王なる少女と見る世界 (星の空)
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プロローグ

俺は走っていた。

逃げる様にただひたすら走っていた。

後ろには魔女の姿をした女が1人、俺を追う。

彼女の狙いは俺が手に持つこれであろう。

これは全て遠き理想郷(アヴァロン)という鞘で現在の俺の主である者、騎士王アーサーの命綱のようなものだ。

何故一端の騎士である俺が知ってるのか?それは、記憶にある。

俺の記憶の中には蒼き狗のごとき槍使いや赤い弓兵、鉛色の巨人などがある。

その中で、この鞘についての知識があるから知っているのだ。

そこで思いついたのだ。騎士王アーサーがこの記憶通りにならないようにすればいいと。

この時代で殺されるならばこの鞘を騎士王アーサーに届け、不老不死として生きてもらい、これから先を見届けて貰ったらいいだろう。

この世界が記憶にある世界であることはアーサーを見て分かっているので、残酷なことかもしれないが聖杯という道具に縋るくらいなら生きて全てを見届けて貰った方がいい。

そして今、カムランの丘で殺し合っている父子?母子?まぁ、あの親子の子が思っているものを教えてあげようかな?

そう思っていた。

後ろから追って来る彼女の名はモルガン・ル・フェイ。確かにアーサーの異母姉だったはず。彼女の魔術が俺を殺しにかかるが、もう片方の手に持つ約束された勝利の剣(エクスカリバー)やその姉妹剣の無毀なる湖光(アロンダイト)転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)と同じ気配がするこの剣で切り払うことで致命傷は避けている。

カムランの丘に辿り着く頃、木の根につまづいてしまい、モルガンの魔術を心臓に受け、抉り取られた。

「ふ、アタイからその鞘を奪うからだよ。恨むんなら取り返すよう指示したアーサーを恨みな。」

そう言いながら俺の手から鞘を手に取る。俺は足掻きで、剣の権能を発動させた。

モルガンは俺が剣の鋒を向けているのを見て腹を抱えて笑いだした。

「はははははっ!!そんなので何ができるってんだい?心臓抉り取られたってのに動けるのは驚愕ものだが、そこまで。あぁあ、あんたのせいで余計な時間を取ったじゃない。綺麗に消してあ────」

星起するは…………静寂の終剣(イルシオン・・・ステラ)

何か言っていたが聞く余裕などない。一か八かで権能を使い、アーサーの持つ星剣約束された勝利の剣の7〜8倍の威力の碧い極光が出て、今まで走っていた森が更地となり、倒れていたため、勢いよく吹き飛んだ。

モルガンが消し炭となり、残っていた鞘をギリギリで掴み取った。

地面を見たら落下予測地点には丁度モードレッド卿がアーサーに最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)で土手っ腹をぶち抜かれて倒された所だった。

俺が落ちた頃には、アーサー王が丘で泣き叫んでいるところだ。

 

ズシャッ!!!!!!!!

 

勢いよく地面に叩きつけられたが死するまでもう少しだけ耐えてくれ。

「ッ!?!?!?!?」

アーサーも泣き叫んでいたら目の前に死体が落ちてきたことにビックリして尻もちをついた様だ。

「騎士王……アーサー………貴方の…鞘を……取り戻しました……私はもう…………持ちません……なので一言……よろしい…………でしょうか…………?」

俺はもう動かない身体を無理に動かして手に持つ鞘を差し出す。

アーサーは慌てて駆け寄ってきた。

「何故この鞘がッ!?!?……………………何故この鞘を私に…………そのようなことをしなければ貴方は生きていた筈……どうして………」

アーサーは涙を流しながら鞘ごと俺の手を取る

「……何故…………か…………以前、私は…………モードレッド卿と酒を飲み…………言葉を交わした…………その時、モードレッド卿はなんと申したと思います?……………モードレッド卿は…………貴方の渇き切った心を潤わせたかったと、孤独を癒したかったと…………申してました…………だから私は…………この鞘を持つ貴方が……不老不死(・・・・)である事が分かっていたので…………取り戻した…………残酷なことかもしれないですが……………貴方には生きてもらいます………そして、これから先を見届けて、いずれ出会うだろう誰かに…………貴方の渇き切った心を、孤独を癒して貰いなさい…………」

アーサーが鞘を受け取ったら手を地面に垂らす。血がドクドクと流れ出る中、アーサーが見届けてくれる中で一言。

「…………貴方は…………アルトリアという1人の少女として………生きたら………いいのです……………………あぁ、第2の生(・・・・)では…………幸せを噛み締めたかったなぁ……」

「ッ!?何故私の幼名を知ッ………………ねぇ!!ねぇったら!!ねぇ──」

この最後の一言は禁句だったのだろう。そんなこと露知らずにアーサーが声をかける中、俺は眼を閉じた。

 

???sideout

 

 

 

アルトリアside

 

私は王に相応しくなかった。

そう心を攻めていた。

そこに、ブリテン国の騎士の1人が私の目の前に落ちてきた。

思わず尻もちを付いたが、それどころではなくなった。モルガンに奪われたはずの鞘を手にしていた。

聞くと、取り戻してきたという。その対価に命を失っているが。

その騎士が語る事を聞くことしか出来なかった。

「…………貴方は…………アルトリアという1人の少女として………生きたら………いいのです……………………あぁ、第2の生(・・・・)では…………幸せを噛み締めたかったなぁ……」

最期、私に少女として生きていけと言って、気になることを申してから眼を閉じた。幼名が知られていることが気になり叫ぶが応答してくれない。

「ッ!?何故私の幼名を知ッ………………ねぇ!!ねぇったら!!ねぇ!!!!…………………………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──────────」

「こら、そんなに絞めたらいけないだろ?」

死んでしまった。それが私の心を抉り、自責の念に囚われていた。そこに、マーリンが幻影体で現れ、軽く私を叱責する。

「…………………………マー……リン?」

「あぁ、僕だよ。何故此処にいるのかって?それは、この人が気になるからだよ。僕の千里眼を持ってしても何もわからなかった。だから監視してたんだ。そして、死んだ。でも、君のせいではない。それでもそのまま泣き叫ぶのかい?」

「彼が…………言ってました。第2の生では幸せを噛み締めたかったと。鞘を取り戻さなかったら幸せを掴み取る事は出来たはず。マーリン、貴方は…………………………………………………………………が出来るでしょうか?」

私は、ある提案をマーリンにした。それが私は二度と自由がなく、私に生を託した彼を冒涜することだろうとしても。

「あぁ、可能だ。でも、君は託されたのだろう?それを棒に奮ってもいいのかい?」

「はい、構いません。王として最期の務めです。」

「……………………そうかい。なら、いくよ!!!!!!!!」

 

アルトリアsideout



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第1話 高校入学

 

「……………………さい!………………きて………さい!…………きてください!………………起きてください!!」

俺こと燚氷嶺亜(いつひれいあ)はいつも起こされている。

誰にって?それは目の前にいる金髪碧眼の美少女にだ。

「…………ふぁぁ、はぁ。…………おはようアルトリア。」

 

アルトリア

 

嘗て、アーサー・ペンドラゴンと名乗りブリテン国を治めていた星剣約束された勝利の剣の担い手たる騎士王その本人。

 

だったのだが、

「はい、おはようございます!では早速いただきますね。」

何処を間違えたのか、寝起き早々人のズボンのチャックを引き始めることをはじめとした入浴中に乱入や夜這いなどといった行動を取るようになっていた。

まぁ、そうなった原因は俺にもあるだろうが………

「やめい!」

「あうっ!!」

とにかく軽く小突いて止めさせてから布団から出る。

上下ジャージに着替えたら部屋を出て歩く。すぐにアルトリアは追いついて隣を歩く。

俺の形は青銀髪の長髪に右が神の子を示す赤眼で左がアルトリアと同じ碧眼。腕や胴体、脚は細く華奢な体躯。そして、アルトリアと同じくらいの背丈である。

「嶺亜、あれから15世紀と数年が経ちますね。」

「あぁ。あの時は驚いたぜ?」

何があったかと言うと、

俺はモルガンから全て遠き理想郷を奪い、心臓を抉り取られてでもちゃんと返して死んだ。

だが、アルトリアはマーリンにお願いして、約束された勝利の剣を全て遠き理想郷に収めたものを媒体に俺と心身共に同化して俺を生きながらえさせた。

その時俺がマーリンをぶん殴ったのはまだ覚えている。そこから、ブリテン国や周辺を見届けていた。

その時、何かが歪みマーリンは消失。特異点化し、暫く情報収集をした。

途中、この時代にありえない服装をした輩がいたが無視して動き、女神ロンゴミニアドが動き出したことを知った。

その時、ロンゴミニアドが成そうとすることがアルトリアの侮辱、俺の中の何がロンゴミニアドを止めろと言っていたので止めた。

最後にロンゴミニアドに抱きしめられた時に怖気が走ったのはその頃まだわからなかった。

後から無視していた1団が来て、そのまま連れてかれた。それ以来今も世話になっている。

そこから彼らに協力して戦い、バビロニアで最古の王から一二言告げられたっけ。

最終戦、ゲーティアとかいう奴と戦い俺の宝具?でトドメを刺した。

その後、LostBelt化したのはめんどくさかった。ゴルドルフから英霊の座に帰れとか言われても俺今も生きてるし。

異星の神なる存在に神と共にある世界の構築などと言われてさすがに俺もブチ切れたりもした。

LostBeltの1つであるイギリスでアルトリアが復活。なんと、彼女の心臓を細胞分裂させるのに時間を食ったとか。

その後は俺は単独で動いて異星の神と接触し全力戦闘をした。途中、インドラやオーディン、ハーデスも協力してくれた。その間に皆が追いついて異星の神を俺の宝具?の真骨頂で消滅させて現代を取り戻したのだ。

閑話休題

「とりあえず飯食いに行こうぜ?」

「分かりました。」

食堂に入ると、幾人か既に食事を始めていた。

「あ、おはようございます!燚氷先輩。」

「ん?嶺亜か。おはよう。」

「おはよう。相変わらず仲睦まじいな。藤丸、マシュ。」

「嶺亜、行きますよ。」

言い忘れてたがこの組織の名はカルデア。所長は今のところロマニ・アーキマンことDr.ロマンが所長だ。

彼をはじめとした、

元人類最後のマスター、藤丸颯夏(ふじまるりつか)節丸六花(ふじまるりっか)というややこしい2人

元ホムンクルスの擬似英霊、マシュ・キリエライト

技術局特別名誉顧問として技術部のトップ、レオナルド・ダ・ヴィンチ

死徒二十七祖第1位にして『比較』の理を持つ第四の獣・ビーストⅣ、フォウ

彼の名探偵シャーロック・ホームズ

カルデア副所長兼土地の利権者、ゴルドルフ・ムジーク

元クリプターで自虐思考なロシア担当、カドック・ゼムルプス

精霊と契約しているカドックのパートナー、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ

元クリプターで魔眼持ちな北欧担当、オフェリア・ファムルソローネ

北欧の大英雄であるオフェリアのパートナー、シグルド

元クリプターで無気力無愛想な中国担当、芥ヒナコ

生真面目で優等生気質のヒナコのパートナー、蘭陵王

その他サーヴァントがあちこちで朝食を食べていた。

俺はアルトリアに引かれてから食券を買って頼む。

厨房には赤き弓兵こと、エミヤがいそいそと動き回っており、俺とアルトリアのものを見たらすぐに作ってくれた。

忙しそうなので声をかけることはしない。

空いている席に座る。

「「いただきます。」」

俺は毎日食うカツ丼を食べ、アルトリアは日本の典型的な和食を食べている。

「お、いたいた。嶺亜、後で局長室に来てくれ。話すことがあるからね。」

食堂から出ようとしていたDr.ロマンからそう言われた。

「?」

「?何か新たな任務でもあるのでしょうか?」

口にものを含んでいる俺は何も言えないが、思っていたことをアルトリアが代わりに言った。

 

食後

 

「先に戻ってていいぞ?」

「いえ、離れるとめんどくさい事になるので近くにいます。」

局長室に着き、すぐに入る。

「お、来たね。って、アルトリアさんも一緒か。まぁいいか。早速なんだけど……………………学校に通ってみないかい?」

来てそうそうとんでもないことを言い出すDr.ロマン。

「学校………………やて?なして今になって行かなあかん?」

「嶺亜、口調崩れてますよ。」

つい口調が崩れてアルトリアに指摘される。

「そう言われても行く必要なかよ。今ん生活で満足しとんやけ。」

「それがさ、藤丸くんは半拉致状態で連れてこられたから復学しなきゃ行けないんだよね。そのついでに元クリプターの彼らや君を学校に通わせようと思ったんだ。ゴルドルフも賛成してくれてる。どうだい?」

「通う場所は決まっているのですか?」

アルトリアが場所を聞く。

「場所かい?場所は決まってないよ。藤丸くんとマシュは秋穂原学園っていう冬木市だけど、他はバラバラ。あ、時計塔はダメだよ。色々とややこしくなるからね。」

時計塔がダメだと言われた。行くならぼろ出しても大丈夫なあそこにしようとしたのに。

「そか。んじゃ、キャン「行きます!!!!」…………アルトリア?」

キャンセルしようとしたらアルトリアが合意してしまった。

「いやぁ、1度でも通って見たかったんです。それに、嶺亜と二人きりになる大チャンスなので。」

「分かった。平々凡々な所にしておくね。」

「はい、では失礼しました。行きますよ嶺亜。」

なんか本人抜きで決まり、アルトリアが俺を引いてそそくさと局長室から出る。戸が締まりきる直前にDr.ロマンがハイライトを失った目でこちらを見て一言。

「末永く爆発しな。」

その一言と、顔を此方に向けずに、ふふふっ、と笑うアルトリアに何か分からないが怖気が走った。

 

それから2ヶ月後

 

「………………此処が新居か」

「はい!これからの生活が楽しみですね!」

やけに肌がつやつやしたアルトリアとやつれ気味な俺はロマンに用意された新居に引っ越してきた。

中を散策すると、地下1階に此処とカルデアを繋ぐ魔法陣があり、他にも工房用の部屋があったり、1階にキッチンとリビング、客間と風呂場がある。2階には幾つか部屋があり、俺は階段近くにアルトリアは階段の反対側が部屋にした。

その日の夜、またアルトリアに俺はくわれた。ナニをとは言わない。

 

次日

 

俺はやつれアルトリアはつやつやとして行くことになった高校に来た。

その日は丁度入学式で、俺とアルトリアは並んで歩く。視線がウザイが今は恋人繋ぎをされたこの手を話したいのだがアルトリアは一向に離さない。

会場に着いたら適当に座り、時間を待つ。

「はぁ、これからの(新婚(・・))生活が楽しみです。」

「まぁ、アルがいいなら(学校(・・))生活に文句は言わねぇよ。」

なんか噛み合ってないような気がするがとりあえずは特徴が無い校長のありふれた演説?が終え、クラスが発表される。俺とアルトリアは1-Aだということが分かった。

1-Aクラスに着いて自分の席に座る。それまでずっと恋人繋ぎをされていた。

女生徒の喚きと男生徒の怨嗟が凄いが。

暫く経って教室に子供(・・)が入ってきた。

皆が席に着いたまま疑問符を頭上に掲げていたら、その子は話し出した。

「皆さん入学おめでとうございます!!!!あ、私は1年このクラスを担当することになった畑山愛子(・・・・)です!これからよろしくお願いします!!!!」

『先生かよ!!!!!!!!』

「ひぅッ!?!?」

1-Aクラスの皆が驚愕し、畑山先生はその声量に飛び跳ねた。

色々としまらない第2の生の学校生活が始まった。

 

自己紹介も終えて下校となり、教室を出る。教室が4階なので階段で降りる。

そこに、

「うわちちちっ!!!!ッ!?!?ちょっ、そこどいてぇ!!!!!!!!!!!!」

1人の生徒がいそいで降りていたが足を踏み外して落ちてきた。それを俺は空いた片手でお姫様抱っこ(・・・・・・)という形でキャッチして1階玄関まで運んだ。

ちなみに空いてない方はアルトリアと何故か恋人繋ぎをしている。俺より小柄だったので難なく運ぶことが出来た。

「ほれ、急いでたんだろ?降ろすのもめんどかったからここまで連れてきたがよかったか?」

「………………はっ、あ、ああありがとう!!私は谷口鈴。1-Bクラスだよ。あ、これ連絡先ね。それじゃ、私急いでるから!」

何故か顔を真っ赤にしながら初めて会った相手に連絡先を教えてから去ったのだろうか?

「……………………あれは恋敵の予感。」

アルトリアが何か言っていたが気にしたらなんか色々とヤバそうなので気にすることなく、新居に帰ることにした。

 



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第2話 高校2年生

 

さて、高校に入学してから何があったか軽く語ろう。

まず、友人が2,3人出来た。

1人は入学初日に出会った?谷口鈴。

彼女は俺より小柄なのに俺より元気がありすぎるムードメーカーな少女。家が真隣だったから登校はいつもいっしょだ。気の所為だとは思うが、彼女が俺を獲物を見るような目で見たりアルトリアと眼で何か会話してるよえな気がする。

2人目は通称オッサンという燈燐瓸(どうりんへくと)

彼は結構背が高く顎にちょっと髭があり尚且つ老けて見えるからオッサンと呼ばれたりしている。無気力、やる気なしの男だが、やる時はやる男だ。ってかロマンよ。此奴どっからどう見てもヘクトールだよな?会ってたんだが。護衛って要らないんだが?

3人目は芭媓姊姁(ははははははは)

なんというか………こんなことがあるのか?と思うのだ。しかし、この人、母性が強い。不良10人以上いるのに全員を諭し、正道に示した。見た目は黒髪長髪黒目で胸も大きく背も高い。この人のおかげで喧嘩は全く起こらないほどだ。

次に谷口(以後鈴)の両親に会った。娘をよろしくと。

それを聞いたアルトリアが鈴を連れて何処かに行き戻って来た時に両者ボロボロだったのは何があったのだろうか?否、知ってはならない気がする。

それ以来鈴が家の新居に居座り始めた気がする。まぁ、俺もアルトリアも料理したら暗黒物質(ダークマター)を生成してしまうので鈴のおかげでまともなご飯にありつけている。

学校では不愉快な奴と遭遇した。

奴の名は天之河光輝(あまのがわこうき)。自分の都合がいいことしか考えてない口先だけの愚者。何より此奴、人の触れられたくないことをズカズカと触れてくるからウザイ。プライバシーの侵害で訴えたろか?

天之河の傍にいつもいる女子2名が不憫に思える。方や苦労人で方や縛られるというね。

鈴経由で彼女らに対処方や離別法を教えたりしている。

それくらいかな。これ以外は南雲という奴がいびられていたり鈴がとうとう家で暮らし始めた以外はないだろう。

 

1年後のこの頃

 

「いやぁ、2年生になったけど…………揃い踏みだったとわねぇ。」

俺たちは2年生になり、クラス替えがあったのだが…………

この学校で有名な奴ばかりが集っていた。

キラキラネームの天之河光輝、脳筋だが勇ましい?坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)、学校の二大女神白崎香織(しらさきかおり)八重樫雫(やえがししずく)、態度のでかい仔犬檜山大介(ひやまたいすけ)、その子分近藤礼一(こんどうれいいち)中野信治(なかのしんじ)斎藤良樹(さいとうりょうじゅ)、就職先が既に決まっている南雲ハジメ(なぐもはじめ)、次期柔道部部長永山重吾(ながやまじゅうご)、存在が無い遠藤浩介(えんどうこうすけ)、マスコットな元気っ子谷口鈴、表お淑やか裏ヤンデレの中村恵里(なかむらえり)、オッサンな燈燐瓸(ヘクトール)などと、これ、何かあるんじゃね?って思えるようなメンバーだ。

「この年に大きな出来事でもあるんじゃね?キラキラネームと脳筋、大和撫子に剣道小町、ヲタクや次期部長。果ては虐めっ子にヤンデレと来た。よし、帰ったらギルに聞くか。」

「えっ?何故にギルなのですか?ケイローンでもいいんじゃないですか?」

「???ギルって誰?レイっち。」

アルトリアは若干苦手意識から聞いてきたが、鈴はなんか目からハイライトが消えて顔が陰ったんだが………

「あ、あぁ。ギルは俺のダチだよ。唯我独尊って言ったらいいかなんて言ったらいいか…まぁ、色々と強い人さ。」

「ふーん。あ、私夕飯の材料買って来なきゃ。それじゃ、先に帰ってて!」

夕飯の材料を買いに鈴は走ってスーパーに向かった。とはいえ、道を挟んだ反対側にあるんだが………

俺とアルトリアは先に家に入り、俺は俺の工房にすぐに行く。そして、ギルに電話をかける。

「もしもし、ギルか?」

『なんだ、我は今子供らの相手に忙しい。要件があるなら早くしろ。』

「あぁ、今年は厄介事があるかもしれん。俺が通う学校限定で未来観測してくれ。御礼は何がいい?」

『少し待て。…………………………フハハハハハハッ!!!!!!!!異星の神が来るのではなく貴様らが異星に攫われる!有象無象共と共にな!!それもこの土日を過ぎた月曜と来た。この土日に準備しておけ!ソロモンにはレイシフトの準備をさせておく!それまで精々異星を楽しんでおけ。我は戻るぞ。あ、御礼は異星の高級食材で構わん。』

「…………はぁ、ややこしいことになったか。一応説明をしておいた方がいいか。」

飛ばされる事が分かったので、準備に取り掛かった。英霊を召喚する魔法陣を作成したり、小型化した魔導四輪(四駆のキャンピングカー)を異空間に入れたり、触媒を入れたり。

最後にある場所に立ち寄った。

そこには1本の細い西洋直剣があり、それは彼の英雄王の持つ乖離剣エアより危険な代物。

「…………………………また、力を借りるぞ。静寂の終剣(イルシオン)。」

工房から出たらリビングに向かう。中に入ったら夕飯の支度をする鈴とテレビを見ているアルトリアがおり、

「ややこしいことになった。」

「「???」」

今日の夕食である豚キムチを食べた後、鈴の家にお邪魔してこの世界の真実を教えた。のだが、まさかの鈴の両親はフリーの魔術師で此処に定住した人だった。

真実を知った鈴は驚愕し、慌てていたがそこはいい。ギルから言われたことを鈴の両親…谷口誠さんと谷口晴香さんに教え、次日、鈴に準備をさせた。その後は魔術を師事。

 

そして、運命の日が来た。

 



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人魔教神混争異星トータス 第3話 異星への転移

 

「なぁ、何故にそこまで引っ付いとんお二人さん?」

月曜のこの日、登校中なのだが…………アルトリアと鈴が俺の両腕をとっている。

周りからの視線はいたい。しかし、この2人はアイコンタクトで何か話しているから気づいてない。

なんとか校庭までには離れてもらった。

教室に入り、自分の席に着いたらすぐに寝る。寝る訳は昨日また食われたのだ。ナニをとは言わない。

鈴とアルトリアは無言で向き合ってアイコンタクトで会話している。一体何を話しているのだろうか?

少ししたら南雲ハジメが教室に入ってきて…………

「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃ~ん」

何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。

ハジメに声を掛けたのは檜山大介ひやま だいすけと言い、毎日飽きもせずに日課のようにハジメに絡んでいる生徒の筆頭だ。

近くで馬鹿笑いをしているのは斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の取り巻きトリオで、檜山と合わせた四人が頻繁にハジメに絡んでいる。

ハジメについて知っている者は檜山らに不快な視線を送り、知らない者はハジメに冷たい視線を送っている。

檜山らに不快な視線を送っている者の中には檜山の恋の的である白崎香織も向けているのに檜山は気づかない。

ハジメは檜山らを華麗に避けて自分の席に着いていた。

そこに、ハジメが檜山らに虐められたり冷たい視線で見られる原因が来た。

「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

二大女神が1人、白崎香織である。彼女は南雲に無自覚に恋しており、彼女をよく見ている二大女神のもう1人がその事に気づいているというおかしな形になっている。否、俺がおかしいと思うだけでそこまでおかしくないのか?まぁいい。

そんなことを内心思っていた。

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

ハジメが白崎に挨拶を返すとハジメについて知らない者から嫉妬や侮蔑の視線を送る。中間地点に俺がいるため実に不愉快だ。

ハジメと白崎の下に三人の男女が近寄って行く。

「南雲君、おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

二大女神のもう1人、八重樫雫とキラキラネームの天之河光輝、脳筋の坂上龍太郎がそれぞれ言いながら声をかける。

それに苦笑いしながら返事をするハジメ。

八重樫も白崎に負けないくらい人気が高く、「てめぇ、何勝手に八重樫さんと話してんだ? アァ!?」という視線がハジメにグサグサと突き刺さっている。

そんなことに気づかない天之河一行。

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? 何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

「いや~、あはは……」

天之河に目に、ハジメは白崎の行為を無碍にする不真面目な生徒に映っているようだ。

実体は全く違うのだが、天之河は自分の都合がいいことしか考えてないので反論しても別の解釈をして話を拗らせるからめんどくさい。

それが分かるハジメは笑ってやり過ごす以外の選択肢を取れずにいたし、俺もため息をつくことしか出来ずにいた。

「?光輝君、なに言ってるの?私は、私が南雲君と話したいから話してるだけだよ?」

そこに天然な白崎は爆弾投下。男子生徒達はギリッと歯を噛み締め呪い殺さんばかりにハジメを睨み、檜山達四人組に至っては何やら話し込んでいる。

「え?……ああ、ホント、香織は優しいよな」

ほんと呆れうす。ハジメともっといたいという意味を独りぼっちは可哀想と捉えたのだから。そして脳筋も脳筋だからか天之河に賛同している。

「……ごめんなさいね?二人共悪気はないのだけど……」

「仕方ないよ。……ありがとう、八重樫さん」

この場で最も人間関係や確認の心情を把握している八重樫が、こっそりハジメに謝罪する。

ハジメも八重樫に苦笑いをしながら心配してくれたことに対してお礼を告げてた。

始業のチャイムが鳴り先生が教室に入ってきた。

教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝え、それを聞き終えたハジメはいつものように夢の世界に旅立っていた。

俺は起きてから先生の話を聞く。

ちなみに先生は2年連続畑山先生である。

 

昼休み

 

俺は適当に席を借りてくっつけて待つ。来たのはいつものメンバーだ。

俺とアルトリアは鈴が作る弁当のご飯で瓸は購買のサンドウィッチ。ハジメは10秒チャージと200円を瓸に払って瓸が購買から買ってきたホットドッグを食っている。瓸はオッサンなので昼飯をハジメの分まで買ってきてハジメはその分の料金を払う。

ただ、いつも違うのは寝惚けているのか教室から出ずに俺らと食べていることだ。

すると案の定、白崎がやってきた。

「南雲君。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」

再び教室に不穏な空気が漂い始める。

「あ〜、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、燈燐くんが買ってきてくれたこれで充分だから天之河くんたちと食べたらどうかな?」

そう言って食いかけのホットドッグを見せるハジメ。だが、無自覚に恋する天然にはその抵抗は虚しいぞ。

「えっ!?お昼それだけなの?駄目だよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」

そしたら瓸はどうなんだ?という疑問は言ってはならないだろう。

そんな中さらに厄介者が来た。

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

そう、天之河である。

爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く天之河君にキョトンとする白崎。

「え?何で、光輝君の許しがいるの?」

素で白崎が聞き返したことに思わず八重樫が「ブフッ!」と吹き出した。瓸に至っては飲んでた牛乳を鼻から垂らしている。

「はぁ…………」

ハジメがため息をつくと同時に天之河の足元に魔法陣が展開される。それに気づいた俺、アルトリア、鈴、瓸は身構える。俺に至っては小型の黒鍵を魔法陣にぶっ刺して阻止しようとしたのだが…………

魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たす程の大きさに拡大し、未だ教室にいた畑山先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

畑山先生がいたので刃物である黒鍵を出すのに躊躇してしまったのが仇となった。俺はそれに悔やみつつ光に飲まれた。

鈴が咄嗟に近くの紙に鉛筆で「異世界に召喚されます。恐らくゲームか何かの感覚でやる奴が出て死人が出るかもしれませんがごめんなさい。」と書いて机に置いたのは見えた。ナイス。

 

─────────────────────────

 

光が消えて最初に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。

縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせ、薄っすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むようにその人物は両手を広げている。

その人物から物色するような視線が、恐らく召喚した存在だろう者の視線が感じたのでLostBeltで敵対した神を殺した(事実)殺意を放つ。

クラスメイトらの小さなざわめきが聞こえてきたので周りを見渡す。

どうやら俺達は巨大な広間にいるらしいという事が分かった。

素材は大理石、或いはそれに近い材質の物だろう。美しい光沢を放つ滑らかな石作りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が掘られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。

大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間だった。

俺達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。

周りには呆然とした様子で周囲を見渡すクラスメートや愛子先生の姿がある。どうやら、あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったみたいだ。

現状に対する可能な限りの分析を行いながら俺は周囲の観察をする。

この広間にいるのは俺達だけではなく少なくとも三十人近い人々が、俺達の載っている台座の前で、まるで祈りを捧げるように両手を胸の前で組んだ格好で跪いていた。

彼らは一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏っており傍らには錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇形に広がっており円環の代わりに円盤が数枚吊り上げられている。

その内の1人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後宜しくお願い致しますぞ」

何が以後だ。俺は警戒心を最大限に出しつつ隠す。瓸に至っては支給品のヌンチャク兼槍となる物を片手に持ちいつでも展開可能にしていた。

ランゴバルドに促されて十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りであり、調度品や飾られた絵、そして壁紙は職人芸の粋を集めたものなのだろうと素人でも分かるだろう程のものだ。

恐らくは晩餐会などをする場所なのだろう。

此処に案内されるまで誰も対して騒がなかったのは未だ現実に認識が追い付いていないからだろう。

ランゴバルドが事情を説明すると告げた事や、カリスマのスキルが学校限定で王系サーヴァント並みに高い天之河が落ち着かせた事も理由だと思うが。

教師より教師らしく生徒達を纏めている姿に畑山先生が涙目だったが。

全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドが入ってきた。

日本産の某聖地にいるような似非メイドと比べれば美女・美少女メイドがしているが、両隣の2人のおかげ?で一切気にしなかった。

最も思春期男子なクラスメート達は憧れの本物のメイドに視線を惹き付けられ、飽くなき探究心と欲望のままにメイド達を凝視しているが。

全員に飲み物が行き渡るのを確認するとランゴバルドが話し始める。

「さて、貴方方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

そう言って始めたランゴバルドの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい身勝手なものだった。

まず、この世界はトータスと呼ばれている。

このトータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族の三つだ。

人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

この内、人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差を人間族は数で対抗していたそうだ。

戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。それが、魔人族による魔物の使役である。

魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形の事だ、と言われている。

この世界の人々も正確な魔物の正体は分かっておらず、それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣との認識らしい。

今まで本能のまま活動する魔物を使役出来る者は殆どいなかったし、いたとしてもせいぜいは一、二匹程度使役するのが限界だったらしい。

だが、魔人族の手によってこの常識が覆された。これの意味する所は人間族側の“数”というアドバンテージが崩れたという事であり、つまり人間族は滅びの危機を迎えている。

なんともきな臭い話だ。てか、異星の神はクズだったのでここもそのはずである。

どうせ、崇める神同士が結託してこのトータル?トータス?の大地をチェスのゲーム板とかそんな感じにしているんだろう。

そして、飽きてきたから依り代を手に入れてこの大地を破壊しまくるといった所か?

貴方方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するために貴方方を喚ばれた。貴方方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。貴方方という“救い”を送ると。貴方方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

ランゴバルドは何処か恍惚とした表情を浮かべている。

恐らくは神託を聞いた時の事でも思い出しているのだろう。

ランゴバルドによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしいい。

俺は“神の意思”を疑い無く、それどころか嬉々とした様子で従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていた。

それは俺達が英雄王ギルガメッシュによって神々との訣別を果たした世界に産まれたからこその意見なのだろう。だから、この世界が歪に思えるのかもしれない。

そんな時、突然立ち上がり、猛然と講義する人が現れた。畑山先生だ。

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! 貴方達のしている事は唯の誘拐ですよ!」

怒りを露わにする愛子先生。

しかしながら百五十センチ程の低身長に童顔という見た目に加え、見ている者に庇護欲を感じさせてしまう性格のせいで、周りのクラスメート達は「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」などと和んでしまっている。

そんなクラスメート達も、次のランゴバルドの言葉には凍りついてしまう。

「お気持ちはお察しします。しかし……貴方方の帰還は現状では不可能です」

場に静寂が満ちた。あ、静寂の終剣(イルシオン)が静寂を収集し始めた。まぁ此奴は2度も全力で使ったから内蔵魔力が尽きかけてたんだよな。直々魔力を注入しておこうか。

俺が静寂の終剣に魔力を注ぐ中、割かし現実を受け入れてる奴ら以外の誰もが何を言われたのかわからないという表情でランゴバルドを見やる。

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、貴方方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第という事ですな」

ランゴバルドがそんなことをほざくと共に、クラスメイトらが喚き散らす。

「嘘だろ? 帰れないってなんだよ!」

「嫌よ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

誰もが狼狽える中、ランゴバルドは特に口を挟まず静かにその様子を眺めていた。

いや、その目の奥には確かな侮蔑が込められている。

今までの言動から考えると「エヒト様に選ばれておいて何故喜べないのか」とでも思っているのだろう。

俺は誰にもバレないようにランゴバルドに威圧を放つ。ランゴバルドが段々と汗をかいている。

未だパニックが収まらない中、天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。

その音にビクッとなりクラスメートの皆は天之河へと注目する。

天之河は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始める。

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

厄介な事になった。そう思わずにはいられなかった。

天之河のカリスマが悪い方向に作用している。

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

いつもの三人組が天之河に賛同する。

後は当然の流れというようにクラスメート達が賛同していく。

愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えていたが、高いカリスマスキルを持つ天之河の作った流れの前では無力だった。

そこで俺は声をかけることにした。

「俺は断る。」

その一言にまた静寂が訪れた。

「何故だい?君は人を救う気は無いのかい!?嶺亜!?」

天之河が俺を批難する。それに続いて天之河ファンや他の賛同者が批難をする。

「当たり前だ。誰が好き好んで人殺しに加担しなければならんのだ?本当に救える力があるって言うんか?どうせ毎度お馴染みのご都合解釈と口先だけなんだろうが。逆に問うが、貴様には豪華客船1台しか直す力がある。そして、豪華客船が2台あり、片方は500人乗り、片方は100人乗っている。しかし、その両方が同時に沈没を始めた。お前はどうする?」

今の問の内容を理解した者は黙る。しかし、天之河は答えた。

「そんなもの両方救うに決まってるじゃないか!!!!」

「ブフッ!!!!アハハハハハハ!!!!御前さん話を聞いてたか!?そいつは豪華客船1台しか直す力があるって言ったんだ。よく思い出してみろ。「しか」って言ってんだから1台しか直せねんだよ。それを両方救うだ?ってか2台の距離がどれくらい離れてるのか分かってんのか?分からねぇんだから普通は答えれねぇよ。」

今まで黙っていた瓸がツボにハマったのか爆笑し出す。そして、指摘したらフルーツに手を出す。

「それは嶺亜が言い間違えたことだろう!?そうだろ、れ「ほら、自分が都合のいい事しか言わない。普通なら間違いなんだろうが、豪華客船1台を直す力があるが逆に言うと1台しか直せねぇという意味を持つ。それを態と略したのさ。国語の得意な園部はいち早く気づいたぜ?」……………………それでも、守れる者を守り、救える者を救うことの何が悪い!?」

「別に救いたきゃ救えよ。その代わり殺人鬼になるけどな。それに、皆を巻き込んでんじゃねぇよ。小僧(・・)が行くのは勝手に行くのは構わねぇが、周りはこの状況に混乱してんだ。んで、リーダーシップとってる小僧が参戦をしたらとりあえずはついて行こうってなるだろうが。ランゴバルドだったか?此奴らが現実を受け入れるまでの猶予が1ヶ月欲しい。あ、宗教なんかの洗脳教育なんざすんなよ?」

そんなことを言ってとりあえず命を無駄にしないように取り計らったのだが、天之河が参戦を強く誇示しクラスメイトらは頷く。

結局、全員で戦争に参加する事になってしまった。

ランゴバルドは短時間で天之河がリーダーだと見抜く程の観察力があるのだろう。このままだとめんどくさい事になるので、俺はある覚悟を決めた。

(よし、こいつ等見捨てよ。)

アルトリアは元王、それに戦争の醜さを知るため、発言しようとしても無駄だと思ったのか深いため息と共に諦めていた。鈴はこれからが不安なのかいつもの笑顔がぎこちなかった。

 

✲✲✲

 

戦争参加の決意をした以上戦いの術を学ぶ必要がある。まぁ、俺とアルトリア、瓸は必要ないがな。

幾ら規格外の力を潜在的に持っていると言っても、平和主義にどっぷり浸かりきった日本の高校生がいきなり魔物や魔人と戦うことなど不可能な事だ。しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、ランゴバルド曰く、この聖教本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ体制が整っているらしい。

王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物が建国した最も伝統ある国なのだそうだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さは誰だって分かることだろう。

俺達がやって来たのは聖教教会の正面門だ。これから下山しハイリヒ王国に行くらしい。

聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、凱旋門もかくやという荘厳な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。

が、俺はそっちより入口真下の誰も気づいてない空洞があったのが気になり、御手洗と称して中に侵入。

そこはそれほど大きくはなく、光沢のある黒塗りの部屋で中央に魔法陣が描かれており、その傍には台座があって古びた本が置かれていた。

俺はとりあえずは精緻にして芸術的な魔法陣へと踏み込んだ。

すると、俺の深い部分に何かが入り込んでくる感覚がしてあまりに不快な感覚に一瞬罠かと疑うも、次の瞬間にはあっさり霧散してしまった。

「……魂魄魔法?」

とりあえずは気になるものを物色する。

脇の台座に歩み寄り、安置された本を手にとった。

どうやら、中身は大迷宮【神山】の創設者であるラウス・バーンという人物が書いた手記のようだ。オスカー・オルクスが持っていたものと同じで、解放者達との交流や、この【神山】で果てるまでのことが色々書かれていた。

俺は正直ラウス・バーンの人生などどうでもよく、彼がなぜ映像体?だったのかや魂魄魔法でミレディとやらのように生きながらえなかったのかも、懺悔混じりの言葉で理由が説明されていたが、スルーである。

そして、最後の辺りで、迷宮の攻略条件が記載されていたのだが、それによれば、先程の禿頭の男ラウス・バーンの映像体が案内に現れた時点で、攻略が認められるそうなのだが………。

「俺、ぶっちぎって飛ばしてんだが?」

というのも、最低二つ以上の大迷宮攻略の証を所持し、神に対して信仰心を持っていない事、あるいは神の力が作用している何らかの影響に打ち勝った事、という条件を満たす者の前にしか現れないそう。つまり、【神山】のコンセプトは、神に靡かない確固たる意志を有すること、のようだ。

しかし、俺はとりあえず入って手に入れたのであかんかもしれん。

まぁ、何かしらの役に立つだろうからいいが。

台座に本と共に置かれていた証の指輪を取ってここを出て待たせていたクラスメイトらの元に向かう。

何処か自慢気なランゴバルドに促されて先に進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。

台座には巨大な魔法陣が刻まれており、その魔法陣を成り立たせている術式の分析を試みるものの、やはり俺の見知らぬ方式で成り立っているが故に容易には解析が出来ない。

大聖堂で見たものと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら、促されるままにその台座の上に乗ると、ランゴバルドは何やら呪文を唱え始める。

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」

その途端、足元の魔法陣が燦然と輝き出す。

まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上に向けて斜めに下っていく。

どうやら先程の詠唱はこのロープウェイを起動させるための魔術だったようだ。俺からすれば興奮するようなものではないが、魔術を初めて見るクラスメート達はキャッキャッと騒いでいる。雲海に突入する頃には大騒ぎだ。やがて、雲海を抜けて地上が見えてきた。眼科には大きな街、いや国が見える。

山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。あれがハイリヒ王国とやらの王都なのだろう。遠くから見た感じだと、正にザ・ファンタジーといった感じの城下町に見える。

いや、本当に素晴らしい演出だ。雲海を抜け天より降りたる“神の使徒”という構図そのまま。

そりゃあ聖教信者が教会関係者を神聖視する。それが普通の価値観じゃないか?

これだけの神秘性に満ちた光景を魅せられて神聖視しなかったら、それはよっぽどの天邪鬼か、或いは創世神エヒトを嫌っているものくらいだろう。

この世界には異世界に干渉出来る程の力を持った超常の存在が存在しており、文字通り“神の意思”を中心に世界は回っている。

自分達の帰還の可能性と同じく世界の行く末は創世神エヒトの思うがままなのだろう。

だが、俺らを連れてきたのが運の尽き。人と神の袂を別けた英雄王の逆鱗に既に触れた後。

異星トータスの神エヒトよ、刮目せよ貴様が攫いし子らの先達の神代の大英雄の力を……

 



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第4話 ステータスプレート

王宮に到着すると俺達は真っ直ぐに玉座の間に案内された。

教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩く。

道中、騎士や文官らしき者、メイドや執事等の使用人とすれ違うのだが皆一様に期待に満ちた、或いは畏敬の念に満ちた眼差しを俺達へと向けてくる。

美しい意匠の凝らされた両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢を取っていた兵士二人がランゴバルドと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たずに扉を開け放った。

ランゴバルドはそれが当然というように悠々と扉を通り、それに続いて天之河等一部の者を除いたクラスメート達は恐る恐るといった感じで扉を潜る。

扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子―――玉座があった。

 玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって(・・・・・・)待っている。

正直、この対応には流石に驚かされた。教会の権威が高いことは分かっていたが、まさか王族に対して平気で無礼な行為を行える程にまで高かったとは。

本来なら中の返事を受けてから扉を開き、そこには玉座に座って待ち構える国王の姿があって然るべきなのだ。国王が立たされて待っているなど普通では考えられない事だ。

初老の男性の隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えている。更にレッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んでいる。

玉座の手前に着くと、ランゴバルドは俺達をそこに留め置き、自分は国王の隣へと進むと国王へとおもむろに手を差し出す。

すると国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程のキスを行う。

本当にこの世界での教会の権威は強大なようだ。王権神授説などというものが地球にもあるが、この世界の場合は王権教会授説となっているようだ。

「………………………………末期だな。」

俺はそんな現状を知って誰にも聞こえないように呟いた。

そこからは唯の自己紹介だ。

国王の名前はエリヒド・S・B・ハイリヒと言い、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女の名前はリリアーナだそうだ。

後は騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。

その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。

見た目は地球の洋食と殆ど変わらなかったが、たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物という怪しい料理が出てきたが普通に美味しかった。

恐る恐る食べていたクラスメイトが多かったものの、ゲイザーの肉とかに比べたら色がおかしいくらいは気になる事ではなく、アルトリアは最初からバクバクと食べ進めていた。

王宮では俺達の衣食住が保証されている旨と訓練における教官達の紹介が成された。

教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようで、中にそこそこの実力者らしき者が数人いるのを見つける事が出来た。

晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずる与えられた部屋に案内された。

天蓋付きベッドなどの家具が設置されている豪奢な部屋である。

俺はこの部屋を丸ごと陣地作成で俺の領域にして安全を確保してからベッドにダイブするとそのまま深い眠りにつくのだった。

 

次日

 

翌日から早速訓練と座学が始まる事になった。

まず、集まった俺達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。

不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスさんが直々に説明を始めた。

「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

非常に気楽な喋り方をするメルド団長。

彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

俺が神山で得たこの世界の真実を知り、七大迷宮を幾つか攻略したら神山の迷宮に入れるのではなかろうか?

俺としては好ましい存在だ。魂魄魔法(第三魔法天の杯の片足突っ込んだもの)で魂の結びつきを強固にしておこうか。

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。“ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

アーティファクトという聞き慣れない単語に天之河が質問をする。

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

よくあるファンタジー小説に出てくるようなそれと殆ど変わらないみたいだ。

俺は指先に針を刺すと血を魔法陣へと擦り付ける。元神代最後の騎士の1人として痛みに慣れている俺は兎も角、痛みに慣れていないクラスメート達は顔を顰めながら血を擦り付けた。

すると、魔法陣が一瞬淡く輝いてステータスプレートに文字が浮かび上がり始める。

 

=================================

 

燚氷嶺亜 1569歳 男(の娘) レベル:1

天職:滅王(※1)

筋力:8000【B】

体力:19000【A+】

耐久:12500【A】

敏捷:37900【A++】

魔力:---【EX】

魔耐:---【EX】

技能:剣術[+次元屈折現象(ゼルレッチ)][+斬獄(※2)]・魔力操作[+魔力放出(※3)][+魔術回路]・無効[+毒][+麻痺][+石化][+汚染][+即死][+魔力]・感知[+気配][+魔力][+熱源][+存在]・龍種改造[+龍の心臓][+魔力生成][+叡智][+黄金]・錬成錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]・直感・極地・夜目・念話・威圧・限界突破[+覇潰]

宝具:

静寂の終剣(イルシオン)

ランク:EX・種別:対人(自身)・レンジ:1・最大捕捉:1

敵対者の魔力を伴う攻撃を全て無効する。永続効果。

星起するは静寂の終剣(イルシオン・ステライズ)

ランク:EX・種別:対国・レンジ:1~∞・最大捕捉:1~∞

極光を放つタイプで大陸1つ消す程の威力。実際、レイシフト先のギリシャでアトランティス大陸を抹消してしまったことがある。

星眠するは静寂の終剣(イルシオン・ステラ・スリーピング)

ランク:EX・種別:対世・レンジ:∞・最大捕捉:∞

星や宇宙、果ては概念すら終わらせる、完全な静寂たる「無」となる一撃。

不滅なる獄鎖の氷界(アブソリュート・アンスターブリゲイド)

ランク:EX・種別:????・レンジ:????・最大捕捉:????

全面が氷でできた固有結界。例えカルナの宝具、日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)や、スルトの宝具、太陽を越えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)だろうと一切溶けない不滅の結界。氷で刀剣類や弓銃を精製して扱えるし、現実でも可能。氷に関わるものがあれば、氷雪地帯にしたり火山を氷山にする事も可能。何より他属性との親和性も高く、火属性なら某ヒーロー学園の半熱半冷のゴウさんが行ったバーストも可能(※4)。氷で凍らせるという概念を用いて時を凍らせて停めることもある。

 

※1・影の女王と同じように人以外の存在を多く殺したことで得た称号

※2・宝具縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)の薄く切ったら低確率で時間差で傷が致命傷迄広がる斬撃

※3・風と氷、雷属性

※4・メタ発言

 

===================================

 

ん?ンンン???

あれれ~、おっかしぃなぁ~?周り見たら雑魚すぎるんだがって、英霊予備軍である俺と一緒にしたらいけないか。

とりあえずは隠蔽しておこうか。

 

===================================

 

燚氷嶺亜 17歳 男 レベル:1

天職:剣士

筋力:80

体力:90

耐久:52

敏捷:97

魔力:50

魔耐:50

技能:剣術・錬成・極地・直感・夜目・威圧・全属性耐性・限界突破・言語理解

 

====================================

 

こんなもんだろう。アルトリアはどのようなものだろうか?

見せてもらうと、

 

====================================

 

燚氷・P・アルトリア 17歳 女 レベル:1

天職:騎士王

筋力:B

敏捷:A

耐久:A

魔力:A+

幸運:B

技能:対魔力:A・騎乗:A・直感:A・魔力放出(※1):A

宝具:

風王結界(インビジブル・エア)

ランク:C・種別:対人・レンジ:1~2・最大捕捉:1

アーサー王の剣を覆い隠す風で出来た第二の鞘。厳密には宝具というより魔術に該当する。幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ不可視の剣へと変える。透明化は副次的な役割であり、その本質は彼女の余りにも有名すぎる剣を隠すためのもの。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

ランク:A+・種別:対城・レンジ:1~99・最大捕捉:1000

アーサー王の聖剣エクスカリバー。

光の剣。人ではなく星に鍛えられた神造兵装であり、聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置し、「空想の身でありながら最強」とも称される。人々の「こうあって欲しい」という願いが地上に蓄えられ、星の内部で結晶・精製された「最強の幻想(ラスト・ファンタズム)」。妖精「湖の乙女」の手で管理されたが、魔術師マーリンを仲介人にしてアーサー王に預かれた。神霊レベルの魔術行使を可能とする聖剣であり、所有者の魔力を“光”に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、振り下ろした剣の先端から光の断層による「究極の斬撃」として放つ。その膨大な魔力は攻撃判定をもつ光の斬撃の先端から高熱を発生させるため、結果的に光の帯ないし地上をなぎ払う光の波に取られる。星の内海で錬成されたこの剣は、この惑星を脅かす外敵の出現時にこそ真の力を発揮すると言われる。

全て遠き理想郷(アヴァロン)

ランク:EX・種別:結界宝具・防御対象:1人

エクスカリバーの魔法の鞘と聖剣の鞘。「不老不死」の効果を有し、持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。真名解放を行なうと、数百のパーツに分解して使用者の周囲に展開され、この世界では無い「妖精郷」に使用者の身を置かせることであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る。それは防御というより遮断であり、この世界最強の守り。魔法の域にある宝具で、五つの魔法さえ寄せ付けず、多次元からの交信は六次元まで遮断する。

 

===================================

 

…………………………彼女はいつ、燚氷となったのだろうか。とりあえずは隠蔽してから返す。隠蔽したのは面倒事を減らすためだ。瓸も面倒事が嫌だからか隠蔽を済ましていたし、鈴は魔術を知って少ししか経ってないのでそれと言って隠蔽しなければならないものは無い。

そうこうしていたらメルド団長が話を再開した。

「全員見れたか?説明するぞ?まず、最初に“レベル”があるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

むしろ、ステータスが上がるからレベルも上がるらしい。

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させる事も出来る。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことは分かっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

いえ、自前の武具防具があるのでいりません。

メルド団長の言葉から推測するとどうやら魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということは無いらしい。はぐれメタルやメタルキングを倒して一気にステータスを上昇させるような事は出来ないみたいだ。

ステータスプレートとかゲームみたいなアイテムがあるというのに、妙に現実的なリアルファンタジーである。

「次に“天職”ってのがあるだろう?それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな。後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

メルド団長の呼びかけに応え、早速、天之河がステータスの報告をしに前へ出た。

そのステータスは……

 

============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==============================

 

正に、主人公のそれだった。まぁ、クラス転移系の小説だったら敵に洗脳されて堕ちるタイプのそれである。

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

成る程、成る程……技能は普通、二つか三つしか持ってないわけか。俺やアルトリアも多い方なのか。

次々とメルド団長に見せていき、ハジメの番となった。

ハジメのステータスは天職が練成師でステータスはオール10と来た。あぁあ、これ1番強くなる奴ほぼ決まったようなもんだろ。

そう思ってたら、始まった。ハジメ虐めが。

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

檜山の馬鹿にするような声が聞こえ、ハッとしてハジメの方へと視線を向ける。

すると、檜山はウザい感じでハジメと肩を組んでいた。

周りの生徒達―――特に男子はニヤニヤとした表情で嗤っている。

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

ハジメは投げやり気味にステータスプレートを渡す。

ハジメのプレートの内容を見て檜山は爆笑した。ハジメのプレートを斎藤達取り巻きに投げ渡し、内容を見た他のクラスメート達も爆笑なり失笑なりをしていく。

「ぶっはははっ~、何だこれ!完全に一般人じゃねぇか!」

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

正直、周りがウザイ。自分が良ければ…………自分の妬み相手が悪ければこう笑うなどと。戦争のSの字すら知らない小僧共が粋がるのがウザイ。威圧を放とうとしたが、萎れた。

俺よか先に動いた奴がいたからだ。そう、畑山先生だ。

「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」

檜山ら馬鹿にしていたヤツらも萎えたのかハジメにステータスプレートを返す。

「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」

 

 そう言って「ほらっ」と愛子先生はハジメに自分のステータスを見せた。

 

=============================

畑山愛子 25歳 女 レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

===============================

 

ハジメは死んだ魚のような目をして遠くを見だした。

あぁ、畑山先生がまさか止めを刺すとは…………

これからが少し不安だ。

 



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第5話 鍛錬と実戦と罠

 

鍛錬や文学?をすることになってから早2週間が経過した。

だが、鍛錬場があまりにも小さ過ぎたので近隣の森ですることにしたのだ。メルド団長には付き添い有りなら構わないと言われたのでその時にいたアランという騎士を連れてから行っている。

相手は何時ものメンバーである。

その中の瓸と行っている。

魔術で東京ドームくらいの範囲に氷柱を四方に立ててその範囲内で行い、アランには外側に投影してあるホログラムで俺と瓸を見て貰っている。

 

 

「いやぁ、あれから2週間経ったと言うのに未だに信じられませんよ。これは流石に見られたくはないですねぇ。」

アランが見ているホログラムには森の木々を足場に多角機動しながら槍でヒット&アウェイをする瓸と初めてから一切その場から足を動かさず手に持つ剣だけで応酬している嶺亜の姿が写っている。

「生きてきた中でここまでの戦闘は見たことがないし、これを知った上層部がなんと言うか………」

「元の世界では槍の名手と剣の名手でしたので、両者が軽く(・・)相対したらこの程度ですよ。全力を出されたら地形が変わりますからセーブはしているのですが………………そろそろ時間ですね。」

時間となったらアルトリアが魔力放出をして、2人に時間が来たことを教える。

ちなみに鈴はその間、結界魔術などの詠唱を必死に覚えていた。

「さて、鈴。稽古の時間ですよ。」

「りょ〜か〜い…………うし、お願いします!」

鈴とアルトリアが範囲内に入ると同時に瓸と嶺亜が出てきた。

「オジさん防衛は得意なんだが、攻撃が苦手なんだよねぇ〜。それに、ランサーと同等の速さとか、色々とショックなんだがなぁ。」

「フッ、まだまだ成長出来るんだよねこれが。さて、鈴には結界だけだと魔力切れの時が大変だからと剣を習うよう言ったが、何処まで出来るのか?」

鈴に剣の扱いを徹底的に教えるアルトリアをアランと共に見る。アランはこれを見る事で個人的な新たな戦術を考えていたりする。

そして、地稽古が始まった。鈴はアルトリア相手に奮戦する。最近出来かけていた結界魔術の無詠唱をなんとか出来るようにして、多々ある崖っぷちなところで結界を展開して危機を脱したり、足元に妨害用として用意したりと、奇策を用いる事でなんとか追いつけてる感じだ。最低級の英霊とはカチ合える程だろう。

1時間後に辞めて出てきたので伴って城に戻る。

戻った時に知ったのだが、ハジメが檜山らに虐められて負傷し、白崎に治療されたとか。

それと、メルド団長から明日にオルクス大迷宮にて実戦することを言われた。

 

 

 

俺達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達の為の宿場町【ホルアド】に到着した。

新兵訓練によく利用するようで王都直営の宿屋があり、そこに泊まることになった。

2人1部屋となり、俺は余りで1人となった。

「はぁ………………何事もなけりゃいいがなぁ。」

 

ピップー!!

 

『あーテステス。嶺亜くん聞こえる?』

「あぁ、聞こえてるぞ。どうした?ギルから俺が飛ばされたのは知ってるだろ?」

『あぁ。それで、言いたいんだけど…………………………そこ、特異点だからね。しかも、異聞帯と来た。でもクリプターがいない。どんなイレギュラーがあるか分からないから覚悟しててね。それと、藤丸くん達をなんとかレイシフトしてみるから。あ、支給品としてエミヤにマシュの大楯を造ってもらったのを送っといたからサーヴァント召喚に使って。』

「なぁ、クラスメイト…………どうしたらいい?」

『へ?ちちちちょっと待ってくれ。今のもう1回言って』

「だからクラスメイトらはどうしたらいい?と聞いたんだ。」

『んな!?君だけじゃなくて君のクラスメイト達も行ってるのかい!?!?』

「あぁ。あ、宝具の開帳するけど気にしないでね?」

『あぁ分かっ………………はい?今な──────』

 

ピッ!!

 

「ふぅ、コンディションを整えに行くか。」

Dr.ロマンからの連絡を受けたあと、暇だったので外に出てコンディションを整える名目で鍛錬をする。

夕食を食べたあとも続け、部屋に戻る時に部屋前に檜山がいた。

「そこで何をしている?」

声をかけたら飛び跳ねて此方を見て、

「………………んだよ」

一言だけ。その瞳は憎悪に濁り、声音は殺意に満ちていた。

「貴様がどのような感情を抱いていようと構わん。だが、過ちだけは犯すなよ。……………………貴様にちっぽけな英雄譚を語ろう。」

 

ある日、少年はお婆ちゃんにたこ焼きを買って貰った。それを何処か座れる場所で食べようと歩いて移動した。しかし、前方から歩いてきていた不良達の1人にぶつかり、たこ焼きはダメになり少年はショックで泣き、お婆ちゃんは不良達の恐喝にオロオロとする。お金を取られ、更に恐喝をされる。そこに、1人の高校生が割って入り、公衆の面前で土下座。それは不良達を逆に増長させ、高校生は殴る蹴るの暴行を受けたり、飲み物をぶちまけられたりした。それでも高校生は耐え、痺れを切らした不良達は未だ泣く少年に標的を変えた。が、高校生は少年を庇い守った。

最後はたこ焼き屋の反対側の蕎麦屋から出てきた極道達に不良達は絞められ、高校生は病院に搬送。全治1年の重症を負った。しかし、極道達はこう言っていた。「あれは彼奴だからこそ耐えた。もし、他のものなら泣き叫び助けを乞うていただろう。」と。そして、その騒動を見ていた野次馬の中にいた1人の女子高生は一目惚れをした。

 

「これは、高校生が勇者である証。勇者は天之河のようなキラキラネームで爽やかイケメンな奴ではなく、こんなちっぽけなことでも挫けず守り抜く者の事を言う。」

「……………………それがなんだってんだ。俺には関係ないだろ。」

俺の話を最後まで聞いていた檜山は関係ないからと憎悪を持ったまま去ろうとした。

「……この高校生の名は南雲ハジメ。女子高生の名は白崎香織だ。」

「………………なんだと?巫山戯るなよ。南雲に白崎は相応しくねぇ。それがいいなら俺の方が相応しいだろがッ!?!?!?」

怒りを込めて此方を向き直る。が、硬直した。気になり俺も振り返ったら白崎本人がいた。

「………………檜山くんはいつも人を虐めて楽しんでたよね?私ね、そういうの大っ嫌い!言葉に出来ないけど、言うとしたら…………惨め。前を向いて精進しようとしない。後ろばかり見て調子に乗る。南雲くんは精進してない?してるよ?でも、檜山くん達に虐められてばかりだから埋もれる。相応しい相応しくないが関係なく南雲くんが好き。だからね、これ以上南雲にちょっかいをかけないで。」

「ッ!!!!!!!!!!!!」

檜山の言葉をバッチリと聞いていた白崎に振られ、その場から駆け出していく檜山。

憎悪が膨れ上がるのを確認した。

「………………ちっ。おい白崎、お前に渡す物がある。」

「???」

俺は檜山の憎悪に対抗するためにある物を2つ白崎に渡した。そして、1つはハジメに渡す様に言ってから部屋に入って寝た。

この時渡した物が幸を成したらいいが。

 

次日

 

現在、俺達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

俺はアステリオスの宝具の迷宮みたいな入口を想像していたんだけど、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりとした入口があり、受付窓口まで設置されていた。

どうやらダンまちのダンジョンみたいにしっかりと管理されているらしく、制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

何でも、此処でステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのが目的らしい。

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び立っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。

 馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。

確かに戦争を始める前に内側の揉め事で国が衰退してしまったら、いざ戦争という時にほんの少しの抵抗も出来ずに負けてしまうから当然の処置だと思う。

クラスメイトらがおのぼりさんになっているが、俺やアルトリア、瓸はレイシフト先や元いた所もこんな感じだったので普通について歩いている。

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

縦横五メートル以上ある通路は灯りもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や灯りの魔法具が無くてもある程度は視認する事が出来る。

なんでも緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

俺達は隊列を組みながらゾロゾロと進む。隊列を組みながら、と言えば聞こえが良いかもしれないけど、実際は教師の後ろを付いて行く幼稚園児みたいな感じだ。こんなので戦争に加担出来んのか?

暫く何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。如何にも魔物とエンカウントしそうな場所だと思う。

と、その時、物珍しげに辺りを見渡している僕達の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。どうやら本当にエンカウントしてしまったらしい。

現れた魔物は「ハハッ!」とは笑いそうにない二足歩行のネズミだ。灰色の体毛に赤黒い瞳が不気味に光っており、上半身が筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。まるで見せびらかすように、八つに割れた腹筋と膨れ上がった胸部の部分だけ毛がない。

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

ラットマンは結構な速度で此方に飛びかかってくる。

正面に立っている天之河達―――特に前衛である八重樫の頬が引き攣っている。

まあ、筋肉モリモリマッチョマンの変態が飛び込んできたらそうなる。しかも、それにネズミが混ざってるんだから尚更だと思う。

間合いに入ったラットマンを天之河、八重樫、坂上の三人が迎撃する。

その間に、白崎と女子二人、ちみっ子鈴と表お淑やか裏ヤンデレ中村恵理が詠唱を開始して魔法を発動する準備に入る。

天之河は白く輝くバスタードソードを蟻が歩く程の速度で振るい、数体のラットマンを纏めて葬る。

天之河が持っている剣はハイリヒ王国の管理するアーティファクトの一つで名称は“聖剣(笑)”である。

ただ単に光属性の性質が付与され、光源に入る敵を弱体化させつつ自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる(笑)”な性能である。それなら、儀式剣の燐然と輝く王剣(クラレント)無毀なる湖光(アロンダイト)の方が圧倒的に性能がいい。

坂上は空手部だそうで天職が “拳士”であることから籠手と脛当てを付けている。

これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないらしい。俺としては「決して壊れない」というのは大げさだと思う。だって、いずれ朽ちることもあるし、限界耐久も物である限り壊れる筈だ。不毀の極槍(ドゥリンダナ・ピルム)は別だけど。

しかし、アーティファクトとしての力はかなりの物で、坂上君は衝撃波を伴った拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。彼らのパーティーのメイン盾は坂上になるだろう。

八重樫は県道小町らしく“剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち敵を切り裂いていく。その動きは現代において洗練されており、騎士団の人達が感嘆の声を漏らすほどだ。

俺達が天之河君達の戦いを見学していると、詠唱が広場へと響き渡る。

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ、“螺炎”」」」

三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎が残ったラットマンの全てを飲み込み、巻き込み、燃やし尽くしていく。炎の飲み込まれたラットマン達は「キッーーー!」という断末魔の悲鳴と上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

ただそれだけの作業で、オルクス大迷宮での初の実戦はあっさりと終わりを告げた。どうやら、天之河達の戦力だと一階層の敵は弱すぎるらしい。

目算だが俺や瓸が本気を出すとしたら70層より先でないと出せない気がする。

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

天之河達の優秀さ(笑)に苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。

だけど、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められないみたいだ。

頬が緩む天之河達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

先手過剰火力で相手に何もさせずにHPを削りきるのはゲームボス戦のセオリーだけど、迷宮の最初にエンカウントする魔物にやるような攻撃じゃないだろう。

それから特に問題もなく後退しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層に辿り着いた。

現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだがそれは百年以上前の冒険者が為した偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いらしい。

クラスメイト達は戦闘経験こそ少ないものの、ハジメ以外の全員がチート(いろんな意味で笑)持ちなので割りかしあっさりと降りることが出来た。

最も、迷宮で一番怖いのはトラップらしい。場合によっては致死性のトラップも数多くあるらしい。ハジメが読んだ本にも落とし穴とか毒矢の罠とか様々な罠が記されていたそうだ。

このトラップ対策にはフェアスコープというものがあり、これは魔力の流れを感知してトラップを発見する事が出来るという優れものだそうだ。迷宮のトラップは殆どが魔法を用いたものであるため、八割以上はフェアスコープで発見出来るらしい。

正し、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば、使用者の経験による索敵範囲の選別が必要らしい。道具だけあっても技術が伴わなければ駄目だということだ。

なので、クラスメイト達が素早く階層を下げられたのは、皆がチート(いろんな意味で笑)持ちである以上に、騎士団の人達の誘導があったからだ。

メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われている。

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十層で訓練して終了だ!気合入れろ!」

此処まで俺や瓸、ハジメは特に何もしていない。

一応、騎士団の人が相手をして弱った魔物を相手にハジメが訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけハウンドドッグという魔物をハジメは倒した。おい、鋼の錬金術師か?

しばらくして小休止を挟む。

俺は空気を錬成(・・・・・)して、エミヤの夫婦剣を概念込みで精製しジャグリングを始める。

ちなみにこれは投影魔術でやった時、最初中身無しで5秒後に崩壊していたが今では5年は持つ。しかし、錬成のおかげで投影魔術で中身のみを投影するだけで済んでいる。ちなみにこれ、50組目の精製だったりする。

「香織、何、南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

そこに、八重樫のが白崎をからかい、白崎は顔を赤らめて反論する。

その時にハジメに憎悪を向ける視線が1つ。檜山である。どうやらハジメを消せば白崎が此方を向くと思い込んでいるらしい。

今回は不干渉といこう。アレを白崎と白崎経由にハジメが持っているので大丈夫だろう。

アレとは夫婦剣のストラップバージョンだ。どちらかが死んだら生きている方に夫婦剣が揃うようにしている。ハジメが死ねば黒が白崎に、白崎が死ねば白がハジメのもとに行くよう設定している。しかも通信機能付きだ。ストラップサイズなので俺の任意出ないと壊れない。

あれから二十階層の探索を再開。

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはないし、トラップに引っかかる心配も無い…………………………はずだった。

二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のように氷柱状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先に進むと二十一階層への階段があるらしい。

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に歩いて帰らなければならない。

すると、先頭を行く天之河達やメルド団長が立ち止まった。魔物がいたのだ。

現れたのはカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物、ロックマウントだとハジメは言う。

地形が悪く、戦いづらい中、ロックマウントがロックマウントを投げ、ロックマウントがルパンダイブで後衛の鈴達に迫る。白崎と中村は気持ち悪さに悲鳴を上げて、鈴はダイブ中のロックマウントの正面に結界を貼って塞き止めて護身用で持つ剣で喉を1突きして殺る。

白崎らが悲鳴を上げたのが死への恐怖と思い込み(決めつけて)狭い中大技をメルド団長の静止を振り切って扱い、1部崩壊させる天之河。

天之河が説教を受けている時に白崎は発見した。

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

その言葉に、クラスメイト達全員が白崎の指差す方向へと視線を向けた。そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

まるでインディコライトが内包された水晶のようである。白崎を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

「でもさ、こういうのって大体がトラップだよね?珍しいものが簡単に崩壊(・・・・・)した中にあったんだから。」

影が薄すぎて誰も反応してないが、遠藤が言っていた。それを聞いていた騎士の1人が例のスコープで確認を取ろうとする。

「…………素敵……」

白崎が無意識に零しそれを聞いた檜山が

「だったら俺らで回収しようぜ!」

そう言って唐突に動き出した。

きっと、グランツ鉱石を手に入れて白崎に良い所を見せようとしたのだろう。檜山君はグランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登って行き、メルド団長はそんな檜山の単独行動に慌てて声を荒らげる。

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

しかし、昨日の1件で焦りが生じ大人しく言う事を聞く檜山じゃない。

メルド団長は、グランツ鉱石の場所へと辿り着いた檜山を止めようと追いかける。先程調べ出して例のスコープで鉱石の辺りを確認し終わった騎士の1人の顔が一気に青褪めた。

「団長!トラップです!」

「ッ!?」

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がった。

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

まるで、召喚されたあの日の再現だ。

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

メルド団長の言葉にクラスメイト達が急いで部屋の外に向かうが……間に合う訳ないわな。

部屋の中に光が満ち、俺達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

俺達は空気が変わったのを感じていた。次いで、地面に着地。

俺達が転移させられた場所は、巨大な石作りの橋の上だった。

ざっと百メートルはありそうで、天井も高く少なくとも二十メートルはある。

橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。落ちれば正に奈落の底、俺や瓸、アルトリアはまだしもその他のデッドエンドは避けられないだろう。

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせればつかむものもなく真っ逆さまだ。俺達はその巨大な橋の中間にいた。

橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

メルド団長が撤退するよう大声で叫び、クラスメイト達は我先に登り階段を目指す。

だが、ここは迷宮。トラップがこの程度で終わるはずもなかった。

階段側の橋の入口からは大量の魔物が魔法陣から出現し、通路側からは一体の巨大な魔物が出現する。

───まさかの挟み撃ちだ。

「まさか、ベヒモス……なのか……」

現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻くような呟きがやけに明瞭に響いた。

橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。それは召喚魔法陣だった。

奥に進むための通路側の魔法陣は十メートル近くあり、此処から脱出するための階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数が夥しい。

小さな無数の魔法陣からはスケルトンや竜牙兵のように骨格だけの体に剣を携えた魔物が溢れるように出現した。いや、正確には出現し続けているというべきだろう。その数は既に百体近くに上っているというのに、尚、増え続けているのだというから。

だけど、数百体の竜牙兵モドキよりも通路側のバケモノの方が遥かにヤバイ。アレは現代の人間が戦って良いような相手じゃないし、戦って勝てるような相手でもない。

十メートル級の魔法陣から出現したのは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物、最も近い地球の生物に例えるならトリケラトプスだ。

瞳は魔法陣と似た赤黒い光を放っており、鋭い爪と牙を打ち鳴らし、頭部の兜から角を放つその魔物の名は、メルド団長の言葉が正しければベヒモス。

旧約聖書に登場する陸の怪物、レヴィアタンと二頭一対を成す者。

亜種特異点で出くわしたことがあるベヒモスの方が圧倒的に威圧的でたまたまいたディルムッド・オディナが何故か狙われまくり、トラウマを抱えさせてたのを思い出す。

「グルァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

迷宮を揺るがすような咆哮に正気に戻ったのか、メルド団長は矢継ぎ早に指示を出す。

「アラン!生徒達を率いて“トラウムソルジャー”を突破しろ!カイルとイヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝達は早く階段へ向かえ!」

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ!ヤツは六十五層の魔物。嘗て“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ!さっさと行け!私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むものの「見捨ててなど行けない!」と踏みとどまる天之河。此処でも、天之河の正義感の強さがマイナスの方向に働いていた。

何とか撤退させようと再度、メルド団長が天之河に話しかけようとした瞬間、ベヒモスは咆哮を上げながら突進してくる。

「…………はぁ、ちったぁ後ろ見ろや天之河。てめぇが巻き込んだあいつら見捨てて自分は好きなことをするとか巫山戯んな。」

複数の氷柱を生やして ベヒモスの足止めをする。だが、弱くしすぎたのか破壊して進んできた。

このままでは全滅だ。それを阻むためにハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、“聖絶”!!」」」

二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、更に三人同時発動。

現れたそれは、下手をすれば防御系の宝具に匹敵するかもしれない純白の護り。

半球状の衝撃がベヒモスの突進を防ぎ、その瞬間、凄まじい衝撃波と共にベヒモスの足元が粉砕され、橋全体が石造りも関わらず大きく揺れる。その揺れはついこの間まで戦いを知らなかったクラスメイトの皆にとっては恐怖そのものであり、撤退中のクラスメイト達から悲鳴が上がり、点灯する者が相次ぐ。

トラウムソルジャーという名前らしき竜牙兵モドキの不気味さと、後ろから迫ってくるベヒモスの気配にクラスメート達はパニック状態に陥っている。

隊列など無視して我先にと階段を目指して我武者羅に進んでいる。騎士団員の一人、アランさんが必死にパニックを抑えようとしているものの、まるで意味を成していない。

瓸がクラスメイトらの防衛に尽力し、アルトリアも危機的状況の者を助けている。

俺は今出来る本気で氷柱を奈落に落ちない様床として展開して足場を増やす。

そうすると竜牙兵モドキ共が広がって氷の足場を踏んで来たので、氷針を生やして串刺しにする。ただひたすらそれを続ける。

その間に何かしらの策が出来たのかハジメ以外が撤退し出す。

数秒後に階段に着き、天之河らが階段入口を死守し出した。なんと、ハジメがベヒモスを抑えているのだ。

そして、ハジメは走り出し、皆が魔術をベヒモスに向けて放ちまくる。が、檜山が狙いをベヒモスからハジメに変えたのだ。それも憎悪と嫉妬、邪魔者がいなくなるという悦びの感情を露わにして。ハジメは間一髪で躱し走り続け、檜山はずっとハジメを狙い続ける。ハジメがクラスメイト達の中から故意的に狙われていることにまともな奴が気付き、白崎にいたっては檜山がハジメを狙っていることを確認するが、既に遅し。

檜山の放った火炎弾がハジメに当たり、押し返され、跳んでいたベヒモスの着地と同時に岩橋は崩壊。ハジメは奈落の底へと落ちていった。

白崎は必死にハジメのあとを追おうとするも、メルド団長に気絶させられて皆が撤退する事となった。

 

……………………俺は1部のクラスメイトを除いて、見限ることにした。

 



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第6話 化け…………お姉さんと旅

ハジメが奈落に落ち、暴走気味の香織をメルド団長が気絶させてから直ぐに撤退をした。

階段を登った先に魔法陣があり、それに乗って転移したら、あのグランなんたら鉱石のトラップがあった場所まで戻っており、クラスメイト達が助かったからと座り込む者が出たが、メルド団長の大迷宮外に出るまで耐えろと発破をかけられて渋々進む。

無事に脱出したらメルド団長は新たなトラップと1人死亡の旨を管理員に説明。

その後、ホルアドの宿で1泊し、直ぐに王宮に帰還した。

あれから5日程経ったのだが、1部を除いて皆沈痛な面持ちである。何より、ハジメが落ちた事について誰も語ろうとしない。それもそうさ。自分の攻撃が当たったのではないか?と思い込んでいるのだ。犯人を知る俺や、実際に目にした白崎以外は知らない。まぁ、白崎が起きていたら今頃檜山は生きてない。

アルトリアは鈴のケアをしているためここにはおらず、瓸は檜山の監視をしている。

俺はと言うと、メルド団長のもとに向かっていた。

団長の執務室に着き、ノックをする。

『ん?入っていいぞ?』

許可を得たので入る。

「…………嶺亜か。何か相談事か?」

「あぁ。少し時間はいいか?」

俺はメルド団長を連れて、いつも鍛錬をしている森に来る。

「どうした?こんな所に呼んでまで誰にも聞かれたくない事でもあるのか?」

「…………………………展開」

俺はいつもの様に四方に氷柱を生やし、結界を貼る。この結界は誰にも認識されない空間で、エヒトですら気づいてない。

「団長、俺とアルトリア、瓸は此処を離れます。」

「…………何故そのようなことを言う?今、お前達に離れられたら困る。何となく離れようとするわけは分かる。坊主のことだろ?だが、お前のクラスメイト達はどうする?お前達がいなくなったら皆が悲しむぞ?」

「そんなもの分かってる。」

「だったら────」

「だが、この世界の真実を知った以上は此処にいることに反吐が出る。それに、クラスメイトらの1部は見限ることにした。このまま全滅するよりはその1部を見捨ててでも残りを元の世界に戻す。」

「ぬぅ…………見限ったのは誰だ?」

「白崎、八重樫、谷口、永山、野村、遠藤、辻、吉野、相川、仁村、玉井、菅原、宮崎、園部、南雲、畑山先生以外だ。天之河は自分のエゴで皆を戦争に巻き込んだ。坂上は論外。檜山は南雲を奈落に突き落とす。清水は堕ちる。中村は倫理観がない。その他は保身に走り過ぎだからだ。」

「………………坊主を落としたのが大介だと何故分かった?あと恵里に倫理観がないというのは?それに、この世界の真実とはなんだ?」

「檜山の件は前日に抑えようとしたが出来ず、南雲は嫉妬で落とされた。中村は天職の死霊術師を使って魔物の死体を使役したり、アンタの部下をこっそりと殺って数を増やしてる。………………真実を知ったら教会の人間に殺されるが構わんか?」

「…………構わん。気がかりなことが多々ある。それが知れるのならいい。お前達を巻き込み、死と隣り合わせにしたのだ。だったら俺にも何かしらを背負う義務がある。お前達の生命然り、な。」

「…………………………この世界は神の玩具だ(・・・・・)。創世神エヒトと魔神アルヴ?は繋がっている。いや、アルヴは確かエヒトの眷属だったか?数百年前にそいつらの血を引いた子らが偶然聞いたそうだ。人間族と魔人族の戦争は遊びに過ぎんとな。それを聞いた神の子らは叛逆し、解放者としてエヒトに挑んだ。だが、戦う前に負けた。神敵として追われる羽目になった。解放者達はエヒトに洗脳された守ろうとした者達に追われ数を減らし、残り7人となった。」

この話を聞いていくに連れて顔を青くしていく団長。

「…………その7人は…………どうなった。」

「7人の名はオスカー・オルクス(・・・・)、ミレディ・ライセン(・・・・)、ナイズ・グリューエン(・・・・・・)、メイル・メルジーネ(・・・・・)、リューティリス・ハルツィナ(・・・・・)、ヴァンドゥル・シュネー(・・・・)、最後にラウス・バーン(・・・)だ。」

「ッ!!!!!?オルクスに………………バーンだと!?それに……彼らの苗字は………………」

「あぁ。シャルムとラウスの関係は知らんがな。彼ら7人は最後、後世に賭けた。神々から人々を解放して貰うために。だが、それだけでは神に勝てん。だから試練を与えた。七大迷宮(・・・・)が彼らの与えた試練だ。俺がこの真実を知ったのはこの世界に来て直ぐにバーンの迷宮を見つけてな。御手洗と称して入り、知った。七大迷宮にはそれぞれ攻略したら褒賞として神代の魔術が手に入る。ついでに攻略順も言おう。最初はグリューエン大火山で空間魔術、次にメルジーネ海底遺跡で再生魔術、その次がシュネー雪原で変成魔術、その次にライセン大峡谷で重力魔術、その次はオルクス大迷宮で生成魔術、最後にバーンの迷宮で魂魄魔術だ。これらはバーンの手記に残されていたもの。各迷宮内の内容は知らないがな。」

「……………エヒト神が裏で操っていたから戦争が数百年に渡って未だに終えないのか。ははっ、絶好のチャンスで撤退させられ、逆転されたのは遊びが終わらないようにするためか……………最後に……エヒト神は何故お前達を召喚した?まさか、刺激が欲しかったとかじゃないだろうな?」

団長はこの世界の真実を知り、本能的に恐れた。そして、疑問も晴れ、最後の疑問を俺にぶつけてきた。俺は渋々答えることにした。

「………………依代選びだ。エヒトは俺ら召喚された誰かを乗っ取り、この世界を破却する気だ。召喚直後に物色されたから何となく分かった。話がだいぶそれたが、まとめて言えば気色悪いから離れる事にした。」

「………………………………分かった。それで、いつ出ていく気だ?」

「白崎にある事を教えたらだな。っと、あんたにもこれを渡しておく。」

「ん?なんだこれは?」

「これはある弓兵が愛用した2本1対の双剣干将と莫耶だ。この双剣の特徴は夫婦剣とも呼ばれる所縁のように1本が遠くにあれどもう1本の方に引き付けられるという権能がある。それをこのサイズにしてアクセサリーにしたものだ。アンタには莫耶の方を渡しておく。このアクセサリーには特徴があり、例えば莫耶の所持者が死んだら莫耶は干将の所持者のもとに行くよう設定されている。」

「ふむふむ、これで嶺亜の生死が常に分かると。」

「必要最低限でも、生きてることは分かってた方がいいだろ。あ、通信機能も付いているから何かあったら教えるくらいはするさ。」

「……………………ほんとうに行くんだな?」

「あぁ、帰る方法を見つけるためでもある。ッ…………白崎が目を覚ましたようだ。メルド団長、今の真実は誰にも話さないように。此処を出ていく前に魂魄魔術でまだ中村の手に堕ちてない騎士の魂を保護しておく。っと、今即席で造ったが一応これも渡しておく。生者と死者を見分ける眼鏡だ。伊達眼鏡みたいなもんだから執務中にでも掛けておけ。」

話が済んだので伴って白崎のもとに向かう。

白崎の部屋前に来たら

「す、すまん!」

「じゃ、邪魔したな!」

天之河と坂上が慌てて部屋から出てきてそそくさと去っていき、

「さっさと戻ってきなさい!この大馬鹿者ども!」

と、八重樫が部屋を飛び出して2人を追いかけていく。俺とメルド団長はキョトンとしながら白崎の部屋の戸をノックした。

「…………?はい」

白崎は普通に戸を開けてくれた。

「目が覚めた様だな。」

「どこも異常はないか?後で医師に見てもらった方がいいだろう。……………………白崎、落ち着いているようだが…その……坊主のことは………」

「…………それなら大丈夫です。南雲くんが死んだとは限りません。確かにあの奈落の底に落ちたなら99%死んだと思うでしょうが、まだ、1%もあるんです。私はその1%に賭けて南雲くんを追います。」

「…………そうか」

「なぁ白崎、ホアルドで俺が渡したものはまだ持ってるか?」

「?まだ持ってるよ?この白い方だけど………黒は南雲くんに渡したし…………………どうしたの?」

「…………聞いて喜べ、南雲は80%の確率で生きている。」

「えっ!?ほんと!?南雲くんは今何処!?」

「ちょっ待て!!落ち着け白崎!!順に説明するから!」

ハジメの生存を示唆すると白崎は興奮して迫ってきたので抑えて落ち着かせる。

「あっ、ごめんなさい。」

「それじゃあ俺は皆に香織が目を覚ました事を教えてくる。」

メルド団長はそう言い残して白崎の部屋から立ち去った。俺は白崎に説明するために中に入れてもらい、椅子に座る。

「まず、俺があんたに渡したストラップは2本1対で1つだ。そして、磁石のような力もある。ただ、その磁石のような力は特殊条件発動するようにした。例えば白の持ち主が死んだとする。そしたら白は黒の方に引き付けられ、黒の持ち主に渡る。つまり、今ここに黒がないということはハジメがまだ生きている証だ。ただ、どこにいるかまでは分からないがな。」

「………………ねぇ、燚氷くんは南雲くんを落とした人が分かる?」

「………………あぁ。あんたも目にしてた筈だ。あの時、1人だけ火球を連続で放っていたのをな。」

「………………やっぱり、檜山くんなんだね。フフッ、許さないんだから」

ハジメを奈落の底へと落としたのが檜山だと教えたら、急にブラック化した白崎に若干頬を引き攣らせた。

「………………白崎、俺とアルトリア、瓸は此処を離れることにした。」

「フフフフって、どうして?」

「1部を除いて見限ったからだ。天之河は自分のエゴに皆を巻き込むし、檜山は現実逃避し続け、中村は騎士の人らを殺して自分の部下にしていく。その他は保身に走り過ぎだからだ。」

「えっ!?恵里ちゃんが!?どうして!?」

「恐らくあんたや八重樫を排除して天之河を好きにしたいんだろう。天之河の傍にはいつも白崎か八重樫がいて尚且つ周りの女子共の牽制によって近づけず悶々とした。鈴の親友ポジで近づいていた様だがな。中村は整い次第クーデターを引き起こすだろうし、俺らは巻き込まれる前に出ていくつもりだ。」

「出て行った後はどうするの?」

「元の世界への帰還方法が粗方分かったから後は手に入れるだけだ。そんときに生き残った奴は連れてくつもりだ。その前に蹴りを付けるか。」

「???」

 

✲✲✲

 

白崎が目を覚ましたため、連れて食堂に向かう。食堂には未だに沈痛な面持ちでいるクラスメイト達がおり、白崎は軽く現状を察した様だ。

1人、此方を向いて戻し、驚愕した顔で此方を見る。

「し、白崎さん!?!?」

その声に周りも一斉に此方を見る。皆が皆此方に駆け寄って来たので、

「待った。白崎が話したいことがあるそうだから全員を此処に集めてくれ。」

「………………分かった。」

比較的冷静な永山が動いたおかげで対立することなくクラスメイトや畑山先生、騎士達が食堂に集った。

1度周りを見て一息して白崎は声を出した。

「まず、迷惑を掛けてごめんなさい。」

気にするな、という野次がとぶ。それを聴きながらさらに続ける。

「そして、私は南雲くんを落としたのが誰かを知ってる。」

その一言で黙り込んだ。それもそうだろう。皆はハジメの自業自得で(・・・・・)火球にぶつかって落ちていった。死人に口なしにすることで誰も語ろうとしなかった。

「燚氷くんもこの事を知ってたけど私が目を覚ますまで黙ってたの。事実確認がまだだったからって。」

全員が俺に注目するが俺は俄然せず、手足を組んで目を瞑る。沈黙は肯定である。

「それに、皆はなんで南雲くんが死んだって決めつけてるのかな?私はまだ生きてるって確信(・・)してる。確かにあの高さを落ちたら99%死んだと思うだろうけど………まだ(・・)1%もある。それなら死んだって決めつけれないよ。」

白崎のこの一言に、ハジメに救われた園部や遠目に心配していた永山や遠藤、野村。守ると誓い、果たせなかった騎士達は身を奮わせた。

「そんな訳ねぇ!!!!彼奴は…………南雲は死んだ!!!!皆も見てたろ!!!!!!」

だが、それを否定した者がいた。無論、檜山である。

「どうして否定できるのかねぇ?南雲は落ちただけで生きてる可能性がまだある。そう言ってるのに死んだと決め付けれるのか…………教えてくれるかな?」

瓸が落ちただけで死なない。言外にそう言って、その意味を悟った檜山は黙り込む。

それを見た白崎は今にも殺したいのを必死に抑えているのが誰でも分かる声音で続ける。

「話を戻すけど…………聞きたかったんだ。なんで…南雲くんを殺そうとしたのかって。ねぇ、嘘偽りなく答えてくれるかな?檜山くん?正直に言って私は貴方みたいな人が大っ嫌いだったってことは前にも言ってたからね。その事も踏まえてね。」

檜山くん?と言われたところで全員が檜山を凝視する。

「………………ねぇよ。」

「聞こえんぞ?少し声を大きくしろ。」

永山が聞こえないと注意する。畑山先生は檜山1人を責めない!と言いたそうにしてたけど、アルトリアが白崎の気持ちを汲み取ってくださいと小声で言い、抑えて貰っている。

「あのキモオタな南雲が白崎さんに相応しくねぇんだよ!!!!!!!!キモオタが白崎さんに適うなら南雲より俺の方が相応しいだろうが!!!!!!!!」

全員が目を点にした。何言ってんだこいつ?である。皆がその事でフリーズしていたら声がかけられた。

「あら〜ん、人の恋路に相応しいとか相応しくないというのは関係ないわよ〜ん♥坊ちゃん?」

その声に反応して、食堂の出入口に振り向くと………………いた。

……………………………………………………化け物が。

正確には、身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。

「恋とはややこしいのよ〜?だって、好きな人と一緒にいたい、認められたい、そう言った思いが強く周りのことは気にしなくなるんだからぁ〜♥白崎さんって娘が前にいる僧侶姿の娘なら、最初は一目惚れだけど想い続けるうちに本当に心から愛したい、幸せになりたい、大切にしたいって思いが分かるわ〜ん♥そのくせ、檜山くんは独占欲が強いわねぇ。でも、それは本人ではなく容姿から来てるわね。人は見た目でなく心から愛さないとその恋は崩れ落ちるんだからぁ〜♥」

言い当てられた両者それぞれの反応をする。白崎は両手で顔を覆い顔を真っ赤にしてるのを隠そうとしており、檜山は顔を青ざめていた。

「あっ、いきなり割って入ってごめんねぇ〜♪私はクリスタベル(・・・・・・)。ブルックの街で服屋を営んでるしがない店長よぉ〜。今日はリリアーナ姫のお召し物のために来たのぉ〜。帰りがけに此処に神妙な顔した子達がいたから気になっちゃってねぇ〜。それで、事情を教えて貰えるかしらぁ〜?」

陽気な話し方で自己紹介をするクリスタベル。しかし、その目は歴戦の猛者のそれであった。

瓸が顔を引き攣らせながら説明をした。

「あらあらぁ〜、それはいけないわねぇ〜。そうだわぁ!」

事情を知ったクリスタベルは陽気さが減り、若干怒ってるのでは?と感じさせる声で心配し、何か思いついた様だ。

「騎士団長様はいらっしゃるかしらぁ〜?」

「あ、あぁ。俺が騎士団長のメルドだ。」

「騎士団長様ぁ、あの子をしばらく借りていいかしらぁ?あと、恋路で少し危ない子(・・・・・・)もねぇ。」

檜山を借りると言われ、檜山がビクつき、少し危ない子と言われ、クリスタベルにガン見された中村が思わず後ずさった。

「俺の独断では出来んが…………上には掛け合って見よう。」

そそくさと去ろうとしたメルド団長。他の騎士達が団長を見て逃げる気かゴラァ!と目力を団長に注ぐ。

「あ、上にはこういっといたら頷いてくれるわぁ〜。元金ランク冒険者(・・・・・・・・)戦乙女(ヴァルキリー)のクリスタベルってねぇ〜♥」

「あ、あぁ。少し揉めるかもしれんから時間を食うだろうからしばらく待っててくれ。」

『♯¿©ღ◣®#*☆$!!!!!!!!!!!!!!!!』

あ、団長がクリスタベルに待つように言ったら男子の1部が発狂した。女子共はクリスタベルが女の気持ちを知り、服なども扱う恋愛のスペシャリストだと分かったからか、そう言った話をするためにクリスタベルのもとに集まっていた。

………………檜山と中村はこれからどうなるのかが心配で青ざめていたが。

ちなみに天之河と坂上は白崎が話したいと言っていたから黙っていたが、それが、白崎の恋簿だった事で複雑そうだ。ついでに天之河もクリスタベルに連れてかれたらいいのに。

こっそりとクリスタベルに告げ口したら、

「あの子が勇者ならおいそれと外に出せないんじゃないのかしらぁ?あの子が人の闇を知らずに唯助けるというエゴを掲げて皆を戦争参加に引っ張ったのは分かったわぁ〜♪人の闇を知って貰わなくちゃねぇ〜。」

その時、天之河は言い逃れようのない怖気が全身を走ったとか。

しばらくして団長が戻ってきた。

「大丈夫だそうです。世間を知るのもいいだろうと。」

「あらそう、なら、檜山くんとそこの眼鏡の娘、出来たら爽やかな子も一緒に来て欲しいんだけどぉ…………私の予想からして貴方が勇者でしょ〜?一緒に来れないのは残念。勇者くんはたまぁにブルックに来て欲しいわぁ〜♥私が教えることもあるだろうしねぇ〜♥」

クリスタベルは何処まで鋭いのだろうか?慧眼だ。

「大介と恵里は準備してこい!彼女?は元とは言え金ランク冒険者だ。経験は豊富だと思うぞ!!」

「「ヒィッ!!は、はい!!!!」」

2人が化け物を見るような目でクリスタベルを見れば、クリスタベルは目で「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」と叫んでいるのが分かったのか、大急ぎで準備をしに食堂から出て行った。

思わず合掌した者が結構いた。

「それじゃあ私は行くわぁ〜♪王宮の門前で待ってるわよ〜ん♥香織ちゃんの恋が叶うのを願ってるからねぇ〜♥」

クリスタベルも食堂から出て行き、男子の大半が座り込んだ。畑山先生がクリスタベルを尊敬の眼差しで送って行ったのは忘れまい。

「おっほん。この件で採用された案があるのだが………………聞くか?」

『???』

 

団長から聞かされたのは俺にとっては嬉しいものだった。

「あぁ、上で採用されたものなんだが、旅をしてみるか?なんせ今まで迷宮でしか鍛えてない。それだと実戦経験は出来るが皆の蟠りは無くならんだろう。そこで、旅に出て実戦は無論、他の経験を積むのもいいだろうとなった。上は上で皆が復帰する事を望んでいたそうだがな。ただ、何組かチームになってもらうぞ?あと、3ヶ月おきに1度戻ってもらうし、付き添いの者も付ける。あぁ、残りたい者は残っていいそうだが、せめて身体を動かしてくれとのことだ。」

「メルド団長!それでは魔人族が───────」

「なぁに、お前達が復帰出来る可能性が少しでもあるなら俺たちは幾らでも頑張ろう!あぁ、光輝には悪いがお前は旅にでろよ?1度外の世界を見てもらった方が考えることを思わせるだろうしな!」

そこから、チーム分けが始まり、決まった。

Aチーム:天之河・坂上・八重樫・白崎・付き添いがホセ

Bチーム:永山・野村・遠藤・辻・吉野・付き添いがニート

Cチーム:近藤・中野・斎藤・縈・付き添いがハルファス

Dチーム:相川・仁村・玉井・清水・付き添いが強い要望で畑山先生

Eチーム:菅原・宮崎・園部・七瀬・付き添いが強い要望で畑山先生

Fチーム:燚氷・燚氷・燈燐・谷口・付き添いがアラン

ということになった。Gチームからは知らん。

出発は準備と覚悟が出来てからだ。

皆は思い思いに話しあっており、完全な出発は王都のギルドで登録してから出発をする。

俺グリューエン大火山に挑むために、アンカジ公国を目指すと予め言っていたので明日が楽しみである。

あ、団長の要望で夫婦剣を頼まれ、造って干将ストラップ(ブレスレット)を配った。板に出席番号順に名と白莫耶ストラップ(ブレスレット)をかけたので死んだか死んでないかがいつも分かる。

通信機能についてはチームリーダーに伝えてあるので3ヶ月経ったら団長が連絡するようにしている。

あぁ、明日が楽しみである。

 



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第7話 出発とグリューエン大火山と召喚

 

さて、昨日クリスタベル(化け……お姉さん)に檜山と中村が連れてかれ、尚且つ俺を含めたクラスメイトの旅へ出るということが確定した翌日。

既に準備していた(出ていく気で)俺とアルトリア、瓸は鈴の準備を昨日のうちに手伝って整ったので出発することにした。

アランもアランで急いで準備したそうだ。

「そう言えば、君たちは何処に行く気なんだ?俺は騎士寮だから聞いてなかったんだが………」

「なんかねー、グリューエン大火山に行くらしいよ?帰還方法を手に入れるためってさ。」

「帰還?…………あぁ、創世神エヒトに召喚されたにも関わらず送還出来ないからか?確かに七大迷宮になら何かしらの情報があるかもしれないな。」

朝食を食べたら直ぐに出発し、今は王都のギルド本部に向かっている。心配事があるとすれば、美少女なアルトリアや鈴に言い寄る変質者が現れないかどうかだ。登録したら馬車の護衛なりして王都から出るという流れだ。

歩いていれば普通に着いたのでローブを羽織ってから中に入る。

中に入るとむさ苦しいオッサンやDQN共、ケバいオバさんや美少女がゴロゴロとおり、侮蔑や物色、観察などといった視線を向けられる。

ローブを被っていたからか、言い寄って来る者はいない。

とりあえずは受付のカウンターに並ぶ。しばらくしたら、俺達の番になった。

「ギルド本部へようこそ!本日はどのようなご要件でしょうか?」

受付人はテンプレよろしくな美少女だ。名はセリス・ラスト二ーという様だ。

「あぁ、冒険者登録をしに来た。5人分頼む。」

そう言って5人分のステータスプレートを提示する。

「わっかりましたぁ!!登録料は計5000ルタとなります!」

「おっけー、5000ルタね。ほい、銀で合ってたっけ?」

「はい!ちょうど5000ルタを受け取りました!少々お待ちください!」

ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。(1)(5)(10)(50)(100)(500)(1000)(5000)(10000)ルタと種類がある。驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。

「はい!お待たせしました!燚氷嶺亜様、燚氷・P・アルトリア様、燈燐瓸様、谷口鈴様、騎士団のアラン・ソミス様ですね!ステータスプレートの職業欄に冒険者と入ってますので御確認ください!それでは冒険者という職について御説明は必要でしょうか?」

戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに“冒険者”と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。……お気づきだろうか。そう、冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなのである。つまり、青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ、ぺっ」と言われているのと一緒ということだ。切ない。きっと、この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているに違いない。

「いや、いい。懇意にしていた人から予め聞いているからな。王都外に出るなら登録しておいた方が後々楽だとか…まぁ、これから王都外に出るのだがちょうどいいクエ…………依頼はあるか?」

「それでしたら…………うん、アンカジ公国行きの商隊があるのですが…………正直、始めたばかりの冒険者は除け者にされるのでやめといた方がいいですよ?」

「別に構わん。俺らの目的地がアンカジ公国の方にあるからな。」

「…………そうっスか」

「ん?」

「あ、はい!分かりました!!ええと、東門に他の参加者が集まっていますのでお急ぎくださいね!!」

「あぁ、セリス嬢も仕事頑張りな。」

そう言い残してギルド本部から出て、東門に向かう。五分で着き、商隊のリーダーであるホーリー・ペレンティクスさんに挨拶をする。

この人もメルド団長に似て気さくな人で、青ランクな俺達でも歓迎してくれた。

ただ、現金ランクらしい『閃刃』のアベルからグチグチ言われている。このアベルとやらは4人の美女を侍らせながら言ってくるので、劣化天之河と称したい所存である。

他にも黒ランク冒険者や紫ランク冒険者がおり、逆に赤ランク冒険者や緑ランク冒険者はおらず、先の黒や紫ランク冒険者らは邪魔くせぇ的な視線を向けてくる。

セリス嬢が言いたかったのはこのことだろう。所がどっこい、此処にはそれを気にする様な小心者はおらず、堂々と指示された中間の護衛をすることとなった。

此処からアンカジ公国までは1週間と少しするらしくちょっとした旅となるっぽい。

 

✲✲✲

 

あれから1週間が経ち、アンカジ公国まであと少しなところまで来た。

あれからも青ランクである俺達にイチャモンを付けて来るが俄然せずで突き通した。

ある時、鈴のローブのフードがとれて顔が明かされたその日の夜、鈴が他の冒険者に襲われ、ドコとは言わないが挿入間際に間に合い、殺しはしなかったがぶちのめした。そいつは冒険者職を辞めなければならないだろう深手を負ったが。

抵抗するも英霊予備軍である俺には適わず一方的に急所を殴り、ナニをとは言わないが引きちぎったのは今でも忘れない。

鈴はそれ以来Fチームの誰かと必ず居るようになった。鈴を襲った奴をクリスタベルのもとに引き連れていくのは確定だが。

閑話休題

「…………それにしても…………この砂嵐はきついねぇ!!」

瓸が言う通り、この砂嵐がウザイ。

前は見えんし、ぶつかる砂は勢いついて痛いし。金ランク冒険者のアベルとやらは金だからっていう理由で商隊の馬車の中にいる。アベルが鈴を馬車内に誘っていたが拒否しており、アベルに媚つらう女共が批難していた。その事に黒ランク冒険者らや紫ランク冒険者らは何も言わない。鈴の素顔が割れて以来、鈴への求婚ないしは性接待的なことでイラついていたが………この砂嵐がウザく、俺は軽く切れた。

だから俺はやや本気で剣を凪いで砂嵐を一時的に止ませる。

そのお陰か移動速度が3倍に上がり、無事にアンカジ公国に辿り着いた。

砂嵐を止ませるという天変地異を引き起こしたからか、それ以降鈴に言い寄ったり、グチグチと文句を言われなくなった。アベルは言ってくるが。

依頼を達成して既に分配された金を一人一人に渡していくホーリー。どうやら馬車内にいる間、依頼達成金を一人一人に分けていたようだ。なんでも、金を纏めて渡すとパーティ同士やパーティ内で揉め事が起き、1度殺し合いにまで発展したことがあるとか。それ以降はこうやって渡しているとのこと。

依頼書の最後の欄に「この依頼の達成金は依頼主が直接渡します。」と書いてあったので誰も文句を言わずにギルドアンカジ支部で達成の意を伝えてからこの国で1泊、次の日には必要な食べ物などを補給してからここを出発した。

進んだ先に砂嵐で出来た壁があったので氷のトンネルを精製してから通り抜ける。後を付けてきていたアベル一派や黒や紫ランク冒険者らが通る前に氷のトンネルを消したので、立ち往生しているっぽい。

氷のトンネルを抜けた先にはエアーズロックの3倍はある岩山を発見した。

噂だと山頂に入口があるらしいので、山頂まで移動する。ただ、普通に歩くとかなり時間を食うので、アルトリアが鈴を抱え、俺はアランを背負い、瓸が寄ってくる魔物を狩りながら人が通れない断崖絶壁を駆け上がり、いつの間にか山頂まで来ていた。

たどり着いた頂上は、無造作に乱立した大小様々な岩石で埋め尽くされた煩雑な場所だった。尖った岩肌や逆につるりとした光沢のある表面の岩もあり、奇怪なオブジェの展示場のような有様だ。砂嵐の頂上がとても近くに感じる。

その中でアーチを象っているものがあったので近づいたら中に続く階段があったので中に入る。

内部は正直に言って暑い。なんせ溶岩が空中を浮いていたり、至る所に溶岩が流れてたり溜まったりしていた。

「「「「「…………暑い」」」」」

暑い中を渋々進む俺達。進む中でやっとこさ第1魔物を発見した。のだが…………………溶岩の中で溶岩を身に纏い、口から火を吹いている雄牛であった。

「「「「……………………暑い!!!!」」」」

「………………絶対零度(アブソリュート・ゼロ)。」

ただでさえ暑い中に暑い奴がいたのでプチッと切れて思わず活火山を停止させてしまった。その影響で溶岩は深成岩となり、溶岩を纏う雄牛はその場で起きた水蒸気爆発に寄って爆死した。

完全に火山が停止したので

「「「「……………………寒っ!」」」」

「やりすぎちった。まぁ、先に行こうぜ?」

とりあえず進むことにした。トラップも襲い来る魔物もいないため、暇を持て余し、歩く。

途中、階段を探すよりも、流れていた元溶岩が下に向かう穴を見つけてそこから下に向かうという荒業を使い続けた。

何度か休憩を挟んで進み続け、最後、不自然に反り上がった元溶岩の先には広大な空間が広がっていた。下に飛び降りて深成岩の上を歩む。最後に広大な空間の中央にあった小さな島に辿り着いた。この島、降り立った深成岩から十メートル程の高さにせり出ている岩石の上にあり、その岩石の上に元溶岩のドームが覆っているのである。とりあえず錬成でそのドームに人1人が通れる穴を開けて中に入る。

ドームの中には扉が一切無い唯の長方体に見えるのだが、壁の一部にラウス・バーンの手記に描かれていた七大迷宮を示す文様が刻まれている場所があった。俺達がその前に立つと、スっと音もなく壁がスライドして中に入ることが出来た。

「へぇ、七大迷宮の最深部ってこんな感じなんだな。」

「さぁな。実質的な攻略ってこれが初めてなんだよな。」

アランの呟きに答えつつ中で見つけた複雑にして精緻な魔法陣………神代魔術の魔法陣の中へ踏み込んだ。

【バーンの神山】の時と同じように、記憶が勝手に溢れ出し迷宮攻略の軌跡が脳内を駆け巡る。まぁ、ただ歩いた事だが。最後に、ガーディアンとやらが凍死する様を見て、その凍死が攻略の証と示され、脳内に直接神代魔術が刻み込まれていった。

バーンの手記通り手に入ったのは空間魔術であった。皆がこれに反芻していたら、

 

カコンッ

 

と音がなり、目の前の壁に輝く文字が浮かび上がった。

 

“人の未来が自由な意思のもとにあらんことを 切に願う”

                    “ナイズ・グリューエン”

 

これは言外に神神言わずに暮らして欲しい的なことを言っている気がする。

その事は置いといて1箇所だけ窪んだ所があったので、そこに手を突っ込んだら、今まで見たことの無い意匠のサークル状のペンダントがあったのでとりあえず鈴の首に掛けてからこの部屋から出て、深成岩のもとに降りる。

「さて、とりあえず時間が出来たからここで休息をとるか。それに、そろそろ召喚した方がいいかもしれないしな。あ、別になにかしててもいいよ?」

「「召喚???」」

召喚を知らない鈴とアランは疑問符を浮かべていたが、カルデアにいたアルトリアや英霊である瓸は分かっているからか、あぁ、と納得していた。

当分前にエミヤが投影し、Dr.ロマンが送ってくれた大盾を床に置く。

一応7騎召喚する予定である。

まず触媒に白百合の花(・・・・・)を用意して詠唱を開始する。

「────素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。」

「────祖には我が半身ペンドラゴン。」

「────降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

「────閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。」

「────繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」

「────告げる。」

「────汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」

「────聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

「────誓いを此処に。」

「────我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

「────汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

大盾の円盤の端が輝き、光の玉が現れ、回転する。さらに強烈な光がとてつもない魔力と共に吹き荒れ、収まった。

アルトリアと瓸は見ているが、鈴とアランはあまりの輝きと風、魔力に冷や汗をかき、しばらくしたらこちらを向いた。

そこには青紫色の帽子を被った金の長髪に蒼眼、白いヤツを模したマントを羽織り、鮮やかな色合いの服(下はスカート)に身を包んだ少女がいた。

「サーヴァント・セイバー、シュヴァリエ・デオン。どうやらまともなセイバーが必要だったようだね、マスター。」

 

シュヴァリエ・デオン

服装によって男にも女にもなれる(肉体が)不思議な少女。

 

「あぁ、他のセイバー…………ガウェインはロリコンだし、フェルグスは変態。モードレッドは……関係故に殺り合うかもしれん。ジークフリートはなんか召喚したらヤバそう。シグルドは惚け話しかしないし、沖田に関しては間に合わなさそう。主にスキルのせいで。」

 

続いて触媒に砂漠で遺跡化した遺体の1部(・・・・・・・・・・・・・)を置き、詠唱する。

再び吹き荒れ、収まったら、白の短髪にヴェールを被った褐色肌で際どい服に身を包んだ少女がいた。

「………………どうした?悪い文明でもあったか?ならば破壊しよう。」

 

アルテラ

セファールの分身体で尚且つ、フン族の王アッティラ。手には模造品を宝具化した機械的な軍神の剣を持つ。

 

続いて触媒に()を使い、召喚する。

現れたのは黒髪褐色肌で手には真紅の弓を携えていた。

「事情はドクターから聞いた。確かに俺が適任だと思われるだろうな。」

 

アーラシュ

またの名をアーラシュ・カマンガー。他の英霊と違い、人を守るために戦を終わらせた本当に神代最後の大英雄。

 

さらに触媒としてギザの大スフィンクスの欠片(・・・・・・・・・・・・・)を置いて召喚する。

「オレはアーチャー、ナポレオン! 可能性の男、虹を放つ男。勝利をもたらすためにやって来た、人理の英雄だ!」

 

ナポレオン・ボナパルト

「世の辞書に不可能の文字はない」でお馴染みのナポレオン。ただ、異聞帯でスルトの宝具を弾き、オフェリアを立ち治した可能性の皇帝。

 

次に出した触媒は鮭の切り身(・・・・・)を置いて召喚する。

「サーヴァント・ランサー、フィン・マックール。この被り物に関しては気にするな。」

 

フィン・マックール

ディルムッド・オディナに第3の妻を寝盗られ、腹いせに見捨てたフィオナ騎士団の団長………………なのだが、頭に2つ穴が空いた茶色い紙袋を被っている。

 

さらにトネリコの枝(・・・・・・)で白兵戦において最強に位置する奴を召喚。

「…………ンを?召喚されたのか。んで、地球と気配が違うが………どうした?」

 

アキレウス

神にまつわるもの(・・)でないと攻撃が一切通らない不死の大英雄。

 

ついで用意した触媒は軍章旗(・・・)

「む、何処だ此処は?ぬ、貴様がマスターか。此処が何処なのか説明してくれ。」

 

ヒッポリュテ

アマゾネスの女王であり、神代においては人格者と言われる小柄な少女。何故かヘラクレスに殺された。

 

次は18のルーン(・・・・・・)が描かれた紙を触媒に召喚したのは毎度お馴染みの兄貴分

「おう、呼んだか?って、キャスターじゃねぇかよ!」

 

クー・フーリン

ケルト神話で1番有名な英雄。しかし、今回は槍兵ではなくドルイドの賢者として召喚された。

 

次に黒塗りのナイフ(・・・・・・・)で奴ら…………Gならぬ髑髏の集団を呼ぶ。

『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

ハサン・サッバーハ

暗殺教団サッバーハの教主第19代目。個性的な奴が多く楽しいが、仕事に関しては役に立つ。のだが、今は多重人格で分離した皆でキレッキレなダンスを踊り、召喚されたことに気づいてない。

 

最後に神殿の支柱たる斧剣(・・・・・・・・・)で個としてなら確実に最強と言える武人を召喚した。

 

ヘラクレス

曰く、十二の難業を乗り越え、神の座に至りし大英雄。武に関する術全てを体得してるとか。

 

結局10騎の英霊を召喚して、全員の維持が()は難しいため、ヒッポリュテとハサン・サッバーハ、アーラシュ以外には霊体化するようお願いしておいた。

「時間を食ってすまんな。紹介する、ヒッポリュテのポルテ嬢とアーラシュだ。そこの仮面たちは個人で聞いてくれ。」

「彼らが高次元体なのは魔力量で分かるけど…………召喚した訳ってなんだ?」

「アラン、気になるのは分かった。それならこれから面倒くさくなる前に要因を説明しておこう。」

メルド団長にしたこの世界の真実をアランにも教えた。アランは教会が胡散臭く感じていたらしく、この世界の真実を知って俺の真の目的を悟ったっぽい。

「それじゃあ、脱出しますか!ゲート!!」

先程の岩山に登り、空間魔術を早速使ってみることにした。

考えたのは最初グリューエン大火山に入った方とは真反対のメルジーネ海底遺跡があると思われるエリセン側の砂嵐の外側に繋げたのだ。

「「「おぉぉ!」」」

皆が通り抜け、最後に俺が出る。その時に絶対零度を解除しておくのも忘れない。いや、時間逆行で過去に戻して溶岩を復活させておくのも忘れない。

「脱出したのはいいけど………次は何処に行くの?次は今回みたいには行かなそうだけど………」

「あぁ、エリセン辺りの海域にあるだろうメルジーネ海底遺跡に行く。鈴の首にかけたペンダントは満月に照らすとメルジーネ海底遺跡の場所を照らしてくれるっぽいからな。」

何も面倒事が起こることなく次の七大迷宮を目指し歩んでゆく。

 




現攻略済み
バーンの神山
グリューエン大火山


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第8話 エリセンとメルジーネ海底遺跡と一時帰還

 

グリューエン大火山を難なく攻略してから歩いて半月、海を発見した。

それからカルデアに半月以内に200海里よりさらに奥まで潜れ、ヘラクレスの射殺す百頭(ナインライブズ)を全て受けてもある程度大丈夫な魔力稼働式潜水可能水陸両用車を頼み、届くまで鍛錬をしたりエリセンに寄って水産物の料理を食べ回ったりして過ごした。が、ある時、子供が攫われたそうで、髑髏仮面集団に捜索を頼んだ。

頼んだ次の日に、水陸両用車が届いた。なんでも1週間程で出来たはずなのだが、ライオン顔と電撃男があぁのどぉのでさらにかかり、何処ぞの探偵とヴィランが少しズレてるのそれだと何処がダメになるのと理論し合って更にかかり、子供達(ジャックやナーサリー)が弄って1からやり直しで更に時間がかかり、やっと残さできたとの事。ドクターが凄い窶れてんですが………どんまい。

「さて、次の満月の日は何時だったか………」

「えぇと、前に見たのが1ヶ月前くらいだったから、今日か明日くらいじゃない?」

俺の呟きに鈴が答えてくれた。

「オーケー、それなら1人だけ外で待機な。満月なら運転席に直行してくれ。」

ちなみに、この水陸両用車、異聞帯でお世話になったあの大型車のバージョンアップである。そのため中に部屋があるのだ。しかも嬉しいことにこの車、カルデアのマスターの魔力を補助する機械と繋がっているため全員が全力戦闘をしても問題がない。これで、一時的に止めていた静寂の終剣(イルシオン)に魔力を貯めることに集中出来る。

その日の夜、鈴の予想通りに満月だった。

外で待機していたのはクー・フーリンで、満月だと分かったらいつの間にか来ていた。なので出発し、約1時間後に沖にまで辿り着いた。着いたら鈴からペンダントを借りて1度外に出てペンダントを月に照らす。すると、真ん中のランタン状の空洞に少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜め始めていた。それに伴って、穴あき部分が光で塞がっていく。

ランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、その直後ランタンから一直線に光を放ち、海面のとある場所を指し示した。

「予想通り」

水陸両用車の中に入り、潜水モードにして入水。ランタンの指す光に従って進む。

ちなみに運転は騎乗Aランクのヒッポリュテが担当している。アキレウスは少々荒っぽく、危なっかしいから遠慮してもらった。

進み続けると海底の岩壁地帯に着いた。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。その指す場所に潜水車が近寄りペンダントの光が海底の岩石の一点に当たると

 

ゴゴゴゴッ!

 

と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。

その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。

「………………ゴクッ」

この世界出身のアランはこの世界にこんな場所があったのか……と内心で思っているのか唾を飲んでいた。

潜水車を操作して海底の割れ目へと侵入していく。ペンダントのランタンはまだ半分ほど光を溜めた状態だが既に光の放出を止めており、暗い海底を照らすのは潜水車のライトだけだ。

「行くぞッ!!!!!!!!」

『おうッ!!!!!!!!!!!!!!!!』

中に入り込んだ。その途端、

 

ゴウゥンッ!!!!!!!!

 

と横殴りの衝撃が船体を襲い、一気に一定方向へ流され始めた。だが、騎乗Aランク持ちにとっては些細な事で、立て直した。

しばらく流れに任せるが一向に着かず、皆が困惑しだした時にデオンが気づいた。

「…………うん……やっぱり…………聞いてくれ、此処ドーナツ状になっててずっと回ってる。壁のどこかに入口があるかもしれないから探した方がいいかもしれない。」

『!?!?!?!?!?』

意気揚々と乗り込んだ癖にズッコケてしまう事態にあった。確かに、流れた先がゴールではなく延々と回ることもあるだろう。誰も気づかなかったので落ち込む者が多数。

「あ、あそこに紋章を見つけた!ポルテ嬢!もっと寄れ!」

「無茶言うな!結構胆力いるんだぞ!?」

グルグルと周回していたらナポレオンが壁に五十センチくらいの大きさのメルジーネの紋章が刻まれている場所を発見した。

何とかその場を維持しながら壁に近づく潜水車。機転を効かせた鈴がその紋章にペンダントに残る光を紋章に照らす。

すると、ペンダントが反応しランタンから光が一直線に伸びる。そして、その光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした。

しかしそれだけ。

「ッ!!!!この紋章五芒星刻んでません!?どーなつ?状になってるなら5箇所これがあるんじゃないんすか!?」

どうやらアランからしてみたらあと4箇所に同じのがあるのではないかとの事。

皆で血眼になって探し、3つ済ませた。最後の1つをアルテラが適当にそこじゃない?と今まで探してた所とは論外な所を指して、とりあえず行くとあった。

残り少ない月光を最後の紋章に注ぐ。

遂に円環の洞窟から先に進む道が開かれた。

 

ゴゴゴゴッ!

 

と轟音を響かせて洞窟の壁が縦真っ二つに別れる。

特に何事もなく奥へ進むと真下へと通じる水路があり、潜水車を進めるポルテ嬢。すると突然、車体が浮遊感に包まれ一気に落下した。

「総員衝撃注意!!!!!!!!」

ポルテ嬢の叫びと同時に鈴とアランはヘラクレスに保護してもらい、それ以外は衝撃に注意する。

直後、

 

ズシンッ!

 

と轟音を響かせながら潜水車が硬い地面に叩きつけられた。

どうやら陸地に出たようだ。フロントガラスで見る限り外は海中ではなく空洞になっているようだった。

潜水車の外は大きな半球状の空間で、頭上を見れば大きな穴があり、どういう原理なのか水面がたゆたっている。水滴一つ落ちることなくユラユラと波打っており、彼処からこの空間に出て落下したっぽい。

そんなことを思っていると、レーザーの如き水流が流星さながらに襲いかかる。

が、この車はヘラクレスの秘技を耐える防御力を誇るため、意味が無い。

ポルテ嬢はとりあえず奥に向かうために運転を再開させる。洞窟のサイズと潜水車の大きさがかなりギリギリで少し慎重になっている。

通路の先に進むと、いきなり通路に半透明なゼリー状の壁が出来た。

が誰もその事に気づかずに進む。

上からもその事はゼリー状の何かが落ちるが無意味。しかしウザかったので、アキレウスに宝具の使用許可を出して一掃してもらう。

その影響で空間そのものが弾け飛んだ。クリオネじみた何かが逃げていけのが見えたが気にせず進む。が、行き止まり。

「どうやらここで降りねば先に進めんらしいぞ、マスター。」

「あぁ。全員降りてくれ。」

全員降りたら潜水車を異空間に仕舞い、亀裂の中で渦巻くものを見つけたので、俺と鈴、アラン以外全員霊体化して貰った。アルトリアは俺の中に戻っていく感じだ。

鈴を中心に離れないように手を繋いで氷で固定。そして、エリセンで買っておいたただの鉄剣で亀裂を叩いてぶち壊した。

その途端、床がぶち抜けて落下する。ついでに潜水車に乗ってたため気づかなかったが俺達の落下と同時に溜まってた海水も流れ、その激流に飲まれて流される。

しばらくしたら足をつけれる場所まで流れてきたので陸に上がる。そこで氷を解除して手を離す。

鈴とアランは海水を含んでしまったからかむせていた。とりあえず真水を渡しておく。

周りを見渡すと、真っ白な砂浜と奥にジャングルがあることしか分からない。

頭上一面には水面がたゆたっていた。結界のようなもので海水の侵入を防いでいるようだ。広大な空間である。

「全員出てきても大丈夫だ。」

分断されずに済んだのでサーヴァントらを実体化させ、鈴とアランが立ち治ったので奥に進む。

進んだ奥は岩石地帯となっており、そこにはおびただしい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっていた。そのどれもが、最低でも百メートルはありそうな帆船ばかりで、遠目に見える一際大きな船は三百メートルくらいありそうだ。

岩場の隙間を通り抜け、あるいは乗り越えて、時折、船の上も歩いて先へと進む。どの船も朽ちてはいるが、触っただけで崩壊するほどではなく、一体いつからあるのか判断が難しかった。

「こりゃあ10世紀は優に超えるぞ。」

クー・フーリンの見立てでは1000年以上昔のものらしい。

「…………此処に人間族と魔人族が争う原因となった何かがあるかもしれない。」

アランはアランで、今まで崇めていた存在がどれだけ醜悪なのかを分かりかねていた。そんな時に1000年以上昔のものがあったとしたら誰かの手記なり過去の情報が分かるかもしれない。そう思っていたようだ。

皆がキョロキョロしながら船の墓地を歩んで、この広大な空間の中央に来たら景色が変わった。

 

――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?全員背を会わせろ!」

全員で背中合わせになり、警戒する。だが、この光景は………………天之河に見せたら戦争を嫌でも理解するとだけ言っておこう。

変わった景色は墓地から大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

そして周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

そうこうしている内に大きな火花が上空に上がり、花火のように大きな音と共に弾けると何百隻という船が一斉に進み出した。俺達が乗る船と相対している側の船団も花火を打ち上げると一斉に進み出す。

そして、一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

 

ゴォオオオオオオオオ!!

 

ドォガァアアン!!

 

ドバァアアアア!!!

 

轟音と共に火炎弾が飛び交い船体に穴を穿ち、巨大な竜巻がマストを狙って突き進み、海面が凍りついて航行を止め、着弾した灰色の球が即座に帆を石化させていく。

俺達の乗る船の甲板にも炎弾が着弾し盛大に燃え上がり始めた。船員が直ちに魔法を使って海水を汲み上げ消火にかかる。

戦場――文字通り、このおびただしい船団と人々は戦争をしているのだ。放たれる魔法に込められた殺意の風が、ぬるりと肌を撫でていく。

戦場を初めて見る鈴はこの時点で顔を青ざめさせており、アランもギリギリ耐えているようだ。

見ていたら不意に不穏な気配がした。

周囲を見渡せば、雄叫びを上げながら、かなり近くまで迫ってきた相手の船団に攻撃する兵士達に紛れて、いつの間にか、かなりの数の男達が暗く澱んだ目で俺達の方を見ていた。

全員が警戒すると一斉に襲いかかってきた。

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

相対する船団は、明らかに何処かの国同士の戦争なのだろうと察することが出来るが、その理由もわかってしまった。これは宗教戦争なのだ。よく耳を澄ませば、相対する船団の兵士達からも同じような怒号と雄叫びが聞こえてくる。ただ、呼ぶ神の名が異なるだけだ。

「ちっ!全員マストの上に退避!!」

鈴は近くにいたポルテ嬢に、アランはアキレウスに引っ張られてマストの上に全員が飛び移る。

下を見れば狂気的な目で俺たちをガン見してくる。

「…………ふぅん、こいつら全員仕留めねぇ限り延々と追いかけられるぞ?」

「そうか。聞いたな?アランと鈴は此処から遠距離で狙え、ヘラクレスは2人の護衛。それ以外は………………特攻だ!魔力で武器コーティングした方が殺りやすいかもな!」

一斉に攻める。俺は次元屈折現象(ゼルレッチ)や魔力放出で蹂躙。アルトリアは風王結界(インビジブル・エア)を星剣約束された勝利の剣に纏っているため一人一人的確に処理、瓸やその他の英霊は魔力体なので殴る蹴るで殺ったり、と蹂躙して行く。

そこかしこで相手の船に乗り込み敵味方混じり合って殺し合いが行われていた。ハジメ達が攻撃した場合と異なり、幻想同士の殺し合いでは、きっちり流血するらしい。甲板の上には、誰の物とも知れない臓物や欠損した手足、あるいは頭部が撒き散らされ、かなりスプラッタな状態になっていた。どいつもこいつも“神のため”“異教徒”“神罰”を連呼し、眼に狂気を宿して殺意を撒き散らしている。

次々と切り殺すも、狂気の兵士達は怯むどころか気にする様子もなく、特攻を繰り返して来た。

「アルテラ!第1宝具で一掃しろ!!!!」

「了解した。命は壊さない。その文明を粉砕する。軍神の剣(フォトン・レイ)!」

虹の極光と共に軍勢に突貫。その一撃で殲滅した。

それと同時に元の空間に戻った。

「…………………………おいそれと教会は信用出来ない。創世神エヒトがこれ(・・)を望んでいるなんて。」

アランは戻って早々、言った一言がこれだった。これと称したが、エヒトは最終的に自分でこれ以上の悲劇を産もうとしてるのだ。もし仮にエヒトがそれを成し遂げたらこれはまだ甘かったと言わなくてはならないのではないだろうか。そんな不安を醸し出す一言だが、

「不安がるのも分かるが、その対応策は既に出来てる。絶対に成功させねぇよ。」

一応、クー・フーリンがフォローしている。

全員が落ち着いたら奥に進む。

だが、誰も言葉を発さない。こっそりと通信機をONにして見ていたドクターですらトイレにリバースしに駆け込んでいた程酷く醜いものだったのだから。

墓地の奥に着き、顔を上げるとそこには先程の全長三百メートル以上、地上に見える部分だけでも十階建て構造になっている。そこかしこに荘厳な装飾が施してある船を見る。

全員が甲板に飛び移ると案の定、景色が変わった。だが、先程の醜さは無く、代わりにキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしている楽しそうなパーティであった。

『・・・・・・・』

皆は思わず口をあんぐりと開けて呆然とした。先のものと差が凄いからだ。

暫く固まっていたら、俺達の背後の扉が開いて船員が数名現れ、少し離れたところで一服しながら談笑を始めた。休憩にでも来たのだろう。

その彼等の話に聞き耳を立ててみたところ、どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。長年続いていた戦争が、敵国の殲滅や侵略という形ではなく、和平条約を結ぶという形で終わらせることが出来たのだという。船員達も嬉しそうだ。よく見れば、甲板にいるのは人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた。

暫く固まっていると甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。それに気がついた人々が即座におしゃべりを止めて男に注目する。彼等の目には一様に敬意のようなものが含まれていた。

初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている。時と場合を考えれば失礼に当たると思うのだが……しかし、誰もフードについては注意しないようだ。

「ッ!?!?!?!?!?!?!?……………………おい、全員さっきの状態で警戒しておけ。恐らく惨劇が起こる。アラン、よく見ておけ。あのフードを被っているのが神の使い(ノイント)だ。」

「……………………分かった。」

やがて、全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった。

「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

そう言って始まった演説を誰もが身じろぎ一つせず聞き入る。演説は進み、和平への足がかりとなった事件や、すれ違い、疑心暗鬼、それを覆すためにした無茶の数々、そして、道半ばで散っていった友……演説が進むに連れて、皆が遠い目をしたり、懐かしんだり、目頭を抑えて涙するのを堪えたりしている。

どうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしい。人間族の中でも、相当初期から和平のために裏で動いていたようだ。人々が敬意を示すのも頷ける。

演説も遂に終盤のようだ。どこか熱に浮かされたように盛り上がる国王。場の雰囲気も盛り上がる。

しかし、召喚初日にランゴバルドがしていた恍惚な表情を見て精神耐性の魔術を掛けておく。

「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………実に、愚かだったと・・・・・・」

国王の言葉に一瞬、その場にいた人々が頭上に“?”を浮かべる。聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。その間も国王の熱に浮かされた演説は続く。

「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」

「い、一体、何を言っているのだ!アレイストよ!一体、どうしたと言うッがはっ!?」

国王アレイストの豹変に一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出た。そして、アレイスト王に問い詰めようとして……結果、胸から剣を生やすことになった。

刺された魔人族の男は肩越しに振り返り、そこにいた人間族を見て驚愕に表情を歪めた。その表情を見れば、彼等が浅はかならぬ関係であることが分かる。本当に信じられないと言った表情で魔人族の男は崩れ落ちた。

場が騒然とする。「陛下ぁ!」と悲鳴が上がり、倒れた魔人族の男に数人の男女が駆け寄った。

「さて、諸君、最初に言った通り、私は諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる“エヒト様”に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も今日この日に終わる!全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ!それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ!さぁ、神の忠実な下僕達よ!獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ!ああ、エヒト様!見ておられますかぁ!!!」

膝を付き天を仰いで哄笑を上げるアレイスト王。彼が合図すると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れた。

甲板は、前後を十階建ての建物と巨大なマストに挟まれる形で船の中央に備え付けられている。なので、テラスやマストの足場に陣取る兵士達から見れば、眼下に標的を見据えることなる。海の上で逃げ場もない以上、地の利は完全に兵士達側にあるのだ。それに気がついたのだろう。各国の重鎮達の表情は絶望一色に染まった。

次の瞬間、遂に甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの……一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった。

何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだがほとんどの者達が息絶え、甲板は一瞬で血の海に様変わりした。ほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだ。海に飛び込んだ者もいるようだがそこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

アレイスト王は部下を伴って船内へと戻っていった。幾人かは咄嗟に船内へ逃げ込んだようなので、あるいは狩りでも行う気なのかもしれない。

彼に追従する男とフードの人物も船内に消える。

とその時、ふと、フードの人物が甲板を振り返った。その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪が一房見えたので記憶しておく。

これで終わりなのか朽ちた元の空間に戻り、先程は閉じられていた船内への入口が開いていたので皆の顔を見てから進むことにした。

暫く進んだら白服の少女がいたが氷の標本にして放置して奥に進む。

その後も、廊下の先の扉をバンバン叩かれたかと思うと、その扉に無数の血塗れた手形がついていたり、首筋に水滴が当たって天井を見上げれば水を滴らせる髪の長い女が張り付いて俺達を見下ろしていたりゴリゴリと廊下の先から何かを引きずる音が下かと思ったら、生首と斧を持った男が現れ迫ってきたり……

その悉くを俺達は順番に打ち砕いて船倉までたどり着いた。

重苦しい扉を開き中に踏み込む。船倉内にはまばらに積荷が残っており、俺達はその積荷の間を奥に向かって進む。すると、少し進んだところでいきなり入ってきた扉が

 

バタンッ!

 

と大きな音を立てて勝手に閉まってしまった。

その後は物理トラップがバンバン攻めてくる。そのうち4分の3は幸運E-筆頭であるクー・フーリンが襲われ、何処からか「ランサーが死んだッ!!!!!?」「この人でなし!!!!!!!!!!!!」と聞こえたが無視しておく。

最後に竜巻が起きてジャックの宝具暗黒霧都(ザ・ミスト)のようなものが発生する。が、ヘラクレスの咆哮により霧散し、俺は除霊をして鈴を乗っ取ろうとした女霊を追い払う。

それから少し経つと、倉庫の一番奥で輝き始めた魔法陣が現れたのでそれに皆が乗って移動する。

淡い光が海面を照らし、それが天井にゆらゆらと波を作る。

その空間には中央に神殿のような建造物があり、四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また周囲を海水で満たされたその神殿からは海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そしてその円形の足場にも魔法陣が描かれていた。

その四つある魔法陣の内の一つが、にわかに輝き出す。そして、一瞬の爆発するような光のあと、そこには人影が複数現れた。

無論、俺達である。

「ふわぁぁぁっ!!」

神殿を見た鈴は神秘的過ぎて思わず歓喜していた。

どうやら、メイル・メルジーネの住処に到着したようだ。

キョロキョロしながら神殿内部を進み、中で一際目立つ祭壇の元に来た。

全員で魔法陣へと足を踏み入れる。いつもの通り、脳内を精査され、記憶が読み取られた。しかし、今回はそれだけでなく、他の者が経験したことも一緒に見させられるようだった。

が同じものだったので少々味気ないが。

しかし、他の場所についても情報が入ってきた。

何でも、魔人族が人間族の村を滅ぼした事がきっかけで、この都を首都とする人間族の国が魔人族側と戦争を始めたのだが、実は、それは和平を望まず魔人族の根絶やしを願った人間側の陰謀だったようなのだ。気がついた時には、既に収まりがつかないほど戦火は拡大し、遂に、返り討ちに合った人間側が王都まで攻め入られるという事態になってしまった……という状況だったらしい。

そして、その陰謀を図った人間とは、国と繋がりの深い光教教会の高位司祭だったらしく、この光教教会は、聖教教会の前身だったようだ。更に、彼等は進退窮まり暴挙に出た。困った時の神頼みと言わんばかりに、生贄を捧げて神の助力を得ようとしたのだ。その結果、都内から集められた数百人の女子供が、教会の大聖堂で虐殺されるという凄惨な事態となった。

無事に全員攻略者と認められたようである。

「再生…………魔法…………?」

「成程な。鈴、結界魔術を使った時に罅が入った時に使ってみろ。結構応用が効くかもしれないな。」

アランが再生というものに疑問を持ち、クー・フーリンが魔術師として鈴にアドバイスをする。言い終えると同時に床から直方体がせり出てきた。小さめの祭壇のようだ。その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった。

人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は、白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。どうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。

彼女は、ラウスの手記に書かれていた解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、ラウスの手記と同じことを言い終えると、最後に言葉を紡いだ。

「……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

これで、証が3つ目である。

七大迷宮がかなり過酷だったので攻略は真剣に取り組もうと再認識し用途した時に神殿が鳴動を始めた。そして、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

「ッ!?全員乗れ!!!!早く!!!!」

咄嗟に潜水車を出して全員が素早く乗りギリギリで閉めた。

『ふぅ、危なかった。』

「休みたい奴は休め、俺と…………ポルテ嬢は運転席に行く。」

休もうとしていたポルテ嬢の後ろ首を掴んで運転席に向かう。皆がポルテ嬢に対して合掌していたのは見ずとも分かった。

運転席に着いた頃にフロントガラスを見たら物凄い勢いで上昇していた。最後の天井部が開いて広大な海の中に放り出された。

直ぐにエンジンを掛けて此処を離れる。

クリオネじみた何かが若干寂しそうだったのは忘れよう。

何とか、海上まで浮上し、俺とポルテ嬢以外は日光浴を始める。まぁ、濡れてばっかしだったからな。

出発した時に駐屯していた場所まで戻り、ここで数日ほど休むことにした。

そこに久しぶりに感じる声が聞こえた。

『おーい、嶺亜。返事してくれぇー』

「どうした?メルド団長。今は休息中なのだが………」

『あぁ、あと2週間で3ヶ月経つから1度戻って来い。行ける奴だけでベヒモスに再挑戦するつもりなんだ。有志だがな。俺は伝えたからな?畑山先生が待ってるから帰ってこいよ?』

「了解した。そんじゃおやすみ。」

メルド団長から戻ってくるように言われたので1泊した後、アンカジ公国を素通りして森に入り、数日後にハイリヒ王国の東門の少し離れた場所で降りて潜水車を異空間に仕舞い、俺、アルトリア、瓸、鈴、アラン以外は霊体化して貰い、ステータスプレートを門番に提示してから中に入る。

王宮に着くまでに食べ歩きをしながら歩き、王宮に帰還した。さて、クラスメイト達は一皮向けた奴がいるのだろうか?

 



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第9話 悪夢克服と帝国

 

ハジメがとある吸血鬼の少女と大迷宮を脱出してから1ヶ月経ったこの頃、王宮の中庭には多種多様な武装をした少年少女らと、統一された武装をした大人らが集っていた。

「よし、クリスタベルさんの元に行っている大介と恵里以外は全員いるな?」

メルド団長が一部を除いて全員がいることを確認する。

「いるならいい。…………今日は3ヶ月に1回の大迷宮攻略の日だ!臆するな!確かにあの日はトラウマとなって閉まっただろう。だが、だからと言って引いていいのか?よくないだろう。あの日の悪夢を克服しない限り先には進めん!お前達が今日までどのような暮らし方をしたかは知らん。それでも、何か得ることが出来たのではないか?出来たのならそれを用いて乗り越えろ!悪夢に打ち勝って先に進もうではないか!!」

あの日の悪夢を思い出していたのか沈痛な面持ちであったクラスメイト達はメルド団長の激に励まされ、前を向く。

なんのための3ヶ月だったのか、それを問われている気がした。そう思うと、それをお披露目?するための日なのだろう。

確かに、見知らぬ土地、存在に怯えることもあった。しかし、それは人それぞれに現実逃避を止めさせ、覚悟を持たせるには十分な期間であった。

故に、クラスメイト達は初日の浮き足立った顔立ちや訓練中などで力に酔いしれていた顔立ちから、凛々しくも勇ましい顔立ちとなって此処に立っていた。

「それじゃあ、出発するぞ!!」

『はい!』

各チーム事に馬車に乗ってホルアドに向かう。

ちなみに英霊達には自由時間と言うことで自由にしてもらっている。あ、自由にしている訳は王宮からステータスプレートをくすねて、彼らに渡しているため職質されても何ら問題はない。まぁ、ヘラクレスはさすがにダメだけど。

 

あれからホルアドに着いて数日ほど経ち、今は60階層に居る。しかし、進み具合は初日と何ら変わらない。メルド団長の激が余程効いたのだろう。

そんなこんなで今は休息中、皆が皆、チームごとに反省点の確認やリラックスするために軽口を叩きあったりしている。

その中でAチームのメンバーの1人である白崎がずっと先を見つめ、八重樫が心配していた。

八重樫の心配そうな呼び掛けに、強い眼差しで眼下を眺めていた白崎はゆっくりと頭を振ると、八重樫に微笑んだ。

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

「そう……無理しないでね?私に遠慮することなんてないんだから」

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

八重樫もまた親友に微笑んだ。白崎の瞳は強い輝きを放っている。そこに現実逃避や絶望は見て取れない。

「…………鈴、白崎が心配なのは分かるが、それは杞憂のようだぞ?まぁ、声をかけるのはいいがな。」

「うん。行ってくるね!」

鈴が白崎と接触する前に天之河がズレた発言をして白崎にディスられる。

休息をやめて行軍?する。一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

付き添いのメルド団長の声が響く。クラスメイト達は表情を更に引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

しばらく進んでいると、大きな広間を見つけた。何となく嫌な予感がする一同。

その予感は的中した。何と広間全域にトラウムソルジャーがギチギチに詰まっており、唯一空いている元橋だった所の穴に雪崩のように落ちて行くがそれでもその量は変わらない。

それを見たクラスメイト達はは無論、騎士団達や嶺亜ですら頬を引き攣らせていた。

「………………おいおい、そりゃあねぇだろ…………」

坂上が思わず零した。その声を拾ったのか定かではないが

 

ザァッ!!!!

 

と、トラウムソルジャー達が一斉にこちらに顔ならぬ骨を向けた。

これは軽くホラーである。

そこで嶺亜は前回張り巡らした氷床を解除する。その途端、氷床の上に立っていたトラウムソルジャー達は一斉に奈落の底に落ちて行く。それに伴って敷き詰まって山のようになっていたトラウムソルジャー達も落ちて行って数がとりあえず全員で対処可能な程に減った。

数時間かけて全滅させて、トラウムソルジャーを召喚する魔法陣を破壊。

それと同時に皆が何か感じたのか顔を上げて橋の方を見ると、橋は修復されて赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣が展開される。

「ま、まさか……アイツなのか!?」

天之河が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

坂上も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」

いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、天之河がそれに不満そうに言葉を返した。

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ!もう負けはしない!必ず勝ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

坂上も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今のクラスメイト達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再びクラスメイト達の前に現れた。

「グゥガァアアア!!!」

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスがクラスメイト達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

しかし、誰も臆さない。此奴を倒して前に進む。その覚悟はとっくの昔に出来ているのだから。

今、過去を乗り越える戦いが始まった。

 

✲✲✲

 

先手は、光輝だった。

「万翔羽ばたき天へと至れ……“天翔閃”!」

曲線状の光の斬撃がベヒモスに轟音を響かせながら直撃する。以前では“天翔閃”の上位技“神威”を以てしてもカスリ傷さえ付けることができなかった。しかし、何時までもあの頃のままではないという天之河の宣言は、結果を以て証明された。

「グゥルガァアア!?」

悲鳴を上げ地面を削りながら後退するベヒモスの胸にはくっきりと斜めの剣線が走り、赤黒い血を滴らせていたのだ。

「…………ほう、生き物の命を奪う忌避感が無くなっているか。だが、それは魔物の場合だ。もしそれが人間ならば…………君は殺せるか?天之河」

嶺亜が誰にも聞こえないよう1人呟いて市販の剣を構える。

「いける!俺達は確実に強くなってる!B、Cチームは左側から、D、Eチームは背後を、Fチームとメルド団長達は右側から!G、Hチームは不足の事態に備えて待機!I、J、Kチームは撹乱と遊撃、負傷者の手当を頼む!残りは魔法準備!上級を頼む!」

天之河が矢継ぎ早に指示を出す。メルド団長直々の指揮官訓練の賜物だ。

「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな?総員、光輝の指揮で行くぞ!」

『おうッ!!!!!!!!』

メルド団長が叫び騎士団員を引き連れベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。それを期に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲する。

前衛組が暴れるベヒモスを後衛には行かすまいと必死の防衛線を張る。遊撃はベヒモスの気を逸らさせて勢いを削ぎ、負傷者の回収並びにその穴を埋めるべく動く。

「グルゥアアア!!」

ベヒモスが踏み込みで地面を粉砕しながら突進を始める。

「させるかっ!」

「行かせん!」

クラスの二大巨漢、坂上と永山がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

「「猛り地を割る力をここに!……“剛力”!」」

身体能力、特に膂力を強化する魔法を使い、地を滑りながらベヒモスの突進を受け止める。

「ガァアア!!」

「らぁあああ!!」

「おぉおおお!!」

三者三様に雄叫びをあげ力を振り絞る。ベヒモスは矮小な人間ごときに完全には止められないまでも勢いを殺され苛立つように地を踏み鳴らした。

その隙を他のメンバーが逃さない。

「全てを切り裂く至上の一閃……“絶断”!」

八重樫の抜刀術がベヒモスの角に直撃する。魔法によって切れ味を増したアーティファクトの剣が半ばまで食い込むが切断するには至らない。

「ぐっ、相変わらず堅い!」

「任せろ!粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ……“豪撃”!」

メルド団長が飛び込み、半ばまで刺さった八重樫の剣の上から自らの騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に腕力をも強化した鋭く重い一撃が八重樫の剣を押し込むように衝撃を与える。

そして、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた。

「ガァアアアア!?」

角を切り落とされた衝撃にベヒモスが渾身の力で大暴れし、永山、坂上、八重樫、メルド団長の四人を吹き飛ばす。

「優しき光は全てを抱く……“光輪”!」

衝撃に息を詰まらせ地面に叩きつけられそうになった四人を光の輪が無数に合わさって出来た網が優しく包み込んだ。白崎が行使した、形を変化させることで衝撃を殺す光の防御魔法だ。

白崎は間髪入れず、回復系呪文を唱える。

「天恵よ 遍く子らに癒しを……“回天”」

香織の詠唱完了と同時に触れてもいないのに四人が同時に癒されていく。遠隔の、それも複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ。以前使った“天恵”の上位版である。

天之河が突きの構えを取り、未だ暴れるベヒモスに真っ直ぐ突進した。そして、先ほどの傷口に切っ先を差し込み、突進中に詠唱を終わらせて魔法発動の最後のトリガーを引く。

「“光爆”!」

聖剣(笑)に蓄えられた膨大な魔力が、差し込まれた傷口からベヒモスへと流れ込み大爆発を起こした。

「ガァアアア!!」

傷口を抉られ大量の出血をしながら、技後硬直中の僅かな隙を逃さずベヒモスが鋭い爪を天之河に振るった。

「ぐぅうう!!」

呻き声を上げ吹き飛ばされる天之河。爪自体はアーティファクトの聖鎧が弾いてくれたが、衝撃が内部に通り激しく咳き込む。しかし、その苦しみも一瞬だ。すかさず、白崎の回復魔法がかけられる。

「天恵よ彼の者に今一度力を……“焦天”」

先ほどの回復魔法が複数人を対象に同時回復できる代わりに効果が下がるものとすれば、これは個人を対象に回復効果を高めた魔法だ。天之河は光に包まれ一瞬で全快する。

ベヒモスが、天之河が飛ばされた間奮闘していた他のメンバーを咆哮と跳躍による衝撃波で吹き飛ばし、折れた角にもお構いなく赤熱化させていく。

「……角が折れても出来るのね。あれが来るわよ!」

八重樫の警告とベヒモスの跳躍は同時だった。ベヒモスの固有魔法は経験済みなので皆一斉に身構える。しかし、今回のベヒモスの跳躍距離は予想外だった。何と、嶺亜達前衛組を置き去りにし、その頭上を軽々と超えて後衛組にまで跳んだのだ。大橋での戦いでは直近にしか跳躍しなかったし、あの巨体でここまで跳躍できるとは夢にも思わず、前衛組が焦りの表情を見せる。

がしかし、焦りは杞憂に終わる。

嶺亜が1人後衛組の前におり、放出した雷の魔力を剣に纏わせて構えていた。

「ちったぁいいとこ見せんとなぁ!擬似宝具(・・・・)雷霆極旋(ケラウノス・ストロフィー)!!!!」

プラズマの極光が二重螺旋を描きながらベヒモスの顔面に直撃して押し戻し、ベヒモスの固有魔法は不発に終わり、ベヒモスの顔は焼け爛れていた。

習性なのか顔を無茶苦茶にした嶺亜を睨むも遅し、既に前衛組がベヒモスに肉薄している。

前衛組が再び取り囲み、ヒット&アウェイでベヒモスを翻弄し続け遂に待ちに待った後衛の詠唱が完了する。

「下がって!」

後衛代表の誰かから合図がでる。前衛組は渾身の一撃をベヒモスに放ちつつ、その反動も利用して一気に距離をとった。

その直後、炎系上級攻撃魔法のトリガーが引かれた。

「「「「「“炎天”」」」」」

術者複数人による上級魔法。超高温の炎が球体となり、太陽のような形で燃えて周囲一帯を焼き尽くす。ベヒモスの直上に創られた“炎天”は一瞬で直径八メートルに膨らんだ直後、ベヒモスへと落下した。

絶大な熱量がベヒモスを襲う。あまりの威力の大きさに味方までダメージを負いそうになり、慌てて結界を張っていく。“炎天”は、ベヒモスに逃げる暇すら与えずに、その堅固な外殻を融解していった。

「グゥルァガァアアアア!!!!」

ベヒモスの断末魔が広間に響き渡る。いつか聞いたあの絶叫だ。鼓膜が破れそうなほどのその叫びは少しずつ細くなり、やがて、その叫びすら燃やし尽くされたかのように消えていった。

そして、後には黒ずんだ広間の壁と、ベヒモスの物と思しき僅かな残骸だけが残った。

「か、勝ったのか?」

「勝ったんだろ……」

「勝っちまったよ……」

「マジか?」

「マジで?」

皆が皆、呆然とベヒモスがいた場所を眺め、ポツリポツリと勝利を確認するように呟く。同じく、呆然としていた天之河が、我を取り戻したのかスっと背筋を伸ばし聖剣(笑)を頭上へ真っ直ぐに掲げた。

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

キラリと輝く聖剣(笑)を掲げながら勝鬨を上げる天之河。その声に漸く勝利を実感したのか一斉に歓声が沸きあがった。男子連中は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。メルド団長達も感慨深そうだ。

これはひとえにトラウマを克服した様なもの。喜ぶのも無理はない。

天之河は白崎と八重樫の会話に混ざりこんなことを言っていた。

「これで南雲も浮かばれるな。自分を突き落とした魔物を自分が守ったクラスメイトが討伐したんだから」

「「……」」

天之河は感慨にふけった表情で八重樫と白崎の表情には気がついていない。どうやら、天之河の中でハジメを奈落に落としたのはベヒモスのみ(・・)という事になっているらしい。確かに間違いではない。直接の原因はベヒモスの固有魔法による衝撃で橋が崩落したことだ。しかし、より正確には、撤退中のハジメに魔法が撃ち込まれてしまったことだ。まぁ、犯人がわれたのだが、天之河はあれがなんだったのか分からなかったようだ。

それは置いておき、感慨にふけてない者は次層への階段を見つめ、神妙な顔をしていた。

これより先は完全に未知の領域。嶺亜達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだから。

 

✲✲✲

 

もう数日ほど迷宮攻略をしてからホルアドで別れてまた3ヶ月後に会う。そのつもりだったのだが、1度王宮に戻らないといけなくなった。

何故ならば、ベヒモス討伐の知らせをいの一番に手に入れたヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。

何故、このタイミングなのか。

元々、エヒト神による“神託”がなされてから嶺亜達が召喚されるまでほとんど間がなかった。そのため、同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかったのだ。

もっとも、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる。なぜなら、帝国は三百年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国だからである。

突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得はできないだろう。聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められていることから信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。もっとも、あくまでどちらかといえばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。

そんな訳で、召喚されたばかりの頃の天之河達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが。王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。

しかし、今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側もクラスメイト達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。

そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、嶺亜達は王宮に到着した。

馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである。ランデル殿下は、思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気で駆け寄ってくると大声で叫んだ。

「香織!よく帰った!待ちわびたぞ!」

もちろんこの場には、白崎だけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢ぞろいしている。その中で、白崎以外見えないという様子のランデル殿下の態度を見ればどういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。

実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は白崎に猛アプローチを掛けていた。と言っても、彼は十歳。白崎から見れば小さい子に懐かれている程度の認識であり、その思いが実る気配は微塵もない。生来の面倒見の良さから、弟のようには可愛く思ってはいるようだが。

「ランデル殿下。お久しぶりです」

パタパタ振られる尻尾を幻視しながら微笑む白崎。そんな白崎の笑みに一瞬で顔を真っ赤にするランデル殿下は、それでも精一杯男らしい表情を作って白崎にアプローチをかける。

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか?余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」

ランデル殿下は悔しそうに唇を噛む。白崎としては守られるだけなどお断りなのだが、少年の微笑ましい心意気に思わず頬が緩む。

「お気づかい下さり有難うございます。ですが、私なら大丈夫ですよ?自分で望んでやっていることですから」

「いや、香織に戦いは似合わない。そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」

「安全な仕事ですか?」

ランデル殿下の言葉に首を傾げる白崎。ランデル殿下の顔は更に赤みを増す。となりで面白そうに成り行きを見ている八重樫は察しがついているのか、少年の健気なアプローチに思わず苦笑いする。

「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ?その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ」

「侍女ですか?いえ、すみません。私は治癒師ですから……」

「な、なら医療院に入ればいい。迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだろう?」

医療院とは、国営の病院のことである。王宮の直ぐ傍にある。要するに、ランデル殿下は香織と離れるのが嫌なのだ。しかし、そんな少年の気持ちは鈍感な白崎には届かない。

「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。心配して下さり有難うございます」

「うぅ」

ランデル殿下は、どうあっても白崎の気持ちを動かすことができないと悟り小さく唸る。そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者天之河がにこやかに参戦する。

「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」

天之河としては、年下の少年を安心させるつもりで善意全開に言ったのだが、この場においては不適切な発言だった。恋するランデル殿下にはこう意訳される。

“俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。俺がいる限り香織は誰にも渡さねぇ!絶対にな!”

親しげに寄り添う勇者と治癒師。実に様になる絵である。ランデル殿下は悔しげに表情を歪めると、不倶戴天の敵を見るようにキッと天之河を睨んだ。ランデル殿下の中では二人は恋人のように見えているのである。

「香織を危険な場所に行かせることに何とも思っていないお前が何を言う!絶対に負けぬぞ!香織は余といる方がいいに決まっているのだからな!」

「え~と……」

ランデル殿下の敵意むき出しの言葉に、白崎はどうしたものかと苦笑いし、天之河はキョトンとしている。八重樫ははそんな天之河を見て溜息だ。

ガルルと吠えるランデル殿下に何か機嫌を損ねることをしてしまったのかと、天之河が更に煽りそうなセリフを吐く前に、涼やかだが、少し厳しさを含んだ声が響いた。

「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう? 光輝さんにもご迷惑ですよ」

「あ、姉上!?……し、しかし」

「しかしではありません。皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて……相手のことを考えていないのは誰ですか?」

「うっ……で、ですが……」

「ランデル?」

「よ、用事を思い出しました!失礼します!」

ランデル殿下はどうしても自分の非を認めたくなかったのか、いきなり踵を返し駆けていってしまった。その背を見送りながら、王女リリアーナは溜息を吐く。

「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」

リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。

「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」

「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと」

白崎と天之河の言葉に苦笑いするリリアーナ。姉として弟の恋心を察しているため、意中の白崎に全く意識されていないランデル殿下に多少同情してしまう。まして、ランデル殿下の不倶戴天の敵は別にいることを知っているので尚更だった。

ちなみに、ランデル殿下がその不倶戴天の敵に会ったとき、一騒動起こすのだが……それはまた別の話。

リリアーナ姫は、現在十四歳の才媛だ。その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。

嶺亜達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼等が関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。 

そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の白崎や八重樫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である。

「いえ、光輝さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。あの子が少々暴走気味なだけですから。それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

リリアーナはそう言うと、ふわりと微笑んだ。白崎や八重樫といった美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。リリアーナの美しさには二人にない洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。

現に、嶺亜と瓸以外の男子生徒達は顔を真っ赤にしてボーと心を奪われているし、女子メンバーですら頬をうっすら染めている。異世界で出会った本物のお姫様オーラに現代の一般生徒が普通に接しろという方が無茶なのである。昔からの親友のように接することができる白崎達の方がおかしいのだ。

天之河が気障な台詞でリリアーナ姫をオロオロさせた後、王宮内に入り、今日の勇姿や3ヶ月間何処で何をしていたかなどで盛り上がる中で畑山先生が”豊穣の女神”と崇められてることが話題になり、それを聞いた畑山先生本人がやめてー!と発狂しかけたりとあったが、この日はそれぞれ思うままに心身を休ませた。

 

それから3日後に帝国の使者が訪れた。

 

現在、クラスメイト達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。

ちなみに嶺亜と瓸、アルトリアだけは此処にはいない。空間転移で鍛錬の時に使っていた森に逃げ込んだのだ。面倒臭いと。

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

「はい」

陛下と使者の定型的な挨拶のあと、早速、天之河達のお披露目となった。陛下に促され前にでる天之河。召喚された頃と違い、既に3ヶ月と少し程経っているため、随分と精悍な顔つきになっている。

天之河を筆頭に、次々と生徒達が紹介された。

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

使者は、天之河を観察するように見やると、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干、疑わしそうな眼差しを向けた。使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。

その視線に居心地悪そうに身じろぎしながら、天之河が答える。

「えっと、ではお話しましょうか?どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

天之河は信じてもらおうと色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっと、俺は構いませんが……」

天之河は若干戸惑ったようにエリヒド陛下を振り返る。エリヒド陛下は天之河の視線を受けてイシュタルに確認を取る。イシュタルは頷いた。神威をもって帝国に天之河を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断したのだ。

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだった。

天之河の対戦相手は、何とも平凡そうな男だった。高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。

刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかった。

天之河は舐められているのかと怒りを抱き、最初の一撃で度肝を抜いてやれば真面目にやるだろうと思ったのか最初の一撃は割かし本気で打ち込むことにしたようだ。

「いきます!」

天之河が風となる。“縮地”により高速で踏み込むと豪風を伴って唐竹に剣を振り下ろした。並みの戦士なら視認することも難しかったかもしれない。もちろん、天之河としては寸止めするつもりだった。だがその心配は無用。むしろ舐めていたのは天之河の方だと証明されてしまう結果となった。

 

バキィ!!

 

「ガフッ!?」

吹き飛んだのは天之河の方だった。護衛の方は剣を掲げるように振り抜いたまま天之河を睥睨している。天之河が寸止めのため一瞬、力を抜いた刹那にだらんと無造作に下げられていた剣が跳ね上がり天之河を吹き飛ばしたのだ。

天之河は地滑りしながら何とか体勢を整え、驚愕の面持ちで護衛を見る。寸止めに集中していたとは言え、護衛の攻撃がほとんど認識出来なかったのだ。護衛は掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている。そう、先ほどの攻撃も動きがあまりに自然すぎて危機感が働かず反応できなかったのである。

「…………永らく剣を手に取り戦場を駆けた生粋の武人と最近剣を手に取りある程度の振り込みしか出来てない元学生。どちらが強いかは一目瞭然だろうに…………寸止めなんて考えるからあんな簡単に吹き飛ばされる。」

「えぇ、天之河は少し驕りがありました。試されている立場でありながら驕るとは………………岡田以蔵を思い浮かべます。」

「いや、あれは才能が努力を勝ってたからそうであって、あれが李書文やケイローンクラスで努力してみろ。少なくとも純粋な剣技だけで俺を上回る。俺は魔力放出なんて奇策にもってこいなものがあるからいいがなくてみろ。負けちまう。」

いつの間にか試合を見に来ていた嶺亜達は誰にもバレない位置と声量で会話をする。

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。その表情には失望が浮かんでいた。

確かに、天之河は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。天之河は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

今度こそ、本気の目になり、自分の無礼を謝罪する天之河。護衛はそんな天之河を見て「戦場じゃあ“次”なんてないんだがな」と不機嫌そうに目元を歪めるが相手はするようだ。先程と同様に自然体で立つ。

天之河は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と“縮地”を使いこなしながら超高速(嶺亜達には亀の歩く速度にしか見えてない。)の剣撃を振るう。その速度は既に、天之河の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。時々、天之河の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

天之河には護衛の動きに覚えがあった。それはメルド団長だ。彼と天之河のスペック差は既にかなりの開きが出ている。にもかかわらず、未だ天之河はメルド団長との模擬戦で勝ち越せていないのだ。それはひとえに圧倒的な戦闘経験の差が原因である。

おそらく護衛も、メルド団長と同じく数多の戦場に身を置いたのではないだろうか。その戦闘経験が天之河とのスペック差を埋めている。つまり、この護衛はメルド団長並かそれ以上の実力者というわけだ。

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々唯の学生ですから」

「……それが今や“神の使徒”か」

チラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると護衛は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ?うっかり殺してしまうかもしれんからな」

護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。天之河程の高速移動ではない。むしろ遅く感じるほどだ。だというのに、

「ッ!?」

気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。天之河は慌てて飛び退る。しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が天之河を襲った。

不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、“先読”で何とか対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。“縮地”で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。次第に天之河の顔に焦りが生まれてくる。

そして遂に、天之河がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

「穿て、“風撃”」

呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、天之河の片足を打ち据えた。

「うわっ!?」

踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す天之河。その瞬間、壮絶な殺気が天之河を射貫く。冷徹な眼光で天之河を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

刹那、天之河は悟る。彼は自分を殺すつもりだと。

実際、護衛はそうなっても仕方ないと考えていた。自分の攻撃に対応できないくらいなら、本当の意味で殺し合いを知らない少年に人間族のリーダーを任せる気など毛頭なかった。例えそれで聖教教会からどのような咎めが来ようとも、戦場で無能な味方を放置する方がずっと耐え難い。それならいっそと、そう考えたのだ。

しかし、そうはならなかった。

 

ズドンッ!

 

「ッガァ!?」

先ほどの再現か。今度は護衛が吹き飛んだからだ。護衛が、地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して天之河を見る。天之河は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

護衛の剣が振り下ろされる瞬間、天之河は生存本能に突き動かされるように“限界突破”を使ったのだ。これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する主人公らしい技能である。

だが、天之河の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

そんな光輝の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

「ビビリ顔?今の方が恐怖を感じてます。……さっき俺を殺す気ではありませんでしたか?これは模擬戦ですよ?」

「だから何だ?まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか?この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ?その自覚があんのかよ?」

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな?最初に言ったろ?気抜いてっと……死ぬってな!」

護衛が再び尋常でない殺気を放ちながら光輝に迫ろう脚に力を溜める。天之河は苦しそうに表情を歪めた。

しかし、護衛が実際に踏み込みことはなかった。なぜなら、護衛と天之河の間に光の障壁がそそり立ったからだ。

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

イシュタルが発動した光り輝く障壁で水を差された“ガハルド殿”と呼ばれた護衛が、周囲に聞こえないくらいの声量で悪態をつく。そして、興が削がれたように肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。

四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

「ガ、ガハルド殿!?」

「皇帝陛下!?」

そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。まさかの事態にエリヒド陛下が眉間を揉みほぐしながら尋ねた。

「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド陛下。

天之河達は完全に置いてきぼりだ。なんでも、この皇帝陛下、フットワークが物凄く軽いらしく、このようなサプライズは日常茶飯事なのだとか。

「…………ゼルレッチの爺さんじゃあるまいし………フットワークが軽いってなんだよ…………」

嶺亜は何処ぞの第二魔法の使い手を思い浮かべて呟く。

なし崩しで模擬戦も終わってしまい、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。

しかし、その晩、部屋で部下に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

「ありゃあダメだな。唯の子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。“神の使徒”である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

「あぁ?違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

どうやら、皇帝陛下の中で天之河達勇者一行は興味の対象とはならなかったようである。無理もないことだろう。彼等は数ヶ月前まで唯の学生。それも平和な日本の。歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのである。

「まぁ、その点に関しては3人ほど見込みがある奴がいたし、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」

「御意」

そんな評価を下されているとは露にも思わず、光輝達は、翌日に帰国するという皇帝陛下一行見送ることになった。用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。本当にフットワークの軽い皇帝である。

帰り際に早朝訓練をしている八重樫を見て気に入った皇帝が愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあった。八重樫は丁寧に断り、皇帝陛下も「まぁ、焦らんさ」と不敵に笑いながら引き下がったので特に大事になったわけではなかったが、その時天之河を見て鼻で笑ったことで天之河はこの男とは絶対に馬が合わないと感じ、暫く不機嫌だった。

その分、溜息…………ストレスの発散法を求めていたので、色々と教えておいた。

 

皇帝陛下らが国に帰ったのを確認したら、嶺亜、瓸、アルトリア、鈴、アランは英霊達を回収して3ヶ月の旅に出発した。

次の行先はライセン大峡谷である。

 

 



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第10話 ブルックの町とライセン大峡谷

 

王宮を出発してから数日、俺達はライセン大峡谷に近い町、ブルックに辿り着いた。

ステータスプレートの提示をして町中に入り、まずはギルドに向かう。

ギルドの中は意外に清潔さが保たれた場所だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。

冒険者ギルドに入ると当たり前のように他の冒険者に見つめられる。俺達は気にすること無く、カウンターに行き、受付嬢に挨拶をする。

「いらっしゃい、今日はどのような件で来たのかしら?」

カウンターには恰幅なオバちゃんがおり、声を掛けてくれた。

「ん?この町は通りがかりでな。今日はこの町で1泊と食料の補充をと思って来たんだが………ギルド推薦の宿とかあるか?」

「あらそうかい?それならこれを参考にしな。この町について書かれてるからね。」

オバちゃんに渡されたガイドマップを見ると、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とはちょっと信じられないくらいの出来である。

「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

オバチャンの優秀さがやばかった。この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの?とツッコミを入れたくなるレベルである。きっと壮絶なドラマがあるに違いない。

「へぇ、それじゃあまぁ、もう行くぜ。帰りがけも寄るかもしれねぇから達者でな。」

「ばいばーい!」

ギルドを出たらある宿に向かう。宿の名はマサカの宿。英霊達には人格者のポルテ嬢以外は霊体化して貰い、俺達は中に入る。

カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿”へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」

「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」

先程ポルテ嬢に渡しておいたオバチャン特製地図をポルテ嬢が見せると合点がいったように頷く女の子。

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

「1泊だけの宿泊で、3人部屋が2つと食事、風呂も付けてくれ。」

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたいので、男女で分けるとして3時間は確保したい。その旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれたが、日本の風呂というものに触れて以来英霊達では人気なのだ。だが、今日は我慢してもらうことにした。

「分かりました!では212号室と213号室の鍵おを渡しします。お帰りの際はこの籠に返却をお願い致します。」

「了解。」

212号室の鍵をポルテ嬢に預け、ポルテ嬢とアルトリア、鈴は付いていき、俺、瓸、アランは213号室に入る。

その日は何事もなく眠れて、翌日に用意された朝食を食べた後、鍵を返却して出る。

町を出る前に軽く観光して、ある服屋を見つけた。ポルテ嬢以外が魔王城に入る様な覚悟をして中に入る。

「あら~ん、いらっしゃい♥あら?久しぶりねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

そう、此処はクリスタベルの営む服屋である。

「そうか。それじゃあ見繕って貰うか。」

6人分×4程頼む事にした。

採寸から始まり、似合う服を見繕って貰った。

「よし、これでいいわねぇん。大ちゃん恵里ちゃん、B-3とA-8、D-5とY-5、J-1とT-4、それから……………………を持ってきて頂戴!」

店の奥からクリスタベルが言ったものを持ってきた檜山と中村が現れた。

「これらで合ってるっスか?姉御(・・)!」

「ちゃんと確認したんだから大丈夫でしょう?」

「「「「「一体何があった?」」」」」

以前の檜山はキチだったが今では立派な舎弟となっており、中村は以前のお淑やかさを眼鏡と共に棄てて本心を顕にしていた。

あまりの変わりように以前を知っている俺達は固まってしまった。

「ンを?おぉ、燚氷姉妹(・・)さん達じゃないっスか!久しぶりっスねぇ!あの時の俺っちはどうかしてやしたからねぇ。連れてかれた後、女心って奴を叩きつけられて俺っちのしていた事が裏目に出ちまってたことを知っちまいやしたけ、ほんと、馬鹿っすよねぇ。もし、南雲さんが現れたら速攻で土下座っス!」

「大ちゃん大ちゃん、喋りたいのもわかるけど、先に終わらせてからにしてねぇん?」

「あ、はいっス!」

 

すちゃちゃちゃちゃッ!!!!!!!!

 

たったの数秒で俺達の買った服を袋に詰めて渡してきた。ちなみに中村は何かすることがまだあるのかそそくさと店奥に戻って行っている。

「あ、そうだ。檜山、中村にも伝えてて欲しいんだが、皆はあの悪夢……ベヒモスを討伐したぞ。前回は連携もクソもなかったが今回は連携のゴリ押しでいけた。」

「へぇ、皆は前に進んでるんスね。俺っちも俺っちなりに追いついて見せるっすよ。」

「俺達はもう行くぜ?帰り際に寄るかもしれないがな。じゃあな。」

檜山と中村がクリスタベルに矯正されて危険がもう無いことが分かり、それはそれで良かったと思いつつもクリスタベルの店を出て、そのまま町を周りつつ食糧を購入してから町を出た。

この道を真っ直ぐ進んだらライセン大峡谷に着くそうなので俺達は少し離れた場所で異空間から潜水車を取り出して乗り込み、直進する。

実はこの時、南雲ハジメ一行とすれ違っているのだが、誰も気づいてなかったりする。

 

✲✲✲

 

「メイル・メルジーネの遺跡を魔術獲得前に調べといて良かったぁ〜」

鈴がこんなことを言うのは先程アキレウスが言った一言が原因だ。

「なぁマスター。ライセン大峡谷にライセンの置いた大迷宮があるのは分かるが入口が何処にあるのかなんてわかんのか?」

『えっ…………』

となり、潜水車から降りてライセン大峡谷入口から入念に探そうとしたところ、魔方陣に乗る前に見つけたメイル・メルジーネの手記を鈴が見つけて回収していたのだ。その手記には各迷宮の攻略に欠かせない情報がかなりあった。

オルクス大迷宮は全200階層ある。

ライセン大峡谷は入口が一枚岩と谷の壁の隙間。

グリューエン大火山とメルジーネ海底遺跡は流れですること。

バーン神山は他の迷宮2つ攻略の上に神に反逆する意志を持つと攻略。

ハルツィナ樹海は4つの証と再生魔術が最低限必要。

シュネー雪原は自分の心と向き合うとあった。

このうち、バーン神山とグリューエン大火山、メルジーネ海底遺跡はその通りだったのでこれは有力だと思い、その通り探したら、あったのだ。降りて隙間に近づいたのだが、こう書いてあった。

“おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪”

と、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字で掘られていた。

“!”や“♪”のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

英霊達には霊体化して貰い、中に入る。

隙間の奥に来たのだが、何も無い。皆であれこれ触っていたら

 

ガコンッ!

 

と、からくり屋敷のように壁がひっくり返り、俺達は中に引き込まれた。

引き込まれて周りを見るが、それと言って何も無い。

と、思えば………

 

ヒュヒュヒュヒュヒュッ!!!!!!!!

 

矢が勢いよく飛んできたので掴み取って投げ返した。

『……………………なんだったんだ今の…………』

霊体化を解いた英霊達もしょうも無さ過ぎてポカンとしていた。

すると、周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

“ビビった?ねぇ、ビビっちゃた? チビってたりして、ニヤニヤ”

“それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ”

俺達の中でも短気な方であるアキレウスが無言で壁を破壊。かなり奥まで窪んだ。

「ふぅ、先に行こうぜ?」

何事も無かったかのように振る舞うアキレウス。皆もそれなりに思うところがあるのか無言で先を進む。

直感スキルが強い俺とアルトリアを先頭に進むことで罠を掻い潜り、ごちゃごちゃな壁の部屋に着き、分かれ道があるが、迷わず左に曲がる。色々なポーズで動くというある種の黒歴史を開発しながら進むこと数時間。

途中虫が大量に敷き詰まっていた部屋があったが、全てを氷床の下敷きにして降り立ち、次の道である穴に進んだり、天井が落下してきたりしたがこちらには数々の死闘を乗り越えた英雄達+‪α。天井を砕いて押しつぶされることなく進む。

中には、勝手にトラップが作動して、定番な球体岩が転がって来るものもあったが砕かれ、第2発目の球は鋼であったがこれも砕いて先に進んだりもした。その先の溶解液プールは凍らせて意味をなくさせたりして、とうとう最奥の部屋に着いた。

その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほど像が並び立っている。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

「これは定番だな。」

「はい。歩いていたら騎士像が動き出すパターンです。」

「動き出す前に破壊しない?」

「いや、あれは再生魔術がかかってるから消滅でないと倒せないぞ。」

「ふぅん、破壊の大王に任せたら?」

「これは悪い文明なのか?そうか。なら、破壊する!!!!」

今まで影の薄かったアルテラが涙目で聞いてきて、皆が頷いたら喜んで突っ込んで行った。しかも宝具を発動させて。そのおかげか、アルテラが通り過ぎたあとは摩擦熱で溶けた床と、完全に蒸発した騎士像無き土台しか残らなかった。

「………………ありがとなアルテラ。それじゃあ先に進みますか。」

進んだ先に大きな戸があり、アルテラは此処で待っていた。着いた所には祭壇があり、その上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

戸を開こうと思ったのだが、開かず、封印されていた。

封印を解くのが面倒臭いと感じたので静寂の終剣(イルシオン)で1突きして強制解除。

戸を開けた後、行き止まりだったので直感的に入らず、適当に削り取った人数分の重さの岩を投げ入れて戸を閉める。

 

ガコンッ!!!!

 

その音がなって1分後に開くと、壁が無くなって先があった。

「…………俺の予想だが、あれん中入ってたら最初んとこ出てたろ?そう思うのは俺だけか?」

「いやいや、キャスターの言う通りだとオッチャンは思うんだけどねぇ。」

とりあえず奥に進むことにした。

奥には重力を無視した立方体が幾つもあり、動いていたので、ライダー以外は霊体化して貰い、ライダー2人の馬とチャリオットに乗り、奥を目指す。

その瞬間、近くにあったブロックに

 

ズゥガガガン!!

 

と、隕石が落下してきたのかと錯覚するような衝撃が直撃し木っ端微塵に爆砕した。隕石というのはあながち間違った表現ではないだろう。赤熱化する巨大な何かが落下してきて、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

「こりゃ英霊並の力量だな。」

隕石として落下してきたそれは、俺達の頭上にまで戻ってきて睥睨する。

俺達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

達が、巨体ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来し、俺達の周囲を囲むように並びだした。整列したゴーレム騎士達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

すっかり包囲され俺達の間にも緊張感が高まる。辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。動いた瞬間、命をベットして殺し合い(ゲーム)が始まる。そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは…………巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

『……………………』

それを聞いた俺達は真顔になって鈴とアラン、アーラシュとポルテ嬢以外は宝具発動の準備を開始した。

真顔で何も返さないからか、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

トータスの魔力と地球の魔力は質が少し違うため、巨大ゴーレムはあまり気にしてないようだ。

実にイラっとする話し方であった。しかも巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げるとやたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。普通にイラっとする俺達。

「……………………全力攻撃開始ぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」

「─────輝けるは命の奔流……受けるがいい!約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」

「─────文明を破壊する…………軍神の剣(フォトン・レイ)!!」

「王家の百合永遠なれ───百合の花咲く豪華絢爛(フルール・ド・リス)!!」

「─────|凱旋を高らかに告げる虹弓《アルク・ドゥ・トリオンフ・ドゥ・レトワール》!」

「─────標的確認、方位角よし!不毀の極槍(ドゥウリンダナ・ピルム)!!!!」

「─────をも屠る魔の一撃……その身で味わえ!無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!!!!!!!!」

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社───倒壊するは灼き尽くす炎の檻(ウィッカー・マン)!オラ、善悪問わず土に還りな───!」

「行くぜ!疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)!!」

GuOooooooooooo(射殺す百頭)!!!!!!!!」

「星に意思有り、それ即ち欲求持つ。星願う、静寂求むと。之は星の怒りの具現である……星起するは静寂の終剣(イルシオン・ステライズ)!!!!!!!!」

デオンが剣舞で両手足を切り裂き、アキレウスの宝具により巨大ゴーレムは撃墜し、落ちたのをウィッカー・マンが捕縛、不毀の極槍と無敗の紫靫草が穿たれ固定。

「えぇ、あれ?なんかやばい?え、ちょっ、ま、待って!!ストップストップストップストオォォォォップ!!!!!!!!」

巨大ゴーレムは自分の認知外の速さで動かれたことで認識できず、目の前には光の奔流と3色の奔流、虹の奔流、漆黒の奔流、9つの龍頭の閃光が全方位から受けて、消し飛んだ。

『…………………………あのウザかった言葉……発散させてもらった。』

行く先々にあるミレディの言葉にブチ切れていたようで、この一撃でだいぶスッキリしたようだ。

油断は命取り。それを鈴とアランは改めて思い知った光景だった。

ちなみに宝具の出力は皆1〜2割程である。

「それで、どうなるんだこれ?」

「あ、あそこに紋章が光ってるよ!」

クー・フーリンの呟きはスルーされて鈴が壁の方にライセンの紋章が輝いていたので、ライダー2人の馬とチャリオットに乗ってそちらに行き、触れる。

すると、光る壁は、まるで見計らったようなタイミングで発光を薄れさせていき、スっと音も立てずに発光部分の壁だけが手前に抜き取られた。奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いている。

俺達はライセンの寝床?まで進み、くぐり抜けた壁の向こうには……

「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」

ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

『………………』

「あれぇ? あれぇ? テンション低いよぉ~? もっと驚いてもいいんだよぉ~? あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか? だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね☆」

ちっこいミレディ・ゴーレムは、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、白い仮面を付けている。ニコちゃんマークなところが微妙に腹立たしい。そんなミニ・ミレディは、語尾にキラッ!と星が瞬かせながら、俺達が降り立った所に歩いて来る。

「……………………捕縛しろ、バーサーカー」

「GuOu!!!!!」

「うわキャッ!?な、なに!?…………えぇと、なんでございましょうか?」

バーサーカーに捕まったミレディは幽霊のように近づく嶺亜に言い様のない怖気が走った。

「………………そういや俺さ、空間魔術と再生魔術は試したから応用も作ってんだけど、一つだけ試してないのがあるんだ。」

 

ガシィッ!!!!

 

ミレディの顔面を鷲掴みにしながら俯いて言う。それが更に恐怖を引き立てる。

「えぇと、試したらいいんじゃない?」

「あぁ、試したい。試そうと思うんだ。いや、試すさ。身内は嫌だから身内外であるお前でなぁ!!!!!!!!!!!!」

「ヒィィィィィィッ!?!?!?」

「あ、お前らは休憩してていいゾ。俺は魂魄魔術を試そうと思うんだ。しばらくは待っててくれ。」

ミレディの顔面を鷲掴みにしたまま引きずって物陰に連れていく。他の皆はちゃぶ台やお茶、行きがけに作って置いた料理を広げて食べ出す。

 

「さてさてさーて、まずは錬成で寝台を造って此奴を固定。そしてもう1つ寝台を造って、肉体を置く。」

「…………ねぇ、さっき空間と再生、魂魄っていったよね?3つも攻略してるっぽいけどさ……それはなんの為に使うの?」

「帰還する方法を得るためだ。あんたらが言う神代魔法の大半が理を揺るがす様なもの。全ての神代魔法を手に入れたら概念を操る力でも手に入るんだろ?それなら穴を開けてここと元の世界を繋げてから帰ることが出来る。俺だけならレイシフトの応用やアビーの開けたSAN値削減の道を通って戻れるが、クラスメイト達もいるんだ。無事に連れ戻せないで何が英雄だ?英雄の一端を担ってんだ。この程度成し遂げなくてなんという?」

「さぁね。ってか何を準備してるのかしら?」

「ん?そんなの決まってんだろ?色々と注ぎ込んだ人間の身体だろうに。よし、始めるぞ。」

「えぇ、…………はい、分かりましたから頭掴まないで…………」

俺はミニ・ミレディ・ゴーレムからミレディの魂を抜き取って用意した肉体の中に埋め込む。そして、精神で肉体と魂を結びつけて浸透させる。

浸透させたら軽く電気ショックを与えて心臓を稼働させて起こす。

「ッ………………たぁ!?いったぁ!?いきなりビリッて来たよビリッて!!肌焼けたらどうすんのよ!?って肌?……あれれ〜?おっかしぃなぁ?引っ張ってた時に終わったら起こすし肉体も戻ってるって言ってたよね?ね?なんでそのまんまなのかな!?」

「戻ってるだろう………………人間の身体に。あんたがなんの目的でゴーレムなんぞに魂を宿したかは知らんが、それじゃあ楽しみたいことも楽しめないし、動きにも制限がかかるだろう。適当に造って置きっぱなしだった肉体を改良しておいたんだ。上手く使えよ。後で鏡でも見てみな。それにお客様のようだ。相手にしなくていいのか?」

「えぇ?うわっ!マジで来てるし!でも試練はあんたらにボコスコにされてほぼダメな状態だし修理は間に合わないし…………」

ミレディに次の挑戦者が来たことを教え、お節介ながらも試練を直しておいた。

「それなら時間を巻き戻して俺達が来る前の状態だ。あの巨大ゴーレムも元に戻ってるから遊んでやんな。まだ話すことがあるだろうから俺達はアンタの寝床で休ませてもらうよ。」

ミレディが挑戦者の相手をしている間に俺達は魔法陣に乗って重力魔術を獲得。

その後はミレディが休んでいるのであろう建物の中に入って休む事にした。

ミレディはミレディで挑戦者の反応が面白いのかプギャーとかブフッとか言っている。

部屋の中に攻略の証を見つけたから先に取って異空間に仕舞う。これで4つ揃ったのでハルツィナ樹海に行けるだろう。

そうこうしているうちに、1週間程たち、挑戦者達がここまで辿り着いたようだ。

外から、ドタバタ、ドカンバキッ、いやぁーなど悲鳴やら破壊音が聞こえていたが、俺達は気にすること無く過ごし、こんなことが聞こえた。

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。それから、お前が持っている便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱物類も全部よこせ」

「……君、セリフが完全に強盗と同じだからね? 自覚ある?」

これには同感した。しかし、それだけでは終わらなかった。

「おい、それ“宝物庫”だろう? だったら、それごと渡せよ。どうせ中にアーティファクト入ってんだろうが」

「あ、あのねぇ~。これ以上渡すものはないよ。“宝物庫”も他のアーティファクトも迷宮の修繕とか維持管理とかに必要なものなんだから」

「知るか。寄越せ」

「あっ、こらダメだったら!」

なんと、この攻略者は大迷宮の機能を停止させる気である。まぁ、ミレディが眠っている間に複製して本物はこの部屋の奥にある倉庫に仕舞ってあるから渡しても問題ないが。

「ええ~い、あげないって言ってるでしょ!もう、帰れ!」

ミレディが飛翔する音と、

「逃げるなよ。俺はただ、攻略報酬として身ぐるみを置いていけと言ってるだけじゃないか。至って正当な要求だろうに」

「それを正当と言える君の価値観はどうかしてるよ! うぅ、いつもオーちゃんに言われてた事を私が言う様になるなんて……」

「ちなみに、そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観だ」

「オーちゃぁーーん!!」

と聞こえてきた。こんな所でオルクス大迷宮の情報が手に入るとは。

追い詰められたのか、

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて……もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ! 戻ってきちゃダメよぉ!」

という言葉と紐が引かれる音が聞こえた。

その直後に

 

ガコンッ!!!!

 

と聞こえて、思わず立ち上がって周りを警戒する。しかし、杞憂に終わる。

外から水の流れる音と、元の世界でよく聞いていた音がした。

確か外は白い部屋で恐らく窪んだであろう中央の穴、そこに流れ込む渦巻く大量の水……それはまるで“便所”である!

「嫌なものは、水に流すに限るね☆」

嫌なことを聞いた。出ていくには便所に流されないといけない。それを知った英霊達は頷き合って何かを決めていた。

…………あいつら、霊体化する気だな。

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か!いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ!ふがっ」

攻略者達は捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていったようだ。

その直後に爆音と共に「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が響き渡った。

 

攻略者達に破壊されたものを時間を巻き戻して直し、泣き止んだミレディと向き合う。

「それで、貴方達は何故残ってるのかな?攻略の証と重力魔法を手に入れたんなら直ぐに出ていけばいいじゃん。…………直してくれたのは感謝するけど。」

「残った理由は聞きたかったんだよ。創世神エヒトは何処にいる?」

「?そんなの神界に決まってるじゃん。神界は神山の頂上からでないと入れないよ?神山の標高は2000メートルも高くておいそれと近づけない。」

「なんだ。そんな所にあったのか。たったの2000メートルくらいなら別に問題はねぇ。」

カルデアは標高6000メートルの高さにあるので、だいぶ慣れてはいる。

「聞きたいのってそれだけ?」

 

コテンッ

 

と、効果音が付くような仕草をしながら聞いてくるミレディ。

「いや、忠告だ。あんたは神界の抹消と共に死ぬ気だろ?神が1人でもいないと世界は崩れる。それを知ってて思ってんのか?俺の世界には軍神が少なくとも5人はいたから1人くらいいなくなっても問題は無いがこの世界は違う。神という存在が1人でもいないとならない。」

ちなみに地球には行く数多の神がいるし、真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)なんて言う存在もいる。だから問題ナッシング。

「え゛初耳なんですけど…………」

「そりゃあ星の声が聞こえてねぇからだな。そこで、神殺しをするとしても代わりの神が必要だ。」

「えぇと、まさかとは思いますが………………」

ミレディはだんだん理解してきたようだ。何故この肉体を与えたのか?何故いつまでも残り話をしようとしたのか?スキルにいつの間にか神託なんて言うおかしなものがあるのか?それは、

「うん、そのまさかさ。ミレディ・ライセン、あんたは神代から永らく生きる中で唯一過去を深く知っている存在。エヒトを殺った後にあんたはそこに立って貰う。あんたはエヒトとは違うから現状のような宗教戦争なんかを起こさないように努力出来るはずだ。」

「えぇ……私こんな性格だよ?嫌われるでしょ普通はさ。」

「逆にあんたみたいにサバサバした性格の方が安心するかもな。今みたいに神の悪口を言ったら神罰が降るわけでもないし。神界でひとりぼっちが嫌なら対策を寝ることも出来る。」

「うぅあぁもう分かった!分かりました!!こうなったらとことん最後まで付き合ってやるっての!!」

「よし、これで憂いはなくなった。あとは神殺しを成すだけだ。だが…………帰還用の力を手に入れないと神殺しと同時に消滅とか嫌だからね。」

1週間もここに滞在していた訳、エヒトを殺すと世界バランスが崩れてしまう可能性がある。そんな憂いを持っていた。しかし、エヒトと同期くらいの少女?であるミレディが残っていたので、彼女が神として君臨すればバランスは保たれ、邪魔を消すだけでいいではないか。となり、彼女が神になる覚悟が出来たそうなのでよし。

ハルツィナ樹海とシュネー雪原、オルクス大迷宮を突破したら、概念を操る力が手に入り、帰還も出来るだろう。

そしたら本格的に神殺しに入る。

目処が立って来たので少しウキウキだ。

「ゲート・オン。」

空間魔術でライセン大峡谷の迷宮入口に出入口を設定する。英霊達が先に出て魔物の対処、鈴とアラン、アルトリアも出て最後に俺はミレディを引っ張ってここを出る。

「あり?ありり?なんで私も出るんでせうか?」

「あ?一緒に行動してねぇと上手く連携出来ねぇじゃねぇか。互いを知ればその分動きやすいだろ?それに今のお前はゴーレムじゃなくて人間の身体なんだ。腹も減るだろ?だから連れていく。」

「えぇ……引きこもってたらダメ?」

「引きこもるなら一斉攻撃するがいいか?」

全員が武器を見せつけると、トラウマとなったのか真っ青になって首を振る。

俺は異空間から潜水車を出して乗り、皆も続く。

「ミレディちゃんも行こうぜ!この世界をエヒトの手から守り抜くためにさ!!」

最後にミレディの手を鈴が引っ張り、無理矢理中に入れてハルツィナ樹海に向けて出発をする。

打倒エヒトを掲げた一行はエヒトの思惑を崩すために第2の解放者(名乗りはしない)として動き出した。

 



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