絢瀬天と九人の物語 (ムッティ)
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女子校に入学してみた。

明けましておめでとうございます、ムッティです。

『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマったので、ノリと勢いで小説を書いてしまいました。

相も変わらず文才は無いですが、温かい目で読んでいただけると幸いです。


 「ここが浦の星かぁ・・・」

 

 正門の前に立ち、校舎を見上げる俺。

 

 静岡県沼津市の内浦湾の西に張り出した岬に所在する、全校生徒が百人にも満たない小さな私立高校・・・それがここ、浦の星である。

 

 俺は今日から、この高校の生徒になるのだ。さて・・・

 

 「とりあえず到着したけど・・・生徒会長さんはどこだろう?」

 

 キョロキョロと辺りを見回す。

 

 学校側からの連絡によると、正門の前で生徒会長さんが待ってくれているとのことだったが・・・それらしき姿は見当たらない。

 

 「・・・まぁ良いや。少し待ってみよう」

 

 「何を待ってみるの?」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなり背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。

 

 いつの間にか俺の後ろには、橙色の髪の女の子が立っていた。浦の星の制服を着ているので、ここの生徒だろう。

 

 「男の子がこんな所で何してるの?ここは女子校だよ?」

 

 首を傾げている女の子。

 

 浦の星の正式名称は、浦の星女学院高等学校・・・名前の通り、ここは女子校なのである。

 

 「いえ、それは重々承知していますが・・・実は俺、今日からこの高校の生徒になる身でして・・・」

 

 「・・・通報して良い?」

 

 「止めて!?」

 

 思わず叫んでしまう。いや、確かに『何言ってんだコイツ』ってなるだろうけども。

 

 男である俺が女子校の生徒になるのには、れっきとした理由があるのだ。

 

 「千歌ちゃん?どうしたの?」

 

 明らかに俺を警戒し始めた女の子の後ろから、別の女の子がひょっこり顔を覗かせる。

 

 グレーのボブカットの髪にウェーブの入った、活発そうな女の子だ。

 

 「あ、曜ちゃん!ここに怪しい男の子がいるの!」

 

 「えぇっ、不審者!?」

 

 橙色の髪の女の子の言葉を聞き、グレーの髪の女の子が俺を見て警戒する。

 

 あぁ、誤解が広がっていく・・・

 

 「違いますって!れっきとしたこの学校の生徒です!」

 

 「だからここは女子校だって!」

 

 「だからそれには理由があるんですって!」

 

 言い合う俺と橙色の髪の女の子。

 

 するとグレーの髪の女の子が、何かに気付いたような表情で俺を見た。

 

 「あれ?その制服・・・浦の星の制服に似てない?」

 

 「いや、似てるも何も浦の星の制服ですよ。男子用の制服だそうです」

 

 着ている制服を指差す俺。俺が入学するにあたって、学校側が急遽男子用の制服を用意してくれたらしい。

 

 その説明をしたところで、グレーの髪の女の子がハッとした表情を浮かべる。

 

 「あぁっ!?ひょっとして、君が例のテスト生!?」

 

 「あぁ、やっと分かってくれた・・・」

 

 ようやく事情を理解してくれたらしい。一方、橙色の髪の女の子は未だ首を傾げていた。

 

 「テスト生?」

 

 「ほら、浦の星は共学化を目指してるって説明があったじゃん!とりあえずテスト生として、四月から男子生徒が一人入学するって!」

 

 「あぁっ!?」

 

 どうやら思い出してくれたようだ。恐る恐るこっちを振り向く橙色の髪の女の子。

 

 「と、いうことは・・・本当に浦の星の生徒?」

 

 俺はその問いかけにニッコリ笑みを浮かべると、二人に背中を向けて歩き出した。

 

 「そのつもりでしたが、どうやら受け入れてはいただけないようですね。学校側に今起こったことを全てありのままに伝えて、テスト生の辞退を申し入れた上で海に身を投げようと思います。それではさようなら、来世でお会い出来ると良いですね」

 

 「「ちょっと待ってええええええええええっ!?」」

 

 必死に俺にしがみついてくる二人。

 

 「離せえええええっ!海が俺を待ってるんだあああああっ!」

 

 「ゴメンなさいいいいいっ!私の早とちりでしたあああああっ!お願いだから思い留まってえええええっ!」

 

 「私からもお願いいいいいっ!早まらないでえええええっ!」

 

 「止めるんじゃねえええええっ!」

 

 この後、周りから不審な目で見られたことは言うまでもないのであった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「すみませんでした!」

 

 「ごめんなさい!」

 

 「いえ、俺の方こそ申し訳ありませんでした・・・」

 

 何とか落ち着いた俺達は、お互いに深々と頭を下げていた。

 

 いやホント、入学初日から何やってんだ俺・・・

 

 「あ、自己紹介が遅れました・・・今日から浦の星でお世話になります、絢瀬天といいます。よろしくお願いします」

 

 「これはこれはご丁寧に・・・二年の高海千歌です」

 

 「同じく二年の渡辺曜です」

 

 自己紹介し合う俺達。やっぱり二人とも先輩だったか・・・

 

 「ところで高海先輩・・・その鉢巻き何ですか?」

 

 「あ、これ?」

 

 頭に巻いてある鉢巻きに触れる高海先輩。

 

 『スクールアイドル愛』と書かれた鉢巻きを付けて、この人は一体何をしているのだろうか・・・

 

 「実は私、新しく部活を立ち上げることにしたの」

 

 「スクールアイドル部ですか?」

 

 「そう、スクールアイドル部・・・って何で分かったの!?」

 

 「今の流れで分からない方がおかしいでしょ」

 

 「アハハ・・・はい、これがチラシだよ」

 

 そう言って紙を一枚渡してくれる渡辺先輩。スクールアイドル部かぁ・・・

 

 「部員って、高海先輩と渡辺先輩以外にいるんですか?」

 

 「あ、私は部員じゃないよ」

 

 首を横に振る渡辺先輩。

 

 「私は水泳部に入ってるから、スクールアイドル部には入ってないんだよね」

 

 「え、じゃあ部員って・・・」

 

 「私だけだよ」

 

 何故か胸を張る高海先輩。

 

 意外と大きいな・・・じゃなくて。

 

 「・・・生徒会の承認って貰ってます?」

 

 「貰ってないよ?」

 

 「・・・部活、立ち上げられてないじゃないですか」

 

 「最低でも五人必要だっていうから、五人集まってから申請しようかなって」

 

 「・・・申請もしてないのに、勧誘活動してるんですか?」

 

 「嫌だなぁ、申請する為に勧誘活動してるんだよ♪」

 

 能天気に笑っている高海先輩。これは生徒会にバレたらマズい案件なのでは・・・

 

 「あっ!あんなところに美少女がっ!スクールアイドルやりませんかっ!?」

 

 一方の高海先輩は、そんなことお構い無しに勧誘活動を続けていた。おいおい・・・

 

 「・・・渡辺先輩、止めなくて良いんですか?」

 

 「いやぁ・・・千歌ちゃん凄くやる気になってるし、良いかなぁって」

 

 「言っときますけど、多分もうすぐ生徒会長さんが来ますよ」

 

 「今すぐ止めなきゃ!?」

 

 慌てて走っていく渡辺先輩。

 

 仕方なくその後を追うと、高海先輩が二人組の女子を勧誘しているところだった。

 

 「大丈夫!悪いようにはしないから!」

 

 「いや、マルは・・・」

 

 茶髪のふわっとしたロングヘアの女の子が、困った様子で対応していた。

 

 その子の後ろには、赤髪の短いツーサイドアップの女の子が怯えたように隠れている。

 

 「千歌ちゃん、その辺にしとかないとマズいって!」

 

 「曜ちゃん、この子達凄く可愛いよ!絶対人気出るよ!」

 

 焦っている渡辺先輩とは対照的に、高海先輩は興奮状態だった。

 

 あれは人の話なんて聞いちゃいないな・・・

 

 「すみません、先輩がご迷惑をおかけしました」

 

 「マ、マルは大丈夫ずら・・・」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?だ、大丈夫です!」

 

 慌てて言い直す茶髪の女の子。何だったんだろう?

 

 「ひょっとして、新入生?」

 

 「あ、はい。そうです」

 

 「じゃあ一緒だね。俺も新入生なんだ」

 

 「ずらっ!?」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?」

 

 慌てて口を押さえる茶髪の女の子。どうやら『ずら』が口癖らしい。

 

 「ど、どうして男の子が・・・?」

 

 「ひょっとして、テスト生の人・・・?」

 

 赤髪の女の子が、茶髪の女の子の後ろから恐る恐る顔を出していた。

 

 「うん、そうだよ。よろしくね」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 慌てて隠れてしまう赤髪の女の子。えっ・・・

 

 「あ、ゴメンね!ルビィちゃん、人見知りな上に男性恐怖症だから!」

 

 茶髪の女の子が慌てて説明してくれる。なるほど、つまり俺が消えるべきなのか・・・

 

 「ゴメンね、ルビィちゃんとやら・・・俺は今から屋上に行ってくるよ」

 

 「ちょっと待つずらあああああっ!?」

 

 茶髪の女の子が必死に止めてくる。最早『ずら』を隠す気も無いらしい。

 

 「屋上に行って何するつもりずら!?」

 

 「アイキャンフライ」

 

 「人は空を飛べないずら!」

 

 「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてるから、きっと今は自由に空も飛べるはずだよ」

 

 「それはスピ●ツの曲ずらあああああっ!」

 

 「ねぇ二人とも、スクールアイドルやろうよ!」

 

 空気を読まない高海先輩が、俺達のやり取りを見てあたふたしていたルビィちゃんとやらの手を握った。

 

 その瞬間、ルビィちゃんとやらの顔が青くなる。

 

 「っ!?マズいずら!」

 

 「うおっ!?」

 

 茶髪の女の子が俺の頭を掴んで自分の胸に押し付け、両腕で俺の頭を抱いた。俺の顔が、大きくて柔らかいものに埋まっている。

 

 あぁ、幸せ・・・じゃなくて。

 

 「ちょ、いきなり何を・・・」

 

 「ぴぎゃああああああああああっ!?」

 

 ルビィちゃんとやらの叫び声が響いた。茶髪の女の子の腕に耳が塞がれているから、俺にはそこまで響かない・・・

 

 ってまさか!?

 

 「俺を庇って・・・!?」

 

 「ずらぁ・・・」

 

 ルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』を食らった茶髪の女の子は、一撃で瀕死状態になってしまったようだ。

 

 倒れそうになる茶髪の女の子を、慌てて抱き留める。

 

 「ちょ、大丈夫!?」

 

 「オ、オラはもうダメずら・・・ガクッ」

 

 「ず、ずら丸うううううっ!?」

 

 何かよく分かんないけど、頭に浮かんだあだ名を叫ぶ俺。すると・・・

 

 「キャアアアアアアアアアアッ!?」

 

 今度は側にあった桜の木の上から、女の子が降ってきた。そのまま見事に着地するが・・・

 

 「うぅ、足が・・・ぐえっ」

 

 着地の衝撃に襲われていた。その上、頭の上に鞄が落ちてきて見事にヒットする。

 

 「えっと・・・色々大丈夫?」

 

 高海先輩が女の子を心配していた。ってかアンタ、至近距離でルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』食らってよく無事だったな・・・

 

 そんなどうでもいいことに感心していると、その女の子が急に肩を震わせて笑い始めた。

 

 「クックックッ・・・ここはもしかして地上・・・?」

 

 「高海先輩、この人大丈夫じゃないみたいです。救急車呼んで下さい」

 

 「分かった。ちょっと待っててね」

 

 「私は正常よっ!?」

 

 ダークブルーの髪を揺らしながら叫ぶ女の子。いや、正常な人はあんなセリフ吐かないからね。

 

 「コホンっ。ここが地上ということは・・・貴女達は、下劣で下等な人間共ということですか?」

 

 「えいっ」

 

 「ギャアッ!?」

 

 足に軽くチョップしてやると、女の子は足を押さえて蹲った。どうやら先程の痛みが残っていたらしい。

 

 「何すんのよ!?セクハラで訴えるわよ!?」

 

 「初対面で下劣だの下等だの言うような奴は、女子としてカウントされません。それがこの世界のルールです」

 

 「無いでしょそんなルール!?」

 

 「それで?どちら様ですか?」

 

 そう尋ねると、女の子がニヒルな笑みを浮かべる。

 

 「フッ・・・私は堕天使ヨハネ・・・」

 

 「・・・善子ちゃん?」

 

 瀕死状態だったずら丸がガバッと起き上がり、女の子の顔を覗き込む。

 

 「やっぱり善子ちゃんだ!私、花丸だよ!幼稚園以来だね!」

 

 「は・・・花丸うううううっ!?」

 

 仰け反る女の子。どうやら二人は知り合いらしい。

 

 っていうか、ずら丸の本名は花丸っていうのか・・・

 

 「久しぶりだね!善子ちゃん!」

 

 「善子言うな!私はヨハネ!ヨハネなんだからね!」

 

 そう言って逃げていく自称・堕天使ヨハネ。ずら丸がその後を追い、その後をルビィちゃんとやらが追いかけていく。

 

 「どうしたの善子ちゃあああああん!?」

 

 「花丸ちゃん待ってえええええっ!」

 

 「来るなあああああっ!」

 

 「・・・何だったんだ?」

 

 多分あの子も新入生だろう。ずいぶん濃いメンツが集まったなぁ・・・

 

 「あの子達・・・後でスカウトに行こう!」

 

 「アハハ・・・」

 

 懲りない高海先輩に、苦笑している渡辺先輩。

 

 「高海先輩、まだ諦めてないんですか?」

 

 「勿論!だってあの子達、凄く可愛かったもん!」

 

 「まぁそれは認めますけど」

 

 ずら丸もルビィちゃんとやらも自称・堕天使ヨハネも、美少女なのは間違い無い。

 

 「あの子達がスクールアイドルになったら、絶対人気出るよ!」

 

 「・・・そんな単純な話でもないと思いますけど」

 

 俺が溜め息をついていると・・・

 

 「このチラシを配っているのは、貴女方ですの?」

 

 背後で声がする。振り向くと、美しい黒髪ロングの女の子が立っていた。

 

 手にはスクールアイドル部のチラシを持っている。

 

 「いつ何時、スクールアイドル部なるものがこの浦の星女学院にできたのです?」

 

 凛とした表情でこちらを見る女の子。

 

 立ち居振る舞いがとても綺麗で、俺は思わずその女の子に見惚れてしまった。

 

 「貴女も新入生?」

 

 「ち、違うよ千歌ちゃん!?その人は三年生だよ!?」

 

 呑気にそう声をかける高海先輩に、慌てて耳打ちする渡辺先輩。

 

 「しかもその人は・・・」

 

 「・・・ひょっとして、生徒会長さんですか?」

 

 もしかしてと思い尋ねてみると、女の子が優しい笑みを浮かべる。

 

 「えぇ、生徒会長の黒澤ダイヤと申します。絢瀬天さんですわね?」

 

 「あ、はい。絢瀬天です」

 

 「遅れてしまい申し訳ありません。生徒会の仕事に少々手間取ってしまいまして・・・」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる生徒会長。

 

 「いえ、大丈夫です。そんなに待ってないですし」

 

 主に二人の先輩と、三人の同級生のおかげで。

 

 「すぐに生徒会室までご案内します。あぁ、それと・・・」

 

 先ほどの優しい笑みとは対照的に、怖い笑みを高海先輩と渡辺先輩に向ける。

 

 「貴女方も一緒に来て下さい。お話がありますので」

 

 「「は、はい・・・」」

 

 震えながら返事をする二人。恐るべし生徒会長・・・

 

 「では、参りましょうか」

 

 「はい。ほら高海先輩、渡辺先輩、行きますよ」

 

 「うぅ、曜ちゃ~ん・・・」

 

 「諦めよう、千歌ちゃん・・・」

 

 絶対に生徒会長を怒らせてはいけない・・・入学初日にして、早くも教訓を学んだ俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は『ラブライブ!サンシャイン!!』の小説を書かせていただきました。

先月アニメを観て、今月映画を観に行って・・・

完全に新規のにわかファンです。

ノリと勢いで書いてみたは良いものの、果たしてどこまで続くことやら・・・

とりあえず、ヒロイン(未定)とイチャイチャするところまで書きたい願望。

それでは次回があることを願いまして・・・

以上、ムッティでした!


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人には意外な一面があったりする。

LiSAさんが歌う『ADAMAS』のサビ部分で、『シャイニーソード マイダイヤモンド』ってあるけど…

このフレーズを聴く度に鞠莉ちゃんとダイヤさんが思い浮かんで、自分が『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマっていることを実感します。


 「・・・つまり設立の許可どころか、申請すらしていないにも関わらず勧誘活動を行なっていたと」

 

 「いやぁ・・・皆勧誘してたんで、ついでというか焦ったというか・・・」

 

 生徒会室にて、黒澤生徒会長の説教を受けている高海先輩。

 

 ちなみに渡辺先輩は手伝っていただけということで、早々にお咎め無しが決まった。

 

 「そして部員は貴女一人だけ・・・部の申請には、最低でも五人必要ということは知っていますわよね?」

 

 「だから勧誘してたんじゃないですか~♪」

 

 高海先輩の答えにイラッとしたのか、バンッと机を叩く会長。

 

 「・・・いったぁ」

 

 と思ったら、叩いた手を痛そうに擦っていた。え、ドジっ子?

 

 「・・・ぷっ」

 

 「笑える立場ですの!?」

 

 「ひぃ!?すいません!」

 

 噴き出した高海先輩だったが、会長に怒られて慌てて謝る。

 

 「とにかく、スクールアイドル部の設立は認められませんわ」

 

 「・・・そうですか。じゃあ、五人集めてまた来ます」

 

 一礼して去ろうとする高海先輩。その背中に、会長が非情な言葉を投げかけた。

 

 「それは別に構いませんけど・・・例えそれでも承認は致しかねますがね」

 

 「なっ!?どうしてですか!?」

 

 慌てて会長に詰め寄る高海先輩。会長は冷たい目で高海先輩を見ていた。

 

 「私が生徒会長でいるかぎり・・・スクールアイドル部は認めないからです!」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 悲鳴を上げる高海先輩。

 

 「そ、そんな横暴な!?」

 

 「落ち着いて千歌ちゃん!?」

 

 尚も会長に詰め寄ろうとする高海先輩を、後ろにいた渡辺先輩が必死に止める。

 

 「とりあえず一回戻ろう!失礼しました!」

 

 「ちょ、離して曜ちゃん!?」

 

 渡辺先輩は慌てて一礼すると、暴れる高海先輩を引きずって生徒会室を後にした。

 

 「・・・入学初日から見苦しい姿をお見せして、申し訳ありません」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 苦笑しながら答える俺。

 

 「何だか少し・・・懐かしい光景でしたから」

 

 「懐かしい?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 俺は会長に向き直り、改めて一礼する。

 

 「改めまして、絢瀬天です。これからお世話になります」

 

 「いえいえ、こちらこそ」

 

 優しい笑みを浮かべる会長。

 

 「さて・・・今さら確認するまでもないことですが、絢瀬さんはこの学校で唯一の男子生徒ということになります」

 

 会長が説明を始める。

 

 「最初に念を押しておきますが、不純な行動は絶対に許しません。それを肝に銘じておくように」

 

 「分かりました」

 

 要はセクハラとかするなってことか・・・まぁするつもりも無いので問題無い。

 

 え?自称・堕天使?堕天使は人間じゃないし、セクハラにならないから。

 

 「・・・まぁ、誰かと交際するのは絢瀬さんの自由ですので。校内で破廉恥な行動をしないかぎり、私が何か言うことはありませんわ。ですが学生という立場上、節度を持った交際をしていただかないと困りますわね」

 

 どうやら会長は、結構お堅い人物のようだ。

 

 ひょっとして、名家の令嬢とかなのではないだろうか・・・

 

 「まぁそこは気を付けていただくとして・・・とりあえず絢瀬さんには、生徒会に所属していただくことになります。そこで生徒会の仕事をしてもらいつつ、学校に慣れていただきたいのです。勿論、私も全力でサポートさせていただきますので」

 

 「心強いです」

 

 これは偽らざる本音だった。男子生徒が一人しかいない環境で、生徒会長のサポートがあるのは正直嬉しい。

 

 「とまぁ、説明することと言ったらこれぐらいなのですが・・・絢瀬さんの方から何か質問等はありますか?」

 

 「そうですねぇ・・・」

 

 今のところ、これといって気になることもない。強いて言うなら・・・

 

 「質問というか・・・お願いでも良いですか?」

 

 「何でしょう?」

 

 「出来たらで良いんですけど・・・苗字じゃなくて、名前で呼んでいただきたいなと」

 

 「はい?」

 

 首を傾げる会長。そりゃそういう反応するよね・・・

 

 「いえ、大した理由は無いんです。今までずっと周りから、名前で呼ばれることが多かったので・・・これから生徒会でお世話になるわけですし、出来ればそうしていただけると嬉しいかなぁって」

 

 本当に大した理由じゃないよな、コレ。そんなことを思っていると・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 会長が急に笑い出す。あれ、何かおかしいこと言ったかな・・・

 

 「あぁ、ごめんなさい。恐る恐るといった感じでしたので、何をお願いされるのかと思ったら・・・そんなことで良いんですの?」

 

 会長はひとしきり笑うと、立ち上がって手を差し出してきた。

 

 「これからよろしくお願いしますわね・・・天さん」

 

 ニッコリと笑う会長。どうやら、思ったほどお堅い人では無かったらしい。

 

 俺は差し出された手を握った。

 

 「よろしくお願いします、会長」

 

 「ダイヤ、で結構ですわ」

 

 「え?」

 

 思わず驚いてしまう。まさか会長からそんなことを言われるとは・・・

 

 「あら、私だけ名前で呼ばせるつもりですの?」

 

 悪戯っぽく笑う会長。こんな表情もする人なんだな・・・

 

 「・・・まさか。よろしくお願いします、ダイヤさん」

 

 「よろしい」

 

 満足気な笑みを浮かべるダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・落ち着かないなぁ」

 

 自分の席に座り、溜め息をつく俺。その原因は・・・

 

 「「「「「じ~っ・・・」」」」」

 

 クラスの女子達からの視線だった。

 

 ダイヤさんとの話が終わった後、入学式に出席したのだが・・・唯一の男子生徒ということで、その時点で周りからの注目を集めていた。

 

 そして入学式終了後、教室に移動してもこうして好奇の視線に晒されている。ある程度予想はしていたが、これは想像以上に気まずい。

 

 どうしたものかと頭を悩ませていると・・・

 

 「これ、食べるずら?」

 

 「あ、どうも・・・」

 

 左の席の女の子が、美味しそうな飴を差し出してくれる。俺はお礼を言いながらそれを受け取って・・・

 

 ずら?

 

 「え、ずら丸!?いつの間に!?」

 

 「今頃気付いたずら!?」

 

 俺の左隣の席に座っていたのは、俺をルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』から守ってくれたずら丸だった。

 

 「同じクラスだったんだ!?」

 

 「そもそも一クラスしかないずら」

 

 「あ、そうだった・・・」

 

 この学校は生徒数が少ないから、各学年一クラスずつしかないんだっけ・・・

 

 「っていうか、マルの名前はいつから『ずら丸』になったずら?」

 

 「いや、何となく思いついたあだ名なんだけど・・・花丸っていうんだっけ?」

 

 「うん、国木田花丸ずら」

 

 「そっか、よろしくずら丸」

 

 「無視ずら!?」

 

 何だろう、何故か『ずら丸』ってしっくりくるんだよね・・・

 

 「あ、俺は絢瀬天。天でいいからね」

 

 「じゃあ『そらまる』で・・・」

 

 「うん、それはダメ」

 

 何かよく分かんないけど、それは誰かと被ってる気がするのでダメだ。

 

 「あれ、ちょっと待って・・・一クラスしかないってことは、ルビィちゃんとやらと自称・堕天使も同じクラス?」

 

 「ルビィちゃんならここにいるずら」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 後ろの席を指差すずら丸。そこには、縮こまって涙目で座っているルビィちゃんとやらの姿があった。

 

 「えーっと・・・よろしくね?」

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 震えているルビィちゃんとやら。俺、嫌われてるのかな・・・

 

 「げ、元気出すずら!そのうち慣れるずら!」

 

 落ち込む俺を見て、ずら丸が慌てて励ましてくれる。良い奴だな、ずら丸・・・

 

 「あ、ちなみに善子ちゃんならあそこずら!」

 

 ずら丸が指差した方を見ると・・・今朝の痛々しい振る舞いとは打って変わって、優雅に笑みを浮かべて席に座っている自称・堕天使がいた。

 

 「・・・誰?」

 

 「一応善子ちゃんのはず・・・ずら」

 

 なるほど、黙っていれば美少女だな・・・

 

 そんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。

 

 「は~い、席に着いて下さいね~」

 

 のんびりとした口調で呼びかける先生。

 

 「コホンッ。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。このクラスの担任を務めることになりました、赤城麻衣です。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる赤城先生。

 

 「それではまず、皆さんにも自己紹介をしてもらいたいと思います。とりあえず出席番号順で・・・絢瀬くん、お願い出来ますか?」

 

 「え、俺が出席番号一番ですか!?」

 

 何てこった・・・全然気付かなかった・・・

 

 「確かに入学式の列は先頭だったし、教室でも一番端の列の一番前の席だけど・・・まさか一番だったなんて・・・」

 

 「逆に何で気付かなかったずら!?」

 

 ずら丸のツッコミ。いやホント、何で気付かなかったんだろう・・・

 

 席を立ち上がって教壇に立つと、クラス中の視線が俺に突き刺さった。

 

 や、やり辛い・・・

 

 「・・・初めまして、絢瀬天です。この学校で唯一の男子ということで、色々とご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが・・・仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる。すると・・・

 

 「よろしくずら~!」

 

 ずら丸が笑顔で拍手してくれた。後ろにいるルビィちゃんとやらや、すまし顔をしていた自称・堕天使もおずおずと拍手してくれている。

 

 それをキッカケに、他の皆も笑みを浮かべて拍手してくれた。

 

 「よろしくね~!」

 

 「よっ、唯一の男子!」

 

 あっ、ヤバい泣きそう・・・皆が温かくて泣きそう・・・

 

 「良かったずらね、天くん」

 

 席に戻ると、ずら丸が笑顔で出迎えてくれた。天使や・・・

 

 「・・・ありがとう、ずら丸。ルビィちゃんとやらもありがとね」

 

 「・・・ぴぎっ」

 

 恐る恐る小さく頷くルビィちゃんとやら。

 

 自称・堕天使の方にも口パクで『ありがとう』と伝えると、照れたように顔をふいっと背けてしまった。素直じゃないだけで、本当は良い子なんだろうな・・・

 

 その後も自己紹介は続いていき、ずら丸やルビィちゃんとやらの自己紹介も終わった。

 

 そして・・・

 

 「フッ・・・堕天使ヨハネと契約して、貴女も私のリトルデーモンになってみない?」

 

 自称・堕天使が思いっきりやらかした。クラスの皆が唖然とする中、やらかしたと気付いた自称・堕天使の表情が強張る。

 

 「ピ・・・ピ~ンチッ!?」

 

 教室から逃走していていく自称・堕天使。

 

 「・・・リトルデーモンって何?」

 

 「・・・オラには分からないずら」

 

 「・・・ぴぎぃ」

 

 それを呆然と見送る俺、ずら丸、ルビィちゃんとやらなのだった。




どうも~、ムッティです。

ノリと勢いで書き始めたこの小説ですが、早くもお気に入りに登録してくださった方々がいらっしゃいます。

本当にありがとうございます。

執筆はある程度まで進んでいるので、今後も続けていきたいところです。

とりあえず早くヒロインを決めてイチャつかせたい。

その為に書いていると言っても過言ではないです←

皆さん、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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夢を語る人はいつだって眩しい。

sweet ARMSさんの『I swear』が頭から離れない今日この頃。

『デート・ア・ライブ』の主題歌といえば、やっぱりsweet ARMSさんですよね。


 「え、ルビィちゃんとやらはダイヤさんの妹なの!?」

 

 「う、うん・・・」

 

 小さく頷くルビイちゃんとやら。

 

 学校も終わり、俺はずら丸やルビィちゃんとやらと帰りのバスに乗っていた。

 

 「マジか・・・苗字が黒澤で名前も宝石繋がりだから、凄い偶然だなと思ったら・・・」

 

 「何で天くんはそこで気付かないずら・・・」

 

 呆れているずら丸。

 

 「黒澤家は旧網元の家系で、この辺りで一番の名家ずら」

 

 「あぁ、道理で・・・」

 

 それなら、ダイヤさんのあの立ち居振る舞いも納得だな・・・

 

 「それよりマルは、善子ちゃんが心配ずら」

 

 「あぁ、大丈夫かなあの子・・・」

 

 あの後、自称・堕天使は帰ってこなかった。恐らく戻り辛かったんだろうけど・・・

 

 唖然としていたクラスの皆も、結構心配していた。

 

 「明日あの子が来たら、ちゃんと話したいな。俺も仲良くなりたいし」

 

 「天くん・・・ありがとうずら。きっと善子ちゃんも喜ぶずら」

 

 笑みを浮かべるずら丸。

 

 そんな話をしているうちに、俺が降りる予定のバス停に到着した。俺は席を立つと、ずら丸とルビィちゃんとやらに手を振る。

 

 「じゃあ二人とも、また明日」

 

 「また明日ずら」

 

 ずら丸が手を振り返してくれる中、ルビィちゃんとやらは恐る恐る小さく頭を下げていた。

 

 俺が苦笑しながらバスを降りようとすると・・・

 

 「っ・・・あ、あのっ!」

 

 ルビィちゃんとやらが声を上げた。驚いて振り向くと、ルビィちゃんとやらが顔を真っ赤にしていた。

 

 「ま・・・また明日・・・」

 

 小さく手を振ってくれる。どうやら、ずいぶん勇気を出してくれたみたいだ。

 

 「うん、また明日ね」

 

 笑顔で手を振り返す。恥ずかしそうに小さく笑うルビィちゃんとやらなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・で、何してんですか貴女達は」

 

 「面目ない・・・」

 

 「ごめんなさい・・・」

 

 呆れた視線を向ける俺の前では、高海先輩と赤紫色のロングヘアの女の子がずぶ濡れで凍えていた。

 

 いやぁ、ビックリしたよね。ルビィちゃんとやらにほっこりしながらバスを降りて歩いてたら、すぐ側の海で凄い悲鳴と凄い水音がするんだもん。急いで駆けつけてみたら、高海先輩とこの女の子がプカプカ海に浮いてるし・・・

 

 しかも高海先輩はともかく、この女の子はスクール水着を着ている。エロいな・・・

 

 じゃなくて、どう見ても自分から海に入ろうとしていた感じだ。

 

 「まだ四月ですよ?沖縄じゃないんですから、そりゃあ寒さで凍えますって」

 

 「反省してます・・・」

 

 うなだれる女の子。呆れて溜め息をついていると、ふと女の子の近くに置いてある制服が目に入った。

 

 これって・・・

 

 「・・・ひょっとして、音ノ木坂の生徒さんですか?」

 

 「えっ・・・」

 

 驚いたような表情の女の子。

 

 「どうしてそれを・・・」

 

 「それ、音ノ木坂の制服ですよね?タイの色が青ってことは、一年生ですか?」

 

 「・・・今月から二年生。音ノ木坂は先月いっぱいで転校して、二年生に上がる今月からこの近くの高校に転入することになってて」

 

 「ねぇねぇ、音ノ木坂ってどこの学校?」

 

 俺の制服の袖を引っ張ってくる高海先輩。えっ・・・

 

 「高海先輩、スクールアイドルやろうとしてるのに知らないんですか?」

 

 「え?スクールアイドルと関係ある学校なの?」

 

 「超有名なスクールアイドルが在籍していた、東京の高校ですよ」

 

 「えぇっ!?東京!?」

 

 「そこに驚くんですか?」

 

 ダメだ、この人の判断基準が分からん。まぁそれは置いとくとして・・・

 

 「どうして海に入ろうとしてたんですか?」

 

 「・・・海の音が聞きたくて」

 

 「デジタル配信されてるんで、ダウンロードして聴いて下さい」

 

 「それ多分『海の声』よね?」

 

 「桐●健太さんのファンなんですね、分かります」

 

 「いや違うから。最後まで話聞いてくれる?」

 

 女の子は一通りツッコミを入れると、ポツポツと語り出した。

 

 「・・・私、ピアノで曲を作ってるの。でも、海の曲のイメージが浮かばなくて・・・」

 

 「それで海に潜って、音を聴こうとしていたと・・・」

 

 コクリと頷く女の子。一方、高海先輩は目を輝かせていた。

 

 「作曲してるの!?凄いね!」

 

 「・・・べ、別に凄いことじゃないけど」

 

 照れたように顔を背ける女の子。この感じ・・・

 

 「・・・似てるな」

 

 「似てる?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 「ねぇねぇ、誰かスクールアイドル知ってる!?東京だと有名なアイドルたくさんいるでしょ!?」

 

 「・・・スクールアイドルって何?」

 

 「えぇっ!?スクールアイドル知らないの!?」

 

 驚愕のあまり叫ぶ高海先輩。おいおいマジか・・・

 

 「音ノ木坂の生徒なら、絶対に語り継がれているであろうスクールアイドルがいるはずなんですけど・・・」

 

 「私ずっとピアノばかりやってきたから、そういうの疎くて・・・スクールアイドルって有名なの?」

 

 「有名なんてもんじゃないよ!?ドーム大会が開かれるほど超人気なんだよ!?」

 

 興奮しながら語る高海先輩。ポケットからスマホを取り出し、画面を見せる。そこに映っていたのは・・・

 

 音ノ木坂の制服を着て踊る、九人組のスクールアイドルだった。

 

 「何で気付かないんですか、この鈍感オレンジヘッド」

 

 「今何で罵倒されたの私!?」

 

 「高海先輩、その人達の制服を見て気付きません?」

 

 「あ、この制服?可愛いよね~!」

 

 「スマホ壊して良いですか?」

 

 「急に攻撃的になったね!?ホントどうしたの!?」

 

 「この制服、音ノ木坂の・・・」

 

 「・・・あっ」

 

 女の子の指摘に、高海先輩がようやく気付く。

 

 そして女の子の近くに置かれた制服に目をやり、スマホの画面に目をやり、最後に俺を見る。

 

 「えっ、じゃあこの人達って・・・」

 

 「・・・かつて音ノ木坂に在籍していた人達です」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 高海先輩の絶叫。今さらですかそうですか。

 

 「じゃあこの子、この人達と同じ学校にいたってこと!?」

 

 「だから最初からそう言ってるでしょうが」

 

 「ねぇねぇ、どんな人達なの!?」

 

 「い、いや・・・会ったことないけど・・・」

 

 「もう卒業してますよ、その人達」

 

 「えぇ・・・何だぁ・・・」

 

 がっくりうなだれる高海先輩。いやいやいや・・・

 

 「っていうか、何でその人達のことは知ってるのに音ノ木坂は知らないんですか」

 

 「いやぁ、知ったのつい最近でさぁ・・・」

 

 苦笑する高海先輩。その場から立ち上がり、海へと視線を向ける。

 

 「・・・私ね、普通なの。普通星に生まれた普通星人で、どんなに変身しても普通なんだって・・・そう思ってた」

 

 寂しそうに笑う高海先輩。

 

 「それでも何かあるんじゃないかって期待してたんだけど、何もなくて・・・気付いたら高校生になってた」

 

 そこで言葉を切ると、おどけるように『ガオーッ!』とポーズをとる。

 

 「このままじゃ普通星人を通り越して、普通怪獣ちかちーになっちゃうううううっ!?」

 

 「うなじ削ぎましょうか?」

 

 「それ怪獣じゃなくて巨人の駆逐方法だよね!?っていうか駆逐しないでよ!?」

 

 高海先輩はツッコミを入れると、面白そうに笑って空を見上げた。

 

 「そんな風に思ってた時に、出会ったの・・・あの人達に」

 

 目を輝かせる高海先輩。

 

 「動画を見て『何じゃこりゃあああああっ!?』ってなって、気付いたら全部の曲を聴いてた。毎日動画を見て、曲を覚えて・・・そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張ってみたい、この人達が目指したところを私も目指したい。私も・・・輝きたい、って」

 

 「それでスクールアイドルを・・・」

 

 気付くと、高海先輩の言葉に引き込まれてしまっていた。輝きたい、か・・・

 

 「・・・ありがとう」

 

 女の子が微笑みながら呟く。

 

 「今の話聞いてたら・・・何か、頑張れって言われた気がする。スクールアイドル、なれると良いわね」

 

 「うんっ!」

 

 女の子の言葉に、笑顔で頷く高海先輩。

 

 「あっ、自己紹介がまだだったね・・・私は高海千歌。あそこの丘にある、浦の星女学院っていう高校の二年生。そこの男の子は絢瀬天くんで、同じ高校の一年生なの」

 

 「えっ・・・女子校よね・・・?」

 

 「共学化に向けてのテスト生です」

 

 「あっ、なるほど・・・」

 

 高海先輩や渡辺先輩に出会った時のような失態を犯さないよう、端的な説明を考えといて良かった・・・

 

 「タイの色だけで音ノ木坂の学年が分かるみたいだし・・・ひょっとしたら、女子校好きの変態なんじゃないかって思っちゃった」

 

 「ちょっと海に身投げしてきますね」

 

 「わーっ!?ストップストップ!?」

 

 必死に俺を止める高海先輩。その様子にひとしきり笑った女の子が立ち上がる。

 

 「じゃあ明日から高海さんは同級生、絢瀬くんは後輩ってことになるわね」

 

 「「・・・え?」」

 

 同時にポカンとする俺達。そんな俺達を見て、悪戯っぽく笑う女の子なのだった。

 

 「私は桜内梨子。明日から浦の星女学院に転入する予定だから、よろしくね」




どうも~、ムッティです。

新成人の皆様、おめでとうございます。

これからは大人としての自覚を持って…なんて、そんな偉そうなことを言える立場ではないので言いません(笑)

お互い人生を楽しみましょうね(^^)

さっきニュースで見ましたが、東京都の豊島区では『アニメで祝う成人式』が行われたんだとか。

…豊島区で成人を迎えたかった(涙)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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損な役回りなど誰もやりたくはない。

両腕とも筋肉痛・・・

日頃の運動不足を痛感するわ・・・


 翌日・・・

 

 「あ、ずら丸とルビィちゃんとやら。おはよう」

 

 「おはようずらぁ・・・」

 

 「お・・・おはよう・・・」

 

 浦の星行きのバスに乗ると、ずら丸とルビィちゃんとやらが一番後ろの席に座っていた。

 

 「ずら丸はずいぶん眠そうだね?」

 

 「つい読書に夢中になって、夜更かししちゃったずら・・・」

 

 欠伸を噛み殺すずら丸。よほど眠いようだ。

 

 「学校に着くまで寝てたら?寄りかかっても良いよ?」

 

 「じゃあお言葉に甘えるずらぁ・・・」

 

 隣に座った瞬間、俺の右肩に頭をコテッと乗せるずら丸。そのまま俺の右半身に体重を預けてくる。

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「・・・寝るの早いな」

 

 苦笑しながら、ずら丸の右隣に座っているルビィちゃんとやらの方を見ると・・・

 

 「ぴぎっ!?」

 

 視線が合い、慌てて逸らすルビィちゃんとやら。どうやらまだ慣れないらしい。

 

 ふとルビィちゃんとやらのバッグに目をやると、女の子の顔が写った缶バッジが付いていることに気付いた。あれって・・・

 

 「・・・もしかしてルビィちゃんとやら、スクールアイドル好きなの?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせるルビィちゃんとやら。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「いや、その缶バッジ・・・小泉花陽ちゃんだよね?」

 

 「っ!?分かるの!?」

 

 「うん、μ'sのメンバーでしょ?」

 

 μ'sというのは、例の音ノ木坂に在籍していたスクールアイドルグループの名前だ。

 

 そのグループを結成していた九人の内の一人・・・それが缶バッジに写っている女の子、小泉花陽ちゃんなのである。

 

 「μ'sを知ってるの!?」

 

 「そりゃあ知ってるよ。有名なグループだもん」

 

 目を輝かせるルビィちゃんとやら。これは高海先輩と話が合いそうだ。

 

 「推しメンっている!?」

 

 「俺は東條希ちゃんかな。包容力のある感じが好きなんだよね」

 

 「分かる!大人の女性って感じがするよね!」

 

 「そうなんだよ。ルビィちゃんとやらは、花陽ちゃん推しなの?」

 

 「そうなの!可愛くて憧れてるんだ!」

 

 よほど好きなのか、表情が活き活きとしているルビィちゃんとやら。ちょっと引っ込み思案だけど、こういう一面もあるんだな・・・

 

 「絢瀬くんは、μ'sの曲で好きな曲ってある!?」

 

 「んー、やっぱり『Snow halation』かなー。っていうか、天で良いよ?俺も何だかんだ、ルビィちゃんとやらのこと名前で呼んじゃってるし」

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「勿論。っていうか、俺もそろそろ普通にルビィちゃんって呼んで良い?『とやら』って付けるの大変で・・・」

 

 俺の言葉にポカンとしていたルビィちゃんとやらだったが、やがてクスクス笑い出す。

 

 「フフッ・・・最初から普通に呼んでくれて良かったのに」

 

 「いきなり下の名前で呼ぶのも図々しいかなって思ってさ」

 

 「その割には、ほぼ下の名前で呼んでたよね?」

 

 「・・・まぁ確かに」

 

 ルビィちゃんとやらはひとしきり笑うと、おずおずと手を差し出してきた。

 

 「えっと、昨日はちゃんと自己紹介できなかったけど・・・黒澤ルビィです。よろしくね・・・天くん」

 

 高海先輩に触れられただけで叫んでしまっていたこの子が、勇気を出して手を差し出してくれている。やはり少し怖いのか、若干手が震えていた。

 

この勇気に、俺はちゃんと応えないといけないな・・・

 

 「・・・改めまして、絢瀬天です。よろしくね・・・ルビィちゃん」

 

 差し出された手をそっと握り、握手を交わす。

 

 視線が合った俺達は、お互い照れ笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「この学校には、スクールアイドルは必要無いからですわ!」

 

 「だからどうしてですか!?」

 

 「・・・俺のほっこりした朝を返して下さい」

 

 げんなりしてしまう俺。

 

 ダイヤさんからの連絡で生徒会室へ行くと、ダイヤさんと高海先輩が顔を突き合わせて言い争いをしていた。渡辺先輩が、少し離れたところでおろおろしている。

 

 「渡辺先輩、何があったんですか?」

 

 「わ、私もスクールアイドル部に入ることにしたんだけど・・・申請書を出しに来たら却下されちゃって・・・」

 

 「・・・あぁ、なるほど」

 

 出来ればスルーしたいけど、渡辺先輩も困ってるみたいだし・・・俺が止めるしかないのか・・・

 

 俺は溜め息をつくと、二人の間に入った。

 

 「はいはい、そこまでにしましょうね」

 

 「絢瀬くん!?」

 

 「天さん!?」

 

 ようやく俺の存在に気付いたようで、驚いている二人。やれやれ・・・

 

 「とりあえず高海先輩、この件に関しては貴女が悪いです」

 

 「えぇっ!?何で!?」

 

 「渡辺先輩が入っても、部員は二人だけじゃないですか。最低でも五人必要だっていう話、忘れたわけじゃないでしょう?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「まずは部員を五人集めてから、申請書を提出しに来るべきです。そこで認められないと言われたら、その時いくらでも抗議したら良いでしょう。高海先輩は昨日、ダイヤさんのことを横暴だと言いましたけど・・・条件を満たせていないのに抗議している今の貴女の方が、よほど横暴だと俺は思います」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛む高海先輩。

 

 「それからダイヤさん、貴女も大概ですよ」

 

 「なっ!?私もですか!?」

 

 「当たり前じゃないですか」

 

 冷たい目でダイヤさんを見る俺。

 

 「『認めない』とか『必要無い』とか・・・具体的な理由も言わずに生徒のやりたいことを否定するなんて、それが生徒会長のやる事ですか?」

 

 「っ・・・それは・・・!」

 

 「まぁ今はいいです。高海先輩が申請条件を満たせていませんから。ですが、もしちゃんと条件を満たした上で申請に来たら・・・今みたいな態度は許されませんからね?」

 

 俯いてしまうダイヤさん。

 

 少し言い過ぎたかもしれないが、こういうことはハッキリさせておかないといけない。

 

 「・・・渡辺先輩、高海先輩を連れて行ってもらって良いですか?生徒会の仕事のことで、ダイヤさんから話があるみたいなので」

 

 「分かった。千歌ちゃん、行こう?」

 

 「うん・・・」

 

 渡辺先輩が高海先輩の手を引いて、生徒会室を出て行く。

 

 謝罪の意味を込めて軽く頭を下げると、渡辺先輩は苦笑しながら手を振ってくれた。高海先輩のアフターケアは、渡辺先輩に任せて良いだろう。

 

 問題は・・・

 

 「・・・申し訳ありませんでした」

 

 俯いたまま、小さな声で謝るダイヤさん。

 

 「生徒会長として、不適切な態度でしたわ・・・ですが、私は・・・」

 

 「・・・何か理由があるんでしょう?」

 

 「っ!?」

 

 驚いたように顔を上げるダイヤさん。

 

 「俺だって、ダイヤさんが何の理由も無くあんなこと言ってるなんて思ってませんよ。昨日知り合ったばかりですけど、それくらいは分かってるつもりです」

 

 この学校の生徒のことを、とても大事に思っている・・・そのことは、昨日話をさせてもらってよく分かった。

 

 スクールアイドルを否定するのは、きっと何かしらの理由があってのことだと思う。

 

 「無理に話せなんて言いませんけど、高海先輩の想いにはちゃんと向き合ってあげて下さい。じゃないと向き合ってもらえない高海先輩も、向き合うことをしないダイヤさんも・・・二人とも苦しい思いをしますから」

 

 「天さん・・・」

 

 「・・・なんて、ちょっと柄にもないこと言っちゃいましたね。さっきもキツい言い方をしてしまって、すみませんでした」

 

 少なくとも、先輩に対してとるべき態度ではなかったしな・・・

 

 頭を下げると、ダイヤさんが慌てていた。

 

 「そ、天さんが謝る必要はありませんわ!悪いのは私なのですから!」

 

 「ですよね。悪いのはダイヤさんですよね」

 

 「急に態度が変わりましたわね!?」

 

 「人の足元を見る男、それが俺です」

 

 「ただの最低な人間じゃないですか!?」

 

 「そうですけど。それが何か?」

 

 「開き直りも甚だしいですわよ!?」

 

 全力ツッコミにより、息切れしているダイヤさん。ようやく本調子に戻ったようだし、この辺にしておくか・・・

 

 「ところでダイヤさん、俺に何か用があったんじゃないですか?」

 

 「ハッ!?そうでしたわ!」

 

 ようやく本題を思い出したらしいダイヤさん。

 

 「実は今日から転入してくる生徒がいて、もうすぐ生徒会室に来る予定なのです。せっかくですので、天さんにも立ち会っていただこうと思いまして」

 

 「あぁ、桜内梨子さんですね」

 

 「えぇ、桜内梨子さん・・・って何で知ってますの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そういった事情が・・・って通じるわけないでしょう!?それで通じるのはアニメやマンガの世界だけですわよ!?」

 

 「おぉ、見事なノリツッコミ」

 

 「させないで下さいます!?」

 

 そんなやり取りをしていると、生徒会室のドアをノックする音がした。

 

 「どうぞ」

 

 「失礼します」

 

 入ってきたのは、やはり桜内さんだった。緊張しているのか、少し表情が強張っている。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「特技はピアノですよね」

 

 「そう、特技はピアノ・・・って絢瀬くん!?」

 

 「どうも」

 

 にこやかに手を振ってみる。桜内さんは唖然としていた。

 

 「な、何でここに・・・」

 

 「俺、生徒会長の下僕なんで」

 

 「下僕!?」

 

 「誤解を生む発言は止めて下さいます!?」

 

 ダイヤさんはツッコミを入れると、咳払いをしてから桜内先輩を見た。

 

 「コホンッ・・・初めまして、生徒会長の黒澤ダイヤですわ。天さんとはお知り合いのようですので紹介は省きますが、彼も生徒会の一員なのです」

 

 「そ、そうでしたか・・・」

 

 驚きながらも納得した様子の桜内さん。

 

 「これからよろしくお願いします、桜内さん・・・あ、桜内先輩か」

 

 「フフッ、どっちでも大丈夫よ。こちらこそよろしくね、絢瀬くん」

 

 「あ、できたら天って呼んで下さい。そっちの方が呼ばれ慣れてるので」

 

 「じゃあ天くんで。私のことも梨子で良いから」

 

 「了解です、梨子さん」

 

 「・・・コホンッ」

 

 再びダイヤさんの咳払いが入る。何故か少しモジモジしていた。

 

 「と、ところで桜内さん?貴女、音ノ木坂から転校してきたそうですわね?」

 

 「えぇ、そうですけど・・・」

 

 「音ノ木坂には有名なスクールアイドルグループがいたと噂に、あくまでも噂に聞いていますが・・・お会いしたことはありまして?」

 

 「いえ、残念ながらありません。私はずっとピアノしかやってこなかったので、そういったことには疎くて・・・スクールアイドルというのも、昨日初めて知ったくらいです」

 

 「そ、そうですか・・・」

 

 明らかに肩を落とすダイヤさん。あれ、もしかしてダイヤさん・・・

 

 「そ、それでは!いくつか注意事項を説明させていただきますわ!」

 

 慌てて切り替えるダイヤさんに、疑惑の眼差しを向ける俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく天とルビィちゃんの距離が少し縮まりましたね。

ちなみに天を希ちゃん推しにしたのは、作者が希ちゃん推しだからです(笑)

いやぁ、可愛いですよね希ちゃん。

しかも大きいし・・・何がとは言わないけど。

さて、梨子ちゃんも転入してきたわけですが・・・

果たして果南ちゃんと鞠莉ちゃんはいつ出せるのか・・・

早く出したいところですね。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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礼儀正しい人ほど怒ると怖い。

沼津に行ってみたいなぁ・・・

聖地巡礼とかやってみたい。


 「善子ちゃん、来なかったずら・・・」

 

 帰りのバスを待ちながら、肩を落とすずら丸。

 

 結局今日、自称・堕天使が学校に来ることは無かった。よほど昨日のことを引きずっているんだろうか・・・

 

 「連絡先って分かんないの?」

 

 「分からないずら。家は・・・変わってないなら覚えてるずら」

 

 「じゃあもう少し待ってみて、何日経っても来ないようなら家に行ってみようか。俺も付き合うからさ」

 

 「勿論ルビィも行くよ」

 

 「天くん、ルビィちゃん・・・」

 

 涙目のずら丸。俺はずら丸の頭を撫でた。

 

 「ホント優しいな、ずら丸は」

 

 「友達の心配をするのは当たり前ずら」

 

 そんな会話をしていると・・・

 

 「あっ、絢瀬くん・・・」

 

 「え?」

 

 不意に名前を呼ばれたので振り向くと、高海先輩と渡辺先輩がいた。二人もちょうど帰るところらしい。

 

 今朝のこともあって、高海先輩は気まずそうな顔をしている。俺は二人に歩み寄ると、頭を下げた。

 

 「高海先輩、今朝はキツい言い方をしてしまってすみませんでした。渡辺先輩も、不快な思いをさせてしまってすみません」

 

 「そんな!?」

 

 「頭上げてよ!?」

 

 慌てる高海先輩と渡辺先輩。

 

 「私がいけなかったんだよ!絢瀬くんの言う通り、ちゃんと五人集めてから申請書を出しに行くべきだったのに・・・ごめんなさい!」

 

 「あの場に最初からいた私が、千歌ちゃんと生徒会長の間に入らなきゃいけなかったんだよ!なのに嫌な役を絢瀬くんに押し付ける形になっちゃって・・・本当にごめん!」

 

 「ですよね。じゃあお二人が悪いということで」

 

 「「掌返し!?」」

 

 「冗談ですよ」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 「これ以上は、お互い謝り続けることになりますから・・・この話はこれで終わりにしませんか?」

 

 「絢瀬くん・・・うん!」

 

 「そうしよっか!」

 

 笑みを浮かべる二人。良かった、どうやら一件落着のようだ。

 

 「天くん、先輩達とケンカでもしてたずら?」

 

 いつの間にか、ずら丸が俺の隣に立っていた。

 

 「まぁ色々あったんだよ、色々」

 

 「あっ、入学式の時の可愛い子!」

 

 高海先輩が顔を輝かせる。

 

 「こんにちは、国木田花丸っていいます」

 

 「私は高海千歌!よろしくね!」

 

 「渡辺曜であります!ヨーソロー!」

 

 ずら丸達が自己紹介しあう中、ルビィちゃんは俺の背中から顔を覗かせていた。

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 「あっ、花丸ちゃんと一緒にいた子!」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 俺の背中に隠れるルビィちゃん。あれ、これってずら丸の役割だった気が・・・

 

 「絢瀬くん、ずいぶん懐かれたね?」

 

 「まぁ色々あったんですよ、色々」

 

 渡辺先輩の言葉に、苦笑しながら返す俺。

 

 「あ、この子は黒澤ルビィちゃんです。ダイヤさんの妹なんですよ」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 驚愕している二人。まぁ何と言うか、対照的な姉妹だもんなぁ・・・

 

 「花丸ちゃん、ルビィちゃん、スクールアイドルやってみない!?」

 

 「マルはちょっと・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 首を横に振る二人。高海先輩がうなだれる。

 

 「えぇ・・・絶対人気出るのにぃ・・・」

 

 「それより、高海先輩と渡辺先輩は作曲って出来るんですか?」

 

 俺はそこが気になっていた。高海先輩か渡辺先輩、どちらかが音楽をやっていたりするんだろうか・・・

 

 「作曲?出来ないよ?」

 

 「私も出来ないなぁ」

 

 「えっ・・・」

 

 呆然としてしまう俺。おいおい・・・

 

 「・・・どうするつもりなんですか?」

 

 「え?スクールアイドルって作曲できないとマズいの?」

 

 「・・・マジかぁ」

 

 俺は頭を抱えてしまった。どうやらこの二人は知らないらしい。

 

 「え、何?どういうこと?」

 

 「・・・スクールアイドルをやるということは、ラブライブを目指すわけですよね?」

 

 「そりゃあ当然だよ!」

 

 大きく頷く高海先輩。

 

 ラブライブというのは、スクールアイドルの頂点を決める大会のことだ。その規模は凄まじく、決勝はドームで行なわれるほどである。

 

 しかしそんなラブライブには、出場する為の絶対条件が存在するのだ。

 

 「・・・ラブライブで披露する曲は、オリジナルの曲じゃないといけないんですよ」

 

 「「・・・えっ」」

 

 「しかも予選から始まって決勝まで進んだ場合、当然一曲だけでは足りません。複数のオリジナルの曲が必要になります。厳密に言えば、オリジナルなら同じ曲を繰り返し披露しても問題はありませんが・・・同じパフォーマンスの繰り返しで勝ち進めるほど、ラブライブは甘くないです」

 

 俺の説明に、顔色が悪くなっていく高海先輩と渡辺先輩。

 

 「・・・つまり作曲が出来ないと、ラブライブに出場することも出来ないってこと?」

 

 「そういうことです」

 

 頷く俺。

 

 俺の背中に隠れているルビィちゃんも、うんうんと頷いていた。流石スクールアイドルが好きなだけあって、この条件を知っていたらしい。

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「早くも夢が断たれた・・・」

 

 その場にへたり込む二人。アララ・・・

 

 「まぁでも、お二人が作曲出来なくても大丈夫じゃないですか?要は作曲出来る人を探せば良いわけですし」

 

 「そうは言ってもさぁ・・・浦の星に作曲が出来る人なんて・・・」

 

 「梨子さんがいるじゃないですか」

 

 「・・・え?」

 

 ポカンとしている高海先輩。

 

 「いや、桜内梨子さんですよ。今日二年生のクラスに転入してきた人です。昨日言ってたじゃないですか。ピアノで曲を作ってるって」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 叫ぶ高海先輩。完全に忘れてたなこの人・・・

 

 「そうだよ!桜内さんがスクールアイドル部に入ってくれたら解決するじゃん!」

 

 「でも千歌ちゃん、今日誘って断られてたよね?」

 

 「もう誘ってたんですか・・・」

 

 「いやぁ、可愛かったからつい・・・」

 

 頭を掻きながら苦笑する高海先輩。行動早いなこの人・・・

 

 「スクールアイドル部には入ってくれないとしても、曲だけでも依頼してみたらどうですか?まぁ梨子さんにも都合があるでしょうし、引き受けてくれるとはかぎりませんけど」

 

 「それ名案だよ!ありがとう絢瀬くん!」

 

 はしゃいでいた高海先輩だったが、ふと気付いたように俺を見た。

 

 「あれ?絢瀬くん、桜内さんのこと名前で呼んでるの?」

 

 「えぇ。俺のことは天で良いって言ったら、梨子さんも名前呼びで良いって」

 

 「えぇっ!?私は絢瀬くんからそんなこと言われてないんだけど!?」

 

 「私もだよ!?」

 

 「そうでしたっけ?」

 

 そういえば、何だかんだで二人には言ってなかった気がする・・・

 

 結局この後散々『不公平だ!』と言われ、二人とも俺のことを『天くん』と呼ぶようになった。

 

 そして俺も高海先輩を『千歌さん』、渡辺先輩を『曜さん』と呼ぶことになるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「で、また断られたんですか?」

 

 「そうなんだよねぇ・・・」

 

 溜め息をつく千歌さん。あれから数日間、千歌さんはひたすら梨子さんにアタックしているそうだが・・・

 

 答えはノー。梨子さん曰く、『そんな暇は無い』らしい。

 

 「もうちょっとな気がするんだけどねぇ・・・『ごめんなさい!』だったのが、『・・・ごめんなさい』に変わったし」

 

 「いや、単に迷惑してるだけでしょ。段々うざくなってきてるだけでしょ」

 

 「アハハ・・・やっぱり天くんもそう思う?」

 

 苦笑している曜さん。やはり千歌さんが鈍感なだけのようだ。

 

 「・・・貴女達」

 

 ダイヤさんがこめかみをピクピクさせている。

 

 「どうして生徒会室で雑談してますの!?」

 

 「花丸ちゃんから、天くんがここにいるって聞いたので」

 

 悪びれもせず答える千歌さん。

 

 放課後にダイヤさんと生徒会の事務作業をしていたところ、千歌さんと曜さんが生徒会室へ乱入してきたのだ。

 

 「天くんなら、何か良いアイデアがあるんじゃないかと思って」

 

 「天さんは生徒会の一員ですわよ!?巻き込むのはお止めなさい!」

 

 「まぁまぁ、とりあえず落ち着きましょう」

 

 苦笑しながらダイヤさんを宥める。

 

 「ちょっと休憩しましょうか。お茶でも淹れるので、千歌さんと曜さんも適当に座って下さい」

 

 「わーい!ありがとう!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「全く・・・天さんは甘すぎますわ」

 

 何とかダイヤさんが落ち着いたところで、俺はお茶の準備を始める。

 

 一方、千歌さんはダイヤさんにスクールアイドルへの情熱を訴えかけていた。

 

 「私はスクールアイドル部を作って、皆と一緒に輝いてみせます!」

 

 「ですから、まずは部員を五人揃えてから来て下さいと言っているでしょう?」

 

 「勿論です!今はまだ二人ですけど、『ユーズ』だって最初は三人だったんですから!」

 

 生徒会室の空気が凍った気がした。何故だろう、今ダイヤさんの方を見てはいけないような気がする。

 

 「知りませんか!?第二回ラブライブ優勝!音ノ木坂学院スクールアイドルグループ!その名も『ユーズ』!」

 

 いや、『ユーズ』って・・・マジですか千歌さん・・・

 

 「・・・千歌さん、あれ『ミューズ』って読むんですよ」

 

 「・・・えっ」

 

 俺の指摘に固まる千歌さん。

 

 「嘘・・・『ユーズ』じゃないの・・・?」

 

 「お黙らっしゃああああああああああいっ!」

 

 「「ひぃっ!?」」

 

 ダイヤさんの怒りが爆発した。千歌さんと曜さんが悲鳴を上げる。

 

 「言うに事欠いて名前を間違えるですって!?あぁん!?」

 

 ヤンキー化するダイヤさん。大和撫子はどこへ行ったんだ・・・

 

 「μ'sはスクールアイドル達にとっての伝説!聖域!聖典!宇宙にも等しき生命の源ですわよ!?その名前を間違えるとは片腹痛いですわ!」

 

 千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 ねぇ、やっぱりこの人スクールアイドル好きだよね?μ'sのファンだよね?

 

 「その浅い知識だと、たまたま見つけたから軽い気持ちで『マネをしてみよう』とか思ったのですね!?」

 

 「そ、そんなこと・・・!」

 

 「ならば問題です!μ'sが最初に九人で歌った曲は!?」

 

 「え、えーっと・・・」

 

 「第二回ラブライブ予選、μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は!?」

 

 「う、う~ん・・・」

 

 「第二回ラブライブ決勝、μ'sがアンコールで歌った曲は!?」

 

 「あ、それは知ってます!『僕らは今の中で』ですよね!?」

 

 「ではその『僕らは今の中で』の冒頭でスキップしている四名は!?」

 

 「えぇっ!?」

 

 「ぶっぶっぶー!ですわ!」

 

 再び千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 もう確定だよ。絶対μ'sのファンだよこの人。あまりの豹変ぶりに曜さんが引いてるよ。

 

 「こんなの基本中の基本ですわよ!?正解は・・・」

 

 「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫」

 

 「その通り・・・え?」

 

 驚いてこちらを振り向くダイヤさん。

 

 そんなダイヤさんをよそに、俺はお茶を注いだ湯呑みをテーブルに並べていく。

 

 「μ'sが最初に九人で歌った曲は、『僕らのLIVE 君とのLIFE』。通称『ぼららら』」

 

 ダイヤさんと一緒に食べようと思って持ってきた和菓子を皿に分けながら、ダイヤさんの問題に答えていく。

 

 「μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだのは、当時A-RISEが通っていた秋葉原UTXの屋上。ちなみにそこで披露した曲は、『ユメノトビラ』ですね」

 

 「あっ、私その曲大好き!」

 

 目を輝かせる千歌さん。

 

 「その曲を聴いて、スクールアイドルをやりたいって思ったの!」

 

 「あ、そうだったんですね」

 

 自分自身に悩んでいた千歌さんなら、確かに大きく心を揺さぶられてもおかしくない。それほど力の込められた歌詞が、この曲には詰まっている。

 

 「凄いね天くん・・・そんなスラスラ答えられるなんて・・・」

 

 「ダイヤさんの言う通り、これくらいは基本中の基本ですよ」

 

 唖然としている曜さんに、笑いながら答える俺。

 

 「μ'sに憧れてスクールアイドルをやるなら、もう少しμ'sのことを知っておいても損は無いと思いますよ?スクールアイドルとしてどういう軌跡を辿ったのか、参考になる点は色々あるでしょうし・・・はい、お茶の用意ができましたよ」

 

 「おぉ、美味しそうな和菓子!」

 

 「もらっちゃって良いの!?」

 

 「勿論。ほらダイヤさん、一緒に食べましょう」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 俺の方を見ながら、呆然としているダイヤさんなのだった。




どうも~、ムッティです。

ふと気付きましたが、全然話が進んでないですね・・・

未だアニメ二話の途中くらいですもんね・・・

もっとサクサク進められたら良かったんですが・・・

あぁ、早くイチャつかせたい←

まぁその前に、早くヒロイン決めろって話ですよね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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足掻くことが出来る人は凄い。

観たい映画は多いけど、なかなか行く時間が無い…


 「んー、どうしたら桜内さんを説得できるかなぁ・・・」

 

 頭を悩ませている千歌さん。曜さんと別れた俺達は、二人で帰り道を歩いていた。

 

 「諦めてないんですね」

 

 「勿論!桜内さんもルビィちゃんも花丸ちゃんも、私は諦めないよ!」

 

 「三股ですね、分かります」

 

 「言い方が悪意に満ちてない!?」

 

 千歌さんのツッコミをスルーして、道路の向かい側に広がる海を眺める。夕陽で海がオレンジ色に染まっている光景は、何度見ても飽きないほど美しかった。

 

 と、浜辺に見覚えのある人物が立っていた。

 

 「あれ、梨子さん?」

 

 「あ、ホントだ」

 

 物憂げな表情で浜辺に佇んでいる梨子さん。絵になるなぁ・・・

 

 「おーい!桜内さーん!」

 

 大きな声で呼びかける千歌さん。

 

 こちらからは梨子さんの背中しか見えないが、明らかに肩を落としたのが分かった。よほど千歌さんにうんざりしているようだ。

 

 千歌さんが梨子さんの方へ走っていくので、俺もその後を追いかける。

 

 「あっ!もしかして、また海に入ろうとしてるの!?」

 

 梨子さんの元へ辿り着いた途端、梨子さんのスカートを捲り上げる千歌さん。

 

 「してないですっ!」

 

 「それなら良かった」

 

 慌ててスカートを戻す梨子さんと、笑みを浮かべる千歌さん。と、そこで梨子さんが俺の存在に気付いた。

 

 「天くん!?」

 

 「こんにちは、梨子さん」

 

 にこやかに挨拶する俺。梨子さんの顔が赤く染まっていく。

 

 「み、見た・・・?」

 

 「何をですか?」

 

 「いや、その・・・パ、パンツ・・・」

 

 「何のことでしょう?」

 

 「よ、良かった・・・見てないのね・・・」

 

 「『苗字が桜内だけに、パンツも桜色か・・・』なんて思ってませんよ?」

 

 「バッチリ見てるじゃない!?」

 

 両手で顔を覆う梨子さん。耳まで真っ赤に染まっている。

 

 「ちょっと天くん!?女の子のパンツ見るなんて最低だよ!?」

 

 「俺の目の前で梨子さんのスカート捲った人がそれを言います?」

 

 「うぅ・・・もうお嫁に行けない・・・」

 

 「何言ってるんですか。そのスカート丈の短さで、これまで誰にも見られてないなんて有り得ないでしょうに」

 

 「・・・ちょっと海に飛び込んでくるわね」

 

 「落ち着いて桜内さん!?天くんもトドメ刺さないでよ!?」

 

 千歌さんが必死に宥め、何とか落ち着きを取り戻す梨子さん。涙目になりながら千歌さんを睨んでいる。

 

 「元はと言えば、貴女のせいで・・・!」

 

 「すいませんでしたあああああっ!」

 

 「まぁまぁ。本人も反省しているようですし、この辺りで許してあげましょうよ」

 

 「何で他人事なの!?」

 

 俺に全力でツッコミを入れたことで力が抜けたのか、溜め息をつく梨子さん。

 

 「・・・こんなところまで追いかけてきても、答えは変わらないわよ」

 

 「桜内さん、答えを出すのが早すぎるよ!もうお嫁に行けないだなんて!」

 

 「違うわよ!?スクールアイドルの話!」

 

 「あ、そっちか」

 

 苦笑する千歌さん。

 

 「違う違う。通りがかっただけだよ」

 

 「千歌さん、ストーカーは皆そう言うんですよ」

 

 「誰がストーカー!?天くんもここまで一緒に帰ってきたじゃん!?」

 

 「俺は千歌さんの掌の上で踊らされたんですね・・・千歌さん、恐ろしい子・・・」

 

 「人の話聞いてくれる!?」

 

 「そういえば梨子さん、海の音聴けました?」

 

 「だから聞いてってば!?」

 

 ギャーギャーうるさい千歌さんをスルーして尋ねると、梨子さんは浮かない顔で首を横に振る。

 

 まだ聴けてないんだな・・・

 

 「ほら千歌さん、喚いてないで海の音が聴ける方法を考えて下さいよ」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 喚いていた千歌さんだったが、そこでふと何か思いついたような顔をする。

 

 「あっ!果南ちゃんがいるじゃん!」

 

 「え、誰ですか?」

 

 「私と曜ちゃんの幼馴染だよ。実家がダイビングショップやってるから、桜内さんもダイビングしてみたら良いんじゃないかな?海の音が聴けるかもしれないよ?」

 

 「なるほど・・・スク水で海に飛び込むよりは良い方法ですね」

 

 「それは忘れて!?」

 

 再び赤面する梨子さん。

 

 いや、あれは忘れられないな。衝撃的な初対面だったもの。

 

 「桜内さん、日曜日って空いてる?ダイビングしに行こうよ!」

 

 「・・・代わりにスクールアイドルやれ、とか言わない?」

 

 「アハハ、流石に言わないよ」

 

 千歌さんは笑うと、梨子さんの手を握った。

 

 「海の音、ちゃんと聴いてほしいの。桜内さんが作った海の曲、私も聴いてみたいし」

 

 「高海さん・・・」

 

 驚いている梨子さん。

 

 損得勘定関係無しに、人の為を思って行動できる・・・こういうところが、千歌さんの美点なんだろうな。

 

 「ねっ?行ってみよう?」

 

 「・・・じゃあ、お願いしようかしら」

 

 「そうこなくっちゃ!天くんも行くよね?」

 

 「俺はアレがアレなんでパスします」

 

 「そっかぁ、それなら仕方ない・・・ってならないよ!?アレがアレって何!?」

 

 「日曜日くらいゴロゴロさせて下さいよ」

 

 「何そのお父さんみたいなセリフ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、梨子さんが笑みを浮かべながら俺の肩に手を置いた。

 

 「人のパンツ見ておいて、来ないなんて言わないわよねぇ・・・?」

 

 ちょ、痛いんだけど!?肩がミシミシいってるんだけど!?

 

 「よ、喜んで行かせていただきます・・・」

 

 「よろしい」

 

 笑顔で手を離す梨子さん。この人、怒らせたらアカン人や・・・

 

 「それじゃあ早速、果南ちゃんに連絡を・・・って、もうこんな時間!?」

 

 スマホを取り出した千歌さんが、時間を見て慌て始める。

 

 「急いで帰らなくちゃ!?果南ちゃんには後で連絡しておくから!じゃあまたね!」

 

 それだけ告げると、千歌さんは走って帰っていった。慌ただしい人だなぁ・・・

 

 「・・・変な人ね、高海さんって」

 

 「否定はできませんね」

 

 俺はそう言って笑うと、夕陽に染まる海を眺めた。

 

 「梨子さん、一つ聞いても良いですか?」

 

 「何?」

 

 「梨子さんが海の音を聴きたいのは・・・本当に曲作りの為だけですか?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む梨子さん。やっぱり・・・

 

 「海の曲を作りたいのは本当なんでしょうけど、果たしてそれだけなのかなって。他にも理由があって、それで必死になってるんじゃないのかなって・・・梨子さんの様子を見てたら、何となくそう思ったんですよね」

 

 「・・・察しが良いのね、天くんって」

 

 梨子さんは苦笑すると、ポツポツと話し始めた。

 

 「私ね、小さい頃からずっとピアノやってるんだけど・・・最近はいくらやっても上達しなくて、やる気も出なくて・・・それで環境を変えてみようと思って、東京からこっちに来たの」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 素直に凄いことだと思った。何かの為にそれまでの環境を変えるというのは、普通なかなか出来ることではない。

 

 「海の音が聴けたら変わるんじゃないか、変えられるんじゃないかって・・・そう思ったら、ちょっと焦っちゃって・・・」

 

 自嘲気味に笑う梨子さん。

 

 「みっともないわよね、不確かなものに縋ったりして・・・」

 

 「・・・良いじゃないですか、みっともなくたって」

 

 「え・・・?」

 

 驚いてこっちを見る梨子さんに、俺は笑みを向けた。

 

 「変わりたい、変えたいと願うのなら・・・どんなにみっともなくたって、全力で足掻くべきだと俺は思いますよ。それで変わるとは限りませんけど、足掻かなければ変わる可能性すら生まれませんから」

 

 「天くん・・・」

 

 「それに、ピアノに対してそこまで足掻けるっていうことは・・・梨子さんがピアノを大切に思っている、何よりの証じゃないですか」

 

 「っ・・・」

 

 「梨子さんは誇って良いと思います。自分はこんなにピアノが好きなんだ、こんなにピアノを大切に思ってるんだって・・・それはとても、素敵なことなんですから」

 

 梨子さんの目には涙が滲んでいた。それを拭おうともせず、俺の方をじっと見ている。

 

 「・・・そんなこと、初めて言われたわ」

 

 「マジですか・・・俺が梨子さんの初めてをもらっちゃいましたか・・・」

 

 「その言い方は誤解を招くから止めてくれる!?」

 

 「え、だって俺が梨子さんの初めてなんでしょ?」

 

 「絶対分かってて言ってるわよねぇ!?」

 

 「ナニソレ、イミワカンナイ」

 

 「誰のモノマネ!?」

 

 「さぁ、誰でしょう?」

 

 俺が笑うと、梨子さんも笑みを零しながら目元の涙を拭う。

 

 「変な人ね、天くんも・・・高海さん以上だわ」

 

 「・・・それはちょっと不名誉なんですけど」

 

 「フフッ、そんな嫌そうな顔しないの」

 

 梨子さんはクスクス笑うと、俺の顔を覗き込んだ。

 

 「・・・ありがとう、天くん。今の言葉、凄く嬉しかった」

 

 間近で見た梨子さんの笑顔は、夕陽と相まって凄く綺麗で・・・思わずドキッとしてしまう俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は梨子ちゃんの回でした。

アニメ見てて思ったんですけど、ピアノの為に東京から内浦に引っ越して来るって凄くないですか?

梨子ちゃんも凄いけど、梨子ちゃんのご両親もよく賛成しましたよね。

まぁ一番驚いたのは、梨子ちゃんのお母さん役が水樹奈々さんだったことなんですけども…

あれはビックリでした(゜ロ゜)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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足掻いた人にしか見えないものがある。

今日から2月かぁ…


 迎えた日曜日・・・

 

 「初めまして、松浦果南です。よろしくね」

 

 青く長い髪をポニーテールに結った女性が、笑顔で挨拶してくれる。

 

 梨子さんと俺は千歌さんに連れられて、近くにある淡島のダイビングショップへとやって来ていた。ちなみに曜さんも一緒である。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「絢瀬天です。よろしくお願いします」

 

 「おぉ、君が噂のテスト生だね?」

 

 俺をじっくりと眺め回す松浦さん。そして両手を広げ、笑みを浮かべてこう言った。

 

 「じゃあ早速・・・ハグしよっ?」

 

 「何だ、ただの痴女か」

 

 「誰が痴女よ!?」

 

 松浦さんのツッコミ。初対面の男にハグを要求するとか、何を考えてるんだこの人・・・

 

 「ほら、いいからハグしよっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 真正面から勢いよく抱きつかれた。

 

 松浦さんの柔らかな身体の感触が俺の全身を包み、二つの大きな膨らみが俺の胸に押し付けられて『むにゅっ』と形を変える。

 

 「ちょ、何してるんですか!?」

 

 俺達の様子を見て赤面している梨子さん。

 

 「何って・・・ハグだよ?」

 

 「同性同士ならともかく、異性同士なんですからもっと恥じらいを持って下さい!っていうか、天くんは何でされるがままになってるの!?」

 

 「いや、何と言うか・・・幸せを噛み締めてます」

 

 「戻ってきなさい!」

 

 「アハハ、純情だねぇ」

 

 松浦さんが笑いながら俺から離れる。

 

 「えーっと、今日は四人ともダイビングするってことで良いんだっけ?」

 

 「あ、三人です。俺は見学なんで」

 

 「え、天くんやらないの!?」

 

 「えぇ、今回は遠慮しておきます」

 

 曜さんの問いに答える俺。

 

 ダイビングを経験しているであろう千歌さんと曜さんはともかく、梨子さんと俺は完全な未経験者だ。未経験者二人が同時に潜ってしまえば、千歌さん達に大きな負担をかけてしまうことになりかねない。

 

 今回の目的は梨子さんが海の音を聴くことなので、梨子さんさえ潜れれば問題無いのだ。梨子さん一人なら、千歌さん達の負担も大きくはないだろう。

 

 「ごめんね、天くん・・・」

 

 何となく理由を察した様子の梨子さんが、申し訳なさそうに謝ってくる。

 

 「私のワガママに付き合わせてるのに、待機させちゃって・・・」

 

 「気にしないで下さい。海の音、ちゃんと聴いてきて下さいね」

 

 「そのことだけど、ちょっといいかなん?」

 

 話に入ってくる松浦さん。っていうか、今の語尾は何だろう・・・

 

 「水中では、人間の耳に音は届きにくいの。だからイメージが大事だと思うよ」

 

 「イメージ?」

 

 「そう、水中の景色から海の音をイメージするの。想像力を働かせてね」

 

 「想像力・・・」

 

 考え込む梨子さん。海の音が聴けるかどうかは、梨子さんの想像力次第ってことか・・・

 

 「とりあえず、ダイビングスーツに着替えよっか。向こうに更衣室があるから」

 

 「よーし!潜るぞー!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 元気よく走っていく千歌さんと曜さん。

 

 「じゃあ、私達も行こっか」

 

 「あ、はい。天くん、ちょっと待っててね」

 

 「ごゆっくり~」

 

 梨子さんにひらひら手を振る。と、松浦さんがこちらを振り返ってニヤリと笑った。

 

 「覗かないでね?絶対だよ?」

 

 「おっ、覗けっていうフリですか?」

 

 「・・・松浦さん?天くん?」

 

 「「すいませんでしたっ!」」

 

 梨子さんから放たれるプレッシャーに、反射的に謝ってしまう俺と松浦さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・う~み~は~広い~な、大きい~な~♪」

 

 小型船の甲板に座り、口ずさみながら海を眺める俺。その様子を見た松浦さんが、面白そうにクスクス笑っている。

 

 「海が好きなの?」

 

 「いえ、好きっていうか・・・懐かしいんです」

 

 「懐かしい?」

 

 「えぇ、海には色々と思い出がありまして。楽しい思い出も・・・悲しい思い出も」

 

 過去のことを思い出して感傷に浸っていると、いきなり背中に衝撃を受けた。

 

 「隙ありっ!ハグっ!」

 

 「どんだけハグ好きなんですか・・・」

 

 ヤバいよこの人、自分がどれほどスタイルが良いか全く分かってないよ・・・

 

 こんなナイスバディなお姉さんにハグされたら、普通の男はコロッといっちゃうどころか野獣化してもおかしくないというのに・・・

 

 「心配しなくても、私がハグするのは女の子だけだよ?」

 

 「松浦さんの目には、俺が女の子に見えてるんですか?」

 

 「何言ってんの?そんなわけないじゃん。大丈夫?」

 

 「すみません、殴って良いですか?」

 

 「アハハ、怖い怖い」

 

 松浦さんは笑うと、俺の身体に回している腕に力を込めた。

 

 「実は君の話、ダイヤから聞いててさ」

 

 「ダイヤさんとお知り合いなんですか?」

 

 「知り合いっていうか、幼馴染だよ。学校でもクラスメイトだしね」

 

 「え、松浦さんって浦の星の生徒なんですか!?」

 

 「あれ?千歌から聞いてないの?」

 

 首を傾げる松浦さん。幼馴染としか聞いてないんだけど・・・

 

 「っていうか、高校生だったんですね・・・てっきり二十歳くらいかと・・・」

 

 「むっ・・・そんなに老けて見える?」

 

 「大人びて見えるって言ってもらえます?っていうか俺、松浦さんを学校で見かけたことないんですけど・・・」

 

 「あぁ、今休学中なんだよ。お父さんが骨折しちゃったもんだから、私が店を手伝わないといけなくてさ」

 

 「それは大変ですね・・・」

 

 凄いな・・・休学してまでお店を手伝ってるのか・・・

 

 「まぁその話は置いとくとして・・・休学中もダイヤとは連絡を取ってるんだけど、この間の電話で君の話題になってさ。ダイヤに説教したんだって?」

 

 「いや、説教というか何と言うか・・・」

 

 思わず苦い表情になる。一方、松浦さんは面白そうに笑っていた。

 

 「あのダイヤに物申せる人なんて、なかなかいないからね。『良い人が入ってきてくれた』って、ダイヤも喜んでたよ?」

 

 「・・・恐縮です」

 

 いやホント、我ながら先輩に失礼な態度を取ってしまったと思う。

 

 まぁああいう場だったし、言うべきことは言わなきゃいけないとは思ったけども。

 

 「ダイヤは君のことを、『信用に足る人だ』って凄く褒めてた。昔からダイヤの人を見る目は確かだし、だったら私も信用してハグしちゃおうと思って」

 

 「信用してくれるのはありがたいんですけど、その発想はおかしいですからね?」

 

 「まぁまぁ。私にとってハグは挨拶みたいなものだから」

 

 「何その海外の人みたいな考え方」

 

 思わずタメ口でツッコミを入れてしまった。大らかな人だなぁ・・・

 

 「そんなわけで、私はこれから君にどんどんハグするから。ちゃんと受け止めてね?」

 

 「自由人ですね、松浦さん・・・あ、松浦先輩か」

 

 「さっきから言おうと思ってたけど、果南で良いよ。ダイヤのことも名前で呼んでるんだし、私のことも名前で呼ぶこと。これは先輩命令だから」

 

 「パワハラで訴えますよ?」

 

 気付けば松浦さんに対して、あまり気を遣わなくなっていた。松浦さんの大らかな性格に、俺も影響されてるのかもしれないな・・・

 

 「その代わり、私も君のこと名前で呼ぶからね。よろしく、天」

 

 「・・・了解です、果南さん」

 

 満足そうに笑う果南さん。その時・・・

 

 「ぷはぁっ!」

 

 海に潜っていた曜さんが浮上してきて、甲板へと上がってきた。

 

 「お疲れ、曜。海の音は聴けそう?」

 

 「んー、難しいね。桜内さんも苦戦してるみたいだし・・・って、果南ちゃんはまた天くんにハグしてるの?」

 

 「天にはちゃんと許可もらってるよ」

 

 「そんな覚え一切ないんですけど」

 

 果南さんにツッコミを入れていると、千歌さんと梨子さんも浮上してきた。やはりイメージが難しいのか、梨子さんは浮かない顔をしている。

 

 「ダメ・・・景色は真っ暗だし、なかなかイメージが出来ない・・・」

 

 「今日の天気は曇りだしねぇ・・・」

 

 空を見上げる千歌さん。確かに、日の光が差さないのは痛いな・・・

 

 「やっぱり、私には無理なのかな・・・」

 

 弱気な梨子さん。

 

 「どんなに足掻いても、変えられないのかな・・・」

 

 「・・・諦めちゃダメ~なん~だ~♪」

 

 「天・・・?」

 

 果南さんが首を傾げる中、ふと頭に浮かんだ曲を口ずさむ。

 

 「その日が絶対来る~♪」

 

 「その曲って・・・」

 

 千歌さんは気付いたようだ。そう、あの曲だ。

 

 「君も感じて~るよ~ね~、始~まり~の鼓動~♪」

 

 「天くん・・・歌上手いね」

 

 「え、そこ?」

 

 曜さんの感心したようなセリフに、咄嗟に梨子さんがツッコミを入れる。

 

 「いや、確かに上手いんだけど・・・何の曲?」

 

 「μ'sの『START:DASH!!』っていう曲です」

 

 高坂穂乃果、南ことり、園田海未・・・まだ三人だったμ'sが、ファーストライブで披露した曲である。

 

 「まぁこの曲を歌っておいて、こんなことを言うのもアレなんですけど・・・『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る』とか、ぶっちゃけただの綺麗事ですよね」

 

 「「「「えええええええええええええええ!?」」」」

 

 まさかの否定に、千歌さん・曜さん・梨子さん・果南さんが大きく仰け反る。

 

 「ちょ、天くん!?何てこと言うの!?」

 

 「だって思いません?諦めずに頑張ったら夢は必ず叶うとか、そんなのただの理想論じゃないですか。諦めずに頑張っても、夢を叶えられない人なんてたくさんいますよ」

 

 「いや、そうかもしれないけど!」

 

 あたふたしている四人が面白くて、俺は思わず笑ってしまった。

 

 「まぁでも・・・この曲の作詞を手掛けた人だって、そんなことは最初から分かってると思いますよ」

 

 「え・・・?」

 

 「諦めずに頑張ったって、夢は叶えられないかもしれない。でも・・・諦めてしまったら、叶えられる可能性すら無い」

 

 「っ・・・それ、この間天くんが言ってた・・・」

 

 梨子さんが気付く。覚えててくれたのか・・・

 

 「だから簡単に諦めるな。夢が叶う日が来る可能性は、諦めなかった人にしか無いんだから・・・勝手な解釈ですけど、俺はそういう意味でこの歌詞を捉えてます」

 

 「天くん・・・」

 

 「今日がダメなら、また来週チャレンジしてみましょう。今日は生憎の曇りですけど、来週は晴れてるかもしれません。それでもダメならもう一度チャレンジしたって良いし、違う方法を考えたって良いじゃないですか」

 

 俺は梨子さんに笑いかけた。

 

 「梨子さんが内浦に来て、まだたったの一週間ですよ?東京から引っ越してまでこっちに来たんですし、もう少し頑張ってみませんか?」

 

 「・・・どうして私なんかの為に、そこまで言ってくれるの?」

 

 不思議そうな表情の梨子さん。

 

 「この間も今日も、天くんは私の背中を押そうとしてくれてる・・・どうして・・・?」

 

 「んー、そうですねぇ・・・」

 

 苦笑いを浮かべる俺。

 

 「多分ですけど、足掻こうとしてる人を放っておけないんでしょうね。ホント厄介な性格にしてくれたよなぁ、あの人達・・・」

 

 「あの人達?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 まぁそれは置いとくとして、とりあえず海の音だよな・・・

 

 「とにかく俺も、梨子さんに海の音を聴いてほしいんです。きっとそれが梨子さんにとっての、始まりの鼓動になるんでしょうから」

 

 「始まりの鼓動・・・」

 

 梨子さんは小さく呟くと、意を決したように顔を上げた。

 

 「私、もう一度やってみる!」

 

 「よーし、私達も行くよ!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 再び海へ潜った梨子さんに続き、千歌さんと曜さんも海へ飛び込んでいった。

 

 「・・・凄いね、天」

 

 果南さんが微笑んでいる。

 

 「天の言葉で、諦めかけてた桜内さんがやる気になっちゃった」

 

 「大したことはしてませんよ」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「上手くいかなくて弱気になってたんで、ほんの少し励ましただけです」

 

 「何言ってるの。それが大きいんじゃない」

 

 笑っている果南さん。

 

 「ああいう時にかけられる励ましの言葉って、凄く心に響くもんだよ。それをさらっと言っちゃうんだもん。ちょっと感心しちゃった」

 

 「果南さんに感心されてもなぁ・・・」

 

 「何でよ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、突如として雲の切れ間から日が差した。日の光が海面を照らし、キラキラと眩く光っている。

 

 やがてその海面から、千歌さん・曜さん・梨子さんが浮上してきた。ここからは何を話しているのか聞こえないが、興奮したように笑いながら抱き合っている。

 

 「・・・聴けたみたいだね、海の音」

 

 「・・・ですね」

 

 笑い合う果南さんと俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく果南ちゃんを出せました。

果南ちゃんにハグされたいわぁ(願望)

あ、それから『START:DASH!!』についてですが…

作者に歌詞を否定する意思は一切ありません!

作者に歌詞を否定する意思は!一切!ありません!

大事なことなので二回言いました。

むしろ凄く良い歌詞・凄く良い曲だと思ってますし、個人的にも大好きな曲の一つです。

あくまでも『そういう解釈もあるよ』というお話ですので、悪しからず…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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友達とはかけがえのないものである。

Aqoursの『WATER BLUE NEW WORLD』ってメッチャ良い曲ですよね。


 「え、曲作りの依頼を引き受けたんですか?」

 

 「うん、そうなの」

 

 頷く梨子さん。

 

 ダイビングの翌日・・・昼休みにばったり会った梨子さんの話に、俺は思わず驚いてしまった。

 

 「どういう心境の変化ですか?『そんな暇は無い』って断り続けてたんですよね?」

 

 「そうなんだけど・・・まぁ色々とね」

 

 梨子さんが小さく笑う。

 

 「今回は高海さんに色々お世話になったから、今度は私が力になれたらって思ったの。スクールアイドルの曲作りなんて初めてだけど、これも良い勉強になるだろうから」

 

 「なるほど・・・ってことは、梨子さんもスクールアイドルやるんですか?」

 

 「それは断ったわ。私がやるのは、あくまでも曲作りだけよ」

 

 肩をすくめる梨子さん。あ、そうなんだ・・・

 

 「そうですか・・・ちょっと残念ですね」

 

 「え、何が?」

 

 「梨子さん可愛いし、スクールアイドルの衣装とか似合うだろうなって思ってたんで」

 

 「なっ!?」

 

 梨子さんの顔が一気に赤くなる。ホント純情だなぁ・・・

 

 「せ、先輩をからかわないのっ!」

 

 「いや、本心ですって。華もありますし、きっとステージ映えするでしょうね」

 

 「も、もういいからっ!」

 

 耳まで真っ赤になった梨子さんが、強引に話題を打ち切る。

 

 まぁ梨子さんが決めたことだし、俺がとやかく言うことでもないよな。

 

 「そ、それで早速なんだけど!今日の放課後、高海さんの家で作詞をすることになったの。もし良かったら、天くんも一緒に来ない?」

 

 誘ってくれる梨子さん。俺としても、行けるなら行きたいところではあるが・・・

 

 「・・・すいません。今日の放課後はちょっと、お見舞いの予定がありまして」

 

 「お見舞い?誰の?」

 

 首を傾げる梨子さんに、苦笑いで答える俺なのだった。

 

 「クラスメイトですよ。自称・堕天使の、ね」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ここずら」

 

 緊張した面持ちのずら丸。

 

 俺・ずら丸・ルビィちゃんの三人は放課後、自称・堕天使が住んでいると思われるマンションの一室へとやって来ていた。

 

 ずら丸曰く、ここが自称・堕天使の家らしい。

 

 「表札もちゃんと『津島』になってるし、間違いないずらね」

 

 「え、あの子の苗字って『津島』なの?」

 

 「今さら!?」

 

 ルビィちゃんのツッコミ。『善子』っていう名前なのは知ってたけど、苗字の方は気にしてなかったなぁ・・・

 

 「とりあえず、インターホン押そうか」

 

 「ずら」

 

 ずら丸がインターホンを押す。すると・・・

 

 「はーい」

 

 ドアが開き、中から女性が出てきた。ダークブルーの髪にシニヨンを結った女性・・・あれ?

 

 「津島さん、メッチャ大人になってない?」

 

 「その人は善子ちゃんのお母さんずら」

 

 「マジで!?」

 

 メッチャ似てるなぁ・・・驚いていると、津島母が首を傾げた。

 

 「えーっと、どちら様ですか?」

 

 「あ、あのっ!私、国木田花丸です!覚えてますか?」

 

 「え・・・?」

 

 ずら丸の顔をじーっと見つめる津島母。次の瞬間、表情がパァッと明るくなった。

 

 「あぁっ、花丸ちゃん!?善子と幼稚園で一緒だった、あの花丸ちゃん!?」

 

 「そうです!お久しぶりです!」

 

 「久しぶりね~!ずいぶん大きくなっちゃって~!」

 

 嬉しそうに笑う津島母。

 

 「幼稚園の時から可愛かったけど、ますます可愛くなったわね~!」

 

 「そ、そんな・・・マルなんて・・・」

 

 照れているずら丸。と、津島母が俺の方に視線を向けてきた。

 

 「あら?ひょっとして、花丸ちゃんの彼氏くんかしら?」

 

 「か、彼氏っ!?」

 

 ずら丸の顔が真っ赤になる。何だかんだで、ずら丸も純情だなぁ・・・

 

 「ち、違いますっ!天くんはそんなんじゃ・・・!」

 

 「そっか、俺とは遊びだったのか・・・」

 

 「天くん!?何を言い出すずら!?」

 

 「朝のバスでは、俺に寄りかかって気持ち良さそうに寝てたのに・・・」

 

 「そ、それは天くんが『寄りかかって良いよ』って言ってくれたから・・・!」

 

 「俺を抱き寄せて、俺の顔を自分の胸に埋めさせてくれたのに・・・」

 

 「あ、あれはルビィちゃんの悲鳴から守る為で・・・!」

 

 「『恋人としてよろしくずら~!』って言ってくれたのに・・・」

 

 「それは言ってないずら!『恋人として』なんて言ってないずら!」

 

 「全てはずら丸の掌の上・・・俺は弄ばれてたのか・・・」

 

 「人聞きの悪いことを言わないでほしいずら!」

 

 「花丸ちゃん・・・悪い子に育っちゃって・・・」

 

 「善子ちゃんのお母さん!?何で信じてるずら!?」

 

 悪ノリに便乗してくる津島母。ノリが良いなぁ・・・

 

 「まぁ冗談はさておき・・・初めまして、絢瀬天といいます」

 

 「く、黒澤ルビィです・・・」

 

 「私達三人、浦の星で善子ちゃんと同じクラスなんです」

 

 「あら、そうだったの?」

 

 驚いていた津島母だったが、すぐに笑みを浮かべる。

 

 「初めまして、善子の母・津島善恵です。娘がいつもお世話に・・・って、あの子ずっと引きこもってたわね」

 

 溜め息をつく津島母。やはり重症らしいな・・・

 

 「あの、善子ちゃんの様子は・・・」

 

 「あぁ・・・うん」

 

 ずら丸の問いに、津島母は困ったように苦笑するのだった。

 

 「元気は元気なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 『やってしまったああああああああああっ!?』

 

 家に上がらせてもらった俺達が最初に聞いたのは、津島さんの叫び声だった。

 

 『何よ堕天使って!?ヨハネって何!?うわあああああん!?』

 

 「・・・まぁこんな感じなのよ」

 

 津島さんの部屋であろうドアを指差し、溜め息をつく善子母。

 

 なるほど、これは重症だな・・・

 

 「浦の星の入学式の日からあんな感じなんだけど・・・何か心当たり無い?」

 

 「その日はクラスの皆の前で、自己紹介をやったんですけど・・・」

 

 「あぁ、『堕天使ヨハネ』で自爆したのね・・・」

 

 一を聞いて十を知る・・・全てを悟った津島母が頭を抱えた。

 

 「あの子、中学の時もそれでやらかしちゃってね・・・高校では同じ失敗をしないようにって意気込んでたんだけど・・・」

 

 「その割には、キャラが凄く仕上がってましたけど・・・」

 

 「『堕天使ヨハネ』は、最早あの子にとってキャラじゃないのよ。幼い頃からの設定を引きずった結果、『堕天使ヨハネ』は津島善子の一部に昇華されてしまったの」

 

 「・・・マジですか」

 

 意図的に演じてるキャラじゃなかったのか・・・恐るべし津島善子・・・

 

 「とりあえず、声をかけてみても良いですか?」

 

 「勿論。どうぞ」

 

 津島母の了承をもらい、ずら丸が部屋のドアをノックする。

 

 「善子ちゃーん?」

 

 『っ!?その声は花丸!?』

 

 津島さんの驚いた声が聞こえる。

 

 『どうしてここにいるのよ!?』

 

 「様子を見に来たずら。ルビィちゃんと天くんもいるずら」

 

 「こ、こんにちは・・・」

 

 「どうも」

 

 『うげっ!?』

 

 呻き声を上げる津島さん。

 

 『わ、私を笑いに来たんでしょ!?冷やかしなら帰って!』

 

 「いや、そんなつもりじゃ・・・」

 

 『うるさい!良いから帰って!』

 

 明確な拒絶。これは何を言っても聞いてもらえなさそうだな・・・

 

 「・・・ずら丸、ルビィちゃん、とりあえず今日は帰ろう。元気なのは分かったし」

 

 「ずら・・・」

 

 「そうだね・・・」

 

 意気消沈している二人。顔さえ見せてもらえず、ショックを受けているようだ。

 

 「ごめんね、せっかく来てくれたのに・・・」

 

 「こちらこそ、突然お邪魔してすいませんでした。あ、それと・・・」

 

 申し訳なさそうな津島母に、俺はカバンの中から紙束を取り出して渡した。

 

 「これ、ノートのコピーです。先週分の授業に関しては、一通りまとめておきました。授業で使ったプリントも余分に貰っておいたので、後で渡してあげて下さい」

 

 「そんなことまで・・・本当にありがとう」

 

 恐縮しながら受け取る津島母。俺は部屋のドアに向かって声をかけた。

 

 「じゃあ津島さん、また来るから」

 

 『来なくていい!』

 

 にべもない返事だった。やれやれ・・・

 

 「それじゃ、お邪魔しました」

 

 「本当にごめんなさい・・・来てくれてありがとう」

 

 津島母に見送られ、津島家を後にする俺達。これは時間がかかりそうだな・・・

 

 「・・・全然話せなかったね」

 

 暗い表情のルビィちゃん。

 

 「良かれと思って来たけど・・・津島さんにとっては迷惑だったのかな・・・」

 

 「・・・顔も見せてくれないなんて、思ってもみなかったずら」

 

 涙目のずら丸。

 

 「マル、余計なことしちゃったのかな・・・」

 

 俯いて歩く二人。俺は溜め息をつくと、歩いている二人の間にあえて割り込んだ。

 

 そのまま右手でずら丸の手を、左手でルビィちゃんの手を握る。

 

 「ずらっ!?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 驚いている二人。そんなことはお構い無しに、俺は二人の手を引いて歩いた。

 

 「俯いたまま歩くと危ないよ。ちゃんと前を向いて歩かなきゃ」

 

 「天くん・・・」

 

 「まぁ確かに、ちゃんとした話は出来なかったけど・・・とりあえず元気なのは分かったし、ノートのコピーも渡せたんだから。今回はそれで良しとしようよ」

 

 「今回はって・・・本当にまた行くつもりなの・・・?」

 

 「勿論」

 

 ルビィちゃんの問いに頷く俺。

 

 「今週の授業のノートをまとめて、また来週お邪魔するよ。津島さんが登校できるようになった時、授業についていけないのは困るだろうから」

 

 「どうして善子ちゃんの為にそこまで・・・」

 

 「・・・大切な友達なんでしょ」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑むずら丸。俺は苦笑いを浮かべた。

 

 「流石に俺だって、ただのクラスメイトの為にここまでしないよ。でもずら丸は俺の友達だし、困ってるのを放っておけないから」

 

 「じゃあ善子ちゃんの為じゃなくて、マルの為に・・・?」

 

 「そういうこと。まぁただでさえ一クラスしかないんだし、どうせなら誰も欠けてほしくないっていうのもあるけど」

 

 呆然としているずら丸。ルビィちゃんがニヤニヤしていた。

 

 「良いなぁ花丸ちゃん、大切に想ってくれる男の子がいて」

 

 「なっ!?ルビィちゃん!?」

 

 「あな~たと~、いる日~々が~、なににも代え~られ~ない~、た~い~せつ~♪」

 

 「天くん!?急にファ●モンの曲を歌わないでほしいずら!」

 

 顔を真っ赤にするずら丸。俺はひとしきり笑うと、握る手に優しく力を込めた。

 

 「せっかくだし、ケーキでも食べて行こっか。さっき良さそうなカフェあったよね」

 

 「賛成!ルビィもそのカフェ気になってたんだよね!」

 

 「マルも行くずら~!」

 

 今度は二人が俺の手を引く。苦笑しつつも、二人に手を引かれるがまま歩く俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は善子ちゃん回…と思いきや、そうでもなかったっていう回でしたね(笑)

ちなみに善子ちゃんのお母さんの名前は、完全に独断で決めました。

多分こういう名前じゃね?みたいな。

あと言い忘れてましたが、2話で出てきたクラス担任の赤城麻衣先生…

オリキャラです、はい。

アニメでは、善子ちゃんの自己紹介の時にチラッと担任の先生が映ってましたよね?

あの先生とは全く別人の先生を、勝手に配置してしまいました。

イメージ的には、『艦これ』の赤城さんですね(そのまま)

今後出番がきっと多分恐らくメイビーあるはずなので、覚えておいていただけると幸いです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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人から必要とされるのは幸せなことである。

投稿間隔が空いてしまった・・・

頑張って投稿していかねば・・・


 翌日。

 

 「そんなわけで、梨子ちゃんもスクールアイドルやることになったんだよ!」

 

 「どんなわけですか」

 

 千歌さんにツッコミを入れる俺。

 

 いきなり一年生の教室に来て、何を言い出すのかと思ったら・・・

 

 「まさか千歌さん、梨子さんを脅迫したんじゃないでしょうね?」

 

 「天くんには私がどういう人間に見えてるの!?」

 

 「目的の為なら手段を選ばない極悪非道な人間」

 

 「私が天くんに何をしたっていうの!?」

 

 ギャーギャー騒いでいる千歌さんはスルーして、俺は梨子さんへと視線を移した。

 

 「梨子さん、良いんですか?」

 

 「うん、自分で決めたから」

 

 ニッコリ笑う梨子さん。

 

 「色々と思うところもあって、一緒にやらせてもらうことにしたの。やるからには一生懸命頑張るわ」

 

 「・・・そうですか」

 

 どうやら、本当に自分の意思で決めたらしい。

 

 どういう心境の変化があったかは分からないが、表情も明るいし心配は要らないだろう。

 

 「ってことは、これで部員が三人・・・あと二人ですね」

 

 「あと二人かぁ・・・集まるかなぁ・・・」

 

 自信無さげな曜さん。と、そこでふと俺の顔を覗き込んでくる。

 

 「どうかしました?」

 

 「いや・・・天くんが入部してくれたらなぁって」

 

 「「え?」」

 

 ポカーンとしている千歌さんと梨子さん。

 

 「何言ってるの曜ちゃん?天くんは生徒会役員だよ?」

 

 「生徒会役員でも、部活に所属することって可能だよね?」

 

 「可能ですね」

 

 「そうなの!?」

 

 曜さんの問いに答えると、千歌さんが目を見開いて身を乗り出してきた。

 

 「そりゃそうですよ。部活の兼任だって可能なんですから」

 

 「ハッ!?そういえばそうだった!?」

 

 「ちょ、ちょっと待って!?スクールアイドルって女子限定なんじゃ・・・」

 

 「アイドルとしてじゃなくて、マネージャーとして入部してもらえば良いじゃん」

 

 「その手があったわ!?」

 

 千歌さんや梨子さんも納得している。曜さんが目を輝かせて俺を見ていた。

 

 「天くん、スクールアイドル部に入らない!?」

 

 「オコトワリシマス」

 

 「即答!?」

 

 ショックを受けている曜さん。俺は溜め息をついて曜さんを見た。

 

 「部を立ち上げる為に、マネージャーで人数稼ぎをするのはいかがなものかと思いますよ?ただでさえスクールアイドル部に反対しているダイヤさんの心証は、より一層悪くなると思います」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「部を立ち上げる為に必要な五人は、スクールアイドルとして活動するメンバーを集めるべきです。そもそもまだ活動さえしてないのに、マネージャーとか要らないでしょう」

 

 「お、仰る通りです・・・」

 

 「どうしてもマネージャーが欲しいなら、スクールアイドル部が正式に設立されてから探して下さい。分かりましたか?」

 

 「はい、すいませんでした・・・」

 

 いつの間にか、教室の床に正座している曜さん。

 

 いや、別にそこまでは求めてないんだけど・・・

 

 「ねぇ梨子ちゃん・・・天くんが生徒会長に見えるんだけど」

 

 「奇遇ね千歌ちゃん・・・私も同じことを思ったわ」

 

 何やらヒソヒソと話している千歌さんと梨子さん。俺は二人に笑みを向けた。

 

 「他人事みたいな顔してますけど、お二人も曜さんの意見に納得してましたよね?」

 

 「「すいませんでした!」」

 

 曜さんと並んで正座する二人。

 

 この後クラスメイト達から、『先輩に土下座させた男』として畏怖の視線を向けられる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「新しい理事長、ですか?」

 

 「えぇ、来週からお見えになるそうです」

 

 頷くダイヤさん。

 

 放課後に生徒会の仕事を片付けていた俺達は、一区切り付いたところで休憩していた。

 

 お茶を飲みながら雑談していた時、ダイヤさんがそんな話を切り出してきたのだった。

 

 「前任の理事長は三月で退職して、四月から新しい理事長が就任したのですが・・・何でも『日程の都合が付かない』とかで、まだ一度も学校に来ていないのです」

 

 「あぁ、そういえば会ってませんね」

 

 「全く、一体どんな人なのやら・・・」

 

 溜め息をつくダイヤさん。まぁ理事長が一度も学校に来ていないというのは、ちょっとよろしくないとは思う。

 

 「じゃあ、俺を呼んだのって新しい理事長なのかな・・・」

 

 「呼んだ?天さんは誰かに呼ばれて、浦の星に入学したのですか?」

 

 首を傾げるダイヤさん。あれ・・・?

 

 「ダイヤさん、俺が入学することになった経緯は聞いてないんですか?」

 

 「えぇ、何も・・・テスト生として天さんが入学することは聞かされましたが、何故天さんが選ばれたのかについては聞いていないのです」

 

 「マジですか・・・」

 

 それで良いのか浦の星・・・せめて生徒会長には経緯ぐらい説明しなさいよ・・・

 

 「・・・とりあえず説明しておきますね。そもそものキッカケは、俺が通っていた中学の理事長でした。理事長は浦の星の関係者の方と知り合いらしくて、浦の星の生徒数が減少していることについて相談を受けていたみたいなんです」

 

 「まぁ、かなり深刻な問題ですからね・・・それで?」

 

 「その問題の解決策について話し合っている中で、共学化という手段があるんじゃないかという話になったらしくて。まずはテスト生として男子生徒を受け入れてみて、様子を見てみようという結論に至ったようなんです。そこで白羽の矢が立ったのが、理事長と仲の良かった俺だったという感じですね」

 

 「あら、理事長さんと仲がよろしかったのですか?」

 

 「まぁ色々ありまして」

 

 苦笑する俺。実際、あの人には凄くお世話になったしな・・・

 

 「俺は理事長からテスト生の話を持ちかけられて、引き受けることを決めまして。それで俺がテスト生として、浦の星に入学することが決まったんです」

 

 「なるほど・・・ん?では先ほどの、『呼んだ』という話は一体?」

 

 首を傾げるダイヤさん。そう、そこが俺も気になっているところなのだ。

 

 「・・・実は俺、その関係者の方と一度も会ってないんです」

 

 「え・・・?」

 

 「それどころか、筆記試験や面接さえ受けてないんです」

 

 「はい!?」

 

 驚くダイヤさん。そりゃそうだよなぁ・・・

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!?いくらその理事長さんが推薦したとはいえ、それはおかしいでしょう!?筆記試験はともかく、面接は顔合わせの意味でも必要なのでは!?」

 

 「俺もそう思って、理事長に聞いたんですよ。そしたら理事長曰く、『関係者の方が天くんに来てほしいと言っている。試験なんて要らないらしい』とのことでして・・・」

 

 「・・・有り得ませんわ」

 

 頭を抱えるダイヤさん。

 

 「つまりそうまでして、天さんに来てもらいたかったいうことですか・・・それは確かに、『呼んだ』に近いですわね・・・」

 

 「でしょう?しかも試験免除を決められる権限を持っているということは、それこそ理事長ぐらいだと思ったんですけど・・・」

 

 「確かに・・・ですがその話が決まったのは、前理事長の就任期間中でしょう?新理事長は関係ないのでは?」

 

 「ですよねぇ・・・でも、前理事長ではないですよね?退職されたわけですし」

 

 「それは間違いありませんわ。私が天さんの話を聞いたのは前理事長からでしたが、自分が決めたわけではないとおっしゃっていましたから」

 

 「・・・謎ですね」

 

 「・・・謎ですわね」

 

 ダイヤさんと顔を見合わせる。関係者の方って、一体誰なんだ・・・

 

 「天さんの中学の理事長さんには、そのことについて聞かなかったのですか?」

 

 「聞きましたけど、『行けば分かる』って言われまして・・・」

 

 あの時の理事長の面白そうな笑み・・・絶対何か隠してるんだよなぁ・・・

 

 「ですが天さん、よくテスト生の話を引き受けましたね?今の話を聞くかぎり、色々と怪しげな点がありますが・・・」

 

 「試験免除に惹かれたので」

 

 「そこですの!?」

 

 「当然でしょう。入学が確約されてるんですよ?おかげで同級生達が受験に向けて勉強している中、これ見よがしに遊びまくることが出来ました」

 

 「もの凄く恨まれそうですわね!?」

 

 「ハハッ、まさか。皆はいつも笑顔で俺に、『くたばれ』『バルス』って話しかけてきてくれましたよ」

 

 「間違いなく恨まれてますわよねぇ!?」

 

 「冗談ですよ」

 

 俺は笑うと、急須に入っていたお茶を湯呑みに注いだ。

 

 「まぁ一番の理由は、理事長に頼まれたからですね。『嫌なら断ってくれて構わない』とは言われましたけど・・・俺で力になれるなら、是非とも引き受けたいと思ったので」

 

 「・・・理事長さんのこと、大切に思われているのですね」

 

 「えぇ、まぁ・・・」

 

 ダイヤさんに優しげな笑みを向けられ、少し照れ臭くなってしまった。どうにも気恥ずかしいな・・・

 

 「とりあえず、以上がテスト生になった経緯です。何か理事長のコネで入学したみたいで、話していてちょっと気が引けましたけど・・・」

 

 「気にする必要はありませんわ。倍率の高い超難関校ならともかく、浦の星は生徒数が減少している学校ですから。入学方法がコネだろうが、気にする人などいないでしょう」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「それに・・・私はテスト生が天さんで良かったと、心から思っていますわ。天さんの中学の理事長さんと、浦の星の関係者の方とやらに感謝しなければなりませんわね」

 

 「ダイヤさん・・・心の底から愛してます」

 

 「そ、そういうセリフを軽々しく口にしてはいけませんっ!」

 

 赤面しながら怒るダイヤさん。そんなダイヤさんを見ながら、浦の星に来て良かったと思う俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

最近、『ラブライブ!サンシャイン!!』のBlu-rayを買い始めました。

収録されている特典映像に、Aqoursの声優さん達が出演しているのですが…

しゅかしゅーさん可愛すぎる( ´∀`)

あと、ありしゃ様が美しい(・∀・)ノ

着々とAqoursにのめり込んでいる今日この頃です(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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人に裏切られるのは辛いことである。

先に謝っておきます…

鞠莉ちゃん推しの方々、大変申し訳ありません…


 翌日・・・

 

 「緊張するなぁ・・・」

 

 理事長室の前でドキドキしている俺。今朝ダイヤさんから連絡があり、放課後に新理事長との顔合わせがあると告げられたのだ。

 

 一体どんな人なんだろう・・・

 

 「・・・よし」

 

 覚悟を決めてドアをノックする。

 

 「どうぞ~」

 

 中から女性の声がした。新理事長の声かな・・・?

 

 「し、失礼します・・・」

 

 恐る恐るドアを開け、理事長室へと足を踏み入れた瞬間だった。

 

 「シャイニー!」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなりタックルをくらい、思わずその場に倒れ込んでしまう。

 

 「な、何事・・・?」

 

 痛みを堪えながら上体を起こすと、誰かが俺に抱きついていた。ブロンドのセミロングヘアを、三つ編みのカチューシャのように結っている女子だ。

 

 浦の星の制服を着ているので、この学校の生徒だと思うのだが・・・

 

 「天!お久しぶりデース!」

 

 顔をガバッと上げ、満面の笑みで俺を見つめる女子生徒。

 

 ん・・・?

 

 「えーっと・・・どちら様ですか?」

 

 「What!?覚えてないの!?」

 

 女性がショックを受けている。いや、俺の知り合いに金髪美少女なんて・・・

 

 一応いるけど、この人ではないはずだ。

 

 「ちょっと!?いきなり何をしているのですか!?」

 

 先に来ていたであろうダイヤさんが抗議する。よく見ると千歌さん、曜さん、梨子さんまでいるし・・・

 

 梨子さんは何故かジト目でこっちを見てるけど。

 

 「・・・天くんって、年上の女性に抱きつかれやすい体質なの?」

 

 「そんな体質だったら幸せなんですけどね。梨子さんも抱きつきます?」

 

 「抱きつきません!」

 

 そっぽを向いてしまう梨子さん。

 

 どうやらご機嫌斜めみたいなので放置して、俺に抱きついているパツキンのチャンネーへと目を向ける。

 

 「で、どちら様ですか?」

 

 「・・・本当に分からないの?」

 

 さっきまでの笑みから一転、寂しそうな表情で俺を見る女子。

 

 何だろう、もの凄い罪悪感に襲われてるんだけど・・・

 

 「鞠莉さん!いいから早く天さんから離れなさい!」

 

 怒っているダイヤさん・・・ん?

 

 「鞠莉・・・?」

 

 今ダイヤさんが呼んだ名前・・・それにこの独特の髪型・・・側頭部に数字の『6』のような形で髪を結ってある・・・

 

 あれ・・・?

 

 「えぇ!?鞠莉ちゃん!?小原鞠莉ちゃん!?」

 

 「Yes!やっと思い出してくれた!」

 

 嬉しそうに俺を抱き締める女子・・・小原鞠莉。おいおいマジか・・・

 

 「大きくなったね、天!」

 

 「鞠莉ちゃんの方こそ、すっかり大人の女性って感じになっちゃって」

 

 特に俺の身体に押し付けられている、この二つの大きく柔らかいモノ・・・ずら丸や果南さんより大きいのでは・・・

 

 「っていうか、何で鞠莉ちゃんがここに?」

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 俺と鞠莉ちゃんが話していると、ダイヤさんが慌てて割り込んでくる。

 

 「その話に入る前に、お二人の関係についてお聞きしたいのですが!?お二人はお知り合いなのですか!?」

 

 「えぇ、幼馴染です」

 

 ダイヤさんの質問に答える俺。

 

 「母親同士が友人関係で、小さい頃は家族ぐるみの付き合いをしてたんです。まぁ鞠莉ちゃん達が引っ越してからは、会う機会もなくて疎遠になってたんですけど」

 

 「最後に会ってから、もう十年近く経つもんねぇ・・・」

 

 しみじみとしている鞠莉ちゃん。時が経つのは早いなぁ・・・

 

 「っていうか鞠莉ちゃん、浦の星の制服着てるけど・・・まさか転校してきたの?」

 

 「No!私は元々、浦の星の生徒デース!」

 

 「マジで!?」

 

 「マジですわ」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 「留学の為に海外へ行っていたのですが、このタイミングで戻ってきたようです・・・理事長として」

 

 「ヘぇ・・・ん?」

 

 今ダイヤさん、何か凄いこと言わなかった?

 

 「・・・理事長が何ですって?」

 

 「例の新理事長というのは・・・鞠莉さんのことだそうです」

 

 「・・・ダイヤさんでも冗談を言う時ってあるんですね」

 

 「・・・冗談であってほしかったのですけどね」

 

 苦い顔のダイヤさんに対し、鞠莉ちゃんがドヤ顔で一枚の紙を見せてくる。

 

 「これが証拠デース!」

 

 「・・・嘘やん」

 

 それは鞠莉ちゃんが理事長に就任したことを証明する任命状だった。おいおい・・・

 

 「鞠莉ちゃん・・・今すぐ警察に出頭しよう」

 

 「Why!?」

 

 「小原家の力で前理事長を亡き者にするなんて・・・それで鞠莉ちゃんは満足なの?」

 

 「勝手に前理事長を殺さないで!?天は小原家を何だと思ってるの!?」

 

 「成金一族」

 

 「それは否定できないけども!」

 

 鞠莉ちゃんの父親はリゾートホテルチェーンを経営している富豪で、鞠莉ちゃんはいわゆる御嬢様というやつだ。

 

 昔からそうだったが、この人達は基本的にお金の力に頼ることが多い。普通なら有り得ない現役女子高生理事長が誕生したのも、恐らく小原家の財力によるものだろう。

 

 「どうせ小原家が浦の星に多額の寄付を納めてるとかで、学校の運営に顔が利くんでしょ?それで鞠莉ちゃんの理事長就任をゴリ押ししたってところじゃないの?」

 

 「・・・君のような勘のいいガキは嫌いだヨ」

 

 「どこの錬金術師?っていうか、嫌いならそろそろ離れてくんない?」

 

 「It`s joke!天のことは大好きデース!」

 

 俺の頬に頬ずりしてくる鞠莉ちゃん。スキンシップが激しいな・・・

 

 「それで?何で留学から戻ってきて、いきなり理事長になったりしたの?」

 

 「浦の星にスクールアイドルが誕生したって聞いて、ダイヤに邪魔されちゃ可哀想だから応援してあげようと思って」

 

 「本当ですか!?」

 

 嬉しそうな千歌さん。生徒会長であるダイヤさんに反対されていることもあって、理事長である鞠莉ちゃんの応援はかなり心強いんだろう。

 

 「Yes!デビューライブにはアキバドームを用意してみたわ!」

 

 「何やってんの!?」

 

 アキバドームといったら、ラブライブの決勝が行なわれるほどのステージだ。そこでデビューライブって・・・

 

 「そんな!?」

 

 「いきなり!?」

 

 「嘘でしょう!?」

 

 「き、奇跡だよ!」

 

 曜さん・梨子さん・ダイヤさんが絶句している中、顔を輝かせている千歌さん。そんな千歌さんを見て、鞠莉ちゃんは満面の笑みを浮かべ・・・

 

 「It`s joke!」

 

 「えぇっ!?」

 

 「「「「・・・ですよねー」」」」

 

 千歌さんがショックを受ける中、溜め息をつく俺・曜さん・梨子さん・ダイヤさん。

 

 小原家の財力なら、アキバドームだろうが貸し切りに出来るだろうからなぁ・・・一瞬本気かと思ったけど、流石にそれはないか・・・

 

 「実際に用意するステージは、もっと身近な場所デース!」

 

 「身近・・・?」

 

 「どこですか・・・?」

 

 曜さんと梨子さんの問いに、鞠莉ちゃんはウインクしながら答えるのだった。

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「ステージって・・・ここですか?」

 

 私達が鞠莉さんに連れられてきた場所は、浦の星の体育館だった。

 

 「Yes!ここが貴方達のデビューライブを開催する場所デース!」

 

 頷く鞠莉さん。

 

 「ここを満員にできたら、人数に関わらず部として承認してあげるわ」

 

 「なっ!?」

 

 「本当ですか!?」

 

 驚くダイヤさんに対して、千歌ちゃんは喜びを抑えきれないようだった。

 

 まぁ念願だったスクールアイドル部を設立できるかもしれないチャンスだし、喜ぶなという方が無理だとは思う。

 

 「鞠莉さん!?何を勝手に・・・」

 

 「理事長権限よ。ダイヤは黙ってて」

 

 「ぐっ・・・!」

 

 鞠莉さんを睨みつけるダイヤさん。この二人、何か因縁でもあるのかしら・・・

 

 「ただし、一つ条件があります」

 

 私達を見回す鞠莉さん。条件・・・?

 

 「もし満員にできなかったら・・・その時は解散してもらいます」

 

 「「「えぇっ!?」」」

 

 まさかの解散宣告に驚く私達。

 

 こんなに広い体育館を満員に・・・果たして私達に出来るだろうか・・・

 

 「嫌なら断ってくれて結構よ?どうする?」

 

 挑発的な態度をとる鞠莉さん。この人、本当に私達を応援する気があるのかしら・・・

 

 「・・・千歌ちゃん、どうする?」

 

 「やるしかないよ!他に手があるわけじゃないんだし!」

 

 鞠莉さんの挑発的な態度に燃えたのか、意気込んでいる千歌ちゃん。

 

 確かに千歌ちゃんの言う通り、他に手があるわけじゃない。やるしかないわね・・・

 

 「ヨーソロー!了解であります!」

 

 「頑張りましょう!」

 

 曜ちゃんと私も応える。それを見て、鞠莉さんはニッコリと笑った。

 

 「では、行なうということで良いかしら?」

 

 「はい、やります!」

 

 「よろしい」

 

 千歌ちゃんの返事に頷くと、鞠莉さんは天くんの方を見た。顔合わせが済んだので帰ろうとした天くんを、鞠莉さんはわざわざ引き止めてここへ連れてきたのだ。

 

 この二人は幼馴染らしいけど、それにしては距離が近すぎないかしら・・・さっきだって、鞠莉さんはずっと天くんにくっついたままだったし・・・

 

 って、何で私はそんなことを気にしているのかしら・・・

 

 「天、貴方にお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 首を傾げる天くんに、鞠莉さんは微笑みながら口を開いた。

 

 「この子達のマネージャーになってちょうだい」

 

 「・・・は?」

 

 「ちょっと待って下さい!?」

 

 驚いている天くん。そこへダイヤさんが慌てて割り込んだ。

 

 「天さんは生徒会役員です!勝手に決められては困りますわ!」

 

 「生徒会の仕事は、毎日あるわけじゃないでしょう?それに生徒会役員でも、部活の兼任は可能なはずよ?他の生徒会役員達だって兼任してるじゃない」

 

 「それはそうですが・・・!」

 

 「鞠莉ちゃん、悪いけどそのお願いは断らせてもらうよ」

 

 苦笑しながら言う天くん。

 

 「そもそもスクールアイドル部は、まだ承認されてもいない部活でしょ?マネージャーなんて早いと思うけど?」

 

 そう、昨日も天くんはそう言っていた。確かにまだ私達は本格的な活動も出来ていないし、マネージャーなんて早いと思う。

 

 昨日は曜ちゃんに乗せられて、『天くんが入ってくれたら』なんて思ってしまったけれど・・・

 

 「それに俺、マネージャーの仕事なんて・・・」

 

 「出来ない、とは言わせないわよ」

 

 不敵な笑みを浮かべる鞠莉さん。

 

 「スクールアイドルのマネージャーなんて・・・天にはお手の物でしょう?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む天くん。スクールアイドルのマネージャーがお手の物・・・?

 

 「私が何も知らないと思った?私達は疎遠になってしまったけど、貴方のお母様と私のママは今でも連絡を取り合っているのよ?」

 

 「・・・あのお喋りクソババア」

 

 悪態をつく天くん。表情が歪んでいる。

 

 「この子達を、マネージャーとして支えてあげてほしいの。天なら出来るでしょ?」

 

 「出来ないよ」

 

 鞠莉さんの言葉をバッサリ切り捨てる天くん。

 

 「俺で力になれることがあるなら、協力したいとは思ってる。でもマネージャーにはならないし、スクールアイドル部に入る気も無い。鞠莉ちゃんの頼みでも、それは聞けない」

 

 明確な拒絶。鞠莉さんが溜め息をつく。

 

 「そう・・・それなら幼馴染の小原鞠莉としてではなく、理事長の小原鞠莉として貴方に命令するわ。この子達のマネージャーになりなさい。さもなくば、貴方を浦の星から追放します」

 

 「鞠莉さん!?何を言い出すのですか!?」

 

 ダイヤさんが鞠莉さんに食ってかかる。

 

 「理事長が一生徒に何かを強要するなど、あってはなりませんわ!そもそも、正当な理由もなく追放など出来るわけが・・・」

 

 「共学化を白紙に戻せば良い話よ。そうすれば天は、浦の星から出ていかざるをえなくなるわ。そして小原家は、浦の星の運営に顔が利く・・・それくらい十分に可能よ」

 

 「正気ですの貴女!?」

 

 「至って正気よ。そもそも、天を浦の星に呼んだのは私なんだから」

 

 「「なっ!?」」

 

 驚いている天くんとダイヤさん。鞠莉さんが天くんを呼んだ・・・?

 

 「天の中学の理事長さんから天を推薦された時、運命だと思ったわ。天がいれば、私の願いはきっと叶う・・・そう思ったわ」

 

 「願い・・・?」

 

 訝しげな天くんに対し、悲しそうに微笑みながら何も答えない鞠莉さん。

 

 一方、ダイヤさんはわなわなと身体を震わせていた。

 

 「鞠莉さん、貴女・・・最初から利用するつもりで、天さんを浦の星に呼んだというのですか・・・!」

 

 「・・・その通りよ」

 

 乾いた音が体育館に響く。ダイヤさんが鞠莉さんの頬を引っ叩いていた。

 

 「見損ないましたわッ!天さんは貴女の幼馴染なのでしょう!?その天さんを利用する為に呼んだですって!?恥を知りなさいッ!」

 

 「・・・天、貴方ずいぶんダイヤに好かれたのね。こんなダイヤ初めて見るわ」

 

 叩かれた頬を押さえ、天くんへと視線を移す鞠莉さん。

 

 「いくら蔑まれようと、私は要求を変えるつもりは無いわ。天、マネージャーになりなさい。私は本気よ」

 

 「鞠莉さん!?いくら何でもそんな無理矢理・・・」

 

 「そうですよ!私達だってそんなやり方は望んで・・・」

 

 「貴女達は黙ってて。天がマネージャーにならないと言うのなら、さっきのデビューライブの件も白紙にするわ。部の承認もしません」

 

 「そんな!?」

 

 千歌ちゃんと曜さんに冷たい眼差しを向ける鞠莉さんに、私も黙っていられなかった。

 

 こんな状況、天くんがあまりにも可哀想すぎる。やりたくもないマネージャーをやれと強要され、断れば学校からの追放及び私達を不利な状況に追い込むと脅されているのだ。

 

 こんなのって・・・

 

 「・・・分かりました」

 

 溜め息をつく天くん。

 

 「引き受けますよ・・・マネージャー」

 

 「天くん!?本当に良いの!?」

 

 「仕方ないでしょう。それ以外の選択肢が無いんですから」

 

 私の言葉に、天くんが苦笑する。

 

 「せっかく浦の星に来たのに、追放されたくありませんから。スクールアイドル部だって、ちゃんと立ち上げてほしいですし」

 

 「天くん・・・」

 

 千歌ちゃんと曜ちゃんも、悲痛な表情を浮かべていた。マネージャーになってほしいとは思ったけど、こんなやり方するなんて・・・

 

 「・・・感謝するわ、天」

 

 鞠莉さんが天くんに触れようと手を伸ばし・・・思いっきり弾かれた。

 

 「・・・触らないで下さい」

 

 「そ、天・・・?」

 

 鞠莉さんを見る天くんの目は、見たこともないほど冷たいものだった。その目に見つめられた鞠莉さんは、怯えたように一歩下がる。

 

 「マネージャーの件、確かに引き受けました。ただし条件があります」

 

 「な、何かしら・・・?」

 

 「まず一つ目・・・スクールアイドル部が設立された場合でも、スクールアイドル部への所属を強要しないこと。マネージャーとしての仕事はするつもりですが、スクールアイドル部に所属するつもりはありませんので。勿論設立されなかった場合は、マネージャーは辞めます。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・マネージャーの仕事をしてくれるなら、所属までは強要しないわ」

 

 天くんの言葉には、感情が全くこもっていなかった。まるで機械音声のようだ。

 

 「二つ目・・・生徒会の仕事の優先を許可すること。俺の所属はあくまでも生徒会ですので、そちらが最優先です。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 鞠莉さんが恐る恐る頷く。今の天くんがよほど怖いらしい。

 

 「そして三つ目・・・貴女がどこまでこれまでの俺を知っているのか、俺も把握はしていませんが・・・」

 

 鞠莉さんを睨みつける天くん。

 

 「他の人達に、俺の情報は一切話さないこと・・・よろしいですね?」

 

 「わ、分かったわ・・・」

 

 「・・・では、マネージャーを引き受けます。不本意ではありますが」

 

 踵を返し、体育館の出口へと歩いていく天くん。

 

 「そ、天っ!」

 

 「人を気安く名前で呼ばないで下さい・・・小原理事長」

 

 名前を呼ぶ鞠莉さんに冷たく返した天くんは、忌々しそうに吐き捨てた。

 

 「俺は今、この学校に来てしまったことを・・・心の底から後悔してますよ」

 

 その言葉は、私達の胸に深く突き刺さるのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、ようやく鞠莉ちゃんが登場しましたが…

すみません、いきなり横暴な態度をとっております…

しばらくは天が鞠莉ちゃんに冷たくなるかと思いますが、物語の都合上何卒ご理解下さいませ(>_<)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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支えてくれる人の存在は大きい。

『想いよひとつになれ』ってメッチャ良い曲ですよね。

アニメではサビの部分で善子ちゃんがウインクしてて、ハートをズッキュンされました。


 「・・・ハァ」

 

 俺は溜め息をつきながら、廊下を歩いていた。頭の中で、先ほどの小原理事長との会話が繰り返し流れている。

 

 「あの女・・・!」

 

 思い出す度に怒りがこみ上げてくる。

 

 なりふり構わず俺を脅し、千歌さん達のマネージャーを務めることを強要してくるなんて・・・流石は富豪の令嬢、権力を持っている者の脅しは一味違うようだ。

 

 だが・・・

 

 「・・・悲しそうだったな」

 

 あの悲しげな笑みが頭から離れない。恐らく、俺を脅してでもマネージャーにしたい理由があるのだろう。

 

 それでも、今回のことを許すことは出来ないが。

 

 「・・・もう訳が分かんない」

 

 頭の中がグチャグチャで、全く整理できない。とにかく今は帰って寝よう。

 

 そう思い、鞄を取りに教室へと戻ると・・・

 

 「あれ?天くん?」

 

 「ずら丸?」

 

 ずら丸が一人で席に座り、本を読んでいた。

 

 「帰ってなかったの?」

 

 「今日は図書委員会の仕事だったずら」

 

 「あぁ、図書室の受付か」

 

 図書委員会の生徒は当番制で、週に何度か図書室の受付をやっている。ずら丸もクラス代表として図書委員会に所属しており、今日がその当番の日だったらしい。

 

 「で、何で教室で本読んでんの?」

 

 「天くんと一緒に帰ろうと思って」

 

 微笑むずら丸。

 

 「当番が終わって教室に戻ってきたら、天くんの鞄が置いてあったから。天くんが戻ってくるのを、読書しながら待ってたずら」

 

 「マジか・・・結構待たせた?」

 

 「今来たところずら」

 

 「何そのデートの待ち合わせで男が言いそうなセリフ」

 

 「マルは女ずら」

 

 「知ってるわ」

 

 笑いながらツッコミを入れる。と、ずら丸が怪訝な表情で俺を見た。

 

 「・・・何かあったずら?」

 

 「え、何で?」

 

 「・・・酷い顔してるずら」

 

 「うわ、顔をディスられた。傷付くわぁ」

 

 「天くん」

 

 いつになく強い口調で、俺の名前を呼ぶずら丸。

 

 「無理して茶化すのは止めるずら。辛いのは天くんの方ずら」

 

 「・・・そうでもしなきゃやってられないよ」

 

 力なく席に座る俺。

 

 「頭の中がゴチャゴチャで、何も考えたくない・・・何かもう疲れたよ・・・」

 

 どうして小原理事長があんなことをしたのか・・・どうして俺がマネージャーをやらなければいけないのか・・・

 

 「何で・・・どうして・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろからずら丸の声が聞こえたかと思うと、頭が柔らかいものに覆われる。

 

 俺はそこで初めてずら丸が俺の後ろに移動していたこと、そして後ろからずら丸に抱き締められていることに気付いた。

 

 「今は何も考えちゃダメずら。こういう時に深く考えちゃうと、どんどん良くない方に考えがいっちゃうずら」

 

 「ずら丸・・・」

 

 「今はただ、頭を空っぽにすること・・・マルに身を任せていれば良いずら」

 

 優しく抱き締めてくれるずら丸。ずら丸の温もりを感じ、心が安らいでいく。

 

 「・・・女の子なんだから、あんまり男にこういうことしない方が良いよ」

 

 「マルの男友達は天くんだけだから、他にこういうことする男の子なんていないずら。天くんだけの特権ずら」

 

 「・・・そっか。ありがたく受け取っとくよ」

 

 大人しくずら丸に身を任せる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったずらね・・・」

 

 神妙な表情のずら丸。

 

 俺は帰りのバスの中で、ずら丸に事情を説明していた。あそこまでしてもらった以上、ずら丸に何も話さないのは良くないと思ったのだ。

 

 「理事長さんも酷いことするずら・・・」

 

 「・・・正直、かなりショックだったよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「久しぶりに会えて嬉しかったし、向こうも純粋に喜んでくれてるんだと思ってた。でも実際は、俺を利用する為に浦の星に入学するように仕組んでたなんて・・・」

 

 「マネージャーを断れば、浦の星からの追放・・・それは断れないずらね」

 

 「いや、それだけで済むなら断ってたよ」

 

 「ずら!?」

 

 驚愕しているずら丸。

 

 「ど、どういうことずら!?」

 

 「別の学校に行くっていう選択肢があったってこと。ツテが無いわけじゃないから、受け入れてくれる学校なら見つけられると思うし」

 

 「じゃ、じゃあ何で・・・」

 

 「・・・スクールアイドル部の為、かな」

 

 もし俺が断れば、小原理事長はスクールアイドル部を認めないと言っていた。それでは千歌さんの夢が叶わないし、せっかく前向きになれた梨子さんの決意が無駄になってしまう。

 

 何より自分達のマネージャーを断ったせいで、俺が浦の星から追放されてしまったら・・・恐らくあの三人は、責任を感じてスクールアイドルを断念してしまうだろう。

 

 「せっかく見つけた目標を、こんなことで諦めてほしくないから。あの三人には、これからも真っ直ぐ突き進んでほしいし」

 

 「でも天くんが無理矢理マネージャーをやらされることに、先輩方が責任を感じてないとは思えないずら」

 

 「そこは先輩方とも話をするよ。さっきはちょっと冷静じゃなかったけど、ずら丸のおかげでずいぶん落ち着いたから」

 

 俺は笑いながら、隣に座るずら丸の頭を撫でた。

 

 「ありがとう。おかげで助かったよ」

 

 「マ、マルは当然のことをしただけずら・・・」

 

 ずら丸が顔を赤くしている。可愛い奴め。

 

 「・・・でも、天くんが浦の星に残ってくれて良かったずら」

 

 「え?」

 

 ずら丸の言葉に首を傾げる俺。ずら丸が優しく微笑む。

 

 「・・・せっかく仲良くなれたのに、離れちゃうのは寂しいずら」

 

 「っ・・・」

 

 思わずドキッとしてしまう。ニヤけるずら丸。

 

 「あれ、天くん顔が赤いずら。どうしたずら?」

 

 「ゆ、夕陽のせいだって!」

 

 「ふーん・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるずら♪」

 

 くっ、コイツ・・・完全に気付いてるな・・・

 

 「フフッ、天くんの弱点発見ずら♪」

 

 「・・・ここにずら丸の愛読書があります」

 

 「ずら!?マルが鞄に入れてた本!?いつの間に!?」

 

 「そしてここにマッチがあります・・・春とはいえ、日が暮れると冷えるよね」

 

 「ごめんなさいずらあああああっ!?堪忍ずらあああああっ!?」

 

 フッ、勝った・・・俺をからかおうなんて百年早いわ。

 

 「うぅ・・・天くんは鬼ずら・・・」

 

 「失礼な。悪魔と呼んでもらおうか」

 

 「余計に酷くなったずら!?」

 

 そんなやり取りをしていると、俺が降りるバス停に到着した。自分の鞄を持ち、席を立ってずら丸の方を見る。

 

 「じゃあまた明日」

 

 「また明日ずら」

 

 手を振ってくれるずら丸。

 

 俺はバスを降りようとしたが・・・一度立ち止まり、もう一度ずら丸の方を見る。

 

 「今日は本当にありがとう・・・花丸と友達で良かった」

 

 初めて名前を呼んだ。

 

 俺の言葉に、花丸は目をぱちくりさせると・・・頬を赤く染め、照れ臭そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「んー・・・とりあえず明日、千歌さん達と話さないとなぁ・・・」

 

 帰り道を歩きながら、どう話を切り出すかを考える。

 

 あの人達、絶対気にしてるだろうしなぁ・・・

 

 「わんっ!」

 

 考えながら歩いていると、犬の鳴き声が聞こえた。思わず顔を上げると、こちらへ向かって大きな犬が駆け寄ってくるところだった。

 

 「おぉ、しいたけ。ただいま」

 

 「わんっ!」

 

 嬉しそうに身体を摺り寄せてくる犬・・・しいたけの頭を優しく撫でる。

 

 と、しいたけの後から一人の女性が駆け寄ってきた。

 

 「ちょっとしいたけ、急にどうした・・・って天じゃん!今帰り?」

 

 「えぇ。こんばんは、美渡さん」

 

 明るいブラウン系の短い髪の女性に挨拶する。

 

 彼女は高海美渡さんといって、しいたけが飼われている旅館『十千万』の娘さんだ。『十千万』は学校の行き帰りで必ず通る為、毎日しいたけを構っていたら美渡さんとも挨拶する仲になったのだ。

 

 「学校の方はどうよ?彼女できた?」

 

 「欲しいのは山々なんですけど、全然フラグが建たないんですよね」

 

 「えー、だって男子は天だけなんでしょ?他は全員女子なんだから、選びたい放題じゃん。選り取りみどりじゃん」

 

 「女子達にも選ぶ権利があるでしょう。こんな冴えない男を選ぶぐらいなら、他校のイケメンを狙いに行くんじゃないですか?」

 

 「そうかなぁ?天は割りとイケてると思うよ?」

 

 「美渡~?」

 

 美渡さんと話していると、美渡さんの後ろから違う女性が現れた。黒髪ロングのおっとりとした雰囲気の女性が、しいたけとじゃれている俺に気付く。

 

 「そろそろ夕飯・・・って、天くんじゃない!お帰りなさい」

 

 「こんばんは、志満さん」

 

 彼女は高海志満さん、美渡さんのお姉さんだ。美渡さんと同じく挨拶する仲で、よくおすそ分けをいただいたりする。マジ女神。

 

 「志満さんは今日もお綺麗ですね」

 

 「フフッ、天くんったら上手なんだから」

 

 「本心ですって。俺が大人だったら放っておかなかったでしょうね」

 

 「あら、じゃあ天くんは私を放っておくのかしら?」

 

 「志満さんがその気なら、喜んでアタックさせていただきます」

 

 「ちょっと天、私の前で志満姉を口説かないでくれる?」

 

 「まだ口説いてませんよ。MK5(マジで口説く5秒前)です」

 

 「言葉が古くない!?アンタ高校生よねぇ!?」

 

 美渡さんのツッコミ。面白い人だなぁ・・・

 

 「美渡さんって、俺の先輩に似てますね。ツッコミが上手なんでボケやすいです」

 

 「いや、そこで判断されても・・・その先輩も大変ね・・・」

 

 同情的な表情の美渡さん。

 

 失礼な、これでも千歌さんのことは敬っているというのに。

 

 「そうだ天くん、良かったら夕飯食べていかない?」

 

 「いえ、そこまで甘えてしまうわけには・・・」

 

 「今日のメニューは肉じゃがなんだけど、ちょっと作りすぎちゃって」

 

 「ご相伴に預からせていただきます」

 

 「急に態度が変わったわね・・・」

 

 呆れている美渡さん。だって前におすそ分けでいただいた肉じゃが、メッチャ美味しかったんだもん。

 

 「フフッ、じゃあどうぞ」

 

 「お邪魔します」

 

 志満さんに案内され、『十千万』の中へと足を踏み入れる。

 

 「千歌ちゃ~ん、ご飯よ~」

 

 志満さんが二階に向かって呼びかける・・・え?

 

 「・・・は~い」

 

 やがて元気の無い様子で階段を下りてきたのは・・・紛れも無く千歌さんだった。

 

 「ごめん志満姉、私あんまり食欲無くて・・・って天くん!?何でここに!?」

 

 「・・・チェンジで」

 

 「何が!?」

 

 千歌さんのツッコミが響くのだった。




どうも~、ムッティです。

前回の話に、多くの感想をいただきました!

本当にありがとうございます!

意外にも『こういう展開好きです』という感想が多くて驚きました。

鞠莉ちゃん推しの方々から呪われるんじゃないかと思い、ちょっとビクビクしてたのはここだけの話…

前回の話はちょっとシリアスでしたが、今回からはまた思いっきりボケていきたいと思います(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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