エイミーの優しい魔法 (春川レイ)
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出会い

本当に何でも許せる人向けです。


小さな少女がキングスクロス駅に立っている。年は恐らく10歳ほど。黒く長い髪を後ろで一本の三つ編みにしており、大きな瞳で辺りを珍しそうに見回していた。上品なワンピースをキッチリと身に纏い、裕福な家のお嬢様のようにどこか気品がある。右手は赤いこうもり傘をギュッと握りしめており、左手には少し大きな鞄を所持していた。

落ち着きなくキョロキョロしている少女を見て、駅員は迷子だろうかと思い、声を掛けた。

「失礼、お嬢さん。誰かをお探しですか?」

少女は困ったように駅員を見上げ、首をかしげた。

「9と4分の3番線はどこですか?」

 

 

 

 

 

 

 

ハンナ・アボットは動き出した列車の中から、家族に向かって手を大きく振った。

「行ってきます!手紙書くから!」

両親は笑顔でハンナを見送る。やがて列車は速度を上げ、たちまち両親の姿は小さくなった。ハンナは窓から体を離し、ホッと息をついた。

ハンナは魔法界で「間違いなく純血の血筋」とされる「聖28一族」の一つ、アボット家出身だ。今年とうとうホグワーツ魔法魔術学校へ入学となり、魔法を一から学ぶことになった。少しだけ緊張しているが、それ以上にずっと興奮している。親や親戚たちから、ホグワーツの話は何度も何度も聞いていた。夢にまで見たホグワーツだ!あと数時間で憧れの学校に足を踏み入れることになる!

ハンナは外の風景に視線を移した。学校までどのくらいかかるのだろう?その時、コンパートメントの扉が音をたてて開き、ハンナは振り返った。

そこにいたのは不思議な雰囲気の女の子だった。年はハンナと同じくらい。黒髪を後ろで一本の三つ編みにしている。大きな瞳は深い茶色。どこか気品はあるが、独特な存在感を放つ少女だった。

少女はハンナを見て、申し訳なさそうに話しかけてきた。

「もしよければ、相席よろしいですか?他はもういっぱいなのです……」

ハンナは慌てて向かいの席を勧めた。

「もちろん、どうぞ!」

少女は優雅にゆっくりと席に座り、鞄を自分の隣に置いた。手に持っていたこうもり傘を席に立て掛ける。一つ一つの仕草が見とれるくらい上品で美しかった。

「あなたも一年生?私はハンナ・アボットよ」

ハンナが笑顔で自己紹介をすると、少女はフワリと笑い返した。

「私は、アメリア・ポピンズ。どうか、エイミーと呼んでください。一年生です」

「エイミーね。よろしく!私もハンナって呼んで。」

ハンナは心の中でホッとした。エイミーは穏やかで優しそうだ。最初の友達になれるかもしれない。

「ハンナ。ちょっと聞きたいんですが……」

「ん?何?」

「これから私たちが行くホグワーツとは、どんなところなのでしょう?何をするんでしょうか?」

ハンナはビックリした。ホグワーツの事を何も知らないらしい。もしかして……

「……エイミーって、マグル出身?」

「……まぐる?」

エイミーがキョトンと首をかしげた。ハンナはエイミーが何も知らない様子を見て、恐らくマグル出身だろうと見当をつけた。

「ホグワーツは学校よ。魔法の学校!これから私たちは魔法を学びに行くのよ!案内の先生から聞かなかったの?」

「案内の先生?」

「あら?確かマグルの家庭には案内の先生が来るってどこかで聞いたけど……」

エイミーは申し訳なさそうに肩を竦めた。

「実はよく分からないうちにお姉様に今日からホグワーツへ行くように言われて、駅に置いていかれたのです……」

「え?お姉さんに?え、でも、ダイアゴン横丁とか行かなかったの?」

「だいあごん横丁?」

「杖とか教科書とか、買わなかったってこと?」

エイミーはそばにあった鞄を手に持ち、ハンナに向かって突き出した。

「お姉様がこの中に必要なものは全て揃っているとおっしゃいました!」

そう言ってニッコリ笑った。ハンナはその言葉に大いに不安になった。エイミーの鞄は大きいが、とても教科書やら制服やら大鍋が入っているようには見えない。いろいろと話を聞こうとしたその時、車内販売がやって来たため、話は中断した。車内販売で売られているお菓子をエイミーは不思議そうに見つめ、少しだけ購入していた。その時、ポケットから財布を出したので少なくともお金は持っているようだ。ハンナは少しだけ安心した。しかし、エイミーは魔法界のお金を全く知らず、首をかしげていたため、ハンナがシックルやガリオンを一から説明し、一緒にお金を払った。

「これ、美味しいですね」

エイミーはハンナの心配をよそにニコニコしながら大鍋ケーキにパクついている。ハンナは蛙チョコレートの箱を開けながら、エイミーに再び質問をした。

「エイミー、あなたのお姉さんって魔女?」

「?いいえ。ナニーです」

「な、ナニー?」

「小さなお子さんの乳母や家庭教師をしています」

ハンナはわけが分からず、眉をひそめた。

「お姉さんがホグワーツに行けって言ったのよね?」

「はい。お姉様が私にはもう少し協調性が必要だとおっしゃって。今日突然ですよ!まったく!」

エイミーは少しだけ口を尖らせた。

「駅に一人で置いていかれて、9と4分の3番線に乗るように、とだけおっしゃって、すぐに帰ってしまったのです!ひどいわ!おかげで迷子になりました。だって、駅員の方に聞いても、9と4分の3番線なんて知らないとおっしゃるんだもの!」

「あぁ……、そうなるわよね……」

ハンナは苦笑いした。この子はなんとマグルの駅員に場所を聞いたらしい。それは駅員も困ったはずだ。ハンナが顔も知らぬ駅員に同情していると、信じられない言葉が耳に入ってきた。

「いろんなところを歩いて回って、ようやく9と4分の3番線への行き方を知っている、紳士的な鳩さんに会ったのです。あの鳩さんに教えてもらわなければ、危うく列車に乗り遅れるところでした。」

「…………ん?」

鳩さん?鳩さんって、あの飛ぶ鳩?

「鳩さん……?」

「はい。とっても優しくてきれいな羽根をもつ鳩さんでした!」

「……?」

もしかして、dove(鳩)という名前の親切な人なのだろうか?いやでも、きれいな羽根って……。ハンナが疑問で頭がいっぱいになったとき、突然コンパートメントの扉が開いた。

そこにいたのは今にも泣きそうな顔をした少年だった。

「突然ごめんね。ヒキガエルを見なかった?僕のペットがいなくなっちゃったんだ」

ハンナとエイミーは揃って首を横に振る。少年がますます泣きそうな顔をしたため、ハンナは慌てて声を掛けた。

「もしも見かけたら、ちゃんと捕まえておくわ」

「ええ。あなたのところへ戻るよう伝えておきますね」

エイミーの言葉はなんだかちょっとずれている気がしたが、少年は少しだけ安心したように頷き、その場を去っていった。

「ところで、ハンナ。ホグワーツの事についてもっと聞きたいんですが……」

「あ、うん。なんでも聞いて。私の知っていることだったら何でも教えるわ」

二人はお菓子を頬張りながらホグワーツの授業や寮の事、習う魔法についてたくさん話しこんだ。二人が話しこむうちに、列車は北へ北へとどんどん進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 




※ハンナ・アボット……本作の準主人公にしてヒロイン。苦労人。エイミーに出会ってしまったばかりに、今後胃薬を日常的に服用することになる。なんだかんだでエイミーの事を放っておけない。


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組み分け

 

 

 

 

車内で他の生徒達が制服に着替えているのを目にして、ハンナとエイミーも慌てて新しい制服に着替え始めた。エイミーが自分の鞄から、ハンナと同じような制服を出すのを見てハンナは安心した。

「そろそろ着くのでしょうか」

エイミーが不安そうに呟く。やがて列車は速度を徐々に落としていき、無事に駅へ到着した。

「イッチ年生はこっち!」

プラットホームに下りると、大きな声が聞こえそちらに目を向ける。そこには信じられないくらい大きな男性が一年生の誘導をしていた。

「エイミー、あそこだわ。行きましょう!」

ハンナとエイミーは二人で走って大男の元へ向かった。大男の周りにはハンナと同じ1年生らしき生徒達が不安そうにザワザワしていた。

大男についていくと、大きな湖の畔にでた。その湖の向こう側に信じられないくらい素敵な光景が見えた。

「うわぁ……」

ハンナは思わず声を漏らす。壮大な美しい城が星空のもと、光り輝いていた。

「大きいですねぇ」

エイミーも思わずといった感じで呟くのが聞こえた。

そこからは小舟に乗って湖を進む。ハンナはエイミーと、知らない男の子二人の四人で小舟に乗り込んだ。ハンナは小舟に乗る間もホグワーツ城から目を離せずうっとりと見つめていたが、エイミーは進んでいく湖の中をなぜだかじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

ようやく小舟が岸に着いた。巨大な扉が1年生を迎える。その扉の向こうには、緑色のローブを着た厳格そうな女性が待っていた。どうやらホグワーツの教師でマクゴナガル先生というらしい。マクゴナガル先生から祝辞や寮の説明を聞く間も、エイミーは何を考えているのかぼんやりとしていた。

マクゴナガルが準備のため一旦部屋を出ていく。生徒達は不安そうに顔を見合わせながらザワザワしていた。ハンナも組分けに何をするのが分からず、不安で心がいっぱいになった。そばでぼんやりしているエイミーに話しかけようとした瞬間、後ろの壁から突然ゴーストが出現したため、驚いて一瞬組分けのことが頭から離れた。ゴースト達は1年生を微笑ましげに見つめ、何事か話したあと消えていった。

「ホグワーツってすごいんですねぇ」

エイミーがニコニコしながらそう言ったとき、マクゴナガルが戻ってきた。マクゴナガルの案内で大広間に入ると、まず目に入ったのは四つのテーブルと上級生達。空中には何本もの蝋燭が浮かんでおり、上座には教師達が座って1年生を待っていた。

やがてマクゴナガルがボロボロの帽子を準備する。帽子が突然歌い出したため、ハンナは驚いて息をのんだ。帽子の歌によると、どうやら組み分けの儀式は帽子を頭に被るだけらしい。思ったよりも簡単な方法だったので、ハンナは安心した。

 

 

 

 

 

「ハッフルパフ!」

ハンナは自分の頭の上で帽子が叫ぶのを聞いて、胸を撫で下ろした。拍手が聞こえ、ハンナは帽子を脱ぐと歓声を上げているテーブルに向かっていった。

「ようこそ、ハッフルパフへ!」

上級生達が笑顔でハンナを歓迎する。ハンナもいろんな生徒と握手をしながら勧められた席に座った。

ハンナの後もどんどん組み分けは進んでいった。ハンナはまだ名前を呼ばれないエイミーを心配そうに見つめた。列車の中で話しただけだが、なんとなくどの寮もエイミーにピッタリとは思えなかった。そして、とうとうエイミーの順番が来た。

「ポピンズ・アメリア!」

エイミーはふらふらと歩いて、椅子に座った。帽子をゆっくりと被る。ハンナも身を乗り出してその姿を見つめた。

1分――――3分――――5分。かなりの時間がたったがまだ帽子は何も叫ばない。他の生徒達もザワザワし始めた。教師も不思議そうにエイミーを見つめる。エイミーは誰よりも長い間帽子を被っていた。

「組み分け困難者だ……。最長記録じゃないか?」

誰かが囁くのが聞こえて、ハンナは心配でたまらなかった。大丈夫だろうか?

10分近く経ったところで、帽子はようやく口(?)を開いた。

「グリフィン……いややっぱりレイブン……むしろスリザ……ええい、もう、ハッフルパフ!」

なんだか優柔不断な言葉を帽子は放ったが、最後の言葉にハッフルパフは歓声を上げた。エイミーはニッコリ笑うとハッフルパフの席にやって来た。

「エイミー、一緒でよかった!よろしくね」

ハンナも笑顔でエイミーを迎え入れ、隣の席へ誘った。

「ずいぶん長くかかってたわね?」

「はい。帽子さんはずいぶん悩んでいました」

ハンナが帽子に何を言われたのか聞こうとしたとき、エイミーの次の生徒の名前が呼ばれたため、思わず視線をそちらへ向けた。

「ポッター・ハリー!」

生徒達が顔を見合わせ、ヒソヒソと話し始める。ハンナも思わず背筋を伸ばし、帽子を被る少年を見つめた。

「あの方は……?」

エイミーが不思議そうにハンナに聞いてきたが、ハンナが答える前に帽子が

「グリフィンドール!」

と高らかに叫んだため、グリフィンドールの席から大歓声が上がった。ハッフルパフの席では上級生が少し残念そうにしていた。

「有名な方なのですか?」

エイミーがこっそりとハンナに聞いてきたため、ハンナも小さく頷いた。

「生き残った男の子よ」

「生き残った……?」

エイミーがもっと詳しく聞きたそうにしていたが、その時ちょうど組み分けが終了し、校長先生が立ち上がったため口を閉じた。校長先生は短い挨拶を終えて、すぐに歓迎パーティーが始まった。

歓迎パーティーは楽しかった。料理は美味しいし、他の1年生や上級生達ともたくさん言葉を交わした。とても温かい雰囲気に、ハンナはハッフルパフに入ることができて心から嬉しいと感じた。一方、エイミーも他の生徒達から話しかけられて、ニコニコと言葉を返していた。エイミーはかなり不思議な子だったから、ハンナは心配していたが、ハッフルパフの生徒はほとんど優しく穏やかな人が多いため、エイミーも無事に受け入れられたようで安心した。

その後は校長先生からの注意事項を聞き、校歌を歌ったあと、歓迎パーティーはお開きとなった。

 

 

 

 

 

ハッフルパフの寮は厨房の近くにあるらしい。厨房の廊下右手の陰にある樽の山が入り口になっていて、二つ目の列の真ん中の樽の底を2回程叩くと、寮への扉が現れた。

ハッフルパフの談話室は黄色と黒を基調とした温かな部屋だった。監督生から寮の説明や注意などを聞いたあとは、1年生はそれぞれ与えられた部屋へ向かった。ハンナとエイミーは同じ部屋だった。部屋には既に荷物が届いている。二人は挨拶もそこそこにベッドにもぐり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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騒がしい日々

 

 

 

「なんとおっしゃいましたかな……?」

セブルス・スネイプは目の前に立つ二人の人物を見て、聞き直した。一人は同僚でハッフルパフの寮監、スプラウト教授。もう一人はハッフルパフの1年生、ハンナ・アボットだった。二人とも顔色がよくない。ハンナ・アボットはスネイプに訴えを繰り返した。

「スネイプ先生。胃薬を調合してください。私とスプラウト先生に」

 

 

 

 

 

 

ハンナのホグワーツでの初めての日々は楽しかった。授業は面白いし、上級生は優しい。魔法を自分の手で扱えるなんてワクワクする。しかし――――

「私は何年もこの学校で様々な生徒を指導してきました。ほとんどの生徒は最初はなかなか魔法をうまく使えません。たくさんの努力をして、多くの知識を吸収し、理論を理解し、そしてはじめて魔法は成功するのです。ええ、そうですとも。マッチ棒を針に変えられなくても結構です。ほとんどの生徒は最初の課題にそれを行います。中には1回目で成功する生徒ももちろんいます。しかし、それはかなりの才能をもったほんの一部の生徒です。大体はマッチ棒をそのまま何も変えられず授業は終わってしまいます。」

マクゴナガルは大きなため息をついた。

「…………それなのに、ミス・ポピンズ。あなたはなぜ、針をすっ飛ばしてマッチ棒をハリネズミに変えてしまうのです?」

エイミーは可愛らしいハリネズミを手のひらにちょこんと乗せたまま、首をかしげた。

エイミーの不思議さはたちまちハッフルパフの生徒達に広まった。エイミーが自分の杖を振るうと必ずおかしな事が起きるのだ。何も呪文を唱えないのに、少し振っただけでマッチ棒がハリネズミに変身した。『呪文学』の授業では、なぜか教室中の机や椅子、フリットウィック先生や生徒達が浮かび上がった。『薬草学』の授業では植物に杖で触れただけなのに、植物があり得ない急成長を成し遂げた。その他数えきれないほどおかしな出来事が勃発し、その中心には必ずエイミーがいるのだ。

杖に触れなくても、エイミーは必ず不思議な行動を起こした。大広間に手紙を届けに来るフクロウに話しかけた時はギョッとした。

「まあ、素敵な瞳と羽根のフクロウさん。お名前はなんと言うの?コーンフレークはいかが?」

驚いた事にフクロウはエイミーの前に停まると、まるでエイミーに答えるかのようにホウホウと何事か鳴いていた。

「素敵なお名前ね!手紙を届けたあとなのね。今から休み?まあ、デートをするの?」

まるでエイミーとフクロウは話が通じ合っているように朝食の間話し込んでいた。ハッフルパフの生徒達は遠巻きに眺めていた。

また、ある時はハンナが寮に帰ってくると、部屋の中から大きな笑い声が聞こえた。エイミーの声だ。部屋を開けても、エイミーの姿は見えず、声が上から聞こえたため、ハンナは天井を見上げて驚いた。エイミーが本を手に持ち、笑いながらふわふわ浮いていたのだ。

「エイミー!?どうしたの!?」

「あら、ハンナ。お帰りなさい。ジャスティンから借りた本がとってもおかしくて、思わず浮いてしまいました。ああ、笑いが止まらないわ!」

なぜ笑うと空中に浮かぶのか、なぜ杖も箒もなしで空中に浮かべるのか。たくさんの疑問が浮かんだが、考えるのがもはや馬鹿馬鹿しくなりつつあった。その後、数分で笑いの波は治まり、エイミーはゆっくりとベッドに降りてきた。

 

 

 

 

 

「……胃が痛い」

ハンナはスネイプからもらった胃薬を口に放り込んだ。授業で何かがある度、ハンナがエイミーのフォローをしている。最近ではいろんな生徒や教師達にまでエイミーのお世話係のような目で見られている気がする。また、エイミーが何かを起こすと寮監のスプラウト先生もその対応に追われていた。二人は最近、エイミーの事でどうすればいいか話し合うようになり、やがてスプラウトの部屋でお茶を飲むようになり、教師と生徒というよりはお茶友達のような関係になっていた。

「ハンナ、大丈夫?」

「……うん」

同じハッフルパフの1年生、スーザン・ボーンズがハリネズミを撫でながら、ハンナの方を心配そうに見てきた。ちなみにこのハリネズミはエイミーによって変身させられた元マッチ棒である。ジョン・スミスと適当すぎる名前を付けられたハリネズミはハッフルパフ生徒の共通のペットとなっていた。

「あまり思い悩まないほうがいいわ。エイミーだったらなんだかんだで自分でどうにかするじゃない」

「……でも心配なの」

そう。別にハンナが何かをせずとも、エイミーは結局自分でやったことはどうにかして最後には始末をつけるのだ。不思議な事を起こす常習犯ではあるが、別に人に怪我をさせたり、迷惑はかけてはいない。起こした騒動で寮から多少減点されたが、今のところ罰則を受けたり、大きな減点はないのだ。

明日はハンナが何よりも心配な飛行訓練である。エイミーが箒に乗ると何が起きるか分からない。ハンナは明日の授業を思い、顔をますます青くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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