聖戦士†有双 (恋姫†有双分岐ルート) (生甘蕉)
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プロローグ
相変わらずの需要無視ですが、よろしければお読みください
今回は恋姫†有双10話からの分岐ルート
信じられないことに恋姫†無双の世界に転移してしまった俺は『セーブ&ロード』というチートな能力を授かっていた。
ただし、セーブスロットは三つしかなくてロードできるのは死んだ時だけというファミコンレベルのチートだけどな!
そのイマイチなチートでがんばってゲームと同じく北郷軍と干吉に操られた曹操軍の戦いを防いだ俺はなぜか華琳ちゃん、季衣ちゃん、春蘭、秋蘭、桂花と結婚。
俺と同じく手を出した娘たち、つまりは魏以外の恋姫ヒロインたちと結婚した恋姫主人公である心友の一刀君と共に世界の終焉を防ぐために干吉、左慈と最終決戦。
だけどみんなの願いも空しく、銅鏡が発動してしまって……。
◇ ◇
白一色の視界から解放された時はもう俺たちが戦っていた泰山の神殿内じゃなかった。
「道場、か」
死ぬたびに戻ってくるもはや見慣れた場所。
真エンド計画、失敗したか……。
「貴様、こんな局面でまた死んだのか?」
怒りが滲む春蘭の言葉に首を横振り。
それに秋蘭がゆっくりと頷く。
「いきなり辺り一面が光ったかと思ったら
「たった一瞬。意外と味気ない終わりね」
パニック映画なみの天変地異を期待してたの華琳ちゃん?
場所的に泰山が噴火するぐらいしか想像できないけど。
「ボクたちも死んじゃったの?」
不安そうな表情の季衣ちゃんの頭をなでる。
死んでてもみんな一緒だから大丈夫だよ、とはさすがに言えなかった。
「なにを言っているのよ! 華琳さまが世界の終わり程度で死ぬわけがないでしょう!」
怒鳴る桂花だが、その顔色は悪い。口ではああ言っているが状況がわかっているのだろう。
この道場は死亡時の休憩所であり、デッドエンドの救済所。
本来ならバッドエンドを救済してくれるアドバイスを貰える場所のはずだ。……そんなアドバイスなんて貰った覚えないけどな。
以前は俺しかこれなかったんだけど、俺だけが見えるシステムウィンドウで“ひきつぎ”って項目があって、それで選んだ相手はここにこれるようになって俺と同じように、俺が死んでやり直す前の記憶を引き継ぐことができる。
その引継ぎができるようになる条件は……俺と合体することだったり。もちろん、釣りバカなサラリーマン的な意味で!
だから責任取ってこんなおっさんが可愛い嫁さんを5人も貰っているんだぜ!!
「死ぬ時の力が抜けてどこまでも落ちていくようなあの言い様のない感覚が無かった。つまり俺は死んでない……なのにここってことは、バッドエンドなのか?」
いい加減ここから解放されたい。
俺が死ななければこの道場に来ることもないのだが、そのルートは遠いようだ。
「なにか条件を満たしてないということなのか?」
体育座りして悩む。元祖ニュータイプのように親指の爪でも噛んだらいい考えが浮かぶだろうか。
「条件?」
問いながら華琳ちゃんたちも俺の隣に座った。
「干吉たちの儀式が完成してしまったのか、それとも逆で儀式を完成させなければいけないのか?」
「北郷一刀が失敗したということはないの? あれが銅鏡を使うことが条件なのでしょう?」
「一刀君が一人だけを連れて新しい世界へ行ったとは考えたくない……」
全ての恋姫ヒロインたちとともに現代日本へ現れるという『真エンド』を目指し、ゲームにはなかった結婚までさせた。
多くのヒロインたちと結婚式まであげておいてたった1人しか連れてかないなんて、連れてかれた方も困るだろう。一刀君はそんな男じゃない。
「道場主を名乗るあなたなら何か知ってるのではなくて?」
道場主を自称する孫策に問う華琳ちゃん。
だけどあんまり期待してない感じを受けるのは道場主の普段の態度のせいだろうな。
「さあ? なんか聞いてたのと違う状況みたいなのよー」
「聞いていた? 孫堅にということ?」
孫策の前はその母親である孫堅がこの道場の主で、その際はまさに
……今まで気づかなかったけど、もしかして孫策も何度も死に戻って、結局ここの主になることにしたんだろうか?
「そ。こういう場合は二周目が始められるようになるって聞いていたんだけどなー」
おっかしいわねー、と頭をかく孫策。どうやら本当に想定外の事態のようだ。それとも演技か?
しかし俺たちを騙したとしてなんの得がある?
俺たちに道場主を引き継がせて自分は成仏するとでもいうのだろうか。
「二周目?」
「“はじめから”を選んだ時とだいたい同じで、なんだっけ? “くりあぼーなす”ってのが貰える、だったかな?」
「ああ、ゲームでよくあるやつか」
だけど恋姫にはそんなのあったっけ?
戦闘がスキップできるってだけだったような。
「どれ……そんな!? どうなってるんだよ、これ!」
「どうしたの、皇一?」
空中に表示させたシステムウィンドウの内容がいつもと違っていた。
このウィンドウは俺にしか見えないので、大きく深呼吸して落ち着いてから嫁たちに説明する。
「“はじめから”と“つづきから”がなくなってる」
「そうなのよね」
「ん? どういうことなのだ?」
春蘭が不思議そうに首を捻る。特大のため息をついて説明する桂花。
「バカね。これでは最初からやり直すことも、せえぶしたところから続けることもできないってことでしょうが!」
「なんだと! 誰がバカだ! もっとわかりやすく説明しろ!」
「だから大バカだって言ってるのよ! いい、つまりこいつが生き返れないから、私たちもこのままかもしれないのよ!」
やっと春蘭も理解したのか、怒鳴り返すこともせずに硬直している。
やっぱりわかってなかった季衣ちゃんも事態を把握したようで、泣きそうな顔で聞いてきた。
「ボクたち、どうなっちゃうの? ずっとここに閉じ込められたままなの?」
この道場、かなり大きな道場ではあるが閉鎖された空間になっていて、道場の外に出ることはできなかった。春蘭と季衣ちゃんが力任せに破壊しようとしても壁はビクともしないのだ。
「他に変わったことはないのかしら?」
「かわりに“あらたなせかいへのみち”ってのが増えてる」
「新たな世界への道?」
「う、うん」
これが悩みどころだ。
恋姫のエンドの場所であるフランチェスカへの道かもしれない。
もしかしたら真・恋姫への道である可能性もある。
最悪の場合、全く別の世界なのかも……。
「どこへ行く道なのが不明なのが怖い、と言うのね」
「行き先が怖いんじゃなくて、みんなと一緒に行けるかわからないのが怖いんだ」
もし、恋姫とは全く関係のない世界で……そこへ行くのが俺だけだったとしたら……。
「やっと結婚できたんだ。それもこんな可愛い嫁さん5人と! 一緒に行けないなんて駄目だ。華琳ちゃんと別れたくない!」
「あんたがいなくなるのは万歳だけどここに閉じ込められるのは困るわね。華琳さまとだけならともかく、邪魔なのもいるし」
「うむ。使えん能力だな」
ぐっ。俺だってもっと使いやすいチートの方がよかったよ!
既に決壊寸前だった俺の涙腺は桂花と春蘭の追い討ちで完全に破壊されてしまった。
「おっちゃん、泣かないでよ」
今度はさっきとは逆に季衣ちゃんが俺の頭をなでてくれる。自分も不安だろうにいい子だ。こんな嫁さんたち別れることになるかもしれないなんて……。
「ちょっとぉ、ここで辛気臭くなられても困るんだけどー」
「そう思うんなら改善策を出しなさい。でなければ皇一はずっとここで私たちと暮らすと言い出しかねないわね」
それしかないのだろうか。
道場主の思いどおりかもしれないけど、ここなら空腹にもならないようだしみんなでいられる!
……すぐに退屈になるかもしれないけど。倦怠期の夫婦にならないようにしなくては。
「うーん。皇一か別の誰か1人だけ召喚されるかもしれないわよ」
召喚?
結婚前だったらそれもよかったかもしれない。ただし、召喚手はロリに限るけどな!
もちろん契約はキスで!
「皇一、変わっているのは初めからと続きからがなくなって、新たな世界への道が増えているだけよね? 引継ぎはあるのね?」
「え? うん。それはまだあるよ」
ウィンドウの表示から“ひきつぎ”を選ぶと、ページが切り替わって引継ぎ対象が表示されていく。
最初は???ばかりで誰が対象だかわからない。俺が
やがて嫁さんたちのゾーンが表示されるのだが。
「あれ? こんなに???が多かったか?」
気のせいかな。これまで何度も確認したわけじゃないもんな。
表示されている嫁さんたちの名前にほっとする俺。
???
曹操
夏侯惇
夏侯淵
荀彧
許緒
???
???
「うん。ちゃんと五人とも名前があるよ。……んん?」
「なにか違いがあったの?」
「みんなの名前が真名じゃない?」
「なにを言っている?」
ああ、みんなには見えないんだっけ。
「引継ぎ欄の名前がさ、前は華琳ちゃんの以外は真名だったはずなのに名前になってるんだ」
華琳ちゃんだけは真名じゃなかったんだけど、みんなのも名前になっちゃっている。どういうことだ?
悩みながら空中に浮かぶウィンドウの曹操の行をクリック。
「あ」
華琳
夏侯惇
夏侯淵
「え?」
表示が変わったと同時に華琳ちゃんが声をあげた。引継ぎ欄から視線を移すとさっきまでと大きく違う。
「服が……真のになった?」
大胆に開いた胸元。髑髏の髪飾りのデザインがデフォルメされたものになり、リボンもピンクから紫へと変わっている。オーバーニーも白になって、金属パーツも増えている。
この姿は完全に真の華琳ちゃんだ。
……んん、ちょっと違うような?
「こ、これは……」
「どういうことだ?」
春蘭と秋蘭も違いに気付いたらしい。
「もう一回試してみる」
再度華琳の表示をクリック。今度は反転していた行が元に戻る。
「華琳さまが!」
視線を戻すと華琳ちゃんが消えていた。慌ててもう一回クリック。表示は曹操に。
「華琳さまが戻った!」
ふう。やっぱり引継ぎナシも選べるのか。
「どうなっているの?」
そう聞いた華琳ちゃんは
「たぶん……モードを決定できるんだ、ここで」
言いながらクリックして表示を華琳に。服装が真のになっているのを確認したら、今度は残りのみんなの表示も真名に変更する。
「かっこいいです、春蘭さま!」
春蘭と秋蘭もやはり胸元が大きく開いた服になっいる。そんなに片乳をさらけ出さなくても。
「うむ。季衣は……桂花もだがどこか変わったのか?」
「季衣ちゃんはベルトがついたり微妙に変わっているね」
季衣ちゃんといえば見せパンだが、できれば俺以外には見せないでほしいと頼んだおかげで最近はキッチリとホットパンツを閉めてくれている。
なのに衣装が変わったせいでまた開いていて、その開きも以前よりも大きくなっておりズリ落ちないようするためかベルトをするようになっていた。
「桂花の新しい服も可愛いわ」
二人は前の衣装と並べればわかるだろうけど、その程度の変化でしかない。桂花が素足に靴から靴下を履くようになったのは大きな変化だと思うけどさ。
「これはもしかして真じゃなくて英雄譚とか革命の衣装?」
「英雄譚? 革命?」
最新の恋姫シリーズのデザインで……?
あれ、最新のは萌将伝じゃなかったのか?
おかしい。俺の記憶にない記憶が有る?
「君たちの出てくる物語の新しいので……俺が知ってるはずのない物語。なんで俺が知っている?」
「ああ、異常が皇一にも現れはじめたみたいね。そのうち落ち着くんじゃない?」
「そうも言ってられないようよ。見なさい。皇一の姿が薄くなってきている」
いくら俺の影が薄いからってそれはあんまりじゃない?
そう思いつつ手を見ると、ぼんやりと向こう側が透けて見えていて。
「どうやら選ばなくても、新たな世界へ連れて行かれるようね。……それとも」
華琳ちゃんは座り込んだままの俺の胸倉を掴んでぐいっと引き寄せて唇を奪う。
熱を持った舌が俺の口内を蹂躙し、ゆっくりと離れた可愛い唇から紡ぎだされた言葉は。
「もしかしたら、以前にあなたが話した北郷一刀のように存在自体がなくなろうとしているのかもしれない」
「そんな……」
真・魏ルートの一刀君は結局、最後どうなったかわからずじまいだ。
俺も消えてなくなってしまうのだろうか?
「そうしないためにも新たな世界への道を選びなさい」
「でも……」
「引継ぎが残っているのだから大丈夫よ」
果たしてそうだろうか?
しかし悩んでいる間にも俺の手はどんどんと透けていく。
「華琳さまが大丈夫と言うのだ。問題はない。さっさとしろ! 消えてしまうぞ!」
「おっちゃん!」
春蘭と季衣ちゃんにも後押しされて、俺は“あらたなせかいへのみち”をクリックする。
「華琳ちゃん、季衣ちゃん、春蘭、秋蘭、桂花。愛して……」
最後まで言い終える前に、俺は七色の光に包まれた。
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1話 全部のせ
眩い七色の光に包まれている俺。気がつくとみんながいなくなっていた。
おかしい。
こんな演出、初めてなんだけど。
今までは『はじめから』を選んだ時だっていきなり開始だった。
これが新たな世界への道ってこと?
……
もう少しでそれが思い出せそうなところへ、ウィンドウが開いてメッセージが表示される。
『クリアボーナスを全て適用します』
クリアボーナス?
2周目だったらたぶん引継ぎが定番なんだろうけど、それはもう俺の能力でやってるし……。
『かね×2、適用しました』
金?
所持金が倍になるってこと?
日本円と恋姫世界のお金のどっちが俺の所持金扱いになる?
『けいけん×2、適用します。スタート時にのみ、記憶の損失なしに使うことができます。使いますか?』
はい <
いいえ
え? 使うと記憶の損失があるの?
でも今だけはそのペナルティなしで使えるのか。よくわからないけど使っちゃおう。どんなものか確認しておいた方がいいだろう。
はい、と。
『けいけん×2、適用しました』
『???×2、適用しました』
あれ? 使ったらどんな効果なのか解説なしなの?
それに???ってなんだよ。
ステータスがランダムで倍になってたりするのか?
セーブスロットの数だったら少しは楽になるかな。
選択がおわると貂蝉の声が聞こえた気がした。
……なにを覚えているとどうなんだって?
なにかで聞いたことがあるフレーズだったけどなんだっけ。
◇ ◇ ◇
「ん? 始まったのか?」
七色の光が消えていたので辺りを見回せばそこは狭い密室。というか狭すぎる。まるでなにかの操縦席のような座席に俺は座っていた。
あれ? この内装、どっかで見覚えがあるような。
正面にある開いた扉は透けていて向こう側が見える。
で、天井には黒く丸い装置。これってたしか……。
思い出そうと悩んでいると外から大きな鳴き声が聞こえる。そっちを見れば怪獣と言っていい存在がそこにいた。
「ドラゴン? 恋姫世界じゃないのかよ!」
真・恋姫世界なら出てきてもおかしくはないはずの龍ではなく、大きな翼を持った西洋竜の姿だ。咄嗟に左右の操縦桿を握ると椅子がブルッと反応。天井の黒い円盤にチカチカっとスパークが走る。
「動くのか?」
まるで俺の声に反応したかのようにキャノピーが閉まる。
あ、わかった!
この形、知ってるよ俺!
俺は知っている。
このコクピット。
外に見えるドラゴンも!
この操縦席は巨大――というにはちょっと小さいかもしれない――ロボット、オーラバトラーのコクピット。
機体の名前はゲド。空で叫びながらこっちに向かってくるのはドラウゲン。両翼を広げれば十メートルは超えているだろう巨大生物だ。
「これはっ! 聖戦士伝説!?」
思わず俺も叫びながらゲドを動かす。
操縦? ああ、オーラバトラーの操縦は操縦桿やフットペダル、スロットルも使うけど、天井にある黒い円盤状のオーライメージプロセッサが俺の思考を制御脳に伝達してオーラバトラーを動かしてくれるんだ。あのスパークはその作業中の証。
強い意志とオーラ
聖戦士伝説でもいきなり
戦乱の恋姫世界で何度も生死の境に直面し、こんな状況に少しは慣れていた俺は悩むよりも先にドラウゲンと戦って安全を確保することを選択、ゲドを飛ばすことに集中する。
オーラバトラーはマントのように背中に背負った大きなオーラコンバーターと蜻蛉のような翅によって自在に飛行が可能なのだ。
よし、これでドラウゲンと戦える。
ここが本当に聖戦士伝説の世界かどうかを確かめる前に死ぬわけにはいかない。
まだ『セーブ』もしてないんだしさ。
「いける!」
なんとか思いどおりに動かせるようだ。
コンバーターの右横に取り付けられた鞘から剣を抜き、ドラウゲンを斬りつける。翼を狙ったその一撃は見事に飛竜を切り裂き、敵は墜落していった。
強いぞゲド! アニメでは活躍なんて全くしてないからここはやはり『聖戦士伝説』の世界と見ていいだろう。
聖戦士伝説か。
俺も大好きな『聖戦士ダンバイン』。ファンタジーな古いロボットアニメだ。
聖戦士伝説はそのシミュレーションゲームなんだけど肝心の戦闘シミュレーション部分は残念な出来で、ファンからはアドベンチャーパートの分岐の多さで評価されていたりするゲームなのだ。
アニメに準ずるロウルートと、ゲームオリジナルの展開が楽しめる悪役寄りのカオスルートとかね。戦闘パートを除けば評価は高いよ。
ダンバイン好きな俺はやりまくったよ。全ルートクリア、辞典フルコンプのために何周も何周もさ。真・恋姫以上にやりこんだゲームだったりする。
でもさ、新たな世界ってこの聖戦士伝説の世界?
道ってまさかオーラロード?
たしかにそんな
俺さ、少しどころかかなり英雄譚か革命の恋姫世界を期待してたのに!
女だらけどころか、男ばっかりじゃんこのゲーム!
華琳ちゃんたちに会えるんだろうか……?
「あれ……?」
なんか妙に疲れている。瞼が重い。
ああ、そうか。
このゲド、弱いくせにオーラ力の消耗はすごいんだっけ。
ん? でもそのゲドが動かせたってことは俺のオーラ力、大きいんじゃね?
それにこの展開、まさか俺が聖戦士伝説の主人公であるシュンジのポジション?
そりゃ聖戦士伝説は主人公の名前変えられたけどさあ……。
そんなことを考えながら俺の意識は遠くなっていった。
◇ ◇ ◇
うーん、ここはベッドの上だろうか?
ならばお約束を言っとかないといけないとオタクの血が騒ぐな。
「知らない天井だ」
エヴァの世界よりはマシだといいんだけどな。
とりあえずここ最近染みついた習慣でセーブウィンドウを呼び出して『1番』にセーブ。
あれ? 上書きしていいか聞いてこないな?
セーブスロットを確認しようとしたら、俺の意識が戻ったことに気づいたおっさんたちが声をかけてきた。
厳つい髭もじゃのおっさんがここ『リの国』の国王、ゴード・トルール。巷では賢王なんて呼ばれている。拳王ではない。注意されたし。
疲れた顔の爺さんはオウエン・アグライト。リの国の家老。
ごっついおっさんはザン・ブラス。騎士団長だ。
現在地はたぶん城内のはずなのにみんな鎧を着込んでいる。聖戦士伝説では鎧姿のグラフィックしかなかったもんなあ。
ついさっきまで美少女に囲まれていただけにこの落差は大きい。
浮気を疑われることはなさそうでいいけどさ。
「よろしいですかな、聖戦士殿」
「マジで俺が聖戦士か……」
恋姫世界の時のようにモブや第三者的ポジションでスタートじゃないのかね。
まああっちには主人公の一刀君がいたんで俺がそのポジに成り代わるなんてありえなかったんだけどね。
「伝承のとおりならば間違いないかと」
「光と共に現れたけど、それだけで聖戦士って……」
あ、高いオーラ力が必要なゲドを動かせたのも証明になるんだっけ。
でもあのゲド、聖戦士伝説だと隣の領主ドレイク・ルフトからのレンタル品でもう返却しちゃってるはずなんだよなあ。
「ええと、つまり俺は元のとこに帰るためにここで戦働きをすればいいんだな? いいよ。他に行くアテなんかないし、選択肢はなさそうだ」
「さ、さすが聖戦士殿。異様にものわかりが早いですな」
俺の理解の速さに呆気にとられるゴードたち。漫画的表現ならでっかい汗が描かれることだろう。
だがそりゃ当然だ。やり込んでいる俺は知ってるからな。
主人公ポジなんて大役、この俺に勤まるか不安でメッチャ緊張してるけどさ。
……んん?
ここでザンのザンの息子の騎士見習い、レン・ブラスを紹介されるはずなんだけどいないな。
見習いの癖にリの騎士団では主人公の次に強くなるやつで、ルートの選択では敵になっちゃう重要キャラなのに。
ルート選択か。
聖戦士伝説は分岐が多いゲームだ。だいたいは覚えている自信があるけど、どのルートに行くとしますかね?
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2話 道場入り
簡単に自己紹介を終えて、リの城に就職した俺は翌日の強獣狩りを命じられた。
正確には命令じゃなくてお願いだったけど、やっかいになっている身だし断るなんてできないよね。
強獣ってのはさっき戦ったドラウゲンのような巨大な生物。
媒体によっては恐獣って字を使われるのでどっちが正しいのかわからなくなることもあるけど、聖戦士伝説では強獣と表記されていたはず。ようは怪獣だ。
オーラバトラーを含むオーラマシンはこの強獣を素材に作られている。
それで、自室となる部屋を与えられて今日はもう休めってことになったんだけど。
「なんじゃこりゃあ!」
前時代的なトイレで思わず叫んでしまった。
トイレにではない。さすが王城、それなりに綺麗にはなっている。
そこではなくて問題は俺の股間だった。恐る恐るもう一度見てみる。
「W0?」
え?
なにこれ?
「XX?」
バスターやサテライトってのは言いすぎだけどさ。
一刀君でいうところの本体が2倍。
俺はオーラロード(仮)を通っている時に出たメッセージを思い出した。
『???×2、適用しました』
???って、ランダムじゃなくてただの伏字かよ!
華琳ちゃんがここにいなくてよかった。こんな気持ち悪い状態、見せるわけにはいかん。
こりゃ他の能力も早急に確認しないといけないな。
「マジかよ……」
部屋に戻って鏡で自分を確認したら、もう一つ異常を発見してしまった。
おっさんだった俺が若くなってる!
どおりでベルトが緩く感じられたのか。
これが『かね×2』か『けいけん×2』のどちらかの効果なんだろうか?
もしくは聖戦士伝説の主人公は18歳だったからそれに合わせて?
わからん。
若返ったのはありがたいかもしれないけど、原因がわからないのは気持ち悪い。誰か説明してくれ!
……道場主ならなにか知っているかな?
自殺してまで道場へ行くつもりもないのですぐには確認できないか。
◇
翌日。
日課である朝のセーブをしようとしてセーブスロットが増えていることに気がついた。その数、15。
PSのメモリーカードかよ。……聖戦士伝説な世界に合わせたんだろうか?
それなら恋姫世界でだって、もっとセーブスロットがあってもよかっただろうに。
今までの恋姫世界のセーブデータは13~15にセーブされているようだ。
今日は強獣狩りということで、いきなり俺が使うことになる『パンツァードラグーン』を紹介された。
パンツァードラグーン、通称『飛竜』は昨日ゲドが倒した怪獣と同じ野生のドラウゲンを飼いならし、戦闘用に調教して装甲をくっつけた機甲竜だ。
聖戦士伝説では文字数の問題からか『P-ドラグーン』もしくは飛竜と表示されることが多い。
飛竜はリの騎士たちが騎馬代わりにしている。リの騎士団は竜騎士団ってことだね。
ええと、聖戦士なら飛竜ぐらい乗りこなせて当然ってこと?
ゲームプレイ時も思っていたけど無理でしょ。
騎士団の連中だっていきなりは乗れなかったでしょうに……。
しかしこれが主人公補正というやつだろうか、俺はあっさりと乗れてしまった。
そりゃ恋姫世界で乗馬の経験はあったけど!
怪獣みたいな巨馬にも乗ったけど!
たぶん大人しい初心者向けの飛竜を回してくれたんだろう。思ったとおりに動いてくれる。いいドラウゲンである。
んで、飛竜の紹介の次はライフルを渡された。
初めて乗った飛竜の上でライフルをバンバン撃って巨大な獣を狩る。
こうして自分がなってみると聖戦士伝説の主人公って何者だったんだ、ってな状況だよなあ。俺はやっていけるんだろうか?
不安に襲われながらも飛竜で飛ぶバイストン・ウェルの空はそれなりに爽快で、目的地である『強獣の森』にすぐ着いてしまった。
強獣の森はリの国にある、野生の強獣が多く出現する危険ポイント。最近ではガッターという強獣が異常に増えて森の外にまで出て暴れているらしい。
強獣が増えたこの状況、ゲームでは原因が結局不明なんだよね。経験値や資金稼ぎのためなんだろうけどさ。
オーラマシンの素材になるわけだし、近隣の住人には悪いけど、ここで強獣がわいてくれないと困るわけだ。
「ガッターが4か」
「いきますぞ!」
ちょっ、レンがいないんでむこうの方が数が多いんですけど!
だいたいさ、王、騎士団長、聖戦士の3人だけなんていくらなんでも舐めプすぎじゃない?
俺も入れていいか微妙だが全員国の重要人物なんだし、もっと護衛に騎士や兵を連れてこようよ!
なんて思っても後の祭り。戦うしかない。
◇
まあ、あれだ。飛竜に乗っての戦い。
ガッターも怖かったけど、やつらは飛べないんで余裕だった。恋姫世界で美少女武将と戦場で会った時の方がよっぽど死を覚悟するってもんだぜ。
行動順を示すバー――行動ゲージ――もちゃんと目標の頭上に見えたんで戦闘も間違いなく聖戦士伝説なのが確認できた。こうなったら後でアレをやるしかないな。
で、油断した俺はガッターがブレスを使うのを忘れ、急に飛んできたブレスに驚いて飛竜から落下、墜落死してしまった。
道場にて嫁たちと会う。
あれ? いつもいた道場主が今回はいないな。
「お前が皇一だと?」
「なんで疑問系……ってそうか俺、若くなっちゃってるんだっけ」
「おっちゃんが兄ちゃんになっちゃった!」
季衣ちゃんはすぐに俺だとわかってくれたようで嬉しい。
春蘭と桂花はまだ疑っているのかジト目で睨んでる。
「なんかね、今回、新たな世界を始める時にクリアボーナスってのが適用されれてね、こんなになっちゃってるんだよ」
「本当に? ならばお前が皇一だと証明なさい」
そ、そんなこと言われても……。
どうしようか悩んでいたら秋蘭に眼鏡を奪われてしまった。
「こうすればいい。華琳さまは皇一の顔が見たかったのだ」
「そ、そうなの?」
「夫の顔を見たいと言うのは当然でしょう。それともあなたは妻の顔を見たくはないのかしら?」
「……わかったよ。俺だって眼帯のない春蘭の素顔が見れて嬉しいもんな。綺麗だ、春蘭」
春蘭は眼帯をしておらず、無事な左眼を見せていた。
以前は眼帯を外して見せてくれたことはなかったので、初めて見る妻の顔だった。
「なっ、貴様っ!」
春蘭が真っ赤になってしまった。怒らせてしまったか?
「そ、その顔で綺麗だなんて言われたらドキドキしちゃうよ、兄ちゃん」
「そう? 俺なんかより、みんなの方が綺麗で可愛くて輝いている。ドキドキするなんて生易しいもんじゃないんだけど」
たった1日離れていただけなのに、みんなが眩しすぎる。
今さっきまでいたのはおっさんばかりの世界だったもんなあ。
それにみんなの姿は英雄譚・革命バージョンでまだ見慣れていないし。
「ふふっ、言うようになったわね」
「本当に皇一か?」
「道場にいる時点で間違いはなさそうだけど……」
春蘭と桂花はまだ駄目なの?
君たちの見た目の変化よりは変わってないと思うんだけど。
「とにかく、俺がクリアボーナスで若返って行ったとこはとんでもない世界でさ。化け物とおっさんだらけの世界だったんだ」
恋姫世界が恋しい。
そりゃむこうにだって美少女は出てくるだろうけど数は少ないし、せっかく主人公ポジションになれたというのに聖戦士伝説はヒロイン不在のゲームだもんなあ。
恋愛関係のイベントは一切無かったと言っていい。
「そこに皇一が行ってしまったと言うの?」
「ああ。大陸とは別の世界だよ。華琳ちゃんたちは?」
「以前と同じ陳留……と言いたいところだけど、少し違うわね。季衣と桂花がまだ部下になっていないのは、それ以前に戻ったからだとして……」
「以前はいなかった気がする華琳さまの従妹たちがいるのだ」
秋蘭が続けた。
あまり確信したような言い方ではなかったけれど。
「皇一にはまだ会わせていないわね」
「華琳ちゃんの従妹というと曹仁、曹洪、曹純?」
「それも知っているのね?」
やはり革命世界なのだろうか。
嫁さんたちの衣装を見る限り、その可能性が高そうだ。
「うん。徐晃はいる?」
「来たばかりよ」
まだスタートしたばかりみたい。
だから季衣ちゃん、桂花と合流していないのか。
「一刀君は?」
「まだ名を聞かないわね」
あれ? 徐晃と一緒に陳留入りしたわけじゃないのか。
蒼天の方じゃないのかな。
「季衣ちゃんの方はどう? 典韋はいる?」
「うん。おかしいよね? この前まで兄ちゃんに聞かれても知らなかったのに、昔っからのボクの友達なんだよ」
「そんなもんだよ。たぶんこの後、季衣ちゃんたちの村が賊に襲われるかもしれないから用心しておいてね」
その討伐で季衣ちゃんが華琳ちゃんの部下になるんだったよな。一刀君がいないんなら微妙に違うのかもしれないけど。
「桂花は……賊退治の食料計算、季衣ちゃんの分を忘れないようにね」
「あんたに言われなくてもわかってるわよ!」
ちゃんと教えたんだから後で感謝とは言わないまでも、怒らないでくれよ。
「以前とは違うだろうけど、華琳ちゃんならたぶん大丈夫。……浮気しないでね?」
「安心なさい。男はあなただけよ」
男は、ね。まあ女の子に関しては諦めるしかないだろう。
変に我慢しておかしくなられても困るし。
それを考慮しても嬉しい。涙が出そうなほどに嬉しい台詞だ。俺も華琳ちゃんだけ……他にも嫁がいるから言えん。
「皇一の方こそ浮気は……美しい娘なら増やしてもいいわ」
「あのね、おっさんばっかだって言ったよね。だいたい俺に浮気なんて不可能なのよく知ってるでしょ」
「どうかしら?」
「……俺の方はちょっとどうなるかわからない。なんとかして華琳ちゃんたちの所へ帰るつもりだけど、時間がかかりそう」
最悪の場合でも恋姫世界のセーブデータも残ってるからなんとかなるはずだ。
「そう。ならば早く戻ってきなさい」
「うん。絶対に!」
俺は嫁さんたちのいる恋姫世界に戻る。
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3話 ぶっちゃけた
強獣との戦闘直前でしていた『セーブ』を『ロード』してやり直す俺。
セーブスロットが増えたのは本当に助かるよ。しかも聖戦士伝説と違って城に戻らないでもちゃんとセーブできていたし!
今度は油断せずにしっかりとガッターを倒す。
……倒したはいいけど、2人の姿が近くにない。
「あいつらとはぐれたってことは」
たった3騎しかいないのに、敵の数も少なかったのに、はぐれたのはイベントだからなんだろう。
そのイベントというのが。
ほら聞こえただろう、小さな悲鳴が。
「見つけた」
小さな妖精といった姿のミ・フェラリオがガッターに襲われている。
……身長8メット――1メットはだいたい1メートル――を超えるガッターがなんであんな小さいのを襲うんだ?
大きさの比率を考えれば食ったって腹の足しにもならないことぐらいわかるだろうに。
フェラリオの方だって高く飛んで逃げればそれで済みそうなもんなんだが。
まあ、シナリオ上の都合ってやつか。このまま見捨てたんじゃ嫁さんたちに嫌われそうだし助けないとな。
俺はフェラリオを追うガッターにライフルの照準を合わせて発射!
見事に命中した。当たったのは硬い甲羅の部分でたいしたダメージはなかったようだが大きな鳴き声を上げながらガッターは逃げていく。倒してもいいのだが、今はこの子の保護が先か。
「大丈夫、味方だ。安心しろ」
オレンジ色の髪のフェラリオの少女フィナ・エスティナと自己紹介をしあっていると戦いの音、というかガッターの鳴き声を聞きつけて王と騎士団長が到着した。
彼らはもし俺が迷子になっても飛竜が城まで連れて帰ると考えていたようだ。
「その飛竜は賢いから安心してやしたが……フェラリオを保護、ですかい?」
「うん。駄目かな?」
「かまいませぬ。聖戦士殿の無聊を慰めるにはいいでしょう」
ゴード王が許してくれてよかったよ。
ゲームの方だと主人公は誰にも相談せずに勝手に仲間にするって決めちゃうんだ。自分が城で世話になってるってことを忘れてるのかね。
ミ・フェラリオは翅を持つ30センチぐらいのまさに妖精そのものの種族。成長、というかランクアップするとエ・フェラリオという人間大の姿になって力も上がる。
フィナは恋愛イベントこそないが、この聖戦士伝説のヒロインと言ってもいい存在でミ・フェラリオにしては珍しい控えめで大人しい少女だ。
記憶喪失なのだが、そのわりにはフェラリオ関係の情報に詳しかったりする謎の少女。ゲームでも記憶が戻ることはなくて彼女の正体は最後まで不明だった。
「よろしく……お願いします」
おっさんだらけの職場で暮らすことになりそうな俺としてはとても有難い仲間である。
フィギュアを思い出すこの大きさなら嫁さんたちも浮気を疑うこともないだろう。
◇ ◇
城に戻った俺たちは国境付近でのガロウ・ランの集結を報告される。
護衛の騎士もなく強獣狩りに行かされたのも、多くの騎士、兵がガロウ・ランを警戒のために動けなかったという理由だったようだ。
ガロウ・ランってのは地下に棲む闇の種族でまあ、見た目はコモン――ゴード王たちの種族。所謂普通の人間種族――とほとんど同じ。ぶっちゃけ、賊って言えばそれまでの連中だ。金を払えばちゃんと働いてくれるのでスパイとして子飼いにする貴族階級も多かったはず。
コモン、フェラリオ、ガロウ・ランの三つの種族がバイストン・ウェルにいる会話可能な主な住人である。
ガロウ・ランは小説版のオーラバトラー戦記ではやっかいな敵で前半の悪役。
聖戦士伝説でも奪ったオーラマシンや強獣を操って敵として出てくる。リの国はこいつらにずっと悩まされてきたんだよね。
国境でそいつらが集結……真・恋姫の魏ルートの黄巾も似たようなことしてたな。春蘭が引っ張られていったっけ。
国境を隔てた隣国を刺激しないよう、謁見隊を送った方がいいか俺にも意見を求められた。
だってその隣国アの領地の領主ってのが、オーラバトラーを開発してゲドをレンタルしてくれたドレイク・ルフトなのだから。
「謁見隊に人員を割いてる余裕なんかないだろう。さっさとガロウ・ランを倒そう。むこうだって集結に気づいているだろうから現地で会うこともあるさ」
今回の選択肢は実はどっちを選んでもあまり意味はない。
だが謁見隊を送ることにすると、俺もそれに同行させられかねない。ドレイクなんて禿親父に面会するのなんてのは嫌だ。面倒くさい。
なので謁見隊は送らないように意見した。俺の護衛がなかったんだし、人手がないってのも確かだもんね。
ゴード王はそれに頷いて、すぐに国境付近の森林地帯へと出撃する。今回はさすがに他の騎士も一緒だよ。たったの3人だけどね。きっと本隊である俺たちとは別に兵も動いているんだろうけどさ。
3人の騎士はロン毛のナラシ・ハモニ。髭面のラージャ・デスト。影が薄いバラフ・クリエだ。
この中ではナラシが戦闘中の行動順が回ってくるのが一番早くて使える。レンがいないからリの騎士では主人公の次にくる速さだ。逆にラージャは行動順が遅い。
この行動順を決める行動値――行動ゲージがチャージされる値――だが、これってレベルアップでも変わらないんだよね。ここも聖戦士伝説の不満点だったり。
◇ ◇
出撃して某谷の姫姉さまの愛機のような小型飛行機グライウィングや強獣に乗ったガロウ・ランたちを倒した俺たち。
リーダーであるシン・ドロたちの操るルグウは思った以上にでかかったがなんとか倒せた。
それよりも、人間を攻撃するのは恋姫世界で慣れていたとはいえ、やはりちょっと気が滅入る。ガロウ・ランには女性もいるしさ。割と美人なんだよ、やりにくい。
聖戦士伝説の主人公って人殺しにも躊躇した様子もないんだよな。ゲームとはいえ、実際に考えるとヤバイやつだったんじゃなかろうか?
戦闘終了後に現れる『ゲド』と『ドロ』。
ゲドは俺が乗った
ドロは『オーラボム』。触手の生えた円盤というかクラゲのような空中戦闘艇である。操縦には数人が必要なのに性能はオーラバトラーに劣る。
ゲドに乗っているのはバーン・バニングス。ドレイク配下の騎士でゴード王と話をつけていた。ついでに俺も紹介される。
バーンか。オーラバトラー戦記ではそこそこいいやつなんだけどなあ。
ドロにはそのオーラバトラー戦記で主人公ジョクといい感じだったガラリア・ニャムヒーが乗っていた。
バーンたちアの連中と別れトルール城に戻ると、再びゴード王に相談を受けた。今度の相談はオーラマシンを開発するかどうかというもの。
「この選択はこれからの大きな
「それがリのためであると思っております」
うーん。これってこのまま俺の選んだとおりに決まるっぽいなあ。責任重大だ。
だって、ここでオーラマシンを開発するかどうかでこの後のルートが大きく違ったものになるんだからさ。
賢王というわりにはこの王様、ちょっと他人任せすぎじゃね?
ゲームだとたしかこの次の戦闘で大怪我して「国を頼む」みたいなことを言って死んじゃうから、主人公が王様にされちゃうんだよね。
俺が王様? 面倒すぐる。
ま、いいや。セーブもしたことだし全部ぶっちゃけてみよう。このおっさんたちが道場へ行って記憶を引き継ぐことはないんだし。
俺の死亡時、一緒に道場へ行き記憶を引き継ぐことができるようになる条件は、俺との性行為だったりする。
なので当然男は不可だ。
試したわけではないが、試すことは絶対にない。
「いいか? 俺はたぶんこの先の出来事を知っている」
「聖戦士殿? なにを言って……」
「いいから聞け。俺はこれとよく似た物語を知っている。似すぎているんだ。ただの偶然とは思えない」
とりあえず物語ってことで話を進めよう。予言ってした方がよかったのかね? バイストン・ウェル的には。
「今のとこの違いはザン団長に息子がいてそれが騎士見習いをやっていたことぐらいだ」
◇ ◇
「以上が、俺の知ってる物語のだいたいの粗筋だ」
「なんと……」
「……そんな……ジャコバ様ならやりかねない?」
俺の語った未来におっさんたちだけじゃなく、フィナまでもが衝撃を受けていた。
記憶喪失でもジャコバは知っているのね。
「このままオーラマシンを開発しなければ、最終的にはリの国がバイストン・ウェルの覇者となろう。だが、それまでにドレイクの引き起こす戦乱で失われる者も多いはずだ」
「むう……。聖戦士殿の言葉を疑うわけでもないが、本当にそんなことが?」
やっぱり疑うよね。そうじゃなきゃ賢王とは呼べないでしょ。
信じてもらうには……ちょうど切れる手札があるな。
「ならばザン団長。あなたの配下にサーラ・ディップというガロウ・ランはいないか?」
「……それも物語に登場しやしたかい?」
「ああ」
席を外したザン団長に驚愕の表情を見せるゴード王。
あれ?
ゴード王ってばザンがガロウ・ランを使ってることを知らなかったの?
「薄々気づいてはおりましたが……まさかガロウ・ランなどを使おうとは!」
「コモンだって裏切る者もいる。ガロウ・ランは金に対する忠義は確かなのだろう? 種族ではなく、個人を見て見極めた方がいい」
手を強く握り締めてワナワナと震えるゴードにアドバイス。
ゴード王は妻や子をガロウ・ランとの戦いで失ったんだっけ?
だからといってガロウ・ラン憎しだけでやられても困るのよ。
「こいつがサーラだ」
ザンに紹介される赤毛の美人がサーラ・ディップ。
聖戦士伝説における主人公側の数少ない女性キャラ。
だけどヒロインポジションをフィナに譲るのは戦闘には出せないのと、地上界に行くと出てこなくなるからだ。たぶん浮上時にバイストン・ウェルに置いてけぼりにされたんだろう。
「聖戦士殿は預言者ですかい?」
「知ってるだけと説明したろう。で、どうする。俺の物語を信じてくれなくてもいいけど」
「オーラマシンを開発する。そして、私は王の座を聖戦士殿に明け渡します」
「……は? いやいやいや、なに言ってんのさ!」
聖戦士伝説の主人公がリの国王になることは言ったけどさ、なんで急に俺が王様にされるのよ。そうならないように「命が危険だから気をつけろ」って意味で話をしたんだよ!
「騎士団長がガロウ・ランを飼ってることにも気づかない老いぼれに国王は無理ですじゃ……」
「ゴード王!」
いきなり老け込んじゃったゴード王。髪も髭も真っ白に変化ってのはいくらなんでも急すぎじゃね?
そんなにサーラのことはショックだったのか。
「聖戦士殿のせいですぜ。責任取って王になってくれ」
「いや、ガロウ・ランを使ってたザンのせいでしょ!」
抗議するもなし崩しに俺はリの国王にされてしまった。
縁側で茶を啜ってそうな爺にクラスチェンジを果たしたゴード前王は……オーラマシンが地上にとばされ、自分が残されたら復活してバイストン・ウェルの覇王になりそうな気がビンビンするんですが。
この狸め!
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4話 仮面の男
「いいのか、オウエン?」
「跡継ぎのために新しい妻を娶ってくれと要請していたのをお気にしていたのでしょう。ゴード前王は亡き王妃を一途に愛してなさいましたからな」
「原因じゃなくて、さ。本当に俺が王なんかやらなきゃいけないのか?」
「ゴード前王の命ならば。私は王の禅譲を発表する手続きを行います」
ゲームの時みたいにゴードが死んだならともかく、生きてるうちにかよ。
俺たちが地上界にとばされた時のためにゴードには後添えを用意してやらないといけないな。嫌がらせとしてもね。
「その前に、ドレイクからオーラマシンの入手と自国開発の準備をしなきゃいけないだろ。技術者を集めろ」
「そうでしたな。さすがコーイチ王」
「サーラ、俺は皇一。なんか王様にされたみたいだ、よろしく」
「王様にされた、かい。くくく、いいだろう。コーイチ王の目耳となってやるよ」
サーラは密偵としてゲームでは大活躍だからね。
美人だし華琳ちゃんも喜びそう。
……華琳ちゃんどうしてるかな。指輪の無くなってしまった左手薬指を眺めてため息。
「皇一さん?」
フィナの心配そうな声に我に返る。
気づかいのできるフェラリオだ。もしかしたら俺の嫁さんたちよりもやさしいかもしれない。
「サーラ、俺の他に地上人がきてないか情報を集めてくれ。地上界に帰る方法もな。ついでに他国の技術者でいいのがいたらスカウトしてきてくれ」
「わかった。新王からの初任務だ。やってみせるよ」
俺のように華琳ちゃんたちがここに召喚されるかもしれないという僅かな希望とともに謁見の間を出て行くサーラ。
「さて、コーイチ王の物語どおりならこの後、ドレイクからガロウ・ラン討伐の書状が届くのでしたな」
「ついでにゴード王を亡き者にしようという、ね」
「先に王が禅譲しちまって、やっこさんどんな顔をしますやら」
ただ、このタイミングで隣国の賢王が死んだとして、なにかドレイクに得になることがあったのかは気になるところだ。王不在で混乱した地の平定を大義名分にして攻め込むつもりだったのだろうか?
それとも、己の下克上に横槍を入れられるのを恐れた?
俺が悩んでいると伝令が現れる。ラース・ワウの使者がやってきたようだ。
「コーイチ王の物語、信憑性が高まってきましたな。新王としての初仕事ですぜコーイチ王」
「マジか。いきなり俺が王として会うの?」
やってきた使者は俺の物語、ゲームと同じく女戦士ガラリア・ニャムヒー。
ニャムさんは敵前逃亡した騎士を父に持つ苦労人だ。たしかそのせいで騎士ではないんだっけ?
「ゴード王はいかがなされたか?」
「聖戦士殿のことは知っておられるだろう。リのためを思い、深謀遠慮をもって禅譲なされたのだ」
オウエンがそれっぽいことを言ってるが、サーラのことがショックでその場のノリで俺を王にしたとしか思えん。
「俺がコーイチ。新たにリの王にさ……なった」
「……はっ。ドレイク様にもそのように報告いたします。こちらがドレイク様より預かった書状にございます」
さすがというべきか。ガラリアは混乱しつつも任務を果たそうとする。
書状の内容はガロウ・ラン残党討伐の協力要請。
なのだが、まだ俺はこっちの文字が読めないので察したオウエンが受け取って要約してくれた。漢文ならもう読めるようになったってのにさ!
ゲームどおりに助勢を約束するとニャムさんはすぐに帰っていく。王の交代をすぐに知らせなきゃいけないってことなんだろうね。
「いやはやコーイチ王の物語が本当になったことを驚くべきか、ゴード前王の慧眼に恐れ入るべきか、迷うとこですな」
「さすがゴード前王です」
どうやら俺の話を完全に信じてくれたようだ。それに伴って俺の話をすぐに信じて王の座を譲ったゴードの評価が上がったみたい。
やっぱり後添えを探してやろう。……未亡人になったパットフットとかいいかもしれない。できればあの影の薄いピネガン王は助けたい気もするけどね。
◇ ◇ ◇
ガロウ・ランとの決戦はゴード王、レンという2人の戦力を欠いて苦戦する。……かと思ったんだが。
「ザン、そっち……そちらの方は?」
「私はマスタードラウゲン、傭兵にございます」
騎士団長ではなく俺が聞いた謎の人物、仮面の男が答えた。
……つうか、あんたゴード王だよね!
騎乗している飛竜はゴード王のだし、髭もそのまんまじゃないか。
正体バレバレな仮面はいかにもダンバインというか聖戦士伝説らしいけどさあ。
みんな気づかないフリをしているのは優しさなんだろうか。
思いっきりツッコミたいけど俺も我慢するしかなさそう。
「そ、そうか。よろしく頼む」
「うむ。任せてくれ」
王の重責から解放されてはっちゃけたのだろうか?
それとも妻と子を奪ったガロウ・ランとの決戦にはどうしても出たかった?
悩む俺を他所に「がはははは」と豪快に笑うゴードならぬ傭兵マスタードラウゲン。
彼のステータスを見るとなかなかの高数値。ゴードってこんなに強かったっけ?
すぐに退場してしまうのであまり記憶にない。
ああ、聖戦士伝説だと同じ人物でも仮面をつけたら能力が上がるのでそれもあるのかね。
「ルグウが3匹もおりますな」
ザンの言うとおり、あの巨大な強獣ルグウが3頭もいた。他にはグライウィングのミューが3機。
「本当にやられるのですかな?」
「ああ。手間だろうけど作戦どおりにやらせてくれ」
戦闘を開始すると俺たちはライフルやパンツァードラグーンによるアタックでルグウとミューのDP――耐久力。聖戦士伝説じゃない他のゲームだとHPってされることが多い――を削りながら、目的のポジションへと誘導していく。
聖戦士伝説に対応したのか俺のウィンドウも以前からのセーブだけでなく、敵や味方のステータスが見れるようになっているので便利だ。他のやつはこのウィンドウ持ってないみたいだし、これもうチートと言っていいんじゃないの?
「ナラシ、そいつはもう攻撃しないでくれ!」
「了解しましたっ!」
削りきって倒さないように注意しながら騎士たちが連携して逃がさないように陣形を作らせて準備完了。その間に俺のレベルは上がり2レベルになった。
『LEVEL UP!』
俺の頭に短く鳴り響くレベルアップの音と同時にウィンドウが現れる。
この感じだと貰ってる経験値は聖戦士伝説のままみたいだな。クリアボーナスの『けいけん×2』ってなんだったんだ?
敵の反撃で俺たちも被弾してはいるけどまだ大丈夫だ。致命傷にはなっていない。
「よし! ブレスだ!」
外れないでくれと祈りながらブレスをPドラグーンに発射させる。今まで使わなかったのは、敵にこの攻撃があるのを悟らせないためなのだ。
飛竜の口から放たれたそれは一気にルグウ3頭、グライウィング1機をまとめて仕留めることに成功した。
『LEVEL UP!』
メッセージウィンドウの出現とレベルアップ音。
うん。ちゃんとレベルも上がってる!
聖戦士伝説にはある有名なテクニックが存在する。
複数の敵を同時に仕留めることで経験値が異常に増えることを利用した急速レベルアップ技だ。
……バグじゃないよ、仕様だ。他のバグが修正されたベスト版でも残ってたからね。
これがないとレベル上げが作業化してかったるいんだよ。
今回はそれを使って経験値を豪快に稼ぎ、俺は92レベルとなっていた。
聖戦士伝説における本来の最高レベルは40でカンストなのだが、この技を使えばそれを超えることができる。
まあ、あまり上げすぎるとステータスの表示がおかしくなるんだけどさ。
戦闘終了後、警戒していた上にカンストオーバーまでレベルアップして感覚も鋭くなった俺は突然の火球にも対応でき、回避することに成功。道場に行かずに済んだ。ここで死んで華琳ちゃんたちに会ってきてもよかったんだけどね。
すぐに発射方向へと駆けつけた騎士たちがドロを捕獲する。さて、ドレイクはどう出るかな?
◇
「どうやら、我らから奪われたドロがコーイチ王を襲ったようだ。申し訳ありません」
頭を下げるバーン。きっと心の中では悔しがっているんだろうな。
「ドロを操縦していたのはガロウ・ランではなくコモンなのだがな。しかもドレイク殿のところの兵だと自供している」
「賊の戯言です! 信じなさいますなコーイチ王」
「ふむ。なればこやつらはオーラマシンもろともこちらで始末する。そちらから奪われたオーラマシンにて我が王が狙われたこと、どう落とし前をつけていただけるのか、楽しみにしておりやすぜ」
最後に地が出たザンがニヤリと笑ってバーンを恫喝する。
「ははは。ザン、そうバーンをイジメるな。ドレイク殿は貴重なオーラバトラーを貸してくれたと聞く。きっとそのオーラバトラーをお詫びとして寄贈するぐらいしてくれるさ。それともそんな旧型じゃなくて、開発中と噂の新型オーラバトラーかな?」
そっちの企みはお見通しだよ、って俺もついでにね。
ゲドでも嬉しいんだけどくれないかね。
「なっ!?」
「バーン、これは貸しだ。ドレイク殿によく伝えておいてくれ。賢王がなにを察して俺に王位を譲ったのかをな」
華琳ちゃんをイメージしながらできるだけ偉そうに言い放つ。
けど華琳ちゃんだったらもっと要求したかな?
ああ、早く会いたいよ。
ガロウ・ランを倒したにもかかわらず逃げるように去るドレイク軍。
これで聖戦士伝説の第1章は終わりか。
この先はどうするかずっと悩んでいるんだけど、ロウとカオス、どっちのルートに行けばいいんだろう?
……華琳ちゃんなら間違いなくカオスルートかな。
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5話 好戦的
不本意ながらもリの王となった俺は慣れない政務で疲れ果てていた。
季衣ちゃんの溜まった書類を手伝ったことはあったけど、そんなレベルじゃないよこれ。聖戦士伝説の主人公もちゃんとやってたんだろうか?
「コーイチ王はよくやっておる」
執務室にもよく顔を出しアドバイスをくれるマスタードラウゲン。傭兵と名乗ったのを忘れているんじゃなかろうか?
こっちは助かってるからいいんだけどさあ。
「お疲れ様です」
「フィナもサポートありがとうな」
「い、いえ」
フィナは文字もちゃんと読めるんで非常にありがたい。
バイストン・ウェルはテレパシー的なもので会話ができるけど文字はそれが働かないんだよね。
「捕虜はどうしている?」
「大人しくオーラマシンのことを話していやすぜ。ドレイクに見捨てられたとわかったのが効いたようですな」
ドロで俺を襲ったドレイク兵たちは捕虜として扱っている。
バーンには始末するなんて言ったが貴重なオーラマシンの乗り手だ。味方にならずとも操縦方法等の情報は出させたい。
「そうか。ちゃんと協力してくれてるんだ、殺すなよ。逆にドレイクのとこに戻ったら証拠隠滅のために殺されるって教えておいてくれ」
「ですな」
まあ、別に逃げ帰られても特に困りはしない気もする。
……油断しすぎか?
「オウエン、機械の館はどうなった?」
「先程完成しました。こちらが機械の館を任せているボウです」
オウエンが連れてきた男が頭を下げ、自己紹介を始めた。
ボウ・ダトラ。
入手したオーラマシンを調べて『開発』し『生産』できるようにしてしまう有能すぎる技術者だ。開発できるのは量産機だけだけど、それでも凄いだろう。
「そうか。ドロとゲドを開発しておいてくれ」
鹵獲したドロではない。あれはうちの騎士との戦闘でボロボロになっている。ドレイクから入手した物。オウエンがドロとゲドを購入してきたのだ。
このドロ、聖戦士伝説ではなぜか1人で操縦できたが、こちらではアニメと同じく動かすには4人が必要。
そのため捕虜にしたドレイク兵も4人いたりする。
「はい。コーイチ王、我が国オリジナルのオーラバトラー『アルダム』も開発可能です。いかがいたしますか?」
「もちろん開発だ、頼むぞボウ」
アルダムは聖戦士伝説オリジナルのオーラバトラーだ。
武器やデザイン、それに色からダーナ・オシーやボゾン系列に見えるが、ゲドを元に開発された設定だったりする。ギブン家の技術者が関わっているとかそんな裏設定がほしいところである。
そんなアルダムだがゲドはおろかダーナ・オシー、ボゾンよりも使いやすい名機なのだ。量産したい。
……カオスルートに行くならドラムロの方が強いんだったな。どうすんべ?
「ガロウ・ランの残党を見つけたよ」
「リの国のキャスウェル山か。わかった。すぐにでも討伐に出たいとこだけど、あそこなら人里から離れているし、騎団を強化してから向かうことにする」
いつの間にか執務室にいたサーラ。まさに忍者。ダンバ忍サーラ……なんか情報収集失敗して捕まりそうだな。
彼女の報告でマスタードラウゲンが今にも飛び出しそう。
「サーラはドレイクの居城ラース・ワウでそろそろ召喚されているはずの新たな地上人を調査だ。できれば聖戦士の方と接触。ドレイクのやり方が気に食わないようだったらリの国にスカウトしてくれ」
「そんなことまでわかるのかい? コーイチ王は千里眼だね」
まだ召喚されてないかもしれないけどマーベルはこちらに引き込みたい。
これはテストでもある。どこまで聖戦士伝説と違ったことができるかの。
ゴードを生存させることはできたが、結局俺は聖戦士伝説と同じく王にされてしまった。
濃い顔だけどダンバインのヒロインであるマーベル・フローズンは聖戦士伝説ではここでは仲間にできず絶対にギブン家へと行ってしまう。
ここで仲間にできれば聖戦士伝説とはかなり違った行動を取れるということになる。
それにロウとカオス、どちらのルートに行くにせよマーベルを仲間にできるのなら戦力がかなり増強されることになるからありがたい。
◇
「こんなもんか」
「さすが聖戦士ですな。もはやコーイチ王にかなう騎士はリにはおりますまい」
マウンテンキャスウェルに集結していたガロウ・ラン残党は楽勝だった。
だって俺、
後で他の騎士たちもレベルアップ技で上げておこう。
トルール城に戻るともう、ドロ、ゲド、そしてアルダムの開発が終了していた。
聖戦士伝説の開発は1度戦闘すれば開発終了してしまうのだ。こっちでもその仕様らしい。ボウ
リの国はパンツァードラグーンの装甲化のために強獣素材の加工に慣れている職人がいるって下地もあったとしても驚異的なスピードといえよう。
アルダムは濃紺で細身のオーラバトラーでゲドと同じく内蔵されている武器はなく、長く鋭い3本の指でオーラソード――オーラバトラーサイズの剣――や射撃武器を持って戦う。
「これがアルダムか。ステータスはたしかにゲドより性能は上だな」
「量産いたしやすかい?」
うーん。アルダムも嫌いじゃないけど、できればドラムロを量産したいんだよなあ。
聖戦士伝説だとドラムロ強いから。アルダムと違って
「騎団のためにあと4機だけ増産しようか。ザン、ナラシ、バラフ、ラージャの分だ。マスタードラウゲンはオーラマシンには乗せないように」
「心得ております」
オウエンが頷く。オウエンも俺たちがバイストン・ウェルから排除された時、ゴード王だけでも残したいのだろう。
地上へ行くならカオスルートじゃないと全滅ルートになるんで悩むとこだよな。
まあ、セーブはしてあるんで今回は色々試せばいいか。
……オーラマシンの開発を決めた後のセーブだから、オーラマシン無しルートにいこうとしたら最初から始めないといけないんだっけ。
ドラグーンだけで戦うのはキツイなんてもんじゃない、ドMルートだからそっち進むことはないだろうからいいか。
「あ、これから造るオーラマシンの色は黒にしておいてくれ。俺が地上界で所属していた軍の鎧の色だから」
ゲームではリ軍のオーラマシンの色はほとんどが青系だったけど、華琳ちゃんたちと合流できると信じて魏軍カラーにしておこう。
アルダムも元々黒っぽい紺色だからちょうどいいし。
◇
強獣の森で騎士たちのレベル上げと資金稼ぎを行う。アルダムを生産するのもタダでできるわけではないからね。
でも俺の記憶よりも資金の入りがいい気がする。
クリアボーナスの『かね×2』が機能してるのかもしれない。
ますます『けいけん×2』が謎になってきたが、既にカンストオーバーしてるし経験値が2倍にならなくても困りはしない。スタート時のメッセージによれば使うと記憶を失うことになるらしいし。
ゲームの聖戦士伝説だったら今頃はゴードの死を国民や諸外国に知らせるかどうかの選択があるんだけど……。
「どうかなさったか?」
マスタードラウゲンとなってピンピンしてるんだよな。こいつも能力値高いしカンストオーバーしてるからドラウゲンでもオーラバトラーに勝てるだろう。
それにとっくに俺が新たな王だって発表しちゃってるから選択に悩む必要もないわけで。
質問がオウエンやザンから発せられることはなかった。
「コーイチ王、ドレイク殿の使者が参りました」
「そうか。今ちょっと手が離せないからザン、応対してくれ」
「了解ですぜ」
なんかザン、騎士団長って言うより山賊の頭みたいな口調なんだよな。ゲームでもこうだったっけ?
ドレイクの使者はたしか、領内の強獣退治の援助要請ってやつなんだよな。
これってドレイク値の上下がある選択なんだよなあ。どうすんべ?
ドレイク値ってのは分岐に関係する数値だ。ドレイクの好感度みたいな言い方でちょっと嫌かもしれない。
ザンが戻ってくる前に決めておきたいけど。
うーん、カオスルートに行くとしてもドレイク値は低い方がいいか。
そう思ってたらザンが断ってしまったようだ。
「すいやせん、つい。詫びの品も寄越さずにどの面下げて「御助勢を願う」ときたもんで……」
「俺はまだ新米の王だ。ドレイクになめられてるのかもしれないな」
「しかも「騎団の指揮は聖戦士コーイチ殿に是非とってもらいたい」などとぬかしやがったんでさ!」
今考えるとこれもよくわからないよな。聖戦士である主人公の力を見極めようとしたのか?
でもこっちだとさ、前回ドロで王を暗殺しようとしたのがバレてるんだけど。
「また王を狙うとでも言うのか! あからさますぎやすぜ!」
「そうとも限りませんよ。ドレイクは同じアの領主、ロムン・ギブンと対立していると聞きます。新たな王とつきあいを持ちたいのかもしれません」
「きっちり詫びを入れるのが先ってもんだろうが!」
ザンの怒りをオウエンが冷まそうとしたが、あまり効果はなかったようだ。
うーん。
「やっぱり出陣しよう。オウエン、ドレイクに使者を」
「コーイチ王?」
「ここはリの力を見せつけておくべきだ。騎士たちも強くなり、騎団のアルダムの配備も完了した。あの禿になめていい相手かどうか思い知らせておこう」
「なるほど。ただ恩を売るだけではない、ということですな」
なんだろう、俺ってば恋姫世界にいた時よりも好戦的になってる気がする。
王様をやるために華琳ちゃんを意識しているせいだろうか。それとも若くなったせい?
「マスタードラウゲンは念のために城に残ってくれ。なにか仕掛けてくるかもしれん」
「了解ですぞ」
騎団本隊がアルダムを使う分、それまで使っていた飛竜が空いている。防衛力も問題はない。
マスタードラウゲンに竜騎士をもっと育ててもらってもいいかもしれないな。
◇
「コーイチ王!? そのオーラバトラーはいったい……?」
「我がリが造り上げたオーラバトラー、アルダムだ。なかなか強いぜ。ドレイク殿の新型ほどではないだろうがさ」
そうバーンに謙遜、というか嫌味をぶつけながらアの国の町を襲う強獣の群れと戦う。
オーラバトラーでの戦いももう慣れているうちの騎士によって強獣たちはあっさり駆逐された。
ザンも三騎士もみんな
「な、なんという強さなのだ……」
「そうか? 知ってて聖戦士を呼んだんだろう。ドレイク殿はさ」
「お館様が……御助勢、感謝いたしますぞ」
「バーン、貸し追加な」
早く返した方がいいぞ。返してくれなかったらショウを『修羅』にしちゃってバーンの出番を完全に消し去るぜ。
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6話 2人の地上人
ラース・ワウに潜入していたサーラが戻ってきた。
サーラは有能でいろんな情報を持ってきてくれるんだけど、地上界に行っちゃうと出てこなくなるから貴重な女性キャラが減るんだよね。
地上界じゃ彼女がスパイ活動なんてできないから当然っちゃ当然なんだけどさ。
「コーイチの言うとおり、2人の地上人が召喚されていたよ」
「やっぱりか」
「1人はゼット・ライト。オーラマシンの技師だよ」
マダ……ゼットか。オーラマシンの技術者としての能力はショットより上なんだよな、実は。
だけどドレイクに取り入るのが上手かったショットに開発者としての手柄を総取りされるんだっけ。
こいつも仲間にできればいいんだけど、聖戦士伝説だと味方になっても結局最後はショットと一緒に裏切るからどうしようかね。
「もう1人はコーイチが欲しがった聖戦士、関羽だ」
「はい?」
関羽?
え、マーベルじゃないの?
もしかしたら華琳ちゃんたちの可能性もあるかもと期待してオーラマシンの色を黒にと指示していたけど、まさかの関羽?
召喚されたのが俺の知っている関羽で、一刀君と
「コーイチ? 関羽はコーイチの読みどおりドレイクが気に食わないようだ。脱走計画を持ちかけたら乗り気だよ。手はずは整えている」
「……ギブン家はどうしている?」
「よく知ってるね。ギブン家も地上人や技師を奪おうと目論んでいたよ。協力してもらうかい?」
どうする?
ここでギブン家に協力してもらったらロウルート行きは確実だろう。
でもギブン家って俺的に評価が低いんだよね。
「協力は不要。できればギブン家にも関羽を脱走させるのがリの国だということがバレないようにしてくれ」
「そうかい、わかったよ」
関羽をそのままゼラーナ隊へ持ってかれそうだもんな、マーベルポジ的にさ。
華琳ちゃんたちじゃないのは残念だけど、一刀君がどうなってるか知っているかもしれない。必ず仲間にしたい。
「絶対に関羽の脱出を成功させる! 必要な物があったら言ってくれ」
「ずいぶんな入れこみようだね。あの嬢ちゃんずいぶんと綺麗だったけど、そのせいかい?」
「妻の知り合いかもしれないからな」
「コーイチさん、結婚してたんですか!?」
珍しく大きな声を上げてフィナが驚いた。
華琳ちゃんたちを見たらもっと驚くだろうな。なんでこんなおっさんに美少女嫁が5人も、ってさ。
あ、今の俺はおっさんじゃないんだっけ。
「新婚だったのに俺だけがバイストン・ウェルにきちゃってさ……。元気だといいんだが」
「コーイチさん……」
「だから地上人を探させたのかい。こりゃなんとしても関羽を連れてこなきゃ駄目だね」
「頼む、サーラ」
関羽のことはサーラに任せるしかできない。
いや、アルダム騎団でラース・ワウに攻め込めばなんとかなるが他国への侵略になりそうだし、それでは関羽も仲間になってくれないかもしれない。
関羽、一刀君と離れ離れになって精神状態がよくない可能性があるもんな。できるだけ怒らせないようにしないと。
一刀君、どうしているかなあ。
◇ ◇
「それでなんでグラバス狩りなんですかい?」
「強獣の森に飽きた、ってわけじゃないけどさ。グラバスっていい素材になるんだろ」
「かなり強力な強獣でさあ」
「アルダムならいけないか?」
グラバス。硬い甲羅を持つとされる水棲の強獣だ。ドラムロの強化型オーラバトラー『ガドラム』の装甲に使われている。
これを狩りにきたのはガドラムを造ろうというわけではなく、オーラバトラー用の武器の素材としてだ。
聖戦士伝説には出てこないが『ガーゴイル』という『ビアレス』の強化型オーラバトラーもあって、こいつは強力なんだけど量産されなかった。その理由の1つがグラバス素材を使ったトマホークだ。研磨に時間がかかり過ぎるらしい。
強い武器が欲しくなった時にグラバスの武器を手に入れようとしても間に合いそうにないので、今のうちに製作に着手しようというわけなのだ。
「たしかにグラバスは美味と聞きやすが」
やっぱりカニなんだろうか?
華琳ちゃんや秋蘭がいたら美味しく料理してくれただろうに……。
強獣狩りなんて季衣ちゃんも喜んで参加したがりそうなのにな。
某狩猟ゲームのBGMが脳内で流れていたグラバスとの戦いはさすがに硬い外殻相手に難儀した。
刃物ではなく、質量兵器で内部にダメージを与える方が楽だったか。でっかいハンマーやメイスを持ってくるべきだった。
「メイスプライヤーを造ってもらうべきか?
「なんですか、それ?」
オーラバトラーは通信機が内蔵されているので、Pドラグーンの時のように大声を出す必要がないのは助かるな。
フィナも飛竜のそばで飛ぶよりオーラバトラーのコクピット内の方が楽そうだ。
当然のように一緒にアルダムに乗ってるフィナだけど、スパロボみたいに精神コマンドはない。オーラ力はプラスされてるかもしれないけどさ。
それでもオーラ力の監視などのサポートをしてくれている。他のフェラリオのようにあまり煩くないのもありがたい。
「重い武器だと機動性が損なわれるか。難しいとこだね」
「このグラバスで武器を造るんですよね?」
「ああ。かなりでっかいのも獲れたから、そいつの鋏で剣や大鎌を造っておこう」
華琳ちゃんたちがもし召喚されてしまっても渡すことができるように、ね。
春蘭の剣はいいとして、秋蘭の弓や季衣ちゃんの鉄球のオーラバトラー用のをどうするかが問題だけどさ。
……桂花になにも用意しないのもマズイな。なにか考えないと。
◇ ◇ ◇
狩りのあとの帰りはちょっと面倒だ。
早くオーラシップを用意しないと。オーラバトラーや飛竜で強獣を文字どおりに持ち帰らなければならないんだよ。
途中で落としたらスプーンで変身しようとするかもしれないぜ。
あれってカレーじゃなくてハヤシライスらしいけどな。
どっちでもいいから食べたい。やっぱり地上に出るルートを選ぶか?
でも全滅エンドは嫌なんだよなあ……。
んん?
関羽が召喚されたってことは、もしかしたらこの世界の地上界はまさかの恋姫世界ってこともありえるのか?
ショットとゼットもいるらしいからなんとも言えないけど、その2人がいないとオーラマシンの開発が進まないからというゲーム世界の強制力っぽいのと仮定すれば……。
あ、でも召喚された関羽がフランチェスカの生徒な関羽の可能性もあるのか。早く会って確認したい。
焦れながらもトルール城に帰投。
すぐにグラバス素材を職人に預けて、やはり加工するには研磨に時間がかかるのを確認。
「円盤や筒状の砥石を高速で回転させて研磨するわけですか。地上界には便利な機械があるのですね」
仕組みを解説してオーラバトラーサイズのグラインダーの製作をボウに依頼した。ついでに旋盤やフライス盤等の俺の知っている工作機械も説明しておく。これで少しは完成が早まるだろう。
もしかしたらオーラチェーンソーやオーラドリルができるかもしれない。
「お帰りなさいませ、コーイチ王」
「ああ。留守中、なにかあったか?」
最近は俺が城を離れる時は、レベルが
「ドレイクからの使者が参りました」
「見せたいものがあるからラース・ワウにきてくれとのことでしたぞ。是非とも国王の目で直に見て欲しいと」
「こりないやつらですぜ。まだ王の命を狙ってるんですかい」
「いや、そうじゃないだろう。俺の知ってる物語にもある流れだ。たぶんオーラシップを見せてくれるんじゃないかな?」
オーラシップを、自分の強大な戦力を見せつけて協力したほうがいいよと半ば脅すのだ。
バイストン・ウェルの人間には有効な手段だろう。
俺は知ってるから意味ないけどさ。
「オーラシップ。空を飛ぶ戦艦、でしたな?」
「ああ。設計技術をリに譲渡しようかという誘いもあるはずだから、もしかしたらそれをこの間の詫びにするつもりかもしれないな」
「なるほど。バーンも我らの戦力にビビッていやしたし、懐柔しようとしてもおかしくはない、か」
見せられると思うオーラシップ『ナムワン』は戦艦というには武装も少なく、輸送艦レベルなんだけど、さっきのように強獣素材を運ぶには便利だろう。
「それにそろそろドレイクに会っておくのも悪くないかもしれない。地上人も紹介されるはずだ」
場合によってはそのままお持ち帰りに……サーラが脱出の準備をしてるからその必要はないか。
「護衛として騎団本隊を連れて行く。ラース・ワウを直接目にしておこう。マスタードラウゲン」
「うむ。留守は任されよ」
たしかビアンの町にガッターが多数侵入してくるフリーシナリオが発生するんだけどこれはマスタードラウゲンの
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7話 詫びの品
「お初にお目にかかります、コーイチ王」
「こちらこそドレイク殿」
当たり前だがドレイクもアニメやゲームと同じ顔をしていて、後にバイストン・ウェル制覇を目指すことになる領主だけに独特の存在感があったが、華琳ちゃんを嫁に持つ俺にはたいしたことはない。気圧されるようなことはなかった。
「本来ならばこちらから出向くべきであったでしょうが、なにぶんガロウ・ランや強獣の始末に忙殺されておりましてな。申し訳ない。不幸な誤解もあったようですが、これからは隣り合う領地同士、水に流して協力していきたいものですな」
「誤解ですかい? そちらの不始末で王を殺されそうになったのを水に流そうとは、ずいぶんと虫がよすぎやしませんかい?」
「貴様!」
ザンが軽く殺気を含ませながら挑発すると、ドレイクのそばに控えていたバーンが腰の剣の柄を握る。ふむ。抜きはしなかったか。
そしてドレイクはこの程度ではビビらない、と。けっこう場数を踏んでるのかね?
俺なんて恋姫世界で鍛えられてなかったら、この雰囲気だけで震えてそうなんだが。
「よい、バーン。コーイチ王、正式な謝罪は後ほどとして、まずはこれを見ていただきたい」
城の中庭が見える窓に案内される俺たち。
そこからはナムワンが飛び立つのが見えた。
うん。大きいな。あの強獣ルグウよりも大きい。たしか50
「ナムワンという」
「ここにくる途中でも見えたけど、うん。やはり飛ぶんだな。地上界の輸送ヘリの大きいやつみたいな感じか」
ここまでアルダムで飛んできてるんだから、もう見てるんだよね。攻め込むことも考えて上空からしっかり観察しながら来たんだし。
フィナやザンたちは実際に見て驚いている。前もって説明してなかったらもっとショックを受けていたかもしれない。
「さすがですなコーイチ王。いかにもオーラシップは兵やオーラマシンも迅速に運べるオーラマシンとなっておる。いかがですかな、あれの設計技術を譲渡しよう」
え? いるかどうかこっちに聞いてこないの?
問答無用でくれちゃうの?
「無論、これを謝罪とは申しませぬ。正式な謝罪はコーイチ王が御所望の物を用意しておりますぞ。リとは友好な関係を続けたいのでな」
この程度、只でくれてやるぐらいうちの技術はスゲーんだよ、ってことか。
さらには機械の館を案内すると言い出した。ゲームでもあった流れだけど、自分の方が強いとダメ押しをしたいのだろう。
もちろん、それは了承しておく。今回の目的である地上人に会えるからだ。
◇
ラース・ワウの機械の館は当然のようにリのものより大きかった。よく見ておこう。真似しやすそうな機械とかあったら参考にしたい。
しばらく機械の館を観察しているとオーラマシンの開発者ショット・ウェポンを紹介された。
軽く会話したところ、アニメと同じだと思う。こいつは野心家なのでヘッドハンティングはありえない。
「ショット、例のものを」
「よろしいのですか、あれは動かせる物では」
「かまわぬ。早くしろ」
ドレイクの指示で運ばれたのは1機のオーラバトラーだった。
アルダムやゲドよりも大きな機体。特徴的な頭部の飾り角。前半の主役メカであるダンバインによく似たシルエット……ってこれは!
「サーバインという。コーイチ王、我が方のドロが奪われ迷惑をかけた謝罪としてこれを受け取ってくだされ」
えええっ、これくれちゃうのかよ。
たしかにサーバインはプロトダンバインって設定があるから、ここに今あってもおかしくはないかもしれないけど!
コクピットハッチでもあるキャノピーを開けながらショットが補足する。
「言っておきますがこのサーバインは稼働に非常に大きなオーラ力を必要とします。簡単に動かせるとは思わないでいただきたい」
「なに、リの誇る聖戦士であるコーイチ王なら動かせよう」
ああ、そうか。きちんと謝罪をしたという形を見せるとともに、動かせなかったら俺が恥をかくということか。
たしかに聖戦士伝説でもサーバインの必要オーラ力は高かった。だけど聖戦士伝説の
ってよく見たら操縦席、OVA――総集編ビデオのオマケともいう――版の立ち乗り式のやつじゃねえか!
まさか『喰われる』ことはないと思うが……まあいい、どうせセーブはしてある。
「面白い。乗ってみていいか?」
「うむ。念のために看護の者を呼んでおけ。コーイチ王に万が一があってはまずい」
ドレイクめ。気を使うフリをして俺が倒れることが前提とか笑わせる。
だぁがしかし!
俺ってば
ただその操縦席なんだけどさ、兜や鎧をつけたままじゃ乗れないタイプなんだよな。パイロットの体形もかなり限定されるし。胸に被さるパーツを考えると女性も無理かもしれない。聖戦士伝説でヴァルキリアが乗ってきた時は操縦席は普通のタイプに変更してるのかな。
む。眼鏡も駄目なの? 思考伝達用の頭部装備に干渉する?
仕方ないな。
「え、コーイチさん?」
「なんと……」
「美しい……」
眼鏡を外した俺の顔に注目が集まる。
勘弁してくれ。俺は素顔を見られるのは苦手なんだっての。
王が弱みを見せるわけにはいかないから、それを顔に出さないように注意しないといけないのがさらにツライ。
「お、お父様、その方は?」
って、なんだかギャラリーに女の子が混じってきたんだけど。
その子も見覚えのある顔。
「おお、リムル。リの国のコーイチ王だ。粗相のないようにな」
「これはコーイチ王。ドレイク・ルフトの娘、リムル・ルフトにございます」
リムル・ルフト。
マーベルの顔が濃いから最初はリムルがヒロインだと思っていた者も多いよね。俺もだよ。OVAだと転生者がちゃんとヒロインになってるしさ。マーベルどこいった?
で、このリムル、恋に生きるのは構わないけどそのせいでまわりに迷惑をかけまくる非常に面倒な子だったりする。
その残念なリムルがなんでここに?
聖戦士伝説ではこんなことなかったのに。
っと、真っ赤になりながらもリムルが挨拶してくれたので返さなきゃな。
「俺はコーイチ・アマイ。紹介されたようにリの王だ。よろしく」
「は、はい! よろしくお願いします!」
あんまり見つめないでほしいが、そうとも言えず逃げるようにサーバインに乗り込んだ。
カシャカシャっと兜、胸当て状のパーツが俺に装着される。……あれ、なんか視界が変だ?
これってもしかしてサーバインの目が見ている風景?
「どれどれ」
座らされていたサーバインを立たせ、軽く動かしてみる。なんだろう、アルダムとはかなり違うな。
「まさか、こうも簡単に起動するとは……」
「コーイチ様……」
サーバインの耳が拾った音も聞こえてくる。驚いているな禿。ざまみろだ。
リムルの声が熱っぽかったのは気にしない方向でいこう。
さすがにこのまま飛行試験ともいかないので再びサーバインを座らせて、操縦席を後にする。
「たしかにゲドより少し疲れるな。あのコクピットも変な感じだ。これ、このまま持ち帰ってもいいのか?」
「……さすが聖戦士殿でございますなコーイチ王。どうぞお持ちくだされ」
ドレイクもショックを受けたのか、先程までの覇気がない。
まあ、サーバインをくれたのは褒めてやってもいいのだが。と偉そうに思っておこう。
「お父様、お話が」
「う、うむ。コーイチ王、すまないが儂はこれで。ショット、ゼットと関羽の紹介を頼んだぞ」
リムルに引きずられるようにドレイクは去っていった。
ショットはサーバインのチェックをしようとしていたがドレイクに命じられてそれを中断。
「コーイチ王、お身体は大丈夫か?」
「言ったろう、少し疲れると。それともドレイク殿はその程度では済まないような物を謝罪の品にしようとしたのか?」
「い、いえ……実はここにはまだ2人ほど地上人がいるので紹介します。1人はコーイチ王ほどではありませんが強きオーラ力を持ち、聖戦士と呼ぶに相応しい者です」
都合が悪いのだろう、あからさまに話を変えるショット。まさかマジで喰われる可能性があったんじゃないだろうな?
まあいい。やっと関羽に会えるか。
◇
呼びに行った兵が連れてきたのは予定どおり、ゼット・ライトと関羽だった。
関羽の衣装はバイストン・ウェルのものになっていたために、大陸とフランチェスカのどちらから召喚されたのはまだわからない。
どちらから召喚された方を俺は望んでいるのだろう。
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8話 ウ・カン
ゼット・ライトはアニメ及び聖戦士伝説とあまり違いはなさそうだった。
わりとのん気なことを言っているけど、このままだとショットに功績を全部持っていかれてしまって、それを愚痴ることになるぞ。
で、肝心の相手の方なのだが。
「関羽?」
「い、いかにも。関雲長です!」
しかもなにか様子が微妙?
聖戦士伝説のここでのマーベルはそうだったとはいえ、ラース・ワウからの脱走が近いからってあの関羽がこんなに緊張するとは思えないんだが。
「俺は天井皇一。今はこっち風にコーイチ・アマイって名乗ることにしてる。君たちよりも先にバイストン・ウェルに落っこちちゃってさ、隣の国のリでなぜか王様をやっている」
関羽の場合はウ・カンか。いかにもダンバインぽい名前になるな。もしくはゾイドジェネシス?
ってそんなに睨まないでください。
「関羽には新しいオーラバトラーのテストパイロットをやってもらっています」
なぜか緊張で無口になっている関羽に代わりショットが紹介を続ける。ゼットのことがないのは自分が開発者だって売り込みか。こんな感じでゼットが手柄を総取りされ、まるでダメなオーラマシンの開発者になるのかな。
「新しいオーラバトラーってこのサーバインじゃないのか? ちょっと疲れたがすごい力を感じた。大したものだな」
「開発中ゆえ、詳しくはお伝えできないのが残念です」
ふむ。聖戦士伝説だとゲドを上回ると自負していたけど、今造っているはずのダンバインじゃサーバインに劣るんだよなあ。だから言えないか。
というかなんでか知らんが聖戦士伝説のダンバインって弱いんだよね。アニメ準拠ならもっともっと強くないとおかしいのにさ。
「ふむ。楽しみな話だがそろそろお暇する時間のようだ」
「そうですか、では……」
ここでゲームと同じく関羽が俺たちを城門まで送ると言ってきてくれた。
うん。全然話ができてないからもう少し話したいもんな。
召喚される前の大陸がどんな状況だったのかとか。
「問題はサーバインをどうやって運ぶかだが……どうだろう、ドレイク殿がナムワンの技術提供を申し出てくれている。ここでも売っているようだし、買っていっても構わぬか?」
「少しお待ちを……」
ショットが伝令を走らせて待っている間に関羽と話す。
「……コーイチ王、劉玄徳殿のことをご存知ないだろうか?」
「劉玄徳って劉備? ごめん、名前ぐらいしか知らないよ。大事な人なのかい?」
「ええ……」
そうか。この関羽は俺の知ってる、一刀君と結婚した関羽ではない。
真・恋姫か、それ以降の恋姫世界から召喚された関羽なのだろう。
あっ、ショットのとこにさっきの兵が走ってきた。
「お待たせいたしました。どうぞ、お買い上げくださいますようにとドレイク殿からです。価格も通常よりもお安くするようにと命を受けております」
「通常? まるで他にも卸しているような言い方だな。当然か。これほどのオーラマシンだ。各国も欲しがるか」
「……さすがは賢王の後を継いだ王、ですな」
いや、知ってるだけだってば。
事前にオウエンに相談していた額――俺の覚えていた聖戦士伝説でのナムワンの価格――の半額でナムワンを購入する。これも『かね×2』の効果だろうか?
サーバインを搬入してもらって俺たちは帰路につく。
関羽の見送りは城門ではなく、ナムワンのドックまでとなった。
「ここまでかな? このまま行くと関羽までお持ち帰りすることになる」
「そ、そうですね」
あれ、関羽落ち込んでるな。劉備のことが聞けなかったのがショックなのか? リに来たくなくなったら困るぞ。
でもこれ以上関羽と接触しているとドレイクに疑われるかもしれないし……フィナに伝言を頼むか。
ナムワン級にアルダムを収納させている間に、フィナが関羽のそばまで飛んで行き耳元でメッセージを聞かせると、再び関羽は真っ赤になってゆっくりとナムワンのブリッジを向いてから頷いてくれた。
これで大丈夫だろう。
あとは慣れないナムワン級を飛ばして無事に帰るだけだ。艦長はいずれ巨大戦艦の艦長になるんだからとザンにやらせてみる。
「関羽なら脱走程度でそんなに緊張しないと思ったけどなあ」
「あの人が真っ赤になっていたのはコーイチさんのお顔のせいですよぉ……」
「え……げっ! ナラシ!」
「はっ」
そういや眼鏡外したままだった。サーバイン入手に浮かれてすっかり忘れていたよ。預けていたナラシから慌てて眼鏡を回収し、装着する。
「別れ際に「待っている」なんて伝言を貰っちゃ、きっと勘違いしてますよぅ」
「HAHAHA。それはないさ」
いくら一刀君と結婚してない関羽だからってそんなことはないよ。
……たぶん。
「コーイチ王の素顔が知れ渡ったら国中から縁談が舞い込みやすぜ」
「ザン、俺が結婚してるって知ってるだろ。オウエンにもそういうのは断るように頼んでいる」
俺に縁談持ち込むくらいならゴードに、いやマスタードラウゲンに嫁を見繕ってやれってさ。
トルール城に帰投後、機械の館に直行しサーバインとナムワンを徹底的に調査させる。爆弾や盗聴器の類が仕掛けられてないかも含めて。
そして解析が終わったらサーバインの操縦席を普通の物にできないか改装の計画を立ててもらう。このままだともしも華琳ちゃんを運ぶことになった時に膝上に座らせることができないからね。
でも実際に改装するのはダンバイン入手後になるのかな。参考になる操縦席が必要だ。
◇ ◇
数日後。タペヤラ――白亜紀の翼竜の一種――という艦名にしたナムワン級の慣熟飛行のついでの強獣狩りから帰ると、サーラも戻っていた。
関羽を連れて!
スゴイ。完全に聖戦士伝説とは違う展開である。
「……あの、コーイチ王は?」
「俺だけど? ……ああ、そうか。オウエン、人払いを」
謁見の間で会ったのがまずかったな。余計な目撃者が出ないようにしてから、眼鏡を取る。
「コーイチ王御本人でしたか。一瞬、影武者かと」
眼鏡してても見分けをつけてくれ。
無理か。嫁さんたちだってわかってくれたの華琳ちゃんだけだったもんな。
「なんとまあ、ラース・ワウで噂になっていた魔性の美を持つ聖戦士ってのがホントだったとはね」
「なにそのイタイの。やめてくれサーラ。俺はただの地味なおっさ……男だよ」
おっさんって言うには若返っちゃったもんなあ。
身体は青年、頭脳はおっさん、なのさ。
「よく来てくれた関羽。歓迎するよ」
「は、はい。……地上へ戻る手立てを探っているというのは本当なのでしょうか?」
サーラはそれを餌に関羽をスカウトしたのか。
ドレイクのとこやギブン家の密偵だと望み薄って感じだったんだろうな。
「本当だ。俺も帰りたい。だが、簡単には帰れそうにない。それまで俺は聖戦士としての務めを果たそうと考えている。関羽も民のために力を貸してくれないか。当面はリのためということになるけど」
「それは無論です。あなたを主としましょう、ご主人様」
「えっ?」
「お嫌、なのですか?」
「う、ううん。ちょっと驚いただけだ。よろしく頼むよ、関羽」
まさか俺が関羽にご主人様と呼ばれることとなろうとは。一刀君と結婚した関羽と違うとはわかっているとはいえ、微妙な感じだ。
この関羽はまだ一刀君とは会ってないんだろうか?
真や革命世界の関羽だったら一刀君が別勢力というのもありえるが……魏には行ってなさそうなので俺の嫁たちは手を出される心配はない。そう信じるしかない。
「私のことは愛紗とお呼びください」
「それが君の真名だね。俺には真名がなくて教えることができないんだけどいいのかい?」
「構いませぬ」
真名まで貰っちゃったよ。華琳ちゃんは褒めてくれるだろうか?
それとも少しは妬いてくれるだろうか?
「真名ってなんですか?」
「家族や親しい者以外は知っていても呼んじゃいけない神聖な名前、であってるかな、愛紗」
「はい、そのとおりです」
フィナを見る愛紗の目が輝いている。可愛いものと認識されたみたいだ。
フェラリオを妖怪変化って恐れることはなさそうで、ちょっとほっとした。
「愛紗。がんばって一緒に地上に帰ろう」
「はい、ご主人様!」
……心友の一刀君はどうしているかな?
君の愛紗じゃないから、「ご主人様」って呼ばれても俺のこと、嫌いになったりしないよね?
さて、無事に愛紗を仲間にできたわけだがこれからが問題だ。
なぜならこの次にくる選択はとても重要なもの。
ここの選択でロウルートかカオスルートかが決まってしまうほどのものなのだ。
もちろん上書きしないスロットにセーブはしておくが、どっちを選ぶか正直な話、まだ悩んでいたりする。
愛紗を仲間に入れた以上、ロウルートの方がいいかな?
じゃないと愛紗がゼラーナに行きそうかもしれない。
だけど、華琳ちゃんだったらカオスルートで覇王になるのを目指すだろうなあ。
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9話 黒髪の騎士
愛紗から詳しい話を聞くと、劉備、張飛と義姉妹にはなっているが旗上げの途中で劉備が『天の御遣い』を探していたとのこと。
むう。かなり初期の時点でオーラロードを通っちゃったみたいだな。
「それで、エ・フェラリオが愛紗とゼットを召喚したのか?」
「はい。エ・フェラリオに召喚させたとそう言っておりました」
エ・フェラリオってのはミ・フェラリオの成長体で見た目はほとんど人間と同じ。ただしオーラロードを開けるほど力が強くなっている。でもそれは禁忌なのでやっちゃうと罰を受けるんだけどね。
30センチから人間大に進化するって○○モンと同レベルの生物かもしれない。ミフェラモン進化~エフェラモン!
ドレイクはそのエ・フェラリオを捕獲して地上人を召喚させている。当然バイストン・ウェルでは許されない行為だ。
捕まっているエ・フェラリオを早く助けた方がいいのかもしれないけど、俺としてはまだ召喚してもらいたいんだよね。たとえ禁忌でも。
だってもしかしたら華琳ちゃんたち俺の嫁さんの誰かが召喚されるかもだし、そうじゃなくてもここの地上界がどの世界なのか確認できる。
早めにエ・フェラリオを助けるのは、それを確認してからロードしてやり直す時でいいはずだ。
……
愛紗はいずれ地上界に戻るからと、リの騎士ではなく俺の直属の配下となった。ある意味レン・ブラスのポジションかもしれない。
あと、地上人とはいえ新参者を重用することにリの騎士たちから不満の声は上がらなかった。強獣狩りで関羽の強さを思い知ったからである。
もしこの愛紗の世界に行けたとして劉備とはどう話をつけるかちょっと悩むところだが、彼女の脳内では俺を天の御遣いとして劉備もろとも下につく心積りのようだ。
うん。真・恋姫、蜀ルートの一刀君ポジションだね。
なんでだ。
……実際に俺がリの王となっているから、それに相応しいと勘違いしているのかも。
「ご指示どおりに戦っただけで、これほど強くなるとは! これが天の知識なのですね、ご主人様!」
飛竜でレベル爆上げしてもらったら余計にそう思うようになったみたい。
もしかしたら魏の最強の敵を作り出したかもしれない。この超強化愛紗が華琳ちゃんの敵に回らないように気をつけないと。
そして、ラース・ワウから脱走した関羽がうちにいるとバレるのは嫌だから、正体を隠してもらうことにした。
「美髪公……いや黒髪の騎士としようか?」
「は、はい」
これでバーンも黒騎士を名乗りづらくなったでしょ。パチモンぽくてさ。
仮面も黒騎士のフルフェイスのにしようか迷ったけど目元だけ隠す方が恋姫的にあってると思ったので、黒騎士繋がりでコードギアスの黒の騎士団のバイザーみたいなのを使ってもらっている。
もう愛紗だとは気づかれないはずだ!
サーバインとナムワンのチェックも終わった。
爆弾等は見つからなかったが、やはりサーバインを開発しての量産はできないらしい。世界の制約なのだろうか?
残念だ。うちのカンストオーバーの騎士たちなら動かせるだろうに。
独自にサーバインの量産型とかが造れないかボウに相談したけど難しいようだ。
「サーバインの元になったゲドをベースにがんばってみます」
「頼む」
たぶん出来ても『試作型ダンバイン』程度だろう。あれでも強いけど、名前と見た目がちょっと、ね。
サーバインは操縦席の換装はまだだが、装甲を黒く塗るように指示した。
愛紗には俺が使っていたアルダムに乗ってもらうことに。
「オーラバトラーのテストパイロットだった愛紗には余計なお世話だろうけどアルダムにも慣れていてくれ。たぶんわかっていると思うが戦が近いようだ」
「お任せを!」
この超愛紗ならオーラバトラーなしでもきっとガッターぐらいには勝てそうだけどね。
◇ ◇ ◇
アの国から使者がやってきた。ただしドレイクではなく、やつと敵対するアの領主ロムン・ギムンの使者である。
「予定どおりか」
「どうしやす?」
「もちろん会うさ」
もうどうするかはだいたい決めたけど、実際に会って話を聞いてみたら考えが変わるかもしれないしね。
偉そうに……華琳ちゃんをイメージして、と。
「ロムン・ギブンの子、ニー・ギブンであるな?」
「さようにございます。……さすが賢王を継ぐコーイチ王。私のことをお知りでしたか」
そりゃ知ってるよ。ダンバインのメインキャラだもん。
マジでミンキーな髪型だ。実際に見ると凄いな。
「急な使者となればそれなりの理由があるのだろう。察するところ、ドレイク殿のことかな?」
「……そこまでお気づきでしたか。ドレイク・ルフトは我がアの王フラオン・エルフに謀反を企てております」
「だからそれを防ぐために力を貸せと? で、あるならば他国ではなく、まずは自国の王にこそ打診すべきだろう。それができぬのはアの国の王が噂どおりだからであろうか」
話が長くなりそうなので先手を打つ。どう考えても外国の王に頼むっておかしいよね、って。
アの国の王、フラオン・エルフはエルフとは名ばかりの愚王として有名だ。自らは享楽にふけりながら国民には重税を課し、地方領主の不穏な空気にも気づかない。
「コーイチ王はドレイクと因縁があるではございませんか」
「既に謝罪は受け入れている。これでリがドレイクを討ったら、アは侵略行為と受け取るだろう。そうならないとしてもフラオンは面目を潰されたと怒るぞ。お前たちは国という後ろ盾が欲しいのかもしれないが、他国に助けを求めるのは国家間の問題に発展しかねない悪手だ」
自国の領主が他国の王に倒されたら、そりゃただで済ますわけにはいかないでしょ。こっちはもうサーバイン貰ってるから暗殺未遂の落とし前、ということにもできない。
「ドレイクの機械化軍の力は強大無比です。次にドレイクが目指すのは世界支配ですぞ! それを防ぐため、なにとぞ聖戦士のお力を!」
「ドレイクを討ちたいだけならあるだろ、いくらでもやりようがさ。それをしないのはなんでだ? ギブン家の名を高めて発言力を上げたいからだろう?」
リが後ろ盾になれば少しはフラオンも言うことを聞くと思っているのだろうか?
逆だ。アニメ、ゲームのままの性格なら意固地になってますます話は聞いてもらえなくなる。
「違う! アの国の、ひいてはバイストン・ウェルのためです!」
「国を憂うのなら、なぜロムンはフラオンを諌めない? ドレイクがそれをやろうとしているだけかもしれんぞ」
「ドレイクのしようとしていることは謀反です。許されることではありませぬ!」
うーん。こうして考えるとやっぱりギブン家の大義名分も微妙だな。愛紗やそれこそ恋姫劉備ならすぐに納得したかもしれないけどさ。
護衛ということでそばに控えている仮面の女性をちらりと見る。愛紗である。
できれば最後まで黙って見ていてくれと頼んでいるけど、ニーに賛同したりしないでくれよ。
「そうまで言うのならばフラオン王に許可をもらってこい。でなければ助勢などできん。お前の言っているのはアの国いや、ギブン家のためにリを無駄な争いに巻き込もうとしているだけだ」
「ドレイクが次に目指すのは世界支配と言ったはずです。民も戦乱に巻き込まれますぞ。それを防ぐためにもお力添えを願っているのです!」
なにその脅迫。なんか詐欺師の手口みたいに思えてきたんだが。
ニーはドレイクを倒すことこそ正義で、それを行うためなら他はどうでもいいって考えのようだ。
「他国に助勢を願って、その国がアと戦乱になるのは構わぬと? ドレイクの討伐後はリの国がアの国を狙うとは思わないのか?」
「コーイチ王ならばそのようなことはなさいますまい」
なんて都合のいい考えだろう。
俺はお前の駒じゃないんだけど。
「ずいぶんと見縊られたものだ。俺はゴードに託されたリの国を護るためならば不穏な隣国を放置などせぬ。どうせギブン家から次にくる使者はフラオンを倒す助勢を、というのは明白だしな」
「ギブン家はそのようなことは望んでおりませぬ!」
いやさ、そうしないと結局はリとアの戦争になるしかないんじゃない?
ギブン家の口車に乗ってドレイクを討伐した場合、ロムンに革命してもらって新政府樹立、ってのがリとしては当然の道筋になりそうなもんなんだけど。
聖戦士伝説の場合は、すぐにドレイクに勝つことはできないんだけど今のカンストオーバーなリの騎団ならラース・ワウを壊滅させることができる。
ドレイクを倒すと決めるのなら俺は手加減などせずにそうするだろう。
……だけど、その後のことを考えると微妙なんだよなあ。
戦争になったらリにも被害は出る。まあ、これはカオスルートに行っても同じだから考えても無駄かもしれないとして、戦争に勝ったとしてもアの財政って愚王のせいでガタガタっぽいだろ。そんな国の面倒まで見たくないってのが本音だ。
華琳ちゃんならどうしただろうか?
「そんなだからドレイクがつけあがるのだ。フラオン王に不満を持つアの者は多い。それがドレイクを増長させている。どんな野心を持っていようがアレよりはマシなんじゃないかと錯覚するだろうさ」
「さようなことはありませぬ!」
「ニー・ギブン、我が国とてドレイクを脅威に感じていないわけではない。いや、近隣諸国の全てが関心を持っているはずだ。どこかののん気な王を除いてな。だが、王としてはそれだけでは動けん。強獣やガロウ・ランの討伐ならばいざ知らず、領主を討とうというのだ。それなりの手順が必要だろう」
「ことは急を要するのです。ドレイクは再び、地上人の召喚の準備を進めているのです」
え、もう? まだ第2章のはずなのに。
……愛紗が
「ならばこそフラオン王を説得するのだな。でなければリの国として動けんと言っているだろう。今のままでは手を貸すことなどできん」
断れられたニーはすぐに帰っていた。
これでとりあえずはカオスルートに進むか。
協力を約束したらギブン家から『ダーナ・オシー』と『フォウ』が貰えたんだけどね。それはまあいいや。
同じ武装系統でより強いアルダムがあるのでダーナ・オシーはいらないし、『ウィングキャリバー』のフォウは多目的に使える便利なオーラマシンだけど、オーラバトラーの輸送という本来の利用法を考えると合体できるオーラバトラーがかなり制限されるのでイマイチだ。
ウィングキャリバーは聖戦士伝説オリジナルのジームルグが生産できるようになればそれを使えばいいだろう。聖戦士伝説ではウィングキャリバーはそれほど使い道のないユニットだったしさ。
今回の決定後もカオスルートからロウルートへのルート変更の方法はあるので特に悩む必要もない。問題があるとすれば愛紗なのだが。
レン・ブラスのように裏切らないでくれよ。
「愛紗は彼の言う正義をどう思った?」
「心を惹かれるものもありましたがご主人様の話を伺うと、たしかにドレイクを倒せばそれで全てが丸く収まるわけではないというのがわかりました」
「わかってくれて嬉しいよ」
「はい!」
愛紗には言えないけど本当はさ、次の召喚を防ぐわけにはいかないってのも大きな理由なんだよね。
誰が召喚されるのやら。
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10話 召喚されたのは
サーラからの情報で目撃されたという白い飛竜の捕獲に、マスタードラウゲンと竜騎士隊をリのアッサーブの森に派遣した。オーラマシンは無しでだ。
これもテストである。
このフリーシナリオはオーラマシンを開発していなければ『パンツァー亜種』という強力な白い飛竜が入手できるのだ。
本来ならばリの国がオーラマシンを開発している現状では他の飛竜との戦闘中に逃げられてしまうのだが、派遣した部隊はオーラマシン抜きで編成し、捕獲を最優先に命じている。
これが成功したら、ゲーム知識を上手く使えればフラグが絶対ではないということになるはずだ。
そしてマスタードラウゲンたちは無事にパンツァー亜種を捕獲して帰城した。ちゃんとテイムできているようだ。
よし! これでルートに悩むことが減りそうだ。だって聖戦士伝説って分岐が多くて大変なんだよね。途中でリカバーできるようになればだいぶ気が楽になる。
第2章のシナリオもこれで終了。
まあ、ちょこちょこ変更されたはずなので、もう章もおかしくなっているかもしれないが。
◇ ◇ ◇
ドレイクからまた使者がきた。
持ってきた書簡によればドレイクの娘リムルとの縁談の申し込みだった。
……はい?
新たに地上人を召喚したからラース・ワウにこいってのじゃないの?
「リムルの嬢ちゃんもコーイチ王の素顔を見てますぜ。一目惚れしたのだろうぜ」
「いえ、ドレイクの地盤固めの一環でしょう。政略結婚の申し込みですな。コーイチ王を一人娘の婿として相応しいと認めたのかと」
ザンとオウエンが勝手なことを言っている。
リムル・ルフトはバーン・バニングスか、クの王ビショット・ハッタが婚約者になっていて、ニー・ギブンの恋人だったはずだよな?
「オウエン、俺の縁談は断ってくれと言ってるだろう」
「それだけではなく、新たな地上人を見せたいのでラース・ワウにこいともあります」
「そうか、ちゃんとそっちもあったか。地上人のことは詳しく書いてないか? 名前や人数とか」
「地上人に関してはそれだけです。メインの内容は縁談の申し込みですな。リムル殿の年齢や趣味など詳しく書かれていますが読みますか?」
なんだよそれ。お見合いするつもりはないんだが。
地上人のことがあるので行かないわけにもいくまいが、気が重い……。
「縁談は断るが召喚された地上人は気になる。
「地上人……大陸のことを知ってる者だろうか?」
黒髪の騎士こと愛紗も行く気らしい。
気になるのはわかるから連れていくか。城に残していってゼラーナ隊にスカウトされても困るし。
サーラも報告にきたが、地上人の報告ではなく国境付近で不審機が目撃されたというもの。つまりはフリーシナリオの情報だった。
これがギブン家のオーラマシンなんだよね。ラース・ワウに行くついでに戦っておくか。
っと、出撃の前に開発可能になったウイングキャリバー『ジームルグ』のプランにゴーサインを出しておかないと。
◇
サーラの報告にあった場所でギブン家のオーラマシンと遭遇した。
「やはりゼラーナ隊か」
「やっこさんたち、やる気のようですぜ」
「こないだ助勢を求めにきたのに、リの騎団の強さを知らないのかね? 各機、戦闘開始!」
マーベル担当の愛紗がいないのでどうするか気になっていたが、ダーナ・オシーにはニー・ギブンが乗っていた。
聖戦士伝説でもギブン家の兵が乗っていることもあるけど、俺的にはダーナ・オシーには女性キャラが乗ってもらいたい。フォウに乗ってるキーン・キッスと代わりなさい!
そしてゼラーナのパイロット表示はドワ・グロウ。中の人的に貂蝉じゃないかとかなり不安だったが違ったようでなによりだ。
聖戦士伝説の再現なのか、俺は意識を集中するとオーラマシンのパイロットの姿と名前もわかるようになっている。さらにウィンドウを開けば敵だろうとステータスまでわかるように。便利すぎる。
恋姫世界でもこれがあれば……あってもあまり意味はなかったか。もしも俺が管理職なら多少は役に立ったかな、って程度だろう。
マーベル無しのゼラーナ隊は敵ではなかったが、ゼラーナとナムワン級では圧倒的に速度が違いすぎて逃げられてしまった。
「相手の動きを観察しすぎたか。……それとも世界の制約で絶対に逃げられた?」
「ご主人様、追いますか?」
「いや、ラース・ワウに向かおう」
あいつら、もしかしてラース・ワウへ向かうタペヤラを待ち伏せてたつもりだったんだろうか?
◇
ラース・ワウには昼頃ついたがドレイクは、地上人はまだ戸惑っているから会わせるのは落ち着いてからと先送りにしようとする。
今晩の宴席で会わせてくれると言うのだが。
聖戦士伝説と同じだけど……あれ? 地上人を召喚したから俺が呼ばれたんだよね? なんでまだ落ち着いてないの?
「コーイチ王、済まぬが私も準備で忙しい。その間はリムルにお相手させましょう」
「いや、ならばこそ早く地上人に合わせてくれ。同郷の者が説明した方が理解も早いだろう」
宴席ではゼラーナ隊が襲ってくるからな。ゆっくり会話もできん。
どうしても! と強く出てやっと地上人に会わせてもらった。
「ご紹介いたそう」
ドレイクがもったいぶっているが、俺は紹介されるより先にその名を呼ぶ。
待ち焦がれた愛しい名を。
「華琳ちゃん!」
あ、やばい。真名で呼んでしまった。もし俺の華琳ちゃんじゃなくて別の曹操だったらどうしよう?
「皇一」
「本当に華琳ちゃん? 俺の華琳ちゃん?」
「お知り合い、なのですか?」
その場に居合わせた全員が驚いていたが、真っ先に復活した仮面愛紗が聞いてきた。
「あ、ああ。彼女は曹操。俺の妻だ」
もうはっきりとわかった。華琳ちゃんだ、間違いない。なんでわかるかは夫婦だからだ。俺たち通じ合ってるもん!
なのにさ。
「本当に我が夫かどうかまだ疑わしいところがある。眼鏡を外しなさい」
「いや、俺だってわかっているよね? 華琳ちゃんならわかるよね?」
「眼鏡を取りなさい。そうでなければはっきりしないわ」
絶対に華琳ちゃんだ。だって口元が笑ってる。
俺だってわかっていて言っている。
この前道場で会った時に確認したじゃんさ!
けれどやっと会えた妻の要求だ。素直に従うしかないだろう。
「わかったよ、これでいい?」
「ええ。お前は私の夫よ。間違いないわ」
「華琳ちゃん!」
やっと抱きしめることができた。
うっ、いかん。涙が。
「相変わらず泣き虫なのね」
「ず、ずっと会えなかったんだ。堪えられるわけがない」
けど、いつまでも泣いているわけにはいかないのですぐに切り替える。
若返ったおかげで涙腺もちょっとは強いのだ。
「恥ずかしいところを見られたな」
「い、いえ……ご主人様、結婚なされていたのですか?」
あれ、愛紗には説明してなかったっけ?
「皇一、その者は?」
「彼女は黒髪の騎士。わけあって顔を隠しているけど俺の直属の騎士だよ」
察してくれ華琳ちゃん。
今の愛紗は関羽であることを隠していると。
「そう。夫が世話になっているわね」
「いえ、私こそお世話になってばかりです」
それを聞いた華琳ちゃんはこっちを向いて微笑んだ。よくやった、って褒めてくれている……わけじゃなそうなのがちょっと怖い。
もしかして怒っている?
ここは話を変えた方がよさそうな雰囲気。
「ドレイク殿、我が妻の保護、感謝する」
「まさかコーイチ王の奥方とは……」
「そちらは孫権殿か?」
「え? は、はい」
急に名前を呼ばれて驚く孫権。
まさか自分の名を俺が知っているとは思ってなかったようだ。
髪も長いんでまだ孫策は生きているみたいだな。
「俺は天井皇一。今はこちら風にコーイチ・アマイと名乗っている。君たちよりも先にこのバイストン・ウェルへときて、色々あって隣国リの国王となった。そっちの君は?」
「北郷一刀だ。その名前だと日本人? 俺と同じくらいの年なのに王様ってすごいな」
「こう見えておっさんなんだよ」
召喚されたのは華琳ちゃん、孫権、そして北郷君の3人か。愛紗と同じように、北郷君と孫権は俺のことを知らないようだ。
真・恋姫以降の人物なんだろう。
俺の心友とは別人なのか……。
「ドレイク殿、この3人、リの国に連れて帰るがよろしいか?」
「奥方だというソウ・ソウ殿はわかるが、残りの2人もと言うのであるか?」
「孫権殿は、本人とは直接面識がなかったのだが彼女の姉妹には世話になっていてな。妹君の孫尚香殿は私と曹操の結婚を後押ししてくれた恩人なのですよ」
「そうね。小蓮のおかげ、になるのかしら」
シャオちゃんにも会いたいなあ。俺の心友の方の一刀君たちと幸せに暮らしていてくれるといいんだけど。
「姉君の孫策殿は……一応は我が師匠ということになる」
「姉様が?」
あの道場の主で俺が弟子ポジだもんな。
ブルマははかなかったけどさ。
「我が恩人の姉妹は我が恩人と同じ、だろう? リで地上界への帰還までお世話するのが当然というもの」
「ではカズト・ホンゴウは?」
「彼は地上界でも私と同郷の者。つもる話もあるのですよ。北郷君が残ると言うのであれば無理にとはいきませんが。どうする北郷君?」
心友と違うとはいえ、ここに残すのも気がひけるからね。
焦ったドレイクは露骨に妨害する。
「コーイチ王、それを決めるのは宴席の後でもいいのではありませんかな?」
「ふむ。俺も焦りすぎましたな。北郷君、よく考えてみてくれ」
「わかった」
ドレイクに説得されなきゃいいけど。
それにしても、彼はどのルートの北郷君なんだろうか?
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11話 ダンバイン
ドレイクが催した宴席は地上人と最新型オーラバトラー『ドラムロ』のお披露目だったはず。
アニメ、聖戦士伝説ともにそこでゼラーナ隊が奇襲してくる。国境で撃退したけど、逃がしたからきっと来るんだろうな。
その宴席までナムワン級タペヤラに戻り、華琳ちゃん、孫権と話をする。
北郷君は連れ出せなかった。今ごろ説得されているのだろう。それとも監禁されて宴席には出てこないか?
「これが船? 本当に飛ぶというの?」
「ああ、まだオーラシップは見てなかったのか。帰りに飛んでいくからその時にわかるよ」
「信じられない……」
水軍に力を入れてる呉だから船に興味があるのかな、孫権。
髪も長いんでまだ呉王じゃなさそうだけど。
格納庫のオーラバトラー、アルダムとサーバインも見てもらう。
「オーラバトラーはもう見せたもらった?」
「ええ。でもこんなに細身ではなかった」
「あれが皇一のオーラバトラーかしら。ダンバインと似てるわね」
えっ、もうダンバインを見せてもらっているのか? アニメだとドラムロだけだったはずだけど……。
ドレイクはうちの騎団の強さを見て焦ってる?
それとも俺がサーバインを動かしたから?
「あのサーバインの改良型がダンバイン、らしい」
「ダンバインは私たちのために用意した機体だと言っていたわ。元々私の物なら持ち帰るのが当然ね」
オーラバトラーで前線に出るのは危険かもしれないけど、
それに華琳ちゃんが大人しくしているとも思えない。
ドレイクに相談してみるしかないか。
ダンバインは俺も大好きなオーラバトラーだもんな。……聖戦士伝説だとなぜかそんなに強くない残念な機体にされちゃっているけど。
「まさか皇一が王となっているとはあの子たちも思っていないでしょうね」
「みんな元気か?」
「ええ。季衣はあなたに会いたい会いたいって寂しそうにすることもあるけれど元気よ」
「季衣ちゃんだけなの? ……桂花は俺がいなくなって喜んでいそうか。あっちはどうなっている?」
俺の質問の意味を華琳ちゃんは的確に捉えてくれる。
どんな世界なのか、と聞いたことをね。
「黄巾党がまだのさばっているわ」
「なにか以前との違いは?」
話を聞いていくとやはり真・恋姫†無双ではなくて革命の方っぽいな。真・恋姫†無双の方は新婚旅行中、華琳ちゃんたちにある程度を話したんだけど、革命世界で役に立つのだろうか?
◇ ◇
「ダンバインを、であるか?」
「ええ。妻がどうしてもと聞かなくて。聖戦士専用だそうだが、乗り手がいないなら造った意味もないだろう」
「しかし……あれはまだテストも済んでおらぬ。こちらとしても全て渡すわけにはいかないのだ」
「なるほど。妻と孫権殿のダンバインは渡すから、北郷一刀のことは諦めろ、と」
むう。さすがドレイクというべきか。動かせないダンバインに見切りをつけてすぐさま逆に交渉の材料に持ってくるとは。
「わかっていただけたかな。しかし、あのコーイチ王が妻に頭が上がらぬとは意外ですな」
「ドレイク、ダンバインは私たちを誘拐した慰謝料代わりにもらっていくわ」
ドレイクの皮肉に我慢しきれなくなったのか、華琳ちゃんが強気に命令する。
「誘拐などではないですぞ」
「そうかしら? あなたの命でエ・フェラリオにオーラロードを開かせて私たちを召喚させたと聞いた。これを誘拐と言わずしてなんと言うつもり?」
「そういえば書簡にも召喚したと明記されていたな。妻と孫権殿は地上界ではドレイク殿と同じく地方領主なのだ。謝罪は必要かと」
物的証拠がこっちにあるぞ、と。
春蘭がこの場にいたらドレイクに襲い掛かっていたかもしれない。いや、確実に剣を抜いているだろう。
「……そうであったか。仕方ない。お二方のダンバインは謝罪として贈ろう。ただし、カズト・ホンゴウは」
「わかっている。大事に扱ってくれよ」
「無論である。コーイチ殿の奥方は傑物であるな」
「そうだろう。自慢の嫁だ」
北郷君のことは残念だが今は諦めるしかなさそう。
このまま残ってバーンのかわりに仮面の男となるか、それともゼラーナ隊入りしてしまうのか。
◇
ドレイクが寄越したダンバインは濃紺と緑色の機体だった。
とすると北郷君がショウ・ザマってことかな。
撃墜されちゃうかもしれないトッドとトカマクポジの2人を早めに確保できてよかったぜ。
あとさ、ショウのダンバインを水色だのアクアブルーだの説明するのは間違いだからね。それは聖戦士伝説のリ軍仕様の方だ。ショウ機は薄紫か藤色、スミレ色ってのが正しい。俺としてはあっちの方が欲しかったんだけどなあ。
まだレベルの低い2人をすぐに戦わせるつもりはないが、念のためとオーラバトラーに乗ってみてもらう。
「意外と簡単なのね」
華琳ちゃんを膝の上に乗せ、
大好きなオーラバトラーに大好きな嫁と同乗。なんて幸せなんだ!
俺のサーバインでは特殊な操縦席のせいでまだこれができないのが残念。
「オーラバトラーは思考で操作できるからね。ある程度は補助的に操縦は必要だけど」
「孫権の方も上手く飛ばせているようね」
「フィナがついているからね」
孫権の方にはフィナがサポートとして同乗している。彼女がついていれば大丈夫だ。
孫権に緑色は似合わないよなあ。どっちかって言うと蜀カラーだ。って、着陸はちゃんとトカマク降りですか。腕立て状態で着陸する孫権機を見て感動してしまった。
「2人とも、体調はどう? 疲れが酷いとはない?」
「問題ないわ」
「私も大丈夫よ」
「そうか。さっきも説明したけどオーラマシンは乗り手のオーラ力っていう『気』みたいな力を使って動くんだ。このダンバインは試作品でまだ情報が少ないから、どんな異常が出るかわからないんで実戦では使いたくない。もし今晩戦闘になってもおとなしく待っていてくれ。絶対に護るから」
ゼラーナ隊と戦うことになるだろうけど2人の安全が第一だ。
召喚されたのが孫権でよかった。孫策だったらきっと止めきれずに出ちゃうだろうから。
◇
ドレイクが開いた園遊会はアニメで見たとおりのもので俺たちも参加した。もうトルール城に帰ってもよかったんだけどね。
ドラムロ見たかったし。
華琳ちゃんと孫権にも敵対勢力の奇襲が予想されると説明している。
「あんな化け物がこの世界にはいるのね」
「あれはガッター。ああいう強獣を倒して材料にしてオーラマシンができているんだ」
ガッターとドラムロの戦いを眺めながら2人に解説する俺。
ドラムロいいなあ。
手はマジックハンドに毛が生えたような簡単な3本爪だけどちゃんと剣を持てるし、その爪の中央には
薄い頭部は胴体にめり込んでおり、ずんぐりむっくりのオーラバトラーだけど見た目どおりの重装甲で、聖戦士伝説ではさらにパワーも
せっかくカオスルートなんだし、ラース・ワウで売り出されたらすぐに買うことにしよう。
「そろそろ来るか」
バーンの操るドラムロがガッターを倒し、ドレイクの演説が盛り上がった辺りで爆発音が響く。
「これが敵対勢力? 宣戦布告もないとは賊と同じね」
まあ、そうだよなあ。
戦力が少ないから奇襲するしかないんだろうけど、それだったら確実にドレイクを仕留めないと。これじゃ脅しにもならない。
ギブン家の覚悟は中途半端すぎる。
「2人とも、タペヤラに向かうよ」
ドレイクに騎団を出すと断って、リの騎団が出撃する。
ダーナ・オシーに乗っているのは相変わらずニー・ギブンだ。
聖戦士伝説ではここで主人公がオーラバトラーに乗っていた場合、一騎討ちが発生するせいか俺とニーの戦いに邪魔は入らなかった。
「やはりドレイクにつくか、コーイチ王!」
「これは自衛だ。この場には妻もいる。襲撃者の貴様を倒すのは当然だろう、ニー・ギブン!」
警戒していたしセーブもしてあるけれど、もしかしたら華琳ちゃんが爆発に巻き込まれたかもしれないだろうが!
飛び道具のないサーバインにダーナ・オシーがミサイルランチャー――聖戦士伝説では文字数の関係か、ミサイルランチャ表記――で遠距離攻撃を仕掛けてくる。
難なくこれを回避して攻撃。オーラソードの一撃で片腕を落とされたダーナ・オシーはすぐに森へと消えていった。
「追わないのですか?」
「タペヤラの安全確保が最優先だよ」
地上人を渡すわけにはいかない。
混乱に乗じてドレイクが華琳ちゃんたちを攻撃したり、拉致しようとする可能性だってある。あまり離れるわけにはいかないのだ。
この後、逆賊ロムンを討つために力を貸せとドレイクに頼まれたが断った。ギブン家の誘いを断った時と同じことを理由にして。
「先程は自衛のために戦いはしたが、これ以上するつもりはない。アの国王の許可が出ない限りは手を出せばリの侵略行為となろう」
本当はレベル上げも済んでない華琳ちゃんと孫権を戦場に出せるかってのが一番の理由だ。
俺たちはさっさとトルール城へと帰ろう。
本当は北郷君もつれて帰りたいけど、ショウならば落とされることはないと自分に言い聞かせることしかできない。
心友の一刀君の方だったら無理やりにでも連れて帰ったのになあ。
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12話 告白
まさかもう搭載するオーラバトラーが溢れてしまうとは。スパロボなら無理があるだろってぐらい母艦に積み込めるのに。
……そもそも聖戦士伝説のオ-ラシップには搭載なんて概念はなかったから、載せられるだけマシなのかもしれないけどさ。
「本当にこの大きな船が飛ぶのね」
「ギブン家のオーラシップも飛んでいたろ? 悔しいがあっちのゼラーナの方が速度が出る」
その分、ゼラーナは防御を犠牲にしている。装甲部分が少なくて格納庫には扉がない。整備の時も怖いだろうなあ。
たしかシャワーはついているんだけどね。
「皇一、さっきの戦いでわかったわ。以前より強くなったというのは本当だったのね」
「サーバインの力もあるよ。華琳ちゃんももっと強くなれると思う。孫権もね」
「私も?」
「いいでしょ華琳ちゃん、孫権がメチャクチャ強くなってもさ?」
レベル爆上げしてもらうつもりだからね。
孫権はもし地上に戻れたら敵に回る可能性もあるけれど、もう愛紗も調教化……超強化しちゃってるしさ。
「ええ。その方が面白いわ」
「そう言うと思った」
これで悩みがまた一つ減ったよ。
だが俺には大きな問題が残っていた。
……この身体のことである。
ボーナスで俺のジュニアが双子になってしまった問題はまだ解決していない。
だってこれ、誰に相談すればいいかもわからない。
「あっちに行けば華佗がいるんだろうけど」
名医とされる華佗ならもしかしたらなんとかできるかもしれない。
けどその前に華琳ちゃんにバレるのは確実。新婚さんがシないというワケにはいかないのである。
俺だってめっちゃシたい!
「なにをブツブツ言っているの?」
「あ、あのね華琳ちゃん! ……ここじゃ言えないけどトルール城に戻ったら大事な話があるんだ」
さすがにみんなの前で相談できることではない。
「ふふっ。わかっているわ。待ちきれないのならダンバインの操縦席ででもいいわよ」
「え? ……い、いや、そうじゃなくて本当に大事な話があるから!」
オーラバトラーの操縦席でなんて狭すぎて……いいかもしれない。
さっきだって2人乗りのとき、鎧がなきゃジュニアのことがバレてたかもしれないし!
◇ ◇
ドレイクやギブン家の襲撃を警戒しながらの帰投で疲労しているはずなので、トルール城についたら騎士たちにはすぐに休息を命じた。孫権にも部屋を用意して休んでもらっている。
フィナには愛紗の部屋に行ってもらった。
愛紗もなんかおかしかったけど可愛がっているフィナが一緒にいてくれればゼラーナ隊に寝返ることはないだろう。
「ふむ。少しは部下の動かし方も覚えたようね」
「一応、王をやっているからね。華琳ちゃんから見ればまだまだなのはわかっているからアドバイス……ええっと、助言をお願いする。それとも華琳ちゃんがリの王になるかい?」
俺よりずっと相応しいだろう。
たとえドレイク以上の覇王となるのは確定でも。
「なにを言っているのよ。この国の王は皇一でしょう」
「それなんだけどね、そもそもなぜ俺が王様やってるかっていう……ってその話は明日にしよう。俺が話したかったのはもっと大事なことで」
「わかっているわ」
え?
もしかして華琳ちゃん、脱がなくても俺のジュニアが双子になったことが……って、なんで『絶』を出すのさ。
慌てて俺がセーブすると、どこにしまっていたのか華琳ちゃんとともにオーラロードを通ってきた大鎌によって、俺の命は刈り取られたのだった。
◇
「華琳さま、ご無事でしたか!」
「ええ。私は皇一のいる世界に召喚されたわ」
「なんと!?」
華琳ちゃんまでバイストン・ウェルに召喚されたとは思っていなくて、しかもそれがいきなりであったため、残された者たちは大混乱しているらしい。
「兄ちゃん!」
季衣ちゃんが俺にタックルしてきた。
カンストオーバーのおかげか、なんとか倒れずに受け止めることに成功する。
「会いたかったよぉ!」
「俺もだよ、季衣ちゃん」
俺を抱きしめる腕の力が強くてかなり痛いが、ぐっとそれを堪える。
だって季衣ちゃん泣いてるんだもん。
「そんなに寂しかった? 前に人質やった時はそんなじゃなかったよね?」
「だって……あの時は会えるようになるってわかっていたし、ここでよく会えたよ……」
「待たせちゃってごめんね」
ゆっくり季衣ちゃんの頭をなでる。
華琳ちゃんが来たんで浮かれていたけど、他の嫁たちのためにも早く恋姫世界に行きたい。
「そうだ! 貴様のせいで華琳さままでがそっちに行ってしまったではないか! どうしてくれる!!」
「それは俺のせいじゃないから! ドレイクって禿のせいだから!」
もしかしたらとは願っていたけどさ。
「奴隷苦だと? 貴様、華琳さまを奴隷にしようというのか!」
「ちげーよ! あっちの隣国の地方領主だ。バイストン・ウェル制覇の野望を持つ男の名前がドレイク・ルフトっての」
「そのドレイクが身の程知らずにも華琳さまを誘拐したのね」
まあ、エ・フェラリオの召喚はランダムみたいだから、誰を選んでってわけじゃないんだけどね。
一応、オーラ力の強い者って条件はあるんだったか?
華琳ちゃんや愛紗、孫権のオーラ力が高いのは納得できる。無印恋姫の三国の顔だもん。
「ええ。ドレイクには覇王となるのは誰か教えてあげましょう。それとも、皇一がやってくれるかしら?」
「皇一が?」
「リの国の王となって関羽を従えていたわね」
王にされちゃったの、みんなにまだ説明してなかったっけ。
暗殺されかかった時に1回死んで道場に来た方がよかったかな?
「そっちへ行けるように立場を利用してはいるけどさ、王は押し付けられたんだよ」
「早く華琳さまをこっちに戻しなさい! あんたは来なくていいから」
久しぶり会えた嫁にそんなことを言われるとツラい。若くなる前だったら確実に泣いている自信がある。
同じことを秋蘭も思ったようだ。
「今ので泣かないとは。お前は本当に皇一か?」
「王様やってるから、できる限り泣くのを我慢してるんだ」
「王をやっている皇一は面白いわ」
酷い、俺だって一生懸命やってるのに!
……華琳ちゃんをイメージしてやってるなんてのは、言わない方がよさそうだな。
「俺の方はいいとして、そっちはどうするの? 華琳ちゃんはしばらく帰れないよ」
「なんだと! なんとかしろ!」
「それができたらさっさと俺がそっちへ行ってるっての!」
緩んできたと思った季衣ちゃんの抱擁が俺の「しばらく帰れない」発言でまた強くなってしまった。
華琳ちゃん抜きで残りの嫁さんたちが無事でいられるか、かなり心配になってきたんだが。
「そうね。私抜きでもどこまでやれるかは気になるところではあるけれど」
「華琳さま抜きでは姉者も桂花も使い物になりません」
「あら? 戻る場所がなくなっていたら私はどこへ帰ればいいのかしら?」
黄巾との戦いの際中なんだよな。
陳留が落とされることはないと思うけど、嫁さんたちが危なくなるのは避けたい。
「そっちの情報をなんとか思い出して教えるから、俺たちが戻るまで上手くやってくれ。華琳ちゃんの不在はできるだけ隠さないと、兵や民への動揺と賊や他国の侵入を呼ぶから……」
「言われなくたってわかってるわよ!」
それぐらいに華琳ちゃんの存在は大きい。
聖戦士伝説でもゴード王の死を隠すかどうかって選択肢あったもんな。
「影武者ができる子を早く探した方がいい。それまでは春蘭の人形で誤魔化そう」
「だからわかってるわよ!」
「影武者か。皇一、誰かアテはないか?」
むう。袁術ちゃんの偽華琳ちゃんは見たいけど、あれだとすぐにバレそうだし、そもそもむこうもまだ逃亡生活してないから無理だろう。そうなると……。
「曹仁なら似てるんじゃないか?」
それからいつも以上に長く道場で会議をした。
俺も知っていることをかなり詳細に説明したから、きっと数え役萬☆姉妹も仲間に入れてくれるはずだ。
◇ ◇
さっきのセーブをロードして再開する。
死ぬ前はなにをしようとしてたんだっけ?
……ああ、みんなに会えて嬉しさで言い忘れてたけど、大事な報告をしようとしてたんだ。
「ボーナスのことなんだけどさ」
「皇一が若返ったということね。なにか問題があるのかしら?」
「そっちじゃなくてさ、ボーナスは3つあって、なんかよくわからない若くなったのと、たぶん資金が入手しやすくなっているのと、あと……」
なんて説明すればいいいんだろう?
言わないわけにはいかない。でももしこれが原因で華琳ちゃんに嫌われたらと思うと、なかなか切り出せない。
「ずいぶんともったいぶるのね」
「そ、そういうわけじゃなくてさ、俺のアレのことなんだけど……異常が発生しちゃってて」
「まさか、勃たなくなったの!?」
なんで異常ですぐそっちが出てくるのさ。そりゃ前はおっさんだったけど元気だったじゃないか。
「そ、そっちは大丈夫だよ!」
「ならば、どうなっているのかしら?」
「……増えた」
「は?」
そりゃそんな顔になるよね。
俺だって初めて見たときはショックを受けたもんなあ。
「ボーナスに『???×2』ってのがあってその効果だと思うんだけど、2本になっちゃってる。あ、玉はそのままだ」
「確認するわ。見せなさい」
「……わかった」
華琳ちゃんのことだから絶対に見ようとするとわかってたので、素直に従う。
気持ち悪いって嫌いにならないでくれよと心の中で祈りながら。
「確かに2本あるわね。使えるの?」
「医者に見せたわけじゃないけど、両方とも機能は同じっぽい。トイレの時はちょっと大変」
「そう」
なにやら楽しそうに華琳ちゃんは微笑みながら手を伸ばしてきた。俺の双子に向けて……。
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13話 目標
華琳ちゃんが俺の双子を
「どうやら両方ちゃんと使えるようね。量も倍になっているのかしら?」
「それはここんとこご無沙汰でずいぶんと溜まっていたから……」
だってさ、こっちではフィナが一緒のことが多くて自分で処理することもできなかったんだよ!
「私1人で両方受け止めるのも面白そうではあるのだけど、ここは人数を増やして楽しみましょう」
「え? でも季衣ちゃんや春蘭たちはバイストン・ウェルにきてないよね」
来る可能性があるとしたらドレイクによる次の召喚だろう。
今回はショウ、トッド、トカマクの代わりに華琳ちゃん、孫権、北郷君で、先に召喚された愛紗も合わせれば無印恋姫の三国の主要人物が揃ってしまった。
そう考えると次はアレン、ジェリル、フェイではなく張飛、孔明、周瑜あたりだろうか?
……中の人を考えるとアレン・ブレディが貂蝉になってる可能性が高そうで怖い。
「なにを言っているの? 関羽がいるでしょう」
「なんでそこで愛紗が出てくるのさ」
「ご主人様と呼ばせているじゃない」
「そ、それは成り行きでね。俺は浮気なんてしてないからね!」
愛紗は一刀君の嫁じゃないか。
ここの愛紗は一刀君と面識がなかったけど……。
「孫権でもいいわ。そのつもりで連れてきたのでしょう?」
「なんでそうなるの? 彼女はいきなりこんな世界に1人召喚されて不安になっているはずだ。そんなことできるはずないでしょ」
「北郷は置いてきたのに? 素直に北郷から奪うつもりだと白状なさい」
むう。双子を見せても嫌われてないみたいなのは嬉しいけど、なんか暴走していないか?
やさしく華琳ちゃんを抱きしめる。
「華琳ちゃんもこんな世界に召喚されて混乱してるんだね。大丈夫、俺がついているから」
「なにを勘違いしてるのよ、もう……少しは逞しくなったじゃない」
「鍛えてますから」
華琳ちゃんを抱きしめてなかったら「シュッ」とポーズを取ったのに。
若返ったのとカンストオーバーのおかげで疲れにくくはなってるけど騎士たちとともに身体を鍛えるのは必要なんだよね。
オーラバトラーってオーラ力で動くけど、戦闘ともなると体力も消耗するしさ。高機動戦闘ってすごい疲れるんだ。
「嫌われなくてよかった。捨てられちゃうんじゃないかとずっと不安で」
「安心なさい。皇一は私のものよ。……褒めた途端にもう泣くの? 道場では堪えたのに」
「華琳ちゃんの前でだけだよ。今まではずっと我慢してたんだ」
王様だからってさ。
そんな俺の頭を華琳ちゃんがそっとなでてくれている。
結局、検査だけで華琳ちゃんと合体することはなかった。
やっぱり気持ち悪いの?
◇ ◇
華琳ちゃん、孫権、そして愛紗。
革命かと思われる恋姫世界から召喚された3人の美少女とオウエン、ザン、マスタードラウゲンを交えて今までの状況、そしてこれからのことを説明する。
もちろんフィナもいるよ。
「まず最初に言っておくが黒髪の騎士の正体は関羽。地上人だ。そしてマスタードラウゲンはゴード・トルール。このリの国の王」
仮面を取る2人。
愛紗のことは既に華琳ちゃんは気づいていたけどね。
「今の王はコーイチ王ですぞ。儂は隠居した身じゃ」
「皇一が無理矢理簒奪した、というわけではないのね」
「王様なんかになったって嬉しくないよ。必要だから……やらされている」
それこそ華琳ちゃんにこの座を譲りたかったんだけどね。
「私はあなたたちより先にドレイクに召喚されたが、ご主人様の手引きによって脱出することに成功したのだ。バーンはフェラリオを使って地上に返せるようなことを言っていたが、疑わしいものだった」
「関羽もドレイクに召喚されたのね。皇一はどうなの?」
「よくわからない。あの道場での選択の後、俺はこの国に出現したんだ」
聖戦士伝説でもその辺、ハッキリとしてないんだよね。
エ・フェラリオだったフィナが主人公を召喚して、罰でミ・フェラリオにされて記憶まで失ったという説もあったけど、それをにおわせる文章はゲームには全く出てこなかった。
もしかしたら俺が乗ったあのゲドに召喚されたんだったりして。
◇
「そう。だいたいの現状はわかったわ。戦乱の兆しが見えているのね」
「ドレイクはバイストン・ウェルの制覇を目論んでいる。ドレイクと同じアの国の地方領主であるギブン家が対抗しようとしていて、当主はマシだと思いたいが息子の方はドレイク憎しで周りが見えていない」
「ラース・ワウを襲撃した賊ね」
「あの場にはドレイクが新型オーラバトラーと地上人を見せびらかすために、俺のような他国の重鎮も呼ばれている。あの襲撃事件でドレイクの評判を落とすこともできただろうが、ギブン家討伐の大義名分を与えてしまった」
地上人の召喚を防ごうと焦ったんだろうけど間に合ってないし、どうせやるならキッチリとドレイクを仕留めるまでやらなければいけない。それができなかった時点で行き当たりばったりの襲撃でしかない。
それともニーもギブン家オリジナルのオーラマシンを見せびらかしたかったんだろうか?
「各国にオーラマシンが出回っているのでしょう? 世界制覇を目指す者が現れるのは当然よ」
「アの王が愚王だというのはわかった。まるで袁術の話を聞いているようでドレイクに感情移入したくなるわ。私を誘拐した者でなければ力を貸しただろう」
華琳ちゃんと孫権はそんな意見か。武将だもんな。厳しい見方になるのは当然か。
「愛紗はどう思う?」
「今のところ、ご主人様の選択におかしな点はないと思います。ドレイクのギブン家討伐への助勢も断っておりますし、主張は一貫しているかと」
そうじゃなくて、正義はどっちかなんてことを俺は聞きたかったんだけど。わかってて避けたのかな?
「そうか、うん。……それならこれからのことを話そうか。これを話すと愛紗が俺の元を離れそうで怖かったんだけど、いつまでも黙っているわけにもいかない。いい機会だから聞いてくれ」
「ご主人様?」
「さっき、俺はこの世界の『物語』を知ってると言っただろう、当然、この先も知っている」
「この先……」
北郷君にダンバイン知識があるか、聞いておけばよかったかな?
まあ、知っていたらドレイクに協力はしない可能性が高いか。きっと『ラウ』ルートか『ナ』ルートを選ぶに違いない。
聖戦士伝説は知らないかな? 知ってたならリの国にきてくれただろうし。
「細かな違いは分かれるけど、大まかに分けるとこの物語の終わり方は3つ。バイストン・ウェルでドレイクを倒して戦乱に終止符を打つか、地上界に出てドレイクを倒して戦乱に終止符を打つか、同じく地上界に出て全滅するか」
「全滅?」
「ここバイストン・ウェルは魂の休息所って言われている。つまり地上界からこっちに戻ってくるために『浄化』されるって終わり方かな」
聖戦士伝説、ロウルートは『浮上』しちゃうとグッドエンドでもそれだから、やってられない。そりゃアニメに忠実なエンドだけどさあ。
「地上界に出るというのは大陸に戻れるということ?」
「たぶんね。もしかするとショットやゼット、それに北郷君の方の地上界かもしれないけど」
もしそうなるのなら、浮上の直前にその3人をオーラマシンから降ろしておけばなんとかなるかもしれない。
それでも駄目なら最悪、彼らにはその前に死んでもらうしかないわけだが。
「その時は別の方法を考える必要がありそうね」
「うん。そして、ドレイクや諸外国のオーラマシン、乗り手も一緒だ。エ・フェラリオのお偉いさんで仙人みたいなやつが、戦乱の原因だってオーラマシンを乗り手ごとバイストン・ウェルから排除するんだ」
「オーラマシンも一緒となると地上界も大混乱しますな」
「ああ。だからみんなに相談したいんだよ。残念だけど俺たちが無事に地上界に戻るにはそれが一番確立が高い方法なんだ」
俺の告白に恋姫たちの表情がそれまで以上に真剣なものに変わる。
自分たちが帰ると、余計なものまでついてくるとならば当然だろう。
「ドレイクは地上界の方でも世界制覇を目論む。ドレイクに協力するクの国の王、ビショット・ハッタも。それを防ごうとするのはギブン家の生き残りにラウの国、ナの国の連合軍。オーラマシンの戦いは地上界に持ち込まれる」
「それならばギブン家と協力してドレイクをさっさと討てばよかったんじゃないかしら?」
「そうかもしれないけど孫権、俺は地上界に戻りたかったからね。たとえバイストン・ウェルや地上界を戦乱に巻き込んでも華琳ちゃんたちの元に帰りたかった」
セーブしてあるからやり直しきくし、とは言えない。俺の『セーブ&ロード』の能力は極秘事項だ。嫁にしか教えるつもりはない。
「各国には既にオーラマシンが広まっている。たとえドレイク・ルフトがいなくなっても、野望を持つ者が現れる。コーイチ王がどう決めようともバイストン・ウェルの戦乱は避けられなかったであろう。リの国はコーイチ王の選択に従うよ」
「ありがとうございます、ゴード王。リからは地上界に行く者はできるだけ少なくしたい。本来なら俺たちだけで行ければいいんだけど……」
「王はあなたですぞ、コーイチ王。そうは言ってもあなたと共に行きたいと言う騎士や兵士も多そうでしてな」
リにはゲームのタイトルにもなっている『聖戦士伝説』が元々あって、王にもなった俺の人気はかなり高いらしいんだよね。信じられないことにさ。
ぽっと出の俺をちょっと引くぐらい心酔している騎士も多くて驚いているよ。
「地上界だとて、ほっておいても戦乱の世になるでしょうね。漢王朝があれでは」
「私がこちらにくる前でも既に乱世と言ってよかったでしょう。漢王朝は腐敗し、賊が蔓延っていました。それをなんとかしようと劉玄徳殿と立ち上がったのです」
うーん。華琳ちゃんも愛紗もオーラマシンの戦闘の規模を軽く見てるのかな?
でも恋姫でも兵の数は多かったしなあ。
「……それじゃ、2人は賛成だと思っていいのかな? 孫権はどうする?」
「わ、私は……こんな時、姉様だったらすぐに決められたでしょうね」
そりゃ迷うか。
帰りたいけど、そのせいで戦乱が大きくなるって言われちゃなあ。
「あの人は勘で決めそうだ。それも面白そうな方にね。だから、参考にしちゃ駄目だよ」
「本当に姉様の知り合いなのね」
「まあね。もしかしたら俺のことは忘れているかもしれないけど」
孫策には道場の記憶が残っているのかな。
少しは世話になっているから、呉ルートのように死ぬのは防いであげたいけど。
……あれ? 革命だとしたら孫堅ママも生きているのだろうか?
「コーイチ王は地上界に戻れたらどうするつもりなの?」
「ドレイクとビショットを倒すつもりだ。
「その後に大陸制覇かしら?」
「それをしたいのは華琳ちゃんでしょ。……まあ、必要だったらしなきゃいけないのかな?」
聖戦士伝説でもカオスルートだと世界制覇しちゃうエンドがベストエンドだっていわれているしさ。
「そう……孫呉の民はどうなる?」
「うーん。孫策か孫権に治めてもらえればいいんじゃないかな? 多分、下につくのは嫌だって戦いにはなるだろうね」
ラウやナと組まれなきゃいいけど。劉備は性格的にナと組みそうで心配だ。
ゼラーナ隊は蜀と? 劉備と……孔明ちゃんと早く会う必要がありそうだな。
「孫権か孫尚香を嫁に差し出してくるかもしれないわね」
「政略結婚は勘弁してよ。俺には華琳ちゃんたちがいるんだしさ」
「たち? ご主人様、まさか他にも奥方がいるのですか?」
「う、うん。あと4人、むこうに残っている。だからどうしても地上界に帰りたいんだよ」
愛紗の迫力に圧されて即答してしまった。
女好きって軽蔑しないでくれよ。
「英雄色を好むというのは本当なのね」
「関羽も皇一のものにおなりなさい」
「なっ! わ、私がご主人様の……」
「別に私のものでもいいのよ」
完全に愛紗をロックオンしちゃっているな。
……それともやっぱり1人だと俺のジュニアの相手が不安なんだろうか。
「曹操殿よりご主人様とがいいに決まっているでしょう!」
「そう。決まりね。よかったわね、皇一」
「え? ……ご主人様、い、今のはですね、売り言葉に買い言葉というかですね、曹操殿の狡猾な話術に嵌っただけであって!」
うん。わかってるから。そんなに慌てなくてもいいから。
「落ち着いてくれ愛紗。華琳ちゃんも愛紗で遊ばないの。こんなおっさんとなんてありえないでしょ」
「それは皇一と結婚した私たちを馬鹿にすることになるのだけれど。皇一は関羽とは嫌なのかしら?」
「ご主人様!? わ、私のことがお嫌いなのですか?」
え? なんでそんな泣きそうな顔でこっち見るのさ、愛紗。
あれか、春蘭に結婚が嫌と言われた時の俺のような気持ちなんだろうか?
「いや、愛紗は好ましいと思うよ。レベルアップの時だって胡散臭いだろう作業にもちゃんとついてきてくれた。俺を疑ってもおかしくないのに」
「私はご主人様を信じています!」
「なら、俺の思いも信じてくれるよね?」
「は、はい!」
うむ。ちょっと、いやかなり卑怯な逃げ方をした気がするが、これで上手くお茶を濁せただろうか。
……華琳ちゃんを見ると不敵に微笑んでいるので駄目っぽい。
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14話 王妃曹操
あの会議が終わってからすぐ華琳ちゃんと愛紗に連れられて寝室に行くことになってしまった。
「曹操殿……私が一緒でよろしいのでしょうか?」
「今の皇一の相手は1人では少し、ね。私のことは華琳と呼びなさい」
「はい。私は愛紗です」
むう。愛紗もなんか乗り気のようだ。真名交換も済んじゃってるよ。
ここで流されてしまっていいものだろうか。
この愛紗は違うとはいえ、愛紗といえば一刀君の嫁のイメージが強いのだが。
「華琳ちゃん、あのね」
「私がはじめてなのはわかってるわね、皇一」
「もちろんだよ。華琳ちゃんのことを信じているから」
「はじめては、はじめてなのよ」
……あ、そうか。地上界の方は革命の初めから始まったみたいなのでこの華琳ちゃんが処女だとは予想できていた。
でも華琳ちゃんには引き継いだ記憶があるから、って思っていたけどよく考えたら華琳ちゃんの初体験は全部意識を失っていたっけ。
「愛紗がついていれば耐えられると思うの」
「お任せください」
むう。愛紗も一緒にという理由を作ってしまうとはさすが華琳ちゃんというべき?
これはもう拒否したら華琳ちゃんに嫌われそうだ。
「わかった。愛紗、俺とシて……いや、俺の嫁になってくれるか? それなら華琳ちゃんと一緒に抱くよ」
「わ、私がご主人様の?」
「うん。俺は自分の嫁さんとしか、シたくないから」
ふふん。どうだ、これなら愛紗も思い止まってくれるに違いない。華琳ちゃんだって俺の嫁をそんな簡単に増やそうとは……しないといいなあ。
「わかりました。この愛紗、ご主人様の妻となりましょう!」
「ええっ!? も、もうちょい考えてからの方が」
「なにを仰るのです。この選択に間違いはありません!」
なんでこうなるの!
愛紗って頑固なとこもあるから、決めたことを撤回はしてくれないだろう。
もう覚悟完了しちゃったみたいだ。
「よかったわね皇一。愛紗、歓迎するわ」
「はい! 共にご主人様を支えましょう、華琳殿!」
がっしりと握手してるし。
心友の方の一刀君、俺はいったいどうすればいいんだ……。
◇ ◇
そのまま結局いたしてしまった。素直な双子が恨めしい。
おかげで華琳ちゃんのレベル上げは後日に回すことになってしまった。
事後、気恥ずかしそうな愛紗を眺めながらまったりとしていていると、控えめに部屋の扉がノックされる。3人とも服は着ていたので許可を出すとフィナとサーラが入ってきた。
フィナの顔が真っ赤だ。タイミングもいいし、もしかして覗いていたのかと疑いそうになるが、フィナはそんな子じゃないか。
「皇一、彼女は?」
「サーラ。密偵として各地の情報を集めてもらっている。愛紗のラース・ワウ脱出にも活躍したんだよ」
新たな獲物を見つけた雰囲気の華琳ちゃんがちょっと怖い。
サーラの報告はドレイク軍の動きだった。
イヌチャンマウンテンでゼラーナ隊への攻撃を行ったという。アニメや聖戦士伝説のルートだとダンバインの初陣。トカマクが落とされるのだ。
聖戦士伝説だとこのトカマク機の残骸を回収、修理して主人公用のダンバインにするんだよな。
「ドレイク軍はかなり痛手を負ったよ」
「北郷君はどうなった?」
「生きてるよ。カズト・ホンゴウのダンバインは一騎打ちでダーナ・オシーをなんとか撃退した」
「そうか」
サーラは手早く報告を済ませるとまた情報収集のためにすぐに行ってしまった。危機を感じ取ったのかもしれない。
「彼はこの先、どっちにつくのかな?」
マーベル担当の愛紗がこっちにいるからゼラーナ隊の戦力も低下してるのか。北郷君が生きててよかったよ。
ショウ・ザマ担当と思われる彼がこのままドレイクのとこにいるのか、それともゼラーナ隊へと行っちゃうのかちょっと予想ができない。聖戦士伝説だと調整できるんだけどさ。
そして翌日。
曹操が王妃、関羽が側室として国の内外に発表されたことを知る。
「関羽のことも発表したのか?」
「はい。ドレイク殿の所からさらわれた関羽をコーイチ王が救助。その際に見初めて側室にしたことにさせてもらいました」
「私がさらわれた?」
「ええ。ドロを盗まれるぐらいですから、関羽殿がさらわれてもおかしくはないでしょう」
暗い笑みを浮かべているオウエン。この人も暗殺未遂を根に持っていたのね。そりゃゲームどおりならゴード王が殺されるとこだったんだし、当然か。
「これで王への縁談が減りますかな」
「ゼロにはならないのか?」
「側室でもいいという者もおりましてな。申し込みやすくなったと思っている者もいるかと」
なにハードル下げてくれちゃってるのさ。
俺はこれ以上いりません。
「ドレイク殿からも再びリムル殿との縁談の話がきてますな」
「早すぎないか?」
「せっかく召喚したばかりの地上人を2人も持っていかれて焦っているのではないかと」
それはありえるのか?
なんか今度の申し込みは毒婦っていわれるルーザの差し金っぽい気もする。リムルを受け入れたらあれもリの国にやってきそうで怖すぎる。……正室じゃなきゃ、それはしにくいか。華琳ちゃんの発表をしといてよかったぜ。
◇ ◇ ◇
あれから数日。
華琳ちゃんと蓮華――ドレイクから助けてくれた礼だと真名を貰った――のレベル爆上げは無事に終了し、彼女たちはこっちの文字を覚えてもらって政務を協力してもらってる。いやあ、経験者がいるとやっぱり違うね。
「オーラバトラーで出撃したいのだけど」
「私も。たまには狩りに行きたいわ」
「ダンバインはまだ調査している段階だから待ってくれ。色もまだ変え終わっていない。それにほら、タペヤラには6機までしか積めないからみんなで出撃は無理なんだよ」
華琳ちゃんと蓮華の申し出はそう断らせてもらった。
ダンバインのステータスをちゃんと確認したら聖戦士伝説のより数値が良くてさ、アルダムよりも強かったんだよ。聖戦士伝説のではなくアニメの方のダンバインなのかもしれんな。
だからしっかり解析してもらっている。出来れば量産化したい。
「そう。ならばもっと船を増産しなさい。造れるのよね?」
「いや、オーラシップならナムワン級じゃなくてブル・ベガー級の方が強いんだ。できればそっちを増産したくてね。ブル・ベガー級は速度は出ないからギブン家のゼラーナでもいいんだけどそっちは造れそうにないからなあ」
オーラシップも聖戦士伝説オリジナルのがあればよかったんだけどね。
一応、ナムワンの強化も命じているけど人手が足りないようだ。ゼットも引き抜いておけば……今からでもその方法を考えるか?
華琳ちゃんたちとそれを相談しようとした時、ドレイクの使者としてバーンがやってきた。
「まさか関羽殿がこちらで発見されるとは」
「俺も驚いている。無事に保護できてよかったよ。おかげで娶ることができた」
「ドレイク様より祝いの品を運んでまいりました。それと……」
ふむ。愛紗のことを責めにきたわけではなかったか。すると、聖戦士伝説のイベントと同じかな。
予想どおり、ドレイクからの言伝はロムン・ギブンとの会談に参加してくれないかというものだった。
「以前も言いましたがアの国で許可なくリの騎団を展開するのは、アの王を刺激してドレイク殿まで誤解されかねない」
そりゃ断るよ。愛紗との結婚祝いをくれるようだけど、それとこれとは話が別。前回出した条件を変えるわけにはいかないでしょ。
バーンは結婚祝いを置いて去っていった。なんだ、オーラマシンじゃないのか。
行けばロムン・ギブンと直接会ってロウルートへ道筋を変更することもできる。けど、ここでロウルートへ行ってもうまみが全くない。
ギブン家はここで大打撃を受けることになるけど身から出た錆だ。ラース・ワウへの襲撃で華琳ちゃんたちを危険にさらした償いだと傍観させてもらうよ。
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15話 北郷の選択
アニメ、そして聖戦士伝説と同じくドレイク軍によりギブン家は屋敷を焼かれ、ロムンは妻を殺された。ニーがさらにドレイクを憎むようになるな。
これにはリの国は関わっていない。会談への参加を拒否したからだが。
「うちも逆恨みされるかもしれない。警戒しないと」
「ここが襲撃を受ければ私が出撃しても文句はないわね」
華琳ちゃんと蓮華のダンバインも調査が終わり、爆弾等のおかしな細工がないのを確認、塗り替えも終わっている。
華琳ちゃんのが黒っぽい紫、蓮華のが赤だ。
マジックミラーみたいになっている胸腹部の装甲も交換してなんとかいい色に仕上がった。迷彩ビルバインは現地改修だったけどあそこの色ってどうやって変えたんだろう?
調査の結果、ダンバインは聖戦士伝説とは違い、アニメ準拠で高い性能になっていることがわかった。相性が合えば強いってやつなのかもしれないが、2人とも相性は悪くなさそう。
こりゃ北郷君のダンバインも強いんだろうね。
ダンバインのプロトタイプであるサーバインには射撃武器はないのだが、ダンバインのオーラショットを参考にしてサーバイン用のをボウに造ってもらった。
聖戦士伝説にこんな装備はないが、引き金となる爪がないのにオーラショットが撃てる『試作型ダンバイン』があるんだからできてもおかしくはないのだろう。サイズがちょっと違うだけだしさ。
「まあ、今の華琳ちゃんたちならオーラバトラーの中の方が安全か」
「レベルというのは私には見えないけれど、オーラ力が高くなっているのはわかるわ」
蓮華も戦いたいのかな。強くなった力を試したいのか?
武力は孫策のようなトップクラスには及ばなかったはずだけど、だから余計になのかもしれない。
「わかったよ。じゃあみんなでラース・ワウの祭りに行こうか」
「ドレイクがギブン家を討った祭りね。当然、ギブン家の生き残りが仕掛けてくるのでしょう」
「それでも行きたい?」
「もちろんよ」
仕方ないか。
可能性は低いけど念のためにスペースを空けておいて三騎士は城に残していこう。聖戦士伝説だと母艦で移動って考えがないから、こんな悩みは無縁なのに。
華琳ちゃんの言ったようにオーラシップがもう1艦ほしいとこだな。
◇ ◇
ラース・ワウは文字どおりのお祭り騒ぎだった。
ドレイクに戦勝祝いの挨拶をすると、クの国王ビショット・ハッタを紹介される。いや、こいつじゃなくて北郷君と話したいんだけど俺。
「おお、噂どおり奥方もお美しいですな」
ビショットもアニメやゲームと同じっぽい。もうドレイクの妻ルーザの愛人やっているのかな?
華琳ちゃんたちには近づかないように言っておこう。
ドレイクは上機嫌でアカシャの森にあるギブン家の秘密工場の情報を教えてくれた。
聖戦士伝説でもこれはあって、撃墜されたダンバインを回収して修理している場所なんだけどさ。
リの国にもうダンバインが2機も来ちゃってて、残った北郷君のダンバインも撃墜されてない。いったい何を開発しているんだ?
気になるな。後で必ず行かなくてはいけない。
祭りを楽しんでいたらやはりゼラーナ隊が奇襲を仕掛けてきた。
ドレイクは行方不明のロムンの捜索に主力部隊を出したまま。油断しすぎである。ま、ゼラーナ隊なんて俺たちだけで楽勝なんですけどね。
自衛のためを理由にオーラバトラーを出撃させる。嫁さんたちとのデートを邪魔した罪は重い。
「各機、自分とタペヤラの安全を最優先で。俺はイベント発生したら北郷君とやるから」
「了解よ。北郷はちゃんと敵になってくれるかしら?」
華琳ちゃんは北郷君に敵になってほしいみたい。無印恋姫だったあっちでは一刀君との決着をつけられなかったからなあ。
聖戦士伝説なら確実にショウがゼラーナ隊に行くルートだけど、こっちはどうなるかな?
「コーイチさん、あそこ! ダンバインが落ちていきます」
フィナが指差した先で、藤色のダンバインが戦列を離れてよろよろと城へ飛んでいく。
「あれは演技だよ。上手いな北郷君。ってことはやっぱりゼラーナに行くか。誰が説得したのかな?」
マーベル担当の愛紗はゼラーナにいないからニーかキーンか?
あれ、でもいったん城へ行くってことはリムルを連れて行くのか。やっぱりリムルはニーと恋仲でいいみたいだな。
北郷ダンバインはリムルを手にした。よし、今だ!
「待てぃ!」
「お前はコーイチ!」
いきなり呼び捨てにされちゃった。心友の一刀君ならさん付けしてくれたのに……。いくら敵対しそうだからってさあ。
「放してください! コーイチ王、助けて!」
「え、ちょっと!?」
ダンバインに掴まれたリムルがこちらに助けを求めてきた。あれ? 同意の上での脱出じゃないのか?
「このままでは私はさらわれてしまいます! コーイチ王!」
「ちょっ、なに言ってるの姫さん?」
北郷君も慌ててる気がする。
もしかして見つかったからリムルが予定変更した?
聖戦士伝説だと見逃してくれって嘆願してくるのに。
「え、えーと北郷君、リムル姫を放してやってくれないかな? 悪いようにはしないから」
「俺をドレイクに売ったやつがなにを言うんだ!」
「別に売ったわけじゃないんだが……そう取られても仕方がない、か」
北郷君にどうしたいと聞いておいて、ダンバイン入手のために北郷君をドレイクに任せちゃったもんなあ。きっとドレイクは俺が売ったとでも言ったのだろう。
「あの時のことは悪かった。信用しろと言っても信用できないかもしれないが、リムル姫を渡してくれたら君の事は見逃すよ。どの道、人を持ったままでは戦闘などできないだろう?」
「……だけど」
「早くしないとガラリアたちに気づかれる。そうなったら俺も言いわけできない。できれば同郷の者と戦いたくないってのはわかってくれ」
北郷君からの返事はなかったが、ダンバインがリムルを前に出して近づいてきたのでそれを受け取る。
「北郷君、ゼラーナ隊に受け入れてもらえなかったらリの国においで。歓迎するから」
だが、彼はまたしても無言でダンバインを飛ばし去っていってしまった。
やはり違うのか。
……心友の一刀君に会いたいよ。
「ありがとうございますコーイチ王! おかげ様で助かりました!」
「う、うん」
「お礼にこれを!」
妙にテンションが高いな。
早くこの
だが彼女がお礼にとくれたものは新型のオーラ増幅器、その設計図だった。たしかにアニメでも持ち出していたけどさ。
「お父様にはナイショですよ」
「アッハイ」
聖戦士伝説だと軽量オーラマルスの設計図だったっぽいんだけどなあ。
ドレイクに返しても疑われそうだから黙っているしかないか。
異常に気づいてやってきたガラリアにリムルを渡して、俺たちはラース・ワウを飛び立つ。
◇ ◇
「北郷はゼラーナに寝返ったのね」
「たぶんね」
「落ち込んでいるの? あの北郷とは違うのでしょう」
華琳ちゃんには俺がへこんでいるのがバレてしまったようだ。俺が一刀君と仲が良かったのを知ってるもんな。
「いや、ダンバインと引き換えにしたのが原因みたいになっちゃうとちょっとね」
「私たちだってやっと戦えたのにゼラーナ隊を見逃すのは物足りなかったわ」
「損害もないみたいだし、トルール城に戻る前にアカシャの森に寄って行こうか。そこでなら手加減はいらないから」
俺たちが地上界に出るためにゼラーナにトドメはささないように頼んでいたので不完全燃焼だったみたい。あまりガス抜きにはなっていないようなのでこのままアカシャの森を捜索してみることにする。
「すぐに工場は見つかったな」
「ゼラーナ隊ではないのね」
「なんの工場かしら? リの領地内にあるのだから完成した物はリの物よ」
工場の防衛のために出てきたオーラマシンには華琳ちゃんの欲求不満解消のために犠牲になってもらった。
さっきはよく見れなかったけど、やはりダンバインの動きはいいな。ギブン家の兵が乗るダーナ・オシーを圧倒している。フォウのスピードにも対抗できているみたい。
守備隊はあっさりと殲滅され、工場は騎団の手に落ちた。
で、ダンバインのかわりになにがあったかっていうと。
「ゼラーナ……」
「あのオーラシップを造っていたのね」
二番艦?
聖戦士伝説にもそんなのはなかったはずなのに。
うちの騎団が強すぎるからその対抗策として造っていたんだろうか?
まだ完成してないけど、外から見る限り8割ぐらいできている気がする。
「これは貰うしかないな。ザン、城に連絡してくれ。ボウなら完成させられるだろう」
「了解しやした」
北郷君は残念だったけど、代わりに聖戦士伝説でも手に入らなかったユニットを入手できたと今は喜ぶことにしよう。
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16話 新たな翼
新型オーラ増幅器の設計図は本物だったようでボウが喜んでいた。ゼラーナ二番艦も同様だ。
完成するのは少し後になるみたいだけど、アニメ、聖戦士伝説のどちらにもなかった展開なのでどうなるか楽しみである。
「リムルがくれた物が役に立つとはな」
「彼女、コーイチ王にかなりお熱のようね」
「やめて、それだけは考えないようにしてるのに!」
リムルはあの濃い両親から生まれたというのが信じられない美少女と言っていいだろう。
だが、やらかしすぎる。
アニメでは彼女のわがままでまわりが迷惑を被ってばかりいた。
恋した相手のために動こうとするが能力が追いつかないのだ。しかもそれを理解しておらずにでしゃばる。聖戦士伝説でも能力が低く、強いオーラバトラーに乗せるのにも苦労するほど。
つまり、俺はリムルにあまりいいイメージがないのだ。
「あの毒婦、娘の結婚相手はビショットよりもコーイチ王と考えているようですな」
「華琳ちゃんの正室発表を早めにしといてよかった……だいたい、リムルは俺の知ってる物語だとニーと恋仲のはずなのに」
「あれより皇一の方がいい男だとわかったのでしょう。それとも、顔だけ見て決めたのかしら」
「コーイチさんは綺麗だもの。シャオだってあの顔を見れば同じようになりかねないわ」
蓮華は最近、俺のことを「コーイチさん」と呼ぶようになった。「コーイチ王」って呼ぶのを止めてって頼んだら次は「コーイチ様」だったので、なんとか「さん」で妥協したよ。
「だって皇一は魔性の美貌の聖戦士よ」
「それやめてってば。恥ずかしすぎるんだから!」
聖戦士なのに魔性ってどういうことさ。もうちょいマシな異名がほしい。なんとか竜とかさぁ。
「ご主人様が王になられておられなければ、ご主人様をめぐって争いが起きていたかもしれぬ。まさに傾国の美男かと」
「それほめてないよね! ったく、愛紗まで。今度そんなこと言ったら愛紗のことは美髪公って呼ぶから! ……北郷君がドレイクのとこに残っていたらリムルも攻略してくれただろうに」
「北郷ならばやりかねないわね」
ドレイクのとこにいれば、ガラリアやミュージィを攻略しただろうな。もしかするとルーザですらも。その方がよかったのに。
北郷君はゼラーナへ行くことでキーンやエレ、シーラを攻略できるルートへ行ったということだろうか。
あ、チャムもいたな。彼ならばサイズの差ぐらい問題あるまい。
「そのカズト・ホンゴウだが無事にゼラーナと合流したようですぜ。サーラから報告がありやした」
「そうか。そうなるとドレイク軍のゼラーナ狩りも近いか」
「ええ、どうしやす?」
ここで出撃するを選ぶと、北郷君と戦うことになる。彼に敵対視されるのは確実だ。
……どうせそうなるんだけど、それはまだ先送りしたい。
「傍観だよ。またリムルが出てきたらどうする」
この後、サーラからマウンテンボンレスでのギブン家の情報を聞くはずだけどそれも放置しよう。リムルを捜索していたアニメのイベントだからね。アニメで彼女が持ち逃げした設計図はもう貰ってあるから、行っても収穫はないだろう。
もしかしたらダンバインがゼラーナ二番艦になったような変化はあるかもしれないけど、マウンテンボンレスはアの国。ドレイクの誘いを断る建前を失いたくはない。
◇ ◇ ◇
フリーシナリオすら無視して政務や強獣狩りに勤しみ、夜は華琳ちゃん、愛紗と新婚性活という充実した日々。
その間にゼラーナ二番艦と設計図の新型オーラ増幅器を使用した新型オーラバトラーが完成した。
「うん。ちゃんと格納庫には扉をつけてくれたな」
「はい。他にも艦首への通路等、全般的に装甲を施しました」
その辺は本当に危ないからな。
防御力を犠牲にしてスピードを求める考え方は嫌いじゃないけど、戦闘機ならともかく巨大な戦艦には向かない開発思想だと思う。
「重量が増した分はコンバーターの改良と新型オーラ増幅器の搭載により対応しました。そのせいで必要オーラ力は増えてしまいましたが……」
「うちの騎団なら問題はあるまい」
オーラシップの
マスタードラウゲン率いる竜騎士たちだってカンストオーバーばかりだったりするのだ。こないだのパンツァー亜種がレベル爆上げに大活躍さ。
その気になればもうバイストン・ウェルだって征服できちゃうかもしれない。……征服後に支配する人手が足りないからやらないけどね。
「量産はできそうか?」
「素材が特殊なのでちょっと無理そうです」
「そうか、ならばナムワン級の改良を頼む。これの艦名は……ナムワン級がタペヤラだからプテラノドンにしよう」
俺たちの翼として活躍してくれることを願い、最も有名な翼竜の名を付けた。
よく見ると艦首には黒く塗られたフォウもついている。これも工場で見つかった未完成品を完成させた物だろう。
次に紹介されるのはオーラバトラー。
2種類の機体が並んでいた。
「サーバインとダンバインを参考にした機体に新型オーラ増幅器を搭載しました。性能はアルダムを上回ります」
「これは……『ブラウニー』か?」
キター! 聖戦士伝説にも出てないオーラバトラー!
ブラウニーは『ビランビー』の前身になったって設定のオーラバトラーだ。
ボウは凄いな。
「そしてこちらが試作型ダンバインにございます」
「これが? 見た目はほとんどダンバインと同じようだな」
「はい。注文どおり地上人専用ということでオーラ増幅器は搭載しておりません」
聖戦士伝説の試作型ダンバインはゲドバインとしか言いようのない、ゲドにオーラショットをくっ付けてダンバインぽいカラーにしただけの間に合わせの急造にも程があるだろう、ってな外見だったのに。
こっちのはダンバインと多少の違いしかわからない。
華琳ちゃんと蓮華のダンバインがアニメ版のなら、これは聖戦士伝説のオープニングに出てきたダンバインといったところだろう。
「俺の知ってる試作型ダンバインとは違うからこれは……『カットグラ』と名づけよう」
カットグラは小説『オーラバトラー戦記』の主人公機だ。Ⅲまであるから、Iがゲド、Ⅱがダンバイン、Ⅲがビルバインに相当するともいわれている。
「カットグラには愛紗が乗ってくれ。色もそのつもりで用意してもらったんだ」
「了解しました、ご主人様」
カットグラの色は緑。ただしトカマク機の緑よりも明るい若竹色だ。配色も違う。
「
「いくら一騎当千のオーラバトラーがいたって数も必要よ」
「そうだった。ブラウニーを量産……ドラムロと比べてからでいいか。取りあえずこのブラウニーはナラシに使わせよう」
聖戦士伝説ではナラシ・ハモニは三騎士の中で一番使える。なぜか艦長にはなれないのが玉に
「ブラウニーは火器を内蔵してないようだが、アルダムのミサイルランチャーを持たせてやればいいだろう」
聖戦士伝説だと持ち変えられるのはなぜか剣だけなんだけどね。発射のために機体独自の機構が必要なボゾンのガッシュやダンバインのオーラショットならともかく、他の武器だって共用できそうなのあるのにさ。
◇ ◇
新型オーラバトラーを完成させたのはうちだけではなかった。ドレイクのとこもビランビーを完成させたとの情報が入ってくる。
うちのブラウニーとどっちが強いだろう?
サーラの情報はそれだけではない。
「ロムン・ギブンが討ち取られたよ」
「北郷君とゼラーナ隊は?」
「そっちは健在さ」
聖戦士伝説と同じか。ゼラーナにマーベル担当の愛紗がいなくても、ドレイクにトッド担当がいないからバランスが取れちゃっているのかね。
ま、その分うちが強くなっているんだよ。両方がいるんだから。
ドレイクの使者がやってきた。
討ち取ったロムン・ギブンの死体からミの国王と共謀してアの国を侵略しようという手紙を見つけたので、自国を脅かすミの国を成敗したいから力を貸せという書簡を持って。
俺は断ったよ。
「協力しないでよかったのかしら?」
「あの手紙はでっち上げだ。ミの国は軍備に力を入れてなかったらドレイクに狙われている。ただの侵略だよ」
あとね、出撃したとして戦場は『レッド・バーの砦』だ。なんか赤壁みたいな名前で華琳ちゃんには不吉でしょ。これは言わないけどね。
言うと華琳ちゃん、絶対出たがるだろうし。
「邪魔なギブン家を始末して、ドレイクは野望を露にし始めたということね」
ここで断ってもどうせミとの戦いには参戦することにはなる。
今はドラムロかブラウニーがすぐ量産できるように強獣を狩って資金と素材を集めておく方がいいだろう。
プテラノドンやカットグラにも慣れないといけないしさ。
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17話 キロン城の戦い
いつもと違い、愛紗だけではなく華琳ちゃんと蓮華も連れてきている。
万が一にもレッド・バーへと向かわないようにするためだ。俺はその赤壁みたいな名前が気になって仕方がなかった。
「やはり自分の意思で自由に空を飛ぶというのは気持ちがいいわね」
もう空中戦に慣れてしまったようで、ダンバインの動きが速い。
これ、もしかしたら聖戦士伝説にはないオーラ斬りやオフ・シュートができるかもしれないな。
……見たいけど、彼女たちが先にできるようになったら俺の立場がない。せっかく、オーラバトラー戦なら強いって華琳ちゃんも見直してくれているのに。
「他の強獣も料理したいわ」
華琳ちゃんの言う料理って、倒すことじゃなくてマジに料理なんだよなぁ。
たしかに強獣も食材になるんだけどさ。
「コーイチさん、さっきはありがとう」
「気にするな。ただ、飛び道具には気をつけてくれ。ブレスを持つ強獣も多いから」
戦闘中に背後からの攻撃に気づかなかった蓮華機のフォローをしたんだよね。サーバインのシールドが役に立ったんでよかった。
このシールド、聖戦士伝説ではない装備なんだけど、スパロボXのサーバインが持っているからボウに頼んだらできてしまったのだ。
裸のねーちゃんの彫刻は愛紗に怒られたので、別の模様になってはいるんだけどね。
◇ ◇ ◇
レッド・バーの砦が陥落した。
バーンが新型オーラバトラーのビランビーに乗り換えているはずだから、マーベル役の愛紗がいないゼラーナ隊ではきつかったのだろう。
サーラの報告のすぐ後にドレイクの使者がやってくる。またもラース・ワウにきてほしいようだ。
聖戦士伝説でもこれは断れなかった。だから余計に断りたい誘惑にかられるが、行くしかないだろう。
だってもう待望のドラムロを売っているはずだし。ドレイクに会うのはオマケ。ドラムロの購入が目的だ。
プテラノドンで向かう俺たち。ドラムロ購入後の運搬のために
ドレイクに会うと、奴はついにある物を持ちだしてミのキロン城攻めの助勢を要求してきた。
ちっ。こうなっては仕方がない。
「以前より求めていたフラオン王の書状があるとなれば助勢するのも当然だろう。先陣は任せるがいい」
ずっと言いわけに使ってきた「そっちのトップの許可をもらえ」が実行されてしまったのだ。
聖戦士伝説でもそうだったから協力しなきゃいけないのはわかってたんで悔しくはないけどね。
戦の準備のためにトルール城に戻る前に本来の目的を果たす。
ドラムロにオーラシップ『ブル・ベガー』、ついでにウィングキャリバー『バラウ』も購入してしまった。すでにフォウがあるっていうのにさ。まあ、稼いでいるから問題はあるまい。
「これがブル・ベガー……大きいわ」
「大きいわりにオーラバトラーの積載量はナムワン級以下なんだけどね。スピードも遅い。その代わり大口径のオーラキャノンからもわかるように攻撃力が高い」
「火力重視なのね」
トルール城に戻ったらいつもと同じくすぐに購入した機体の調査、開発を指示。
ブル・ベガーは速度を改善した改良型ができないかも注文した。カットグラを造ったボウならきっとやってくれる!
「ブル・ベガーとドラムロは今回はまだ使えないのね」
「ああ。俺たちだけでがんばろう。怪我をしないように注意してくれよ」
「ご主人様は私がお守りいたします!」
侵略だってことで不安だった愛紗もやる気のようだ。毎晩俺ががんばっている効果があるのかもしれない。
ミの国はそれほど豊かではなく、オーラマシンの開発もせず軍備増強に力を入れていなかった。だからドレイクが狙った。
ドレイクがほしいのは土地や資源ではなく人間。兵器増産のための労働力がほしいんだよね。
だから協力するかわりに「奴隷を手に入れるための戦ではないのだろう。ミの国民にあまり重労働をさせないように」ってドレイクに書簡を出しておいたよ。
もしドレイク軍が聞かなければそれを口実にリがミを解放することができるように、さ。
愛紗もそれを知ってるからたぶん大丈夫だよね?
「留守中にドレイクやギブン家、他国が仕掛けてくる可能性もある。今回はプテラノドンだけで行く。いつもどおり、リの国をしっかり護ってくれ。頼りにしているよ」
「お任せください!」
出陣前には留守番組にも声をかけておかないとね。
騎士たちがもうかなり強くなっているから、どこぞの御大将みたいに「労いの言葉一つなく」とか言い出して謀反をおこされても困るのよ。
様子を見る限り、その心配は薄そうでほっとする。
◇ ◇
「ピネガン王は城の上、ナムワン2か」
この戦闘は聖戦士伝説だとターン数制限のあるイベントだ。
かなりゆるい制限なので失敗することはまずないんだけど、ターン数制限のあるマップはたとえ目標のターン数をオーバーしてもゲームオーバーにはならなかったりする。
ここでは失敗しておいた方が地上界に出やすくなるのだが、マーベル担当の愛紗がゼラーナにいない以上、ドレイクたちだけでもなんとかしちゃうかもしれない。普通にクリアすることにしよう。
「あの青いのがビランビーね。ダンバインよりも大きいのね」
「ブラウニーと同じくらいかしら。頑丈なのね」
攻撃をくらいながらもあまり効いているようには見えないバーンのビランビーにそんな感想を漏らす華琳ちゃんと蓮華。
思わず「さすがビランビーだ、なんともないぜ」って言いそうになっちゃた俺の気持ちは理解してもらえるはずだ。
「北郷君はあれか。
戦力の低いミが勝つためには敵の頭を取るしかないということだろう。ラウの援助があればまた話は別なんだがね。
でもそれも、やっとオーラバトラーを支給されたガラリアのドラムロに阻まれる。
「敵味方が入り乱れている。流れ弾には注意してくれ」
「わかってるわ。皇一こそ油断しないように」
俺がニーのダーナ・オシーと戦っている間に、アニメ11話と同じくバーンがナムワン2を撃墜し、ピネガン王を討ち取ってしまった。この回のバーンは活躍するなあ。
「ゼラーナが撤退する。バーン、追撃はどうする?」
「キロン城の制圧を優先しましょう」
「バーンが言うのでは仕方ないな」
ピネガン王の妻パットフットと娘エレを逃がす使命を持ったゼラーナを逃がすのもやむなし、と。
一刀君だったら間違いなく母子両方を攻略しちゃうだろうけど、北郷君はどうかな?
「ガラリアは落とされたのかしら?」
「ですがドラムロのフレイボム、たしかに使いやすそうではありました」
「だよなあ。だけど騎士にはあの3本指は評判悪いみたいだから一般兵用に量産するとしようか」
ダンバインがアニメ版の能力値みたいだから北郷君の相手をしたガラリアも大変だっただろうね。北郷君も剣術の経験者だから敵に回すと強敵になるか。
レベル差があるから俺はたぶん大丈夫だと信じたい。
「騎士だけでなく兵士にまでオーラバトラーが必要になるというの?」
「むこうの騎馬、とまではいかないけどオーラマシンの数はもっともっと増えて大規模な戦闘になっていくよ」
巨大戦艦なんてのも出てきちゃうしさ。
できればリの人間はあまり地上界には連れていきたくはないけど、巨大戦艦を動かすには人数も必要だ。どうしたもんだろうかね。
◇ ◇ ◇
ミの敗北とともに第3章が終了。
キロン城制圧後にドレイクと会談し、フラオン王への下克上を持ちかけられたので協力することに。
そして、シルキー・マウによって新たに召喚させたという地上人を紹介された。
残念ながら俺の嫁さんたちではなかった。
「ホンマに関羽や! ウチは張遼! よろしうな!」
「なんと。お
「う、うむ。だが、まずはご主人様に挨拶してくれぬか、張遼、馬騰」
俺のアドバイザーとして華琳ちゃん、護衛として愛紗も同席しているんだよ。その愛紗に二人の地上人が盛り上がる。
「そりゃすまんかった。やっと関羽に会えたもんで焦ってもうたわ。そっちの男が? ウチは張遼や」
「オレとしたことが……西涼太守、馬騰だ。よろしくな」
張遼と馬騰って。召喚されるのは無印のメインキャラってわけでもなかったのか。
って言うか、馬騰って馬超の親だよね? 無印だと男だったけど……どう見ても馬超や馬岱よりも幼く見える小さな少女なんですが。まさかのロリBBAだったの?
で、残る1人がさ。中の人的に貂蝉じゃないかなって勝手に予想していたんだけど。
「こいつは呂布や」
最強武将キター!
オーラマシンなんかなくたって強獣と戦えるほどに強いのはわかってるっての。そりゃオーラ力も強いでしょうよ。
「あ、うん。俺はコーイチ。バイストン・ウェルに召喚されて、今はリの国王をやってる。よろしく」
「私は曹孟徳。まさかこのバイストン・ウェルで馬騰や呂布、張遼に会えるとは思っていなかったわ」
なんかこう戦闘力が凄い武将ばかり来ちゃってるんですが。呂布と張遼が来ちゃって董卓軍大丈夫なのか?
それとももう反董卓連合戦、終わっちゃってるの?
たしかに馬騰の顔色がよくない気もしないでもない。ドレイクも大事な聖戦士の体調管理はしてくれると思うが……。
「あんた、曹操と関羽と結婚してるってホンマか?」
「ええ。皇一は我が夫よ。関羽も私の」
「ご主人様の妻です!」
うん。嬉しい。華琳ちゃんが言いかけたのは気にしないでおこう。
それにしても新たな地上人の3人、きっとオーラバトラーでも強いんだろうなあ。
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18話 傾国
俺たちが確実に恋姫世界へと帰還するためにドレイクの下克上に協力をすることにして、トルール城に戻り準備を進める。
ステータスを確認したところ、やはり購入したドラムロは聖戦士伝説と同じくアルダム以上の性能を持っていたがブラウニーよりは下の性能、デザインも騎士には不人気だったので、ブラウニーを騎士用にドラムロを兵士用に量産化を決定し機械の館に指示を出す。
ミがああなった以上、他人事ではないのだ。軍備増強は必要である。
リのドラムロは他国の物と区別するために頭部に角をつけることにした。ダンバインとは逆に斜め前に伸びて先端が2つに分かれる角。
色も魏軍仕様の黒なのでコガネムシからカブトムシっぽくなったな。ダンバインよりもさ。
――後に『ドラムロ雄型』もしくは、リ仕様のドラムロということで『リィドラ』と呼ばれるようになるのだった。
ブル・ベガー級の改良型はプテラノドンと同じくコンバーターの改良で対応したようだ。当然必要オーラ力も跳ね上がったが問題はない。
ゼラーナには及ばないがナムワン以上の速度は出るようになったのだからたいしたものだ。
オーラ力を足らすために船員も鍛えておかねばならない。
ブル・ベガー改級の名前は迷った。俺があと他に知ってる翼竜ってランフォリンクスかケツァルコアトルスしかないんだけど、ランフォリンクスは小さいしケツァルコアトルスは逆に大きすぎて巨大戦艦のイメージになってしまう。
なので仕方なくワイバーンって名前にした。ほら、攻撃力がある感じがしていいでしょ。
ワイバーン級も量産を始める。稼いでいてよかったよ。『かね×2』のボーナスが効いていて本当によかった。
そういえば聖戦士伝説のカオスルートだとここらでザン団長の息子のレンが脱走してナに行っちゃうんだよな。
なぜかこの世界にはそのレン・ブラスがいないから心配はないんだけど、リの国の騎士たちも
敵に回られると厄介なんで、万が一にも脱走者が出ないように意識調査しておくようにオウエンとザンに相談する。
「その心配はねえですぜ」
「ミの国民を思いやるあの書簡の内容を内外に発表しておりますので、騎士、兵ともにコーイチ王の思いを理解しております」
内外にって、諸外国にもってこと?
こりゃドレイクも聞いてないとは言えなくなったな。
というかあれを騎士も信じているのか。
そして書簡を差し出してくるオウエン。
「フラオンからの?」
「はい。ミ攻略助勢への謝礼だということです」
「たしかにドレイクも相応の謝礼をするって言っていたけど」
聖戦士伝説でこんなのあったか?
オーラマシンが貰えるイベントだったら絶対に忘れていない自信はあるんだが。
「これから自分を倒そうとする者に謝礼とはのん気なものね」
「……要約すると、コーイチ王と直接会ってそのお美しいご尊顔を拝見したいとのことです。謝礼よりも会いたいという方が重要のようでして。まるで恋文ですな」
「止めてくれオウエン。フラオンにはそんな趣味はないのだろう?」
いくらフラオンが愚王だとはいえ、男色の気はなかったはずだ。……なかった、よな?
うん。絶対に会わない。
「で、謝礼ってなにをくれたんだ? 資金?」
「オーラマシンにございます」
オウエンから目録を受け取る。アケロンにスカラベ?
模型誌の企画『オーラファンタズム』に出てきた
オーラバトラーと違って飛べない地上戦のみの戦車のようなオーラマシンだ。あ、大亀戦車のアケロンはオーラコンバーターも持っていてホバリングぐらいはできる設定だったっけ。
こんなのもドレイクはフラオンに売っていたのか。飛べないからオーラバトラーの敵ではないと判断して……それとも、ドレイクに金だけ渡して見繕わせた、ってのが正しいかもしれない。
ドレイクはうちが手に入れたオーラマシンを解析して量産しているのを気づいていて、飛べない役立たずを量産させて力を削ごうとしているのかも。
「あ、ピグシーもあるのか」
アニメに出てきたノミみたいなデザインの一人乗りの3脚小型機。高速移動時には2脚になる、馬かロバ代わりの機械だ。盾を付けてるのがドレイク軍にもいるんだっけ。
「敵となる者に武器を送るなんて、本当に愚王」
「まさに傾国の美男ね、皇一」
「俺のせいでアの国が混乱するみたいな言い方は嫌だってば。討たれるのはフラオンの自業自得だよ」
本当にさ、俺がきたのがリの国でよかった。
もしも出現場所がアの国でフラオンに献上されたりなんかしてたら……止めよう。考えたくもない。
「コーイチさんはその自業自得のフラオン・エルフがいるアの王城、エルフ城攻めのための砦の建設に協力することにしたのね」
「うん。ラウへの牽制なんて選べないだろ。どうせ失敗するんだし、ドレイクの下克上のためにリがラウと戦争する必要はない」
「あら、北郷と戦いたくないだけではないかしら? ゼラーナはそちらの方に出るのでしょう」
たしかに北郷君とは戦いたくないんだよなあ。俺の心友の一刀君とは違うとわかっていても、さ。
この先、エルフ城の戦いで北郷君の地上界に行く可能性もあるから、その時にはバイストン・ウェルに戻ってこないでくれると助かるんだけど。
北郷君ならショウ・ザマみたいに地上界にいたくないほど家族仲が壊滅してるわけじゃないだろうし。
でもきっと一刀君と同じならバイストン・ウェルに帰ってきちゃうんだろうなあ。
「北郷君のダンバインは強いからね。レベルでこっちが勝っていても用心するにこしたことはないよ」
「そういうことにしておきましょう」
ガロウ・ランのシン・ドロやゴド・オンも倒したはずなのにぴんぴんして出てきたし、倒しても聖戦士伝説と同じタイミングじゃないとトドメをさすことができないのかもしれない。
さすがに何度も北郷君を倒すのは俺の精神がツラそう。でもこんな気持ちは武将たちにはわかってもらえまい。
死なないからって割り切れれば楽なんだろうけどなあ。
「砦建設の前にザラルの森の鉱山を復活させよう」
「復活?」
「強獣が大量発生するようになって閉山しているから」
フリーシナリオだから行かなくてもいいんだけど、砦の建設は焦る必要がない。
倒した強獣の素材を持ち帰るためにも今回は
「ナラシのブラウニーとラージャのドラムロで実戦テストだ。三騎士なら大丈夫だと思うが、危険だと判断したらすぐに撤退するように。戦闘データとお前たちの命の方が優先だから無理はするなよ」
「はっ!」
「強獣相手なら逃げても恥にはならないわ。オーラバトラーや鍛え上げた騎士たちを失うことの方がリのためにならないということを理解しなさい」
「了解しましたっ!」
俺よりも華琳ちゃんの方が騎士の気持ちをわかってるっぽい?
さすがである。
強獣を始末できたら採掘再開をさせるように指示して出撃。
◇ ◇ ◇
三騎士は無事に戻ってきた。
実戦でもやはりドラムロよりもブラウニーの方が強いらしい。
ただし弾数の多いフレイボムはミサイルランチャーよりも使いやすいとのこと。聖戦士伝説でもそうだったもんなあ。範囲攻撃でレベルアップにも役立つし。
「わかった。次はフォウ、ジームルグを実戦テストしてくれ。オーラバトラーでなくてすまんな」
「いえ、フォウならばコーイチ王と同じプテラノドンに乗れます。是非私に!!」
結局、ザンがそれを怒ってフォウもジームルグもタペヤラに積むことになったのは少し可哀想だったかもしれない。
ウイングキャリバーはアニメでは2人乗りなんだけど、聖戦士伝説では1人乗りだ。うちのも新型オーラ増幅器を搭載したおかげで1人でも動かせるようになっている。
ジームルグが完成しているのでフォウを量産する気はないが、反ドレイク陣営のウイングキャリバーを実際に動かして確認しておくのも悪くはないだろう。サーバインやブラウニーとも合体できるし。
建設中の砦にて監督中のバーンと会い、建設を邪魔する強獣の相談を受ける。
聖戦士伝説と同じく
さくっと強獣を倒してトルール城に帰還する。
「こうやって長距離を飛ぶのもたまにはいいわね」
「ごめんね、オーラバトラーで帰ることになっちゃって。疲れたらフォウかジームルグと合体してくれ」
倒した強獣素材を持ち帰るためにオーラシップが満載になってしまったので、俺たちはオーラバトラーで飛んでいる。
ドレイクに少しでもオーラマシンの素材をやるのは避けたいというケチな理由からだったり。
「合体するなら皇一とがいいわ」
嬉しいけど、あんまりオヤジな発言はしないでほしかったよ。
あ、でもビルバインなら華琳ちゃんのダンバインと合体できるな。
強力な機体だから欲しいけど、カオスルートじゃ手に入らないんだよなあ……。
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19話 政略結婚
ダンバ忍サーラの情報によればラウを攻めたドレイク軍は大した戦果も上げられず大敗したらしい。
聖戦士伝説でもそうだったから驚きはない。
トッドがドレイク軍にいればここで撃墜されるんだったよな。トッド専用の紺ダンバイン担当だった華琳ちゃんを確保できていてよかったぜ。
「ゼラーナの連中、強くなっているみたいだよ」
「やはり新型オーラバトラーを使っていたのか?」
「ああ。ラウの国が造ったボゾンって機種さ。ニー・ギブンがダーナ・オシーからそれに乗り換えている。ラウ軍も配備を進めているよ」
ボゾンか。聖戦士伝説では移動力が低くて自分で使うとイマイチなオーラバトラーなんだけど、敵で出てくると移動力がない分接近戦にならず専用の狩猟兵器ガッシュで遠距離攻撃をしてくる嫌なやつだった。
性能は移動力に目を瞑ればドラムロクラスだ。ダーナ・オシーよりは強いのでたしかに戦力アップしている。
「ラウの国王もそのようなオーラバトラーがあるのであればミの国を支援していればよかったのに。娘がミのピネガン王に嫁いでいたのでしょう?」
「蓮華、ラウの王フォイゾン・ゴウの娘パットフットは政略結婚でピネガン・ハンムと結婚したんじゃなくて、国を捨て駆け落ちをしてピネガンと結ばれたんだ。だからフォイゾンはミを支援しなかった。それどころかゼラーナが送り届けたパットフットと孫のエレをラウに受け入れなかったよ」
「娘と孫なのに!?」
「ドレイクに言いがかりをつけられるのを嫌ってとった、国のための苦渋の決断だったんだろうけど結局ラウは攻められている。フォイゾンの判断は間違い続けてるってことになるね」
そもそも最初の時点でピネガンとパットフットの結婚を認めていればよかったんじゃね、ってなお話。
とはいえ俺も娘ができて男を連れてきたらどうなるかわからないから、偉そうなことは言えないかもしれん。
「……コーイチさんは孫家と縁を結ぶ気はある? その縁を大事にしてくれる?」
「蓮華?」
「キロン城の攻防でオーラマシンの威力を思い知ったわ。はっきりと理解したの、既存の戦力では歯が立たないって」
既存の……恋姫世界の戦力だろうか?
いくら恋姫武将が強くても飛んでる相手から射撃されたら戦うのは無理かもしれん。もしかしたら弓矢でなんとかしちゃうかもという可能性はあるが。
「あの時の戦力でも城や砦を簡単に落とせるわ。それが、大規模な軍勢となって地上界に現れる……。その時になっていきなり結婚というよりは今のうちに考えておいてもらった方がいい。私では駄目かしら?」
「政略結婚じゃないか」
「王なのだから当然でしょう? 側室が増えても私は構わないわ。孫策とは戦ってみたかったけれど」
華琳ちゃんまで。
孫策か。あれが義姉になるのはちょっと……シャオちゃんが妹になるのは嬉しいんだけどね。
「コーイチさんは……私では嫌?」
「ずるいな、その聞き方は。俺に嫌だなんて言えるはずがないじゃないか」
あの北郷君が俺の心友の一刀君だったら絶対に断ったんだけどね。
この蓮華も一刀君と結婚した孫権じゃない。
俺のことが好きだからって理由じゃないのがツライけど、家族や領民を護りたいって気持ちはわからないでもないんだ。俺も仮のだけど王だしさ。
「では、そのように進めますね」
「オウエン?」
「ミが滅び、アの不穏な空気で不安に怯える国民も多いのです。慶事で国内の雰囲気を明るくすることも重要です」
王族の結婚は国の一大イベントってやつか。
なんかグッズでも販売するのかね?
「曹操様、関羽様との結婚式も行っておりませんので挙式も必要かと」
「むこうで華琳ちゃんとは結婚式したけど、忙しさにかまけてたしかに愛紗とはしてなかったな」
一刀君との結婚式で関羽の花嫁衣装は見たことがあったから気にならなかったというか、一刀君のことを思い出すので無意識に避けていたのかもしれない。
「ごめんね愛紗。やっぱり結婚式はしたいよね?」
「当然でしょう。私も愛紗の花嫁姿、見たいわね」
「……戦乱の
愛紗も乗り気か。そりゃそうだよな。
よく我慢してくれていた。それとも地上界に出てから結婚式しようと思ってたのかな?
「蓮華、決まっちゃったみたいだけど覚悟はいい?」
今ならまだ取り下げられる。イベントなら2人との結婚式だけでも十分だろう。
「コーイチさん……」
「うん。プロポーズの準備ができたらするから、その時の返事でもいいよ」
自分で言い出したとはいえ、いきなり決まって不安そうな顔の蓮華にそう告げる。
……次の瞬間、愛紗から殺気にも似た凄い
「私は求婚などされてはおりませんが」
「愛紗の時はあまりにも急だったから……うん、愛紗と華琳ちゃんにもちゃんとプロポーズするよ!」
プロポーズなど緊張しまくるだろうが、ここバイストン・ウェルには便利な物がある。むしろ地上界に出る前にしておくべきだろう!
そう、『ポロポウズの花』だ。取りにいかなきゃ。
あれのおかげでリムルが転生してOVAのヒロインになれたって言われてるほどのもんだもんな。
あ、でも花言葉が「あなただけを永遠に愛します」で渡せばプロポーズしたことになるってのは楽でいいんだけど、「あなた
何人もと結婚する場合はこっちじゃどうするか、調べるか。
◇ ◇ ◇
結局よくわからなかったがポロポウズの花の珍しい色の物を見つけたので、その色だと「あなた
事前にどういう花だとか、受け取ったら求婚も受け入れたことになると、こっそりとフィナに解説してもらうように頼んであったので無事に成功したよ。
結婚式も盛大に行う。バイストン・ウェル式の花嫁も綺麗だね。
ドレイクや張遼、呂布、馬騰も呼んだけど戦の準備を理由にきてくれなかった。代わりにガラリアが祝いの品を運んできたよ。
本来ならルーザ・ルフトとリムル・ルフトも来るはずだったのだが、リムルが強硬に出席を拒否したらしい。
「コーイチ王に入れあげていたみたいだから結婚式を見るのが悔しいんじゃないですかい?」
「ルーザにコーイチの素顔を見せたくないのかもしれないよ。クのビショットを愛人にしているのにリムルも気づいているんだろう。コーイチまで狙われると思ったんじゃないか?」
結婚式では眼鏡は着用していない。前回もそうだったからね。
それが俺を危険にすると言うのか?
国を挙げての祝いの席にガロウ・ランが顔を出すのもまずかろうと気を使ったサーラと別れ、花嫁の所へ。ちょうどガラリアもいて愛紗と話していた。
「ガラリアが来てくれただけでも嬉しい。ドレイク殿の所にいた時は世話になったからな。そちらに戻れずすまなかった」
「バーンでは女のことはわかるまい。それに……あたしは愛紗がいなくなってほっとしているのかも知れぬ。手柄を競う相手が減ったとな」
「ガラリア……」
「今のはドレイク様には内緒にしてくれよ。結婚おめでとう、愛紗」
愛紗ってガラリアとは真名をあげるくらいに仲良かったみたいだな。
ドレイクも召喚された聖戦士が女だったんで配慮したのかね?
聖戦士伝説でもガラリアとマーベルの会話とかあればよかったのに。
「ラウは祝いの品を贈ってきたりはしないのかしら?」
「離間の計ね。ドレイクの使者の前でラウからの祝いが届いたら、リとラウの繋がりを疑うわ」
結婚式までそんな策謀に利用されるのは勘弁してほしい。
でもそんな策もないってことは、リを完全に敵国として見ているってことなんだろう。
「ラウやゼラーナの襲撃に備えて量産したワイバーン級2隻が展開しております。やつらがきたら祝砲代わりにぶっ放すと騎士たちもやる気でした」
君たちも花嫁衣裳のまま出撃しそうだから、ゼラーナが襲撃にはこないでほしいな。
……むこうも罠と警戒してたりして。
なお、俺たちのオーラバトラーも式場に展示物のように配置されている。
ダンバイン各機は全身に
「こんなに急がなくても、結婚式はドレイクがエルフ城を落としてからの方がよかったのではないかしら?」
「思いっきり死亡フラグだからね、早めに結婚式をしたかったんだ。それに……」
「早く蓮華としたいわ。今夜あなたも皇一の力を知ることになる。楽しみね」
俺の双子って数だけじゃなくて、2人を同時にやっちゃった場合、その2人がもう片方の相手に挿入感、発射感を感じられるという特殊能力があるらしい。簡単に言えば俺が感覚のついた双頭の器具にされる感じ?
感覚共有……いや、俺は相手側の感覚がわかるわけじゃないから感覚付与かな。
俺自身もちゃんと2本とも感じられるんで問題はないからいいんだけどさ。
「それって道場の方も? 愛紗もまだ連れてってないし……」
「もちろんよ」
「痛くしないでね」
やっぱりか。俺も季衣ちゃんたちに会いたいけど、愛紗と蓮華はビックリするだろうな。
「あの力に頼らずとも世界を手に入れるつもりではあるけれど、2人は知っておいた方がいいでしょう」
「世界を……コーイチさんとの婚姻は正しかったようね」
「蓮華殿、素直にご主人様が好きだからと言わないと、初夜で眼鏡を取ってもらえませんよ」
「そんな! 私はコーイチさんが好きよ!」
それだと俺の顔が好きってことになるんですが……まあ、政略結婚よりはマシなのか?
仕方ない。眼鏡は我慢するか。
サーバインの操縦席は未だに立ち乗り式で眼鏡をつけていられない。それもあって眼鏡無しにも慣れてきた気がする。
そのせいでサーバインの操縦席の換装を華琳ちゃんが許してくれないんだ。
見た目を豪華にするよりも中身を変えてほしかった……。
「ありがとう。俺も蓮華が好きだ。華琳ちゃんと愛紗も好きだ! ここにはいない季衣ちゃんたちも!」
「そうね。早くあの者たちとも閨で楽しみたいわね」
双子の力を春蘭や桂花が喜びそうだ。
華琳ちゃんのように季衣ちゃんも処女に戻っているんだろうな。今度こそあまり痛くないようにしてあげたい。
「私もご主人様が好きです!」
って愛紗泣いちゃったよ。
ずっと涙を我慢してたのかもしれない。劉備や張飛も結婚式に呼びたかったって。
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20話 道場再び
蓮華も増えて贅沢すぎる素晴らしい初夜を終えると、俺は華琳ちゃんに殺された。
俺が
「ご主人様!」
「華琳! なんでコーイチさんを!」
チェックを済ませて道場へと現れた愛紗と蓮華が俺の殺害で華琳ちゃんを責めている。
ま、そうなるよね。
「2人とも落ち着いて」
「ごっ、ご主人様!? 首を刎ねられたのでは……」
「コーイチさん?」
「皇一も言ったでしょう、落ち着きなさい。周りをよく見ることね」
華琳ちゃんに言われて部屋が変わっていることに気づく2人。
そして今度は春蘭が俺に詰め寄る。
「おい、関羽と孫権がここに現れるとはどういうことだ?」
「華琳さまだけでは飽き足らずにこの2人も襲ったのね、強姦魔!」
「いや、俺にそんなことができるはずがないっつの! 」
嫁にそう言われると泣きたくなる。
華琳ちゃんに関しては仕方がないのかもしれんけど……。
「だが、この道場にいるということは無理矢理かどうかは別として、抱いたということの証明に他あるまい」
「えっ、兄ちゃん浮気したの? 華琳さまや兄ちゃんがいなくてボクたちがむちゃくちゃ苦労してる間に!?」
季衣ちゃんだけがこの道場での俺の癒しなのに、彼女までが俺を責め立てる。
もう泣いちゃっていいよね。
「本当にご主人様なのですか? 確認させてもらいます!」
愛紗が俺の眼鏡を奪う。くっ、油断してた。
ここならば眼鏡をしたままでいいと思ったのに!
「その顔、まさか本当に?」
「コーイチさん!」
俺の胸に飛び込んできた蓮華。その目は涙に濡れている。
ずるい!
俺より先に泣くなんて!!
「わ、私、あなたが死んだものかと……」
「え、えっと、死んだのはたしかだよ。でも生き返るから安心して」
「そんな馬鹿な!」
俺と抱きついて泣く蓮華を睨む愛紗。もしかして怒ってます?
俺でもちゃんと嫉妬してくれてるの?
蓮華との結婚も許してくれたから俺のことは嫉妬するほど好きじゃないと疑っていたんだけどさ。
「嘘ではないわ。現にこうして会話もしているでしょう。蓮華、その男の体温は死人のものかしら?」
「本当に生きているのですか?」
「ああ。愛紗の苦手な幽霊じゃないからね」
この道場にいる間は幽霊みたいなもんかもしれないけど、わざわざそれを言う必要はない。
「いったいどうなっているのです?」
「これこそが俺の力らしいんだけどね」
2人が落ち着いたのを見計らって、ゆっくりと俺は説明した。
信じてくれるといいのだが。
◇
「まさか、そんなことが?」
「俺自身もなんでこうなったのか原因はわからないけど、本当なんだ」
それこそ道場主である孫策に聞くしかないのに、革命世界でまだ生きているせいなのか、道場に現れないんだよ。
思い当たることといえば恋姫と聖戦士伝説のどちらとも俺が何周もやりこんだゲームだってことぐらい。
「そして、この道場へと皇一以外の者が現れ、やりなおした時に記憶をひき継ぐ条件は皇一に抱かれること」
「そ、それではこの者たちもコーイチさんと?」
「うん。みんな俺の嫁さん」
「……ずいぶんと幼い者も交じっているようですが」
愛紗の視線が俺を貫く。
だが否定はできない。というか初めの頃はその幼い季衣ちゃんと華琳ちゃんしか嫁にするのは無理だと思っていたんだよね、俺ってば。
「全員俺の大事な嫁さんだよ。もちろん季衣ちゃんも」
「ボクは幼くなんかないよっ!」
幼い方がいいのに。
◇ ◇
道場で少し長く打ち合わせた後、初夜直前のセーブから再開。
愛紗と蓮華は生き返った俺に微妙な表情だったが、もう一度蓮華の初めてをもらって巻き戻ったことを証明した。
セーブが増えててよかったよ。華琳ちゃんと愛紗の初めて直前と同様にこの直前のセーブを残しておけるもんね。
数日後、完成したドレイク軍の砦に赴く。
今回はプテラノドンとワイバーンの両方でだ。三騎士も連れて行く。
ドラムロを使う兵も増えたのでトルール城が襲われることになっても大丈夫だろう。
「新婚早々、かたじけない」
そう思うんならドレイク、さっさとエルフ城落とせよ。
ドレイクとの作戦会議、リの騎団は迷ったけど本陣である砦の防衛を選んだ。リの騎団が先陣を切ったら強すぎてエルフ城が簡単に落ちてしまって、この後の地上界へ行くテストがどうなるかちょっとわからないからね。
ドレイク軍守備隊の指揮はやはりガラリアが取っていた。
結婚式にきてくれてありがとうな。
「ちょっとルーバックへ行ってくるよ」
「ルーバック……黒金の刃騎士団か。砦の守備を任されてなければ私が行きたいところです」
「ゼラーナのパターンからいって、この砦に奇襲を仕掛けてくる可能性が高い。それまでには戻ってくる予定だけど守備隊の主力であるガラリアが離れるわけにはいかないだろう?」
アの国のルーバックの町に駐屯する黒金の刃騎士団はアの騎士にしてはなかなかに強いと有名だ。必要オーラ力の大きなゲドを使う騎士団なのだから、騎士のオーラ力も高いのだろう。
聖戦士伝説では放置してもエルフ城攻略に影響はないが念のために倒しておきたい。
残しておいてもドレイク軍に入るだけだろうから、後のことを考えるとね。
まあ、そうは言っても所詮はゲド。苦戦はしまい。ガラリアが乗る新型オーラバトラー、バストールの力も確認したいからさっさと戻るよ。
ここは足の速いプテラノドンのみで出撃した。
◇ ◇
やはり黒金の刃騎士団は強くなかった。ゲドじゃね。練度もそれほどじゃなかったし。騎士団が強いのではなく、オーラバトラーという存在が強くて有名だったのかもしれない。ドレイクのところを除けばオーラバトラーの騎士団なんて他になかったのだから。
サクッと倒して砦に戻るとガラリアがやさぐれている。
騎士にとって城攻めは名誉らしく、城攻めに加われなかったことが悔しいようだ。
「ガラリア、本陣を守るのも重要な仕事よ。その程度のことがわからぬ者にあなたの主も身を守らせたりなどしないはずよ」
「曹操殿?」
「力が余ってるというなら相手をしてあげるわ。ベッドの上でね」
「華琳ちゃん!? 気を悪くしないでくれガラリア、これはからかっているのではなく、妻は本気で誘っている。妻は美しい女性に目がなくてね。ガロウ・ランやエ・フェラリオ以上に性に貪欲なのだ」
うん。自分で言っていてこれフォローになっているかわかんなくなってきた。
華琳ちゃんは気にしないだろうけどさ。
「そう褒めなくてもいいわ。それに男は皇一だけよ」
「そこは信じているから!」
俺と華琳ちゃんのやり取りを前に大きくため息をつくガラリア。
「私は騎士だ。そのお誘いは拒否させてもらう」
「ああ、うん。断られても怒ったりしないから気にしないでいい。で、頭は冷えたかいガラリア。そろそろゼラーナがきそうだよ」
「なにか情報を掴んでいるのですか?」
「まあ、ね。ほら、来たみたいだ」
情報といえばたしかに情報だよな、うん。ゲーム知識だけどさ。
爆発音と軽い震動がして、ゼラーナからの攻撃だと報告に来るドレイク軍の兵士。
ガラリアは兵に怒鳴るように指示を出しながら、出撃していく。
「ガラリアとの閨の分まで楽しませてもらうわよ」
華琳ちゃんの呟きはゼラーナ隊に向けてのものだろうか。それとも俺か……。
ベッドでなら頑張るよ。カンストオーバーでの高オーラ力のせいか、俺がこの年齢だった頃よりも精力も増大してるみたいなんだよね。
持続力、回復力ともに信じられないぐらいになってる。華琳ちゃんが研究中の強獣素材によるスタミナ料理――強獣の内臓やアレを使用――も関係しているのかもしれない。
……華琳ちゃんたちもだけどね。
俺たちも出撃してゼラーナ隊を迎え撃つ。
もっとも今回は北郷君の相手はガラリアに任せるつもりだ。
「見せてもらおうか。ガラリアのオーラバトラーの性能とやらを!」
「速いわね。ダンバイン以上の速度が出ている。サーバインと同じくらいかしら?」
「それに細身でありながら力も強いようだ」
「姉様が欲しがりそうなオーラバトラーね」
バストールを観察する俺たち。ゼラーナ隊だけしか来ていないので数の上で差がありすぎる。ニーのボゾンの相手を三騎士に任せるぐらいに余裕だった。
実は聖戦士伝説のバストールは移動力だけが高くて
だがこうして見る限り、この世界のバストールは嫁さんたちのダンバインと同じくアニメと同じ高性能機のようである。
「ニー・ギブン。相変わらずの逃げっぷりね」
「うん。まあ三騎士にも無理に倒すことはないって言ってあったけどね」
さてと、ガラリアが深追いしないよう説得しないとな。
疲れるけど春蘭を説得するよりは楽なはずだ、きっと。
◇ ◇
砦に設置された機械の館で補給中なのだが、ガラリアがまだ不満そう。
「ガラリア、ゼラーナを逃がしたのが気に入らないのだろうが、あれは懲りずにまたくる。今度はゼラーナ単独ではなくアの援軍も連れてこよう。バーンの城攻めも上手く行ってない。功を焦ることはないだろう」
「ですが!」
「まだ血が滾っているようならば私が稽古をつけてやるぞ。ご主人様の仰るようにいつまた敵がくらかわからんから軽くだが。よろしいですね、ご主人様?」
俺に許可をもらうと愛紗とガラリアが場所を変えて手合わせを始めた。
ここは練兵場だろうか。
刃が入っていない訓練用の剣だけど2人の気迫が凄い。これで軽くとか……。
「やっぱ関羽はええなあ」
「張遼?」
いきなり声をかけられてビックリした。いつの間にか張遼、呂布、馬騰も観戦している。
ドレイクがまた引き抜かれるのを嫌ってか俺にはあまり会わせないようにしているみたいで、3人とは砦に来て初めて会う。
「ウチらもいい加減出陣せんとつまらん、退屈なんや」
「……ん」
呂布はなんか干し肉っぽいのを食べながらだ。かなり大きな塊だ。強獣の肉だろうか。
「退屈か。飛竜で来てたら見せてあげたんだけど」
「飛竜?」
「リの騎士はオーラマシンだけじゃなくて、飛竜にも乗るんだ。ドラウゲンって強獣に装甲を着せたパンツァードラグーンってやつで慣れると可愛いよ。オーラマシンはこっちでも見れるだろうけど、飛竜はまだだろう?」
動物好きの呂布が気になるようなことを言ってみた。
できれば仲間に引き入れたい。
「そいつはちょっとオレも気になるぜ」
馬騰も興味を示すか。
こっちの
顔色があまりよくないように見えるのは気のせいか?
「機会があれば乗せよう」
「よろしく頼むぜ」
「……ん」
これでいきなりリの国に来てくれることはないにしろ、仲間になってくれる可能性が少しでも増えてくれれば嬉しい。
で、やはり愛紗が圧倒し続けて訓練終了。呂布や馬騰も戦いたかったが、ゼラーナの再びの襲撃。今度はやはりアの軍も連れてきていた。
ゲドがたったの4機だけどね。
フラオン・エルフがゴネてエルフ城の守備隊から援軍を引き出すのって大変なんだよ。ロウルートに行きたくなかった理由の一つさ。わかっててもムカつくんだよ、あの愚王。
エルフって名前のとおりに女エルフだったりしたら華琳ちゃんもあっちについただろうに……。
今回の迎撃にはエルフ城攻めに失敗したバーンも参加していた。ドラムロも出ているけど、張遼たちの出撃はまだみたいだ。
ガラリアが出ていないのは聖戦士伝説のとおりなんだけどバストールがメンテ中なのかな?
あのオーラバトラーはパイロットに合わせての調整が可能なのが売りだし、それで時間がかかっているのかもしれない。
「ゼラーナ隊も忙しいな。リの騎団も明朝のエルフ城攻めに参加することになっているから深追いはしないように!」
「そうね。早く終わらせて楽しむとしましょう。今夜は4人でよ」
本当にすぐに終わらせるつもりなのか、早くもゲドを1機撃墜する華琳ちゃんのダンバイン。
「ゲドではやはりこの程度ね」
蓮華ダンバインもゲド相手では苦戦するはずもなく切り捨てていた。
「この程度、ご主人様の手を煩わせるまでもない!」
愛紗にいたってはゲドを2機まとめて撃破。……聖戦士伝説じゃ爆発系の攻撃がないと無理なんですが。アニメのオープニングみたいにカットグラの両腕にオーラショットつけたんだけどさ、これがオーラシュート?
俺の見せ場もなしにゼラーナは引き上げていった。
◇
「やはりザラルの森近くにラウの部隊がやってきたみたいだ」
「鉱山を狙ってでしょうか。迎撃に向かうのですか?」
「いや、襲撃に備えて駐屯させていたドラムロ隊によって撃破されたってさ」
フリーシナリオのイベントなんだけど、どこに来るかわかっているんなら前もって部隊を派遣しておけばいい。リで今ドラムロに乗っているのは一般兵といいながらも、カンストオーバーになったいわばエリート兵だ。ボゾンやグナンなんて敵ではない。
ラウもなんでうちに攻めてくるかね。リはまだ直接ラウには攻めていないのに。もう完全に敵国としたってことか。
「鉱山は無事だよ。で、鉱山で完成した鉄を使って作られた剣を持ってきたよ」
サーラはどうやって持ってきたのか、オーラバトラー用の剣、カ・オスソードを持ってきてくれた。
……これ、強いんだけどデザインが微妙なんだよね。コンバーター横の鞘にも入りそうにないしさ。
「誰か使いたい?」
「私はいいわ」
「私も遠慮する」
誰も使おうとしなかった。早くグラバスソードができればいいんだが。各人の好みに合わせた武器形状にしているせいか時間がかかってしまっている。
「いよいよ明朝ね。予定に変わりはないのね」
「うん。俺が消えても必ず戻ってくるから、その間のことは頼むよ」
そう。いよいよ明日、北郷君との戦闘でオーラロードを開いて地上界へ出る予定。しばらくは会えなくなるかも知れない。
だからこそ今夜は4人でと華琳ちゃんもさっき言ったのだ。
「必ず戻ってきて」
「当たり前だよ」
「ご武運を」
「みんなもね」
気になっているのは、
アニメ、聖戦士伝説と同じ、ショットやゼットのいた80年代の地上界か。
いや、それは俺と北郷君だと可能性はないだろう。
そうなると北郷君の故郷、フランチェスカ学園のある地上界、もしくは俺が生まれた世界、ということになるのかな?
俺としては季衣ちゃんたちがいる革命っぽい恋姫世界の方がいいんだけど、そっちはまだ行ったことがないんだよね。
無印恋姫世界だったら行けそうだけど、もうあっちは消滅してるかもしれない……。
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21話 地上界
聖戦士伝説ならばいよいよオーラロードを開くイベントである。
ドレイクも新しい地上人3人をやっと出撃させる。
張遼、呂布、馬騰の武将3人を。
「待ちかねたで」
「ん……出る」
「戦場はオレたちの方が慣れている。もうちょいマシな指揮をしろ若造」
指揮をするショットは大変そうだ。後方支援なんかでおさまる雰囲気じゃないけどわかってるのかな。無理だろうなあ。
俺だってあの3人をおさえられる自信はない。
おっと、ちょっとよそ見してる間にデートの相手がやってきてしまった。
「来たな北郷君!」
俺のサーバインに勢いよく向かってきた藤色のダンバイン。
そこにバストールが強引に割り込もうとしてくる。
「カズトは私が討ちます!」
「……北郷君、ガラリアになにしたのさ!?」
一騎打ちに入ろうとしたのを邪魔されるなんて。
聖戦士伝説だとここは自分でやるかガラリアにまかせるかの選択になるのに、今は3人で戦っている状況だ。ガラリアは譲ってくれそうにない。
「俺はなにも!」
言いわけしながらも斬りつけてくるダンバイン。
さすが一刀君と同じ男。鋭い剣筋だ。
さすがショウ・ザマ担当。やっぱりオーラ力が増大している。
むう、このタイミングで3人での戦いってダンバインの小説版、つまり『オーラバトラー戦記』っぽいな。となると……。
「ガラリアの気持ちをもてあそんだんじゃないのか?」
北郷君ならばありえるかもしれない。オーラバトラー戦記のガラリアは主人公のジョクに恋愛感情があったんだし。
「そ、そうではないコーイチ王!」
あれ、違うの?
そう悩んでいる間にも3機のオーラ力がぐんぐん高まっていき、やがて七色の光が発生し始める。
「カズト!」
「俺はなにもしてない! と、とにかくお前を倒す! コーイチ!」
「いや今はそんなことしてる場合じゃないって……もう! ガラリア、北郷君!」
攻撃を回避しながらサーバインの剣を鞘にしまい、右手でダンバインの、左手でバストールの腕をそれぞれ掴む。
逸れたらやっかいだ。この手は絶対に離さない!
俺の強い意志でさらにオーラ力が増大したのか、視界が七色の光で満たされてしまった。
……3機で浮上ってやっぱり小説版かよ。
◇ ◇
「コーイチさん!」
フィナに起こされると、キャノピーの外に見えるのは見覚えのない場所だった。
サーバインはダンバインとバストールの腕を掴んだままだ。
「ガラリア、北郷君! 目を覚ませ!」
バストールとダンバインを軽く揺らしながら声をかける。
「んっ、こ、ここは……? ダンバイン!」
「フランチェスカの男子寮じゃないか!」
あ、やっぱり北郷君のとこの地上界だったか。俺んとこじゃなくてある意味ほっとした。
俺、若返ってるから身分証明もできそうにないんだよね。
「2人とも落ち着け。今は戦っている場合じゃない」
「ですが!」
「ここは地上界だ。なんで?」
「北郷君はわかったようだな。どうやら俺たちは地上界に出てしまったらしい。非常事態だ。一時停戦するしかない。ガラリア、従ってくれ」
サーバインのキャノピーを開き、できるだけガラリアを刺激しないように説得する。
アニメだとバストールのミサイルランチャーで何十万人もの犠牲者が出てしまうのだ。それは防ぎたい。
俺に合わせるようにバストールとダンバインもキャノピーを開いてくれた。
「バイストン・ウェルでは大気に満ちているオーラの力が火器の爆発力を抑えているというのを聞いたことがないか?」
「あるけど、それが?」
「もしその話が本当ならば迂闊に発射すれば地上界に甚大な被害を出す。自分のオーラバトラーも爆発に巻き込まれてお陀仏だ。絶対に火器は発射しないように!」
これって結局さ、バイストン・ウェルの火薬が強力だってことでいいのかね? バイストン・ウェルでは威力が落ちているってだけで。
「ならば剣で戦えばいいのでしょう!」
「だから落ち着けって! 北郷君はここに見覚えがあるんだな?」
「ああ。ここは俺が通っていたフランチェスカ学園の男子寮だ」
そう言われても『春恋』はやってないんでよくわからん。
共学化したばかりの元女子校、でいいんだっけ?
「そうか。ならば北郷君の部屋はあるのか? とりえずそこでゆっくり話がしたいのだが」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
ダンバインから降りる北郷君。
それを見て、影から覗いていた者が声をあげる。
「かずピー!?」
「及川!」
どうやら北郷君の友人のようだ。
無印恋姫の最初に出てくるやつってこいつだったかな?
「行方不明なった思たら怪獣と一緒に帰ってくるとか自分、宇宙人やったんか!?」
「ちげーよ! ありゃロボット! それより、俺の部屋ってまだあるか?」
「警察がきおって調査しとったけど、まだ始末はされてないはずや」
「警察……マジかよ。そ、そういうことみたいですけどー?」
うん。聞こえてたから降りることにするか。サーバインから降りる俺。一応、念のためフィナには残っていてもらおう。操縦席はまだ改装してないので、操縦は無理だろうけどさ。
北郷君もチャムを残すようだ。
「ガラリアも来てくれ。思うところはあるだろうが、まずは情報が必要だろう」
渋々なのか、無言で降りてきたガラリア。
そういえばバイストン・ウェルではテレパシーで言葉がわからなくても会話できてたけど、ガラリアは地上界ではどうやって会話してるんだろうね?
恋姫世界でも普通に会話できてたから今さらだけどさ。
「このロボ、どうすんねん?」
「あー……適当に誤魔化しといてくれ。学園祭用のオブジェとかなんとか」
「うわ、なんやこのイケメン?」
っと、眼鏡眼鏡。
いい加減サーバインの操縦席直したいなあ。
オーラバトラーのことを北郷君の友人にまかせて寮内へ移動する。
「ここだ」
北郷君の部屋は広くはないが、綺麗にはなっていた。
「警察が来たって言ってたけど、荒らされた感じはしないな。誰かが片付けてくれたのか?」
「誰かって彼女かい?」
「そんなのこっちにはいない」
こっちには、か。
バイストン・ウェルにはいそうだな。やっぱりキーン・キッス?
「ここが地上界というのはわかりました。ですが、なぜ北郷と和んでいるのです!」
「落ち着けってば」
「これが落ち着いていられるか!」
ガラリア、情緒不安定だな。
北郷君の彼女の話題で怒ったんだろうか。
「ガラリア、ここで争ってもバイストン・ウェルには帰れないぞ。地上で死ぬのは犬死だろう、俺たちがどうして地上界に来てしまったかを考えるんだ」
「バイストン・ウェルに帰る?」
「当たり前だ。あっちには嫁さんたちがいる。俺は絶対に帰るぞ! ……北郷君はどうしたい? せっかく地上界に戻ってこれたんだ。むこうに行く必要はないよな?」
そうすれば敵として戦わずにすむ。浮上イベントで恋姫世界への帰還の障害もなくなるだろう。
アニメのショウ・ザマみたいに家族仲が壊滅的で居場所がないってわけじゃないだろうし……ならなんで実家じゃなくて学生寮の方に出てきたんだ?
「俺だってバイストン・ウェルに戻りたい」
「……そうか。こっちにきた原因に心当たりは?」
「たぶん、さっきの戦いでオーラ力が増大しまくってオーラロードを開いたんじゃないか?」
さすが北郷君、察しがよすぎる。
このまま味方につけたいところだ。
「もしそれが本当なら、また3人でオーラ力を高めれば再びオーラロードを開くことができるかもしれないな。ガラリア、北郷君を倒してしまったらバイストン・ウェルに帰れなくなるかもしれない。今は諦めてくれ」
「そんな……」
「きっと戻れるさガラリア」
にっこり微笑む北郷君にガラリアの頬が染まった。さすがギャルゲ主人公様だ。心友の一刀君を思い出すよ。
「ここにきたのは北郷君が自分の住処であるこの学生寮を望んだからじゃないのか? だとしたらガラリアや俺たちのフェラリオがバイストン・ウェルを望めば帰るはずだ」
「それも道理か」
「バイストン・ウェルを望む……」
アニメやゲームでの台詞なら故郷だったんだけどな。北郷君の場合、浅草の実家か鹿児島の道場に出現って可能性もあったかもしれない。
「そうだ北郷君、俺たちはできればすぐにでもバイストン・ウェルに帰りたいが、君は家族に連絡を取った方がいいんじゃないか? もうこっちに戻ってこれなくなるぞ」
「コーイチはいいのか?」
「俺はこっちには家族はいないんだ」
俺のとこに帰ってたらどうしたかな?
若返ってなきゃ実家に顔を出したんだろうけど。電話ぐらいならしたかも。
「す、すまない」
「いや、気にするな。君は俺の分まで家族と話してくれ。ガラリアだってそれぐらいは許してくれるさ」
「あ、ああ。最後の別れになるだろうしな!」
「……ありがとう。でもやっぱいいよ。声を聞いたら決心が鈍りそうだ」
泣きそうな顔で北郷君は言った。
俺だったら泣いてたな、絶対。
「本当にいいのか?」
「ああ。さっさとバイストン・ウェルに帰ろう」
「その前に機体の状態を確認しよう。オーラロードを通る時になにか異常があったかもしれない」
今の俺ならステータスの確認で故障はすぐにわかるのだ。
◇
「ガラリア……バストールを使うのは止めておいた方がいい」
「どういうことだ、コーイチ王?」
「コンバーターに違和感があるだろう? バストールはパイロットに合わせての細かい調整が利く新型のオーラ増幅器を使っていると聞く。その調整がオーラロードを通る時におかしくなっているようだな」
異常は見つからなかったが適当なことを言ってみる。
聖戦士伝説だとガラリアは条件が揃えば無事にバイストン・ウェルに帰れるが、バストールはアニメ版の性能を持ってるし、3人での浮上はオーラバトラー戦記だ。そのどちらもガラリアはバイストン・ウェルに帰れずに死亡してしまう。
両方の作品とも主人公は1人(+妖精)であっさり帰るけどな。ガラリアとの苦労は一体なんだったんだっていう。
「北郷君、ダンバインにガラリアを乗せてくれないか?」
「え? 2人乗りってこと?」
「あたしもいるじゃない!」
北郷君が数に入れてなかったチャムが抗議の声を上げた。
チャムはやかましいだろうけど、あのお尻はちょっと見てみたかったりもする。
「そうだ。ほら、俺のサーバインはコクピットの構造的に2人乗りは無理だろ」
「それはそうだけど」
やっぱり無事に戻ったら操縦席を換装しよう。
嵐の玉でもその方がいいだろうしさ。
「ガラリアもいいな? バイストン・ウェルに帰るためだ、万全を期す」
「バストールはどうする?」
「地上界に残すのも問題だから持っていくさ。帰った時に動くようだったら乗ればいい」
「……わかった」
よし。これでガラリアも無事に帰れそうだ。愛紗も悲しまないですむ。
もしかしたら敵が増えるかもしれないけれど、それは気にしないことにする。
「北郷君、ガラリアを頼む」
「いいか! 変なところを触るなよ」
なんか俺が見たとこフラグが立って脈ありそうだし、北郷君がんばってくれ。
……でもそうなるとヴァルキリアになってゼラーナに行っちゃうんだろうか?
話がまとまった俺たちはオーラバトラーで日本からはるかに離れた洋上へと移動した。
どっかのレーダーや衛星には補足されているだろうけど、今のとこ付近に機影は見当たらないのでさっさと始めることにする。
サーバインの操縦席に元々ついてなかったため、キャノピーに強引にくっつけた通信用モニターに写るのは北郷君とその膝の上のガラリア。
「ガラリア、北郷君、準備はいいか?」
「あ、ああ」
「まかせて!」
「そっちのフェラリオも大丈夫のようだな」
北郷君のかわりに返ってきたチャムの声。
羨ましい。あの声を近くでずっと聞いていたのか、北郷君は。
「あたしはチャム・ファウよ!」
「そうかチャム。始めるよ」
バストールをサーバインとダンバインで抱き合う様に抱えがら急上昇する。
「フィナ、ガラリア、チャム、故郷を想ってくれ、バイストン・ウェルを強く念じてくれ!」
それぞれの返事が返ってきて、機体がまた七色の光を発生し始めたので急降下に移る俺たち。
海面が近づいているが構わずに速度を維持し、海面に激突する瞬間、七色の光に包まれた俺たちは、オーラロードに突入した。
「帰るぞ、みんなで!」
「ええ! バイストン・ウェルへ!」
季衣ちゃんたちのことを考えてたらあっちの大陸に行けるか、ちょっと試したくなるな。
……華琳ちゃん抜きで行ったら春蘭と桂花に殺されるか。
スパロボTってヴェルビン出てるのか~
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22話 バイストン・ウェル帰還
七色に輝くオーラロードを通ってバイストン・ウェルに戻る俺たち。
だが途中で無人のバストールが大きく振動し、それに驚いたのかダンバインがバストールから手を離してしまう。
やはり念のためにガラリアを北郷君に預けて正解だったか。
視界の片隅で機体を立て直すことに成功したダンバインが写っていたので無事にオーラロードを抜けたとは思うが、俺たちは逸れてしまったようだ。
こちらも地表に激突することなく飛行を維持する。
「ここは?」
「コーイチさん!」
フィナが指差す先には巨大な鳥のような強獣、ギャラウー。
でかっ! 全長は50メットだっけ。
俺たちはバイストン・ウェルに帰ってこれた!
聖戦士伝説と同じくボンヤー山なのかな。アニメだとギャラウーじゃなくてズ・バダなんだよね。データ節約の都合上でギャラウーを使い回しているんだろうけど、ズ・バダはたしか5メットぐらい。
10倍のサイズ差はちょっとあんまりなんじゃないの、と実際に対面してる俺は思うわけで。
「ここにこいつがいるってことは……いた!」
予想どおりやはり2人の女性がいる。それなら逃げるわけにもいかない。
バストールを抱えなおしてオーラショットをギャラウーの顔面に発射。命中したギャラウーは倒れることはなかったが大きく鳴いて羽ばたき、高度を上げて去っていった。
「逃げてくれたか」
よかった。バストールを抱えたままでは戦いにくいもんな。
見つけた2人の近くにサーバインを着陸させる。
「漆黒のダンバイン……いえ、それはサーバイン! リの国のコーイチ王!」
そう声をかけてきたのはピンク色の特徴的な髪型をした少女だ。
辺りを警戒しながらコクピットハッチを開き、サーバイン付属の操縦用の兜を外して声をかける。
「そうだ。俺がコーイチ・アマイ。お初にお目にかかります、パットフット王妃、そしてエレ王女」
そこには聖戦士伝説と同様にパットフットとエレがいた。
この後面倒な話になりそうなんで2人を置いて帰りたいけど、そうもいかないか。
「美しい……」
「その美貌、たしかにコーイチ王のようですね」
判断基準、そこなの?
サーバインを動かせてるんだからそれで判別でいいじゃん!
「ここは危険です。失礼ながら、そのオーラバトラーに乗ってはいただけませんか?」
「なっ!?」
バストールを置き、サーバインから降りて軽く見回して異常がないのを確認。操作してコクピットハッチを開く。
「ドレイクに組する者に従うとでも!」
「こっちにだって理由がある。それに、リが組まなくてもドレイクはミを落としていたよ」
「そんな考えだからドレイクがつけ上がるのです!」
「ドレイクのことはわかっている。話は乗った後でもできるよ。狭いだろうけどサーバインの手で直接運ぶよりはマシだ。いつさっきのギャラウーが戻ってくるかわからない。素直に従ってくれ」
あの巨鳥とはうかつに戦えない。倒すことができても、その落下で地上のエレとパットフットが危険なのだ。
「私たちのことは心配御無用です」
「エレ王女、それでいいのか? このままここに残ればパットフット王妃を死なせることになるぞ」
「脅しには屈しません」
「一瞬視えたよ、この地で銃弾に倒れるパットフット王妃の姿が。君にも視えたんじゃないか?」
一瞬どころか聖戦士伝説だとパットフットはジェリルたちの弾丸に倒れることを知ってるからね。ただのハッタリではないのだ。
こっちだとジェリル担当は呂布だからどうなるか微妙だけど、連れてきた兵士が先走って攻撃することもありえる。
「そんな……コーイチ王にも霊力があると言うのですか!?」
「エレ・ハンム、霊力の修行はなんのためだ? 大事な母親を犠牲にしてまで続けたいものなのか?」
「わ、私は……」
「安全は保障しよう。フォイゾン王が君たちを拒絶したのも知っている。今さらラウの国に対しての人質にもならないだろうし、しようともせん。そんなことをすれば聖戦士の名が落ちるだけだ」
エレは迷っていたが、どこからか強獣の大きな声が聞こえたので従う気になったようだ。
そりゃ50メートルのギャラウーに襲われてたんだからよほど怖かったのだろう。
バストールをあまり揺らさないように気をつけながら飛ぶと暫くしてエレは寝てしまったようだった。狭いながらも母に抱かれての安全な状態に気が緩んだか。
「よくがんばったな」
俺の声が届いたのかパットフットが泣き出してしまった。こちらに聞こえないよう必死に声を殺して涙している。
空気を読む俺は見なかったことにするしかない。つか、こんな状況で声なんかかけられないっての。
◇ ◇
2人を乗せたバストールを運びながらなのでゆっくりとトルール城に帰ると、聖戦士伝説で発生するはずのラウ軍との戦闘がすでに終わっていた。
俺の帰城が遅かっただけでなく、華琳ちゃんがいて指揮系統に問題がなかったのですぐに戦闘が終わってしまい間に合わなかったのだろう。
「おかえりなさい。遅いわよ、皇一」
「それはバストール? ガラリアがどうかしたのですか?」
「ただいま。遅れてごめん。詳しい話はあとでしよう。今は彼女たちを休ませたい」
城の者にはバストールから出てきた2人を丁重に扱うように告げた。
ついでにサーバインのメンテと操縦席の換装も命じておく。
「あれがパットフット・ハンムとエレ・ハンムね。楽しむにはエレは幼いわよ。あれぐらいの方が皇一の好みなのはわかっているけど。それともパットフットかしら? あなた処女でなくてもよくなったの?」
「そんなつもりで連れてきたんじゃないから!」
もしかしたら助けられたかもしれないピネガン王への罪悪感を多少なりとも誤魔化したいだけだ。
「マスタードラウゲン、パットフットたちのことをお願いします」
こういう場合の扱いは本当の王様に丸投げしておこう。上手く行けばいい仲になってくれるかもしれんと期待もしながら。
俺も休みたかったが、無事に帰ってきたと3人の嫁さんにキスして留守中の埋め合わせもしなければいけない。
そうか、しまった!
あっちでなにか土産でも買ってくればよかったぜ……。
「ガラリアが北郷と一緒なのですか?」
「うん。たぶん無事だろう。もしかするとゼラーナ隊に取り込まれるかもしれないよ」
「ガラリアは敵前逃亡扱いをされたと聞きます。もはやドレイクの下には戻れないでしょう。ご主人様の仰ることもわからないでもない」
聖戦士伝説のロウルートでもそうだった。命がけで帰ってきたのに味方からよりにもよって父と同じ敵前逃亡扱いされてしまい、ドレイク軍を離れるのだ。その後、どこでどうやったか知らないけどサーバインを入手して覆面で正体を隠し――全くもって隠せていないが――ヴァルキリアとして仲間になる。
「たしかに北郷ならありえるわね」
華琳ちゃんはあの一刀君を知ってるだけに深く頷いてくれた。
もしかしたらもう攻略されちゃっているかもしれない。
傷心のガラリアをほっておくとは思えないもんね。
「コーイチさん、地上界は北郷の故郷の方だったのね?」
「ああ。俺のとこやみんなの大陸じゃなかったよ。ただ、イメージすることでバイストン・ウェルに戻ってこれたから、決行の時は大陸を、あの世界を強く思い浮かべるようにしてくれ」
「早く帰りたいわね」
「俺だって季衣ちゃんたちに早く会いたい。もう少し待っててよ」
ここで1回死んで道場に行った方がいいんだろうか?
華琳ちゃんが俺を殺さない限り、死ぬことがないんだよな。戦闘だって
「エルフ城はどうなった?」
「フラオン・エルフが死んだわ。もはやアの国の王はドレイク・ルフトよ」
「予定どおりか。まあ、ガラリアのこととか、パットフットとエレを拾ったとか多少の違いがどう影響してくるか……」
これにて聖戦士伝説第4章の分は終わる。第5章はロウルートへ移行の最後のチャンスがあるけど、どうしようかな?
あっちの方のあれもよろしくです
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23話 Ⅱ
地上界からバイストン・ウェルそしてトルール城に帰ってきたばかりだが謁見室で会議を行う。
「やはり強獣の森に出る強獣が変化したか」
「はい。ガッターがあまり出なくなり、代わりにギャラウーが出現するようになっております。ドラウゲンも多く飛んでおりますな」
今の所、ボンヤー山で見たような50メット級のギャラウーは確認されていないようだが、ガッターよりも大きく強いのは確かだ。
「レベル上げの調整が厄介だな。ドラムロのフレイボムでできるのがせめてもの救いか」
「皇一以外に強獣が瀕死かどうか判明できる者がいないのはツライわね」
「政務は華琳ちゃんたちに任せて、俺が兵を鍛えるしかない」
「オーラマシンのパイロットになる者は志願者のみにしなさい。未婚者で扶養家族のいない者よ。この戦いが終われば聖戦士とともに帰れぬ旅に出ることになると噂も流しておいて」
できれば俺たちだけで恋姫世界に帰れればいいんだけど、それは無理なようでリの国にも迷惑をかけてしまう。元王や老中たち家臣は「聖戦士に付き添うのは名誉なことだ」と言っているけど無理強いはしたくない。
「ラウの国がちょっかいをかけてきてやがる。オーラマシンの乗り手を増やしたくねえってのに頭の痛いことですな」
「いずれバレるだろうが、パットフットとエレのことはできる限り極秘にしてくれ。ドレイクが欲しがる可能性が高い。あれは人質を恥とは思わないからな」
地上人の召喚もリムルを人質にエ・フェラリオにやらせているしさ。
アニメや聖戦士伝説でパットフットが死んでしまうのもフォイゾンに対しての人質にしようとして失敗するという流れだ。
「他国も戦力を強化している。サーラからの報告で巨大戦艦の建造が確認された」
「以前コーイチ王が仰っていた城や砦のような巨大なオーラシップですか」
「うん。700メットを超える代物だ。ドレイクのアの国だけじゃなく、クの国、ラウの国、ナの国でも開発が開始されている」
その辺の前情報もサーラには話してあったので、各艦の図面までちゃんと入手してきてくれた。さすがである。
「うちでも開発したいんだけど、資金ある?」
「はい。コーイチ王のおかげで資金は潤沢です。問題はないでしょう」
オウエンにも俺のボーナス『かね×2』は話してある。俺が地上界に行っている間はたしかに入金が減ったと納得していた。
「俺たちがバイストン・ウェルから排除された時の貯えは用意しておいてくれよ」
「それにはまだまだ稼がなくてはいけないわね」
「強獣を狩って資金になるのが本当にありがたいわね。大陸に戻った時には使えない手だけれど」
そうなんだよなあ。地上界に出ちゃうと強獣の森がないからレベル上げに苦労するんだよね。
なのに聖戦士伝説では一番弱いリムルが仲間になるのは最終章でマジに面倒なんだよ。がんばってレベルをカンストオーバーにしたところで次は最終イベント。しかも乗り換えができないのでリムルは活躍のしようがない。
「今のうちに稼ぎまくっておこう」
「そうね。ギャラウーの肉も美味しいわ」
「から揚げが食べたいな」
巨鳥だけあって肉がたくさん取れるギャラウー。食用にもなるんで助かる。
から揚げでキンキンに冷えたビールが飲みたい。
聖戦士伝説だとここでは巨大戦艦開発のために資金繰りに苦労して「当分は冷や飯ぐらい」とか言われるんだけどそれがないなら、お酒飲んだっていいよね。
「ご主人様がお望みならば、私が作りましょう」
「愛紗、それに蓮華、揚げ物は上級者向けのとっっっても危険な料理だ。料理が得意な者の師事なしには決して作ろうとはしないでくれ!」
「は、はい」
ふう。たとえ不味くても嫁の手料理なら食ってみたい気もするんだけど、揚げ物は危険すぎる。
「皇一は心配性ね」
「あれ? 華琳ちゃんには言わなかったっけ」
愛紗の料理は春蘭と同程度と耳打ちすると、華琳ちゃんも納得してくれたようだ。時間があったら料理教室をしてもらうのもいいかもしれない。
◇ ◇
サーラからの追加情報でゼラーナがクリスタルの森に潜伏中なのも確認できた。ここも聖戦士伝説と同じだからね。
んで、ドレイクに伝えるか、リの騎団で討伐に行くか、の二択なわけなんだけど。
「なにもしないでいいよ」
聖戦士伝説になかった選択肢を選んでみる。
今はまだサーバインの操縦席の換装が終わってないから討伐に俺が行くのは無理だ。行けばバーンを仲間にできるようになるんだけど、どうせ最後には裏切るのもわかっている。
バニングスさんは魔法少女の友人だけでいい。
ドレイクに伝えるを選ぶとリムルの脱走イベント。放置してもこれがちゃんと発生するのかも試したい。発生しなければしないでいいな、と思ってたり。だってリムルはどうでもいい。
で、なにをするのかというとファンロンの森で謎のオーラバトラー隊との戦闘。ファンロンの森はアの国にあって、ドレイク軍が襲われたみたいなんだけどこれの正体はラウの新型オーラバトラーであるボチューン。ラウとナが共同で開発したボゾンの後継機だ。
これから何度も戦うことになる機体だから早めに見ておきたかった。
それにこのフリーシナリオはドレイクからの謝礼も貰える。少しでも稼ぐために行っておくことにする。
問題は俺がなにに乗っていくか、なんだけど。
「ブラウニーの強化型?」
ボウが新型オーラバトラー『ブラウニーⅡ』を完成させていた。正確には俺の留守中にもうできあがっていたらしい。
このブラウニーⅡも聖戦士伝説には登場しないオーラバトラーで、ビランビーとビアレスの中間に位置するという設定の機体だ。
見た目はブラウニーに水棲生物のヒレのようなトサカをつけて、ちょこちょこっとゴツくした感じだろうか。
「これのテストをして問題がないようだったら、ブラウニーの生産ラインをブラウニーⅡに切り替えよう」
すぐに切り替えないのは近い系統のビランビーの強化型にギトールがあるんだけどさ、そいつは強いんだけど移動力が低くてね、多くの騎士を乗せるにはちょっと向かない機体だったんだ。
だからブラウニーⅡもちゃんと調べて問題があったら改良したい。
◇ ◇
「やはりボチューンか」
褐色というよりは黄土色のオーラバトラー。この色は一般機カラーだな。
まあ、ラウの国だとボチューンは一般兵ではなく近衛兵クラスじゃないと乗れない、
ボチューンは参考にしたダンバイン譲りの小型オーラバトラーで空戦重視のスピード型だ。
そういいつつ、納得いかないことに聖戦士伝説ではドラムロと同じ移動力なんだよね。……ドラムロが速すぎると言うべきか。
内蔵火器はバルカンしかないんだけど、剣にオーラ力を集中させることができる機能を持ってたりする。アニメやゲームではほとんどその設定活かされてないけどさ。
「できれば回収したいが……。行くぞ!」
久しぶりの座席型の操縦席はまだ慣れないが、やはり立ち乗りよりはこっちの方がいい。
ブラウニーⅡは心配だった移動力も低くなく、内蔵火器がない以外は癖のないいい機体だった。
射撃武器がほしいが、これは偶々バストールを入手できてしまったのでそのオーラランチャーを解析、開発してもらっている。ビランビーの使う物とも同型なのでブラウニーⅡが使っても悪くはないだろう。
他にボゾンとグナンもいたが、うちの騎団の敵ではなかった。
さくっとブラウニーⅡの剣の錆になったよ。
「うん。ブラウニーⅡは悪くなさそうだ。ボチューンはどうだった?」
「ボゾンよりは強いようね。小回りもきくようだし、ドラムロよりも空中戦に強そうよ」
ドラムロより、ずっと速い!!
聖戦士伝説とちょっと違うのか。アニメと同じ……まさか俺がいろいろ選択を変えてるからじゃないよな?
「太腿の火器はいつ飛んでくるかわからないから正面での斬りあいはやりにくいわ」
「ご主人様、残骸はしっかり回収しました」
うん。嫁さんたちのダンバインやカットグラでも十分に余裕があったようだ。
これなら上級機で紛らわしい名前のボテューンが出てきても大丈夫そうだな。
ただ、北郷君のダンバインもアニメと同じに強化される可能性が高いだろうし、ビルバインも出てくる。それに地上界に出たらドレイク軍やク軍も敵に回すことになるから、嫁さんたち用のオーラバトラーも開発してもらわないといけないな。
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24話 リムルの家出
ドレイクの使者がきた。前回のファンロンの森でラウ軍と戦ったことへの謝礼だ。
1000Gほどだった。金額は覚えてないんで自信がないがたぶん聖戦士伝説の倍だろう。
ブラウニーⅡの量産も進んでいる。
ボウは巨大戦艦の建造で忙しいようだが、聖戦士用の専用機もちゃんと開発をしてくれているようだ。回収したボチューンの残骸からオーラ力の伝達、収束の機構を調べて組み込むとも言っていた。地上界に行くまでに完成してくれればいいが。
「皇一はどんな機体があるのか知っているのでしょう? 最強のオーラバトラーがほしいわ」
「そうなるとズワウスになるかな? ただあれは完全に敵専用の機体で、インチキして手に入れても不具合が出てたから使うのは無理かな。実は移動力も低いし」
あれも好きなオーラバトラーなのに。
まあ、オーラバトラーはだいたい全部好きなんだけどね。
「そうなると聖戦士伝説で強いのは、強化型ズワァースか強化型ライネック、改良型ダンバインかな? 改良型ダンバインはたぶんボウが造ってくれるかもしれない。次点は重装甲ボチューンだ」
「結構あるのね。強化型ってことは普通のもあるのよね?」
「ああ。ズワァースはショットが開発する最終型の量産型オーラバトラーで、ライネックはアとクが共同開発する量産型オーラバトラーだ。両方手に入れたいけど、カオスルートだとライネックは入手できないんだよなぁ」
なぜかズワァースは販売するのにライネックは販売してくれないのだ。共同開発のせいで販売権がややっこしかったりするのだろうか?
「コーイチさんは乗りたい機体はないの?」
「うーん、今使ってるサーバインも最強候補の1つだったからね。射撃武器がないのが玉に瑕だけど。ビルバインもいいけど、たぶん北郷君のとこにいくんだろう」
聖戦士伝説ではビルバインはショウ専用で、主人公は2号機をシーラからもらえるかどうか。でもそれもロウルート限定だ。
一応カオスルートでも迷彩ビルバインなら入手できる可能性はあるけど、浮上する地上界が恋姫世界だから入手できる選択肢が不明。手に入れるのは難しいだろう。
それとも……。
「ブラウニーのように知識にはあるけれど出てこないはずのオーラバトラーもあるのでしょう?」
「それだったらヴェルビンかな。設定上ではブラウニー、ビランビーと発展していった高機動型の究極なんだよ。……ふむ。ブラウニーができるならこれも有りなのか?」
ヴェルビンがあるならほしい。というか、人気がある機体なのになんで聖戦士伝説で出なかったんだろう?
あれの限定モデル、買い損ねていたのが悔しかったなあ。
設定から考えるとアの国製っぽいからゼットをヘッドハンティングすればワンチャンあるかもしれない。
「ご主人様、もしそのヴェルビンができたのならばご主人様が今お使いのサーバインをいただけないでしょうか?」
「ずるいわ愛紗!」
「私は強さよりもご主人様のにお……使ったオーラバトラーの方が重要なだけです」
愛紗がマーベルならおさがりのダンバイン系ってのは正しいんだろうけど……。
まあ、浮上へ向けての備えはしっかりしておきたい。むこうに帰れたらなにがおこるか不明なのだから。
◇ ◇
ブラウニーの開発に間接的に協力した、とも言えるリムルが脱走したという情報が入ってきてしまった。
くっ。やっぱり脱走しちゃうのか。そりゃその分岐の判定に使われるドレイクの好感度は高くないはずだけど!
「いくらドレイクに軟禁されていたからって家出するとは……ニー・ギブンのところを目指しているのか?」
「それが、リの国へ行くと書置きを残していたそうです」
「まだコーイチさんを諦めていなかったのね」
「い、いや、ドレイクを混乱させるための欺瞞工作なんじゃないか。きっとそうだよ」
そうであってほしい。俺は彼女には関わりたくない。
でも、ほっとくとさらに面倒をおこすかもしれないのがリムルなんだよなあ。
リムルはラース・ワウから西に、一直線にリに向かったらしい。敵を撒くための欺瞞であってほしいが、もし違った場合を考えると……。
「仕方ない。気は進まないが捜索を行う。ゼラーナとの戦闘も予想される。気をつけてくれ」
サーラがだいたいの位置を国境付近と予測してくれたのでそこへ捜索に向かった。いないでくれと祈りながら。
「グライウィングが見つかっちゃったか」
「リムルさんが乗り捨てたのでしょうか?」
換装がおわり、普通のオーラバトラーと同じ座席型になったサーバインの操縦席でフィナが首を傾げる。
「たぶん……いや、ガロウ・ランの可能性だってある。やつらだって使っていたよ。む、あれはドレイク軍の兵士か」
ドレイクのリムル捜索隊と合流してしまった。
グライウィングはリムルの使った物で間違いないらしい。
捜索隊を指揮していたのはミュージィ・ポー。リムルの音楽教師だったが、ショットの恋人になって彼のために戦士になった女だ。ショットのためには無理をも通す、たとえるなら有能なリムル。かなり厄介な人物である。
「コーイチ王、リムル様捜索のためにリの国内の調査を行うことをお許しください」
ちゃんと許可を取ろうとするなら、もっと早くに連絡すべきだよな。リには隠して極秘裏にリムルを見つけたかったんだろうけどさ。
「うむ。だが最近はラウの偵察部隊の接近も多く、兵たちもピリピリしている。注意されよ。それと馬騰殿、顔色がすぐれぬようだがお加減が悪いのか?」
「……ちょっと風邪っぽいだけだ」
「そうか。大事になされよ」
ミュージィは馬騰ちゃんをつれてきていた。アニメでは
アニメだとその戦いでフェイが死亡しちゃうんだよな。まさか馬騰ちゃんが?
気になったが効率優先で俺たちとミュージィの部隊は別々にリムル捜索を行うことにした。
「馬騰ちゃんよりも先にゼラーナを見つけたいが……」
「ご主人様! いました、ゼラーナです。ミュージィの部隊と戦闘中です」
うん。こっちでも捕捉した。……馬騰ちゃんのレプラカーンがいない。やられてしまったのか?
フェイみたいに
レプラカーンを探していると、サーバインに向かって走ってくるリムルを発見してしまう。
「コーイチ王!」
「……コーイチさんに助けてほしいみたいですね」
「言わないでくれフィナ。愛紗、リムルを頼む! 俺は北郷君をおさえる」
ここは一騎討ちに持ち込んで外野は無視するしかあるまい。
サーバインの剣を抜いてリムルを追ってきた藤色のダンバインを迎えうつ。
「北郷君、元気だったか? オーラロードで逸れたから心配してたんだよ」
「なにをのん気なことを!」
いや、軽い話じゃないと馬騰を殺したのか聞くことになってしまうじゃないか。
「ガラリアはどうした? 無事なのか?」
「ガラリアは……死んだ」
「嘘だろう!? 君と同じ操縦席にいたのに!」
そうさせないようにバストールからダンバインに2人乗りにさせたんじゃないか!
それなのになぜ?
馬騰といい、救うことはできないのか?
「俺たちの知ってるガラリアは死んだんだ……」
「あ……そういうこと?」
サーバインと切り結ぶダンバインを通して北郷君の悲しみのオーラ力が伝わってきた。
それはガラリアの死を悲しむものではない。ガラリアが「死んだ」と言うほどの、つまり生まれ変わったかのように変貌したガラリアを悲しんでいるのだろう。
ヴァルキリアとなったガラリアをまだ受け入れられないのかな。
「キーンとのエッチを邪魔されたぐらいでそこまでイジケるな、カズト!」
「チャム!」
「ガラリアにも手を出したカズトが悪いんじゃない!」
ああ、邪魔されたのね。
で、ガラリアもしっかり攻略しちゃってると。
「まあ、ガラリアが生きてるならいいか。リムルはこっちで保護するから安心してくれ。ドレイクには渡さないようにするから」
「リムルは渡さない!」
「……まさかリムルも狙っているのか、北郷君。キーンとガラリアはちゃんと説得できるんだろうな?」
「違う! くっ、これ以上は無理かっ!」
ゼラーナが敗色濃厚なのを感じて北郷君は撤退する。
チッ、リムルを押し付けようと思ったのに。
「皇一、リムルは保護したわ」
「そうか……」
だがミュージィの部隊に合流してリムルを渡そうとすると、ドレイクの元には返りたくないと駄々をこねられてしまう。
このままアニメのとおりに帰ってもらいたいのに。
……でもそのままアニメどおりに進むと実の母親であるルーザに殺されちゃうんだよなぁ。
さすがにそれはあんまりすぎるか。
「どうだろうミュージィ、その部隊では帰路で再びゼラーナに襲われた場合、リムル王女を守れないだろう。だから、彼女が落ち着くまでトルール城で保護するというのは?」
「ですがドレイク様も心配なされておいでなのです」
「ドレイク王にはこちらからも説明するよ。君に借りを作ることになる。すまないな」
ミュージィはしばらく考えたが、リムルの様子を見て諦めたのか、それとも俺の言った「借り」がショットの役に立つと理解したのか帰っていった。
「ありがとうございます、コーイチ王!」
「リムル王女、こちらへ」
俺に抱きついてこようとするリムルを愛紗が防御する。
情に流されるんじゃなかったかなあ……。
念のためにと戦闘区域を捜索すると、レプラカーンの残骸と馬騰を発見した。
聖戦士伝説のロウルートではフェイとの一騎討ちでの撃墜後に仲間にできるからもしかしてとは思ったけど、ちゃんと生きていた。
「ミュージィはオレを置いてきやがったか」
「生きていてよかったわ。あなたと会うのを楽しみにしていたのだから」
華琳ちゃんも喜んでいるな。
馬騰も背が低いし年齢より幼く見えるから共感があるのかも。
「どうだかな。あんな小僧に負けるなんてオレはもう長くなさそうだ……」
ゴホゴホッと咳き込む馬騰ちゃん。
やはり病が身体を蝕んでいたのか。
「うちに来てくれれば馬騰ちゃんの身体を治す方法があるかもしれないけど、どうする?」
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25話 商談
馬騰ちゃんはあっさり完治した。
治療方法はレベルの
華琳ちゃんの持病ともいえる頭痛がカンストオーバーしてから以降発生してないことをヒントにしたよ。
自身の強くなったオーラ力で華琳ちゃんの頭痛が治ったんだと俺は睨んでいる。スパロボのショウ・コハ・ザマみたいにさ。
その可能性に賭けて馬騰ちゃんをカンストオーバーさせたのだ。
「調子はどう?」
「信じられんくらいにいいな。十年くらい若返った気分だ」
その見た目で十年若返ったと言われても……俺の方がおっさんから若返ったのが外見で実感できるぞ。
馬騰ちゃんは恩を感じてくれて仲間入りすることになった。
「お前たちと一緒の方が西涼にも帰れそうだしな」
帰った後も敵対しないでくれるといいんだけど。
カンストオーバーした馬騰ちゃんはやっぱり滅茶苦茶強いんで。
一方、保護した
「よほど甘やかされてきたのね。シャオを思い出すわ」
「うーん、シャオちゃんはちゃんと領民や兵のことも考えていたよ」
会いたいなあ。いろいろと作戦を考えあった同志で友人で恩人のシャオちゃん。一刀君と幸せにやっているといいのだが。
「エレちゃんもごめんね。仇の娘の世話なんかまかせて」
「……リムルがお父様を殺したわけではありません。彼女もそれを気にしていますのであまり言わないように」
エレちゃんはしっかりしてるなあ。リムルにも見習ってほしい。
あの困った姫はうちの嫁さんたちに張り合おうとしてるのか、オーラバトラーに乗って戦場に出るなんて言い出すし、俺を見つけるとすぐに抱きつこうとしてくる。その度に愛紗に邪魔されてるけどさ。
「直接的な仇ならバーン・バニングスということになるけど、やつはゼラーナに負け続けてドレイクのとこから放逐されたそうだよ」
北郷君もドレイクのとこにいないし、愛紗が黒髪の騎士をやめたから黒騎士やれるかな?
聖戦士伝説だとこの時期は条件が揃っていればトッド・ギネスがトルール城にやってきて仲間入りするんだけど、彼の担当だと思われる華琳ちゃんがすでにこっちにいる。まさかバーンが代わりに訪ねてくるってことはあるまい。
「ゼラーナは健在なのですね」
「うん。北郷君も無事だよ。女性関係は面白いことになってそうだけど」
「コーイチさんが言えるの、それ?」
ぐぁっ。おま言う案件だったのか。
でもうちの嫁さんたちは仲いいよね?
「エレちゃんは最近変な感じがしないかい?」
「なんでコーイチさんがエレの月のものを知ってるのよ!」
「い、いやそっちじゃなくて! 巨大な影を感じたりしてないか聞きたかったんだけど……」
まさか赤飯炊かなきゃいけなかったのか?
こっちだとどうお祝いすればいいのか知らんけど。
そういえば蓮華も漢ルートだと生理不順があったような。馬騰ちゃんみたいにカンストオーバーのオーラ力で治っちゃったのかね?
「巨大な影?」
「わからないならいいよ」
その予感は聖戦士伝説第6章だったしね。
それとも修行を途中で止めさせたから霊力がアニメやゲームほど高まっていない?
ま、そんな能力はなくてもいいような気がするよ。アニメのエレの最後はそれによって無茶しすぎた結果だしさ。
◇ ◇ ◇
馬騰ちゃん加入から数週間経った。
道場には2、3日置きぐらいに華琳ちゃんに殺されて通っているけど、むこうも大変のようだ。
結局、曹仁に華琳ちゃんの影武者をやらせているとのことだが、華琳ちゃんの衣装をすぐ脱ぎたがるので困っているみたい。
季衣ちゃんが早く直接会いたいって寂しがっているし、春蘭と桂花も華琳ちゃんを返せとうるさい。
俺だって早くみんなに会いたいのに。
バイストン・ウェルの方は巨大戦艦完成までの小競り合いが続いている。
リの国にも、ラウの国のオーラマシンが侵入してきて鬱陶しい。こちらから攻め込むことはまだしてないけど、仕掛けられたら当然迎撃するしかない。
今のとこうちの圧勝。ボゾンではブラウニーⅡはおろかドラムロの敵ではない。レベルが違うのだよ、レベルが。
ゼラーナ隊はドレイク軍の戦力低下を狙って、ドレイク軍秘密工場を襲撃してオーラバトラーの生産を滞らせている。
秘密にしているだけあってこっちには詳しく伝わってこないけど、すでにいくつかの工場がやられているらしい。
リムル捜索ん時はいなかったけどゼラーナ隊にはガラリアも入って戦力アップしてるからドレイク軍が苦戦するのも当然か。仮面もつけているようなのでパワーアップしているみたいだ。
サーバインは俺が貰っちゃってるから、
ラナウン・シーかガータだったら面白いのだが。
で、ドレイクはその対策としてミラブロ山の工場で待ち伏せ、ゼラーナ隊を叩く作戦に出る。
ドレイクからリムルについての長々としたメッセージのオマケでその協力を申し込まれたので、リの騎団もミラブロ山に向かうことに。
それと、ビショット・ハッタからも新型機のテストの相手をしてくれとの協力要請があったが、これは断る。
うちの騎団との戦闘データを与えるつもりはない。それにドレイクの方だと報酬としてオーラバトラーが貰えるはずだけど、ビショットの方は『タンギー』なんだよね。
タンギーはオーラボムにしては強くて硬い、敵にしたら鬱陶しいやつなんだけど自軍で使うにはオーラバトラーの方がいいという微妙な機体だ。
ビショットが新型オーラバトラーである『ビアレス』くれるんなら戦ってあげたのにさ。
ドレイクの書簡を持ってきた使者はミュージィだった。
そして彼女は内密にと断ってショット・ウェポンからの商談を持ちかけてくる。
ミュージィには「前回の借りを返そう」とその商談に赴くことを告げた。
借りなんてなくても商談は受けるんだけどね。だって商品はオーラバトラーなんだから。
「ミラブロ山にはプテラノドンだけで行く。残りは建造中のヨルムーンガントの護衛に回す。ラウの襲撃が予想されるので華琳ちゃんを残していくから指揮に従ってくれ」
「建造の視察に行くつもりだったからその方がよさそうね」
聖戦士伝説でのこのシナリオは騎団の留守中にラウにより巨大戦艦の建造地が襲われるのだ。そんなことはさせない。
華琳ちゃんと離れるのはツライけど、ゼラーナよりもラウ軍の方が弱いから不安はない。それにプテラノドンの格納庫を空けておく必要もあるし。
出発前のチェックでプテラノドン艦首のフォウにリムルが潜り込んでいるのを馬騰ちゃんが発見した。いても邪魔なだけなので当然降りてもらう。
「行動力はあるけど、それが周囲に迷惑をかけているのを理解してほしいよ」
「あれも皇一が抱けば少しは安心するのではなくて?」
「やめてくれ。あの禿が義理の父になるなんて考えたくもない」
ルーザが義母ってのも嫌だ。
どうにかしてリムルには大人しくなってほしい。
北郷君やニーがリムル救出にきたら押し付けたくてしかたがない。
「留守は頼むよ」
「任せなさい。もしここへゼラーナが来たら沈めてあげるわ」
華琳ちゃんなら本当に倒してしまいそうだ。ゼラーナ隊、ちゃんとミラブロ山に現れてくれよ。
◇
ミラブロ山の前にショットがいるマウンテンボンレスに立ち寄る。
……なんで山とマウンテンが混在してるんだろ? マウンテンミラブロやボンレス山じゃ駄目なのか?
「これは、聖戦士コーイチ王」
ショットはオーラシップを着陸させて待っていた。スプリガンではない。まだ完成していないか、それとも隠しているのか。
「ショット、悪いがドレイク殿の協力要請の途中だから短めに頼む。ここでの商談という事情もわかっているつもりだ」
ドレイクには聞かせたくない秘密の商談。見つからないうちにさっさと取引を済ませたいだろってこと。
「ではさっそく、私がお売りしたいというものは……」
「期待してるよ。うちのブラウニーより弱いオーラバトラーの開発技術や、量産に不向きの新型オーラバトラー1機だけだったらさすがに金は出せないから」
駄目元で先制攻撃してみる。
聖戦士伝説なら1周目ではビランビーの開発技術、2周目以降ではオーラバトラー『ガドラム』を購入できる。
だが
「……まずはこちらをご覧いただきたい。新型オーラバトラー、ガドラムにございます」
む。2周目以降の機体なのか。もしかしてこの世界、2周目なの?
それとも俺がクリアボーナスもらってきちゃったから2周目扱いになってしまった?
わからん。
まあ、今はどうでもいいことか。
「ドラムロの強化型か。強そうだけど量産できそうにはないな」
「ええ。装甲に使われている強獣グラバスの甲羅は加工が困難でして。それでも1機でドラムロ4機分の性能を持っています」
模型誌の企画『AURA FHANTASM』の設定どおりとはいえ、4倍とは大きく出たねえ。
「ショットのことだ。まさかこれだけではあるまい? こちらは安くない資金と物資を用意するつもりだが」
「……ふむ。コーイチ王はなにかお目当ての品があるようですね。伺っても?」
そうきたか。
俺としては『ギトール』か『改良型ダンバイン』を引き出せればよかったんだけど。
「なら、開発中のオーラバトラー『ライネック』をもらいたい」
「ライネックをですか」
「そうだ。アとクで共同開発中と聞く。リとしては悔しい思いをしてるからな」
「なるほど。たしかに同盟国であるリの国にも共同開発を持ち掛けなかったのはドレイク王の落ち度でしょう」
お、信じてくれたか。
ライネックをほしがったのは実はそんな理由じゃないんだけどね。カオスルートじゃ手に入らないオーラバトラーがほしかったから。というただの物欲なだけで。
それより強いズワァースがあるのはわかっていてもさ、どうせならライネックも欲しいじゃん、オーラバトラー好きとしては!
「わかりました。ライネック、完成次第お譲りいたしましょう」
「よろしい。資金と物資はそちらの言い値で構わん。ライネックを早く完成させてくれ」
「感謝いたします」
「うん。よい関係が続けられそうでなによりだ。ガドラムは今、もらっていく。それじゃ失礼するぞ」
ふう。偉そうな態度でやるのはいつまで経っても慣れないぜ。
今回は予想以上に上手くいって逆にドキドキしてる。なんか裏があるんじゃないだろうな?
……いや、ショットはドレイクに隠れて他国とも商売をし、資金を集めて力を蓄えているだけか。
どうせ敵になるんだし、悩んでも無駄だな、うん。
ガドラムも貰ったし、さっさとミラブロ山に行こう。
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26話 仮面の女戦士
「関羽ぅ! よう来てくれたなあ、大歓迎や! おっと、コーイチ王もおひさー」
ショットとの取引を終えた俺たちはミラブロ山の秘密工場に到着した。
ドレイク軍の先発隊の指揮は張遼が執っている。
張遼がアレン・ブレディ担当なのか?
となると呂布がジェリル・クチビか。たしかに髪も赤いけど! ハイパー化しそうなぐらい強そうだけど!
呂布はうちの飛竜に興味持ってたのにまだリの国にきてくれていない。ドレイクが邪魔をしているのだろう。もしかしたらバイストン・ウェルの生物を与えているのかも。
「先発隊の指揮はウチが任されてる。よろしゅう頼むで」
「うん。期待してるよ」
アレンも聖戦士伝説では強い方の地上人だったからね。張遼もきっとオーラバトラーを使っても強いのだろう。アレンは艦長にもなれるけど張遼はどうかな?
張遼は馬騰に気づいたが、あまり驚いた顔もしなかった。
「なんや馬騰も生きとったってのはホンマ……ちっ、さっそく来たようやな!」
もう来ちゃったか。さすがゼラーナ隊は神出鬼没だ。
やはりビランビーで出撃する張遼。うん。アレンといったらビランビーだからね。ビルバイン初登場の引き立て役でもあるけど、そうならないようにしなくては。
ゲームではすぐに使うけど、ショットがなにか仕掛けていてもおかしくないので安全第一だ。馬騰だって
「げぇっ、バルバイン!? このオーラ力はガラリアか?」
ゼラーナ隊に見慣れないオーラバトラーが混じっている。北郷君の藤色ダンバインによく似たカラーリングのトゲトゲしい細身の機体。
バルバインは聖戦士伝説用にデザインされたオリジナルオーラバトラーなんだけど、没になっていてゲームには登場しない謎の機体だ。
聖戦士伝説でのサーバインといいニャムさん、どっからそんなオーラバトラー持ってきてるのさ?
「私はヴァルキリアだ! ガラリアなどという美女戦士ではない!」
キャノピーを開け、口元を覆う覆面をした顔を見せる自称ヴァルキリア。
うん、やっぱりガラリアだね。食事の時には正体バレるけど、それは黒騎士も一緒か。
……ヴァルキリアでバルバインか。ヴァルバインってわけ?
「おもろそうやな。ウチは張遼! 相手したる!」
張遼のビランビーもキャノピーを開け名乗りを上げて突っ込んでいく。
先をこされてしまったか。
バルバインの武器は鉈みたいなオーラソードだけなのかな?
ビランビーとバルバインが空中で激しい鍔迫り合いだ。やはり張遼のオーラ力も強い。
「北郷君……」
「言うな! 俺が言っても聞いてくれないんだ!」
華蝶仮面も止めさせられないもんなあ。
やけになってるオーラ力を感じられる北郷君のダンバインと適当に戦っていると、ゼラーナ隊はすぐに諦めて撤退していった。
「ヴァルキリア言うたあいつ、強いやないか」
「そうだな。バルバインもいい動きをしていた」
張遼はガラリアだと気づかないのか?
それとも気を使っているのか。後で愛紗にも確認しないと。
「あんたもや。おかげさんで工場は無事や。そんでな、工場の中のレプラカーンを一騎、貰うてくれ。ドレイクに言われとんねん。今回の謝礼や」
待ってました! このためにこっちを選んでよかったよ。
プテラノドンの格納スペースはもうないけど、オーラバトラー1体はフォウとドッキングして帰ればいい。
「ありがたく頂戴しよう」
「関羽、また組もうや!」
「ええ、また」
愛紗と話せたからか上機嫌の張遼に見送られ、俺たちはトルール城へ戻った。
張遼も早く味方にしたい。
◇ ◇
「おかえりなさい。商談はどうだったのかしら?」
帰城後すぐに華琳ちゃんに報告。
「ただいま。ガドラムを買ってきたよ。あとライネックも手配できちゃった」
「そう。ミラブロ山は?」
「張遼が対ゼラーナの指揮をとっていたよ。誘き出されたゼラーナ隊にはやはりガラリアが入ってね、ヴァルキリアって名乗っている。使うオーラバトラーはバルバイン、なかなか強そうだった。あとはいつもと同じですぐにゼラーナ隊は撤退。相変わらず逃げ足が速い。報酬としてレプラカーンを1機もらってきた」
「あの下品なオーラバトラーね」
下品って……股間のオーラキャノンをいやらしい目で見るの、禁止!
気になるのはわかるけどさ。リの騎士たちにも不評だったし。
「2機とも機械の館で調査している。なにも仕掛けがなければ馬騰ちゃんにガドラムをと思うんだ」
「あの蟹みてえなやつか」
「見た目は蟹だけど強いからね」
後期型と思われるぐらいにドラムロが性能のいい聖戦士伝説。その改良型のガドラムも当然高性能である。ショットもドラムロ4機分と自信ありげだったから、こっちでも同じはずだ。
ちなみに馬騰はつい「ちゃん」付けしてしまうのだがすぐに慣れてくれた。代わりに真名は教えてくれなかったけどね。
「巨大戦艦の方はどうなってる?」
「ラウの部隊がリの領土に侵入してきたわ。襲ってきた中にボチューンもいたけれど歯応えがなさすぎて不満よ」
やっぱりか。
ラウに直接リが仕掛けたことはないんだけどなあ。フォイゾンは先が見えてないね。
エレちゃんとパットフットはだいぶこちらのことを理解してくれているんでラウに渡せば向こうの態度も変わるかもしれないけど、わざわざ危険な場所に送るのも考えものだ。
「今回回収した残骸と以前に回収したものを合わせれば、ボゾンとボチューンがなんとか開発ができそうだとボウが報告しております」
ボチューンは反ドレイク陣営の主力オーラバトラーなんだけど、聖戦士伝説ではそれほど強くないユニットだったりする。『ボテューン』って紛らわしい名前の上位機種がいるせいだろうけど。
「ボゾンはいらないだろう。腕のボゾン砲と携行武器のガッシュだけを調べておいてくれればいい。ボチューンは改良型を造れないか研究してほしい」
もしかしたら『重装甲ボチューン』ができるかもしれないしさ。ボチューンの売りである移動力が下がったオーラバトラーだけどそこ以外は強い機体だからほしいよね。色も黒いし。
「わが国の巨大戦艦建造は順調に進んでおります。コーイチ王がお望みの機能が一番難しいぐらいですな」
オウエンから嫌味を貰ってしまった。
でもさ、しょうがないよね。
各国が建造中の
総合力と堅牢性を誇る、アの国の『ウィル・ウィプス』。
巨大さと艦載数が尋常ではない、クの国の『ゲア・ガリング』。
オーラノバ砲をはじめ火力自慢、ラウの国の『ゴラオン』。
城のような外見で優美な、ナの国の『グラン・ガラン』。
どこの国のもそれぞれ特色がある。
では、リの国の『ヨルムーンガント』は……一言で言えば地味。
聖戦士伝説で登場するゲームオリジナルの巨大戦艦は特に目立った特徴はなかったりするのだ。
アイロンと喩えられる外観も別に優雅ではないし、絶大な破壊力を持つ主砲もない。機動性も装甲も普通だ。積載量は聖戦士伝説では関係ないので不明だったが、たぶんそれなりかな?
だけどさ、どうせなら自慢できるものがほしいでしょ。
ならば、もはや機動母艦には定番ともいえる巨大浴場しかないわけで。
リの騎団の強さの秘訣はハイレベルな騎士にある。その長所を発揮させるためにも生活環境の充実は絶対に必要なスペックだと理屈をでっちあげてゴリ押したよ。
「楽しみだな。引き続き、巨大戦艦建造地の防衛には力を入れてくれ。俺も兵の育成に力を入れる」
「了解しました。あまりご無理をなさらぬ様にお願いします」
「巨大浴場でゆっくりするから大丈夫さ」
巨大戦艦ができたらそれこそゆっくりしている暇なんてないだろうけどね。
今のうちに鍛えて稼いでおかないと。
若返ってない俺だったら疲労で倒れていたかもしれない。……
「それに俺がいなくても問題ないだろ。またちょっとみんなと離れる予定だけど、心配しないでくれよ」
「また地上へ行かれるのですか?」
「いや、今度は『嵐の玉』さ。必ず戻ってくるから信じて待っててくれ」
これが聖戦士伝説でのロウルートへ移行する最後のチャンス。
どうするかな。
迷うけど、ショットからライネックが来る予定だしズワァースもまだ買ってないからそこまで悩むほどでもないか。
「ご主人様を信じてはおりますが……ご無事で」
「うん。約束するよ、絶対に帰ってくる」
「そう、絶対ね。戻ってこなかったら楽しみね」
これ以上嫁さんたちと離れたくないんだ。
早く季衣ちゃんたちに道場以外で会いたいよ。
会ったら春蘭と桂花に遅いって怒られるのはわかっているけどさ。
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27話 聖戦士伝説で多くのプレイヤーがやりたかったこと
しばらく小競り合いが続いていた。
各国は巨大戦艦の建造に力を注ぎ、そして他国の巨大戦艦建造を邪魔しようとする。
リの国も建造地の防衛隊を強化したよ。オーラバトラーの量産と兵の育成が進んでいるからね。
母艦として
ガドラム、レプラカーンの解析が終わり、やはりガドラムの方が性能がいいとわかったので馬騰ちゃんに与えた。
聖戦士伝説ではついていた両腕のオーラバルカンがなかったけど、フレイボムはちゃんとついていたよ。カニっぽい爪だけど剣もちゃんと持てるようだ。
「ああ、たしかにレプラカーンよりも速いぜ」
「レプラカーンは火力重視だからバランスがね。でもあれはオーラ増幅器の性能なのか、オーラ力への反応はいいみたいなんだよ」
アニメでは最初にハイパー化したオーラバトラーがレプラカーンだしさ。バーンが使っていた時もなかなかに強かった。
逆にガドラムはオーラ増幅器が非搭載で必要オーラ力が大きい。
もしかしたらショットはリに売るからって地上人向けにセッティングしてくれたのかもしれん。
それともまさかドレイク軍にはまともに動かせるやつがいないから売ることにしたのか?
「馬騰さんの希望で以前乗られていたレプラカーンの角をガドラムに移植しました。牙の方は無理でしたのでお許しください」
「ありがとな、ボウ」
聖戦士伝説では再現されていないけど、アニメだとその顔の横の牙でレプラカーンは実際にダンバインに噛み付いてたりするんだよね。
それをガドラムの半没式の頭部にくっつけるというのはさすがに無理だってば。
角の方はなんかアリかもしれないかな。
「レプラカーンはコストパフォーマンスもメンテナンス性も悪い。量産化しないでいいだろう。ボウ、ご苦労だった。地上人用新型機の設計を続けてくれ」
量産機はライネックかズワァースを開発すればいいだろうからね。ビアレスも捨てがたいけど、あれはオーラソードが斧なんで互換性にかけるのがなあ……。
聖戦士伝説では斧のカテゴリの武装も売ってるしそれが強いからいいんだけどね。
まあ、剣も持てないわけじゃないからコンバーターに鞘をつけるようにした改良型を造ってもらうという手もあるか。もしかしたら『ガーゴイル』もできるかも?
やっぱりビアレスも購入することにしよう。あっちに戻れたら北郷隊の3人に使ってもらうのもいいかもしれないし。
◇ ◇ ◇
ゲーム知識どおりにドレイクがナブロの砦を攻めるための協力を要請してきた。リムルの近況を問う書簡も多かったけどね。
「本格的にラウと戦う準備ができたようだな」
ナブロの砦はラウの国の要塞の1つ。巨大な奇岩をくり抜いて作られているアの国との国境沿い、最前線でラウを守る砦だ。
名前的に元ネタはナバロンの要塞であってるはず。三国志関係ないんで華琳ちゃんたちが参加しても心配はなさそう。
「リに先陣をさせたいか。ドレイクめ、自軍は温存してあわよくばリの戦力も減らしたいのだろう。援軍の口約束などあてにならないし」
「分かりやすい男ね。断るのかしら?」
「いや、この戦いに行かないと嵐の玉に行けないからね。先陣で行くよ。ただし成功したら俺がまた消えるはずだから、その時は上手く撤退をお願い」
ナブロの砦を落としちゃうと浮上前に戦いが終わっちゃう可能性が出てくるし、ここは失敗しないと困ることになる。
俺たちは浮上イベントまで戦いを長引かせなければいけないのだから。
「ご主人様、砦は落とさなくていいのですか?」
「うん。むしろ落とさないでくれ。リが撤退したら失敗するからそんなに気を使う必要はないだろうけど」
「ゼラーナがいるのなら、そうなるわね」
「それですが、ゼラーナが多島海からナブロの砦へ向かっているとの報告があります」
ゼラーナ隊もドレイクがナブロの砦を攻めることを知って援軍に向かうのだろう。
よし、これでちゃんと嵐の玉に行けそうだな。
ここでゼラーナと多島海で戦うこともできるけど、それはしてはいけない。
この多島海でのフリーシナリオを戦っちゃうとゼラーナがナブロ攻防戦に間に合わなくなってしまって、嵐の玉に行けなくなってしまう。
なのに聖戦士伝説で唯一発売された攻略本にはこの情報が記載されておらず、原因がわかるまで何度やり直すことになったか。苦い思いでだ。
「ゼラーナはナブロの砦に出てくる。油断しないでくれ」
「どうせすぐに撤退するんだろ。オレたちがさ」
「でも安全に撤退できるように
華琳ちゃんたちの安全確保は絶対に必要だからね。
ラウにもリの騎団は倒せないってことを思い知らせておきたいしさ。
◇ ◇
予定の空域でドレイク軍と合流し、オーラバトラーを展開してナブロの砦へと向かう。
「あれがナブロの砦か」
知ってはいたが実際に見るとすごいな。
あんな巨岩、どうやって削ったんだろ?
「来たわよ」
「早いな。もう少しじっくりと眺めたかった!」
通信モニタはやっぱり新しい操縦席の方が見やすいな。サーバインの剣を抜き、一直線に向かってきた藤色のダンバインを迎え撃つ。
「ダンバインのスピードが上がってる……。新型のコンバーターに換装済みか!」
聖戦士伝説ではなかったけど、アニメでは行われたダンバインの強化。
背中のコンバーターを新型の物と変えることでダンバインは「まるで別のオーラバトラー」とまで言われるほどのパワーアップをするのだ。
こりゃ華琳ちゃんと蓮華のダンバインも強化できないか確認しないと。ボウならきっとできるはずだ。コンバーター換装なら
「今のダンバインなら! 今日こそコーイチを倒す!」
「やる気だねえ。そんなに憎まれてんの、俺?」
「戯れ言を!」
北郷君、いつもなら多少は乗ってくれるのに今日は雰囲気が違うなあ。
けど多少パワーアップしたところで
「絶対に倒す!」
「はいはい。頑張れ頑張れ」
俺の応援が効いたのか、2機のオーラバトラーがまた七色の光に包まれ始めた。
北郷君もフランチェスカ寮へ戻った時のことを思い出したはず。それでも構わずにダンバインが斬りつけてくる。本当になにがあったんだろう?
◇ ◇
嵐の玉は数千
オーラ力だけを高めながら北郷ダンバインと適当に戦っていたら、無事に嵐の玉に辿り着くことができた。
前もってわかっていたので気を張っていたが効果はなかったようで、やはり俺は意識を失っていたみたいだ。
フィナに起こされて目覚めるとサーバインの前には大きな強獣がいる。
「ガロウ・ランか。やっぱり生きていたか」
巨大な強獣ルグウの上には今まで何度か戦った、見覚えのあるガロウ・ランのシン・ドロ。
こいつがいるってことは、ここに来てまで会いたかった目的の人物もいるってことだろう。北郷君より先に会わなければならない。
北郷君と戦っている時よりも本気を出してガロウ・ランたちをさくっと倒すと、サーバインの操縦席付近に飛んできたミ・フェラリオに声をかけられた。
エンディングのヌードで有名なエル・フィノだ。
彼女の案内、というか勝手に飛んでいったエルを追っていくと、俺たちは目的の人物に遭遇する。
ダンバインのレギュラーキャラでは数少ない美少女の1人だ!
「シーラ・ラパーナ!」
「コーイチさんそれってナの国の女王ですよね?」
「うん。俺はコーイチ・アマイ。今はリで王をやっている。こっちはフィナ・エスティナ」
先手を打って相手に名乗らせず、自分の名も名乗ってしまう。ペースを握られるとやりにくそうな人だからね。
「コーイチ王? リの伝承に伝わる聖戦士の?」
「そう名乗ったが」
「本物ですか?」
「このサーバインでは証拠にならないか?」
無言で頷かれてしまった。
女の子にはロボの見分けなんてつかないのかね?
どうすればと納得してくれるかと悩んでいたら突然フィナが俺の眼鏡を外す。
「その美貌、たしかに……」
「判別方法、おかしいだろ!」
サーバインの操縦席を直してやっと眼鏡を着けていられるようになったのに。戦闘中は危ないとわかっていても着けていたいのに!
だいたい美しいって言うならシーラの方だろ。ダンバインでも人気トップの美少女じゃないか!
スパロボだったら戦艦の能力はマップ兵器のあるゴラオンの方が強いのに、シーラがいるからグラン・ガランが選ばれるぐらいに人気があるだろ!
俺の内心の苦情を他所にシーラは頬を染めながらシン・ドロに騙されて嵐の玉に来たことを告げる。……騙されたって、ガロウ・ランにのこのこついてきて誘拐されたんだろうか、この女王は?
アニメでも詳しい説明はされなかったんだよな。小説版でもしシーラが出てきていたらガロウ・ランに乱暴されていたことは確実だ。それとも、だから出てこなかったのかな。
「さっさとここを出るぞ、話はそれからだ」
シーラは「お話があります」と言ってきたが、それはここを脱出してからだと言い聞かせ、サーバインに2人乗りしてさっさと嵐の玉を脱出してしまう。
このためにサーバインの操縦席を通常タイプに換装したのだ!
膝の上のシーラの密着感が感動するよ。
「コーイチさん、鼻の下伸ばしてる……」
「華琳ちゃんには言わないでくれよ」
「シーラ様をいやらしい目で見るな!」
「蹴るなよ、エル・フィノっ!」
聖戦士伝説だと脱出の前にショウかマーベルのオーラバトラーと戦闘があるんだけど、そんな面倒なことはパス。北郷君に発見されないようにシーラの「お話」は後回しにしたのだ。彼も俺に負けてダンバインが壊れたりしてない方が脱出しやすいだろうしね。
渋々従ったシーラの案内で嵐の壁を抜けて脱出に成功。そのままトルール城へと戻る。
シーラ・ラパーナ?
そのまま膝の上ですがなにか?
「これでゆっくりと話ができるな、シーラ・ラパーナ」
ふふん。
聖戦士伝説では嵐の玉でシーラに説得されてロウルートに移らないとできない『シーラ様お持ち帰り』をルート移行せずにやってやったぜ!
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28話 姫様会議
もはや我が家ともいえるリの王城トルール城にでっかい土産を持って帰城する。
途中でシーラが暴れるかとも思ったがそんなことはなかった。
「ガロウ・ランから逃げ出せたのです。悪の聖戦士からとて逃げ出す機会もありましょう」
「スゴイ理屈だ。で、俺が悪の聖戦士か」
正義を名乗るつもりは毛頭ないけど、自分から悪を名乗るのも中2くさい。
そしてシーラは用が済めばウロポロス城に送るつもりだから逃げる機会もないだろうね。
「コーイチ王はその美貌で多くの女性を誑かしもてあそんでいると聞きます。だからといって私までたやすく堕とせると思わないでください」
「そんなことをした覚えは一度もないんだけど!」
あ、リムルがそれっぽいか。
けどそれは俺が狙ってやったワケじゃないのだ。
もてあそんでいるってのもなんか違う。リムルには手を出していない。というか狙われているが逃げている。
関係があるのは嫁さんとだけなの!
なのにエル・フィノが俺の顔を蹴ってくる。
「お前、シーラ様の身体を狙っているのか!」
「エル、この身が
だから俺の用はそんなんじゃないっつの!
そりゃシーラは美少女だしダンバインキャラでは好きなキャラでもある。この密着した状況を堪能させてもらっているけどさ、俺には可愛い嫁さんたちがいる。浮気なんぞできる筈もない。
……華琳ちゃんが我慢できないって可能性もあるが。トルール城は美少女が不足しているっていつも嘆いているもんなあ。
あの城は現在、バイストン・ウェル一美少女が集まっているというのに!
◇ ◇
帰城後、まずはみんなの無事を確認する。
騎団の誰も欠けることなくそこにいてほっと一安心。嫁さんやリの騎士たちが強いのはわかっていてもやはり心配はしてしまうものだ。
「注文どおりナブロの砦も落とさなかったわ。その子が?」
「うん。シーラ・ラパーナ、ナの国の女王だよ」
ダンバイン一と評判の美少女を前にして目が輝いている華琳ちゃんに紹介した。あと紹介するのを忘れたエル・フィノにまた蹴られた。
「よくやったわ。私は曹孟徳。皇一の妻よ」
「関雲長。ご主人様の剣であり、妻でもある者です」
「私は孫権。コーイチさんの妻だ」
3人の超美少女嫁によるジェットストリーム妻宣言に俺は感動で泣きそうになるのをぐっと堪える。
一方シーラは絶句。だが驚くのはこれからだ。
「オレは馬騰だ。よろしくな」
「パットフット・ハンムです」
「エレ・ハンムです。シーラ女王、聖女王と名高いあなたにお会いできて光栄です」
「リムル・ルフト。いずれコーイチ王の妻になる者です!」
最後に余計なことを言った困ったのがいるけど、俺の嫁さんたちも入れて姫、王妃な者が大集結だね。ロイヤルなお茶会ってやつ?
「やはり噂は本当だったのですね」
「だから違うから!」
無茶言うなよ。俺にそんなことができるはずがない。
顔目当てにくる女性なんて御免だっての。
「もっと増やしてもいいのに」
「俺は君たちだけだってば」
まだ季衣ちゃんたちとも会えていないのにこれ以上増やしたくはないんだが。
早く直接会いたい。元気でいてくれよ。
北郷君が
「ゴード王がどんなお気持ちでご自分の国を託されたか……」
「あ、それなら本人に聞いてくれ」
「さすが聖戦士、気づいておられたか。……ゴード・トルール。先のリの王である」
俺に促されマスタードラウゲンがゆっくりと仮面を外して名乗るとまたシーラが絶句してしまう。
聖戦士伝説のシーラはこっちの話もろくに聞かずに理想を押し付けてくるので、実際に会うことになっても説得される気にはならなかったんだよね。
だから先手を打ちまくる。
「シーラ女王、あなたが聖戦士と言う地上人の気持ちを考えたことがあるか?」
「世界救済の……」
「勝手にこんな世界に連れてこられたのに、そんなことを考えるのか? シーラ女王、異国へと強引に連れてこられたその身なら少しは想像できよう。君は自分をさらった異国のために働くのが正しき道と押し付けられて、それを納得できるのか?」
これが言いたくて説得なんて聞かずにいきなり連れてきたのもあるんだよね。
世界のためと言うのなら、シーラにはこの国のために働いてもらおうか。
「オレは娘や領民を残してバイストン・ウェルに来た。コーイチのおかげで病は治ったが、それでも早く西涼へ帰りたいぜ」
「私も地上界に残してきた領民と可愛い子たちが心配よ。戦乱はバイストン・ウェルだけではないわ。地上界にも戦乱が起きている。故郷をほっておいて、自分をさらった世界を救済しろと言うのかしら?」
馬騰ちゃんと華琳ちゃんにそう言われてはシーラも強く出れないようだ。
よかった。俺1人だったら言いくるめられてたかもしれないもんな。
「ですが、ドレイク・ルフトの野望はバイストン・ウェルに災いをもたらします!」
「俺はバイストン・ウェルがどうなっても構わない。シーラ女王だって地上界がどうなってもいいと言っているも同然だから文句はないよな。俺も王だからリの国だけは護るけどさ」
うーん。シーラの困った顔を見るのがなんだか楽しくなってきちゃった。華琳ちゃんのドSがうつったんだろうか?
「ご主人様、あまりシーラ女王を責めなさいますな」
理想を口にしようとする姿が劉備とダブったのか、愛紗が助け舟を出した。
まあ、本題は別だからこれぐらいにしとくか。
「そうだな。シーラちゃんをイジるのも楽しいけど、そろそろ本題に入るか。シーラ女王、それに他のみんなもよく聞いてくれ。リと俺たちがなにを考えて戦っているのかを」
◇ ◇
「そんな、エ・フェラリオの長がオーラマシンを排除するというのですか?」
「うん。バイストン・ウェル中のオーラマシンをね。フェラリオの長ジャコバ・アオンは命がけでやるよ。俺たちはそれに乗じて地上界へと帰る」
「帰れるのか!」
馬騰ちゃんにはまだ説明してなかったね。
ここんとこ忙しかったもんなあ。
「だからオーラマシンは余り造らない方がいいんだよ。もう巨大戦艦を造っているだろうけどさ。決戦に赴くのならバイストン・ウェルから排除される覚悟を持ってくれ」
「まさか地上界へ戻るために国々にオーラマシンを広めたのですか?」
「それはドレイクとショットがやったことだ。俺は止めなかっただけ」
俺の責任ではない。
ま、いいわけだけどね。
「コーイチ王は地上界に戻ってどうするのです? ドレイクも地上界へと出てしまいますよね?」
「倒すさ。ドレイクとビショットは地上界の制覇を目論むだろうが、それは絶対に阻む。もしフォイゾン王やシーラ女王が覇者ならんとするならば戦うこともあるだろうが、そうでないならば地上界では共闘することを約束しよう」
華琳ちゃんの野望のために、とは言わずにエレちゃんの質問に答えた。
そして父親を倒すと言われたわりにはあまりショックを受けた様子がないリムル。
「コーイチ王はいつ私と結婚なさってくれるのですか?」
「そのつもりはないって言ってるでしょ。俺には地上界にも嫁さんがいるの。彼女たちも大事なの! 余計な嫁なんて増やせるか!」
「ご主人様、つまり私と蓮華殿は余計ではなかったのですね!」
「もちろん。愛紗と蓮華も大事な嫁さんだよ」
嫁はみんな大事さ。
流されて結婚した部分も大きいけどね。
「それなんだけどよ、孫権とは孫家との縁固めの意味もあるんだろ? ならよコーイチ、うちの娘ももらっちゃくれねーか?」
「はい?」
「ドレイクまで地上界に出るんじゃ西涼が心配だからな。オレたちにも力を貸してほしいから、お前を婿にするのが確実だろ。お前が身内に甘いのはわかってるからな」
また政略結婚か。
馬騰ちゃんまでがそんなことを言い出すとは思ってなかった。
「オレの留守中に男ができてんなら話は別だが、ちいと望み薄でな……。お前さんならいいと思ってるんだ」
「そ、それは本人に意見を聞いてからじゃないと駄目だろ。男だって紹介されてないだけかもしれんぞ」
「よし、決まりだな! あいつらの意見が賛成ならお前は結婚してくれると。忘れんなよ!」
強引だなあ馬騰ちゃん。ってか、あいつら?
ああ、革命世界なら馬休と馬鉄もいるってことか。
そりゃ俺だって馬超は嫌いじゃないけどさ。というか、嫌いな恋姫ヒロインなんていないし!
だからと言って馬超と結婚……華琳ちゃんが嫌じゃなきゃアリか?
愛紗から流れてくる冷気は気づかないことにしたい。ブルブル。
「コーイチ王、もしも地上界にエレが行ってしまった時は……その時はエレをお願いします」
「パットフット王妃?」
「私たちにもこの話をしてくださったということは、エレをフォイゾンの元へ送るつもりなのでしょう? 恋を取り、国を捨てた愚かな娘ならともかく、孫だけならばフォイゾンも受け入れるはずです」
「お母さま?」
「母のことは気にせずにお行きなさい。それがラウの民のためにもなりましょう」
意外と鋭いのね、パットフット。
2人に浮上のことを話したのは全くそのとおりで、フォイゾンにもこちらの計画を流してリの国への攻撃を控えさせるためだったりする。
思惑どおりにはいかない可能性もあるが、その時はその時だ。
「エレちゃんはラウの巨大戦艦ゴラオンやオーラマシンには乗らないでいてくれるといいんだけど」
「それではドレイクがほってはおくまい。フォイゾン王のそばが一番安全であろう」
ゴードの発言にエレちゃんも頷く。
いやいや、一番安全なのはうちだろう!
「以前にコーイチ王が仰った巨大な影を感じるようになってしまいました。そのこともおじいさまに告げねばなりません」
「……感じたのか」
「はい。お母さまへの不安はなくなったのですが……コーイチ王にはたいへんにお世話になりました。できれば、お母さまのことをよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるエレちゃん。以前俺を父の仇に与する者と言った彼女とはまるで違う。
「俺が余計なことを言っちゃったか。やっぱりフォイゾン王に渡すのが惜しくなってくるよ。ずっとうちにいてくれてもいいんだ。ラウには別の方法で伝えてもいいだろう」
「ありがとうございます。ですが、おじいさまには私から伝えねばならぬのです」
「無理はしないでくれよ」
やばい。泣きそう。
エレちゃんも死なないで済むようにしたい。いい子だもんな。
「今のままだとフォイゾン王はドレイクの巨大戦艦を墜とそうとオーラバトラーで自ら出陣して命を失う可能性が高い。ドレイクは一騎討ちなどに応じる相手ではないと言い聞かせてやってくれ」
「必ずや伝えましょう」
フォイゾンが生き残ればエレちゃんの苦労が減るだろうから。
エレちゃんの話を聞いてくれるといいのだが。
「シーラ・ラパーナ。リの国はこの戦いでナの国に仕掛けるつもりはない。俺たちは地上界へ帰りたいだけだからリとナは戦う必要がない。二国間で不戦協定を結ばないか」
「信じられません。現にドレイクと共にミの国を滅ぼし、ラウの国ナブロの砦を襲ったではありませんか」
「ラウの国はむこうが先にリ本土へと攻撃を行っている。何度もだ。国としてこれを放置することはできないだろう? ミの国は協力しなければ今ごろはドレイクがミの民を労奴としていたよ。あれが欲したのは労働力だったからな」
ドレイクもうちに気を使って一応は表立って過酷な労働をさせることはしてないみたいだ。
「ではあなた方は、オーラマシンが排除される日まで傍観するとでも言うのですか」
「それができるならリに最も被害が少なくて済むからな。リは決戦には志願兵だけで赴くつもりだ。……本当は俺たちだけでいいんだけど付き合うって言ってくれる者も多くてね。できればもっと減らしたい」
「聖戦士のお供を願うのはリの騎士の本懐であります!」
リの国には聖戦士の伝説があって、子供の頃からそれを聞かされて育った者が多い。伝説というか憧れの存在、それが聖戦士だったりする。
「聖戦士がこのようなことを企んでいたなどと……」
「たぶん北郷君もジャコバとの邂逅を済ませて君のとこへ行った時にはオーラマシンの排除を言い出すと思う。だからその時にも考えてくれ。ドレイクを止めるために多くの者を犠牲にするのかを」
「犠牲?」
「オーラマシンを使っていたら兵を地上界に連れていくことになるだろ。こっちへ帰る方法はない。それともバイストン・ウェルは魂の安息地だからって、浄化とか言ってみんなで死ねば帰ることになる、とでも?」
アニメ最終回の浄化エンドって結局そういうことだよね?
そのせいで聖戦士伝説もロウルートは浄化エンド、つまり全滅エンドしかない。だからカオスルートの方が好きだったりする。
「シーラ・ラパーナ。頼る者のいない地上界で兵を養うためにあなたはどうするのかしら? もし行くあてが見つからなかったら私を頼りなさい」
「曹操?」
「代金はあなたでいいわ」
地上に出たら俺はリの王様をもうやらなくていいだろうから華琳ちゃんに全権を渡したいんだけど……どうしたもんかな?
あくまで聖戦士伝説のシーラへのアンチ(?)です
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29話 シーラの覚悟
「わかりました」
「へ?」
「コーイチ王の提案を受け入れましょう」
不戦協定をか?
たしかにありがたいが、こうすんなり受け入れられるとなにか企んでいるんじゃないかと勘ぐりたくもなる。
自分たちの、バイストン・ウェルのための行動が俺たちには押しつけであると聞かされたので、正義を口に出しにくくなって混乱してるのかも。
「ただし、秘密同盟のような形では民もついてきません。正式な形で同盟国となってくれるならば、です」
「ドレイクの敵となることをはっきりとせよ、と?」
なるほど、そうきたか。
さっきシーラの説得を軽く流しちゃったんで、ここで反ドレイクルートへの分岐をねじ込んできたというワケね。
美少女なだけじゃなくて女王としての強かさもしっかり持っていると。
「はい。いずれ戦うなどと言われても納得できません。証明を見せていただきたいのです」
「証明ね。ならばシーラ・ラパーナを皇一の婚約者として認るわ」
「ちょっ、華琳ちゃん!?」
いきなりなにを言い出すのさ。そんなにシーラが欲しいのか?
やっぱり俺よりも美少女の方がいいのか?
欲求不満なら夜もっとがんばるから!
「諸国で聖王と呼ばれる皇一と聖女王と呼ばれるあなたとの婚約ならば民も納得するのではなくて?」
「いや、敵国の同盟国の王な俺となんて、大臣連中が反対するでしょ?」
あと、『聖王』ってちょっとイタいんですけど。
たしかに聖戦士伝説のエンディングでそう呼ばれるルートもあるけど、マジでそんな呼ばれ方してんの?
桂花に聞かれたら鼻で笑われたあげく、絶対に別の字をあてるぞ。
「はい。ですが民は喜びます。臣たちは私を降ろし新たな王をたてようとするでしょうが、その者ならば私が地上界へと行った後にナの国を任せられるかもしれません」
「おいおい、どーゆー計算なのさ。しかも地上界に出るつもりなのか?」
「でなければあなた方の悲願は達成できませんのでしょう? そのためには手段を選ばないようですので。ドレイクの悪意を潰すためであれば、この身など。それとも他に方法があるのですか?」
うっ、手段は選ばないって言われるとショックだけど、たしかにどんなことをしてでも恋姫世界には戻らなければならないワケで。
だけど問題はそーゆーことじゃなくてだね。
「だ、だがいいのか、婚約だぞ! 結婚の約束だぞ!」
「わかっております。国同士の繋がりを作るのに手軽かつ確実な手段です」
「いや、お手軽って言われても」
上流階級の連中の結婚に対する認識ってそんなのばかりなんだろうか?
だからあの
シーラが愛人なんて作るとも思えないが……親衛隊の騎士との愛人関係とかあってもおかしくはない?
「皇一は嫌なのかしら?」
「そうですか。私ではご不満だと言うのですね」
げっ、なにこのプレッシャー!
そりゃ聖戦士伝説ではシーラのオーラ力がゲーム中トップだったけどさあ。
主人公キャラよりも上なそのオーラ力も乗ってるユニットのせいであまり発揮できなかったんだよね。
「あのね、キミはただの約束だと思っているかもしれないけど、俺は一度結婚したら絶対に別れるつもりなんてないから!」
そんなことしたら他の嫁さんたちも俺と別れるなんてことになりそうで怖い。
そうならなくても浮気なんかされたら絶対に泣く自信がある!
「それは婚約成立ということでよろしいのですね。わかりました。末永くよしなに」
「たたみ込まれた!?」
頭を下げると同時に黒いオーラ力が消失するシーラ。
もしかして俺の錯覚ではなかったのかとも思えるほど感じなくなったが、俺の頭の後ろに隠れたフィナがまだブルブルと震えているので現実なのだろう。
「言質を取られた皇一が悪いわね」
「シーラ女王もご主人様の色香に惑わされたか」
「まさに傾国の美男ね」
嫁たちが勝手なことを言っている。愛紗、色香ってなんだよ、色香って。まるで俺が誘惑したみたいじゃないか!
というかだな、反対はないの?
「愛紗たちはいいのか? 俺が嫁さん増やしても」
「今頃聞きますか? 馬騰殿の娘の時は聞かなかったのに」
いや、だってさっき怒ってたじゃん、すっごく。
嫉妬してくれるのは愛されてることの証明だから嬉しいんだけどさぁ。
さて、どう誤魔化せばこの局面を乗り切れるか、だな。
愛紗の喜ぶことって、ええと……。
「よし! 愛紗、約束だったな、サーバインを愛紗に譲ろう」
「ご、ご主人様?」
「そして空いたカットグラを不戦の証明としてナの国に贈呈する。聖戦士の使っていたオーラバトラーだ、不満はあるまい」
少しもったいない気もするが、こちらの覚悟を示すということはできるだろう。
「それでは愛騎を譲ったコーイチ王はどうするのです?」
「ナの国と戦う意思がないという表明だ。そちらがリの国と戦うということでもなければ、俺がオーラバトラーに乗る必要はないだろう? 民を守るため、強獣との戦いには使用するがそれは別にブラウニーⅡやドラムロで十分だ」
どうだ、これならば同盟の証としてシーラと婚約する必要はあるまい。
そりゃシーラは美少女でダンバインキャラでは好きなキャラだし、スパロボでもグラン・ガランの方を育ててたけど、実際に嫁にしたいかって言われると困る。
俺には華琳ちゃんたちがいるし、さらに女王な嫁追加なんて大変すぎる。この聖戦士伝説世界のシーラは面倒そうな子でもあるしさ。
ラウの国との戦いではどうするかは言明しない。まあ、エレちゃんの話を聞いたフォイゾン次第だけど。
俺が戦えないのをわかって攻めてきた卑怯者だ、とでも宣伝すればフォイゾンは嫌がるだろう。
ゼラーナと戦う時は……バストール、俺用に調整するかな?
いざとなったら俺も仮面をつけて正体を隠して戦えばいいだけだ。
「シーラとならばそれぐらい出してもいいでしょう」
「えっ」
「ずいぶんと物騒な結納品だな。オレのとこもオーラバトラーでいいぞ」
なになに?
どうあっても婚約は覆せないの?
馬騰ちゃんも結納品にオーラバトラーよこせって……古代中国にも結納ってあったっけ?
まあ、仲間になってくれるなら馬超たちにもオーラバトラーは必須だろうけどさあ。
ボウに新型オーラバトラーの開発、がんばってもらうしかないか。
「なあ、本当にいいのか? ゴード王が生きてるからって、俺がナの国に婿入りするってのは無理なんだが」
「はい。どの道、他国の王族との結婚という話はいつもあがっていました。ならば、この婚約以上のカードはありません」
「シーラ様、ずるい……私もお父様に話をつけなければ!」
俺との結婚を政治カードにしないでほしいのだが。
リムルもなんか妙な決意をしたのか、オーラ力が燃え上がってるし。シーラのオーラ力に比べたら微々たるものなんだけどさ。
「話はまとまったわね。それではシーラ、あなたが口先だけではないことを見せてもらいましょう。覚悟はできているわね?」
「もちろんです。私の言葉に偽りはありません」
「皇一、閨に行くわよ!」
やっぱりか。
華琳ちゃんにとっては政治的な価値はオマケ程度で、そっちが本題なんだね。瞳もオーラ力もギラギラと勢いよく輝いている。
「こ、婚前交渉は拙いだろ?」
「私の時は強引だったのに」
「それを言われると……」
あの時はまさか華琳ちゃんと結婚できるなんて思いもしなかったわけで。
もうそれで死んでもいいっていうか、死んでもなんとかなるからって、あまり先のことなんて考えてなかったような気もする。
「ナの国に戻れば考えを改めるかもしれないわ。その前に皇一を刻みつけておきなさい」
「わかりました。聖戦士の種を貰っておくのもいいですね」
いやいやいや、なんでお腹に手を当ててそんなことを言いますかね!
聖少女どこいったのさ!!
ショウへの恋心は隠したシーラ様ですが
政治利用できるとなればこうなるかもってことで?
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30話 黒騎士消滅
シーラ・ラパーナとエレ・ハンム。2人の姫――正確には片方は女王――をフォウに乗せてナの国の王城であるウロポロス城へと飛ぶ。
先触れは出してあるが襲われるかもしれない。
俺だけ――フィナはついている――、しかもオーラバトラーとドッキングしたウイングキャリバー1機だけというあからさまに狙ってくれとばかりの獲物なのだから。
王自ら行くことはないと止められはしたけどナの戦力も見たかったし、俺ならやり直しが効くからね。
これでナの国の出方も見ることができるだろう。シーラが御せるか、それとも暴走するか。
「本当に護衛もないのですね」
「シーラの言うナの国の正義とやらを試したいからね」
「無謀な」
「ほいほいと城を出てガロウ・ランに捕まった子に言われても」
マジでなんでガロウ・ランにさらわれちゃったんだろうね。薄い本へのネタ提供? オーラバトラー戦記だったら確実に酷い目にあっていただろうなあ。
ああ、このシーラは陵辱されてなかったよ。だって初めてだったし。大事な商品だからってガロウ・ランも手を出さなかったのかな。
「そのおかげでとても素晴らしいものをいただきました」
隣を見るんじゃなかったよ。頬を染めたシーラが意味ありげにお腹をなでているんだもん。エル・フィノまでそのお腹に耳あてているし。
いや、流されてシちゃったけどまだデキているかなんてわからないよね? オーラ力でわかるとでもいうの?
もしデキていたら俺の死亡フラグっぽいんですけど!
まあどうせ帰ったら死ぬことになるんだけどさ。
後ろの席のエレちゃんが睨んでいるのがちょっと気になる。フォウは基本2人乗りなんだけどスペアシートがあってエレちゃんにはそこに座ってもらっている。座り心地悪かったかな、ゴメンね。
「あれがウロポロス城か。さすがにオーラマシンが展開されているな。シーラ女王、無線で連絡してくれ」
そのためにシーラを副操縦席に乗せていたけど、エレちゃんでもよかったかな。母親と離れて心細いだろうから、いい席に座らせてあげればよかったよ。
「本当に私を帰すつもりなのですね」
「早い方がいいだろう。それとも華琳ちゃんともっと楽しみたかったかい?」
新たな美少女とあって華琳ちゃんがはりきっちゃったんだよね。こっちの世界は恋姫世界と違って見た目が可愛い娘が少ないもんなあ……。
ため息の後に通信を始めるシーラ。
ウロポロス城側も半信半疑なのだろうがすぐに攻撃してくる気配はなかった。
フォウを自動操縦に切り替えて、合体したカットグラの操縦席へと移動する。フォウは合体時、接続したオーラバトラーの操縦席へ移動できるようになっているのだ。
あ、俺がカットグラの操縦席に乗ったままフォウを無線操縦して操縦席2つにシーラとエレちゃんに座ってもらえばよかったかも。
でもフォウと合体時のオーラバトラーの操縦席って視界が悪くて操縦しにくいからそれはないか。
「それじゃドッキング解除して着陸させるからシートベルトをちゃんとしておいてくれよ」
カットグラで上から持上げるように支えながらゆっくりと着陸したが、それでも震動があったので可愛い悲鳴が2つ聞こえた。
確認にきた城の騎士がフォウから降りたシーラを確認して跪く。
「シーラ様、よくぞ、よくぞご無事で!」
周りの騎士も一緒に跪いた上に泣いてるし。
感動、というよりは暑苦しい。
エレちゃんも降りたのを確認して声をかける。
「シーラ女王、エレ王女のこと、頼みましたぞ」
「はい。フォイゾン王の元へ必ず届けましょう」
「ならば長居は無用だ。離陸するから離れてくれ」
騎士たちの視線がきつかったのと、そんな中でシーラとの婚約を発表するのもちょっと面倒だったのでさっさと帰ることにした。
なのに、カットグラからフォウへ移動する俺にシーラが駆け寄ってくる。
「なんだ?」
「エル」
「はいはい」
シーラの命令か、エル・フィノが素早く俺の眼鏡を外し、それに驚いた隙にシーラの顔が急接近。俺はあっさりと唇を奪われてしまった。
そして高らかに掲げられる一輪の花。
「ナの国の女王シーラ・ラパーナ。リの国の王コーイチ・アマイの求婚を承諾しました!」
やられた。シーラが手にしているのはポロポウズの花。そう、蓮華たちに求婚した時に使った花で、異性に渡すと求婚、受け取ると承諾って便利なアレだ。
むこうに行った時に季衣ちゃんたちにもあげるために栽培していたんで、ついシーラにもあげちゃったんだよね。
うわ、キテルキテル。騎士たちからの殺気がびんびん、びんびんと。
いや、華琳ちゃんや春蘭ほどのはないから大丈夫か。
「リの国とナの国の友好の証として聖戦士関羽が愛機カットグラをここに進呈する!」
これは政治的な結婚だとアピールしても殺気は収まらない。シーラは人気が高いもんなあ。
憧れていた騎士も多いのだろうね。やつらからすればアイドルに手を出した不届き者ってワケだ。
あ、近衛騎士といえば、ボチューンのカスタムタイプであるボテューンに乗っているんだった。
ボテューンは聖戦士伝説だと移動力が高くて使いやすい高性能量産機だったなあ。地上に出ちゃうとオーラバリアが発生するから射撃武器の数よりも移動力の方が重要なのだ。
カットグラのお返しにボテューン売ってくれてもいいのよ。
「ご無事で」
もう一度口づけしてきたので、今度は華琳ちゃん仕込みのテクニックで仕返し。脱力した彼女を慌てて近づいてきた、たぶん近衛騎士団長っぽい騎士に渡してやっとフォウへと移動する。
近衛騎士団長にすっごい睨まれたけど気にしない。
「それじゃエレちゃん、無茶はするなよー」
搭乗ハッチ閉める前にエレちゃんに向かって叫んだら『それはあなたの方です』ってオーラ力のテレパシーっぽいのが届いた。
やるなあ。シーラと一緒に
シーラの方も俺のオーラ力を上回っちゃったんで少し早まったかもしれない。
でも嫁になる子の安全のためだから必要なことではあったはずだ。女王という立場のせいか毅然とした態度の多い彼女だけど、あっちの時はやっぱり可愛かったしね。
◇ ◇
嫉妬に狂った
ボテューン見たかったんだけどなあ。展開していたオーラバトラーに白いボチューンはいたから、あれが近衛騎士用だとするとまだ開発されていないのか?
「おかえりなさい」
「ただいま。異常はなかった?」
「表面上はね。でもみんな不安になっていたわよ。いくら聖戦士だからって1人で送っていくなんて」
むう、華琳ちゃんたちがいれば騎士や兵たちは心配しないと思ってたけど、そうでもなかったか。
嫁さん以外は俺の能力を知らないのだから、よく考えたらそれは当然だった。
「さあ、セーブは済ませたかしら?」
いとも容易く奪われる俺の命。華琳ちゃんも
道場へやってきた俺は、ひきつぎリストを確認。直後、シーラが道場へと出現する。
「え? ここは……」
「ようこそシーラ。煌一の秘密の園へ」
「なにその微妙にドキドキする名前は。ここはタイガー道場でしょ」
状況についていけないシーラに華琳ちゃんたち聖戦士嫁が説明する。
俺の方は季衣ちゃんたちに状況を解説。
「兄ちゃんまた浮気したの!?」
「いや、政略結婚だからね」
「貴様、本当に皇一か? お前はそのようなことは一番嫌っていたぞ」
春蘭に剣を向けられてしまった。でもまさか春蘭が俺のことをわかっていてくれたなんてすごく嬉しい。
そう感動で涙していたらすぐに剣を引っ込めてくれて。
「なんだ皇一か」
なにその納得の仕方は!
秋蘭もうんうんて頷いているし。桂花は華琳ちゃんの話に参加したいのかそっちにいっちゃった。
「あの子は大国の女王で、華琳ちゃんのお気に入り」
「またか」
「うん」
「貴様、なぜ止めなかった!」
俺も止めたんだってば。でも無理だったんだよ。それにやっぱりダンバインキャラだとシーラ様は大好きだったもん、俺も流されるのは当然だよなあ。
春蘭が俺の襟元に掴みかかっていると当のシーラが近づいてきた。
「私も望んだことです」
「ふん、どうせこやつの顔に引っかかったのだろう。いいか、こいつは顔だけだぞ。へたれの泣き虫だ」
事実だけど嫁に言われると泣くぞ!
◇ ◇
シーラはすぐに俺の能力を理解してくれ、むこうの嫁さんたちに自己紹介し嫁さんたちも名乗った。
いつものように情報交換すると、シーラは地上界にも戦乱がおこっていて俺が早くあっちに行きたがっているということに納得したようだ。
「聖戦士として以外の戦いもあなたたちにはあったのですね」
「うん。シーラが女王だけではなく、可愛い女の子でもあるようにね」
後ろの方で「あんなことを言えるなんてやはり偽者ではないのか?」なんて声がしたけど気にしない。
むこうの嫁たちとキスしてから道場から戻ってきた。セーブはトルール城に帰ってきてすぐのだ。
聖戦士伝説だともう第6章。この章の最後で浮上することになる。いよいよ道場以外で季衣ちゃんたちと会えるのだ。
この後は聖戦士伝説と同じくドレイクと軍議するために多島海に行かなければ。でもその前にサーラからも情報を確認して、と。
「バーン・バニングスを連れてきたよ」
お、やってくれたかサーラ。
これで上手くいけば地上界での強敵である黒騎士を誕生させないですむ。
ついでにリムルをバーンに押しつけることができれば最高なのである。
リムルは嫁にしないでいいよね?
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31話 多島海
バーン・バニングス。
聖戦士ダンバインにおける序盤からの宿命の敵、つまりは主人公を付け狙うというか、立ち塞がるというか、なライバルキャラだ。
黒騎士の正体としても有名だけどこの黒騎士、脚本の人が違う時なのかブレがある。
自分を助けてくれた漁師を口止めのために殺害したかと思えば、姑息な手段を嫌って人質になったマーベルを解放してみせたりもするのだ。
小説版ともいえるオーラバトラー戦記だと最後は主人公と戦わないで昔話してて、スパロボでも最近は仲間になることもある。
だから綺麗なバーンに持って行きたい。
だって漁師の殺害って情報漏洩の阻止が目的じゃなくてさ、無様に体育座りで泣いてた自分の姿を目撃したのが許せないってしか見えなくて、涙腺の弱い俺としては人ごとじゃないのよ。
それにだよ、綺麗なバーンならリムルをまかせられるかもしれない。
アニメ最終回でショウ・ザマに「その怨念を殺す!」されてもリムル・ルフトへの想いは残り、ラバーンに転生してもまたリムルの転生したレムルに心を奪われるのだ。
ならばその想いかなえてあげよーじゃないか。
うん、俺ってばキューピッド。……む、なんだか微妙に複雑な気分になるような。キューピッドは神話だとろくな矢の使い方をしてないもんなあ。
ドレイクに放逐され、ショットに拾われて黒騎士となる前にサーラに捕まったバーンは俺の前。後ろ手に縛られてまるでお白州状態に座らされていた。
「ドレイクに捨てられたらしいな、バーン」
「カズト・ホンゴウさえいなければ……」
項垂れていたバーンがゆっくりとこっちを見る。おおう、暗く濁った瞳。感じるオーラ力も憎しみでよどんでる。病んでるな。
「そんなに北郷君に邪魔されたのか。そんなに憎いのか」
「騎士である私がこのような……全てカズトのせいだ」
「いや、騎士とは笑わせてくれる。暗殺その他の後ろ暗い仕事にも手をかけていたくせによくも言えるものだ」
ゴード王や俺の暗殺は防ぐことができたが、確実に実行犯だったはずの男だ。他にも表に出せない仕事を色々やっていたことだろう。
「そ、それは」
「自分の名を落としてでも尽くす騎士か? 日本人的にはそういう忠義も嫌いではないがな」
「ご主人様もわかってらっしゃる!」
俺もけっこう尽くすタイプなんだよね。
愛紗が頻りにうんうんって肯いている。自分も尽くすタイプだって言いたいのかな。
「自分の立身出世のために手段を選ばなかっただけだろ。呂布や張遼相手じゃそれも霞んじまったが。ま、北郷に負けたのはオレも同じだけどよ」
「馬騰は体調が悪かったせいも大きいでしょう。あとあの二人は私もほしいわ」
馬騰と華琳ちゃんは冷めた感じで分析。
ドレイクんとこに残っている地上人は最強武将の呂布に張遼。ダンバインの役どころだとジェリルとアレンという、ゲームでは滅多に味方にならないけど強い二人である。
「地上人に勝る強さもなく、裏付けのない誇りだけで騎士を名乗るバーン・バニングス。お前は俺を暗殺しようとした件にも関わっていたな」
また俯いて黙ってしまったバーン。黙っていたら認めているようなもんだけど、言い分けしてもそれがこっちには通用しないこともわかっているんだろね。
「エレ王女がいなくてよかったわね。お前はピネガンの仇として殺される覚悟はあるのかしら?」
蓮華、エレ王女を可愛がっていたもんなあ。責任ある家系同士ということなのか気が合っていたみたいだから。
アニメのダンバインだとエレは黒騎士のオーラ力を抑えるために命を落としてしまうので、黒騎士=バーンはピネガンだけじゃなくてエレの仇でもあったり。
「エレちゃんの手を汚すまでもないだろう」
腰に差してはいるけど、滅多に抜かない剣を抜く。これ、トルール王家の剣とかでむこうで兵士時代に使っていたのとは大違いの業物なんだよね。
その名剣をバーンに向ける。
「覚悟はいいか?」
返事はない。
ここで命乞いをするのは騎士としてのプライドが許さないのか。
恨みを告げる様子もない。
「落ちぶれていても、無様な死に様をさらしたくはないという程度の理性は残っているようね」
「そうか。騎士として死にたいか」
俺にはそういうの、ちょっとわからない。死んだら道場行きなだけなので1回ぐらいカッコつけて死んでもいいのかもしれないけどね。
なんか悔しいのでさっさと済ますことにしよう。慎重に狙いを定めて一気に剣を振り下ろす。
恋姫世界でも剣は使っていた。集団戦ばかりだったが剣で敵を直接殺したこともある。
こっちにきてからは自分ではなくオーラバトラーでだが、サーバインの基本武装は剣なのでずっと使っていた。
振り下ろした剣を軽く振って鞘に収める。毛をはらわなければいけないからね。
そう、血ではない。
俺が切ったのはバーンの首ではなく、やつの長髪。
「……どういうつもりだ?」
「怨念の騎士バーン・バニングスは死んだ。これより貴様はリムル・ルフトの騎士バーン・ババーン。生まれ変わって真の騎士道を示すがよい」
「な!?」
いやあ、うまく髪だけ切れてよかったよ。失敗してもバーンだからまあいいやと思い切りやったのが成功した理由かな。
調子に乗ってつけたバーンの新しい名前は魔球を開発しそうなのを提案しちゃったぜ。バニングスさんは魔法少女の友人だけでいいからね。
「姫君を護る騎士。男の夢だろ、断ることは許さん」
「私が裏切るとは考えないのか?」
そりゃ考えてるよ。でも俺はやり直しができる。ならば浮上後の強敵を減らすことを試しておくのもいいかなって。
「できぬな。裏切ったらそれこそ騎士はもうやれん。そのように狡猾なだけの者を誰がほしがる? 傭兵としてだとていらぬよ」
マスタードラウゲンことゴード王。正体を隠して傭兵ということにしているからそんな台詞になるのね。というか、傭兵って設定すっかり忘れていたんだけど。
「私が……リムル様の騎士?」
「リムル、騎士の儀式を。ザン、剣を貸してやれ」
「え、ええ」
ザンから借りた剣で騎士の叙任を行うリムル。
俺がこの剣を貸さないのは、そのままリムルにあげちゃった扱いになって、王家の剣をプレゼントされるということはつまり求婚ってリムルが突っ走りそうだから。
リムルも初めてなのか固い動きながらバーンの肩に剣の平を乗せて軽く叩く。が、震えていので見ているのがちょっと怖い。
……せめて縛ってるのは解いてやれよ。
それが悔しいのか、それとも感激してるのかバーンの目からは滂沱の涙。うん、生かしておいてよかったかな。俺だけが涙腺弱い男じゃないって証明できた。
「これが騎士の儀式? 面白いわね」
「むこうに行ったら春蘭たちにもやる? きっと喜ぶよ」
「そうね。考えておきましょう」
桂花はどうしようかな。騎士ならば桂花には必要ないけど自分にないのは怒るだろうし。
◇ ◇
ついてきたがるリムルをバーンに任せて城に残し、俺たちは多島海へと移動する。
バーンが断髪してリニューアルしたのはうちの広報が国内外に発表した。これでさらに裏切りにくくなったはずだ。各地の掲示板に経緯が写真付きで貼られているのだから。
あとやつにはオーラバトラーは与えていない。浮上されたら困るからね。
多島海上のブル・ベガーにてドレイクと会議。バーンのことを告げたら「物好きな」と言われてしまった。まあ、それは本題ではない。
ナブロを攻めるか、ナの国を牽制するか、それとも自国に戻って守りを固めるか、その選択を決めるのだ。
「リの国でラウの反撃に備えると? 消極的なのはシーラ女王との噂が関係しているのですかな?」
「ナの国は俺の策によって牽制できた。だがラウはナブロの砦を守り切って士気が上がっている。すぐにでも攻めてこよう」
噂ってどんなのだろう。
シーラちゃんと婚約したってのは知っているんだろうけど。
それにシーラちゃんのファンクラブは俺との結婚なんて認めたくないようだってのがサーラ情報で届いている。
「今ならビショット殿と合流してラウを一気に攻め滅ぼすこともできましょうぞ」
「それではリの国の被害が大きい。ラウの国は執拗に我が国を攻撃しているからな。騎団が留守にしているリの国に確実に攻め込むだろう」
聖戦士伝説のフォイゾンはドレイク軍よりもリの国に戦力を送っているような気すらしてくる。うちの方が簡単に倒せそうだから先に潰しておくつもりなんだろうか。
「たしかに、ナの国からもリの国への攻撃があるのは確定ですな」
「近衛騎士団には恨まれているようだからな。だがこちらが動かなければむこうからは動きづらい」
こうは言ったけどどうだろ。聖戦士伝説ではリの国で守りを固める選択だとナの国の軍が攻めてくるんだよね。親衛隊がボテューンまで使ってさ。
「ここは俺に任せてくれないか?」
聖戦士伝説ではドレイクが簡単に折れちゃうのが微妙な気もするけど、たぶん同じ反応を返してくれるんじゃないかな。
「うむ。ご自由に兵を動かしてもらいたい」
ほらね。リムルをトルール城に残しているから彼女の安全のためにも我が国を囮にするわけにもいかないでしょ。
先にリムルからのドレイクへの手紙を手渡ししたのも効果があったな、これは。会議はすぐにおわった。早くリムルからの手紙を読みたくてたまらないのだろうね。
◇ ◇
トルール城に戻り、ボウの報告を聞く。
「サーバインは無理だったか」
「はい。ダンバインのコンバーターの改良はできたのですが」
「サーバインは高性能すぎるから今のままでもいいか。ダンバインの全面的な改良も引き続き頼む」
頼んでいたダンバインのコンバーターの交換は済んだようだ。これで北郷君のダンバインと同等の性能のはず。
聖戦士伝説では改良型ダンバインという身も蓋もない名前のオリジナルオーラバトラーが出てくるので、それ狙いでボウには開発を続けさせる。
「ご主人様、やはりサーバインはご主人様がお使いになられた方が」
「いや、せっかく愛紗用に装甲のカラーも変更したんだ、使ってくれ」
サーバインは黒から愛紗カラーに変更済み。盾も龍が彫刻されたものになっている。なんか俺用の時より強そうなのは気のせい?
「だからと言って王がブラウニーⅡでいいのですかい?」
「王がオーラバトラーで出る方が珍しいって。今の騎団なら俺の出番はない。ああ、稼ぐために強獣狩りには出るよ」
クリアボーナスの『かね×2』のためにもね。
聖戦士伝説に出てないオーラバトラーがあれば乗ることも考えないでもないけど、多忙なボウにそれを願うのも無理がある。
シーラちゃん、北郷君だけじゃなくて俺にもビルバインくれないかなぁ。
バーンの処理が長くなってしまった……
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32話 NTR計画
みなさんの巣ごもりライフの暇潰しに少しでも役立ちますように
浮上時、ショットとゼットや北郷君のいる地上へ出る可能性もある。
アニメと同じ80年代の地球か、21世紀の地球。普通に暮らすのならば北郷地上の方がいいだろう。インターネット等もあるだろうし。
だが、俺は恋姫世界の古代大陸にいる嫁さんたちに会いたいわけで。
オーラロードを開く際はオーラ力の強い者に所縁のある場所へと飛ばされると見ていいと思う。そうあってほしい。
それもあってこっちの恋姫キャラは
呂布と張遼もこっちに引き込めればいいのだが。それに呂布なんて
限界オーラ力ってのはオーラバトラーの設定でもよくわからん物の一つだったりする。
一応、ビランビー以降のオーラバトラーから設定されているので、オーラ増幅器搭載機には限界がある、という見方もできる。
オーラ増幅器搭載機の目安にはオーラ係数が1以上になっている、というのもある。オーラ係数はオーラ力を動力として変換する効率だったはず。
ドレイク側オーラバトラーのみの仕様ではなく、ボゾンやビルバインのオーラ係数は1以下。
ボゾンはオーラ増幅器の開発が間に合わず、ビルバインは聖戦士専用機として開発していたのでわざとオーラ増幅器を非搭載、ということか。
少なくともこの世界のボゾンにはオーラ増幅器が使用されていなかったのでたぶんそんな感じなはず。
ビルバインも限界オーラ力が設定されておらず、ビルバインのみの数値で適性オーラ力というのがあったりする。もっともこの数値、オーラバトラー最大値であるライネックの限界オーラ力よりも大きいのであまり参考にはならないかもしれないが。
アニメでは旧式機であるダンバインはハイパー化しそうになかったのでオーラ増幅器非搭載機はハイパー化しない、と思いたい。もしくはダンバインだけなのか?
ハイパー化はオーラマシンが巨大化して強化されるが、ジェリルの死因でもあるし絶対に避けるべきだろう。
オーラ増幅器を搭載すると必要オーラ力が小さくなって、パイロットが疲れにくくなるが、うちのオーラバトラー乗りの多くは
だからボウにはオーラ増幅器なしの研究も進めてもらっている。オーラ係数も1に近い方がいいがビルバインもハイパー化しそうになったのでそこまで効率優先でなくてもいいかな。
なんでこんなことを考えているのかといえば、リムルの護衛を任せたバーンにゼットを引っ張ってきてもらえばよかった、なんてちょっと思っているからだ。
個人的にゼット・ライトはショット・ウェポンよりもオーラマシン開発能力が高いんじゃないかと思っている。
ショットは世渡りが上手くてドレイクに重用され政治家になっていったが、その分ゼットはドレイクに評価されずに不満を持っていたイメージがある。
だからスカウトする道もあったんじゃないかな、って。
ロードした時に機会があればゼットも味方にしてみるか。
そのためにはガラリアも味方の方がいいかもしれない。むう。バルバインの出所、まさかゼットじゃないよな?
「ダンバインの調子はどう? 華琳ちゃん、蓮華」
「コンバーターを換えただけでこれほど違うのね。まるで別のオーラバトラーよ」
「ええ、北郷が同じ性能を使っているのは驚異ね」
北郷君のダンバインも改良型コンバーターに換装済みなようなのでたしかに強敵ではある。
うちの連中が
「困ったことにそれ以上のオーラバトラーを北郷君は手に入れる予定だ」
「欲しいわね」
「北郷君はこっちに引き入れにくそうだよ。なんか俺、嫌われているみたいだし」
「違うわ、オーラバトラーの方よ。北郷の方ではあなたが嫉妬するでしょう。泣いてしまうのではなくて?」
たしかに。本当の主人公キャラをほしがられたら俺、絶対に嫉妬する自信がある。そして俺より北郷君の方がいいんじゃないかって不安になる。
「ビルバインか。シーラちゃんのナの国が開発してゼラーナ隊に渡すんだよ。アニメだと戦闘中に乗り換えていたけど、こっちじゃどうなるんだろね?」
アレンのビランビーがダンバインを追い詰めるんだけど、結局は乗り換えたビルバインのかませ犬にされちゃうんだよね。
聖戦士伝説ではそれが再現されていなくて戦闘が始まった時にはショウはビルバインに乗っていたりする。
「それなら奪いましょう」
「はい?」
「北郷に渡る前にその新型オーラバトラーを奪いましょう。シーラとて北郷よりも私たちが使う方が本意なはずよ」
たしかに聖戦士伝説のロウルートではシーラと嵐の玉で会っていれば彼女からビルバインを送られる。
けれどそれは迷彩ビルバイン。アニメではショウのビルバインが最終決戦で塗り替えられたオーラバトラーだが、聖戦士伝説では別の機体なのだ。
だから北郷君に通常カラーのビルバインが渡されるのはシーラちゃんの願いなのでは。
「北郷が強化されるのは避けたいですが、可能でしょうか?」
「愛紗まで乗り気なの?」
むこうで一刀君と結婚した愛紗とは違うって安心できて嬉しい自分がいるのは否定できない。
「はい。新たなご主人様の機体を入手したい。華琳殿もそのつもりなのでしょう」
「あら、私が乗ってもいいのよ」
愛紗は俺がサーバインを譲ったことを気にしていて、俺がブラウニーⅡを使っていることに不満だ。
それを華琳ちゃんも気づき、こんなことを言い出しているのか。
強いオーラバトラーがほしいのが俺のため、なんて。
「泣かないの」
「だって、嬉しくて」
「もう、この程度で泣いていてはその新型を手に入れた時にどうするのよ。泣くのは北郷の方なんだから」
蓮華まで。こりゃビルバイン強奪、真剣に検討しなきゃいけなさそうだ。
サーラにはその辺、しっかり見張っていてもらおう。
◇ ◇
ロアドの森で、偵察部隊がドラウゲンの群れと遭遇、戦闘となった。
聖戦士伝説では偵察部隊がやられてしまい、フリーシナリオの導入となるのだが、うちの偵察部隊はあっさりと飛竜を全滅させて戻ってきた。
偵察部隊はもちろん全員が
試験機であるガラリア機を
武装はブラウニーⅡと同じ物が使えるのだが、各騎士ごとに調整が必要で乗り回しもききにくいから、あまり量産はできないのが残念だ。聖戦士伝説ではなくアニメに準じた高性能機なのに。
「アカシャの森の警戒も続けていますが、侵入された形跡はありません」
「そうか。シーラちゃんが騎士たちを抑えてくれているのかな?」
オウエンの報告。聖戦士伝説だったらカオスルート第6章ではナの国のオーラバトラー隊が攻めてくる。ここで近衛騎士専用機であるボテューンとも戦うことができ、戦闘後にはボチューンと重装甲ボチューンを入手できたのだ。
ボチューンはボテューンが存在するので性能が微妙だったが、重装甲ボチューンはそこそこに性能がいいオーラバトラーだったな。
「ラウの動きは?」
「コーイチ王の話どおりにカラカラの山岳地帯に大規模な戦力を集結させている模様です」
「やはりか」
できればゴラオンにはいてほしくないけど、無理だろうな。
「ドレイク軍の巨大戦艦も完成しています」
「ウィル・ウィプスか。ならば行かなきゃならない、か」
浮上への準備が着々と整ってきている。忘れていることはないだろうか。セーブスロットが多い分、やり直しはしやすいから油断しているかもしれない。
リの巨大戦艦はまだ完成していない。ボウにはオーラバトラーの開発で無茶ぶりすることが多いので、急かすこともできないのだ。
「ゴラオンとウィル・ウィプスとの戦いでビルバインが現れるのね」
「ナの国の巨大戦艦、グラン・ガランもまだ完成していないからビルバインだけでも渡して援護しようということなんだろうね」
それを奪う計画をたてているのはシーラちゃんに対して心苦しいところではあるが、ビルバイン一機ではカラカラでの戦局は変わらない。
そこまで気にしないでもいいだろう。
◇ ◇
再び騎団を率いて多島海に赴き、ウィル・ウィプスに乗艦する。実物を見るとマジでバカでかいな。
「わざわざのご足労かたじけない」
「ウィル・ウィプスが完成したとなれば祝うのも当然。見事な戦艦だ」
華琳ちゃんが奪おう、って言い出さないかちょっと不安だったり。
俺の言葉に気をよくしたのかドレイクは、ナブロの要塞を無視してカラカラのラウの軍勢を攻めたいと提案してくる。うん、聖戦士伝説と同じ流れだ。
リの国に執拗に攻撃してくるフォイゾン。ゴラオンが完成すればリの国に攻めてくる可能性も捨てきれないので、少しでも動きを制限するためにカラカラ攻撃に同意した。
今回は
一応、ラウはリの国への攻撃を続けているので、国防のためという名目もあるにはあるが、カットグラを渡した手前、まだ俺が出撃するのは早いだろう。
カラカラ山岳地帯には情報どおり、かなりの数のオーラマシンが集結していた。
反ドレイク陣営が使用する
まだラウの国にはボチューンは回ってきていないか。
ゴラオンの姿もないからドックで作業中なのだろう。
だが敵軍に混じっているゼラーナ隊にボチューンがいる。ニーが乗っているのかな?
それにゼラーナ隊にはダンバインとバルバインがいるので戦力は高い。
ま、うちのダンバインもコンバーター換装で強化されているし、愛紗もサーバインなのでまったく苦戦せずにイベントが進んでしまったわけだが。
「ゴラオンが出てきた。各機、オーラノバ砲に備えて散開!」
もう少しでゼラーナが墜とせそうというところでゴラオン出現。その力を知っているので深追いせずに避難するよう指示しておく。
ああ、やっぱり狙われるのはウィル・ウィプスか。
ゴラオンから発射された砲撃。オーラ力によるごんぶとのビームがウィル・ウィプスに命中する。
さすがに巨大戦艦一の防御力を誇るウィル・ウィプスも小さくないダメージを受けたな。
もしロードした時にうちの巨大戦艦が出来ててもここには連れてこない方がいいかも。なんか狙われそうな気がする。
動揺したドレイク軍が見て取れたので撤退を促すとドレイクもすぐに従った。ゴラオンの情報、持ってなかったんだろうな。
さてマウンテンファランに撤退しますかね。
北郷君にはまだビルバインが届いてなきゃいいけど。
ビルバインNTR(乗っ取り)計画
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33話 ビルバイン
カラカラ山脈でゴラオン初登場、波動砲発射のイベントを見てきた後、マウンテンファランの上空まで撤退した俺たちとドレイク軍。
知識で知っていてもあの攻撃の威力は実際に目にすると驚くな。まさにマップ兵器としか思えん。
聖戦士伝説ではあのイベントでしか発射されず、戦闘マップでも使用されないゴラオンの主砲、オーラノバ砲。この世界は完全には聖戦士伝説と一致していないので、味方に向かって使われないか不安だ。
なお、オーラノバ砲は誤字にあらず。聖戦士伝説ではオーラ・ノヴァ砲だった気もするがアニメではノバだった。
対策会議でドレイクは、巨大戦艦ならこっちにもあるから互角に戦えるなんてほざいてくれる。
アニメでは、ゴラオンがまだ未完成で不完全だと知ったドレイク軍がラウの王城であるタータラ城を攻め、ラウの方はオーラマシンに対して無力なタータラ城ではなく、ゴラオンを中核としてウィル・ウィプスを墜とそうとする。
この戦いで不利を悟ったフォイゾン王が専用のボチューンでウィル・ウィプスに突撃しジェリルのレプラカーンに撃墜され死亡。
ショウのダンバインはトッドのビアレスにコンバーターを破壊され、オーラパワーが一気に噴出して海上に移動、そこでビルバインを入手するのだ。
聖戦士伝説のカオスルートでは主人公がはやるドレイクを止めて被害を抑えるべく案を出す。
タータラ城を攻める
ゴラオンを誘き出す
ナブロの砦を攻める
この3択からリ軍の行動を選ぶ。タータラ城を選べばドレイク軍はゴラオンを、ゴラオンを選べばドレイク軍はタータラ城を攻撃する。
ナブロの砦を選んだ場合は二手に分かれてどちらもナブロの砦を攻撃するのだがこの場合、バイストン・ウェルで全部の決着がついてしまい浮上できない。当然、この選択はない。
で、肝心のビルバインであるが3択のどれを選んでも次のマップではゼラーナ及びショウ、マーベルは出現しない。さらにその次のマップではショウもしくはマーベルは既にビルバインに乗り込んで登場する。
聖戦士伝説では戦闘マップ中のイベント再現がないのでこうなっているんだろうけど、かなり残念なポイントである。やはりアニメのビルバイン初登場シーンは再現してほしかった。
聖戦士伝説と同じように進めてしまうとビルバインを俺たちが入手しにくそうなので、今回は違う行動をする。ドレイクの好きなようにさせてアニメと同じように進める予定だ。
失敗したらロードしてやり直せばいいだけ。代価は俺の命。安いものである。
アニメでのビルバインの初登場は、被弾して背中のコンバーターの片方を失ったダンバインがオーラ力を一気に噴出して操作不能になり暴走。海に運ばれ、そこでウィングキャリバー形態のビルバインが飛来してきてショウが乗り移るというもの。
うん、ツッコミどころがあるね。無人のオーラマシンが飛行って。
ウィングキャリバーの無線操縦もあるからそれはまあ目をつぶるとしても、あまりにもタイミングが良すぎる。だって暴走してやってきた先にビルバインが出現するんだよ。ダンバインが段取り知っててそこに移動したとしか思えないでしょ。
それともエイブ船長がそこまで予想できたとでも?
……いいか。海上なのはわかっている。そこで張って、ビルバインが発進するのを待とう。
俺が乗る専用のオーラバトラーをナの国に渡してしまっているのはドレイクもフォイゾンも知っている。戦場に俺がいなくても不思議には思うまい。
問題があるとすれば、ドレイク軍が全力を出して戦うということになるのでラウの国もアの国も被害が大きくなること。間違いなくたくさん死ぬ。
だがこれも今更だ。恋姫世界に帰還するためである。多少の犠牲はやむをえまい。
バイストン・ウェルの平穏よりも嫁さんたちとの再会を俺は選ぶ!
ああ、久しぶりに胃が痛い。覚悟してたはずなんだけど、シーラちゃんと関係を持ったせいでリの国以外のバイストン・ウェルの人間も軽視できなくなってしまったのか。
ショウ担当の北郷君がビルバインを入手したらアレン担当の恋姫キャラが死亡する可能性があるから、ってそう自分に言いわけをしよう。
「そうか、ショットからライネックが届いていたか」
「はい。事前にコーイチ王が申しつけてあったようにすぐにボウが調査、開発を行っております。そのせいで、巨大戦艦の完成が若干遅れています」
サーラはアの国やラウの国を調査中なので、リの国情報は連絡員からの報告。
ライネックがもうきたのは嬉しい。まあ、ライネックの入手、量産ができるロウルートでは6章の最初のマップで手に入るので遅いぐらいではあるが。
「巨大戦艦の遅れは仕方がない。ボウにあまり無理をさせて倒れられても困るしな。適度に休養も取るように告げておいてくれ。巨大戦艦よりもオーラバトラーの方を優先だ」
「はっ。了解しました」
連絡員である騎士が敬礼して去っていく。
ボウにはまだ重要な任務があるので巨大戦艦の完成を急ぐ必要はない。
ぶっちゃけた話、聖戦士伝説のリの国の巨大戦艦であるヨルムーンガントはそんなに強くない。移動力も低いし弾切れも起こす。なにより、巨大戦艦への攻撃は必ず命中するので囮や盾にする時以外は積極的に前線には出したくはない。
自動的に艦長になってしまうザンは巨大戦艦よりもオーラバトラーで使いたかったと思うぐらいなのだ。
だから、巨大戦艦の完成は遅れているぐらいでちょうどいい。焦って未完成のを実戦投入するよりも、じっくり完成させておきたい。
「ライネックね。どんなオーラバトラーなのかしら?」
「いいオーラバトラーだよ。オーラ係数や限界オーラ力も量産機トップの名機だ。カオスルートでは手に入らないはずのこれが入手できたのは嬉しい」
「ですが、このあと購入できるようになるずわぁーすというオーラバトラーの方が強いのではなかったのですか?」
まあ、ズワァースがあるからライネックがなくてもカオスルートでも困りはしない。
でもさ。
「ズワァースは高いんだ。オーラバトラーの中で一番。購入額はライネックの1.5倍近い。ブル・ベガーの2倍以上のお値段だ」
「なんと」
「性能差は価格差ほどじゃない。ズワァースの方が火器が豊富ではあるけど、その分メンテナンスも大変で、しかも地上に戻ってからはあまり火器は使えなくなると思う」
「威力が増すが、オーラマシンにはあまり効かないという話だったわね。弾薬も入手しづらくなるでしょうから確かに火器は重要視しなくてもいいのかしら?」
聖戦士伝説ではオーラバリアは正面からのみに発生するんでそこまで絶対視はできないかもしれないけど、火薬やフレイボム用の油だってむこうじゃそう簡単には補充できない。あ、大陸だからレプラカーンの中華キャノンなら大地のエネルギーで発射できる……わきゃないか。
さらにアニメどおりの強威力だったらできれば使用禁止にしないと村や町の付近では戦えないだろう。
「ライネックの方がスリムな見た目だから気に入るんじゃないかな。頭の触覚も武将の頭飾りっぽく見えなくもないし」
あの触覚はセンサーかレーダーなのかね?
「もちろん、予算と相談してズワァースも量産したい。あっちは悪役じみた外見だけどやっぱり強いから」
聖戦士伝説のズワァースは2周目以降の隠しユニットのせいで性能がダウンしているが、こっちだとどうなんだろう。
アニメの黒騎士専用機が特別だったという扱いなんだろうか?
「北郷から奪う予定のオーラバトラーは量産できないの?」
「ビルバインは俺の知っている話だとできなかった。ちょっと性能を落としたゼルバインなら量産できるけど、カオスルートじゃ手に入らなかった」
「そう。残念ね」
そのゼルバインにしてもビルバインの売りである変形はできないし、ライネック、ボテューンという強力なライバルがいる。
前述のように地上では火器の価値が下がるので、ロウルートではゼルバインよりも移動力の高いボテューンを選びがちだ。オーラバトラーは結局、近接攻撃の方が強いってことだね。
「ただ、ここのボウは俺の知っている話よりも有能だから、もしかしたらなんとかしてくれるかもしれない」
「さっき休養も取らせるように言ったのにまた酷使するつもりかしら?」
「そうなんだよなぁ。既存の機体の改良も頼んじゃってるし、やっぱゼットをスカウトしておくべきだったか」
もし浮上がうまくいかなくてもっと前のセーブからやり直すことにした時は仲間にしなくては。
俺がオーラマシンの開発できればいいんだけど、さすがにそれは無理なのが残念でならない。
◇ ◇
セーブ後、華琳ちゃんに殺されて道場へ行く。こっちに来た直後は俺が殺しにくくなったと褒めて(?)くれた華琳ちゃんだったが、彼女自身も
道場についた途端、春蘭、桂花が不足していた成分を取り戻すために華琳ちゃんに縋りついてクンカクンカ。愛紗と蓮華が若干引いてるが、シーラちゃんがあまり動じていないのはまさか、部下にあんな感じなのがいるからだろうか? 国での人気の高いシーラちゃんならありえそうかも。
「いい加減ここ以外で華琳さまに会わないと姉者が禁断症状でおかしくなる」
「むしろ今までよく持っていた、か。そっちの情勢の進行具合から考えると、バイストンウェルと時間の流れがちょっと違うのかもな」
「そんなことあるの、兄ちゃん?」
春蘭の真似なのか、俺に抱きつながら首を傾げる季衣ちゃん。まったくもう、かわいいなあ。
あ、シーラちゃんも近づいてきた。さすがにだいしゅきホールドは無理だったのか、俺の服を引っ張るようにつまんでいる。こっちはこっちでかわいい。
「元々、そっちの大陸は俺や一刀君の時間よりは、はるかに過去なわけだし」
「そうなのですか?」
「そうだよシーラちゃん。正確にはちょっと違うんだけどね。それがあるから俺や一刀君はあっちの大陸の先行きをある程度読めるんだ。まあ、バイストンウェルからオーラマシンが排除されてあっちに行ったら全然変わってしまうだろうけど」
恋姫世界にオーラマシンが展開。俺たち全員が確実に恋姫世界に戻る方法だ。
頭が痛いのはドレイクやビショットたち他勢力もきちゃうこと。絶対に恋姫世界の征服を狙うだろう。
あいつらはショットとゼットの方の地上界に行ってくれればいいのだが、そう都合よくはいくまい。
恋姫世界の混乱が酷すぎて「ダメだこりゃ」になった場合は浮上前にロードしてやり直すとして、まずは全員での浮上をする。とにもかくにも生きた状態で嫁さんたちに会うのが先決だ。
「早くちゃんとみんなと会いたいよ」
「ボクも流琉に兄ちゃんを自慢したい」
「ははは。季衣、さんざん流琉以外にも自慢しておったではないか。きっと誤解しているからこいつを見たらがっかりするぞ」
いったい俺はどんな風に説明されてるんだろ?
真や革命で追加された恋姫ヒロインに会うのは楽しみだけど、華琳たちの結婚相手には相応しくないって拒否されないかが心配なんだよなあ。
あ、季衣ちゃんたちへのプロポーズ用にポロポウズの花壇、巨大戦艦に用意しておいてもらわないといけない。
「おお、呂布みたいな巨人が手に入ったのか!」
「そう、なるのか?」
春蘭桂花が華琳ちゃん分を補充できて落ち着いたようなので詳しく情報交換。ライネックのことを説明したら春蘭が興奮している。
オーラバトラーを見ていない古代中国の人間には巨大ロボはわかりにくいか。
「呂布を乗せるのも面白いわね。陳宮は手に入れたのでしょう?」
「はい。華琳さまのご指示のとおり、呂布の飼っていた動物ともども確保しております」
華琳ちゃんの問いに桂花が答える。そうか、陳宮ちゃんは魏にいるのか。なら、やはりなんとしても呂布も味方にしておきたい。呂布がいればあの子も仲間になってくれるだろう。
戦乱というか混乱が激化するのは目に見えているので軍師は多い方がいい。
あとロリも。袁術ちゃんにも会いたいなあ。
◇ ◇
ウィル・ウィプスによるラウ攻略の本格開始。
一応、ウィル・ウィプスの付近にゼラーナ改級プテラノドンで華琳ちゃんたちが、タータラ城の方にはブル・ベガー改級ワイバーンでザンと三騎士たちが布陣して戦場にいるが、俺はフィナと海にいた。発見されないように移動はグライウィングのシュットだったりする。
シュットはゼラーナ二番艦を奪取した時にフォウに付属していたのを入手、リの国でも
「本当に海の上にいるんでしょうか?」
「さすがに広いから、見つからなかったらやり直すよ」
背後に目をやればこちらからでも戦場の光が見える。激戦だ。だが俺は、華琳ちゃんたちは
こんな広い海でビルバインやグリムリーなんてすぐに見つかるわきゃないよなあと数回やり直すことを覚悟していたわけだが、その予想はあっさりと裏切られた。
「あれか?」
「え? あ、オーラの光!?」
俺が指差した先にはオーラ光を引きながら飛翔する物体。既に夜なせいもあるが、
「速いな。もしかして北郷君がピンチなのか? それとももうフォイゾンが?」
華琳ちゃんたちにはビルバインを発見しやすくするために北郷君のダンバインにはトドメは刺さないように頼んであるが、ドレイク軍に呂布と張遼がいるからやられちゃったりしてるかもしれない。
「行くぞフィナ、しっかり掴まっててくれ」
「はい!」
グライウィングだからフィナは同乗というよりはそばを飛んでいるだけ。なので高速移動時は俺に掴まることになる。やはりオーラバトラーの方がフィナも楽そうだ。
最高速度で飛べばシュットが追いつけるはずもないビルバインだが、やはり聖戦士どころかパイロットなしではそこまでの速度は出せなかったのだろう、追いつくことに成功。
……成功したんだけど、乗り移るのには失敗。俺は落下死してしまった。アニメの時のショウはビルバインがダンバインに相対速度を合わせてくれたから乗り移れたんだよなあ。
飛び移る前にセーブしておいて本当によかった。
「がんばってください! シュットを持ってきますから!」
どう見ても無理なのに俺を助けるためにシュットを操縦しようと奮闘してくれたフィナには悪いことしちゃったよ。
うちのエディタだと『令羽』が使えなかったので
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34話 一騎打ち
「失敗したのね」
「うん。ビルバインは捕捉できたんだけど、乗り移るのに失敗しちゃった」
落下死後、道場で華琳ちゃんたちと合流。以前にやった飛竜からの落下死は途中で気絶したんでそれほどでもなかったんだけど、慣れかそれとも
やっと死ねたかと安堵してたら、そこには当然、シーラもいて。
「ビルバイン?」
「シーラには悪いけど、あれは俺たちが貰うよ」
「いえ、どうしてビルバインが?」
「んん? シーラがよこしたんじゃないの? 北郷君に贈るって」
詳しく説明すると、どうやらナの国の女王としてシーラが聖戦士である北郷君に贈ったというワケではなく、近衛兵たちがテスト中のビルバインを勝手に北郷に横流ししようとしたらしいとのこと。
まあ、聖戦士専用として開発されたビルバインはオーラ力が大きくないと性能発揮できないから、聖戦士じゃないと満足にテストできないってのもわからないでもない。
だがそうでもなく、シーラのファンクラブはシーラ女王と俺の結婚に反対していて、しかしそれでも女王に逆らってリの国を直接襲撃することもできず、こっそりとゼラーナを支援して俺を困らせよう、ってことみたいだ。
「本来ならばあなたに渡すように指示したのですが、反対が多くそのままにしていたのをあの者たち……」
「そうなのか? なら俺が貰っちゃっても問題ないのね」
アニメではショウにシーラがビルバインを贈ったんだけど、こっちだと嵐の玉で俺が先に助けちゃったからショウ担当のはずの北郷君とシーラが会ってない。北郷君にビルバインを贈ろうとはならなかったのかな。
「ええ。でもできれば私から直接贈りたかったのに」
「気にすることはないわね。使うのは私よ。皇一に使ってもらいたいなら直接渡せばいい」
たしかにシーラから俺用にって貰った物を華琳ちゃんにあげるのはちょっと気まずい。ここはそうじゃなくて奪ったという形にしておいた方が俺の精神衛生上にもいいか。
ビルバインは強いんで華琳ちゃんに渡すのは当然。身を守る為にも乗ってもらいたいからね。
だがそうなると北郷君にビルバインが行く目はないのかな。変形してウイングキャリバーになれるビルバインなしだとシルキー・マウの救出のための移動が面倒なような。そうなるとジャコバとの面会もどうなるか。
面会なんてなくてもジャコバが排除を止めるとは思えない。気にすることもないか。むしろ浮上イベントが早まる?
ま、こっちに不都合があった時はやり直せばいいだけだ。セーブスロットが増えててよかったなあ。
とりあえず今回はビルバインを入手ってことで。俺も乗ってみたいしな。
◇ ◇
ビルバイン奪取にやっと成功。
あれから三度ほど失敗して、その間にシーラがビルバインの資料を調べ、コクピットハッチの開き方を教えてもらったので、なんとか操縦席に潜り込めた。
『貴様、なにものだ?』
ノイズ混じりのモニターに映るのは髭の生えた爺さん。エイブ・タマリか。記憶に自信がないが名前は白鯨のエイハブ船長からじゃなかったっけ。
ラウの国の軍人だけど、ビルバインを預かってきてるんだからよほど信用されているんだろう。エレの副官ぽいポジションになるし。
補給艦グリムリーの艦長で、ゴラオンの艦長にもなるんだよな。……だとすると、今のゴラオンって誰が艦長やってるんだ? それともこれはゴラオンからの通信? ビルバインを運んできたって考えるとグリムリーからだと思えるのだが。
「人に尋ねる時はまず自分から名乗るってのはバイストン・ウェルにはないのか? まあいい。俺はコーイチ。そう言えばわかるか?」
『な、なんだと? リの国の好色王か! なぜビルバインに!?』
なにその好色王って? 初耳なんですけど!
そりゃ嫁さん多いけど!
美少女ばかりだけど!
敵国ではそんな呼ばれ方してんのかよ。さすがにサーラやオウエンが気を使って俺に隠したんだろうか。
「マニュアル、ありました!」
「でかしたフィナ!」
俺がエイブと話してショックを受けてる間にフィナがマニュアルを発見してくれた。真っ先に無線誘導の自動操縦をオフにしなくては。ふむふむ、んー? ああ、これかな?
『なにをするつもりだ?』
「ん? ビルバインを貰うだけだ」
『馬鹿な! 王でもある聖戦士がコソ泥まがいのことをすると言うのか!』
「さんざんリの国を襲っているラウの蛮族がなにを偉そうに言うんだか」
コソ泥って言われてもなあ。シャアだってMK-II強奪したじゃん。
今までラウの本土には積極的に攻めずに、リの国の防衛に専念してたからなめられちゃってるんかね?
『それは聖戦士カズト・ホンゴウのものだ!』
「いやいや、シーラ女王に確認してみるといい。このビルバインはナの国から盗まれた物だって言うから。俺はそれを取り戻しただけだ」
あ、黙っちゃった。ははーん。シーラ女王に内緒でこっそりっての、エイブも知ってんのね。
もし北郷君にビルバインが渡ってそれをシーラが知った時にどう誤魔化すつもりだったんだろうね。ラウの国が持ち出したとなれば国際問題だが。
うん? ああ! 別にラウの国じゃなくてもいいのか。ガロウ・ランに強奪されてそれを北郷君が取り返したってことにでもしようとしたのかな? ガロウ・ランならシーラも攫われてるから強く言えないだろうし。
「まったくもう。ビルバインよりもフォイゾン王の心配をしろっての。まだ生きてんだよな?」
『なんだと貴様!』
アニメ通りの展開だとフォイゾンはもう死んでいるんだけど、どうなっているかな?
道場で聞いた華琳ちゃんや愛紗の話だとまだゴラオンから出撃してはいないはず。エレちゃんに教えた情報が役に立っているといいのだが。
フォイゾンが生きてた方がエレちゃんの苦労が減る。死因である黒騎士を潰しておいたとはいえ、あの子は応援したい。ピネガンを助けられたかもしれないのにそれをしなかったという負い目があるから。
「フォイゾン王が先走らないようにようく言っておけ。じゃあな。エレちゃんによろしく。絶対に無茶させるなよ!」
『貴様、姫様になんという』
うるさくなりそうなので通信をカット。
ビルバインの操作を一通り試してから戦闘に向かう。こいつの
しかもその苦労する前方視界があまりよくない。ウイングキャリバーはあくまでオマケと考えた方がよさそうである。量産機が変形をオミットされたのもその辺が原因だろう。
大体にして聖戦士伝説ではウイングキャリバーの使い勝手が悪い。移動力がアップしたところで分離や変形に1ターン使ってしまうのでは役に立たない。さらにはビルバインをウイングキャリバーに変形させたままマップクリアするとゲーム進行に致命的な問題が発生するというバグがあったりする。Best版では修正したらしいけどさ。
まあ華琳ちゃんに渡す前に問題点は俺が洗い出しておきゃいいか。
視界は悪いながらもさすがは高速移動形態。目的の戦場にはすぐにたどり着くことができた。……できたんだが、この状況はなに?
なんか愛紗のサーバインとボチューンが一騎打ちしてて、他のオーラマシンがそれを観戦中なんだけど!
ダークブルーの基本色に両肩と喉元がピンクってあのボチューン、フォイゾン専用機だろ。
『やっと成功したようね』
「う、うん。それよりこの状況は?」
『フォイゾンが我慢出来ずにドレイクとの一騎打ちを求めてウィル・ウィプスに突撃、ドレイクが応じずに砲撃しようとしたのを愛紗が察知して阻止、代わりに一騎打ちを受けたのよ』
『すみません。私も止めたのですが……』
通信をオフにしてたからか、華琳ちゃんのオーラ力によるテレパシーのようなもので情報交換。そこにエレちゃんが申し訳なさそうに謝ってきた。彼女も
アニメだとビルバインが出る前にフォイゾン死亡だったけど、聖戦士伝説だと一騎打ちはこの次のマップじゃなかったっけ? でもあれ、一騎打ち戦闘じゃなくてマップ画面でのショボいイベント扱いだったしなあ。
一騎打ちの方は若竹色のサーバインが優勢。ボチューンは軽くあしらわれている。そりゃ聖戦士伝説最強のプレイヤー機サーバインに
『フォイゾンの気迫が実力以上に戦わせているわね』
「ああ、オーラマシンはそんなとこあるよなぁ……って!」
ビルバインをオーラバトラー変形させ、観戦しながらも愛紗が負けるはずがないと安心して周囲を警戒していた俺は、付近にいたレプラカーンの一機がオーラキャノンを一騎打ち中の方向に向けているのを発見、オーラソードライフルを発射する。
「俺の嫁相手におっ起ててるんじゃない!」
弾は当然のように命中。レプラカーンの股間のオーラキャノンは見事に粉砕された。しかもクリティカル演出の光まで出ているので、あのレプラカーンのパイロットの方にもダメージが入っているかな。オーラ力の感じでは地上人ではなさそうだから気にはしないけど。
一騎打ちとは別の場所で発生した爆音に愛紗も気づいたのか、オーラソードを鞘に収めるサーバイン。あれ、ボチューンも引き下がって行っちゃったよ。
フォイゾンも満足したのかね?
『ありがとうございます、ご主人様』
「いや、どうなったの?」
『水を差されたということで、一騎打ちを取りやめました。どうやらゴラオンは撤退するようですね』
『皇一もさっさと撤退なさい。謎のオーラバトラーを墜とせってドレイクが怒っているわよ』
謎の機体って……ああ、そうか。ドレイク側には俺、まだ連絡してなかったっけ。その謎の機体であるビルバインがフォイゾンを仕留めるのを邪魔したんだから腹も立つ、か。こりゃ俺だってばれない方がいいな。
俺はビルバインをウイングキャリバーに変形させて戦場からさっさと逃げ出すことにした。ビルバインはこの後、俺が奪ったってドレイク側には誤魔化すことにしよう。
ドレイク軍のオーラバトラーやウイングキャリバーが追ってくるけど、余裕で振り切った。これは言うしかあるまい!
「我に追いつく敵機無し」
あ、もしかしてウイングキャリバーでマップクリアって扱いになっちゃうのかな、これ。
バグらなきゃいいけど。
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35話 翅リ試浴
ゴラオンは無事に撤退できた。フォイゾンは生存するも元々、被害が大きすぎてフォイゾンが出撃しなければその時点で撤退するつもりだったようだ。
華琳ちゃんたちの話によればドレイク軍はレプラカーン無双。呂布のレプラカーンがとんでもない強さだったとのこと。それはちょっと見たかったかも。
タータラ城も陥落し、事前に命じておいたとおりにナラシたちがタータラの剣を回収しておいてくれた。これは鉈っぽい外見ながら聖戦士伝説においてバイストン・ウェル最強のオーラソードだ。もちろん1本しかないので誰に持たせるかが悩みどころ。
ビルバインは調査と同時に華琳ちゃん専用として塗り替え中。アニメ版最終話付近に出てきた、夜間迷彩や洋上迷彩と言われている物に近いカラーになる予定。聖戦士伝説では迷彩ビルバインと呼ばれていたオーラバトラーだ。
あと、聖戦士伝説だと塗り替えじゃなくて別の機体だったりする。迷彩ビルバインは2周目以降の隠しユニットなのだ。なのでロウルートならばゼラーナ隊を仲間にした上で迷彩カラーも入手し、ビルバイン2機を自軍で使うことも可能だ。主人公が通常カラーをもらうこともできるが、そうなるとゼラーナ隊にビルバインがいかなかったりするのも面白い。
カオスルートでは残念ながらビルバイン撃墜後に入手となるのでもしかしたら、それを回収、リペイントした物かもしれない。だって迷彩ビルバインの青系カラーってのは聖戦士伝説のリ軍カラーなワケだし。
つまりカオスルートだけど俺が通常カラーのビルバインを入手してしまったから、聖戦士伝説と同じように進めば北郷君にはビルバインが渡らなくなるのだが、この世界ではどうなるのかな?
なぜかいないレン・ブラスのかわりにボテューンをもらったりして。色も彼のイメージカラーである白だしね。いいなボテューン。移動力もあるしロウルート最強の量産機と言っていいだろう。親衛隊の機体だけどロウルートだとウロポロス城で買えたりする。シーラちゃん売ってくれないかな? 道場に行ったら相談してみよう。
まあ、今はドレイクのものとなってしまったこのタータラ城でお買い物なんだけどな。
占領してすぐのはずなのに、元ラウの国の王城にある機械の館でドレイク軍のオーラマシンが購入できてしまうのは、ゲームと同じで便利だけど腑に落ちない。
戦費がかさみ過ぎたので少しでも資金がほしいとでもいうのだろうかね。
品揃えは聖戦士伝説と同じだった。ライネックも完成しているはずだが売っていない。なのにズワァースが販売されているのは高額商品だからか?
「ズワァースとビアレスをくれ。あとせっかくだからズロンとタンギーも包んでもらおうか」
別にズワァースだけでもいいのだが、この機会に入手できるオーラマシンは全部入手しておこう。強獣狩りで稼いでいるので資金に余裕はある。
ズワァースを売ってるだけ全部買ってドレイク軍の戦力低下を図るのも悪くないかもしれない。だけど、資金をそんなに渡すのもマズイか? ううむ、迷うな。
結局、1機ずつのみ購入してドレイクと会う。爆弾や盗聴器をチェックする手間を考えた結果だ。
これでもうドレイク軍に用はないのだが、一応は会って話をしておかないとまずい、か。
「もう少しでウ・カン殿がフォイゾンを討てたものを残念ですな。あのオーラバトラーの乱入がなければよかったものを」
「ええ。あのオーラバトラーを鹵獲することに成功はしたが、パイロットはいなかった。逃げたのならばいいが、自動操縦ではないと信じたいな」
嘘は言っていない。鹵獲したのも本当だし、その時にパイロットはいなかったのだから。
カマをかけたんだろうドレイクも顔色を変えずに「ふむ」とうなずく。
「あのオーラバトラー討伐の混乱でおめおめと逃げ延びたフォイゾンはゴラオンを我々に対する反抗の旗印にしておる」
そう言ってるけど、愛紗が剣を収めた相手を横取りするかのごとく攻撃できそうな雰囲気になかった、らしい。それぐらいあの一騎打ちを全軍が注目していた。もしフォイゾンを討てても名声は得られないと平民出身の軍人も実感したようだ。むしろ罵られる、と。
そこら辺はまだ騎士道が残っているのかね? ガラリアも騎士だった父親が敵前逃亡したってずっと肩身が狭かったぐらいだから。
で、ドレイクはそこんとこを「古い体質」って切り捨てるような奴なんだよ。勝てば先進的、ってことにできるんだろうけど、負けたらたただの卑怯者って言われる。まあ、アの国の王位を簒奪したぐらいだから今更なんだろうけど。
「一騎打ちでほとんど敗れていたフォイゾンにそこまで求心力が残っているとは。ゴラオンを墜としたいところだが」
「なにか気になることでも?」
「ぜひ先鋒をつとめたいところだが、ゼラーナ隊が起死回生を目論んで我が国が建造中の巨大戦艦を奪取しようとしているとの情報がある。リの国に戻って防御を固めねばならん。もしかしたらやつらの目的はリムル姫を人質にしようとしているやもしれぬし、な」
「むう」
いや、ゼラーナ隊は人質なんてことはしないでしょ。だけどドレイクは自分の方がそんな手を使うもんだから、あっちはそんなことはしないと強く出れない。
こう言っておけば北郷君のラース・ワウ侵入もやりやすくなるかもね。もちろん彼らの目標がラース・ワウであることも教えないよ。
それとゼラーナ隊がリの国を襲撃するのは嘘ではない。聖戦士伝説ではフォイゾン死亡後のマップで巨大戦艦ではなくトルール城を襲ってくる。ドレイク側でももしかしたらそんな情報を掴んでいるかもしれないな。
「なに、クの国のビショット殿ならば俺以上に戦ってくれるはず」
「ビショット殿、であるか」
「クの国の巨大戦艦ゲア・ガリングはバカでかく搭載量も膨大。ウィル・ウィプスとともに当たればゴラオンなど目ではないだろう」
ビショットも反ドレイク陣営戦力を倒した後、ドレイクとの戦いのために戦力を温存したいから、すぐには動かないだろう。なので、ここは一つ爆弾を落としておく。
「彼とてルーザ殿の前でいい格好をしたいだろうし」
「む? どういう意味だ」
「ん? ビショット殿はドレイク殿公認の愛人だと聞いていたのだが。済まない、誤情報だったか。いやいや、妻が他の男のとこに長逗留なんて自分ならとても耐えられないが、度量の大きなドレイク殿ならありえるかもと信じてしまったよ」
ドレイクってルーザの浮気に全く気づいてなくて、知った時に愚痴るんだよ、「教えてくれなんだ」って。だからやさしい俺は教えてあげた。俺だって嫁さんが浮気なんかしたら正気ではいられないからね。
ドレイクはどうするかな?
「まあ、器の小さな男が悪い冗談を言ったと許してほしい。それでは。次に会う時は我が国の巨大戦艦完成後かな」
「う、うむ。その頃にはゴラオンを墜としているはずだ」
「ご武運を」
ドレイクの混乱中に気まずさを装って退出。うん、うまくいったかな。
ふう、やっと言えてスッキリしたよ。いくら敵となるのがわかっている奴でも、「あんたの奥さん浮気してっから」なんて言い出しにくかったんだよね。
◇ ◇
トルール城に戻って1週間。ドレイクはよほどショックだったのか、それともビショットがうまく誤魔化したのかは不明だが、ゴラオンは未だ健在。今は小競り合いが続いている状況。
聖戦士伝説ではビルバインにカオスルートで初めてショウかマーベルが搭乗した状態で出てくるマップで、そこでフォイゾンが死亡する。辺りなはずなんだけどそんな状況でもないようだな。
そのマップの後ぐらいでリの国の巨大戦艦ヨルムーンガントが完成。これは建設中の巨大戦艦を防衛できたどうかで完成の時期が前後したっけ。
こっちでは購入したオーラマシンの調査と
あれからはラウの国の軍がリの国に攻めてきてはいない。エレちゃんが上手く説得してくれたのだろう。単にこっちに回す戦力がないだけかもしれないが。
ヨルムーンガントはもうすぐ完成する予定。オーラマシンの調査とズワァースの量産で少し遅れてしまった。別にスピーカーの調整で遅れたわけではない。ボウが過労死しないか心配ではあるが。
「ふぅ」
思わず声が出てしまう。現在、ヨルムーンガントのとある施設をテスト稼働中。
まあ、大浴場なワケだが。
ヨルムーンガント自慢の施設となる大浴場は男湯、女湯とさらに王湯の3つに分かれている。王湯は当然、王族用だ。軍艦なので余分なスペースを使わないためにも当初は1つの大浴場を時間帯によって男湯と女湯に切り替える予定だったが、恋姫世界に戻った時のためにこうした。王族用も中はそれほど豪華ではなく、他の2つよりも狭いが俺が嫁さんたちと入っていても問題はない。
つうかそっちがメイン。女湯に俺が入るワケにはいかないからな。いくら王様でもね。
今はその王湯に入浴中だ。男湯、女湯はボウたち開発スタッフがテスト中。無理させている褒美ってことで一番風呂で休んでもらっている。
「このお湯、オーラ力を感じます」
嫁ではないが、彼女ならばいいだろうとフィナもこっちに入ってたり。フィナの裸は初めて見るな。キャストオフしたフィギュアみたいだ。普段のレオタードのようなフェラリオスーツも悪くはないが、やはり全裸もいい。さすがに小さいのでHすることはできないが。
ふむ、チャム・ファウのように鎧も用意してあげた方がいいかな?
「オーラコンバーターの発熱を利用しているせいかしら?」
「たしかに癒される気がしますね」
「あなたたちと入っているだけでも癒されるわ。むしろ
うんうん。眼福眼福。オーラ湯に温められ、ほんのりと染まった肌を水滴が伝う。嫁さんたちがいつも以上に色っぽい。
惜しむらくは、あっちにいる他の嫁さんたちがいないことか。
「早く季衣ちゃんたちとも一緒に入りたいなあ」
実は季衣ちゃんとは一緒に入浴したことがある。それも結婚前に。ああ、あのちっちゃな身体が恋しい。
「そうね。シーラがいないのは残念だわ。リムルはともかく、馬騰とパットフットもくればよかったのに」
「そんなの、俺が恥ずかしいって」
リムルには今回の入浴は秘密にしておいた。でないと乱入してくるからな。それを防ぐために今日はバーンと飛竜で遠乗りしてもらっている。
バーンは憑き物が落ちたかのごとく、綺麗な騎士としてリムルに仕えていたりしていて、フィナいわく城の女中や女騎士からも人気が出始めているらしい。ちなみに騎士での人気トップはナラシとのこと。
ナラシは以前に騎団の連中と一緒に城の風呂に入った際に湯船にあの長髪が浸かってたので、そうならないように髪をアップにすることを教えたらすごい感謝されたっけ。
双子のことを医者に相談したら気にするなって言われてさ、吹っ切るためにあえて、騎士連中と裸の付き合いしたんだよね。
嫁さんたちも今はバレッタで髪を簡単に留めている。これはこれで普段と違っていいな。
くぅっ、ジュニアを抑えるために男湯を思い出していたのに嫁さんたちでまた元気になってきてしまった。入浴剤もどきのおかげでお湯に若干色がついていてよかったよ。
フィナがいなければこのままお楽しみに流れ込んだのにぃ!
ま、どのみち今回はそういうの無理なんだけどね。
「今日はお客さんが来るだろうからあまり長湯ができないのが残念だな」
「シーラ殿の情報とはいえ、本当に来るのでしょうか?」
「来るさ。シーラと北郷君たちが接触したという情報もサーラから届いている」
「あの子もお風呂でかわいがってあげたいわね」
サーラはガロウ・ランなんだけど小説版ほどアレな種族じゃないから、華琳ちゃんのお誘いは断っているようなんだよね。聖戦士伝説では浮上以後は登場しないので、こっちでもバイストン・ウェルに残ってもらうつもり。
サーラ情報では北郷君はラース・ワウに潜入、シルキー・マウの救出に成功。一時足取りがつかめなくなるも、ナの国の王城、ウロポロス城を来訪し、シーラ女王との目通りを果たした。その時にシルキー・マウはいなかったとのことなので、もうフェラリオの長であるジャコバ・アオンとも会うことができたと見ていい。
一刀君ならシルキーも落としていただろうけど北郷君はどうかな?
北郷君はその謁見の時に新型オーラバトラーを授けられた。
ビルバインではない。その量産型であり、アニメに登場しない聖戦士伝説オリジナルのユニット、ゼルバインである。
変形はせず、移動力、耐久力はボテューンに譲るものの、ビルバインと同じくオーラライフル、オーラキャノンを持つ強力な機体だ。
色はビルバインの赤い部分を青くした感じだが、膝から下がダンバインのをゴツくしたような形状になっているので白が増えている。うん、確かに北郷君には合いそうだ。ボテューンの方が全身白なんだけどさ。
今日はゼラーナ隊がトルール城を訪れる予定だったりする。
説得できるか、戦闘になるか……さて、どうなりますかね?
カーヴァル・ウシュタでもよかったかな?
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36話 ゼラーナ隊と謁見
北郷君が新オーラバトラーことゼルバインに乗り換えているワケだが、では彼の乗っていたダンバインはどうなったか?
そう! 聖戦士ダンバインの主役機である藤色のダンバインのことだ。
前回のドレイク軍とラウの戦いで、主役ダンバインは張遼のビランビー、呂布のレプラカーンという、
北郷君の保護を優先するために、爆発の危険のあるオーラコンバーター破損の機体を運ぶのをよしとしなかったのかな。
北郷君とヴァルキリアがラース・ワウを襲撃した時はフォウとバルバインでだった。そしてシルキー・マウ救出、
その後、ゼラーナと合流するためにナの国へ行き、シーラと謁見。本来ならその前に黒騎士との初遭遇、戦闘があるワケなんだけどそれはなかった。だってバーンはもう改心して綺麗なバーン。ズワァースはあるけどもちろんバーンには与えていないよ。
シーラと謁見した北郷君はゼルバインを拝領する。ゼルバインが手に入ったので地上人用というイメージのあるダンバインの回収が行われなかったようだ。直しても北郷君以外が動かせないからね。
もっともその頃にはうちの連中が藤色ダンバインを回収していたのだが。
ダンバインは既に修理、改修済み。色もリの国カラーに塗り替えようという話も上がったが、それは止めた。
それを塗り替えるなんてとんでもない。
だって藤色のダンバインだよ! 聖戦士伝説だって主人公用は残骸を回収、修理したトカマク機のリカラーで水色だ。なんかパチモン臭してスゴく安っぽく残念なのだ。
やっと手に入ったオリジナルカラーのダンバインなんだから見た目はそのままにするに決まってるでしょ!
俺用のオーラバトラーが完成するまではこのダンバインに乗ろうと思う。ゼラーナ隊がトルール城に現れたし、出番があるかな?
一応、あっちは俺への謁見を求めるって声明を出してやってきている。この期に及んで不意打ちだまし討ちとかしないはずだけど。
「ゼラーナの他にグリムリーか。オーラバトラーも展開していないし、戦闘の意思はないようだな。謁見の間に通してくれ」
グリムリーはラウの国が開発したオーラシップだ。ナムワンより大きい。火力は貧弱だが輸送能力が高く、オーラバトラーを10機搭載できるというのが売り。補給艦のイメージが強い艦だな。
あとアニメでは設定よりも大きく見えるグリムリーもいたので、大型のグリムリーもいるのかもしれない。ほら、あのグリムリーみたいに。あれ、どう見てもゼラーナの倍くらいあるように見えるんだが。あれなら横のハッチからだってボチューン屈まないでも発進できそうだ。
◇
謁見の間にきたのは北郷君、ヴァルキリア、ニー、キーン、それにチャム・ファウだ。ドワたちはゼラーナで留守番か。もちろん残ったクルーにも見張りはつけているよ。
「戦場以外で会うのは久しぶりかな。元気そうだね」
「そっちこそ。って、そんなのんきなことを言ってる場合じゃないんだけど」
「急ぎのようかい? 久しぶりに故郷の話でもしながら酒でも飲もうと思っていたんだが」
心友の一刀君とまたバカな話を肴に飲みたい。1周目のあの一刀君はもう消えてしまったんだろうか? それとも無事にフランチェスカに戻って暮らしているんだろうか?
会いたいなぁ。
「だからそういう場合じゃない!」
「あら? 送別会を邪魔しにきたのかしら」
いまだ湯上がりの色気を漂わせている嫁の嫌み。
そうなんだよね、北郷君関係なく、飲む予定は元からあった。
「華琳ちゃん、壮行会だからね。送別会でも間違ってないけど、さ」
ヨルムーンガントが完成した今、完成披露宴も兼ねて国を挙げての大規模なお祭り状態だったりする。ヨルムーンガント饅頭みたいな記念品を国民にも配布した。
もうすぐいなくなる俺たちに頼らないよう、あえて消え物にしたんだよ。
「残す者と最後の別れとなる者も多い。その別れの宴を邪魔はさせん」
「最後の別れ?」
「うん、俺たちが元の世界に帰るのに付き合わせることになっちゃうからね」
これを教えていいものか迷ったけど、スロットが増えているのでセーブも多く、うまくいかなくてもやり直しに問題はない。
道場でみんなで相談した結果、北郷君がどんな選択をするか試したい、ってことで今回は教えることにした。
ふふふ。ジャコバからの警告を伝えにきたつもりが、いきなりこんなことを切り出されて、北郷君も動揺しているな。
「地上界に?」
「そうだけど、そうじゃない。北郷君も気づいているだろう。バイストン・ウェルに召喚された者が2種類いるって」
「2種類?」
「正確にいえば3種類かな」
本当は4種類だが。俺だけさらに別だもんね。
少し考えた後、ハッと表情を変える北郷君。さすがにわかるよね。
「大きく分けると男と女に別れる。召喚された地上の女性について思うところがあるだろう? あ、みんな可愛いってのは当たり前すぎるから無しでね」
「関羽、曹操、孫権、呂布、張遼、馬騰。全員、三国志の人物と同じ名前だ」
「そう。みんな三国志の世界からきた武将なのさ。その名のとおりの強さだろ。呂布なんてまさに一騎当千だ」
うちの武将たちは
レベルとか関係なくステータスが化け物だよ、呂布ちゃんは。張遼だって神速は伊達じゃないとばかりに行動ゲージのたまりが速い。馬騰ちゃんに勝てたのだって彼女が病んでいたせいが大きいのはわかってるかな?
「古代の中国から召喚されたって言うのか?」
「そうだよ。召喚者の時間の差は他にもある。ショット・ウェポン、ゼット・ライトの2人は80年代の世界から召喚されているんだ。携帯電話見せたら驚いてなかったか?」
「そんな……でも、みんな女性じゃないか」
「そういう三国志の世界から召喚されたんだ」
武将がみんな美少女な三国志のギャルゲー世界から、ね。さらにいえば君が主人公のギャルゲー世界だ。もちろん教えないけどね。
どうせならこっちも有名人がみんな美少女だったらよかったのにね。聖戦士伝説なんてヒロイン不在なんだから。主人公の親衛隊ぐらいさあ、オーラバトラーを動かせるオーラ力の強い者を集めたらなぜか少女ばかりだった、なんて展開でもよかったのに!
「いくらなんでもそれは無理があるんじゃ?」
「事実だからね。バイストン・ウェルだってむこうじゃ信じてもらうのは難しいだろ。こっちの変な生き物に比べたら武将が女性ばかりの方が無理がない」
「言われてみれば」
と納得した北郷君だが「変ってのはなによ!」とチャムに蹴られてしまった。変な生き物の代表さんみたいな子にさ。
「フェラリオなんてむこうにはいないんだよ」
「そう。だからフィナにはこっちに残ってほしいんだってば」
「いやです。コーイチさんについて行きます」
ひしっと俺の頭に抱きつくフィナ。それを見たチャムは対抗心からか今度は北郷君の頭の上に座り、腕組みしてドヤ顔。
ううむ。フィナがついてきてくれるのは嬉しいが、あっちじゃフェラリオがいないから……恋姫世界のヨーロッパなら妖精ぐらいいてもおかしくなさそうだけど、ねえ。
「北郷君、三国志の年代だと日本は邪馬台国だよね。ヨーロッパは?」
「ええと、ローマ帝国あたり?」
「そんなもんだよなあ。そんな世界へ俺たちは帰るのさ」
ローマ帝国か。最近じゃ風呂のイメージだな。あと赤王。
そっちまで戦場を広げたくないけど、ドレイクたちがどこに出現するかが問題だ。
できればやつらと北郷君だけ、フランチェスカのある地上界へ出てくれるのが一番ありがたい。
「帰る方法があるっていうのか?」
「君たちが会ってきたフェラリオの長が業を煮やして、オーラマシンをバイストン・ウェルから排除する。その時に帰れる」
「な!」
今までで一番驚いた顔を見せる北郷君。そりゃそうだろうね。だってジャコバから世界を恐れさせ、震えさせるオーラマシンの排除を頼まれたのに、その本人が自分で排除を行うなんて聞かせられたら、ねえ。
「ジャコバ・アオンはなんと言っていた?」
「今のコモンの世界を憂いていた。機械の力で歪んでゆくって」
「だからバイストン・ウェルから全てのオーラマシンを無くさねばならない、かな」
「そこまで知って!?」
そりゃ聖戦士伝説は何周もしたからね。システム用のセーブデータを作ってくれない当時でも珍しいタイプだったから、事典を全部埋めるためには、項目を埋めたらちょっと前のセーブデータから別の選択肢なんてことはできず、最初から最後まで通しで全ルートクリアしなきゃいけないというマゾ仕様。しかも2周目以降でも名前以外の引き継ぎなし。
ああ、大変だったなあ。
「アの国のウィル・ウィプス、ラウの国のゴラオン、クの国のゲア・ガリング、ナの国のグラン・ガラン。そして、リの国のヨルムーンガント。これだけの巨大戦艦が完成した今、その戦いは大きく激しいものとなる。その決戦をジャコバ・アオンは耐えられない」
「それがわかっていて、なぜドレイクに手を貸すんだ!」
「それこそが望みだから」
うん。きっと俺今、悪役顔だね、計画どおりってさ。
絶句する北郷君たち。これがもし北郷君じゃなくてショウ・ザマだったら殴られてるだろうかね。
いい気分だ。ここはもう犯人バレしたサスペンスドラマのようにベラベラと喋るべきだろう。セーブ&ロードはそれでも秘密だけど。
「ジャコバが命がけで行うそれによって、俺たちは元の世界に帰る。全員が帰るにはそれが一番可能性が高い。余計なものもついてきちゃうが、それも覚悟の上なんだ」
「バイストン・ウェルを混乱させてまでか?」
「俺が混乱させたワケじゃない。俺はただ、積極的に混乱を止めようとしなかっただけだ」
いいわけになるけど、召喚されたのが俺だけだったらここまでしないで、ガラリアと地上界に出る時になんとか恋姫世界に出て、それで戻ってこなかったはず。華琳ちゃんや他の恋姫キャラまで召喚されちゃったからこうするしかなかった。
「なんでそこまでするんだ? こっちで王様にまでなったじゃないか」
「好きで王様になったワケじゃない。あっちにも大事な嫁さんたちがいるんだ。絶対に帰らなきゃいけないだろ。嫁さんたちと世界の安定なら、俺は嫁さんたちを選ぶ」
主人公キャラなら両方か、悩んだ末に世界を選ぶんだろうけどね。そんなんだったら俺は悪役ポジションでいい。
「ま、まだお嫁さんがいるの?」
「そうだよチャム。みんな可愛い、愛しい嫁さんたちだ。だから早く帰りたい。ああ、早く会いたいよ」
「カズトはそんな子、地上にいないよね?」
あら、チャムの質問にあっちの雰囲気が一変した。俺を責めるのではなく、北郷君に詰め寄る視線。なんとかリアだけでなく、やっぱりキーンもか。
ニーも知ってるのか視線を逸らしているし。リムルからも相手にされていないみたいだし、チャムもカズト君か。ダンバインきってのモテ男はどこへいったのやら。
「北郷君、なんなら結婚式を手配しようか? 約束だけだと死亡フラグになるから今の内に結婚しておいた方がいい。略式でいいならすぐにできる」
「ちょっ!」
「相手はガラリア、キーン、チャムでいい? まだ他にもいる?」
1周目で一緒に結婚式したのを思い出すなあ。それだけじゃなくて俺の嫁さんに手を出させない予防線でもあるおせっかいだったり。
「わ、わたしも?」
「私はヴァルキリアだ!」
「カズトと結婚!?」
断れそうにない雰囲気を悟ったのか、がっくりとする北郷君。
宴会のいい余興ができた。こらならグリムリーにいる彼女も顔を出す口実ができただろう。
ってか、なんでやってきてるんですかね、シーラちゃん?
◇
結婚式の準備に入ったゼラーナ隊と交代でグリムリーの乗員と会う。
「私に逆らい、ビルバインをカズト・ホンゴウに渡そうとした者たちへの抗議を示しています。私とコーイチ王の仲を周囲に知らしめるためでもあります」
「グラン・ガランでこなかっただけ、マシか」
「喜んではくださらないのですか?」
うっ、その悲しげな表情はズルい。
「そりゃ嬉しいよ。元気そうでよかった。そっちも忙しいんだろ? 抜けてきて大丈夫なのか?」
「バイストン・ウェルからいなくなる私ばかりを頼ってもナの国のためになりません。次の者を育てているのです。このまま私を排斥してくれてもいいのに」
あの責任感の強い聖女王とは思えないお言葉。ナの国のことは任せて重責から逃れられるという解放感からだろうか。まあ、後のことも考えているようではあるな。
「やっぱりバイストン・ウェルに残るつもりはないのか?」
「当然でありましょう。夫が行くというのですから」
うっ。さっきあんなことを言ったばかりの手前、残れとは言えそうにない。
嬉しいのもたしかではあるし。
「ふふ。むこうでも可愛がってあげるわ。ここへ来たのは会いたかった、だけではないのでしょう?」
「それが一番の理由です。コーイチ王にオーラバトラーを渡すためでもありますが。カズト・ホンゴウを慕う女性騎士によって、私の目がない隙にあの者に渡されても困ります。ビルバインを華琳が使うのならばコーイチ王にもオーラバトラーを渡したい。それが地上界でのグラン・ガランのためにもなりましょう」
「えっ、オーラバトラーくれるの! マジで!?」
「何故でしょう? 再会した私の顔を見た時よりも嬉しそうなのは」
ごめん。謝るから黒いオーラ力やめて。
シーラに会えて嬉しいってのも本当だから。今晩それを身体で証明するから!
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37話 浮上
シーラがくれたオーラバトラーは1機ではなかった。
ボチューンの親衛隊用のカスタムタイプであるボテューン。
模型誌の企画AURA FHANTAZUMに登場したオーラバトラー。まぎらわしい名前だがAURA FHANTAZUMにはそういうのが他にもあったりする。
聖戦士伝説では量産機のくせにカラーバリエーションがなく、リの国で使用してもシーラ近衛隊仕様なのは残念なんだか、ファンクラブ仕様が使えて嬉しいんだか。
バルカンの位置が太股から手に移っちゃったけど、移動力が大きくて使いやすい量産型最強オーラバトラーの一角だ。
ゼルバインは聖戦士伝説オリジナルの高性能機で、同じくカラバリなしの量産機。ビルバインの変形機構をオミットした量産型であり、北郷君にも渡されている。
聖戦士伝説だと、このくらいのタイミングでゼラーナ隊がゼルバインを連れてトルール城を襲うんだよなあ。ゼルバインが登場する数少ない戦闘。
で、撃墜したゼルバインを回収して量産できるようになる。
そして、ヴェルビン。
そう、ヴェルビンである!
アニメには登場せず、AURA FHANTAZUMにて発表されたもう1つのビルバイン。
スポンサーである玩具メーカーの希望によってデザインされたビルバイン。それを世界観に合うようにリデザインされたヴェルビン。
変形はしないが高機動型のオーラバトラーだ。武装もオーラソードとクローのみという重武装型のズワァースの対極。
聖戦士伝説にも登場しなかった幻の人気オーラバトラー。
ヴェルビンがもらえたのは正直嬉しい。
だけど、AURA FHANTAZUMだとブラウニー、ビランビーと発展していって高機動型の究極に達したのがヴェルビン。だからアの国製だと思っていたんだよなあ。
まあ、TOYでナの国の近衛騎士団長専用って設定でビルバインのようなカラーリングも販売されたから、今はもう設定が変わっているのかも。
「わが近衛騎士団の長も満足に動かすことのできない難物のオーラバトラーですが、聖戦士ならば問題はないでしょう」
「ありがとうシーラ。最高の贈り物だ!」
思わずシーラを抱き上げてくるくると回ってしまった。それぐらいに有頂天だ。
当然だろう。だってヴェルビン大好きだもん!
聖戦士伝説でも強化型や改良型なんて手抜きのオリジナル機出さないでヴェルビンやガーゴイルを出せとずっと思っていたのだよ、俺は!
「ずいぶんな喜びようね」
「ヴェルビンは華琳ちゃんのビルバインの別の姿みたいなもんだからね。ある意味お揃いなんだよ!」
さっきまで俺は藤色の主役ダンバインに乗るつもりだったけど、ヴェルビンがきたんなら話は別。ヴェルビンはもちろんボウに開発チャレンジしてもらうけど、たぶん無理そうだからね。俺専用機ということになるだろう。
量産できるといいなあ。ビルバインの量産型がゼルバインだから、ヴェルビンの量産型はジェルビン? それともリの国のだから……リビルバイン?
いや、リゼルバインか。むう、女の子になりそうな名前だな。これで行くか。
略称リゼルだと変形しそうな気もしてくるけど!
◇
ヨルムーンガント大浴場の検査をおえて湯上がりのボウに、入手したオーラバトラーの調査、開発と新しい量産機の構想(?)を伝えた。
ほぼ完成したヨルムーンガント内にも機械の館があるので、
「また苦労をかける」
「おまかせください」
ボウも地上界についてくることを望んでいてくれて助かるよ。報酬もはずまないとね。
むこうにいったら嫁さんも探してあげないと。
あっちの女の子は美人ばかりだからついてきてくれる騎士、兵士たちも喜ぶはず。余計なお世話かな。
北郷君たちもヨルムーンガントの姿に驚いているようだ。
思っていたよりも大きかったかい?
「本当に完成していたのか」
「巨大戦艦で一番遅い完成になっちゃったけどね」
「コーイチ王に相応しい見事な艦です」
「グラン・ガランもシーラ女王に相応しい優雅な艦だよ」
ゲームオリジナルの巨大戦艦ヨルムーンガントって聖戦士伝説ではサイズ不明で、マスターファイルだと巨大戦艦にしては小型艦扱いされてしまう。なに140メートルぐらいって。小さすぎでしょ! 搭載オーラバトラー数も10機程度って戦力低く見積もりすぎ。マスターファイルは独自解釈が多いよなぁ。
だがこの世界のヨルムーンガントは違う!
俺のクリアボーナス『かね×2』によって収益が増している上に、強獣の森へ通いまくって稼いだ資金と素材でリの国にあまり負担をかけることなく建造。
俺の無理な注文に応えるチート技術士ボウによって対空砲も充実。サイズもゴラオン以上の大型艦となっている。ウィル・ウィプスやゲア・ガリングに対抗するためにもオーラバトラーを多く持っていかなきゃいけないからね。
オーラマシンの搭載数、多いよ。パイロットよりも多いぐらいだ。あっちで武将達にも渡したいもん。
だけどグラン・ガランの城っぽいあの優美さは持っていないのは残念だ。アイロンじゃなくて日本の城っぽいデザインを注文すればよかったか。
「で、ゼラーナ隊はこれを奪うつもりかい?」
「……ドレイクと袂を別つというのはマジなのか?」
「もちろん。地上界に帰るために協力していただけだからね。地上界に帰れて、それにドレイクたちもついてきちゃったら戦うことになるだろう。奴は地上の世界征服を目論むのは明らかだ」
ドレイクだけじゃなくて華琳ちゃんも目指しそうだったり。大陸だけじゃなくて世界全部をさ。俺としてはそんなの面倒なんだけどね。
でも日本には行きたいかも。もうお米って作っているんだっけ?
「三国志の頃ならオーラマシンがあればそれも可能、か」
「逆に補給では苦労しそうだろ、食料も含めて。だから、物資も多めに用意しておかないといけないのさ。連れて行く人員は最低限にして、ね」
「それなのに、聖戦士について行きたいという者が多くて困っているわ」
死ぬまで帰ってこれないこと、リの国の人的資源の低下、等をさっ引いても、食料他の必要物資のことを考えれば連れて行く人数は少ない方がいい。
オーラバトラーの操縦はそれほど難しくないので、機体さえあれば魏軍で対処できるはず。
「おかげであっしとオウエンも居残りでさ」
「なるほど。騎士団長が残るというのならば、思い止まる者も増えましょう」
シーラの言う理由も期待してるし、オウエン抜きだとリの国も困る。ザンだって残ってくれればオーラマシンが無くなった後でも戦力的に問題はあるまい。むしろついてこられてもあっちの有能な美少女たちにおされて立場なくなりそうだ。
だけど、それでもついて行くって者が多いのも事実で選抜試験すらやってたりするのがね。
「ゼラーナ隊も残ってくれないかい? 決戦の時にオーラマシンに乗っていなければバイストン・ウェルに居続けられる」
浮上の先が、フランチェスカのある現代日本になる可能性もなくなる。北郷君の結婚を勧める理由の1つだ。
まあ、オーラ力の大きさで決まるんなら
「そんなワケにもいかない。あんたが言ってることがどこまで本当かなんて証明できないだろ」
「俺がシーラやエレちゃんの敵になることはないって断言してもいいけど、証明しろってどうりゃいい」
「問題はありません。これから行われる聖戦士カズトたちの結婚式と同時に、私とコーイチ王の結婚式も執り行うのですから。私たちの繋がりの証明となりましょう」
「シーラ女王?」
にっこり微笑んだシーラちゃんに北郷君が頬が染まる。赤くなるのも無理ないぐらいシーラは可愛いが、その頬にチャムのキックが炸裂。
痛かったのか、頬とそれに尻をさする北郷君。キーンに抓られたのかな。
「結婚式前に浮気するな!」
「そ、そんなつもりじゃ」
ああ、心友の一刀君を思い出すなあ。
あの結婚式の時は緊張しまくりだったっけ。
……思い出してたらなんか泣きそう。嫁さんの次くらいには会いたい友人に、もう会えないなんてさ。
「どうなさいました、コーイチ王?」
「い、いや……シーラがあんまり綺麗だから見とれてたよ」
「まあ」
既にナの国の婚礼衣装を纏っているシーラ。褒めるのも当然だ。
俺だけじゃなく華琳ちゃんが今にもベッドに連れ去りそうな視線を送っている。その華琳ちゃんや愛紗、蓮華も着飾っていて綺麗。花嫁衣裳じゃなくたって目立つこと間違いなしだ。
「ほ、本当に結婚するんですか?」
「聖戦士カズト、ずっとそう言っています。私が国のために望まぬ結婚をしなければならない、とでも近衛騎士に言われましたか?」
北郷君はまだショックを受けている。もしかしてシーラを狙っていたのだろうか。
嵐の玉で出会ったのが俺じゃなくて北郷君だったらシーラも攻略されていたんだろう。一刀君だったらむこうでエッチしてたかもね。それともダンバインの中ですらありえるか。
シーラとの結婚式は急遽決定された。のではなく、俺には内緒で準備が進められていたらしい。嫁さんたちも知っていたんだとさ。だから着替えもわりと早く済んだ。
ヨルムーンガントの完成もそのために俺に知らせるのを少し遅らせていた。まあ、緊急時にはすぐに知らせる予定だったらしいけどさ。
花嫁衣装で乱入してきそうなリムルだが、遠乗りにつれて行ったバーンはしばらく戻ってこない。山奥の砦の一つに避難という形でしばらく滞在してもらうからだ。オーラバトラー戦記での最後とちょっと似てるね。
オーラマシンも配備されていない砦とは名ばかりの僻地。いくらリムルでも飛竜無しでは脱出できまい。そのまま結婚式も知らせず、ヨルムーンガント出航まで隔離する。バーンにはその間にリムルといい仲になってもらいたいものだ。
「ナの国でやらなくていいのかい?」
「恥ずかしながら、我が国で行うと暴動が起きそうなのです」
「当然よ! 相手は好色王なんだから」
チャム、ため息つかないでくれ。泣きそうになるから!
その呼び方はあんまりだよ。
シーラは国民に大人気で、その彼女の結婚相手が既に嫁さんを何人ももらっている、ってのは反対するのも納得してるけどさ。しかも全員美少女でそりゃ悪名もつけたくなるってもんか。
「むこうに戻った時も蓮華との結婚を知られて似たようなことが起きないか、心配だ」
「大陸でも結婚式をしなくてはいけないわね。人数も増えるでしょうし」
「うむ。オレの娘だけじゃなくて、もっと増えるかもな」
「まだいるのか?」
いやいや、馬超との結婚だってまだそうなるか、わかってないんだからね。
でも、華琳ちゃんの花嫁姿がまた見たいって春蘭たちは絶対言うか。
愛紗も義姉妹に結婚式見せたいだろうし。
「エレ王女を呼べないのが残念ですが、地上界での結婚式には参加してもらいましょう」
「エレ様まで!?」
「なんか勘違いしてない!?」
嫁じゃなくて招待客って意味だよね、シーラ。
なんでうんうんわかってるって顔で肯いてるかな、パットフット。
そしてなぜ俺の髪をぎゅっと握っているかな、フィナ?
「カズトには私たちがいるからな」
「そうよ。これ以上いらないでしょ」
「ねー」
左右の腕をキーンとガラリアにとられ、頭の上にチャムの北郷君。君は羨ましそうに見ているニーに気づくべきだろう。あえて無視しているのかもしれんが。
ニーはリムルと会えると思っていたらしく、ポロポウズの花を手にがっくりと落ち込んでいた。
まだ未練あったのか。
しっかり面倒を見られるんなら任せても……いや、リムルはしっかり見張っていられる人物じゃないと任せられないか。彼にはドレイク討伐に集中してもらおう。
できればニーにもバイストン・ウェルに残ってもらいたいものだが、一応、ゼラーナ隊のリーダーだしなあ。
◇ ◇
結婚式は無事に終了。他国の攻撃やゼラーナ隊の工作もなかった。
どうやらゼラーナ隊は結婚式という予想外の展開に流されてしまったよう。
うむ。作戦勝ちだな。
俺も流されただけだけどさ。
初夜もよかった。シーラだけじゃなくてこっちにいる嫁さん全員で。浮上に備えて繋がりを深めておいたよ。みんな同じ世界に浮上できるようにね。
ちょっと疲れてはいるけど、気力は充実している。
「初夜も済ませたし、死亡フラグが減ったな」
「新婚さんも危険だけど」
「そうだった。油断しちゃダメか」
一緒に朝食を取りながら北郷君と談笑する。あの時の一刀君と違うのは嫁の数が違うから疲れをそれほど感じないこと。一刀君は疲れを顔に出しながらもやり遂げた感じだったっけ。
「それと、ゼラーナにオーラバトラー用の剣を支給しておいた。あ、結婚祝いには縁起が悪いって思わないでくれよ。災いを断ち切る、未来を切り開く、って刃物は縁起物なんだから。悪意はないんで使ってくれ」
「オーラバトラー用の剣?」
「ああ。硬いグラバスの甲羅を研磨した名品だ。日本刀型のも作ってもらったんだけど、なんか俺には合わなくてね。君なら上手く使えるだろう」
以前に狩った水棲の強獣グラバス。その甲羅の研磨に時間がかかったがついに完成した。聖戦士伝説では地上界で手に入れることができる最強のオーラソードが日本刀型だったんで作ってもらったんだけど、俺って日本刀より剣の方が慣れてるんで西洋剣型のグラバスソードの方がいいみたい。数値は同じくらいなので北郷君に渡すのも面白いだろう。
ヴェルビンにはそのグラバスソードを2本装備させることにした。ビルバインの必殺技って二刀流のイメージもあったりするんだよ。だからヴェルビンにもね。
嫁さんたちや馬騰のオーラバトラーもグラバス武器を装備しているよ。
「ありがとう。俺もそっちの結婚祝いしたいけど、渡すものがなくてすまない」
「構わないさ。誤解を解いてくれたんだから」
さすがにむこうでどんな関係になるか不明だから
本来の主人公が恋姫世界で敵になると大変そうだしね。
朝食後、ついにヨルムーンガントの出航。ザンを残して行くので艦長は華琳ちゃんだ。
「皇一はゼラーナ隊と同行してシーラを送っていきなさい。ヨルムーンガントはナブロの砦のゴラオンと合流するわ」
国中で祝ったので、ドレイクも俺とシーラの結婚式を知ったことだろう。グラン・ガランにシーラ不在となれば、きっとウィル・ウィプスを動かす。それだけではなく、シーラがグラン・ガランに戻るのを邪魔するのは間違いない。
ゼラーナ隊だけでは不安なのでこっちからも戦力を出すがナの国への手前、俺が出ないワケにはいくまい。シーラから贈られたヴェルビンで護衛することで、俺とシーラの結婚を示すのだ。
「サーラからの情報だと、ドレイクにせっつかれてビショットのゲア・ガリングがやっと動き出した。ナブロに向かっているようだから注意してくれ。クの国のビアレスはいいオーラバトラーだ」
ビアレスは近接武器が斧なので他機種と使いまわしが効かない欠点はあるがそれを差し引いても名機だ。斧だって、購入できる最高級品の
残念ながら聖戦士伝説ではバリエーション機が出ないけど、AURA FHANTAZUMには最終生産型ってのがあったりするので改良型とか強化型なんてオリジナル色違いを出すより、そっちを出すべきだったと思う。
「皆様、エレをお願いします」
「任せてパットフット。エレは私にとっても妹のようなものだから」
蓮華はエレちゃんを可愛がっている。亡国の姫という立場が近いもんな。髪の色も似ているし。
孫尚香がなんて言うかな。シャオちゃんだったら「ならシャオの妹ね」とか言いそう。どっちも特徴的な髪型だよね、重力に逆らったさ。
あのシャオちゃんにも会いたいなぁ。
パットフットのことはゴードがなんとかしてくれるはず。くっついちゃってもいいのよ。
「マスタードラウゲン、いえ、ゴード王。リの国を頼みます」
「任されよう。聖戦士の願いが叶うことを祈る」
仮面を外したゴード王に王家の剣を返却し後を任せる。これでもう、俺は王様やらなくていいってことだよね。肩の荷降りたー!
王家の剣が無くなったので代わりに持つのは黒い剣。聖戦士伝説では重装甲ボチューンと改良型ダンバインって黒いオーラバトラーが出てくるからそれができないかボウに頼んだ結果できた副産物。結構切れ味もいいんだよ。
「ザン、オウエン、今まで世話になった。ありがとう」
「聖戦士の下で働くのは悪くなかったですぜ」
「聖戦士殿についていく騎士、兵たちをお願いします」
「わかったよ。そっちも元気で王を支えてくれ」
国民をあずかる重責は減ったけど、ついてくる連中はやっぱり俺が面倒みなきゃならんか。
ついてくるやつらは苦労かけることになるが、福利厚生はちゃんとするからな。その辺も華琳ちゃんと相談してあるし。
「サーラの情報にも助けられた。連れて行けないのが残念だよ」
「さすがに地上界のことはわかんないからね、役には立てないさ」
「閨でがんばってくれてもいいのよ」
「光栄だって返しておくよ。あんたがガロウ・ランじゃないってのが未だに信じられないね」
華琳ちゃんは結局、サーラに手を出したのだろうか?
他にも城の侍女たちに別れを惜しまれているのが怪しい。
愛紗、馬騰は騎士たちと激励しあっている。あいつらはよく生身での訓練をしていたやつらだろう。2人の指導のおかげで強くなったと泣いていた。
たしかに強くなっている。
もはやリの国に心残りはない。
◇
城で国民への最後の別れを済ませ、俺たちはトルール城を後にする。失敗してロードしない限り、もう戻ることもあるまい。
ドレイク軍に発見されるのを防ぐために、シーラを送るために同行するのは俺だけ。ゼラーナではなく大グリムリーに乗艦している。
「ミヤランの海でグラン・ガランと合流か。ウィル・ウィプスも近い、と」
ナの国は海を挟んでアの国の東にある。で、リの国は断崖を挟んでアの国の西にある。つまり、最短距離を通ろうとしたらアの国の上空を通過することになってしまう。
北はラウの国。北に向かうヨルムーンガントを旗艦とした艦隊とは別れて南に進路をとり、アの国上空を迂回してミヤランの海を目指す。遠回りだが余計な戦闘をするよりは早くつく。
その予定どおりに空の航海は順調ではあった。合流目前で敵と遭遇するまでは。
「ここまで戦闘がなかっただけで上出来か」
「グラン・ガランは目と鼻の先なのにー」
「ウィル・ウィプスと先に会ってしまいましたか」
『ウィル・ウィプスはゼラーナが引き受ける。シーラ様は早くグラン・ガランへ!』
ゼラーナからの通信。既にオーラバトラーを展開している。これじゃドレイクを誤魔化すのはやりにくそうだ。
ウィル・ウィプスの周りに展開していたオーラバトラーも向かってきた。って、このオーラ力は張遼と呂布じゃないか!
完全に待ち伏せされてたな、こりゃ。
「ゼラーナだけじゃ無理だ。俺も出る。シーラ、次に直接会うのは地上界だ!」
「ご武運を!」
大グリムリーをグラン・ガランに向かわせ、俺はヴェルビンで出撃。
新たなオーラバトラーの力強さを感じながら北郷君たちのそばへ飛ぶ。ガラリア(ヴァルキリア)はバルバインでキーンはボチューンか。北郷君はちゃんとゼルバインにグラバス刀を装備させてくれていてちょっと嬉しい。
これでキーンも聖戦士伝説オリジナルのオーラバトラーだったらバランスがいいトリオになるのに。
「呂布のレプラカーンには1機じゃ無理だ。北郷君たちは3機で当たってくれって言うべきか?」
「数では勝ってても、俺たちの方が貧乏クジにしか思えないな、それ」
「俺は1機だし、張遼だって強いっての」
北郷君と軽口をかわしながらドレイク軍オーラバトラーに備える。先陣を切って現れたのはやはり張遼のビランビーだった。
「見たことないオーラバトラーやけどやっぱコーイチやな、おひさー。っと、ゼラーナといるワケないってドレイク言うとるから、コーイチじゃなかったわ」
「俺の顔を忘れるなんて冷たいな、関羽を連れてくればよかったか」
「そりゃ魅力的やな。けど、あんたともいっぺん
ドレイクは本気で俺がいないとは思ってないだろう。もし俺がいてもついでに倒せればいいし、俺が生き残ってもゼラーナ隊と同行してるとは思わなかったと言い張る、か。
俺たちが話している間に呂布のレプラカーンとドレイク軍の他のオーラバトラーも接近。ドラムロ多数にビランビー、レプラカーンが数機か。っと、俺たちを無視してグリムリーを追おうとした部隊に向かって手持ちのオーラランチャーを発射。ヴェルビンは近接武器オンリーだったので、持ってきたのはブラウニーで使っていたバストールと同型の物だ。
「ここから先は通行止めだ」
「うち相手に余所見とは余裕やな!」
うぉっ、返礼とばかりに張遼ビランビーもオーラランチャーを撃ってきた。ギリギリで回避するとすぐに剣まで迫ってくる。鋭い斬撃だ、受け止めたのがグラバスソードじゃなかったら折られてたかも。
「よう受け止めた」
「そりゃまあ、こっちの方が聖戦士は長いからね、っと」
至近なのに構わずにオーラランチャーを向けるとビランビーが離れる。それにも関わらずに発射。その弾はドラムロに命中、爆散させる。
当たったよ、ヴェルビン反応がいいな。エイムもバッチリだ!
「やるやないの!」
「張遼に集中したいのに邪魔が多い!」
「悪いなあ。ウチも一騎打ちしたいけど、やつら、させてくれへん」
ちっ、オーラランチャーは5連。片手にしか装備してこなかったので、これではグリムリーを追われてしまう。
ならば目標を変える、か。
「こっちも悪いな! 地上に戻れたら酒おごるから!」
「なんやそれ! って、ウチよりも速い!?」
ビランビーから離れてウィル・ウィプスへと向かうヴェルビン。ナの国製に変わったけど、高機動型の究極という設定は残っていたのかビランビーは追いつけない。
単機特攻なんてフォイゾンのこと言えないと苦笑しつつ、ビランビーや他のオーラマシンの砲撃を回避する。反応も悪くないよ。このオーラバトラー、俺と相性が抜群だ。
「よしっ、グリムリーを追うのは諦めたな」
「無茶しないでください!」
「すまん!」
回避運動をとりながらフィナに謝る。道場を知らないフィナにとっては自殺行為にしか思えないんだろう。ウィル・ウィプスが近づくにつれて砲撃が激しくなってきたしそれも当然か。
ブル・ベガーも多いな。うわ、ショットのスプリガンもいるよ。
少しでも数を減らしておくかと残り少ないオーラランチャーをブル・ベガーに全弾発射。艦下部のオーラキャノンに命中し、撃沈。
「やったけど弾切れ! こんなことならビルバイン借りてくりゃよかった!」
「後ろからきます!」
華琳ちゃんにヨルムーンガント艦長を任せたんだからビルバイン空いてたのに、つい入手したばかりのヴェルビンに浮かれて乗ってきたことをちょっと後悔しつつ、フィナの警告に従って回避。
この攻撃はスプリガンからか。聖戦士伝説ではそんなに強くなかったけど油断できる相手じゃない。というか、この状況で相手してたらマズイな。
空になったオーラランチャーを投げ捨てながらスプリガンから離れ、グラバスソード二刀に持ち変える。
追ってこない? ウィル・ウィプスが近すぎて砲撃しづらいのね。お、ライネックが出てきた。ウィル・ウィプスに配備されていたか。乗っているのはドレイク軍のエリート兵ね。今の内に倒しておこう。地上界に行かれると面倒だ。
◇ ◇
「オーラ斬りぃ!」
ライネックが真っ二つになって墜ちていく。
さすがボチューンを作ったナの国製。オーラ力を剣に集中させる機能を持ってるので、ただでさえ強いグラバスソードの切れ味がいい。
この機能はハイパー化防止機能として、リの国製のオーラバトラーにも搭載している。うちのは限界オーラ力以上のオーラ力を半ば強制的に剣に送ってハイパー化を防ぐ安全装置でもあるのだ。
つまり、オーラバトラー本体がハイパー化するのではなく、オーラソードがハイパー化する予定。まだ試してはいないけど。
二桁に及ぶ敵オーラバトラーを撃破したり、追いついてきた張遼ンビーと戦ったりしてる内に攻撃が少し緩くなってきた。グラン・ガランが近づいてきたようだ。
『ご無事ですか?』
「無事だよシーラ、さすがにちょっと疲れてるけど」
俺だけじゃなくてヴェルビンも筋肉痛を心配するぐらい働いた。グラバスソードじゃなかったら剣ももたなかったかも。ドレイク軍のオーラバトラーは重装甲揃いだから。
北郷君たちが呂布を抑えてくれていて本当によかったよ。あっちも無事だろうか。北郷君とガラリアはともかく、キーンにも新型オーラバトラーを支給してあげるべきだったかもしれない。ラナウン・シーとかなかったのかね。
呂布だってことを考えると、戦う時はワイヤークローに投網をセットしたオーラバトラーを複数用意してみるか。あっちで作れるといいのだが。
『かかれ! ドレイク軍を殲滅せよ!』
通信機からもシーラの号令が聞こえ、ナの国軍とドレイク軍の戦いが始まった。
今の勢いならウィル・ウィプス墜とせそうではあるけど、帰るためにそれはできない。ジャコバさん早くしてくれないかな。
お、やっと光り出したか。弾切れなのが悔やまれる。今こそウィル・ウィプスに撃っておきたいのに。
『この光ですか?』
「ああ、地上界で会おう!」
さあ、みんなとはぐれないように季衣ちゃんや春蘭たちを強くイメージしなくては!
行くぞ、恋姫世界へ!
目的達成なので完?
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