ご~るでん☆れとりば~ず! (カール・ロビンソン)
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本編
1・G41はいいことを思いつきました(その1)


 ある日のことです。G41はいつものように指揮官室で副官業務をしてました。

 といっても、ご主人様のお仕事をG41はほとんど手伝えません。せいぜい、お茶を入れるとか、カリーナさんとのやり取りをするとか、ご主人様が手を離せない時に電話の応対をするとかぐらいです。

 

 なので、G41はソファーに座ってご主人様をじっと見ています。ご主人様が大好きなG41はご主人様を見ているだけでも幸せです。もちろん、本当は甘えたいですが、仕事の邪魔をしてはいけないので我慢しています。

 ご主人様もG41を見ています。視線が遠いのは、頭の中が大忙しだからです。でも、G41を見ていると頑張れるってご主人様は言ってます。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 ふと、ご主人様の視線が近くなりました。次の瞬間、椅子に身体を投げ出して言いました。

 

「終わった…」

 

 長くため息を吐いて、頭のケーブルをIFNデッキから抜きました。ご主人様は頭をサイバー化していて、インターフェイスネットワーク(=IFN)上で仕事ができます。さすがご主人様。凄いです。

 

「ご主人様。仕事終わったの?」

 

「ああ。後は適当に情報処理セルを走らせておけばいいだろう」

 

 ご主人様の言葉にG41は嬉しくなって、立ち上がります。仕事が終わったので甘えてもいいのです。

 

「ご主人様! 頭撫でてー!」

 

「おう! おいでおいで!」

 

 そう言ってご主人様は自分の膝を叩きます。お膝の許可が出ました。G41は大喜びで飛んでいきました。そして、ご主人様のお膝に座って、ご主人様の胸にもたれかかります。

 

「あー、癒されるー…」

 

 ご主人様はしみじみとそう言って、G41を抱っこして頭を撫で撫でしてくれます。G41は幸せです。ご主人様も幸せです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 しばらくそうしていると、不意にG41は背中に電流が走るような感覚を覚えました。

 

「うわぁ!」

 

 びくぅ! として、G41は素っ頓狂な声を上げてしまいました。

 何でそんなことになったのかと言いますと、G41の頭のミミをご主人様がはむっ、としたからです。

 

「す、すまん、G41!」

 

 ご主人様が慌てて口を離して、謝ります。ご主人様はG41をお膝に乗せていると、ついミミをはむっとしてしまいたくなるそうです。

 

「…ご主人様? びっくりしたよ?」

 

「悪い悪い。G41があまりにも可愛すぎてつい、な?」

 

 ジト目で見上げるG41に、ご主人様は謝ってくれます。

 ご主人様が可愛い、と思ってくれるのは嬉しいです。でも、いくら相思相愛でもいきなりミミをはむっとしてはいけないと思います。

 お膝に乗ると、8割以上の確率でご主人様ははむっとしてきます。そろそろ、ご主人様にいきなりはむっとされたらびっくりすることを分かって貰わないといけません。でも、どうしたら分かって貰えるでしょう?

 

 いいことを思いつきました!

 

 G41はご主人様のお膝から降りて、椅子を90度回転させます。

 

「ご主人様。こっち向いててね?」

 

「あ? ああ…」

 

 ご主人様に約束して貰って、G41は行動を開始します。しゃがんで机の陰に隠れながら、ご主人様の後ろに回り込むのです。

 ちなみに、ご主人様からはミミが丸見えだったらしいですが、黙っていてくれました。ご主人様は優しいです。

 

 それで、ご主人様の後ろに回りこんだら、ばっ!って立ち上がって、ご主人様の耳をはむっとしました!

 

「おおう!」

 

 ご主人様はびっくりしました! 作戦成功です! えっへん!

 

「ほしゅひんはま、ほうふぁ~」

 

 耳をはむはむしながら、G41は勝利宣言をします。これでご主人様も耳をはむっとされる気持ちがわかったと思います。

 

「ああ~…なんか、超幸せだ…」

 

 でも、ご主人様はなんだかご満悦です。ご主人様が幸せなのはいいことです。でも、何か違うと思います。これではミミをはむっとされる気持ちが理解してもらえないかもしれません。G41は困りました。

 

「仲良いわね、二人とも」

 

 そう言いながら、FALさんが部屋に入ってきました。

 FALさんは凄い先輩で、なんでも知っています。G41はご主人様から離れて、FALさんの方に駆けていきました。

 

「? どうしたの、G41?」

 

「あのね、FALさん…」

 

 不思議そうなFALさんにG41は耳打ちしました。ご主人様にミミをはむっとされるのでどうしようか、と相談したのです。

 

「ああ! 任せて、G41!」

 

 FALさんはとっても素敵な笑顔でそう言って、G41に解決策を耳打ちしてくれます。素晴らしい案でした! 流石、FALさんです!

 

 G41はご主人様の前に駆けて行って、嘘泣きをしながら言いました。

 

「ご主人様。G41はもうお嫁にいけません。責任を取って誓約して下さい」

 

「こら、G41! FAL、余計なことを教えるな!」

 

「あら? 女の子に恥をかかせたのだから、責任は取るべきでしょう?」

 

「ご主人様~」

 

「う… あ、ああ。借金を返し終えたらな…」

 

「わーい! 借金返したら、ご主人様が誓約してくれる~♪」

 

「よかったわね、G41! 私が証人だからね?」

 

「わーい!」

 

「お前らな!」

 

 こうして、3人でじゃれあいながら時間が過ぎていきました。幸せな一日でした。

 G41はご主人様と誓約したいです。でも、FALさんを差し置いて誓約するのは少し気が引けます。FALさんもご主人様が大好きで、付き合いはG41よりもずっと長いからです。

 だから、せめてFALさんの後に誓約してもらえたら良いな、と思いました。後、一〇〇式ちゃんも一緒だと良いです。M14さんとかSOPMODちゃんとかも一緒だと良いです。みんな大好きだからです。

 というわけで、ご主人様は一杯の戦術人形と誓約しないといけないです。ご主人様、早く借金を返してください。待ってます。まる。

 



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2・G41はいいことを思いつきました(その2)

 G41は普段第一部隊、通称一〇〇式隊に所属しています。

 一〇〇式(モモ)ちゃんを隊長とする常設部隊で、AR小隊や第2小隊(通称M590隊)と入れ替わりに緊急対応部隊に割り当てられています。緊急対応部隊に当たっている時は、緊急時にすぐ動かないといけないので、巡回任務や後方任務にも参加しません。

 

 なので、非常事態が起きるまでは割と暇です。

 そんなわけで、G41はご主人様の所に行くことにしました。今日副官には一〇〇式(モモ)ちゃんが就いていますが、今は文書を取りに行っているところだと思うので、G41がいる方がいいと思います。

 

 指揮官室のドアの前に着きました。こんこん、とノックしますが、反応がありません。きっとお仕事が忙しいのでしょう。

 

「G41入ります!」

 

 G41はそう言って、ドアを開けます。すると、ご主人様は椅子にもたれかかって寝ていました。

 カリーナさんやヘリアンさんが見たら、さぼっているように思うかもしれません。でも、ご主人様は忙しいと2日も3日も寝ないでお仕事をしています。暇な時ぐらい寝ていても、文句は言えないと思います。

 

 ふと、G41は思いました。人間は寝ていると体温調節機能が低下するみたいです。このままだと、ご主人様が風邪をひいてしまうかもしれません。ご主人様が病気になると、G41は悲しいです。

 

 G41はお布団を探してみました。でも、指揮官室にはお布団の代わりにかけられそうなものがありません。G41はどうしたものか、としばらく考えました。

 

 いいことを思いつきました!

 

 G41はご主人様を起こさないように静かに近づいていきました。それで、ご主人様の方を向いてお膝に乗って、そのまま被さるようにしました。

 G41の身体は温かくて柔らかいのでお布団の代わりになります。そうすると、ご主人様は風邪をひきません。G41もご主人様の側でいられるので嬉しいです。とっても名案です!えっへん!

 

 というわけで、ご主人様にそっと覆いかぶさりました。ご主人様の匂いがします。嬉しいです。

 すると、ご主人様にぎゅっ、とされてしまいました。頭をなでなでしてくれます。

 

「どうした、G41? 甘えに来たのか?」

 

 ご主人様が目を開いて、笑ってくれます。ご主人様に撫でてもらえるのは嬉しいです。でも、G41はご主人様にゆっくり休んで欲しかったのです。自分の役目を果たせなかったので、G41はしょんぼりしました。

 

「ごめんなさい、ご主人様。起こしてしまいました…」

 

 G41はご主人様に謝ります。お布団になろうとして、寝ているのを邪魔しては本末転倒です。

 

「ああ、そういうことか」

 

 ご主人様はG41の意図に気づいてくれました。それで、ぎゅっとしたまま笑って言いました。

 

「G41。俺は別に寝てたわけじゃないよ」

 

 そう言って、ご主人様は頭のケーブルを見せました。どうやら寝ている風に仕事をしていたみたいです。目が疲れていたのかもしれません。

 

「でもまあ、G41が気遣ってくれるのは嬉しいな。ありがとう」

 

 ご主人様からお礼を言われて、G41は幸せな気持ちでいっぱいになりました。ご主人様はG41の気持ちをよくわかってくださいます。G41はそんなご主人様の戦術人形で幸せでした。

 

「戻りました、指揮官…」

 

 ドアを開けて一〇〇式(モモ)ちゃんが入ってきました。何だか、顔が凍り付いています。手から書類が落ちました。でも、顔が赤いです。風邪でしょうか? 普通の戦術人形は風邪をひかないですが、一〇〇式(モモ)ちゃんは風邪をひくかもしれません。一緒にご主人様にぎゅっとして貰おう、と思って口を開きかけた時、

 

「し、指揮官…! お、お邪魔しました…!!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんは顔を真っ赤にして、どこかに行ってしまいました。大慌てです。どうしたんでしょうか?

 

「も、一〇〇式(モモ)ー!?」

 

 ご主人様が絶叫しました。本当にどうしたんでしょう? G41には分かりません。

 

『…FAL。緊急任務が発生した。直ちに遂行を頼む』

 

『はいはい、分かったわ。…お礼はガトーショコラね?』

 

『う… わ、わかった…』

 

 ご主人様は通信モジュールを開いて、FALさんに緊急任務を依頼しました。お仕事の最中に何か非常事態が発生したのかもしれません。単独で任務を貰えるなんて、さすが、FALさんです。

 FALさんはガトーショコラが貰えるみたいです。あれは物凄く高いので滅多に食べられません。任務の報酬で貰えるなんて羨ましいです。G41も一口だけ貰おうとおねだりしてみます。

 

 次の日、ご主人様はお金が無くなったみたいで御飯がお水だけになってしまったみたいです。何にお金を使ったのでしょう。

 よくわからないですが、この前一〇〇式(モモ)ちゃんに習ったオムライスを作って差し入れてあげようと思います。ご主人様、待っててね? まる。



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3 ・G41はいけないことを思いついてしまいました(その1)

 最近は鉄血の連中が大人しいので、ご主人様の仕事がすぐに終わることが多いです。

 なので、今日も仕事が終わってるといいな、と思いながらご主人様の所に行きます。

 もちろん、仕事が終わっていたらご主人様と遊びたいです。ご主人様のお伽話を聞くのがG41は大好きです。本当はご主人様がご主人様になる前の話も聞きたいのですが全然話してくれません。

 ご主人様はグリフィンに来る前は軍のえりーとだったらしいです。えりーとはかっこいいらしいので、是非その話を聞きたいです。でも、それを聞こうとすると凄く暗い顔になります。

 FALさんは知っているらしいですが、FALさんも全然話してくれません。

 きっと、余程嫌なことがあったんだ、と思います。えりーとはかっこいいらしいですが、大変でもあるらしいからです。なので、いつか話してくれたらいいな、と待ってます。

 

 ふと、廊下の向こうから歩いてくる人がいます。ご主人様です! G41は嬉しくなって飛んでいきました。

 

「ご主人様~!」

 

「お、G41!」

 

 ご主人様は突撃したG41を優しく受け止めてくれて、なでなでしてくれました。G41は幸せです。今日もご主人様が一緒にいると思うともっと幸せな気持ちになります。

 

「おい、ボス。鍵借りてくるぞ?」

 

 後ろにいたトンプソンさんが言います。G41はご主人様になでなでしてもらっている頭を少し傾げました。倉庫の鍵か何かでしょうか?

 

「うん、お願いね。ついでに一服して来ていいわよ?」

 

 同じく後ろにいたFALさんがトンプソンさんに言います。3人は一緒に何かするのでしょうか?

 

「ご主人様、どうしたの?」

 

「ああ。これから少し外に出かけてくるんだ」

 

 ご主人様の言葉を聞いてG41は少し悲しくなりました。折角、ご主人様といられると思ったからです。でも、G41はすぐに気分を切り替えました。G41は戦術人形です。だから、ご主人様のお役に立てます。

 

「ご主人様! G41を護衛として連れてって!」

 

 G41は笑顔で言います。G41は元々護衛用として開発された戦術人形で、故に他の戦術人形にないミミ型簡易動態センサーと、精密射撃用の狙眼が搭載されています。この基地でもM4さんやFALさんと並ぶエースです。きっと連れて行ってもらえる、と思いました。

 

「いや、護衛とドライバーはトンプソンとFALに頼んでいるんだ」

 

 あう。いきなり断られてしまいました。G41はしょんぼりです。

 

「悪いな、G41。少しビジネスの話もあるんでな」

 

「G41は一〇〇式(モモ)と一緒にお留守番をお願いね?」

 

 トンプソンさんとFALさんがそう言います。二人とも頼りになる先輩で、特にFALさんは戦闘以外の仕事でもご主人様に頼られる凄い戦術人形です。なので、戦力としては心配ないと思います。

 でも、G41はご主人様と一緒にいたいです。連れてってくれないなら出かけて欲しくないです。でも、どうしたら出かけるのを止めてくれるでしょう?

 

 いけないことを思いついてしまいました!

 

 G41は走って整備班の方に行きます。それで恐らくご主人様達が使うであろうトラックの鍵を先に借りてしまいます。なぜトラックなのかというと、鍵が必要な車両はトラックしかないからです。

 

 それでご主人様のところに戻ります。ご主人様は笑顔でG41を待っててくれました。G41が鍵を借りてきてくれた、と思っているのかもしれません。でも、今日のG41は悪い子です。

 

「大変です、ご主人様! 鍵がありません!」

 

 G41は後ろ手に鍵を隠して言いました。鍵がないとご主人様は出かけられません。どうしても出かけたいなら、鍵を持っているG41を連れていくしかないです。とっても名案です!

 もちろん、これは悪いことです。でも、ご主人様は目的のためなら親の仇でも使う、ってよく言ってます。G41がちょっと悪いことをしても怒らないと思います。

 

「おい、G41。お前な…」

 

「まあ落ち着け、トンプソン」

 

 呆れ顔で詰め寄るトンプソンさんをご主人様が止めます。G41を連れてってくれるのでしょうか。G41はワクワクしてご主人様の言葉を待ちます。

 

「鍵が無くなったのか。困ったな、FAL」

 

「そうね、指揮官」

 

 ところがG41の目の前でご主人様はFALさんと相談を始めました。あう。もしかして、G41が鍵を持ってるんじゃなくて、本当になくなったと思ってるんでしょうか? でも、今更G41が持ってます、とは言えません。今日のG41は悪い子です。

 

「でも、大切な用だから必ず行かないといけないわね、指揮官?」

 

「ああ、仕方ない。歩いて行くか」

 

「そうね。丸一日がかりになるから、今日は帰ってこられないわね」

 

 FALさんの言葉を聞いて、G41は内心で大慌てです。大変です。ご主人様の帰りが遅くなったら本末転倒です。どうしましょう。

 

「それに街まで歩いて行ったら危険よね。指揮官死んじゃうかもしれないわよね」

 

「そうだな。大気汚染もあるし、鉄血の連中に襲われるかもしれないしな」

 

 ご主人様の言葉を聞いて、G41は超大慌てです。ご主人様が死んでしまったら、G41は生きていけません。ましてやG41のせいで死んだりしたら泣くに泣けません。どうしましょう。とんでもないことになってしまいました!

 

「鍵があったら昼までには帰ってくるんだけどな」

 

「そうよね。お菓子もいっぱい貰ってね」

 

 ご主人様とFALさんがG41を見つめて言います。もうどうしようもありません。G41は観念して、鍵を差し出して言いました。

 

「ご主人様、ごめんなさい。鍵、ありました…」

 

「ああ。ありがとう、G41」

 

 ご主人様は鍵を受け取って、頭を撫でてくれます。ご主人様は怒らなかったです。でも、本当は連れてって欲しかったです。

 でも、ビジネスの話をする時、G41や一〇〇式(モモ)ちゃんがいると気兼ねしちゃうそうです。ご主人様の負担になってはいけません。G41は自分にそう言い聞かせて、諦めることにしました。

 

「そういえば、SOPMODがG41を探してたわよ? 面白い玩具を手に入れたんですって」

 

「そうだな。二人で仲良くお留守番頼むな?」

 

 FALさんとご主人様がそう言ってくれます。SOPMODちゃんは大の仲良しです。二人で遊んでたら、きっと楽しくてすぐ時間も経って、ご主人様が帰ってきてくれると思います。

 なので、G41はご主人様を駐車場までお見送り押した後、いい子でお留守番することにしました。ご主人様、待ってます。 まる。

 

 ちなみに、SOPMODちゃんに通信モジュールで連絡を取ってみると、野外訓練場で待ってる、とのことです。どんな玩具を手に入れたのでしょう。楽しみです。わくわく。



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4・G41はいけないことを思いついてしまいました(その2)

 


 突然ですが、G41はいけないことを思いついてしまいました!

 

 G41はご主人様に誓約して貰いたいです。

 でも、ご主人様は借金があるから、と誓約してくれません。

 

 ご主人様の借金はとっても多いですが、カリーナさんに聞いたら一年前の事件と、ここ最近起きた二つの事件の特別報奨で半額ぐらいを返せているそうです。後、幾らか事件が起きたら返済できると思います。

 なので、G41は作戦を立てて、ご主人様に誓約して貰おうと考えています。とにかく、ご主人様に誓約するって言って貰いたいのです。

 

 もちろん、ご主人様を引っかけるのは悪いことです。

 でも、ご主人様は戦場においては策にかかるやつが悪い、騙されるやつが悪い、と言ってました。そして、恋は戦争と言います。なので、ご主人様は引っかけても怒らない、と思います。

 

 というわけで、早速G41はご主人様の所に行きます。幸い、ご主人様は一人で座ってお茶を飲んでいました。仕事が一段落したみたいです。そして、一〇〇式(モモ)ちゃんはお使いに出ているみたいです。チャンスです。

 

 というわけで、早速作戦を開始します。

 

 まず、G41はご主人様のところに走って行きました。

 

「ご主人様~」

 

「おお、G41! おいでおいで!」

 

 G41を見るなり、ご主人様は手招きをして迎えてくれました。作戦の第一段階は成功です!

 

「ご主人様! まず、褒めて!」

 

 作戦は第二段階に入りました。まず、G41はご主人様に褒めの言葉をおねだりします。

 

「ああ。G41は今日も可愛いな」

 

 ご主人様はいつものように褒めてくれます。作戦の経過は順調です。

 

「頭撫でて!」

 

 次になでなでをおねだりします。耳を寝かせて頭を差し出してみます。

 

「ああ。よしよし」

 

 ご主人様はG41の頭を優しくなでてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。

 でも、作戦を忘れてはいけません。ここからが肝心なのです。

 

「ご主人様、超褒めて?」

 

 G41はおねだりをグレードアップさせます。これが作戦の内容です。

 おねだりをグレードアップさせて、最後に誓約して? っておねだりすることで、なし崩し的にうんって言って貰うことです。名付けて、雪だるま作戦です!

 

「ああ。G41は本当に可愛いな。お前は俺の天使だ。宝物だ」

 

 ご主人様はG41を超褒めてくれました。嬉しいです。

 ご主人様は順調に作戦に引っかかってくれています。ご主人様は数多くの敵を作戦で引っかけて倒してきました。その凄いご主人様が作戦にかかってくれています。一生懸命考えた甲斐がありました! えっへん!

 

「ご主人様、超撫でて?」

 

 G41は勢いに任せてそう言いました。

 

「おお! よ~しよしよしよし!!」

 

 ご主人様はG41の頭を抱えてわしゃわしゃしてくれました。超嬉しいです。

 G41は幸せいっぱいです。これ以上の要求はないので、いよいよG41は作戦の締めにかかります!

 

「ご主人様、誓約して?」

 

 G41はご主人様を見上げてそう言いました。ここまで来たら作戦はきっと上手く行く、と思いました。

 

「こら、G41!」

 

 でも、ご主人様はそう言ってG41の頭をぺちっとしました。

 とっても優しいぺちっだったので痛くはないです。でも、作戦は失敗でした。

 G41は少し残念でしたが、でもしょうがないと思いました。ご主人様は賢いので、G41の作戦を見抜いてしまったのです。もっと上手に作戦を練らないといけません。

 

「全く、借金を返し終えるまで無理だって言ってるだろ?」

 

「でも、G41はご主人様に誓約して貰いたいです」

 

 G41はご主人様に正直に言います。G41はご主人様とずっと一緒がいいです。だから、誓約して欲しいです。

 

「まあ、それはもう少し待つんだ。代わりによしよししてやるから」

 

 そう言って、ご主人様は椅子に座って膝をパンパンします。お膝の許可が出ました。G41は喜び勇んでご主人様のお膝の上に座ります。

 

 ふと、G41は思いつきました。今日もご主人様はミミをはむっとしてくるかもしれません。なので、最初に言っておくことにします。

 

「ご主人様? ミミをはむっとしないでね?」

 

「ああ。G41が嫌だというならやらないよ?」

 

 ご主人様がそう言ってくれたのでG41は安心してご主人様のお膝を満喫します。幸せです。

 

「G41、なでなでしていいか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は喜んで頷きます。ご主人様になでなでしてもらうと幸せだからです。

 ご主人様はG41の頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は幸せ100%です。

 

「G41、ゴロゴロしていいか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は喜んで頷きます。ご主人様にゴロゴロしてもらうと幸せだからです。

 ご主人様はG41の喉を撫でてくれます。とても気持ちいいので、ゴロゴロと喉を鳴らしてしまいます。G41は幸せ120%です。

 

「G41、はむはむしていいか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は喜んで頷きます。ご主人様にはむはむしてもらうと… あれ?

 次の瞬間、G41の背筋に電流が走るような感覚がしました。

 

「うわぁ!」

 

 G41は驚いて素っ頓狂な声を上げてしまいます。

 

「ご主人様? はむってしないでって言ったのに…」

 

「いや、はいって言うから嫌じゃなくなったのかと思ってな」

 

 膨れるG41に、ご主人様はしれっとそう言います。確かに、ご主人様は嫌ならやめる、と言ってました。そして、G41はあまりよく分からないうちにはいって言ってしまいました。

 なんと、G41はご主人様の作戦に引っかかってしまいました! 流石ご主人様です!

 

 というわけで、G41はご主人様に負けてしまいました。

 でも、ご主人様にたっぷり甘えられたのでとっても幸せでした。なので、作戦は部分的成功でした! まる。

 



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5・はたらくG41(その1)

 G41は今ご主人様の部屋の掃除をしています。

 ご主人様の部屋の掃除は当番制で戦術人形の有志がやってます。ご主人様の部屋を掃除し隊です。隊長はM590さんがやってくれてます。以前は一〇〇式(モモ)ちゃんが隊長だったのですが、いろいろ忙しくなってきたのでM590さんが代わりに就任したのです。

 

 ご主人様の部屋は結構汚いです。

 服は脱ぎ散らかしているし、飲んだお酒の瓶とかも机に放置しています。

 ご主人様は私生活ではかなりだらしないです。困ったご主人様です。今度会ったらめっ!しないといけません。

 

 G41は部隊結成初期から隊員だったので、今や勝手知ったるご主人様の部屋です。

 なので、どこに何を片付けたらいいかはご主人様より知っています。早速お片づけを始めます。

 

 まず机の上のお酒を片付けることにします。空の瓶とコップとお皿をお盆に乗せます。

 少しだけ瓶の口を舐めてみます。なんだかとっても安っぽい味がしました。ご主人様は給料日なのにこんな安っぽいお酒しか飲めません。可哀想です。

 お金を稼いだら、ご主人様にいいお酒をあげたいと思います。シャンペンというのがしゅわっとして甘くて美味しいので、それを買ってあげたいです。

 次にコップをちょっと舐めてみます。やっぱり安っぽい味がしました。でも、ご主人様と間接キッスです。嬉しいです。えへへ。

 

 続いて、服のお掃除です。

 いつも着ているスーツとYシャツを回収します。Yシャツはお洗濯で、スーツはアイロンして消臭剤をかけることにします。

 最初G41はアイロンが難しくて、スーツをダメにしたこともありました。でも、一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒にスプリングフィールドさんに習って、とっても上手になりました。

 なので、G41はいいお嫁さんになれます! えっへん!

 

 回収した服をくんくんしてみます。ご主人様の匂いがしました。嬉しいです。

 嬉しかったので、ついついぎゅっとしてすりすりしてしまいました。G41はご主人様の匂いが大好きです。

 名残惜しいですが、それを籠に入れて、持ってきた新しいシャツとスーツをクローゼットにかけておきます。しっかりアイロンしたので、脱ぎ散らかしてしわしわにしないで欲しいものです。脱いだらちゃんとハンガーにかけるぐらいはして欲しいです。やっぱり、めっ!しないといけません。

 

 後はお部屋に掃除機をかけて、拭き掃除をします。

 掃除機をかけていると、ベッドの下に何か当たるものがありました。とってみると、それはエロ本でした。

 新しい本だったのでG41は早速読んでみます。何だか一〇〇式(モモ)ちゃんみたいな服の女の子がいっぱいでした。

 もしかしてご主人様は一〇〇式(モモ)ちゃんみたいな服が好きなのでしょうか。なら、今度G41もああいう服用のスキンを作って貰いたいです。今度ペルシカさんに頼んでみます。

 

 エロ本をたっぷり読んで、ご主人様をのーさつするお勉強をした後、掃除機と拭き掃除を仕上げてしまいます。

 部屋は綺麗になりました! G41はお掃除が得意です! なので、G41はいいお嫁さんになれます! えっへん!

 ちなみに、エロ本は机の上に置いておきました。お気に入りのエロ本だと思うので、すぐに読めるように、と配慮したのです。G41は気が利きます!

 

 後はベッドメイキングだけです。今日はシーツ交換はしないで、消臭剤をかけるだけです。

 布団を持ち上げたところで、ご主人様の匂いがしました。G41はご主人様の匂いが大好きです。ご主人様の匂いに包まれたいと思ってしまいました。

 なので、G41はご主人様のベッドに寝っ転がってお布団を抱っこしました。ご主人様の匂いでいっぱいです。ぬくぬくです。G41は幸せです。

 

 何だかちょっと眠くなってきました。でも、寝ちゃいけません。まだお掃除が完全に済んでないからです。でも、もう少しだけコロコロしていたいです。

 コロコロしているうちにますます眠くなってきてしまいました。ご主人様の匂いは安心するからです。でも、寝ちゃいけません。寝ちゃいけません。寝ちゃ…ZZZzzz…

 

 …何だか、頭を撫でてくれている感触がします。ご主人様の手みたいです。なのでちょっとすりすりしてしまいました。

 

 あれ? G41は今どうしてるんでしょうか? あれ?あれ?

 あ! G41は思い出しました! お掃除の途中でした!

 G41は慌てて身を起こしました。すると、ご主人様が隣に座っていました。

 

「おはよう、G41」

 

 ご主人様が笑顔でそう言ってくれます。体内時計を確認してみると、もう夕方です。ご主人様は仕事を終えて部屋に戻ってきたのです。

 G41はしょんぼりです。コロコロの誘惑に負けて、お掃除を最後までできませんでした。G41はダメな子です。

 

「ごめんなさい、ご主人様。寝てしまいました…」

 

 G41はミミをペタンとしてご主人様に謝ります。これではいいお嫁さんになれません…

 

「いや、いいんだよ。いつもありがとうな、G41」

 

「…ふぇ? 頭、撫でてくれた…?」

 

 でも、ご主人様はG41をなでなでしてお礼を言ってくれました。怒られるかと思っていましたが、どうやら余計な心配だったみたいです。

 

「せっかくだし、もう少しG41を愛でてから飯にしよう」

 

 ご主人様が嬉しいことを言います。G41は幸せです。お掃除し隊に入ってて本当に良かったです。

 ちなみに、洗濯物や洗い物は一〇〇式(モモ)ちゃんが片付けてくれていたみたいです。一〇〇式(モモ)ちゃんフォローありがとう。今度お礼にほねっこを持っていくから待っててね? まる。



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6・はたらくG41(その2)

 今日はみんなで巡回任務の日です。メンバーは私とFALさん。それにSOPMODちゃんとステンちゃんとスコーピオンちゃんです。

 一〇〇式隊所属の私とAR小隊所属のSOPMODちゃんは普段巡回任務には出ないのですが、最近事件がなさ過ぎてつまんないので出させてもらうことにしました。FALさんは引率です。

 

 ダミードールを引き連れて、無事帰還です。みんな傷一つありません。戦闘はなかったからです。鉄血は最近本当に勢力を減退させています。巡回に出ても、雑魚さえ出てきません。SOPMODちゃんはつまらなさそうです。

 でも、G41は久しぶりのお外で楽しかったです。ステンちゃんやスコーピオンちゃんも最近は後方任務ばっかりだったのでお外は楽しかったようです。やっぱり散歩は大事だと思います。

 

「みんな、お帰りなさい」

 

 副官の一〇〇式(モモ)ちゃんが玄関までお迎えに来てくれました。

 

「あ、一〇〇式(モモ)ちゃんだー!」

 

 SOPMODちゃんが嬉しそうに言います。G41も嬉しいです。二人とも一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きだからです。

 

「「一〇〇式(モモ)ちゃ~ん!!」」

 

 嬉しかったので二人で突撃しました。その後ろをダミードール×8が追従します。

 

「「一〇〇式(モモ)ちゃん~」」

 

 そして、二人×5で一〇〇式(モモ)ちゃんをもみくちゃにします。舐めたり、スリスリしたり、髪を弄ったり、無駄に上着を脱がしたりします。

 

「あ、あの… G41ちゃん? SOPMODちゃん?」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが戸惑うように言いますが、G41達は止まりません。一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きだからです。もちろん、一〇〇式(モモ)ちゃんを虐めているわけじゃありません。じゃれているだけです。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん~」

 

 G41は遠慮なく一〇〇式(モモ)ちゃんのほっぺを舐めまくります。一〇〇式(モモ)ちゃんのほっぺはぷっくりしてて気持ちいいです。それに、桃ちゃんと名前が似ているせいなのか、なんだか甘い気がするからです。

 

「こら、そこまでにしなさい二人とも」

 

 FALさんがそう言うと、G41とSOPMODちゃんはすぐに一〇〇式(モモ)ちゃんから離れます。一〇〇式(モモ)ちゃんは怒らないですが、FALさんが怒るとげんこつされます。

 げんこつは痛いので嫌です。なので、FALさんに怒られないようにしないといけません。

 

「FALさん…」

 

一〇〇式(モモ)、嫌なら嫌って言いなさい。この二人、悪気はないけど遠慮も際限もないんだから」

 

 FALさんはSOPMODちゃんのダミーから上着を取り返して、一〇〇式(モモ)ちゃんに着せてあげながら言います。

 FALさんの言葉に、G41とSOPMODちゃんはしゅんとします。もしかして、一〇〇式(モモ)ちゃんに嫌われてしまったのでしょうか?

 

「いいえ、FALさん。嫌じゃないですよ。…二人とも大切な友達ですから」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉にG41達は笑顔になりました。嬉しかったのでもう一度じゃれに行きたかったですが、FALさんに睨まれたので止めておきます。

 

「みんな、おかえり」

 

 しばらくすると、ご主人様も来てくれました。G41とSOPMODちゃんは喜色満面です。

 あまりにも嬉しかったので、二人でご主人様に突撃しました。その後ろをダミードール×8が追従します。

 

「ご主人様~!」

 

「しきか~ん!」

 

「おっ、二人共ご苦労だったな!」

 

 突撃する二人×5をご主人様は両手を広げて迎えてくれます。さすがご主人様です!

 

「ご主人様~、全員の頭撫でて~」

 

「指揮官、だっこ~」

 

 G41&SOPMODちゃん×5はご主人様を遠慮なくもみくちゃにします。でも、ご主人様は、

 

「ははははは、こぉいつぅ~」

 

 とっても幸せそうでした。流石ご主人様です。

 

 ふと見ると、ステンちゃんが何だか羨ましそうにこっちを見ています。ステンちゃんもご主人様が大好きだからだと思います。G41とSOPMODちゃんに遠慮して来ないのだと思います。

 

「ステンちゃん! 一緒にあまあましよ!」

 

 なので、G41はステンちゃんを呼びました。ご主人様は凄い人なので全員でもみくちゃにしても大丈夫です。なので、ステンちゃんも一緒がいい、と思いました。G41にとってステンちゃんもお友達だからです。

 

「…うん、ステン-MKⅡ、行きます!」

 

「…じゃあ、私も行こうかな」

 

 ステンちゃんだけでなく、スコーピオンちゃんもご主人様にあまあまするみたいです。ご主人様は何だかとんでもないことになっていますが、幸せそうです。なので、遠慮しなくていいと思います。

 

「はい、みんなそこまで」

 

 でも、FALさんから待ったがかかって、みんな動きを止めました。G41とSOPMODちゃんも離れます。

 FALさんの口調は怒ってそうじゃないですが、言うことを聞かないとげんこつされてしまいます。FALさんを怒らせないようにしないといけません。

 

「もう、指揮官もいい加減にしてよ? いつまでも報告できないじゃない」

 

「すまんな、FAL。あまりに幸せだったからな」

 

 FALさんの言葉に、ご主人様は笑って服装を直します。FALさんもそれを手伝ってます。なんだか、お父さんとお母さんみたいです。G41達には両親はいないですが、何となくそう思いました。

 

「で、指揮官。仕事は終わったの?」

 

「大体な。後は情報処理セルが妙なものを見つけて来なければ、お仕事は終わりだ」

 

「なら、この娘達の相手をしてあげて? 雑務は私と一〇〇式(モモ)でやっておくから」

 

 FALさんの言葉に、みんな笑顔になりました! FALさんはやっぱりいい人です。G41はFALさんのことも大好きです!

 

「みんな、ダミードール置いて、一応診断と消毒だけは受けて、それから指揮官に甘えなさい?」

 

「「「「は~い!!!!」」」」

 

 FALさんの言葉に、みんな素直に従います。FALさんは厳しいことも言いますし、怖いこともありますが、でもみんなのことを思いやってくれます。みんなFALさんが大好きです!

 

「あ、そうだ。FAL」

 

「何? 何か忘れ物?」

 

 立ち去ろうとするFALさんにご主人様が近づいて行きます。

 

「ありがとうな、FAL。助かるよ」

 

 そう言って、FALさんをなでなでしました。何だか珍しい光景です。

 

「ちょっ!? し、指揮官!? もう…」

 

 FALさんは顔を真っ赤にして驚きましたが、嫌がったりせずにご主人様になでなでされてます。やっぱり、FALさんもご主人様が大好きです。

 

 みんなもご主人様が大好きで、ご主人様もみんなが大好きです。G41達は幸せです。ご主人様も幸せです。そんな幸せで平和な日々が続いて欲しいな、と思いました。まる。

 

 あ、でも、何か事件が起こらないとご主人様がいつまで経っても借金を返せません。ほどほどに事件も起きて欲しいです。



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7・ご奉仕G41(その1)

 突然ですが、G41はいいことを思いつきました!

 

 いつもご主人様に撫でてもらったり、褒めてもらってばかりでは不公平です。なので、G41もご主人様に気持ち良くなって貰おうと思います。

 というわけで、G41はこの前から一〇〇式ちゃんにある技を習ってました。そして、もう免許皆伝の腕になりました! えっへん!

 

 後、Five-sevenさんから貰ったご奉仕用の服も着ています。紺色のワンピースとその上に白いエプロンドレスとヘッドドレスを着けてます。白い手袋と黒いストッキングも身に着けました。なんでも、これはメイド服って言って、昔からご奉仕するときに着る服だそうです。これを着ていくとご主人様が大喜びするって言ってたのでこれで完璧です!

 

 というわけで、今日はその技のお披露目です。G41は早速指揮官室に行きました。

 

「G41入ります!」

 

 ノックして、そう言ってお部屋に入りました。ご主人様はIFN通信で誰かとお話し中です。

 

「うちの一〇〇式はいささか忙しくてですね。それに彼女も人前に出るのは少々苦手な性格でして…」

 

『そこをなんとか』

 

 あう。交渉事の最中でした。ご主人様は交渉中にG41達を近づけることを嫌います。返事があるまで待てばよかったです。ご奉仕するつもりがいけないことをしてしまいました。

 

「ふむ。そういえば、一〇〇式は最近お腹を減らしていることが多くてですね…えぇ!?」

 

 ご主人様がG41を見た瞬間素っ頓狂な声を上げました。とっても目が大きいです。あう。もしかして怒られるのでしょうか? G41はしょんぼりです。

 

『どうしました? 天野指揮官』

 

「急用が入りました。この話はまた今度。では」

 

 ご主人様はそう言って強引に通信を打ち切って、すぐに立ち上がります。そして、G41の前に大股で歩いてきました。

 

「じ、G41!((*´Д`)ハアハア) お前はなんていけない子なんだ!((*´Д`)ハアハア) これはおしおきをするしかない…(じゅる)おっと、涎が…」

 

 ご主人様が何だか怖い目で、息を乱してそう言いました。もしかして、もの凄く大事な交渉だったのでしょうか。ご主人様のお邪魔をして、G41はしょんぼりです。

 

「ごめんなさい、ご主人様。失望させました…」

 

 G41はミミをペタンとして、上目遣いでご主人様に言います。悲しいので、つい目がウルウルしてしまいました。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

 そう言った次の瞬間、いきなりご主人様が床に倒れて横にごろごろし始めました。一体どうしたのでしょう? G41はびっくりです。一体何が起こったのでしょうか?

 

「…い、いかん、いかん。俺、正気に戻れ… G41をそんな目で見るんじゃない…」

 

 ご主人様はうつ伏せで寝ころんだままそう言って、立ち上がりました。

 

「ご主人様?」

 

「すまん、G41。取り乱してしまった。お前は悪い子じゃないからな。可愛い可愛い、俺の大天使だ」

 

 なんだかよくわかりませんが、いきなり超褒められました。怒られるんじゃなかったのでしょうか? よく分からないですが。褒められたのでG41は嬉しいです。

 

「で? G41、どうしたんだ?」

 

「はい! ご主人様にご奉仕しに来ました!」

 

「ご奉仕…だと…?」

 

 ご主人様は凄く驚いてそう言います。とってもサプライズだったみたいです。というわけで、G41はソファーの端に座って、膝をパンパンしました。ご主人様のお膝の合図の真似です。

 

「うおおおお… マジか…」

 

 ご主人様は何だか感極まった様子でそう言って、いそいそとソファーに寝っ転がって、G41のお膝を枕にしました。G41は高級モデルなので、臭くないですしお膝も柔らかいのでいい枕になります。

 

「ご主人様、どうですか?」

 

「ああ。幸せすぎる…」

 

 ご主人様は本当に幸せそうにそう言いました。ご奉仕大成功です! でも、G41のご奉仕はまだ始まったばかりです。

 

「ご主人様、横向いて?」

 

「こうか?」

 

 ご主人様が頭を右に向けました。ご主人様の耳が前にあります。いよいよ、日ごろの訓練の成果を発揮する時です。

 G41はポケットからピンセットを取り出しました。先にはゴムがついていて突いても痛くないようになっています。

 G41は精密作業が得意なので、耳かきや綿棒よりピンセットを使うほうが扱いやすいのです。

 

「ご主人様、耳掃除しますね?」

 

 そう言って、G41は耳の穴にピンセットを入れました。そして、ちょっと大きい耳垢を摘まみます。パリっていって、耳垢が取れました。

 

「おおう!」

 

 ご主人様が声を上げます。気持ちいいみたいです。ご奉仕はとっても順調です! えっへん!

 

「ご主人様、ここかゆいですか?」

 

 G41は取れた耳垢のあった場所をピンセットで優しくカリカリします。そこがほんのちょっとだけ赤くなっていたからです。

 

「ああ… めっちゃ気持ちいい…」

 

 ご主人様はため息交じりにそう言います。ご主人様が気持ち良さそうなので、G41は嬉しいです。ご奉仕はとっても順調です! えっへん!

 

 G41は丁寧に耳垢をとっていきます。ご主人様はあまり耳掃除をしないらしく、結構耳垢がたくさんありました。それを一枚一枚、ゆっくり剥がしてとっていきます。ぱりっと剥げるたびに、ご主人様は気持ちよさそうな顔をします。なんだかG41は嬉しいです。もちろん、赤い部分があったらカリカリするのも忘れません。

 

 いよいよ仕上げです。まずはふーふーをします。

 G41は口をご主人様の耳に寄せ、息をフーフーしました。

 

「うおぅ!?」

 

 ご主人様はびっくりしたみたいです。なんだか、今日のご主人様は何だか可愛いです。そんなご主人様を見られて、G41は嬉しいです。ご奉仕はとっても素晴らしいことだ、と思いました。

 

 いよいよ、最後の仕上げです。G41は耳の壁を少しピンセットの先端でなぞって、へこんでいる部分を探します。それはすぐに見つかりました。ここが耳のツボらしいです。

 そこを優しくピンセットの先端でつんつんしたり、カリカリしたりします。ここを刺激されるととっても気持ちいいらしいです。

 

「やべえ… 幸せすぎる…」

 

 そう言って、ご主人様は大きな欠伸をしました。このツボを刺激すると眠くなるみたいです。そうでなくても、ご主人様は一生懸命私たちのために働いてお疲れです。ゆっくり休んで欲しいです。

 

「ご主人様、お眠してもいいですよ?」

 

「ああ。すまん、G41」

 

 そう言うなり、ご主人様は反対を向いて別の耳をG41に向けました。寝てる間にこっちもお願い、ということだと思います。

 

「はい、ご主人様。おやすみなさい」

 

 そう言って、G41は再び耳の掃除を始めました。大きな耳垢がたくさんあります。掃除のし甲斐があります。

 そうして、耳垢をパリパリしていると、ご主人様の寝息が聞こえてきました。ご主人様の寝顔が何だか可愛くて、G41は嬉しかったです。ご奉仕は大成功でした!

 ご主人様が寝ていても、G41は手を抜かずご奉仕します。ゆっくりお休みください、ご主人様。まる。

 



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8・ご奉仕G41(その2)

 今日はG41が急遽副官です! なんと、一〇〇式(モモ)ちゃんが副官の予定だったのを押しのけての副官業務です! 

 G41は今日もメイド服です。ご主人様はどうもメイド服が大好物みたいです。一〇〇式(モモ)ちゃんに勝ったのは初めてです。これからもうずっとメイド服でもいいかもしれません。

 でも、それはちょっとずるい気がするので、一〇〇式(モモ)ちゃんにもメイド服をお勧めするつもりです。そうしたらずるくないです。ご主人様の取り合いは、正々堂々するべきです。大事なお友達の一〇〇式(モモ)ちゃんだから猶更です。

 でも、後で聞いたら急遽16Labにデータ提出に行く必要があったからだったらしいです。良かったです。でも、一〇〇式(モモ)ちゃんにもメイド服はお勧めします。きっと可愛いからです。思わずペロペロしちゃうかもしれません。

 

 それはさておき、お仕事が終わったご主人様は首を捻ります。ゴキゴキ音がしました。

 

「うー、何だか奥歯が痛いな…」

 

 ご主人様が顎を押さえて言います。虫歯でしょうか?

 

「ご主人様、虫歯?」

 

「わからん。G41、少し見てくれるか?」

 

 そう言ってご主人様はG41に向けて口を開けます。G41はポケットからペンライトを取り出して、照らしながら中を確認します。

 ご主人様は歯磨きを丁寧にするので臭くないです。虫歯が酷ければ臭いはずなので、虫歯ではないと思います。奥歯も黒かったりはしないです。

 

「ご主人様、虫歯じゃないみたいです」

 

「そっか。やはり、肩の凝りすぎか」

 

 ご主人様は顔をしかめて肩を回します。ご主人様の仕事は脳を直接使うという生物としては歪な仕事です。そして、脳の疲労は肩と首に溜まるといいます。歯が痛いのもそれが原因かもしれません。

 

「ご主人様、かたもみしましょうか?」

 

 G41はそう申し出ました。実はG41はかたもみとかたたたきには自信があります! だって、カリーナさんをじっけんだ…もとい、カリーナさんに実践してやり方を熟知してるのです! えっへん!

 

「ああ。よろしく頼む」

 

 ご主人様はそう言って、背中を向けました。ご主人様の信頼を感じます! ご主人様、G41は頑張ります!

 

 まず、ご主人様の肩回りを4本の指先でツンツンするようにして具合を確かめます。肩から肩引きにかけてつついて回ります。

 

「おおう! …いい感じだ、G41」

 

 ご主人様がため息交じりに言います。気持ちいいみたいです。

 ご主人様が気持ちいいのはいいことです。でも、あんまりいい感じじゃないのでG41は黙ってます。

 

 ご主人様の肩はカリーナさんと違ってあからさまに固くないです。でも、何というか表面ではなく奥のほうが固い気がします。あまりよろしい状態じゃない気がします。

 

 とりあえず、コリを散らす必要があります。

 G41はご主人様の肩から背中にかけてをさするようにします。丁度、肩から肩引きにかけてT字になるようにさすります。何度も何度も繰り返します。肩を摩擦で温めて、血の通りを良くして、滞った悪い血を心臓に送るのです。

 

「おおっ!? 何だか本格的だな」

 

 ご主人様がびっくりして言います。それはそうです。G41はご主人様に喜んでもらうためなら手を抜くつもりはないのです! G41はご主人様のためならいつでも一生懸命です!

 

 肩が温まってきたところで、首の後ろに手をやります。そして、首の後ろの強張った筋肉の側面を親指で押します。

 

「おおう!」

 

 ご主人様が気持ちよさそうに言いました。G41はそこをほぐすように指を動かしながら、眉を顰めます。思ったより良くない状況な気がします。首の側面の筋肉の奥。そこに変な筋ができているのです。肩こりの酷いカリーナさんにもこんなのなかったです。恐らく、これが歯痛の原因です。

 G41はとりあえず首と頭の付け根になる部分に親指を据えます。そして、頭蓋骨の隙間を押すようにします。そこは風池とか天柱とかいう経絡があるみたいです。実際手ごたえでへこんでいるのがわかります。

 

「おおおおおおお!?」

 

「ご主人様、どうですか?」

 

「気持ちいい。だけど何だろう、妙にピリピリ来る」

 

 それはとっても悪いんだと思います。ご主人様が可哀想です。G41達のために一生懸命働いてくれるご主人様の疲れが、そういうところに現れているのです。だから、G41は頑張って、お疲れを癒してあげたいです。

 

 後は、首の側面を押さえながら首筋に沿って心臓に向かってなぞるように指を動かします。筋に溜まった疲労物質を心臓に送るのです。

 それを懸命に何度も何度も繰り返します。ご主人様の疲労が少しでも消えるように、一生懸命繰り返します。

 

「おおおお… マジ天国だ…」

 

 ご主人様が感動したように言います。何だか可愛いです。だから、ご主人様がもっと癒されるようにG41は頑張ります。

 首の筋をほぐすとともに、肩の筋肉をほぐすのも忘れません。肩の筋肉に掌を当てて、回すようにします。そうして、コリをほぐして疲労物質を散らすのです。そうやって、首の疲労物質を心臓に通るようにするのです。

 

 ご主人様の首と肩が暖かくなってきました。血の通りがよくなってきたのだと思います。G41は嬉しいです。きっとご主人様の歯痛は収まると思います。

 G41はご主人様のお仕事を手伝えません。でも、こうしてご主人様の疲労を癒すことはできます。そう考えると、ご奉仕は本当に尊いものだと思います。ご主人様にご奉仕できて、G41は幸せです!

 

 気が付くと、ご主人様が寝息を立てています。ご主人様の寝顔は可愛いです。G41のご奉仕は大成功です! えっへん!

 後はもみ返しが来ないように、優しく肩をトントン叩くのみに留めます。とんとんとことん肩たたきです。

 

 数時間後、目を覚ましたご主人様は気分が凄く良くなった、と喜んでくれて、G41の頭をなでなでしてくれました! ご奉仕はいいことです! カリーナさん、じっけんだ… もとい、肩を揉ませてくれてありがとう! 一回ごきってやっちゃったのは許してください。まる。

 



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9・G41と仲間達(その1)

 海です!

 青い海が目の前にあります!

 

 凄いです! G41は感動しました!

 青い海なんて、VRシアターでしか見たことないです!

 G41は感動で胸がいっぱいです!

 

 でも、もちろんこの海は本物じゃありません。

 本物の海は崩壊液で汚染されて、すっかり死の海になっています。人間どころか戦術人形でさえ近づいたら危険です。悲しいです。

 

 ここはNEWハワイアンというリゾート施設です。最近、海洋研究所がスピンオフで始めた高級リゾート施設です。

 海を浄化しようと、必死で研究している海洋研究所ですが、こういうことをしないと予算が下りないらしいです。悲しいです。

 

 当然、ここは高級市民の人用の施設なので、本来はG41たちが来られる場所じゃないです。でも、海洋研究所からプロモーション動画や写真を撮りたい、と言われて招かれたのでした。

 

 何故なら、G41はグリフィンドール総選挙5位の人気者だからです! えっへん!

 

 ちなみに、堂々1位の一〇〇式(モモ)ちゃんと6位のFALさんも一緒です。FALさんがグラビア写真の係で、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんが動画の係です。

 でも、脚本とかそういうのはないみたいです。ただ、遊んでいて欲しい。それだけみたいです。スタッフの人たちはいい人です!

 

 というわけで、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に砂浜にいます!

 ちなみに、水着はワンピースのスクール水着というものらしいです。ちゃんと胸にG41と一〇〇式って名前も書いてます。G41が白で、一〇〇式(モモ)ちゃんが紺色です。

 ご主人様に似合うかどうか見せたら、いきなり鼻血を吹いて倒れてしまいました。FALさん曰く、病気らしいです。物凄く心配でしたが、M16さんやトンプソンさんに任せれば治るらしいので、お任せしました。ご主人様、早く元気になってね?

 

「行こう、一〇〇式(モモ)ちゃん!」

 

「う、うん!」

 

 G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは潮風を頬に受け、裸足で駆けていきます! 生臭い潮風はやっぱりVRシアターでしか体験したことがありません! こんなのまで再現できるなんて、海洋研究所の人達は凄いです!

 

「えーい!」

 

 どっぱーん! G41は波間に頭から飛び込みます。冷たくて気持ちいいです。G41は水が大好きです!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、水がしょっぱいよ! 海だ!」

 

「うん! 海だね、G41ちゃん!」

 

 G41は立ち上がって、唇を舐めながら言います。同じように海に突っ込んだ一〇〇式(モモ)ちゃんも同じようにして言います! 凄いです! 海です!! G41のテンションが上がってきました!

 

「えーい!!」

 

 G41は両手で水を掬って、一〇〇式(モモ)ちゃんの顔にかけます! こういうことをVRシアターで体験したことはありますが、リアルでは初めてです。すっごく楽しいです!

 

「わっぷ! やったな~、G41ちゃん!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんも反撃してG41の顔に水をかけてきます。わっぷい。冷たいです。おのれ~、一〇〇式(モモ)ちゃん、かくなる上は…

 

「だいれくとあたーっく!」

 

 G41は一〇〇式(モモ)ちゃんに飛び掛かり、

 

「きゃ~」

 

 どっぱーん! 二人は一緒に海の中に倒れこみました。超楽しいです。

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に海の中のG41。目の端をきらきら輝くものが通り過ぎました。お魚さんです!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん! お魚さんだ!」

 

「うん! 魚もいるんだね!」

 

 立ち上がったG41と一〇〇式(モモ)ちゃんは感動しました! 海洋研究所の人達の仕事は凄いです!

 

 G41と一〇〇式(モモ)ちゃんはいそいそとお魚さんを追いかけていきました。深いところに入っていきますが、気にしません。高級モデルの戦術人形であるG41と一〇〇式(モモ)ちゃんは泳げるのです! 防水だって完璧です! えっへん!

 

 途中で足がつかなくなったので、二人で泳いでいきました。でも、お魚さんは早いです。全然追いつけません。しょんぼりです。

 

 ふと、目の前から大きなお魚さんが近づいてきます。なんでしょうか? 鮫さんだったら嫌だなぁ、と思いました。銃がないので襲われたら危ないです。

 

 でも、それは似ていましたが違いました。イルカさんでした! 生でイルカさんを見るなんて夢にも思わなかったです! G41も一〇〇式(モモ)ちゃんも感動で胸がいっぱいです。

 

 イルカさんはG41の前にやってきて止まりました。目が合います。

 イルカさんが胸を口で突いてきました。ちょっとくすぐったいです。

 お返しに、G41もイルカさんの口先を突きました。なんだかくすぐったそうです。

 なんだか、心が通い合った気がしました! 二人は相思相愛です! えっへん!

 

 G41と一〇〇式(モモ)ちゃん、それにイルカさんは一緒に泳ぐことにしました。泳ぎはイルカさんのほうがずっと上手ですが、なんだか手加減してG41達に合わせてくれたみたいです。

 イルカさんと共に、360度自由な海の中を泳ぐ。青い水と沢山のお魚さん達、それに揺らぐ光。そして、水の中を舞うG41達とイルカさん。まるで、夢みたいなひと時です。

 

 しばらくして、アクアラングを着た人たちが、やってきました。海洋研究所の人達らしいです。通信モジュールを通じて聞いたところ、このイルカさんは施設から逃げたみたいで連れ戻しに来たそうです。

 

 イルカさんは戻るのは嫌そうで、G41達の後ろに隠れます。でも、逃げてはいけない、とG41は思いました。海洋研究所の人達だって、悪意があってイルカさんを閉じ込めたりはしてないと思います。

 だから、G41はイルカさんの頭に触れて思いました。帰ってあげてって。

 

 すると、思いが通じたのかイルカさんは自分から職員の皆さんのところに行きました。凄いです! やっぱり、G41とイルカさんは相思相愛です! えっへん!

 

 職員の人達から感謝の言葉をもらって、イルカさんと別れたG41達は一度砂浜に戻りました。すると、撮影を終えたFALさんが待っていてくれました。

 FALさんは砂のお城を作って遊ぼうって言いました! 嬉しいです! 砂遊びは大好きだからです!

 こうして、G41達はとっても楽しい海の一日を過ごしました!

 

 後日の話ですが、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんの遊んでいるところは、ドローンで撮影されていたみたいです。

 それで、G41とイルカさんが触れ合う場面はまるで映画みたいだ、と大好評だったみたいです!

 というわけで、感謝の印としてタダ券をいくつか貰いました! わーい!

 また、イルカさんとも遊ばせてくれるみたいです! イルカさん、また会おうね! まる。



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10・G41と仲間達(その2)

 ある日の事です。G41が娯楽室にやってくると、M590さんが黄昏ていました。

 なんだか、暗い表情でため息を吐いています。悩みがあるのかもしれません。

 M590さんはご主人様の部屋を掃除し隊の隊長さんです。隊員として、M590さんの悩みを解決しようと思います!

 

「M590さん!」

 

「あ、G41ちゃん」

 

 G41が近づくと、M590さんもこっちを見ました。笑顔ですが、なんだかちょっと悲しそうです。M590さんが悲しいとG41も悲しいです。何とか力になってあげたいです!

 

「M590さん? 何かあったの?」

 

 G41の言葉に、M590さんは少しだけ迷うように視線を彷徨わせましたが、しばらくするとため息を一つ吐いて悩みを打ち明けてくれました。

 

「実は指揮官のことなのですが…」

 

 悩みはどうもご主人様のことらしいです。それならG41には自信があります! 何せ、G41は46時中ご主人様のことばかり考えてます。ご主人様に関する理解度はFALさんの次ぐらいだと自負しています!

 

「私、指揮官から敬遠されているのではないかと思って…」

 

 M590さんの言葉にG41は首を傾げました。そんなことはないと思います。ご主人様はM590さんのことを頼りにしていますし、お掃除に関しても感謝しています。その後に続いたあんよが云々は聞き流しましたが、それでもM590さんを避けているとは思えません。

 

「うーん、考えすぎだと思うよ?」

 

「でも… M500にはかなりフランクに話をするのに、私の前では固いのですよね…」

 

 G41の言葉に、M590さんはまたため息を吐いて言います。M500さんはこの前入ってきたばかりのSG型戦術人形で、M590さんの妹分みたいなものです。

 言われてみれば、確かに入ってきたばかりなのにご主人様と頻繁に話しているところを見かけます。なんでしょう。ほんのちょっぴり腹が立ちました。何としても、M500さんからM590さんにご主人様の視線を取り戻さなければいけません! ご主人様を取り戻せ作戦開始です!

 

 G41は冷静に分析してみます。ご主人様やFALさんからは問題が起きたときは、まず対象や事象を比較することから始める、と言います。

 まず、M590さんとM500さんを比較すると、M590さんの方が古参です。戦場での活躍も大きいです。でも、M500さんの方が話しかけられる理由はなんでしょう?

 ぴこん! G41は分かりました! 謎は全て解けました!

 

「分かりました、M590さん!」

 

「…ええと、もしかして指揮官のM500に対する態度のことですか?」

 

「はい! それはミミがあるかないかです!」

 

 M590さんの問いに、G41は力強く答えます。もうこれしかありません。G41の名推理です! えっへん!

 まず、ご主人様はG41が大好きです。隊の最古参で、自身の右腕と言うFALさんと比べても同じぐらい好きだと思います。そして、G41にはミミがあります。だから、ご主人様はミミのある戦術人形が好きなのです!

 

 というわけで、推理が成立しました! 後は、それを検証しないといけません。

 というわけで、G41はご主人様のところに行くことにしました。

 

「M590さん、ちょっと待っててね?」

 

「え、ええ…」

 

 というわけで、G41はご主人様の部屋にダッシュです。部屋の前に行って、申告したのち入ります。部屋の中には一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんがいました。ご主人様の机に座って、勝手にご主人様のお茶を飲んでいるFALさんとそれに文句を言うご主人様。その間でおろおろしている一〇〇式(モモ)ちゃん。いつもの平和なご主人様の部屋の日常です。

 

「やあ、G41。どうしたんだ?」

 

 G41を見つけたご主人様が声をかけてきます。G41はとりあえずご主人様の前に駆けて行きます。そして、猫さんみたいなポーズをして言いました。

 

「ご主人様、G41だにゃ~♪」

 

 それはIDWちゃんの台詞を真似たものでした。ミミのある戦術人形の代名詞であるIDWちゃんの物まねをすることで、ご主人様がミミを好きかどうかを測るのです。

 

「ぐはぁ!」

 

 そう言って、ご主人様は一瞬天を仰ぎ、そして机に突っ伏しました。どうしたんでしょう?

 

「ちょっと、指揮官?」

 

「ああ… 余りに可愛くて意識が飛んでしまった…」

 

 FALさんの呆れ半分の言葉に、ご主人様は真顔でそう答えました。そして、G41をなでなでしてくれました。気持ちいいです。

 というわけで、ご主人様がミミが好きということは確定事項になりつつあります。でも、まだ確実ではありません。というわけで、もう一度検証をしてみます。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、ちょっと手伝って?」

 

「え? うん、私はいいけど…」

 

「ああ。ちょうど暇だし、席を外していいぞ、一〇〇式(モモ)

 

 ご主人様からの許可が出たので、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんを抱えて娯楽室までダッシュします。

 そして、部屋の隅のおもちゃ箱からこの前のハロウィンで使った猫さんの耳の付いたカチューシャと尻尾の付いたベルトを取り出しました。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、これ着けて?」

 

「え? う、うん」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが頷いた次の瞬間、G41はカチューシャとベルトをセットしました。一〇〇式(モモ)ちゃん、黒い猫さんみたいで可愛いです。

 

「それでね、あのね…」(ごにょごにょ)

 

「う、うん。分かったよ」

 

 G41の伝えた作戦内容に一〇〇式(モモ)ちゃんが頷きます。そして、二人はダッシュでご主人様の部屋に行きました。部屋に入るのは一〇〇式(モモ)ちゃんだけです。G41はドアの陰で、ご主人様の反応を見守ります。

 

「あ、あの…指揮官…」

 

「どうしたんだ、も…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの姿を見た途端、ご主人様が言葉を失いました。FALさんも目を見開いて、何も言わずに様子を見守っています。

 

「え、ええと…ひゃ、一〇〇式機関短銃だにゃ~…なんて、えへへ…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが猫さんみたいなポーズでそう言います。最後ちょっと照れました。可愛いです。

 でも。ご主人様とFALさんは無反応です。どうしたんでしょう? 可愛い一〇〇式(モモ)ちゃんにミミが付いたら物凄くご主人様は喜ぶと思ったのですが。

 

「う…」

 

 ご主人様が呻くようにそう言って、次の瞬間

 

「うぼあー」

 

 そう言って、机に突っ伏しました。何が起こったのでしょう?

 

「…一〇〇式(モモ)。そういうことはやめなさい。余りに可愛すぎで指揮官が死ぬでしょ?」

 

 私もちょっときゅんとしたわ、とFALさんが言います。何と、一〇〇式(モモ)ちゃん+ミミはご主人様を倒してしまいました。やっぱり、ミミは偉大です! えっへん!

 というわけで、ご主人様はミミが大好きだということが確定しました。というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんを持って、娯楽室に帰りました。

 

「M590さん! やっぱり、ご主人様はミミが大好きです!」

 

「え、ええ。そうなの…」

 

「というわけで、はい!」

 

 何だか戸惑っているM590さんに、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんから外したミミと尻尾を手渡します。

 

「これを着けて、あの台詞を言えば、ご主人様を倒せます!」

 

「た、倒すの?」

 

 M590さんが戸惑いがちに言いますが、G41はご主人様を倒すにはこれしかない、と思っています。そういえば、M590さんの悩みってなんでしたっけ? ちょっと忘れましたが、でもこれで大丈夫だと思います!

 

「M590さん…何事も挑戦です!」

 

 多分事情がちっとも分かってない一〇〇式(モモ)ちゃんも応援してくれます。それを聞いて、M590さんも少しその気になったみたいです。ミミと尻尾を着けて、猫さんみたいなポーズをして言いました。その瞬間、娯楽室のドアが開きました。

 

「…M590だにゃ~、なんて…」

 

「…M590!?」

 

 部屋に入ってきたFALさんが驚いて言います。なんでしょう、部屋の空気が凍り付いた気がします。

 

「…M590、休暇の申請出しておくわね…」

 

「ち、ちがうんです、FAL!」

 

 部屋から出ようとするFALさんをM590さんが必死で止めます。それで今までの経緯をFALさんに説明します。

 

「…なるほどね」

 

 M590さんの言葉にFALさんは軽くため息を吐いて言いました。

 

「単にスタンスの問題よ。M500はテキトーだけど、M590は真面目でしょ? それに合わせて対応しているだけよ」

 

 FALさん曰く、ご主人様は数多くの戦術人形を相手にしないといけないのでそれぞれに対応が少し違うらしいです。考えてみれば、G41と一〇〇式(モモ)ちゃん、それにFALさんでもそれぞれ態度が違います。固く見えたのは真面目なM590さんに対する態度だったからです。

 

「そういうことですか…」

 

 M590さんは軽くため息を吐いて言います。安心したのか、それとも少し残念に思っているのかは定かではないですが、FALさんの言葉を信じたみたいです。ご主人様のいうことを一番知っているFALさんがそういうのです。絶対間違いありません!

 

「でも、そうだとすると、指揮官の態度はこれからも固いままなのでしょうか?」

 

 M590さんは少し残念そうに言います。M590さんはご主人様にもっと親しく接して欲しいみたいです。

 

「任せて、M590!」

 

 FALさんはとってもいい笑顔でそう言います。

 

「貴女のセンスを直してあげるわ!」

 

 そう言って、M590さんを引っ張って連行します。

 

「え、ええ!? FALのセンスって…!?」

 

「つべこべ言わないの。行くわよ!」

 

 微妙に抵抗するM590さんと有無を言わさず連れていくFALさん。きっとFALさんに任せておけば大丈夫です! 一〇〇式(モモ)ちゃんは何だか不安そうでしたが、きっと大丈夫です!

 

 明くる日、G41はFALさんのアドバイスの成果を見ました。ミニなチャイナドレスを着たM590さんです! しかも、頭にミミも付いています。さすがFALさん! 完璧です!

 案の定M590さんは副官に急遽任命されました。流石です! これもミミがあるおかげです! G41の検証は間違っていなかったです。

 でも、ご主人様の視線が何だか低いです。足元ばかり見ている気がします。何だかよくわかりません。

 でも、M590さんがご主人様と仲良さそうなので問題なしです! M590さん、良かったね! まる。

 



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11・いたずらG41(その1)

 ある日、ワンちゃんの動画を見ていた時のことでした。

 頭のいいワンちゃんは悪戯をしたときに、ご主人様のお膝に頭を乗せて愛嬌を振りまきます。それで許してもらおうとするのです。

 G41は感銘を受けました。ワンちゃんも賢いものです! G41もご主人様にそうやって悪戯を許して貰おうと思います!

 

 というわけで、さっそく実践です!

 

 その日、G41は副官でした。朝起きて、ご主人様のお茶を準備して、ご主人様の部屋に行きます。ご主人様はいつものようにいて、G41を笑顔で迎えてくれました。

 

「G41が可愛いから、今日も頑張れるよ」

 

 ご主人様は早速褒めてくれました。嬉しいです。G41も笑顔でご主人様にお茶を出しました。ご主人様はカップを手に取って啜ります。

 

「ああ。今日もG41のお茶は美味しいな」

 

 そう言って、ご主人様はお茶を褒めてくれます。嬉しいです。G41はタンポポ茶を淹れるのがとっても得意です! えっへん!

 

 一通り副官の仕事が終わりました。G41はおもむろにご主人様の側に近寄ります。

 お茶を啜りながら、ご主人様が不思議そうにG41を見ています。G41はそんなご主人様の前に座ります。そして、そのお膝に顔を乗せて、上目遣いで言います。

 

「ご主人様、許してね?」

 

「ごふっ!」

 

 突然ご主人様が息を詰まらせます。そして、何度も咳き込みます。どうしたんでしょう? お茶が気管に入ったのでしょうか?

 

「ご主人様、大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だが、お茶を飲んでいる時にそういう可愛いのは勘弁してくれ。咽てしまう」

 

 そう言って、ご主人様はG41の頭をなでなでしてくれます。でも、ちょっと怒られちゃいました。作戦は失敗でしょうか?

 

「それにな、G41。一つ聞きたいんだが」

 

「何ですか、ご主人様?」

 

「ええと、俺は何を許したらいいんだ?」

 

 ご主人様の言葉に、G41ははっとしました。なんと、G41は許してもらうことばかり考えていて、肝心の悪戯をするのを忘れてました!

 

 というわけで、今から悪戯をします。

 

 まず、ご主人様の椅子を90°回転させます。

 

「ご主人様、こっち向いててね?」

 

「あ、ああ…」

 

  ご主人様に約束して貰って、G41は行動を開始します。しゃがんで机の陰に隠れながら、ご主人様の後ろに回り込むのです。

 ちなみに、ご主人様からはやっぱりミミが丸見えだったらしいですが、黙っていてくれました。ご主人様は優しいです。

 

 それで、ご主人様の後ろに回りこんだら、ばっ!って立ち上がって、ご主人様の目を両手で塞ぎました!

 

「だ~れだ?」

 

「…う~ん、G41かな~」

 

「正解です、ご主人様!」

 

 ご主人様はすぐに答えてくれました。さすがご主人様です!

 というわけで、悪戯達成です!

 G41はまたご主人様の前に回り込みました。そして、ご主人様の前に座って、お膝に顔を乗せて、上目遣いで言いました。

 

「ご主人様、許してね?」

 

「…G41は本当に可愛いな」

 

 G41の言葉に、ご主人様は微笑んでなでなでしてくれました。ということは、きっと許して貰えたということです。作戦は大成功でした!

 

 そして、次の日です。今日もG41は副官です。

 味をしめたG41は今度こそ最初に悪戯をしてから許して貰おうと思いました。

 というわけで、G41はご主人様が来る前に指揮官室の机の下に隠れています。そして、ご主人様がやってきたらわっ!て飛び出してびっくりして貰うのです!

 ちなみに、机の上にお茶は置いてあります。保温性の高いカップで蓋も被せているのでしばらくは冷めません。G41は副官業務も抜かりありません!

 

 そろそろご主人様が来る時間です。G41はワクワクしてご主人様を待ちます。

 でも、5分してもご主人様が来ません。どうしたんでしょう。お寝坊したのでしょうか?

 10分待ちました。ご主人様は来ません。やはり、お寝坊したのでしょうか? もしかして、急にお出かけの用が入ったのでしょうか?

 15分待ちました。ご主人様が来ません。寂しくなったので、G41は机の下から出てご主人様を探しに行くことにしました。

 そして、ドアから出てすぐのことです。目の前が真っ暗になりました。誰かがG41の目を塞いでいるのです。

 

「だ~れだ?」

 

 後ろから声がしました。この声と手の感触と匂い。それらをG41がわからないわけがないです。

 

「ご主人様!」

 

「正解」

 

 そう言って、ご主人様は手を放しました。ご主人様の姿が見えたので、G41は嬉しいです。なでなでもしてくれたのでさらに嬉しいです。ご主人様がいるだけでG41は幸せです。

 

「全く、傍から見たらバカップルね、貴方達」

 

 後ろからFALさんの声がしました。バカップルというのはよく分からないですが、G41は今日もご主人様が大好きです。ご主人様もG41が大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 というわけで、今日は逆にご主人様に悪戯をし返されました。

 でも、ご主人様がG41を置いてお出かけしたとかじゃなかったのでよかったです! ご主人様と一緒に居られてG41は今日も幸せでした! まる。

 



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12・いたずらG41(その2)

 G41は思いつきました。次はFALさんに悪戯したいと思います。

 最近FALさんとは作戦以外で付き合いが薄くて、G41はしょんぼりです。また、FALさんと仲良くしたいので悪戯をして、こらって言って欲しいです。

 

 でも、あんまり変なことをするとげんこつされるので悪戯は考えないといけません。げんこつは痛いので嫌です。

 なので、だーれだするぐらいなら怒らないと思います。

 …そう考えると何だか悲しくなりました。最近だーれだとかさえFALさんとしてません。FALさんの仕事が忙しいからです。FALさんが命を賭けるようなことが最近2件も起きています。二つとも世界の運命をかけるような大きな事件だったので仕方ないですが。

 なので、G41はFALさんともっと仲良くしたいです。FALさんにも幸せを感じて欲しいです。

 

 というわけで、作戦を開始します。FALさんに隠れてだーれだをするのです。

 

 FALさんを発見しました。廊下の真ん中です!

 

「貴女は何を考えているの!? 一〇〇式(モモ)ちゃんにあんな露出の大きい格好をさせて! 客でも取らせるつもり!?」

 

「ふざけるんじゃないわ、Five-Seven! 誰がそんなことを考えるものですか!」

 

 あう。FALさんはFive-Sevenさんと盛大に喧嘩中です。FALさんとFive-Sevenさんが喧嘩することは珍しくはないですが、今回のは結構大きいです。二人とも親しい先輩なので、仲良くして貰いたいです。

 二人ともG41の悪戯で場を笑納してもらいたいです。というわけで、G41は作戦を開始します。FALさんだ~れだ作戦です!

 内容は簡単です。FALさんの背後に近づいてだーれだすることです。

 でも、FALさんは歴戦の戦術人形です。背後に忍び寄るのは生半可な難易度ではないです。更に、索敵能力に優れたFive-Sevenさんまでいます。これは只事ではありません、

 でも、G41には必勝の策があります! えっへん!

 

 G41の手には段ボール箱というアイテムがあります。これは伝説の潜入工作員が用いたという最強のスニーキングアイテムです。Am RFBちゃんからそう聞きました。でも、装着時の無敵時間とかそういうのは意味がわからないので聞き流しておきました。

 

 これを用いて、G41は頑張ります。

 まず被ってみました。何だか狭くて居心地がいいです。今のG41は段ボール箱です。怪しくないです。うん。何だかいける気がしてきました。作戦開始です!

 G41は段ボール箱を被ったまま匍匐前進第二法で進みます。ずりずりずり…

 

「大体、あんたは先輩をなんだと…ん!?」

 

「うるさいわね! 先輩なら先輩らしく…ん!?」

 

 あう。何だか、FALさんとFive-Sevenさんの視線がこちらに向いている気がします。

 今のG41は段ボール箱です。怪しくないです。FALさん、怪しまないでください。そう願いながら、しばらくその場で動かずにいました。

 

「…まあいいわ。大体、あんただって随分挑発的な格好じゃない。ベガスか何かにでも憧れたの!?」

 

「なんですって!? あんたの娼婦同然の格好に比べれば随分マシでしょうが!?」

 

 …どうやら気づかれずに済みました。でも、喧嘩はますますエスカレートしてるように思います。悪戯をして笑納させないといけません、G41は使命を胸に進みます。ずりずりずり…

 

「誰が娼婦よ!? だいたいあんたは… うん!?」

 

「その格好でセンスがあるとかほざいているのは… うん!?」

 

 あう。また視線がこちらに向いた気がします。

 今のG41は段ボール箱です。怪しくないです。FALさん、怪しまないでください。そう願いながら、しばらくその場で動かずにいました。

 

「…ええと? もしかして、G41? 何しているの?」

 

 ぎくっ! FALさんの言葉にG41はびっくりです。完全に怪しまれています。しかも、どうしてG41のことがわかったのでしょう。流石、FALさんは洞察力があります!

 

 こうなったら奥の手を使うしかないです。伝説の工作員ニンジャが用いたとされるあの手です!

 

「にゃ~」

 

 G41は猫さんの物まねをしました! これで今までのことは猫さんの仕業と思って貰えるかもしれません!

 

「…なんだー、猫かー」

 

「…うん、猫の仕業だったのねー」

 

 やりました! Five-SevenさんとFALさんが猫さんの仕業と思ってくれました! 流石、ニンジャの秘術です!

 

 何だか、FALさんとFive-Sevenさんの喧嘩が収まりました。仲直りしたのでしょうか。よかったです。

 というわけで、G41はいそいそとFALさんらしき人に近づいていきます。

 そして、その前に行った時に段ボール箱を脱ぎ捨てて、ばっと立ち上がりました!

 

 その瞬間、いきなりハグされました。顔に柔らかいものが当たります。匂いから考えてFive-Sevenさんです。

 更に次の瞬間、目の前が真っ暗になりました。目を誰かに塞がれたのです。

 

「だーれだ?」

 

 声が聞こえます。声と手の感触と匂いから考えて間違いないです。G41は答えを言います。

 

「FALさん!」

 

「正解よ、G41!」

 

 そう言うと、視界が開けました。目の前にはFive-Sevenの、振り向けばFALさんの笑顔がありました。

 

「もう。なんでこんなに可愛いの、G41ちゃんは!?」

 

 Five-SevenさんはG41に頬ずりをして言います。くすぐったいです。Five-Sevenさんはよく一緒に戦ってきた人形で、G41によくしてくれました。大事な先輩です。

 

「はいはい。G41に邪なことを考えないでよね?」

 

 そう言って、よしよししてくれるFALさんは一番尊敬する先輩で、一〇〇式隊の同僚でもあります。G41はFALさんが大好きです!

 

 なんと、G41は大好きな先輩たちのサンドウィッチになってしまいました! でも、嬉しいです。二人ともG41をあまあましてくれます。えへへ。

 

「折角だし、三人でカフェでもいきましょうか?」

 

「そうね。G41ちゃんとならお茶も進むわ」

 

「はい! FALさん、Five-Sevenさん!」

 

 G41は二人に誘われてカフェにお茶をしに行くことになりました。わーい。G41は二人が大好きなので、いっぱいお話がしたいです。

 

 というわけで、G41のスニークミッションは失敗に終わりました。

 でも、FALさんとFive-Sevenさんにいっぱい構ってもらえて、G41は幸せでした! 二人も仲直りできました! なので、作戦は部分的成功でした! まる。



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13・G41にもブルーな日はあります(その1)

 ある日のことです。G41は突然、副官業務をキャンセルということになってしまいました。理由はM99ちゃんが予定より早く訓練を終えて帰ってきたから、ということです。

 M99ちゃんはこの間入ってきたばかりの戦術人形で、ご主人様ともそこまで親しい仲ではないです。というわけで、ご主人様はM99ちゃんと仲良くなるために、かねてより副官に据えようとしていました。

 

 そして、今回その機会が来たというわけですが。

 …やっぱりG41は面白くありません。今日もご主人様と一緒にいられると思ってわくわくしてたのに…本当に残念です。

 

 というわけで、G41はご主人様の部屋の前でドアののぞき窓から中の様子を見ています。M99ちゃんとどういう風に過ごしているのかが気になるのです。

 

 今M99ちゃんがお茶を出したところのようです。M99ちゃんがお茶を淹れたのを見たことはありません。でも、G41はお茶には自信があります! 一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に一杯練習したからです。だから、お茶で負けてはいないと思います!

 

「うん? 何だか、独特の香りの茶だな」

 

「はいっ! メグスリノキっていう木から作られたお茶です! 目や肝臓にいいんですよ!」

 

「そうか… うん、旨いな。ありがとう、M99」

 

 む~、ご主人様が美味しそうにお茶を飲んでいます。そんな変わったお茶を出すなんて反則です。

 

「はいっ! 指揮官の身体が良くなるといいです!」

 

「ああ。M99はいい娘だな」

 

 む~、M99ちゃんの頭をご主人様がなでなでしています。M99ちゃんも気持ちよさそうです。本当だったら、今日もG41がなでなでして貰う立場だったのに… む~。

 

「指揮官、今日もいろいろ教えてください。でも、前みたいに変なもの教えたら承知しませんよ! 恥ずかしすぎますから…」

 

「ああ。あの時のM99は可愛かったなぁ」

 

「もー、指揮官!」

 

 む~、何だか楽しそうにお話ししています。G41や一〇〇式(モモ)ちゃんの時はお茶を飲んだらすぐに仕事に取り掛かるのに。しかも、変なものって何なんでしょう。実はご主人様とM99ちゃんはG41が思っているよりも親しいのでしょうか。む~。

 

 とっても面白くないです。でも、M99ちゃんに当たってはいけません。そんなことはしてはいけないことです。

 G41は一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんといった優しい先輩ばっかりだったので幸せでした。これがG41をやっかんだりする先輩ばっかりだったらG41も悲しかったでしょう。自分が嫌なことを人にしてはいけないと思います。だから、M99ちゃんに当たってはいけません。

 

「まあ、M99はいつでも最高に可愛いけどな」

 

「もー… でも、認めてくれてありがとうございます、指揮官…」

 

 む~、いつまでも喋ってないで仕事をしてください、ご主人様!

 何だか、M99ちゃんに当たるのは筋違いな気がしてきました。悪いのは節操のないご主人様です! ぷー。

 

 もうG41は怒りました。ご主人様のばか。もうしりません。

 今日は一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんと一緒に遊ぶことにします。それでご主人様が楽しそうだから混ぜてって言って来てもつーんします。つーん。

 というわけで、バイバイご主人様。つーん。

 てててててててて…

 

 …てててててててて。戻ってきてしまいました。やっぱり、気になります。む~。

 

「M99、おいでおいで」

 

「はい。何ですか、指揮官?」

 

 ご主人様は手招きでM99ちゃんを呼びます。そして、無警戒にやって来たM99ちゃんを抱え上げてお膝に乗せました。

 む~。G41は悲しい気持ちでいっぱいです。ご主人様のお膝はG41の特等席なのに… む~。

 

「指揮官っ!なななな何をするのですか!?警察呼びますよ!」

 

 ぴこん! チャンス到来… もとい、M99ちゃんのピンチです! G41はすぐにドアを蹴り開けて部屋に乱入しました!

 

「ご主人様ー!!」

 

「え!?」

 

「ん? G41、どうしたんだ?」

 

 目を白黒させるM99ちゃんとご主人様に、G41は素早く近寄ります。そして、M99ちゃんを抱え上げて横にどかせてから言いました!

 

「ご主人様、めっ!」

 

 G41はご主人様を叱ります。M99ちゃんは警察を呼ぶぐらい嫌がってました。もうこれはセクハラです! セクハラはいけません。一〇〇式(モモ)ちゃんもM14さんもセクハラはいけませんって言ってます!

 

「ご主人様! セクハラするとFALさんに言いますよ!!」

 

「う… わ、悪かったよ、M99にG41…」

 

「あの…そ、そこまで大げさなことじゃないですから…」

 

 G41の言葉にご主人様が謝ってくれました。M99ちゃんもご主人様を許してあげるみたいです。これにて一件落着です。

 G41はM99ちゃんのピンチを助けてあげました! G41はいい先輩です! えっへん!

 

 というわけで、G41はご主人様のお膝に座りました。

 M99ちゃんをお膝に乗せるということは、ご主人様も癒しが欲しい、ということだと思います。でも、M99ちゃんはご主人様のお膝が警察を呼びたくなるぐらい嫌だそうです。なので、代わりにG41がご主人様のお膝に座ることにしたのです。

 後輩の嫌がる仕事をG41は積極的に引き受けてあげます! G41はとってもいい先輩です! えっへん!

 

 でも、何か落ち着きません。M99ちゃんの匂いがご主人様からするからです。む~。

 というわけで、G41はご主人様の方に向いて座りなおします。そして、身体全体でご主人様に全力ですりすりします。

 

「ええ!? ちょっ…!」

 

「お、おい!? G41!?」

 

 M99ちゃんとご主人様がびっくりしていますが、G41は構いません。すりすりすりすりすりすり…

 

「し、指揮官! お、お邪魔しました!」

 

「お、おい、M99!?」

 

 何だか、M99ちゃんが部屋から駆け出していきました。でも、G41は気にしません。すりすりすりすりすり…

 うん! ご主人様についた匂いがG41のものになりました。G41は改めてご主人様のお膝に座りなおします。うん。しっくりきます! やっぱり、ご主人様のお膝はG41の特等席です!

 

『…FAL。緊急任務が発生した。直ちに遂行を頼む』

 

『はいはい、分かったわ。…お礼はブッシュドノエルね?』

 

『う… わ、わかった…』

 

 ご主人様は通信モジュールを開いて、FALさんに緊急任務を依頼しました。何か非常事態が発生したのかもしれません。単独で任務を貰えるなんて、さすが、FALさんです。

 FALさんはブッシュドノエルが貰えるみたいです。あれは物凄く高いので滅多に食べられません。任務の報酬で貰えるなんて羨ましいです。G41も一口だけ貰おうとおねだりしてみます。

 

 次の日、ご主人様はまたお金が無くなったみたいで御飯がお水だけになってしまったみたいです。何にお金を使ったのでしょう。

 よくわからないですが、この前一〇〇式(モモ)ちゃんに習ったカレーライスを作って差し入れてあげようと思います。ご主人様、待っててね? まる。



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14・バレンタイン大作戦!

 G41はうきうきです。もうすぐバレンタインデーだからです。 

 バレンタインデーというのは好きな人にプレゼントをあげる日らしいです。なので、みんなどんなプレゼントを準備しようか、とうきうきしています。

 もちろん、この基地の戦術人形の好きな人というのは概ねご主人様です。もちろん、G41もご主人様が大好きです。

 なので、去年はほねっこをプレゼントしましたが、すごく微妙な顔をされてしまいました。なんでも、人間はほねっこを食べられないんだそうです。しょんぼりです。

 なので、今年こそは人間の食べられるプレゼントを贈ってご主人様に喜んでもらいたいです。

 FALさんの話だとこの国では主にチョコレートをあげるらしいです。

 G41はこの日のために貯金して来ました。チョコレートなら十分買えます。後はカリーナさんに陳情するだけです。わくわく。

 

 ところが、陳情しに行く一日前になって、FALさんがみんなを娯楽室に集めて言いました。

 

「みんな、チョコレートをあげるのは禁止ね」

 

 その一言に、みんなショックを受けました。G41もショックです。せっかく今年こそご主人様にチョコレートをあげようと思ったのに…

 

「ぶーぶー! FALさん、横暴だー!」

 

「ちょっとFAL! どういうつもり!?」

 

 SOPMODちゃんとAR-15さんがFALさんに抗議します。他のみんなも不満顔です。一体FALさんはどうしてチョコレートを禁止したのでしょう?

 

「あのねぇ… みんなが買えるチョコって言ったら戦術人形用の擬似チョコレートだと思うけど、あれって人工甘味料の塊みたいなものだから、人間の身体には悪いのよ?」

 

 FALさんの言葉に、みんなしん、となります。確かにFALさんの言うとおり、G41達の食べているのは擬似チョコレートです。確かに、あれはあんまり人間の身体に良さそうなものじゃないです。指揮官への好意を表そうとして、指揮官が身体を壊したら本末転倒です。

 

「あの、FALさん。天然物のチョコレートならいいんですか?」

 

「そうね。できたら、ダークチョコレートがいいわね。指揮官、甘いもの好きじゃないし」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの質問にFALさんが答えます。確かにご主人様は甘いものが苦手です。それにダークチョコレートは身体にいいということを聞いたことがある気がします。

 でも、天然物のチョコレートはとんでもない贅沢品で、上級市民の人でないとなかなか食べられるようなものじゃないです。G41達戦術人形では買うのはかなり難しいです。

 

「じゃあ、チョコレート以外に指揮官には何を送ったらいいんですか!?」

 

 ステンちゃんが不満顔で聞きます。ステンちゃんもご主人様が好きなのでチョコレートをあげようとしていたに違いありません。なので、別の何かを送りたいのでしょう。G41もそれを聞きたいです。

 

「うーん、クッキーとかキャンディーとかでいいんじゃない?」

 

 FALさんはなんだかテキトーな様子でそう答えました。食べ物のことになるとFALさんはあまり頼りにならなくなります。凄いFALさんにも苦手なことはあるみたいです。

 

 というわけで、集会は解散になりました。

 

 G41は部屋に帰って貯金箱をひっくり返しました。じゃらじゃらじゃら、とコインが出てきました。結構いっぱいです。がんばって貯めた甲斐がありました。でも、天然物のチョコレートにはとても手が届きません。桁が違います。

 

 困りました。チョコレートも駄目でほねっこも駄目となると難しいです。クッキーを作ったらいいかもしれませんが、みんなでクッキーばかり上げるのもご主人様としては困ると思います。何か別のものにしたいです。

 

 いいことを思いつきました!

 

 G41は貯金箱を抱えてカリーナさんのところに行きました。物品を陳情するのです。

 

「カリーナさん、はい!」

 

 G41はカリーナさんの机のところに行って、どちゃっと貯金箱を置きました。お金が好きなカリーナさんの目が¥マークに変わりましたが一瞬で元に戻りました。カリーナさんはいい人なので、戦術人形の持ってきたお金を横領したりはしません。

 

「ええと? 物品の陳情?」

 

「はい! ささみジャーキーをお願いします!」

 

 カリーナさんの質問にG41は元気に答えます。ささみジャーキーのことを思うと幸せいっぱいです。

 G41はささみジャーキーをご主人様にあげることを思いつきました。ささみジャーキーはほねっこより好きなおやつです。G41の憧れです。ささみジャーキーなら、ご主人様も喜んでくれると思いました。

 もちろん、ささみジャーキーは天然物の肉を使うのでほねっこよりずっと高いですが、天然物のチョコレートよりはずっと安いです。貯金箱の中身で十分足ります。

 もちろん、G41はささみジャーキーを食べたいです。でも、ご主人様の喜ぶ顔を見るのが何よりも優先です。惜しむことはありません! …でも、一つ貰えたら嬉しいな、と思います。

 

「うん、わかったわ。ささみジャーキーなら一週間もあれば届くと思うし」

 

 あう。カリーナさんの言葉にG41は困りました。バレンタインデーは明後日です。とても間に合いません。

 でも、G41は一応カリーナさんにお願いしました。もしかすると何かの弾みで早く届くかもしれませんし。それにご主人様はあまりそういうことを気にしないと思うので、遅れてあげても喜んでくれると思います。

 

 でも、やっぱりG41はすっきりしないです。明後日、みんながプレゼントをあげている中、G41だけ手ぶらだとしょんぼりです。

 どうにかできないものか、FALさんに相談しに行くことにしました。FALさんなら物品を早く移送する方法を知ってるかもしれないからです。

 というわけで、G41は宿舎にFALさんを探しに戻りました。

 

「あ、G41ちゃん!」

 

 途中で一〇〇式(モモ)ちゃんに会いました。なにやら手に荷物を抱えています。一〇〇式(モモ)ちゃんはG41を探していたらしく、すぐに駆け寄ってきました。

 

「G41ちゃん、指揮官へのプレゼントは決まった?」

 

「うん、一〇〇式(モモ)ちゃん。あのね…」

 

 G41は一〇〇式(モモ)ちゃんに今までのことを正直に伝えました。すると、一〇〇式(モモ)ちゃんは力強く頷いて、言いました。

 

「よかった、役に立てて」

 

 そして、手にしていたものをG41に差し出しました。それは、ビニールに包まれたチョコレートの塊みたいでした。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、これ…!」

 

「天然物のダークチョコレート。これで指揮官へのプレゼントが作れるね!」

 

 驚くG41に一〇〇式(モモ)ちゃんは笑顔で言いました。きっと、G41がプレゼントで困っているだろうなって思って準備してくれたみたいです。

 

「でも、一〇〇式(モモ)ちゃんはこれ使わなくていいの?」

 

「いいの。G41ちゃんが喜んでくれる方が嬉しいから」

 

 G41ちゃんは大切な友達だから。そう言って、チョコレートをG41に渡してくれました。

 

 信じられません。どうやって手に入れたかは知りませんが、こんなのを準備しているのはきっと一〇〇式(モモ)ちゃんだけです。これでご主人様へのプレゼントを作ったら、ご主人様はきっととっても喜んで、一〇〇式(モモ)ちゃんのことを凄く好きになると思います。

 でも、一〇〇式(モモ)ちゃんはG41のためにこれをくれました。

 何だか、G41は感動しました。一〇〇式(モモ)ちゃんが友達で凄く良かったって思いました。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。一〇〇式(モモ)ちゃんもG41が大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「じゃあ、行こう。チョコレート作るの、手伝うよ」

 

「うん! ありがとう、一〇〇式(モモ)ちゃん!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの申し出にG41は嬉しくなって、抱きついてぺろぺろしてしまいました。一〇〇式(モモ)ちゃんも擽ったそうですが嬉しそうです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 そして、いよいよ迎えたバレンタインデー。G41はご主人様にチョコレートを渡しました。アーモンド入りのハート型の小さいチョコを一杯です。

 ご主人様はきっとブランデーとかと一緒にこのチョコレートを食べるらしいので、小さくて沢山の方がいいと一〇〇式(モモ)ちゃんに教わったからです。

 ご主人様は凄く喜んでくれて、G41を超なでなでしてくれました。俺、G41と誓約するとまで言ってくれました。物凄く嬉しいです。一〇〇式(モモ)ちゃん本当にありがとう。

 

 ちなみに、一〇〇式(モモ)ちゃんはご主人様に毛糸のマフラーをあげたみたいです。赤いマフラーなので、何だか一〇〇式(モモ)ちゃんとお揃いに見えます。ご主人様は喜んでいました。

 というわけで、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんのバレンタイン大作戦は大成功でした! まる。



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15・G41にもブルーな日はあります(その2)

「いってらっしゃい、ご主人様!」

 

「ああ。いい子でお留守番しててくれよ、G41?」

 

 今日は朝からヘリに乗り込むご主人様をお見送りしています。なでなでしてくれた感触を嬉しく思って、ご主人様の後姿を見送ってます。

 

 今日からしばらくの間、ご主人様は政府の中央で交渉に入ります。グリフィンにとっても凄く重要な任務らしいです。でも、ご主人様ならやってのけられる、とヘリアンさんは信じています。

 

「基地のことはお願いね」

 

「何かお土産買って来るわね、G41ちゃん」

 

 FALさんとFive-sevenさんもご主人様に同行します。重要な任務になるので護衛以外でも頼りになる二人が選ばれたのです。

 

 三人がヘリに乗り込んで、ドアが閉まります。ヘリが飛び立って、窓の向こうで手を振るご主人様達の姿が小さくなっていきました。

 ご主人様は今日から2日ほど帰ってきません。寂しいです。でも、G41はいい子でお留守番もできます!

 それにご主人様やFALさんこそいませんが、一〇〇式(モモ)ちゃんやSOPMODちゃんがいます。大親友の二人がいれば寂しいことなんてありません!

 

「G41ちゃん、あそぼー!」

 

 廊下を歩いているとSOPMODちゃんがG41を見つけて駆けてきました。肩には一〇〇式(モモ)ちゃんを担いでいます。

 

「うん!」

 

 G41も笑顔で二人のところに駆けていきました。3人で遊んでいれば、時間もすぐに経って、ご主人様が帰ってきてくれるはずです。寂しくなんてないです。

 というわけで、その日はSOPMODちゃんと一緒に一〇〇式(モモ)ちゃんの髪を弄ったり、服を着せ替えたり、ぺろぺろしたりして遊びました。

 

 次の日です。ご主人様はまだ帰ってきません。

 カリーナさんのところに入った連絡では、交渉は順調で予定通り明日には帰る、とのことです。さすが、ご主人様です! 明日にはご主人様に会える、と思うと嬉しいです。うきうきです。

 でも、その日一〇〇式(モモ)ちゃんとSOPMODちゃん達AR小隊のみんなが16Labに呼び出されてしまいました。

 一〇〇式(モモ)ちゃんやSOPMODちゃんがいなくなると寂しいです。でも、仕方ないです。大切な用なのですから。

 

「行ってくるね、G41ちゃん」

 

「お土産いっぱいもらってくるから!」

 

 M16さんの運転するバンに乗った二人をお見送りします。ドアが閉まって、エンジンがかかります。手を振る二人の姿が小さくなっていきました。

 二人がいなくなって寂しいです。でも、G41はいい子でお留守番します。明日にはご主人様も帰ってきてくれます。それにステンちゃんやスコーピオンちゃん、M590さんやM14さん達もいます。G41には友達がいっぱいです。だから、寂しくないです!

 

「G41ちゃーん!」

 

 早速ステンちゃんが駆けてきました。手に何か持ってます。新しいおもちゃでしょうか?

 

「みんなで野球盤のリーグ戦やるんだけど、G41ちゃんもやろー!」

 

「うん!」

 

 こうして、ステンちゃんとG41は娯楽室に行きました。すると、スコーピオンちゃんとM590隊のみんなが待ってました。そして、みんなで野球盤をやって楽しみました。

 

 次の日です。いよいよご主人様が帰ってきます! G41はうきうきです!

 というわけで、G41は張り切って指揮官室の掃除をしています。ご主人様が帰ってきた時に褒めて貰うためです。いつもの3倍気合が入ってます! ご主人様が帰ってきてなでなでしてくれることを思うと幸せになります。

 

 ところが、昼頃になって急遽カリーナさんのところに連絡が入りました。ご主人様が帰ってくるのが遅れる、とのことです。

 しかも、M590隊と臨時編成でステンちゃんやスコーピオンちゃんを含めた隊にも出撃の命令が入りました。何でも、グリフィンの別の基地から急遽応援の要請が入って、ご主人様が直接出向くことになったみたいです。

 G41も出撃したかったですが、ご主人様からは基地の防衛をお願いされました。M590隊とステンちゃん達以外の人形はまだ訓練途上であるため、最精鋭のG41が残らないと不安なのだそうです。

 

「すぐに片付けて帰ってくるから!」

 

「今度は勝つからねー」

 

 ヘリで飛び立つステンちゃんとスコーピオンちゃん達を見送りました。手を振る二人の姿が小さくなっていきます。

 G41はがっかりです。せっかくご主人様が帰ってきてくれるかと思ったのに。しかも、ステンちゃん達までいなくなってしまいました。寂しいです。

 でも、G41は負けません! この基地を守る戦力の要として、いい子でお留守番します! ご主人様達も頑張っているのです。G41も自分の価値を必ず発揮します!

 というわけで、G41は指揮官室の掃除を再開します。ご主人様が帰ってくるまでにぴかぴかにして見せます。ご主人様、FALさん、ステンちゃん、スコーピオンちゃん、M590さん頑張ってね!

 

 次の日です。ご主人様はまだ帰ってきません。

 カリーナさんの話では詳細はまだ分からないそうですが、かなり厄介な事案になるかもしれない、とのことです。ということはご主人様が帰ってくるのは相当遅くなるかもしれないということです。

 

 G41はがっかりです。早くご主人様に褒めて欲しいです。頭を撫でて欲しいです。遊んで欲しいです。

 今基地に残っているのはカリーナさんとM99ちゃん達訓練中の人形だけです。しかも、みんな忙しくて、G41と遊んでいる余裕はなさそうです。

 でも、G41は負けません! この基地を守るっていうご主人様からの命令を必ず達成します! G41はいい子です!

 というわけで、今日はご主人様の部屋をぴかぴかにすることにしました。相変わらずご主人様の部屋は汚いです。帰ってきたらめっ!しないといけません。後、また新しいエロ本があったので、よく読んだ後机の上に置いておきました。

 

 次の日です。ご主人様はまだ帰ってきません。

 しかも、カリーナさんへの連絡も途絶えてしまいました。カリーナさん側からの呼び出しにも応じません。

 G41は大慌てです。ご主人様の身に何かあったのでしょうか!?

 

 G41はすぐに部隊を臨時編成して、ご主人様の救援に向かうことを提案しました。

 でも、カリーナさんは許可しませんでした。G41やM99ちゃん達がいなくなるとこの基地の戦力が完全になくなります。そして、得体の知れない事件が起きている以上この基地も安全とはいえません。なので、G41達はここにいて基地を守らなければいけないのです。

 

 カリーナさんの言うことはもっともです。だから、G41もそれに従って待機します。

 でも、G41は気が気ではありません。ご主人様が危ないなら、ご主人様をお守りしたいです。ご主人様が怪我をするぐらいならG41が怪我をする方が余程いいです。

 

 G41はぴかぴかになったご主人様の部屋に来ました。干していたお布団を持ってきたのです。

 誰もいない部屋です。寂しいです。この基地に来て、こんなに長い間ご主人様と離れ離れになったのは初めてです。

 でも、でも、G41は負けません! ご主人様が戻るまで基地を守って見せます!

 というわけで、ベッドにお布団を敷きました。ふと、ご主人様の匂いがしました。なので、ついベッドに飛び込んでしまいました。

 お布団からはお日様の匂いとご主人様の匂いがします。ぬくぬくです。ご主人様、G41は寂しくないです。お仕事頑張って、無事帰ってきてください! 寂しくなんてないです!

 …やっぱり寂しいです。ご主人様、早く帰ってきてください。くすん。

 

 次の日です。ご主人様はまだ帰ってきません。

 連絡もありません。通信も途絶えたままです。カリーナさんがヘリアンさんに問いただしても、グリフィン全体がご主人様の動向を把握できないでいるみたいです。

 

 そして、G41はまたご主人様の部屋のベッドでころころしています。

 寂しいです。心配です。G41は切ない気持ちでいっぱいです。

 寂しさを癒すために、お布団に顔を埋めます。ご主人様の匂いがします。ぬくぬくです。

 …でも、G41の匂いが混ざったせいかご主人様の匂いが薄くなった気がします。

 怖いことを考えてしまいました。もし、このままご主人様が帰ってこなくて、布団がG41の匂いだけになってしまったら… ぽろっと涙が零れました。

 そんなことありません! G41は首をいっぱい振って嫌な思いを振り払います。そして、いけないことを考えた頭をぽかぽかします。ご主人様が帰ってこないなんてありません! 明日にはきっと笑顔で帰ってきます! そう信じます!

 G41はご主人様を信じて待ちます。ご主人様早く帰ってきてください。お願いします。くすん。

 

 次の日です。ご主人様はまだ帰ってきません。

 連絡も途絶したままです。カリーナさんもグリフィンに捜索隊の出動を要請しましたが、動かせる部隊が少ない上に、同地区は極めて危険であることが推測されるので余程の精鋭でない限り出動の許可が下りないそうです。

 G41は心配で心配でたまりません。それならG41が出撃したいのですが、やっぱり許可が下りません。

 

 G41はゲートのところでひたすら待ちます。でもご主人様が帰ってくる気配はありません。でも、ひたすら待ち続けます。そうしないと寂しさで心が潰れてしまうかもしれません。

 日が傾きました。でも、ご主人様が帰ってくる気配はありません。G41は切ない気持ちでいっぱいです。

 すぐにでもご主人様を捜索に行きたいです。でも、だめです。この基地を守らないといけません。それがご主人様の命令なのです。

 だから、G41は我慢します。我慢します。我慢します。我慢します…

 

『G41、聞こえるか?』

 

 ぴこん! 通信モジュールに通信が入りました! この声は間違いありません! ご主人様です!

 

『ご主人様!』

 

『すまん、遅くなったな。後、数時間で帰るから、飯作って待っててくれ』

 

 ご主人様の声が聞こえました。嬉しいです。嬉しいです。嬉しすぎてつい涙が零れました。くすん。

 

『指揮官様、ご無事なんですね!?』

 

『おう、カリーナ。基地が一つアラスカぐらいまでぶっ飛んだが、俺もみんなも無事だ!』

 

 カリーナさんの言葉にご主人様が答えます。ご主人様も他のみんなも無事です。安心しました。安心しすぎてその場にぺたんと座ってしまいました。本当に、本当によかったです!

 

『全く、二度とやらないわよ、あんな作戦!』

 

『ええ… 本当に指揮官みたいな無茶苦茶な人は初めてですよ…』

 

 FALさんとM590さんの声が聞こえました。よかったです。もうすぐみんなにも会えます。嬉しいです。

 

『さて、G41。寂しかったろ? 帰ったら、たっぷり甘えさせてやるからな!』

 

 ご主人様がとっても嬉しいことを言います。もう、G41はご主人様に甘えたい気持ちでいっぱいです。姿を見たら飛んで行ってしまうかもしれません。

 

『…ううん、ご主人様。今日はお疲れだと思うので、ゆっくり休んでください』

 

 でも、G41は首を横に振りました。大変な事件を解決したばかりなので、ご主人様はきっと物凄く疲れていると思います。なので、G41は我慢します。ここまで待ったのだから我慢できます!

 

『そうか。…G41は本当にいい子だな』

 

 ご主人様から褒めてもらえました。嬉しいです。嬉しすぎて小躍りしてしまいました。

 というわけで、G41は早速ご飯の準備に取り掛かりました。美味しいご飯を作って、きっと物凄くお腹を空かせているご主人様に満足してもらわなくてはいけません。G41はすぐにキッチンに走りました。

 ようやくご主人様が帰ってきます。今度こそご主人様が帰ってきます。G41は嬉しいです。本当に本当に嬉しいです! ご主人様、早く帰ってきてください。くすん。まる。



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16・甘えんぼG41(その1)

 G41はうきうきです。待ちに待った副官業務です。

 今日の副官業務はいつもとは一味違います。だって、昨日までずっとご主人様に会えなかったのです。昨日もご主人様はご飯を食べたらすぐ寝てしまったので、今日こそ甘えまくりたいです。

 昨日大仕事をこなしたばかりなので、さすがに今日は仕事はないと思います。ご主人様は暇に違いありません。なので、物凄く構ってもらえると思います。うきうきです。

 

 いつもより1時間以上早く起きて、お茶を淹れて指揮官室に向かいます。お茶が冷めてもお代わりを魔法瓶に入れて持っていきます。今日のG41は気合いっぱいです!

 

 誰もいないはずの指揮官室に入ると、ご主人様とFALさんがいました。G41はちょっとびっくりです。ノックなしに入ってしまうことになってしまいました。でも、二人は怒ったりしませんでした。

 

「おはよう、G41…」

 

 FALさんがG41に挨拶します。何だか、ちょっとばつが悪そうです。嫌な予感がしました。

 

「おはよう、FALさん。どうしたの?」

 

「うん…ヘリアンさんから緊急の仕事が入ってね…昨日までの事件絡みでね…」

 

 G41の問いに、FALさんは何だか申し訳なさそうに説明します。

 話によると、グリフィンの各基地が正体不明の敵に襲われているそうです。グリフィンは全基地及び支部に非常事態宣言を発令したそうです。

 でも敵の正体がわからないのでは打つ手がありません。そこでご主人様が敵の正体を探るために調査をしているようです。

 G41はご主人様を見ます。いつもとは全然表情が違います。G41がいることにも気づいていません。何もしていないように見えますが、IFNと繋がった頭の中は大忙しのはずです。しかも、かなり切迫した状況であると思います。

 

「ごめんね、G41。いっぱい甘えたかったでしょうにね…」

 

 FALさんが申し訳なさそうに言って、G41の頭をなでなでしてくれます。

 G41はがっかりです。せっかくご主人様にあまあましてもらえると思ったのに、これでは甘えるどころではありません。

 でも、FALさんが悪いわけではありません。悪いのはグリフィンを襲っている謎の敵です。ぷんぷんです。出撃して戦うことになったら思う存分ぼこぼこにしようと思います。

 それにご主人様がこういう時は決して邪魔をしてはいけません。下手をするとご主人様が危険だからです。だから、G41は甘えたい気持ちを我慢します。G41は待てもできるいい子です!

 

「おはようございます、ご主人様!」

 

 そう言って、G41はお茶を出します。でも、ご主人様は上の空です。G41がいることにも気づいていないと思います。寂しいです。お茶も飲んでくれません。とっても寂しいです。

 でも、G41は我慢します。ご主人様の仕事の邪魔をしてはいけません。それに、ご主人様は超有能なので、すぐに仕事を片付けてくれます。そしたら、G41といっぱい遊んでくれるはずです。少しぐらい待っても大丈夫です。FALさんだっていてくれます。G41は寂しくないです。

 

 一時間経ちました。カップのお茶がすっかり冷めて湯気も立たなくなっています。しょんぼりです。

 ご主人様は変わらずIFNの中です。時折苦しそうな表情をしたり、額に汗が浮いていたりするのは相当難しい仕事をしているようです。FALさんはご主人様の頭から延びるケーブルを握っています。ご主人様に異変があったらすぐに引き抜くためです。

 G41はご主人様の仕事を手伝えません。悲しいです。

 なので、せめてお祈りすることにします。ご主人様、無事にお仕事を終えてください。神様、ご主人様を守ってください。一生懸命お祈りします。

 

 更に二時間経ちました。ご主人様は相変わらずです。G41にも気づいてくれません。

 G41は寂しいです。悲しいです。今すぐご主人さまに飛びついてあまあましたいです。でも、できません。物凄くお腹が減っている状況で目の前にご飯を置かれた状況で待てをさせられているような状況です。

 FALさんが心配そうにG41を見ます。FALさんに心配をかけて申し訳ないです。

 でも、G41は昨日までいっぱい我慢しました。今日もいっぱい我慢しています。でも、もう我慢しきれません。なので、少しだけ、邪魔にならない範囲で甘えても怒られないと思います。

 

 G41はご主人様に近づいていきました。FALさんも止めません。G41が寂しいことを知っていて、こんな時に決してご主人様の邪魔をすることはない、と信じてくれているからです。FALさんはいつもG41を理解してくれます。

 

 G41はご主人様の横に座って、ひじ掛けの上のご主人様の手の上にそっと顎を乗せました。ご主人様の体温を感じます。嬉しいです。G41の寂しさが少しだけ癒されました。

 

 すると、頭を撫でられている感触がしました。ご主人様が反対側の手で撫でてくれているのです。G41の方を見て笑ってくれました。ようやくG41に気付いてくれました! G41は嬉しいです!

 でも、すぐに前を向いて仕事に戻りました。また反応がなくなりました。悲しいです。寂しいです。

 

 でも、ご主人様の邪魔をしてはいけません。ご主人様の負担になってはいけません。G41は我慢します。我慢します。我慢します…ポロリ。我慢しすぎて涙が出ました。

 

 すると、ご主人様はケーブルを引き抜いてすぐにG41の頭を抱きかかえてくれました。

 

「よしよし…ごめんな、G41。いっぱい我慢したもんな…」

 

 ご主人様はG41を抱きしめていっぱいなでなでしてくれます。

 結局ご主人様の仕事の邪魔をしてしまいました。G41はダメな子です。

 でも、嬉しいです。ご主人様がなでなでしてくれて嬉しいです。ご主人様が抱きしめてくれて嬉しいです。ご主人様の匂いがいっぱいで嬉しいです。ようやく満たされた気がしました。くすん。

 

「まあ、仕方ないわよね。G41、いっぱい我慢したもんね」

 

 そう言って、FALさんも頭をなでなでしてくれます。ご主人様の仕事を邪魔しても、怒らなかったです。FALさんはいつもG41を理解してくれます。

 

「でも、どうするの指揮官?」

 

 FALさんの言葉に、G41は悲しくなりました。G41の寂しさが癒えても仕事は残っています。そして、G41は仕事の邪魔をしてしまいました。このままではまた長い時間ご主人様が構ってくれなくなるかもしれません。そんなの嫌です。G41はご主人様に抱き着きました。G41はダメな子です。でも、ご主人様に構って欲しいです。

 

「いいさ。正直、埒が空かん。戦術を切り替えよう」

 

 ご主人様はG41を抱きしめて、なでなでしながら言います。そして、G41の顔を両手で持って視線を合わせて言いました。

 

「G41、今すぐにお出かけの支度をしてくるんだ。今日は市街地で一緒にデートしよう」

 

 ご主人様の言葉にG41は目を丸くしました。そして、すぐに嬉しい気持ちで一杯になりました。

 デートです! ご主人様と憧れのデートです! わーいわーい! 物凄く嬉しいです! G41の目の前が一気に薔薇色になりました!

 

『カリーナ、今から休暇を3日ほどとる。手続きを頼む。後、リストを送るからその案件全部を俺が帰る前に通しておいてくれ』

 

『え゛!? 休暇って、非常事態宣言中ですよ!? しかも、こんなの…通りっこないですよ!?』

 

『意見は求めてない。よろしく頼む』

 

 ご主人様は通信モジュールでカリーナさんと会話して、一方的に話を打ち切りました。言われてみれば。確かに非常事態宣言中にデートをするとか普通あり得ません。

 でも、きっと大丈夫だと思います。ご主人様は凄い人なので、これも何かの手だと思います。G41はご主人様を信じます!

 

「FAL。よろしく頼んだぞ?」

 

「ええ。…私、自分のやるべきことを間違えたりはしないわよ」

 

 ご主人様の言葉に、FALさんは不敵に笑って言います。FALさんはご主人様が何も言わなくても命令を分かっています。凄いです。流石、FALさんです!

 

「よし、出かけるぞ! G41、ちゃんとスカートも履いてくるんだぞ?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 そう言って、G41は駆けていきます。自分の部屋へ、お出かけの支度をしに行くのです。

 デートです! ご主人様とデートです! 憧れのデートです! 嬉しいです! G41はとてつもなく幸せです!

 きっと神様がいっぱい我慢したG41にご褒美をくれたのだと思います。神様、ありがとう! 今度、神棚にほねっこをお供えするので待っててね? まる!

 



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17・甘えんぼG41(その2)

 芝生です! 緑色の天然物の芝生です!

 足の裏が柔らかくて気持ちいいです! 訓練場の硬い人工芝とは大違いです!

 ここは市街地エリアの運動公園です。目の前には芝生を敷き詰められた広いグラウンドがあります。しかも今日は人がほとんどいないです。G41とご主人様の貸切です!

 空は雲一つない晴天です。市街地エリアは防護フィルターが張られているので紫外線を気にする必要もありません。運動公園には大規模な空気清浄機も備え付けられているので空気も美味しいです。

 G41は思わず芝生にごろごろしたくなります。でも、そんなことをしてはいけません。なぜならば、今日のG41はレディだからです! えっへん!

 ちゃんとFive-sevenさんにお化粧もして貰いましたし、スカートも履いてます。G41はレディの嗜みも完璧です!

 

「いくぞ、G41!」

 

 隣に立っているご主人様が言います。手に持っているのはフリスビーです。

 

「はい、ご主人様!」

 

 G41はわくわくしながらフリスビーを今か今かと待ち望んでいます。G41はフリスビー遊びが超大好きです!

 

「それー!」

 

 ご主人様がフリスビーを投げました。G41はそれを追いかけていきます。すかさず、狙眼と動態センサーを起動させます。G41の左目が赤く染まり、ミミがぴん、と立ちます。

 距離算出、風計算。フリスビーの動きを完全に捉えました。右カーブします。

 すると、フリスビーは推測通り右に曲がりました。ご主人様は上手く投げてG41を惑わせようとします。でも、G41には通じません。G41はフリスビーをキャッチするのが大得意です! えっへん!

 

「えーい!」

 

 G41は一生懸命ジャンプして両手でフリスビーを捕まえます。ぱしっ! 見事にキャッチできました! G41はフリスビーをキャッチするのが大得意です! えっへん!

 

「ご主人様ー! どうだぁ!」

 

 G41は捕まえたフリスビーを片手にぴょんぴょん跳ねてご主人様にアピールします。えっへん!

 

「おお! G41は流石だな!」

 

 ご主人様が感心してくれました。嬉しいです。

 というわけで、G41はご主人様の所に駆けていきます。

 

「ただいまー! 早く褒めて褒めて♪」

 

 そして、ご主人様に頭を差し出して褒めの言葉となでなでをおねだりします。

 

「ああ。G41、よくやったぞ」

 

 ご主人様はそう言って、G41の頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41は幸せな気持ちでいっぱいになりました。

 

「ご主人様、はい」

 

 ひとしきりなでなでして貰って満足したG41は、ご主人様にフリスビーを差し出します。もう一回投げて欲しいです。G41はフリスビー遊びが大好きです。

 

「よし! 行くぞ、G41!」

 

 ご主人様はフリスビーを受け取って、もう一度構えます。ご主人様は今日はG41と徹底的に遊んでくれるみたいです。しばらくの間ご主人様を独り占めです。うきうきです。G41は幸せいっぱいです!

 

 その後、G41はご主人様といっぱいフリスビーで遊びました。ご主人様は色々と投げ方を変えてきましたが、その全てをG41はキャッチしました。そのたびにご主人様はG41を褒めてくれて、なでなでしてくれました。G41はフリスビーをキャッチするのが大得意です! えっへん!

 

「さて、G41、少し喉が渇いたから、お茶にしないか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉に、G41は頷きました。本当はもう少しフリスビーしたいですが、ご主人様は人間なので喉が渇きます。それにフリスビー遊びは基地でもできますが、ご主人様と二人きりでお茶は滅多にできません。なので、優先順位はお茶の方が上です。

 

 ご主人様が手を差し出してくれます。手を繋いで歩こうということだと思います。嬉しいです。でも、G41はもっと甘えたい気分です。

 

「えーい!」

 

 G41はご主人様の腕に抱きつきました。生身の方のご主人様の腕です。ご主人様の匂いと体温を感じます。G41は幸せです。

 

「おいおい。G41は甘えんぼだな」

 

 そう言って、ご主人様は笑ってG41の喉をさすさすしてくれます。嬉しいです。気持ちいいので喉をごろごろ鳴らしてしまいました。

 

 ご主人様の腕に抱きついたまま、G41はご主人様と歩いていきます。あまりいない周りの人が見てます。今のご主人様とG41はみんなにはどう見えるのでしょうか。カップルに見えるのでしょうか。そうだとすると嬉しいです。えへへ。

 

 というわけで、G41達は併設されているカフェに来ました。そして、オープン席に腰を下ろします。G41の座る椅子をご主人様が引いてくれました。今のG41はレディです。えへへ。

 

 ウェイトレスの人がやってきて、ご主人様に注文を聞きます。ご主人様はホットコーヒー、G41には苺サンデーを頼んでくれました。こういう時、レディは殿方に注文を一任するそうです。Five-sevenさんがそう言ってました。

 

 ご主人様がにこにこしてG41を見ています。G41もご主人様を笑顔で見つめます。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 

「G41が楽しそうで何よりだ」

 

 ご主人様が嬉しいことを言います。幸せでないはずがないです。憧れのご主人様とのデートなのですから。G41は幸せすぎて夢かと思うほどです。

 

『だが、G41。分かっているとは思うが、これは策の一環だ』

 

 突然、ご主人様が通信モジュールを開いて秘匿回線で言いました。

 

『だから、そういう動きが混じることはある。それは勘弁してくれな』

 

 ご主人様の言葉に、G41はほんの少しだけ残念に思いました。でも、考えてみれば当然だと思います。ご主人様はいい加減そうに見えますが、仕事には真面目な人です。そんなご主人様が非常事態宣言中に単に遊んでいるはずがありません。

 ご主人様の仕事はこの世の中を少しでもよくするためのとても大切なものです。G41はご主人様とその仕事を大切に思います。そして、そのお手伝いができる戦術人形の自分を誇らしく思います。

 

『はい、ご主人様。G41は何かした方がいいですか?』

 

『周囲に敵意がある奴がいないかどうかの警戒は頼む。いざというときの護衛もな』

 

 ご主人様の言葉にG41は頷きます。G41は護衛はお手の物です! お任せください、ご主人様! ご主人様のことはG41は命を懸けてもお守りします!

 

 やがて、注文していたコーヒーと苺サンデーがやってきました。

 G41の目はまん丸です。綺麗にデコレーションされた苺サンデーが目の前にあります。こんなのVRシアターでしか見たことないです!

 ご主人様に促されて、G41はスプーンで掬って食べます。美味しいです! 甘くて冷たくて、ほんのちょっぴり酸っぱくて物凄く美味しいです! 多分、全部天然素材です! 美味しすぎます!

 

「どうだ、美味しいだろ?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 G41はご主人様の言葉に頷いてもう一口です。天然素材のスイーツはこんなにも美味しいです! G41は感動で胸がいっぱいです! 美味しいのでゆっくり味わって食べようと思います。

 

 三口食べたところでG41は思いつきました。そういえば、こういう時にやりたいことがG41にはありました!

 

「ご主人様!」

 

「ん?」

 

 G41の声にご主人様はコーヒーを飲む手を止めてこっちを見ます。G41はスプーンでクリームを掬ってご主人様の方へ持っていって言いました。

 

「ご主人様、あ~ん♪」

 

「なん…だと…!?」

 

 ご主人様が物凄く驚いています。どうしたんでしょう? よく分からないですが、でもG41はご主人様にあ~んして貰いたいです。なので、もう一度言います。

 

「ご主人様、あ~ん♪」

 

「…ああ。あ~ん…」

 

 ご主人様があ~んしてくれたので、G41はクリームをご主人様の口元に持っていきます。ご主人様は食べてくれました。なんだか嬉しいです。間接キッスです。えへへ。

 

「G41…」

 

 クリームを食べ終えたご主人様が感極まった声で言いました。

 

「俺、生きててよかった…」

 

 なんだかよく分かりませんが、ご主人様の目から一筋の涙がこぼれました。でも悲しそうではなくて、幸せそうです。ご主人様が幸せそうなので、G41も幸せです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 というわけで、G41はご主人様と楽しいデートの一時を過ごしています。

 でも、今日はまだ終わりじゃありません! それにまだご主人様の休暇は2日以上残っています。その間、ずっと一緒です! G41は幸せな気持ちでいっぱいです! ご主人様、G41はご主人様の戦術人形で本当に幸せです! 残りの休暇期間、いっぱいいっぱい遊んでください! まる!

 



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18・甘えんぼG41(その3)

 凄いです! 木と布と紙で出来たお部屋です! こんなお部屋見たことありません。

 しかも、床は畳です! 柔らかくて草の匂いがするので、多分天然物の畳です! 基地の娯楽室のプラスチック製の畳とは大違いです!

 ここは今日泊まるお宿です。料亭旅館風の宿で、今G41達はご飯を食べるために離れの建物にいます。凄いです! ご飯を食べるところが別の建物なんて、流石高級宿泊施設です!

 G41は思わず畳の上でコロコロしたくなりました。でも、そんなことはしません。今日のG41は大和撫子だからです!

 今G41は浴衣を着ています。白くて花の模様の可愛い浴衣です。女将さんが着付けてくれました。

 ご主人様に似合うかどうか聞いたら、物凄い勢いで床でゴロゴロし始めました。よく分からないですが、ご主人様はお行儀が悪いです。G41だって我慢しているのに。困ったご主人様です。

 

 そんなG41とご主人様の目の前には凄いご飯が並んでいます。透けて見えるような薄い刺身や、綺麗な丸いものが盛られた小鉢なんかが並んでいます。凄いです! こんなご馳走、見たこともありません!

 

「いやぁ、てっぽうなんて久し振りだな」

 

 そう言って、ご主人様は刺身をお箸で取って紅葉おろしを乗せて、ポン酢をつけて食べようとします。

 てっぽうって何でしょうか? G41は首を傾げました。G41の記憶が正しければ、鉄砲はこの国の古い言葉で銃の事を指すはずです。でも、銃が食べられるはずがありません。ご主人様に尋ねてみます。

 

「ご主人様? てっぽうって何ですか?」

 

「ああ。河豚のことさ。当たったら死ぬからてっぽうっていうんだ」

 

 ご主人様の言葉を聞いたG41は真っ蒼になりました。河豚には怖い毒があると聞いたことがあります。そんなものを食べたらご主人様が死ぬかもしれません。ご主人様が死んだらG41は生きていけません。

 

「だめです、ご主人様!」

 

 G41はご主人様のお箸の先の刺身をぱくっとしました! 危ないところでした。これでご主人様は死にません!G41は戦術人形なので平気です。何とかご主人様を守ることができました!

 ちなみに、とてもおいしいです。何だか、一瞬味がないように思いましたが、もぐもぐしているとじわじわと口の中に体験したこともない味わいが広がっていきました。幸せです。でも、油断してはいけません。ご主人様が危ないからです。

 

「ありがとう、G41」

 

 ご主人様はそう言って頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41はご主人様が無事で嬉しいです。

 

「でも、大丈夫だ。この河豚は食っても死なないからな」

 

 ご主人様はそう言いました。そういえば、一〇〇式(モモ)ちゃんが海洋研究所の河豚には毒がないって言っていたような気がします。それならご主人様も美味しい河豚を食べられます。嬉しいです。

 

「じゃあ、ご主人様! あ~ん♪」

 

 そう言って、G41は刺身に紅葉おろしを乗せて、ポン酢をつけてご主人様の口元に運びました。G41はお箸も上手に使えます!

 

「ああ。あ~ん…」

 

 そう言ってご主人様は食べてくれました。間接キッスです。嬉しいです。えへへ。

 ふと見ると、ご主人様のお猪口が空でした。なので、お銚子を取ってお酒を注いであげます。G41は気の利いた大和撫子です! えっへん!

 

「G41…俺、もうこの瞬間死んでもいい…」

 

 ご主人様が感慨深そうに言います。幸せそうです。ご主人様が幸せでG41は嬉しいです。でも、死んだらだめです。G41とご主人様はずっと一緒です。

 

 その後、お鍋がやってきたり、生きた魚を捌いてお寿司にしてくれたりとか色々美味しい事が沢山あって、ご主人様もG41も大満足でした! 特にお吸い物に浮いていた肝が美味しかったです! FALさんや一〇〇式(モモ)ちゃんにもおいしいご飯を持って帰ってあげようと思いましたが、ご主人様の曰く、お土産は別に用意するそうなので遠慮しないで食べました。とっても美味しかったです!

 

 お部屋に帰る途中、廊下を歩いているとガラス張りの部屋が見えました。中には何やら大きなテーブルみたいなものがあります。でも、その真ん中にネットが張られていたりもしました。あれは何でしょう。G41は興味津々です。

 

「高級旅館に似合わないチープなものがあるじゃないか」

 

 ご主人様がニヤリとして言います。きっとあれは楽しいものです! なんとなくそう思いました!

 

「せっかくだし、卓球やっていくか、G41?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は頷きます。G41は楽しいことをするのが大好きです。ご主人様も一緒だともっと大好きです。

 ご主人様は部屋の隅にあった籠からラケットを取り出して、G41に渡してくれました。ボールはご主人様が持ってます。

 

「そういえば、G41は卓球を知っているのか?」

 

 ご主人様が尋ねてきます。G41は卓球とか知りません。でも、この前ステンちゃんが持って来た玩具がそれっぽいのでそうだと思います。

 

「はい、ご主人様!」

 

 なので、G41は元気良く頷いてラケットを構えました。小さいので両手では持てませんが、ボールが軽いので片手で十分です!

 

「じゃあ、行くぞ。それー!」

 

 ご主人様がラケットでボールを打ち出してきました。バウンドしている遅い球です。ご主人様はG41が初心者だと思って手加減してくれています。でも、G41の動態センサーは伊達ではありません。ミミをぴん!と立てて、ボールの動きを捉えます。

 

「えーい!」

 

 完全に捉えました! G41は力いっぱいボールをかっ飛ばします!

 ぱっこーん! やりました! これでホームランは確実です! えっへん!

 

「おっとっと」

 

 と思ったら、ご主人様があっさりとキャッチしてしまいました。G41はしょんぼりです。アウトになってしまいました。

 

「G41、それは野球だ。卓球じゃない」

 

 ご主人様の言葉に、G41ははっとなりました! そういえば、ステンちゃんはあれを野球盤って言ってました。卓球盤じゃありません。なんと、G41は勘違いをしていました!

 

 というわけで、G41はご主人様から卓球を教わりました。しばらくすると、ラリーを30回とかできるようになったので、ご主人様に一杯褒めて貰いました。G41は卓球が好きになりました。今度、一〇〇式(モモ)ちゃん達とも一緒にやってみたいです。

 

「さて、そろそろ部屋に戻るか」

 

「はい、ご主人様!」

 

 というわけで、ひとしきり遊んでご主人様とG41は部屋に戻りました。お部屋にはもう布団が敷かれていました。ご主人様とお隣です。嬉しいです。ご主人様の御伽噺を聞かせて貰えると超嬉しいです。

 

「G41、先に風呂入るか?」

 

 ご主人様が尋ねてきます。G41は普段お風呂に入りません。大体の場合は、シャワーで洗浄するだけです。なので、ご主人様にゆっくり入って来て欲しいです。

 

「いいえ、ご主人様。ゆっくり入って来てください」

 

「ああ。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰う」

 

 そう言って、ご主人様はお風呂に行きました。この部屋のお風呂はなんと露天風呂みたいになってます。凄いです。流石、高級宿泊施設です。お水も人工ですが温泉らしいです。凄いです。

 

 というわけで、G41は一人になりました。お布団の上でゴロゴロしたり、お部屋の中を見て回ったりします。

 …飽きました。やっぱり、ご主人様がいないと楽しくないです。

 G41は露天風呂をそっと覗いてみます。ご主人様はお風呂でお酒を飲みながら極楽気分です。あんなにゆったりしているご主人様は珍しいです。そっとしておいてあげるべきです。

 でも、ご主人様がいないとG41はつまんないです。どうしましょう。

 

 いいことを思いつきました!

 

「ご主人様ー!」

 

「うん? どうしたんだ、Gよんい…って、ぶっ!」

 

 ご主人様はG41を見るなりお酒を吹き出しました。どうしたんでしょう?

 ちなみに、G41はご主人様の背中を流すべくお風呂に乱入してます。もちろん、浴衣は脱いでます。お風呂には服を着て入ったらいけません。FALさんからもそう言われています。

 

「じ、G41、おまっ…!」

 

「ご主人様! 背中を流しに来ました!」

 

 狼狽えているご主人様を見て、G41は笑顔で言います。背中を流すとみんな喜んでくれます。FALさんも喜んでくれます。なので、ご主人様の背中を流して、喜んで貰いたいです。

 

「G41! せめて、タオル…! タオル巻け!」

 

「ふぇ!? でも、お風呂にタオルを漬けちゃいけませんってFALさんが…」

 

「命令だ! タオル巻け!」

 

 ご主人様の命令は絶対です。なので、G41はタオルを身体に巻きました。ご主人様は顔を真っ赤にして、顔を背けています。呼吸も荒い気がします。上せたのでしょうか?

 

「…で、G41? どうしたんだ?」

 

「はい! ご主人様、背中を流します!」

 

「そ、そうか…」

 

 じゃあ、お願いするか。と、ご主人様は洗い場に座って背中を向けました。お任せください、ご主人様! G41は一生懸命ご主人様の背中を流します!

 

 ご主人様の背後に座ると、なんだかドキドキしました。ご主人様の背中は広いです。逞しいです。しばらく運動してないから鈍ったっていつも言ってますが、すごく鍛えられてると思います。ドキドキです!

 

「えーい!」

 

 というわけで、ご主人様の背中に抱き着きました。ご主人様の体温と匂いを感じます。ぬくぬくです。G41は幸せです。

 

「ぐはあ!」

 

 突然ご主人様が盛大に呻きました。ご主人様の目の前の鏡が真っ赤です。血の匂いがします。どうしたんでしょうか?

 

「G41… のぼせたみたいだから、上がるよ…」

 

 そう言ってご主人様は立ち上がって、左手で鼻を押さえながら前屈みになってお風呂場から出ていきました。変なご主人様です。とりあえず、鏡をお湯で流して身体を洗うことにしました。後、お風呂にも漬かりました。温泉はぬくぬくでした! 気持ちよかったです!

 

 お風呂から上がると、ご主人様はお布団の上で転がっていました。もうお眠なのかもしれません。体内時計を確認してみると、もう2200を超えています。G41はお眠の時間です。ご主人様も眠いのかもしれません。

 

「ご主人様、もうお眠する?」

 

「…ああ。明かりを消してくれ」

 

 ご主人様がそう言ったので、G41は明かりを消しました。部屋が真っ暗です。でも完全な闇ではないです。G41は狙眼を起動して歩いていきます。G41の狙眼は抵光量空間にも対応しています! えっへん!

 

 G41は自分の布団に潜り込みました。ふわふわでいい匂いがします。ぬくぬくです。G41は幸せな気持ちでいっぱいです。でも、もっと幸せな気持ちになりたいです。

 というわけで、もそもそもそ…

 

「って、おい。G41?」

 

「ご主人様ー!」

 

 というわけで、G41はご主人様のお布団に潜り込みました。ご主人様の匂いに包まれています。ぬくぬくです。G41は物凄く幸せです。こんな幸せなこと滅多にないです。幸せ150%です!

 

「全く、甘えん坊だな、G41は」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様に抱きしめて貰いながら、G41は頷きました。それはそうです。G41はご主人様が大好きです! ご主人様に甘えている時がG41の至福の時なのです!

 

「ご主人様! ご主人様の御伽噺が聞きたい!」

 

「分かったよ、G41… 昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいました…」

 

 ご主人様はG41のおねだりを聞いてくれました。嬉しいです。ご主人様に抱き着いたまま、御伽噺を聞きます。幸せすぎます。きっと夢でもこんなに幸せなことはありえません。幸せ200%です!

 G41はご主人様がいてくれて幸せです。ご主人様の戦術人形で幸せです。いつまでも、ご主人様と一緒の日々を送っていきたいです。ご主人様の声が途切れがちになってきました。眠いのだと思います。G41も寝ます。また明日、ご主人様! まる!



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19・愛されG41(その1)

 次の日の朝。G41とご主人様は美味しい朝御飯を食べた後に、チェックアウトしました。見送る女将さんには、また来てね、と言われました。もちろんです! G41はこのお宿が気に入りました。ご主人様にお願いして連れて来てもらおうと思います。

 

 今、G41とご主人様は車で16Labに向かっています。一〇〇式(モモ)ちゃん達を迎えにいくのだそうです。

 わーい! G41は嬉しいです。一〇〇式(モモ)ちゃんやSOPMODちゃんにもうすぐ会えます。G41は二人が大好きなので嬉しいです。

 

 というわけで、G41はご主人様の車で16Labに向かうべく走っています。ハイウェイを突っ走って2時間程度らしいです。

 ご主人様の車は一見普通の軽自動車みたいですが、後ろの席がテーブル席になったり、キッチンがあったり、屋根の上に寝るスペースができたりするので面白いです。何だか秘密基地みたいです。

 それで今G41とご主人様は後部座席で絶賛ゲームで遊んでいます。

 

「ご主人様、やばいよ!」

 

「G41! ハンマーを投げろ!」

 

「えーい!」

 

「よし、そこで教えたコンボだ!」

 

「はい、ご主人様! えーい!」

 

「よし、止めだ!」

 

 どかーん! 敵は倒れました。ご主人様とG41の勝利です!

 

「ご主人様ー!」

 

「G41ー!」

 

「「いぇーい!」」

 

 そう言って二人はハイタッチを交わします。二人の合体攻撃で敵を倒しました! ゲームもご主人様とプレイすると楽しさ10倍増しです!

 ちなみに、車の運転は自動操縦システムがやってます。何かあっても、ご主人様は無線で車を動かせるのでハンドルを握る必要がないらしいです。ご主人様はすごいです!

 

「どれ。そろそろ着く頃か」

 

 そう言って、ご主人様は座席に戻りました。G41も助手席に戻ります。流石に、到着したときに運転席に誰もいないのでは困るらしいです。

 というわけで、G41達は16Labの前の目的地に到着しました。

 そこはサービスエリアを改造した軍の基地らしいです。お仕事の話だと思います。

 ゲートを潜る時、守衛の娘が知り合いの戦術人形に似てたので、G41はその娘かと思いました。でも、違いました。あの娘はもっと小さいです。ちょっとがっかりしましたが、あの娘もこの基地にいるかもしれません。もし会えたら嬉しいです。

 

「じゃあ、G41。行ってくるな」

 

 駐車場に車を止めてご主人様はそう言いました。

 

「少し時間がかかるから、車の中でゲームをしているなり、外の立ち入り可能エリアを見て回るなり、好きにしててくれ」

 

「はい、ご主人様!」

 

 G41はご主人様の言葉に元気に頷きます。G41はお留守番のできるいい子です!

 というわけで、ご主人様をお見送りしたG41はゲームをすることにします。

 

 ぴこぴこぴこ…

 ぴこぴこぴこぴこ…

 ぴこぴこぴこぴこぴこ…

 

 …ゲームオーバーになってしまいました。やっぱりご主人様がいないと難しいですし面白くないです。

 

 というわけで、G41はお散歩にでかけます。何か面白いものがあるかもしれないですし、あの娘に会えると嬉しいからです。

 でも、周りには特に何もないですし、あの娘がいる気配もないです。すぐに飽きてしまいました。

 困りました。仕方ないので車に戻って、座席の下にあるエロ本を読んでご主人様をのーさつするお勉強をするしかありません。というわけで、帰ろうとした時…

 

「やあ、グリフィンのG41ちゃんだね?」

 

 突然、声をかけられました。

 声をかけてきた人はご主人様より一回りぐらい年上っぽい男の人でした。

 

「はい、G41です」

 

 G41は素直に答えます。すると、男の人は笑って言いました。

 

「これからバーベキューをするんだが、よかったらご一緒していただけないかな、と思ってね」

 

 ばーべきゅー! もしかして、お肉がいっぱいのバーベキューでしょうか!? そうだとするとG41は嬉しいです! 丁度暇でもあります。

 でも、FALさんからは知らない人について行ってはだめ、と言われています。本来ならお誘いは断るべきです。でも、せっかく誘ってくれているし、このおじさんからは悪意は感じられません。

 

「はい。ご主人様に許可を貰ってからでいいですか?」

 

「ああ、もちろん。なんなら、俺の方から連絡するし」

 

 おじさんがそう言ってくれたので、G41は通信モジュールを開いてご主人様に連絡します。ここは軍の基地ですが、グリフィン用のチャンネルもあるので通信モジュールが使えるのです。

 

『ご主人様、今時間大丈夫ですか?』

 

『ああ。どうかしたのか?』

 

『はい。実はバーベキューに誘われてしまいました』

 

『…ええと、G41。目を借りるぞ?』

 

『はい、ご主人様』

 

 というわけで、G41はご主人様と視覚を共有しました。これでご主人様にもおじさんの顔が見えたはずです。

 

『…いないと思ったらそういうことか…』

 

 すると、ご主人様はあきれ果てた口調でそう言いました。どういうことでしょう。もしかして、ご主人様はこのおじさんと知り合いなのでしょうか?

 

『…許可する、G41。たらふく食ってきてやれ』

 

『はい、ご主人様!』

 

 やりました! ご主人様からの許可が下りました。これでバーベキューしても大丈夫です! うきうきです!

 

「おじさん! ご主人様からの許可が出ました!」

 

「ああ! じゃあ、行こうか!」

 

 というわけで、G41はおじさんの差し出した手を握って歩いて行きました。バーベキューです! バーベキューです! うきうきです!

 

 道すがらおじさんとお話ししたところ、おじさんは若宮将補っていうらしく、ご主人様の昔の上司だった人らしいです。バーベキューが趣味みたいでご主人様にも何度も御馳走したことがあるらしいです。

 

「あいつは優秀だが、物凄く困った奴でなぁ」

 

 おじさんは軍にいた頃のご主人様の話を懐かしそうに話してくれました。ご主人様は優秀な情報員兼戦術人形の指揮官だったらしいです。時々、口が汚いとか人形たらしとかの文句も入りますが、全体的には褒めている内容なので、G41は嬉しかったです。G41は自分が褒められるのも嬉しいですが、ご主人様が褒められるともっと嬉しいからです。それに交じってる文句も、納得の内容でした。

 

 話している間にバーベキューエリアに着きました。展望台みたいになっている奇麗な場所で、青い海と空と緑の山を一望できます。

 でも、G41はほんの少ししゅんとします。あの海は奇麗に見えても死の海です。それが凄く悲しいです。

 

「大丈夫だよ、G41ちゃん。この辺りの海は浄化された海なんだ」

 

 おじさんの言葉を聞いて、G41は驚きました。あの海は奇麗な海なんでしょうか!?

 おじさんの言うには、この辺りの内海は海洋研究所の研究の成果が実って、浄化に成功した海なんだそうです。しかも、その成功のカギになったのはご主人様が提供した新型ナノマシンのデータのおかげだそうです。

 G41は感動しました! G41が関わった件で世界が良くなっているのが分かったからです! G41や一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんが頑張った甲斐がありました!

 

 バーベキュー台の方を見ると男の人がいっぱい待っていました。みんなこの基地の軍人さんらしいです。ご主人様より若そうな人たちばかりでした。

 

「おお! 本物のG41ちゃんだ!」

 

「マジか! 可愛い…」

 

 みんなG41を見るなり、口々に褒めてくれました。G41は人気者です! えっへん!

 

「さて、始めようか諸君!」

 

 そう言って、おじさんがクーラーボックスを開いて、中から物凄く大きな肉の塊を取り出しました。すごい大きさです! あんな大きな肉、G41は見たこともありません。しかも、どう見ても天然物の肉です。凄すぎます!

 

 おじさんが大きな包丁で肉を切り分けます。肉からは血が流れませんでした。どうもベーコンらしいです。周りの男の人に聞いたのですが、おじさんはベーコンを作ったり、漬物を作ったりするのが趣味らしいです。とってもおいしそうでいい趣味だと思います!

 

 おじさんは分厚く切ったベーコンを鉄板の上に置きました。じゅう、っといい音がしました。次第に物凄くおいしそうな匂いがしてきます。G41はもう待ちきれません! うきうきです!

 

 やがて、ベーコンが綺麗に焼きあがりました! 憧れのステーキです!

 おじさんはそれをお皿にとって、G41に渡してくれました。レディファーストだそうです。周りのみんなも勧めてくれます。嬉しいです。みんないい人ばかりです。

 

 G41は切り分けられているベーコンを食べました。もう物凄く美味しいです! 肉汁がジューシーで脂が凄く甘いです! G41は幸せな気持ちでいっぱいになりました!

 

「どうだい?」

 

「はい! 物凄く美味しいです!」

 

 おじさんの問いに、G41がそう言うとみんな喜んでくれました。みんないい人たちばかりです!

 

 というわけで、本格的なバーベキューパーティが始まりました。いくつかある台の上で、ベーコンやコンビーフ、それに野菜の漬物が焼かれていきます。美味しそうな匂いで満たされています。

 みんな、G41のことを褒めてくれたり、お肉を取ってくれたり、なでなでしてくれたりしてくれます。美味しいものとみんなからの愛情が一杯で、G41は幸せです!

 

「G41ちゃん、こっちも食べてくれないかな?」

 

 おじさんはそう言って、お皿に料理を取ってくれました。なんでしょう? 見たところ、野菜と卵みたいです。なんでしょう。G41はそれを食べてみました。

 物凄く美味しいです! 漬物のすっぱさと卵のまろやかさとバター醤油の風味が何とも言えません!

 おじさんにきいたら、これは漬物のステーキだそうです。凄いです! G41は作り方を聞いておきました。これなら野菜が嫌いなご主人様でも美味しく食べられるに違いありません。今度、もやしの漬物を使って作ってあげたいと思います!

 

 ふと、G41は思いました。G41は昨日から美味しい思いを沢山しています。でも、カリーナさんやFALさんは今もきっと仕事をしているはずです。他のみんなも警戒態勢のはずです。G41ばかりが美味しい思いをしてはいけないと思います。

 

「どうしたんだい、G41ちゃん?」

 

「あのね、おじさん」

 

 気を遣って尋ねてきたおじさんにG41は言います。他の基地のみんなのためにお土産が欲しいって。

 もちろん、これは厚かましいお願いです。でも、G41は言いました。せめて、FALさんだけにでもあげてほしいです。そのためなら、G41はこれから食べなくてもいいです。我慢します。

 

「ああ。そのことなら」

 

 そういうと、おじさんは大きなクーラーボックスを指さして言いました。あの中には一番大きなベーコンの塊が入っているそうです。あれを丸ごと持って帰ってくれ、って言いました。

 

「みんなも異存はないな!?」

 

「「「「「おおー!!!」」」」」

 

 おじさんの言葉に、みんな賛同してくれました。そして、G41のことを健気だ、と褒めてくれました。

 G41は感動しました! こんなおいしいものを沢山G41のために譲ってくれるのです! G41はおじさんたちが大好きです! おじさん達もG41が大好きです! みんな相思相愛です! えっへん!

 

「その代わりといっては何だが、一つお願いを聞いてくれないかい?」

 

 おじさんがそう申し出ます。何でしょうか? こんなにいいようにしてくれるおじさん達のお願いなら聞いてあげたいです。

 

「何か歌を歌ってくれないかな?」

 

 もちろん、恥ずかしかったり、難しかったりするなら断ってくれてもいい、とおじさんは言いました。

 どうしましょう。G41は困りました。G41は歌なんて全然知りません。でも、オジサン達のお願いなら聞いてあげたいです。周りのみんなも期待を込めた視線を向けてきます。

 G41は少しの間悩んで、思いつきました! そうでした! G41は歌を知っています! 劇をやるために覚えたあの歌です!

 

「はい! G41は桃太郎さんを歌います!」

 

 G41がそう言うと、みんながおおー!って歓声を上げて、拍手してくれました。照れてしまいます。えへへ。

 というわけで、G41は息を吸い込んで歌い始めました。

 

「も~もたろさん♪ももたろさん♪ おっこしにつっけた~きっびだんご~♪ ひっとつ~わったしにくっださいな~♪」

 

 G41は歌詞を思い出しながら一生懸命歌います。周りのみんなは手拍子をしてくれたり、可愛いって褒めてくれたり、身悶えしたり、地面でごろごろしたりしてくれました。なんだかみんなご主人様みたいです。この国の軍人さん達はそういうものなのでしょうか。何だか可愛いです。

 

 歌を歌い終わると、みんなの拍手と歓声に包まれました! なんだかアイドルみたいです! えへへ。

 

 その後もG41はおじさん達と楽しい時間を過ごしました。みんないい人達でした!

 お別れする時に、みんないつでも会いに来てくれって言ってくれました。G41もまた会いたいです!

 その時は、もっと一杯歌を覚えて、一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に披露したいです! みんな、待っててね? まる!



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20・みんなご主人様が大好きです!(その1)

 おじさん達とお別れしたG41はご主人様と一緒に16Labにやってきました。

 ゲートをくぐって、駐車場に車を停めて、病院の玄関みたいなところにやってきました。いつもの16Labの入り口です。

 その玄関の先に立っていた人を見つけて、G41は駆けて行きました。一〇〇式(モモ)ちゃんです! 恐らく、ご主人様から連絡を受けて待っていてくれたのです!

 

一〇〇式(モモ)ちゃ~ん!」

 

「G41ちゃん!」

 

 突撃してきたG41を受け止めてくれました。久し振りの一〇〇式(モモ)ちゃんです。思わずほっぺをぺろぺろしてしまいます。一〇〇式(モモ)ちゃんも擽ったそうですが嬉しそうです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

一〇〇式(モモ)、調整は終わったのか?」

 

「はい、指揮官。一〇〇式は今日指揮官達と帰られます」

 

「そうか。ペルシカさんのところで用事が終わったらすぐに出る。荷物を纏めておいてくれ」

 

「はい、了解です」

 

 ご主人様と一〇〇式(モモ)ちゃんが言葉を交わします。今日から一〇〇式(モモ)ちゃんが一緒です。嬉しいです。

 というわけで、ご主人様はペルシカさんの部屋に行きました。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に居室に向かいます。一〇〇式(モモ)ちゃんはAR小隊のみんなと一緒の部屋で過ごしていたみたいです。

 部屋は6畳一間ぐらいで机と二段ベッドが二つ。それにテーブルと椅子と壁に掛けられたハンモックが1つありました。部屋にはM4さんとSOPMODちゃんがいるそうです。M16さんとAR-15さん、それにROさんは今は検査中だそうです。

 

「あ! G41ちゃん!」

 

「SOPMODちゃん!」

 

 部屋に入るなり、SOPMODちゃんが駆けてきました。G41はそれを受け止めて、すりすりしたりしてひとしきりじゃれあいます。G41とSOPMODちゃんも相思相愛です。えっへん!

 

一〇〇式(モモ)、先に帰るの?」

 

 椅子に座っているM4さんがなんだか残念そうに言いました。

 

「はい、M4さん。お世話になりました」

 

「ううん、こちらこそ。貴女とゆっくりと話せてよかったわ」

 

 M4さんと一〇〇式(モモ)ちゃんが穏やかな笑顔で言葉を交わします。もしかして、M4さんも一〇〇式(モモ)ちゃんと相思相愛なんでしょうか? さすがは一〇〇式(モモ)ちゃん、モテモテです!

 

「指揮官の用が終わるまで時間あるんでしょ? じゃあ、それまでお話ししよ?」

 

「うん!」

 

 SOPMODちゃんの申し出にG41は頷きます。G41はみんなでお話しするのが大好きです。

 

「えへへ。じゃあねぇ、恋バナしよ? 恋バナ」

 

「恋バナって、SOPⅡ…」

 

 嬉しそうに言うSOPMODちゃんに、M4さんが呆れたような口調で言います。恋バナは女の子が集まるとする定番のトークだそうです。Five-sevenさんがそう言っていました。

 でも、G41は恋バナというのが一体何なのかは知りません。どういう話なのでしょう。

 

「ねー、SOPMODちゃん。恋バナって何?」

 

「えーとねー、好きな人の話とか」

 

 G41の問いにSOPMODちゃんがすぐに答えてくれました。さすが、SOPMODちゃん! 物知りです!

 好きな人の話ならG41は自信があります! G41は勢い良く手を挙げて言いました!

 

「はい! G41はご主人様のことが大好きです!!」

 

 G41はご主人様が大好きです! ご主人様のことなら一日中でも話せます。G41は四十六時中ご主人様のことを考えているのです!

 

「えー、普通過ぎて面白くないよ、G41ちゃん」

 

 あう。SOPMODちゃんから不評を貰ってしまいました。

 

「もう、SOPⅡ。無理言わないの」

 

 M4さんがSOPMODちゃんを窘めるように言います。

 

「私達が親しく接している男の人は指揮官しかいないでしょ?」

 

「えー? じゃあ、M4も指揮官が好きなの?」

 

「…え? …えっと、それはその…」

 

 SOPMODちゃんの質問に、M4さんは顔を真っ赤にして、ごにょごにょと黙り込んでしまいます。隣を見ると、一〇〇式(モモ)ちゃんの顔も赤いです。どうしたんでしょう?

 

「よう。G41、来ていたのか」

 

 扉の所からM16さんの声がしました。どうやら検査が終わったみたいです。

 

「はい! M16さんは検査終わったの?」

 

「まあな。…しかし、一〇〇式(モモ)が帰るとなると、また飯が味気なくなるな…」

 

 G41の問いに頷いたM16さんは残念そうに言います。M16さんとトンプソンさんは一〇〇式(モモ)ちゃんの料理が大好きです。特にやきとりが大好きです。厳密にはやきとりではないのですが、一〇〇式(モモ)ちゃんは焼き方とタレでうまくやきとり風に仕上げています。

 

「大丈夫です、M16さん! おいしいお土産をいっぱい貰ってます」

 

「よっしゃ! でかしたぞ、G41! 私たちが帰るまでちゃんと残しとけよ?」

 

 G41が言うと、M16さんが褒めてくれました。もちろん、AR小隊のみんなが帰ってくるまで残しておきます。みんなで食べる方がおいしいからです。

 

「で、何の話をしてたんだ?」

 

「恋バナだけど… あのね、M4は指揮官が好きなんだって」

 

 M16さんの問いにSOPMODちゃんがそう答えました。何でしょう。周りの空気が凍りついたような気がしました。

 

「なん…だと…?」

 

 M16さんが物凄いショックを受けてます。どうしたんでしょうか? もしかして、M16さんもご主人様が好きだからなんでしょうか。

 M16さんの気持ちをG41は凄くわかります。G41も大好きな一〇〇式(モモ)ちゃんにやきもちを妬いて辛い思いをしたことがあります。M16さんも大好きなM4さんがご主人様を好きなので、少しやきもちを妬いてしまったのかもしれません。

 

「ちょっと! SOPⅡ…!?」

 

「えー? じゃあ、指揮官のこと好きじゃないんだ?」

 

「…そうは言わないけど…」

 

 SOPMODちゃんの言葉に、M4さんは真っ赤になって俯きます。やっぱりM4さんもご主人様のことが好きなのです!

 それはそうだ、と思います。1年前の事件でご主人様はM4さんを助けるために凄く頑張りました。M4さんもご主人様に深く感謝しています。ご主人様を好きになっても不思議ではありません。ご主人様はモテモテです!

 

「…悪いが、一〇〇式(モモ)。グラスを取ってくれ」

 

「は、はい!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんにグラスを渡して貰ったM16さんは棚からお酒を取り出して飲み始めました。

 G41にはM16さんの気持ちがよくわかります。やきもちの感情をどうしたらいいかわからないのだと思います。G41も同じような経験をしたので、よく分かります。

 でも、大丈夫です! G41達は戦術人形です! そして、指揮官と戦術人形の誓約は複数でもできるのです。なので、みんなでご主人様に誓約してもらえばいいのです! でも、一番はFALさんに譲ってあげてください。

 

「私だって、指揮官のこと好きだもん! 指揮官と一緒に寝たこともあるし!」

 

 なんだか対抗意識を燃やしたSOPMODちゃんが言いました。なんでしょう。また部屋の空気が凍りついた気がします。

 

「…な、な、なん…だと…!?」

 

 M16さんが凄い驚いています。どうしたんでしょうか?

 

「ちょ、ちょっと、SOPⅡ、それはどういう…」

 

「言葉の通りの意味だよ。指揮官と一緒のベッドで一夜を過ごしたの」

 

 驚いて尋ねるM4さんにSOPMODちゃんが言いました。どうしてそんなに驚くのでしょう。別にご主人様と一緒に寝るのなんてよくあることだと思うのですが…

 G41はそのことを知っています。だって、G41も一緒に寝たからです。

 G41はお掃除し隊の副長なので、ご主人様の部屋の鍵を持っています。なので、よくお布団に忍び込んで添い寝して貰っています。そのことをSOPMODちゃんに話したら、SOPMODちゃんも一緒に寝たいと言ったので、一緒にお布団に忍び込みに行ったのです。

 ご主人様のベッドは大きくないので少し窮屈でしたが、その分ご主人様にいっぱい抱っこして貰えたので幸せでした! 多分、SOPMODちゃんはその時のことを言っているのだと思います。

 

「指揮官ねー、凄く優しくシテくれてね。凄く気持ちよかったんだよー」

 

「な…に…!?」

 

 SOPMODちゃんの言葉に、やっぱりM16さんが物凄く驚いています。

 確かに、ご主人様はG41達を優しく抱っこしてくれて、なでなでしてくれて、さらに御伽噺まで聞かせてくれました。G41達はとっても幸せでした。

 

「それにね、指揮官って実は凄く大きくって固いんだよー」

 

「嘘…だろ……!?」

 

 嘘じゃないです、M16さん。ご主人様は割りと着痩せするタイプなのでみんな知らないですが、実は胸筋とか腕とか逞しくて大きくてカチカチです。もうG41はどきどきです!

 

「SOPMODちゃんが…大人の階段を駆け上がってる…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが愕然とした様子で言いました。なんと、ご主人様と寝たら大人の階段を駆け上がったことになるそうです。なら、もうG41はとっても大人です! えっへん!

 

「おい、M4。入るぞ? 一〇〇式(モモ)、ここにいるんだろ?」

 

 ノックの音がして、ご主人様の声がしました。なんでしょう。G41とSOPMODちゃんを除く三人の顔に物凄い緊張が走っています。次の瞬間、ドアが開いてご主人様が入ってきました。

 

「…おい、指揮官。SOPⅡと寝たって言うのは本当か?」

 

 M16さんがご主人様に詰め寄って尋ねます。

 

「ほんとだもん。ねー、指揮官?」

 

 SOPMODちゃんがご主人様の腕に抱きついて言います。はい、本当のことです。ご主人様も忘れてないと思います。

 

「あ? あー、そういえば、一回そんなこともあったな…」

 

 ご主人様の言葉になんだか部屋の空気がさらに凍りついた気がします。どうしたんでしょう。G41はよくわかりません。

 

「し、指揮官…」

 

「指揮官…ふ、不潔です…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんとM4さんが物凄いショックを受けた顔で言いました。

 

「指揮官…妹達に手を出すな、と言ったはずだったな…?」

 

「え!? い、いや、ちょっと待て。お前ら何か誤解を…」

 

「問答無用! M16ブリーカー!! 死ねぇ!!!」

 

 なんと、M16さんがご主人様に物凄い勢いで抱きつきました! 凄いです! 熱烈なハグです!!

 M16さんの気持ちはG41にもよく分かります。G41もご主人様がM99ちゃんをお膝に乗せたりしたら、その匂いを取るために抱きついたりします。やっぱり、M16さんもご主人様が大好きです! ご主人様はモテモテです!

 

「ぎえええええええ!!」

 

 ご主人様が絶叫しています。ちょっと、M16さんは力が強すぎるのかもしれません。でも、ご主人様は凄い人なのできっと大丈夫です!

 

「やめて、お姉ちゃん! 指揮官がしんじゃうよ!」

 

「M16姉さん、やりすぎです!」

 

「うおおおお! はなせー!」

 

「し、指揮官、大丈夫ですか!?」

 

 SOPMODちゃんとM4さんがM16さんを引き剥がして、一〇〇式(モモ)ちゃんがご主人様を担いで部屋の外に連れて行きました。なんだか大騒ぎです。

 でも、これぐらいの騒ぎは基地では普通です。場所が16Labに変わっても、みんな元気でご主人様が大好きです!

 

 一時間後、酔いつぶれたM16さんが寝て、一〇〇式(モモ)ちゃんが帰ってきました。なんでも、ご主人様の具合が悪くなったので今日は16Labにお泊りだそうです。旅の疲れが出たのでしょうか? ご主人様、早く元気になってね? まる。

 

 ちなみに、後でご主人様と寝た時のことをみんなに話しました。すると、一〇〇式(モモ)ちゃんとM4さんは物凄くほっとしたみたいです。なんだかよく分かりませんが、二人が安心してよかったです!



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21・G41vsご主人様(その1)

 翌朝、16Labを出たG41達は昼頃には基地に到着しました。帰り道、ご主人様はぐったりしていたので、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんとゲームをして遊びました。

 

 基地についたG41達をカリーナさんが出迎えてくれました。

 

「お、お帰りなさい、指揮官様…」

 

 その様子を見て、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは仰天しました。

 髪はぼさぼさで、目は充血していて、顔色がすごく悪いです。目の下には濃いクマができています。超ボロボロです。一体、カリーナさんに何があったのでしょうか?

 

「ただいま、カリーナ。随分と苦労したようだな」

 

 ご主人様は平然とそう言って、カリーナさんに近づきます。手には何やら細長い紙の包みを持っていました。

 

「あの… 指揮官様から頼まれた8件…うち4件はどうにか通せたのですが、その他の4件はどうしても無理でした…」

 

 カリーナさんは泣き出しそうな顔でご主人様にタブレットを手渡します。泣きそうなのはご主人様に怒られると思っているのでしょう。

 ご主人様は仕事には厳しい人で、任務を達成できないと怒ります。一〇〇式(モモ)ちゃんも隊長になってからは何度も叱責を受けました。可愛い一〇〇式(モモ)ちゃんでさえその有様なので、カリーナさんはすごく怒られると思っているのです。

 

「…うん、よくやってくれた。ご苦労様」

 

 ご主人様はそう言って、カリーナさんの肩をぽんってしました。予想と大きく違う言葉に、カリーナさんが目を見開いて呆然としています。

 

「ありがとう。これだけやってくれれば、後はこっちでなんとかできる」

 

「指揮官様…!」

 

 カリーナさんが涙を浮かべて喜びました。物凄く珍しいご主人様の仕事に対する満点に近い誉め言葉です。カリーナさんの苦労が報われてよかったです!

 

「後は俺に任せて、休暇を2日ぐらいとってくれ。手続きは俺が通しておく。後、これは土産だ」

 

 そう言ってご主人様が包装を解いてお土産を渡しました。それはコアントローっていう高いお酒でした。

 

「そいつを一杯やって、ゆっくり休むんだ。後は俺に任せろ」

 

「はい…! 指揮官様、ありがとうございます…」

 

「礼を言うのは俺の方だ。お前の仕事のおかげでグリフィンは救われる。ありがとう」

 

 ご主人様の言葉を聞いたカリーナさんは感激で泣きながら敬礼して去っていきました。カリーナさんが嬉しそうでよかったです。でも、見送るご主人様がボソッと

 

「よし。これで刺されずには済むな…」

 

 と言ったのはどういうことだったのでしょう? 変なご主人様です。

 

一〇〇式(モモ)は早急に待機室に行って、総員に警戒態勢を解くように伝えてくるんだ。後、土産でサワー会でも開いてくれ」

 

「え!? で、でも、指揮官…今、グリフィンは非常事態宣言中じゃ…」

 

「大丈夫だ。全責任は俺が取る。気にせずにみんな楽しむように言ってくれ。もちろん、一〇〇式(モモ)もな」

 

「は、はい!」

 

 そう言って一〇〇式(モモ)ちゃんは駆けていきました。市街地から出る際に、ご主人様はみんなのお土産にお菓子や飲み物をたくさん買ってくれました。あれだけあれば、盛大なサワー会が開けます。みんな楽しんで欲しいです!

 

「G41は副官を頼む。サワー会には出られないが、俺と一緒に頑張ってくれ」

 

「はい! ご主人様!」

 

 ご主人様の命令に、G41は元気よく応じます。サワー会には出られないですが、今日もまたご主人様を独り占めできます。G41はとっても嬉しいです。

 

 というわけで、G41は台所でお茶を淹れてご主人様に持っていくことにします。

 お茶を淹れて指揮官室の前に行くと、FALさんが部屋から出ていくところでした。そして、G41の進行方向と逆側に鼻歌を歌いながらスキップして行きました。どうしたんでしょう。すっごくご機嫌そうです。

 

「G41、入ります!」

 

 G41が指揮官室に入ると、ご主人様は椅子に座って、書類を見てニヤニヤしてました。何かいいことがあったのでしょうか?

 

「ご主人様、どうしたの?」

 

「いや、FALは本当にいい仕事をしてくれる。完璧の一つ上を行っているな」

 

 お陰で仕事がなくなった。ご主人様はそう言って、書類を机の上に置きました。ご主人様がここまで褒めるのは珍しいです。流石FALさんです! しかも、仕事がなくなったということは、今日もまたいっぱい遊んで貰えるかもしれません! G41は嬉しいです!

 

「というわけで、G41。おいでおいで!」

 

 ご主人様が膝をパンパンと叩きます。お膝の許可が出ました。G41は喜び勇んでご主人様のお膝に座ります。

 G41はご主人様のお膝を満喫します。G41は幸せです。お出かけも楽しいですが、こうして基地でご主人様と一緒に過ごすのも楽しいものです。

 でも、G41ばかり幸せではいけません。この数日、G41は幸せでいっぱいでした。なので、ご主人様にも幸せになって欲しいです。

 

「何をしたいですか、ご主人様?」

 

 というわけで、G41はご主人様に尋ねました。ご主人様の幸せのためなら、G41はなんでもします。お散歩でも、フリスビー遊びでも、ゲームでも何でもご主人様にお付き合いします。

 

「そうだな。G41のミミをはむはむしたいな」

 

 あう。ご主人様が不穏なことを言います。

 困りました。ご主人様はG41のミミをはむっとするつもり満々です。大ピンチです。

 というわけで、G41は両手でミミを押さえました。これでご主人様はG41のミミをはむっとできません!

 

「んー、そういうことをすると、ますますはむはむしたくなるな」

 

 ご主人様が意地悪なことを言います。でも、こうしてミミを押さえている限り、ご主人様ははむっとすることができません。ご主人様、敗れたりです! えっへん!

 

「そうだ。G41、いいものをあげよう」

 

 そう言って、ご主人様がポケットに手を入れます。何をくれるのでしょう。G41は興味津々です。

 

「はい」

 

 そう言って、ご主人様が取り出したのは赤い飴でした。これはコーラの飴です!

 わーい! G41は嬉しいです。コーラの飴は甘くてしゅわっとするのでとっても美味しいです。G41はコーラの飴が大好きです!

 

「感謝します、ご主人様! 頭撫でて?」

 

 G41は感謝の言葉を言いつつなでなでをおねだりしました。もちろん、ご主人様は優しくなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

 というわけで、G41はご主人様から飴を受け取りました。そして、その包装を両手で剥こうとして

 

 はむ。

 

「うわぁ!」

 

 素っ頓狂な声をあげてしまいました。ご主人様がG41のミミをはむっとしたのです!

 なんと、G41はご主人様の巧みな罠にかかってしまいました! さすがご主人様です!

 

 でも、これ以上はやらせません。G41は再びミミを両手で押さえました。これでご主人様はもうはむっとできません。次は飴にもほねっこにもささみジャーキーにも釣られません。ご主人様、敗れたりです。

 ちなみに、飴はご主人様が包装を剥いて食べさせてくれました。甘くて美味しいです。ご主人様は優しいです。

 

「さてさて」

 

 飴を食べ終えたところで、ご主人様が机の引き出しから何かを取り出しました。

 それはなんと猫じゃらしでした!

 

「ほら~、G41!」

 

 ご主人様は机の上で猫じゃらしをしゃかしゃかします。

 むー。G41は猫じゃらしから目を離せません。しゃかしゃか動く猫じゃらしを見ていると胸の中がうずうずします。捕まえたくなります。

 でも、我慢しないといけません。これは罠です。G41が猫じゃらしに手を出すと、ご主人様はミミをはむっとしてきます。

 

 なので、G41は我慢します。

 しゃかしゃかしゃか…

 我慢します。我慢します…

 しゃかしゃかしゃかしゃか…

 我慢します。我慢します。我慢します…

 しゃかしゃかしゃかしゃかしゃか…

 我慢します。我慢します。我慢します。我慢しま…たしっ!

 

 あ! G41は思わず手を出してしましました! しかも、外してしまいました!

 でも、ご主人様ははむっとしてきません。まだ猫じゃらしは目の前で動いています。なので、もう少したしっとしても大丈夫です。

 

 しゃかしゃかしゃか…

 たしっ!たしっ!

 しゃかしゃかしゃかしゃか…

 たしっ!たしっ!たしっ!

 

 むー、捕まりません。ご主人様は巧みに猫じゃらしを操ります。

 業を煮やしたG41は両手で挑むことにします!

 

 しゃかしゃかしゃか…

 ぱしっ!

 

 やりました! G41は見事猫じゃらしを捕まえました!

 勝利の充実感に、G41は満足して…

 

 はむ。

 

「うわぁ!」

 

 素っ頓狂な声をあげてしまいました。ご主人様がG41のミミをはむっとしたのです!

 なんと、G41はまたご主人様の罠に引っかかってしまいました!

 

 困りました。G41は連戦連敗です。

 このままではG41はまたはむっとされてしまいます。でも、ご主人様を防ぐ手段をG41は思いつきません。どうしましょう…

 

「ちょっと。仕事してるんじゃなかったの?」

 

 声がしたので部屋の入り口を見ると、FALさんが立っていました。FALさんはちょっとあきれ顔で苦笑しています。

 

「どうした、FAL? 申し継ぎ忘れか?」

 

「雑誌を忘れたから取りに来ただけ。…このネックレスに合う服を考えないといけないものね」

 

 そういうFALさんの首元には宝石のネックレスが着けられていました。きれいです! FALさんはお姫様みたいです! もしかするとご主人様から貰ったのでしょうか?

 

 G41はご主人様のお膝から降りてFALさんのところに駆けていきました。FALさんならご主人様に負けない策を思いつくかもしれないからです。

 

「? どうしたの、G41?」

 

「あのね、FALさん…」

 

 G41はFALさんに耳を貸してもらって話します。ご主人様に勝てる策はないでしょうか?

 

「ええ! 任せて、G41!」

 

 すぐに策を思いついたFALさんはそう言ってG41に策を耳打ちしてくれます。これは名案です!さすがFALさんです!

 

 というわけで作戦開始です。G41はご主人様のお膝に、ご主人様の方を向いて座りました。

 

「…そう来たか」

 

 G41の顔を見て、ご主人様は苦笑します。

 G41がご主人様の方を向いていたら、ご主人様ははむっとできません。しかも、G41はご主人様を間近で見られるので嬉しいです。まさに一石二鳥の名案です!

 

 というわけで、G41はご主人様をいっぱい見ます。ご主人様の顔が近いです。嬉しいです。

 でも、そのうちペロペロしたくなりました。というわけで、G41はご主人様の顔をぺろぺろします。ご主人様はくすぐったそうにして、G41の頭を抱いてくれました。嬉しいです。

 

「参ったよ、G41。降参だ」

 

 G41の頭を抱きかかえて、頭をなでなでしながらご主人様はそう言ってくれました。

 やりました! G41の勝利です! G41はご主人様に勝ちました! えっへん!

 

「ふふふ。邪悪な指揮官にはG41の純な視線は辛かったかしら?」

 

「それはお前も変わらないだろ?」

 

「あら? さっきまで褒めててくれたのに、急にそれ?」

 

「そういうところまで含めてお前は俺の連れ合いだってことだ」

 

 頭の上でFALさんと言葉を交わしながら、ご主人様はG41をなでなでしてくれます。嬉しいです。勝利の達成感と合わさって、G41は超嬉しいです。

 でも、今回の勝利はほとんどFALさんのお陰です。なので、次こそはG41の力でご主人様に勝ちたいと思います。ご主人様、覚悟してね? まる。



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22・G41vsご主人様(その2)

 G41は分かりました!

 敗因を分析するだに、G41は守勢に回ると弱いということが分かりました。

 積極的に攻勢に出ないとご主人様に勝つことはできません。

 

 というわけで、G41はご主人様のベッドの中で待ち構えています。

 何故かと言うと、ご主人様がやってきたら、わっ!って言って驚いて貰うためです。ご主人様もベッドの中にG41が潜んでいるとは思わないと思うので、きっとびっくりしてくれます!

 

 というわけで、G41はわくわくしながらご主人様を待ちます。もうすぐご主人様は部屋に帰ってくると思います。わくわくです。

 それにしても、ご主人様のお布団の中は居心地がいいです。ぬくぬくです。ご主人様の匂いでいっぱいです。G41は幸せです。

 ふと、眠くなってきてしまいました。ご主人様の匂いは安心するからです。

 

 でも、寝ちゃいけません。ご主人様に勝たなくてはならないのです。

 G41は頑張って起きていようとします。でも、瞼が重くなってきます。寝ちゃいけません。寝ちゃいけません。寝ちゃいけません。寝ちゃ…ZZZzzz…

 

 …なんだか、頭を撫でてくれている感触がします。ご主人様の匂いを感じた気がしました。なので、G41は撫でてくれている手にスリスリしました。

 

 あれ?あれ? G41は何をしているのでしょうか? 今どうなっているのでしょうか?

 あ! G41は慌てて身を起こします。ご主人様を待ち受けるつもりがすっかり寝てしまいました!

 

「おはよう、G41」

 

 ベッドに座ったご主人様がG41をなでなでしながらおはようの挨拶をします。

 G41はしょんぼりです。これではご主人様に勝つどころではありません。不戦敗です…

 

「せっかくだし、一緒に飯を食うか」

 

 しょんぼりするG41をなでなでしながらご主人様が言います。ご主人様とご飯を食べるのは楽しいです。なので、G41は幸せな気持ちになりました。

 

「ご主人様、ご飯作りましょうか?」

 

「まじか!? 悪いな、G41」

 

 G41の申し出にご主人様はとても喜んでくれました。この前貰ったたまねぎとかをピクルスにしているので、漬物のステーキとかが作れます。卵もたくさんあるので言うことなしです!

 というわけで、G41が作った漬物のステーキとコンビーフのソテーとオニオンスープと黒パンのご飯をご主人様と食べました。ご主人様はとても美味しいと喜んでくれて、俺もう絶対にG41と誓約する、って言ってくれました! というわけで、今日の戦いは引き分けでした!

 

 次の日です。G41は廊下の曲がり角で待ち受けています。指揮官室に行くために通る廊下です。ここをご主人様が通りかかったら、わって飛び出してびっくりして貰うのです。ご主人様もこんなところにG41が潜んでいるとは思わないと思うので、きっとびっくりしてくれます!

 

 ふと、G41の脇を走っていくものがありました。結構速いです。

 G41はついそれを追いかけてしまいました。G41は走っていくものを追いかけるのが大好きです。

 すぐに追いついて捕まえました。それは電動で動く車の玩具でした。結構かっこいいです。でも、誰のものでしょうか?

 不意に、G41の視界が真っ暗になりました。誰かが後ろからG41の目を押さえているのです。

 

「だ~れだ?」

 

 声がしました。この声と匂いと手の感触をG41が間違えるはずがありません。

 

「ご主人様!」

 

「正解」

 

 視界が晴れました。振り向くとご主人様がいてくれました。G41は嬉しいです。でも、ご主人様にばれてしまったので驚いて貰うことができません。G41は今日も不戦敗です。

 

「G41、その車が気に入ったならあげようか?」

 

「本当ですか、ご主人様!?」

 

「ああ」

 

 ご主人様はG41をなでなでしながら言ってくれました。わーい。G41はご主人様からのプレゼントが大好きです。しかも、面白そうな玩具なので超嬉しいです。

 

「じゃあ、動かし方を教えるから娯楽室に行こうか」

 

「はい! 感謝します、ご主人様!!」

 

 というわけで、G41はご主人様といっぱい遊んで貰えました。しかも、また一つ宝物が増えました。物凄く嬉しいです。というわけで、今日の戦いは引き分けでした!

 

 次の日です。こうなったら、指揮官室の机のところに隠れることにします。ご主人様が椅子に座ろうとしたら、わって飛び出してびっくりして貰うのです。ご主人様も机のところにG41が潜んでいるとは思わないと思うので、きっとびっくりしてくれます!

 

 というわけで、G41はご主人様の先回りをして指揮官室に行きました。すると、副官の一〇〇式(モモ)ちゃんがいました。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、机の下に隠れてるから黙っててね?」

 

「う、うん…」

 

 G41のお願いを、一〇〇式(モモ)ちゃんは何も言わずに聞いてくれました。流石一〇〇式(モモ)ちゃんです。G41はそんな一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。

 というわけで、G41は机の陰に隠れました。きっと今日こそ勝って見せます。わくわく。

 

「あの…G41ちゃん、み…」

 

「おはよう、一〇〇式(モモ)。G41がどうかした…ん?」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが何か言おうとしたときにご主人様が来てしまいました。しかも何か怪しんでいます。ぎくっ。もしかしてバレてしまったのでしょうか? なんででしょうか?

 

『G41ちゃん! ミミが出てるよ!』

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが秘匿回線でG41に耳打ちしました。やばいです! G41はさっとミミを隠しました。ミミが出ていたとは盲点でした。やばいです。ご主人様にバレてしまいます。

 

「し、指揮官。ほ、本日はとっても良いお日柄で…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが頑張ってご主人様の気を逸らそうとしてくれます。流石一〇〇式(モモ)ちゃんです。G41はそんな一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。

 

「いや、外大雨だったぞ? 崩壊液濃度は凄く薄いようだから被害はないだろうが」

 

「…あう」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが空回ってしまいました。かわいいです。でも、これではご主人様は気を逸らしてくれないかもしれません。万事休すです!

 

「全く、一〇〇式(モモ)は可愛いな」

 

 そう言って、ご主人様は無警戒に机の方にやってきます。やりました! 一〇〇式(モモ)ちゃんの可愛さでご主人様は気を逸らされてしまいました! 流石一〇〇式(モモ)ちゃんです!

 

 ご主人様はどんどん近づいてきています。今がチャンスです! G41は机の陰からばっと飛び出して言いました!

 

「ご主人様、わっ!」

 

「うわあ! びっくりした~」

 

 やりました! ご主人様が驚いてくれました! G41の大勝利です! G41は初めてご主人様に勝ちました! 今日はG41の記念日です!

 

一〇〇式(モモ)ちゃ~ん!」

 

 G41はあまりの嬉しさに協力してくれた一〇〇式(モモ)ちゃんに駆け寄って抱き着きました。一〇〇式(モモ)ちゃんあっての勝利でした。これぞ、一〇〇式隊の絆ぱわーです!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、やったよ!」

 

「うん! やったね、G41ちゃん!」

 

 G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは勝利の喜びを分かち合いました。一〇〇式(モモ)ちゃんはちっとも事情が分かってないにも拘らず我が事のように喜んでくれました。流石一〇〇式(モモ)ちゃんです。G41はそんな一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。

 

「全く、お前達はどうしてそんなに可愛いんだ」

 

 ご主人様がG41と一〇〇式(モモ)ちゃんを抱き締めて、超なでなでしてくれました。G41は嬉しいです。一〇〇式(モモ)ちゃんも嬉しそうです。三人は相思相愛です。えっへん!

 

 というわけで、この日はG41の大切な記念日になりました。今日もまた栄光の一〇〇式隊に勝利の1ページが加えられたのでした。とっても誇らしいです。G41は今日までも、これからも、その一員として一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんと一緒に頑張っていきたいと思います! まる!



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23・エイプリルフール大作戦!

 4月1日です! 全てのウソが許される万愚節です!

 この日、G41達戦術人形には大切な緊急任務が発生します。それがエイプリルフール大作戦です!

 

 ご主人様は戦術人形の嘘を物凄く嫌います。下手に嘘をつくと解体処分も辞さない勢いです。

 何故なら、報告の虚偽を許すと作戦が成り立たないからです。なので、G41もステンちゃん達も絶対にご主人様に嘘はつきません。FALさんでさえご主人様に嘘を言うことはないです。

 

 でも、この日は嘘が許されます。なので、今日は嘘をついて盛大にご主人様を困らせるべき日なのです。

 でも、みんなで嘘をついたりするとご主人様も辟易とする上に、効果が薄まります。なので、代表で誰かが嘘をついて、視覚と聴覚を共有して、慌てるご主人様を楽しむのです。

 

 そして、今年の嘘つき役はG41です! くじ引きでそう決まりました! えっへん!

 

 ちなみに、去年は一〇〇式(モモ)ちゃんが嘘つき役をやって、数秒でばれてしまいました。一〇〇式(モモ)ちゃんは嘘が苦手なので仕方ないです。なので、今年のG41はみんなの期待を背負って頑張ります!

 

「ご主人様~!」

 

「おお、G41! どうしたんだ?」

 

 G41が近づいていくと、ご主人様は笑顔で迎えてくれます。そして、頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。でも、幸せに囚われてはいけません。G41には重要な使命があるのです。みんなも楽しみにして待っています。というわけで、G41はFALさんから教えられた嘘を言います。

 

「あのね、ご主人様。G41ね、好きな人ができたの!」

 

「そうか~、好きな人ができたのか~」

 

 G41の嘘を聞いたご主人様は穏やかな口調でそう言いました。G41と視覚を共有しているFALさん、及び他のみんなも首を傾げます。なんだか、ご主人様の反応が薄いです。FALさんが言うには物凄く驚くはずだったのですが…

 

「好きな人ができた………………………だとぉ!?!?!?!?」

 

 そう思っていたら、いきなりご主人様が絶叫しました。物凄くびっくりです。ご主人様が物凄く驚いたので作戦は大成功です。

 

「じ、G41!? そ、それはどういうことなんだ!? く、詳しいことを聞かせて貰うぞ!?」

 

「は、はい、ご主人様」

 

 ご主人様に両肩を掴まれて、鬼気迫る表情で言われたのでG41は戸惑いながら頷きました。怖いです。ご主人様を驚かせるのには成功しましたが、何だか変な方向に話が進んでます。

 G41の窮状を察したFALさんが腰を上げました。流石、FALさんです。アフターケアもばっちりです! FALさんが来てくれれば何の問題もありません!

 

「まずはだ、G41… そいつは誰なんだ?」

 

 でも、FALさんが来る前にご主人様から質問をぶつけられてしまいました。あう。ご主人様の雰囲気がいつもと違ってちょっと怖いです。怒られてしまうのでしょうか? でも、最悪正直に言えばご主人様は許してくれると思います。なので、今はFALさんの言うプラン通りに答えます。

 

「ごめんなさい、ご主人様。それは言えません」

 

「そ、そうか…」

 

 G41の言葉にご主人様はあっさり引き下がりました。流石、FALさんの読み通りです! ご主人様はG41達戦術人形の自主性を重んじるので、任務以外のことには強く追及はしないのです。

 

「もう一つ聞くぞ? …そいつと俺、どっちが好きなんだ?」

 

 ご主人様の言葉にG41は困ってしまいました。

 この質問が来ること自体はFALさんの読み通りでした。でも、答えはG41の好きに言っていいとのことでした。FALさんはG41がご主人様より好きです、って言えないことを理解してくれているからです。

 

「はい! ご主人様と同じぐらい好きです!」

 

 なので、G41はつける限りの精一杯の嘘をつきました。G41はご主人様より好きな人はいないのでそれより好きな人がいる、という嘘は絶対につけないですが、FALさんや一〇〇式(モモ)ちゃんはご主人様に近いぐらい好きなので、そう言ったのです。

 

「そ、そうなのか…」

 

 でも、ご主人様は物凄くショックを受けたみたいです。視覚を共有しているみんながどう思っているかは知りませんが、G41はあんまり笑えないです。ご主人様の顔色が目に見えて悪いからです。

 でも、でもでもG41の心は喜んでいます。嬉しいです。ご主人様がやきもちを妬いてくれているみたいで嬉しいです。G41は悪い子です。でも嬉しいです。

 

「指揮官。どうしたのよ、G41をそんな目で見て」

 

 そうこうしているうちにFALさんがやってきました。G41はほっとしました。料理以外のことなら、FALさんに任せておけば何とかしてくれます。

 

「おお、FALか。いいところに来た。…G41は下がってくれ」

 

 ご主人様にそう言われたので、G41は部屋から出ました。でも、G41はFALさんとも視覚と聴覚を共有しているのでやり取りがわかります。ちょっと気になるので、部屋のドアの前で待つことにしました。

 

『FAL。大至急、G41と接触した基地の男のリストを上げろ。一時間以内にやれ』

 

 あう。いきなりご主人様が無茶苦茶なことを言います。FALさんもまずい、思っているみたいです。舌打ちが聞こえました。

 

『…無茶苦茶言わないでよ、指揮官。それに、G41に接した人とか整備班の人間しかいないし…』

 

『…そうだな。…よし、リストアップした。すぐにそいつらを呼び出せ。非番だろうが何だろうが関係ない。指揮官命令だ』

 

 ご主人様、早いです。しかも言っていることが無茶苦茶です。あう。なんだか、話が物凄く無茶苦茶な方向に突き進んでいます。

 

『落ち着いてよ、指揮官』

 

『これが落ち着いていられるか!? 俺のG41に色目を使いやがって! 生きて帰れると思うな!!』

 

『ちょっと、指揮官!? それ何よ!?』

 

『西の野郎が開発した、歩兵携行用対要塞光子砲だ。G41を嫁に欲しかったら、これぐらい受けて見せろ!』

 

『基地を吹っ飛ばすつもりなの!?』

 

 あうう。もう収集がつきません。こんなご主人様は初めてです。FALさんでさえ手に負えない状況です。もうどうしようもありません。

 

「ごめんなさい、ご主人様!」

 

「「G41!?」」

 

 部屋に飛び込んだG41は驚く二人の前で事情を説明しました。全部、エイプリルフール大作戦でしたと告白しました。

 

「そ、そうだったのか…」

 

 そう言って、ご主人様は落ち着いてくれて、手にしたアサルトキャノンを床においてくれました。よかったです。大惨事は免れました。

 

「もう、指揮官。今日の日付を考えてよ」

 

「うるせえ。本気でびっくりしただろうが」

 

 ほっとしたFALさんとご主人様が文句を言い合います。よかったです。いつものご主人様が戻ってきてくれました。よかったです。G41はご主人様に抱き着きました。嬉しかったからです。

 

「でも、ご主人様! G41はご主人様がやきもちを妬いてくれて、嬉しかったです!」

 

 G41は自分の心を正直に言いました。ご主人様がG41のことでやきもちを妬いて慌ててくれているのを見て、G41は嬉しかったです。G41は悪い子です。でも、本当に嬉しかったです。

 

「全く…そんな可愛いこと言われたら、許すしかないだろ?」

 

 そう言って、ご主人様はG41を抱きしめて頭をなでなでしてくれました。気持ちいいです。G41は嬉しいです。G41はご主人様が大好きです。ご主人様もG41が大好きです。二人は超相思相愛です。えっへん!

 

「G41? G41は誰が一番好きなんだ?」

 

「はい! もちろん、ご主人様です!」

 

 ご主人様の問いに、G41は今度こそ正直に答えました。G41にとって、ご主人様ほど好きな人がいるはずがありません。そう言うと、ご主人様がなでなでしてくれます。嬉しいです。

 

「G41、もう一回」

 

「はい! G41は、ご主人様が一番大好きです!」

 

「もう一回」

 

「はい! G41は、この世界で一番ご主人様が大好きです!」

 

「全くもう、ばかっぷるね~」

 

 ご主人様とG41のやり取りを聞いていたFALさんが苦笑して言いました。それはそうです。G41はご主人様が一番大好きなのです!!

 

 というわけで、エイプリルフール大作戦は終わりました。ご主人様は物凄く驚いてくれましたし、G41はご主人様の愛情を再確認できました。そして、ご主人様の慌てるところが見えたので他のみんなも多分大満足です。なので、エイプリルフール大作戦は大成功した! まる!



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24・G41と新しいお友達(その1)

 


 グリフィン本社から正式に非常事態宣言が解除された旨が示達されました。警戒レベルも通常まで下げられて、ようやく平穏な日々が戻りました。

 最も、この基地はご主人様が早い段階で警戒態勢を解いていたので、お気楽そのものでした。

 

 話によると、敵からの襲撃が一昨日あたりから完全になくなったそうなのです。

 きっとご主人様が何かしたのでしょうが、G41には何をしたのか皆目見当もつきません。さすがはご主人様です!

 

 というわけで、訓練を終えたG41はコーラとぽてちとクッションを持って、宿舎の部屋の奥にある倉庫に向かいます。

 そこの荷物を置いてある棚の隙間に、G41の秘密基地があります。狭い場所に茣蓙が敷いているだけですが、G41はそこがお気に入りです。G41は狭い場所が大好きです。

 

 ちなみに、そこに入ってころころしたりするのが好きなのはG41だけです。一〇〇式(モモ)ちゃんを初めとする他の娘達は、狭い場所はあまり好きではないみたいです。特にFALさんはかなり嫌いらしいので絶対に入ってくれません。しょんぼりです。

 

 というわけで、G41は今日も一人でまるまるしようと思います。このクッションはご主人様がくれたもので、とても柔らかくて気持ちいいものです。狭い場所で、このクッションでまるまるするのがG41は大好きです。

 

 ふと、人の気配を感じました。G41が秘密基地を覗き込んでみると、誰かが先に寝ていました。

 

「暗くて狭くて…いい感じかも…」

 

 それが誰かすぐに分かりました。TMPちゃんです!

 TMPちゃんは最近この基地に来たばかりの戦術人形で、一〇〇式隊の新入隊員でもあります。最近、G41はTMPちゃんの訓練を見てあげていることが多いので、仲良しです。

 

「TMPちゃん!」

 

「きゃっ! じ、G41さん…!?」

 

 驚くTMPちゃんのところにG41も入っていきます。幸い秘密基地は二人でも十分入れるスペースがあるので問題なしです。

 

「あの…もしかして、ここ…」

 

「うん! G41の秘密基地!」

 

「うわわわわわ! ご、ごめんなさい!!」

 

「ううん、いいの!」

 

 謝るTMPちゃんにG41は笑顔で言いました。どうもTMPちゃんは知らずにここに入り込んでしまったみたいです。でも、G41は構いません。秘密基地の良さの分かるお友達ができて、G41は嬉しいです。それにTMPちゃんは後輩なので優しくしてあげないといけません、G41はいい先輩です。えっへん!

 

「じゃあね、一緒にコーラとぽてちでまるまるしよう!」

 

「は、はい! あ、ありがとうございます!」

 

 というわけで、G41とTMPちゃんはコーラを飲んだり、ぽてちを摘んだりしながら秘密基地で丸くなって過ごしました。交わす言葉はないですが、なんだか満ち足りた気持ちになります。狭いところでまるまるするのは気持ちいいものです。TMPちゃんも気持ちよさそうです。二人は相思相愛です! えっへん!

 

 ふと、TMPちゃんがG41の敷いているクッションを見ていました。気持ちよさそう、と思っているのかもしれません。

 

「TMPちゃん。よかったら、クッション使ってみる?」

 

 というわけで、G41はクッションを差し出してみました。秘密基地の良さとともにこのクッションの良さも共有できたらいいな、と思うからです。

 

「え!? い、いいんですか!?」

 

「うん。寝てみて?」

 

「は、はい!」

 

 G41からクッションを受け取ったTMPちゃんはそっと顔の下に敷いて丸くなりました。ふわっと顔がクッションに沈みました。

 

「あっ! 物凄く柔らかくて、いい感じです!」

 

「でしょ~?」

 

 TMPちゃんが感激して言うので、G41は嬉しくなりました。TMPちゃんもクッションの良さを分かってくれました。今度ご主人様に頼んで、TMPちゃん用のものも貰おうと思います。

 

 しばらくすると、TMPちゃんの寝息が聞こえてきました。クッションが気持ちよかったので、すぐに寝付いてしまったのです。

 きっと疲れているんだと思います。一〇〇式隊は最精鋭部隊であるので、新入りのTMPちゃんはみんなについて行くために連日訓練を続けています。その疲れが出たのだと思うので、ゆっくり休んで欲しいです。

 

 でも、G41は困りました。このままではG41がクッションを使えません。かといって、起こしたりクッションを取り返したりすると可哀想です。どうしましょう。

 

 いいことを思いつきました!

 

 G41はTMPちゃんのお尻を枕にすることにしました。早速頭を置いてみます。なんだか柔らかくていい感じです。G41は満足です。

 ふと、目の前で何かが動いています。それはTMPちゃんの尻尾でした。黒くてふわふわしてて、可愛いです。

 目の前で尻尾が揺れています。G41はなんとなくそれを視線で追ってみます。そして、目の前にそれが来たとき…

 

 はむっ。

 

 あ。思わずはむっとしてしまいました!

 

「きゃっ!」

 

 TMPちゃんが飛び起きてしまいました。きっと、TMPちゃんは尻尾をはむっとされるとびっくりするのでしょう。G41のミミみたいです。

 

「あ、あの…尻尾の処理は自分でやりますから…」

 

「ごめんね、TMPちゃん…」

 

 起きたTMPちゃんにG41は謝ります。なんだか、ご主人様みたいなことをしてしまいました。G41は反省です。

 

「なんだか騒がしいと思ったら、二人で入ってたのね?」

 

 入り口から声が聞こえました。見ると、FALさんが覗き込んでいました。

 

「FALさん!」

 

「うわわわっ! ご、ごめんなさい!」

 

「別に謝ることじゃないわよ。それより、一〇〇式(モモ)が中華風パイを焼いてくれたんだけど、一緒に食べない?」

 

 FALさんの言葉にG41は嬉しくなりました。一〇〇式(モモ)ちゃんのおやつは大好きです。G41はうきうきです。TMPちゃんも嬉しそうです。

 というわけで、G41とTMPちゃんはすぐに秘密基地から出ました。部屋からは良い匂いがしています。G41はTMPちゃんの手を引いて、すぐにでも駆けて行こうとしました。

 

「こらこら。おやつの前に服装を直しなさい。狭いところで丸くなってたから、乱れてるでしょ?」

 

 FALさんから待ての合図があったので待つことにしました。G41達は待てもできるいい子です。

 

「おいで、直してあげるから。まずはTMPからね」

 

「は、はい!」

 

 TMPちゃんの服装を直すFALさんを、G41は嬉しい気持ちで見ていました。メンバーは変わっても、一〇〇式隊の絆は変わりません。みんな仲良しです!

 というわけで、G41達はみんなでお茶とおやつを楽しみました! おいしくて楽しくて、今日もとっても幸せでした! まる。



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25・G41と新しいお友達(その2)

 ある日の事です。基地から少し離れた場所を、珍しく一〇〇式隊で巡回しているときのことでした。

 凄い銃声がするので駆け付けると、よく分からない黒ずくめの集団に出くわしました。FALさんが即刻攻撃を開始したので、G41達もそれに続いて攻撃を仕掛けました。

 FALさんの曰く、こいつらが今グリフィンを騒がせている敵らしいです。

 むー。G41はそれを聞いてやる気が出ました。容赦も遠慮もなく撃ち倒していきます。こいつらのせいでG41は物凄く切ない思いをしました。その悲しみを倍返しします!

 

 敵の数は物凄く多かったですが、最精鋭である一〇〇式隊の敵ではありませんでした。特にFALさんのグレネードは物凄い勢いで敵を薙ぎ倒しました。完全に今日のMVPです。流石FALさんです!

 

「さて、そこに隠れてるの。出てきてくれない?」

 

 敵を全部倒した後で、FALさんが瓦礫に向かって銃を向けて言います。G41もそこに何かが潜んでいるのを感知しています。敵ならば倒さなければいけません。銃を向けます。

 

「わ、分かったから、撃たないでよ!?」

 

 そう言って出てきたのは意外な人形でした。あれはデストロイヤーっていう鉄血のBOSS級の娘です。

 なんだかボロボロな様子で、戦闘力はなさそうです。でも、油断をしてはいけません。G41は銃を構えて、動態センサーを最大レベルで稼働しています。おかしな動きをすれば一撃で頭を撃ち抜けます。

 

「…どうして貴女がこんなところにいるの?」

 

 そう言ってFALさんが銃を下ろします。一〇〇式(モモ)ちゃんやFive-sevenさんやTMPちゃんもそれに倣います。でも、G41は銃を下ろしません。警戒する人形は一人は必要だからです。

 

「奴らに襲われたのよ!! 部隊は全滅するし、弾は切れるし… 仕方なく逃げたのよ!!」

 

 デストロイヤーちゃんは半泣きでそう言います。後でFALさんに聞いたのですが、例の敵は1000人単位で襲ってくるという非常に恐ろしい連中らしいです。今回G41達が戦ったのは、デストロイヤーちゃん達が頑張って減らした残り、ということでしょう。

 

「それはご愁傷様ね」

 

 Five-sevenさんがため息交じりにそう言います。FALさんとFive-sevenさんに敵意がないので、デストロイヤーちゃんをここで撃つ必要はなさそうです。G41は銃を下ろしました。

 

「あ、あの…どうするんですか?」

 

「とりあえず連行しよう。…ついてきて」

 

 TMPちゃんの問いに、一〇〇式(モモ)ちゃんが答えて、デストロイヤーちゃんに銃剣を突きつけます。

 

「わ、分かったわよ!」

 

 デストロイヤーちゃんは両手を上げて従います。というわけで、G41達はデストロイヤーちゃんを連行して基地に帰り、ご主人様のところに行きました。

 

「…また妙なもんが釣れたな」

 

 ご主人様は呆れたように言いました。どうするのか、みんなで固唾を呑んで注視していましたが、とりあえずいきなり解体処分とかはなさそうです。

 

「とりあえず、どうするの、これ?」

 

「しばらく自習室に放り込んでおけ。見張りは一〇〇式(モモ)とG41に任せる」

 

 FALさんの問いに、ご主人様はそう答えました。確かに鉄血のBOSS級を見張るのですから、最精鋭の一〇〇式(モモ)ちゃんやG41が見張るのがいいと思います。

 というわけで、G41達はデストロイヤーちゃんを自習室に連れて行きました。デストロイヤーちゃんは怖がって黙っています。でも、少なくともG41は今のところデストロイヤーちゃんを撃つつもりはありません。ご主人様に危害を加える可能性は低いですし、過去のことは全て戦場の事と割り切っているからです。一〇〇式(モモ)ちゃんもどうもそういうスタンスのようです。

 

「とりあえず座って。手当してあげるから」

 

「え!? い、いらないわよ!?」

 

「駄目。人工血液が流れすぎたら、運動機能停止しちゃうから」

 

 戸惑うデストロイヤーちゃんにそう言って、一〇〇式(モモ)ちゃんは手当を開始します。損壊個所に応急修理用の傷パッドを貼っていくのです。全身傷だらけなので、結構いっぱい貼らないといけません。G41もそれをお手伝いました。

 

「はい。これでよし」

 

「…べ、別に、感謝とかしないんだからね!?」

 

 応急処置が終わると、デストロイヤーちゃんはそう言って、顔を赤くしました。怒っているのかもしれませんが、仕方ありません。一〇〇式(モモ)ちゃんの処置は適切だと思います。

 

「応急処置も終わったし、ちょっと遊ぼう?」

 

 そう言って、一〇〇式(モモ)ちゃんはポケットから布でできた小さな玉を取り出しました。あれはお手玉です。

 

「な、なによ、それ!?」

 

「お手玉。こうして使うんだよ」

 

 そう言って、一〇〇式(モモ)ちゃんは玉二つでお手玉します。一〇〇式(モモ)ちゃんの手の上で玉が躍り、一定の間隔で見事なアーチを描きます。流石、一〇〇式(モモ)ちゃんは上手です。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんのお手玉を見るのが大好きです。

 

「…へぇ…」

 

 デストロイヤーちゃんもその様子をまじまじと見つめます。なんだか珍しそうな目です。きっと、お手玉とか見たのは初めてなのでしょう。

 

「はい、デストロイヤーちゃんの番」

 

 そう言って、一〇〇式(モモ)ちゃんはお手玉をデストロイヤーちゃんに投げて渡しました。

 

「え、ええ!?」

 

 それを受け取ったデストロイヤーちゃんは戸惑いながらも、それでも見様見真似でお手玉しようとします。ぎごちない動きですが、数回お手玉はアーチを描きました。

 

「すごーい、デストロイヤーちゃん!」

 

 G41は感心しました。初めてでお手玉を数回できるのは大したものだと思いました。G41も初めての時は全然できなかったのです。

 

「す、凄いの…?」

 

「うん。上手だよ、デストロイヤーちゃん」

 

 戸惑うデストロイヤーちゃんを一〇〇式(モモ)ちゃんが褒めてあげます。すると、デストロイヤーちゃんの表情に喜色が宿りました。笑ってくれました。

 

「ま、まあ、私は鉄血のハイエンドモデルだもの! 貴女達とは出来が違うわ!」

 

「うん! 凄いんだねー」

 

 ふんぞり返るデストロイヤーちゃんにG41は素直に感心します。鉄血のBOSS級はグリフィンの戦術人形に比べて性能はかなり上です。お手玉とかが上手でも不思議じゃありません。

 

「じゃあ、次はもっと綺麗にできるよね?」

 

「ええ! 任せておきなさい!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉に、デストロイヤーちゃんは意気揚々とお手玉を握りました。そして、お手玉を宙に躍らせます。

 時々、力が入って失敗することはあるものの、かなり早い段階でデストロイヤーちゃんはお手玉のコツを掴んだみたいです。しばらくすると見事にお手玉でアーチを描けるようになりました。

 

「すごーい!」

 

 G41が素直に感心すると、

 

「すごいでしょ!」

 

 デストロイヤーちゃんは素直に喜んでくれます。デストロイヤーちゃんは褒めてもらうのが好きみたいです。なんだか、G41みたいです。そこら辺はグリフィンの戦術人形も鉄血の機械人形もあんまり変わらないのかもしれません。

 

「じゃあ、次は3つで行ってみようか」

 

「ええ! やってやるわ!」

 

「がんばれー、デストロイヤーちゃん!」

 

 G41の応援を受けて、デストロイヤーちゃんが意気揚々と一〇〇式(モモ)ちゃんから受け取った3つのお手玉を構えた時でした。

 

『交渉は成立した。とっとと出て失せろ、デストロイヤー』

 

 通信モジュールを通じてご主人様の声が聞こえました。G41達は思わず顔を見合わせました。この短時間で鉄血と話をつけたのでしょうか。どうやったのでしょう? ご主人様のことなので、嘘をついているとは思えないのですが…

 

「え!? で、でも…」

 

『なんだ? 俺のために尽くしてくれるんなら基地に留めてもいいが?』

 

「そ、そんなわけないでしょ!?」

 

『なら、とっとと失せろ』

 

 ご主人様の言葉に、デストロイヤーちゃんは助けを求めるような視線で、G41達を見ます。でも、こればかりはどうしようもありません。一〇〇式(モモ)ちゃんは首を横に振りました。ご主人様の命令である以上、G41達に異論は許されないのです。

 

「…ゲートまで、送るよ」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉にデストロイヤーちゃんは答えませんでした。でも、逆らったりせずに従って歩いてくれました。G41達の立場を理解してくれているのだと思います。

 

 ゲートの前で、G41と一〇〇式(モモ)ちゃん、そしてデストロイヤーちゃんはしばし黙って見つめあいました。

 なんだか、デストロイヤーちゃんは名残惜しそうです。G41達も名残惜しいとは思います。短い間でしたが心が通じ合ったからです。そして、デストロイヤーちゃんはそういう経験をしたことが少ないのかもしれません。だから、残念に思うのかもしれません。

 

「デストロイヤーちゃん。これあげるね」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんは微笑みながらデストロイヤーちゃんに近づいていきました。そして、お手玉を4つ手渡しました。

 

「これ…!?」

 

「4つでできるようになったら、勝負しよう。誰が一番長くできるか」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉に、デストロイヤーちゃんは感極まった顔をして、そして、お手玉をひったくるように受け取って、背中を向けます。そして、歩いていきます。自分の住むべき場所へ。一〇〇式(モモ)ちゃんとG41は黙って、その姿を見つめていました。後姿が小さくなっていきます。

 

「あ、あんた達!」

 

 しばらくして、デストロイヤーちゃんが振り向いて言いました。

 

「せ、戦場であったら、い、一応生かしてはおいてあげるんだから!」

 

「うん! でも、出来たら銃の撃ちあいはしない方がいいね!」

 

 デストロイヤーちゃんの言葉に、一〇〇式(モモ)ちゃんがそう答えます。デストロイヤーちゃんはしばらく一〇〇式(モモ)ちゃんとG41を見つめて、やがて背を向けて走って行きました。G41達はその姿が見えなくなるまで見送りました。

 

「…いつか、戦いが終わって、仲良くできたらいいね」

 

「うん!」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉に、G41は同意しました。せっかく心が通じ合ったのです。戦ったりせずに友達でいる方がいいです。

 みんなが仲良く手を取り合える。そんな未来が来るかどうか、G41はわかりません。でも、そんな日が来ることを信じて、G41は生きていこうと思います。

 デストロイヤーちゃん、お手玉負けないからね! まる。



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26・G41と仲間達(その3)

 G41はTMPちゃんと廊下を歩いています。訓練を終えてお腹が空いたので、キッチンで何か作って食べようと思うのです。冷凍うどんと玉ねぎとニンニクぐらいはあったと思うので、ペペロンチーノ風焼うどんにして食べようと思います。

 

「あの…本当にあんな感じでよかったんですか?」

 

 TMPちゃんがさっきの訓練を思い出して言います。

 今日G41達がやったのは突入制圧プログラムによる模擬戦です。G41がバックアップで、TMPちゃんがフロントです。

 

 G41の定めた今日の重点項目は勇気を出して突撃、です。

 

 TMPちゃんは身のこなしだけなら一〇〇式(モモ)ちゃんと比べても上回っていると言えますが、気が弱いので突っ込むべきところで二の足を踏む時があります。そして、敵の抵抗を許して怪我をするのです。

 なので、今日は勇気をもって突撃してもらうことにしました。もちろんG41が動態センサーで敵の動きを見極め、突撃の指示は出します。そして、援護射撃も見事にこなしました。G41は精密射撃は得意です。えっへん!

 

「うん! いつもより、怪我少なかったでしょ?」

 

「そういえば…いい感じだった気がします!」

 

 G41の言葉にTMPちゃんは笑ってくれました。G41も笑顔になりました。TMPちゃんの信頼を感じたからです。よかったです。少しだけFALさんに近づけたのかもしれません。G41はFALさんみたいに素敵で立派な先輩になりたいのです。

 

 ふと、目の前から誰かが歩いてきています。ご主人様です! 嬉しくなったので、G41はご主人様のところに駆けていきました。

 

「ご主人様ー!」

 

「おっ、G41とTMP。訓練は終わったのか?」

 

 ご主人様は突撃してきたG41をやんわりと受け止めて言います。今日もご主人様がいます。G41はそれだけで幸せな気持ちでいっぱいになりました。

 

「うん! 早く褒めて褒めて?」

 

「ああ。G41は偉いな。可愛いな」

 

 頭を差し出すと、ご主人様は優しく撫でてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

「休憩したら、一応応急待機に移ってくれ。ないとは思うが、何かあったらよろしく頼むな」

 

「はい! G41にお任せください、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉に、G41は喜んで応じます。今日の応急対処隊はFALさんを除く一〇〇式隊です。FALさんがいないところはG36ちゃんが臨時に加わって埋めています。

 FALさんは今秘密任務を受けて動いているみたいです。流石FALさんです。G41もいつかFALさんみたいにかっこよく秘密任務をこなしてみせたいです。FALさんはG41の憧れです!

 

 ご主人様とお別れした後、TMPちゃんの方を見ると、なんだか呆けた様子で立ち尽くしていました。G41が近づいても反応がありません。視線が遠いです。どうしたのでしょうか?

 

「指揮官に撫でてもらえたら…」

 

 そして、夢見心地でそう言います。

 G41は首を傾げました。ご主人様に撫でてもらうのはそんなに難しいことではないと思うのですが。

 ご主人様は可愛い戦術人形が大好きです。なので、TMPちゃんが撫でてっておねだりすればすぐにでも撫でてもらえるはずです。おねだりすればいいと思うのですが…

 

「ご主人様に撫でて欲しいの?」

 

「きゃっ! G41さん!? き、聞こえてましたか…?」

 

「うん」

 

 G41が頷くと、TMPちゃんは恥ずかしそうにしました。

 ぴこん! G41は分かりました! 謎は全て解けました!

 TMPちゃんは奥手なのでおねだりが恥ずかしいのです! これはG41が一肌脱ぐしかありません!

 

「TMPちゃん、ちょっと待っててね?」

 

「は、はい…」

 

 TMPちゃんにそう言って、G41はご主人様をダッシュで追いかけました。すぐにご主人様に追いつきました。

 

「ご主人様ー!」

 

「おっ、G41。どうしたんだ?」

 

 ご主人様は振り向いて、突撃したG41を優しく受け止めて頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。でも、幸せに囚われてはいけません。G41はご主人様にお願いがあるのです。

 

「ご主人様。明日の副官はTMPちゃんにしてあげてください!」

 

 G41はご主人様にお願いします。TMPちゃんが副官になれば、ご主人様は可愛いTMPちゃんを撫でたくなっておねだりなしでも撫でてあげることだと思います。これは名案です!

 ちなみに、明日の副官はG41の予定でした。もちろん、G41は副官をしたいです。ご主人様を独り占めしたいです。でも、可愛い後輩のTMPちゃんのためです。G41は涙を呑んで譲ることにします。G41はいい先輩です! えっへん!

 

「ああ、分かった。…TMPは副官初めてだから、よく仕事を教えておいてくれな?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様はG41のお願いを聞いてくれました。よかったです。

 というわけで、G41はTMPちゃんのところに戻りました。TMPちゃんに副官業務を教えなくてはならないからです。ご主人様の期待に応えるべく頑張ります!

 

「TMPちゃん! 明日副官だよ!」

 

「ええええ!? うわわわわ! 早く隠れないと…」

 

「こら、TMPちゃん」

 

 逃げようとするTMPちゃんを抱えて、キッチンに連行します。

 TMPちゃんは副官が初めてなので逃げたくなる気持ちは分かります。でも、逃げてはいけません。撫でてもらえません。虎穴に入らざれば虎子を得ず、とFALさんも言いました。ここで逃げてはいけません。今日の重点項目は勇気を出して突撃、です

 

「というわけで、タンポポ茶の入れ方を覚えてね?」

 

 というわけで、G41は愛用のフライパンとざる。そして、裏のプランターから植えているタンポポを幾つか採ってきました。副官業務で一番重要なのは美味しいお茶を淹れることです。他は一日の流れを覚えておけばすぐにできますが、お茶の淹れ方だけは訓練しておかないと無理です。

 というわけで、まずはG41が実践してやり方を見せます。して見せて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かず、とFALさんから習いました。その通りに実践します。

 

 幸い、TMPちゃんはこういうことが得意なみたいで、すぐにお茶の淹れ方を覚えました。

 

「すごーい、TMPちゃん!」

 

 G41は素直に感心しました。これならご主人様も満足します。

 

「あっ、なんか、いい感じかも」

 

 TMPちゃんも自分の淹れたお茶を見て、自信を持ったみたいです。やりました。これで第一関門を突破です! G41ちゃんとTMPちゃんの大勝利です!

 

 というわけで、後はお茶を出す訓練です。G41とTMPちゃんは指揮官室に行きました。この時間、ご主人様は副官の一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒にお出かけ中です。なので、実際の部屋を使って予行演習をするのです。

 

 指揮官室に来ました。案の定、ご主人様はいません。

 というわけで、G41はご主人様の椅子に座りました。G41はご主人様役です! えっへん!

 

「し、指揮官! TMP、は、入ります!」

 

「ああ、TMP。入ってくれ」

 

 こんこんとノックするTMPちゃんに、G41はご主人様の口調を真似して言います。G41はよく副官をしているので、ご主人様の物まねが上手いのです!

 

 TMPちゃんがおどおどしながら、部屋に入ってきます。何だか可愛いです。最初のうちは一〇〇式(モモ)ちゃんもそんな感じだったらしいです。一〇〇式(モモ)ちゃんに似ていると、ご主人様は好感を持ってくれるはずです。撫でられ率アップです!

 

「し、指揮官、お、おはうございます!」

 

「おはよう、TMP。お茶はそこに置いてくれ」

 

 挨拶するTMPちゃんにG41はご主人様の真似をしたまま言います。我ながら上手です。何だか楽しくなってきました。

 

「は、はい。失礼します…」

 

「ああ。TMPは今日も可愛いなぁ」

 

「可愛いって! そ、そんな…」

 

 G41がご主人様の真似をして褒めると、TMPちゃんは慌てて顔を真っ赤にしました。

 その瞬間、カップを持つ手が滑ってしまいました。ガチャン! カップは机の上に転がりお茶をぶちまけてしまいました!

 

 やばいです! G41とTMPちゃんの顔が真っ青になりました。机の上が滅茶苦茶です。大事そうな書類がびちゃびちゃになりました!

 

「じ、G41さん!」

 

「慌てちゃダメだよ、TMPちゃん!」

 

 半泣きのTMPちゃんに、G41は言います。こういう時こそ慌ててはいけません。こんなこともあろうかと、G41はちゃんとダスターを持ってきています。綺麗に拭いたら、元通りになります。

 というわけで、G41は頑張って机を拭きます。机の上は何とか綺麗になりました。あとは書類です。G41はもう一枚のダスターで書類を拭きます。拭けばきっと書類も綺麗に…びりっ。

 あ! 書類が破けてしまいました! G41は内心で大慌てです。TMPちゃんは今にも泣きそうです。どうしましょう。とんでもないことになってしまいました!!

 

「あれ? どうしたんだ、G41にTMP?」

 

 そのタイミングでご主人様が戻ってきてしまいました! 超大ピンチです!

 

「し、指揮官…!」

 

 TMPちゃんがご主人様を見て泣きそうになります。こうなっては仕方ありません。G41はご主人様の前に出て謝ります。

 

「ごめんなさい、ご主人様!!」

 

「あ、ああ…」

 

 戸惑うご主人様にG41は謝ったうえで事情を説明しました。そして、全部G41が悪いのでTMPちゃんを怒らないでくださいってお願いしました。

 G41が予行演習を指揮官室でしようとか言わなければこんなことにはなりませんでした。なので、全部G41が悪いのです。

 

「あ、あの… こぼしたのは私ですから…」

 

 TMPちゃんも頭を下げて、G41を庇おうとします。TMPちゃんはいい子です。でも、怒られるのはG41だけにして欲しいです。叩かれても我慢します。

 

「ああ。そんなことなら気にするな、二人とも。このぐらいの書類はどうとでもなる」

 

 ちょっと待ってろよ。そう言って、ご主人様は部屋から出ました。しばらくして戻ってきたご主人様は一枚の書類を持っていました。それは濡れてダメになった書類と全く同じものでした。G41のセンサーで見ても全く同じものにしか見えません。

 ご主人様は昔軍の情報員していたので、書類を偽造したりする訓練を受けているようです。この程度の書類を偽造するのは朝飯前だそうです。流石、ご主人様です!

 

「まあ、これぐらいの失敗は誰にでもある。これに懲りたりせず、頑張ってくれ」

 

 ご主人様はそう言って二人の頭をなでなでしてくれました。気持ちいいです。G41は幸せです。念願かなったTMPちゃんもとても気持ちよさそうです。TMPちゃんも幸せです。

 ご主人様は怒るどころか励ましてくれて、なでなでしてくれました。この失敗がG41とTMPちゃんが一生懸命やろうとした結果だとわかってくれて、なおかつ十分に反省していることを理解してくれているからです。ご主人様は優しくて、G41達のことを理解してくれます。G41達はご主人様の戦術人形で本当に良かったです!

 

 翌日、TMPちゃんは副官業務本番に挑みました。ご主人様が優しいことが分かったTMPちゃんは、そこまで緊張せずに任務をこなしました。そして、得意な機械いじりの話題で盛り上がって、カリーナさんのペットロボットを(無断で)改造して絆を深めました。TMPちゃんとご主人様が仲良くなって本当に良かったです! まる。



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27・G41と仲間達(その4)

 ある日、廊下を歩いていると思わぬ人形たちに会いました。

 UMP45さんと9ちゃん。それに、G11ちゃんと416さん。所謂、404小隊の面々です。

 404小隊はグリフィン直属の部隊の中でも特殊性の強い部隊で、他の隊と絡む事はほとんどありません。それなのに、うちにどうしているんでしょう?

 

「あ! G41、久し振り~!」

 

 G41を見つけた9ちゃんが駆け寄って来ます。そして、遠慮なくG41を抱きしめました。G41も抵抗なく抱きしめられてます。9ちゃんが今もG41のことを好きでいてくれてうれしい気持ちになりました。

 

「9ちゃん、お久し振り」

 

「うん! 相変わらずミミが可愛いね!」

 

 そう言って、9ちゃんはG41のミミを両手で持って左右に引っ張ります。強い力でないので痛くはないですが、ちょっとくすぐったいです。

 

「お久し振り、G41」

 

 続いて45さんもG41に声をかけてきます。

 

「お久し振りです、45さん」

 

 9ちゃんにミミを引っ張られながら、G41は45さんに挨拶します。45さんも尊敬する先輩の一人なので、今日会えて嬉しいです。

 

「…こっちの部隊は水が合ってるみたいね」

 

 そう言って、45さんはG41の頭を撫でてくれます。気持ちいいです。45さんが安心してくれているので、G41も嬉しいです。もしかすると、別れてからもずっと心配してくれていたのかもしれません。

 

 実はG41は昔、ほんのわずかな期間だけ404小隊に参加していました。その時の隊長さんが45さんです。

 G41は404小隊の他のメンバーとも性能的に相性が良く、特にG11ちゃんが苦手な夜戦では416さんと共に多くの敵を倒しました。

 でも、G41はすぐに404小隊から抜けることになりました。45さんがここにはいないほうがいい、と隊から除くことをグリフィンに申請し、代わりに今の隊に編入できるように動いてくれたのです。G41は今の隊でご主人様に出会えて物凄く幸せです。なので、45さんにはとっても感謝しています。

 

「45、9。旧交を温めるのもいいけど、今は天野指揮官に話を聞きに行くのが先でしょう

?」

 

 416さんが45さんと9ちゃんに言います。416さんは404小隊一番の常識人で、仕事熱心な人なので早く用を片付けたいのだと思います。

 

「あたしもう無理… ねえ、G41。お布団は?」

 

 ものすごく眠そうな様子でG11ちゃんが言います。G11ちゃんは物凄く強いのですが、同時に物凄く寝るのが好きなので、用がない時はいつも寝ています。まるで、どこかの闘牛士みたいだ、とご主人様は言ってました。

 

「私のベッド貸してあげるよ?」

 

 G11ちゃんにG41はそう言いました。404小隊が泊まるなら流石にG41達にも通達があるはずですが、それがないので部屋は用意されてないと思います。なので、G41のベッドを使って貰うのがいいです。それに、G41のベッドの布団はご主人様がプレゼントしてくれた物凄く寝心地のいいものなのです。えっへん!

 

「全く…まあいいわ。G41、お願いね?」

 

 416さんが呆れ顔で言います。416さんは何のかんのでG11ちゃんのことを気にしています。仲良しです。

 

「じゃあ、私もそっち行くよ! 天野指揮官とのお話とか私がいても役に立たないし」

 

 9ちゃんはG41に頬ずりをしながら言います。久し振りに9ちゃんと遊べます。G41は嬉しいです。

 

「予定より随分と早いわね」

 

 不意に傍らから声がしました。FALさんです! FALさんがいてくれたので、G41は嬉しい気持ちになりました。

 

「あ、FALさんお久し振り~! …なんか、太った?」

 

「…一発殴っていい、9?」

 

「え!? いや、そういうんじゃなくて! なんか、昔より大きく見えたから…」

 

 FALさんの静かな怒りを受けて、9ちゃんは慌てて言います。G41はあまりにも命知らずな発言にはらはらしましたが、FALさんは本気で怒っているわけではなさそうなのでほっとしました。

 

「…貴女は前に進んでいるのね、FAL」

 

 416さんがため息交じりに言いました。どこか羨ましそうですが、その言葉には憎悪や怒りは感じられません。

 

「まあね。…で、45」

 

 そう言って、FALさんは45さんの方に視線を向けます。G41達も45さんを見ました。

 

「なんで、私を親の仇を見るような目で見ているのかしら?」

 

 G41はぞっとしました。45さんのFALさんを見る目が凄まじく恐ろしかったからです。憎悪と殺気、そして静かな怒りに満ちた目でした。

 

「…別に」

 

 G41達の視線を受けて、45さんはそう言って、FALさんから視線を逸らしました。いつもの45さんに戻ったと思います。

 

「まあいいわ。とりあえず、指揮官のところに行きましょう?」

 

「…ええ、そうね」

 

 FALさんに促されて、45さんと416さんがその後ろについて行きます。それを見送って、G41達も宿舎の方へ行きました。

 

「45さんとFALさん、仲悪いのかな?」

 

 G41は9ちゃんに尋ねました。45さんとずっと一緒な9ちゃんならきっとその辺りの事情を知っていると思ったのです。

 

「うーん… どうなのかなー? 大体、私も45姉もFALさんと会ったのなんて、ずっと昔に何回かだけだよ?」

 

 しかも、軽く挨拶しただけぐらいだし。9ちゃんは首を傾げながらそう言いました。9ちゃんがそう言うのなら、そうなんだと思います。なら、45さんはどうしてFALさんをあそこまで嫌っているのでしょう。よくわかりません。

 

「FALさん、昔ろくでもないことばかりしてたし、それで恨みを買ったんじゃない?」

 

 G11ちゃんがなんでもなさそうに言います。

 そういえば、FALさんはその昔味方を利用して戦果を挙げるようなことを繰り返していたと言います。グリフィンでも悪名高い味方殺しだっていつか言ってた気がします。

 もしかすると、その辺りのことで因縁があるのかもしれません。でも、今のFALさんはとても優しい先輩です。味方を使い潰すどころか、危機に陥っている味方を率先して救出に向かいます。昔何かあったとしても許してあげて欲しいです。

 

「うーん。何とかFALさんと45さんが仲直りできないかな?」

 

 G41は提案しました。二人とも大好きな先輩なので仲良くして欲しいです。FALさん45さん仲直り作戦開始です。

 

「そうだね。うん、何とかしよう!」

 

 9ちゃんは笑顔でそう言います。とっても乗り気です。45さんと最も近しい9ちゃんが味方なのでとっても心強いです。G41は大船に乗った気持ちです!

 

「えー…ほっとけばいいじゃん」

 

 対してG11ちゃんは物凄くめんどくさそうです。でも、このミッションは恐らくSSSランクの難易度です。多少嫌でも手伝って貰わないといけません。

 

「うん! 作戦、思いついたよ!」

 

 早速9ちゃんが作戦を思いついたみたいです。流石、9ちゃんです。グリフィンの戦術人形の中でも屈指の戦術家である45さんの妹だけはあります。

 

「G41と私が喧嘩してる振りをするの。そしたら、お互い隊を率いている者同士共同して喧嘩を止めようとすると思う!」

 

「そっかー!」

 

 9ちゃんの作戦に、G41は感心しました。とっても良くできた作戦です! 流石、9ちゃんです!

 

「えー… それ、その先がないと上手く行かないと思うんだけど…」

 

「大丈夫! 為せば成る!」

 

 疑問を呈するG11ちゃんに9ちゃんは自信満々に言います。G41もそう思います。大切なのは勇気を出して突撃することです。

 

「というわけで、G11ちゃんはFALさんと45さんを呼んできて!」

 

「うん…」

 

 G41のお願いをG11ちゃんは少し嫌そうに聞いてくれました。G11ちゃんが指揮官室の方に歩いて行きます。ちなみに通信モジュールを開いて、G11ちゃんの聴覚を共有しておきます。FALさんたちがやってきたら喧嘩を始めるためです。

 

 G11ちゃんが指揮官室のドアを叩く音がしました。そして、ドアを開けて言いました。

 

『えーとね。G41と9がなんか喧嘩っぽいことをしてるよー』

 

 G11ちゃんがすっごいやる気なさそうにそう言いました。あう。早くも作戦に暗雲が漂ってきました。これでは来てくれないかもしれません。TMPちゃん辺りを呼んで協力して貰った方が良かったかもしれません。万事休すです。

 

『というわけで、FALさんと45。止めてきてよ』

 

『…ってことだけど、指揮官?』

 

『ああ。カリーナの資料を待つ時間もあるし、行ってきてくれ』

 

 やりました! ご主人様が促してくれたお陰で、二人は部屋を出てこっちに向かってます。G41は9ちゃんと顔を見合わせてサムズアップします!

 というわけで、喧嘩開始です。9ちゃん、かくごー!

 

「9ちゃんのばかー!」

 

「G41のばかー!」

 

 とりあえず、まず口喧嘩です。二人で大声を出したので、傍らを歩いていたMP5ちゃんがビックリして足を止めました。掴みはばっちりです。ここから実力行使に移ります。

 

「えーい!」

 

 というわけで、G41は両手を振り回しながら9ちゃんに突撃しました。9ちゃんは手を突き出して、G41の頭を押さえます。9ちゃんの方がずっと背が高いので手が届きません。流石、9ちゃん。的確な回避です!

 

「おりゃー!」

 

 すかさず、9ちゃんが後ろの回り込んでG41の頬を軽く抓って引っ張ります。あまり力が入ってないので痛くはないです。でも、一方的にやられっぱなしです。おのれー、9ちゃん。

 

「えーい!」

 

 G41は手から抜け出して振り向き、脇をこちょこちょしました。ちなみに、9ちゃんのおっぱい結構大きいです。羨ましいです。

 

「あっはっはっは! やったなー!」

 

 9ちゃんはくすぐったそうにしながら、G41のミミをはむっとしました。

 

「うわあ!」

 

 G41はビックリして手を放してしまいました。9ちゃんはG41の弱点を巧みに衝いてきます。おのれー。かくなる上は…

 

「…仲いいわね、貴女達」

 

「…本当にただじゃれ合っているだけね」

 

 気が付くと、FALさんと45さんが呆れた様子で見てました。二人とも共感しています。仲直りしてくれるのでしょうか!? G41と9ちゃんは手を止めて、期待を込めて二人を見ます。

 

「9、この茶番は何?」

 

 あう。完全に見抜かれています。流石、45さんです。G41と9ちゃんはしょんぼりです。

 

「え、えっとね、45姉…」

 

 バツが悪そうに9ちゃんが説明します。45さんとFALさんが仲が悪そうなので、仲直りして欲しくてやったと白状しました。

 

「そういうことね…」

 

 FALさんがため息を吐いて、そして軽く笑って言いました。

 

「誤解よ、二人とも。私は45のこと好きよ?」

 

 そう言って、FALさんは45さんに視線を向けます。その視線は暖かくて、柔らかくて、何だか懐かしいものを見るかのように思えました。

 

「…ええ、そうね。分かった」

 

 そんなFALさんの視線を受けて、45さんは降参するように両手を上げて言いました。

 

「FAL。私はね、鬱陶しい貴女が疎ましくて、腹立たしくて…………そして…大好きなのね…」

 

 45さんもまたFALさんを見ます。その視線は、ある種の諦観を受け入れたような視線でした。何だか憑き物が落ちたように穏やかな目でした。

 

 G41は9ちゃんと笑顔を交わしました。作戦は見抜かれてしまいましたが、FALさんと45さんは仲直りしたみたいです。なので、作戦は部分的成功でした!

 

「じゃあ、私達は打ち合わせに戻るから」

 

「うん! 仲良くね!」

 

「…はいはい」

 

 9ちゃんに軽くそう言って45さんはFALさんと一緒に歩いて行きました。G41と9ちゃんは笑顔でそれを見送りました。二人が仲直りできた本当に良かったです。G41と9ちゃんの思いが一つでした。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 というわけで、G41と9ちゃんは安心して遊ぶことにしました。G11ちゃんが寝ている横で、ゲームで超盛り上がって楽しかったです! まる。

 



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28・G41のグルメ(その1)

 結局、話をもう少し詰める必要があるとかで、404小隊のみんなは泊まって行くことになりました。お部屋はご主人様の部屋にハンモックを取り付けて何とかしました。

 ちなみに、ご主人様は昨日は車の中でお休みでした。みんなのために部屋を譲ってあげるなんて、ご主人様はとってもいい人です。

 

 G41はキッチンにやってきました。乾燥コーンがあったと思うので、ポップコーンを作ってみんなで食べようと思ったのです。

 

 そこで先客がいることに気づきました。G36ちゃんです。

 G36ちゃんは最近入ってきたばかりの戦術人形で、G41の後輩です。しかも、物凄く背が低くて、M99ちゃんよりも幼く見えます。

 本来のG36ちゃんは大人の女性の義体のはずなのですが、この基地に配属したのは何故か外見が大きく異なるようです。どういうこのなのでしょう。もしかして、ご主人様の趣味なのでしょうか。

 

「G36ちゃん、お料理中?」

 

「あ、お嬢様」

 

 G41の言葉に、G36ちゃんは振り向いて返事をします。ちなみに、G36ちゃんはG41のことをお嬢様と呼んでます。よく分からないですが、それがしっくりくるそうです。

 

 見ると、G36ちゃんはジャガイモの皮を剥いていました。ジャガイモはこの前G41がいっぱい貰ってきたので、たくさんあります。

 

「ジャガイモ料理でも作ろうかと…メイドとして、料理の腕を上げておかねばなりませんし」

 

「そうなの?」

 

「はい。…それに我が国ではジャガイモでフルコースが作れないと嫁に行けない、と言われていますし」

 

 G36ちゃんの言葉にG41ははっとしました。G36ちゃんとG41は共にI.O.P.社の欧州工場産です。同じ国の出身なので、G41もジャガイモでフルコースを作れないとお嫁に行けないかもしれません。

 一応、G41もそれなりに料理はできるようになりましたが、そのほぼ全てを一〇〇式(モモ)ちゃんから習ったので、ジャガイモ料理はほとんど知りません。

 どうしましょう。G41は困りました。

 

「G36ちゃん。G41にもジャガイモ料理教えて?」

 

「え? お嬢様にですか?」

 

 G41の言葉に、G36ちゃんは困ってしまいました。

 

「申し訳ありません、お嬢様。私も試行錯誤の段階で…最近製造されたばかりで知識が蓄積されていないのです…」

 

 G36ちゃんが謝って言うので、G41も困りました。確かに最近造られたばかりであれば仕方ありません。

 でも、ならばなおさらジャガイモ料理について学ばないといけません。G41とG36ちゃんの花嫁修業作戦開始です!

 

 まず、料理について尋ねるなら一〇〇式(モモ)ちゃんです。一〇〇式(モモ)ちゃんはこの国の料理のみならず、いろいろな国の料理に詳しいです。得意な料理がイカ墨スパゲッティであることを考えると当然と言えます。

 でも、一〇〇式(モモ)ちゃんは今朝早くからUMP45さんに取られてしまいました。現在、外の演習場で共同訓練の真っ最中です。一〇〇式(モモ)ちゃんは当隊や市民の人々のみならず、他の部隊の戦術人形からも引っ張りだこなのかもしれません。流石一〇〇式(モモ)ちゃん。グリフィンドール総選挙一位は伊達ではありません。

 ちなみに、45さんは一〇〇式(モモ)ちゃんには一切悪意を持っている様子はなく、純粋に興味がある風でした。他の416さんや9ちゃんがびっくりするほど友好的な態度だったらしいです。

 45さんと一〇〇式(モモ)ちゃんが仲良くすることはとてもいいことです。でも、それを邪魔してはいけないので料理について聞けません。しょんぼりです。

 

 まず、フルコースには料理のレパートリーが必要です。そして、G41はジャガイモ料理となると、粉吹き芋とフライドポテトぐらいしか知りません。一応、肉じゃがという料理についても一〇〇式(モモ)ちゃんから習いましたが、あれはそう簡単に作れる料理ではないです。牛肉は物凄い高級食材だからです。

 

「私…アイントプフとカトッフェル・ズッペぐらいしか知りません…」

 

 G36ちゃんが申し訳なさそうに言います。でも、G41はそれでも凄いと思います。そんな料理のことなんて、G41は名前さえ聞いたことがないのですから。

 

 困ったG41達はFALさんに頼ることにしました。

 FALさんは料理のことではあんまり頼りにならないですが、それでも知識があるので料理の名前と大まかにどういうものかは知ってるかもしれません。それさえ分かれば、自分達で考えて作れるかもしれないからです。

 

 というわけで、G41はG36ちゃんを担いで指揮官室に行きました。幸い、打ち合わせは終わったらしく、落ち着いた様子のご主人様とFALさん。それに、416さんがいました。

 

「ん? どうしたの、G41にG36」

 

 部屋に入ってきたG41達にFALさんが言います。ご主人様と416さんは机の上の書類で相談中です。というわけで、G41は当初の予定通り、FALさんに尋ねます。

 

「FALさん。ジャガイモ料理知らない?」

 

「うえぇ!? ……え、ええと…フライドポテトとか?」

 

 あう。やっぱり、FALさんは料理に関しては頼りにならないです。どうしましょう。G36ちゃんも不安そうです。

 ふと見ると、ご主人様と416さんが相談するのを止めて、なんだか可哀想なものを見る目でFALさんを見てます。

 

「…なによ?」

 

「…いいえ。ただ、天野指揮官の食生活が心配なだけ」

 

「…指揮官の食生活が貧しいのは借金のせいよ?」

 

「…まあ、一〇〇式(モモ)とG41が頑張ってくれるからこいつが料理できなくても問題ないけどな」

 

「失礼ね! できるわよ!」

 

「そういう嘘松はいらんというに」

 

 三人が言い合いをしていますが、G41とG36ちゃんは大弱りです。困りました。

 下手に知らない者同士で料理に挑戦するととんでもないことになります。G41も料理ができないときに、SOPMODちゃんと無理やり料理しようとしてとんでもないことになった経験があります。そうでなくても、貴重な食材を無駄にしてはいけません。

 これは一〇〇式(モモ)ちゃんが帰ってくるまで待たなくてはいけないのでしょうか。

 

「…天野指揮官。 二人とキッチンを借りるわね?」

 

「ああ。存分にやってくれ」

 

 416さんの申し出にご主人様が許可を出しました。そういえば、416さんも同じ国の出身です。ジャガイモのフルコースができるのでしょうか?

 

「二人はどんなジャガイモ料理ができるの?」

 

 指揮官室を後にして、キッチンに向かう道すがら416さんが聞いてきました。

 

「ええと、アイントプフとカトッフェル・ズッペができます」

 

「えっとね、粉吹き芋と肉じゃが」

 

「なるほど。G36はスープ。G41はメインデッシュをお願いね。他は私が作るから見てなさい」

 

 G36ちゃんとG41の言葉を聞いた416さんが言います。G41達はびっくりです。416さんは料理が得意なのでしょうか?

 

「でも、416さん。肉じゃがは作れないです…」

 

 G41はしょんぼりして言います。ニンジンやジャガイモや玉ねぎはありますが、牛肉や糸こんにゃくがないです。両方ともとんでもない高級食材で、G41達には手が出ません。

 

「レシピにこだわる必要はないわ。…ポトフとか知らない?」

 

 ぴこん! G41は416さんの言葉にはっとしました! そういえば、一〇〇式(モモ)ちゃんもやきとりとかオムライスとかをかなりアレンジして作ってました。G41もそれに挑戦する時が来たのかもしれません。それに、ポトフなら知ってます。いけるかもしれません。G41は閃きました!

 

「…相変わらず利口なのね、G41は」

 

 そんなG41を見て、416さんは頭を撫でてくれました。気持ちいいです。G41は嬉しいです。

 昔から416さんは無口で、でも見るべきところは見て、しっかり褒めてくれました。G41は416さんが大好きです。

 

 半時間後、ジャガイモのフルコースが完成しました。試食はご主人様にやってもらうことにしました。

 

「おお! 凄いな!!」

 

 ご主人様が机に並んだ料理を見て感動して言います。本来、フルコースは順次出すのが通例ですが、今回は試しということで一斉に並べてみたのです。

 

 G36ちゃんの作ったカトッフェル・ズッペ。それに、416さんが作ったポテトパンケーキとジャガイモの浅漬けサラダとポテトアイス。それに、G41が作った洋風肉じゃがです。

 ご主人様はそれらを美味しそうに食べていきます。ご主人様が幸せそうで、G41は嬉しいです。G36ちゃんと416さんも嬉しそうです。

 

「全部旨いが、特に肉じゃがが旨いな。G41、よくやった」

 

 ご主人様の褒めの言葉に、G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました! これで、G41はお嫁さんに行けそうです! えっへん!

 

「ええ… G41も前に進んでいるのね…」

 

 416さんがほんの一瞬微笑んで言いました。とっても綺麗な、まるで流星のような笑顔でした。416さんの笑顔、それはいつもそんなだったとG41は思い出しました。凄く素敵だと思いました。

 

「いいえ、416さんのお陰です。ありがとうございました!」

 

 G41は416さんにぺこりと頭を下げてお礼を言います。416さんがくれた助言がなくては洋風肉じゃがは作れなかったからです。

 ポトフと肉じゃがを融合させて作った洋風肉じゃがは牛肉の代わりにベーコンを用いてます。そして、ベースには鶏のコンソメを用い、隠し味に白ワインを加えました。ぶっつけ本番でしたが、G41は精密計算は得意なので調味料のバランスを間違うことはありませんでした。

 

「しかし、416がこんなに料理が上手いとは思わなかったな」

 

 ご主人様がポテトアイスを食べながら、416さんに言います。416さんの作った三品は、凄く美味しかったです。G41もG36ちゃんも感動したぐらいです。

 

「言ったはずです、天野指揮官。私は完璧だと。…戦闘や謀略が上手いだけでは戦術人形とは言えないわ」

 

「はいはい。負けを認めるわよ」

 

 416さんの言葉に、ご主人様のお皿から勝手に料理を横取りしていたFALさんが言いました。FALさんもまた他人の優れたところを素直に認められる戦術人形です。料理ができなくても、FALさんは立派だ、とG41は思います。

 

「ただいま、天野指揮官。…って、美味しそうな匂いがするわね」

 

「ただいま、指揮官。…これは一体…」

 

 訓練から帰ってきた45さんと一〇〇式(モモ)ちゃんが驚いて言いました。

 

「おお、おかえり。丁度いい、一〇〇式(モモ)。416と料理対決やってみてくれ」

 

「え!?」

 

 ご主人様の無茶振りに一〇〇式(モモ)ちゃんが驚きます。でも、G41も一〇〇式(モモ)ちゃんのジャガイモ料理を見てみたいです。それに一〇〇式隊と404小隊の対決という構図も面白いです。

 

「…上等。一〇〇式、貴女を超えてみせる」

 

「…面白そうね。一〇〇式、次は料理で勝負ね」

 

 416さんと45さんが楽しそうに笑って言います。二人とも乗り気です。でも、負けません。一〇〇式隊の結束を見せてあげます!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん! 頑張ろう! G41も手伝うから!」

 

「お嬢様、一〇〇式(モモ)さん、頑張って!」

 

「う、うん! 一〇〇式、料理対決、行きます!」

 

 G41とG36ちゃんの言葉を受け、一〇〇式(モモ)ちゃんもやる気を出しました。こうなったら、一〇〇式(モモ)ちゃんは強いです。416さん、45さん。勝負は貰いました!

 

「よし! FAL、全員呼べ。今日はジャガイモ祭りだ! 必要な食材は全部放出しろ!」

 

「了解! ジャガイモファイト! レディー…ゴー!」

 

 ご主人様とFALさんの言葉を受け、G41と一〇〇式(モモ)ちゃん、416さんと45さんが料理にかかりました。FALさんとFive-sevenさんと9ちゃんが勝手に実況を始めたり、M16さんとトンプソンさんが乱入したりして、その日は物凄く盛り上がりました。とっても楽しかったです! いつまでも、こんな風にみんなで楽しい日々が続いてほしい、と思いました! まる。

 

 ちなみに、料理対決は途中で416さんがM16さんに飲まされたお酒でへべれけになったので、G41達の不戦勝になりました。416さん、お酒には気を付けてね。



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29・愛されG41(その2)

 今日は最近珍しい護衛任務でした。どこかの会社の研究員さんが例の敵に関して話したいことがあるらしいので、グリフィン極東支部に護送するという任務です。

 一〇〇式(モモ)ちゃんとトンプソンさん、それにFive‐sevenさんが車に同乗しての護衛。FALさんと64式さん、M4さんとAR-15さん、M16さんとSOPMODちゃんが沿道の監視及び敵の排除、M590隊とG41の率いる臨時編成隊が遊撃隊として配置されました。

 ちょっとヤバい場面もありましたが、一〇〇式(モモ)ちゃんが大活躍して研究者さんは無事グリフィン支部まで送り届けられました。さすが一〇〇式(モモ)ちゃんです!

 

 でも、帰ってきた一〇〇式(モモ)ちゃん達は物凄く暗い表情でした。一体何があったのでしょう。Five‐sevenさんは苦い顔で聞かないでって言いました。一〇〇式(モモ)ちゃんに聞いたら、なんでもないよって抱きしめてくれました。

 

「よしっ! 嫌なことは、サワー会で忘れましょ!」

 

 Five‐sevenさんがそう提案しました。やっぱり何か嫌なことがあったのです。そういう時は騒いで忘れるのがいいって、ご主人様も言ってます。G41は賛成です。FALさんやTMPちゃんも頷きました。

 

「そうね。今日は奮発するわよ!」

 

 そう言って、FALさんが部屋からクーラーボックスを持ってきました。中には缶ジュースが沢山入ってました! さすがFALさん、準備がいいです!

 

「じゃあ、G41がお菓子作ります。TMPちゃん、手伝って?」

 

「は、はい!」

 

 というわけで、G41はTMPちゃんと一緒に台所に行って、416さんに習ったポテトボンボンっていうお菓子を沢山作ってきました。あれはさくっとして、プシュッとするのでとても美味しいです。

 

 大量のポテトボンボンを持って来て、一〇〇式隊でサワー会が始まりました。コーラを飲んだり、ポテトボンボンを食べたりしながら、楽しいことをお話しします。新作のVRシアターとか、ファッションとか、ご主人様への文句とかの話をして盛り上がりました。最初暗かった一〇〇式(モモ)ちゃんの表情も明るくなってきました。よかったです。

 

「よし! じゃあ、私もとっておきを出すわよ!」

 

 そう言って、Five‐sevenさんが冷蔵庫から大きな瓶を取り出してきました。あれは何でしょう?

 

「へえ…なかなかいいセンスじゃない」

 

 FALさんがそれを見て、感心して言いました。何だか嬉しそうです。

 

「ふふん。スパークリング梅酒なんて、なかなか手に入らないんだから、感謝してよね」

 

 Five‐sevenさんが得意げに言います。どうもあれはお酒みたいです。G41はシャンペンみたいなしゅわっとしてて甘いお酒は大好きです。あのお酒はどうなのでしょうか。

 

「はい、G41ちゃん」

 

 Five‐sevenさんは紙コップにお酒を注いでG41に渡してくれます。

 G41はくんくんと匂いを嗅ぎました。甘い匂いがします。

 飲んでみました。美味しいです! しゅわっとしてて、甘くて美味しいです! しかも、シャンペンより自然な甘さです! G41はこのお酒が好きになりました。

 

「どう、一〇〇式(モモ)ちゃん?」

 

「はい…とても美味しいです」

 

 Five‐sevenさんの問いに、一〇〇式(モモ)ちゃんも笑顔で答えます。一〇〇式(モモ)ちゃんもこのお酒が好きになったみたいです。

 

 後は、TMPちゃんです。Five‐sevenさんはTMPちゃんの紙コップにも注いであげました。

 

「TMPちゃんはどうかな?」

 

「は、はい! いただきます!」

 

 そう言って、TMPちゃんはコップに並々注がれたお酒を一気に飲みました。

 

「あーあー、もう。高いお酒なんだから、味わって飲みなさい?」

 

「まあいいわよ、いっぱいあるし」

 

 窘めるFALさんと苦笑するFive‐sevenさんがTMPちゃんの反応を伺います。ところが反応がありません。

 

「あれ?」

 

 Five‐sevenさんが首を傾げながらお酒をもう一杯注ぎます。すると、TMPちゃんはまた凄い勢いで飲んでしまいました!

 

「あ…これ、もしかして…」

 

 FALさんが何かを察したみたいです。Five‐sevenさんも顔色を変えて下がろうとしました。でも、TMPちゃんは物凄い速さでFive‐sevenさんからお酒の瓶をひったくってしまいました。

 

「うぇへへへへへ~」

 

 TMPちゃんがとろけた表情で妙な笑い声を出します。やばいです。へべれけです。何だか416さんみたいです。まさか、TMPちゃんもお酒に関するバグがあるのでしょうか。

 やばいです。G41はこの前の416さんの大惨事を思い出しました。あの時はご主人様が命懸けで止めましたが、もしかして今度もそうなってしまうのでしょうか。

 

「TMPちゃん、暴れちゃだめだよ」

 

 G41はそう言ってTMPちゃんに近づきました。サワー会でご主人様の負担になってはいけません。後輩のTMPちゃんはG41が止めて見せます。

 

「うぇへへへへ~、G41さぁ~ん~」

 

 すると、いきなりTMPちゃんがG41に抱き着いてきました。そして、超すりすりしてきます。

 G41はちょっと安心しました。TMPちゃんが暴れないのでよかったです。でも、G41はちょっと困りました。もう物凄い勢いでホールドされてます。そして、凄い勢いですりすりされてます。別に嫌なわけではないですが、くすぐったいしG41は身動きが取れません。

 

「あうぅ~、TMPちゃん~」

 

「G41さん~」

 

 困るG41をTMPちゃんは今度はぺろぺろし始めます。ほっぺとか首筋とかを遠慮なくぺろぺろしまくりです。超くすぐったいです。

 

「G41さんおいし~」

 

 TMPちゃんは物凄く幸せそうにそう言って、G41をなめまくります。そして、時々お酒の瓶に口をつけてそのまま飲みます。そして、またぺろぺろします。あう。何だか、G41がおつまみになったみたいです。

 

 G41は困ってしまいました。TMPちゃんはG41が好きすぎてぺろぺろしてるのだと思います。G41も一〇〇式(モモ)ちゃんをぺろぺろするのでよく分かります。TMPちゃんに好かれること自体は嬉しいですが、このままではG41は身動きできないですし、物凄い擽ったいです。でも、TMPちゃんを振りほどいたりすると、TMPちゃんは物凄くショックだと思います。そんな可哀想なことはできません。

 

 G41はFALさんとFive‐sevenさんに視線で助けを求めます。

 

「う~ん、何というか和む光景ね」

 

「いいなぁ。G41ちゃん美味しそう」

 

 でも、二人はにこにこしながらまったりとお酒を飲みながらそう言います。G41とTMPちゃんが仲良しなのが微笑ましいのかもしれません。あう。困りました。

 

「TMPちゃん…そろそろ離れよう」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんがそう言ってG41を救助してくれようとしますが、

 

「ふかーーーーーーー!!!!」

 

 TMPちゃんが物凄い勢いで威嚇して寄せ付けません。G41は自分のものと言わんばかりの様子です。

 

「あうぅ。だめぇ、TMPちゃん~…」

 

「うぇへへへ~、らめじゃないれしょお~」

 

 そう言って、TMPちゃんはG41のミミをはむはむし始めました。

 

「うわぁ!」

 

 G41はびっくりして素っ頓狂な声をあげてしまいます。でも、TMPちゃんはやめてくれる気配がありません。あうぅ。変な感じになってしまいます。だめぇ、TMPちゃん…

 

「待てい、TMP!」

 

 娯楽室に唐突に声が響き渡りました。ご主人様が助けに来てくれたのです! さすがご主人様です!

 

「TMP。G41のミミをはむはむするのは俺の特権だ。いくらお前でもまかりならんぞ」

 

 あう。ご主人様の救助の動機が物凄い不純です。G41はそんな特権認めた覚えはないのですが…

 

「シャーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 TMPちゃんがG41を抱えたまま盛大に威嚇します。もう他の人はG41を奪おうとする敵にしか見えてないのかもしれません。今にも飛び掛かって攻撃しそうです。

 

「だめぇ、TMPちゃん!」

 

 G41はそう言ってTMPちゃんを抱き締めました。ご主人様とTMPちゃんが喧嘩するなんて嫌です。TMPちゃん、元に戻って。そう心の中でお願いしました。

 

「…? あれ?」

 

 その瞬間、TMPちゃんが気の抜けた声を上げます。同時に身体から力が抜けました。もしかして、元に戻ってくれたのでしょうか!?

 

「TMPちゃん、元に戻ったの?」

 

「え!? え!? G41さん!? うわわわわ!! ゆ、夢なら醒めないでー!!」

 

 TMPちゃんはG41に抱き締められたまま大慌てです。顔は物凄く赤いですが、お酒の影響が残っている様子はありません。いつものTMPちゃんでした。よかったです。

 

「TMP。とりあえず、一〇〇式(モモ)にごめんなさい」

 

 FALさんが言いました。どんな理由があっても、隊長である一〇〇式(モモ)ちゃんに威嚇なんかしてはいけません。一〇〇式(モモ)ちゃんに謝るのは妥当なことだと思います。

 

「ご、ごめんなさい、一〇〇式さん…」

 

「大丈夫。気にしてないよ」

 

 頭を下げるTMPちゃんを一〇〇式(モモ)ちゃんは快く許してあげました。これで一件落着です。

 と思ったら、TMPちゃんは続けてG41の方を見ます。何だか今にも泣きだしそうです。どうしたのでしょう。G41は少し驚きました。

 

「あ、あの…ごめんなさい…G41さん…変なことして…」

 

 TMPちゃんはそう言って、G41に謝ります。G41は理解しました。TMPちゃんはG41に嫌われてしまったのかと心配しているのです。でも、それは余計な心配です。

 

「大丈夫だよ。G41はTMPちゃんのこと大好きだからね」

 

 そう言って、G41はTMPちゃんを抱き締めてあげます。G41はTMPちゃんにとても好かれているのを感じてとても嬉しいです。

 

「G41さん!」

 

 TMPちゃんもまた喜色に満ちた声で言い、G41に抱き着いてきます。TMPちゃんもG41に好かれていることが分かったので嬉しいのだと思います。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「ふふふ。いいわね、G41ちゃんとTMPちゃん」

 

「ああ。二人が仲良しなことを記念して、飲みなおすか!」

 

「賛成!」

 

「じゃあ、お摘み追加で作ってきますね」

 

 みんなもG41とTMPちゃんの仲を喜んでくれました。嬉しいです。

 というわけで、サワー会はお酒で一悶着ありましたが、無事解決したことでG41とTMPちゃん、そして一〇〇式隊の絆はますます強くなりました! そして、その後もサワー会をとっても楽しむことができたので、よかったです。

 でも、酔っぱらったご主人様が超はむはむしてくるのには閉口しました。ご主人様、G41は特権とか認めてませんからね。勘違いしないでね? まる。



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30・ご奉仕G41(その3)

 ご主人様の身体は頑丈ですが、それでも人間なので風邪をひくことがあります。特に最近お仕事が忙しいので生活が不規則になっています。こういう時は危ないと思います。

 仕事をしているご主人様が何度かごほごほと咳き込みます。顔色も良くない気がします。もしかして、風邪をひいてしまったのでしょうか?

 

「ご主人様、大丈夫?」

 

「ああ。あまりよろしくはないかもな」

 

 ご主人様は喉を押さえて言います。喉が痛いのかもしれません。声の調子も変です。

 

「ご主人様、失礼しますね」

 

 G41はそう言って、ご主人様のお膝にご主人様の方を向いて乗りました。そして、おでこをこっつんこします。これでご主人様の熱を測るのです。ご主人様の顔が近いので嬉しいです。ご主人様の顔の赤みが増した気がしますがどうしたんでしょう?

 しばらくそうして、計測が終わりました。38度ちょっとぐらいだと思います。結構高いです。

 

「風邪だと思います、ご主人様」

 

 G41はおでこを離してそう言いました。ご主人様はほっとしたような、少し残念そうな顔をしています。本当にどうしたんでしょう?

 

「まあ、大したことはないさ。すぐ治る」

 

 そう言って、ご主人様は仕事にとりかかろうとします。でも、その直後げほげほと咳をしました。

 これはいけません。仕事熱心なご主人様は大好きですが、そんなご主人様が風邪を引いているとG41は悲しいです。早く元気になって欲しいです。

 

『FALさん、ご主人様が風邪を引いてしまいました』

 

 というわけで、通信モジュールを開いて、FALさんに相談しました。ご主人様にゆっくり休んでもらうには、FALさんから一言言って貰う方がいいです。

 

『そうなの? …指揮官、仕事でどうしても代わりが利かないことは?』

 

『ないだろう。仕込みは全て終わった。後は細かいコントロールぐらいだな』

 

『なら、さっさと寝て、本番までにマシな体調にしなさいよ。次で今回の事件は終わりなんでしょ?』

 

『…そうだな。なら、FAL。たった今から臨時指揮官に任命する。しばらく任せたぞ』

 

『了解。…G41、指揮官の看病よろしくね?』

 

『はい、FALさん!』

 

 FALさんはご主人様からのやり取りの後、G41に看病を任せてくれました。お任せください、FALさん! ご主人様のお世話は、G41が頑張ってします!

 

 というわけで、ご主人様の部屋にやってきました。ご主人様のためにベッドを整えて、寝間着に着替えてもらいます。そして、ゆっくり寝てもらいます。

 

「ご主人様、アロマとか気になりませんか?」

 

「ああ。大丈夫だ」

 

 そして、ご主人様に尋ねた上で、加湿器を点けます。水にはラベンダー油を少し混ぜています。風邪の予防及び治療には空気の加湿が大事です。そして、ラベンダーの油には殺菌効果と精神をリラックスさせる効果があるといいます。

 しばらくすると、加湿器からほのかに甘い香りのする蒸気が出てきました。これでご主人様の喉の痛みが少しでも和らぐといい、と思います。

 

「G41は細やかな気遣いができるいい娘だな…」

 

 そう言って、ご主人様は布団の中から手を伸ばしてG41の頭を撫でてくれます。嬉しいです。G41はご主人様の役に立てると嬉しいので、普段からこういうことを一生懸命勉強しているのです。えっへん!

 

 後はお水を用意します。風邪の時は水分を摂ることが重要だからです。台所に行った、G41はレモンを薄く輪切りにします。それを水筒に入れて、そこに水を入れるのです。仕上げに塩を少し入れて、G41特製レモン水の完成です。

 

 それをコップと共にご主人様のところに持っていきます。そして、コップに注いで渡してあげました。

 

「ああ、美味い。ありがとうな、G41」

 

 喉が渇いていたのでしょう。ご主人様は美味しそうに飲んでくれました。嬉しいです。少し塩が入っているので、ミネラルバランスが崩れることもないです。G41は気が利きます!

 

「それで、G41。アレを頼む」

 

「はい、ご主人様」

 

 ご主人様の命を受け、G41はお風呂場に向かいます。そして、42度に調整してお湯を入れます。

 ご主人様は風邪を引くと、熱めのお風呂に入って治します。お風呂で身体の芯を温めて汗をかくことで、病気を治すのです。

 そして、G41はあるものを用意します。ネットに入った、乾燥したレモンやみかんの皮です。G41はこういう時のために、普段からレモンやミカンの皮を取っておいて乾燥させておくのです。これで身体の芯から温まるお湯になります。

 お湯を張って、皮を漬けておきます。しばらくすると、柑橘系の匂いのする蒸気がお風呂場を満たしました。お湯の温度も40度まで下がってます。頃合いや良しです。

 

「ご主人様。お風呂の準備ができました」

 

「ああ。ありがとう、G41」

 

 ご主人様はそう言って、G41の用意したどてらを着て、頭を撫でてくれました。嬉しいです。嬉しいので、ご主人様に寄り添ってお風呂場まで行きました。G41は温かいのでご主人様の体温を保つ役に立てると思います。

 

 ご主人様がゆっくりお風呂に入っている間に、G41はご飯を用意します。風邪が治るようにお粥を食べてもらうのです。

 

 まず、柿葉茶のパック2つと水を大きなお鍋に入れます。そして、濃いめのお茶を煮出します。

 柿葉茶はビタミンが多く、熱処理しても壊れません。しかも、癖がなくて香ばしいので茶粥にうってつけです。

 お茶ができたら、パックを取り出してお米を入れます。そして、鍋底に焦げ付かないようにじっくりかき混ぜて、炊き上がるのを待ちます。灰汁が出たら、とることも忘れません。

 そして、ある程度煮えてきたら、火を中火と弱火の間ぐらいにして、卵を3つボウルに入れて菜箸でよく溶きます。そして、それを鍋に加えて、蓋をして、5分ほど蒸らしました。最後に出汁醤油で味を整えて、ネギを散らして完成です! 付け合わせには、ザウアークラウトを用意しました。

 

 お粥と漬物をお盆にのせて持っていくと、ご主人様はお風呂を出てベッドにいました。お風呂で温まったからか、顔色が少し良くなった気がします。嬉しいです。G41は元気なご主人様が大好きです。もっと元気になるようにG41は頑張ります。

 

「ご主人様、お粥をお持ちしました」

 

「ああ。すまん、G41」

 

 ご主人様の傍に小さなテーブルを置いて、その上にお粥と漬物を置きます。お腹が空いていたご主人様は嬉しそうにそれを匙で掬って食べました。

 

「…めっちゃ旨い」

 

 ご主人様がしみじみと言います。よく蒸らしたふわふわ卵と、出汁醤油と柿葉茶の風味が何とも言えないのだと思います。G41は嬉しいです。ご主人様のために一生懸命作った甲斐がありました。

 

「G41は本当に俺の天使だなぁ…」

 

 ご主人様がザウアークラウトをパリパリしながらしみじみと言います。超褒めて貰えたので、G41はとっても嬉しいです。天使とはどういうことなのかはわかりませんが、ご主人様にとってG41が役に立てればとても嬉しいです。

 

 ご主人様はお粥を3杯もおかわりして食べてくれました。これだけ食欲があればすぐに良くなると思います。口を漱いだご主人様はお休みモードです。

 というわけで、G41はもっとご主人様が安らいで眠れるようにしたいと思います。

 

「ご主人様、子守唄を歌いましょうか?」

 

「なん…だと…!?」

 

 G41の申し出にご主人様が驚愕して言います。G41は首を傾げました。そこまで驚くほどのことではないと思うのですが。

 

「ああ。ぜひとも頼む、G41」

 

「はい、ご主人様」

 

 ご主人様の許可が下りたので、G41は歌います。ご主人様、早く元気になってください。そんな思いを込めて一生懸命歌います。

 

「ゆ~りかご~の~う~たを~♪ カ~ナ~リア~がう~たうよ~♪ ね~んね~こ~♪ ね~んね~こ~♪ ね~んね~こ~よ~♪」

 

 G41は静かな声で、でも一生懸命歌います。こんな時のために、G41はお歌を一生懸命覚えて練習しました。ご主人様はG41達のために、世界を少しでも良くするために一生懸命働いてくれています。そんなご主人様のためなら、できる限りのことを何でもしたいのです。

 

「嗚呼… 天使の歌が聞こえる…」

 

 ご主人様がとっても嬉しそうにそう言いました。お歌の練習をして本当に良かったです。ご主人様に喜んで貰えて本当に嬉しいです。ご主人様、ゆっくりお休みください。そんな思いを込めて、一生懸命歌い続けます。

 

「ゆ~りかご~の~ゆ~めに~♪ きい~ろ~いつ~きがか~かるよ~♪ ね~んね~こ~♪ ね~んね~こ~♪ ね~んね~こ~よ~♪」

 

 しばらくすると、ご主人様の寝息が聞こえてきました。安らかに眠っています。ご主人様の寝顔は何だか可愛いです。ご主人様がG41の歌声で安らいでくれて嬉しいです。えへへ。

 ご主人様が寝ても、しばらくの間G41は子守唄を歌いながら見守ります。ご主人様、ゆっくりお休みください。

 

 翌朝、目を覚ましたご主人様の熱はかなり下がってました。ご主人様はG41は本当に俺の大天使だ、と喜んでくれて、抱きしめて超なでなでしてくれました。G41はとっても嬉しいです。ご主人様のために一生懸命頑張った甲斐がありました!

 

 でも、風邪はまだ完全には治ってません。G41は今日も看病します。まずはレモン水の補充からです。

 ご主人様、早く元気になって、いっぱい遊んでください! まる。

 

 

 



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31・G41のグルメ(その2)

 ささみジャーキーです! ついにささみジャーキーがやってきました!! 例の事件のせいでやってくるのが遅れましたが、ついにやってきたのです!

 G41は段ボールを切って、箱いっぱいのささみジャーキーの袋の一つを取り出して目を輝かせました。それはまごうことなきささみジャーキーです! G41の憧れです!

 

「わーいわーい!」

 

 G41は嬉しすぎてぴょんぴょん跳ねて、小躍りしてしまいました。そして、ささみジャーキーの袋を頭上高くに持ち上げて、くるくるとその場で回ります。美味しいささみジャーキーが箱いっぱいあるのです。嬉しくないはずがないです!

 

「わーいわーい!」

 

 G41はささみジャーキーを胸に抱きしめて、畳の上でゴロゴロしました。嬉しいのでいっぱいゴロゴロします。それぐらい、G41はささみジャーキーが大好きです!

 

 ひとしきり喜んだところで、G41は袋の口を開けて匂いを嗅ぎます。うっとりです。美味しそうな肉の匂いがいっぱいします。嬉しいです。G41は幸せです。というわけで、早速一本取りだして食べることにしました。

 

「あの…G41さん、訓練の成果を報告に…」

 

 そのタイミングでTMPちゃんが部屋に入ってきました。別にG41に今日の訓練成果を報告する必要はない、と思うのですが。でも、G41はすぐに気づきました。きっと、いいスコアをとったので、褒めてもらいたいのだと思います。

 

「すごーい!」

 

 G41はTMPちゃんのスコアシートを見て言いました。今まで最高値です。素直に凄いと思いました。G41の言葉に、TMPちゃんも嬉しそうです。

 

「というわけで、TMPちゃん、はい!」

 

 そんなわけで、ご褒美にTMPちゃんにささみジャーキーを一つ渡しました。

 

「え!? い、いいんですか!?」

 

「うん!」

 

 目を輝かせて言うTMPちゃんに、G41は快く頷きます。どうやらTMPちゃんもささみジャーキーが好きなようです。喜んで貰えてよかったです。

 

「というわけで、TMPちゃんも喜ぼう!」

 

「は、はい!」

 

 というわけで、G41とTMPちゃんは喜びを身体いっぱいで表現し合います。

 

「わーいわーい!」

 

 G41は再びぴょんぴょん跳ねながら万歳をします! ささみジャーキー万歳です!

 

「やったぁ…!」

 

 TMPちゃんは床にコロンとおしりから座って、ささみジャーキーを愛しそうに撫でます。あれはTMPちゃんが戦闘に勝利したときによくするポーズです。

 

「あれ? G41ちゃんとTMPちゃん?」

 

「…何してるの、二人共?」

 

 入口の方から声が聞こえました。一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんです。

 なんと、G41達は喜びの舞を見られてしまいました。えへへ。

 

「あわわ…! す、すみません!」

 

「別に謝る必要はないわよ」

 

 謝るTMPちゃんに、FALさんは苦笑して言います。そうです。そこにささみジャーキーがあるのです。とっても喜んでも何も悪いことはありません!

 というわけで、G41は二人のところに近づいていきました。一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんとも喜びを分かち合いたいです。

 

「FALさん! ささみジャーキーです!」

 

「うん、そうね」

 

「嬉しいです!」

 

「うん、よかったわね」

 

「というわけで、はい!」

 

 というわけで、G41は二人にもささみジャーキーを一本ずつ渡しました。

 

「あ、ありがとう、G41ちゃん」

 

「うん。これなら食べられそうね。ありがとう、G41」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんからお礼を貰って、FALさんからはなでなでして貰えました。嬉しいです。やっぱりみんなささみジャーキーが大好きです。 

 

 その後VRシアターを見るという一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんと別れて、G41とTMPちゃんはささみジャーキーとコーラとクッションを持って秘密基地に行きます。ささみジャーキーを食べながらまるまるするのです。

 狭い秘密基地に二人はクッションを敷いてうつ伏せに寝ます。そして、ジャーキーをもぐもぐします。少し硬いですが、噛んでいると肉の味が口の中に広がります。塩をあまり利かせていないので純粋な肉の味だけを楽しめます。TMPちゃんも美味しそうです。G41達は幸せです。

 

 G41とTMPちゃんはもぐもぐしたり、ごくごくしたり、まるまるしながらゆったりと過ごします。G41達は幸せです。

 ふと見ると、袋のささみジャーキーが一つしかなくなりました。まだ箱いっぱいあるので問題はないですが、今日はこれぐらいにしようと思います。ささみジャーキーの幸せを短い時間で浪費するのは勿体ないです。

 

 ふと見ると、TMPちゃんがささみジャーキーを見ていました。でも、G41の視線を感じると、すぐに目を逸らしてしまいました。恐らく、TMPちゃんはジャーキーを食べたいのだと思います。でも、これがG41の分だから、と遠慮しているのです。

 

「TMPちゃん、最後の食べていいよ?」

 

「え!? で、でも、これ、G41さんのですし」

 

「ううん、いいの。TMPちゃん、今日頑張ったから、ご褒美」

 

 というわけで、G41はTMPちゃんにささみジャーキーを差し出しました。G41もささみジャーキーを食べたいですが、頑張ったTMPちゃんにご褒美を上げる方が先決です。G41はとってもいい先輩です! えっへん!

 

「あ、ありがとうございます、G41さん!」

 

 TMPちゃんがとっても喜んで受け取ります。そして、早速ささみジャーキーをもぐもぐしはじめました。

 G41はそれをにこにこと見守ります。TMPちゃんが幸せそうで、G41は嬉しいです。

 

 もぐもぐ…

 にこにこ…

 もぐもぐもぐ…

 にこにこにこ…

 もぐもぐもぐもぐ…

 にこにこにこにこ………じゅる。

 

 はっ! 思わず涎が垂れてしまいました。TMPちゃんがあまりにも美味しそうに食べるからです。

 どうしましょう。G41は食べたくなりました。もう一袋開けてもいいのですが、それだとエンドレスジャーキーになってしまうかもしれません。でも、ほんのちょっとだけでもいいから食べたいです。

 

 というわけで、G41はTMPちゃんの咥えているジャーキーの反対側をはむっとしました。

 

「うわわわわわわ! G41さん!」

 

 TMPちゃんは大慌てです。ごめんね、TMPちゃん。

 でも、TMPちゃんならきっとG41の気持ちを分かってくれるはずです。G41は気にせずもぐもぐします。TMPちゃんも顔を赤くしながらもぐもぐを再開しました。

 

 しばらくして、G41は気が付きました。TMPちゃんの顔が近いです。ジャーキーがもう少ししかないのです。

 G41とTMPちゃんの唇が近いです。G41ははっとしました。このままではG41はTMPちゃんとちゅーしてしまうかもしれません!

 でも、あんまり気にしないでG41はもぐもぐします。TMPちゃんも顔がなぜか赤いですがもぐもぐをやめません。ちゅーは好きな人同士がするものらしいです。そして、G41とTMPちゃんは相思相愛です。何の問題もありません。

 

 というわけで、もぐもぐもぐもぐ…

 TMPちゃんの顔がどんどん近づいてきます。唇の距離もどんどん近くなっていきます。それが3cm、2cm、そして、1cmに近づいたところでG41は口を放しました。視線を感じたからです。

 視線の先を見ると、入り口からご主人様が覗いていました。なんと、G41とTMPちゃんがちゅーしそうになるところをご主人様に見られてしまいました。えへへ。

 

「うわわわわわ! し、指揮官!!」

 

 TMPちゃんは大慌てです。もう顔がトマトみたいに赤いです。TMPちゃんはやっぱり照れ屋さんです。

 

「すまん。邪魔するつもりはなかったんだが…」

 

 なんだかご主人様が申し訳なさそうでかつ残念そうに言います。どうしたんでしょう。

 

「ご主人様、どうしたの?」

 

「いや、次の作戦の前にG41に伝えたいことがあってな。せっかくだから、TMPも聞いてくれ」

 

「は、はい!」

 

 ご主人様の言葉に、G41とTMPちゃんは秘密基地を出て、ご主人様に付き従って指揮官室に行きました。

 

「…うーん。勿体なかったなぁ…」

 

 ご主人様が道中しきりにそう呟いていました。どういうことなんでしょうか。G41には分かりません。

 もしかすると、ご主人様もささみジャーキーが食べたかったのでしょうか。そうかもしれません。ご主人様は酒飲みなので、ジャーキーとかが大好きだって言ってたことがあります。

 

「ご主人様、はい!」

 

 というわけで、G41は持っていた袋をご主人様に差し出しました。元々これはご主人様に上げるために陳情したのです。それに、ご主人様にもささみジャーキーの喜びを味わってほしいのです。

 

「ありがとうな、G41」

 

 ご主人様は嬉しそうに笑って、G41の頭をなでなでしてくれました。G41は嬉しいです。

 

 というわけで、今日はささみジャーキーでいっぱい楽しめました。

 せっかくなので、ジャーキーを使った料理とかを一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に考えて、みんなにももっとささみジャーキーの素晴らしさを分かってほしい、と思いました。ささみジャーキー万歳です! まる。

 

 後、ご主人様からはG41に臨時的に新しい部隊を率いて欲しいってお願いされました。新しい娘も来るらしいです。副官にはウェルロッドさんがついてくれるみたいなので、心配はないです。ご主人様の期待に応えられるように頑張ります!



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32・G41と新しいお友達(その3)

 ご主人様に隊長に任命された次の日、G41は基地のゲートのところで待ってました。今日、仮設G41隊の最後の隊員が赴任してくるらしいからです。

 なお、一〇〇式隊には64式さんが入るみたいです。ご主人様が言うには、今回の事件の敵は64式さんの仇であるので、その手で決着をつけさせたい、とのことです。

 そういうことであれば仕方ないです。G41は一〇〇式隊を離れるのは嫌ですが、事情が事情なので我慢します。それに離れるのも一時的な処置です。なので、G41は頑張って、隊長をできるように頑張ります。

 

 やがて、ゲートの向こうから影が見えました。迎えに行ったFALさんの乗るバイクです。大きくて速くてカッコいいです。G41も乗ってみたいですが、足が届かないので乗れません。しょんぼりです。

 

「あら、G41。待ってたのね」

 

 バイクから降りて、ヘルメットを脱いだFALさんがそう言って頭を撫でてくれます。気持ちいいです。

 

「その娘が私の同僚? かわいいわね」

 

 タンデムシートから降りた娘がヘルメットを脱いで、帽子を被り直してそう言いました。金色の髪の毛をおさげにしている娘です。確か、名前はSR-3MPちゃんです。

 

「そうよ。うちのエース、G41よ。仲良くね?」

 

「へぇ…予想とは違うけど…まぁいいか」

 

 SR-3MPちゃんはFALさんとG41を見比べて言います。FALさんは名高い戦術人形なのでこの基地のエースと思ったのかもしれません。でも、最近のスコアーはG41が僅かに上なので、FALさんはG41をエースとして紹介したのです。もちろん、FALさんの凄さは単純なスコアーで測れるものではないですが。

 

「アタシはSR-3MP。ヴィーフリって呼んで?」

 

「G41です。よろしくね?」

 

 そう言って、G41とヴィーフリちゃんは握手を交わしました。初印象は好感触です。仲良くできそうな気がします。よかったです。

 

「じゃあ、ウェルロッドやSVDを呼んでくるから、そこで待ってて?」

 

「はい、FALさん!」

 

 というわけで、G41とヴィーフリちゃんはFALさんを待つことにします。とはいえ、ただ待っているだけでは面白くないですし、時間が無駄になります。この時間を利用して、G41はヴィーフリちゃんと仲良しになりたいと思います。

 

「というわけで、あそぼ、ヴィーフリちゃん!」

 

「いいけど…なにするの?」

 

「はい、これ」

 

 というわけで、G41は手に持っていたフリスビーを渡します。フリスビー遊びで親睦を深めるのです。

 

「そういうことね。いいわよ!」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんはフリスビーを構えました。G41もいつでも走り出せる態勢になります。

 

「それ~!」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんがフリスビーを投げました。G41はそれを追いかけていきます。特に工夫のない単純な投げ方です。G41は簡単にそれをキャッチしました。

 

「ヴィーフリちゃん、どうだー!」

 

「へぇ、やるじゃない!」

 

 G41の言葉に、ヴィーフリちゃんは手を叩いて喜んでくれます。ヴィーフリちゃんはノリがいいです。これはとっても仲良くなれそうです。

 

 G41はヴィーフリちゃんのところに戻ってフリスビーを渡しました。もう一度投げて欲しいです。

 

「よし! じゃあ、次行くよ~!」

 

 そう言ってヴィーフリちゃんは再度フリスビーを構えます。G41も走り出せるように準備しました。

 

「おりゃー!」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんが力いっぱい投げました。G41もそれを追っていきます。

 G41の片目が赤くなります。狙眼を起動させたのです。あれは右に曲がります。でも、その後少し左に曲がって急速に落下します。ヴィーフリちゃんは頑張ってG41を惑わすように投げたのですが、G41には通じません。

 

 フリスビーは見事にG41の予想通りの軌道を描きました。もちろん、G41は易々とそれをキャッチしました。

 

「ヴィーフリちゃん、どうだー!」

 

「すごいすごーい!」

 

 G41の言葉に、ヴィーフリちゃんは手を叩いて喜んでくれました。もう二人は相思相愛です。えっへん!

 

「もうすっかり仲良しのようだな?」

 

 すると、やって来たドラグちゃんことSVDちゃんがヴィーフリちゃんにそう言いました。

 

「久し振りね、SVD。あの娘とは上手くやって行けそうよ」

 

「それはよかった」

 

「はい。今後ともお嬢様と仲良くしてください」

 

 ヴィーフリちゃんの言葉に、ウェルロッドさんとG36ちゃんがそう答えました。これでG41隊が揃いました。G41はみんなのところにててててて、と走っていきます。

 

「で、SVD? この隊の長は貴女? それとも、そっちのウェルロッド?」

 

 ヴィーフリちゃんがドラグちゃんとウェルロッドさんとを見比べて言いました。

 

「いいや? うちの隊長はそちらの可愛い娘だ」

 

 ドラグちゃんが笑ってG41を指して言いました。

 

「え? ええええええ!?」

 

 ヴィーフリちゃんが素っ頓狂な声を上げて驚きます。それはそうかもしれません。正直、戦術人形としての実績なら、ウェルロッドさんやドラグちゃんの方が隊長に相応しいからです。G41が隊長というのは信じられないかもしれません。

 

「驚くことはないですよ。彼女もまた指揮官と数多くの戦場を潜り抜けた、歴戦の戦術人形です」

 

「はい。お嬢様なら、きっと立派に隊長業務をこなせると、信じています」

 

 驚くヴィーフリちゃんにウェルロッドさんとG36ちゃんが言います。二人に信頼されているのが嬉しいです。特にウェルロッドさんは英国チームの隊長を務めていたこともあり、本来ならこの隊の隊長でもおかしくないです。そんなウェルロッドさんにそう言って貰えて嬉しいです。

 

「見た目や性格の無邪気さで侮るなよ? うちの隊長は思いの外有能だぞ?」

 

 お陰で手間がかからない。とドラグちゃんは言いました。それはそうです。

 G41は一〇〇式隊の結成当初からのメンバーです。そして、一〇〇式(モモ)ちゃんの大親友です。一〇〇式(モモ)ちゃんが慣れない隊長業務で苦労しているところを間近で見てきました。そんな一〇〇式(モモ)ちゃんからG41は沢山の事を学びました。そのことが今も活きているのです。

 

「侮ったりしないよ…ちょっと意外だっただけ」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんはG41に手を差し出しました。G41はその手を握って、改めて握手を交わしました。

 

「改めてよろしく、隊長さん。ちゃんと面倒を見てね、いつか報われるから!」

 

「うん、一緒に頑張ろうね、ヴィーフリちゃん!」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんとG41は互いの意思を確認しあいました! 二人は相思相愛です! えっへん!

 

 こうして、仮設G41隊が結成されました。その日はみんなでサワー会をやって楽しく過ごしました。短い間ですが、一〇〇式隊に負けないぐらい良い隊にしていこうとG41は思います。みんな、頑張ろうね! まる。



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33・いたずらG41(その3)

 ある日のことです。G41はヴィーフリちゃんと台所にいました。お茶の淹れ方を教えているのです。

 ご主人様はヴィーフリちゃんが気に入ったようで、早速明日の副官に指名しました。なので、G41が副官業務について教えているのです。G41はいい隊長さんです。えっへん!

 

「こんな感じかな?」

 

 ヴィーフリちゃんがカップにお茶を注いで言います。とってもいい色です。G41は早速いただいてみます。ふーふーしながら飲んでみると、程よい苦みと甘さが感じられました。とっても上手だと思います。

 

「うん! ヴィーフリちゃん、すごく上手!」

 

 G41は感心して言いました。少し教えただけでこれだけできるようになったのだから、凄いと思います。ヴィーフリちゃんは凄く物覚えがいいです。

 

「ありがと。でも、G41の教え方が上手だったからだよ」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんが頭を撫でてくれます。気持ちいいです。G41とヴィーフリちゃんは仲良しです。

 

「すみませーん、お茶を一杯貰えますか?」

 

「それは隊長に頼むことじゃないだろう、ウェル」

 

「あの、私が淹れますから…」

 

 入口からみんなの声が聞こえました。どうやら訓練が終わったみたいです。

 幸い、お茶はまだいっぱいあります。みんなに席に座って貰って、G41がお茶を淹れて出しました。

 

「ああ…G41さんのお茶は美味しいですね…」

 

 ウェルロッドさんがG41のお茶を褒めてくれました。それはそうです。G41はご主人様に美味しいお茶を飲んでもらうために、いっぱい練習したのです。

 

「お嬢様、申し訳ありません。本来なら私が…」

 

「ううん、いいの」

 

 謝るG36ちゃんにG41は首を振って言いました。みんな訓練の後なので、お茶を淹れて労うのも隊長の務めだと思うからです。

 

「ふふふ。うちの隊長殿はとてもいい娘で助かるよ」

 

 ドラグちゃんがそう言って、お茶にイチゴジャムを入れて混ぜ混ぜします。あれはドラグちゃんが好きなロシアンティーの飲み方です。ちなみに、ドラグちゃんは甘党なので結構いっぱい入れます。

 

「うん。仕事も丁寧に教えてくれるし。この隊に入って良かったよ」

 

 ヴィーフリちゃんもG41を褒めてくれます。嬉しいです。

 というわけで、仮設G41隊のお茶会が始まりました。みんな和気あいあいとお茶や会話を楽しみます。とってもいい雰囲気です。G41隊はみんな仲良しです。

 

「全く、G41はこのままいい娘でいて欲しいな」

 

「ええ。そういうところは指揮官に似ないで欲しいですね」

 

 ドラグちゃんとウェルロッドさんがG41を見て言います。G41は首を傾げました。G41をいい娘と褒めてくれているということは、ご主人様は悪い人と言ってるようなものだと思うのですが…

 

「ウェルロッドさん。ご主人様はそんなに悪い人なの?」

 

「…えーと」

 

 G41の言葉にウェルロッドさんとドラグちゃんはバツが悪そうに顔を合わせます。そんな二人をG41とG36ちゃん、それにヴィーフリちゃんが興味津々で見ます。

 

「ああ…うちの指揮官は相当な悪党だな…」

 

「…ええ。鉄血の連中が可愛く見えるレベルですよね…」

 

 ちょっと目を逸らしながら、ドラグちゃんとウェルロッドさんが言います。

 そういえば、ご主人様とFALさんは、任務のためにちょっと悪いことをすることもあるって言ってました。今回の事件もそうやって解決に導いているのかもしれません。

 

 でも、G41はたとえご主人様がとっても悪いことをしてても嫌いになることはありません。なぜなら、ご主人様はG41達のために悪いことをしているのですから。ウェルロッドさんやドラグちゃんもそれが分かっているので、ご主人様を悪いと思いながらも好きなのだと思います。

 

 ふと、G41は思いました。ご主人様を含めたみんなはG41をいい娘と褒めてくれます。でも、ご主人様のために働くのなら、少しは悪いこともできたほうがいいのかもしれません。そうしたら、FALさんみたいに特別任務を受けることもできるかもしれません。FALさんはG41の憧れです。FALさんみたいに活躍したいです。

 

 というわけで、お茶会が終わった後、G41はトンプソンさんのところに行きました。

 トンプソンさんは昔結構やんちゃをしたもんだ、って言ってました。悪いこともいっぱいしたらしいので、トンプソンさんならG41にもできる悪いことを教えてくれるかもしれません。

 

「あん? 手軽にできる悪いこと? …そうだな。スリとかカツアゲとかか?」

 

 ま、お前にできるとは思えないけど。トンプソンさんは笑ってそう言いました。

 

 むー。そんなことはありません。G41は悪戯の達人です。悪戯でご主人様に勝ったこともあります。なので、G41はスリやカツアゲもできます。今日のG41は悪い子です。

 

 というわけで、G41はご主人様のところに行きました。ご主人様にスリとカツアゲをするのです。

 

「G41、入ります!」

 

 指揮官室に入るとご主人様は一人でいました。副官の一〇〇式(モモ)ちゃんは仕事がないので訓練に行っているみたいです。

 

「やあ、G41。どうしたんだ?」

 

 ご主人様がG41に笑顔でそう言います。ご主人様がいるので、G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました。でも、今日のG41は悪い子です。早速ご主人様にスリをします。

 

「ご主人様、こっち向いててね?」

 

「うん? ああ…」

 

 ご主人様に正面を向いていてもらって、行動開始です。G41はご主人様の右側に回り込んで、近づいていきます。

 そして、ご主人様の左のほっぺに、自身のほっぺを近づけて、すりってしました!

 

「おおう!」

 

 やりました! ご主人様が驚いてくれました。スリ成功です!

 

 味をしめたG41は反対側に回り込みます。そして、ご主人様に近づいて、右のほっぺにもすりってしました!

 

「おおう!」

 

 やりました! ご主人様が驚いてくれました。またもやスリ成功です!

 

 というわけで、G41は見事スリを達成しました。G41はとっても悪い子です。えっへん!

 でも、このままではご主人様に怒られるかもしれません。なので、あの手を使ってG41はご主人様に許してもらうことにします。G41は抜け目がありません。

 

 G41はご主人様の前に座ります。そして、お膝に顔を乗せて上目遣いで言いました。

 

「ご主人様、許してね?」

 

「…G41は本当に可愛いな」

 

 ご主人様は笑ってG41の頭をなでなでしてくれました。ということは、許して貰えたということです。

 やりました! スリは大成功でした!

 

 というわけで、次はカツアゲをしようと思います。G41は立ち上がって言いました。

 

「ご主人様、ちょっと待っててね?」

 

「ああ」

 

 ご主人様にそう言ってG41は部屋を出ました。向かう先は台所です。

 

 まず、スパムの缶詰を開けて、中身を取り出します。それを横半分に切ってマヨネーズを塗って、スライスチーズを挟みます。

 次に小麦粉と溶き卵とパン粉で衣をつけます。そして、それをフライヤーでじっくりと揚げます。

 衣がきつね色になったら、フライヤーから上げて、キッチンペーパーで油を切って、ざく切りにします。それをお皿に盛りつけて、付け合わせのザウアークラウトとケチャップを添えたら、G41特製スパムカツの完成です!

 

 G41はお箸とカツとノンアルコールビールをお盆に乗せてご主人様のところに行きました。お昼時なのでご飯にちょうどいいです。

 

「ご主人様、どうぞー!」

 

「G41、マジか!?」

 

 G41がカツを出すと、ご主人様は目を輝かせて言いました。そして、カツを一口食べました。

 

「無茶苦茶うめぇ…」

 

 ご主人様はとっても嬉しそうにそう言いました。やりました! カツアゲも見事達成です!

 というわけで、G41はカツを食べ終えたご主人様の前に座って、お膝に頭を乗せて上目遣いで言いました。

 

「ご主人様、許してね?」

 

「嗚呼…G41は物凄く可愛いな」

 

 ご主人様は笑ってG41のことをなでなでしてくれました。ということは許して貰えたということです。やりました! カツアゲも大成功でした。えっへん!

 

「だが、G41… 俺は何を許したらいいんだ?」

 

 ご主人様はG41を抱え上げて、お膝に乗せて尋ねました。

 

「あのね、ご主人様」

 

 というわけで、G41は説明します。G41はFALさんみたいに、もっとご主人様のお役に立てるように悪いこともできるようになろうと頑張ってます。そのために、まずスリとカツアゲをしたのです。

 

「…G41、それは違う。俺もFALもG41にはいい子でいて欲しいんだ」

 

「ふぇ?」

 

 ご主人様は戸惑うG41の頭をなでなでしながら言います。

 ご主人様もFALさんも任務のために悪いことをすることがあります。それらに関して、特に罪悪感はないらしいですが、それでも何らかのわだかまりが心に残ることもあるそうです。

 

「そんな時、いい子のG41や一〇〇式(モモ)が俺達のことを好きでいてくれるとな、心が救われるんだ。俺もFALもG41に生かされてるんだよ…」

 

 ご主人様はG41を抱きしめてそう言いました。

 なんと、G41はいい子であることでご主人様やFALさんの役に立てていたみたいです。無理に悪い子にならなくてもいいのです。よかったです。G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました!

 

「でも、たまには悪戯をしたり、わがままを言ってもいいからな?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は元気よく言いました。ご主人様が頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は幸せいっぱいです。

 というわけで、今日もG41はご主人様にいっぱい甘えることができました。G41はこれからもご主人様の望むとおり、いい子であり続けます! まる。



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34・みんなご主人様が大好きです!(その2)

 本日、ご主人様はお外にお出かけです。何でも、秘密の交渉事があるらしいです。

 護衛にはFALさんとトンプソンさん、それにFive-sevenさんが着いて行きました。一〇〇式(モモ)ちゃんが指揮官室で電話番をしています。

 でも、G41は寂しくないです。なぜなら、G41達は今娯楽室で野球盤大会をしているのです。

 

「ふっふっふ、この打者で終わりだよ、G41ちゃん!」

 

 ステンちゃんが不敵に笑って勝利宣言をします。

 G41はステンちゃんと対戦中です。ステンちゃんはかなり野球盤の練習をしていて、凄く上手です。でも、G41も動態センサーや狙眼を用いて頑張りました。試合は完全打撃戦で25対24とかいう野球だとありえない点数になってます。

 

 今9回裏でG41の打順です。2アウト満塁で、ここで打てばG41の勝ち。アウトになればステンちゃんの勝ち、という状況です。

 

「いっちゃえ、ステン!」

 

 相棒のスコーピオンちゃんがステンちゃんを応援します。スコーピオンちゃんとしては、さっきG41に3回コールドで負けたのが悔しいのだと思います。

 

「大丈夫、G41。勝利はすぐそこよ!」

 

 ヴィーフリちゃんが対抗して応援してくれます。G41はやる気が出ました。G41隊の隊長として、カッコいいところを見せます!

 

「えーい!」

 

 さっそくステンちゃんが玉を撃ち出しました。G41のミミがピン!と立ちます。ボールはまっすぐに来ます。速度もあんまり速くないです。これはもらいました。逆転サヨナラホームランです!

 G41は狙いを澄まし、バットを振ろうとしました。

 すると、突然グラウンドが凹んでボールが下に入ってしまいました。G41はバットを止められず、空振ってしまいました。

 

「ふっふっふ、G41ちゃん。切り札は最後まで取っておくものだよ!」

 

 ステンちゃんがとっても得意な顔で言います。そんな機能があるとは知りませんでした。む~、そんなの反則です。

 

「G41ちゃん、振らなかったらボールになるよ」

 

「そうなの?」

 

 横で見ていたM14さんがアドバイスをくれました。

 

「はい。でないと、流石にずるいですからね」

 

 M590さんも肯定してくれます。そっかー。ならば、今度は見送ります。これで万事解決です!

 

「えーい!」

 

 ステンちゃんがまたもや玉を撃ち出しました。さっきと同じぐらいの速度の真っ直ぐの玉です。これはきっとさっきのアレです。G41は見送ることにしました。

 ところが、グラウンドは凹まずに玉は素通りしていきます。む~、2ストライクです。

 

「頑張って…! G41さん!」

 

「はい! 落ち着いて球を見極めてください!」

 

 TMPちゃんとM99ちゃんも応援してくれます。G41はますますやる気が出ました。でも、次が最後の一球になるかもしれません。何とか二択に迷わされずに打てる手はないものか。G41はグラウンドと穴の位置、それにバットの長さを見て考えました。

 

 ぴこん! 思いつきました! これで勝てます! ステンちゃん、かくごー!

 

「えーい!」

 

 ステンちゃんがまたまた球を撃ち出しました。やはり同じような球です。でももう通じません。

 

「えーい!」

 

 G41はジャストなタイミングより大分早く振りました。G41の見るところ、穴の位置よりも先に、バットの先端の届くタイミングがあります。それを目掛けて振ったのです。

 案の定、バットは球に当たりました。カス当りなので勢いは弱いです。でも、それもG41は計算済みです。

 ボールはへろへろと転がっていき、何とか2塁打の窪みに落ちました。やったです! 作戦大成功です!!

 

「ステンちゃん、どうだぁ!」

 

「うあー! 負けたー!!」

 

 G41が勝ち誇ると、ステンちゃんは頭を抱えて畳の上でゴロゴロしました。この勝負、G41の勝ちです!えっへん!

 

「凄い試合でしたね。二人とも、お疲れ様」

 

「うん、お疲れ様。…でも、あんな試合されちゃうと次からが辛いかも」

 

 M590さんとM14さんがG41達の戦いを褒めてくれました。確かに凄い戦いだったと思います。ステンちゃん、お疲れ様でした。

 

「じゃあ、次にアタシがTMPに勝ったら、隊長と勝負ね。…手加減しないわよ?」

 

「…絶対負けません!」

 

 次に勝負をするヴィーフリちゃんとTMPちゃんが言葉を交わします。ヴィーフリちゃんは普通なのですが、何だかTMPちゃんの声に秘められた闘志が凄いです! 訓練のおかげで、TMPちゃんも気弱さを克服できつつあるのかもしれません。

 

「暇だから、私達解説でもする?」

 

「そうですね。…あはは」

 

 すでに負けてるスコーピオンちゃんとM99ちゃんが言います。ごめんね、スコーピオンちゃん。でも、これも勝負の世界の厳しさです。

 

『みんな、基地は変わりないか?』

 

 ぴこん! 通信モジュールが開いてご主人様の声が聞こえました! ご主人様の声が聞けたのでG41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました!

 

『ご主人様!』

 

『おお、G41! いい子でお留守番できているか?』

 

『うん! みんなで野球盤して遊んでるの!!』

 

『そうか。楽しそうで何よりだ』

 

 G41の言葉にご主人様は優しい口調でそう言ってくれます。嬉しいです。帰ってきてなでなでして貰う事を考えると、G41は更に幸せな気持ちになります。早く帰ってきて欲しいです。

 

『指揮官、もうすぐお帰りですか?』

 

『ああ。後5分程で着きそうだ。すまんが、お茶を用意してくれないか?』

 

 M590さんの問いにご主人様が答えます。やりました! ご主人様が帰ってきます! 嬉しいです。

 

「みんな! ご主人様のお迎えに行こう!」

 

「あ、はい!」

 

 G41の提案にTMPちゃんが同意してくれました。他のみんなも頷いてくれました。というわけで、大会は一時中断して、みんなでゲートのところに行くことにしました。

 

『しかし、野球盤人気のようだな。ステンも大事に使ってくれているみたいだし』

 

『大事になんてしてません。…でも、ありがとうございます、指揮官』

 

 ステンちゃんが照れくさそうに言います。ステンちゃんはご主人様が大好きなのでちょっと天邪鬼しちゃうみたいです。可愛いです。

 

『ねえねえ、指揮官。お土産とかある?』

 

『ああ。お菓子を買い込んできたから、後でみんなで食ってくれ』

 

『やったー!』

 

 ご主人様の言葉に、スコーピオンちゃんが喜びます。スコーピオンちゃんもご主人様が大好きです。

 

他にも、

 

『ねー、M4。私も指揮官お迎えに行きたい』

 

 とSOPMODちゃん。

 

『まだ訓練中でしょ? ちゃんと終わってからにしないと』

 

『と言いながら、本当は自分が』一番先に迎えに行きたいんでしょ?』

 

『そ、それは…!』

 

 とM4さんとAR-15さん。

 

『全く、指揮官は人気者だな』

 

『それはそうよ、M16』

 

 とM16さんとROさん。

 

『指揮官、お茶とマフィンを用意して待ってますね』

 

『後、秘蔵のマーマイトも用意してますよ、指揮官』

 

 とスプリングフィールドさんとウェルロッドさん。

 

『指揮官…特に電話などもありませんでした』

 

『事態も動きはないみたいですわ、指揮官様』

 

 と一〇〇式(モモ)ちゃんとカリーナさん。

 

 その後も、64式さんやM500さん等、基地のみんながわいわいして、通信モジュールがとっても賑やかになりました。みんなご主人様の帰りを喜んでいます。みんなご主人様が大好きです!

 

『はいはい、みんな待っててね? でも、一番先にハグするのは私ね、指揮官?』

 

『じゃあ、いっそここでハグしておくよ、Five-seven』

 

『おいおい、ボス。そんなお色気シーンがあるなんて、聞いてないぞ?』

 

『せめて基地についてからにしてよ。狭いんだから』

 

 車の中の声も通信モジュールに乗って聞こえてきます。何だか楽しそうです。みんな仲良しなので、G41は嬉しいです。

 

「なんていうか、和気藹々とした基地ね」

 

 ヴィーフリちゃんが何だかしみじみとそう言いました。

 

「実を言うとね、結構不安だったの。指揮官は悪魔みたいな人って言われてたし、味方殺しで有名なFALもいるっ言うし、でね」

 

 ヴィーフリちゃんが少し笑って言います。確かにご主人様とFALさんはグリフィンの中では評判が良くない、と聞いたことはあります。でも、二人とも優しくて素敵です。それが分かったので、ヴィーフリちゃんも不安じゃなくなったのでしょう。ヴィーフリちゃんが基地の雰囲気になじんでくれているみたいで、とっても嬉しいです。

 

「うん! これからも一緒に頑張ろうね、ヴィーフリちゃん!」

 

「うん。アタシの可愛い隊長さん?」

 

 G41とヴィーフリちゃんは笑顔を交わします。G41とヴィーフリちゃんはすっかり仲良しです。もう相思相愛です。えっへん!

 

 やがてG41達はゲートの前に着きました。G41が狙眼で確認すると、車らしいものがうっすらと見えています。もうすぐご主人様が帰ってきます! 嬉しいです!

 G41はみんなと一緒にご主人様を待ちました。今日もご主人様にみんなであまあまするのです。G41達とご主人様は今日も仲良しでした! まる。



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35・甘えんぼG41(その4)

 今日も一日が終わりました! G41はパジャマに着替えて就寝準備完了です! デフォルメされたゴジラとかガメラがプリントされた薄紅色のパジャマです。FALさんがくれたパジャマはG41のお気に入りです! ご主人様がくれた猫さんみたいな枕も抱えているので完璧です!

 

 というわけで、G41は早速自分のベッドに潜り込みます。ちょっと子供っぽい意匠の二段ベッドの下です。上にはヴィーフリちゃんが寝ます。

 

「お休み、G41!」

 

 ヴィーフリちゃんが上から言ってくれます。G41も布団から右手を出して応えました。

 

「お休みなさい、皆さん」

 

「また明日、諸君」

 

「はい。おやすみなさい」

 

 隣の普通な二段ベッドに寝るウェルロッドさんとドラグちゃん、間に吊っているハンモックで寝るG36ちゃんがそう言ってお布団を被ります。それを確認して、G41は無線で部屋の電気を消しました。真っ暗になります。みんな、お休みなさい。

 

 …

 ……

 ………

 

 む~、眠れません。電脳のシャットダウン処理が終わらないのです。どうしたのでしょう。

 G41達戦術人形にとっても睡眠は大事です。寝ている間に人工筋肉なんかの修復をしたり、電脳内のクラスタの排除をしたりするのです。眠れないと困ります。

 こういう眠れないとき、G41は概ね一〇〇式(モモ)ちゃんのベッドに飛び込んで一緒に寝ていました。そうするとよく眠れるのです。

 でも、今G41は一〇〇式隊じゃないので、一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒の部屋じゃないです。一応、隣の部屋に一〇〇式隊のみんながいますが、流石に部屋をまたいで一〇〇式(モモ)ちゃんのベッドに入ったりすると、FALさんに叱られると思います。

 そして、大親友の一〇〇式(モモ)ちゃんはともかく、他のみんなのベッドに飛び込んだら流石に嫌がられると思います。

 というわけで、G41はベッドから降りて、枕を抱えてスリッパを履いて部屋を出ました。こういうときはご主人様に甘えるのです。

 

 ご主人様の部屋のドアの鍵を開けて、中に入ります。やはり、ご主人様はいません。時間は2230です。ご主人様はまだお仕事中です。でも、もうすぐ帰ってくると思います。

 というわけで、G41はご主人様のベッドに飛び込んでころころします。気持ち良いです。ご主人様の匂いでいっぱいです。G41は嬉しい気持ちでころころします。

 ご主人様の匂いは安心します。でも、今日のG41はなんだかこれだけでは眠れそうにないです。ご主人様の声が聞きたいです。というわけで、G41はひたすらころころしてご主人様を待ちます。

 

 …ちょっと飽きてきました。

 というわけで、G41はベッドの下に手を差し入れました。案の定エロ本がありました! また新しい本です!

 G41はそれをぺらっとめくって読み始めます。ご主人様をのーさつするお勉強をするのです。一枚めくると、やっぱり一〇〇式(モモ)ちゃんみたいな服の女の人がいました。やっぱり、ご主人様は一〇〇式(モモ)ちゃんみたいな服が好きなのでしょうか?

 そう思いながら、G41が次のページをめくろうとしたとき、

 

「こら、G41!」

 

 入り口からご主人様の声が聞こえました。そして、足早に近寄ってきてエロ本を取り上げます。

 

「勝手にこんな本を読むんじゃない!」

 

 そう言って、ご主人様はG41の頭をぺちっしました。とっても優しいぺちっだったので痛くはないですが、怒られてしまいました。ごめんなさい、ご主人様。

 

「で? どうしたんだ。G41? 甘えに来たのか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

「そうかそうか。よしよし」

 

 そう言って、ご主人様はG41の隣に腰掛けて頭を抱えてなでなでしてくれます。気持ち良いです。G41は幸せです。

 ひとしきりなでなでして、ご主人様はベッドから立ち上がろうとします。シャワーを浴びたいのかもしれません。

 ご主人様は仕事を終えて帰ってきたばかりです。シャワーを浴びたいのは当然です。そんなご主人様に我が侭を言うと負担になってしまいます。

 でも、G41は右手でご主人様にちょいってしてしまいました。もっと撫でて欲しいのです。もっとご主人様に構って欲しいのです。

 もちろん、我が侭はいけません。でも、ご主人様はちょっとぐらい悪戯をしたり、我が侭を言ってもいい、って言いました。なので、ちょいってしても怒られないと思います。

 

「甘え足りないのか。よしよしよし」

 

 すると、ご主人様はもう一度座って、G41の頭を抱えてなでなでしてくれます。喉の下をさすさすしてくれます。耳の後ろをさすさすしてくれます。気持ち良いです。G41は幸せです。つい喉をごろごろと鳴らしてしまいました。

 

 ひとしきりG41をなでなでして、ご主人様はG1をお膝に乗せて抱っこしました。そして、更になでなでしてくれます。G41は幸せいっぱいです。やっぱり、G41はご主人様に甘えているときが一番幸せです。

 

「でも、最近夜中来なかったのに、珍しいな?」

 

 ご主人様はG41のお腹をさすさすしながら言います。そういえば最近夜中ご主人様の部屋に来てないです。一〇〇式(モモ)ちゃんのベッドに入ることで寂しさが癒されてきたからです。でも、今は一〇〇式隊じゃないので一〇〇式(モモ)ちゃんに甘えるわけにはいかないのです。

 

「はい。今は一〇〇式隊じゃないので一〇〇式(モモ)ちゃんがいないです」

 

「そうか。一〇〇式(モモ)がいないなら寂しいな」

 

 G41の言葉に、ご主人様はG41のほっぺをむにむにしながら言いました。なんだか視線がちょっと高い気がします。視線を追ってみると、部屋の入り口です。少し開いています。あれ? なんだか人影が…

 

「でも、新しい隊の娘ももっとG41に甘えて欲しいと思ってると思うぞ? なあ、ヴィーフリ?」

 

「…あははは。ばれちゃった」

 

 そう言って、ヴィーフリちゃんが部屋に入ってきました。なんと、ヴィーフリちゃんは起きていてG41の後をつけていたのでした!

 

「ヴィーフリちゃん」

 

「…あのさ、G41」

 

 G41の視線を受けて、ヴィーフリちゃんは少し照れくさそうに言いました。

 

「寂しかったら、甘えても良いから。添い寝ぐらいするし」

 

 ヴィーフリちゃんの言葉に、G41は笑顔になりました。ヴィーフリちゃんはG41のことが大好きみたいです。G41もヴィーフリちゃんが大好きです。二人は相思相愛です! えっへん!

 

「でも、今日は俺と一緒に寝ような、G41」

 

「ちょっと! ふしだらよ、指揮官!」

 

 G41を抱きかかえて寝ようとするご主人様と、G41を取り返そうとするヴィーフリちゃん。夜中なのに大騒ぎです。G41は嬉しいです。一〇〇式(モモ)ちゃんは大親友です。それは未来永劫変わりません。でも、ヴィーフリちゃんもまたG41の親友になりつつあるのかもしれません。友達の輪が広がると未来が広がる。そんな気がしました!

 

 というわけで、G41は今日は部屋に帰って、ヴィーフリちゃんと一緒に寝ることにしました。ご主人様はちょっと寂しそうでしたが、引き止めずに見送ってくれました。ごめんね、ご主人様。でも、G41がご主人様が一番好きなのは変わらないことなので、勘違いしないでね? まる。



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36・G41の嫁入り

 ある日の事です。G41にお仕事が入りました。PV撮影のお仕事です。

 何でも結婚式場の宣伝用らしいです。ということは、G41は花嫁さんです!

 G41は嬉しいです。ウエディングドレスとか着てみたかったからです。うきうきです!

 

 というわけで、G41はご主人様と一緒に結婚式場に行きました! 式場の職員の人が迎えてくれて、G41は早速ドレスを着ることになりました。更衣室で職員の人達が着付けてくれて、お化粧もしてくれました! すっかりお嫁さんです! えへへ。

 

 というわけで、ご主人様にお披露目です。ご主人様はG41の花嫁姿を気に入ってくれるでしょうか?

 

「はっ…! …ハレルヤ~!」

 

 ご主人様の前に行くと、いきなり平伏してしまいました。どうしたんでしょうか?

 

「ご、ご主人様?」

 

「はっ! G41だったのか!? てっきり天使が降臨してきたのかと思った…」

 

 戸惑うG41に、ご主人様は顔を上げて言います。よくわかりませんが、きっと褒めてくれているのだと思います。G41は嬉しいです。

 

「いやぁ、こんな可愛いG41と誓約の練習か~。夢みたいだなぁ」

 

 ご主人様がニコニコして言います。ご主人様はG41と誓約してくれるつもり満々です。その予行演習なら嬉しいです。G41もうきうきです。ご主人様もうきうきです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「あの…相手役はこちらで男性型人形を用意してますから…」

 

「何ぃ!?」

 

 職員の人の言葉にご主人様が衝撃を受けます。G41も残念ですが、考えてみれば仕方ないです。ご主人様は人形じゃないですし、メディアに露出とかしちゃいけません。

 

「いや、それはまかりならん。例え芝居でも、G41と誓約しようというなら俺を倒してからにしろ」

 

 あう。ご主人様がヤキモチを妬き始めました。それ自体は嬉しいですが、これでは仕事になりません。どうしましょう。

 

 いろいろすったもんだした結果、相手役にはG36ちゃんが選ばれました! G36ちゃんはG41と相思相愛ですし、義体を標準型にすればタキシードも似合いそうです!

 

「お嬢様、どうでしょうか?」

 

「凄い素敵だよ、G36ちゃん!」

 

 タキシードを着て、眼鏡をかけているG36ちゃんはカッコいいです! 今はG41よりもずっと大人っぽく見えます。ドキドキです!

 

というわけで、G41とG36ちゃんは係の人から段取りを聞いて、式の動画を見て、それをロジック化して頭にインストールしました。これで動作を失敗することはありません。

 

 というわけで、さっそく本番です。G41とG36ちゃんは腕を組んで教会に入場しました。そして、一緒にゆっくりと歩いていきます。両脇にいるエキストラの人達が、祝福の言葉と花びらを浴びせてくれます。

 真っ白な教会を歩く、真っ白なドレスのG41。なんだかちょっと嬉しいです。お芝居ですがお嫁さんです。えへへ。

 

「うううう… 俺こんな日が来たら、泣いちゃうかも…」

 

 教会の隅のカメラに映らない辺りで見ているご主人様が、目に涙を浮かべて言いました。どうして泣いちゃうのかは分かりませんが、G41の花嫁姿を喜んでくれていると思います。

 G41は笑顔でG36ちゃんを見上げました。G36ちゃんも嬉しいといいです。ところが、G36ちゃんは顔を真っ赤にして緊張してました。どうしたんでしょう? 動きはロジック化しているので、緊張する必要はないと思うのですが…

 

 やがて、神父様の前にやってきました。ちゃんと台詞は覚えています。G36ちゃんも覚えていると思うのですが… 凄く緊張しています。でも、きっとG36ちゃんなら大丈夫です。

 

「G36さん、あなたはG41さんを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「はい! お嬢様は何があっても私が守ります!」

 

 G36ちゃんが力強く宣言してくれました。ちょっと台詞が違うような気がしますが、これはこれでいいと思います。なんだか、本気で言われてるみたいでちょっとドキドキです。

 

「G41さん、あなたはG36さんを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「はい、誓います!」

 

 G41はちゃんと台詞通りに答えました。G41はお芝居も完璧です。えっへん!

 でも、G36ちゃんの顔がさらに赤くなった気がします。どうしたんでしょう? 具合が悪いのでしょうか? これは頑張って、一発で終わらせてG36ちゃんの負担にならないようにしないといけません。

 

 その後も式は着々と続いていきます。指輪交換をしたりとか、誓いの言葉を言ったりとかしました。ちゃんと式次第通りにG41はやっています。G36ちゃんも時々言葉がとっても力強かったりしますが、おおむね式次第の通りです。

 

 そして、いよいよ誓いのキスの場面です! G36ちゃんとちゅーです。えへへ。

 G41とG36ちゃんは相思相愛です。なので、ちゅーしても問題ありません。

 

「お、お嬢様…し、失礼します…」

 

 G36ちゃんがG41のヴェールを取ってくれました。いよいよちゅーです。G36ちゃんの顔はもはやゆでだこのようです。早く終わらせないといけません。というわけで、G41は笑顔で目を閉じました。ちゅーを待つことにします。

 1分経ちました。ちゅーはまだです。ほんの少しだけ薄目を開けて様子を見ました。G36ちゃんが顔を真っ赤にしてフリーズしています。これはいけません。不具合が起きたのかもしれません。早く終わらせて診断しないといけません。

 というわけで、G41はG36ちゃんの頬を両手で持ってちゅーしました! なんだか、G36ちゃんの唇は柔らかくていい感じです。えへへ。

 

 というわけで、10秒ほどちゅーしてG41はG36ちゃんを放しました。すると、G36ちゃんは鼻血を垂らして、糸が切れた人形のようにその場に倒れてしまいました。大変です! 早く、診断しないといけません!

 

「ご主人様! G36ちゃんの診断をお願いします!」

 

「…ああ。いいものを見たなぁ」

 

 ご主人様がよくわからないことを言っています。そんなことを言っている場合ではないのですが…

 しょうがないので、G41はG36ちゃんを担いでご主人様のところまで持っていきました。でも、ご主人様は夢見心地で反応がありません。困りました。

 というわけで、正気に戻すためにご主人様にもちゅーしました! これできっと元に戻ってくれるに違いありません。

 

 10秒ほどちゅーした後、ご主人様は…

 

「うぼあー」

 

 と言って鼻血を出して倒れてしまいました! どうしたんでしょう? よく分かりませんが、困ったことになってしまいました。

 

 結局、その日の撮影はそれで終わりということになって、G41はご主人様とG36ちゃんを車に乗せて、基地に戻りました。そして、ご主人様をトンプソンさんにお任せして、G36ちゃんを医務室まで運んでいきます。

 

「お嬢様… 大好きです…」

 

 途中でG36ちゃんがうわ言を言いました。G41もG36ちゃんが大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 なんだかドタバタしてしまいましたが、次の日には式の残りをやってPVは完成しました。G41は楽しかったですし、G36ちゃんも何だかんだで幸せそうでした。ご主人様もPVの仕上がりに満足そうで、嬉しそうに何度も見返していました。

 いつかまたこんな風に式を開いて、ご主人様と誓約したいです。その時もこんな風に幸せと祝福に満ちた日であるといいな、って思いました! まる。



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37・G41vsご主人様(その3)

 G41はぷんすかです。またご主人様にミミをはむってされてしまいました!

 もちろん、ご主人様は謝ってくれましたが、G41は唇を尖らせたまま娯楽室で不貞腐れてます。どうしてご主人様はG41のミミをはむっとするのでしょう。理解できません。

 

 もしかすると、G41のミミは美味しいのでしょうか? そうならばまあ納得できなくはないです。G41だって美味しいものは大好きです。

 

 というわけで、G41は自分のミミをはむっとしようと試みます。ミミを引っ張って口元に持っていこうとします。

 もちろん、G41のミミはそこまで長くないですし、伸びたりもしないです。単に痛いだけです。G41はミミをはむっとできません。しょんぼりです。

 

「どうしたの、G41?」

 

 そんな様子を部屋に入ってきたFALさんが苦笑しながら見ていました。えへへ。

 でも、FALさんがいることは僥倖です。G41はすぐにFALさんに近づいていきます。

 

「FALさん、あのね? どうしてご主人様はG41のミミをはむっとするの?」

 

 G41はFALさんに疑問をぶつけます。ご主人様のことはFALさんが一番よく知っています。FALさんに聞けば間違いないです。

 

「うーん、G41が可愛いからだと思うんだけど…ちょっと、試そうか」

 

 そう言って、FALさんは椅子に腰かけて、お膝をパンパンと叩きます。お膝の許可が出ました。というわけで、G41はFALさんのお膝に座りました。G41は嬉しいです。ご主人様のお膝が一番ですが、FALさんのお膝も気持ちいいものです。G41は幸せです。

 

 しばらく、FALさんのお膝を堪能していると、不意にG41の背筋に電気が走るような感じがしました!

 

「うわぁ!」

 

 G41は思わず素っ頓狂な声をあげてしまいました。FALさんがG41のミミをはむってしたのです!

 

「あ、ごめん。G41」

 

 FALさんが軽く謝ってくれました。FALさんも思わずやってしまったみたいです。むー。FALさんまで思わずはむっとしてしまうとは。

 

「…FALさん、びっくりしたよ?」

 

「ごめんごめん。目の前でピコピコ動いてるから、ついね」

 

 G41の抗議をFALさんは軽く受け流して言います。そして、結論を言います。

 

「指揮官がミミをはむってするのは、目の前の丁度いい位置でピコピコ動いているからと、反応が可愛いからね」

 

「そうなの?」

 

 FALさんの言葉を聞いて、G41は悩みます。そういえば、ご主人様は反応が可愛い娘ばかりセクハラをするそうです。一〇〇式(モモ)ちゃんやM14さんがセクハラをよくされるのはそういう理由だそうです。

 

 ぴこん! G41は思いつきました!

 ということは、G41がミミをはむっとされても反応しなければ、ご主人様はやめてくれるはずです。というわけで、ミミをはむっとされても素っ頓狂な声をあげなければいいのです。

 

 それには特訓が必要です。ミミをはむっとされても声を上げない特訓開始です!

 

 はむっとする役は一番親しいFALさんと一〇〇式(モモ)ちゃんがいいです。でも、FALさんはこれから少し秘密任務があるらしいので駄目だそうです。G41はしょんぼりですがしょうがないです。FALさん、任務頑張ってください。

 一〇〇式(モモ)ちゃんを探してみますが、なんとUMP40さんやC-MSちゃんと訓練中です。お仕事中ならしょうがないです。一〇〇式(モモ)ちゃん、訓練頑張ってね。

 

 というわけで、G41は秘密基地に行きます。すると、案の定TMPちゃんがまるまるしてました。G41も秘密基地に入っていきます。ごそごそ…

 

「あ、G41さん」

 

 TMPちゃんは笑顔でG41を迎えてくれました。

 

「うん。あのね、TMPちゃん…」

 

 というわけで、G41は事情を話しました。かくなる上は、TMPちゃんに特訓に付き合ってもらうのです。

 

「え!? い、いいんですか!?」

 

 話を聞いたTMPちゃんは嬉しそうに言いました。目がきらきらしています。TMPちゃんは嫌がらずに付き合ってくれると思ってましたが、そこまで乗り気だとは思いませんでした。なので、遠慮なく頼むことにします。

 

「うん。よろしくね?」

 

 そう言って、G41は座ってTMPちゃんに背を向けます。そして、ミミをペタンと寝かせました。TMPちゃんが近づいてくる気配がします。特訓開始です。G41は目を瞑って我慢する姿勢をします。

 

 はむっ。

 

 TMPちゃんがG41のミミをはむってしました。少しびくってしましたが声は我慢できました。この調子です。これを続けて、G41はミミを克服するのです。くすぐったくても、変な感じがしても我慢します。

 

 はむはむはむ…

 我慢します。我慢します…

 はむはむはむはむ…

 我慢します。我慢します。我慢します…

 はむはむはむはむはむ…

 我慢します。我慢します。我慢します。我慢します…

 

 はむっ。

 

「うわぁ!」

 

 G41は思わず素っ頓狂な声をあげてしましました。誰かがTMPちゃんがはむはむしている方と反対のミミをはむっとしたのです!

 

「あ、ごめん。G41」

 

 つい可愛かったから。そう言って謝るのはヴィーフリちゃんでした!

 

「…ヴィーフリちゃん、びっくりしたよ?」

 

「ごめんごめん。で、どうしたの?」

 

 謝りながら事情を聞くヴィーフリちゃんに、G41は説明します。ミミをはむはむされる特訓をしているのです。

 でも、なんだか失敗な気がします。TMPちゃんのはむはむは予期していたので何とか我慢できましたが、ヴィーフリちゃんの方は予測していなかったので対処できませんでした。これではご主人様のはむはむに対抗はできません。しょんぼりです…

 

「うーん。でも、少しぐらいは許容してもいいかな、と思うんだけどね、私は」

 

 ヴィーフリちゃんがG41を見て言います。なんと、ヴィーフリちゃんは早速セクハラの被害に遭っているみたいです。主に脛とか太ももを撫でられるそうです。

 

「まあ、指揮官も色々頑張ってくれているし。…帰ってこなくなったら困るし」

 

 ヴィーフリちゃんの言葉を聞いて、以前FALさんが言っていたことを思い出しました。ご主人様はIFNで仕事をするので現実世界と仮想世界の区別がつきづらいのだそうです。なので、セクハラをすることで現実世界の感覚と繋がりを確認するのだそうです。もしかすると、G41のミミをはむっとするのもその一環かもしれません。

 

「そういえば… 指揮官はG41さんのミミは物凄く可愛くて、一番のお気に入りだって言ってました…」

 

 TMPちゃんがそう言ってくれます。なんと、G41のミミはご主人様の一番になっていたのでした! それならば、無理にご主人様のはむっを避けるよりは、ありのままに受け入れてあげるほうがいいのかもしれません。G41だって、ご主人様が帰ってこられなくなったら嫌だからです。

 

 というわけで、G41は特訓しないでおくことにします。もちろん、びくってするのは嫌ですが、これもご主人様のためです。G41はご主人様のお役に立てるのが一番幸せなのです。

 

 後日の話ですが、ご主人様はG41が不貞腐れていたのを見ていたようで、物凄く謝ってくれた後お詫びの品としてアイスクリームをくれました! 甘くて冷たくてとっても美味しかったです! そういえば、ご主人様はときどきこうしてお詫びの品を用意してくれることもあります。美味しい思いができるので、はむっとされるのも悪くはないかもしれません。

 

 でも、その後お膝に座ったら超はむはむされたので閉口しました。ご主人様? G41は受け入れますが、やっぱりびくってするのは嫌なものなのです。ほどほどにしてね? まる。



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38・愛されG41(その3)

 


 G41はるんるんです。FALさんの曰く、もうすぐ今回の事件が終わるからです。

 FALさんはご主人様と共に、今回の事件の経緯をつぶさに観察しているそうです。そして、もう敵は追い詰められており、今は逃げようとしているスポンサーに噛みついているそうです。

 敵はおバカさんです。スポンサーに噛みついたところで敵を増やすだけです。もはや長期的な補給は期待できません。もう敵は自壊を待つのみとなりました。

 今後のG41達の仕事は、死に体の敵の息の根を止めることです。ほっといても自壊するだけの相手ですが、死ぬ間際の足掻きで被害が出るかもしれません。なので、その前に敵の動きの隙を衝いて完全に葬らなくてはならないのです。今はその機会を伺っているらしいです。

 

 さすがご主人様です! もう事件は解決した同然です。後はご主人様の号令を待つのみです。G41はやる気満々です!

 あいつらのせいで、G41は切ない気持ちをいっぱい味わいました。G41は許しません。仮設G41隊の力をもって、あいつらを木っ端みじんにして見せます。出撃が待ち遠しいです。うきうき。

 

 というわけで、今日は仮設G41隊とM590隊で模擬戦闘訓練を行いました。結果はG41隊の圧勝です。M590さんも感心していました。

 

 G41はうきうきしながらご主人様のところに報告に行きます。仮設G41隊はいい隊になってきています。正直、一〇〇式隊と勝負しても勝てる気がします。ご主人様はきっと褒めてくれます。というわけで、G41はスキップしながら指揮官室に向かいました。

 

 指揮官室に行くと、何やら先客がご主人様とお話ししていました。部屋にいるのはTMPちゃんのようです。どうしたのでしょう?

 

「…TMP。最近調子が悪いようだが、どうしたんだ? 前の訓練ももう少し粘れただろう?」

 

 あう。TMPちゃんはお説教されているみたいです。しょんぼりです。

 でも、ご主人様の指摘は当たっています。本来TMPちゃんは体捌きに優れた戦術人形です。でも、最近訓練でやられる頻度が増えています。調子が悪いのかな、とG41も思っていました。

 でも、TMPちゃんを責めないで欲しいです。ハイエンドモデルの人形で固められた一〇〇式隊の中でTMPちゃんは唯一のハイコモングレードの戦術人形です。戦果の面でやや劣るのは仕方ないことです。

 いざとなったら、乱入してTMPちゃんを擁護しよう、とG41はミミを立ててドアの前で待機します。

 

「ご、ごめんなさい、指揮官…」

 

「いや、謝る必要はないさ。ただ、不安や不満があるなら言ってくれ。それを解消すればTMPも調子が回復するだろう?」

 

 謝るTMPちゃんに、ご主人様は優しく言います。ご主人様は優しいです。G41は安心しました。

 

「あの…G41さんはいつ一〇〇式隊に戻るんですか?」

 

 TMPちゃんが言いました。なんと、TMPちゃんはG41のことを気にしていたみたいです。

 

「とりあえず、現状今回の戦いが終わってからだ、としか言えん。言いたいことはわかるが、しばらくはそのつもりで行動してくれ」

 

「…分かりました」

 

 ご主人様の言葉に、TMPちゃんは肩を落として退出しました。

 

 むー。これはいけません。TMPちゃんはG41がいないので寂しいに違いないです。秘密基地とかでは今まで通りに接しているつもりですが、戦場で接することがないので寂しいのかもしれません。

 TMPちゃんとG41は言うまでもなく、相思相愛です。えっへん。でも、そのことがTMPちゃんの負担になってはいけません。隊が違っても、G41はTMPちゃんが大好きだ、と伝えてあげたいです。身体は少し離れてても心は共にある、ということを教えてあげたいです。

 

「TMPちゃん!」

 

「きゃっ! …じ、G41さん?」

 

 指揮官室を出たTMPちゃんを、G41は捕まえます。今はTMPちゃんの悩みを解決してあげたいです。訓練の報告はまた後でいいです。別に急ぎじゃないですし、ご主人様は分かってくれると思います。

 

「TMPちゃん! ちょっと、一緒に行こう!」

 

「は、はい!」

 

 G41の言葉に、TMPちゃんは頷きました。というわけで、G41はTMPちゃんを肩に担いで基地の裏門に行きます。そして、ゲートを開いてバイクで走り出しました。ネイキッドの大型バイクで、TMPちゃんをタンデムシートに乗せています。これはFALさんのバイクですが、G41も使えるようにして貰ってます。

 

 エンジンに火を入れて、G41達は夕日の中を駆けていきました。廃墟になった街の風景を丘から見下ろしつつ、駆けていきます。最初は驚いていたTMPちゃんも今は楽しそうにしています。G41は笑顔です。TMPちゃんも笑顔です。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 小高い山の上の展望台。暮れていく陽を横目に、G41はポケットからポケットストーブを出します。そして、マッチで燃料に火を点けて、水の入ったケトルを上に置きました。やがてお湯が煮えてきます。G41はチタンカップにカモミールティーのティーパックを添えてお湯を注ぎます。香ばしいお茶の香りがしてきました。

 G41はお茶をマグカップに注いでTMPちゃんに渡しました。

 

「はい、TMPちゃん」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 G41が渡したお茶を、TMPちゃんはフーフーしながら飲んでます。可愛いです。G41も自分の分を作って、飲むことにします。

 

 二人でお茶を飲みながら、静かに沈んでいく夕日を眺めます。周りが暗くなってきます。でも、何も怖いことはありません。銃には野戦装備を施してきていますし、TMPちゃんとG41が組んで戦えば大体の敵は片づけることができます。

 小高い丘からは基地とか周囲の街の残骸とかが全て見えます。オレンジに染められた世界は今やG41とTMPちゃんのもののように思えるぐらいです。そんな景色を二人で静かに眺めていました。

 

「あの…G41さん…」

 

 TMPちゃんが控えめにG41のことを呼びます。G41は笑顔でそれを受け入れました。

 

「…やっぱり、G41さんがいないと寂しいです。みんな良くしてくれますけど、やっぱり…」

 

「そうなんだー…」

 

 G41はそんなTMPちゃんを抱きしめます。寂しい時、G41はこうして欲しいです。きっと、TMPちゃんもそうして欲しいと思います。そして、TMPちゃんはG41の胸に顔を埋めています。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「大丈夫だよ。G41はいつまでもTMPちゃんのことが大好きだから」

 

「G41さん…!」

 

 G41の言葉に、TMPちゃんはとっても嬉しそうな笑顔を見せます。G41も嬉しくなりました! やっぱり、二人は相思相愛です! えっへん!

 

「この戦いが終わったら、また同じ隊だから。一緒に頑張ろうね!」

 

「はい!」

 

 G41はそう言って、TMPちゃんの頭をなでなでします。TMPちゃんは嬉しそうです。誰かに頭をなでなでしてもらうのも嬉しいですが、なでなでするのも嬉しいものです。G41はTMPちゃんが大好きです!

 

「というわけで、今日はここでキャンプしよー」

 

 すっかり暗くなったところで、G41はバイクのサイドについているバッグからテントを取り出して言います。ついこの間FALさんが野営用のセットをバイクに積んでいたのです。

 テントはそれほど大きくないですが、それでもG41とTMPちゃんが一緒にまるまるできるぐらいには広いです。今日はここがG41達のおうちです。

 

「は、はい!」

 

 TMPちゃんも嬉しそうに頷いてテントの設営を開始します。細引きを張って、ペグで固定します。10数分の後にテントが出来上がりました。ランタンを吊るして明かりをつけると、すっかり我が家の雰囲気になります。エアマットを膨らませて敷けばふかふかの床になります。寝心地は良さそうです。

 

「あとはご飯を用意しよー」

 

 G41はそう言って、ポケットストーブをもう一つ取り出し、固形燃料を置きます。そして、火を点けて取っ手付きの飯盒を温めて油を引きます。そして、ベーコンを炒めます。じゅう、と音がして美味しそうな匂いが漂ってきます。TMPちゃんも目を輝かせながらそれを見ています。でも、まだ食べてはだめです。料理は完成していません。

 

 そこに野菜の缶詰を入れて更に炒めます。そして、頃合いを見てペットボトルから水を入れます。そして、味覇を入れて下味をつけてます。そして、そこにオートミールを投入してしばらく煮込みます。

 その間にケトルに水を足し、ポケットストーブに燃料を追加して更にお湯を沸かします。そして、G41とTMPちゃんのカップに味覇と乾燥玉ねぎとニンニクを入れます。これにお湯を注いでかき混ぜると、即席のスープになります。

 

 しばらくして、オートミールが煮えてきました。そこにカレー粉を投入します。そして更に煮込んでカレー粉が馴染んだら、G41特製野営カレーリゾットの完成です!

 

 G41とTMPちゃんはカレーと即席スープ。それにコンビーフの缶詰という夕食を摂りました。星空の下で食べるご飯は美味しいです! G41もTMPちゃんもニコニコです!

 

「G41さんのご飯、久し振り…美味しい…」

 

 TMPちゃんがしみじみとそう言ってカレーを食べます。とっても嬉しそうです。一〇〇式隊には一〇〇式(モモ)ちゃんがいるので、ご飯がまずいわけはありません。このカレーだって一〇〇式(モモ)ちゃんに習ったものなので、ほとんど一緒の味がするはずです。でも、TMPちゃんはG41が作ったという事実が嬉しいみたいです。TMPちゃんに愛されて、G41は嬉しいです!

 

『G41、TMP。今日はそこで野営するのか?』

 

 通信モジュールからご主人様の声が聞こえました。勝手に基地から出てきましたが、特に怒ってる風はありません。G41は主力部隊の隊長なのである程度訓練の裁量を任されています。今日のことは野営訓練、として処理されると思います。

 

『うわわわ、指揮官! ご、ごめんなさい…』

 

『謝ることはないさ、TMP。G41、明日は特に予定もないからゆっくりしてくれ。何かあったら、連絡をくれ』

 

『はい、ご主人様』

 

 ご主人様にそう答えて、G41とTMPちゃんは再びご飯を食べます。星空の下、基地の明かりを見下ろしてのご飯。隣には笑顔のTMPちゃんがいます。とっても贅沢な時間です。

 

「G41さん…私、G41さんが大好きです!」

 

「うん! G41もTMPちゃんが大好きだよ!」

 

 そう言って、二人は笑顔を交わします。幸せな時間です。G41とTMPちゃんはずっと仲良しです。いつまでもいつまでもこの絆を大切にしていきたいと思います。

 そして、食事を終えたG41とTMPちゃんはテントの中でまるまるして、いろんなことをお話ししたり、尻尾やミミをはむっとしてじゃれたりしながら、夜を過ごしました。とっても楽しかったです。一〇〇式隊に戻ったら、一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんやFive-sevenさんも一緒です。みんなでする野営は楽しいものです。

 でも、そんなG41の脳裏にヴィーフリちゃんやG36ちゃんのことが思い浮かびました。仮設G41隊が解散になったら、二人は寂しいでしょうか? G41は寂しいです。なんだか名残惜しい、そんな気がします。

 

「G41さん?」

 

 黙り込んだG41にTMPちゃんが声をかけてきます。G41はそんな思いを振り払って、TMPちゃんに抱き着きました。とりあえず、今はTMPちゃんとの時間を楽しむべきです。隊のことはその時が来たらなるようになると思います。でも、何が起きてもTMPちゃんとの絆は揺るがないので安心してね? まる。



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39・G41にもブルーな日はあります(その3)

 ウェルロッドさんの運転する軽トラに揺られながら、仮設G41隊は基地に帰還しました。ようやく、今回の事件の主犯を撃滅したのです。

 仮設G41隊とM590隊とトンプソンさん達、それに404小隊を囮にして、一〇〇式隊とAR小隊が基地に潜入、そして深部に潜む主犯を撃滅するという作戦でした。

 

 主犯を撃滅したのは、やはり一〇〇式隊でした。本来、民間の戦術人形が勝てるような相手ではなかったみたいですが、FALさんの作戦と一〇〇式(モモ)ちゃんの銃剣で勝利を掴んだようです。流石、一〇〇式隊です!

 仮設G41隊も大いに暴れて、敵の注意を釘付けにしました。敵アジトへの正面突破を果たし、内部の敵の大半を引き付けることに成功したのです。これはご主人様も想定してなかった戦果で、物凄く感心していました。仮設G41隊も流石です! えっへん!

 

 今は軽トラの荷台でお茶を沸かしています。ポケットストーブにケトルを置いて、ウインドスクリーンを巻き付けて足で押さえ、ケトルの取っ手を手で押さえています。燃料をいっぱい燃やしているのですぐにお湯が沸いてきました。後は、ケトルにアップルティーのティーパックを入れてしばらく待った後、みんなのカップにお茶を注いで渡していきました。もちろん、運転席のウェルロッドさんと助手席のドラグちゃんの分もあります。

 

「はい、ヴィーフリちゃん」

 

「ありがと」

 

 笑顔でカップを渡すG41に、ヴィーフリちゃんはどこか作ったような笑顔で受け取りました。なんだか、無理して笑っているようです。大戦果を挙げての帰還だというのにどうしたのでしょう?

 

「どうしたの、ヴィーフリちゃん?」

 

「あ、うん…」

 

 G41の言葉に、ヴィーフリちゃんは少しだけ寂しそうに答えました。

 

「基地に帰ったら、この隊も解散かなって…少し寂しくなっただけ」

 

「…私も、もう少しこの隊で戦いたかったです…」

 

 ヴィーフリちゃんの言葉に、G36ちゃんも同意します。二人はこの隊を離れたくないみたいです。

 G41は何も言えませんでした。G41もまたこの隊の解散を寂しく思っているのです。

 もちろん、G41は一〇〇式隊に帰りたいです。お母さんのようなFALさんとお姉ちゃんみたいなFive-sevenさん、そして大好きな一〇〇式(モモ)ちゃんやTMPちゃんに囲まれていたいのです。

 でも、仮設G41隊もまたよく纏まった良い隊です。特にヴィーフリちゃんとは期間が短いながらも、相思相愛の仲になれたと思っています。名残惜しいと思います。

 その後、何も言えないまま仮設G41隊は基地に帰りました。みんな消毒と手当てを受け、データを提出しました。その後、各隊の隊長が指揮官室に集められます。いよいよ戦果報告です。

 

 指揮官室にはご主人様と一〇〇式(モモ)ちゃんとM4さん、M590さんとトンプソンさんが待ってました。G41は第2小隊なので一〇〇式(モモ)ちゃんの隣に並びました。視線を絡ませてにこっとします。お互い無事で本当に良かったです!

 なお、FALさんは64式さんとどこかにでかけたみたいです。ちょっとだけヤキモチですが、64式さんにとっては敵が討てたのです。今日ばかりは大目に見てあげようと思います。G41はいい先輩です! えっへん!

 

「各隊、ご苦労だった。今日もみんな無事で何よりだ。諸君の奮闘に感謝する」

 

「ボスの作戦が上手くいったからさ。まあ、お嬢のところだけは少し危なかったがな」

 

「まさか、あんなものが出てくるなんて。ぞっとしますね」

 

 ご主人様の言葉に、トンプソンさんが笑いながら、M590さんが肩を竦めて言いました。実際、あれと対峙していたら仮設G41隊でも勝てるかどうかわかりませんでした。そんな強敵を倒したのは一〇〇式(モモ)ちゃんです。一〇〇式(モモ)ちゃんは本当に凄いです!

 

一〇〇式(モモ)、本当によくやってくれた。この戦いの殊勲賞は間違いなくお前とFALだ。特別にケーキを出すから、後で食べてくれ」

 

「はい、指揮官。…後、千鳥ちゃんにも…」

 

「そうだな。後であいつにもやらないとな」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが手元の小太刀を見て言うのに、ご主人様も同意します。あの小太刀は一〇〇式(モモ)ちゃんの友達の遺した最強の剣です。今回も一〇〇式(モモ)ちゃんを守ってくれました。千鳥ちゃん、ありがとう。G41も後でほねっこをお供えしようと思います。

 

「後、G41隊もよくやってくれた。まさか、正面突破ができるなんて思いもしなかったよ」

 

「ええ。お陰で私達も一〇〇式(モモ)も助かったわ」

 

 ご主人様の褒めの言葉に、M4さんも付け加えます。G41達が敵の大半を引き付けたことで、一〇〇式(モモ)ちゃん達は危険なく任務を達成できました。特に一〇〇式隊は主犯が強敵だったこともあって、G41隊が突入に成功しなければ勝利は危うかったと思います。今回の戦いのMVPは一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんですが、G41隊の働きも大きなものでした! えっへん!

 

「ご主人様、褒めて~!」

 

 G41はご主人様に駆け寄って、褒めの言葉をおねだりします。あれだけ活躍したのだから、物凄く褒めてくれると思います。

 

「ああ、G41。本当によくやってくれた。お前は俺の天使だ。宝物だ」

 

 ご主人様はG41を抱きしめて、頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は嬉しいです。ご主人様のために戦えて、G41はとっても幸せです。

 

「後、今後の編成について、ここで説明する」

 

 G41をなでなでしながらご主人様が言います。いよいよ、G41は一〇〇式隊に戻るのです。G41は複雑です。戻りたいですが、名残惜しい。そんな感じです。でも、仕方ないです。G41は一〇〇式隊のエースなのですから。そう思いながら、G41はご主人様の言葉を待ちました。

 

「今日から常設第二小隊として、G41隊を設立する。以後、特別事案対処隊は一〇〇式隊、G41隊、M590隊、AR小隊の4隊で回すこととする」

 

 え……… G41は耳を疑いました。一〇〇式隊に戻るという話ではありませんでした。どういうことなのでしょう。

 

「やったじゃないか、G41!」

 

「まあ、あの戦果なら妥当ですね。おめでとう、G41さん」

 

 トンプソンさんとM590さんが祝福してくれます。でも、G41は分かりません。どういうことなのか、ご主人様に尋ねてみます。

 

「ご主人様…どういうことですか?」

 

「ああ、聞いての通りだ、G41。今後もG41隊を率いて頑張ってくれ。まあ、編成は少し変わるかもしれないがな」

 

 ご主人様が微笑みながら、G41の頭をなでなでして言います。でも、G41の顔は凍り付いたままです。

 

 一〇〇式隊に戻れません。大好きなFALさんと一〇〇式(モモ)ちゃん、Five-sevenさんとTMPちゃんの輪の中に戻れません。家族のようだったあの輪の中に戻れません。

 

 次の瞬間、G41は駆けだしてしましました。指揮官室を飛び出して、ひたすら走ります。後ろから声が聞こえました。すれ違った誰かが声をかけてきました。でも、G41の耳には入りません。ひたすら走って行きます。

 

 どれぐらいの時間が過ぎたのか。G41は気が付くと、野外訓練所の片隅に座っていました。

 頭の中がぐるぐるです。もちろん、ご主人様の言いたいことは分かります。G41隊が予想以上の戦果を挙げたので、常設隊として今後も活躍して欲しいのです。

 でも、一〇〇式隊はG41のおうちのような場所でした。そこから切り離されてしまいました。悲しいです。もしかして、G41の代わりは64式さんで十分と判断されたのでしょうか? G41はいらない子なのでしょうか。ぽろり。思わず涙が零れました。

 

「G41ちゃん」

 

 後ろから一〇〇式(モモ)ちゃんの声がしました。G41のことを追いかけてきたみたいです。そして、泣いているG41の隣に座りました。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん…」

 

 G41は思わず一〇〇式(モモ)ちゃんに抱き着いてしまいました。一〇〇式(モモ)ちゃんの服をG41の涙が濡らしていきます。でも、一〇〇式(モモ)ちゃんは優しくG41を抱き締めてくれました。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん…もう一〇〇式隊にG41は必要ないの…?」

 

「そんなことないよ。G41ちゃんがいてくれたら、私も心強いから…」

 

 G41の頭をなでなでしながら一〇〇式(モモ)ちゃんは言います。一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉が嬉しいです。一〇〇式(モモ)ちゃんが側にいてくれて嬉しいです。

 

「でもね、G41ちゃん。一〇〇式隊は…もう昔のままじゃいられないんだ…」

 

「その通りだ、G41」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの言葉に、追いついてきたご主人様が同意します。どうやら、ご主人様は必死で走ってきたみたいで息を切らしてました。

 

「すまなかった、G41。お前がこんなに一〇〇式隊を大切に思ってたなんて。俺が無神経だった」

 

 ご主人様がG41に頭を下げて詫びてくれます。G41はまたご主人様の負担になってしまいました。G41はダメな子です。でも、それぐらいG41にとって一〇〇式隊は大切な所なのです。家族のようだ、と思っていたのです。

 

「G41、聞いてくれ。一〇〇式隊隊からはFALとTMPが抜ける。また新しい体制になるんだ」

 

「ふぇ!? FALさんも!?」

 

 ご主人様の言葉に、G41は驚きました。一〇〇式隊の中で作戦を立案し、実質的に指揮しているのは副長のFALさんです。それが抜けるということは大黒柱がなくなるということです。G41が抜けるどころの話ではありません。

 

「FALにもまた隊長として隊を率いてもらう。俺の懐刀としてな。今の形の一〇〇式隊はもう存在し得ないんだ」

 

 ご主人様の曰く、一〇〇式(モモ)ちゃんもG41も成長して、FALさんなしでも隊長ができるようになったと信じている、とのことです。そして、今後もこの世界を少しでもマシにするためにより多くの力が必要になるのです。最精鋭であるG41にはもっともっと活躍して欲しい、とのことです。そのために、G41は正規G41隊を率いなければならないのです。

 

「G41ちゃん。お互いに頑張ろう」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんが力強い笑顔で言います。一〇〇式(モモ)ちゃんにとっても、今日はFALさんが隊からいなくなる時です。G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは今日、FALさんの庇護から抜け出して自分達でやっていくのです。巣立ちの時なのです。

 

「…うん、一〇〇式(モモ)ちゃん!」

 

 G41はそう言って、顔を上げます。一〇〇式(モモ)ちゃんだって頑張るのです。G41もまた独り立ちして見せます!

 

「ご主人様。このG41、ご主人様の期待を裏切らないように頑張ります!」

 

「ああ。ありがとう、G41」

 

 G41の言葉に、ご主人様が笑顔でお礼を言って頭をなでなでしてくれます。なんだか、嬉しいです。いつものなでなでと少しだけ違います。そんな気がしました。

 

「G41!」

 

「お嬢様!」

 

 ふと、声が聞こえました。ヴィーフリちゃんとG36ちゃんが走ってきています。G41もまた二人のところに走って行きました。

 

「G41! また一緒に戦えてよかった!」

 

「はい! お嬢様と一緒に居られて嬉しいです!」

 

「うん!」

 

 G41はヴィーフリちゃんとG36ちゃんと抱き合いながら喜びました。G41も二人と一緒に戦えて嬉しいです。ご主人様と一〇〇式(モモ)ちゃんもそんなG41達を笑顔で見つめていてくれました。

 

 こうして、G41は一〇〇式隊ではなく、正規G41隊の隊長になりました。

 家族のようだった一〇〇式隊はもうありません。でも、G41隊が新しい家族です。そして、一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんとの絆も健在です。これからは同じ隊長として肩を並べて戦っていく。そう形が変わっただけなのです。輪が広がった。それだけなのです。

 

「G41、これからもよろしく頼むぞ?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉に、G41は力強く答えました。今日までもこれからもG41はご主人様のために頑張っていきます! ヴィーフリちゃん、G36ちゃん。改めてよろしくね? まる!



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40・ハロウィン大作戦!

 戦いが終わって2日後、戦勝のお祝いを兼ねてハロウィンパーティーが行われる事になりました! みんなめいめいにお化けの仮装をします。

 ウェルロッドさんやP7ちゃんもノリノリです。一部の仕掛けはTMPちゃんが作って動くようになってます。凄いです。

 

 ちなみに、G41は雪女です! 青と白の着物を着て、頭に藁で作った笠を被っています。ちなみに、猫娘の一〇〇式(モモ)ちゃんに着付けて貰いました! 一〇〇式(モモ)ちゃんもとっても可愛いです!

 

 ちなみに、G41はご主人様からお菓子を受領する係りです。この格好で行くとご主人様はきっと喜ぶからです。お菓子もたくさんくれるに違いありません!

 

 というわけで、早速指揮官室のドアをノックして申告します。

 

「G41、入ります!」

 

 部屋に入るとご主人様はすでにお菓子を用意して待っててくれました! お菓子はカートの中にぎっしりです! あれだけあればきっとみんな大喜びです! うきうき。

 

「ぐはぁ!」

 

 と思ったら、いきなりご主人様が呻いて机に突っ伏してしまいました。一体どうしたのでしょうか?

 

「ご主人様?」

 

「ああ、すまん…G41があまりにも可愛いから意識が一瞬飛んでしまった」

 

 そう言ってご主人様が起き上がります。どうしてG41が可愛いと意識が飛ぶのでしょうか? よくわかりませんが、誉めてもらえたのでG41は嬉しいです。

 

 というわけで、G41は早速ご主人様の前に走っていきます。そして、ハロウィンの定番の一言を言いました!

 

「ご主人様、お菓子ください! さもないとイタズラをします!」

 

 G41はとっても得意な表情で言いました! こう言えば、ご主人様はイタズラを恐れてお菓子をくれるのです! ご主人様、どうだぁ!

 

「そうか。で、どんなイタズラをするんだ?」

 

 あう。ご主人様がにこにこと笑ってそう聞いてきました。

 G41は困りました。想定外です。ご主人様はお菓子をくれると思っていたのでイタズラを考えてきてないです…

 

「はい、時間切れ。お菓子はあげられないな」

 

 む~。ご主人様が意地悪なことを言います。かくなる上はイタズラをしないといけません。でも、どんなイタズラをしましょう。

 ぴこん! G41は思い付きました! 今のG41は雪女なのです!

 

「ご主人様、こっち向いててね?」

 

「うん? ああ…」

 

 ご主人様に約束してもらって、G41は右側に回り込みました。そして、ご主人様の耳に口を寄せて、息をふーってしました!

 

「うおぅ!」

 

 やりました! ご主人様が驚いてくれました!

 雪女は男の人に冷たい息をかけて驚かせるそうです。そして、G41は体温を調節して低くしています。なので、涼しい息が吐けるのです! えっへん!

 というわけで、G41は更に息を吹きかけます! ふーふーふー!!!

 

「ぐわああああああああ!!!!」

 

 ご主人様がそう言って椅子から転げ落ちて、床でごろごろし始めました! 物凄く効いてます! G41は追い討ちで更にいっぱい息を吹きかけます! ふーふーふーふー!!!!

 

「G41、参った参った。降参だ」

 

 そう言ってご主人様は立ち上がって、G41を抱き締めて頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。勝利の達成感と合わせて、G41は得意満面です。

 

「全く、G41が可愛すぎて死ぬところだったよ」

 

 そう言ってご主人様が誉めてくれます。嬉しいです。でも、可愛さで人は死ぬものなのでしょうか? G41にはよくわかりません。でも、とりあえずお菓子は貰えました。任務達成です! えっへん!

 

 その次の瞬間、急に目の前が真っ暗になりました。急に部屋の照明が落ちたのです!

 G41は困りました。何も見えません。G41の狙眼にはある程度の低光量補正能力がありますが、完全な闇の中では機能しません。どうしましょう。

 

「やれやれ。電源ユニットが落ちたのか」

 

 そう思っていると、明かりが灯りました。ご主人様がペンライトを点けてくれたのです! ご主人様は用意がいいです!

 

「通信モジュールも落ちてるな… 全く、何で毎年ハロウィンはこうなるんだか…」

 

 ご主人様がぶつぶつ言いながら、机の引き出しからトランシーバーを出します。そう言えば、去年のハロウィンも電源ユニットが落ちたような気がします。なんだか、基地がお化け屋敷になったみたいで、楽しかったです!

 

『カリーナ、状況はどうだ?』

 

『指揮官様!? どうも電源ユニットが主、予備ともに落ちたみたいです!!』

 

『了解。これから修理に向かう。一応、敵対勢力の工作の可能性もある。拳銃を片手に物陰に隠れてろ』

 

『わ、分かりました!』

 

 そう言って、ご主人様はベルトにトランシーバーを着けて、机の中から大型のマシンピストルとライトを取り出します。

 考えてみれば、電源が落ちたのは敵の工作の可能性もあるのです。ご主人様が戦闘態勢で出向くのも当然です。幸い、G41も銃を持ってきています。ご主人様を守ることができます!

 

「行こうか。G41は護衛を頼む」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は元気に応じます。G41は護衛はお手の物です! ご主人様のことは必ずお守りします!

 

 ご主人様のライトの明かりを頼りに、廊下を歩いていきます。ほとんどの娘は娯楽室にいると思うので、廊下には誰もいないです。G41はミミ立てて何かいないかどうかを確認しながらご主人様の先を行きます。今のところ何もいないですが油断をしてはいけません。

 

「ったく、暑いな」

 

 ご主人様はうんざりした様に言います。確かに暑いです。この季節なのに、空調や空気循環がとまると暑いのです。

 というわけで、G41はご主人様の側に寄って、寄り添うようにしました。今のG41の体温は低いので側にいると涼しいはずです。

 

「ああ、涼しい。ありがとう、G41」

 

 すると、ご主人様がお礼を言ってくれて頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。ご主人様のお役に立てて嬉しいです。

 というわけで、G41達はこの態勢のままで進んでいきます。敵が襲ってきても、動態センサーで察知できますし、すぐに戦闘態勢に移行できるからです。G41の練度は非常に高いのです! えっへん!

 

 その後15分ほどで地下の電源室に辿り着きました。G41が警戒しながらドアを蹴り開けます。すぐに銃を構えて突入しますが、敵の気配はありません。安全を確認した後、ご主人様に入って貰います。

 

 ご主人様はすぐに電源ユニットのところに歩いていきます。そして、腰のポーチからアーミーナイフを取り出して、電源ユニットを開きます。そして、異常がないかどうか確認します。

 

「ちと暗いな。G41、この部分を確認してくれないか?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 G41は前に進み出て狙眼を起動します。G41の片目が赤く染まります。G41の眼は精密にモノを見ることができます。このぐらいの光量があれば視覚に障害はありません。

 ご主人様に示された場所を、G41はじっくり見ます。すぐに分かりました。回線が一部断裂しているのです。

 

「ご主人様、見つけました」

 

「でかしたぞ、G41」

 

 そう言ってご主人様がすぐに修理にかかります。G41はその間別の場所を精査します。ヒューズが飛んでたり、回路が切れた部分もすぐ見つけました。G41とご主人様のコンビネーションはばっちりです! えっへん!

 

 半時間の後、部屋の電気が点きました。応急修理が完了したのです。

 

「G41のおかげでスムーズにできたよ」

 

 そう言ってご主人様がなでなでしてくれます。嬉しいです。G41はご主人様のお役に立てることが一番嬉しいのです。G41は幸せです。

 

『戦術人形各員に告ぐ。ただちに、状況を序列順に報告せよ』

 

 ご主人様が通信モジュールを開いてみんなに声をかけます。G41達は何もなかったですが、みんなに何かあったのかもしれません。それを確認するのです。

 

『…こちらFAL。別に何もないわよ』

 

『一○○式、異常ありません。…料理を温め直さないと…』

 

『M4A1、異常ありません』

 

 FALさん、一〇〇式(モモ)ちゃん、M4さんが答えます。他のみんなも順次報告します。みんな無事のようです。よかったです!

 

『そうか。被害はFALが尻餅ついたぐらいか』

 

『な!? そ、そんなことないわよ!!』

 

 ご主人様の言葉にFALさんが反論して、みんなが笑います。今日もみんな仲良しです。パーティはきっと楽しいものになると思います。

 

「後は予備電源だな。G41、すまんがそちらも手伝ってくれ」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉にG41は元気に応えます! お任せください、ご主人様! ご主人様の期待に添えられるようG41はいつも何事にも頑張ります!

 

 予備の電源を直した後、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんのお手伝いをして料理を完成させた後、ご主人様のくれたお菓子をみんなに届けました。みんなめいめいに仮装してて可愛かったです。

 後は、身支度を整えたご主人様を待つだけです。みんなでご主人様に驚いてもらうのです。きっと楽しい一日になります。ご主人様、早く来てね? まる!

 



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最終話:G41はいつまでも貴方と共にあります

「ご主人様! はやくはやく!」

 

「おいおい。そう急かすなよ、G41」

 

 G41はご主人様の手を引っ張って行きます。今にも駆けだしたいですが、ご主人様はお疲れなので無理はしない方がいいです。でも、G41は早く見たいのです。この世界がどれだけ素晴らしいのか。それが分かる景色らしいからです。

 

 今日はG41が頑張ったご褒美として、デートをしてくれました。同時にお話ししたいこともある、とのことです。G41は嬉しいです。ご主人様とのデートとかお伽噺を聞くのは大好きなのです。

 

 それから30分ほど歩いて、G41とご主人様は展望台に辿り着きました。山のてっぺんです!

 

「うわぁ…!」

 

 G41は思わず声を上げました。

 凄いです! 空が近いです! 手を伸ばせば届きそうなところに雲があります! 

 周りを見渡せば、赤や黄色になった山があります。綺麗です! 普段緑色の山がお化粧をしてるかのようです! さらにその先には青い海も見えます。空と山と海。それらが全部G41とご主人様のものになったかのようです!

 

「ようやくここまで来た。それをG41に見せたかったんだ」

 

 風に髪を梳かれているG41の頭をご主人様がなでなでしながら言います。この綺麗な世界はこの国のみんなが頑張って取り戻したものだ、と言います。崩壊液と核でボロボロになった世界は、ゆっくりとですが再生に向かっているのです。

 G41は何となく嬉しくなりました。ご主人様の戦いもまた、この世界を少しでもマシにするためのものです。つまり、G41の働きもこの世界を綺麗にするのに役に立っているのです。明日からも頑張っていきたい。そう思います!

 

 今日までにいろんな事件がありました。いろんな人や人形達と出会いました。痛いこともありましたし、苦しいこともありました。悲しいこともありました。でも、嬉しいことや楽しいことの方が多かったと思います。

 

 G41はご主人様の腕に抱き着きます。今日もご主人様がいてくれます。G41は幸せです。これからもずっとご主人様と一緒です。なので、G41はずっと幸せです! そして、基地に帰れば、一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさん達もいてくれます。みんなともずっと一緒です! G41はとってもずっと幸せです!

 

 G41はポケットストーブを2つ取り出して、シェラカップにお湯を沸かし始めます。しばらくすると、お湯が沸いてきたのでティーパックを入れてお茶にしました。一つをご主人様に渡して、もう一つを自分で飲みます。

 

 ベンチに座るご主人様のお膝に座って、綺麗な世界の風景を見ながら、まったりをお茶を飲みます。とっても幸せな時間です。時々ご主人様がG41の頭を撫でてくれたり、ミミをさすさすしてくれたりします。気持ちいいです。G41は幸せいっぱいです。ずっとこんな時間が続いたらいいな、って思ってしまいます。

 

「はい、ご主人様!」

 

 G41はバスケットからクッキーを取り出してご主人様に渡します。お茶菓子としてG41が持ってきていたのです。ストーブでは水を入れたケトルを沸かしています。お代わりもちゃんと用意しているのです。G41は気が利きます!

 

「ああ、ありがとう。G41」

 

 クッキーを受け取ったご主人様が美味しそうに食べてくれます。嬉しいです。そして、二人の間にまたまったりとした時間が流れていきます。幸せすぎます。

 

「ご主人様、いつ世界は全部綺麗になるんですか?」

 

 G41はふとご主人様に尋ねました。今綺麗なのはほんのごく一部の場所だけらしいです。それはやっぱり悲しいことだと思います。世界の全部が綺麗になって欲しいです。そうすれば、もっともっとご主人様と一緒に幸せな時間が過ごせる、と思うのです。

 

「…正直分からないな。もしかすると、そんな日は俺が生きている間には来ないかもしれない」

 

 ご主人様はG41の頭をなでなでしながら言います。G41は少し悲しいですが、それも仕方ないと思います。でも、ご主人様の働きのおかげで世界の浄化の研究はかなり加速している、ってFALさんは言いました。G41達が頑張れば、ご主人様の働きも大きくなって、もっと研究が進むかもしれません。そうすれば、ご主人様が生きているうちに世界の全部が綺麗になるかもしれません。もっともっと努力して、ご主人様と一緒に綺麗な世界を見よう、と思います。

 

「もし、世界の全部が綺麗になったら、ご主人様はどうしたいですか?」

 

「そうだな…その時はグリフィンを辞めて、気ままに過ごそうかな」

 

 ご主人様の言葉に、G41は悲しい気持ちになりました。ご主人様がグリフィンを辞めたら、G41はご主人様とお別れになってしまいます。基地も解散になって、みんなともお別れです。そんなの嫌です。ご主人様のために頑張りたいです。でも、頑張ったらご主人様とお別れになってしまうかもしれません。どうしましょう…

 

「大丈夫だ、G41。俺がグリフィンを辞めても、G41は俺とずっと一緒さ」

 

 G41の気持ちを察したご主人様がG41をなでなでしてくれながら言います。G41はご主人様の顔を見上げて言葉を待ちました。

 

「そのころには借金を返し終えているから、G41とも誓約しているさ。だから、G41とはずっと一緒なんだよ」

 

 ご主人様の言葉に、G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました! ご主人様はG41と誓約してくれるつもり満々です。わーい! G41の視界がバラ色になりました!

 グリフィンを辞めても、G41はご主人様とずっと一緒なのです! もちろん、ご主人様は一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんとも誓約するつもりだと思うので、G41達はずっと一緒なのです!

 

「G41、手を出してくれないか?」

 

「こうですか、ご主人様?」

 

 G41は右手をご主人様に差し出します。ちなみに、今のG41はお出かけモードなので、手を生体パーツに換装しています。

 

「お誕生日、おめでとう。G41」

 

 そう言って、ご主人様はG41の手を取って、人差し指に指輪を着けてくれました。G41は驚きで目を丸くします。なんと、今日はG41のお誕生日だったのです! ご主人様はG41も覚えていない製造日を把握していてくれたのです!

 

「それは誓約用の指輪じゃないが、きっといつかG41を守ってくれると思う」

 

 ご主人様の言葉にG41は指輪を見つめます。ピンクの宝石の付いた、銀色の綺麗な指輪です。とってもとっても嬉しいです。なんだか、もう誓約して貰った気持になりました。えへへ。

 

 その後もご主人様とG41はまったりとした時間を過ごして、いっぱいお話をしました。戦いが終わったら、みんなでレストランを開いて幸せに暮らそうっていう夢のお話をしました。G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは料理長兼看板娘です! えっへん!

 

 G41は蒼穹の彼方を見つめて思います。素敵で幸せな夢。ご主人様や仲間達と歩む未来。そして、綺麗なこの世界。それらを守っていくために、G41はこれからも戦い続けます。G41隊のみんなと共に、ご主人様の銃であり続けます。そして、

 

「ご主人様、このG41、ずっと貴方と共にあります!」

 

 G41は万感の思いを込めて、誓いの言葉を言い、ご主人様に抱き着きました!

 戦いは今後も続きます。危険が満ち溢れた道をG41は進んでいきます。でも、後悔なんてありません。G41はただご主人様のために前を向いて征きます! まる!




 というわけで、今日が終わりました。
 でも、明日はまたやってきます。ご主人様やみんなと歩むG41の日々はこれからも続いていきます。
 でも、ご主人様から貰ったにっきちょうのページがなくなってしまいました…

 なので、G41の秘密日記はこれで終わりになります。

 ここまで読んでくれたみなさん。どうもありがとう! 戦いが終わったらほねっこを持ってお礼にいくから、待っててね?

 でも、もしかするとご主人様から新しいにっきちょうのページを貰って、新しい秘密日記を書くかもしれません。

 その時は、耳を立ててよく読んで、面白かったらご褒美もくださいね? まる!


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追記分
追記1:お勉強G41


ご主人様から、追加用のページを貰えました!
G41は早速、のりで張り付けて日記を書きます。
というわけで、皆さん耳を立ててよく読んで、面白かったらご褒美もくださいね?


 それは夜、ご主人様が仕事を終えて部屋に帰ってきてからのことです。

 G41はご主人様にお勉強を教えて貰いにやってきました。ご主人様は喜んでG41を迎えてくれて、机の対面に座ってお勉強をする姿勢になりました。

 

「さて、今日のお題はこれで行こうか」

 

「はい、ご主人様」

 

 ご主人様は机の上にレゴブロックで簡単な建物を作り、そこに人形を並べていきます。そして、その周辺にもブロックを適当において、G41に人形を5つ渡してくれました。

 これは机上演習というものです。仮想のシチュエーションで人形を動かすことで、戦場を再現し、状況を打破する訓練をするのです。

 今日のシチュエーションは鉄血に占拠された二階建ての建物を奪還する、というものです。敵はStriker型とGuard型の混成部隊、そしてDinergate型が多数です。

 

 G41は盤面を見て頭をひねります。

 二階建ての建物はなかなかに厄介で、Striker型やJaeger型が立てこもると防衛陣地として十分機能します。下手に近づくと蜂の巣です。

 また、上手く突入できてもDinergate型の物量に押し潰される可能性があります。万全の体制なら、G41隊の敵ではありませんが、かろうじて突入できた、という程度の戦力では厳しい状況です。

 

「G41、戦術の基本は敵の短所を味方の長所を持って叩くことだ。この場合、G41隊が敵より優れているところはどこだい?」

 

 ご主人様がやんわりと助言をくれます。ご主人様はG41が困っていると、少しだけヒントを言って答えの糸口をくれるのです。

 G41は隊のメンバーを思い浮かべます。そして、敵の編成と地形を見ます。建物の間には遮蔽に使えそうな瓦礫がたくさんあります。身を隠すのにはうってつけです。それは後方にも散らばっています

 

 ぴこん! G41は作戦を思いつきました!

 

「お、思いついたか?」

 

「うん。あのね、ご主人様」

 

 G41は思いついた策を披露します。ドラグちゃんとウェルロッドさんに見立てた人形を後方に回したのです。

 この場合、敵に比べてG41隊は長距離からの精密狙撃を得意とするドラグちゃんを有していることが強みと言えます。Striker型の射程範囲外から狙い撃ってもらうのです。ウェルロッドさんは護衛兼観測手です。

 

 でも、それだけではいけません。Striker型がドラグちゃんの射線に入るように窓の近くまで誘導しないといけません。

 というわけで、G36ちゃんとヴィーフリちゃんが前線に出て、突入の構えを見せて陽動します。G41はそのバックアップ兼全体の統括です。遮蔽もたくさんあるので、隠れれば危険も少ないです。

 

「そうだな、G41。妥当な作戦だ」

 

 ご主人様が答えを聞いて、G41を褒めてくれてなでなでしてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

 その後も、G41はご主人様と一緒に演習を進めていきました。

 Striker型を始末した後は、ヴィーフリちゃんが突入して、すぐに引き返してDinergate型を誘い受けする、とか、いっそ周辺の車からガソリンを失敬して燃やすふりをして誘い出すとか、色々な案を検討しながら状況を進めていきます。

 

 そして、試行錯誤の末ついにG41は敵を一掃し、建物を取り返しました! 作戦は成功です!

 

「ご主人様~!」

 

「G41!」

 

「「いぇ~い!!」」

 

 G41はご主人様とハイタッチを交わします。何だかゲームをクリアーしたみたいで楽しいです。

 

「ご主人様。もう一問お願いします」

 

「分かったよ。G41は勉強熱心だな」

 

 G41のお願いに、ご主人様は頷いて、その後G41を褒めてなでなでしてくれます。嬉しいです。G41は幸せです。

 G41がお勉強をすれば、G41の作戦能力が上がり、その分だけ副長のウェルロッドさんの負担を減らすことができます。そして、みんなの生存率や任務達成率が上がるのです。

 それに、お勉強はゲームみたいで面白いですし、ご主人様に一杯構って貰えて、褒めて貰ったりなでなでもして貰えます。こんないいことはないです。G41はお勉強が大好きです。

 

 その後、3問程解いたところで時間が2200になりました。そろそろお眠の時間です。

 

「ご主人様。今日もありがとうございました」

 

「ああ。お疲れさま、G41」

 

 G41はご主人様にご指導のお礼を言って、ご主人様はG41に労いの言葉をかけてくれます。そして、これからいよいよご褒美タイムです。G41は内心でワクワクしてご主人様の言葉を待ちます。

 

「というわけで、G41。おいでおいで!」

 

 ご主人様がお膝を叩いてG41を呼びます。お膝の許可が出ました! G41は喜び勇んでご主人様のお膝に座ります。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

「よしよしよし! G41、よ~しよしよし!!」

 

 そして、ご主人様が一杯なでなでしてくれます。ミミの後ろをさすさすしてくれます。喉をさすさすしてくれます。ぽんぽんをなでなでしてくれます。超嬉しいです。G41は幸せ一杯です。思わずゴロゴロと喉を鳴らしてしまいます。

 

「もう、相変わらずのばかっぷるね」

 

 入口の方から声がしました。FALさんが苦笑しながらこちらを見てました。えへへ。

 

「なんだ? やきもちか、FAL?」

 

「はいはい。寝言は寝て言ってよね」

 

 ご主人様の揶揄をFALさんは軽く受け流して近づいてきます。そして、G41の頭をなでなでしてくれました。

 なんと、ご主人様とFALさんのダブルなでなでです! G41は物凄く気持ちいいです。途轍もなく幸せです。

 

「指揮官もいいけど、今度は私やFive-seven、それにRoともやりましょう?」

 

「そうだな。現場レベルの指揮ならFAL達の方が上な部分もある。今度教わってみるといい」

 

「はい!」

 

 FALさんとご主人様の言葉に、G41は笑顔で頷きます。お勉強を通じて輪を広げて、自分を大きくするのです。こんなに素晴らしいことはありません。G41はお勉強が超大好きです。えっへん!

 

 というわけで、G41は今日もご主人様やFALさんに一杯可愛がって貰えました。超幸せでした。G41はいつも幸せ一杯です。

 G41はまだ隊長としての仕事を始めたばかりです。でも、いつかFALさんみたいな凄い戦術人形になって、ご主人様をお助けしていきたいです。なので、明日はFALさんやFive-sevenさん、それにRoさんやM16さんを交えてお勉強会です! G41が今どれぐらいのレベルなのか、そしてどんなことが学べるのか、とっても楽しみにしてG41はベッドに潜り込みました! みんな、また明日! まる!



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追記2:ツンデレG41

 ある日、グリフィンドール総選挙の話題の載った雑誌を読んでいた時のことです。

 G41は総選挙で5位でしたが、6位のWA2000さんとは票数的に大差がありません。互角の勝負です。

 なんでも、WA2000さんは「つんでれ」が可愛いらしいです。それこそが、WA2000さんの魅力なのだそうです。

 

 そこで、G41はいいことを思いつきました!

 G41もつんでれができるようになれば、もっと可愛さが増すかもしれません。すると、総選挙の順位が伸びると思います。

 そうすれば、CM出演とかの仕事が増えてお小遣いが稼げます。そしたら、もっと食材やオモチャが買えるので、ご主人様やみんなに美味しいご飯を作ってあげられたり、みんなで一緒に遊んだりできます。それはとても素晴らしいことです!

 

 というわけで、G41は早速ご主人様につんでれをすることにします。指揮官室に突撃です。

 

「G41、入ります!」

 

 G41はノックした後に申告して、指揮官室に入りました。

 

「おお、G41。今日も可愛いな。おいでおいで」

 

 ご主人様がG41を見るなり、早速褒めてくれました。G41は嬉しいです。ご主人様のところに突撃して、なでなでして貰いたいです。でも駄目です。今日のG41はつんでれなのです。

 

「ご主人様、G41は別にご主人様になでて貰いたくないんだからねっ!」

 

 そう言ってG41はぷいってします。何だかWA2000さんがこの前こんな事を言ってた気がするのでまねっこをしてみたのです。

 

「ぐはぁ!」

 

 突然、ご主人様が呻いて机に突っ伏しました。やりました! ご主人様はG41が可愛いとそういう態度をするみたいです。なので、つんでれは成功でした! えっへん!

 

「そう言わないで、G41。飴をあげるから」

 

 立ち直ったご主人様は机から飴を取り出して、G41に言います。あれはコーラの飴です! 美味しそうです。でも、味を占めたG41はつんでれを継続します。

 

「ご主人様、G41は別に飴なんて欲しくないんだからねっ!」

 

「…G41は本当に可愛いなぁ」

 

 ご主人様はつんでれをするG41をニコニコとして見ています。やりました! つんでれはまたしても成功です! えっへん!

 

「じゃあ、仕方ない。仕事を始めようかな」

 

 あう。ご主人様はそう言って、デッキからケーブルを伸ばして頭に接続しました。ご主人様の視線が遠くなります。仕事を始めてしまったのです。

 

 む~。G41は困りました。このままではなでなでが当分お預けです。本当はなでなでして欲しいのに…

 

 というわけで、G41はご主人様の机にあごのせをしました。ご主人様の邪魔をせずになでなでをおねだりするのです。

 でも、ご主人様の目は遠いままです。なでなでして貰えません。寂しいです。

 

 次にG41はご主人様の周りをくるくるします。ここまですればご主人様はきっと気が付いてなでなでしてくれるに違いありません。

 というわけで、ててててててと3回ご主人様の周りをくるくるしました。

 でも、ご主人様の目は遠いままです。なでなでして貰えません。

 

 G41はしょんぼりです。せっかくなでなでして貰えて飴も貰えるはずだったのに… こんなことなら、つんでれなんてしなければよかったです…

 

「あー、よく働いた。疲れたから、癒しが欲しいなぁ」

 

 すると、ご主人様がケーブルを抜いて言いました。G41は期待のまなざしをご主人様に向けます。

 

「というわけで、G41。おいでおいで!」

 

 ご主人様が自身の膝をぱんぱんします。お膝の許可が出ました! G41は喜び勇んでご主人様のお膝に座ります。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

「よしよしよし! G41、よ~しよしよしよし!」

 

 ご主人様がそう言って、G41の頭を抱えて物凄く一杯なでなでしてくれます。嬉しいです。G41は幸せ一杯です。

 

「ツンデレも悪くないけど、俺はやっぱり素直なG41が好きだな」

 

 ご主人様はそう言って飴を剥いてG41に食べさせてくれます。美味しいです。そして、ご主人様がまたなでなでしてくれます。嬉しいです。G41は素直に幸せを享受します。G41も素直にご主人様に甘えるのが一番幸せなのです!

 

 というわけで、G41のつんでれは失敗に終わりました。

 でも、ご主人様にいっぱい甘えられたので嬉しかったです! 今日もG41は幸せ一杯でした! まる。



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追記3:クリスマス大作戦!

 G41はうきうきです! 明日は待ちに待ったクリスマスです!

 前夜祭をたっぷりと楽しんだG41は、明日の本番に向けて心を躍らせます。銃にもオプティカルサイトやサイレンサーやTMPちゃん特製の銃剣、それにご主人様から貰った超小型電磁加速装置や排ガス制御装置なんかを取り付けてクリスマスツリーにしました! ちょっと重たいですが、とってもかっこいいです。えっへん!

 

 そして、明日はサンタさんがプレゼントをくれる日です!

 夜寝る前に、靴下を枕元に釣っておくと、サンタさんがプレゼントを入れてくれるのです!

 

 ART556ちゃんやP7ちゃんは手製の大きな靴下を用意して、FALさんに窘められました。なんでも、そんな欲の深いことをすると、悪い子とみなされてプレゼントをくれないのだそうです。それにあんまり高いものを頼んでもダメです。それは欲深の悪い子になってしまいますし、なによりサンタさんが貧乏になったら可哀想だからです。

 

 ちなみに、G41はポケットストーブをもう一つ頼みました。ストーブが増えると料理が沢山作れます。G41はみんなにもっとたくさん美味しいものを作ってあげたいのです!

 それに愛用のポケットストーブも兄弟が増えると嬉しいと思います。ポケットストーブ三兄弟です!

 ちなみに、大親友のSOPMODちゃんはドリルとしても使えるインパクトドライバーセットをサンタさんにお願いしています。何に使うのかは知りませんが、とても綺麗な笑顔でした。もしかすると、わんちゃんのお家でも作ってあげるのかもしれません。

 

 そういえば、その時SOPMODちゃんはサンタさんはご主人様だって言いました。

 

 G41は首を傾げました。そんなことはないと思います。

 ご主人様は毎年クリスマスイヴの日に全人形のメンテナンスを行います。なので、G41達は必ず端末に接続して寝ないといけません。

 メンテナンスをすると大忙しのはずなので、ご主人様がプレゼントを配って回るなんて不可能です。

 

 それに、ご主人様は貧乏です。月末になるとご飯にさえ事欠く有様です。今月は特に貧乏なようで、昨日も一昨日もG41の差し入れで飢えを凌いでいました。そんなご主人様がみんなにプレゼントを渡して回るとかできるはずがありません。

 

 やっぱり、サンタさんはいるのです。G41はサンタさんを信じています。

 

 でも、そうなるとG41の悩みがまた一つ増えます。

 サンタさんはこの基地に来てから毎年プレゼントをくれます。でも、G41はサンタさんに何もしてあげられません。サンタさんに申し訳ないです。せめて、お礼だけでも言いたいのです。

 

 クリスマス大作戦開始です! G41は何としてでもサンタさんに会って、お礼を言うのです。

 

 というわけで、G41はベッドの上で座って待つことにしました。今日はサンタさんに会うまで寝ないことにします。

 

「どうしたんですか、G41さん?」

 

「寝られないんなら添い寝するけど?」

 

 まだ起きていたウェルロッドさんとヴィーフリちゃんが声をかけてきます。もうお眠の時間なのに寝ていないので不思議に思ったのでしょう。

 ちなみに、ドラグちゃんとG36ちゃんはご主人様から特別任務を与えられたので今はいません。クリスマスイヴなのに可哀想だ、と思いますが2330には終わるらしいので、部屋には帰ってこられます。なので、明日の朝にはちゃんとプレゼントを受け取れるのです。

 

「あのね、クリスマス大作戦するの」

 

「「クリスマス大作戦?」」

 

 G41の言葉に首を傾げる二人に、G41は作戦を説明します。今日はサンタさんにお礼を言ってから寝るのです。

 それを言うと、二人は穏やかに微笑んで言いました。

 

「G41さん。サンタさんはとってもシャイなので、子供が起きていると来てくれないんですよ?」

 

「そうなの?」

 

「うん。だから、早く寝たほうがいいよ?」

 

 二人の言葉にG41は困ってしまいました。サンタさんは恥ずかしがり屋さんなのです。だから、みんなが寝ている隙に隠れてプレゼントを渡していくのです。ご主人様が制御する基地の監視システムにも引っかからないなんて、サンタさんのステルス技術は凄いです!

 

 ぴこん! G41はいいことを思いつきました! ステルスにはステルスで対抗するのです!

 

 というわけで、G41はまずクッションを丸めてベッドの上に置きました。そして、その上からお布団をかけます。これでG41が寝てるみたいに見えると思います。

 そして、G41自身は部屋の隅で段ボール箱を被って隠れることにしました。これでサンタさんが現れたら、飛び出してお礼を言うのです! とっても名案です!

 というわけで、G41は床に茣蓙を敷いて段ボール箱を被ります。狭くて暗いのでいい感じです。これでサンタさんが来るまで待つのです。

 

『G41、消灯時間が過ぎているぞ? 早く端末に接続して寝ないと、サンタさんが来てくれないぞ?』

 

 あう。通信モジュールからご主人様の声がしました。ご主人様にはバレバレなのです。

 G41は困ってしまいました。ご主人様の言いつけを守らないと悪い子になってしまいます。悪い子にはサンタさんはプレゼントをくれません。サンタさんにお礼を言いたくて、悪い子になってしまっては本末転倒です。

 

『ご主人様、どうしても今日メンテナンスしないと駄目なの?』

 

 G41はご主人様に尋ねました。普段なら消灯時間を少しぐらい過ぎてもご主人様は何も言いませんが、今日は一斉メンテナンスをするので消灯時間に寝るように言うのだと思います。メンテナンスを明日とかにして貰えないでしょうか。

 

『ああ。明日はクリスマスパーティだし、俺も酒を飲みたいしな。んで、明後日からはグリフィン支部の方に出向かないといけないから、今日終わらせとかないといけないんだ』

 

 ご主人様の言葉にG41はしょんぼりです。ご主人様の言っていることがもっともすぎるので、ワガママを言えません。どうしましょう…

 

『どうしたんだ、G41? 何かあるのか?』

 

『あのね、ご主人様。G41はサンタさんにお礼が言いたいです』

 

『そうか。ならいい手がある。俺の部屋においで?』

 

 正直に答えるG41に、ご主人様はそう言ってくれました。さすがご主人様です! G41は喜び勇んでご主人様の部屋に行きました。

 すると、ご主人様は万年筆と綺麗なクリスマスカードを用意して待っててくれました。

 

「G41、このカードにお礼の言葉を心を込めて描くんだ。そうしたら、G41がお礼を言うのと同じだろう?」

 

「はい、ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉に、G41は嬉しい気持ちになりました! 確かにご主人様の言う通りです! こんな手を思いつくなんて、さすがご主人様です!

 

「というわけで、G41。おいでおいで」

 

 机の前に座るご主人様がぱんぱんと膝を叩きます。お膝の許可が出ました! G41は喜び勇んでご主人様のお膝に座りました。気持ちいいです。G41は幸せです。

 というわけで、G41はご主人様のお膝に座って万年筆を握ります。そして、心を込めてありがとうのメッセージをカードに書いていきます。

 

「G41は優しいいい子だな」

 

 ご主人様がそう言ってなでなでしてくれます。嬉しいです。この嬉しさをサンタさんにも共有して貰えるともっと嬉しいです。そんな願いを込めて、一生懸命メッセージを書きました。

 

 そして、部屋に帰ってG41は靴下のところにカードを置いて寝ることにしました。サンタさんお休みなさい。

 

 次の日です。朝起きると、G41の枕元にカードが置いてありました。G41が書いたのと別のカードでした!

 

『メリークリスマス! 可愛いG41ちゃん。これからもその優しい心を忘れないでいてね』

 

 カードにはそう書いていました! サンタさんが返信してくれたのです! ご主人様の字とは全然筆跡が違います! やっぱりサンタさんはいるのです! G41のカードはないので受け取って貰えたみたいです。

 靴下の中を見てみると、お願いしていたポケットストーブが入っていました! よかったです。クリスマス大作戦は大成功でした!

 サンタさん、今年もどうもありがとう。来年はほねっこも一緒に置いておくから待っててね? まる!

 

 ちなみに、SOPMODちゃんもお願いしていたインパクトドライバーセットを貰えました。よかったです。

 というわけで、二人でこれを使って訓練場で遊ぼう、ということになりました。わんちゃんのお家でも作るのでしょうか。楽しみです。わくわく。



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追記4:あけおめG41

 明けましておめでとうございます! 今日はお正月です! 新しい年の始まりです! ご主人様とみんなでまた新しい年を迎えられたのです。もう、うきうきです!

 

 というわけで、G41は朝早く起きて、台所に向かいます。まずはお雑煮を作ってご主人様に食べて貰わないといけません。

 お餅と言ってもお米で作るものではありません。お米はごく限られた地域でしか作られていないので、上級市民の人でないとそうそう食べられるものではないのです。

 

 なので、一〇〇式(モモ)ちゃんが発明した小麦粉のお餅を作ることにします。

 まず、片栗粉と小麦粉と水と塩をボウルに入れて、捏ねていきます。水をちょっと多めに加えて、ひたすら捏ねると、もちもちしてなんだかお餅っぽくなります。それを千切って手に取って、平たく丸めていきます。

 後はそれにほんの少しだけ醤油を塗って、表面を軽く炙るととってもお餅っぽくなります! 味見をしてみるととってももちもちで美味しいです! こんなものを考え出すなんて、一〇〇式(モモ)ちゃんは本当に凄いです!

 

 後は、鳥の骨で薄く出汁を取ったスープにお味噌を溶いて、グルタミン酸で味を調えます。後は、切った人参と大根と鳥のささみで作ったかまぼこを煮て、それを椀にとって最後に小麦粉餅を入れます。これで、G41特製お雑煮の完成です!

 

 上手にできたので、早速ご主人様のところに持っていきます。余ったお餅は焼き餅にして、別のお皿に乗せて持っていきました。これでボリュームも十分です。

 

「G41入ります!」

 

 指揮官室の前に着いたG41は、申告して部屋に入ります。そこにはもちろんご主人様がいてくれました。今日もご主人様がいるので、G41は嬉しいです。

 

「やあ、G41。あけましておめでとう」

 

「はい! あけましておめでとうございます、ご主人様! まずは褒めて褒めて?」

 

「ああ。新年早々G41は途轍もなく可愛いな。お前は俺の天使だ。宝物だ」

 

 挨拶をすると、ご主人様がとっても褒めてくれました。初褒めです! G41はとっても嬉しいです。今年もいっぱい褒めて貰うために頑張ろう、と思います。

 

「ご主人様! お雑煮をどうぞ~!」

 

「G41、マジか!?」

 

 驚くご主人様の前に、お雑煮の椀と焼き餅を置きます。我ながらとっても美味しそうです。G41はお料理もできるとってもいい子です! えっへん!

 

「むっちゃ美味い…」

 

 ご主人様がしみじみとそう言ってお餅とお雑煮を食べます。ご主人様が幸せそうで、G41は嬉しいです。

 

「G41は本当にいい子だな。可愛いな」

 

 お雑煮とお餅を食べ終えたご主人様がG41をなでなでしてくれます。初なでなでです。G41は今年も幸せです。

 

「指揮官、あけましておめでとう、って、先客?」

 

 後ろから声がしました。64式さんです! ピンクの着物を着ていてとっても綺麗です! お盆には大きな椀が乗っています。そういえば、今日の副官は64式さんでした。ちょっと出し抜いてしまいました。えへへ。

 

「ああ、64式。あけましておめでとう」

 

「あけましておめでとうございます、64式さん!」

 

「ええ。今年もよろしくね。…これ、余った蕎麦だけど、食べる?」

 

「ああ、頂くよ」

 

 挨拶を交わして、ご主人様が64式さんのお蕎麦を食べます。G41も昨日年越し蕎麦を食べましたが、とっても美味しかったです! 今日のご主人様の朝ご飯はとっても豪勢です!

 

「じゃあ、二人にお年玉をあげよう」

 

 お蕎麦を食べ終えたご主人様が、ポチ袋をG41と64式さんに渡してくれました。わーい。お年玉です嬉しいです。コインが沢山です。これでまたほねっことかささみジャーキーが陳情できます。嬉しいです。

 

「感謝します、ご主人様! 頭撫でて?」

 

「あ、ありがとう、指揮官。…でも、財布は大丈夫なの?」

 

 G41をなでなでするご主人様に64式さんが心配そうに尋ねます。

 そういえば、ご主人様は貧乏です。みんなにお年玉をあげるともっと貧乏になります。そうすると、借金を返せなくなって、誓約して貰うことができません。お年玉をお返しした方がいいのでしょうか。

 

「心配ないさ。この前の事件の特別褒章として予算を申請していたのさ。俺の財布が痛むわけじゃないよ」

 

 ご主人様は笑ってそう言います。さすがご主人様です! 根回しも抜かりがありません。というわけで、みんな遠慮なくお年玉を貰ってもいいのです!

 

「とりあえず、今日は仕事がない。64式もG41を着付けて、外で遊んでおいで?」

 

「うん、分かった。…じゃあ、行こうか」

 

「うん!」

 

 というわけで、G41は64式さんと一緒に更衣室に行きました。それでハロウィーンの時にも使った着物に着替えて、お外に行きます。手には一昨日みんなで作った羽子板を持ってます。G41のはわんちゃんと猫さんのプリント入りです。とっても可愛いです! えっへん!

 

 訓練場に行くと、四式ちゃんとヴィーフリちゃんと9A-91さんとRFBちゃんが羽子板で遊んでいました。まだ始めたばっかりのようです。G41も加わろう、と近づいていきます。

 

「みんな、明けましておめでとう!」

 

「明けましておめでとう、G41。今年もよろしくね?」

 

「あけおめ! ことよろ!」

 

「ス ノーヴィム ゴーダム… 今年もよろしく…」

 

「明けましておめでとうございます、G41殿! …64式殿、どうして隠れているのです?」

 

「…あ、明けましておめでとう、みんな…」

 

 みんなで新年の挨拶を交わし合います。今年もみんなが仲良しで嬉しいです。特に四式ちゃんはこの前入って来たばかりの後輩です。みんなで一人前に鍛えてあげないといけません。

 

「みんな、羽子板やろー!」

 

「んふっふっふ、この私に勝てるかな~?」

 

「指揮官がくれた…羽子板…負けません…」

 

「了解。それじゃあ早くいくわよ!」

 

「ちょっと、二刀流はずるいわよ!?」

 

 というわけで、いきなり羽子板大会が始まりました! ちゃんと墨汁と筆も持ってきてます。みんなー、かくごー。

 

 というわけで、G41が初めに打ちます。狙いはRFBちゃんです。小手調べなので、軽く打ちます。

 

「えーい!」

 

「ただのEASYモード…って、うわっ!」

 

 いきなりRFBちゃんは転んで羽を落としてしまいました。着物の裾を踏んでしまったのです。RFBちゃんは普段ゲームばかりしてて、こういうのには慣れていないのかもしれません。その点、G41はお外でよく遊ぶ元気な子なので、そう簡単に転んだりしません。えっへん!

 

「RFBちゃん、かくごー!」

 

 というわけで、G41はRFBちゃんのお尻に×マークを書きました。

 

「うう…新しい攻略法を見つけないと…」

 

 RFBちゃんは悔しそうにそう言って再び羽子板を構えました。その意気です。G41もミミをぴん、と立てて羽の来襲を待ち受けます。

 

 しばらく続けて、四式ちゃんとRFBちゃんが落書きだらけになりました。四式ちゃんはまだ訓練生なので身のこなしが甘いのです。可哀想ですが、これも教訓です。

 ヴィーフリちゃんや9A-91さん、それに64式さんも転んだりして着物が乱れてきました。なんか、結構みんな露出が多くなってきましたが、エキサイトしてるので気にしてません。G41も特に気にすることなく続けました。

 

「みんな、神社の準備ができたから、おみくじでも…って、うおおおおお!?」

 

 声をかけてきたご主人様が目を見開いて超驚いています。どうしたのでしょう? G41は首を傾げました。

 

「し、指揮官!? な、何見てるの!? 人を呼ぶわよ!?」

 

「指揮官!? ラッキースケベイベントがあるとか、聞いてないよ!?」

 

「し、指揮官! いきなり現れないでよ!?」

 

「あ、主…いえ、指揮官殿!? あわわわわ…」

 

「…指揮官…もっと、私を見てください…」

 

 9A-91さんを除くみんなは大慌てです。どうしたのでしょう? G41にはよく分かりません。

 

「…うぼあー」

 

 そして、ご主人様が鼻血を吹いて倒れてしまいました。どうしたのでしょう? いつもの病気でしょうか。トンプソンさんとM16さんを呼んで治して貰った方がいいのでしょうか? G41は困惑の極致です。 

 

「…ちょっと、みんな。エキサイトしすぎ。おいで、直してあげるから。一〇〇式(モモ)も手伝って」

 

「は、はい、FALさん」

 

 軽トラを運転してきた巫女服姿のFALさんと一〇〇式(モモ)が、降りてきてみんなを手招きして言います。新年早々FALさんにお手数をかけてしまいました。えへへ。

 

「みんな、衣装を整えたら、神社にお参りするのよ? おみくじを引くのも忘れないでね?」

 

 FALさんがそう言って、軽トラの荷台を見ます。そこには木で作られた神社がありました。毎年お正月に使われる仮設神社です! 一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんはそこで巫女さんをやっているのです!

 

「「「「「「はーい!」」」」」」

 

 みんな元気よくそう言って、神社の前に並びました。今年もいい年でありますように。そう願いながら、G41はお祈りして、じゃらじゃらと鈴を鳴らしました。顔を上げると、一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんの笑顔がありました。嬉しいです。みんなと一緒なら今年もきっといい年になります。そう思いました。

 

 渡されたおみくじを開いてみると、なんと大吉でした! 嬉しいです。G41の予感はきっと当たるのです! ご主人様とみんなと一緒に歩む未来は、とっても明るいのです!

 

 というわけで、皆さん今年もよろしくお願いします。きっと、いっぱい面白いことがあるので、耳を立ててよく読んで、面白かったらご褒美もくださいね? まる!



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追記5:やきもちG41

 お昼休みです! ご飯を食べたG41は指揮官室に戻ります。

 G41はうきうきです。お昼休みは余程のことがない限り、ご主人様も仕事の手を休めます。なのでご主人様に甘えることができます。

 そして、今日はG41が副官の日です。明日も明後日も副官です。ずっとご主人様を独り占めできるのです。こんな幸せなことはありません。

 

 ふと、中庭のところに差し掛かると二人分の人影がありました。

 うち一人は見間違えるはずもありません。ご主人様です。ご飯を食べ終えたご主人様は中庭でお休みしていたのです。

 それでもう一人はファルコンさんでした。最近入って来たばかりの人形で、G41の後輩です。

 二人の様子が気になるG41は、物陰に隠れて様子を見ることにします。それでご主人様がファルコンさんと別れたら甘えるのです。

 

「いい天気だね、こひつじちゃん。日向ぼっこでもしようか」

 

「ああ、そうだな。いい天気だし、可愛い娘が隣にいると気分もいい」

 

「はははっ、誰のことよ、バカなんだから~」

 

 む~。ベンチに座って二人で仲良さそうにお話をしています。ご主人様もファルコンさんも楽しそうです。ご主人様が楽しそうなのはいいですが、これでは甘えられません。昼休みが終わってしまいます。む~。

 

「そういえばファルコン、個人フォルダに随分沢山テキストファイルがあるんだが、あれは何だい?」

 

「ちょっと!私の楽譜を勝手に見ちゃダメだよ!あれは全部こひつじちゃんへのラブソングだから……いま見られるのは恥ずかしいよ!」

 

「そうなのか。じゃあ、聞かせて貰える時を楽しみに待ってるよ」

 

 顔を真っ赤にしているファルコンさんをご主人様がなでなでしてあげています。む~、G41も早くなでなでして貰いたいのに…む~。

 

 とっても面白くありません。それにこのままではご主人様に甘えられないままお昼休みが終わってしまいます。多少強引にでもご主人様を取り戻さないといけません。というわけで、G41はフリスビーを持ってご主人様のところに駆けて行きました。

 

「ご主人様~」

 

「お、G41。お昼済んだのか?」

 

「はい!」

 

 ご主人様の前にやってくると、ご主人様はファルコンさんとの会話を止めて、G41の頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。やっぱり、ご主人様はG41が一番大好きなのです! えっへん!

 

「はい、ご主人様」

 

 というわけで、G41はフリスビーをご主人様に手渡します。ご主人様にフリスビー遊びをして貰うのです。そうすれば、昼休みが終わるまでご主人様を独占できます。

 

「G41、フリスビー遊びはまた仕事が終わってからにしよう」

 

 あう。やんわりと断られてしまいました。G41はしょんぼりです。

 

「とりあえず、俺はもう少しここで休んでいくから、指揮官室で電話番をしてくれないか?」

 

 しかも、ご主人様はまだファルコンさんとお話しするつもりです。む~。G41は物凄く面白くないです。

 

「あはは。こいぬちゃんは今日も可愛いね~」

 

 むか。ファルコンさんの言葉に、G41はかちんときました。

 G41はファルコンさんよりも先輩で、しかもこの基地で序列第5位の戦術人形です。そんなG41を勝手に渾名で呼んだりしてはいけません。ファルコンさんは失礼です。

 

 もうG41は怒りました。ご主人様のばか。もう知りません。

 こうなったら、今日はG41はご主人様のことをぷいってします。ご主人様がなでなでしたがっても、お膝の許可を出してもぷいってします。ぷいっ。

 というわけで、ばいばいご主人様。ぷいっ。

 ててててててててて…

 

 …ててててててててて。

 戻ってきてしまいました。やっぱり気になります。む~。

 

「…ふふん、こひつじちゃんって意外と不器用なんだね。じゃあ、私が作るのをよ~く見てて」

 

「ああ。ファルコンは上手だなぁ」

 

 む~。二人でシロツメクサの冠を作ったりしてます。む~、ご主人様のばか~。

 

 もうG41は切なくて切なくて堪りません。どうにかしてご主人様を奪還したいです。

 というわけで、G41は通信モジュールを開いて、秘匿回線でFALさんに連絡します。FALさんならきっとご主人様を取り戻す作戦を考えてくれるはずです。

 

『FALさん、今時間大丈夫?』

 

『ん? どうしたの、G41? 秘匿回線なんか使って…』

 

『うん、あのね…』

 

 戸惑うFALさんに、G41は現状を伝えて、ご主人様を奪還する作戦がないか尋ねました。

 

『ええ。それならいい手があるわよ』

 

 FALさんは快く作戦を教えてくれました。さすがFALさんです! G41はFALさんが大好きです!

 でも…作戦の内容を聞いて、G41は首を傾げました。内容が杜撰だからです。なんだか、FALさんらしくありません。

 でもまあ、G41はFALさんを信じて作戦を決行します。G41はFALさんを信じます。

 

 というわけで、G41は再びご主人様のところに走って行きました。

 

「ご主人様~!」

 

「ん? どうしたんだ、G41?」

 

「大変です、ご主人様! 事件が起きました!」

 

 G41はご主人様にそう言いました。FALさんの曰く、事件が起きたら仕事に戻らないといけないのでファルコンさんと引き離すことができる、とのことです。

 それは確かにそうなのですが、どんな事件かとか詳細は話してくれませんでした。そう言えば大丈夫だから、の一点張りです。ご主人様から質問されたらどうしましょう…

 

「そうか。事件が起きたのなら仕方ないな。じゃあ、ファルコン、またな?」

 

「あ…」

 

 そう言ってご主人様が立ち上がりました。やりました、作戦は成功です! さすがはFALさんです!

 

「こひつじちゃん…!」

 

 ファルコンさんは去っていくご主人様の背中に向けてそう言って手を伸ばしますが、やがて諦めたように俯きました。手には作りかけのシロツメクサの冠を握り締めています。とっても切なそうです。

 

 G41の心が痛みました。ファルコンさんに酷いことをしてしまった、と思いました。

 ファルコンさんはこの基地に来たばっかりで、まだ友達もいません。仲がいいのはご主人様だけです。ファルコンさんもまたご主人様が大好きなのです。

 でも、副官業務はこのところずっとG41か一〇〇式(モモ)ちゃんかFALさんばかりです。ファルコンさんは大好きなご主人様にほとんど構って貰えてないのです。

 G41はご主人様の言葉を思い出します。自分がされて嫌なことは、他人にもしてはいけないって。G41は自分がされたら一番嫌なことをファルコンさんにしてしまいました… 嫉妬に目が眩んで大切なことを見失ってしまっていたのです。

 

 G41は指揮官室に向かうご主人様の後ろを俯きながらついて行きます。

 まずはご主人様に嘘を吐いたことを謝らないといけません。でも、言うのが怖いのです。

 G41はご主人様に叩かれたことはないですが、今回ばかりは叩かれても仕方ないです。それぐらい悪いことをしました。叩かれるのは嫌です。心が痛いから。

 でも、G41はご主人様の前に回り込んで、意を決して言うことにします。嘘を吐いたままだといい子じゃありません。それはご主人様もFALさんも望んでいません。だから、謝ります。叩かれても我慢します。

 

「ご主人様、ごめんなさい!」

 

「ああ。どうしたんだ、G41?」

 

 足を止めたご主人様に頭を下げて、G41は事件は嘘だったということと、全部ご主人様をファルコンさんから取るためにやったことを告白しました。叩かれるかもしれないので、耳は寝かせています。

 

「いや、事件ならあったさ。G41が寂しくてやきもちを妬いてしまうって事件がな」

 

 ご主人様は穏やかにそう言って、G41の頭をなでなでしてくれました。ご主人様は何もかもお見通しだったのです。きっとFALさんもお見通しだったのでしょう。そして、二人ともきっとG41が自発的に反省すると信じてくれていたのでしょう。

 G41はご主人様が大好きです。なのでやきもちも妬いてしまいます。でも、それは他のみんなだって一緒なのです。みんなご主人様が大好きなのです。そして、G41はこの基地の中でもトップクラスにご主人様に構って貰えています。他のみんなが少しぐらい構われても、やきもちを我慢しないといけない立場なのです。それを自覚しないといけません。

 

「G41? G41は何がしたいんだい?」

 

 ご主人様がG41と目を合わせて言います。

 今G41がしたいことはファルコンさんに償いをすることです。酷いことをしてしまったのだから、謝って償いをしないといけません。そして、そのための手段をG41は知っています。

 

「はい! ご主人様、明日の副官はファルコンさんにしてあげてください!」

 

「そうか、分かった。ファルコンは副官初めてだから、よく教えておいてくれ。俺はしばらくFALと話するから」

 

「はい!」

 

 ご主人様はG41の申し出を快く許可してくれました。そして、ファルコンさんと仲直りする機会もくれたのです。

 というわけで、G41はファルコンさんを探しに行きました。中庭にいたのですぐに見つかりました。すぐにそばに駆けて行きます。

 

「ファルコンさん、ごめんなさい!」

 

「…こいぬちゃん?」

 

 頭を下げるG41にファルコンさんはきょとんとしていました。でも、明日副官副官業務に当たったことを伝えると、とっても喜んでくれました。

 そして、G41はファルコンさんと一緒に台所に行って、お茶の淹れ方とかを教えてあげました。ファルコンさんはとっても感謝してくれて、ギターの作り方とか弾き方を教えてくれました。そして、二人でご主人様のお歌を作って楽しみました。

 

 こうして、G41にまた新しい友達が出来ました! ファルコンさん、副官業務頑張ってね! まる!



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追記6:嬉しいG41

 今年もバレンタインデーがやって来ました。

 G41はうきうきです。今回は事前にプレゼントも決めて、前日には準備を終えていました! 去年みたいに大慌てする必要はありません。

 

 ご主人様にプレゼントするのは何とチョコレートケーキです! G41は心を込めて一生懸命作りました!

 もちろん、天然物のチョコレートではありません。一〇〇式(モモ)ちゃんなら手に入れられるかもしれませんが、いつもいつも頼れません。

 でも、合成チョコレートでもありません。キャロブ豆というものを栽培して使ったのです! 見た目と味はかなりチョコレートしています。おからとか炒ったヒマワリの種とかも混ぜているので健康にもいいです! G41は気が利きます!

 

 後は小さいケーキもいくつか作りました! これは友チョコというものです!

 この前FALさんの雑誌を見ていると、バレンタインには友達にもチョコレートをあげるといい、って書いてた気がします。

 G41には一〇〇式(モモ)ちゃんとかSOPMODちゃんとかヴィーフリちゃんとかTMPちゃんとか相思相愛のお友達が沢山いるのです! なので、これはそのみんなに配る用です!

 

 その中でも少し大きいのはFALさん用です! G41はFALさんが大好きです! FALさんはチョコレートが好きなのでとっても喜んでくれると思います。

 

 というわけで、一〇〇式(モモ)ちゃん達にケーキを配り終えたG41はご主人様とFALさんを探します。今日の副官はFALさんなので、一緒にいるはずです。

 

 指揮官室に行く途中、中庭に通りかかると二人がベンチに座ってました。二人は仲良くおしゃべりしています。お仕事が終わったのかもしれません。

 G41は中庭の入り口で様子を伺います。二人が仲良くおしゃべりしているのです。お邪魔をしてはいけません。話が終わった後に、G41はプレゼントを渡すのです。

 

「今回の件はお疲れ様ね、指揮官」

 

「ああ、マジ疲れた。ったく、二度とやんねぇ」

 

「その割にはずいぶん楽しそうだったって、M14が言ってたけど?」

 

「馬鹿を嵌めるのはまあ楽しいさ。疲れるのとは別問題だ」

 

 だらけるご主人様にFALさんが苦笑して言います。

 実はこの前、ちょっと大きな事件がありました。下手をするとこの地域全体の危機になりそうなぐらい大きな話でした。G41隊も前線基地で戦闘待機していたのです。

 でも、ご主人様はなんだかよく分からない内に事件を解決してしまいました。本当にあっという間でした。あんな事件でもご主人様にとっては朝飯前なのです! やっぱりご主人様は凄いです!

 

「FALもよくやってくれた。しかし、今回は画龍点睛を欠いたな」

 

「…仕方ないでしょ? あんな裏技みたいな手、誰も読めないわよ」

 

 揶揄う様に言うご主人様に、頬を膨らせてFALさんが言います。FALさんは今回基地で色々と裏工作をしていたらしいです。仕事そのものはほぼ完璧だったみたいですが、少しだけ読み違えて昔のご主人様の上司の人に笑われたそうです。画龍点睛を欠く、というのはそのことでしょう。

 でも、G41はご主人様が何をやったかさえ分かりません。ほんの少しだけ読み違えるぐらいで、仕事を完璧にこなしたFALさんは凄いです! FALさんはG41の憧れです!

 

「それと指揮官、ハッピーバレンタイン」

 

「おお! マジか、FAL! こんなのどこで手に入れたんだ!?」

 

 FALさんが傍らに置いていた紙袋から、高級そうなお酒の瓶を取り出してご主人様に渡しました。ご主人様は物凄く嬉しそうです!

 

「秘密よ、指揮官。…私もグリフィンドール総選挙10位以内だってこと、忘れないでね?」

 

「なんだよ~、言えよ~」

 

「だ~め。今回の策で騙されたから、これでおあいこよ」

 

 FALさんの肩を抱いてゆさゆさするご主人様に、FALさんは悪戯っぽく笑って言います。FALさんは現在総選挙7位の戦術人形です。どこかでCMやモデルのお仕事をして、報酬として貰ってきたのかもしれません。

 

 G41はにこにこです。ご主人様とFALさんの仲が良くて嬉しいです。

 ご主人様とFALさんはたまに口喧嘩もしますが、でもその実とっても仲良しです。G41は二人のことが大好きなので、仲がいいと嬉しいのです!

 

「…で、指揮官。今回のことで進展は?」

 

「…いや、むしろ後退したかもな。洗わないといけないことができた」

 

 FALさんとご主人様が真面目な口調でお話しします。お仕事のお話のようです。ご主人様はFALさんの肩を抱いた姿勢のままですが、表情が全然違います。

 

「…急がなければいけないのにね」

 

「ああ。だが、間に合わせるさ。今後も引き続き頼むぞ?」

 

 そう言って、ご主人様はFALさんの頭をなでなでして、手を放します。そして、二人で夕暮れの空を見上げながら、しばらく黙ってしまいました。G41もじっと二人のお話を待ちます。

 

「…あの計画が完成したら、どうなるのかしらね?」

 

「大きく動くだろうな。救済となるか破滅となるか…まあ、地獄には俺が行く。心配するな」

 

「…指揮官、忘れないでね。貴方の後ろにはいつも私がいるってことを」

 

「傍らの間違いだろ? …じゃあまあ、一緒に行くか」

 

「…ええ、そうね」

 

 そう言ってまたご主人様はFALさんの肩を抱きます。そして、二人の顔が近づいていきます。二人はやっぱり仲良しです。

 でも、G41は悲しいです。なんだか、ご主人様とFALさんだけがどこか遠くに行ってしまいそうだからです。そんなの嫌です。G41はご主人様ともFALさんとも一緒にいたいです。なので、つい飛び出してしまいました。

 

「ご主人様~!」

 

「うおっ!?」

 

「じ、G41!?」

 

 G41の声を聞いた二人は物凄く驚いて、パッと身体を離しました。なんだか、ちょっと顔が赤いです。でも、G41は切なくてそれどころではありません。二人の側に駆け寄って行きます。

 

「じ、G41、どうしたんだ?」

 

 ご主人様が面食らったように言います。でも、G41は躊躇わずに言います。

 

「ご主人様、FALさん。G41を置いて行ったら嫌です」

 

 G41は目に涙をためて、上向き加減で言いました。

 ご主人様は地獄に行く、と言いました。FALさんもそれについて行く風でした。なら、G41もついて行きたいです。一〇〇式(モモ)ちゃん達も一緒だといいです。みんなで行けば地獄もきっと怖くないです。G41はずっとみんなと一緒にいたいです。

 

「もう…さっきの話、聞いていたのね…」

 

 FALさんはそう言って苦笑し、G41の頭をなでなでしてくれました。FALさんの手は柔らかくて暖かいです。G41は少しだけ安心しました。

 

「大丈夫だ、G41。俺達はずっと一緒だ。その時が来たらお前も力を貸してくれ」

 

 ご主人様はそう言ってG41の頭を抱きしめて、超なでなでしてくれました。とっても安心しました。G41はご主人様について行けるのです。お役に立てるのです。こんなに嬉しいことはありません。

 

「せっかくG41がいるんだし、もっと夢のある話をしない?」

 

「そうだな…例のレストランの話でもするか…正直、お役御免したらそっちでもいいな…」

 

 ご主人様はG41をお膝に乗せて、お話をします。G41は嬉しいです。あのレストランのお話です。幸せな未来のお話です。

 

「G41は料理もできるし、可愛いからフロアーとキッチンの両方を一〇〇式(モモ)と一緒に頼むな?」

 

「はい、ご主人様!」

 

「FALは料理できないし、接客もなぁ…どうしたものか…」

 

「失礼ね! できるわよ!」

 

「そういう嘘松はいらんと言うに」

 

 そんなわけでG41はご主人様とFALさんと一緒に楽しくお話をしました。ご主人様とFALさんが時々言い合いを始めますが、二人とも仲が良くてとっても幸せな時間です。G41はやっぱり二人の間で過ごすのが至福の時なのです!

 お空が暗くなってきたので、そろそろ晩御飯です。G41は二人に手を繋いで貰って、基地の中に帰りました。晩御飯は一〇〇式(モモ)ちゃんが作ってくれたシチューです。とっても楽しみです。

 

「あ、ご主人様、FALさん」

 

 その途中、G41は忘れていたことを思い出しました。二人にバレンタインのプレゼントを渡すのです。

 

「はい! ハッピーバレンタイン!」

 

そう言って、手提げ袋の中から箱を二つ取り出して、二人に渡します。

 

「おお、チョコレートか! ありがとう、G41!」

 

「G41のお菓子は美味しいから、ありがとう」

 

 そう言って二人ともG41の頭をなでなでしてくれました。ダブルなでなでです。とてつもなく嬉しいです。G41は今日もとっても幸せでした。

 

 ご主人様やFALさんの行く道は険しく、その先にはもしかするととっても怖いものが待ち受けているかもしれません。でも、G41は二人と一緒に進んで行きます。どんな怖いものでも、それこそ地獄でもご主人様とG41達が力を合わせて戦えば必ずぶっ飛ばせると信じています。だから、ご主人様、FALさん、ずっとG41と一緒にいてね? まる!



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追記7:のーさつG41

 G41は思いつきました! ご主人様をのーさつするのです!!

 最近G41は月10日ぐらいしか副官をやってません。しょんぼりです。

 G41はもっとご主人様を独り占めしたいです。なので、ご主人様をのーさつして、もっと好きになって貰うのです。そうすれば、副官の日が15日とかになるかもしれません。これは名案です!

 

 というわけで、G41はご主人様の部屋で待ち受けます。ご主人様はもうすぐ仕事を終えて部屋に戻ってくるはずです。G41はご主人様のベッドでまるまるしたり、机に置いている瓶をペロペロしたり、吊ってある服をクンクンしたりしてご主人様の帰りを待ちました。

 

 やがて、部屋のドアが開きました。G41は咄嗟に読んでいたエロ本をベッドの下に放り込んで立ち上がります。ご主人様が帰ってきたのです!

 

「ご主人様~!」

 

「おっ、G41。甘えに来たのか?」

 

 突撃するG41を、ご主人様が受け止めようと両手を広げて待ってくれます。嬉しいです。思わずその手の中に飛び込んでいきたい、と思いました。

 でも、今日はダメです。G41は手前で止まりました。そして、ご主人様の前で必殺の台詞を言うのです!

 

「ご主人様、ご飯にする? お風呂にする? それとも、G41?」

 

「こらっ、G41!」

 

 必殺の台詞を言ったG41の頭をご主人様がぺちっしました。とっても優しいぺちっだったので痛くはないですが怒られてしまいました。ごめんなさい、ご主人様。

 

「全く、そんな台詞をどこで覚えてきたんだ?」

 

 ご主人様はそう言って、G41を抱えてベッドに座り、G41をお膝に乗せてほっぺをむにむにしました。怒られてしまいましたが、本気で怒ってるわけではない。そう判断したG41は素直に答えます。

 

「はい! ご主人様のエロ本です!」

 

「…勝手にそんな本を読んだらいけないって言ってるだろ? 悪い子だなぁ、G41は」

 

 答えたG41のほっぺを横に引っ張りながら、ご主人様は言います。とっても優しいので痛くはないです。むしろ構って貰えるので嬉しいです。ご主人様は本気では怒っていません。なので、G41は安心してご主人様のお膝を堪能します。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

 はむっ。

 

「うわぁ!」

 

 G41はびっくりして素っ頓狂な声をあげてしまいました。ご主人様がG41のミミをはむっとしたのです!

 

「こうなったら、お仕置きとしてはむはむ地獄だ。観念しろ」

 

「あうぅ~、だめぇ、ご主人様」

 

 というわけで、G41はご主人様にいっぱいはむはむされてしまいました。今回はお仕置きなので文句は言えません。G41はしょんぼりです。

 

 翌日、G41はFALさんに相談しに行きました。FALさんならきっとご主人様をのーさつする手段を知ってると思ったからです。

 

「FALさ~ん」

 

「ん? どうしたの、G41?」

 

「あら、G41ちゃん。今日も可愛いわね」

 

 FALさんのところに飛んでいくと、Five-sevenさんも傍らにいました。これは僥倖です。FALさんは非常に賢い戦術人形ですが、Five-sevenさんは違う切り口で物事を見ることができます。二人がそろっていると、時と場合によっては部分的にご主人様さえ上回る作戦を考えることができることができるのです。とっても心強いです。なので、G41は遠慮なく相談します。

 

「なのね、FALさん、Five-sevenさん。どうしたら、ご主人様をのーさつできるの?」

 

「ええぇ… 指揮官を悩殺って…」

 

 あう。G41の問いにFALさんが顔をしかめてしまいました。思ったより難問のようです。ご主人様は可愛い人形が好きなので簡単だ、と思っていたのですが…

 

「…う~ん、指揮官って、G41ちゃんにはもう既にメロメロだとしか思えないんだけど…」

 

「うん。G41より好かれてる娘っていないと思うわ…」

 

 もうすでに目に入れても痛くないぐらいの勢いだし。二人はそう言います。

 G41は困ってしまいました。FALさんやFive-sevenさんが言うぐらいなので、ご主人様はG41のことがとっても好きなのだと思います。

 でも、G41はご主人様にもっと好きになって欲しいです。もっとご主人様を独り占めしたいです。もっと副官の日が増えて欲しいです。どうしましょう…

 

「もしかして、G41はもっと副官の日が増えて欲しい、と思ってるの?」

 

「はい、FALさん!」

 

「こらっ、G41」

 

 G41が素直に答えると、FALさんはG41の頭をぺちっしました。とっても優しいぺちっなので痛くはないですが怒られてしまいました。

 

「あのね、G41。最近新しい娘が色々入ってきてるでしょ? G41と一〇〇式(モモ)ばっかりが副官だと、その娘達も寂しいでしょ?」

 

 今でさえほとんど二人ばっかりなのに、とFALさんが言います。

 考えてみれば、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは共に月10日ぐらい当たっています。月の三分の二です。なんと、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんは既にご主人様をほとんど一人占めしているのです。

 というわけで、G41はこれ以上副官の日を増やしてもらうことを諦めました。第一、FALさんやFive-sevenさんでさえそこまで多くないのです。序列が上の二人よりも優先して貰っているのですから、これ以上言うとわがままになる、とG41は思いました。

 

 というわけで、G41は指揮官室に行きました。今日の副官はTMPちゃんです。TMPちゃんは大事な後輩です。二人が仲良くしているかどうかを確かめに行くのです。

 

「指揮官、あの…どうですか?」

 

「ああ、気持ちいいよ。TMPは肩たたきも上手だなぁ」

 

 指揮官室のドアの陰から覗いてみると、TMPちゃんがご主人様に肩たたきをしているところでした。ご主人様も気持ちよさそうで、TMPちゃんも褒められて嬉しそうです。

 G41はにこにこです。TMPちゃんは可愛い後輩なので、ご主人様と上手くやっているのを見ると嬉しいです。G41はTMPちゃんが大好きです。

 

 でも、その様子を見ていると、ちょっともどかしい気持ちになってきました。TMPちゃんは肩たたきにはあんまり慣れていないようです。

 見ているとTMPちゃんはご主人様の肩ばかり叩いています。それも一本調子です。それはよくありません。肩もみや肩たたきは心臓に向かうようにしていかないといけません。あまり同じ場所だけを揉んだり叩いていると揉み返しが来てしまいます。

 G41ならもっと上手にできるのに。そう思いますが、邪魔してはいけません。TMPちゃんが可哀想です。でも、やっぱりもどかしいです。

 G41はつい自分がとんとんしているつもりで、空中に向けてエア肩たたきをしてしまいます。自分ならこうするって、TMPちゃんにして見せてあげたいです。でも、邪魔をしてはいけません。G41は我慢します。

 

「そういえば指揮官、この前のロボット凄くかっこよかったです!」

 

「おお、TMPは目が高いな。いやぁ、頭部バルカンを付けるのに苦労してな。バックル型拳銃を応用する形で付けたのに、みんな分かってくれねぇんだよなぁ」

 

 とんとんとんとん…

 うずうずうずうず…

 

「あれ、凄いって思いました! 後、ワイヤードフィストとか付いてるのもよかったです!」

 

「だろ!? せっかくアダマンチウム製のバネ戦略研究所から貰ってきたのに。FALとか無駄なことするなって言うんだぜ?」

 

 とんとんとんとんとん…

 うずうずうずうずうず…

 

「後、今度目からビームが出るように改造したいです!」

 

「おお! 光〇力ビームか!! いいなぁ! 今度一緒にやってみるか!」

 

「はい!」

 

 とんとんとんとんとんとん…

 うずうずうずうずうずうず…

 

 てててててて…

 とんとんとんとん…

 

「あれ? G41さん?」

 

 はっ! TMPちゃんの声で我に返りました。なんと、G41はつい出て行ってTMPちゃんの肩を叩いてしまっていたのです!

 

「ごめんね、TMPちゃん…」

 

「いえ、G41さん! 一緒に肩たたきしましょう!!」

 

 謝るG41にTMPちゃんは嬉しそうにそう言いました。

 

「そうだな。G41は肩たたきがとっても上手だから、TMPにもコツを教えてやってくれ」

 

 ご主人様もそう言ってくれました。輪の中に入れたのでG41は嬉しいです。G41はご主人様とTMPちゃんが大好きです。ご主人様とTMPちゃんもG41が大好きです。みんな相思相愛です。えっへん!

 というわけで、今日はTMPちゃんと一緒にご主人様の肩もみをして、いっぱいお話をして過ごしました。とっても楽しかったです。のーさつできなくても、G41はご主人様やお友達にいっぱい愛されているのでした! まる!

 

 



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追記8:一〇〇式ちゃんとG41

 G41はさっきから基地の中を駆け回っています。一〇〇式(モモ)ちゃんを探しているのです。

 最近、お互い忙しくて一〇〇式(モモ)ちゃんと遊んでいません。今日は二人とも訓練にも副官にも当たっていません。一〇〇式隊とG41隊も応急対処隊ではありません。というわけで、久し振りに一〇〇式(モモ)ちゃんと遊べます。

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんの匂いを辿っていくと、娯楽室に着きました。もしかして、一〇〇式(モモ)ちゃんと誰か遊んでいるのでしょうか。そうならば、混ぜて貰うか奪還します。今日、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんと遊ぶと決めているのです。

 

 娯楽室に入ると、ソファのところで一〇〇式(モモ)ちゃんの後姿が座っていました。幸い一人です。G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました。早速、一〇〇式(モモ)ちゃんに突撃します。

 

一〇〇式(モモ)ちゃ~ん!!」

 

 G41は一〇〇式(モモ)ちゃんを呼びながら突撃します。でも、一〇〇式(モモ)ちゃんの反応がありません。どうしたんでしょう。いつもなら、笑顔で迎えてくれるのに…

 

 近くに寄ってみると、一〇〇式(モモ)ちゃんが寝ていることが分かりました。安らかに寝息を立てて、すやすやと眠っています。

 きっと疲れているのでしょう。一〇〇式(モモ)ちゃんは隊務の他にも、みんなのお世話を焼いてあげています。それに一〇〇式(モモ)ちゃんの脳は生身です。なので、睡眠はとても大事です。

 というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんの隣に座って、じっと顔を見つめ続けます。一〇〇式(モモ)ちゃんの寝顔は可愛いです。G41はにこにこです。ゆっくり休んでね、一〇〇式(モモ)ちゃん。

 

 すやすや…

 にこにこ…

 すやすやすや…

 にこにこにこ…

 すやすやすやすや…

 …うずうず

 すやすやすやすやすや…

 うずうずうずうず…ぺろっ!

 

「ううん…」

 

 はっ! G41は思わず一〇〇式(モモ)ちゃんのほっぺをぺろってしてしまいました! 一〇〇式(モモ)ちゃんのほっぺがぷっくりしてて美味しそうだったからです。

 もう少しで、一〇〇式(モモ)ちゃんを起こしてしまうところでした。G41は反省です。

 

「…くしゅん!」

 

 ふと、一〇〇式(モモ)ちゃんがくしゃみをしました。そういえば、娯楽室の暖房が故障していたのでしたちょっと寒いです。

 G41は困りました。このままでは一〇〇式(モモ)ちゃんが風邪をひいてしまうかもしれません。普通の戦術人形は風邪をひきませんが、一〇〇式(モモ)ちゃんはひく可能性があるのです。

 かといって、かけられそうなものは座布団ぐらいしかありません。座布団で埋めたら一〇〇式(モモ)ちゃんも苦しいと思います。

 

 というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんに覆い被さるように抱き着きました。これなら一〇〇式(モモ)ちゃんは風邪をひきません。そして、G41も一〇〇式(モモ)ちゃんが側にいるので嬉しいです。これは一石二鳥の名案です!

 

 しばらくの間、一〇〇式(モモ)ちゃんとG41は一緒におねんねしていました。一〇〇式(モモ)ちゃんの匂いが一杯でG41は嬉しいです。ご主人様やFALさんも好きですが、それと同じぐらいG41は一〇〇式(モモ)ちゃんが好きなのです!

 

「ううん…」

 

 しばらくして、一〇〇式(モモ)ちゃんがうなされ始めました。苦しそうな顔で、呻くような声を上げています。

 もしかすると、悪い夢を見ているのかもしれません。一〇〇式(モモ)ちゃんは夢が見られるのです。いい夢ばかりだといいのですが、悪い夢である場合もあるのでしょう。一〇〇式(モモ)ちゃんがピンチです!!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん!!」

 

 G41は必死に一〇〇式(モモ)ちゃんを抱き締めて、ほっぺをぺろぺろしました。一〇〇式(モモ)ちゃんを悪い夢から助けてあげたいのです。一〇〇式(モモ)ちゃん、しっかりして。そんな思いを込めて一生懸命ぺろぺろしました。

 

「う…ん………あれ? G41ちゃん…?」

 

 しばらくすると、一〇〇式(モモ)ちゃんが目を覚ましてくれました。よかったです! 一〇〇式(モモ)ちゃんは悪い夢から解放されたのです!!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん!!」

 

 嬉しくなったG41は一〇〇式(モモ)ちゃんに抱き着いてすりすりします。一〇〇式(モモ)ちゃんが苦しくなくなって、よかったです。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、悪い夢を見てたの?」

 

「…うん。昔、人間だったころの夢だった気がする…」

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんがそう言うのを聞いて、G41はしょんぼりしました。もしかすると、それは悪い夢ではなかったのかもしれません。本当のお父さんやお母さんや兄妹と会っていた夢かもしれません。そんな夢を邪魔してしまっては、一〇〇式(モモ)ちゃんが可哀想です。申し訳ないです…

 

「大丈夫。きっと、嫌な夢だったから。…助けてくれてありがとう、G41ちゃん」

 

 そう言って一〇〇式(モモ)ちゃんはG41の頭をなでなでしてくれました。G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました!

 一〇〇式(モモ)ちゃんはいつもG41の気持ちを分かってくれます。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。一〇〇式(モモ)ちゃんもG41が大好きです! 二人は相思相愛です! えっへん!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、あそぼー!」

 

「うん。じゃあ、あやとりでもして遊ぼうか」

 

「うん!」

 

 こうして、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんとあやとりをしたり、コマを回したり、将棋を指したりしてたっぷり遊びました。

 

 もしかすると、一〇〇式(モモ)ちゃんには人間だった時悲しいことがあったのかもしれません。ご主人様やFALさんは何か知っているみたいですが、話してくれません。

 でも、もしそうだとしても今一〇〇式(モモ)ちゃんには、G41達仲間がいます。ご主人様もいます。みんな仲良しです。みんなと一緒なら悲しい過去が襲ってきても、きっと怖くないです。

 

 だから、一〇〇式(モモ)ちゃん。これからもずっと一緒に遊ぼうね? まる。



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追記9:仲良しG41

 新しくM14隊が設立されることになって、ウェルロッドさんとドラグちゃんがG41隊から抜けることになりました。G41隊は再編されることになり、メンバーが決まるまで一時的に解散になっています。

 

 というわけで、暇になったG41は今日もご主人様に甘えています。

 ご主人様も今日は暇みたいで、朝からご主人様のお膝を堪能しています。気持ちいいです。G41は幸せです。

 

「G41は今日も可愛いな。お前がいるととっても癒されるよ」

 

 ご主人様がG41を褒めながらなでなでしてくれます。嬉しいです。今日もご主人様がいてくれるので、G41は幸せです。ご主人様も幸せです。二人は相思相愛です! えっへん!

 

「ご主人様~」

 

 G41はご主人様を呼んでみました。

 

「ん? どうしたんだ、G41?」

 

 ご主人様がG41の顔を覗き込んで質問してきます。もちろん、別に用があったわけではありません。

 

「はい! 呼んでみただけです!!」

 

 G41は笑顔でそう言います。G41はご主人様が好きすぎるのでとっても甘えたいのです。

 

「そうか~。じゃあ、G41~」

 

「はい、ご主人様!」

 

「呼んでみただけ~」

 

「わ~い!」

 

 G41は諸手を挙げて喜びます。もう二人は相思相愛を越えてらぶらぶです。嬉しすぎます。

 

「G41? G41はどうしてこんなにも可愛いんだ?」

 

 ご主人様がなでなでしながらG41に尋ねてきます。どうしてなんでしょう? G41は少しの間考えて、そして思いつきました!

 

「はい! それはご主人様が褒めてくれるからです!」

 

 いつか一〇〇式(モモ)ちゃんがプランターのユウガオをお世話してるときに、花を褒めてあげていたことがありました。そうすると、花が綺麗になるって一〇〇式(モモ)ちゃんは言いました。

 きっと、G41もそうであるに違いありません。なので、G41はそう答えました。

 

「そうか~、G41は褒めると可愛くなるのか~。じゃあ、もっと褒めよう」

 

 すると、ご主人様がとっても嬉しいことを言ってくれました。

 

「G41は愛くるしいな。お前は俺の天使だ。宝物だ」

 

 ご主人様がなでなでしながら超褒めてくれます。嬉しいです。G41は幸せすぎます。今日も一日幸せが続くと思うと、G41はうきうきです。

 

「ただいま、指揮官! ハグして~」

 

 すると、扉を開けてFive-sevenさんが入ってきました。手には報告書を持っています。どうもご主人様からお使いを頼まれていたようです。

 

「ご苦労様、Five-seven。おいでおいで~」

 

 ご主人様もFive-sevenさんを迎えるように両手を広げました。G41が座っていると邪魔になります。序列が上のFive-sevenさんがご主人様に甘えるのを邪魔してはいけません。そう考えたG41はご主人様のお膝から降りようとしました。

 

「あ、いいのよ、G41ちゃんはそのままで」

 

 Five-sevenさんが近づいてきながらG41を制止しました。なので、G41はそのまま座ってました。

 次の瞬間、G41の顔が柔らかいものに包まれてしまいました。なんと、Five-sevenさんはG41ごとご主人様にハグしたのです。なんと、G41はFive-sevenさんとご主人様のサンドウィッチになってしまいました!

 G41は柔らかい感触とFive-sevenさんの匂いを堪能します。気持ちいいです。Five-sevenさんは大好きな先輩なので、G41は嬉しいです。

 

「さて、とりあえず今日の昼、この娘が入ってくるわ」

 

 そう言ってFive-sevenさんはご主人様から離れて資料を手渡します。新しく入ってくる娘のプロフィールのようです。

 

「そうか。ついにPA-15が来てくれたか。いやぁ、前々からスカウトしてたんだが、ついに実現したか」

 

「もう、指揮官たら鼻の下伸ばして」

 

「お前だって可愛い娘が入ってきてくれると嬉しいだろ?」

 

「まあね。優秀ならなおいいわ」

 

 会話を続けるご主人様の手の中にある資料を見て、G41はむっとしました。これはいけません!

 なんと、PA-15さんは一〇〇式(モモ)ちゃんみたいな服を着ています。しかも、ミミや尻尾まであります! ご主人様が好きな要素の役満です!

 む~。このままではご主人様が取られてしまうかもしれません。G41は物凄く面白くないです。

 

「新しい仲間…安っぽい…」

 

 G41は思わずそう呟いてしまいました。PA-15さんはハイエンドモデルなので安っぽいわけではないですが、ご主人様を取ってしまいそうな後輩につい苛立ってしまったのです。

 

「こら、G41!」

 

 すると、ご主人様がG41の頭をぺちっしました。

 とっても優しいぺちっだったので痛くはないですが怒られてしまいました。ごめんなさい、ご主人様。

 

「新しい娘にそんなこと言ったら駄目だろ?」

 

「でもご主人様。G41はご主人様を取られたくないです」

 

 G41のほっぺをむにむにするご主人様にG41はそう言います。G41はずっとご主人様に好かれていたいです。可愛がって貰いたいです。なので、新しい娘に取られてしまうのは嫌です。

 

「う~ん、G41ちゃんから指揮官を取るとか無理だと思うけど…」

 

 すると、Five-sevenさんが苦笑してそう言います。そうなんでしょうか。G41はご主人様を見上げます。

 

「大丈夫だ、G41。そりゃ、最初は仲良くなるために重点的に構うが、最終的にG41より好きになることはないさ」

 

 何せ、G41は俺の天使だからな。そう言ってG41をなでなでしてくれます。そういえば、M99ちゃんが来た時もご主人様を取られてしまうと思ってましたが、ご主人様は結局G41の方を可愛がってくれています。ご主人様とG41は相思相愛なのです! もっと自信を持ってもいいのかもしれません。

 

「そうだな。一通り訓練が終わったら巡回に行かせるが、その時はG41が連れて行ってくれるか?」

 

「はい! ご主人様!」

 

 ご主人様の申し出にG41は喜んで応じます。巡回に連れて行く、ということは新生G41隊の新しいメンバーになるのかもしれません。そうでなくても、後輩のお世話はしっかりやらないといけません。一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんやFive-sevenさんみたいに、G41もいい先輩になるのです。

 

 というわけで、G41はご主人様と一緒にPA-15さんを待ちました。

 PA-15さんは奇矯な発言こそ多いですが、とってもいい人でした。なので、G41ともすぐ仲良くなりました。

 

 そして、PA-15さんが来て3日目のことです。G41は肩を落として巡回から帰ってきました。PA-15さんに大怪我をさせてしまったのです。

 

「次からはもっと慎重に戦う……ごめん、指揮官」

 

「いや、PA-15はよくやってくれた。名誉の負傷だ。ゆっくり傷を癒してくれ」

 

 ヴィーフリちゃんに肩を貸して貰いながら謝るPA-15ちゃんに、ご主人様は言います。その通りです。PA-15さんはとっても頑張ってくれました。

 

 巡回に出たG41達は鉄血の結構大きな部隊と遭遇しました。BOSS級も2体程いたので、かなりの苦戦を強いられました。部隊のメインアタッカーはG41とヴィーフリちゃんでした。なので、ヴィーフリちゃんを消耗させてはいけませんでした。そんな訳で、G41はPA-15さんに単騎での攪乱をお願いしました。HG型の人形は他にコンテンダーさんがいたので、火力に乏しいPA-15さんが適任だったのです。PA-15さんも喜んで引き受けてくれました。

 PA-15さんはこういう事がとても得意らしく、敵を散々ひっかきまわしてG41達が反撃するきっかけを作ってくれました。そして、見事敵を撃滅することができました。

 でも、お陰でPA-15さんは大怪我をしてしまいました。仕方がなかったとはいえ、本来、新入りに単独任務、しかも最前線を任せたりしてはいけません。他にどうにかできなかったのか。G41はボロボロのPA-15さんを見てずっとそう自問自答していました。

 

「G41さんの指揮は間違っていませんでしたよ」

 

「は、はい! だから、元気出してください」

 

 コンテンダーさんとTMPちゃんが励ましてくれます。でも、G41は悲しいです。守るべき後輩をボロボロにしてしまうなんて…これでは隊長失格です。

 

「気にしないで、G41。とっても面白かったから!」

 

 落ち込むG41にPA-15さんはとっても嬉しそうにそう言ってくれました。G41は思わず顔を上げて、PA-15さんを見ます。とっても綺麗な笑顔でした。

 

「私、一番刺激的な任務を求めてここに来たんだし、重要な仕事を任せてくれて嬉しかったよ!」

 

「本人もこう言ってるんだし、落ち込まなくていいよ、G41」

 

 二人はそう言ってG41を励ましてくれました。嬉しいです。G41はやきもちを妬いて、新しい娘をやっかんでしまうこともありますが、それでもみんな仲良くしてくれます。優しくしてくれます。こんなにありがたいことはありません。G41はそんなみんなが大好きです!

 

「うん! ありがとう、PA-15さん!」

 

「アハハ……くすぐったい! こっちにもして~」

 

「ちょっともう! じゃれるのは手当てしてからにしなよ!」

 

 PA-15さんに抱き着いてぺろぺろするG41とそれを窘めるヴィーフリちゃん。そして、それを笑顔で見守ってくれるご主人様達。素敵な皆に囲まれて、G41は今日も幸せでした! まる!

 

 なお、新生G41隊には結局PA-15さんは加わらず、代わりに89式さんが加わることになりました。89式さんとも仲良くして、G41隊を良い隊にしていきたい、と思います。



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追記10:おはようG41

 最近、何と一〇〇式隊が解散してしまいました。なんでも、一〇〇式(モモ)ちゃんがこれから忙しくなりそうなので、なるべく基地に留めておきたいから、だそうです。

 少し寂しいですが、そういう事情なら仕方ありません。一〇〇式(モモ)ちゃんの分もG41は頑張ります! 何せ、G41隊が繰り上げで第一常設小隊になるからです! 何と、G41は基地で最も重要な隊の隊長になったのです! えっへん!

 

 そんなある日のことです。G41はご主人様を指揮官室で待っていました。今日の副官はG41なのです。お茶も準備していますし、お迎えの支度は万全です。今日もご主人様と一緒にいられると思うと、G41はうきうきです。

 

 ところが、10分待ってもご主人様が来ません。どうしたのでしょう?

 もしかするとお寝坊してしまったのかもしれません。昨日ご主人様は夜遅くまで仕事をしていたので、寝過ごしてしまったのでしょう。

 

 仕方ないので、G41はご主人様の部屋に行きました。ご主人様を起こすのです。

 ご主人様の部屋に鍵を使ってはいると、案の定ご主人様が寝ていました。む~、困ったご主人様です。早速、G41はご主人様を起こしにかかります。

 

「ご主人様~!!」

 

 G41は寝ているご主人様に飛び掛かります。そして、ご主人様の上に覆い被さるようにして、スリスリしたり、顔をぺろぺろしたりします。こうすればご主人様は起きてくれるに違いありません。

 

 すると、ご主人様がギュっとしてくれました。

 

「おはよう、G41」

 

 ご主人様が目を開けて、G41をなでなでしてくれます。嬉しいです。ご主人様がいるので今日もG41は幸せ一杯です。

 

「おはようございます、ご主人様!」

 

「ああ。でも、今日は午前中代休をとったんだ。悪いが昼まで寝かせておくれ」

 

 ご主人様の言葉に、G41は思い出します。そういえば、指揮官室の机の上にメモのようなものがありました。もしかすると、ご主人様が代休を取ったということが書かれていたのかもしれません。ご主人様が来なくて寂しかったので、つい確認を怠ってしまったのです。

 

 そういうことならご主人様にゆっくり休んで貰うほうがいいです。G41はご主人様から離れて、寝息をたて始めたご主人様をニコニコ顔で見守ります。ご主人様、ゆっくり休んでくださいね?

 

 ぐーぐー…

 にこにこ…

 すぴーすぴー…

 にこにこにこ…

 すやすやすやすや…

 …うずうず

 ZZZzzz…

 うずうずうず…ぺろっ!

 

 はっ! G41は思わずご主人様をぺろってしてしまいました! G41はご主人様が好きすぎるので、構って欲しくなってしまったのです。

 でも、ご主人様は全く動じずに寝ています。さすがご主人様です。

 でも、G41は少し寂しくなってきました。ご主人様に構って欲しいです。あまあましたいです。

 

 ふとみると、ご主人様の手がお布団からはみ出ていました。上に向けた掌が開いています。

 G41はそこについたしっしてしまいました。せめて、ご主人様に手を繋いでいて欲しいのです。

 

 すると、ご主人様が手を握ってくれて、親指でG41の手の甲をさすさすしてくれました! 嬉しいです。G41の寂しさが少しだけ癒されました。

 

 でも、すぐにご主人様の手から力が抜けて離れてしまいました。む~、G41は寂しいです。なので、もう一度たしたしします。すると、やはりご主人様は手を握ってくれました。嬉しいです。

 

「G41は甘えん坊だなぁ」

 

 そう言ってご主人様は布団をめくって、ベッドに寝たまま膝を叩きます。お膝の許可が出ました。G41はご主人様のお膝の上にうつ伏せで寝そべるようにしました。そして、ご主人様のお腹の上に顎乗せをします。ご主人様の匂いが一杯で、G41は嬉しいです。

 

「よしよし、G41」

 

 ご主人様はG41をなでなでしながらお膝を左右に揺らします。何だか揺り篭みたいで気持ちいいです。G41は幸せです。やはり、G41はご主人様に甘えているときが一番幸せなのです。

 

 しばらくすると、ご主人様の動きが止まりました。見ると、やっぱりご主人様は寝ていました。

 ご主人様は眠くて眠くて仕方ないのでしょう。それなのに、ご主人様は起こして、更に甘えるG41をよくしてくれているのです。これ以上我儘を言ってはご主人様の負担になってしまいます。

 なので、G41はそのままお布団をかぶって、ご主人様と一緒に寝ることにしました。こうすれば、ご主人様と一緒にいられますし、ご主人様の邪魔にもなりません。これはとっても名案です!

 というわけで、G41はご主人様に抱き着いてお休みモードに入りました。とっても安心します。というわけで、ご主人様お休みなさい。ZZZzzz…

 

 三時間後、起きたご主人様はG41を抱き締めてなでなでしてくれました。そして、G41にお昼ご飯の支度をお願いしたのです。

 お任せください、ご主人様! G41は喜び勇んで部屋を出ます。ご主人様に美味しいご飯を作って喜んで貰います。そして、今日もまた一日副官としてご主人様と頑張るのです! ご主人様、よろしくお願いします! まる。



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追記11:FALさんとG41

 ある日の事でした。珍しく、基地に第一種戦闘配備の号令が下されました。久々の大規模戦闘です。

 任務の内容は、大陸で遭遇したパロディウスだとかいう敵がこの国にも現れたので、それを殲滅するというものでした。

 G41はあいつらが大嫌いです。一年前の事件で、ご主人様を虐めたからです。もうG41は殺る気満々です。怒りを込めて絶対に木っ端みじんにしてやります。

 M4さんも絶対に殺すっていいながら、封印したケースを持って出撃しましたし、一〇〇式(モモ)ちゃんも珍しく怒りを露にして千鳥ちゃんの力を全力稼働で叩きのめすつもりです。しかも、フル装備のレーヴァティンちゃん率いる軍用人形小隊まで参戦しました。もう奴らの命運は風前の灯火です。

 結果、奴らを徹底的に撃滅し、二度と現れることがなくなるまでぼこぼこにしました。みんな大きな怪我もなかったですし、本来ならば、にこにこ顔で凱旋するところです。

 

 でも、G41は肩を落として、暗い顔のまま帰還しました。途中で、ヴィーフリちゃんや89式さんが励ましてくれましたが、何も言えずに黙ったままでした。

 何故なら、G41は作戦中にFALさんと喧嘩してしまったのです。

 

 G41の出撃した戦闘区域は、G41隊と臨時FAL隊で受け持っていました。FAL隊がガンダムとか呼ばれるかっこ悪いロボットを相手して、G41隊はそれ以外を相手にする、という形で戦闘を進めていました。

 ところが、思ったよりも敵の攻勢が強く、G41隊とFAL隊は次第に追い込まれていきました。

 これ以上後がない。そんな場面で、FALさんが起死回生の策に打って出ました。G41隊も策を打診されましたが、これはいけない、とG41は思いました。

 FALさんは策を打つときによく自身を危険に晒そうとします。G41はFALさんが酷い目に遭うのは嫌です。なので、FALさんの策に従わず独自に策を打って行動しました。作戦は図に当たり、ご主人様から貰った切り札も活用した結果、見事敵の殲滅に成功しました。もちろん、FALさんが危険に晒されることもなかったです。とっても上手くできた、と思いました。

 

 ところが、戦闘が終わった後FALさんからは褒めて貰えず、お叱りの言葉を受けました。

 

「どうして、策に従わなかったの、G41?」

 

 FALさんの言葉は激しいものではなかったですが、明らかにG41を叱咤するものでした。

 G41はちょっとむっとしてしまいました。作戦は明らかに成功でしたし、みんなの中に怪我人も出ていません。

 それに、確かにFALさんの方が序列は上ですが、そもそもG41は第一常設小隊の隊長なのです。現場においては、FALさんはおろかご主人様の命令にさえ必ずしも従う必要はないという権限を持っています。G41は間違ったことはしていないと思います。

 

「はい! その方が効率がいい、とG41は判断しました!」

 

 なので、G41は堂々とそう言いました。ヴィーフリちゃんもFALさんの隣にいたM16さんも頷いていたので、G41の判断は間違っていなかったと思います。

 だから、FALさんもその場では分かったわ、とため息を一つ吐いてそれ以降何も言いませんでした。

 

 その後、軽トラで帰還する際中もG41は黙って体育座りしたままでした。FALさんのことを想って、G41は頑張ったのに…FALさんはいつもG41を理解してくれてるって思っていたのに…ぽろり、涙が零れてしまいました。

 

「みんな、任務ご苦労だった」

 

 ご主人様は凱旋したみんなを温かく迎え入れてくれました。そして、指揮官室で隊長格が並んで戦勝報告が始まります。でも、FALさんはさっさと報告して引き下がってしまいました。隣にいたG41に声もかけてくれません。悲しいです。

 

 そんなこんなで報告は終わりました。みんな退出していきます。一〇〇式(モモ)ちゃんもG41を心配そうに見ながら退出していきました。

 

「G41は残ってくれ」

 

 ご主人様はそう言ってG41を引き留めました。G41もご主人様に相談したかったのです。ご主人様はいつもG41の気持ちを分かってくれます。FALさんもそうだと思っていたのに…どうしてこうなってしまったのでしょう…

 

「よしよし、G41」

 

 ご主人様はG41を抱き締めてなでなでしてくれました。ぐすん。G41は思わず泣いてしまいました。ご主人様に抱っこされて安心してしまったのです。ぐすぐすとしばらく泣き続けてしまいました。

 

「ご主人様…G41はFALさんに嫌われちゃったの?」

 

 G41は泣きながら、ご主人様に尋ねました。G41はFALさんが大好きです。今回は衝突してしまいましたが、それでもG41はFALさんが大好きです。今後、口をきいてもらえないかもしれない、そう思うと物凄く悲しいです。悲しすぎて涙が止まりません。ぐすぐす…

 

「俺やFALがG41を嫌うことなんて絶対にない。安心するんだ」

 

 そう言いながら、ご主人様はG41を抱き締めてくれます。頭をなでなでしてくれます。

 

「そもそも、FALだって今回の事はG41の方が正しいことは分かっている。あいつはそんな馬鹿な奴じゃない」

 

 ご主人様の言葉に、G41は顔を上げます。ご主人様は全てを分かり切っているような穏やかな微笑みを湛えていました。ご主人様のことをFALさんが一番分かっているように、FALさんのことはご主人様が一番よくわかっています。ご主人様の言葉に間違いはないと思います。

 

「だがな、あいつもまだこの世に生まれて10年も過ごしていない。感情を制御できない時だってあるのさ…」

 

 そう言って、ご主人様はG41の顔を持って、目を合わせて尋ねます。

 

「G41? G41はどうしたいんだい?」

 

「はい! G41はFALさんと仲直りしたいです」

 

「そうだな。なら…」

 

 そう言って、ご主人様は机の中からポテチとかチョコレートとかのお菓子を出して、G41に渡してくれました。

 

「これを持って行ってFALと話し合うんだ。あいつはきっと娯楽室でG41を待っているから」

 

「はい! ご主人様!」

 

 ご主人様の言葉を受けて、G41は娯楽室に向かいます。途中、本当に嫌われていたらどうしよう。怖い、という思いがG41の足を何度も挫きました。でも、G41はご主人様を信じます。FALさんを信じます。嫌な思いを振り払ってG41は娯楽室の扉を開けました。

 部屋の中ではFALさんが待っていました。ここにきて、G41の怖い思いが強く湧き出してしまいました。部屋の中に入れません。G41は俯いて足を止めてしまいます。

 

「G41、そんなところにいないで、話しましょう」

 

 すると、FALさんが優しい声でそう言ってくれました。G41は耳を寝かせたまま、恐る恐るFALさんのテーブルのところに行き、体面に座りました。FALさんは用意してくれていた紙コップにコーラを注いでくれました。

 

「まずは…ごめん、G41。今回の件は貴女の方が正しいわ」

 

 FALさんの言葉にG41は頭をあげました。FALさんは自嘲的な笑みを浮かべて話を続けます。

 

「あのね、私は指揮官の傍らに立つ唯一の人形だって思ってた。それを誇りにここ数年は頑張ってきたつもりだったわ」

 

 FALさんの独白に似た言葉を聞いたG41は頷きます。FALさんはご主人様から一番信頼されている戦術人形です。過去もご主人様の期待にこたえ続け、最近もご主人様からの密命を受けて事件解決の鍵ともいえる活躍をこなしてきました。ご主人様がFALさんほど信頼する人形はいない、と断言できます。

 

「でもね、何だかG41が成長して…指揮官に似た策を立てるのを見てね…ちょっと、やきもちを妬いてしまった…そんなところね」

 

 私もまだまだね、そうFALさんは苦笑してコーラを一気に煽りました。

 G41は気づきました。FALさんだって神様じゃありません。時に悲しいこともありますし、怒ることもあります。G41はFALさんに分かってもらうだけではいけなかったのです。FALさんの気持ちだって考えなくてはならなかったのです。

 今回の件に関しても、G41は正しいことをしたとはいえ、最終的にFALさんが分かってくれるという甘えのもとに作戦を勝手に遂行しました。最初にFALさんに相談すればこんなことはなかったはずです。

 

「ごめんなさい、FALさん」

 

 G41はFALさんに謝りました。G41はFALさんの気持ちを考えていなかったのです。こんなに酷い話はありません…

 

「そうね。じゃあ、お互い謝ったから仲直りね?」

 

 そう言ってFALさんはG41をなでなでしてくれました。G41は顔を上げました。FALさんはG41を許してくれたのです。嬉しいです。

 

「はい、FALさん!」

 

「じゃあ、今度は仲良しの二人サワー会ね? 楽しくやりましょう?」

 

 こうして、G41とFALさんは一緒にポテチを摘まんだり、コーラを飲んだり、お膝に乗せて貰ってなでなでして貰ったりしながら楽しい午後の時間を過ごしました。二人ともニコニコでした。G41はFALさんが大好きです。FALさんもG41が大好きです。そして、二人は今回の件でもっと仲良くなれたと思います。二人は超相思相愛です! えっへん!

 

「せっかくだし、机上演習でもやってみる? …次からは手加減しないわよ?」

 

「はい、FALさん!」

 

 チェス盤と駒、それにレゴブロックを取り出してきたFALさんにG41が答えます。もちろんです! G41はFALさんに教わりたいことがいくらでもあります。それに手加減して貰っては、訓練のし甲斐がないです。FALさん、よろしくお願いします!

 

 結果、G41とFALさんの戦績は0勝3敗2引き分けでした。その結果を聞いたご主人様は、FALさんに大人げない奴だなぁ、と呆れていましたが、G41はFALさんに一人前に認められたみたいで嬉しかったです。

 やっぱり、FALさんはG41の憧れです。今後も、G41はFALさんみたいな立派な戦術人形になれるように努力していきたいと思います! FALさん、次は負けないからね? まる!



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追記12:ひっつきG41

 ある日のことです。G41隊は巡回に出ていました。今回は基地周辺なので、トラックも使ってないですし、キャンプもしません。のんびり歩いて、その日の内に帰れます。お気楽に散歩しているようなものです。

 

 その途中で、G41達はオナモミがいっぱい生えているのを見つけました。

 オナモミは訓練の際には嫌われます。ひっつきむしだからです。この前89式さんが藪の中の訓練でいっぱいひっつかれて、みんなでそれを取ってあげたのを思い出します。

 でも、オナモミの茎は刻んで乾燥させるといい入浴剤になります。それをネットに入れてお風呂に漬けると、とってもいい香りがしてぬくぬくになります。

 G41はぬくぬくなお風呂が大好きです。なので、刈って帰ることにしました。

 

 みんな服にひっつきむしが付かないように、注意しながらハチェットやナイフで枝を落としていきます。入浴剤にするのは茎だけなので、枝はいらないのです。

 

 というわけで、一杯オナモミの茎が手に入りました。適当な大きさにカットしてビニール袋に入れます。明日のお風呂はぬくぬくです。G41は嬉しいです。

 

 あたりを見ると、ひっつきむしが一杯地面に転がっています。アスファルトの上では流石に芽は出せないでしょう。なんだか、オナモミが可哀想です。

 

 ふと、G41はいけないことを思いついてしまいました。オナモミの実をいっぱい拾って、ヴィーフリちゃんに近づきます。

 

「ヴィーフリちゃん。えーい!」

 

 そう言って、G41はヴィーフリちゃんの服にオナモミの実を投げつけました。もちろん、オナモミの実はひっつきむしとしてヴィーフリちゃんの服にひっつきました。悪戯成功です! えへへ。

 

「もう、G41ったら! いたずらっ子なんだから!」

 

 そう言ってヴィーフリちゃんもまた足元のオナモミを拾います。G41は笑顔で土のある所まで逃げます。ヴィーフリちゃんはG41を追って、オナモミを投げつけました。もちろん、G41の服にもひっつきむしが付きます。

 

「あ、G41さん楽しそう! 私も混ぜてください!」

 

「あ、あの…私も、G41さんと遊びたいです!」

 

「うひひひ、59式にオナモミ合戦で勝てるかな~?」

 

 89式さんとTMPちゃん。それに、59式ちゃんも楽しそうにオナモミを拾ってみんなでぶつけ合います。G41隊対抗オナモミ合戦です! みんな笑顔でオナモミをぶつけあってとっても楽しい時間が過ごせました。

 

 ひとしきり遊んだところで、G41達は服に着いたオナモミを土の地面に落として、基地へ帰還しました。作戦は成功です。土の上ならオナモミも芽を出せるでしょう。お風呂のお礼です。

 

 というわけで、G41隊はまず検査を受けてシャワーを浴びて、カリーナさんに報告書を提出して宿舎に帰ることになりました。

 隊長であるG41は帰る前にご主人様に報告に行かなければなりません。G41は嬉しいので、スキップしながら指揮官室に向かいました。

 

 G41はうきうきです。今日もこんなに楽しいことがありました、とご主人様に報告するのはとっても幸せなことです。ご主人様はG41のお話をよく聞いてくれますし、面白ければご褒美としてコーラの飴をくれることもあります。そうでなくても、G41はご主人様が好きすぎるので、会えるのが楽しみなのです。

 

「あ! G41ちゃん、おかえりなさい」

 

 廊下を歩いていると前方から一〇〇式(モモ)ちゃんがやってきました。一〇〇式(モモ)ちゃんは今日の副官です。G41を迎えに来てくれたのかもしれません。

 ふと、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんともひっつきむしの楽しさを共有したくなりました。あんなに楽しかったのです。大好きな一〇〇式(モモ)ちゃんにもその楽しさを味わってほしいです。

 

 でも、もうひっつきむしはありません。全部、土の上に落としてきました。これではひっつきむしの楽しさを伝えることができません。

 

 いいことを思いつきました!

 

一〇〇式(モモ)ちゃ~ん!」

 

 G41はおもむろに一〇〇式(モモ)ちゃんに駆け寄ります。そして、遠慮なく抱きついてスリスリしながら言いました。

 

「ひっつきむし~♪」

 

 そう言ってG41は一〇〇式(モモ)ちゃんに固く抱き着きます。ひっつきむしがないなら、G41がひっつきむしになればいいのです。これは名案です!

 

「えっと…じゃあ、私もひっつきむし~」

 

 そう言って、一〇〇式(モモ)ちゃんがG41を抱き返してくれました。一〇〇式(モモ)ちゃんのぬくもりを感じてG41は幸せです。オナモミのお風呂よりも、一〇〇式(モモ)ちゃんのぬくもりと匂いの方がいいです。何せ、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんが好きすぎるのです!

 

 一〇〇式(モモ)ちゃんとひとしきりじゃれあったG41は、一緒に指揮官室に行きます。ご主人様への報告をして、あまあまするのです。

 

 ふと、G41は更にいいことを思いつきました!

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、あのね…(ごにょごにょ)」

 

「う、うん、分かったよ」

 

 というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんに作戦を伝えてから、一緒に指揮官室に行きます。扉は開いていて、ご主人様はFALさんと一緒に、一〇〇式(モモ)ちゃんとG41を待っていたのでした。

 

「お帰り、G41」

 

「ご苦労だった、G41。とりあえず、おいでおいで」

 

 部屋に入ったG41にFALさんとご主人様が声をかけてくれます。G41は嬉しい気持ちでいっぱいになりました!

 でも、幸せにとらわれてはダメです。作戦を決行しないといけません。

 

 というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒にご主人様に近づいて行きました。

 

「ん? どうしたんだ、二人とも?」

 

 不思議そうな顔のご主人様にG41は一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒に抱き着いて、そして一言。

 

「ひっつきむし~♪」

 

「ひ、ひっつきむし~」

 

 二人はご主人様にくっついてすりすりします。やりました! 作戦は成功です!

 G41はご主人様にもひっつきむしの楽しさを知って欲しかったのです。なので、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんと一緒にひっつきむしになることにしたのです!

 

 ところが、ご主人様は無反応です。おかしいです。ご主人様は喜んでくれると思ったのですが…

 

「…うぼあー…」

 

 次の瞬間、ご主人様がいきなり倒れてしまいました。どういうことなのでしょう? G41にはよくわかりません。

 

「…二人とも、不意打ちでそういう可愛いことをするのはやめなさい。指揮官が死ぬでしょ?」

 

 そして、苦笑したFALさんに窘められてしまいました。ごめんなさい、FALさん。でも、可愛さで人は死ぬものなのでしょうか? G41にはよくわかりません。

 

「指揮官、しっかりしなさいよ」

 

「ああ…一瞬魂が天国に行っていたよ…」

 

 FALさんに手伝って貰いながら、ご主人様が立ち上がります。そして、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんの頭をなでなでしてくれました。G41は幸せです!一〇〇式(モモ)ちゃんも幸せです!みんな相思相愛です! えっへん!

 

「とりあえず、もう夜も遅いけど、夕飯どうするの?」

 

「そうだな。今日は給料日だし、みんなにハンバーガーでも奢るよ」

 

「わーい♪」

 

 FALさんの問いに答えたご主人様の言葉に、G41は諸手を上げて喜びます。G41は嬉しいです。ハンバーガーは美味しいのでとっても好きなのです。

 

「あの…指揮官…無理しないでくださいね?」

 

「分かってるさ、一〇〇式(モモ)。さあ、行くぞ」

 

 ご主人様に従って、G41達は基地のフードコートにあるハンバーガー屋さんに行きました。そして、みんなで今日一日に会ったことをお話しします。とっても和やかで楽しい時間が過ぎました。ハンバーガーも美味しかったし、物凄く満ち足りた時間でした。

 ご主人様もFALさんも一〇〇式(モモ)ちゃんもG41の話を楽しそうに聞いてくれました。G41は幸せ一杯です。今日までもG41は素敵な皆に囲まれて幸せすぎる日々を送ってきました! そして、今日もまたG41は幸せ一杯でした! 明日もきっと幸せ一杯です! G41は過去と今の幸せを噛みしめながら、きっと幸せな明日に思いを馳せるのでした! まる!



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追記13:恋しいG41

 ある日のことです。G41は暗い顔でご主人様のお部屋を掃除しています。実は昨日M590さんが掃除しているので綺麗なのですが、それでもG41はご主人様のお部屋を時間をかけて丁寧にお掃除します。部屋の隅の小さな埃も見逃さない勢いです。

 

 なんでかというと、G41はしばらくご主人様と会っていないのです。

 ご主人様は今戦略研究所に出向いています。それで一週間ぐらいは帰らない、ということです。しかも、一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんも一緒です。

 G41は以前の事を思い出しました。ご主人様が長い間帰ってこなくなる事態になると、G41は不安で仕方ありません。今回の事は軍が絡んでいるので、いざとなったらそっちの戦力が使えるのでご主人様の身に不安はありませんが、事態が長引いてご主人様が帰ってこないとG41は心配で心配でたまりません。

 

 なので、不安と寂しさを紛らわせるためにご主人様の部屋を掃除しているのです。こうしていると、ご主人様と少しでも近づけるような気がして、ほんの少しだけ寂しさが紛れるのです。

 

 しばらくして、掃除が終わりました。徹底的にお掃除したので、これ以上掃除のしようがありません。なんだかしょんぼりです。早くご主人様に帰ってきて欲しいです。なでなでして貰いたいです。甘々したいです。遊んで欲しいです。

 

 ふと、ご主人様の枕が目に留まりました。持ち上げてぎゅっとしました。そば殻の枕は固くてざらざらしてますが、ご主人様の匂いがします。嬉しいです。G41の寂しい心が癒されました。

 

 しばらく抱きかかえてG41は枕をベッドに戻します。でも、そうすると寂しさがこみあげてくるのです。もう、4日もご主人様に会ってないG41の心は寂しさでいっぱいです。

 

 なので、ご主人様の枕を抱えてG41は部屋から出ました。こうするとご主人様が側にいるような気がして、G41は安心するのです。

 

「おや、G41さん」

 

 廊下を歩いていると、M590さんに会いました。昨日部屋を掃除したM590さんは、G41が今日も掃除をしているのを察したはずです。でも、M590さんは気を悪くしたり、怪訝に思ったりはしないみたいです。M590さんもG41の気持ちを理解してくれているのです。

 

「G41さん。枕を部屋から持ち出したりすると、指揮官に叱られますよ?」

 

 M590さんは穏やかに微笑みながらそう言いました。でも、G41は枕をギュっとして、ふるふると首を横に振りました。寂しいG41は少しでもご主人様を側に感じたいのです。

 

「…仕方ないですね。このことは黙っておきますから」

 

 M590さんは口元に人差し指を立ててそう言ってくれました。M590さんもG41の心を理解してくれているのです。そんなM590さんがG41は大好きです。M590さんもG41が大好きです。二人は相思相愛です! えっへん!

 

「私も訓練を終えて暇になりましたし、M590隊とG41隊で野球盤の対抗戦でもしませんか? もちろん、今回は勝たせていただきますけど」

 

 M590さんは笑顔のままそう言います。G41が寂しいことを知っているM590さんはG41を気遣ってそう言ってくれているのです。しかも、隊も巻き込んでのお遊びです。こうすることで、G41隊とM590隊との交流も深めようとしているのでしょう。そして、共に常設小隊であるG41隊とM590隊が交流することには意義があります。

 

「うん!」

 

 なので、G41は力いっぱい頷きました。ご主人様がいなくても、一〇〇式(モモ)ちゃんとFALさんがいなくても、G41には友達が一杯なのです。なので、そこまで寂しがることはないのです。

 

 というわけで、G41は枕を抱いたまま、G41隊に招集をかけました。ヴィーフリちゃんやTMPちゃん。それに、89式さんやAUGさんも喜んで参加してくれます。

 M590隊は最近かなり編成が代わりましたが、それでも副官のM500さんを始め、みんな快く参加してくれました。嬉しいです。G41は幸せ一杯です。

 

 というわけで、みんなでピッチャーやバッターを交代しながら野球盤をプレイしてとても楽しみました。試合は一進一退の好勝負です。M500さんが何気に上手で、AUGさんが投げた球を満塁ホームランされてしまいました。これで25対24です。おのれー。かくなるうえは…

 

『G41、聞こえるか?』

 

 ぴこん! G41のミミが立ちました! ご主人様の声です!

 

『ご主人様!』

 

『思いの外調整が早く終わった。おおよそ一時間後には帰るから、手が空いていたら、ご飯の準備をして待っててくれ』

 

 ご主人様がG41にそう要請してくれました。G41は嬉しいです。もうすぐご主人様が帰ってくるのです。嬉しすぎます。頑張ってご飯を作って待ちたいです。

 でも…とG41は野球盤を見ました。みんなで遊んでいたのに、ここでG41だけ抜けるとなんだかバツが悪いです。それに結構いいところです。ご主人様も大事ですが、G41隊のみんなもM590さん達も大事です。どうしようか、と困ってしまいました。

 

「…これでよし。スコアシートは記録しましたし、続きは指揮官をみんなで迎えてからしましょう」

 

「うん! 指揮官が還ってきたのだから、みんなでパーティしましょう! にぎやかなパーティって最高でしょう、ねえ!」

 

 M590さんの言葉にM500さんもそう言って同意します。その通りだ、とG41も思います。ご主人様と久しぶりに会えるのです! パーティしたいです!

 

『…なんか盛り上がってるみたいだけど、指揮官?』

 

『ああ。G41達が頑張ってくれるみたいだから、備蓄の放出を許可しよう。みんなにも伝えておけ。今日は朝までパーティだ!』

 

『はいはい、分かったわよ』

 

『基地に着いたらお手伝いするから、待っててね、G41ちゃん』

 

 ご主人様とFALさんと一〇〇式(モモ)ちゃんの声が聞こえました。今日はみんなでパーティです! うきうきです!

 というわけで、G41はみんなと一緒に台所に走りました。パーティのご馳走を用意するのです! しかも、備蓄も使っていい、とのことです。物凄く豪華な料理が作れそうで腕が鳴ります!

 

「よかったですね、G41さん。…枕は戻しておきますね」

 

 そう言って、M590さんはG41から枕を受け取ってご主人様の部屋に向かいました。そんなM590さんの事が大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

 というわけで、G41はG41隊とM590隊のみんなと一緒にご馳走を作ってご主人様を待つことにしました。料理が完成したらお出迎えです。ようやく、ご主人様に会えます。料理をきっちりと仕上げたG41は、ご主人様のヘリが辿り着くまでの数十分を一日千秋の気持ちで待つのでした! まる!



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追記14:怖がりG41

 ゴロゴロゴロ…

 ピシャーン!

 

 雷です! G41は大慌てです。大雨と共に雷が鳴り始めました!

 幸い、雨には崩壊液はほぼ含まれていないので対崩壊液用タープを張る必要はないみたいです。小太刀を握り締めて非常事態に備えていた一〇〇式(モモ)ちゃんもほっとしていました。

 でも、G41は雷が怖いです。もし雷が落ちたら、G41達戦術人形はショートして、メンタルモデルが破損してしまう可能性があります。それは銃で撃ち倒されるより嫌です。メンタルモデルが破損したら、ご主人様の事も一〇〇式(モモ)ちゃんのことも忘れてしまいます。そんなの嫌です。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん~」

 

 G41は怖いので一〇〇式(モモ)ちゃんに抱き着きました。大好きな一〇〇式(モモ)ちゃんが側にいると安心するのです。一〇〇式(モモ)ちゃんはなんだか甘くていい匂いがします。身体も柔らかくて抱き心地もいいです。

 

「大丈夫だよ、G41ちゃん。怖くないからね」

 

 そう言って一〇〇式(モモ)ちゃんもG41を抱き締めてくれます。気持ちいいです。G41は幸せです。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんが大好きです。一〇〇式(モモ)ちゃんもG41が大好きです。二人は相思相愛です! えっへん!!

 

「どうやら心配なさそうだな。一〇〇式(モモ)、ご苦労だった。通常待機に戻ってくれ」

 

「はい、指揮官」

 

 しばらくそうしていると、ご主人様がやってきて一〇〇式(モモ)ちゃんに言いました。一〇〇式(モモ)ちゃんもそれに応じて懐に小太刀を仕舞いました。どうやらもう怖くないみたいです。G41は一〇〇式(モモ)ちゃんから離れました。ご主人様がいるので雷なんて怖くないのです。

 

 ゴロゴロゴロ…

 ピシャーン!

 

 また雷です! 凄い光と音でした!

 でも、怖くないです。今はご主人様と一〇〇式(モモ)ちゃんがいてくれるのです。何にも怖い物なんてないです。

 その瞬間、ふっと電気が消えてしまいました! 発電機に雷が落ちたのかもしれません!!! 真っ暗です!!! 何も見えません!!!!

 

「ご主人様ー!!」

 

 怖くなったG41はご主人様に抱き着きました。一〇〇式(モモ)ちゃんもいいですが、やはりご主人様の側が一番落ち着きます。

 

「よしよし、G41。怖いことなんてないからな」

 

 そう言ってご主人様がG41をなでなでしてくれます。嬉しいです。G41は幸せです。

 すると、すぐ電気が付きました。予備電源が働いたみたいです。よかったです。これで一件落着です。

 

 でも、まだ雷はゴロゴロいってます。怖いです。銃声はもう聞き慣れましたが、雷はいつになっても慣れません。G41はご主人様に抱き着いています。ご主人様がいてくれると雷も怖くないです。

 

 …ふと、思いつきました。このまま雷が落ちたら…ご主人様も危ないです!!

 G41は真っ青です! G41達戦術人形は金属パーツを使っているので、人間よりも落雷する可能性が高いです! このまま抱き着いていたら、ご主人様に雷が落ちるかもしれません!!

 

 なので、G41はご主人様から離れました。怖いですが仕方ないです。G41にとって一番大事なのはご主人様の安全なのです。なので、怖いけど我慢します。くすん。

 

「大丈夫だよ、G41。雷なんて怖くないからおいでおいで」

 

 そう言ってご主人様が手招きします。G41は恐る恐るご主人様に近づいて抱き着きました。やっぱり安心します。G41はご主人様の側にいるのが一番幸せなのです。

 

「俺の腕にはフォースフィールド発生装置が仕込まれてるから、雷なんて効かないさ」

 

 そう言って、ご主人様はG41をなでなでしてくれました。嬉しいです。そう言えばご主人様は軍用戦術人形に匹敵するぐらい強いのです。何も心配はありません。なので、G41は遠慮なくご主人様に抱き着きました。

 

 ふと見ると、一〇〇式(モモ)ちゃんが微妙な表情で立ち竦んでいました。なんだか、微妙に羨ましそうな色があります。一〇〇式(モモ)ちゃんもご主人様に甘えたいのでしょう。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん! 一緒にあまあましよう!!」

 

 というわけで、G41は一〇〇式(モモ)ちゃんも誘うことにします。一〇〇式(モモ)ちゃんはG41の大親友でかつ序列もG41より上です。ここは一緒にあまあますべきです!!

 

「そうだな、二人とも。おいでおいで」

 

 そう言ってご主人様は近くのベンチに腰を下ろして、股を開いて両方のお膝を叩きました。

 お膝の許可が出ました! G41は喜び勇んでご主人様の右のお膝に座ります。一〇〇式(モモ)ちゃんも遠慮がちに左のお膝に座りました。気持ちいいです。一〇〇式(モモ)ちゃんも恥ずかしそうですが、気持ちよさそうです。

 

「嗚呼…両手に花…幸せだなぁ」

 

 そして、ご主人様はG41と一〇〇式(モモ)ちゃんの頭をなでなでしながらしみじみと言いました。ご主人様も幸せそうです。三人は相思相愛です! えっへん!!

 

 しばらくすると、雨音がなくなりました。小さな窓から光が差し込んできます。雨が止んだのです。雷はどこかに行ってしまいました! G41達の勝利です!! えっへん!!!

 

 窓から外を眺めてG41は目を丸くしました! 七色のアーチが空にかかっています! 虹です! 虹が空にかかっているのです!! とっても綺麗です!!!

 

「ご主人様、虹です!!」

 

「ああ、綺麗だな。…せっかくだから、中庭に見に行こうか」

 

「はい、指揮官!」

 

 こうして、G41と一〇〇式(モモ)ちゃんはご主人様と手を繋いで、中庭に歩いて行きました。そして、お日様と虹を堪能しながら、今日の午前の時間を終えました。

 G41は嬉しいです。怖い雷が去って綺麗な虹が見えました。大好きなご主人様と一〇〇式(モモ)ちゃんも一緒です。今日もとっても素敵な一日になりそうです! G41は笑顔で花に満ちた中庭に駆けて行きました! まる。



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追記15:接待G41

 ある日のことです。G41にお仕事の依頼がやってきました。以前ご主人様と泊った旅館の女将さんからです。

 女将さんの話によると、今度物凄く偉い人が旅館にやってきて、御持て成しをしないといけないのだそうです。

 ご主人様の曰く、その人は悪い人ではないのですが、結構面倒くさいらしく普通に持て成しただけでは満足しないかもしれない、とのことです。そして、満足して貰えないと旅館に回すお金なんかが減らされるかもしれない、と困っているのです。

 

 そこで、G41が接待役に抜擢された、と言うことです。G41は最近WA2000さんに下されてしまいましたが、それでもグリフィンドール総選挙6位の人気者なのです! えっへん! そんなG41が接待すれば満足してくれるだろう、と言うのです。

 

 お任せください! G41は頑張って、きっと満足して貰える接待をします!G41は笑顔で女将さんの依頼を受けました。

 

 というわけで、今日は件の旅館に行き、女将さんや他の女中の人達の指導を受けて、失礼がないよう作法を学びました。G41は呑み込みがいい、とみんなから褒めて貰えました。なでなでもして貰えました。嬉しいです。可愛い着物も着付けて貰ったので、G41は幸せです。

 

 そして迎えた明くる日。いよいよ、偉い人がやってくる日です。G41と女将さん、それに数人の女中さんが門の前で、到来を待っていました。

 やがて、黒塗りの車がやってきて門の前で止まりました。女中さんの一人がドアを開け、男の人が出てきます。ご主人様より二回り以上年上な綺麗な白髪の男の人でした。

 女将さんも女中のみんなも深くお辞儀をして、男の人にお出迎えのご挨拶をします。でも、G41は思わずタイミングを逃してしまいました。

 

「あれ? ご主人様?」

 

 そして、男の人についそう言ってしまいました。どうしてなのか、G41には分かりません。男の人はご主人様にちっとも似てないですし、匂いも違います。でも、G41は何故かご主人様がやって来たのか、と思ったのです。

 

「おや? そちらはG41ちゃんかな?」

 

 男の人はG41の失礼を咎めたりはせず、G41に微笑んでくれました。G41も笑顔になりました。この人はなんだかいい人そうです。そう思いました。

 

「なるほど。あいつはうちのG41はとても可愛いと自慢していたが、その通りだな」

 

「ご主人様の事を知っているんですか?」

 

「ああ、もちろんだとも。…女将たちは下がっていい。G41ちゃん。離れに案内してもらえるかな?」

 

「はい!」

 

 というわけで、ここからはG41だけで男の人に接待することになりました。女将さん達はなんだか不安そうな表情でしたが、G41はこの人とは仲良くできそうな気がします。どこと言うわけではないですが、ご主人様に似ている気がするからです。

 

 というわけで、G41は離れの部屋に男の人を案内しました。離れは相変わらず上等な和室で、畳のいい匂いがします。机の上には綺麗な陶磁器のお皿と、その上には少量ずつの酒肴が盛られていました。近くには氷水の張った瓶が置かれており、その中にはお酒の入ったひょうたんが浮かんでいました。

 

「堅苦しい挨拶なんかは必要ない。隣に座って、御酌をしておくれ」

 

「はい!」

 

 男の人にそう言われたので、G41は瓶からひょうたんを取り出して手拭いで軽く拭いて、男の人の隣に座ります。そして、男の人が手にしたお猪口にお酒を注ぎました。甘い香りのする透明なお酒です。

 

「…ふむ。いい酒だ。可愛い子に注いで貰うと、なお美味い」

 

 男の人はお酒を飲んで満足そうにそう言いました。G41の接待は喜んで貰えているようです! 何だか全然訓練通りに出来てはいませんが、お客様が満足してくれていればそれでよしです! G41は接待もできるいい子です! えっへん!!

 

「G41ちゃんも一口どうかな?」

 

 そう言って男の人は机の上にあるもう一つのお猪口をG41の前に置いてくれました。そして、G41の手からひょうたんを持ち上げます。

 

「はい、頂きます!」

 

 G41はお猪口を手にして笑顔で言います。美味しそうなお酒には興味津々です。

 

「じゃあ、はい」

 

 そう言って男の人はG41のお猪口にお酒を注いでくれます。なんだか、立場が逆転しているように思えますが、お客様が喜んでくれてるのならそれでよしです。

 

 G41はお猪口のお酒の匂いを嗅いでみます。凄く甘くていい匂いがします。普段基地で飲んでいるお酒と違って安っぽいアルコール臭などはしません。どちらかというと上品な化粧水のような香りです。

 

 飲んでみるとその美味しさに驚きます。とても上品な甘さです。コーラのようなわざとらしさがない清々しい甘さと、鼻から抜けていくいい香りがとても素晴らしいです。こんなお酒飲んだことがありません。

 

「美味しいかい?」

 

「はい! こんな美味しいお酒初めてです!」

 

「そうかい。それはよかった」

 

 そう言って男の人はG41の頭をなでなでしてくれます。気持ちいいです。何だかご主人様になでなでして貰っているみたいです。G41は幸せです。

 

「晶の奴は相変わらず金に困っているのかな?」

 

「はい。昨日もご飯はG41が差し入れてあげました」

 

「そうか。全く、あいつは仕事ばかりでなく自身の世話もできるようにせんとな」

 

 そう言って男の人は苦笑しながらG41の注いだお酒を飲みます。そして、酒肴の酒盗を一口食べました。

 

「あの、ご主人様の事を知っているのですか?」

 

「ああ。あいつは俺の息子のようなものだ」

 

 男の人はG41の問いに答えて言います。なんでも、この人は軍時代の上官で、そして家族を亡くして天涯孤独になったご主人様を引き取った人らしいです。仕事の事とかもこの人が全部ご主人様に教えたのだそうです。なるほど。確かにご主人様のお父さんみたいな人です。だから、G41はこの人をご主人様と誤認したのかもしれません。

 

「と言う訳で、G41ちゃんは俺のことをお祖父ちゃんと呼んでくれると嬉しいな」

 

 お祖父ちゃん! 確かにそうです。ご主人様のお父さんならお祖父ちゃんと呼ぶのがいいかもしれません。

 

「はい、お祖父ちゃん!」

 

「おお…とてもいい響きだ。嬉しいな」

 

 G41が呼ぶと、お祖父ちゃんは嬉しそうに微笑んでG41の頭をなでなでしてくれました。嬉しいです。

 

「と言う訳で、G41ちゃん。おいでおいで」

 

 胡坐をかいているお祖父ちゃんが言いました。G41は喜び勇んで胡坐の上の座ります。気持ちいいです。何だか、ご主人様のお膝みたいです。とっても幸せです。

 

 その後、G41はお祖父ちゃんと昔のご主人様のお話をしたり、今の基地のお話をしたりしてしばらく時間を過ごしました。お酒を飲ませて貰ったり、酒肴を食べさせて貰ったりもしました。物凄く幸せです。G41はお祖父ちゃんが大好きです。お祖父ちゃんもG41が大好きです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「あのね、お祖父ちゃん。G41ね、お祖父ちゃんのために接待を考えたの」

 

 G41はお祖父ちゃんにそう言います。すっかり口調が砕けていますが、お祖父ちゃんもその方が嬉しそうです。

 

「おお、それは嬉しいな。どんなのだい?」

 

「うん。ちょっと待っててね?」

 

「ああ」

 

 お祖父ちゃんの許可を得たG41は部屋を出て、離れの炊事場に行きます。そして、ご飯の入ったおひつと塩、それに水の張った小さなタライと小梅の入った瓶と海苔を貰って部屋に帰ります。

 

「おにぎりを握りますね、お祖父ちゃん」

 

 そう言ってG41は考えていた接待を始めます。

 G41のファンの人はG41の作る料理を食べたい、と言う人もいます。お祖父ちゃんもG41の事が気に入ってくれたのなら、G41の料理を食べたい、と思うかもしれません。でも、厨房を貸して貰う訳にもいかないですし、ポケットストーブで料理を始めるわけにもいきません。

 なので、G41の手でおにぎりを握ったら喜んで貰えるかもしれない、と思ったのです。それにお米のおにぎりを作ってみたかったというのもあります。

 

「おお、それは素晴らしいな」

 

 お祖父ちゃんも嬉しそうにそう言ってくれました。G41の接待は成功みたいです。えっへん!

 

 まず、手をタライの水に漬けます。そして、手に塩を付けてご飯を握っていきます。手の中で転がして、三角にしていきます。そして、小梅をおにぎりの真ん中に埋め込んで海苔で包んだら完成です!

 

「お祖父ちゃん、どうぞ~」

 

「ああ。いただきます、G41ちゃん」

 

 G41がお皿に乗せて差し出したおにぎりを、お祖父ちゃんが一口食べました。

 

「嗚呼、美味しい。最高のご馳走だ」

 

 お祖父ちゃんはとっても喜んでそう言ってくれました。やりました! G41の接待は大成功です! えっへん!

 

 その後もG41とお祖父ちゃんは楽しくお話をしたり、なでなでして貰ったりして小一時間が過ぎました。そろそろお祖父ちゃんは帰る時間です。G41は名残惜しいですが仕方ないです。女将さんを呼んで車の支度をして貰ってお見送りします。

 

「女将、大変楽しめたよ」

 

「はい、ありがとうございます御前!」

 

 お祖父ちゃんからお褒めの言葉を貰った女将さんは物凄く嬉しそうです。周りの女中さんの間にもホッとした空気が流れます。接待が成功したことを心から喜んでいるのです。みんなが嬉しそうだから、G41も嬉しいです。

 

「G41ちゃん。これはお小遣いだ。次は一〇〇式ちゃんやFALも連れておいで?」

 

「ありがとう、お祖父ちゃん!」

 

 支払い保証済み電子通貨カードを受け取ったG41はお祖父ちゃんにお礼を言います。後で確認したら、ご主人様の月給を大きく上回る金額が入ってました。わーい。これでご主人様やみんなに美味しいご飯を作ってあげられます。ありがとう、祖父ちゃん。

 

 というわけで、G41の接待のお仕事は無事終了しました。G41は旅館のみんなから物凄く褒めて貰えて、一杯ご馳走を食べさせて貰ったり、なでなでして貰ったりしました。またいつでも遊びに来て、とも言われました。物凄く嬉しいです。G41は幸せ一杯です。

 後で聞いたら、お祖父ちゃんはこの国の情報部の元締めのような人で、国を裏から動かして世界と渡り合っているとんでもない人みたいです。

 でも、G41にとっては優しいお祖父ちゃんでした。今度は一〇〇式(モモ)ちゃんやFALさんも一緒に、しっかり準備して接待するから待っててね? まる。



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追記16:おしおきG41

 ある日のことです。廊下を歩いていると、怒声が聞こえました。この声はヴィーフリちゃんです!

 ヴィーフリちゃんはとても面倒見がよくて寛大な性格です。それがこんな怒声を上げているとは、珍しいです。何かあったのかもしれません。

 これはいけません。G41は声の方に飛んでいきます。ヴィーフリちゃんに何かあったのかもしれません。

 ヴィーフリちゃんはG41隊の副官であり、一〇〇式(モモ)ちゃんやSOPMODちゃんに匹敵する大親友です。

 ヴィーフリちゃんに何かあったのなら、G41が救助します。G41はヴィーフリちゃんが大好きです。

 

「ちょっと、Saiga-12!! 人のパンツ盗まないでよ!?」

 

「ち、違うんです、SR-3MP! 洗濯物を取り込もうとしたら、巻き込んでしまって」

 

「普通巻き込まないでしょ、そんなの!!」

 

 何と、ヴィーフリちゃんはSaiga-12さんに怒っていたようです。パンツを盗まれたそうなのです。

 

 うーん、とG41は首を捻ります。Saigaさんがヴィーフリちゃんのパンツを盗むものなのでしょうか?

 Saigaさんはこの基地では新参の部類に入りますが、G41のためにほねっこをくれたりします。礼儀正しいです。一〇〇式(モモ)ちゃんやUSASちゃんやTMPちゃんやM99ちゃんが好きなぐらいで、特に変わったところもない、と思ういい後輩です。ヴィーフリちゃんに無礼を働くとは思えません。

 それにSaigaさんとヴィーフリちゃんではパンツのサイズも違うでしょうし、第一Saigaさんは潔癖症のきらいがあります。人のパンツを盗んで穿いたりするようなことはないでしょう。

 これはきっと誤解です。G41が解決しようと思います。序列5位のG41は基地の秩序や治安にも気遣って動かねばなりません。G41はとってもいい先輩です。えっへん!

 

「ヴィーフリちゃん、落ち着いて」

 

「あ、G41。ごめん、気を遣わせた?」

 

「ううん、いいの」

 

 G41の言葉にヴィーフリちゃんが謝るのを聞いて、首を横に振りました。こんなこと、大親友のヴィーフリちゃんのためならば何の労苦も感じません。それに、G41はまだ事情を把握していないので、完全にヴィーフリちゃんの誤解と断言できませんし。

 

「こんにちは、G41さん! ハグしてもいいですか!?」

 

「こんにちは、Saigaさん。別にいいですよ?」

 

 Saigaさんの申し出をG41は快く受け入れてあげます。後輩の要望を快く受け入れてあげるG41はとってもいい先輩です。えっへん!

 

「嗚呼…G41さん、可愛すぎる…いい匂い…」

 

 Saigaさんは早速G41を抱き締めて言いました。気持ちいいです。G41はハグされるのが大好きです。でも、ハグだけでは物足りません。

 

「Saigaさん、頭撫でて?」

 

 G41はSaigaさんになでなでをおねだりします。後輩に無茶な要求をしてはいけませんが、なでなでぐらいなら問題ないと思います。そして、G41はハグも好きですが、なでなではもっと好きなのです。

 

「嗚呼…G41さんの髪…ふわふわでさらさら…」

 

 SaigaさんがG41の頭をなでなでして言います。気持ちいいです。それに、Saigaさんもとても幸せそうです。二人は相思相愛です。えっへん!

 

「ちょっと! G41に変な気を起こさないでよ!!」

 

「ち、違います! そういうのじゃないですから…((*´Д`)ハアハア…)」

 

 そうしていると、ヴィーフリちゃんがSaigaさんの手をぺちっしました。別にSaigaさんが変な気持ちになっているとは思いませんが…

 なるほど。ヴィーフリちゃんはもしかするとやきもちを妬いているのかもしれません。G41はニコニコです。G41はヴィーフリちゃんが大好きなので、やきもちを妬いてもらえるとちょっと嬉しいです。えへへ。

 

「それで、どうしたの?」

 

「うん。Saigaが乾燥室で私のパンツを盗んで…」

 

「だから、誤解です! 事故なんです!!」

 

 G41の問いに、ヴィーフリちゃんがSaigaさんを睨みながら言って、Saigaさんが弁明します。

 うーん。これに関してはちょっと、ヴィーフリちゃんが考えすぎな気がします。でもまあ、面倒見がよくて理知的なヴィーフリちゃんがそこまでいうということは、Saigaさんにも問題があるのかもしれません。一応Saigaさんにも問い詰める必要があると思います。

 

「Saigaさん。本当に事故ですよね? 嘘じゃないですよね?」

 

 G41はSaigaさんの目をじっと見つめて言います。G41がじっと見つめて言うと、誰でも本当のことを言いたくなるって、FALさんは言ってました。なので、G41はいっぱいSaigaさんを見つめます。じー。

 

「嗚呼…G41さんの目、綺麗…邪心が欠片もない…」

 

 すると、Saigaさんは何だか床に転がってゴロゴロしました。何だかご主人様みたいです。そういえば、ご主人様はSaigaさんを同好の士と言ってました。なるほど。SaigaさんもG41の事が好きなのかもしれません。だとすれば嬉しいです。G41は人から好かれるのが大好きです。

 

「ええと、ごめんなさい、G41さん。その…洗濯物を取り込もうとして巻き込んだのは嘘ではないんです」

 

 すると、Saigaさんが正直に出来事を言い始めました。

 

「ただ、SR-3MPが可愛くて…ついついポケットにしまってしまって…」

 

「ちょっと、Saiga! やっぱり、そういうことなんじゃない!!」

 

「ご、ごめんなさい! 貴女があまりに可愛くてつい…」

 

「ちっとも嬉しくないわよ、それ!!」

 

 そして、Saigaさんとヴィーフリちゃんが言い合うのを聞いて、G41は思います。まあ、出来心だったみたいですし、それにヴィーフリちゃんがとても可愛いのは事実です。それに、Saigaさんはご主人様の同好の士なので、ヴィーフリちゃんが好きすぎるのでしょう。

 でも、盗みはいけません。これがご主人様やFALさんにバレたらかなり厳重な処分を受けることでしょう。自習室で一週間は謹慎処分を受けると思います。

 その前に、G41が処分を下して何とか、許して貰おうと思います。幸い、G41は序列5位の戦術人形で、第一常設部隊の隊長でもあります。そういうことの処分を行う権限があるのです。なので、G41がお仕置きをすることで、Saigaさんを許してもらうのです。

 

「Saigaさん! そこに直ってください!!」

 

「は、はい…」

 

 G41がそういうと、Saigaさんは神妙に頷いて、正座します。というわけで、お仕置きタイムです。G41はおもむろにSaigaさんの側面に回ります。そして、その耳をはむっとしました!!

 

「ああああああ!! じ、G41さん!?」

 

 Saigaさんが素っ頓狂な声をあげます。やりました! お仕置きは成功です!!

 これはご主人様がG41に対して行うお仕置きのはむはむ地獄です。G41はとってもはむはむ地獄が怖いです。なので、これをすればお仕置きは十分と言えるでしょう。Saigaさん、かくごー。はむはむはむはむはむ…

 

「ああああああああ!? じ、G41さんの唇、柔らかい…息、甘い…(*´Д`)(ハアハア)」

 

 Saigaさんが物凄く悶えています。効果はてきめんです!! なので、G41はペロペロ地獄も追加します。耳をはむはむしながらペロペロもするのです。Saigaさん、どうだー!!!

 

「あふん…」

 

 すると、数秒もしない内に、Saigaさんが鼻血を吹き出して倒れてしまいました。G41は大慌てです。一体何が起こったのでしょう。

 

「……まあ、医務室に放り込んでおこうか、G41」

 

 戸惑うG41を尻目に、ヴィーフリちゃんは苦笑いしながらSaigaさんを引きずって医務室に行きます。むー。ちょっとやり過ぎたのかもしれません。G41は反省です。

 まあでも、メンタルモデルがちょっとオーバーヒートしただけらしいので、命に別状はないみたいです。G41は安心してSaigaさんを医務室に任せて、ヴィーフリちゃんと一緒に行くことにしました。治ったら仲直りするために、アップルパイを焼くのです。一緒にお茶が出来たら、きっと簡単に仲直りできると思います。だから、Saigaさん、早く元気になってね? まる。



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追記17:怒りのG41

 ある日のことです。G41は訓練を終えて、廊下を歩いていました。

 パロディウスの輩も大体片付けて、G41達は平和な日々を送っています。明日は副官ですし、今日は何をして遊びましょう。

 そんなことを考えていると、ふと指揮官室の前を通ると、ドアが開いていました。コーヒーを飲んでいたご主人様も気づいて、G41を見ます。

 

 

「おお、G41! おいでおいで!!」

 

 ご主人様はすぐにG41を手招きしました! G41は喜び勇んで突撃します!!

 

「ご主人様~!!」

 

 G41はすぐに駆け寄ります。そして、ご主人様の差し出されている手に頭を擦りつけました! セルフなでなでです!! ご主人様がG41を撫でたそうだったので、そうしました! G41は気が利きます!!

 

「G41は今日もたまらなく愛くるしいな。よしよしよし…」

 

 ご主人様はG41を抱きしめてなでなでしてくれます。嬉しいです。G41は幸せです。

 すると、ご主人様はG41を抱えて椅子に座ります。そして、G41をお膝に乗せて更になでなでしてくれます。

 

「よしよしよしよしよし! G41よしよしよしよしよし…」

 

 もう、めいっぱいなでなでしてくれます。G41は嬉しい気持ちでいっぱいです。幸せすぎます。G41とご主人様は今日も相思相愛です!

 

 はむっ。

 

「うわぁ!」

 

 G41は素っ頓狂な声をあげてしまいました! ご主人様がG41のミミをはむってしたのです!!

 

「ご主人様っ!」

 

 G41は頬を膨らせて、ご主人様を見上げます。またご主人様はG41のミミをはむってしたのです!!

 

「ごめんごめん。G41が可愛すぎてつい、な?」

 

 ご主人様は謝りながらなでなでしてくれますが、G41は頬を膨らせたまま不機嫌です。

 ご主人様は何度言ってもG41のミミをはむってするのをやめてくれません! これはもうガツンと言うしかありません! G41は意を決して、精一杯怒った声で言います!

 

「ご主人様っ! G41を! 食べたら! いけません!!」

 

「嗚呼…G41は怒っても可愛いな…」

 

 G41の言葉にご主人様は、にこにこしてそう言うだけです。まるで、反省の色はありません! む~…

 

 

「でも、G41。 どうしてG41をはむってしたらいけないんだい?」

 

 ご主人様の訳のわからない質問に、G41は閉口します。普通、人のミミをはむってしたりしません。そんな理由が必要なんでしょうか?

 でもまあ、ご主人様の御下問とあれば、答えないといけません。G41はとっても忠義ないい娘なのです。

 

「はい! G41は美味しくないからです!!」

 

「G41は美味しいよ?」

 

 ご主人様は間伐を入れずにそう答えて、にこにこしながらなでなでを続けます。G41が美味しいとか、そんなはずはないと思うのですが…

 

 はむっ。

 

「うわぁ!」

 

 G41はまたもや素っ頓狂な声をあげてしまいました! ご主人様がG41のミミを、またはむってしたのです!!

 

「ご主人様っ!!」

 

 G41はご主人様の方に向き直って、ご主人様に抗議します! もうこれはもっとガツンと言うしかありません! G41はもっと声を怒らせて言います。

 

「ご主人様っ!! G41を! 食べたら!! ダメです!!!」

 

「ごめんごめん、G41」

 

 G41の言葉に、ご主人様は謝ってくれます。でも、やっぱり反省の色がありません。む~…

 

「もう、いい加減にしなさいよ、指揮官」

 

 すると、今日の副官のFALさんが帰ってきました。G41はご主人様のお膝から降りて、FALさんのところに駆けていきます。もう、これはFALさんに言って聞かせてもらうしかありません。

 

「いやあ、G41が可愛すぎるから仕方ないんだ」

 

「なによ、その無茶苦茶な言い訳…」

 

 ご主人様の言葉に、FALさんが呆れてため息を吐きます。ご主人様は、全く考えを改めてくれるつもりがなさそうです。む~。

 

「大体、そんなにミミをはむってしたいなら、PA—15辺りにしたらどう? あの娘なら喜ぶと思うわよ?」

 

 むっ。それはいけません。G41は口をへの字にして、思わずFALさんを見上げてしまいました。

 PA⁻15さんはG41とは仲良しです。最近は、秘密基地で一緒に丸々したりもする仲です。でも、ご主人様を取られるわけにはいきません。多少言いたいことはあっても、G41はご主人様が大好きなのです。

 

「う~~ん、PA—15も可愛いんだが、可愛いんだが…」

 

 ご主人様は腕を組んで、うなりながら言います。ご主人様は何を梁んでいるのでしょう。G41は首を傾げて、ご主人様の様子を見ます。

 

「ただまあ、やっぱりなぁ…俺の一番はG41だからなぁ…」

 

「…だってさ、G41?」

 

 ご主人様の言葉を聞いて、G41は笑顔になりました! ご主人様の一番はG41なのです! 嬉しいです!

 PA⁻15さんが来たときは、ご主人様を取られてしまうと思いましたが、やっぱりご主人様の一番は揺るぎもしませんでした! やっぱり、G41とご主人様はらぶらぶなのです!! えっへん!!

 

 まあ、そういうことなら仕方ありません。 G41はご主人様に近づいて、お膝に座ります。はむっとされることをよしとするわけではないですが、まあご主人様がG41を大好きなのはわかったので、怒るのはやめにしようと思います。

 

「おお、許してくれるのか、G41。よしよしよしよし…」

 

「許してくれたからって、あんまりしちゃだめよ、指揮官。セクハラみたいなものなんだから」

 

「わかってるよ、FAL」

 

 というわけで、G41は怒りを収めてご主人様を許してあげました。そして、今日も三人で仲良く楽しく過ごしました。

 ご主人様は一〇〇式(モモ)ちゃんやヴィーフリちゃんにもセクハラを働いていますが、二人と文句を言いながらも許してあげています。ご主人様がちゃんと二人を大事に思っているからです。もちろん、ご主人様は二人に負けないぐらい、G41を大切に思ってくれています。なので、今回はまあ大目に見てあげます。G41はとっても寛大ないい子です! えっへん!!

 

 …でも、あくる日の副官をやっているときに、またはむはむされたのには閉口しました。

 ご主人様、G41はご主人様のことが大好きですから、ある程度は大目に見ますが、あんまりすると怒って暴れるかもしれません。ほどほどにしてね? まる。



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追記18:友達G41

 それは、ある日の昼休みの事です。G41は思い切って、ご主人様に言います。

 

「ご主人様! ご指導をお願いします!!」

 

「おお、いいとも。昨日の勉強会で得るところがあったのか?」

 

「はい!」

 

 ニヤリと笑って応じてくれるご主人様に、G41は堂々と答えます。勉強会の成果をご主人様に披露したいのです。

 昨日の勉強会はFALさんとFive-sevenさん、そしてM-16さんとROさんが参加しました。全員でレギュレーションを決めて、模擬戦闘の繰り返しで切磋琢磨するのです。その中で、G41はかなり勝つことができました。FALさん相手にも、一度は裏をかいて勝利しました。

 みんなからは物凄く褒めてもらえました。特にFALさんは、もう物凄くなでなでしてくれて、これからはもっと頼りにさせてもらうわ、と褒めてくれました。G41も手加減抜きのFALさんに勝ったのは初めてなので、物凄く誇らしかったです。えっへん!

 

 というわけで、今日はご主人様に本気で勝負してもらうことにします。いつもの机上演習では、G41はご主人様に勝つことがしばしばありますが、明らかに手加減されているのがわかります。なので、今日は本気のご主人様と戦いたいのです。

 

「ご主人様、本気でお願いします」

 

「わかった。お前の実力を見せてもらうぞ、G41」

 

 というわけで、G41とご主人様はシュミレーターで戦闘を行います。5部隊同士の模擬戦です。

 そして、10分ほどして、G41はご主人様に負けてしまいました。最初はG41が押していたのに、呆気なく盤面をひっくり返されて、包囲殲滅の憂き目にあいました。完全敗北です。

 

「G41、これはな、昔の英雄ハンニバルの戦術を応用した戦法でな…」

 

 模擬戦が終わった後、G41は戦闘の詳細をご主人様から講義していただきました。なるほど、一から説明して貰うとよく分かります。G41は最初からご主人様の手の上でした。

 でも、G41がなかなか隙を見せなかったから、実は突破される寸前だったと、ご主人様は言ってくれました。なんと、G41は本気のご主人様を苦戦させたのです。とっても誇らしいです。えっへん!

 

「G41は物凄く頑張り屋さんないい子だな」

 

 そして、物凄く褒めてもらえてなでなでもして貰えました。嬉しすぎます。やっぱり、お勉強は大切です。今後も一生懸命お勉強して、もっとご主人様に褒めてもらえるようにしたいです。

 

 というわけで、その日の午後は秘密基地でまるまるしてました。夜には巡回に出るので、今の内に英気を養っておくのです。

 傍らにはTMPちゃんとPA‐15さんがいます。三人でめいめいにまるまるしているのです。互いに寛いでいます。

 

「G41、はい」

 

 PA-15さんがぽてちを目の前に差し出してくれます。G41はそれをぱくってしました。美味しいです。なので、お返しにささみジャーキーを差し出します。PA-15さんもG41の手からぱくってしました。美味しそうです。

 

「G41、こっちこっち」

 

 PA-15さんはG41に、自身の咥えている方とは逆の方を指さして言いました。意図を察したG41は、そっちに食いつきます。なんと、PA-15さんとささみジャーキーゲーム状態になりました!

 

「あはは。ちゅーしちゃうかも?」

 

 PA-15さんがもぐもぐしながら、楽しそうに言います。確かに、食べる度にささみジャーキーは短くなるので、このままではPA-15さんとちゅーしてしまうかもしれません。でもまあ、G41とPA-15さんは相思相愛なので、気にしません。もぐもぐもぐもぐ…

 

 はむっ。

 

「うわあ!」

 

 G41は思わず素っ頓狂な声をあげて、ささみジャーキーから口を放してしまいました。TMPちゃんがG41のミミをはむってしたのです!

 

「ご、ごめんなさい、G41さん…」

 

 驚くG41に、TMPちゃんは謝ってくれました。いきなりはむってするのは、TMPちゃんに有るまじき失礼な行動ですが、これはG41とPA-15さんの遊びに混ざりたかったのでしょう。きっと、PA-15さんとばかり遊んでいるのでヤキモチを妬いてしまったのでしょう。

 なので、G41はTMPちゃんを抱きしめます。

 

「じ、G41さん!?」

 

「TMPちゃん、かくご~」

 

 慌てるG41ちゃんを抱きしめたまま、床でゴロゴロします。必殺のごろごろ地獄です!

 

「わああぁぁ~、目が回るぅ~」

 

「えーい!」

 

 TMPちゃんが弱弱しく言うので、G41は調子に乗って更にごろごろします。とっても楽しいです。

 

「ちょっと~、私も混ぜてよ~」

 

 そこにPA-15さんも抱き着いてきて、三人でくんずほぐれつしながら、床をゴロゴロと転がりまわります。もう、TMPちゃんとPA-15さんの臭いが混ざり合って、柔らかい感触でもみくちゃになります。超楽しいです。

 

 しばらくごろごろして、G41達は大の字になって、みんなで笑います。楽しいです。今日もG41達は幸せいっぱいです。

 

 その時、何やら得体のしれない気配を感じました。ふと、秘密基地の入り口あたりを見ると、なんだか大きな獣さんがいたのです。真っ黒な体毛の、猫さんみたいな獣さんでした。

 

「じ、G41さん! は、早く隠れないと…!」

 

 TMPちゃんが怖がって、隅に避難します。秘密基地はそんなに広くないので、意味はないと思うのですが、TMPちゃんが怯える気持ちも分かります。G41もこんな獣さんは見たことありません。

 

「うわぁ…もしかして、豹? なんでこんなところに…」

 

 PA-15さんが冷静にライブラリィと照合して分析します。豹という獣さんは聞いたことがあります。でも、なんでこんなところにいるのでしょう。確か生息域は南米の方だと思うのですが…

 

 豹さんが近づいてきます。さすがのPA-15さんも後ずさりしますが、G41は豹さんを見つめてじっとしています。豹さんは大きいですが、怖い感じはしません。

 やがて、目と鼻の先に顔を突き合わせて見つめ合う形になります。G41は豹さんの赤い目を見つめます。豹さんもG41の瞳を見つめてきます。

 やがて、なんだかくすぐったい感じがしました。豹さんがG41の頬をぺろってしたのです。G41は笑顔になりました! 豹さんからの友好を感じたからです。

 

 G41もお返しに鼻先をぺろってしました。豹さんは、なんだかくすぐったそうに目を細めました。でも、気持ちよさそうです。

 

 なんだか、心が通じ合った気がしました! G41は豹さんが大好きです! 豹さんもG41が大好きです! 二人は相思相愛です! えっへん!

 

 豹さんは、その場に寝そべりました。G41はそんな豹さんの胴にもたれかかりました。毛皮がふわふわで、暖か良くて気持ちいいです。思わず、すりすりしてしまいました。

 

 

「…あの、大丈夫なんですか…?」

 

「う~ん、なんだか、危なくないのかな…?」

 

「うん!」

 

 まだ警戒しているTMPちゃんとPA-15さんを、G41は手招きします。豹さんはもうお友達です。近寄っても危ないことはないです。

 

 二人もおずおずと近づいてきて、G41の隣に寝そべります。豹さんは怒った様子もなく、むしろリラックスしていているようで、長閑にあくびをしていました。

 というわけで、まるまる再開です。みんなで、まるまるするのはとっても気持ちのいいものです。

 

「豹さん、はい!」

 

 G41は豹さんに、ささみジャーキーを差し出しました。肉食動物のはずなので、きっとささみジャーキーは好きなはずです。

 豹さんは遠慮なく、ジャーキーを食べてくれました。目を細めて、美味しそうに食べてくれます。嬉しいです。

 

「じゃあ、ぽてち食べるかな?」

 

「じゃ、じゃあ、私も煮干しを…」

 

 PA-15さんやTMPちゃんも打ち解けてきたみたいで、用意していたおやつをあげることにしました。もちろん、豹さんは美味しそうに食べてくれます。もう、みんなすっかり仲良しです。

 

 ふと、G41はご主人様に報告をしようと思いました。まあ、基地の中に部外者がいたら、報告はしないといけないですし、それが珍しい豹さんならなおさらです。でも、G41の新しいお友達なので、怖がらないで欲しいと申し添えしないといけないと思うのです。

 

 というわけで、通信モジュールでご主人様に繋ごうとしたのですが…どうも、上手く繋がりません。通信ネットワークが不調なのでしょうか。基地の中で通信がつながらなかったのなんて、ハロウィーンの停電の時ぐらいなのですが…

 

 でもまあ、繋がらないものは仕方ないです。後で、報告すればいいと思いますし、見つかったらその時申し添えれば、ご主人様は許してくれると思います。

 

 というわけで、引き続き豹さんにもたれてまるまるしていたのですが、なんだか眠くなってきました。豹さんはふわふわで、温かいからです。高級なクッションよりも、豹さんの感触は気持ちいいです。それに、他のみんなも眠そうだったので、お昼寝をすることにしました。みんな、お休みなさい。ZZZzzz…

 

 どれぐらい時間が経ったのでしょう。G41は頭を撫でる感触で目を覚ましました。つい手にすりすりすると、ヴィーフリちゃんが微笑んでくれました。

 

「おはよう、G41。ちょっと早いけど、巡回の準備しよう?」

 

「うん!」

 

 G41はヴィーフリちゃんの言葉に頷いて、意識を覚醒させます。同時に、隣で寝ているPA-15さんとTMPちゃんも起こしました。二人とも今日の巡回のメンバーだからです。

 そこで気づいたのですが、豹さんがいなくなっていました。早起きして、どこかに行ってしまったのでしょうか?

 

「どうしたの、G41?」

 

「あのね、ヴィーフリちゃん。豹さん見なかった?」

 

 G41はヴィーフリちゃんに尋ねました。あれだけ大きい動物が基地をうろついていたら、流石に見つかるでしょうし、そうなればヴィーフリちゃんもそのことを聞いていると思うのですが。

 

「豹って、あの動物の? そんなの見てないし、目撃の報告も入ってないわよ?」

 

 ヴィーフリちゃんは苦笑して言いました。どうも豹さんは発見されていないみたいです。監視システムもあるし、他の人形もたくさんいる宿舎内を、大型の動物が歩いていて見つからないはずはないと思うのですが…

 

 

 釈然とはしないですが、巡回の事件も迫っています。とりあえず、豹さんのことは置いといて、巡回に出る準備をしました。一応、出発の際にご主人様にも豹さんのことはお伝えしたのですが、ご主人様は苦笑してそうか、としか言いませんでした。どうも、ご主人様も豹さんのことは知らないみたいです。う~ん、よくわかりません。謎は深まるばかりです。G41達戦術人形は夢とか見ないので、そういうものではないと思うのですが…

 

 そして、巡回が始まって2時間。G41達は苦境に陥っていました。パロディウスの残党と鉢合わせをしたのです。残党といっても数はなかなか多く、ロボットや戦車も引き連れているので、G41隊単独では対処は困難です。

 恐らく、基地を襲撃しようとしていたのかもしれません。既に、ご主人様には報告しており、現在援軍がヘリで向かってきています。M4さんやM14さん達が、10分もあれば到着するとのことですが、それまでは頑張って耐えるしかありません。

 

『すっかり囲まれてる。何とか退路を切り開くしかないね』

 

 偵察に出ているPA-15さんから報告が入ります。敵の数は想像以上です。何とか弱いところを探して、突破しないといけません。PA-15さんの方は無理臭いので、後は、TMPちゃんとヴィーフリちゃんの報告を待ちます。

 

 ふと、建物の影から敵が姿を現しました。ガンダムとかいう、白くて大きなロボットです。他の歩兵も多数います。G41と89式さんだけで対処は不可能です。

 

「G41さん!?」

 

「G41がけん制するから、89式さんは後退して、新たな合流地点を確保して」

 

「は、はい!」

 

 89式さんの後退を確認して、G41は遮蔽を確保し、敵を待ち受けます。でも、G41の弾では敵にほとんどダメージを与えられません。厚い装甲と、偏向フィールドとかいうのに阻まれるからです。そうでなくても、敵はかなり多くG41は単独です。かなり危険な状況です。でも、負けません。ご主人様にために、G41は精いっぱい戦います。

 

 ふと、その時鈍い音と共に、ガンダムが飛んでいきました。機体を半壊させながら、水平に10mぐらいぶっ飛んで、地面に転がってバラバラになって破壊されたのです。

 

  そして、ガンダムがいた場所に、豹さんがいました。まさか、さっきのは豹さんの仕業なのでしょうか? だとすると、野生の力って凄いです!

 

 敵の集団と豹さんが交戦を開始します。でも、まるで勝負になっていません。豹さんは物凄い速さで、敵に突撃して、前足の爪や牙で敵を薙ぎ払い、肩の辺りから生えた触手で、敵を捕まえては投げ飛ばしていきます。敵の放った銃弾は、何故か豹さんの身体をすり抜けて、地面を穿っているのです。

 瞬く間に、敵を薙ぎ倒した豹さんは、G41の方に近づいてきます。嬉しくなったので、G41も物陰から飛び出て、豹さんに抱き着きました!

 

「ありがとう、豹さん!」

 

 G41のお礼を聞いて、豹さんは嬉しそうに唸って、G41の頬をぺろぺろしてくれました。嬉しいです。G41は豹さんが大好きです。豹さんもG41が大好きです。二人は相思相愛です! えっへん!!

 

『G41、大丈夫!?』

 

『皆さんと合流しました! 今からそちらに向かいます!!』

 

 ヴィーフリちゃんと89式さんが連絡を入れてきます。どうやら、無事みたいです。後、TMPちゃんが包囲の薄いところを見つけたみたいです。合流して、そこを突破します。

 

「豹さん、脱出を手伝ってくれる?」

 

 G41の言葉に、豹さんは短く唸って頷いてくれました。豹さんがいれば、脱出は格段に容易になります。実に頼りになります。G41はいいお友達に恵まれました。

 

 ふと豹さんがG41を触手で抱え上げました。そして、G41を背中に乗せて、凄い速度で走り出しました。なんだか、アニメや映画の主人公になったかのようです。えへへ。

 

 というわけで、G41は新しい友達になった豹さんと共に、戦うことになりました。きっと、今回も大丈夫です。G41達は勝って、必ずご主人様のところに帰ります。みんなに豹さん、頑張ろうね!! まる!



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