DOG DAYS~ウチのお兄ぃ様~ (Rodo)
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EPISODE 0【プロローグ】
今回は今話題のDOGDAYSの二次創作ということで初チャレンジしてみました。
原作の内容によっては本文の変更もしますが、基本的には独自設定で進めようと思います。
とりあえず、お兄ぃ・・・出て来るなよ。
ここは動物の耳や尻尾を持った種族たちが暮らす、私達の住む地球とは隔絶した異世界フロニャルド___
数か月前に隣国、ビスコッティ共和国とガレット獅子団領で魔物事件が勃発し、異世界より召喚された勇者の協力もあって無事に解決を迎えたことは未だ記憶に新しいものである。
そんな中、ビスコッティ共和国の西側に位置する国『パスティヤージュ公国』では別の物語が始まっていたのでした・・・
「キャラウェイ、騎士達の調子はどうだい?」
「至って順調です。以前、手紙で頂いた訓練メニューも本日で全てこなせそうです」
「そうかい。何だかんだで厳しい訓練を考えたつもりだったが、流石は我が騎士団達だな」
「まったくです」
パスティヤージュ公国・エッシェンバッハ城内の廊下を会話しながら歩く二人。
蒼い上着に黄色の装飾、白いロングパンツに青いネクタイと身に着けている服装から貴族を連想させるが、腕に付けている篭手と腰の長剣からその連想は早々に消え去ってしまう。
二人の内、一人はこのパスティヤージュ晶術騎士団の騎士でエッシェンバッハ騎士団の指揮隊長をしているキャラウェイ・リスレ。
このパスティヤージュ公国の次期代表領主であり第一公女でもあるクーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュの補佐を務めている。
もう一人も服装こそキャラウェイと同じだが、少し長身で腰にぶら下げた二本の長剣と青いマント、黄色い羽根が刺さった青いハット帽子が何ともいえない雰囲気を醸し出していた。
「それで、クーベル様にはもうお会いになられたのですか」
「実はまだ帰国してから顔を出していないんだ。僕も直ぐに会いたかったがセルクルの世話やリーシャと世間話なんぞしていたからね」
「あのセルクルは貴方以外、世話が正直出来ませんから。近づいただけで威嚇してきますし、ブランシールとはとっつき合いますし」
「どうもアイツ、僕とクーにしか懐いてくれないんだよ」
「ははっ」
そんな話をしながら歩いていると前から物凄い勢いで走ってくる小さな少女が二人の目に入って来た。
『お兄ぃぃぃぃぃ!!』
「おおっ、クーじゃないか」
「噂をすれば何とやらですね。あとクーベル様、走られますと危ないですよ」
黄色いドレスを身に纏った少女、クーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュはその勢いのまま、キャラウェイの横に並ぶ人物に飛びついた。
「お兄ぃ!!ウチは会いたかったぞ!!何で帰ってきて直ぐに顔を見せてくれんのじゃ!!」
抱きつかれた当の本人はクーベルが落ちないように抱えながら少し困った顔をしてつぶやいた。
「すまない、アイツの世話に時間が経かってしまってな・・・」
「言い訳は見苦しいぞ、
「ふぅ・・・」
彼、カトルは
=訂正履歴=
2012/9/9 主人公の名前を変更
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EPISODE 1【これが私のお兄ぃさま】
「クーベル様、それ以上暴れられますとカトル様にご迷惑・・『キャラウェイは黙っておれ!!』・が・・・」
カトルに抱きついたままじたばたする姿を見かねたキャラウェイがクーベルを宥めようとするが逆効果になってしまった。
依然としてじたばたするクーベルにカトルは一言。
「クー?キャラウェイの言う事は聞いてくれと言っただろう。それとも、見習い領主様は我が儘が通ると思って兄との約束を忘れてしまったのかい」
「うっ!?」
カトルの一言の刹那、クーベルの動きが止まり鳩が豆鉄砲をくらったような姿になった。
うんうんと何か言いたそうなのを抑えながらカトルは彼女を床に下ろすとその幼い頭を撫でた。
そこには年相応の可愛らしい少女が自身の兄に笑顔を見せながら微笑んでおり、その隣ではそんな二人を微笑ましく見つめるキャラウェイの姿があるのだった。
「さて・・僕の仕事もさっき終わったわけだし。クー、これから今回の旅の報告をしたいのだけれど領主様として対応して貰えるかな?」
「もちろん!!お兄ぃの頼みを聞かないわけにはいかんじゃろ。ウチはなんたってこのパスティヤージュの領主なんじゃからな!!」
「ふふっ、ありがとう。・・キャラウェイ、悪いがリーシャ達も呼んで来て貰えるかな?」
「かしこまりました」
両手を広げながら自慢げに話すクーベルの姿を横目にカトルはキャラウェイにそう伝えた。
そう、彼は周辺各国を旅しながら自身の腕を磨き、晶術中心の戦興業から剣術中心へと流れを変えようとしているのだ。
パスティヤージュもビスコッティやガレットと同じで領主は基本、公女が務めることになっている。
なのでカトルは長男ではあるものの、領主として振る舞うことが出来ないのである。
そこで自国の騎士団の技術力向上を目的に彼自身が旅をし、身に付けた技術を騎士団の訓練に活かすようにしてきたのであった。
現在、晶術訓練を基本としながらキャラウェイと彼に選抜された数名が試験運用という形でカトルの訓練を行っているのである。
本来、晶術を扱う間は無防備に近い。
その為、ブランシールに跨りながら晶術を扱うのが教科書通りなのだがカトルはその基本ですら剣術の習得によって覆したのだった。
晶術剣---
晶術と剣術を組み合わせたまったく新しい発想によって瞬間的に生まれる攻撃力は、あのレオ閣下ですら凌駕できると考えられている。
無論、それだけの攻撃力を生み出すのだから反動も大きい。技の出力に耐えられる身体能力と同時に二つのことを行う技術的センスが不可欠。
なので、まだ正式に晶術剣というものが存在するわけでもないし、扱えきれる人物はカトルただ一人なのである。
「お兄ぃぃぃぃぃ!!さっさと広間へ行くのじゃ。みんなが待ってるからのう」
「はいはい」
いつの間にか自分より前にいるクーベルに呼ばれてカトルは苦笑いしながら手を上下に振った。
そんなこんなでそんな凄い人物であろうとなかろうと、妹であるクーベルにはとことん弱い兄上なのであった。
=訂正履歴=
2012/9/9 主人公の名前を変更
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EPISODE 2【勢揃い】
久々の投稿でふのでお見苦しい文章になっているかもしれませんが、勘弁してやってくだせぇ。
誤字・脱字は是非ともご報告を!!
エッシェンバッハ城/謁見広間
それから暫くして___
カトルから声がかかった者達が謁見広間に集まってきた。
まず、パスティヤージュ公国第一公女であり君主でもあるクーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュ。
パスティヤージュ晶術騎士団・エッシェンバッハ騎士団指揮隊長、キャラウェイ・リスレ。
同じくパスティヤージュ晶術騎士団で飛空術騎士団隊長、リーシャ・アンローベ。
パスティヤージュ公国晶術研究学院・主席研究員、ノエル・クグロフ。
多くの晶術騎士団隊長、晶術研究学院の研究員・・・
そしてパスティヤージュ公国・晶術騎士団特別顧問、カトル・エッシェンバッハ・パスティヤージュ。
パスティヤージュ公国の主だった人物が集まったのを確認するとクーベルは口を開いた。
「皆の衆、よく集まってくれたのじゃ。今日はお兄ぃが皆に報告したいことがあるからそれを聞いてほしいのじゃ」
彼女はカトルに視線を向けると彼もそれに気づいたのか頷いてそれに答えた。
「急遽だが集まってくれてありがとう。まずは僕から礼を言わせてくれ。さて、集まってもらったのは他でもない。旅の中で耳にした話だと隣国のビスコッティとガレットで数日後、勇者とその知人を迎えての戦興行を行うそうだ。そこで僕達、パスティヤージュもその戦興行に参加しようと思う。新生パスティヤージュ晶術騎士団のお披露目としてはどうだろうか?」
皆に提案すると一斉に広間はざわつき始めた。その中で飛空術騎士団隊長であるリーシャが声を荒げた。
「ちょっ、ちょっと待って下さいカトル様!!いきなり勇者だの戦興行だの言われましても・・・」
同じく彼女の意見に賛同するかのように主席研究員のノエルもカトルに向かって叫んだ。
「そうだぞカトル!!ちょっとはお前さんの成果物を分析・解析して頑張っとるワシ達の身にもなってくれよぞ。体が持たん!!」
一気に賑わいを見せ始めた広間。あーだの、こーだのとあちらこちらから賛否両論の声が上がりいよいよ収集がつかなくなってきた。
「うーん・・・こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ」
予想外の出来事に自らの耳を手で押さえつけるカトル。その顔をもう苦笑いしかなかった。
キャラウエイもこの様子を見かねて周囲を落ち着かせようと努力をするも空しく、一向に収まる気配はなかった。
一方でこの状況を見ていたクーベルだったが、ついに彼女は我慢の限界を超えて痺れを切らせた。
「こりゃぁぁぁぁぁ!!落ち着かんか、このアホンダラ!!騒いでは話すものも話せんじゃろうが!!」
「「「「「えっ!?」」」」」
格闘戦の一歩手前、まさしくノエルがカトルの首元を掴み殴りかかろうとしたそのときだった。
椅子に足を載せ、胸の前で拳を作ったその姿は彼女の後ろで黄色に何かが燃え上がっているようにも見られた。
普段温厚な可愛く幼い領主が日常会話では使わないような汚い言葉を身内とはいえ公衆の前で大声で叫んだのだから周囲が驚かないのも無理がなく、皆目を点にした。
「人の話は最後まで聞けと普段から耳にタコが出来るほど言っとるのは何処のどいつじゃ!?」
正論、誰もクーベルに何も言えなかった。
心当たりが多々あるキャラウェイにリーシャ、自分の話を聞いてもらえず毎回怒るノエル。
そして普段から自分の話を聞いてくれと進言するカトル。
「・・・お兄ぃ、話の続きを」
「あ・・あぁ・・・」
クーベルの一言で落ち着きを取り戻した広間でカトルは再び、話を始めた。
---何でこうもウチの国の人達は話を聞かないんだろう
公女といい身内といい個々の喜怒哀楽によって振り回されるカトルであった。
新キャラ登場!!
設定については後日、掲載予定です!!
=訂正履歴=
2012/9/9 主人公及び登場人物一部の名前を変更
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EPISODE 3【ノエルの憂鬱】
エッシェンバッハ城/中庭渡り廊下
「まったく、わっちは何度も何度もお前の無茶には付き合いきれん!!早くわっちに楽をさせてくれや」
「まぁ、まぁ。そう言うなよノエル。幼馴染の中じゃないか」
「その幼馴染をこき使っているのは何処の何方かえ?『親しき仲にも礼儀あり』と言うです!!」
「畏れ多くも僕です・・・」
カトルの突然の戦興行宣言からはや二時間―――
クーベルの助けもあり、話を軌道にのせたカトルは一気に話を終結へ加速させた。
参加の目的、それに伴う自国の利益、参加方法、参加させる勢力・人数・規模などなど・・・
結果として戦興行を行うための案をある程度までまとめていた彼の提案に皆が理解を示す形で事なきを終えた。
しかし、依然として現在カトルの横に並んで歩いている幼馴染、ノエル・クグロフはエサを口いっぱいに入れたリスのように顔を膨らませていた。
弱冠7歳にしてパスティヤージュ公国の頭脳ともいえる晶術研究学院に入学、10歳で研究員の一員、13歳になった現在では主席研究員として学院を引っ張る立場にあり、晶術の研究とパスティヤージュの発展のために新しい技術開発に勤しんでいる。
ちなみに隣国ビスコッティ国立研究学院の主席研究士であるリコッタ・エルマールとはフロニャルド研究発表会で対面して以来の仲良しであり、良き好敵手である。
今では日夜、お互いに技術を研鑽し合って毎年開催されるフロニャルド研究発表会で開発したものを披露することが目標になっている。
そのおかげか『ビスコッティのリコッタ』、『パスティヤージュのノエル』と言えばフロニャルドで知らない人はいないほどまでに有名人でもあったりするのだ。
カトル自身も晶術騎士団に入団したのがちょうどノエルが晶術研究学院に入学した時と同時期である。
―――閑話休題―――
「頼むから機嫌を直してくれよ~。あの話も進めて欲しいしさ」
「い・や・じゃ!!そもそも無理難題すぎるがや」
話は戻り、今だ絶賛喧嘩中の二人・・・
原因はというとカトルがノエルに新しい晶術剣用の武器の製作を依頼していたの
が事の発端であった。
元々、普通の武器では晶術剣として使用できないのをこれまでの試験結果から見出していたカトルは旅の途中で出会ったとある刀鍛冶に自分専用の剣を作って貰うようお願いした。
その人物とはイスカ・マキシマ―――
天下に名を馳せる刀鍛冶で、国宝級の刀を何本も製作している男性である。
そんな大層な人物に数年前、作って貰ったのが晶術剣『フロランタン』という二本の剣である。
これまで幾度となくカトルの窮地を救ってきた剣ではあるが、その刃こぼれ一つしない出来栄えに勝る武器は作れないとノエルが悲鳴を上げたのだ。
周囲が聞けば有名な刀鍛冶の刀にそんじょそこいらの者が作ったものが勝てるはずがないと間違いなく思うだろう。
だが、そんな中カトルだけはノエルにこの無理難題を頼み込んでいた。
そう、イスカ・マキシマですら製作不可能な武器。それは・・・
―――晶術と剣術だけではなく、紋章術も同時に使うことのできる武器
現在は武器の特性上、晶術と剣術の組み合わせしか出来ないのだがそれに今度は紋章術を組み込もうとしているのだ。
もし、それが本当に可能になれば想像も絶するような攻撃を生み出すことになるに違いない。
「お前さんは魔王ヴァレリーにでもなるつもりかえ。そんな力を追い求めたって仕方がないだろうがや」
「必要なんだよ、今のパスティヤージュには。ビスコッティにもガレットにも勝る力がね」
「・・・」
「・・・」
黙り込む二人―――
ノエルにはカトルの思いが十二分に理解できたし、彼の思いも分かっていた。
(数年前のあの事件がコイツを変えたがや。何もできなかった自分を追い詰め、ここ1、2年で頭角を一気に現し始めて騎士団の頂点まで辿り着いたし、国内でコイツに勝てる奴はもういない。そろそろ俺自身も覚悟を決めないといけないときなんやろうな)
「ふぅ・・・」
突然、足を止めてため息をつくノエル。もちろんカトルも足を止めた。
振り返って彼を見るノエルのその目は何時ものめんどくさそうな目ではなく、何か強い覚悟を感じさせる目であった。
「―――次回の戦興行までにお前さんの望み、出来るか分からんがなんとか形にしてみせるがや。これが今、わっちにできる最大限の譲歩じゃ」
そう言い終え、完成できるか微妙しゃがと付け加えた。
しかし、カトルにはその言葉で十分であった。
「ほ、本当か!!やってくれるのかノエル!?」
「わっちがお前に嘘をついたことがあったかえ?まぁ、楽しみにしときや」
そう言ってノエルはカトルに手を振りながら自分の戦場、パスティヤージュ公国・晶術研究学院の自室へと戻っていった。
その姿を見たカトルは嬉しさのあまり声を掛けられず、その場で彼に向って頭を下げてでしか感謝の気持ちを伝えることが出来なかった。
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