍しいものだし、まぁそういうものだ。 それに応援などで任務に加われば、色々とやっかみも受ける。 リンディさんやクロノのおかげで、全然なのだが

 

「せっかくの休みなのに、すまないな」

 

「管理局がブラックなのは知ってるし。 その言葉は俺じゃなくて俺の家族に言うべきだな」

 

「違いないな」

 

「それで、クロノもやらないか?」

 

「・・・・・・ふっ」

 

俺がトーリスリッターを構えると、クロノはバリアジャケットを装着し杖を構える。 こうして、小学四年生の俺は今までと変わらず魔法と過ごしている

 




短いけど気にしないでね? 今回は大体3000じゃなくて、書きたいだけ書くから


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第二話

お気に入りやUAが増えてて、ちょっと草生えた。 こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします。

それと、アクション大好きっ子様、評価ありがとうございます


小学四年になったが特に変わったことはない、これは前にも言った通りだ。 いや、前に比べれば少し周りが騒がしくなったかもしれない

 

「はよー」

 

「理樹じゃん、おはよー」

 

去年の今頃は踏み台として活動していて、クラスメイトも騒いでいたものだが今はそんなことはない。 年明けから比べると随分騒がなくなったものだ

 

「おはよう、神木」

 

「おはよう」

 

「・・・・・・おはよう」

 

「嫌そうな顔するんじゃないわよ......」

 

「・・・・・・」

 

嫌そうな顔をするなと言われても、それはするだろうと思う。 いまや、あの時のことは気にしていない、という風にバニングスも月村も話しかけてくる。 俺としては関わるつもりはないと、あの時ハッキリ言ったのだが、話しかけられるからそのままずるずると、という感じか

 

「アリサちゃん、すずかちゃんオハヨー!」

 

「はやて、おはよう」

 

「おはようはやてちゃん」

 

「理樹君もおはよー」

 

「・・・・・・はぁ、何とかしてくれバニングス」

 

「無理」

 

「なんや理樹君、オハヨー!」

 

「・・・・・・おはよう」

 

人の腕に抱きつきながらおはようおはよう連呼するのは、はやてだ。 バニングスに何とかするように言うが、帰ってきたのは無理の一言。 いつものことなので、もはやバニングスも気にしていないようだ。 このやり取り、実は毎朝やっている。 最初の頃は俺もバニングスも注意をしていたのだが、いつのころからかやめた。 ある意味この執念はすごいと言うべきか...... 話はそれたが、はやては車いすを脱却し自分の足で普通に歩いている。 家族の看護のおかげというのもあるんだろうが、はやての努力の結果だろう。 俺もよく呼び出されたりしたが。 石田先生も、回復の速さに驚いていた。 まぁ、もともと闇の書の浸食が原因だったのだ、それさえなくなれば後ははやての努力次第、というわけだ

 

「理樹君は毎朝暗いなー」

 

「誰のせいだか」

 

「なんのことやら」

 

「わかってて言ってるんだから、はやてもたち悪いわね」

 

「なはは」

 

上機嫌に笑うはやてだが、笑い事ではない。 と、教室の空気が少し悪くなる。 ということは、アイツ等が来たのか

 

「おはよう」

 

「・・・・・・・おはよう」

 

フェイト・テスタロッサと藤森織(アイツ)の登場だ。 毎日引っ張ってくる関係で、フェイト・テスタロッサとアイツは腕を組んで登校することが多い。 腕を組んでいるというか、半ば引っ張られているというのが正しいが。 決着(アレ)いこう、酷い時は不登校だったアイツだが、その時にフェイト・テスタロッサが引っ張ってきてその時からずるずると、という感じだ。 フェイト・テスタロッサは天然だし、この頃はそうでもないが酷い時はそんなことを気にしている余裕がなかったアイツは空気が悪くなっていることに気が付いていない。 そもそも、クラス内の人気が落ちる一方だったアイツだ、そんなときにフェイト・テスタロッサが腕を組んで登校したともなれば、嫉妬が、ねぇ? 今もバニングスが注意しに行っているし

 

「直ると思う、アレ?」

 

「直らんだろうな、お前と一緒で」

 

「えー?」

 

はやての問いに答えれば、笑って誤魔化される。 期待はしていなかったが、こうも予想通りだとは。 ちなみに俺は、何故か許されている。 元々踏み台の演技をしているときに嫁だのなんだの言っていたのだ、今更である

 

「さーて、名残惜しいけど離れよか」

 

「おはようすずか、はやて。 ・・・・・・神木」

 

「おはよう、フェイトちゃん」

 

「うん、オハヨー」

 

「おはよう」

 

俺の時だけえらく溜めるが、一時期に比べれば全然である。 アイツは俺などに目をくれず、そのまま席に座ってしまう

 

「もう、織!」

 

そんなアイツの様子に、フェイト・テスタロッサは少し怒ったようにアイツの席に向かう。 これもまた見慣れた光景だった

 

「どうやった、アリサちゃん?」

 

「わかってるんでしょ?」

 

「ダメだったんだね......」

 

面白そうに聞くはやてだが、バニングスはその様子を見てヤレヤレみたいな表情だ。 月村もそんな様子に、何時ものように返事を返すだけだ

 

「お、おはよう」

 

「ん? なのはか、おはよう」

 

「う、うん......」

 

いつの間にか来ていたのか、なのはが俺に挨拶をしてくる。 ・・・・・・いまだに少しぎこちない。 俺は普通に話しているつもりなのだが、なのははいまだに記憶のことを気にしているのかどこかぎこちない。 ちなみにはやてやアリシアに言わせれば、俺もぎこちないそうだ。 どこがそうなのか、俺にはよくわからないが

 

「それで、俺に何か用か?」

 

「な、なんで?」

 

「いや、何時もなら俺とあいさつすると同時にバニングスたちの方に行くから。 今日はなかなか行かないし、何か用でもあるのかと思ってな」

 

「えっと、その......」

 

「別に朝のHRまでは時間がある、ゆっくりでいいからな」

 

・・・・・・毎朝のことなのだが、まぁ視線がうざい。 クラス全体がそうなのだが、特にバニングスたちの視線が。 見世物じゃないぞと周りを睨むが、バニングス達の生暖かい視線は変わらない。 すごく腹立つ

 

「その、お兄ちゃんたちがね?」

 

「・・・・・・あぁ、呼び出しか」

 

呼び出し。 あの花見以降、俺の日課に加わった修行だ。 あの花見、親たちはもちろん参加していた。 当然、なのはの家族たちも。 なのはの落ち込みが俺にあると予測を付けた兄は、俺を道場に呼び出すようになったのだ。 ちなみに母親である桃子さんは、俺が何をやったのか知っている。 レイジングハートが映像を見せたそうだ。 特に言われることはなかったが、一言だけ『これ以上、なのはを悲しませないでね?』 と笑顔で言われたのは記憶に新しい。 その時の雰囲気というか、オーラというかすさまじかった。 それに、目が笑ってなかったし

 

「う、うん、ごめん......」

 

「いや、伝言わざわざ悪いな」

 

「・・・・・・」

 

俺がスケジュールを思い出していて黙ったのを怒ったのと勘違いしてきたのか、謝ってくるなのは。 俺はそれを否定し、礼を言って頭をなでる。 生暖かい視線がより一層に温かくなった気がするが、無視しとく。 その頭をなでるのは、担任が入ってくる直前まで続いた

 



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第三話

帰りのバス、バニングス達と別れ俺となのはの二人きりというわけではない。 フェイト・テスタロッサとアイツ、アリシアも一緒だ。 アイツに関しては、俺が一緒ということで震えが酷いがな。 まぁ、そんなことは気にしない

 

「理樹がこっちの方向ということは?」

 

「アリシアの予想通りだ」

 

「モテモテだねぇ」

 

「嬉しくもなんともないわ」

 

はやてと一緒で、アリシアもわかって言ってるので本当に質が悪い。 こうやって一緒に帰る回数もここ最近は多いので、俺が一緒に帰る時は呼び出しということで察してくれている

 

「そう言えば玉藻が最近見てやれないって嘆いてたな」

 

「あぁ~...... まぁ、自分でやってるから大丈夫だよ」

 

「そういうのは俺の目を見てから言ってみろ」

 

最近、俺もだが玉藻たちもそこそこ忙しいのだ。 なのでアリシアの魔術...... というよりも呪術の制御、それを見てやれないと玉藻も嘆いていた。 最初はなんだかんだ言っていた玉藻だが、アリシアが優秀なのもあり休みの日は遊びに行ってみたりしているものだ。 本人も楽しんでるようだし、止めはしないが

 

「・・・・・・玉藻さん、毎回うちでご飯食べていくんだけど」

 

「ん? プレシアさんやアリシアが勧めていくからって聞いたが?」

 

珍しいことにフェイト・テスタロッサが話に乗ってきた。 まぁ、なのはの手前もあるし、あちらが歩み寄ってきているのだからこちらも歩み寄らなければならないだろう。 ・・・・・・・そうしないとアリシアから何を言われるか。 ともかく、俺がフェイト・テスタロッサの方を向くと、隣のが震えたような気がするが無視する

 

「それは、そうだけど」

 

「迷惑ならやめるように言うが?」

 

「・・・・・・・」

 

「もう、理樹もそういう言い方しないの!フェイトも嫌がってるわけじゃないでしょ?」

 

「「・・・・・・・」」

 

別に変な言い方していないはずなのだが、アリシアに怒られる。 なので俺は黙ることにした、何故かフェイト・テスタロッサもそっぽ向いて黙ってしまうが

 

「もう、本当にしょうがないんだから」

 

ヤレヤレみたいな顔をされるが、それを無視し歩く速度を少し早めることにした。 その際繋いでいた手が引っ張られるが、俺が歩くのを速めたのが分かったのか少し握る力は強くなったが抵抗が消える。 ・・・・・・もうちょっと、なのはのことも考えてやらないとな。 そうして歩いていると、なのはの家の前まで着いてしまう

 

「じゃあ、私たちこっちだから!またね理樹、なのは!」

 

「おう、またなアリシア。 それとフェイト・テスタロッサと、藤森」

 

「・・・・・・ッ!?」

 

「お、織!じゃあねなのは!?」

 

「う、うん、またねアリシアちゃん、フェイトちゃん、織君」

 

「ふん」

 

やはり、というかなんというか。 あの高慢ちきな態度じゃなくなったのはいいが、アレはあれで面倒だな。 まぁ、アイツがどうなろうが知ったことじゃないが。 俺はアリシアたちに挨拶をすると同時に、鼻を鳴らしながら門に向き直る。 相変わらずというかなんというか、やはり威圧感がすごい。 とりあえず

 

「なのは、手を離してもらってもいいか?」

 

「・・・・・・うん」

 

毎回のことなのだが、名残惜しそうに俺の手を離すなのは。 俺はそれを見つつ、苦笑交じりで頭をなでる

 

「毎回言うが、もうどうこうするつもりも離れるつもりもない。 だから、そんなに心配そうにしないでくれ。 お前らから言われない限り、俺は何も言わずにどこか行こうなんて思ってないから」

 

そう言って門の方を再度向く。 さて、ここからは真剣に行かないとな。 意識を切り替え、一気に門を開ける。 もちろん、近所迷惑にならないようにだ

 

「相変わらず手荒い歓迎ですね」

 

「・・・・・・行くぞ」

 

宝物庫から木刀を出し、それを一気に引き抜きなのはと逆側の方に受け流す。 毎回の歓迎方法で慣れた部分がある。 最初は、後一瞬遅れていたら頭がトマトのようになるところだったが。 まぁ、この呼び出して宝物庫の展開速度や俺の反応速度が上がっているというのも皮肉な話なのだが

 

「お兄ちゃん!」

 

「口を出すななのは、これは俺とコイツの問題だ」

 

「そう言うことだなのは」

 

何か言おうとするなのはだが、それを兄である恭也さんは有無を言わせない気迫で遮る。 俺はというと頭に手を置き、そのまま二、三回ポンポンするだけで恭也さんについて行く。 本当に毎回のことだが、頭に手を置いた時睨むのはやめていただきたい。 そんならこんな手荒い歓迎はやめていただきたいものだ。 それからは無言で歩き、道場につくとすぐに構える恭也さん。 俺もそれを受け構える

 

「・・・・・・・ッ!!」

 

構えた瞬間、相変わらずすごい速度で接近される。 これで最高速じゃないというのだから、本当に人間やめてるんじゃないかと思う。 一撃目の突きをいなすが、恭也さん自体小太刀の木刀を二振りも使っている。 この高町家、小太刀二刀御神流というもの教えているらしい。 もっとも俺も詳しく聞いたわけではないし、門外不出らしいのだが。 なのはは習っていないと聞いた。 ともかく、二振りあるのだ。 一撃目を迎撃した時点で、二撃目は振られている。 二撃目の迎撃は、出来る!空いている左手で二撃目を放とうとしている腕を下からすくいあげるように弾く。 なのだが、隙のない連撃だ。 もうお代わりが来ている。 これを魔法なしでやっているのだから、本当に高町家は化け物だと思う。 隙などないが無理矢理切り払い、距離を開く

 

「・・・・・・」

 

「はぁはぁ......」

 

本当に、顔色も変えないでこっちを見下ろして。 木刀を持つ手に力が入る。 いいさ、やれるところまでやってやるさ。 どういうつもりで呼び出しているのか知らないが、いやなのはのことでなのだろうが、そんなこと知ったことじゃない

 

~恭也視点~

 

「はあああぁぁぁ!!」

 

雄叫びをあげながら神木がこちらに向かってくる。 なのはやなのはの相棒であるレイジングハートから、彼の話は聞いていた。 最初はなのはを泣かせたやつとして根性を叩きなおしてやろう、そんな考えで高町家(ここ)に呼んだ。 ・・・・・・顔を見た瞬間、カッとなっていきなり木刀で突きをしてしまったのは今でも申し訳ないと思っている。 寸止めをしようとしたら、弾かれたのには驚いたが。 だが、弾かれたのも当然かもしれない。 レイジングハートに見せて貰った映像のことを思い出せば、()()()()の話だった。 だが、その時のことが認められず結局こうして今も道場に呼んでいる。 今呼んでいる理由は....... そうだな、その時の悔しさもあるが、やはり彼が彼の同年代では相手になる人物がいないこと。 それに単純に俺が強いやつとやりたいからというのがあるだろう。 まぁ、彼がそれを分かっているかと言われれば、分かっていないだろう。 純粋に、彼の目には俺は超えるべき壁くらいにしか映っていないだろうしな。 まぁだからと言って

 

「ッ!!」

 

わざと負けてやる義理はないがな。 肩で息をしている神木の体勢が大きく崩れ、俺はそれに合わせわざと突っ込む。 罠だろうが何だろうが『貫』を放つだけだ。 だが、神木は予想をはるかに超える答えを叩き出す。 右手に持っていた木刀を左手に持ち替え、こちらの貫に合わせ、小太刀の木刀を掴まれる。 まさか、こんな答えを出されるとはな!さっきも思った通り、こちらも簡単に負けてやるつもりはない!片方は捕まれてしまったが、片方は無事だ。 視界がモノクロになる感覚を無視し、距離を開け一刀による遠間からの抜刀による一撃。 虎切、しかも神速を併用してのものだ。 一撃は吸い込まれるように神木に直撃するかと思われたが、()()()しなかった。 直前で木刀でガードしたようだが、折れて壁に叩きつけられる。 ・・・・・・まさかこれほどとは

 

~恭也視点 end~

 

何が起こったのかわからなかった。 小太刀の木刀を()()()掴んだはずだった。 だが掴んでいたのは一振りで、直後嫌な予感がした俺は木刀を前に構えるが木刀は折れ、道場の壁に叩きつけられた。 壁に寄りかかりながら前を向けば、離れた場所に恭也さんが小太刀を構え立っていた。 一瞬で移動して斬撃? 本当に人間かよ...... そう悪態をつきたいところだったが、生憎今の衝撃で体に力は入らないし喋るのも億劫だ

 

「恭ちゃんも大人げないなー、神速使ってからの虎切なんて。 大丈夫?」

 

なのはの姉の美由希さんがそんな風に言いながら道場に入ってきて、俺のほうによってくる。 

 

「・・・・・・まぁ、何とか」

 

 



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第四話

「今日はここまでだ」

 

小太刀の木刀を壁にかけ、そう言い残し去って行く恭也さん。 それにしても、今日は一撃入れられると思ったのだが甘かった。 残されたのはいまだに体に力が入らず壁に寄りかかっている俺と、ヤレヤレみたいな表情をしている美由希さんだ

 

「恭ちゃんも素直じゃないなぁ」

 

「・・・・・・素直じゃない?」

 

「うん。 ちょっと冷たく見えるけど、理樹君のこと気に入ってると思うよ?」

 

「・・・・・・」

 

気に入っている人が、玄関の引き戸を開けると同時に攻撃してくるんですかね...... この呼び出しの手合わせだって身にはなっているけど、こうやって毎回立てなくなるまでやられるんですがそれは

 

「納得いかないって顔だね」

 

「美由希さんだって毎回道場訪れてるんですから、こうなってるのは知ってるでしょう? それにちょっと心当たりがないもので」

 

「あー...... まぁ、やられてる側からしたらそうかな」

 

頬を掻きながら苦笑し、納得したような感じの美由希さん。 いや、美由希さんは納得しても俺は分からないから

 

「恭ちゃんだってそこまで暇じゃないんだ。 自分の鍛錬や私の鍛錬だってある、それに大学とか家の手伝いとか。 あとあと、忍さんのこととかね」

 

楽しそうに恭也さんのことを語る美由希さんだが、忍さんて誰? 月村の姉がそんな名前だったような気がするが

 

「この間だってデートすっぽかしてね?」

 

「は、はぁ......」

 

その話、俺に関係あるのかなぁ...... とか思いながら話を聞く

 

「あ、関係あるのかなとか思って聞いてる?」

 

「まぁ」

 

「あるんだなぁ、これが。 その日、この手合わせがあったんだよ。 そのせいというか、まぁ恭ちゃんが普通に忘れてただけなんだけど。 そんなわけで恭ちゃんも色々と忙しい中、時間を捻出してやっているわけです。 流石に恭ちゃんも嫌いな人のためにここまでやらないよ」

 

「・・・・・・」

 

最後の件は聞かなかったことにして、なるほどね。 どういうつもりで呼び出していたのかわからなかったが、少しは分かった気がする。 ただまぁ、それにしたってやりすぎな気もしないでもないが。 いや、昔に比べたらやりすぎじゃないな。 昔の修行は動けなくなったら回復魔法使って無理やり動いていたし

 

「わかってもらえたようで何より!まぁ、私も少しやりすぎじゃないかなぁって思うけどね。 まぁ、なのはのこともあるしどうしても力が入っちゃうんだろうけど。 じゃあねー」

 

俺はこのまま放置ですか。 まぁ、いいんだけどいつものことだし。 道場の天井を見上げる。 修業はしてきた。 実際、家族のおかげでその家族たちよりは強くなったが上には上がいる。 体格差や修行に費やしてきた時間の違いなどを抜きにしても、あまりにも差がありすぎる。 強くなったがこれでは...... いや、焦っても仕方のないことだ。 俺は俺で今まで通りやるだけだ。 幸いにも、呼び出しという形で手合わせは続いている。 強くなる機会はある

 

「理樹君!」

 

ドタバタ音が聞こえてはいたが、やはりなのはか。 道場の引き戸を勢い良く開けると、救急箱をもって俺に近寄ってくる。 毎回のことだが、泣きそうな顔をしなくても。 手合わせとは言え、かなり実践に近い模擬戦だ。 それなりに傷など、打撲などはできるがそれだけだ。 そこらへんも恭也さんは気を使ってくれてはいるのだが

 

「大丈夫!?」

 

「何時もの通り、打撲だけだって」

 

この通り、大変取り乱す。 ようやく力の入るようになってきた腕をあげ、なのはの頭をなでるとようやく落ち着きを取り戻す

 

「毎回のことだが、心配しすぎだって」

 

「そんなこと、ないもん......」

 

「いやいやいや」

 

自覚があるのかそっぽを向きながら言うなのは

 

「だって、もしものことがあったら.......」

 

「いや、ないだろ。 恭也さんて師範代なんだろ? そこらへんはちゃんと加減してくれてるから大丈夫だって」

 

まぁ、恭也さんの本気というものを見たことがないから断定はできないが。 そこらへんはちゃんとしてくれていると思う。 まぁ、美由希さん曰く、なのはのことで少し力が入っているらしいが

 

「恭也さんや俺をもうちょっと信用しろって」

 

「信用はしてるけど、それとこれとは話が違うもん」

 

そう言ってうつむくなのは。 まぁ、これも俺が記憶を封印していた影響か...... 思わずため息をつきたくなるが、それをぐっとこらえながらなのはの頭をなで続ける。 しばらく頭をなでふと腕時計を見てみると、結構いい時間になっていた

 

「さて、そろそろお暇するか。 体も随分回復したし」

 

「あっ......」

 

俺が立ち上がるために頭をなでるのをやめると、切なそうな声を出すなのは。 それを聞き、髪をぐしゃぐしゃにする勢いで撫でる

 

「うにゃー!?」

 

「それじゃあ俺は帰らせてもらう」

 

なのはが髪に気を取られているうちにそう言って歩き出す。 すると、なのはは急いで俺の横に並ぶ。 チラリと横を見ると、髪は少しぼさぼさになっていた。 ちゃんと整えてからにしろよ...... 玄関の門のところに行けば、恭也さんと美由希さんが待っていた

 

「数日中にまたやろう」

 

「今日はありがとうございました」

 

俺が頭を下げると、少し意外そうな顔をする恭也さん。 まぁ、今までは返事をしてさっさと帰っていたからな。 ・・・・・・すこし感じ悪かったな。 美由希さんから少し話を聞けたし、これぐらいはね。 そんな恭也さんの顔を見て、少しおかしそうにする美由希さん。 次になのはを見て大笑い

 

「ちょっとなのは、その髪」

 

「髪? うにゃー!? 忘れてたー!」

 

少し騒がしく思いながら、恭也さんと美由希さんの横を通り抜ける

 

「それではまた。 それと恭也さん、次は一撃入れますから」

 

そう言い残し、俺は高町家を出る

 



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第五話

感想の方で父親治さなかったと聞かれましたが、治しましたね。 ほら、親父さん治したのより、なのはの方が印象深かったんですよ(震え声

決して忘れてたわけじゃないよ?


気持ち悪さで目が覚める。 気持ち悪さの原因は寝汗だ。 

 

「またか......」

 

ため息をつきながら時計を見れば、朝の五時だ。 ちょうどいいかと思いつつ、着替えをもって部屋を出る

 

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シャワーを浴び、物音を立てないように玄関の扉を閉め外に出る。 ここ最近、あまり寝た気がしなくて頭をスッキリさせるためにたまにやっていたランニングを毎朝やるようになった。 まぁこの海鳴、ランニング等をしている人が多い。 朝の散歩とかランニングとか、なのでこの時間にランニングをすれば知り合いなどにも出くわす

 

「む?」

 

「ん?」

 

「リインフォースとシグナムか、おはよう」

 

八神家のリインフォースと将のシグナムだ。 たまにここにザフィーラやヴィータなども入るのだが、今日は二人のようだ。 そのまま抜かそうと前に出れば、何故か並走される

 

「「「・・・・・・」」」

 

何が悲しくて、朝から三人とも無言で走っているのか。 しかも、引き離そうとペースをあげれば二人も上げるし、落とせば落とす。 何がしたいんだコイツ等は

 

「何か用か?」

 

「いや、私は特にないのだが将がな」

 

「・・・・・・負けてはいられないからな」

 

「意味が分からん」

 

ただのランニングのはずなのだが、何故か勝ち負けの話になっていた。 とりあえず朝から疲れたくないし、普通のペースに戻す。 それが分かったのか、リインフォースも普通に話しかけてきた

 

「この頃よくランニングをしているようだが、どうしたんだ?」

 

「よく、分からなくてな。 夢見が悪いみたいでな、ここ最近、飛び起きることが多いんだ」

 

「夢見、か。 内容などは覚えていないのか?」

 

「全然。 思い出そうとか思わないが、飛び起きた時寝汗がすごくてな。 そのまま寝直す気分でもないし、そのままランニングに。 そんな感じだな。 そっちは?」

 

「私たちか? 私たちの方はもともと将が行っていたランニングに私が参加してる感じだな」

 

割と会話が始まれば、俺とリインフォースは会話が進む。 なんというか、割と天然の部分が最近見え始めたリインフォースだが、独特な感じがあるので話が進むのだ。 ・・・・・・それに、こいつの場合あまり深く聞いて来ようとしないしな

 

「そういうわけで、制御をだな」

 

「まぁ、聖杯から魔力のバックアップはほぼ無限だからな。 制御を早めに身に着けようというのは間違いではないな」

 

「あぁ。 騎士たちでもいいのだが、もしものこともある」

 

「暇なとき、という制約はつくが手合わせ程度なら構わない。 最悪、結界をはれば全力で戦闘しても問題ないしな。 ・・・・・・無断でやると、俺の報告書の量が増えるがな」

 

「それは....... そうだな」

 

お互いに苦笑しながら笑い合っていると、後ろから死にそうな声が聞こえる

 

「リイン、フォース...... それに、神木...... すこしは、人のことを考えろ.......」

 

「「あっ......」」

 

知らずのうちにペースが少し上がっていたらしく、シグナムが今にも死にそうな青い顔でこちらを見ていた。 完璧にシグナムを忘れていた俺たちは同時に声をあげる。 てか、そんな状態になるまで走るなよ。 そんなことを思いながら、慌てて駆け寄るリインフォースの後を追う

 

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授業中というのは暇だ。 前世で習ったことをもう一回なぞっているのだ、それは暇だ。 確かに前世よりやっていることは高度なのだが、小学生の内容だ。 暇なのは仕方がない。 だが、だからと言って大多数の授業の邪魔をするわけにはいかない。 なので、教科書を読みながら暇をつぶす。 プチ寝不足ということもあり眠いが、まぁ大丈夫だ。 空を眺めれば快晴、梅雨も終わり夏も目前だ。 てか、まぶしい。 それに日差しも、段々と熱くなってきている。 海が近い海鳴だが、それでも暑いものは暑い。 今年も熱くなりそうだなんて考えていると、授業の終わりのチャイムが鳴る。 日直がお決まりの号令をすれば教師は出て行く。 固まったところをほぐすように体を伸ばしていると、わき腹をつつかれる

 

「・・・・・・はやて」

 

「むぅ、理樹君はわき腹やってもダメなんやな」

 

「はぁ......」

 

はやてを無視し体を伸ばすのをやめると、そのまま机に突っ伏す。 はやてが騒いでいるがそのことごとくを無視しておく、関わるの面倒だし。 それに、何故か俺の席に人が集まってきてるしな

 

「アンタも懲りないねぇ、はやて」

 

「アリサちゃんが何言ってるかわかりませーん」

 

「アンタは......」

 

「あ、はやてちゃんこの間の本だけど」

 

「お、流石すずかちゃんやな!」

 

・・・・・・騒がしいことこの上ない。 自分らの席でやれと言いたいところだが残念、この間の席替えで周りがこいつらなのだ。 だからと言って、俺の席の周りでやる意味が分からないけどな

 

「り、理樹君」

 

「んー? 何か用かなのは」

 

なのはが話しかけてきたが、少し眠くなってきていた俺は机に突っ伏したまま応答する

 

「なんかこの頃眠そうだけど、どうかしたの?」

 

「あー......」

 

「夢見が悪いんやろ?」

 

「・・・・・・何でアンタが知ってんのよはやて」

 

俺がなのはの質問に答えようとすると、横からはやてが口を挟んでくる。 なんかすごく微妙な空気になってしまったが、一応説明しておく

 

「今はやてが言った通りだ。 この頃夢見が悪くてな、少し寝不足なんだ。 どんな夢かは覚えてないが」

 

「・・・・・・なんではやてちゃんが?」

 

すごく面倒なことになった。 なのはが少し落ち込んだ声を出している。 それに合わせてバニングスの視線が鋭くなっているような気がする。 なので顔を上げ、はやてを睨んでおく。 ペコちゃん人形みたいな顔をしているが、この借りはあとで模擬戦かなんかで晴らしておこう。 はやてが身震いしているようだが、知らん。 とりあえず体を起こし、なのはに説明を始める

 

「たぶん、朝ランニングしたときにリインフォースたちに話したからだと思う。 偶然会ってな」

 

「ま、そういうことやで? なのはちゃんが心配するようなことなーんにもないで?」

 

などと、不安にさせた張本人が言っている。 なのはも納得したのか、少しは表情が晴れた

 



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第六話

感想の方ですが、別に昼ドラしてナイヨー(ハナホジー

短くなったり長くなったり、今回の小説はそれの繰り返しになりそう


-汝は何を望んでここに来た-

 

望んでここに来たわけではないが、そうだな...... 今度は間違えずに進めるだけの力を

 

-愚かな。 身の丈に合わぬ力は破滅を生む、それが分からぬ汝ではあるまい-

 

言ったはずだ、今度は()()()()()()()()()()()()だ。 強大な力が欲しいわけじゃない

 

-フッ...... 面白い。 本来ならこのようなことはあり得ぬが、汝はここに来たのだ。 ならば、そのような力があると証明して見せよ-

 

言われなくても

 

------------------------------------------------------------------------

 

「大丈夫か神木」

 

「問題ない」

 

夏休み初日、任務ということでアースラに呼ばれた俺はいきなりクロノに心配されていた。 顔色はそこまで悪くないらしいのだが、どうも顔に生気が見られないとか何とか。 訳が分からないが、別に体調が悪くないのは本当だ。 結局、寝不足は続いている。 休みの日、昼間とかに寝落ちしても寝た気がしないのだ。 だが、もうそれも数ヶ月続いているのだ、いい加減慣れた

 

「それで、任務は?」

 

「まぁ少し待て」

 

「トーリスリッター」

 

「いろんな意味で待つんだ。 確かに急いできてくれと言ったがまさかすぐ来ると思わないだろう」

 

休日ということで家でゆっくりしようと思えばいきなり朝から通信が入り、急いできてくれと言われれば誰だって急な任務が入ったと思って飛んでくるだろう。 それなのに待てとか言われればこんな反応になるのも当然だと思うのだが、まぁ、いきなりトーリスリッターを構えるのはやりすぎか。 そう思いトーリスリッターを待機状態に戻す

 

「悪かったよ本当に。 ともかく、もう少ししたら他の者も来ると思う。 そうしたら、説明するからそれまで待ってくれ」

 

「・・・・・・複数人での任務か?」

 

「待て待て待て、そんなに嫌そうな顔をするな。 今回は他の部署の人間じゃないし、君の知り合いでもある」

 

「・・・・・・まぁ、任務なら従うが」

 

前にも話したと思うが、レアスキルや優秀な結果を残しているせいか、どうも俺は他の部隊から嫌われている節がある。 なので、俺が回してもらうのは大体単独の任務か家族との合同任務なのだが。 というか、知り合いと言われると嫌な予感しかしない。 帰りたいと思うが任務は任務だ、個人的な感情は抜きにするつもりだが

 

「失礼しまーす」

 

「「失礼します」」

 

「失礼......っ!?」

 

「来たか」

 

入ってきたのは見知った顔ばかりだった。 なのはにはやて、フェイト・テスタロッサと藤森(アイツ)だ。 なんというか、前途多難だな

 

「今回の任務の説明だが...... はやて、任せた」

 

「いやいやいや、クロノ君冗談キツイわ」

 

「・・・・・・・冗談だ」

 

コイツ...... 簡単に言うと、レティ提督からの要請を受けた任務らしい。 はやての任務慣れということで前から守護騎士たちと受けていたらしいのだが、守護騎士たちは予定が合わず一人で受けることになっていたらしい。 らしいが、問題はその要請を出してきた部隊だ。 俺も何度か一緒になったことがあるが、隊長が無能なのだ。 幸い副隊長が有能のため部隊が回って入るのだが....... そこで、クロノというかリンディさんに相談が入ったらしい。 そこで何度か一緒になっている俺が上がったらしいが

 

「・・・・・・で、なんでなのは達も」

 

転送ポートに歩いていく際、俺とクロノはなのは達から離れていたので聞いてみた

 

「なのはは教導隊の方があるが、一応まだアースラに席は残してあるんだ。 なので、今回は予備戦力のような感じだ。 フェイトは藤森につきっきりだろうしな」

 

「・・・・・・・正直に言う、アイツは足手纏いだから置いていきたい」

 

「そうもいかないんだ。 流石に嘱託と言えども数か月活動していない。 いくら局が人手不足といえど、人材を遊ばせておくわけにはいかないんだ」

 

「・・・・・・」

 

それを聞き押し黙る。 まぁ、あの一件以来アイツが任務に出たという話は聞いていない。 言いたいことは分かるが、あの部隊との任務で足手纏いがいるのはどうにも......

 

「もしもの時は召喚させてもらうぞ」

 

「・・・・・・致し方ないだろう」

 

少し不安を抱えながら、俺たちは転送ポートから現場に向かうのだった

 



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第七話

感想について

リインは聖杯によって魔力が無尽蔵になっていて、それにより身体的に丈夫になりました。 シグナムはすごいけど、リインはそれ以上なんやで?

ん? 中学生になってないんやで? リフレクションぶっ飛ばしてもいいなら、中学、三期に入ってもいいんやで?(スマイル


「アースラ所属神木理樹、以下四人現在より隊長の指揮下に入ります」

 

「ふん、副官が増援とうるさいから呼んでみれば貴様とはな」

 

「・・・・・・」

 

「だが貴様らの出番はない、残念だったな」

 

転送場所から徒歩でキャンプ地となっている場所に向かえば、無能な隊長がそんなことを言ってきた。 なので俺は一礼し、その場を去る。 他の奴らも慌てて一礼し、俺についてくる。 少しキャンプ地を歩き回っていたが、局員はどうも少しやつれている者たちが多い。 事前に受けた任務の説明では、そこまで長い期間ここに居たはずではないはずだが....... キャンプ地を一回りしたわけだが、俺の探し人は見つからなかった。 これからどうするか考えるためにいったん止まると、はやてが話しかけてくる

 

「なんなんや、あの隊長の態度?」

 

「アレはいつものことだし気にするな。 気にするだけ無駄」

 

「・・・・・・なにかしたの?」

 

震えているアイツの肩を抱きながら、フェイト・テスタロッサがこちらを非難するように目を向けてくる。 面倒ではあるが、一応誤解は解いておく

 

「別に何も。 ただ単にアースラという比較的優秀な人材が揃っているところから来た俺が気に入らないだけだろ。 レアスキルを持ち、優秀な成績をあげてる俺がな」

 

「そんなことで......」

 

「プライドの高いことで有名だからな」

 

なのはが信じられないというような声を出すが、クロノやリンディ提督の周りの人達がいい人たちというだけで、別にそこまで珍しくない。 才能がなくても、親の七光りで上に居る人物たちなど結構いるみたいだからな

 

「それで、これからどうするんや? あのいけ好かない隊長は置いておいて、このまま見てるだけって言うのもするつもりはないんやろ?」

 

「その通りなんだが、探し人がいなくてな。 仕方ないからそこら辺の局員に話しかけるか」

 

たまたま近くを通りかかった医療系スタッフに話を聞くことができた。 どうもこの任務、長引いているらしい。 本当はもっと短期間で終わるようだったが、犯人の潜伏先のまわりに遺跡のような未確認の建造物があったらしく、そこに逃げ込まれたらしい。 そのおかげで任務の期間が延び、ただでさえ切れそうな食料はもうなくなりそうらしい。 スタッフによっては、一日おきに少ない食事など環境は劣悪。 遺跡の調査も思うように進まず、今日になって副隊長と数名の局員が調査に向かったらしい

 

「すみません、ありがとうございました」

 

「・・・・・・食料やクスリとかは」

 

「何も聞いてなかったので、物資は持ってきていません。 すぐに連絡して、現状で持ってこられる分はすぐにでも」

 

「ありがとうございます!」

 

泣きながらお礼を言ってくる医療スタッフに若干引きながら、気持ちを切り替えアースラに連絡を取る

 

「こちら神木」

 

『はいはーい!どうしたの神木君、緊急事態?』

 

通信に出たのはエイミィさんで、すぐに事情を説明する。 最初はいつものように笑顔で通信に出たエイミィさんだったが、段々と顔が険しくなっていく

 

『状況は分かった。 物資に関しては、手配できるものはすぐに送ろう。 局員に補充はどうする?』

 

「できれば欲しいところだが、そんなすぐに手配できるか?」

 

『・・・・・・すぐには厳しい。 物資の方はアースラの方の備蓄を使ってもいいが、人員はな』

 

「なら、現地の局員と協力...... は出来ないから、このメンツで何とかする」

 

『すまない。 もし指揮権の委譲が必要なら、レティ提督か母さんの名前を使ってもいいそうだ』

 

「すまんがさっそく使わせてもらうと二人には」

 

『わかった。 物資の方だが、君たちを転送したところのほうがいいか? 勝手に用意したともなれば、色々と面倒だろう?』

 

「悪いが頼む。 取りに行くのは、協力してもらうからな」

 

『わかった。 もし何かあれば通信を。 本当に危険そうなら、呼び出すのは構わない』

 

「了解」

 

たまたま通りかかったクロノのおかげで、物資の転送等はスムーズに相談できた。 指揮権の方はレティ提督とリンディ提督に感謝しないとな。 さて、物資の方だが

 

「おい藤森、お前がここの局員数人と取りに行け」

 

「っ!?」

 

俺が声をかけたことで震えがひどく、逃げ出そうとするアイツだがフェイト・テスタロッサがそれを抑える。 そしてこちらを睨みつけながら反論する

 

「今回の任務で一杯一杯なのに、そんなの!」

 

「この際だからハッキリ言ってやる。 そんな足手纏いがいたら、命がいくつあっても足らん。 ここで待機していたほうが、そいつのためにもなるだろう。 お前が甘やかすから、そいつは何時までもそうなんじゃないのかフェイト・テスタロッサ?」

 

「・・・・・・・」

 

図星なのか、歯を食いしばりながらこちらを睨むフェイト・テスタロッサ。 それを放っておき、作戦を伝える

 

「ただ見てるだけでもよかったんだがな、死人が出るかもしれないこの状況は看過できるものじゃない。 これから遺跡の中に突入する。 今回の目的は、遺跡に突入した副官の安否確認及び、負傷してるようならそのまま撤退だ。 犯人の確保もすればこの任務も終わりだが、そこは状況によってという感じだ。 いいか、あくまでも今回の目的は副官と数名の局員を帰還させることにある。 突入するのは比較的動ける俺、なのは、フェイト・テスタロッサだ。 はやては上空で待機していてくれ」

 

「まぁ、そうなるやろな。 んー、それなら私が物資の方も行こか?」

 

「・・・・・・藤森(アレ)が使えなかったらな。 外で待機にしたが、お前には万が一の場合に備えて魔法の準備をしていてほしい。 場合によっては遺跡を吹っ飛ばす」

 

「ん、分かった」

 

「なのはもわかったな」

 

「うん」

 

「フェイト・テスタロッサ」

 

「・・・・・・私は」

 

「そいつのそばについていたいと? 悪いが無理だな。 今回、お前の機動力は確実に必要になる。 もし飛行魔法や自力で動けない局員がいた場合、迅速に外に出すならお前の機動力が必要になる。 そして藤森、ここで何もしないならそれはそれで構わないが、この先お前が局員として入れるかは保証しないぞ」

 

そう言うと、フェイト・テスタロッサは立ち上がりこちらに詰め寄ってくる

 

「な、なんで!?」

 

「当たり前だ。 局だって人員不足ではあるが、使えない人材を登録させておくほどいいところじゃない。 今回の結果次第では、どうなるかわからんぞ」

 

「っ」

 

フェイト・テスタロッサとアイツが俯くが、俺の知ったことではない

 

「話は終わりだ。 もう一回あの隊長のところに行くぞ」

 

返事は聞かずに俺は歩き出した

 



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第八話

ランキングで二日連続ランクインとか、前代未聞やね(俺がチェックしてないだけでなっていたとかノーカン
これも皆さんのおかげです!それと、そんだけ期待されてるんやなって(白目

さて、感想の方ですが告知してなかったから仕方ないね!更生はまだまだこれからよ、HAHAHA
幾ら人材不足でも、働かないのに所属できるわけないだろぉ(にっこり みたいな

追記.カリバーンの方指摘されましたので、修正しました


「なんだ、また来たのか」

 

「指揮権の委譲、は面倒だからこちらで勝手に動くのを認めてもらいたい」

 

「そんなことが可能だと思っているのか!!」

 

思っていた通り怒ったようだが、知ったことではない。 驚いてこちらを向く他の局員だが、俺はそれを気にせずに話を進める

 

「出来るできないじゃなくてやれ。 俺が言いたいのはそれだけだ」

 

「このガキが!貴様はいつもいつもそうやって!!」

 

「言いたいことはそれだけか? 今回の件、いや、これまで任務に参加したときの暴言や、お前のずさんな作戦の立て方全部上の連中に報告してもいいわけだが? もちろん、俺が遠慮し、全部お前の功績になっているものも」

 

「ぐぅ!」

 

「わかったら今ここで、俺たち増援、全員の作戦参加、その作戦中の自由を認めろ」

 

「~~~!!わかった!」

 

「言質はとった。 すみませんが動ける局員の方は追加の物資を取りに行ってもらいたいのですが」

 

多少やつれているが、大半が動けるようですぐにで動いてくれるようだ。 恨めしそうにこちらを見ている無能だが、それを無視し物資の方はアイツに任せ通信等をしている局員に記録を貰う。 どうも副隊長たちと連絡が取れなくなって結構経っているようで、かなりまずい状態のようだ。 最後の通信は十人くらいの局員で突入したようだが、半数は負傷したという通信だった。 他にも遺跡内部は罠があり、下手に出れないらしい

 

「思っていた以上に面倒なのと、そこそこの実力がなければ入れないってことか。 それにしても遺跡内部に罠、ねぇ......」

 

「なんか気になることでもあるんか?」

 

「いや、侵入者撃退のトラップとかはあるのはユーノとかから聞いているが、どうにも引っかかる。 ともかく気を付けて進むぞ。 はやては頼む」

 

「ほいほい」

 

空に飛ぼ上がっていくはやてを見送り、俺はなのはとフェイト・テスタロッサに向き直る

 

「記録は見せた通りだ。 内部は無数の罠が張り巡らされている、副官のことは気になるが慎重に進むぞ。 ミイラ取りがミイラになる、なんてことにはなりたくないからな」

 

「うん」

 

「わかった」

 

「出発するぞ」

 

そう声をかけ、俺が先導して飛んでいく。 一応、身体強化や感知の魔術は使っているので心配はないと思うが。 遺跡までの道は整備されており、何度も通っているためか罠の心配はない。 問題は内部だ。 遺跡の入り口まで付くと、いったん飛行魔法を切り周囲を探る。 トラップの類はないようだが......

 

「トーリスリッター」

 

「スキャン...... 完了。 入り口にはトラップなどは仕掛けられてません。 ただ」

 

「ただ?」

 

「遺跡にしては少し新しいような...... それに内部も」

 

データを表示させれば、確かに妙だ。 外部の石の感じも、資料や本で見るようなのとは違う。 それに内部構造はそこまでスキャンしているわけではないが、あきらか機械などが多い

 

「遺跡に偽装した研究所、とかか?」

 

「研究って、何の研究を?」

 

「そこまでわからんが...... とにかく、普通の遺跡とは違うようだ」

 

「気を付けて行こう、理樹君フェイトちゃん」

 

トーリスリッターに引き続き情報の収集を頼み、内部に侵入する。 すぐに感じたのはだいぶ薄れているが、焦げ臭いにおいと焼け焦げた跡だ。 暗くて普通ならわからないが、俺はまぁ、ね? 試しに宝物庫から宝具を射出する。 反応がないようだ。 ならと思い、瓦礫を適当に投擲する。 すると、少し離れたところから炎が噴き出す。 その噴き出す根元に向かって宝具を射出する。 ショートする音と、小さな爆発音が聞こえたると炎は噴出さなくなる。 そのあとも違う方向に瓦礫を投げるが、反応はない

 

「よ、よくわかったね理樹君」

 

「少し焦げ臭いにおいと、焦げ跡があったからな。 ここら辺は大丈夫なようだ、行くぞ」

 

なのはが驚きの声をあげるが、俺はそれに必要最低限に返事をし先に進む。 副官の痕跡をたどっていくが、罠の多さに疲れながらそれをたどっていく。 下から槍が付き出てきたり、鉄球が転がってきたり、毒矢がこっちに向かってきたり。 凝った仕掛けがたくさんあったが、それらをすべて無力化し進んでいく

 

「な、なんかインディージョーンズみたい」

 

「そ、そうかも.......」

 

「ユーノについて行けば毎回こんな体験ができるんじゃないか?」

 

少し軽口をたたくが、気は抜けない。 二人の様子を見ると、少し疲れたような顔をしていた。 少し休憩でもと思ったが、光が見える。 目を細めるが、よくわからない。 警戒しながら進むと、突如人工の壁が

 

「ど、どういうこと?」

 

「予想は当たっていた、ということか?」

 

「研究所だったとしても、目的は」

 

「その通り、副官の救出だ。 ただまぁ、割と近くにいるらしい」

 

明かりのついた人工の通路ということで、分かりやすい。 通路には血が点々と続いていた。 触ってみれば、指に付着する。 まだ時間が経っていないだろうということで、その点を追う。 すぐ近くに

 

「大丈夫ですか!」

 

倒れた人たちが。 傷はそこまでひどくはないのだが、やつれている影響か気絶している人もいる。 唯一、一人だけ意識をしっかり保ち軽傷の人がいたので話を聞くと...... 副官は犯人を追って一人で奥へと行ってしまったらしい。 あの人らしくもないが。 ともかく、副官は奥に行ってしまったらしい

 

「ともかく、怪我人を外へ」

 

「だがあの罠を越えるなんて、そんな魔力は......」

 

「すべて破壊してあります。 この二人を残していきますので、外へ。 俺は副官と犯人を」

 

「待って理樹君、私も!」

 

正直言って、迷っていた。 確かになのはは戦力的に見ればプラスだ、だがこの先罠がないとも限らないし守れる保証もない。 帰るだけなら、罠は無効化してあるので大丈夫だと思うが......

 

「・・・・・・なのはは、神木について行ったほうがいいと思う。 運ぶのなら、この人と私の二人で大丈夫。 でも、もし犯人に仲間がいて複数人との戦闘になれば、副官を守りながら一人で戦うのは辛いと思うから」

 

「・・・・・・」

 

確かに、この施設を一人で動かしたとは思えない。 打ち捨てられた施設を一人で起動した、何ていうのはあまりにも突拍子がない。 負傷した局員を見れば、大丈夫というように頷いていた

 

「わかった。 なのは、行こう。 フェイト・テスタロッサと局員の方は、怪我人を連れて外へ」

 

「うん!」

 

「わかった」

 

「副隊長を、よろしくお願いします」

 

フェイト・テスタロッサと局員と別れ、俺たちは奥へと向かっていく。 血痕が残って入るが、そんなに多くはない。 だが、元々体力がない状態だ、あまり遅れるのもまずい。 だからと言って、罠があるかもしれないこの施設の中を無警戒に進むわけにはいかないのだが。 少しもどかしく思いながら奥へと進む。 すると、段々と声が聞こえてくる。 なのはと顔を見合わせ、その声が聞こえる部屋へと突入する

 

「ひぃ!?」

 

「なのは!」

 

「ディバイン...... バスター!」

 

なのはの放った砲撃は見事犯人に直撃、気絶した犯人だったが最悪なアナウンスが鳴り響く

 

『機密保持のため、自爆が決行されました。 機密保持のため、自爆が決行されました。 カウントダウン、開始します』

 

「くっ!押されてしまった」

 

「もしかして俺たちのせいで?」

 

それはそれで冷や汗ものだったが、副官の話では違うようだ。 もともと、この犯人はここに迷い込んだようだが、その際入り口に設置されていた施設の起動ボタンと持ち運び可能な自爆スイッチをもって奥に逃げ込んだらしい。 それが手に持っていたボタンで、元々ここに追い詰められていた時から押す寸前だったらしい。 そんな物騒なもの入り口に置いておくなとも思ったが、元々錯乱状態の犯人が押さないために副官は追いかけてきたようだ。 らしくないと思ったが

 

「それにしても、君が来てくれるとはね」

 

「まぁ、話は追々。 今は話している時間もないですしね。 カウントも30を切ってます。 なのは、危険だが壁ぶち抜けるか?」

 

「それが、収束してるんだけど、なんでか収束が悪くて」

 

「トーリスリッター」

 

「どうも、魔法の結合が阻害されているようです。 なのはさんほどの魔導士でも、この状態は...... 最奥ですから、それだけ」

 

「なのは、飛ぶのは?」

 

「出来る」

 

そう言って、アクセルフィンを展開し、少し地面を離れるなのは。 ならいいと思い、俺は宝物庫かカリバーンの原点を出す

 

「なのは、俺が壁をぶち抜くから副隊長を」

 

「わかった」

 

「すまないがよろしく頼む」

 

なのはが副官に肩を貸したのを確認し、俺はカリバーンに魔力を込め始める。 まぁ、流石に俺は影響を受けないようだ

 

「カリバーン!!」

 

極光は空へと向かい、貫通したのか光が晴れれば空が見えた。 俺となのはは顔を見合わせ、空に向かって飛ぶ。 結構深いところまで潜ったのか、中々地上へ出ない。 空は見えてるんだがな! もう少しというところで、下から爆音が響き始める

 

「チッ!!」

 

一気に加速し、なのはに追いつくと俺は後ろ向きで飛ぶ。 宝具の連続使用とか疲れるんだがな!

 

「仮想宝具、疑似展開!」

 

展開と同時に爆風が来るが、見事防ぎきりようやく外に出られたようだった

 

「あー...... とりあえず、お疲れさんなのは」

 

「うん、ありがとう、神木君」



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第九話

砕けた選定の剣てカリバーンやん...... というわけで、指摘がありましたので直しました。 ありがとナス!

それと感想の追記の方分からんやろ!(いいぞもっとやれー


「楽しい楽しい夏休み...... なのに俺はなんでこんなことしてるんですかね?」

 

「自業自得だろう」

 

「それな」

 

夏休み初日の任務から数日、俺の姿はアースラにあった。 アースラに寝泊まりしているからか悪夢? は見なくなったが、報告書や始末書をまとめているため寝不足なのは変わらない。 あの遺跡擬きは大爆発を起こしたが、爆発による被害はゼロに等しかった。 副官は仮想宝具やなのはのプロテクションで守っていたわけだし、怪我人はフェイト・テスタロッサと局員によって既に安全圏まで運び出されていた。 まぁ、それで終わりではなかった。 あの無能が遺跡擬きが大爆発したことの責任をこっちに擦り付け、向こうは全く関係ない顔をしたため始末書やら報告書やらが全部こっちに流れてきているのだ。 まぁ、向こうにもそれ相応の()()を取ってもらったが。 なのは達も手伝うと言ったのだが、必要最低限の報告書を提出させさっさと地球に転送した。 なので俺が膨大な量の書類を処理しているのは、クロノの言う通り自業自得なのだ

 

「どうせ予定もなかったんだろう?」

 

「あぁ、すまん。 まぁ、家族たちも任務で忙しいしな。 特に予定も立ててなかったのは事実だ。 まぁ、なのはの家やらテスタロッサ家なんかからはどこか行かないかと誘われてはいたがな」

 

クロノが淹れてくれたコーヒーに口を付けつつ、少し休憩とペンを置く。 実際、家としては旅行の計画などは立てていないが、なのはの家やテスタロッサ家、はやてからなんかは旅行に行かないかという話は来ていた。 適当にお茶を濁しておいたが

 

「まぁ、休暇はとってもいいと思うぞ? 君はよく働いてくれているしな」

 

「旅行先から急な呼び出し、なんて嫌だぞ?」

 

「・・・・・・大丈夫だろう」

 

「俺の目を見て言え、コラ」

 

実際、リンディ提督やエイミィさん、アースラクルーには休みを取ってもいいとは言われているが、俺がクロノに言ったことを言うと目をそらすのだ。 まぁ、一戦力と数えられているのは嬉しいが、無理ならそんなことを言わないでほしい

 

「藤森がもう少し任務に出れれば話が違うんだがな.......」

 

「出れると思ってんの?」

 

「・・・・・・本人次第、と言った所か」

 

俺がコーヒーを飲みながら視線を向ければ、クロノは静かに目をそらしながらそんなことを言う。 実際この初日の任務、自分の役割を果せたとは言い難かった。 はやてからの報告にもあるように、道には迷うわ野生の生物に出くわすわで散々だったらしい。 見かねたはやてが空からナビゲートし、ようやくついた始末だ

 

「実際どうするんだアイツ。 こんな簡単なことも果たせないんだぞ?」

 

今見ていたはやての報告書をクロノの方に投げクロノに見させる。 目を通したクロノは資料を俺のほうに戻しながら、息を吐く

 

「もう少し様子見、と言った所か?」

 

「好きにしてくれ。 ただ、周りへの影響も考えろよ」

 

「フェイトの将来、だな」

 

過去はどうあれ、執務官を目指し始めたフェイト・テスタロッサ。 今のままでは確実にアイツが足を引っ張る、そういう思いを込めクロノに言ったがクロノには通じたようだ



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第十話

藤森君、地味ーに将来屑になりそうとの意見が多い(笑) そんなことはしないので、大丈夫ですよ? 

なーんか、新作始めてから文字数が少ないんだよなぁ...... もうちょっと字数を、とも思うけど増えない。 まぁ、そこは追々......


「理樹くーん、はやくー」

 

「元気なもんだな...... 砂に足を取られやすいから気を付けろよー!」

 

夏、と聞いたら皆は何を思い浮かべるだろうか。 プールや海など水辺のレジャーだろうか。 なんで俺がそんなことを思うかといえば、現在進行形で海に居るからである。 来る一週間後に迫った海に出かける企画の下見ということで、八神家と共に俺も駆り出された。 初めての海と言うこともあり、あのはやてのはしゃぎようである

 

「主も初めての海だ、許してやってくれ」

 

「別に怒ってるわけじゃないさ」

 

肩に下がっているクーラーボックスを位置を直しながら、リインフォースに返事をする。 それにしても、それなりの広さなのに海水浴客がいもしない。 まぁ、バニングス家のプライベートビーチだ、誰かいても困るのだが

 

「ほらヴィータちゃん、そんなにはしゃがないで」

 

「はしゃいでねーよ!」

 

そんな声が聞こえ、そちらの方向を向くとヴィータとシャマルが何やら言い争っていた。 まぁ、ヴィータが一方的に言ってるだけなのだが。 それにしても、あんなにウキウキしながらはしゃいで居ないとは

 

「別にはしゃがしといてもいいんじゃないかシャマル、その分俺らでちゃんと見といてやればいいんだから」

 

「でも、ヴィータちゃんやはやてちゃんが怪我したらって思うと......」

 

「大丈夫だろう、私たちで見てれば」

 

「お前ら喧嘩売ってんのか!?」

 

俺たちでそんな風に話し合っていたのだが、ヴィータの目の前でしていたためか怒り出すヴィータ。 だが、はやてに呼ばれてすぐに機嫌を直してはやての方に行ってしまう

 

「・・・・・・本当に子供か」

 

「あははははは......」

 

「ま、まぁヴィータの話はいいとして、荷物を運んでしまおう」

 

「それなら私と神木でやっておく、お前たちは着替えてきたらどうだ?」

 

俺と同じ様に荷物を肩にかけやってきたのはザフィーラで、女性陣にそう言っていた。 顔を見合わせるシャマルとリインフォース、それに遅れてきたシグナムだったが何故か最後に俺の顔を見る

 

「なんだよ」

 

「いや、いいのかと思って」

 

「好きにしてくれ。 ザフィーラは済まないが頼む」

 

「心得た」

 

そう言って俺たちはさっさと砂浜の方に歩いて行ってしまう

 

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砂浜にパラソルを立て、そこにシートを引くと俺はさっさと寝転がる。 ザフィーラは仕事が終わると、さっさと守護獣の姿に戻り寝てしまった。 まぁ、ザフィーラは任務あけという話だったのでそのまま寝かせることにした。 俺も俺で寝不足気味のため、横になっていると眠くなる。 はやてたちが来るまでで少し寝るかとも思ったが、そうもいかないらしい。 そろりそろりとゆっくり誰かが近づいてきている気配がする。 まぁ、気配を消してないのでバレバレなのだが。 薄目を開けてそちらを見てみれば、水着に着替えたはやてがゆっくりとこちらに近づいていた

 

「あちゃー、バレてしもうたー」

 

「もうちょい気配と足音を消せ」

 

「理樹君じゃないから無理やろ」

 

シレっとそんなことを言って俺の隣に腰を下ろす。 海で泳いでくればいいものを...... 一応起き上がることにした

 

「なんや、寝ててもよかったのに」

 

「一応、な。 それにしても泳がないのか?」

 

目の前の海に目を向ければ、ヴィータがはしゃぎながらこちらに手を振っていた。 そんなヴィータを心配そうに追いかけるシャマル

 

「母親だな」

 

「シャマルにそれ言ったら駄目やで? んー、まぁ泳ぐのはもう少し後や」

 

そんなヴィータに手を振りつつ、答えるはやて。 それならいいかと、視線をはやてから海に戻す。 にしても、体をほぐすのは分かるのだが何故ラジオ体操? 海を目の前に、ラジオ体操を始めるシグナムとリインフォースを不思議に思いはやてを見れば、だらしない顔をしたはやてが。 なるほど、これが目的か。 一気に馬鹿らしくなり、俺はそのまま寝転がる

 

「ん? どうしたんや?」

 

「何でもねーよ。 それよりお前も海行って来いよ」

 

「ん、そやね。 ヴィータも呼んでるし」

 

はやてが立ち上がるのを確認し、俺は目を閉じる

 

「理樹君は?」

 

「パス。 元々水着も持ってきてないしな」

 

リフレッシュになると思ったんやけどな...... そか。 それじゃあ、私は行ってくるなー」

 

前半の言葉に聞こえないふりをする。 それはそうと

 

「ペンダント、外していけよ。 流石に金属だから、錆びるぞ。 それと、水着にあってるぞ」

 

「・・・・・・ちゃんと加工してあるから大丈夫や」

 



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第十一話

さて、感想の方ですが

デバイス自体はそのままです。 もはや神がいなくなり、カートリッジシステム自体を隠す必要がなくなったため、バージョンアップした際に名前を変えただけなので、デバイス自体は変わっていません。 まぁ、その描写が今までなかったのですが(汗

藤森に関してはねぇ...... これ以上墜ちることはないですよ? それこそ、この小説にお前の席ねえから!状態になりますし。 彼はこれから良くなっていくのだよ(遠い目

いったい何を見ていたんですかねぇ...... 

ヒロインは誰なんでしょうね? もはや前作から迷走してる感がありますからね。 フェイトちゃんは、今はそっとしておきましょう。 サーヴァント? おらんのだよ......


「海ー!!」

 

「海だー!」

 

「ア、アリサちゃん!」

 

「アリシア!」

 

「なーんかどこかで見たような光景」

 

「よーわからんなー。 あ、アリシアちゃん更衣室はこっちやでー」

 

ジト目をはやてに向ければ、シレっと俺の視線から逃げるようにアリシアを呼ぶ。 午前中のシフトなどを含め、ようやく全員の休みがそろった夏休み中盤、前回の下見から時間は経ってしまったがようやく海水浴というわけだ。 アリシアはともかく、バニングスに関しては自分のプライベートビーチに来たのだから、あんなにはしゃがないと思うのだが。 まぁ、遊びに来たんだしいいのか

 

「神木、パラソル立てるのを手伝ってくれ」

 

「わかりました」

 

恭也さんから声をかけられ、俺は砂場にパラソルを立てる。 今回は家族づれということもあり、何本か立てないといけないしな。 周りを見回せば、はしゃいでるバニングスに引っ張られるなのはに、それをなだめる月村。 アリシアはちょろちょろ移動して、フェイトという追手から逃れていた

 

「皆さんは元気ですねぇ......」

 

「まぁ、あっちは小学生とかだからな。 俺らみたいに仕事が立て込んでない分、楽だろうよ」

 

「それを言ったら、マスターも小学生なのですが......」

 

「マスター殿、パラソルの設置完了しましたぞ」

 

「ご苦労様、ハサン。 お前たちも着替えてきたらどうだ」

 

周りを見回していれば、玉藻たちが話しかけてきた。 リリィの言うことももっともなのだが、俺は転生者だし学校なんて行かなくてもいいのだ。 そんなことを言っても、リリィ達は納得しないだろうけど。 なのでこの話はしないに限る、ということで着替えてくるように促せば、行ったようだ

 

「・・・・・・マスター殿、お体の方は?」

 

「問題ない、とは言い切れないな。 夢で初代様とあんなことしてるんだ、寝た気がしなくて寝不足さ」

 

「無理に参加されなくても......」

 

「問題ない。 参加するって決めたのは俺だし、あそこから去らなかったのも俺だ。 ま、今日はゆっくりさせてもらうさ」

 

そう言って、俺は設置したビーチチェアに寝転がる。 別に俺がどこに居ようが構わないだろうし

 

「で? 何でアンタは海に来てまで寝ようとしているわけ?」

 

「・・・・・・悪いが夜中まで任務だったんでな」

 

「クロノ君から聞いて任務じゃないって知ってるよ神木君」

 

「・・・・・・」

 

クロノめ、余計なことを。 仕方なしに体を起こせば、水着に着替えたバニングスがこちらを見下ろしていた。 その隣では、月村が何時もの通りニコニコしていた。 こいつ、俺の時ニコニコしてること多くないか? まぁいい

 

「それで、何か用か? 一応パラソルの設置は終わってるし、寝てても問題ないと思うんだが?」

 

「問題ないと思ってるのはアンタだけよ」

 

「せっかく海に来たのに寝てるなんてもったいないと思うよ?」

 

「過ごし方は人それぞれだろ」

 

これはアレだ、面倒な奴だ。 話は終わったとばかりに俺は体勢をもとに戻そうとするが、腕をつかまれる。 そちらを見てみると、はやてとアリシアがにっこりと笑っていた

 

「ダメだよ理樹」

 

「なのはちゃんが待っとるでー」

 

「・・・・・・」

 

最早何も言う気も起きず、俺は体の力を抜く。 それをアリシアとはやては感じ取ったのか、俺をずるずると引きづっていく。 そんな俺の様子を見てか、バニングスはヤレヤレと言いたげに首を振っていた

 

「まったく、理樹も正直じゃないなー」

 

「ほんとやホントや。 なのはちゃん妬けるわー」

 

「お前らな......」

 

適当言っているアリシアとはやてに一言申そうとしたが、中断される

 

「そーれ!」

 

「ほな、いってらっしゃーい」

 

「にゃ!?」

 

「いきなり投げるなよ.......」

 

いきなり宙に放りだされたため文句を引っ込め、飛行魔法などは使わず体をひねりなのはの前に着地する。 なのははなのはでいきなり俺が目の前に現れ驚いたのか、猫みたいな声を出したが

 

「り、理樹君!?」

 

「アリシアとはやてに連れてこられてな。 あと、バニングスと月村がなのはが待ってるってな」

 

「うぅ、アリサちゃんとすずかちゃん......」

 

恨めしそうにバニングスと月村を見るなのはだが、当の本人たちは涼しい顔でこちらに合流した

 

「さて神木、何か言うことがあるんじゃないかしら?」

 

「はて? 本日はご招待いただきありがとうございます?」

 

「そうだけどそうじゃないやろ......」

 

何故か胸を張るバニングスだが、俺がお礼を言うと一気に気が抜けた表情になった。 はやてからは違うという答えを貰ったが

 

「違うよ理樹、アリサが言ってるのは、女性がいつもと違う格好でいるんだから、何か言うことがあるんじゃないのってこと」

 

アリシアの言うことにようやく納得がいくのだが

 

「なに、俺に褒められたいの? そんなに褒めてほしいなら、あそこでフェイト・テスタロッサに引っ付かれてる奴に行ってくれ」

 

「あーもー!!何でアンタはそうなのよ!」

 

俺が正直な感想を言えば、バニングスがキレて距離を詰めてくる。 それを押しとめるのは、アリシアとはやてなわけだが。 頑張ってくれ。 さて、ちょっとした意趣返しができたわけだが

 

「うん、まぁ、みんなよく似合ってると思うけど」

 

何故か時が止まった。 なぜか意外そうな顔をしてみられるのだが、何なんだよ

 

「いやまぁ、最初っからそう言っていれば、アリサちゃんもこんなに荒ぶらなかったと思うで?」

 

「しらん」



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第十二話

ヤバイ。 何がやばいって、感想がフェイトちゃんばっか。 一応、藤森君は更生予定ですよ皆さん。 別に俺はフェイトちゃんが嫌いなわけでなく、むしろ好きな部類ですし? ちゃんと、藤森は更生しますからね? (大切なことなので二回ry) てなわけでー

追記:地の文が集中しすぎて見辛い、との意見がありましたので今回試験的に編集。 少しは見やすくなりましたかね?


遊べる時間は少ないということで早速遊ぶことになったのだが、何をして遊ぶか決まらない。 というのも、基本俺や月村は化け物じみたスペックのためビーチバレーや海で泳ぐのに向かない。 スイカ割も基本目隠しした程度で位置が分からなくなる俺ではない。 ・・・・・・何をやろうにも俺抜きになってしまうのだが、そこを許さないのがバニングス達だ。 俺がいたほうがなのはが喜ぶだの、仲間外れはよくないと。 どないせいっちゅうねん

 

「もう審判でいいから、早く決めてくれ......」

 

俺のこの一言で言い争いに決着が付き、ビーチバレーからということになった。 

チーム分けは、はやて、月村の本好き。 アリシアとバニングスチーム、なのはとフェイト・テスタロッサの仲良しコンビとなった。 守護騎士やウチの家族なんかはボール拾いだ。 

まぁ、やったのはいいのだが、なんともハチャメチャだった...... 砂に足を取られたフェイト・テスタロッサは空を飛び始めるは、アリシアは呪術使ってアイツに事故を装ってボールで攻撃するは...... 何故かクロノには監督者の責任、ということで俺が怒られた。 

気を取り直して、次にやったのがスイカ割りだ。 まぁ、これは平和だった。 お手本ということで、恭也さんに協力してもらったが木刀できれいにスイカを両断していた。 そちらは玉藻に頼み、他の保護者や休憩している人に配ってもらったが。 そんなわけで、スイカ割りを始めた。 

じゃんけんで決まった順番、一番最初はバニングスからだった。 まぁ、アリシアとはやてが邪魔して全く見当違いの方向で木刀を振り下ろしていた。 月村やなのは、フェイト・テスタロッサが頑張って誘導していたのだが、アリシアの声が大きいこと。 その声にかき消されるわ、はやてが月村をそそのかして違う方向行かせるわ。 まぁ、予想通りといえば予想通りか。 

二番手はフェイト・テスタロッサ。 今回はアリシアとはやては静かにしていたが、バニングスが暴走した。 さっきの恨みとでもいうかのように滅茶苦茶な命令を出していた。 なのはと月村は正確に誘導していたのだが、焦ったフェイト・テスタロッサはスイカ手前で木刀を振り下ろした。 

三番手ははやてだ、はやてなのだが...... 面白みもなかったので特になし。 強いてあげるとすれば、わざとこけるふりしてこちらに助けを求めたり、リインフォースに助けてもらったりだったので退場させた。 説教は今バニングスに任せてる。 

四番手はアリシア。 はやてと同じことをするなと口を酸っぱく言っておいたのですることはなかったが、プレシアさんからの助言がね...... フェイト・テスタロッサにも助言はしていたが、フェイト・テスタロッサが叩けなかったこともありアリシアにという思いが強かったようだ。 あまりにもうるさかったため玉藻とリリィに頼み、退場願った。 まぁ、うるさい助言もあり見事スイカにたどり着いたアリシアだったが、スイカを割るには至らなかった。 単純な力の問題だ。 

五番手はなのはだ。 はやてとバニングスも戻ってきたことにより本来の賑わいを取り戻した指示側だったが、これにより指示が錯綜していた。 なのはもそれにより迷走、一番歩き回るのが長かったのではないだろうか。 流石に見かねて、俺も指示を出したが。 ようやくスイカまでたたどり着いたが、何故かスイカの目の前で木刀を振り下ろしたのにもかかわらず木刀は砂を叩いた。 流石にこれには指示側もびっくりして言葉が出ないわ、なのは自身も泣きそうな目でこっちを見ている話で大変だった。 

その間に月村はシレっと準備をし、俺がなのはを慰めているときにスイカを割っていた

 

------------------------------------------------------------------------

 

「んー!今日はバカンスを楽しみました!」

 

「今日の夜はご飯が美味しそうです!」

 

「えぇ...... リリィ殿、気が早すぎるのでは?」

 

スイカ割りで割ったスイカを美味しくいただき、休憩してから泳いでみればあっという間に夕方になっていた。 適当にシャワーを浴び、着替えをすまして後片付けを手伝ってい居ると、同じく手伝っていた玉藻たちも終わったのか合流してきた

 

「私もいい息抜きになりました!明日からもまた任務頑張れそうです」

 

「「あぁー......」」

 

さっきまでの清々しい顔はどこへやら、一気にブルーになった顔の玉藻とリリィ。 それに気が付いたマシュは苦笑していた。 まぁ、楽しい今日が終わればまた明日からは仕事だ。 今日もなかなか強引にシフトを動かしたため、結構仕事は溜まっている。 それを思い出したのだろう、なんて考えながら海を見ていた。 そんな俺にまっすぐ近づいてくる気配がする。 それを察してか、玉藻たちは駐車場の方に体を向けて歩き始めていた

 

「理樹君」

 

「なのはか、どうした」

 

一瞬視線を向ければなのはがいたので、そう聞くと

 

「もう準備できたし、出発するみたい」

 

「なるほど、呼びに来てくれたわけか、ありがとう」

 

なのはに向かってお礼を言う前に今の光景を焼き付け、なのはにお礼を言う。 歩き始めようとすれば、なのはに手をつかまれた

 

「なのは?」

 

「また、来れるよね?」

 

そう聞いてきたなのはの目は不安に揺れていた。 それを俺は

 

「当たり前だ。 またいつだって来れるさ」

 

なのはの頭をなで、なのはの手を引いて歩き出す



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第十三話

今回の話は、ちょっと前のお話になるよー。 まぁ、寝不足の補足やね


目が覚めればどこか知らない場所に来ていた

 

「トーリスリッター」

 

呼んでも応答がない。 不審に思って首元をさすってみると、寝るとき以外は外していないトーリスリッターがなかった。 寝てるときに拉致された? そんなことになれば気が付くし、何より家には侵入者撃退のトラップや感知式の結界もある。 それを気付かれもしないで俺を誘拐するということは...... いやな汗をかきつつ、俺は周囲を見渡す。 どこまでも闇が広がっており、明かりも何もない。 これが目隠しをしているとかなら別だが...... 動くしかないか? このまま待っていても増援などもないだろうし、最悪死人が出かねない。 周囲を警戒しつつ俺はその場を動き出した。 気配は何も感じないし、何処だかわからない。 最悪の条件だが、何もしないよりはましか。 しばらく歩いていると、こんな闇には不釣り合いな白い建造物が見える。 隠れる場所もないこの闇空間だ、俺は真正面から進んでいく。 白い建物は教会のようにも見えるが、よくわからない。 ただ、白い建物に進んで行くにつれて寒気がしてきた。 よくわからないが、進むごとに寒気は増している。 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 それを無視し、白い建物の扉に手をかけようとすれば何処からか短剣が飛んできた。 俺はそれを掴み取り、周囲を警戒する。 ()()()()()()()に囲まれているのは確かだ

 

「貴様、どうやってここへ来た」

 

何処からともなく声が聞こえる。 声から位置の特定は無理だな。 とりあえず今は油断を誘いつつ、会話だな

 

「どうやって、と言われても気が付いたらここに居た。 っていうところか?」

 

「戯言を」

 

同時に何方向からも短剣が飛んでくるが、それをすべて大げさに避ける。 ギリギリで避けたように見せかけたのだが、相手が現れる気配がない。 そう簡単には行かないか。 尚も続く短剣投げだが、せっかくの目印を失うわけにはいかないので常に視界のどこかに白い建物をいれておく。 それにしても

 

「本当ににここは何処なんだ」

 

「本当に知らないのか?」

 

俺のつぶやきに反応してか、そう問うてくる短剣投げの主。 この間も短剣投げはやめないのだから、本当に困る

 

「さっきも言ったように気が付いたらここに居たんだ」

 

「・・・・・・なら悪いことは言わん、ここから立ち去れ」

 

そう言うや否や、短剣の投擲がぴたりとやむ。 それを不審に思いながら、警戒を解かずに話を続ける

 

「どういうことだ? 立ち去れと言っても周りは闇、ただ白い建物が見えたからここに来ただけだ」

 

「問題はない。 ここは夢のようなものだ、いずれ醒める」

 

言いたいことだけ言って、気配はさっさと去ってしまう。 夢のようなもの、ねぇ...... さっきの短剣投げの言葉を鵜呑みにするなら、ここは夢世界なのでいつかは冷める。 確かに夢、つまり意識だけなら結界も察知されないし、トーリスリッターを持っていないのも頷ける。 だが、情報が少なすぎる。 そして、この白い建物はあの短剣投げの大切な場所。 離れていけば戦闘になる可能性はないだろうが、情報は欲しい。 どうするか迷っていると、いきなり扉の前に現れる影が一人

 

「ハサン?」

 

ハサンは扉を開け、中に入っていく。 さっきの短剣投げが止めないところを見れば、ハサンは仲間? ということはまさか

 

「ハサンたちの総本山てことか? いや、それよりハサンを」

 

ハサンを追って扉に手をかけようとするが、またも飛んでくる短剣。 それを今度は弾きながら、ドアを開けようとする

 

「させるか!」

 

「クソ!」

 

今度こそ姿を現したのは、数人の仮面をかぶったものたち。 その仮面には見覚えがあった

 

「やっぱりハサン関係か!」

 

「知っていると見えるが、警告をしたのにもかかわらず初代様の住居を踏み荒らそうとした罪、ここで清算してもらうぞ!」

 

数人が飛びかかってくる。 こんな事てる場合じゃないんだがな! 魔法は使えるようで、呪相密天でとびかかってきたやつらを吹き飛ばす

 

「俺が用があるのは、俺の知ってるハサン。 呪椀を持つハサンだ!」

 

そう言って扉を開ける。 まず感じたのは強烈な寒気。 これまで感じたことのない、強烈な()だった。 だが、固まっている場合ではなく、その場を飛びのく。 直後、頬を風が撫でるような感覚がした

 

「っ...... ハァ、ハァ.......」

 

「マスター殿!?」

 

良くは分からないが、あのままそこに居れば確実に死んでいた。 ハサンの力を借りながら、俺は体を起こす。 呼吸が乱れて息苦しいが、ただ前だけを見据える。 すると、その声は突然聞こえてきた

 

-汝は何を望んでここに来た-

 

鐘が鳴るよう音が聞こえたが、その質問に答える

 

「望んでここに来たわけではないが、そうだな...... 今度は間違えずに進めるだけの力を」

 

多分俺の予想が間違っていないのならこの声の主は.......

 

-愚かな。 身の丈に合わぬ力は破滅を生む、それが分からぬ汝ではあるまい-

 

「言ったはずだ、今度は()()()()()()()()()()()()だ。 強大な力が欲しいわけじゃない」

 

-フッ...... 面白い。 本来ならこのようなことはあり得ぬが、汝はここに来たのだ。 ならば、そのような力があると証明して見せよ-

 

「言われなくても」

 

そう言った途端、姿を現したのは。 大きな角の付いた髑髏の仮面と胸部に髑髏をあしらった装飾のある甲冑を身に纏った大男。 グランドアサシン、山の翁、初代ハサン・サッバーハだった



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第十四話

何時もの通り、感想についてからー

初代様に立ち回りもくそも、真正面から首切られそう(笑)

考えれば考えるほど、理樹君の周りの戦力は異常。 まぁ、理由はどうあれ理樹君自身が力を悪用しないとわかっているからですが。 逆に、今の段階で一撃入れられたのなら修行する必要ないんじゃないですかね(震え声

雑種君ねー、目覚めるのねー、どうなるだろうねー


山の翁との最初の邂逅以来、俺は毎日のように夢でハサンたちの総本山に訪れていた。 やることは単純、山の翁と剣を交えるだけ。 といってもこっちの一撃は届かず、俺は無残にも死体の山を重ねるだけなのだが。 幸いなのは、ここが夢の世界ということ。 首を切られ、意識がブラックアウトした次の瞬間には山の翁の前に立っている。 この感覚に慣れないが、山の翁から言わせれば慣れなくていい感覚らしい。 それに慣れてしまえば人として大切なもの、人ではなくなってしまうとのこと

 

「死合の最中に考え事とは、余裕だな」

 

「常に違うことを考えていないと、くっ...... 貴方に飲まれそうでね!」

 

軽々と振るっている大剣の一撃は非常に重く、たまに受け流し損ねるときがある。 山の翁がそう振るっているのもあるが、単純に俺の技量不足だろう。 トーリスリッターを使っていないとしても、夢で全く同じものを用意してもらっているのだから。 最初の頃は酷いものだった。 刀で受けようとすれば、そのまま斬り殺され真っ二つ。 変な受け方をすれば、刀が折れて腕が切られ最悪そのまま死亡コースだ。 そう考えれば、日を経るごとに死合の時間は長くなってきている。 呪腕、つまりうちのハサンからも感心されていた。 そもそも、他のハサン、ここに来た時最初に出会った百貌さんや、静謐さんなどから言わせれば山の翁は尊敬や畏怖の感情があるだけで、手合わせなどする気も起きないらしいが

 

「それは素晴らしい心がげだが、そんなものでは足元が掬われるぞ」

 

「ッ!?」

 

その言葉と共に、足払いを仕掛けてくる山の翁。 今までの死合の中でそんなことを一度もしてこなかったので、突然のことでほんの少しだけだが動きが止まってしまい回避し損ねた。 大きく体勢を崩した俺に、剣が振り下ろされそうになるが、鞘を地面につきたてることで転倒だけは何とか回避した。 そこから腕の筋力にものを言わせ、無理やり姿勢を戻し、その場から飛びのく。 飛びのいたが、額から血が流れ始める。 完全には避けきれなかったらしい

 

「考えることは確かに大事だが、考え事は今のように突然の状況に対応ができない。 それを心に刻め」

 

「・・・・・・はい」

 

このように時たまアドバイスのようなものをくれるが、とことん実戦形式なので心が休まらない。 そして、休んでいる暇もないのだ。 刀を構えると、そのまま山の翁に向かっていく

 

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~呪腕のハサン 視点~

 

マスター殿がここ(ハサンの根城)に来るようになってから...... いや、空間自体に引っ張られるようにですな。 ともかくようになってから、数週間が経過した。 マスター殿は、毎日のように初代様と手合わせをしている

 

「今日もか、呪腕の」

 

「百貌の」

 

ここの警護....... 一応、警護を担当している百貌のハサンが話しかけてくる

 

「ここにきて毎日初代様と手合わせとは、感心するな。 私は遠慮願いたいが」

 

「マスター殿は...... マスター殿は、強くあらねばと思っているような方ですからな......」

 

「・・・・・・そうか。 ふん、いいマスターに出会ったようじゃないか呪腕の。 だからか、()()()()()()()()()()()()手合わせをしてもらっていたのは?」

 

「・・・・・・そうだ」

 

マスター殿が来る少し前まで、私は初代様に手合わせを行ってもらっていた。 こんなことを言うのは恐れ多かったが、マスター殿のためでもあった。 いついかなる状況でも、マスター殿の力になれるように。 一人ですべてを行おうとするマスター殿だが、そうなっても影から手助けできる力を。 そう思って初代様にお願いしたのだ。 他のマシュ殿やリリィ殿、玉藻殿も同じ気持ちだ

 

「それにしても、日に日に動きがよくなってきているな貴様のマスターは」

 

手合わせが長く続くようになってきたのは事実だが、動きにも無駄がなくなってきたのだ。 元々、こう言ってしまうと自慢に聞こえるかもしれないが、マスター殿は小さい頃から私たちサーヴァントに戦闘訓練をお願いしてきた。 私たちサーヴァントは人間よりも能力的に見れば優れている。 そんな私たちがもう教えることがないところまで教えたのだ、だから同年代では敵になるものがいないと言っても過言ではない。 だが、初代様から見れば児戯に等しいだろうが。 あのお方は、元々底が知れないお方だから

 

「・・・・・・・」

 

「そろそろ終わりのようだな」

 

~呪腕のハサン視点 end~

 

------------------------------------------------------------------------

 

「見事だ」

 

意識が覚醒すると、山の翁から賞賛の言葉が送られた。 いや、いきなりすぎて意味が分からない。 確か最後は突きを放ったが、それに合わせて山の翁が剣を振るい首を刎ねられた記憶しかないのだが

 

「最後の一撃、決死の覚悟だったとはいえ我に届いたのだ」



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Reflection if編
第十五話


偉業達成...... 宝具でも獲得したんですかね?(白目 それか座に登録されたとか? どっちにしても、理樹君からしたら嬉しくないんやろうなぁ......

にしても、なんか新しいの書きたいな。 リリなのか、ダンまちか、シンデレラガールズか


「お前、結構背伸びたよな」

 

「・・・・・・・今までが小さかったんだ」

 

アースラの通路、偶然会ったクロノとそんな話をしていた

 

「まぁでも、確かに今までが低すぎたのかもな。 エイミィさんより低かったものな」

 

「どういう意味だ?」

 

こちらにいい笑顔を向けているクロノ、この話題は危険だと判断した俺は話題を変えることにした

 

「そういえば、お前も招待されてたよな? オールストンシー」

 

「雑な話題の変え方だな....... あぁ、プレシアさんが母さんを誘いに来ていた。 臨時支部もようやく安定してきたところだしな、合流するのは遅くなるだろうが行くさ。 君はどうするんだ?」

 

「絶対来いって言われたよ。 てかお前、俺の仕事の情報流すのやめろよ」

 

「なんのことやら」

 

シレっと知らんふりされたが、バニングス達(アイツ等)が俺の仕事の有無を知っているのはおかしな話だ。 こいつが情報を流したのだろうが、これだ。 まぁ、気にしても仕方のないことなので追及はしないでおく

 

「どちらにしろ、家族に話したら行きたがっていたしな。 休暇という形で、二日、三日とれたしな」

 

「まぁ、君は忙しいから良い機会なんじゃないのか?」

 

「お前もだろ」

 

なんてお互い苦笑しつつ、分かれ道なのでそのまま別れ歩いていく

 

------------------------------------------------------------------------

 

「はい、それではみなさん。 夏休みになりますが浮かれず、元気な姿で会いましょう」

 

「「はーい!」」

 

挨拶と共に先生は教室を出て行き、教室内は騒がしくなる。 夏休みどこに行くなどの話が出ているが、プライベートビーチなど海外だの流石金持ち学校と言わざる得ない。 そんな話を聞き流しつつ、俺は体を伸ばす

 

「なんかお疲れみたいやな、理樹君」

 

「疲れたというよりは、ためにもならない話聞いてたから退屈だった。 って言うだけだ」

 

話しかけてきたのははやてだ。 俺の席に歩いてくると、にこにこと嬉しそうに話しかけてくる。 何やら上機嫌なようだが、いいか

 

「それは一理あるけど、ここで言うことじゃないでしょ神木」

 

「そうだよ? せっかく夏休みに入ったんだから」

 

次に話しかけてきたのはバニングスと月村で、何やらこいつらもテンションが少し高い。 ・・・・・・なんで?

 

「たのもー!そして、理樹にダーイブ!!」

 

「させんわ!」

 

教室のドアを派手に開けて登場したのはアリシアで、俺に飛びつこうとしていたがはやてによって阻止されていた。 いやホント、なんでそんなにテンション高いの?

 

「夏休みだから、だと思うよ?」

 

「なるほどね」

 

なのはの苦笑交じりの言葉に、俺は納得する。 昔なら俺もテンションが上がっただろうが、今はそれほどでもないのだが。 さて、帰りにもなったのにもかかわらず、俺の席の周りにはいつものメンバーが集合した。 何故か、帰りにもかかわらず、何故俺の席の周りに集まったのか不思議だ

 

「それじゃあ、明日についてよ!」

 

「かつてないくらいにはしゃいでるなバニングス」

 

「にゃはは.......」

 

ノリノリで明日の説明を始めたバニングスに、俺のつぶやきが聞こえたのか相変わらず苦笑しているなのは。 それはともかくとして、バニングスと月村の親が経営している会社が合同で建設している、遊園地やホテルなどの複合施設があるオールストンシーについての説明をしている。 本当はまだ建設中でありオープンはしていないのだが、一部のアトラクションや立ち入り禁止区画などはあるが関係者やその家族に向けたプレみたいなのを開催するのだ。 そして俺たちは、それに招待されている

 

「そこで関係ないって顔してるアンタ達!アンタたちも明日は行くんだからね、特に神木!」

 

「いや、分かってるから。 本当にテンション高いなお前......」

 

何て少し疲れて応待しつつ、話は進んで行った



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第十六話

感想ありがとナス!

アリシアはね、自由だからね...... 呪術で怪盗、新しい。 SAOはねぇ、長いしちゃんと見てないのよねぇ...... 原作も読んでないし。 もちろん、普通に面白そうな題材ではあるんですけどね。 シノン、かわいいんじゃ~。 まぁ、新作云々は気が向いたら。 気分屋なんで(遠い目 

ほ、ほら、小学生の頃を思い出しているのかも(震え声
休み云々は自衛隊こそなさそうだけど、よくよく考えたら国家公務員やし、政府自体が推奨しだしてるからあってもおかしくないかと自己完結


「流石に任務が長引いただけあって眠いな......」

 

「もー!ちゃんと相手してよ理樹!」

 

「そうは言ってもな......」

 

氷漬けとなった周りを見る。 ちゃんと許可をもらって結界をはっているとはいえ、そこそこ広範囲だ。 あまりやりすぎると解凍が面倒なのだ

 

「呪術もバリエーションが少ないからなー、もっと派手なのないの玉藻さん?」

 

「この小娘は、相変わらずわがままですね......」

 

今回の監督役ということで、アリシアの師匠でもある玉藻だ。 確かに呪術はバリエーションが少ないが、そもそもだ

 

「一応クロノやアースラ職員は知っているとはいえ、お前の呪術は局事態には秘密だ。 あくまでも魔法で襲われた時の時間稼ぎぐらいにしか考えてないんだから、派手さも何も必要ないだろうに......」

 

「それはそうだけどさー」

 

どうも納得していないようだが、アリシアも本気で言っているようではないようだ。 俺はアリシアの頭を撫でつつ、通信を開く。 さっきからコールが鳴り響いていたので、そろそろ出ないと通信の主が怒り出す

 

「はい」

 

『そろそろいい時間よ、切り上げて朝食にしましょう』

 

「あれ、俺もですか?」

 

「えー!理樹食べて行かないのー!」

 

何故か不満の声をあげるアリシアだが、玉藻を見れば仕方ないみたいな表情をしていた。 まぁ、今日は仕事が入ってる奴もいたので食事は各自にしたのでいいのだが

 

「いただいていきます」

 

『えぇ、そうしなさい』

 

それに何より、こうやって通信の主の方が怖かったのは言うまでもない

 

------------------------------------------------------------------------

 

俺とアリシア、玉藻の三人はプレシアさんの運転で、オールストンシーに向かっていた。 免許? もちろん地球で取ったちゃんとしたものだ。 フェイトやアリシア、アルフと一緒に旅行でも、そう思って免許を取り車まで買ったらしい。 親の行動力ってスゲーッて思わなくもないが、それを語っている時ちょっとお見せできない顔だったのでよく覚えている。 もちろん、俺は車の中で寝ようと思っていたのだが

 

「オールストンシーってどんなところなのかな理樹!」

 

「いやねアリシアさん? 俺寝たいんだけど......」

 

このように遠慮なく話しかけてくるアリシア。 玉藻は助手席でプレシアさんと喋っており、我関せず見たいな感じだ。 そのプレシアさんだが、何故かプレッシャーを感じる。 まぁ、アリシアを暇にさせるなってことでしょうね......

 

「アリサの話だと、結構いろいろなアトラクションあるみたいだけど」

 

「はぁ...... まぁ、ちょっとした資料見せてもらったけど結構メジャーなアトラクションが多いみたいだな」

 

「あとあと、水族館とかもあるんだよね?」

 

「らしいな。 まぁ、もともとそう言った所を複合施設にしたみたいだし」

 

「たのしみだなぁー!」

 

なんというか、歳相応にはしゃいで居るというか。 まぁ、実年齢から考えたら

 

「理樹」

 

冷たい声でよばれ驚いて見てみれば、親譲りのいい笑顔をしたアリシアが

 

「それ以上は、駄目だからね」

 

「なんのことやら」

 

俺は外を見るふりをして、誤魔化した

 

-----------------------------------------------------------------------

 

「これではやて以外は全員ね!」

 

そんな声と共に、俺やアリシア、プレシアさんと玉藻を出迎えたのはバニングス達だった。 おいおい、昨日よりハイテンションじゃないか...... アリシアと手を叩いてハイタッチしている面々に軽く絶望しつつ、玉藻と共にバニングスの両親と月村の母親に挨拶を済ませる。 元々来る予定ではなかったものの、誘っていただいたのだからお礼などは言わなければならない。 挨拶を済ませて戻れば、待ちきれないバニングスが口を開く

 

「さあ、行くわよ!」

 

「「おー!!」」

 

そんなバニングスの声に続くかのように、他の面々が返事をしてオールストンシーに突撃していく。 わーお、俺あの中に混じらないといけないのか

 

「俺保護者側に居ようかな......」

 

「マスター、そうもいかないみたいですよ?」

 

玉藻に指さされそちらの方向を向けば、俺が付いて来ないことに不満顔のバニングス達。 そしてなのはは、不安そうな顔をしていた。 俺は頭を掻きながら、渋々とバニングス達の後をついて行った

 



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第十七話

バニングスの父親の案内でまず向かったのは、水族館のエリア。 まぁ、見させてもらった資料でエレベーターに乗って地下に行き、そこからエスカレーターで移動とはなっていたが、まさか全面ガラス張りとは。 まぁ、海の中に通路を作っているのだから見せなきゃもったいないのも確かか

 

「これってどのぐらいの圧がかかってるんだろうか」

 

「え!? 気にするところそこなの!?」

 

なんて、海の生き物そっちのけで考えていたらみんなから総スカン食らったが。 いやだって、バニングスさんたちの計らいで説明してくれる案内員ついてるし、海の生き物に関してはそれ聞いてればいいかとも思ったしな。 気になったのだから仕方ない。 エスカレーター移動が終われば、水族館エリアに到着だ。 水族館エリアも結構広く、魚の種類も多いため見ていて飽きない。 水槽もでかく、魚の説明なども書いてあるのでそっちでも楽しめる

 

「神木、何でアンタ魚の方の説明文ばかり見てるのよ......」

 

「いや、こういう機会でもないとなかなか調べないだろ? 水族館によっては、こういう説明書きないんだし」

 

「それはそれで楽しみ方が違うような......」

 

楽しみ方は人それぞれなので、バニングスと月村の意見はスルーしておいた。 それに魚もちゃんと見てるしな。 スマホの通知の音がしそちらを見れば、予想通りの人物たちからの返信だった。 ・・・・・・クロノもユーノも似たような返信じゃねえか。 魚の写真やなのは達の写真を送り付けたのだが、どっちも要約すれば俺が写っていないことを言っている。 それを無視し、それまで送っていた倍の写真を短時間で取り送り付けてやった。 それも一枚ずつ。 今頃通知がうるさくて大変だろう、俺の知ったことではないがな。 一人で嫌がらせに満足しつつ、バニングス達から一定の距離を保ちついて行く。 あまり離れすぎるとうるさいしな。 水槽の配置などを見ながら、これも何か考えてるんだろうかなど思考を巡らせてみる。 通路は広くとられているから、混雑時でもゆったり歩けそうだが

 

「理樹君?」

 

「なのはか、どうした?」

 

前の一団から離れ、俺の隣まで来ていたなのはが不思議そうに声をかけてきた

 

「えっと、なんか難しそうな顔してたから考え事かなって」

 

「あぁ、この水槽の配置とかも何か意味あるのかなって」

 

「り、理樹君。 さっきからどこかずれてるよね」

 

流石のなのはも苦笑いだが、これにはちゃんとした理由もある

 

「んー、まぁずれてるのは分かってるけどさ、なのは達と同じ視点だと自由研究にならないだろ。 合同で発表ならまだしも、その予定ないし」

 

「い、言われてみれば」

 

それともう一つ理由はあるが。 流石になのは達のテンションについて行けない、というのもある。 俺の横で考え始めたなのはに苦笑しながら、周りを眺める。 海の生物など興味がなければ調べないので、ここはいいところだ。 一人でも着たいと思うが、ちと遠い。 まぁ、任務終わりに転送とかいろいろくる方法はあるのだが

 

「って、そうじゃなかった!?」

 

「どうしたいきなり」

 

考え込んでいたと思ったら、いきなり声をあげるなのは。 少し驚いたが、なのはに声をかける。 すると、とたん言いにくそうにし始めるなのは。 チラリと前の奴らの様子を伺うが、こちらに気付いた様子はない

 

「えっと、そのぅ......」

 

「まぁ、ゆっくりでいいぞ。 ちゃんと待つから」

 

「そ、その、一緒に写真撮らない?」

 

さっきまで自由研究の資料に使うのか、デジカメで写真を撮っていたが、少し気恥しそうにスマホを取り出しながら言うなのは。 それに驚きはしたが

 

「別に構わないぞ」

 

そう返事をする

 

「っ!うん!」

 

途端に嬉しそうな顔をするなのはに苦笑しつつ、近くの水槽により写真を撮る。 スマホの撮影なので少し近いが、まぁ、問題ないだろう。 なんか、なのはの手がブレブレのせいでスマホがめちゃ震えているがちゃんと撮れるのかこれ。 心配になって横目でなのはを見ると、顔を真っ赤にしてあわあわしていた。 ・・・・・・その反応はこっちまで恥ずかしくなるので、やめてもらいたいのだが。 なので、反対側を持ちブレを失くしてやる

 

「ほれ、撮ろうぜ」

 

「ち、チーズ」

 

撮った写真はなのはは顔を少し赤く染め、はにかんだ笑顔に、俺はどちらかといえば仏頂面のような感じだった。 俺って、こんな写真写り悪かったっけ? なんて少しショックに思いながら、なのはが喜んでいるのでいいかとも思う。 思うのだが

 

「おいそこの奴ら、数名除いて何生暖かい視線をよこしてやがる」

 

「「べっつにー」」

 

すごくムカついた。 その後アリシアと写真を撮らされたり、フェイト・テスタロッサが暴走したりと少し面倒だった

 

-------------------------------------------------------------------

 

「これがこの水族館の目玉の一つ、海鳴沖で発掘された巨大鉱石!」

 

「私たちの会社が、発見したの!」

 

「すごい!」

 

など周りは盛り上がっているが、俺はその鉱石を見続ける。 色からしてアメジストとかか? いや、それにしてはこの大きさってあり得るのか? どうにも疑問が残る

 

----------------------------------------------------------------

 

「水族館の後は、こっち。 地上の遊園地エリア」

 

「オールス東京でーす!」

 

テンションの高いバニングス夫妻について行くと、今度は遊園地エリアのようだ。 関係者のプレオープンみたいな感じだけあって、アトラクションのライド関係も一応は動かせるらしい。 いや、本当にすごいな

 

「ほら!ボーっとしてないで行くよ理樹!」

 

「早いから、アリシア」

 

アリシアに腕を引かれるが、その場で立ち止まる。 早すぎてバニングス達が付いてきていないし

 

「よーし、遊び倒すわよー!!」

 

「「おー!!」」

 

「いや、自由研究...... それにライド系とか一部のアトラクションはあまり動かせないって、今説明が......」

 

「任せたまえ!」

 

「いや、もう好きにして......」

 

力が抜けたのを見計らってか、アリシアが俺を引っ張り始める。 それに続き、バニングス達遊園地ゾーンに突撃し始めた

 

----------------------------------------------------------------

 

「元気すぎ......」

 

ライド系は観覧車以外全コンプ、ホラーハウスなどの歩いて回れる系も全コンプなど、すさまじいめにあった。 こっちは寝不足なので休ましてほしいと言っても、テンションが上がっているため誰も聞きやしない。 とりあえず、もうコーヒーカップはアイツ等とは絶対乗らん。 次があるかは分からんが。 コンプへの最終アトラクションである観覧車にバニングス達は乗っているため、ここには俺しかいない

 

「さて......」

 

さっきからうるさく鳴り響いていたが、出る暇がなかったため無視していたスマホを見る。 電話主は、クロノだった

 

「アイツがかけてくるってことは、急用か? だとしたら悪いことしたな」

 

そう呟きながら、俺は電話をかける。 すると、すぐにつながる

 

『もしもし』

 

「クロノか? すまん、出れなくて」

 

『いや、君も色々と忙しいだろう?』

 

「皮肉か。 それで、予定が分かっててかけてきてるんだ、急用なんだろ?」

 

『あぁ...... ちょっとした事件がな』



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第十八話

感想についてですが藤森君(悪落ちフラグは)ないです
これから、これからだから!


「江戸川区で起きた光る物体の墜落事故、ねぇ...... 確か朝のニュースでやってたな」

 

『あぁ、ここのところ連日廃車場や工事現場から車数台が忽然と姿を消していてな』

 

テレビ電話にしてあるので、そう言って映像を見せてくれるクロノ。 朝食のBGM程度としか見てなかったので、改めてニュースを見てみる。 夜に光る物体が墜落している映像だ。 そこは廃車場だったらしく、そこのトラック数台が忽然と姿を消しているらしい

 

「突然、ね。 工事現場の方は初耳だが?」

 

『盗難自体はこちらで独自に調べていたからね。 その盗難自体もこの次の日からということで、今回の事件と何ら関わりがあるとみている』

 

そう言って見せられたのは、恐らく工事車両が盗まれた分布図だろう。 結構手広く盗まれているようだが、日付を見れば墜落事故の次の日からだ。 だが気になるのは

 

「工事車両もそうだが、大型車ばかりだな。 数をそろえてどうするつもりなんだ?」

 

『それは分からないが...... ただ、、この盗難の現場で目撃されてる人物が一人』

 

そう言って次に見せられた映像には、女子高生が映っていた。 映像を見続けると、車に手を当てその手から光が発生したと思ったらそれが車に広がっていく。 明らかに、何か細工をしたのは確かだ

 

『そして、この女子高生からは未確認のエネルギーが検出された』

 

「異世界渡航者か。 これを俺に見せるということは?」

 

『近々動いてもらうことになる。 まぁ、今回の休暇はなくならないと思うから安心してくれ』

 

「えらくふわっふわだな」

 

そう言ってお互いに苦笑する。 それにしても異世界渡航者か、何も起きなければいいのだが

 

「なのは達には?」

 

『母さんとも相談したが、まだ伝えなくても、ということだ』

 

「了解。 情報は何か新しいものが出次第、逐次送ってくれ」

 

『了解した。 あぁ、それと今回のオールストンシー、楽しんでるみたいじゃないか』

 

「まぁ、見ていては退屈しないが...... どうしたいきなり」

 

仕事の話は終わりということなのか、何故かクロノがニヤニヤしだす。 すごくうざいのだが、一応話はきいておかないとな

 

『いや、母さんからこんな写真がな?』

 

そう言って表示されたのは、なのはとのツーショットをとっているときの写真やアリシアとの写真などだった。 リンディさん(あの人)何してくれてんの? 写真を連投した恨みか、ここぞとばかりにいじくってくるクロノだが全部無視して話を変えてやる

 

「あぁ、そうだった。 俺からも一つ報告というか、調べてほしいものがあるんだ」

 

『いやいや、騙されないぞ?』

 

「真面目な話だ」

 

睨みつけてやれば、クロノは渋々と表情を真面目なものに戻す

 

『なんだ?』

 

「オールストンシーの水族館エリア、そこにある展示品なんだが...... 海鳴沖に発掘された鉱石がある、それを調べてくれ」

 

『・・・・・・一応かけあっては見るが、どうしてだ?』

 

「俺もよく分からんが、なんか違和感を感じてな。 杞憂ならそれでいいが」

 

『ふぅ...... まぁ一応かけあっては見るが、期待はするな?』

 

「すまんな」

 

クロノとの通話を終了し、空を見上げる。 なのは達は何も感じなかったようだが、俺と玉藻はあの鉱石を見て顔を見合わせた。 普通の鉱石ではない、何故かはわからないがそう思ったのだ。 もちろん、この雰囲気に水を差すつもりはないのでなのは達に言ってないのだが

 

「本当に、なにも起きなければいいけどな......」

 

せめて、このオールストンシーの滞在期間くらいは

 

「さあ十分休んだわね!」

 

観覧車に乗り、遊園地エリアはコンプリートしたはずなのに、何故かテンションの高いバニングスがそう言ってくる。 非常に、非常に嫌な予感がする

 

「まぁ、休めはしたが......」

 

「もう一週よ!!」

 

「・・・・・・」

 

最早何も言うまいとバニングスの父親を見ると、白い歯をきらめかせていた。 あぁ、左様で...... なのはに手を引かれつつ、俺たちはアトラクションをもう一週したのだった



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第十九話

俺の表現力の問題なんですかねぇ......
神のこと言っているということは、前作から読んでいるのでしょうけど。 それにしたって、ねぇ? まぁ、受け取り方は人それぞれなんでしょうけど。 書きく気ががが

まぁ、俺のやる気云々は置いておいてちょっとした相談がありますので、もしよかったら新しい活動報告の方をよろしければ。 皆さんの意見待ってますー


「あぁ......」

 

夜、俺はうめき声をあげてソファーに倒れていた。 アトラクションを二周、それでもハイテンションなバニングス達に振り回され、歩き回らされた。 食い倒れツアーなどもしたか。 おかげで夕食は入らず、ずっとソファーで横になっていた。 マシュと玉藻は心配してか、俺にずっとついていてくれた。 リリィ? 俺の分まで大食いしてたよ?

 

「もう、元気すぎ......」

 

「皆さん、今日は特にテンションが高かったですからねぇ......」

 

「お疲れ様でした、マスター」

 

あぁ、玉藻やマシュのねぎらいが身に染みる。 バニングス達は、バルコニーで星を眺めているため本当に平和だ。 はやてもこの後合流ということで、今ははやて待ちだ。 はやてが来たら、女性陣は風呂に入ってくるらしい。 豪華な風呂なんだろうが、俺はもう少しゆっくりしてからだな。 そんなことを考えていると、ポケットの中のスマホが震える。 面倒に思いながらスマホの画面を見れば、クロノからだった

 

「・・・・・・もしもし」

 

『疲れていそうな声のところ悪いが、緊急出動だ』

 

「そらまた急だな」

 

ソファーから体を起こし、玉藻たちに目配せしつつバルコニーに向かって歩き始める

 

『はやてが襲われた。 リインフォースもいるが、状況が芳しくないらしい。 頼めるか』

 

「・・・・・・何が目的か知らんが、リインフォースがいて状況が芳しくないか。 転送頼む」

 

『了解した』

 

電話を切ると同時にバルコニーに出る

 

「玉藻とマシュはここで待機だ。 リリィには玉藻から声をかけておいてくれ」

 

「「わかりました」」

 

ただ事ではないと察したのか、なのはとフェイト・テスタロッサともう一人がこちらに近づいてくる

 

「理樹君?」

 

「転送まで時間がないから簡潔に言う、はやてが襲われた。 詳細はクロノから聞いてくれ」

 

そう言い終わると同時に、転送が開始された

 

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~はやて視点~

 

局での用事も終わり、すずかちゃんのお父さんの運転で私はオールストンシーに向かっていた。 すずかちゃんからのメールによると、みんな私を待ってくれているって言ってるし楽しみやった。 まぁ、アリシアちゃんは許さへんけどな。 なのはちゃんやフェイトちゃん、アリサちゃんにすずかちゃんは水族館エリアや遊園地エリアの写真を送ってきてくれたけど、何故かアリシアちゃんだけは理樹君とのツーショット写真が送られてきた。 そのせいで何度スマホを投げそうになったか

 

「あ、主?」

 

「んー? なんやリインフォース?」

 

「い、いえ、なんか黒いオーラが見えまして......」

 

アカン、リインフォースに心配させてしもうた。 リインフォースは何かと心配性やからな、気を付けな。 なんでもないと手を振りつつ、今しがたクロノ君から送られてきた内容に目を通す。 江戸川区で起きた光る物体の墜落事故、それと工事現場や廃車場から車が盗まれる事件、これに関しての参考人の画像。 ピンク色の髪をした高校生ぐらいの人やな。 そんなことを考えていると、車が突然大きく揺れる

 

「うわ!?」

 

「ご、御免ねはやてちゃん、リインフォースさん。 危ないトラックがね」

 

「すみません、車を止めてもらってもいいですか?」

 

どうやら危ない運転をしたトラックがいたみたいでそれを避けたみたいやけど、リインフォースが突然そんなことを言いだす

 

「いやいや、ここ高速やそんな急に」

 

「さっきのトラック、運転席に人がいませんでした」

 

険しい顔のリインフォース、何かを感じ取っているのかもしれない。 でもそれよりも、私とすずかちゃんのお父さんはリインフォースの言葉にぎょっとした。 無人のトラック? いや、そういうのが実験で走っているって言うのは知ってるけど、まだ実用的じゃないはず。 すずかちゃんのお父さんもそう思ったのか、急いで車を止める。 直後、轟音と共にその危険運転をしたトラックが横転する。 なんとかぶつからずに済んだけど......

 

「主、俊さん、急いで外へ!トラックからガソリンが!」

 

その声を聞き、すぐに車を乗り捨て外に出る。 走って逃げると、爆発と共に熱風が。 幸い、範囲外に居たからよかったけど......

 

「主、すぐにバリアジャケットを。 敵が来ます!」

 

「ん、分かった。 月村さんは、離れててください。 私とリインフォースでアレの対処を。 八神はやてから東京支局へ、みはら四丁目で緊急事態発生!私とリインフォースで対応に当たりますので、応援とモニタリングをお願いします!」

 

『了解です』

 

すぐに東京支局に連絡を入れ、結界を発動させる。 ツヴァイがおらんと少し不安やけど、リインフォースもおるし何とかせえへんと

 

「そこに居るのは分かっている、姿を現せ」

 

リインフォースが一点を見据え、そう言うと姿を現す。 あのピンク髪の女子高生とは違うけど、協力者なんやろうか?

 

「八神はやてちゃんに、リインフォース......」

 

「何故私たちの名を」

 

少し目が細くなるリインフォースだけど、相手はそんなのを全く気にせず私を見る。 ううん、私じゃない。 見てるのは...... 夜天の書?

 

「私の目的ははやてちゃん、貴方の持ってるその本、ロストテクニクスデータストレージ、闇の書。 それを貸してもらいに来たの」

 

「お話やお願いでしたら局の方で伺います!」

 

「すぐ返すから、抵抗しないでくれると嬉しいのだけど」

 

そう言って変形したショベルカーのアームで横転したトラックを持ち上げ、ガトリングの銃口がこちらを向く。 実力行使、ってわけかいな!そう思った瞬間、ガトリングが火を噴く

 

「主、そのままバリアジャケットを。 その間の時間は私が」

 

「ごめんな、お願いリインフォース!」

 

リインフォースが私の前に立ち、プロテクションを展開する。 その間に私は騎士甲冑を展開する。 うぅ、やっぱりまだツヴァイの補助が必要やな。 ガトリングにトラック、そのすべてをリインフォースはプロテクションで軽々と受ける。 それにしても、何で動かないんや? プロテクションで軽々と受けてるので効いてないのは分かってるはずなのに、少女は動く気配がない。 少しおかしく思ったが、リインフォースから声がかかる

 

「主、バリアジャケットの展開はどのくらいで終わりそうですか?」

 

「もう少しやけど......」

 

「そうですか。 なら少し、強引に!」

 

使っていなかった左腕に魔力をため、それを少女に向かって撃ちだすリインフォース。 結構な魔力砲やったけど、大丈夫なんやろか? 土煙が上がるが、それが晴れると同時にバリアジャケットも展開し終わる

 

「「なっ!?」」

 

結構な魔力砲、だが傷一つついていなかった。 おかしい、おかしすぎる。 いくら正体不明の力で強化してたとしても、無傷は...... そんな私たちをよそに、少女は涼しい顔をしていた

 

「突撃!」

 

その声と同時に、変形した重機がこちらに走ってくる。 リインフォースと顔を見合わせて空に逃げるも、変形したアームや砲弾が飛んでくる

 

「はぁ!!」

 

気合の入った掛け声と共に、リインフォースが拳を振り抜く。 聖杯で強化された拳の威力はすごく、アームがへしゃげてる。 でも、こっちに飛んでくる砲弾が!プロテクションで受けるも、ガリガリと削られている感覚がする

 

「なん、なんや!」

 

「主」

 

辛くも避けるも、次の弾が。 リインフォースが助けに来てくれるけど、後ろからワイヤーが!

 

「リインフォース!!」

 

「はぁ!!」

 

縛られるも、魔力の解放で無理やり抜け出すリインフォース。 でも、リインフォースの方に気を取られたため、防御が遅れてしまう

 

「きゃあ!」

 

「主!数が多すぎる!!」

 

バランスを崩して、そのまま落ちてしまう私。 バリアジャケットのおかげで怪我はないけど、そのままワイヤーに捕縛されてしまう

 

「あかん、ミスった......」

 

私が捕まったのを見てか、リインフォースまで捕えられてしまう。 絶体絶命やと思ったけど

 

「ん? このワイヤー切れないか。 あまり使いたくなかったが、まぁいい」

 

拘束が弱まったと感じると同時に、私の前に影が落ちる

 

「遅くなった、はやて、リインフォース」

 

~はやて視点 end~

 



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第二十話

活動報告の方にこの作品の今後について書いてありますので、よろしかったらご意見を
期限は来週ですかね?


転送が終わると同時に周りを見渡せば、少し離れたところではやてとリインフォースが戦っていた 

 

「トーリスリッター」

 

「やはり、魔力のようなものは感じませんね。 それと管理局のデータベースにアクセスしましたが、前歴者等の履歴はありません」

 

「どちらにしろ、ピンク髪の女子高生の協力者か。 ん?」

 

各種データの計測をトーリスリッターに任せていると、少し目を離しただけなのにあっという間はやてとリインフォースがワイヤーに捕縛されていた。 はやてもツヴァイがいないとはいえ細かい調整は利かないものの魔法が使える、それにリインフォースに至っては聖杯のバックアップがある。 その二人がこうも簡単に捕まるとなると

 

「それだけの実力なのか、はたまた未確認のエネルギーの影響なのか。 トーリスリッター」

 

「セットアップ」

 

バリアジャケットを展開し、捕縛されているはやての救出を試みる。 刀で切りつけるものの

 

「ん? このワイヤー切れないか」

 

強度が異常で、刀では切れなかった

 

「あまり使いたくなかったが、まぁいい」

 

一度目を閉じ、意識を切り替える。 次に目を開けば、予想通りの光景が広がっていた。 そこら中に、それこそワイヤーはもちろんはやてにまで出てきた点と線。 唯一出てないのは、空と月だけか。 軽く吐き気を覚えるが、それよりもはやての救出が先だ。 はやてを切らないように細心の注意を払いつつ、ワイヤーを切断する。 そして、そのまま敵を見据える

 

「遅くなった、はやて、リインフォース」

 

「すまん、助かった」

 

リインフォースははやての拘束が解かれると同時に、ワイヤーを引きちぎり自力で脱出した。 強度がかなりあったはずなのだが、聖杯のバックアップあるしな

 

「それで、アレは?」

 

敵である少女を見据える。 どこか存在が希薄なような気がするが

 

「わからない。 夜天の書を貸してくれといわれてな、こちらが断りそのまま戦闘に。 という感じだ」

 

「夜天の書を? ・・・・・・まぁいい、それも拘束してゆっくり聞き出そうじゃないか...... 時空管理局、アースラ所属の嘱託魔導士の神木理樹だ。 一応、管理外世界での魔法使用、局員への攻撃、その他もろもろで身柄を拘束させてもらう」

 

刀の切っ先を向けるが、表情に変化がない少女。 それどころか変形した重機をさらに変形させ、攻撃してくる。 なんか、後ろのはやても避ける気配ないし動けないじゃん。 ガトリングでの攻撃だが、そのすべてを刀で切り裂く。 幸い、これは直死の魔眼を使わなくても切り裂けるようだ。 弾切れか、はたまた様子見か、ともかく攻撃が止む。 その隙にはやてに声をかける

 

「おいはやて、戦闘中だ。 ボーっとするな」

 

「え、あ、は、はい!」

 

「いや、どうしたんだお前は......」

 

体ごと後ろを向いて注意するわけにも行かないので、顔を後ろに向けそう注意したのだが、様子がおかしい。 とりあえず、リインフォースはその両手をあげてヤレヤレみたいに首を振るのやめろ。 ともかく、はやても気を入れ直したようなので、少女の拘束に移ることにした。 といっても、気配を消して後ろに立つだけなのだが

 

「呪相、氷天」

 

「なっ!?」

 

何時もの通り、氷天で動きを拘束する。 まぁ、寒いかもしれないが我慢してもらうほかないだろう

 

「・・・・・・貴方、何者なの?」

 

「その言葉、そっくりそのまま返そう」

 

睨みつけるわけではないが、さっきの余裕そうな顔から目を細める少女。 どうにも、余裕があるな。 何か隠し玉を用意しているのか、それともピンク髪の高校生(お仲間)が来るのか。 ともかく、時間稼ぎだろうが何だろうが乗ってやろう。 こちらも情報を引き出したいしな

 

「それで、君は何者だ?」

 

「・・・・・・」

 

ダンマリか。 はやてやリインフォースも近くで警戒してるのが分かってるのか、最早目を閉じてだんまりだ。 少女が黙っているあいだ、念話で移送の話をしていると結界内に侵入してきた感覚があった。 リインフォースやはやても感じたのか、こちらの方を向く。 まぁ、向こうからきてくれるなら有り難いが

 

「この反応、キリエじゃない? アミティエ!」

 

どうもこの反応、仲間じゃないな。 となると、仲間がキリエというやつで、これから登場するのがアミティエ。 関係までは分からないが

 

「なっ!?」

 

「消えた!」

 

「・・・・・・」

 

ことは一瞬だった。 本当に一瞬で、氷で拘束していた少女の気配が消えたのだ。 元々存在も希薄だったし、ここで姿を現していたのは何か特殊な技術、そう言うことだろう。 リインフォースもはやても驚いているようだが、俺はその来るであろうアミティエという人物に備えていた。 というか、遠くでかすかだがエンジン音が聞こえるし。 ともかく、暴れ始めた変形した重機を壊しますかね

 

----------------------------------------------------------------

 

「大丈夫ですか、はやてさん! ・・・・・・って、アレ?」

 

「申し訳ないですが、もう終わってますよアミティエさん」



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第二十一話

皆さん、活動報告の方ご意見ありがとうございました。 一応、オリジナルの方書く方向で動きたいと思います。 と言っても、そんなに話数はとらないんでしょうけど......
Detonationの方円盤が発売しましたら、しばらく置いてから気が向いたら書きますので......
オリジナルはifとして、一応残すつもりではいますが。

さて、本編の方、どうぞ


「すまんクロノ、ピンク髪の女子高生の協力者とみられる少女に逃げられた。 代わりと言っては何だが、協力者が一人」

 

『協力者?』

 

気合が空回りしているアミタさん(本人がそう呼んでくれと言っていたので呼ぶことにした)は放っておきながら、クロノに通信をいれる。 案の定、何も説明もしていないクロノは首をかしげていた

 

「ピンク髪の女子高生...... は長いから、キリエ・フローリアンの姉で、アミティエ・フローリアンさんだ」

 

『・・・・・・なるほど。 ともかく、詳しい話は後だ。 そのキリエ・フローリアンを発見した。 今はアルフとザフィーラが追跡しているが、君とはやても応援を』

 

「了解。 なら向かいながら、報告でもしますかね」

 

クロノとの通信をいったん切り、はやてとリインフォース、アミタさんに再度説明する

 

「というわけで、話は聞いていたな。 これよりアルフ、ザフィーラと合流して、キリエ・フローリアンの確保に移る。 アミタさんもそれでいいですね?」

 

「うちの妹がすみません!」

 

「いやまぁ、俺に言われても......」

 

頭を下げてくるアミタさんだが、俺に言われてもなぁ...... ともかく、俺とリインフォースは空を飛び、はやてはアミタさんが乗ってきたバイクで現場まで向かうことにする

 

「よくよく考えれば、そのバイク自前のものじゃないですよね?」

 

「えっと、廃棄場らしきところにあって、まだ使えそうだなぁと......」

 

「無断で持ち出し、スピードオーバー、結界はって他の車いないからいいけど進路無視、おまけにノーヘル。 違反盛りだくさんだよな」

 

「まぁ、そうだが......」

 

「早すぎー!」

 

「まぁ、はやてが楽しそうで何より」

 

「どこが楽しそうに見えるんやー!!」

 

アミタさんにしがみつきながら、叫ぶはやては無視してクロノに通信を開く

 

「それでクロノ、報告の続きだが。 容疑者のピンク色の髪の女子高生改め、キリエ・フローリアンだが、目的はやはり夜天の書だったようだ」

 

『だが、夜天の書は管理者以外は』

 

「使えないはずなんだが、そこは彼女たちの技術でできるそうだ」

 

そう言いながらアミタさんを見れば、こちらを見て頷いていた

 

『むぅ、そうか』

 

「まぁ、夜天の書自体も、本当の目的を達成するのに必要な道具でしかないらしい。 本当の目的は、父親の病気を治すのと惑星エルトリアの再生らしい」

 

『惑星エルトリア?』

 

『ちょっと軽く調べてみたけど、こっちではヒットしないよー?』

 

「彼女たちの故郷の星らしいが......」

 

エイミィさんは軽くと言っているが、あの人も調べるの早いからな。 精密な調査をそのままエイミィさんにお任せし、報告に戻る

 

「その惑星エルトリアだが、環境汚染による資源の枯渇や様々な要因でもはや住んでる人もごく少数らしい。 そのエルトリアを再生させるため、夜天の書の中に眠る永遠結晶というものが必要らしい」

 

『永遠結晶? そんなものが夜天の書に?』

 

「執務官、そのことなんだが...... 夜天の書の中にそういうものがある、というのは実はわからないんだ。 私自身、夜天の書を管理はしていたがデータは膨大だ。 闇の書の汚染によって破壊、または改変されたデータもあるわけで、大半は彼からもらった聖杯で直せたんだが......」

 

『永遠結晶については、分からない、ということか......』

 

ということらしい。 アミタさんの方も、永遠結晶がどういうものなのか、というのは分かっていないらしい。 どちらにしろ、アミタさんの妹キリエ・フローリアンを確保しなければ何もわからない

 

「それと、彼女たちのの能力だが魔法とは全く別体系らしい」

 

『まぁ、薄々は分かっていたが。 それで?』

 

「相性が悪すぎる。 魔法を解析すれば、俺たちの魔法は彼女たちには意味をなさない。 ()()()()()()は、未知数だけどな。 少なくとも、戦ったはやてたちの魔法は解析されていいようにやられていた」

 

『・・・・・・なのは、フェイト、藤森にはその旨伝えておく』

 

「一人の確保にほぼ最大戦力か......」

 

『やりすぎだと思うか?』

 

「いや、そうは思わない。 どちらにしろ、魔法は最小限にしたほうがいいだろうな。 やるなら、解析する暇を与えずに一発で気絶させるくらいに考えないと」

 

『伝えておこう。 それとはやてだが、少し離れたところで降ろしてくれ』

 

「? どういうことだ?」

 

『ツヴァイを転送する』

 

「そう言うことか。 了解」

 

クロノとの通信を終了し、前を見る。 相手がバイクで走行していることも考えると、もう少しで見えてくるはずだが。 と、その前に

 

「アミタさん、はやて」

 

「了解。 アミタさんもありがとうございます」

 

「いえいえ、気にしないでください」

 

リインフォースはそのまま先行させ、俺はアミタさんとはやてに指示を出すためにその場に着地する。 はやては安全な場所でツヴァイが来るのを待っているということなので、アミタさんに声をかけ出発しようとする

 

「アミタさん」

 

「ええ、行きましょう。 ですが、貴方は何者なのですか? キリエが調べたデータの中には貴方は...... もっと言えば、リインフォースさんは」

 

「・・・・・・」

 

多少のずれというか、なんというか。 たぶんこっちの世界に惑星アルトリアがないように、彼女たちの世界はおそらく

 

「とにかく行きましょう」

 

「そう、ですね。 すみません、突然ぶしつけなことを」

 

「・・・・・・」

 

そのまま俺は飛び立つ。 バイクの音は聞こえているので、アミタさんはちゃんとついてきているようだ

 

 



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第二十二話

~なのは視点~

 

「もう少しで予定地点です」

 

『目標は予定通りの進路でそちらに向かっている、その場で待機して捕縛を』

 

「「了解!」」

 

理樹君がはやてちゃんの救援に向かい、今回の騒ぎの説明をクロノ君からされた。 少しニュースにもなっていたけど、廃車場からのトラックなどの盗難。 それは、ピンク髪の女子高生のお姉さんが起こしたものだった。 理樹君には事前に伝えられてたみたいだけど...... 

 

『それと、神木やはやてからの追加情報だ。 彼女たちが使う能力だが、こちらの魔法と相性が悪い。 魔法の使用は最小限、もし戦うことになれば一撃で気絶させるように、とのことだ』

 

「ど、どういうことクロノ?」

 

理樹君のことを考えていたら、クロノ君は通信を切らずに追加情報を出していた。 魔法との相性が悪い? 私とフェイトちゃんは顔を見合わせ、フェイトちゃんがクロノ君にそう質問する

 

『詳しくは分からないが、魔法を解析するらしい。 実際、はやてやリインフォースはそれが分からず苦戦したようだ。 だから魔法の使用は最低限、決めるなら一撃で、だ』

 

「「了解!」」

 

はやてちゃんやリインフォースさんが苦戦、そう聞いて私とフェイトちゃんは気を引き締める。 フェイトちゃんには上空で待機してもらい、私は地上から。 そしてもう一人、織君はバックアップということで隠れてもらっている。 織君が容疑者のピンク髪の女子高生のお姉さんを見てから、ちょっと様子がおかしかったけど大丈夫なんだろうか? フェイトちゃんは大丈夫って言ってたけど......

 

「マスター」

 

「うん、ありがとうレイジングハート」

 

少し考えるのに集中していた私を引き戻してくれたのは、相棒であるレイジングハート。 遠くだけど、トラックも見える位置まで来ていた。 それを教えてくれたんだと思う。 気持ちを切り替え、今は目の前のことに集中する。 魔法は最小限と言われたけど、車や重機などを破壊して止めるわけにはいかない。 なので、タイヤをバインドでロック。 横転したら大変だからレイジングハートに計算をしてもらい、適切なタイミングでバインドをかける。 少し危なかったけど、ピンク髪の女子高生のお姉さんも止まったみたいだった。 上空で待機していたフェイトちゃんに目配せをしつつ、ピンク髪の女子高生のお姉さんもバインドで拘束しておく

 

「時空管理局です、そのまま動かないでください」

 

フェイトちゃんがバルディッシュを構え、ピンク髪の女子高生のお姉さんに近づいていく。 何とかうまく拘束できたけど、気は抜けない

 

「フェイト・テスタロッサちゃんと、高町なのはちゃん」

 

「貴女は、私たちのことを」

 

私たちの名前を知っていた。 その事実に少し驚きはしたけど、はやてちゃんのことを襲った人と共犯なら知っていてもおかしくない。 そう思ってデバイスを構える。 直後、重機が変形して私に銃口を向けてくる。 攻撃は地面をえぐるけど、魔力を少し解放し、すぐに視界を確保する。 ピンク髪の女子高生のお姉さんは街頭に飛び乗っていた。 バインドが一瞬で外された。 バリアジャケット? のようなものに変身すると同時に指パッチン、直後私のいる地面が盛り上がる。 失敗した!そう思ったときには、ワイヤーに拘束される。 引きちぎろうにも、このワイヤー硬い!ワイヤーを何とか引きちぎろうとしつつ、フェイトちゃんの方を見ると、戦闘が始まっていた。 あのピンク髪の女子高生のお姉さん、フェイトちゃんに何か言ってる? 少し離れているから内容までは聞き取れないけど、フェイトちゃんの動きが少し鈍ってる

 

『フェイトちゃん!』

 

シューターを展開しつつ念話でフェイトちゃんに呼びかけると、こちらの意図を理解したのか頷いてくれる。 シューターを発射しつつ、バインドの準備。 決めるなら一撃で、その言葉を思い出し。 砲撃の体制をとる

 

「非殺傷スタンモード」

 

『織君もバインドをお願い!』

 

私とフェイトちゃんのバインドは一度使った以上、解析されてる可能性がある。 長期戦は不利、織君に頼んでバインドを追加する

 

「エクセリオン、バスター!」

 

チャージ時間はなかったけど、その分の威力不足を補うためにカートリッジを一発使ったエクセリオンバスター。 過剰ともいえる攻撃だけど、多分。 土煙が晴れるけど、ほとんど無傷だった

 

「んもー!話の途中なのに!」

 

そう言うと同時に使っていた剣を空に投げると、二つに分裂する。 剣を両手に持ちながら突風を起こし、フェイトちゃんに向かっていく。 フェイトちゃんは突風を防ぐために目を閉じてしまう

 

「フェイトちゃん!」

 

急いで助けに行きたいけど、ワイヤーは切れずそれどころか変形した重機は私に向かってきていた。 織君はさっきから念話をしても応答がないし

 

「マスター!」

 

レイジングハートの声に反応し前を見上げれば、ショベルカーのバケットが私を押しつぶすように迫っていた。 咄嗟にプロテクションを展開して押しつぶされるのは阻止したけど、真っ暗で何も見えない

 

「レイジングハート、外の戦闘は?」

 

「継続...... いえ、フェイトさんに何かお願いしているようです」

 

「織君は!?」

 

ちょっと力が増してきた。 これは、どうにかしないとまずい

 

「いまだ待機場所から動いていません」

 

「・・・・・・もう!!」

 

魔力消費が激しいからあまりやりたくなかったけど、織君は動かない。 なら、私がやるしか!

 

「レイジングハート、バリアジャケットパージ!!」

 

「了解、パージブラスト」

 

瞬間、バリアジャケットをパージしその余波で、ワイヤーは切れ、バケットも吹き飛ばす。 さっき見た感じだと、魔法は解析されていると思ってもいいと思う、レイジングハートも同じ考えみたいだし。 なら、これで!シューターを発射するけど、普通のシューターじゃない、これは閃光弾!驚いたみたいだけど、それで終わりじゃない!さっき引きちぎったワイヤーの中で一番長いのを手に取り、ピンク髪の女子高生のお姉さんに向かって振りかぶる

 

「てぇぇぇぇい!!」

 

上手く巻き付いた!からの

 

「せぇーの!!!」

 

思いっきり振り回す。 ちょっと力強くなっちゃったけど、問題ない、はず

 

「な、なのは!?」

 

「大丈夫だったフェイトちゃん?」

 

「う、うん。 大丈夫ではあったけど......」

 

バリアジャケットを修復しつつ、ピンク髪の女子高生のお姉さんに近づく

 

「な、なんて力......」

 

「何を話していたかわかりませんけど、家のフェイトちゃんは優しい子なので、いじめないで上げてくださいね」

 

「力になれるように頑張りますから。 話、聞かせてください」

 

「二人ともすごいのね......」

 

そう言われて、嬉しいは嬉しいけどなんか複雑な気持ちだった

 

「でも」

 

拘束が甘かったのか銃を向けてくるピンク髪の女子高生のお姉さん。 だけど、そのくらいは予測していた。 レイジングハートを使い、銃ごと弾く。 そんなに強く弾いたわけじゃなかったけど、銃は明後日の方向に飛んでいってしまう

 

「キリエ、やっと見つけました」

 

「アミタ」

 

飛ばしたのは私じゃなかったみたい

 

なのは視点 end

 

 

 

 




なのはがワイヤーぶん回しを目撃したちょっとした主人公視点

「アレじゃあマジカルじゃなくて、フィジカルじゃね?」

「いやまぁ、身体強化の魔法は使ってますから、一応はマジカルかと。 あと、それはなのはさんの前では言ってはいけませんからね、マスター」


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第二十三話

「さて、俺も...... いや、大丈夫みたいだな」

 

アミタさんがキリエ・フローリアンの方に向かっていくのを見届け、変形した重機の後始末もあるので俺も動き出そうと思ったがその必要はなかった。 応援の守護騎士たちが到着したようだった。 よく見ればいつも使ってるデバイスではなく、新武装のようだ。 確か新武装のテストだと言っていたが、それをそのまま持ってきたのか。 はたまた、アミタさんたちの能力に対応するためのものか。 どちらでもいいが、変形した重機も鎮圧したようだった。 後はキリエ・フローリアンを捕縛して終わりだが、守護騎士たちが取り囲んでいるがその瞳には諦めが見られない。 アミタさんも説得してるけど、アレはだめだな。 事実、俺がキリエ・フローリアンの方に飛ぶと何かしたのか守護騎士は抑えようとしていたが吹き飛ばされる。 そして早く動いてはいるが、目で追える速さだ。 なにより

 

「そんなに闘気むき出しにしていたら、それをもとに気配で追える」

 

「なっ!?」

 

結構なスピードと全体重を乗せた蹴りはそこそこ重かったが、何も押し返せないほどではない。 俺はそのまま腕を振りかぶり、押し返す。 まさか押し返されると思っていなかったのか、キリエ・フローリアンは驚いた表情で固まっていた

 

「リインフォースは一緒に彼女を抑えるぞ。 それ以外ははやての護衛だ、ぼさっとするな!」

 

俺の声を受けて、はやての近くに行く守護騎士。 リインフォースは、俺の隣に

 

「さて、お前はどうだリインフォース。 彼女の動き、目で追えたか?」

 

「いや、すまないが」

 

「なら捕縛を頼む。 解析されてもいいように多量の魔力とオーバーなくらいの数をな」

 

「了解した」

 

短く会話をし、俺はキリエ・フローリアンに突っ込んでいく。 流石にスピード勝負は分が悪いが、向こうの狙いははやて。 そのはやてが持つ夜天の書だ。 そっち側に行くのを阻止すればいい

 

「貴方は、いったい、誰なの!!」

 

「時空管理局所属、嘱託魔導士の神木理樹。 色々話があるんでな、連行させてもらう」

 

流石に真正面から攻撃を受ければただでは済まないので、攻撃を受け流す。 さっき真正面から受けたの、まだ痛いしな。 それでなくとも、初代様の攻撃のせいで受け流す癖がついてるのだ。 リインフォースの方もそろそろ準備が整っただろうし、そろそろ本格的に捕縛に移るか。 今回は受け流すのではなく、手首をつかみそのまま後ろに回る

 

「いたたたたた!?」

 

「リインフォース」

 

「そのまま捕縛する」

 

かなりの魔力を使ったバインドが、かなりの数キリエ・フローリアンにかけられる。 いやぁ、自分でもリインフォースにお願いしたがここまでするとは。 まぁ、そのおかげもあってキリエ・フローリアンは身動き一つとれないようだが

 

「さて、このまま管理局まで来てもらおうか」

 

「っ......!」

 

「すみません神木さん、お手数をおかけしました」

 

「気にしないでくださいアミタさん、仕事なので。 アミタさんも」

 

「はい。 今回の事は、皆さんに謝らないといけませんから」

 

これで今回の事件も終わりか、そんな空気が流れているがまだ終わりじゃない。 参考人はもう一人いるのだ

 

「なんだよアレ......」

 

そんな声が聞こえた。 へぇ、いたのか気が付かなかったがまぁいい。 アイツが見上げている方向を見ると、馬鹿でかい()()がこちらに向かって飛んできていた。 やはり終わりではなかったようだ

 

「アレは、この後に使うはずだった機動外殻? イリス、何を考えて」

 

やはりお仲間のようだが、作戦にはなかったようだな。 イレギュラー(オレやアイツ)対策、と言った所か。 ともかく

 

「守護騎士、新装備の方は?」

 

「すまねぇ、アタシはバッテリーが厳しい」

 

「この剣、消耗が激しいからな。 だが、数度は行けるだろう」

 

「私は問題ない」

 

「私も」

 

ならあれの迎撃メンバーは、ヴィータを抜かした守護騎士、俺とリインフォースにアミタさんか。 戦力としては十分だろうか? 機動外殻と言って言てアレの戦闘能力が未知数だが、何とかなるだろう

 

「ならなのは達はそのまま、はやての護衛だ」

 

「待って理樹君、私たちも!」

 

「私だってまだ!」

 

「ダメだ。 はやてのように多種多様な魔法が使えるなら足止め等出来るだろうが、お前たちの魔法は解析されてる。 それに、キリエ・フローリアンを捕縛する際に多量の魔力を使っただろう。 だから駄目だ。 それに、敵の戦力が未知数すぎる。 どちらにしろはやての護衛は必要だ」

 

それだけ言い、守護騎士とリインフォース、アミタさんの方を向き直る

 

「さて、どうするか」

 

「あのぐらいの大きさですから、多分どこかにコアがあるはずです。 それが探し出せれば」

 

「ならシャマル、それは任せる」

 

「わかった」

 

「私はあの二つを運んでいる空を飛ぶ奴をやろう」

 

「ならザフィーラとシグナム、アミタさんはあのごつそうなのを。 俺はあの身軽そうなのをやる」

 

それぞれどの機動外殻を狙うかを決め、飛び去って行く。 それにしても、遠くで降ろされた機動外殻を見る。 街への被害、今回は甚大だな

 

「まぁなんというか、やはりか」

 

さっきの変形した重機やワイヤーと同じく、トーリスリッターの刀では切れない。 横目でリインフォースとアミタさんの方を見るが、二人は特に苦戦している様子はなかった。 まぁ、アミタさんは同じところから来たんだし当たり前だ。 リインフォースはザフィーラと同じ様にガントレットつけているからか、調子よさそうだな。 まぁ、俺のほうに誰もつけなかったのは直死の魔眼(コレ)があるからなんだが。 それにしても、全身からなるビーム砲の攻撃に、腕の収束ビーム。 空を飛んでるからいいものの、地上で戦っていたらひとたまりもないな

 

「まぁでも、データは十分だ。 そろそろ、終わりにさせてもらう」

 

「そうしましょう、マスター」

 

腕から撃ちだされたビームをスレスレで避け、機動外殻に接近していく。 全身のビーム砲を撃ちだし、腕を振るっているようだが動きが緩慢すぎる。 まずは、腕からだな。 腕の付け根の線をなぞり、切り離すと同時に細切れにして行く。 学習しているのか、全身のビームの弾幕が濃くなる。 ただまぁ、濃くなったところでコレだけの大きさだ。 逃げ道はいくらでもある。 一旦高度を上げ、上空に避難する。 ビームを避けつつ、砲門の位置を確認する

 

「トーリスリッター」

 

「了解」

 

腕を破壊した右側面から再度突入しつつ、顔や体の砲門を破壊していく。 上空から見てたが、足の砲門は射角が足りないのか動いてなかったしな。  それにしても右半分の体と顔の砲門はすべて破壊したが、これでも動くんだな。 結構な数の砲門破壊したし、内部でコアなどに熱が伝わってそうなものだが。 ともかく、こうなれば残りの左腕と砲門を破壊してコアを。 そう考えていたのだが

 

『神木!』

 

「クロノ?」

 

左腕を切断すると同時に、クロノから通信が入る

 

『はやてをモニターしていたんだが、突如モニターできなくなった。 状況はどうなってる!!』

 

「はやてが?」

 

そう言われはやての方を向くと、はやてを襲った少女とはやてたちが戦っていた。 そうか、こいつらに紛れて!

 

「クソが!!」

 

はやてたちの魔法は解析され、あの少女には攻撃が通らないだろう。 足止めだって、キリエさんと違い凍らせても意味がないのは俺の氷天で実証している。 応援に行きたいが、目の前のコイツを片付けないと。 横目ではやてたちの方を見れば、アイツがはやてたちの方に応援に入ったようだが。 どちらにしろ、長くは持たない。 だが、ここで目を離したのがいけなかった

 

「まだ攻撃手段残ってたのかよ!!」

 

目の前に顔が来たと思えば、くちばしのようなものが開き中から砲門が現れる。 チャージが開始され始める。 俺はその砲門に刀を突きさし、攻撃を止ましたのはよかったのだがくちばしが閉じる。 そして小爆発が起こり始める

 

「マスター、コアの方に異常な熱反応が!」

 

「チッ!!」

 

攻撃をやりすぎたのか、はたまた自爆か。 どちらにしろ、絶体絶命ではある

 

「初代様、お借りします」




昨日はねー、メタギアTPPやりすぎて眠かったんですよねー。 更新できずに申し訳ない。
まぁ、それもあるけど本心としては、この頃筆が進まないんですよねこの作品。 もしかしたら、勝手ながら休載するかもしれないので、そこらへん申し訳ないですがご了承ください。 一応、まだ書く気ではいますが


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第二十四話

少し更新速度落とします、一応Detは終わらせるつもりですので。 それ以降は、ちょっとわからないですかね......


『夜天の書は敵の手に渡ったか......』

 

「すまん、油断しすぎだった」

 

『いや、今回の件に関しては僕たちに不手際だ、すまない』

 

モニターに映るクロノはこちらに頭を下げていた。 今回の件、高速道路上でのはやて襲撃及び、キリエ・フローリアン捕縛に関してだ。 はやての襲撃の方は俺が増援に入ることで抑えたが、キリエ・フローリアン捕縛の方は失敗だった。 あの機動外殻とかいうやつの自爆に巻き込まれ、それが終わるころには夜天の書ははやてから奪われていた

 

「この借りは必ず返させてもらうがな」

 

『それはもちろんだ。 それはそうと、君のデータは大変役に立ったと技師たちが喜んでいた』

 

「役に立ったようで何よりだ」

 

役に立ったというのは、戦い中に収集していた機動外殻のデータのことだろう。 再生速度、学習能力、攻撃の脅威度。 その他細かいデータを、戦闘中に取っていたのだ。 あれぐらいの大きさはないものの、アレと同じ様なものが出てこないとは限らない。 実際、重機型の機動外殻はそんなに時間も必要としないのはアミタさんも言っていた。 流石にあれぐらいの規模ともなれば、それなりに時間は必要なようだが

 

「新型装備の方は?」

 

『装備の更新、改修は二、三時間で終わるそうだ。 ただ、フェイトのバルディッシュは時間がかかるようだが』

 

「ならなのは達は休ましとけ。 俺とリインフォースは二人、イリスと呼ばれる少女とキリエ・フローリアンの捜索に当たる」

 

そう言ってベランダから飛び立とうとすれば、クロノから待ったの声がかかる

 

『待て待て待て、確かに捜索は大事だが君の方も更新と改修だ』

 

「必要ない。 俺には直死の魔眼(コレ)があるからな」

 

『それでも、だ。 自爆なんかもあるかもしれないんだ、ディフェンサーくらいは持っていけ』

 

「・・・・・・了解」

 

『さて、個別の報告はこんなものにしよう。 ぶっちゃけ、報告を個別に受けるのが面倒だ』

 

「お前ホントぶっちゃけるよな......」

 

----------------------------------------------------------------

 

『さて、情報の共有はこのくらいで大丈夫か?』

 

「「はい」」

 

クロノが個別に報告を受けるのが面倒(半分ぐらいは本気)とのことで、今回の件に関しての合同の報告会が行われた。 と言っても、どっちの件もかかわっていた俺からすれば目新しい情報はない。 合同の報告会が終われば、これからについてだ。 イリス、キリエ・フローリアンの捜索はツーマンセルで探すこととなった。 と言っても、目標の反応はないし、しらみつぶしに探すことになるのだが。 時間を決め、交代で休みを取ることとなった。 後は、そうだな。 ユーノが後程合流することぐらいだろうか

 

『こんなところか?』

 

「だろうな。 装備に関しても、更新が終わり次第順次受け取りになる。 それじゃあ、捜索隊は捜索を。 先に休憩をとる方は休憩を。 解散」

 

それぞれが準備のためいったん、この場を後にする。 俺は

 

「なのは」

 

「えっと、何かな理樹君」

 

「とりあえずちょっと来い」

 

なのはの手を引いて、ベランダへと連れ出す。 というのも

 

「キリエ・フローリアンの件、気にしてるのか」

 

「・・・・・・にゃはは、やっぱり理樹君にはわかっちゃうんだね」

 

気が付いたとは言っても、報告会の時ちょっと表情が沈んでるように見えただけだ。 本当は放っておいてもよかったのだが、まぁ、心配だったのだ

 

「助けなきゃいけない人を助けられなかった、そう思っているのか」

 

「うん....... 確かにキリエさんがやったのはいけないことだけど、その想いは本物だった。 こんなことになる前に、違う形で協力できたんじゃないかなって」

 

「・・・・・・協力は確かにできたんだろう、それを彼女が求めればな。 いや、こんな形で求めなければな。 管理局を通じて、俺たちに要請をしてもよかったわけだしな」

 

そう言いながら、空を見上げる。 相変わらず星々が輝き、夜空は綺麗だった。 それにしても、おかしな話だ。 俺がこんな話をするなんてな、自分のことを棚に上げて

 

「うん......」

 

「まぁ、()がないわけじゃない。 なら、今回が駄目でも次で助ければいい。 そうだろう?」

 

視線を空からなのはに戻し、なのはの頭をなでつつ問いかける。 少し驚いたようだが、徐々に決意が固まった顔をして返事をする

 

「うん、そうだね。 にゃはは、アリサちゃんにも元気づけられたけど、理樹君にも元気づけられちゃった。 それじゃあ私、いくね!」

 

「あぁ」

 

どうやら、今回は放っておいてもよかったようだ。 まぁ、流石親友というか。 ともかく、なのはがそう決めたのなら俺も気合を入れないさないとな

 

「理樹君」

 

俺がそんなことを考えていると、元気よく歩き出したなのはが不意に足を止める

 

「ありがとう」

 

そう俺に伝え、また歩き出していく。 その言葉に俺は少し面食らったが

 

『神木』

 

「ん? なんだクロノ」

 

クロノからの呼び出しのようだ

 

『アミティエ・フローリアンの調書を』

 

「あー、了解」

 

すっかり忘れていた。 彼女の希望ということもあり、俺が調書を受け持つことになったのだ。 アミタさんを探せば、部屋のソファーで座っていた

 

「すみません、お待たせして」

 

「いえ、気にしてませんよ。 それにしても、なのはさんと仲、いいんですね」

 

アミタさんは悪気はないのだろうが

 

「そう、見えますかね」

 

俺はついそう答えてしまう。 アミタさんは不思議そうな顔をしていたが、肯定していた。 アレだけ傷つけて、なんて言葉もよぎったがそれでも、みんなに求められここに居ると決めたのは、ほかならぬ俺自身だ。 くだらない考えを追い出し、改めて調書を開始することにした

 

「それでは調書を開始します。 ここでの会話は録音され、証拠として残りますのでそこだけご理解ください」

 

「はい」

 

背筋を正すアミタさんに、俺もつられて背筋を正す

 

「それでは、貴方のお名前を」

 

「アミティエ・フローリアンと申します。 良ければアミタ、とお呼びください」

 

----------------------------------------------------------------

 

改めて分かったことだが、やはり惑星エルトリアは存在しなかった。 調書中、別口の通信でエイミィさんがそう語っていた。 永遠結晶については、リインフォースから。 手元に夜天の書がないから詳細までは分からないが、やはり記憶にないとのこと。 ただ、夜天の書にも厳重に封印されている区画もあり、もしかしたらそこにデータが眠っているのではないかとのことだった。 そして、一番クロノたちを驚かしたのはフェイト・テスタロッサや闇の書事件だ。 キリエ・フローリアンが事前になのは達のことを調べたのは知ってはいたが、事件の詳細はこちらの世界と大きく異なっていた。 プレシアさんとアリシアは次元の海に沈み、リインフォースは空に帰っていた。 だが、俺は特に驚かなかった。 だって、()()()()()()()()()()だったからだ。 俺がプレシアさんと契約せず、アリシアを救わなければ。 聖杯をリインフォースにあげなければ。 他にも様々な要因があるだろうが、一番は俺やアイツがいなければ、だな

 

「だからこそ、キリエの情報になかった貴方に驚いたんです。 貴方は本当に、何者なんですか」

 

「・・・・・・」

 

調書も終わり、今回の事件に関しての協力を取り付けたアミタさんが俺に向かってそう言ってくる。 前にも言われたが

 

「本来なら存在しなかった存在。 まさにイレギュラー、ですかね」



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第二十五話

せっかくのGWですし、更新をば

いやー、MGSV TPPが忙しくてですね(目逸らし


「大型の魔力反応が三つ」

 

『あぁ。 それと、キリエ・フローリアンが別々に行動を開始した。 僕たちの班はキリエ・フローリアンを、他の各員は大型魔力反応と交戦中だ』

 

「今本部と通信をつないだ」

 

『すまないが頼む』

 

そう言って通信を切る。 大型の魔力反応が確認されたのが、少し前。 すぐに魔力反応は動きだし、同時にキリエ・フローリアンも行動開始。 大型の魔力反応とキリエ・フローリアンの位置が近いことから、仲間として迎撃に当たる。 現在、オールストンシーで交戦中か。 それにしても、なぜオールストンシーに? 捜索に出て、みんなの位置はばらばらだったはずだ。 なのに、なぜ大型の魔力反応も今はロストしたがキリエ・フローリアンもオールストンシーを目指したんだ。 オールストンシーに何かがあるのか? 何か...... 何か? いやまさか、もしかしてあの鉱石が? モニターを操作しつつ、クロノに頼んでいた件の結果を探す。 あった。 だめっだたようだが、クロノたちが独自に調べたのか? あまり調査は進んでいないようだが、結果はやはりと言うべきか。 普通の鉱石ではないようだった。 とすると、クロノたちはここに向かったのか? なのは達は...... 交戦中か。 大型の魔力反応と、やはりというか機動外殻が出てきたようだ。 機動外殻は、キリエ・フローリアンの捕縛の時倒した奴だ。 こちらは問題なかったようだが、大型の魔力反応の方は.......

 

「・・・・・・チッ」

 

あの三人に似ていた。 なのはとフェイト・テスタロッサと、はやてと

 

「装備の方は?」

 

「ごめんね、まだ調整が...... 君の魔力に合わせるのが難しくて」

 

「いや、元々俺が頼んだことなので」

 

俺が出撃をせずに情報を集めていたのは、現在俺が本局の技術部に居るからだ。 クロノに言われた通りディフェンサーを取りに来たのだが、俺のディフェンサーはまだ調整が終わっていなかった。 いや、正確には終わっていたのだが、俺が機能の追加とその追加した機能が使えるように調整を依頼したからだ。 元々、全員の装備の調整などをしていたのだ。 俺が最後でいいと頼んだのもあって、俺が最後に。 だが状況は刻一刻と動いている。 正直言えば歯がゆい。 だが、この調整が終わらなければ困るのも事実だ。 そんな中、現場の方で動きがあったようだった。 大型の魔力反応は沈黙したようだが、オールストンシー内部で強力な反応を確認。 クロノも動いたようだが...... クロノの方のモニタリングが切れた?

 

「マリーさん調整は?」

 

「最終段階に入ったけど......」

 

「なら、装備を。 後はこちらで調整します」

 

「ま、待って!トーリスリッターがいくら優秀でも、実戦で調整なんて!」

 

「やるしかないんですよ。 突入隊、クロノたちを突然モニターできなくなりました」

 

「!本当は技術者として中途半端なのを渡したくないけど、これを」

 

そう言って、装備を渡してくるマリーさん。 その顔はとても悔しそうだ、悔しそうなのだが頼んでないものまで渡される

 

「・・・・・・ストライクカノンは」

 

「私からのおまけ」

 

そうは言うが、それの調整をしていたから遅れたのでは? とも思わなくもない

 

「調整は六割程度まで済んでる。 これから君の魔力と合わせて調整しようと思ってたけど......」

 

「後は実戦で調整します。 いけるな、トーリスリッター」

 

「もちろんです」

 

「気を付けてね」

 

その声を背に受け、輸送ポートまで走る。 さて言ったのはいいが、相当面倒なことになりそうだ。 だが、やるしかないのも事実で。 転送が開始され、目を開ければそこはオールストンシー結界内。 救急車があるところを見ると、一時的な救急のテントか。 クロノの姿を探せば、すぐに見つかった。 エイミィさんがクロノに縋り付いて泣いていた。 まるで死んだかのようだが、一応重症だと聞いている

 

「あの、エイミィさん?」

 

「来たか」

 

控えめに声をかければ、反応したのは目をつぶっていたクロノだった

 

「悪い、装備の調整がな。 その調整も、実戦で最終調整だが」

 

「すまない、しくじった」

 

クロノの話を聞くと、イリスたちを捕えたのはいいが一歩遅かったということ。 それと、イリスは人工知能ではなく人間で、肉体を得たということ。 にわかには信じがたいが、結果はこの通りだ。 クロノは負傷し、イリスは上空に

 

「苦しいだろう、もう眠っとけ。 後は俺たちで何とかする」

 

「すまないが、頼む。 それと指揮権を君に」

 

「・・・・・・了解した。 とりあえず、これが終わったら療養ついでにお前もオールストンシー楽しもうぜ」

 

「ふっ、そうだな」

 

クロノに背を向け歩き出す。 指揮権が移されたことにより、情報を見直さなければいけない。 大型の魔力反応を持った三人は、逃げ出しイリスの元に集まっているようだ。 今なら捕縛は容易いだろうが、クロノの話を聞く限り特殊な攻撃もあるため並みの局員は...... イリスが手心を加えたのか、それともただ大丈夫なだけだったのか。 キリエ・フローリアンが無事なことを考えると、アミタさんは捕縛に向いているだろうが...... これからの作戦を考えつつ歩いていると、なにやらシャーリーとなのはが話しこんでいた

 

「なのは」

 

「理樹君」

 

声をかければ、少しバツが悪そうにするなのは。 まさかコイツ、戦闘による疲労と魔力消費が激しかったから安静にしているようにと言われたはずだが出撃しようとしていたのか? いやそれよりも、何故ここにシャーリー

 

「シャーリー、なんでここに?」

 

「神木さん、お久しぶりです。 それはその、なのはさんに頼まれていた件を......」

 

なのはを見るが、顔はそらしたままだ。 シャーリーに聞けば、アミタさんに頼んでフォーミュラ、アミタさんたちが使ってる技術をストライクカノンに搭載したらしい。 もちろん、そんなもの作ってくれと依頼した覚えはない。 なのはの独断、というわけか

 

「レイジングハート、完成度は?」

 

「六割程度です。 ですが、運用は可能です」

 

「・・・・・・」

 

頭を抱える。 こいつの場合、言っても聞かないだろう。 なら

 

「行くぞ、なのは」

 

「え? い、いいの?」

 

なのはが意外そうに聞いてきたが、時間がない。 いつの間にやら、現在いる局員総出でイリスたちの捕縛作戦が実行されようとしている。 これ以上被害を増やすわけにはいかない

 

「俺としては、人のことを言えないがその装備で出てほしくない。 傷の処置も応急処置程度だろうしな。 でもお前、待機しろって言われて待機できるのか?」

 

「ううん、出来ない。 諦めて後悔するのも、それで誰かが悲しんでるのを見るのも、もう嫌なの」

 

「少しは、自分の身も労われよ。 行くぞなのは」

 

「理樹君も、だよ」

 

「トーリスリッター、セットアップ」

 

「行こう、レイジングハート」



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第二十六話

全開の最後のセリフで死亡フラグなら、もうとっくに死んでるからヘーキヘーキ

ゴールデンウイークで筆が乗ってるので更新です


なのはを連れて、飛び立つ。 局員は...... 全員配置についてるか。 間に合うか? いや、間に合わせる。 何とか間に合わせはしたものの、イリスは飛んでる物体に拳を打ち付ける。 その瞬間、身体がぞわぞわしだす。 なんだこの感覚、体の中で何かが暴れてる? 局員も違和感を感じている。 ということは、これがクロノが言っていたのか!魔力を体の中から外に向かって大量に放出することで、それを吹き飛ばす。 違和感はなくなったが、断続的にそれは続いている。 これじゃあ、局員は戦闘自体無理だな。 俺の余波で、局員たちのも何とか吹き飛ばせたようだが、戦闘が始まればそんな余裕はなくなる。 なのはは...... フォーミュラが上手く働いてるみたいだな

 

「俺となのは、アミタさん、リインフォース以外は全員退避だ。 ここに長くいれば、先発隊のような状況になるぞ!!」

 

局員は退避していく中、はやてと守護騎士、フェイト・テスタロッサとアイツはこの場に残っていた。 たぶん、魔力量によってもスピードが違うのだろう

 

「お前たちも退避だ」

 

「いやや」

 

はやてがはっきり否定する。 その瞳はすでに覚悟が決まっており、なのはと同じ目をしていた。 リインフォースを見るが、首を振っている。 フェイト・テスタロッサとアイツを見るも、首を振っている

 

「はぁ...... どいつもこいつも、人が被害を最小限にしようとしてるって言うのに」

 

その間にも、やはり何かしらの力が働いているのか体がぞわぞわする。 今はリインフォースが俺と同じように体の中から外に魔力放出をやっているようだが、戦闘になればそうもいかないだろう。 あまり使いたくはなかったが

 

「初代様、お力をお借りします」

 

目を閉じ、いつの間にやら持っていた仮面をつけ目を開く。 一歩踏み占めるように足を前に出せば、甲冑の音がする。 どうやら成功したみたいだな。 あの時はとっさに使ったが、実戦では初だ。 初代様の力、初代様が使っていた大剣と甲冑、外套を借りるのだが、正直言って荷が重すぎる。 だが、初代様が認め貸してくれたのだ。 それに応えるような働きはしなければならない。 ともかく、外套を外し、はやての方に投げる

 

「付けておけ、普通の状態よりはましなはずだ」

 

「あ、うん...... そうじゃなくて、その姿!」

 

「後だ。 後リインフォース、お前にはこれを」

 

「ストライクカノンか。 それに魔力の調整を...... あぁ、確かに私とお前にしか使えないな」

 

「そういうことだ。 待たせたな、イリス」

 

「別に、こっちは貴方の力の解析をしてたから、待ってないわよ。 それにしても、本当に厄介ね貴方」

 

それまで沈黙していたイリスたちに声をかければ、そんな答えが返った来た。 睨みつけるような視線をよこしてくるところを見ると、俺の力の解析は出来なかったみたいだな

 

「そのふざけた魔力量もそうだけど、貴方のその力全く解析できないんだもの。 キリエが調べた情報にもいない、貴方いったい何者なの?」

 

「それに答える義理はないな」

 

「それもそうね。 貴方が何者かなんてもはや関係ない、だってこの子が目覚めてしまったのだから」

 

淡々とそうはなし隣に控えていた、金髪の子を見る。 確かに、この体の違和感はあの子が目覚めたことによって始まった。 あの子がカギとなるんだろうが、様子がおかしい。 さっきから一言も発しないのだ。 それどころか、ピクリともしない

 

「・・・・・・その子は、何だ」

 

「そうねぇ...... 本当なら応える義理はないのだけど、教えてあげる。 この子こそ、そこに居る王様たちやキリエが探し求めていたもの。 ま、キリエの願ったものとは真逆の力を持ったものなんだけどね」

 

あっけらかんと言い放つイリス、他の面々は驚いているようだが俺は薄々感づいていた

 

「・・・・・・自分の目的のために、キリエ・フローリアンを利用したのか」

 

「お互い様よ。 キリエも私を利用したし、私もキリエを利用した。 心から願った思いがあるなら、他人を困らせても仕方がない。 そうでしょ?」

 

「なんて、勝手な!!」

 

「あ、アミタさん!落ち着いて!」

 

後ろが騒がしい。 たぶん、アミタさんが激高してイリスに殴りかかろうとしてるんだろうが、それをはやてや他の奴らが止めてるんだろう。 心から願った思いがあるなら、他人を困らせても仕方がない、ね。 その言葉に、俺はこれまでのことがフラッシュバックする。 まさにその通りだ、だが聞かねばならない。 たとえ予想が付いていたとしても、その答えを

 

「お前の目的は」

 

「復讐よ。 私はこいつにすべてを奪われた、だから私もこいつのすべてを奪うことにした。 私はもともとエルトリアで暮らしていた人間だった。 だけどこいつに、命も家族も、大切なものを全部奪われた。 だから復讐する」

 

「・・・・・・」

 

それはまるで自分を見ているようで、身体から力が抜ける。 俺もこうだった。 玉藻たちが居たからここまで酷くはなかったが、一歩間違えばこうなっていた。 それをまざまざ見せつけられた気分だった

 

「なんとなくわかるわ、貴方もそうなんでしょ? 似たような境遇、ならあなたに私を止める権利はないはずよ」

 

「・・・・・・」

 

その通り、その通りなのだが

 

「理樹君......」

 

そう声が聞こえ、大剣を握っていない左手が温かくなる。 見ればなのはの顔が近くにあり、左手が握られていた。 体に力を入れ直し、イリスを見据える

 

「あぁ、お前の言う通りだ。 確かに似たような境遇だ。 俺もかつて復讐に走って、周りを傷つけた。 自分の目的のために。 周りから差し伸べられた手をはねのけ、周りの思いを踏みにじり進んだ。 その果てに復讐を遂げたさ。 だが、俺とお前は決定的に違う。 歩んできた道は確かに似たようなものだろうが、違うさ。 こんな俺でも、手を差し伸べてくれた家族(サーヴァント)がいた、おせっかいな(アリサとすずか)奴らがいた、恩人(はやて達やプレシアさん達)がいた。 なにより、裏切り踏みにじったのにも関わらず隣に居てくれと言ったやつがいた。 だから、お前と俺は違う」

 

「・・・・・・何それ、自慢?」

 

一瞬だけ悲しそうな顔をしたイリスだったが、それもほんの一瞬。 俺を見下すように見ている

 

「いや、事実だ。 そして一つだけ言っておいてやる。 どんなに手を払いのけようとな、諦めないやつは諦めないぞ。 手を取ってくれるまでな。 そして、手を差し伸べてくれる奴は近くに居る」

 

「話が過ぎたわね」

 

「確かに俺はお前を止める権利はないが、それでも止めさせてもらう」

 

剣の切っ先をイリスに向け、睨みつける

 

「なのは、ありがとな。 もう大丈夫だ」

 

そう、小声でお礼を言う



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第二十七話

「ユーリ、行きなさい!」

 

そうイリスが言うのと同時に、ユーリと呼ばれた金髪の少女がこちらに突っ込んでくる。 速度は大したものだが、見切れない速さではない。 ただ厄介なのは、あのディフェンサーみたいなものだな。 なのはのフォーミュラカノンの砲撃も完璧に防ぎきっている。 ただ気になるのは、俺の斬撃は完璧に回避を選んでいる。 俺の力が解析できないため操っているイリスがそう選択しているのかは知らないが、確実に俺が剣を振るえば距離を開けている

 

『なのは、少し負担が大きくなるが聞いてくれるか?』

 

『なに、理樹君』

 

なのはの方にユーリと呼ばれた少女を行かせないように牽制しつつ、なのはに念話をする

 

『コイツ、俺が攻撃しようとすると距離を離すだろう?』

 

『うん。 私の攻撃はディフェンサーみたいなので防ぐけど、理樹君の攻撃特に剣で切りつけようとする攻撃は必ず距離をとるね』

 

どうやらなのはも気が付いていたようで、俺の言いたいことが分かっているらしい

 

『距離を離さないように砲撃の密度を濃くすればいいんだね?』

 

『もしそれをしてなのはのところに行くようなら、俺の援護をしようとはせずに退避を選んでくれ』

 

『大丈夫。 理樹君を信頼してるから。 だから、理樹君も思いっきりやって!』

 

その言葉を行動で示すかのように、砲撃だけでなくシューターも使い始めるなのは。 心なしか、なのはの体がさっきよりも発光しているような気がするが

 

「信頼、ね。 ならそれに応えなくちゃな!」

 

俺も速度を上げ、これまで以上にユーリと呼ばれた少女に接近戦を仕掛ける。 それが分かったのか、それとも多少の被弾を覚悟したのかユーリと呼ばれた少女もこちらの懐に飛び込んでくる。 腕を伸ばしてこちらをつかもうとするが、それを勢いよく蹴り上げそのままの勢いを利用し回転しながらディフェンサーのようなものを一枚切り裂く。 爆発と同時に煙が上がるが、それもなのはの砲撃によって吹き飛ばされる。 なのは狙いに切り替えたのかなのはの方に高速で飛ぶが、横から進行方向をふさぐ形で剣を刺しこむ。 その際ディフェンサーのようなものを巻きこみ、残り二枚。 そこになのはの砲撃が直撃する。 なのはの魔力とフォーミュラによって威力のあげられたそれは、ユーリと呼ばれた少女を巻き込み大爆発を起こす。 これで倒れてくれればいいのだが、それほど甘くはないだろう。 体を駆け巡る不快感が強くなる

 

「あぁ...... あああああああ!!」

 

「なに、アレ......」

 

「わからん、分からんがあのユーリって子の意思じゃないことは確かだろう」

 

おぞましいほどの魔力が解放され、ユーリと呼ばれた少女の周りに赤黒い稲妻が落ちる。 横目で別の場所で行われてる戦闘を見れば、全員がこちらを見て驚いている。 その中で、イリスは薄く笑っていた。 アイツ、これが何かを知ってるみたいだな。 今すぐにでも捕縛して聞きたいところではあるが、ユーリと呼ばれた少女から目を離すのは危険だ。 実際、白かった衣装は赤く染まり、瞳の色も変わり始めている。 変化はそれだけではない

 

「っ!? みんな!?」

 

はやての悲鳴のような叫び声が上がりそちらを見れば、耐性があった守護騎士やフェイト・テスタロッサ達までも先発隊と同じ様な状況になり始めていた。 それどころか、海からも棘のようなものが現れ始めていた。 もちろん、俺の体からも

 

「っ!? 理樹君!!」

 

なのはの声がやけに遠く感じると思えば、物理的に距離を離されていた。 見れば、金色だった瞳は緑色になり、衣装は完全に赤くなり、文様まで浮かび始めたユーリと呼ばれた少女に頭をつかまれなのはから距離を離されていた。 目を離したのがいけなかったな。 冷静に分析しながら、念話で指示を飛ばす

 

『はやて、リインフォース。 お前らは守護騎士とフェイト・テスタロッサ、それともう一人を安全圏まで離脱させろ。 ノイズがひどいが、結界の外は被害が出ていないらしい。 だから結界の外へ』

 

『何言ってるんや!そんな状態じゃ理樹君も!』

 

はやての言う通り、甲冑越しとは言え直接触れられているためか、これまでより浸食スピードが速い。 体内からの魔力放出では間に合わず、身体から棘が生え始めていた。 そんな状況ではあるが

 

『誰かがやらなければならない。 俺はまだ大丈夫だが、長引けば守護騎士やフェイト・テスタロッサは死ぬぞ。 いいか、お前らは怪我人を連れていったん撤退だ』

 

『了解した。 必ず戻ってくる、それまで持ちこたえてくれ』

 

『はいよ』

 

駄々をこねるはやてを連れ、リインフォースは撤退を始める。 さて

 

『戦力は大きく減ったわけですが、イリス捕縛に問題はありますかアミタさん?』

 

『その状況、大丈夫なんですか!?』

 

『大丈夫じゃないですけど、アナタ方でこの子と戦えるんですか? フォーミュラがあるにも関わらず、少し浸食を受けていたでしょう?』

 

実際、フォーミュラを搭載しているはずのなのはですら少し浸食を受けていたのだ、ありえないとは言い切れない。 事実なのか、それ以上アミタさんが何か言ってくることはなかった

 

『それで、捕縛に問題は?』

 

『・・・・・・して見せます』

 

『なら、そちらはよろしくお願いしますね』

 

これで状況は整ったわけで、いい加減この輸送も辞めさせないとな。 被害をいたずらに増やすだけだし。 そう思い、ユーリと呼ばれた少女の腹を思いっきり蹴り上げる。 輸送は止まったが、蹴った感触がどうにもおかしい。 人を蹴った感触ではなく、クッションを蹴ったような感触。 たぶん、あふれ出る魔力が衝撃を完全に殺したようだ

 

「理樹君!」

 

「・・・・・・なのはか」

 

かなりのスピードで輸送されていたはずなのだが、なのはが追い付いたようだ

 

「正直に言えばこっちの戦闘はかなり危険だ、出来れば向こうのイリス捕縛の方を頼みたかったんだが」

 

「もう、一人は嫌だから。 私も一緒に戦う」

 

なのはの瞳は不安そうに揺れていて、だからだろうか

 

「なら、頼む」

 

そう頼んでしまった



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第二十八話

さて、状況は最悪だ。 放出される魔力は時間がたつごとに強くなっているし、浸食も同様だ。 なのははましとは言え、俺も甲冑の外に出ていないだけで甲冑の中はえらいことになっている。 あまり時間はかけていられないが、いい方法もないのも事実だ。 ()()のは簡単だが、無力化がこれほど難しいとは。 ユーリと呼ばれた少女に関係がありそうな三人組は消耗が激しいために局員と共に離脱させたため、本当にいい方法が思いつかない

 

「ふん!!」

 

「-----!」

 

ユーリと呼ばれた少女の攻撃をはじき返し、距離をとる。 もはや人の言葉をしゃべれないほど暴走状態らしい。 さっきからなのはのフォーミュラカノンの砲撃も直撃しているが、効果がない。 一瞬動きが止まるものの、ほんの一瞬だ。 あまり使いたくないが、仕方ない。 宝物庫からランクの低い宝具の原点を射出し、爆発させることで時間を稼ぐ

 

「攻撃、効いていると思うか?」

 

「ううん、思わない」

 

「だよなぁ......」

 

爆発攻撃もあふれ出る魔力に防がれ、通っていない。 物量が多いためその場にとどまっているようだが、それもいつまでもつか

 

「どうするの?」

 

フォーミュラカノンのバッテリーを交換しながら、なのはがそう聞いてくる。 一応、対抗しうる手段はあるにはあるが

 

「・・・・・・殺すのは簡単だ。 だが、それじゃあ意味がない。 一応、手はないことはないが」

 

「なら、私は時間を稼ぐね」

 

「・・・・・・」

 

「あの子を救ってあげよう理樹君」

 

そう言い残し、なのははストライクフレームを展開しユーリと呼ばれた少女に向かっていく

 

「覚悟を決めるか」

 

瞳を閉じ、集中する。 目に神経を集中させれば、何かにつながった感覚がする。 これで、第一段階だ。 そして、甲冑と剣を基に今度はパスを。 これもすんなりとつながる感覚がする。 意外と言えば意外だが

 

『これはいささか見過ごせる事態ではないのでな、手を貸そう』

 

口が勝手に動き、そう呟いた。 なるほど。 お願いします()()()

 

『よかろう、ハサンよ』

 

はやてに渡したはずのマントがいつの間にかついており、それを風で揺らしながら一歩踏み出す。 流石に空気の違いを感じたのか、ユーリと呼ばれた少女がこちらを向く。 短い時間だったはずだが、なのはのディフェンサーは全機破損しており、なのは自身も少なからず怪我をしていた。 無茶したみたいだな

 

「なのは、もう大丈夫だ。 トーリスリッター、なのはに俺のディフェンサーを渡しておけ」

 

「了解しましたマスター」

 

トーリスリッターにそう支持しつつ、なのはがユーリと呼ばれた少女から離れるのを確認し剣の切っ先を向ける

 

『神託は下った。 本当ならその通りにするはずだが、この体の持ち主がそれを許さん。 ならば、このハサンの望み通りそれを叶えるのみ』

 

そう初代様がつぶやくと同時に、ユーリと呼ばれた少女はこちらに向かってくる。 その顔を恐怖に歪めながら。 暴走状態で意識がないのにもかかわらず、本能で死を察するというわけか。 それに逆らおうと。 だが、無意味だ。 初代様、分かっているとは思いますが

 

『あぁ、任せよ』

 

そう言うと同時に、向かってきたユーリと呼ばれた少女に剣を突き刺す。 他の人間から見たら大変ショッキングな光景だろうが、俺にはちゃんと()()()いた。 剣を引き抜き、意識を失っているユーリを抱きかかえる

 

『さらばだ、ハサンよ』

 

「はい、ありがとうございました初代様」

 

体がかなり重い。 それと全身の骨が軋んでる。 限定召喚とは言え、身体が耐えられるものではない

 

「理樹君?」

 

「終わった。 が、まだ事件全部が終わったわけじゃない。 イリスの捕縛に移るぞ」

 

仮面をとり、そのまま手を離す。 すると仮面は虚空に消え、甲冑も消えた。 バリアジャケットを着ているから外相は見えないが、所々血がにじんでる。 それを見て見ぬふりをしつつ、ユーリと呼ばれた少女を背負う

 

「行くぞ、なのは」

 

「う、うん」



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第二十九話

イリス捕縛組と合流するために飛んでる最中に気が付いたが、ユーリと呼ばれた少女を倒した時から黒い柱の活動は止まっていたらしい。 まぁ、それにしても所狭しと生えているのだが。 それを見て、思わずため息をついた俺は悪くないと思う

 

「理樹君、どうしたの?」

 

「あー、この惨状後始末が面倒だと思ってな」

 

そう言いながら、視線をなのはから海に向ける。 するとなのはも俺のため息をついた理由がわかったのか、苦笑していた

 

「にゃはは、確かに大変そうかも。 フォーミュラカノンなら広範囲うち消せるし、私も手伝うよ?」

 

「何発撃つ気だお前は...... まぁそれよりも、今はイリスの捕縛だ」

 

戦闘音が聞こえてきたということは、もうそろそろイリスの捕縛組と合流するということだ。 気を引き締めてそう言えば、なのはも同じように前を向いたようだ。 状況はこちらの方が優勢なのは当たり前なのだが、どうも捕縛はまだできていないらしい。 まぁ、バインド系が使えないし仕方ないと言えば仕方ないが。 即席の連携がうまく行っていないようである。 なので、俺が指示を飛ばす

 

『リインフォース指示通りに動いてくれ。 はやてはアミタさんとキリエさんを一時的に退避させて、魔法の準備』

 

『頼む』

 

『理樹君!? そっちはもう終わったんかいな』

 

『話は後だ、はやく捕縛してこの件を終わらせるぞ』

 

はやてが驚いた様子でキョロキョロしているが、指示を飛ばす。 リインフォースはこちらの指示通りに動いてくれているため、とてもスムーズだ。 ただ、攻撃する人数が減った分イリスにも余裕があるようだ。 早めに決めなければ

 

『離れて、そこから動かさないように遠距離で頼む』

 

『ストライクカノンを使わせてもらう!』

 

「なのは、行けるな」

 

「うん、任せて。 フォーミュラカノン、フルバースト!!」

 

いや、別にフルバーストでなくてもよかったのだが。 結構距離もあったため、俺たちはばれておらずイリスに攻撃が直撃する。 だが、そこで手を緩めはしない

 

『はやて、捕縛準備!』

 

『了解や!』

 

結界で空間を固定し、一部分だけを残し呪相、氷天を使ってそのまま氷漬けにする。 そして結界の上から、はやての魔法で氷漬けにする。 これで逃げようとしても逃げられまい。 と言っても、なのはのフルバーストが直撃した時点で抵抗らしい抵抗を見せないが。 一応警戒しつつ、イリスに近づく

 

「抵抗はやめて大人しくしろ、イリス」

 

「ふん、したくても出来ないわよ」

 

どうやら減らず口は言えるほどにはまだ余裕があるようだ

 

「これで私の復讐も終わりってわけね」

 

「ユーリと言う子も、無力化してこちらで保護してるからな」

 

そう言って背負っているユーリを見せれば、特に驚いた様子もなく見ていた。 まぁ、俺となのはがここに居る時点で察しはついていただろうが

 

「殺さず無力化、そんなことをやってのけるとは驚きだわ」

 

「口が減らないやつだな」

 

「んっ......」

 

イリスとの会話もそこそこに、イリスの輸送をどうしようか考えていると背中から声が聞こえてきた。 身じろぎもしているし、どうやら起きたみたいだ

 

「あれ、ここは?」

 

「起きたみたいねユーリ」

 

「イリス!? 何でそんな姿に!?」

 

「捕縛する際にこうしただけだ」

 

「え? わわっ!?」

 

正直後ろで騒がれるのはたまらないと思い、声をあげれば急いで背中から降りるユーリ。 一応、周りにはなのはやはやて、リインフォースやアミタさん、キリエさんがいるためすぐにでも捕縛ができる

 

「さて、ノリノリで氷漬けにしたのはいいがどうやって移送しようか」

 

「いや、そこら辺考えて指示出したんやないの?」

 

「ともかく捕縛が最優先だったからな」

 

ユーリが離れたことで自由になったのでどうするかを言ってみれば、はやてからは呆れたような答えが返ってきた。 他の奴は苦笑いしているが

 

「抵抗なんかしないわよ」

 

「信用できるとでも?」

 

イリスがそうは言ってきたが、信用できるはずもなく

 

「そ、そこまで言わなくても」

 

「言っておきますけど、貴女も事情聴取しますからねキリエ・フローリアンさん」

 

「・・・・・・」

 

アミタさんは険しい顔をしていたが、流石に最後の捕縛を手伝ったからと言ってチャラになる話ではない。 それが分かっているから、アミタさんも何も言わないのだろう

 

「あ、あの、今回はすみませんでした!私がもっとしっかりしていれば」

 

「あー、まぁ、とりあえず話はあとで聞こう」

 

こうして、長かった事件も幕を閉じた



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第三十話

オールストンシー臨時救難テントまでイリスを護送し、応急手当てを済ませるころには日付が変わっていた。 ようやく取り調べの準備も整い、取り調べをしようとすればバニングス達が来たようだった。 その際氷漬けにしたまま取り調べを始めようとしたためか白い目で見られたが、気にせずに追い出しなのはのところに行かせた

 

「さて、取り調べを始めるわけだが。 ぶっちゃけ、お前がこの世界に来た目的は分かってはいるがもう一度語ってもらう」

 

「ふん......」

 

「・・・・・・」

 

結構な怪我をしたクロノも立ち合い、イリスの事情聴取が始まった。 と言っても、目新しい情報はない。 キリエ・フローリアンの星の再生と父親の病気を治したいという願いを利用し、この世界に眠るユーリに復讐を。 夜天の書を奪い、その中に眠っていたデータ、これはなのはやはやて、フェイト・テスタロッサと似た姿をした少女たちのことだが、それを目覚めさせ永遠結晶、つまりユーリへの道を開いたこと。 そして自分の復讐のためにユーリを操り、この世界をも巻き込んで復讐をしようとしたこと

 

「まぁ、これて言って目新しい情報はないな。 それで、今回の件だがどうするクロノ?」

 

「ことがこと、だからな。 本局に報告すれば、イリスを含めた今回の事件にかかわった者たちの身柄確保、技術の提供を迫られるだろうな」

 

「もちろん俺たちも、色々事情聴取されるだろうな。 正直言ってかなり面倒だが」

 

「・・・・・・今回の事は母さんと話し合って決めるつもりだが、僕としては報告せず今回の事件に関するデータ破棄、抹消しようと思う」

 

「それが一番だろうな。 はぁ...... それもそれで面倒そうだが」

 

「私に関係のない話をしないでほしいのだけど?」

 

「・・・・・・それもそうだな」

 

イリスに言われ気が付く。 まぁ、確かに今回の件がどうなろうがイリスとしては関係ないだろう。 逃げようと思えば逃げれるのだから。 クロノとの話はそこで打ちきり、イリスに向き直る

 

「まぁ、今言った通り今回の件はなかったことになる。 お前は帰るまで、そのまま拘束しておくがな」

 

「判断が甘いこと。 まぁ、逃げる気なんてさらさらないけどね」

 

相変わらず態度の変わらないイリスには呆れるが、俺はそのまま席を立つ。 あまり長く取り調べして、クロノに無理をさせるのも悪いというのもある。 一応、クロノは絶対安静なのだ。 それを無理言って出てきたので、エイミィさんが怖いと嘆いていたのはクロノだったが。 それともう一人、イリスと話したがっていたやつがいたからだ

 

「さて、取り調べは終わりだ。 もう入ってきても構わない」

 

「し、失礼します」

 

「・・・・・・」

 

話したがっていたのは、ユーリだった。 一応彼女も取り調べをしなければならないのだが、操られて暴れていただけなので取り調べようがない。 激しい戦闘ではあったが、特に怪我もなかったのでこちらについた途端、けがの手当てを受けている俺にイリスと話したいとお願いしに来たのだ。 おっかなびっくり入ってきたユーリにイリスは特に反応を示すことはなかった

 

「一応、イリスには監視がいるんでな。 俺も同席させてもらうが構わないか?」

 

「えっと...... 一応大丈夫だと思います」

 

どこか怖がられているような気もするが、同席の返事ももらったのでそのままテントの端による

 

「お久しぶりです、イリス」

 

「久しぶり、ね。 家族を殺して、星すら殺そうとしたアンタからそんな言葉が聞けるなんてね」

 

「それ、は......」

 

イリスの皮肉がたっぷり効いた言葉に、あげていた顔を下げてしまうユーリ。 たぶん事実なのだろう、ユーリの反応を見ていれば分かる。 服の裾を握りしめ、俯いてる姿はどこか泣きそうにも思えた。 はぁ...... 

 

「一々罵倒しなきゃ気が済まんのかお前は。 それとユーリ、お前はそいつと話に来たんじゃないのか。 部外者が口を挟むのはどうかとも思うが」

 

「ふん......」

 

「は、はい」

 

気に入らないようにこちらを見たイリスだが、すぐに目をそらした。 ユーリも顔を上げ、話始める

 

「イリスにはとても信じられない荒唐無稽の話かもしれませんが、私が知る真実をお話します」



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第三十一話

きっかけは一人の科学者でした。 その科学者は自分の故郷の星の研究をしており、自分の故郷の星がゆっくりと終末に向かっているのを。 実際、他の科学者もそのことを薄々ながら知っていました。 ですが、その科学者が学界に発表したことで広く知られるようになった。 そしてその対策をするために発足したのが

 

「惑星再生委員会、そのくらい知っているわよ」

 

「そうですよね、ごめんなさい。 イリスのお父さんとお母さんも」

 

「やめて、アンタが言わないで」

 

「・・・・・・」

 

惑星再生委員会などよくわからない単語が出てきたが、多分ユーリが語っているのは過去のことなのだろう。 気になるのは、ユーリとイリスの関係だ、 イリスはユーリに家族を殺されたと言っているが、ユーリとイリスの家族は親交があったようだ。 イリスはそのことすら語ってほしくないのか、ユーリを睨みつけていた。 ユーリは悲しそうに目を伏せながらも、続きを話し始める

 

その惑星再生委員会ですが、二つの派閥に分かれていました。 一つは惑星を再生させ、そのまま故郷の星で暮らす派閥。 そしてもう一つは、人が住めるコロニーを開発し故郷を捨て移住する派閥。 どちらの計画も同時進行で進められていましたが、芳しくなかったのは惑星の再生の方でした。 惑星が終末に向かっている原因自体わからなかったのですから。 ただ分かっていたのは、星の力自体が弱まっている。 もう寿命だと、別派閥の人間は言ってましたがそんなこと到底認められるはずもなく、惑星再生派は研究に没頭していきました。 

一方、移住派も問題に直面してました。 材料です。 コロニーの完成度約半分というところで、鉱物などの資源が尽きてしまった。 他の惑星から輸入というのも考えましたが、距離がかなり離れているのとコストの高さから断念。 一応、無理にでも採掘すれば採れないこともなかったですが、それをしてしまえばコロニーの開発前に故郷の星が駄目になってしまう。 かといって、一応完成度半分でも受け入れは出来ましたが、惑星全員が移住できるほどでは到底ありませんでした。

ちょうどその頃でしょうか、再生派も別のアプローチをしていました。 星自体の力がなくなっているのなら、別のところから足せばいい。 短絡的な考えではありましたが、それ自体は惑星の研究をする副産物で偶然できていた

 

「・・・・・・永遠結晶の力」

 

「イリスの言う通りです。 もっとも、永遠結晶(コレ)はこんな力ではなかったのですが......」

 

そう呟くユーリの表情は、何処か自嘲気味だった

 

話を戻しましょう。 永遠結晶により、再生派は勢いを取り戻し再生まであと一歩というところまで来ていました。 後は実証実験をすれば、惑星の再生は叶うはずでした。 そう、()()()()だったんです。 とある富豪たちの謀略さえなければ

 

「待ちなさいよ、何を言ってるの。 アンタが暴走したからエルトリアは、家族は!!」

 

「イリス、私は最初に言ったはずですよ。 イリスには()()()()()()()()()()()()だと。 そして、()()()()真実だと」

 

「今更何を!!」

 

「一ついいか?」

 

「なんでしょうか?」

 

イリスが今にも殴りかかんとする感じでユーリを睨んでいるが、それを気にせずに俺は気になったことを聞いてみる

 

「イリスの家族とユーリがどういう関係かというのは部外者の俺が口を挟むことじゃないが、惑星再生委員会の目的は何なんだ? 惑星を再生させるのが目的なのか、それとも故郷を捨てコロニーに移るのが目的なのか?」

 

「最初はみんなで故郷の星を再生させよう、救おうと星中の富豪や研究者が参加しました。 そのうちに無理だと諦めるものや別視点から切り込もうと考えたものが、再生派と移住派の誕生です。 と言っても、再生派、移住派も大きいくくりでしかありませんが」

 

「ならなおさら、富豪たちが謀略したのが謎なんだが」

 

「・・・・・・研究もタダではありません。 出資して結果が出せなければ、お金はどんどんなくなっていきます。 なら、その減った分はどこかから補填しなければなりません。 その補填が、コロニー建設及び今のヴァリアントシステム、そのひな形だったんです」

 

「・・・・・・なるほど。 その技術を売って、金にしていたわけか。 なら、コロニーの建設が止まるのは困るわけだ」

 

「この永遠結晶の力も、当時はまだ調整等が不十分でしたから。 一応コロニー建設は続く予定でしたが、これまでより工期が遅れるのは確かです。 ヴァリアントシステムのひな型も然りです」

 

「なら、それをさせないために謀略を?」

 

「それもありますが」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

そこで待ったをかけたのはイリスで、その表情はいつもとは違く焦っていた

 

「待ちなさいよ、アンタの魄翼の調整やシステム周りの調整はお父さんとお母さんのはずよ。 お父さんとお母さんがそんな計画に」

 

「それはありません」

 

イリスの言葉を最後まで言わせないように、ユーリはイリスに鋭い視線を向ける。 それは、まるでその発言を許さないかのようだった。 これにはイリスも押されたのか言葉をつぐんだ

 

「二人の名誉のために言っておきます、それはありません。 それこそ、真実の話になります」

 

イリスのお父さんとお母さんは私の魄翼、つまり総合防衛システムを調整していたのは確かです。 ですが、最終試験中にとあるプログラムにウイルスが仕込まれているのを発見し最後まで被害を最小限に抑えるのに尽力してました

 

「私が、正気を失って真っ先に殺してしまいましたが...... 謝って許されることじゃないです、でもごめんなさいイリス」

 

「・・・・・・」

 

イリスはその謝罪を黙って受け入れ...... いや、呆然と聞いていた。 ユーリもそれが分かっていたのか、すぐに頭を上げ話し始める

 

とあるシステム、それこそが再生計画の核である魔力をエネルギーに変えるシステムです。 星が終末に向かうと同時に出始めたエネルギーでしたが、それを星を存続させる生命力つまりエネルギーに変換するという大事なプログラムです。 それを真逆のものにウイルスに書き換えられ、生命力を結晶化するといあの能力になってしまったんです。 その能力によって、エルトリアや多くの人達の命を...... ですが、イリスのお父さんとお母さんのおかげで被害は最小限でした。 ウイルスコードによってできた副作用はもう一つあります。 私の能力の凶暴化、いえ暴走と言ったほうが正しいですね。 それの他に選民させようとしたんです

 

「選民? あの能力は無差別じゃ?」

 

「今回はもともとの目的を果たしていたことに加えて、イリスのウイルスコードがそうさせたということです。 元々は再生派の皆殺し、そして選民し.......」

 

「そうか...... ユーリが暴れ出せば星は住める環境じゃなくなる。 ならコロニーに移住するしかないが、肝心のコロニーは完成しておらず受け入れは十分にできない。 だから元の数を減らそうとしたわけか。 富豪(自分)たちが我先にとコロニーに移住しても、文句を言われないようにするために」

 

「そういうことです......」

 

「そんな、そんなことのためにお父さんとお母さんは......」

 

自分たちのエゴのためにユーリを、イリスの父親や母親、それに星すらも利用したわけか。 性根が腐ってやがる。 その場が何とも言えない雰囲気になったため、俺はテント内から出ることにした。 一応監視しなければいけない立場だが、何かあったならユーリに言うように言ってきたから大丈夫だろう。 それに、いくらイリスが犯罪者と言えど涙は見たくないしな



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第三十二話

「理樹君」

 

「なのはか、どうしたこんなところに」

 

外でテントによりかかって暇をつぶしていると、なのはが近寄ってきた。 そもそも、なのはがここに居るのは少しおかしな話だが。 一応、戦闘後の検査で異常等がないかを確認した後は自由行動だったはずだ。 だからこそ、バニングス達をなのはの方に行かせたわけだし。 実際、バニングス達も呆れた顔をしながら俺となのはを見ていた

 

「えっと、理樹君は遊びに行かないの?」

 

「悪いがこれでも現場の最高責任者何でな。 クロノから指揮権を譲渡されたわけだし、そもそもアイツは絶対安静が必要だ。 なら代理でもなんでも現場に居なければならないしな」

 

「その割に暇してるみたいだけど?」

 

「中で込み入った話をしててな、さっきまで立ち会っていたけどな」

 

バニングスの言うことももっともだが、一応これでも中の気配は探っている。 ともかく、苦笑しつつなのはに話しかける

 

「そういうわけだ。 これ以上何かあるわけでもないが、一応警戒はしてる。 なのは達はもしかしたら急な呼び出しがあるかもしれないが、それまでは好きに過ごしてくれ」

 

そう言いつつなのはの頭をなでていると、後ろから近づいてくる気配がする。 それに合わせ撫でるのをやめると、まだ物欲しそうに見てくるなのは。 それに後ろ髪惹かれつつ、向き直ればちょうどユーリがテントから出てきたところだった

 

「神木さん」

 

「もういいのか?」

 

「・・・・・・流石に一人になる時間が必要だと思いますから」

 

そういうユーリの顔は少し寂しそうだったが、本人がいいというのだからいいだろう。 さて、事情聴取する人間は他にもいるので局員に連絡を取って見張りでもつけておくか。 そんなことを考えていると、ユーリが俺の後ろにいた人物に気が付いたのか声をかけていた

 

「なのはさん、ですよね」

 

「えっと、ユーリさんですよね」

 

「今回は迷惑をかけて」

 

「はい、ストップ」

 

ところかまわず謝ろうとしていたユーリにストップをかける。 完全に部外者というわけではないが、流石にバニングス達もいるのだ。 なのはから多分今回の事件を簡単に聞いているだろうが、流石に謝らせるわけにも行かない

 

「そういうのは後だ、事情聴取も立て込んでる。 後で機会は設けるつもりだから、いまはなしだ」

 

「えっと...... はい、わかりました」

 

「そういうわけだから、なのはも遊んで来い」

 

なのはの頭に手を置き人撫でして離れる。 すると、遅れてきたユーリが話しかけてきた

 

「次の事情聴取、私も立ち会うんですか?」

 

「あの三人と無関係なら立ち会わなくてもいいが」

 

そう言ってユーリを見れば、俺の後をついてきていた。 まぁ、元から無関係とも思っていなかったが。 そうして三人を保護しているテントへと向かう

 

「失礼する。 事情聴取の時間だ」

 

「ようやくか」

 

「待たせたのは詫びるが、こっちも人手が足りなくてな」

 

待ちわびたと不遜な態度でいるのはディアーチェと呼ばれるはやて似の少女だ。 なのは似の少女シュテルは非常に落ち着いているし、フェイト・テスタロッサ似の少女レヴィに至っては寝ていた。 こちらも人手が少ないのもあって後回しにした感じはあるが何ともマイペースな

 

「さて、こちらも色々と聞きたいことがある。 君らがどういう存在だとか、目的が何なのか、とかな。 何分、君らを確保してからあんなことがあったしな。 あぁ、ユーリも彼女らの方に座ってくれ、一緒に聴取を」

 

「わかりました」

 

そう言ってディアーチェと呼ばれる少女の隣に座るユーリ。 座ったのを確認し、調書を始める

 

「さて、まずは確認だがディアーチェ、シュテル、レヴィというのは名前で間違いないんだよな?」

 

「余り面識がないのに呼び捨てにされるのはいささか感じが悪いがそうだ」

 

「レヴィ、呼ばれていますよ」

 

「すやー......」

 

「あぁ、寝たままでも構わない」

 

一応事情聴取なのだが、なんとも締まらない。 かといって暴れる様子はないにしても抵抗されても面倒なので、このままにしておくことにした。 何故かユーリはユーリで何故か心配そうに成り行きを見てるし

 

「それは済まないと思うがこちらも事情聴取という形をとってるんでな、そこは留意してもらいた」

 

「ふん」

 

「納得してもらえた、ということかな? 話を進めさせてもらう。 まず、君らがどこからきてどういう存在なのかを知りたい」

 

「貴様に話す義理などない、と言いたいところだがな。 それを言っていると終わらぬし、ユーリを助けてもらったこともある。 特別に答えてやろう」

 

かなり偉そうだなと思ったが、言ったら言ったで機嫌を損ねそうなのでやめておいた。 でも、偉そうな態度とかの割に説明はちゃんとしていた。 ディアーチェ達も元はエルトリアで暮らしていた()()だったらしい。 ユーリとは幼馴染で、どうもユーリより偉い貴族だったようだ。 ユーリはもともと地元の名士で、そこの家来みたいなものだったようで。 ユーリ曰く、没落してディアーチェたちの方が偉くなったらしい。 そんなわけで、再生派として協力していたらしい。 ユーリの暴走により命を落とすが、イリスのように魂だけは助かったらしい。 結晶の中で生きながらえたらしいが、何の手違いか闇の書に吸収され奥深くに封印されていたらしい。 そしてイリスに目覚めさせられ、今回の事件だったというわけだ

 

「じゃあ、イリスとは?」

 

「もちろん面識はあった」

 

「と言っても、中々記憶が思い出せず、思い出したのはついさっきでしたが」

 

俺が出したお茶をすすりながら、マイペースに話すシュテル。 ディアーチェの説明が足りないところがある時は補足したりしてくれるのだが。 ほんとこれ事情聴取じゃないだろ。 さっきまで心配そうに見ていたユーリも、俺が出した茶菓子に舌鼓を打っていた

 

「それで、目的は?」

 

俺もお茶をすすりながら聞く

 

「お主...... 一応事情聴取の形をとっているのであろう?」

 

呆れながら聞いてくるディアーチェだが、そう言いつつもお茶を飲んでいた。 人のこと言えないだろ

 

「そうしないと周りが納得しないからな。 一応、君らのせいで()()()()()()()()()()()()()()()が出てるわけだしね。 俺としてはこんなに面倒なことやりたくもないんだが」

 

「神木さんて意外と......」

 

お茶菓子であるせんべいを食べつつ苦笑するユーリだが、お前のそんな姿に俺も苦笑しか出ないわ

 

「ふう...... お茶は大変美味しかったです。 さて、目的でしたか? ぶっちゃけて言えばユーリですがそれももう達成されました。 ユーリの話ではウイルスもなくなっているようですし」

 

「シュテル...... いや、もう何も言うまい。 さて、その件だが貴様には礼を言っておく。 ユーリを止めてくれてありがとう」

 

それまでの尊大な態度は鳴りを潜め、座りながらも頭を下げるディアーチェ。 それに俺は面食らいながらも、姿勢を正すことにした

 

「いや、こっちも世界が危なかったんだ。 ただ働いただけだ」

 

そう言って席を立つ。 さて、そうなると最後の事情聴取になるな



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第三十三話

「すみません、事情聴取大丈夫ですか?」

 

「神木さんですか? 大丈夫ですよ」

 

テントの前から声をかければ、アミタさんから返事をもらったので中に入る。 中に入ればキリエ・フローリアンは俯いていて、アミタさんはその横に座っていた。 あんなことがあって落ち込んでいるのは分かるが、こちらも仕事なので気にせずに座る。 まぁ、面倒だが

 

「さて、アミタさんからどこから来たかは聞いてますし、目的を改めて話してもらいましょうか。 キリエ・フローリアンさん」

 

「・・・・・・私の目的はパパの病気の治療と惑星エルトリアの再生よ」

 

「そのために必要だった夜天の書を借りる、もし無理なら奪うために来た、と」

 

縮こまるキリエ・フローリアンだが、俺は事実を話しているだけだ。 そんなキリエ・フローリアンに気付かないふりをして、話を続ける

 

「アミタさんによれば事前にこっちのことを調べてきたとか。 その時に管理局のことを知っていたのなら、管理局を通してこちらに話を付ければよかったのでは?」

 

「それは!管理局なんて信用ならなかったからで」

 

「それについては同感ですが、情報を引き抜くほどの腕を持っているんですから、管理局を通さずともこちらにコンタクトをとることは可能だったんじゃないんですか?」

 

「・・・・・・」

 

反論するために顔を上げたキリエ・フローリアンだったが、俺がそう言うと顔を再び下げてしまう。 まぁ、仕方ないか。 少しアミタさんの視線も厳しくなってきているところだし、ここら辺でやめておこう

 

「次の話ですが、工事現場や廃車工場などから重機やトラックなどを盗んだのは全部貴女とイリスということで間違いないですかね?」

 

そう言って俺はモニターを起動し、今回被害にあった工事現場や廃車工場の分布図を見せる。 一応クロノたちが集めた情報だが、間違いがあっても困るので確認してもらう

 

「そう言えばアミタさんのバイクもそこらへんに捨ててあったのを直したんでしたっけ?」

 

「えっと、すみません」

 

「あぁ、別に怒ってるわけでも咎めてるわけでもないですから。 確認です。 場所とかって覚えてますか?」

 

「ただ道路にポンと置いてあっただけだったので......」

 

「・・・・・・それ、本当に捨ててあったんですか?」

 

「も、勿論ですよ!それに紙が貼ってありましたし」

 

そう言ってその貼ってあったと思われる紙を見せてくるアミタさん。 その紙を受け取り見てみる。 あぁ、うん、確かに回収できないってなっている紙だが、何故燃えるゴミの日に出したんだこの廃棄者......

 

「ありがとございます。 それで、キリエ・フローリアンさんの方はどうですか?」

 

「間違いないです」

 

「話に来たって割りには、あの変形した重機の数多かったですし本当に話し合いに来たのやら」

 

「っ......」

 

「神木さん、それ以上は怒りますよ?」

 

「気になったもので。 まぁ、俺たちも人のことは言えませんけど」

 

モニターを閉じつつ呟いた言葉だったのだが、聞こえていたようだ。 別に聞かせるように言ったわけではないのだが

 

「それで、二手に分かれて夜天の書の確保は無事成功。 その後はあの戦闘と。 そう言えばあの機動外殻の材料って何だったんですかね?」

 

「それは、重機や廃車を持っていくときに一緒に鉄くずを」

 

「誰の命令で?」

 

「それは、イリスの」

 

「なるほど、最初からイリスはオールストンシーを襲うつもりだったわけか」

 

聞きたいことは聞けたので、聴取を終わりにして立ち上がる

 

「イリスは!イリスはどうなるの」

 

「・・・・・・驚いたな、そんなことを聞かれるなんて。 どうもこうもない。 今回の件、貴女の信用ならない管理局に流れれば想像なんて難しくないはずでしょう?」

 

「そ、れは......」

 

「なので今回の事件にかかわるデータなどはすべて破棄。 貴方達はもとの世界に帰ってもらいます」

 

「え?」

 

「事件自体をなかったことにする、それが俺や俺の上司のクロノが下した判断です。 流石にリンディさんなんかには話を通しますが」



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第三十四話

「とりあえず聴取のまとめはこんなもんで、今度は被害まとめか、肩凝るなぁ......」

 

「それを私の前でやるのは嫌味かしら?」

 

「お前の監視ついでだよ」

 

「あはは......」

 

流石に局員にずっと監視させておくのも可哀想ということで、変わったのはいいが仕事は山盛りだ。 まぁ、なのはとかはやて、フェイト・テスタロッサなどを待機させずにこっちに動員すれば済む話なのだが。 そんなわけで監視ついでにイリスの前で仕事をやっていたのだが、文句の多いやつである。 ディアーチェ達はまだしも、ユーリは割と自由にここら辺を歩かせている。 危険なウイルスは殺したし、本人の意思じゃなかったのも大きいから他の局員も何も言わないのだが。 そんなくだらないことを話していると、このテントに近づく気配がする

 

「マスター、ご飯持ってきましたよー」

 

「玉藻だったか、ありがとう」

 

多分、オールストンシーの泊ってるホテルで出たのをそのまま持ってきてくれたのだろう、そもそもそんな時間なのも気が付かなかったが。 道理で肩がこるわけだ

 

「あら、なんか氷漬けにされてる人が」

 

「ぶっ飛ばすわよ」

 

「ふん、やれるものならやってみればいいんじゃないですか?」

 

何故か玉藻はイリスと仲が悪い。 というよりも、イリスは誰にでもかみつくか。 玉藻は札を持ちながら威嚇してるし、イリスは動けないにもかかわらずそんな玉藻を睨みつけている

 

「玉藻、仕事を増やさないでくれ。 飯は有り難いが、他の三人は?」

 

「あぁ、それなら問題ありませんよ。 ハサンさんとマシュが手伝ってくれましたし」

 

「こいつらの分は?」

 

「リリィさんがそのうち......」

 

「目をそらすな」

 

まぁ、なんというか、リリィは相変わらずのようだ。 どうやらマシュとハサンも食事を持ってき終えたようで、テントの中に入ってくる

 

「マスター殿、初代様のお力を使いになったそうですが、お体の方は?」

 

「バッキバキだ。 なんとか耐えられたが、身体は鍛え直しかもな。 どちらにしろ、今回の戦闘の傷が完全に癒えてからだな」

 

「私たちも戦闘に参加できればよかったのですが......」

 

「あの聖杯から直接バックアップ受けてるリインフォースさえ浸食されてたんだ、仕方ないさ。 それに、お前らがホテルを守っていてくれてたからこそ全力で戦えたわけだしな」

 

苦笑しつつそう言えば、顔を伏せるサーヴァント達。 こんな雰囲気にさせたいわけじゃないかったのだが、ままならないな。 そんなことを考えていると、遠慮がちに服の袖が引っ張られる

 

「すみません、私のせいで」

 

「いや、そこの奴のせいだから」

 

俺がイリスを指させば、そっぽを向くイリス。 おうおう、自覚があるのはいいことだ

 

「でも」

 

「でもも何もない。 今回奇跡的に死亡者はいなかった、それでいいだろう」

 

頭に手を置き、そのまま数度撫で食事を再開する。 早く書類を処理しないと、今日中に終わらないからな。 さすがに、こんなもの数日間引っ張りたいと思わん

 

「ふぅ、食べた食べた。 わざわざ悪かったな」

 

「いえ、マスターのことですから忘れていると思いまして」

 

「・・・・・・悪かったな、集中すると周り視えなくて」

 

「そ、そういう意味言ったんじゃないですよ!?」

 

「わかってるって」

 

食器が乗っているお盆を渡しつつ、玉藻相手に少しふざけると、案の定慌てる玉藻。 少し悪ふざけが過ぎたか

 

「まぁとにかく、せっかくの休暇だ、楽しんでくれ」

 

「それはマスターもだと思うのですが......」

 

「この件が終わっても絶対安静だから純粋には楽しめないだろうよ」

 

「ともかく、マスター殿もし無理そうなら我々に」

 

「あぁ」

 

「すみません遅れました!ご飯お持ちしましたけ、ど?」

 

なんとも締まらないものである



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第三十五話

結局、今回の事件の関係者は俺とクロノが言った通り記録を抹消して元の世界に送り返すことで片が付いた。 と言っても、レイジングハートに搭載したフォーミュラシステムの記録を抹消するのは少し惜しいということになり、調整を施し完成品を封印という形になった。 他のデバイスへの搭載も検討されたが、それは見送り記録は完全に抹消した。 そもそも今回の事件により、試験段階であったカノンやディフェンサーといったカレドヴルフ社製の製品が実用段階に持っていけたというのが大きな理由だ。 これにより個人のデバイスもチューンアップされていくとか。 裏話はこれくらいにして、元の世界に送り返すことが決まり拘束しておく必要もないので今回の事件の関係者は解放という運びになった。 もちろん、監視はつけたが。 と言っても、事件の首謀者であるイリスはユーリが話した真実により大人しくなったし、元々ユーリが目的だったディアーチェ、シュテル、レヴィはアクションを起こすことはなかった。 キリエさんなんかはアミタさんにしこたま叱られたようで、何かする様子もないのだが。 こっち側、俺やクロノ側はそうなっても大忙しだ。 といっても、クロノは重症であり絶対安静。 忙しいのは俺だけだったわけだが。 送り返すことが決まっても、今回のような大きな事件があってもいいように資料をまとめ、クロノと話し合いをしていた。 その間なのは達は療養兼監視という名目で、オールストンシーで遊ばせていた。 と言っても、オールストンシーも少なからず被害が出たため、復旧などで忙しかったようだが。 まぁ、建設の様子も間近で見れたことだし、自由研究としてはいい資料が集まったのではないだろうか。 そんな風に激動の数日を過ごし今日

 

「キリエのせいでご迷惑をおかけしました!」

 

「いやいや......」

 

今回の事件の御一行様が帰る日がやってきた。 アミタさんが申し訳なさそうに頭を下げる中、隣のキリエさんはバツが悪そうにしていた。 まぁ、被害は被ったものの終わり良ければ総て良しということで。 そんな思いを込めて、首を振っておいた

 

「・・・・・・・悪かったわね、色々と」

 

「・・・・・・はぁ」

 

「り、理樹君」

 

「えっと、イリスがすみません」

 

「いやいや、ユーリが謝ることじゃないから」

 

最後の最後まで偉そうな態度というか、なんというか...... まぁ、イリスらしいと言えばイリスらしいのか? そんな風に納得しようとしていれば、なのはが手を引いてくる。 いや、失礼だとは思うけどね? そんなイリスの態度を見てかユーリが謝ってくるが、ユーリのせいじゃないし

 

「うーん、王様と離れるの寂しいわー」

 

「ええぃ!うっとおしいわ子鴉が!!リインフォース、貴様も何とかしろ!」

 

「そんなこと言われてもな......」

 

「はやてちゃん、王様も困ってますから。 それにアインスも苦笑いですよ!」

 

「レヴィ、大丈夫?」

 

「うんうん、お姉ちゃん心配だよ」

 

「ふふん!僕は無敵だから大丈夫さ!」

 

なんて、それぞれ思い思いに別れを惜しんでいた。 あ、ディアーチェがこっちに視線よこしてきたけど無視しとこ。

 

「なのは、貴女とはいつか再戦を」

 

「もちろんだよシュテル、今度は周りに気にせず全力全開でやろうね!」

 

こっちでは友情が目覚めてるのはいいんだが、その会場の手配は誰がやるんだろうか。 まぁ、自分でやらせよう

 

「本当に、ありがとうございました」

 

「礼はいらないさ、こっちは世界がかかっていたんだからな」

 

「それもありますけど、こうやって全員が笑顔で別れられることを、です」

 

少し離れたところで、俺はユーリと会話をしていた。 全員が笑顔で、ね。 その言葉にユーリのどんな思いが込められてるのかはわからないが、それなら

 

「一応言っておくと、全員がこの状況を望んだからだろうよ。 まぁ、お礼は受け取っておく。 それで、エルトリアに戻ったらどうするんだ?」

 

「そう、ですね。 貴方のおかげでウイルスはなくなりました。 なら、私は私の使命を果たします。 イリスのお父さんやお母さん、他のみんなが望んだ未来を獲得するために」

 

「そうか」

 

多分並大抵の道ではないだろうが、まぁ大丈夫なのだろう。 特に何か会話するわけでもなく、しばらく今の光景を目に焼き付けておいた

 

----------------------------------------------------------------

 

「それでは、お世話になりました!」

 

そう言って、光に包まれていく今回の関係者一向。 光が晴れれば、そこに姿はなく今回の事件の終わりを意味していた

 

「ふぅ....... これで今回の事件も終わりか」

 

「お疲れ様、理樹君」

 

「なのはもな」

 

「なーに二人でいい雰囲気になってるんや!」

 

「そうだそうだー!」

 

「にゃ!?」

 

「あぶないから後ろからとびかかるなはやて、アリシア」



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第三十六話

「指揮官代理、お疲れ様」

 

「資料等は纏めてあるからそれを読んでくれ」

 

「あぁ」

 

オールストンシーの一件以来、療養していたクロノがようやく復帰ということで東京臨時支局に来た。 俺は俺で、あの一件からずっと指揮権が移譲されたままだったので代行を果していたというわけだ。 なんかクロノにしてやられたような気がするが、いいか

 

「それで、療養という体での休暇はどうでしたかね?」

 

「嫌味な奴だ。 君に任していたのは申し訳なかったが、それほど信頼しているということで一つ」

 

なーにが信頼だか。 目は口程に物を言うというのを、見せつけられている気分だ。 いや、勿論信頼しているのは分かるが楽しかったと言ってるぞ顔が。 話を聞けば、傷自体見た目は酷いものだったものの、そこまで深くはなかったらしい。 クロノ自身はすぐ復帰したかったようだが、エイミィさんが許さなかったらしい。 それで、リンディさんに休暇届をエイミィさんが勝手に提出、この頃休みもなかったことだしということで受理、今回のようなことになったようだ

 

「それで、僕がいなかった間に変わったことは?」

 

「特にない。 あの一件以来、どうもリンディさんが手配した本部の連中が働いていたからな。 そもそもここは管理外世界、魔導士が来ること自体あまりないしな」

 

「平和でいいじゃないか、あの一件があったから余計にそう思う」

 

クロノは俺が作成した引き継ぎの資料に目を通しつつ、ため息をつく。 まぁ、今回のイリスが起こした一件の被害は少なくなかったしな。 こうやって数か月たったのにも関わらず、俺やクロノ...... 俺はつい最近まで、処理に追われていたわけだしな。 いや、そもそも本局に提出しなかったからもあるのか? 深みにはまりそうな思考はさっさと明後日の方向に投げ捨て、改めてクロノに向き直る

 

「その報告書の中に、今回の事件で使った力を出来るだけ簡潔にまとめておいた」

 

「あぁ、後から報告で聞いた仮面と甲冑、マントだったか?」

 

「そうだ」

 

「まぁ、それも本部に報告するわけにはいかないからな。 どうせ、ここどまりだがな」

 

「報告しなかったらしなかったでうるさく言うくせに......」

 

「それとこれとは、話は別だ。 うん、引き継ぎの資料も問題ないな。 今回は本当に助かった」

 

「それじゃあゆっくり休ませてもらう」

 

「急ぎの任務がなければな」

 

クロノのそんな言葉を無視し、俺は部屋を出た

 

----------------------------------------------------------------

 

「ただいまー」

 

玄関をくぐり、靴を並べて脱ぎリビングにはいる。 どうやら夕食には間に合ったようで、全員集合していた

 

「マスター、今日は早いんですね」

 

「今日からクロノが復帰したからな。 みんなもすまなかった、俺の代わりに任務に出るなんてこともあったしな」

 

一応責任者という立場もあり、何もないにしても臨時支部にはいないといけなかったのだ。 なので、本当に緊急のもの以外任務を変わって貰ったりしていたのだ。 そのことについて言えば、みんなは笑顔を崩さなかった

 

「良いんですよマスター、私たちだって頼られて嬉しいんですから」

 

「リリィさんの言う通りですマスター」

 

「マスター殿は普段から働きすぎなのですから」

 

「・・・・・・そんなことないだろ」

 

苦笑しつつ、俺も自分の席につく。 配膳してくれる玉藻にお礼を言いつつ、全員が座ったのを確認し手を合わせる

 

「いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

全員で手をあわせ食べ始める。 それにしても、こうして全員揃ってご飯を食べるというのも久しぶりだ。 毎日誰かしら任務に出ていたし、この頃は支部に居ることが多かった俺だ。 久しぶりの談笑しながらのご飯は美味しく感じた



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空白期
第三十七話


「さっむ......」

 

何度経験しても海鳴の冬は寒いもので、手をこすりながら廊下を歩く。 海が近いというのも、この寒さには関係があるのだろうかと思いながら立ち止まり窓から空を見る。 どんよりと曇っており、どこか嫌な天気模様だった。 予報では晴れだったはずだが、何故か曇り空、しかも気温まで下がっているという。 雪かなーなんて思いつつ、歩みを再開する。 教室に入れば、がやがやにぎわっている。 皆は口々に、雪降るかなーなんて言っているが、降られたら降られたで靴が濡れて大変なのだが。 まぁ、そんなことを考えるのも俺だけかと一人納得し、席に座り空を見上げる

 

「なんか、なのはがいないと元気ないわね」

 

「・・・・・・冷やかしならどこか行ってくれ」

 

視線を合わせずに声の主に言う。 視線を合わせなくても声で分かる、バニングスだ。 なのはがいるなら面白い反応も帰ってきただろうが、俺だけでは面白い反応なんて帰すはずもない。 それが分かっているのに話しかけてくるとは、相当の暇人である。 そもそもだ、今日いないのはなのはだけではなく、はやてやフェイト・テスタロッサもいない。 いるのは俺とアイツだけだ。 あとはアリシアか。 なのはは教導隊経由での任務、フェイト・テスタロッサは経験を積むために、クロノの知り合いの執務官の捜査協力、はやては聖王協会。 それぞれがそれぞれの道に動き出している

 

「なのは達がいなくて暇なのよ」

 

「ならあっちのかまってちゃんに構って来ればいいだろう」

 

そう言って視線をアイツに移す。 俺と目が合うとビクッと体を震わせ、目をそらす。 前まではひどかったものだが、あの事件、異世界組が起こした事件以来アイツの中で何か変化があったのか、少しはましになった。 クロノの話曰く、任務にも少しずつ出るようになったらしい。 まぁ、何故かフェイト・テスタロッサもついて行くようだが。 この分なら、復帰もできるかもしれないとのこと。 話はそれたが

 

「藤森君は藤森君で付き合いがあるから」

 

「へぇ......」

 

月村がそう言ってこちらに近づいてくる。 アイツにもアイツの付き合いがねぇ...... 俺も前ほどクラスに絡まれなくなったとはいえ、いまだに付き合いがある。 アイツの場合、一回どん底まで落ちたのに付き合いがあるとは。 これが成長ということなのだろうか? なんて思いながら、視線をどんよりと曇った空に戻す

 

「なのはが心配?」

 

「あのね、アイツもガキじゃないんだから心配なわけないだろ?」

 

何を言うんだコイツはと思い、思わずバニングスの方を向けば何とも微妙な表情のバニングスが。 そんなバニングスの表情に、それ以上何も言う気が起きずため息を一つこぼす。 そんな俺とバニングスを見る月村だが、その表情は苦笑していた

 

「まぁうん。 私たちは神木君みたいに魔法の力があるわけじゃないからね、なのはちゃんに何かあってもすぐに駆け付けられないから」

 

「・・・・・・そーですね」

 

こんな話になるのだったら、仕事でも入れればよかっただろうか

 

----------------------------------------------------------------

 

昼休み、教室のように人口密度が高いような場所、なおかつストーブがついている場所から離れた俺はとても寒い思いをしながら廊下を歩いていた。 嫌な事に、雪が降ってきたのだ。 まぁ元々、外で体を動かそうなんて思ってないが。 なので、図書室にでも行こうと思ったのだが

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

そんな俺の前に、偶然通りがかったのかアイツが驚いた顔をしてこちらを見ていた。 俺は特に気にせず通り過ぎようとしたのだが、声がかかった

 

「な、なぁ」

 

「・・・・・・なんだ」

 

視線を合わせれば少し怯えが混じっているが、なんとか話そうとしているアイツの姿が。 何とも珍しいことがあるものだな

 

「お前は、ここに居ていいのか?」

 

「どういう意味だ」

 

意味の分からない質問に困惑する俺。 そして一層に怖がったアイツだが、話だけはやめるつもりがないようだ

 

「だって、なのはが、任務、なんだろう?」

 

「任務くらい普通だろうに」

 

要領を得ない説明に若干内心ではイライラしつつ、会話を重ねる

 

「なのはが、墜落するかもしれない、のに?」

 

「おい、どういう意味だ」

 

胸ぐらを掴み上げ、問いただす。 なのはが墜落、どういう意味だ。 というよりも、何故こいつは()()()()()()()()()()()

 

「だ、だって、このころ原作ではなのはが墜ちて!

 

「チッ!!」

 

この頃忘れがち、いやそもそも俺にその記憶はないのだが、俺とコイツは転生者である。 原作、つまりこの世界で未来に何が起こるというのを知っている。 俺は神を殺した代償に、その記録を失くしてしまっているがコイツにはそれが残っている。 半泣きになっているアイツを放置し、屋上に上がるために階段を上る

 

『クロノ!』

 

『いきなり念話とは、緊急事態か?』

 

クロノの冷静な声を聞き幾分か気持ちは落ち着いたが、嫌な胸騒ぎがする。 というよりも、朝からずっとあったのをそらしていたというほうが正しいか? ともかく、クロノに簡単に事情を話す

 

『なのはは何処だ』

 

『なんだ、なんだかんだ言いつつも』

 

『真面目な話だ』

 

『すまん。 なのはだったか? 一応ログを洗ったが、任務は完了しているようだ。 今は他の部隊と合流のため、飛んでいるはずだが』

 

『悪いが、説教はあとで聞く。 今は緊急事態なんだ』

 

そう言って送られてきた座標を調べ、屋上についた俺はトーリスリッターに制御を任せて現地に跳ぶ



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第三十八話

どうも現地は雪が降り始めたようで、うっすらと木に雪が積もっていた。 バリアジャケットや身体強化のおかげで寒くはないが、白いとなのはが見つけ辛い。 闇雲に探しても見つかるはずもないので、はやる気持ちを抑えつつ念話で声をかける

 

『こちら神木、誰かこの念話が聞こえているやつはいないか!』

 

『神木、なんでお前がここに!いや、それはいい。 なのはを探してくれ!!』

 

ビンゴだったようで、なのはと一緒に任務を受けていたヴィータに念話がつながったようだった。 だが、なのはを探してくれということは......

 

『何かあったのか?』

 

『任務を終えて合流地に向かったのはいいんだが、部隊に合流したら突然襲われて部隊は散り散りになっちまったんだ。 他の奴らの退避は完了したんだが、アタシとなのはがしつこく追われてて......』

 

『目的はお前たち? いやいい、考えるのは後だ。 なのはの大まかな位置は分かるか?』

 

直後、ピンク色の魔力光と轟音が鳴り響く。 なのはっていうのは分かるが、なんであんなにでかい一撃を? それほどの敵って言うことなのか? 頭が思考でごちゃごちゃになりながら、その方向に飛び始める

 

『なのは様の魔力を確認。 その周りに何かの反応が、取り囲まれてます』

 

「チィッ!!」

 

飛ぶ速度を最高速に上げ、目的地を目指す。 ようやくなのはを視認できるところまで来たが、何かに取り囲まれている? しかもなのはは先ほどの一撃が原因か、中央で気絶していた。 普段ならレイジングハートが何かしらしてなのはを守りそうなものだが、その様子もない。 まさに、絶体絶命だった。 このままでは間に合わないと判断し、王の財宝からありったけの剣を射出する。 なのはの周りの奴らが少し残ったが、これで大部分は殲滅できた。 これにより気が付いたのか、なのはを襲っていたものはこちらに向かってくる。 接近すると同時に、何故か飛行魔法が不安定になっていく

 

「トーリスリッター!!」

 

『あの機体、魔法結合と発生を...... すぐに対処します』

 

不安定になった飛行魔法だったが、トーリスリッターがすぐに術式を組み替えたのか安定する。 すれ違いざまに機械を切り裂き、そのままなのはを囲んでいる数機を切り裂く

 

「なのは!なのは!!」

 

『バイタルは安定しています。 おそらく過剰な魔力の消失で気絶しただけかと』

 

俺が声をかけてもなのはは目を覚ますことなく、眠り続けていた。 そんな俺の様子を見かねてか、トーリスリッターが簡易的に診察をしてくれたようだ。 一安心と言いたいところだが、まだあの機械がいるかもしれない。 長居は無用だ。 なのはを横抱きにし、レイジングハートを回収する

 

『ヴィータ、なのはを回収した』

 

『すまん、アタシが付いていながら......』

 

『イレギュラーがあったんだ、仕方ないだろ。 いつまでも気にするな。 合流するぞ』

 

『あぁ』

 

飛ぼうとして術式を起動すれば、なのはが身じろぎした

 

「う、ん?」

 

「なのは、目が覚めたか」

 

「理樹、君?」

 

目が覚めたのはよかったのだが、どこか顔色が悪いなのは。 ともかく長居は危ないので飛ぼうとしたのだが...... 何かを感じ、なのはとレイジングハートを放り投げる

 

「きゃ!?」

 

なのはのそんな声が聞こえると同時に、俺の胸からは刃物が生えていた

 

「マスター!?」

 

一瞬意識が遠のきかけるものの気合でつなぎ止め、胸から出ている刃物を掴む。 ステルス機能まであるやつがいるのか、こいつらは。 初代様と手合わせしてなかったら死んでたぞこれ。 なんて考えつつ、魔力を高め札に込める

 

「理樹君!?」

 

「ぐぅ!!呪相、氷、天!!」

 

離れないのが分かったのか、俺のことを切ってくる機械だが氷天を使い氷漬けにする。 それにより動きが止まり、一緒に氷漬けになった刃物は脆くなったのか折れる。 それにより支えを失った俺は地面に落ちる。 あぁ、冷たいが下が雪で助かった。 あまり痛くない

 

「理樹君!理樹君!!」

 

俺のことをゆするなのはだが、段々と意識が遠くなっていく。 だんだんなのはがゆすっているのに、それすらも心地よくなってきた

 

「なの、は...... ヴィータと、連絡を取れ」

 

幸いなことに、機械ごと氷漬けにした時に刃物も凍ったため、傷口も凍っているためかあまり血が出ないのが救いだ。 まぁ、後はヴィータがどれだけ早くついて応急処置を出来るかだな。 こいつ、冷静じゃないし。 それに、ほとんど魔力残ってないみたいだしな。 なんてことを考えながら、俺は意識を緩やかに手放した



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第三十九話

静かに目を覚ませば、見慣れた自室ではなく全体的に白い部屋だった。 場所を確認しようとすれば、胸に鋭い痛みが走った。 それで、今までの自分がどういう状態だったかを思い出す。 あぁ、そう言えば油断して胸を貫かれたんだったな。 とっさになのはを突き飛ばし、身体をずらしたからよかったものの、そうでなければ心臓直撃だった。 戦場だというのに、気を抜きすぎたなと反省して体の力を抜く。 療養が終わったら、初代様に鍛え直してもらうことを頭に置き、首だけを動かし改めて周囲を確認する。 どうも医療機器があるようだし、病院か何かだろうと視線を下に向ければなのはが寝ていた。 まぁ、無事だったようで何よりだ。 藤森(アイツ)にも礼を言う必要があるだろう

 

「む?」

 

部屋に入ってきたであろうクロノが俺が目覚めているのを確認して声をかけようとするが、口に指を持っていき声をかけることを制する。 クロノもなのはが寝ていることに気が付いたのか、静かに移動し俺のベッドの近くに腰を下ろす

 

『存外元気そうだな』

 

『心臓の横を貫かれはしたが、それだけだ』

 

『その様子だと、傷のことは分かっていそうだな。 さて、今回の件だがなのはやヴィータを迅速に助けたということもあって厳重注意だけだ。 ただ、次もかばいきれるとは限らない、そこだけは注意してくれ』

 

『何から何まですまんな』

 

流石に面と向かって言いたかったのだが、なのはも寝ているためお礼は念話で言う。 まぁ、後で改めて言うことにしよう

 

『本当だぞ。 運ばれたときになのはをはがすのに苦労したし、丸二日も寝こけていたんだからな』

 

『・・・・・・そんなにか』

 

『あぁ』

 

クロノの念話に視線を眠っているなのはに向ける。 確かに、よく見れば目元にクマが出来ていた。 ・・・・・・心配かけてしまったな

 

『にしても、なのははなんであんな状態になっていたんだ?』

 

再びクロノに視線を戻し、念話でそう尋ねた。 いくら不意打ちを受けて、あの機械が魔法に対するジャマーがあるとしても、なのはやヴィータならそこまで脅威じゃないはずだ

 

『それについてなんだが......』

 

そこでいったん言葉を切り、クロノはなのはに向かって厳しい視線を向ける。 ふむ、なのはが原因みたいだな

 

『なのはのリンカーコアに異常な収縮が見られた』

 

『どういうことだ?』

 

『医者が言うには、無理な魔法の連続行使が原因だそうだ』

 

『・・・・・・』

 

確かに、思い当たる節はあった。 ジュエルシード事件の時も、闇の書事件に関してもなのはは実力以上の力を引き出し使っていた。 イリスが引き起こした事件なんか、こちらでは技術の確立もされていないフォーミュラの力まで使っていたのだ

 

『治すには、魔法の使用を控えさせる、十分な休息をとらせることだそうだが......』

 

『・・・・・・そこそこ任務があったはずだぞ。 フェイト・テスタロッサが執務官試験を受けるということで、自分の教導官としての仕事にその分まで受け持っていたはずだ』

 

『あぁ。 だがこうなった以上は』

 

『なのはは休ませる。 教導官の仕事は悪いがヴィータに引き継いでもらうしかないだろう』

 

『それについては問題ない、ヴィータ本人からそういう要望があったからな』

 

『任務については、俺が全部引き継ぐ』

 

『流石に無理だ。 こっちでもいくつか簡単な任務を見繕い、藤森にも参加させる。 危険度が高いのについては、君と君の家族に行ってもらうことになるが』

 

『・・・・・・それでいい』

 

流石に家族を頼るのは控えたかったのだが、こればかりは仕方がない。 自分でも全部引き継ぐのは無理だとわかっていたし、よしんばできたとしても途中でポカをやってなのはのように墜ちるのが関の山だ

 

『本当は僕も出れればよかったんだが』

 

『こればかりは仕方ないだろう。 お前も色々忙しいだろう?』

 

『あぁ、すまない』

 

頭を下げるクロノに手を振りつつ、少しだけ話をした

 

----------------------------------------------------------------

 

「んっ......」

 

クロノが出て行ったから数分後、なのはが目を覚ましたようだ。 不安そうにあたりをきょろきょろし、俺を見つけると目尻に涙をため抱き着いてきた

 

「理樹君!」

 

「もうちょい気を付けてくれ、これでも胸の傷が塞がってないんだ」

 

苦笑しつつ、なのはを抱きしめながら頭をなでる。 するとなのはは、声にならない声をあげて泣き続ける。 その間、俺はなのはを抱きしめ続けながら頭をなでていた。 数分の時間が経ち、ようやくなのはが落ち着いたのか鳴き声は聞こえなくなった。 なのだが、離れようとしない

 

「なのは?」

 

「・・・・・・」

 

少し身じろぎするだけで、返事はない。 まぁいいかと気持ちを切り替え、さっきクロノと話していたことを口にする

 

「なのは、お前はしばらく魔法の使用を禁止する。 それに伴って、お前が参加するはずだった任務も他の人間が遂行することになった」

 

「どういう、こと?」

 

ようやく離れたと思えば、信じられないような顔でこちらを見るなのは

 

「今のお前の状態を鑑みてだ」

 

「私は!」

 

「墜ちかけた奴が何を言ってる!お前の体の状態を俺が知らないと思ってるのか!!」

 

何か言いかけたなのはを、俺は黙らせるために怒鳴りつける。 ここが個室でよかったと思った瞬間だった

 

「無理をしたせいでリンカーコアに異常な収縮が見られるそうだな? そんな状態で今回の任務に出たんだ、そうなるに決まってるだろ!自己管理ができないのなら、こちらで管理するしかない、そういうことだ。 今回の決定は俺の一存ではなく、クロノも了承済みだ」

 

「それはそうだけど、私はまだ大丈夫だよ!」

 

「俺がいなかったら死んでたかもしれないのにか?」

 

自分でも驚くほど冷たい声が出た。 なのはも俺の声に驚いてか、顔が青くなっていく。 だが、これはなのはだけの問題ではない。 また同じようなことが起こり、それがチームでの活動中だとしたら、チームまで危険にさらすことになる。 だから俺は心を鬼にしてなのはに言い放つ

 

「どちらにしろもう決まったことだ、今回の休暇でよく自分を見直すことだ」

 

そう言って、痛む胸の傷を無視しつつ部屋を後にする。 俺の見間違いでなければ、部屋を出るときのなのはは俺に手を伸ばしつつ泣いていたような気がした



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第四十話

先週は更新できず申し訳ないです。 どうも、風邪気味っぽかったので


「さて、全員に来てもらったのは他でもない、これからのことだ」

 

家族である玉藻、リリィ、マシュ、ハサンを東京臨時支部の一室、俺にあてがわれた執務室に集めそう告げる。 まぁ、いきなりのことでみんなは不思議そうな顔をしていたが

 

「なのはが墜ちそうになった件は知ってるな」

 

俺がそう問えば、みんなは頷いた。 今回の事は、大事な執務官試験を控えているフェイト・テスタロッサには言われなかったようだが、それ以外には全員何らかの形で伝達がされているという話を聞いていた

 

「その件で、なのはが受け持っていた任務を俺とお前たち、それと簡単な任務を藤森(アイツ)でこなすことになった」

 

「うぇー...... それって休日がつぶれるってことですかー?」

 

玉藻が心底嫌そうな顔をするが、俺は苦笑して返事をする

 

「一応最低限の休みはとれるようにスケジュールは管理する予定だが、その可能性は高いだろうな」

 

「これがブラック管理局の実態なんですね、玉藻泣いちゃいそうですぅ」

 

「すまないな」

 

「いえ、マスターのせいではありません」

 

「そうですマスター、私も微力ながら力をお貸ししますので!」

 

そう言って俺を慰めてくれるリリィに、妙にやる気みなぎるマシュ。 頼もしく思いながらハサンを見れば、分かっているという風に頷いている。 そもそもハサンに関しては、初代様からもっと働かせろというお達しが来ていたので心を鬼にする所存だ。 一応、抑えてはいたものの、そろそろ首出せ案件になりそうだったので。 俺は俺で、たるんでいるそうなのであの夢空間で初代様と手合わせ進行中だ

 

「ともかくそういうわけだ、みんなよろしく頼む」

 

座っていた椅子から立ち上がり、みんなに頭を下げる。 顔を上げれば、みんなは真剣な表情で頷いていた

 

----------------------------------------------------------------

 

それからというもの、かなり忙しかった。 俺は俺個人で来る任務をこなしながら、なのはの任務を引き継ぎその任務で飛び回り。 家族の方も、そんな感じだ。 一応、スケジュールは管理して俺より忙しくないようにはしておいたのだが。 なので、この頃家にも帰ってないし、家族にも会っていない。 今も報告書や次の任務での書類の作成中だ。 そんな中、ドアからノック音がする。 時計を見れば深夜で、この時間にくる人間は限られているのでそのまま書類をキリのいいところまで進める

 

「まったく、ノックをしても反応がないのはいささか感じが悪いんじゃないか?」

 

「この時間に東京臨時支局(ここ)に居るのは限られた人間だけだし、そんな中コーヒーを持ってくるのはお前くらいだ」

 

そう言ってキリのいいところまで纏めた書類を片付け、クロノを見る。 それもそうかといって、コーヒーを差し出してくる。 それを受け取りつつ、クロノにここに来た用件を聞く

 

「それで、なんか用か?」

 

「なんだ、用がなければ来ちゃいけないのか?」

 

「そういうわけでもないが、忙しいんでな」

 

「まったく......」

 

呆れたとでも言いたげな顔をしながらコーヒーを飲むクロノになんだコイツと思いつつ、俺もコーヒーを飲む

 

「こっちに来て僕も自分で働きすぎだと思ったが、今の君はそれ以上だな」

 

「それなら変わってくれてもいいぞ、てか変われ」

 

「そのくらいの軽口が叩けるようなら大丈夫そうだな」

 

「へぇ、心配してくれるのか」

 

何て談笑しながら、コーヒーをちびちび飲む。 それから数分後、飲み終わったカップをクロノに返しながら聞きたかったことを聞く

 

「それで、なのはの方は?」

 

「リンカーコアは順調に回復、らしい。 ただ、まだ任務に出すわけにはいかない。 これが医者の見解だ」

 

「ほーん、いいんじゃない?」

 

「医者の見立てでは、完全回復まで半年から一年だそうだ」

 

「じゃあそれまではヴィータに頑張ってもらうしかないな」

 

「きみも、だ。 他の局員からも君は働きすぎだと言われている。 実際、家にどのくらい帰ってないんだ?」

 

「なのはが墜ちそうになって数日後からか?」

 

「もう四、五か月になるじゃないか......」

 

「休憩は終わりだ、気が散る」

 

「・・・・・・」

 

クロノは何とも言えない表情で俺の執務室を後にした

 

----------------------------------------------------------------

 

何時もなら書類などは上司であるクロノに提出すればそれで終わりなのだが、たまに管理局本局に直で提出しなければいけないものもある。 今回はその直で提出しなければならない書類が出てしまったので、本局に足を運んでいた。 久しぶりに本局に来たが、居心地が悪いこと悪いこと。 俺がそう感じているだけかもしれないが。 書類はもう提出し終えているので、こんな居心地悪いところなどとっとと出て行くに限る。 そう思いながら、俺は本局を歩いていた。 すると、前方に見知った顔が。 あちらは書類とにらめっこしているために気が付いてないが、このままだとぶつかるコースだ。 ・・・・・・なんで俺がこんなことを指摘しなければならないのか

 

「おい、書類見て歩くのは構わないが周りにも気を払え」

 

「あ、すみません!て、神木!?」

 

大げさに驚き、手にしていた書類を落としてしまうアイツ。 本当に何をやってるんだか。 何故か謝っているアイツを尻目に、俺は地面に散乱した書類を拾う。 ちらっと内容を見れば、なのはの代わりの任務であろう

 

「何やってるんだお前は」

 

「す、すまん」

 

「さっきからそればかりだな」

 

書類を渡してやれば、また謝ってくる。 うんざりしながらそう言えば、今度こそ黙る。 ・・・・・・なんか変な空気になってしまったがちょうどいい、俺も忙しくてコイツと会う機会なんてほとんどないのだ

 

「礼を言う」

 

「え?」

 

「なのはの件だ。 お前があの時俺に言ってくれなければ、なのはは死んでたかもしれない。 だからその礼だ、ありがとう」

 

「・・・・・・」

 

ポカンとしているアイツには無性に腹がっ立ったが、そのまま横を通り過ぎる。 あぁ、そういえば

 

「その書類、そのまま上げると不備があるぞ。 書類の書き方くらい誰かに教われ」

 

そう言って、今度こそその場を後にした

 

----------------------------------------------------------------

 

「マスター」

 

「なんだ、トーリスリッター」

 

任務の帰り、重い体に喝を入れつつ執務室に向かっていると珍しいことにトーリスリッターが話しかけてきた

 

「プレシア様からデータが転送されました」

 

「珍しい」

 

執務室についたのでコーヒーを淹れて席に座る。 そしてプレシアさんから送られてきたデータを開けば

 

「あぁ、そう言えば今日は卒業式か」

 

この頃忙しくて忘れていたが、今日は小学校の卒業式だった。 送られてきたデータは、その卒業式の様子や写真だった。 あの人親ばかだからなぁ...... それにしても俺に写真を送ってくる意味が分からないが。 ふと一枚の写真を見て動きを止める。 その写真はなのはの写真で、表情が暗かった

 

「はぁ...... なんとなく送ってきた意味が分かったわ」



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第四十一話

やっとの思いでクロノに報告書を提出し、海鳴に戻ってきた。 と言っても辺りは暗く、時間にすると九時だ。 この頃は忙しくて時間の感覚どころか曜日感覚まであやふやだ。 なんて関係ないことを考えつつ、道を歩く。 何かしら考えていないと寝そうなので、考えているわけだが。 とある家の前で立ち止まり、呼び鈴を押す。 中から出てきた人に用件を伝え待つこと数分

 

「理樹君......」

 

「よぉ、なのは」

 

俺のことを見るとバツが悪いのか、視線を逸らすなのはに手をあげて挨拶をする。 あの一件以来顔を合わせてはいなかったが、元気そうだった

 

「元気そうだな」

 

「・・・・・・」

 

俺が声をかけても、視線をそらしたまま目も合わせようともしないなのは。 ただ、この場から立ち去らないところを見ると話したいとは思っているのか? ダメだ、頭が回らない

 

「だんまり、か...... 今日卒業式だったんだな、すっかり忘れてたよ」

 

「・・・・・・うん」

 

頭が働いていない影響か、全く関係ない話題に飛んだがこれには応じるなのは。 と言っても、目はそらしたままなのだが

 

「プレシアさんから写真が送られてきたよ、お前の写真とかフェイト・テスタロッサ、バニングスとか月村とかな。 まぁ、はやてなんかはリインフォースが嫌がらせかというほど写真が送られてきたが」

 

そう、あのプレシアさんが写真を送ってきた後、書類を整理していたら本当に嫌がらせかというほどリインフォースがはやての写真を送ってきたのだ。 流石に書類をまとめるのに集中したかったので、トーリスリッターに言って一時的に受信拒否にしたが

 

「それで? あの一件以来ヴィータと話したのか?」

 

「っ!?」

 

体をビクつかせ縮こまるなのはに、俺は溜息をはく。 このなのはの様子から察するに、ヴィータとも話していないようだ

 

「俺はともかくとして、ヴィータとは話しておけよ。 自分の教導の他になのはの分まで受け持ったんだから。 結構忙しかったと風の噂で聞いたしな」

 

「・・・・・・さい」

 

「ん?」

 

「ごめん、なさい!私のせいで!」

 

そう言ってうわごとのようにごめんなさいと繰り返し言うなのは。 別に責めに来たわけではないのだが...... いや、言い方的に責めるような言い方になってしまったかもしれない。 なんせ、頭働いてないし。 ともかくなのはをそのままにしておくわけにも行かず、なのはを抱き寄せる

 

「まぁ、謝って済む問題じゃないが...... 今回のようなことを二度と起こさないでくれば、それでいいさ」

 

「うぅ...... うわ......」

 

そうして泣きじゃくるなのはをあやす。 数分後、泣きじゃくる声は聞こえなくなった。 まだ鼻をすするような音はしているものの、大丈夫だろう

 

「落ち着いたか」

 

俺に抱き着きながら、頷くなのは。 顔は見えないが、ここは個人の意思を尊重しよう

 

「今回の事でお前は結構な人に迷惑をかけた、ちゃんと謝っておけよ?」

 

「うん...... ごめんね、理樹君」

 

「別に謝らなくてもいい」

 

「ううん、そうじゃないの」

 

そう言って抱き着くのをやめ、俺を見上げるなのは

 

「今回の事でいろんな人に迷惑かけたけど、一番は理樹君でしょ?」

 

「そんなことは.....」

 

「あるよね? クロノ君から聞いてるよ。 私がやるはずだった任務、ほとんど理樹君が肩代わりしたって。 この頃学校に来ないのだって」

 

そう言って視線を逸らすなのは。 クロノめ、面倒なことを。 そう思いながら、頭をガシガシと掻く

 

「その通りだ、その通りだが俺が進んでやったことだ。 いやなら嫌で、俺にも拒否権ぐらいはある。 お前が気に病むことじゃない」

 

「でも私が!!」

 

「それもなしだバカ」

 

なのはを再度抱き寄せる。 少しなのはは暴れるが、抑え込むと途端におとなしくなる

 

「確かにお前の無理や無茶がたたった結果だが、それを監督できなかった俺やクロノの責任にもなる。 ヴィータなんか、任務を一緒にこなしていたのに気が付かなかったと後悔していた。 だから必要以上に気に病むな、だが同じことは二度と起こすなよ?」

 

「理樹君は、優しすぎるよ......」

 

「前にも言われたなそれ」



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第四十二話

なのはも無事に回復し、前よりも魔力量が増えたらしく積極的に任務に出るようになっていた。 今度は全員の前で無茶をしないと約束したので、まぁ大丈夫だと思いたい。 それと同時に激務だった俺は強制的に休みを取らされ、行きたくもない学校に通っていた。 小学校まで行くつもりしかなかったのだが、リンディさんと玉藻、他の大人たちが手を回していたそうな。 なので、数週間は平和な学園生活を送っている。 だが平和とは脆く崩れ去るもので、意外なところからの知らせにより、俺の平和は崩される

 

「神木!」

 

「お前だったのか手紙の主は」

 

昼休み、屋上にて待つ。 そんな紙切れが下駄箱に入っていたのだ、驚いたものだ。 偶然一緒に来ていたなのはから隠すのが大変だったし、果たし状かよと思ったものだ。 約束通り屋上で待っていれば、現れたのはアイツだった。 声が予想よりも大きくてしまったみたいな顔をしているが、何かあるのだろうか? それに、中学入っても隣に居るフェイト・テスタロッサの姿がない。 フェイト・テスタロッサがいたほうが話がスムーズに進むのだが、いないものは仕方がない。 それにしても、呼び出しておいてなかなか話を切り出さない。 休み時間も有限だ、なので俺から切り出すことにした

 

「はぁ...... それで、何か用か?」

 

「その、神木に協力してほしいことがある」

 

おどおどして言う割には、瞳にはしっかりとした覚悟があった。 ふむ...... フェイト・テスタロッサには話せない内容、そしてコイツのことを嫌っている俺にあえて話す内容と言ったら一つしかないな

 

「未来に関することか」

 

「そ、その通りだ。 よくわかったな?」

 

「いつも一緒に居るフェイト・テスタロッサを同席させず、しきりに周囲を気にするような話題と言ったらそれしかないだろう。 と言っても、その内容が何なのか俺にはさっぱりだがな」

 

「その、人助けだ」

 

「・・・・・・続きは?」

 

人助け、その言葉が出た時に俺の中には何とも言えない感情が噴き出してきたが、それを飲み込み続きを促す

 

「俺たちによって既に未来が変わってる。 この間のキリエ・フローリアンの事件然り、リインフォース然り。 俺の予想以上のことが起これば、みんなを守り切ることができなくなる。 なら、そう言ったイレギュラーに対応できる人を増やしておくのは悪いことじゃないだろう?」

 

思い当たる節はあった。 キリエさんが調べた情報の中には、リインフォースがいないという情報だったし。 それにしても

 

「みんなを守る、ね」

 

「も、もちろん俺一人で守れるなんて思ってない!自分の力が足りないのもわかってる......」

 

俺がそう呟けば、慌てたように訂正する。 そして俯いてしまう。 ふーん、こいつも変わったってことか。 俯きながらも悔しそうに拳を震わせるのを見て、そう思った

 

「それで?」

 

「それにその人たちは、この先にも関わってくる人物だ。 だから頼む、助けるのを手伝ってくれ。 俺一人じゃ無理なんだ、この通りだ!」

 

土下座でもしそうな勢いで頼みこんでくる。 確かに、言ってることに間違いはない。 未来が変わってきている、それはたぶん本当のこと。 コイツの知らない事象が出て来れば、対応は遅れるだろう。 まぁそもそも、未来を知っているという時点でおかしいのだが。 本来なら死ぬはずだった人間を残しておけば、イレギュラーにも対応出来るということも分かるが...... 

 

「・・・・・・誰だ、その助ける人って言うのは」

 

「ゼスト・グランガイツ、クイント・ナカジマ、メガーヌ・アルピーノ、そしてその部隊」

 

「バカかお前は」

 

陸の英雄だった。 デバイスである槍一本でどんな困難も切り抜け、陸の上層レジアスと親友と言われる人だった。 そしてその部隊員で有名な人たちが軒を連ねる。 そもそも、その部隊は陸では最高戦力であり助ける必要なんて微塵も感じられない

 

「お、俺は本気で!」

 

「陸の最高戦力だ、やられるとは思えない。 イレギュラーがあったとして、お前の言う通り助けに行くとしてもあっちは陸だ。 俺たちは海の人間、言いたいことは分かるだろう?」

 

「確かに海と陸、いやそもそも陸は何処とも仲が悪いがそんなこと言ってる場合じゃ!」

 

「ゼスト隊はレジアスとも繋がってるんだぞ、下手に俺たちが向かえば諍いを生むだけだ。 それじゃあなくてもレジアスはレアスキル、犯罪者を嫌ってるんだぞ? お前はともかく、俺が行ったら火に油を注ぐようなものだぞ」

 

「そ、れは.......」

 

「それに根本的な問題として、何故俺たちがその場にいるか納得のいく説明ができるのか? 俺もお前も、近日中に任務なんかないぞ? 馬鹿正直に未来を知っていたのであそこでスタンバってました、とでも言う気か?」

 

「・・・・・・」

 

俺の言葉に俯いて黙ってしまう。 ただまぁ、これからのことを考えるなら陸に恩が売れる大事な機会だ、みすみす逃すのも惜しいというのも事実だ

 

「で、そのゼスト隊が襲われる日は分かっているのか?」

 

「え?」

 

「だから、その襲われる日は分かっているのか?」

 

「あ、あぁ。 いくつか怪しい任務はピックアップしておいたから、それのどれかだと思う」

 

「そのデータを送れ」

 

わかったと言って、データを送ってくる。 コイツにしてはよく調べてあるが、どういうことだ? それに陸の任務を覗く、それもゼスト隊だ。 相当なセキュリティーのはずだが...... まぁ、いい。 そして、今度は東京臨時支局のデータを覗く。 任務地が近いのをピックアップして......

 

「こんなものか? ほれ」

 

「これは...... 任務?」

 

「俺も俺で独自の権限持ってるからな、それくらいは朝飯前だ。 と言っても、本当なら俺は休暇を言い渡されている身だ。 この任務には監督役として付いて行くことになる。 言いたいことは分かるな?」

 

「俺の主導で進める、ってことだよな」

 

「あぁ。 簡単な任務だ。 終わってしばらく世界を散策しても、何も言われまい?」

 

「すまん!!」

 

そう言って頭を下てくるが、俺はそれに返事をせずに屋上を後にした



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第四十三話

「ふぅ...... そろそろ誤魔化し続けるのも限界だぞ」

 

「うっ...... お前に迷惑かけてるのは分かってるけど、これは」

 

「必要なこと、だろう。 わかってるから協力している、だが限度はあるぞ」

 

「・・・・・・猶予はどのくらいなんだ?」

 

「後一、二回が限度だろう。 お前と俺が一緒に任務に赴いてる時点で、フェイト・テスタロッサが怪しんでる。 それに本来なら安静にしなければいけない俺が動いてる時点でなのはもな。 今はクロノの方に抑えてもらってるが、それももうそろそろ限界だ」

 

「・・・・・・」

 

「諦めることも視野に入れろ」

 

「・・・・・・わかった」

 

----------------------------------------------------------------

 

「それで、藤森の様子はどうだ?」

 

「俺と一緒に任務に出て普通にやれてるんだ、もうそろそろ大丈夫だろうよ」

 

今回の報告書をまとめつつ、クロノに報告をする。 この頃のパターンで、場所は何時も俺にあてがわれた執務室だ。 クロノの方から視線を感じ、そちらを見ればじっとクロノに見られていた

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「それで、目的の方は?」

 

クロノには藤森を通じて目的を話してある。 そもそも、独自の権限を持つと言っても休みを決めたのはクロノだ。 監督役と言っても休みをひっくり返す理由にはならないので、クロノには説明をしたのだ。 もともと、クロノには話せとアイツに言っておいたのだ

 

「さてな。 そもそも、俺にその記録はなくなったからな。 一応、トーリスリッターに記録していると言っても細かい日付などは分からないしな」

 

「わかっているとは思うが」

 

「アイツには言ってある」

 

「ならいい」

 

そう言って視線を外し、人の部屋にあるコーヒーを勝手に飲み始める。 これももう何時ものことなので、言う気にもならなくなった

 

「だが、もし救出が上手くいったとして、どうするつもりなんだ?」

 

「まぁ、交渉等は得意だ」

 

「君のは交渉というより脅しだがな...... こっちに被害を来ないようにはしてくれ」

 

「それはもちろんだ」

 

----------------------------------------------------------------

 

「早く任務が終わってよかった......」

 

「吹雪いて視界が確保できないからな。 それで、どうする?」

 

「・・・・・・・もう少し待ちたい」

 

任務も終わり、恒例のゼスト隊にもしものことがあったら救援に入るということなのだがあいにくのことに雪が吹雪いてきた。 視界も悪く、徐々に寒さにより体温も奪われる最悪の状況。 まぁ、ここ最近の任務のおかげでアイツも判断を間違うようなこともないと思うのでギリギリまで待ってみることにした。 それにしてもこの吹雪で襲われればひとたまりもないが....... そんなことを考えていると、トーリスリッターが通信を傍受したのかノイズ音が

 

「ノイズがひどいな、トーリスリッター除去と発信元の特定を」

 

「完了しました。 距離はそれほど離れていないようです」

 

『この通信を聞いているものは誰でもいい、救援を』

 

「神木!」

 

「ビンゴだ。 だが藤森、分かっているな?」

 

「無鉄砲に突っ込んだりしない!」

 

「ならいい」

 

トーリスリッターの誘導に従い、徐々にポイントに接近をする。 すると、爆発音や怒声が聞こえてくる。 そしてかなりの数の気配も

 

「お前はゼスト隊と合流しろ、俺はこの吹雪を何とかする」

 

「気を付けろよ!」

 

「誰に言ってる」

 

アイツの背を見送りつつ、俺は宝物庫からエアを抜く。 念には念を。 嵐に紛れて、聞き覚えのある機械音がしたからだ

 

「まったく、今回の件は本当に当たりか?」

 

手加減に手加減を重ね、エアの力を開放する。 俺を中心に魔力を帯びた暴風が巻き起こり、吹雪は見事に晴れる。 さて、サブミッションを開始しますかね



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第四十四話

『神木、ゼスト隊と合流したが死亡者はいないものの負傷者多数』

 

『負傷者はどのくらいだ?』

 

『隊の半数だ、どうする?』

 

『どうするも何も、隊員たちは撤退させろ邪魔だ。 撤退は隊長とお前、クイント・ナカジマ、メガーヌアルピーノで補佐すればいいだろう。 俺は俺で敵の殲滅を受け持つ』

 

『頼んだ!』

 

「頼んだってアイツ、簡単に言ってくれるけどなぁ...... まぁ、あっちも大変と言えば大変、か!」

 

アイツと念話をしながら敵を倒しているが、やはりあの時なのはを襲った機械が混じっている。 となると、あの襲撃と同じ奴が犯人というわけか。 アイツ辺りなら犯人を知っていそうだが、細かいことは後だ。 同じような機械が辺りを飛んでいたりするが、氷漬けや炎天で片付ける。 あまりアイツと離れすぎても何かあった時に対処できないので周囲の安全を確認しつつ、アイツの方に近づいていく

 

『か、神木!?』

 

『どうした?』

 

焦ったような念話がアイツから飛んできた。 というか、頭に響くから念話のボリュームを考えろ。 危うく墜ちそうになったわ

 

『ガジェットドローンに混じって、戦闘機人がきた!?』

 

『あのな、お前は正式名称を知っているかもしれないが俺は知らないからな? ガジェットドローンがあの変な機械だって言うことは分かるが、戦闘機人は? あと少しは冷静になれ』

 

『す、すまん。 説明している時間はないけど、とにかく敵だ!』

 

『ちょうどそっちに向かって飛んでいたところだ、すぐに行く』

 

「それにしても、はぁ...... 敵ってことぐらいわかるわ」

 

この状況で味方が来るなんてありえないし、念話を飛ばすぐらいだから敵ってことは分かるが。 クロノにそろそろ大丈夫だと言ったが、まだ駄目かもしれないな。 すこし気分を盛り下がりながら、アイツの方に行く。 敵はガジェットと呼ばれた機械と、三人か? ともかくガジェットは邪魔だ。 まずは隊員を襲ているガジェットを片付けることにする

 

「う、うわぁ!」

 

「・・・・・・」

 

刀で切り裂き、次のガジェットを切り裂く。 隊員たちは助かったことにポカンとしているが、そこに隊長であるゼスト・グランツの怒声が飛ぶ

 

「何をぼうっとしている!!撤退をしろ!!」

 

「は、はい!!」

 

流石陸の英雄、圧が違う。 隊員たちはすぐさま立ち上がり、撤退を開始する

 

『藤森、お前は撤退する隊員の護衛を。 出来れば最前線で戦っている三人も連れて行って欲しいんだが』

 

『いやお前、それは無理だろ。 ともかく、撤退する隊員の護衛は任せろ!』

 

そう言うや否や、攻撃が迫っていた隊員を助けプロテクションで攻撃から守っていた。 いやうん、分かってたけどそんなハッキリ言うなよ。 そしてあの姿を見れば大丈夫だろうと思えるのだが、いかんせん予想外な出来事が起こると駄目らしい。 少しそれを残念に思いながら、最前線を見る。 この吹雪の中の行軍のせいか、それとも任務を遂行した疲れなのかはわからないが動きが鈍い三人。 少し押され気味だな。 周りのガジェットを完全殲滅したので、加勢に入ることにする。 まずは、中途半端なスピードで羽虫のように飛んでる奴からだな。 フェイト・テスタロッサと比べるまでもなく遅いが、慣れてないからかスピードに翻弄されていた。 なので、横合いから思いっきり蹴り飛ばしてやる。 すると面白いように吹っ飛ぶ。 なんか蹴った感覚が変だったが、まぁいいか。 雪を巻き上げながら遠くに飛んでいく敵を見送りながら、三人に向き直る

 

「一応、通信を傍受したんで助けに来たんですが」

 

「・・・・・・救援感謝する」

 

「お三方も出来れば撤退していただけると」

 

「待ちなさい、貴方が三人の相手をするの、無茶よ!」

 

「いえ、そんなことは」

 

そう言いながら、後ろから襲ってきた銀髪の攻撃をよけ、そのまま拘束する。 三人目はバックアップなのか知らないが、俺が現れてからだいぶ距離を離したな。 少し遠いが、行けるか?

 

「呪層、氷天」

 

魔力を多量に込めて凍るスピードを速めたのだが、間一髪のところで気が付いたのか全身氷漬けにはできなかった

 

「この通りですが?」

 

「・・・・・・」

 

何故か三人から絶句された。 それにしても、抑え込んでいるのだがこの銀髪すごい力だな。 拘束をしっかりしようと、力を弱めた瞬間拘束を逃れナイフを取り出してきた。 それだけでは俺を倒せないが、嫌な予感がした俺はそのまま距離を離しプロテクションを展開する。 直後、大爆発が起こり煙が晴れたころには誰もいなくなっていた。 気配もなし、と

 

「逃げられたか」



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第四十五話

「救援、感謝する」

 

「い、いえ!こちらも近くで任務をしていたので!!」

 

ガチガチに緊張しつつ、握手をするアイツに呆れる俺。 結局戦闘機人とやらに逃げられたわけだが、ゼスト隊が無事だったのだから当初の目的は果たせた。 ただ、ガジェットドローンが現れたということは今回の件はなのはが襲われた件とつながっているということだ。 いろいろと調べることが出てきた

 

「君にも、感謝する」

 

「いえ」

 

俺は短く返事をし、差し出された手を握り返す。 ごつごつした手だ

 

「本当に君たちのおかげで助かったんだもの、謙遜しない!」

 

「そうよ、そうよ!」

 

何故か俺がメガーヌさんとクイントさんに背中をバシバシ叩かれる。 メガーヌさんはいいとしても、クイントさんは加減をしてほしい。 周りを見回してみると、俺が見た時よりも少し怪我人は増えているが重傷者はいないようだ。 おおかた、撤退しているときに襲われたのだろうが大丈夫だったようだ

 

「それで、近くで任務ということだったが何故海の人間がここに?」

 

言われるとは思っていたが、まさかこのタイミングとは。 さっきまでの雰囲気は身を潜め、こちらに厳しい視線を向けてくるゼストさん。 その様子にクイントさんはなだめようとするも、効果なし。 メガーヌさんも怪しいと思ってるのか、ニコニコとこちらを見ていた。 アイツではぼろが出そうだったので、俺が前に出て説明を始める

 

「管轄違い、ということですよね? とは言っても、そういう任務が海にくるということもご存じのはずでは?」

 

「その通りだ。 だが、我々が確認したときは()()()()()()()()という報告はなかった」

 

「それはおかしいですね。 こちらも命令できているので。 指示書はこれですが」

 

そう言って、指示書を表示する。 ゼストさん、メガーヌさんは確認するために文面を読んでいた。 やがて読み終わったのか、顔を見合わせ頷いていた

 

「確かに、本物のようだ」

 

「でも隊長、出る前に確認した時には」

 

「本局で間違いが発生したか、あるいは」

 

俺の言葉に厳しい視線を向けてくる二人。 俺は肩をすくめることで視線を躱す

 

「ともかく、これで偶然ということは分かって頂けたはずです」

 

「ええ、そうね」

 

まだ少し疑わしそうにしているものの、メガーヌさんは納得したようだ。 ただ、ゼストさんは厳しい表情のままだ

 

「ところで、そちらの任務はどうするんでしょうか? 負傷者も多いですし、このまま中止でしょうか?」

 

「何でそんなことを?」

 

これまで話し合いに参加していなかったクイントさんが、そう聞いてくる。 まぁ、隊の負傷者の傷の具合を確認しに行っていたのだが

 

「いえ、こちらも任務が終わって帰還するところだったので。 もしよろしければ、このまま護衛でもと」

 

「あー、負傷者も多いから私としては助かるけど......」

 

そう言ってチラリとゼストさんを見るクイントさん。 さて、どうする

 

「・・・・・・負傷者は多いのは事実だ。 頼めるか?」

 

「こちらから言いだしたことですから。 それに、任務中断の報告をする時俺もいたほうが都合がいいでしょう?」

 

「・・・・・・」

 

ゼストさんはそれには答えず、撤退の準備を開始し始める。 俺たちはそれを少し離れたところから見ていた。 と言っても、周りは警戒しているが

 

「なぁ」

 

「なんだ?」

 

「さっきの任務の記録だけど、どう見る?」

 

真剣な表情で俺のことを見るが

 

「わからん。 本当にただのミスか、それとも本当に彼らを消そうとしたのかはな。 どちらにしろ、この後分かるだろうよ」

 

「・・・・・・胃が痛い」

 

泣き言を言っているやつは知らないふりをして、どうやら準備が整ったようなのでついて行く



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第四十六話

負傷した局員たちの輸送も終わり、俺たちは陸のおひざ元地上本部へと来ていた。 ゼストさんにも言ったが、報告のためにだ。 アイツは本局についてからずっとガクブルしているが、放っておこう。 どうせ話すのは俺だし。 廊下を歩いていると、奇異な視線を向けられる。 まぁ、海の人間が陸に居れば相応の視線を向けられるのは確かだ。 それも、陸の英雄と一緒に居ればねぇ

 

「ここだ、失礼のないように」

 

そう言って、扉をノックし返事があると同時に部屋に入っていくゼストさん。 俺たちもその後をついて部屋に入っていく。 流石中将クラスの部屋というか。 俺の執務室と比べるまでもなく広いし、綺麗だ

 

「誰かね?」

 

「初めましてレジアス中将。 私は海所属の神木理樹です」

 

「お、同じく嘱託魔導士の藤森織です!」

 

海といった瞬間視線が厳しくなったが、秘書がデータを持ってくるとより一層視線を厳しくする

 

「ほぅ、海の人間がわざわざ私に、いったい何のようだ」

 

「それは、ゼストさんの方から聞いてください」

 

そう言うと、視線をゼストさんに向け早く話せと目で訴えていた。 その視線を受け、ゼストさんも今回の任務について話始める。 厳しい表情は徐々に驚愕へと変わる

 

「それは本当なのか?」

 

「あぁ。 私の部隊は約半数が負傷した」

 

「陸の最高戦力だぞ!?」

 

「そうだとしても、だ」

 

そう聞くや否や、レジアス中将は力が抜けたかのように椅子へと座り込んでしまう。 まぁ、ガラクタとたった三人の戦闘員に陸の最高戦力がやられたのだからその絶望感は計り知れない。 だがそんな中でも、レジアス中将はこちらに視線を向ける

 

「さっきは済まなかった。 君たちが居なければ、ゼストたちは全滅もありえただろう」

 

「いえ、こちらもたまたま近くで任務をしていたら救援の念話が聞こえただけですから」

 

「任務、な。 さっき話にもあったが、ゼスト本当に任務地がかぶっているようなことはなかったのか?」

 

「確認した」

 

「そちらも確認か...... まぁ、痕跡が残っているとは思えんがな」

 

「痕跡?」

 

「まぁ、いいだろう」

 

俺がいるのを忘れてうっかり漏らしてしまったようだが、苦虫を嚙み潰したような顔をしながら語り始めるレジアス中将

 

「独自で調査した結果だが、そういう改竄が数件見られたんだ。 しかも、ゼストの隊が受ける任務だけ、だ」

 

「それはまた...... 誰かがゼストさんたち、消そうとしてると?」

 

無言で視線をそらしていたが、それは何よりも答えだった。 こうなると、アイツが言っていた通りレジアス中将がゼストさん消しに絡んでいた線は消えたような気がするが...... 正直言って、判断するには早計のように思えた。 これで演技なら相当な狸のわけだが、ともかく監視の意味も込めてパイプを作っておかないとまずいかもしれない。 まぁ、当初の予定通りか

 

「ならリスクを分散させるために、他の部隊の人間に受けさせればいいのでは?」

 

「ククク、簡単に言ってくれるな。 ゼストが受ける任務は相応にレベルの高いものだ。 それに貴様ら空や海のせいで人員が足りないのを知ってて言っているのか?」

 

「ならば引き抜けばいいでしょう? 俺なんてどうですかね?」

 

「だからそんなに簡単に!」

 

「そうか、お前はもともとそれが狙いだったか」

 

こちらを怒鳴りつけようとしたレジアス中将を制し、納得したような視線を向けてくるゼストさん。 やっぱり、中々に鋭いようだった

 

「ゼスト?」

 

「どこまでが計算なのかは知らないが、もともとそういう話をする予定でここに来たのだろう?」

 

「思っていたように誤魔化し切れませんでしたね。 その通りです、最初からこの話をするためにここに来たんです。 そもそも、海の上も俺の扱いには困ってるでしょうから、これ幸いとこちらに渡してくると思いますよ?」

 

「ゼスト、どうなんだ?」

 

「実力は申し分ない」

 

コロコロと話が変わっていくが、概ね予想通りか



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第四十七話

皆様お久しぶりです。 そして、かなり遅れましたが新年あけましておめでとうございます。 一応お知らせというか、今後のことと言うか、活動報告のことを書きましたので、そちらの方チェックをお願いします


「あー、疲れた.......」

 

明かりの灯っていないリビングに明かりをともし、乱暴に椅子に座る。 陸の人材不足は聞いてはいたが、忙しすぎる。 休日は緊急の任務でつぶれ、残業なんて当たり前。 レジアスのおっさんに文句を言っても、改善されることがない現状。 いっそやめたやろうかというものの、やめたらやめたでゼストさんやクイントさん、メガーヌさんに仕事が増えるだけなのでそれもやめたい。 結局、あの一件はレジアスのおっさんによってもみ消された。 というのも、任務地のバッティングやいろいろな()()()()()でそうせざるえなかったというのが、本当のところだ。 俺は目論見通り陸に移籍し、今現在陸で仕事をしている。 

 

「自分で望んだこととは言え、やっぱり忙しすぎる」

 

畑が違えど、クロノやリンディさんが融通を聞かせてくれるおかげで玉藻たちなんかも手伝いとして呼べるのだが、やはり大半は俺一人でこなすしかない。 まぁそもそも、いまだにレジアスのおっさんが玉藻たちを呼ぶと良い顔をしないので呼ぶに呼べないわけだが

 

「マスター、通信が」

 

「はぁ...... 誰よ?」

 

「藤森からのようです」

 

「珍しい、繋いでくれ」

 

トーリスリッターにそう告げると、目の前にモニターが映し出され藤森の顔が浮かんだ

 

『久しぶりだな、今大丈夫か?』

 

「おやおや、空と海で今引っ張りだこの英雄さんが陸所属の平隊員になんのようで?」

 

『別に、そんなことは......』

 

「いい加減認めろよ」

 

あの一件から、こいつは自信を付けたのか徐々に難しい任務をこなし、今では空や海から引っ張りだこになっていた。 昔のように慢心せず、俺やリインフォース、守護騎士たちに頭を下げて模擬戦などをするのだ。 そりゃあ実力もつくだろう。 そして可笑しいことに、そのことをフェイト・テスタロッサに秘密にしてな。 なのはとこの間話したが、フェイト・テスタロッサは自分に秘密で何かをやっているとなのはに話したそうだ。 もうお前ら付き合えよ、そう思ったが

 

「さて、何のようだ? たぶん、あまり時間はないぞ。 一応オフにはなっているが、なんせ陸所属だからな、休日は緊急出動でつぶれる」

 

『そ、そうなのか? 陸は相変わらずか...... 一応、俺も改善は言っているけど』

 

「まぁ、頭のお堅い上の連中は頷かないだろう」

 

俺が陸に所属するにあたって、幾人かの提督が陸の改善の声をあげたようだが黙殺されているのが現状だ。 これにはレジアスのおっさんもブチギレ、ゼストさんが必死に止めていたのはいい思い出だ

 

『とと、つい関係ない話になるな。 用件は、未来についてだ』

 

「俺の記録はトーリスリッターに記録してある。 お前の記憶と統合して差異を見つけ出し、これを修正。 やっぱり、正史とは大なり小なり違いが出て生きてるな」

 

『俺たちがこの世界に介入した結果、だな』

 

「だろうな」

 

立ち上がりインスタントのコーヒーを淹れ、一息つく。 実際、アイツの記憶で細かいところまで覚えてなかったものの、大体の道筋は俺の記録と同じだった。 なのにもかかわらず、大なり小なり事件は起きているのだ。 これは俺たちがこの世界に生まれ落ちた結果、ということで話がついている

 

「ただまぁ、いい方向には向かっているだろう?」

 

『プレシアさんから始まり、アリシア、リインフォース、ゼスト隊...... 何かがあっても対応できる、とおもう』

 

「最後の一言がフラグになるとは思わんのか、お前は」

 

思わず呆れた眼をめけてしまうが、自分でもわかっているのか苦笑していた

 

『いやだって、なぁ?』

 

「そのための俺たちだろうが」

 

『あぁ、そうだな。 近いうちにはやてが動くと思う、その時はレジアス中将に融通を聞かせるように言っておいてくれ』

 

「あのおっさんが素直に俺の言葉に頷くはずはないけどな...... まぁ、了解した」

 

そう言うと同時に通信が急に切れる。 なんだとも思ったが、まぁ何か急用ができたのだろう。 すると、別の通信が。 しかも、今回のは緊急通信。 ということは、だ

 

「・・・・・・はい」

 

『すまないが仕事だ』



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