絢瀬天と九人の物語 (ムッティ)
しおりを挟む

女子校に入学してみた。

明けましておめでとうございます、ムッティです。

『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマったので、ノリと勢いで小説を書いてしまいました。

相も変わらず文才は無いですが、温かい目で読んでいただけると幸いです。


 「ここが浦の星かぁ・・・」

 

 正門の前に立ち、校舎を見上げる俺。

 

 静岡県沼津市の内浦湾の西に張り出した岬に所在する、全校生徒が百人にも満たない小さな私立高校・・・それがここ、浦の星である。

 

 俺は今日から、この高校の生徒になるのだ。さて・・・

 

 「とりあえず到着したけど・・・生徒会長さんはどこだろう?」

 

 キョロキョロと辺りを見回す。

 

 学校側からの連絡によると、正門の前で生徒会長さんが待ってくれているとのことだったが・・・それらしき姿は見当たらない。

 

 「・・・まぁ良いや。少し待ってみよう」

 

 「何を待ってみるの?」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなり背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。

 

 いつの間にか俺の後ろには、橙色の髪の女の子が立っていた。浦の星の制服を着ているので、ここの生徒だろう。

 

 「男の子がこんな所で何してるの?ここは女子校だよ?」

 

 首を傾げている女の子。

 

 浦の星の正式名称は、浦の星女学院高等学校・・・名前の通り、ここは女子校なのである。

 

 「いえ、それは重々承知していますが・・・実は俺、今日からこの高校の生徒になる身でして・・・」

 

 「・・・通報して良い?」

 

 「止めて!?」

 

 思わず叫んでしまう。いや、確かに『何言ってんだコイツ』ってなるだろうけども。

 

 男である俺が女子校の生徒になるのには、れっきとした理由があるのだ。

 

 「千歌ちゃん?どうしたの?」

 

 明らかに俺を警戒し始めた女の子の後ろから、別の女の子がひょっこり顔を覗かせる。

 

 グレーのボブカットの髪にウェーブの入った、活発そうな女の子だ。

 

 「あ、曜ちゃん!ここに怪しい男の子がいるの!」

 

 「えぇっ、不審者!?」

 

 橙色の髪の女の子の言葉を聞き、グレーの髪の女の子が俺を見て警戒する。

 

 あぁ、誤解が広がっていく・・・

 

 「違いますって!れっきとしたこの学校の生徒です!」

 

 「だからここは女子校だって!」

 

 「だからそれには理由があるんですって!」

 

 言い合う俺と橙色の髪の女の子。

 

 するとグレーの髪の女の子が、何かに気付いたような表情で俺を見た。

 

 「あれ?その制服・・・浦の星の制服に似てない?」

 

 「いや、似てるも何も浦の星の制服ですよ。男子用の制服だそうです」

 

 着ている制服を指差す俺。俺が入学するにあたって、学校側が急遽男子用の制服を用意してくれたらしい。

 

 その説明をしたところで、グレーの髪の女の子がハッとした表情を浮かべる。

 

 「あぁっ!?ひょっとして、君が例のテスト生!?」

 

 「あぁ、やっと分かってくれた・・・」

 

 ようやく事情を理解してくれたらしい。一方、橙色の髪の女の子は未だ首を傾げていた。

 

 「テスト生?」

 

 「ほら、浦の星は共学化を目指してるって説明があったじゃん!とりあえずテスト生として、四月から男子生徒が一人入学するって!」

 

 「あぁっ!?」

 

 どうやら思い出してくれたようだ。恐る恐るこっちを振り向く橙色の髪の女の子。

 

 「と、いうことは・・・本当に浦の星の生徒?」

 

 俺はその問いかけにニッコリ笑みを浮かべると、二人に背中を向けて歩き出した。

 

 「そのつもりでしたが、どうやら受け入れてはいただけないようですね。学校側に今起こったことを全てありのままに伝えて、テスト生の辞退を申し入れた上で海に身を投げようと思います。それではさようなら、来世でお会い出来ると良いですね」

 

 「「ちょっと待ってええええええええええっ!?」」

 

 必死に俺にしがみついてくる二人。

 

 「離せえええええっ!海が俺を待ってるんだあああああっ!」

 

 「ゴメンなさいいいいいっ!私の早とちりでしたあああああっ!お願いだから思い留まってえええええっ!」

 

 「私からもお願いいいいいっ!早まらないでえええええっ!」

 

 「止めるんじゃねえええええっ!」

 

 この後、周りから不審な目で見られたことは言うまでもないのであった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「すみませんでした!」

 

 「ごめんなさい!」

 

 「いえ、俺の方こそ申し訳ありませんでした・・・」

 

 何とか落ち着いた俺達は、お互いに深々と頭を下げていた。

 

 いやホント、入学初日から何やってんだ俺・・・

 

 「あ、自己紹介が遅れました・・・今日から浦の星でお世話になります、絢瀬天といいます。よろしくお願いします」

 

 「これはこれはご丁寧に・・・二年の高海千歌です」

 

 「同じく二年の渡辺曜です」

 

 自己紹介し合う俺達。やっぱり二人とも先輩だったか・・・

 

 「ところで高海先輩・・・その鉢巻き何ですか?」

 

 「あ、これ?」

 

 頭に巻いてある鉢巻きに触れる高海先輩。

 

 『スクールアイドル愛』と書かれた鉢巻きを付けて、この人は一体何をしているのだろうか・・・

 

 「実は私、新しく部活を立ち上げることにしたの」

 

 「スクールアイドル部ですか?」

 

 「そう、スクールアイドル部・・・って何で分かったの!?」

 

 「今の流れで分からない方がおかしいでしょ」

 

 「アハハ・・・はい、これがチラシだよ」

 

 そう言って紙を一枚渡してくれる渡辺先輩。スクールアイドル部かぁ・・・

 

 「部員って、高海先輩と渡辺先輩以外にいるんですか?」

 

 「あ、私は部員じゃないよ」

 

 首を横に振る渡辺先輩。

 

 「私は水泳部に入ってるから、スクールアイドル部には入ってないんだよね」

 

 「え、じゃあ部員って・・・」

 

 「私だけだよ」

 

 何故か胸を張る高海先輩。

 

 意外と大きいな・・・じゃなくて。

 

 「・・・生徒会の承認って貰ってます?」

 

 「貰ってないよ?」

 

 「・・・部活、立ち上げられてないじゃないですか」

 

 「最低でも五人必要だっていうから、五人集まってから申請しようかなって」

 

 「・・・申請もしてないのに、勧誘活動してるんですか?」

 

 「嫌だなぁ、申請する為に勧誘活動してるんだよ♪」

 

 能天気に笑っている高海先輩。これは生徒会にバレたらマズい案件なのでは・・・

 

 「あっ!あんなところに美少女がっ!スクールアイドルやりませんかっ!?」

 

 一方の高海先輩は、そんなことお構い無しに勧誘活動を続けていた。おいおい・・・

 

 「・・・渡辺先輩、止めなくて良いんですか?」

 

 「いやぁ・・・千歌ちゃん凄くやる気になってるし、良いかなぁって」

 

 「言っときますけど、多分もうすぐ生徒会長さんが来ますよ」

 

 「今すぐ止めなきゃ!?」

 

 慌てて走っていく渡辺先輩。

 

 仕方なくその後を追うと、高海先輩が二人組の女子を勧誘しているところだった。

 

 「大丈夫!悪いようにはしないから!」

 

 「いや、マルは・・・」

 

 茶髪のふわっとしたロングヘアの女の子が、困った様子で対応していた。

 

 その子の後ろには、赤髪の短いツーサイドアップの女の子が怯えたように隠れている。

 

 「千歌ちゃん、その辺にしとかないとマズいって!」

 

 「曜ちゃん、この子達凄く可愛いよ!絶対人気出るよ!」

 

 焦っている渡辺先輩とは対照的に、高海先輩は興奮状態だった。

 

 あれは人の話なんて聞いちゃいないな・・・

 

 「すみません、先輩がご迷惑をおかけしました」

 

 「マ、マルは大丈夫ずら・・・」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?だ、大丈夫です!」

 

 慌てて言い直す茶髪の女の子。何だったんだろう?

 

 「ひょっとして、新入生?」

 

 「あ、はい。そうです」

 

 「じゃあ一緒だね。俺も新入生なんだ」

 

 「ずらっ!?」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?」

 

 慌てて口を押さえる茶髪の女の子。どうやら『ずら』が口癖らしい。

 

 「ど、どうして男の子が・・・?」

 

 「ひょっとして、テスト生の人・・・?」

 

 赤髪の女の子が、茶髪の女の子の後ろから恐る恐る顔を出していた。

 

 「うん、そうだよ。よろしくね」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 慌てて隠れてしまう赤髪の女の子。えっ・・・

 

 「あ、ゴメンね!ルビィちゃん、人見知りな上に男性恐怖症だから!」

 

 茶髪の女の子が慌てて説明してくれる。なるほど、つまり俺が消えるべきなのか・・・

 

 「ゴメンね、ルビィちゃんとやら・・・俺は今から屋上に行ってくるよ」

 

 「ちょっと待つずらあああああっ!?」

 

 茶髪の女の子が必死に止めてくる。最早『ずら』を隠す気も無いらしい。

 

 「屋上に行って何するつもりずら!?」

 

 「アイキャンフライ」

 

 「人は空を飛べないずら!」

 

 「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてるから、きっと今は自由に空も飛べるはずだよ」

 

 「それはスピ●ツの曲ずらあああああっ!」

 

 「ねぇ二人とも、スクールアイドルやろうよ!」

 

 空気を読まない高海先輩が、俺達のやり取りを見てあたふたしていたルビィちゃんとやらの手を握った。

 

 その瞬間、ルビィちゃんとやらの顔が青くなる。

 

 「っ!?マズいずら!」

 

 「うおっ!?」

 

 茶髪の女の子が俺の頭を掴んで自分の胸に押し付け、両腕で俺の頭を抱いた。俺の顔が、大きくて柔らかいものに埋まっている。

 

 あぁ、幸せ・・・じゃなくて。

 

 「ちょ、いきなり何を・・・」

 

 「ぴぎゃああああああああああっ!?」

 

 ルビィちゃんとやらの叫び声が響いた。茶髪の女の子の腕に耳が塞がれているから、俺にはそこまで響かない・・・

 

 ってまさか!?

 

 「俺を庇って・・・!?」

 

 「ずらぁ・・・」

 

 ルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』を食らった茶髪の女の子は、一撃で瀕死状態になってしまったようだ。

 

 倒れそうになる茶髪の女の子を、慌てて抱き留める。

 

 「ちょ、大丈夫!?」

 

 「オ、オラはもうダメずら・・・ガクッ」

 

 「ず、ずら丸うううううっ!?」

 

 何かよく分かんないけど、頭に浮かんだあだ名を叫ぶ俺。すると・・・

 

 「キャアアアアアアアアアアッ!?」

 

 今度は側にあった桜の木の上から、女の子が降ってきた。そのまま見事に着地するが・・・

 

 「うぅ、足が・・・ぐえっ」

 

 着地の衝撃に襲われていた。その上、頭の上に鞄が落ちてきて見事にヒットする。

 

 「えっと・・・色々大丈夫?」

 

 高海先輩が女の子を心配していた。ってかアンタ、至近距離でルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』食らってよく無事だったな・・・

 

 そんなどうでもいいことに感心していると、その女の子が急に肩を震わせて笑い始めた。

 

 「クックックッ・・・ここはもしかして地上・・・?」

 

 「高海先輩、この人大丈夫じゃないみたいです。救急車呼んで下さい」

 

 「分かった。ちょっと待っててね」

 

 「私は正常よっ!?」

 

 ダークブルーの髪を揺らしながら叫ぶ女の子。いや、正常な人はあんなセリフ吐かないからね。

 

 「コホンっ。ここが地上ということは・・・貴女達は、下劣で下等な人間共ということですか?」

 

 「えいっ」

 

 「ギャアッ!?」

 

 足に軽くチョップしてやると、女の子は足を押さえて蹲った。どうやら先程の痛みが残っていたらしい。

 

 「何すんのよ!?セクハラで訴えるわよ!?」

 

 「初対面で下劣だの下等だの言うような奴は、女子としてカウントされません。それがこの世界のルールです」

 

 「無いでしょそんなルール!?」

 

 「それで?どちら様ですか?」

 

 そう尋ねると、女の子がニヒルな笑みを浮かべる。

 

 「フッ・・・私は堕天使ヨハネ・・・」

 

 「・・・善子ちゃん?」

 

 瀕死状態だったずら丸がガバッと起き上がり、女の子の顔を覗き込む。

 

 「やっぱり善子ちゃんだ!私、花丸だよ!幼稚園以来だね!」

 

 「は・・・花丸うううううっ!?」

 

 仰け反る女の子。どうやら二人は知り合いらしい。

 

 っていうか、ずら丸の本名は花丸っていうのか・・・

 

 「久しぶりだね!善子ちゃん!」

 

 「善子言うな!私はヨハネ!ヨハネなんだからね!」

 

 そう言って逃げていく自称・堕天使ヨハネ。ずら丸がその後を追い、その後をルビィちゃんとやらが追いかけていく。

 

 「どうしたの善子ちゃあああああん!?」

 

 「花丸ちゃん待ってえええええっ!」

 

 「来るなあああああっ!」

 

 「・・・何だったんだ?」

 

 多分あの子も新入生だろう。ずいぶん濃いメンツが集まったなぁ・・・

 

 「あの子達・・・後でスカウトに行こう!」

 

 「アハハ・・・」

 

 懲りない高海先輩に、苦笑している渡辺先輩。

 

 「高海先輩、まだ諦めてないんですか?」

 

 「勿論!だってあの子達、凄く可愛かったもん!」

 

 「まぁそれは認めますけど」

 

 ずら丸もルビィちゃんとやらも自称・堕天使ヨハネも、美少女なのは間違い無い。

 

 「あの子達がスクールアイドルになったら、絶対人気出るよ!」

 

 「・・・そんな単純な話でもないと思いますけど」

 

 俺が溜め息をついていると・・・

 

 「このチラシを配っているのは、貴女方ですの?」

 

 背後で声がする。振り向くと、美しい黒髪ロングの女の子が立っていた。

 

 手にはスクールアイドル部のチラシを持っている。

 

 「いつ何時、スクールアイドル部なるものがこの浦の星女学院にできたのです?」

 

 凛とした表情でこちらを見る女の子。

 

 立ち居振る舞いがとても綺麗で、俺は思わずその女の子に見惚れてしまった。

 

 「貴女も新入生?」

 

 「ち、違うよ千歌ちゃん!?その人は三年生だよ!?」

 

 呑気にそう声をかける高海先輩に、慌てて耳打ちする渡辺先輩。

 

 「しかもその人は・・・」

 

 「・・・ひょっとして、生徒会長さんですか?」

 

 もしかしてと思い尋ねてみると、女の子が優しい笑みを浮かべる。

 

 「えぇ、生徒会長の黒澤ダイヤと申します。絢瀬天さんですわね?」

 

 「あ、はい。絢瀬天です」

 

 「遅れてしまい申し訳ありません。生徒会の仕事に少々手間取ってしまいまして・・・」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる生徒会長。

 

 「いえ、大丈夫です。そんなに待ってないですし」

 

 主に二人の先輩と、三人の同級生のおかげで。

 

 「すぐに生徒会室までご案内します。あぁ、それと・・・」

 

 先ほどの優しい笑みとは対照的に、怖い笑みを高海先輩と渡辺先輩に向ける。

 

 「貴女方も一緒に来て下さい。お話がありますので」

 

 「「は、はい・・・」」

 

 震えながら返事をする二人。恐るべし生徒会長・・・

 

 「では、参りましょうか」

 

 「はい。ほら高海先輩、渡辺先輩、行きますよ」

 

 「うぅ、曜ちゃ~ん・・・」

 

 「諦めよう、千歌ちゃん・・・」

 

 絶対に生徒会長を怒らせてはいけない・・・入学初日にして、早くも教訓を学んだ俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は『ラブライブ!サンシャイン!!』の小説を書かせていただきました。

先月アニメを観て、今月映画を観に行って・・・

完全に新規のにわかファンです。

ノリと勢いで書いてみたは良いものの、果たしてどこまで続くことやら・・・

とりあえず、ヒロイン(未定)とイチャイチャするところまで書きたい願望。

それでは次回があることを願いまして・・・

以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人には意外な一面があったりする。

LiSAさんが歌う『ADAMAS』のサビ部分で、『シャイニーソード マイダイヤモンド』ってあるけど…

このフレーズを聴く度に鞠莉ちゃんとダイヤさんが思い浮かんで、自分が『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマっていることを実感します。


 「・・・つまり設立の許可どころか、申請すらしていないにも関わらず勧誘活動を行なっていたと」

 

 「いやぁ・・・皆勧誘してたんで、ついでというか焦ったというか・・・」

 

 生徒会室にて、黒澤生徒会長の説教を受けている高海先輩。

 

 ちなみに渡辺先輩は手伝っていただけということで、早々にお咎め無しが決まった。

 

 「そして部員は貴女一人だけ・・・部の申請には、最低でも五人必要ということは知っていますわよね?」

 

 「だから勧誘してたんじゃないですか~♪」

 

 高海先輩の答えにイラッとしたのか、バンッと机を叩く会長。

 

 「・・・いったぁ」

 

 と思ったら、叩いた手を痛そうに擦っていた。え、ドジっ子?

 

 「・・・ぷっ」

 

 「笑える立場ですの!?」

 

 「ひぃ!?すいません!」

 

 噴き出した高海先輩だったが、会長に怒られて慌てて謝る。

 

 「とにかく、スクールアイドル部の設立は認められませんわ」

 

 「・・・そうですか。じゃあ、五人集めてまた来ます」

 

 一礼して去ろうとする高海先輩。その背中に、会長が非情な言葉を投げかけた。

 

 「それは別に構いませんけど・・・例えそれでも承認は致しかねますがね」

 

 「なっ!?どうしてですか!?」

 

 慌てて会長に詰め寄る高海先輩。会長は冷たい目で高海先輩を見ていた。

 

 「私が生徒会長でいるかぎり・・・スクールアイドル部は認めないからです!」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 悲鳴を上げる高海先輩。

 

 「そ、そんな横暴な!?」

 

 「落ち着いて千歌ちゃん!?」

 

 尚も会長に詰め寄ろうとする高海先輩を、後ろにいた渡辺先輩が必死に止める。

 

 「とりあえず一回戻ろう!失礼しました!」

 

 「ちょ、離して曜ちゃん!?」

 

 渡辺先輩は慌てて一礼すると、暴れる高海先輩を引きずって生徒会室を後にした。

 

 「・・・入学初日から見苦しい姿をお見せして、申し訳ありません」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 苦笑しながら答える俺。

 

 「何だか少し・・・懐かしい光景でしたから」

 

 「懐かしい?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 俺は会長に向き直り、改めて一礼する。

 

 「改めまして、絢瀬天です。これからお世話になります」

 

 「いえいえ、こちらこそ」

 

 優しい笑みを浮かべる会長。

 

 「さて・・・今さら確認するまでもないことですが、絢瀬さんはこの学校で唯一の男子生徒ということになります」

 

 会長が説明を始める。

 

 「最初に念を押しておきますが、不純な行動は絶対に許しません。それを肝に銘じておくように」

 

 「分かりました」

 

 要はセクハラとかするなってことか・・・まぁするつもりも無いので問題無い。

 

 え?自称・堕天使?堕天使は人間じゃないし、セクハラにならないから。

 

 「・・・まぁ、誰かと交際するのは絢瀬さんの自由ですので。校内で破廉恥な行動をしないかぎり、私が何か言うことはありませんわ。ですが学生という立場上、節度を持った交際をしていただかないと困りますわね」

 

 どうやら会長は、結構お堅い人物のようだ。

 

 ひょっとして、名家の令嬢とかなのではないだろうか・・・

 

 「まぁそこは気を付けていただくとして・・・とりあえず絢瀬さんには、生徒会に所属していただくことになります。そこで生徒会の仕事をしてもらいつつ、学校に慣れていただきたいのです。勿論、私も全力でサポートさせていただきますので」

 

 「心強いです」

 

 これは偽らざる本音だった。男子生徒が一人しかいない環境で、生徒会長のサポートがあるのは正直嬉しい。

 

 「とまぁ、説明することと言ったらこれぐらいなのですが・・・絢瀬さんの方から何か質問等はありますか?」

 

 「そうですねぇ・・・」

 

 今のところ、これといって気になることもない。強いて言うなら・・・

 

 「質問というか・・・お願いでも良いですか?」

 

 「何でしょう?」

 

 「出来たらで良いんですけど・・・苗字じゃなくて、名前で呼んでいただきたいなと」

 

 「はい?」

 

 首を傾げる会長。そりゃそういう反応するよね・・・

 

 「いえ、大した理由は無いんです。今までずっと周りから、名前で呼ばれることが多かったので・・・これから生徒会でお世話になるわけですし、出来ればそうしていただけると嬉しいかなぁって」

 

 本当に大した理由じゃないよな、コレ。そんなことを思っていると・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 会長が急に笑い出す。あれ、何かおかしいこと言ったかな・・・

 

 「あぁ、ごめんなさい。恐る恐るといった感じでしたので、何をお願いされるのかと思ったら・・・そんなことで良いんですの?」

 

 会長はひとしきり笑うと、立ち上がって手を差し出してきた。

 

 「これからよろしくお願いしますわね・・・天さん」

 

 ニッコリと笑う会長。どうやら、思ったほどお堅い人では無かったらしい。

 

 俺は差し出された手を握った。

 

 「よろしくお願いします、会長」

 

 「ダイヤ、で結構ですわ」

 

 「え?」

 

 思わず驚いてしまう。まさか会長からそんなことを言われるとは・・・

 

 「あら、私だけ名前で呼ばせるつもりですの?」

 

 悪戯っぽく笑う会長。こんな表情もする人なんだな・・・

 

 「・・・まさか。よろしくお願いします、ダイヤさん」

 

 「よろしい」

 

 満足気な笑みを浮かべるダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・落ち着かないなぁ」

 

 自分の席に座り、溜め息をつく俺。その原因は・・・

 

 「「「「「じ~っ・・・」」」」」

 

 クラスの女子達からの視線だった。

 

 ダイヤさんとの話が終わった後、入学式に出席したのだが・・・唯一の男子生徒ということで、その時点で周りからの注目を集めていた。

 

 そして入学式終了後、教室に移動してもこうして好奇の視線に晒されている。ある程度予想はしていたが、これは想像以上に気まずい。

 

 どうしたものかと頭を悩ませていると・・・

 

 「これ、食べるずら?」

 

 「あ、どうも・・・」

 

 左の席の女の子が、美味しそうな飴を差し出してくれる。俺はお礼を言いながらそれを受け取って・・・

 

 ずら?

 

 「え、ずら丸!?いつの間に!?」

 

 「今頃気付いたずら!?」

 

 俺の左隣の席に座っていたのは、俺をルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』から守ってくれたずら丸だった。

 

 「同じクラスだったんだ!?」

 

 「そもそも一クラスしかないずら」

 

 「あ、そうだった・・・」

 

 この学校は生徒数が少ないから、各学年一クラスずつしかないんだっけ・・・

 

 「っていうか、マルの名前はいつから『ずら丸』になったずら?」

 

 「いや、何となく思いついたあだ名なんだけど・・・花丸っていうんだっけ?」

 

 「うん、国木田花丸ずら」

 

 「そっか、よろしくずら丸」

 

 「無視ずら!?」

 

 何だろう、何故か『ずら丸』ってしっくりくるんだよね・・・

 

 「あ、俺は絢瀬天。天でいいからね」

 

 「じゃあ『そらまる』で・・・」

 

 「うん、それはダメ」

 

 何かよく分かんないけど、それは誰かと被ってる気がするのでダメだ。

 

 「あれ、ちょっと待って・・・一クラスしかないってことは、ルビィちゃんとやらと自称・堕天使も同じクラス?」

 

 「ルビィちゃんならここにいるずら」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 後ろの席を指差すずら丸。そこには、縮こまって涙目で座っているルビィちゃんとやらの姿があった。

 

 「えーっと・・・よろしくね?」

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 震えているルビィちゃんとやら。俺、嫌われてるのかな・・・

 

 「げ、元気出すずら!そのうち慣れるずら!」

 

 落ち込む俺を見て、ずら丸が慌てて励ましてくれる。良い奴だな、ずら丸・・・

 

 「あ、ちなみに善子ちゃんならあそこずら!」

 

 ずら丸が指差した方を見ると・・・今朝の痛々しい振る舞いとは打って変わって、優雅に笑みを浮かべて席に座っている自称・堕天使がいた。

 

 「・・・誰?」

 

 「一応善子ちゃんのはず・・・ずら」

 

 なるほど、黙っていれば美少女だな・・・

 

 そんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。

 

 「は~い、席に着いて下さいね~」

 

 のんびりとした口調で呼びかける先生。

 

 「コホンッ。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。このクラスの担任を務めることになりました、赤城麻衣です。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる赤城先生。

 

 「それではまず、皆さんにも自己紹介をしてもらいたいと思います。とりあえず出席番号順で・・・絢瀬くん、お願い出来ますか?」

 

 「え、俺が出席番号一番ですか!?」

 

 何てこった・・・全然気付かなかった・・・

 

 「確かに入学式の列は先頭だったし、教室でも一番端の列の一番前の席だけど・・・まさか一番だったなんて・・・」

 

 「逆に何で気付かなかったずら!?」

 

 ずら丸のツッコミ。いやホント、何で気付かなかったんだろう・・・

 

 席を立ち上がって教壇に立つと、クラス中の視線が俺に突き刺さった。

 

 や、やり辛い・・・

 

 「・・・初めまして、絢瀬天です。この学校で唯一の男子ということで、色々とご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが・・・仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる。すると・・・

 

 「よろしくずら~!」

 

 ずら丸が笑顔で拍手してくれた。後ろにいるルビィちゃんとやらや、すまし顔をしていた自称・堕天使もおずおずと拍手してくれている。

 

 それをキッカケに、他の皆も笑みを浮かべて拍手してくれた。

 

 「よろしくね~!」

 

 「よっ、唯一の男子!」

 

 あっ、ヤバい泣きそう・・・皆が温かくて泣きそう・・・

 

 「良かったずらね、天くん」

 

 席に戻ると、ずら丸が笑顔で出迎えてくれた。天使や・・・

 

 「・・・ありがとう、ずら丸。ルビィちゃんとやらもありがとね」

 

 「・・・ぴぎっ」

 

 恐る恐る小さく頷くルビィちゃんとやら。

 

 自称・堕天使の方にも口パクで『ありがとう』と伝えると、照れたように顔をふいっと背けてしまった。素直じゃないだけで、本当は良い子なんだろうな・・・

 

 その後も自己紹介は続いていき、ずら丸やルビィちゃんとやらの自己紹介も終わった。

 

 そして・・・

 

 「フッ・・・堕天使ヨハネと契約して、貴女も私のリトルデーモンになってみない?」

 

 自称・堕天使が思いっきりやらかした。クラスの皆が唖然とする中、やらかしたと気付いた自称・堕天使の表情が強張る。

 

 「ピ・・・ピ~ンチッ!?」

 

 教室から逃走していていく自称・堕天使。

 

 「・・・リトルデーモンって何?」

 

 「・・・オラには分からないずら」

 

 「・・・ぴぎぃ」

 

 それを呆然と見送る俺、ずら丸、ルビィちゃんとやらなのだった。




どうも~、ムッティです。

ノリと勢いで書き始めたこの小説ですが、早くもお気に入りに登録してくださった方々がいらっしゃいます。

本当にありがとうございます。

執筆はある程度まで進んでいるので、今後も続けていきたいところです。

とりあえず早くヒロインを決めてイチャつかせたい。

その為に書いていると言っても過言ではないです←

皆さん、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夢を語る人はいつだって眩しい。

sweet ARMSさんの『I swear』が頭から離れない今日この頃。

『デート・ア・ライブ』の主題歌といえば、やっぱりsweet ARMSさんですよね。


 「え、ルビィちゃんとやらはダイヤさんの妹なの!?」

 

 「う、うん・・・」

 

 小さく頷くルビイちゃんとやら。

 

 学校も終わり、俺はずら丸やルビィちゃんとやらと帰りのバスに乗っていた。

 

 「マジか・・・苗字が黒澤で名前も宝石繋がりだから、凄い偶然だなと思ったら・・・」

 

 「何で天くんはそこで気付かないずら・・・」

 

 呆れているずら丸。

 

 「黒澤家は旧網元の家系で、この辺りで一番の名家ずら」

 

 「あぁ、道理で・・・」

 

 それなら、ダイヤさんのあの立ち居振る舞いも納得だな・・・

 

 「それよりマルは、善子ちゃんが心配ずら」

 

 「あぁ、大丈夫かなあの子・・・」

 

 あの後、自称・堕天使は帰ってこなかった。恐らく戻り辛かったんだろうけど・・・

 

 唖然としていたクラスの皆も、結構心配していた。

 

 「明日あの子が来たら、ちゃんと話したいな。俺も仲良くなりたいし」

 

 「天くん・・・ありがとうずら。きっと善子ちゃんも喜ぶずら」

 

 笑みを浮かべるずら丸。

 

 そんな話をしているうちに、俺が降りる予定のバス停に到着した。俺は席を立つと、ずら丸とルビィちゃんとやらに手を振る。

 

 「じゃあ二人とも、また明日」

 

 「また明日ずら」

 

 ずら丸が手を振り返してくれる中、ルビィちゃんとやらは恐る恐る小さく頭を下げていた。

 

 俺が苦笑しながらバスを降りようとすると・・・

 

 「っ・・・あ、あのっ!」

 

 ルビィちゃんとやらが声を上げた。驚いて振り向くと、ルビィちゃんとやらが顔を真っ赤にしていた。

 

 「ま・・・また明日・・・」

 

 小さく手を振ってくれる。どうやら、ずいぶん勇気を出してくれたみたいだ。

 

 「うん、また明日ね」

 

 笑顔で手を振り返す。恥ずかしそうに小さく笑うルビィちゃんとやらなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・で、何してんですか貴女達は」

 

 「面目ない・・・」

 

 「ごめんなさい・・・」

 

 呆れた視線を向ける俺の前では、高海先輩と赤紫色のロングヘアの女の子がずぶ濡れで凍えていた。

 

 いやぁ、ビックリしたよね。ルビィちゃんとやらにほっこりしながらバスを降りて歩いてたら、すぐ側の海で凄い悲鳴と凄い水音がするんだもん。急いで駆けつけてみたら、高海先輩とこの女の子がプカプカ海に浮いてるし・・・

 

 しかも高海先輩はともかく、この女の子はスクール水着を着ている。エロいな・・・

 

 じゃなくて、どう見ても自分から海に入ろうとしていた感じだ。

 

 「まだ四月ですよ?沖縄じゃないんですから、そりゃあ寒さで凍えますって」

 

 「反省してます・・・」

 

 うなだれる女の子。呆れて溜め息をついていると、ふと女の子の近くに置いてある制服が目に入った。

 

 これって・・・

 

 「・・・ひょっとして、音ノ木坂の生徒さんですか?」

 

 「えっ・・・」

 

 驚いたような表情の女の子。

 

 「どうしてそれを・・・」

 

 「それ、音ノ木坂の制服ですよね?タイの色が青ってことは、一年生ですか?」

 

 「・・・今月から二年生。音ノ木坂は先月いっぱいで転校して、二年生に上がる今月からこの近くの高校に転入することになってて」

 

 「ねぇねぇ、音ノ木坂ってどこの学校?」

 

 俺の制服の袖を引っ張ってくる高海先輩。えっ・・・

 

 「高海先輩、スクールアイドルやろうとしてるのに知らないんですか?」

 

 「え?スクールアイドルと関係ある学校なの?」

 

 「超有名なスクールアイドルが在籍していた、東京の高校ですよ」

 

 「えぇっ!?東京!?」

 

 「そこに驚くんですか?」

 

 ダメだ、この人の判断基準が分からん。まぁそれは置いとくとして・・・

 

 「どうして海に入ろうとしてたんですか?」

 

 「・・・海の音が聞きたくて」

 

 「デジタル配信されてるんで、ダウンロードして聴いて下さい」

 

 「それ多分『海の声』よね?」

 

 「桐●健太さんのファンなんですね、分かります」

 

 「いや違うから。最後まで話聞いてくれる?」

 

 女の子は一通りツッコミを入れると、ポツポツと語り出した。

 

 「・・・私、ピアノで曲を作ってるの。でも、海の曲のイメージが浮かばなくて・・・」

 

 「それで海に潜って、音を聴こうとしていたと・・・」

 

 コクリと頷く女の子。一方、高海先輩は目を輝かせていた。

 

 「作曲してるの!?凄いね!」

 

 「・・・べ、別に凄いことじゃないけど」

 

 照れたように顔を背ける女の子。この感じ・・・

 

 「・・・似てるな」

 

 「似てる?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 「ねぇねぇ、誰かスクールアイドル知ってる!?東京だと有名なアイドルたくさんいるでしょ!?」

 

 「・・・スクールアイドルって何?」

 

 「えぇっ!?スクールアイドル知らないの!?」

 

 驚愕のあまり叫ぶ高海先輩。おいおいマジか・・・

 

 「音ノ木坂の生徒なら、絶対に語り継がれているであろうスクールアイドルがいるはずなんですけど・・・」

 

 「私ずっとピアノばかりやってきたから、そういうの疎くて・・・スクールアイドルって有名なの?」

 

 「有名なんてもんじゃないよ!?ドーム大会が開かれるほど超人気なんだよ!?」

 

 興奮しながら語る高海先輩。ポケットからスマホを取り出し、画面を見せる。そこに映っていたのは・・・

 

 音ノ木坂の制服を着て踊る、九人組のスクールアイドルだった。

 

 「何で気付かないんですか、この鈍感オレンジヘッド」

 

 「今何で罵倒されたの私!?」

 

 「高海先輩、その人達の制服を見て気付きません?」

 

 「あ、この制服?可愛いよね~!」

 

 「スマホ壊して良いですか?」

 

 「急に攻撃的になったね!?ホントどうしたの!?」

 

 「この制服、音ノ木坂の・・・」

 

 「・・・あっ」

 

 女の子の指摘に、高海先輩がようやく気付く。

 

 そして女の子の近くに置かれた制服に目をやり、スマホの画面に目をやり、最後に俺を見る。

 

 「えっ、じゃあこの人達って・・・」

 

 「・・・かつて音ノ木坂に在籍していた人達です」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 高海先輩の絶叫。今さらですかそうですか。

 

 「じゃあこの子、この人達と同じ学校にいたってこと!?」

 

 「だから最初からそう言ってるでしょうが」

 

 「ねぇねぇ、どんな人達なの!?」

 

 「い、いや・・・会ったことないけど・・・」

 

 「もう卒業してますよ、その人達」

 

 「えぇ・・・何だぁ・・・」

 

 がっくりうなだれる高海先輩。いやいやいや・・・

 

 「っていうか、何でその人達のことは知ってるのに音ノ木坂は知らないんですか」

 

 「いやぁ、知ったのつい最近でさぁ・・・」

 

 苦笑する高海先輩。その場から立ち上がり、海へと視線を向ける。

 

 「・・・私ね、普通なの。普通星に生まれた普通星人で、どんなに変身しても普通なんだって・・・そう思ってた」

 

 寂しそうに笑う高海先輩。

 

 「それでも何かあるんじゃないかって期待してたんだけど、何もなくて・・・気付いたら高校生になってた」

 

 そこで言葉を切ると、おどけるように『ガオーッ!』とポーズをとる。

 

 「このままじゃ普通星人を通り越して、普通怪獣ちかちーになっちゃうううううっ!?」

 

 「うなじ削ぎましょうか?」

 

 「それ怪獣じゃなくて巨人の駆逐方法だよね!?っていうか駆逐しないでよ!?」

 

 高海先輩はツッコミを入れると、面白そうに笑って空を見上げた。

 

 「そんな風に思ってた時に、出会ったの・・・あの人達に」

 

 目を輝かせる高海先輩。

 

 「動画を見て『何じゃこりゃあああああっ!?』ってなって、気付いたら全部の曲を聴いてた。毎日動画を見て、曲を覚えて・・・そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張ってみたい、この人達が目指したところを私も目指したい。私も・・・輝きたい、って」

 

 「それでスクールアイドルを・・・」

 

 気付くと、高海先輩の言葉に引き込まれてしまっていた。輝きたい、か・・・

 

 「・・・ありがとう」

 

 女の子が微笑みながら呟く。

 

 「今の話聞いてたら・・・何か、頑張れって言われた気がする。スクールアイドル、なれると良いわね」

 

 「うんっ!」

 

 女の子の言葉に、笑顔で頷く高海先輩。

 

 「あっ、自己紹介がまだだったね・・・私は高海千歌。あそこの丘にある、浦の星女学院っていう高校の二年生。そこの男の子は絢瀬天くんで、同じ高校の一年生なの」

 

 「えっ・・・女子校よね・・・?」

 

 「共学化に向けてのテスト生です」

 

 「あっ、なるほど・・・」

 

 高海先輩や渡辺先輩に出会った時のような失態を犯さないよう、端的な説明を考えといて良かった・・・

 

 「タイの色だけで音ノ木坂の学年が分かるみたいだし・・・ひょっとしたら、女子校好きの変態なんじゃないかって思っちゃった」

 

 「ちょっと海に身投げしてきますね」

 

 「わーっ!?ストップストップ!?」

 

 必死に俺を止める高海先輩。その様子にひとしきり笑った女の子が立ち上がる。

 

 「じゃあ明日から高海さんは同級生、絢瀬くんは後輩ってことになるわね」

 

 「「・・・え?」」

 

 同時にポカンとする俺達。そんな俺達を見て、悪戯っぽく笑う女の子なのだった。

 

 「私は桜内梨子。明日から浦の星女学院に転入する予定だから、よろしくね」




どうも~、ムッティです。

新成人の皆様、おめでとうございます。

これからは大人としての自覚を持って…なんて、そんな偉そうなことを言える立場ではないので言いません(笑)

お互い人生を楽しみましょうね(^^)

さっきニュースで見ましたが、東京都の豊島区では『アニメで祝う成人式』が行われたんだとか。

…豊島区で成人を迎えたかった(涙)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

損な役回りなど誰もやりたくはない。

両腕とも筋肉痛・・・

日頃の運動不足を痛感するわ・・・


 翌日・・・

 

 「あ、ずら丸とルビィちゃんとやら。おはよう」

 

 「おはようずらぁ・・・」

 

 「お・・・おはよう・・・」

 

 浦の星行きのバスに乗ると、ずら丸とルビィちゃんとやらが一番後ろの席に座っていた。

 

 「ずら丸はずいぶん眠そうだね?」

 

 「つい読書に夢中になって、夜更かししちゃったずら・・・」

 

 欠伸を噛み殺すずら丸。よほど眠いようだ。

 

 「学校に着くまで寝てたら?寄りかかっても良いよ?」

 

 「じゃあお言葉に甘えるずらぁ・・・」

 

 隣に座った瞬間、俺の右肩に頭をコテッと乗せるずら丸。そのまま俺の右半身に体重を預けてくる。

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「・・・寝るの早いな」

 

 苦笑しながら、ずら丸の右隣に座っているルビィちゃんとやらの方を見ると・・・

 

 「ぴぎっ!?」

 

 視線が合い、慌てて逸らすルビィちゃんとやら。どうやらまだ慣れないらしい。

 

 ふとルビィちゃんとやらのバッグに目をやると、女の子の顔が写った缶バッジが付いていることに気付いた。あれって・・・

 

 「・・・もしかしてルビィちゃんとやら、スクールアイドル好きなの?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせるルビィちゃんとやら。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「いや、その缶バッジ・・・小泉花陽ちゃんだよね?」

 

 「っ!?分かるの!?」

 

 「うん、μ'sのメンバーでしょ?」

 

 μ'sというのは、例の音ノ木坂に在籍していたスクールアイドルグループの名前だ。

 

 そのグループを結成していた九人の内の一人・・・それが缶バッジに写っている女の子、小泉花陽ちゃんなのである。

 

 「μ'sを知ってるの!?」

 

 「そりゃあ知ってるよ。有名なグループだもん」

 

 目を輝かせるルビィちゃんとやら。これは高海先輩と話が合いそうだ。

 

 「推しメンっている!?」

 

 「俺は東條希ちゃんかな。包容力のある感じが好きなんだよね」

 

 「分かる!大人の女性って感じがするよね!」

 

 「そうなんだよ。ルビィちゃんとやらは、花陽ちゃん推しなの?」

 

 「そうなの!可愛くて憧れてるんだ!」

 

 よほど好きなのか、表情が活き活きとしているルビィちゃんとやら。ちょっと引っ込み思案だけど、こういう一面もあるんだな・・・

 

 「絢瀬くんは、μ'sの曲で好きな曲ってある!?」

 

 「んー、やっぱり『Snow halation』かなー。っていうか、天で良いよ?俺も何だかんだ、ルビィちゃんとやらのこと名前で呼んじゃってるし」

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「勿論。っていうか、俺もそろそろ普通にルビィちゃんって呼んで良い?『とやら』って付けるの大変で・・・」

 

 俺の言葉にポカンとしていたルビィちゃんとやらだったが、やがてクスクス笑い出す。

 

 「フフッ・・・最初から普通に呼んでくれて良かったのに」

 

 「いきなり下の名前で呼ぶのも図々しいかなって思ってさ」

 

 「その割には、ほぼ下の名前で呼んでたよね?」

 

 「・・・まぁ確かに」

 

 ルビィちゃんとやらはひとしきり笑うと、おずおずと手を差し出してきた。

 

 「えっと、昨日はちゃんと自己紹介できなかったけど・・・黒澤ルビィです。よろしくね・・・天くん」

 

 高海先輩に触れられただけで叫んでしまっていたこの子が、勇気を出して手を差し出してくれている。やはり少し怖いのか、若干手が震えていた。

 

この勇気に、俺はちゃんと応えないといけないな・・・

 

 「・・・改めまして、絢瀬天です。よろしくね・・・ルビィちゃん」

 

 差し出された手をそっと握り、握手を交わす。

 

 視線が合った俺達は、お互い照れ笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「この学校には、スクールアイドルは必要無いからですわ!」

 

 「だからどうしてですか!?」

 

 「・・・俺のほっこりした朝を返して下さい」

 

 げんなりしてしまう俺。

 

 ダイヤさんからの連絡で生徒会室へ行くと、ダイヤさんと高海先輩が顔を突き合わせて言い争いをしていた。渡辺先輩が、少し離れたところでおろおろしている。

 

 「渡辺先輩、何があったんですか?」

 

 「わ、私もスクールアイドル部に入ることにしたんだけど・・・申請書を出しに来たら却下されちゃって・・・」

 

 「・・・あぁ、なるほど」

 

 出来ればスルーしたいけど、渡辺先輩も困ってるみたいだし・・・俺が止めるしかないのか・・・

 

 俺は溜め息をつくと、二人の間に入った。

 

 「はいはい、そこまでにしましょうね」

 

 「絢瀬くん!?」

 

 「天さん!?」

 

 ようやく俺の存在に気付いたようで、驚いている二人。やれやれ・・・

 

 「とりあえず高海先輩、この件に関しては貴女が悪いです」

 

 「えぇっ!?何で!?」

 

 「渡辺先輩が入っても、部員は二人だけじゃないですか。最低でも五人必要だっていう話、忘れたわけじゃないでしょう?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「まずは部員を五人集めてから、申請書を提出しに来るべきです。そこで認められないと言われたら、その時いくらでも抗議したら良いでしょう。高海先輩は昨日、ダイヤさんのことを横暴だと言いましたけど・・・条件を満たせていないのに抗議している今の貴女の方が、よほど横暴だと俺は思います」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛む高海先輩。

 

 「それからダイヤさん、貴女も大概ですよ」

 

 「なっ!?私もですか!?」

 

 「当たり前じゃないですか」

 

 冷たい目でダイヤさんを見る俺。

 

 「『認めない』とか『必要無い』とか・・・具体的な理由も言わずに生徒のやりたいことを否定するなんて、それが生徒会長のやる事ですか?」

 

 「っ・・・それは・・・!」

 

 「まぁ今はいいです。高海先輩が申請条件を満たせていませんから。ですが、もしちゃんと条件を満たした上で申請に来たら・・・今みたいな態度は許されませんからね?」

 

 俯いてしまうダイヤさん。

 

 少し言い過ぎたかもしれないが、こういうことはハッキリさせておかないといけない。

 

 「・・・渡辺先輩、高海先輩を連れて行ってもらって良いですか?生徒会の仕事のことで、ダイヤさんから話があるみたいなので」

 

 「分かった。千歌ちゃん、行こう?」

 

 「うん・・・」

 

 渡辺先輩が高海先輩の手を引いて、生徒会室を出て行く。

 

 謝罪の意味を込めて軽く頭を下げると、渡辺先輩は苦笑しながら手を振ってくれた。高海先輩のアフターケアは、渡辺先輩に任せて良いだろう。

 

 問題は・・・

 

 「・・・申し訳ありませんでした」

 

 俯いたまま、小さな声で謝るダイヤさん。

 

 「生徒会長として、不適切な態度でしたわ・・・ですが、私は・・・」

 

 「・・・何か理由があるんでしょう?」

 

 「っ!?」

 

 驚いたように顔を上げるダイヤさん。

 

 「俺だって、ダイヤさんが何の理由も無くあんなこと言ってるなんて思ってませんよ。昨日知り合ったばかりですけど、それくらいは分かってるつもりです」

 

 この学校の生徒のことを、とても大事に思っている・・・そのことは、昨日話をさせてもらってよく分かった。

 

 スクールアイドルを否定するのは、きっと何かしらの理由があってのことだと思う。

 

 「無理に話せなんて言いませんけど、高海先輩の想いにはちゃんと向き合ってあげて下さい。じゃないと向き合ってもらえない高海先輩も、向き合うことをしないダイヤさんも・・・二人とも苦しい思いをしますから」

 

 「天さん・・・」

 

 「・・・なんて、ちょっと柄にもないこと言っちゃいましたね。さっきもキツい言い方をしてしまって、すみませんでした」

 

 少なくとも、先輩に対してとるべき態度ではなかったしな・・・

 

 頭を下げると、ダイヤさんが慌てていた。

 

 「そ、天さんが謝る必要はありませんわ!悪いのは私なのですから!」

 

 「ですよね。悪いのはダイヤさんですよね」

 

 「急に態度が変わりましたわね!?」

 

 「人の足元を見る男、それが俺です」

 

 「ただの最低な人間じゃないですか!?」

 

 「そうですけど。それが何か?」

 

 「開き直りも甚だしいですわよ!?」

 

 全力ツッコミにより、息切れしているダイヤさん。ようやく本調子に戻ったようだし、この辺にしておくか・・・

 

 「ところでダイヤさん、俺に何か用があったんじゃないですか?」

 

 「ハッ!?そうでしたわ!」

 

 ようやく本題を思い出したらしいダイヤさん。

 

 「実は今日から転入してくる生徒がいて、もうすぐ生徒会室に来る予定なのです。せっかくですので、天さんにも立ち会っていただこうと思いまして」

 

 「あぁ、桜内梨子さんですね」

 

 「えぇ、桜内梨子さん・・・って何で知ってますの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そういった事情が・・・って通じるわけないでしょう!?それで通じるのはアニメやマンガの世界だけですわよ!?」

 

 「おぉ、見事なノリツッコミ」

 

 「させないで下さいます!?」

 

 そんなやり取りをしていると、生徒会室のドアをノックする音がした。

 

 「どうぞ」

 

 「失礼します」

 

 入ってきたのは、やはり桜内さんだった。緊張しているのか、少し表情が強張っている。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「特技はピアノですよね」

 

 「そう、特技はピアノ・・・って絢瀬くん!?」

 

 「どうも」

 

 にこやかに手を振ってみる。桜内さんは唖然としていた。

 

 「な、何でここに・・・」

 

 「俺、生徒会長の下僕なんで」

 

 「下僕!?」

 

 「誤解を生む発言は止めて下さいます!?」

 

 ダイヤさんはツッコミを入れると、咳払いをしてから桜内先輩を見た。

 

 「コホンッ・・・初めまして、生徒会長の黒澤ダイヤですわ。天さんとはお知り合いのようですので紹介は省きますが、彼も生徒会の一員なのです」

 

 「そ、そうでしたか・・・」

 

 驚きながらも納得した様子の桜内さん。

 

 「これからよろしくお願いします、桜内さん・・・あ、桜内先輩か」

 

 「フフッ、どっちでも大丈夫よ。こちらこそよろしくね、絢瀬くん」

 

 「あ、できたら天って呼んで下さい。そっちの方が呼ばれ慣れてるので」

 

 「じゃあ天くんで。私のことも梨子で良いから」

 

 「了解です、梨子さん」

 

 「・・・コホンッ」

 

 再びダイヤさんの咳払いが入る。何故か少しモジモジしていた。

 

 「と、ところで桜内さん?貴女、音ノ木坂から転校してきたそうですわね?」

 

 「えぇ、そうですけど・・・」

 

 「音ノ木坂には有名なスクールアイドルグループがいたと噂に、あくまでも噂に聞いていますが・・・お会いしたことはありまして?」

 

 「いえ、残念ながらありません。私はずっとピアノしかやってこなかったので、そういったことには疎くて・・・スクールアイドルというのも、昨日初めて知ったくらいです」

 

 「そ、そうですか・・・」

 

 明らかに肩を落とすダイヤさん。あれ、もしかしてダイヤさん・・・

 

 「そ、それでは!いくつか注意事項を説明させていただきますわ!」

 

 慌てて切り替えるダイヤさんに、疑惑の眼差しを向ける俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく天とルビィちゃんの距離が少し縮まりましたね。

ちなみに天を希ちゃん推しにしたのは、作者が希ちゃん推しだからです(笑)

いやぁ、可愛いですよね希ちゃん。

しかも大きいし・・・何がとは言わないけど。

さて、梨子ちゃんも転入してきたわけですが・・・

果たして果南ちゃんと鞠莉ちゃんはいつ出せるのか・・・

早く出したいところですね。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

礼儀正しい人ほど怒ると怖い。

沼津に行ってみたいなぁ・・・

聖地巡礼とかやってみたい。


 「善子ちゃん、来なかったずら・・・」

 

 帰りのバスを待ちながら、肩を落とすずら丸。

 

 結局今日、自称・堕天使が学校に来ることは無かった。よほど昨日のことを引きずっているんだろうか・・・

 

 「連絡先って分かんないの?」

 

 「分からないずら。家は・・・変わってないなら覚えてるずら」

 

 「じゃあもう少し待ってみて、何日経っても来ないようなら家に行ってみようか。俺も付き合うからさ」

 

 「勿論ルビィも行くよ」

 

 「天くん、ルビィちゃん・・・」

 

 涙目のずら丸。俺はずら丸の頭を撫でた。

 

 「ホント優しいな、ずら丸は」

 

 「友達の心配をするのは当たり前ずら」

 

 そんな会話をしていると・・・

 

 「あっ、絢瀬くん・・・」

 

 「え?」

 

 不意に名前を呼ばれたので振り向くと、高海先輩と渡辺先輩がいた。二人もちょうど帰るところらしい。

 

 今朝のこともあって、高海先輩は気まずそうな顔をしている。俺は二人に歩み寄ると、頭を下げた。

 

 「高海先輩、今朝はキツい言い方をしてしまってすみませんでした。渡辺先輩も、不快な思いをさせてしまってすみません」

 

 「そんな!?」

 

 「頭上げてよ!?」

 

 慌てる高海先輩と渡辺先輩。

 

 「私がいけなかったんだよ!絢瀬くんの言う通り、ちゃんと五人集めてから申請書を出しに行くべきだったのに・・・ごめんなさい!」

 

 「あの場に最初からいた私が、千歌ちゃんと生徒会長の間に入らなきゃいけなかったんだよ!なのに嫌な役を絢瀬くんに押し付ける形になっちゃって・・・本当にごめん!」

 

 「ですよね。じゃあお二人が悪いということで」

 

 「「掌返し!?」」

 

 「冗談ですよ」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 「これ以上は、お互い謝り続けることになりますから・・・この話はこれで終わりにしませんか?」

 

 「絢瀬くん・・・うん!」

 

 「そうしよっか!」

 

 笑みを浮かべる二人。良かった、どうやら一件落着のようだ。

 

 「天くん、先輩達とケンカでもしてたずら?」

 

 いつの間にか、ずら丸が俺の隣に立っていた。

 

 「まぁ色々あったんだよ、色々」

 

 「あっ、入学式の時の可愛い子!」

 

 高海先輩が顔を輝かせる。

 

 「こんにちは、国木田花丸っていいます」

 

 「私は高海千歌!よろしくね!」

 

 「渡辺曜であります!ヨーソロー!」

 

 ずら丸達が自己紹介しあう中、ルビィちゃんは俺の背中から顔を覗かせていた。

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 「あっ、花丸ちゃんと一緒にいた子!」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 俺の背中に隠れるルビィちゃん。あれ、これってずら丸の役割だった気が・・・

 

 「絢瀬くん、ずいぶん懐かれたね?」

 

 「まぁ色々あったんですよ、色々」

 

 渡辺先輩の言葉に、苦笑しながら返す俺。

 

 「あ、この子は黒澤ルビィちゃんです。ダイヤさんの妹なんですよ」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 驚愕している二人。まぁ何と言うか、対照的な姉妹だもんなぁ・・・

 

 「花丸ちゃん、ルビィちゃん、スクールアイドルやってみない!?」

 

 「マルはちょっと・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 首を横に振る二人。高海先輩がうなだれる。

 

 「えぇ・・・絶対人気出るのにぃ・・・」

 

 「それより、高海先輩と渡辺先輩は作曲って出来るんですか?」

 

 俺はそこが気になっていた。高海先輩か渡辺先輩、どちらかが音楽をやっていたりするんだろうか・・・

 

 「作曲?出来ないよ?」

 

 「私も出来ないなぁ」

 

 「えっ・・・」

 

 呆然としてしまう俺。おいおい・・・

 

 「・・・どうするつもりなんですか?」

 

 「え?スクールアイドルって作曲できないとマズいの?」

 

 「・・・マジかぁ」

 

 俺は頭を抱えてしまった。どうやらこの二人は知らないらしい。

 

 「え、何?どういうこと?」

 

 「・・・スクールアイドルをやるということは、ラブライブを目指すわけですよね?」

 

 「そりゃあ当然だよ!」

 

 大きく頷く高海先輩。

 

 ラブライブというのは、スクールアイドルの頂点を決める大会のことだ。その規模は凄まじく、決勝はドームで行なわれるほどである。

 

 しかしそんなラブライブには、出場する為の絶対条件が存在するのだ。

 

 「・・・ラブライブで披露する曲は、オリジナルの曲じゃないといけないんですよ」

 

 「「・・・えっ」」

 

 「しかも予選から始まって決勝まで進んだ場合、当然一曲だけでは足りません。複数のオリジナルの曲が必要になります。厳密に言えば、オリジナルなら同じ曲を繰り返し披露しても問題はありませんが・・・同じパフォーマンスの繰り返しで勝ち進めるほど、ラブライブは甘くないです」

 

 俺の説明に、顔色が悪くなっていく高海先輩と渡辺先輩。

 

 「・・・つまり作曲が出来ないと、ラブライブに出場することも出来ないってこと?」

 

 「そういうことです」

 

 頷く俺。

 

 俺の背中に隠れているルビィちゃんも、うんうんと頷いていた。流石スクールアイドルが好きなだけあって、この条件を知っていたらしい。

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「早くも夢が断たれた・・・」

 

 その場にへたり込む二人。アララ・・・

 

 「まぁでも、お二人が作曲出来なくても大丈夫じゃないですか?要は作曲出来る人を探せば良いわけですし」

 

 「そうは言ってもさぁ・・・浦の星に作曲が出来る人なんて・・・」

 

 「梨子さんがいるじゃないですか」

 

 「・・・え?」

 

 ポカンとしている高海先輩。

 

 「いや、桜内梨子さんですよ。今日二年生のクラスに転入してきた人です。昨日言ってたじゃないですか。ピアノで曲を作ってるって」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 叫ぶ高海先輩。完全に忘れてたなこの人・・・

 

 「そうだよ!桜内さんがスクールアイドル部に入ってくれたら解決するじゃん!」

 

 「でも千歌ちゃん、今日誘って断られてたよね?」

 

 「もう誘ってたんですか・・・」

 

 「いやぁ、可愛かったからつい・・・」

 

 頭を掻きながら苦笑する高海先輩。行動早いなこの人・・・

 

 「スクールアイドル部には入ってくれないとしても、曲だけでも依頼してみたらどうですか?まぁ梨子さんにも都合があるでしょうし、引き受けてくれるとはかぎりませんけど」

 

 「それ名案だよ!ありがとう絢瀬くん!」

 

 はしゃいでいた高海先輩だったが、ふと気付いたように俺を見た。

 

 「あれ?絢瀬くん、桜内さんのこと名前で呼んでるの?」

 

 「えぇ。俺のことは天で良いって言ったら、梨子さんも名前呼びで良いって」

 

 「えぇっ!?私は絢瀬くんからそんなこと言われてないんだけど!?」

 

 「私もだよ!?」

 

 「そうでしたっけ?」

 

 そういえば、何だかんだで二人には言ってなかった気がする・・・

 

 結局この後散々『不公平だ!』と言われ、二人とも俺のことを『天くん』と呼ぶようになった。

 

 そして俺も高海先輩を『千歌さん』、渡辺先輩を『曜さん』と呼ぶことになるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「で、また断られたんですか?」

 

 「そうなんだよねぇ・・・」

 

 溜め息をつく千歌さん。あれから数日間、千歌さんはひたすら梨子さんにアタックしているそうだが・・・

 

 答えはノー。梨子さん曰く、『そんな暇は無い』らしい。

 

 「もうちょっとな気がするんだけどねぇ・・・『ごめんなさい!』だったのが、『・・・ごめんなさい』に変わったし」

 

 「いや、単に迷惑してるだけでしょ。段々うざくなってきてるだけでしょ」

 

 「アハハ・・・やっぱり天くんもそう思う?」

 

 苦笑している曜さん。やはり千歌さんが鈍感なだけのようだ。

 

 「・・・貴女達」

 

 ダイヤさんがこめかみをピクピクさせている。

 

 「どうして生徒会室で雑談してますの!?」

 

 「花丸ちゃんから、天くんがここにいるって聞いたので」

 

 悪びれもせず答える千歌さん。

 

 放課後にダイヤさんと生徒会の事務作業をしていたところ、千歌さんと曜さんが生徒会室へ乱入してきたのだ。

 

 「天くんなら、何か良いアイデアがあるんじゃないかと思って」

 

 「天さんは生徒会の一員ですわよ!?巻き込むのはお止めなさい!」

 

 「まぁまぁ、とりあえず落ち着きましょう」

 

 苦笑しながらダイヤさんを宥める。

 

 「ちょっと休憩しましょうか。お茶でも淹れるので、千歌さんと曜さんも適当に座って下さい」

 

 「わーい!ありがとう!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「全く・・・天さんは甘すぎますわ」

 

 何とかダイヤさんが落ち着いたところで、俺はお茶の準備を始める。

 

 一方、千歌さんはダイヤさんにスクールアイドルへの情熱を訴えかけていた。

 

 「私はスクールアイドル部を作って、皆と一緒に輝いてみせます!」

 

 「ですから、まずは部員を五人揃えてから来て下さいと言っているでしょう?」

 

 「勿論です!今はまだ二人ですけど、『ユーズ』だって最初は三人だったんですから!」

 

 生徒会室の空気が凍った気がした。何故だろう、今ダイヤさんの方を見てはいけないような気がする。

 

 「知りませんか!?第二回ラブライブ優勝!音ノ木坂学院スクールアイドルグループ!その名も『ユーズ』!」

 

 いや、『ユーズ』って・・・マジですか千歌さん・・・

 

 「・・・千歌さん、あれ『ミューズ』って読むんですよ」

 

 「・・・えっ」

 

 俺の指摘に固まる千歌さん。

 

 「嘘・・・『ユーズ』じゃないの・・・?」

 

 「お黙らっしゃああああああああああいっ!」

 

 「「ひぃっ!?」」

 

 ダイヤさんの怒りが爆発した。千歌さんと曜さんが悲鳴を上げる。

 

 「言うに事欠いて名前を間違えるですって!?あぁん!?」

 

 ヤンキー化するダイヤさん。大和撫子はどこへ行ったんだ・・・

 

 「μ'sはスクールアイドル達にとっての伝説!聖域!聖典!宇宙にも等しき生命の源ですわよ!?その名前を間違えるとは片腹痛いですわ!」

 

 千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 ねぇ、やっぱりこの人スクールアイドル好きだよね?μ'sのファンだよね?

 

 「その浅い知識だと、たまたま見つけたから軽い気持ちで『マネをしてみよう』とか思ったのですね!?」

 

 「そ、そんなこと・・・!」

 

 「ならば問題です!μ'sが最初に九人で歌った曲は!?」

 

 「え、えーっと・・・」

 

 「第二回ラブライブ予選、μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は!?」

 

 「う、う~ん・・・」

 

 「第二回ラブライブ決勝、μ'sがアンコールで歌った曲は!?」

 

 「あ、それは知ってます!『僕らは今の中で』ですよね!?」

 

 「ではその『僕らは今の中で』の冒頭でスキップしている四名は!?」

 

 「えぇっ!?」

 

 「ぶっぶっぶー!ですわ!」

 

 再び千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 もう確定だよ。絶対μ'sのファンだよこの人。あまりの豹変ぶりに曜さんが引いてるよ。

 

 「こんなの基本中の基本ですわよ!?正解は・・・」

 

 「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫」

 

 「その通り・・・え?」

 

 驚いてこちらを振り向くダイヤさん。

 

 そんなダイヤさんをよそに、俺はお茶を注いだ湯呑みをテーブルに並べていく。

 

 「μ'sが最初に九人で歌った曲は、『僕らのLIVE 君とのLIFE』。通称『ぼららら』」

 

 ダイヤさんと一緒に食べようと思って持ってきた和菓子を皿に分けながら、ダイヤさんの問題に答えていく。

 

 「μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだのは、当時A-RISEが通っていた秋葉原UTXの屋上。ちなみにそこで披露した曲は、『ユメノトビラ』ですね」

 

 「あっ、私その曲大好き!」

 

 目を輝かせる千歌さん。

 

 「その曲を聴いて、スクールアイドルをやりたいって思ったの!」

 

 「あ、そうだったんですね」

 

 自分自身に悩んでいた千歌さんなら、確かに大きく心を揺さぶられてもおかしくない。それほど力の込められた歌詞が、この曲には詰まっている。

 

 「凄いね天くん・・・そんなスラスラ答えられるなんて・・・」

 

 「ダイヤさんの言う通り、これくらいは基本中の基本ですよ」

 

 唖然としている曜さんに、笑いながら答える俺。

 

 「μ'sに憧れてスクールアイドルをやるなら、もう少しμ'sのことを知っておいても損は無いと思いますよ?スクールアイドルとしてどういう軌跡を辿ったのか、参考になる点は色々あるでしょうし・・・はい、お茶の用意ができましたよ」

 

 「おぉ、美味しそうな和菓子!」

 

 「もらっちゃって良いの!?」

 

 「勿論。ほらダイヤさん、一緒に食べましょう」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 俺の方を見ながら、呆然としているダイヤさんなのだった。




どうも~、ムッティです。

ふと気付きましたが、全然話が進んでないですね・・・

未だアニメ二話の途中くらいですもんね・・・

もっとサクサク進められたら良かったんですが・・・

あぁ、早くイチャつかせたい←

まぁその前に、早くヒロイン決めろって話ですよね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

足掻くことが出来る人は凄い。

観たい映画は多いけど、なかなか行く時間が無い…


 「んー、どうしたら桜内さんを説得できるかなぁ・・・」

 

 頭を悩ませている千歌さん。曜さんと別れた俺達は、二人で帰り道を歩いていた。

 

 「諦めてないんですね」

 

 「勿論!桜内さんもルビィちゃんも花丸ちゃんも、私は諦めないよ!」

 

 「三股ですね、分かります」

 

 「言い方が悪意に満ちてない!?」

 

 千歌さんのツッコミをスルーして、道路の向かい側に広がる海を眺める。夕陽で海がオレンジ色に染まっている光景は、何度見ても飽きないほど美しかった。

 

 と、浜辺に見覚えのある人物が立っていた。

 

 「あれ、梨子さん?」

 

 「あ、ホントだ」

 

 物憂げな表情で浜辺に佇んでいる梨子さん。絵になるなぁ・・・

 

 「おーい!桜内さーん!」

 

 大きな声で呼びかける千歌さん。

 

 こちらからは梨子さんの背中しか見えないが、明らかに肩を落としたのが分かった。よほど千歌さんにうんざりしているようだ。

 

 千歌さんが梨子さんの方へ走っていくので、俺もその後を追いかける。

 

 「あっ!もしかして、また海に入ろうとしてるの!?」

 

 梨子さんの元へ辿り着いた途端、梨子さんのスカートを捲り上げる千歌さん。

 

 「してないですっ!」

 

 「それなら良かった」

 

 慌ててスカートを戻す梨子さんと、笑みを浮かべる千歌さん。と、そこで梨子さんが俺の存在に気付いた。

 

 「天くん!?」

 

 「こんにちは、梨子さん」

 

 にこやかに挨拶する俺。梨子さんの顔が赤く染まっていく。

 

 「み、見た・・・?」

 

 「何をですか?」

 

 「いや、その・・・パ、パンツ・・・」

 

 「何のことでしょう?」

 

 「よ、良かった・・・見てないのね・・・」

 

 「『苗字が桜内だけに、パンツも桜色か・・・』なんて思ってませんよ?」

 

 「バッチリ見てるじゃない!?」

 

 両手で顔を覆う梨子さん。耳まで真っ赤に染まっている。

 

 「ちょっと天くん!?女の子のパンツ見るなんて最低だよ!?」

 

 「俺の目の前で梨子さんのスカート捲った人がそれを言います?」

 

 「うぅ・・・もうお嫁に行けない・・・」

 

 「何言ってるんですか。そのスカート丈の短さで、これまで誰にも見られてないなんて有り得ないでしょうに」

 

 「・・・ちょっと海に飛び込んでくるわね」

 

 「落ち着いて桜内さん!?天くんもトドメ刺さないでよ!?」

 

 千歌さんが必死に宥め、何とか落ち着きを取り戻す梨子さん。涙目になりながら千歌さんを睨んでいる。

 

 「元はと言えば、貴女のせいで・・・!」

 

 「すいませんでしたあああああっ!」

 

 「まぁまぁ。本人も反省しているようですし、この辺りで許してあげましょうよ」

 

 「何で他人事なの!?」

 

 俺に全力でツッコミを入れたことで力が抜けたのか、溜め息をつく梨子さん。

 

 「・・・こんなところまで追いかけてきても、答えは変わらないわよ」

 

 「桜内さん、答えを出すのが早すぎるよ!もうお嫁に行けないだなんて!」

 

 「違うわよ!?スクールアイドルの話!」

 

 「あ、そっちか」

 

 苦笑する千歌さん。

 

 「違う違う。通りがかっただけだよ」

 

 「千歌さん、ストーカーは皆そう言うんですよ」

 

 「誰がストーカー!?天くんもここまで一緒に帰ってきたじゃん!?」

 

 「俺は千歌さんの掌の上で踊らされたんですね・・・千歌さん、恐ろしい子・・・」

 

 「人の話聞いてくれる!?」

 

 「そういえば梨子さん、海の音聴けました?」

 

 「だから聞いてってば!?」

 

 ギャーギャーうるさい千歌さんをスルーして尋ねると、梨子さんは浮かない顔で首を横に振る。

 

 まだ聴けてないんだな・・・

 

 「ほら千歌さん、喚いてないで海の音が聴ける方法を考えて下さいよ」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 喚いていた千歌さんだったが、そこでふと何か思いついたような顔をする。

 

 「あっ!果南ちゃんがいるじゃん!」

 

 「え、誰ですか?」

 

 「私と曜ちゃんの幼馴染だよ。実家がダイビングショップやってるから、桜内さんもダイビングしてみたら良いんじゃないかな?海の音が聴けるかもしれないよ?」

 

 「なるほど・・・スク水で海に飛び込むよりは良い方法ですね」

 

 「それは忘れて!?」

 

 再び赤面する梨子さん。

 

 いや、あれは忘れられないな。衝撃的な初対面だったもの。

 

 「桜内さん、日曜日って空いてる?ダイビングしに行こうよ!」

 

 「・・・代わりにスクールアイドルやれ、とか言わない?」

 

 「アハハ、流石に言わないよ」

 

 千歌さんは笑うと、梨子さんの手を握った。

 

 「海の音、ちゃんと聴いてほしいの。桜内さんが作った海の曲、私も聴いてみたいし」

 

 「高海さん・・・」

 

 驚いている梨子さん。

 

 損得勘定関係無しに、人の為を思って行動できる・・・こういうところが、千歌さんの美点なんだろうな。

 

 「ねっ?行ってみよう?」

 

 「・・・じゃあ、お願いしようかしら」

 

 「そうこなくっちゃ!天くんも行くよね?」

 

 「俺はアレがアレなんでパスします」

 

 「そっかぁ、それなら仕方ない・・・ってならないよ!?アレがアレって何!?」

 

 「日曜日くらいゴロゴロさせて下さいよ」

 

 「何そのお父さんみたいなセリフ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、梨子さんが笑みを浮かべながら俺の肩に手を置いた。

 

 「人のパンツ見ておいて、来ないなんて言わないわよねぇ・・・?」

 

 ちょ、痛いんだけど!?肩がミシミシいってるんだけど!?

 

 「よ、喜んで行かせていただきます・・・」

 

 「よろしい」

 

 笑顔で手を離す梨子さん。この人、怒らせたらアカン人や・・・

 

 「それじゃあ早速、果南ちゃんに連絡を・・・って、もうこんな時間!?」

 

 スマホを取り出した千歌さんが、時間を見て慌て始める。

 

 「急いで帰らなくちゃ!?果南ちゃんには後で連絡しておくから!じゃあまたね!」

 

 それだけ告げると、千歌さんは走って帰っていった。慌ただしい人だなぁ・・・

 

 「・・・変な人ね、高海さんって」

 

 「否定はできませんね」

 

 俺はそう言って笑うと、夕陽に染まる海を眺めた。

 

 「梨子さん、一つ聞いても良いですか?」

 

 「何?」

 

 「梨子さんが海の音を聴きたいのは・・・本当に曲作りの為だけですか?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む梨子さん。やっぱり・・・

 

 「海の曲を作りたいのは本当なんでしょうけど、果たしてそれだけなのかなって。他にも理由があって、それで必死になってるんじゃないのかなって・・・梨子さんの様子を見てたら、何となくそう思ったんですよね」

 

 「・・・察しが良いのね、天くんって」

 

 梨子さんは苦笑すると、ポツポツと話し始めた。

 

 「私ね、小さい頃からずっとピアノやってるんだけど・・・最近はいくらやっても上達しなくて、やる気も出なくて・・・それで環境を変えてみようと思って、東京からこっちに来たの」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 素直に凄いことだと思った。何かの為にそれまでの環境を変えるというのは、普通なかなか出来ることではない。

 

 「海の音が聴けたら変わるんじゃないか、変えられるんじゃないかって・・・そう思ったら、ちょっと焦っちゃって・・・」

 

 自嘲気味に笑う梨子さん。

 

 「みっともないわよね、不確かなものに縋ったりして・・・」

 

 「・・・良いじゃないですか、みっともなくたって」

 

 「え・・・?」

 

 驚いてこっちを見る梨子さんに、俺は笑みを向けた。

 

 「変わりたい、変えたいと願うのなら・・・どんなにみっともなくたって、全力で足掻くべきだと俺は思いますよ。それで変わるとは限りませんけど、足掻かなければ変わる可能性すら生まれませんから」

 

 「天くん・・・」

 

 「それに、ピアノに対してそこまで足掻けるっていうことは・・・梨子さんがピアノを大切に思っている、何よりの証じゃないですか」

 

 「っ・・・」

 

 「梨子さんは誇って良いと思います。自分はこんなにピアノが好きなんだ、こんなにピアノを大切に思ってるんだって・・・それはとても、素敵なことなんですから」

 

 梨子さんの目には涙が滲んでいた。それを拭おうともせず、俺の方をじっと見ている。

 

 「・・・そんなこと、初めて言われたわ」

 

 「マジですか・・・俺が梨子さんの初めてをもらっちゃいましたか・・・」

 

 「その言い方は誤解を招くから止めてくれる!?」

 

 「え、だって俺が梨子さんの初めてなんでしょ?」

 

 「絶対分かってて言ってるわよねぇ!?」

 

 「ナニソレ、イミワカンナイ」

 

 「誰のモノマネ!?」

 

 「さぁ、誰でしょう?」

 

 俺が笑うと、梨子さんも笑みを零しながら目元の涙を拭う。

 

 「変な人ね、天くんも・・・高海さん以上だわ」

 

 「・・・それはちょっと不名誉なんですけど」

 

 「フフッ、そんな嫌そうな顔しないの」

 

 梨子さんはクスクス笑うと、俺の顔を覗き込んだ。

 

 「・・・ありがとう、天くん。今の言葉、凄く嬉しかった」

 

 間近で見た梨子さんの笑顔は、夕陽と相まって凄く綺麗で・・・思わずドキッとしてしまう俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は梨子ちゃんの回でした。

アニメ見てて思ったんですけど、ピアノの為に東京から内浦に引っ越して来るって凄くないですか?

梨子ちゃんも凄いけど、梨子ちゃんのご両親もよく賛成しましたよね。

まぁ一番驚いたのは、梨子ちゃんのお母さん役が水樹奈々さんだったことなんですけども…

あれはビックリでした(゜ロ゜)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

足掻いた人にしか見えないものがある。

今日から2月かぁ…


 迎えた日曜日・・・

 

 「初めまして、松浦果南です。よろしくね」

 

 青く長い髪をポニーテールに結った女性が、笑顔で挨拶してくれる。

 

 梨子さんと俺は千歌さんに連れられて、近くにある淡島のダイビングショップへとやって来ていた。ちなみに曜さんも一緒である。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「絢瀬天です。よろしくお願いします」

 

 「おぉ、君が噂のテスト生だね?」

 

 俺をじっくりと眺め回す松浦さん。そして両手を広げ、笑みを浮かべてこう言った。

 

 「じゃあ早速・・・ハグしよっ?」

 

 「何だ、ただの痴女か」

 

 「誰が痴女よ!?」

 

 松浦さんのツッコミ。初対面の男にハグを要求するとか、何を考えてるんだこの人・・・

 

 「ほら、いいからハグしよっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 真正面から勢いよく抱きつかれた。

 

 松浦さんの柔らかな身体の感触が俺の全身を包み、二つの大きな膨らみが俺の胸に押し付けられて『むにゅっ』と形を変える。

 

 「ちょ、何してるんですか!?」

 

 俺達の様子を見て赤面している梨子さん。

 

 「何って・・・ハグだよ?」

 

 「同性同士ならともかく、異性同士なんですからもっと恥じらいを持って下さい!っていうか、天くんは何でされるがままになってるの!?」

 

 「いや、何と言うか・・・幸せを噛み締めてます」

 

 「戻ってきなさい!」

 

 「アハハ、純情だねぇ」

 

 松浦さんが笑いながら俺から離れる。

 

 「えーっと、今日は四人ともダイビングするってことで良いんだっけ?」

 

 「あ、三人です。俺は見学なんで」

 

 「え、天くんやらないの!?」

 

 「えぇ、今回は遠慮しておきます」

 

 曜さんの問いに答える俺。

 

 ダイビングを経験しているであろう千歌さんと曜さんはともかく、梨子さんと俺は完全な未経験者だ。未経験者二人が同時に潜ってしまえば、千歌さん達に大きな負担をかけてしまうことになりかねない。

 

 今回の目的は梨子さんが海の音を聴くことなので、梨子さんさえ潜れれば問題無いのだ。梨子さん一人なら、千歌さん達の負担も大きくはないだろう。

 

 「ごめんね、天くん・・・」

 

 何となく理由を察した様子の梨子さんが、申し訳なさそうに謝ってくる。

 

 「私のワガママに付き合わせてるのに、待機させちゃって・・・」

 

 「気にしないで下さい。海の音、ちゃんと聴いてきて下さいね」

 

 「そのことだけど、ちょっといいかなん?」

 

 話に入ってくる松浦さん。っていうか、今の語尾は何だろう・・・

 

 「水中では、人間の耳に音は届きにくいの。だからイメージが大事だと思うよ」

 

 「イメージ?」

 

 「そう、水中の景色から海の音をイメージするの。想像力を働かせてね」

 

 「想像力・・・」

 

 考え込む梨子さん。海の音が聴けるかどうかは、梨子さんの想像力次第ってことか・・・

 

 「とりあえず、ダイビングスーツに着替えよっか。向こうに更衣室があるから」

 

 「よーし!潜るぞー!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 元気よく走っていく千歌さんと曜さん。

 

 「じゃあ、私達も行こっか」

 

 「あ、はい。天くん、ちょっと待っててね」

 

 「ごゆっくり~」

 

 梨子さんにひらひら手を振る。と、松浦さんがこちらを振り返ってニヤリと笑った。

 

 「覗かないでね?絶対だよ?」

 

 「おっ、覗けっていうフリですか?」

 

 「・・・松浦さん?天くん?」

 

 「「すいませんでしたっ!」」

 

 梨子さんから放たれるプレッシャーに、反射的に謝ってしまう俺と松浦さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・う~み~は~広い~な、大きい~な~♪」

 

 小型船の甲板に座り、口ずさみながら海を眺める俺。その様子を見た松浦さんが、面白そうにクスクス笑っている。

 

 「海が好きなの?」

 

 「いえ、好きっていうか・・・懐かしいんです」

 

 「懐かしい?」

 

 「えぇ、海には色々と思い出がありまして。楽しい思い出も・・・悲しい思い出も」

 

 過去のことを思い出して感傷に浸っていると、いきなり背中に衝撃を受けた。

 

 「隙ありっ!ハグっ!」

 

 「どんだけハグ好きなんですか・・・」

 

 ヤバいよこの人、自分がどれほどスタイルが良いか全く分かってないよ・・・

 

 こんなナイスバディなお姉さんにハグされたら、普通の男はコロッといっちゃうどころか野獣化してもおかしくないというのに・・・

 

 「心配しなくても、私がハグするのは女の子だけだよ?」

 

 「松浦さんの目には、俺が女の子に見えてるんですか?」

 

 「何言ってんの?そんなわけないじゃん。大丈夫?」

 

 「すみません、殴って良いですか?」

 

 「アハハ、怖い怖い」

 

 松浦さんは笑うと、俺の身体に回している腕に力を込めた。

 

 「実は君の話、ダイヤから聞いててさ」

 

 「ダイヤさんとお知り合いなんですか?」

 

 「知り合いっていうか、幼馴染だよ。学校でもクラスメイトだしね」

 

 「え、松浦さんって浦の星の生徒なんですか!?」

 

 「あれ?千歌から聞いてないの?」

 

 首を傾げる松浦さん。幼馴染としか聞いてないんだけど・・・

 

 「っていうか、高校生だったんですね・・・てっきり二十歳くらいかと・・・」

 

 「むっ・・・そんなに老けて見える?」

 

 「大人びて見えるって言ってもらえます?っていうか俺、松浦さんを学校で見かけたことないんですけど・・・」

 

 「あぁ、今休学中なんだよ。お父さんが骨折しちゃったもんだから、私が店を手伝わないといけなくてさ」

 

 「それは大変ですね・・・」

 

 凄いな・・・休学してまでお店を手伝ってるのか・・・

 

 「まぁその話は置いとくとして・・・休学中もダイヤとは連絡を取ってるんだけど、この間の電話で君の話題になってさ。ダイヤに説教したんだって?」

 

 「いや、説教というか何と言うか・・・」

 

 思わず苦い表情になる。一方、松浦さんは面白そうに笑っていた。

 

 「あのダイヤに物申せる人なんて、なかなかいないからね。『良い人が入ってきてくれた』って、ダイヤも喜んでたよ?」

 

 「・・・恐縮です」

 

 いやホント、我ながら先輩に失礼な態度を取ってしまったと思う。

 

 まぁああいう場だったし、言うべきことは言わなきゃいけないとは思ったけども。

 

 「ダイヤは君のことを、『信用に足る人だ』って凄く褒めてた。昔からダイヤの人を見る目は確かだし、だったら私も信用してハグしちゃおうと思って」

 

 「信用してくれるのはありがたいんですけど、その発想はおかしいですからね?」

 

 「まぁまぁ。私にとってハグは挨拶みたいなものだから」

 

 「何その海外の人みたいな考え方」

 

 思わずタメ口でツッコミを入れてしまった。大らかな人だなぁ・・・

 

 「そんなわけで、私はこれから君にどんどんハグするから。ちゃんと受け止めてね?」

 

 「自由人ですね、松浦さん・・・あ、松浦先輩か」

 

 「さっきから言おうと思ってたけど、果南で良いよ。ダイヤのことも名前で呼んでるんだし、私のことも名前で呼ぶこと。これは先輩命令だから」

 

 「パワハラで訴えますよ?」

 

 気付けば松浦さんに対して、あまり気を遣わなくなっていた。松浦さんの大らかな性格に、俺も影響されてるのかもしれないな・・・

 

 「その代わり、私も君のこと名前で呼ぶからね。よろしく、天」

 

 「・・・了解です、果南さん」

 

 満足そうに笑う果南さん。その時・・・

 

 「ぷはぁっ!」

 

 海に潜っていた曜さんが浮上してきて、甲板へと上がってきた。

 

 「お疲れ、曜。海の音は聴けそう?」

 

 「んー、難しいね。桜内さんも苦戦してるみたいだし・・・って、果南ちゃんはまた天くんにハグしてるの?」

 

 「天にはちゃんと許可もらってるよ」

 

 「そんな覚え一切ないんですけど」

 

 果南さんにツッコミを入れていると、千歌さんと梨子さんも浮上してきた。やはりイメージが難しいのか、梨子さんは浮かない顔をしている。

 

 「ダメ・・・景色は真っ暗だし、なかなかイメージが出来ない・・・」

 

 「今日の天気は曇りだしねぇ・・・」

 

 空を見上げる千歌さん。確かに、日の光が差さないのは痛いな・・・

 

 「やっぱり、私には無理なのかな・・・」

 

 弱気な梨子さん。

 

 「どんなに足掻いても、変えられないのかな・・・」

 

 「・・・諦めちゃダメ~なん~だ~♪」

 

 「天・・・?」

 

 果南さんが首を傾げる中、ふと頭に浮かんだ曲を口ずさむ。

 

 「その日が絶対来る~♪」

 

 「その曲って・・・」

 

 千歌さんは気付いたようだ。そう、あの曲だ。

 

 「君も感じて~るよ~ね~、始~まり~の鼓動~♪」

 

 「天くん・・・歌上手いね」

 

 「え、そこ?」

 

 曜さんの感心したようなセリフに、咄嗟に梨子さんがツッコミを入れる。

 

 「いや、確かに上手いんだけど・・・何の曲?」

 

 「μ'sの『START:DASH!!』っていう曲です」

 

 高坂穂乃果、南ことり、園田海未・・・まだ三人だったμ'sが、ファーストライブで披露した曲である。

 

 「まぁこの曲を歌っておいて、こんなことを言うのもアレなんですけど・・・『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る』とか、ぶっちゃけただの綺麗事ですよね」

 

 「「「「えええええええええええええええ!?」」」」

 

 まさかの否定に、千歌さん・曜さん・梨子さん・果南さんが大きく仰け反る。

 

 「ちょ、天くん!?何てこと言うの!?」

 

 「だって思いません?諦めずに頑張ったら夢は必ず叶うとか、そんなのただの理想論じゃないですか。諦めずに頑張っても、夢を叶えられない人なんてたくさんいますよ」

 

 「いや、そうかもしれないけど!」

 

 あたふたしている四人が面白くて、俺は思わず笑ってしまった。

 

 「まぁでも・・・この曲の作詞を手掛けた人だって、そんなことは最初から分かってると思いますよ」

 

 「え・・・?」

 

 「諦めずに頑張ったって、夢は叶えられないかもしれない。でも・・・諦めてしまったら、叶えられる可能性すら無い」

 

 「っ・・・それ、この間天くんが言ってた・・・」

 

 梨子さんが気付く。覚えててくれたのか・・・

 

 「だから簡単に諦めるな。夢が叶う日が来る可能性は、諦めなかった人にしか無いんだから・・・勝手な解釈ですけど、俺はそういう意味でこの歌詞を捉えてます」

 

 「天くん・・・」

 

 「今日がダメなら、また来週チャレンジしてみましょう。今日は生憎の曇りですけど、来週は晴れてるかもしれません。それでもダメならもう一度チャレンジしたって良いし、違う方法を考えたって良いじゃないですか」

 

 俺は梨子さんに笑いかけた。

 

 「梨子さんが内浦に来て、まだたったの一週間ですよ?東京から引っ越してまでこっちに来たんですし、もう少し頑張ってみませんか?」

 

 「・・・どうして私なんかの為に、そこまで言ってくれるの?」

 

 不思議そうな表情の梨子さん。

 

 「この間も今日も、天くんは私の背中を押そうとしてくれてる・・・どうして・・・?」

 

 「んー、そうですねぇ・・・」

 

 苦笑いを浮かべる俺。

 

 「多分ですけど、足掻こうとしてる人を放っておけないんでしょうね。ホント厄介な性格にしてくれたよなぁ、あの人達・・・」

 

 「あの人達?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 まぁそれは置いとくとして、とりあえず海の音だよな・・・

 

 「とにかく俺も、梨子さんに海の音を聴いてほしいんです。きっとそれが梨子さんにとっての、始まりの鼓動になるんでしょうから」

 

 「始まりの鼓動・・・」

 

 梨子さんは小さく呟くと、意を決したように顔を上げた。

 

 「私、もう一度やってみる!」

 

 「よーし、私達も行くよ!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 再び海へ潜った梨子さんに続き、千歌さんと曜さんも海へ飛び込んでいった。

 

 「・・・凄いね、天」

 

 果南さんが微笑んでいる。

 

 「天の言葉で、諦めかけてた桜内さんがやる気になっちゃった」

 

 「大したことはしてませんよ」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「上手くいかなくて弱気になってたんで、ほんの少し励ましただけです」

 

 「何言ってるの。それが大きいんじゃない」

 

 笑っている果南さん。

 

 「ああいう時にかけられる励ましの言葉って、凄く心に響くもんだよ。それをさらっと言っちゃうんだもん。ちょっと感心しちゃった」

 

 「果南さんに感心されてもなぁ・・・」

 

 「何でよ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、突如として雲の切れ間から日が差した。日の光が海面を照らし、キラキラと眩く光っている。

 

 やがてその海面から、千歌さん・曜さん・梨子さんが浮上してきた。ここからは何を話しているのか聞こえないが、興奮したように笑いながら抱き合っている。

 

 「・・・聴けたみたいだね、海の音」

 

 「・・・ですね」

 

 笑い合う果南さんと俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく果南ちゃんを出せました。

果南ちゃんにハグされたいわぁ(願望)

あ、それから『START:DASH!!』についてですが…

作者に歌詞を否定する意思は一切ありません!

作者に歌詞を否定する意思は!一切!ありません!

大事なことなので二回言いました。

むしろ凄く良い歌詞・凄く良い曲だと思ってますし、個人的にも大好きな曲の一つです。

あくまでも『そういう解釈もあるよ』というお話ですので、悪しからず…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達とはかけがえのないものである。

Aqoursの『WATER BLUE NEW WORLD』ってメッチャ良い曲ですよね。


 「え、曲作りの依頼を引き受けたんですか?」

 

 「うん、そうなの」

 

 頷く梨子さん。

 

 ダイビングの翌日・・・昼休みにばったり会った梨子さんの話に、俺は思わず驚いてしまった。

 

 「どういう心境の変化ですか?『そんな暇は無い』って断り続けてたんですよね?」

 

 「そうなんだけど・・・まぁ色々とね」

 

 梨子さんが小さく笑う。

 

 「今回は高海さんに色々お世話になったから、今度は私が力になれたらって思ったの。スクールアイドルの曲作りなんて初めてだけど、これも良い勉強になるだろうから」

 

 「なるほど・・・ってことは、梨子さんもスクールアイドルやるんですか?」

 

 「それは断ったわ。私がやるのは、あくまでも曲作りだけよ」

 

 肩をすくめる梨子さん。あ、そうなんだ・・・

 

 「そうですか・・・ちょっと残念ですね」

 

 「え、何が?」

 

 「梨子さん可愛いし、スクールアイドルの衣装とか似合うだろうなって思ってたんで」

 

 「なっ!?」

 

 梨子さんの顔が一気に赤くなる。ホント純情だなぁ・・・

 

 「せ、先輩をからかわないのっ!」

 

 「いや、本心ですって。華もありますし、きっとステージ映えするでしょうね」

 

 「も、もういいからっ!」

 

 耳まで真っ赤になった梨子さんが、強引に話題を打ち切る。

 

 まぁ梨子さんが決めたことだし、俺がとやかく言うことでもないよな。

 

 「そ、それで早速なんだけど!今日の放課後、高海さんの家で作詞をすることになったの。もし良かったら、天くんも一緒に来ない?」

 

 誘ってくれる梨子さん。俺としても、行けるなら行きたいところではあるが・・・

 

 「・・・すいません。今日の放課後はちょっと、お見舞いの予定がありまして」

 

 「お見舞い?誰の?」

 

 首を傾げる梨子さんに、苦笑いで答える俺なのだった。

 

 「クラスメイトですよ。自称・堕天使の、ね」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ここずら」

 

 緊張した面持ちのずら丸。

 

 俺・ずら丸・ルビィちゃんの三人は放課後、自称・堕天使が住んでいると思われるマンションの一室へとやって来ていた。

 

 ずら丸曰く、ここが自称・堕天使の家らしい。

 

 「表札もちゃんと『津島』になってるし、間違いないずらね」

 

 「え、あの子の苗字って『津島』なの?」

 

 「今さら!?」

 

 ルビィちゃんのツッコミ。『善子』っていう名前なのは知ってたけど、苗字の方は気にしてなかったなぁ・・・

 

 「とりあえず、インターホン押そうか」

 

 「ずら」

 

 ずら丸がインターホンを押す。すると・・・

 

 「はーい」

 

 ドアが開き、中から女性が出てきた。ダークブルーの髪にシニヨンを結った女性・・・あれ?

 

 「津島さん、メッチャ大人になってない?」

 

 「その人は善子ちゃんのお母さんずら」

 

 「マジで!?」

 

 メッチャ似てるなぁ・・・驚いていると、津島母が首を傾げた。

 

 「えーっと、どちら様ですか?」

 

 「あ、あのっ!私、国木田花丸です!覚えてますか?」

 

 「え・・・?」

 

 ずら丸の顔をじーっと見つめる津島母。次の瞬間、表情がパァッと明るくなった。

 

 「あぁっ、花丸ちゃん!?善子と幼稚園で一緒だった、あの花丸ちゃん!?」

 

 「そうです!お久しぶりです!」

 

 「久しぶりね~!ずいぶん大きくなっちゃって~!」

 

 嬉しそうに笑う津島母。

 

 「幼稚園の時から可愛かったけど、ますます可愛くなったわね~!」

 

 「そ、そんな・・・マルなんて・・・」

 

 照れているずら丸。と、津島母が俺の方に視線を向けてきた。

 

 「あら?ひょっとして、花丸ちゃんの彼氏くんかしら?」

 

 「か、彼氏っ!?」

 

 ずら丸の顔が真っ赤になる。何だかんだで、ずら丸も純情だなぁ・・・

 

 「ち、違いますっ!天くんはそんなんじゃ・・・!」

 

 「そっか、俺とは遊びだったのか・・・」

 

 「天くん!?何を言い出すずら!?」

 

 「朝のバスでは、俺に寄りかかって気持ち良さそうに寝てたのに・・・」

 

 「そ、それは天くんが『寄りかかって良いよ』って言ってくれたから・・・!」

 

 「俺を抱き寄せて、俺の顔を自分の胸に埋めさせてくれたのに・・・」

 

 「あ、あれはルビィちゃんの悲鳴から守る為で・・・!」

 

 「『恋人としてよろしくずら~!』って言ってくれたのに・・・」

 

 「それは言ってないずら!『恋人として』なんて言ってないずら!」

 

 「全てはずら丸の掌の上・・・俺は弄ばれてたのか・・・」

 

 「人聞きの悪いことを言わないでほしいずら!」

 

 「花丸ちゃん・・・悪い子に育っちゃって・・・」

 

 「善子ちゃんのお母さん!?何で信じてるずら!?」

 

 悪ノリに便乗してくる津島母。ノリが良いなぁ・・・

 

 「まぁ冗談はさておき・・・初めまして、絢瀬天といいます」

 

 「く、黒澤ルビィです・・・」

 

 「私達三人、浦の星で善子ちゃんと同じクラスなんです」

 

 「あら、そうだったの?」

 

 驚いていた津島母だったが、すぐに笑みを浮かべる。

 

 「初めまして、善子の母・津島善恵です。娘がいつもお世話に・・・って、あの子ずっと引きこもってたわね」

 

 溜め息をつく津島母。やはり重症らしいな・・・

 

 「あの、善子ちゃんの様子は・・・」

 

 「あぁ・・・うん」

 

 ずら丸の問いに、津島母は困ったように苦笑するのだった。

 

 「元気は元気なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 『やってしまったああああああああああっ!?』

 

 家に上がらせてもらった俺達が最初に聞いたのは、津島さんの叫び声だった。

 

 『何よ堕天使って!?ヨハネって何!?うわあああああん!?』

 

 「・・・まぁこんな感じなのよ」

 

 津島さんの部屋であろうドアを指差し、溜め息をつく善子母。

 

 なるほど、これは重症だな・・・

 

 「浦の星の入学式の日からあんな感じなんだけど・・・何か心当たり無い?」

 

 「その日はクラスの皆の前で、自己紹介をやったんですけど・・・」

 

 「あぁ、『堕天使ヨハネ』で自爆したのね・・・」

 

 一を聞いて十を知る・・・全てを悟った津島母が頭を抱えた。

 

 「あの子、中学の時もそれでやらかしちゃってね・・・高校では同じ失敗をしないようにって意気込んでたんだけど・・・」

 

 「その割には、キャラが凄く仕上がってましたけど・・・」

 

 「『堕天使ヨハネ』は、最早あの子にとってキャラじゃないのよ。幼い頃からの設定を引きずった結果、『堕天使ヨハネ』は津島善子の一部に昇華されてしまったの」

 

 「・・・マジですか」

 

 意図的に演じてるキャラじゃなかったのか・・・恐るべし津島善子・・・

 

 「とりあえず、声をかけてみても良いですか?」

 

 「勿論。どうぞ」

 

 津島母の了承をもらい、ずら丸が部屋のドアをノックする。

 

 「善子ちゃーん?」

 

 『っ!?その声は花丸!?』

 

 津島さんの驚いた声が聞こえる。

 

 『どうしてここにいるのよ!?』

 

 「様子を見に来たずら。ルビィちゃんと天くんもいるずら」

 

 「こ、こんにちは・・・」

 

 「どうも」

 

 『うげっ!?』

 

 呻き声を上げる津島さん。

 

 『わ、私を笑いに来たんでしょ!?冷やかしなら帰って!』

 

 「いや、そんなつもりじゃ・・・」

 

 『うるさい!良いから帰って!』

 

 明確な拒絶。これは何を言っても聞いてもらえなさそうだな・・・

 

 「・・・ずら丸、ルビィちゃん、とりあえず今日は帰ろう。元気なのは分かったし」

 

 「ずら・・・」

 

 「そうだね・・・」

 

 意気消沈している二人。顔さえ見せてもらえず、ショックを受けているようだ。

 

 「ごめんね、せっかく来てくれたのに・・・」

 

 「こちらこそ、突然お邪魔してすいませんでした。あ、それと・・・」

 

 申し訳なさそうな津島母に、俺はカバンの中から紙束を取り出して渡した。

 

 「これ、ノートのコピーです。先週分の授業に関しては、一通りまとめておきました。授業で使ったプリントも余分に貰っておいたので、後で渡してあげて下さい」

 

 「そんなことまで・・・本当にありがとう」

 

 恐縮しながら受け取る津島母。俺は部屋のドアに向かって声をかけた。

 

 「じゃあ津島さん、また来るから」

 

 『来なくていい!』

 

 にべもない返事だった。やれやれ・・・

 

 「それじゃ、お邪魔しました」

 

 「本当にごめんなさい・・・来てくれてありがとう」

 

 津島母に見送られ、津島家を後にする俺達。これは時間がかかりそうだな・・・

 

 「・・・全然話せなかったね」

 

 暗い表情のルビィちゃん。

 

 「良かれと思って来たけど・・・津島さんにとっては迷惑だったのかな・・・」

 

 「・・・顔も見せてくれないなんて、思ってもみなかったずら」

 

 涙目のずら丸。

 

 「マル、余計なことしちゃったのかな・・・」

 

 俯いて歩く二人。俺は溜め息をつくと、歩いている二人の間にあえて割り込んだ。

 

 そのまま右手でずら丸の手を、左手でルビィちゃんの手を握る。

 

 「ずらっ!?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 驚いている二人。そんなことはお構い無しに、俺は二人の手を引いて歩いた。

 

 「俯いたまま歩くと危ないよ。ちゃんと前を向いて歩かなきゃ」

 

 「天くん・・・」

 

 「まぁ確かに、ちゃんとした話は出来なかったけど・・・とりあえず元気なのは分かったし、ノートのコピーも渡せたんだから。今回はそれで良しとしようよ」

 

 「今回はって・・・本当にまた行くつもりなの・・・?」

 

 「勿論」

 

 ルビィちゃんの問いに頷く俺。

 

 「今週の授業のノートをまとめて、また来週お邪魔するよ。津島さんが登校できるようになった時、授業についていけないのは困るだろうから」

 

 「どうして善子ちゃんの為にそこまで・・・」

 

 「・・・大切な友達なんでしょ」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑むずら丸。俺は苦笑いを浮かべた。

 

 「流石に俺だって、ただのクラスメイトの為にここまでしないよ。でもずら丸は俺の友達だし、困ってるのを放っておけないから」

 

 「じゃあ善子ちゃんの為じゃなくて、マルの為に・・・?」

 

 「そういうこと。まぁただでさえ一クラスしかないんだし、どうせなら誰も欠けてほしくないっていうのもあるけど」

 

 呆然としているずら丸。ルビィちゃんがニヤニヤしていた。

 

 「良いなぁ花丸ちゃん、大切に想ってくれる男の子がいて」

 

 「なっ!?ルビィちゃん!?」

 

 「あな~たと~、いる日~々が~、なににも代え~られ~ない~、た~い~せつ~♪」

 

 「天くん!?急にファ●モンの曲を歌わないでほしいずら!」

 

 顔を真っ赤にするずら丸。俺はひとしきり笑うと、握る手に優しく力を込めた。

 

 「せっかくだし、ケーキでも食べて行こっか。さっき良さそうなカフェあったよね」

 

 「賛成!ルビィもそのカフェ気になってたんだよね!」

 

 「マルも行くずら~!」

 

 今度は二人が俺の手を引く。苦笑しつつも、二人に手を引かれるがまま歩く俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は善子ちゃん回…と思いきや、そうでもなかったっていう回でしたね(笑)

ちなみに善子ちゃんのお母さんの名前は、完全に独断で決めました。

多分こういう名前じゃね?みたいな。

あと言い忘れてましたが、2話で出てきたクラス担任の赤城麻衣先生…

オリキャラです、はい。

アニメでは、善子ちゃんの自己紹介の時にチラッと担任の先生が映ってましたよね?

あの先生とは全く別人の先生を、勝手に配置してしまいました。

イメージ的には、『艦これ』の赤城さんですね(そのまま)

今後出番がきっと多分恐らくメイビーあるはずなので、覚えておいていただけると幸いです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人から必要とされるのは幸せなことである。

投稿間隔が空いてしまった・・・

頑張って投稿していかねば・・・


 翌日。

 

 「そんなわけで、梨子ちゃんもスクールアイドルやることになったんだよ!」

 

 「どんなわけですか」

 

 千歌さんにツッコミを入れる俺。

 

 いきなり一年生の教室に来て、何を言い出すのかと思ったら・・・

 

 「まさか千歌さん、梨子さんを脅迫したんじゃないでしょうね?」

 

 「天くんには私がどういう人間に見えてるの!?」

 

 「目的の為なら手段を選ばない極悪非道な人間」

 

 「私が天くんに何をしたっていうの!?」

 

 ギャーギャー騒いでいる千歌さんはスルーして、俺は梨子さんへと視線を移した。

 

 「梨子さん、良いんですか?」

 

 「うん、自分で決めたから」

 

 ニッコリ笑う梨子さん。

 

 「色々と思うところもあって、一緒にやらせてもらうことにしたの。やるからには一生懸命頑張るわ」

 

 「・・・そうですか」

 

 どうやら、本当に自分の意思で決めたらしい。

 

 どういう心境の変化があったかは分からないが、表情も明るいし心配は要らないだろう。

 

 「ってことは、これで部員が三人・・・あと二人ですね」

 

 「あと二人かぁ・・・集まるかなぁ・・・」

 

 自信無さげな曜さん。と、そこでふと俺の顔を覗き込んでくる。

 

 「どうかしました?」

 

 「いや・・・天くんが入部してくれたらなぁって」

 

 「「え?」」

 

 ポカーンとしている千歌さんと梨子さん。

 

 「何言ってるの曜ちゃん?天くんは生徒会役員だよ?」

 

 「生徒会役員でも、部活に所属することって可能だよね?」

 

 「可能ですね」

 

 「そうなの!?」

 

 曜さんの問いに答えると、千歌さんが目を見開いて身を乗り出してきた。

 

 「そりゃそうですよ。部活の兼任だって可能なんですから」

 

 「ハッ!?そういえばそうだった!?」

 

 「ちょ、ちょっと待って!?スクールアイドルって女子限定なんじゃ・・・」

 

 「アイドルとしてじゃなくて、マネージャーとして入部してもらえば良いじゃん」

 

 「その手があったわ!?」

 

 千歌さんや梨子さんも納得している。曜さんが目を輝かせて俺を見ていた。

 

 「天くん、スクールアイドル部に入らない!?」

 

 「オコトワリシマス」

 

 「即答!?」

 

 ショックを受けている曜さん。俺は溜め息をついて曜さんを見た。

 

 「部を立ち上げる為に、マネージャーで人数稼ぎをするのはいかがなものかと思いますよ?ただでさえスクールアイドル部に反対しているダイヤさんの心証は、より一層悪くなると思います」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「部を立ち上げる為に必要な五人は、スクールアイドルとして活動するメンバーを集めるべきです。そもそもまだ活動さえしてないのに、マネージャーとか要らないでしょう」

 

 「お、仰る通りです・・・」

 

 「どうしてもマネージャーが欲しいなら、スクールアイドル部が正式に設立されてから探して下さい。分かりましたか?」

 

 「はい、すいませんでした・・・」

 

 いつの間にか、教室の床に正座している曜さん。

 

 いや、別にそこまでは求めてないんだけど・・・

 

 「ねぇ梨子ちゃん・・・天くんが生徒会長に見えるんだけど」

 

 「奇遇ね千歌ちゃん・・・私も同じことを思ったわ」

 

 何やらヒソヒソと話している千歌さんと梨子さん。俺は二人に笑みを向けた。

 

 「他人事みたいな顔してますけど、お二人も曜さんの意見に納得してましたよね?」

 

 「「すいませんでした!」」

 

 曜さんと並んで正座する二人。

 

 この後クラスメイト達から、『先輩に土下座させた男』として畏怖の視線を向けられる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「新しい理事長、ですか?」

 

 「えぇ、来週からお見えになるそうです」

 

 頷くダイヤさん。

 

 放課後に生徒会の仕事を片付けていた俺達は、一区切り付いたところで休憩していた。

 

 お茶を飲みながら雑談していた時、ダイヤさんがそんな話を切り出してきたのだった。

 

 「前任の理事長は三月で退職して、四月から新しい理事長が就任したのですが・・・何でも『日程の都合が付かない』とかで、まだ一度も学校に来ていないのです」

 

 「あぁ、そういえば会ってませんね」

 

 「全く、一体どんな人なのやら・・・」

 

 溜め息をつくダイヤさん。まぁ理事長が一度も学校に来ていないというのは、ちょっとよろしくないとは思う。

 

 「じゃあ、俺を呼んだのって新しい理事長なのかな・・・」

 

 「呼んだ?天さんは誰かに呼ばれて、浦の星に入学したのですか?」

 

 首を傾げるダイヤさん。あれ・・・?

 

 「ダイヤさん、俺が入学することになった経緯は聞いてないんですか?」

 

 「えぇ、何も・・・テスト生として天さんが入学することは聞かされましたが、何故天さんが選ばれたのかについては聞いていないのです」

 

 「マジですか・・・」

 

 それで良いのか浦の星・・・せめて生徒会長には経緯ぐらい説明しなさいよ・・・

 

 「・・・とりあえず説明しておきますね。そもそものキッカケは、俺が通っていた中学の理事長でした。理事長は浦の星の関係者の方と知り合いらしくて、浦の星の生徒数が減少していることについて相談を受けていたみたいなんです」

 

 「まぁ、かなり深刻な問題ですからね・・・それで?」

 

 「その問題の解決策について話し合っている中で、共学化という手段があるんじゃないかという話になったらしくて。まずはテスト生として男子生徒を受け入れてみて、様子を見てみようという結論に至ったようなんです。そこで白羽の矢が立ったのが、理事長と仲の良かった俺だったという感じですね」

 

 「あら、理事長さんと仲がよろしかったのですか?」

 

 「まぁ色々ありまして」

 

 苦笑する俺。実際、あの人には凄くお世話になったしな・・・

 

 「俺は理事長からテスト生の話を持ちかけられて、引き受けることを決めまして。それで俺がテスト生として、浦の星に入学することが決まったんです」

 

 「なるほど・・・ん?では先ほどの、『呼んだ』という話は一体?」

 

 首を傾げるダイヤさん。そう、そこが俺も気になっているところなのだ。

 

 「・・・実は俺、その関係者の方と一度も会ってないんです」

 

 「え・・・?」

 

 「それどころか、筆記試験や面接さえ受けてないんです」

 

 「はい!?」

 

 驚くダイヤさん。そりゃそうだよなぁ・・・

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!?いくらその理事長さんが推薦したとはいえ、それはおかしいでしょう!?筆記試験はともかく、面接は顔合わせの意味でも必要なのでは!?」

 

 「俺もそう思って、理事長に聞いたんですよ。そしたら理事長曰く、『関係者の方が天くんに来てほしいと言っている。試験なんて要らないらしい』とのことでして・・・」

 

 「・・・有り得ませんわ」

 

 頭を抱えるダイヤさん。

 

 「つまりそうまでして、天さんに来てもらいたかったいうことですか・・・それは確かに、『呼んだ』に近いですわね・・・」

 

 「でしょう?しかも試験免除を決められる権限を持っているということは、それこそ理事長ぐらいだと思ったんですけど・・・」

 

 「確かに・・・ですがその話が決まったのは、前理事長の就任期間中でしょう?新理事長は関係ないのでは?」

 

 「ですよねぇ・・・でも、前理事長ではないですよね?退職されたわけですし」

 

 「それは間違いありませんわ。私が天さんの話を聞いたのは前理事長からでしたが、自分が決めたわけではないとおっしゃっていましたから」

 

 「・・・謎ですね」

 

 「・・・謎ですわね」

 

 ダイヤさんと顔を見合わせる。関係者の方って、一体誰なんだ・・・

 

 「天さんの中学の理事長さんには、そのことについて聞かなかったのですか?」

 

 「聞きましたけど、『行けば分かる』って言われまして・・・」

 

 あの時の理事長の面白そうな笑み・・・絶対何か隠してるんだよなぁ・・・

 

 「ですが天さん、よくテスト生の話を引き受けましたね?今の話を聞くかぎり、色々と怪しげな点がありますが・・・」

 

 「試験免除に惹かれたので」

 

 「そこですの!?」

 

 「当然でしょう。入学が確約されてるんですよ?おかげで同級生達が受験に向けて勉強している中、これ見よがしに遊びまくることが出来ました」

 

 「もの凄く恨まれそうですわね!?」

 

 「ハハッ、まさか。皆はいつも笑顔で俺に、『くたばれ』『バルス』って話しかけてきてくれましたよ」

 

 「間違いなく恨まれてますわよねぇ!?」

 

 「冗談ですよ」

 

 俺は笑うと、急須に入っていたお茶を湯呑みに注いだ。

 

 「まぁ一番の理由は、理事長に頼まれたからですね。『嫌なら断ってくれて構わない』とは言われましたけど・・・俺で力になれるなら、是非とも引き受けたいと思ったので」

 

 「・・・理事長さんのこと、大切に思われているのですね」

 

 「えぇ、まぁ・・・」

 

 ダイヤさんに優しげな笑みを向けられ、少し照れ臭くなってしまった。どうにも気恥ずかしいな・・・

 

 「とりあえず、以上がテスト生になった経緯です。何か理事長のコネで入学したみたいで、話していてちょっと気が引けましたけど・・・」

 

 「気にする必要はありませんわ。倍率の高い超難関校ならともかく、浦の星は生徒数が減少している学校ですから。入学方法がコネだろうが、気にする人などいないでしょう」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「それに・・・私はテスト生が天さんで良かったと、心から思っていますわ。天さんの中学の理事長さんと、浦の星の関係者の方とやらに感謝しなければなりませんわね」

 

 「ダイヤさん・・・心の底から愛してます」

 

 「そ、そういうセリフを軽々しく口にしてはいけませんっ!」

 

 赤面しながら怒るダイヤさん。そんなダイヤさんを見ながら、浦の星に来て良かったと思う俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

最近、『ラブライブ!サンシャイン!!』のBlu-rayを買い始めました。

収録されている特典映像に、Aqoursの声優さん達が出演しているのですが…

しゅかしゅーさん可愛すぎる( ´∀`)

あと、ありしゃ様が美しい(・∀・)ノ

着々とAqoursにのめり込んでいる今日この頃です(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人に裏切られるのは辛いことである。

先に謝っておきます…

鞠莉ちゃん推しの方々、大変申し訳ありません…


 翌日・・・

 

 「緊張するなぁ・・・」

 

 理事長室の前でドキドキしている俺。今朝ダイヤさんから連絡があり、放課後に新理事長との顔合わせがあると告げられたのだ。

 

 一体どんな人なんだろう・・・

 

 「・・・よし」

 

 覚悟を決めてドアをノックする。

 

 「どうぞ~」

 

 中から女性の声がした。新理事長の声かな・・・?

 

 「し、失礼します・・・」

 

 恐る恐るドアを開け、理事長室へと足を踏み入れた瞬間だった。

 

 「シャイニー!」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなりタックルをくらい、思わずその場に倒れ込んでしまう。

 

 「な、何事・・・?」

 

 痛みを堪えながら上体を起こすと、誰かが俺に抱きついていた。ブロンドのセミロングヘアを、三つ編みのカチューシャのように結っている女子だ。

 

 浦の星の制服を着ているので、この学校の生徒だと思うのだが・・・

 

 「天!お久しぶりデース!」

 

 顔をガバッと上げ、満面の笑みで俺を見つめる女子生徒。

 

 ん・・・?

 

 「えーっと・・・どちら様ですか?」

 

 「What!?覚えてないの!?」

 

 女性がショックを受けている。いや、俺の知り合いに金髪美少女なんて・・・

 

 一応いるけど、この人ではないはずだ。

 

 「ちょっと!?いきなり何をしているのですか!?」

 

 先に来ていたであろうダイヤさんが抗議する。よく見ると千歌さん、曜さん、梨子さんまでいるし・・・

 

 梨子さんは何故かジト目でこっちを見てるけど。

 

 「・・・天くんって、年上の女性に抱きつかれやすい体質なの?」

 

 「そんな体質だったら幸せなんですけどね。梨子さんも抱きつきます?」

 

 「抱きつきません!」

 

 そっぽを向いてしまう梨子さん。

 

 どうやらご機嫌斜めみたいなので放置して、俺に抱きついているパツキンのチャンネーへと目を向ける。

 

 「で、どちら様ですか?」

 

 「・・・本当に分からないの?」

 

 さっきまでの笑みから一転、寂しそうな表情で俺を見る女子。

 

 何だろう、もの凄い罪悪感に襲われてるんだけど・・・

 

 「鞠莉さん!いいから早く天さんから離れなさい!」

 

 怒っているダイヤさん・・・ん?

 

 「鞠莉・・・?」

 

 今ダイヤさんが呼んだ名前・・・それにこの独特の髪型・・・側頭部に数字の『6』のような形で髪を結ってある・・・

 

 あれ・・・?

 

 「えぇ!?鞠莉ちゃん!?小原鞠莉ちゃん!?」

 

 「Yes!やっと思い出してくれた!」

 

 嬉しそうに俺を抱き締める女子・・・小原鞠莉。おいおいマジか・・・

 

 「大きくなったね、天!」

 

 「鞠莉ちゃんの方こそ、すっかり大人の女性って感じになっちゃって」

 

 特に俺の身体に押し付けられている、この二つの大きく柔らかいモノ・・・ずら丸や果南さんより大きいのでは・・・

 

 「っていうか、何で鞠莉ちゃんがここに?」

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 俺と鞠莉ちゃんが話していると、ダイヤさんが慌てて割り込んでくる。

 

 「その話に入る前に、お二人の関係についてお聞きしたいのですが!?お二人はお知り合いなのですか!?」

 

 「えぇ、幼馴染です」

 

 ダイヤさんの質問に答える俺。

 

 「母親同士が友人関係で、小さい頃は家族ぐるみの付き合いをしてたんです。まぁ鞠莉ちゃん達が引っ越してからは、会う機会もなくて疎遠になってたんですけど」

 

 「最後に会ってから、もう十年近く経つもんねぇ・・・」

 

 しみじみとしている鞠莉ちゃん。時が経つのは早いなぁ・・・

 

 「っていうか鞠莉ちゃん、浦の星の制服着てるけど・・・まさか転校してきたの?」

 

 「No!私は元々、浦の星の生徒デース!」

 

 「マジで!?」

 

 「マジですわ」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 「留学の為に海外へ行っていたのですが、このタイミングで戻ってきたようです・・・理事長として」

 

 「ヘぇ・・・ん?」

 

 今ダイヤさん、何か凄いこと言わなかった?

 

 「・・・理事長が何ですって?」

 

 「例の新理事長というのは・・・鞠莉さんのことだそうです」

 

 「・・・ダイヤさんでも冗談を言う時ってあるんですね」

 

 「・・・冗談であってほしかったのですけどね」

 

 苦い顔のダイヤさんに対し、鞠莉ちゃんがドヤ顔で一枚の紙を見せてくる。

 

 「これが証拠デース!」

 

 「・・・嘘やん」

 

 それは鞠莉ちゃんが理事長に就任したことを証明する任命状だった。おいおい・・・

 

 「鞠莉ちゃん・・・今すぐ警察に出頭しよう」

 

 「Why!?」

 

 「小原家の力で前理事長を亡き者にするなんて・・・それで鞠莉ちゃんは満足なの?」

 

 「勝手に前理事長を殺さないで!?天は小原家を何だと思ってるの!?」

 

 「成金一族」

 

 「それは否定できないけども!」

 

 鞠莉ちゃんの父親はリゾートホテルチェーンを経営している富豪で、鞠莉ちゃんはいわゆる御嬢様というやつだ。

 

 昔からそうだったが、この人達は基本的にお金の力に頼ることが多い。普通なら有り得ない現役女子高生理事長が誕生したのも、恐らく小原家の財力によるものだろう。

 

 「どうせ小原家が浦の星に多額の寄付を納めてるとかで、学校の運営に顔が利くんでしょ?それで鞠莉ちゃんの理事長就任をゴリ押ししたってところじゃないの?」

 

 「・・・君のような勘のいいガキは嫌いだヨ」

 

 「どこの錬金術師?っていうか、嫌いならそろそろ離れてくんない?」

 

 「It`s joke!天のことは大好きデース!」

 

 俺の頬に頬ずりしてくる鞠莉ちゃん。スキンシップが激しいな・・・

 

 「それで?何で留学から戻ってきて、いきなり理事長になったりしたの?」

 

 「浦の星にスクールアイドルが誕生したって聞いて、ダイヤに邪魔されちゃ可哀想だから応援してあげようと思って」

 

 「本当ですか!?」

 

 嬉しそうな千歌さん。生徒会長であるダイヤさんに反対されていることもあって、理事長である鞠莉ちゃんの応援はかなり心強いんだろう。

 

 「Yes!デビューライブにはアキバドームを用意してみたわ!」

 

 「何やってんの!?」

 

 アキバドームといったら、ラブライブの決勝が行なわれるほどのステージだ。そこでデビューライブって・・・

 

 「そんな!?」

 

 「いきなり!?」

 

 「嘘でしょう!?」

 

 「き、奇跡だよ!」

 

 曜さん・梨子さん・ダイヤさんが絶句している中、顔を輝かせている千歌さん。そんな千歌さんを見て、鞠莉ちゃんは満面の笑みを浮かべ・・・

 

 「It`s joke!」

 

 「えぇっ!?」

 

 「「「「・・・ですよねー」」」」

 

 千歌さんがショックを受ける中、溜め息をつく俺・曜さん・梨子さん・ダイヤさん。

 

 小原家の財力なら、アキバドームだろうが貸し切りに出来るだろうからなぁ・・・一瞬本気かと思ったけど、流石にそれはないか・・・

 

 「実際に用意するステージは、もっと身近な場所デース!」

 

 「身近・・・?」

 

 「どこですか・・・?」

 

 曜さんと梨子さんの問いに、鞠莉ちゃんはウインクしながら答えるのだった。

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「ステージって・・・ここですか?」

 

 私達が鞠莉さんに連れられてきた場所は、浦の星の体育館だった。

 

 「Yes!ここが貴方達のデビューライブを開催する場所デース!」

 

 頷く鞠莉さん。

 

 「ここを満員にできたら、人数に関わらず部として承認してあげるわ」

 

 「なっ!?」

 

 「本当ですか!?」

 

 驚くダイヤさんに対して、千歌ちゃんは喜びを抑えきれないようだった。

 

 まぁ念願だったスクールアイドル部を設立できるかもしれないチャンスだし、喜ぶなという方が無理だとは思う。

 

 「鞠莉さん!?何を勝手に・・・」

 

 「理事長権限よ。ダイヤは黙ってて」

 

 「ぐっ・・・!」

 

 鞠莉さんを睨みつけるダイヤさん。この二人、何か因縁でもあるのかしら・・・

 

 「ただし、一つ条件があります」

 

 私達を見回す鞠莉さん。条件・・・?

 

 「もし満員にできなかったら・・・その時は解散してもらいます」

 

 「「「えぇっ!?」」」

 

 まさかの解散宣告に驚く私達。

 

 こんなに広い体育館を満員に・・・果たして私達に出来るだろうか・・・

 

 「嫌なら断ってくれて結構よ?どうする?」

 

 挑発的な態度をとる鞠莉さん。この人、本当に私達を応援する気があるのかしら・・・

 

 「・・・千歌ちゃん、どうする?」

 

 「やるしかないよ!他に手があるわけじゃないんだし!」

 

 鞠莉さんの挑発的な態度に燃えたのか、意気込んでいる千歌ちゃん。

 

 確かに千歌ちゃんの言う通り、他に手があるわけじゃない。やるしかないわね・・・

 

 「ヨーソロー!了解であります!」

 

 「頑張りましょう!」

 

 曜ちゃんと私も応える。それを見て、鞠莉さんはニッコリと笑った。

 

 「では、行なうということで良いかしら?」

 

 「はい、やります!」

 

 「よろしい」

 

 千歌ちゃんの返事に頷くと、鞠莉さんは天くんの方を見た。顔合わせが済んだので帰ろうとした天くんを、鞠莉さんはわざわざ引き止めてここへ連れてきたのだ。

 

 この二人は幼馴染らしいけど、それにしては距離が近すぎないかしら・・・さっきだって、鞠莉さんはずっと天くんにくっついたままだったし・・・

 

 って、何で私はそんなことを気にしているのかしら・・・

 

 「天、貴方にお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 首を傾げる天くんに、鞠莉さんは微笑みながら口を開いた。

 

 「この子達のマネージャーになってちょうだい」

 

 「・・・は?」

 

 「ちょっと待って下さい!?」

 

 驚いている天くん。そこへダイヤさんが慌てて割り込んだ。

 

 「天さんは生徒会役員です!勝手に決められては困りますわ!」

 

 「生徒会の仕事は、毎日あるわけじゃないでしょう?それに生徒会役員でも、部活の兼任は可能なはずよ?他の生徒会役員達だって兼任してるじゃない」

 

 「それはそうですが・・・!」

 

 「鞠莉ちゃん、悪いけどそのお願いは断らせてもらうよ」

 

 苦笑しながら言う天くん。

 

 「そもそもスクールアイドル部は、まだ承認されてもいない部活でしょ?マネージャーなんて早いと思うけど?」

 

 そう、昨日も天くんはそう言っていた。確かにまだ私達は本格的な活動も出来ていないし、マネージャーなんて早いと思う。

 

 昨日は曜ちゃんに乗せられて、『天くんが入ってくれたら』なんて思ってしまったけれど・・・

 

 「それに俺、マネージャーの仕事なんて・・・」

 

 「出来ない、とは言わせないわよ」

 

 不敵な笑みを浮かべる鞠莉さん。

 

 「スクールアイドルのマネージャーなんて・・・天にはお手の物でしょう?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む天くん。スクールアイドルのマネージャーがお手の物・・・?

 

 「私が何も知らないと思った?私達は疎遠になってしまったけど、貴方のお母様と私のママは今でも連絡を取り合っているのよ?」

 

 「・・・あのお喋りクソババア」

 

 悪態をつく天くん。表情が歪んでいる。

 

 「この子達を、マネージャーとして支えてあげてほしいの。天なら出来るでしょ?」

 

 「出来ないよ」

 

 鞠莉さんの言葉をバッサリ切り捨てる天くん。

 

 「俺で力になれることがあるなら、協力したいとは思ってる。でもマネージャーにはならないし、スクールアイドル部に入る気も無い。鞠莉ちゃんの頼みでも、それは聞けない」

 

 明確な拒絶。鞠莉さんが溜め息をつく。

 

 「そう・・・それなら幼馴染の小原鞠莉としてではなく、理事長の小原鞠莉として貴方に命令するわ。この子達のマネージャーになりなさい。さもなくば、貴方を浦の星から追放します」

 

 「鞠莉さん!?何を言い出すのですか!?」

 

 ダイヤさんが鞠莉さんに食ってかかる。

 

 「理事長が一生徒に何かを強要するなど、あってはなりませんわ!そもそも、正当な理由もなく追放など出来るわけが・・・」

 

 「共学化を白紙に戻せば良い話よ。そうすれば天は、浦の星から出ていかざるをえなくなるわ。そして小原家は、浦の星の運営に顔が利く・・・それくらい十分に可能よ」

 

 「正気ですの貴女!?」

 

 「至って正気よ。そもそも、天を浦の星に呼んだのは私なんだから」

 

 「「なっ!?」」

 

 驚いている天くんとダイヤさん。鞠莉さんが天くんを呼んだ・・・?

 

 「天の中学の理事長さんから天を推薦された時、運命だと思ったわ。天がいれば、私の願いはきっと叶う・・・そう思ったわ」

 

 「願い・・・?」

 

 訝しげな天くんに対し、悲しそうに微笑みながら何も答えない鞠莉さん。

 

 一方、ダイヤさんはわなわなと身体を震わせていた。

 

 「鞠莉さん、貴女・・・最初から利用するつもりで、天さんを浦の星に呼んだというのですか・・・!」

 

 「・・・その通りよ」

 

 乾いた音が体育館に響く。ダイヤさんが鞠莉さんの頬を引っ叩いていた。

 

 「見損ないましたわッ!天さんは貴女の幼馴染なのでしょう!?その天さんを利用する為に呼んだですって!?恥を知りなさいッ!」

 

 「・・・天、貴方ずいぶんダイヤに好かれたのね。こんなダイヤ初めて見るわ」

 

 叩かれた頬を押さえ、天くんへと視線を移す鞠莉さん。

 

 「いくら蔑まれようと、私は要求を変えるつもりは無いわ。天、マネージャーになりなさい。私は本気よ」

 

 「鞠莉さん!?いくら何でもそんな無理矢理・・・」

 

 「そうですよ!私達だってそんなやり方は望んで・・・」

 

 「貴女達は黙ってて。天がマネージャーにならないと言うのなら、さっきのデビューライブの件も白紙にするわ。部の承認もしません」

 

 「そんな!?」

 

 千歌ちゃんと曜さんに冷たい眼差しを向ける鞠莉さんに、私も黙っていられなかった。

 

 こんな状況、天くんがあまりにも可哀想すぎる。やりたくもないマネージャーをやれと強要され、断れば学校からの追放及び私達を不利な状況に追い込むと脅されているのだ。

 

 こんなのって・・・

 

 「・・・分かりました」

 

 溜め息をつく天くん。

 

 「引き受けますよ・・・マネージャー」

 

 「天くん!?本当に良いの!?」

 

 「仕方ないでしょう。それ以外の選択肢が無いんですから」

 

 私の言葉に、天くんが苦笑する。

 

 「せっかく浦の星に来たのに、追放されたくありませんから。スクールアイドル部だって、ちゃんと立ち上げてほしいですし」

 

 「天くん・・・」

 

 千歌ちゃんと曜ちゃんも、悲痛な表情を浮かべていた。マネージャーになってほしいとは思ったけど、こんなやり方するなんて・・・

 

 「・・・感謝するわ、天」

 

 鞠莉さんが天くんに触れようと手を伸ばし・・・思いっきり弾かれた。

 

 「・・・触らないで下さい」

 

 「そ、天・・・?」

 

 鞠莉さんを見る天くんの目は、見たこともないほど冷たいものだった。その目に見つめられた鞠莉さんは、怯えたように一歩下がる。

 

 「マネージャーの件、確かに引き受けました。ただし条件があります」

 

 「な、何かしら・・・?」

 

 「まず一つ目・・・スクールアイドル部が設立された場合でも、スクールアイドル部への所属を強要しないこと。マネージャーとしての仕事はするつもりですが、スクールアイドル部に所属するつもりはありませんので。勿論設立されなかった場合は、マネージャーは辞めます。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・マネージャーの仕事をしてくれるなら、所属までは強要しないわ」

 

 天くんの言葉には、感情が全くこもっていなかった。まるで機械音声のようだ。

 

 「二つ目・・・生徒会の仕事の優先を許可すること。俺の所属はあくまでも生徒会ですので、そちらが最優先です。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 鞠莉さんが恐る恐る頷く。今の天くんがよほど怖いらしい。

 

 「そして三つ目・・・貴女がどこまでこれまでの俺を知っているのか、俺も把握はしていませんが・・・」

 

 鞠莉さんを睨みつける天くん。

 

 「他の人達に、俺の情報は一切話さないこと・・・よろしいですね?」

 

 「わ、分かったわ・・・」

 

 「・・・では、マネージャーを引き受けます。不本意ではありますが」

 

 踵を返し、体育館の出口へと歩いていく天くん。

 

 「そ、天っ!」

 

 「人を気安く名前で呼ばないで下さい・・・小原理事長」

 

 名前を呼ぶ鞠莉さんに冷たく返した天くんは、忌々しそうに吐き捨てた。

 

 「俺は今、この学校に来てしまったことを・・・心の底から後悔してますよ」

 

 その言葉は、私達の胸に深く突き刺さるのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、ようやく鞠莉ちゃんが登場しましたが…

すみません、いきなり横暴な態度をとっております…

しばらくは天が鞠莉ちゃんに冷たくなるかと思いますが、物語の都合上何卒ご理解下さいませ(>_<)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

支えてくれる人の存在は大きい。

『想いよひとつになれ』ってメッチャ良い曲ですよね。

アニメではサビの部分で善子ちゃんがウインクしてて、ハートをズッキュンされました。


 「・・・ハァ」

 

 俺は溜め息をつきながら、廊下を歩いていた。頭の中で、先ほどの小原理事長との会話が繰り返し流れている。

 

 「あの女・・・!」

 

 思い出す度に怒りがこみ上げてくる。

 

 なりふり構わず俺を脅し、千歌さん達のマネージャーを務めることを強要してくるなんて・・・流石は富豪の令嬢、権力を持っている者の脅しは一味違うようだ。

 

 だが・・・

 

 「・・・悲しそうだったな」

 

 あの悲しげな笑みが頭から離れない。恐らく、俺を脅してでもマネージャーにしたい理由があるのだろう。

 

 それでも、今回のことを許すことは出来ないが。

 

 「・・・もう訳が分かんない」

 

 頭の中がグチャグチャで、全く整理できない。とにかく今は帰って寝よう。

 

 そう思い、鞄を取りに教室へと戻ると・・・

 

 「あれ?天くん?」

 

 「ずら丸?」

 

 ずら丸が一人で席に座り、本を読んでいた。

 

 「帰ってなかったの?」

 

 「今日は図書委員会の仕事だったずら」

 

 「あぁ、図書室の受付か」

 

 図書委員会の生徒は当番制で、週に何度か図書室の受付をやっている。ずら丸もクラス代表として図書委員会に所属しており、今日がその当番の日だったらしい。

 

 「で、何で教室で本読んでんの?」

 

 「天くんと一緒に帰ろうと思って」

 

 微笑むずら丸。

 

 「当番が終わって教室に戻ってきたら、天くんの鞄が置いてあったから。天くんが戻ってくるのを、読書しながら待ってたずら」

 

 「マジか・・・結構待たせた?」

 

 「今来たところずら」

 

 「何そのデートの待ち合わせで男が言いそうなセリフ」

 

 「マルは女ずら」

 

 「知ってるわ」

 

 笑いながらツッコミを入れる。と、ずら丸が怪訝な表情で俺を見た。

 

 「・・・何かあったずら?」

 

 「え、何で?」

 

 「・・・酷い顔してるずら」

 

 「うわ、顔をディスられた。傷付くわぁ」

 

 「天くん」

 

 いつになく強い口調で、俺の名前を呼ぶずら丸。

 

 「無理して茶化すのは止めるずら。辛いのは天くんの方ずら」

 

 「・・・そうでもしなきゃやってられないよ」

 

 力なく席に座る俺。

 

 「頭の中がゴチャゴチャで、何も考えたくない・・・何かもう疲れたよ・・・」

 

 どうして小原理事長があんなことをしたのか・・・どうして俺がマネージャーをやらなければいけないのか・・・

 

 「何で・・・どうして・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろからずら丸の声が聞こえたかと思うと、頭が柔らかいものに覆われる。

 

 俺はそこで初めてずら丸が俺の後ろに移動していたこと、そして後ろからずら丸に抱き締められていることに気付いた。

 

 「今は何も考えちゃダメずら。こういう時に深く考えちゃうと、どんどん良くない方に考えがいっちゃうずら」

 

 「ずら丸・・・」

 

 「今はただ、頭を空っぽにすること・・・マルに身を任せていれば良いずら」

 

 優しく抱き締めてくれるずら丸。ずら丸の温もりを感じ、心が安らいでいく。

 

 「・・・女の子なんだから、あんまり男にこういうことしない方が良いよ」

 

 「マルの男友達は天くんだけだから、他にこういうことする男の子なんていないずら。天くんだけの特権ずら」

 

 「・・・そっか。ありがたく受け取っとくよ」

 

 大人しくずら丸に身を任せる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったずらね・・・」

 

 神妙な表情のずら丸。

 

 俺は帰りのバスの中で、ずら丸に事情を説明していた。あそこまでしてもらった以上、ずら丸に何も話さないのは良くないと思ったのだ。

 

 「理事長さんも酷いことするずら・・・」

 

 「・・・正直、かなりショックだったよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「久しぶりに会えて嬉しかったし、向こうも純粋に喜んでくれてるんだと思ってた。でも実際は、俺を利用する為に浦の星に入学するように仕組んでたなんて・・・」

 

 「マネージャーを断れば、浦の星からの追放・・・それは断れないずらね」

 

 「いや、それだけで済むなら断ってたよ」

 

 「ずら!?」

 

 驚愕しているずら丸。

 

 「ど、どういうことずら!?」

 

 「別の学校に行くっていう選択肢があったってこと。ツテが無いわけじゃないから、受け入れてくれる学校なら見つけられると思うし」

 

 「じゃ、じゃあ何で・・・」

 

 「・・・スクールアイドル部の為、かな」

 

 もし俺が断れば、小原理事長はスクールアイドル部を認めないと言っていた。それでは千歌さんの夢が叶わないし、せっかく前向きになれた梨子さんの決意が無駄になってしまう。

 

 何より自分達のマネージャーを断ったせいで、俺が浦の星から追放されてしまったら・・・恐らくあの三人は、責任を感じてスクールアイドルを断念してしまうだろう。

 

 「せっかく見つけた目標を、こんなことで諦めてほしくないから。あの三人には、これからも真っ直ぐ突き進んでほしいし」

 

 「でも天くんが無理矢理マネージャーをやらされることに、先輩方が責任を感じてないとは思えないずら」

 

 「そこは先輩方とも話をするよ。さっきはちょっと冷静じゃなかったけど、ずら丸のおかげでずいぶん落ち着いたから」

 

 俺は笑いながら、隣に座るずら丸の頭を撫でた。

 

 「ありがとう。おかげで助かったよ」

 

 「マ、マルは当然のことをしただけずら・・・」

 

 ずら丸が顔を赤くしている。可愛い奴め。

 

 「・・・でも、天くんが浦の星に残ってくれて良かったずら」

 

 「え?」

 

 ずら丸の言葉に首を傾げる俺。ずら丸が優しく微笑む。

 

 「・・・せっかく仲良くなれたのに、離れちゃうのは寂しいずら」

 

 「っ・・・」

 

 思わずドキッとしてしまう。ニヤけるずら丸。

 

 「あれ、天くん顔が赤いずら。どうしたずら?」

 

 「ゆ、夕陽のせいだって!」

 

 「ふーん・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるずら♪」

 

 くっ、コイツ・・・完全に気付いてるな・・・

 

 「フフッ、天くんの弱点発見ずら♪」

 

 「・・・ここにずら丸の愛読書があります」

 

 「ずら!?マルが鞄に入れてた本!?いつの間に!?」

 

 「そしてここにマッチがあります・・・春とはいえ、日が暮れると冷えるよね」

 

 「ごめんなさいずらあああああっ!?堪忍ずらあああああっ!?」

 

 フッ、勝った・・・俺をからかおうなんて百年早いわ。

 

 「うぅ・・・天くんは鬼ずら・・・」

 

 「失礼な。悪魔と呼んでもらおうか」

 

 「余計に酷くなったずら!?」

 

 そんなやり取りをしていると、俺が降りるバス停に到着した。自分の鞄を持ち、席を立ってずら丸の方を見る。

 

 「じゃあまた明日」

 

 「また明日ずら」

 

 手を振ってくれるずら丸。

 

 俺はバスを降りようとしたが・・・一度立ち止まり、もう一度ずら丸の方を見る。

 

 「今日は本当にありがとう・・・花丸と友達で良かった」

 

 初めて名前を呼んだ。

 

 俺の言葉に、花丸は目をぱちくりさせると・・・頬を赤く染め、照れ臭そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「んー・・・とりあえず明日、千歌さん達と話さないとなぁ・・・」

 

 帰り道を歩きながら、どう話を切り出すかを考える。

 

 あの人達、絶対気にしてるだろうしなぁ・・・

 

 「わんっ!」

 

 考えながら歩いていると、犬の鳴き声が聞こえた。思わず顔を上げると、こちらへ向かって大きな犬が駆け寄ってくるところだった。

 

 「おぉ、しいたけ。ただいま」

 

 「わんっ!」

 

 嬉しそうに身体を摺り寄せてくる犬・・・しいたけの頭を優しく撫でる。

 

 と、しいたけの後から一人の女性が駆け寄ってきた。

 

 「ちょっとしいたけ、急にどうした・・・って天じゃん!今帰り?」

 

 「えぇ。こんばんは、美渡さん」

 

 明るいブラウン系の短い髪の女性に挨拶する。

 

 彼女は高海美渡さんといって、しいたけが飼われている旅館『十千万』の娘さんだ。『十千万』は学校の行き帰りで必ず通る為、毎日しいたけを構っていたら美渡さんとも挨拶する仲になったのだ。

 

 「学校の方はどうよ?彼女できた?」

 

 「欲しいのは山々なんですけど、全然フラグが建たないんですよね」

 

 「えー、だって男子は天だけなんでしょ?他は全員女子なんだから、選びたい放題じゃん。選り取りみどりじゃん」

 

 「女子達にも選ぶ権利があるでしょう。こんな冴えない男を選ぶぐらいなら、他校のイケメンを狙いに行くんじゃないですか?」

 

 「そうかなぁ?天は割りとイケてると思うよ?」

 

 「美渡~?」

 

 美渡さんと話していると、美渡さんの後ろから違う女性が現れた。黒髪ロングのおっとりとした雰囲気の女性が、しいたけとじゃれている俺に気付く。

 

 「そろそろ夕飯・・・って、天くんじゃない!お帰りなさい」

 

 「こんばんは、志満さん」

 

 彼女は高海志満さん、美渡さんのお姉さんだ。美渡さんと同じく挨拶する仲で、よくおすそ分けをいただいたりする。マジ女神。

 

 「志満さんは今日もお綺麗ですね」

 

 「フフッ、天くんったら上手なんだから」

 

 「本心ですって。俺が大人だったら放っておかなかったでしょうね」

 

 「あら、じゃあ天くんは私を放っておくのかしら?」

 

 「志満さんがその気なら、喜んでアタックさせていただきます」

 

 「ちょっと天、私の前で志満姉を口説かないでくれる?」

 

 「まだ口説いてませんよ。MK5(マジで口説く5秒前)です」

 

 「言葉が古くない!?アンタ高校生よねぇ!?」

 

 美渡さんのツッコミ。面白い人だなぁ・・・

 

 「美渡さんって、俺の先輩に似てますね。ツッコミが上手なんでボケやすいです」

 

 「いや、そこで判断されても・・・その先輩も大変ね・・・」

 

 同情的な表情の美渡さん。

 

 失礼な、これでも千歌さんのことは敬っているというのに。

 

 「そうだ天くん、良かったら夕飯食べていかない?」

 

 「いえ、そこまで甘えてしまうわけには・・・」

 

 「今日のメニューは肉じゃがなんだけど、ちょっと作りすぎちゃって」

 

 「ご相伴に預からせていただきます」

 

 「急に態度が変わったわね・・・」

 

 呆れている美渡さん。だって前におすそ分けでいただいた肉じゃが、メッチャ美味しかったんだもん。

 

 「フフッ、じゃあどうぞ」

 

 「お邪魔します」

 

 志満さんに案内され、『十千万』の中へと足を踏み入れる。

 

 「千歌ちゃ~ん、ご飯よ~」

 

 志満さんが二階に向かって呼びかける・・・え?

 

 「・・・は~い」

 

 やがて元気の無い様子で階段を下りてきたのは・・・紛れも無く千歌さんだった。

 

 「ごめん志満姉、私あんまり食欲無くて・・・って天くん!?何でここに!?」

 

 「・・・チェンジで」

 

 「何が!?」

 

 千歌さんのツッコミが響くのだった。




どうも~、ムッティです。

前回の話に、多くの感想をいただきました!

本当にありがとうございます!

意外にも『こういう展開好きです』という感想が多くて驚きました。

鞠莉ちゃん推しの方々から呪われるんじゃないかと思い、ちょっとビクビクしてたのはここだけの話…

前回の話はちょっとシリアスでしたが、今回からはまた思いっきりボケていきたいと思います(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

好きな人には好きって伝えるんだ。

タイトルは、Aqua Timezの『千の夜をこえて』から取りました。

あと、あいにゃさんが可愛すぎてヤバい。


 『十千万』の二階にある千歌さんの部屋で、千歌さんと俺は正座して向き合っていた。千歌さんからの連絡を受けたであろう曜さん・梨子さんも加わり、俺達四人はテーブルを囲む形で座っている。

 

 先ほどの一件もあり、部屋の中は重苦しい雰囲気で包まれて・・・

 

 「もぐもぐ・・・このクッキー・・・もぐもぐ・・・メッチャ・・・もぐもぐ・・・美味しい・・・もぐもぐ・・・流石は・・・もぐもぐ・・・志満さん・・・もぐもぐ・・・」

 

 「凄い勢いでクッキー食べてる!?」

 

 「口の中に物を入れた状態で喋らないのっ!」

 

 いなかった。

 

 梨子さんから注意されてしまったので、口の中のクッキーを紅茶で流し込む・・・うん、紅茶も美味しい。

 

 「ごめんなさい、お母さん」

 

 「誰がお母さんよ!?」

 

 「え、ママって呼んだ方が良いですか?」

 

 「そういう問題じゃないんだけど!?」

 

 「じゃあ間をとってオカンで」

 

 「だからそういう問題じゃないってば!?」

 

 ぜぇぜぇ息を切らしながらツッコミを入れてくれる梨子さん。

 

 「まぁ、疲れ切っている梨子さんは放置するとして・・・」

 

 「誰のせいよ!?」

 

 「それにしても、志満さんと美渡さんが千歌さんのお姉さんだったとは・・・」

 

 世の中狭いものである。知り合いのお姉さん達が、まさか学校の先輩の家族とは・・・

 

 「確かに苗字は『高海』だし、妹がいるとは聞いてたし、浦の星に通ってるとは聞いてたし、最近スクールアイドルにハマってるらしいとは聞いてたけど・・・まさかですね」

 

 「全然まさかじゃないよねぇ!?それ私しかいないよねぇ!?何で気付かないの!?」

 

 「いやぁ、鈍感なもので。すみません千歌さん・・・いや、義妹さん」

 

 「何で言い直したの!?」

 

 「俺が志満さんと結婚したら、美渡さんと千歌さんは俺の義妹になりますから」

 

 「こんな義兄さん嫌ああああああああああっ!?」

 

 梨子さんに続き、千歌さんもダウンして机に突っ伏す。仕方ないので、俺は右隣の曜さんに向き直った。

 

 「ところで曜さん、もう夜ですけど・・・ここに来てて良いんですか?バスが無くなって帰れなくなりません?」

 

 「あ、それは大丈夫。今日は千歌ちゃんの家に泊まらせてもらうから」

 

 大きめのリュックを持ち上げる曜さん。

 

 「千歌ちゃんから連絡もらって、大急ぎでお泊りの準備したんだよ。まさか千歌ちゃんの家に天くんが来るなんて、思ってもみなかったなぁ」

 

 「お騒がせしてすいません・・・梨子さんは大丈夫なんですか?」

 

 「うん。私の家は隣だから」

 

 「そうなんですか!?」

 

 マジか・・・っていうか、家の隣が旅館ってある意味凄いな・・・

 

 「それより、天くんこそ大丈夫なの?」

 

 机に突っ伏していた千歌さんが顔を上げる。

 

 「夕飯のこととか、家に連絡してる様には見えなかったけど・・・」

 

 「あ、一人暮らしなんで大丈夫です」

 

 「「「一人暮らし!?」」」

 

 三人の声がハモる。あれ、言ってなかったっけ?

 

 「俺、元々は家族と東京に住んでたんですよ。それが浦の星へ入学することになって、一人でこっちに引っ越してきたんです」

 

 「天くんも東京に住んでたの!?」

 

 「えぇ、一応」

 

 流石に梨子さん一家のように、家族で内浦に引っ越すことは出来なかったが。だから俺だけこっちに来たのだ。

 

 「だから志満さんからのおすそ分けって、ホントありがたいんですよね。一応料理は出来ますけど・・・人の作ってくれたものを食べられるって、凄く幸せなことですから」

 

 「天くん、これからはウチで夕飯食べていきなよ!」

 

 「私の家も大歓迎よ!いつでも来てくれて良いからね!」

 

 何故か涙目の千歌さんと梨子さん。あれ、同情されてる?

 

 「天くん、ウチにもご飯食べに来てね!」

 

 「いや、気持ちは嬉しいですけど・・・曜さんの家だと帰れなくなりますから」

 

 「お泊りでも大丈夫だよ!」

 

 「思春期の男子に対して、もう少し警戒心を持ってくれません?」

 

 呆れている俺に構わず、目を潤ませながら俺の手を握ってくる曜さん。いや、気持ちはメッチャ嬉しいんだけども。

 

 「まぁそれはさておき・・・とりあえず、マネージャーの件について話しましょうか」

 

 「「「っ・・・」」」

 

 俯く三人。やっぱり責任を感じているようだ。

 

 「まず最初に言っておきますが、俺がマネージャーをやるのは小原理事長に脅されたからです。悪いのは小原理事長であって、千歌さん達には何の非もありません。なので責任を感じる必要は無いですよ」

 

 「いや、でも・・・」

 

 「異論は認めません」

 

 千歌さんが申し訳なさそうに口を開くが、強引に遮る。

 

 「俺はスクールアイドルを目指す千歌さん達を応援してましたし、俺で力になれることがあるなら協力したいとも思ってました。スクールアイドル部に入ったり、マネージャーになったりするつもりはありませんでしたが・・・それでも、陰ながら支えていけたらって。だから『自分達がスクールアイドルをやろうとしたせいだ』なんて、絶対に思わないで下さい。そう思われることの方が、俺はよほど悲しいです」

 

 「天くん・・・」

 

 「・・・一つ、聞いても良いかしら?」

 

 梨子さんがおずおずと口を開く。

 

 「天くんならスクールアイドルのマネージャーなんてお手の物だって、あの時鞠莉さんが言ってたけど・・・どういう意味なのかな?」

 

 「・・・申し訳ないんですけど、今は話せません」

 

 「あ、言いたくないなら大丈夫よ!?無理に聞いたりしないから!」

 

 頭を下げる俺を見て、慌てる梨子さん。気を遣わせちゃったな・・・

 

 「・・・まぁとにかく。マネージャーをやることになったからには、精一杯やらせてもらいます。経緯が経緯なんで、正直複雑かとは思いますが・・・」

 

 「本当に良いの・・・?」

 

 曜さんが気遣わしげに俺を見ている。

 

 「あんなにマネージャーをやることを拒否してたのに・・・大丈夫なの?」

 

 「・・・曜さん」

 

 「何・・・?」

 

 「好きです」

 

 「うん・・・えぇっ!?」

 

 ビックリしている曜さん。顔がどんどん赤くなっていく。

 

 「きゅ、急にそんな・・・!」

 

 「あ、恋愛的な意味じゃないですよ。人としてです」

 

 「紛らわしいわっ!」

 

 勘違いが恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にしながら両手で顔を覆う曜さん。千歌さんと梨子さんが同情的な視線を送っている。

 

 「曜ちゃん、ドンマイ・・・」

 

 「天くん、今のは誰でも勘違いするわよ・・・」

 

 「そうですか?」

 

 まぁとりあえず、悶絶している曜さんは置いといて・・・

 

 「千歌さんのことも梨子さんのことも、俺は好きですよ。尊敬できる先輩だと思ってます。もしそう思ってなかったら、学校を追放されるとしてもマネージャーを引き受けたりしなかったでしょうね」

 

 さっき花丸にも言ったことだが、学校を追放されるだけなら俺はマネージャーを断っていた。それでもマネージャーを引き受けたのは、スクールアイドル部を立ち上げてほしかったから。

 

 それはつまり・・・尊敬できる先輩方に、夢を叶えてほしかったからだ。

 

 「俺がマネージャーをやりたくなかったのは、先輩方が嫌いだからじゃありません。まだ理由は言えませんけど、それでも・・・先輩方が好きだから、俺はマネージャーを引き受けたんです。それだけは覚えておいて下さい」

 

 「天くん・・・」

 

 涙目の千歌さん。俺は立ち上がると、三人に向かって頭を下げた。

 

 「さっきはちょっと感情的になって、場の空気を悪くしてしまってすみませんでした。マネージャーとして精一杯頑張りますので、これからよろしくお願いします」

 

 「っ・・・天くんっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 勢いよく抱きついてくる千歌さん。思わずその場に倒れこんでしまう。

 

 「ごめんね・・・ひっぐ・・・ごめんね・・・!」

 

 「・・・はいはい、泣かないで下さい」

 

 苦笑しながら、泣いている千歌さんの頭を撫でる。

 

 「謝る必要なんか無いのに・・・千歌さんはお人好しですね」

 

 「・・・それは天くんもでしょ」

 

 優しい温もりに包まれる。梨子さんが後ろから俺を抱き締めていた。

 

 「天くんも謝る必要なんか無いのに・・・本当にお人好しなんだから・・・ぐすっ」

 

 「あれ、梨子さん泣いてます?」

 

 「泣いてないわよ・・・ぐすっ」

 

 確実に泣いてるじゃないですか・・・というツッコミは、流石に無粋だと思ったのでしなかった。

 

 「うわあああああんっ!天くうううううんっ!」

 

 「感情を微塵も隠す気の無い人が来た!?」

 

 俺、千歌さん、梨子さんをまとめて抱き締める曜さん。ちょ、苦しいんだけど・・・

 

 「皆で頑張ろうっ!スクールアイドル部を立ち上げようっ!」

 

 「ちょ、曜さん・・・分かったから落ち着いて・・・」

 

 「うわあああああんっ!」

 

 「・・・全然人の話聞いてないし」

 

 まぁ、不思議と悪い気はしてないけど。今は好きにさせておこう。

 

 「っていうか梨子さん、結局俺に抱きついてるじゃないですか。やっぱり俺、年上の女性に抱きつかれやすい体質なのかも」

 

 「か、勘違いしないでよね!?これはあくまで友愛的な意味でしてることだから!」

 

 「梨子ちゃん、今のは世間じゃツンデレって言われるセリフだよ?」

 

 「千歌ちゃん!?何よツンデレって!?私はデレてなんかないんだからね!?」

 

 「千歌さん聞きました?テンプレの台詞でしたよね?」

 

 「うん、やっぱり梨子ちゃんはツンデレなんだね」

 

 「だから違うってば!?」

 

 「うわあああああんっ!」

 

 最早カオスとも言うべき状況である。

 

 それでも・・・先輩方との距離が、少しだけ縮まったような気がした俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、とりあえず天がマネージャーになりましたね。

千歌ちゃん達とは良い感じに仲が深まっていますが、果たして鞠莉ちゃんとはどうなるのか…

そして海の音を聴いて以来、出番の無い果南ちゃんの登場はいつになるのか…

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

縁は大切にすべきである。

昨日は暑かったのに、今日はメッチャ寒い…

気温の変化が激しすぎてついていけない…


 「あっ・・・天くん・・・ダメ・・・!」

 

 「そんなこと言っちゃって・・・梨子さんなら、もっとイケるでしょう・・・?」

 

 「ダメ・・・それ以上は・・・あっ・・・!」

 

 「よし、イキますね・・・!」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 悲鳴を上げる梨子さんに構わず、俺はただ力を込め・・・

 

 「痛い痛い痛い!?天くん待って!?ホントギブ!ギブだから!」

 

 「梨子さんの悲鳴が聞けるなら、俺はいくらでもこの背中を押しますよ」

 

 「ドS!鬼!悪魔!」

 

 「おっと、力加減をミスりました」

 

 「いやああああああああああっ!?」

 

 梨子さんの背中を押していた。

 

 マネージャーを引き受けてから数日、俺は千歌さん達の練習に付き合っていた。今は練習前の柔軟体操をしており、俺は梨子さんとペアを組んで身体をほぐしているのだった。

 

 「天くん、ホント容赦ないよね・・・私もやられたけど、痛かったなぁ・・・」

 

 「そうかな?私はそんなことなかったけど?」

 

 千歌さんと曜さんも、そんな会話をしながら柔軟体操をやっている。まぁ曜さんは水泳部だけあって、身体も柔らかかったしな。

 

 「さて、これぐらいにしておきますか」

 

 「ハァ・・・ハァ・・・」

 

 練習場所の砂浜に突っ伏し、息切れしている梨子さん。やれやれ・・・

 

 「大丈夫ですか?練習はこれからですよ?」

 

 「天くんのせいでしょうが!」

 

 「梨子さんの身体が硬いせいです。だから頭も固いんですよ」

 

 「うぐっ・・・」

 

 悔しそうな梨子さん。どうやら自覚はあるらしい。

 

 「俺の知り合いのピアノやってる人は、キチンと柔軟体操を続けて身体が柔らかくなりましたよ。まぁ未だに頭は固いままですけど」

 

 「じゃあ関係ないじゃない!?」

 

 「でも、ピアノはメッチャ上手くなりました」

 

 「ちゃんと柔軟体操やらなくちゃ!」

 

 チョロい梨子さん。

 

 まぁ上手くなったというより、前より楽しそうにピアノを弾くようになったっていう話なんだけどね。柔軟体操も関係無いし。

 

 「さて、ランニングいきますか」

 

 「おー!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 千歌さんと曜さんが元気よく走り出し、その後を梨子さんと俺が追う。これがいつものランニングの陣形だった。

 

 「ライブ、絶対成功させるんだ!私達なら出来る!」

 

 息巻いている千歌さん。

 

 ライブの日まであまり時間も無いが、それまでに何とかスクールアイドルとしての形にはしたいところだ。会場を満員にできたとしても、パフォーマンスがダメなら小原理事長も納得しないだろう。

 

 そもそも、μ's大好きウーマンのダイヤさんがブチギレるだろうし・・・ん?μ's?

 

 「千歌さん、一つ聞いても良いですか?」

 

 「ん?何?」

 

 「グループの名前って決まってるんですか?」

 

 「・・・あっ」

 

 今『あっ』って言ったよこの人。完全に忘れてたパターンだよ。

 

 「ちゃんと決めた方が良いですよ。名前って結構重要ですから」

 

 「そうだよね・・・でも、どんな名前が良いかなぁ・・・」

 

 考え込む千歌さん。すると、曜さんが勢いよく手を上げた。

 

 「はいはーい!『制服少女隊』なんてどうかな!?」

 

 「無いかな」

 

 「無いわね」

 

 「無いですね」

 

 「えぇっ!?」

 

 全員から否定され、ショックを受ける曜さん。いや、まぁ何と言うか・・・

 

 「完全に曜さんの趣味が入ってますよね、それ」

 

 「良いじゃん!可愛いじゃん!」

 

 頬を膨らませる曜さん。

 

 曜さんは職業系の制服が大好きらしく、自分で作ったりもするんだとか。なのでライブの衣装は、曜さんが担当することになっている。

 

 「梨子ちゃんはどう?どんな名前が良いと思う?」

 

 「んー、そうねぇ・・・」

 

 千歌さんに尋ねられ、考え込む梨子さん。梨子さんならきっと、良いセンスのグループ名を考えてくれるだろう。

 

 「海で知り合った三人組ってことで、『スリーマーメイド』とか・・・」

 

 そんなことを考えていた時期が俺にもありました。

 

 「さぁ、そろそろペース上げましょうか」

 

 「「おー!」」

 

 「待って!?今の無し!無しだから!」

 

 顔を真っ赤にしてブンブン腕を振る梨子さん。やれやれ・・・

 

 「仕方ありません。言い出しっぺに決めてもらいましょうか」

 

 「え、天くんが決めてくれるの?」

 

 「脳天かち割りますよ、能天気オレンジヘッド」

 

 「メッチャ罵倒された!?私一応先輩だよねぇ!?」

 

 「早く考えないと、マジで『スリーマーメイド』にしますからね」

 

 「今すぐ考えなきゃ!?」

 

 「だからそれは無しだってば!?」

 

 ギャーギャー騒いでいる梨子さんは無視して、千歌さんが必死にグループ名を考える。と、曜さんが俺へと視線を向けてきた。

 

 「ちなみに、天くんはどんなグループ名が良いと思う?」

 

 「そうですねぇ・・・『シグナル』とかどうでしょう?」

 

 「お、ちょっとカッコ良いかも。ちなみに名前の由来は?」

 

 「イメージカラーですね。梨子さんがサクラピンク、千歌さんがオレンジ、曜さんがライトブルー・・・それぞれ赤・黄・青に近いですし、信号っぽいじゃないですか」

 

 「・・・うん、由来がちょっとアレかな。まぁ名前は悪くないと思うけど」

 

 「っていうか、私のイメージカラーはみかん色だから!オレンジじゃないから!」

 

 「そこに拘るんですか?」

 

 千歌さんのよく分からない拘りはさておき、他にも名前を考えてみる。

 

 「三人のイニシャルで考えるのはどうですか?千歌さんがC、曜さんがY、梨子さんがRだから・・・そう、例えば『CYaRon!』とか・・・」

 

 「「「それはダメ」」」

 

 「あれ?ダメでした?」

 

 結構良い名前だと思ったんだけど・・・

 

 「いや、良い名前だとは思うんだけどね・・・」

 

 「うん、良い名前なんだけど・・・何かダメな気がする」

 

 「上手く言えないんだけど・・・この三人のグループ名では無いわね」

 

 何故か微妙な表情をしている三人。まぁ皆がそう言うなら仕方ないか・・・

 

 「そういえば、μ'sはどうやって名前を決めたのかしら?」

 

 「ギリシア神話に登場する文芸の女神『ミューズ』が由来なんだって。『ミューズ』は九人の女神が存在するらしくて、そこから『μ's』っていう名前にしたみたい」

 

 「あれ?でもμ'sって、最初は三人だったんじゃなかったっけ?」

 

 「あっ、確かに・・・じゃあ何で『μ's』にしたんだろう?」

 

 ダイヤさんの問題に答えられなかったことがキッカケで、μ'sのことを熱心に調べるようになった千歌さんだったが・・・これは流石に分からないだろう。

 

「天くんは知ってる?」

 

「まだμ'sが三人だった頃、学校に投票箱を設けてグループ名を募集したみたいです。そこに投函されていた紙に『μ's』って書いてあって、それをグループ名にしたんだとか」

 

「・・・まさか本当に知ってるなんて」

 

唖然としている千歌さん。

 

「じゃあμ'sの名前を考えた人は、音ノ木坂の生徒ってこと?」

 

「そうです。後に判明したそうですが、投函したのは東條希さんだったんだとか」

 

「東條希さんって・・・え、μ'sのメンバーの!?」

 

「えぇ。まぁ投函したのは、彼女がμ'sに加入する前の話だそうですけど」

 

「そうなんだ・・・でも、何で『μ's』だったんだろう?」

 

「彼女には、九人になる未来が見えていたそうですよ。まぁ、嘘か本当かは分かりませんけど」

 

「そういえば希さんは、パワースポットや占いに傾倒していたってネットにも書いてあったっけ・・・それなら、本当に未来が見えたのかもしれないね!」

 

少し興奮気味な千歌さん。この人、μ'sの話の時はホントに熱くなるな・・・

 

 「で、名前どうします?」

 

 「あぁっ!?忘れてた!?」

 

 頭を抱える千歌さん。

 

 その後も皆で考えながらランニングしていたものの、結局良い案は思い浮かばず・・・俺達はスタート地点へと戻ってきていた。

 

 「ハァッ・・・ハァッ・・・何か・・・いつもより疲れた・・・」

 

 運動は得意なはずの曜さんが、珍しくしんどそうにしている。千歌さんと梨子さんも疲れたのか、砂浜に仰向けに倒れ込んだ。

 

 頭を使いながらランニングをすると、いつもより負荷が大きいようだ。

 

 「・・・よし、練習メニューに追加しよう」

 

 「「「鬼かっ!」」」

 

 三人から総ツッコミを受けたところで、俺はあるものを発見した。

 

 「ん・・・?」

 

 「天くん?どうしたの?」

 

 「いえ、何か書いてあるみたいで・・・」

 

 さっきまで俺達が柔軟体操をしていた辺りに、『Aqours』という落書きがしてあった。

 

 走り始めた時は、こんな落書きなど無かったはずだが・・・

 

 「私達がランニングしてる間に、誰かが書いたんじゃないかな?この辺の砂浜って、結構色んな落書きがあったりするし」

 

 「・・・そうですかね」

 

 曜さんはそう言うものの、俺はどこか釈然としなかった。

 

 そもそも落書きにしては字が綺麗過ぎるというのもあるが、どこかで見た字のような・・・

 

 「ところでこれ、何て読むのかしら?」

 

 首を傾げる梨子さん。俺の知るかぎりこんな英単語は無いはずなので、恐らく造語だとは思うのだが・・・

 

 「もしかして・・・アクア、ですかね?」

 

 「アクア・・・水ってこと?」

 

 「えぇ、多分。海辺ですし、水を基にした造語なんじゃないですか?」

 

 「・・・水かぁ」

 

 微笑む千歌さん。あ、この顔は・・・

 

 「ねぇ、この名前・・・」

 

 「良いんじゃないですか?」

 

 「まだ何も言ってないよ!?」

 

 「グループ名にどうか、っていう話ですよね?」

 

 「天くんってエスパーなの!?」

 

 「千歌さんが分かりやすいだけです」

 

 この人は本当に分かりやすい。考えていることが思いっきり顔に出るし。

 

 「これをグループ名にするの?誰が書いたか分からないのに?」

 

 「だから良いんだよ」

 

 梨子さんの言葉に、千歌さんが笑う。

 

 「名前を決めようとしている時に、この名前に出会った・・・それって、凄く大切なことなんじゃないかな?」

 

 「・・・そうですね」

 

 出会いというものは、偶然なのか必然なのか・・・そんなものはどちらでも良い。

 

 重要なのは、その縁を大切に出来るかどうか・・・そう考えている俺にとって、今の千歌さんの言葉はとても共感できるものだった。

 

 「賛成であります!」

 

 「このままじゃ、いつまでも決まりそうにないしね」

 

 曜さんと梨子さんも賛成のようだ。これで決まったな。

 

 「じゃあ決定ね!今から私達は、スクールアイドル『Aqours』だよ!」

 

 「「おー!」」

 

 盛り上がる三人。グループ名も決まり、これでますます気合いが入るだろう。

 

 「さて、休憩はここまでにしましょうか。次はステップの練習をしましょう」

 

 「えぇっ!?もう休憩終わり!?」

 

 「ご不満なら、永遠に休憩させてあげましょうか?」

 

 「遠回しの殺害予告じゃん!?最近の天くん、生徒会長より怖いんだけど!?」

 

 「いやいや、ダイヤさんは・・・あっ」

 

 思い出した。あの字、どこかで見たことがあると思ったら・・・

 

 思わず苦笑してしまう俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやくグループ名が決まりました。

もっとサクッと終わらせる予定だったのですが、思ったより長くなってしまった…

早く善子ちゃんや果南ちゃんを出さねば…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

借りは返すものである。

3月28日木曜日、日間ランキングで6位に入りました!

皆様、ありがとうございます!


 「・・・そうですか。ライブの準備は順調に進んでいるのですね」

 

 「えぇ、何とか」

 

 生徒会室でお茶を呑みながら、ダイヤさんと会話している俺。

 

 今日は生徒会の仕事があった為、マネージャーとしての仕事はお休みだ。

 

 「高海さん達は、今日も練習ですか?」

 

 「いえ、今日は宣伝活動ですね。沼津の駅前でチラシを配るそうですよ」

 

 スクールアイドル部の設立が承認される条件は、体育館を満員にすること・・・しかしそこには、一つの問題点があった。

 

 「この学校の生徒が全員集まったとしても、体育館は満員にはならない・・・私が言える立場ではありませんが、鞠莉さんも意地悪ですわね」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 そう、浦の星の全校生徒は百人にも満たない。体育館を満員にするには、外部のお客さんに来てもらうしかないのだ。

 

 小原理事長はそれを分かった上で、この条件を出したのだろう。本当に食えない人である。

 

 「ラブライブを目指す以上、学校の中だけで満足してはいられませんからね。それでこんな条件を出したんでしょうけど・・・気に入りませんね」

 

 千歌さん達はまだ、スクールアイドルを始めたばかりだ。

 

 それなのにもうライブをやらせ、満員に出来なければ解散しろだなんて・・・ハードルが高過ぎる。

 

 「あの人が何を考えているのか分かりませんが・・・人を何だと思ってるんですかね」

 

 「天さん・・・」

 

 気遣わしげにこちらを見るダイヤさん。

 

 小原理事長とのいざこざがあってから、ダイヤさんは本当に俺のことを心配してくれていた。『生徒会長として何も出来ず申し訳ない』と言って、土下座してきたほどである。

 

 勿論ダイヤさんは何も悪くないので、すぐに肩を掴んで頭を上げてもらったが。

 

 「・・・まぁ、今はそんなことを言っても仕方ないですね。とにかく体育館を満員にして、スクールアイドル部の設立を承認してもらわないと」

 

 苦笑する俺。

 

 とにかくやるしかない。今は恨み言を言うよりも、前を向いて頑張っていかないと。

 

 「グループ名が決まって、千歌さん達もますます気合いが入ってますから。素敵な名前を付けてくれた人に感謝しないと・・・ありがとうございます、ダイヤさん」

 

 「なっ!?」

 

 驚くダイヤさん。やっぱりか・・・

 

 「な、何のことか私にはさっぱり・・・」

 

 「いつも生徒会の仕事でダイヤさんの字を見ている俺が、分からないわけないでしょうに。砂浜の落書きにしては、ちょっと字が綺麗過ぎましたね」

 

 「・・・参りましたわ」

 

 がっくりと肩を落とすダイヤさん。

 

 「少し練習の様子を見に行ったら、ちょうどグループ名の話をしているのが聞こえたので・・・あ、あくまでも参考にと思って・・・」

 

 「千歌さんの性格を考えると、あの名前になる可能性が高いことは分かってたんじゃないですか?つまりダイヤさんにとって、あの名前は特別なものだったんでしょう?」

 

 「うぐっ・・・」

 

 どうやら図星らしい。まぁ本人が話したくなさそうだし、これ以上は深く聞かない方が良いだろう。

 

 「ちなみに、読みは『アクア』で合ってますか?」

 

 「・・・えぇ、そうです」

 

 頷くダイヤさん。

 

 「水を意味する『Aqua』と、複数形の所有代名詞『ours』を合わせた造語ですわ」

 

 「それで『Aqours』ですか・・・」

 

 『ours(私達のもの)』ということは、ダイヤさん以外にもこの名前を考えた人がいるってことなのかな・・・?

 

 「・・・まぁいずれにせよ、良い名前をいただきました。ありがとうございます」

 

 「あの、天さん・・・このことは、高海さん達には・・・」

 

 「分かってます。内緒にすれば良いんですよね?」

 

 言うつもりが無かったからこそ、ダイヤさんはこっそり落書きをするという方法をとったんだろう。ダイヤさんがそれを望むなら、わざわざ暴露したりするつもりは無い。

 

 「それにしても・・・ダイヤさんのおかげで、グループ名が『制服少女隊』や『スリーマーメイド』にならずに済みましたよ」

 

 「・・・どんなネーミングセンスしてますの?」

 

 呆れているダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「あら天くん、いらっしゃい」

 

 「こんにちは、善恵さん」

 

 生徒会の仕事を終えた俺は、津島さんの家へとやってきていた。目的は勿論、先週分のノートやプリントを届けることである。

 

 花丸やルビィちゃんも来たがっていたが、前回のこともあるので今回は俺一人で来ることにしたのだ。

 

 「来てくれてありがとう。本当に助かるわ」

 

 「いえいえ、大したことじゃないですから」

 

 これで津島さんが授業に遅れずに済むなら、お安い御用である。俺もノートをまとめた甲斐があるというものだ。

 

 「それじゃあ私は買い物に行ってくるから、留守番よろしくね」

 

 「了解です。荷物持ちは大丈夫ですか?」

 

 「フフッ、そんなに買う物は多くないから大丈夫よ。それじゃ、行ってくるわね」

 

 「行ってらっしゃーい」

 

 善恵さんを見送り、俺は津島家へと足を踏み入れる。さて・・・

 

 「善恵さんが帰ってくるまで、テレビでも見てようかな」

 

 「待たんかいいいいいいいいいいっ!」

 

 テレビをつけてソファに座った瞬間、津島さんが勢いよく自分の部屋から出てきた。

 

 「あ、津島さん。こんにちは」

 

 「あ、こんにちは・・・じゃないわよ!?あと、私のことはヨハネって呼びなさい!」

 

 「津島さん、もしくは善子ちゃんじゃダメなの?」

 

 「ダメに決まってるでしょ!?私は堕天使ヨハネよ!?」

 

 「じゃあよっちゃんで」

 

 「人の話聞いてた!?」

 

 ツッコミを入れまくるよっちゃん。キレの良いツッコミだなぁ・・・

 

 「っていうかアンタ、人の家で何してんのよ!?」

 

 「ソファに座ってテレビ見てる」

 

 「おかしいわよねぇ!?ここアンタの家じゃないわよねぇ!?」

 

 「よっちゃん・・・遂に自分の家さえ分からなくなったんだね・・・」

 

 「腹立つ!コイツ腹立つ!」

 

 「コラコラ、地団駄を踏まないの。下の部屋の人に迷惑だよ?」

 

 「誰のせいだと思ってんのよ!?」

 

 ムキーッと怒っているよっちゃん。やれやれ・・・

 

 「実は今日、津島家で夕飯をご馳走になる予定なんだよね」

 

 「ハァッ!?何で!?」

 

 「昨日善恵さんとラインしてたら、夕飯のお誘いを受けたんだよ」

 

 「ちょっと待って!?アンタいつから人の母親を名前で呼ぶようになったの!?いつラインの交換とかしたの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そんなことが・・・って分かるかっ!それが通じるのはアニメやマンガの世界だけだわっ!」

 

 「おぉ、ダイヤさんと同じツッコミ」

 

 「ダイヤさんっていうのが誰かは知らないけど、私は今その人に果てしない同情の気持ちを抱いたわっ!」

 

 ツッコミすぎて息切れしているよっちゃん。大変だなぁ・・・

 

 「まぁとりあえず説明しとくと・・・この前俺達がここに来た日の夜、俺のところに善恵さんから電話がかかってきたんだよ。『せっかく来てくれたのにごめんなさい』って」

 

 「うぐっ・・・」

 

 バツの悪そうなよっちゃん。少しは申し訳ないと思っているらしい。

 

 「な、何でアンタの電話番号が分かって・・・」

 

 「ほら、クラスの連絡網ってあるじゃん?あの紙を見て俺に電話してきたみたい」

 

 「・・・あったわね、そんなの」

 

 忘れていた様子のよっちゃん。連絡網は入学初日に配布された為、初日しか学校に来ていないよっちゃんでもしっかり貰っていたようだ。

 

 「それで電話で話しているうちに、よっちゃんのことで色々と相談を受けたんだよ。部屋で怪しげなことをやってるっぽいとか、気になって覗こうとするんだけど全然部屋に入れてくれないとか・・・」

 

 「人のクラスメイトに何てこと相談してんのあの人!?」

 

 顔を真っ赤にして、両手で顔を覆うよっちゃん。自分のことを堕天使とか言っちゃう割に、そういうことを知られるのは恥ずかしいようだ。

 

 「そして何だかんだ馬が合った俺と善恵さんは、お互いのラインのIDを教え合ったのだった・・・続く」

 

 「今すぐ話しなさいっ!」

 

 「いや、後は特に無いんだよね。昨日ラインで『明日お邪魔しまゆゆ』って送ったら、『せっかくだし夕飯をご馳走しまゆゆ』って返ってきて今に至りまゆゆ」

 

 「語尾が気になって話が入ってこない!」

 

 「よっちゃん、人の話はちゃんと聞こうよ」

 

 「やっぱコイツ腹立つわ!」

 

 疲れ切ってしまったのか、壁にもたれかかるよっちゃん。仕方ないので、座る位置をずらしてソファのスペースを空けてあげる。

 

 「ほらよっちゃん、座りなよ。何か飲む?」

 

 「・・・冷蔵庫に麦茶が入ってるからよろしく」

 

 「あいよー」

 

 もうツッコミを入れる気力も無いらしく、力なくソファに座るよっちゃん。俺は冷蔵庫から麦茶を取り出し、適当なコップに注いでよっちゃんに差し出した。

 

 「へいお待ち」

 

 「・・・どうも」

 

 コップを受け取り、一気に麦茶を飲み干すよっちゃん。良い飲みっぷりである。

 

 「ぷはぁっ・・・あぁ、生き返る・・・」

 

 「全く・・・体力無いのに全力でツッコミ入れるからだよ」

 

 「誰のせいよ!?」

 

 「あ、気力が戻ったね」

 

 俺はそこで今日の目的を思い出し、鞄の中からクリアファイルを取り出した。

 

 「はいこれ。先週分の授業のノートとプリントが入ってるから」

 

 「あ、うん・・・」

 

 何とも言えない表情で受け取るよっちゃん。

 

 「・・・ねぇ、何でここまでしてくれるの?」

 

 「あれ?迷惑だった?」

 

 「いや、凄く助かるけどさ・・・」

 

 複雑そうに俺を見るよっちゃん。

 

 「前回もらったノート、本当に分かりやすくまとめられてた。あれって、黒板に書かれたことをただ写したものじゃないでしょ?その後でアンタが、私にも分かりやすいように色々手を加えてくれたのよね?」

 

 「色々ってほどじゃないよ。要点が分かりやすいようにまとめただけだし」

 

 「それでも、わざわざそこまでしてくれた。どうしてただのクラスメイトの為に、そこまでしてくれるの?」

 

 憂いを帯びたその表情に、俺は彼女の本質を見た気がした。

 

 自分のことを堕天使だと名乗るその豪胆さとは裏腹に、本当の彼女はとても臆病なんだと思う。誰よりも人の目を気にするし、人に対してなかなか心を開くことが出来ない。

 

 恐らくその理由は、自分に自信が無いから。今の質問には、『私にそこまでする価値があるの?』という意味合いもあるのだろう。

 

 まぁ、俺の答えは決まってるけど。

 

 「・・・花丸が、いつもよっちゃんの心配をしてるんだよ」

 

 「え・・・?」

 

 「『せっかく同じ学校になったのに』とか、『このまま学校に来なかったらどうしよう』とか・・・よっちゃんのこと、凄く気にかけてるんだよ」

 

 花丸は本当に心の優しい子だ。そんな俺の大切な友達に、寂しそうな顔をしてほしくない。

 

 だから俺は、よっちゃんを放っておけない。

 

 「つまり、花丸の為ってこと・・・?」

 

 「それが大きな理由かな。まぁ個人的に、よっちゃんには借りもあるから」

 

 「借り・・・?」

 

 首を傾げるよっちゃん。どうやら心当たりが無いようだ。

 

 「入学式の日、教室で自己紹介やったでしょ?」

 

 「ああああああああああっ!?思い出させないでええええええええええっ!?」

 

 「ていっ」

 

 「あうっ!?」

 

 やかましかったので、よっちゃんの頭にチョップをお見舞いして黙らせる。

 

 まぁよっちゃんの黒歴史確定自己紹介のことは置いといて・・・

 

 「俺が自己紹介した後、花丸やルビィちゃんとすぐに拍手してくれたじゃん。俺、あれに救われたんだよね」

 

 「いや、そんな大げさな・・・」

 

 「拍手してもらえない辛さは、よっちゃんが一番分かってるだろうに」

 

 「だからそれを思い出させないでよおおおおおおおおおおっ!?」

 

 頭を抱えるよっちゃん。どんだけ引きずってんだこの子・・・

 

 「女子校の中で唯一の男子っていうこともあって、周りの皆は凄く注目してくるわけだよ。その好奇の視線を向けられる中で、一番最初に自己紹介だからね。ものすごく緊張したし・・・皆が受け入れてくれるか、不安で仕方なかったよ」

 

 それでも、最初に花丸が拍手してくれて。ルビィちゃんとよっちゃんも続いてくれて。

 

 あの時は本当に、凄く救われた気持ちになった。

 

 「だからあの時のことは、本当に感謝してる・・・ありがとう、よっちゃん」

 

 「・・・べ、別に大したことはしてないわよ」

 

 素っ気無くそう言うよっちゃんだが、顔が赤くなっている。素直じゃないんだから・・・

 

 「そんなわけで、よっちゃんには大きな借りがあるんだよ。それを少しでも返せたらっていうのも、理由としてはあるかな」

 

 「ま、まぁそういうことなら・・・しょうがないから受け取ってあげるわ」

 

 「じゃあその対価として、来る度に夕飯をご馳走になるね」

 

 「借りを返す話はどこへいったのよ!?」

 

 「TS●TAYAで借りたCDを返す話?」

 

 「言ってないわよ!?」

 

 全力ツッコミのせいで、またしてもよっちゃんが力尽きそうになっていた。仕方ないからこの辺にしておこう。

 

 「まぁとりあえず、心の準備が出来たらまた学校に来てよ。花丸とかルビィちゃんは勿論、クラスの皆とか赤城先生も心配してるから」

 

 「・・・本当に?あの時のことを笑ったり、ドン引きしたりしてない?」

 

 「してないよ。むしろ『何で来なくなっちゃったのかな』とか、『仲良くなりたいね』って言ってるぐらいだし」

 

 実際、ウチのクラスは本当に良い人ばかりだ。俺も今では仲良くさせてもらってるし。

 

 「よっちゃんの心の準備が出来るまでは、俺が責任を持ってノートとかプリントを届けに来るから。いつ復帰しても授業についていけるように、ちゃんと勉強はしといてね」

 

 「・・・うん。分かった」

 

 小さく頷くよっちゃん。名前の通り、やっぱり善い子だな・・・

 

 「ヨハネよっ!」

 

 「人の心を読むの止めてくんない?」

 

 どんだけ堕天使ヨハネに拘るんだ・・・

 

 「・・・まぁでも、『よっちゃん』呼びは許してあげる」

 

 「え・・・?」

 

 よっちゃんが頬を赤らめ、髪の毛先をクルクルいじっている。

 

 「あ、あくまでも『ヨハネ』の『よっちゃん』だからね!?『善子』の『よっちゃん』は認めないからね!?」

 

 「両方とも『よっちゃん』だし、どっちでも良いんじゃ・・・」

 

 「良いのっ!そこは譲れないからねっ!」

 

 よく分からない拘りだけど・・・まぁ本人がそう言うんだから良いか。

 

 「了解。俺のことも天で良いからね」

 

 「フッ・・・では天、貴方を私のリトルデーモンに・・・」

 

 「あ、結構です」

 

 「何でよ!?」

 

 そんなやり取りをしている間に、窓の外はすっかり薄暗くなっていた。

 

 千歌さん達、チラシ配り終わったかなぁ・・・あっ。

 

 「よっちゃん、スクールアイドルって知ってる?」

 

 「何よ突然・・・まぁ知ってるけど」

 

 「実は浦の星でも、スクールアイドルをやろうっていう人達がいてさ。一応俺がマネージャーをやってるんだけど、今度ライブをやるんだよね」

 

 鞄の中からチラシを取り出して、よっちゃんに手渡す。

 

 「へぇ・・・天がマネージャーやってるのね」

 

 「色々あったんだよ・・・本当に色々・・・」

 

 「・・・アンタも苦労してるのね」

 

 同情してくれるよっちゃん。優しいなぁ・・・

 

 「ま、気が向いたら行ってあげるわ。本当に気が向いたらね」

 

 「よっちゃん・・・マジ善子だわ」

 

 「だからヨハネよっ!?」

 

 よっちゃんが堕天使ではなく、正真正銘の天使に見える俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、前書きでも述べましたが・・・

3月28日木曜日、『絢瀬天と九人の物語』が日間ランキングで6位にランクインしました!

嬉しすぎてスクショしました(笑)

☆評価を付けて下さった皆様。

感想を書いて下さった皆様。

お気に入りに登録して下さった皆様。

そしてこの作品を読んで下さった皆様。

本当にありがとうございます。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

好きなことは全力でやるべきである。

最近タイトルに悩むことが多い…

ちょっと名言っぽいタイトル縛りをやってきたのが仇になったか…


 「・・・言い残したい言葉はありますか?」

 

 「すいませんでしたああああああああああっ!」

 

 全力で土下座している千歌さん。津島家で夕飯をご馳走になった翌日の放課後、俺は千歌さんの家にお邪魔していた。

 

 ライブで披露する曲の作詞を、千歌さんが担当することになっていたのだが・・・

 

 「作詞ノートって書いてありますけど、完全に白紙じゃないですか。何ですかこれ。千歌さんの頭の中と一緒じゃないですか」

 

 「人の頭が空っぽみたいに言わないでくれる!?」

 

 「ああん・・・?」

 

 「返す言葉もございません!」

 

 冷たい目を向けると、千歌さんが再び額を床に擦り付ける。その様子を見て、曜さんと梨子さんが引いていた。

 

 「ま、まぁまぁ天くん!ここは落ち着こう!ねっ!?」

 

 「そ、そうよ!まだ何とか間に合うわ!」

 

 「・・・ハァ」

 

 二人に宥められ、溜め息をつく俺。まぁ確かに、千歌さんを責めてる場合じゃないか・・・

 

 「とにかく作詞を終わらせましょう。千歌さん、イメージとかあります?」

 

 「μ'sのスノハレ!」

 

 「却下です」

 

 「えぇっ!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。この人はホント・・・

 

 「スクールアイドルを始めたばかりで、スノハレみたいな曲を目指すのはハードルが高過ぎます。μ'sの楽曲で一、二を争うほどの名曲を舐めないで下さい」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「まぁ、恋愛に関する曲を作るのは構いませんけど・・・それこそ、千歌さんの経験を基にして作詞すれば良いんじゃないですか?」

 

 「フッフッフッ・・・自慢じゃないけど、私の恋愛経験はゼロだよ!」

 

 「ライフもゼロにしてあげましょうか?」

 

 「遠回しの殺害予告止めて!?」

 

 ダメだこの人、完全にポンコツだわ・・・

 

 「曜さんとか梨子さんなら、恋愛経験ありそうですよね」

 

 「私?無い無い!」

 

 「私も無いわね」

 

 「・・・マジですか」

 

 これはテーマを恋愛じゃないものにすべきかもしれない。それにしても・・・

 

 「梨子さんに恋愛経験が無いのは意外ですね・・・」

 

 「え、そう?」

 

 「だって梨子さん美人だし、絶対モテるでしょう」

 

 「なっ!?」

 

 赤面する梨子さん。

 

 「そ、そういうことを真顔で言わないでっ!」

 

 「だって本心ですし。クラスに居たら、間違いなく男子達の注目の的でしょう。実際モテたんじゃないですか?」

 

 「そ、そんなこと言われても・・・本当にモテなかったわよ?ずっとピアノ一筋でやってきたから、恋愛にうつつを抜かしてる余裕も無かったし」

 

 「告白とかされなかったんですか?」

 

 「全然。中学までは共学の学校に通ってたけど、男子達にとって私は気軽に話せる友達って感じだったのかも。よく『付き合って下さい』って買い物に誘われたし」

 

 「・・・梨子さんって罪深い人ですね」

 

 「何で!?」

 

 千歌さんと曜さんも、何とも言えない表情で梨子さんを見ている。

 

 その『付き合って下さい』は、どう考えても告白だろうな・・・『買い物に付き合って下さい』なわけが無い。

 

 「ちなみに、買い物には付き合ったんですか?」

 

 「申し訳なかったんだけど、全部断ってたわ。ピアノのレッスンで忙しかったから」

 

 「うわぁ・・・」

 

 「そ、そんな露骨に引かなくても良いじゃない!私だって、友達からの買い物のお誘いを断るのは申し訳なかったわよ!」

 

 「いや、何と言うか・・・大丈夫です。梨子さんは知らない方が良いと思います」

 

 「え?」

 

 首を傾げる梨子さん。

 

 梨子さんに想いが届くことなく撃沈していった男子達の人生に、どうか幸多からんことを・・・

 

 「っていうか、曜さんも意外ですよね。モテそうなのに」

 

 「おっ、私のことも可愛いって言ってくれるの?」

 

 「当然じゃないですか。誰がどう見たって美少女でしょう」

 

 「っ・・・あ、ありがと・・・」

 

 頬を赤く染め、照れ臭そうに笑う曜さん。梨子さんと同じで、真正面から褒められることに弱いらしい。

 

 「でも残念ながら、梨子ちゃんと違って本当にそういう経験無いんだよね」

 

 「いや、だから私も無いんだってば」

 

 「被告人は静粛に」

 

 「誰が被告人よ!?」

 

 抗議してくる梨子さんは無視して、俺は曜さんと会話を続けた。

 

 「じゃあ逆に、好きな人とかいなかったんですか?」

 

 「んー、そもそも恋したことが無いんだよね。私も小さい頃から水泳一筋だったし」

 

 「なるほど・・・」

 

 「ねぇねぇ天くん、私は?私は可愛い?」

 

 「はいはい、可愛い可愛い」

 

 「何で子供をあやすみたいなノリなの!?」

 

 膨れっ面の千歌さん。

 

 まぁ実際、千歌さんもかなりの美少女だと思う。あまりにもフランク過ぎて、俺もこんなノリで接してしまっているけども。

 

 「でも、三人とも恋愛経験ゼロとなると・・・やっぱり、別のテーマで曲を作った方が良いかもしれませんね」

 

 「えー・・・あっ、じゃあμ'sのメンバーは恋をしてたのかな?」

 

 「どうしたんですか急に」

 

 「いや、だってスノハレみたいな曲を作れたんでしょ?それってつまり、μ'sの誰かが恋をしてたってことじゃないの?」

 

 目が爛々と輝いている千歌さん。本当にμ'sが好きなんだな・・・

 

 「・・・スノハレって、μ'sが全員で作詞した曲らしいですよ」

 

 「え、そうなの?」

 

 「えぇ。μ'sのメンバーが、色々なものに対する『大好き』という気持ちを込めた一曲・・・それが『Snow halation』です」

 

 「『大好き』という気持ち・・・」

 

 「それをテーマにするのも良いんじゃないですか?例えば・・・スクールアイドルが大好きっていう気持ちとか」

 

 「それだ!」

 

 勢いよく立ち上がる千歌さん。

 

 「それ良い!私達の最初の曲にピッタリなテーマだよ!」

 

 「千歌ちゃん、歌詞書けそう?」

 

 「うん!これなら書ける気がする!」

 

 千歌さんはペンを持つと、白紙のノートに勢いよく文字を書き始めた。書けば書くほど、どんどんのめり込んでいくのが分かる。

 

 「・・・凄い集中力ですね」

 

 「千歌ちゃんはやれば出来る子なんだよ」

 

 笑みを浮かべる曜さん。やれば出来る子、か・・・

 

 「・・・ホント、そっくりだな」

 

 「そっくり?」

 

 「いえ、何でもないです」

 

 適当に曜さんを誤魔化し、千歌さんの姿を眺める。

 

 「これほどスクールアイドルが大好きな人が、スクールアイドルを続けられなくなるなんて・・・そんなのおかしいですよね」

 

 「天くん・・・」

 

 「会場、絶対満員にしましょうね。小原理事長に、スクールアイドル部の設立を認めさせてやりましょう」

 

 「勿論!」

 

 「頑張りましょう!」

 

 「え、何?何の話?」

 

 「千歌さんのライフがゼロになるまでしごき続けようっていう話です」

 

 「それは勘弁してええええええええええっ!?」

 

 千歌さんの悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ありがとうございました!」

 

 笑顔で最後のお客さんを見送る俺。

 

 お客さんが見えなくなるまで手を振り、ホッと一息ついたところで・・・後ろからいつもの衝撃を受けた。

 

 「お疲れ様のハグ!」

 

 「はいはい、お疲れ様です」

 

 「むぅ・・・反応が冷たい」

 

 「毎回ハグされ続けたら、そりゃ慣れますって」

 

 不満そうな果南さんに、苦笑しながら返す俺。まぁ俺の目の前で、平気でダイビングスーツを脱ぐことに関しては未だに慣れないけども。

 

 下に水着を着ているとはいえ、惜しげもなくナイスバディをさらけ出されると・・・正直、目のやり場に困ってしまう。

 

 「やっぱり土日は、お客さんの数が多いんですね」

 

 「そうなんだよ。私だけじゃ手が回りきらないだろうから・・・ホント、天が手伝ってくれて助かってるよ」

 

 笑顔でそう言ってくれる果南さん。

 

 実は梨子さん達と海の音を聴きに行った日、果南さんからアルバイトの誘いを受けていたのだ。これから土日に来るお客さんの数が増えるので、手伝ってくれる人を探していたんだとか。

 

 その誘いを受けた俺は翌週から、果南さんの実家が営むダイビングショップで土日だけアルバイトをするようになったのだった。

 

 「アルバイト経験の無い素人で、ホントに大丈夫なんですか?」

 

 「大丈夫だって。っていうか、ホントにアルバイト経験無いの?接客とか上手いし、初めてとは思えないんだけど」

 

 「コミュニケーション能力には自信あるんで」

 

 「アハハ、なるほどね」

 

 果南さんは面白そうに笑うと、近くのウッドチェアに腰を下ろした。

 

 「そういえば、千歌達のライブって来週の日曜日でしょ?準備は大丈夫なの?」

 

 「えぇ。何とかなりそうです」

 

 あの後千歌さんはすぐに歌詞を書き終えたし、それを基に梨子さんもすぐに曲を作ってくれた。振り付けもこの土日に三人で考えると言っていたので、後は明日からその振り付けを基に練習するのみだ。

 

 ちなみに衣装は曜さんが制作を進めており、もう間もなく完成するとのことだった。

 

 「明日からの一週間は、ちょっとハードになりそうですけどね。俺も裏方としての仕事を進めていかないと」

 

 「裏方としての仕事?」

 

 「主に会場の設営ですね。スポットライトの位置とか、音響のチェックとかもしないといけませんし。まぁそれに関しては手伝ってくれる人もいるので、心配無いですけど」

 

 ちなみに手伝ってくれる人というのは、千歌さん達と同じクラスのよしみさん・いつきさん・むつさんの三人である。通称・よいつむトリオの三人は千歌さん達の良き理解者であり、今回のライブでの手伝いを申し出てくれたのだ。

 

 ライブの宣伝の為のビラ配りもしてくれていて、正直かなり助かっていたりする。

 

 「後は練習の監督ぐらいですね。ライブ前なので追い込みをかけたいところなんですけど、無理して本番に響いたら元も子もないですから。その辺りはこっちでちゃんと調整して、練習メニューを組もうと思います」

 

 「へぇ・・・しっかりマネージャーやってるんだね」

 

 感心している果南さん。

 

 「千歌達は運が良いね。こんなしっかりサポートしてくれるマネージャーがいてさ」

 

 「・・・まぁマネージャーをやることになったキッカケは、あまり褒められたものじゃないですけどね」

 

 「・・・鞠莉か」

 

 顔を顰める果南さん。

 

 俺も話を聞いて驚いたのだが、ダイヤさん・果南さん・小原理事長は小学生の時からの付き合いらしい。ダイヤさんと果南さんが通っていた小学校に、小原理事長が転入してきたんだそうだ。

 

 つまり俺が幼かった頃の小原家の引っ越し先は、内浦だったということになる。

 

 「ホント・・・相変わらず自分勝手なんだから」

 

 果南さんもダイヤさんから事情を聞いたらしく、俺のことを凄く心配してくれた。

 

 おまけに俺があの時の状況を話すと、『これから一緒に殴りに行こうか』とチャゲアスの名曲みたいなセリフを本気で言い出すほど怒っていた。まぁ何とか思い留まらせたけども。

 

 「まぁとにかく、ライブに向けて頑張らないといけませんね・・・そんなわけで果南さんには申し訳ないんですけど、来週の日曜日はお休みをいただきます」

 

 「了解。忙しいようなら、土曜日も休みで大丈夫だよ?来週の土日は天気が良くないっていう予報が出てるせいか、今のところお客さんの予約も多くないし」

 

 「いえ、大丈夫です。マネージャーの仕事に力を入れ過ぎて、生徒会の仕事やアルバイトを疎かにしたくないので」

 

 「天は真面目だねぇ・・・ダイヤに影響されてるんじゃない?」

 

 「ハハッ、そうかもしれませんね」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 実際、ダイヤさんはとても真面目な人だ。生徒会長として責任を持って仕事をしているし、俺も見習わないといけない点がたくさんある。

 

 「ただ・・・ダイヤさんにはもう少し、肩の力を抜いてほしいんですけどね。ちょっと頑ななところがあるので」

 

 「ダイヤは昔からあんな感じだからね。黒澤家の名に恥じないようにって、肩肘張って生きてるところがあるから」

 

 「なるほど・・・俺の知り合いにも名家の娘がいますけど、確かにそういったところはありましたね」

 

 「へぇ、知り合いにそんな人がいるんだ?」

 

 「えぇ、まぁ」

 

 せっかくだし、今度電話して話を聞いてみようかな。似たような立場だからこそ、分かることがあるかもしれないし。

 

 「そういえばダイヤさんって、μ'sのファンなのに何で『スクールアイドル部は認めない』なんて言ってるんだろう・・・」

 

 ふと疑問を口にする俺。これはよいつむトリオの三人から聞いた話だが、これまでにも『スクールアイドルをやりたい』という生徒が少なからずいたらしい。

 

 ところがダイヤさんはそれを認めず、スクールアイドル関連の部活の設立を全て拒否してきたんだそうだ。一体何故なのか・・・

 

 と、果南さんが何やら思いつめたような表情をしていた。

 

 「果南さん?どうかしました?」

 

 「ううん、何でもないよ」

 

 すぐに笑みを浮かべる果南さんだったが、どこか笑顔がぎこちなかった。ダイヤさんについて、思い当たる節でもあるんだろうか・・・

 

 「さて、さっさと片付けちゃおうか。今日もウチで夕飯食べていきなよ。お母さんが天の為に、腕によりをかけて美味しいもの作って待ってるってさ」

 

 「ありがたくご馳走になります」

 

 果南さんの表情が気になったものの、深くは聞けない俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

何とこの作品が、またしても日間ランキングで7位に入りました!

本当にありがたいことでございます(>_<)

いつもこの作品を読んで下さっている皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございます。

そんな中、いよいよファーストライブが近付いてきましたね。

果たしてどうなるのか…

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一人じゃないというのは心強いものである。

最近『HAPPY PARTY TRAIN』をよく聴きます。

メッチャ良い曲ですよね。

センターの果南ちゃんも勿論良いんですけど、個人的には善子ちゃんのソロパートが好きです。

特に『思い~出は~、ポケットの~なか~♪』の部分が好き。

あの優しい歌声がたまらなく好き。

善子ちゃん、そしてあいきゃん最高。


 ライブ当日。

 

 雲ひとつない青空が広がり、まさに絶好のライブ日和・・・

 

 「天くん、現実を見よう?凄い雨降ってるから。雲ひとつない青空じゃなくて、雨雲しかない灰色の空が広がってるから」

 

 「人の心を読むの止めて下さい」

 

 紫髪の女の子・・・いつきさんのツッコミに、俺は大きな溜め息をついた。

 

 確かに予報では、週末の天気は良くないと言ってはいたが・・・ここまで酷いとは思わなかった。

 

 「いつきさん、ちょっと『雨止めえええええっ!』って叫んでもらって良いですか?」

 

 「いや、それで止むとは思えないんだけど・・・」

 

 「物は試しです。三、二、一・・・はいっ!」

 

 「あ、雨止めぇ!」

 

 「声が小さい!もう一度!」

 

 「雨止めーっ!」

 

 「もっと!もっと熱くなれよ!」

 

 「雨止えええええっ!」

 

 「・・・まぁ、止むわけないですよね」

 

 「急に冷静にならないでくれる!?もの凄く恥ずかしいんだけど!?」

 

 両手で顔を覆って恥ずかしがるいつきさん。やはりミラクルは起こせなかったようだ。

 

 「おーい、天くーん」

 

 茶髪をサイドテールにくくった女子・・・よしみさんがこちらへ歩いてくる。

 

 「照明と音響の準備は完了・・・って、何でいつきは耳まで真っ赤になってるの?」

 

 「そっとしておいてあげて下さい。羞恥心に悶えてるところなんです」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 いつきさんの抗議はスルーして、俺はよしみさんへと視線を向けた。

 

 「ありがとうございます。千歌さん達の様子はどうですか?」

 

 「今は振り付けのチェックをしてるけど・・・やっぱり緊張してるみたい。いつもより表情が硬いもん」

 

 「初ライブだもんね・・・大丈夫かな、千歌達・・・」

 

 心配そうなよしみさんといつきさん。ここはマネージャーの出番かな・・・

 

 「・・・さて、いきますか」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「本当にこんなに短くて大丈夫なの・・・?」

 

 本番用の衣装に身を包んだ私は、鏡の前で顔を引き攣らせていた。

 

 ピンク色の可愛らしい衣装ではあるんだけど、スカートが短い。いつもより太ももが露わになっていて、凄く恥ずかしい。

 

 「大丈夫!ステージに出ちゃえば忘れるよ!」

 

 水色の衣装に身を包んだ曜ちゃんが、そう言ってニッコリ笑う。

 

 いや、忘れちゃいけないと思う。晒しちゃいけないものを晒しそうだもの。

 

 「大丈夫だよ、梨子ちゃん。もう天くんには見られてるじゃん」

 

 「そういう問題じゃないわよねぇ!?っていうか思い出させないで!?」

 

 オレンジ色・・・もといみかん色の衣装に身を包んだ千歌ちゃんの言葉に、火が出そうなくらい顔が熱くなる。

 

 あの時のことを思い出しただけで、とてつもなく恥ずかしいわ・・・

 

 「っていうか、あれは千歌ちゃんのせいでしょ!?天くんの目の前でスカート捲ったりするから!」

 

 「アハハ、ゴメンゴメン」

 

 苦笑しながら謝る千歌ちゃんに、思わず溜め息をついてしまう。全くもう・・・

 

 「あ、そろそろ時間だね」

 

 曜ちゃんが時計を見て呟く。

 

 その瞬間、空気が張り詰めたような気がした。これからステージに立って、歌って踊る・・・そう考えるだけで緊張してしまった。

 

 そして何より、お客さんは来てくれているのか・・・もし満員に出来なければ、その時はAqoursを解散しなくてはいけない決まりになっている。

 

 「・・・嫌だよね」

 

 消え入りそうな声で呟く千歌ちゃん。

 

 「初めてのライブで解散なんて・・・そんなの嫌だよね」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 心配そうな表情の曜ちゃん。

 

 スクールアイドルを始めて間もないけれど、私にとってAqoursは大切な場所になりつつあった。

 

 失いたくない、解散なんてしたくない・・・そう思えば思うほど、ステージに立つ勇気が無くなっていくのを感じた。

 

 「・・・怖いね」

 

 「・・・うん」

 

 足が震えている。こんな状態で、良いパフォーマンスなんて出来るわけ・・・

 

 

 

 『できる~!できる~!キミならできる~!』

 

 

 

 「「「!?」」」

 

 急に音楽が聴こえてきた。何この曲・・・

 

 

 

 『僕は~本気だ!キミは本気か!?』

 

 

 

 私達が呆気にとられていると、天くんがスマホを手に持って現れた。え、まさか・・・

 

 

 

 『できる~!できる~!キミなr・・・』

 

 

 

 「ピッ・・・あ、もしもし?よっちゃん?」

 

 「着信音だったのそれ!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまう。

 

 今思い出したけど、それ松●修造さんの曲じゃない!元気応援SONGじゃない!

 

 「え、来てくれたの?よっちゃんマジ善子だわぁ・・・あぁ、はいはい。もうそろそろ始まるから、急いで体育館に来てね・・・うん、じゃあまた後で」

 

 天くんは通話を終えると、私達の方へと視線を向けた。

 

 「あ、お疲れ様です。準備できました?」

 

 「何か色々吹っ飛んじゃったんだけど!?あれ、私達どんな曲歌うんだっけ!?」

 

 「落ち着いて千歌ちゃん!?えーっと、確か・・・『できる~!できる~!キミならできる~!』」

 

 「いやそれ違う曲だから!曜ちゃんこそ落ち着いてよ!?」

 

 色々パニックになっている二人。とりあえず、私が落ち着かないと・・・

 

 「お、梨子さん衣装似合ってますね。やっぱり梨子さんは桜色・・・もといピンク色ですよね。苗字が桜内だけに」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 何であの時と同じようなセリフを言うのっ!?思い出しちゃうでしょうがあああああっ!?

 

 「あぁっ!?梨子ちゃんが耳まで真っ赤になってる!?」

 

 「落ち着いて梨子ちゃん!?『できる~!できる~!キミならできる~!』」

 

 「その曲はもういいから!」

 

 本番前とは思えないほどの騒ぎっぷりだった。そんな私達の様子を見て、天くんが溜め息をつく。

 

 「やれやれ・・・これじゃ本番が思いやられますね」

 

 「「「天くんのせいでしょうが!」」」

 

 三人同時にツッコミを入れる。全くもう・・・

 

 「・・・まぁ、緊張してるよりよっぽど良いですけどね」

 

 天くんが苦笑しながら言う。あれ、そういえば私達・・・

 

 「何か・・・緊張が消えてる?」

 

 「確かに・・・」

 

 ポカンとしている千歌ちゃんと曜ちゃん。

 

 気付いたら私も足の震えが止まっていた。さっきまで不安に押し潰されそうだったのに・・・

 

 一方、天くんは私達の着ている衣装をしげしげと眺めていた。

 

 「やっぱり衣装のクオリティ高いですね・・・流石は曜さん」

 

 「えへへ・・・そうかな?」

 

 「えぇ、メッチャ良いですよこれ。しかも三人とも、本当によく似合ってます」

 

 笑顔でそう言ってくれる天くん。何だか照れくさいけど、ちょっと嬉しい。

 

 「おーい!千歌ー!曜ー!梨子ー!」

 

 私達の名前を呼びながらやってきたのは、明るめの茶髪に白いカチューシャを付けた女の子・・・クラスメイトのむっちゃんだった。

 

 「そろそろ時間だからスタンバイ・・・って、天もいたんだ?」

 

 「今来たところです。むつさんは準備オッケーですか?」

 

 「バッチリだよ!照明は私とよしみに任せな!」

 

 ドンと胸を叩くむっちゃん。と、その後ろからよしみちゃんといつきちゃんも現れた。

 

 「そうそう、大船に乗ったつもりでいてよ!」

 

 「音響は私に任せてね!」

 

 「いつきさん、そう言いながらさっきみたいに叫ばないで下さいね?」

 

 「叫ばないよ!?っていうか、あれは天くんがやらせたんだからね!?」

 

 「ちょっと何言ってるか分からないです」

 

 「何で!?」

 

 天くんといつきちゃんのやり取りに、むっちゃんとよしみちゃんが爆笑していた。それにつられて、私達も思わず笑ってしまう。

 

 「じゃあ三人とも、頑張れ!」

 

 「私達がサポートするから!」

 

 「天くん、指示よろしくね!」

 

 「了解です。よろしくお願いします」

 

 三人が笑顔で手を振って出て行く。頑張れ、か・・・

 

 「・・・頑張ろう」

 

 笑みを浮かべ、両手を握り締める千歌ちゃん。

 

 「応援してくれる人がいるんだもん。全力で頑張らなきゃ!」

 

 その言葉に、曜ちゃんと私も笑みを浮かべる。今まさに、私達の心は一つだった。

 

 「それじゃ、円陣組もう!天くんも!」

 

 「いや、俺マネージャーなんですけど・・・」

 

 「ほらほら、早く!」

 

 曜ちゃんが天くんの腕を引っ張り、曜ちゃんと私の間に立たせた。時計回りに千歌ちゃん、曜ちゃん、天くん、私の並びで円陣を組む。

 

 「えーっと、手を重ねるんだっけ?」

 

 「普通はそうですけど・・・ちょっと変えましょうか」

 

 「変える?」

 

 天くんの言葉に首を傾げていると、天くんが曜ちゃんと私の手を優しく握った。

 

 「そ、天くん!?」

 

 「どうしたの!?」

 

 「・・・手を繋ぐと、お互いの温もりを感じられるじゃないですか」

 

 微笑む天くん。

 

 「お互いの温もりを感じられたら、一人じゃないって思えます。一人じゃないって思えたら・・・少しは安心できるでしょ?」

 

 「天くん・・・」

 

 どうやら、私達が不安がっていたのを分かっていたみたいね・・・

 

 ホント、天くんには敵わないわ・・・

 

 「・・・ナイスアイデアだよ、天くん」

 

 千歌ちゃんも微笑みながら、曜ちゃんと私の手を握る。私達はお互いの手を握り合い、笑みを浮かべた。

 

 「さぁ、行こう!今全力で、輝こう!」

 

 千歌ちゃんが声を張り上げる。私達は、この日の為に決めた掛け声を叫ぶのだった。

 

 「「「「Aqours!サンシャイン!」」」」




どうも~、ムッティです。

相も変わらず投稿が遅くてスミマセン…

そして物語のスピードが遅くてスミマセン…

まだアニメの3話さえ終わっていないというね…

もうちょいサクサク進めるはずだったのに、何故こうなった…

まぁこれからもマイペースに進めていきますので、読んでいただけると幸いです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

手を差し伸べてくれる人は必ずいる。

遂に平成から令和になりましたね。

良い時代になると良いなぁ…


 「・・・想定以上に厳しいな」

 

 ステージ裏から観客席側へとやってきた俺は、その光景を見て思わず渋い表情になる。

 

 観客は満員どころか、数えられるほどの人数しかいなかった。花丸やルビィちゃん、よっちゃんは来てくれているが・・・

 

 っていうか、よっちゃん変装下手すぎじゃない?サングラスにマスクとか、バリバリの不審者だからメッチャ目立ってるんだけど。

 

 「満員には出来なかったみたいね」

 

 背後から声がする。俺が今一番会いたくない人の声だった。

 

 「・・・冷やかしに来たのなら帰って下さい」

 

 「違うわよ。見届けに来ただけ」

 

 俺の隣に立つ小原理事長。

 

 「スクールアイドルを始めたばかりで、このハードルは高過ぎたかしら・・・」

 

 「それを分かった上で、貴女はこの条件を出したんでしょう?後悔したいなら別の場所でお願いします。貴女に付き合っていられるほど暇ではないので」

 

 「・・・本格的に嫌われちゃったわね」

 

 「自業自得です」

 

 俺が吐き捨てるように言うと、小原理事長は寂しそうに笑った。

 

 そんな顔をされたところで、俺はこの人から受けた仕打ちを許すつもりなど無い。

 

 「・・・もう良いのよ、天。あの子達は体育館を満員にすることが出来なかった。スクールアイドル部は設立されないし、あの子達は解散することになる。もうマネージャーなんてやらなくて良いの」

 

 「・・・つくづく見下げ果てた人ですね」

 

 俺を脅してマネージャーをやらせたくせに、今度はマネージャーなんてやらなくて良いだなんて・・・

 

 俺は今、この人を心底軽蔑していた。

 

 「何もう『終わった』みたいな顔してるんですか?ライブはこれからなんですけど?」

 

 「勿論、ライブはやってもらって構わないわ。ただ満員にならなかった以上、あの子達の解散は決定した・・・これ以上、天が望まない仕事をする必要は無いの」

 

 「その望まない仕事を押し付けたのは、一体どこの誰でしたかね?まるで他人事みたいな言い方ですけど、自分のやったことを忘れたんですか?高校の理事長として、頭の中がお花畑なのはいかがなものかと思いますが?」

 

 容赦の無い言葉を浴び、俯いてしまう小原理事長。自分がやったことの重さを、これで少しは認識してもらえるだろう。

 

 「小原理事長、貴女はこう言いました。『ここを満員に出来たら、人数に関わらず部として承認してあげる』と」

 

 「・・・えぇ、言ったわね」

 

 「ですが・・・『ライブ開始時点で』とは言いませんでした」

 

 「え・・・?」

 

 ポカンとしている小原理事長。

 

 「それってどういう・・・」

 

 「要するに」

 

 俺は小原理事長の言葉を遮った。

 

 「このライブでここを満員に出来たら良いんでしょう?それならタイムリミットは、『ライブ開始時点』じゃなくて・・・『ライブ終了時点』じゃないですか」

 

 「っ・・・!」

 

 「つまりライブが終わるまでに、ここを満員にすることが出来れば・・・条件はクリアしたことになります。確かに今は満員ではありませんが、これからお客さんが来る可能性だってありますから」

 

 「天、貴方・・・」

 

 驚いている小原理事長。俺は小原理事長に冷たい視線を向けた。

 

 「ライブはこれからだって言ったでしょう。勝手に終わらせないで下さい」

 

 「で、でも・・・この悪天候の中、これから来る人なんて・・・」

 

 「いないって決め付けるのは止めてもらえます?それとも・・・可能性があるにも関わらず、貴女は約束を反故にするつもりなんですか?」

 

 小原理事長を睨みつける俺。

 

 「見届けに来たのなら、黙ってライブを見てろ。あの三人がどれほど頑張ってきたか、その目でしっかり確認しとけ」

 

 それだけ言うと、小原理事長からステージへと視線を移す。

 

 そしてインカムを通じて、よいつむトリオの三人に合図を出すのだった。

 

 「さて・・・始めましょうか」

 

 『『『了解!』』』

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《千歌視点》

 

 曜ちゃんや梨子ちゃんと手を繋ぎ、ステージに立っている私。

 

 天くんの言う通り、二人の温もりのおかげで少し安心できていた。私は一人じゃないんだ・・・

 

 「・・・来てくれてるかな?」

 

 小さな声で呟く曜ちゃん。

 

 「お客さん・・・来てくれてるかな?」

 

 私達の前には幕が下りている為、観客席の様子を窺うことは出来ない。

 

 幕の向こうにはお客さんがいるかもしれないし・・・いないかもしれない。

 

 「・・・大丈夫だよ」

 

 曜ちゃんの手を強く握る。

 

 「天くんも言ってたでしょ?『ライブ開始時点で満員じゃなくても諦めるな。タイムリミットはライブ終了時点だ』って」

 

 確かに鞠莉さんは、そこまで詳しく指定していたわけじゃない。

 

 でもまさか、そこを突くとは思わなかったなぁ・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 面白そうに笑う梨子ちゃん。

 

 「ホント、抜け目が無いっていうか・・・案外ずる賢いのね、天くんって」

 

 「確かにね」

 

 私もつられて笑ってしまう。頼りになるマネージャーだよ、ホントに・・・

 

 「私達は、私達に出来る精一杯のパフォーマンスをしよう」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「うん!」

 

 気合いが入ったところで、ステージの幕が上がる。観客席の光景が目に飛び込んできた。

 

 「あ・・・」

 

 小さな呟きが口から漏れる。残念ながら、お客さんは十人くらいしかいなかった。

 

 これじゃあ、満員には程遠い・・・

 

 「よっ、待ってました!」

 

 大きな声が会場に響く。視線を向けると、天くんが大きく手を叩いて拍手してくれていた。

 

 天くん・・・

 

 「見て見て花丸ちゃん!衣装凄く可愛いよ!」

 

 「キラキラしてるずら~!」

 

 ルビィちゃんと花丸ちゃんも来てくれている。他のお客さんも浦の星の生徒で、皆笑顔で拍手してくれていた。

 

 ただ一人だけ、サングラスとマスクをした不審な女の子がいるけど・・・あの子もビラを見て来てくれたのかな。

 

 「私達は、スクールアイドル・・・せーのっ!」

 

 「「「Aqoursです!」」」

 

 三人で自己紹介をする。

 

 ここにいる人達は、わざわざ私達のライブを見る為に足を運んでくれたんだ。だったら私達は、この人達に報いないといけない。

 

 「私達は、その輝きと!」

 

 「諦めない気持ちと!」

 

 「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました!」

 

 今は下を向く時じゃない。前を向いてパフォーマンスをしなくちゃいけない。

 

 私達がこの人達に出来ることは、それくらいしかないんだから。

 

 「目標は・・・スクールアイドル、μ'sです!」

 

 そして最後まで諦めない。ライブが終わるその瞬間まで、絶対に諦めない。

 

 「聴いて下さい!『ダイスキだったらダイジョウブ!』!」

 

 私が作詞して、梨子ちゃんが作曲して、曜ちゃんが衣装を作った・・・私達の初めての曲、それが『ダイスキだったらダイジョウブ!』だ。

 

 あの日天くんから言われた、スクールアイドルが大好きだっていう気持ち・・・私はその気持ちを、この曲の歌詞に込めた。

 

 この曲の歌詞は、今の私の気持ちそのものだ。

 

 (楽しい・・・!)

 

 私の心は、喜びで満ち溢れていた。

 

 スクールアイドルとして、曜ちゃんや梨子ちゃんと一緒にステージで歌って踊っている・・・それが本当に嬉しいし、とても楽しい。

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも笑顔だし、お客さんも楽しんでくれているのが分かる。いよいよサビに入り、盛り上がりが最高潮に達しようとしていたその時・・・

 

 突如として音楽が途切れ、照明も消えた。

 

 「えっ・・・?」

 

 真っ暗になった会場で、私は呆然と立ち尽くしていた。

 

 そんな・・・どうして・・・

 

 「まさか・・・停電・・・?」

 

 「そんな・・・こんな時に・・・」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも困惑している。

 

 (・・・やっぱり、私には無理なの?)

 

 普通星人の私が、スクールアイドルになって輝くなんて無理だったのかな・・・身の丈に合わない願いだったのかな・・・

 

 もう、諦めるしかないのかな・・・

 

 

 

 『諦めてしまったら、叶えられる可能性すらない』

 

 

 

 ふと頭の中に、天くんの言葉が浮かんだ。

 

 海の音を聴きに行った時、μ`sの『START:DASH!!』の歌詞について話していた時の言葉だ。

 

 

 

 『だから簡単に諦めるな。夢が叶う日が来る可能性は、諦めなかった人にしか無いんだから』

 

 

 

 「っ・・・」

 

 そうだ。諦めてる場合じゃない。最後まで諦めないって決めたんだ。

 

 「・・・気持ちが、つ~なが~り~そ~う~な~んだ~♪」

 

 アカペラで歌う。曲が流れなくても、歌うことは出来る。

 

 「・・・知らないこ~とば~かり、な~に~も~か~も~が~♪」

 

 「・・・それ~でも、きた~いで、足が~軽~い~よ~♪」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも続いてくれる。これならまだ・・・

 

 「温度差な~んて、いつ~か~消~し~ちゃえって~ね~♪元気だよ・・・元気を出して・・・いく・・・よ・・・」

 

 もう限界だった。涙がこみ上げてきて、歌うことが出来ない。悔しくて、情けなくて、やるせなくて・・・心が折れる寸前だった。

 

 スクールアイドル部は設立することが出来ず、Aqoursは解散・・・おまけに最初で最後のステージはこの有り様だ。こんなのあんまりだ。

 

 もう、私には前を向くことなんて・・・

 

 

 

 「スイッチオン!」

 

 

 

 天くんの声が会場に響く。その瞬間、再びステージが照明で照らされた。

 

 「・・・え?」

 

 驚いていると、今度は会場のドアが勢いよく開かれた。

 

 「バカ千歌あああああっ!アンタ開始時間を間違えたでしょ!?」

 

 「美渡姉!?」

 

 レインコートを着た美渡姉が、大勢の人を連れて会場に入ってきた。

 

 何が起きているのか、訳が分からない私なのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、元号が令和に変わりましたね。

自分は平成生まれなので、これが初めての改元なのですが…

何だか今一つ実感がありません(笑)

でもきっとそのうち、令和○年というのが当たり前に感じるようになるんでしょうね…

歳ってこうやってとっていくんですね(笑)

令和が良い時代になると良いなぁ…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

準備しておくに越したことはない。

劇場版『響け!ユーフォニアム』を観に行きたい。


 「停電!?」

 

 驚いている小原理事長。

 

 曲の途中でいきなり発生した停電に、千歌さん達だけではなくお客さん達も困惑していた。

 

 「まぁ、この天気だもんなぁ・・・」

 

 俺は溜め息をつくと、インカムを通じてよいつむトリオの三人に指示を出した。

 

 「むつさんとよしみさん、一度照明のスイッチを切って下さい。切ったらそのまま待機でお願いします」

 

 『わ、分かった!』

 

 『了解!』

 

 「いつきさんも待機してて下さい。何とかしてきますんで」

 

 『何とか出来るの!?』

 

 「元気があれば何でも出来ます」

 

 『アント●オ猪木じゃん!?』

 

 いつきさんのツッコミはスルーして、俺は出口へと足を向けた。

 

 「天!?どこに行くつもり・・・キャッ!?」

 

 足がもつれ、転倒する小原理事長。何してんのこの人・・・

 

 「・・・暗いんですから、下手に動くと危ないですよ」

 

 小原理事長の手を掴み、思いっきり引き上げる。

 

 「あ、ありがと・・・」

 

 「時間も無いんで、このまま行きますね」

 

 「え、ちょ!?」

 

 小原理事長の手を掴んだまま、出口から外へと出て電気室へと向かう。そこには既に先客がいた。

 

 「遅いですわよ、天さん」

 

 「ダイヤ!?」

 

 そう、そこにいたのはダイヤさんだった。

 

 「すみません、このおっぱいお化けのせいで遅れました」

 

 「おっぱいお化けって何!?」

 

 「あぁ、なるほど・・・その無駄に大きい乳をもぎ取ってやりたいですわね」

 

 「ダイヤまで!?」

 

 ショックを受けている小原理事長。と、俺は陰に隠れているもう一人の存在に気付いた。

 

 「・・・果南さん?」

 

 「ぎくっ・・・」

 

 青い髪のポニーテールを揺らし、恐る恐るこちらを振り向く果南さん。

 

 「何で果南さんがここに?」

 

 「アハハ・・・この悪天候で今日はお店が休みになったから、ちょっとライブの様子を見ようかなぁって・・・」

 

 「会場を覗く様子が完全に不審者でしたので、ここまで連行してきたのですわ」

 

 「ちょ、誰が不審者よ!?れっきとしたこの学校の生徒なんだけど!?」

 

 「果南さんうるさいです。おっぱいが大きいからって、声まで大きくする必要は無いんですよ」

 

 「おっぱい関係なくない!?っていうか、完全にセクハラ発言だよねぇ!?」

 

 「ハグ魔に言われたくないです」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる果南さん。と、果南さんと小原理事長の目が合った。

 

 「鞠莉・・・」

 

 「果南・・・」

 

 お互い複雑そうな表情を浮かべる。この二人、何かあったんだろうか・・・

 

 「時間もありませんし、早速取り掛かりますわよ」

 

 手を叩くダイヤさん。

 

 「早くこの発電機をセットして、電源を復活させるのですわ」

 

 「発電機って・・・何でそんなものがここに・・・?」

 

 「倉庫から引っ張り出してきたので」

 

 小原理事長の疑問に、しれっと答えるダイヤさん。

 

 「念の為に準備しておきたいと、天さんにお願いされましたからね」

 

 「天が・・・?」

 

 「まぁ予報でも、天気が悪いって言ってましたから。雷の影響で停電する恐れもあるので、念には念を入れて準備しておこうと思いまして」

 

 使うことはないだろうなんて思ってたけど、まさか本当に使うことになるとは・・・

 

 「ダイヤさんと二人でセットしようと思いましたけど・・・三人もいるなら大丈夫そうですね。というわけで、ここはお願いします」

 

 「天さんはどうするのですか?」

 

 「電源が復活したら、よいつむトリオの三人に指示を出さないといけないので。準備が出来たら、インカムで知らせてもらえますか?」

 

 「承知しました」

 

 「ダイヤさん・・・松嶋菜●子のモノマネしてる場合じゃないですよ」

 

 「家●婦のミタは意識してないですわよ!?」

 

 ダイヤさんの、ツッコミもスルーして、俺は会場へと戻る。そこで目にしたのは・・・

 

 「温度差な~んて、いつ~か~消~し~ちゃえって~ね~♪元気だよ・・・元気を出して・・・いく・・・よ・・・」

 

 泣きながらアカペラで歌う、千歌さんの姿だった。見るからに心が折れかかっている。

 

 「千歌さん・・・」

 

 無理も無い。初めてのライブが解散のリスクを伴ったものということで、余計にプレッシャーを感じていたはずだ。

 

 その上こんなハプニングまで起きてしまったのだから、誰だって泣きたくなるだろう。純粋な性格の千歌さんだけに、ダメージも人一倍なはずだ。

 

 「・・・何でああいう真っ直ぐな人にばかり、こういう試練が待ち受けてるのかなぁ」

 

 本当によく似てるというか・・・こんな試練に遭遇するところまで、似なくてもいいんだけど・・・

 

 と、ダイヤさんから連絡が入る。

 

 『天さん、準備完了ですわ』

 

 「了解です」

 

 さて・・・ちょっくら手を貸しましょうかね。

 

 「むつさん、よしみさん・・・スイッチオン!」

 

 『『ラジャー!』』

 

 再びステージが照明で照らされる。ステージ上の千歌さん達が呆然としている中、今度は会場に大きな声が響き渡った。

 

 「バカ千歌あああああっ!アンタ開始時間を間違えたでしょ!?」

 

 レインコートを着た美渡さんが、大勢の人を連れて会場に入ってくる。

 

 「美渡さん!」

 

 「あっ、天!」

 

 レインコートを脱ぎながら、こっちへ歩いてくる美渡さん。

 

 「遅くなってゴメン!開始時間を間違って知らされてたみたいで・・・」

 

 「どういうことですか?」

 

 「これよ、これ」

 

 美渡さんが一枚のビラを渡してくる。

 

 これって確か、千歌さんが自分達で配る為に作ったビラ・・・ん?

 

 「・・・ここに書いてある開始時間、三十分遅いんですけど」

 

 「そうなのよ!十五分前に行けば良いかなって思って来てみたら、もう始まってるっていうんだもん!ホント焦ったわよ!」

 

 なるほど・・・

 

 千歌さんが作ったビラの開始時間が間違っていたせいで、ライブ開始時点でお客さんが全然来ていなかったと・・・

 

 逆に来てくれていたお客さんは、かなり時間に余裕を持って来てくれていたと・・・

 

 うん、そういうことね。

 

 「すいません美渡さん、ちょっと妹さんのうなじ削いできますね」

 

 「巨人扱い!?気持ちは分かるけど落ち着いて!?」

 

 「駆逐してやる・・・この世から・・・一匹残らず・・・!」

 

 「いや、千歌は一人しかいないから!」

 

 美渡さんに全力で止められたので、仕方なく駆逐を諦める。

 

 あのオレンジヘッド、マジで覚えてろよ・・・

 

 「それにしても・・・埋まったね、会場」

 

 笑っている美渡さん。気付けば会場は満員になっており、どこもかしこも人で埋め尽くされていた。

 

 条件達成だな・・・

 

 「・・・Unbelievable」

 

 いつの間にか、小原理事長が近くに立っていた。満員になった会場を見て、眩しそうに目を細めている。

 

 「あの状態から、本当に満員になるなんて・・・」

 

 「・・・言ったでしょう。可能性はあるって」

 

 美渡さんへと視線を移す。

 

 「そもそも、シスコンの美渡さんが来てない時点でおかしいと思いましたよ」

 

 「誰がシスコンよ!?べ、別に千歌の為なんかじゃないんだからね!?」

 

 「はいはい、ツンデレ乙」

 

 「ツンデレちゃうわ!」

 

 「っていうか、志満さんはどうしたんですか?」

 

 「留守番してくれてるわよ。旅館を空けるわけにはいかないからね」

 

 「・・・・・」

 

 「『アンタが留守番してろよ・・・』みたいな目で見ないでくれる!?」

 

 「おぉ、以心伝心」

 

 「全然嬉しくないんだけど!?」

 

 ギャーギャー喚く美渡さんは無視して、小原理事長へと向き直る。

 

 「・・・条件はクリアしました。今さら約束を反故にしたりしませんよね?」

 

 「勿論よ。スクールアイドル部の設立を許可するわ」

 

 微笑む小原理事長。

 

 「やっぱり貴方は凄いわね、天・・・あの人の言う通りだわ」

 

 「・・・俺は何もしていません。買い被るのは止めて下さい」

 

 それだけ返すと、インカムを通じていつきさんに指示を出す。

 

 「いつきさん、曲を最初から流して下さい」

 

 『え、最初から!?続きからじゃなくて!?』

 

 「これだけの人が集まってくれたんです。もう一度初めからライブやりましょう」

 

 『・・・それもそうだね。了解!』

 

 『ダイスキだったらダイジョウブ』が最初から流れる。千歌さん達は驚いていたが、すぐに曲に合わせて歌い始めた。

 

 「うおおおおおっ!千歌あああああっ!」

 

 興奮して叫んでいる美渡さん。やっぱりシスコンじゃん。

 

 「・・・楽しそうね、あの子達」

 

 小原理事長が呟く。ステージ上で歌って踊る千歌さん、曜さん、梨子さん・・・三人とも活き活きとしていて、本当に楽しそうだ。

 

 それを眺める小原理事長の表情は・・・どこか懐かしそうで、どこか寂しそうなものだった。

 

 「・・・言うべきか迷いましたけど、一応言っておきますね」

 

 「天・・・?」

 

 「発電機のセット・・・手伝ってくれてありがとうございました」

 

 俺の言葉に一瞬ポカンとした後、小さく笑う小原理事長なのだった。




どうも~、ムッティです。

ここで一つ、この作品とは全く関係の無いお知らせをさせていただきますが…



『刀藤綺凛の兄の日常記』が復活しました!



…知らない人にとっては、『何の話?』ってなりますよね(笑)

学戦都市アスタリスクを原作とした、ハーメルンに投稿されているssでございます。

実は自分もアスタリスクが原作のssを投稿させていただいているのですが、以前コラボさせていただきまして。

作者の富嶽二十二景さん(以前の名前は綺凛・凛綺さん)がハーメルンに戻られて、以前の作品を再び投稿されているのです。

以前読んでいたという方、アスタリスクのssに興味があるという方は是非ともチェックしてみてはいかがでしょうか?



というわけで、ちょっと宣伝させていただきました(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試練を乗り越えた先に待っているものがある。

まだ5月なのにこの暑さ…

今年の夏はヤバい気がする…


 「ライブ凄かったよ天くん!衣装も曲も振り付けも良かったし、先輩方もキラキラしてて輝いてた!それから、それから・・・!」

 

 「アハハ・・・ありがとね、ルビィちゃん」

 

 興奮状態のルビィちゃんに、苦笑しながらそう返す俺。

 

 ライブが終わってお客さん達のお見送りをしていた俺に、ルビィちゃんがダッシュで駆け寄ってきたのだ。

 

 本当にスクールアイドルが好きなんだなぁ・・・

 

 「お疲れ様、天くん」

 

 ルビィちゃんの後ろでは、花丸が優しく微笑んでいた。

 

 「ライブ、凄く楽しかったずら」

 

 「そう言ってもらえると嬉しいよ。来てくれてありがとね、花丸」

 

 「フフッ、天くんの為ならどこでも行くずら」

 

 「・・・花丸が天使に見えるわぁ」

 

 花丸の頭を撫でる。

 

 「まだ結構雨が降ってるから、気を付けて帰ってね」

 

 「了解ずら!」

 

 「じゃあ、また明日ね!」

 

 手を振って帰っていく二人。さて・・・

 

 「花丸もルビィちゃんも行ったし、そろそろ出てきなよ・・・よっちゃん」

 

 「ぎくっ!?」

 

 扉の陰から、よっちゃんが恐る恐る顔を出す。

 

 「恐るべしリトルデーモン・・・隠していた我が魔力を感知するとは・・・」

 

 「扉の陰からシニヨンだけはみ出してたら、誰だって気付くわ」

 

 「うげっ!?」

 

 「っていうか、マスクとサングラス外したら?完全に不審者だよ?」

 

 「誰が不審者よっ!?」

 

 そうツッコミを入れつつも、マスクとサングラスを外すよっちゃん。素直や・・・

 

 「今日は来てくれてありがとね」

 

 「フッ・・・リトルデーモンの頼みを聞くのも、主である我の役目・・・堕天使ヨハネの慈悲深さに感謝するが良い」

 

 「わー、ヨハネ様慈悲深ーい」

 

 「棒読みっ!」

 

 正直、よっちゃんには本当に感謝している。まだ登校する決心がついていない中で、ライブの為にわざわざ学校まで足を運んでくれたのだから。

 

 「・・・学校に来るの、しんどくなかった?」

 

 「急に心配してんじゃないわよ」

 

 バシッと背中を叩かれる。

 

 「これぐらいどうってことないわよ。まぁ、クラスメイト達と会うのは・・・まだちょっと勇気が出ないけど」

 

 「・・・ゆっくりで良いから。焦らずにやっていこうね」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 小さく笑うよっちゃん。

 

 「天も今日はお疲れ。帰ったらゆっくり休みなさいよ」

 

 「分かったよ、母さん」

 

 「誰が母さんよ!?」

 

 「明日ノートとプリント持って行くから。いつものごとく、夕飯ご馳走になります」

 

 「相変わらずその流れなのね・・・了解。じゃあまた明日」

 

 よっちゃんも手を振りながら帰っていく。と、俺の背中がいつもの衝撃を受けた。

 

 「お疲れ様のハグ!」

 

 「・・・慣れって恐ろしいですね」

 

 最初の頃はあんなにドキドキしてたのに、今はもう完全に平常心だ。

 

 健全な思春期男子として、これはいかがなものだろうか・・・

 

 「次々に美少女と会話しちゃって・・・本命はどの子なの?」

 

 「果南さんってことにしといて下さい」

 

 「おっ、私を美少女の括りに入れてくれるの?」

 

 「誰がどう見たって美少女でしょ。果南さんの可愛さを舐めないで下さい」

 

 「な、何か恥ずかしいんだけど・・・」

 

 顔を赤らめる果南さん。

 

 最近分かったことだが、この人もストレートな言葉に弱い。褒め言葉には特に弱い。

 

 「そういえば、果南さんもありがとうございました。発電機のセットを手伝ってくれて」

 

 「どういたしまして。まぁ大したことはしてないけどね」

 

 笑う果南さん。

 

 「それにしても・・・このタイミングで鞠莉に会うとはね・・・」

 

 表情が暗くなる果南さん。やっぱり二人の間には、何かがあるようだ。

 

 「・・・元気出して、のハグ」

 

 「っ!?」

 

 偶にはこっちから果南さんにハグしてみる。果南さんの顔が真っ赤になっていた。

 

 「そ、天!?」

 

 「いつもハグしてる仲なんですから、そんなに恥ずかしがらなくても良いでしょう」

 

 「そ、そうだけどさぁ・・・男の子からハグされるなんて、経験無いから・・・!」

 

 「よし、果南さんの初めてゲット」

 

 「その言い方は誤解を招くから止めてくんない!?」

 

 「ちょっと何言ってるか分かんないです」

 

 「何でよ!?」

 

 どうやら少しは元気が出たようだ。やっぱり果南さんはこうでなくちゃ。

 

 「さて・・・こんなところをダイヤさんに見られたら『破廉恥ですわ!』って怒られそうなんで、そろそろ離れますね」

 

 「アハハ、確かに・・・」

 

 苦笑する果南さん。

 

 「でも・・・偶には相手の方からハグされるのも、悪くないかもね」

 

 「果南さんは基本的に、自分からハグしに行きますもんね」

 

 「そうなんだよ。だからまぁ・・・偶には、天からハグしてくれても良いよ?」

 

 少し恥ずかしそうに笑う果南さん。

 

 何だか今の果南さんは、『お姉さん』というより『女の子』っていう感じがして新鮮だな・・・

 

 「それじゃ、私も帰るね!」

 

 「えぇ。今日は来てくれてありがとうございました」

 

 帰っていく果南さんを見送る。これでお客さんはほとんど帰ったか・・・

 

 「・・・顔を出しに行くかな」

 

 ライブが終わってから、まだ千歌さん達のところに顔を出せていない。

 

 果たしてどんな様子なのか、少し気になっている俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《千歌視点》

 

 「・・・終わったね」

 

 「・・・うん」

 

 「・・・そうね」

 

 ステージ裏で、私達は椅子に座ってボーっとしていた。

 

 ライブが終わって、ステージ裏に戻ってきて、三人で号泣して・・・ひとしきり泣いたら、何だかドッと疲れが押し寄せてきたのだ。

 

 「満員だったね・・・」

 

 「うん、会場を埋められたね・・・」

 

 「条件クリア、よね・・・」

 

 これでスクールアイドル部の設立が認められる。これからもAqoursとして活動することが出来る。

 

 「これから始まるんだ・・・」

 

 ゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

 「始められるんだ・・・スクールアイドル」

 

 また涙ぐんでしまいそうになる。ステージでも泣いたし、さっきも泣いたのに・・・

 

 「・・・千歌ちゃん」

 

 そっと隣に寄り添ってくれる曜ちゃん。

 

 「一緒に頑張ろうね」

 

 「曜ちゃん・・・」

 

 「曲作りは任せて」

 

 梨子ちゃんも隣に立ってくれる。

 

 「絶対に良い曲を作ってみせるから」

 

 「梨子ちゃん・・・」

 

 「だから千歌ちゃん・・・作詞は早めにお願いね?」

 

 「うっ・・・」

 

 「全ては千歌ちゃんにかかってるからね?」

 

 「止めてえええええっ!?プレッシャーかけないでえええええっ!?」

 

 思わず頭を抱えてしまう。そんな私を見て、曜ちゃんと梨子ちゃんが笑っていた。

 

 うぅ、意地悪・・・

 

 「勘違いしないことですわね」

 

 厳しい声がかけられる。振り向くと、ダイヤさんが立っていた。

 

 「今までのスクールアイドルの努力と、街の人達の善意があったからこそライブは成功した・・・それを忘れないように」

 

 「・・・分かってます」

 

 言われなくても分かってる。私達の実力なんてまだまだで、今は他のスクールアイドルには到底及ばない。

 

 そんなことは分かってる。

 

 「でも、ただ見てるだけじゃ始まらないって・・・上手く言えないけど、今しか無い瞬間だから・・・だから、輝きたい」

 

 ダイヤさんを真っ直ぐ見つめる。

 

 「だから全力で、スクールアイドルをやります。普通星人の私がようやく見付けた、心からやりたいことだから」

 

 「・・・そうですか」

 

 ダイヤさんはそれだけ言うと、踵を返して出て行った。

 

 「あんな言い方しなくても良いのに・・・」

 

 口を尖らせる曜ちゃん。

 

 「そんなに私達のことが気に入らないのかな・・・」

 

 「・・・多分、私達の為を思って言ってくれてるんじゃないかな」

 

 最初はただ、スクールアイドルが嫌いなんだと思ってたけど・・・

 

 μ'sのことをあんなによく知ってる人が、スクールアイドルを嫌いなわけがない。

 

 「何か、そんな気がするんだよね」

 

 「千歌さんって、そういう勘だけは無駄に鋭いですよね」

 

 「無駄って酷い・・・って天くん!?」

 

 いつの間にか、すぐ後ろに天くんが立っていた。い、いつの間に・・・

 

 「お疲れ様です」

 

 「いつからいたの!?」

 

 「『夢にときめけ!明日にきらめけ!』からですね」

 

 「そんな場面無かったよねぇ!?完全にルー●ーズじゃん!?川●先生じゃん!?」

 

 「あれ?『あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?』でしたっけ?」

 

 「それはスラ●ダンクの安●先生!野球からバスケになってるよ!?」

 

 「あ、曜さんと梨子さんもお疲れ様でした」

 

 「お疲れ~」

 

 「お疲れ様」

 

 「無視しないでくれる!?」

 

 ホントにこの子は・・・全くもう・・・

 

 「あ、さっき小原理事長とも話したんですけど・・・スクールアイドル部、正式に設立を認めてくれるそうです」

 

 「ホント?良かったぁ・・・」

 

 胸を撫で下ろす梨子ちゃん。

 

 まぁ約束を反故にされることはないとは思ってたけど、改めて聞くとやっぱりホッとする。

 

 「良いライブでしたよ。ファーストライブとしては上々だと思います」

 

 「色々ハプニングもあったけどね」

 

 苦笑する曜ちゃん。あ、ハプニングといえば・・・

 

 「天くんの『スイッチオン!』っていう声と同時に、また照明が点いたんだけど・・・あの時、天くんが何かしてくれたの?」

 

 「あぁ、ちょっと発電機をセットしてもらいまして」

 

 「発電機!?」

 

 「え、まさか停電になることを予測してたの!?」

 

 「えぇ。あくまでも万が一の為に用意してもらったんですけど・・・正解でしたね」

 

 苦笑する天くん。この子、ちょっと有能過ぎない・・・?

 

 「まぁ用意してくれたのもセットしてくれたのも、俺じゃないんですけどね」

 

 「え、じゃあ誰が・・・?」

 

 「あー・・・本人の為にも言わないでおきます」

 

 「えぇっ!?凄く気になるんだけど!?」

 

 何故か言葉を濁す天くん。本人の為ってどういう意味・・・?

 

 「まぁとにかく、何とかなって良かったです。ライブも成功して、スクールアイドル部も設立が認められる・・・最高の結果になりましたね」

 

 「うん、ありがとう・・・天くんのおかげだよ」

 

 「え?」

 

 驚いている天くんの手を、両手でそっと握る。

 

 「ライブの途中、何度も心が折れそうになった。でも折れそうになる度に、天くんの声が聞こえたんだ。だから頑張れた」

 

 「千歌さん・・・」

 

 「今回のライブだって、天くんの支えが無かったら成功してないもん。本当に感謝の気持ちでいっぱいだよ」

 

 練習メニューを考えてくれたり、作詞に悩んでた私にヒントをくれたり・・・

 

 いつだって天くんは、私達に寄り添ってくれた。会場の設営とかだって、誰よりも一生懸命やってくれてたってむっちゃん達から聞いてる。

 

 天くん無しで、今回の成功は有り得なかった。

 

 「支えてくれてありがとう、天くん」

 

 「ホント、天くんにはいつも助けられてるわね」

 

 「曜さん、梨子さん・・・」

 

 天くんと私の手に、曜ちゃんと梨子ちゃんの手が重ねられる。私は天くんを見た。

 

 「これからも、私達のマネージャーでいてくれる?」

 

 「・・・まぁ、そうしろって言われてますからね。あの忌々しい理事長から」

 

 溜め息をつく天くん。

 

 「でも・・・千歌さんや曜さん、梨子さんと一緒にいるのは楽しいですから。もう嫌々マネージャーをやってるわけじゃありませんよ」

 

 「天くん・・・」

 

 「ここからがスタートですから。練習もハードにするんで、覚悟して下さいね」

 

 「っ・・・うん!」

 

 私は笑顔で頷くと、勢いよく天くんの胸に飛び込んだ。

 

 「ちょ、千歌さん!?危ないですって!」

 

 「えへへ、何か無性に抱きつきたくなっちゃった」

 

 「あ、じゃあ私も!ヨーソロー!」

 

 「ちょ、曜さん!?倒れる!倒れるから!」

 

 「だ、だったら私も!えいっ!」

 

 「いや、梨子さんまで来ちゃったら・・・うわっ!?」

 

 三人分の重さに耐え切れなくなった天くんと共に、私達はそのまま床へと倒れ込んだ。

 

 私も曜ちゃんも梨子ちゃんも笑い、天くんはやれやれと言いたげに苦笑している。

 

 仲間達とこうして笑い合えることを、とても幸せに思う私なのだった。




どうも~、ムッティです。

この話で、アニメ一期の第三話まで終了したことになります。

次回からは第四話へと入っていきます。

ここ最近あまり出番のなかった、はなまるびぃの二人を存分に出していく…予定です(笑)

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自分の気持ちに蓋をしてしまうのは苦しい。

劇場版『響け!ユーフォニアム』を観てきました!

いやぁ…あれはヤバい。

絵は綺麗だし、ストーリーには引き込まれるし…

何より演奏シーンが圧巻すぎて鳥肌が立ちました。

またアニメ見たいなぁ…


 「じゃあ曜さんと俺で、ドアと窓を拭いていきましょうか」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「千歌さんは棚拭きを、梨子さんは床拭きをお願いします」

 

 「オッケー!」

 

 「分かったわ」

 

 体育館の中にある一つの部屋を、手分けしながら掃除している俺達。

 

 ファーストライブで会場を満員にしたことで、小原理事長は約束通りスクールアイドル部の設立を承認してくれた。それと同時に部室として与えられたのが、今俺達が掃除しているこの部屋なのだが・・・

 

 長い間使われていなかったらしく、完全な物置部屋と化していたのだ。まずは掃除しないと使えないということで、こうしてせっせと掃除しているというわけである。

 

 「あの腐れ成金理事長・・・ホント覚えてろよ・・・」

 

 「アハハ・・・」

 

 恨み言を呟く俺に、曜さんが苦笑していた。

 

 ライブの時に発電機のセットを手伝ってくれたとはいえ、お礼なんて言うべきじゃなかったな・・・

 

 「曜さん、デ●ノート持ってません?小原理事長の名前を書き込みたいんですけど」

 

 「持ってるわけないじゃん!?何ちょっと物騒なこと言ってるの!?」

 

 「じゃあちょっとリュ●ク探してきて下さいよ。多分リンゴで釣れると思うんで」

 

 「死神を魚みたいに釣れるわけないでしょ!?っていうか、そもそもデスノ●トに触れなきゃ見えないよねぇ!?」

 

 「曜さんならいけますって。ヨーソローパワーで」

 

 「ヨーソローパワーって何!?」

 

 そんな会話をしているうちに、部室内の掃除を終えることが出来た。部室にあった荷物の整理も済ませてあるので、後は机や椅子等を再び配置するだけだ。

 

 「千歌さん、ホワイトボードお願いします」

 

 「はーい!」

 

 廊下に出してあったホワイトボードを引っ張ってくる千歌さん。と、何やら首を傾げている。

 

 「このホワイトボード、何か書いてあるよ?」

 

 「ホワイトボードに名前を書かれた人間は死ぬって?」

 

 「まだデス●ートのネタを引きずるの!?」

 

 千歌さんのツッコミを受けつつ、ホワイトボードに視線を向ける。確かにホワイトボードいっぱいに、消えかかった文字で何かが書かれていた。

 

 これは・・・

 

 「ひょっとして・・・曲の歌詞?」

 

 「そうみたいね」

 

 俺の肩越しにホワイトボードを覗きこんだ梨子さんが頷く。

 

 「でも、こんな歌詞の曲知らないわね・・・」

 

 「私も知らないなぁ・・・ひょっとして、オリジナルの曲だったりして」

 

 「誰かが作詞してたってこと?」

 

 「そうかもしれないわね」

 

 梨子さん達が話している中、俺はホワイトボードに書かれていた文字を見つめていた。

 

 この筆跡には見覚えがある。もし本当にあの人が書いたものだとしたら、色々と疑問に思っていたことにも説明がつくな・・・

 

 「天くん?どうしたの?」

 

 「いえ、何でもないです」

 

 梨子の問いに笑って返す俺。

 

 あくまでも推測でしかないし、俺が踏み込み過ぎるのも良くないだろうな・・・

 

 「千歌さん、ホワイトボードも拭いちゃって下さい」

 

 「え、文字が消えちゃうけど良いの?」

 

 「えぇ。このままじゃ使えないですし、汚れも目立ちますからね」

 

 「了解!」

 

 千歌さんがホワイトボードを拭いていき、文字が完全に消えてしまう。

 

 まぁ、今はこれで良いかな・・・

 

 「じゃあ梨子さんと俺で、机と椅子を運びましょうか」

 

 「えぇ、そうしましょう」

 

 「曜さん、運んできた机と椅子の表面を拭いてもらって良いですか?」

 

 「お任せあれ!」

 

 「あ、じゃあついでに●スノートも・・・」

 

 「それは任せないで!?」

 

 悲鳴を上げる曜さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「失礼しまーす」

 

 段ボール箱を抱え、図書室へとやってきた俺達。受付に花丸が座っていた。

 

 「あれ?天くん?」

 

 「お、花丸じゃん。今日は当番の日?」

 

 「ずら」

 

 頷く花丸。と、俺の後ろから千歌さんがひょっこり顔を覗かせる。

 

 「おぉ、花丸ちゃん!」

 

 「こんにちは」

 

 「そしてルビィちゃん!」

 

 「ぴぎゃあっ!?」

 

 受付の側に置いてある送風機の陰に、しゃがんで隠れていたルビィちゃんを千歌さんが発見する。恐らく花丸と話している時に俺達がやって来たから、咄嗟に隠れようとしたんだろうけど・・・

 

 ルビィちゃん、そのしゃがみ方はあまりよろしくないと思う。スカートの中がバッチリ見えてるから。パンツ丸見えだから。

 

 「・・・天くん?」

 

 「そんな目で見ないで下さい。今のは不可抗力です」

 

 梨子さんが冷たい目でこっちを見ていた。理不尽や・・・

 

 「不可抗力といえば、梨子さんの時も・・・」

 

 「今すぐ記憶から消しなさい」

 

 「アッハイ」

 

 女帝・桜内梨子、ここに爆誕。俺は梨子さんには逆らえそうにないな・・・

 

 「あ、これ部室にあったんだけど・・・図書室の本じゃないかな?」

 

 段ボール箱を受付の机に置く曜さん。部室の荷物を整理していた時に見付けたので、ここまで持ってきたのだ。

 

 花丸が手に取ってチェックする。

 

 「あぁ、多分そうです。わざわざありがとうございまs・・・」

 

 「スクールアイドル部へようこそ!」

 

 「ずら!?」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 強引に割り込んできた千歌さんが、花丸とルビィちゃんの手を握る。

 

 「正式に設立されたし、絶対悪いようにはしないから!二人が歌ったら絶対キラキラする!間違いない!」

 

 「アンタの対応が間違いだわ」

 

 「あたっ!?」

 

 千歌さんの頭を容赦なく引っ叩く。ホントにこの人は・・・

 

 「その辺にしておかないと、マジでしばきますよ?」

 

 「もうしばかれてるんですけど!?男の子が女の子を引っ叩くってどうなの!?」

 

 「男女平等です」

 

 「こういう場面で使う言葉じゃないと思うよ!?」

 

 「とにかく、強引な勧誘はダメです。二人とも戸惑ってるでしょう」

 

 「す、すみません・・・マル、そういうの苦手っていうか・・・」

 

 「ル、ルビィも・・・」

 

 恐縮しながら断る二人。千歌さんは残念そうに苦笑していた。

 

 「アハハ、そっかぁ・・・ゴメンね、つい・・・」

 

 「あっ、いえ・・・」

 

 どこか複雑そうな表情をしているルビィちゃん。そんなルビィちゃんを、花丸が心配そうに見つめている。

 

 あれ、もしかしてルビィちゃん・・・

 

 「千歌ちゃん、そろそろ帰ろう?」

 

 「あ、うん。そうだね」

 

 曜さんに声をかけられ、千歌さんが頷く。

 

 今日は部室の掃除に時間を費やしてしまったので、練習は休みにしようということになったのだ。

 

 「あ、千歌さん達は先に帰って下さい」

 

 「あれ?天くん帰らないの?」

 

 「えぇ。せっかくなので、ちょっと調べ物をしてから帰ります」

 

 「了解。じゃあまた明日!花丸ちゃんとルビィちゃんもまたね!」

 

 三人が図書室を出て行く。さて・・・

 

 「ルビィちゃん、俺の勘違いだったら申し訳ないんだけど・・・ひょっとして、スクールアイドルやりたいんじゃない?」

 

 「っ・・・!」

 

 息を呑むルビィちゃん。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「千歌さんの誘いを断った時の表情が・・・よく似てたから」

 

 「似てたって・・・誰に?」

 

 「俺の知り合い。その子は自分に自信が無くて、本当はやりたいのに『やりたい!』って言えなくて・・・凄く悩んでたんだよね」

 

 「・・・まるでルビィちゃんずらね」

 

 苦笑する花丸。

 

 「天くんはこう言ってるけど・・・ルビィちゃんはどう思ってるずら?」

 

 「・・・やってみたい気持ちはある」

 

 俯くルビィちゃん。

 

 「でも・・・お姉ちゃん、スクールアイドルが嫌いになっちゃったから。多分、反対されると思う」

 

 「ダイヤさんか・・・嫌いになっちゃったってことは、元々は好きだったの?」

 

 「うん。お姉ちゃん、昔はスクールアイドルが大好きで・・・一緒にμ'sのマネして、歌ったりしてたんだ。でも高校に入ってしばらく経った頃から、スクールアイドルが嫌いになっちゃったみたいで・・・」

 

 「嫌いに、ねぇ・・・」

 

 ダイヤさんが今でもスクールアイドル好きなのは間違いない。でも千歌さんをはじめ、スクールアイドルをやりたいと言った人達に頑なな態度をとってきたのも事実だ。

 

 その原因は、恐らく・・・

 

 「・・・本当はね、ルビィも嫌いにならなきゃいけないんだよ。スクールアイドル」

 

 悲しそうに言うルビィちゃん。

 

 「お姉ちゃんが嫌いっていうものを、好きなままじゃいけないんだけど・・・」

 

 「・・・嫌いになれないんでしょ?ルビィちゃん、スクールアイドル好きだもんね」

 

 「・・・うん」

 

 ルビィちゃんは俺の問いに頷くと、花丸の方を見た。

 

 「花丸ちゃんは興味無いの?スクールアイドル」

 

 「マル!?無い無い!運動苦手だし、オラとか言っちゃうし・・・」

 

 「・・・そっか。じゃあルビィも平気」

 

 力なく笑うルビィちゃんを、悲しそうな表情で見つめる花丸なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回からアニメ一期の第四話へと入っていきます。

ここからはなまるびぃの二人の登場が多くなる…はず(笑)

相変わらず不定期の投稿にはなりますが、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切な人の背中は押してあげたいものである。

投稿間隔が空いてしまって申し訳ない・・・

今回は短めですが、よろしくお願いします。


 「ずらぁ・・・」

 

 帰りのバスの中で、俺にもたれかかってくる花丸。ちなみにルビィちゃんは用事があったらしく、一足先に帰ってしまった。

 

 「ルビィちゃん、絶対スクールアイドルやりたいずら。間違いないずら」

 

 「まぁそうだろうね」

 

 自分に自信が無いことと、ダイヤさんに反対されるだろうということ・・・この二つが原因で、ルビィちゃんは自分の気持ちに蓋をしてしまっている。

 

 でも・・・

 

 「多分ダイヤさんは・・・反対しないんじゃないかな」

 

 「どうしてそう思うずら?」

 

 「ルビィちゃんが自分で決めたことなら、それを尊重してくれる人だと思うから。あくまでも個人的な考えだけどね」

 

 そう考えると、問題はルビィちゃん自身がどうするか・・・一歩踏み出すことが出来るかどうかだと思う。

 

 でも今のルビィちゃんは、恐らくその選択をしないだろうな・・・

 

 「となると、俺達の選択肢は二つに限られるかな」

 

 「黙って見守るか、背中を押すか・・・ずらね」

 

 「そういうこと」

 

 まぁ、花丸が選ぶとしたら・・・

 

 「勿論、背中を押すずら」

 

 「言うと思ったよ」

 

 笑いあう俺達。

 

 出会ってからそんなに時間は経ってないけど、花丸が友達思いなのはよく知ってる。ここで動かないという選択肢を、花丸が選ぶわけがない。

 

 「でも背中を押すって言っても、強引過ぎるのは良くないよね・・・どうやってルビィちゃんの気持ちを動かすべきか・・・」

 

 「実は一つ、マルに考えがあるずら」

 

 「マジで!?」

 

 まさかもう方法を考えているとは・・・

 

 「天くん・・・マルをスクールアイドル部に入れてほしいずら」

 

 「・・・え?」

 

 唖然としてしまう俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「体験入部?」

 

 首を傾げる千歌さん。

 

 翌日の昼休み・・・俺は二年生の教室に出向き、千歌さん達に事情を説明していた。

 

 「えぇ、花丸とルビィちゃんがやってみたいって」

 

 「体験入部って、要はお試しってことだよね?自分に合ってたら入るし、合わなかったら入らないって感じかな?」

 

 「ですね。二人とも興味はあるみたいで、実際にやってみて判断したいらしいです」

 

 曜さんの問いに頷く俺。

 

 今朝ルビィちゃんにも話したところ、『花丸ちゃんがやるなら』ということでオッケーをもらっている。

 

 「き、奇跡だよ・・・!」

 

 目をキラキラ輝かせる千歌さん。

 

 「これで二人が入ってくれたら・・・!」

 

 「でも昨日、こういうのは苦手って言ってなかったかしら・・・?」

 

 首を傾げる梨子さん。

 

 「それが急にどうして・・・」

 

 「思春期だからです」

 

 「いや、それは別に関係ないんじゃ・・・」

 

 「思春期だからです」

 

 「わ、分かった!分かったから!」

 

 額がくっつくほど梨子さんに顔を近付けて、勢いで無理矢理押し通す。

 

 こういう時、勘の鋭い人って厄介だなぁ・・・

 

 「そういうわけで、今日の放課後は二人が体験入部に来ますから。後のことはよろしくお願いします」

 

 「あれ?天くんは?」

 

 「残念ながら、今日は生徒会なんですよ」

 

 ルビィちゃんのことは花丸に任せて、俺は別の仕事を請け負っている。

 

 さて・・・

 

 「果たしてどうなるかな・・・」

 

 「「「?」」」

 

 俺の呟きに首を傾げる三人なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・今日の仕事はこれで終了ですわ」

 

 「お疲れ様です」

 

 息を吐くダイヤさん。

 

 生徒会の仕事も終わり、後は帰るだけなのだが・・・

 

 「ダイヤさん、この後少し時間ありますか?」

 

 「えぇ、大丈夫ですけれど・・・何か?」

 

 「これからデートしません?」

 

 「デ、デート!?」

 

 ダイヤさんの顔が赤くなる。

 

 「そ、そんな破廉恥な・・・!」

 

 「どんだけ初心なんですか・・・」

 

 ダイヤさんの恋愛経験はゼロということが判明した瞬間だった。

 

 「まぁデートっていうのは冗談で・・・実はダイヤさんにご相談がありまして」

 

 「じょ、冗談って・・・まぁ良いですけれど。それで、相談というのは?」

 

 「ルビィちゃんのことです」

 

 「ルビィの・・・?」

 

 首を傾げるダイヤさん。

 

 「えぇ。ルビィちゃんとは同じクラスっていうこともあって、仲良くさせてもらってるんです」

 

 「ルビィからも、天さんの話は聞いてますわ。あのルビィが男の人と仲良くしてるなんて、私も驚いたのですけれど・・・ハッ!?」

 

 そこで急に息を呑むダイヤさん。

 

 「ま、まさか天さん・・・私の愛する妹に手を出して・・・!?」

 

 「内浦の海に沈みたいんですか?」

 

 「怖いですわよ!?」

 

 このシスコン生徒会長・・・あんな天使みたいな子に手を出せるわけないでしょ。

 

 「とりあえず外に出ましょうか。見てほしいものもありますし」

 

 「見てほしいもの・・・?」

 

 訝しげなダイヤさんに、俺は笑みを向けるのだった。

 

 「えぇ、見てあげて下さい・・・愛する妹の頑張る姿を」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・どういうことですの?」

 

 驚いているダイヤさん。

 

 俺達は今、学校の屋上に来ているのだが・・・

 

 「ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 そこでは今、ルビィちゃんと花丸がダンスの練習をしているところだった。曜さんがカウントをとり、手を叩いている。

 

 「少しズレてるよ!テンポを意識して!」

 

 「はいっ!」

 

 「ずらっ!」

 

 真剣に練習している二人を、俺とダイヤさんは階段の陰から覗いていた。

 

 「何故ルビィがスクールアイドル部に・・・?」

 

 「体験入部ですよ」

 

 説明する俺。

 

 「ルビィちゃん、スクールアイドル好きじゃないですか。それで興味を持ってくれたみたいで、花丸と一緒に体験入部することになったんです」

 

 「ルビィが・・・スクールアイドル・・・」

 

 じっとルビィちゃんを見つめるダイヤさん。その表情は、どこか複雑そうだった。

 

 「・・・反対ですか?」

 

 「え・・・?」

 

 「ルビィちゃんがスクールアイドルをやること・・・ダイヤさんは反対ですか?」

 

 「私は・・・」

 

 俯くダイヤさん。やはりダイヤさんとしては、ルビィちゃんが心配なんだろう。

 

 「とりあえず、もう少し見てあげて下さい。ルビィちゃんの頑張ってる姿を」

 

 ダンスの練習に打ち込むルビィちゃんは、どこか活き活きとした様子だった。スクールアイドルとしての練習が出来ることに、楽しさを覚えているのかもしれない。

 

 そしてもう一人・・・

 

 「花丸ちゃん、良い感じだよ!その調子で頑張って!」

 

 「ずらっ!」

 

 「・・・楽しそうじゃん、花丸」

 

 笑顔で練習する花丸を見て、俺は口元を緩ませるのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、投稿間隔が空いてしまって申し訳ございません・・・

なかなか執筆が進まなくて・・・

今後も投稿間隔が空いてしまうことがあるかと思いますが、温かい目で見守っていただけると幸いでございます。

ちなみに次の話は明日投稿しますので、お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

言葉にしなければ分からないことがある。

最近『未来の僕らは知ってるよ』と『MIRAI TICKET』をよく聴いてます。

Aqoursの曲の中でも、五本の指に入るくらい好きな二曲です。


 「おぉ・・・良い眺めですね」

 

 感嘆の声を上げる俺。

 

 俺達は今、淡島神社へと続く長い階段の途中にいた。少し開けたその場所からは、内浦の海を見渡すことが出来る。

 

 ちょうど夕陽に染まっており、オレンジ色の海がとても綺麗だった。

 

 「でしょう?私のお気に入りスポットですわ」

 

 ダイヤさんはそう言って笑うと、近くのベンチに腰を下ろした。

 

 「それにしても、ルビィは大丈夫でしょうか・・・こんなに長い階段を、ダッシュで上っていきましたが・・・」

 

 ここの階段ダッシュは、Aqoursにとって日々のトレーニングの一環となっている。前に果南さんからこの場所を教えてもらった俺が、トレーニングメニューに追加したのだ。

 

 まぁかなり長いので、途中で一息入れるようにはしているが。果南さんはこれを毎朝、しかも休憩無しでやっているらしい。

 

 小原理事長がおっぱいお化けなら、果南さんは体力お化けといったところだろうか。

 

 「大丈夫ですよ。千歌さん達が無理させないでしょうから」

 

 ダイヤさんの隣に座る俺。

 

 「それにルビィちゃん、意外に体力ありますからね。体育でやった持久走とか、割と良いタイム出してましたよ」

 

 むしろ心配なのは花丸の方だ。運動が苦手と公言するだけあって、体力があまり無い。途中でバテそうな気がする。

 

 「・・・そうですわね」

 

 浮かない表情のダイヤさん。

 

 「・・・ルビィは、本気でスクールアイドルをやるつもりなのでしょうか?」

 

 「もしルビィちゃんが『やりたい』と言ったら・・・ダイヤさんはどうするつもりなんですか?」

 

 「私は・・・」

 

 俯くダイヤさん。

 

 「私は・・・ルビィが本気なら、その気持ちを応援しますわ。あの子がスクールアイドルに憧れているのは、よく知っていますから」

 

 「・・・それはダイヤさんも同じでしょう?」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むダイヤさん。やっぱりな・・・

 

 「ルビィちゃんが言ってました。高校に入ってしばらくして、ダイヤさんはスクールアイドルが嫌いになってしまったと・・・それを聞いて、何となく想像がつきました」

 

 俺は隣に座るダイヤさんへ視線を向けた。

 

 「ダイヤさん、貴女・・・スクールアイドルをやってましたよね?」

 

 「ッ!?」

 

 ダイヤさんが息を呑む。

 

 「ど、どうして・・・!?」

 

 「ダイヤさんが教えてくれたんじゃないですか」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「あの日ダイヤさんが浜辺に書いた、『Aqours』という名前・・・調べたらすぐ分かりましたよ。二年前、東京で行なわれたスクールアイドルのイベントに参加してますよね?出場グループ一覧に、『Aqours』の名前がありました」

 

 『Aqours』という名前には、ダイヤさんにとって思い入れがあるんだろうとは思ってはいたが・・・

 

 まさか自分がやっていたスクールアイドルグループの名前だったとはな・・・

 

 「担任の赤城先生にも聞いてみたんですけど、ちゃんと覚えてましたよ。二年前、浦の星でスクールアイドルをやっていた生徒がいたことを」

 

 「・・・天さんは既にご存知だったのですね」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「その様子から察するに、他のメンバーが誰なのかも分かっているのでしょう?」

 

 「・・・果南さんと小原理事長ですね」

 

 俺の答えに、力なく頷くダイヤさん。

 

 部室のホワイトボードに書かれていた文字・・・恐らくあれは果南さんの字だ。バイトの時に果南さんが書く字は度々見ているから、すぐに果南さんの字だと分かった。

 

 そして小原理事長が留学したのは二年前・・・恐らくイベントが終わった後に留学したんだろう。スクールアイドル部に何かと目をかけるのも、自身が過去にスクールアイドルをやっていたのであれば説明がつく。

 

 「二年前、ダイヤさん達はスクールアイドルを始めた。でも何らかの理由で辞めざるをえなくなり、Aqoursは解散した。だからダイヤさんは、スクールアイドル関連のものを自分から遠ざけようとしたんでしょう?」

 

 それでも、心の底からスクールアイドルを嫌いになることなど出来なかった・・・μ'sについて楽しそうに語っていたのがその証拠だ。

 

 「スクールアイドルに関わる部の設立を承認してこなかったのは、その人達が傷付かないようにする為・・・スクールアイドルをやっていたからこそ、その大変さがダイヤさんには分かってたんですよね?どんな事情があったにせよ、辞める決断をするというのは・・・とても辛いことですから」

 

 「・・・敵いませんわね。察しが良すぎますわ」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 「そこまで分かっているのなら、私が何を心配しているか分かるでしょう?」

 

 「スクールアイドルをやることで、ルビィちゃんが辛い思いをしないか・・・ですね」

 

 「えぇ。あんな思いをするくらいなら、私は・・・」

 

 膝の上で拳を握るダイヤさんが、俺にはとても弱々しく見えた。

 

 誰かが傷付くことを恐れ、自分が嫌われてでも防ごうと必死になる・・・その行動は、ただただ『不器用』の一言に尽きる。いつもスマートに仕事をこなすダイヤさんとは大違いだ。

 

 でも恐らく、その『不器用』な姿こそが本当のダイヤさんなんだろう。人一倍優しいからこそ、人が傷付くのを黙ってみていられない・・・それが『不器用』な行動に繋がっている。

 

 まったく・・・

 

 「千歌さんがあの人に似てると思ったら、ダイヤさんはあの人ですか・・・」

 

 「あの人・・・?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 まぁそれはさておき・・・俺がダイヤさんにかけられる言葉は一つだ。

 

 「ダイヤさん・・・あまりルビィちゃんを見くびらない方が良いですよ」

 

 「え・・・?」

 

 ポカンとしているダイヤさん。

 

 「それはどういう・・・?」

 

 「そのままの意味です。確かにルビィちゃんは極度の人見知りですし、気の弱いところだってありますけど・・・しっかりとした芯を持ってる子ですよ」

 

 「っ・・・」

 

 「スクールアイドルが大変だってことぐらい、スクールアイドルが大好きなルビィちゃんなら分かってるはずです。それでもルビィちゃんは、『やってみたい気持ちはある』と言いました。この意味が分かりますか?」

 

 それはつまり、『大変だとしてもやる覚悟はある』ということだ。千歌さんがゼロから始めたところを見ているルビィちゃんが、『スクールアイドルは楽だ』なんて思っているはずがないのだから。

 

 「ルビィちゃん、言ってましたよ。『お姉ちゃんが嫌いっていうものを、好きなままじゃいけない』って」

 

 「っ・・・ルビィが・・・?」

 

 「えぇ。それでも、やっぱりスクールアイドルを嫌いにはなれなかったみたいですけどね・・・ダイヤさんと同じで」

 

 こういうところは似てるよな・・・流石は姉妹というべきか。

 

 「要はダイヤさんに遠慮してるんです。ダイヤさんがやってほしくないだろうからやらない・・・それはダイヤさんが望んでいる答えじゃないでしょう?貴女がルビィちゃんに望むものは何ですか?」

 

 「私が・・・ルビィに望むもの・・・」

 

 ダイヤさんの瞳が揺れ動く。俺はダイヤさんを見据えた。

 

 「しっかりしろ、黒澤ダイヤ」

 

 「っ・・・!」

 

 俺に呼び捨て、しかもタメ口をきかれて驚くダイヤさん。先輩を相手に失礼だとは思うが、これだけはハッキリ伝えなくてはいけない。

 

 「妹に伝えたいこと、妹に望むこと・・・それをハッキリ言葉にしろ。言葉にしなくても分かるだなんて、そんなのはただの甘えだ。ルビィが望んでいるのは他の誰でもない、貴女の言葉なんだから」

 

 「天さん・・・」

 

 と、その時・・・

 

 「え、お姉ちゃん!?」

 

 驚く声が聞こえる。振り向くと、ルビィちゃん達が階段を下りてくるところだった。

 

 「ダイヤさん!?それに天くんも!?」

 

 「どうしてここに!?」

 

 千歌さん達も驚いている中、花丸がこちらへ不安げな視線を送ってくる。恐らくダイヤさんを説得できたかどうか、心配しているのだろうが・・・

 

 俺は花丸に笑みを向けると、千歌さん達へと視線を移した。

 

 「ワー、偶然デスネー」

 

 「棒読みっ!絶対偶然じゃないよねぇ!?」

 

 「バアアアアニングゥ!ラアアアアブ!」

 

 「何で艦●れの金●さん!?」

 

 「アレです。内浦に対する愛が溢れてしまったんです・・・メイビー」

 

 「急に!?しかも今メイビーって言ったよねぇ!?」

 

 「落ち着くネ、ブッキー」

 

 「誰がブッキー!?」

 

 ギャーギャーやかましい千歌さんはさておき、俺はルビィちゃんへ目をやった。

 

 「ルビィちゃん、ダイヤさんが話したいことがあるんだって」

 

 「お、お姉ちゃんが・・・?」

 

 恐る恐るダイヤさんを見るルビィちゃん。スクールアイドルをやることについて、反対されると思っているんだろう。

 

 「ルビィ・・・私は・・・」

 

 言葉に詰まるダイヤさん。俺はダイヤさんの背中に手を添えた。

 

 「・・・今ダイヤさんが、一番ルビィちゃんに言いたいことを言ってあげて下さい」

 

 「一番言いたいこと・・・」

 

 逡巡していたダイヤさんだったが、意を決してルビィちゃんを見つめた。

 

 「ルビィ・・・本気でスクールアイドルをやりたいのですか?」

 

 「っ・・・ルビィは・・・」

 

 「ダイヤさん、あの・・・!」

 

 「千歌さん」

 

 慌てて口を挟もうとした千歌さんを、花丸が制する。これはルビィちゃんが答えるべき質問だということを、花丸はよく分かっている。

 

 「ル、ルビィは・・・」

 

 戸惑っているルビィちゃん。仕方ないか・・・

 

 「焦らなくて良いよ・・・ルビィ」

 

 「え・・・?」

 

 俺はルビィに言葉をかけた。初めて呼び捨てにされたせいか、ポカンとしているルビィちゃん。

 

 「ダイヤさんの質問に、きちんと本心で答えてあげて。ダイヤさんが聞きたいのは、ルビィの本当の気持ちなんだよ」

 

 「本当の気持ち・・・」

 

 俯くルビィちゃん。そして、意を決したように顔を上げた。

 

 「お姉ちゃん、ルビィね・・・ルビィ、スクールアイドルがやりたい」

 

 そう言い切るルビィちゃんの表情は、とても真剣なものだった。

 

 「大変なのは分かってる。それでも・・・それでもやってみたい!千歌さん達と一緒に、ルビィも輝きたい!」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 千歌さん達の目が潤む中、ダイヤさんはじっとルビィちゃんを見つめていた。ルビィちゃんもまた、ダイヤさんをじっと見つめている。

 

 そして・・・

 

 「・・・それなら、頑張りなさい」

 

 「っ・・・!」

 

 微笑むダイヤさん。ルビィちゃんが息を呑む。

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「やってみたいのでしょう?ならやってみなさい。ルビィが心からやりたいと思うのであれば、私は応援しますわ」

 

 「っ・・・お姉ちゃん・・・!」

 

 ダイヤさんの胸に飛び込むルビィちゃん。それをダイヤさんが優しく抱き留めた。

 

 「ひっぐ・・・ぐすっ・・・!」

 

 「もう、ルビィったら・・・相変わらず泣き虫ですわね」

 

 「うぅ・・・だって・・・!」

 

 「・・・でも、大きくなりましたわね」

 

 ルビィちゃんの頭を撫でるダイヤさん。俺は二人の側をそっと離れ、花丸の隣へと移動した。

 

 「一件落着・・・ってところかな」

 

 「そうずらね。これでルビィちゃんの気持ちも晴れるずら」

 

 「だね・・・お疲れ、花丸」

 

 「天くんもお疲れ様ずら」

 

 笑みを浮かべ、拳を軽く合わせる俺達なのだった。




どうも~、ムッティです。

梅雨入りしたということで、雨の日が続いております。

梅雨入り前はメッチャ暑かったのに、何故急に寒くなるのか…

いや、個人的に暑い方より寒い方が好きだけども。

こうも急に気温が変わると、身体がついていかないぜ…

皆さんも身体に気を付けて下さい(>_<)

あ、ちなみに明日も投稿しますのでお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切なのはやりたいかどうかである。

ポケモンの新作が楽しみすぎてヤバい。

ソードとシールド、どっちにしようかな・・・


 翌日・・・

 

 「ルビィちゃん、入部届け出したみたい。梨子さんからラインきたよ」

 

 「良かったずら」

 

 俺と花丸は、図書室でお喋りしていた。今日は花丸が当番の日なので、俺も普通に受付の椅子に座ってしまっている。

 

 「早速これから練習だって。ルビィちゃん、張り切ってるんじゃないかな」

 

 「天くんは行かなくて良いずら?」

 

 「残念ながら、今日も生徒会なのよね」

 

 ダイヤさんが所用で少し遅くなるとのことだったので、それまでの時間潰しにこうして図書室に来ているのだった。

 

 「花丸こそ、良かったの?」

 

 「何がずら?」

 

 「ルビィちゃんと一緒に、スクールアイドル部に入らなくて」

 

 「・・・オラには無理ずら」

 

 首を横に振る花丸。

 

 「オラとか言っちゃうし、運動は苦手だし・・・スクールアイドルに向いてないずら」

 

 「その割には、スクールアイドルの雑誌読んでるじゃん」

 

 「ずらっ!?」

 

 机の引き出しにしまってあった雑誌を取り出す俺。花丸がこういう雑誌をこっそり読んでいることを、俺は前から知っていた。

 

 「そ、それは・・・ルビィちゃんの好きなものを知ろうと思って・・・!」

 

 「あ、このページの端が折ってある」

 

 「ずらあああああっ!?」

 

 雑誌を取り戻そうとする花丸を避け、そのページを開く俺。そこには、ウエディングドレス姿の女の子が写っていた。

 

 「星空凛ちゃんか・・・μ'sの特集みたいだけど、何でこのページだけ折ってあるの?」

 

 「うぅ・・・それは・・・」

 

 「それは?」

 

 続きを促すと、花丸が観念したように口を開いた。

 

 「何か凄く・・・キラキラしてたから・・・」

 

 「・・・なるほど」

 

 これは確か、凛ちゃんがセンターを務めた『Love wing bell』の時か・・・

 

 「懐かしいな・・・」

 

 「天くん?」

 

 首を傾げる花丸。俺は花丸へと視線を向けた。

 

 「・・・凛ちゃんも、最初はスクールアイドルに向いてないって思ってたらしいよ」

 

 「え・・・?」

 

 「自分には女の子らしい服なんて似合わないからって。凄くコンプレックスを持ってたみたいなんだけど、それを乗り越えられたんだって」

 

 「ど、どうやって・・・」

 

 「同じμ'sのメンバーの小泉花陽ちゃんが、凛ちゃんの背中を押してくれたんだって。花陽ちゃんと凛ちゃんは小さい頃からの親友同士で、凛ちゃんにとって花陽ちゃんの存在は大きかったみたいだよ」

 

 驚いている花丸に、俺は笑みを向けた。

 

 「ちなみに花陽ちゃんがμ'sに入る時、背中を押したのは凛ちゃんなんだって。自分に自信が無かった花陽ちゃんを勇気付けて、μ's入りを後押ししたらしいよ。それにしても、この二人の関係・・・まるでどこかの誰かさん達だと思わない?」

 

 「っ・・・!」

 

 息を呑む花丸。

 

 「花丸はルビィちゃんの背中を押して、Aqours入りを後押しした。なら次は、ルビィちゃんが花丸の背中を押す番じゃないかな・・・ね、ルビィちゃん?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 入り口の陰に隠れていたルビィちゃんが飛び上がり、それに花丸が驚いて飛び上がった。

 

 「ルビィちゃん!?いつの間に!?」

 

 「ア、アハハ・・・少し前に来たんだけど、二人が話してたからつい・・・」

 

 「花丸は気付いてなかったみたいだけど、ツインテールが丸見えだったよ。隠れるなら透明マント持ってこないと」

 

 「どこのハ●ー・ポ●ター!?そんなもの実在しないよ!?」

 

 「じゃあ黒澤家に代々伝わる古の術とか無いの?」

 

 「無いよ!?天くんは黒澤家を何だと思ってるの!?」

 

 「スクールアイドル大好き一族」

 

 「それは私とお姉ちゃんだけだからね!?」

 

 ルビィちゃんは一通りツッコミを入れると、花丸の方を見た。

 

 「花丸ちゃん、ルビィね・・・花丸ちゃんのことずっと見てた」

 

 「え・・・?」

 

 「ルビィに気を遣って体験入部してるんじゃないかって、ルビィの為に無理してるんじゃないかって・・・心配だったから」

 

 実際花丸がスクールアイドル部に体験入部したのは、ルビィちゃんをスクールアイドル部に入部させる為だ。そういう意味では、ルビィちゃんに気を遣ったというのは間違いじゃない。

 

 でも・・・

 

 「でも・・・花丸ちゃん、とっても嬉しそうだった。練習してる時も、皆でお話してる時も・・・それを見て気付いたの。花丸ちゃん、スクールアイドルが好きなんだって」

 

 「マルが・・・?」

 

 驚いている花丸。

 

 ルビィちゃんの言う通り、練習の時の花丸はとても楽しそうだった。運動は苦手という意識が強すぎて、自分では気付いてなかったのかもしれないけど。

 

 「花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルが出来たらって、ずっと思ってた。一緒に頑張れたらって」

 

 「・・・それでも、マルには無理ずら。体力も無いし、向いてないずら」

 

 首を横に振り、俯く花丸。やれやれ・・・

 

 「マルがスクールアイドルなんて、そんな・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろから花丸を抱き締める。小原理事長に脅されて落ち込んでいた時、花丸が俺にしてくれたみたいに。

 

 「そ、天くんっ!?」

 

 「そうやって自分を卑下して、『無理』とか『向いてない』とか言っちゃダメずら。自分の気持ちに正直になるずら」

 

 「・・・マルの真似しないでほしいずら」

 

 「意地っ張りな誰かさんへの罰ずら」

 

 「むぅ・・・」

 

 ジト目で見上げてくる花丸に、俺は笑みを浮かべた。

 

 「ルビィちゃんが正直な気持ちをぶつけてるんだから、花丸も正直な気持ちを言うべきだと思うよ。花丸はスクールアイドルをやりたいの?やりたくないの?」

 

 「・・・やってみたいずら」

 

 小さく呟く花丸。

 

 「でも・・・マルに出来るかな・・・」

 

 「一番大切なのは、出来るかどうかじゃない・・・やりたいかどうかでしょ」

 

 花丸を抱く腕に力を込める。

 

 「一緒に頑張ろう。俺もサポートするから」

 

 「天くん・・・」

 

 「花丸ちゃん」

 

 ルビィちゃんが花丸に手を差し出す。

 

 「ルビィ、スクールアイドルがやりたい。花丸ちゃんと一緒に」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 花丸は笑みを浮かべると、ルビィちゃんの手を握った。

 

 「よろしくずら」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 涙を浮かべるルビィちゃん。良かった・・・

 

 「さて、じゃあ善は急げって言うし・・・入部届けを出しに行こうか」

 

 そう言って花丸から離れようとすると、腕を掴まれた。ルビィちゃんと握手している手と反対の手で、花丸が俺の腕を掴んでいる。

 

 「花丸・・・?」

 

 「・・・もう少しだけ。もう少しだけ、このままでいてほしいずら」

 

 耳まで真っ赤にしながら、小さな声で呟く花丸。ルビィちゃんがニヤニヤしている。

 

 「ひょっとして、ルビィはお邪魔だったかな?」

 

 「そ、そんなことはないずら!マルはただ・・・!」

 

 「失礼しまーす」

 

 花丸が慌てて言い訳しようとしていると、千歌さん・曜さん・梨子さんが図書室へと入ってきた。

 

 「あ、花丸ちゃん。ルビィちゃんはどこに・・・って天くん!?」

 

 「ちょっと!?何で花丸ちゃんを抱き締めてるの!?」

 

 「そういう関係なんです」

 

 「「「えぇっ!?」」」

 

 「天くん!?何言ってるずら!?」

 

 「抱き締めたり抱き締められたりする関係なんです」

 

 「言い方っ!間違ってないけど言い方を考えるずらっ!」

 

 「間違ってないの!?」

 

 「やっぱりそういう関係なの!?」

 

 「違うずらあああああっ!?違わないけど違うずらあああああっ!?」

 

 「どっちよ!?」

 

 ギャーギャー騒いでる四人。それを見て、ルビィちゃんがクスクス笑っていた。

 

 「フフッ、天くんも悪い人だね」

 

 「ルビィちゃんには負けるよ」

 

 笑いあう俺達。と、ルビィちゃんが微笑んだ。

 

 「・・・今回はありがとね、天くん。天くんのおかげで、お姉ちゃんにも花丸ちゃんにも本音が言えたよ」

 

 「ダイヤさんの件は花丸のおかげだし、花丸の件はルビィちゃんが頑張ったからだよ。俺は何もしてないから」

 

 「そんなことないよ。天くんがいなかったら、ルビィは踏み出せてなかったと思う。本当にありがとう」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 屈託の無い笑顔を見せるルビィちゃん。俺はその笑みに、ダイヤさんの面影を見た気がした。

 

 やっぱり姉妹なんだな・・・

 

 「それとね・・・天くんに一つお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 急にモジモジし始めるルビィちゃん。どうしたんだろう?

 

 「これからはルビィのこと、呼び捨てで呼んでほしいっていうか・・・ほら!花丸ちゃんのことも呼び捨てで呼んでるし、ルビィのこともそう呼んでほしいなって!」

 

 急に早口でまくし立てるルビィちゃん。顔が真っ赤である。

 

 「了解。じゃあ、改めてよろしくね・・・ルビィ」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 「天くん!早くこっちに来て誤解を解くずら!」

 

 花丸が焦っている。やれやれ・・・

 

 「誤解じゃないでしょ。事実なんだから」

 

 「その言い方が誤解を招いてるずら!」

 

 「それより千歌さん、花丸がスクールアイドル部に入りたいそうですよ」

 

 「えぇっ!?ホントに!?」

 

 「そ、それは・・・ホントずら」

 

 「やったあああああっ!?」

 

 「ヨーソローっ!」

 

 「ずらっ!?」

 

 花丸に抱きつく千歌さんと曜さん。と、梨子さんが俺達のところへやってくる。

 

 「それで?今回も天くんが暗躍してたわけ?」

 

 「いや、暗躍って・・・ひょっとして梨子さん、怒ってます?」

 

 「別にぃ?天くんが誰を抱き締めようが天くんの自由だしぃ?」

 

 「うわぁ・・・」

 

 めんどくさいなぁ、この人・・・何に怒ってるのか知らないけど。

 

 「ほら、拗ねてないで行きますよ。花丸の入部届けを出しに行かないと」

 

 「ちょ、手を引っ張らないでよ!?」

 

 「良いじゃないですか。俺と梨子さんだって抱き合った仲でしょ」

 

 「誤解を招く言い方しないでくれる!?」

 

 「ずらっ!?梨子さんとも抱き合ってたずらっ!?」

 

 「違うのよ花丸ちゃん!?あれはただのスキンシップで・・・!」

 

 「何か今の会話だけ聞いてると、天くんって女ったらしみたいだよね」

 

 「曜さん、人聞きの悪いこと言わないで下さい。デスノー●に名前書き込みますよ」

 

 「最後までそのネタ引きずるの!?」

 

 皆でわいわい騒ぎながら、図書室を後にする。

 

 新しくスクールアイドル部に加わった、引っ込み思案な仲良しコンビ・・・花丸とルビィがどんな姿を見せてくれるのか、今からとても楽しみな俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回でアニメ一期の第四話が終了となります。

次回からは第五話の内容に入っていきます。

遂に善子回・・・善子ちゃんの運命やいかに。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一歩を踏み出す為には勇気が必要である。

毎日暑くて辛い・・・

これからまだ暑くなるのかと思うと、ホント萎えるわ・・・


 「ランキングが上がらないよおおおおおっ!」

 

 部室に置かれたパソコンを前に、頭を抱える千歌さん。

 

 花丸とルビィが加わったのを機に、Aqoursはスクールアイドル専門のサイトに登録した。ここに登録すると、スクールアイドルを応援している人達の評価によってランク付けされるようになるのだ。

 

 このサイトに登録しているスクールアイドルの数は、およそ5000組。現在Aqoursは4768位なので、かなり下の方ということになる。

 

 「昨日が4856位で、今日が4768位・・・」

 

 「落ちてはいないけど・・・」

 

 梨子さんと曜さんも肩を落としている。思うように順位が上がらないことで、もどかしく思っているのだろう。

 

 「確かに人気は大事ですけど、まだ登録したばかりなんですから仕方ないですよ」

 

 俺は苦笑しつつ、お茶の準備を進めていた。

 

 「とりあえず一息つきましょう・・・はい、お茶と和菓子」

 

 「ずらあああああっ!」

 

 真っ先に花丸が和菓子を頬張る。

 

 花丸は美味しい食べ物に目が無い上、無限大の食欲を誇る大食い娘だったりする。その割りにはメッチャ小柄なんだけど、摂取した栄養は一体どこへいっているのだろうか・・・

 

 やっぱりおっp・・・

 

 「・・・天くん?」

 

 「すいませんでした」

 

 女帝の冷たい視線が飛んでくる。何で人の思考が分かるんだ・・・

 

 「ん、美味しい!」

 

 ルビィも目を輝かせながら和菓子を食べている。

 

 「天くんの差し入れてくれる和菓子は凄く美味しいって、お姉ちゃんからも聞いてたけど・・・どこのお店の和菓子なの?」

 

 「東京だよ。向こうに住んでた時、よく通ってた和菓子屋さんがあるんだ。こっちに来てからは、電話で注文して送ってもらってるんだけど」

 

 「えぇっ!?東京の和菓子!?」

 

 「早く食べなきゃ!」

 

 「二人ともがっつかないの!」

 

 急いで食べようとする千歌さんと曜さんを、梨子さんが嗜める。

 

 「でも天くん、よく和菓子を差し入れで振る舞ってくれるけど・・・こういうのって結構高いんじゃない?大丈夫?」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 心配してくれる梨子さんに、笑いながら答える俺。

 

 「その和菓子屋の大将と奥さんには、昔からよくお世話になってまして。電話で注文すると、必ず注文した数より多く送ってくれるんですよ。ありがたいことなんですけど、一人じゃ食べ切れなくて・・・」

 

 「じゃあマルが全部食べてあげるずら!」

 

 「あっ、花丸ちゃんズルい!ルビィも食べる!」

 

 「食い意地を張らないの!」

 

 梨子さんに怒られる花丸とルビィ。

 

 「まぁそういうことなんで大丈夫です。大将と奥さんも、『周りから好評だ』って伝えたら凄く喜んでましたから。遠慮なく召し上がって下さい」

 

 「そういうことなら・・・ありがとう。遠慮なくいただくわ」

 

 微笑む梨子さん。一方、千歌さんは再びパソコンと睨めっこしていた。

 

 「むぅ・・・どうしたらランキング上がるかなぁ・・・」

 

 「んー・・・例えば、名前を奇抜なものにしてみるとか?」

 

 「今からでもスリーマーメイドにします?」

 

 「ぶふうううううっ!?」

 

 お茶を飲んでいた梨子さんが盛大に吹き出す。

 

 「ゴホッ、ゴホッ・・・そ、それは忘れてって言ったでしょ!?」

 

 「あ、今はファイブマーメイドですね」

 

 「そういうことじゃないから!」

 

 「じゃあ梨子さんだけ『ピンクマーメイド』を名乗りましょう。苗字が桜内だけに」

 

 「止めてええええええええええっ!?」

 

 顔を真っ赤にしながら俺の胸倉を掴み、盛大に身体を揺らしてくる梨子さん。そんなに恥ずかしいのかな?

 

 「いや違うから。恥ずかしがってるのは見られた時のことだから」

 

 俺の心を読んだであろう千歌さんのツッコミに、首を傾げる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「リア充に、私はなる!」

 

 「いや、そんな『海賊王に、俺はなる!』みたいに言われても・・・」

 

 堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんに、呆れた視線を向ける俺。

 

 いつものごとくノートとプリントを届けに来た俺は、よっちゃんの部屋で突然訳の分からない宣言を聞かされていた。ちなみに善恵さんは夕飯の買出し中である。

 

 「あの悪夢の日から一ヵ月半・・・もう五月の半ばよ。そろそろ学校に行かないと、マジでヤバいわ」

 

 「そうだね。来週から中間試験もあるし」

 

 流石に中間試験を受けないのはちょっとマズい。

 

 赤城先生からも、『中間試験だけでも受けるように、絢瀬くんから津島さんに言ってもらえないかしら?』とお願いされたほどだ。

 

 「そこで私は覚悟を決めたわ・・・明日から学校に行く!」

 

 「・・・熱でもあるの?」

 

 「ちょ、顔が近いわよ!?」

 

 額と額をくっつけてみるが、熱は無いようだ。

 

 ということは、マジで言ってるのか・・・

 

 「よっちゃん、本当に大丈夫?無理はしなくて良いんだよ?」

 

 「・・・いつまでも甘えてちゃダメなのよ」

 

 小さな声で呟くよっちゃん。

 

 「そろそろ一歩踏み出さないと・・・私は変わらなきゃいけないのよ」

 

 「よっちゃん・・・」

 

 どうやらよっちゃんは本気らしい。なら俺も、よっちゃんの背中を押してあげないと。

 

 「・・・分かった。じゃあ明日は一緒に学校に行こう」

 

 「良いの・・・?」

 

 「勿論。よっちゃんのことはちゃんとサポートするから、安心して」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 微笑むよっちゃん。

 

 「フフッ、流石は我がリトルデーモン・・・褒めてつかわすぞ」

 

 「前言撤回。一人で何とかしろバカヨハネ」

 

 「すいませんでしたあああああっ!」

 

 その場で土下座するよっちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 「フフッ・・・今日も良い天気ね、天」

 

 「ソウダネ、ヨッチャン」

 

 優雅な女子高生として振舞うよっちゃんに、カタコトで返事をする俺。

 

 よっちゃんと俺は、学校へと続く坂道を上っているところだった。

 

 「ちょっと天、返事が不自然よ。それじゃ不審に思われるでしょうが」

 

 「いや、不自然にもなるって。よっちゃんの本性を知ってる身としては、その優雅なキャラが気持ち悪くて仕方ないんだけど」

 

 「酷い!?女の子に『気持ち悪い』とか言うんじゃないわよ!?」

 

 「『初対面で下劣だの下等だの言うような奴は、女子としてカウントされない』って、初めて会った時に言ったじゃん」

 

 「あのルールまだ適用されてたの!?」

 

 小声でひそひそと話し合っていると・・・

 

 「あ、天くん!」

 

 「おはよー!」

 

 クラスの女子達が声をかけてくれる。手を上げて応える俺。

 

 「おはy・・・」

 

 「おはよう♪」

 

 一瞬で優雅キャラの皮を被ったよっちゃんが、にこやかに女子達に笑いかける。

 

 「お、おはよう・・・」

 

 「えーっと、津島さん・・・だよね?」

 

 「えぇ、そうよ」

 

 戸惑う女子達に対し、笑みを浮かべて答えるよっちゃん。

 

 「今までずっと休んでいたんだけど、今日からまた学校に通えることになったの。これからよろしくね」

 

 「う、うん・・・」

 

 「よ、よろしく・・・」

 

 おずおずと答える女子達。

 

 よっちゃんは微笑むと、そのまま優雅な足取りで坂道を上っていく。

 

 「津島さん、雰囲気変わった・・・?」

 

 「あんな子だったっけ・・・?」

 

 「気にしないで。久しぶりの学校に浮かれてるだけだから」

 

 「そ、そうなんだ・・・」

 

 とりあえずそういうことにしておく。

 

 ちなみに言っておくと、クラスメイト達は皆あの自己紹介の時のことを覚えている。あんなにインパクトの強すぎる自己紹介、そうそうお目にかかれないし。

 

 それだけにあの優雅なキャラが逆に違和感バリバリだということに、よっちゃんは未だに気付いていないらしい。

 

 「そのうち素が出ると思うから、今は優しく見守ってあげて。っていうか、素が出ちゃっても温かい目で見守ってあげて」

 

 「わ、分かった・・・」

 

 「何か天くん、津島さんの保護者みたい・・・」

 

 そんな話をしていると、よっちゃんが途中でこちらを振り向いた。

 

 「天、何をしているの?早く行きましょう?」

 

 「はいはい・・・じゃ、よろしくね」

 

 「「り、了解・・・」」

 

 何とか二人の理解を得られたところで、小走りでよっちゃんに追い付く。

 

 「見た!?ねぇ見た!?私メッチャ自然に会話してたわよね!?」

 

 「ウン、ソウダネ」

 

 「いける!いけるわ!この調子なら上手くやれる!リア充になれる!」

 

 「頑張ッテ。応援シテルヨ」

 

 「ありがとう天!私頑張る!」

 

 俺がカタコトで返事をしていることにも気付かず、やる気に満ち溢れているよっちゃん。

 

 自分では自然だと思っているようだが、ここは不自然さを指摘すべきなのか・・・

 

 「さぁ、行くわよ天!私達の教室へ!」

 

 俺の手を掴み、満面の笑みで歩き出すよっちゃん。そんな楽しそうなよっちゃんを見ていたら、俺は何も言えなくなってしまった。

 

 「・・・まぁ良いか」

 

 よっちゃんが笑顔でいられるなら、それに越したことはない。

 

 俺は苦笑しつつ、よっちゃんに引っ張られるがままに歩き出すのだった。




どうも~、ムッティです。

梶裕貴さん、竹達彩奈さん、ご結婚おめでとうございます!

いやぁ、ビックリしました(゜ロ゜)

梶さんと竹達さんといえば、個人的には『ハイスクールD×D』を思い出しますね。

まさかイッセーと小猫ちゃんがねぇ…

本当におめでたいことですね(^^)

末永くお幸せに(・∀・)ノ

あ、次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自分を変えるというのは簡単ではない。

梅雨ってホントに憂鬱・・・

暑い上に雨とか最悪すぎる・・・


 「な、何がどうなっているずら・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 唖然としている花丸とルビィ。

 

 その視線の先では、よっちゃんがクラスメイト達とにこやかに会話していた。

 

 「善子ちゃん、キャラが全然違うずら・・・」

 

 「堕天使ヨハネは封印して、優雅な女子高生でいくらしいよ。『あの時みたいな過ちは犯さないわ!』って意気込んでたけど」

 

 「確かに似合ってるよね。津島さん美人だし」

 

 そんなことを言うルビィ。

 

 確かによっちゃんは美人だし、何も知らない人なら違和感も無くあのよっちゃんを受け入れるだろうな。

 

 「でも善子ちゃんの中で堕天使ヨハネは、自分の一部として昇華されてるはずずら。それを完全に封印できるとは思えないずら」

 

 「俺もそう思うんだよね・・・」

 

 そんな俺達の会話をよそに、よっちゃん達は楽しそうに談笑を続けていた。

 

 「ねぇねぇ、津島さんって趣味とか無いの?」

 

 「し、趣味・・・?」

 

 あ、よっちゃんが詰まった。ここで堕天使関連のことを口には出来ない・・・

 

 さて、どうする?

 

 「う、占いをちょっと・・・」

 

 「ホント!?」

 

 「すごーい!」

 

 色めきたつクラスメイト達。よっちゃん、占いなんて出来たのね・・・

 

 「私占ってくれる!?」

 

 「私も私も!」

 

 「良いよ!」

 

 笑顔で答えるよっちゃん。皆が盛り上がってくれたのが嬉しかったらしい。

 

 「今占ってあげるね!」

 

 よっちゃんはそう言うと・・・おもむろに黒い衣装に身を包み、魔法陣のようなものが書かれた布を床に広げ始めた。

 

 えっ・・・

 

 「これで良し!」

 

 シニヨンに黒い羽を刺し、蝋燭を取り出してクラスメイトに差し出すよっちゃん。

 

 「はい、火をつけてくれる?」

 

 「へっ?あ、うん・・・」

 

 よっちゃんから渡されたチャッカマンで、蝋燭に火をつけるクラスメイト。

 

 学校に何を持ってきてんのよっちゃん・・・

 

 「天界と魔界に蔓延る遍く精霊、煉獄に堕ちたる眷属達に告げます。ルシファー、アスモデウスの洗礼者・・・堕天使ヨハネと共に、堕天の時が来たのです!」

 

 「・・・どこが占い?」

 

 思わずツッコミを入れてしまう俺。よっちゃんは正気に戻ったのか、大量の冷や汗をかいていた。

 

 あーあ・・・

 

 「ピ・・・ピ~ンチッ!?」

 

 教室から逃走していく堕天使・・・あれ、何かデジャヴだわ。

 

 「皆さ~ん、席に着いて・・・って津島さん!やっと登校してきてくれたんですね!」

 

 「うわああああああああああんっ!」

 

 教室に入ってこようとした赤城先生を押し退け、ダッシュで逃げて行くよっちゃん。

 

 「ちょ、津島さん!?どこへ行くんですか!?」

 

 「赤城先生、ストップ」

 

 追いかけようとする赤城先生の肩を掴む俺。

 

 「絢瀬くん!?何があったんですか!?」

 

 「何も無いですよ。自爆テロがあっただけです」

 

 「重大事件が発生してるじゃないですか!?怪しげな黒い布と火のついた蝋燭があるのは何でですか!?」

 

 「犯人の遺品です。花丸、蝋燭の火消して」

 

 「了解ずら」

 

 蝋燭の火を吹き消す花丸。さて・・・

 

 「とりあえず犯人を捕まえてくるんで、先生はそれを使って占いでもやってて下さい」

 

 「占い!?これで占い!?」

 

 ツッコミを連発している赤城先生をスルーして、よっちゃんを捕獲すべく教室を飛び出した俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「どうして止めてくれなかったのよおおおおおっ!?」

 

 部室の机の下で体育座りをしながら、両手で顔を覆っているよっちゃん。

 

 あの後すぐによっちゃんを捕獲したものの、本人が教室に戻ることを頑なに拒否。

 

 仕方ないので保健室で預かってもらい、昼休みによっちゃんの気分転換を兼ねて部室に連れてきたのだった。

 

 「いやぁ、あんな物を持ってきてるとは思わなくて・・・」

 

 「私は中学の時まで、『自分は堕天使だ』と思ってた重度の中二病患者よ!?舐めんじゃないわよ!」

 

 「何で偉そうにしてるずら・・・」

 

 呆れている花丸。っていうか、重度の中二病患者っていう自覚はあるのね・・・

 

 「つまり、中学の頃の癖が抜け切ってないってこと?」

 

 「・・・そういうこと」

 

 ルビィの問いに頷くよっちゃん。

 

 「分かってるの、自分が堕天使のはずなんてないって・・・そもそもそんなもんいないんだし・・・」

 

 「だったらどうしてあんな物学校に持って来たの?」

 

 机の上に置かれた蝋燭や黒い布を見る梨子さん。

 

 「それはまぁ、ヨハネのアイデンティティみたいなもので・・・あれが無かったら、私は私でいられないっていうか・・・ハッ!?」

 

 ヨハネ化しかけたところで、ハッと我に返るよっちゃん。

 

 堕天使ヨハネは、本当によっちゃんの一部として昇華されているらしい。

 

 「・・・何か心が複雑な状態にあるということは、よく分かった気がするわ」

 

 溜め息をつく梨子さん。難儀だなぁ・・・

 

 「だね。実際今でも、ネットで占いやってるみたいだし」

 

 曜さんがパソコンを操作し、ある動画を再生する。

 

 そこに映っていたのは、堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんだった。

 

 『フフッ、またヨハネと堕天しましょ・・・?』

 

 「うわあああああっ!?」

 

 慌ててパソコンを閉じるよっちゃん。あの無駄に凝った衣装は、これに使う為の物だったのね・・・

 

 「とにかくっ!私は普通の高校生になりたいのっ!」

 

 「普通になる理由は何があるんでしょうか?堕天使じゃダメなんでしょうか?」

 

 「蓮●かっ!『2位じゃダメなんでしょうか?』みたいに言わないでくれる!?」

 

 「んー、じゃあ俺のことを『お兄様』って呼んでみたら?」

 

 「それ『魔●科高校の劣等生』でしょうが!」

 

 「いや、妹の方だから優等生でしょ」

 

 「どっちでも良いわ!そもそもあの兄妹のどこが普通の高校生なのよ!?」

 

 「自分のことを『堕天使ヨハネ』とか名乗らないところだよ」

 

 「うわあああああん!?」

 

 机に突っ伏すよっちゃん。やれやれ・・・

 

 「そんなに普通の高校生になりたいの?」

 

 「なりたいに決まってるでしょ!?」

 

 涙目でずいっと俺に顔を近付けてくるよっちゃん。

 

 「天ぁ・・・何とかしてよぉ・・・!」

 

 「はいはい、泣かないの」

 

 よっちゃんの頬に手を当て、目元の涙を親指で優しく拭う。

 

 よっちゃんを普通の高校生にねぇ・・・

 

 「・・・可愛い」

 

 「え・・・?」

 

 ボソッと呟く声が聞こえる。振り向くと、千歌さんがパソコンに映し出されたよっちゃんをマジマジと見つめていた。

 

 「千歌さん・・・?」

 

 「これだ・・・これだよっ・・・!」

 

 千歌さんは勢いよく立ち上がると、よっちゃんの手を力強く握った。

 

 「津島善子ちゃん・・・いや、堕天使ヨハネちゃん!」

 

 目をキラキラ輝かせている千歌さん。あっ、これは・・・

 

 「スクールアイドル、やりませんか!?」

 

 「・・・え?」

 

 「・・・言うと思った」

 

 訳が分からないといった表情のよっちゃん。その隣で溜め息をつく俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回はちょっと短めでした。

果たしてよっちゃんは普通の高校生になれるのか・・・

個人的には●舫さんの有名な言葉を出せたので満足です(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

追い込まれた人は何をしでかすか分からない。

あー、旅行に行きたい・・・

思いっきり羽を伸ばしたい・・・


 「こ、これで歌うの・・・?」

 

 モノクロの衣装に身を包んだ梨子さんが、しきりにスカートを気にしている。

 

 放課後、俺達は千歌さんの家へとやってきていた。何でも千歌さんが、ランキングを上げる為の良い考えを思いついたらしい。

 

 ホントかなぁ・・・

 

 「この前より短い・・・これでダンスしたら、流石に見えるわ・・・」

 

 「マジですか。じゃあちょっとダンスしてみて下さい」

 

 「話聞いてた!?見えるって言ってるでしょうが!」

 

 「良いじゃないですか。俺はもう見てるんですし」

 

 「あああああっ!?聞こえないっ!何も聞こえないっ!」

 

 しゃがみ込んで耳を塞ぐ梨子さん。やれやれ・・・

 

 「っていうか曜さん、よくこんな衣装ありましたね」

 

 「いやー、色々と試作品を作ってたんだよねー!花丸ちゃんとルビィちゃんも加わったし、次の衣装を考えてたら作業が捗っちゃってさー!」

 

 鏡の前で嬉々として衣装を眺めている曜さん。ホントに衣装が好きだな・・・

 

 「それで千歌さん、良い考えっていうのは・・・」

 

 「よくぞ聞いてくれました!」

 

 腕を組み、ふんぞり返る千歌さん。

 

 「ズバリ!Aqoursは堕天使アイドルでいこうと思います!」

 

 「地獄に堕ちろ、単細胞オレンジヘッド」

 

 「段々と罵倒が酷くなってきてるのは気のせい!?」

 

 「それだけ千歌さんへの信頼が無くなってきてる証拠です」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。いや、堕天使アイドルって・・・

 

 「それのどこが良い考えなんですか・・・」

 

 「調べてみたけど、堕天使アイドルっていなかったんだよ。結構インパクトあると思うし、良いんじゃないかな?」

 

 「・・・まぁインパクトはあるでしょうね」

 

 この前まで正統派アイドル路線だったのに、急に大きく路線を外れて堕天使アイドルだもんな・・・

 

 確かに、見てる方からすると衝撃は大きいと思う。

 

 「な、何か恥ずかしい・・・」

 

 「落ち着かないずら・・・」

 

 普段着ない衣装を着ているせいか、モジモジしているルビィと花丸。

 

 っていうか花丸、それ以上スカートを持ち上げないで。見えるから。ワ●メちゃんみたいになるから。

 

 「ほ、本当にこれで良いの・・・?」

 

 堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんが、おずおずと尋ねる。

 

 あのよっちゃんでさえそんなことを言う時点で、俺達がいかに迷走しているかが分かるな・・・

 

 「これで良いんだよ!ステージ上で堕天使の魅力を皆で思いっきり振りまくの!」

 

 「堕天使の・・・魅力・・・」

 

 あっ、よっちゃんの心が揺れてる・・・

 

 「ハッ!?ダメダメ!そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!?」

 

 おっ、正常な思考を取り戻したようだ。

 

 「大丈夫だよ!きっと大人気だよ!」

 

 「だ、大人気・・・ククッ・・・クククッ・・・」

 

 あぁ、完全に堕ちたな・・・ダメだこりゃ・・・

 

 「ハァ・・・私、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

 

 溜め息をついて、部屋から退出する梨子さん。梨子さん的には、あまり賛成できるアイデアではなかったようだ。

 

 「よーし!堕天使アイドルとして頑張るぞー!」

 

 「「おー!」」

 

 意気込む千歌さんと、ノリノリな曜さんとよっちゃん。花丸とルビィは苦笑しているところを見ると、梨子さん寄りの考えみたいだ。

 

 ここは一言言っておくべきか・・・

 

 「千歌さん、一つ忠告しておきますね」

 

 「忠告?」

 

 首を傾げる千歌さん。何のことか分かっていないらしい。

 

 「本当に堕天使アイドルとしてやっていきたいのなら、別に止めはしません。ですが、ただランキングを上げたいという理由でやろうとしているのなら・・・路線変更はオススメできません」

 

 「え、何で?」

 

 「意味が無いからです」

 

 バッサリ切り捨てる俺。

 

 「Aqoursは美少女揃いですから、堕天使アイドルも最初は人気が出るでしょう。恐らくランキングも上がります」

 

 「ホント!?じゃあ・・・」

 

 「ですが、それは一時的なものですよ。目新しさが無くなってしまえば、また元に戻るのがオチです。そしてまた目新しさを求めて、路線変更を繰り返す・・・そうなってしまったら、相当苦しくなるでしょうね」

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「やるんだったら、最後まで貫く必要があります。今の路線を貫くのか、堕天使アイドルを貫くのか・・・目先のことだけ考えて動くと、後々痛い目を見ますよ」

 

 「うっ・・・」

 

 言葉に詰まる千歌さん。と、その時・・・

 

 「嫌ああああああああああっ!?」

 

 廊下から梨子さんの悲鳴が聞こえた。えっ、何事?

 

 「来ないでええええええええええっ!?」

 

 「わんわんっ!」

 

 「ちょ、しいたけ!?」

 

 しいたけから逃げる梨子さんと、しいたけを止めようとする美渡さんの姿が障子越しに映った。

 

 あー、梨子さんって犬が苦手なのか・・・

 

 「梨子ちゃん大丈夫!しいたけは大人s・・・うわっ!?」

 

 部屋の襖をぶち破り、梨子さんが部屋に飛び込んでくる。

 

 そして障子もぶち破り、窓から向かい側にある自分の家のベランダへとジャンプした。

 

 「梨子さん!?」

 

 慌てて窓へ駆け寄ると、梨子さんが空中で一回転しながらベランダに着地するところだった。

 

 何あの人、凄くない?

 

 「「「「「「「おぉ・・・!」」」」」」」

 

 思わず拍手する俺達。流石は女帝、そこに痺れる憧れる。

 

 「いったぁ・・・」

 

 着地の際にお尻を打ったらしく、梨子さんが痛そうにお尻を擦っている。

 

 「梨子さーん、大丈夫ですかー?」

 

 「大丈夫じゃないわよ!?何で私はこんな目に遭ってるの!?」

 

 「日頃の行いが悪いんですね、分かります」

 

 「喧嘩売ってる!?お尻も痛いし最悪よ!」

 

 「いや、お尻もそうですけど・・・もっと気にしなくちゃいけないことがあるでしょ」

 

 「気にしなくちゃいけないこと?」

 

 首を傾げている梨子さん。あー、気付いてないのか・・・

 

 「梨子さん、今どんな格好してます?」

 

 「どんなって・・・さっきの衣装を着てるけど?」

 

 「その衣装ってスカートですよね?」

 

 「そうだけど?」

 

 「さっきその衣装、スカートが短いって言ってましたよね?」

 

 「そうそう。これでダンスしたら、流石に見え・・・る・・・」

 

 梨子さんの顔がどんどん赤くなっていく。ようやく気付いたようだ。

 

 「そ、天くん・・・?」

 

 「何でしょう?」

 

 「ま、まさかとは思うけど・・・み、見てないわよね・・・?」

 

 恐る恐る尋ねてくる梨子さんを安心させるべく、俺はニッコリ笑った。

 

 「大丈夫ですよ。『今日は白かぁ・・・やっぱり梨子さんは清楚だなぁ・・・』なんて思ってませんから」

 

 「嫌ああああああああああっ!?」

 

 窓を開け、家の中に逃げていく梨子さん。耳まで真っ赤になっていた。

 

 「あっ、梨子ちゃんのメンタルがやられた・・・」

 

 「天くん、そこは見てないフリしなくちゃ・・・」

 

 「危ないマネをした梨子さんに対する、ちょっとした罰ですよ」

 

 しいたけを撫でながら答える俺。

 

 「とりあえず、梨子さんを回収してきますね。曜さんは千歌さん達の衣装を合わせてあげて下さい」

 

 「了解。梨子ちゃんは任せたよ」

 

 「任されました」

 

 衣装のことは曜さんに任せ、梨子さんを回収すべく桜内家へと向かう俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「あら天くん、いらっしゃい」

 

 「こんにちは、奈々さん」

 

 『十千万』の隣にある桜内家を訪ねると、梨子さんのお母さんである桜内奈々さんが出迎えてくれる。

 

 桜内家には何度かお邪魔したことがあり、その度に奈々さんには良くしてもらっていた。

 

 「ごめんなさい、梨子は今いないのよ。千歌ちゃんの家に行くんですって」

 

 「その千歌さんの家から脱走したので、捕獲しに来たんです」

 

 「いや、脱走って・・・どこに?」

 

 「ここです。千歌さんの家の窓から、この家のベランダに飛び移ってました」

 

 「何してるのあの子!?」

 

 「いやぁ、信じられませんよね・・・あの跳躍力」

 

 「そこじゃないわよ!?」

 

 とりあえず家に上げてもらう。二階へと上がり、梨子さんの部屋の前に立つと・・・

 

 『うぅ・・・また見られた・・・もう本当にお嫁に行けない・・・』

 

 梨子さんの声が聞こえてくる。あー、ダメージ受けてるなぁ・・・

 

 「何か凄く落ち込んでるんだけど・・・何があったの?」

 

 「聞かないであげて下さい。本人の名誉の為に」

 

 「そこまで!?」

 

 とりあえずドアをノックしてみる。

 

 「ちわー、三河●でーす」

 

 『えぇっ!?天くんっ!?』

 

 部屋の中でドタバタ音がする。

 

 『ど、どうしてここにっ!?』

 

 「犯人に告ぐ。この部屋は完全に包囲されている。大人しく出てきなさい」

 

 『誰が犯人よ!?立てこもり犯みたいな扱いしないでくれる!?』

 

 「こんなことして・・・田舎のお袋さんが泣いてますよ」

 

 『田舎じゃなくてこの家にいるんだけど!?』

 

 「しくしく・・・梨子、罪を償って・・・しくしく・・・」

 

 『お母さん!?何でノッてるの!?』

 

 「ほら、千歌さん達のところに戻りましょう?皆待ってますから」

 

 『うぅ・・・』

 

 ドアがゆっくり開き、赤い顔をした梨子さんが出てきた。

 

 「全く・・・窓からジャンプした時は肝が冷えましたよ」

 

 「うっ・・・ごめんなさい・・・」

 

 「しいたけは大人しい犬ですから、落ち着いて接してあげれば大丈夫ですよ。まぁ身体が大きいんで、犬が苦手な人にとっては怖いかもしれませんけど」

 

 「うぅ・・・」

 

 涙目の梨子さん。よほど犬が怖いらしい。

 

 「とりあえず美渡さんに頼んで、しいたけは繋いでおいてもらいましたから。もう梨子さんを追いかけたり出来ませんよ」

 

 梨子さんの頭を撫でる。

 

 「あっ・・・」

 

 「俺も一緒にいますから、安心して下さい」

 

 「・・・うん」

 

 俯く梨子さん。耳まで赤くなっているのは何故だろう?

 

 「フフッ、梨子ったら照れちゃって♪」

 

 「ちょ、お母さん!?何言ってるの!?」

 

 「はいはい、邪魔者は退散するから。じゃあ天くん、梨子をよろしくね」

 

 「了解です」

 

 ニヤニヤしながら階段を下りていく奈々さん。良いキャラしてるなぁ・・・

 

 「さて、俺達も行きましょうか」

 

 先に階段を下りようとすると、梨子さんが俺の手を掴んだ。

 

 「梨子さん・・・?」

 

 「・・・手、握ってて良い?」

 

 「・・・どうぞ」

 

 梨子さんの手を握り返す。これで梨子さんが安心できるのなら、お安い御用だ。

 

 「あ、それから・・・さっき見たものは忘れなさい。良いわね?」

 

 「アッハイ」

 

 やはり女帝には逆らえない俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

この作品、完全に梨子ちゃんがラッキースケベ要員と化しているような・・・

いや、きっと気のせいだと信じたい←

ところで、梨子ちゃんのお母さんの名前ですが・・・

えぇ、そうです。中の声優さんのお名前です。

善子ちゃんのお母さんを『善恵』にしたので、『梨香』とか『梨奈』とか色々と考えたんですけどね。

選ばれたのは『奈々』様でした( ´∀`)

次話は明日投稿したいと思います。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

熱くなると周りが見えなくなるものである。

先に謝罪しておきます。

ダイヤさん推しの方々、大変申し訳ありません・・・


 翌日・・・

 

 『ハァイ♪伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ。皆で一緒に・・・堕天しない?』

 

 『『『『『しない?』』』』』

 

 「・・・やってしまった」

 

 落ち込んでいる梨子さん。

 

 『とりあえずやってみよう』という千歌さんの号令により、堕天使アイドルっぽい感じでPR動画を撮影したのだが・・・

 

 「何というか・・・よっちゃん以外似合ってませんね、このキャラ」

 

 「そう?結構カッコ良くない?」

 

 ウキウキしている千歌さん。

 

 撮影した動画は既にネットにアップしており、俺達は部室でその反響を確かめているところだった。

 

 「えーっと、Aqoursの順位は・・・953位です」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 慌ててパソコンに群がる皆。一気に上がったな・・・

 

 「コメントもたくさん来てますね。『ルビィちゃんと一緒に堕天する!』、『ルビィちゃん最高!』、『ルビィちゃんのミニスカートがとても良いです!』、『ルビィちゃんの笑顔が素敵すぎる!』、『ルビィちゃん、ハァハァ・・・』」

 

 「いやぁ、そんなぁ・・・」

 

 照れているルビィ。こうしてみると、ルビィの人気が凄いな・・・

 

 最後のコメントは通報して良いと思うけど。

 

 「まぁ確かに、このPR動画を見たらこうなるよなぁ・・・」

 

 俺はもう一つの動画を再生する。そこには・・・

 

 『ヨハネ様のリトルデーモン四号、黒澤ルビィです・・・一番小さい悪魔だけど・・・可愛がってね?』

 

 モジモジしながらポーズを決める、衣装に身を包んだルビィの姿があった。

 

 「・・・・・」

 

 「そ、天くん?何で無言でルビィの頭を撫でてるの?」

 

 「いや、何かもう可愛すぎて・・・俺の妹にならない?」

 

 「同い年だよねぇ!?」

 

 ヤバいわこの子、破壊力抜群だわ。ハートをズッキュンされたわ。

 

 一方千歌さんは、ランキングが上がったことにテンションが上がっていた。

 

 「凄いじゃん!堕天使アイドルいけるよ!」

 

 「フッ・・・堕天使ヨハネの力をもってすれば、これくらい造作も無いこと・・・」

 

 「オイそこの堕天使、普通の高校生になりたい願望はどこへいった?」

 

 「ハッ!?」

 

 正気に戻るよっちゃん。全く・・・

 

 「だから言ったでしょう。ランキングは上がるって」

 

 「うん、メッチャ上がったね!」

 

 「そしてこうも言ったはずです。それは一時的なものだと」

 

 千歌さんに釘を刺しておく。

 

 「このまま本格的に堕天使アイドルでやっていくのかは、よく考えた方が良いですよ。昨日も言いましたけど、目先のことだけ考えて動くと後々痛い目を見ますからね」

 

 「天くん・・・ルビィちゃんを撫でながら言われても、説得力が無いんだけど」

 

 「・・・やめられない、とまらない」

 

 「か●ぱえびせん!?」

 

 髪がサラサラで、撫でていてとても心地良い。

 

 これはヤバい・・・あっ。

 

 「ヤバいといえば・・・そろそろかな」

 

 「何が?」

 

 首を傾げるルビィ。その時、校内放送が流れた。

 

 『スクールアイドル部!今すぐ生徒会室に来なさい!』

 

 ダイヤさんの怒声が流れる。皆冷や汗ダラダラだった。

 

 「えーっと・・・天くん?」

 

 「PR動画、ダイヤさんもチェックしたみたいですね。正統派アイドルを好むダイヤさんからすれば、堕天使アイドルは邪道・・・まぁ怒るでしょうね」

 

 「それを先に言ってよ!?雷が落ちるの確定じゃん!?」

 

 「千歌さんのアホ毛を避雷針代わりに使えません?」

 

 「無理だよ!?」

 

 頭を抱える千歌さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「Oh!Pretty bomber head!」

 

 「これのどこがプリティですの!?こういうものは破廉恥というのですわ!」

 

 PR動画を見て歓声を上げる小原理事長に対し、完全に激怒しているダイヤさん。

 

 案の定、俺達は生徒会室でダイヤさんに説教されていた。

 

 「いやぁ、そういう衣装というか・・・」

 

 「キャラというか・・・」

 

 「ああん!?」

 

 「「ヒィッ!?」」

 

 言い訳をする千歌さんと曜さんだったが、ダイヤさんに睨まれて悲鳴を上げる。

 

 だからよく考えろって言ったのに・・・

 

 「ルビィにこんな格好をさせて注目を浴びようなどと・・・!」

 

 「ごめんなさい、お姉ちゃん・・・」

 

 「・・・まぁ良いですわ」

 

 あ、ルビィが謝ったら怒りが収まった。やっぱりこの人シスコンなのね。

 

 「とにかく『キャラが立ってない』とか『個性が無いと人気が出ない』とか、そういう狙いでこんなことをするのはいただけませんわ」

 

 「良いぞー、ダイヤさん。もっと言ってやれー」

 

 「天くん!?どっちの味方なの!?」

 

 「黒澤ダイヤ先生ですが?」

 

 「まさかの先生呼び!?」

 

 「でも、一応順位は上がったし・・・」

 

 曜さんが少し食い下がると、ダイヤさんが溜め息をついた。

 

 「そんなもの一瞬に決まっているでしょう?今のランキングを見てみると良いですわ」

 

 パソコンを差し出すダイヤさん。パソコンを受け取り、サイトを開いてみると・・・

 

 「・・・1526位ですね」

 

 「嘘!?もうそんなに下がったの!?」

 

 「だから言ったでしょう?本気で目指すのならどうすればいいか、もう一度考えることですわね!」

 

 再び怒りがこみ上げてきたのか、口調が強くなるダイヤさん。

 

 「そもそも高校生にもなって『堕天使』だなんて、正気とは思えませんわ!」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むよっちゃん。マズいな・・・

 

 「ダイヤさん、もうその辺で・・・」

 

 やんわり制止しようとするが、ダイヤさんは止まらなかった。

 

 「あまりにも痛々しいですわ!いい歳して何を考えているんですの!?」

 

 「分かりましたから、少し落ち着いて・・・」

 

 「このような幼稚な振る舞いをするなど、スクールアイドルの恥晒s・・・」

 

 

 

 「黙れって言ってんだろうがッ!」

 

 

 

 「っ!?」

 

 大声で怒鳴った瞬間、ダイヤさんがビックリして言葉を失った。千歌さん達や小原理事長でさえ驚いていた。

 

 「そ、天さん・・・?」

 

 「・・・生徒会長ともあろうお方が、言って良いことと悪いことの区別もつかないんですか?」

 

 ダイヤさんに冷ややかな視線を向ける俺。

 

 「・・・今回の件は、千歌さんを止められなかった自分に責任があります。それに関しては本当に申し訳ありませんでした」

 

 「そ、天くんのせいじゃないよっ!元はと言えば私がっ!」

 

 「下がってて下さい。邪魔です」

 

 慌てて割り込んでくる千歌さんを睨みつけ、後ろへと下がらせる。

 

 「ですが・・・『堕天使』そのものを否定される謂れはありません。『正気とは思えない』だの『痛々しい』だの『幼稚な振る舞い』だの・・・ずいぶん好き勝手に言ってくれるじゃないですか」

 

 ふつふつと怒りが湧き上がる中、ダイヤさんに怒りの言葉をぶつける。

 

 「おまけにさっき何を言いかけました?『恥晒し』?頑張ってスクールアイドル活動をしている人達に向かって、ずいぶんな言い様ですね?」

 

 「わ、私はただ・・・」

 

 「ただ、何ですか?まさか『貴女達の為を思って』とでも仰るつもりですか?だとしたら余計なお世話ですよ」

 

 「そ、天!少し落ち着いて・・・」

 

 「人を脅すことしか出来ないヤツはすっこんでろ」

 

 間に入ってこようとした小原理事長も黙らせる。俺はダイヤさんに詰め寄った。

 

 「そんなに人を馬鹿にして楽しいんですか?そうやって人を見下すことで、優越感に浸りたいんですか?」

 

 「ち、違いますわ!そんなつもりは・・・」

 

 「アンタにそんなつもりが無くてもッ!こっちはそうとしか受け取れねぇんだよッ!」

 

 「もう止めてッ!」

 

 背中に衝撃を受ける。よっちゃんが俺の背中に抱きついていた。

 

 「もう、いいからっ・・・十分だからっ・・・!」

 

 「っ・・・」

 

 泣いているのか、よっちゃんの身体は震えていた。それを感じ、頭がスーッと冷えていく。

 

 何をやってるんだ、俺は・・・

 

 「・・・ゴメン。もう大丈夫」

 

 身体に回されたよっちゃんの腕を優しく叩く。俺から離れるよっちゃん。

 

 やっぱり泣いてたか・・・

 

 「・・・ありがとう。おかげで頭が冷えたよ」

 

 「・・・柄にも無くブチギレてんじゃないわよ」

 

 目元の涙を拭うよっちゃん。

 

 「でも・・・ありがと」

 

 「・・・もう行こっか」

 

 俺はダイヤさんの方を振り向き、深々と頭を下げた。

 

 「・・・お騒がせして、申し訳ありませんでした」

 

 「天さん・・・」

 

 ダイヤさんは何か言いたそうにしていたが、俺はそれを無視して千歌さん達へと視線を移した。

 

 「千歌さん達も行きましょう。話は終わったみたいですし」

 

 「う、うん・・・」

 

 戸惑いながらも、気遣わしげにダイヤさんの方を見る千歌さん。

 

 俺はよっちゃんの手を引いて、生徒会室を後にするのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが・・・

ダイヤさん推しの方々、大変申し訳ありません・・・

いや、決してアンチではないんです(鞠莉ちゃんも含めて)

ちょっと喧嘩?をさせたかっただけなんです。

ダイヤさんとはこの後すぐ和解する予定ですので、どうかご安心を・・・

鞠莉ちゃんは・・・もう少し後になるかと思います。

ダイヤさん及び鞠莉ちゃん推しの方々、本当に申し訳ございません。

ちゃんと和解する予定ですので、今しばらくお待ちいただけると幸いでございます。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切に想うからこそ言えない言葉がある。

完全に風邪をひいた・・・

まさかこの時期に風邪をひくとは・・・


 「・・・ハァ」

 

 屋上で寝転がりながら、溜め息をつく俺。

 

 少し一人になりたかったので、こうして屋上に出てきたのだが・・・やはり気分は晴れなかった。

 

 「何で怒鳴っちゃったかなぁ・・・」

 

 「ホントにね。らしくなかったわよ」

 

 独り言を呟くと、思わぬ返事が返ってきた。空しか映っていなかった俺の視界に、よっちゃんの顔が現れる。

 

 「意外だったわ。天でもあんなに怒ったりするのね」

 

 「人間だもの」

 

 「相田み●をかっ!」

 

 ツッコミを入れてくるよっちゃん。相変わらず、良いツッコミではあるんだけど・・・

 

 「よっちゃん」

 

 「何よ?」

 

 「そこに立ってると、スカートの中が丸見えだよ?」

 

 「ッ!?」

 

 慌てて俺から離れるよっちゃん。

 

 俺の顔の横に立っていた為、寝転がっている俺からはよっちゃんのスカートの中が丸見えだったのだ。

 

 「天のスケベっ!変態っ!」

 

 「いや、こっちとしても不可抗力だったんだけど・・・普通スカートで人の顔の横に立ったりしないでしょ」

 

 「うぐっ・・・」

 

 「流石は堕天使ヨハネ、衣装だけじゃなくて下着まで黒とは・・・」

 

 「言わんでいいっ!」

 

 よっちゃんから蹴りが飛んできたので、転がって避ける。そのまま上体だけ起こし、俺はよっちゃんと向き合った。

 

 「よっちゃんこそ、少しは元気出た?」

 

 「っ・・・」

 

 俯くよっちゃん。

 

 ダイヤさんの言葉に一番ショックを受けていたのは、他ならぬよっちゃんだ。堕天使をあそこまで否定されたのだから。

 

 「・・・おいで」

 

 「・・・ん」

 

 隣の地面をポンポン叩くと、よっちゃんが大人しくそこに座った。

 

 「怒っちゃった俺が言うのもどうかと思うけど・・・ダイヤさんのこと、悪く思わないであげてね。よっちゃんのことを否定するつもりは無かっただろうから」

 

 「・・・分かってる。っていうか、あれが一般的な反応よ。むしろ堕天使を受け入れてる天の方がおかしいわ」

 

 「友達のことを『おかしい』っていうの止めてくんない?」

 

 「事実でしょ」

 

 笑うよっちゃん。

 

 「でも・・・嬉しかった。受け入れてくれたことも、私の為に怒ってくれたことも・・・ホント、天には助けられてばかりね」

 

 よっちゃんはそう言うと、俺の肩に頭を乗せてきた。

 

 「・・・私、やっぱり堕天使は卒業する。普通の高校生になる」

 

 「・・・よっちゃんはそれで良いの?」

 

 「勿論。むしろ今回のことでスッキリしたわ。やっぱり高校生にもなって、堕天使なんて通じないもの」

 

 笑顔を見せるよっちゃん。その笑顔は、何だか寂しげなものだった。

 

 「スクールアイドルも止めておくわ。今回迷惑かけちゃったし、また迷惑かけちゃうのも申し訳ないから」

 

 「・・・そっか」

 

 本心ではないことは明らかだった。それでも、これはよっちゃんが選んだこと・・・そこに俺が口を挟むべきではない。

 

 俺はよっちゃんの頭を撫でた。

 

 「よっちゃんが笑顔でいられるなら・・・それが一番だから。堕天使とか関係無しに、俺はよっちゃんの友達だからね」

 

 「・・・うん」

 

 身を寄せてくるよっちゃん。

 

 「天に出会えて良かった・・・ありがとう」

 

 微笑むよっちゃん。

 

 俺達はしばらくの間、お互いに身を寄せ合いながら静かに時間を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「先程は見苦しいところをお見せして、申し訳ありませんでした」

 

 部室に戻った俺は、千歌さん達に対して深々と頭を下げていた。

 

 流石に熱くなりすぎたし、千歌さんに対しても失礼なことを言ったしな・・・

 

 「大丈夫だよ」

 

 千歌さんが微笑みながら、俺の頭を撫でてくる。

 

 「天くんが怒ったのは、津島さんの為でしょ?皆ちゃんと分かってるから」

 

 「そうだよ天くん。気にすることないよ」

 

 「だからほら、頭上げて。ねっ?」

 

 曜さんと梨子さんも声をかけてくれる。先輩方の優しさが心に沁みた。

 

 「・・・天くん」

 

 ルビィがおずおずと話しかけてくる。

 

 「その・・・お姉ちゃんのこと、嫌いにならないであげてほしいの。お姉ちゃんも、ちょっと熱くなっちゃっただけっていうか・・・津島さんのことを侮辱するつもりなんて、無かったと思うから」

 

 「・・・うん。分かってる」

 

 俺もさっき、よっちゃんに似たようなこと言ったしな。ダイヤさんに、よっちゃんを傷付ける意図は無かったはずだ。

 

 「ダイヤさんとも、一度ちゃんと話すから。心配かけてゴメンね、ルビィ」

 

 「うんっ!」

 

 ようやくルビィも笑顔を見せてくれた。と、花丸がキョロキョロと辺りを見回す。

 

 「ところで天くん、善子ちゃんはどこへ行ったずら?」

 

 「あぁ、よっちゃんなら帰ったよ」

 

 昨日から色々あって、よっちゃん的にも少し疲れてしまったらしい。気持ちの整理もしたいので、今日はもう帰るとのことだった。

 

 「もう堕天使は卒業するってさ。スクールアイドルもやめとくって」

 

 「えぇっ!?そんな!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。一番熱心に誘ってたもんなぁ・・・

 

 「本人がそう言ってるんですから、仕方ないでしょう」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「堕天使だって、本当は卒業したくないんだと思います。でも、『普通の高校生になりたい』っていうのも本心でしょうし・・・」

 

 「どうして、堕天使だったのかな・・・?」

 

 ポツリと呟く曜さん。

 

 「どうしてあそこまで、堕天使に拘ってたのかな・・・?」

 

 「・・・マル、分かる気がします」

 

 花丸が口を開く。

 

 「ずっと、普通だったんだと思うんです。マル達と同じで、あまり目立たなくて・・・そういう時、思いませんか?『これが本当の自分なのかな?』って。『元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかな?』って」

 

 「・・・確かにそういう気持ち、あったかもしれない」

 

 梨子さんが呟く。

 

 『どうして自分はこうなのか』、『本当はもっと違う自分なんじゃないか』・・・俺もそう思ったことがたくさんあった。

 

 よっちゃんもそうなのかな・・・

 

 「幼稚園の頃の善子ちゃん、いつも言ってたんです。『私は本当は天使で、いつか羽が生えて天に帰るんだ』って。多分善子ちゃんもマルと一緒で、キラキラしたものに憧れてて・・・善子ちゃんにとっては、それが堕天使だったんだと思います」

 

 「憧れ、か・・・」

 

 自分の憧れたものに情熱を燃やし、全力でそれになりきる・・・俺の頭の中には、ある人の顔が浮かんでいた。

 

 「ホント・・・こっちに来てから、似たような人に出会うもんだな・・・」

 

 「天くん?どうかしたの?」

 

 「何でもないよ。こっちの話」

 

 ルビィの頭を優しく撫でる。今の花丸の話を聞くかぎり、このままではよっちゃんが笑顔でいられなくなってしまうだろう。

 

 さて、どうしたものか・・・

 

 「・・・やっぱり、諦められないよ」

 

 千歌さんが呟く。

 

 「私は津島さんと・・・いや、善子ちゃんと一緒にスクールアイドルがやりたい!」

 

 力強く言い切る千歌さん。全く、この人ときたら・・・

 

 「・・・流石ですね、リーダー」

 

 俺は苦笑しながら、ある決意を固めるのだった。




どうも~、ムッティです。

そろそろアニメ一期の第5話分の話が終わろうとしております。

もうずいぶん書いたような気がしていましたが、まだ一期の折り返しにすら届いていないという事実・・・

そして果南ちゃんが全然出ていないという事実・・・

第6話分の話で出せたら良いなぁ・・・

次話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切に想うからこそ伝えたい言葉がある。

咳が止まらない・・・

久しぶりに風邪ひいたけど、やっぱり健康なのが一番だとつくづく思うわ・・・


 《善子視点》 

 

 「・・・これで良し」

 

 マンションのゴミ捨て場に段ボール箱を置きながら、私は小さく呟いた。

 

 この中には衣装を始め、堕天使関連のグッズが全て入っている。堕天使を卒業すると決めた私には、もう必要の無いものだ。

 

 「これで本当に卒業か・・・」

 

 本当は卒業なんてしたくない。でもこれ以上は、周りに迷惑をかけてしまう。

 

 ただでさえ今回、スクールアイドル部の皆に迷惑をかけてしまったのだ。それに・・・

 

 「天・・・」

 

 こんな私を受け入れてくれた、大切な友達の顔が浮かぶ。

 

 いつも穏やかで温厚なあの天が、私の為に生徒会長に対して本気で怒ってくれた。本当に嬉しかったけど・・・それと同時に、本当に申し訳なかった。

 

 天は生徒会長のことを、心から尊敬できる人だと言っていた。私がいつまでも堕天使を引きずっていたせいで、天は尊敬する生徒会長を怒鳴ってしまったのだ。

 

 これ以上天に迷惑をかけない為にも、堕天使は卒業しないといけない。私はこれからも、天とは友達でいたいから。

 

 「・・・バイバイ」

 

 小さく呟き、ゴミ捨て場を後にする。これで私は、堕天使を卒業・・・

 

 「本当にそれで良いの?」

 

 「っ!?」

 

 聞き覚えのある声に、慌てて視線を向ける。そこには・・・

 

 「天!?」

 

 私の大切な友達が立っていた。どうしてここに・・・

 

 「っていうかよっちゃん、ちゃんと分別した?捨てるにしてもちゃんと分別しないと、業者さんが困っちゃうよ?」

 

 「全部燃えるゴミだから大丈夫よ」

 

 「部屋にあったグッズの中に、明らかに燃えるゴミには出せないものもあった気がするんだけど?」

 

 「・・・火をつければ全部燃えんのよ」

 

 「シニヨン燃やすぞ中二病」

 

 「ごめんなさい」

 

 容赦の無いツッコミに、思わず謝ってしまう。

 

 「・・・何でアンタがここにいんのよ?」

 

 「善恵さんからラインきたんだよね。『善子が断捨離なう』って」

 

 「相変わらず人の母親と仲良しね・・・」

 

 そういえばこの間、『天くんが息子だったらなぁ・・・そうだ善子!天くんと結婚しなさい!そしたら天くんは私の息子になるわ!』とか言ってたわね・・・

 

 まぁ確かに、天が相手なら悪くないかも・・・って何考えてんのよ私!?

 

 「よっちゃん?何か顔が赤いけど大丈夫?」

 

 「な、何でもないわよ!それより何しに来たのよ!?」

 

 「いや、よっちゃんが堕天使を卒業する瞬間に立ち会おうかと思って。朝早くに来てスタンバってたんだよね」

 

 「・・・アンタねぇ」

 

 大方、私のことを心配してくれたんだろう。そんなことの為に、わざわざこんな時間にここまで来るなんて・・・

 

 ホント、バカなんだから・・・

 

 「・・・わざわざありがとね。私は大丈夫よ。もう堕天使は卒業するから」

 

 「・・・俺の目には、大丈夫そうには見えないけど」

 

 「っ・・・」

 

 見抜かれていた。こういう時の天は本当に鋭い。

 

 「俺はね、よっちゃん。よっちゃんの決めたことに、俺が口を挟むべきじゃないと思った。だから堕天使を卒業するって言った時、何も言わなかった。本当は卒業したくないんだって、分かってたのに」

 

 私から目を離さない天。

 

 「だからせめて、よっちゃんが堕天使を卒業するところに立ち会おうって。よっちゃんを一人にしたくなかったから、ここまで来た。でも・・・今のよっちゃんの顔を見て、やっぱり思ったよ。よっちゃんは堕天使を卒業すべきじゃない」

 

 「・・・ふざけないで」

 

 天を睨みつける。人の気持ちも知らないで・・・

 

 「私は普通の高校生になりたいの。ようやく・・・ようやく気持ちの整理をつけて、堕天使グッズを捨てにきたのに・・・何でそんなこと言うの?何で私の気持ちを踏みにじるようなことを言うのよ?」

 

 「じゃあよっちゃん・・・堕天使を卒業して、これから笑顔でいられる自信ある?」

 

 「っ・・・それは・・・」

 

 「・・・無いよね。やっぱり」

 

 寂しそうに笑う天。

 

 「言ったはずだよ、よっちゃん。よっちゃんが笑顔でいられるのが一番だって。大切な友達が、毎日を笑顔で過ごせないなんて・・・俺は嫌だから」

 

 「天・・・」

 

 「普通の高校生になりたいって気持ちを、否定してるわけじゃないよ。でも普通の高校生になることで、よっちゃんが笑顔でいられなくなるっていうなら・・・無理に堕天使を卒業してほしくない。そんな寂しそうなよっちゃん、見たくないから」

 

 「・・・バカ」

 

 天に歩み寄り、天の胸を叩く。

 

 「バカ、バカ、バカ・・・!」

 

 何度も胸を叩く。本当に、どうしてコイツはいつもいつも・・・!

 

 「何でそんな・・・私に優しくするのよぉ・・・!」

 

 天の胸に縋る。気付けば、涙が溢れて止まらなくなっていた。

 

 「何で・・・どうして・・・!」

 

 「・・・さっき言ったでしょ」

 

 優しい温もりに包まれる。天が私を抱き締めてくれていた。

 

 「よっちゃんは大切な友達だって。最初は花丸の友達だからとか、借りを返す為だとか言ってたけど・・・今はそれ以上に、よっちゃんの力になりたい気持ちが強いから」

 

 微笑む天。

 

 「堕天使ヨハネだって良いじゃん。それだってよっちゃんの・・・津島善子の一部なんだから。全部ひっくるめてよっちゃんだって、俺はそう思うよ」

 

 優しく頭を撫でられる。ホントにコイツは・・・

 

 「それに・・・そう思ってるのは俺だけじゃないよ」

 

 「え・・・?」

 

 「堕天使ヨハネちゃん!」

 

 大きな声が響き渡る。視線を向けると・・・堕天使の衣装を着たスクールアイドル部の五人が、笑顔で立っていた。

 

 「「「「「スクールアイドル部に入りませんか!?」」」」」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑む私。アンタ達まで・・・

 

 「・・・良いの?変なこと言うわよ?」

 

 「良いよ」

 

 「時々、儀式とかするかもよ・・・?」

 

 「そのくらい我慢するわ」

 

 「リトルデーモンになれっていうかも・・・」

 

 「嫌だったら嫌だっていうずら」

 

 「ぴぎっ!」

 

 笑顔で頷いてくれる皆。と、私の背中に天の手が触れた。

 

 「思いっきり羽ばたくと良いよ。やりたいことをやったら良い。今のよっちゃんには、それが許されるんだから」

 

 「やりたいこと・・・」

 

 「憧れてるだけじゃなくて、今度は自分の手で掴みにいきなよ。ここで折れたら、堕天使ヨハネの名が泣くよ?」

 

 笑っている天。

 

 全く、そこまで言うのなら・・・やってやろうじゃない。

 

 「はい、これ」

 

 千歌さんが黒い羽を差し出す。これ、私の・・・

 

 「昨日部室に忘れていったよ。堕天使ヨハネのアイデンティティなんでしょ?」

 

 微笑む千歌さん。

 

 「一緒に頑張ろう?」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 手を伸ばし、黒い羽を掴む。そして頭のシニヨンに差した。

 

 「堕天使ヨハネ・・・ここに降臨っ!」

 

 「おぉ、この痛々しい感じ・・・まさによっちゃんって感じがするよ」

 

 「アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

 「よっ、中二病患者」

 

 「やかましいわ!」

 

 そんなツッコミを入れながらも、気付けば自然と笑顔になっている私がいるのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話で、アニメ一期の第5話が終了・・・

ではありません。

次の話まで続きます。

それから第6話へ入っていこうと思いますので、よろしくお願い致します。

あと前書きでも述べましたが、思いっきり風邪をひきました。

皆さんも風邪にはお気を付け下さい。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心からの笑顔に勝るものはない。

今回の話で、アニメ一期第5話までの内容が終了となります。

そして今回の話で第30話目・・・

ノリと勢いで書き始めたこの物語だけど、我ながらよくここまで書いてきたなぁ・・・

それではいってみよー!


 放課後・・・

 

 「ふぅ・・・」

 

 生徒会室の前で、深く息を吐く俺。

 

 よっちゃんは正式にスクールアイドル部に加入することになり、早速千歌さん達と一緒に練習に励むことになった。

 

 俺は生徒会の仕事がある為ここに来たのだが・・・昨日ダイヤさんとあんなことがあったので、顔を合わせるのがとても気まずい。

 

 とはいえ、顔を出さないわけにもいかないからな・・・よし。

 

 「・・・失礼します」

 

 思い切ってドアを開ける。そこには、既に席について仕事をしているダイヤさんの姿があった。

 

 「あっ・・・」

 

 俺を見て驚くダイヤさん。

 

 どういった言葉をかけようか迷った俺だったが、机の上の書類の山を見て黙って席についた。

 

 「・・・今日はいつもより書類が多いですね」

 

 「そ、そうですわね・・・」

 

 「とりあえず、こっちを片付ければ良いですか?」

 

 「え、えぇ・・・お願いします」

 

 二人で黙々と仕事を進める。時折ダイヤさんがチラッとこちらを窺ってくるが、口を開くことはなかった。

 

 やがて書類が半分ほど片付いた頃・・・

 

 「あ、あの・・・天さん・・・」

 

 意を決したように、ダイヤさんが口を開いた。

 

 「昨日のことなのですが、その・・・」

 

 「ダイヤさん」

 

 恐らく謝ろうとしたダイヤさんの言葉を、俺は途中で遮った。

 

 「俺には・・・姉が二人いるんです」

 

 「はい・・・?」

 

 戸惑うダイヤさん。

 

 何の脈絡も無くいきなり関係無い話をされたら、誰だってこうなるよな・・・

 

 「上の姉は、高校時代に生徒会長をやっていまして。弟である俺の目から見ても、立派に生徒会長としての仕事を果たしていました。ただ・・・」

 

 「ただ・・・?」

 

 「・・・生徒会長だった頃の姉は、良くも悪くも真面目過ぎたんです」

 

 苦笑する俺。

 

 「不器用で頭が固くて、融通の利かないところがありまして・・・周りに頼らず、一人で突っ走ってしまうような人でした。『自分がやらないといけない』っていう使命感が強くて、俺も当時は側で見ててハラハラしてました」

 

 心の優しい副会長が支えてくれていなかったら、今頃姉は潰れていたかもしれない。彼女には本当に感謝している。

 

 「だから浦の星に来て、ダイヤさんと出会って驚きました。ダイヤさん、当時の姉にそっくりなんですもん」

 

 「わ、私がですか・・・?」

 

 「えぇ。真面目で不器用で頭が固くて・・・当時の姉を見ている気分です」

 

 「・・・素直に喜べませんわ」

 

 複雑そうなダイヤさん。まぁ『不器用』とか『頭が固い』とか言われてるしな・・・

 

 「だからですかね・・・何だかダイヤさんのこと、放っておけないんですよ。『側で支えないと』って思いますし・・・より感情が入ってしまうんです」

 

 俺は頭の中で、昨日のことを振り返っていた。

 

 「昨日、ダイヤさんが堕天使を否定した時・・・当時の姉と重なってしまったんです。学校の為に一生懸命頑張っていた人達のことを、姉が否定したことがあって・・・俺はそれがとても悲しくて、『何でそんなことを言うんだ』って怒りました。その人達は、俺にとって大切な人達で・・・だからこそ、姉が認めてくれなかったことが悲しくて。そんな姉とダイヤさんが重なって、ついあんなに怒ってしまいました」

 

 「天さん・・・」

 

 「ダイヤさんに対して、あそこまで怒る必要は無かった・・・よっちゃんの気持ちも考えたら、もっと穏便に済ますべきだった・・・結果として俺はダイヤさんを傷付け、よっちゃんを泣かせてしまいました。とてもじゃないですけど、姉のことを言えた義理ではありませんね」

 

 俺は椅子から立ち上がり、ダイヤさんに対して深く頭を下げた。

 

 「昨日は本当に申し訳ありませんでした」

 

 今の俺にはこれしか出来ない。ダイヤさんから罵倒されても仕方が無い。

 

 だが・・・

 

 「・・・頭を上げて下さい、天さん」

 

 柔らかな両手で頭を支えられ、そのまま元の位置へと戻される。

 

 「昨日家に帰ってから、ルビィに津島さんのことを聞きましたわ。私があの時、どれほど津島さんを傷付ける発言をしていたのか・・・ようやく気付きました」

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 「おまけに熱くなりすぎて、スクールアイドル部を貶すような言葉まで言いかけてしまって・・・天さんが止めてくださって、本当に助かりましたわ」

 

 ダイヤさんは優しく微笑むと、今度は両手を俺の頬に添えた。

 

 「・・・天さんは、お姉様のことをとても大事に思われているのですね。だからこそ、そんなお姉様と重なる私を大事に思ってくださっている・・・本当に嬉しく思いますわ」

 

 ダイヤさんの額が、俺の額にコツンと触れた。

 

 「これからもどうか、私のことを支えて下さい。間違っていると思えば、遠慮なく怒っていただいて構いません。私は天さんのことを、心から信頼していますわ」

 

 「・・・優し過ぎますよ、ダイヤさん」

 

 「それはお互い様ですわ」

 

 面白そうに笑うダイヤさん。

 

 「私もルビィも、そしてスクールアイドル部の皆さんも・・・天さんの優しさに助けられた身ですから。これからも頼りにしてますわよ、天さん」

 

 「・・・ご期待に添えるよう頑張ります」

 

 「よろしい」

 

 笑顔で頷くダイヤさん。

 

 「さて、残りの書類を片付けてしまいましょう。早くしないと日が暮れてしまいますわ」

 

 「そうですね。さっさと終わらせちゃいましょうか」

 

 笑い合い、再び仕事を再開する俺達。

 

 「あ、ダイヤさん」

 

 「何ですの?」

 

 「確かにダイヤさんは姉に似てますけど・・・それを抜きにしても、俺はダイヤさんのことを大事に思ってますから。それは忘れないで下さいね」

 

 「っ・・・ズルいですわ・・・」

 

 何故か顔を赤くするダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「お待たせしました」

 

 「遅いよ天くん!私はもうお腹ペコペコなんだから!」

 

 「私もお腹空いた!」

 

 お腹を押さえている千歌さんと曜さん。

 

 生徒会の仕事も終わり、俺はスクールアイドル部の皆と正門の前で合流していた。

 

 「でも善子ちゃん、本当に良いの?大勢で押しかけちゃって・・・」

 

 「ヨハネよ。呼んだのはお母さんなんだから、遠慮する必要なんて無いわよ」

 

 梨子さんの問いに、溜め息をつきながら答えるよっちゃん。実は今朝のやりとりの後、俺はよっちゃんの家にお邪魔して善恵さんに事情を説明していたのだ。

 

 よっちゃんがスクールアイドル部に入ると知った善恵さんの感激っぷりは尋常ではなく、よっちゃんと俺を抱き締めて号泣してしまうほどだった。

 

 その後『今夜はお祝いよ!』と高らかに宣言した善恵さんは、今夜の夕飯の席に俺とスクールアイドル部の皆を招待してくれた。

 

 そんなわけで俺達は、これから津島家で夕飯をご馳走になる予定なのだ。

 

 「全く、何がお祝いよ・・・たかだか部活に入っただけだっていうのに・・・」

 

 「いや、引きこもりの娘が部活に入ったら喜ぶでしょ。善恵さんはよっちゃんのこと、凄く心配してたんだよ?俺もよく相談に乗ってたもん」

 

 「何であの人は娘の同級生に相談してんのよ・・・」

 

 呆れているよっちゃん。

 

 まぁよっちゃんも、心配をかけてしまったことは申し訳なく思っているようだ。善恵さんが号泣してる時、よっちゃんもつられて泣いてたし。

 

 「今日の夕飯は豪華にするんだって、善恵さん張り切ってたっけ・・・食い意地を張るであろう花丸に、ほとんど食べられちゃう気がするけど」

 

 「天くんはマルを何だと思ってるずら!?」

 

 「胃袋ブラックホール娘」

 

 「否定出来ないのが辛いずら!」

 

 「だ、大丈夫だよ花丸ちゃん!花丸ちゃんはいくら食べてもスタイル良いもん!」

 

 「ル、ルビィちゃん・・・!」

 

 「そうだね。花丸は栄養がお腹周りじゃなくて、別の場所に行ってるもんね」

 

 「・・・花丸ちゃんはルビィの敵だね」

 

 「ルビィちゃん!?」

 

 瞳から光が消えたルビィの一言に、ショックを受けている花丸。

 

 やっぱりルビィ、気にしてたんだね・・・

 

 「私も花丸ちゃんに負けないくらい食べるよ!」

 

 「私も負けないからね!」

 

 「望むところずら!」

 

 「・・・何でルビィのには栄養が行かないんだろう」

 

 「げ、元気出してルビィちゃん!」

 

 千歌さんと曜さんが花丸と張り合い、梨子さんは落ち込んでいるルビィを必死に励ましている。

 

 賑やかだなぁ・・・

 

 「全く、騒がしいわね」

 

 いつの間にか、よっちゃんが俺の隣を歩いていた。

 

 「どうやら、私の静かな日常は終わりみたいね」

 

 「静かな日常(笑)」

 

 「何笑ってんのよ!?」

 

 「wwwww」

 

 「草を生やすなっ!」

 

 ムキーッと怒っているよっちゃん。相変わらず面白いなぁ・・・

 

 「まぁ、静かな時間を過ごすのも大切だと思うけどさ・・・こうやって皆でわいわいやってる時間も、悪くはないでしょ?」

 

 「・・・まぁね」

 

 照れたようにそっぽを向くよっちゃん。

 

 「こんな時間を過ごせるのも、その・・・アンタのおかげよ。ありがと」

 

 「あ、よっちゃんがデレた」

 

 「デ、デレてなんかないんだからっ!」

 

 おぉ、ツンデレのテンプレみたいなセリフ・・・よっちゃんはツンデレだったのね。

 

 「・・・よっちゃんの力になれたのなら、良かったよ」

 

 よっちゃんの頭を撫でる。

 

 「スクールアイドル、俺もサポートするから。一緒に頑張ろうね」

 

 「・・・うん」

 

 小さく笑いながら頷くよっちゃん。

 

 「期待してるよ。堕天使ヨハネ様」

 

 「・・・善子」

 

 「え・・・?」

 

 「・・・善子で良いわよ」

 

 顔を赤くしながら言うよっちゃん。嘘だろオイ・・・

 

 「名前で呼ばれるの、嫌がってなかったっけ・・・?」

 

 「・・・アンタには、名前で呼んでほしいなって思ったのよ。『ヨハネ』じゃなくて、『善子』って・・・私の大切な友達だから」

 

 耳まで真っ赤になっているよっちゃん。そっか・・・

 

 「・・・ありがとう、善子」

 

 「っ!」

 

 「これからもよろしくね、善子」

 

 「ちょ、何度も呼ばなくて良いから・・・!」

 

 「善子おおおおおっ!」

 

 「うにゃあああああっ!?」

 

 両手で顔を覆いながら、全力で走り去る善子。

 

 「え、善子ちゃん!?どうしたの!?」

 

 「ヨハネよおおおおおっ!」

 

 「ちょ、待ってよ善子ちゃん!?」

 

 「だからヨハネだってばあああああっ!」

 

 「善子ちゃあああああんっ!?」

 

 「ヨハネえええええっ!」

 

 千歌さん、曜さん、花丸が慌てて追いかけていく。やれやれ・・・

 

 「ほらルビィ、落ち込んでる場合じゃ無いよ」

 

 「ぴぎっ!?天くん!?」

 

 「梨子さんも早く。置いてかれちゃいますよ」

 

 「ちょ、天くん!?」

 

 ルビィと梨子さんの手を引き、笑みを浮かべながら善子達の後を追いかける。

 

 気付けばルビィも梨子さんも、千歌さんも曜さんも花丸も笑っていた。そしてもう一人・・・

 

 先頭を走る善子の笑顔は、今までで一番輝いて見えたのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、今回の話でアニメ一期第5話までの内容が終了となります。

天があそこまで怒った理由は、姉の姿とダイヤさんの姿を重ねてしまったことが原因でした。

ダイヤさんが堕天使を否定して善子ちゃんを傷付けたことに対する怒りに、そのことがプラスされてブチギレに繋がってしまったわけですね。

感想でもいただきましたが、まだ高一になったばかりの天の精神的な未熟さが出た形と言えます。

いやホント、ダイヤさん推しの方々には大変申し訳ない展開となってしまいました・・・

和解したので許して下さい(土下座)

さて、そして『絢瀬天と九人の物語』が30話目を迎えました。

映画を見た興奮から、ノリと勢いで書き始めたのがこの作品でございます。

そんなこの作品がここまで続くことが出来たのは、ひとえにいつも読んでくださる皆様のおかげです。

皆様からの感想に、どれほどモチベーションが上がっていることか・・・

本当にありがとうございます。

お気に入り登録、☆評価をしてくださった方々もありがとうございます。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。

次の話からは、アニメ一期第6話の内容に入っていきます。

まだ詳しくは言えませんが・・・あの人を出す予定です(誰だよ)

次の話もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

高いハードルを越えるのは簡単ではない。

急に暑くなったな・・・

急激な気温の変化に、身体がついていかないわ・・・


 「そ、そうだよねー!」

 

 教室でクラスメイト達と会話している善子。

 

 学校に来るようになり、クラスメイト達と会話することも増えたのだが・・・

 

 「マ、マジムカつく、よねー!」

 

 まだ慣れていないせいか、もの凄くたどたどしい。大丈夫だろうか。

 

 「だよねー!ホント頭にきちゃってさー!」

 

 「いやー、マジないわー!」

 

 そんな善子の様子をクラスメイト達も分かっているので、たどたどしい様子に誰も触れたりはしない。

 

 善子に無理をさせない範囲で親睦を深めようと、こうして善子に話しかけてくれているのだ。

 

 良い人達だなぁ・・・

 

 「善子ちゃん、少しずつ普通に会話が出来るようになってきたずらね」

 

 少し安心した様子の花丸。

 

 「また堕天使キャラで暴走するんじゃないかって、最初は心配してたずら」

 

 「まぁそれで二回やらかしてるからね」

 

 もうやらかすことがないよう、クラスメイト達の前では堕天使キャラを出さないようにしたいらしい。堕天使キャラを捨てるつもりは無いが、普通の高校生にはなりたいんだそうだ。

 

 まぁ善子の今後を考えると、堕天使を抜きにした普通の会話も出来るようになった方が良いよな。

 

 「これからゆっくり慣れていけば良いんじゃないかな。無理に焦る必要も無いでしょ」

 

 「そうずらね」

 

 頷く花丸。と、そこへルビィが息を切らして飛び込んできた。

 

 「た、大変だよっ!」

 

 「ルビィちゃん!?どうしたずら!?」

 

 「学校が・・・学校が・・・!」

 

 「落ち着いて、ルビィ」

 

 ルビィの背中を擦り、ペットボトルの水を差し出す。それをゴクゴク飲んだルビィは、衝撃の一言を口にするのだった。

 

 「学校が・・・学校が無くなっちゃう!」

 

 「「・・・えっ!?」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「説明していただけますか、小原理事長」

 

 放課後に理事長室を訪れた俺は、目の前に座る小原理事長に冷たい視線を向けていた。

 

 「浦の星が廃校になるというのは本当ですか?」

 

 「・・・耳が早いわね」

 

 溜め息をつく小原理事長。

 

 「浦の星女学院は沼津の高校と統合し、廃校となる・・・正式に決まったわけではないけど、そういう方向で話が進んでいるのは事実よ」

 

 「・・・統廃合ですか」

 

 唇を噛む俺。

 

 ルビィは小原理事長とダイヤさんの会話を偶然聞いてしまったらしく、慌ててそれを俺達に伝えに来てくれたらしい。そして今の小原理事長の説明は、ルビィが教えてくれた内容と全く同じものだった。

 

 やっぱり事実だったか・・・

 

 「ずいぶん話が早いですね。共学化を目指す話はどこへいったんですか?」

 

 「・・・運営が水面下で調査した結果、来年浦の星への入学を希望している生徒は今年より少ないみたいなの。最悪の場合、入学する生徒が一人もいない可能性もあるそうよ」

 

 「・・・0ってことですか」

 

 「えぇ。共学化したところで、状況が良くなることはないだろうというのが運営の判断みたい。ただでさえ今年の入学者数は、運営の想定をはるかに下回っている・・・一気に統廃合の話が進んでも、おかしくはないわ」

 

 肩をすくめる小原理事長。

 

 「元々統廃合の話は二年前・・・私達が一年生の時からあったのよ。決して今に始まった話ではないの」

 

 「・・・それでスクールアイドルを始めて、学校の危機を救おうとしたんですか?」

 

 「ッ!?」

 

 驚きのあまり立ち上がる小原理事長。

 

 「ど、どうして天がそれを・・・!?」

 

 「貴女がダイヤさんや果南さんと共に、スクールアイドルをやっていたことは知っています。動機に関してはあくまでも予想でしたけど・・・どうやら当たったみたいですね」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「統廃合を阻止する為にスクールアイドルを始めたものの、何らかの理由で挫折して貴女達は解散した。そしてその二年後、今度は後輩達がスクールアイドルを始めた・・・貴女はそれを利用しようとしているんでしょう?統廃合を阻止する為に」

 

 冷ややかな目を向ける俺。

 

 「そして俺を脅し、マネージャーをやらせることにした。俺の過去を知っている貴女にとって、俺はさぞかし利用価値のある駒なんでしょうね」

 

 「天・・・」

 

 悲しげな表情の小原理事長。人を脅しておいて、よくもまぁそんな顔が出来るものだ。

 

 「スクールアイドルとして有名になることで学校をPRし、廃校を阻止する・・・五年前のμ'sは、それを見事に成功させました。貴女はそれをAqoursに求めようとしているようですが・・・そう上手くいくとは思わないことですね」

 

 強い口調で小原理事長に忠告する。

 

 「このまま浦の星が廃校になるのは、俺だって嫌です。ですが俺は、あの時のμ'sの役割をAqoursに求めようとは思いません。そもそもμ'sとAqoursでは、スクールアイドルを始めた動機が違います」

 

 μ'sがスクールアイドルを始めたのは、音ノ木坂の廃校を阻止する為。一方Aqoursがスクールアイドルを始めたのは、輝きたいという思いがあったから。

 

 最初から廃校阻止が目的で動いているならともかく、途中からそんな重荷を背負わせるのはあまりにも酷だ。最悪の場合、責任が重過ぎて潰れてしまうかもしれない。

 

 「貴女がどんな思惑で動こうが、それは貴女の自由です。ですが、それによってAqoursが不利な状況に追い込まれるようなら・・・俺も黙っているつもりはありませんので」

 

 一礼して踵を返し、出口へと足を向ける。

 

 「・・・大事に思っているのね、あの子達のこと」

 

 ドアに手をかけたところで、小原理事長から声をかけられる。

 

 「貴方は昔から不思議な子だったわね、天。人見知りだった私が、貴方に対してはいつもベッタリくっついてて。私のパパやママ、使用人の皆も貴方を気に入っていたわ」

 

 当時を懐かしんでいる小原理事長。

 

 「浦の星でもあの子達は勿論、ダイヤや果南だって貴方を信頼している。貴方なら、きっと・・・」

 

 そこまで言いかけて口を閉ざす小原理事長。俺は無言で理事長室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「私達が学校を救うんだよ!そして輝くの!あのμ'sのように!」

 

 「雷●八卦」

 

 「ぐはっ!?」

 

 テンションマックスの千歌さんの後頭部に、ハリセンをフルスイングで叩き込む。

 

 理事長室を後にした俺は、スクールアイドル部の部室へとやってきていた。

 

 「お、女の子を相手に容赦の無い攻撃・・・」

 

 「天くんが鬼・・・っていうか、カ●ドウに見えるのは気のせいかしら・・・」

 

 「ああん・・・?」

 

 「「ヒィッ!?」」

 

 悲鳴を上げる曜さんと梨子さん。俺は千歌さんへと視線を向けた。

 

 「そこで机に突っ伏してるオレンジヘッド、早く起きてもらって良いですか?」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 涙目でガバッと顔を上げる千歌さん。

 

 「今もの凄い衝撃だったよ!?ツッコミのレベルを超えてたよ!?」

 

 「人の虫の居所が悪い時に、人が望まないセリフ言うの止めてもらえます?さっきまでのシリアスな空気がぶち壊しな上に、小原理事長に食ってかかった俺がバカみたいなんですけど。このいたたまれない気持ちをどうしてくれるんですか」

 

 「知らないよ!?何があったの!?」

 

 全く、この人ときたら・・・

 

 「っていうか、何で浦の星が廃校になるかもしれないのにテンション高いんですか」

 

 「だってμ'sと同じ状況だよ!?これは私達が学校を救うしかないよ!」

 

 「アンタの脳内はお花畑か」

 

 ダメだこの人、何も分かってない。

 

 そんな簡単に学校の廃校危機を救えるなら、誰も苦労したりしないっていうのに・・・

 

 「で、何でそこの胃袋ブラックホール娘まで期待に満ち溢れた顔してんの?」

 

 「ずらぁ・・・!」

 

 目がキラキラしている花丸。ルビィが苦笑している。

 

 「ほら、統合先の学校って沼津でしょ?花丸ちゃん、沼津の学校に通えるのが嬉しいみたいで・・・」

 

 「あぁ、『未来ずら』症候群か・・・」

 

 どんな生活をしているのか知らないが、花丸は機械的・都会的と呼べるものには本当に目がない。

 

 この間も俺・花丸・ルビィの三人で沼津に行ったら、『未来ずら~っ!』を連呼していたし・・・

 

 ホントにどんな生活してんのこの子・・・

 

 「で、逆に何でそこの堕天使は落ち込んでんの?」

 

 「統廃合反対統廃合反対統廃合反対・・・」

 

 呪文のようにぶつぶつ呟いている善子。何か怖いんだけど・・・

 

 「ほら、善子ちゃんの家って沼津にあるでしょ?つまり善子ちゃんが通ってた中学も、沼津にあるわけで・・・」

 

 「あぁ・・・中学時代の黒歴史を知ってる人が、統合先の学校に進学してる可能性があるのね・・・」

 

 俺が納得していると、千歌さんが机をバンッと叩いた。

 

 「とにかく!廃校の危機が学校に迫っていると分かった以上、Aqoursは学校を救う為に行動します!」

 

 「・・・本気ですか?」

 

 千歌さんに尋ねる俺。

 

 「簡単なことじゃないですよ。そもそもただの一生徒に過ぎない俺達では、やれることにも限度があります。それでもやるつもりですか?」

 

 「勿論!」

 

 力強く言い切る千歌さん。

 

 「私、浦の星が好きだもん!やれることはやりたいんだよ!」

 

 「ヨーソロー!賛成であります!」

 

 「このまま何もしないっていうのも嫌だしね」

 

 「統廃合なんてさせるもんですか!私は断固として抗うわよ!」

 

 「まぁ確かに、この学校が無くなっちゃうのは寂しいずらね」

 

 「ルビィもこの学校が大好きだし、無くなってほしくないよ!」

 

 他の皆も同じ意見らしい。やれやれ、人の気も知らないで・・・

 

 「・・・それで?行動って何をするつもりなんですか?」

 

 「いやぁ、まだ何も考えてないんd・・・ごはぁっ!?」

 

 再び千歌さんにハリセンをぶちかます俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「学校を救う、ですか・・・」

 

 複雑そうな表情のダイヤさん。

 

 スクールアイドル部の練習後、俺はダイヤさんに呼ばれて生徒会室へやってきていた。話があるとのことだったが、恐らく統廃合のことだろう。

 

 「μ'sと同じことが、あの子達に出来るのでしょうか・・・」

 

 「・・・今の状態では厳しいでしょうね」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「そもそも浦の星は、音ノ木坂と比べて統廃合撤廃のハードルが高いと思います」

 

 「どうしてですの?」

 

 「立地条件が不利なんですよ」

 

 説明する俺。

 

 「音ノ木坂は東京にあるので、交通の便が良く通学しやすい環境にあります。それに対して浦の星がある場所は、沼津の中でも外れの方にある内浦ですから。交通の便はあまり良くないですし、通学しやすい環境とは言えない・・・これは大きなマイナスですよ」

 

 「確かに・・・内浦に住んでいるならともかく、外から来る人にとって良い環境とは言えませんわね・・・」

 

 「えぇ。とはいえ入学者数を増やすには、内浦の外に住んでいる人も呼び込まないといけません。となると・・・」

 

 「多少通学に不便しても、浦の星に入学したいと思わせる何かが無いといけない・・・つまり、浦の星に入学するメリットをPRする必要がありますわね・・・」

 

 「そうなりますね。通学が不便というデメリットを抱えている分、超えるべきハードルは音ノ木坂よりも高いと俺は思います」

 

 「・・・これは難問ですわ」

 

 頭を抱えるダイヤさん。

 

 「勿論、浦の星の良いところはたくさんありますが・・・外から来る人にとって、デメリットを超えるほどのメリットは何かと聞かれると・・・」

 

 「・・・答えに困りますよね」

 

 二人揃って溜め息をついてしまう。メリットかぁ・・・

 

 「まぁ、それはこれから考えるとして・・・もう一つ、別の話をしましょうか」

 

 気持ちを切り替えるように、ダイヤさんがパンッと手を叩く。

 

 「別の話というと?」

 

 「実は明日から、教育実習生の方がいらっしゃる予定なのです。そのことで少し、天さんにお願いしたいことがありまして」

 

 「・・・統廃合の話が進んでる中で、よく教育実習生を受け入れましたね」

 

 呆れる俺。そもそも統廃合の問題でバタバタしている中、やってくる教育実習生の方も可哀想だと思うんだけど・・・

 

 「私もそう思ったのですが・・・鞠莉さんが独断で決めてしまいまして」

 

 溜め息をつくダイヤさん。あの成金理事長・・・

 

 「何でもその教育実習生の方は、自ら浦の星を希望されたそうですよ」

 

 「へぇ・・・浦の星の卒業生の方ですか?」

 

 「いえ、母校は東京の方だそうです」

 

 「・・・何で浦の星を希望してるんですか?」

 

 「さぁ・・・不思議ですわね」

 

 首を傾げるダイヤさん。

 

 教育実習って、通常は母校でやることが多いはずだよな・・・東京に母校がある人が、何でよりによって浦の星での教育実習を希望してるんだ・・・?

 

 「まぁどんな理由があれ、この学校を希望してくださっているんですもの。私としても無下にしたくはありませんし、出来る限り力になって差し上げたいですわ」

 

 微笑むダイヤさん。ダイヤさんは優しいなぁ・・・

 

 「教育実習生の方の指導は赤城先生が担当されるそうですので、実習は一年生のクラスで行なわれることになります。ですので天さんには、教育実習生の方が溶け込みやすい環境を作ってあげてほしいのです」

 

 「つまりクラスの皆と打ち解けられるように、それとなく気を遣ってあげてほしいっていうことですか?」

 

 「そういうことです。赤城先生ともお話しさせていただきましたが、こういった役は天さんが適任だろうと仰っていました。お願い出来ますか?」

 

 「またあの人は・・・」

 

 ウチのクラスはフレンドリーな人がほとんどだし、俺が動かなくても大丈夫な気がするけど・・・

 

 まぁダイヤさんの頼みだし、断る理由も無いか。

 

 「分かりました。やってみます」

 

 頷く俺。

 

 まさか教育実習生があの人だとは・・・この時はまだ知る由も無いのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話から、アニメ一期の第6話の内容へと入っていきます。

本来の内容に、少しオリジナル要素を加える形となります。

最後の方に出てきた、教育実習生の存在がまさにそうなのですが・・・

皆さんご存知の、あの方です。

さらに皆さんも薄々・・・いや、もうガッツリ気付いているとは思いますが(笑)

前回の話で触れた、天のお姉さんについても明らかになります。

今後の展開をお楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰にでも秘密にしていることはある。

映画『天気の子』を観に行きたい。

新海誠監督の最新作だし、物凄く気になってる。


 翌日・・・

 

 「そういうわけだから、皆よろしくね」

 

 「「「「「お~っ!」」」」」

 

 朝のホームルーム前、俺は教室でクラスの皆に事情を説明していた。

 

 流石はフレンドリー軍団なだけあって、皆快く返事をしてくれる。

 

 「教育実習生ってどんな人かな?」

 

 「イケメンだったりして!?」

 

 「キャーッ!」

 

 「いや、女性らしいよ」

 

 「えぇっ!?イケメンじゃないの!?」

 

 「でも待って!イケメン系女子っていう可能性があるわ!」

 

 「それなら良し!」

 

 「良いんだ・・・」

 

 っていうか、よくそんなテンション上げられるな・・・

 

 あそこで机に突っ伏してる堕天使とは大違いだわ。

 

 「知らない人が来る知らない人が来る知らない人が来る・・・」

 

 ヤバいな、善子・・・完全に病んでるじゃん・・・

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・こ、怖い人じゃないと良いなぁ・・・」

 

 涙目になっているルビィ。あぁ、ここにも人見知りが・・・

 

 「善子ちゃんもルビィちゃんも落ち着くずら」

 

 二人を宥める花丸。

 

 「こういう時は、教育実習生さんをじゃがいもだと思えば良いずら」

 

 「「「それは違うと思う」」」

 

 「ずら!?」

 

 俺・善子・ルビィが同時にツッコミを入れる。むしろこの場合、教育実習生さんが俺達をじゃがいもだと思うケースだよね・・・

 

 そんなやり取りをしていると、朝のホームルーム開始を告げるチャイムが鳴った。

 

 「は~い皆さん、席についてくださいね~」

 

 教室に入ってくる赤城先生。俺達が席に着くと、赤城先生が俺達を見回した。

 

 「皆さんご存知だとは思いますが、今日から教育実習生の方がこのクラスにやってきます。入ってきてくださ~い」

 

 「は、はいっ!」

 

 赤城先生の呼びかけに、上ずった返事が返ってくる。

 

 あれ、今の声って・・・

 

 「し、失礼しますっ!」

 

 教室のドアが開き、スーツ姿の女性が入ってくる。綺麗な青い髪を腰の辺りまで伸ばした、とても美しい女性・・・

 

 「えっ・・・」

 

 「天くん?」

 

 絶句してしまう俺。そんな俺を、隣の花丸が不思議そうに見つめていた。

 

 「それでは、自己紹介をお願いします」

 

 赤城先生に促され、女性が緊張した面持ちで俺達の前に立った。

 

 「は、初めまして!教育実習で浦の星女学院に参りました、園田海未と申します!よ、よろしくお願いしましゅっ!」

 

 「えっ・・・ええええええええええっ!?」

 

 『今噛んだでしょ』などとツッコミを入れる暇もなく、ルビィの絶叫が響き渡った。

 

 「そ、園田海未さんっ!?μ'sのメンバーのっ!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 「嘘っ!?」

 

 それを聞き、花丸と善子が驚きの声を上げる。

 

 教室がざわつく中、青い髪の女性・・・園田海未さんは涙目になっていた。困ったように視線を彷徨わせていた彼女は、やがて彼女を見て固まっていた俺と目が合い・・・

 

 次の瞬間、目からドバーッと涙が溢れた。

 

 「そっ・・・天ああああああああああっ!」

 

 「げふっ!?」

 

 勢いよく抱きつかれ、ひっくり返りそうになるのをどうにか堪える。

 

 「会いたかったですううううううううううっ!天ああああああああああっ!」

 

 「ちょ、海未ちゃん!?落ち着いて!?」

 

 「うわああああああああああんっ!?」

 

 俺に抱きつき、号泣している海未ちゃん。

 

 赤城先生やクラスの皆が唖然としている中、俺は溜め息をつきながら海未ちゃんの頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・やってしまいました」

 

 机に突っ伏して落ち込んでいる海未ちゃん。

 

 放課後、俺は海未ちゃんを連れてスクールアイドル部の部室へとやってきていた。

 

 「あんな醜態を晒して・・・もう教育実習なんて出来ません・・・」

 

 「相変わらずメンタル弱いねぇ・・・」

 

 溜め息をつく俺。一方・・・

 

 「な、何でμ'sの園田海未さんがここにいるの!?」

 

 「教育実習生ってどういうこと!?お姉ちゃん知ってたの!?」

 

 「私も知りませんでしたわ!一体何がどうなってますの!?」

 

 ヒソヒソ話している千歌さん、ルビィ、ダイヤさん。

 

 μ's大好きトリオの三人は、海未ちゃんを興奮と戸惑いの入り混じった表情で見つめていた。

 

 「ほら海未ちゃん、あそこに海未ちゃんのファンがいるよ。ラブアローシュートで打ち抜いてあげなよ」

 

 「人が落ち込んでる時に黒歴史を持ち出すの止めてもらえます!?」

 

 「ちなみに推しは穂乃果ちゃん、花陽ちゃん、エリーチカだって」

 

 「私のファンじゃないじゃないですか!?」

 

 「えーっと、天くん・・・?」

 

 俺と海未ちゃんが会話していると、曜さんがおずおずと話しかけてきた。

 

 「一応聞いておきたいんだけど・・・そちらの女性は、μ'sの園田海未さんで合ってるんだよね・・・?」

 

 「そうですよ。恥ずかしがり屋のくせに、ステージ上ではメチャクチャ投げキッスしまくってた園田海未ちゃんです」

 

 「その紹介やめてもらえます!?」

 

 「じゃあ、ラブアローシューターの園田海未ちゃんです」

 

 「それもやめて下さい!」

 

 海未ちゃんはコホンッと咳払いをすると、曜さん達の方に向き直った。

 

 「改めまして・・・浦の星女学院に教育実習で参りました、園田海未と申します。高校時代はスクールアイドルグループ・μ'sの一員として活動していました。よろしくお願い致します」

 

 深々と頭を下げる海未ちゃん。

 

 今の自己紹介が、今朝のホームルームで出来てたら良かったのに・・・

 

 「や、やっぱり本物なんですね!」

 

 「あ、あのっ!サインしていただいても良いですか!?」

 

 「わ、私もお願いします!」

 

 「私で良ければ喜んで」

 

 差し出された色紙に、スラスラとサインを書いていく海未ちゃん。色紙なんてどこから持ってきたんだろう・・・

 

 「「「やったぁ!」」」

 

 サインを胸に抱え、大はしゃぎしている三人。ダイヤさんに関しては、もうスクールアイドル好きを隠す気すら無いようだ。

 

 「フフッ、凄い盛り上がりようね」

 

 小原理事長が笑いながらやってくる。

 

 「Surpriseは大成功といったところかしら?」

 

 「帰れ成金」

 

 「相変わらず辛辣ね!?」

 

 涙目の小原理事長。

 

 この人が関わっていることは間違いないので、ここで洗いざらい白状してもらうことにしよう。

 

 「で、どういうことですか?」

 

 「単純な話よ。彼女の方から、『浦の星女学院で教育実習をさせてもらえないか』という打診があったの」

 

 「・・・ホントなの?」

 

 「本当ですよ」

 

 俺の問いに頷く海未ちゃん。

 

 「私は本来、母校である音ノ木坂で教育実習を行うのが普通なのですが・・・やむをえない事情があって、音ノ木坂での教育実習は避けるべきと判断したのです」

 

 「あぁ、ひょっとしてμ'sが有名だから?」

 

 「それもあるのですが・・・それよりさらに重大な問題がありまして・・・」

 

 神妙な表情の海未ちゃん。そんなに重大な問題なんだろうか・・・

 

 「音ノ木坂は・・・生徒数が多すぎて、私の精神が持たないんです」

 

 「教師目指すのやめちまえ」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている海未ちゃん。心配して損したわ・・・

 

 「あれだけの観客を前に歌って踊ってた人が、今さら何『精神が持たない』とか言い始めちゃってんの?」

 

 「あれは九人いたからです!今の私は一人で教壇という名のステージに立ち、一人で授業という名のライブをしなければいけないんですよ!?」

 

 「何ちょっと上手いこと言ってんの?」

 

 っていうか、その道を選んだのは海未ちゃん自身だろうに・・・

 

 「で、生徒数の少ない浦の星を選んだと・・・」

 

 「それもありますが、やはり天がいるというのが大きいですね。理事長からの勧めもありましたし」

 

 「あぁ、あの人経由で打診したのね・・・」

 

 絶対面白がってるよね、あの人・・・

 

 と、俺の制服の裾を誰かが掴んだ。振り向くと、困惑した表情の梨子さんが立っていた。

 

 「ね、ねぇ天くん・・・?園田さんとずいぶん仲が良いみたいだけど・・・あのμ'sのメンバーである園田さんと、一体どういう関係なの・・・?」

 

 「そ、そうずら!何でμ'sのメンバーの人とそんなに親しいずら!?」

 

 「こっちはさっきから、それが気になって仕方ないんだけど!?」

 

 花丸と善子も尋ねてくる。ですよねぇ・・・

 

 「天、彼女達に何も説明していないんですか?」

 

 「いや、自分から言いふらすのも良くないと思って・・・特にここにいる皆は、μ'sのこと知ってるしさぁ・・・」

 

 「あぁ、なるほど・・・とはいえ、もう説明するしかないのでは?こんな状況になってしまいましたし」

 

 「そうだね。海未ちゃんが俺に黙ってここに来なかったら、こんな状況になってないし説明する必要も無かっただろうね」

 

 「すみませんでした」

 

 もの凄いスピードで頭を下げる海未ちゃん。やれやれ・・・

 

 俺は溜め息をつくと、皆の方へと向き直った。

 

 「俺と海未ちゃんがどういった関係なのか・・・それを説明する為にはまず、皆さんに俺の名前を思い出してもらう必要があります」

 

 「名前?」

 

 首を傾げる千歌さん。

 

 「名前って・・・天くんでしょ?」

 

 「千歌さん、俺のフルネームって覚えてます?」

 

 「あっ、バカにしてる!?」

 

 頬を膨らませる千歌さん。

 

 「私だってそれくらい覚えてるよ!『絢瀬』天くんでしょ!?」

 

 「正解です。よく言えました」

 

 千歌さんの頭を撫でる俺。千歌さんの顔がニヤける。

 

 「え、えへへ・・・」

 

 「おーい、千歌ちゃーん?」

 

 「はっ!?」

 

 曜さんの呼びかけで正気に戻る千歌さん。慌てて俺の手を払い除ける。

 

 「そ、そんなのに騙されないんだから!」

 

 「思いっきり騙されてたことは置いといて・・・ダイヤさん、μ'sの中で誰が一番好きなんでしたっけ?」

 

 「エリーチカですわ!アイドルと生徒会長の兼任・・・カッコ良いですわぁ・・・!」

 

 うっとりしているダイヤさん。本当に好きなんだなぁ・・・

 

 「じゃあ、エリーチカのフルネームは言えますか?」

 

 「当然ですわ!エリーチカのフルネームは、『絢瀬』絵里・・・え?」

 

 固まるダイヤさん。他の皆も気付いたのか、小原理事長以外は全員固まってしまった。

 

 「あ、絢瀬・・・?」

 

 「ダイヤさんには、前に言いましたよね。俺には姉が二人いて、上の姉は高校時代に生徒会長を務めていたと」

 

 「ま、まさかっ・・・!?」

 

 「そのまさかです」

 

 俺は苦笑しながら、今まで話すことのなかった事実を告げるのだった。

 

 「μ'sの絢瀬絵里は・・・俺の姉なんですよ」




どうも~、ムッティです。

遂にこの作品にも、μ'sのメンバーが登場する日がやってまいりました!

一人目は海未ちゃんですね。

教育実習生として登場させるというプランは、実は結構前から考えてました。

最初は希ちゃんにしようと思っていたのですが、『ラブライブ!サンシャイン!!』が『ラブライブ!』の五年後らしいんですよね・・・

それだと希ちゃんは既に社会人になってるはずなので、大学四年生になっているはずの海未ちゃんに変更したんです。

同い年の穂乃果ちゃんやことりちゃんも考えましたが、海未ちゃんが一番先生っぽいかなと思いまして。

そして遂に明らかになった事実・・・

いやぁ、まさか天が絵里ちゃんの弟だったとは・・・

・・・はい、皆さん気付いてましたよね(笑)

だって苗字が同じですもんね。

しかもこの間天が、『姉は高校の時に生徒会長だった』って言ってましたもんね。

感想でもたくさん『ハラショー』をいただきました(笑)

教育実習生も絵里ちゃんだろうと、皆さん思われていたかと思いますが・・・

ごめんなさい。絵里ちゃんはまだ登場しません。

希ちゃんと同じで社会人になっている、ということもあるのですが・・・

他にもちょっとした事情がありまして、それは後々明らかになるかと思います。

今後の展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人にはそれぞれの事情というものがある。

7月23日、日間ランキングで15位にランクインしました。

気が付けば、☆評価をしてくださった方が20人もいらっしゃるんですね・・・

本当にありがたいことです。

読者の皆様、いつもありがとうございます。

こんな作品ですが、これからもよろしくお願い致します。


 「エ、エリーチカが・・・!?」

 

 「そ、天くんの・・・!?」

 

 「お、お姉さん・・・!?」

 

 驚愕しているダイヤさん、ルビィ、千歌さん。他の皆も絶句していた。

 

 「う、嘘・・・!?」

 

 「嘘じゃないわ」

 

 善子の呟きに、小原理事長が口を開いた。

 

 「二人は姉弟よ。幼馴染の私が保証するわ」

 

 「私もμ'sのメンバーとして保証します」

 

 海未ちゃんも頷く。

 

 「というか、誰も気付かなかったんですか?苗字が同じなのに」

 

 「いやぁ、全く・・・」

 

 「たまたま同じだけかと・・・」

 

 呆然としながら答える曜さんと梨子さん。まぁ普通はそう思うよね・・・

 

 「じゃあ、天くんがμ'sについて詳しいのって・・・」

 

 「身内がμ'sのメンバーだからね」

 

 花丸の問いに、苦笑しながら答える俺。

 

 「それに俺、μ'sの活動はずっと近くで見てきたんだよ。学校同じだったし」

 

 「学校が同じ・・・?」

 

 首を傾げる千歌さん。

 

 「μ'sが活動してたのは五年前・・・天くんは小学五年生だったはずだよね?っていうか、そもそも音ノ木坂って女子校のはずじゃ・・・」

 

 「あっ・・・!?」

 

 梨子さんが何かに気付いたように声を上げた。

 

 「まさか天くん、中学まで音ノ木坂にいたの!?」

 

 「そういうことです」

 

 「梨子ちゃん、どういうこと?」

 

 「音ノ木坂って、幼稚園から大学院まで存在するのよ。中学までは共学で、女子校になるのは高校からなの」

 

 説明してくれる梨子さん。

 

 「だから男子生徒は中学までしか上がれなくて、高校は外部を受験する必要があるんだけど・・・天くんもその内の一人だったのね」

 

 「えぇ。なので俺が中三だった去年、高一だった梨子さんとどこかですれ違ってたかもしれませんね」

 

 まぁそれはさておき、話を続けることにする。

 

 「姉がμ'sのメンバーで、学校も同じ・・・μ'sの存在が身近にあった俺は、μ'sの活動をすぐ側で見てきました。だからμ'sのことは勿論、スクールアイドルやラブライブについてもよく知っているというわけです」

 

 「そうだったのですね・・・ん?」

 

 そこで首を傾げるダイヤさん。

 

 「そういえば天さん、前に仰ってましわよね?中学の理事長さんから、浦の星のテスト生の話を持ちかけられたと」

 

 「えぇ、言いましたね」

 

 「そして天さんは中学まで、音ノ木坂に通っていたと・・・」

 

 「そうですね」

 

 「つまり天さんの中学の理事長さんは、音ノ木坂の理事長さん・・・ということは、まさか・・・!」

 

 青ざめるダイヤさん。

 

 「μ'sのメンバーの一人・・・南ことりさんのお母様のことですの!?」

 

 「その通りです」

 

 頷く俺。あの人には、昔からお世話になってるんだよなぁ・・・

 

 「まぁまさか俺だけじゃなくて、海未ちゃんまでこっちに寄越すとは思ってませんでしたけど・・・小原理事長、あの人とどういう繋がりがあるんですか?」

 

 「フフッ、小原家のConnectionよ」

 

 「・・・何かもう怖いわ小原家」

 

 思わず呆れてしまう。何なんだ、この成金一族は・・・

 

 「まぁいいや・・・ところで海未ちゃん、教育実習ってどれくらいの期間なの?」

 

 「二、三週間といったところですけど・・・それが何か?」

 

 「いや、住む場所どうするの?まさか毎日東京と内浦を往復するわけじゃないよね?」

 

 「あぁ、それでしたら問題ありません。天の家に住みますので」

 

 「あぁ、なるほど。それなら問題ない・・・は?」

 

 ん?今何かスルーしてはいけないことを聞いた気がする・・・

 

 「聞き間違いかな・・・俺の家に住むって言った?」

 

 「言いましたよ。最初からそのつもりで来ましたし」

 

 「俺の意見は!?」

 

 「天が断るわけないじゃないですか。天と私の仲ですよ?」

 

 「まさかの決め付け!?っていうかどんな仲!?」

 

 「当時は空(天)と海(海未)コンビとして、よろしくしあった仲じゃないですか」

 

 「そのダサいコンビ名止めてくんない!?」

 

 「ダサいってなんですか!」

 

 ギャーギャー言い合う俺達を、皆がポカーンと眺めていた。

 

 「な、仲良いね・・・」

 

 「天くんがこんなにツッコミに回ってるところ、初めて見たかも・・・」

 

 「確かにそうね・・・」

 

 「あの天をツッコミに回すだなんて・・・」

 

 「園田海未さん、恐ろしい人ずら・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 よく聞こえないけど、凄く心外なことを言われている気がする。一方・・・

 

 「あの園田海未さんと、これから毎日会える・・・フフッ・・・フフフッ・・・!」

 

 不気味に笑っているダイヤさん。何あの人、怖いんだけど。

 

 「そういうわけだから天、教育実習生さんをよろしくデース♪」

 

 「黙れおっぱいお化け。もぎ取るぞ」

 

 「何を!?」

 

 「大体男と一緒に住むとか、海未ちゃんなら『ふしだらです!』とか『破廉恥です!』とか言うところじゃないの!?」

 

 「天は弟みたいなものなので大丈夫です」

 

 「ラブアローシューターが姉とか嫌だわ!」

 

 「それはやめて下さいって言ってるでしょうが!」

 

 再び言い合う俺達なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「それにしても、本当にビックリしたなぁ・・・」

 

 千歌ちゃんが呟く。千歌ちゃんと私は、バスを降りて帰り道を歩いていた。

 

 「まさかμ'sの園田海未さんに会えるなんて・・・しかも天くんのお姉さんが、あの絢瀬絵里さんだったとは・・・」

 

 「驚いたわよねぇ・・・」

 

 確かに衝撃だった。スクールアイドルを始めてからというもの、私もμ'sについて色々調べたので少しは詳しくなった自信がある。

 

 そのμ'sのメンバーに会えた上に、天くんのお姉さんもμ'sのメンバーであることが分かったのだ。まさかこんな形で関わることになるなんて、思ってもみなかった。

 

 「でも天くん、何で黙ってたんだろう?」

 

 「μ'sのファンである千歌ちゃん達に言ったら、大騒ぎになるからでしょ?」

 

 「うっ・・・否定できない・・・」

 

 千歌ちゃんが苦い顔をする中、私は別のことが気になっていた。

 

 「・・・本当に、身内がμ'sのメンバーっていうだけなのかな?」

 

 「え?」

 

 「天くんと園田さん、凄く仲良かったじゃない。あれは単なる知り合いっていうより、もっと関わりが深いような気がするのよね」

 

 それだけじゃない。前に鞠莉さんが言ってたセリフ・・・

 

 

 

 

 

 『スクールアイドルのマネージャーなんて・・・天にはお手の物でしょう?』

 

 

 

 

 

 「まさか・・・」

 

 ある可能性に思い至っていると、千歌ちゃんが顔を覗き込んできた。

 

 「梨子ちゃん・・・もしかして、嫉妬してる?」

 

 「はい!?」

 

 「なるほど、天くんと園田さんの仲の良さを見て妬いちゃったのかぁ・・・天くんも罪な男だねぇ」

 

 「ち、違うから!そんなんじゃないから!」

 

 「あ、照れてる!可愛い!」

 

 「違うって言ってるでしょ!?」

 

 逃げる千歌ちゃんを、顔を真っ赤にしながら追いかける私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ここが天の家ですか・・・?」

 

 「そうだよ」

 

 驚いている海未ちゃんに、苦笑しながら答える俺。

 

 俺が住んでいる家は、アパートやマンションではなく平屋建ての一軒家だ。千歌さんや梨子さんの家より、もう少し歩いたところにある。

 

 「浦の星にテスト生として入学することになった時、学校側が手配してくれたんだよ。前の住人が引っ越してから、しばらくの間誰も使ってなかったんだって。ここだったら家賃も払わなくて大丈夫だから、好きに使って良いってさ」

 

 「そ、そんな都合の良い話ってあります・・・?」

 

 「俺も最初は半信半疑だったんだけどさぁ・・・理事長があの人だって分かって、何か色々納得しちゃったよね」

 

 「あぁ、なるほど・・・」

 

 恐らく、手配してくれたのは小原理事長・・・というか小原家だろうな。

 

 小原家の力が働いているのなら、こんな都合の良い話があっても納得できてしまう。現役女子高生理事長を誕生させちゃうぐらいだし。

 

 「中も広いですね・・・ここで一人暮らししてるんですか?」

 

 「まぁね。なかなか贅沢だと自分でも思うよ」

 

 完全にファミリー向けの家だもんな、ここ・・・

 

 どう見ても一人暮らし向けの家ではない。俺と海未ちゃんの二人で住んでも、まだまだ余裕たっぷりだ。

 

 「でも安心しました。私はてっきり狭いアパートで、ひもじい思いをしながら暮らしているのではないかと・・・」

 

 「そんな生活を強要されてたら、とっくの昔に東京に帰ってるわ」

 

 思った以上に酷い想像をされていたらしい。やれやれ・・・

 

 「それでは、しばらくの間お世話になりますね」

 

 「はいはい・・・っていうか、そろそろ教えてくれても良いんじゃない?」

 

 「教える?何をですか?」

 

 「海未ちゃんが浦の星に来た本当の理由を、だよ」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑む海未ちゃん。やっぱりか・・・

 

 「確かに海未ちゃんは緊張しやすいタイプだけど、『人が多いから』なんていう理由で音ノ木坂を避けたりしないでしょ。むしろ母校の方が安心するだろうし、縁もゆかりもない浦の星を選ぶ理由は無い。あるとすれば・・・俺に用があったんじゃないの?」

 

 「・・・その察しの良さ、相変わらずですね」

 

 溜め息をつく海未ちゃん。

 

 「確かに、そんな理由で浦の星に来たわけではありません。μ'sのメンバーである私が音ノ木坂に行くことで、混乱を招いてしまう恐れがあることを考慮したのもありますが・・・一番の理由は仰る通り、貴方に用があったからですよ」

 

 「わざわざ教育実習で来なくても、プライベートで来れば良いのに・・・」

 

 「私が一番見たかったのは、学校での天ですからね。貴方が浦の星でどのような学校生活を送っているのか、自分の目で確かめたかったんですよ」

 

 苦笑する海未ちゃん。

 

 「だって気になるじゃないですか。何しろ天は・・・絵里と大喧嘩してまで、浦の星にテスト生として入学する道を選んだんですから」

 

 「・・・それで南理事長に頼んで、浦の星で教育実習を受けさせてもらえるよう小原理事長に掛け合ったの?」

 

 「その通りです」

 

 頷く海未ちゃん。

 

 「浦の星に来て驚きましたよ。まさか天が・・・スクールアイドルグループのマネージャーをやっているだなんて」

 

 「っ・・・」

 

 「経緯は黒澤生徒会長に伺いましたが、小原理事長に脅されたそうですね。高海さん達の為に、仕方なくマネージャーを引き受けたのでしょう?」

 

 俺を見つめる海未ちゃん。俺は海未ちゃんの顔を見ることが出来なかった。

 

 「これでは、天も絵里も浮かばれません・・・私が小原理事長に直談判して、スクールアイドル部の立場を保障させます。ですから・・・」

 

 涙を浮かべ、俺の手を握る海未ちゃん。

 

 「帰って来て下さい、天・・・絵里も亜里沙も、μ'sの皆も・・・貴方の帰りを待っているんですよ」

 

 海未ちゃんの切実な願いに、何も返すことが出来ない俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、天の立場が明らかになったわけですが・・・

ここで少し説明させていただきますと、この作品での音ノ木坂は幼稚園から大学院まで存在することになっています。

『え、じゃあ何で高校だけ廃校の危機に陥ったの?』

『中学まで共学なのに、高校から女子校ってマジ?』

等の疑問は勘弁してください(泣)

そういう設定なんです(泣)

まぁとにかく、実は天は音ノ木坂に通ってましたというお話でした。

さて、物語はどう動いていくのか・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真剣な気持ちには真剣に向き合うべきである。

凄く今さらですけど、逢田梨香子さんの『ORDINARY LOVE』ってメッチャ良い曲ですよね。

最近メッチャ聴いてます。


 翌日・・・

 

 「・・・ん・・・さん・・・天さんっ!」

 

 「へっ?」

 

 生徒会の仕事中、名前を呼ばれてハッと我に返る。顔を上げると、ダイヤさんが心配そうにこちらを見ていた。

 

 「大丈夫ですの?心ここにあらず、といった様子でしたが・・・」

 

 「あぁ、すみません・・・少しボーっとしてました」

 

 ダイヤさんに謝る俺。仕事に集中しないといけないのに・・・

 

 「・・・少し休憩しましょう。今お茶を淹れますわ」

 

 「あ、それなら俺が・・・」

 

 「私がやりますわ」

 

 腰を浮かせた俺を押し留めるダイヤさん。

 

 「いつも天さんに淹れていただいてますから。たまには私にやらせて下さいな」

 

 「・・・すみません。お願いします」

 

 大人しく椅子に座る俺。気を遣わせてしまったな・・・

 

 「はい、どうぞ」

 

 「ありがとうございます」

 

 ダイヤさんの淹れてくれたお茶を飲む。少し心が落ち着いた気がした。

 

 「そういえば今日、スクールアイドル部の方で何かあるのですか?ルビィから『今日は帰りが遅くなる』と連絡がありましたが・・・」

 

 「PVを作るそうですよ。内浦の良いところを紹介して、浦の星の入学希望者を増やそうとしてるみたいです」

 

 内浦のことをよく知らない人は多いだろうし、PVを作って内浦のことを知ってもらうというのは良いアイデアだと思う。

 

 内浦のことを知ってもらえれば、浦の星にも興味を持ってもらえるかもしれないし。

 

 「PVですか・・・よく思いつきましたわね」

 

 「海未ちゃんが助言したみたいですよ。当時のμ'sがやっていたことを、千歌さん達に教えたみたいです」

 

 「あぁ、なるほど」

 

 納得するダイヤさん。

 

 スクールアイドル部のメンバーと海未ちゃんの距離は、今日一日でだいぶ縮まっていた。花丸・ルビィ・善子は休み時間になると積極的に質問しに行っていたし、昼休みには千歌さん・曜さん・梨子さんも加わって一緒に昼ご飯を食べたりもした。

 

 海未ちゃんも皆が話しかけてきてくれるのが嬉しかったみたいで、嬉々として質問に答えたりμ'sとして活動していた頃の話をしたりしていた。

 

 「今日一日見てて思いましたけど、海未ちゃんは教師に向いてますね。生徒に対して真摯に向き合ってくれるところとか、海未ちゃんらしいなって思いますもん」

 

 メンタルの弱いところはあるけれど、真っ直ぐで誠実な人・・・それが海未ちゃんだ。きっと良い教師になってくれるだろう。

 

 「ホント・・・俺なんかに構ってないで、素直に音ノ木坂で教育実習を受けさせてもらえば良かったのに・・・」

 

 「・・・園田先生は、天さんを大切に思っていらっしゃるのだと思いますよ」

 

 「え・・・?」

 

 ダイヤさんが優しい表情で俺を見ていた。

 

 「園田先生だって、母校で教育実習を受けることを第一に考えていたと思います。それでも、あえて浦の星を選んだ・・・それは園田先生にとって、天さんの存在が大きかったからではないでしょうか」

 

 「ダイヤさん・・・まさか、海未ちゃんの嘘に気付いて・・・?」

 

 「μ'sは音ノ木坂を救う為に結成されたグループですわよ?それほど音ノ木坂を大切に思われている方が、あのような理由で母校での教育実習を避けるはずありませんわ」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「それでも園田先生は、母校よりも天さんのいる浦の星を選んだのです。よほど天さんを大切に思っていないかぎり、そんな選択はしませんわ」

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 「昨日園田先生と何を話されたのか、一体何があったのか・・・私には分かりません。私に言えることは唯一つ・・・園田先生の気持ちに向き合ってあげて下さい。天さんなら、それが出来るはずですわ」

 

 「・・・はい。ありがとうございます、ダイヤさん」

 

 ホント、この人には敵わないな・・・

 

 優しく微笑むダイヤさんを見て、心からそう思う俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「今日も疲れましたぁ・・・」

 

 ソファにぐでーんと寝そべる海未ちゃん。昨日来たばかりだというのに、もうすっかり我が家のように寛いでいる。

 

 「とても名家の娘とは思えないだらけっぷりだね・・・」

 

 「家でまで肩肘張った生活をしていたら、身体がもちませんから」

 

 苦笑する海未ちゃん。なるほど・・・

 

 そういえば、前に果南さんと名家の娘についての話をしたことがあったな・・・せっかくだし聞いてみるか。

 

 「名家の娘っていえば、ダイヤさんとルビィもそうなんだけどさ。ルビィはともかく、ダイヤさんは少し頑なというか・・・それこそ、肩肘張って生きてるところがある気がするんだよね」

 

 「あぁ、彼女はそういうタイプでしょうね」

 

 頷く海未ちゃん。

 

 「家の名に恥じない振る舞いを心がけないといけない・・・その気持ちは私もよく分かります。人前で肩の力を抜けないんですよね。だからこそ一人の時や、心を許せる人の前では肩の力を抜きたくなるんですよ」

 

 「あぁ、身体がリラックスを求めてるのね」

 

 「そういうことです。ですので人前で肩の力を抜くという生き方は、私も無理ですし彼女も無理でしょうね。勿論その分、リラックス出来る時間というものを大切にしていますのでご心配なく」

 

 「へぇ・・・」

 

 なるほどねぇ・・・今度果南さんにも教えてあげよう。

 

 「私が見た感じでは、ルビィと小原理事長・・・それと天、貴方の前でも黒澤生徒会長は肩の力を抜いていましたね」

 

 「え、ホント?」

 

 「えぇ。私は彼女と似たような立場ですから、見れば何となく分かります。天と話している時の彼女は、全体的に物腰が柔らかいといいますか・・・いつもの真面目で堅苦しい感じではなく、お茶目で柔和な感じの印象を受けました。心を許していない相手に、あの態度はとれないと思いますよ。それこそ、私達のような人間は特に」

 

 「そっか・・・それは嬉しいな」

 

 「むっ・・・」

 

 何故か少し不機嫌になった海未ちゃんが、後ろから俺に抱きついてくる。

 

 「私だって、天に心を許してるんですからね!」

 

 「はいはい、ありがとね」

 

 「軽くないですか!?」

 

 「アハハ、そんなことないよ」

 

 俺のお腹に回された海未ちゃんの両手に、自分の両手を重ねる。

 

 「・・・ありがとね、海未ちゃん。大事な教育実習の機会を、俺の為に使ってくれて」

 

 「天・・・」

 

 「でも・・・ゴメン。今は戻るつもりはない」

 

 昨日の海未ちゃんの願いには応えられない・・・俺はそのことを詫びた。

 

 「今はまだ、やらなきゃいけないことがある。小原理事長から脅されたとはいえ、今の俺はAqoursのマネージャーだから。最低限の責務は果たさないといけないんだよ」

 

 まだAqoursは始まったばかり・・・ここで彼女達を見捨てることは出来ないのだ。

 

 「それを果たしたら、帰って来てくれるんですか?」

 

 「・・・そのつもりでいるよ」

 

 「絵里とも仲直りしてくれるんですか?」

 

 「それは・・・あの人の態度次第かな」

 

 「・・・フフッ」

 

 小さく笑みを溢す海未ちゃん。

 

 「本当に・・・似てますね、貴方達は」

 

 「・・・俺はあんなに頭の固い人間じゃないつもりなんだけど」

 

 「いえ、天も十分頑固だと思います」

 

 「マジかぁ・・・」

 

 軽く凹んでいると、海未ちゃんがクスクス笑っていた。

 

 「フフッ、凹まないで下さいよ。天のそういうところ、私は好きなんですから」

 

 海未ちゃんはそう言うと、俺を抱き締める腕に力を込めた。

 

 「・・・待ってますからね、天」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 海未ちゃんの呟きに、小さく頷く俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

鈴木愛奈さん、ソロデビューおめでとうございます!

個人的にあいにゃさんの歌声が凄く好きなので、これは本当に楽しみ!

っていうか、最近あいにゃさんに凄く惹かれている自分がいる・・・

だがしかし、そのあいにゃさんが演じている鞠莉ちゃんを悪役風にしてしまっている件について・・・

感想でも『和解してほしい』というお声をたくさんいただきました。

いずれ和解させますので、しばしお待ちを(>_<)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

有り得ないなんて事は有り得ない。

タイトルは『鋼の錬金術師』に登場するグリードのセリフから取りました。

有り得ないなんてことは有り得ない、なんてことは有り得ない・・・って無限ループしそうなセリフではありますが(笑)

まぁ要はどんなことでも起こり得るし、『絶対』は無いということですね。

ちなみに自分がハガレンの中で好きなキャラはランファンです。


 翌日・・・

 

 『以上、頑張ルビィ!こと黒澤ルビィがお伝えしました!』

 

 理事長室にて、千歌さん達が製作したPVを見ている俺達。

 

 これは・・・

 

 「よく伝わりますね・・・ルビィの可愛さが」

 

 「「「「「そっち!?」」」」」

 

 「いやぁ、そんなぁ・・・」

 

 照れているルビィ。いや、照れてる場合じゃないよルビィ・・・

 

 「海未ちゃん、どう思う?」

 

 「いや、どう思うと聞かれても・・・」

 

 返答に困る海未ちゃん。まぁそうだよね・・・

 

 「や、やっぱりイマイチ・・・?」

 

 「・・・良い出来映え、とは言えませんね」

 

 「・・・だよねぇ」

 

 俺の一言に、ガックリと肩を落とす千歌さん。自分でも分かっていたらしい。

 

 「なかなか上手くいかなくて・・・PVって難しいね」

 

 「経験者として、それは分かります」

 

 頷いている海未ちゃん。俺は小原理事長へ視線を移した。

 

 「小原理事長はどう思いますか?」

 

 「・・・すぴー・・・すぴー・・・」

 

 「”●砕”」

 

 「痛ぁっ!?」

 

 足を高く上げ、小原理事長の頭目掛けてかかとを振り下ろす。椅子から飛び上がり、頭を押さえながら痛みに悶える小原理事長。

 

 「ちょっと天!?何するのよ!?」

 

 「どうも、黒足の絢瀬です」

 

 「どこのサ●ジ!?理事長に暴力だなんて、普通なら退学ものよ!?」

 

 「出来るもんならやってみて下さいよ。俺を利用する為にこの学校に呼んだのは、一体誰でしたっけ?」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる小原理事長。と、ここで千歌さんが抗議の声を上げる。

 

 「何で寝てるんですか!本気なんですから、ちゃんと見て下さい!」

 

 「・・・本気?」

 

 小原理事長の表情が変わった。今までのおちゃらけたものとは違う、冷たい表情だ。

 

 「・・・それでこの体たらくですか?」

 

 「ちょっと!?それは酷くないですか!?」

 

 「そうです!これだけ作るのがどれほど大変だったと思ってるんですか!」

 

 「努力の量と結果は比例しませんッ!」

 

 曜さんと梨子さんが反論するも、一言で黙らせる小原理事長。

 

 「大切なのは、このTownやSchoolの魅力をちゃんと理解しているかですッ!」

 

 「小原理事長、流石に言い過ぎなのでは・・・」

 

 「海未ちゃん」

 

 海未ちゃんが間に入ろうとするのを、手を掴んで引き止める。

 

 言い方は厳しいが、今回ばかりは小原理事長が正しい。確かにこのPVを作る為に、千歌さん達は一生懸命頑張ったんだと思う。

 

 それでも出来上がったPVは、内浦の魅力を伝えるには不十分と言わざるをえないものだった。『努力したからそれで良い』という話ではないのだ。

 

 「それってつまり・・・」

 

 「私達が理解していないということですか・・・?」

 

 「じゃあ理事長は、魅力が分かってるってこと・・・?」

 

 ルビィ・花丸・善子に対し、小原理事長は不敵な笑みを浮かべた。

 

 「少なくとも、貴女達よりはね・・・聞きたいですか?」

 

 「結構です」

 

 即座に断る千歌さん。

 

 「そういう大切なことは、自分で気付けなきゃ意味無いですから・・・皆、行こう」

 

 曜さん達を連れ、理事長室から出て行く千歌さん。俺も後に続こうとするが、海未ちゃんはその場から動こうとしなかった。

 

 「海未ちゃん?行かないの?」

 

 「先に行って下さい。私は小原理事長にお話がありますので」

 

 「・・・分かった。程々にね」

 

 海未ちゃんの心情を察した俺は、それだけ忠告して理事長室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《鞠莉視点》

 

 「それで?話って何かしら?」

 

 園田先生に尋ねる私。

 

 年齢は彼女の方が上だけれど、立場は私の方が上・・・彼女は理事長としての私に話があるようだし、それなら私も理事長として接するべきだ。

 

 ここは敬語を使わず、堂々としているべきだろう。

 

 「今のPVの件なら、私は間違ったことは言ってないつもり・・・」

 

 「・・・少し黙りなさい」

 

 「っ!?」

 

 底冷えするような低い声に、私はゾッとしてしまった。こちらを射抜くような鋭い眼光に、思わず身体が固まってしまう。

 

 「今の件についても言いたいことはありますが、天に止められてしまったので何も言わないでおきます。それより・・・話というのは天のことです」

 

 私を睨み付ける園田先生。

 

 「貴女が天を脅したことは、黒澤生徒会長から聞いています。本来であれば、私としても黙って見過ごすつもりなどありませんでしたが・・・天は引き続き、Aqoursを支えるつもりだと言っていました。それが天の意思である以上、私が出しゃばることは出来ません。ですが・・・」

 

 園田先生は私の目の前に立つと、執務用の机を思いっきり叩いた。大きな音に、身体がビクッと反応してしまう。

 

 「これ以上、天を傷付けたり苦しめたりするようであれば・・・私は勿論、μ'sのメンバー達が黙ってはいません。特に絵里が、どれほど天を大切に思っているか・・・幼馴染の貴女が、知らないはずありませんよね?」

 

 園田先生はそう言うと、踵を返して出口へと歩いていった。

 

 「貴女にどのような思惑があるのか知りませんが・・・天を脅してAqoursのマネージャーをやらせたことを、後悔する日が必ずやって来ます。その時に思い知るといいでしょう・・・自分のやったことが、どれほど罪深いことなのかを」

 

 それだけ言い残し、園田先生は理事長室から出て行った。その瞬間、何かから解放されたように身体の力が一気に抜ける。

 

 「後悔か・・・そんなもの・・・とっくにしてるわよっ・・・」

 

 涙で視界が滲む中、思わず本音を呟いてしまう私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「魅力かぁ・・・」

 

 部室の椅子に座り、考え事に耽る俺。

 

 千歌さん達は作戦会議をするとのことで、最早スクールアイドル部の溜まり場となっている千歌さんの家へと向かった。

 

 俺も誘われたのだが、少し一人で考えたかったので断ったのだ。

 

 「っていうか、海未ちゃん大丈夫かなぁ・・・」

 

 理事長室を出る時に顔を見たけど、完全に目が据わってたもんなぁ・・・

 

 あれは海未ちゃんがガチでキレている時にする目だ。あの目で睨まれたら最後、身体が固まって動かなくなってしまうのだ。

 

 ちなみにソースは俺。ガチでキレた時の海未ちゃんは、μ'sの中の誰よりも怖いのである。

 

 「・・・まぁ、大丈夫か」

 

 相手は仮にも理事長だし、海未ちゃんも少しは自重するだろう。それより、PVについて考えないと・・・

 

 そう思っていた時、体育館の方から音がすることに気付いた。

 

 「誰かいる・・・?」

 

 今日はどこの部も体育館を使っていないはずだけどな・・・

 

 部室を出て体育館を覗いてみると、体育館のステージ上で踊るダイヤさんの姿があった。

 

 「ダイヤさん・・・?」

 

 あのダイヤさんが、体育館のステージ上で踊っている。それにしても・・・

 

 「・・・凄いな」

 

 優雅で美しいダイヤさんの踊りに、俺は釘付けになっていた。

 

 『踊り』というより、これは『舞い』と言った方が良いかもしれない。見る者をここまで魅了するなんて・・・

 

 そのまま夢中になって見ていると、ダイヤさんが俺の存在に気付いた。

 

 「そ、天さんっ!?」

 

 みるみる顔が赤くなっていく。まさか見られているとは思わなかったらしい。

 

 「い、いつからそこに!?」

 

 「少し前からです。そこからずっと、ダイヤさんに見惚れてました」

 

 「み、見惚れっ・・・!?」

 

 耳まで真っ赤になるダイヤさん。可愛いなぁ・・・

 

 「凄いですね、ダイヤさん。思わず引き込まれちゃいましたよ」

 

 「ま、まぁダンスには少し自信があるので・・・」

 

 照れ笑いを浮かべるダイヤさん。

 

 「とはいえ、もう披露する機会もありませんから・・・」

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 恐らく千歌さんならここで、『一緒にスクールアイドルやりませんか?』と声をかけるだろう。

 

 だが、それに対するダイヤさんの答えはノーだ。何故なら・・・

 

 「・・・果南さんや小原理事長と、また一緒にスクールアイドルをやりたいですか?」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むダイヤさん。

 

 これがダイヤさんの答え・・・二人が一緒でなければ、スクールアイドルはやらない。この答えが覆ることはないだろう。

 

 だったら・・・

 

 「もし果南さんと小原理事長が、もう一度スクールアイドルをやると言ったら・・・ダイヤさんもやりますか?」

 

 「・・・有り得ませんわ」

 

 俯くダイヤさん。

 

 「鞠莉さんは乗り気のようですが・・・果南さんが再びスクールアイドルをやることはないでしょう。果南さんの意思は固いですから」

 

 「今はあの二人の意思はどうでもいいです」

 

 バッサリ切り捨てる俺。ダイヤさんが目を見開いて驚く。

 

 「俺が聞いているのは、ダイヤさんの意思です。もう一度聞きますが・・・あの二人がもう一度スクールアイドルをやると言ったら、ダイヤさんもやりますか?」

 

 「・・・やりますわ」

 

 目に涙を浮かべているダイヤさん。

 

 「私はもう一度・・・果南さんと鞠莉さんと・・・一緒にスクールアイドルがやりたいですわ・・・!」

 

 「・・・それが貴女の本音ですか」

 

 二年前、何故Aqoursが解散したのかは分からない。ただ現状から推測すると、恐らく原因は果南さんと小原理事長にある。

 

 何があったかは知らないが、ダイヤさんとしては解散なんてしたくなかったんだろうな・・・

 

 「・・・その思い、大切にして下さい」

 

 「え・・・?」

 

 呆然とするダイヤさんに、俺は微笑んだ。

 

 「ダイヤさんは、千歌さんがスクールアイドル部を設立すると宣言した時・・・ここまで来るなんて予想してましたか?」

 

 「・・・正直、無理だと思ってましたわ」

 

 「まぁ、普通はそう思いますよね」

 

 階段を上り、ステージに上がる俺。

 

 「でもここまで来た。曜さんや梨子さん、ルビィと花丸、それに善子・・・一緒に輝きを目指す仲間を集めて、ここまで来たんですよ」

 

 そう、ここまでの流れはまるで・・・

 

 「μ'sみたいだな・・・それが俺の感想です」

 

 「μ's・・・ですか?」

 

 「えぇ。最初は穂乃果ちゃんがスクールアイドルをやると宣言して、幼馴染のことりちゃんや海未ちゃんがそれに賛同して。そこから仲間が増えていき、μ'sになったんです。ラブライブで優勝するほどのグループになるなんて、あの時は想像もしてませんでした」

 

 いつだって彼女達は、俺の想像を遥かに超える活躍を見せてくれた。周りを巻き込み、スクールアイドルブームを巻き起こしたのだ。

 

 その中心にいたのは、紛れも無くリーダーの穂乃果ちゃんだった。

 

 「穂乃果ちゃんと千歌さんって、どことなく似てるところがあるというか・・・何かやってくれそうな雰囲気があるんですよね。その千歌さんが今、周りを巻き込みながらスクールアイドルをやっている・・・可能性はあると思いません?」

 

 「私達が、再び一緒にスクールアイドルをやれる可能性・・・ですか?」

 

 「えぇ。あの人のことですから、そのうちダイヤさん達をも巻き込むことになるでしょう。意思が固いという果南さんだって、心が動くこともあるかもしれません」

 

 「そんなこと・・・」

 

 「有り得ないと決め付けるのは勿体ないですよ」

 

 俺はダイヤさんを真っ直ぐ見つめた。

 

 「だからその気持ち、絶対に捨てないで下さい。今の果南さんと小原理事長を繋いでいるのは、ダイヤさんなんですから」

 

 「天さん・・・」

 

 俺はそれだけ言うとステージを降り、ダイヤさんに一礼して体育館を後にする。

 

 最後に見たダイヤさんの瞳は、大きく揺れ動いていたのだった。




どうも~、ムッティです。

暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

自分は暑くて死にそうになってます(´д`|||)

実は春夏秋冬の中で、夏が一番嫌いです。

とにかく暑いのが苦手でして・・・

逆に寒い方が好きなので、一番好きな季節は冬です。

好きな順でいうと、冬→秋→春→夏ですかね。

皆さんの好きな季節はいつでしょうか?

・・・作品と全く関係ない話でしたね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ここにしかない魅力がある。

映画『天気の子』を観てきました。

凄く良い映画でした。

物語も良いし画も綺麗だし、流石は新海監督だなと思いました。

とりあえず、陽菜ちゃんと夏美さんが可愛かった( ´∀`)


 翌朝・・・

 

 「・・・ん」

 

 鳴り響く目覚ましのアラームを止め、俺は上半身を起こした。

 

 「・・・眠い」

 

 欠伸をしながら、思いっきり身体を伸ばす。

 

 昨日は結局、この町や学校の魅力についての答えは出なかった。勿論良いところは思いつくのだが、外の人達に興味を持ってもらえるような魅力となると・・・

 

 「難しいなぁ・・・」

 

 溜め息をつきながら、隣の布団で寝ている海未ちゃんを眺める。すやすやと安らかな寝息を立て、穏やかに眠っていた。

 

 「・・・幸せそうだなぁ」

 

 苦笑しながら、海未ちゃんの頭を撫でる。ふと時計を見ると、3時半を過ぎていた。

 

 「・・・そろそろ起きないと」

 

 いつもより全然早い時間ではあるが、今日は早起きしないといけない理由があるのだ。俺は海未ちゃんの身体を優しく揺り動かした。

 

 「海未ちゃん、起きて」

 

 「んんぅ・・・」

 

 ゆっくりと目を開ける海未ちゃん。俺へと視線を向ける。

 

 「天ぁ・・・?」

 

 「おはよう、海未ちゃん。時間だよ」

 

 微笑む俺。

 

 「早く支度して、海に行こう?」

 

 「・・・海未は私ですが?」

 

 「そのボケ懐かしいね」

 

 俺が苦笑していると、海未ちゃんがハッとした表情を浮かべる。

 

 「もしかして・・・私は今、夜這いされているのでは!?」

 

 「“檸檬●弾”」

 

 「ギャアアアアアッ!?目がッ!?目があああああッ!?」

 

 海未ちゃんの顔の上でレモンを握り潰す俺。海未ちゃんの悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「うぅ、天ぁ・・・待って下さいよぉ・・・」

 

 しきりに目を擦りながら、俺の後をヨタヨタと追いかけてくる海未ちゃん。先ほどのレモンの果汁が、よほど目に染みたらしい。

 

 「早く歩きなよ、ムッツリスケベ」

 

 「ちょっと!?女子に向かって何てこと言うんですか!?」

 

 「『夜這い』とか想像してる時点で言い返せないでしょ」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる海未ちゃん。

 

 「ほら、早く行くよ。集合時間に遅れちゃう」

 

 「あ、待って下さいってば!」

 

 小走りで俺の隣に並ぶ海未ちゃん。

 

 そのまま少し歩くと、『十千万』の前に千歌さんと梨子さんが立っているのが見えた。

 

 「あ、天くん!海未先生!」

 

 こちらに向かってブンブン手を振る千歌さん。朝早くから元気だなぁ・・・

 

 「おはようございます。お二人とも早いですね」

 

 「おかげで眠いけどねぇ・・・」

 

 欠伸を噛み殺す梨子さん。まぁ、まだ日も昇ってないしな・・・

 

 「千歌、海開きってこんなに朝早くからやるものなんですか?」

 

 「そうですよ」

 

 海未ちゃんの質問に、笑顔で答える千歌さん。

 

 今日は海開きということで、早朝からこの町の人達が集まって海辺のゴミ拾い等をやるらしい。毎年の恒例行事なんだそうだ。

 

 「さて、私達も行きましょうか!」

 

 「行ってらっしゃい。俺は『十千万』でもう一度寝てきます」

 

 「天くん!?何で行く気ゼロなの!?」

 

 「海を開く以前に、俺の目が開く時間じゃないんで」

 

 「何ちょっと上手いこと言ってるの!?」

 

 「「同じく」」

 

 「梨子ちゃん!?海未先生!?」

 

 朝からツッコミを連発する千歌さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「「「おぉ・・・」」」

 

 感嘆の声を上げる俺・梨子さん・海未ちゃん。既に海辺には、たくさんの人達が集まってゴミ拾いをしていた。

 

 「この町、こんなに人がいたんだね・・・」

 

 「えぇ、驚きました・・・」

 

 海未ちゃんとそんな会話をしていると・・・

 

 「おはようのハグっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなり背後から抱きつかれる。こんなことをしてくる人を、俺は一人しか知らない。

 

 「おはようございます、果南さん」

 

 「おはよー!」

 

 果南さんは元気よく挨拶すると、そのまま俺をギュっと抱き締めてきた。

 

 「果南さん、いつもよりテンション高くないですか?」

 

 「だって海開きだよ?そりゃあテンションも上がるよ!」

 

 「本当に海が大好きですよね、果南さんって」

 

 苦笑していると、海未ちゃんが驚愕の表情でこっちを見ていた。

 

 「そ、天に抱きついて・・・まさか、天に恋人が・・・!?」

 

 「いや、違うんだけど」

 

 「初めまして、天の恋人の松浦果南です♪」

 

 「悪ノリするの止めてもらえます?海未ちゃんは果南さんと違って純粋なんで、冗談とかすぐ信じちゃうんですから」

 

 「ちょっと!?人が純粋じゃないみたいに言わないでよ!?」

 

 「こうしてはいられません!急いで皆に伝えないと!」

 

 「“檸●爆弾”」

 

 「ギャアアアアアッ!?目がッ!?目があああああッ!?」

 

 慌ててスマホを取り出した海未ちゃんの顔の前で、思いっきりレモンを握り潰した。再び悲鳴を上げる海未ちゃん。

 

 「よ、容赦ないわね・・・」

 

 「これくらいしないと、海未ちゃんは止められないんで」

 

 若干引き気味の梨子さんに対し、溜め息をつきながら答える俺。

 

 「そういえば、千歌さんはどこに行ったんですか?」

 

 「あそこで曜ちゃんとゴミ拾い始めてるわよ」

 

 梨子さんの指差した先では、千歌さんと曜さんが談笑しながらゴミ拾いをしていた。

 

 よく見るとむつさんやいつきさん、よしみさんもいる。

 

 「じゃあ、私も行ってくるわね」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 千歌さん達のところへ歩いていく梨子さん。

 

 そんな梨子さんと入れ替わるように、ルビィとダイヤさんがこちらへ歩いてくる。

 

 「天くん、おはよう!」

 

 「おはようルビィ。ダイヤさんもおはようございます」

 

 「お、おはようございます・・・」

 

 おずおずと挨拶を返してくるダイヤさん。果南さんが首を傾げる。

 

 「どうしたのダイヤ?何かぎこちなくない?」

 

 「そ、そんなことありませんわ!」

 

 慌てて否定するダイヤさんだが、恐らく昨日のことが影響しているんだろう。動揺しているのが目に見えて分かる。

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 「な、何ですの・・・?」

 

 「・・・おはようのハグ」

 

 「っ!?」

 

 ダイヤさんに近付き、軽くハグしてみる。硬直するダイヤさん。

 

 「そ、天くん!?何してるの!?」

 

 「何って・・・ハグ?」

 

 「何で!?」

 

 「そんな気分だったんだよ」

 

 「どんな気分!?」

 

 「あ、ダイヤだけズルい!天、私にもハグしてよ!」

 

 「ダイヤさんにハグしたい気分であって、果南さんにハグしたい気分じゃないんです」

 

 「酷い!?」

 

 「そ、天さん・・・」

 

 耳まで真っ赤になり、涙目でプルプル震えているダイヤさん。

 

 「は、恥ずかしいので・・・そ、そろそろ・・・」

 

 「・・・昨日は少し踏み込み過ぎてしまって、すみませんでした」

 

 「っ・・・」

 

 ルビィや果南さんに聞こえないよう、ダイヤさんの耳元で囁く俺。

 

 「それでも、ダイヤさんの本音が聞けて良かったです。ダイヤさん、なかなか自分の思いを打ち明けてくれないから」

 

 「天さん・・・」

 

 「もっと自分の思いをさらけ出しても良いんですからね。俺なんかで良ければ、いつでも聞かせてもらいますから」

 

 それだけ言うと、俺はダイヤさんから離れた。

 

 「よし、次はルビィとハグしようかな」

 

 「ぴぎっ!?何で!?」

 

 「そんな気分だから」

 

 「その言葉メッチャ便利だね!?」

 

 「ちょっと天!?私は!?」

 

 「すいません、気分じゃないんで」

 

 「何でよ!?」

 

 「・・・フフッ」

 

 口元を押さえ、面白そうに笑うダイヤさん。

 

 「やっぱり・・・天さんは天さんですわね」

 

 「お姉ちゃん?どうしたの?」

 

 「何でもありませんわ。さぁ果南さん、私達もそろそろ行きましょう?」

 

 「むぅ・・・ハグ・・・」

 

 俺からのハグが無いことに、若干不満そうな果南さん。

 

 ダイヤさんは苦笑すると、果南さんを引き寄せて抱き締めた。

 

 「わわっ、ダイヤ!?」

 

 「フフッ、天さんの代わりですわ」

 

 「どうしたのダイヤ!?何か今日変じゃない!?」

 

 「そんなことありませんわ」

 

 楽しそうに笑うダイヤさん。どうやら元に戻ったようだ。

 

 「では、私達は行きますわ。また後ほど」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 果南さんの手を引いて、三年生組の方へと歩いていくダイヤさん。

 

 と、ふと立ち止まってこちらを振り返り・・・

 

 「えいっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 勢いよく走ってきて、そのまま俺に抱きついてきた。慌てて受け止める俺。

 

 「ちょ、ダイヤさん!?」

 

 「・・・ありがとうございます、天さん」

 

 先ほどの俺と同じように、耳元で囁くダイヤさん。

 

 「お言葉通り、この思いは捨てないでおきますわ。いつの日か、叶うことを信じて」

 

 「・・・えぇ、そうして下さい」

 

 抱き締め返す俺。

 

 「その思いが叶うことを祈ってます」

 

 「フフッ、ありがとうございます」

 

 ダイヤさんは笑みを浮かべると、俺から離れて果南さんの手をとった。

 

 「さぁ果南さん、いきますわよ」

 

 「ちょ、待ってよ!?私も天とハグするのー!」

 

 果南さんの訴えも空しく、ダイヤさんは果南さんを引きずって去っていった。

 

 「・・・あんなお姉ちゃん、初めて見たかも」

 

 呆然としているルビィ。

 

 「何か・・・凄いね、天くんって」

 

 「変わったことは何もしてないよ」

 

 「むしろ変わったことしかしてないよねぇ!?」

 

 「ルビィ、そこはツッコミを入れても仕方ないですよ」

 

 いつの間にか復活した海未ちゃんが、苦笑しながら言う。

 

 「天は昔からこういう人ですから」

 

 「あれ?海未ちゃんどこ行ってたの?」

 

 「顔を洗いに行ってたんですよっ!誰かさんがレモン汁なんてかけるからっ!」

 

 「酷いことをするヤツがいたもんだね」

 

 「ア・ナ・タ・で・す・よ!」

 

 「いふぁいいふぁい(痛い痛い)」

 

 海未ちゃんに頬をつねられる。と、そこへ花丸と善子がやってきた。

 

 「おはようずら~」

 

 「おふぁふぉ~(おはよ~)」

 

 「朝から仲良しねぇ、アンタ達・・・」

 

 呆れている善子。

 

 「ほら、早くゴミ拾い始めましょ。天の分も道具もらっといたから」

 

 「おっ、ありがと」

 

 善子からゴミ拾い用のトングと袋、明かりとなる提灯をもらう。

 

 「さぁ、始めるわよ!」

 

 「やるずら~!」

 

 「いっぱい拾って綺麗にしようね!」

 

 「私も頑張っちゃいますよー!」

 

 ノリノリでゴミ拾いを始める四人。

 

 海辺に集まった人達は皆、それぞれ笑顔を見せながらゴミ拾いに勤しんでいる。面倒そうにしている人などおらず、皆楽しそうにしていた。

 

 これって・・・

 

 「フフッ、気付いたかしら?」

 

 背後から声がする。振り向くと、小原理事長が立っていた。

 

 「この町の魅力・・・もっといえば、この町に住んでいる人達の魅力。この光景を初めて見た時、私は感動したわ。『何て素敵な町なんだろう』ってね」

 

 「・・・分かります」

 

 俺は素直に頷いた。この町の魅力が、この光景に詰まっていると言っても過言ではない。

 

 「これを他の人達に伝えるには・・・」

 

 俺の頭の中で、ピンとくるものがあった。後はこれを、千歌さん達と一緒に形に出来れば・・・

 

 と、小原理事長がある方向をジッと見ていることに気付く。その方向には、二人でゴミ拾いをするダイヤさんと果南さんの姿があった。

 

 「・・・行かないんですか?」

 

 俺の問いに答えず、寂しそうに笑う小原理事長。ハァ・・・

 

 「えいっ」

 

 「きゃあっ!?」

 

 小原理事長の背中を思いっきり押す。前につんのめり、転びそうになる小原理事長。

 

 「な、何するの!?」

 

 「ウジウジしてないで早く行く。ほら、道具もあげるから」

 

 小原理事長の手に、トングや提灯を押し付ける。

 

 「で、でも・・・」

 

 「全く・・・普段は威勢がいいくせに、肝心な時にヘタレなところは変わりませんね」

 

 「ちょ、誰がヘタレよ!?」

 

 「いいから早く行って下さい。せっかくの機会を逃しますよ」

 

 今度は優しく背中を押す。覚悟を決めたのか、意を決した表情になる小原理事長。

 

 「・・・行ってくるわ」

 

 「逝ってらっしゃい」

 

 「何か字が違う気がするんだけど!?」

 

 「あの世に逝ってらっしゃい」

 

 「今『あの世』って言ったわよねぇ!?」

 

 ツッコミを連発する小原理事長。と、面白そうにクスッと笑う。

 

 「・・・ありがとう、天」

 

 それだけ言うと、小原理事長はダイヤさんと果南さんのところへと向かって行った。

 

 「・・・相変わらずお人好しですね」

 

 いつの間にか、納得がいかない表情の海未ちゃんが俺の側に立っていた。

 

 「自分を脅した相手の背中を押すなんて・・・」

 

 「・・・やっぱりあの人に、悲しそうな顔は似合わないからね」

 

 「ハァ・・・天は優しすぎます」

 

 溜め息をつく海未ちゃん。

 

 「まぁ、それが天の良いところなんですけどね」

 

 「ありがと」

 

 俺は苦笑すると、海未ちゃんにあるお願いをするのだった。

 

 「ところで海未ちゃん、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど・・・」




どうも~、ムッティです。

ようやく果南ちゃんが登場しました・・・

今までゴメンよ、果南ちゃん(涙)

さて、次の話でアニメ一期の六話までの話が終わる予定です。

相変わらず話をサクサク進められていませんが、お許し下さい(汗)

次の話は明日投稿します(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人の温かさは心に沁みるものである。

映画『ONE PIECE STAMPEDE』を観に行きたい・・・

でも暑いから外に出たくない・・・


 「準備は出来ましたか?」

 

 「オッケーだよ!」

 

 新しい衣装に身を包んだ千歌さんが、笑顔で頷く。

 

 俺達は浦の星の屋上で、Aqoursの新しいPVを撮影しようとしていた。

 

 「海未ちゃん、録画開始」

 

 「了解です」

 

 海未ちゃんがビデオカメラの録画ボタンを押す。

 

 「いつきさん、曲を流して下さい」

 

 『ラジャー!』

 

 インカムを通じて、音響担当のいつきさんに指示を出す。流れ始めた曲は、今回の為に作った新曲『夢で夜空を照らしたい』だ。

 

 海開きの日にこの町の魅力を感じた俺は、すぐに千歌さん達に相談した。そしてその魅力を伝える為、新曲を作ることを提案したのだ。

 

 千歌さん達も賛成してくれて、すぐに新曲の製作が始まった。作詞と作曲は千歌さんと梨子さん、衣装は曜さんとルビィ、振り付けは花丸と善子に担当してもらった。

 

 そしてもう一つ・・・このPVには欠かせないものがあった。

 

 「むつさん、よしみさん、お願いします」

 

 『よしきた!』

 

 『皆さーん!お願いしまーす!』

 

 曲がサビに入る前に、インカムを通じてむつさんとよしみさんに合図を出す。

 

 その瞬間・・・たくさんのスカイランタンが、一斉に空へと上っていった。

 

 「わぁ・・・!」

 

 目を輝かせている海未ちゃん。

 

 たくさんのスカイランタンをバックに、Aqoursが歌って踊る・・・この演出をどうしてもやりたかった。

 

 ちなみにこのスカイランタンは、町の人達が浦の星の近くで上げてくれている。『協力してほしい』とお願いしたところ、皆快く引き受けてくれたのだ。

 

 「凄いな・・・」

 

 想像以上の美しさに、俺も思わず見惚れてしまった。

 

 このスカイランタンの演出は、PVを華やかにする為もあるが・・・それ以上に、町の人達の温かさを表現したいという思いで考えたものだ。

 

 海開きの時の提灯が、良いヒントになったんだよな・・・

 

 「・・・綺麗ですね」

 

 「・・・うん」

 

 海未ちゃんと二人、幻想的な景色に見入る。

 

 放課後に撮影していることもあって、既に日は沈んでいる。しかし夕焼けの名残である赤さが残っており、まさに黄昏時だった。

 

 そこにスカイランタンの明りが合わさり、それをバックにAqoursがパフォーマンスをしている・・・これは良いPVになりそうだ。

 

 「『夢で夜空を照らしたい』ですか・・・良い曲が出来ましたね」

 

 「ホントにね。流石は千歌さんと梨子さんだよ」

 

 生まれ育った町に対する郷土愛と、町の人達への尊敬や感謝・・・それをテーマに、千歌さんは想いのこもった素晴らしい歌詞を書いてくれた。

 

 梨子さんもまた、その歌詞を基に心に沁み渡る良い曲を作ってくれた。本当に名曲だと思う。

 

 「フフッ・・・何だか私も、久しぶりに作詞がしたくなってしまいました。今度真姫を誘って、新しい曲でも作ってみましょうか」

 

 「『オコトワリシマス』って言われるんじゃない?」

 

 「じゃあ天も一緒に作詞しましょう。それなら真姫は絶対、『し、仕方ないわね・・・』って言ってくれます」

 

 「そうかなぁ?」

 

 「そうですよ」

 

 笑っている海未ちゃん。

 

 「『START:DASH!!』の時もそうだったじゃないですか。あれが私と天、そして真姫の三人で作った最初の曲でしたよね」

 

 「・・・そうだったね」

 

 「天が考えた『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る』という歌詞に、当時の私は感銘を受けたものです」

 

 「恥ずかしいから止めて」

 

 口が裂けても千歌さん・曜さん・梨子さん・果南さんには言えない。あの歌詞を書いたのが俺だったなんて・・・

 

 「あ、真姫から『し、仕方ないわね・・・』って返事が来ました」

 

 「もう打診したの!?っていうか返信早くない!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまう俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 翌日・・・

 

 「Great!良いPVね!」

 

 新しく撮影したPVを見て、グッと親指を立てる小原理事長。

 

 俺達は小原理事長にPVを見せる為、理事長室を訪れていた。

 

 「良かったぁ・・・!」

 

 「お墨付きをもらえたね!」

 

 ホッとした様子の皆。まぁその前のPVを、あれほど酷評されたもんな・・・

 

 「早速Uploadすると良いわ。きっと反響も大きいんじゃないかしら」

 

 「了解です!」

 

 「ありがとうございます!」

 

 部室に向かう為、急いで理事長室を出て行く皆。俺も出て行こうとしたのだが・・・

 

 「天」

 

 小原理事長に呼び止められた。

 

 「・・・海開きの時はありがとう。背中を押してくれて」

 

 「・・・ちゃんと話せたんですか?」

 

 「少しはね・・・まぁ、深い話は出来なかったけど」

 

 苦笑する小原理事長。

 

 「私はね、天・・・果南やダイヤと一緒に、またスクールアイドルがやりたいの。もう一度、あのかけがえのない時間を取り戻したいのよ」

 

 「・・・そうですか」

 

 どうやら小原理事長は、ダイヤさんと同じ気持ちらしい。

 

 しかし果南さんがそれを拒んでおり、ダイヤさんも果南さんの意思を尊重している。果南さんの意思が変わらないかぎり、三人が再びスクールアイドルをやれることはないだろう。

 

 誰か一人でも欠けてしまえば、スクールアイドルをやる意味が無くなってしまうのだから。

 

 「以前のAqoursに何があったのか知りませんが・・・貴女方三人は、肝心な気持ちを言葉にしない傾向があります。スクールアイドルを始める前に、まずは本音をぶつけ合うことから始めるべきだと思いますが」

 

 「・・・ホント、その通りね」

 

 寂しそうに笑う小原理事長。俺は無言で一礼し、理事長室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「いやぁ、良いPVが出来て良かった!」

 

 満足そうに笑う千歌さん。

 

 PVのアップロードを終えた俺達は、帰宅の途についていた。

 

 「そういえば天くん、海未先生はどうしたずら?」

 

 「今日は赤城先生と食事に行くんだって。あの二人、すっかり仲良くなったみたい」

 

 花丸の問いに答える俺。今日の夕飯は俺一人かぁ・・・どうしようかなぁ・・・

 

 「だったら天くん、今日はウチで晩御飯食べていったら?お母さん、今日の夕飯はカレーにするって・・・」

 

 「ご相伴に預からせていただきます」

 

 「食い気味できたわね!?」

 

 梨子さんの提案に全力で乗っかる。奈々さんも料理上手なんだよなぁ・・・

 

 「そういえば志満姉が、『最近天くんが夕飯食べに来てくれない・・・』って寂しがってたなぁ・・・」

 

 「すいません梨子さん、未来の嫁が待ってるんで『十千万』行きますね」

 

 「志満さんのこと好き過ぎない!?」

 

 「っていうか、未来の嫁って何!?私は認めないからね!?」

 

 「今度ミカン奢ります」

 

 「よろしくお義兄ちゃん!」

 

 「千歌ちゃんがミカンで買収された!?」

 

 曜さんのツッコミ。いやぁ、軽い義妹で助かったわ。

 

 「天、ウチの母親も待ってるわよ。いつでも大歓迎って言ってたわ」

 

 「マジで?また善恵さんのご飯も食べたいし、今度お邪魔しようかな」

 

 「ルビィもお母さんから、『また天くんを連れてきなさい』って言われてるんだよね。天くんが初めてウチに来て以来、お母さんは天くんのことを気に入ってるから」

 

 「黒澤家の夕飯は豪華だったなぁ・・・『またお邪魔します』って伝えといてくれる?」

 

 「私もママから、『今度はいつ天くんを連れてくるの?』って聞かれるんだよね」

 

 「曜さんの家も行きたいですね。また是非ともお邪魔させていただきます」

 

 「天くん、皆の家族からモテモテずらね」

 

 苦笑している花丸。思い返してみると、果南さんの家を含め色々なところで夕飯をご馳走になってる気がするな・・・

 

 「・・・やっぱり温かいですね、この町の人達は」

 

 改めてそう思う。

 

 東京から来た俺を歓迎してくれて、こうやって優しく受け入れてくれる・・・本当にありがたいことだ。

 

 「・・・私、ここには何も無いって思ってた」

 

 千歌さんがそんなことを呟く。

 

 「でも違った。今回PVを作って、町の人達の温かさに気付いて・・・この町は、こんなにも素敵な場所なんだって思えた」

 

 俺を見て微笑む千歌さん。

 

 「ありがとう。天くんのおかげで気付けたよ」

 

 「千歌さん・・・」

 

 「私達は、この場所から始めよう。スクールアイドルを・・・Aqoursを!」

 

 「うんっ!」

 

 「そうね!」

 

 「ずらっ!」

 

 「ぴぎっ!」

 

 「ギラン!」

 

 千歌さんの言葉に応える皆。良いグループになったもんだ・・・

 

 「よーし!今日は皆で晩御飯食べよう!志満姉に連絡しなくちゃ!」

 

 「えっ、大丈夫?志満さん大変じゃない?」

 

 「平気平気!志満姉なら何とかしてくれるって!」

 

 「おいそこのお気楽オレンジヘッド、志満さんに迷惑かけたらスキンヘッドにすんぞ」

 

 「天くん!?何で志満姉が絡むと人が変わるの!?」

 

 「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに志満さんが好きだからです」

 

 「どこのR●keさん!?」

 

 「いつまでも志満さんの横で笑っていたいからです」

 

 「それはG●eeeeN!」

 

 「ほら、早く『十千万』に帰りますよ」

 

 「帰るって何!?天くんの家じゃないよねぇ!?」

 

 俺と千歌さんのやり取りに笑う皆。

 

 この場所から始まったAqoursが、これからどんな軌跡を辿るのか・・・とても楽しみな俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話で、アニメ一期の六話までの話が終了しました。

次回からは七話の話に入っていく予定です。

海未ちゃんは教育実習中なので、引き続き登場しますよ。

さらに他のμ'sのメンバーも登場する・・・かも(笑)

そして後半で明らかになりましたが、既に黒澤家や渡辺家にもお邪魔している天・・・

どんだけ夕飯をご馳走になってるんだって話ですよね(笑)

羨ましいぜ(゜言゜)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チャンスは突然やってくるものである。

映画『ONE PIECE STAMPEDE』を観てきました!

激アツでした!バレット強すぎィ!


 「あっつ~い・・・」

 

 部室の椅子に座っている俺の後ろから、ぐでーんともたれかかってくる善子。

 

 七月に入り、内浦は少しずつ暑くなってきていた。

 

 「何言ってんの。本格的な夏はこれからだよ?」

 

 「何で夏なんて季節があるのよ・・・春の次は秋でいいじゃない・・・」

 

 「その意見には同意するけども」

 

 苦笑しながら善子の頭を撫でる。

 

 「それよりほら、これ見てみなよ」

 

 「ん?」

 

 パソコンの画面を指差す俺。そこには、この間のPVが映っていた。

 

 「やっぱり綺麗ねぇ、スカイランタン」

 

 「いや、それもそうなんだけど・・・再生回数を見てよ」

 

 「再生回数?」

 

 画面の下へと目を向ける善子。その瞬間、驚愕の表情を浮かべた。

 

 「嘘!?五万回!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 「ホントに!?」

 

 俺達の会話を聞いていたのか、花丸とルビィが慌ててパソコンを覗き込む。

 

 「スカイランタンが綺麗だって、結構評判になってるんだよ。『夢で夜空を照らしたい』も好評らしくて、どんどん再生回数が増えてるみたい」

 

 「凄いずらぁ・・・!」

 

 目がキラキラしている花丸。こんなに再生回数が伸びたの、初めてだもんな・・・

 

 「天くん、ランキングはどう!?」

 

 「えーっとね・・・」

 

 ルビィに尋ねられ、ランキングをチェックする俺。すると・・・

 

 「・・・99位だね」

 

 「えぇっ!?」

 

 「まさかの100位以内!?」

 

 曜さんと梨子さんも急いで近寄ってくる。マジか・・・

 

 「キタ・・・キタキタキターっ!」

 

 テンションが上がっている千歌さん。

 

 「それって全国でってことでしょ!?5000以上いるスクールアイドルの中で、100位以内ってことでしょ!?私達凄くない!?」

 

 「一時的な盛り上がりかもしれないけど、それでも凄いわね!」

 

 梨子さんも少し興奮気味だ。

 

 確かに、この短期間でここまでランキングを伸ばしたのは凄い。ランキング上昇率は一位だし、今最も勢いのあるグループといえるだろう。

 

 「何かさぁ・・・このままいったら、ラブライブ優勝出来ちゃうかも・・・!」

 

 「調子に乗るな、自惚れオレンジヘッド」

 

 「その罵倒に慣れちゃった自分が怖い!?」

 

 溜め息をつく俺。ホントにお調子者なんだから・・・

 

 「ラブライブで優勝するということは、全国のスクールアイドルの頂点に立つということです。確かに99位は凄い順位ですけど、裏を返せば上にまだ98組のスクールアイドルがいるということなんですよ?」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「100位以内に入っているスクールアイドルですから、当然実力は折り紙付き・・・ラブライブの決勝まで進んだことのあるグループもゴロゴロいます。そういったグループを超えないかぎり、ラブライブで優勝なんて出来ないということを忘れないで下さいね」

 

 「も、勿論です!」

 

 ビシッと背筋を正す千歌さん。

 

 「でもでも、可能性はゼロじゃないよね!?私達も100位以内に入ったんだから、ラブライブで優勝出来る可能性は上がったってことだよね!?」

 

 「・・・まぁ、そうですね」

 

 「やったー!」

 

 喜ぶ千歌さん。

 

 この人、本当に分かってるのかなぁ・・・ん?

 

 「メール・・・?」

 

 どうやら、新しいメールが届いたらしい。開いてみると・・・

 

 「東京スクールアイドルワールド運営委員会・・・?」

 

 俺の肩越しに、開かれたメールの差出人をチェックする曜さん。

 

 「東京スクールアイドルワールドって何?」

 

 「近年東京で開かれている、スクールアイドルのイベントですね。どうやら、Aqoursにもお誘いがかかったみたいです」

 

 「「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」」

 

 ビックリしている皆。これは突然の展開だな・・・

 

 「開催日は、今週の日曜日ですね・・・どうします?」

 

 「行きます!」

 

 力強く宣言する千歌さん。言うと思った・・・

 

 「お金は大丈夫なんですか?」

 

 「お、お小遣い前借りで!」

 

 「全然大丈夫じゃないパターンですね」

 

 ダメだこの人、何も考えてないわ・・・

 

 「イベントは日曜日の朝から始まるそうなので、もし参加するなら前乗り・・・つまり土曜日に東京へ行って、一泊する必要があります。往復の交通費にプラスして、東京での宿泊代もかかるわけですが・・・本当に大丈夫ですか?」

 

 無言で汗をダラダラ流す千歌さん。はい、アウトー。

 

 「『オコトワリシマス』っと・・・」

 

 「わーっ!?」

 

 メールに返信しようとすると、千歌さんが慌ててパソコンを閉じた。

 

 「お、お金は何とかするからっ!」

 

 「・・・何とかなるんですか?」

 

 「うぅ・・・」

 

 涙目の千歌さん。流石に可哀想になったのか、曜さんと梨子さんが助け舟を出す。

 

 「ま、まぁまぁ!皆で出し合って何とかしようよ!」

 

 「そ、そうよ!こういう時こそ助け合いよ!」

 

 「曜ちゃん、梨子ちゃん・・・!」

 

 「正直に言って下さい。懐、潤ってますか?」

 

 「「・・・いえ、全く」」

 

 「二人とも!?」

 

 「ゴメンなさい、ルビィもちょっと・・・」

 

 「マルもそんなにお金は・・・」

 

 「堕天使グッズ買っちゃったから・・・」

 

 「皆も!?」

 

 全滅だった。そりゃそうか・・・

 

 「でも、東京のイベントだもんね・・・」

 

 ルビィが呟く。

 

 「参加、したいよね・・・」

 

 その言葉に、押し黙ってしまう皆。どうやら皆、気持ちは同じようだ。

 

 「・・・そんなに参加したいんですか?」

 

 「・・・したいよ」

 

 千歌さんが頷く。

 

 「Aqoursをアピールする、絶好の機会だもん。みすみす逃したくないよ」

 

 「・・・ハァ」

 

 溜め息をつく俺。こうなりそうな予感がしたんだよなぁ・・・

 

 「・・・往復の交通費だけなら、何とかなりますか?」

 

 「え・・・?」

 

 「東京での宿泊代が無ければ・・・何とかなりますか?」

 

 俺の問いに、皆が顔を見合わせた。

 

 「それなら何とかなるけど・・・」

 

 「でも、イベントって朝からなんでしょ?ここからじゃ、当日どんなに早く出発したって間に合わないわよ?参加するなら前乗りしないと・・・」

 

 曜さんと善子が戸惑いの表情を浮かべる。だが、俺には考えがあった。

 

 「大丈夫ですよ。心当たりはあります」

 

 「天ー?」

 

 海未ちゃんがふらっと部室に現れる。

 

 「仕事終わりました。そろそろ帰りましょう」

 

 「お、ナイスタイミング」

 

 「え?」

 

 首を傾げる海未ちゃん。俺は話を切り出した。

 

 「実は今週の日曜日、東京でスクールアイドルのイベントがあるんだけどさ。土曜日の夜、海未ちゃんの実家に千歌さん達を泊めてあげてほしいんだよね」

 

 「あぁ、良いですよ」

 

 「「「「「「軽っ!?」」」」」」

 

 ずっこける皆。

 

 「海未先生!?本当に良いずら!?」

 

 「構いませんよ。実家には連絡しておきます」

 

 「で、でも!流石に大人数で押しかけるのは迷惑なんじゃ!?」

 

 「全然大丈夫です。ウチはそういうの慣れてるので」

 

 さらっと答える海未ちゃんに、皆絶句していた。苦笑する俺。

 

 「海未ちゃんの家って、日本舞踊の家元なんですよ。家の広さでいえば、黒澤家くらいはあるので大丈夫です」

 

 「そうなんだ・・・」

 

 唖然としているルビィ。

 

 「そういうことなら、私も今週末は一緒に実家に帰ります。その方が千歌達も安心出来るでしょうし」

 

 「ありがとうございます!海未先生!」

 

 千歌さんが海未ちゃんに抱きつく。曜さん達も大喜びしていた。

 

 「やったー!これでイベントに参加できる!」

 

 「良かったですね」

 

 苦笑する俺。

 

 「頑張ってきて下さい。応援してます」

 

 「「「「「「「え・・・?」」」」」」」

 

 俺の言葉に、千歌さん達だけでなく海未ちゃんも固まる。

 

 「えーっと・・・天くん?」

 

 「何ですか?」

 

 おずおずと尋ねてくる千歌さんに、俺は首を傾げた。何だろう?

 

 「まさかとは思うけど・・・行かないつもり?」

 

 あぁ、なるほど・・・そういうことね。

 

 「いや、まさかも何も・・・行きませんよ?」

 

 「「「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」」」

 

 皆の絶叫が響き渡るのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話から、アニメ一期の七話の内容へと入っていきます。

東京でのイベント編ですね。

早速天が東京に行かない宣言してますけど(笑)

果たしてどうなることやら・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人は人を思いやるものである。

Aqoursの4thシングル『未体験HORIZON』、メッチャ良い曲ですよね。

センターの花丸ちゃんが可愛すぎてヤバい。


 《曜視点》

 

 「よーし!頑張るぞー!」

 

 張り切っている千歌ちゃん。

 

 帰りのバスの中で、私達は東京で行なわれるイベントの話で盛り上がっていた。

 

 「μ'sのメンバーに会えたりして!?」

 

 「東京・・・未来ずらぁ・・・!」

 

 「ククッ・・・堕天使ヨハネ、東京に降臨ッ!」

 

 一年生の三人もテンションが上がっている。

 

 そんな中、梨子ちゃんだけが浮かない表情をしていた。

 

 「梨子ちゃん?どうしたの?」

 

 「・・・天くん、本当に行かないつもりなのかな?」

 

 その言葉に、皆の表情が曇る。

 

 当然天くんも行くものだと思っていた私達は、天くんの『行かない』という発言にショックを受けていた。

 

 「・・・仕方ないと思います。アルバイトも忙しいみたいですし」

 

 ルビィちゃんがそんなことを言う。

 

 天くんは今、土日に果南ちゃんのところのダイビングショップでアルバイトをしている。

 

 事前に『休みたい』と伝えているならともかく、いきなり『休ませてくれ』というのは申し訳ないから無理とのことだった。

 

 「・・・そうだね。果南ちゃんも忙しいだろうし、迷惑かけちゃうもんね」

 

 私がルビィちゃんの言葉に賛同すると、梨子ちゃんがポツリと呟いた。

 

 「・・・それだけなのかな?」

 

 「え・・・?」

 

 「私には、東京に行くことそのものを拒否してるように見えたけど・・・」

 

 「どういうことよ?」

 

 善子ちゃんが尋ねる。首を横に振る梨子ちゃん。

 

 「あくまでも、私がそう感じたっていうだけ・・・根拠があるわけじゃない。でも考えてみたら、私達って天くんについて知らないことが多くない?」

 

 「知らないことって?」

 

 「例えば・・・どうして浦の星に来たのか、とか」

 

 「っ・・・」

 

 そういえば、考えたことなかったな・・・

 

 「ルビィ、お姉ちゃんから聞きました。音ノ木坂の理事長さんの力になりたくて、浦の星のテスト生の話を引き受けたって」

 

 「そうだったずらね・・・」

 

 ルビィちゃんの話に、驚いている花丸ちゃん。

 

 しかし、梨子ちゃんは納得いかないという表情だった。

 

 「理事長の力になりたかったとはいえ、わざわざ東京を離れてまで内浦に来るかしら?高校生で一人暮らしなんて、ご家族も反対されただろうし・・・」

 

 「・・・確かに」

 

 つまり天くんは、その反対を押し切ってまで浦の星に来たということ・・・

 

 何か理由があるのかな・・・

 

 「・・・あれこれ考えても、仕方ないよ」

 

 千歌ちゃんが力なく笑う。

 

 「天くんが、『東京には行かない』って言ってるんだもん。だったらどんな理由があったとしても、私達はそれを強要しちゃいけないんだよ」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 「だってそうでしょ?天くんが嫌がることを無理矢理やらせるなんて・・・鞠莉さんのやったことと同じだもん」

 

 「っ・・・」

 

 顔を伏せる私達。

 

 そうだった・・・あの時、天くんがどれほど傷付いたか・・・

 

 「天くんはいないけど、海未先生がいてくれるし心配ないよ。東京のイベントで結果を残して、天くんをビックリさせよう」

 

 そう言って笑う千歌ちゃん。

 

 「・・・そうね。それが今、私達に出来ることよね」

 

 「天くんの為に頑張ルビィ!」

 

 「マルも気合い入れるずら!」

 

 「ククッ・・・我がリトルデーモンの為に、一肌脱ごうではないか」

 

 皆の顔に笑顔が戻る。

 

 全く、天くんも罪な男だねぇ・・・こんな美少女達から、こんなにも大切に思われてるんだから。

 

 それにしても・・・

 

 「・・・知らないことが多い、か」

 

 天くんのことを、もっとよく知りたい・・・そう思う私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「んー、海未ちゃんの作るご飯は美味しいね」

 

 「フフッ、ありがとうございます」

 

 嬉しそうに笑う海未ちゃん。教育実習で来てからというもの、海未ちゃんはほとんど毎日ご飯を作ってくれていた。

 

 『Aqoursの親御さん達には負けていられません!私も天の胃袋を掴みます!』と、謎の対抗心を燃やしてはいたが・・・

 

 久しぶりに海未ちゃんの作るご飯が食べられて、俺としても嬉しかったりするのだった。

 

 「それより天・・・本当に良いのですか?」

 

 「ん?何が?」

 

 「東京のイベントの件です。Aqoursの皆に付き添ってあげなくて良いのですか?」

 

 「あぁ、そのことね」

 

 苦笑する俺。

 

 「言ったでしょ?土日は果南さんのところのバイトがあるって。いきなり『今週は休ませてほしい』なんて、果南さんに迷惑かけちゃうから無理だよ」

 

 「・・・私には、絵里と顔を合わせるのを避けているように見えるのですが」

 

 「・・・それが分かってるなら、聞かないでほしかったな」

 

 溜め息をつく俺。

 

 果南さんに迷惑をかけるというのも理由の一つではあるが、それ以上に・・・俺は今、絵里姉と顔を合わせたくなかった。

 

 「何故絵里を避けるのですか?確かに喧嘩してしまったかもしれませんが、天が内浦に来てもう三ヶ月も経つんですよ?いい加減、仲直りしても良いのでは?」

 

 「・・・海未ちゃんさ、教育実習に来る前に絵里姉と会った?」

 

 「え?えぇ、会いましたよ。『教育実習で浦の星に行くので、天の様子を見て来ます』と伝えましたけど」

 

 「それに対する反応は?」

 

 「・・・『ふーん』の一言でした」

 

 言い辛そうに顔を背ける海未ちゃん。やっぱり・・・

 

 「こっちに来てから絵里姉とは連絡とってないけど、亜里姉とは定期的に連絡とっててさ。聞いてもいないのに、絵里姉の様子を教えてくれるんだけど・・・俺の話は一切口に出さないみたい。亜里姉の方から俺の話題を振っても、『へぇ』とか『そう』としか言わないんだって」

 

 つまり絵里姉は、未だに俺に対して怒っているということだ。

 

 いや、あるいは見限られたのかもしれないな・・・

 

 「『もう』三ヶ月『も』経つんじゃなくて、『まだ』三ヶ月『しか』経ってないんだよ。絵里姉の怒りの持続時間を舐めちゃいけない。あの人がμ'sを認めて加入するまで、結構な時間がかかったことを忘れてないよね?」

 

 「・・・そういえばそうでしたね」

 

 溜め息をつく海未ちゃん。

 

 「本当に貴方達姉弟は・・・頑固にも程があります」

 

 「一緒にしないでくれる?」

 

 「一緒ですよ。天の頑固さも大概です」

 

 呆れている海未ちゃん。

 

 心外だな・・・絵里姉レベルではないと思うんだけど・・・

 

 「まぁとにかく・・・絵里姉の怒りが収まっていない以上、冷静な話し合いなんて出来ないだろうから。今は顔を合わせない方が良いんだよ」

 

 「・・・そうですか」

 

 残念そうな表情の海未ちゃん。

 

 「それなら絵里と会えなんて言いませんから、東京には一緒に来てもらえませんか?あの子達にとっては慣れない場所ですし、天がいてくれた方が心強いと思います」

 

 「・・・俺に頼ってどうすんの」

 

 首を横に振る俺。

 

 「俺はずっとAqoursのマネージャーを続けるつもりは無いから。小原理事長に脅されたとはいえ、千歌さん達の力にはなりたいから最低限の務めは果たすつもりだけど・・・俺なんかがいなくても、大丈夫なグループになってもらわないと困るんだよ」

 

 「天・・・」

 

 海未ちゃんが悲しそうな顔をする。

 

 「貴方がマネージャーという仕事を、そこまで頑なに拒否するのは・・・やはり私達、μ'sのせい・・・」

 

 「止めなよ」

 

 海未ちゃんの言葉を遮る俺。

 

 「誰のせいとかじゃない。俺が自分で決めたことだから・・・ご馳走様」

 

 俺はそれだけ言うと椅子から立ち上がり、リビングから出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 翌朝・・・

 

 「ふぅ・・・」

 

 淡島神社の階段を登り切り、一息つく俺。

 

 内浦に来てからというもの、毎朝ジョギングをするのが俺の日課になっていた。Aqoursの練習に付き合うにも体力が要るし、この町の風景を見ながら走るのも楽しいしな。

 

 「・・・東京か」

 

 昨日の海未ちゃんとの会話を思い出す。

 

 正直、今はあまり東京に戻りたくない。絵里姉のこともあるしな・・・

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 「おはようのハグっ!」

 

 「おっと」

 

 後ろから果南さんにハグされる。ホントにこの人は・・・

 

 「おはよう天!」

 

 「おはようございます。朝から元気ですね」

 

 「勿論!」

 

 笑顔の果南さん。この時間に淡島神社に来ると、結構な確率で果南さんと遭遇するのだ。

 

 まぁ果南さんもジョギングが日課だし、お互いジョギングコースは決まってるから当然といえば当然なんだけど。

 

 「天は何か考え事?」

 

 「まぁそんなところです」

 

 「ふぅん・・・東京のイベントのこと?」

 

 「っ!?」

 

 思わず驚いてしまう。何で果南さんがそのことを・・・

 

 「当たりみたいだね」

 

 苦笑する果南さん。

 

 「昨日千歌から、『東京のイベントに出ることになった』っていう連絡があったの。今週末なんだって?」

 

 「えぇ。俺は行かないので、バイトのことは大丈夫です」

 

 「・・・そのことなんだけどさ」

 

 いつになく真面目な表情の果南さん。

 

 「ついていってあげてほしいんだ、千歌達に」

 

 「え・・・?」

 

 「今週は予約が入ってるお客さんも多くないし、私一人でも何とか回せるからさ。こっちのことは心配しないで、天は東京に行って来てほしい」

 

 真剣な表情でそう言う果南さん。

 

 「どうして・・・」

 

 「・・・心配なんだよ、千歌達が」

 

 苦笑する果南さん。

 

 「ダイヤから聞いたけど、私達がスクールアイドルやってたこと知ってるんでしょ?二年前、東京のイベントに出たことも」

 

 「えぇ、まぁ・・・」

 

 「私さ・・・歌えなかったんだよね」

 

 果南さんはそう言うと、切なげに空を見上げた。

 

 「他に出てたスクールアイドル達のレベルの高さに、圧倒されちゃってさ・・・会場の空気にも呑まれちゃって、歌えなくて・・・それで打ちのめされて、スクールアイドルは辞めちゃったんだ」

 

 「・・・そうだったんですか」

 

 「情けないよね。『スクールアイドルとして活躍して、浦の星を廃校の危機から救うんだ!』なんて意気込んでたのに・・・このザマだもん」

 

 自嘲気味に笑う果南さん。

 

 「だからこそ、千歌達には同じ思いをしてほしくないの。堂々と胸を張って、自分達のパフォーマンスをして・・・笑顔で帰ってきてほしい」

 

 「果南さん・・・」

 

 「その為には、千歌達の側に天がいないとダメなんだよ。千歌達にとって、天の存在は凄く大きいから。天が側にいるのといないのとじゃ、気持ちが全然違うと思う」

 

 「・・・そうですかね」

 

 「そうだよ」

 

 頷く果南さん。

 

 「だから私からのお願い・・・千歌達と一緒に東京に行ってきてほしい。千歌達のことを、側で支えてあげてほしいの」

 

 果南さんのお願いに、俺は素直に頷くことが出来なかった。

 

 果南さんの顔を見ることが出来ず、俯いていると・・・

 

 「・・・ゴメンね、わがまま言って」

 

 果南さんに抱き寄せられる。

 

 いつもの力強いハグではなく、優しいハグだった。

 

 「千歌から聞いたんだ。天は東京に行きたくないんじゃないかって」

 

 「千歌さんが・・・?」

 

 「正確には、気付いたのは桜内さんみたいだけどね」

 

 梨子さんか・・・鋭いな、あの人・・・

 

 「だから千歌達は、無理に天を東京に連れて行かないって決めたんだって。嫌がることを強要されて傷付く天を、もう見たくないからって」

 

 「っ・・・」

 

 小原理事長の一件か・・・ずいぶん気を遣わせちゃったんだな・・・

 

 「それが分かっててこんなことを頼むなんて、我ながら最低だとは思うけど・・・それでも、これが私からのお願い。ダメかな?」

 

 「・・・ずるいですね、果南さんは」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「こんな時だけそんな真剣な顔で、そこまで真摯にお願いされたら・・・断れるわけないじゃないですか」

 

 「天・・・」

 

 「・・・分かりました。今週末のバイトはお休みさせていただいて、Aqoursの皆と一緒に東京のイベントに行ってきます」

 

 「・・・ありがとう」

 

 微笑む果南さん。

 

 「千歌達のこと、よろしくね」

 

 「了解です。その代わりといってはなんですけど・・・」

 

 「何?」

 

 首を傾げる果南さん。俺は果南さんに身体を委ねた。

 

 「もう少しだけで良いので・・・このままでいてもらっても良いですか?」

 

 「・・・フフッ、喜んで」

 

 果南さんは嬉しそうに笑うと、俺を抱き締める腕にギュっと力を込めるのだった。




どうも~、ムッティです。

いやぁ、果南ちゃんハンパねぇ・・・

これが年上の女性の包容力か・・・

というわけで、天も東京に行くことになりました。

果たして天、そしてAqoursの運命やいかに・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

気合いを入れ過ぎると空回りするものである。

久しぶりにカラオケ行きたいなぁ・・・

μ'sやAqoursの曲を思いっきり歌いたい・・・


 そして迎えた土曜日・・・

 

 「じゃーん!」

 

 「・・・一体何がどうしたの?」

 

 もの凄く奇抜な格好をしている千歌さんを見て、ドン引きしている梨子さん。

 

 東京に行くからって、気合い入りすぎだろ・・・

 

 「内浦から東京へ行くなんて、一大イベントだもん!お洒落しちゃった♪」

 

 「ピエロのコスプレにしか見えないんですけど」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。

 

 っていうかこれ、確実に美渡さんの入れ知恵だろうな・・・美渡さんが『十千万』の玄関口で、爆笑しているのが何よりの証拠だ。

 

 まぁ美渡さんのことは置いといて、問題なのは・・・

 

 「ちゃ、ちゃんとしてるかな・・・?」

 

 「こ、これで渋谷の険しい谷も大丈夫ずらか・・・?」

 

 仰々しい格好のルビィと花丸だった。

 

 花丸に関しては、ヘルメットを被ってつるはしとか持ってるし・・・お宝でも探しに行く気なんだろうか。

 

 「・・・ルビィも花丸も、普通の服に着替えてきなさい」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 「で、でも渋谷の険しい谷が・・・!」

 

 「渋谷は険しくないし谷じゃないから。あとそこのピエロも着替えて下さい」

 

 「ピエロって言わないでくれる!?」

 

 そう言いつつも、ルビィや花丸と一緒に着替えに行く千歌さん。

 

 と、梨子さんが俺の袖をくいくいっと引っ張った。

 

 「天くん、本当に良いの?『東京には行かない』って言ってたのに・・・」

 

 「えぇ。果南さんが良いって言うので、お言葉に甘えようかなって」

 

 苦笑する俺。

 

 「ホント・・・ずるい人だよな」

 

 「ずるい?」

 

 「こっちの話です。それより・・・やっぱり梨子さんは、私服姿も可愛いですね」

 

 「なっ!?」

 

 顔が赤くなる梨子さん。

 

 「そ、そういうことを真顔で言わないでっ!」

 

 「本心なんですけど」

 

 「梨子、いい加減慣れた方が良いですよ」

 

 海未ちゃんが苦笑しながらやってくる。

 

 「天は人を褒めるのに、一切照れたりしませんから。むしろ褒められた方が照れてしまうんですよね」

 

 「海未ちゃんを褒めた記憶は一切無いけどね」

 

 「嘘でしょう!?『海未ちゃんは本当に可愛いね。俺のお嫁さんになってよ』って言ってくれたじゃないですか!?」

 

 「それは確実に言ってないわ」

 

 サラッと事実を捏造したよこの人・・・

 

 「ところで海未ちゃん、今までどこ行ってたの?」

 

 「ちょっと志満さんに挨拶してました」

 

 「おはよう天くん」

 

 海未ちゃんの後ろから、女神様が現れた。

 

 「おはようございます、志満さん。結婚して下さい」

 

 「いきなりプロポーズですか!?」

 

 「フフッ、そんなに私のことが好き?」

 

 「会いたくて会いたくて震えるくらい好きです」

 

 「西●カナじゃないですか!?」

 

 「ありがとう、凄く嬉しいわ。私も会えない時間にも愛しすぎて、目を閉じればいつでも天くんがいるくらい好きよ」

 

 「それも西野●ナですよねぇ!?」

 

 海未ちゃんのツッコミが響き渡る。

 

 と、着替え終わった千歌さん達が『十千万』から出てきた。普通の私服姿になっている。

 

 「結局、いつもの服になってしまったずら・・・」

 

 不安げな花丸。俺は花丸の頭を撫でた。

 

 「その服の方が似合ってるよ。花丸は可愛いんだから、服のチョイスさえ間違わなきゃ大丈夫だって」

 

 「か、可愛っ・・・!?」

 

 赤面する花丸。純粋だなぁ・・・

 

 「なるほど・・・海未先生の言った通りですね」

 

 「でしょう?ああやって素直に人を褒めることが出来るのは、天の良いところではあるのですが・・・無自覚にフラグを立てやすいのが問題でして」

 

 「・・・納得です」

 

 何やらヒソヒソ話し合っている梨子さんと海未ちゃん。よく聞こえないが、もの凄く心外なことを言われている気がする。

 

 「ねぇねぇ天くん、私は!?私は可愛い!?」

 

 「はいはい、可愛い可愛い・・・おっ、ルビィもその服の方がよく似合ってるじゃん」

 

 「えへへ、そうかな?」

 

 「何で私だけ扱いが違うの!?」

 

 抗議してくる千歌さんは放置して、ただただルビィを愛でる。

 

 ホント、この子を妹にしたくて仕方ないわぁ・・・

 

 「じゃあ、そろそろ車出すわね」

 

 「ありがとうございます、志満さん。ついでに美渡さんも」

 

 「ついでって何よ!?」

 

 美渡さんのツッコミ。

 

 曜さんや善子とは沼津駅で待ち合わせている為、俺達は志満さんと美渡さんに車で沼津駅まで送ってもらうことになっていた。

 

 「さて、沼津駅に向かいましょうか」

 

 俺がそう言ったところで、俺のスマホに着信が入った。

 

 

 

 『できる~!できる~!キミならできる~!』

 

 

 

 「まだ着信音それだったの!?」

 

 梨子さんのツッコミはスルーして、着信相手を確認すると・・・あれ、曜さん?

 

 「もしもし?」

 

 『もしもし天くん!?』

 

 「曜さん?どうしたんですか?」

 

 『お願いだから早く来て!これ以上は私の精神がもたない!』

 

 「え・・・?」

 

 切羽詰った様子の曜さんの声に、首を傾げる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ククッ・・・魔都にて堕天使ヨハネが、冥府よりリトルデーモンを召喚しましょう」

 

 「・・・何あれ」

 

 沼津駅に着いた俺達は、石像の前で堕天使ポーズを決める善子を見て呆れていた。

 

 いつもの堕天使の衣装だけでは飽き足らず、白塗りの顔に赤い付け爪とか・・・もうデ●モン閣下にしか見えない。

 

 「天くーんっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 涙目で駆け寄ってきた曜さんが、俺に抱きついてくる。

 

 「もう限界だよ!善子ちゃんの隣にいるだけでもの凄く注目されるし、スマホでメッチャ撮影されるし!私の精神がもたないよ!」

 

 「・・・お疲れ様です」

 

 曜さんの頭を撫でる。

 

 皆からも曜さんに同情の視線が向けられる中、善子はさらに演説を続けていた。

 

 「私の名は・・・堕天使ヨハネッ!」

 

 「「「「「キャーッ!?」」」」」

 

 突然の叫びにビックリした周囲の人達が、一目散に逃げて行く。

 

 完全に怖がられてんじゃん、善子・・・

 

 「フッ・・・私の闇の力に恐れをなしたか。下劣で下等な人間共め」

 

 「“クラ●チ”」

 

 「ギャアッ!?」

 

 善子の背後から、首の関節をきめにかかる。

 

 「痛い痛い!ちょ、天!?ギブギブ!」

 

 「どうも、懸賞金一億三千万ベリーの“悪魔の子”です」

 

 「どこのロ●ンよ!?ホントにヤバいから!首がミシミシいってるから!」

 

 「アンタだけは・・・落とすッ!」

 

 「意識が落ちちゃうから止めて!?」

 

 「それだけで済むと良いね」

 

 「嫌ああああああああああっ!?」

 

 悲鳴を上げる善子なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「うぅ、首が痛い・・・」

 

 「自業自得だよ」

 

 涙目で首を擦る善子を、冷たい目で見る俺。

 

 志満さんと美渡さんに見送られた俺達は電車に乗り、東京へと向かっていた。出発する直前にむつさん・いつきさん・よしみさんも来てくれて、差し入れにのっぽパンをくれたのだった。

 

 ありがたいことだよな・・・

 

 「のっぽパン美味しいずら~!」

 

 「食べ過ぎないでね」

 

 美味しそうにのっぽパンを頬張る花丸に、念の為釘を刺しておく。

 

 花丸の場合、全てののっぽパンを食べ尽くしてしまいかねないからな・・・

 

 「東京に着いたらどこに行こっか!?」

 

 「私はメイドカフェに行ってみたいな!メイドさんの衣装が見たい!」

 

 「ルビィはスクールアイドルショップに行きたいです!」

 

 「すっかり観光気分だし・・・」

 

 溜め息をつく俺。梨子さんと海未ちゃんが苦笑している。

 

 「まぁまぁ、少しくらい良いじゃない」

 

 「そうですよ。せっかく東京に行くんですから」

 

 「・・・ハァ」

 

 これじゃ先が思いやられるな・・・

 

 「あ、私トランプ持ってきたんだった!皆でやらない!?」

 

 「よし、大富豪やりましょう。負けた人は罰ゲームで」

 

 「天くんが一番ノリノリじゃない!?」

 

 梨子さんのツッコミ。隣では海未ちゃんが苦笑している。

 

 「よーし!カード配っていくよー!」

 

 「フッ・・・このヨハネに勝負を挑もうとは、良い度胸ね」

 

 「いや、善子にだけは負ける気がしないんだけど」

 

 「何でよ!?」

 

 「だって善子、上条●麻さんばりの不幸体質じゃん」

 

 「その幻想をぶち殺すッ!」

 

 結果として不幸体質は幻想ではなく、本当に一度も勝つことの出来ない善子なのだった。




どうも~、ムッティです。

この間電車に乗っていたら、自分の斜め右前に座っていたおじいさんと、自分の斜め左前に座っていたおばさんが同じ駅で降りたんですね。

その瞬間、自分の正面に座っていたおじさんが大きな声で一言・・・



『あー、臭かったッ!』



どうやらこのおじさん、デリカシーというものをどこかに置いてきてしまったみたいです(笑)

まぁ電車に乗ってると、匂いが気になる人とかいますけども。

それにしたって、電車内で大声で叫ばなくても・・・

そして臭かったのは、おじいさんとおばさんのどちらだったのか・・・

そんなことが気になったのでした(笑)

全く関係ない話ですみません(笑)

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅行先ではついはしゃぎたくなるものである。

μ'sから、あの二人が登場します。


 「わぁ・・・!」

 

 目を輝かせる千歌さん・ルビィ・花丸。俺達は東京・秋葉原に到着していた。

 

 「見て見て!スクールアイドルの広告があるよ!」

 

 はしゃぐ千歌さん。一方・・・

 

 「クックックッ・・・ここがあまねく魔の者が闊歩すると言い伝えられる約束の地、魔都・東京ね」

 

 ドヤ顔でポーズを決めている善子。魔都って何やねん。

 

 「はいはい、はしゃぎすぎないの」

 

 釘を刺す俺。

 

 「とりあえず、勝手な行動はしないように・・・」

 

 「あっ、スクールアイドルショップ!」

 

 「ぴぎぃっ!」

 

 「人の話聞いてくれる!?」

 

 近くのスクールアイドルショップへと走っていく千歌さんとルビィ。

 

 何してんのあの人達・・・

 

 「すっかり夢中になってますね」

 

 「皆はしゃいでるなぁ」

 

 苦笑している海未ちゃんと曜さん・・・って、あれ?

 

 「気のせいかな・・・海未ちゃんと曜さん以外誰もいなくない?」

 

 「善子は近くに堕天使ショップがあるらしくて、そちらへ行きましたよ。花丸は秋葉原の街を巡りたいとのことで、付き添いの梨子と一緒に行ってしまいました」

 

 「・・・もう嫌だ」

 

 溜め息をつく俺。内浦に帰りたい・・・

 

 「まぁせっかくですし、観光するのも悪くないでしょう。私は先に実家へ戻ろうと思いますが、天と曜はどうしますか?」

 

 「私はちょっと寄りたいところがあるので」

 

 「・・・じゃあ俺も曜さんに付き合おうかな。ついでに全員回収していくよ」

 

 「了解です。ではまた後ほど」

 

 海未ちゃんはそう言うと、実家へと戻っていった。

 

 俺は曜さんへと視線を移す。

 

 「曜さん、寄りたいところってどこですか?俺で案内できるところなら、案内させてもらいますけど」

 

 「ホント!?」

 

 目を輝かせる曜さん。

 

 「さっきも言ったけど、メイドカフェに行きたいんだよね!」

 

 「やっぱり俺も海未ちゃんの実家に行ってます」

 

 「ちょっと!?」

 

 慌てて襟首を掴まれる。えぇ・・・

 

 「勘弁してくださいよ・・・それはちょっと勇気が必要ですって」

 

 「大丈夫だよ!『愛と勇気だけが友達さ』ってアン●ンマンも言ってるじゃん!」

 

 「いや、俺はアンパ●マンじゃないんで。愛と勇気以外にも友達いるんで」

 

 っていうかそれ、『アンパン●ンのマーチ』の歌詞だよね?ア●パンマン本人が言ってたわけじゃないよね?

 

 アンパンマ●にだって友達はたくさんいるわ。

 

 「お願い天くん!私一人じゃ勇気が出なくて入れないの!」

 

 「それが本音じゃないですか。曜さんも勇気が無いパターンじゃないですか」

 

 「天くん、お願いっ!」

 

 両手を合わせて、上目遣いでお願いしてくる曜さん。

 

 何か今、あの人と被ったな・・・髪色もちょっと似てるし・・・

 

 「・・・分かりましたよ」

 

 「やったぁ!」

 

 喜ぶ曜さん。そういや、あの人の頼みも断れなかったっけ・・・

 

 「それで?どこのメイドカフェに行くんですか?一口にメイドカフェと言っても、色々お店がありますけど」

 

 「フッフッフッ、そこは抜かりなく調査済みだよ!」

 

 胸を張る曜さん。大きいな・・・じゃなくて。

 

 「実は一軒、もの凄く気になってるお店があるんだよね!」

 

 「へぇ・・・そんなに有名なお店なんですか?」

 

 「うん!『伝説のメイド』って呼ばれてるメイドさんがいることで有名なお店なの!」

 

 「・・・マジかぁ」

 

 苦笑する俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「えーっと、この道がここだから・・・」

 

 「こっちですよ」

 

 「えっ、ホント!?」

 

 スマホと睨めっこしていた曜さんが、慌てて俺の後をついてくる。

 

 俺達は、『伝説のメイド』がいるメイドカフェを目指していた。

 

 「天くん、道詳しいね・・・ひょっとして、そのお店知ってるの?」

 

 「知ってますよ。行ったことありますし」

 

 「えぇっ!?」

 

 驚く曜さん。

 

 「じゃ、じゃあ!『伝説のメイド』に会ったことあるの!?」

 

 「ありますよ」

 

 「どんな人!?」

 

 「それは行ってのお楽しみです」

 

 「えぇっ!?凄く気になるんだけど!?」

 

 そんな会話をしているうちに、目的地に到着する。

 

 何だか懐かしく感じるな・・・

 

 「そういえば今日、『伝説のメイド』は出勤してるんですかね?」

 

 「ネットの口コミで調べたら、土日にいることが多いみたい。前は平日の方が多かったみたいだけどね」

 

 だろうな。当時は高校生だったから放課後にバイトしてたけど、今は大学が忙しいって言ってたし・・・

 

 「そういえば、最近新しいメイドさんが入ったみたいだよ。もの凄く可愛いメイドさんで、『伝説のメイド』もイチオシなんだって」

 

 「そうなんですか?」

 

 あの人がイチオシかぁ・・・どんな人なんだろう?

 

 「よし・・・!」

 

 扉の前に立ち、深呼吸を始める曜さん。

 

 「入る前に、まずは心の準備を・・・」

 

 「こんにちは~」

 

 「天くん!?」

 

 扉を開けて中に入る俺。すると・・・

 

 「いらっしゃいませ~♪」

 

 背中までかかる赤い髪を揺らしながら、一人のメイドさんが笑顔で駆け寄ってきた。

 

 えっ・・・

 

 「二名様でよろしいでしょう・・・か・・・」

 

 俺の顔を見て硬直するメイドさん。そんなメイドさんを、曜さんがキラキラした表情で見つめていた。

 

 「うわぁ、メイドさんだぁ・・・!可愛いなぁ・・・!」

 

 曜さんがまじまじと観察していることを気にもせず、ダラダラ汗をかきながら俺を見ているメイドさん。

 

 うん、とりあえず・・・

 

 「スイマセン、店を間違えました」

 

 「待って!?」

 

 踵を返して店を出ようとした俺の肩を、メイドさんがガシッと掴んだ。

 

 「違うの!これは違うの!」

 

 「何ガ違ウンデスカ?」

 

 「何でカタコトなのよ!?お願いだから事情を聞いて!?」

 

 「誰カト間違エテマセンカ?俺達ハ初対面ジャナイデスカ」

 

 「冗談でも他人のフリなんてしないでくれる!?天に他人のフリなんてされたら、私は本気で泣く自信あるわよ!?」

 

 既に涙目のメイドさん。一方、曜さんは困惑していた。

 

 「えーっと・・・天くん、このメイドさんと知り合いなの・・・?」

 

 「いえ、全く」

 

 「ちょっと!?」

 

 「真姫ちゃ~ん?」

 

 奥からもう一人のメイドさんがやってきた。ベージュ色の長い髪を、独特のサイドテールに結ったメイドさんだ。

 

 「騒がしいけど、何か問題でもあった・・・の・・・」

 

 やはり俺を見て固まるメイドさん。俺もそのメイドさんを見て固まってしまった。

 

 そして・・・

 

 「そっ・・・天くううううううううううんっ!」

 

 「ことりちゃああああああああああんっ!」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 お互いの元に駆け寄り、思いっきり抱き合う。曜さんがビックリしていた。

 

 「会いたかったよ天くんっ!」

 

 「俺もだよことりちゃんっ!」

 

 「・・・相変わらず仲良しね、アンタ達」

 

 ひしと抱き合う俺達を見て、赤髪のメイドさんが溜め息をつく。

 

 「全く・・・私にはそんなリアクションしてくれなかったくせに・・・」

 

 「天くん、真姫ちゃんがやきもち妬いてるよ」

 

 「アララ、ホントだね。全く、真姫ちゃんったら可愛いんだから」

 

 「べ、別にやきもちなんて妬いてないわよ!?」

 

 「ゴメンゴメン。ほら真姫ちゃん、ハグしよ?」

 

 「し、仕方ないわね・・・」

 

 と言いつつも、しっかり俺に抱きついてくる真姫ちゃん。曜さんが呆然としていた。

 

 「そ、天くん・・・そろそろ説明してくれると助かるんだけど・・・」

 

 あっ、完全に曜さんを置き去りにしてたわ・・・

 

 っていうか、この二人の顔にまだピンときてないのかな?

 

 「曜さん、今μ'sの画像って見れます?」

 

 「え?あ、うん。千歌ちゃんからもらったのがあるよ」

 

 そう言ってスマホを操作し、μ'sの画像を表示する曜さん。それを見た瞬間、曜さんが驚愕の表情を浮かべた。

 

 「えっ!?」

 

 スマホの画面と二人のメイドさんの顔を、ダラダラ汗を流しながら超高速で交互に見る。

 

 「ま、まさかっ・・・!?」

 

 「そのまさかです」

 

 苦笑する俺。

 

 「南ことりちゃんと、西木野真姫ちゃん・・・二人ともμ'sのメンバーですよ」

 

 「初めまして♪」

 

 「どうも」

 

 挨拶する二人に、完全に固まってしまう曜さんなのだった。




どうも~、ムッティです。

今回はμ'sから、ことまきペアが登場しました!

真姫ちゃんは五年経っているので、髪が伸びているという設定です。

ことりちゃんは・・・そのままで良いかなって(笑)

鞠莉ちゃんもそうですけど、あの独特のサイドテールは特徴的ですもんね。

さて、メイドカフェにて真姫ちゃんやことりちゃんと再会した天ですが・・・

果たしてどのような展開になっていくのか・・・

続きをお楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

知らない方が良いことでも気になるものである。

何か少しだけ暑さが和らいだ気がする。

早く涼しくならないかなぁ・・・


 《曜視点》 

 

 「はい天くん、あ~ん♪」

 

 「あ~ん・・・ん、美味しい!」

 

 「でしょでしょ!?私が考えた新作メニューなの!」

 

 「ホントに美味しいねコレ・・・しかもことりちゃんに食べさせてもらえたおかげで、尚更美味しく感じるよ」

 

 「もう、天くんったら♡」

 

 「・・・どこのバカップル?」

 

 「気にしたら負けよ。この二人はずっとこんな感じだから」

 

 溜め息をつく西木野さん。私達は今、メイドカフェの奥にある従業員用の控え室にお邪魔していた。

 

 南さんも西木野さんもちょうど休憩時間に入るところだったらしく、ここまで案内してくれたのだ。

 

 「ことりは天を溺愛してて、昔からメチャクチャ可愛がってるのよ。天もそんなことりにもの凄く懐いてるから、この二人が一緒にいる時の空間はいつも甘々ってわけ。知らない人が見たら、間違いなく恋人同士だと勘違いされるレベルね」

 

 「な、なるほど・・・」

 

 これで付き合ってないとか嘘でしょ・・・?

 

 今だって南さんと天くんは隣同士で座ってるけど、ピッタリくっついてるよ?ソファのスペースは全然余裕あるのに、お互いがお互いに寄り添い合ってるよ?

 

 これで本当に恋人同士じゃないの・・・?

 

 「何度も言うけど、気にしたら負けよ。この二人に関しては、『こういうものなんだ』って割り切らないと」

 

 諦めたような目をしている西木野さん。

 

 あっ、既に達観してらっしゃる・・・

 

 「いやぁ、それにしてもビックリしたよ」

 

 一通りイチャイチャして落ち着いたのか、天くんが西木野さんに視線を移す。

 

 「まさか真姫ちゃんが、メイドさんに憧れてたなんて」

 

 「違うわよ!?」

 

 慌てて否定する西木野さん。

 

 「人が足りなくて困ってるってことりが言うもんだから、仕方なく手伝ってあげてるだけよ!」

 

 「真姫ちゃんは普通のメイドカフェより、ツンデレカフェの方が向いてると思うよ」

 

 「人の話聞きなさいよ!?っていうかどういう意味よそれ!?」

 

 「だってツンデレって、真姫ちゃんの為にあるような言葉じゃん」

 

 「人をツンデレの代表格みたいに言わないでくれる!?」

 

 「いや、実際代表格でしょ」

 

 「ちょっと表出なさい!」

 

 ツッコミを連発する西木野さん。大変そうだなぁ・・・

 

 「まぁでも・・・新しく入ったもの凄く可愛いメイドさんっていうのが、真姫ちゃんだったことは納得だわ」

 

 笑っている天くん。

 

 「真姫ちゃん可愛いし、メイド服もよく似合ってるもん」

 

 「・・・ありがと」

 

 照れたようにふいっと顔を背ける西木野さん。確かに西木野さんは可愛い・・・というより、とても綺麗な女性だった。

 

 μ'sの写真では肩にかかるくらいだった髪も、今では背中にかかるくらいまで伸びている。

 

 「これだけ可愛いメイドさんなら、『伝説のメイド』がイチオシするのも頷けるよ・・・ねぇ、ミナリンスキーさん?」

 

 「フフッ、でしょ?」

 

 笑う南さん。噂の『伝説のメイド』とは、どうやら南さん・・・もといミナリンスキーさんのことらしい。

 

 まさか『伝説のメイド』がμ'sのメンバーだったなんて、夢にも思わなかったなぁ・・・

 

 「っていうか、こっちこそ驚いたわよ。天がスクールアイドル・・・Aqoursだっけ?そのマネージャーをやってるなんて」

 

 「そうそう!海未ちゃんから聞いた時はビックリしちゃった!」

 

 「・・・まぁ、色々あってね」

 

 天くんの表情に陰りが差した。鞠莉さんのことを思い出してるのかな・・・

 

 「そのAqoursがスクールアイドルのイベントに参加するから、天も東京に戻ってきたんでしょ?そういうことは前もって教えなさいよ」

 

 「そうだよ!それが分かってたら、私達だってちゃんと時間作ったのに・・・」

 

 「ゴメンゴメン」

 

 苦笑しながら謝る天くん。

 

 「スケジュール的に皆と会う時間は無いと思って、あえて何も言わなかったんだよ。だから海未ちゃんにも、『皆には何も言わないで』ってお願いしておいたんだ」

 

 「全く・・・海未は天の言うこと何でも聞いちゃうんだから・・・」

 

 やれやれと言いたげな西木野さん。と、南さんがおずおずと尋ねる。

 

 「『皆に』ってことは・・・その、絵里ちゃんにも・・・?」

 

 「・・・伝えてないよ。一応亜里姉には伝えたから、耳には入ってると思うけど」

 

 「絵里ちゃんから連絡は・・・?」

 

 「何も無いし、俺も会うつもりはないよ。仲裁役の亜里姉も、今週末は東京にいないみたいだしね」

 

 淡々と話す天くん。

 

 南さんの言う『絵里ちゃん』って、μ'sの絢瀬絵里さん・・・つまり天くんのお姉さんだよね?

 

 天くん、お姉さんと仲悪いのかな・・・

 

 「ホントにもう・・・天も絵里も頑固なんだから」

 

 呆れている西木野さん。

 

 「一度腹を割って話し合ってみなさいよ。本音をぶつけ合わなきゃ、理解出来るものも出来やしないわよ」

 

 「残念ながら、話し合った結果がこれなんだよ」

 

 西木野さんの言葉をバッサリ切り捨てる天くん。

 

 「もう一度話し合おうにも、お互いが冷静になれなきゃ同じことの繰り返しになっちゃうでしょ。今はその時じゃないんだよ」

 

 「天くん・・・」

 

 「ゴメンことりちゃん、お手洗い借りたいんだけど」

 

 「え?あぁ、どうぞ。廊下の突き当たりにあるよ」

 

 「ありがと」

 

 天くんは席を立つと、控え室から出て行った。南さんが申し訳なさそうに私を見る。

 

 「ゴメンね、雰囲気悪くしちゃって・・・」

 

 「い、いえ!そんな!」

 

 「もう、真姫ちゃんがあんなこと言うから・・・」

 

 「絵里の話を振ったのはことりでしょ」

 

 溜め息をつく西木野さん。私は思い切って尋ねてみることにした。

 

 「あの、天くんってお姉さん・・・絢瀬絵里さんと仲悪いんですか・・・?」

 

 私の質問に対し、困ったように笑う南さん。

 

 「そんなことないよ。二人はとっても仲の良い姉弟なの。ただ、今はちょっと姉弟喧嘩中で・・・」

 

 「姉弟喧嘩、ですか?」

 

 「うん、色々あってね・・・」

 

 言葉を濁した南さんだったが、そこへ西木野さんが口を挟んだ。

 

 「テスト生の話を受けるか断るかで揉めたのよ」

 

 「真姫ちゃん!?」

 

 「目の前でこんな話しちゃったんだから、今さら隠す必要も無いでしょ。それにこの子は、今の天と最も関わりが深い子の一人なのよ?天のことを知る権利があると思うわ」

 

 「そうかもしれないけど・・・」

 

 躊躇いを見せる南さん。私は西木野さんの言葉が気になっていた。

 

 「天くんとお姉さんとの間で、意見が対立したってことですか?」

 

 「まぁね」

 

 頷く西木野さん。

 

 「天と絵里のご両親は、仕事の関係でロシアに住んでるの。だから天は、絵里ともう一人の姉・・・亜里沙っていうんだけどね。三人で東京に住んでたのよ」

 

 そうだったんだ・・・全然知らなかった・・・

 

 「天が理事長からテスト生の話を打診された時、絵里は猛反対したの。絵里はこっちで就職が決まってたし、亜里沙も大学はこっちにあるから。つまり天がテスト生になって内浦へ行くことになっても、二人はついて行くことが出来ない・・・必然的に、天は一人暮らしをすることになるでしょ?絵里としては、それが嫌だったみたい」

 

 「・・・そうですよね」

 

 その反応が自然だと思う。

 

 ご両親がロシアにいるのなら、今はお姉さんが天くんの保護者みたいなもの・・・心配するのも当然だ。

 

 「それに天って、凄く勉強が出来るのよ。偏差値の高い超難関校でも、あの子だったら十分に合格出来る可能性があった。将来のことを考えたら、そういう高校を選ぶべきだって絵里は主張したんですって」

 

 その主張も間違っていないと思う。

 

 そういった選択肢があったのなら、お姉さんとしてはそっちを選んでほしいだろう。

 

 「それでも天は、テスト生の話を受ける意思を曲げなくて・・・それで絵里と大喧嘩になったのよ」

 

 苦笑する西木野さん。

 

 「その場にいた亜里沙から聞いたけど、かなり激しく言い合ったみたい。二人があんな大喧嘩をしたのは、五年前以来ですって」

 

 「五年前・・・?」

 

 「絵里がμ'sに加入する前に、ちょっと色々あってね・・・まぁそれは置いといて。そんなことがあって、二人は今距離を置いてるのよ」

 

 「そうだったんですね・・・」

 

 天くんが東京に行くことを拒んでいたのは、こういうことだったんだ・・・

 

 お姉さんと顔を合わせたくなかったから・・・

 

 「ウチのお母さん、未だに責任を感じてるんだよねぇ・・・」

 

 溜め息をつく南さん。

 

 「自分が天くんにテスト生の話を打診したせいで、二人の関係を拗れさせちゃったって・・・」

 

 「そういえば、音ノ木坂の理事長さんは南さんのお母さんなんですよね」

 

 「そうだよ。ウチのお母さんも、天くんのことは自分の息子みたいに可愛がってて・・・それだけに、二人が大喧嘩したって知った時はショックを受けてたなぁ・・・」

 

 悲しそうな表情の南さん。どうやら天くんとお姉さんの大喧嘩は、周りの人達に結構な影響を与えているようだ。

 

 そんな天くんにマネージャーをやってもらっている身としては、ちょっと申し訳ないな・・・

 

 「まぁこんな話をしておいて、こういうことを言うのもどうかと思うけど・・・貴女達が責任を感じる必要は無いのよ?」

 

 私の表情から心境を汲み取ってくれたのか、西木野さんが優しげな表情で私を見ていた。

 

 「これはあくまでも天と絵里の問題であって、誰が悪いとかそういう話じゃないの。天には天の意見があって、絵里には絵里の意見があった・・・それがぶつかり合ってこうなってるだけだから、誰にも責任なんて無いのよ」

 

 「真姫ちゃんの言う通りだよ。今は喧嘩中でも、きっとすぐ仲直りしてくれるって信じてる。あの二人の仲の良さは、私達がよく知ってるんだから」

 

 西木野さんと南さんはそう言ってくれたが、私は複雑な気持ちを拭えないのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ご馳走様。休憩時間中だったのに、何かゴメンね」

 

 「気にしないで。久々に天くんと会えて嬉しかったから」

 

 笑顔でそう言ってくれることりちゃん。

 

 千歌さん達も十分観光を楽しんだようで、『そろそろ合流しよう』と連絡が来たのだ。

 

 こっちはアンタ達を待ってたっていうのに・・・

 

 「内浦へは明日帰るのよね?夏休みにまた東京に戻ってきたりしないの?」

 

 「今のところ、予定は決めてないかな」

 

 真姫ちゃんの質問に、苦笑しながら答える俺。

 

 「逆に内浦に遊びに来なよ。少しは案内出来ると思うから」

 

 「えぇ・・・めんどくさいんだけど・・・」

 

 「そっかぁ・・・また真姫ちゃんと会いたいんだけどなぁ・・・」

 

 「し、仕方ないわね!そこまで言うなら遊びに行ってあげるわよ!」

 

 言葉とは裏腹に、口元が緩んでいる真姫ちゃん。ホント素直じゃないなぁ・・・

 

 「内浦って海が綺麗なんでしょ?私も新しい水着買って、泳ぎに行きたいなぁ」

 

 「露出多めの水着でお願いします」

 

 「欲望丸出し!?」

 

 曜さんのツッコミ。ことりちゃんが面白そうに笑っている。

 

 「もう、天くんのエッチ♡じゃあその時は、天くんがサンオイル塗ってくれる?」

 

 「はい喜んで!」

 

 「・・・西木野さん、この二人って」

 

 「気にしたら負けよ」

 

 曜さんと真姫ちゃんが何やら話している。仲良くなれたようで何よりだ。

 

 「じゃあ曜さん、そろそろ行きましょうか」

 

 「あ、うん」

 

 「天」

 

 真姫ちゃんに名前を呼ばれて振り向くと・・・そのまま優しく抱き締められた。

 

 「真姫ちゃん・・・?」

 

 「・・・また必ず会いに来なさいよ。私だって、天に会えないのは寂しいんだから」

 

 「真姫ちゃん・・・」

 

 「連絡くらい寄越しなさい。いつでも待ってるわ」

 

 「・・・ありがとう、真姫ちゃん」

 

 真姫ちゃんを強く抱き締め返す。

 

 そんな俺達を包み込むように、ことりちゃんが優しく抱き締めてくる。

 

 「私だって、天くんに会えないのは寂しいんだからね。それは皆も一緒だってことを、忘れないで」

 

 「ことりちゃん・・・」

 

 「私や真姫ちゃんは勿論、他の皆にもちゃんと連絡してあげて。皆待ってるから」

 

 「・・・うん、分かった」

 

 ことりちゃんと真姫ちゃんの温もりを感じ、心が温かくなる。

 

 こうやって自分のことを想ってくれる人がいるって、幸せなことだよな・・・

 

 「じゃあ、そろそろ行くね」

 

 「うん、行ってらっしゃい!」

 

 「イベント頑張りなさい。応援してるわ」

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 恐縮しながら頭を下げる曜さん。

 

 笑顔で手を振る二人に見送られ、俺達は千歌さん達との待ち合わせ場所へと歩き出した。

 

 「・・・幸せ者だね、天くんは」

 

 曜さんがそんなことを言う。

 

 「あんなにも大切に想ってくれる人達がいるんだもん。羨ましいな」

 

 「・・・えぇ、俺の自慢です」

 

 他の皆にも連絡しないとな・・・ずいぶん心配かけてるみたいだし。

 

 「・・・ねぇ、天くん」

 

 そんなことを考えていると、曜さんがおずおずと口を開いた。

 

 「何ですか?」

 

 「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」

 

 「聞きたいこと?」

 

 首を傾げる俺。

 

 曜さんは口を開きかけたが、思い留まったように開きかけた口を閉じた。

 

 「・・・ううん。やっぱり何でもない!」

 

 笑顔でそう言う曜さん。

 

 どことなく悲しそうな表情をしている曜さんの様子が、少し気になる俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回はことまきペアとのお喋りタイムでした!

前回の話では、『ことりちゃんの登場は予想してたけど、真姫ちゃんの登場は予想外だった』という感想を多くいただきました。

まぁメイド真姫ちゃんを書きたかったのはあるんですが(笑)

実は天と絵里ちゃんの喧嘩について触れてもらう為でもありました。

ことりちゃんは優しいから気を遣って、天と絵里ちゃんの間にあったことについて触れないだろうなと思ったので。

とはいえ曜ちゃんが天の事情を知るシーンは書きたかったので、μ'sの中の誰がそれを話してくれそうか考えた結果が真姫ちゃんでした。

真姫ちゃんなら天にも曜ちゃんにも気を遣いつつ、事情をきちんと説明してくれるだろうなと。

あとは希ちゃんとにこちゃんも思い浮かびましたが、二人は社会人になっているはずなので。

真姫ちゃんが適任かな、と。

まぁ天と海未ちゃんの会話に真姫ちゃんの名前を出したので、早く登場させたかったというのもありますが(笑)

ちなみに何話か前の話を曜ちゃん視点で書いたのは、この話を書くにあたっての伏線だったりします。

まぁ伏線とはいいましたが、そんな大げさなものでもないですけどね(笑)

長々と説明してしまってすみません。

さて、これからどのような展開になっていくのか・・・

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見下されて良い気分になる人などいない。

先に謝罪しておきます。

Saint Snowファンの方々、大変申し訳ございません。


 「えぇっ!?じゃあ曜ちゃん、南ことりさんと西木野真姫さんに会ったの!?」

 

 「うん。凄く綺麗で、メッチャ良い人達だったよ」

 

 「良いなぁ・・・!」

 

 曜さんを羨ましがる千歌さんとルビィ。

 

 合流した俺達は、海未ちゃんの実家へ行く前に神田明神へと向かっていた。千歌さんがどうしても行きたいのだそうだ。

 

 「ちょっと天くん!?どうして呼んでくれなかったの!?」

 

 「どこかの誰かさん達は、俺に何も言わずにいなくなっちゃったじゃないですか」

 

 「「「「「すいませんでした」」」」」

 

 千歌さん・梨子さん・花丸・ルビィ・善子が即座に謝る。全く・・・

 

 「まぁ、また機会があれば紹介しますよ」

 

 「絶対だよ!?絶対紹介してね!?」

 

 「ルビィも忘れないでね!?」

 

 「はいはい」

 

 そんな会話をしていると・・・懐かしい風景が目の前に現れた。

 

 「・・・変わらないなぁ」

 

 思わずそんなことを呟く。

 

 神田明神へと続く、長い石の階段・・・μ'sの皆はあの頃、何度も何度もここを駆け上ってたっけ・・・

 

 「これが、μ'sがいつも練習していたっていう階段・・・!」

 

 目を輝かせるルビィ。

 

 μ'sファンの間ではこの場所は有名で、『聖地』なんて呼ばれていたりするらしい。『仰々し過ぎる』って、μ'sの皆は苦笑いしてたけど。

 

 「ねぇ、ちょっと上って・・・」

 

 「先に行きますね」

 

 「ちょ、天くん!?」

 

 千歌さんが言い終わる前に、俺はもう階段を駆け上がり始めていた。

 

 この階段を見ていたら、身体が勝手に動いてしまったのだ。

 

 「天くん!?ちょっと待ってほしいずら!?」

 

 「っていうか早すぎない!?」

 

 花丸と善子の悲鳴が聞こえてくる。

 

 それはそうだ。μ'sの皆と一緒に、何度この階段を上ったことか・・・

 

 「よっ!」

 

 一番乗りで階段の上に到着する。

 

 目の前に広がる神田明神の境内に、何だかとても懐かしい気持ちになっていると・・・

 

 「ん?」

 

 何やら歌声が聴こえた。誰かが境内で歌ってる・・・?

 

 「やっと着いたぁ・・・」

 

 「結構キツいね・・・」

 

 皆が続々とやってくるが、俺の視線は一点に向けられていた。そこでは同じ制服を着た二人の女の子が、見事な歌唱力で歌を歌っているところだった。

 

 あの二人って・・・

 

 「凄い・・・」

 

 千歌さんが呟く。歌唱力もさることながら、二人のハモりがとても美しかった。

 

 やがて歌い終えた二人が、ゆっくりとこちらを振り向いた。

 

 「こんにちは」

 

 サイドテールに髪を括った女の子が、こちらに向けて会釈する。

 

 「こ、こんにちはっ!」

 

 緊張気味に応える千歌さん。それに対して・・・

 

 「まさか・・・天界勅使!?」

 

 「何言ってんの?」

 

 訳の分からないことを言いながら、俺の背中に隠れている善子。相変わらず人見知りなんだから・・・

 

 と、女の子が千歌さん達を見て何かに気付いた。

 

 「あら?貴女達もしかして、Aqoursの皆さん?」

 

 「えっ、どうして・・・」

 

 「この子、脳内に直接・・・!?」

 

 「善子、飴あげるからちょっと黙ってて」

 

 「子供扱い!?」

 

 「PV見ました。素晴らしかったです」

 

 微笑みながらそう言ってくれる女の子。千歌さんが嬉しそうに笑う。

 

 「ありがとうございます!」

 

 「もしかして・・・明日のイベントでいらしたんですか?」

 

 女の子の目が一瞬細められたのを、俺は見逃さなかった。

 

 あの目は・・・

 

 「あ、はい!」

 

 「・・・そうですか」

 

 女の子は微笑むと、俺へと視線を移した。

 

 「貴方は?Aqoursのどなたかの彼氏さんですか?」

 

 「「「「「「かっ、彼氏!?」」」」」」

 

 顔を赤くする皆。何照れてんのこの人達・・・

 

 「いえ、マネージャーです」

 

 「あら、マネージャーさんがいらっしゃるんですか?凄いですね」

 

 「大したことはしてませんけどね」

 

 淡々と答える俺。

 

 「貴女達の方が凄いと思いますよ・・・Saint Snowさん」

 

 「あら、私達のことをご存知で?」

 

 驚いた様子の女の子。俺は溜め息をついた。

 

 「これでも主要なスクールアイドルはチェックしているので。貴女が鹿角聖良さんで、お隣が鹿角理亞さん・・・北海道で姉妹ユニットとして活動されているそうですね」

 

 「えぇっ!?この二人スクールアイドルだったの!?」

 

 「少しは勉強して下さい、世間知らずオレンジヘッド」

 

 「相変わらず辛辣!?」

 

 全くこの人は・・・

 

 もっと他のスクールアイドルを見て、勉強しようという心構えは無いんだろうか・・・

 

 「貴女方も明日のイベントに参加する為に、北海道からいらしたんですよね?」

 

 「えぇ、先ほど到着したところでして」

 

 笑みを浮かべる聖良さん。

 

 「明日のイベント、お互い頑張りましょう。楽しみにしてます」

 

 そう言うと、聖良さんは一礼して歩き出した。

 

 その瞬間、理亞さんがこちらに向かって勢いよく走り出す。

 

 「「「「「「えぇっ!?」」」」」」

 

 動揺する皆。

 

 そしてこちらにギリギリまで近付いた瞬間、境内の地面に手をつき・・・その勢いで空中に跳んだ。

 

 「おぉ・・・」

 

 その身軽さに、思わず感嘆の声を上げる俺。理亞さんは空中で一回転すると、聖良さんの横にスタッと着地した。

 

 「・・・凄いですね」

 

 「・・・どうも」

 

 不敵な笑みを浮かべる理亞さん。いやぁ、何が凄いって・・・

 

 「よくスカートで跳びましたね・・・パンツ丸見えでしたけど」

 

 「「「「「「「そっち!?」」」」」」」

 

 「っ!?」

 

 聖良さんまでツッコミを入れてくる。

 

 一方の理亞さんは顔が一瞬で真っ赤になり、慌ててスカートを押さえ俺から距離をとった。

 

 「こ、この変態っ!」

 

 「スカートにも関わらず跳んで、人にパンツ見せつけた貴女に言われたくないです」

 

 「うぅ・・・」

 

 涙目の理亞さん。聖良さんがコホンッと咳払いをする。

 

 「えーっと・・・見苦しいものをお見せして、申し訳ありませんでした」

 

 「見苦しい!?私のパンツが見苦しいっていうの!?」

 

 「そ、そういう意味で言ったんじゃなくて!」

 

 「姉様のバカアアアアアッ!」

 

 「ちょ、理亞!?」

 

 走り去っていく理亞さんを、慌てて追いかけていく聖良さん。あーあ・・・

 

 「理亞さん・・・可哀想に・・・」

 

 「誰のせいだと思ってるずら!?」

 

 「本当にすまないと思っている(キリッ)」

 

 「絶対嘘ずらっ!」

 

 花丸のツッコミ。まぁ正直、俺は申し訳ないとは思っていなかった。

 

 聖良さんのあの目・・・あれは人を値踏みしている時の目だ。さらに俺がマネージャーだと名乗った時の反応・・・『お前達には必要ないだろう』という思いが見えた。

 

 そして何よりも、あの二人の不敵な笑み・・・自分達に絶対の自信がある一方で、明らかにこちらを見下している。

 

 「・・・気に食わないな」

 

 小さく呟く俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、遂に登場しましたSaint Snowの二人・・・

ちょっと嫌なキャラみたいになってしまい、大変申し訳ありません。

実は個人的に最初、Saint Snowの二人は嫌なキャラだと思っていたんです(アニメ一期第八話での、Aqoursに対する言動から)

それが反映された形となってしまいました・・・

これから少しずつ仲良くなっていきますので、何卒御容赦下さいませ・・・

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

元気の無い人を見ると心配になるものである。

最近、欅坂46の『黒い羊』をメッチャ聴いてます。

メッセージ性の強い、心に響く曲ですよね。


 「こ、ここが海未先生の実家・・・」

 

 唖然としている千歌さん。

 

 武家屋敷のような趣のある古風な家を前に、皆思わず固まってしまっていた。

 

 「何だかウチと似てて、親近感が湧くなぁ」

 

 「黒澤家もこんな感じだもんね」

 

 ルビィとそんな会話をする。

 

 初めて黒澤家にお邪魔した時、『まるで園田家だな』って思ったっけなぁ・・・

 

 「とりあえず入りましょうか」

 

 そう言ってインターホンを押そうとすると、その前にドアが開いた。中から着物姿の女性が出てきて、俺達を見て首を傾げる。

 

 「あら?ウチに何か御用ですか?」

 

 「あ、えーっと・・・」

 

 「お久しぶりです、波未さん」

 

 頭を下げる俺。波未さんは俺を見ると、顔をパァッと輝かせた。

 

 「まぁ、天さん!お久しぶりです!」

 

 「お元気そうで何よりです。お変わりないですか?」

 

 「えぇ、おかげさまで。天さんもお元気そうで安心しました」

 

 波未さんと談笑していると、梨子さんに袖を引っ張られた。

 

 「そ、天くん・・・こちらの方は・・・?」

 

 「あぁ、すみません。こちらは園田波未さん、海未ちゃんのお母さんです」

 

 「初めまして」

 

 微笑みながら一礼する波未さん。相変わらず作法が綺麗だなぁ・・・

 

 「お、お母さん!?海未先生の!?」

 

 「お姉さんじゃなくて!?」

 

 「フフッ、そう言っていただけると嬉しいです」

 

 皆の驚きように、口元に手を当てて嬉しそうに笑う波未さん。

 

 まぁ確かに、波未さんと海未ちゃんって似てるもんなぁ・・・しかも波未さんは若く見えるし、俺も最初は海未ちゃんのお姉さんだと勘違いしたっけ・・・

 

 そんなことを思い出していると、家の中から海未ちゃんが出てきた。

 

 「お母様、何かあったのですか・・・って、皆もう着いてたんですね」

 

 「遅くなってゴメンね、海未ちゃん。ちゅんちゅんとイチャイチャしててさ」

 

 「ことりと会ったんですか!?あの子はまた抜け駆けを・・・!」

 

 「あと、ツンデレ姫と戯れてた」

 

 「真姫まで!?ズルいです!」

 

 「『ちゅんちゅん』と『ツンデレ姫』で通じるんだ・・・」

 

 呆れている曜さん。まぁμ'sのメンバーなら、大体ニュアンスで通じるからな。

 

 「海未、こちらの方々が浦の星の・・・?」

 

 「えぇ、そうです」

 

 「まぁ、いつもウチの海未がお世話になってます」

 

 「い、いえ!こちらこそ!」

 

 慌てて頭を下げる皆。俺も波未さんに一礼した。

 

 「すみません波未さん、大勢で押しかけてしまって・・・」

 

 「フフッ、天さんとそのお友達ならいつでも大歓迎です」

 

 ニッコリ笑う波未さん。

 

 「それでは、私は夕飯のお買い物に行ってきます。どうぞ自分の家だと思って、ゆっくり寛いで下さいね」

 

 「ありがとうございます」

 

 「海未、皆さんに家の中を案内して差し上げて」

 

 「はい、お母様」

 

 波未さんは微笑むと、そのまま買い物へと出かけていった。

 

 「いやぁ、波未さんは相変わらず綺麗だねぇ・・・結婚しよ」

 

 「出来ませんよ!?人妻ですからね!?」

 

 「アハハ、冗談だよ」

 

 「私でしたら結婚出来ますよ?」

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 「ガチトーンで断るの止めてもらえます!?」

 

 「この二人、本当に仲良しずらね・・・」

 

 「「「「「確かに・・・」」」」」

 

 苦笑する花丸の言葉に、同じく苦笑しながら頷く皆なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「美味しかったずら~♪」

 

 幸せそうに寝そべる花丸。園田家で夕飯をご馳走になった俺達だったが、その豪華さに全員が大満足だった。

 

 流石は波未さん、料理も上手とか完璧すぎる。

 

 「俺、料理が得意な人と結婚するんだ・・・」

 

 「じゃあ私しかいませんね」

 

 「ちょっと何言ってるか分かんない」

 

 「何でですか!」

 

 全く、海未ちゃんときたら・・・

 

 「ところで海未ちゃん、俺は今夜どこで寝たら良いの?」

 

 海未ちゃんに尋ねる俺。俺達は今大部屋にいるのだが、ここはAqoursの皆に用意された場所だ。

 

 俺はどこか余っている部屋にでも・・・

 

 「ここですけど?」

 

 「寝言は寝て言え、ラブアローシューター」

 

 「その呼び方止めてもらえます!?」

 

 何言ってんのこの人。年頃の男女を同じ部屋で寝かせる気なの?

 

 「あのね海未ちゃん、皆の気持ちを考えよう?男と一緒に寝るなんて、皆嫌に決まってるでしょ?」

 

 「私は構わないよ?」

 

 「私も大丈夫だけど?」

 

 キョトンとした顔で言う千歌さんと曜さん。いやいやいや・・・

 

 「マルも平気ずら」

 

 「ルビィも天くんだったらオッケーだよ」

 

 花丸とルビィもそんなことを言い出す。いやいやいやいや・・・

 

 「ちょ、ちょっと恥ずかしいけど・・・まぁ天くんなら・・・」

 

 「クックックッ・・・我がリトルデーモンに添い寝をしてやるのも、主であるヨハネの使命・・・感謝するが良いぞ?」

 

 「また“ク●ッチ”されたい?」

 

 「すいませんでした!」

 

 梨子さんと善子まで・・・この人達の貞操観念はどうなってるんだ・・・

 

 「まぁ、天が嫌だというなら仕方ありません。私と一緒に私の部屋で寝ましょう。そして二人で、いつものように熱い夜を・・・!」

 

 「ここで寝ます」

 

 「ちょっと!?」

 

 海未ちゃんのツッコミ。『熱い』夜なんて過ごした覚えないわ。

 

 海未ちゃんに抱き枕代わりにされて、『暑い』夜を過ごした覚えならあるけど。

 

 「じゃあ私もここで寝ます!私だけ仲間外れは嫌です!」

 

 「よーし!皆で仲良く一緒に寝よー!」

 

 「「「「「おー!」」」」」

 

 テンションの上がっている皆。俺と梨子さんは顔を見合わせ、思わず苦笑してしまった。

 

 と、千歌さんが海未ちゃんの方を見る。

 

 「そういえば海未先生、ここから音ノ木坂って近いんですか?」

 

 「えぇ、近いですよ。私は徒歩で通学してましたし」

 

 「案内してもらえませんか!?」

 

 目をキラキラと輝かせている千歌さん。

 

 μ'sファンにとって、音ノ木坂は是非とも行きたい場所なんだろうな・・・

 

 「案内するのは構いませんが・・・今から行くんですか?もう夜ですし、お風呂にも入ってしまいましたよ?」

 

 「はい!行ってみたいです!」

 

 「ルビィも行きたい!」

 

 「賛成であります!」

 

 「大丈夫ずら・・・?東京の夜は物騒じゃないずらか・・・?」

 

 「ククッ、夜こそヨハネの活動時間・・・恐れるものなど何も無いわ!」

 

 「この辺りって夜になるとお化けが出るらしいよ」

 

 「ひぃっ!?」

 

 俺にしがみつく善子。メッチャ怖がってんじゃん・・・

 

 と、梨子さんが何やら浮かない顔をしていた。

 

 「梨子さん?どうしました?」

 

 「えっ?あっ、ううん・・・何でもない」

 

 慌てて笑顔を見せる梨子さん。

 

 「千歌ちゃん、ゴメン。私は遠慮しておくね」

 

 「梨子ちゃん・・・?」

 

 「先に寝てるから。皆で行ってきて」

 

 梨子さんはそう言うと立ち上がり、大部屋から出て行った。

 

 どうしたのかな・・・

 

 「・・・やっぱり俺達も寝ませんか?明日の朝は早いですし」

 

 「・・・そうしよっか」

 

 苦笑する千歌さん。音ノ木坂に行ってみたい気持ちはあるようだが、梨子さん抜きで行くつもりはないようだ。

 

 こういう仲間思いなところは、千歌さんの良いところだと思う。

 

 「とりあえず布団敷きましょう。寝る場所を確保しないと」

 

 「では、私は天の隣で」

 

 「あ、間に合ってます」

 

 「間に合ってるって何ですか!?」

 

 「ちょっと海未先生!リトルデーモンに添い寝するのはヨハネの役目よ!」

 

 「そこの堕天使もどきもちょっと黙って」

 

 「もどきって何よ!?」

 

 「しょうがないなー。天くん、私の隣に来ることを許してあげよう」

 

 「ピッチャー、第一球を投げました」

 

 「ふがっ!?」

 

 千歌さんの顔面に枕を叩き込む。一撃で沈む千歌さん。

 

 「天くんって、相手が女の子でも容赦ないよね・・・」

 

 「男女平等だからね」

 

 「こういう場面で使う言葉じゃないよねぇ!?」

 

 ルビィのツッコミ。海未ちゃんが苦笑している。

 

 「天は昔からそうでしたね・・・私達が相手でも容赦ありませんでした。ことりと花陽は例外でしたけど」

 

 「あの二人は天使だもん。それ以外は悪魔だけど」

 

 「誰が悪魔ですかっ!」

 

 「昔から、か・・・」

 

 何やら呟いている曜さん。

 

 憂いを帯びたその表情に、俺は曜さんのことが心配になるのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は海未ちゃんのお母さんが登場しましたね。

アニメでは映画で一瞬だけ出てきましたが、果たして名前は何というのか・・・

この作品では、勝手にオリジナルの名前をつけてしまいました。

だいぶ迷いまして、最初は『すずこ』にしようかと思ってました(笑)

最終的に、海といえば波・・・じゃあ『波未(なみ)』で、となりました(笑)

名前を考えるって難しいですね。

さて、何やら曜ちゃんの元気がありませんが・・・

果たしてどうなるのか・・・

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心の優しい人ほど思い悩んでしまうものである。

雨が降っているのを見て、脳内でシドの『レイン』が再生される今日この頃。


 《曜視点》 

 

 「・・・ハァ」

 

 溜め息をつく私。何となく眠れなかった私は、大部屋を抜け出して中庭の縁側に腰掛けていた。

 

 ただぼんやりと空を眺めていると・・・

 

 「フフッ・・・内浦と違って、星はあまり見えないでしょう?」

 

 背後から声がする。慌てて振り向くと、海未先生が微笑みながら立っていた。

 

 「どうしてここに・・・?」

 

 「ふと目が覚めてしまったものですから。少し外の空気を吸おうかと思って出てきたのですが、先客がいて驚きました」

 

 笑う海未先生。

 

 多分、私がいないことに気付いて探しに来てくれたんだろうな・・・

 

 「隣、いいですか?」

 

 「あ、どうぞ・・・」

 

 私の隣に腰を下ろす海未先生。改めて思うけど、本当に綺麗な人だなぁ・・・

 

 「ん?どうかしましたか?」

 

 「あ、いえ・・・海未先生、彼氏とかいないのかなって」

 

 「か、彼氏!?」

 

 顔を赤くする海未先生。

 

 「な、何ですかいきなり!?」

 

 「いや、海未先生って美人じゃないですか。きっとモテるんだろうなって思って」

 

 「ま、真顔で褒めないで下さい・・・天じゃないんですから・・・」

 

 恥ずかしそうな海未先生。

 

 「彼氏なんて、今まで一度もいたことありませんよ・・・」

 

 「えっ、意外ですね・・・スクールアイドルとしても有名になったわけですし、てっきり学生時代からモテモテなのかと・・・」

 

 私が首を傾げていると、海未先生が溜め息をついた。

 

 「・・・正直な話、告白されたことは何度かありましたよ。全てお断りしましたけど」

 

 「どうしてですか?」

 

 「そもそも私、男性と話すことが苦手でして・・・」

 

 「えぇっ!?天くんとあんなに仲良く話してるじゃないですか!?」

 

 抱きついたりとかもしてるのに・・・弟みたいな存在だから大丈夫ってことなのかな?

 

 「・・・実は天とも、初対面の時はまともに話せなかったんですよ」

 

 苦笑する海未先生。

 

 「当時天は小学生で、私は高校生・・・それでも上手く話せなかったんです。どれだけ私が男性を苦手としているか、よく分かるでしょう?」

 

 「・・・確かに」

 

 それはちょっと重症な気がするなぁ・・・

 

 「じゃあ、どうして天くんと話せるようになったんですか?」

 

 「・・・そうですねぇ」

 

 海未先生はゆっくり空を見上げると、何を思い出したのかクスッと笑った。

 

 「・・・天が私に寄り添ってくれたから、ですかね」

 

 「え・・・?」

 

 「上手く話せない私を急かすこともせず、かと言って自分から強引に距離を詰めようとしてくることもない・・・ゆっくり時間をかけて私と向き合い、少しずつ距離を縮めようとしてくれました」

 

 微笑む海未先生。

 

 「私が落ち込んだ時は励ましてくれて、私が不安な気持ちになっている時は勇気づけてくれて・・・そんな天だからこそ、私も心を開くことが出来たんだと思います」

 

 「海未先生・・・」

 

 「前に私は、天のことを『弟みたいなもの』と言いましたが・・・正しくは『弟のようであり、それでいて自分と対等な存在』と言うべきでしょうか」

 

 「対等な存在・・・?」

 

 「年下ではあるけれど、子供だとは思っていないということです。自分と対等・・・信頼の置ける相手として見ているんですよ。これは私だけでなく、μ'sのメンバー全員に言えることですね」

 

 言い切る海未先生。言葉の端々に、天くんへの信頼が窺える。

 

 「曜は今日、ことりと真姫に会ったんでしょう?天への接し方を見て、何か感じませんでしたか?」

 

 「・・・二人とも、天くんのことを大切に想ってるんだなって感じました」

 

 南さんも西木野さんも、天くんに会えて本当に嬉しそうだった。

 

 確かにあの距離の近さは、信頼関係が無いと無理だと思う。

 

 「・・・天くんとμ'sの皆さんの関係って、何なんですか?メンバーの弟っていうだけじゃ、そこまでの信頼関係は築けないですよね?」

 

 「・・・天が話していない以上、私から話すことは出来ません」

 

 首を横に振る海未先生。

 

 「ですが天と貴女達が繋がり続けるかぎり、いずれは明らかになるでしょう。何せ天は、Aqoursのマネージャーなのですから」

 

 「マネージャー、か・・・」

 

 「曜?」

 

 首を傾げる海未先生に、私は自分の気持ちを正直に話すことにした。

 

 「私、ちょっと分からなくなっちゃって・・・このまま天くんに、マネージャーを続けてもらっても良いのか」

 

 「・・・天に不満がある、ということですか?」

 

 「違います!」

 

 慌てて否定する私。

 

 「天くんは本当に良い子です!鞠莉さんに脅されてマネージャーの役目を押し付けられたのに、私達のことを考えてしっかりサポートしてくれて!天くんがいてくれたから、私達はここまでくることが出来たんです!ただ・・・」

 

 「ただ・・・?」

 

 「・・・西木野さんと南さんに聞いたんです。テスト生の話を巡って、天くんがお姉さん・・・絢瀬絵里さんと大喧嘩してしまったこと」

 

 俯く私。

 

 「南さんが言ってました。二人はとっても仲の良い姉弟だって。その二人が、浦の星のテスト生の話で揉めたって知って・・・何だか申し訳ない気持ちになってしまって」

 

 ふいに涙が込み上げてくる。泣くつもりなんて無かったのに・・・

 

 「二人が仲直り出来るのなら・・・天くんは東京に戻って、お姉さんのところに帰った方が良いんじゃないかって。その方が、私達と一緒にいるよりも幸せなんじゃないかって・・・そう思ったんです」

 

 鞠莉さんに脅された時、天くんは言っていた。『この学校に来てしまったことを、心の底から後悔している』と。

 

 お姉さんと喧嘩してまで浦の星に来てくれたのに、あんな目に遭って・・・天くんの幸せを考えたら、私達と一緒にいない方が・・・

 

 「・・・ありがとうございます」

 

 背後から海未先生に優しく抱き締められる。

 

 「天のことを、そんなにも大切に想ってくれて・・・嬉しいです」

 

 「海未先生・・・」

 

 「全く、あの二人ときたら・・・いえ、恐らく話したのは真姫ですね?ことりは止めようとしたんでしょうけど、真姫に押し切られたのではありませんか?」

 

 あまりにも的確な予想に、思わず驚いてしまう私。

 

 そんな私の表情を見て、海未先生が苦笑いを浮かべる。

 

 「どうやら当たりみたいですね」

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「長い付き合いですから。何となく分かりますよ」

 

 溜め息をつく海未先生。

 

 「まぁ流石にあの二人も、曜がここまで思い悩むとは思わなかったんでしょうね。気を遣わせてしまってすみません」

 

 「い、いえ!聞いたのは私ですから!」

 

 慌てて首を横に振る。

 

 海未先生は困ったように笑うと、私を抱き締める腕に力を込めた。

 

 「・・・正直、私も天に戻ってきてほしいと思っていました。浦の星での教育実習を希望したのも、天を連れて帰るつもりでいたからなんです」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 「まぁ、拒否されてしまいましたけどね」

 

 苦笑する海未先生。

 

 「『今の俺はAqoursのマネージャーだから』だそうです。今の貴女達を見捨てることは出来ないと、ハッキリ言われてしまいました」

 

 「っ・・・」

 

 天くん・・・私達の為にそこまで・・・

 

 「いくら天でも、義務感でここまで動くことは出来ませんよ。貴女達のことを大切に思っているからこそ、浦の星に残る道を選んでいる・・・そうでなければ、小原理事長に脅された時点で東京に戻ってきているはずです」

 

 それは天くんも言ってくれていた。私達のことが好きだから、脅されたとはいえマネージャーを引き受けたんだって。

 

 「天は自分の意思で浦の星へ行くことを選び、自分の意思で浦の星に残ることを選んだんです。曜が思い悩む必要は無いんですよ」

 

 「で、でも・・・そのせいでお姉さんと喧嘩を・・・」

 

 「大丈夫です。いずれ仲直りしますから」

 

 言い切る海未先生。

 

 「天も絵里も、少し素直じゃないところはありますが・・・お互いのことを大切に想っていますから。亜里沙も含め、あの姉弟の絆は深いですよ。側で見てきた私が言うんですから、間違いありません」

 

 「・・・本当ですか?」

 

 「本当です」

 

 海未先生が優しく微笑む。

 

 「それに・・・貴女達と一緒にいる時の天は、とても楽しそうでしたよ?あれで『一緒にいて幸せじゃない』なんて、そんなバカなことはありません。だからこそ天は、貴女達と一緒にいる道を選んだのではありませんか?」

 

 海未先生の言葉に、私は安堵していた。海未先生の目から見て、天くんが楽しそうに見えているのなら・・・それはきっと間違いじゃない。

 

 私達よりもずっと長く、天くんのことを近くで見てきた人なんだから。

 

 「さて、ずいぶん長く話し込んでしまいましたね・・・明日は朝早いんでしょう?早く寝て備えましょう」

 

 「・・・はいっ!」

 

 海未先生と一緒に立ち上がる。心のモヤモヤが少し晴れたような気がして、今ならよく眠れそうだ。

 

 「そうだ海未先生、同じ布団で一緒に寝ませんか?それならもっと安心して眠れるような気がします」

 

 「そ、それは少し恥ずかしい気が・・・」

 

 「海未先生・・・お願いっ!」

 

 「なっ!?ことりの入れ知恵ですか!?」

 

 「え?何の話ですか?」

 

 「・・・まさかの無自覚ですか。曜、恐ろしい子・・・!」

 

 ブツブツ呟いている海未先生に、首を傾げる私なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は、曜ちゃんと海未ちゃんのお話し回でした。

海未ちゃんのお姉さん感がハンパない(笑)

海未ちゃんがお姉ちゃんだったら、色々口うるさく言いながらも可愛がってくれそうな気がします。

ただ個人的にお姉ちゃんになってほしいのは、ことりちゃんですかね。

ことりちゃんの弟になって、天みたいに溺愛されたい(切実)

天、代われ(゜言゜)

さて、元気が無い人といえば・・・曜ちゃん以外にもう一人いましたね。

そんなわけで、次の話は梨子ちゃん回です。

明日投稿しますので、お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人から認めてもらえるのは嬉しいものである。

もうすぐ9月・・・

早く夏なんて終わってしまえ(゜言゜)


 「・・・ん」

 

 夜中、ふと目が覚めてしまう俺。何やら右腕が重いような・・・

 

 「ずらぁ・・・」

 

 花丸が俺の右腕に抱きつき、幸せそうに眠っていた。そういえば寝る場所をじゃんけんで決めた結果、花丸と梨子さんの間になったんだっけ・・・

 

 っていうか、俺の右腕が花丸の胸の谷間に挟み込まれてるんだけど。メッチャ柔らかい感触に包まれてるんだけど。

 

 「ムニャムニャ・・・もう食べられないずらぁ・・・」

 

 「・・・無防備だなぁ」

 

 思わず苦笑してしまう。一応俺も思春期の男子だということを、理解してもらいたいんだけど・・・

 

 花丸を起こさないよう、そっと右腕を抜いた時だった。

 

 「天くん・・・?」

 

 花丸とは反対側から声がした。

 

 そちらに顔を向けると、俺の方に顔を向けている梨子さんと目が合った。

 

 「梨子さん?起きてたんですか?」

 

 「うん、少し前に目が覚めちゃってね・・・それから眠れないの」

 

 苦笑する梨子さん。

 

 「しかも私が寝てる間に、あんなことになってるし。驚いちゃった」

 

 「あんなこと・・・?」

 

 首を傾げる俺。

 

 梨子さんが視線を向けた先を見ると・・・別々の布団で寝ていたはずの海未ちゃんと曜さんが、同じ布団で身を寄せ合って眠っていた。

 

 マジか・・・

 

 「千歌さんならともかく、曜さんはちょっと意外ですね・・・」

 

 「そうよね・・・あの二人、あんなに仲良かったかしら・・・?」

 

 梨子さんも首を傾げている。

 

 まぁ、仲が良いに越したことはないから良いけど。

 

 「海未ちゃんは人見知りですし、仲の良い人が増えるのは良いことです。梨子さんも海未ちゃんと仲良くしてあげて下さいね」

 

 「・・・何か天くん、海未先生の保護者みたいになってるわよ」

 

 「昔から海未ちゃんを知ってる身として、心配してるだけですよ」

 

 お互い布団に身を横たえながら向かい合い、他愛も無い話をする。

 

 気分転換も兼ねて少し話せば、梨子さんもまた眠れるかもしれないし。

 

 「大切に想ってるのね、海未先生のこと」

 

 「・・・そりゃあそうですよ」

 

 何となく照れ臭くなってしまう。

 

 「海未ちゃんも、ことりちゃんも、真姫ちゃんも・・・μ'sのメンバー全員が、俺にとってかけがえのない人達ですから」

 

 「フフッ・・・海未先生が聞いたら号泣しそうなセリフね」

 

 「オフレコでお願いします」

 

 こんなセリフ、なかなか面と向かって言えないからな・・・

 

 「・・・凄いわね、天くんは。そうやって言い切れるくらい、大切な人達と出会えたんだもの。きっと音ノ木坂で、良い時間を過ごしたのね」

 

 「梨子さん・・・?」

 

 梨子さんの表情が暗くなる。どうしたんだろう・・・?

 

 「・・・私、中学の頃にピアノの全国大会に行ったことがあってね。だから高校から入った音ノ木坂では、結構期待されてたの」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 音ノ木坂は、伝統的に音楽で有名な学校だ。

 

 その方面で腕を鳴らした学生が入ってくることも多く、梨子さんもその内の一人だったんだろう。

 

 「だから期待に応えなきゃって、いつも練習ばかりしてて・・・でも結局、大会では上手くいかなくてね。そのせいか、音ノ木坂に行くことに対して気が引けちゃって・・・」

 

 「・・・なるほど」

 

 それでさっき、千歌さんの提案を断ったのか・・・

 

 音ノ木坂にいた頃、苦しい思いをしたことを思い出してしまうから・・・

 

 「音ノ木坂が嫌いなわけじゃないのよ?ただ・・・期待に応えられなかった自分が情けないし、期待してくれた人達に申し訳ない・・・そんな気持ちになっちゃって」

 

 「梨子さん・・・」

 

 「だから、海未先生やμ'sの人達は凄いと思う。周りからの期待に応えて、廃校を阻止したんだもの。それどころか、スクールアイドルブームまで巻き起こしちゃって・・・千歌ちゃんや天くんに出会うまで知らなかったけど、本当に偉大な人達だと思うわ」

 

 微笑む梨子さん。

 

 「そして・・・その偉大な人達を、『かけがえのない人達』って言い切れる天くんもね」

 

 「いや、俺は別に・・・」

 

 「曜ちゃんが言ってたわよ?『南さんと西木野さんは、本当に天くんと仲が良かった』って。海未先生も天くんに心を許してるし、μ'sの人達にとって天くんの存在は大きいんでしょうね。偉大な人達の支えになっている天くんも、私から見たら凄い人よ」

 

 梨子さんはそう言うと、悲しげに目を伏せた。

 

 「私も期待に応えられてたら・・・もっと練習して、大会で上手くいってたら・・・少しは音ノ木坂の役に立てたのかな・・・」

 

 「・・・もしそうなっていたら、俺達が出会うことはなかったでしょうね」

 

 「え・・・?」

 

 驚く梨子さん。俺は梨子さんに微笑みかけた。

 

 「もし梨子さんが、音ノ木坂で順調にいっていたら・・・環境を変えてみようなんて思わなかったでしょう?浦の星に来ることもなく、俺達と出会うこともなかったはずです。少し言い方は悪いですが・・・梨子さんが音ノ木坂で上手くいかなかったから、俺達は出会えたんだと思います」

 

 「天くん・・・」

 

 「それとも・・・梨子さんは、俺達に出会わなければ良かったと思いますか?」

 

 「なっ!?そんなわけないじゃない!」

 

 「しーっ、皆が起きちゃいます」

 

 「あっ・・・」

 

 慌てて口を押さえる梨子さん。俺は思わず笑ってしまった。

 

 「・・・俺が言いたいのは、たらればの話をしても仕方ないってことです。過去のことは変えられないんですから」

 

 「それはそうだけど・・・」

 

 「それに苦しい思いをしたからこそ、今の梨子さん・・・Aqoursの桜内梨子がいるんじゃないですか。スクールアイドル、やってみてどうですか?」

 

 「・・・凄く楽しいわ。心からやりがいを感じてる」

 

 「そう思えるなら、梨子さんの歩んできた道は間違いじゃないですよ。期待に応えられずに苦しんだことも、何かを変えようとしてもがいたことも・・・無駄なことなんて何一つありません。全てが梨子さんの礎になってます」

 

 俺は梨子さんへと手を伸ばした。

 

 「梨子さんのしてきた努力が全て分かるだなんて、そんなおこがましいことは言えませんけど・・・その様子を見ていれば、一生懸命やってきたってことくらいは分かります。周囲の期待に応えようとして、必死に頑張ったんだろうなってことも・・・」

 

 梨子さんの頭を、優しく撫でる。

 

 「前にも言いましたけど、梨子さんはもっと胸を張っていいと思います。引け目とか、情けなさとか、申し訳なさとか・・・そういったものを感じるなとは言いません。ただ、もっと自分のことを褒めてあげて下さい。自分で思っている以上に、梨子さんは凄い人なんですよ。俺が保証します」

 

 「っ・・・」

 

 梨子さんの目から、一筋の涙が伝う。

 

 それを機に次々に涙が滴り落ち、梨子さんの枕を濡らしていった。

 

 「本当に・・・ずるいわね、天くんは・・・」

 

 ボロボロと涙を零す梨子さん。

 

 「あの時も、今も・・・私を泣かせにくるんだから・・・」

 

 「良いじゃないですか。嬉し涙なんですから」

 

 笑みを浮かべる俺。

 

 「俺には、梨子さんの心に寄り添うことしか出来ませんから・・・それで梨子さんが、少しでも元気になってくれるなら嬉しいです」

 

 「・・・十分すぎるくらいよ」

 

 泣きながら微笑む梨子さん。

 

 「なるほどね・・・だからμ'sの人達は、天くんのことを・・・」

 

 「梨子さん?」

 

 「フフッ・・・何でもないわ」

 

 梨子さんはそう言うと、おもむろに俺の布団に入ってきた。

 

 「ちょ、どうしたんですか!?」

 

 動揺する俺に何も言わず、抱きついてくる梨子さん。

 

 「お願いだから・・・少しだけ、このままでいさせて・・・」

 

 俺の胸に顔を埋める梨子さん。その肩は震えており、まだ泣いているのが分かった。

 

 「・・・俺で良ければ、喜んで」

 

 梨子さんの身体を、優しく抱き締める俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は梨子ちゃん回となりました。

アニメでは千歌ちゃんと梨子ちゃんが話していましたが、この作品では千歌ちゃんに代わり天が梨子ちゃんと話しています。

何だか二人が良い感じになっていますが・・・

本当にヒロイン未定でお送りしております(笑)

果たしてヒロインは誰になるのか・・・

そろそろ絞った方が良いのかなぁとも思うのですが、これが決められないんですよねぇ・・・

どうか長い目で見ていただけると幸いです(笑)

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命とは不思議なものである。

最近、鈴木このみさんの『My Days』をよく聴いてます。

メッチャカッコいい曲( ´∀`)


 《梨子視点》 

 

 翌朝・・・

 

 「・・・んっ」

 

 目を覚ました私は、ぼんやりとした頭の中で状況を整理する。昨日の夜は海未先生の実家に泊まって、皆で一緒に寝たんだっけ・・・

 

 と、身体が妙に温かいことに気付いた。まるで何かに包まれているような・・・

 

 「っ!?」

 

 そういえば昨日の夜、天くんと抱き合って・・・!?

 

 慌てて上を見上げると・・・

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 安らかに寝息を立てる天くんの顔があった。そして私の顔が、ちょうど天くんの胸の位置に・・・

 

 つまり私は天くんに抱き締められて、天くんの胸に顔を埋めたまま一晩寝ていたというわけだ。

 

 「っ・・・!」

 

 耳まで真っ赤になっていくのを感じる。

 

 天くんの前でボロ泣きしたことはまだ良い。問題は自分から天くんの布団に潜り込んで、自分から天くんに抱きついて胸に顔を埋めてしまったことだ。

 

 何やってるの私!もしこの場にダイヤさんがいたら、『破廉恥ですわ!』って怒られてるところじゃない!

 

 でも・・・

 

 「・・・温かい」

 

 思わず呟いてしまう。

 

 やっぱり天くんも男の子なだけあって、身体つきがしっかりしていた。抱き締められていて、とても安心感を覚える。

 

 「・・・嬉しかったな」

 

 昨夜の記憶が甦ってくる。

 

 私が歩んでいる道は間違いじゃないと、苦しい思いをしたことも無駄じゃないと言ってくれた。もっと胸を張って良いと、私のことを凄い人だと言ってくれた。

 

 本当に本当に嬉しくて・・・涙が止まらなかった。

 

 「・・・天くん」

 

 天くんの顔を見上げる。

 

 穏やかな寝顔を見ていると、何だか可愛く思えてきて・・・とても愛おしく感じた。

 

 「・・・フフッ」

 

 私は小さく笑うと、再び天くんの胸に顔を埋めた。もう少しだけ、このままでも良いよね・・・

 

 そんなことを思いながら天くんに身体を委ね、意識を手放そうとした時・・・

 

 「あーっ!?」

 

 急に大声が聞こえて、慌てて顔を上げる。

 

 千歌ちゃんが驚愕の表情でこちらを見ていた。

 

 「天くん!?梨子ちゃん!?何してるの!?」

 

 「ち、違うの千歌ちゃん!これは・・・」

 

 「うゆ・・・?」

 

 「何の騒ぎずらぁ・・・?」

 

 「騒々しいわねぇ・・・」

 

 千歌ちゃんの大声で目覚めた一年生三人組が、眠そうに目を擦りながら起き上がる。

 

 そして私達の方を見て・・・

 

 「ぴぎっ!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 「な、何してんのよアンタ達!?」

 

 顔を赤くして絶句する三人。

 

 慌てて弁解しようとすると、今度は曜ちゃんと海未先生が起き上がった。

 

 「んっ・・・何かあったの・・・?」

 

 「大変なんだよ曜ちゃん・・・って、何で海未先生と同じ布団で寝てるの!?」

 

 「えへへ、色々あって・・・って、えぇっ!?天くんと梨子ちゃんも同じ布団で寝てるの!?しかも抱き合ってるじゃん!?」

 

 「ふわぁ・・・朝から何を騒いでるんですか・・・?」

 

 「海未先生!天くんと梨子ちゃんが!」

 

 「え・・・?」

 

 こちらを見る海未先生。

 

 マ、マズい・・・!天くんを溺愛している海未先生が、こんな光景を見たら・・・!

 

 「・・・何か問題でも?」

 

 「「「「「「えぇっ!?」」」」」」

 

 全員驚きの声を上げる。意外と冷静な反応なのが怖いんだけど・・・

 

 「ちょ、海未先生!?天くんと梨子ちゃんが抱き合って寝てるんですよ!?」

 

 「・・・普通ですよね?」

 

 「普通じゃないわよ!?」

 

 善子ちゃんのツッコミ。寝起きで頭がボーっとしてるのかな・・・?

 

 「μ'sとして活動していた頃、こういった光景はよく見ましたからね。外泊する時は誰が天の隣で寝るか、皆でよく争ったものです」

 

 苦笑する海未先生。

 

 「かくいう私も、今は天と一緒に寝てますから。同じ布団で寝ることもありますし」

 

 「そ、そうなんですか・・・」

 

 「・・・ん」

 

 そんな会話をしていると、天くんの目がゆっくりと開いた。

 

 そのまま海未先生達の方へと視線を向ける。

 

 「おはよー・・・朝から騒々しいけど、何かあったの?」

 

 「原因は天くんずらっ!」

 

 「俺・・・?」

 

 花丸ちゃんのツッコミに、首を傾げる天くん。

 

 「それより花丸、人の腕を抱き枕にするのは良いんだけどさ・・・俺も思春期の男子だってことを忘れないでね?花丸の胸の谷間に腕が挟み込まれて、色々大変だったんだよ?」

 

 「ずらぁっ!?」

 

 耳まで真っ赤になる花丸ちゃん。そんなことがあったのね・・・

 

 「ちょ、花丸ちゃん!?」

 

 「アンタも破廉恥なことしてるじゃない!?」

 

 「・・・ずらぁ」

 

 「あぁっ!?花丸ちゃんが倒れた!?」

 

 何やら大変なことになっている中、天くんが私の方を見た。

 

 「おはようございます、梨子さん」

 

 「お、おはよう・・・」

 

 未だに天くんの腕に抱かれている私は、恥ずかしくてまともに天くんの顔を見れなかった。

 

 そんな私に天くんは優しく微笑み、耳元で小さく囁いた。

 

 「・・・少しはスッキリしましたか?」

 

 「っ・・・」

 

 ホントにこの子は・・・優しすぎるでしょ・・・

 

 「・・・えぇ。ありがとう、天くん」

 

 笑顔でそう返す私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「この道を歩くのも、何だか久々な気がするよ」

 

 「フフッ、そうですね」

 

 Aqoursの皆の後ろを、海未ちゃんと会話しながら歩く俺。

 

 イベント会場へと向かう前に、俺達はある場所へと向かっていた。

 

 「着いた・・・!」

 

 先頭を歩いていた千歌さんが立ち止まる。

 

 目の前には大きなスクリーン、そして白く巨大な建物・・・秋葉原UTXがそびえ立っていた。

 

 「・・・変わらないな、ここも」

 

 小さく呟く。ここに来ることを提案したのは、他でもない千歌さんだった。

 

 何でも高一の時、曜さんと二人で秋葉原を訪れたことがあったらしい。その際にこのスクリーンでμ'sの映像を見て、スクールアイドルをやりたいと思ったんだそうだ。

 

 千歌さんがスクールアイドルを目指すきっかけは聞いていたが、まさかこの場所だったとは・・・

 

 それを聞いた時は、海未ちゃんと顔を見合わせて驚いてしまった。

 

 「同じですね・・・穂乃果と」

 

 「・・・そうだね」

 

 穂乃果ちゃんも、このスクリーンでA-RISEの映像を見てスクールアイドルをやることを決めた人だもんな・・・

 

 そしてその五年後、このスクリーンでμ'sの映像を見てスクールアイドルをやりたいと思った千歌さん・・・

 

 これは運命なんだろうか・・・

 

 「そういえば、そろそろじゃないですか?」

 

 「ん?何が?」

 

 「ラブライブのエントリーですよ。時期的にそろそろだと思うのですが」

 

 「あぁ、確かに」

 

 ラブライブは半年に一度のペースで、春と秋にそれぞれ開催されている。予選のことを考えると、そろそろ秋の大会のエントリーが始まる頃なのだが・・・

 

 そんなことを海未ちゃんと話していると、突然音楽が鳴り響いた。スクリーンに『Love Live!』の文字が映し出され、その下に『ENTRY START!』の文字が浮かび上がる。

 

 「ラブライブ・・・」

 

 「遂に来たね・・・」

 

 スクリーンを見上げるルビィと曜さん。梨子さんが千歌さんへと視線を向ける。

 

 「どうするの?」

 

 「勿論出るよ!」

 

 力強く頷く千歌さん。

 

 「μ'sがそうだったように、学校を救ったように・・・私達もラブライブに出て、浦の星を救おう!」

 

 「フフッ、言うと思ったずら」

 

 「やってやろうじゃない」

 

 笑みを浮かべる花丸と善子。μ'sがそうだったように、か・・・

 

 「・・・どこまでもμ'sの背中を追いかけるんですね。千歌さんは」

 

 「天・・・?」

 

 海未ちゃんが首を傾げる中、千歌さんが前に出す。

 

 「よし、アレやろう!」

 

 その言葉に呼応し、Aqoursの皆が円陣を組む。曜さんがこちらへ視線を向ける。

 

 「ほら、天くんも一緒に!」

 

 「六人いたら十分でしょう。俺は遠慮しときます」

 

 「えぇっ!?ファーストライブの時はやってくれたじゃん!?」

 

 「曜さんが無理矢理やらせたんじゃないですか」

 

 「言い方が酷くない!?」

 

 「俺の初めてが、曜さんに奪われて・・・」

 

 「その言い方も止めて!?」

 

 「まぁ、円陣組むの初めてじゃなかったんですけどね」

 

 「今のやりとり何だったの!?」

 

 「まぁまぁ曜ちゃん、今回は六人でやりましょう?ね?」

 

 「むぅ・・・」

 

 梨子さんが宥めてくれるものの、膨れっ面になる曜さん。やれやれ・・・

 

 「さぁ、いこう!今、全力で輝こう!」

 

 「「「「「「Aqours!サンシャイン!」」」」」」

 

 六人の声が響き渡る。

 

 人数が増えたのもあるが、それ以上に・・・ファーストライブの時と比べて、力強さが増した気がした。良いグループになったなぁ・・・

 

 感慨に浸っていた俺は、海未ちゃんがこちらを気遣わしげに見つめていることに気が付かないのだった。




どうも〜、ムッティです。

この前久しぶりにカラオケに行きまして、μ'sやAqoursの曲を熱唱してきました。

μ'sはともかく、Aqoursはキーの高い曲が多いですね(>_<)

そんな中、精密採点DXを使ってみたのですが・・・

Aqoursの曲の中で一番得点が高かったのは、『HAPPY PARTY TRAIN』でした。

ちなみに二番が『MY舞☆TONIGHT』で、三番が『想いよひとつになれ』でした。

個人的に難しいと感じたのは、『勇気はどこに?君の胸に!』ですね。

特に二番が終わった後の『やり残したことなど〜』からが、ちょっとキーが高すぎて・・・

裏声を使うって難しい(>_<)

またカラオケに行って練習したいなぁ・・・

という、全く関係ない話をしてしまいました(笑)

次の話ではあの人が登場する予定です。

明日投稿しますので、お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰しもが壁にぶつかるものである。

セブンイレブンで大量のチョコを買いました。

全てはAqoursのクリアファイルを手に入れる為・・・

おかげで全種類コンプリート出来ましたが、店員さんからは白い目で見られました。

解せぬ。


 「うぅ、こんなに人が多いなんて・・・」

 

 俺の腕にしがみつき、恐る恐る歩いている海未ちゃん。パフォーマンスの準備に向かった皆と別れた俺達は、イベントを鑑賞する為に客席へと向かっていた。

 

 マネージャーとはいえ、他のスクールアイドル達も使用する控え室には入れないからな。

 

 「どこかの誰かさん達がスクールアイドルブームを巻き起こして以来、スクールアイドルの人口は年々増加してるからね。必然的にスクールアイドルファンも増えて、こういうイベントはいつもお客さんでいっぱいになるんだよ」

 

 「く、詳しいですね・・・」

 

 「μ'sが解散してからも、こういうイベントにはよく連れて来られてたからねぇ・・・初代部長と二代目部長と三代目部長に」

 

 「あぁ、にこと花陽と亜里沙ですか」

 

 苦笑する海未ちゃん。あの三人は本当にスクールアイドルが好きだからなぁ・・・

 

 「まぁそのおかげで、最近のスクールアイドルのことも把握出来てるんだけどね。このイベントに参加するスクールアイドルも、ほとんど知ってるグループだったし」

 

 「いや、ほとんど知ってるって・・・凄くないですか?」

 

 「というより、割と有名なグループがたくさん参加してるんだよね」

 

 苦笑する俺。

 

 「何しろ、ラブライブの決勝まで進んだことのあるグループばかりだから」

 

 「えぇっ!?このイベント、そんなにレベルの高いものだったんですか!?」

 

 「気付くの遅くない?」

 

 俺が呆れていると・・・

 

 「あら?Aqoursのマネージャーさん?」

 

 ふいに声をかけられる。振り向くとSaint Snowの二人・・・鹿角姉妹が立っていた。

 

 「あぁ、おはようございます」

 

 「おはようございます」

 

 丁寧に挨拶を返してくれる聖良さん。一方理亞さんは聖良さんの陰に隠れ、こちらを睨み付けていた。

 

 「理亞さんもおはようございます」

 

 「・・・ふんっ」

 

 そっぽを向く理亞さん。聖良さんが困ったように笑う。

 

 「すみません・・・この子、昨日のことを根に持ってまして・・・」

 

 「あぁ、パンツの件ですか」

 

 「言わなくていいっ!」

 

 ガルルル・・・とこちらを威嚇してくる理亞さん。どうやら、本格的に警戒されてしまっているようだ。

 

 「天・・・また女の子のパンツを見てしまったんですか?」

 

 「だって理亞さんが見せつけてくるんだもん」

 

 「見せつけてないわよ!?」

 

 「スカートで跳んだら同じことでしょう」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる理亞さん。と、聖良さんが海未ちゃんの顔を見て首を傾げる。

 

 「ところで、そちらの女性は?」

 

 「初めまして、天の彼j・・・」

 

 「正体バラすぞ(ボソッ)」

 

 「姉ですっ!」

 

 慌てて言い直す海未ちゃん。

 

 ちなみに今の海未ちゃんは伊達メガネとマスクをしており、髪型もポニーテールにしている。要は正体がバレないように変装しているのだ。

 

 こんなところにμ'sの園田海未がいると分かったら、大騒ぎになりそうだしな・・・スクールアイドルファンの中で、μ'sのことを知らない人なんていないだろうし。

 

 「お姉様でしたか。ずいぶん仲がよろしいんですね」

 

 「姉は人見知りなもので、こういった人混みが苦手なんですよ」

 

 ここは適当に誤魔化しておく。向こうも気付いてないみたいだし。

 

 「我々は客席でイベントを鑑賞させていただきますので。お二人も頑張って下さい」

 

 「あら、他所のスクールアイドルを応援して良いんですか?」

 

 「Aqoursのマネージャーをやっているからといって、他のスクールアイドルを敵視しているわけではありませんから。俺はスクールアイドル好きなので」

 

 「フフッ、ありがとうございます」

 

 笑みを浮かべる聖良さん。

 

 「それではまた・・・理亞、行きましょう」

 

 理亞さんを引き連れて去っていく聖良さん。去り際、理亞さんがこちらに向かって『アッカンベー』をしてきた。

 

 アララ、嫌われたもんだな・・・

 

 「・・・大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫だよ。『アッカンベー』くらい可愛いもんだし」

 

 「いえ、そうではなくて・・・」

 

 心配そうに俺を見る海未ちゃん。

 

 「あの二人のこと、本当は好きじゃありませんよね・・・?」

 

 「・・・よく分かったね」

 

 素直に驚いてしまった。表面上は上手く取り繕ってたつもりだったんだけど・・・

 

 「丁寧な態度ではありましたが、ちょっと丁寧すぎましたね」

 

 苦笑する海未ちゃん。

 

 「普段の天を知っている身としては、少し冷淡な態度に感じましたよ。もっとも、普段の天を知らない人は気付かないでしょうけど」

 

 「よく見てるねぇ・・・」

 

 「これでも長い付き合いなんですから、それくらい分かりますよ。それに・・・五年前にもいたじゃないですか。天がああいう態度をとった人達が」

 

 「あぁ・・・そうだったね」

 

 当時のことを思い出して苦笑する。

 

 今でこそ仲良くなってはいるが、最初の印象は悪かったっけな・・・

 

 「懐かしいなぁ・・・って、そろそろ時間か。早くしないと始まっちゃう」

 

 「えぇ、急ぎましょう」

 

 「うん、急ぎたいから離れてくんない?」

 

 「それは無理です」

 

 「断言したよこの人・・・」

 

 俺が呆れていると、海未ちゃんがおずおずと尋ねてきた。

 

 「そういえば天、先ほどの話なのですが・・・今回のイベントには、かなりの実力者達が参加しているんですよね?Aqoursは、その・・・大丈夫でしょうか?」

 

 「・・・大丈夫、ではないだろうね」

 

 俺は首を横に振ると・・・あまり口にしたくない予想を言うのだった。

 

 「恐らく、Aqoursは・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「お疲れ様でした」

 

 千歌さん達を労う俺。イベント終了後、俺と海未ちゃんは千歌さん達と合流していた。

 

 皆の表情は・・・どこか暗いものだった。

 

 「ダメだった・・・」

 

 「優勝どころか、入賞すら出来なかったずら・・・」

 

 落ち込むルビィと花丸。

 

 今回のイベントは、観客の投票で優勝グループを決めるというものだった。得票数が一番多かったグループが優勝、八位以内に入ったグループは入賞という形だ。

 

 残念ながらAqoursの名前は、八位までには呼ばれなかった。

 

 「でも声は出てましたし、ミスもこれまでで一番少なかったですよ?今までで一番良い出来だったのではありませんか?」

 

 皆のことを気遣い、フォローしようとする海未ちゃん。

 

 確かに俺の目から見ても、今までで一番良い出来だったとは思う。ただ・・・

 

 「・・・それでも、この結果なのよね」

 

 溜め息をつく善子。

 

 今までで一番の出来であっても、優勝どころか入賞すら出来ていない・・・その現実が、皆に重くのしかかっているのだ。

 

 「・・・私ね、Saint Snowを見た時に思ったの」

 

 曜さんが呟く。

 

 「これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらい出来なきゃダメなんだって。なのに・・・入賞すらしてなかった」

 

 そう、Saint Snowも入賞出来ていなかった。イベントのトップバッターとして登場した彼女達は、大いに会場を沸かせてイベントを盛り上げた。

 

 そのレベルはとても高く、入賞した他のグループと比べても遜色ないものだったと思う。Aqoursの出番はその次だったのだが・・・その前のSaint Snowが良すぎて、イマイチ盛り上がりに欠けてしまったほどだ。

 

 それほど良かったSaint Snowでさえ、入賞すらしていなかったのだ。

 

 「あの人達のレベルで無理なら、そのレベルさえに届いていない私達じゃ・・・」

 

 「でも・・・全力で頑張ったじゃん、私達」

 

 落ち込む曜さんに対し、笑いかける千歌さん。

 

 「海未先生も言ってくれたけど、今日が今までで一番良い出来だったと思う。周りはラブライブの決勝まで進んだことのある人達ばかりだし、入賞出来なくて当たり前だよ」

 

 「だけど、ラブライブの決勝に出ようと思ったら・・・今日出ていた人達くらい、上手くなきゃいけないってことでしょ・・・?」

 

 「それはそうだけど・・・でも、今はそんなこと考えても仕方ないよ」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 あくまでも笑顔の千歌さん。全く、不器用なんだから・・・

 

 「・・・とりあえず、何か食べに行きませんか?お腹空いちゃって」

 

 「あ、賛成!私もお腹ペコペコ!」

 

 俺の提案に乗ってくる千歌さん。と、千歌さんのスマホが鳴った。

 

 「はい、高海ですけど・・・はい・・・はい・・・」

 

 何やら話し込む千歌さん。やがて電話を切ると、困ったような表情でこちらを見た。

 

 「さっきのイベントのスタッフさんが、渡したいものがあるから来てほしいって」

 

 「渡したいもの?」

 

 「うん。参加者全員に渡してるものらしいんだけど、渡しそびれちゃったんだってさ」

 

 「スマホ貸して下さい。『そっちが持ってこいやハゲ』って伝えとくんで」

 

 「喧嘩売る気満々!?女性スタッフさんだよ!?」

 

 「だから男女平等ですって」

 

 「だからこういう時に使うセリフじゃないって!?」

 

 千歌さんのツッコミ。ホント空気の読めないスタッフだな・・・

 

 「とりあえず行ってくるよ。天くんと海未先生は待ってて」

 

 「大丈夫ですか?私達もついていった方が・・・」

 

 「大丈夫ですよ。すぐ戻ってきますから」

 

 千歌さん達がイベント会場へと戻っていく。大丈夫かなぁ・・・

 

 「・・・皆、もの凄く落ち込んでましたね」

 

 海未ちゃんの表情も優れない。

 

 「その中でも、一番落ち込んでいたのは・・・」

 

 「大丈夫。分かってるから」

 

 海未ちゃんの言葉を遮る俺。あれで気付かないわけがない。

 

 「ホント・・・似てるよね」

 

 「・・・ですね」

 

 揃って溜め息をつく俺と海未ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「全く、これだから海未ちゃんは・・・」

 

 溜め息をつく俺。俺は今、迷子になった海未ちゃんを探していた。

 

 待っている間に、皆の分の飲み物を買いに行ってくれたのだが・・・先ほど泣きながら『助けて下さい!』と電話がかかってきたのだ。

 

 どうやら、帰り道が分からなくなってしまったらしい。

 

 「だから一緒に行こうって言ったのに・・・」

 

 そんな愚痴を呟きながら、海未ちゃんのことを探していると・・・

 

 「あら、またお会いしましたね」

 

 ある~日~、人混みの中~、Saint Snowさんに~、出会った~♪

 

 「チェンジで」

 

 「何がですか!?」

 

 聖良さんのツッコミ。熊さんより出会いたくない人達に出会ってしまった・・・

 

 「まぁいいや・・・お二人とも、ウチの姉を見ませんでしたか?」

 

 「な、何か凄く投げやりな感じですけど・・・お姉様は見てませんね。はぐれてしまったんですか?」

 

 「えぇ、どうやら迷子になってしまったみたいでして・・・電話で聞いたかぎりでは、どうやらこの辺にいるみたいなんですけど」

 

 「私達も探すの手伝いましょうか?」

 

 「あぁ、大丈夫です。多分すぐ捕獲出来ると思うので」

 

 「いや、捕獲って・・・」

 

 呆れている聖良さん。

 

 ふと聖良さんの陰に隠れる理亞さんへと視線を向けると・・・その目には涙が浮かんでいた。

 

 「えっ・・・泣くほど俺のこと嫌いですか?」

 

 「違うわよ!?」

 

 慌ててゴシゴシと目元を拭う理亞さん。聖良さんが苦笑している。

 

 「入賞出来なかったことが、よほど悔しかったみたいで」

 

 「姉様!余計なこと言わないで!」

 

 「あぁ、なるほど・・・」

 

 「何よ!?悪い!?」

 

 「いや、全然」

 

 首を横に振る俺。

 

 「それだけ理亞さんが、このイベントに本気で挑んでたっていうことでしょう?上から目線みたいになって申し訳ないですけど・・・立派だと思います」

 

 「っ・・・ふんっ」

 

 そっぽを向く理亞さん。

 

 「そんなの当たり前じゃない。お遊びで参加してるアンタ達とは違うのよ」

 

 「理亞」

 

 咎めるように声をかける聖良さん。だが、理亞さんは止まらなかった。

 

 「姉様だってあの子達に、『μ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら、諦めた方が良いかもしれません』って言ってたじゃない」

 

 「それは・・・」

 

 「・・・ずいぶんな言い方ですね」

 

 「「っ!?」」

 

 思わずドスの効いた声が出てしまう。それを聞いた鹿角姉妹が硬直してしまった。

 

 「お遊び?諦めた方が良い?貴女達がAqoursの何を知ってるんですか?」

 

 怒りがふつふつと湧き上がり、腸が煮えくり返る。

 

 「それがAqoursの為を思って言った言葉なら、話は別ですが・・・とてもそうは聞こえませんね。入賞出来なかったことが悔しくて、Aqoursに八つ当たりしたんですか?」

 

 「そ、そんなつもりは・・・」

 

 震えている聖良さん。理亞さんも再び涙目になっていた。

 

 「やっぱり俺は、貴女達のことがきr・・・」

 

 「ストップ」

 

 誰かに後ろから抱きつかれ、口を手で塞がれる。

 

 「それ以上は言っちゃダメよ、天くん」

 

 ウェーブのかかったセミロングヘアの女性が、優しく微笑んでいた。えっ・・・

 

 「なっ!?貴女はっ・・・!」

 

 その女性の顔を見た聖良さんが、驚愕の表情を浮かべる。その女性とは・・・

 

 「何でこんなところにいるの・・・あんじゅちゃん」

 

 「フフッ♪」

 

 A-RISEのメンバー・・・優木あんじゅその人なのだった。




どうも〜、ムッティです。

私事で大変恐縮ですが、本日誕生日を迎えました。

また一つ歳を重ねてしまった・・・

読者の皆様・・・いつもこの作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この作品を書き続けることが出来るのも、ひとえに皆様の応援のおかげだと思っております。

こんな自分ではありますが、これからも応援していただけると幸いでございます。

これからもどうぞ、よろしくお願い致します。

さてさて、今回はA-RISEの優木あんじゅちゃんが登場したわけですが・・・

μ'sは勿論、A-RISEも出したかったんですよねー。

次の話では綺羅ツバサちゃんと藤堂英玲奈ちゃん、そして・・・

μ'sのあのメンバーも登場する予定です。

お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

避けては通れない道もある。

台風半端ないって!アイツ半端ないって!

メッチャ電車遅れるもん!運休するもん!

そんなんどうしようもできひんやん普通!

・・・ホント大変だったなぁ(遠い目)


 「ゆ、優木あんじゅ・・・!?」

 

 「嘘でしょ・・・!?」

 

 絶句している聖良さんと理亞さん。

 

 一方のあんじゅちゃんは、嬉しそうに俺に頬ずりをしていた。

 

 「天くん久しぶり~♪大きくなったわね~♪」

 

 「まぁ、成長期だからね」

 

 あんじゅちゃんの登場ですっかり毒気を抜かれた俺は、苦笑しながら返した。

 

 「あんじゅちゃんこそ・・・また一段と実ったんじゃない?」

 

 「フフッ、天くんのエッチ♡」

 

 そう言いながらも、俺の身体に二つの立派なモノを押し付けてくるあんじゅちゃん。

 

 いや、何というか・・・ご馳走様です。

 

 「っていうか、何であんじゅちゃんがここに?」

 

 「半日だけオフになったから、今日のイベントを見に来たの」

 

 笑うあんじゅちゃん。

 

 「どうしても見に来たかったのよね。天くんがマネージャーをやってるグループが出るっていうんだもの」

 

 「えっ、何でそれを・・・」

 

 「あっ!いたいた!」

 

 「あんじゅ!探したぞ!」

 

 こちらに向かってくる二つの影・・・って、あれ?

 

 「もう、急にいなくならないで・・・って天じゃない!久しぶりね!」

 

 ショートヘアの女性が笑顔で話しかけてくる。この人も相変わらずだなぁ・・・

 

 「久しぶり、ツバサちゃん・・・ハゲた?」

 

 「ハゲてないわっ!」

 

 全力でツッコミを入れてくる女性・・・綺羅ツバサちゃん。A-RISEのリーダーである。

 

 「っていうか、久しぶりに会って第一声がそれなの!?」

 

 「あぁ、ゴメン。聞き方が悪かったね・・・生え際後退した?」

 

 「オブラートに包んでるようで全然包んでないじゃない!?」

 

 「毛根死滅した?」

 

 「最早どストレート!?」

 

 「いや、何か前よりおでこが広くなった気がするんだけど・・・」

 

 「そんな疑いの眼差しで見ないでくれる!?本当にハゲてないから!」

 

 「ハハッ、相変わらず天は面白いな」

 

 ロングへアで切れ長の目の女性が、楽しそうに笑っている。

 

 「ツバサをそこまでイジることが出来るのは、天だけだろうな」

 

 「英玲奈ちゃんも久しぶり。ますますカッコ良くなったね」

 

 「・・・それは喜んで良いものなのか?」

 

 反応に困っている女性・・・藤堂英玲奈ちゃん。同じくA-RISEのメンバーである。

 

 「一応私も女なのだが・・・」

 

 「大丈夫。ちゃんと知ってるから」

 

 苦笑する俺。

 

 「こんな綺麗な人を、男と勘違いしたりしないよ」

 

 「なっ・・・お前はまたそういう恥ずかしいことを・・・!」

 

 「あら英玲奈、言葉とは裏腹にずいぶん嬉しそうじゃない」

 

 「ツバサ!?何を言ってるんだお前は!?」

 

 今度はツバサちゃんが英玲奈ちゃんをからかい、英玲奈ちゃんが顔を真っ赤にしている。

 

 相変わらず仲が良いなぁ・・・

 

 「綺羅ツバサと藤堂英玲奈まで・・・!?」

 

 「どうなってるの・・・!?」

 

 口をパクパクさせている聖良さんと理亞さん。まぁ無理もないか・・・

 

 「あら、この二人・・・確かSaint Snowよね?どうしてこっちを見て驚愕の表情を浮かべてるの?」

 

 「いや、普通はこうなるんだよ」

 

 ツバサちゃんの反応に呆れる俺。

 

 「それほどA-RISEは有名なんだから」

 

 A-RISE・・・第一回ラブライブ優勝グループであり、μ'sと共にスクールアイドルブームを巻き起こした存在だ。

 

 高校卒業後は芸能界に入り、正式にプロのアイドルとしてデビュー・・・今や大人気アイドルグループへと成長を遂げている。

 

 スクールアイドルの先駆者であり、スクールアイドルファンの間では『神』と呼ばれているグループなのだ。

 

 「マ、マネージャーさん!?貴方、A-RISEとどういう関係なんですか!?」

 

 「んー・・・犬猿の仲ですかね」

 

 「ちょっと!?」

 

 ツバサちゃんのツッコミ。

 

 「この場面で冗談言ったって通じないでしょ!?」

 

 「いやほら、出会った頃は仲良くなかったじゃん」

 

 「それは天が私達を敵視してたからでしょ!?」

 

 「うん、マジで気に食わなかった。特にツバサちゃん」

 

 「うわぁ・・・ハッキリ言われると凹むわぁ・・・」

 

 落ち込むツバサちゃん。

 

 言われてみると、今のSaint Snowは当時のA-RISEに似てるかもしれない。

 

 「安心しなよ、今は大好きだから」

 

 「えっ、ホント!?」

 

 「あんじゅちゃんのことが」

 

 「や~ん♡嬉しいわ♡」

 

 「うわああああん!?」

 

 「あぁっ!?ツバサがガチ泣きしてる!?」

 

 まるでコントのようなやり取りを繰り広げる俺達。すると・・・

 

 「ちょっとアンタ達!」

 

 聞き覚えのある声がする。声のした方を振り向くと・・・

 

 「勝手に行動してんじゃないわよ!どんだけ探したと思ってんの!?」

 

 「うぅ、天ぁ・・・天ぁ・・・」

 

 サングラスをかけた長い黒髪の女性と、その女性に手を引かれている海未ちゃんがいた。

 

 「あぁ、ごめんなさい。その代わり、ちゃんと天くんは発見しておいたわよ」

 

 「天あああああっ!」

 

 勢いよく抱きついてくる海未ちゃん。やれやれ・・・

 

 「よしよし、もう大丈夫だよ」

 

 「うぅ、怖かったですぅ・・・」

 

 「全く・・・相変わらずどっちが年上だか分かんないわね・・・」

 

 溜め息をつく女性。

 

 「まぁそれはさておき・・・久しぶりね、天」

 

 かけていたサングラスを外す女性。

 

 その顔を見た聖良さんが、またしても驚きの表情を浮かべた。

 

 「なっ・・・μ'sの・・・!?」

 

 「久しぶり、にこちゃん」

 

 目の前の女性・・・矢澤にこちゃんに挨拶する俺。

 

 まさかにこちゃんにまで会うことになるとは・・・

 

 「あれ?背縮んだ?」

 

 「縮むかっ!むしろ伸びたわっ!」

 

 「にこちゃん・・・そんな悲しい嘘は止めよう・・・?」

 

 「嘘じゃないわよ!?そんな憐れむような目で見ないでくれる!?」

 

 「大丈夫。小さくても需要はあるって」

 

 「それ身長の話よねぇ!?胸の話だったらしばくわよ!?」

 

 ツッコミを連発するにこちゃん。相変わらずイジりやすいなぁ・・・

 

 「っていうか、何でにこちゃんがここにいるの?」

 

 「ツバサ達と一緒に、今日のイベントを見に来たのよ」

 

 溜め息をつくにこちゃん。

 

 「昨日ことりと真姫から、『天に会った』っていう連絡が来てね。天がマネージャーを務めてるAqoursが、このイベントに出るっていうじゃない。どんなもんかと思って見に来たってわけ」

 

 「あぁ、だからあんじゅちゃんが知ってたのね」

 

 納得する俺。

 

 にこちゃんは大学を卒業後、A-RISEの所属事務所で働いている。その為かA-RISEの三人と仲良くなっており、プライベートでも遊びに行ったりする仲なんだとか。

 

 五年前まで、A-RISEの追っかけしてたっていうのに・・・

 

 「それでイベントが終わってこの辺りをうろついてたら、偶然海未を発見してね。話を聞いたら、天とはぐれたっていうじゃない。この辺りにいることは電話で伝えたっていうから、ちょっと周りを探してみようってことになったんだけど・・・」

 

 ツバサちゃん達を睨むにこちゃん。

 

 「コイツらが好き勝手に動くもんだから、いつの間にかはぐれちゃって・・・どうしようかと思ったわよ」

 

 「アハハ、ゴメンゴメン」

 

 苦笑しながら謝るツバサちゃん。

 

 なるほど、そういうことだったのね・・・

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」

 

 黙っていられなくなったのか、話に割り込んでくる理亞さん。

 

 「アンタ、A-RISEとどういう関係なわけ!?しかもμ'sの矢澤にこまで!」

 

 「μ'sのメンバーなら、ここにもう一人いるわよ」

 

 「ちょ、にこ!?」

 

 海未ちゃんの伊達メガネとマスクを外すにこちゃん。

 

 「そ、園田海未・・・!?」

 

 海未ちゃんの顔を見た理亞さんが固まる。

 

 聖良さんにいたっては、完全に絶句してしまっていた。

 

 「じゃあアンタ、園田海未の弟だったの!?」

 

 「あー・・・すいません。海未ちゃんが姉っていうのは嘘なんですよ」

 

 苦笑する俺。と、ここでにこちゃんが口を挟む。

 

 「この子の名前は絢瀬天・・・μ'sの絢瀬絵里の弟よ」

 

 「ハァッ!?」

 

 「ちょっとにこちゃん、勝手に人の素性をバラさないでよ」

 

 「今さらでしょ。私達やA-RISEとの関わりがバレてるんだから」

 

 「そうだけどさぁ・・・」

 

 今のカミングアウトで、鹿角姉妹は完全にフリーズしてしまっていた。

 

 まぁA-RISEやμ'sのメンバーが登場した挙句、絵里姉のことまで知ってしまったらこうなるか・・・

 

 「えーっと・・・まぁそんなわけです。姉がμ'sのメンバーなので、μ'sの皆とは関わりがありまして。ツバサちゃん達ともその流れで知り合ったんですよ」

 

 「あら、それだけじゃないわ」

 

 ニヤリと笑うツバサちゃん。

 

 「何と言っても天は、あのμ'sの・・・」

 

 「えいっ」

 

 「むぐっ!?」

 

 海未ちゃんが持っていたコーラのペットボトルを開け、ツバサちゃんの口に突っ込んだ。

 

 そのまま傾け、ツバサちゃんの口の中へとコーラを流し込む。

 

 「むぐぅっ!?」

 

 「すみませんね。今の何でもないんで忘れて下さい」

 

 「むぐぐぐぅっ!?」

 

 「あぁっ!?ツバサちゃんがコーラで死にかけてる!?」

 

 「勘弁してやってくれ天!このバカには後でちゃんと言い聞かせておくから!」

 

 あんじゅちゃんと英玲奈ちゃんが必死に止めてくるので、仕方なく止めてあげた。

 

 コーラから解放され、咳き込むツバサちゃん。

 

 「ゲホッ、ゲホッ・・・ちょっと天!?容赦なさすぎよ!?」

 

 「ああん・・・?」

 

 「すいませんでした!」

 

 俺の絶対零度の視線に、即座に土下座を敢行するツバサちゃん。

 

 鹿角姉妹が完全に引いているが、そんなことはどうでもいい。

 

 「まぁそれはさておき・・・先ほどのAqoursに対する侮辱、俺は絶対に忘れませんので。人を見下している暇があるのなら、自分自身を磨くことをオススメします。貴女方も入賞できていないという事実を、どうかお忘れなく」

 

 「っ・・・申し訳ありませんでした・・・」

 

 頭を下げる聖良さん。

 

 「理亞、行きましょう・・・」

 

 「う、うん・・・」

 

 その場を去っていく二人。やれやれ・・・

 

 「・・・ありがとね、あんじゅちゃん。危うく言い過ぎるところだったよ」

 

 「フフッ、どういたしまして」

 

 微笑むあんじゅちゃん。

 

 「まぁ、天くんが怒る気持ちは分かるけどね。頑張っている人に対して、あのセリフは酷いと思うわ」

 

 「天、何かあったのですか・・・?」

 

 「うん、まぁ色々とね」

 

 海未ちゃんの問いに、苦笑しながら答える俺。

 

 と、にこちゃんが溜め息をつく。

 

 「大方、あの二人がAqoursに対して何か言ったんでしょう?何を言ったのかは知らないけど・・・Aqoursのパフォーマンスが、他のグループより劣っていたのは事実よ」

 

 「ちょっとにこ、そんな言い方・・・!」

 

 「海未だって本当は気付いてるでしょ?フォローするだけが優しさじゃないのよ?」

 

 「それは・・・」

 

 「それに・・・天は分かってたんじゃないの?このイベントにAqoursが参加すれば、こういう結果になるだろうって」

 

 「・・・まぁね」

 

 にこちゃんの問いに、溜め息をつきながら頷く俺。

 

 「このイベントで、周りのレベルの高さを実感することになるだろうとは思ってたよ。今のAqoursのレベルじゃ、優勝どころか入賞さえ出来ないことも分かってた」

 

 「そんな・・・だったらどうして・・・!」

 

 「ラブライブを目指す以上、そこは絶対に理解してないといけないところだからね。スクールアイドルを続けていく上で、避けては通れない道なんだよ」

 

 「同感だな」

 

 頷く英玲奈ちゃん。

 

 「他のスクールアイドル達の実力と、それに対しての自分達の実力・・・それを把握出来ていないようでは、話にならないからな」

 

 「そうね。あと大事なのは、強い意思があるかどうかってところかしら」

 

 ツバサちゃんも口を挟んでくる。

 

 「今回Aqoursは、周りとの実力差を痛感したはずよ。もしこれで心が折れてしまったら・・・キツい言い方になってしまうけど、その程度の覚悟しかなかったってことよね」

 

 「そういうことになるね」

 

 苦笑する俺。でも・・・

 

 「もしAqoursの皆が、それでもスクールアイドルを続けるというのであれば・・・今より絶対に伸びる」

 

 「・・・信じてるのね。あの子達のこと」

 

 「勿論」

 

 にこちゃんの問いに、笑みを浮かべる俺。

 

 「こんなところで終わる人達じゃないよ。絶対に這い上がってくるから」

 

 「・・・変わらないわね。そういうところ」

 

 呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑うにこちゃんなのだった。




どうも〜、ムッティです。

いやぁ・・・凄かったですね、台風。

皆さんは大丈夫でしたか?

よりによって月曜日に、通勤・通学の時間帯に多大なる影響を与えてましたもんね・・・

電車の運休や遅延で、駅は人で溢れかえってるし・・・

ようやく電車に乗れたと思ったら、ぎゅうぎゅう詰めで圧死しそうになるし・・・

どこへ行っても人、人、人ですよ。

本当に大変な目に遭いました(>_<)

やはり自然には勝てませんね・・・

さてさて・・・今回はツバサちゃんと英玲奈ちゃん、そしてにこちゃんも登場しました!

にこちゃんは芸能関係(裏方)の仕事とかやってそう・・・という勝手なイメージで、にこちゃんの職業を決めてしまいました(笑)

でもその方面に詳しい分、絶対有能なスタッフだと思うんですよね。

ゆくゆくはマネージャーとかやってそう。

さて、今回のイベントでスクールアイドルのレベルの高さを知ったAqours・・・

果たしてどうなるのか・・・

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

簡単には受け止められないこともある。

ことりちゃん、誕生日おめでとう!

1日遅れてゴメンね・・・


 「さて、そろそろ行くわよ」

 

 「えぇ・・・せっかく天くんと会えたのにぃ・・・」

 

 「文句言わない。これから仕事でしょうが」

 

 不満そうに俺に抱きつくあんじゅちゃんに、溜め息をつくにこちゃん。

 

 どうやらA-RISEはこれから仕事があるらしく、長居は出来ないとのことだった。

 

 芸能人も大変だなぁ・・・

 

 「こっちはマネージャーさんから、時間通りに連れてくるよう厳しく言われてるんだから。これで遅刻なんてしたら、怒られるのは私なのよ」

 

 「じゃあ遅刻しても大丈夫ね。怒られるのはにこなんだから」

 

 「しばくわよハゲ」

 

 「だからハゲじゃないわよ!?」

 

 ツバサちゃんのツッコミ。

 

 A-RISEの熱烈なファンだったにこちゃんが、こんなセリフを吐く日が来るとは・・・

 

 「ほらあんじゅ、気持ちは分かるが仕事に行くぞ」

 

 「うぅ・・・分かったわよぉ・・・」

 

 英玲奈ちゃんに宥められ、渋々従うあんじゅちゃん。

 

 「じゃあ天くん、またね・・・んっ」

 

 「っ!?」

 

 急に頬にキスされ、流石に俺もビックリしてしまう。

 

 「ちょ、あんじゅちゃん!?」

 

 「フフッ♡」

 

 俺から離れたあんじゅちゃんが、悪戯っぽく笑う。

 

 「頬じゃなくて、唇の方が良かったかしら?」

 

 「あんじゅさん!?何してるんですか!?」

 

 慌てて俺を後ろから抱き寄せ、あんじゅちゃんを睨みつける海未ちゃん。

 

 「天は渡しませんからね!?」

 

 「あら、嫉妬?海未ちゃんも可愛いわね」

 

 「あんじゅ、からかうのは止めなさい」

 

 やれやれ、と言いたげなツバサちゃん。

 

 「じゃあ天、また会いましょう」

 

 「今度はゆっくり話そう。お互い積もる話もあるだろうしな」

 

 「寂しくなったら、いつでも連絡ちょうだいね♪」

 

 「ありがとう。仕事頑張ってね」

 

 三人に手を振る俺。

 

 にこちゃんも三人の後に続こうとしたが、ふと足を止めた。

 

 「・・・Aqoursのこと、ちゃんと支えてあげなさいよ。今それが出来るのは、マネージャーである天しかいないんだから」

 

 「分かってる。ほったらかしにしておくつもりは無いよ」

 

 俺の言葉に、にこちゃんが小さく笑みを浮かべた。

 

 「私が認めた男が、『こんなところで終わる人達じゃない』って断言したんだもの。あの子達の成長を楽しみにしてるわ」

 

 それだけ言い残すと、手をひらひらと振って去っていくにこちゃん。

 

 かつてのツインテールではなく、長い黒髪をなびかせながら歩くその背中は・・・とても大きく見えた。

 

 「・・・大人だなぁ」

 

 「ですね」

 

 頷く海未ちゃん。

 

 「絵里や希とは、また違った感じの大人っぽさですよね」

 

 「うん、何と言うか・・・人生の先輩っていう感じがする」

 

 時には優しく、時には厳しく・・・

 

 にこちゃんには昔から、何かと目をかけてもらってたっけなぁ・・・

 

 「全く・・・普段はイジられキャラのくせに、何でこういう時だけ・・・」

 

 「フフッ・・・でも、そこがにこらしいですよね」

 

 二人でそんなことを言いながら苦笑していると・・・

 

 「ねぇ、あの人ってμ'sの・・・」

 

 「嘘!?園田海未!?」

 

 「えっ、じゃあ横にいる男の子って・・・」

 

 「まさか彼氏!?」

 

 周りがメッチャざわついていた。えっ・・・

 

 「・・・そういえば、にこに伊達メガネとマスクを取られたんでした」

 

 冷や汗をダラダラ流しながら呟く海未ちゃん。

 

 よし、にこちゃんはいつか絶対に泣かすとして・・・

 

 「とりあえず退散っ!」

 

 「ラジャーッ!」

 

 全力でその場から走り去る俺と海未ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・」

 

 「危なかったですね・・・」

 

 ホッと一息つく俺達。

 

 全力ダッシュで逃走した俺達は、何とか最初にいた場所まで戻って来ることが出来たのだった。

 

 「そろそろ千歌さん達も戻って来ると思うんだけど・・・あっ」

 

 そんな話をしていると、千歌さん達がこちらへ向かってくるのが見えた。どうやら、ちょうど良いタイミングだったらしい。

 

 ただ・・・

 

 「・・・何か、元気無くない?」

 

 「ですね・・・さっきより暗いといいますか・・・」

 

 明らかに落ち込んだ表情の皆。どうしたんだろう?

 

 「お帰りなさい」

 

 「っ・・・」

 

 俺がそう声をかけた瞬間・・・ルビィが勢いよく俺に抱きついてきた。

 

 「おっと・・・ルビィ?」

 

 「・・・ひっぐ・・・うぅっ・・・」

 

 俺の胸に顔を埋めながら、泣きじゃくるルビィ。

 

 俺は戸惑いながらも、ルビィの頭を優しく撫でた。

 

 「何かあったんですか・・・?」

 

 「・・・これです」

 

 問いかける海未ちゃんに、千歌さんが一枚の紙を渡す。

 

 そこには、今回のイベントに参加したグループの名前が順位で並べて書いてあった。右側には得票数も書いてある。

 

 「Saint Snowは9位・・・入賞までもう少しだったのか・・・」

 

 手の届く位置にあったのに、掴むことが出来なかったわけか・・・気の強そうな理亞さんが泣いていたのも納得できる。

 

 それより問題なのは・・・

 

 「Aqoursは・・・最下位。得票数・・・0」

 

 「そんな・・・」

 

 絶句する海未ちゃん。つまりあの会場にいた観客の中で、Aqoursに投票した人はいなかったということか・・・

 

 俺と海未ちゃんはAqoursの身内になるから、あえて誰にも投票しなかったもんな・・・

 

 「0・・・だったの・・・」

 

 泣きながら言うルビィ。

 

 「ルビィ達に・・・ひっぐ・・・投票してくれた人は・・・えぐっ・・・誰もいなかったの・・・うぅっ・・・」

 

 「・・・そっか」

 

 そっとルビィを抱き締める。

 

 「我慢しなくて良いよ・・・気が済むまで泣いて良いから」

 

 「っ・・・うわあああああんっ!」

 

 大声で泣くルビィ。

 

 そんなルビィの様子を、他の皆も沈痛な面持ちで見つめていた。

 

 「・・・Saint Snowさんからも、言われちゃったの。『μ'sのようにラブライブを目指しているのなら、諦めた方が良いかもしれない』って」

 

 「『馬鹿にしないで。ラブライブは遊びじゃない』とも言われちゃったよね・・・」

 

 「っ・・・!」

 

 梨子さんと曜さんの言葉を聞いた海未ちゃんが、唇をぐっと噛む。

 

 「あの二人・・・そんなことを言ったのですか・・・!」

 

 怒りの表情を浮かべる海未ちゃん。

 

 「まだ遠くへは行ってないはず・・・!」

 

 「止めときな」

 

 海未ちゃんがあの二人を追いかける前に、釘を刺しておく。

 

 「天!?何故止めるのですか!?」

 

 「あの二人に対して怒った俺が、こんなことを言える立場じゃ無いのは分かってるけど・・・今はあの二人のことなんてどうでもいいよ」

 

 淡々と答える俺。

 

 「人を傷つける言葉を平気で言えるようなヤツらに、これ以上構っていたくないから。そんなヤツらに怒りをぶつけてる暇があるなら・・・俺は皆の側にいたい」

 

 「っ・・・天・・・」

 

 「・・・とりあえず、海未ちゃんの家に戻ろっか。荷物をまとめて内浦に帰ろう。早くしないと、帰るのが遅くなっちゃうから」

 

 「・・・分かりました」

 

 力なく頷く海未ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「ようやく落ち着いたか・・・」

 

 俺の肩に寄りかかって眠るルビィを見て、ホッと一息つく俺。

 

 園田家を出た俺達は、電車に乗って内浦へと向かっていた。

 

 「ルビィちゃん、安心したような顔で眠ってるわね」

 

 通路を挟んで俺の隣に座っている梨子さんが、笑みを浮かべながら言う。

 

 「きっと天くんが側にいるからね」

 

 「そうですかね?」

 

 「そうよ。花丸ちゃんと善子ちゃんだって、さっきまで落ち込んでたのに今は穏やかな顔で眠ってるじゃない。天くんと一緒だから安心してるのよ」

 

 俺の向かいの席で身を寄せ合って眠る花丸と善子を見て、微笑む梨子さん。

 

 安心してる、か・・・

 

 「・・・それなら嬉しいですね」

 

 ルビィによって握られている手を、そっと握り返す。

 

 「一緒にいるだけで、人を安心させることが出来る・・・そんな存在になりたいって、ずっと思ってましたから」

 

 「え・・・?」

 

 「・・・フフッ」

 

 首を傾げる梨子さんに対し、俺の言葉を聞いていた海未ちゃんが小さく笑った。

 

 「それはひょっとして、希の影響ですか?」

 

 「・・・まぁね」

 

 照れ臭くなり、海未ちゃんから視線を外す俺。

 

 「天は希に懐いてましたもんね。ことり以上に」

 

 「み、南さん以上・・・?」

 

 「ちょっと曜さん、何でそんなにげんなりしてるんですか?」

 

 「いや、あの甘々な感じを見せつけられてるからさぁ・・・あれ以上ってことは、胸焼けどころじゃ済まないなぁと思って・・・」

 

 「大丈夫ですよ、曜」

 

 胸を押さえる曜さんに、海未ちゃんが苦笑しながら言う。

 

 「あそこまでの甘々空間になることはありませんから。安心して下さい」

 

 「でも、天くんが南さん以上に懐いてるんですよね?」

 

 「そうですが、天と希はああいう感じではないんですよ。会えば分かります」

 

 「は、はぁ・・・」

 

 よく分かっていない様子の曜さん。

 

 全く、海未ちゃんときたら・・・

 

 「東條希さんか・・・会ってみたいわね、千歌ちゃん」

 

 「・・・・・」

 

 「千歌ちゃん?」

 

 「・・・えっ?」

 

 梨子さんに話を振られたことに気付かない千歌さん。ようやく気付いたようで、バツの悪そうな顔をする。

 

 「ゴメン、聞いてなかった・・・」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 心配そうな表情の梨子さん。

 

 「やっぱり千歌ちゃん、イベントの結果を気にして・・・」

 

 「ち、違うって!そんなんじゃないから!」

 

 慌てて笑みを浮かべ、取り繕おうとする千歌さん。

 

 と、ここで曜さんが真剣な表情で千歌さんに尋ねた。

 

 「じゃあ千歌ちゃんは・・・悔しくないの?」

 

 「「「っ・・・!」」」

 

 息を呑む俺・梨子さん・海未ちゃん。その質問は・・・

 

 「そ、そりゃあちょっとはね・・・でも、皆であそこに立てたんだもん!私は満足だよ!」

 

 無理矢理作ったような笑顔を見せる千歌さん。ホント、この人は・・・

 

 「千歌ちゃん・・・スクールアイドル、やめる?」

 

 「っ・・・」

 

 続けられた曜さんの問いに、答えられなくなってしまった千歌さん。

 

 いつもなら、勢いよく『やめない!』と答えているところだが・・・

 

 「・・・そこまでにしましょう、曜さん。これ以上はダメです」

 

 「・・・ゴメン」

 

 素直に引き下がる曜さん。

 

 重苦しい雰囲気に包まれ、電車に揺られる俺達なのだった。




どうも〜、ムッティです。

昨日9月12日は、ことりちゃんの誕生日でしたね!

改めておめでとう!

誕生日記念とかで、一話のみの特別編とか書いてみるのも面白そうですよね。

まぁそういうのを書くのは、もう少し話が進んでからになると思いますが・・・

鞠莉ちゃんとか未だに和解してませんし、まだ登場してないμ'sのメンバーもいますし・・・

とりあえず、早く三年生編に入りたいところです(>_<)

引き続きマイペースに投稿していきますので、これからもよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思うところは人それぞれである。

アニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』で、遂にサトシがポケモンリーグ優勝を果たしたらしい。

おめでたいことだけど、何でXYの時に優勝してくれなかったんだ・・・

あの時の作画が一番綺麗だったし、決勝戦のフルバトルはマジで激アツだったのに・・・

あと、セレナちゃんカムバック(´・ω・`)


 「何かこの海を見ると、『戻ってきた』って感じがするよ」

 

 「フフッ、すっかり内浦の人になってますね」

 

 海沿いを散歩している俺と海未ちゃん。

 

 無事に沼津駅に到着した俺達は、駅まで迎えに来てくれた志満さんと美渡さんの車でそれぞれの家へと帰った。

 

 帰宅後に何となく風に当たりたくなった俺が散歩に行こうとしたところ、海未ちゃんも行きたいと言うので一緒に外に出てきたのだった。

 

 「久しぶりの東京はどうでしたか?」

 

 「久しぶりって言っても、引っ越してまだ三ヶ月程度だけど・・・少し懐かしく感じたかな。『あぁ、こんなところだったな・・・』って感じちゃったよ」

 

 それだけ内浦の景色に慣れてしまったということだろう。

 

 そう考えると俺にとって、三ヶ月という期間は案外長かったのかもしれないな・・・

 

 「・・・私としては、それは少し寂しいですね」

 

 そっと俺との距離を詰め、手を握ってくる海未ちゃん。

 

 「確かに内浦は良い所ですが・・・」

 

 「分かってるよ」

 

 海未ちゃんの手を優しく握り返す。

 

 「俺にとって、東京が大切な場所なのは今も変わらないから。海未ちゃんや皆との思い出がたくさんあるし・・・姉さん達と一緒に暮らしてきた場所だからね」

 

 「天・・・」

 

 「次に東京に行く時は、今回は会えなかったμ'sのメンバーにも会いたいな。亜里姉とも会いたいし・・・可能であれば、絵里姉とも」

 

 「・・・会えますよ、きっと」

 

 微笑む海未ちゃん。

 

 「今度は連絡してあげて下さい。皆喜んで天に会いに来ますから」

 

 「・・・うん。そうするよ」

 

 ことりちゃんにも同じ事を言われたもんな・・・

 

 今度穂乃果ちゃん達に連絡してみよう。

 

 「それより、千歌達は大丈夫でしょうか・・・帰り際も意気消沈していましたが・・・」

 

 「・・・大丈夫、とは言えないかな」

 

 とはいえ、今はどんなに励ましても意味が無いと思う。まだ自分達の中で現実を受け止めきれていない以上、他の人の言葉に耳を傾けることなど出来ないだろう。

 

 まずは一晩、自分達の中で今回の結果とじっくり向き合ってもらおう。話はそれからだ。

 

 「明日、これからのことについて皆と話してみるよ。とりあえず今日は、考える時間をあげた方が良いと思う」

 

 「そうでしょうか・・・」

 

 心配そうな表情の海未ちゃん。恐らく、先ほどの千歌さんの様子が頭をよぎっているんだろう。

 

 曜さんは千歌さんの反骨心を煽る為に、よく『じゃあやめる?』というセリフを口にする。そうすると負けず嫌いな千歌さんは、『やめない!』と宣言してより一層やる気を出すのだ。

 

 ところが今回、曜さんに『やめる?』と聞かれた千歌さんは何も答えなかった。つまり今、千歌さんの心は折れそうになっているということだ。

 

 海未ちゃんとしては、そこが心配なところなんだと思う。

 

 「このまま『やめる』と言い出したら・・・」

 

 「その時はツバサちゃんも言ってたけど、『その程度の覚悟だった』ってことだよ」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「でも・・・折れないよ。あの人は」

 

 「・・・そうですね。私も信じます」

 

 そんな会話をしていた時だった。

 

 「私は諦めないッ!」

 

 誰かの叫ぶ声が聞こえた。この声って・・・

 

 「必ず取り戻すのッ!あの時をッ!」

 

 小原理事長が涙を流しながら叫んでいるのが見えた。隣にはダイヤさんが立っている。

 

 そして・・・果南さんが二人に背を向けて、その場を立ち去るところだった。

 

 「・・・あんまり見ちゃいけない場面に遭遇しちゃったね」

 

 「・・・そのようですね」

 

 二人揃って溜め息をつく。こっちはこっちで大変そうだなぁ・・・

 

 「どうします?見なかったことにしますか?」

 

 「・・・海未ちゃんも人が悪いよね」

 

 恨みのこもった眼差しを向ける俺。

 

 「俺がそういうこと出来ない性格だって、分かってて聞くんだもん」

 

 「・・・今回に関しては、本当に見なかったことにしてほしいと思ってますよ」

 

 苦い表情の海未ちゃん。

 

 「天がどう思っているのかは分かりませんが・・・私は小原理事長を許していませんので。後の二人には申し訳ないですが、彼女をフォローする気が一切起きません」

 

 「海未ちゃんもなかなか言うようになったねぇ・・・」

 

 苦笑する俺。

 

 「悪いけど、俺は果南さんの後を追いかけるよ。海未ちゃんは・・・どうする?」

 

 「・・・人が悪いのは天も一緒じゃないですか」

 

 呆れている海未ちゃん。

 

 「天にそんな聞かれ方をして、『では先に帰ります』なんて言えるわけないでしょう。人の性格を分かってて聞くのは止めて下さい」

 

 「海未ちゃん、俺のこと好きだもんね」

 

 「大好きですけど。それが何か?」

 

 「恥ずかしがったりしないのね・・・」

 

 今度は俺が呆れる番だった。逆にこっちが恥ずかしくなるんだけど・・・

 

 「では私は、ダイヤと小原理事長のところへ行ってきます。先ほども言いましたが、フォローするつもりは一切ありませんからね」

 

 「何を言うかは任せるよ。海未ちゃんなら大丈夫だろうし」

 

 「ずいぶん信じてくれるじゃないですか」

 

 「いつだって信じてるよ。海未ちゃんのこと大好きだもん」

 

 「っ・・・ホントに人が悪いですね・・・」

 

 そう言いながらも、頬を赤く染める海未ちゃん。

 

 俺は小さく笑うと、果南さんの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《果南視点》

 

 「・・・ハァ」

 

 歩きながら溜め息をつく私。

 

 「諦めない、か・・・」

 

 キッカケはダイヤからの電話だった。妹のルビィちゃんが東京から帰ってきたらしいのだが、家に着いてダイヤの顔を見た瞬間に泣き出してしまったのだという。

 

 どうやらAqoursは、イベントで思うような結果を残すことが出来なかったらしい。だから私はダイヤと・・・鞠莉を呼び出した。

 

 鞠莉は浦の星の統廃合を阻止する為に、Aqoursを利用しようとしている。それを止めさせないと、千歌達が傷つくことになると思ったから。

 

 だけど・・・

 

 「・・・それだけじゃ、ないんだよね」

 

 鞠莉がAqoursを応援する理由・・・それは・・・

 

 「こんばんはのハグっ!」

 

 「うわっ!?」

 

 誰かがいきなり背後から抱きついてくる。この声は・・・

 

 「そ、天っ!?」

 

 「こんばんは。果南さん」

 

 笑みを浮かべている天。ど、どうしてここに・・・?

 

 「海未ちゃんと散歩してたら、果南さん達のシリアスな場面に遭遇したので追いかけてきたってところです」

 

 「心の声を読んで答えるの止めてくれない?」

 

 「果南さんは海未ちゃんと一緒で、すぐ顔に出るから分かりやすいんですよ」

 

 笑っている天。本当にこの子は・・・

 

 「・・・それで?私を慰めに来てくれたってわけ?」

 

 「甘えんなハグ魔」

 

 「まさかのトドメを刺しに来たの!?」

 

 「冗談ですよ」

 

 天は苦笑すると私から離れ、申し訳なさそうな表情になる。

 

 「・・・俺が果南さんのところに来たのは、謝罪する為です」

 

 「謝罪・・・?」

 

 「えぇ。東京のイベントでのことは、既に聞いてるんでしょう?だからダイヤさんや小原理事長と、今後のAqoursについての話をしてたんじゃないですか?」

 

 「・・・鋭いね」

 

 ダイヤも言っていたが、こういうことに関しての天の察しの良さは尋常じゃない。まるで全てを見透かされているようだ。

 

 「果南さん、言ってましたよね。千歌さん達には笑顔で帰ってきてほしいって。でも俺は、それを叶えることが出来ませんでした」

 

 悲しそうに笑う天。

 

 「いえ、それ以前に・・・イベントで結果が残せないことは、初めから分かっていました。今のAqoursには、それだけの実力がないということも・・・にも関わらず、俺はそれを果南さんには伝えなかった・・・何も言い訳出来ません」

 

 「天・・・」

 

 「結果としてAqoursはショックを受け、笑顔で内浦に帰ってくることは出来ませんでした。そしてそれが原因で、果南さんは小原理事長と喧嘩になってしまった・・・全て俺の責任です」

 

 天はそう言うと、私に向かって深々と頭を下げた。

 

 「すみませんでした」

 

 「・・・止めてよ」

 

 首を横に振る私。

 

 「鞠莉との喧嘩は私達の問題なんだから。天のせいじゃないよ。それに・・・私だって分かってたよ。千歌達が結果を残せないだろうってことは」

 

 これでも二年前、イベントに参加して周りのレベルの高さを実感した身だ。ライブやPVはチェックしていたけど・・・千歌達の今のレベルは、二年前の私達と大して変わらないと思う。

 

 それを分かっていながら、私は天に身勝手なお願いをしたのだ。

 

 「私達は歌えなかったけど・・・千歌達はちゃんとパフォーマンス出来たんでしょ?それはきっと、天が側にいてくれたからだと思う。それだけで十分役目を果たしてくれたんだから、天は謝る必要なんかないんだよ」

 

 あのお願いをした時、天は最初頷いてくれなかった。それはきっと、東京に行きたくないからだろうと思っていたけど・・・それだけじゃなかったんだと思う。

 

 千歌達が結果を残せないことが分かってたからこそ、簡単に頷くことが出来なかったんだろう。

 

 「・・・私の方こそゴメン。嫌な思いさせちゃったね」

 

 天に頭を上げさせ、正面から抱き締める。

 

 「千歌達を支えてくれてありがとう。それだけで十分だよ」

 

 「果南さん・・・」

 

 私に身を委ねてくれる天。

 

 さっきまで心の中がグチャグチャだったのに、天とこうして触れ合っていると心が落ち着いてくる。

 

 「ねぇ、天・・・千歌達は大丈夫かな・・・?」

 

 「・・・心配ですか?」

 

 「そりゃあね・・・心配にもなるよ」

 

 鞠莉が利用しようとしているのは気に食わないし、これ以上傷ついてほしくないとも思うけど・・・

 

 やっぱり千歌達には、スクールアイドルを続けてほしい。歌って踊るあの子達は、本当に楽しそうで・・・キラキラしてるから。

 

 「もし今回のことで、スクールアイドルをやめることになったら・・・」

 

 「ストップ」

 

 「っ・・・」

 

 私の唇に、天の人差し指が触れた。

 

 「そういうネガティブな発言は、果南さんらしくないですよ。果南さんの長所はポジティブなところでしょうに・・・あっ、おっぱいが大きいところもですね」

 

 「ちょ、だからそれセクハラ発言だってば!?」

 

 「否定しないところを見ると、自分でも大きいって思ってるんですね」

 

 「いや、まぁ少しは・・・って何を言わせるの!?」

 

 うぅ、天ってばエッチなんだから・・・

 

 天はひとしきり笑うと、優しく微笑んだ。

 

 「・・・千歌さんと曜さんのことは、幼馴染の果南さんがよく分かってるでしょう?梨子さんも善子も、花丸もルビィも・・・そんなに柔な人達じゃないですよ。少しは信じてあげて下さい」

 

 「・・・そうだよね」

 

 心配するあまり、あの子達を信じてあげられてなかった・・・それじゃダメだよね・・・

 

 「もう遅いですから、家まで送りますよ。行きましょう?」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 差し出された天の手を握る。触れた手の温もりに、少し胸が高鳴る私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《ダイヤ視点》

 

 「果南・・・」

 

 涙を流しながら、果南さんの去っていった方を見つめる鞠莉さん。私はそんな鞠莉さんに、何も言葉をかけられずにいました。

 

 鞠莉さんは浦の星の統廃合を阻止する為、Aqoursを利用しようとしています。ですが、それだけではありませんでした。

 

 鞠莉さんの真の目的は・・・

 

 「ダイヤや松浦さんと、もう一度スクールアイドルをやること・・・」

 

 「「っ!?」」

 

 驚く私達。海未先生が、冷たい表情で立っていました。

 

 「それが貴女の目的なのでしょう?小原理事長」

 

 「ど、どうしてそれを・・・」

 

 「貴女方が二年前にスクールアイドルをやっていたことは、赤城先生から聞いていました。何らかの理由で解散し、直後に貴女が留学したことも知っています。その事実を聞いた時、ピンときましたよ」

 

 冷たい眼差しを向ける海未先生。

 

 「何故留学から戻ってきたのか、何故スクールアイドル部を応援するのか・・・何故天を脅して、マネージャーをやらせているのか」

 

 「っ・・・」

 

 凛とした佇まいから放たれる威圧感に、私は言葉を発することが出来ませんでした。鞠莉さんも固まってしまっています。

 

 「二年前の解散は、貴女にとっては不本意なものだったのでしょう?受け入れざるをえなかったものの、貴女は納得などしていなかった。そして二年後・・・浦の星の統廃合の話が進んだことを知った貴女は、浦の星に戻ることを決めた」

 

 淡々と語る海未先生。

 

 「まずは浦の星の統廃合を阻止すべく、音ノ木坂の南理事長に相談した。その際に共学化のテスト生として天を推薦され、天を利用することに決めた。恐らく最初は、自分達のマネージャーをやらせるつもりだったのでしょう?」

 

 「っ・・・」

 

 何も言うことが出来ない鞠莉さん。

 

 どうやら海未先生の仰っていることは、概ね間違いなさそうですわね・・・

 

 「ですが、貴女も分かっていたはずです。またスクールアイドルをやろうと言ったところで、ダイヤや松浦さんが簡単には頷かないだろうということを。そんな時、スクールアイドル部を立ち上げようとしている後輩がいることを知った貴女は方針を変えた。三人で再び始めるのではなく、後輩が作るであろうグループに便乗してしまおうと」

 

 冷ややかな目で鞠莉さんを見る海未先生。

 

 「先にグループを作ってもらえれば、理事長として力を貸すことが可能になります。浦の星の統廃合を阻止する為に利用することも出来ますし、ダイヤと松浦さんを説得する時間だって稼ぐことが出来る・・・だから貴女は、千歌達のマネージャーをやるように天を脅したのでしょう?」

 

 「・・・鋭いわね」

 

 「少し考えれば、誰にでも分かることです」

 

 溜め息をつく海未先生。

 

 「私が気付いているのですから、当然天だって分かっています。それなのにあの子は、ダイヤや松浦さんと距離を縮めようとする貴女の背中を押すようなことまでして・・・お人好しにも程があります」

 

 そう語る海未先生は呆れた様子でしたが・・・その中にどこか、誇らしげな感じが混ざっているように思えました。

 

 「恐らく天は、貴女のことをそこまで恨んではいないでしょう。貴女から受けた仕打ちを許してはいないでしょうが、理由を察して理解はしているはずです。もっとも・・・私は未だに怒りが収まりませんけどね」

 

 鞠莉さんを鋭く睨みつける海未先生。

 

 「天を傷つけた貴女を、私は許すことが出来ません」

 

 「・・・本当に天を大切に想っているのね」

 

 「当然です」

 

 言い切る海未先生。

 

 海未先生は、どうしてそこまで天さんのことを・・・エリーチカの弟だから、という理由では説明がつきませんわね・・・

 

 「他のμ'sのメンバーも、私と同じことを言うでしょう。天の意向で、貴女のしでかしたことは他のμ'sのメンバーに伝えていませんが・・・もし事実を知れば、すぐにでも浦の星に乗り込んでくるでしょうね。私達にとって、貴女は決して許すことの出来ない存在なんですよ」

 

 「そんなこと分かってるわよッ!」

 

 耐え切れなくなったのか、鞠莉さんが叫びました。

 

 「μ'sのメンバーがどれほど天を大切に想っているかなんて、絵里を知ってる私が分からないはずないでしょ!?私がやってしまったことの重さもッ!どれほど天を傷つけてしまったのかもッ!十分すぎるほど感じてるわよッ!」

 

 その瞬間、乾いた音が鳴り響きました。海未先生が鞠莉さんの頬を引っ叩いたのです。

 

 「・・・ふざけないで下さい」

 

 海未先生の眼差しは・・・これ以上ないほど、冷たく鋭いものになっていました。

 

 嫌でも分かります。海未先生は今・・・ブチギレているということが。

 

 「μ'sのメンバーが、どれほど天を大切に想っているかが分かる?そんなはずないでしょう。天と十年近く会っていなかった貴女が、私達が共に過ごしてきた時間を知るはずがないのですから」

 

 鞠莉さんの胸倉を掴む海未先生。

 

 「やってしまったことの重さを感じている?だとしたら勘違いも甚だしいですね。貴女が想像してる以上に、天は傷ついていますよ」

 

 「う、海未先生っ!それ以上はダメですっ!」

 

 拳を握り締めた海未先生を見て、慌てて二人の間に入る私。

 

 海未先生は溜め息をつくと、鞠莉さんから手を離しました。

 

 「・・・ダイヤがいてくれて助かりました。危うく本気で殴るところでしたね」

 

 海未先生の言葉にゾッとする私。海未先生は再び鞠莉さんに視線を向けます。

 

 「貴女にとって、ダイヤや松浦さんと過ごす時間がどれほど大切だったのか・・・私は貴女ではないので分かりません。ですが・・・少しだけ理解は出来ていると思います。私にも思うところがありますので」

 

 海未先生はそう言うと、くるりと踵を返しました。

 

 「だからこそ忠告しておきますが・・・もう少し方法を考えなさい。貴女だって天のことを、大切に想っているのでしょう?その天を傷つけて、仮に大切な時間を取り戻すことが出来たとして・・・貴女は心の底から喜ぶことが出来るのですか?」

 

 「っ・・・」

 

 俯く鞠莉さん。目からは次々と涙が零れ落ちます。

 

 そんな鞠莉さんに背中を向けたまま、静かにその場を立ち去る海未先生なのでした。




どうも〜、ムッティです。

今回の話は、いつもより少し長めです。

ちょうど良い感じに区切れなかったぜ・・・

ちなみに次の話で、アニメ一期第八話の内容が終了します。

いよいよアニメ一期第九話、三年生編へと入っていくわけですね。

ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんの運命やいかに・・・

そして天と鞠莉ちゃんは和解出来るのか・・・

絶賛執筆中ですので、お楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再スタートはいつだって切ることが出来る。

ヤバい。ポケモンがやりたくて仕方ない。

久々にXYとかORASとかSMとかやりたい。


 翌朝・・・

 

 「はっ・・・はっ・・・!」

 

 日課のランニングをしている俺。やっぱり内浦は走ってて気持ちが良いな・・・

 

 「・・・果南さん、大丈夫かな」

 

 ふとそんなことを呟く。

 

 昨夜家まで送り届けた時、Aqoursのことは『信じる』と言っていたが・・・小原理事長に関しては、やはりまだ複雑な思いを抱えているようだった。

 

 小原理事長といえば・・・

 

 「・・・あの人こそヤバそうだよなぁ」

 

 あの後家に帰ったら、海未ちゃんの機嫌が最悪だったのだ。何があったかは知らないが、恐らく小原理事長が海未ちゃんをブチギレさせる何かを言ってしまったんだろう。

 

 ムスッとした表情のまま抱きついてくる海未ちゃんをあやすのに、どれだけ苦労したことか・・・

 

 そして海未ちゃんがブチギレたのなら、小原理事長が何のダメージも無く済んでいるわけがない。精神的ダメージを負っているだろうし・・・海未ちゃんのことだから、思いっきり引っ叩いていることも考えられる。

 

 ブチギレた海未ちゃんの怖さを舐めてはいけない。

 

 「・・・ダイヤさんに、何があったのか聞いてみようかな」

 

 そんなことを考えながら、ふと海の方へ視線を向けると・・・

 

 「え・・・?」

 

 浜辺に千歌さんが立っていた。物憂げな表情で海を眺めている。

 

 スルーするのもアレなので、声をかけようとした瞬間・・・千歌さんが勢いよく海へと入っていった。

 

 「えぇっ!?」

 

 ビックリしてしまう俺。

 

 慌てて浜辺へと走るが、着いた時には千歌さんは完全に海に潜ってしまっていた。

 

 「っ・・・まさかあの人・・・!」

 

 嫌な予感がして、急いで俺も海に飛び込んだ瞬間・・・

 

 「ぷはぁっ!」

 

 千歌さんが海から出てくる。服はずぶ濡れ、腰から下は未だに海に浸かったままだ。

 

 「あー、気持ち良い!」

 

 「紛らわしいわっ!」

 

 「ごふっ!?」

 

 海水を手で掬い、千歌さんの顔面に叩きつける。マジで焦った・・・

 

 「げほっ・・・ごほっ・・・そ、天くん!?いきなり何するの!?」

 

 「カッとなってやりました。反省はしていません」

 

 「ふてぶてしいっ!?」

 

 ツッコミを入れつつ、手で海水を拭う千歌さん。

 

 「っていうか、何で天くんがここにいるの?」

 

 「ランニングしてたら、どっかのアホみかんが入水自殺を図ろうとしてたんで止めにきました」

 

 「コラッ!みかんをアホ呼ばわりしないのっ!」

 

 「そこにツッコミ入れます?俺がアホ呼ばわりしたのは千歌さんなんで大丈夫です」

 

 「そっかぁ、それなら大丈夫・・・じゃないよ!?何度も言うけど私先輩だよねぇ!?女の子だよねぇ!?」

 

 「当たり前じゃないですか。アホ過ぎて自分のことも分からなくなったんですか?」

 

 「辛辣過ぎィ!」

 

 千歌さんはツッコミを入れると、深く溜め息をついた。

 

 「そんなことするわけないじゃん。ちょっと海に潜りたくなっただけだよ」

 

 「服のまま潜るのは止めて下さい。もっと気をつけないと」

 

 「天くん・・・私のことを心配して・・・」

 

 「ただの水ならともかく海水なんですから、服がダメになっちゃうじゃないですか」

 

 「そっちの心配!?私のことは!?」

 

 「どうでもいいです」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。まぁ、冗談はさておき・・・

 

 「千歌さん、とりあえず隠した方が良いですよ」

 

 「え?何を?」

 

 「身体です。思いっきり透けてますけど」

 

 「透け・・・あぁっ!?」

 

 千歌さんは今、白いシャツを着ている。それが海水によって濡れ、肌にピッチリ張り付いた結果・・・下着がくっきりと浮き出てしまっていたのだ。

 

 しかも小柄な割りに大きい胸も、シャツが張り付いたことで強調されてしまっており・・・とてもエロい状態になっていた。

 

 慌てて両腕で隠す千歌さん。

 

 「ちょ、そういうことは早く言ってよ!?」

 

 「いや、あえて見せつけてるのかなって。痴女なのかなって」

 

 「誰が痴女!?私にそんな趣味はないから!」

 

 「派手なオレンジ色のブラを着けてるのに?」

 

 「色を言わないで!?それとオレンジ色じゃなくてみかん色だから!」

 

 「相変わらずそこにこだわりますね・・・」

 

 俺は呆れつつ、ランニングウェアの上着を脱いで千歌さんに着せた。

 

 「少し汗臭いかもですけど、我慢して下さいね」

 

 「あ、ありがと・・・でも、濡れちゃうよ?」

 

 「今さらでしょう。俺も海に浸かってますし」

 

 そう答えながらジッパーを上げる。これで良し・・・

 

 「それで?何で海に潜ったりしたんですか?」

 

 「いやぁ・・・何か見えないかなぁって」

 

 苦笑する千歌さん。

 

 「前に海の音を聴く為に、海に潜ったことがあったでしょ?だから今回も、何か見えないかなぁと思って」

 

 「・・・何か見えました?」

 

 「・・・何も見えなかった」

 

 千歌さんは首を横に振ると、広がっている曇天の空を見上げた。

 

 「でも・・・だからこそ、スクールアイドルを続けなきゃって思った。先にあるものが何なのか・・・このまま続けても0なのか、それとも1になるのか10になるのか・・・ここでやめたら、全部分からないままになっちゃうから」

 

 「千歌さん・・・」

 

 「だから私は、これからもスクールアイドルを続けるよ!」

 

 笑顔で宣言する千歌さん。

 

 「だってまだ0だもん。あれだけ皆で練習して、皆で歌も衣装もPVも作って。頑張って頑張って、皆に良い歌を聴いてほしいって・・・スクールアイドルとして輝きたいって・・・!」

 

 千歌さんの表情がどんどん歪んでいく。

 

 目には涙が浮かび、歯を食い縛り・・・ついには自らの拳で、自分の頭を叩き始めた。

 

 「なのに0だったんだよッ!?悔しいじゃんッ!周りのレベルが高いとかッ!そんなの関係ないんだよッ!」

 

 俯く千歌さん。涙がとめどなく流れている。

 

 「やっぱり私・・・悔しいんだよ・・・!」

 

 「・・・ホント、不器用な人ですね」

 

 千歌さんをそっと抱き締める。

 

 千歌さんが一番悔しがってることなんて、一目見てすぐに分かった。雰囲気を暗くしないよう無理に笑顔を作っていたことも、悔しさを押し殺して皆を励まそうとしていたことも。

 

 多分、その理由は・・・

 

 「『スクールアイドルをやろう』って皆を誘った自分が、悔しいからって皆の前で泣くわけにはいかない・・・そう思ったんですか?」

 

 「だって・・・だって・・・!」

 

 泣きじゃくる千歌さん。俺は千歌さんの頭を撫でた。

 

 「全く・・・美渡さんの言葉を借りるなら、本当にバカ千歌ですね」

 

 千歌さんを抱き締める腕に、ギュっと力を込める。

 

 「悔しかったら『悔しい』って言えば良いんです。泣きたかったら泣けば良いんです。仲間の前で強がってどうするんですか」

 

 「だって・・・!」

 

 「もっと仲間を頼って下さい。一人で抱え込んで、感情を押し殺して・・・それじゃただの独りよがりですよ」

 

 あやすように、千歌さんの背中を優しく叩く。

 

 「曜さんも、梨子さんも、花丸も、ルビィも、善子も・・・千歌さんの大切な仲間でしょう?千歌さんが皆を大切に想っているように、皆も千歌さんを大切に想ってるんですよ」

 

 そう、だからこそ・・・皆この場にやってきたのだ。

 

 「千歌ちゃーんっ!天くーんっ!」

 

 「っ!?」

 

 驚いている千歌さん。

 

 浜辺には、Aqoursのメンバーが全員集合していた。躊躇することなく海に入り、俺達のところへやってくる。

 

 「み、皆!?どうしてここに!?」

 

 「やっぱり千歌ちゃんと、ちゃんと話をするべきだと思って。朝早かったんだけど、皆に連絡したらすぐに来てくれたの」

 

 笑っている梨子さん。だがすぐにジト目になり、俺の方を睨んでくる。

 

 「ただし天くんは、連絡したのに返信してくれなかったけど」

 

 「あっ・・・そういえば、スマホ見てませんでしたね・・・」

 

 ま、まぁ結果オーライってことで・・・

 

 「しかも海で千歌ちゃんと抱き合ってるし・・・ホント手が早いんだから」

 

 「その言い方やめてくれません?まるで俺が女ったらしみたいじゃないですか」

 

 「合ってるじゃない」

 

 「合ってるじゃん」

 

 「合ってるずら」

 

 「合ってるよね」

 

 「合ってるわね」

 

 「よし、今日の練習メニューは淡島神社の階段ダッシュを五往復で」

 

 「「「「「すいませんでしたっ!」」」」」

 

 揃って頭を下げる五人。分かればよろしい。

 

 「・・・フフッ」

 

 小さく笑う千歌さん。少しは元気が出たらしい。

 

 「・・・やっと心から笑えましたね」

 

 千歌さんの目元の涙を、指でそっと拭う。

 

 「泣きたい時は泣いたら良いですけど・・・やっぱり千歌さんには、笑顔がよく似合いますよ」

 

 「っ・・・!」

 

 恥ずかしそうに俯く千歌さん。顔が赤くなっている。

 

 「そ、そういうことを真顔で言わないでよぉ・・・!」

 

 「千歌ちゃん、いい加減慣れた方が良いわよ。これが天くんなんだから」

 

 「そういう梨子ちゃんも、未だに慣れてないけどね」

 

 「ちょ、曜ちゃん!?」

 

 「やれやれ、これだから女ったらしは・・・」

 

 「善子のパンツの色はーっ!堕天使を意識した黒ーっ!」

 

 「うにゃああああああああああっ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

 

 「アハハ・・・流石の善子ちゃんも、天くんには敵わないんだね」

 

 「何だかんだ言いつつ、善子ちゃんは天くん大好きっ子ずら」

 

 「ヨハネよっ!あとずら丸は変なこと言わないっ!」

 

 ギャーギャー騒ぐ皆。俺は思わず笑ってしまった。

 

 「・・・やっぱり、似てるな」

 

 「天くん・・・?」

 

 首を傾げる千歌さん。俺は皆の顔を見回して、笑みを浮かべた。

 

 「確かに今は0かもしれません。それをいきなり100にすることは出来ないでしょう。だから・・・まずは1にするところから始めてみませんか?」

 

 「0から、1に・・・?」

 

 「えぇ。そもそもスクールアイドル部だって、最初は0からのスタートだったじゃないですか。部を立ち上げて、仲間が増えて・・・そして、東京のイベントに出ることが出来たんです」

 

 初めて千歌さんと出会った時には、そんな日が来るなんて想像もしていなかった・・・

 

 「だから、またここから始めるんです。新たなスタートを・・・もう一度、0からのスタートを切るんです」

 

 「0からのスタート・・・」

 

 やる気に満ち溢れた表情の皆。どうやら、覚悟は決まったようだ。

 

 「お遊びでやっているわけじゃないし、ラブライブを諦める必要も無い・・・Aqoursは本気なんだっていうところを、見せつけてやりましょう」

 

 「天くん・・・うんっ!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「やりましょう!」

 

 「ずらっ!」

 

 「頑張ルビィ!」

 

 「ギランッ!」

 

 笑みを浮かべる皆。その瞬間・・・曇天だった空に光が差した。

 

 「「「「「「わぁ・・・!」」」」」」

 

 嬉しそうに空を見上げる皆。

 

 そういや、五年前も似たようなことがあったっけ・・・

 

 「・・・懐かしいなぁ」

 

 眩しさに目を細めつつ、皆と一緒に空を見上げる俺なのだった。




どうも〜、ムッティです。

これにて、アニメ一期第八話までの内容が終了しました。

次からはいよいよ第九話の内容へと入っていきます。

色々と構想を練っていますので、お楽しみに(・∀・)ノ

さて、ここで日頃の感謝をお伝えしたいと思うのですが・・・

☆評価を見てみたら、何と40人もの方が付けて下さっていました!

あ、ありがたや・・・!

お気に入りの件数も500を超え、嬉しいかぎりです。

感想を書いて下さる方も多く、本当に励みになっております。

☆評価を付けて下さった方々・・・

お気に入りに登録して下さった方々・・・

いつも感想を書いて下さる方々・・・

そして、この作品を読んで下さっている方々・・・

本当にありがとうございます。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心からの懇願は相手の心を揺さぶる。

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ・・・

昨日俺は☆評価を付けてくれた人の数が40人だと思っていたが、今日見たらいつの間にか50人になっていた・・・

何を言っているのか分からないと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった・・・

嬉しすぎて頭がどうにかなりそうだった・・・

半分の人が☆10の最高評価だとか、9割以上の人が☆8以上の高評価だとか、本来俺が受け取っていい評価じゃ断じてない・・・

身に余る光栄を味わったぜ・・・



皆様、本当にありがとうございます。


 『えぇっ!?じゃあことりさんと真姫さん、にこさんとも会ってたの!?』

 

 「まぁね」

 

 『ずるいずるいずるいっ!私だって天と会いたかったのにぃっ!』

 

 電話越しに、悔しがっている女性の声が聞こえる。苦笑する俺。

 

 「仕方ないでしょ。亜里姉は東京にいなかったんだから」

 

 『うぅ、やっぱり旅行はキャンセルすればよかった・・・』

 

 「でも楽しかったんでしょ?」

 

 『楽しかった!』

 

 俺の問いに声を弾ませる女性・・・絢瀬亜里沙。俺のもう一人の姉であり、キャンパスライフを絶賛満喫中の大学二年生だ。

 

 俺が先週東京に行った時は、旅行に行っていた為に会うことが出来なかった。その旅行先でのお土産を送ってくれた為、近況報告も兼ねて俺の方から電話したのだ。

 

 「それなら良かった。雪穂ちゃんは元気?」

 

 『元気だけど、相変わらず真面目だよ。熱心に勉強するのもいいけど、もっとキャンパスライフを満喫すべきだと思うんだよね』

 

 「姉がちゃんらんぽらんだと、妹はしっかり者になるんだよ」

 

 『今サラッと穂乃果さんをディスらなかった!?』

 

 「同じようなちゃらんぽらんの姉がいる身として、雪穂ちゃんの気持ちはよく分かるわ」

 

 『私までディスられた!?』

 

 「まぁお土産を送ってくれたから、『ちゃらんぽらん』から『頭のネジが外れた子』に格上げしてあげるね」

 

 『それ格上げなの!?むしろ下がってない!?』

 

 亜里姉のツッコミ。

 

 雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹で、亜里姉にとって一番の親友だ。亜里姉と雪穂ちゃんは同じ大学に通っており、今回の旅行も二人で行ってきたらしい。

 

 「雪穂ちゃんにも連絡しないとね。雪穂ちゃんからもお土産送ってもらっちゃったし」

 

 『そうしてあげて。雪穂、天のこと凄く心配してたから』

 

 俺も雪穂ちゃんとは仲良くさせてもらっており、何かとお世話にもなっていた。

 

 内浦へ行くことが決まった時には、『母親かっ!』とツッコミを入れたくなるほど心配されたものである。

 

 「了解。後で連絡しとくよ」

 

 『よろしくね。それから・・・お姉ちゃんのことなんだけど』

 

 少し言い辛そうな亜里姉。

 

 俺に気を遣うくらいなら、絵里姉の話題なんて出さなきゃいいのに・・・

 

 「・・・元気にやってるの?」

 

 『・・・何だか最近、無理してるような気がして』

 

 亜里姉の声が暗くなる。

 

 『いつも通りに振舞ってはいるんだけど、少し元気が無いっていうか・・・疲れてるんじゃないかなって思うんだよね』

 

 「仕事が大変なんじゃないかな。社会人一年目で、慣れないことも多いだろうし」

 

 『・・・それだけじゃないって、天も分かるでしょ?』

 

 溜め息をつく亜里姉。

 

 『天がいなくなってから、お姉ちゃんはあまり笑わなくなっちゃってさ・・・雰囲気も少し暗くなったし、自分から話をすることも減っちゃって・・・その分、凄く仕事に打ち込んでるみたいだけど』

 

 絵里姉は大学を卒業後、公務員として区役所で勤務している。

 

 実に堅実で絵里姉らしいが、今の亜里姉の話だとまるで・・・

 

 『・・・μ'sに入る前のお姉ちゃんみたい、でしょ?』

 

 「っ・・・」

 

 読まれていたらしい。

 

 周りに心を開くことが出来ず、信頼出来る友達が希ちゃんしかいなかった頃・・・音ノ木坂が統廃合の危機に陥り、生徒会長としての責任感だけで行動していた頃・・・

 

 話を聞くかぎり、今の絵里姉はあの頃の絵里姉と似ているかもしれない。

 

 『・・・ねぇ、天』

 

 いつになく真面目で、それでいて切実な声で俺の名前を呼ぶ亜里姉。

 

 『天がどんな思いでテスト生の話を受けたのか、私には分からないけど・・・私は天に帰ってきてほしい。いつまでも三人で暮らすことは出来ないかもしれないけど、今はまだ三人で暮らしていたい。お姉ちゃんだってそれを望んだから、テスト生の話を受けることに反対したんだよ?』

 

 「・・・分かってるよ」

 

 呟く俺。

 

 「それでも、俺は・・・」

 

 『お願い、天・・・』

 

 涙声になる亜里姉。

 

 『天がいない生活は、私も寂しいんだよ・・・帰ってきてよ、天・・・』

 

 「・・・ゴメン、亜里姉」

 

 いたたまれなくなり、電話を切る俺。亜里姉の涙声が、耳から離れない。

 

 「天ー?」

 

 ちょうどその時、お風呂から上がった海未ちゃんがリビングに入ってきた。

 

 「先にお風呂をいただき・・・どうしたんですか?」

 

 暗い表情を浮かべる俺に気付き、心配そうに声をかけてくれる海未ちゃん。俺は海未ちゃんに視線を向けた。

 

 「・・・ねぇ、海未ちゃん。最後に絵里姉と会った時、どんな様子だった?」

 

 「どんな様子、とは?」

 

 「いつもより元気が無かったとか、疲れた様子だったとか・・・」

 

 「・・・亜里沙から聞いたんですね」

 

 溜め息をつく海未ちゃん。

 

 「天がいなくなってから、絵里が心配で何度か家にお邪魔しましたが・・・元気は無かったですね。いつも通りに振舞ってはいましたが、少し無理をしているという印象を受けました。特に最後に会った時は、疲労の色が見えたように思います」

 

 「・・・そっか」

 

 「・・・黙っていてすみませんでした」

 

 「海未ちゃんが謝る必要なんて無いよ。俺の方こそ、気を遣わせちゃってゴメンね」

 

 海未ちゃんに謝る俺。俺がこのことを知れば、『俺のせいでそうなった』と罪悪感を感じてしまうと思ったんだろう。

 

 絵里姉も知られたくないから隠そうとしたんだろうし、そんな絵里姉の気持ちも汲んでくれたんだと思う。

 

 「・・・亜里沙は、何と?」

 

 「・・・帰ってきてほしいって」

 

 「・・・どうするんですか?」

 

 「・・・どうしようかね」

 

 力なく椅子に体重を預ける俺。

 

 「Aqoursのことが心配ですか?」

 

 「それもある。俺がマネージャーを辞めたら、小原理事長が何をするか分からないし」

 

 「・・・あの女ですか」

 

 忌々しそうな表情の海未ちゃん。

 

 俺が言えることでもないけど、海未ちゃんってホント小原理事長が嫌いだよね・・・

 

 「まぁ、それを差し置いても・・・やらなきゃいけないことがあるから」

 

 「マネージャーとしての、最低限の責務というやつですね」

 

 「・・・それだけじゃないけどね」

 

 「え・・・?」

 

 首を傾げる海未ちゃん。まぁ、今はそれも置いといて・・・

 

 「絵里姉と喧嘩して、亜里姉を悲しませて・・・我ながら最低の弟だね、俺は」

 

 「天・・・」

 

 「あぁ、ゴメン・・・お風呂入ってくるね」

 

 これ以上海未ちゃんを暗い気持ちにさせないよう、椅子から立ち上がりリビングを出ようとすると・・・

 

 後ろから海未ちゃんに抱き締められた。

 

 「海未ちゃん・・・?」

 

 「・・・私は天に戻ってきてほしくて、浦の星に教育実習生としてやってきました。その気持ちは今も変わりません」

 

 俺を抱き締める腕に、ギュっと力を込める海未ちゃん。

 

 「ですが・・・後悔はしてほしくありません。内浦にやって来たことも、浦の星に入学したことも・・・Aqoursの皆と楽しそうに過ごす天を見て、私はそう思いました」

 

 「海未ちゃん・・・」

 

 「天が自分自身で選んだ道じゃないですか。だったら何があっても、前を向いて歩かないとダメでしょう。後ろばかり見て歩いているようでは、それこそ絵里や亜里沙に怒られてしまいますよ」

 

 「・・・そうだよね」

 

 海未ちゃんの言う通りだ。

 

 これは俺自身が選んだ道・・・絵里姉や亜里姉に反対されても、俺はこの道を選んだのだ。

 

 だったら、後ろを向いてちゃいけないよな・・・

 

 「・・・ありがとね、海未ちゃん」

 

 身体に回されている海未ちゃんの腕に、そっと手を置く俺なのだった。




どうも〜、ムッティです。

さて、前書きでは長々とポルナレフさんのセリフをパクっておりますが(笑)

改めて皆様、本当にありがとうございます。

身に余る光栄で大変恐縮ではありますが、本当に嬉しく思います。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。



さて、今回からアニメ一期第九話の内容へと入っていきます。

まぁ今回は、天と亜里沙の会話で終わってしまっているのですが・・・

亜里沙から『帰ってきてほしい』と懇願された天・・・

姉の願いに、天はどのような決断を下すのか・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チャンスは全力で掴みにいくべきである。

『ソードアート・オンライン』が観たい・・・

10月からまた放送が始まるし、前回までの話を見返したい・・・


 「花火大会ですか?」

 

 「うん。私達に出てほしいんだって」

 

 翌日・・・『十千万』のロビーにて、俺に説明してくれる曜さん。

 

 近々沼津で花火大会が開かれるそうなのだが、運営側から『参加してくれないか』という打診があったらしい。花火大会のステージで、パフォーマンスを披露してほしいのだそうだ。

 

 「沼津の花火大会っていったら、ここら辺じゃ一番のイベントなんだよ。そこからオファーが来たっていうのは、私達にとってはチャンスだと思う」

 

 「ふぁふふぁふぉふぃっふぇふぉふぁうふぃふぁふぃふぃふぁんふふぁふぇ」

 

 「花丸、のっぽパン食べながら話すの止めて。何かの呪文みたいになってるから」

 

 「ゴックン・・・Aqoursを知ってもらうには一番ずらね」

 

 「それが言いたかったのね・・・」

 

 呆れる俺。っていうか、相変わらずよく食べるな・・・

 

 「でも、今からじゃあんまり練習時間無いよね」

 

 ルビィがそんなことを言う。

 

 花火大会の開催日は、およそ二週間後らしい。今から曲や衣装を作って、振り付けも考えると・・・

 

 かなりタイトなスケジュールになるだろうな。

 

 「私は、今は練習を優先した方が良いと思うけど・・・」

 

 遠慮がちに意見を出す梨子さん。

 

 梨子さんとしても出たいのは山々だろうけど、無理をしてまで出るべきではないという考えなんだろう。

 

 「天くんはどう思う?」

 

 「個人的な意見を言わせてもらうなら、出るべきだと思いますよ」

 

 素直な意見を述べる俺。

 

 「曜さんの言う通り、今回のオファーはAqoursにとってチャンスだと思います。タイトなスケジュールになることは間違いないですけど、不可能ではないですから。やらずに後悔するくらいならばやって後悔したい生涯。蛹はいつか希望を胸にso fly」

 

 「途中から『sa●agi』の歌詞よねぇ!?『銀●』のエンディングテーマよねぇ!?」

 

 「梨子さん、よく知ってましたね・・・」

 

 俺が不覚にも感動を覚えていると、曜さんが千歌さんに視線を向けた。

 

 「千歌ちゃんはどう思う?」

 

 「私は出たいかな!」

 

 屈託の無い笑みを浮かべる千歌さん。

 

 「今の私達の全力を見てもらって、それでダメだったらまた頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな」

 

 「千歌さん・・・」

 

 どうやら東京のイベントをキッカケに、千歌さんは一皮剥けたようだ。迷いが無くなったし、良い意味で吹っ切れている。

 

 「ヨーソロー!賛成であります!」

 

 「ギランッ!」

 

 「あ、善子いたの?」

 

 「最初からいたわよ!」

 

 善子のツッコミ。どうやらずっと長椅子に寝そべっていたらしい。

 

 「ふぉふぃふぉふぁん、ふぁふぇふふふふぃふふぁ」

 

 「花丸、ボッシュート」

 

 「ずらぁっ!?マルののっぽパンがぁっ!?」

 

 「ちょっとずら丸!『善子ちゃん、影薄過ぎずら』なんて酷いじゃない!」

 

 「何で善子は普通に理解出来てんの・・・はむっ」

 

 「ずらあああああっ!?」

 

 花丸からボッシュートしたのっぽパンをかじる。何これ美味くね?

 

 「天くん!?何で食べちゃうずら!?」

 

 「そこにのっぽパンがあるから」

 

 「某登山家の名言をパクるのは止めるずら!」

 

 「っていうか、普通に間接キスなんじゃ・・・」

 

 ルビィがちょっと恥ずかしそうに何かを言っているが、花丸がギャーギャーうるさいのでよく聞こえなかった。

 

 全く、花丸のヤツめ・・・

 

 「マルののっぽパンを返すずら!」

 

 「それよりずら丸!ちょっと表出なさい!ヨハネの堕天使奥義で・・・」

 

 「えいっ」

 

 「むぐぅっ!?」

 

 「ずらああああああああああっ!?」

 

 善子の口にのっぽパンを突っ込む俺。

 

 悲鳴を上げる花丸なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 翌朝・・・

 

 「ここの階段はしんどいなぁ・・・」

 

 日課のランニングコースに含まれている、淡島神社の階段を上る俺。

 

 神田明神の比ではない長さの階段を、何とか上り終えようとした時・・・

 

 「復学届、提出したのね」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、思わず足を止める。今の声って・・・

 

 「まぁね」

 

 またしても聞き覚えのある声だ。

 

 側にあった木の陰に隠れ、恐る恐る様子を窺ってみると・・・神社の前で、小原理事長と果南さんが会話しているところだった。

 

 「やっと逃げるのを諦めた?」

 

 「勘違いしないで。学校を休んでいたのは、怪我をしたお父さんの代わりに店を手伝う為・・・スクールアイドルは関係無い」

 

 小原理事長の問いに、冷たく返す果南さん。

 

 そういや、そろそろ果南さんのお父さんが復帰出来そうなんだっけ・・・近々復学出来そうだって、アルバイトの時に果南さんが言ってたよな・・・

 

 「それに復学しても、スクールアイドルはやらないから」

 

 「私の知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走り出していた。成功するまで諦めなかった」

 

 果南さんに語りかける小原理事長。

 

 もしかしなくても、二年前の東京のイベントで果南さんが歌えなかったことを言ってるんだろう。

 

 「だからもう一度スクールアイドルをやれって?高校卒業まで一年も無いのに?」

 

 「それだけあれば十分じゃない。それに、今は後輩だっているんだから」

 

 「止めて」

 

 小原理事長を睨みつける果南さん。

 

 「千歌達は必死で頑張ってるの。利用するような真似は許さない」

 

 「果南・・・」

 

 「・・・もう止めて。どうして留学から戻ってきたの?」

 

 悲しそうな表情を浮かべる果南さん。

 

 「私は・・・戻ってきてほしくなかった」

 

 「っ・・・ホント、相変わらず果南は頑固ね・・・」

 

 笑みを浮かべる小原理事長だったが、強がっていることは明白だった。

 

 そしてそんな小原理事長の様子に、果南さんが気付かないはずもなく・・・

 

 「もう・・・貴女の顔、見たくないの」

 

 トドメの一言を放つ。絶句して何も言えない小原理事長に背を向け、階段を下りていく果南さん。

 

 今のはキツい一言だったな・・・

 

 「・・・もう隠れる必要は無いわよ」

 

 沈