その四つ葉が枯れるまで (あるぐれ)
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一〇〇式と404 プロローグ

初めまして、あるぐれと申します。
他の指揮官様がお書きになった小説に触発されてこんなものを錬成してしまいました。
よろしければお付き合いくださいませ。


とある指揮官配下の戦術人形の手記より抜粋

 

 

 

某月某日 晴→曇

 

 私は戦術人形、一〇〇式。一〇〇式機関短銃なんて大層な名前もあるにはあるけど、一〇〇式と呼んでもらう方が私は好きかな。お母さんは私のこと一〇〇式(モモ)って呼んでくれてる。

 今私は、小さなトラックの荷台で私を創った人(お母さん)が今朝餞別に、とくれたメモ帳にペンを走らせている。布の表紙に、私の髪飾りとおそろいの四つ葉のクローバーの刺繍が入った、本と間違えてしまいそうなくらい分厚い赤いメモ帳。そう、今日は私が初めて戦術人形としてある指揮官の下に配備される日。一応、訓練は積んでいるしたくさんの作戦報告書にも目は通してある。他の戦術人形(なかま)達の足を引っ張ることがないといいんだけど……。あと、指揮官も優しい人だといいな。でもこれから行く先は戦場だ。いつも褒めてくれてたお母さんはもういないし、そんな甘ったれたことも言ってられない。みんなの役に立つためにも、頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、S16地区付近にて

 

 

 乗っていたトラックが突如停車した。昨日ドライバーさんが鉄血のスナイパーに撃たれて死んじゃったとき(初めての死体で怖くなって泣いてしまった)から私が運転を交代して司令所の近くまでなんとか来たけど、あと1kmもないのにガス欠だなんて昨日から本当についてないなぁ……。察知できなくてドライバーさんは撃たれちゃうし、スナイパーには逃げられるし、追いかけてたせいでドライバーさんの救命は間に合わないし。はぁ……。人間を守って人間の代わりに戦うための戦術人形なのに、このままじゃ到着したら即分解だよ……。うぅ、泣きたい……。お母さんと訓練しながら過ごしていた日々が懐かしい。もう帰らせて……。

 

 

 家への想いを引きずりつつ足を進めていると、目指していた司令所の全景が見えてきた。……が、何かがおかしい。ガッチリ閉じていたのだろう門は、不自然な形にひしゃげているし、窓からは一切明かりが見えないし、そして何より、人気が一切ない。静かすぎる。お母さんは『先輩達とも仲良くやりなさいね』とも言ってたし、他の人形が少なからずいるのは確かだ。もしかして廃棄された他の司令所にたどり着いちゃった?いや、門の横にはしっかり『S16地区司令部』と書いてあるし……。何より、端末に表示された自分の現在位置の座標と貰った地図データの司令所の座標が一致している。

 

 

 外でうじうじしながら考えていても何も変わらない。ちょっと勇気を出して、入ってみよう…。愛銃、一〇〇式機関短銃をいつでも撃てる状態にし構え、そろり、そろりと門をくぐる。入り口を通り、中に入ると。そこには。

 

 

「なにこれ……?」

 

 

 多数の弾痕の残る壁に鉄血兵の人工血液の飛び散った見るに堪えない残骸に加え、そして……これから共に戦うはずだった戦術人形(仲間達)の無残な死体。多くの人形達は紅く染まり、どこかしらがひしゃげ、身体の一部がなくなっているものもあり、綺麗に残ったものは一つとしてなかった。

 

 

「うっ……」

 

 

 あまりの光景に口元を押さえ、うずくまってしまう。なにこれ?なにこれ?なにがあったの?鉄血の襲撃?そんなのは分かっている。電脳には突然の出来事により大きな負荷がかかり、正常な判断ができない。

 

 

 私にはただ膝を抱えて泣きじゃくることしかできなかった。




最初からこんな展開ですみません、いつかハッピーエンドに持ってきますので…!(予定)


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一〇〇式とG11

どうも、あるぐれです。
今作の主人公はこの話に出てくる二人が主人公で進めていくつもりでいます。


 しばらく泣いていたら少し落ち着いてきた。まだ入り口に入ったところだ、まだ奥に生き残った人や人形が居るかもしれない。無残な姿の彼女らに手を合わせ、誰かに会えることを願いながら愛銃を握りしめ、ゆっくりと奥へと進んだ。

 

 

 探索を続け、ほぼ全ての部屋を回り切ったが、多くの部屋は鉄血の残骸しかなく指揮官室すら無人だった。人間や人形は一切見当たらない。今はこの後のために、申し訳ないが倉庫から資材を勝手に頂いている所だ。殆ど持ち去られていたものの、途中で落としたと思しき配給を発見し、回収する。

 

 

「うーん…この後、どうしよう…。どう考えても最寄りの司令部まで3日はかかるし…」

 

 

 そう、この司令部は相当な僻地でここまで来るのにも5日かかっている。持っている資材の量も歩いて行くには少々心配だった。鉄血に会わなければ消費も少なく済むし十分なくらいだったが、人工血液の乾き具合からして、ここが襲われたのは恐らく昨晩。まだ近くに鉄血が潜んでいると考えるのが妥当だ。やはりもう少し弾薬が欲しい。

 

 

「というか、このままここにいるのも相当危ないんじゃ…」

 

 

 そう思い、倉庫を後にしようとすると……相当慎重に歩いているのだろう、かなり抑えられているがかすかに足音がする。若干パニックになりかけたが冷静さを取り戻し、軽く深呼吸をする。

 

 

「ふぅ…音は下の階の廊下の方から、おそらく人数は一人……よしっ」

 

 

 すでに弾丸はしっかりと込められている。銃の用意が整っていることを確認し廊下へと戻り、階段をゆっくりと下る。……さっきよりこちら側に来ている。今の位置からしてここの踊り場から撃ちおろすように迎え撃つのが最適であろう。足音は先ほどより早く、若干小走り気味にこちらへと向かってくる。相手が見えるようになるまで3…2…1…今っ!しかし弾丸は発射されず、味方は撃てない旨の警告音声が電脳に鳴り響くだけであった。

 

 

「あ、あの…私鉄血じゃないよ…?」

 

 

 目の前にいたのは鉄血兵などではなく、グレーのふんわりとした髪の四角い銃を持った少女であった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 司令部を探索せよとの命が下りたのは今朝がたのことだった、らしい。熟睡していたので詳しいことは知らないが、今いるところの近くにある司令部が昨晩の報告以降音信不通になっているそうだ。まだ新人の指揮官が配属されて間もない司令部だったらしく、鉄血の襲撃によるものだとしたら全滅して占拠されている可能性も高いらしい。という事で、作戦任務の途中で近くをうろついていた我々404小隊に白羽の矢が立ったのだそう。うーん、面倒くさい…。

 

 416に叩き起こされて眠い目をこすりながら向かったその司令部、S16の状況は一言でいうと……最悪だった。入ってすぐ目に入ったのは鉄血兵とグリフィンの人形たちの残骸。その中に混じって隅のほうに拳銃を握りしめた指揮官と思しき死体も紛れ込んでいた。私は静かに手を合わせた後、すでに奥へと向かってしまっている3人を追いかけた。

 

 

 結局、中にいたのは数体の鉄血だけで人間、人形の生き残りは一切いなかった。それらを軽く片付けたのち拠点へと戻り、今は念のために少し離れた岩場から司令部の様子を監視している。もしかしたらまた鉄血が戻ってくるかもしれない。いやぁそれにしても眠い。この岩場、すっごい日が当たってめちゃめちゃ眠くなる。

 

 

「G11、誰か来たりした?」

 

 

 そう言って話しかけてきたのは404小隊隊長、45ことUMP45だった。

 

 

「45か。いや、特には来てないよ」

 

「そう……待って、あの人影は?」

 

 

 45が指さす先を見ると確かに、司令部へとゆっくり向かっていく人影がある。

 

 

「あれは…うちの人形っぽいけど…」

 

「そうね、なら見てきてもらおうかしら?見張りは私が交代してあげるから」

 

「えぇ、眠いからやだよぉ…」

 

「あら、隊長の命に背くの?」

 

「くっ…はいはい、行ってきますよ…」

 

「行ってらっしゃい♪」

 

 

 くそぉ。折角交代後にここでお昼寝しようと思ってたのに。まぁいいや、とっとと終わらせて戻って寝よ…。

 

 

 中に入ると、二階から微かに足音が聞こえる。そして周囲に鉄血の反応もない。この分だともう少しすれば降りてくるだろうし私はさっき416が探索してた宿舎でも覗いてみよっかな?うふふ、柔らかそうなお布団が回収出来たらいいのだけど…。じゃ、おじゃましまーすっ……あれ?

 

 

 結論から言うと宿舎の中の布団は全部燃えカスになっていた。くそぉ。このセリフをさっきから何度か吐かせられてるあたり今日はツイていない。そんなことを考えていたらおっと、足音が階段に向かっている。ちょっと急がなくては。よしあと階段まで30m…ってあれ?踊り場で待機してる?……ということはおそらく人間だな。人形なら鉄血か否かはわかるはずだし。まずは姿を見せて味方ってわかってもらわなきゃ。

 

 

 G11は階段へと飛び出し、相手の姿を確認する。黒いふんわりしてそうな髪にクローバーの髪飾り。赤いマフラーとそして……こちらへと向けられた銃剣付きのSMG(サブマシンガン)。ありゃこれは完全に敵と思われてるな。えっと、こういう時はどう声をかけたらいいんだっけ…。えっと…。

 

 

「あ、あの…私鉄血じゃないよ…?」




ということで初エンカでした。
この二人の絡みが書きたかったから投稿したと言っても過言ではない。


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状況整理

連続で投稿しようとするとどうしても一話一話が短くなってしまいます。
自分の製造運と文章力を呪う日々です。


「えっと…落ち着いた?」

 

 

 そう言いながら私の頭をゆっくりと撫でてくれているのは、先程の灰色の髪の少女……いや、私と同じ戦術人形のG11。頼れる人、物のあてもなくどうすればいいのか全くわからない状況下で出会ったせいだろうか。彼女が名乗りだすとほぼ同時に私はまた泣き出してしまった。彼女の問いに対し何とかうなずき返し、嗚咽で出しにくくなった声を絞り出す。

 

 

「はい…あ、ありがとうございます……。私の名前は一〇〇式機関短銃…今日からここに配備…される予定で…うぇっ…」

 

「うんうん、無理はしないで…ゆっくりでいいからね…」

 

「ぐすっ…ありがとう、ございます…」

 

 

 G11は優しく、私の背中をさすってくれる。なんとか止めようと頑張っているのに、涙は頬を流れ続ける。

 

 

「私はどこにも行かないから…安心して?」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 戦術人形を拾ってしまった。いや、人間だと思ったんだけどさ。この子…一〇〇式って言ってたっけ。さっきからずっと泣いてて色々聞きたい情報を一つも聞けていない。まあ、この様子と発言からして鉄血の襲撃に関しては何も知らなそうだけど。うーん、どうしたら泣き止んでくれるかな…とりあえずみんなの所に連れて行ってみる?

 

 

「G11!遅いよ~?一体何してるの…さ……」

 

「あ、9(ナイン)…」

 

「……G11が女の子泣かしてる」

 

「えっ」

 

 

 いや違うぞ断じて違うぞ9。これは慰めているだけってオイ45に連絡するのはいいが泣かしてたって報告するんじゃないやめろ。

 

 

「な、泣いてたから慰めてあげてただけだよぉ~…」

 

「ふふ、分かってる分かってる。このままここにいてもしょうがないし一先ず45と416のとこにいこ?」

 

「そうだね、そうし『G11!あんた何やってんの!』」

 

 

 いや416違う、9の無線を鵜呑みにするんじゃないよ。はぁ…いったいどうして私がこんな目に…。

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったね。私はUMP9!よろしくね?」

 

「一〇〇式機関短銃です。うっ、えぐっ…よ、よろしくお願いします…」

 

「一〇〇式ちゃん…でいいのかな?本部からの指令でとりあえず私たちの部隊に合流することになったから今からそこに向かうんだけど…動ける?」

 

「は、はい…すいません…」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 私は今、司令部で私を慰めてくれたG11さんと後から合流してきた茶髪のツインテールのUMP9さんに連れられて彼女たちが所属しているという404小隊が今拠点にしている小屋へと来ていた。安心して落ち着いてきたせいか、また泣きそうになっているがまだなんとか耐えている。

 

 

「えっと、一〇〇式さんでいいのかしら?災難だったわね…」

 

 

 そう優しく声をかけてくれているのはHK416さん。さっきまで本当に心細かったから非常にありがたいんだけどヤバイ、このままじゃまた泣く。

 

 

「今司令部から通達が来たわ。このままあなたを連れて私たちの任務を達成後、一緒に本部まで行くことになったみたい。少しの間、よろしくね?」

 

 

 微笑みながら語りかけてくれたのはUMP45さん。9さんとそっくりだけど45さんは9さんと違って片方だけのサイドテールにしている。

 

 

「はい…皆さんの足手まといにならないよう、頑張らせて貰いますので…。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 そうは言ったものの、心配だなぁ…。ドライバーさんは死なせちゃったし、戦術人形(仲間)の残骸には全く耐えられなかったし…。いや、でも見たところ彼女たちはかなりの経験を積んでいるようだし、そしてなにより、あのままあそこで野垂れ死んでいたかもしれない私を救ってくれた命の恩人だ。頑張ってついていかなきゃ。あぁ、でも心配だ。それにまた思い出しちゃって…辛い…泣きたい……。




果たして一〇〇式は404小隊の前で醜態を晒さずに済むのであろうか…いや、もう半数の前では思いっきり泣いてたねこの娘。

次回以降はもうちょっと時間取ってもう少し長いのをアップしようと思います。


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疑念

G11と45の密談回です。


「G11、今いい?」

 

 

 夜間の見張りをしていると45が話しかけてきた。その日は満月で、月明かりで彼女の姿が表情まではっきりと見える。本当なら45も含めて皆眠っているはずなのだがどうしたのだろう。え?私は真っ先に寝てると思ってた?失礼な。見張りの仕事くらいちゃんとやるわ。

 

 

「いいけど手短にお願い。交代時刻過ぎたら私の大事な睡眠時間が減っちゃうし」

 

「いやでもあなたいつも最後まで起きてこないじゃない」

 

「……ノーコメントで。それで?話ってのは何?」

 

「えっとね、……今日拾ったあの娘のことなんだけど」

 

「……一〇〇式ちゃんか」

 

 

 まあ皆寝静まった時間に突然、おまけに思案顔で話しかけてくるあたりそういった内容なのは察していたがやっぱりか。まあしょうがない。本部の決定とはいえ突然見ず知らずの人形と一緒に行動することになったのだ。……少しくらいなら寝る時間が削れるのは勘弁してあげよう。

 

 

 

「G11、あなたは……あの娘、一〇〇式の事をどう思った?最初に会ったのはあなただし、それにあの娘が銃を構えているのを見たのはあなただけでしょ?」

 

 

 ……うーん、これは45、あの娘のこと疑ってるな?作戦中と同じ目をしている。まあ私も信用しきってはいないけど、なにか問題が起こるとかそういう事は考えていないんだがなぁ。

 

 

「そうだねぇ……弱いと思った、かな。構え方もまだまだって感じだったしおまけに、戦いなれてないね、あれは。今後の成長に期待かなぁ。45は……あの娘の後ろに変なのがいるとか、そーゆーのを危惧してるんだと思うんだけど、私はそんなことはないと思うよ?」

 

「……じゃあ、これを見てくれない?」

 

「ふぇ?」

 

 

 45がこっちに見せてきたのは、小さな液晶といくつかのボタンがついた私が見たことのない機械。暗いせいでいやにはっきりと見えるその液晶には"65%~70%"と表示されている。

 

 

「……なにこれ?」

 

「えっ?あなた本部でこの機械渡されたとき隣に……いた。いたけど、いたんだけど……」

 

「えへへ……立ったまま眠るのが特技です!」

 

「そこ若干誇らしげに言う必要性ある?」

 

「ん、ごめん。で?これ何?」

 

「はぁ……しょうがないわね……」

 

 

 呆れ顔で45は説明を始める。だってさぁ本部の職員の説明ってなんか端末に表示されてる内容読み上げてるだけで眠いんだもん……。催眠術だよ催眠術。寝るのも致し方なし。

 

 

「えっとね……簡単に言っちゃうと、これは人形の最適化がどれだけ終わってるかを大まかに知るための機械。あの娘の最適化は6割5分から7割終わってるって事」

 

「ほうほう、便利なもんだねぇ。ふーん……うーん……?」

 

 

 あれ……なんかおかしい気がする。

 

 

「私たちの最適化は前回計測時みんな90前後だった。一応今さっき全員の最適化率を測ってみたけど、みんな90%~95%って表示されてたの。そして……今のグリフィン所属の人形で最適化が50%以上終わってるのは私たち以外だとAR小隊だけ、のはずだった。これが意味すること、分かるよね?」

 

「……異常なまでに高い、そう言いたいの?」

 

「そう。あの娘、実戦経験はないって言ってたよね?」

 

「うん。少し訓練しただけとも言ってた」

 

 

 なら何故そこまで最適化が済んでいる?私たち人形は作られてすぐ万全の体制で動ける、という訳ではない。確かに電脳や体格は自分の使う銃が最も力を発揮できるように作られている。それは間違いない。しかし電脳と身体の接続は実戦を繰り返すごとにだんだんと馴染み、慣れてゆくようになっている。と、いうことは。

 

 一〇〇式は、相当な量の訓練を積み戦闘を繰り返してきた(嘘をついている)、という事になる。じゃあ今までのあの娘は演技をしていた、ということか。

 

 

「……思ったより面倒なことになってるねぇ」

 

「ええ……警戒した方が良さそうね」

 

「それで?416と9(2人)には言うの?」

 

「想像してみなさい。416は唐突によそよそしくなりそうだし、9は優しいからポロッと漏らしてしまうかも分からない」

 

「あぁ……」

 

 

 私には一〇〇式の発言に対し慌てて余計なことを言ってしまう416が容易に想像できた。9もまた然り。言っちゃいそうだよねぇ……。

 

 

「でもなんで私には言ってくれたの?」

 

「まああなたは任務だけはしっかりとこなしてくれるしね?」

 

「だけってのはひどくないかなぁ……」

 

「ふふ、ごめんごめん」

 

「G11、交代の時間……って45じゃない。まだ起きてたの?」

 

「あ、416」

 

 

 いつの間にか交代の時間が来ていたようだ。それにしても416は何故誰にも起こされないのに自力で起きれるのだろう。

 

 

「うん、そうなの……ちょっと寝付けなくてね?」

 

「そう……睡眠不足はパフォーマンスを低下させるし、交代までは寝てなさいよ?」

 

「ほいほい、分かりましたよっと」

 

「じゃ、おやすみ2人とも」

 

「「おやすみなさい」」

 

 

 小屋の中の皆が眠っている部屋へと戻る。中へ入ると、9と一〇〇式が小さく寝息を立てていた。待ち望んでいたはずの寝袋。いつもなら小走りで飛び込むようにして潜り込み即就寝、なのに今日の私はゆっくりと寝袋に近づき、あわや入った後に少し考え事までする気でいる。

 

 

「G11、おやすみ」

 

「うん、また明日ね……」

 

 

 45が小声で話しかけてきた。私も小声で返し、寝袋へと入り込む。隣で眠っている一〇〇式の顔を覗き込むと、落ち着いた安らかな顔をしている。安心しきったその顔は幼い少女のようで、とてもかわいらしい。そう、まるで嘘など知らぬあどけない少女のように、だ。

 

 

(あの時、私が一〇〇式を慰めていたときの涙は……本当に演技だったのだろうか。泣いているこの娘は、私には本当に何かに怯えているように見えた)

 

 

「んぅ……」

 

「……?」

 

 

 眠っている一〇〇式の顔が、どこか苦しそうなものに突然変わる。

 

 

「う……や……」

 

「……これは……」

 

 

 ゆっくりと頭をなでてやると、だんだんと顔からは苦しげなものが抜け、徐々に先ほどと同じような安らかな寝顔に戻っていく。

 

 

(悪い夢でも見ていたのだろうか?いや……人形は夢を見るようには作られていない。なら一体……)

 

 

 でもまあ、一緒にしばらくいればおいおい分かってくるだろう。あんまりこの娘を疑いたくないしね。そう考え、私はいつもより遅れてやってきた睡魔に身を任せることにした。

 

 

 

 

 小屋の中では4つの寝息が絶えず優しく聞こえている。皆の寝顔は穏やかで……先ほどまで曇った顔をしながら隣で眠る少女を見つめていた彼女も、また、落ち着いた顔をしていた。"あまり疑いたくない。"そう願っていた彼女だったが、翌日、疑念はさらに深まることとなる。梟の鳴き声が静かに響いた。




今回は結構重要な回でした。
一〇〇式とG11のいちゃいちゃまでの道は長い。


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