周りと同じように自由に生きてたら何故かヴィランになっていた (鰹節31)
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いちばん古い記憶

突然ヴィラン主人公書きたくなったんです許して下さい。何でも(ry


 ピッ、ピッ、ピッと連続的な音が聞こえる。目を開ければ変なマスクをつけた人達が俺を見ている。成功だなんだと言っているけど一言言わせてほしい。俺裸なんだよ恥ずかしいわ。

 

「ゴボゴボ(全裸で恥ずかしいです)」

 

 口になんかくっつけられてるせいで喋ってもゴボゴボしか言わない。動こうとしても鎖で拘束されてるせいで動かせない。

 

「君の名前は翡翠。“個性”は干渉……君は全てに干渉して意のままに操るのだ! 限度はあるだろう……それでも君は私たちの最高傑作だ! 脳無など恐れるに足らない程君は強くなる。ああ、これで先生は我々の努力を認めて下さる!」

 

 色々情報をくれた訳だけど説明的に頑張れば俺強い系? 脳無って奴知らないけど恐れるに足らないらしい。後、この人達は先生って人に認めてくれるらしい良かったね。

 

「ゴボゴボ(あの“個性”とは?)」

「所長! 既に翡翠は中学生並みの思考をしています!」

「なんだと!? 1才児並みの思考から開始するようにと言っただろう! 私は翡翠にじじい扱いされたら泣くぞ!」

「ゴボゴボ(所長可愛いなおい)」

 

 ゴボゴボ言ってても意味ないので周りを見ていると、突然暗かった部屋が赤色に変わりビービーとうるさい音が鳴る。

 

「な、なんだ! 何が起きている!」

「所長! 研究所の自爆機能が作動しています!」

「ぬぁにぃ! 誰もスイッチを押していないのに何故だ!」

「か、考えれる原因は……翡翠が“個性”を使って起動させたとしか」

「ゴボゴボ(やってねぇし!?)」

 

 弁解をするがゴボゴボとしか言わない俺を見るはずがないマスクを被った人達はどこか行ってしまった。所長と呼ばれた人は俺を入れているケースに触り顔を下げた。

 

「逃げたところで先生は全員の居場所をあぶり出すだろう。また集められるんだ。もう、逃げれるほど体力が無い私はこの研究所と共に潰れてしまうが。翡翠…君だけは逃げてほしい」

 

 所長がケースを二回叩くとケースが地面に埋まっていき、口についたやつは地面に落ち、俺を拘束していた鎖は切れた。文句を言うと半分からじゃなくて根元から切手ほしい。ジャラジャラ五月蝿いし重い。

 

「君の存在を先生は知らない。だから幸せに、自由に生きるんだよ。時間がない早く逃げるんだ」

「……ありがとう。所長?」

「ははは。所長よりもお爺ちゃんと呼んでほしかったな」

「んじゃ、ありがとうお爺ちゃん」

「翡翠……翡翠ぃ!」

 

 止めろよ。泣きながら手を伸ばすなよ。逃げづらいじゃん。つか、なんでそんなに俺が大事なんだよ。

 

「元気でな翡翠ぃ!」

「お、お元気で…?」

 

 そんな馬鹿げた漫才をしていたら俺の視界は部屋よりも赤くて凄い衝撃に包まれた。




“個性”干渉
対象に干渉し自由に操ることが出来る。尚、一度対象に触らなければならない。体調によるが一度に干渉できる最大限は三つ。人も干渉できるが、一度に一人しか干渉できず、他のものにも干渉できない。干渉できる数を越えると血を吐く。
距離の制限は使用者の半径5m程度。それ以上離れると干渉できない。
干渉した人の感覚を共有も可能だが、干渉した人のダメージを何割かを自身も受ける。
干渉の例としてコンクリートを陥没させて落とし穴にしたり、隆起させて盾にする等々。


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森の中

 身体の痛みで目を覚ます。暗い世界、初めて目が覚めた場所よりかはまだ明るいけどそれでも周りは見えづらい。でも一つ分かったとするならば此処、森である。

 

「うぉい、まっじかぁ~」

 

 変な声を出しながら立ち上がる。全身痛い。立ったらすげぇ痛い。あ、俺裸やん。

 

「見たこともないけど分かるぐらいある程度の知識があるからびっくりだよなぁ」

 

 お爺ちゃんは幸せに、自由に生きてと言ったけどこの先どうすればええの? 自由に生きるのは良いんだけど食べ物とか服とか。裸で山から降りてきた奴とかただのド変態やん。

 

「う~ん。わかんね」

 

 自由に生きて良いならその辺に人がいたらその人の服ひっぺはがしていいんだろうか? 道徳的には駄目なんでしょうけどそんなもん知りません。

 

「歩いたら痛いし靴ほしい」

 

 確か俺の“個性”とやらは干渉。お爺ちゃん曰わく、全てに干渉して意のままに操るらしい。……いや、どうしろと?

 

「触ったりとかかなぁ」

 

 試しに木に触ってみたけど特に何ともない。干渉の使い方が違うのだろうか。触った時に木が直角に曲がれば面白いのに。

 

「うおっ!?」

 

 俺がそう思った瞬間俺の周りにある木が直角に曲がった。元に戻ったらいいのにと思ったら周りにある木は元に戻った。やべぇ、面白い。

 

「多分触ったやつなら操れるのかな? この木しか触ってないのに他の木も操れてるから、一回触れば触ったやつと同じ種類の奴は操れんのか」

 

 干渉マジ便利。木を直角に曲げたやつの上歩けば足痛くないのでは?

 

「よぉし、やってみよう」

 

 俺の見える直線上の木を直角に曲げる。ちゃんと指定すればその範囲だけ操れる。俺は木の上に立ち、走った。

 

「葉っぱ危な! 痛たたた! うわぁ、全身葉っぱだらけだ」

 

 直角に曲げた木の上を走る作戦は大失敗。前から迫り来る葉っぱに突っ込んだ俺は地面に転がりながら全身に葉っぱをくっつける羽目になった。良い案だと思ったけどダメだった。

 

「どうやって移動すっかなぁ」

 

 歩くの痛いからいっそのこと地面動いてくれればいいのに。そうすれば立ってるだけで移動できる。この発想もしかしたら出来るんじゃないか……?

 

「地面を触って、俺が立ってるところだけ動く感じ。波の上に立つ的なあれですな」

 

 口に出した瞬間、俺の足下の地面が隆起し、前進し始める。やっべぇ、これ快適過ぎる。

 

「人間やれば出来るじゃん。俺が人間かどうかは置いといて」

 

 アッハッハッと笑いながら俺は地面と共に森の中を爆走した。

 

────────────

 

 無機質な機械音が鳴り響く暗い部屋。部屋に設置されたイスに腰掛け、点滴をしながら目の前にあるスクリーンを見ているその男の容姿は誰が見ても人とはいえないだろう。毛髪がなく、目の部分が皮膚で覆われた小さなくぼみになっている。口だけがあるというのっぺらぼうの亜種のようである。

 

 そんな奇妙な男に用があるのかガチャリと部屋のドアが開かれる。男は振り返らず、少し笑みを浮かべて口を開いた。

 

「やぁ、ドクター。調べものは終わったのかい?」

「研究所は爆発で木っ端微塵だ。調べれるもんも調べれんよ」

「それは残念だ」

 

 だが、とドクターと呼ばれた人物は手に持っていた所々焼かれた資料を見始める。

 

「一つだけ資料があったな。所々焼かれて読みにくいが、脳無を越える人造人間を造っていたそうだ」

「人造人間? 随分と面白いものを造っていたんだね。完成する前に研究所は爆発しちゃったのかな?」

「それは分からんよ。もし完成して生きているなら研究所から遠くには行っておらんだろ」

 

 男は笑い、口角を上げる。

 

「……少し楽しみが増えちゃったなぁ。その子の名前はなんて言うのかな?」

「名前は翡翠という。あの大馬鹿者が付けそうな名前だ」

「翡翠……か。是非あの子に欲しいね。きっと役に立ってくれるだろうなぁ」

 

 男は上を見る。自分が育てている次なる自分。大切な生徒を思い浮かべながら。

 

「君なら上手く使いこなせるさ。ねぇ、死柄木弔」



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ヴィラン

 速報、ホームレスの田中さんに服と靴を貰いました。ボロボロだけど無いよりかはマシなのである。田中さんと会った経緯としては高笑いしながら森の中を爆走してたら目の前にイノシシが出てきて、それを追いかけている田中さんと出会った。木を直角に曲げる方法でイノシシを倒したお礼に服と靴貰ったのだ。イノシシすげぇ怖かった。後、イノシシ旨かった。

 

「いよ~し。行ってみっかな街!」

 

 寝る場所は森で何とかなったとしてもご飯がなかったら生きてけない。田中さん曰わく街の裏路地だったら食べ物あるらしいし行くしかない。今はお腹いっぱいでもお腹空くからね。だから行くしかないんだ(使命感)

 

「爆走してやるぜハッハッハ!」

 

 そういや、田中さんから街が何処にあるか教えてもらってなかったなぁ。ま、なんとなくで着くでしょ。

 

────────────

 

 なんとなくで行った結果、まさか朝になってようやく着くだなんて思わなんだ。明るくなって周りが見えてきた頃にやっとね、自分が同じ所をグルグルしてることに気づいたからね。

 

「腹減ったなぁ。裏路地って所に行けばなんか食べれるらしいし、裏路地に行こうかなぁ」

 

 街を歩いていると色んな人から凄い見られる。まぁ、こんなボロボロの服着てれば見たくなる気持ちも分かるんだけど、全裸でいるよりかは全然マシじゃん。止めてよ見ないでよ。

 

「路地裏に急がねば」

 

 如何にも路地裏感満載な場所に逃げ込む。美味しそうな匂いなど一切しないけど、取り敢えずどんどん奥に進んでいく。

 

「おいおい兄ちゃん、ここらへんは俺達の縄張りだ。通りたかったら金置いてけや」

 

 進んでたらなんか囲まれてた。進みたいけどお金を置いてかないと駄目らしい。お金ないし、ボロボロの服置いてったら許してくれるかな。

 

「んじゃ、服置いてくな」

「いらねぇし!」

「そう? じゃあ、進みたいけどお金ないから引き返すわ」

「おい待て待て!」

「え~なんだよ~。引き返すんだからいいじゃん。見逃してくれよ~」

「取り敢えず金置いてけ。いや、暴れんなって。取り敢えず金置けよ、な?」

 

 囲んだ人達はお金目当てで色々言ってたみたいだ。だが、出せよと言われても出すものないし、渡せるのは本当にボロボロの服だけ。

 

「マジでお金ないんだって。田中さんがここ来たら飯食えるって言ってたからここに来たんだよ」

「田中さん? 誰だそれ?」

「服とかくれたホームレスの田中さん」

「兄貴、あいつじゃねぇか? 俺らの縄張りのゴミ漁って何か食ってたホームレス。ほら、兄貴が“個性”で山にほっぽりだしたじゃないですか」

「ああ、あのクソジジイか」

 

 今田中さんをクソジジイ呼ばわりしたのか? ボロボロだけど数少ない服を譲ってくれて、イノシシも料理して食わして貰ったあの田中さんに!

 

「おい……」

「あん?」

「田中さんをクソジジイ呼ばわりすんじゃねぇ…! 田中さんはすげぇ優しいんだ。正体不明の俺に服くれて、飯食わしてくれて。そんな優しい田中さんがホームレスだったとしても、行動がどうであっても田中さんを侮辱すんのは許さねぇ!」

 

 地面を触れて“個性”を使用。俺を囲んだ人達の地面から触手のようにウネウネとコンクリートが動き、拘束する。強いこの戦法強いぞ。アニメ専門店とかいう店の奥の方にあった『ドキドキダンジョン~触手の悲劇~』を見て良かった!

 

「クソッ! とんだ強“個性”じゃねぇか。ふざけやがって」

「ははは! アニメ専門店にあった『ドキドキダンジョン~触手の悲劇~』の触手戦法はどぉだぁ! このまま首を絞めてくれるわぁ!」

「なんだその名前! どう考えても18禁じゃねぇか!」

 

 少し時間を経つとビキビキという音は聞こえなくなり、俺を囲んだ人達は力なく頭を下げた。“個性”を解除してコンクリートを元に戻す。ドシャという音が裏路地に響いた。

 

「……やっちまった」

 

 人殺し。それを行ってしまった俺は“個性”を悪用し、法を破った悪者である(ヴィラン)になってしまったのでは? テレビで言ってたぞ(ヴィラン)の抑止力であるヒーローが(ヴィラン)を捕まえる為に巡回してるって。見つかったら終わりじゃん。

 

「君、こんな所で何をしている」

「ヒエッ!」

 

 声がした方に振り向けば、なんかマントとかつけてるムキムキな人が居た。あかん、この人多分ヒーローだ。

 

「最近このあたりの不良が迷惑行為をしていると報告があってな。不良達は“自由に生きてるだけ”と主張しているが、周りが困っているし補導しようときたのだ。危ないから君は直ぐにここから離れた方がいい……む?」

 

 多分その不良達って俺が殺しちゃった人達だよね? カッとなったんだからしょうがないじゃん。“個性”使わないで死んだあの人達もどうかと思うんだよ俺。

 

「死体だと……! まだ温かい。死んでから時間が経っていたないということは……まさか君が」

「イエ、チ、チガイマスヨ?」

「そうか。だが、この状況を説明してもらおう。何があったんだ?」

「……」

 

 いや、詰んだ。何だよ何だよ自由に生きたらヒーローの敵なのかよ。おかしいじゃんそんな何かに縛られないと生きていけないんだなんて。俺は田中さんや不良達みたいに自由に生きるだけなのに。少ない人間の意見に聞く耳持たずで悪と決めつけるのはオカシイヨネ?

 

「悪いけど、始末させてもらう」

「なに!?」

 

 コンクリートの触手を俺の横に四本出現させ、ヒーローを拘束させるために伸ばす。ヒーローは驚いて硬直するが直ぐに構え、コンクリートの触手を殴って破壊した。

 

「は……?」

「侮ったな(ヴィラン)。俺の“個性”は増強型。そう簡単にはやられんぞ」

 

 マズい、コンクリートを殴って壊すとか頭おかしいだろ。あんなんで殴られたらお陀仏確定だわ。何度もコンクリート触手伸ばしても、どんなに死角から攻めても変態的な動きで避けて壊す。マジであかん、こっちに徐々に来てっから!

 

「同じ事をしても無駄だぞ(ヴィラン)!」

「んじゃあ、こんなんはどうよ!」

 

 横に建ってる建物から針を無数に伸ばす。ヒーローは最初は避けていたが、数が多くなるにつれて避けれるスペースがなくなり顔をしかめる。針を壊しても直ぐに修復されるから逃げ場は確保出来ない。針の間にコンクリートの触手を潜らせ四苦八苦してるヒーローを拘束した。

 

「なっ!? ぐっ……!」

「勝負ありってところだな。残念だけど死んでもらうよ」

「……私もまだまだ未熟だったな。サイドキックの言葉を無視した罰か。最期に君の名前を教えてもらえないか?」

「敵に名前名乗るってなぁ……。ま、殺すんだから構わないか。俺の名前は翡翠! 自由に生きる人間だ!」

 

 俺の言葉の後にグサッとコンクリートの針がヒーローの胸を貫く。ポタポタと滴る赤黒い血液。それを見たら多分気持ち悪い筈なのに、俺は何も感じない。それはいけない事なのに俺は罪悪感を覚えない。

 

「ははは……人造人間ってのは要らない感情とかも消せんのかねぇ」

 

 だとするなら、俺は人じゃないのだろうか? 人の顔を被ったバケモノ。ああ、それは嫌だな。

 

「証拠隠滅出来てねぇし。まぁ、俺が(ヴィラン)ってバレるのは暫く時間掛かるか。よし! 不良達とヒーローから服とお金を奪うぞぉ!」

 

 金品を奪い、血が着いてない服に着替え、コンクリートの針を戻していると路地裏の奥から足音が聞こえた。

 

「初めまして翡翠君」

「……誰だ」

 

 路地裏の奥から出てきた人物は口だけの人間。いや、人間と言えないような不気味なオーラを纏っている。少なくともこいつは会ったら駄目系な奴だ。

 

「お前、人間じゃねぇな」

「僕の顔を見れば誰もが言うかもね。だけど、君にだってそれは該当するじゃないか翡翠君。君だって本当の人間じゃないだろう?」

「言うねぇ……まぁそうだけど、さ!」

 

 壁から針を伸ばして不気味な人間を串刺しにする。筈だった。

 

「っ!?」

 

 横からコンクリート針が伸びてきて俺の目の前を通り過ぎる。有り得ない何があったら攻撃がこっちにくるんだ。

 

「これは失礼。急いでしまいましたので眼前にだしてしまいました」

 

 そう声がした瞬間、不気味な人間の横に黒い靄が現れた。あれが喋ったのか? うっそだろおい。

 

「ワープロってやつか……やだなぁ」

「ワープです」

 

 苦笑いしながら頬を伝う汗を拭う。四本のコンクリートの触手を俺の近くで伸ばし、触手の先を二人の人物に向ける。

 

「効かないと分かっていて来るのかい? 君はまだ若いね。それは勇気ではなくて無謀だよ」

「若くて結構、無謀で結構! 俺は俺のやり方で勝つ!」

「“個性”が素晴らしくても、僕と君には歴戦の差があるということを知った方がいいね」

「どうだろうなぁ?」

 

 コンクリートの触手を二人の人物に伸ばす。その瞬間目の前が真っ暗になった。



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ヴィラン連合

「……は?」

 

 目の前が突然真っ暗になったと思えば、いきなり明るくなる。直ぐに目が慣れず目を細めながら周りを見て驚愕。

 

「よぉ、来たかヴィラン候補」

「なんだお前」

 

 お顔に肩に、体に手をくっつける変人が俺を見てくる。直ぐに床を触り、床から触手を四本俺の近くに出す。

 

「ハァ……黒霧、こいつ敵意丸出しじゃねぇか」

「申し訳ありません死柄木弔。連れて来るときも抵抗していまして」

 

 ズモモモと言う表現が似合うほど何もない場所から黒い霧が現れる。どうやら名前は黒霧というらしい。手をくっつけてる奴は死柄木弔という名前。意味不明な状況が続く続く……。やってらんねぇぜ!

 

「お前を此処に呼んだのは敵対したくて呼んだんじゃない。翡翠、この世界の現状をぶっ壊して自由に生きてやろうぜ」

「正体不明の奴の言葉なんて聞くわけねぇだろバァーカ!」

 

 触手を二本死柄木弔目掛けて伸ばす。しかし簡単に避けられた。

 

「黙って話を聞くこともできねぇのかよ。だから最近のガキは嫌いなんだ。大人しくしてねぇと──」

 

 死柄木弔が触手に触れた瞬間、触手がボロボロと壊れていく。残る一本を即座に戻そうとしたが時既に遅し。死柄木弔に触れられた。

 

「お前もこれと同じように壊すぞ」

「っ!」

 

 背筋がゾッとした。顔にくっついてる手の隙間から覗いている冷たい目が恐ろしく感じてしまった。思わず後退りしてしまう。

 

「……こーさーん! 勝てる気しないから大人しく話を聞く。でも話を聞いてどうするかは俺次第で良い?」

「それでいい」

 

 触手を地面に戻し、俺はその場に座る。死柄木弔は片足をもう片方の足に乗っけて話し始めた。

 

「俺達はヴィラン連合。このくったれな社会……そうだな、オールマイトぶっ殺して今を壊す! 今は人数が少ないが、もっと数を増やして俺達の存在を世間に知らしめる」

「オールマイト? ああ、あのナンバーワンヒーローの……いや、無理じゃね?」

 

 街を歩いて居たときにチラリとテレビを見たけどオールマイトとかいうナンバーワンヒーローはマジでやばい。あの破壊力はチートやん。

 

「策があんだよ策が」

 

 ニィ、と死柄木弔は笑う。うっわ怖。しっかしナンバーワンヒーローを殺すとは思い切った行動をするなぁ。

 

「ん~、まぁ、策があるなら……乗っても問題ないのか?」

 

 バレてるかバレてないかはさておき。ヒーローとその他の愉快な人達を殺しているし、ヴィラン連合とかいうヴィランの溜まり場に居る以上、俺はヴィランなのである。自由に生きたいのにちょっとハメを外したらこうである。なのでバレて捕まる前にやっちゃえ作戦だ。

 

「ああ、大船に乗ったつもりでいろよ」

「泥船の可能性高いなぁ」

「殺すぞテメェ」

「しか~し、条件が1つある!」

「ちっ、なんだよ」

 

 死柄木弔は首を掻きながら不満そうな声で返事をする。此処はヴィランの溜まり場にしてはかなり良い雰囲気だし、でもあれだ長時間この人達と居るのやだ。

 

「協力はする。でも、普段は俺の自由がいい。勿論作戦とか実行するときに呼んでくれれば駆けつけるし、用があったら何時でも来てくれてもいいからさ」

「……別に構わねぇ」

「マジ? サンキュー」

 

 俺の自由は守られた。呼んでくれれば、と言ったけどどうやって呼んでもらおうかな。

 

「では、用事がある時は私が迎えに行きます。念の為にスマホを持っておいて下さい」

「え? ああ、ありがとう。黒霧さん」

「はい。別に黒霧と呼び捨てでも構いませんよ」

「んじゃ、黒さん」

「黒さんねぇ単純だな」

「あんたは弔っちな」

「おいなんだその呼び方。殺すぞ」

 

 なんやかんやあって俺は正式にヴィランになってしまった。この先俺は生きていけるか心配だぜ。ヒーローよりも弔っちに殺されそう。



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無個性

 ヴィラン連合とかいう泥船の乗組員になってから数週間がたった。俺を黒さんと一緒にヴィラン連合に連れてきた口だけマンからお金を貰い現在はぶらついてる。そういや口だけマンのこと弔っちと黒さんが先生とか呼んでたな。俺もそう言った方がいいのかな? のっぺらぼうの亜種って言ったら最高に笑ってたけど。

 

「しっかし此処どこだし。適当にぶらつきすぎたなぁ」

 

 周りを見れば静岡県と書いてある。いや、どこだし。そもそもが適当にぶらつくんじゃなくてルートぐらい決めておくべきだった。

 

「公園で休むかぁ」

 

 休息は大事である。俺はぶらついてる日々でそれを学んだ。幾ら人造人間でも限界が存在する。そもそも“個性”を意図的なものになっているだけで他の人とあまり変わりないのかもしれない。

 

「……次はどこに行こうかなぁ」

 

 二日に一回のペースで生存確認という名目で黒さんから電話が来る。その度に何処にいるのか聞かれるので応えて居るのだが何故か驚かれる。昨日の電話では珍しく弔っちが掛けてきたけど怒ってたような?

 

「まぁ、いいか。さて出発だ」

 

 ぶらつくのに目的などないのだ。そもそも行きたい場所が分かっても行き方知らないし。最近になって漸くホテルに泊まることと電車に乗ることを覚えたのだ。目的地に向かうことは俺にはまだ早いのである。

 

「わっ!」

「おっ?」

 

 考えながら歩いていたら人とぶつかった。いけない、いけない……周りが見えてなかった。

 

「これは失礼、周りを見てなかった。怪我はないか?」

「だ、大丈夫です! こちらこそ周りを見てなくてすみません!」

 

 倒してしまった人に手を差し伸べる。そばかすのある緑色の縮れ毛の男の子。男の子を立たせた後、転んだ拍子に落としたであろうノートとペンを拾う。

 

「ヒーロー分析……?」

「あ、はい! 僕、ヒーローに憧れてて。その、色々纏めてるんです」

「へぇ~かなりオタクなんだな。でもすげぇよ。見ても良いか?」

「は、はい!」

 

 ページを開けば色々な情報が書かれている。ヒーローの“個性”からなにまで。考察を交えたり、技を書いてたり。いずれヒーローと対峙することになるであろう(ヴィラン候補)にとってこれは最高の資料だった。

 

「ありがとう。こんなに細かく考察出来るなんてすげぇよ。思わず読み入っちまった」

「ありがとうございます! こんなに褒められたのは初めてです」

「そうなのか。良ければ色々教えてくんねぇか? ほら、近くに公園あるし」

「僕で良ければ是非!」

 

 公園に移動し、そばかす君もとい緑谷出久君にヒーローについて話し合った。分かんない俺は相づちをしながら考察を頭に入れる。それから少し経った後、俺達の“個性”の話になった。

 

「翡翠さんはどんな“個性”なんですか?」

「ん~? ああ、俺の“個性”ね~なんつったらいいのかな? 簡単に言えばこれ」

 

 公園の砂に干渉して操り犬の模型を作る。我ながらかなり良い線いってる。前に暇潰しで色々な模型を作ってた甲斐があるな。

 

「砂を操る“個性”! 凄い“強個性”だ! もし砂鉄とかも操れたとしてそれを纏めることが出来れば簡易的なナイフにもなるし砂で敵を拘束とかも出来るし身の危険を守りやすくなるでも逆に言えば砂がない場所じゃ不利だし水を砂にかけたら操れなくなるんじゃないか? だったら予備に少量の砂とか持ち運べば弱点とか補えるしもしそうだとしたら──」

 

 “個性”を見た瞬間めっちゃめちゃブツブツと独り言をいってる緑谷出久君。ちょっと怖いが、それよりも恐ろしいのは既に“個性”の特徴を踏まえて考察してらっしゃるところ。あれじゃん俺の本当の“個性”教えたらヤバいやん。砂を操っといてよかったぁ。

 

「取り敢えず戻ってこいよ出久君。んで、出久君の“個性”ってなに?」

「え……? えっと、その、僕は“無個性”なんです。他の人と違って“個性”がなくてそれなのにヒーローに憧れて、なりたいって、おかしいですよね……みんなにも“無個性”なのに無理だって笑われて」

「そうだねぇ……。確かに“個性”ねぇのは他の奴らより劣ってるってことだもんなぁ。でもさ──」

 

 なにも“個性”に縛られることはない。干渉とかいう意味分からん“個性”持ってる俺が言うのは違うかもしれないが……あくまでも“個性”は偶々ついてきたもので、必要なのは本人の意志。なりたいならなればいいし、やりたくなけりゃあやらなきゃいい。本人の自由を奪う原因が“個性”でそれをダシに嘲笑う奴らがいるなら……この社会をそのクソ野郎共を、泥船に乗りながら壊すしかないのだろう。

 

「関係ねぇだろ」

「え?」

「確かに“個性”ねぇのは“個性”を持ってる奴と戦うのは難しいだろうな。それでも憧れて、なるんだって決めて目指すなら投げ出すな。お前には相手を分析する事が出来る、その“個性”では何ができて何が出来ないか。弱点はなんなのか。それをさっき見ただけで瞬時に考えれただろ?」

「でもそれは」

「でもじゃねぇ。戦うことは出来ずとも味方に戦略を伝えることができる。もし君のそれが他の奴より優れているとするならそれは立派な“個性”だ。万人がそれは違うと言おうが俺はそれを“個性”って言い続けてやる。一人がお前に“個性”があるって言ってんだ。胸張ってそれ活かしてなっちまえよヒーローに」

「……」

 

 出久君は黙って下を向く。自分から敵を作るなんて弔っちに馬鹿とか阿呆とか殺すとか言われそうだけど関係ない。俺は出久君の自由を守りたいだけなのだ。

 

「と言ってもヒーローになるのも、それを決めるのもお前の自由だ。周りに言われたからとか自分は劣ってるからっつーくだらない事で諦めることやめろ。夢を見るのも目指すも素晴らしいじゃねぇか。いいか、俺は面倒くせぇ奴でな。人が何しようが俺は知ったこっちゃない。でもな、他の奴の自由を根こそぎ奪うような奴は俺は絶対に許さねぇ」

 

 自由は美徳なのだ。行き過ぎた自由は俺のような存在を生み出してしまうが、それでも全てを制限されて出来ないことが多いなんてのはおかしい話。

 

「だからお前を縛るクソ共を許さない。だが、それに縛られ続けるお前も許さない。他人に用意された選択に身を委ねんな。その選択を振り切ってやりてぇこと叫べ。縛られんならお前を縛ってるそれを強引に破れよ。もっとわがまま言って自由に生きろよ!」

 

 出久君の肩を少し振って顔を近づける、未だに下を向いたままの出久君の目を見るようし顔を少し下に下げて俺はニッと笑う。

 

「そうすればお前はヒーローになれるじゃんか」

「う……」

「う?」

「うわああああああ!」

 

 え? 出久君めっさ泣いてんだけど。なんかおかしいこと言ったかな俺?

 

「え? どしたどした!?」

「初めてヒーローになれるって言って貰えて、僕に“個性”があるって言ってくれて。それが嬉しくて」

「……そっか。ま、ヒーローになってまた会ったら最高の笑顔でヒーローになったぞって言ってくれよ。俺はこの後予定があるから失礼するわ」

「あ、はい! 励ましてくれてありがとうございます!」

「別に、俺は思ったこと言っただけだ。あ、お礼に会った時になんか奢ってくれてもいいよ?」

「アハハ。そうさせて貰います」

「おう、そんじゃな~」

「ありがとうございました!」

 

 公園から遠ざかり、スマホを取り出して電話を掛ける。電話を掛ける相手は弔っちだ。

 

「どうした、死んだのか?」

「いやいや、死んだら電話かけれないじゃん」

「なんの用だ?」

「あ~、それなんだけどね弔っち。朗報と悲報どっちが先がいい?」

「悲報」

「即答かい。まぁ、悲報だけど敵、一人作ちまったかもしれない。しかも直ぐに“個性”について瞬時に考察出来る奴」

「は?」

 

 スマホ越しから殺意に満ち溢れた声が聞こえる。まぁ、そりゃそうだよな。

 

「かっかすんなよ。んで朗報、そいつの考察が書いてあるノートを見せてもらった。ヒーローの“個性”とか弱点とか書いてある。殆ど全部覚えてきたから今後に役立つんじゃねぇの?」

「……っち。朗報がなかったら直ぐにでもお前壊してたよ」

「うわ怖。黒さんに伝えといて迎えに来て欲しいって。覚えてること全部お前等に伝えるからさ」

 

 口角を吊り上げて俺は笑った。



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ヘドロ事件

 弔っちと黒さんに出久君から聞いた考察を伝え終わり、俺は黒さんから貰ったオレンジジュースを飲んでいる。黒さんに迎えに来てもらった時になんだかバーが五月蝿いなと思ったら弔っちが人集めてたみたい。めっちゃ威嚇されたので触手(ミニ)で威嚇した奴を拘束しといた。

 

「黒さんごちそーさま。ジュース幾ら?」

「いえいえ、お代は大丈夫ですよ。代わりにいい情報も頂けましたし」

「そっか」

「ところで翡翠」

「ん?」

「彼の拘束を解いていただけませんか?」

 

 黒さんの視線を辿ると俺の後ろに拘束されている威嚇してた輩が頑張って抜け出そうとしてる。おお、頑張れもっとキツくしてやるから。

 

「ほれ」

「ぐっ! がああああ!」

「なんで逆に締めるんですか?」

「試練……的な?」

「はぁ……」

 

 まぁ、未だに睨んできたからって理由なんだけどね。一応俺はヴィラン連合の協力関係だから殺しはしないけど、もしなんの関係もなかったら殺してたね。

 

「殺しはしないから大丈夫。それにどれぐらいやったら殺せるかも知ってるからさぁ」

 

 ニィと笑いながら言うと拘束された奴が顔を青ざめる。拘束を解き、立ちあがって集められた人達を見る。

 

「俺を襲うのは一向に構わないけど、殺されたくなかったら止めた方が良いぜ? 今回は見せしめで殺さなかったけど次は殺すよ。だってヴィラン連合の協力関係にある俺を襲うってことは裏切りだろ?」

「翡翠、それまでだ。こいつ等がビビって何も出来なくなったらどうすんだよ」

「ええ~今超良いとこだったのになぁ。ま、いいや」

 

 弔っちに制止をかけられ俺は止まる。時間を確認してから黒さんを見てニコニコと笑う。

 

「ねぇ黒さん」

「なんですか?」

「ちょっと、静岡まで送ってってくれない?」

「構いませんが、あの時と同じ場所でよろしいですか?」

「うん。お願いします」

「分かりました」

 

 黒さんに静岡まで連れてって貰ってからまたぶらぶらと歩き出す。今日泊まれるホテルを探すために。願わくば、また出久君に会って色々話を聞きたいな。

 

────────────

 

 特になんのイベントも起こらず数日が過ぎた。未だに俺はどこに住んでいるかも分からない出久君に会うために静岡を彷徨っている。と、言っても何もイベントが起きない事に不満が募ってきた所なので新天地に向かうのも良いかもしれない。

 

「暇だなぁ」

 

 午後になれば路地裏に多少のハプニングがあるのだが今日は何故かない。あれか、弔っちが全部引き入れちまったか。

 

「よっと」

 

 そうなると本格的にやることも無くなるので俺の“個性”の限界を調べるために色々やっている。建物の屋上から屋上に跳び移ったり、動物とかやんちゃな方々を干渉してみたり。干渉の上限、つまり操れる数は三種類のみで動物とか人などの生物を操る場合は一人(一匹)で同時に他に操るない事が分かった。それ以上干渉したら限界突破して吐血する事も分かった(白目)。

 

 なら自分自身を干渉した場合どうなっちゃうのかと疑問に思った。やってみたところ身体能力の強化と、ありえない角度に関節を曲げること等が出来た。尚、ありえない角度に関節を曲げたら戻らなくなりそうで焦ったし、普通に骨折した。そんなこんなで使用者である俺にも牙を剥きまくるがこの“個性”は便利である。現に俺が建物から建物に跳び移れているのはこの“個性”のお陰な訳だし。

 

「おっとっと。調子に乗りすぎてかなり高いところまで来ちまったな」

 

 気づけば夕方になりかけている。夢中になりすぎるのも良くないなぁ。結構高い建物まで跳んできたことで周りが良く見え~る。ん? 彼処……燃えてないか?

 

「うわぁ、燃えてる~」

 

 少し遠いがなんか爆発しまくってるところがある。やべぇ、彼処やべぇよ。戦争が起きてるよ。

 

「よし、見に行こう」

 

 ヴィランが暴れてんならヒーローが居るだろうしそいつの“個性”を出久君のように考察させてもらうとしよう。今後の為になるかもしれないからね。

 

「よっ、ほっ!」

 

 近くまで来てから百均で買った双眼鏡を使ってファイヤーしている所を見る。みた感じドロドロ状のヴィランが男の子に乗り移ろうとしてるみたい。男の子が抵抗するついでに爆破をおこして周りが燃えてる。おぉ……爆破起こすとかとんだ“強個性”なことで。

 

「ん? あれは……出久君?」

 

 近くに居るヒーローを観察してたら出久君と思わしき人物が居た。いや、出久君だ(確信)。しばらく観察していたらいきなり走り出したと思ったらヴィランに突っ込んでいった。おいおい、それは自殺行為じゃん。それは絶対止めた方がいいって。すげぇヒーローっぽいけどさ。幾ら何でも相性が悪すぎる。

 

「ヒーロー、か」

 

 僕、ヒーローになりたいんです。なんて言ってたのを思い出す。それに俺はなんと返しただろう。そうだ、ヒーローになれるって返したんだ。彼は立派なものを持っている此処で死ぬような奴じゃない。少なくとも俺はそれを認めない。

 

「ああ、もう! 仕方がないなぁ!」

 

 双眼鏡を目から離し、建物の屋上を蹴って事故が起きている所へ急接近する。もう少しで出久君の真上にある建物に着きそうになった瞬間、空気が震えた。

 

「プロはいつだって命懸け!」

 

 直ぐに来るであろう強力な余波に耐えるため俺は気づけば守りの体制に入っていた。その場に俺が居る訳でもないのに感じ取れる気迫。ヴィランの前に立つ一人の男に俺は多少恐怖を抱いた。

 

「DETROITSMASH!」

 

 男、いや、No.1ヒーロー(オールマイト)が拳を振り抜いたと同時に俺は暴風に襲われ僅かに体が浮く。その後、仰向けに倒れた俺に雨が降り注いだ。

 

「は、ははは。拳の一振りで雨降らせるとかどんなチートだよそれ……。弔っちが策があるって言ってたけどさ、ありゃ無理だって」

 

 肌で感じたあの気迫。あれはヤバい。今まで感じた中でも余裕でチビるよ。

 

「いやぁ、本当にヴィラン連合勝てんのか?」

 

 色んな人に囲まれたオールマイトを見ながら俺は乾いた笑みを浮かべた。



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