カードファイト!!ヴァンガードG IF 〜夜薔薇の先導者〜 (バンドリーマーV)
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ヴァンガードG
日下部アン


今までpixivのほうにウルトラマンばっかり投稿してましたが、今回はこっちで初めてのヴァンガード小説です。よろしくお願いします!

(……ウルトラマンを惑星クレイに行かせたことはあるので厳密には初めてじゃない……?)


リン「──世界の全てを、解放してみせる!」

 

とあるビルの上。

黒髪をツインテールにした少女が、黄金の騎士団を従え、虚無の侵略者を統率する少年と対峙していた。

 

リン「私の大切な、皆のために…!」

 

リン「私の大好きな、この世界のために!」

 

騎士の王《解放者 モナークサンクチュアリ・アルフレッド》の一撃が、侵略者の終末兵器《星輝兵 “Ω”グレンディオス》を光に飲み込み、消滅させていった。

 

 

カムイ:かつて、闇に覆われ、滅亡しかけた

世界を救った少女がいた…。

 

カムイ:その少女の名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

──3年後。

 

 

 

「……ん……」

 

都内にある、豪邸ではないがそれなりに立派な家。

 

1人の少女が、自室のベッドで目を覚ました。

 

「ふわぁ…」

 

あくびをする少女の名は日下部アン。

この物語の主人公であり、晴見中学校に通う中学2年生だ。黒髪のショートヘア。現在、この家に1人で生活している。

 

両親は共に海外勤務で長く家を空けており、母親代わりとして面倒を見てくれていた優しい姉も、昨年の高校卒業後は、多忙となり滅多に帰って来なくなってしまった。おかげで家の広さが逆に空しい。

 

アン「……姉さん……」

 

アンはベッドの脇に置かれた、姉妹二人が写った写真をしばらく眺め、やがてベッドから降りた。

 

 

 

 

 

夕方、晴見中学校。

 

「あの…日下部さん?」

 

アン「え…?」

 

放課後の教室で宿題をしていたアンは、声をかけられて顔を上げる。机の前にいるのは学級委員を務める女子生徒だった。

 

「えっと…進路希望調査の用紙、まだ提出してないよね?」

 

アン「……あ…すいません。まだ、書けて、なくて……」

 

「今週末までだから、早めに提出してね」

 

アン「は、はい…」

 

 

 

やりとりを終え、アンは勉強道具を片付けて帰路につこうと歩き始めた。

 

アン「はぁ…」

 

……学級委員は、アンと話す時やりにくそうな表情をしていた。

もう少し明るく人と接しなければならないと頭では分かっているのだが、元々引っ込み思案だった性格が、家族と会えない寂しさからさらに顕著になってしまい、学校には友達と言える人は1人もいなかった。

 

アン「あ…そうでした、夕飯のお買い物をしないと…」

 

校門から出たその時……

 

 

ドンッ!

 

アン「きゃっ!」

 

「…!おっと…」

 

ちょうど側にいた人とぶつかり、転んでしまった。

 

アン「いたた…」

 

起き上がると、ぶつかった相手である、20歳前後に見える、白い長髪の青年と目が合った。

 

「周りをよく見て歩け…大丈夫か?」

 

アン「す、すいません。大丈夫です…」

 

「…そうか、ならいい。気をつけろよ」

 

 

青年はそう言って歩き去った。

 

アン「……はぁ、ついてないですね……」

 

 

アンがため息をついていると、緑色の髪が特徴の女子生徒が走りよってきた。確か、隣のクラスの学級委員だったと思うが…。

 

 

「ちょっとあなた、大丈夫?おもいっきりぶつかってたけど…ケガしてない?」

 

アン「へ?…あ、はい。大丈夫です…」

 

「そっか、よかった」

 

アン「あ、はい…。じゃあ、私はこれで…」

 

 

アンが帰ろうと歩き出すと、

 

 

「あ、待って!」

 

アン「…?」

 

「カード落としてるよ。これ」

 

少女は地面から拾い上げた1枚のカードをアンに差し出した。

……裏地の柄になんとなく見覚えはあるが、自分のものではない。

 

アン「えっと、これ、私のじゃないです…」

 

「え、そうなの?一応手持ちのカード確認してみたら?」

 

アン「あ…すいません。カード自体、持ってなくて…」

 

「あ、そうなんだ。ごめんね。…もしかして、さっきぶつかってた人のかな」

 

アン「そ、そうかも…でも、もう行っちゃいましたし…」

 

「う〜ん…とりあえずあなたが持ってたら?さっきの人が落としたのに気づいたら、あなたを探すかもしれないしね」

 

アン「は、はぁ…」

 

 

とりあえず受けとるアン。

眺めていると、朧気な記憶がよみがえる。

1、2年前、まだ高校生だった姉が、テーブルに似たようなカードを並べて楽しそうな表情を浮かべていた。名前は、たしか……。

 

 

アン「あ、あの…」

 

「?なぁに?」

 

アン「このカード…えっと、ヴァンガード…?のこと、教えて、くれませんか…?その、えっと、持ち主に、返したいので…」

 

 

あと、姉がやっていたらしいこのゲームに興味がある、というのもある。

自分から人に頼み事をするなど滅多にないので、緊張しながら尋ねるアン。少女はニコリと笑って、

 

 

「そっか、私でよければ力になるよ!これからカードショップ行こうと思ってたんだけど、よかったらいっしょに行かない?カードもいっぱいあるしさ」

 

アン「い、いいんですか?」

 

「もちろん!あ、自己紹介まだだったね。私は安城トコハ。あなたは?」

 

アン「あ…はい。日下部アン、です…」

 

トコハ「アンちゃんね、よろしく!じゃあさっそく行こっか!」

 

アン「は、はい…」

 

 

明るく元気なトコハに、アンは戸惑いつつも着いて行った。

しばらくして、二人は目的地に到着した。

 

 

トコハ「ここがさっき話したカードショップ。カードキャピタル2号店だよ。──こんにちは〜!」

 

カムイ「お、トコハちゃん、いらっしゃい!」

 

 

ツンツンと髪が跳ねたバイト店員が二人を出迎える。エプロンの下に着ているのは、アンの姉が通っていた後江高校の制服だ。

続いて、二人と同じ晴見中学の制服を着た美少年が声をかけてくる。

 

 

シオン「やぁ、安城さん。そっちの子はお友達?」

 

トコハ「うん、さっき知り合ったばっかりだけどね。ヴァンガードのこと知りたいみたいだからいっしょに来てもらったんだ」

 

アン「く、日下部アンです。はじめまして…」

 

シオン「そっか。僕は綺場シオン。よろしくね」

 

カムイ「未経験者か、大歓迎だぜ!俺は葛城カムイ。ここのアルバイト店員だ。……ん?」

 

 

カムイはアンの顔をじっと見る。

 

 

アン「……?…な、なにか…?」

 

カムイ「……お前、どっかで会ったっけ?」

 

アン「い、いえ…」

 

カムイ「そっか…気のせいか?…まぁいいや」

 

トコハ「せっかく来たんだし、カムイさんや綺場にも色々教えてもらうといいよ。あ…でもヴァンガードそのものは知ってたんだっけ?さっきヴァンガードって言ってたし」

 

アン「あ、その…姉さんがやってたみたいで、たまにカードを並べてるの、見ていたので。でも、私自身は全然…」

 

トコハ「へぇ、お姉さんいるんだ」

 

 

話していると、入り口のドアが開き、メガネをかけた男性が入って来た。

 

シン「カムイくん、任せっきりにして申し訳ありません。やっと1号店の仕事が片付きましたよ」

 

カムイ「あ、お疲れ様です。アンちゃん、この人が店長の新田シンさんだ」

 

シン「どうも。この店ははじめてですか?」

 

アン「は、はい…」

 

シオン「ヴァンガード自体、やったことがないそうです」

 

シン「そうですか!ヴァンガードに興味を持ってくれるのは嬉しいですね!」

 

カムイ「そうだ。忘れないうちにこれ」

 

カムイはアンに一つの機械を渡した。

 

アン「これは…?」

 

カムイ「ファイターズカード、通称ファイカだ。ヴァンガード普及協会ってとこが発行しててな。ヴァンガードファイターを様々な形でサポートしてくれる組織だ。一番の目玉はVGネットワーク!ここで配信される『クエスト』をこなせば、ファイカのグレードを上げられる。グレードが上がれば色んな特典があるし、大きな大会への出場資格も得られるぞ」

 

アン「な、なるほど…」

 

 

 

トコハ「ルールは…やっぱり対戦形式のほうが覚えやすいよね。私とファイトしてみよう!」

 

アン「え?でも私、カードが…」

 

トコハ「まずはデッキの用意から、だね。最初にクランを決めよっか」

 

アン「くらん?」

 

トコハ「クランっていうのは、カードに描かれたキャラクターが所属する団体の名前。さぁ、こっちこっち」

 

 

トコハはアンを、カードが並ぶショーケースの前に連れて行った。

 

 

トコハ「とりあえず、この中で気になるカードがあったら、そのカードのクランでデッキを作ってみよう。まぁ最初は見た感じでOKよ」

 

アン「はい。えっと…」

 

 

ショーケースの中を眺めるアン。

騎士やドラゴン、天使や人魚…様々なイラストが目を引く。

そうしているうちに、1枚のカードが目に止まった。

 

アン「あ…」

 

夜空をバックに剣を構える女海賊。

 

 

トクン……

 

 

アン(え…?)

 

勝ち気そうな目をした、内気な自分とは正反対の少女。しかし何故か、アンは彼女に惹かれる気がした。無意識にカードに手を伸ばす──

 

 

トコハ「そのカードが気に入った?」

アン「あっ…は、はい」

 

我に返るアン。

 

トコハ「グランブルーのカードか…じゃあ、デッキ組んでみよう!」

 

トコハ、シオン、カムイのアドバイスを受けながら、アンはデッキを構築した。

 

トコハ「よし、完成ね!」

アン「できた…?」

トコハ「うん。このデッキが、あなたといっしょに戦う仲間よ」

アン「なかま…」

 

 

吸血鬼や亡霊などが集まるホラーなデッキだが、1から作ったためかなんとなく愛着が湧く。代金を払い、自分のものになったデッキを見つめるアン。

 

 

トコハ「じゃあ、百聞は一見にしかず!さっそくやってみようか!」

 

アン「は、はい…!」

 

 

二人はファイトテーブルにデッキを置く。

 

 

トコハ「まずはファーストヴァンガード。グレード0のカードを1枚選んで、真ん中のサークルに裏向きで置くの」

 

アン「えっと…これでしょうか」

 

お互い1枚のカードを場に伏せる。

 

トコハ「次に最初の手札。デッキからカードを5枚引くの。この時、一回だけ引き直しができるんだ。手札にグレード1、2、3が揃うようにするといいよ」

 

アン「えっと…大丈夫です」

 

トコハ「私は2枚引き直して…よし。ほんとはじゃんけんで先攻後攻を決めるんだけど、今回はティーチングだから私からね。それじゃあ、ヴァンガードの世界観?を説明しようか」

 

トコハは1枚のカードを見せながら話す。

 

トコハ「カードに描かれているのは、惑星クレイっていう別世界に生きる、様々な力を持ったユニット達。私達はこれから、惑星クレイに行って、ユニット達といっしょに戦うことになるの」

 

 

トコハはファイトテーブルにファイカをセットする。するとテーブルの画面に、惑星クレイの様々な風景を描いた画像が浮かび上がった。

 

 

トコハ「フィールドの選択だね。まぁこれは気分みたいなものだから、好きなの選んでみて」

 

アン「え〜っと…」

 

 

神殿や大草原、荒野や近未来的な都会の光景など様々な映像が見られたが、自分のデッキに合わせて海賊船の上に決めた。

 

 

トコハ「決まったね。さぁ、イメージして!」

 

アン「イメージ…」

 

カムイが横から口を出す。

 

カムイ「そ。ヴァンガードはイメージが全てだ。ファイトの展開、相手の心理。先をイメージできた者が、勝利を掴むんだ!」

 

アン「イメージ、イメージ…」

 

 

アンは言われるまま、目を閉じてイメージする。すると、アンとトコハは、惑星クレイの海に浮かぶ、夜空の下の海賊船に降り立っていた。

 

 

アン『わぁ…!』

 

トコハ『惑星クレイに降り立った私達は、何の力もない、か弱い霊体。だから力を貸してくれるユニットに…ライドする!』

 

 

いよいよヴァンガードファイトが始まる。

 

 

トコハ「いくよ!スタンドアップ・ヴァンガード!《春待ちの乙女 オズ》!」

 

 

トコハは伏せたカードを表にする。

そして彼女はイメージの中で、カードに描かれたユニットと同じ姿に変わった。

 

 

【《春待ちの乙女 オズ》G0 パワー5000】

 

 

トコハのクランはネオネクタール。大自然の力で戦うクランだ。

 

 

トコハ「さぁ、アンちゃんも!」

 

アン「は、はい…!──スタンドアップ・ヴァンガード!《お化けのぴーたー》…!」

 

 

【《お化けのぴーたー》G0 パワー5000】

 

 

アンのクランはグランブルー。惑星クレイの海を駆ける大海賊団だ。

 

 

トコハ「まずは私のターン!最初の1枚引いて…続けてライドフェイズ。自分のヴァンガードのグレードを、ライドすることで、1ターンにひとつずつ上げていくの。ライド!《萌芽の乙女 ディアン》!」

 

 

【《萌芽の乙女 ディアン》G1 パワー8000】

 

 

トコハは再びライドし、ユニットの姿を変える。

 

 

トコハ「ライドしたユニットの下にあるカードは『ソウル』って呼ばれて、カードの能力を使うためのコストとかに使われるの。ユニットの中には、固有の能力を持つカードもいる。《春待ちの乙女 オズ》は『先駆』っていう能力があってね。ライドされた時、自身をリアガードとしてコールできるんだ。アンちゃんのぴーたーも先駆を持ってるよ」

 

 

トコハはオズをリアガードサークルに移す。

 

 

トコハ「そしてメインフェイズ。ここで手札から、味方のユニットをコールできるんだ。コールできるのは、ヴァンガードと同じか、それ以下のグレードのカードだよ。今の私はグレード0、1のカードをコールできるってわけ。──コール、《萌芽の乙女 ディアン》!」

 

 

【《萌芽の乙女 ディアン》G1 パワー8000】

 

 

トコハ「リアガードは同じ縦列なら、前後の移動、入れ替えができるよ。先攻は攻撃できないから、これでターンはおしまい。次はアンちゃんの番だよ」

 

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ディアン) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

 

 

アン「は、はい!えっと、まず1枚引いて…ら、ライド!《パーティング・シェイド》!」

 

 

【《パーティング・シェイド》G1 パワー8000】

 

 

アン「えっと、ぴーたーをリアガードに移動して…手札から、《パーティング・シェイド》をコールします」

 

 

【《パーティング・シェイド》G1 パワー8000】

 

 

────────────────

アンの盤面

R(パーティング) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

 

 

アン「えっと…」

 

トコハ「もうコールしないなら、アタックフェイズ。カードを横向きにすることでアタックできるよ。攻撃する相手のユニットとパワーが同じかそれ以上なら、アタックが通るよ」

 

アン「じゃあ…ヴァンガードのパーティング・シェイドでアタックします」

 

トコハ「アタックするユニットの後ろにいるユニットをいっしょに横にすると、そのパワーをプラスできるよ。それを『ブースト』っていうの。パーティング・シェイドにぴーたーのブーストをつけると、8000+5000で13000になるね」

 

アン「なるほど…じゃあ、ブーストします」

 

トコハ「ヴァンガードがアタックする時には、ドライブチェックっていうのがあるの。デッキの一番上をめくってみて」

 

アン「あ、はい」

 

 

アンはドライブチェックを行う。

 

 

【《ナイトスピリット》(☆)】

 

 

トコハ「お、トリガーユニットだね!上のところにマークがあるでしょ?ドライブチェックでこれが出ると、効果が発動するの。トリガーは全部で四種類。今アンちゃんが引いたのは、クリティカルトリガー。クリティカル…相手に与えるダメージの数をひとつ増やせるの」

 

アン「ダメージが倍になるんですか?」

 

トコハ「そう!あと、全部のトリガーに共通する効果として、そのターン中、ユニット1体のパワーを+5000できるの。二つの効果は同じユニットに乗せても、別々でもOKよ」

 

アン「なるほど…」

 

トコハ「そうね…この場面だと、クリティカルをヴァンガード、パワーはまだ攻撃してないリアガードに…って感じかな」

 

アン「そっか…じゃあ、そうします」

 

 

アタックがヒットし、トコハは2ダメージを受ける。

 

 

トコハ「ダメージを受けたら、デッキの上からダメージの数だけ、このダメージゾーンにカードを置くの。6ダメージになったら負けだよ。この時、ドライブチェックと同じようにダメージチェックをして、トリガーが出たら同じように効果が発動するわ」

 

 

トコハはダメージゾーンにカードを置く。

一枚目はトリガーなし。二枚目は……

 

 

【《ウーント・タナップ》(引)】

 

 

トコハ「お、ドロートリガー!これが出たら、デッキから1枚引くことができるの。それから、ヴァンガードのディアンにパワー+5000するよ」

 

アン「う…」

 

トコハ「ちなみに、リアガードはアタックがヒットされると、こっちのドロップゾーンに退却するわ。普通、ここのカードは使えなくなるんだけど…アンちゃんのグランブルーは、ドロップゾーンのカードを使った面白い戦い方をするんだよね〜。まぁ詳しいことはまた後で」

 

アン「あ、はい。じゃあ…リアガードのパーティング・シェイドでアタックします」

 

トコハ「攻撃を全て受けるわけじゃない。手札からヴァンガードと同じかそれ以下のグレードのカードをガーディアンとしてコールできる。私は《ガーデナー・エルフ》でガード!」

 

 

【《ガーデナー・エルフ》G1 シールド5000】

 

 

トコハ「ガードの数値は横にあるやつね。これとヴァンガードのパワーの合計が、アタックしてきたユニットより高ければ、ガード成功よ」

 

────────────────

アンの盤面

R(パーティング) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ディアン) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

トコハ「……と、これがファイトの一連の流れよ。わかんないところある?」

 

アン「あ、いえ。だいたい覚えられたと思います」

 

トコハ「そっか!じゃあここからが本番。行くよ!」

 

再びトコハのターン。

 

トコハ「ライド!《開花の乙女 ケラ》!さらに《グレースナイト》をコール!」

 

 

【《開花の乙女 ケラ》G2 10000】

【《グレースナイト》G2 9000】

 

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(ケラ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

トコハ「ディアンのブースト、ケラでアタック!」

 

アン「が、ガードは…しません」

 

トコハ「ドライブチェック…トリガーなしか。続けて、オズのブースト、グレースナイトでアタック!」

 

アン「ナイトスピリットで、ガードします!」

 

トコハ「ターンエンド」

 

────────────────

アンの盤面

R(パーティング) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(ケラ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

アン「わ、私のターン…《大幹部 ブルーブラッド》にライドします!それから、《腐蝕竜 コラプトドラゴン》をコール!」

 

【《大幹部 ブルーブラッド》G2 10000】

【《腐蝕竜 コラプトドラゴン》G2 9000】

 

────────────────

アンの盤面

R(コラプト) V(ブラッド) R(空き)

R(パーティング) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

アン「ぴーたーのブーストをつけて、ブルーブラッドでアタックします!」

 

トコハ「ノーガード」

 

アン「ドライブチェック…トリガーなしです」

 

トコハ「ダメージチェック。トリガーなしだよ」

 

アン「じゃあ次は、パーティング・シェイドのブースト、コラプトドラゴンでアタックします!」

 

トコハ「《メイデン・オブ・ディモルフォーセ》でガード!」

 

【《メイデン・オブ・ディモルフォーセ》シールド10000】

 

アン「ターンエンド!」

 

────────────────

アンの盤面

R(コラプト) V(ブラッド) R(空き)

R(パーティング) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(ケラ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

 

 

 

シン「──声に熱が入ってきましたね、彼女」

カムイ「はい」

 

 

 

トコハ「いくよ、アンちゃん!──煌めく蕾よ、今こそ花開け!《ラナンキュラスの花乙女 アーシャ》に、ライド!」

 

 

【《ラナンキュラスの花乙女 アーシャ》G3 11000】

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(アーシャ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

 

トコハ「ディアンのブースト、アーシャでヴァンガードにアタック!」

 

アン「ノーガードです」

 

トコハ「グレード3はドライブチェックが二回あるんだ。ツインドライブ!ファーストチェック…ノートリガー。セカンドチェック…」

 

 

【《メイデン・オブ・ディモルフォーセ》☆】

 

 

トコハ「ゲット!クリティカルトリガー!パワーはグレースナイトに!」

 

アン「あっ…!」

 

アンに一気に2ダメージが通る。

 

アン「ううっ…ダメージチェック…!」

 

 

【《悲しき銃声 ナイトフレア》引】

 

 

アン「ドロートリガー、パワーはヴァンガードに!」

 

トコハ「続けて、オズのブースト、グレースナイトでアタック!」

 

アン「《お化けのりっく》で、ガード!」

 

 

【《お化けのりっく》シールド10000】

 

 

トコハ「ターンエンド!」

 

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(アーシャ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(コラプト) V(ブラッド) R(空き)

R(パーティング) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

 

アン「よし…!」

 

トコハ「どう?」

 

アン「え?」

 

トコハ「そろそろ楽しくなってきたんじゃない?ヴァンガード」

 

アン「あ…」

 

 

……言われて初めて、アンは自分が笑みを浮かべていることに気がついた。

 

 

アン「たし、かに…こんなに笑ったの、久しぶりです」

 

 

アン「──楽しい…!」

 

トコハ「そっか…よかった!」

 

アン「私も行きますよ!」

 

トコハ「うん!」

 

 

 

アン「ライド…!《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》!」

 

 

【《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》G3 11000】

 

 

その時のアンは、カードのイラストを思わせる強気な笑みを浮かべていた。

 

トコハ(さっきまでとは別人みたい…)

 

アン「よ〜し…!…?」

 

 

アンはデッキとは反対側に置かれた、数枚の銀色のカードに目を止めた。

 

 

トコハ「あ、気づいた?それはジェネレーション。時空を越えて現れる、もう一つの未来!」

 

アン「未来…」

 

トコハ「手札からグレードの合計が3になるようにドロップゾーンに捨てて、ジェネレーションゾーンの解放を宣言すれば、そこのカードが使えるよ」

 

アン「……よし…!」

 

 

 

アン「ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト《不死竜 ボーンドラゴン》G3】

 

 

アン「夜星の光よ照らせ…!この手で斬り開く未来を!ストライド…ジェネレーションッ!」

 

 

 

イメージの世界に現れるのは、時空の彼方からやって来た未来の大海賊。

 

放たれた一撃はアーシャを飲み込み、船上は大爆発に包まれた。

 

────────────────

トコハの盤面

R(グレース) V(アーシャ) R(空き)

R(オズ) R(ディアン) R(空き)

 

ダメージ6

────────────────

 

トコハ「うっそ、ダブルクリティカルぅ!?負けたぁ!!」

 

アン「か、勝った…?」

 

トコハ「負けちゃったけど、楽しかったよ。ありがとう、アンちゃん」

 

アン「──はい!こちらこそ!」

 

二人は握手を交わした。

 

 

 

カムイ「よ〜し、次は俺と…ん?」

 

カムイは何かに気づく。

 

カムイ「ちょっとごめんな。あっちでお客さんが困ってるみたいなんだ」

 

カムイが歩み寄る方には、前髪が見事にカールした赤髪の少年が立っていた。

 

 

カムイ「よう!お前も見ない顔だな。ここ、初めてか?」

 

「え…お店の、人?」

 

カムイ「あぁ、バイトな。カード探しに来たのか?」

 

「いや、別に…。ていうか、こういうのよくわかんねぇし…」

 

カムイ「?ヴァンガードやってるんだろ?デッキ握りしめてるし」

 

「いや…これ、いつの間にか下駄箱に入ってて…」

 

カムイ「下駄箱!?なんでそんなところに?」

 

「いや、俺に聞かれても…」

 

 

 

トコハ「あれ、新導?」

 

「ん?安城…」

 

シオン「君は確か、安城さんと同じクラスの…新導クロノくん、だったかな」

 

クロノ「お、おう…」

 

アン「…………」

 

新導クロノ。

目付きが悪く無愛想なことから、学校では近づき難く思われており、良くない噂も広がっているが、こうして目の前で見るとそれほど悪い人には見えない、というのがアンの印象だ。

 

 

クロノ「…ん?なんだ?」

 

アン「あっ、いえ…」

 

カムイ「ふむふむ、こいつも初めてか。なら…よし!」

 

 

カムイは何やら思いついたようだ。

 

 

カムイ「アンちゃん、こいつとファイトしてみないか!」

 

アン「え?」

クロノ「は?」

 

驚く二人。

 

アン「え…私!?」

 

カムイ「二人ともヴァンガードは今日が初めてだし、ちょうどいいだろ?」

 

クロノ「ちょ、ちょっと待てよ、なんでそうなるんだ!?」

 

カムイ「いいからやってみろって。絶対楽しいから、な?アンちゃんはどうだ?」

 

アン「わ、私は彼さえよければ…」

 

カムイ「よし、そうこなくっちゃな。えっと、クロノだったか?」

 

クロノ「あ、はい…」

 

カムイ「俺はクロノにルール教えるから、アンちゃんはデッキ調整でもしてみなよ」

 

アン「は、はい!」

 

クロノ「なんなんだ…」

 

 

《続く》

 

 

 




──と、いうわけで1話でした。序盤はゲーム版準拠が多いかもしれません。まぁどっちも流れは同じなんですけどね。

あらすじで書いた通り、無印編はここに設定書くだけに留めます。

アンの姉である日下部リンは、後江高校で櫂たちと共にヴァンガードやってました。
ロックオンビクトリーの後江ルート準拠なので、ヴァンガード教わったのは櫂です。そんなかんなで段々ときめき始めたり。
両親が海外勤務のため、アンの母親代わりもしてました。

リンクジョーカー倒したのはリンですが、シードはそれ以前にヴォイドに勝った上にPSYクオリアを持っているアイチのほうに行っちゃったので、レギオンメイト編は大体原作通り。
リンは本来自分に宿るはずだったシードがアイチに宿ってしまったことに責任を感じ、カトルナイツに加入して尊敬、恋慕する櫂と敵対することになってました。

最終的には原作通り和解。

リンは最終話の卒業式の日に櫂に告白して、付き合うことに。今は遠距離恋愛中……みたいな感じのを書こうと思ってました。

……これだけ書いたらなんとかなりそうに見えますけど、書いてない部分で結構無理のある設定が多過ぎて…自分の発想力ではいい流れが思い付かず、結局ここの設定だけに留めることになりました。申し訳ありませんが、この短い設定を元に脳内補完して頂けると。

櫂ミサやら櫂エミなんてタグがあるんだから、櫂リンがあったってなんの問題もあるまいて。…ないよね?

では、これからよろしくお願いします!


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新導クロノ

第2話、よろしくお願いします!


カムイ「クロノ、ルールはバッチリだよな」

クロノ「まぁ…どうにか」

カムイ「よし、準備オッケーだな!さっそくファイトしてみろよ」

 

カードキャピタル2号店では、日下部アンと新導クロノのファイトが始まろうとしていた。

 

アン「えっと…日下部アンといいます。よろしくお願いします」

クロノ「……新導クロノだ。よろしく」

 

じゃんけんで先攻後攻を決め、まずはフィールドの選択となる。

 

アン「新導くん、どうぞ…」

クロノ「別にどこだって…ん?」

 

フィールドを選んでいたクロノの手が止まる。

 

カムイ「そこにするか?そこは惑星クレイの大陸、ダークゾーンのとある遺跡だ。さぁ、イメージしてみろ!」

 

クロノ「イメージ…」

 

カムイ「さぁ、スタートだ。二人ともがんばれよ!」

 

アン「はい!では…」

クロノ「おう」

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

 

二人はダークゾーンの遺跡に降り立ち、姿を変える。

 

 

アン「《お化けのぴーたー》…!」

 

【《お化けのぴーたー》G0 パワー5000】

 

 

クロノ「《ガンナーギア・ドラコキッド》!」

 

【《ガンナーギア・ドラコキッド》G0 パワー5000】

 

 

シオン「『ギアクロニクル』…?」

トコハ「初めて見るクラン…」

 

 

アン「えっと、私からでしたね。ドロー…ライド、《パーティング・シェイド》!」

 

【《パーティング・シェイド》G1 パワー8000】

 

アン「ぴーたーを移動して…ターン終了です」

 

 

クロノ「俺の番か…ドロー…ライド!《メーザーギア・ドラゴン》!ガンナーギアは移動する」

 

【《メーザーギア・ドラゴン》G1 パワー8000】

 

クロノ「ガンナーギアのブースト、メーザーギア・ドラゴンでアタック」

 

アン「ノーガードです」

 

クロノ「えっと、ドライブチェック…」

 

【《ラッキーポット・ドラコキッド》引】

 

クロノ「お…えっと、なんだったか…」

 

カムイ「ドロートリガー。1枚ドローして、ユニット1体にパワー+5000だ」

 

クロノ「あぁ…そうだった。じゃあパワーはメーザーギア・ドラゴンに」

 

アンに1ダメージが入る。

 

クロノ「ターンエンドだ」

 

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(メーザー) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

アン「私のターン…《大幹部 ブルーブラッド》にライドして、アタックします!」

 

クロノ「ノーガードだ」

 

アン「ドライブチェック」

 

【《ナイトスピリット》(☆)】

 

アン「クリティカルトリガー!」

 

クロノ「ゲッ…!?」

 

クロノに一気に2ダメージが通る。

 

クロノ「ぐうっ…!ダメージチェック…お?」

 

【《スチームメイデン ウルル》治】

 

トコハ「お、ヒールトリガー!」

シオン「ダメージ1回復だね」

クロノ「ふぅ…」

アン「ターンエンドです」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(メーザー) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(ブラッド) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

クロノ「俺のターン…ライド!《スモークギア・ドラゴン》!」

 

【《スモークギア・ドラゴン》G2 10000】

 

クロノ「ガンナーギアのブースト、スモークギア・ドラゴンでアタック!」

 

アン「ノーガード!」

 

トリガーはなく、アンに1ダメージ。

 

クロノ「ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(スモーク) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(ブラッド) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

アン「私のターン…!」

 

アンは手札のキーカードに手をかける。

 

アン「ライド…!《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》!」

 

【《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》G3 11000】

 

 

クロノ「…!」

 

アン「《海賊剣士 コロンバール》、《お化けのとみー兄弟》をコール!」

 

【《海賊剣士 コロンバール》G2 9000】

【《お化けのとみー兄弟》G1 7000】

 

 

アン「ぴーたーのブースト、ナイトローゼでアタックします!」

 

クロノ「ノーガードだ…!」

 

アン「ツインドライブ!」

 

【《悲しき銃声 ナイトフレア》引】

 

アン「ドロートリガー、パワーはコロンバールに!」

 

クロノに1ダメージ。

 

クロノ「ぐううっ…!」

 

【《腹時計付きのギアラビット》醒】

 

カムイ「スタンドトリガーか…」

 

クロノ「パワーはヴァンガードに…!」

 

アン「とみー兄弟のブースト、コロンバールでアタック!」

 

クロノ「《スチームバトラー ダダシグ》で、ガード!」

 

アン「ターンエンドです」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(スモーク) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(コロンバール) V(ローゼ) R(空き)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

 

 

クロノ「──つ」

アン「え?」

 

クロノ「始めたからには、勝つッ!」

 

無気力だったクロノの瞳に、熱い闘志が宿り初めていた。

 

クロノ「ドロー!……!」

 

しかし、突然固まった。

 

クロノ「…………」(汗)

アン「どうか…なされましたか?」

クロノ「あ、いや…」

 

クロノ「こ…この…ドラコンに、ライド、する」

カムイ「んだそりゃあ、カード名は性格にはっきりと宣言するもんだ!」

クロノ「ぐっ…!」

 

クロノ「だぁ〜〜もうッ!ライドッ!《クロノジェット・ドラゴン》!」

 

 

【《クロノジェット・ドラゴン》G3 11000】

 

 

アン「……クロノ?」

クロノ「…言うな…」

トコハ「あ〜自分の名前だから恥ずかしかったんだ〜?」(ニヤニヤ)

クロノ「うっせぇぞ安城…!えっと、次は…」

 

クロノはGゾーンに目を止める。

 

 

 

《我は、汝の魂より生まれし新たなる未来。時空を越えて、自らの望む世界を導け…ストライド・ジェネレーション…!》

 

 

 

クロノ「よし…!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

【コスト《スチームナイト ウバル・トゥトゥ》】

 

クロノ「今こそ示せ…我が真に望む世界を!ストライド…ジェネレーションッ!」

 

アン「…!」

 

クロノ「《時空竜 ロストエイジ・ドラゴン》!」

 

 

【《時空竜 ロストエイジ・ドラゴン》G4 11000+15000→26000】

 

 

クロノ「更にコール!《スモークギア・ドラゴン》、《ツインメーザー・ドラゴン》、《ブラスウイング・ドラゴン》!」

 

【《スモークギア・ドラゴン》G2 10000】

【《ツインメーザー・ドラゴン》G2 9000】

【《ブラスウイング・ドラゴン》G1 7000】

 

────────────────

クロノの盤面

R(ツイン) V(ロスト) R(スモーク)

R(空き) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ2

────────────────

 

クロノ「行くぜッ!ツインメーザー・ドラゴンでアタック!スキルでパワー+3000!」

 

アン「ナイトフレアで、ガードします!」

 

【《悲しき銃声 ナイトフレア》シールド5000】

 

クロノ「ガンナーギアのブースト、ロストエイジ・ドラゴンでアタック!」

 

アン「ノーガードです!」

 

クロノ「ドライブチェック!…3回か。1枚、2枚、3枚…!」

 

 

【《スチームバトラー ダダシグ》☆】

 

 

クロノ「よし、クリティカルトリガー!パワーはスモークギアに、クリティカルはロストエイジ・ドラゴンに!」

 

アン「!きゃっ…!」

 

アンに2ダメージ。ダメージトリガーはない。

 

クロノ「さらにロストエイジ・ドラゴンのスキル!アタックがヒットした時、相手のリアガード1体を、相手のデッキの下に山札の下に置く!」

アン「え…!?」

クロノ「コロンバールを山札の下に!」

 

トコハ「山札の下に…!?」

シオン「これがギアクロニクルの特性、ということか…興味深いね」

 

クロノ「まだだ!ブラスウイング・ドラゴンのブースト、スモークギア・ドラゴンでアタック!」

 

アン「えっと…!ナイトスピリットとナイトフレアで、ガードします!」

 

クロノ「くそっ、攻めきれなかったか…ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(ツイン) V(クロノ) R(スモーク)

R(空き) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ2

────────────────

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(ローゼ) R(空き)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ4

────────────────

 

アン「私のターン、ですね…。こちらも行きます。ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト《腐蝕竜 コラプトドラゴン》、《海中散歩のバンシー》】

 

 

アン「夜星の光よ照らせ…!この手で斬り開く未来を!ストライド…ジェネレーションッ!」

 

 

時空を越え現れるのは、あらゆる時代で暗躍を繰り返す海賊の王…。

 

 

アン「《暗躍する海賊王 バンデッドラム》!」

 

 

【《暗躍する海賊王 バンデッドラム》G4 11000+15000→26000】

 

 

アン「ナイトローゼのスキル!ドロップゾーンから1枚コールして、パワー+2000します!」

 

クロノ「復活!?マジかよ…!」

 

アン「《腐蝕竜 コラプトドラゴン》をコールします!」

 

クロノ「!さっきストライドのコストにしてた…!このためもあったのか…!」

 

アン「コラプトドラゴンは、ドロップゾーンから登場した時、パワー+3000です!」

 

【《腐蝕竜 コラプトドラゴン》G2 9000+2000+3000→14000】

 

カムイ「ドロップゾーンのガードを巧みに操る、それがグランブルーの特性だ」

クロノ「マジっすか…」

カムイ「そうそう、俺がヴァンガード始めるきっかけになった奴も、グランブルー使ってた」

トコハ「へぇ、初耳!」

 

アン「さらに、《海賊剣士 コロンバール》をコール!」

 

【《海賊剣士 コロンバール》G2 9000】

 

────────────────

アンの盤面

R(コロンバール) V(ローゼ) R(コラプト)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ4

────────────────

 

アン「いざ、参ります!とみー兄弟のブースト、コロンバールでヴァンガードにアタックします!──コロンバールのスキル発動です!コストを支払い、ドロップゾーンから《海中散歩のバンシー》をコールします!」

 

【《海中散歩のバンシー》G1 6000】

 

アン「さらに《海中散歩のバンシー》のスキルで、1枚ドローです!」

 

────────────────

アンの盤面

R(コロンバール) V(バンデッド) R(コラプト)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(バンシー)

 

ダメージ4

────────────────

 

クロノ「い、一気に埋めてきやがった…!が、ガード!《スチームメイデン ウルル》!」

 

アン「ぴーたーのブースト、バンデッドラムでアタックします!」

 

クロノ「ノーガード…!」

 

アン「トリプルドライブ…!1枚目、二枚目…!」

 

【《ナイトスピリット》☆】

 

アン「クリティカルトリガー!パワーはコラプトドラゴン、クリティカルはヴァンガードに!三枚目…!」

 

【《荒海のバンシー》☆】

 

クロノ「なっ…!?」

シオン「ダブルクリティカル!」

トコハ「引いた!?」

 

アン「パワーはコラプトドラゴン、クリティカルはヴァンガードに!」

 

クロノ「ぐっ…うぁあああッ!?」

 

クロノに、一気に3ダメージが入る…!

 

トコハ「一気に3ダメージ!」

カムイ「しかもダメージトリガーなし…強化されまくったコラプトドラゴンも残ってる。クロノには厳しい展開だな…」

 

アン「これで、決めます…!海中散歩のバンシーのブースト、コラプトドラゴンでアタックします!」

 

パワー30000の一撃がクロノに迫る…!」

 

 

 

 

 

クロノ「──まだだぁッ!ガード!《引っ込み思案のギアレイヴン》ッ!」

 

 

【《引っ込み思案のギアレイヴン》守護者】

 

 

アン「…!」

トコハ「完全ガード!」

シオン「持っていたのか…!」

 

クロノ「これでこのアタックは通らねぇ…!」

アン「た、ターンエンドです…!」

 

────────────────

アンの盤面

R(コロンバール) V(バンデッド) R(コラプト)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(バンシー)

 

ダメージ4

────────────────

────────────────

クロノの盤面

R(ツイン) V(クロノ) R(スモーク)

R(空き) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ5

────────────────

 

クロノ「行くぜ…!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

【コスト《クロノジェット・ドラゴン》】

 

クロノ「今こそ示せ…我が真に望む世界を!ストライド…ジェネレーションッ!」

時空の扉が開く…!

 

クロノ「《時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン》ッ!!」

 

【《時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン》G4 11000+15000→26000】

 

クロノ「これで、終わりだッ!いっけぇえええええええええッ!!」

 

ミステリーフレア・ドラゴンが放った光が、ナイトローゼを飲み込んだ…!

 

 

 

 

────────────────

アンの盤面

R(コロンバール) V(バンデッド) R(コラプト)

R(とみー兄弟) R(ぴーたー) R(バンシー)

 

ダメージ6

────────────────

 

アン「ダメージ、6…。あはは…負けちゃいました」

クロノ「…勝った?…勝ったんだ…!」

 

クロノは普段の無気力さからは想像もつかない、嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

 

カムイ「すっげぇいいファイトだったぜ!」

トコハ「二人とも初心者とは思えないほど、様になってたよね…!」

シオン「きっと面白いファイターになるね、彼らは」

 

 

アン「ありがとうございました。楽しかったです…!」

クロノ「あぁ…。俺も、こんなに熱くなったの、久しぶりだ。…また、ファイトできるか」

アン「はい、喜んで!」

 

 

 

──それが、クロノとアンの出合いだった。

 

 

《続く》

 

 




カムイ「二人ともやるじゃねえか!アンちゃん、クロノ!」

アン「あ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします…!」

クロノ「…どうも、よろしくお願いします」

カムイ「んだよ固いなぁ…これから何かヴァンガードで分からない事があったら、何でも俺に聞いてくれよな!うし、早速クエストにでも挑戦してみるか!」

クロノ/アン「「クエスト…?」」


次回「綺場シオン」




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綺場シオン

ちょっとクロスオーバーありです。


 

アン「こんにちは〜…」

 

つぐみ「いらっしゃいませ!──あ、いらっしゃい、アンちゃん!」

 

羽沢珈琲店。

近所の商店街にあるこの喫茶店は、アンの行き付けの店である。

 

アン「紅茶とチーズケーキ、お願いします」

 

つぐみ「かしこまりました!」

 

看板娘の羽沢つぐみ。一つ年上の彼女とは、店に通ううちに顔見知りになった。

 

アン「いただきます…ん〜〜♥️」

 

紅茶とケーキを味わっていると、つぐみは近くに来て笑みを向ける。

 

つぐみ「いつも来てくれてありがとう!」

 

アン「いえ、今日も最高に美味しいですぅ…!」

 

つぐみ「ふふ、よかった」

 

ケーキを口に運び至福の表情を浮かべるアンを見て、つぐみも嬉しそうだ。

 

つぐみ「でも、安心したな」

 

アン「え?」

 

つぐみ「アンちゃん、最近元気ないな〜って思ってたから。お姉さんが大学行ってからずっとそんな調子だったし…けど、元気出たみたいでよかったよ」

 

アン「あ、あはは…ご心配おかけしました」

 

つぐみ「ううん、気にしないで。何か楽しいことでもあった?」

 

アン「あ、はい!これなんですけど…」

 

アンがハンドバッグからデッキケース兼用のファイカを取り出そうとしていると、店の入り口のドアが開いた。

 

つぐみ「あ、ちょっとごめんね。──いらっしゃいませ!」

 

「あぁ」

 

来店したのは、20歳前後に見える、白い長髪の青年だった。

 

アン(…あれ?あの人…どこかで…)

 

見覚えがあるような気がして、記憶を探るアン。席についた青年はメニューに目を通し、つぐみに声を掛ける。

 

「ブラックコーヒーを頼む」

 

つぐみ「かしこまりました!」

 

つぐみは注文を受けて店の奥に向かう。

 

アン(…あ)

 

それからしばらく考えて、やっと青年のことを思い出したアンは、彼に声を掛けた。

 

アン「あ、あの…」

 

「…ん?」

 

アン「あの…この間、校門のところでぶつかった方…です、よね?」

 

「ん?…あぁ、あの時の生徒か。何か用か?」

 

アン「これ…あの時、落としてましたよ」

 

アンはあの日に拾った1枚のカードを取り出し、青年に差し出した。青年は目を見開く。

 

(……偶然か?いや……)

 

アン「えっと…」

 

「…!すまない。感謝する…」

 

つぐみ「お待たせしました!…って、お知り合いだった?」

 

アン「あ、えっと、知り合いという程でも…」

 

「…………」

 

 

 

 

 

数日後、カードキャピタル2号店。

 

トコハ「あ、来た来た!アンちゃん!」

 

アン「あ…こんにちは、安城さん」

 

トコハ「ちょうどよかった!紹介したい子がいるんだ。クミちゃ〜ん!」

 

「は〜い、よんだ〜?」

 

呼ばれて来たのは、タレ目でどこかふわふわした印象の少女だ。

 

トコハ「岡崎クミちゃん。私と新導と同じクラスなんだ。クミちゃんもヴァンガード始めたばっかりだから、お互い励みになるかなって」

 

クミ「トコハちゃんからお話聞いてるよ〜。よろしく〜」

 

アン「は、はい。よろしくお願いします、岡崎さん」

 

クミ「クミでいいよ〜」

 

トコハ「私のこともトコハでいいから!」

 

アン「え?あ、は、はい…。と…トコハ、ちゃん…クミ、ちゃん…?」

 

トコハ「うん、うん!──よし!今日はい〜っぱいファイトするぞ〜!」

 

 

 

?「そういうことなら、俺達が相手になってやるぜ〜ッ!!」

 

「「「?」」」

 

突然、三人の少年がアン達の前に現れた。

 

アン「えっと…?」

トコハ「はぁ、またこいつらか…」

 

「俺はこのショップNo.3ファイター!運命の騎士、多度ツネト!」

 

「世界を調べ尽くす頭脳!山路カル!」

 

「自然大好き、長良ケイ!」

 

「三人そろって…!」

 

「「「チーム・トリニティドラゴン!」」」

 

名乗りと共に、三人は戦隊よろしく謎のポーズを決めた。

 

アン「……へ?」

トコハ「……ねぇねぇアンちゃん、今日はクミちゃんとファイトしてみなよ!」

クミ「うんうん!ぜひお願いしたいなぁ〜」

 

ツネト「せっかくの名乗りをスルーすんなーッ!!……とにかくそこのお前!」

 

アン「わ、私ですか?」

 

ツネト「お前がカムイさんが言ってた新人ファイターだな!どれ程の腕前か!俺が試してやるぜ!ファイトだっ!」

 

アン「…は、はぁ…」

 

 

 

10分後。

 

シオン「勝った方がこのカードを届け、クエストを達成する…それでいいね?」

 

クロノ「おもしれぇ、やってやるぜ!!」

 

クロノとシオンが来店した。

 

カムイ「お、いらっしゃい!二人か」

 

シオン「はい、実は…ん?」

 

 

 

ツネト「ヨユーのノーガード♪」←ダメージ2

 

アン「ドライブチェック…あ、トリプルクリティカル」

 

ツネト「なぁにぃいいいいいいいいッ!?」

 

ダメージ6。

 

アン「あ…勝っちゃいました」

 

ツネト「負けたぁああああああああッ!!」

 

「「つ、ツネトさぁああああん!!」」

 

アン「ありがとうございました…あれ、新導くん、綺場くん?」

 

クロノ「あ、日下部…ん?トリなんとかも一緒か」

 

ツネト「トリニティドラゴンだってんだろがッ!!」

 

シオン「やぁ、日下部さん、安城さん、岡崎さん」

 

 

 

なんでも、カードを届けるクエストを受け、二人が同じクエストを受けてしまったため、ファイトして勝った方が届けることにしたらしい。

 

シオン「ここは惑星クレイ…。ユナイテッドサンクチュアリの、優美で壮麗な白亜の城」

 

シオンが選択したフィールドに、イメージの世界へ降り立つ二人。

 

シオン「僕のクランは、ロイヤルパラディン。騎士は、己の誇りと、名誉をかけて戦う…。キミは、その剣から逃れる事は出来ない!」

クロノ「ふん、返り討ちにしてやるぜ!」

 

アン「えっと…お二人とも、がんばってくださいね」

 

シオン「あぁ」

クロノ「おう」

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

 

クロノ「《ガンナーギア・ドラコキッド》!」

 

【《ガンナーギア・ドラコキッド》G0 5000】

 

 

シオン「《閃きの騎士 ミーリウス》!」

 

【《閃きの騎士 ミーリウス》G0 5000】

 

 

先行はシオンだ。

 

シオン「ライド!《繊月の騎士 フェレックス》!」

 

【《繊月の騎士 フェレックス》G1 8000】

 

シオン「ミーリウスを移動。ターンエンド」

 

 

クロノ「俺の番だな。ライド!《メーザーギア・ドラゴン》!」

 

【《メーザーギア・ドラゴン》G1 8000】

 

クロノ「ガンナーギアを移動。ガンナーギアのブースト、アタック!」

 

シオン「ノーガードだ」

 

ノートリガー、ダメージ1。

 

クロノ「ターンエンド」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(メーザー) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(空き) V(フェレックス) R(空き)

R(空き) R(ミーリウス) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

シオン「ライド、《絶剣の騎士 リヴァーロ》!」

 

【《絶剣の騎士 リヴァーロ》G2 10000】

 

シオン「ミーリウスのブースト、アタック!」

 

クロノ「ノーガードだ!」

 

こちらもノートリガー、ダメージ1。

 

シオン「ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(メーザー) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(空き) V(リヴァーロ) R(空き)

R(空き) R(ミーリウス) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

 

クロノ「ライド、《スモークギア・ドラゴン》!」

 

【《スモークギア・ドラゴン》G2 10000】

 

クロノ「ガンナーギアのブースト、スモークギア・ドラゴンでアタック!」

 

シオン「ノーガード!」

 

トリガーはなく、シオンに1ダメージ。

 

クロノ「ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(スモーク) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(空き) V(リヴァーロ) R(空き)

R(空き) R(ミーリウス) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

シオン「ふっ…」

 

カムイ(シオンの奴…ギアクロニクルを楽しんでやがるな)

 

シオン「いいね、未知なるクラン、ギアクロニクル。その力を、もっと僕に見せてくれ!」

クロノ「…その余裕っぷりが、気に入らねんだよ」

 

シオン「──僕の情熱はキミの剣とともに! ライド! 《青天の騎士 アルトマイル》!」

 

 

【《青天の騎士 アルトマイル》】

 

 

シオン「コール!、《オーラシューター・ドラゴン》、《ナイト・オブ・ツインソード》、《繊月の騎士 フェレックス》!」

 

 

【《オーラシューター・ドラゴン》G3 10

000】

【《ナイト・オブ・ツインソード》G2 9000】

【《繊月の騎士 フェレックス》G1 8000】

 

────────────────

シオンの盤面

R(ツインソード) V(アルトマイル) R(オーラ)

R(フェレックス) R(ミーリウス) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

シオン「オーラシューター・ドラゴンでアタック!」

 

クロノ「ガード!《ラッキーポット・ドラコキッド》!」

 

 

【《ラッキーポット・ドラコキッド》シールド5000】

 

 

シオン「ミーリウスのブースト、アルトマイルでアタック!」

 

クロノ「ノーガードだ!」

 

シオン「ドライブチェック!──ゲット、クリティカルトリガー!パワーはツインソード、クリティカルはアルトマイルに!」

 

クロノ「ぐうっ!」

 

クロノに2ダメージ。

 

シオン「ツインソード!」

 

クロノ「ウルルでガード!」

 

 

【《スチームメイデン ウルル》シールド10000】

 

 

シオン「ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(空き) V(スモーク) R(空き)

R(空き) R(ガンナー) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(ツインソード) V(アルトマイル) R(オーラ)

R(フェレックス) R(ミーリウス) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

 

 

トコハ「今のところ、ほぼ互角か…」

アン「ですが、次のターンには新導くんのストライドが…」

 

 

 

クロノ「──行くぜッ!ライド!《クロノジェット・ドラゴン》!」

 

 

【《クロノジェット・ドラゴン》G3 11000】

 

 

クロノ「まだまだ!ストライド…ジェネレーション!《時空竜 クロノスコマンド・ドラゴン》!」

 

 

【《時空竜 クロノスコマンド・ドラゴン》G4 11000+15000→26000】

 

 

トコハ「新しいGユニット…!」

 

クロノ「更にコール!《ツインメーザー・ドラゴン》2体、《メーザーギア・ドラゴン》、

《ブラスウイング・ドラゴン》!」

 

 

【《ツインメーザー・ドラゴン》G2 9000】

【《メーザーギア・ドラゴン》G1 8000】

【《ブラスウイング・ドラゴン》G1 7000】

 

────────────────

クロノの盤面

R(ツインメーザー) V(クロノス) R(ツインメーザー)

R(メーザー) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ3

────────────────

 

クロノ「クロノスコマンド・ドラゴンで、ヴァンガードにアタック!」

 

シオン「ノーガード!」

 

クロノ「トリプルドライブ!──ゲット、クリティカルトリガー!パワーは右のツインメーザー、クリティカルはヴァンガードに!──ゲット、ドロートリガー!パワーは左のツインメーザーに!」

シオン「くっ…!」

 

シオンに2ダメージ。合計4ダメージだ。

 

シオン「ダメージチェック…!ゲット、ドロートリガー!パワーはヴァンガードに!」

 

クロノ「クロノスコマンド・ドラゴンのスキル発動ッ!カウンターブラスト…!相手のリアガード全てを山札の下へ!」

 

シオン「なっ…!」

アン「全部…!?」

 

クロノ「全てを飲み込み、時空の彼方へ消し飛ばせッ!!」

 

シオンの盤面がガラ空きになる。

 

クロノ「ツインメーザーッ!」

 

シオン「ガード!《ヒーリング・ペガサス》!」

 

【《ヒーリング・ペガサス》シールド10000】

 

クロノ「もう一撃だっ!」

 

シオン「ガード!《ミルキーウェイ・ユニコーン》、《まぁるがる》!」

 

【《ミルキーウェイ・ユニコーン》シールド5000】

【《まぁるがる》シールド5000】

 

クロノ「クソ、攻め切れなかったか…!ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(ツインメーザー) V(クロノ) R(ツインメーザー)

R(メーザー) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ3

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(空き) V(アルトマイル) R(空き)

R(空き) R(空き) R(空き)

 

ダメージ4

────────────────

 

 

カムイ「逆転か…!さぁどうする、シオン」

 

シオン「ふ…」

 

シオン(君なら導いてくれるかもしれないな…僕を、もっと強いファイターへと…!)

 

シオン「ジェネレーションゾーン解放ッ!」

 

 

【コスト《オーラシューター・ドラゴン》】

 

 

シオン「天翔連撃!無限の未来をこの手に! ストライドジェネレーション! 《閃火の聖騎士 サムイル》!」

 

 

【《閃火の聖騎士 サムイル》G4 11000+15000→26000】

 

 

未来から、天馬を駆る聖騎士が現れる。

 

クロノ「…!」

 

シオン「アルトマイルのスキル!ツインソードとフェレックスをコールして、パワー+5000!更にフェレックス、《ミルキーウェイ・ユニコーン》をコール!」

 

 

【《ナイト・オブ・ツインソード》G2 9000+5000】

【《繊月の騎士 フェレックス》G1 8000+5000】

【《繊月の騎士 フェレックス》G1 8000】

【《ミルキーウェイ・ユニコーン》G1 6000】

 

────────────────

シオンの盤面

R(ツインソード) V(サムイル) R(空き)

R(フェレックス) R(ミルキー) R(フェレックス)

 

ダメージ4

────────────────

 

トコハ「一気に埋めた!」

 

シオン「行くよ、新導…!フェレックスのブースト、ツインソードでアタック!カウンターブラスト、リヴァーロをスペリオルコール!」

 

クロノ「ノーガードだ!」

 

シオン「《ミルキーウェイ・ユニコーン》のブースト、サムイルでヴァンガードにアタック!サムイルのカウンターブラスト!相手のダメージゾーンが4枚以下で、自分のリアガードが5枚以上なら、相手に1ダメージ!」

 

クロノ「なっ…!」

 

シオン「貫け閃光! ブライト・ライトニング・シュート!」

 

クロノ「ぐああっ!」

 

クロノに1ダメージ。トリガーはなしだ。

 

クロノ「そんなのありかよ…!アルリムで完全ガード!」

 

 

【《スチームメイデン アルリム》守護者】

 

 

シオン「トリプルドライブ!──ドロートリガー!パワーはリヴァーロに!──ゲット、クリティカルトリガー!効果は全てリヴァーロに!さぁ、リヴァーロでアタックだ!」

 

アン「えっと、パワー合計…33000!?」

 

クロノ「ダダシグ、ウルル、ラッキーポットでガード!」

 

 

【《スチームバトラー ダダシグ》シールド10000】

【《スチームメイデン ウルル》シールド10000】

【《ラッキーポット・ドラコキッド》シールド5000】

 

 

シオン「…ターンエンドだ」

 

────────────────

クロノの盤面

R(ツインメーザー) V(クロノ) R(ツインメーザー)

R(メーザー) R(ガンナー) R(ブラス)

 

ダメージ5

────────────────

────────────────

シオンの盤面

R(ツインソード) V(サムイル) R(空き)

R(フェレックス) R(ミルキー) R(フェレックス)

 

ダメージ4

────────────────

 

アン「防いだ…!」

クロノ「へへ…」

 

クロノ(こんな強い奴が、身近にいたなんて…)

 

 

クロノ「──やっぱり面白いぜ…!ヴァンガードは!」

 

クロノは実に楽しそうな笑みを浮かべる。

 

アン(…学校とは、別人みたい…)

 

 

 

クロノ「──ジェネレーションゾーン、解放!!」

 

 

【コスト《クロノジェット・ドラゴン》】

 

クロノ「今こそ示せ、我が真に望む世界を!ストライド…ジェネレーションッ!!」

 

時空を超え顕現するのは、終末を呼ぶ黒き竜…。

 

クロノ「時空竜…ラグナクロック・ドラゴン!」

 

 

【《時空竜 ラグナクロック・ドラゴン》G4 11000+15000→26000】

 

 

シオン「…!」

クロノ「クロノジェットのスキル!ツインソードを山札の下へ!行くぜ…!ラグナクロックでアタック!」

 

そして、ラグナクロック・ドラゴンのスキルが発動する。

 

クロノ「カウンターブラスト、そしてGペルソナブラスト…!このアタックのガードに、グレード0のカードは使えない!更にクリティカル+1だ!」

 

シオン「!」

 

シオン(完全ガードはない…手持ちのグレード1以上ではガード値が足りないか…ッ!)

 

シオン「くっ…ノーガードだ」

 

クロノ「時を止め、逃れられない終末が訪れる…!終極咆哮ッ!!」

 

トリガーも乗せた漆黒の一撃が、アルトマイルを飲み込んだ…!

 

 

 

シオン「ダメージ6…僕の、負けだよ」

 

クロノ「…か、勝った?」

 

カムイ「やったな、クロノ!」

カムイがクロノの肩に手を置くと、

 

クロノ「──はい」

 

クロノは少し照れくさそうながら、嬉しげな笑みを浮かべた。

 

アン「……あ……」

 

 

 

その日の帰り道。

 

岩倉「何やら楽しそうですな、お坊っちゃま」

 

リムジンを運転する執事・岩倉がシオンにそう言う。シオンは財閥の御曹子なのだ。

 

シオン「そうかな?…でもね、僕は今、最高に腹が立ってるんだよ。……ファイトに負けた、自分にね…。」

 

シオン(…新導クロノ…次は絶対…僕が勝つ!)

 

 

 

一方、歩いている女子勢は。

 

クミ「二人ともすごく楽しそうだったね〜」

トコハ「だよね!」

アン「…………」

トコハ「アンちゃん?どうかした?」

アン「あ……い、いえ!」

 

 

 

アン(新導くん……あんな顔、するんだ……)

 

 

《続く》

 

 




シオン「いやぁいい勝負だった。ありがとう」

クロノ「いちいち爽やかなんだよなぁコイツ…」

アン「まぁまぁ…」

シオン「ひとまず勝負はついたんだから、そんなにピリピリすることないのに…」

クロノ「お前こそ、ちょっと笑顔がひきつってんぞ、やっぱり無理してんじゃないのか?」

アン「ち、挑発するようなことはよくありませんよ…?」

シオン「いや、次は絶対に勝つから」

アン「き、綺場くんも乗らないで…!」

クロノ「…なかなかいうじゃねえか。お前はまだ底を見せてない。俺だってそれくらいは分かる。次もぜってえ負けねえ!」

シオン「のぞむ所だ!」

アン「あぁ、もう…!」


次回「安城トコハ」


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安城トコハ

お久しぶりです!今回はゲーム版寄りです。


ヴァンガード普及協会・ドラゴンエンパイア支部。

 

アン「ここが…」

クロノ「ドラゴンエンパイア支部」

シオン「基本的には協会のオフィスなんだけど、1階から3階までは、ヴァンガードのアミューズメントスペースになってるんだ」

クミ「へぇ〜…」

トコハ「みんな、クエスト受けてくれてありがとうね〜!」

 

先に来ていたトコハが、四人を出迎える。

 

トコハ「見ての通り、今やってるイベント大盛況でさ〜、とにかく人手不足で!」

 

ツネト「トコハちゃ〜ん!クエスト受けて来たぜ〜!」

 

トリニティドラゴンの三人もやって来た。

 

トコハ「多度達も受けてくれたんだ、ありがと!じゃあ早速…」

 

トコハが説明しようとしていると、二十代半ば程の青年が歩み寄って来た。

 

「トコハ!イベント手伝ってくれる人、見つかったかな?」

 

トコハ「あ、兄さん!友達が受けてくれたよ」

 

「そっか、みんなありがとう」

 

ツネト「ま、マモルさんッ!」

 

アン「多度くん?」

 

ツネト「た、多度ツネトっていいますッ!マモルさんとお会いできるなんて…!」

 

アン「…?あ、日下部アンです」

 

マモル「あぁ、トコハから聞いてるよ。よろしくね」

 

トコハ「あ、紹介しとくね。私の兄さん、安城マモル。ここで働いてるんだ」

 

ツネト「あ、アンちゃん知らないの!?かげろうのクランリーダーであるマモルさんを!?」

 

アン「クランリーダー?」

 

トコハ「クランリーダーっていうのは、普及協会が認めたトップファイターのこと。各クランに1人ずついるの」

 

マモル「あはは…まだまだ修行中だけどね」

 

「有名人だねぇ、マモルきゅん」

 

そう言って歩み寄って来たのは、アロハシャツでヒゲ面のおっさん。

 

マモル「支部長!?仕事はどうしたんです!?」

支部長「あ、え〜と、ちょっとだけ参加者とファイトを〜と…」

マモル「支部長…今朝確認した時は、そんな暇はなかったはずですが?仕事してくださいッ!」

支部長「…声かけるんじゃなかった」

 

アン「えっと、ここの支部長さん…なんですか?」

支部長「うんうん、よろしくね〜!ところで君?挨拶がわりにボクとファイトでも…」

 

マモル「支・部・長!!」ギロリ

支部長「ひいっ!」

マモル「じゃ、僕は一旦戻るから、みんなよろしくね」

支部長「ごめ〜んマモルきゅ〜ん!引っ張らないで〜ッ!」

 

マモルは支部長を引きずって歩き去った。

 

クロノ「……あんな人が支部長で大丈夫か?」

トコハ「あ、アハハ…。いざって時には頼りになるんだよ。ファイターとしても一流だし」

アン「そうなんですか?」

シオン「なるかみのクランリーダーだからね。あの人の強さは底知れない」

アン「へぇ…!」

 

トコハ「兄さんはいつも大変そうだけどね」

シオン「そっか…けど羨ましいな。」

トコハ「え?」

シオン「お兄さん。身近にあんな凄いファイターがいたら、学べることだらけじゃないか」

トコハ「……っ……」

 

アン「…?」

 

トコハ「……めんどくさい時もあるよ」

シオン「そっか…実の妹なら、そんなものかもしれないね」

 

アン「…………」

 

トコハ「──さぁて、始めるわよ!」

 

 

 

 

 

その後はチラシ配りや入場者案内などをしてあっという間に時間が過ぎる。

 

休憩時間、アンはトコハとツネトがファイトしているのを見ていた。

 

トコハ「私の勝ちね!」

ツネト「ぐぬっ…地区予選では、俺の実力を見せつけてやるからな!覚悟しろ!」

 

ツネトは悔しそうに言うが、

 

トコハ「私、出ないし」

 

トコハはあっさりと言った。

 

ツネト「なんでなんで?どうして出ないの大会!」

トコハ「いいじゃない別に」

カル「自分の力を示すチャンスですよ!?絶対出るべきですよ!」

トコハ「…興味ないから、そーゆうの」

ツネト「えぇ~!?一緒に、てっぺん目指そうよー」

 

トコハはやたら乾いた態度で受け流していたが……

 

ツネト「マモルさんの妹の名が泣くぜ?」

 

トコハ「…!」

 

その言葉を聞いたとたんに冷静さを無くす。

 

トコハ「うるさいッ!もうほっといてよ!!」

 

怒鳴られてビクッとするツネト達。

 

トコハ「……ごめん」

 

トコハはデッキを片付け、歩き去った。

 

アン「…………」

 

アンは黙って後を追う。

 

 

 

 

アン「トコハちゃん」

トコハ「あ…アンちゃん。……さっきはごめんね?気まずい感じにしちゃって」

アン「いえ…お気になさらないでください」

 

うつむくトコハ。

 

トコハ「なんとなく、出る気になれなくて…」

 

アン「……勝てば、安城マモルの妹だから……負ければ、安城マモルの妹なのに……ですか?」

 

トコハ「…!……うん、そう。よくわかったね」

 

アン「あはは…なんとなく」

 

トコハ「兄さんのせいじゃない、私のせいでもない。分かってるけど…」

 

アン「…………」

 

トコハ「……あぁあもう!うじうじしてたって仕方がない!アンちゃん!ファイトしようファイト!気分転換したい!」

 

アン「あ…は、はい!」

 

アンはデッキを取り出した。

 

 

 

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

二人は緑の大陸ズーのとある森に降り立ち、姿を変える。

 

アン「《お化けのぴーたー》…!」

 

【《お化けのぴーたー》G0 パワー5000】

 

トコハ「《春待ちの乙女 オズ》!」

 

【《春待ちの乙女 オズ》G0 パワー5000】

 

 

 

トコハ「私から!ライド!《萌芽の乙女 ディアン》!」

 

 

【《萌芽の乙女 ディアン》G1 パワー8000】

 

 

トコハ「オズは先駆で移動!ターンエンド」

 

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ディアン) R(空き)

R(空き) R(オズ) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

 

アン「私の番ですね…ライド!《パーティング・シェイド》!」

 

 

【《パーティング・シェイド》G1 パワー8000】

 

 

アン「ぴーたーを移動。ぴーたーのブースト、パーティング・シェイドでアタックします!」

 

トコハ「ノーガード!」

 

アン「トリガーなし…ターンエンドです」

 

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ0

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ディアン) R(空き)

R(空き) R(オズ) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

トコハ「ライド!《開花の乙女 ケラ》!」

 

 

【《開花の乙女 ケラ》G2 10000】

 

 

トコハ「オズのブースト、ケラでアタック!」

 

アン「ノーガードです」

 

トコハ「ドライブチェック!」

 

 

【《メイデン・オブ・ディモルフォーセ》☆】

 

 

トコハ「ゲット!クリティカルトリガー!」

 

アン「うっ…!」

 

トコハ「ターンエンド」

 

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(パーティング) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ケラ) R(空き)

R(空き) R(オズ) R(空き)

 

ダメージ1

────────────────

 

アン「私のターン…!《大幹部 ブルーブラッド》にライド!ぴーたーのブーストで、アタックします!」

 

トコハ「ノーガード!」

 

アン「ターンエンドです」

 

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(ブルー) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(空き) V(ケラ) R(空き)

R(空き) R(オズ) R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

トコハ「いくよ、アンちゃん!──煌めく蕾よ、今こそ花開け!《ラナンキュラスの花乙女 アーシャ》に、ライド!」

 

 

【《ラナンキュラスの花乙女 アーシャ》G3 11000】

 

 

トコハ「更にケラとディアンをコール!オズのブースト、アーシャでヴァンガードにアタック!」

 

アン「ノーガードです」

 

トコハ「ツインドライブ!」

 

 

【《ウーント・タナップ》(引)】

 

 

トコハ「ドロートリガー!パワーはケラに!」

 

アン「ダメージチェック…」

 

 

【《ナイトスピリット》(☆)】

 

 

アン「クリティカルトリガー、パワーはヴァンガードに!」

 

トコハ「ディアンのブースト、ケラでアタック!」

 

アン「ナイトスピリットでガード!」

 

トコハ「ターンエンド」

 

────────────────

アンの盤面

R(空き) V(ブルー) R(空き)

R(空き) R(ぴーたー) R(空き)

 

ダメージ3

────────────────

────────────────

トコハの盤面

R(ケラ) V(アーシャ) R(空き)

R(ディアン) R(オズ)    R(空き)

 

ダメージ2

────────────────

 

 

 

アン「トコハちゃん」

 

トコハ「なに?」

 

アン「蒸し返すようで申し訳ないんですけど……私もあったんですよね、似たようなこと」

 

トコハ「え?」

 

アン「私、5つ年上の姉がいるんですけど…姉さん、昔から勉強もスポーツもなんでもよくできて…だから私も色んな人から期待されちゃって」

 

トコハ「……」

 

アン「あの子の妹さんなら安心だね〜とか、あの子の妹ならきっと才能あるだろうとか。けど私は、何をやっても平均程度の結果しか出せなくて…大人の人達は表面上は繕ってるつもりだったんでしょうけど、内心がっかりしてるのが子供の私に分かるぐらい隠せてなくて」

 

アン「姉さんがやってるのを見て楽しそうだなって思って、スポーツやってみたりピアノ弾いてみたり…色々やったなぁ…。最初は下手なりに楽しかったのに…。比べられてばっかりなのが嫌になって、結局全部やめちゃいました」

 

トコハ「アンちゃん……」

 

アン「そんな時に…姉さんのお友達が…」

 

 

 

?『アンはアンなんだから、リンにはなれなくて当然。勝手に期待して勝手に失望するような阿呆共の視線なんか気にしてるからつらいんだよ』

 

?『そんな自分勝手な奴らなんて、クソ喰らえって言ってやればいい。アンはアンにできること、自分らしくやれればそれでいいんだから』

 

 

 

アン「言い方は乱暴でしたけど、おかげで吹っ切れたのはほんとです。自分が自分らしくいられれば、誰が何て言っても関係ないんだって」

 

トコハ「…………」

 

アン「……長く話し過ぎちゃいましたかね。続き、しましょうか」

 

トコハ「……うん」

 

 

 

アン「参ります…!闇を包め、月下の花嵐…!ライド!《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》!」

 

 

【《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》G3 11000】

 

 

アン「ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト《腐蝕竜 コラプトドラゴン》、《海中散歩のバンシー》】

 

 

アン「夜星の光よ照らせ…!この手で斬り開く未来を!ストライド…ジェネレーションッ!」

 

 

時空を越え現れるのは、あらゆる時代で暗躍を繰り返す海賊の王…。

 

 

アン「《暗躍する海賊王 バンデッドラム》!」

 

 

【《暗躍する海賊王 バンデッドラム》G4 11000+15000→26000】

 

 

アン「ナイトローゼのスキル!ドロップゾーンから《腐蝕竜 コラプトドラゴン》をコールして、パワー+2000します!」コラプトドラゴンは、ドロップゾーンから登場した時、パワー+3000です!」

 

【《腐蝕竜 コラプトドラゴン》G2 9000+2000+3000→14000】

 

トコハ「あ…!」

 

アン「ぴーたーのスキル!自身をソウルへ、山札の上から2枚をドロップゾーンに置いて1枚ドロー!更にコール!《不死竜 ボーンドラゴン》!《パーティング・シェイド》3体!」

 

 

【《不死竜 ボーンドラゴン》G3 11000】

【《パーティング・シェイド》G1 パワー8000】×3

 

────────────────

アンの盤面

R(ボーン) V(バンデッド) R(コラプト)

R(パーティング) R(パーティング) R(パーティング)

 

ダメージ3

────────────────

 

トコハ「パワーが…!」

 

アン「ボーンドラゴンでアタック!スキルでパワー+3000です!」

 

【《不死竜 ボーンドラゴン》G3 11000+3000+8000→22000】

 

トコハ「の、ノーガード!…トリガーなし」

 

アン「バンデッドラムでアタック!」

 

【《暗躍する海賊王 バンデッドラム》G4 11000+15000+8000→34000】

 

トコハ「ノーガード…!」

 

アン「トリプルドライブ!」

 

【《不死竜 ボーンドラゴン》なし】

【《ナイトスピリット》☆】

【《荒海のバンシー》☆】

 

トコハ「ダブルクリティカル…!?きゃあっ!?」

 

一気に3ダメージ。このままではダメージ6だ。

 

トコハ「…!」

 

二枚目まではトリガーなし。

 

トコハ「……」

 

 

 

トコハ(……私は、私らしく……)

 

トコハ(どんな時も前向きに、突き進む…!それが、私!)

 

 

【《フェアリーライト・ドラゴン》治】

 

トコハ「ヒールトリガー!ダメージ1回復!さらにアーシャにパワー+5000!」

 

アン「…!こ、コラプトドラゴンでアタックします!」

 

【《腐蝕竜 コラプトドラゴン》G2 9000+2000+3000+8000+5000+5000→33000】

 

 

トコハ「まだまだ!お願い、《100%・オーランジュ》!」

 

 

【《100%・オーランジュ》守護者】

 

 

アン「完全ガード…!た、ターンエンドです」

 

トコハ「ふふ…!安城トコハは、これくらいじゃビクともしないんだから!」

 

アン「トコハちゃん……はい、そのいきです!」

 

トコハ「よぉし、次は私の番!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト《開墾の戦乙女 パドミニ》】

 

 

トコハ「今こそ咲き誇れ、我が輝ける未来に! ストライドジェネレーション! 」

 

時空を越えてやってきた、春を象徴する乙姫。

 

トコハ「《立春の花乙姫 プリマヴェーラ》!」

 

 

【《立春の花乙姫 プリマヴェーラ》G4 11000+15000→26000】

 

 

────────────────

トコハの盤面

R(ケラ) V(ヴェーラ) R(空き)

R(ディアン) R(オズ)    R(空き)

 

ダメージ5

────────────────

 

 

トコハ「行くよ、アンちゃん!ディアンのブースト、ケラでアタック!」

 

アン「お化けのりっくでガードです!」

 

トコハ「よぉし!プリマヴェーラでアタック!スキル発動!」

 

カウンターブラスト3に加え、ドロップゾーンからノーマルユニットを5枚選び、山札に戻すという高いコスト。だがその分メリットも大きい。

 

トコハ「リアガードを2枚まで選び、そのユニットと同名のカードをそれぞれ2枚までスペリオルコール!」

 

アン「!!?」

 

トコハ「私はケラとディアンを選ぶよ!」

 

既にアタックを終えたケラとディアンは入れ替えで退却し、新たにケラとディアンが2体ずつコールされた…!

 

────────────────

トコハの盤面

R(ケラ) V(ヴェーラ) R(ケラ)

R(ディアン) R(オズ)    R(ディアン)

 

ダメージ5

────────────────

 

アン「ノーガードです…!」

 

トコハ「トリプルドライブ!」

 

 

【《開墾の戦乙女 パドミニ》なし】

【《メイデン・オブ・ディモルフォーセ》☆】

【《フェアリーライト・ドラゴン》治】

 

 

トコハ「クリティカルはプリマヴェーラ、パワーは右のケラに!」

 

アン「きゃあっ!?」

5ダメージ。

 

トコハ「左のケラでアタック!」

 

アン(どっちかは必ず通っちゃう…!なら…!)

 

アン「ノーガード…!」

 

 

 

アンのダメージは6となり、トコハが勝利した。

 

 

 

トコハ「そっか…そうだよね。自分のファイトが出来れば、他の人がなんて言ったって関係ない。…うん、なんかスッキリした。ありがとう、アンちゃん!」

 

アン「い、いえ…!」

 

トコハ「そうだ、アンちゃんは地区予選出ないの?」

 

アン「え!?私まだ初心者ですし…。…でも…ちょっと出てみたい、かも…?」

 

トコハ「そっか…大会は三人のチーム戦だし…よかったら、一緒に出ない?」

 

アン「…!はい!」

 

 

 

 

その後、イベントの手伝いに戻り、アンがトコハと別れてチラシ配りをしている時のことだった。

 

アン「あっ…」

「…ん?」

 

以前会った白い長髪の青年と目があった。

 

アン「ど、どうも…」

「…あぁ」

アン「えっと…」

 

 

マモル「伊吹くん!」

「ん…」

マモル「やっと見つけた!本部の人が呼んで…あれ、アンちゃんも」

アン「あ…お疲れ様です」

 

マモル「ありがとう。そうだ、紹介しておこうか。彼は伊吹コウジ君。ユナイテッド・サンクチュアリ支部で働いていて、僕とは…」

 

伊吹「…安城、何か用があるんじゃなかったのか」

 

マモル「あぁ、そうそう!本部の人が伊吹くんを探してたんだ」

 

伊吹「そうか。すまんが俺は戻るぞ」

 

伊吹は歩き去った。

 

マモル「ごめんね、ドタドタしてて」

 

アン「いえ。お疲れ様です」

 

マモル「ありがとう。そうだ、トコハから聞いたよ。一緒に大会に出るんだって?」

 

アン「あ、はい」

 

マモル「あの子にいい影響を与えてくれたみたいで、本当にありがとうね」

 

アン「い、いえ、そんなこと…!」

 

マモル「そうかしこまらないで。…これからも妹のこと、よろしくね」

 

アン「──はい!」

 

 

《続く》

 

 

 

 



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第5話「麗しのナギサ」

大っ変お待たせいたしましたぁ!

いやぁpixivのほうがクライマックスでそっちばっか集中してたらいつの間にか。

では、一途な愛のエピソードをどうぞ!





OP「BREAK IT!」宮野真守




アン「〜〜♪」

 

 

アンは今日もカードキャピタル2号店に向かっていた。

 

 

クロノ「お…日下部」

 

アン「あ、新導くん!新導くんもカードキャピタルですか?」

 

クロノ「おう。お前もか」

 

アン「はいっ!」

 

 

 

少し前までは、忙しい家族に会えない寂しさから、無気力な生活を送っていたアン。

 

物腰は丁寧ながら暗い雰囲気が目立った為、クラスでも浮き気味だった。

 

そんな以前の自分と比べてみれば、学校の友人…しかも男の子と明るく話しているなんて、信じられない…しかし嬉しい変化だ。

 

 

 

それは目の前の彼もそうだろう。

 

目付きは悪いし、態度もぶっきら棒だしで不良のような噂が広まっている彼だが、こうして親しくなってみれば、ぶっきら棒な言動の裏から時折垣間見える、彼本来の優しさがよく分かる。

 

 

アン(……ほんとはいい人なのに……学校のみんなにも、なんとか分かってもらえたらな……)

 

 

クロノ「なんだよ、人の顔じっと見て」

 

アン「あっ…い、いえ、何も!」

 

クロノ「?」

 

 

気がつけば、彼を目で追っている自分がいた。

 

 

クロノ「おっ…着いたな」

 

アン「あっ…そうですね」

 

いつの間にかカードキャピタルの前に着いていた二人は、階段を上がって店内へ。

 

 

すると……

 

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 

「「?」」

 

 

聞き慣れない声を聞いてそちらを見ると、首にバンダナを巻いた、薄茶色の髪をツインテールにした美少女が掃除をしていた。

 

 

アン「……新しいバイトの人ですかね?」

 

クロノ「さぁ…?」

 

 

とりあえず二人でクエストをチェックしていると……

 

 

「ねぇ、あなたたち」

 

「「?」」

 

 

その少女に声を掛けられた。

 

 

「もしかして、新導クロノ君に日下部アンちゃん?」

 

クロノ「えっ、あ、はい」

 

「この店よく来てるでしょう。それに貴女、日下部リンさんの妹さんでしょ?」

 

アン「えっ?は、はい。姉さんをご存知で?」

 

「うん。お姉さんにはお世話になってね〜。ちゃんと挨拶をしておきたくて」

 

アン「挨拶って…わざわざそんな。」

 

「だって、お世話になってるんだし、迷惑だってかけてるかも…」

 

アン「は、はぁ……」

 

 

 

 

 

カムイ「シンさ〜ん、1号店から補充するパック取ってきましたよー」

 

 

そこに、バイトのカムイが入って来た。

 

 

クロノ「あ、カムイさん」

 

アン「こんにちは!」

 

カムイ「おう、クロノにアンちゃん、来てたのか……な゛っ!?」

 

 

 

 

「おかえりなさい、葛木先輩♪」

 

カムイ「ナ、ナギサぁっ!?」

 

 

少女を見て、カムイは顔をひきつらせる。

 

 

クロノ/アン「「?」」

 

 

カムイ「どうしてお前が!?ここで何をしているッ!」

 

ナギサ「お手伝いです。葛木先輩の♪」

 

カムイ「何故だ!?どうして俺がここでバイトしてるってわかった?誰にも言ってなかったのに…!!」

 

ナギサ「それはぁ〜…」

 

 

ナギサは可愛らしく人差し指を唇に当て…

 

 

ナギサ「ヒ・ミ・ツ♥️」

 

カムイ「何だよそれ!」

 

ナギサ「うふふ…ないしょ〜」

 

カムイ「何故だッ!」

 

ナギサ「教えてあ〜げな〜い♪」

 

 

 

 

アン「えっと…?」

 

クロノ「あの子は…?」

 

シン「大文字ナギサちゃん。カムイくんとは、小さな頃から仲が良くて。ヴァンガードファイターとしても、かなりの実力者なんですよ」

 

 

 

ナギサ「心配したのよ?この3ヶ月連絡もなくて……」

 

カムイ「なんで俺がお前に連絡しなきゃならないんだよ!!」

 

ナギサ「…………」

 

アン(!?)

 

 

アンは見た。…ナギサが後ろ手に持っていた鉛筆がへし折られたのを。

 

 

アン「……ぇ……」

 

クロノ「日下部?」

 

シン「どうかしましたか?」

 

アン「……あ、いえ……」

 

 

どうやら気づいたのはアンだけらしい。

 

 

ナギサ「……葛木先輩、ファイトしましょう?」

 

カムイ「な゛っ…!……い、今はバイト中だからな…!仕事仕事…!」

 

クロノ「いつも仕事中でもおかまいなしにやってるのに…」

 

カムイ「ッ!」ギロリ

 

クロノ「おっ…!?」

 

 

おもいっきり睨まれるクロノ。

 

 

ナギサ「じゃあ終わるまで待ってる」

 

カムイ「き、今日は夜までだからなぁ」

 

シン「12時になったらお昼休みだから、その時にファイトすれば…」

 

カムイ「ッ!!」ギロリ

 

シン「お゛っ…!」

 

ナギサ「はい、そうします〜♪」

 

 

 

それから、ナギサはカード雑誌を読んだり、子供達と優しくファイトしたりしながら、大人しくカムイを待っている。

 

 

シン「久しぶりにナギサちゃんと会いましたけど、大人になったのかな。落ち着きましたね。」

 

クロノ「あんな子がカムイさんを慕ってるなんて…なんか、意外だな」

 

アン「新導くん、それ遠回しにカムイさんを馬鹿にしてますよ…」

 

クロノ「えっ」

 

カムイ「…はぁ…クロノもシンさんもわかってねぇなぁ…」

 

 

 

カムイ「──ファイトなんて…絶対するもんか!!」

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだあって、昼休みの時間。

 

 

アン「もうお昼ですか…。えっと…お昼ごはん、よかったらご一緒にどうですか?」

 

クロノ「ん?まぁ、いいけど…ん?」

 

 

二人は、こっそり逃げようとしているカムイを見つける。しかし……

 

 

 

ツネト「逃がしませんよ、カムイさん!」

 

カムイ「なにぃっ!?」

 

 

 

カムイの前に、チームトリニティドラゴンが立ち塞がった。

 

 

カムイ「なんのつもりだ!?」

 

ツネト「大文字からクエストを受けたんですよ。葛城カムイとファイトしたいから協力してくれってね」

 

カル「カムイさんが逃げようとするのは想定済みだったようですね」

 

ケイ「うん、うん」

 

ナギサ「うふふ…♪」

 

 

 

カムイ「グッ…!ナギサと同級生のお前らなら分かるはずだ!これがどんなことになるのかッ!!」

 

ツネト「勿論。ですがこれもポイントのため、あきらめてくださーい」

 

カムイ「クソッ…!」

 

 

膝をつくカムイ。

 

 

クロノ「どうしてそんなにファイトしたくないんですか?カムイさんらしくないですよ?」

 

カムイ「うぅ…」

 

 

 

カムイ「──よし、俺も男だ!もう逃げるような真似はしねぇ!ナギサ、お前とのファイト受けて立ってやるぜ!!」

 

ナギサ「わぁ…!」

 

 

ナギサの表情が一気に明るくなる。

 

 

カムイ「………だが、その前に…ションベンだ」

 

 

そう言って、カムイはトイレに向かった。

 

 

クロノ「あの子、そんなに強いのか?」

 

ツネト「あぁ、まぁな。だけど、カムイさんが嫌がってるのはそーゆう事じゃあないんだよなぁ…」

 

アン「へ…?」

 

 

その時。

 

 

カル「大変だっ!カムイさんがトイレの窓から逃げたっ!!」

 

アン「えっ、ここ2階…」

 

ナギサ「…………」

 

アン(ひぃっ!?)

 

 

またもへし折られる鉛筆にアンだけが気づく。

 

 

ナギサ「ッ!」

アン「えっ、ちょっと!?」

 

ツネト「よぉしクエスト続行だ!」

 

 

カムイを追い、ナギサとトリドラは店から駆け出した。

 

 

アン「な、なんなんでしょう…?」

 

クロノ「さ、さぁ…?」

 

 

シン「クロノく〜ん、アンちゃ〜ん」

 

「「?」」

 

シン「──面白いクエストが入ってますよ?」

 

 

 

 

 

 

高架下。

 

 

カムイ「はぁ、はぁ……なんとか巻いたか…?」

 

 

 

「ざんね〜ん♪」

 

カムイ「な゛っ!?」

 

 

そこに、トリドラを引き連れたナギサが。

 

 

ナギサ「うふふ…知ってる?孫悟空がどんなに飛び回っても、それはお釈迦様の手の上だっていう話…」

 

カムイ「くっ、俺の行動をすべて読みきって…!」

 

ナギサ「さぁ、ファイトしましょう…?」

 

カムイ「グッ…!」

 

 

追い詰められるカムイ。しかし……

 

 

クロノ「ちょっと待った!」

 

ナギサ「!?」

 

 

クロノが割って入る。

 

 

カムイ「クロノ…!」

 

クロノ「助けに来ましたよ、カムイさん。クエスト受領しました!」

 

 

 

─────────────

 

K.カムイ グレードEX ノヴァグラップラー

 

【超・緊急クエスト!!】

 

怖いヴァンガードファイターに追われてます!

 

誰か守ってくれ!!

 

─────────────

 

 

 

ナギサ「チイッ…!」

 

カムイ「クロノ、ツネト達はどうでもいい!ナギサの足止めを!」

 

クロノ「分かりました!」

 

 

走り出すカムイ。追おうとするナギサをクロノが止める。

 

 

クロノ「行かせない、ポイントのため…いや、カムイさんのため。どうしても行くって言うなら、俺を倒すんだな!」

 

ナギサ「…………」

 

 

しかし……

 

 

 

クロノ「なっ…!」

 

 

ナギサの涙を見て、クロノは思わず動きを止めた…。

 

 

 

 

 

 

アン「はぁ…どこだろ、ナギサさん達…」

 

 

一方、クロノと手分けしてクエストを受けたアンは、カムイもナギサ達も見つからずに困っていた。

 

今日は気温も高めで、歩き回っていたアンは汗だくであった。下着がはりついて気持ち悪い。

 

 

アン「あっつい…」

 

 

ベンチに腰かけて思わずぼやいていると……

 

 

アン「ひゃうっ!?」

 

 

突然頬に冷たいものが押し付けられ、アンは思わず飛び退いた。

 

そちらを見ると……

 

 

アン「え…ルナ、さん?」

 

「久しぶり…アン」

 

 

水色の髪に黒いヘアバンド。

 

大学生程に見えるその女性が、コーヒーの缶を持って立っていた。

 

 

ルナ「…飲む?」

 

アン「あ…はい、ありがとうございます!」

 

 

女性はアンの隣に腰を降ろす。

 

 

月城ルナ。

 

姉である日下部リンの幼なじみで、アンも度々顔を合わせていた彼女を慕っている。

 

マイペースで、どことなくミステリアスな雰囲気で…あと、滅多に笑わない。

 

常にハキハキとして、明るく社交的なリンとは性格がまるで違うのだが、昔から不思議と息が合っていたのを覚えている。

 

 

……ちなみに、以前トコハに語った、姉へのコンプレックスを解消する切欠をくれた人というのは彼女だったりする。

 

 

アン「お久しぶりです…!今日は何かご用事でしょうか?」

 

ルナ「……迷った」

 

アン「あ、あはは…」

 

 

……極度の方向音痴は相変わらずらしい。

 

 

ルナ「アンこそ、何してるの?」

 

アン「あ、実は…」

 

 

 

〜事情説明中〜

 

 

 

ルナ「あぁ…それならほっとけばいいよ」

 

アン「え?」

 

ルナ「カムイがナギサから逃げ回ってるのは、今に始まったことじゃないし。…あの子、愛が重めだから」

 

アン「は、はぁ…お二人のこと、ご存知なんですね」

 

ルナ「まぁね。ナギサか…身長と胸ばっかり成長して、中身は相変わらず…いや、悪知恵がついた分悪化してるか…。それより……ヴァンガード、始めたんだ」

 

アン「あ…はい!」

 

ルナ「そ…あ、そろそろ時間だ…」

 

アン「迷ったんじゃ…」

 

ルナ「……あ」

 

アン「あ、あはは…」

 

 

とりあえずルナを目当ての駅まで案内したアン。

 

 

ルナ「…ありがと」

 

アン「いえ!今度はもうちょっとゆっくりお話しましょうね!」

 

ルナ「うん。……ヴァンガード、やってるなら…近いうちに、会うかもよ?」

 

アン「え…?えっと…?」

 

ルナ「……お楽しみ。あと1つ忠告…ナギサの執念舐めないで。……あの子、外堀埋めるのだけは滅茶苦茶得意だから」

 

 

ルナはふっと笑ってから、改札の向こうに歩いて行った。

 

 

アン「…?」

 

 

 

 

 

カムイ「ふぅ……」

 

アン「あ…いた、カムイさ〜ん!」

 

カムイ「お、アンちゃん!アンちゃんもクエスト受けてくれたのか?」

 

アン「はい。ナギサさん達は?」

 

カムイ「クロノが足止めしてくれてるよ。やっぱり俺が見込んだだけの事はあるなー!」

 

アン「え?新導くんならあそこに…」

 

カムイ「へ?」

 

 

アンが指差した方を見ると、何故か息を切らしたクロノの姿が…。

 

 

カムイ「クロノ…?えっ、お前もうナギサを…?」

 

クロノ「酷いじゃないですかカムイさん…」

 

アン/カムイ「「え?」」

 

 

 

クロノ「聞きましたよ…。カムイさんと彼女の愛のメモリー…」

 

カムイ「はぁ?愛のメモリーだぁ?」

 

クロノ「残された1枚のカードを手に、彼女はカムイさんを捜し続けた…!もう一度カムイさんとファイトして、2人の愛を取り戻すために!!」

 

 

カムイ「ハッ!しまった!ナギサの奴、いつものあの手を!」

 

アン「???」

 

 

クロノ「そう、全てはあの日から始まった…!」

 

 

 

 

 

【カムイとナギサ 愛の劇場(嘘)】

 

 

 

ナギサ『えぇん…!』

 

カムイ『フッ!ハッ!』

 

 

野良犬に吠えられ、泣いていた幼いナギサを、幼いカムイが野良犬を追っ払って救出。

 

 

カムイ『もう大丈夫だ。……!』

 

ナギサ『……!』

 

 

 

クロノ「出合いは偶然だった。そして二人は…一瞬で恋に落ちた!」

 

カムイ「そんな事実はねぇッ!!」

 

アン「あ、あはは…」

 

 

 

クロノ「だが2人の関係を許さなかった…!大文字財閥の令嬢である彼女と、庶民丸出しのあんたとでは、あまりにも身分が違いすぎたからだ…!」

 

カムイ「そんな財閥はねぇッ!!」

 

アン「いや庶民丸出して…」

 

 

クロノ「そして2人が選んだのは…駆け落ち!二人は全てを失った…!だが愛さえあれば!何も!いらなかった…!」

 

アン「小中学生で駆け落ちは無理があるんじゃあ…」

 

 

どこかの町のボロアパート。

 

 

クロノ「知らない土地での貧乏生活…それでも2人は幸せだった。二人には…愛があったからだ!なのに…あんたは!」

 

 

ナギサ『…うそ…』

 

クロノ「ある日突然、姿を消した…。たった1枚のカードを残して!!」

 

 

ちゃぶ台の上に1枚だけ残された、《叫んで踊れる実況 シャウト》…。

 

……何故この場面で実況シャウト……。

 

 

 

クロノ「あんたは一方的に彼女を捨てた!最低だ!!俺はあんたを軽蔑する!」

 

カムイ「ナギサめ…無いこと無いこと無いことを…!」

 

 

 

ナギサ「ふふっ…」

 

物陰でニヤリと笑うナギサ。

 

 

 

アン「新導くんって純粋…意外とかわいいところあるなぁ…」

 

カムイ「悪くいや単純だ!ほっこりしてる場合じゃねぇ!クロノ、お前もお前だ!そんなホラ話、本気で信じてんのか!」

 

クロノ「彼女の涙に嘘はないっ!」

 

 

嘘しかない。

 

 

クロノ「大文字ナギサの為…!あんたを倒すッ!!」

 

カムイ「簡単に騙されやがって…!…フッ、こうなったら、奥の手だ。──来い、トリニティ・ドラゴン!!」

 

「「「シャキーンっ!!」」」

 

 

なんと、ナギサ側だったはずのトリドラがカムイを守るように見参した!

 

 

クロノ「何っ!?」

 

アン「えぇっ!?」

 

ナギサ「どういうこと…!?」

 

 

カムイ「緊急クエストを発動させたのさ…俺を守れってな!」

 

クロノ「だが、クエストはショップじゃないと受けられないはず…!いつのまに…!?」

 

カムイ「フッ…ハハハハ!ポイントは…“肉まん一週間分”という、普及協会非公認のクエストだ!!」

 

 

クロノ「それクエストじゃなくて買収っすよ」

 

ツネト「黙れ!裏切り者!!」

 

 

ナギサ「お前が言うな」スパッ

 

 

お互いにデッキを構えるクロノとトリドラ。

 

 

クロノ「オォオオオオッ!!」

 

「「「うぉおおおおっ!!」」」

 

 

激突!そして……

 

「「「……ぐはぁっ!!」」」

 

 

倒れるトリドラ。立っているのは…クロノだ。

 

 

カムイ「な、なんかよく分かんねぇが、強え…!」

 

アン「あはは、もうツッコミが追い付かない…」

 

クロノ「次はアンタだ…!」

 

 

クロノは主人公とは思えない悪い笑みでカムイに迫る。

 

 

カムイ「クッ…!完全にナギサの手先になりやがったか…!」

 

 

ナギサ「うん、うん〜♪」

 

アン「外堀埋めるのだけは上手いってこういうことですか…」

 

 

 

カムイ「目を覚ませ!情けねぇぜ!お前の魂はそんなもんだったのか!?」

 

クロノ「クヘヘ…!カムイぃ…!」

 

カムイ「思いだせ、クロノ!俺との熱きヴァンガードの日々を!思い出すんだ…!俺との出会いをッ!!」

 

 

 

 

 

【カムイとクロノ 熱血劇場(嘘)】

 

 

 

コート姿のカムイとクロノ。

 

すれ違いざまに肩がぶつかり、そして……

 

 

カムイ『ラァアアアアアッ!!』

 

クロノ『オォオオオオッ!!』

 

カムイ/クロノ『『──グハァッ!!』』

 

 

互いの顔面に拳がヒット!

 

殴り合いの中、二人の中には熱い絆が…!

 

 

カムイ「俺にはすぐわかった。お前の中に熱いヴァンガード魂が眠ってるってな…!俺は探してたんだ、お前のような奴を…!」

 

 

そして修行の日々。

 

養成ギプス、逆さ吊り状態での腹筋、更に鉄下駄ランニング…。

 

そして夜空を指差せば、そこには輝く星が…。

 

 

 

 

 

アン「やってることがナギサさんと同レベル…」

 

カムイ「共に目指すと誓った、ヴァンガードの星!それを、ナギサごときにあっさり丸め込まれやがって…!俺は!お前をそんな子に!育てた覚えはッ、ねぇえええええッ!!!」

 

クロノ「グハァアアッ!!」

 

アン「えぇえええっ!?」

 

 

イメージでビクトールにライドしたカムイの拳が、クロノの顔面にクリティカルヒット!

 

吹き飛び、なんとか起き上がったクロノはハッとする。

 

 

 

クロノ「ハッ……、俺…いったい何を…?」

 

カムイ「ようやくお目覚めか…!」

 

アン「洗脳が解けた…」

 

ナギサ「チィッ…!」

 

 

 

 

 

 

カル「もう付き合いきれませんよ…」

 

ケイ「つかれたぁ…」

 

カムイ「ったく、昼飯食い損ねたじゃねぇか…」

 

 

ナギサ「はい♪」

 

カムイ「おっ…!──ハッ!?」

 

 

横から差し出されたナギサの手作り弁当を自然な流れで手にとり、箸を伸ばしたところでハッとするカムイ。

 

 

クロノ「……なんか、今しっくり来てましたね」

 

アン「すごい自然な流れでしたね」

 

ツネト「カムイさぁん、もういいんじゃないですかぁ?お似合いですよ?」

 

ケイ「美味しい〜」

 

ツネト「あっケイ何食っ……おお!カムイさんのキャラ弁だ!一口も〜らいっと!」

 

 

ツネトも一口つまむが……

 

 

ツネト「ッ!!? か、辛ええぇぇ!!!」

 

 

火を噴いた。

 

 

ナギサ「時に愛には刺激も必要よ♥️」

 

カムイ「お前ら勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!何が『もういい』だ…!」

 

クロノ「だって…」

 

ツネト「もう面倒っす」

 

アン「同じくです」

 

カル「うん」

 

ケイ「うん」

 

 

 

カムイ「ふざけんなっ。それにな…俺には心に決めた人がいるんだ。俺だけの女神がな」

 

 

クロノ「二股っすか」

 

ツネト「サイテーっすね」

 

 

カムイ「……なんでそうなる…!だぁあああもうお前ら帰れッ!!」

 

 

クロノ/アン「「はーい」」

 

トリドラ「「「おつかれっしたー」」」

 

 

カムイ「ま、待てッ!帰るな!ナギサと二人きりにすんなぁっ!」

 

クロノ「もうなんなんすか…」

 

ツネト「支離滅裂〜」

 

 

カムイ(クッ…!このままじゃあバイトもできねぇじゃねぇか…!……こうなったら仕方ねぇ…!)

 

 

カムイ「ナギサッ!」

 

ナギサ「なぁに?」

 

カムイ「……ファイトだナギサ!俺が勝ったら、二度とバイト先には来るな!」

 

ナギサ「……!」

 

 

ナギサは目を見開くが、やがて笑みを浮かべ……

 

 

ナギサ「ふふっ…いいわよ。そのかわり私が勝ったら……」

 

カムイ「ぐっ…!」

 

次に来る言葉を察してうぐっとなるカムイ。

 

そして……

 

 

ナギサ「──あははっ、結婚ね♪」

 

 

 

クロノ/アン「「け、結婚…!?」」

 

 

 

 

 

 

カードキャピタル2号店。

 

 

クロノ「勝ったら結婚って…あの子正気か?」

 

ツネト「よくわかんねぇけど、あの二人の間じゃ、昔からそういうことになってんだよ」

 

アン「あぁ、だからあんなに嫌がってたんですね」

 

 

ルナ『カムイがナギサから逃げ回ってるのは、今に始まったことじゃないし。…あの子、愛が重めだから』

 

 

アン(あはは……あれはそういう……)

 

 

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!」」

 

 

カムイ「《メチャバトラー ランボール》!」

 

ナギサ「《獣神 ライオット・ホーン》♪」

 

 

【《メチャバトラー ランボール》G0 5000】

 

【《獣神 ライオット・ホーン》G0 5000】

 

 

カムイ「俺からだ!《メチャバトラー ケンドール》に、俺様ライドッ!」

 

 

【《メチャバトラー ケンドール》G1 8000】

 

 

ナギサ「次は私ね…!《獣神 マックスビート》に、ナギサちゃんライド〜♪《獣神 フロッグマスター》をコール!」

 

【《獣神 マックスビート》G1 7000】

【《獣神 フロッグマスター》G1 7000】

 

ナギサ「フロッグマスターのブースト、マックスビートでアタック〜♪」

 

 

 

アン「二人ともノヴァグラップラーですか…」

 

クロノ「しかし、いくらあの子が強いって言ってもカムイさんには…」

 

ツネト「確かに実力そのものはカムイさんが圧倒的に上だろうな。だが…」

 

「「?」」

 

 

ナギサ「クリティカルトリガーゲットー!」

 

【《獣神 デススティンガー》☆】

 

カムイ「げえっ…!」

 

 

その後も…

 

 

カムイ「《メチャバトラー ケンビーム》に、俺様ライドッ!《デアデビル・サムラーイ》、《ベアダウン・サムラーイ》をコールだ!」

 

【G2 10000】

【G2 9000】

【G1 7000】

 

 

カムイ「アタック!」

 

ナギサ「ノーガード!」

 

カムイ「ドライブチェック!…と、トリガーなし」

 

 

次のターンも…

 

 

ナギサ「《獣神 ダムンドレオ》でアタッ〜ク♪」

 

【G2 10000】

 

カムイ「の、ノーガード…」

 

ナギサ「ドライブチェック!」

 

 

【《獣神 デススティンガー》☆】

 

 

ナギサ「クリティカルトリガーゲットー!」

 

カムイ「またトリガーを引き当てやがった…!クソ、なんで俺とのファイトの時だけそんなに引きがいいんだ…!」

 

ナギサ「愛の力に決まってるじゃない…♥️あぁ、聞こえる…!祝福のウェディングベルが♥️」

 

 

カムイはあっという間に4ダメージである。

 

 

ツネト「勝負には相性ってもんがある。それはヴァンガードも同じだ。カムイさん、大文字とは驚くほど相性が悪いんだ…」

 

カル「実際、過去に大きな大会で負けてますしね…」

 

アン「な、なるほど…」

 

 

 

カムイ「クソッ…!やられっぱなしでいられっか!──百撃必殺、永劫不敗!王者の凱旋に震えやがれ!《永劫不敗(イモータル) アシュラ・カイザー》に、超俺様ライドッ!!」

 

 

【《永劫不敗(イモータル) アシュラ・カイザー》G3 11000】

 

 

 

しかし…

 

 

 

カムイ「ぐっ…!た、ターンエンド…」

 

 

反撃を狙って総攻撃を仕掛けたものの、ドライブチェックではトリガーもG3も出なかったためせっかくのリミットブレイクも発動せず…。

 

 

ナギサ「じゃあ私ね!──あたしの本能が叫んでいる…!恋する思いは止まらない! ラブラブライドっ! 《最凶獣神 エシックス・バスター “Я”》!」

 

 

【《最凶獣神 エシックス・バスター “Я”》G3 11000】

 

 

カムイ「くっ…!Яユニットも一般発売されたと分かってはいるが、何故かナギサが使うと異様に似合って滅茶苦茶こぇえ…!」

 

ナギサ「ジェネレーションゾーン・解放♪」

 

 

【コスト《最凶獣神 エシックス・バスター “Я”》】

 

 

ナギサ「聞こえる…ウェディングベル…!聞こえる…!愛する二人の輝ける未来!ストライドジェネレーション!《究極獣神 エシックス・バスター・カタストロフ》ッ!!」

 

 

【G4 11000+15000→26000】

 

 

カムイ「げぇえっ!?」

ナギサ「病めるときも、健やかなる時も〜!ヴァンガードにっ、ラブラブアタ〜ック!!」

 

カムイ「ぎゃあアアアアっ!!」

 

 

カタストロフの効果とスタンドトリガーの連続発動による5連続アタックで、カムイはギリギリ凌いだものの追い詰められてしまう。

 

 

ナギサ「ナギサもう中学2年生だから、親の承諾なしで結婚できるんだよ!」

 

 

 

※中学2年生では結婚できません!!

 

 

 

カムイ「俺はヴァンガードの道を突き進む…!結婚なんかしてられっか!!」

 

クロノ「そうですカムイさん!!一緒にヴァンガードの星を掴みましょう!!」

 

アン「えっ、そのネタ続いてたんですか…」

 

 

カムイ「あぁ!だがそれより何より、俺は普通にバイトがしてえんだ…!」

 

ナギサ「!」

 

カムイ「ナギサに邪魔されてたまるかぁっ!ジェネレーションゾーン、解放ッ!」

 

 

【コスト《アシュラ・カイザー》】

 

 

カムイ「今こそ示せ…!我が、真に望む世界を!ストライドジェネレーションッ!《闘神 アシュラ・カイザー》ッ!!」

 

 

【G4 11000+15000→26000】

 

 

カムイ「いっくぜぇえええッ!!」

 

 

戦場(リング)の王者と呼ばれた王者の拳が、エシックス・バスター “Я”を叩き潰した…!

 

 

ダメージ6、カムイの大逆転勝利である。

 

 

カムイ「よし…!」

 

クロノ「おおっ!」

 

ナギサ「…そんなにバイトがしたいなんて…」

 

 

 

しかし、タダでは起きないのがナギサである。

 

 

 

ナギサ「──あ…! そっか、2人の未来のためね!!」

 

カムイ「はぁ!?」

 

ナギサ「さっきまでのナギサは子供だった…。愛さえあれば、他に何もいらないっと思ってた…でも違う。結婚生活はお金が必要!!そーゆうことね、カムイちゃん!」

 

カムイ「全然違う!!」

 

 

クロノ「か、カムイちゃん…!?」

 

 

ナギサ「ありがとう!カムイちゃ〜んっ!──ひゃうっ!」

 

カムイ「いい加減それはやめろ」

 

 

カムイに抱き付こうと突撃したところを回避され、ナギサは床に撃沈した。

 

 

クロノ「こんな子だったのか…」

 

アン「あ、あはは…」

 

 

 

 

 

 

カムイ「ともかく、俺の勝ちだ。もうバイト先には来るなよ?」

 

ナギサ「指輪は給料の3ヶ月分、新婚旅行はワイハーね!」

 

カムイ「ホントに解ってんのか…!?」

 

ナギサ「あ~楽しかった!じゃあまたねー!」

 

 

ナギサは店を去った。

 

 

ツネト「…しまった!大文字にクエスト完了のサイン、もらってねえ!!」

 

 

トリドラも出ていった後、残された3人。

 

 

アン「…なんか、大変でしたね、色々…」

 

カムイ「そうだな…」

 

 

 

アン「けど、恋、かぁ…。ナギサさんはちょっと重めだけど…一途なんですね」

 

カムイ「い、一途ってなぁ…」

 

アン「……私にもいつか、そんな相手が……」

 

 

 

 

クロノ「あの…」

 

カムイ「ん?」

 

クロノ「……ホントに特訓とかしちゃいます?」

 

カムイ「あ?」

 

クロノ「ヴァンガードの星、目指して」

 

アン「……えっ」(゜Д゜)

 

 

 

カムイ「……フッ」

 

クロノ「えっ?」

 

カムイ「よし、お前ら鉄下駄履け。んでもって、逆さ吊りな!」

 

クロノ「ま、まじっすか」

 

アン「え、私もですか!?」

 

カムイ「よぉしクロノは服脱げ!ギブス付けてやるから」

 

アン「…あるんですか?養成ギブス…」

 

カムイ「ある!」

 

アン「…うそ」

 

 

 

 

 

 

……その夜、どこかのマンションにて。

 

 

ルナ「……うん。大丈夫。アン、元気そうだった」

 

 

月城ルナは、湯船に浸かりながら、スマホで誰かと通話していた。

 

 

ルナ「……そう。うん。ヴァンガード、始めたんだって。……嬉しい?……ふふ。だよね」

 

 

ルナ「そっちは?忙しそうだけど……うん。……うん。無理、しないで。……うん。それじゃ……」

 

 

 

 

ルナ「おやすみ……リン」

 

 

 

 

 

《続く》

 

ED「Hi×Touch大丈夫!」戸倉ミサキ〈橘田いずみ〉・新田シン〈森嶋秀太〉

 

 

 

 




クロノ「ナギサさん半端ないっすね…」

カムイ「アイツは人間ではない、化け物だ!」

アン「あ、あはは…そもそもどんな人だったんですか?」

カムイ「強豪、大文字ゴウキの妹で、そのゴウキ率いるチーム男前の一員だったんだ…!」

クロノ「それでファイトも強かったんですね…」

カムイ「あぁ。得意とするのは、期を見たら一気に畳み掛ける戦法で、スキを見せたら一瞬でやられちまう…!」

アン「……カムイさん、嫌い嫌いといいながら、けっこうナギサさんのこと語りますね……」

カムイ「……アンちゃぁんんん…!」

アン「……恋かぁ……」



次回『ハイメ・アルカラス』



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第6話「ハイメ・アルカラス」

大っ変……長らく……お待たせいたしました…!

最近pixivばっかでしたので、たまにはハーメルンにも上げてこうと思います。



OP「BREAK IT!」宮野真守


浅草・雷門…の前。

 

 

アン「ここ…ですよね?」

 

クロノ「あぁ。わりぃな、付き合ってもらって」

 

アン「いえ、今日は暇でしたので」

 

 

クロノとアンがここにいるのは、とあるクエストを受けたためだ。内容は……

 

 

 

【《にっぽんのゔぁんがーどをおしえてください》

ぼくはがいこくからきたふぁいたーです。にっぽんのゔぁんがーどをみてみたいのであんないしてください。】

 

 

 

クロノ「っつっても、人が多すぎて誰が依頼者なんだか…」

 

 

その時、声が聞こえた。

 

 

「ハートにきたぁー!」

 

クロノ/アン「「?」」

 

 

「これが提灯!昔のランプか…!おもしろい!火を使うのに紙でできてるなんて、驚き桃の木、ららららっきー!」

 

クロノ「……すっげぇテンション」

 

 

その青みがかった銀髪の青年は、アンとクロノの元にやって来た。

 

 

「ハーイ、アミーゴ!キミ達が依頼を引き受けてくれたんだね!」

 

アン「へっ?あ、はい…」

 

クロノ「え?どうして…」

 

「ファイカを持って、人を探してたみたいだからね。いやぁ、君みたいな美しい人に案内してもらえるなんてうれしいなぁ!」

 

アン「はいっ!?」(///)

 

クロノ「おいコラ…」

 

「お?二人はドツキアイしてるのかい?」

 

クロノ「ド突き合い…?」

 

アン「それ多分お付き合い……って違いますよッ!?」(///)

 

クロノ「お、おぅ違うぞ!?」(///)

 

「オゥ、失礼しましたッ!」

 

 

 

 

 

「オレはハイメ・アルカラス。よろしく!アミーゴは?」

 

アン「えっと…日下部アンです」

 

クロノ「新導クロノです、ハイメさん」

 

ハイメ「ノー!ハイメ!さんはいらないよ!」

 

クロノ「……ハイメ」

 

ハイメ「じゃあアン、クロノ!チョコチョーダイ、よろしくっ!」

 

クロノ/アン「「?」」

 

 

首を傾げる二人。

 

 

クロノ「……なんだ?」

 

アン「……あ、自己紹介じゃないですか?」

 

ハイメ「そ〜う!それです!自己紹介っ!歳は?」

 

アン「二人とも14歳です」

 

ハイメ「家族は?」

 

アン「私は四人家族で…両親と姉が」

 

ハイメ「オゥ!君のお姉さんならきっと美人だろうなぁ!クロノは?」

 

クロノ「……あ〜……おばさん、と……」

 

 

目を逸らすクロノ。

 

 

アン「……?」

 

ハイメ「…………」

 

 

ハイメの笑みが一瞬消えたが…すぐに気を取り直したように笑みを浮かべ、話題を変える。

 

 

ハイメ「アン、クロノ、キミ達の町を紹介してよ。」

 

クロノ「俺達の町…」

 

ハイメ「ここはキミ達が暮らしている町なんだろう?いいところをいっぱい知ってるはずさ!」

 

クロノ「いい所…、この町に来て1年も経つのに、あまり知らないんだよな…。」

 

アン(そうなんだ…)

 

ハイメ「いこう!クロノ、アン!」

 

 

 

 

 

そうして出発した三人だが……

 

 

ハイメ「おぉ~!エミリオから聞いてたとーり!日本の文化は独特で、おもしろそうなものばかりだね!」

 

クロノ「日本のヴァンガードファイトに興味があるんだから、カードショップか、それとも、ギアースのある支部とか…」

 

アン「あとは……ってあれ?どこ行きました?」

 

ハイメ「ハートにきたぁー!」

 

 

ハイメは人形焼の店に向かって爆走していた。

 

 

「ほれ、一つ食ってみるか?」

 

ハイメ「グラシアス!」

 

アン「すぐお店の人と仲良くなってる…」

 

クロノ「すげぇな…けど日本のヴァンガードが知りたいんじゃないのか…?」

 

 

ハイメは煎餅屋や食品サンプル屋、武士や侍のコスプレと、興味を持ったらすぐに駆けていくため、クロノとアンは追いかけるのに必死だった。

 

 

ハイメ「美しい…!まさに大和撫子…!オレと、恋のアバンチュールしないかい?」

 

「し、仕事中なので…」

 

 

更には若い巫女さんをナンパする始末。

 

 

ハイメ「キミに、この花を…!」

 

アン(いやそれりんご飴…)

 

 

巫女さんも思わずといった様子で笑っていた。

 

 

クロノ「俺にはとても真似出来ない…」

 

アン「真似しなくていいです、というか真似しないでください、心から」

 

 

 

クロノ(寄り道ばっか、世話が焼ける…。でもこの人の周りは、いつも笑顔でいっぱいだ…)

 

 

 

ハイメ「人力車サイコ〜!風を切る感じ、自動車と違ってやさしー!景色も違って見える!」

 

「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ!そう、俺達はお客さんだけじゃねえ、雰囲気も運んでんだ!」

 

ハイメ「粋ってやつだよね!」

 

アン「近くに住んでるのに、初めて乗ったなぁ…」

 

 

そんなことを考えていると……

 

 

シオン「日下部さん、新導くんも?」

 

アン「綺場くん?」

 

クロノ「綺場!」

 

 

信号で止まった時、隣に止まった高級車の窓からシオンが顔を出した。

 

 

シオン「何をしてるんだい?」

 

アン「クエストです」

 

シオン「……?人力車に乗ることが…?」

 

クロノ「何故かそーゆうことになってる…」

 

 

ハイメもシオンに声をかける。

 

 

ハイメ「ハーイ!クロノのアミーゴだね?オレはハイメ・アルカラス。クロノのアミーゴさ!」

 

シオン「ハイメ・アルカラス…?(どこかで聞いたような……)」

 

ハイメ「いい車だ。そうだ、競争しないか?」

 

シオン「競争?この車と、人力車で…?」

 

 

クロノ/アン「「へ?」」

 

 

ハイメ「オレは人力車が勝つ方に賭ける、どうする?のるかい?」

 

シオン「……いいですよ。その勝負受けましょう。勿論、交通ルールは守ってね」

 

アン「ええっ!?」

 

 

運転している岩倉(シオンの執事)も、人力車の俥夫さんも乗り気である。

 

ゴールを決め、信号が青になると同時にスタートした。

 

 

アン「……綺場くんも意外と負けず嫌いだからなぁ…。すいません、妙なことに…」

 

「いやいや、むしろ腕が鳴る…!アミーゴ!人力車の方が凄いってこと、この俺がプライドかけて、証明してやらぁ!行くぜ!!」

 

アン「むしろこっちのほうが本気〜ッ!?」

 

 

そして結果は……

 

 

ハイメ「人力車の勝ちだね、アディオース!」

 

シオン「…!?」

 

 

先にゴールに着いていた人力車は、そのまま去って行った…。

 

 

シオン「どうして…」

 

岩倉「人力車の俥夫は、この辺りの道をよく知っています。あのハイメという方は、それを見越していたんでしょうね」

 

シオン「…!」

 

 

 

クロノ「どうして人力車が勝てるって?」

 

ハイメ「よく見れば、分かることさ」

 

アン「見ていれば…?」

 

ハイメ「そう!あとは、ハートが震えるかどうかさ!」

 

クロノ「ハートが…」

 

 

 

ところ変わって、住宅街を歩く3人。

 

 

トコハ「アンちゃん、新導?」

 

クロノ「ん?…安城」

 

アン「トコハちゃん」

 

ハイメ「おぉ~、キュート!」

 

 

アン(また始まった…)

 

アンが頭を抱える中、ハイメはトコハに近づく。

 

 

ハイメ「俺は、ハイメ・アルカラス!セニョリータ、ファースト・ネームは?」

 

トコハ「へ?トコハ…」

 

ハイメ「運命の人…!キミに会うのは、2回目だね」

 

トコハ「はぁ!?」

 

ハイメ「1回目は…夢の中さ。キミに会うために生まれてきたんだ!オレのハニーになっておくれ!」

 

トコハ「お断りしますっ!!」

 

ハイメ「おぅふっ…」

 

 

さすがにちょっとへこむハイメ。しかしすぐ立ち直る。

 

 

トコハ「新導、何なのこの人!?」

 

クロノ「俺にも分からない…」

 

ハイメ「ハートに……きったぁああ!!キッパリ断るこの性格!ますます気に入った!絶対好きにさせてみせる!!キミのハート、このハイメが必ず…撃ちぬいてみせる!」バァン!

 

トコハ「ちょっと新導!なんとかしなさいよ!!」

 

クロノ「と、言われても…」

 

ハイメ「トコハ、俺とフォーリンラブしよう!」

 

トコハ「新導っ!!」

 

クロノ「俺かよ!?」

 

アン「あ、あはは…」

 

 

 

そしてしばらく歩くと……

 

 

「だから、もういっぺん僕とファイトしてほしいんだ!」

 

「嫌だ、だってお前弱すぎんだもん。つまんないよ」

 

「練習して強くなったんだよ!」

 

 

路地で言い争う子供達がいた。

 

 

クロノ「ん…?」

 

ハイメ「よーし話は聞かせてもらった!この子とファイトしてくれないか?」

 

「「へ?」」

 

ハイメ「勝てたらこの人形焼あげるから、ね?」

 

「は、はぁ…」

 

 

なんやかんやで子供達のファイトが始まる。

 

 

ハイメ「俺は、あの子が勝つ方に賭ける。」

 

クロノ「え、実力もわからないのに…?」

 

ハイメ「あぁ」

 

アン(……そういえば、さっさも……)

 

 

そして。

 

 

「負けた…」

 

「やったー!やった、勝ったー!」

 

「ごめん、本当に練習してきたんだな…」

 

「うん!」

 

 

 

クロノ「さっきまで喧嘩してたのに…」

 

ハイメ「ヴァンガードはいい、勝負の跡はアミーゴになれる!」

 

クロノ「アミーゴ…さっきはどうして、あの子が勝つ方にかけたんだ?」

 

ハイメ「目さ。あの子の真剣な目…、相当練習してきたってわかった」

 

クロノ「そんな所まで見てたのか…」

 

アン「人力車の時も?」

 

ハイメ「ハハッ!人力車を見たら、彼が真剣に仕事に打ち込んでるのが分かったからね!」

 

クロノ/アン「「…………」」

 

 

 

そして、やっとこさカードショップに向かうことになった3人。

 

 

ハイメ「そうだ!二人はどんなデッキを使ってるんだ?」

 

アン「私は…グランブルーを」

 

ハイメ「オゥ!俺はアクアフォースだから、同じ海に生きる者…!──ハッ!これは運命!?」

 

アン「あ、あはは…」

 

ハイメ「はははっ!クロノは?」

 

クロノ「俺は…」

 

 

クロノはファイカを開いてデッキを見せる。

 

 

ハイメ「おぉ…!?ギアクロニクル!?初めてみた…!ファイトしよう!ファイト!!」

 

クロノ「えっ、今!?」

 

 

その時……

 

 

 

 

 

「……みぃつけた……」ポンッ

 

ハイメ「ひぃっ!?」

 

 

音もなく後ろに忍び寄った人物に肩に手を置かれ、ハイメは驚きですっとんきょうな声を上げた。

 

 

ハイメ「っとぉッ!?な、なんだルナじゃないか!あ〜ビックリした〜…!」

 

ルナ「……まったく…」

 

アン「ルナさん!?」

 

ルナ「……アン。また会ったね…」

 

マモル「観光の時間は終わりだよ、ハイメ」

 

クロノ「マモルさん!」

 

 

そこにマモルまでやって来た。

 

 

ルナ「……そう。おさぼりはここまで…」

 

ハイメ「ご、後生でござるぅ~!あとすこしだけぇ〜!」

 

マモル「ダメだ。この後レセプションがあるんだから…」

 

ハイメ「え〜っ!?」

 

ルナ「……またオシオキが必要かな?」

 

ハイメ「すんませんでしたァアッ!」

 

クロノ(何したんだこの人…)

 

 

 

アン「あの…ルナさん、マモルさん……それにハイメ、知り合いなんですか?」

 

ルナ「……私も普及協会の人間だから」

 

マモル「彼女も僕と同じ、クランリーダーだ」

 

アン「ええっ!?」

 

 

 

マモル「そしてハイメは、普及協会が日本に招待したんだ。まだ新人ながら、ヴァンガード欧州リーグでトップクラスにまで上り詰めた…新進気鋭なユーロ選抜メンバーの1人だよ」

 

クロノ「マジか…」

 

マモル「来週、僕らを含む日本選抜との交流戦に参加するんだ。そして、そこでハイメとファイトする予定なのが…」

 

ルナ「……私」

 

アン「えぇええええっ!?」

 

 

 

マモル「さぁ、帰るよハイメ」

 

ハイメ「わかったよ。アン、クロノ、楽しかったよ!おかげで日本らしい場所を沢山みることが出来た!これで俺のクエストは完了だ!」

 

アン「えっ、でも日本のヴァンガードはまだ見てないんじゃ…」

 

ハイメ「それはこの目で確かめるよ、ルナとのファイトでね。よかったら二人とも、交流戦見に来ないか?」

 

 

クロノ/アン「「!」」

 

 

ハイメ「ハートが震えるファイトが、見たかったら…!」

 

 

 

 

 

《続く》

 

ED「Hi×Touch大丈夫!」戸倉ミサキ〈橘田いずみ〉・新田シン〈森嶋秀太〉

 

 

 

 

 




トコハ「ハイメ・アルカラス…まさか、ユーロリーグを代表するファイターだったなんて…」

クロノ「お前、結構きっつい態度とってたからなぁ…」

トコハ「だって!あんな風に声かけられたら、まさかそんなすごい人だなんて思わないじゃない!」

アン「あ〜…まぁ、たしかに…?」

トコハ「でしょでしょ?」

クロノ「それにしてもハイメ、いったいどんなファイトするんだろ?」

アン「ルナさんとファイトするみたいですけど…どうなるんでしょうか…?」



次回『ハイメのカード』





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第7話「ハイメのカード」

今回は色々とアレです(笑)

あと、ちょっとだけ新右衛門編を意識した描写があります(パラレルだけど)。


MCミヤ「FiVA主催!東京選抜VSユーロリーグ交流戦も、いよいよ大詰めだぁッ!」

 

 

MCミヤによる実況。大きなファイトスタジアムで、FiVA…ヴァンガード普及協会が主催する、ヴァンガードの国際交流戦が開催されていた。

 

 

アン「すごいですね…」

 

クロノ「あぁ…」

 

 

観客席のアン達は、ハイレベルなファイトの連続に驚くばかりだ。

 

 

MCミヤ「では最終戦の対戦カードをご紹介しましょう!FiVA本部所属の、シャドウパラディンクランリーダー!

かつて世界大会を席巻した、チームアブソリューツのメンバーでもある…!月城ルナ選手です!」

 

 

ルナ「……腕が鳴る…」

 

 

ルナの入場と共に、大歓声が上がる。

 

 

アン「ルナさんって、すごい有名人だったんだ…」

 

 

アンは知人の思わぬ一面に唖然としている。

 

 

MCミヤ「対するユーロ選抜!アクアフォースを相棒に、欧州リーグでトップクラスに上り詰めた、新進気鋭のファイター!ハイメ・アルカラス選手だ〜ッ!」

 

ハイメ「いえ〜いッ!」

 

 

ハイメも大歓声と共に入場する。

 

 

MCミヤ「さぁ〜勝つのは……どってぃだ!?」

 

ハイメ「行くよ、ルナ!」

 

ルナ「……望むところ」

 

 

満面の笑みのハイメ。ルナも珍しく好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

 

 

───────

 

 

 

しばらくたち、ファイトは後半に突入していた。

 

 

ルナ「私のターン」

 

 

現在のルナのヴァンガード

 

【《撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン》G3 11000】

 

 

お互いグレード3。勝負はここからだ。

 

 

ルナ「ジェネレーションゾーン、解放…!」

 

 

ルナはGユニットのカードを手にする。

 

 

ルナ「黒き刃で、未来を阻むもの全てを斬り払え…。──ストライドジェネレーション」

 

 

《撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン》の姿が、天からの黒い稲妻に呑まれる。そして……

 

 

ルナ「──《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》…!」

 

 

青白き刃の大剣を手にした黒竜が、その姿を現した…!

 

 

【《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》G4 11000+15000→26000】

 

 

ルナ「……行くよ、ハイメ…!」

 

ハイメ「あぁ…!おもいっきり来なよッ!」

 

 

 

アン(……二人とも、笑ってる……楽しそう……)

 

 

 

ルナ「ドラグルーラー・レブナントのスキル発動…!リアガードの《氷結の撃退者》を退却させて、山札から《撃退者 ダークボンド・トランペッター》をスペリオルコール。自身とダークボンドにパワー+3000。

更にダークボンドのスキルで、山札から《恐慌の撃退者 フリッツ》をスペリオルコール…!」

 

 

【《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》G4 11000+15000+3000→29000】

 

【《撃退者 ダークボンド・トランペッター》G1 6000+3000→9000】

 

【《恐慌の撃退者 フリッツ》G0 6000】

 

 

ルナ「アタック…!」

 

 

ルナの攻撃が決まっていく。

 

ハイメは一気にダメージを受けたが……

 

 

ハイメ「ハートに…、きたぁーっ!」

 

 

良い笑顔で叫ぶ。

 

 

ハイメ「流石だね、日本のエース!これが日本のヴァンガード!」

 

ルナ「ふふ…日本には、強いファイターが山ほどいるよ」

 

ハイメ「うわぁ~言うねぇ…!でも、俺もユーロリーグを背負ってきたんだ。簡単にアディオスってわけにはいかないよ!」

 

 

ハイメのターン。

 

 

ハイメ「俺のハートを震わせてくれたキミに、全力でこたえなくっちゃね!ジェネレーションゾーン、解放!!」

 

 

ハイメもGユニットのカードを手にする。

 

 

ハイメ「進め!我が導く運命の航路!!ストライドジェネレーション!!」

 

 

ハイメのヴァンガード《嵐を超える者 サヴァス》が光に包まれる。そして……

 

 

ハイメ「《天羅水将 ランブロス》ッ!」

 

 

【《天羅水将 ランブロス》G4 11000+15000→26000】

 

 

ハイメ「突き進め!ハートの燃えるままに!皆の思いを乗せて、打ち砕けぇえッ!!」

 

 

ハイメ怒涛の連続攻撃が決まり……ファイトは決着した。

 

 

「勝者、ハイメ・アルカラス選手〜ッ!!」

 

 

大歓声が上がる。

 

 

ルナ「負けちゃったか……ありがと、いいファイトだった」

 

ハイメ「こっちこそ!」

 

 

ルナとハイメは握手を交わした…。

 

 

 

───────

 

 

クロノ「………………」

 

 

数日後…町を歩きながら、クロノはルナとハイメのファイトを回想していた。

 

 

クロノ「俺だったら、どう戦う…?」

 

 

自らのクロノジェット・ドラゴンと、ハイメのサヴァスの戦いが頭に浮かび……

 

 

アン「何やってるんですか…?」

 

クロノ「ハッ!?」

 

 

クロノジェットと同じように拳を突き出しているところを、たまたま通りかかったアンに目撃された。

 

 

クロノ「な、なんでもねえよっ!?」(///)

 

アン(かわいい……)キュン…

 

 

アンがキュンとしていると……

 

 

クロノ「……ん?あれハイメか?」

 

アン「?……あ」

 

 

荷物を持ったハイメがキョロキョロとしていた。

 

 

クロノ「ハイメ?」

 

ハイメ「おぉ、アミーゴ!いい所に!ちょっとミミハンバイ頼むよ。」

 

クロノ「耳販売…?」

 

アン「道案内じゃないですか?」

 

ハイメ「そう、それ!」

 

クロノ「あ〜…」

 

 

 

───────

 

 

ハイメ「とうちゃ〜く!ココだ!」

 

アン「ここって…」

 

 

到着したのは、児童養護施設だった。

 

 

ハイメ「エミリオ!」

 

エミリオ「よく来た!遅かったじゃないか。心配しちゃったよ~、タントティエンポ(久しぶり)!」

 

 

そう答えた男性・エミリオは、この施設の管理者らしい。

 

 

ハイメ「元気そうだねエミリオ。ちょっと道に迷っちゃってさ。アミーゴに道案内してもらって…ん?」

 

 

クロノ「泣くな泣くな、ちょっとすりむいただけだろう?後で消毒してもらえ」

 

アン「あっ、私持ってますよ」

 

 

クロノが足を擦りむいて泣いている子供に声をかけており、それを見たアンが駆け寄る。

 

その近くでは、別の子供がなにやらもじもじと……

 

 

アン「?」

 

クロノ「あ…。あぁ待て待て!すみません、トイレの場所ってどこに…!」

 

 

そんなこんなで、クロノは慣れた様子で、率先して子供達の面倒を見ていた。

 

 

ハイメ「おぉ…アミーゴ、案外子供好き?」

 

クロノ「あ、いや……俺も前、こうゆう所にいたんでさ…慣れてるだけ。」

 

アン(……え)

 

ハイメ「…!……そっか、キミも…」

 

アン「………………」

 

 

 

───────

 

 

ハイメ「ハートにきたー!こっちも、全力でいくよっ!」

 

子供「望むところだ!」

 

ハイメ「ノーガード!」

 

子供「ノーガードかよっ!?」

 

 

庭で子供達とファイトするハイメ。アンがそれを見ていると……

 

 

少女「ね〜、おねぇちゃんもヴァンガードやるの?」

 

アン「え?あ、うん…」

 

少女「じゃあ私とやろ!」

 

アン「……うん、いいよ!」

 

 

 

そんな声が聞こえる中、クロノは建物の中でエミリオと話していた。

 

 

エミリオ「ハイメと出会ったのは、もう10年以上前になるのかな…。

 

僕はずっと世界中であの子達のような子供を助ける仕事しててね、

 

でもそろそろ歳だから、僕の実家のあったここに戻ってきて、みんなの面倒をみてるのさ」

 

 

クロノ「……俺のいた施設にも、ヴァンガードがあったらよかったのにな…」

 

エミリオ「……じゃあ、昔やれなかった分、これから楽しもうじゃないか!」

 

 

エミリオもデッキを取り出す。

 

 

クロノ「……はい!」

 

 

 

───────

 

 

……夕方、帰り道の橋の上。

 

 

ハイメ「グラシアス、アミーゴ!このゴホンは一生忘れないよ!」

 

アン「それをいうなら御恩です」

 

クロノ「まぁ俺も案外楽しかったし、気にすんな」

 

ハイメ「そーだねー、最後は一緒になって騒いでたもんね~♪」

 

クロノ「そ、それはお前だろ!?」(///)

 

 

クロノもアンも、子供達とのヴァンガードを楽しんでいた。

 

 

クロノ「……別にさ、俺も嫌な目にあったわけじゃないんだ。いじめられたとか、そういうのも無かったし。でも……」

 

アン「………………」

 

クロノ「……あっ、わりぃな暗い話して」

 

アン「い、いえ!お気になさらず…」

 

ハイメ「……俺もそうだったよ。エミリオと出会うまでは」

 

 

ハイメは、《嵐を超える者 サヴァス》のカードを取り出す。

 

 

ハイメ「エミリオにもらった、俺の宝物だ。こいつが全部、教えてくれた。何もかも変えてくれたんだ」

 

クロノ/アン「「…………」」

 

 

そう時。

 

 

ハイメ「ああっ!?」

 

 

近くを大型トラックが通ったことで風が起こり、サヴァスのカードが飛ばされ……

 

 

ハイメ「うおおおおおおっ!!」

 

 

ハイメは手すりから身を乗り出してキャッチしたが、バランスを崩してしまう。

 

 

アン「あぶないっ!」

 

ハイメ「クロノッ!」

 

クロノ「うおっ!?」

 

 

なんとかクロノにサヴァスを渡すが、体勢を戻すことはできず……

 

 

ハイメ「良かっ……たぁああああああッ!?」

 

アン「あっちょっと!?……ひゃあああああああああああああッ!!?」

 

クロノ「おぃいいいいッ!!?」

 

 

助けようとしたアンまでバランスを崩し、カードを受け取るのに踏み出した際に足を滑らせてその場に転んだせいでクロノの助けも間に合わず、ハイメとアンは川にドボンと墜落した。

 

 

クロノ「大丈夫か〜ッ!!?」

 

アン「ぷはっ…!な、なんとか…!」

 

ハイメ「ぷはっ!ご、ごめんアン!巻き込んじゃった…!」

 

アン「あっ、いえ大丈夫です…」

 

ハイメ「よかったぁ…!……ハッ!クロノ、カードは無事!?」

 

クロノ「えっ!?お、おう!」

 

ハイメ「あぁよかった…ぶあっはっ!助けてえ!アミーゴぉ!!」

 

アン「泳げないんですか…?」

 

 

アンの手助けで、ハイメも揃ってなんとか陸に上がった。

 

 

ハイメ「助かったぁ……グラシアス、アン…」

 

アン「いえ……寒っ…!」

 

クロノ「大丈夫か!?……うっ……!?」

 

アン「…?……なんで目を逸らすんですか?」

 

クロノ「……あっ、いや……」

 

アン「……なんですか?……ちょっと、あの…?」

 

クロノ「………………………………す、透けてる……」

 

アン「へっ?……あっ…!」(///)

 

 

濡れたせいで服は体に張りつき、体のラインが はっきりでているだけでなく、色の薄い服を着ていたのもあってうっすら下着が見えていた。

 

 

アン「……ば、ばかぁああああああッ!!?」

 

 

バチィンッ!!

 

 

クロノ「ぐはぁッ!?……り、理不尽、だ…」バタッ

 

アン「……あっ」

 

ハイメ「わぉ、ナイスビンタ…」

 

 

 

───────

 

 

とあるマンションの、クロノの伯母の部屋。

 

クロノは現在ここで暮らしており、一番近かったここに3人はやって来た……のだが。

 

 

アン「………………」

 

 

アンはシャワーを浴びていた。

 

ずぶ濡れの二人を、クロノは自宅に案内した。

 

レディーファーストと、ハイメは先を譲ってくれたのだが……

 

 

 

アン(……な、なんか、緊張しますね……///)

 

 

体を洗い終わったアンは、クロノがお湯を張ってくれた湯船に浸かりながら考える。

 

……同級生の男の子の家でお風呂を借りている。

 

なんだか妙に意識してしまい、お風呂の中だというのにまったくリラックスできない。

 

 

アン(……あったまりましたし、そろそろ上がりましょうか……ハイメも待ってくれてますし……)

 

 

……脱衣場に出て(出たら鉢合わせというラッキースケベのテンプレなんてことはなかった)タオルを巻き、髪を乾かし、下着もドライヤーで乾かして身につけてから、クロノに借りた服を着る。

 

 

アン(……こ、これはいわゆる彼シャツというものでは……って彼氏じゃない彼氏じゃない…!)

 

 

……まだ自分の服が乾いていないし仕方ないのだが……

 

 

アン(……新導くんの匂い……)スン……

 

 

 

アン「……って私は何を〜ッ!!?」

 

クロノ『どうした!?』

 

ハイメ『え、なに!?』

 

アン「あっ……な、なんでもないですッ!」(///)

 

 

思わず出した大声はリビングまで届いていたらしく、何やってんだと頬を叩きつつ、アンは身支度を再開した。

 

 

 

───────

 

 

クロノ「ほら」

 

アン「あ、ありがとうございます…」

 

 

交代したハイメがシャワーを浴びている間、 クロノが淹れてくれた暖かいココアを飲んでいた。

 

 

アン「何から何まですいません…」

 

クロノ「気にすんな。……っと、ハイメの着替えも用意しねぇと……」

 

 

クロノはリビングを出ていく。

 

 

アン「……ふぅ……」

 

 

やっぱり緊張するなぁ……と思いつつ部屋を見回す。なかなか広いマンションだ。

 

 

アン「……?」

 

 

ふと、目立たない場所にある写真立てが目に入る。倒れていたので、直そうと手に取る。

 

写真に写っていたのは数人の男女。

 

まず幼少期のクロノ…幼稚園の年少ぐらいか。

 

彼を抱き抱えるのは、父親と思わしき男性。紺色の短髪で、目元がクロノにそっくりだ。

 

次に、自分やクロノと同じ晴見中学の制服を来た二人。

 

1人は少女。エメラルドグリーンの瞳にオレンジ色の長髪。前髪の一房が異様に長く、後ろから首に巻き付くようにカールがかかっている独特の髪型だ。クロノの親戚だろうか。現在は社会人だろうし、もしかしたら彼女がクロノの伯母なのかもしれない。

 

もう1人は少年。灰色の短髪で、後ろ髪がふんわりと少し広がる、温和そうな見た目だ。

 

あとの二人は大学生ほどの青年。

 

1人は外国人らしき金髪碧眼の青年。何故かちょんまげで、忍者っぽいポーズをとっている。

 

そしてもう1人は眼鏡をかけた青年。少し緑がかった黒髪が大きく跳ねているが、どこかで見たような……

 

 

アン「……店長さん…?……う〜ん……違うかな……?」

 

クロノ「日下部?」

 

アン「あっ…!す、すいません勝手に見て…!」

 

クロノ「いや、いいけど…」

 

ハイメ「上がったよ〜!」

 

 

クロノに続いて、クロノのシャツを着たハイメが入ってくる。

 

 

ハイメ「クロノのマンション、広くていいとこだね!」

 

クロノ「おばさんの家だよ。俺は住まわせてもらってるだけだ」

 

ハイメ「伯母さん、何歳?」

 

クロノ「25、6?」

 

アン「お若いですね…」

 

ハイメ「わーお!紹介してもらっていいかな?」

 

クロノ「おい…」

 

ハイメ「クロノの部屋はどこー?こっち?」

 

クロノ「あっおい待て!?」

 

 

 

───────

 

 

クロノの部屋。

 

 

アン(……必要最低限のものしかない……)

 

ハイメ「げっ…イクエーション…!」

 

 

本棚は教科書のみ。クローゼットには制服と、私服は2、3着だけ。机の上も時計ぐらい。

 

あとはベッドぐらいか。

 

私物はヴァンガードのデッキとファイカ以外全くない、殺風景な部屋だ。

 

 

ハイメ「うぅん、何もない…」

 

クロノ「いいんだよこれで。物が増えると出る時面倒だろ?」

 

ハイメ「出る?」

 

クロノ「俺、早く自立したいからさ」

 

アン/ハイメ「「………………」」

 

 

 

アン「……新導くん」

 

クロノ「ん?」

 

 

 

アン「……あんまり急いで大人にならなくても、いいんじゃないですか?」

 

クロノ「…………」

 

 

アンは自覚していなかったが、その寂しげで暖かい笑顔に、クロノは不思議な感慨を覚えた。

 

 

クロノ「……俺もさ。何かが変わるような気がしたんだ。ヴァンガードに初めて出会った時。

あんな熱さ…初めてだった。何だったんだろう、あの感じ…。俺の知らない俺と、出会ったみたいな…」

 

ハイメ「……キミと、俺の人生は違う。だから…答えは、自分自身のファイトで掴むしかない」

 

 

 

───────

 

 

二人の服は渇き、時間は夜。

 

すっかり暗くなり、女子中学生1人の夜道は危ないと、クロノとハイメもアンと一緒だ。

 

 

そこで、クロノはハイメに声をかける。

 

 

クロノ「ハイメ。……俺とファイトしてくれないか?」

 

ハイメ「…!」

 

クロノ「お前が凄いファイターで、俺なんかじゃ全然相手にならないことは分かってる。

けど…確かめたいんだ。俺が今感じているものが何なのか!」

 

アン「新導くん…」

 

 

 

ハイメ「……アミーゴ。ヴァンガードファイターは挑むものさ!」

 

クロノ「…!」

 

ハイメ「遠慮なんか捨てなよ。強い者にこそ、挑む価値がある。違うかい?」

 

クロノ「ハイメ…」

 

 

そしてハイメは、マモルに連絡を入れた。

 

 

ハイメ「俺は、あさっての午前中の便で帰国しなくちゃならない。だから、ファイトは明日の午後!場所をセッティングしてほしい!」

 

マモル『わかった、手配するよ』

 

ハイメ「ありがとう!それともう1つ!クエストを登録させてほしい。

俺のために、クロノにクエストをキャンセルさせちゃったからね」

 

 

そう。実は今朝、クロノはクエストに向かう途中だったのだ。

 

 

 

───────

 

グレード7 A.ハイメ 使用クラン:アクアフォース

【新導クロノ殿!】

 

君の情熱を俺に見せてくれ!!

ハートに来たら200ポイント!!

 

───────

 

 

ハイメ「じゃあ、明日!」

 

クロノ「──あぁ、明日!」

 

 

ハイメと別れ、アンの自宅までやって来た二人。

 

 

クロノ「けっこう立派だな」

 

アン「そうですかね?……両親は海外勤務ですし、姉さんも大学ですから……私1人じゃ、ちょっと広すぎますね」

 

クロノ「……そっか」

 

 

 

アン「……明日、見に行きますから。──がんばってくださいね♪」

 

クロノ「──おう!」

 

 

 

 

 

《続く》

 

ED「Hi×Touch大丈夫!」戸倉ミサキ〈橘田いずみ〉・新田シン〈森嶋秀太〉

 

 

 




アン「カードが無事でよかったですね」

ハイメ「あぁ!サヴァス…このカードはエミリオからもらった大切なものだからね!」

アン「だからあんなに…」

ハイメ「それだけじゃない!サヴァスは俺が手にした時はひとりぼっちだった。
だけど、ある時を堺にどんどんと仲間を増やしていったんだ!俺と歩んできた道とそっくりなんだよ!
俺達は、特別な運命で結ばれているのさ!」

アン「ハイメとサヴァス、強い絆で結ばれているんですね…!」



次回 第8話「クロノVSハイメ」





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第8話「クロノVSハイメ」

1年半以上開いてしまいました…!(汗)
すいません、pixivでのシリーズばかりしてました…。


クロノとハイメのファイトは、ドラゴンエンパイア支部にあるフリーファイトスペースを貸し切りして行うこととなっている。

 

 

マモル「あの歳でトップファイターと戦う機会をもてるなんて、クロノ君には素晴らしい経験になるな。どういう経緯なんだい?」

 

ハイメ「ハートに来たのさ!」

 

ルナ「……なるほど、わかんない」ポンッ

 

ハイメ「ひぃっ!?」

 

 

音もなく後ろに忍び寄ったルナに肩に手を置かれ、ハイメは驚きですっとんきょうな声を上げた。……あれ、前にも見たような。

 

ハイメ「い、いやぁ〜、毎回毎回驚かせてくれるね〜!」

 

マモル「月城さんも見に来たんだね」

 

ルナ「一応、大舞台でハイメに負けちゃった身としては気になったりする…」

 

 

 

 

 

支部に到着したクロノ達を、カムイが出迎えた。

 

 

カムイ「リラックス!余計なことを考えるな、いつものお前のファイトをすればいい」

 

クロノ「はい!」

 

カムイ「よし、いい顔だ!俺も思い出すぜ…全国大会の決勝とか、アジアサーキットの決勝とか…!」

 

アン「カムイさんのは大舞台すぎて参考にならないのでは…」

 

クロノ「てかカムイさん、皆に話したでしょ」

 

カムイ「ったりめぇだろ!こんだけの大勝負に、ギャラリー無しなんてありえないぜ!」

 

 

クロノ(いつもの俺のファイト…か)

 

 

思い浮かぶのは、かつて一度だけファイトした、名前も語らなかった男に言われた言葉。

 

 

『───ファイトには、その人間性がすべて現れる。どんなファイトをするかで、その人間の性格や、考え方が分かる』

 

 

クロノ(……やってやるさ。今の俺の全てを、この1戦で試す!)

 

 

そして、いよいよファイトの時。

 

 

ハイメ「楽しいね。ヴァンガードがあって、戦う相手がいて、見てくれる人たちがいる…!これ以上楽しいことってあるかい?」

 

クロノ「だな…!」

 

 

フィールドは、メガラニカの海中遺跡。青き水の支配する、失われた古代文明の神殿跡。

 

そして、ついに……

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」

 

クロノ「ガンナーギア・ドラコキッド!」

 

ハイメ「士官候補生 アンドレイ!」

 

 

シオン「いよいよ始まったね…」

 

アン「はい…!」

 

アン(新導くん、絶対に勝ってルナさんのリベンジを…!……って…?)

 

 

その時……アンの視界を光が支配した。

 

 

アン(───!?)

 

 

──────────────────

 

 

アン『……え』

 

 

気がつくと、アンは半透明な姿で浮いていた。

 

 

アン『……ここは…?…え、なに?何なの…!?』

 

 

海の中のようだが、全く息苦しくない。

 

そして……海底遺跡らしき場所で、クロノのクロノジェットと、ハイメのサヴァスが向かい合っている。

 

 

アン『あれは…。…!』

 

 

展開する魔法陣。クロノジェットが光に包まれ、新たに機械仕掛けの巨大な竜が現れる。

 

 

アン(ミステリーフレア・ドラゴン…?)

 

 

ミステリーフレアが放った光が、サヴァスを吹き飛ばす。更に……

 

 

アン(!?)

 

 

スモークギア・ドラゴン、スチームバトラー マシュダ、スチームメイデン アルリム、そしてクロノジェットドラゴンの幻影がミステリーフレアに重なる。

 

ミステリーフレアはクロノジェットに戻り、再び突撃。その拳をサヴァスに叩き込んだ!

 

 

アン『…!』

 

 

そこから溢れた光が、アンの視界を塗り潰して……

 

 

────ンちゃん……

 

 

──────────────────

 

 

トコハ「アンちゃん?」

 

アン「はっ…!?」

 

 

アンは我に返った。

 

 

トコハ「どうかしたの?ボ〜っとして……」

 

アン「えっ、あっいや、なんでもないです!」

 

トコハ「そっか…?」

 

アン(……今のイメージは……何…?)

 

 

──────────────────

 

 

しばらくして……ファイトは進み、互いにG3・クロノジェットとサヴァスにライドしている。

 

 

クロノ「ストライドジェネレーション!時空竜 クロノスコマンド・ドラゴンッ!」

 

 

クロノが超越する!

 

 

クロノ「クロノスコマンドで、ヴァンガードにアタック!」

 

ハイメ「ノーガード!」

 

 

これにより、ハイメはダメージ4となる。

 

 

クロノ「スキル発動!全てを呑み込み、時空の彼方へ消し飛ばせッ!」

 

 

クロノスコマンドは、アタックがヴァンガードにヒットした時、コストを払うことで、相手のリアガード全てを山札の下に送るスキルを持っている。

 

ハイメのリアガードはいなくなった。

 

 

アン「リアガードを一層する能力、ハイメの連続攻撃に対抗するために…!」

 

トコハ「あいつ、やるじゃない!」

 

カムイ「ヘヘッ、伊達に毎日俺らとやってないぜ。その調子だ!クロノ!」

 

 

──────────────────

 

 

クロノの攻撃が終わり、ハイメのターン。

 

 

ハイメ「いい攻撃だ。アミーゴの情熱が伝わってくるよ…!けど!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

クロノ「!」

 

ハイメ「進め!我が導く運命の航路!ストライドジェネレーション!!」

 

 

ハイメも超越する。

 

 

ハイメ「天羅水将 ランブロス!」

 

 

リアガードを補充し、バトルフェイズへ!

 

 

ハイメ「俺もずっと追いかけてきたんだ!君が今感じている、その熱さを!リアガードのサヴァスでアタック!」

 

クロノ「ガード!」

 

ハイメ「マグナム・アサルト!」

 

クロノ「ノーガード…!ドロートリガー!」

 

ハイメ「スキルでマグナム・アサルトをスタンド、パワー+2000!もう一度!リアガードのエルルにアタック!」

 

クロノ「ノーガード…!」

 

 

そして……ここからが本番だ。

 

 

ハイメ「行くよ!天羅水将ランブロスで、アタック!

 

4回目のアタックなので、スキル発動!

 

リアガード2体をスタンド!更にGゾーンの表のカードが2枚以上なら、スタンドしたリアガードにパワー+10000!」

 

クロノ「!」

 

 

マグナム・アサルトとサヴァスがスタンド。

 

 

クロノ「か、完全ガード!!」

 

ハイメ「トリプルドライブ!──ヒールトリガー!パワーはサヴァスへ!アタック!」

 

クロノ「ガード!」

 

 

クロノ(このままじゃ勝てない…。嫌だ、まだ俺は何も掴んでない…!俺を熱くするもの、ヴァンガード…!)

 

 

ハイメ「マグナム・アサルト!」

 

クロノ「ガード!」

 

ハイメ「ターンエンド!」

 

 

これでダメージ5、手札も0……しかし。

 

 

クロノ(俺は、あきらめないぞ。知りたいんだ…俺の掴んだこの熱さが何なのか!こいつが俺を、どこへ連れて行ってくれるのか!)

 

 

そして……引いた!

 

 

クロノ「ジェネレーションゾーン解放!」

 

 

引いたのは、超越コストを補助する『スチームブレス・ドラゴン』だった。

 

 

クロノ「今こそ示せ、我が真に望む世界を!ストライドジェネレーションッ!」

 

 

クロノが超越したのは……

 

 

クロノ「時空竜 ミステリーフレア・ドラゴンッ!!」

 

 

アン「…!あれは…!」

 

シオン「そうか…!ミステリーフレア・ドラゴンのスキル。攻撃がヒットした時、山札から4枚のカードを公開する。そのカードのグレードが全て異なっていれば、追加の1ターンを得る事が出来る…!」

 

トコハ「けど、4枚のグレードが全部違うなんて…」

 

クミ「出来るの?そんなこと…」

 

シオン「確率は、相当低い……賭けなんだ、これは」

 

 

クロノ「俺は、こいつに全てを賭ける!俺は、俺の運命を信じる!」

 

ハイメ「ハートに…きたぁーっ!アミーゴの心意気、俺も全力で受けて立つよ!俺の運命は、君の運命に打ち勝つ!必ず!!」

 

クロノ「いっけぇええ!」

 

 

ミステリーフレアのアタック!

 

 

ハイメ「超えてみせろ、アミーゴ!」

 

 

ハイメはガードするが……

 

 

クロノ「トリプルドライブ!」

 

 

クロノはトリガーを2枚引き、パワーアップでガードを突破した!これにより……

 

 

クロノ「スキル発動!」

 

 

1枚目……グレード2《スモークギア・ドラゴン》。

 

2枚目……グレード0《スチームバトラー マシュダ》。

 

3枚目……グレード1《スチームメイデン アルリム》。

 

 

アン(……このカードの流れ……さっきの…?)

 

アン(じゃあ、次のカードはクロノジェットで、スキル成功…?まさか……そんなことが…?)

 

 

クロノ「これが俺の……運命だぁああッ!!」

 

 

 

 

 

4枚目……グレード3 《クロノジェット・ドラゴン》。

 

 

アン「…!」

 

アン(本当に…!?)

 

トコハ「揃った…!」

 

ハイメ「フッ…」

 

クロノ「もう一度、俺のターンだッ!」

 

 

エクストラターン開始。先ほどドライブで引いたカードをコールし、バトルフェイズへ!

 

 

クロノ「時を超えて、未来をつかめ…!クロノジェットでアタック!

 

Gブレイクでパワー+5000!更に、グレード1以上でガードできない!」

 

ハイメ「──ノーガード!」

 

クロノ「これが俺の、望んだ世界だッ!!」

 

 

クロノジェットのアタックがサヴァスにヒット!ハイメのダメージが6となり、ファイトは決着した…!

 

 

クロノ「勝った…?」

 

ハイメ「確かに見せてもらったよ、君の情熱」

 

トコハ「ほんとに、ハイメ・アルカラスに勝っちゃった…」

 

クミ「凄い、すごかったよー!」

 

カムイ「やっぱアイツは、俺が見込んだ男だぜ!」

 

シオン(どうして、あそこに立っているのが、僕じゃないんだ…?このままでは終わらせない。僕は、必ず僕自身の勝利を掴んでみせる…!)

 

アン「…………」

 

 

一方、マモル達は……

 

 

マモル「…あれ?伊吹くんじゃないか」

 

ルナ「そんなすみっこで…」

 

伊吹「…………」

 

 

物陰からファイトを見ていた白い長髪の青年・伊吹コウジに声を掛けていた。

 

 

マモル「珍しいね、もしかして君もハイメのファイトを?」

 

伊吹「あぁ」

 

ルナ「どこから聞いたやら……相変わらず地獄耳……」

 

マモル「けどまさか、あのハイメに勝つなんてね。知ってるかい?あれが噂のギアクロニクル使いの子だよ」

 

伊吹「運が良かっただけだ」

 

マモル「まぁね。でも、運の実力のうちだろ?」

 

伊吹「……仕事に戻る」

 

 

伊吹は歩き去る。

 

 

マモル「ユナサン支部のみんなによろしく!」

 

 

──────────────────

 

 

クロノ「最後の一手……どうして、俺の勝負にこたえてくれたんだ?」

 

ハイメ「ここが震えたのさ」

 

 

ハイメは左胸に手を当てる。

 

 

ハイメ「俺のハードが震えたら、俺もそれに応えなくちゃね…!アディオス!」

 

 

そうして、ハイメは帰国していくのだった…。

 

 

 




次回 第9話「カードキャピタルの夜」


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第9話「カードキャピタルの夜」

 

「「「「「グレードアップ、おめでと〜っ!!」」」」」

 

クロノ「…へ?」

 

カムイ「よし、始めるか!」

 

 

いきなりクラッカーの紙を浴びて、クロノはキョトンとしていた。

 

今日はクロノのグレードアップ兼ハイメ戦のサプライズ祝勝会である。

 

カードキャピタル2号店の店内には、アン、カムイ、シン、トリニティドラゴンがいた。

 

 

クロノ「お祝いだなんて、そんな大げさな…俺いいですよ!」

 

カムイ「ば〜か、何遠慮してんだよ!シンさんだって店早く閉めて使わせてくれてんだぞ?」

 

 

クロノは本日の主役と書かれたタスキをかけられる。

 

とりあえず乾杯して、食事をしながら盛り上がる。

 

 

シン「クロノ君、この短期間でグレード2になるなんて、なかなかのものですよ」

 

 

ちなみに、グレード3にアップすれば、ヴァンガード普及協会が主催する大会に出られる。

 

 

カムイ「それも、あのハイメ・アルカラスに勝ってポイントゲットだもんな!すげぇファイトだったよな。今思い出してもゾクゾクするぜ!」

 

カル「ホントすごいです!4枚すべて違うグレードのカードを引き当てるなんてまさに奇跡!いや、最早神秘です!」

 

アン「…………」

 

 

カルのその言葉を聞いて、アンはクロノとハイメのファイト時に、自身が体験した不思議なことを思い出していた。

 

 

──現実のようなイメージ。

 

まるで、その後のファイトの展開を予言するように動いていた、ユニット達の姿。

 

ミステリーフレアのスキルで公開されたユニットまで、1枚も違わず一致していた。

 

 

アン(あれは、なんだったんでしょうか…?)

 

 

 

その後、トコハやクミ、シオンも合流したのだが……

 

 

シン「鍋って…カムイ君、これはどうゆうことですか…!?」

 

カムイ「大丈夫です!全部俺のおごりですから、シンさんは気にせずに!」

 

シン「いや、そうじゃなくて店で鍋っていうのはちょっと…!」

 

 

湿気でカードが反ったりする危険が。

 

そんなシンの心配をよそに、鍋パーティーが始まってしまったのだが……

 

 

アン「…?」

 

 

アンが何だかよくわからない具材を取った。

 

 

アン「…?なんでしょう、おもち?」

 

ツネト「それは俺様がコッソリ入れておいたイチゴ大福だ!戻しちゃいけないのが鍋のルールだぜ!」

 

 

バァンッ!!

 

 

「「「!?」」」

 

 

机に手を叩きつける音がした。

 

 

トコハ「イチゴ大福ぅ?なぁにが鍋のルールよ、不作法働いといて、鍋語らないで……」

 

アン「あ、あの、トコハちゃん…?」

 

トコハ「いい?鍋っていうのはね…ダシと食材が渾然一体となって奏でる、美しいハーモニーを味わうものなの!それをウケとか狙って妙な食材入れて、言っとくけどそーゆうの、全然おもしろくないからね?寧ろ寒いから!!まったく、鍋に対する冒涜よ!──ホント、止めてほしいわァッ!!!」

 

アン「ひいっ!?」

 

トリドラ「「「す、すみませぇんッ!!」」」

 

 

いちご大福は怯えきったトリドラが全部食べることになった。

 

 

トコハ「そのお肉、まだ早い。隣の白菜を取って、食べごろだから。そのしいたけはOKです!」

 

クロノ「いちいちうるせぇなぁ…」

 

シオン「いわゆる鍋奉行ってやつだね」

 

アン「にぎやかで楽しいです!」

 

シン「あぁ…店で鍋パーティーしたなんてことが、もしミサキにバレたら何て言われるか…!!」

 

 

 

トコハ「そういえば、クミちゃんもグレードアップしたんだよね?」

 

クミ「うんっ!やっとクエスト達成して、グレード1になったの~」

 

クロノ「じゃあ主役交代っと…」

 

 

クロノは恥ずかしがっていた『今日の主役』のタスキをクミに渡そうとするが……

 

 

アン「せっかくだからもうちょっとつけてましょうよ!」

 

クロノ「勘弁してくれ…」

 

クミ「しんどうく~ん」

 

クロノ「ん?」

 

 

パシャ。

 

 

クロノ「お前!?なにとってんだよ!」

 

クミ「なんとなく、記念にー♪」

 

アン「じゃ、じゃあ私も…」

 

 

パシャ。

 

 

クロノ「おい!?」

 

「「「あはは!!」」」

 

 

 

更に、腹ごなしに卓球が始まる始末。

 

 

シン「あぁ…絶対怒る、絶対怒る…!店内で卓球なんて、ミサキが知ったら絶対怒ります…!」

 

 

怯えるシンの近くで、電話が鳴った。

 

 

シン「はい、カードキャピタ…」

 

ミサキ『もしもし、シンさん?』

 

シン「うわっ、ミサキっ!」

 

 

姪っ子にしてオーナー・戸倉ミサキの声にビクリとするシン。

 

 

ミサキ『シンさんまだ帰ってこないの?』

 

シン「あっ…あぁ…在庫の整理にちょ〜っと手間取ってねぇ…!」

 

ミサキ『なんか騒がしいけど、どうしたの?』

 

シン「あっ、いや、その…!気のせいですよ気のせい!忙しいから切りますよ!」

 

 

ひとまず電話が終わって一安心と思いきや……

 

 

クロノ「おおおおおりゃああああっ!!!」

 

シン「ひぃっ!?スマッシュはやめてください!禁止ですッ!!」

 

 

ショーケース直撃により、卓球は中止となった。

 

 

 

その後も色々あって、『朝までヴァンガード』なんて企画が始まった。

 

みんなノリノリ過ぎである。

 

 

カムイ「シンさん、悪いんですけど皆の家に電話して、事情を説明してください!あいつら、中学生なんで…」

 

クロノ「あ、俺は大丈夫です」

 

アン「私も大丈夫ですので…」

 

 

クロノは忙しくなかなか帰って来れない叔母が今日も仕事で不在、アンは両親の海外勤務と姉の多忙でほぼ1人暮らしのため、連絡を断った。

 

 

 

 

 

「「「……zzz……」」」

 

 

『朝までヴァンガード』なんて言っていたが、数時間後には、半分以上が眠気に負けて寝落ちしていた。

 

起きているのはアン、クロノ、シオン、トコハだけである。

 

 

トコハ「ちょっと…!…ふふっ、あははは!」

 

アン「?えっ、ちょっと新導くん!?」

 

クロノ「フフ…!」

 

 

クロノは寝ているツネトの顔に落書きしていた。

 

 

トコハ「私も〜♪」

 

アン「えぇっ!?」

 

 

トコハまで落書きを始める。

 

 

アン「えっ、えっと…?…………」

 

 

……ゴクリ……

 

 

アン「…………」

 

シオン「えぇえっ!?」

 

 

深夜テンションか、楽しそうに見えてしまったアンは、誘惑に負けて落書きに参加した。

 

 

シオン「ちょ、ちょっと!3人ともやめなよ!……!?」

 

「「ふふ~ん♪」」

 

 

クロノ&トコハ、満面の笑み。

 

 

シオン「ぼ、僕はそんな事…しない…!」

 

 

クロノ&トコハ、満面の笑み(2回目)で迫る。

 

アンは横からスッとペンを差し出した。

 

 

シオン「や、やめろおぉ〜!?」

 

 

 

数分後。

 

 

シオン「…………」

 

 

シオンはハイライトが消えた目で、カムイの顔に落書きしていた。

 

 

「「おぉ…!」」

 

アン「あの〜、綺場くん?目が…」

 

カムイ「……ん……」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

 

四人は慌てて店の外に逃げ出した。

 

 

 

トコハ「ふー、驚いたあ。私達、共犯ね!」

 

シオン「ハッ!?何故だ…何故僕はあんな事を…!?」

 

アン「あ、正気に戻った…」

 

クロノ「フッ…」

 

「「「「あははははっ!!」」」」

 

 

四人は笑い合った。

 

こうして、四人の絆は深まったのだった。

 

 

 

翌朝。

 

 

「起きて。シンさん起きて」

 

シン「ん…?あれ…?いつのまに、寝ちゃったんでしょう…?」

 

ミサキ「おはよう、シンさん」

 

 

戸倉ミサキ、満面の笑み。

 

 

シン「どうわぁああ!?ミサキっ!?」

 

ミサキ「これ、ど〜ゆうこと?」

 

 

散らかりに散らかった店内で全員寝落ちしている。

 

結局、クロノ達四人も落書きされていた。

 

 

カムイ「うぅん…あれ、ミサキさん!?」

 

ミサキ「まったく、何やってんだか…」

 

 

毒気を抜かれたミサキは思わず笑う。

 

 

ミサキ「事情は後でしっかり聞かせてもらいます」

 

シン「は…はい…!ひぃっ…!」

 

ミサキ「はい、皆で掃除!その前に、全員顔を洗いなさいッ!」

 

 

揃って落書きだらけで起き出したクロノ達に、笑いが堪えられないミサキであった。

 

 

 



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第10話「クランリーダー」

9ヶ月も更新してなかったとは…Pixivもよろしくお願いします。

オリ主を絡ませづらいエピソードは度々カットすることになりますが、後々に関わる場合などは最低限の説明は入れるつもりです。




 

「君の分身をいただくよ」。

 

子供たちの間ではヴァンガード都市伝説、「仮面ゴースト」の噂で持ちきり。

 

挑まれたファイトに負けると、大切なカードを奪われてしまうのだ。

 

知り合いの少年から助けを求められたシオンは、仮面ゴーストの正体を突き止めようとする。

 

仮面ゴーストの正体は、シオンの幼なじみである烏森ユウヤであり、金持ちゆえに庶民を見下し、相手を叩き潰し絶望させることを快楽としていた。

 

シオンはカードを取り返す条件として、トリガーの多くをデッキから取り除いたハンデつきファイトを行う。

 

シオンは苦戦しながらも見事勝利し、カードを取り返したのだった。

 

そしてある日。

 

 

アン「お祭りクエスト?」

 

トコハ「そう。今度、ドラゴンエンパイア祭りがあるでしょう?一緒に盛り上がる企画をやると、ポイントがもらえるの!」

 

 

アン、トコハ、クミ、クロノ、シオン、トリニティドラゴンは、カードキャピタルに集まって話していた。

 

 

クロノ「興味ない…」

 

トコハ「あら残念。参加者は兄さんとファイトできるのにね~」

 

クロノ「えっ、マモルさんと!?」

 

アン(かわいい…)

 

トコハ「じゃ、申し込んでおくね」

 

クロノ「いや、まだやるとは…」

 

クミ「楽しみだね、トコハちゃん!」

 

 

結局参加となり、現在は話し合い中だ。

 

 

クロノ「……」

 

トコハ「そこの仏頂面!やると決めたら楽しむ、それが祭りよ!」

 

アン「あ、あはは…」

 

クロノ「はぁ…で、お前も参加するのかよ?」

 

シオン「うん、安城さんに強引に誘われてやることにね」

 

 

ヴァンガード女子、強し。

 

 

シオン「オークションはどうかな?」

 

アン「何を出品するんですか?」

 

シオン「しまいこんでいて使わないものだよ。みんなの家にもあるだろう?アンティーク品とか彫刻とか…」

 

クロノ「そんなもん普通ねぇから」

 

シオン「え、そう?」

 

 

…世界が違う。その後も色々と意見が出たが、なかなか決まらない。

 

 

クロノ「なんでもいいだろ~?さっさと決めろよ」

 

トコハ「新導!あんたも何か出しなさいよっ!企画よ企画、なんかないの?」

 

クロノ「う〜ん…じゃあ、たこ焼き屋」

 

「「「えっ」」」

 

 

クロノに注目が集まる。

 

 

クロノ「いや、言えって言うから…」

 

トコハ「いたって普通!だがそれがいい!」

 

クミ「もー考えつかれちゃったしね~♪」

 

アン「シンプルイズベストということですか」

 

クロノ「ちょ、ちょっと待て!?」

 

 

適当に言ったのが採用されて逆に焦るクロノ。

 

 

クロノ「たこ焼き屋、結構金かかるぞ!?」

 

カル「粉物って安くやれるんじゃないですか?」

 

クロノ「問題はタコだ!タコが安く仕入れられないと赤字になるぞ!」

 

アン「ほ、本気だ…」

 

 

さすが自炊してるだけある。

 

 

クロノ「あ、赤字が出たら困るだろ。予算は割り勘だろ?」

 

ツネト「いきなり金の話かよ。みみっちい」

 

クロノ「堅実といえ」

 

シオン「うちで出そうか?出資って形で」

 

クロノ「お前に借りをつくる気はない」

 

アン(あぁ、またですか…)

 

 

アンは頭を抱えた。以前クエストで対決して以来、この二人は妙な対抗意識を持っているのだ。

 

いや、クロノはシオンだけでなくトコハとも、しょっちゅうしょうもないことでケンカしているのだが。

 

 

トコハ「いっそ、タコはやめて別の具を入れようか?チョコとか、クリームとか、いろんな種類つくるの!」

 

カル「激辛ソース入りとかどうでしょう?」

 

ツネト「名前も、ドラゴンエンパイア焼きとかにしたらどーよ!」

 

クミ「わ~♪多度君にしては、ナイスアイディア〜♪」

 

ツネト「誉めてんの!?貶してんの!?」

 

トコハ「いいじゃんいいじゃん。ドラゴンエンパイア焼き、それでいこう!」

 

 

 

当日。

 

 

クミ「すご~い。新導君上手~」

 

 

屋台の調理スペースで、クロノはたこ焼きの生地を作っていた。

 

 

カル「はあ…終わりました」

 

クロノ「おい、小麦粉のダマが残ってんだろ?」

 

カル「ダマ?ダマとは…」

 

 

カルはタブレットで検索を始める。

 

 

クロノ「…いい、俺がやる!」

 

シオン「そろそろ焼き始めるよ」

 

クロノ「もう少し待て!まだ油がなじんでない!」

 

クミ「お釣りの小銭これでいい~?」

 

クロノ「ちゃんと分けて!後で面倒だぞ!」

 

ツネト「お前案外細けぇな~」

 

クロノ「うるせぇ!」

 

アン「まぁまぁ」

 

アン(けど、新導くんがやる気になってくれて、うれしい…)

 

 

マモル「へぇ…意外だね、クロノ君」

 

トコハ「そうなのよ、案外マジになっちゃって」

 

 

クロノ達の様子を見ている安城兄妹。

 

 

トコハ「兄さん、相当忙しいんでしょ?大丈夫?ちゃんと寝てる?」

 

マモル「ははは、心配いらないよ」

 

支部長「そう!マモルは強い子だから大丈夫だよ」

 

 

やってきた支部長を、マモルが睨む。

 

 

マモル「あなたに言われたくありません。ぶらぶらしてないで、働いてください!!」

 

支部長「は、はい〜…」

 

 

以前も着ぐるみに入って仕事を抜け出していた支部長である。

 

 

 

 

 

アン「ドラゴンエンパイア焼き、いかがですか〜?」

 

 

いよいよ祭りが始まり、ドラエン焼きの販売もなかなか好調だ。

 

 

シオン「いらっしゃいませ!ほら、キミも声だしなよ」

 

クロノ「…い、いらっしゃいませぇ〜」

 

 

ぎこちない笑顔に、裏返り気味の声。

 

 

シオン「あっ…ごめん!僕が頑張るよ!」

 

クロノ「いらっしゃいませぇ〜っ!」

 

アン「ムキにならなくても…(可愛い…)」キュン…

 

 

 

「もう1つくださいっ!」

 

「私は2つ!」

 

「私も!」

 

シオン「ありがとうございます!」キラッ☆

 

 

ちなみに、シオンは女性客にキャーキャー言われていた。

 

そんなかんなで、好調なまま時間が過ぎていった。

 

クロノとアンが二人でドラエン焼きを焼いていると、接客していたトコハがやってきた。

 

 

トコハ「大繁盛よ!」

 

クロノ「このペースなら、赤字は免れるな」

 

アン「うふふ、心配しすぎですよ」

 

トコハ「そうそう。二人ともちょっと休憩行って来たら?」

 

シオン「焼き場は僕が変わるよ」

 

クロノ「あ、あぁ…わりぃな。じゃあ、頼む」

 

アン「それでは、お言葉に甘えて…」

 

 

クロノとアンは、二人で休憩に入り、祭りを歩き始めた。

 

 

アン「きゃっ…!」

 

「おっと…」

 

 

アンは誰かとぶつかってしまった。

 

 

アン「す、すいません…!」

 

「いえいえ、こちらこそ〜」

 

アン(最近、よく人とぶつかるなぁ…)

 

 

ぶつかったのは、赤い長髪の青年だった。

 

その手にはドラエン焼きが。

 

 

アン(買ってくれたんだ…)

 

「おや…?」

 

 

ふと、青年はアンの目をじっと見つめる。

 

 

「…これは…やはり…これは驚いた…」

 

アン「…?あの、えっと…?」

 

「…ふふ、なんでもありませ〜ん。けど、そのうちまた会える気がしますね!」

 

アン「へ…?」

 

「それじゃあ♪」

 

 

青年は手を振って歩いていった。

 

 

アン「…?」

 

アン(なんか、不思議な雰囲気の人…)

 

クロノ「大丈夫か?ぶつかってたけど」

 

アン「あっ…ご心配なく!さぁ、行きましょう!」

 

クロノ「おう」

 

 

 

二人で祭りを周り、食べたり写真を取ったりして、時間が過ぎていった。

 

クロノが偶然会ったマモルと話している頃、アンも声をかけられていた。

 

 

ルナ「…アン」

 

アン「?」

 

 

アンが振り返ると、月城ルナがいた。

 

 

アン「ルナさん!ルナさんも参加するんですか?」

 

ルナ「今日はお仕事。一応、普及協会本部にいるから。各支部の視察とお手伝いはよくある」

 

アン「お忙しそうですね…」

 

ルナ「まぁね。これでも、クランリーダーだから。けど、楽しいよ。ヴァンガード、好きだから」

 

アン「あ…」

 

ルナ「アンもお祭り、楽しんで」

 

 

ルナはめったに見せない笑みを、静かに浮かべる。

 

 

アン「──はい!」

 

ルナ「うん。それじゃ」

 

 

 

そして夕方、メインイベントの時間だ。

 

 

ヴァンガ郎「元気ですだが~!?」

 

 

ヴァンガ郎(中身は支部長)と、マモルがステージに立つ。

 

 

マモル「今日はみんなのおかげで、とても楽しいお祭りになった。今日のファイトは僕からのお礼だ、さぁいくよ、みんな!」

 

 

参加人数などの関係もあり、3人か4人対マモル1人の特殊ルールでのファイトだ。

 

定員が四人までのため、兄妹であるトコハは辞退した。

 

トリニティドラゴンがマモルとファイトを始め、次はアン、クロノ、シオン、クミの番になったのだが…

 

 

クミ「…?」

 

 

クミのスマホから通知音が鳴った。

 

 

クミ「…やだ、ママが超怒ってる…!」

 

トコハ「どうしたの?」

 

クミ「猫がソファーにおしっこしちゃって…トコハちゃんお願い!変わりにファイトして!私の闘魂、あずけたぞい!」

 

トコハ「えぇっ!?…あ~…」

 

 

少し前のトコハなら、コンプレックスから悩んでいただろう。しかし、アンとのファイトで前向きになったトコハは、ファイトしてみようという気になっていた。

 

 

トコハ「…よし!やったるわ!」

 

アン「ふふ、そのいきです!」

 

順番になり、ステージに上がる。

 

マモル「…久しぶりだな、ファイトするの」

 

トコハ「そうだね…」

 

 

そして…

 

 

『『スタンドアップ・ヴァンガード!』』

 

 

 

 

 

その後。

 

 

トコハ「あ~、楽しかった!」

 

アン「負けちゃったけど、楽しかったです!」

 

 

結局全員敗北したが、気分はどこか清々しい。

 

 

クロノ「はぁ~…もう少し粘れると思ったんだけどなぁ…」

 

シオン「なかなかだったんじゃない?」

 

クロノ「まぁ、お前よりは粘ったかな」

 

シオン「ふふっ…」

 

クロノ「なんだよ、その笑い…」

 

シオン「いや、別に」

 

クロノ「別にじゃねえだろ?」

 

アン「まぁまぁ…」

 

 

クロノ「マモルさん、完全ガードが無いのを読みきって、ストライドせずにブレードマスターのスキルで、クリティカルを上げてアタックしてきたな…」

 

シオン「こっちの手札とトリガーチェック、ファイト展開から読んでたんだろうね」

 

トコハ「ねぇ、キャンプファイヤー始まるよ?」

 

クロノ「キャンプじゃないのに、何でキャンプファイヤなんだよ…」

 

アン「細かい事はいいじゃないですか?」

 

トコハ「最後まで付き合いなさいよ?楽しかったでしょう?」

 

クロノ「…まあな」

 

アン「ふふっ…」

 

 

トコハ「ほら、立って!やるよフォークダンス!」

 

シオン「えっ!?フォークダンスやるの!?」

 

クロノ「マジかよ…」

 

アン「!」

 

 

アンはちょっと迷うが、やがて頬を赤くし、クロノの手を取る。

 

 

クロノ「ん?」

 

アン「せ、せっかくですし踊りましょう?」

 

クロノ「えっ、お前まで…まぁ、いいけど…」

 

アン「そ、それじゃあ早速…!」

 

クロノ「お、おい…!」

 

 

アンはクロノの手を引き、会場に向かう。

 

 

トコハ「あら~♪」

 

シオン「ふふ…」

 

 

《続く》

 

 




次回 第11話「まだない名前」


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第11話「まだない名前」

 

アン「こんにちは~」

 

 

アンがカードキャピタルに入店すると…

 

 

クロノ「俺とチーム組みませんかっ!」

 

「「ひぃいいっ!?」」

 

 

クロノが他の客に声をかけ、目付きの悪さと鬼気迫る雰囲気から怖がられて逃げていた。

 

 

カムイ「おぉアンちゃん、いらっしゃい…」

 

アン「あ、カムイさん。新導君は何をやっているんですか?」

 

カムイ「勧誘だよ…」

 

アン「勧誘?」

 

カムイ「チーム組むメンバーを探してるんだけど…最早、軽い営業妨害だぜ…」

 

 

ヴァンガードの大会は、3人のチーム戦。たまに4人チームもいるが、試合に出るのは3人だ。

 

 

アン「むぅ…」

 

 

アンは頬を膨らませて歩み寄る。

 

 

アン「し、新導くん!」

 

クロノ「お、日下部…」

 

アン「ち、チーム組むなら、知らない人より先に…私を、誘ってくださいよ…!」

 

クロノ「え、お前は安城と出るんじゃ?」

 

アン「う…じゃあ、いっしょに…!」

 

クロノ「ん~でも安城とはすぐ喧嘩になるし…」

 

アン「もう…」

 

 

その時、シオンとトコハが来店した。

 

 

アン「トコハちゃん、綺場くん」

 

トコハ「アンちゃん!カムイさんに呼ばれたんだ」

 

シオン「僕もだよ」

 

カムイ「よし、揃ったな!」

 

 

カムイが四人の前に立つ。

 

 

カムイ「お前ら4人で、大会エントリーしといたから!お前らチーム組め!」

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 

四人は驚愕する。

 

 

シオン「どうしていきなりそうなるんですか!?」

 

カムイ「シオンもトコハちゃんも、色々誘われてるのに、決めかねてるみたいだったし…クロノはあのザマだしな…」

 

クロノ「う゛…」

 

カムイ「何年もヴァンガードやってるとな、スペシャルなチームかそうじゃねえか分かるんだよ!俺には見える…お前ら四人が、てっぺん取るのがな!聞こえるんだよ!お前らの奏でるハーモニーが!お前ら四人が起こすケミストリーが!ヴァンガード界に、旋風を巻き起こすってな!」

 

「「「「えぇ…?」」」」

 

 

 

 

 

しばらくして、近くの公園。

 

 

カムイ「うぅーん、お揃いのユニフォームかぁ。一緒に戦うっていう気持ちがビシビシ伝わってくるぜ!」

 

クロノ「無理やり着せたんでしょ」

 

アン「そもそも学校の体操着ですし…」

 

カムイ「勝利を掴むには、何よりチームワークが重要だからな。手始めにまず、四人五脚をやってもらう!」

 

「「「「えぇ…?」」」」

 

 

仕方なく四人は足を結ぶが…

 

 

クロノ/シオン「「う…」」

 

 

クロノとシオンは、真ん中に入ったトコハとアンの肩に手を回そうとして、赤くなって躊躇う。

 

 

カムイ「どうした!グズグズするなー!」

 

トコハ「早くしなさいよ」

 

アン「どうかしたんですか?」

 

「「あ、いや…」」

 

 

男子二人が赤くなりながらも肩を組む。

 

 

トコハ「右、左で行くわよ」

 

カムイ「よーい、スタート!」

 

「「「「右、左…うわぁっ!?」」」」

 

 

いきなりコケた。

 

 

トコハ「何やってんのよ新導!右、左って言ったでしょ!」

 

クロノ「ちゃんと右出したぞ!?」

 

トコハ「私が右ならアンタは左でしょ!?」

 

クロノ「なんでお前に合わせなきゃいけないんだよ!」

 

シオン「僕はちゃんと出したからね!」

 

アン「ま、まぁまぁ落ち着いて…!」

 

カムイ「次!組体操!」

 

 

組体操では、トコハが上に乗る。

 

 

トコハ「ほら!男子二人はちゃんと高さ合わせてよ、危ないでしょ!」

 

クロノ「お前、見かけより重いな…!食い過ぎじゃねえのか…!」

 

アン「デリカシー…!」

 

トコハ「うるさぁいっ!って…!?」

 

「「「「うわぁああああっ!?」」」」

 

 

四人は重なりながら崩れ落ちた。

 

 

アン「いたた…ひゃうっ!?」

 

クロノ「んむっ…!…!?」

 

 

倒れた拍子に、クロノの顔面が、アンの年齢のわりに発育した胸に埋まって…

 

 

アン「──きゃあああああああああああああああああああっ!?」(///)

 

パァンッ!

 

クロノ「ぶふぉおっ!?」

 

 

アンの全力ビンタがヒットし、クロノは撃沈した。

 

 

シオン/トコハ「「うわぁ…」」

 

カムイ「次!」

 

 

 

 

 

カムイ「三人同時に答えるんだ。それじゃあ行くぞ。可愛い動物といえば何!」

 

クロノ「ネコ」

 

シオン「ウサギ」

 

トコハ「イヌ」

 

アン「ペンギン」

 

 

見事に割れた。

 

 

「おにぎりの具といえば!」

 

クロノ「シャケ」

 

シオン「キャビア」

 

トコハ「おかか」

 

アン「昆布…え、キャビア…?」

 

 

また割れた。その後も全ての質問で割れた。

 

 

 

次は何故か釣りだが…

 

 

カムイ「何やってんだよぉ…4人同時に釣らなきゃ意味ねえだろ?」

 

クロノ「んなことできるわけないじゃないですか!」

 

 

ごもっともである。

 

 

カムイ「ったく、さっきからお前ら全然息あってねえな…何だったら出来るんだ?自信があるもん言ってみろ。漫才か?ダイナゼノンか?四人だし」

 

アン「ダイナゼノンってなんですか?」(汗)

 

トコハ「全然ヴァンガードに関係ないし!」

 

シオン「ファイトなら…ファイトなら、自信があります!!」

 

 

 

五人はカードキャピタルに戻った。

 

 

「「「トリニティドラゴン、参上!」」」

 

 

トリニティドラゴンがいつものポーズを決めた。

 

 

カムイ「今からやるのは、1ターンごとにファイターが変わる変則ファイトだ!」

 

トコハ「大会のルールと違うんじゃ…」

 

カムイ「これはチームワークを測るためのファイトだ。ファイトなら自信あるんだろ~?」

 

ツネト「…ところで、何で体操服着てるんだ?」

 

トコハ「…そこは、スルーで」

 

ツネト「流行ってんの?」

 

 

ファイトの準備が整う。

 

 

カムイ「先攻はオラクルシンクタンクのトリニティドラゴン。後攻は、ギアクロニクルの……えっと…お前ら、チーム名は?」

 

「「「「えっ」」」」

 

 

考えてなかった。

 

 

クロノ「あ、あぁ…名前はまだない」

 

ツネト「ぷっ、名前はまだないだって!だっせぇチーム名!」

 

クロノ「ち!ちがう!そうじゃなくて!」

 

ツネト「後攻は、チーム名前はまだない!」

 

クロノ「だから違うって!」

 

 

なんやかんやでファイトが始まる。

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

 

ツネト「神宮衛士ハヒキ!」

 

クロノ「ガンナーギア・ドラコキッド!」

 

カムイ「はい交代!」

 

クロノ「めくるだけかよ!」

 

 

クロノからトコハへ、ツネトからカルへ。

 

 

カル「ライド!神宮衛士ツナガイ!ハヒキは移動!ターンエンド!」

 

カムイ「はい交代!」

 

トコハ「え!?私何もやってない!」

 

ツネト「ナイスライドー」

 

カル「はい!」

 

 

その後はというと…

 

 

クロノ「なんでメーザーギア・ドラゴンにライドしねぇんだよ!?」

 

シオン「僕には僕のやり方がある!」

 

 

で、次のターン。

 

 

クロノ「くっ…メーザーギア・ドラゴンにライドしてりゃあ!お前のせいでパワー7000のグレ1にまでボコられたじゃねえか!!」

 

シオン「僕は確率的に有利になる選択をしたまでだ!」

 

アン「ま、まぁまぁ…」

 

 

 

クロノ「そこはスモークギア・ドラゴンだろ!!」

 

トコハ「引けなかったんだからしょうがないでしょう!」

 

クロノ「引けよ!!」

 

アン「さすがにそれは無茶ですって、自分が毎回引いてるからって…!」

 

 

 

ツネト「すごいぞカル!」

 

カル「ツネトさんのデッキが最高だからですよ!」

 

 

トリドラの完璧な連携に対し、四人は全く息が合わない。

 

 

クロノ「1枚ぐらい引けよ!」

 

シオン「君は本当に無茶ばかり言うね!」

 

アン「いい加減に…!」

 

 

 

トコハ「このターンで決める!って言ってなかった~?」

 

クロノ「うるせぇ!」

 

アン「いい加減にしてください!話が全然進まないじゃないですか!」

 

クロノ「お前だってトリガー引いてないだろ!」

 

アン「それは全員同じでしょう!」

 

シオン「全員ねぇ、そういう日下部さんだってさっきもう1枚コールしていれば…」

 

アン「私のせいって言うんですか!?」

 

カムイ「お前らいい加減にしろ!」

 

 

ついに唯一の制止役だったアンまでキレてしまう。

 

 

トコハ「むぅ…!」

 

シオン「君も気付いているんだろう?カムイさんのブラフだよ。新導と日下部さんはまだグレード2。このチームは、大会にエントリーする事は出来ない」

 

トコハ「そうね…」

 

「だけど、カムイさんのチームを組めという言葉を聞いたあの瞬間、僕は何かを感じたんだ。今まで、誰に誘われても感じなかった何かを。だから乗った」

 

トコハ「私も。でもそれは間違いだった。こんなチーム全然だめ!」

 

シオン「…同感だ」

 

 

シオンとトコハがコソコソ話す中…

 

 

ツネト「未来の扉をこじ開けろ!ストライドジェネレーション!」

 

 

ツネトは《神鳴りの剣神 タケミカヅチ》にストライドした。

 

 

ツネト「目覚めよ、荒ぶる神の剣よ!必殺!爆雷稲妻斬りッ!」

 

 

タケミカヅチの一撃がクロノジェットにヒットし、ダメージ6となった。

 

 

ツネト「やったあああ!」

 

カル「見事なフィニッシュです!」

 

ケイ「流石ツネトさん!」

 

ツネト「お前らがお膳立てしてくれたお陰だよ!俺はただ決めただけで、チームの主役じゃない。このチームの主役は…俺達、3人だ!俺達3人、チームトリニティドラゴンの勝利だ!」

 

 

 

クロノ「なんだよ…!チーム、チームって…」

 

カムイ「…ないな。このチームは無い」

 

クロノ「無いってなんですか!俺達がてっぺん取るって」

 

シオン「旋風を巻き起こすとも言ってましたよ!」

 

カムイ「フンッ、笑させるな!何がてっぺんだ!何が旋風だ!ケミストリー?ハーモニー?ふざけるのも大概にしておけ!!」

 

アン「全部カムイさんが言ったんじゃないですか!特に後半!」

 

カムイ「自分勝手で独り善がりのファイト。傲慢で、自信過剰で、誰1人チームの事を思いやらねぇ!チームワークの欠片もねぇ!俺が見たのは幻だった。お前らは、終わっている」

 

 

四人は全く否定できない。

 

 

カムイ「あ~時間の無駄だったぜ!とっとと帰れ!で、歯磨いて便所いって寝ろ!」

 

 

カムイは歩き去ろうとするが…

 

 

「「「「やってやる!」」」」

 

カムイ「ん?」

 

「「「「このチームで、やってやる!」」」」

 

 

意地になった負けず嫌いの四人は、そう宣言した。

 

 

カムイ「…好きにしろよ」

 

 

カムイはカウンターに向かう。

 

 

トコハ「だいたいアンタ達が自己中すぎんのよ!」

 

クロノ「お前だってワガママじゃねえかよ!」

 

トコハ「アンタに言われたくないんですけど!」

 

シオン「2人とも、冷静さが足りない。すぐに熱くなる。よくないね」

 

クロノ「何ぃ!?」

 

トコハ「なんですって!?」

 

アン「三人とも似たようなものでしょう!短気過ぎますし!」

 

クロノ「他人事みたいに言うな!」

 

アン「私は止めようとしたのに聞いてくれなかったのはそっちでしょう!」

 

クロノ「一人だけ責任逃れか!?」

 

 

 

シオン「一応、反省会ですかね?」

 

カムイ「さぁ、どうなんすかね」

 

 

カムイは笑みを浮かべる。

 

 

クロノ「やっぱお前ら気に入らねぇ!」

 

アン「私だって気に入らないです!」

 

シオン「気に入らない」

 

トコハ「気に入らない!」

 

「「「気にいらない!!!」」」

 

 

 

 

 

なんやかんやでチームを組むことになった四人。喧嘩もありつつ、しばらくして多少は打ち解けた四人は、まだグレード3になっていないクロノとアンが大会出場資格を得るため、ユナイテッドサンクチュアリ支部主催のミニ大会に参加したのだが…事件は起こった。

 

 

 

大会中、クロノは偶然にも、イカサマをしている悪辣なチームを発見した。

 

罪を認めないイカサマチームにキレたクロノは詰め寄るが、チームリーダーは振り払われたのをチャンスと捉え、悲鳴を上げてわざと大げさに転び、他のファイトテーブルを巻き込んで倒れた。

 

まんまとクロノが暴力を振るったかのような状況が捏造されてしまい、クロノは暴力行為とファイト妨害の濡れ衣を着せられ、アン達の制止も聞かず、一人会場を去る。

 

後にシオンの活躍で、クロノの無実は証明された。イカサマチームの罪も白日の元にさらされ、ファイター資格の停止と、公式大会への5年間出場禁止という処分を受けた。しかし…

 

 

「理由はどうあれ、暴力行為は許しがたい事実です。トリックトリックと同様の処分でよろしいのでは?」

 

「厳しすぎませんか?情状酌量の余地は十分にあると思います」

 

 

クロノは昔から誤解されがちの経験から、どうせ話しても信じてくれないと、相手がわざと大げさに転げたことを説明せずに去ってしまった。故にスタッフの会議の場は割れていた。

 

 

「伊吹さんはどう思われますか?」

 

伊吹「…無罪というわけにはいかないでしょう。ですが、彼がイカサマを告発しようとした思いを汲めば、ファイターの資格を奪うまでには当たらない。ポイントの剥奪程度に留めておくのが、妥当ではないでしょうか」

 

 

会議を仕切っていた伊吹コウジ…アンがヴァンガードに出会う切欠となった、あの白い長髪の青年は、落としどころを提案した。

 

 

トコハ「じゃあ、新導が今持ってるポイントは、全部剥奪…!?」

 

 

クロノはグレード0に戻ることに…。

 

 

トコハ「正しいことを言ったのに、何で新導が罰せられなきゃならないのよ!私が話をつけてくる!」

 

シオン「…安城さん、もういい」

 

トコハ「何言ってんの!?アンタまで!」

 

シオン「そんなふうにして、乗り込んでいったら、君も新導と同じことになってしまう」

 

トコハ「っ!」

 

アン「…っ…」

 

 

アンは拳を握り締めた…。

 

 

 

《~続く~》

 

 

 

次回 第12話「レイジング」

 

 

 



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第12話「レイジング」

今回は半分オリジナルです。


 

ルナ「…で、新導クロノはポイント剥奪、と」

 

伊吹『落としどころとしては妥当だろう』

 

ルナ「まぁね…」

 

伊吹『それだけなら切るぞ。今忙しい』

 

ルナ「はいはい、分かってる」

 

 

月城ルナは通話を終え、ため息をついた。

 

 

ルナ「本人もだけど…アンも気にしてるだろうな…」

 

 

翌日、カードキャピタル2号店。

 

 

カムイ「ヴァンガードをやめる!?」

 

クロノ「……」

 

カムイ「聞いたと思うが、あの後シオン達が、お前が正しかったと証明してくれたんだぞ。お前は無罪なんだ。ポイント剥奪は残念だが…俺もユナサン支部にかけあってやる。結論はそれからでも…」

 

クロノ「もういいんです。…お世話になりました」

 

カムイ「えっ、いや、だから…!」

 

 

クロノはデッキが入ったファイカを起き、店を出た。その後、クロノはシオン、トコハ、アンにも、ヴァンガードをやめることを告げ、止めるのも聞かずに去っていった。

 

 

アン「……」

 

 

アンは一人俯き、公園のベンチに座っていた。

 

 

アン(私だって、あの時もっと冷静に対処していれば…新導くん…)

 

 

その時。

 

 

アン「ひゃうっ!?」

 

 

突然頬に冷たいものが押し付けられ、覚えのある展開に振り返る。

 

 

ルナ「また成功…」

 

アン「ルナさん…!」

 

ルナ「はい、これ」

 

アン「あ…どうも…」

 

 

ルナはアンに缶コーヒーを渡し、アンの隣に座る。

 

 

ルナ「コーヒーより苦い顔してるね」

 

アン「…そうですか?」

 

ルナ「…お友達の話は聞いてる」

 

アン「…っ」

 

 

 

アン「…私、何もできなかった…」

 

ルナ「そうかな?」

 

アン「そうですよ…新導くんは、ヴァンガードやめるって…私には、何も…」

 

ルナ「……」

 

 

 

ルナ「…アン、ファイトしよ」

 

アン「え?でも…」

 

ルナ「いいから。…こういう時はこうするもんなの」

 

アン「…は、はい…」

 

 

 

 

 

ファイカを変形、テーブルとして、アンとルナは向かい合う。

 

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

アン「《お化けのぴーたー》…」

 

ルナ「《ジャッジバウ・撃退者》」

 

 

ルナの先攻だ。

 

 

ルナ「ライド、《誘いの撃退者 フィネガス》。ジャッジバウを移動。ターンエンド」

 

アン「私のターン…《パーティング・シェイド》にライド。ぴーたーは移動。ぴーたーのブースト、パーティング・シェイドでアタック」

 

 

ノーガード、ノートリガーで1ダメージ。ルナのターンとなる。

 

 

ルナ「ライド、《撃退者 ダークブレス・エンジェル》。ジャッジバウのブースト、アタック」

 

アン「ノーガード…」

 

 

ノートリガーで1ダメージ。アンのターンだ。

 

 

アン(新導くんが大変な時に…なんで私、ファイトなんてしてるんだろう…)

 

アン「《大幹部 ブルーブラッド》にライド。ぴーたーのブースト、ブルーブラッドでアタック」

 

ルナ「ノーガード」

 

アン「ドライブチェック…クリティカルトリガー」

 

ルナ「ダメージチェック…ドロートリガー、1枚ドロー」

 

 

ルナはダメージ3。ルナのターンだ。

 

 

ルナ「心ここに在らずだね。そりゃそうか」

 

アン「…っ」

 

 

 

ルナ「──来て、私の分身。その激情を、力に変えよ…!ライド!《撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン》!」

 

 

ルナはキーカードにライドする。その時。

 

 

アン「…!」

 

 

アンの視界を光が満たした。

 

 

─────

 

 

アン『…!』

 

 

ナイトローゼにライドした自分に、レイジングフォーム・ドラゴンの攻撃が、三回に渡って直撃する。更に、レイジングフォームの姿は闇に飲まれ、巨大な漆黒の竜が…

 

 

─────

 

 

アン「!」

 

 

アンはハッと我に返る。

 

 

ルナ「どうかした?」

 

アン「あ、いえ…」

 

アン(前にも、こんなこと…あれは、クロノとハイメがファイトした時…あ…)

 

 

あの時の楽しそうなクロノと、今の塞ぎ込んだクロノの姿が浮かび、アンの表情は再び曇る。

 

 

ルナ「……」

 

 

 

ルナ「──余所見してると…このターンで消し飛ぶよ」

 

アン「!」

 

ルナ「ダークブレス・エンジェル、フィネガス、《詭計の撃退者 マナ》をコール。マナのスキルで、山札から《血気の撃退者 マウル》をコール。マウルのスキルで、山札からレイジングフォームを手札に加える」

 

 

一気に盤面が埋まる。

 

 

ルナ「マナでアタック」

 

アン「ガード…!」

 

ルナ「ダークブレスでアタック」

 

アン「ガードです…!」

 

ルナ「レイジングフォーム・ドラゴンでアタック」

 

アン「ノーガード…!」

 

 

お互いトリガーはない。アンはダメージ2。

 

 

ルナ「フィネガスのスキルで、レイジングフォームのリミットブレイク発動…!マナ、マウル、ダークブレスを退却。手札から、スペリオルペルソナライド…!パワー+10000!」

 

アン「!?」

 

ルナ「ダークブレスのスキル、山札からマウルをコール。マウルのスキルで、山札からレイジングフォームを手札に加える。レイジングフォーム、再びアタック!」

 

アン「の、ノーガード…!」

 

ルナ「ツインドライブ…!クリティカルトリガー!」 

 

アン「!ダメージチェック…ドロートリガー、1枚ドロー…!」

 

 

アンはダメージ4。

 

 

ルナ「さて…次の手は、分かるよね?」

 

アン「…!また…!」

 

ルナ「限界を斬り捨てろ…リミットブレイク!スペリオルペルソナライド・アゲイン!」

 

 

再び新たな肉体を得たレイジングフォームが咆哮を上げる。

 

 

ルナ「レイジングフォーム、三度目のアタック!」

 

アン「…!完全ガード!」

 

 

アンは先程ドロートリガーで引いた完全ガードを出す。

 

 

ルナ「ツインドライブ…ノートリガー。ターンエンド」

 

 

アンはほっと息をつく。

 

 

ルナ「…うん、やっとファイトに意識がいったいかな」

 

アン「…!」

 

ルナ「ヴァンガード、楽しい?好き?」

 

アン「…はい」

 

ルナ「新導クロノも、同じじゃないかな」

 

アン「え?」

 

ルナ「…ほら、アンのターン」

 

アン「は、はい…」

 

 

 

アン「ストライドジェネレーション…!《暗躍する海賊王 バンデッドラム》!」

 

 

アンはストライドする。

 

 

アン「ナイトローゼのスキルで、ドロップゾーンから《海中散歩のバンシー》をコール、パワー+2000。スキルで1枚ドロー」

 

 

先程完全ガードのコストに使ったカードだ。

 

 

アン「ぴーたーのスキル、山札の上2枚をドロップゾーンに、ぴーたーをソウルに置いて、1枚ドロー。更に《海賊剣士 コロンバール》《パーティング・シェイド》をコール。

 

コロンバールでアタック!スキルで、ドロップの《不死竜 ボーンドラゴン》をコール!」

 

ルナ「ガード」

 

アン「バンデッドラムでアタック!」

 

ルナ「ノーガード」

 

アン「トリプルドライブ!ノートリガー…」

 

 

しかしアタックはヒット。ルナはダメージ4。

 

 

アン「バンデッドラムのスキル、ドロップのパーティング・シェイドをコール!そのブーストで、ボーンドラゴンのアタック…!」

 

ルナ「ガード」

 

アン「ターンエンド…」

 

 

 

ルナ「ストライドジェネレーション…!《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》!」

 

 

ハイメとの試合でも使ったGユニットだ。

 

 

ルナ「《幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム》、《氷結の撃退者》をコール。

 

レブナントのスキル。《氷結の撃退者》を退却させて、山札から《撃退者 ダークボンド・トランペッター》をスペリオルコール。自身とダークボンドにパワー+3000。

 

更にダークボンドのスキルで、山札から《恐慌の撃退者 フリッツ》をスペリオルコール。

 

レブナントでアタック…!」

 

 

パワー29000のアタックだ。

 

 

アン「…!ガード!」

 

ルナ「トリプルドライブ…クリティカルトリガー。効果は全てモルドレッドに。モルドレッドでアタック」

 

アン「ガード、コロンバールでインターセプト…!」

 

ルナ「ターンエンド」

 

 

 

ルナ「──イメージ」

 

アン「え?」

 

ルナ「アンにとって、新導クロノはどんな子なのか、イメージ」

 

アン「イメージ…」

 

ルナ「ヴァンガードと同じ。イメージすれば分かる」

 

 

 

ルナ「──アンの友達は、そこで終わるほど弱い人だったの?」

 

アン「…!」

 

アン(…私にとっての、新導くん…)

 

 

同じ日にヴァンガードを始めて、共に過ごした時間。

 

ぶっきらぼうだけど、本当は優しくて。

 

素直てないせいで、なかなか本当の自分を人に見せられくて。

 

でも…ファイトしている時は、普段からは想像もつかないぐらい、本当に楽しそうで。

 

 

ルナ「…すぐに立ち直れるんて言わない。けど、新導クロノはヴァンガードが大好きなんでしょ?」

 

アン「あ…」

 

 

 

ルナ『新導クロノも、同じじゃないかな』

 

 

 

アン「…はい」

 

ルナ「だから捨てない。きっと戻ってくる。ヴァンガードが好きなら」

 

アン「ヴァンガードが、好きなら…」

 

 

アン(新導くんは、ヴァンガードが大好きなんだ…私と同じで…。だから私は…新導くんが戻ってくることを信じて…!)

 

 

アン「──行きます!」

 

ルナ「来なよ、アン」

 

 

ルナは笑みを浮かべる。

 

 

アン「ストライドジェネレーション…!《深淵の海賊王 ブルーハート》!」

 

 

アンはストライドする。

 

 

アン「ナイトローゼのスキルで、ドロップのコロンバールをコール!

 

更にブルーハートのスキル!ボーンドラゴン、海中散歩のバンシーと入れ替えで、ドロップから《腐蝕竜 コラプトドラゴン》《お化けのとみー兄弟》をコール!

 

コラプトドラゴンでアタック!」

 

ルナ「ノーガード」

 

 

ルナはダメージ5。

 

 

アン「ブルーハートでアタック!」

 

ルナ「完全ガード」

 

アン「トリプルドライブ!ファーストチェック…セカンドチェック…クリティカルトリガー!効果は全てコロンバールに!サードチェック…クリティカルトリガー!効果は全てコロンバールに!

 

コロンバールでアタック!スキルでドロップのボーンドラゴンをコール!」

 

ルナ「完全ガード。《カルマ・コレクター》のスキルでカウンターチャージ」

 

アン「…!ボーンドラゴンでアタック!」

 

ルナ「ガード」

 

アン「ターンエンド…!」

 

 

 

ルナ「いい目になった。けど…まだまだそう簡単に勝たせないよ」

 

アン「!」

 

ルナ「ルナ「黒き刃で、未来を阻むもの全てを斬り払え…!ストライドジェネレーション!」

 

 

現れたのは、アンが先程のイメージで見た黒き竜。

 

 

ルナ「《暗黒竜 ファントム・ブラスター “Diablo”》…!」

 

アン「…!」

 

 

 

ルナ「Gペルソナブラスト。パワー+10000、クリティカル+1、更にスキル獲得。マナをコール。スキルでフィネガスをコール。マナでコロンバールにアタック!」

 

アン「ノーガード…!」

 

ルナ「《ファントム・ブラスター “Diablo”》で、ヴァンガードにアタック!スキル発動。リアガード3体を退却。このアタックは、リアガード2体を退却させなければガードできない…!」

 

アン(クリティカル2…このアタックを通したら負け…けど、手札のガードはかなりギリギリ…!クリティカルが出ないことに懸けるしか…!)

 

アン「ボーンドラゴンととみー兄弟を退却…!ガード!」

 

ルナ「ドライブチェック…クリティカルトリガー。効果は全てモルドレッドに。クリティカルトリガー。こっちも全てモルドレッドに」

 

アン「…!」

 

ルナ「モルドレッドでアタック…!」

 

 

そのアタックを防げず、アンのダメージは6となった。

 

 

アン「負けました…」

 

ルナ「悩みは晴れた?」

 

アン「私は…新導くんを信じます!」

 

ルナ「そっか」

 

 

ルナは笑みを浮かべ、デッキを片付け、歩き出す。

 

 

ルナ「それじゃあ」

 

アン「──ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

そして…

 

 

クロノ「ファイカのポイントが消えた事が、あんなに悲しかったのは、楽しんでいた記憶を、消された気がしたからだ…溜まったポイントは、これまであいつらと積み重ねてきた歴史だったから…」

 

 

伊吹コウジとファイトすることになったクロノは、ファイトの中で吹っ切れていた。

 

 

クロノ「けど、全然消えてなかった。俺の中では…!もう、迷わねえ。俺は行く!ギアクロニクル、お前達と一緒に!」

 

 

ファイトには敗れたが、クロノは笑顔を取り戻していた。

 

 

伊吹「次に会うまでに、精々腕を磨いておくんだな」

 

クロノ「今度は必ず、お前を倒す!そして、お前の名前を言わせてやる!」

 

 

その夜。

 

 

ルナ「ふ~ん、伊吹も案外優しいんだね」

 

伊吹「別に心配したわけじゃない。ここで折れられては困るというだけの話だ」

 

ルナ「へ~」

 

伊吹「なんだその目は」

 

 

ルナと伊吹は、喫茶店で話していた。

 

 

ルナ「伊吹」

 

伊吹「……」

 

ルナ「色々動いてるみたいだけどさ…あんまり、1人で無理しないで。私も、同じ本部の人間。手伝えることはあるよ」

 

伊吹「…すまないな、月城」

 

ルナ「こういう時は、謝るより"ありがとう"」

 

伊吹「フッ…そうだな。…お前と二人で動いていたら、日田の奴に睨まれそうだが」

 

ルナ「…べ、別にリョータとはまだそんなんじゃないし…」(///)

 

伊吹「『まだ』、か。全く、お前達は二人揃ってうじうじと…」

 

ルナ「うっさい…」(///)

 

 

 

《~続く~》

 

 

 

次回 第13話「ダークな奴ら」

 

 

 



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第13話「ダークな奴ら」

 

ヴァンガードをやめることをやめたクロノは、アン達に頭を下げた。

 

 

クロノ「迷惑かけた」

 

アン「いいんですよ、信じてましたから!」

 

シオン「もう気にしないで欲しいな」

 

トコハ「一番割りを食ったのは新導でしょ」

 

クロノ「俺は、チームを抜ける」

 

「「「え?」」」

 

クロノ「これ以上、迷惑をかけたくない」

 

 

クロノは大会までにグレード3になるべく、独力で次々とクエストに挑んでいった。トコハは学校でも手伝いを申し出たが…

 

 

クロノ「ほっとけってば。日下部ももうすぐグレード3だろ?大会はお前達三人で出ろよ。特訓とかしたらどうだ?おせっかいも程々にして、自分達の心配をしろよ」

 

トコハ「む~!この分からず屋!」

 

 

トコハはキレてクロノの席から離れた。

 

 

クロノ「…これ以上迷惑かけたら、カッコつかねえだろ」

 

 

しばらくして、2号店。

 

 

トコハ「もう知りませんよあんな奴!人の気も知らないで!ほんとにこの三人で出ようかなッ!」

 

アン「まぁまぁトコハちゃん、もう少し待ってみましょうよ」

 

トコハ「だって…!」

 

カムイ「昔、俺癇癪起こして、仲間から離れた事があってさ…その時、待っててくれた人がいたんだ。俺はガキだったから、なかなか素直になれなくて…でも嬉しかった。その人がいたから戻れたんだ」

 

 

カムイが見つめるショーケースには、ロイヤルパラディンのカード達。

 

 

シオン「フッ…どうする?」

 

トコハ「…なんで私に聞くの」

 

シオン「この三人でって言い出したのキミだろ?」

 

トコハ「だって、新導がグレ3なるの待ってたら、大会出られないし」

 

カムイ「頑張り次第じゃわからないぞ?クロノが今行ってるクエスト、すっげぇ高ポイントで、今日で一気にグレ2まで上がるかもしれないし」

 

アン「え、そんなに一気に?」

 

カムイ「ただ、難攻不落って言われてるからな~。あ、そーいえば、チームで挑戦もできたんだっけ?」

 

アン「…カムイさん、謀りましたね?」

 

 

アンは半目で苦笑する。

 

 

カムイ「なんのことやら」

 

アン「でも、ありがとうございます」

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

クロノ「な、なんてクエストだ…」

 

 

とある屋敷の前で、クロノが膝をついていると…

 

 

アン「大丈夫ですか?」

 

トコハ「1人じゃ無理無理」

 

シオン「チームで行くべきだね」

 

 

アン達が到着した。

 

 

クロノ「お前ら…!?俺の事は気にするなって…」

 

アン「新導くんはいつもそうですね」

 

 

アンはしゃがんでクロノと視線を合わせる。

 

 

アン「『自立』でしたっけ。自分のことは自分でって、人に迷惑かけたくないって…それで、全部一人で抱え込んで…」

 

クロノ「それは…」

 

アン「前にも言ったでしょ?あんまり急いで大人にならなくてもいいって」

 

クロノ「…っ…」

 

 

シオン「いいかげん、意地を張るのはやめなよ」

 

トコハ「1人で勝手に決めないで!迷惑だとか、そういうのは私達が決める事だから。私達、仲間でしょう!」

 

クロノ「…っ…」

 

 

クロノ「ありがとう──なんて、ゼッタイ言わねえからな…!」

 

シオン「フッ、期待してない」

 

トコハ「新導だからね~」

 

アン「素直じゃないですから」

 

クロノ「行くぞ!」

 

 

四人は屋敷に入った。

 

 

 

 

 

アン「…うぅ、暗い…」

 

クロノ「ちょっ、おい…」

 

 

アンはクロノの腕にしがみついている。

 

 

トコハ「アンちゃん、暗いの苦手?」

 

アン「え、えぇ、まぁ…」

 

シオン「大丈夫かい?」

 

クロノ「言った傍からお前が無茶すんなよ」

 

アン「新導くんに言われたくない…」

 

クロノ「ぐっ…」

 

 

その時、声が響いた。

 

 

『人は何故闇を恐れる。それは闇の心地よさに、身も心も奪われる事を、心の何処かで感じているかるりゃだ』

 

トコハ「噛んだ」

 

シオン「噛んだね」

 

アン「噛みましたね」

 

『ンンッ…!ようこそ、ダークイレギュラーズの館へ!私と戦いたければ闇を愛せよ、闇に身を委ねよ!』

 

 

三つの関門をクリアしなければならないらしい。

 

 

『第一関門!積み重なりし魂の宴!』

 

アン「え、座布団?」

 

『違う違う!ソウル!ヴァンガード!魂の宴!』

 

アン「あ、はい」

 

『ソウルチャージ!己の足元に魂を積み上げよ!15枚のソウルをチャージしたとき、お前は

キング・オブ・フィフスエレメントを手にするだろう』

 

 

ようするに、座布団を15枚積み上げて、上に乗って天井の電球に触れろということらしい。なんとかクリアすると、そこから色とりどりのライトが光り、ロウソクを模した置物を照らし、5色の炎のように演出した。

 

 

アン「無駄に凝ってますね…」

 

シオン「これ、一人じゃ絶対無理だよね」

 

トコハ「あんた、どうやってクリアするつもりだったの?」

 

クロノ「…こ、根性」

 

 

次の階に進む。

 

 

『第二関門!我が待つ最上階へ来たければ、孤独な怒りを身に纏え!』

 

 

部屋には、様々なダークイレギュラーズのユニットのコスプレ衣裳。モニターに『ブレイドウイング・レジー』と『エーデル・ローゼ』が表示され、消えた。

 

 

アン「…つまり、今表示されてた二枚のコスプレすればいいんですかね?」

 

シオン「だろうね…」

 

 

とりあえず衣裳を探す。ブレイドウイングは今回の張本人ということでクロノが着ることになり、コスプレしたクロノはなんとも言えない顔で立っていた。エーデル・ローゼの方は…

 

 

トコハ「…あ、アンちゃん、着てみない?」

 

アン「え、えっと、トコハちゃん似合いそうです!」

 

トコハ「ほ、ほら!アンちゃんのナイトローゼとローゼ繋がりでさ!」

 

アン「いやいらトコハちゃんのユニットだって殆どお花でしょう!」

 

「「……」」

 

「「最初はグー、ジャンケンぽんッ!」」

 

 

アン←チョキ

 

トコハ←グー

 

 

アン「……」(汗)

 

トコハ「さぁアンちゃん、向こうでお着換えよ♪」

 

アン「うぅ…!」

 

 

数分後。

 

 

アン「うぅう…!」(///)

 

 

水色のヴィッグでツインテールを作り、両手には付け爪、そしてピンクのドレス、チョーカー、紫と水色のストライプのタイツを身につけたアンは、顔を真っ赤にして震えていた。

 

 

アン「こんな、破廉恥な…!」(///)

 

 

肩を露出して胸元が開いたドレス姿のアンに、クロノとシオンは目のやり場に困って目を逸らしていた。

 

 

『──怒りが足りぬ。怒りがたりぬぅうううぅッ!!』

 

「「「?」」」

 

トコハ「…もしかして、ポーズじゃない?」

 

 

カード通りのポーズと表情。クロノは怒り、アンは舌を出してぎこちなく笑みを浮かべる。

 

 

『おぉ~ッ!感じるぞ!お前達の孤独を!お前達の闇を!』

 

 

クリアである。

 

 

クロノ「なんで俺が、こんな…」

 

アン「うぅううう…!」(///)

 

 

 

 

 

『最終関門!さぁ、迷宮を越え、我もとへ来るがよい!!』

 

 

次の階は迷路だった。

 

 

シオン「こんなものまで…」

 

クロノ「もっと他にやることあんだろ…」

 

 

しばらく進むが、なかなかクリアできない。

 

 

アン「また行き止まり…」

 

クロノ「戻るぞ」

 

シオン「待つんだ。この迷路、抜けられない」

 

「「「え?」」」

 

シオン「僕達はもう全てのルートを辿った。上から見た時、構造は把握したからね」

 

トコハ「…ふざけんじゃないわよッ!」ドガッ!

 

アン「えぇっ!?」

 

 

トコハが壁に蹴りを入れると、壁はあっさり壊れた。

 

 

アン「発泡スチロール…?」

 

トコハ「なら…フンッ!」

 

アン「えぇえっ!?」

 

 

トコハは目の前の壁を殴り壊した!

 

 

トコハ「こうすればゴールまで最短距離!」

 

 

結局、壁を壊してゴールまで着いた。

 

 

トコハ「やった~!ゴール!」

 

クロノ「強引だな…」

 

シオン「ルール違反じゃない…?」

 

『そのとおおおおりっ!!まさにダークかつイレギュラー!常識からの逸脱こそ、ダークイレギュラーズに相応しい精神!』

 

シオン「えっ」

 

アン「正解だったんですか…」

 

 

 

 

 

そして、最上階に到着すると…

 

 

「ようこそ…我は闇を統べる魔王、ブラドⅢ世!」

 

 

玉座には魔王のコスプレしたおっさん。

 

 

クロノ「うわぁ~…」

 

トコハ「暑苦しい…」

 

 

ドン引き。

 

 

「お前の忌み嫌う闇はここにたどり着くまでに肥大し、その心と身体を染め上げた!我と戦うに相応しい闇を手に入れたのだ!」

 

 

同じくコスプレした付き人二人が拍手する。

 

 

クロノ「勘弁してくれ…」

 

アン「でも、確かに心に闇が湧き上がってる気はします…」

 

「「「えっ」」」(汗)

 

「おぉ!分かるか少女よ!」

 

アン「そのことで一つ」

 

「なんだ?」

 

 

 

アン「第二関門のコスプレッ!いい年して女子中学生にあんな破廉恥な格好させて楽しいですか!?この変態ッ!スケベッ!」

 

「す、スケッ…!?」

 

トコハ「根に持ってたんだ…」

 

「う、うるさい!通販で買ったダークイレギュラーズコスプレセットに入ってたのを全部置いといただけだ!カードも手元に裏で置いたのからランダムに引いて選んだ!他意はない!」

 

アン「急に現実的になりましたね…」

 

「…ンンッ!──戦いの時は来た!このファイトが終わった時、お前は新たな闇の力を手に入れる。さぁ、今こそ闇を統べる魔王、ブラドⅢ世とファイトを!!」

 

アン「都合悪いからって話を進めないでくださいよッ!」

 

 

 

 

 

とにかく、クロノとブラドⅢ世のファイトが始まった。

 

 

「あぁ、感じる!いい闇だ!」

 

トコハ「あんなのに負けたら、一生この事言ってやる…!」

 

 

お互いグレード3。

 

 

「ブラド様~!」

 

「素晴らしい闇です!」

 

アン「付き人さん達も痛い人ッ…!」

 

クロノ「まだまだ行くぜ…!クロノスコマンド・ドラゴンで、シャルハロートにアタック!」

 

「完全ガード!」

 

 

クロノの攻撃は防がれ、ブラド三世のターン。

 

 

「光をも飲み込む闇があると知れ!ストライドジェネレーション!《忌まわしき者 ジル・ド・レイ》!」

 

 

ブラドの切り札だ。

 

 

ブラド「シャルハロートのスキルでソウルチャージ!」

 

 

リアガードの展開、ソウルチャージを続ける旅人、付き人達がブラドの足元にソウル(座布団)を積み上げていく。更にアタック開始。

 

 

「ジル・ド・レイの真の力を見せてやる!アタック!」

 

シオン「まずい!スキルでグレード1以上でガードできない!」

 

アン「新導くん…!」

 

 

攻撃がヒットする。

 

 

「抵抗するから辛いのだ…受け入れろ、負けを!」

 

クロノ「冗談じゃねぇ!楽しいのはここからだろ!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

クロノのターン、反撃開始だ。

 

 

クロノ「今こそ示せ、我が真に望む世界を!ストライドジェネレーション!《時空竜 エポックメイカー・ドラゴン》!」

 

 

クロノは新たなカードに超越する。

 

 

クロノ「アタック!」

 

 

エポックメイカーの攻撃がヒットする。

 

 

クロノ「スキル発動!リアガードを1枚バインド!山札からクロノジェットをコール!」

 

「何!?」

 

クロノ「いっけぇええッ!」

 

「グァアアッ!」

 

「「ブラド様!」」

 

 

ダメージ6。敗北したブラドは、座布団が崩れて落っこちた。

 

 

アン「やった…!」

 

 

クエストをクリアしたクロノのファイカに、ブラドがサインする。『山田一郎』と書いていたが気にしてはいけない。

 

 

「新導クロノ。今は光に包まれようとも、お前には闇の才能がある。私に勝った事で、それを証明したのだ。今から、この砦の主は汝に譲ろう!今この時より闇を統べる魔王、ブラドⅣ世を名乗るがいい!」

 

クロノ「!?」

 

「「「お仕えします!闇を統べる魔王、ブラドⅣ世様!」」」

 

 

ブラドと付き人達が跪く。

 

 

「さぁ、このマントを纏い、魔王の玉座に!」

 

「「「「うわぁあああっ!」」」」

 

 

四人はたまらず屋敷から逃げ出した。

 

 

「Ⅳ世様~!お待ちくださ~い!──ぎゃあああッ!光が、光が我を苛むぅううッ!」

 

 

追いかけてきたブラドだが、外に出て夕日の光を浴びた瞬間苦しみだした。

 

 

トコハ「どこまでも本気ね…」

 

 

そして四人は帰路につく。

 

 

クロノ「何なんだよ、あのおっさんは…」

 

アン「とんでもない人でしたね…」

 

シオン「ブラドⅢ世でしょ?」

 

クロノ「そーゆう事じゃねよ…」

 

トコハ「良かったじゃない。グレード2になれたし、ブラドⅣ世にもなれたし」

 

クロノ「ふざけんな~」

 

「「「アハハハハハッ!」」」

 

 

その後、アンは無事グレード3になり、クロノもグレード3になるべくクエストに励んでいたのだが、ある日…

 

 

アン「えぇっ!?」

 

トコハ「嘘でしょ!?」

 

シオン「迷子の相手をして、クエスト全部飛ばしたなんて…!」

 

クロノ「すまない!」

 

 

このままでは大会に間に合わない…頭を抱えていたその時。

 

 

緊急クエスト

 

大オリエンテーリング!サバイバルヴァンガード!

 

ドラゴンエンパイア支部主催

 

里山で繰り広げられる、前代未聞、空前絶後、抱腹絶倒の大ファイト!生き残れるのは誰だ!

 

 

「「「「いける!!」」」」

 

シオン「ここでポイントがゲットできれば、グレ3に届く!」

 

アン「地区予選のエントリーにも間に合いますね!」

 

カムイ「予選前にグレードアップを目指すファイター達への、緊急クエストってわけか。しかもあんなふざけたイベントなんてな。ドラエン支部らしいぜ」

 

トコハ(もう…兄さん、やってくれるな…絶対予選に出てみせるからね…!)

 

 

トコハの予想通り、マモル考案のクエストだ。そしてイベント当日、会場の山には多くの人が集まっていた。

 

 

支部長「あー、本日はお日柄もよく、まことに青天で、まさに大オリエンテーリング、サバイバルヴァンガード日和です!お日さまの元、皆で楽しく、ヴァンガりましょう!それでは皆さんご一緒に!スタンドアップ!」

 

『『『ヴァンガード!!』』』

 

 

 

《続く》

 

 

 



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第14話「チーム誕生」

今回はチーム名決定回。


 

山の中の大規模クエストが、ついに開始。クロノ達はスタートしようとするが…

 

 

ツネト「待て待て待てーい!

 

クロノ「邪魔すんなよ」

 

ツネト「この俺におそれをなして敵前逃亡か?」

 

クロノ「逃げてねえし!っていうか、なんだよその格好…」

 

 

なんか探検隊みたいな格好のトリニティドラゴンが登場。

 

 

アン「そのベルトにつけてるデッキ、全部使うんですか?」

 

ツネト「んなわけねーだろ!俺は生まれてこの方、オラクルシンクタンク一筋!」

 

トコハ「じゃあ残りは?」

 

ツネト「気分だッ!俺クラスのファイターになると、ここまで気を遣うのさ!」

 

カル「人は見た目が120%です!」

 

クロノ「いいからファイトの腕みがけよ…」

 

ツネト「言われるまでもねえ!歯とファイトの腕なら毎日磨いてる!お前をグレ3にしてたまるか!1つたりとも星は取らせないぜ!って、あれ?」

 

 

四人は先に駆け出していた…。

 

 

ツネト「コラ~ッ!無視すんな~っ!」

 

 

 

マモル『改めて、ルールをおさらいします。本日のイベントは、宝探しとファイトを合わせたサバイバルゲームです。協力して、フィールドに隠された星(コイン)を集めてください。

 

両チームが合意すれば、その場でファイトする事が出来ます。互いの使用クランを確認。相性などを考慮して、代表を1人選びましょう。

 

勝ったチームは、負けたチームの星をゲット終了時刻の3時までに、頂上ゴールを目指してください。

 

ゴールまでに集めた星は、イベント後ポイントに換算して授与されます。一気にグレードアップのチャンス!』

 

 

 

トコハ「星を集めながら!」

 

シオン「出来る限りファイトして」

 

クロノ「頂上を目指す!」

 

アン「って、なんですかあれ!」

 

 

次々と投げつけられる泥玉が他チームに直撃しており、見上げれば、崖の上にジャージ姿の集団がいた。

 

 

クミ「ジャマ~♪」

 

トコハ「クミちゃん!?」

 

 

中にはクミもいた。

 

 

マモル『途中、妨害や、大量に星を獲得できるボーナスチャンスもあります。皆さん、ヴァンガってクリアしてください!』

 

クミ「ごめんねトコハちゃん、これもクエストのお仕事だから…えいっ!」

 

「「!」」

 

 

クミともう一人が泥玉を投げるが、トコハとアンは近くに落ちていた木の枝を構え…

 

 

アン「えいっ!」

 

トコハ「た~まや~っ!」

 

 

打った!トコハに至ってはホームラン級に吹っ飛ばした。

 

 

「「「おぉ…!」」」

 

トコハ「町内野球チームで、4番打者だった私を、ナメたらあかんぜよ!」

 

「「「おぉ…!」」」

 

シオン「でも、日下部さんも打ったよね…」

 

アン「小学校の頃ソフトボールをちょっと…私は普通でしたけど」

 

トコハ「あぁ、色んな習い事してたって言ってたもんね」

 

 

 

 

 

なんやかんやでファイトやトラップを乗り越え、進んでいく四人。

 

ちなみに同じ頃、支部長は着ぐるみに入って参加者とファイトしようとし、トリドラと向かい合ったところでマモルに取っ捕まっていた。

 

そして、休憩スペースでの昼食後。

 

 

シオン「よし。ここを道なりに行けば、正規ルートに戻れる。行こう!」

 

 

妨害役から逃れて道を変えていた四人は、先を急いでいたが…

 

 

クロノ「おわっ!?」

 

アン「新導くん!って…!」

 

「「「「うわぁあああっ!」」」」

 

 

崖(低い)で足を滑らせたクロノを、三人で引き上げようとしたが、四人纏めて落ちてしまった。

 

 

クロノ「くっそぉ…こんなとこで、グズグズしてられっかよ!っておわっ!」

 

アン「昇るのは無理です、道を変えましょう」

 

クロノ「…ひっでぇ格好」

 

トコハ「何よ!自分だって泥だらけの顔して!」

 

シオン「キミもだろう?」

 

アン「全員ですよ」

 

「「「「アハハ!」」」」

 

 

笑い合い、ルートを変えて進む四人。すると…

 

 

ルナ「ここでボーナスちゃ~んす」

 

「「「「!?」」」」

 

 

何故かCEOアマテラス的なコスプレをしたルナが現れた。

 

 

アン「…ルナさん?」

 

ルナ「お助け女神さまだよ~」

 

アン「ルナさんですよね」

 

ルナ「お助け女神さま~」(圧)

 

アン「分かりました、分かりましたから!」

 

トコハ「月城さんって本部の所属じゃ?」

 

ルナ「出張営業で~す…視察がてらお手伝い。見てるだけもヒマだし。ちなみにカムイも、近くでお助け仙人やってるよ」

 

クロノ「カムイさんまで…」

 

ルナ「コホン…妾の質問に答えられたら、特別にこの星をやろう」

 

 

ルナは大量の星が詰まった袋を取り出す。

 

 

ルナ「ただし答えられなかったら、そなたらが持ってる星を全てもらうぞよ~、どする?」

 

クロノ「やります!」

 

アン「ルナさん、キャラに無理があります…」

 

 

クロノはお題を決めるくじを引く。

 

 

ルナ「お~、最高難易度G4。じ~ふぉ~」

 

トコハ「ちょっと!無駄に引きが強いのよ!」

 

ルナ「もんだ~い。ドラゴンエンパイアに所属する各クランから、1枚ずつリミットブレイクの能力を持つカードを、攻撃力の合計が55000になるようにフルネームで答えよ。制限時間一分。はいスタート」ピッ

 

アン「えっもう!?」

 

クロノ「よし…!《炎獄封竜 ブロケード・インフェルノ》!《古代竜 ティラノレジェンド》!《修羅忍竜 カブキコンゴウ》!《隠密魔竜 カスミローグ》!《征天魔竜 ダンガリー “Unlimited”》!」

 

「「「おぉ…!?」」」

 

ルナ「せいか~い。どんどんぱふぱふ、わ~わ~」

 

 

大量の星をゲットだ。

 

 

トコハ「やるじゃない!」

 

アン「あんな無茶振りを即答なんて、すごいです!」

 

クロノ「そりゃあ、あれだけヴァンガーとテスト(クエスト)受ければなぁ…」

 

シオン「まさか勉強が、こんな所で役に立つとはね」

 

 

 

 

 

そして、ゴールが近づいてきた。

 

 

アン「どうですか?」

 

クロノ「ダメだ、まだちょっと足りねえ」

 

 

その時。

 

 

ツネト「ふははははッ!お前らが来るのを待ってたぜ!」

 

 

トリドラが現れた!

 

 

ツネト「ここで会ったが3年目!」

 

クロノ「まだ会って1年もたってないだろ…」

 

ツネト「御託はいい!その星全部、俺様が頂く!」

 

クロノ「それはこっちの台詞だ!」

 

シオン「頼んだよ!ここで負けたら後がない!」

 

トコハ「勝つのよ、絶対!」

 

アン「勝って大会に出ましょう!」

 

クロノ「分かってる!」

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」

 

 

クロノとツネトのファイトが進む。

 

 

ツネト「未来の扉をこじ開けろ!ストライドジェネーレション!《神鳴りの剣神 タケミカヅチ》!」

 

 

ツネトは切り札にストライドする。

 

 

ツネト「目覚めろ、荒ぶる神の剣よ! 必殺、爆雷稲妻切りぃッ!」

 

クロノ「完全ガードッ!」

 

 

防ぎ切り、クロノのターンとなる。

 

 

アン「ここからです!」

 

シオン「行くんだろ、地区予選!」

 

トコハ「負けたら承知しないんだから!」

 

クロノ「そうだ…!俺は絶対この先へ行く!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

そして…

 

 

クロノ「今こそ示せ、我が真に望む世界を!ストライドジェネレーション!来い、新時代の先駆け!《時空竜 エポックメイカー・ドラゴン》!」

 

 

クロノも切り札を切った!

 

 

クロノ「生み出せ、新たなる潮流!俺達を、次の未来へ連れて行け!」

 

 

エポックメイカーの一撃がヒットする。

 

 

クロノ「ヒット!スキル発動!スモークギア・ドラゴンを、クロノジェット・ドラゴンに!アタックッ!」

 

ツネト「グァアアッ!」

 

 

決着。クロノの勝利だ。ツネトは集めた星をクロノに渡す。

 

 

アン「え、こんなにですか!?」

 

ツネト「その星、今はお前に預けといてやる。ただし、大会で必ず返してもらうからな!覚悟しとけよ!」

 

 

トリドラは歩いていく。

 

 

クロノ「あいつら…」

 

トコハ「この星持ってそのままゴールしてたら、ポイント全部貰えたのに…」

 

アン「もしかして…」

 

 

そして夕方、クエストが終了した。

 

 

マモル「グレード3、おめでとう!」

 

 

クロノは無事グレード3に到達した。

 

 

アン「ついに新導くんもグレード3ですね!」

 

クロノ「ありがとな!日下部、綺場、安城!」

 

シオン「ついに新導にも並ばれたか」

 

トコハ「私だって負けないんだから!」

 

シオン「うん」

 

カムイ「やったな!」

 

ルナ「これで地区予選出られるね。エントリー急ぎなよ」

 

カムイ「そういやお前ら、チーム名はどうするんだ?名前はまだない…か?」

 

 

 

クロノ「いや、俺達は、挑戦する4人…トライフォーです!」

 

カムイ「へぇ、悪くないな!」

 

クロノ「行くぜ、地区予選!やってやるぜ!」

 

 

《続く》

 

 

 



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第15話「トラベラーズ」

今回はオリジナル回です!時系列は原作の「明日川タイヨウ」と同じタイミングです。


 

ある休日。

 

 

アン「えっと、向こうのスーパーが特売ですよね…」

 

 

アンは買い物に向かっていた。

 

 

アン(シオンはお家の用事で、今日は各自特訓…買い物が終わったらカードキャピタルに…)

 

アン「あ…」

 

 

アンは一つの店に目を止めた。

 

 

アン「『カードショップ トラベラーズ』…」

 

 

初めて見るカードショップだ。

 

 

アン「こんなところに、カードショップがあったんですね…」

 

 

アンは店に向かって歩き始めた。もしかしたら、まだ見ぬファイターとのファイトができるかもしれない。

 

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

 

アンを出迎えたのは、クールな印象を受ける、店員の青髪の青年だ。アンが初めてのカードショップにキョロキョロしていると…

 

 

「この店は初めてかな?」

 

アン「あ、はい…」

 

「そうか。俺は店長の藍千ソウマだ。分からないことがあったら聞いてくれ」

 

アン「ありがとうございます」

 

 

藍千ソウマは笑みを浮かべ、アンは礼をする。

 

 

『『おぉ~!』』

 

アン「?」

 

 

店の奥から歓声が上がった。

 

 

ソウマ「あぁ…今日は有名人がいてな。見てくるか?」

 

アン「は、はい」

 

 

アンが店の奥に行くと…

 

 

ルナ「ペルソナライド…!レイジングフォーム・ドラゴン、三回目のアタック!」

 

「完全ガード!」

 

アン「!ルナさん…!」

 

 

月城ルナが、店員の女性とファイトしていた。

 

 

「さぁ、ここからが勝負よ…!ストライドジェネレーションッ!」

 

 

そのストライドで勝負が決まり、ルナのダメージが6になる。

 

 

アン「!」

 

アン(ルナさんに勝った…あの人は…?)

 

ルナ「負けた…また腕上げたね」

 

「ルナこそ。紙一重だったよ」

 

 

笑い合う二人。

 

 

ルナ「…あれ、アン?」

 

アン「あ…」

 

 

店の仕事があるため、ギャラリーがある程度退いたところで、ルナがアンに気づいた。

 

 

ルナ「奇遇だね、こんなところで」

 

アン「はい…!たまたま近くを通りまして…」

 

「知り合い?」

 

ルナ「うん。この子、リンの妹」

 

「え、そうなの!?あ、改めて見たら似てる!」

 

アン「えっと…?」

 

「あ、ごめんごめん!自己紹介がまだだよね!」

 

 

店員の女性は笑顔で名乗る。

 

 

「初めまして!お姉さんの友達の、藍千シユリです!」

 

「あ…こ、これはご丁寧に!私、日下部アンです!初めまして!」

 

シユリ「よろしく、アンちゃん!」

 

 

 

 

 

アン「え、姉さんとチーム!?」

 

シユリ「そう!リンとルナと私のチームでね」

 

ルナ「三人でブイブイ言わせてた…どや」

 

シユリ「いやブイブイって。しかもどやって口で言っちゃったよ!」

 

 

シユリがルナに笑いながらツッコミを入れる姿から、二人の仲の良さが伝わる。

 

 

ソウマ「相変わらず仲が良いな」

 

シユリ「あ、お兄ちゃん!ごめんね、そろそろ店番変わろうか?」

 

ソウマ「気にするな、久しぶりに友達と会ったんだからゆっくりしろ。今日はバイトもいるしな。にしても、日下部の妹だったか」

 

アン「ソウマさんも姉さんとお知り合いなんですか?」

 

ソウマ「あぁ。高校時代、VF甲子園を始めとする試合でな。日下部とシユリは、学校対抗の大会では何度も戦ったライバルで、チームメイトでもあるからな」

 

アン「へぇ…!」

 

 

ルナ「兄貴とショップ切り盛りしながら、プロリーグでも活躍してるスーパーウーマン」

 

シユリ「も~、ルナだって普及協会本部でクランリーダー、大活躍してるじゃない」

 

アン(お二人とも、すごい…!)

 

 

シユリ「そうだ!アンちゃん、せっかくだからファイトしようよ!」

 

アン「え、いいんですか?」

 

シユリ「うん、これも何かの縁だしさ!それにもうすぐ大会なんでしょ?特訓も兼ねて、ね?」

 

アン「よ、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

そして、二人はファイトテーブルで向かい合い、ルナやソウマが見守る。

 

 

シユリ「さぁ、始めようか」

 

アン「はい!」

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

 

アン「お化けのぴーたー!」

 

シユリ「手当の守護天使 ペヌエル!」

 

アン(エンジェルフェザー…)

 

 

そしてターンは進み…

 

 

シユリ「ライド!《団結の守護天使 ザラキエル》!」

 

 

シユリがグレード3にライドする。

 

 

シユリ「《聖火の守護天使 サリエル》をコール!スキル発動、山札からザラキエルをダメージゾーンに。更に、《確信の守護天使 ルムヤル》のスキルで、ザラキエルのリミットブレイクを発動!自分の守護天使全てにパワー+3000!」

 

 

シユリのユニット全てがパワーアップする。

 

 

アン「…!」

 

シユリ「サリエルでアタック!」

 

アン「ガード!」

 

シユリ「ザラキエルでアタック!」

 

アン「ノーガード!」

 

アン「ツインドライブ!ゲット、クリティカルトリガー!」

 

 

2ダメージ。

 

 

シユリ「《天罰の守護天使 ラグエル》でアタック!」

 

アン「ガード!」

 

シユリ「ターンエンド!」

 

 

 

 

 

アン「私のターン…!ライド!《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》!ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト《夜霧の吸血姫 ナイトローゼ》】

 

 

アン「ストライドジェネレーション!《深淵の海賊王 ブルーハート》!ナイトローゼのスキルで、コラプトドラゴンをコール!パワー+2000!更にパワー+3000!

 

ブルーハートのスキル!2体目のコラプトドラゴンと、とみー兄弟をコール!コラプトドラゴンは、スキルでパワー+3000!」

 

シユリ「来たね…!」

 

 

アン「ブルーハートでアタック!」

 

シユリ「アニエルで完全ガード!」

 

アン「トリプルドライブ…!ゲット、クリティカルトリガー!効果は全てコラプトドラゴンに!アタック!」

 

シユリ「ガード!」

 

アン「もう一体のコラプトドラゴンでアタック!」

 

シユリ「ガード、更にサリエルでインターセプト!」

 

アン「ターンエンド…!」

 

 

 

シユリ「次はこっちの番だよ。ジェネレーションゾーン、解放!」

 

 

【コスト「神託の守護天使 レミエル」】

 

 

シユリ「光の翼で、未来に羽ばたけ!ストライド、ジェネレーション!」

 

 

天使が瑠璃色の翼を広げる。

 

 

シユリ「《聖霊守護天使 ミカエル》!」

 

 

エンジェルフェザーの創設者たる守護天使が降臨する。

 

 

シユリ「ミカエルのスキル!山札の上から1枚をダメージゾーンに置いて、ダメージゾーンから《天罰の守護天使 ラグエル》をコール!

 

更に、ダメージゾーンにハーツと同じザラキエルがいることで、ラグエルにパワー+5000!」

 

アン「…!」

 

 

シユリ「ラグエルでアタック!」

 

アン「ガード!」

 

シユリ「ミカエルでアタック!」

 

アン「ノーガード…!」

 

シユリ「トリプルドライブ!ヒールトリガー!パワーは2体目のラグエルに!クリティカルトリガー!クリティカルはミカエルに、パワーはラグエルに!」

 

アン「!」

 

 

アンは5ダメージ。

 

 

シユリ「これで決める…!ラグエルでアタック!」

 

アン(防ぎ切れない…!)

 

アン「ノーガード…!」

 

 

ラグエルの一撃がナイトローゼにヒットし、ダメージ6。シユリの勝利だ。

 

 

アン「ありがとうございました…!」

 

シユリ「こちらこそ!」

 

 

 

 

 

その後、アンはシユリに聞かれ、チームメイトについて話していた。

 

 

シユリ「へ~、新導クロノ君…なんか、アイツに似てるかも」

 

ソウマ「フッ、確かにな」

 

 

シユリとソウマは思わず笑う。

 

 

アン「?」

 

シユリ「あぁごめんね。高校時代、私とお兄ちゃんと同じヴァンガード部にいた子なんだけどね。とにかくヴァンガードが大好きで、不器用だけど根は優しい熱血君でさ」

 

ルナ「あぁ、あの熱苦しい奴」

 

シユリ「あはは!ルナは容赦ないなぁ」

 

ルナ「あれととか、シユリも物好き」

 

シユリ「ちょ、どういう意味かな~!」

 

アン「へ、へぇ…」

 

シユリ「とにかく…彼、今もたまにこの店に来るんだ。そのうち会えるかもね。ファイトも強いんだよ」

 

アン「いつかファイトしてみたいです!」

 

シユリ「ふふ、いつでもまた来なよ」

 

アン「はい!」

 

 

 

《続く》

 

 

 



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第16話「チーム・ディマイズ」

まず謝罪から。『トライスリー』が四人になって『トライフォー』だと色々被る(メタ発言)なんて言ってオリジナルのチーム名をつけていましたが、トライスリーのネーミング方式からしても『トライフォー』以外は不自然すぎて、自分で書いてて違和感がハンパないのです。
なので数話前から一部書き換え、チーム名は『トライフォー』にさせて頂きます。申し訳ありません。


 

ある日の安城家。

 

 

クロノ「鍋か…もうすぐ夏なのに」

 

トコハ「熱い時こそ鍋!パワー全開で、地区予選に挑むのよ!」

 

 

決起集会のため、四人はトコハの両親と共にすき焼きを囲んでいた。

 

 

母「いきなり2人も男の子を連れてくるなんて、トコハもやるじゃないの!どっちが本命?」

 

トコハ「説明したでしょう、今日は大会に向けての決起集会だって!ねぇ!」(///)

 

クロノ「あぁ」

 

アン「え、えぇ」

 

 

アンは頷きつつ、チラッとクロノを見た。

 

 

シオン「祝勝会は、是非うちでしよう。今度は三人を、我が家に招待するよ」

 

トコハ「…いい」

 

クロノ「俺も」

 

アン「私もちょっと…」

 

シオン「え、どうして!?」

 

トコハ「だって、綺場ん家ってめんどくさそうだもん。手土産とか大変そうだし…」

 

父「こんな高級なお肉を頂いちゃうとね」

 

母「何を持たせたらいいのか…あ、なんだったらこの子、貰ってくれてもいいけど!」

 

シオン/トコハ「「!?」」(///)

 

父「やらんぞ!トコハはやらん!」

 

シオン「お、落ち着いてください、冗談じゃないですかお父さん!」

 

父「私はッ!君のお義父さんじゃないッ!」

 

アン「じ、字が違うかと…」

 

 

 

トコハ「新導のとこはどんな感じなの?」

 

アン(あ…!)

 

トコハ「?」

 

クロノ「別に、普通のマンション。おばさんと二人暮らし」

 

シオン/トコハ「「…!」」

 

トコハ「…へえ、そうなんだ」

 

クロノ「あぁ」

 

アン「……」

 

 

 

 

 

その後、四人は夜空を見上げていた。

 

 

アン「…いよいよ、明日ですね」

 

トコハ「結構色々あったよね~。最初はカムイさんに無理やりチーム組まされてさ」

 

シオン「ミニ大会で、新導がポイント剥奪されちゃってね」

 

クロノ「ぐっ…!」

 

トコハ「ヴァンガードやめるってすねて」

 

アン「チームやめるってすねちゃって」

 

クロノ「も、もういいだろ!その話は!」

 

 

シオン「でも、辿り着いた」

 

トコハ「うん、辿り着いた」

 

クロノ「まだだ、まだどこにもたどり着いちゃいねえ。これから行くんだ」

 

アン「そうですね。地区予選優勝して、全国大会に!」

 

クロノ「全国大会でも優勝してやる!」

 

シオン「全国制覇…そして、さらにその先へ…」

 

アン「更に、先…」

 

 

 

 

 

そして、大会当日。

 

 

クロノ「ここが会場か…」

 

アン「広いですね…」

 

シユリ「アンちゃ~ん!」

 

 

そこにシユリが駆け寄った。

 

 

アン「シユリさん!」

 

シユリ「応援に来ちゃった。ルナは運営側だから、こっちは私が!」

 

アン「あ、ありがとうございます…!」

 

トコハ「え、藍千シユリさん?」

 

シオン「プロリーグの…」

 

クロノ「有名なファイターなのか…」

 

 

 

 

 

大会は初っ端から波乱の展開だった。前回優勝チームの一人と、大会責任者であるユナイテッドサンクチュアリ支部支部長・

神崎ユウイチロウのエキシビションマッチが行われたのだが…

 

 

神崎「これが優勝者だと…!?悲しい程に弱いぞぉおおッ!!」

 

 

神崎は、ファイト中に突然泣き出したかと思えば、そんなとんでもない暴言を吐き、圧倒的な強さで前回優勝者を下したのだ。

 

 

神崎「弱さは罪だ!弱き者は去れ!強き者のみが栄光を掴めるのだ!卿らの勝利に期待する」

 

 

神崎はそう言うとマイクを投げ捨て、会場を去った。

 

 

 

 

 

神崎に怒りながらも、順調に勝ち進むトライフォー。

 

クロノの友人である強豪・馬場タケルとの激戦を乗り越え、ベスト16に残った。

 

トリニティドラゴンは残念ながら敗北したが、泣いた末に立ち直ったようだ。

 

 

MCミヤ『ユナサン支部の選抜メンバーから成る、チーム・ディマイズ!刈谷スギル選手、東雲ショウマ選手!羽島リン選手!』

 

 

予選で全員無敗、最速勝利の注目チームが紹介されている。

 

 

クロノ「!アイツ…!?」

 

 

控え室にいるディマイズの三人が移っているが、その近くには伊吹がいた。

 

 

アン「あれ、あの人…」

 

クロノ「知り合いか?」

 

アン「あぁ…前に偶然ぶつかって、落としたカードを拾って返して…それがヴァンガードを始めた切欠なんです」

 

クロノ「…!そ、そうか…」

 

トコハ「あぁ、あの時アンちゃんとぶつかってた人か!きっとチーム監督よ。ユナサン支部は幹部クラスのファイターが、有望な選手を徹底的にエリート教育してるって話だから」

 

シオン「ユナサン支部の選り抜きか…優勝候補の一角とみて、間違いないね」

 

トコハ「アンタの事だから、バッチリ調べてるんでしょー?どんなチーム?」

 

シオン「えっ…時間がなくて、まだ何も…」

 

トコハ「なーんだ、前情報無しか。」

 

クロノ(チーム監督…ユナサン支部の幹部だったのか…)

 

 

同じ頃。

 

 

シユリ「…!」

 

カムイ「何で…こんな所に、アイツが…!?」

 

 

更に、トライフォーベスト16トーナメント最初の相手は、ディマイズだった。

 

 

 

 

 

ミヤ『第一試合!チームディマイズの先鋒は、刈谷スギル選手!』

 

 

出てきたのは、いかにもガラの悪そうな青年。

 

 

ミヤ『対するチームトライフォー先鋒は、日下部アン選手!』

 

アン「よし…!」

 

 

アンがフィールドに出る。

 

 

ショウマ「へぇ、あれが日下部リンの妹か…」

 

伊吹「……」

 

ミヤ『数ヶ月前、ヴァンガードを始めたばかりというルーキーが、強豪相手にどこまで善戦するか、期待が高まります!』

 

トコハ「期待どころか、最初から負けるって決めつけてるみたい!」

 

シオン「まぁ、客観的に見たらそうだろうね」

 

トコハ「ちょっと、どっちの味方なの!」

 

シオン「あ、あくまで一般論だよ…」

 

クロノ「お前ら落ち着け…」

 

 

 

スギル「ハッ、気分がのらね~」

 

アン「はい?」

 

スギル「仲良しこよしの馬鹿騒ぎで、ポイントが稼げるドラエン地区のチームなんざ、たかが知れてんだろ」

 

アン「…弱いかどうか、ファイトすれば嫌でもわかります。始めましょう」

 

 

 

『第一試合、始め!』

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

アン「《お化けのぴーたー》!」

 

スギル「《星輝兵 ダストテイル・ユニコーン》!」

 

 

GIRS(ギアース)による最先端のホログラムで、ユニットや惑星クレイが映し出され、宇宙のフィールドで、ファイトが続く。

 

 

スギル「行くぜ!打ち鳴らせ、破滅の警鐘!ライド!《星輝兵 ダークゾディアック》!」

 

 

スギルがキーカードにライドする。

 

 

スギル「発動!前後列のリアガードを一枚ずつロック!ダークゾディアックでアタック!」

 

 

クリティカルトリガーとリアガードのアタックで、2ダメージ、アンのダメージが5になる。

 

 

アン「……」

 

スギル「あ?何だよ。私まだまだ頑張りま~すってか?」

 

 

冷静なアンをスギルが挑発する。

 

 

スギル「チッ…弱いくせにうぜぇんだよ。俺は弱い奴が大嫌いだ!グッダグッダ言い訳ばっかしやがって…虫唾が走る!」

 

 

更にファイトは進む。

 

 

スギル「跪け!さもなくば消え失せろ!ストライドジェネレーション!《星雲竜 ビッククランチ・ドラゴン》!」

 

 

スギルがストライドする。

 

 

スギル「スキル発動!オメガロック!」

 

アン「ッ!」

 

 

アンの縦一例のリアガードが、2ターンに渡りロックされる。

 

 

スギル「弱さは罪!分かったかッ!」

 

 

スギルのアタック、しかし…

 

 

アン「《竜巻のジン》で完全ガード!」

 

スギル「チッ、さっさと終われよこの野郎ッ!」

 

 

アンはスギルのアタックを全て防いだ。

 

 

トコハ「やった、特訓の成果!途中地道にリアガードを叩いておいて正解だった!」

 

スギル「へっ!その程度ではしゃいでんじゃねーよ。どーせ貴様は次のターンも決めきれねぇ、残念だったなぁ!」

 

 

縦一例のロックで、アンのアタック回数は制限されている。

 

 

アン「…さっき、弱い奴は嫌いとかおっしゃってましたね」

 

スギル「あぁん?それがどうした」

 

アン「──私も、あなたみたいな人は大っ嫌いですッ!」

 

 

ジェネレーションゾーンを解放する。

 

 

アン「夜星の光よ照らせ…!この手で斬り開く未来を!ストライドジェネレーションッ!」

 

 

現れたのは、怨念のオーラを纏う、巨大な骸骨の竜。

 

 

アン「《蝕骸竜 ジャンブル・ドラゴン》!」

 

 

アンは新たなGユニットにストライドした。

 

 

アン(相手はリアガードを削ってた分、沢山コールしてる…今、相手の手札に完全ガードはない!このカードを使う絶好の機会!)

 

アン「ジャンブル・ドラゴンの、ストライド時にスキル発動!山札の上から4枚をドロップゾーンへリその中のノーマルユニット1枚につき、パワー+5000!」

 

 

ドロップゾーンに落ちたのは…

 

 

アン「ノーマルユニット4枚!パワー+2万ッ!」

 

スギル「な、何ィッ!?」

 

アン「更にナイトローゼのストライドスキル!ドロップゾーンから、《腐蝕竜 コラプトドラゴン》をスペリオルコール!パワー+2000!更に、コラプトドラゴンは自身のスキルで、パワー+3000!」

 

 

高パワーのラインが揃う。

 

 

アン「ジャンブル・ドラゴンで、ヴァンガードにアタック!」

 

スギル(ガードが足りねぇ…!こっちのダメージは4、クリティカルさえ出なけりゃ防ぎきれる!)

 

アン「トリプルドライブ!ファーストチェック…セカンドチェック」

 

 

【《荒海のバンシー》☆】

 

 

アン「クリティカルトリガーッ!」

 

スギル「ッ!」

 

アン「パワーはコラプトドラゴン、クリティカルはジャンブル・ドラゴンに!サードチェック!」

 

 

【《ナイトスピリット》☆】

 

 

アン「クリティカルトリガーッ!」

 

スギル「なァッ!?」

 

アン「こちらもパワーはコラプトドラゴン、クリティカルはジャンブル・ドラゴンに!全て、喰らい尽くせッ!」

 

 

ジャンブル・ドラゴンのアタックがダークゾディアックに決まり、スギルのダメージは6となった。

 

 

『勝者、日下部アン選手!』

 

 

強豪を倒したアンに歓声が向けられる。

 

 

スギル「俺が…負けた…?」

 

 

呆然としていたスギルの前に、試合前にスギルにパシられていた青年達が現れた。

 

 

スギル「お前ら…」

 

「…弱さは罪」

 

スギル「うおっ、どこ連れてくんだよ、離せぇッ!」

 

 

スギルは引きずっていかれた…。

 

 

アン「…?」

 

 

 

 

 

伊吹「……」

 

 

一人、会場の裏を歩く伊吹の前に…

 

 

シユリ「──見つけた」

 

カムイ「こんな所で何してるんだ?伊吹コウジ!」

 

 

 

《続く》

 

 

 



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第17話「羽島リン」

何気にカムイがオリジナルデッキ使ってます。


 

シユリ「何してるの?なんで貴方が、ユナサン支部のコーチに…」

 

 

カムイとシユリは、伊吹と向かい合っていた。

 

 

カムイ「あそこは最近、いい噂を聞かねぇ。俺の後輩も嫌な目にあったしな…」

 

伊吹「……」

 

カムイ「何が目的だ、伊吹。もしヴァンガードに仇をなすようなら…許さねえぞ」

 

伊吹「…お前達が心配するような事は何もない」

 

シユリ「…ッ…」

 

 

シユリの脳裏に浮かぶのは、3年前のメサイア・スクランブル準決勝。

 

 

シユリ『──イズルくんッ!』

 

 

彼女の大切な人が倒れる光景と、それを見下ろす伊吹の姿。

 

 

カムイ「──ファイトしろ。お前のヴァンガードを見せてみろ。俺が見極めてやる!」

 

シユリ「あぁ、先に言われちゃったね…」

 

伊吹「……」

 

 

伊吹もデッキを取り出す。

 

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

 

カムイFV【《メチャバトラー ランボール》】

 

伊吹FV【《ネオンメサイア》】

 

 

カムイ「…!」

 

シユリ「…ネオン、メサイア…」

 

 

 

 

 

トコハ「あんな奴には、絶対負けないんだから!」

 

 

トコハは休憩時間、次の対戦相手、ディマイズの羽島リンに散々挑発され、完全にブチ切れていた。そんな中、その羽島リンはというと…

 

 

リン「安城マモル、ごきげんよう」

 

マモル「ん…?」

 

 

大会スタッフとして来ていたマモルに声をかけていた。

 

 

マモル「君は…トコハの対戦相手の、羽島リンさんだね。妹とのファイト、楽しんでね」

 

リン「…覚えてないのね」

 

マモル「…?」

 

 

そうして試合の時間になる。

 

 

リン「うふふ…楽しもうね?」

 

トコハ「えっ…?」

 

 

態度の違いに困惑しながらも、試合開始だ。

 

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

トコハ「《春待ちの乙女 オズ》!」

 

リン「《黒衣の燭光 アズライール》」

 

アン「エンジェルフェザー…」

 

 

 

 

 

一方。

 

 

シユリ「……」

 

カムイV【《永劫不敗 アシュラ・カイザー》】

 

伊吹V【《オルターエゴ・メサイア》】

 

 

お互いグレード3だ。

 

 

カムイ「ストライドジェネレーションッ!《闘神 アシュラ・カイザー》ッ!!」

 

 

カムイがストライドする。

 

 

カムイ「スキル発動!ドロップゾーンのビクトールを山札に戻して、スキル獲得!更にコールだ!」

 

 

リアガードを展開し、連続アタックを仕掛ける。続けてヴァンガードのアタックとなる。

 

 

カムイ「アシュラ・カイザーのアタックだッ!」

 

伊吹「完全ガード」

 

カムイ「トリプルドライブッ!グレード3が出たことで、アシュラ・カイザーのスキル発動!リアガード4体をスタンドだ!

 

《メチャバトラー ザザンダー》2体は、スタンドした時にパワー+5000!更に《ファイナル・レンチ》のスキルで、右のザザンダーにパワー+4000!ランボールのブースト、左のザザンダーでアタック!」

 

伊吹「ノーガード」

 

 

伊吹のダメージが5になる。

 

 

カムイ「行くぜ!ファイナル・レンチのブースト、右のザザンダーでアタック!」

 

伊吹「《震脚のパルスモンク》2体でガード」

 

カムイ「ターンエンド…!」

 

 

伊吹のターン。

 

 

伊吹「──ジェネレーションゾーン、解放!」

 

伊吹「混沌を切り裂き、白き翼で描け未来!ストライド…ジェネレーションッ!《創世竜 アムネスティ・メサイア》…!」

 

 

伊吹もストライドする。

 

 

シユリ「メサイアの、Gユニット…」

 

伊吹「超越スキル…!呪縛(ロック)。傷みを我が力に…!タスクブレードでアタック。スキルで呪縛」

 

カムイ「連続で2体呪縛か。相変わらず、嫌らしい攻撃だぜ…!ガード!」

 

伊吹「アムネスティでアタック。スキル発動。アローザルを解呪(アンロック)!アムネスティをパワーアップ…!」

 

カムイ「解呪…!?お前が…」

 

 

シユリ(やっぱり、あの時とは全く違う…今の彼は…)

 

 

伊吹「アローザルのスキル、タスクブレードをスタンド、パワーアップ」

 

カムイ「ノーガード…!」

 

伊吹「トリプルドライブ…!クリティカルトリガー」

 

 

2ダメージ。

 

 

伊吹「タスクブレードでアタック」

 

カムイ「ガード!──へっ、だんだん分かってきたぜ。お前のファイトからは、邪なものは感じない。曲がった道を行こうとしてるわけじゃ無いようだな…」

 

シユリ「──うん。だからこそ、改めて聞かせて。貴方は一体、何をしようとしているの?」

 

伊吹「──普及協会の…延いては、ヴァンガードの未来のため。俺は、俺の使命を果たすだけだ」

 

シユリ「…?」

 

カムイ「ヴァンガードの、未来…使命って…?」

 

伊吹「──アローザルでアタック」

 

 

メサイアの光が、アシュラ・カイザーを飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

一方。

 

 

トコハ【《ラナンキュラスの花乙女 アーシャ》】

 

リン【《黒衣の戦慄 ガウリール》】

 

 

クロノ「これでお互いグレード3か」

 

トコハ「ストライドジェネレーションッ!」

 

アン(ここからが勝負…)

 

 

『──警戒しろ』

 

 

アン(ッ!?)

 

 

─────

 

金色の槍を構えた天使が、アーシャに迫る。

 

その攻撃から、多くのユニットがアーシャを守る。しかし、続く一撃を防ぐことはできず、アーシャは光に飲み込まれた…。

 

 

─────

 

 

アン「──ッ!」

 

アン(また見えた…!今のイメージは…それに、今の声は…?)

 

クロノ「どうした?」

 

アン「あ、いえ…」

 

トコハ「《春色の花乙姫 アルボレア》で、ヴァンガードにアタック!」

 

 

ストライドしたトコハは、連続アタックでリンをダメージ4まで追い詰めた。

 

 

リン「…明るくて真っ直ぐなファイト。びっくりする程そっくり」

 

トコハ「えっ?」

 

リン「…安城マモルに」

 

トコハ「ッ!」

 

リン「……」

 

 

リンは幼少期を思い出す。

 

 

リン『ほらぁ、まだヴァンガードには攻撃しないであげるからぁ、頑張って~?』

 

 

当時から強く、性格も問題ありだったリンが、カードショップでファイトをしていた時…

 

 

マモル『そんな意地の悪いファイトは、やめたほうがいいよ』

 

 

たまたま居合わせたのが、マモルだった。

 

 

『はぁ?弱っちいのがいけないんじゃん』

 

『そういう言い方はよくないよ。キミだって、同じことされたら辛いだろう?』

 

『うるさいなぁ…お説教したいんなら、私とファイトして勝ちなさいよ!』

 

『…仕方ないな』

 

 

マモルも戸惑いつつファイトを受けたが、勝者はマモルだった。

 

 

『惜しかったね…でも、勝ち負けがすべてじゃないんだよ?一緒に楽しむのが、ヴァンガードなんだ。キミとのファイト、楽しかったよ』

 

 

マモルは手を差し伸べるが…

 

 

『…綺麗事だね』

 

 

リンが手を取ることはなかった。そして現在…

 

 

リン(…アイツは、何も覚えていなかった…)

 

 

リンのターン。

 

 

リン「ストライドジェネレーション!《聖霊熾天使 ウリエル》!」

 

アン(あのユニットは、さっきのイメージの…!)

 

リン「ふふっ、楽しもうねぇ。安城マモルの妹ちゃん」

 

トコハ「兄さんは関係ない!」

 

リン「怒っちゃダメだよぉ♪ヴァンガードは楽しくやるものだよぉ~?お兄ちゃんも、言ってるでしょ~?」

 

トコハ「関係ないって、言ってるでしょ!」

 

アン「…ッ!」

 

 

以前トコハの悩みを聞き、自分も姉と比べられてきたアンは、トコハの心中を察し、拳を握り締める。

 

 

リン「ウリエルでアタック」

 

 

リンのアタックを、トコハはなんとか凌いだが、冷静でいられるはずもなく。

 

 

トコハ「このターンで一気に、決めてやる!ストライドジェネレーション!《立春の花乙姫 プリマヴェーラ》!」

 

 

トコハはストライドして一気に攻めるが、防ぎ切られてしまう。

 

 

シオン「前のターンで手札に加えた完全ガードに加え、ドロートリガーも出てるんだ…!決められるわけないのに…!」

 

クロノ「落ち着け安城…!」

 

 

更には次のターン。

 

 

アン「今のターンで決められてもおかしくなかったのに、リアガードを攻撃してた…これ、多分わざと…」

 

クロノ「勝てるのにトドメを刺さなかったってのか、アイツ…!」

 

リン「こんなに楽しいファイト…簡単には終わらせないから…!」

 

 

更に…

 

 

リン「そんな顔しないで?笑顔、笑顔~。ヴァンガードは楽しくやらないとね。おにーちゃんに叱られちゃうぞっ?」

 

トコハ「──アタックッ!」

 

リン「完全ガード」

 

 

攻めきれない。

 

 

「え~っ?もーおしまぁい?もっと楽しめると思ったのになぁ…弱いんだねぇ、安城マモルの妹なのに…泣かないで?」

 

「泣いてないッ!」

 

「はいはい、終わりにしましょうね」

 

 

再びウリエルにストライド。

 

 

アン(この盤面…!さっきのイメージの…!)

 

リン「ばいばい、妹ちゃん?」

 

 

ウリエルのアタックが決まり、トコハのダメージは6になった。

 

 

リン「アイツ、見てくれたかしら…?」

 

 

リンは控え室に戻る。

 

 

東雲「随分楽しんだみたいだな。君があんなに感情をあらわにするのは珍しいだろう」

 

リン「だって、ヴァンガードって…楽しいものでしょう?」

 

 

一方。

 

 

トコハ「…ごめん、負けちゃって」

 

クロノ「まぁ…しゃーねえだろ」

 

アン「あれだけ煽られたら…」

 

シオン「気にすることはないよ、次で、僕が必ず勝つから」

 

トコハ「何それ!私のファイトなんて意味がないって言うわけ!?」

 

シオン「そういう意味じゃ…」

 

トコハ「ッ…ごめん」

 

アン「あ…!」

 

 

トコハは控え室から出て行き、アンが追いかける。

 

 

アン「あ…」

 

 

会場の外に出たアンは、遠くで佇むトコハを見つける。

 

 

トコハ(なんにも変わってない…煽られて、熱くなって、負けて。結局、私…)

 

トコハ「──チクショーォオオッ!」

 

 

泣きながら叫ぶトコハに…

 

 

アン「…ッ!」

 

 

アンが思わず、持っていたデッキケースを固く握りしめた、その時。

 

 

『──怒りが伝わってくる。気に入らないな』

 

アン「──ッ!?」

 

 

突然頭に響いた声に、アンはハッと顔を上げる。

 

 

アン(え…今の、誰…?)

 

 

アンは辺りを見回すが、遠くにいるトコハ以外誰もいない。

 

 

アン「……」

 

 

思わずデッキに視線を落とす。一番上にあったカードは、彼女の分身たるナイトローゼだった。

 

 

アン「…?」

 

 

同じ頃。

 

 

カムイ「お前の覚悟は分かった。けどな…もし、仲間達が危険な目に会うような事があれば…その時は、黙ってないからな」

 

伊吹「…好きにしろ」

 

 

伊吹は、カムイとシユリの前から歩き去っていた…。

 

 

 

《続く》

 

 



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第18話「昏き覚醒」

今回から少しの間、オリジナル展開が続きます。


 

シオン(東雲さんは、僕のことを詳細までリサーチしていた…僕は、彼の顔と名前しか知らないのに…)

 

 

試合前、偶然対戦相手の東雲ショウマと出くわしたシオン。東雲は至って紳士的にシオンと握手したが、その情報収集に隙はなかった。

 

 

MCミヤ『チームトライフォー、綺場シオン選手対、チームディマイズ、東雲ショウマ選手!試合開始です!』

 

 

アン(ここまでの二人、性格が悪いにも程があった…この人は…?)

 

 

シオン「フィールドは、東雲さんが決めて頂けますか?」

 

東雲「いいのかい?」

 

シオン「先程のお詫び、という程のことでもないですけど…」

 

 

東雲の服には、シオンと廊下でぶつかってしまった時にできたコーヒーのシミが。

 

 

東雲「では、遠慮なく」

 

 

会場の照明が消える。

 

 

東雲「光あれ」

 

 

東雲が指を鳴らせば、青い光が灯る。

 

 

東雲「ユナイテッド・サンクチュアリ、奈落の神殿」

 

 

いよいよファイト開始となる。

 

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

シオン「《閃きの騎士 ミーリウス》!」

 

東雲「《革の戒め レージング》」

 

シオン(ジェネシスか…)

 

 

そして、ファイトは進み…

 

 

シオン(読まれていた…僕の攻撃が…)

 

東雲「フッ…仕方ないさ。時間が無かったんだってね?今回」

 

シオン「そんなことまで…!?」

 

東雲「当然さ、君だって調べていたはずさ。時間さえあれば」

 

シオン「ッ!」

 

 

 

東雲「解き放て、滅びを告げる狼の顎門。ライド、《神界獣 フェンリル》!」

 

 

更に…

 

 

東雲「ジェネレーションゾーン、解放」

 

 

【コスト《幸運の女神 フォルトナ》】

 

 

東雲「フハハ…!黄昏の世界に…終末の裁きをッ!ストライド、ジェネレーション!《大天使 ドゥームブレイス》!超越スキル、ソウルチャージ!」

 

 

スキルで支払ったソウルを補充しつつ、ドロップしたカードを再コール、更にパワーアップまで。

 

 

クロノ「使った分のソウルを毎回補充出来るなら、息切れなしでスキルが使える。しかもユニットまで戻ってくる…!」

 

アン「こんなのがターン毎に続いたら…!」

 

 

アタックが続く。

 

 

東雲「俺みたいな庶民にはわからないけど、大変なんだろうなぁ…あの綺場一族の御曹司ともなればさ。」

 

シオン「ッ!」

 

 

ダブルクリティカルトリガーのアタックが決まる。

 

 

「言い訳はしません。みんなそれぞれ忙しいのは一緒です!」

 

「謙虚だな。だからここまでやって来れたんだろうねぇ。尊敬するよ、心から。でも不思議だなぁ。綺場の跡取りでフェンシングの選手。それだけでも大変なのに、どうしてヴァンガードまでやろうと思ったんだい?」

 

「特別なんだ…言い訳はしない。僕は、僕自身のために、必ず勝利を掴んでみせる!」

 

 

シオンのターン。

 

 

シオン「ストライドジェネレーション!《閃火の聖騎士 サムイル》!」

 

 

スキルでユニットを展開しつつ、サムイルのスキルで追加ダメージ。

 

 

東雲「すべてを取る…か。すごいなぁ君は…でもさぁ…」

 

 

完全ガード。

 

 

東雲「可能なのかなぁ、そんな中途半端」

 

シオン「ッ!?」

 

アン「…ッ!」

 

 

アタックは全て防がれ、シオンは動揺、アンは拳を握り締める。

 

 

アン(この人も…ッ!)

 

「ホントはとっくに気付いているんだろ?君では俺に勝てない…!ストライドジェネレーション!」

 

 

再びドゥームブレイスにストライドし、ユニットを展開、パワーアップする。

 

 

東雲「これが最近のお気に入りでね。大きな大会では使ってるんだ、いつも」

 

シオン(情報さえあれば、対策もできていたはず…!)

 

 

アタックが次々と決まる。

 

 

東雲「仕方ないさ、忙しかったんだ。準備が足りなかったんだよ、今回は」

 

シオン「ち…違うッ!」

 

 

 

アン(また、好き放題に…ッ!)

 

トコハ「何やってんのよ…!こんなの全然、アンタらしくないじゃない…!」

 

クロノ「しっかりしろ!お前のファイトを取り戻せ!一緒に上まで行くんだろ!」

 

 

 

東雲「新導クロノに、日下部アンさん、だっけ?君とチームを組んだことで、彼らは格段に強くなったな。俺の仲間もあっさり負けてしまった。きっともっと強くなる…ヴァンガードに全てをかけられるからね」

 

シオン「違う…言い訳はしない…!僕は…っ!すべてを掴んでみせる!僕は、綺場シオンだ!」

 

 

《神聖竜 セイントブロー・ドラゴン》にストライドし、猛攻を仕掛けるが、トリガーは引けず、防ぎ切られる。

 

 

東雲「ラストターンを君に」

 

 

《神界獣 フェンリル》の一撃が、アルトマイルに決まる。

 

 

東雲「残念だなぁ。この程度だったんだな…君のヴァンガードは」

 

シオン「──ッ!」

 

 

決着…チームは敗退となった。

 

 

シオン「…すべて僕の責任だ。すまなかった」

 

トコハ「やめてよ、そもそも最初に負けたのは私だし…!」

 

クロノ「誰の責任とかじゃねぇ、俺達はチームだろ…!」

 

アン「…っ…!」

 

 

 

 

 

リン「よくやるわぁ…お気に入りのシャツだったんでしょ?それ。そこまでするような相手だったの?」

 

東雲「天翔ける鳥を籠で飼うためには、どうすればいいと思う?」

 

リン「?」

 

東雲「──翼を折るのさ。また会える日が、楽しみだなぁ…」

 

 

 

 

 

アン「……」

 

 

しばらくして、アンは一人外を歩いていた。

 

 

シユリ「アンちゃん」

 

アン「あ…シユリさん。いつの間にいなくなってたから、どうしたかと…」 

 

シユリ「ご、ごめんね、急用でさ…試合、最後だけ見てたんだけど…その…」

 

アン「──終わらせない」

 

シユリ「え?」

 

アン「…終わらせない…絶対に…

 

 

 

 

 

──許さない」

 

 

 

シユリ「──ッ!?」

 

 

ゾワリと寒気が走る。アンは無表情ながら、その目は憎悪に燃えている。

 

 

シユリ「…あ…ま、待って…」

 

 

我に返った時には、アンは既に歩き出していた。遠くなる背中を追おうとしても、足が震える。

 

 

ルナ「シユリ」

 

シユリ「あ…る、ルナ…」

 

 

シユリにルナが歩み寄る。

 

 

ルナ「大丈夫?」

 

シユリ「…怖かった…」

 

ルナ「…昔から、キレたら一番怖い」

 

シユリ「え…?」

 

ルナ「…今は何言っても聞かない…けど、注意しなきゃ…危ない、かも…」

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

アン(…私の友達を、あんなに、傷つけて…絶対に、許さない…ッ!強くなって、あいつらなんて、叩き潰して…ッ!)

 

 

デッキを握り締めた、その時。

 

 

『強くなりたいのか?』

 

アン「ッ!?」

 

 

デッキからカードが宙を舞い、放たれた光が視界を覆い尽くした。

 

 

アン『──!…ここは…?』

 

 

気付けば、アンは夜空の下、海賊船の甲板にいた。

 

 

『よぉ』

 

アン『!』

 

 

振り向くと、そこにいたのは…

 

 

アン『…ナイト、ローゼ?』

 

 

長い髪をなびかせる女海賊…ナイトローゼがいた。

 

 

ナイトローゼ『あたし達の先導者。お前はどうしたいんだ?』

 

アン『…私は…人を見下して嘲笑うような奴らが大嫌いです。何より…私の大切な友達を傷つけた奴らは、絶対に許さない…!私がこの手で叩き潰してやりたいッ!友達と同じ苦しみを、あいつらにも味わわせてやりたいッ!』

 

ナイトローゼ『──ハハッ!なるほどねぇ。大人しいいい子ちゃんに見えて、案外海賊向きなのかもねぇ。あたし達を選んだ理由が何となく分かったよ』

 

 

ナイトローゼは笑った後、表情を引き締める。

 

 

ナイトローゼ『だったらぶっ潰せ』

 

アン『!』

 

ナイトローゼ『その辺のゴロツキみたいな海賊と違ってな。誇り高い海賊ってのは、身内を傷つけた奴は絶対に許さない。それに…』

 

 

 

ナイトローゼ『気に入らねぇもんはぶっ潰す。それが海賊ってもんだろ』

 

 

 

 

 

アン「──ッ!」

 

 

ハッと我に返れば、元の帰り道。デッキは手の中にある。

 

 

アン(…気に入らないものは、ぶっ潰す…)

 

 

物騒な台詞が、今はやけに魅力的に思える。

 

 

「よ~お」

 

アン「…?…!」

 

 

声をかけられて顔を上げれば、見覚えのある三人組。アンは顔を顰める。

 

 

アン「…イカサマ野郎…!」

 

 

かつてクロノに暴力の濡れ衣を着せた、チームトリックトリックの三人だ。

 

 

「お~お~、怖いですねぇ。けどデカイのは口だけだよねぇ」

 

「中継見たぞ~?お前のチームボロ負けしただろ、情けね~!」

 

「残念だな~、弱いチームメイトのせいで負けちゃってさぁ」

 

アン「…は?」

 

 

──その言葉で、アンの中で何かが切れた。

 

 

アン(こいつら…ッ!イカサマして、新導君に濡れ衣着せて、綺場君とトコハちゃんまで馬鹿にして…ッ!許さない…許さない、許さない、許さないッ!!)

 

「よ~し、計画開始ですね…!」

 

「来い…!」

 

 

トリックトリックの一人が、アンの腕を掴んで無理矢理引っ張り…

 

 

アン「──ッ!」

 

「ぎゃああッ!?」

 

 

逆にアンが背負い投げした!

 

 

「いってぇ!?」

 

「「うわぁっ!?」」

 

アン「やることが小物くさい…。こう見えて道場通ってた時がありまして。特別強いわけじゃなかったけど、普通の人相手なら余裕です」

 

「くっそぉ…!これじゃあこいつらに痛い目見せる計画が…!」

 

アン「…へぇ、私の友達にも手を出すつもりなんだ…」

 

 

…やっぱりこいつら、潰さないと。

 

アンはデッキを取り出す。

 

 

アン「そうだなぁ…私に勝てたら、大人しく殴られてあげてもいいかなぁ」

 

「は、はぁ…!?」

 

アン「イカサマは、分かりますからね?…あぁ、イカサマしなきゃゲームにすらならないんだ?」

 

 

目の前の卑怯者達への怒りから、普段なら絶対出ないような言葉が、驚くほど自然に出る。

 

 

「ふ、ふざけんなッ!?やってやらぁっ!」

 

 

トリックトリックのリーダーがデッキを取り出し、ファイトが始まった…のだが…

 

 

 

 

 

ファイトは進み、お互いG3の中…

 

 

「はぁ、はぁ…!?」

 

アン「──大口叩いといて、呆気ないですね」

 

アン(…声が、聞こえる…)

 

 

カードに手をかけたアンの瞳に、虹色の光が輝いた。

 

 

『『『っ!?』』』

 

 

トリックトリックは、イメージに引きずり込まれ、気がつけばクレイの海賊船の中にいた。

 

 

『な、なんだよこれ…!?』

 

『あ、あれ…!』

 

『ひぃっ!?』

 

 

目の前に、ナイトローゼにライドしたアンがいる。

 

 

アン『──ストライドジェネレーション』

 

 

アンの姿が闇に飲まれ…《蝕骸竜 ジャンブル・ドラゴン》が、その巨体でトリックトリックを見下ろす。

 

 

『『『ひぃいいっ!?』』』

 

『『──ガァアアアアッ…!』』

 

 

ジャンブル・ドラゴンは、怨念のオーラを束ねた光線を、トリックトリックに向かって放った…!

 

 

『『『うわぁあああああああっ!?』』』

 

 

トリックトリックは為す術なく飲み込まれ…現実では6ダメージ目が通った。

 

 

「「「うわぁあああああああっ!?」」」

 

 

トリックトリックはその場にひっくり返る。

 

 

「あ、あぁああああっ…!?」

 

「ひ、ひぃいい…!」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ…っ!」

 

 

トリックトリックは涙と鼻水を垂れ流しながら

震え上がっている。

 

 

アン「……」

 

 

その姿を、目を見開いて見下ろすアン。クロノを陥れ、シオンとトコハを嘲笑った、許し難い卑怯者達が、目の前で震え上がっている光景を見て…アンが感じたのは、暗い喜びだった。

 

──あぁ、いい気味だ…!

 

久しぶりだ…長らく忘れていた感覚だった。

 

昔、こんな思いを感じた時があった…。

 

 

アン「…は…はは…あははっ…!」

 

 

口角が上がり、歪んだ笑みが浮かぶ。

 

 

アン「──アハハ…ッ!アハハハハハハハハッ!!」

 

 

 

《続く》

 

 

 



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