絢瀬天と九人の物語 (ムッティ)
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女子校に入学してみた。

明けましておめでとうございます、ムッティです。

『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマったので、ノリと勢いで小説を書いてしまいました。

相も変わらず文才は無いですが、温かい目で読んでいただけると幸いです。


 「ここが浦の星かぁ・・・」

 

 正門の前に立ち、校舎を見上げる俺。

 

 静岡県沼津市の内浦湾の西に張り出した岬に所在する、全校生徒が百人にも満たない小さな私立高校・・・それがここ、浦の星である。

 

 俺は今日から、この高校の生徒になるのだ。さて・・・

 

 「とりあえず到着したけど・・・生徒会長さんはどこだろう?」

 

 キョロキョロと辺りを見回す。

 

 学校側からの連絡によると、正門の前で生徒会長さんが待ってくれているとのことだったが・・・それらしき姿は見当たらない。

 

 「・・・まぁ良いや。少し待ってみよう」

 

 「何を待ってみるの?」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなり背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。

 

 いつの間にか俺の後ろには、橙色の髪の女の子が立っていた。浦の星の制服を着ているので、ここの生徒だろう。

 

 「男の子がこんな所で何してるの?ここは女子校だよ?」

 

 首を傾げている女の子。

 

 浦の星の正式名称は、浦の星女学院高等学校・・・名前の通り、ここは女子校なのである。

 

 「いえ、それは重々承知していますが・・・実は俺、今日からこの高校の生徒になる身でして・・・」

 

 「・・・通報して良い?」

 

 「止めて!?」

 

 思わず叫んでしまう。いや、確かに『何言ってんだコイツ』ってなるだろうけども。

 

 男である俺が女子校の生徒になるのには、れっきとした理由があるのだ。

 

 「千歌ちゃん?どうしたの?」

 

 明らかに俺を警戒し始めた女の子の後ろから、別の女の子がひょっこり顔を覗かせる。

 

 グレーのボブカットの髪にウェーブの入った、活発そうな女の子だ。

 

 「あ、曜ちゃん!ここに怪しい男の子がいるの!」

 

 「えぇっ、不審者!?」

 

 橙色の髪の女の子の言葉を聞き、グレーの髪の女の子が俺を見て警戒する。

 

 あぁ、誤解が広がっていく・・・

 

 「違いますって!れっきとしたこの学校の生徒です!」

 

 「だからここは女子校だって!」

 

 「だからそれには理由があるんですって!」

 

 言い合う俺と橙色の髪の女の子。

 

 するとグレーの髪の女の子が、何かに気付いたような表情で俺を見た。

 

 「あれ?その制服・・・浦の星の制服に似てない?」

 

 「いや、似てるも何も浦の星の制服ですよ。男子用の制服だそうです」

 

 着ている制服を指差す俺。俺が入学するにあたって、学校側が急遽男子用の制服を用意してくれたらしい。

 

 その説明をしたところで、グレーの髪の女の子がハッとした表情を浮かべる。

 

 「あぁっ!?ひょっとして、君が例のテスト生!?」

 

 「あぁ、やっと分かってくれた・・・」

 

 ようやく事情を理解してくれたらしい。一方、橙色の髪の女の子は未だ首を傾げていた。

 

 「テスト生?」

 

 「ほら、浦の星は共学化を目指してるって説明があったじゃん!とりあえずテスト生として、四月から男子生徒が一人入学するって!」

 

 「あぁっ!?」

 

 どうやら思い出してくれたようだ。恐る恐るこっちを振り向く橙色の髪の女の子。

 

 「と、いうことは・・・本当に浦の星の生徒?」

 

 俺はその問いかけにニッコリ笑みを浮かべると、二人に背中を向けて歩き出した。

 

 「そのつもりでしたが、どうやら受け入れてはいただけないようですね。学校側に今起こったことを全てありのままに伝えて、テスト生の辞退を申し入れた上で海に身を投げようと思います。それではさようなら、来世でお会い出来ると良いですね」

 

 「「ちょっと待ってええええええええええっ!?」」

 

 必死に俺にしがみついてくる二人。

 

 「離せえええええっ!海が俺を待ってるんだあああああっ!」

 

 「ゴメンなさいいいいいっ!私の早とちりでしたあああああっ!お願いだから思い留まってえええええっ!」

 

 「私からもお願いいいいいっ!早まらないでえええええっ!」

 

 「止めるんじゃねえええええっ!」

 

 この後、周りから不審な目で見られたことは言うまでもないのであった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「すみませんでした!」

 

 「ごめんなさい!」

 

 「いえ、俺の方こそ申し訳ありませんでした・・・」

 

 何とか落ち着いた俺達は、お互いに深々と頭を下げていた。

 

 いやホント、入学初日から何やってんだ俺・・・

 

 「あ、自己紹介が遅れました・・・今日から浦の星でお世話になります、絢瀬天といいます。よろしくお願いします」

 

 「これはこれはご丁寧に・・・二年の高海千歌です」

 

 「同じく二年の渡辺曜です」

 

 自己紹介し合う俺達。やっぱり二人とも先輩だったか・・・

 

 「ところで高海先輩・・・その鉢巻き何ですか?」

 

 「あ、これ?」

 

 頭に巻いてある鉢巻きに触れる高海先輩。

 

 『スクールアイドル愛』と書かれた鉢巻きを付けて、この人は一体何をしているのだろうか・・・

 

 「実は私、新しく部活を立ち上げることにしたの」

 

 「スクールアイドル部ですか?」

 

 「そう、スクールアイドル部・・・って何で分かったの!?」

 

 「今の流れで分からない方がおかしいでしょ」

 

 「アハハ・・・はい、これがチラシだよ」

 

 そう言って紙を一枚渡してくれる渡辺先輩。スクールアイドル部かぁ・・・

 

 「部員って、高海先輩と渡辺先輩以外にいるんですか?」

 

 「あ、私は部員じゃないよ」

 

 首を横に振る渡辺先輩。

 

 「私は水泳部に入ってるから、スクールアイドル部には入ってないんだよね」

 

 「え、じゃあ部員って・・・」

 

 「私だけだよ」

 

 何故か胸を張る高海先輩。

 

 意外と大きいな・・・じゃなくて。

 

 「・・・生徒会の承認って貰ってます?」

 

 「貰ってないよ?」

 

 「・・・部活、立ち上げられてないじゃないですか」

 

 「最低でも五人必要だっていうから、五人集まってから申請しようかなって」

 

 「・・・申請もしてないのに、勧誘活動してるんですか?」

 

 「嫌だなぁ、申請する為に勧誘活動してるんだよ♪」

 

 能天気に笑っている高海先輩。これは生徒会にバレたらマズい案件なのでは・・・

 

 「あっ!あんなところに美少女がっ!スクールアイドルやりませんかっ!?」

 

 一方の高海先輩は、そんなことお構い無しに勧誘活動を続けていた。おいおい・・・

 

 「・・・渡辺先輩、止めなくて良いんですか?」

 

 「いやぁ・・・千歌ちゃん凄くやる気になってるし、良いかなぁって」

 

 「言っときますけど、多分もうすぐ生徒会長さんが来ますよ」

 

 「今すぐ止めなきゃ!?」

 

 慌てて走っていく渡辺先輩。

 

 仕方なくその後を追うと、高海先輩が二人組の女子を勧誘しているところだった。

 

 「大丈夫!悪いようにはしないから!」

 

 「いや、マルは・・・」

 

 茶髪のふわっとしたロングヘアの女の子が、困った様子で対応していた。

 

 その子の後ろには、赤髪の短いツーサイドアップの女の子が怯えたように隠れている。

 

 「千歌ちゃん、その辺にしとかないとマズいって!」

 

 「曜ちゃん、この子達凄く可愛いよ!絶対人気出るよ!」

 

 焦っている渡辺先輩とは対照的に、高海先輩は興奮状態だった。

 

 あれは人の話なんて聞いちゃいないな・・・

 

 「すみません、先輩がご迷惑をおかけしました」

 

 「マ、マルは大丈夫ずら・・・」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?だ、大丈夫です!」

 

 慌てて言い直す茶髪の女の子。何だったんだろう?

 

 「ひょっとして、新入生?」

 

 「あ、はい。そうです」

 

 「じゃあ一緒だね。俺も新入生なんだ」

 

 「ずらっ!?」

 

 「ずら?」

 

 「ハッ!?」

 

 慌てて口を押さえる茶髪の女の子。どうやら『ずら』が口癖らしい。

 

 「ど、どうして男の子が・・・?」

 

 「ひょっとして、テスト生の人・・・?」

 

 赤髪の女の子が、茶髪の女の子の後ろから恐る恐る顔を出していた。

 

 「うん、そうだよ。よろしくね」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 慌てて隠れてしまう赤髪の女の子。えっ・・・

 

 「あ、ゴメンね!ルビィちゃん、人見知りな上に男性恐怖症だから!」

 

 茶髪の女の子が慌てて説明してくれる。なるほど、つまり俺が消えるべきなのか・・・

 

 「ゴメンね、ルビィちゃんとやら・・・俺は今から屋上に行ってくるよ」

 

 「ちょっと待つずらあああああっ!?」

 

 茶髪の女の子が必死に止めてくる。最早『ずら』を隠す気も無いらしい。

 

 「屋上に行って何するつもりずら!?」

 

 「アイキャンフライ」

 

 「人は空を飛べないずら!」

 

 「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてるから、きっと今は自由に空も飛べるはずだよ」

 

 「それはスピ●ツの曲ずらあああああっ!」

 

 「ねぇ二人とも、スクールアイドルやろうよ!」

 

 空気を読まない高海先輩が、俺達のやり取りを見てあたふたしていたルビィちゃんとやらの手を握った。

 

 その瞬間、ルビィちゃんとやらの顔が青くなる。

 

 「っ!?マズいずら!」

 

 「うおっ!?」

 

 茶髪の女の子が俺の頭を掴んで自分の胸に押し付け、両腕で俺の頭を抱いた。俺の顔が、大きくて柔らかいものに埋まっている。

 

 あぁ、幸せ・・・じゃなくて。

 

 「ちょ、いきなり何を・・・」

 

 「ぴぎゃああああああああああっ!?」

 

 ルビィちゃんとやらの叫び声が響いた。茶髪の女の子の腕に耳が塞がれているから、俺にはそこまで響かない・・・

 

 ってまさか!?

 

 「俺を庇って・・・!?」

 

 「ずらぁ・・・」

 

 ルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』を食らった茶髪の女の子は、一撃で瀕死状態になってしまったようだ。

 

 倒れそうになる茶髪の女の子を、慌てて抱き留める。

 

 「ちょ、大丈夫!?」

 

 「オ、オラはもうダメずら・・・ガクッ」

 

 「ず、ずら丸うううううっ!?」

 

 何かよく分かんないけど、頭に浮かんだあだ名を叫ぶ俺。すると・・・

 

 「キャアアアアアアアアアアッ!?」

 

 今度は側にあった桜の木の上から、女の子が降ってきた。そのまま見事に着地するが・・・

 

 「うぅ、足が・・・ぐえっ」

 

 着地の衝撃に襲われていた。その上、頭の上に鞄が落ちてきて見事にヒットする。

 

 「えっと・・・色々大丈夫?」

 

 高海先輩が女の子を心配していた。ってかアンタ、至近距離でルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』食らってよく無事だったな・・・

 

 そんなどうでもいいことに感心していると、その女の子が急に肩を震わせて笑い始めた。

 

 「クックックッ・・・ここはもしかして地上・・・?」

 

 「高海先輩、この人大丈夫じゃないみたいです。救急車呼んで下さい」

 

 「分かった。ちょっと待っててね」

 

 「私は正常よっ!?」

 

 ダークブルーの髪を揺らしながら叫ぶ女の子。いや、正常な人はあんなセリフ吐かないからね。

 

 「コホンっ。ここが地上ということは・・・貴女達は、下劣で下等な人間共ということですか?」

 

 「えいっ」

 

 「ギャアッ!?」

 

 足に軽くチョップしてやると、女の子は足を押さえて蹲った。どうやら先程の痛みが残っていたらしい。

 

 「何すんのよ!?セクハラで訴えるわよ!?」

 

 「初対面で下劣だの下等だの言うような奴は、女子としてカウントされません。それがこの世界のルールです」

 

 「無いでしょそんなルール!?」

 

 「それで?どちら様ですか?」

 

 そう尋ねると、女の子がニヒルな笑みを浮かべる。

 

 「フッ・・・私は堕天使ヨハネ・・・」

 

 「・・・善子ちゃん?」

 

 瀕死状態だったずら丸がガバッと起き上がり、女の子の顔を覗き込む。

 

 「やっぱり善子ちゃんだ!私、花丸だよ!幼稚園以来だね!」

 

 「は・・・花丸うううううっ!?」

 

 仰け反る女の子。どうやら二人は知り合いらしい。

 

 っていうか、ずら丸の本名は花丸っていうのか・・・

 

 「久しぶりだね!善子ちゃん!」

 

 「善子言うな!私はヨハネ!ヨハネなんだからね!」

 

 そう言って逃げていく自称・堕天使ヨハネ。ずら丸がその後を追い、その後をルビィちゃんとやらが追いかけていく。

 

 「どうしたの善子ちゃあああああん!?」

 

 「花丸ちゃん待ってえええええっ!」

 

 「来るなあああああっ!」

 

 「・・・何だったんだ?」

 

 多分あの子も新入生だろう。ずいぶん濃いメンツが集まったなぁ・・・

 

 「あの子達・・・後でスカウトに行こう!」

 

 「アハハ・・・」

 

 懲りない高海先輩に、苦笑している渡辺先輩。

 

 「高海先輩、まだ諦めてないんですか?」

 

 「勿論!だってあの子達、凄く可愛かったもん!」

 

 「まぁそれは認めますけど」

 

 ずら丸もルビィちゃんとやらも自称・堕天使ヨハネも、美少女なのは間違い無い。

 

 「あの子達がスクールアイドルになったら、絶対人気出るよ!」

 

 「・・・そんな単純な話でもないと思いますけど」

 

 俺が溜め息をついていると・・・

 

 「このチラシを配っているのは、貴女方ですの?」

 

 背後で声がする。振り向くと、美しい黒髪ロングの女の子が立っていた。

 

 手にはスクールアイドル部のチラシを持っている。

 

 「いつ何時、スクールアイドル部なるものがこの浦の星女学院にできたのです?」

 

 凛とした表情でこちらを見る女の子。

 

 立ち居振る舞いがとても綺麗で、俺は思わずその女の子に見惚れてしまった。

 

 「貴女も新入生?」

 

 「ち、違うよ千歌ちゃん!?その人は三年生だよ!?」

 

 呑気にそう声をかける高海先輩に、慌てて耳打ちする渡辺先輩。

 

 「しかもその人は・・・」

 

 「・・・ひょっとして、生徒会長さんですか?」

 

 もしかしてと思い尋ねてみると、女の子が優しい笑みを浮かべる。

 

 「えぇ、生徒会長の黒澤ダイヤと申します。絢瀬天さんですわね?」

 

 「あ、はい。絢瀬天です」

 

 「遅れてしまい申し訳ありません。生徒会の仕事に少々手間取ってしまいまして・・・」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる生徒会長。

 

 「いえ、大丈夫です。そんなに待ってないですし」

 

 主に二人の先輩と、三人の同級生のおかげで。

 

 「すぐに生徒会室までご案内します。あぁ、それと・・・」

 

 先ほどの優しい笑みとは対照的に、怖い笑みを高海先輩と渡辺先輩に向ける。

 

 「貴女方も一緒に来て下さい。お話がありますので」

 

 「「は、はい・・・」」

 

 震えながら返事をする二人。恐るべし生徒会長・・・

 

 「では、参りましょうか」

 

 「はい。ほら高海先輩、渡辺先輩、行きますよ」

 

 「うぅ、曜ちゃ~ん・・・」

 

 「諦めよう、千歌ちゃん・・・」

 

 絶対に生徒会長を怒らせてはいけない・・・入学初日にして、早くも教訓を学んだ俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は『ラブライブ!サンシャイン!!』の小説を書かせていただきました。

先月アニメを観て、今月映画を観に行って・・・

完全に新規のにわかファンです。

ノリと勢いで書いてみたは良いものの、果たしてどこまで続くことやら・・・

とりあえず、ヒロイン(未定)とイチャイチャするところまで書きたい願望。

それでは次回があることを願いまして・・・

以上、ムッティでした!


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人には意外な一面があったりする。

LiSAさんが歌う『ADAMAS』のサビ部分で、『シャイニーソード マイダイヤモンド』ってあるけど…

このフレーズを聴く度に鞠莉ちゃんとダイヤさんが思い浮かんで、自分が『ラブライブ!サンシャイン!!』にハマっていることを実感します。


 「・・・つまり設立の許可どころか、申請すらしていないにも関わらず勧誘活動を行なっていたと」

 

 「いやぁ・・・皆勧誘してたんで、ついでというか焦ったというか・・・」

 

 生徒会室にて、黒澤生徒会長の説教を受けている高海先輩。

 

 ちなみに渡辺先輩は手伝っていただけということで、早々にお咎め無しが決まった。

 

 「そして部員は貴女一人だけ・・・部の申請には、最低でも五人必要ということは知っていますわよね?」

 

 「だから勧誘してたんじゃないですか~♪」

 

 高海先輩の答えにイラッとしたのか、バンッと机を叩く会長。

 

 「・・・いったぁ」

 

 と思ったら、叩いた手を痛そうに擦っていた。え、ドジっ子?

 

 「・・・ぷっ」

 

 「笑える立場ですの!?」

 

 「ひぃ!?すいません!」

 

 噴き出した高海先輩だったが、会長に怒られて慌てて謝る。

 

 「とにかく、スクールアイドル部の設立は認められませんわ」

 

 「・・・そうですか。じゃあ、五人集めてまた来ます」

 

 一礼して去ろうとする高海先輩。その背中に、会長が非情な言葉を投げかけた。

 

 「それは別に構いませんけど・・・例えそれでも承認は致しかねますがね」

 

 「なっ!?どうしてですか!?」

 

 慌てて会長に詰め寄る高海先輩。会長は冷たい目で高海先輩を見ていた。

 

 「私が生徒会長でいるかぎり・・・スクールアイドル部は認めないからです!」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 悲鳴を上げる高海先輩。

 

 「そ、そんな横暴な!?」

 

 「落ち着いて千歌ちゃん!?」

 

 尚も会長に詰め寄ろうとする高海先輩を、後ろにいた渡辺先輩が必死に止める。

 

 「とりあえず一回戻ろう!失礼しました!」

 

 「ちょ、離して曜ちゃん!?」

 

 渡辺先輩は慌てて一礼すると、暴れる高海先輩を引きずって生徒会室を後にした。

 

 「・・・入学初日から見苦しい姿をお見せして、申し訳ありません」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 苦笑しながら答える俺。

 

 「何だか少し・・・懐かしい光景でしたから」

 

 「懐かしい?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 俺は会長に向き直り、改めて一礼する。

 

 「改めまして、絢瀬天です。これからお世話になります」

 

 「いえいえ、こちらこそ」

 

 優しい笑みを浮かべる会長。

 

 「さて・・・今さら確認するまでもないことですが、絢瀬さんはこの学校で唯一の男子生徒ということになります」

 

 会長が説明を始める。

 

 「最初に念を押しておきますが、不純な行動は絶対に許しません。それを肝に銘じておくように」

 

 「分かりました」

 

 要はセクハラとかするなってことか・・・まぁするつもりも無いので問題無い。

 

 え?自称・堕天使?堕天使は人間じゃないし、セクハラにならないから。

 

 「・・・まぁ、誰かと交際するのは絢瀬さんの自由ですので。校内で破廉恥な行動をしないかぎり、私が何か言うことはありませんわ。ですが学生という立場上、節度を持った交際をしていただかないと困りますわね」

 

 どうやら会長は、結構お堅い人物のようだ。

 

 ひょっとして、名家の令嬢とかなのではないだろうか・・・

 

 「まぁそこは気を付けていただくとして・・・とりあえず絢瀬さんには、生徒会に所属していただくことになります。そこで生徒会の仕事をしてもらいつつ、学校に慣れていただきたいのです。勿論、私も全力でサポートさせていただきますので」

 

 「心強いです」

 

 これは偽らざる本音だった。男子生徒が一人しかいない環境で、生徒会長のサポートがあるのは正直嬉しい。

 

 「とまぁ、説明することと言ったらこれぐらいなのですが・・・絢瀬さんの方から何か質問等はありますか?」

 

 「そうですねぇ・・・」

 

 今のところ、これといって気になることもない。強いて言うなら・・・

 

 「質問というか・・・お願いでも良いですか?」

 

 「何でしょう?」

 

 「出来たらで良いんですけど・・・苗字じゃなくて、名前で呼んでいただきたいなと」

 

 「はい?」

 

 首を傾げる会長。そりゃそういう反応するよね・・・

 

 「いえ、大した理由は無いんです。今までずっと周りから、名前で呼ばれることが多かったので・・・これから生徒会でお世話になるわけですし、出来ればそうしていただけると嬉しいかなぁって」

 

 本当に大した理由じゃないよな、コレ。そんなことを思っていると・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 会長が急に笑い出す。あれ、何かおかしいこと言ったかな・・・

 

 「あぁ、ごめんなさい。恐る恐るといった感じでしたので、何をお願いされるのかと思ったら・・・そんなことで良いんですの?」

 

 会長はひとしきり笑うと、立ち上がって手を差し出してきた。

 

 「これからよろしくお願いしますわね・・・天さん」

 

 ニッコリと笑う会長。どうやら、思ったほどお堅い人では無かったらしい。

 

 俺は差し出された手を握った。

 

 「よろしくお願いします、会長」

 

 「ダイヤ、で結構ですわ」

 

 「え?」

 

 思わず驚いてしまう。まさか会長からそんなことを言われるとは・・・

 

 「あら、私だけ名前で呼ばせるつもりですの?」

 

 悪戯っぽく笑う会長。こんな表情もする人なんだな・・・

 

 「・・・まさか。よろしくお願いします、ダイヤさん」

 

 「よろしい」

 

 満足気な笑みを浮かべるダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・落ち着かないなぁ」

 

 自分の席に座り、溜め息をつく俺。その原因は・・・

 

 「「「「「じ~っ・・・」」」」」

 

 クラスの女子達からの視線だった。

 

 ダイヤさんとの話が終わった後、入学式に出席したのだが・・・唯一の男子生徒ということで、その時点で周りからの注目を集めていた。

 

 そして入学式終了後、教室に移動してもこうして好奇の視線に晒されている。ある程度予想はしていたが、これは想像以上に気まずい。

 

 どうしたものかと頭を悩ませていると・・・

 

 「これ、食べるずら?」

 

 「あ、どうも・・・」

 

 左の席の女の子が、美味しそうな飴を差し出してくれる。俺はお礼を言いながらそれを受け取って・・・

 

 ずら?

 

 「え、ずら丸!?いつの間に!?」

 

 「今頃気付いたずら!?」

 

 俺の左隣の席に座っていたのは、俺をルビィちゃんとやらの『ばくおんぱ』から守ってくれたずら丸だった。

 

 「同じクラスだったんだ!?」

 

 「そもそも一クラスしかないずら」

 

 「あ、そうだった・・・」

 

 この学校は生徒数が少ないから、各学年一クラスずつしかないんだっけ・・・

 

 「っていうか、マルの名前はいつから『ずら丸』になったずら?」

 

 「いや、何となく思いついたあだ名なんだけど・・・花丸っていうんだっけ?」

 

 「うん、国木田花丸ずら」

 

 「そっか、よろしくずら丸」

 

 「無視ずら!?」

 

 何だろう、何故か『ずら丸』ってしっくりくるんだよね・・・

 

 「あ、俺は絢瀬天。天でいいからね」

 

 「じゃあ『そらまる』で・・・」

 

 「うん、それはダメ」

 

 何かよく分かんないけど、それは誰かと被ってる気がするのでダメだ。

 

 「あれ、ちょっと待って・・・一クラスしかないってことは、ルビィちゃんとやらと自称・堕天使も同じクラス?」

 

 「ルビィちゃんならここにいるずら」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 後ろの席を指差すずら丸。そこには、縮こまって涙目で座っているルビィちゃんとやらの姿があった。

 

 「えーっと・・・よろしくね?」

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 震えているルビィちゃんとやら。俺、嫌われてるのかな・・・

 

 「げ、元気出すずら!そのうち慣れるずら!」

 

 落ち込む俺を見て、ずら丸が慌てて励ましてくれる。良い奴だな、ずら丸・・・

 

 「あ、ちなみに善子ちゃんならあそこずら!」

 

 ずら丸が指差した方を見ると・・・今朝の痛々しい振る舞いとは打って変わって、優雅に笑みを浮かべて席に座っている自称・堕天使がいた。

 

 「・・・誰?」

 

 「一応善子ちゃんのはず・・・ずら」

 

 なるほど、黙っていれば美少女だな・・・

 

 そんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。

 

 「は~い、席に着いて下さいね~」

 

 のんびりとした口調で呼びかける先生。

 

 「コホンッ。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。このクラスの担任を務めることになりました、赤城麻衣です。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる赤城先生。

 

 「それではまず、皆さんにも自己紹介をしてもらいたいと思います。とりあえず出席番号順で・・・絢瀬くん、お願い出来ますか?」

 

 「え、俺が出席番号一番ですか!?」

 

 何てこった・・・全然気付かなかった・・・

 

 「確かに入学式の列は先頭だったし、教室でも一番端の列の一番前の席だけど・・・まさか一番だったなんて・・・」

 

 「逆に何で気付かなかったずら!?」

 

 ずら丸のツッコミ。いやホント、何で気付かなかったんだろう・・・

 

 席を立ち上がって教壇に立つと、クラス中の視線が俺に突き刺さった。

 

 や、やり辛い・・・

 

 「・・・初めまして、絢瀬天です。この学校で唯一の男子ということで、色々とご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが・・・仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる。すると・・・

 

 「よろしくずら~!」

 

 ずら丸が笑顔で拍手してくれた。後ろにいるルビィちゃんとやらや、すまし顔をしていた自称・堕天使もおずおずと拍手してくれている。

 

 それをキッカケに、他の皆も笑みを浮かべて拍手してくれた。

 

 「よろしくね~!」

 

 「よっ、唯一の男子!」

 

 あっ、ヤバい泣きそう・・・皆が温かくて泣きそう・・・

 

 「良かったずらね、天くん」

 

 席に戻ると、ずら丸が笑顔で出迎えてくれた。天使や・・・

 

 「・・・ありがとう、ずら丸。ルビィちゃんとやらもありがとね」

 

 「・・・ぴぎっ」

 

 恐る恐る小さく頷くルビィちゃんとやら。

 

 自称・堕天使の方にも口パクで『ありがとう』と伝えると、照れたように顔をふいっと背けてしまった。素直じゃないだけで、本当は良い子なんだろうな・・・

 

 その後も自己紹介は続いていき、ずら丸やルビィちゃんとやらの自己紹介も終わった。

 

 そして・・・

 

 「フッ・・・堕天使ヨハネと契約して、貴女も私のリトルデーモンになってみない?」

 

 自称・堕天使が思いっきりやらかした。クラスの皆が唖然とする中、やらかしたと気付いた自称・堕天使の表情が強張る。

 

 「ピ・・・ピ~ンチッ!?」

 

 教室から逃走していていく自称・堕天使。

 

 「・・・リトルデーモンって何?」

 

 「・・・オラには分からないずら」

 

 「・・・ぴぎぃ」

 

 それを呆然と見送る俺、ずら丸、ルビィちゃんとやらなのだった。




どうも~、ムッティです。

ノリと勢いで書き始めたこの小説ですが、早くもお気に入りに登録してくださった方々がいらっしゃいます。

本当にありがとうございます。

執筆はある程度まで進んでいるので、今後も続けていきたいところです。

とりあえず早くヒロインを決めてイチャつかせたい。

その為に書いていると言っても過言ではないです←

皆さん、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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夢を語る人はいつだって眩しい。

sweet ARMSさんの『I swear』が頭から離れない今日この頃。

『デート・ア・ライブ』の主題歌といえば、やっぱりsweet ARMSさんですよね。


 「え、ルビィちゃんとやらはダイヤさんの妹なの!?」

 

 「う、うん・・・」

 

 小さく頷くルビイちゃんとやら。

 

 学校も終わり、俺はずら丸やルビィちゃんとやらと帰りのバスに乗っていた。

 

 「マジか・・・苗字が黒澤で名前も宝石繋がりだから、凄い偶然だなと思ったら・・・」

 

 「何で天くんはそこで気付かないずら・・・」

 

 呆れているずら丸。

 

 「黒澤家は旧網元の家系で、この辺りで一番の名家ずら」

 

 「あぁ、道理で・・・」

 

 それなら、ダイヤさんのあの立ち居振る舞いも納得だな・・・

 

 「それよりマルは、善子ちゃんが心配ずら」

 

 「あぁ、大丈夫かなあの子・・・」

 

 あの後、自称・堕天使は帰ってこなかった。恐らく戻り辛かったんだろうけど・・・

 

 唖然としていたクラスの皆も、結構心配していた。

 

 「明日あの子が来たら、ちゃんと話したいな。俺も仲良くなりたいし」

 

 「天くん・・・ありがとうずら。きっと善子ちゃんも喜ぶずら」

 

 笑みを浮かべるずら丸。

 

 そんな話をしているうちに、俺が降りる予定のバス停に到着した。俺は席を立つと、ずら丸とルビィちゃんとやらに手を振る。

 

 「じゃあ二人とも、また明日」

 

 「また明日ずら」

 

 ずら丸が手を振り返してくれる中、ルビィちゃんとやらは恐る恐る小さく頭を下げていた。

 

 俺が苦笑しながらバスを降りようとすると・・・

 

 「っ・・・あ、あのっ!」

 

 ルビィちゃんとやらが声を上げた。驚いて振り向くと、ルビィちゃんとやらが顔を真っ赤にしていた。

 

 「ま・・・また明日・・・」

 

 小さく手を振ってくれる。どうやら、ずいぶん勇気を出してくれたみたいだ。

 

 「うん、また明日ね」

 

 笑顔で手を振り返す。恥ずかしそうに小さく笑うルビィちゃんとやらなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・で、何してんですか貴女達は」

 

 「面目ない・・・」

 

 「ごめんなさい・・・」

 

 呆れた視線を向ける俺の前では、高海先輩と赤紫色のロングヘアの女の子がずぶ濡れで凍えていた。

 

 いやぁ、ビックリしたよね。ルビィちゃんとやらにほっこりしながらバスを降りて歩いてたら、すぐ側の海で凄い悲鳴と凄い水音がするんだもん。急いで駆けつけてみたら、高海先輩とこの女の子がプカプカ海に浮いてるし・・・

 

 しかも高海先輩はともかく、この女の子はスクール水着を着ている。エロいな・・・

 

 じゃなくて、どう見ても自分から海に入ろうとしていた感じだ。

 

 「まだ四月ですよ?沖縄じゃないんですから、そりゃあ寒さで凍えますって」

 

 「反省してます・・・」

 

 うなだれる女の子。呆れて溜め息をついていると、ふと女の子の近くに置いてある制服が目に入った。

 

 これって・・・

 

 「・・・ひょっとして、音ノ木坂の生徒さんですか?」

 

 「えっ・・・」

 

 驚いたような表情の女の子。

 

 「どうしてそれを・・・」

 

 「それ、音ノ木坂の制服ですよね?タイの色が青ってことは、一年生ですか?」

 

 「・・・今月から二年生。音ノ木坂は先月いっぱいで転校して、二年生に上がる今月からこの近くの高校に転入することになってて」

 

 「ねぇねぇ、音ノ木坂ってどこの学校?」

 

 俺の制服の袖を引っ張ってくる高海先輩。えっ・・・

 

 「高海先輩、スクールアイドルやろうとしてるのに知らないんですか?」

 

 「え?スクールアイドルと関係ある学校なの?」

 

 「超有名なスクールアイドルが在籍していた、東京の高校ですよ」

 

 「えぇっ!?東京!?」

 

 「そこに驚くんですか?」

 

 ダメだ、この人の判断基準が分からん。まぁそれは置いとくとして・・・

 

 「どうして海に入ろうとしてたんですか?」

 

 「・・・海の音が聞きたくて」

 

 「デジタル配信されてるんで、ダウンロードして聴いて下さい」

 

 「それ多分『海の声』よね?」

 

 「桐●健太さんのファンなんですね、分かります」

 

 「いや違うから。最後まで話聞いてくれる?」

 

 女の子は一通りツッコミを入れると、ポツポツと語り出した。

 

 「・・・私、ピアノで曲を作ってるの。でも、海の曲のイメージが浮かばなくて・・・」

 

 「それで海に潜って、音を聴こうとしていたと・・・」

 

 コクリと頷く女の子。一方、高海先輩は目を輝かせていた。

 

 「作曲してるの!?凄いね!」

 

 「・・・べ、別に凄いことじゃないけど」

 

 照れたように顔を背ける女の子。この感じ・・・

 

 「・・・似てるな」

 

 「似てる?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 「ねぇねぇ、誰かスクールアイドル知ってる!?東京だと有名なアイドルたくさんいるでしょ!?」

 

 「・・・スクールアイドルって何?」

 

 「えぇっ!?スクールアイドル知らないの!?」

 

 驚愕のあまり叫ぶ高海先輩。おいおいマジか・・・

 

 「音ノ木坂の生徒なら、絶対に語り継がれているであろうスクールアイドルがいるはずなんですけど・・・」

 

 「私ずっとピアノばかりやってきたから、そういうの疎くて・・・スクールアイドルって有名なの?」

 

 「有名なんてもんじゃないよ!?ドーム大会が開かれるほど超人気なんだよ!?」

 

 興奮しながら語る高海先輩。ポケットからスマホを取り出し、画面を見せる。そこに映っていたのは・・・

 

 音ノ木坂の制服を着て踊る、九人組のスクールアイドルだった。

 

 「何で気付かないんですか、この鈍感オレンジヘッド」

 

 「今何で罵倒されたの私!?」

 

 「高海先輩、その人達の制服を見て気付きません?」

 

 「あ、この制服?可愛いよね~!」

 

 「スマホ壊して良いですか?」

 

 「急に攻撃的になったね!?ホントどうしたの!?」

 

 「この制服、音ノ木坂の・・・」

 

 「・・・あっ」

 

 女の子の指摘に、高海先輩がようやく気付く。

 

 そして女の子の近くに置かれた制服に目をやり、スマホの画面に目をやり、最後に俺を見る。

 

 「えっ、じゃあこの人達って・・・」

 

 「・・・かつて音ノ木坂に在籍していた人達です」

 

 「ええええええええええっ!?」

 

 高海先輩の絶叫。今さらですかそうですか。

 

 「じゃあこの子、この人達と同じ学校にいたってこと!?」

 

 「だから最初からそう言ってるでしょうが」

 

 「ねぇねぇ、どんな人達なの!?」

 

 「い、いや・・・会ったことないけど・・・」

 

 「もう卒業してますよ、その人達」

 

 「えぇ・・・何だぁ・・・」

 

 がっくりうなだれる高海先輩。いやいやいや・・・

 

 「っていうか、何でその人達のことは知ってるのに音ノ木坂は知らないんですか」

 

 「いやぁ、知ったのつい最近でさぁ・・・」

 

 苦笑する高海先輩。その場から立ち上がり、海へと視線を向ける。

 

 「・・・私ね、普通なの。普通星に生まれた普通星人で、どんなに変身しても普通なんだって・・・そう思ってた」

 

 寂しそうに笑う高海先輩。

 

 「それでも何かあるんじゃないかって期待してたんだけど、何もなくて・・・気付いたら高校生になってた」

 

 そこで言葉を切ると、おどけるように『ガオーッ!』とポーズをとる。

 

 「このままじゃ普通星人を通り越して、普通怪獣ちかちーになっちゃうううううっ!?」

 

 「うなじ削ぎましょうか?」

 

 「それ怪獣じゃなくて巨人の駆逐方法だよね!?っていうか駆逐しないでよ!?」

 

 高海先輩はツッコミを入れると、面白そうに笑って空を見上げた。

 

 「そんな風に思ってた時に、出会ったの・・・あの人達に」

 

 目を輝かせる高海先輩。

 

 「動画を見て『何じゃこりゃあああああっ!?』ってなって、気付いたら全部の曲を聴いてた。毎日動画を見て、曲を覚えて・・・そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張ってみたい、この人達が目指したところを私も目指したい。私も・・・輝きたい、って」

 

 「それでスクールアイドルを・・・」

 

 気付くと、高海先輩の言葉に引き込まれてしまっていた。輝きたい、か・・・

 

 「・・・ありがとう」

 

 女の子が微笑みながら呟く。

 

 「今の話聞いてたら・・・何か、頑張れって言われた気がする。スクールアイドル、なれると良いわね」

 

 「うんっ!」

 

 女の子の言葉に、笑顔で頷く高海先輩。

 

 「あっ、自己紹介がまだだったね・・・私は高海千歌。あそこの丘にある、浦の星女学院っていう高校の二年生。そこの男の子は絢瀬天くんで、同じ高校の一年生なの」

 

 「えっ・・・女子校よね・・・?」

 

 「共学化に向けてのテスト生です」

 

 「あっ、なるほど・・・」

 

 高海先輩や渡辺先輩に出会った時のような失態を犯さないよう、端的な説明を考えといて良かった・・・

 

 「タイの色だけで音ノ木坂の学年が分かるみたいだし・・・ひょっとしたら、女子校好きの変態なんじゃないかって思っちゃった」

 

 「ちょっと海に身投げしてきますね」

 

 「わーっ!?ストップストップ!?」

 

 必死に俺を止める高海先輩。その様子にひとしきり笑った女の子が立ち上がる。

 

 「じゃあ明日から高海さんは同級生、絢瀬くんは後輩ってことになるわね」

 

 「「・・・え?」」

 

 同時にポカンとする俺達。そんな俺達を見て、悪戯っぽく笑う女の子なのだった。

 

 「私は桜内梨子。明日から浦の星女学院に転入する予定だから、よろしくね」




どうも~、ムッティです。

新成人の皆様、おめでとうございます。

これからは大人としての自覚を持って…なんて、そんな偉そうなことを言える立場ではないので言いません(笑)

お互い人生を楽しみましょうね(^^)

さっきニュースで見ましたが、東京都の豊島区では『アニメで祝う成人式』が行われたんだとか。

…豊島区で成人を迎えたかった(涙)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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損な役回りなど誰もやりたくはない。

両腕とも筋肉痛・・・

日頃の運動不足を痛感するわ・・・


 翌日・・・

 

 「あ、ずら丸とルビィちゃんとやら。おはよう」

 

 「おはようずらぁ・・・」

 

 「お・・・おはよう・・・」

 

 浦の星行きのバスに乗ると、ずら丸とルビィちゃんとやらが一番後ろの席に座っていた。

 

 「ずら丸はずいぶん眠そうだね?」

 

 「つい読書に夢中になって、夜更かししちゃったずら・・・」

 

 欠伸を噛み殺すずら丸。よほど眠いようだ。

 

 「学校に着くまで寝てたら?寄りかかっても良いよ?」

 

 「じゃあお言葉に甘えるずらぁ・・・」

 

 隣に座った瞬間、俺の右肩に頭をコテッと乗せるずら丸。そのまま俺の右半身に体重を預けてくる。

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「・・・寝るの早いな」

 

 苦笑しながら、ずら丸の右隣に座っているルビィちゃんとやらの方を見ると・・・

 

 「ぴぎっ!?」

 

 視線が合い、慌てて逸らすルビィちゃんとやら。どうやらまだ慣れないらしい。

 

 ふとルビィちゃんとやらのバッグに目をやると、女の子の顔が写った缶バッジが付いていることに気付いた。あれって・・・

 

 「・・・もしかしてルビィちゃんとやら、スクールアイドル好きなの?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせるルビィちゃんとやら。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「いや、その缶バッジ・・・小泉花陽ちゃんだよね?」

 

 「っ!?分かるの!?」

 

 「うん、μ'sのメンバーでしょ?」

 

 μ'sというのは、例の音ノ木坂に在籍していたスクールアイドルグループの名前だ。

 

 そのグループを結成していた九人の内の一人・・・それが缶バッジに写っている女の子、小泉花陽ちゃんなのである。

 

 「μ'sを知ってるの!?」

 

 「そりゃあ知ってるよ。有名なグループだもん」

 

 目を輝かせるルビィちゃんとやら。これは高海先輩と話が合いそうだ。

 

 「推しメンっている!?」

 

 「俺は東條希ちゃんかな。包容力のある感じが好きなんだよね」

 

 「分かる!大人の女性って感じがするよね!」

 

 「そうなんだよ。ルビィちゃんとやらは、花陽ちゃん推しなの?」

 

 「そうなの!可愛くて憧れてるんだ!」

 

 よほど好きなのか、表情が活き活きとしているルビィちゃんとやら。ちょっと引っ込み思案だけど、こういう一面もあるんだな・・・

 

 「絢瀬くんは、μ'sの曲で好きな曲ってある!?」

 

 「んー、やっぱり『Snow halation』かなー。っていうか、天で良いよ?俺も何だかんだ、ルビィちゃんとやらのこと名前で呼んじゃってるし」

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「勿論。っていうか、俺もそろそろ普通にルビィちゃんって呼んで良い?『とやら』って付けるの大変で・・・」

 

 俺の言葉にポカンとしていたルビィちゃんとやらだったが、やがてクスクス笑い出す。

 

 「フフッ・・・最初から普通に呼んでくれて良かったのに」

 

 「いきなり下の名前で呼ぶのも図々しいかなって思ってさ」

 

 「その割には、ほぼ下の名前で呼んでたよね?」

 

 「・・・まぁ確かに」

 

 ルビィちゃんとやらはひとしきり笑うと、おずおずと手を差し出してきた。

 

 「えっと、昨日はちゃんと自己紹介できなかったけど・・・黒澤ルビィです。よろしくね・・・天くん」

 

 高海先輩に触れられただけで叫んでしまっていたこの子が、勇気を出して手を差し出してくれている。やはり少し怖いのか、若干手が震えていた。

 

この勇気に、俺はちゃんと応えないといけないな・・・

 

 「・・・改めまして、絢瀬天です。よろしくね・・・ルビィちゃん」

 

 差し出された手をそっと握り、握手を交わす。

 

 視線が合った俺達は、お互い照れ笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「この学校には、スクールアイドルは必要無いからですわ!」

 

 「だからどうしてですか!?」

 

 「・・・俺のほっこりした朝を返して下さい」

 

 げんなりしてしまう俺。

 

 ダイヤさんからの連絡で生徒会室へ行くと、ダイヤさんと高海先輩が顔を突き合わせて言い争いをしていた。渡辺先輩が、少し離れたところでおろおろしている。

 

 「渡辺先輩、何があったんですか?」

 

 「わ、私もスクールアイドル部に入ることにしたんだけど・・・申請書を出しに来たら却下されちゃって・・・」

 

 「・・・あぁ、なるほど」

 

 出来ればスルーしたいけど、渡辺先輩も困ってるみたいだし・・・俺が止めるしかないのか・・・

 

 俺は溜め息をつくと、二人の間に入った。

 

 「はいはい、そこまでにしましょうね」

 

 「絢瀬くん!?」

 

 「天さん!?」

 

 ようやく俺の存在に気付いたようで、驚いている二人。やれやれ・・・

 

 「とりあえず高海先輩、この件に関しては貴女が悪いです」

 

 「えぇっ!?何で!?」

 

 「渡辺先輩が入っても、部員は二人だけじゃないですか。最低でも五人必要だっていう話、忘れたわけじゃないでしょう?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「まずは部員を五人集めてから、申請書を提出しに来るべきです。そこで認められないと言われたら、その時いくらでも抗議したら良いでしょう。高海先輩は昨日、ダイヤさんのことを横暴だと言いましたけど・・・条件を満たせていないのに抗議している今の貴女の方が、よほど横暴だと俺は思います」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛む高海先輩。

 

 「それからダイヤさん、貴女も大概ですよ」

 

 「なっ!?私もですか!?」

 

 「当たり前じゃないですか」

 

 冷たい目でダイヤさんを見る俺。

 

 「『認めない』とか『必要無い』とか・・・具体的な理由も言わずに生徒のやりたいことを否定するなんて、それが生徒会長のやる事ですか?」

 

 「っ・・・それは・・・!」

 

 「まぁ今はいいです。高海先輩が申請条件を満たせていませんから。ですが、もしちゃんと条件を満たした上で申請に来たら・・・今みたいな態度は許されませんからね?」

 

 俯いてしまうダイヤさん。

 

 少し言い過ぎたかもしれないが、こういうことはハッキリさせておかないといけない。

 

 「・・・渡辺先輩、高海先輩を連れて行ってもらって良いですか?生徒会の仕事のことで、ダイヤさんから話があるみたいなので」

 

 「分かった。千歌ちゃん、行こう?」

 

 「うん・・・」

 

 渡辺先輩が高海先輩の手を引いて、生徒会室を出て行く。

 

 謝罪の意味を込めて軽く頭を下げると、渡辺先輩は苦笑しながら手を振ってくれた。高海先輩のアフターケアは、渡辺先輩に任せて良いだろう。

 

 問題は・・・

 

 「・・・申し訳ありませんでした」

 

 俯いたまま、小さな声で謝るダイヤさん。

 

 「生徒会長として、不適切な態度でしたわ・・・ですが、私は・・・」

 

 「・・・何か理由があるんでしょう?」

 

 「っ!?」

 

 驚いたように顔を上げるダイヤさん。

 

 「俺だって、ダイヤさんが何の理由も無くあんなこと言ってるなんて思ってませんよ。昨日知り合ったばかりですけど、それくらいは分かってるつもりです」

 

 この学校の生徒のことを、とても大事に思っている・・・そのことは、昨日話をさせてもらってよく分かった。

 

 スクールアイドルを否定するのは、きっと何かしらの理由があってのことだと思う。

 

 「無理に話せなんて言いませんけど、高海先輩の想いにはちゃんと向き合ってあげて下さい。じゃないと向き合ってもらえない高海先輩も、向き合うことをしないダイヤさんも・・・二人とも苦しい思いをしますから」

 

 「天さん・・・」

 

 「・・・なんて、ちょっと柄にもないこと言っちゃいましたね。さっきもキツい言い方をしてしまって、すみませんでした」

 

 少なくとも、先輩に対してとるべき態度ではなかったしな・・・

 

 頭を下げると、ダイヤさんが慌てていた。

 

 「そ、天さんが謝る必要はありませんわ!悪いのは私なのですから!」

 

 「ですよね。悪いのはダイヤさんですよね」

 

 「急に態度が変わりましたわね!?」

 

 「人の足元を見る男、それが俺です」

 

 「ただの最低な人間じゃないですか!?」

 

 「そうですけど。それが何か?」

 

 「開き直りも甚だしいですわよ!?」

 

 全力ツッコミにより、息切れしているダイヤさん。ようやく本調子に戻ったようだし、この辺にしておくか・・・

 

 「ところでダイヤさん、俺に何か用があったんじゃないですか?」

 

 「ハッ!?そうでしたわ!」

 

 ようやく本題を思い出したらしいダイヤさん。

 

 「実は今日から転入してくる生徒がいて、もうすぐ生徒会室に来る予定なのです。せっかくですので、天さんにも立ち会っていただこうと思いまして」

 

 「あぁ、桜内梨子さんですね」

 

 「えぇ、桜内梨子さん・・・って何で知ってますの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そういった事情が・・・って通じるわけないでしょう!?それで通じるのはアニメやマンガの世界だけですわよ!?」

 

 「おぉ、見事なノリツッコミ」

 

 「させないで下さいます!?」

 

 そんなやり取りをしていると、生徒会室のドアをノックする音がした。

 

 「どうぞ」

 

 「失礼します」

 

 入ってきたのは、やはり桜内さんだった。緊張しているのか、少し表情が強張っている。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「特技はピアノですよね」

 

 「そう、特技はピアノ・・・って絢瀬くん!?」

 

 「どうも」

 

 にこやかに手を振ってみる。桜内さんは唖然としていた。

 

 「な、何でここに・・・」

 

 「俺、生徒会長の下僕なんで」

 

 「下僕!?」

 

 「誤解を生む発言は止めて下さいます!?」

 

 ダイヤさんはツッコミを入れると、咳払いをしてから桜内先輩を見た。

 

 「コホンッ・・・初めまして、生徒会長の黒澤ダイヤですわ。天さんとはお知り合いのようですので紹介は省きますが、彼も生徒会の一員なのです」

 

 「そ、そうでしたか・・・」

 

 驚きながらも納得した様子の桜内さん。

 

 「これからよろしくお願いします、桜内さん・・・あ、桜内先輩か」

 

 「フフッ、どっちでも大丈夫よ。こちらこそよろしくね、絢瀬くん」

 

 「あ、できたら天って呼んで下さい。そっちの方が呼ばれ慣れてるので」

 

 「じゃあ天くんで。私のことも梨子で良いから」

 

 「了解です、梨子さん」

 

 「・・・コホンッ」

 

 再びダイヤさんの咳払いが入る。何故か少しモジモジしていた。

 

 「と、ところで桜内さん?貴女、音ノ木坂から転校してきたそうですわね?」

 

 「えぇ、そうですけど・・・」

 

 「音ノ木坂には有名なスクールアイドルグループがいたと噂に、あくまでも噂に聞いていますが・・・お会いしたことはありまして?」

 

 「いえ、残念ながらありません。私はずっとピアノしかやってこなかったので、そういったことには疎くて・・・スクールアイドルというのも、昨日初めて知ったくらいです」

 

 「そ、そうですか・・・」

 

 明らかに肩を落とすダイヤさん。あれ、もしかしてダイヤさん・・・

 

 「そ、それでは!いくつか注意事項を説明させていただきますわ!」

 

 慌てて切り替えるダイヤさんに、疑惑の眼差しを向ける俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく天とルビィちゃんの距離が少し縮まりましたね。

ちなみに天を希ちゃん推しにしたのは、作者が希ちゃん推しだからです(笑)

いやぁ、可愛いですよね希ちゃん。

しかも大きいし・・・何がとは言わないけど。

さて、梨子ちゃんも転入してきたわけですが・・・

果たして果南ちゃんと鞠莉ちゃんはいつ出せるのか・・・

早く出したいところですね。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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礼儀正しい人ほど怒ると怖い。

沼津に行ってみたいなぁ・・・

聖地巡礼とかやってみたい。


 「善子ちゃん、来なかったずら・・・」

 

 帰りのバスを待ちながら、肩を落とすずら丸。

 

 結局今日、自称・堕天使が学校に来ることは無かった。よほど昨日のことを引きずっているんだろうか・・・

 

 「連絡先って分かんないの?」

 

 「分からないずら。家は・・・変わってないなら覚えてるずら」

 

 「じゃあもう少し待ってみて、何日経っても来ないようなら家に行ってみようか。俺も付き合うからさ」

 

 「勿論ルビィも行くよ」

 

 「天くん、ルビィちゃん・・・」

 

 涙目のずら丸。俺はずら丸の頭を撫でた。

 

 「ホント優しいな、ずら丸は」

 

 「友達の心配をするのは当たり前ずら」

 

 そんな会話をしていると・・・

 

 「あっ、絢瀬くん・・・」

 

 「え?」

 

 不意に名前を呼ばれたので振り向くと、高海先輩と渡辺先輩がいた。二人もちょうど帰るところらしい。

 

 今朝のこともあって、高海先輩は気まずそうな顔をしている。俺は二人に歩み寄ると、頭を下げた。

 

 「高海先輩、今朝はキツい言い方をしてしまってすみませんでした。渡辺先輩も、不快な思いをさせてしまってすみません」

 

 「そんな!?」

 

 「頭上げてよ!?」

 

 慌てる高海先輩と渡辺先輩。

 

 「私がいけなかったんだよ!絢瀬くんの言う通り、ちゃんと五人集めてから申請書を出しに行くべきだったのに・・・ごめんなさい!」

 

 「あの場に最初からいた私が、千歌ちゃんと生徒会長の間に入らなきゃいけなかったんだよ!なのに嫌な役を絢瀬くんに押し付ける形になっちゃって・・・本当にごめん!」

 

 「ですよね。じゃあお二人が悪いということで」

 

 「「掌返し!?」」

 

 「冗談ですよ」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 「これ以上は、お互い謝り続けることになりますから・・・この話はこれで終わりにしませんか?」

 

 「絢瀬くん・・・うん!」

 

 「そうしよっか!」

 

 笑みを浮かべる二人。良かった、どうやら一件落着のようだ。

 

 「天くん、先輩達とケンカでもしてたずら?」

 

 いつの間にか、ずら丸が俺の隣に立っていた。

 

 「まぁ色々あったんだよ、色々」

 

 「あっ、入学式の時の可愛い子!」

 

 高海先輩が顔を輝かせる。

 

 「こんにちは、国木田花丸っていいます」

 

 「私は高海千歌!よろしくね!」

 

 「渡辺曜であります!ヨーソロー!」

 

 ずら丸達が自己紹介しあう中、ルビィちゃんは俺の背中から顔を覗かせていた。

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 「あっ、花丸ちゃんと一緒にいた子!」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 俺の背中に隠れるルビィちゃん。あれ、これってずら丸の役割だった気が・・・

 

 「絢瀬くん、ずいぶん懐かれたね?」

 

 「まぁ色々あったんですよ、色々」

 

 渡辺先輩の言葉に、苦笑しながら返す俺。

 

 「あ、この子は黒澤ルビィちゃんです。ダイヤさんの妹なんですよ」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 驚愕している二人。まぁ何と言うか、対照的な姉妹だもんなぁ・・・

 

 「花丸ちゃん、ルビィちゃん、スクールアイドルやってみない!?」

 

 「マルはちょっと・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 首を横に振る二人。高海先輩がうなだれる。

 

 「えぇ・・・絶対人気出るのにぃ・・・」

 

 「それより、高海先輩と渡辺先輩は作曲って出来るんですか?」

 

 俺はそこが気になっていた。高海先輩か渡辺先輩、どちらかが音楽をやっていたりするんだろうか・・・

 

 「作曲?出来ないよ?」

 

 「私も出来ないなぁ」

 

 「えっ・・・」

 

 呆然としてしまう俺。おいおい・・・

 

 「・・・どうするつもりなんですか?」

 

 「え?スクールアイドルって作曲できないとマズいの?」

 

 「・・・マジかぁ」

 

 俺は頭を抱えてしまった。どうやらこの二人は知らないらしい。

 

 「え、何?どういうこと?」

 

 「・・・スクールアイドルをやるということは、ラブライブを目指すわけですよね?」

 

 「そりゃあ当然だよ!」

 

 大きく頷く高海先輩。

 

 ラブライブというのは、スクールアイドルの頂点を決める大会のことだ。その規模は凄まじく、決勝はドームで行なわれるほどである。

 

 しかしそんなラブライブには、出場する為の絶対条件が存在するのだ。

 

 「・・・ラブライブで披露する曲は、オリジナルの曲じゃないといけないんですよ」

 

 「「・・・えっ」」

 

 「しかも予選から始まって決勝まで進んだ場合、当然一曲だけでは足りません。複数のオリジナルの曲が必要になります。厳密に言えば、オリジナルなら同じ曲を繰り返し披露しても問題はありませんが・・・同じパフォーマンスの繰り返しで勝ち進めるほど、ラブライブは甘くないです」

 

 俺の説明に、顔色が悪くなっていく高海先輩と渡辺先輩。

 

 「・・・つまり作曲が出来ないと、ラブライブに出場することも出来ないってこと?」

 

 「そういうことです」

 

 頷く俺。

 

 俺の背中に隠れているルビィちゃんも、うんうんと頷いていた。流石スクールアイドルが好きなだけあって、この条件を知っていたらしい。

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「早くも夢が断たれた・・・」

 

 その場にへたり込む二人。アララ・・・

 

 「まぁでも、お二人が作曲出来なくても大丈夫じゃないですか?要は作曲出来る人を探せば良いわけですし」

 

 「そうは言ってもさぁ・・・浦の星に作曲が出来る人なんて・・・」

 

 「梨子さんがいるじゃないですか」

 

 「・・・え?」

 

 ポカンとしている高海先輩。

 

 「いや、桜内梨子さんですよ。今日二年生のクラスに転入してきた人です。昨日言ってたじゃないですか。ピアノで曲を作ってるって」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 叫ぶ高海先輩。完全に忘れてたなこの人・・・

 

 「そうだよ!桜内さんがスクールアイドル部に入ってくれたら解決するじゃん!」

 

 「でも千歌ちゃん、今日誘って断られてたよね?」

 

 「もう誘ってたんですか・・・」

 

 「いやぁ、可愛かったからつい・・・」

 

 頭を掻きながら苦笑する高海先輩。行動早いなこの人・・・

 

 「スクールアイドル部には入ってくれないとしても、曲だけでも依頼してみたらどうですか?まぁ梨子さんにも都合があるでしょうし、引き受けてくれるとはかぎりませんけど」

 

 「それ名案だよ!ありがとう絢瀬くん!」

 

 はしゃいでいた高海先輩だったが、ふと気付いたように俺を見た。

 

 「あれ?絢瀬くん、桜内さんのこと名前で呼んでるの?」

 

 「えぇ。俺のことは天で良いって言ったら、梨子さんも名前呼びで良いって」

 

 「えぇっ!?私は絢瀬くんからそんなこと言われてないんだけど!?」

 

 「私もだよ!?」

 

 「そうでしたっけ?」

 

 そういえば、何だかんだで二人には言ってなかった気がする・・・

 

 結局この後散々『不公平だ!』と言われ、二人とも俺のことを『天くん』と呼ぶようになった。

 

 そして俺も高海先輩を『千歌さん』、渡辺先輩を『曜さん』と呼ぶことになるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「で、また断られたんですか?」

 

 「そうなんだよねぇ・・・」

 

 溜め息をつく千歌さん。あれから数日間、千歌さんはひたすら梨子さんにアタックしているそうだが・・・

 

 答えはノー。梨子さん曰く、『そんな暇は無い』らしい。

 

 「もうちょっとな気がするんだけどねぇ・・・『ごめんなさい!』だったのが、『・・・ごめんなさい』に変わったし」

 

 「いや、単に迷惑してるだけでしょ。段々うざくなってきてるだけでしょ」

 

 「アハハ・・・やっぱり天くんもそう思う?」

 

 苦笑している曜さん。やはり千歌さんが鈍感なだけのようだ。

 

 「・・・貴女達」

 

 ダイヤさんがこめかみをピクピクさせている。

 

 「どうして生徒会室で雑談してますの!?」

 

 「花丸ちゃんから、天くんがここにいるって聞いたので」

 

 悪びれもせず答える千歌さん。

 

 放課後にダイヤさんと生徒会の事務作業をしていたところ、千歌さんと曜さんが生徒会室へ乱入してきたのだ。

 

 「天くんなら、何か良いアイデアがあるんじゃないかと思って」

 

 「天さんは生徒会の一員ですわよ!?巻き込むのはお止めなさい!」

 

 「まぁまぁ、とりあえず落ち着きましょう」

 

 苦笑しながらダイヤさんを宥める。

 

 「ちょっと休憩しましょうか。お茶でも淹れるので、千歌さんと曜さんも適当に座って下さい」

 

 「わーい!ありがとう!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「全く・・・天さんは甘すぎますわ」

 

 何とかダイヤさんが落ち着いたところで、俺はお茶の準備を始める。

 

 一方、千歌さんはダイヤさんにスクールアイドルへの情熱を訴えかけていた。

 

 「私はスクールアイドル部を作って、皆と一緒に輝いてみせます!」

 

 「ですから、まずは部員を五人揃えてから来て下さいと言っているでしょう?」

 

 「勿論です!今はまだ二人ですけど、『ユーズ』だって最初は三人だったんですから!」

 

 生徒会室の空気が凍った気がした。何故だろう、今ダイヤさんの方を見てはいけないような気がする。

 

 「知りませんか!?第二回ラブライブ優勝!音ノ木坂学院スクールアイドルグループ!その名も『ユーズ』!」

 

 いや、『ユーズ』って・・・マジですか千歌さん・・・

 

 「・・・千歌さん、あれ『ミューズ』って読むんですよ」

 

 「・・・えっ」

 

 俺の指摘に固まる千歌さん。

 

 「嘘・・・『ユーズ』じゃないの・・・?」

 

 「お黙らっしゃああああああああああいっ!」

 

 「「ひぃっ!?」」

 

 ダイヤさんの怒りが爆発した。千歌さんと曜さんが悲鳴を上げる。

 

 「言うに事欠いて名前を間違えるですって!?あぁん!?」

 

 ヤンキー化するダイヤさん。大和撫子はどこへ行ったんだ・・・

 

 「μ'sはスクールアイドル達にとっての伝説!聖域!聖典!宇宙にも等しき生命の源ですわよ!?その名前を間違えるとは片腹痛いですわ!」

 

 千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 ねぇ、やっぱりこの人スクールアイドル好きだよね?μ'sのファンだよね?

 

 「その浅い知識だと、たまたま見つけたから軽い気持ちで『マネをしてみよう』とか思ったのですね!?」

 

 「そ、そんなこと・・・!」

 

 「ならば問題です!μ'sが最初に九人で歌った曲は!?」

 

 「え、えーっと・・・」

 

 「第二回ラブライブ予選、μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は!?」

 

 「う、う~ん・・・」

 

 「第二回ラブライブ決勝、μ'sがアンコールで歌った曲は!?」

 

 「あ、それは知ってます!『僕らは今の中で』ですよね!?」

 

 「ではその『僕らは今の中で』の冒頭でスキップしている四名は!?」

 

 「えぇっ!?」

 

 「ぶっぶっぶー!ですわ!」

 

 再び千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 もう確定だよ。絶対μ'sのファンだよこの人。あまりの豹変ぶりに曜さんが引いてるよ。

 

 「こんなの基本中の基本ですわよ!?正解は・・・」

 

 「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫」

 

 「その通り・・・え?」

 

 驚いてこちらを振り向くダイヤさん。

 

 そんなダイヤさんをよそに、俺はお茶を注いだ湯呑みをテーブルに並べていく。

 

 「μ'sが最初に九人で歌った曲は、『僕らのLIVE 君とのLIFE』。通称『ぼららら』」

 

 ダイヤさんと一緒に食べようと思って持ってきた和菓子を皿に分けながら、ダイヤさんの問題に答えていく。

 

 「μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだのは、当時A-RISEが通っていた秋葉原UTXの屋上。ちなみにそこで披露した曲は、『ユメノトビラ』ですね」

 

 「あっ、私その曲大好き!」

 

 目を輝かせる千歌さん。

 

 「その曲を聴いて、スクールアイドルをやりたいって思ったの!」

 

 「あ、そうだったんですね」

 

 自分自身に悩んでいた千歌さんなら、確かに大きく心を揺さぶられてもおかしくない。それほど力の込められた歌詞が、この曲には詰まっている。

 

 「凄いね天くん・・・そんなスラスラ答えられるなんて・・・」

 

 「ダイヤさんの言う通り、これくらいは基本中の基本ですよ」

 

 唖然としている曜さんに、笑いながら答える俺。

 

 「μ'sに憧れてスクールアイドルをやるなら、もう少しμ'sのことを知っておいても損は無いと思いますよ?スクールアイドルとしてどういう軌跡を辿ったのか、参考になる点は色々あるでしょうし・・・はい、お茶の用意ができましたよ」

 

 「おぉ、美味しそうな和菓子!」

 

 「もらっちゃって良いの!?」

 

 「勿論。ほらダイヤさん、一緒に食べましょう」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 俺の方を見ながら、呆然としているダイヤさんなのだった。




どうも~、ムッティです。

ふと気付きましたが、全然話が進んでないですね・・・

未だアニメ二話の途中くらいですもんね・・・

もっとサクサク進められたら良かったんですが・・・

あぁ、早くイチャつかせたい←

まぁその前に、早くヒロイン決めろって話ですよね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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足掻くことが出来る人は凄い。

観たい映画は多いけど、なかなか行く時間が無い…


 「んー、どうしたら桜内さんを説得できるかなぁ・・・」

 

 頭を悩ませている千歌さん。曜さんと別れた俺達は、二人で帰り道を歩いていた。

 

 「諦めてないんですね」

 

 「勿論!桜内さんもルビィちゃんも花丸ちゃんも、私は諦めないよ!」

 

 「三股ですね、分かります」

 

 「言い方が悪意に満ちてない!?」

 

 千歌さんのツッコミをスルーして、道路の向かい側に広がる海を眺める。夕陽で海がオレンジ色に染まっている光景は、何度見ても飽きないほど美しかった。

 

 と、浜辺に見覚えのある人物が立っていた。

 

 「あれ、梨子さん?」

 

 「あ、ホントだ」

 

 物憂げな表情で浜辺に佇んでいる梨子さん。絵になるなぁ・・・

 

 「おーい!桜内さーん!」

 

 大きな声で呼びかける千歌さん。

 

 こちらからは梨子さんの背中しか見えないが、明らかに肩を落としたのが分かった。よほど千歌さんにうんざりしているようだ。

 

 千歌さんが梨子さんの方へ走っていくので、俺もその後を追いかける。

 

 「あっ!もしかして、また海に入ろうとしてるの!?」

 

 梨子さんの元へ辿り着いた途端、梨子さんのスカートを捲り上げる千歌さん。

 

 「してないですっ!」

 

 「それなら良かった」

 

 慌ててスカートを戻す梨子さんと、笑みを浮かべる千歌さん。と、そこで梨子さんが俺の存在に気付いた。

 

 「天くん!?」

 

 「こんにちは、梨子さん」

 

 にこやかに挨拶する俺。梨子さんの顔が赤く染まっていく。

 

 「み、見た・・・?」

 

 「何をですか?」

 

 「いや、その・・・パ、パンツ・・・」

 

 「何のことでしょう?」

 

 「よ、良かった・・・見てないのね・・・」

 

 「『苗字が桜内だけに、パンツも桜色か・・・』なんて思ってませんよ?」

 

 「バッチリ見てるじゃない!?」

 

 両手で顔を覆う梨子さん。耳まで真っ赤に染まっている。

 

 「ちょっと天くん!?女の子のパンツ見るなんて最低だよ!?」

 

 「俺の目の前で梨子さんのスカート捲った人がそれを言います?」

 

 「うぅ・・・もうお嫁に行けない・・・」

 

 「何言ってるんですか。そのスカート丈の短さで、これまで誰にも見られてないなんて有り得ないでしょうに」

 

 「・・・ちょっと海に飛び込んでくるわね」

 

 「落ち着いて桜内さん!?天くんもトドメ刺さないでよ!?」

 

 千歌さんが必死に宥め、何とか落ち着きを取り戻す梨子さん。涙目になりながら千歌さんを睨んでいる。

 

 「元はと言えば、貴女のせいで・・・!」

 

 「すいませんでしたあああああっ!」

 

 「まぁまぁ。本人も反省しているようですし、この辺りで許してあげましょうよ」

 

 「何で他人事なの!?」

 

 俺に全力でツッコミを入れたことで力が抜けたのか、溜め息をつく梨子さん。

 

 「・・・こんなところまで追いかけてきても、答えは変わらないわよ」

 

 「桜内さん、答えを出すのが早すぎるよ!もうお嫁に行けないだなんて!」

 

 「違うわよ!?スクールアイドルの話!」

 

 「あ、そっちか」

 

 苦笑する千歌さん。

 

 「違う違う。通りがかっただけだよ」

 

 「千歌さん、ストーカーは皆そう言うんですよ」

 

 「誰がストーカー!?天くんもここまで一緒に帰ってきたじゃん!?」

 

 「俺は千歌さんの掌の上で踊らされたんですね・・・千歌さん、恐ろしい子・・・」

 

 「人の話聞いてくれる!?」

 

 「そういえば梨子さん、海の音聴けました?」

 

 「だから聞いてってば!?」

 

 ギャーギャーうるさい千歌さんをスルーして尋ねると、梨子さんは浮かない顔で首を横に振る。

 

 まだ聴けてないんだな・・・

 

 「ほら千歌さん、喚いてないで海の音が聴ける方法を考えて下さいよ」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 喚いていた千歌さんだったが、そこでふと何か思いついたような顔をする。

 

 「あっ!果南ちゃんがいるじゃん!」

 

 「え、誰ですか?」

 

 「私と曜ちゃんの幼馴染だよ。実家がダイビングショップやってるから、桜内さんもダイビングしてみたら良いんじゃないかな?海の音が聴けるかもしれないよ?」

 

 「なるほど・・・スク水で海に飛び込むよりは良い方法ですね」

 

 「それは忘れて!?」

 

 再び赤面する梨子さん。

 

 いや、あれは忘れられないな。衝撃的な初対面だったもの。

 

 「桜内さん、日曜日って空いてる?ダイビングしに行こうよ!」

 

 「・・・代わりにスクールアイドルやれ、とか言わない?」

 

 「アハハ、流石に言わないよ」

 

 千歌さんは笑うと、梨子さんの手を握った。

 

 「海の音、ちゃんと聴いてほしいの。桜内さんが作った海の曲、私も聴いてみたいし」

 

 「高海さん・・・」

 

 驚いている梨子さん。

 

 損得勘定関係無しに、人の為を思って行動できる・・・こういうところが、千歌さんの美点なんだろうな。

 

 「ねっ?行ってみよう?」

 

 「・・・じゃあ、お願いしようかしら」

 

 「そうこなくっちゃ!天くんも行くよね?」

 

 「俺はアレがアレなんでパスします」

 

 「そっかぁ、それなら仕方ない・・・ってならないよ!?アレがアレって何!?」

 

 「日曜日くらいゴロゴロさせて下さいよ」

 

 「何そのお父さんみたいなセリフ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、梨子さんが笑みを浮かべながら俺の肩に手を置いた。

 

 「人のパンツ見ておいて、来ないなんて言わないわよねぇ・・・?」

 

 ちょ、痛いんだけど!?肩がミシミシいってるんだけど!?

 

 「よ、喜んで行かせていただきます・・・」

 

 「よろしい」

 

 笑顔で手を離す梨子さん。この人、怒らせたらアカン人や・・・

 

 「それじゃあ早速、果南ちゃんに連絡を・・・って、もうこんな時間!?」

 

 スマホを取り出した千歌さんが、時間を見て慌て始める。

 

 「急いで帰らなくちゃ!?果南ちゃんには後で連絡しておくから!じゃあまたね!」

 

 それだけ告げると、千歌さんは走って帰っていった。慌ただしい人だなぁ・・・

 

 「・・・変な人ね、高海さんって」

 

 「否定はできませんね」

 

 俺はそう言って笑うと、夕陽に染まる海を眺めた。

 

 「梨子さん、一つ聞いても良いですか?」

 

 「何?」

 

 「梨子さんが海の音を聴きたいのは・・・本当に曲作りの為だけですか?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む梨子さん。やっぱり・・・

 

 「海の曲を作りたいのは本当なんでしょうけど、果たしてそれだけなのかなって。他にも理由があって、それで必死になってるんじゃないのかなって・・・梨子さんの様子を見てたら、何となくそう思ったんですよね」

 

 「・・・察しが良いのね、天くんって」

 

 梨子さんは苦笑すると、ポツポツと話し始めた。

 

 「私ね、小さい頃からずっとピアノやってるんだけど・・・最近はいくらやっても上達しなくて、やる気も出なくて・・・それで環境を変えてみようと思って、東京からこっちに来たの」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 素直に凄いことだと思った。何かの為にそれまでの環境を変えるというのは、普通なかなか出来ることではない。

 

 「海の音が聴けたら変わるんじゃないか、変えられるんじゃないかって・・・そう思ったら、ちょっと焦っちゃって・・・」

 

 自嘲気味に笑う梨子さん。

 

 「みっともないわよね、不確かなものに縋ったりして・・・」

 

 「・・・良いじゃないですか、みっともなくたって」

 

 「え・・・?」

 

 驚いてこっちを見る梨子さんに、俺は笑みを向けた。

 

 「変わりたい、変えたいと願うのなら・・・どんなにみっともなくたって、全力で足掻くべきだと俺は思いますよ。それで変わるとは限りませんけど、足掻かなければ変わる可能性すら生まれませんから」

 

 「天くん・・・」

 

 「それに、ピアノに対してそこまで足掻けるっていうことは・・・梨子さんがピアノを大切に思っている、何よりの証じゃないですか」

 

 「っ・・・」

 

 「梨子さんは誇って良いと思います。自分はこんなにピアノが好きなんだ、こんなにピアノを大切に思ってるんだって・・・それはとても、素敵なことなんですから」

 

 梨子さんの目には涙が滲んでいた。それを拭おうともせず、俺の方をじっと見ている。

 

 「・・・そんなこと、初めて言われたわ」

 

 「マジですか・・・俺が梨子さんの初めてをもらっちゃいましたか・・・」

 

 「その言い方は誤解を招くから止めてくれる!?」

 

 「え、だって俺が梨子さんの初めてなんでしょ?」

 

 「絶対分かってて言ってるわよねぇ!?」

 

 「ナニソレ、イミワカンナイ」

 

 「誰のモノマネ!?」

 

 「さぁ、誰でしょう?」

 

 俺が笑うと、梨子さんも笑みを零しながら目元の涙を拭う。

 

 「変な人ね、天くんも・・・高海さん以上だわ」

 

 「・・・それはちょっと不名誉なんですけど」

 

 「フフッ、そんな嫌そうな顔しないの」

 

 梨子さんはクスクス笑うと、俺の顔を覗き込んだ。

 

 「・・・ありがとう、天くん。今の言葉、凄く嬉しかった」

 

 間近で見た梨子さんの笑顔は、夕陽と相まって凄く綺麗で・・・思わずドキッとしてしまう俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は梨子ちゃんの回でした。

アニメ見てて思ったんですけど、ピアノの為に東京から内浦に引っ越して来るって凄くないですか?

梨子ちゃんも凄いけど、梨子ちゃんのご両親もよく賛成しましたよね。

まぁ一番驚いたのは、梨子ちゃんのお母さん役が水樹奈々さんだったことなんですけども…

あれはビックリでした(゜ロ゜)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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足掻いた人にしか見えないものがある。

今日から2月かぁ…


 迎えた日曜日・・・

 

 「初めまして、松浦果南です。よろしくね」

 

 青く長い髪をポニーテールに結った女性が、笑顔で挨拶してくれる。

 

 梨子さんと俺は千歌さんに連れられて、近くにある淡島のダイビングショップへとやって来ていた。ちなみに曜さんも一緒である。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「絢瀬天です。よろしくお願いします」

 

 「おぉ、君が噂のテスト生だね?」

 

 俺をじっくりと眺め回す松浦さん。そして両手を広げ、笑みを浮かべてこう言った。

 

 「じゃあ早速・・・ハグしよっ?」

 

 「何だ、ただの痴女か」

 

 「誰が痴女よ!?」

 

 松浦さんのツッコミ。初対面の男にハグを要求するとか、何を考えてるんだこの人・・・

 

 「ほら、いいからハグしよっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 真正面から勢いよく抱きつかれた。

 

 松浦さんの柔らかな身体の感触が俺の全身を包み、二つの大きな膨らみが俺の胸に押し付けられて『むにゅっ』と形を変える。

 

 「ちょ、何してるんですか!?」

 

 俺達の様子を見て赤面している梨子さん。

 

 「何って・・・ハグだよ?」

 

 「同性同士ならともかく、異性同士なんですからもっと恥じらいを持って下さい!っていうか、天くんは何でされるがままになってるの!?」

 

 「いや、何と言うか・・・幸せを噛み締めてます」

 

 「戻ってきなさい!」

 

 「アハハ、純情だねぇ」

 

 松浦さんが笑いながら俺から離れる。

 

 「えーっと、今日は四人ともダイビングするってことで良いんだっけ?」

 

 「あ、三人です。俺は見学なんで」

 

 「え、天くんやらないの!?」

 

 「えぇ、今回は遠慮しておきます」

 

 曜さんの問いに答える俺。

 

 ダイビングを経験しているであろう千歌さんと曜さんはともかく、梨子さんと俺は完全な未経験者だ。未経験者二人が同時に潜ってしまえば、千歌さん達に大きな負担をかけてしまうことになりかねない。

 

 今回の目的は梨子さんが海の音を聴くことなので、梨子さんさえ潜れれば問題無いのだ。梨子さん一人なら、千歌さん達の負担も大きくはないだろう。

 

 「ごめんね、天くん・・・」

 

 何となく理由を察した様子の梨子さんが、申し訳なさそうに謝ってくる。

 

 「私のワガママに付き合わせてるのに、待機させちゃって・・・」

 

 「気にしないで下さい。海の音、ちゃんと聴いてきて下さいね」

 

 「そのことだけど、ちょっといいかなん?」

 

 話に入ってくる松浦さん。っていうか、今の語尾は何だろう・・・

 

 「水中では、人間の耳に音は届きにくいの。だからイメージが大事だと思うよ」

 

 「イメージ?」

 

 「そう、水中の景色から海の音をイメージするの。想像力を働かせてね」

 

 「想像力・・・」

 

 考え込む梨子さん。海の音が聴けるかどうかは、梨子さんの想像力次第ってことか・・・

 

 「とりあえず、ダイビングスーツに着替えよっか。向こうに更衣室があるから」

 

 「よーし!潜るぞー!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 元気よく走っていく千歌さんと曜さん。

 

 「じゃあ、私達も行こっか」

 

 「あ、はい。天くん、ちょっと待っててね」

 

 「ごゆっくり~」

 

 梨子さんにひらひら手を振る。と、松浦さんがこちらを振り返ってニヤリと笑った。

 

 「覗かないでね?絶対だよ?」

 

 「おっ、覗けっていうフリですか?」

 

 「・・・松浦さん?天くん?」

 

 「「すいませんでしたっ!」」

 

 梨子さんから放たれるプレッシャーに、反射的に謝ってしまう俺と松浦さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・う~み~は~広い~な、大きい~な~♪」

 

 小型船の甲板に座り、口ずさみながら海を眺める俺。その様子を見た松浦さんが、面白そうにクスクス笑っている。

 

 「海が好きなの?」

 

 「いえ、好きっていうか・・・懐かしいんです」

 

 「懐かしい?」

 

 「えぇ、海には色々と思い出がありまして。楽しい思い出も・・・悲しい思い出も」

 

 過去のことを思い出して感傷に浸っていると、いきなり背中に衝撃を受けた。

 

 「隙ありっ!ハグっ!」

 

 「どんだけハグ好きなんですか・・・」

 

 ヤバいよこの人、自分がどれほどスタイルが良いか全く分かってないよ・・・

 

 こんなナイスバディなお姉さんにハグされたら、普通の男はコロッといっちゃうどころか野獣化してもおかしくないというのに・・・

 

 「心配しなくても、私がハグするのは女の子だけだよ?」

 

 「松浦さんの目には、俺が女の子に見えてるんですか?」

 

 「何言ってんの?そんなわけないじゃん。大丈夫?」

 

 「すみません、殴って良いですか?」

 

 「アハハ、怖い怖い」

 

 松浦さんは笑うと、俺の身体に回している腕に力を込めた。

 

 「実は君の話、ダイヤから聞いててさ」

 

 「ダイヤさんとお知り合いなんですか?」

 

 「知り合いっていうか、幼馴染だよ。学校でもクラスメイトだしね」

 

 「え、松浦さんって浦の星の生徒なんですか!?」

 

 「あれ?千歌から聞いてないの?」

 

 首を傾げる松浦さん。幼馴染としか聞いてないんだけど・・・

 

 「っていうか、高校生だったんですね・・・てっきり二十歳くらいかと・・・」

 

 「むっ・・・そんなに老けて見える?」

 

 「大人びて見えるって言ってもらえます?っていうか俺、松浦さんを学校で見かけたことないんですけど・・・」

 

 「あぁ、今休学中なんだよ。お父さんが骨折しちゃったもんだから、私が店を手伝わないといけなくてさ」

 

 「それは大変ですね・・・」

 

 凄いな・・・休学してまでお店を手伝ってるのか・・・

 

 「まぁその話は置いとくとして・・・休学中もダイヤとは連絡を取ってるんだけど、この間の電話で君の話題になってさ。ダイヤに説教したんだって?」

 

 「いや、説教というか何と言うか・・・」

 

 思わず苦い表情になる。一方、松浦さんは面白そうに笑っていた。

 

 「あのダイヤに物申せる人なんて、なかなかいないからね。『良い人が入ってきてくれた』って、ダイヤも喜んでたよ?」

 

 「・・・恐縮です」

 

 いやホント、我ながら先輩に失礼な態度を取ってしまったと思う。

 

 まぁああいう場だったし、言うべきことは言わなきゃいけないとは思ったけども。

 

 「ダイヤは君のことを、『信用に足る人だ』って凄く褒めてた。昔からダイヤの人を見る目は確かだし、だったら私も信用してハグしちゃおうと思って」

 

 「信用してくれるのはありがたいんですけど、その発想はおかしいですからね?」

 

 「まぁまぁ。私にとってハグは挨拶みたいなものだから」

 

 「何その海外の人みたいな考え方」

 

 思わずタメ口でツッコミを入れてしまった。大らかな人だなぁ・・・

 

 「そんなわけで、私はこれから君にどんどんハグするから。ちゃんと受け止めてね?」

 

 「自由人ですね、松浦さん・・・あ、松浦先輩か」

 

 「さっきから言おうと思ってたけど、果南で良いよ。ダイヤのことも名前で呼んでるんだし、私のことも名前で呼ぶこと。これは先輩命令だから」

 

 「パワハラで訴えますよ?」

 

 気付けば松浦さんに対して、あまり気を遣わなくなっていた。松浦さんの大らかな性格に、俺も影響されてるのかもしれないな・・・

 

 「その代わり、私も君のこと名前で呼ぶからね。よろしく、天」

 

 「・・・了解です、果南さん」

 

 満足そうに笑う果南さん。その時・・・

 

 「ぷはぁっ!」

 

 海に潜っていた曜さんが浮上してきて、甲板へと上がってきた。

 

 「お疲れ、曜。海の音は聴けそう?」

 

 「んー、難しいね。桜内さんも苦戦してるみたいだし・・・って、果南ちゃんはまた天くんにハグしてるの?」

 

 「天にはちゃんと許可もらってるよ」

 

 「そんな覚え一切ないんですけど」

 

 果南さんにツッコミを入れていると、千歌さんと梨子さんも浮上してきた。やはりイメージが難しいのか、梨子さんは浮かない顔をしている。

 

 「ダメ・・・景色は真っ暗だし、なかなかイメージが出来ない・・・」

 

 「今日の天気は曇りだしねぇ・・・」

 

 空を見上げる千歌さん。確かに、日の光が差さないのは痛いな・・・

 

 「やっぱり、私には無理なのかな・・・」

 

 弱気な梨子さん。

 

 「どんなに足掻いても、変えられないのかな・・・」

 

 「・・・諦めちゃダメ~なん~だ~♪」

 

 「天・・・?」

 

 果南さんが首を傾げる中、ふと頭に浮かんだ曲を口ずさむ。

 

 「その日が絶対来る~♪」

 

 「その曲って・・・」

 

 千歌さんは気付いたようだ。そう、あの曲だ。

 

 「君も感じて~るよ~ね~、始~まり~の鼓動~♪」

 

 「天くん・・・歌上手いね」

 

 「え、そこ?」

 

 曜さんの感心したようなセリフに、咄嗟に梨子さんがツッコミを入れる。

 

 「いや、確かに上手いんだけど・・・何の曲?」

 

 「μ'sの『START:DASH!!』っていう曲です」

 

 高坂穂乃果、南ことり、園田海未・・・まだ三人だったμ'sが、ファーストライブで披露した曲である。

 

 「まぁこの曲を歌っておいて、こんなことを言うのもアレなんですけど・・・『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る』とか、ぶっちゃけただの綺麗事ですよね」

 

 「「「「えええええええええええええええ!?」」」」

 

 まさかの否定に、千歌さん・曜さん・梨子さん・果南さんが大きく仰け反る。

 

 「ちょ、天くん!?何てこと言うの!?」

 

 「だって思いません?諦めずに頑張ったら夢は必ず叶うとか、そんなのただの理想論じゃないですか。諦めずに頑張っても、夢を叶えられない人なんてたくさんいますよ」

 

 「いや、そうかもしれないけど!」

 

 あたふたしている四人が面白くて、俺は思わず笑ってしまった。

 

 「まぁでも・・・この曲の作詞を手掛けた人だって、そんなことは最初から分かってると思いますよ」

 

 「え・・・?」

 

 「諦めずに頑張ったって、夢は叶えられないかもしれない。でも・・・諦めてしまったら、叶えられる可能性すら無い」

 

 「っ・・・それ、この間天くんが言ってた・・・」

 

 梨子さんが気付く。覚えててくれたのか・・・

 

 「だから簡単に諦めるな。夢が叶う日が来る可能性は、諦めなかった人にしか無いんだから・・・勝手な解釈ですけど、俺はそういう意味でこの歌詞を捉えてます」

 

 「天くん・・・」

 

 「今日がダメなら、また来週チャレンジしてみましょう。今日は生憎の曇りですけど、来週は晴れてるかもしれません。それでもダメならもう一度チャレンジしたって良いし、違う方法を考えたって良いじゃないですか」

 

 俺は梨子さんに笑いかけた。

 

 「梨子さんが内浦に来て、まだたったの一週間ですよ?東京から引っ越してまでこっちに来たんですし、もう少し頑張ってみませんか?」

 

 「・・・どうして私なんかの為に、そこまで言ってくれるの?」

 

 不思議そうな表情の梨子さん。

 

 「この間も今日も、天くんは私の背中を押そうとしてくれてる・・・どうして・・・?」

 

 「んー、そうですねぇ・・・」

 

 苦笑いを浮かべる俺。

 

 「多分ですけど、足掻こうとしてる人を放っておけないんでしょうね。ホント厄介な性格にしてくれたよなぁ、あの人達・・・」

 

 「あの人達?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 まぁそれは置いとくとして、とりあえず海の音だよな・・・

 

 「とにかく俺も、梨子さんに海の音を聴いてほしいんです。きっとそれが梨子さんにとっての、始まりの鼓動になるんでしょうから」

 

 「始まりの鼓動・・・」

 

 梨子さんは小さく呟くと、意を決したように顔を上げた。

 

 「私、もう一度やってみる!」

 

 「よーし、私達も行くよ!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 再び海へ潜った梨子さんに続き、千歌さんと曜さんも海へ飛び込んでいった。

 

 「・・・凄いね、天」

 

 果南さんが微笑んでいる。

 

 「天の言葉で、諦めかけてた桜内さんがやる気になっちゃった」

 

 「大したことはしてませんよ」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「上手くいかなくて弱気になってたんで、ほんの少し励ましただけです」

 

 「何言ってるの。それが大きいんじゃない」

 

 笑っている果南さん。

 

 「ああいう時にかけられる励ましの言葉って、凄く心に響くもんだよ。それをさらっと言っちゃうんだもん。ちょっと感心しちゃった」

 

 「果南さんに感心されてもなぁ・・・」

 

 「何でよ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、突如として雲の切れ間から日が差した。日の光が海面を照らし、キラキラと眩く光っている。

 

 やがてその海面から、千歌さん・曜さん・梨子さんが浮上してきた。ここからは何を話しているのか聞こえないが、興奮したように笑いながら抱き合っている。

 

 「・・・聴けたみたいだね、海の音」

 

 「・・・ですね」

 

 笑い合う果南さんと俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく果南ちゃんを出せました。

果南ちゃんにハグされたいわぁ(願望)

あ、それから『START:DASH!!』についてですが…

作者に歌詞を否定する意思は一切ありません!

作者に歌詞を否定する意思は!一切!ありません!

大事なことなので二回言いました。

むしろ凄く良い歌詞・凄く良い曲だと思ってますし、個人的にも大好きな曲の一つです。

あくまでも『そういう解釈もあるよ』というお話ですので、悪しからず…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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友達とはかけがえのないものである。

Aqoursの『WATER BLUE NEW WORLD』ってメッチャ良い曲ですよね。


 「え、曲作りの依頼を引き受けたんですか?」

 

 「うん、そうなの」

 

 頷く梨子さん。

 

 ダイビングの翌日・・・昼休みにばったり会った梨子さんの話に、俺は思わず驚いてしまった。

 

 「どういう心境の変化ですか?『そんな暇は無い』って断り続けてたんですよね?」

 

 「そうなんだけど・・・まぁ色々とね」

 

 梨子さんが小さく笑う。

 

 「今回は高海さんに色々お世話になったから、今度は私が力になれたらって思ったの。スクールアイドルの曲作りなんて初めてだけど、これも良い勉強になるだろうから」

 

 「なるほど・・・ってことは、梨子さんもスクールアイドルやるんですか?」

 

 「それは断ったわ。私がやるのは、あくまでも曲作りだけよ」

 

 肩をすくめる梨子さん。あ、そうなんだ・・・

 

 「そうですか・・・ちょっと残念ですね」

 

 「え、何が?」

 

 「梨子さん可愛いし、スクールアイドルの衣装とか似合うだろうなって思ってたんで」

 

 「なっ!?」

 

 梨子さんの顔が一気に赤くなる。ホント純情だなぁ・・・

 

 「せ、先輩をからかわないのっ!」

 

 「いや、本心ですって。華もありますし、きっとステージ映えするでしょうね」

 

 「も、もういいからっ!」

 

 耳まで真っ赤になった梨子さんが、強引に話題を打ち切る。

 

 まぁ梨子さんが決めたことだし、俺がとやかく言うことでもないよな。

 

 「そ、それで早速なんだけど!今日の放課後、高海さんの家で作詞をすることになったの。もし良かったら、天くんも一緒に来ない?」

 

 誘ってくれる梨子さん。俺としても、行けるなら行きたいところではあるが・・・

 

 「・・・すいません。今日の放課後はちょっと、お見舞いの予定がありまして」

 

 「お見舞い?誰の?」

 

 首を傾げる梨子さんに、苦笑いで答える俺なのだった。

 

 「クラスメイトですよ。自称・堕天使の、ね」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ここずら」

 

 緊張した面持ちのずら丸。

 

 俺・ずら丸・ルビィちゃんの三人は放課後、自称・堕天使が住んでいると思われるマンションの一室へとやって来ていた。

 

 ずら丸曰く、ここが自称・堕天使の家らしい。

 

 「表札もちゃんと『津島』になってるし、間違いないずらね」

 

 「え、あの子の苗字って『津島』なの?」

 

 「今さら!?」

 

 ルビィちゃんのツッコミ。『善子』っていう名前なのは知ってたけど、苗字の方は気にしてなかったなぁ・・・

 

 「とりあえず、インターホン押そうか」

 

 「ずら」

 

 ずら丸がインターホンを押す。すると・・・

 

 「はーい」

 

 ドアが開き、中から女性が出てきた。ダークブルーの髪にシニヨンを結った女性・・・あれ?

 

 「津島さん、メッチャ大人になってない?」

 

 「その人は善子ちゃんのお母さんずら」

 

 「マジで!?」

 

 メッチャ似てるなぁ・・・驚いていると、津島母が首を傾げた。

 

 「えーっと、どちら様ですか?」

 

 「あ、あのっ!私、国木田花丸です!覚えてますか?」

 

 「え・・・?」

 

 ずら丸の顔をじーっと見つめる津島母。次の瞬間、表情がパァッと明るくなった。

 

 「あぁっ、花丸ちゃん!?善子と幼稚園で一緒だった、あの花丸ちゃん!?」

 

 「そうです!お久しぶりです!」

 

 「久しぶりね~!ずいぶん大きくなっちゃって~!」

 

 嬉しそうに笑う津島母。

 

 「幼稚園の時から可愛かったけど、ますます可愛くなったわね~!」

 

 「そ、そんな・・・マルなんて・・・」

 

 照れているずら丸。と、津島母が俺の方に視線を向けてきた。

 

 「あら?ひょっとして、花丸ちゃんの彼氏くんかしら?」

 

 「か、彼氏っ!?」

 

 ずら丸の顔が真っ赤になる。何だかんだで、ずら丸も純情だなぁ・・・

 

 「ち、違いますっ!天くんはそんなんじゃ・・・!」

 

 「そっか、俺とは遊びだったのか・・・」

 

 「天くん!?何を言い出すずら!?」

 

 「朝のバスでは、俺に寄りかかって気持ち良さそうに寝てたのに・・・」

 

 「そ、それは天くんが『寄りかかって良いよ』って言ってくれたから・・・!」

 

 「俺を抱き寄せて、俺の顔を自分の胸に埋めさせてくれたのに・・・」

 

 「あ、あれはルビィちゃんの悲鳴から守る為で・・・!」

 

 「『恋人としてよろしくずら~!』って言ってくれたのに・・・」

 

 「それは言ってないずら!『恋人として』なんて言ってないずら!」

 

 「全てはずら丸の掌の上・・・俺は弄ばれてたのか・・・」

 

 「人聞きの悪いことを言わないでほしいずら!」

 

 「花丸ちゃん・・・悪い子に育っちゃって・・・」

 

 「善子ちゃんのお母さん!?何で信じてるずら!?」

 

 悪ノリに便乗してくる津島母。ノリが良いなぁ・・・

 

 「まぁ冗談はさておき・・・初めまして、絢瀬天といいます」

 

 「く、黒澤ルビィです・・・」

 

 「私達三人、浦の星で善子ちゃんと同じクラスなんです」

 

 「あら、そうだったの?」

 

 驚いていた津島母だったが、すぐに笑みを浮かべる。

 

 「初めまして、善子の母・津島善恵です。娘がいつもお世話に・・・って、あの子ずっと引きこもってたわね」

 

 溜め息をつく津島母。やはり重症らしいな・・・

 

 「あの、善子ちゃんの様子は・・・」

 

 「あぁ・・・うん」

 

 ずら丸の問いに、津島母は困ったように苦笑するのだった。

 

 「元気は元気なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 『やってしまったああああああああああっ!?』

 

 家に上がらせてもらった俺達が最初に聞いたのは、津島さんの叫び声だった。

 

 『何よ堕天使って!?ヨハネって何!?うわあああああん!?』

 

 「・・・まぁこんな感じなのよ」

 

 津島さんの部屋であろうドアを指差し、溜め息をつく善子母。

 

 なるほど、これは重症だな・・・

 

 「浦の星の入学式の日からあんな感じなんだけど・・・何か心当たり無い?」

 

 「その日はクラスの皆の前で、自己紹介をやったんですけど・・・」

 

 「あぁ、『堕天使ヨハネ』で自爆したのね・・・」

 

 一を聞いて十を知る・・・全てを悟った津島母が頭を抱えた。

 

 「あの子、中学の時もそれでやらかしちゃってね・・・高校では同じ失敗をしないようにって意気込んでたんだけど・・・」

 

 「その割には、キャラが凄く仕上がってましたけど・・・」

 

 「『堕天使ヨハネ』は、最早あの子にとってキャラじゃないのよ。幼い頃からの設定を引きずった結果、『堕天使ヨハネ』は津島善子の一部に昇華されてしまったの」

 

 「・・・マジですか」

 

 意図的に演じてるキャラじゃなかったのか・・・恐るべし津島善子・・・

 

 「とりあえず、声をかけてみても良いですか?」

 

 「勿論。どうぞ」

 

 津島母の了承をもらい、ずら丸が部屋のドアをノックする。

 

 「善子ちゃーん?」

 

 『っ!?その声は花丸!?』

 

 津島さんの驚いた声が聞こえる。

 

 『どうしてここにいるのよ!?』

 

 「様子を見に来たずら。ルビィちゃんと天くんもいるずら」

 

 「こ、こんにちは・・・」

 

 「どうも」

 

 『うげっ!?』

 

 呻き声を上げる津島さん。

 

 『わ、私を笑いに来たんでしょ!?冷やかしなら帰って!』

 

 「いや、そんなつもりじゃ・・・」

 

 『うるさい!良いから帰って!』

 

 明確な拒絶。これは何を言っても聞いてもらえなさそうだな・・・

 

 「・・・ずら丸、ルビィちゃん、とりあえず今日は帰ろう。元気なのは分かったし」

 

 「ずら・・・」

 

 「そうだね・・・」

 

 意気消沈している二人。顔さえ見せてもらえず、ショックを受けているようだ。

 

 「ごめんね、せっかく来てくれたのに・・・」

 

 「こちらこそ、突然お邪魔してすいませんでした。あ、それと・・・」

 

 申し訳なさそうな津島母に、俺はカバンの中から紙束を取り出して渡した。

 

 「これ、ノートのコピーです。先週分の授業に関しては、一通りまとめておきました。授業で使ったプリントも余分に貰っておいたので、後で渡してあげて下さい」

 

 「そんなことまで・・・本当にありがとう」

 

 恐縮しながら受け取る津島母。俺は部屋のドアに向かって声をかけた。

 

 「じゃあ津島さん、また来るから」

 

 『来なくていい!』

 

 にべもない返事だった。やれやれ・・・

 

 「それじゃ、お邪魔しました」

 

 「本当にごめんなさい・・・来てくれてありがとう」

 

 津島母に見送られ、津島家を後にする俺達。これは時間がかかりそうだな・・・

 

 「・・・全然話せなかったね」

 

 暗い表情のルビィちゃん。

 

 「良かれと思って来たけど・・・津島さんにとっては迷惑だったのかな・・・」

 

 「・・・顔も見せてくれないなんて、思ってもみなかったずら」

 

 涙目のずら丸。

 

 「マル、余計なことしちゃったのかな・・・」

 

 俯いて歩く二人。俺は溜め息をつくと、歩いている二人の間にあえて割り込んだ。

 

 そのまま右手でずら丸の手を、左手でルビィちゃんの手を握る。

 

 「ずらっ!?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 驚いている二人。そんなことはお構い無しに、俺は二人の手を引いて歩いた。

 

 「俯いたまま歩くと危ないよ。ちゃんと前を向いて歩かなきゃ」

 

 「天くん・・・」

 

 「まぁ確かに、ちゃんとした話は出来なかったけど・・・とりあえず元気なのは分かったし、ノートのコピーも渡せたんだから。今回はそれで良しとしようよ」

 

 「今回はって・・・本当にまた行くつもりなの・・・?」

 

 「勿論」

 

 ルビィちゃんの問いに頷く俺。

 

 「今週の授業のノートをまとめて、また来週お邪魔するよ。津島さんが登校できるようになった時、授業についていけないのは困るだろうから」

 

 「どうして善子ちゃんの為にそこまで・・・」

 

 「・・・大切な友達なんでしょ」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑むずら丸。俺は苦笑いを浮かべた。

 

 「流石に俺だって、ただのクラスメイトの為にここまでしないよ。でもずら丸は俺の友達だし、困ってるのを放っておけないから」

 

 「じゃあ善子ちゃんの為じゃなくて、マルの為に・・・?」

 

 「そういうこと。まぁただでさえ一クラスしかないんだし、どうせなら誰も欠けてほしくないっていうのもあるけど」

 

 呆然としているずら丸。ルビィちゃんがニヤニヤしていた。

 

 「良いなぁ花丸ちゃん、大切に想ってくれる男の子がいて」

 

 「なっ!?ルビィちゃん!?」

 

 「あな~たと~、いる日~々が~、なににも代え~られ~ない~、た~い~せつ~♪」

 

 「天くん!?急にファ●モンの曲を歌わないでほしいずら!」

 

 顔を真っ赤にするずら丸。俺はひとしきり笑うと、握る手に優しく力を込めた。

 

 「せっかくだし、ケーキでも食べて行こっか。さっき良さそうなカフェあったよね」

 

 「賛成!ルビィもそのカフェ気になってたんだよね!」

 

 「マルも行くずら~!」

 

 今度は二人が俺の手を引く。苦笑しつつも、二人に手を引かれるがまま歩く俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は善子ちゃん回…と思いきや、そうでもなかったっていう回でしたね(笑)

ちなみに善子ちゃんのお母さんの名前は、完全に独断で決めました。

多分こういう名前じゃね?みたいな。

あと言い忘れてましたが、2話で出てきたクラス担任の赤城麻衣先生…

オリキャラです、はい。

アニメでは、善子ちゃんの自己紹介の時にチラッと担任の先生が映ってましたよね?

あの先生とは全く別人の先生を、勝手に配置してしまいました。

イメージ的には、『艦これ』の赤城さんですね(そのまま)

今後出番がきっと多分恐らくメイビーあるはずなので、覚えておいていただけると幸いです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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人から必要とされるのは幸せなことである。

投稿間隔が空いてしまった・・・

頑張って投稿していかねば・・・


 翌日。

 

 「そんなわけで、梨子ちゃんもスクールアイドルやることになったんだよ!」

 

 「どんなわけですか」

 

 千歌さんにツッコミを入れる俺。

 

 いきなり一年生の教室に来て、何を言い出すのかと思ったら・・・

 

 「まさか千歌さん、梨子さんを脅迫したんじゃないでしょうね?」

 

 「天くんには私がどういう人間に見えてるの!?」

 

 「目的の為なら手段を選ばない極悪非道な人間」

 

 「私が天くんに何をしたっていうの!?」

 

 ギャーギャー騒いでいる千歌さんはスルーして、俺は梨子さんへと視線を移した。

 

 「梨子さん、良いんですか?」

 

 「うん、自分で決めたから」

 

 ニッコリ笑う梨子さん。

 

 「色々と思うところもあって、一緒にやらせてもらうことにしたの。やるからには一生懸命頑張るわ」

 

 「・・・そうですか」

 

 どうやら、本当に自分の意思で決めたらしい。

 

 どういう心境の変化があったかは分からないが、表情も明るいし心配は要らないだろう。

 

 「ってことは、これで部員が三人・・・あと二人ですね」

 

 「あと二人かぁ・・・集まるかなぁ・・・」

 

 自信無さげな曜さん。と、そこでふと俺の顔を覗き込んでくる。

 

 「どうかしました?」

 

 「いや・・・天くんが入部してくれたらなぁって」

 

 「「え?」」

 

 ポカーンとしている千歌さんと梨子さん。

 

 「何言ってるの曜ちゃん?天くんは生徒会役員だよ?」

 

 「生徒会役員でも、部活に所属することって可能だよね?」

 

 「可能ですね」

 

 「そうなの!?」

 

 曜さんの問いに答えると、千歌さんが目を見開いて身を乗り出してきた。

 

 「そりゃそうですよ。部活の兼任だって可能なんですから」

 

 「ハッ!?そういえばそうだった!?」

 

 「ちょ、ちょっと待って!?スクールアイドルって女子限定なんじゃ・・・」

 

 「アイドルとしてじゃなくて、マネージャーとして入部してもらえば良いじゃん」

 

 「その手があったわ!?」

 

 千歌さんや梨子さんも納得している。曜さんが目を輝かせて俺を見ていた。

 

 「天くん、スクールアイドル部に入らない!?」

 

 「オコトワリシマス」

 

 「即答!?」

 

 ショックを受けている曜さん。俺は溜め息をついて曜さんを見た。

 

 「部を立ち上げる為に、マネージャーで人数稼ぎをするのはいかがなものかと思いますよ?ただでさえスクールアイドル部に反対しているダイヤさんの心証は、より一層悪くなると思います」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「部を立ち上げる為に必要な五人は、スクールアイドルとして活動するメンバーを集めるべきです。そもそもまだ活動さえしてないのに、マネージャーとか要らないでしょう」

 

 「お、仰る通りです・・・」

 

 「どうしてもマネージャーが欲しいなら、スクールアイドル部が正式に設立されてから探して下さい。分かりましたか?」

 

 「はい、すいませんでした・・・」

 

 いつの間にか、教室の床に正座している曜さん。

 

 いや、別にそこまでは求めてないんだけど・・・

 

 「ねぇ梨子ちゃん・・・天くんが生徒会長に見えるんだけど」

 

 「奇遇ね千歌ちゃん・・・私も同じことを思ったわ」

 

 何やらヒソヒソと話している千歌さんと梨子さん。俺は二人に笑みを向けた。

 

 「他人事みたいな顔してますけど、お二人も曜さんの意見に納得してましたよね?」

 

 「「すいませんでした!」」

 

 曜さんと並んで正座する二人。

 

 この後クラスメイト達から、『先輩に土下座させた男』として畏怖の視線を向けられる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「新しい理事長、ですか?」

 

 「えぇ、来週からお見えになるそうです」

 

 頷くダイヤさん。

 

 放課後に生徒会の仕事を片付けていた俺達は、一区切り付いたところで休憩していた。

 

 お茶を飲みながら雑談していた時、ダイヤさんがそんな話を切り出してきたのだった。

 

 「前任の理事長は三月で退職して、四月から新しい理事長が就任したのですが・・・何でも『日程の都合が付かない』とかで、まだ一度も学校に来ていないのです」

 

 「あぁ、そういえば会ってませんね」

 

 「全く、一体どんな人なのやら・・・」

 

 溜め息をつくダイヤさん。まぁ理事長が一度も学校に来ていないというのは、ちょっとよろしくないとは思う。

 

 「じゃあ、俺を呼んだのって新しい理事長なのかな・・・」

 

 「呼んだ?天さんは誰かに呼ばれて、浦の星に入学したのですか?」

 

 首を傾げるダイヤさん。あれ・・・?

 

 「ダイヤさん、俺が入学することになった経緯は聞いてないんですか?」

 

 「えぇ、何も・・・テスト生として天さんが入学することは聞かされましたが、何故天さんが選ばれたのかについては聞いていないのです」

 

 「マジですか・・・」

 

 それで良いのか浦の星・・・せめて生徒会長には経緯ぐらい説明しなさいよ・・・

 

 「・・・とりあえず説明しておきますね。そもそものキッカケは、俺が通っていた中学の理事長でした。理事長は浦の星の関係者の方と知り合いらしくて、浦の星の生徒数が減少していることについて相談を受けていたみたいなんです」

 

 「まぁ、かなり深刻な問題ですからね・・・それで?」

 

 「その問題の解決策について話し合っている中で、共学化という手段があるんじゃないかという話になったらしくて。まずはテスト生として男子生徒を受け入れてみて、様子を見てみようという結論に至ったようなんです。そこで白羽の矢が立ったのが、理事長と仲の良かった俺だったという感じですね」

 

 「あら、理事長さんと仲がよろしかったのですか?」

 

 「まぁ色々ありまして」

 

 苦笑する俺。実際、あの人には凄くお世話になったしな・・・

 

 「俺は理事長からテスト生の話を持ちかけられて、引き受けることを決めまして。それで俺がテスト生として、浦の星に入学することが決まったんです」

 

 「なるほど・・・ん?では先ほどの、『呼んだ』という話は一体?」

 

 首を傾げるダイヤさん。そう、そこが俺も気になっているところなのだ。

 

 「・・・実は俺、その関係者の方と一度も会ってないんです」

 

 「え・・・?」

 

 「それどころか、筆記試験や面接さえ受けてないんです」

 

 「はい!?」

 

 驚くダイヤさん。そりゃそうだよなぁ・・・

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!?いくらその理事長さんが推薦したとはいえ、それはおかしいでしょう!?筆記試験はともかく、面接は顔合わせの意味でも必要なのでは!?」

 

 「俺もそう思って、理事長に聞いたんですよ。そしたら理事長曰く、『関係者の方が天くんに来てほしいと言っている。試験なんて要らないらしい』とのことでして・・・」

 

 「・・・有り得ませんわ」

 

 頭を抱えるダイヤさん。

 

 「つまりそうまでして、天さんに来てもらいたかったいうことですか・・・それは確かに、『呼んだ』に近いですわね・・・」

 

 「でしょう?しかも試験免除を決められる権限を持っているということは、それこそ理事長ぐらいだと思ったんですけど・・・」

 

 「確かに・・・ですがその話が決まったのは、前理事長の就任期間中でしょう?新理事長は関係ないのでは?」

 

 「ですよねぇ・・・でも、前理事長ではないですよね?退職されたわけですし」

 

 「それは間違いありませんわ。私が天さんの話を聞いたのは前理事長からでしたが、自分が決めたわけではないとおっしゃっていましたから」

 

 「・・・謎ですね」

 

 「・・・謎ですわね」

 

 ダイヤさんと顔を見合わせる。関係者の方って、一体誰なんだ・・・

 

 「天さんの中学の理事長さんには、そのことについて聞かなかったのですか?」

 

 「聞きましたけど、『行けば分かる』って言われまして・・・」

 

 あの時の理事長の面白そうな笑み・・・絶対何か隠してるんだよなぁ・・・

 

 「ですが天さん、よくテスト生の話を引き受けましたね?今の話を聞くかぎり、色々と怪しげな点がありますが・・・」

 

 「試験免除に惹かれたので」

 

 「そこですの!?」

 

 「当然でしょう。入学が確約されてるんですよ?おかげで同級生達が受験に向けて勉強している中、これ見よがしに遊びまくることが出来ました」

 

 「もの凄く恨まれそうですわね!?」

 

 「ハハッ、まさか。皆はいつも笑顔で俺に、『くたばれ』『バルス』って話しかけてきてくれましたよ」

 

 「間違いなく恨まれてますわよねぇ!?」

 

 「冗談ですよ」

 

 俺は笑うと、急須に入っていたお茶を湯呑みに注いだ。

 

 「まぁ一番の理由は、理事長に頼まれたからですね。『嫌なら断ってくれて構わない』とは言われましたけど・・・俺で力になれるなら、是非とも引き受けたいと思ったので」

 

 「・・・理事長さんのこと、大切に思われているのですね」

 

 「えぇ、まぁ・・・」

 

 ダイヤさんに優しげな笑みを向けられ、少し照れ臭くなってしまった。どうにも気恥ずかしいな・・・

 

 「とりあえず、以上がテスト生になった経緯です。何か理事長のコネで入学したみたいで、話していてちょっと気が引けましたけど・・・」

 

 「気にする必要はありませんわ。倍率の高い超難関校ならともかく、浦の星は生徒数が減少している学校ですから。入学方法がコネだろうが、気にする人などいないでしょう」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「それに・・・私はテスト生が天さんで良かったと、心から思っていますわ。天さんの中学の理事長さんと、浦の星の関係者の方とやらに感謝しなければなりませんわね」

 

 「ダイヤさん・・・心の底から愛してます」

 

 「そ、そういうセリフを軽々しく口にしてはいけませんっ!」

 

 赤面しながら怒るダイヤさん。そんなダイヤさんを見ながら、浦の星に来て良かったと思う俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

最近、『ラブライブ!サンシャイン!!』のBlu-rayを買い始めました。

収録されている特典映像に、Aqoursの声優さん達が出演しているのですが…

しゅかしゅーさん可愛すぎる( ´∀`)

あと、ありしゃ様が美しい(・∀・)ノ

着々とAqoursにのめり込んでいる今日この頃です(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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人に裏切られるのは辛いことである。

先に謝っておきます…

鞠莉ちゃん推しの方々、大変申し訳ありません…


 翌日・・・

 

 「緊張するなぁ・・・」

 

 理事長室の前でドキドキしている俺。今朝ダイヤさんから連絡があり、放課後に新理事長との顔合わせがあると告げられたのだ。

 

 一体どんな人なんだろう・・・

 

 「・・・よし」

 

 覚悟を決めてドアをノックする。

 

 「どうぞ~」

 

 中から女性の声がした。新理事長の声かな・・・?

 

 「し、失礼します・・・」

 

 恐る恐るドアを開け、理事長室へと足を踏み入れた瞬間だった。

 

 「シャイニー!」

 

 「うおっ!?」

 

 いきなりタックルをくらい、思わずその場に倒れ込んでしまう。

 

 「な、何事・・・?」

 

 痛みを堪えながら上体を起こすと、誰かが俺に抱きついていた。ブロンドのセミロングヘアを、三つ編みのカチューシャのように結っている女子だ。

 

 浦の星の制服を着ているので、この学校の生徒だと思うのだが・・・

 

 「天!お久しぶりデース!」

 

 顔をガバッと上げ、満面の笑みで俺を見つめる女子生徒。

 

 ん・・・?

 

 「えーっと・・・どちら様ですか?」

 

 「What!?覚えてないの!?」

 

 女性がショックを受けている。いや、俺の知り合いに金髪美少女なんて・・・

 

 一応いるけど、この人ではないはずだ。

 

 「ちょっと!?いきなり何をしているのですか!?」

 

 先に来ていたであろうダイヤさんが抗議する。よく見ると千歌さん、曜さん、梨子さんまでいるし・・・

 

 梨子さんは何故かジト目でこっちを見てるけど。

 

 「・・・天くんって、年上の女性に抱きつかれやすい体質なの?」

 

 「そんな体質だったら幸せなんですけどね。梨子さんも抱きつきます?」

 

 「抱きつきません!」

 

 そっぽを向いてしまう梨子さん。

 

 どうやらご機嫌斜めみたいなので放置して、俺に抱きついているパツキンのチャンネーへと目を向ける。

 

 「で、どちら様ですか?」

 

 「・・・本当に分からないの?」

 

 さっきまでの笑みから一転、寂しそうな表情で俺を見る女子。

 

 何だろう、もの凄い罪悪感に襲われてるんだけど・・・

 

 「鞠莉さん!いいから早く天さんから離れなさい!」

 

 怒っているダイヤさん・・・ん?

 

 「鞠莉・・・?」

 

 今ダイヤさんが呼んだ名前・・・それにこの独特の髪型・・・側頭部に数字の『6』のような形で髪を結ってある・・・

 

 あれ・・・?

 

 「えぇ!?鞠莉ちゃん!?小原鞠莉ちゃん!?」

 

 「Yes!やっと思い出してくれた!」

 

 嬉しそうに俺を抱き締める女子・・・小原鞠莉。おいおいマジか・・・

 

 「大きくなったね、天!」

 

 「鞠莉ちゃんの方こそ、すっかり大人の女性って感じになっちゃって」

 

 特に俺の身体に押し付けられている、この二つの大きく柔らかいモノ・・・ずら丸や果南さんより大きいのでは・・・

 

 「っていうか、何で鞠莉ちゃんがここに?」

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 俺と鞠莉ちゃんが話していると、ダイヤさんが慌てて割り込んでくる。

 

 「その話に入る前に、お二人の関係についてお聞きしたいのですが!?お二人はお知り合いなのですか!?」

 

 「えぇ、幼馴染です」

 

 ダイヤさんの質問に答える俺。

 

 「母親同士が友人関係で、小さい頃は家族ぐるみの付き合いをしてたんです。まぁ鞠莉ちゃん達が引っ越してからは、会う機会もなくて疎遠になってたんですけど」

 

 「最後に会ってから、もう十年近く経つもんねぇ・・・」

 

 しみじみとしている鞠莉ちゃん。時が経つのは早いなぁ・・・

 

 「っていうか鞠莉ちゃん、浦の星の制服着てるけど・・・まさか転校してきたの?」

 

 「No!私は元々、浦の星の生徒デース!」

 

 「マジで!?」

 

 「マジですわ」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 「留学の為に海外へ行っていたのですが、このタイミングで戻ってきたようです・・・理事長として」

 

 「ヘぇ・・・ん?」

 

 今ダイヤさん、何か凄いこと言わなかった?

 

 「・・・理事長が何ですって?」

 

 「例の新理事長というのは・・・鞠莉さんのことだそうです」

 

 「・・・ダイヤさんでも冗談を言う時ってあるんですね」

 

 「・・・冗談であってほしかったのですけどね」

 

 苦い顔のダイヤさんに対し、鞠莉ちゃんがドヤ顔で一枚の紙を見せてくる。

 

 「これが証拠デース!」

 

 「・・・嘘やん」

 

 それは鞠莉ちゃんが理事長に就任したことを証明する任命状だった。おいおい・・・

 

 「鞠莉ちゃん・・・今すぐ警察に出頭しよう」

 

 「Why!?」

 

 「小原家の力で前理事長を亡き者にするなんて・・・それで鞠莉ちゃんは満足なの?」

 

 「勝手に前理事長を殺さないで!?天は小原家を何だと思ってるの!?」

 

 「成金一族」

 

 「それは否定できないけども!」

 

 鞠莉ちゃんの父親はリゾートホテルチェーンを経営している富豪で、鞠莉ちゃんはいわゆる御嬢様というやつだ。

 

 昔からそうだったが、この人達は基本的にお金の力に頼ることが多い。普通なら有り得ない現役女子高生理事長が誕生したのも、恐らく小原家の財力によるものだろう。

 

 「どうせ小原家が浦の星に多額の寄付を納めてるとかで、学校の運営に顔が利くんでしょ?それで鞠莉ちゃんの理事長就任をゴリ押ししたってところじゃないの?」

 

 「・・・君のような勘のいいガキは嫌いだヨ」

 

 「どこの錬金術師?っていうか、嫌いならそろそろ離れてくんない?」

 

 「It`s joke!天のことは大好きデース!」

 

 俺の頬に頬ずりしてくる鞠莉ちゃん。スキンシップが激しいな・・・

 

 「それで?何で留学から戻ってきて、いきなり理事長になったりしたの?」

 

 「浦の星にスクールアイドルが誕生したって聞いて、ダイヤに邪魔されちゃ可哀想だから応援してあげようと思って」

 

 「本当ですか!?」

 

 嬉しそうな千歌さん。生徒会長であるダイヤさんに反対されていることもあって、理事長である鞠莉ちゃんの応援はかなり心強いんだろう。

 

 「Yes!デビューライブにはアキバドームを用意してみたわ!」

 

 「何やってんの!?」

 

 アキバドームといったら、ラブライブの決勝が行なわれるほどのステージだ。そこでデビューライブって・・・

 

 「そんな!?」

 

 「いきなり!?」

 

 「嘘でしょう!?」

 

 「き、奇跡だよ!」

 

 曜さん・梨子さん・ダイヤさんが絶句している中、顔を輝かせている千歌さん。そんな千歌さんを見て、鞠莉ちゃんは満面の笑みを浮かべ・・・

 

 「It`s joke!」

 

 「えぇっ!?」

 

 「「「「・・・ですよねー」」」」

 

 千歌さんがショックを受ける中、溜め息をつく俺・曜さん・梨子さん・ダイヤさん。

 

 小原家の財力なら、アキバドームだろうが貸し切りに出来るだろうからなぁ・・・一瞬本気かと思ったけど、流石にそれはないか・・・

 

 「実際に用意するステージは、もっと身近な場所デース!」

 

 「身近・・・?」

 

 「どこですか・・・?」

 

 曜さんと梨子さんの問いに、鞠莉ちゃんはウインクしながら答えるのだった。

 

 「フフッ、それはね・・・」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「ステージって・・・ここですか?」

 

 私達が鞠莉さんに連れられてきた場所は、浦の星の体育館だった。

 

 「Yes!ここが貴方達のデビューライブを開催する場所デース!」

 

 頷く鞠莉さん。

 

 「ここを満員にできたら、人数に関わらず部として承認してあげるわ」

 

 「なっ!?」

 

 「本当ですか!?」

 

 驚くダイヤさんに対して、千歌ちゃんは喜びを抑えきれないようだった。

 

 まぁ念願だったスクールアイドル部を設立できるかもしれないチャンスだし、喜ぶなという方が無理だとは思う。

 

 「鞠莉さん!?何を勝手に・・・」

 

 「理事長権限よ。ダイヤは黙ってて」

 

 「ぐっ・・・!」

 

 鞠莉さんを睨みつけるダイヤさん。この二人、何か因縁でもあるのかしら・・・

 

 「ただし、一つ条件があります」

 

 私達を見回す鞠莉さん。条件・・・?

 

 「もし満員にできなかったら・・・その時は解散してもらいます」

 

 「「「えぇっ!?」」」

 

 まさかの解散宣告に驚く私達。

 

 こんなに広い体育館を満員に・・・果たして私達に出来るだろうか・・・

 

 「嫌なら断ってくれて結構よ?どうする?」

 

 挑発的な態度をとる鞠莉さん。この人、本当に私達を応援する気があるのかしら・・・

 

 「・・・千歌ちゃん、どうする?」

 

 「やるしかないよ!他に手があるわけじゃないんだし!」

 

 鞠莉さんの挑発的な態度に燃えたのか、意気込んでいる千歌ちゃん。

 

 確かに千歌ちゃんの言う通り、他に手があるわけじゃない。やるしかないわね・・・

 

 「ヨーソロー!了解であります!」

 

 「頑張りましょう!」

 

 曜ちゃんと私も応える。それを見て、鞠莉さんはニッコリと笑った。

 

 「では、行なうということで良いかしら?」

 

 「はい、やります!」

 

 「よろしい」

 

 千歌ちゃんの返事に頷くと、鞠莉さんは天くんの方を見た。顔合わせが済んだので帰ろうとした天くんを、鞠莉さんはわざわざ引き止めてここへ連れてきたのだ。

 

 この二人は幼馴染らしいけど、それにしては距離が近すぎないかしら・・・さっきだって、鞠莉さんはずっと天くんにくっついたままだったし・・・

 

 って、何で私はそんなことを気にしているのかしら・・・

 

 「天、貴方にお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 首を傾げる天くんに、鞠莉さんは微笑みながら口を開いた。

 

 「この子達のマネージャーになってちょうだい」

 

 「・・・は?」

 

 「ちょっと待って下さい!?」

 

 驚いている天くん。そこへダイヤさんが慌てて割り込んだ。

 

 「天さんは生徒会役員です!勝手に決められては困りますわ!」

 

 「生徒会の仕事は、毎日あるわけじゃないでしょう?それに生徒会役員でも、部活の兼任は可能なはずよ?他の生徒会役員達だって兼任してるじゃない」

 

 「それはそうですが・・・!」

 

 「鞠莉ちゃん、悪いけどそのお願いは断らせてもらうよ」

 

 苦笑しながら言う天くん。

 

 「そもそもスクールアイドル部は、まだ承認されてもいない部活でしょ?マネージャーなんて早いと思うけど?」

 

 そう、昨日も天くんはそう言っていた。確かにまだ私達は本格的な活動も出来ていないし、マネージャーなんて早いと思う。

 

 昨日は曜ちゃんに乗せられて、『天くんが入ってくれたら』なんて思ってしまったけれど・・・

 

 「それに俺、マネージャーの仕事なんて・・・」

 

 「出来ない、とは言わせないわよ」

 

 不敵な笑みを浮かべる鞠莉さん。

 

 「スクールアイドルのマネージャーなんて・・・天にはお手の物でしょう?」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む天くん。スクールアイドルのマネージャーがお手の物・・・?

 

 「私が何も知らないと思った?私達は疎遠になってしまったけど、貴方のお母様と私のママは今でも連絡を取り合っているのよ?」

 

 「・・・あのお喋りクソババア」

 

 悪態をつく天くん。表情が歪んでいる。

 

 「この子達を、マネージャーとして支えてあげてほしいの。天なら出来るでしょ?」

 

 「出来ないよ」

 

 鞠莉さんの言葉をバッサリ切り捨てる天くん。

 

 「俺で力になれることがあるなら、協力したいとは思ってる。でもマネージャーにはならないし、スクールアイドル部に入る気も無い。鞠莉ちゃんの頼みでも、それは聞けない」

 

 明確な拒絶。鞠莉さんが溜め息をつく。

 

 「そう・・・それなら幼馴染の小原鞠莉としてではなく、理事長の小原鞠莉として貴方に命令するわ。この子達のマネージャーになりなさい。さもなくば、貴方を浦の星から追放します」

 

 「鞠莉さん!?何を言い出すのですか!?」

 

 ダイヤさんが鞠莉さんに食ってかかる。

 

 「理事長が一生徒に何かを強要するなど、あってはなりませんわ!そもそも、正当な理由もなく追放など出来るわけが・・・」

 

 「共学化を白紙に戻せば良い話よ。そうすれば天は、浦の星から出ていかざるをえなくなるわ。そして小原家は、浦の星の運営に顔が利く・・・それくらい十分に可能よ」

 

 「正気ですの貴女!?」

 

 「至って正気よ。そもそも、天を浦の星に呼んだのは私なんだから」

 

 「「なっ!?」」

 

 驚いている天くんとダイヤさん。鞠莉さんが天くんを呼んだ・・・?

 

 「天の中学の理事長さんから天を推薦された時、運命だと思ったわ。天がいれば、私の願いはきっと叶う・・・そう思ったわ」

 

 「願い・・・?」

 

 訝しげな天くんに対し、悲しそうに微笑みながら何も答えない鞠莉さん。

 

 一方、ダイヤさんはわなわなと身体を震わせていた。

 

 「鞠莉さん、貴女・・・最初から利用するつもりで、天さんを浦の星に呼んだというのですか・・・!」

 

 「・・・その通りよ」

 

 乾いた音が体育館に響く。ダイヤさんが鞠莉さんの頬を引っ叩いていた。

 

 「見損ないましたわッ!天さんは貴女の幼馴染なのでしょう!?その天さんを利用する為に呼んだですって!?恥を知りなさいッ!」

 

 「・・・天、貴方ずいぶんダイヤに好かれたのね。こんなダイヤ初めて見るわ」

 

 叩かれた頬を押さえ、天くんへと視線を移す鞠莉さん。

 

 「いくら蔑まれようと、私は要求を変えるつもりは無いわ。天、マネージャーになりなさい。私は本気よ」

 

 「鞠莉さん!?いくら何でもそんな無理矢理・・・」

 

 「そうですよ!私達だってそんなやり方は望んで・・・」

 

 「貴女達は黙ってて。天がマネージャーにならないと言うのなら、さっきのデビューライブの件も白紙にするわ。部の承認もしません」

 

 「そんな!?」

 

 千歌ちゃんと曜さんに冷たい眼差しを向ける鞠莉さんに、私も黙っていられなかった。

 

 こんな状況、天くんがあまりにも可哀想すぎる。やりたくもないマネージャーをやれと強要され、断れば学校からの追放及び私達を不利な状況に追い込むと脅されているのだ。

 

 こんなのって・・・

 

 「・・・分かりました」

 

 溜め息をつく天くん。

 

 「引き受けますよ・・・マネージャー」

 

 「天くん!?本当に良いの!?」

 

 「仕方ないでしょう。それ以外の選択肢が無いんですから」

 

 私の言葉に、天くんが苦笑する。

 

 「せっかく浦の星に来たのに、追放されたくありませんから。スクールアイドル部だって、ちゃんと立ち上げてほしいですし」

 

 「天くん・・・」

 

 千歌ちゃんと曜ちゃんも、悲痛な表情を浮かべていた。マネージャーになってほしいとは思ったけど、こんなやり方するなんて・・・

 

 「・・・感謝するわ、天」

 

 鞠莉さんが天くんに触れようと手を伸ばし・・・思いっきり弾かれた。

 

 「・・・触らないで下さい」

 

 「そ、天・・・?」

 

 鞠莉さんを見る天くんの目は、見たこともないほど冷たいものだった。その目に見つめられた鞠莉さんは、怯えたように一歩下がる。

 

 「マネージャーの件、確かに引き受けました。ただし条件があります」

 

 「な、何かしら・・・?」

 

 「まず一つ目・・・スクールアイドル部が設立された場合でも、スクールアイドル部への所属を強要しないこと。マネージャーとしての仕事はするつもりですが、スクールアイドル部に所属するつもりはありませんので。勿論設立されなかった場合は、マネージャーは辞めます。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・マネージャーの仕事をしてくれるなら、所属までは強要しないわ」

 

 天くんの言葉には、感情が全くこもっていなかった。まるで機械音声のようだ。

 

 「二つ目・・・生徒会の仕事の優先を許可すること。俺の所属はあくまでも生徒会ですので、そちらが最優先です。よろしいですね?」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 鞠莉さんが恐る恐る頷く。今の天くんがよほど怖いらしい。

 

 「そして三つ目・・・貴女がどこまでこれまでの俺を知っているのか、俺も把握はしていませんが・・・」

 

 鞠莉さんを睨みつける天くん。

 

 「他の人達に、俺の情報は一切話さないこと・・・よろしいですね?」

 

 「わ、分かったわ・・・」

 

 「・・・では、マネージャーを引き受けます。不本意ではありますが」

 

 踵を返し、体育館の出口へと歩いていく天くん。

 

 「そ、天っ!」

 

 「人を気安く名前で呼ばないで下さい・・・小原理事長」

 

 名前を呼ぶ鞠莉さんに冷たく返した天くんは、忌々しそうに吐き捨てた。

 

 「俺は今、この学校に来てしまったことを・・・心の底から後悔してますよ」

 

 その言葉は、私達の胸に深く突き刺さるのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、ようやく鞠莉ちゃんが登場しましたが…

すみません、いきなり横暴な態度をとっております…

しばらくは天が鞠莉ちゃんに冷たくなるかと思いますが、物語の都合上何卒ご理解下さいませ(>_<)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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支えてくれる人の存在は大きい。

『想いよひとつになれ』ってメッチャ良い曲ですよね。

アニメではサビの部分で善子ちゃんがウインクしてて、ハートをズッキュンされました。


 「・・・ハァ」

 

 俺は溜め息をつきながら、廊下を歩いていた。頭の中で、先ほどの小原理事長との会話が繰り返し流れている。

 

 「あの女・・・!」

 

 思い出す度に怒りがこみ上げてくる。

 

 なりふり構わず俺を脅し、千歌さん達のマネージャーを務めることを強要してくるなんて・・・流石は富豪の令嬢、権力を持っている者の脅しは一味違うようだ。

 

 だが・・・

 

 「・・・悲しそうだったな」

 

 あの悲しげな笑みが頭から離れない。恐らく、俺を脅してでもマネージャーにしたい理由があるのだろう。

 

 それでも、今回のことを許すことは出来ないが。

 

 「・・・もう訳が分かんない」

 

 頭の中がグチャグチャで、全く整理できない。とにかく今は帰って寝よう。

 

 そう思い、鞄を取りに教室へと戻ると・・・

 

 「あれ?天くん?」

 

 「ずら丸?」

 

 ずら丸が一人で席に座り、本を読んでいた。

 

 「帰ってなかったの?」

 

 「今日は図書委員会の仕事だったずら」

 

 「あぁ、図書室の受付か」

 

 図書委員会の生徒は当番制で、週に何度か図書室の受付をやっている。ずら丸もクラス代表として図書委員会に所属しており、今日がその当番の日だったらしい。

 

 「で、何で教室で本読んでんの?」

 

 「天くんと一緒に帰ろうと思って」

 

 微笑むずら丸。

 

 「当番が終わって教室に戻ってきたら、天くんの鞄が置いてあったから。天くんが戻ってくるのを、読書しながら待ってたずら」

 

 「マジか・・・結構待たせた?」

 

 「今来たところずら」

 

 「何そのデートの待ち合わせで男が言いそうなセリフ」

 

 「マルは女ずら」

 

 「知ってるわ」

 

 笑いながらツッコミを入れる。と、ずら丸が怪訝な表情で俺を見た。

 

 「・・・何かあったずら?」

 

 「え、何で?」

 

 「・・・酷い顔してるずら」

 

 「うわ、顔をディスられた。傷付くわぁ」

 

 「天くん」

 

 いつになく強い口調で、俺の名前を呼ぶずら丸。

 

 「無理して茶化すのは止めるずら。辛いのは天くんの方ずら」

 

 「・・・そうでもしなきゃやってられないよ」

 

 力なく席に座る俺。

 

 「頭の中がゴチャゴチャで、何も考えたくない・・・何かもう疲れたよ・・・」

 

 どうして小原理事長があんなことをしたのか・・・どうして俺がマネージャーをやらなければいけないのか・・・

 

 「何で・・・どうして・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろからずら丸の声が聞こえたかと思うと、頭が柔らかいものに覆われる。

 

 俺はそこで初めてずら丸が俺の後ろに移動していたこと、そして後ろからずら丸に抱き締められていることに気付いた。

 

 「今は何も考えちゃダメずら。こういう時に深く考えちゃうと、どんどん良くない方に考えがいっちゃうずら」

 

 「ずら丸・・・」

 

 「今はただ、頭を空っぽにすること・・・マルに身を任せていれば良いずら」

 

 優しく抱き締めてくれるずら丸。ずら丸の温もりを感じ、心が安らいでいく。

 

 「・・・女の子なんだから、あんまり男にこういうことしない方が良いよ」

 

 「マルの男友達は天くんだけだから、他にこういうことする男の子なんていないずら。天くんだけの特権ずら」

 

 「・・・そっか。ありがたく受け取っとくよ」

 

 大人しくずら丸に身を任せる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったずらね・・・」

 

 神妙な表情のずら丸。

 

 俺は帰りのバスの中で、ずら丸に事情を説明していた。あそこまでしてもらった以上、ずら丸に何も話さないのは良くないと思ったのだ。

 

 「理事長さんも酷いことするずら・・・」

 

 「・・・正直、かなりショックだったよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「久しぶりに会えて嬉しかったし、向こうも純粋に喜んでくれてるんだと思ってた。でも実際は、俺を利用する為に浦の星に入学するように仕組んでたなんて・・・」

 

 「マネージャーを断れば、浦の星からの追放・・・それは断れないずらね」

 

 「いや、それだけで済むなら断ってたよ」

 

 「ずら!?」

 

 驚愕しているずら丸。

 

 「ど、どういうことずら!?」

 

 「別の学校に行くっていう選択肢があったってこと。ツテが無いわけじゃないから、受け入れてくれる学校なら見つけられると思うし」

 

 「じゃ、じゃあ何で・・・」

 

 「・・・スクールアイドル部の為、かな」

 

 もし俺が断れば、小原理事長はスクールアイドル部を認めないと言っていた。それでは千歌さんの夢が叶わないし、せっかく前向きになれた梨子さんの決意が無駄になってしまう。

 

 何より自分達のマネージャーを断ったせいで、俺が浦の星から追放されてしまったら・・・恐らくあの三人は、責任を感じてスクールアイドルを断念してしまうだろう。

 

 「せっかく見つけた目標を、こんなことで諦めてほしくないから。あの三人には、これからも真っ直ぐ突き進んでほしいし」

 

 「でも天くんが無理矢理マネージャーをやらされることに、先輩方が責任を感じてないとは思えないずら」

 

 「そこは先輩方とも話をするよ。さっきはちょっと冷静じゃなかったけど、ずら丸のおかげでずいぶん落ち着いたから」

 

 俺は笑いながら、隣に座るずら丸の頭を撫でた。

 

 「ありがとう。おかげで助かったよ」

 

 「マ、マルは当然のことをしただけずら・・・」

 

 ずら丸が顔を赤くしている。可愛い奴め。

 

 「・・・でも、天くんが浦の星に残ってくれて良かったずら」

 

 「え?」

 

 ずら丸の言葉に首を傾げる俺。ずら丸が優しく微笑む。

 

 「・・・せっかく仲良くなれたのに、離れちゃうのは寂しいずら」

 

 「っ・・・」

 

 思わずドキッとしてしまう。ニヤけるずら丸。

 

 「あれ、天くん顔が赤いずら。どうしたずら?」

 

 「ゆ、夕陽のせいだって!」

 

 「ふーん・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるずら♪」

 

 くっ、コイツ・・・完全に気付いてるな・・・

 

 「フフッ、天くんの弱点発見ずら♪」

 

 「・・・ここにずら丸の愛読書があります」

 

 「ずら!?マルが鞄に入れてた本!?いつの間に!?」

 

 「そしてここにマッチがあります・・・春とはいえ、日が暮れると冷えるよね」

 

 「ごめんなさいずらあああああっ!?堪忍ずらあああああっ!?」

 

 フッ、勝った・・・俺をからかおうなんて百年早いわ。

 

 「うぅ・・・天くんは鬼ずら・・・」

 

 「失礼な。悪魔と呼んでもらおうか」

 

 「余計に酷くなったずら!?」

 

 そんなやり取りをしていると、俺が降りるバス停に到着した。自分の鞄を持ち、席を立ってずら丸の方を見る。

 

 「じゃあまた明日」

 

 「また明日ずら」

 

 手を振ってくれるずら丸。

 

 俺はバスを降りようとしたが・・・一度立ち止まり、もう一度ずら丸の方を見る。

 

 「今日は本当にありがとう・・・花丸と友達で良かった」

 

 初めて名前を呼んだ。

 

 俺の言葉に、花丸は目をぱちくりさせると・・・頬を赤く染め、照れ臭そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「んー・・・とりあえず明日、千歌さん達と話さないとなぁ・・・」

 

 帰り道を歩きながら、どう話を切り出すかを考える。

 

 あの人達、絶対気にしてるだろうしなぁ・・・

 

 「わんっ!」

 

 考えながら歩いていると、犬の鳴き声が聞こえた。思わず顔を上げると、こちらへ向かって大きな犬が駆け寄ってくるところだった。

 

 「おぉ、しいたけ。ただいま」

 

 「わんっ!」

 

 嬉しそうに身体を摺り寄せてくる犬・・・しいたけの頭を優しく撫でる。

 

 と、しいたけの後から一人の女性が駆け寄ってきた。

 

 「ちょっとしいたけ、急にどうした・・・って天じゃん!今帰り?」

 

 「えぇ。こんばんは、美渡さん」

 

 明るいブラウン系の短い髪の女性に挨拶する。

 

 彼女は高海美渡さんといって、しいたけが飼われている旅館『十千万』の娘さんだ。『十千万』は学校の行き帰りで必ず通る為、毎日しいたけを構っていたら美渡さんとも挨拶する仲になったのだ。

 

 「学校の方はどうよ?彼女できた?」

 

 「欲しいのは山々なんですけど、全然フラグが建たないんですよね」

 

 「えー、だって男子は天だけなんでしょ?他は全員女子なんだから、選びたい放題じゃん。選り取りみどりじゃん」

 

 「女子達にも選ぶ権利があるでしょう。こんな冴えない男を選ぶぐらいなら、他校のイケメンを狙いに行くんじゃないですか?」

 

 「そうかなぁ?天は割りとイケてると思うよ?」

 

 「美渡~?」

 

 美渡さんと話していると、美渡さんの後ろから違う女性が現れた。黒髪ロングのおっとりとした雰囲気の女性が、しいたけとじゃれている俺に気付く。

 

 「そろそろ夕飯・・・って、天くんじゃない!お帰りなさい」

 

 「こんばんは、志満さん」

 

 彼女は高海志満さん、美渡さんのお姉さんだ。美渡さんと同じく挨拶する仲で、よくおすそ分けをいただいたりする。マジ女神。

 

 「志満さんは今日もお綺麗ですね」

 

 「フフッ、天くんったら上手なんだから」

 

 「本心ですって。俺が大人だったら放っておかなかったでしょうね」

 

 「あら、じゃあ天くんは私を放っておくのかしら?」

 

 「志満さんがその気なら、喜んでアタックさせていただきます」

 

 「ちょっと天、私の前で志満姉を口説かないでくれる?」

 

 「まだ口説いてませんよ。MK5(マジで口説く5秒前)です」

 

 「言葉が古くない!?アンタ高校生よねぇ!?」

 

 美渡さんのツッコミ。面白い人だなぁ・・・

 

 「美渡さんって、俺の先輩に似てますね。ツッコミが上手なんでボケやすいです」

 

 「いや、そこで判断されても・・・その先輩も大変ね・・・」

 

 同情的な表情の美渡さん。

 

 失礼な、これでも千歌さんのことは敬っているというのに。

 

 「そうだ天くん、良かったら夕飯食べていかない?」

 

 「いえ、そこまで甘えてしまうわけには・・・」

 

 「今日のメニューは肉じゃがなんだけど、ちょっと作りすぎちゃって」

 

 「ご相伴に預からせていただきます」

 

 「急に態度が変わったわね・・・」

 

 呆れている美渡さん。だって前におすそ分けでいただいた肉じゃが、メッチャ美味しかったんだもん。

 

 「フフッ、じゃあどうぞ」

 

 「お邪魔します」

 

 志満さんに案内され、『十千万』の中へと足を踏み入れる。

 

 「千歌ちゃ~ん、ご飯よ~」

 

 志満さんが二階に向かって呼びかける・・・え?

 

 「・・・は~い」

 

 やがて元気の無い様子で階段を下りてきたのは・・・紛れも無く千歌さんだった。

 

 「ごめん志満姉、私あんまり食欲無くて・・・って天くん!?何でここに!?」

 

 「・・・チェンジで」

 

 「何が!?」

 

 千歌さんのツッコミが響くのだった。




どうも~、ムッティです。

前回の話に、多くの感想をいただきました!

本当にありがとうございます!

意外にも『こういう展開好きです』という感想が多くて驚きました。

鞠莉ちゃん推しの方々から呪われるんじゃないかと思い、ちょっとビクビクしてたのはここだけの話…

前回の話はちょっとシリアスでしたが、今回からはまた思いっきりボケていきたいと思います(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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好きな人には好きって伝えるんだ。

タイトルは、Aqua Timezの『千の夜をこえて』から取りました。

あと、あいにゃさんが可愛すぎてヤバい。


 『十千万』の二階にある千歌さんの部屋で、千歌さんと俺は正座して向き合っていた。千歌さんからの連絡を受けたであろう曜さん・梨子さんも加わり、俺達四人はテーブルを囲む形で座っている。

 

 先ほどの一件もあり、部屋の中は重苦しい雰囲気で包まれて・・・

 

 「もぐもぐ・・・このクッキー・・・もぐもぐ・・・メッチャ・・・もぐもぐ・・・美味しい・・・もぐもぐ・・・流石は・・・もぐもぐ・・・志満さん・・・もぐもぐ・・・」

 

 「凄い勢いでクッキー食べてる!?」

 

 「口の中に物を入れた状態で喋らないのっ!」

 

 いなかった。

 

 梨子さんから注意されてしまったので、口の中のクッキーを紅茶で流し込む・・・うん、紅茶も美味しい。

 

 「ごめんなさい、お母さん」

 

 「誰がお母さんよ!?」

 

 「え、ママって呼んだ方が良いですか?」

 

 「そういう問題じゃないんだけど!?」

 

 「じゃあ間をとってオカンで」

 

 「だからそういう問題じゃないってば!?」

 

 ぜぇぜぇ息を切らしながらツッコミを入れてくれる梨子さん。

 

 「まぁ、疲れ切っている梨子さんは放置するとして・・・」

 

 「誰のせいよ!?」

 

 「それにしても、志満さんと美渡さんが千歌さんのお姉さんだったとは・・・」

 

 世の中狭いものである。知り合いのお姉さん達が、まさか学校の先輩の家族とは・・・

 

 「確かに苗字は『高海』だし、妹がいるとは聞いてたし、浦の星に通ってるとは聞いてたし、最近スクールアイドルにハマってるらしいとは聞いてたけど・・・まさかですね」

 

 「全然まさかじゃないよねぇ!?それ私しかいないよねぇ!?何で気付かないの!?」

 

 「いやぁ、鈍感なもので。すみません千歌さん・・・いや、義妹さん」

 

 「何で言い直したの!?」

 

 「俺が志満さんと結婚したら、美渡さんと千歌さんは俺の義妹になりますから」

 

 「こんな義兄さん嫌ああああああああああっ!?」

 

 梨子さんに続き、千歌さんもダウンして机に突っ伏す。仕方ないので、俺は右隣の曜さんに向き直った。

 

 「ところで曜さん、もう夜ですけど・・・ここに来てて良いんですか?バスが無くなって帰れなくなりません?」

 

 「あ、それは大丈夫。今日は千歌ちゃんの家に泊まらせてもらうから」

 

 大きめのリュックを持ち上げる曜さん。

 

 「千歌ちゃんから連絡もらって、大急ぎでお泊りの準備したんだよ。まさか千歌ちゃんの家に天くんが来るなんて、思ってもみなかったなぁ」

 

 「お騒がせしてすいません・・・梨子さんは大丈夫なんですか?」

 

 「うん。私の家は隣だから」

 

 「そうなんですか!?」

 

 マジか・・・っていうか、家の隣が旅館ってある意味凄いな・・・

 

 「それより、天くんこそ大丈夫なの?」

 

 机に突っ伏していた千歌さんが顔を上げる。

 

 「夕飯のこととか、家に連絡してる様には見えなかったけど・・・」

 

 「あ、一人暮らしなんで大丈夫です」

 

 「「「一人暮らし!?」」」

 

 三人の声がハモる。あれ、言ってなかったっけ?

 

 「俺、元々は家族と東京に住んでたんですよ。それが浦の星へ入学することになって、一人でこっちに引っ越してきたんです」

 

 「天くんも東京に住んでたの!?」

 

 「えぇ、一応」

 

 流石に梨子さん一家のように、家族で内浦に引っ越すことは出来なかったが。だから俺だけこっちに来たのだ。

 

 「だから志満さんからのおすそ分けって、ホントありがたいんですよね。一応料理は出来ますけど・・・人の作ってくれたものを食べられるって、凄く幸せなことですから」

 

 「天くん、これからはウチで夕飯食べていきなよ!」

 

 「私の家も大歓迎よ!いつでも来てくれて良いからね!」

 

 何故か涙目の千歌さんと梨子さん。あれ、同情されてる?

 

 「天くん、ウチにもご飯食べに来てね!」

 

 「いや、気持ちは嬉しいですけど・・・曜さんの家だと帰れなくなりますから」

 

 「お泊りでも大丈夫だよ!」

 

 「思春期の男子に対して、もう少し警戒心を持ってくれません?」

 

 呆れている俺に構わず、目を潤ませながら俺の手を握ってくる曜さん。いや、気持ちはメッチャ嬉しいんだけども。

 

 「まぁそれはさておき・・・とりあえず、マネージャーの件について話しましょうか」

 

 「「「っ・・・」」」

 

 俯く三人。やっぱり責任を感じているようだ。

 

 「まず最初に言っておきますが、俺がマネージャーをやるのは小原理事長に脅されたからです。悪いのは小原理事長であって、千歌さん達には何の非もありません。なので責任を感じる必要は無いですよ」

 

 「いや、でも・・・」

 

 「異論は認めません」

 

 千歌さんが申し訳なさそうに口を開くが、強引に遮る。

 

 「俺はスクールアイドルを目指す千歌さん達を応援してましたし、俺で力になれることがあるなら協力したいとも思ってました。スクールアイドル部に入ったり、マネージャーになったりするつもりはありませんでしたが・・・それでも、陰ながら支えていけたらって。だから『自分達がスクールアイドルをやろうとしたせいだ』なんて、絶対に思わないで下さい。そう思われることの方が、俺はよほど悲しいです」

 

 「天くん・・・」

 

 「・・・一つ、聞いても良いかしら?」

 

 梨子さんがおずおずと口を開く。

 

 「天くんならスクールアイドルのマネージャーなんてお手の物だって、あの時鞠莉さんが言ってたけど・・・どういう意味なのかな?」

 

 「・・・申し訳ないんですけど、今は話せません」

 

 「あ、言いたくないなら大丈夫よ!?無理に聞いたりしないから!」

 

 頭を下げる俺を見て、慌てる梨子さん。気を遣わせちゃったな・・・

 

 「・・・まぁとにかく。マネージャーをやることになったからには、精一杯やらせてもらいます。経緯が経緯なんで、正直複雑かとは思いますが・・・」

 

 「本当に良いの・・・?」

 

 曜さんが気遣わしげに俺を見ている。

 

 「あんなにマネージャーをやることを拒否してたのに・・・大丈夫なの?」

 

 「・・・曜さん」

 

 「何・・・?」

 

 「好きです」

 

 「うん・・・えぇっ!?」

 

 ビックリしている曜さん。顔がどんどん赤くなっていく。

 

 「きゅ、急にそんな・・・!」

 

 「あ、恋愛的な意味じゃないですよ。人としてです」

 

 「紛らわしいわっ!」

 

 勘違いが恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にしながら両手で顔を覆う曜さん。千歌さんと梨子さんが同情的な視線を送っている。

 

 「曜ちゃん、ドンマイ・・・」

 

 「天くん、今のは誰でも勘違いするわよ・・・」

 

 「そうですか?」

 

 まぁとりあえず、悶絶している曜さんは置いといて・・・

 

 「千歌さんのことも梨子さんのことも、俺は好きですよ。尊敬できる先輩だと思ってます。もしそう思ってなかったら、学校を追放されるとしてもマネージャーを引き受けたりしなかったでしょうね」

 

 さっき花丸にも言ったことだが、学校を追放されるだけなら俺はマネージャーを断っていた。それでもマネージャーを引き受けたのは、スクールアイドル部を立ち上げてほしかったから。

 

 それはつまり・・・尊敬できる先輩方に、夢を叶えてほしかったからだ。

 

 「俺がマネージャーをやりたくなかったのは、先輩方が嫌いだからじゃありません。まだ理由は言えませんけど、それでも・・・先輩方が好きだから、俺はマネージャーを引き受けたんです。それだけは覚えておいて下さい」

 

 「天くん・・・」

 

 涙目の千歌さん。俺は立ち上がると、三人に向かって頭を下げた。

 

 「さっきはちょっと感情的になって、場の空気を悪くしてしまってすみませんでした。マネージャーとして精一杯頑張りますので、これからよろしくお願いします」

 

 「っ・・・天くんっ!」

 

 「うおっ!?」

 

 勢いよく抱きついてくる千歌さん。思わずその場に倒れこんでしまう。

 

 「ごめんね・・・ひっぐ・・・ごめんね・・・!」

 

 「・・・はいはい、泣かないで下さい」

 

 苦笑しながら、泣いている千歌さんの頭を撫でる。

 

 「謝る必要なんか無いのに・・・千歌さんはお人好しですね」

 

 「・・・それは天くんもでしょ」

 

 優しい温もりに包まれる。梨子さんが後ろから俺を抱き締めていた。

 

 「天くんも謝る必要なんか無いのに・・・本当にお人好しなんだから・・・ぐすっ」

 

 「あれ、梨子さん泣いてます?」

 

 「泣いてないわよ・・・ぐすっ」

 

 確実に泣いてるじゃないですか・・・というツッコミは、流石に無粋だと思ったのでしなかった。

 

 「うわあああああんっ!天くうううううんっ!」

 

 「感情を微塵も隠す気の無い人が来た!?」

 

 俺、千歌さん、梨子さんをまとめて抱き締める曜さん。ちょ、苦しいんだけど・・・

 

 「皆で頑張ろうっ!スクールアイドル部を立ち上げようっ!」

 

 「ちょ、曜さん・・・分かったから落ち着いて・・・」

 

 「うわあああああんっ!」

 

 「・・・全然人の話聞いてないし」

 

 まぁ、不思議と悪い気はしてないけど。今は好きにさせておこう。

 

 「っていうか梨子さん、結局俺に抱きついてるじゃないですか。やっぱり俺、年上の女性に抱きつかれやすい体質なのかも」

 

 「か、勘違いしないでよね!?これはあくまで友愛的な意味でしてることだから!」

 

 「梨子ちゃん、今のは世間じゃツンデレって言われるセリフだよ?」

 

 「千歌ちゃん!?何よツンデレって!?私はデレてなんかないんだからね!?」

 

 「千歌さん聞きました?テンプレの台詞でしたよね?」

 

 「うん、やっぱり梨子ちゃんはツンデレなんだね」

 

 「だから違うってば!?」

 

 「うわあああああんっ!」

 

 最早カオスとも言うべき状況である。

 

 それでも・・・先輩方との距離が、少しだけ縮まったような気がした俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、とりあえず天がマネージャーになりましたね。

千歌ちゃん達とは良い感じに仲が深まっていますが、果たして鞠莉ちゃんとはどうなるのか…

そして海の音を聴いて以来、出番の無い果南ちゃんの登場はいつになるのか…

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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縁は大切にすべきである。

昨日は暑かったのに、今日はメッチャ寒い…

気温の変化が激しすぎてついていけない…


 「あっ・・・天くん・・・ダメ・・・!」

 

 「そんなこと言っちゃって・・・梨子さんなら、もっとイケるでしょう・・・?」

 

 「ダメ・・・それ以上は・・・あっ・・・!」

 

 「よし、イキますね・・・!」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 悲鳴を上げる梨子さんに構わず、俺はただ力を込め・・・

 

 「痛い痛い痛い!?天くん待って!?ホントギブ!ギブだから!」

 

 「梨子さんの悲鳴が聞けるなら、俺はいくらでもこの背中を押しますよ」

 

 「ドS!鬼!悪魔!」

 

 「おっと、力加減をミスりました」

 

 「いやああああああああああっ!?」

 

 梨子さんの背中を押していた。

 

 マネージャーを引き受けてから数日、俺は千歌さん達の練習に付き合っていた。今は練習前の柔軟体操をしており、俺は梨子さんとペアを組んで身体をほぐしているのだった。

 

 「天くん、ホント容赦ないよね・・・私もやられたけど、痛かったなぁ・・・」

 

 「そうかな?私はそんなことなかったけど?」

 

 千歌さんと曜さんも、そんな会話をしながら柔軟体操をやっている。まぁ曜さんは水泳部だけあって、身体も柔らかかったしな。

 

 「さて、これぐらいにしておきますか」

 

 「ハァ・・・ハァ・・・」

 

 練習場所の砂浜に突っ伏し、息切れしている梨子さん。やれやれ・・・

 

 「大丈夫ですか?練習はこれからですよ?」

 

 「天くんのせいでしょうが!」

 

 「梨子さんの身体が硬いせいです。だから頭も固いんですよ」

 

 「うぐっ・・・」

 

 悔しそうな梨子さん。どうやら自覚はあるらしい。

 

 「俺の知り合いのピアノやってる人は、キチンと柔軟体操を続けて身体が柔らかくなりましたよ。まぁ未だに頭は固いままですけど」

 

 「じゃあ関係ないじゃない!?」

 

 「でも、ピアノはメッチャ上手くなりました」

 

 「ちゃんと柔軟体操やらなくちゃ!」

 

 チョロい梨子さん。

 

 まぁ上手くなったというより、前より楽しそうにピアノを弾くようになったっていう話なんだけどね。柔軟体操も関係無いし。

 

 「さて、ランニングいきますか」

 

 「おー!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 千歌さんと曜さんが元気よく走り出し、その後を梨子さんと俺が追う。これがいつものランニングの陣形だった。

 

 「ライブ、絶対成功させるんだ!私達なら出来る!」

 

 息巻いている千歌さん。

 

 ライブの日まであまり時間も無いが、それまでに何とかスクールアイドルとしての形にはしたいところだ。会場を満員にできたとしても、パフォーマンスがダメなら小原理事長も納得しないだろう。

 

 そもそも、μ's大好きウーマンのダイヤさんがブチギレるだろうし・・・ん?μ's?

 

 「千歌さん、一つ聞いても良いですか?」

 

 「ん?何?」

 

 「グループの名前って決まってるんですか?」

 

 「・・・あっ」

 

 今『あっ』って言ったよこの人。完全に忘れてたパターンだよ。

 

 「ちゃんと決めた方が良いですよ。名前って結構重要ですから」

 

 「そうだよね・・・でも、どんな名前が良いかなぁ・・・」

 

 考え込む千歌さん。すると、曜さんが勢いよく手を上げた。

 

 「はいはーい!『制服少女隊』なんてどうかな!?」

 

 「無いかな」

 

 「無いわね」

 

 「無いですね」

 

 「えぇっ!?」

 

 全員から否定され、ショックを受ける曜さん。いや、まぁ何と言うか・・・

 

 「完全に曜さんの趣味が入ってますよね、それ」

 

 「良いじゃん!可愛いじゃん!」

 

 頬を膨らませる曜さん。

 

 曜さんは職業系の制服が大好きらしく、自分で作ったりもするんだとか。なのでライブの衣装は、曜さんが担当することになっている。

 

 「梨子ちゃんはどう?どんな名前が良いと思う?」

 

 「んー、そうねぇ・・・」

 

 千歌さんに尋ねられ、考え込む梨子さん。梨子さんならきっと、良いセンスのグループ名を考えてくれるだろう。

 

 「海で知り合った三人組ってことで、『スリーマーメイド』とか・・・」

 

 そんなことを考えていた時期が俺にもありました。

 

 「さぁ、そろそろペース上げましょうか」

 

 「「おー!」」

 

 「待って!?今の無し!無しだから!」

 

 顔を真っ赤にしてブンブン腕を振る梨子さん。やれやれ・・・

 

 「仕方ありません。言い出しっぺに決めてもらいましょうか」

 

 「え、天くんが決めてくれるの?」

 

 「脳天かち割りますよ、能天気オレンジヘッド」

 

 「メッチャ罵倒された!?私一応先輩だよねぇ!?」

 

 「早く考えないと、マジで『スリーマーメイド』にしますからね」

 

 「今すぐ考えなきゃ!?」

 

 「だからそれは無しだってば!?」

 

 ギャーギャー騒いでいる梨子さんは無視して、千歌さんが必死にグループ名を考える。と、曜さんが俺へと視線を向けてきた。

 

 「ちなみに、天くんはどんなグループ名が良いと思う?」

 

 「そうですねぇ・・・『シグナル』とかどうでしょう?」

 

 「お、ちょっとカッコ良いかも。ちなみに名前の由来は?」

 

 「イメージカラーですね。梨子さんがサクラピンク、千歌さんがオレンジ、曜さんがライトブルー・・・それぞれ赤・黄・青に近いですし、信号っぽいじゃないですか」

 

 「・・・うん、由来がちょっとアレかな。まぁ名前は悪くないと思うけど」

 

 「っていうか、私のイメージカラーはみかん色だから!オレンジじゃないから!」

 

 「そこに拘るんですか?」

 

 千歌さんのよく分からない拘りはさておき、他にも名前を考えてみる。

 

 「三人のイニシャルで考えるのはどうですか?千歌さんがC、曜さんがY、梨子さんがRだから・・・そう、例えば『CYaRon!』とか・・・」

 

 「「「それはダメ」」」

 

 「あれ?ダメでした?」

 

 結構良い名前だと思ったんだけど・・・

 

 「いや、良い名前だとは思うんだけどね・・・」

 

 「うん、良い名前なんだけど・・・何かダメな気がする」

 

 「上手く言えないんだけど・・・この三人のグループ名では無いわね」

 

 何故か微妙な表情をしている三人。まぁ皆がそう言うなら仕方ないか・・・

 

 「そういえば、μ'sはどうやって名前を決めたのかしら?」

 

 「ギリシア神話に登場する文芸の女神『ミューズ』が由来なんだって。『ミューズ』は九人の女神が存在するらしくて、そこから『μ's』っていう名前にしたみたい」

 

 「あれ?でもμ'sって、最初は三人だったんじゃなかったっけ?」

 

 「あっ、確かに・・・じゃあ何で『μ's』にしたんだろう?」

 

 ダイヤさんの問題に答えられなかったことがキッカケで、μ'sのことを熱心に調べるようになった千歌さんだったが・・・これは流石に分からないだろう。

 

「天くんは知ってる?」

 

「まだμ'sが三人だった頃、学校に投票箱を設けてグループ名を募集したみたいです。そこに投函されていた紙に『μ's』って書いてあって、それをグループ名にしたんだとか」

 

「・・・まさか本当に知ってるなんて」

 

唖然としている千歌さん。

 

「じゃあμ'sの名前を考えた人は、音ノ木坂の生徒ってこと?」

 

「そうです。後に判明したそうですが、投函したのは東條希さんだったんだとか」

 

「東條希さんって・・・え、μ'sのメンバーの!?」

 

「えぇ。まぁ投函したのは、彼女がμ'sに加入する前の話だそうですけど」

 

「そうなんだ・・・でも、何で『μ's』だったんだろう?」

 

「彼女には、九人になる未来が見えていたそうですよ。まぁ、嘘か本当かは分かりませんけど」

 

「そういえば希さんは、パワースポットや占いに傾倒していたってネットにも書いてあったっけ・・・それなら、本当に未来が見えたのかもしれないね!」

 

少し興奮気味な千歌さん。この人、μ'sの話の時はホントに熱くなるな・・・

 

 「で、名前どうします?」

 

 「あぁっ!?忘れてた!?」

 

 頭を抱える千歌さん。

 

 その後も皆で考えながらランニングしていたものの、結局良い案は思い浮かばず・・・俺達はスタート地点へと戻ってきていた。

 

 「ハァッ・・・ハァッ・・・何か・・・いつもより疲れた・・・」

 

 運動は得意なはずの曜さんが、珍しくしんどそうにしている。千歌さんと梨子さんも疲れたのか、砂浜に仰向けに倒れ込んだ。

 

 頭を使いながらランニングをすると、いつもより負荷が大きいようだ。

 

 「・・・よし、練習メニューに追加しよう」

 

 「「「鬼かっ!」」」

 

 三人から総ツッコミを受けたところで、俺はあるものを発見した。

 

 「ん・・・?」

 

 「天くん?どうしたの?」

 

 「いえ、何か書いてあるみたいで・・・」

 

 さっきまで俺達が柔軟体操をしていた辺りに、『Aqours』という落書きがしてあった。

 

 走り始めた時は、こんな落書きなど無かったはずだが・・・

 

 「私達がランニングしてる間に、誰かが書いたんじゃないかな?この辺の砂浜って、結構色んな落書きがあったりするし」

 

 「・・・そうですかね」

 

 曜さんはそう言うものの、俺はどこか釈然としなかった。

 

 そもそも落書きにしては字が綺麗過ぎるというのもあるが、どこかで見た字のような・・・

 

 「ところでこれ、何て読むのかしら?」

 

 首を傾げる梨子さん。俺の知るかぎりこんな英単語は無いはずなので、恐らく造語だとは思うのだが・・・

 

 「もしかして・・・アクア、ですかね?」

 

 「アクア・・・水ってこと?」

 

 「えぇ、多分。海辺ですし、水を基にした造語なんじゃないですか?」

 

 「・・・水かぁ」

 

 微笑む千歌さん。あ、この顔は・・・

 

 「ねぇ、この名前・・・」

 

 「良いんじゃないですか?」

 

 「まだ何も言ってないよ!?」

 

 「グループ名にどうか、っていう話ですよね?」

 

 「天くんってエスパーなの!?」

 

 「千歌さんが分かりやすいだけです」

 

 この人は本当に分かりやすい。考えていることが思いっきり顔に出るし。

 

 「これをグループ名にするの?誰が書いたか分からないのに?」

 

 「だから良いんだよ」

 

 梨子さんの言葉に、千歌さんが笑う。

 

 「名前を決めようとしている時に、この名前に出会った・・・それって、凄く大切なことなんじゃないかな?」

 

 「・・・そうですね」

 

 出会いというものは、偶然なのか必然なのか・・・そんなものはどちらでも良い。

 

 重要なのは、その縁を大切に出来るかどうか・・・そう考えている俺にとって、今の千歌さんの言葉はとても共感できるものだった。

 

 「賛成であります!」

 

 「このままじゃ、いつまでも決まりそうにないしね」

 

 曜さんと梨子さんも賛成のようだ。これで決まったな。

 

 「じゃあ決定ね!今から私達は、スクールアイドル『Aqours』だよ!」

 

 「「おー!」」

 

 盛り上がる三人。グループ名も決まり、これでますます気合いが入るだろう。

 

 「さて、休憩はここまでにしましょうか。次はステップの練習をしましょう」

 

 「えぇっ!?もう休憩終わり!?」

 

 「ご不満なら、永遠に休憩させてあげましょうか?」

 

 「遠回しの殺害予告じゃん!?最近の天くん、生徒会長より怖いんだけど!?」

 

 「いやいや、ダイヤさんは・・・あっ」

 

 思い出した。あの字、どこかで見たことがあると思ったら・・・

 

 思わず苦笑してしまう俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやくグループ名が決まりました。

もっとサクッと終わらせる予定だったのですが、思ったより長くなってしまった…

早く善子ちゃんや果南ちゃんを出さねば…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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借りは返すものである。

3月28日木曜日、日間ランキングで6位に入りました!

皆様、ありがとうございます!


 「・・・そうですか。ライブの準備は順調に進んでいるのですね」

 

 「えぇ、何とか」

 

 生徒会室でお茶を呑みながら、ダイヤさんと会話している俺。

 

 今日は生徒会の仕事があった為、マネージャーとしての仕事はお休みだ。

 

 「高海さん達は、今日も練習ですか?」

 

 「いえ、今日は宣伝活動ですね。沼津の駅前でチラシを配るそうですよ」

 

 スクールアイドル部の設立が承認される条件は、体育館を満員にすること・・・しかしそこには、一つの問題点があった。

 

 「この学校の生徒が全員集まったとしても、体育館は満員にはならない・・・私が言える立場ではありませんが、鞠莉さんも意地悪ですわね」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 そう、浦の星の全校生徒は百人にも満たない。体育館を満員にするには、外部のお客さんに来てもらうしかないのだ。

 

 小原理事長はそれを分かった上で、この条件を出したのだろう。本当に食えない人である。

 

 「ラブライブを目指す以上、学校の中だけで満足してはいられませんからね。それでこんな条件を出したんでしょうけど・・・気に入りませんね」

 

 千歌さん達はまだ、スクールアイドルを始めたばかりだ。

 

 それなのにもうライブをやらせ、満員に出来なければ解散しろだなんて・・・ハードルが高過ぎる。

 

 「あの人が何を考えているのか分かりませんが・・・人を何だと思ってるんですかね」

 

 「天さん・・・」

 

 気遣わしげにこちらを見るダイヤさん。

 

 小原理事長とのいざこざがあってから、ダイヤさんは本当に俺のことを心配してくれていた。『生徒会長として何も出来ず申し訳ない』と言って、土下座してきたほどである。

 

 勿論ダイヤさんは何も悪くないので、すぐに肩を掴んで頭を上げてもらったが。

 

 「・・・まぁ、今はそんなことを言っても仕方ないですね。とにかく体育館を満員にして、スクールアイドル部の設立を承認してもらわないと」

 

 苦笑する俺。

 

 とにかくやるしかない。今は恨み言を言うよりも、前を向いて頑張っていかないと。

 

 「グループ名が決まって、千歌さん達もますます気合いが入ってますから。素敵な名前を付けてくれた人に感謝しないと・・・ありがとうございます、ダイヤさん」

 

 「なっ!?」

 

 驚くダイヤさん。やっぱりか・・・

 

 「な、何のことか私にはさっぱり・・・」

 

 「いつも生徒会の仕事でダイヤさんの字を見ている俺が、分からないわけないでしょうに。砂浜の落書きにしては、ちょっと字が綺麗過ぎましたね」

 

 「・・・参りましたわ」

 

 がっくりと肩を落とすダイヤさん。

 

 「少し練習の様子を見に行ったら、ちょうどグループ名の話をしているのが聞こえたので・・・あ、あくまでも参考にと思って・・・」

 

 「千歌さんの性格を考えると、あの名前になる可能性が高いことは分かってたんじゃないですか?つまりダイヤさんにとって、あの名前は特別なものだったんでしょう?」

 

 「うぐっ・・・」

 

 どうやら図星らしい。まぁ本人が話したくなさそうだし、これ以上は深く聞かない方が良いだろう。

 

 「ちなみに、読みは『アクア』で合ってますか?」

 

 「・・・えぇ、そうです」

 

 頷くダイヤさん。

 

 「水を意味する『Aqua』と、複数形の所有代名詞『ours』を合わせた造語ですわ」

 

 「それで『Aqours』ですか・・・」

 

 『ours(私達のもの)』ということは、ダイヤさん以外にもこの名前を考えた人がいるってことなのかな・・・?

 

 「・・・まぁいずれにせよ、良い名前をいただきました。ありがとうございます」

 

 「あの、天さん・・・このことは、高海さん達には・・・」

 

 「分かってます。内緒にすれば良いんですよね?」

 

 言うつもりが無かったからこそ、ダイヤさんはこっそり落書きをするという方法をとったんだろう。ダイヤさんがそれを望むなら、わざわざ暴露したりするつもりは無い。

 

 「それにしても・・・ダイヤさんのおかげで、グループ名が『制服少女隊』や『スリーマーメイド』にならずに済みましたよ」

 

 「・・・どんなネーミングセンスしてますの?」

 

 呆れているダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「あら天くん、いらっしゃい」

 

 「こんにちは、善恵さん」

 

 生徒会の仕事を終えた俺は、津島さんの家へとやってきていた。目的は勿論、先週分のノートやプリントを届けることである。

 

 花丸やルビィちゃんも来たがっていたが、前回のこともあるので今回は俺一人で来ることにしたのだ。

 

 「来てくれてありがとう。本当に助かるわ」

 

 「いえいえ、大したことじゃないですから」

 

 これで津島さんが授業に遅れずに済むなら、お安い御用である。俺もノートをまとめた甲斐があるというものだ。

 

 「それじゃあ私は買い物に行ってくるから、留守番よろしくね」

 

 「了解です。荷物持ちは大丈夫ですか?」

 

 「フフッ、そんなに買う物は多くないから大丈夫よ。それじゃ、行ってくるわね」

 

 「行ってらっしゃーい」

 

 善恵さんを見送り、俺は津島家へと足を踏み入れる。さて・・・

 

 「善恵さんが帰ってくるまで、テレビでも見てようかな」

 

 「待たんかいいいいいいいいいいっ!」

 

 テレビをつけてソファに座った瞬間、津島さんが勢いよく自分の部屋から出てきた。

 

 「あ、津島さん。こんにちは」

 

 「あ、こんにちは・・・じゃないわよ!?あと、私のことはヨハネって呼びなさい!」

 

 「津島さん、もしくは善子ちゃんじゃダメなの?」

 

 「ダメに決まってるでしょ!?私は堕天使ヨハネよ!?」

 

 「じゃあよっちゃんで」

 

 「人の話聞いてた!?」

 

 ツッコミを入れまくるよっちゃん。キレの良いツッコミだなぁ・・・

 

 「っていうかアンタ、人の家で何してんのよ!?」

 

 「ソファに座ってテレビ見てる」

 

 「おかしいわよねぇ!?ここアンタの家じゃないわよねぇ!?」

 

 「よっちゃん・・・遂に自分の家さえ分からなくなったんだね・・・」

 

 「腹立つ!コイツ腹立つ!」

 

 「コラコラ、地団駄を踏まないの。下の部屋の人に迷惑だよ?」

 

 「誰のせいだと思ってんのよ!?」

 

 ムキーッと怒っているよっちゃん。やれやれ・・・

 

 「実は今日、津島家で夕飯をご馳走になる予定なんだよね」

 

 「ハァッ!?何で!?」

 

 「昨日善恵さんとラインしてたら、夕飯のお誘いを受けたんだよ」

 

 「ちょっと待って!?アンタいつから人の母親を名前で呼ぶようになったの!?いつラインの交換とかしたの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そんなことが・・・って分かるかっ!それが通じるのはアニメやマンガの世界だけだわっ!」

 

 「おぉ、ダイヤさんと同じツッコミ」

 

 「ダイヤさんっていうのが誰かは知らないけど、私は今その人に果てしない同情の気持ちを抱いたわっ!」

 

 ツッコミすぎて息切れしているよっちゃん。大変だなぁ・・・

 

 「まぁとりあえず説明しとくと・・・この前俺達がここに来た日の夜、俺のところに善恵さんから電話がかかってきたんだよ。『せっかく来てくれたのにごめんなさい』って」

 

 「うぐっ・・・」

 

 バツの悪そうなよっちゃん。少しは申し訳ないと思っているらしい。

 

 「な、何でアンタの電話番号が分かって・・・」

 

 「ほら、クラスの連絡網ってあるじゃん?あの紙を見て俺に電話してきたみたい」

 

 「・・・あったわね、そんなの」

 

 忘れていた様子のよっちゃん。連絡網は入学初日に配布された為、初日しか学校に来ていないよっちゃんでもしっかり貰っていたようだ。

 

 「それで電話で話しているうちに、よっちゃんのことで色々と相談を受けたんだよ。部屋で怪しげなことをやってるっぽいとか、気になって覗こうとするんだけど全然部屋に入れてくれないとか・・・」

 

 「人のクラスメイトに何てこと相談してんのあの人!?」

 

 顔を真っ赤にして、両手で顔を覆うよっちゃん。自分のことを堕天使とか言っちゃう割に、そういうことを知られるのは恥ずかしいようだ。

 

 「そして何だかんだ馬が合った俺と善恵さんは、お互いのラインのIDを教え合ったのだった・・・続く」

 

 「今すぐ話しなさいっ!」

 

 「いや、後は特に無いんだよね。昨日ラインで『明日お邪魔しまゆゆ』って送ったら、『せっかくだし夕飯をご馳走しまゆゆ』って返ってきて今に至りまゆゆ」

 

 「語尾が気になって話が入ってこない!」

 

 「よっちゃん、人の話はちゃんと聞こうよ」

 

 「やっぱコイツ腹立つわ!」

 

 疲れ切ってしまったのか、壁にもたれかかるよっちゃん。仕方ないので、座る位置をずらしてソファのスペースを空けてあげる。

 

 「ほらよっちゃん、座りなよ。何か飲む?」

 

 「・・・冷蔵庫に麦茶が入ってるからよろしく」

 

 「あいよー」

 

 もうツッコミを入れる気力も無いらしく、力なくソファに座るよっちゃん。俺は冷蔵庫から麦茶を取り出し、適当なコップに注いでよっちゃんに差し出した。

 

 「へいお待ち」

 

 「・・・どうも」

 

 コップを受け取り、一気に麦茶を飲み干すよっちゃん。良い飲みっぷりである。

 

 「ぷはぁっ・・・あぁ、生き返る・・・」

 

 「全く・・・体力無いのに全力でツッコミ入れるからだよ」

 

 「誰のせいよ!?」

 

 「あ、気力が戻ったね」

 

 俺はそこで今日の目的を思い出し、鞄の中からクリアファイルを取り出した。

 

 「はいこれ。先週分の授業のノートとプリントが入ってるから」

 

 「あ、うん・・・」

 

 何とも言えない表情で受け取るよっちゃん。

 

 「・・・ねぇ、何でここまでしてくれるの?」

 

 「あれ?迷惑だった?」

 

 「いや、凄く助かるけどさ・・・」

 

 複雑そうに俺を見るよっちゃん。

 

 「前回もらったノート、本当に分かりやすくまとめられてた。あれって、黒板に書かれたことをただ写したものじゃないでしょ?その後でアンタが、私にも分かりやすいように色々手を加えてくれたのよね?」

 

 「色々ってほどじゃないよ。要点が分かりやすいようにまとめただけだし」

 

 「それでも、わざわざそこまでしてくれた。どうしてただのクラスメイトの為に、そこまでしてくれるの?」

 

 憂いを帯びたその表情に、俺は彼女の本質を見た気がした。

 

 自分のことを堕天使だと名乗るその豪胆さとは裏腹に、本当の彼女はとても臆病なんだと思う。誰よりも人の目を気にするし、人に対してなかなか心を開くことが出来ない。

 

 恐らくその理由は、自分に自信が無いから。今の質問には、『私にそこまでする価値があるの?』という意味合いもあるのだろう。

 

 まぁ、俺の答えは決まってるけど。

 

 「・・・花丸が、いつもよっちゃんの心配をしてるんだよ」

 

 「え・・・?」

 

 「『せっかく同じ学校になったのに』とか、『このまま学校に来なかったらどうしよう』とか・・・よっちゃんのこと、凄く気にかけてるんだよ」

 

 花丸は本当に心の優しい子だ。そんな俺の大切な友達に、寂しそうな顔をしてほしくない。

 

 だから俺は、よっちゃんを放っておけない。

 

 「つまり、花丸の為ってこと・・・?」

 

 「それが大きな理由かな。まぁ個人的に、よっちゃんには借りもあるから」

 

 「借り・・・?」

 

 首を傾げるよっちゃん。どうやら心当たりが無いようだ。

 

 「入学式の日、教室で自己紹介やったでしょ?」

 

 「ああああああああああっ!?思い出させないでええええええええええっ!?」

 

 「ていっ」

 

 「あうっ!?」

 

 やかましかったので、よっちゃんの頭にチョップをお見舞いして黙らせる。

 

 まぁよっちゃんの黒歴史確定自己紹介のことは置いといて・・・

 

 「俺が自己紹介した後、花丸やルビィちゃんとすぐに拍手してくれたじゃん。俺、あれに救われたんだよね」

 

 「いや、そんな大げさな・・・」

 

 「拍手してもらえない辛さは、よっちゃんが一番分かってるだろうに」

 

 「だからそれを思い出させないでよおおおおおおおおおおっ!?」

 

 頭を抱えるよっちゃん。どんだけ引きずってんだこの子・・・

 

 「女子校の中で唯一の男子っていうこともあって、周りの皆は凄く注目してくるわけだよ。その好奇の視線を向けられる中で、一番最初に自己紹介だからね。ものすごく緊張したし・・・皆が受け入れてくれるか、不安で仕方なかったよ」

 

 それでも、最初に花丸が拍手してくれて。ルビィちゃんとよっちゃんも続いてくれて。

 

 あの時は本当に、凄く救われた気持ちになった。

 

 「だからあの時のことは、本当に感謝してる・・・ありがとう、よっちゃん」

 

 「・・・べ、別に大したことはしてないわよ」

 

 素っ気無くそう言うよっちゃんだが、顔が赤くなっている。素直じゃないんだから・・・

 

 「そんなわけで、よっちゃんには大きな借りがあるんだよ。それを少しでも返せたらっていうのも、理由としてはあるかな」

 

 「ま、まぁそういうことなら・・・しょうがないから受け取ってあげるわ」

 

 「じゃあその対価として、来る度に夕飯をご馳走になるね」

 

 「借りを返す話はどこへいったのよ!?」

 

 「TS●TAYAで借りたCDを返す話?」

 

 「言ってないわよ!?」

 

 全力ツッコミのせいで、またしてもよっちゃんが力尽きそうになっていた。仕方ないからこの辺にしておこう。

 

 「まぁとりあえず、心の準備が出来たらまた学校に来てよ。花丸とかルビィちゃんは勿論、クラスの皆とか赤城先生も心配してるから」

 

 「・・・本当に?あの時のことを笑ったり、ドン引きしたりしてない?」

 

 「してないよ。むしろ『何で来なくなっちゃったのかな』とか、『仲良くなりたいね』って言ってるぐらいだし」

 

 実際、ウチのクラスは本当に良い人ばかりだ。俺も今では仲良くさせてもらってるし。

 

 「よっちゃんの心の準備が出来るまでは、俺が責任を持ってノートとかプリントを届けに来るから。いつ復帰しても授業についていけるように、ちゃんと勉強はしといてね」

 

 「・・・うん。分かった」

 

 小さく頷くよっちゃん。名前の通り、やっぱり善い子だな・・・

 

 「ヨハネよっ!」

 

 「人の心を読むの止めてくんない?」

 

 どんだけ堕天使ヨハネに拘るんだ・・・

 

 「・・・まぁでも、『よっちゃん』呼びは許してあげる」

 

 「え・・・?」

 

 よっちゃんが頬を赤らめ、髪の毛先をクルクルいじっている。

 

 「あ、あくまでも『ヨハネ』の『よっちゃん』だからね!?『善子』の『よっちゃん』は認めないからね!?」

 

 「両方とも『よっちゃん』だし、どっちでも良いんじゃ・・・」

 

 「良いのっ!そこは譲れないからねっ!」

 

 よく分からない拘りだけど・・・まぁ本人がそう言うんだから良いか。

 

 「了解。俺のことも天で良いからね」

 

 「フッ・・・では天、貴方を私のリトルデーモンに・・・」

 

 「あ、結構です」

 

 「何でよ!?」

 

 そんなやり取りをしている間に、窓の外はすっかり薄暗くなっていた。

 

 千歌さん達、チラシ配り終わったかなぁ・・・あっ。

 

 「よっちゃん、スクールアイドルって知ってる?」

 

 「何よ突然・・・まぁ知ってるけど」

 

 「実は浦の星でも、スクールアイドルをやろうっていう人達がいてさ。一応俺がマネージャーをやってるんだけど、今度ライブをやるんだよね」

 

 鞄の中からチラシを取り出して、よっちゃんに手渡す。

 

 「へぇ・・・天がマネージャーやってるのね」

 

 「色々あったんだよ・・・本当に色々・・・」

 

 「・・・アンタも苦労してるのね」

 

 同情してくれるよっちゃん。優しいなぁ・・・

 

 「ま、気が向いたら行ってあげるわ。本当に気が向いたらね」

 

 「よっちゃん・・・マジ善子だわ」

 

 「だからヨハネよっ!?」

 

 よっちゃんが堕天使ではなく、正真正銘の天使に見える俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

さて、前書きでも述べましたが・・・

3月28日木曜日、『絢瀬天と九人の物語』が日間ランキングで6位にランクインしました!

嬉しすぎてスクショしました(笑)

☆評価を付けて下さった皆様。

感想を書いて下さった皆様。

お気に入りに登録して下さった皆様。

そしてこの作品を読んで下さった皆様。

本当にありがとうございます。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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好きなことは全力でやるべきである。

最近タイトルに悩むことが多い…

ちょっと名言っぽいタイトル縛りをやってきたのが仇になったか…


 「・・・言い残したい言葉はありますか?」

 

 「すいませんでしたああああああああああっ!」

 

 全力で土下座している千歌さん。津島家で夕飯をご馳走になった翌日の放課後、俺は千歌さんの家にお邪魔していた。

 

 ライブで披露する曲の作詞を、千歌さんが担当することになっていたのだが・・・

 

 「作詞ノートって書いてありますけど、完全に白紙じゃないですか。何ですかこれ。千歌さんの頭の中と一緒じゃないですか」

 

 「人の頭が空っぽみたいに言わないでくれる!?」

 

 「ああん・・・?」

 

 「返す言葉もございません!」

 

 冷たい目を向けると、千歌さんが再び額を床に擦り付ける。その様子を見て、曜さんと梨子さんが引いていた。

 

 「ま、まぁまぁ天くん!ここは落ち着こう!ねっ!?」

 

 「そ、そうよ!まだ何とか間に合うわ!」

 

 「・・・ハァ」

 

 二人に宥められ、溜め息をつく俺。まぁ確かに、千歌さんを責めてる場合じゃないか・・・

 

 「とにかく作詞を終わらせましょう。千歌さん、イメージとかあります?」

 

 「μ'sのスノハレ!」

 

 「却下です」

 

 「えぇっ!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。この人はホント・・・

 

 「スクールアイドルを始めたばかりで、スノハレみたいな曲を目指すのはハードルが高過ぎます。μ'sの楽曲で一、二を争うほどの名曲を舐めないで下さい」

 

 「うっ、確かに・・・」

 

 「まぁ、恋愛に関する曲を作るのは構いませんけど・・・それこそ、千歌さんの経験を基にして作詞すれば良いんじゃないですか?」

 

 「フッフッフッ・・・自慢じゃないけど、私の恋愛経験はゼロだよ!」

 

 「ライフもゼロにしてあげましょうか?」

 

 「遠回しの殺害予告止めて!?」

 

 ダメだこの人、完全にポンコツだわ・・・

 

 「曜さんとか梨子さんなら、恋愛経験ありそうですよね」

 

 「私?無い無い!」

 

 「私も無いわね」

 

 「・・・マジですか」

 

 これはテーマを恋愛じゃないものにすべきかもしれない。それにしても・・・

 

 「梨子さんに恋愛経験が無いのは意外ですね・・・」

 

 「え、そう?」

 

 「だって梨子さん美人だし、絶対モテるでしょう」

 

 「なっ!?」

 

 赤面する梨子さん。

 

 「そ、そういうことを真顔で言わないでっ!」

 

 「だって本心ですし。クラスに居たら、間違いなく男子達の注目の的でしょう。実際モテたんじゃないですか?」

 

 「そ、そんなこと言われても・・・本当にモテなかったわよ?ずっとピアノ一筋でやってきたから、恋愛にうつつを抜かしてる余裕も無かったし」

 

 「告白とかされなかったんですか?」

 

 「全然。中学までは共学の学校に通ってたけど、男子達にとって私は気軽に話せる友達って感じだったのかも。よく『付き合って下さい』って買い物に誘われたし」

 

 「・・・梨子さんって罪深い人ですね」

 

 「何で!?」

 

 千歌さんと曜さんも、何とも言えない表情で梨子さんを見ている。

 

 その『付き合って下さい』は、どう考えても告白だろうな・・・『買い物に付き合って下さい』なわけが無い。

 

 「ちなみに、買い物には付き合ったんですか?」

 

 「申し訳なかったんだけど、全部断ってたわ。ピアノのレッスンで忙しかったから」

 

 「うわぁ・・・」

 

 「そ、そんな露骨に引かなくても良いじゃない!私だって、友達からの買い物のお誘いを断るのは申し訳なかったわよ!」

 

 「いや、何と言うか・・・大丈夫です。梨子さんは知らない方が良いと思います」

 

 「え?」

 

 首を傾げる梨子さん。

 

 梨子さんに想いが届くことなく撃沈していった男子達の人生に、どうか幸多からんことを・・・

 

 「っていうか、曜さんも意外ですよね。モテそうなのに」

 

 「おっ、私のことも可愛いって言ってくれるの?」

 

 「当然じゃないですか。誰がどう見たって美少女でしょう」

 

 「っ・・・あ、ありがと・・・」

 

 頬を赤く染め、照れ臭そうに笑う曜さん。梨子さんと同じで、真正面から褒められることに弱いらしい。

 

 「でも残念ながら、梨子ちゃんと違って本当にそういう経験無いんだよね」

 

 「いや、だから私も無いんだってば」

 

 「被告人は静粛に」

 

 「誰が被告人よ!?」

 

 抗議してくる梨子さんは無視して、俺は曜さんと会話を続けた。

 

 「じゃあ逆に、好きな人とかいなかったんですか?」

 

 「んー、そもそも恋したことが無いんだよね。私も小さい頃から水泳一筋だったし」

 

 「なるほど・・・」

 

 「ねぇねぇ天くん、私は?私は可愛い?」

 

 「はいはい、可愛い可愛い」

 

 「何で子供をあやすみたいなノリなの!?」

 

 膨れっ面の千歌さん。

 

 まぁ実際、千歌さんもかなりの美少女だと思う。あまりにもフランク過ぎて、俺もこんなノリで接してしまっているけども。

 

 「でも、三人とも恋愛経験ゼロとなると・・・やっぱり、別のテーマで曲を作った方が良いかもしれませんね」

 

 「えー・・・あっ、じゃあμ'sのメンバーは恋をしてたのかな?」

 

 「どうしたんですか急に」

 

 「いや、だってスノハレみたいな曲を作れたんでしょ?それってつまり、μ'sの誰かが恋をしてたってことじゃないの?」

 

 目が爛々と輝いている千歌さん。本当にμ'sが好きなんだな・・・

 

 「・・・スノハレって、μ'sが全員で作詞した曲らしいですよ」

 

 「え、そうなの?」

 

 「えぇ。μ'sのメンバーが、色々なものに対する『大好き』という気持ちを込めた一曲・・・それが『Snow halation』です」

 

 「『大好き』という気持ち・・・」

 

 「それをテーマにするのも良いんじゃないですか?例えば・・・スクールアイドルが大好きっていう気持ちとか」

 

 「それだ!」

 

 勢いよく立ち上がる千歌さん。

 

 「それ良い!私達の最初の曲にピッタリなテーマだよ!」

 

 「千歌ちゃん、歌詞書けそう?」

 

 「うん!これなら書ける気がする!」

 

 千歌さんはペンを持つと、白紙のノートに勢いよく文字を書き始めた。書けば書くほど、どんどんのめり込んでいくのが分かる。

 

 「・・・凄い集中力ですね」

 

 「千歌ちゃんはやれば出来る子なんだよ」

 

 笑みを浮かべる曜さん。やれば出来る子、か・・・

 

 「・・・ホント、そっくりだな」

 

 「そっくり?」

 

 「いえ、何でもないです」

 

 適当に曜さんを誤魔化し、千歌さんの姿を眺める。

 

 「これほどスクールアイドルが大好きな人が、スクールアイドルを続けられなくなるなんて・・・そんなのおかしいですよね」

 

 「天くん・・・」

 

 「会場、絶対満員にしましょうね。小原理事長に、スクールアイドル部の設立を認めさせてやりましょう」

 

 「勿論!」

 

 「頑張りましょう!」

 

 「え、何?何の話?」

 

 「千歌さんのライフがゼロになるまでしごき続けようっていう話です」

 

 「それは勘弁してええええええええええっ!?」

 

 千歌さんの悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ありがとうございました!」

 

 笑顔で最後のお客さんを見送る俺。

 

 お客さんが見えなくなるまで手を振り、ホッと一息ついたところで・・・後ろからいつもの衝撃を受けた。

 

 「お疲れ様のハグ!」

 

 「はいはい、お疲れ様です」

 

 「むぅ・・・反応が冷たい」

 

 「毎回ハグされ続けたら、そりゃ慣れますって」

 

 不満そうな果南さんに、苦笑しながら返す俺。まぁ俺の目の前で、平気でダイビングスーツを脱ぐことに関しては未だに慣れないけども。

 

 下に水着を着ているとはいえ、惜しげもなくナイスバディをさらけ出されると・・・正直、目のやり場に困ってしまう。

 

 「やっぱり土日は、お客さんの数が多いんですね」

 

 「そうなんだよ。私だけじゃ手が回りきらないだろうから・・・ホント、天が手伝ってくれて助かってるよ」

 

 笑顔でそう言ってくれる果南さん。

 

 実は梨子さん達と海の音を聴きに行った日、果南さんからアルバイトの誘いを受けていたのだ。これから土日に来るお客さんの数が増えるので、手伝ってくれる人を探していたんだとか。

 

 その誘いを受けた俺は翌週から、果南さんの実家が営むダイビングショップで土日だけアルバイトをするようになったのだった。

 

 「アルバイト経験の無い素人で、ホントに大丈夫なんですか?」

 

 「大丈夫だって。っていうか、ホントにアルバイト経験無いの?接客とか上手いし、初めてとは思えないんだけど」

 

 「コミュニケーション能力には自信あるんで」

 

 「アハハ、なるほどね」

 

 果南さんは面白そうに笑うと、近くのウッドチェアに腰を下ろした。

 

 「そういえば、千歌達のライブって来週の日曜日でしょ?準備は大丈夫なの?」

 

 「えぇ。何とかなりそうです」

 

 あの後千歌さんはすぐに歌詞を書き終えたし、それを基に梨子さんもすぐに曲を作ってくれた。振り付けもこの土日に三人で考えると言っていたので、後は明日からその振り付けを基に練習するのみだ。

 

 ちなみに衣装は曜さんが制作を進めており、もう間もなく完成するとのことだった。

 

 「明日からの一週間は、ちょっとハードになりそうですけどね。俺も裏方としての仕事を進めていかないと」

 

 「裏方としての仕事?」

 

 「主に会場の設営ですね。スポットライトの位置とか、音響のチェックとかもしないといけませんし。まぁそれに関しては手伝ってくれる人もいるので、心配無いですけど」

 

 ちなみに手伝ってくれる人というのは、千歌さん達と同じクラスのよしみさん・いつきさん・むつさんの三人である。通称・よいつむトリオの三人は千歌さん達の良き理解者であり、今回のライブでの手伝いを申し出てくれたのだ。

 

 ライブの宣伝の為のビラ配りもしてくれていて、正直かなり助かっていたりする。

 

 「後は練習の監督ぐらいですね。ライブ前なので追い込みをかけたいところなんですけど、無理して本番に響いたら元も子もないですから。その辺りはこっちでちゃんと調整して、練習メニューを組もうと思います」

 

 「へぇ・・・しっかりマネージャーやってるんだね」

 

 感心している果南さん。

 

 「千歌達は運が良いね。こんなしっかりサポートしてくれるマネージャーがいてさ」

 

 「・・・まぁマネージャーをやることになったキッカケは、あまり褒められたものじゃないですけどね」

 

 「・・・鞠莉か」

 

 顔を顰める果南さん。

 

 俺も話を聞いて驚いたのだが、ダイヤさん・果南さん・小原理事長は小学生の時からの付き合いらしい。ダイヤさんと果南さんが通っていた小学校に、小原理事長が転入してきたんだそうだ。

 

 つまり俺が幼かった頃の小原家の引っ越し先は、内浦だったということになる。

 

 「ホント・・・相変わらず自分勝手なんだから」

 

 果南さんもダイヤさんから事情を聞いたらしく、俺のことを凄く心配してくれた。

 

 おまけに俺があの時の状況を話すと、『これから一緒に殴りに行こうか』とチャゲアスの名曲みたいなセリフを本気で言い出すほど怒っていた。まぁ何とか思い留まらせたけども。

 

 「まぁとにかく、ライブに向けて頑張らないといけませんね・・・そんなわけで果南さんには申し訳ないんですけど、来週の日曜日はお休みをいただきます」

 

 「了解。忙しいようなら、土曜日も休みで大丈夫だよ?来週の土日は天気が良くないっていう予報が出てるせいか、今のところお客さんの予約も多くないし」

 

 「いえ、大丈夫です。マネージャーの仕事に力を入れ過ぎて、生徒会の仕事やアルバイトを疎かにしたくないので」

 

 「天は真面目だねぇ・・・ダイヤに影響されてるんじゃない?」

 

 「ハハッ、そうかもしれませんね」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 実際、ダイヤさんはとても真面目な人だ。生徒会長として責任を持って仕事をしているし、俺も見習わないといけない点がたくさんある。

 

 「ただ・・・ダイヤさんにはもう少し、肩の力を抜いてほしいんですけどね。ちょっと頑ななところがあるので」

 

 「ダイヤは昔からあんな感じだからね。黒澤家の名に恥じないようにって、肩肘張って生きてるところがあるから」

 

 「なるほど・・・俺の知り合いにも名家の娘がいますけど、確かにそういったところはありましたね」

 

 「へぇ、知り合いにそんな人がいるんだ?」

 

 「えぇ、まぁ」

 

 せっかくだし、今度電話して話を聞いてみようかな。似たような立場だからこそ、分かることがあるかもしれないし。

 

 「そういえばダイヤさんって、μ'sのファンなのに何で『スクールアイドル部は認めない』なんて言ってるんだろう・・・」

 

 ふと疑問を口にする俺。これはよいつむトリオの三人から聞いた話だが、これまでにも『スクールアイドルをやりたい』という生徒が少なからずいたらしい。

 

 ところがダイヤさんはそれを認めず、スクールアイドル関連の部活の設立を全て拒否してきたんだそうだ。一体何故なのか・・・

 

 と、果南さんが何やら思いつめたような表情をしていた。

 

 「果南さん?どうかしました?」

 

 「ううん、何でもないよ」

 

 すぐに笑みを浮かべる果南さんだったが、どこか笑顔がぎこちなかった。ダイヤさんについて、思い当たる節でもあるんだろうか・・・

 

 「さて、さっさと片付けちゃおうか。今日もウチで夕飯食べていきなよ。お母さんが天の為に、腕によりをかけて美味しいもの作って待ってるってさ」

 

 「ありがたくご馳走になります」

 

 果南さんの表情が気になったものの、深くは聞けない俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

何とこの作品が、またしても日間ランキングで7位に入りました!

本当にありがたいことでございます(>_<)

いつもこの作品を読んで下さっている皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございます。

そんな中、いよいよファーストライブが近付いてきましたね。

果たしてどうなるのか…

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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一人じゃないというのは心強いものである。

最近『HAPPY PARTY TRAIN』をよく聴きます。

メッチャ良い曲ですよね。

センターの果南ちゃんも勿論良いんですけど、個人的には善子ちゃんのソロパートが好きです。

特に『思い~出は~、ポケットの~なか~♪』の部分が好き。

あの優しい歌声がたまらなく好き。

善子ちゃん、そしてあいきゃん最高。


 ライブ当日。

 

 雲ひとつない青空が広がり、まさに絶好のライブ日和・・・

 

 「天くん、現実を見よう?凄い雨降ってるから。雲ひとつない青空じゃなくて、雨雲しかない灰色の空が広がってるから」

 

 「人の心を読むの止めて下さい」

 

 紫髪の女の子・・・いつきさんのツッコミに、俺は大きな溜め息をついた。

 

 確かに予報では、週末の天気は良くないと言ってはいたが・・・ここまで酷いとは思わなかった。

 

 「いつきさん、ちょっと『雨止めえええええっ!』って叫んでもらって良いですか?」

 

 「いや、それで止むとは思えないんだけど・・・」

 

 「物は試しです。三、二、一・・・はいっ!」

 

 「あ、雨止めぇ!」

 

 「声が小さい!もう一度!」

 

 「雨止めーっ!」

 

 「もっと!もっと熱くなれよ!」

 

 「雨止えええええっ!」

 

 「・・・まぁ、止むわけないですよね」

 

 「急に冷静にならないでくれる!?もの凄く恥ずかしいんだけど!?」

 

 両手で顔を覆って恥ずかしがるいつきさん。やはりミラクルは起こせなかったようだ。

 

 「おーい、天くーん」

 

 茶髪をサイドテールにくくった女子・・・よしみさんがこちらへ歩いてくる。

 

 「照明と音響の準備は完了・・・って、何でいつきは耳まで真っ赤になってるの?」

 

 「そっとしておいてあげて下さい。羞恥心に悶えてるところなんです」

 

 「誰のせいだと思ってるの!?」

 

 いつきさんの抗議はスルーして、俺はよしみさんへと視線を向けた。

 

 「ありがとうございます。千歌さん達の様子はどうですか?」

 

 「今は振り付けのチェックをしてるけど・・・やっぱり緊張してるみたい。いつもより表情が硬いもん」

 

 「初ライブだもんね・・・大丈夫かな、千歌達・・・」

 

 心配そうなよしみさんといつきさん。ここはマネージャーの出番かな・・・

 

 「・・・さて、いきますか」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「本当にこんなに短くて大丈夫なの・・・?」

 

 本番用の衣装に身を包んだ私は、鏡の前で顔を引き攣らせていた。

 

 ピンク色の可愛らしい衣装ではあるんだけど、スカートが短い。いつもより太ももが露わになっていて、凄く恥ずかしい。

 

 「大丈夫!ステージに出ちゃえば忘れるよ!」

 

 水色の衣装に身を包んだ曜ちゃんが、そう言ってニッコリ笑う。

 

 いや、忘れちゃいけないと思う。晒しちゃいけないものを晒しそうだもの。

 

 「大丈夫だよ、梨子ちゃん。もう天くんには見られてるじゃん」

 

 「そういう問題じゃないわよねぇ!?っていうか思い出させないで!?」

 

 オレンジ色・・・もといみかん色の衣装に身を包んだ千歌ちゃんの言葉に、火が出そうなくらい顔が熱くなる。

 

 あの時のことを思い出しただけで、とてつもなく恥ずかしいわ・・・

 

 「っていうか、あれは千歌ちゃんのせいでしょ!?天くんの目の前でスカート捲ったりするから!」

 

 「アハハ、ゴメンゴメン」

 

 苦笑しながら謝る千歌ちゃんに、思わず溜め息をついてしまう。全くもう・・・

 

 「あ、そろそろ時間だね」

 

 曜ちゃんが時計を見て呟く。

 

 その瞬間、空気が張り詰めたような気がした。これからステージに立って、歌って踊る・・・そう考えるだけで緊張してしまった。

 

 そして何より、お客さんは来てくれているのか・・・もし満員に出来なければ、その時はAqoursを解散しなくてはいけない決まりになっている。

 

 「・・・嫌だよね」

 

 消え入りそうな声で呟く千歌ちゃん。

 

 「初めてのライブで解散なんて・・・そんなの嫌だよね」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 心配そうな表情の曜ちゃん。

 

 スクールアイドルを始めて間もないけれど、私にとってAqoursは大切な場所になりつつあった。

 

 失いたくない、解散なんてしたくない・・・そう思えば思うほど、ステージに立つ勇気が無くなっていくのを感じた。

 

 「・・・怖いね」

 

 「・・・うん」

 

 足が震えている。こんな状態で、良いパフォーマンスなんて出来るわけ・・・

 

 

 

 『できる~!できる~!キミならできる~!』

 

 

 

 「「「!?」」」

 

 急に音楽が聴こえてきた。何この曲・・・

 

 

 

 『僕は~本気だ!キミは本気か!?』

 

 

 

 私達が呆気にとられていると、天くんがスマホを手に持って現れた。え、まさか・・・

 

 

 

 『できる~!できる~!キミなr・・・』

 

 

 

 「ピッ・・・あ、もしもし?よっちゃん?」

 

 「着信音だったのそれ!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまう。

 

 今思い出したけど、それ松●修造さんの曲じゃない!元気応援SONGじゃない!

 

 「え、来てくれたの?よっちゃんマジ善子だわぁ・・・あぁ、はいはい。もうそろそろ始まるから、急いで体育館に来てね・・・うん、じゃあまた後で」

 

 天くんは通話を終えると、私達の方へと視線を向けた。

 

 「あ、お疲れ様です。準備できました?」

 

 「何か色々吹っ飛んじゃったんだけど!?あれ、私達どんな曲歌うんだっけ!?」

 

 「落ち着いて千歌ちゃん!?えーっと、確か・・・『できる~!できる~!キミならできる~!』」

 

 「いやそれ違う曲だから!曜ちゃんこそ落ち着いてよ!?」

 

 色々パニックになっている二人。とりあえず、私が落ち着かないと・・・

 

 「お、梨子さん衣装似合ってますね。やっぱり梨子さんは桜色・・・もといピンク色ですよね。苗字が桜内だけに」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 何であの時と同じようなセリフを言うのっ!?思い出しちゃうでしょうがあああああっ!?

 

 「あぁっ!?梨子ちゃんが耳まで真っ赤になってる!?」

 

 「落ち着いて梨子ちゃん!?『できる~!できる~!キミならできる~!』」

 

 「その曲はもういいから!」

 

 本番前とは思えないほどの騒ぎっぷりだった。そんな私達の様子を見て、天くんが溜め息をつく。

 

 「やれやれ・・・これじゃ本番が思いやられますね」

 

 「「「天くんのせいでしょうが!」」」

 

 三人同時にツッコミを入れる。全くもう・・・

 

 「・・・まぁ、緊張してるよりよっぽど良いですけどね」

 

 天くんが苦笑しながら言う。あれ、そういえば私達・・・

 

 「何か・・・緊張が消えてる?」

 

 「確かに・・・」

 

 ポカンとしている千歌ちゃんと曜ちゃん。

 

 気付いたら私も足の震えが止まっていた。さっきまで不安に押し潰されそうだったのに・・・

 

 一方、天くんは私達の着ている衣装をしげしげと眺めていた。

 

 「やっぱり衣装のクオリティ高いですね・・・流石は曜さん」

 

 「えへへ・・・そうかな?」

 

 「えぇ、メッチャ良いですよこれ。しかも三人とも、本当によく似合ってます」

 

 笑顔でそう言ってくれる天くん。何だか照れくさいけど、ちょっと嬉しい。

 

 「おーい!千歌ー!曜ー!梨子ー!」

 

 私達の名前を呼びながらやってきたのは、明るめの茶髪に白いカチューシャを付けた女の子・・・クラスメイトのむっちゃんだった。

 

 「そろそろ時間だからスタンバイ・・・って、天もいたんだ?」

 

 「今来たところです。むつさんは準備オッケーですか?」

 

 「バッチリだよ!照明は私とよしみに任せな!」

 

 ドンと胸を叩くむっちゃん。と、その後ろからよしみちゃんといつきちゃんも現れた。

 

 「そうそう、大船に乗ったつもりでいてよ!」

 

 「音響は私に任せてね!」

 

 「いつきさん、そう言いながらさっきみたいに叫ばないで下さいね?」

 

 「叫ばないよ!?っていうか、あれは天くんがやらせたんだからね!?」

 

 「ちょっと何言ってるか分からないです」

 

 「何で!?」

 

 天くんといつきちゃんのやり取りに、むっちゃんとよしみちゃんが爆笑していた。それにつられて、私達も思わず笑ってしまう。

 

 「じゃあ三人とも、頑張れ!」

 

 「私達がサポートするから!」

 

 「天くん、指示よろしくね!」

 

 「了解です。よろしくお願いします」

 

 三人が笑顔で手を振って出て行く。頑張れ、か・・・

 

 「・・・頑張ろう」

 

 笑みを浮かべ、両手を握り締める千歌ちゃん。

 

 「応援してくれる人がいるんだもん。全力で頑張らなきゃ!」

 

 その言葉に、曜ちゃんと私も笑みを浮かべる。今まさに、私達の心は一つだった。

 

 「それじゃ、円陣組もう!天くんも!」

 

 「いや、俺マネージャーなんですけど・・・」

 

 「ほらほら、早く!」

 

 曜ちゃんが天くんの腕を引っ張り、曜ちゃんと私の間に立たせた。時計回りに千歌ちゃん、曜ちゃん、天くん、私の並びで円陣を組む。

 

 「えーっと、手を重ねるんだっけ?」

 

 「普通はそうですけど・・・ちょっと変えましょうか」

 

 「変える?」

 

 天くんの言葉に首を傾げていると、天くんが曜ちゃんと私の手を優しく握った。

 

 「そ、天くん!?」

 

 「どうしたの!?」

 

 「・・・手を繋ぐと、お互いの温もりを感じられるじゃないですか」

 

 微笑む天くん。

 

 「お互いの温もりを感じられたら、一人じゃないって思えます。一人じゃないって思えたら・・・少しは安心できるでしょ?」

 

 「天くん・・・」

 

 どうやら、私達が不安がっていたのを分かっていたみたいね・・・

 

 ホント、天くんには敵わないわ・・・

 

 「・・・ナイスアイデアだよ、天くん」

 

 千歌ちゃんも微笑みながら、曜ちゃんと私の手を握る。私達はお互いの手を握り合い、笑みを浮かべた。

 

 「さぁ、行こう!今全力で、輝こう!」

 

 千歌ちゃんが声を張り上げる。私達は、この日の為に決めた掛け声を叫ぶのだった。

 

 「「「「Aqours!サンシャイン!」」」」




どうも~、ムッティです。

相も変わらず投稿が遅くてスミマセン…

そして物語のスピードが遅くてスミマセン…

まだアニメの3話さえ終わっていないというね…

もうちょいサクサク進めるはずだったのに、何故こうなった…

まぁこれからもマイペースに進めていきますので、読んでいただけると幸いです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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手を差し伸べてくれる人は必ずいる。

遂に平成から令和になりましたね。

良い時代になると良いなぁ…


 「・・・想定以上に厳しいな」

 

 ステージ裏から観客席側へとやってきた俺は、その光景を見て思わず渋い表情になる。

 

 観客は満員どころか、数えられるほどの人数しかいなかった。花丸やルビィちゃん、よっちゃんは来てくれているが・・・

 

 っていうか、よっちゃん変装下手すぎじゃない?サングラスにマスクとか、バリバリの不審者だからメッチャ目立ってるんだけど。

 

 「満員には出来なかったみたいね」

 

 背後から声がする。俺が今一番会いたくない人の声だった。

 

 「・・・冷やかしに来たのなら帰って下さい」

 

 「違うわよ。見届けに来ただけ」

 

 俺の隣に立つ小原理事長。

 

 「スクールアイドルを始めたばかりで、このハードルは高過ぎたかしら・・・」

 

 「それを分かった上で、貴女はこの条件を出したんでしょう?後悔したいなら別の場所でお願いします。貴女に付き合っていられるほど暇ではないので」

 

 「・・・本格的に嫌われちゃったわね」

 

 「自業自得です」

 

 俺が吐き捨てるように言うと、小原理事長は寂しそうに笑った。

 

 そんな顔をされたところで、俺はこの人から受けた仕打ちを許すつもりなど無い。

 

 「・・・もう良いのよ、天。あの子達は体育館を満員にすることが出来なかった。スクールアイドル部は設立されないし、あの子達は解散することになる。もうマネージャーなんてやらなくて良いの」

 

 「・・・つくづく見下げ果てた人ですね」

 

 俺を脅してマネージャーをやらせたくせに、今度はマネージャーなんてやらなくて良いだなんて・・・

 

 俺は今、この人を心底軽蔑していた。

 

 「何もう『終わった』みたいな顔してるんですか?ライブはこれからなんですけど?」

 

 「勿論、ライブはやってもらって構わないわ。ただ満員にならなかった以上、あの子達の解散は決定した・・・これ以上、天が望まない仕事をする必要は無いの」

 

 「その望まない仕事を押し付けたのは、一体どこの誰でしたかね?まるで他人事みたいな言い方ですけど、自分のやったことを忘れたんですか?高校の理事長として、頭の中がお花畑なのはいかがなものかと思いますが?」

 

 容赦の無い言葉を浴び、俯いてしまう小原理事長。自分がやったことの重さを、これで少しは認識してもらえるだろう。

 

 「小原理事長、貴女はこう言いました。『ここを満員に出来たら、人数に関わらず部として承認してあげる』と」

 

 「・・・えぇ、言ったわね」

 

 「ですが・・・『ライブ開始時点で』とは言いませんでした」

 

 「え・・・?」

 

 ポカンとしている小原理事長。

 

 「それってどういう・・・」

 

 「要するに」

 

 俺は小原理事長の言葉を遮った。

 

 「このライブでここを満員に出来たら良いんでしょう?それならタイムリミットは、『ライブ開始時点』じゃなくて・・・『ライブ終了時点』じゃないですか」

 

 「っ・・・!」

 

 「つまりライブが終わるまでに、ここを満員にすることが出来れば・・・条件はクリアしたことになります。確かに今は満員ではありませんが、これからお客さんが来る可能性だってありますから」

 

 「天、貴方・・・」

 

 驚いている小原理事長。俺は小原理事長に冷たい視線を向けた。

 

 「ライブはこれからだって言ったでしょう。勝手に終わらせないで下さい」

 

 「で、でも・・・この悪天候の中、これから来る人なんて・・・」

 

 「いないって決め付けるのは止めてもらえます?それとも・・・可能性があるにも関わらず、貴女は約束を反故にするつもりなんですか?」

 

 小原理事長を睨みつける俺。

 

 「見届けに来たのなら、黙ってライブを見てろ。あの三人がどれほど頑張ってきたか、その目でしっかり確認しとけ」

 

 それだけ言うと、小原理事長からステージへと視線を移す。

 

 そしてインカムを通じて、よいつむトリオの三人に合図を出すのだった。

 

 「さて・・・始めましょうか」

 

 『『『了解!』』』

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《千歌視点》

 

 曜ちゃんや梨子ちゃんと手を繋ぎ、ステージに立っている私。

 

 天くんの言う通り、二人の温もりのおかげで少し安心できていた。私は一人じゃないんだ・・・

 

 「・・・来てくれてるかな?」

 

 小さな声で呟く曜ちゃん。

 

 「お客さん・・・来てくれてるかな?」

 

 私達の前には幕が下りている為、観客席の様子を窺うことは出来ない。

 

 幕の向こうにはお客さんがいるかもしれないし・・・いないかもしれない。

 

 「・・・大丈夫だよ」

 

 曜ちゃんの手を強く握る。

 

 「天くんも言ってたでしょ?『ライブ開始時点で満員じゃなくても諦めるな。タイムリミットはライブ終了時点だ』って」

 

 確かに鞠莉さんは、そこまで詳しく指定していたわけじゃない。

 

 でもまさか、そこを突くとは思わなかったなぁ・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 面白そうに笑う梨子ちゃん。

 

 「ホント、抜け目が無いっていうか・・・案外ずる賢いのね、天くんって」

 

 「確かにね」

 

 私もつられて笑ってしまう。頼りになるマネージャーだよ、ホントに・・・

 

 「私達は、私達に出来る精一杯のパフォーマンスをしよう」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「うん!」

 

 気合いが入ったところで、ステージの幕が上がる。観客席の光景が目に飛び込んできた。

 

 「あ・・・」

 

 小さな呟きが口から漏れる。残念ながら、お客さんは十人くらいしかいなかった。

 

 これじゃあ、満員には程遠い・・・

 

 「よっ、待ってました!」

 

 大きな声が会場に響く。視線を向けると、天くんが大きく手を叩いて拍手してくれていた。

 

 天くん・・・

 

 「見て見て花丸ちゃん!衣装凄く可愛いよ!」

 

 「キラキラしてるずら~!」

 

 ルビィちゃんと花丸ちゃんも来てくれている。他のお客さんも浦の星の生徒で、皆笑顔で拍手してくれていた。

 

 ただ一人だけ、サングラスとマスクをした不審な女の子がいるけど・・・あの子もビラを見て来てくれたのかな。

 

 「私達は、スクールアイドル・・・せーのっ!」

 

 「「「Aqoursです!」」」

 

 三人で自己紹介をする。

 

 ここにいる人達は、わざわざ私達のライブを見る為に足を運んでくれたんだ。だったら私達は、この人達に報いないといけない。

 

 「私達は、その輝きと!」

 

 「諦めない気持ちと!」

 

 「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました!」

 

 今は下を向く時じゃない。前を向いてパフォーマンスをしなくちゃいけない。

 

 私達がこの人達に出来ることは、それくらいしかないんだから。

 

 「目標は・・・スクールアイドル、μ'sです!」

 

 そして最後まで諦めない。ライブが終わるその瞬間まで、絶対に諦めない。

 

 「聴いて下さい!『ダイスキだったらダイジョウブ!』!」

 

 私が作詞して、梨子ちゃんが作曲して、曜ちゃんが衣装を作った・・・私達の初めての曲、それが『ダイスキだったらダイジョウブ!』だ。

 

 あの日天くんから言われた、スクールアイドルが大好きだっていう気持ち・・・私はその気持ちを、この曲の歌詞に込めた。

 

 この曲の歌詞は、今の私の気持ちそのものだ。

 

 (楽しい・・・!)

 

 私の心は、喜びで満ち溢れていた。

 

 スクールアイドルとして、曜ちゃんや梨子ちゃんと一緒にステージで歌って踊っている・・・それが本当に嬉しいし、とても楽しい。

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも笑顔だし、お客さんも楽しんでくれているのが分かる。いよいよサビに入り、盛り上がりが最高潮に達しようとしていたその時・・・

 

 突如として音楽が途切れ、照明も消えた。

 

 「えっ・・・?」

 

 真っ暗になった会場で、私は呆然と立ち尽くしていた。

 

 そんな・・・どうして・・・

 

 「まさか・・・停電・・・?」

 

 「そんな・・・こんな時に・・・」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも困惑している。

 

 (・・・やっぱり、私には無理なの?)

 

 普通星人の私が、スクールアイドルになって輝くなんて無理だったのかな・・・身の丈に合わない願いだったのかな・・・

 

 もう、諦めるしかないのかな・・・

 

 

 

 『諦めてしまったら、叶えられる可能性すらない』

 

 

 

 ふと頭の中に、天くんの言葉が浮かんだ。

 

 海の音を聴きに行った時、μ`sの『START:DASH!!』の歌詞について話していた時の言葉だ。

 

 

 

 『だから簡単に諦めるな。夢が叶う日が来る可能性は、諦めなかった人にしか無いんだから』

 

 

 

 「っ・・・」

 

 そうだ。諦めてる場合じゃない。最後まで諦めないって決めたんだ。

 

 「・・・気持ちが、つ~なが~り~そ~う~な~んだ~♪」

 

 アカペラで歌う。曲が流れなくても、歌うことは出来る。

 

 「・・・知らないこ~とば~かり、な~に~も~か~も~が~♪」

 

 「・・・それ~でも、きた~いで、足が~軽~い~よ~♪」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんも続いてくれる。これならまだ・・・

 

 「温度差な~んて、いつ~か~消~し~ちゃえって~ね~♪元気だよ・・・元気を出して・・・いく・・・よ・・・」

 

 もう限界だった。涙がこみ上げてきて、歌うことが出来ない。悔しくて、情けなくて、やるせなくて・・・心が折れる寸前だった。

 

 スクールアイドル部は設立することが出来ず、Aqoursは解散・・・おまけに最初で最後のステージはこの有り様だ。こんなのあんまりだ。

 

 もう、私には前を向くことなんて・・・

 

 

 

 「スイッチオン!」

 

 

 

 天くんの声が会場に響く。その瞬間、再びステージが照明で照らされた。

 

 「・・・え?」

 

 驚いていると、今度は会場のドアが勢いよく開かれた。

 

 「バカ千歌あああああっ!アンタ開始時間を間違えたでしょ!?」

 

 「美渡姉!?」

 

 レインコートを着た美渡姉が、大勢の人を連れて会場に入ってきた。

 

 何が起きているのか、訳が分からない私なのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、元号が令和に変わりましたね。

自分は平成生まれなので、これが初めての改元なのですが…

何だか今一つ実感がありません(笑)

でもきっとそのうち、令和○年というのが当たり前に感じるようになるんでしょうね…

歳ってこうやってとっていくんですね(笑)

令和が良い時代になると良いなぁ…

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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準備しておくに越したことはない。

劇場版『響け!ユーフォニアム』を観に行きたい。


 「停電!?」

 

 驚いている小原理事長。

 

 曲の途中でいきなり発生した停電に、千歌さん達だけではなくお客さん達も困惑していた。

 

 「まぁ、この天気だもんなぁ・・・」

 

 俺は溜め息をつくと、インカムを通じてよいつむトリオの三人に指示を出した。

 

 「むつさんとよしみさん、一度照明のスイッチを切って下さい。切ったらそのまま待機でお願いします」

 

 『わ、分かった!』

 

 『了解!』

 

 「いつきさんも待機してて下さい。何とかしてきますんで」

 

 『何とか出来るの!?』

 

 「元気があれば何でも出来ます」

 

 『アント●オ猪木じゃん!?』

 

 いつきさんのツッコミはスルーして、俺は出口へと足を向けた。

 

 「天!?どこに行くつもり・・・キャッ!?」

 

 足がもつれ、転倒する小原理事長。何してんのこの人・・・

 

 「・・・暗いんですから、下手に動くと危ないですよ」

 

 小原理事長の手を掴み、思いっきり引き上げる。

 

 「あ、ありがと・・・」

 

 「時間も無いんで、このまま行きますね」

 

 「え、ちょ!?」

 

 小原理事長の手を掴んだまま、出口から外へと出て電気室へと向かう。そこには既に先客がいた。

 

 「遅いですわよ、天さん」

 

 「ダイヤ!?」

 

 そう、そこにいたのはダイヤさんだった。

 

 「すみません、このおっぱいお化けのせいで遅れました」

 

 「おっぱいお化けって何!?」

 

 「あぁ、なるほど・・・その無駄に大きい乳をもぎ取ってやりたいですわね」

 

 「ダイヤまで!?」

 

 ショックを受けている小原理事長。と、俺は陰に隠れているもう一人の存在に気付いた。

 

 「・・・果南さん?」

 

 「ぎくっ・・・」

 

 青い髪のポニーテールを揺らし、恐る恐るこちらを振り向く果南さん。

 

 「何で果南さんがここに?」

 

 「アハハ・・・この悪天候で今日はお店が休みになったから、ちょっとライブの様子を見ようかなぁって・・・」

 

 「会場を覗く様子が完全に不審者でしたので、ここまで連行してきたのですわ」

 

 「ちょ、誰が不審者よ!?れっきとしたこの学校の生徒なんだけど!?」

 

 「果南さんうるさいです。おっぱいが大きいからって、声まで大きくする必要は無いんですよ」

 

 「おっぱい関係なくない!?っていうか、完全にセクハラ発言だよねぇ!?」

 

 「ハグ魔に言われたくないです」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる果南さん。と、果南さんと小原理事長の目が合った。

 

 「鞠莉・・・」

 

 「果南・・・」

 

 お互い複雑そうな表情を浮かべる。この二人、何かあったんだろうか・・・

 

 「時間もありませんし、早速取り掛かりますわよ」

 

 手を叩くダイヤさん。

 

 「早くこの発電機をセットして、電源を復活させるのですわ」

 

 「発電機って・・・何でそんなものがここに・・・?」

 

 「倉庫から引っ張り出してきたので」

 

 小原理事長の疑問に、しれっと答えるダイヤさん。

 

 「念の為に準備しておきたいと、天さんにお願いされましたからね」

 

 「天が・・・?」

 

 「まぁ予報でも、天気が悪いって言ってましたから。雷の影響で停電する恐れもあるので、念には念を入れて準備しておこうと思いまして」

 

 使うことはないだろうなんて思ってたけど、まさか本当に使うことになるとは・・・

 

 「ダイヤさんと二人でセットしようと思いましたけど・・・三人もいるなら大丈夫そうですね。というわけで、ここはお願いします」

 

 「天さんはどうするのですか?」

 

 「電源が復活したら、よいつむトリオの三人に指示を出さないといけないので。準備が出来たら、インカムで知らせてもらえますか?」

 

 「承知しました」

 

 「ダイヤさん・・・松嶋菜●子のモノマネしてる場合じゃないですよ」

 

 「家●婦のミタは意識してないですわよ!?」

 

 ダイヤさんの、ツッコミもスルーして、俺は会場へと戻る。そこで目にしたのは・・・

 

 「温度差な~んて、いつ~か~消~し~ちゃえって~ね~♪元気だよ・・・元気を出して・・・いく・・・よ・・・」

 

 泣きながらアカペラで歌う、千歌さんの姿だった。見るからに心が折れかかっている。

 

 「千歌さん・・・」

 

 無理も無い。初めてのライブが解散のリスクを伴ったものということで、余計にプレッシャーを感じていたはずだ。

 

 その上こんなハプニングまで起きてしまったのだから、誰だって泣きたくなるだろう。純粋な性格の千歌さんだけに、ダメージも人一倍なはずだ。

 

 「・・・何でああいう真っ直ぐな人にばかり、こういう試練が待ち受けてるのかなぁ」

 

 本当によく似てるというか・・・こんな試練に遭遇するところまで、似なくてもいいんだけど・・・

 

 と、ダイヤさんから連絡が入る。

 

 『天さん、準備完了ですわ』

 

 「了解です」

 

 さて・・・ちょっくら手を貸しましょうかね。

 

 「むつさん、よしみさん・・・スイッチオン!」

 

 『『ラジャー!』』

 

 再びステージが照明で照らされる。ステージ上の千歌さん達が呆然としている中、今度は会場に大きな声が響き渡った。

 

 「バカ千歌あああああっ!アンタ開始時間を間違えたでしょ!?」

 

 レインコートを着た美渡さんが、大勢の人を連れて会場に入ってくる。

 

 「美渡さん!」

 

 「あっ、天!」

 

 レインコートを脱ぎながら、こっちへ歩いてくる美渡さん。

 

 「遅くなってゴメン!開始時間を間違って知らされてたみたいで・・・」

 

 「どういうことですか?」

 

 「これよ、これ」

 

 美渡さんが一枚のビラを渡してくる。

 

 これって確か、千歌さんが自分達で配る為に作ったビラ・・・ん?

 

 「・・・ここに書いてある開始時間、三十分遅いんですけど」

 

 「そうなのよ!十五分前に行けば良いかなって思って来てみたら、もう始まってるっていうんだもん!ホント焦ったわよ!」

 

 なるほど・・・

 

 千歌さんが作ったビラの開始時間が間違っていたせいで、ライブ開始時点でお客さんが全然来ていなかったと・・・

 

 逆に来てくれていたお客さんは、かなり時間に余裕を持って来てくれていたと・・・

 

 うん、そういうことね。

 

 「すいません美渡さん、ちょっと妹さんのうなじ削いできますね」

 

 「巨人扱い!?気持ちは分かるけど落ち着いて!?」

 

 「駆逐してやる・・・この世から・・・一匹残らず・・・!」

 

 「いや、千歌は一人しかいないから!」

 

 美渡さんに全力で止められたので、仕方なく駆逐を諦める。

 

 あのオレンジヘッド、マジで覚えてろよ・・・

 

 「それにしても・・・埋まったね、会場」

 

 笑っている美渡さん。気付けば会場は満員になっており、どこもかしこも人で埋め尽くされていた。

 

 条件達成だな・・・

 

 「・・・Unbelievable」

 

 いつの間にか、小原理事長が近くに立っていた。満員になった会場を見て、眩しそうに目を細めている。

 

 「あの状態から、本当に満員になるなんて・・・」

 

 「・・・言ったでしょう。可能性はあるって」

 

 美渡さんへと視線を移す。

 

 「そもそも、シスコンの美渡さんが来てない時点でおかしいと思いましたよ」

 

 「誰がシスコンよ!?べ、別に千歌の為なんかじゃないんだからね!?」

 

 「はいはい、ツンデレ乙」

 

 「ツンデレちゃうわ!」

 

 「っていうか、志満さんはどうしたんですか?」

 

 「留守番してくれてるわよ。旅館を空けるわけにはいかないからね」

 

 「・・・・・」

 

 「『アンタが留守番してろよ・・・』みたいな目で見ないでくれる!?」

 

 「おぉ、以心伝心」

 

 「全然嬉しくないんだけど!?」

 

 ギャーギャー喚く美渡さんは無視して、小原理事長へと向き直る。

 

 「・・・条件はクリアしました。今さら約束を反故にしたりしませんよね?」

 

 「勿論よ。スクールアイドル部の設立を許可するわ」

 

 微笑む小原理事長。

 

 「やっぱり貴方は凄いわね、天・・・あの人の言う通りだわ」

 

 「・・・俺は何もしていません。買い被るのは止めて下さい」

 

 それだけ返すと、インカムを通じていつきさんに指示を出す。

 

 「いつきさん、曲を最初から流して下さい」

 

 『え、最初から!?続きからじゃなくて!?』

 

 「これだけの人が集まってくれたんです。もう一度初めからライブやりましょう」

 

 『・・・それもそうだね。了解!』

 

 『ダイスキだったらダイジョウブ』が最初から流れる。千歌さん達は驚いていたが、すぐに曲に合わせて歌い始めた。

 

 「うおおおおおっ!千歌あああああっ!」

 

 興奮して叫んでいる美渡さん。やっぱりシスコンじゃん。

 

 「・・・楽しそうね、あの子達」

 

 小原理事長が呟く。ステージ上で歌って踊る千歌さん、曜さん、梨子さん・・・三人とも活き活きとしていて、本当に楽しそうだ。

 

 それを眺める小原理事長の表情は・・・どこか懐かしそうで、どこか寂しそうなものだった。

 

 「・・・言うべきか迷いましたけど、一応言っておきますね」

 

 「天・・・?」

 

 「発電機のセット・・・手伝ってくれてありがとうございました」

 

 俺の言葉に一瞬ポカンとした後、小さく笑う小原理事長なのだった。




どうも~、ムッティです。

ここで一つ、この作品とは全く関係の無いお知らせをさせていただきますが…



『刀藤綺凛の兄の日常記』が復活しました!



…知らない人にとっては、『何の話?』ってなりますよね(笑)

学戦都市アスタリスクを原作とした、ハーメルンに投稿されているssでございます。

実は自分もアスタリスクが原作のssを投稿させていただいているのですが、以前コラボさせていただきまして。

作者の富嶽二十二景さん(以前の名前は綺凛・凛綺さん)がハーメルンに戻られて、以前の作品を再び投稿されているのです。

以前読んでいたという方、アスタリスクのssに興味があるという方は是非ともチェックしてみてはいかがでしょうか?



というわけで、ちょっと宣伝させていただきました(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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試練を乗り越えた先に待っているものがある。

まだ5月なのにこの暑さ…

今年の夏はヤバい気がする…


 「ライブ凄かったよ天くん!衣装も曲も振り付けも良かったし、先輩方もキラキラしてて輝いてた!それから、それから・・・!」

 

 「アハハ・・・ありがとね、ルビィちゃん」

 

 興奮状態のルビィちゃんに、苦笑しながらそう返す俺。

 

 ライブが終わってお客さん達のお見送りをしていた俺に、ルビィちゃんがダッシュで駆け寄ってきたのだ。

 

 本当にスクールアイドルが好きなんだなぁ・・・

 

 「お疲れ様、天くん」

 

 ルビィちゃんの後ろでは、花丸が優しく微笑んでいた。

 

 「ライブ、凄く楽しかったずら」

 

 「そう言ってもらえると嬉しいよ。来てくれてありがとね、花丸」

 

 「フフッ、天くんの為ならどこでも行くずら」

 

 「・・・花丸が天使に見えるわぁ」

 

 花丸の頭を撫でる。

 

 「まだ結構雨が降ってるから、気を付けて帰ってね」

 

 「了解ずら!」

 

 「じゃあ、また明日ね!」

 

 手を振って帰っていく二人。さて・・・

 

 「花丸もルビィちゃんも行ったし、そろそろ出てきなよ・・・よっちゃん」

 

 「ぎくっ!?」

 

 扉の陰から、よっちゃんが恐る恐る顔を出す。

 

 「恐るべしリトルデーモン・・・隠していた我が魔力を感知するとは・・・」

 

 「扉の陰からシニヨンだけはみ出してたら、誰だって気付くわ」

 

 「うげっ!?」

 

 「っていうか、マスクとサングラス外したら?完全に不審者だよ?」

 

 「誰が不審者よっ!?」

 

 そうツッコミを入れつつも、マスクとサングラスを外すよっちゃん。素直や・・・

 

 「今日は来てくれてありがとね」

 

 「フッ・・・リトルデーモンの頼みを聞くのも、主である我の役目・・・堕天使ヨハネの慈悲深さに感謝するが良い」

 

 「わー、ヨハネ様慈悲深ーい」

 

 「棒読みっ!」

 

 正直、よっちゃんには本当に感謝している。まだ登校する決心がついていない中で、ライブの為にわざわざ学校まで足を運んでくれたのだから。

 

 「・・・学校に来るの、しんどくなかった?」

 

 「急に心配してんじゃないわよ」

 

 バシッと背中を叩かれる。

 

 「これぐらいどうってことないわよ。まぁ、クラスメイト達と会うのは・・・まだちょっと勇気が出ないけど」

 

 「・・・ゆっくりで良いから。焦らずにやっていこうね」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 小さく笑うよっちゃん。

 

 「天も今日はお疲れ。帰ったらゆっくり休みなさいよ」

 

 「分かったよ、母さん」

 

 「誰が母さんよ!?」

 

 「明日ノートとプリント持って行くから。いつものごとく、夕飯ご馳走になります」

 

 「相変わらずその流れなのね・・・了解。じゃあまた明日」

 

 よっちゃんも手を振りながら帰っていく。と、俺の背中がいつもの衝撃を受けた。

 

 「お疲れ様のハグ!」

 

 「・・・慣れって恐ろしいですね」

 

 最初の頃はあんなにドキドキしてたのに、今はもう完全に平常心だ。

 

 健全な思春期男子として、これはいかがなものだろうか・・・

 

 「次々に美少女と会話しちゃって・・・本命はどの子なの?」

 

 「果南さんってことにしといて下さい」

 

 「おっ、私を美少女の括りに入れてくれるの?」

 

 「誰がどう見たって美少女でしょ。果南さんの可愛さを舐めないで下さい」

 

 「な、何か恥ずかしいんだけど・・・」

 

 顔を赤らめる果南さん。

 

 最近分かったことだが、この人もストレートな言葉に弱い。褒め言葉には特に弱い。

 

 「そういえば、果南さんもありがとうございました。発電機のセットを手伝ってくれて」

 

 「どういたしまして。まぁ大したことはしてないけどね」

 

 笑う果南さん。

 

 「それにしても・・・このタイミングで鞠莉に会うとはね・・・」

 

 表情が暗くなる果南さん。やっぱり二人の間には、何かがあるようだ。

 

 「・・・元気出して、のハグ」

 

 「っ!?」

 

 偶にはこっちから果南さんにハグしてみる。果南さんの顔が真っ赤になっていた。

 

 「そ、天!?」

 

 「いつもハグしてる仲なんですから、そんなに恥ずかしがらなくても良いでしょう」

 

 「そ、そうだけどさぁ・・・男の子からハグされるなんて、経験無いから・・・!」

 

 「よし、果南さんの初めてゲット」

 

 「その言い方は誤解を招くから止めてくんない!?」

 

 「ちょっと何言ってるか分かんないです」

 

 「何でよ!?」

 

 どうやら少しは元気が出たようだ。やっぱり果南さんはこうでなくちゃ。

 

 「さて・・・こんなところをダイヤさんに見られたら『破廉恥ですわ!』って怒られそうなんで、そろそろ離れますね」

 

 「アハハ、確かに・・・」

 

 苦笑する果南さん。

 

 「でも・・・偶には相手の方からハグされるのも、悪くないかもね」

 

 「果南さんは基本的に、自分からハグしに行きますもんね」

 

 「そうなんだよ。だからまぁ・・・偶には、天からハグしてくれても良いよ?」

 

 少し恥ずかしそうに笑う果南さん。

 

 何だか今の果南さんは、『お姉さん』というより『女の子』っていう感じがして新鮮だな・・・

 

 「それじゃ、私も帰るね!」

 

 「えぇ。今日は来てくれてありがとうございました」

 

 帰っていく果南さんを見送る。これでお客さんはほとんど帰ったか・・・

 

 「・・・顔を出しに行くかな」

 

 ライブが終わってから、まだ千歌さん達のところに顔を出せていない。

 

 果たしてどんな様子なのか、少し気になっている俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《千歌視点》

 

 「・・・終わったね」

 

 「・・・うん」

 

 「・・・そうね」

 

 ステージ裏で、私達は椅子に座ってボーっとしていた。

 

 ライブが終わって、ステージ裏に戻ってきて、三人で号泣して・・・ひとしきり泣いたら、何だかドッと疲れが押し寄せてきたのだ。

 

 「満員だったね・・・」

 

 「うん、会場を埋められたね・・・」

 

 「条件クリア、よね・・・」

 

 これでスクールアイドル部の設立が認められる。これからもAqoursとして活動することが出来る。

 

 「これから始まるんだ・・・」

 

 ゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

 「始められるんだ・・・スクールアイドル」

 

 また涙ぐんでしまいそうになる。ステージでも泣いたし、さっきも泣いたのに・・・

 

 「・・・千歌ちゃん」

 

 そっと隣に寄り添ってくれる曜ちゃん。

 

 「一緒に頑張ろうね」

 

 「曜ちゃん・・・」

 

 「曲作りは任せて」

 

 梨子ちゃんも隣に立ってくれる。

 

 「絶対に良い曲を作ってみせるから」

 

 「梨子ちゃん・・・」

 

 「だから千歌ちゃん・・・作詞は早めにお願いね?」

 

 「うっ・・・」

 

 「全ては千歌ちゃんにかかってるからね?」

 

 「止めてえええええっ!?プレッシャーかけないでえええええっ!?」

 

 思わず頭を抱えてしまう。そんな私を見て、曜ちゃんと梨子ちゃんが笑っていた。

 

 うぅ、意地悪・・・

 

 「勘違いしないことですわね」

 

 厳しい声がかけられる。振り向くと、ダイヤさんが立っていた。

 

 「今までのスクールアイドルの努力と、街の人達の善意があったからこそライブは成功した・・・それを忘れないように」

 

 「・・・分かってます」

 

 言われなくても分かってる。私達の実力なんてまだまだで、今は他のスクールアイドルには到底及ばない。

 

 そんなことは分かってる。

 

 「でも、ただ見てるだけじゃ始まらないって・・・上手く言えないけど、今しか無い瞬間だから・・・だから、輝きたい」

 

 ダイヤさんを真っ直ぐ見つめる。

 

 「だから全力で、スクールアイドルをやります。普通星人の私がようやく見付けた、心からやりたいことだから」

 

 「・・・そうですか」

 

 ダイヤさんはそれだけ言うと、踵を返して出て行った。

 

 「あんな言い方しなくても良いのに・・・」

 

 口を尖らせる曜ちゃん。

 

 「そんなに私達のことが気に入らないのかな・・・」

 

 「・・・多分、私達の為を思って言ってくれてるんじゃないかな」

 

 最初はただ、スクールアイドルが嫌いなんだと思ってたけど・・・

 

 μ'sのことをあんなによく知ってる人が、スクールアイドルを嫌いなわけがない。

 

 「何か、そんな気がするんだよね」

 

 「千歌さんって、そういう勘だけは無駄に鋭いですよね」

 

 「無駄って酷い・・・って天くん!?」

 

 いつの間にか、すぐ後ろに天くんが立っていた。い、いつの間に・・・

 

 「お疲れ様です」

 

 「いつからいたの!?」

 

 「『夢にときめけ!明日にきらめけ!』からですね」

 

 「そんな場面無かったよねぇ!?完全にルー●ーズじゃん!?川●先生じゃん!?」

 

 「あれ?『あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?』でしたっけ?」

 

 「それはスラ●ダンクの安●先生!野球からバスケになってるよ!?」

 

 「あ、曜さんと梨子さんもお疲れ様でした」

 

 「お疲れ~」

 

 「お疲れ様」

 

 「無視しないでくれる!?」

 

 ホントにこの子は・・・全くもう・・・

 

 「あ、さっき小原理事長とも話したんですけど・・・スクールアイドル部、正式に設立を認めてくれるそうです」

 

 「ホント?良かったぁ・・・」

 

 胸を撫で下ろす梨子ちゃん。

 

 まぁ約束を反故にされることはないとは思ってたけど、改めて聞くとやっぱりホッとする。

 

 「良いライブでしたよ。ファーストライブとしては上々だと思います」

 

 「色々ハプニングもあったけどね」

 

 苦笑する曜ちゃん。あ、ハプニングといえば・・・

 

 「天くんの『スイッチオン!』っていう声と同時に、また照明が点いたんだけど・・・あの時、天くんが何かしてくれたの?」

 

 「あぁ、ちょっと発電機をセットしてもらいまして」

 

 「発電機!?」

 

 「え、まさか停電になることを予測してたの!?」

 

 「えぇ。あくまでも万が一の為に用意してもらったんですけど・・・正解でしたね」

 

 苦笑する天くん。この子、ちょっと有能過ぎない・・・?

 

 「まぁ用意してくれたのもセットしてくれたのも、俺じゃないんですけどね」

 

 「え、じゃあ誰が・・・?」

 

 「あー・・・本人の為にも言わないでおきます」

 

 「えぇっ!?凄く気になるんだけど!?」

 

 何故か言葉を濁す天くん。本人の為ってどういう意味・・・?

 

 「まぁとにかく、何とかなって良かったです。ライブも成功して、スクールアイドル部も設立が認められる・・・最高の結果になりましたね」

 

 「うん、ありがとう・・・天くんのおかげだよ」

 

 「え?」

 

 驚いている天くんの手を、両手でそっと握る。

 

 「ライブの途中、何度も心が折れそうになった。でも折れそうになる度に、天くんの声が聞こえたんだ。だから頑張れた」

 

 「千歌さん・・・」

 

 「今回のライブだって、天くんの支えが無かったら成功してないもん。本当に感謝の気持ちでいっぱいだよ」

 

 練習メニューを考えてくれたり、作詞に悩んでた私にヒントをくれたり・・・

 

 いつだって天くんは、私達に寄り添ってくれた。会場の設営とかだって、誰よりも一生懸命やってくれてたってむっちゃん達から聞いてる。

 

 天くん無しで、今回の成功は有り得なかった。

 

 「支えてくれてありがとう、天くん」

 

 「ホント、天くんにはいつも助けられてるわね」

 

 「曜さん、梨子さん・・・」

 

 天くんと私の手に、曜ちゃんと梨子ちゃんの手が重ねられる。私は天くんを見た。

 

 「これからも、私達のマネージャーでいてくれる?」

 

 「・・・まぁ、そうしろって言われてますからね。あの忌々しい理事長から」

 

 溜め息をつく天くん。

 

 「でも・・・千歌さんや曜さん、梨子さんと一緒にいるのは楽しいですから。もう嫌々マネージャーをやってるわけじゃありませんよ」

 

 「天くん・・・」

 

 「ここからがスタートですから。練習もハードにするんで、覚悟して下さいね」

 

 「っ・・・うん!」

 

 私は笑顔で頷くと、勢いよく天くんの胸に飛び込んだ。

 

 「ちょ、千歌さん!?危ないですって!」

 

 「えへへ、何か無性に抱きつきたくなっちゃった」

 

 「あ、じゃあ私も!ヨーソロー!」

 

 「ちょ、曜さん!?倒れる!倒れるから!」

 

 「だ、だったら私も!えいっ!」

 

 「いや、梨子さんまで来ちゃったら・・・うわっ!?」

 

 三人分の重さに耐え切れなくなった天くんと共に、私達はそのまま床へと倒れ込んだ。

 

 私も曜ちゃんも梨子ちゃんも笑い、天くんはやれやれと言いたげに苦笑している。

 

 仲間達とこうして笑い合えることを、とても幸せに思う私なのだった。




どうも~、ムッティです。

この話で、アニメ一期の第三話まで終了したことになります。

次回からは第四話へと入っていきます。

ここ最近あまり出番のなかった、はなまるびぃの二人を存分に出していく…予定です(笑)

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!



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自分の気持ちに蓋をしてしまうのは苦しい。

劇場版『響け!ユーフォニアム』を観てきました!

いやぁ…あれはヤバい。

絵は綺麗だし、ストーリーには引き込まれるし…

何より演奏シーンが圧巻すぎて鳥肌が立ちました。

またアニメ見たいなぁ…


 「じゃあ曜さんと俺で、ドアと窓を拭いていきましょうか」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「千歌さんは棚拭きを、梨子さんは床拭きをお願いします」

 

 「オッケー!」

 

 「分かったわ」

 

 体育館の中にある一つの部屋を、手分けしながら掃除している俺達。

 

 ファーストライブで会場を満員にしたことで、小原理事長は約束通りスクールアイドル部の設立を承認してくれた。それと同時に部室として与えられたのが、今俺達が掃除しているこの部屋なのだが・・・

 

 長い間使われていなかったらしく、完全な物置部屋と化していたのだ。まずは掃除しないと使えないということで、こうしてせっせと掃除しているというわけである。

 

 「あの腐れ成金理事長・・・ホント覚えてろよ・・・」

 

 「アハハ・・・」

 

 恨み言を呟く俺に、曜さんが苦笑していた。

 

 ライブの時に発電機のセットを手伝ってくれたとはいえ、お礼なんて言うべきじゃなかったな・・・

 

 「曜さん、デ●ノート持ってません?小原理事長の名前を書き込みたいんですけど」

 

 「持ってるわけないじゃん!?何ちょっと物騒なこと言ってるの!?」

 

 「じゃあちょっとリュ●ク探してきて下さいよ。多分リンゴで釣れると思うんで」

 

 「死神を魚みたいに釣れるわけないでしょ!?っていうか、そもそもデスノ●トに触れなきゃ見えないよねぇ!?」

 

 「曜さんならいけますって。ヨーソローパワーで」

 

 「ヨーソローパワーって何!?」

 

 そんな会話をしているうちに、部室内の掃除を終えることが出来た。部室にあった荷物の整理も済ませてあるので、後は机や椅子等を再び配置するだけだ。

 

 「千歌さん、ホワイトボードお願いします」

 

 「はーい!」

 

 廊下に出してあったホワイトボードを引っ張ってくる千歌さん。と、何やら首を傾げている。

 

 「このホワイトボード、何か書いてあるよ?」

 

 「ホワイトボードに名前を書かれた人間は死ぬって?」

 

 「まだデス●ートのネタを引きずるの!?」

 

 千歌さんのツッコミを受けつつ、ホワイトボードに視線を向ける。確かにホワイトボードいっぱいに、消えかかった文字で何かが書かれていた。

 

 これは・・・

 

 「ひょっとして・・・曲の歌詞?」

 

 「そうみたいね」

 

 俺の肩越しにホワイトボードを覗きこんだ梨子さんが頷く。

 

 「でも、こんな歌詞の曲知らないわね・・・」

 

 「私も知らないなぁ・・・ひょっとして、オリジナルの曲だったりして」

 

 「誰かが作詞してたってこと?」

 

 「そうかもしれないわね」

 

 梨子さん達が話している中、俺はホワイトボードに書かれていた文字を見つめていた。

 

 この筆跡には見覚えがある。もし本当にあの人が書いたものだとしたら、色々と疑問に思っていたことにも説明がつくな・・・

 

 「天くん?どうしたの?」

 

 「いえ、何でもないです」

 

 梨子の問いに笑って返す俺。

 

 あくまでも推測でしかないし、俺が踏み込み過ぎるのも良くないだろうな・・・

 

 「千歌さん、ホワイトボードも拭いちゃって下さい」

 

 「え、文字が消えちゃうけど良いの?」

 

 「えぇ。このままじゃ使えないですし、汚れも目立ちますからね」

 

 「了解!」

 

 千歌さんがホワイトボードを拭いていき、文字が完全に消えてしまう。

 

 まぁ、今はこれで良いかな・・・

 

 「じゃあ梨子さんと俺で、机と椅子を運びましょうか」

 

 「えぇ、そうしましょう」

 

 「曜さん、運んできた机と椅子の表面を拭いてもらって良いですか?」

 

 「お任せあれ!」

 

 「あ、じゃあついでに●スノートも・・・」

 

 「それは任せないで!?」

 

 悲鳴を上げる曜さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「失礼しまーす」

 

 段ボール箱を抱え、図書室へとやってきた俺達。受付に花丸が座っていた。

 

 「あれ?天くん?」

 

 「お、花丸じゃん。今日は当番の日?」

 

 「ずら」

 

 頷く花丸。と、俺の後ろから千歌さんがひょっこり顔を覗かせる。

 

 「おぉ、花丸ちゃん!」

 

 「こんにちは」

 

 「そしてルビィちゃん!」

 

 「ぴぎゃあっ!?」

 

 受付の側に置いてある送風機の陰に、しゃがんで隠れていたルビィちゃんを千歌さんが発見する。恐らく花丸と話している時に俺達がやって来たから、咄嗟に隠れようとしたんだろうけど・・・

 

 ルビィちゃん、そのしゃがみ方はあまりよろしくないと思う。スカートの中がバッチリ見えてるから。パンツ丸見えだから。

 

 「・・・天くん?」

 

 「そんな目で見ないで下さい。今のは不可抗力です」

 

 梨子さんが冷たい目でこっちを見ていた。理不尽や・・・

 

 「不可抗力といえば、梨子さんの時も・・・」

 

 「今すぐ記憶から消しなさい」

 

 「アッハイ」

 

 女帝・桜内梨子、ここに爆誕。俺は梨子さんには逆らえそうにないな・・・

 

 「あ、これ部室にあったんだけど・・・図書室の本じゃないかな?」

 

 段ボール箱を受付の机に置く曜さん。部室の荷物を整理していた時に見付けたので、ここまで持ってきたのだ。

 

 花丸が手に取ってチェックする。

 

 「あぁ、多分そうです。わざわざありがとうございまs・・・」

 

 「スクールアイドル部へようこそ!」

 

 「ずら!?」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 強引に割り込んできた千歌さんが、花丸とルビィちゃんの手を握る。

 

 「正式に設立されたし、絶対悪いようにはしないから!二人が歌ったら絶対キラキラする!間違いない!」

 

 「アンタの対応が間違いだわ」

 

 「あたっ!?」

 

 千歌さんの頭を容赦なく引っ叩く。ホントにこの人は・・・

 

 「その辺にしておかないと、マジでしばきますよ?」

 

 「もうしばかれてるんですけど!?男の子が女の子を引っ叩くってどうなの!?」

 

 「男女平等です」

 

 「こういう場面で使う言葉じゃないと思うよ!?」

 

 「とにかく、強引な勧誘はダメです。二人とも戸惑ってるでしょう」

 

 「す、すみません・・・マル、そういうの苦手っていうか・・・」

 

 「ル、ルビィも・・・」

 

 恐縮しながら断る二人。千歌さんは残念そうに苦笑していた。

 

 「アハハ、そっかぁ・・・ゴメンね、つい・・・」

 

 「あっ、いえ・・・」

 

 どこか複雑そうな表情をしているルビィちゃん。そんなルビィちゃんを、花丸が心配そうに見つめている。

 

 あれ、もしかしてルビィちゃん・・・

 

 「千歌ちゃん、そろそろ帰ろう?」

 

 「あ、うん。そうだね」

 

 曜さんに声をかけられ、千歌さんが頷く。

 

 今日は部室の掃除に時間を費やしてしまったので、練習は休みにしようということになったのだ。

 

 「あ、千歌さん達は先に帰って下さい」

 

 「あれ?天くん帰らないの?」

 

 「えぇ。せっかくなので、ちょっと調べ物をしてから帰ります」

 

 「了解。じゃあまた明日!花丸ちゃんとルビィちゃんもまたね!」

 

 三人が図書室を出て行く。さて・・・

 

 「ルビィちゃん、俺の勘違いだったら申し訳ないんだけど・・・ひょっとして、スクールアイドルやりたいんじゃない?」

 

 「っ・・・!」

 

 息を呑むルビィちゃん。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「千歌さんの誘いを断った時の表情が・・・よく似てたから」

 

 「似てたって・・・誰に?」

 

 「俺の知り合い。その子は自分に自信が無くて、本当はやりたいのに『やりたい!』って言えなくて・・・凄く悩んでたんだよね」

 

 「・・・まるでルビィちゃんずらね」

 

 苦笑する花丸。

 

 「天くんはこう言ってるけど・・・ルビィちゃんはどう思ってるずら?」

 

 「・・・やってみたい気持ちはある」

 

 俯くルビィちゃん。

 

 「でも・・・お姉ちゃん、スクールアイドルが嫌いになっちゃったから。多分、反対されると思う」

 

 「ダイヤさんか・・・嫌いになっちゃったってことは、元々は好きだったの?」

 

 「うん。お姉ちゃん、昔はスクールアイドルが大好きで・・・一緒にμ'sのマネして、歌ったりしてたんだ。でも高校に入ってしばらく経った頃から、スクールアイドルが嫌いになっちゃったみたいで・・・」

 

 「嫌いに、ねぇ・・・」

 

 ダイヤさんが今でもスクールアイドル好きなのは間違いない。でも千歌さんをはじめ、スクールアイドルをやりたいと言った人達に頑なな態度をとってきたのも事実だ。

 

 その原因は、恐らく・・・

 

 「・・・本当はね、ルビィも嫌いにならなきゃいけないんだよ。スクールアイドル」

 

 悲しそうに言うルビィちゃん。

 

 「お姉ちゃんが嫌いっていうものを、好きなままじゃいけないんだけど・・・」

 

 「・・・嫌いになれないんでしょ?ルビィちゃん、スクールアイドル好きだもんね」

 

 「・・・うん」

 

 ルビィちゃんは俺の問いに頷くと、花丸の方を見た。

 

 「花丸ちゃんは興味無いの?スクールアイドル」

 

 「マル!?無い無い!運動苦手だし、オラとか言っちゃうし・・・」

 

 「・・・そっか。じゃあルビィも平気」

 

 力なく笑うルビィちゃんを、悲しそうな表情で見つめる花丸なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回からアニメ一期の第四話へと入っていきます。

ここからはなまるびぃの二人の登場が多くなる…はず(笑)

相変わらず不定期の投稿にはなりますが、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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大切な人の背中は押してあげたいものである。

投稿間隔が空いてしまって申し訳ない・・・

今回は短めですが、よろしくお願いします。


 「ずらぁ・・・」

 

 帰りのバスの中で、俺にもたれかかってくる花丸。ちなみにルビィちゃんは用事があったらしく、一足先に帰ってしまった。

 

 「ルビィちゃん、絶対スクールアイドルやりたいずら。間違いないずら」

 

 「まぁそうだろうね」

 

 自分に自信が無いことと、ダイヤさんに反対されるだろうということ・・・この二つが原因で、ルビィちゃんは自分の気持ちに蓋をしてしまっている。

 

 でも・・・

 

 「多分ダイヤさんは・・・反対しないんじゃないかな」

 

 「どうしてそう思うずら?」

 

 「ルビィちゃんが自分で決めたことなら、それを尊重してくれる人だと思うから。あくまでも個人的な考えだけどね」

 

 そう考えると、問題はルビィちゃん自身がどうするか・・・一歩踏み出すことが出来るかどうかだと思う。

 

 でも今のルビィちゃんは、恐らくその選択をしないだろうな・・・

 

 「となると、俺達の選択肢は二つに限られるかな」

 

 「黙って見守るか、背中を押すか・・・ずらね」

 

 「そういうこと」

 

 まぁ、花丸が選ぶとしたら・・・

 

 「勿論、背中を押すずら」

 

 「言うと思ったよ」

 

 笑いあう俺達。

 

 出会ってからそんなに時間は経ってないけど、花丸が友達思いなのはよく知ってる。ここで動かないという選択肢を、花丸が選ぶわけがない。

 

 「でも背中を押すって言っても、強引過ぎるのは良くないよね・・・どうやってルビィちゃんの気持ちを動かすべきか・・・」

 

 「実は一つ、マルに考えがあるずら」

 

 「マジで!?」

 

 まさかもう方法を考えているとは・・・

 

 「天くん・・・マルをスクールアイドル部に入れてほしいずら」

 

 「・・・え?」

 

 唖然としてしまう俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「体験入部?」

 

 首を傾げる千歌さん。

 

 翌日の昼休み・・・俺は二年生の教室に出向き、千歌さん達に事情を説明していた。

 

 「えぇ、花丸とルビィちゃんがやってみたいって」

 

 「体験入部って、要はお試しってことだよね?自分に合ってたら入るし、合わなかったら入らないって感じかな?」

 

 「ですね。二人とも興味はあるみたいで、実際にやってみて判断したいらしいです」

 

 曜さんの問いに頷く俺。

 

 今朝ルビィちゃんにも話したところ、『花丸ちゃんがやるなら』ということでオッケーをもらっている。

 

 「き、奇跡だよ・・・!」

 

 目をキラキラ輝かせる千歌さん。

 

 「これで二人が入ってくれたら・・・!」

 

 「でも昨日、こういうのは苦手って言ってなかったかしら・・・?」

 

 首を傾げる梨子さん。

 

 「それが急にどうして・・・」

 

 「思春期だからです」

 

 「いや、それは別に関係ないんじゃ・・・」

 

 「思春期だからです」

 

 「わ、分かった!分かったから!」

 

 額がくっつくほど梨子さんに顔を近付けて、勢いで無理矢理押し通す。

 

 こういう時、勘の鋭い人って厄介だなぁ・・・

 

 「そういうわけで、今日の放課後は二人が体験入部に来ますから。後のことはよろしくお願いします」

 

 「あれ?天くんは?」

 

 「残念ながら、今日は生徒会なんですよ」

 

 ルビィちゃんのことは花丸に任せて、俺は別の仕事を請け負っている。

 

 さて・・・

 

 「果たしてどうなるかな・・・」

 

 「「「?」」」

 

 俺の呟きに首を傾げる三人なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・今日の仕事はこれで終了ですわ」

 

 「お疲れ様です」

 

 息を吐くダイヤさん。

 

 生徒会の仕事も終わり、後は帰るだけなのだが・・・

 

 「ダイヤさん、この後少し時間ありますか?」

 

 「えぇ、大丈夫ですけれど・・・何か?」

 

 「これからデートしません?」

 

 「デ、デート!?」

 

 ダイヤさんの顔が赤くなる。

 

 「そ、そんな破廉恥な・・・!」

 

 「どんだけ初心なんですか・・・」

 

 ダイヤさんの恋愛経験はゼロということが判明した瞬間だった。

 

 「まぁデートっていうのは冗談で・・・実はダイヤさんにご相談がありまして」

 

 「じょ、冗談って・・・まぁ良いですけれど。それで、相談というのは?」

 

 「ルビィちゃんのことです」

 

 「ルビィの・・・?」

 

 首を傾げるダイヤさん。

 

 「えぇ。ルビィちゃんとは同じクラスっていうこともあって、仲良くさせてもらってるんです」

 

 「ルビィからも、天さんの話は聞いてますわ。あのルビィが男の人と仲良くしてるなんて、私も驚いたのですけれど・・・ハッ!?」

 

 そこで急に息を呑むダイヤさん。

 

 「ま、まさか天さん・・・私の愛する妹に手を出して・・・!?」

 

 「内浦の海に沈みたいんですか?」

 

 「怖いですわよ!?」

 

 このシスコン生徒会長・・・あんな天使みたいな子に手を出せるわけないでしょ。

 

 「とりあえず外に出ましょうか。見てほしいものもありますし」

 

 「見てほしいもの・・・?」

 

 訝しげなダイヤさんに、俺は笑みを向けるのだった。

 

 「えぇ、見てあげて下さい・・・愛する妹の頑張る姿を」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・どういうことですの?」

 

 驚いているダイヤさん。

 

 俺達は今、学校の屋上に来ているのだが・・・

 

 「ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 そこでは今、ルビィちゃんと花丸がダンスの練習をしているところだった。曜さんがカウントをとり、手を叩いている。

 

 「少しズレてるよ!テンポを意識して!」

 

 「はいっ!」

 

 「ずらっ!」

 

 真剣に練習している二人を、俺とダイヤさんは階段の陰から覗いていた。

 

 「何故ルビィがスクールアイドル部に・・・?」

 

 「体験入部ですよ」

 

 説明する俺。

 

 「ルビィちゃん、スクールアイドル好きじゃないですか。それで興味を持ってくれたみたいで、花丸と一緒に体験入部することになったんです」

 

 「ルビィが・・・スクールアイドル・・・」

 

 じっとルビィちゃんを見つめるダイヤさん。その表情は、どこか複雑そうだった。

 

 「・・・反対ですか?」

 

 「え・・・?」

 

 「ルビィちゃんがスクールアイドルをやること・・・ダイヤさんは反対ですか?」

 

 「私は・・・」

 

 俯くダイヤさん。やはりダイヤさんとしては、ルビィちゃんが心配なんだろう。

 

 「とりあえず、もう少し見てあげて下さい。ルビィちゃんの頑張ってる姿を」

 

 ダンスの練習に打ち込むルビィちゃんは、どこか活き活きとした様子だった。スクールアイドルとしての練習が出来ることに、楽しさを覚えているのかもしれない。

 

 そしてもう一人・・・

 

 「花丸ちゃん、良い感じだよ!その調子で頑張って!」

 

 「ずらっ!」

 

 「・・・楽しそうじゃん、花丸」

 

 笑顔で練習する花丸を見て、俺は口元を緩ませるのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、投稿間隔が空いてしまって申し訳ございません・・・

なかなか執筆が進まなくて・・・

今後も投稿間隔が空いてしまうことがあるかと思いますが、温かい目で見守っていただけると幸いでございます。

ちなみに次の話は明日投稿しますので、お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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言葉にしなければ分からないことがある。

最近『未来の僕らは知ってるよ』と『MIRAI TICKET』をよく聴いてます。

Aqoursの曲の中でも、五本の指に入るくらい好きな二曲です。


 「おぉ・・・良い眺めですね」

 

 感嘆の声を上げる俺。

 

 俺達は今、淡島神社へと続く長い階段の途中にいた。少し開けたその場所からは、内浦の海を見渡すことが出来る。

 

 ちょうど夕陽に染まっており、オレンジ色の海がとても綺麗だった。

 

 「でしょう?私のお気に入りスポットですわ」

 

 ダイヤさんはそう言って笑うと、近くのベンチに腰を下ろした。

 

 「それにしても、ルビィは大丈夫でしょうか・・・こんなに長い階段を、ダッシュで上っていきましたが・・・」

 

 ここの階段ダッシュは、Aqoursにとって日々のトレーニングの一環となっている。前に果南さんからこの場所を教えてもらった俺が、トレーニングメニューに追加したのだ。

 

 まぁかなり長いので、途中で一息入れるようにはしているが。果南さんはこれを毎朝、しかも休憩無しでやっているらしい。

 

 小原理事長がおっぱいお化けなら、果南さんは体力お化けといったところだろうか。

 

 「大丈夫ですよ。千歌さん達が無理させないでしょうから」

 

 ダイヤさんの隣に座る俺。

 

 「それにルビィちゃん、意外に体力ありますからね。体育でやった持久走とか、割と良いタイム出してましたよ」

 

 むしろ心配なのは花丸の方だ。運動が苦手と公言するだけあって、体力があまり無い。途中でバテそうな気がする。

 

 「・・・そうですわね」

 

 浮かない表情のダイヤさん。

 

 「・・・ルビィは、本気でスクールアイドルをやるつもりなのでしょうか?」

 

 「もしルビィちゃんが『やりたい』と言ったら・・・ダイヤさんはどうするつもりなんですか?」

 

 「私は・・・」

 

 俯くダイヤさん。

 

 「私は・・・ルビィが本気なら、その気持ちを応援しますわ。あの子がスクールアイドルに憧れているのは、よく知っていますから」

 

 「・・・それはダイヤさんも同じでしょう?」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むダイヤさん。やっぱりな・・・

 

 「ルビィちゃんが言ってました。高校に入ってしばらくして、ダイヤさんはスクールアイドルが嫌いになってしまったと・・・それを聞いて、何となく想像がつきました」

 

 俺は隣に座るダイヤさんへ視線を向けた。

 

 「ダイヤさん、貴女・・・スクールアイドルをやってましたよね?」

 

 「ッ!?」

 

 ダイヤさんが息を呑む。

 

 「ど、どうして・・・!?」

 

 「ダイヤさんが教えてくれたんじゃないですか」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「あの日ダイヤさんが浜辺に書いた、『Aqours』という名前・・・調べたらすぐ分かりましたよ。二年前、東京で行なわれたスクールアイドルのイベントに参加してますよね?出場グループ一覧に、『Aqours』の名前がありました」

 

 『Aqours』という名前には、ダイヤさんにとって思い入れがあるんだろうとは思ってはいたが・・・

 

 まさか自分がやっていたスクールアイドルグループの名前だったとはな・・・

 

 「担任の赤城先生にも聞いてみたんですけど、ちゃんと覚えてましたよ。二年前、浦の星でスクールアイドルをやっていた生徒がいたことを」

 

 「・・・天さんは既にご存知だったのですね」

 

 苦笑するダイヤさん。

 

 「その様子から察するに、他のメンバーが誰なのかも分かっているのでしょう?」

 

 「・・・果南さんと小原理事長ですね」

 

 俺の答えに、力なく頷くダイヤさん。

 

 部室のホワイトボードに書かれていた文字・・・恐らくあれは果南さんの字だ。バイトの時に果南さんが書く字は度々見ているから、すぐに果南さんの字だと分かった。

 

 そして小原理事長が留学したのは二年前・・・恐らくイベントが終わった後に留学したんだろう。スクールアイドル部に何かと目をかけるのも、自身が過去にスクールアイドルをやっていたのであれば説明がつく。

 

 「二年前、ダイヤさん達はスクールアイドルを始めた。でも何らかの理由で辞めざるをえなくなり、Aqoursは解散した。だからダイヤさんは、スクールアイドル関連のものを自分から遠ざけようとしたんでしょう?」

 

 それでも、心の底からスクールアイドルを嫌いになることなど出来なかった・・・μ'sについて楽しそうに語っていたのがその証拠だ。

 

 「スクールアイドルに関わる部の設立を承認してこなかったのは、その人達が傷付かないようにする為・・・スクールアイドルをやっていたからこそ、その大変さがダイヤさんには分かってたんですよね?どんな事情があったにせよ、辞める決断をするというのは・・・とても辛いことですから」

 

 「・・・敵いませんわね。察しが良すぎますわ」

 

 溜め息をつくダイヤさん。

 

 「そこまで分かっているのなら、私が何を心配しているか分かるでしょう?」

 

 「スクールアイドルをやることで、ルビィちゃんが辛い思いをしないか・・・ですね」

 

 「えぇ。あんな思いをするくらいなら、私は・・・」

 

 膝の上で拳を握るダイヤさんが、俺にはとても弱々しく見えた。

 

 誰かが傷付くことを恐れ、自分が嫌われてでも防ごうと必死になる・・・その行動は、ただただ『不器用』の一言に尽きる。いつもスマートに仕事をこなすダイヤさんとは大違いだ。

 

 でも恐らく、その『不器用』な姿こそが本当のダイヤさんなんだろう。人一倍優しいからこそ、人が傷付くのを黙ってみていられない・・・それが『不器用』な行動に繋がっている。

 

 まったく・・・

 

 「千歌さんがあの人に似てると思ったら、ダイヤさんはあの人ですか・・・」

 

 「あの人・・・?」

 

 「いえ、こっちの話です」

 

 まぁそれはさておき・・・俺がダイヤさんにかけられる言葉は一つだ。

 

 「ダイヤさん・・・あまりルビィちゃんを見くびらない方が良いですよ」

 

 「え・・・?」

 

 ポカンとしているダイヤさん。

 

 「それはどういう・・・?」

 

 「そのままの意味です。確かにルビィちゃんは極度の人見知りですし、気の弱いところだってありますけど・・・しっかりとした芯を持ってる子ですよ」

 

 「っ・・・」

 

 「スクールアイドルが大変だってことぐらい、スクールアイドルが大好きなルビィちゃんなら分かってるはずです。それでもルビィちゃんは、『やってみたい気持ちはある』と言いました。この意味が分かりますか?」

 

 それはつまり、『大変だとしてもやる覚悟はある』ということだ。千歌さんがゼロから始めたところを見ているルビィちゃんが、『スクールアイドルは楽だ』なんて思っているはずがないのだから。

 

 「ルビィちゃん、言ってましたよ。『お姉ちゃんが嫌いっていうものを、好きなままじゃいけない』って」

 

 「っ・・・ルビィが・・・?」

 

 「えぇ。それでも、やっぱりスクールアイドルを嫌いにはなれなかったみたいですけどね・・・ダイヤさんと同じで」

 

 こういうところは似てるよな・・・流石は姉妹というべきか。

 

 「要はダイヤさんに遠慮してるんです。ダイヤさんがやってほしくないだろうからやらない・・・それはダイヤさんが望んでいる答えじゃないでしょう?貴女がルビィちゃんに望むものは何ですか?」

 

 「私が・・・ルビィに望むもの・・・」

 

 ダイヤさんの瞳が揺れ動く。俺はダイヤさんを見据えた。

 

 「しっかりしろ、黒澤ダイヤ」

 

 「っ・・・!」

 

 俺に呼び捨て、しかもタメ口をきかれて驚くダイヤさん。先輩を相手に失礼だとは思うが、これだけはハッキリ伝えなくてはいけない。

 

 「妹に伝えたいこと、妹に望むこと・・・それをハッキリ言葉にしろ。言葉にしなくても分かるだなんて、そんなのはただの甘えだ。ルビィが望んでいるのは他の誰でもない、貴女の言葉なんだから」

 

 「天さん・・・」

 

 と、その時・・・

 

 「え、お姉ちゃん!?」

 

 驚く声が聞こえる。振り向くと、ルビィちゃん達が階段を下りてくるところだった。

 

 「ダイヤさん!?それに天くんも!?」

 

 「どうしてここに!?」

 

 千歌さん達も驚いている中、花丸がこちらへ不安げな視線を送ってくる。恐らくダイヤさんを説得できたかどうか、心配しているのだろうが・・・

 

 俺は花丸に笑みを向けると、千歌さん達へと視線を移した。

 

 「ワー、偶然デスネー」

 

 「棒読みっ!絶対偶然じゃないよねぇ!?」

 

 「バアアアアニングゥ!ラアアアアブ!」

 

 「何で艦●れの金●さん!?」

 

 「アレです。内浦に対する愛が溢れてしまったんです・・・メイビー」

 

 「急に!?しかも今メイビーって言ったよねぇ!?」

 

 「落ち着くネ、ブッキー」

 

 「誰がブッキー!?」

 

 ギャーギャーやかましい千歌さんはさておき、俺はルビィちゃんへ目をやった。

 

 「ルビィちゃん、ダイヤさんが話したいことがあるんだって」

 

 「お、お姉ちゃんが・・・?」

 

 恐る恐るダイヤさんを見るルビィちゃん。スクールアイドルをやることについて、反対されると思っているんだろう。

 

 「ルビィ・・・私は・・・」

 

 言葉に詰まるダイヤさん。俺はダイヤさんの背中に手を添えた。

 

 「・・・今ダイヤさんが、一番ルビィちゃんに言いたいことを言ってあげて下さい」

 

 「一番言いたいこと・・・」

 

 逡巡していたダイヤさんだったが、意を決してルビィちゃんを見つめた。

 

 「ルビィ・・・本気でスクールアイドルをやりたいのですか?」

 

 「っ・・・ルビィは・・・」

 

 「ダイヤさん、あの・・・!」

 

 「千歌さん」

 

 慌てて口を挟もうとした千歌さんを、花丸が制する。これはルビィちゃんが答えるべき質問だということを、花丸はよく分かっている。

 

 「ル、ルビィは・・・」

 

 戸惑っているルビィちゃん。仕方ないか・・・

 

 「焦らなくて良いよ・・・ルビィ」

 

 「え・・・?」

 

 俺はルビィに言葉をかけた。初めて呼び捨てにされたせいか、ポカンとしているルビィちゃん。

 

 「ダイヤさんの質問に、きちんと本心で答えてあげて。ダイヤさんが聞きたいのは、ルビィの本当の気持ちなんだよ」

 

 「本当の気持ち・・・」

 

 俯くルビィちゃん。そして、意を決したように顔を上げた。

 

 「お姉ちゃん、ルビィね・・・ルビィ、スクールアイドルがやりたい」

 

 そう言い切るルビィちゃんの表情は、とても真剣なものだった。

 

 「大変なのは分かってる。それでも・・・それでもやってみたい!千歌さん達と一緒に、ルビィも輝きたい!」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 千歌さん達の目が潤む中、ダイヤさんはじっとルビィちゃんを見つめていた。ルビィちゃんもまた、ダイヤさんをじっと見つめている。

 

 そして・・・

 

 「・・・それなら、頑張りなさい」

 

 「っ・・・!」

 

 微笑むダイヤさん。ルビィちゃんが息を呑む。

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「やってみたいのでしょう?ならやってみなさい。ルビィが心からやりたいと思うのであれば、私は応援しますわ」

 

 「っ・・・お姉ちゃん・・・!」

 

 ダイヤさんの胸に飛び込むルビィちゃん。それをダイヤさんが優しく抱き留めた。

 

 「ひっぐ・・・ぐすっ・・・!」

 

 「もう、ルビィったら・・・相変わらず泣き虫ですわね」

 

 「うぅ・・・だって・・・!」

 

 「・・・でも、大きくなりましたわね」

 

 ルビィちゃんの頭を撫でるダイヤさん。俺は二人の側をそっと離れ、花丸の隣へと移動した。

 

 「一件落着・・・ってところかな」

 

 「そうずらね。これでルビィちゃんの気持ちも晴れるずら」

 

 「だね・・・お疲れ、花丸」

 

 「天くんもお疲れ様ずら」

 

 笑みを浮かべ、拳を軽く合わせる俺達なのだった。




どうも~、ムッティです。

梅雨入りしたということで、雨の日が続いております。

梅雨入り前はメッチャ暑かったのに、何故急に寒くなるのか…

いや、個人的に暑い方より寒い方が好きだけども。

こうも急に気温が変わると、身体がついていかないぜ…

皆さんも身体に気を付けて下さい(>_<)

あ、ちなみに明日も投稿しますのでお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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大切なのはやりたいかどうかである。

ポケモンの新作が楽しみすぎてヤバい。

ソードとシールド、どっちにしようかな・・・


 翌日・・・

 

 「ルビィちゃん、入部届け出したみたい。梨子さんからラインきたよ」

 

 「良かったずら」

 

 俺と花丸は、図書室でお喋りしていた。今日は花丸が当番の日なので、俺も普通に受付の椅子に座ってしまっている。

 

 「早速これから練習だって。ルビィちゃん、張り切ってるんじゃないかな」

 

 「天くんは行かなくて良いずら?」

 

 「残念ながら、今日も生徒会なのよね」

 

 ダイヤさんが所用で少し遅くなるとのことだったので、それまでの時間潰しにこうして図書室に来ているのだった。

 

 「花丸こそ、良かったの?」

 

 「何がずら?」

 

 「ルビィちゃんと一緒に、スクールアイドル部に入らなくて」

 

 「・・・オラには無理ずら」

 

 首を横に振る花丸。

 

 「オラとか言っちゃうし、運動は苦手だし・・・スクールアイドルに向いてないずら」

 

 「その割には、スクールアイドルの雑誌読んでるじゃん」

 

 「ずらっ!?」

 

 机の引き出しにしまってあった雑誌を取り出す俺。花丸がこういう雑誌をこっそり読んでいることを、俺は前から知っていた。

 

 「そ、それは・・・ルビィちゃんの好きなものを知ろうと思って・・・!」

 

 「あ、このページの端が折ってある」

 

 「ずらあああああっ!?」

 

 雑誌を取り戻そうとする花丸を避け、そのページを開く俺。そこには、ウエディングドレス姿の女の子が写っていた。

 

 「星空凛ちゃんか・・・μ'sの特集みたいだけど、何でこのページだけ折ってあるの?」

 

 「うぅ・・・それは・・・」

 

 「それは?」

 

 続きを促すと、花丸が観念したように口を開いた。

 

 「何か凄く・・・キラキラしてたから・・・」

 

 「・・・なるほど」

 

 これは確か、凛ちゃんがセンターを務めた『Love wing bell』の時か・・・

 

 「懐かしいな・・・」

 

 「天くん?」

 

 首を傾げる花丸。俺は花丸へと視線を向けた。

 

 「・・・凛ちゃんも、最初はスクールアイドルに向いてないって思ってたらしいよ」

 

 「え・・・?」

 

 「自分には女の子らしい服なんて似合わないからって。凄くコンプレックスを持ってたみたいなんだけど、それを乗り越えられたんだって」

 

 「ど、どうやって・・・」

 

 「同じμ'sのメンバーの小泉花陽ちゃんが、凛ちゃんの背中を押してくれたんだって。花陽ちゃんと凛ちゃんは小さい頃からの親友同士で、凛ちゃんにとって花陽ちゃんの存在は大きかったみたいだよ」

 

 驚いている花丸に、俺は笑みを向けた。

 

 「ちなみに花陽ちゃんがμ'sに入る時、背中を押したのは凛ちゃんなんだって。自分に自信が無かった花陽ちゃんを勇気付けて、μ's入りを後押ししたらしいよ。それにしても、この二人の関係・・・まるでどこかの誰かさん達だと思わない?」

 

 「っ・・・!」

 

 息を呑む花丸。

 

 「花丸はルビィちゃんの背中を押して、Aqours入りを後押しした。なら次は、ルビィちゃんが花丸の背中を押す番じゃないかな・・・ね、ルビィちゃん?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 入り口の陰に隠れていたルビィちゃんが飛び上がり、それに花丸が驚いて飛び上がった。

 

 「ルビィちゃん!?いつの間に!?」

 

 「ア、アハハ・・・少し前に来たんだけど、二人が話してたからつい・・・」

 

 「花丸は気付いてなかったみたいだけど、ツインテールが丸見えだったよ。隠れるなら透明マント持ってこないと」

 

 「どこのハ●ー・ポ●ター!?そんなもの実在しないよ!?」

 

 「じゃあ黒澤家に代々伝わる古の術とか無いの?」

 

 「無いよ!?天くんは黒澤家を何だと思ってるの!?」

 

 「スクールアイドル大好き一族」

 

 「それは私とお姉ちゃんだけだからね!?」

 

 ルビィちゃんは一通りツッコミを入れると、花丸の方を見た。

 

 「花丸ちゃん、ルビィね・・・花丸ちゃんのことずっと見てた」

 

 「え・・・?」

 

 「ルビィに気を遣って体験入部してるんじゃないかって、ルビィの為に無理してるんじゃないかって・・・心配だったから」

 

 実際花丸がスクールアイドル部に体験入部したのは、ルビィちゃんをスクールアイドル部に入部させる為だ。そういう意味では、ルビィちゃんに気を遣ったというのは間違いじゃない。

 

 でも・・・

 

 「でも・・・花丸ちゃん、とっても嬉しそうだった。練習してる時も、皆でお話してる時も・・・それを見て気付いたの。花丸ちゃん、スクールアイドルが好きなんだって」

 

 「マルが・・・?」

 

 驚いている花丸。

 

 ルビィちゃんの言う通り、練習の時の花丸はとても楽しそうだった。運動は苦手という意識が強すぎて、自分では気付いてなかったのかもしれないけど。

 

 「花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルが出来たらって、ずっと思ってた。一緒に頑張れたらって」

 

 「・・・それでも、マルには無理ずら。体力も無いし、向いてないずら」

 

 首を横に振り、俯く花丸。やれやれ・・・

 

 「マルがスクールアイドルなんて、そんな・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろから花丸を抱き締める。小原理事長に脅されて落ち込んでいた時、花丸が俺にしてくれたみたいに。

 

 「そ、天くんっ!?」

 

 「そうやって自分を卑下して、『無理』とか『向いてない』とか言っちゃダメずら。自分の気持ちに正直になるずら」

 

 「・・・マルの真似しないでほしいずら」

 

 「意地っ張りな誰かさんへの罰ずら」

 

 「むぅ・・・」

 

 ジト目で見上げてくる花丸に、俺は笑みを浮かべた。

 

 「ルビィちゃんが正直な気持ちをぶつけてるんだから、花丸も正直な気持ちを言うべきだと思うよ。花丸はスクールアイドルをやりたいの?やりたくないの?」

 

 「・・・やってみたいずら」

 

 小さく呟く花丸。

 

 「でも・・・マルに出来るかな・・・」

 

 「一番大切なのは、出来るかどうかじゃない・・・やりたいかどうかでしょ」

 

 花丸を抱く腕に力を込める。

 

 「一緒に頑張ろう。俺もサポートするから」

 

 「天くん・・・」

 

 「花丸ちゃん」

 

 ルビィちゃんが花丸に手を差し出す。

 

 「ルビィ、スクールアイドルがやりたい。花丸ちゃんと一緒に」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 花丸は笑みを浮かべると、ルビィちゃんの手を握った。

 

 「よろしくずら」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 涙を浮かべるルビィちゃん。良かった・・・

 

 「さて、じゃあ善は急げって言うし・・・入部届けを出しに行こうか」

 

 そう言って花丸から離れようとすると、腕を掴まれた。ルビィちゃんと握手している手と反対の手で、花丸が俺の腕を掴んでいる。

 

 「花丸・・・?」

 

 「・・・もう少しだけ。もう少しだけ、このままでいてほしいずら」

 

 耳まで真っ赤にしながら、小さな声で呟く花丸。ルビィちゃんがニヤニヤしている。

 

 「ひょっとして、ルビィはお邪魔だったかな?」

 

 「そ、そんなことはないずら!マルはただ・・・!」

 

 「失礼しまーす」

 

 花丸が慌てて言い訳しようとしていると、千歌さん・曜さん・梨子さんが図書室へと入ってきた。

 

 「あ、花丸ちゃん。ルビィちゃんはどこに・・・って天くん!?」

 

 「ちょっと!?何で花丸ちゃんを抱き締めてるの!?」

 

 「そういう関係なんです」

 

 「「「えぇっ!?」」」

 

 「天くん!?何言ってるずら!?」

 

 「抱き締めたり抱き締められたりする関係なんです」

 

 「言い方っ!間違ってないけど言い方を考えるずらっ!」

 

 「間違ってないの!?」

 

 「やっぱりそういう関係なの!?」

 

 「違うずらあああああっ!?違わないけど違うずらあああああっ!?」

 

 「どっちよ!?」

 

 ギャーギャー騒いでる四人。それを見て、ルビィちゃんがクスクス笑っていた。

 

 「フフッ、天くんも悪い人だね」

 

 「ルビィちゃんには負けるよ」

 

 笑いあう俺達。と、ルビィちゃんが微笑んだ。

 

 「・・・今回はありがとね、天くん。天くんのおかげで、お姉ちゃんにも花丸ちゃんにも本音が言えたよ」

 

 「ダイヤさんの件は花丸のおかげだし、花丸の件はルビィちゃんが頑張ったからだよ。俺は何もしてないから」

 

 「そんなことないよ。天くんがいなかったら、ルビィは踏み出せてなかったと思う。本当にありがとう」

 

 「ルビィちゃん・・・」

 

 屈託の無い笑顔を見せるルビィちゃん。俺はその笑みに、ダイヤさんの面影を見た気がした。

 

 やっぱり姉妹なんだな・・・

 

 「それとね・・・天くんに一つお願いがあるの」

 

 「お願い?」

 

 急にモジモジし始めるルビィちゃん。どうしたんだろう?

 

 「これからはルビィのこと、呼び捨てで呼んでほしいっていうか・・・ほら!花丸ちゃんのことも呼び捨てで呼んでるし、ルビィのこともそう呼んでほしいなって!」

 

 急に早口でまくし立てるルビィちゃん。顔が真っ赤である。

 

 「了解。じゃあ、改めてよろしくね・・・ルビィ」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 「天くん!早くこっちに来て誤解を解くずら!」

 

 花丸が焦っている。やれやれ・・・

 

 「誤解じゃないでしょ。事実なんだから」

 

 「その言い方が誤解を招いてるずら!」

 

 「それより千歌さん、花丸がスクールアイドル部に入りたいそうですよ」

 

 「えぇっ!?ホントに!?」

 

 「そ、それは・・・ホントずら」

 

 「やったあああああっ!?」

 

 「ヨーソローっ!」

 

 「ずらっ!?」

 

 花丸に抱きつく千歌さんと曜さん。と、梨子さんが俺達のところへやってくる。

 

 「それで?今回も天くんが暗躍してたわけ?」

 

 「いや、暗躍って・・・ひょっとして梨子さん、怒ってます?」

 

 「別にぃ?天くんが誰を抱き締めようが天くんの自由だしぃ?」

 

 「うわぁ・・・」

 

 めんどくさいなぁ、この人・・・何に怒ってるのか知らないけど。

 

 「ほら、拗ねてないで行きますよ。花丸の入部届けを出しに行かないと」

 

 「ちょ、手を引っ張らないでよ!?」

 

 「良いじゃないですか。俺と梨子さんだって抱き合った仲でしょ」

 

 「誤解を招く言い方しないでくれる!?」

 

 「ずらっ!?梨子さんとも抱き合ってたずらっ!?」

 

 「違うのよ花丸ちゃん!?あれはただのスキンシップで・・・!」

 

 「何か今の会話だけ聞いてると、天くんって女ったらしみたいだよね」

 

 「曜さん、人聞きの悪いこと言わないで下さい。デスノー●に名前書き込みますよ」

 

 「最後までそのネタ引きずるの!?」

 

 皆でわいわい騒ぎながら、図書室を後にする。

 

 新しくスクールアイドル部に加わった、引っ込み思案な仲良しコンビ・・・花丸とルビィがどんな姿を見せてくれるのか、今からとても楽しみな俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回でアニメ一期の第四話が終了となります。

次回からは第五話の内容に入っていきます。

遂に善子回・・・善子ちゃんの運命やいかに。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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一歩を踏み出す為には勇気が必要である。

毎日暑くて辛い・・・

これからまだ暑くなるのかと思うと、ホント萎えるわ・・・


 「ランキングが上がらないよおおおおおっ!」

 

 部室に置かれたパソコンを前に、頭を抱える千歌さん。

 

 花丸とルビィが加わったのを機に、Aqoursはスクールアイドル専門のサイトに登録した。ここに登録すると、スクールアイドルを応援している人達の評価によってランク付けされるようになるのだ。

 

 このサイトに登録しているスクールアイドルの数は、およそ5000組。現在Aqoursは4768位なので、かなり下の方ということになる。

 

 「昨日が4856位で、今日が4768位・・・」

 

 「落ちてはいないけど・・・」

 

 梨子さんと曜さんも肩を落としている。思うように順位が上がらないことで、もどかしく思っているのだろう。

 

 「確かに人気は大事ですけど、まだ登録したばかりなんですから仕方ないですよ」

 

 俺は苦笑しつつ、お茶の準備を進めていた。

 

 「とりあえず一息つきましょう・・・はい、お茶と和菓子」

 

 「ずらあああああっ!」

 

 真っ先に花丸が和菓子を頬張る。

 

 花丸は美味しい食べ物に目が無い上、無限大の食欲を誇る大食い娘だったりする。その割りにはメッチャ小柄なんだけど、摂取した栄養は一体どこへいっているのだろうか・・・

 

 やっぱりおっp・・・

 

 「・・・天くん?」

 

 「すいませんでした」

 

 女帝の冷たい視線が飛んでくる。何で人の思考が分かるんだ・・・

 

 「ん、美味しい!」

 

 ルビィも目を輝かせながら和菓子を食べている。

 

 「天くんの差し入れてくれる和菓子は凄く美味しいって、お姉ちゃんからも聞いてたけど・・・どこのお店の和菓子なの?」

 

 「東京だよ。向こうに住んでた時、よく通ってた和菓子屋さんがあるんだ。こっちに来てからは、電話で注文して送ってもらってるんだけど」

 

 「えぇっ!?東京の和菓子!?」

 

 「早く食べなきゃ!」

 

 「二人ともがっつかないの!」

 

 急いで食べようとする千歌さんと曜さんを、梨子さんが嗜める。

 

 「でも天くん、よく和菓子を差し入れで振る舞ってくれるけど・・・こういうのって結構高いんじゃない?大丈夫?」

 

 「大丈夫ですよ」

 

 心配してくれる梨子さんに、笑いながら答える俺。

 

 「その和菓子屋の大将と奥さんには、昔からよくお世話になってまして。電話で注文すると、必ず注文した数より多く送ってくれるんですよ。ありがたいことなんですけど、一人じゃ食べ切れなくて・・・」

 

 「じゃあマルが全部食べてあげるずら!」

 

 「あっ、花丸ちゃんズルい!ルビィも食べる!」

 

 「食い意地を張らないの!」

 

 梨子さんに怒られる花丸とルビィ。

 

 「まぁそういうことなんで大丈夫です。大将と奥さんも、『周りから好評だ』って伝えたら凄く喜んでましたから。遠慮なく召し上がって下さい」

 

 「そういうことなら・・・ありがとう。遠慮なくいただくわ」

 

 微笑む梨子さん。一方、千歌さんは再びパソコンと睨めっこしていた。

 

 「むぅ・・・どうしたらランキング上がるかなぁ・・・」

 

 「んー・・・例えば、名前を奇抜なものにしてみるとか?」

 

 「今からでもスリーマーメイドにします?」

 

 「ぶふうううううっ!?」

 

 お茶を飲んでいた梨子さんが盛大に吹き出す。

 

 「ゴホッ、ゴホッ・・・そ、それは忘れてって言ったでしょ!?」

 

 「あ、今はファイブマーメイドですね」

 

 「そういうことじゃないから!」

 

 「じゃあ梨子さんだけ『ピンクマーメイド』を名乗りましょう。苗字が桜内だけに」

 

 「止めてええええええええええっ!?」

 

 顔を真っ赤にしながら俺の胸倉を掴み、盛大に身体を揺らしてくる梨子さん。そんなに恥ずかしいのかな?

 

 「いや違うから。恥ずかしがってるのは見られた時のことだから」

 

 俺の心を読んだであろう千歌さんのツッコミに、首を傾げる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「リア充に、私はなる!」

 

 「いや、そんな『海賊王に、俺はなる!』みたいに言われても・・・」

 

 堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんに、呆れた視線を向ける俺。

 

 いつものごとくノートとプリントを届けに来た俺は、よっちゃんの部屋で突然訳の分からない宣言を聞かされていた。ちなみに善恵さんは夕飯の買出し中である。

 

 「あの悪夢の日から一ヵ月半・・・もう五月の半ばよ。そろそろ学校に行かないと、マジでヤバいわ」

 

 「そうだね。来週から中間試験もあるし」

 

 流石に中間試験を受けないのはちょっとマズい。

 

 赤城先生からも、『中間試験だけでも受けるように、絢瀬くんから津島さんに言ってもらえないかしら?』とお願いされたほどだ。

 

 「そこで私は覚悟を決めたわ・・・明日から学校に行く!」

 

 「・・・熱でもあるの?」

 

 「ちょ、顔が近いわよ!?」

 

 額と額をくっつけてみるが、熱は無いようだ。

 

 ということは、マジで言ってるのか・・・

 

 「よっちゃん、本当に大丈夫?無理はしなくて良いんだよ?」

 

 「・・・いつまでも甘えてちゃダメなのよ」

 

 小さな声で呟くよっちゃん。

 

 「そろそろ一歩踏み出さないと・・・私は変わらなきゃいけないのよ」

 

 「よっちゃん・・・」

 

 どうやらよっちゃんは本気らしい。なら俺も、よっちゃんの背中を押してあげないと。

 

 「・・・分かった。じゃあ明日は一緒に学校に行こう」

 

 「良いの・・・?」

 

 「勿論。よっちゃんのことはちゃんとサポートするから、安心して」

 

 「・・・うん。ありがと」

 

 微笑むよっちゃん。

 

 「フフッ、流石は我がリトルデーモン・・・褒めてつかわすぞ」

 

 「前言撤回。一人で何とかしろバカヨハネ」

 

 「すいませんでしたあああああっ!」

 

 その場で土下座するよっちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 「フフッ・・・今日も良い天気ね、天」

 

 「ソウダネ、ヨッチャン」

 

 優雅な女子高生として振舞うよっちゃんに、カタコトで返事をする俺。

 

 よっちゃんと俺は、学校へと続く坂道を上っているところだった。

 

 「ちょっと天、返事が不自然よ。それじゃ不審に思われるでしょうが」

 

 「いや、不自然にもなるって。よっちゃんの本性を知ってる身としては、その優雅なキャラが気持ち悪くて仕方ないんだけど」

 

 「酷い!?女の子に『気持ち悪い』とか言うんじゃないわよ!?」

 

 「『初対面で下劣だの下等だの言うような奴は、女子としてカウントされない』って、初めて会った時に言ったじゃん」

 

 「あのルールまだ適用されてたの!?」

 

 小声でひそひそと話し合っていると・・・

 

 「あ、天くん!」

 

 「おはよー!」

 

 クラスの女子達が声をかけてくれる。手を上げて応える俺。

 

 「おはy・・・」

 

 「おはよう♪」

 

 一瞬で優雅キャラの皮を被ったよっちゃんが、にこやかに女子達に笑いかける。

 

 「お、おはよう・・・」

 

 「えーっと、津島さん・・・だよね?」

 

 「えぇ、そうよ」

 

 戸惑う女子達に対し、笑みを浮かべて答えるよっちゃん。

 

 「今までずっと休んでいたんだけど、今日からまた学校に通えることになったの。これからよろしくね」

 

 「う、うん・・・」

 

 「よ、よろしく・・・」

 

 おずおずと答える女子達。

 

 よっちゃんは微笑むと、そのまま優雅な足取りで坂道を上っていく。

 

 「津島さん、雰囲気変わった・・・?」

 

 「あんな子だったっけ・・・?」

 

 「気にしないで。久しぶりの学校に浮かれてるだけだから」

 

 「そ、そうなんだ・・・」

 

 とりあえずそういうことにしておく。

 

 ちなみに言っておくと、クラスメイト達は皆あの自己紹介の時のことを覚えている。あんなにインパクトの強すぎる自己紹介、そうそうお目にかかれないし。

 

 それだけにあの優雅なキャラが逆に違和感バリバリだということに、よっちゃんは未だに気付いていないらしい。

 

 「そのうち素が出ると思うから、今は優しく見守ってあげて。っていうか、素が出ちゃっても温かい目で見守ってあげて」

 

 「わ、分かった・・・」

 

 「何か天くん、津島さんの保護者みたい・・・」

 

 そんな話をしていると、よっちゃんが途中でこちらを振り向いた。

 

 「天、何をしているの?早く行きましょう?」

 

 「はいはい・・・じゃ、よろしくね」

 

 「「り、了解・・・」」

 

 何とか二人の理解を得られたところで、小走りでよっちゃんに追い付く。

 

 「見た!?ねぇ見た!?私メッチャ自然に会話してたわよね!?」

 

 「ウン、ソウダネ」

 

 「いける!いけるわ!この調子なら上手くやれる!リア充になれる!」

 

 「頑張ッテ。応援シテルヨ」

 

 「ありがとう天!私頑張る!」

 

 俺がカタコトで返事をしていることにも気付かず、やる気に満ち溢れているよっちゃん。

 

 自分では自然だと思っているようだが、ここは不自然さを指摘すべきなのか・・・

 

 「さぁ、行くわよ天!私達の教室へ!」

 

 俺の手を掴み、満面の笑みで歩き出すよっちゃん。そんな楽しそうなよっちゃんを見ていたら、俺は何も言えなくなってしまった。

 

 「・・・まぁ良いか」

 

 よっちゃんが笑顔でいられるなら、それに越したことはない。

 

 俺は苦笑しつつ、よっちゃんに引っ張られるがままに歩き出すのだった。




どうも~、ムッティです。

梶裕貴さん、竹達彩奈さん、ご結婚おめでとうございます!

いやぁ、ビックリしました(゜ロ゜)

梶さんと竹達さんといえば、個人的には『ハイスクールD×D』を思い出しますね。

まさかイッセーと小猫ちゃんがねぇ…

本当におめでたいことですね(^^)

末永くお幸せに(・∀・)ノ

あ、次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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自分を変えるというのは簡単ではない。

梅雨ってホントに憂鬱・・・

暑い上に雨とか最悪すぎる・・・


 「な、何がどうなっているずら・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 唖然としている花丸とルビィ。

 

 その視線の先では、よっちゃんがクラスメイト達とにこやかに会話していた。

 

 「善子ちゃん、キャラが全然違うずら・・・」

 

 「堕天使ヨハネは封印して、優雅な女子高生でいくらしいよ。『あの時みたいな過ちは犯さないわ!』って意気込んでたけど」

 

 「確かに似合ってるよね。津島さん美人だし」

 

 そんなことを言うルビィ。

 

 確かによっちゃんは美人だし、何も知らない人なら違和感も無くあのよっちゃんを受け入れるだろうな。

 

 「でも善子ちゃんの中で堕天使ヨハネは、自分の一部として昇華されてるはずずら。それを完全に封印できるとは思えないずら」

 

 「俺もそう思うんだよね・・・」

 

 そんな俺達の会話をよそに、よっちゃん達は楽しそうに談笑を続けていた。

 

 「ねぇねぇ、津島さんって趣味とか無いの?」

 

 「し、趣味・・・?」

 

 あ、よっちゃんが詰まった。ここで堕天使関連のことを口には出来ない・・・

 

 さて、どうする?

 

 「う、占いをちょっと・・・」

 

 「ホント!?」

 

 「すごーい!」

 

 色めきたつクラスメイト達。よっちゃん、占いなんて出来たのね・・・

 

 「私占ってくれる!?」

 

 「私も私も!」

 

 「良いよ!」

 

 笑顔で答えるよっちゃん。皆が盛り上がってくれたのが嬉しかったらしい。

 

 「今占ってあげるね!」

 

 よっちゃんはそう言うと・・・おもむろに黒い衣装に身を包み、魔法陣のようなものが書かれた布を床に広げ始めた。

 

 えっ・・・

 

 「これで良し!」

 

 シニヨンに黒い羽を刺し、蝋燭を取り出してクラスメイトに差し出すよっちゃん。

 

 「はい、火をつけてくれる?」

 

 「へっ?あ、うん・・・」

 

 よっちゃんから渡されたチャッカマンで、蝋燭に火をつけるクラスメイト。

 

 学校に何を持ってきてんのよっちゃん・・・

 

 「天界と魔界に蔓延る遍く精霊、煉獄に堕ちたる眷属達に告げます。ルシファー、アスモデウスの洗礼者・・・堕天使ヨハネと共に、堕天の時が来たのです!」

 

 「・・・どこが占い?」

 

 思わずツッコミを入れてしまう俺。よっちゃんは正気に戻ったのか、大量の冷や汗をかいていた。

 

 あーあ・・・

 

 「ピ・・・ピ~ンチッ!?」

 

 教室から逃走していく堕天使・・・あれ、何かデジャヴだわ。

 

 「皆さ~ん、席に着いて・・・って津島さん!やっと登校してきてくれたんですね!」

 

 「うわああああああああああんっ!」

 

 教室に入ってこようとした赤城先生を押し退け、ダッシュで逃げて行くよっちゃん。

 

 「ちょ、津島さん!?どこへ行くんですか!?」

 

 「赤城先生、ストップ」

 

 追いかけようとする赤城先生の肩を掴む俺。

 

 「絢瀬くん!?何があったんですか!?」

 

 「何も無いですよ。自爆テロがあっただけです」

 

 「重大事件が発生してるじゃないですか!?怪しげな黒い布と火のついた蝋燭があるのは何でですか!?」

 

 「犯人の遺品です。花丸、蝋燭の火消して」

 

 「了解ずら」

 

 蝋燭の火を吹き消す花丸。さて・・・

 

 「とりあえず犯人を捕まえてくるんで、先生はそれを使って占いでもやってて下さい」

 

 「占い!?これで占い!?」

 

 ツッコミを連発している赤城先生をスルーして、よっちゃんを捕獲すべく教室を飛び出した俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「どうして止めてくれなかったのよおおおおおっ!?」

 

 部室の机の下で体育座りをしながら、両手で顔を覆っているよっちゃん。

 

 あの後すぐによっちゃんを捕獲したものの、本人が教室に戻ることを頑なに拒否。

 

 仕方ないので保健室で預かってもらい、昼休みによっちゃんの気分転換を兼ねて部室に連れてきたのだった。

 

 「いやぁ、あんな物を持ってきてるとは思わなくて・・・」

 

 「私は中学の時まで、『自分は堕天使だ』と思ってた重度の中二病患者よ!?舐めんじゃないわよ!」

 

 「何で偉そうにしてるずら・・・」

 

 呆れている花丸。っていうか、重度の中二病患者っていう自覚はあるのね・・・

 

 「つまり、中学の頃の癖が抜け切ってないってこと?」

 

 「・・・そういうこと」

 

 ルビィの問いに頷くよっちゃん。

 

 「分かってるの、自分が堕天使のはずなんてないって・・・そもそもそんなもんいないんだし・・・」

 

 「だったらどうしてあんな物学校に持って来たの?」

 

 机の上に置かれた蝋燭や黒い布を見る梨子さん。

 

 「それはまぁ、ヨハネのアイデンティティみたいなもので・・・あれが無かったら、私は私でいられないっていうか・・・ハッ!?」

 

 ヨハネ化しかけたところで、ハッと我に返るよっちゃん。

 

 堕天使ヨハネは、本当によっちゃんの一部として昇華されているらしい。

 

 「・・・何か心が複雑な状態にあるということは、よく分かった気がするわ」

 

 溜め息をつく梨子さん。難儀だなぁ・・・

 

 「だね。実際今でも、ネットで占いやってるみたいだし」

 

 曜さんがパソコンを操作し、ある動画を再生する。

 

 そこに映っていたのは、堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんだった。

 

 『フフッ、またヨハネと堕天しましょ・・・?』

 

 「うわあああああっ!?」

 

 慌ててパソコンを閉じるよっちゃん。あの無駄に凝った衣装は、これに使う為の物だったのね・・・

 

 「とにかくっ!私は普通の高校生になりたいのっ!」

 

 「普通になる理由は何があるんでしょうか?堕天使じゃダメなんでしょうか?」

 

 「蓮●かっ!『2位じゃダメなんでしょうか?』みたいに言わないでくれる!?」

 

 「んー、じゃあ俺のことを『お兄様』って呼んでみたら?」

 

 「それ『魔●科高校の劣等生』でしょうが!」

 

 「いや、妹の方だから優等生でしょ」

 

 「どっちでも良いわ!そもそもあの兄妹のどこが普通の高校生なのよ!?」

 

 「自分のことを『堕天使ヨハネ』とか名乗らないところだよ」

 

 「うわあああああん!?」

 

 机に突っ伏すよっちゃん。やれやれ・・・

 

 「そんなに普通の高校生になりたいの?」

 

 「なりたいに決まってるでしょ!?」

 

 涙目でずいっと俺に顔を近付けてくるよっちゃん。

 

 「天ぁ・・・何とかしてよぉ・・・!」

 

 「はいはい、泣かないの」

 

 よっちゃんの頬に手を当て、目元の涙を親指で優しく拭う。

 

 よっちゃんを普通の高校生にねぇ・・・

 

 「・・・可愛い」

 

 「え・・・?」

 

 ボソッと呟く声が聞こえる。振り向くと、千歌さんがパソコンに映し出されたよっちゃんをマジマジと見つめていた。

 

 「千歌さん・・・?」

 

 「これだ・・・これだよっ・・・!」

 

 千歌さんは勢いよく立ち上がると、よっちゃんの手を力強く握った。

 

 「津島善子ちゃん・・・いや、堕天使ヨハネちゃん!」

 

 目をキラキラ輝かせている千歌さん。あっ、これは・・・

 

 「スクールアイドル、やりませんか!?」

 

 「・・・え?」

 

 「・・・言うと思った」

 

 訳が分からないといった表情のよっちゃん。その隣で溜め息をつく俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回はちょっと短めでした。

果たしてよっちゃんは普通の高校生になれるのか・・・

個人的には●舫さんの有名な言葉を出せたので満足です(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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追い込まれた人は何をしでかすか分からない。

あー、旅行に行きたい・・・

思いっきり羽を伸ばしたい・・・


 「こ、これで歌うの・・・?」

 

 モノクロの衣装に身を包んだ梨子さんが、しきりにスカートを気にしている。

 

 放課後、俺達は千歌さんの家へとやってきていた。何でも千歌さんが、ランキングを上げる為の良い考えを思いついたらしい。

 

 ホントかなぁ・・・

 

 「この前より短い・・・これでダンスしたら、流石に見えるわ・・・」

 

 「マジですか。じゃあちょっとダンスしてみて下さい」

 

 「話聞いてた!?見えるって言ってるでしょうが!」

 

 「良いじゃないですか。俺はもう見てるんですし」

 

 「あああああっ!?聞こえないっ!何も聞こえないっ!」

 

 しゃがみ込んで耳を塞ぐ梨子さん。やれやれ・・・

 

 「っていうか曜さん、よくこんな衣装ありましたね」

 

 「いやー、色々と試作品を作ってたんだよねー!花丸ちゃんとルビィちゃんも加わったし、次の衣装を考えてたら作業が捗っちゃってさー!」

 

 鏡の前で嬉々として衣装を眺めている曜さん。ホントに衣装が好きだな・・・

 

 「それで千歌さん、良い考えっていうのは・・・」

 

 「よくぞ聞いてくれました!」

 

 腕を組み、ふんぞり返る千歌さん。

 

 「ズバリ!Aqoursは堕天使アイドルでいこうと思います!」

 

 「地獄に堕ちろ、単細胞オレンジヘッド」

 

 「段々と罵倒が酷くなってきてるのは気のせい!?」

 

 「それだけ千歌さんへの信頼が無くなってきてる証拠です」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。いや、堕天使アイドルって・・・

 

 「それのどこが良い考えなんですか・・・」

 

 「調べてみたけど、堕天使アイドルっていなかったんだよ。結構インパクトあると思うし、良いんじゃないかな?」

 

 「・・・まぁインパクトはあるでしょうね」

 

 この前まで正統派アイドル路線だったのに、急に大きく路線を外れて堕天使アイドルだもんな・・・

 

 確かに、見てる方からすると衝撃は大きいと思う。

 

 「な、何か恥ずかしい・・・」

 

 「落ち着かないずら・・・」

 

 普段着ない衣装を着ているせいか、モジモジしているルビィと花丸。

 

 っていうか花丸、それ以上スカートを持ち上げないで。見えるから。ワ●メちゃんみたいになるから。

 

 「ほ、本当にこれで良いの・・・?」

 

 堕天使の衣装に身を包んだよっちゃんが、おずおずと尋ねる。

 

 あのよっちゃんでさえそんなことを言う時点で、俺達がいかに迷走しているかが分かるな・・・

 

 「これで良いんだよ!ステージ上で堕天使の魅力を皆で思いっきり振りまくの!」

 

 「堕天使の・・・魅力・・・」

 

 あっ、よっちゃんの心が揺れてる・・・

 

 「ハッ!?ダメダメ!そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!?」

 

 おっ、正常な思考を取り戻したようだ。

 

 「大丈夫だよ!きっと大人気だよ!」

 

 「だ、大人気・・・ククッ・・・クククッ・・・」

 

 あぁ、完全に堕ちたな・・・ダメだこりゃ・・・

 

 「ハァ・・・私、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

 

 溜め息をついて、部屋から退出する梨子さん。梨子さん的には、あまり賛成できるアイデアではなかったようだ。

 

 「よーし!堕天使アイドルとして頑張るぞー!」

 

 「「おー!」」

 

 意気込む千歌さんと、ノリノリな曜さんとよっちゃん。花丸とルビィは苦笑しているところを見ると、梨子さん寄りの考えみたいだ。

 

 ここは一言言っておくべきか・・・

 

 「千歌さん、一つ忠告しておきますね」

 

 「忠告?」

 

 首を傾げる千歌さん。何のことか分かっていないらしい。

 

 「本当に堕天使アイドルとしてやっていきたいのなら、別に止めはしません。ですが、ただランキングを上げたいという理由でやろうとしているのなら・・・路線変更はオススメできません」

 

 「え、何で?」

 

 「意味が無いからです」

 

 バッサリ切り捨てる俺。

 

 「Aqoursは美少女揃いですから、堕天使アイドルも最初は人気が出るでしょう。恐らくランキングも上がります」

 

 「ホント!?じゃあ・・・」

 

 「ですが、それは一時的なものですよ。目新しさが無くなってしまえば、また元に戻るのがオチです。そしてまた目新しさを求めて、路線変更を繰り返す・・・そうなってしまったら、相当苦しくなるでしょうね」

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「やるんだったら、最後まで貫く必要があります。今の路線を貫くのか、堕天使アイドルを貫くのか・・・目先のことだけ考えて動くと、後々痛い目を見ますよ」

 

 「うっ・・・」

 

 言葉に詰まる千歌さん。と、その時・・・

 

 「嫌ああああああああああっ!?」

 

 廊下から梨子さんの悲鳴が聞こえた。えっ、何事?

 

 「来ないでええええええええええっ!?」

 

 「わんわんっ!」

 

 「ちょ、しいたけ!?」

 

 しいたけから逃げる梨子さんと、しいたけを止めようとする美渡さんの姿が障子越しに映った。

 

 あー、梨子さんって犬が苦手なのか・・・

 

 「梨子ちゃん大丈夫!しいたけは大人s・・・うわっ!?」

 

 部屋の襖をぶち破り、梨子さんが部屋に飛び込んでくる。

 

 そして障子もぶち破り、窓から向かい側にある自分の家のベランダへとジャンプした。

 

 「梨子さん!?」

 

 慌てて窓へ駆け寄ると、梨子さんが空中で一回転しながらベランダに着地するところだった。

 

 何あの人、凄くない?

 

 「「「「「「「おぉ・・・!」」」」」」」

 

 思わず拍手する俺達。流石は女帝、そこに痺れる憧れる。

 

 「いったぁ・・・」

 

 着地の際にお尻を打ったらしく、梨子さんが痛そうにお尻を擦っている。

 

 「梨子さーん、大丈夫ですかー?」

 

 「大丈夫じゃないわよ!?何で私はこんな目に遭ってるの!?」

 

 「日頃の行いが悪いんですね、分かります」

 

 「喧嘩売ってる!?お尻も痛いし最悪よ!」

 

 「いや、お尻もそうですけど・・・もっと気にしなくちゃいけないことがあるでしょ」

 

 「気にしなくちゃいけないこと?」

 

 首を傾げている梨子さん。あー、気付いてないのか・・・

 

 「梨子さん、今どんな格好してます?」

 

 「どんなって・・・さっきの衣装を着てるけど?」

 

 「その衣装ってスカートですよね?」

 

 「そうだけど?」

 

 「さっきその衣装、スカートが短いって言ってましたよね?」

 

 「そうそう。これでダンスしたら、流石に見え・・・る・・・」

 

 梨子さんの顔がどんどん赤くなっていく。ようやく気付いたようだ。

 

 「そ、天くん・・・?」

 

 「何でしょう?」

 

 「ま、まさかとは思うけど・・・み、見てないわよね・・・?」

 

 恐る恐る尋ねてくる梨子さんを安心させるべく、俺はニッコリ笑った。

 

 「大丈夫ですよ。『今日は白かぁ・・・やっぱり梨子さんは清楚だなぁ・・・』なんて思ってませんから」

 

 「嫌ああああああああああっ!?」

 

 窓を開け、家の中に逃げていく梨子さん。耳まで真っ赤になっていた。

 

 「あっ、梨子ちゃんのメンタルがやられた・・・」

 

 「天くん、そこは見てないフリしなくちゃ・・・」

 

 「危ないマネをした梨子さんに対する、ちょっとした罰ですよ」

 

 しいたけを撫でながら答える俺。

 

 「とりあえず、梨子さんを回収してきますね。曜さんは千歌さん達の衣装を合わせてあげて下さい」

 

 「了解。梨子ちゃんは任せたよ」

 

 「任されました」

 

 衣装のことは曜さんに任せ、梨子さんを回収すべく桜内家へと向かう俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「あら天くん、いらっしゃい」

 

 「こんにちは、奈々さん」

 

 『十千万』の隣にある桜内家を訪ねると、梨子さんのお母さんである桜内奈々さんが出迎えてくれる。

 

 桜内家には何度かお邪魔したことがあり、その度に奈々さんには良くしてもらっていた。

 

 「ごめんなさい、梨子は今いないのよ。千歌ちゃんの家に行くんですって」

 

 「その千歌さんの家から脱走したので、捕獲しに来たんです」

 

 「いや、脱走って・・・どこに?」

 

 「ここです。千歌さんの家の窓から、この家のベランダに飛び移ってました」

 

 「何してるのあの子!?」

 

 「いやぁ、信じられませんよね・・・あの跳躍力」

 

 「そこじゃないわよ!?」

 

 とりあえず家に上げてもらう。二階へと上がり、梨子さんの部屋の前に立つと・・・

 

 『うぅ・・・また見られた・・・もう本当にお嫁に行けない・・・』

 

 梨子さんの声が聞こえてくる。あー、ダメージ受けてるなぁ・・・

 

 「何か凄く落ち込んでるんだけど・・・何があったの?」

 

 「聞かないであげて下さい。本人の名誉の為に」

 

 「そこまで!?」

 

 とりあえずドアをノックしてみる。

 

 「ちわー、三河●でーす」

 

 『えぇっ!?天くんっ!?』

 

 部屋の中でドタバタ音がする。

 

 『ど、どうしてここにっ!?』

 

 「犯人に告ぐ。この部屋は完全に包囲されている。大人しく出てきなさい」

 

 『誰が犯人よ!?立てこもり犯みたいな扱いしないでくれる!?』

 

 「こんなことして・・・田舎のお袋さんが泣いてますよ」

 

 『田舎じゃなくてこの家にいるんだけど!?』

 

 「しくしく・・・梨子、罪を償って・・・しくしく・・・」

 

 『お母さん!?何でノッてるの!?』

 

 「ほら、千歌さん達のところに戻りましょう?皆待ってますから」

 

 『うぅ・・・』

 

 ドアがゆっくり開き、赤い顔をした梨子さんが出てきた。

 

 「全く・・・窓からジャンプした時は肝が冷えましたよ」

 

 「うっ・・・ごめんなさい・・・」

 

 「しいたけは大人しい犬ですから、落ち着いて接してあげれば大丈夫ですよ。まぁ身体が大きいんで、犬が苦手な人にとっては怖いかもしれませんけど」

 

 「うぅ・・・」

 

 涙目の梨子さん。よほど犬が怖いらしい。

 

 「とりあえず美渡さんに頼んで、しいたけは繋いでおいてもらいましたから。もう梨子さんを追いかけたり出来ませんよ」

 

 梨子さんの頭を撫でる。

 

 「あっ・・・」

 

 「俺も一緒にいますから、安心して下さい」

 

 「・・・うん」

 

 俯く梨子さん。耳まで赤くなっているのは何故だろう?

 

 「フフッ、梨子ったら照れちゃって♪」

 

 「ちょ、お母さん!?何言ってるの!?」

 

 「はいはい、邪魔者は退散するから。じゃあ天くん、梨子をよろしくね」

 

 「了解です」

 

 ニヤニヤしながら階段を下りていく奈々さん。良いキャラしてるなぁ・・・

 

 「さて、俺達も行きましょうか」

 

 先に階段を下りようとすると、梨子さんが俺の手を掴んだ。

 

 「梨子さん・・・?」

 

 「・・・手、握ってて良い?」

 

 「・・・どうぞ」

 

 梨子さんの手を握り返す。これで梨子さんが安心できるのなら、お安い御用だ。

 

 「あ、それから・・・さっき見たものは忘れなさい。良いわね?」

 

 「アッハイ」

 

 やはり女帝には逆らえない俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

この作品、完全に梨子ちゃんがラッキースケベ要員と化しているような・・・

いや、きっと気のせいだと信じたい←

ところで、梨子ちゃんのお母さんの名前ですが・・・

えぇ、そうです。中の声優さんのお名前です。

善子ちゃんのお母さんを『善恵』にしたので、『梨香』とか『梨奈』とか色々と考えたんですけどね。

選ばれたのは『奈々』様でした( ´∀`)

次話は明日投稿したいと思います。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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熱くなると周りが見えなくなるものである。

先に謝罪しておきます。

ダイヤさん推しの方々、大変申し訳ありません・・・


 翌日・・・

 

 『ハァイ♪伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ。皆で一緒に・・・堕天しない?』

 

 『『『『『しない?』』』』』

 

 「・・・やってしまった」

 

 落ち込んでいる梨子さん。

 

 『とりあえずやってみよう』という千歌さんの号令により、堕天使アイドルっぽい感じでPR動画を撮影したのだが・・・

 

 「何というか・・・よっちゃん以外似合ってませんね、このキャラ」

 

 「そう?結構カッコ良くない?」

 

 ウキウキしている千歌さん。

 

 撮影した動画は既にネットにアップしており、俺達は部室でその反響を確かめているところだった。

 

 「えーっと、Aqoursの順位は・・・953位です」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 慌ててパソコンに群がる皆。一気に上がったな・・・

 

 「コメントもたくさん来てますね。『ルビィちゃんと一緒に堕天する!』、『ルビィちゃん最高!』、『ルビィちゃんのミニスカートがとても良いです!』、『ルビィちゃんの笑顔が素敵すぎる!』、『ルビィちゃん、ハァハァ・・・』」

 

 「いやぁ、そんなぁ・・・」

 

 照れているルビィ。こうしてみると、ルビィの人気が凄いな・・・

 

 最後のコメントは通報して良いと思うけど。

 

 「まぁ確かに、このPR動画を見たらこうなるよなぁ・・・」

 

 俺はもう一つの動画を再生する。そこには・・・

 

 『ヨハネ様のリトルデーモン四号、黒澤ルビィです・・・一番小さい悪魔だけど・・・可愛がってね?』

 

 モジモジしながらポーズを決める、衣装に身を包んだルビィの姿があった。

 

 「・・・・・」

 

 「そ、天くん?何で無言でルビィの頭を撫でてるの?」

 

 「いや、何かもう可愛すぎて・・・俺の妹にならない?」

 

 「同い年だよねぇ!?」

 

 ヤバいわこの子、破壊力抜群だわ。ハートをズッキュンされたわ。

 

 一方千歌さんは、ランキングが上がったことにテンションが上がっていた。

 

 「凄いじゃん!堕天使アイドルいけるよ!」

 

 「フッ・・・堕天使ヨハネの力をもってすれば、これくらい造作も無いこと・・・」

 

 「オイそこの堕天使、普通の高校生になりたい願望はどこへいった?」

 

 「ハッ!?」

 

 正気に戻るよっちゃん。全く・・・

 

 「だから言ったでしょう。ランキングは上がるって」

 

 「うん、メッチャ上がったね!」

 

 「そしてこうも言ったはずです。それは一時的なものだと」

 

 千歌さんに釘を刺しておく。

 

 「このまま本格的に堕天使アイドルでやっていくのかは、よく考えた方が良いですよ。昨日も言いましたけど、目先のことだけ考えて動くと後々痛い目を見ますからね」

 

 「天くん・・・ルビィちゃんを撫でながら言われても、説得力が無いんだけど」

 

 「・・・やめられない、とまらない」

 

 「か●ぱえびせん!?」

 

 髪がサラサラで、撫でていてとても心地良い。

 

 これはヤバい・・・あっ。

 

 「ヤバいといえば・・・そろそろかな」

 

 「何が?」

 

 首を傾げるルビィ。その時、校内放送が流れた。

 

 『スクールアイドル部!今すぐ生徒会室に来なさい!』

 

 ダイヤさんの怒声が流れる。皆冷や汗ダラダラだった。

 

 「えーっと・・・天くん?」

 

 「PR動画、ダイヤさんもチェックしたみたいですね。正統派アイドルを好むダイヤさんからすれば、堕天使アイドルは邪道・・・まぁ怒るでしょうね」

 

 「それを先に言ってよ!?雷が落ちるの確定じゃん!?」

 

 「千歌さんのアホ毛を避雷針代わりに使えません?」

 

 「無理だよ!?」

 

 頭を抱える千歌さんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「Oh!Pretty bomber head!」

 

 「これのどこがプリティですの!?こういうものは破廉恥というのですわ!」

 

 PR動画を見て歓声を上げる小原理事長に対し、完全に激怒しているダイヤさん。

 

 案の定、俺達は生徒会室でダイヤさんに説教されていた。

 

 「いやぁ、そういう衣装というか・・・」

 

 「キャラというか・・・」

 

 「ああん!?」

 

 「「ヒィッ!?」」

 

 言い訳をする千歌さんと曜さんだったが、ダイヤさんに睨まれて悲鳴を上げる。

 

 だからよく考えろって言ったのに・・・

 

 「ルビィにこんな格好をさせて注目を浴びようなどと・・・!」

 

 「ごめんなさい、お姉ちゃん・・・」

 

 「・・・まぁ良いですわ」

 

 あ、ルビィが謝ったら怒りが収まった。やっぱりこの人シスコンなのね。

 

 「とにかく『キャラが立ってない』とか『個性が無いと人気が出ない』とか、そういう狙いでこんなことをするのはいただけませんわ」

 

 「良いぞー、ダイヤさん。もっと言ってやれー」

 

 「天くん!?どっちの味方なの!?」

 

 「黒澤ダイヤ先生ですが?」

 

 「まさかの先生呼び!?」

 

 「でも、一応順位は上がったし・・・」

 

 曜さんが少し食い下がると、ダイヤさんが溜め息をついた。

 

 「そんなもの一瞬に決まっているでしょう?今のランキングを見てみると良いですわ」

 

 パソコンを差し出すダイヤさん。パソコンを受け取り、サイトを開いてみると・・・

 

 「・・・1526位ですね」

 

 「嘘!?もうそんなに下がったの!?」

 

 「だから言ったでしょう?本気で目指すのならどうすればいいか、もう一度考えることですわね!」

 

 再び怒りがこみ上げてきたのか、口調が強くなるダイヤさん。

 

 「そもそも高校生にもなって『堕天使』だなんて、正気とは思えませんわ!」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むよっちゃん。マズいな・・・

 

 「ダイヤさん、もうその辺で・・・」

 

 やんわり制止しようとするが、ダイヤさんは止まらなかった。

 

 「あまりにも痛々しいですわ!いい歳して何を考えているんですの!?」

 

 「分かりましたから、少し落ち着いて・・・」

 

 「このような幼稚な振る舞いをするなど、スクールアイドルの恥晒s・・・」

 

 

 

 「黙れって言ってんだろうがッ!」

 

 

 

 「っ!?」

 

 大声で怒鳴った瞬間、ダイヤさんがビックリして言葉を失った。千歌さん達や小原理事長でさえ驚いていた。

 

 「そ、天さん・・・?」

 

 「・・・生徒会長ともあろうお方が、言って良いことと悪いことの区別もつかないんですか?」

 

 ダイヤさんに冷ややかな視線を向ける俺。

 

 「・・・今回の件は、千歌さんを止められなかった自分に責任があります。それに関しては本当に申し訳ありませんでした」

 

 「そ、天くんのせいじゃないよっ!元はと言えば私がっ!」

 

 「下がってて下さい。邪魔です」

 

 慌てて割り込んでくる千歌さんを睨みつけ、後ろへと下がらせる。

 

 「ですが・・・『堕天使』そのものを否定される謂れはありません。『正気とは思えない』だの『痛々しい』だの『幼稚な振る舞い』だの・・・ずいぶん好き勝手に言ってくれるじゃないですか」

 

 ふつふつと怒りが湧き上がる中、ダイヤさんに怒りの言葉をぶつける。

 

 「おまけにさっき何を言いかけました?『恥晒し』?頑張ってスクールアイドル活動をしている人達に向かって、ずいぶんな言い様ですね?」

 

 「わ、私はただ・・・」

 

 「ただ、何ですか?まさか『貴女達の為を思って』とでも仰るつもりですか?だとしたら余計なお世話ですよ」

 

 「そ、天!少し落ち着いて・・・」

 

 「人を脅すことしか出来ないヤツはすっこんでろ」

 

 間に入ってこようとした小原理事長も黙らせる。俺はダイヤさんに詰め寄った。

 

 「そんなに人を馬鹿にして楽しいんですか?そうやって人を見下すことで、優越感に浸りたいんですか?」

 

 「ち、違いますわ!そんなつもりは・・・」

 

 「アンタにそんなつもりが無くてもッ!こっちはそうとしか受け取れねぇんだよッ!」

 

 「もう止めてッ!」

 

 背中に衝撃を受ける。よっちゃんが俺の背中に抱きついていた。

 

 「もう、いいからっ・・・十分だからっ・・・!」

 

 「っ・・・」

 

 泣いているのか、よっちゃんの身体は震えていた。それを感じ、頭がスーッと冷えていく。

 

 何をやってるんだ、俺は・・・

 

 「・・・ゴメン。もう大丈夫」

 

 身体に回されたよっちゃんの腕を優しく叩く。俺から離れるよっちゃん。

 

 やっぱり泣いてたか・・・

 

 「・・・ありがとう。おかげで頭が冷えたよ」

 

 「・・・柄にも無くブチギレてんじゃないわよ」

 

 目元の涙を拭うよっちゃん。

 

 「でも・・・ありがと」

 

 「・・・もう行こっか」

 

 俺はダイヤさんの方を振り向き、深々と頭を下げた。

 

 「・・・お騒がせして、申し訳ありませんでした」

 

 「天さん・・・」

 

 ダイヤさんは何か言いたそうにしていたが、俺はそれを無視して千歌さん達へと視線を移した。

 

 「千歌さん達も行きましょう。話は終わったみたいですし」

 

 「う、うん・・・」

 

 戸惑いながらも、気遣わしげにダイヤさんの方を見る千歌さん。

 

 俺はよっちゃんの手を引いて、生徒会室を後にするのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが・・・

ダイヤさん推しの方々、大変申し訳ありません・・・

いや、決してアンチではないんです(鞠莉ちゃんも含めて)

ちょっと喧嘩?をさせたかっただけなんです。

ダイヤさんとはこの後すぐ和解する予定ですので、どうかご安心を・・・

鞠莉ちゃんは・・・もう少し後になるかと思います。

ダイヤさん及び鞠莉ちゃん推しの方々、本当に申し訳ございません。

ちゃんと和解する予定ですので、今しばらくお待ちいただけると幸いでございます。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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大切に想うからこそ言えない言葉がある。

完全に風邪をひいた・・・

まさかこの時期に風邪をひくとは・・・


 「・・・ハァ」

 

 屋上で寝転がりながら、溜め息をつく俺。

 

 少し一人になりたかったので、こうして屋上に出てきたのだが・・・やはり気分は晴れなかった。

 

 「何で怒鳴っちゃったかなぁ・・・」

 

 「ホントにね。らしくなかったわよ」

 

 独り言を呟くと、思わぬ返事が返ってきた。空しか映っていなかった俺の視界に、よっちゃんの顔が現れる。

 

 「意外だったわ。天でもあんなに怒ったりするのね」

 

 「人間だもの」

 

 「相田み●をかっ!」

 

 ツッコミを入れてくるよっちゃん。相変わらず、良いツッコミではあるんだけど・・・

 

 「よっちゃん」

 

 「何よ?」

 

 「そこに立ってると、スカートの中が丸見えだよ?」

 

 「ッ!?」

 

 慌てて俺から離れるよっちゃん。

 

 俺の顔の横に立っていた為、寝転がっている俺からはよっちゃんのスカートの中が丸見えだったのだ。

 

 「天のスケベっ!変態っ!」

 

 「いや、こっちとしても不可抗力だったんだけど・・・普通スカートで人の顔の横に立ったりしないでしょ」

 

 「うぐっ・・・」

 

 「流石は堕天使ヨハネ、衣装だけじゃなくて下着まで黒とは・・・」

 

 「言わんでいいっ!」

 

 よっちゃんから蹴りが飛んできたので、転がって避ける。そのまま上体だけ起こし、俺はよっちゃんと向き合った。

 

 「よっちゃんこそ、少しは元気出た?」

 

 「っ・・・」

 

 俯くよっちゃん。

 

 ダイヤさんの言葉に一番ショックを受けていたのは、他ならぬよっちゃんだ。堕天使をあそこまで否定されたのだから。

 

 「・・・おいで」

 

 「・・・ん」

 

 隣の地面をポンポン叩くと、よっちゃんが大人しくそこに座った。

 

 「怒っちゃった俺が言うのもどうかと思うけど・・・ダイヤさんのこと、悪く思わないであげてね。よっちゃんのことを否定するつもりは無かっただろうから」

 

 「・・・分かってる。っていうか、あれが一般的な反応よ。むしろ堕天使を受け入れてる天の方がおかしいわ」

 

 「友達のことを『おかしい』っていうの止めてくんない?」

 

 「事実でしょ」

 

 笑うよっちゃん。

 

 「でも・・・嬉しかった。受け入れてくれたことも、私の為に怒ってくれたことも・・・ホント、天には助けられてばかりね」

 

 よっちゃんはそう言うと、俺の肩に頭を乗せてきた。

 

 「・・・私、やっぱり堕天使は卒業する。普通の高校生になる」

 

 「・・・よっちゃんはそれで良いの?」

 

 「勿論。むしろ今回のことでスッキリしたわ。やっぱり高校生にもなって、堕天使なんて通じないもの」

 

 笑顔を見せるよっちゃん。その笑顔は、何だか寂しげなものだった。

 

 「スクールアイドルも止めておくわ。今回迷惑かけちゃったし、また迷惑かけちゃうのも申し訳ないから」

 

 「・・・そっか」

 

 本心ではないことは明らかだった。それでも、これはよっちゃんが選んだこと・・・そこに俺が口を挟むべきではない。

 

 俺はよっちゃんの頭を撫でた。

 

 「よっちゃんが笑顔でいられるなら・・・それが一番だから。堕天使とか関係無しに、俺はよっちゃんの友達だからね」

 

 「・・・うん」

 

 身を寄せてくるよっちゃん。

 

 「天に出会えて良かった・・・ありがとう」

 

 微笑むよっちゃん。

 

 俺達はしばらくの間、お互いに身を寄せ合いながら静かに時間を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「先程は見苦しいところをお見せして、申し訳ありませんでした」

 

 部室に戻った俺は、千歌さん達に対して深々と頭を下げていた。

 

 流石に熱くなりすぎたし、千歌さんに対しても失礼なことを言ったしな・・・

 

 「大丈夫だよ」

 

 千歌さんが微笑みながら、俺の頭を撫でてくる。

 

 「天くんが怒ったのは、津島さんの為でしょ?皆ちゃんと分かってるから」

 

 「そうだよ天くん。気にすることないよ」

 

 「だからほら、頭上げて。ねっ?」

 

 曜さんと梨子さんも声をかけてくれる。先輩方の優しさが心に沁みた。

 

 「・・・天くん」

 

 ルビィがおずおずと話しかけてくる。

 

 「その・・・お姉ちゃんのこと、嫌いにならないであげてほしいの。お姉ちゃんも、ちょっと熱くなっちゃっただけっていうか・・・津島さんのことを侮辱するつもりなんて、無かったと思うから」

 

 「・・・うん。分かってる」

 

 俺もさっき、よっちゃんに似たようなこと言ったしな。ダイヤさんに、よっちゃんを傷付ける意図は無かったはずだ。

 

 「ダイヤさんとも、一度ちゃんと話すから。心配かけてゴメンね、ルビィ」

 

 「うんっ!」

 

 ようやくルビィも笑顔を見せてくれた。と、花丸がキョロキョロと辺りを見回す。

 

 「ところで天くん、善子ちゃんはどこへ行ったずら?」

 

 「あぁ、よっちゃんなら帰ったよ」

 

 昨日から色々あって、よっちゃん的にも少し疲れてしまったらしい。気持ちの整理もしたいので、今日はもう帰るとのことだった。

 

 「もう堕天使は卒業するってさ。スクールアイドルもやめとくって」

 

 「えぇっ!?そんな!?」

 

 ショックを受けている千歌さん。一番熱心に誘ってたもんなぁ・・・

 

 「本人がそう言ってるんですから、仕方ないでしょう」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「堕天使だって、本当は卒業したくないんだと思います。でも、『普通の高校生になりたい』っていうのも本心でしょうし・・・」

 

 「どうして、堕天使だったのかな・・・?」

 

 ポツリと呟く曜さん。

 

 「どうしてあそこまで、堕天使に拘ってたのかな・・・?」

 

 「・・・マル、分かる気がします」

 

 花丸が口を開く。

 

 「ずっと、普通だったんだと思うんです。マル達と同じで、あまり目立たなくて・・・そういう時、思いませんか?『これが本当の自分なのかな?』って。『元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかな?』って」

 

 「・・・確かにそういう気持ち、あったかもしれない」

 

 梨子さんが呟く。

 

 『どうして自分はこうなのか』、『本当はもっと違う自分なんじゃないか』・・・俺もそう思ったことがたくさんあった。

 

 よっちゃんもそうなのかな・・・

 

 「幼稚園の頃の善子ちゃん、いつも言ってたんです。『私は本当は天使で、いつか羽が生えて天に帰るんだ』って。多分善子ちゃんもマルと一緒で、キラキラしたものに憧れてて・・・善子ちゃんにとっては、それが堕天使だったんだと思います」

 

 「憧れ、か・・・」

 

 自分の憧れたものに情熱を燃やし、全力でそれになりきる・・・俺の頭の中には、ある人の顔が浮かんでいた。

 

 「ホント・・・こっちに来てから、似たような人に出会うもんだな・・・」

 

 「天くん?どうかしたの?」

 

 「何でもないよ。こっちの話」

 

 ルビィの頭を優しく撫でる。今の花丸の話を聞くかぎり、このままではよっちゃんが笑顔でいられなくなってしまうだろう。

 

 さて、どうしたものか・・・

 

 「・・・やっぱり、諦められないよ」

 

 千歌さんが呟く。

 

 「私は津島さんと・・・いや、善子ちゃんと一緒にスクールアイドルがやりたい!」

 

 力強く言い切る千歌さん。全く、この人ときたら・・・

 

 「・・・流石ですね、リーダー」

 

 俺は苦笑しながら、ある決意を固めるのだった。




どうも~、ムッティです。

そろそろアニメ一期の第5話分の話が終わろうとしております。

もうずいぶん書いたような気がしていましたが、まだ一期の折り返しにすら届いていないという事実・・・

そして果南ちゃんが全然出ていないという事実・・・

第6話分の話で出せたら良いなぁ・・・

次話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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大切に想うからこそ伝えたい言葉がある。

咳が止まらない・・・

久しぶりに風邪ひいたけど、やっぱり健康なのが一番だとつくづく思うわ・・・


 《善子視点》 

 

 「・・・これで良し」

 

 マンションのゴミ捨て場に段ボール箱を置きながら、私は小さく呟いた。

 

 この中には衣装を始め、堕天使関連のグッズが全て入っている。堕天使を卒業すると決めた私には、もう必要の無いものだ。

 

 「これで本当に卒業か・・・」

 

 本当は卒業なんてしたくない。でもこれ以上は、周りに迷惑をかけてしまう。

 

 ただでさえ今回、スクールアイドル部の皆に迷惑をかけてしまったのだ。それに・・・

 

 「天・・・」

 

 こんな私を受け入れてくれた、大切な友達の顔が浮かぶ。

 

 いつも穏やかで温厚なあの天が、私の為に生徒会長に対して本気で怒ってくれた。本当に嬉しかったけど・・・それと同時に、本当に申し訳なかった。

 

 天は生徒会長のことを、心から尊敬できる人だと言っていた。私がいつまでも堕天使を引きずっていたせいで、天は尊敬する生徒会長を怒鳴ってしまったのだ。

 

 これ以上天に迷惑をかけない為にも、堕天使は卒業しないといけない。私はこれからも、天とは友達でいたいから。

 

 「・・・バイバイ」

 

 小さく呟き、ゴミ捨て場を後にする。これで私は、堕天使を卒業・・・

 

 「本当にそれで良いの?」

 

 「っ!?」

 

 聞き覚えのある声に、慌てて視線を向ける。そこには・・・

 

 「天!?」

 

 私の大切な友達が立っていた。どうしてここに・・・

 

 「っていうかよっちゃん、ちゃんと分別した?捨てるにしてもちゃんと分別しないと、業者さんが困っちゃうよ?」

 

 「全部燃えるゴミだから大丈夫よ」

 

 「部屋にあったグッズの中に、明らかに燃えるゴミには出せないものもあった気がするんだけど?」

 

 「・・・火をつければ全部燃えんのよ」

 

 「シニヨン燃やすぞ中二病」

 

 「ごめんなさい」

 

 容赦の無いツッコミに、思わず謝ってしまう。

 

 「・・・何でアンタがここにいんのよ?」

 

 「善恵さんからラインきたんだよね。『善子が断捨離なう』って」

 

 「相変わらず人の母親と仲良しね・・・」

 

 そういえばこの間、『天くんが息子だったらなぁ・・・そうだ善子!天くんと結婚しなさい!そしたら天くんは私の息子になるわ!』とか言ってたわね・・・

 

 まぁ確かに、天が相手なら悪くないかも・・・って何考えてんのよ私!?

 

 「よっちゃん?何か顔が赤いけど大丈夫?」

 

 「な、何でもないわよ!それより何しに来たのよ!?」

 

 「いや、よっちゃんが堕天使を卒業する瞬間に立ち会おうかと思って。朝早くに来てスタンバってたんだよね」

 

 「・・・アンタねぇ」

 

 大方、私のことを心配してくれたんだろう。そんなことの為に、わざわざこんな時間にここまで来るなんて・・・

 

 ホント、バカなんだから・・・

 

 「・・・わざわざありがとね。私は大丈夫よ。もう堕天使は卒業するから」

 

 「・・・俺の目には、大丈夫そうには見えないけど」

 

 「っ・・・」

 

 見抜かれていた。こういう時の天は本当に鋭い。

 

 「俺はね、よっちゃん。よっちゃんの決めたことに、俺が口を挟むべきじゃないと思った。だから堕天使を卒業するって言った時、何も言わなかった。本当は卒業したくないんだって、分かってたのに」

 

 私から目を離さない天。

 

 「だからせめて、よっちゃんが堕天使を卒業するところに立ち会おうって。よっちゃんを一人にしたくなかったから、ここまで来た。でも・・・今のよっちゃんの顔を見て、やっぱり思ったよ。よっちゃんは堕天使を卒業すべきじゃない」

 

 「・・・ふざけないで」

 

 天を睨みつける。人の気持ちも知らないで・・・

 

 「私は普通の高校生になりたいの。ようやく・・・ようやく気持ちの整理をつけて、堕天使グッズを捨てにきたのに・・・何でそんなこと言うの?何で私の気持ちを踏みにじるようなことを言うのよ?」

 

 「じゃあよっちゃん・・・堕天使を卒業して、これから笑顔でいられる自信ある?」

 

 「っ・・・それは・・・」

 

 「・・・無いよね。やっぱり」

 

 寂しそうに笑う天。

 

 「言ったはずだよ、よっちゃん。よっちゃんが笑顔でいられるのが一番だって。大切な友達が、毎日を笑顔で過ごせないなんて・・・俺は嫌だから」

 

 「天・・・」

 

 「普通の高校生になりたいって気持ちを、否定してるわけじゃないよ。でも普通の高校生になることで、よっちゃんが笑顔でいられなくなるっていうなら・・・無理に堕天使を卒業してほしくない。そんな寂しそうなよっちゃん、見たくないから」

 

 「・・・バカ」

 

 天に歩み寄り、天の胸を叩く。

 

 「バカ、バカ、バカ・・・!」

 

 何度も胸を叩く。本当に、どうしてコイツはいつもいつも・・・!

 

 「何でそんな・・・私に優しくするのよぉ・・・!」

 

 天の胸に縋る。気付けば、涙が溢れて止まらなくなっていた。

 

 「何で・・・どうして・・・!」

 

 「・・・さっき言ったでしょ」

 

 優しい温もりに包まれる。天が私を抱き締めてくれていた。

 

 「よっちゃんは大切な友達だって。最初は花丸の友達だからとか、借りを返す為だとか言ってたけど・・・今はそれ以上に、よっちゃんの力になりたい気持ちが強いから」

 

 微笑む天。

 

 「堕天使ヨハネだって良いじゃん。それだってよっちゃんの・・・津島善子の一部なんだから。全部ひっくるめてよっちゃんだって、俺はそう思うよ」

 

 優しく頭を撫でられる。ホントにコイツは・・・

 

 「それに・・・そう思ってるのは俺だけじゃないよ」

 

 「え・・・?」

 

 「堕天使ヨハネちゃん!」

 

 大きな声が響き渡る。視線を向けると・・・堕天使の衣装を着たスクールアイドル部の五人が、笑顔で立っていた。

 

 「「「「「スクールアイドル部に入りませんか!?」」」」」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑む私。アンタ達まで・・・

 

 「・・・良いの?変なこと言うわよ?」

 

 「良いよ」

 

 「時々、儀式とかするかもよ・・・?」

 

 「そのくらい我慢するわ」

 

 「リトルデーモンになれっていうかも・・・」

 

 「嫌だったら嫌だっていうずら」

 

 「ぴぎっ!」

 

 笑顔で頷いてくれる皆。と、私の背中に天の手が触れた。

 

 「思いっきり羽ばたくと良いよ。やりたいことをやったら良い。今のよっちゃんには、それが許されるんだから」

 

 「やりたいこと・・・」

 

 「憧れてるだけじゃなくて、今度は自分の手で掴みにいきなよ。ここで折れたら、堕天使ヨハネの名が泣くよ?」

 

 笑っている天。

 

 全く、そこまで言うのなら・・・やってやろうじゃない。

 

 「はい、これ」

 

 千歌さんが黒い羽を差し出す。これ、私の・・・

 

 「昨日部室に忘れていったよ。堕天使ヨハネのアイデンティティなんでしょ?」

 

 微笑む千歌さん。

 

 「一緒に頑張ろう?」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 手を伸ばし、黒い羽を掴む。そして頭のシニヨンに差した。

 

 「堕天使ヨハネ・・・ここに降臨っ!」

 

 「おぉ、この痛々しい感じ・・・まさによっちゃんって感じがするよ」

 

 「アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

 「よっ、中二病患者」

 

 「やかましいわ!」

 

 そんなツッコミを入れながらも、気付けば自然と笑顔になっている私がいるのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話で、アニメ一期の第5話が終了・・・

ではありません。

次の話まで続きます。

それから第6話へ入っていこうと思いますので、よろしくお願い致します。

あと前書きでも述べましたが、思いっきり風邪をひきました。

皆さんも風邪にはお気を付け下さい。

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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心からの笑顔に勝るものはない。

今回の話で、アニメ一期第5話までの内容が終了となります。

そして今回の話で第30話目・・・

ノリと勢いで書き始めたこの物語だけど、我ながらよくここまで書いてきたなぁ・・・

それではいってみよー!


 放課後・・・

 

 「ふぅ・・・」

 

 生徒会室の前で、深く息を吐く俺。

 

 よっちゃんは正式にスクールアイドル部に加入することになり、早速千歌さん達と一緒に練習に励むことになった。

 

 俺は生徒会の仕事がある為ここに来たのだが・・・昨日ダイヤさんとあんなことがあったので、顔を合わせるのがとても気まずい。

 

 とはいえ、顔を出さないわけにもいかないからな・・・よし。

 

 「・・・失礼します」

 

 思い切ってドアを開ける。そこには、既に席について仕事をしているダイヤさんの姿があった。

 

 「あっ・・・」

 

 俺を見て驚くダイヤさん。

 

 どういった言葉をかけようか迷った俺だったが、机の上の書類の山を見て黙って席についた。

 

 「・・・今日はいつもより書類が多いですね」

 

 「そ、そうですわね・・・」

 

 「とりあえず、こっちを片付ければ良いですか?」

 

 「え、えぇ・・・お願いします」

 

 二人で黙々と仕事を進める。時折ダイヤさんがチラッとこちらを窺ってくるが、口を開くことはなかった。

 

 やがて書類が半分ほど片付いた頃・・・

 

 「あ、あの・・・天さん・・・」

 

 意を決したように、ダイヤさんが口を開いた。

 

 「昨日のことなのですが、その・・・」

 

 「ダイヤさん」

 

 恐らく謝ろうとしたダイヤさんの言葉を、俺は途中で遮った。

 

 「俺には・・・姉が二人いるんです」

 

 「はい・・・?」

 

 戸惑うダイヤさん。

 

 何の脈絡も無くいきなり関係無い話をされたら、誰だってこうなるよな・・・

 

 「上の姉は、高校時代に生徒会長をやっていまして。弟である俺の目から見ても、立派に生徒会長としての仕事を果たしていました。ただ・・・」

 

 「ただ・・・?」

 

 「・・・生徒会長だった頃の姉は、良くも悪くも真面目過ぎたんです」

 

 苦笑する俺。

 

 「不器用で頭が固くて、融通の利かないところがありまして・・・周りに頼らず、一人で突っ走ってしまうような人でした。『自分がやらないといけない』っていう使命感が強くて、俺も当時は側で見ててハラハラしてました」

 

 心の優しい副会長が支えてくれていなかったら、今頃姉は潰れていたかもしれない。彼女には本当に感謝している。

 

 「だから浦の星に来て、ダイヤさんと出会って驚きました。ダイヤさん、当時の姉にそっくりなんですもん」

 

 「わ、私がですか・・・?」

 

 「えぇ。真面目で不器用で頭が固くて・・・当時の姉を見ている気分です」

 

 「・・・素直に喜べませんわ」

 

 複雑そうなダイヤさん。まぁ『不器用』とか『頭が固い』とか言われてるしな・・・

 

 「だからですかね・・・何だかダイヤさんのこと、放っておけないんですよ。『側で支えないと』って思いますし・・・より感情が入ってしまうんです」

 

 俺は頭の中で、昨日のことを振り返っていた。

 

 「昨日、ダイヤさんが堕天使を否定した時・・・当時の姉と重なってしまったんです。学校の為に一生懸命頑張っていた人達のことを、姉が否定したことがあって・・・俺はそれがとても悲しくて、『何でそんなことを言うんだ』って怒りました。その人達は、俺にとって大切な人達で・・・だからこそ、姉が認めてくれなかったことが悲しくて。そんな姉とダイヤさんが重なって、ついあんなに怒ってしまいました」

 

 「天さん・・・」

 

 「ダイヤさんに対して、あそこまで怒る必要は無かった・・・よっちゃんの気持ちも考えたら、もっと穏便に済ますべきだった・・・結果として俺はダイヤさんを傷付け、よっちゃんを泣かせてしまいました。とてもじゃないですけど、姉のことを言えた義理ではありませんね」

 

 俺は椅子から立ち上がり、ダイヤさんに対して深く頭を下げた。

 

 「昨日は本当に申し訳ありませんでした」

 

 今の俺にはこれしか出来ない。ダイヤさんから罵倒されても仕方が無い。

 

 だが・・・

 

 「・・・頭を上げて下さい、天さん」

 

 柔らかな両手で頭を支えられ、そのまま元の位置へと戻される。

 

 「昨日家に帰ってから、ルビィに津島さんのことを聞きましたわ。私があの時、どれほど津島さんを傷付ける発言をしていたのか・・・ようやく気付きました」

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 「おまけに熱くなりすぎて、スクールアイドル部を貶すような言葉まで言いかけてしまって・・・天さんが止めてくださって、本当に助かりましたわ」

 

 ダイヤさんは優しく微笑むと、今度は両手を俺の頬に添えた。

 

 「・・・天さんは、お姉様のことをとても大事に思われているのですね。だからこそ、そんなお姉様と重なる私を大事に思ってくださっている・・・本当に嬉しく思いますわ」

 

 ダイヤさんの額が、俺の額にコツンと触れた。

 

 「これからもどうか、私のことを支えて下さい。間違っていると思えば、遠慮なく怒っていただいて構いません。私は天さんのことを、心から信頼していますわ」

 

 「・・・優し過ぎますよ、ダイヤさん」

 

 「それはお互い様ですわ」

 

 面白そうに笑うダイヤさん。

 

 「私もルビィも、そしてスクールアイドル部の皆さんも・・・天さんの優しさに助けられた身ですから。これからも頼りにしてますわよ、天さん」

 

 「・・・ご期待に添えるよう頑張ります」

 

 「よろしい」

 

 笑顔で頷くダイヤさん。

 

 「さて、残りの書類を片付けてしまいましょう。早くしないと日が暮れてしまいますわ」

 

 「そうですね。さっさと終わらせちゃいましょうか」

 

 笑い合い、再び仕事を再開する俺達。

 

 「あ、ダイヤさん」

 

 「何ですの?」

 

 「確かにダイヤさんは姉に似てますけど・・・それを抜きにしても、俺はダイヤさんのことを大事に思ってますから。それは忘れないで下さいね」

 

 「っ・・・ズルいですわ・・・」

 

 何故か顔を赤くするダイヤさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「お待たせしました」

 

 「遅いよ天くん!私はもうお腹ペコペコなんだから!」

 

 「私もお腹空いた!」

 

 お腹を押さえている千歌さんと曜さん。

 

 生徒会の仕事も終わり、俺はスクールアイドル部の皆と正門の前で合流していた。

 

 「でも善子ちゃん、本当に良いの?大勢で押しかけちゃって・・・」

 

 「ヨハネよ。呼んだのはお母さんなんだから、遠慮する必要なんて無いわよ」

 

 梨子さんの問いに、溜め息をつきながら答えるよっちゃん。実は今朝のやりとりの後、俺はよっちゃんの家にお邪魔して善恵さんに事情を説明していたのだ。

 

 よっちゃんがスクールアイドル部に入ると知った善恵さんの感激っぷりは尋常ではなく、よっちゃんと俺を抱き締めて号泣してしまうほどだった。

 

 その後『今夜はお祝いよ!』と高らかに宣言した善恵さんは、今夜の夕飯の席に俺とスクールアイドル部の皆を招待してくれた。

 

 そんなわけで俺達は、これから津島家で夕飯をご馳走になる予定なのだ。

 

 「全く、何がお祝いよ・・・たかだか部活に入っただけだっていうのに・・・」

 

 「いや、引きこもりの娘が部活に入ったら喜ぶでしょ。善恵さんはよっちゃんのこと、凄く心配してたんだよ?俺もよく相談に乗ってたもん」

 

 「何であの人は娘の同級生に相談してんのよ・・・」

 

 呆れているよっちゃん。

 

 まぁよっちゃんも、心配をかけてしまったことは申し訳なく思っているようだ。善恵さんが号泣してる時、よっちゃんもつられて泣いてたし。

 

 「今日の夕飯は豪華にするんだって、善恵さん張り切ってたっけ・・・食い意地を張るであろう花丸に、ほとんど食べられちゃう気がするけど」

 

 「天くんはマルを何だと思ってるずら!?」

 

 「胃袋ブラックホール娘」

 

 「否定出来ないのが辛いずら!」

 

 「だ、大丈夫だよ花丸ちゃん!花丸ちゃんはいくら食べてもスタイル良いもん!」

 

 「ル、ルビィちゃん・・・!」

 

 「そうだね。花丸は栄養がお腹周りじゃなくて、別の場所に行ってるもんね」

 

 「・・・花丸ちゃんはルビィの敵だね」

 

 「ルビィちゃん!?」

 

 瞳から光が消えたルビィの一言に、ショックを受けている花丸。

 

 やっぱりルビィ、気にしてたんだね・・・

 

 「私も花丸ちゃんに負けないくらい食べるよ!」

 

 「私も負けないからね!」

 

 「望むところずら!」

 

 「・・・何でルビィのには栄養が行かないんだろう」

 

 「げ、元気出してルビィちゃん!」

 

 千歌さんと曜さんが花丸と張り合い、梨子さんは落ち込んでいるルビィを必死に励ましている。

 

 賑やかだなぁ・・・

 

 「全く、騒がしいわね」

 

 いつの間にか、よっちゃんが俺の隣を歩いていた。

 

 「どうやら、私の静かな日常は終わりみたいね」

 

 「静かな日常(笑)」

 

 「何笑ってんのよ!?」

 

 「wwwww」

 

 「草を生やすなっ!」

 

 ムキーッと怒っているよっちゃん。相変わらず面白いなぁ・・・

 

 「まぁ、静かな時間を過ごすのも大切だと思うけどさ・・・こうやって皆でわいわいやってる時間も、悪くはないでしょ?」

 

 「・・・まぁね」

 

 照れたようにそっぽを向くよっちゃん。

 

 「こんな時間を過ごせるのも、その・・・アンタのおかげよ。ありがと」

 

 「あ、よっちゃんがデレた」

 

 「デ、デレてなんかないんだからっ!」

 

 おぉ、ツンデレのテンプレみたいなセリフ・・・よっちゃんはツンデレだったのね。

 

 「・・・よっちゃんの力になれたのなら、良かったよ」

 

 よっちゃんの頭を撫でる。

 

 「スクールアイドル、俺もサポートするから。一緒に頑張ろうね」

 

 「・・・うん」

 

 小さく笑いながら頷くよっちゃん。

 

 「期待してるよ。堕天使ヨハネ様」

 

 「・・・善子」

 

 「え・・・?」

 

 「・・・善子で良いわよ」

 

 顔を赤くしながら言うよっちゃん。嘘だろオイ・・・

 

 「名前で呼ばれるの、嫌がってなかったっけ・・・?」

 

 「・・・アンタには、名前で呼んでほしいなって思ったのよ。『ヨハネ』じゃなくて、『善子』って・・・私の大切な友達だから」

 

 耳まで真っ赤になっているよっちゃん。そっか・・・

 

 「・・・ありがとう、善子」

 

 「っ!」

 

 「これからもよろしくね、善子」

 

 「ちょ、何度も呼ばなくて良いから・・・!」

 

 「善子おおおおおっ!」

 

 「うにゃあああああっ!?」

 

 両手で顔を覆いながら、全力で走り去る善子。

 

 「え、善子ちゃん!?どうしたの!?」

 

 「ヨハネよおおおおおっ!」

 

 「ちょ、待ってよ善子ちゃん!?」

 

 「だからヨハネだってばあああああっ!」

 

 「善子ちゃあああああんっ!?」

 

 「ヨハネえええええっ!」

 

 千歌さん、曜さん、花丸が慌てて追いかけていく。やれやれ・・・

 

 「ほらルビィ、落ち込んでる場合じゃ無いよ」

 

 「ぴぎっ!?天くん!?」

 

 「梨子さんも早く。置いてかれちゃいますよ」

 

 「ちょ、天くん!?」

 

 ルビィと梨子さんの手を引き、笑みを浮かべながら善子達の後を追いかける。

 

 気付けばルビィも梨子さんも、千歌さんも曜さんも花丸も笑っていた。そしてもう一人・・・

 

 先頭を走る善子の笑顔は、今までで一番輝いて見えたのだった。




どうも~、ムッティです。

前書きでも述べましたが、今回の話でアニメ一期第5話までの内容が終了となります。

天があそこまで怒った理由は、姉の姿とダイヤさんの姿を重ねてしまったことが原因でした。

ダイヤさんが堕天使を否定して善子ちゃんを傷付けたことに対する怒りに、そのことがプラスされてブチギレに繋がってしまったわけですね。

感想でもいただきましたが、まだ高一になったばかりの天の精神的な未熟さが出た形と言えます。

いやホント、ダイヤさん推しの方々には大変申し訳ない展開となってしまいました・・・

和解したので許して下さい(土下座)

さて、そして『絢瀬天と九人の物語』が30話目を迎えました。

映画を見た興奮から、ノリと勢いで書き始めたのがこの作品でございます。

そんなこの作品がここまで続くことが出来たのは、ひとえにいつも読んでくださる皆様のおかげです。

皆様からの感想に、どれほどモチベーションが上がっていることか・・・

本当にありがとうございます。

お気に入り登録、☆評価をしてくださった方々もありがとうございます。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。

次の話からは、アニメ一期第6話の内容に入っていきます。

まだ詳しくは言えませんが・・・あの人を出す予定です(誰だよ)

次の話もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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