Re:艦これ×ペルソナ4 (じんた)
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おまけ
オマケっぽく何かアレしたアレ


所謂、区切りが良い所で挟むCMみたいなもんだよ

多分ネタバレになるようなことは口滑らしてないと思いまする
ですが気になる方は今回の話はシナリオに関係しません
見なくても問題ないという事を念頭に置いて、見たい方はどうぞ


生きてます、執筆者の"じんた"です。

今回はUA一万回記念と称して、色々疑問に思われてそうな事とか、今後の展開についてちょいと解説っぽいのを入れようかなと考えてます。

 

ではさっくりと行きます

 

・UA一万回突破

 

これに関しては素直に感謝です。読者の皆様有難う御座います。

正直こんなに伸びるとは思ってなかったので、UAが伸びるたびに「嘘やん」と震えておりました。

おまけの話とかも考えたんですけど、ちょっと説明したい事も有ったのでこんな形式になってます。

 

・オリキャラについて

 

艦これという原作に準拠すると、どうしても出て貰わないと困るのが提督なんですよね。(艦これアニメ? いやぁあれはちょっと……)

そして八十神鎮守府だけで話を膨らませようとすると、どうしても規模が小さくなってしまうんです。

なので他の鎮守府を出現させて、世界観をある程度広げて物語を作成しようと試みています。

ですが、あくまでオリキャラ。艦これの提督ではありますが、ゲームにもアニメにも提督は大っぴらには登場しません。

となるとペルソナ4と艦これでクロスさせるのだから、オリキャラはあくまでサブキャラクターという立ち位置になります。

何が言いたいかというと、"オリキャラとコミュは発生しない"、"各鎮守府ごとにオリキャラが存在するかも"という事です。

 

・鳴上 悠について

 

現状の鳴上くんは記憶を失っており、ステータスや築いたコミュなどが変動しています。

ですがゲームアニメ版共々最終的には超人ですよね? なのでこの鳴上くんも番長なんです。

そういった部分は"覚えが早い"、"炭と化したクッキーを受け取る"等でステータスが変動している事が分かるかなー? と思います。(この場合知識のステ―タスUP、断る勇気がない)

 

ゲーム的な表現も今後交えていきたいですね。

勿論コミュニティも進んでいます。下記で説明します。

 

・コミュニティとアルカナ

 

現在詰まってる箇所です。

現状の作成進行度など本当にザックリ言いますと

本シナリオ:60%

コミュシナリオ:20%

上記に加え、各キャラにどのアルカナを当てはめるかを考えてますが……

如何せん一度決めてしまうと、コミュMAXまでの話を考えないといけないので、キャラの崩壊やらシナリオ付け加えるにしても慎重にしないとな……と思ってます。

 

そしてコミュニティ進行度ですが、説明した通り各キャラにアルカナを当てはめる事がまだ出来ていない為、コミュレベルの上昇自体はありますが、どのアルカナが上昇しているのかは決めかねています。スレで書いてた時の情報などを参考に現在当てはめ中です。

 

・というわけで

 

色々書き連ねましたが、最後に言いたいことは

見切り発車でキャラ崩壊とか、シナリオがfly awayして欲しくないという事です

まぁコミュストーリーの都合上、艦娘に設定は書き加えるので、キャラ崩壊は少なからず発生しそうです……

出来るだけ少なくするつもりですがね。

 

昔もエタることはない、なんて言いながら未完で終わったのでそう言った約束はしません

ただ完結まで書きたいという気持ちに嘘はないです。

そういえばこの作品見てたような……? とか不意に思い出して、偶に更新してるか見に来るような、そんな感じでお待ちいただけると幸いです。

 

 




更新記録
2019年3月4日、各キャラにアルカナを仮で当てはめました。
これでやっとこさ各キャラのシナリオと絡ませながら、メインストーリーを書いていけます……

2019年4月5日、現在お仕事の都合で家に帰れていません。スマホでこれ書いてます。
3月末から始まり、4月末くらい拘束されそうです……
帰ってきたらゴールデンウィークだし、書きたいなぁ……


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本編
呼び声


鳴上「……!」

 

>気が付けば知らない場所に立っている

 確か自分は……

 

>……自分は、何をしていた?

 いや、それだけじゃない

 

鳴上「あ、れ……?」

 

>今さっきだけじゃない

 これまでの記憶、それに大切な「何か」を忘れてしまっている――!

 

鳴上「……」(見渡し)

 

>周囲は、霧靄に包まれており景色も何も見えない

 

>……自分は死んでしまったのだろうか?

 

>だが、それ以上に――

 

>自分は以前にも、この場所に来たことがある――!

 

――ああ、ああ! やっと、やっと繋がった……!

 

鳴上「……! 誰だ!」

 

>周囲を見渡しても先ほどと同じ、霧で何も見えないままだ……

 

――良かった……

 

――もしかしたら誰にもつながらないまま、なんて……

 

――いえ、まずは、私の身勝手で貴方を呼びつけてしまい、申し訳ありません……

 

――ですが今の私には、貴方に説明をする時間も、余裕も持ち合わせていないのです

 

>女性の声、だろうか

 ともかくこの声の正体が、自分をここに呼びつけたようだ

 

――さぁ、どうか、前へ進んでください……

 

――そして真実を……、全てを救って下さい……

 

>ふわ、と霧の中を優しい光が差すと同時に、その光は霧の中で道しるべとなっていた

 

鳴上「進むしかないか……」

 

―――

 

>先に進んでも霧は晴れない

 それどころか、道しるべとしていた光はだんだんと、その明かりを弱々しくしていった

 

>このままでは埒が明かない……

 

――どうやら私の力ではここまでのようです

 

――ですが、ご安心ください。決して貴方を死なせることはしません。決して……

 

鳴上「……!」

 

>霧の中で急激な寒気を感じる

 それに先ほどまで道しるべだった光がチカチカと、まるで消えかけの電球のような……

 

>……今、「死」という言葉が聞こえたが……

 

――大丈夫です。貴方には大きな力が付いています。私など比較にならないほどの大きな力が……

 

――どうか、お気をつけて……

 

鳴上「なっ……! じ、地面が……!」フワッ

 

>駄目だ、落ちる――!

 

ザパアアアアアアアアアアアン!!

 

鳴上「……ッパァハ! ……ゲホッ、ゴホッ!」

 

>落ちた先は水…… 塩辛い上に磯の香りがする

 ということはここは海だろうか

 ……なんてことだ、自分は海の真ん中に投げ出されてしまったのか……

 

>辺りを見ても、霧が出ていてよく見えない

 見える範囲にも浮き木一つ見つからない……

 

鳴上「まずい……! まずいぞ……!」

 

鳴上「わっ……っぷ!」

 

>海は荒れており、顔を出して息をするのも困難だ……

 このままでは……

 

鳴上「だ、駄目だ……、息が……」

 

>波に飲まれ、意識を失う中、あの声が頭に響いた

 

(――ですが、ご安心ください。決して貴方を死なせることはしません。決して……)

 

>鳴上悠の意識は、暗転した……




書き溜めがそこまでない上、スレを見直しながら書くので遅筆になると思います。
それでもいいお!という奇特な方は次回を楽しみにしてくれればなと……!


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起床

前回の後書きの件ですが、SSVIPからのサルベージ作業云々と述べました。
なので内容が似通ったり、もしくは全く違ったりする所があると思います。

ご了承ください……


???「―――、――――――」

 

???「――――」

 

鳴上(……?)

 

>誰かの話し声が聞こえる

 

???「大丈夫なんですか、この人」

 

???「治療後に明石から直接聞きましたけど、命に別状はないそうです」

 

???「後遺症になりそうなケガもありませんでした」

 

???「ホッ……、良かったぁ」

 

>自分は、あの時――

 ……自分は、助かったのか……?

 

鳴上「……っ、っぐ……!」ムクリ

 

???「あっ、気が付かれたみたいですよ」

 

鳴上「こ、ここは……?」(見渡し)

 

???「病室ですよ、ここは鎮守府の中です」

 

>……鎮守府?

 

吹雪「えっと、私、吹雪って言います!」ペコリ

 

大淀「申し遅れました、大淀です」(お辞儀)

 

>鎮守府……? 確か日本海軍や海上自衛隊の根拠地…… だったはず

 

吹雪「……大丈夫ですか? まだボーっとしたりします?」

 

鳴上「えっと、はい……」

 

大淀「まだ安静にしててくださいね、体も楽にしていてください」

 

鳴上「そうさせてもらいます」

 

大淀「大変でしたね、ここの近くの浜辺に打ち上げられていた所を、吹雪さんが見つけたんです」

 

吹雪「びっくりしたんですからね、でも大丈夫そうで良かったぁ」ニコ

 

鳴上「ありがとう、吹雪さん」

 

吹雪「さん付けはくすぐったいので、吹雪でかまいませんよ」

 

鳴上「……じゃあ次からは」コク

 

吹雪「ふふ、それにこれは当然のことですからね! お礼なんて全然!」

 

大淀「……コホン!」

 

大淀「勝手で申し訳なかったのですが、持ち物を確認させて頂きました。といっても……」スッ

 

大淀「この眼鏡しかくらいしかなかったんですけど……」

 

鳴上「……!」

 

>なんだろう、眼鏡……

 この眼鏡はとても大事なものだった気がする

 

大淀「これだけでは何とも言えないので、単刀直入にお聞きします」

 

大淀「ご身分を聞いても構いませんか? 出来れば漂流した理由についても」

 

>うっ、と息が詰まる

 どう説明したものだろう……

 

>それに身分といっても自分は……

 

鳴上「八十神高校の、鳴上悠です」

 

大淀「鳴上さん、ですね……」カキカキ

 

鳴上「……」

 

大淀「……」

 

吹雪「……?」

 

>えー……

 

鳴上「以上になります」(真顔)

 

大淀「」ズルッ

 

大淀「い、以上ですか!?」

 

>自分自身の事だけとなると……

 

鳴上「……以上になります」メソラシ

 

大淀「……」(頭抱え)

 

吹雪「お、大淀さん! 八十神高校に連絡を取ってみるのはどうですか?」

 

>八十神高校、言葉として出てきたは良いものの実際にどんな場所だったかは……

 断片的に覚えている部分もあるが、自分の記憶なのか確証が持てない

 

大淀「そうですね……わかりました。では私が連絡しておきます」

 

大淀「何か分かり次第、お伝えしますね」

 

吹雪「しっかり体を休めてくださいね! ……私も少し見回りをしてきます!」

 

大淀「気を付けてくださいね? 今日もまた、ですから」

 

吹雪「わかってます!」

 

>……

 

>二人は行ってしまった

 

 

>まるでここで働いているかのような素振りだったが

 あそこまで若い女性が海軍に入ることが出来るのだろうか……

 

>まだ体のあちこちが痛い

 とりあえず体を休めることにした……

 

―――

 

鳴上「……」パチリ

 

鳴上「随分寝ちゃったんだな……」

 

>部屋の掛け時計は夕方の5時を指している

 

>……!

 自分の机の上に食事が置いてある

 

>『明石さんの許可が出たのでおかゆを作りました

  よろしければどうぞ

  ご気分が優れない場合はそのまま置いておいてください』

 

>何事も食べなければ元気が出ない

 有り難く頂こう……

 

>……

 

>温かみのある味だ……

 

>……?

 

>食器に「食事処 間宮」とある

 作ったと書いてあったが、出前だったのだろうか……?

 

???「あら、起きましたか?」

 

鳴上「……!」モグモグ

 

鳴上「……えっと」ゴクン

 

???「あ、そうですよね。自己紹介がまだでした」

 

間宮「私は間宮といいます。この鎮守府でお食事処を任されています」(お辞儀)

 

鳴上「鳴上悠です。おかゆおいしいかったです」

 

間宮「あぁ良かった! お口に合わなかったらどうしようかと思っちゃいました」ニコニコ

 

???「お! 起きましたかー?」

 

間宮「紹介しますね、こちら明石さんです」

 

明石「どーもー明石です。体の調子はどうですか?」

 

鳴上「体はもう大丈夫です」

 

明石「そうですか、いやー急に人を診てくれ~! なんて頼まれちゃったから、どうしようかと……」ニヘ

 

明石「あと、医者というのはちょっと違うんですけどね。今はお客のいない万事屋を鎮守府でやってますよ」

 

鳴上「なるほど」

 

>二人の自己紹介が済んだ後、病室の扉が開いた

 

大淀「あら、二人ともここにいたの?」

 

吹雪「じゃあこれで全員揃いましたね」

 

鳴上「えっ」

 

>ぜ、全員……?

 

大淀「鳴上さん、八十神高校に連絡を取ってみたんですけど」

 

大淀「鳴上悠という名前の生徒は八十神高校にはいないし、いた形跡もない、と……」

 

>……!

 鳴上悠は八十神高校にはいなかった……?

 

吹雪「でも、あの制服は八十神高校の制服ですよね?」

 

大淀「制服は確かに八十神高校の制服です。そこが不可解で……」

 

明石「えっと、話が読めないんですけど……?」

 

大淀「あぁそうだった、えっと……」

 

>大淀説明中……

 

明石「なるほど、記憶喪失……」ムム

 

間宮「手がかりの八十神高校も駄目だったとなると、手詰まりですね……」ウーン

 

大淀「こちらで可能な限り調べてみたのですが、此方に心当たりはありませんか?」(資料渡し)

 

鳴上「……」ピラ

 

>……

 

>今の自分の状況のせいかもしれないが、ピンとくるものはなかった……

 

大淀「そうですか、困りましたね……」

 

吹雪「だ、大丈夫ですよ! 鳴上さんの記憶はちゃんと戻りますよ!」

 

鳴上「……うん、ありがとう」

 

>知らない場所で記憶がないということに不安ではあるが

 吹雪の言葉通り、記憶が元に戻るよう頑張ろう

 

吹雪(とはいったものの根拠も何もないよぉ~!)

 

吹雪「……! そうだ! 流されてきた場所に行けば、何か思い出すかもしれませんよ?」

 

>自分が漂流した場所……

 確かこの近くの浜辺だと言っていたが……

 

吹雪「体調が良くなれば行ってみませんか!」

 

鳴上「じゃあ今から行こう」

 

吹雪「ええ! じゃあ今からってええええ!?」

 

明石「いやいや、本当に大丈夫ですか? 無理とかしてません?」

 

>体に痛みなどは無いし大丈夫だと思う

 

明石「どうしても行くって顔してますねぇ……」

 

間宮「じゃあその間にお夕飯の準備、しておこうかしら」

 

>焦りではないが、気がかりなことがある

 窓の外に見える霧だ

 

>何故だか分からないが、霧を見ているとなんだか落ち着かない

 一度外に出てみよう……

 

吹雪「待ってください~! 私も行きますー!」




おは番長

ということで、鎮守府に到着です(遭難)
書き溜めがある間は、短いスパンで投稿するつもりです。
投稿が途切れた場合は、書き溜めが無い状態だと思ってください。


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影の召喚

吹雪「えー、記憶が無いということなので、移動がてら説明を!」

 

鳴上「よろしくお願いします」

 

吹雪「ちゃんと大淀さんから資料も頂きましたので、では……」

 

吹雪「(霧で見にくい……)えっとですね、まず私たちの鎮守府から……」ピラピラ

 

吹雪「名称は『八十神鎮守府』、『七里海岸』の一部とその付近の陸地に拠点を置いています」

 

吹雪「八十神鎮守府だけでなく、現在日本には多くの鎮守府が存在します」

 

吹雪「その理由として『深海棲艦』という存在が確認されたからです」

 

吹雪「一年ほど前、深海棲艦という存在を人類は彼女らの海上攻撃によって知ります」

 

吹雪「深海棲艦によってシーレーンはほぼ壊滅、海産物の収穫とかも難しくなりました」

 

吹雪「また、海上からの攻撃により航空機などに多くの被害が出ました」

 

吹雪「なので飛行機も最近は飛んでいませんね。軍事用のものが稀に飛びますけど……」

 

>……

 

吹雪「ここまでは大丈夫ですか?」

 

鳴上「いや、全然」(真顔)

 

吹雪「え、えっと……」

 

吹雪「謎の敵が現れて、世界がピンチです」

 

>いや違う、いやそれもだけど……

 今自分が気にしているのはそこじゃない

 

鳴上「吹雪、今は何年何月何日なんだ?」

 

吹雪「えっと、今は2011年の4月11日ですね」

 

鳴上「」(絶句)

 

>自分の記憶が正しければ今は2012年のはずだ

 だって自分は――

 

>……なぜ確証が持てる?

 でも2011年の4月は自分にとって大切な何かで……

 

吹雪「……みさん! 鳴上さん!」

 

>……!

 

吹雪「大丈夫ですか? 顔色が悪そうですけど……」

 

鳴上「……大丈夫、話を続けよう」

 

吹雪「……辛かったら後ででも」

 

鳴上「大丈夫、本当に辛かったら伝えるから」

 

吹雪「……じゃあ鎮守府の役割ですが、勿論深海棲艦の侵攻を食い止め、これを押し返すことです」

 

吹雪「ですがお伝えした通り、シーレーンは壊滅状態に陥りました。つまり現行の艦では太刀打ち出来ず、新たな対抗策が必要でした」

 

吹雪「そして出来上がったのが『艦娘システム』と『各地の鎮守府』です」

 

鳴上「は?」

 

吹雪「……と、話している間に着いちゃいましたね。こっちですー!」

 

>妙ちくりんな単語が……

 艦娘システム……?

 

>と、とにかくついて行くしかなさそうだ……

 

―――

 

吹雪「この辺りですね」

 

>なんだろう……

 最近までこの景色を見たことがある。妙に懐かしいような、そんな気分になってくる……

 

吹雪「ここも深海棲艦の侵攻で被害を受けて、今ではめっきり人がいなくなって……」

 

鳴上「そうなのか……」

 

吹雪「近くに鎮守府が出来たというのもあるんでしょうけど……」

 

吹雪「……休憩も兼ねて座りませんか?」

 

鳴上「出来れば話の続きも」

 

吹雪「……もう、わかりましたよー」ピラ

 

>……此処まで来たが、正直病室にいた時よりも謎が深まっている

 分からないことが多すぎて、自分ではどうしたらいいのか……

 

吹雪「えっとじゃあ、艦娘システムと鎮守府の関係ですね」

 

吹雪「まず艦娘システムというのは、元を辿れば敵対する深海棲艦の技術に近いものです」

 

吹雪「少ないながら回収に成功した深海棲艦の残骸から、艦娘システムの金型が出来ました。その後、現行の技術と組み合わせることにより、軍艦の戦力を搭載した兵士を――」

 

吹雪「それが艦娘システムです。詳しく話すともっともっと沢山の紆余曲折があるんですけど、ここでは割愛しますね」

 

吹雪「あ、一つだけ! 艦娘システムはその名の通り『艦娘』なので男性は使用できません。女性だけです」

 

鳴上「どうして?」

 

吹雪「私が初めて聞いたのは、『船乗りは船の事を彼女(she)と呼ぶ』から、と……」

 

鳴上「理由になってない気が……」

 

吹雪「詳しくは分からないです。男性ではシステムが同期せずで、女性の場合は同期するらしいです」

 

鳴上「ふーん……」

 

吹雪「鎮守府の話に戻りますね。現状で鎮守府と呼ばれるのは、艦娘システムを担う女性と、彼女たちを指揮する提督がいる」

 

吹雪「それに加えて、彼女たちを補助出来る施設がある軍事施設を大まかに指す言葉だそうです」

 

吹雪「……といっても八十神鎮守府は司令官が不在で、最近受け入れ態勢が出来たところなんですけどね」

 

吹雪「あ、これ話して良かったのかな……、良いよね?」

 

>しかしそうなると、八十神鎮守府にも艦娘がいることになる

 誰だろう、間宮さんは食事処を切り盛りしていて、明石さんは万事屋だったはず

 

>そうなると自然に残るのは大淀さんと吹雪になるが……

 

鳴上「……」(凝視)

 

吹雪「えっと次は……、んー? 霧が濃くなってきたのかな……、見えにくいなぁ……」

 

>さすがに吹雪は違うだろう

 年齢は聞いていないが、少なくとも学生だろうし

 

>理由は吹雪の服装、女生徒らしい学生服だ

 

吹雪「うーん……霧がこれ以上濃くなる前に戻りましょうか」

 

鳴上「わかった。そうしよう」

 

吹雪「……何か思い出しました?」

 

鳴上「何も、ただ引っかかることが幾つか」

 

>自分はこの土地を知っている気がする

 ……単に勘でもあるが、確固たる自分の心がそう告げている気がする

 

ウゥゥン

 

吹雪「……? 今何か……? ッ!」

 

ウウゥゥゥゥン!

 

鳴上「なんだ!?」

 

吹雪「何かが周りを飛んでます。私から離れないで……!」

 

鳴上「あ、ああ」

 

>――なんだこの既視感は! 胸が騒ぐどころの話じゃない!

 

>知っている

 分かる、感じるものがある

 

グギャアアアオオオオ!

 

吹雪「し、深海棲艦! ……じゃない!?」

 

吹雪「知らない……! 新型なの? う、ウソ……」

 

>記憶が無くとも

 ―体が覚えている

 ――心が覚えている

 ――魂が呼んでいる――

 

???「ガアアアアアオオオオ!!」

 

吹雪(逃げなきゃ……! 今は艤装がないのに!)

 

鳴上「……」

 

>分かっている、このままでは助からない

 だから―――

 

――――我ハ汝

 

 ぺ―――

 

――――汝ハ我

 

 ペ ル――

 

――――汝……、己ガ双眸ヲ見開キテ

 ペ ル ソ―

 

――――今コソ……発セヨ!!

 

 

ペ ル ソ ナ ! ! !

 

 

鳴上「吹雪、下がれ!」バッ

 

吹雪「えっ、きゃぁ……ッ!」

 

???「ガアアアアアアア!」突進

 

鳴上『イ ザ ナ ギ ! ! !』カッ!

 

>心のままにそう叫ぶ

 激しい稲光と共に、自身の力……、ペルソナが顕現する!

 

>それと同時、球体の体に口が付いたような化け物が、長い舌を出しこちらへと急速に近づいてくる

 

>だが――!

 

イザナギ「……!」ガシッ!

 

鳴上「……フッ」ニッ

 

>突っ込んできた敵は

 このまま……!

 

鳴上「握りつぶす……!」

 

イザナギ「……!」グ、グ……!

 

???「ギ、ギイイイィ……!」グチャアッ……

 

吹雪「あ、あわ、わわわ……!?」

 

鳴上「……! 新手か……!」(眼鏡装着)

 

>自身の周りにはまだ複数体飛んでいるらしい

 

???「グギャアアアア!!」

 

鳴上「何体来ようと……!」ジオ!

 

イザナギ「……!」ブゥン!

 

>イザナギの持つ刀身の指した先、目の前に存在する敵に力は収束する!

 

???「ガ、グギギャギギ……ギ……」ジ、ジジ……

 

ズウウゥン……

 

吹雪「……あ、え……と」

 

吹雪「(お、終わった……?)」

 

>二体目を倒したところで、周囲の飛行音は次第に遠のいていく……

 

>激しい稲光の後、こちらへ接近する敵はもういなかった

 

鳴上「――怪我はないか?」(振り向き)

 

吹雪「な、ない……です」

 

鳴上「ならよかった、……じゃあ鎮守府に戻ろう」クルッ

 

吹雪「え、え! あの、ええぇぇ!?」




朝方に投稿出来ないかもなので、時間をずらして投稿してます
というのを書いてる時に、「そういえば予約投稿機能とかあったなぁ」
と思い浮かんだのですが、面倒なので投稿ポチー

書き溜めの3分の1が消費されてしまい、嬉しさ反面楽しく続き書いてます


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信じて

サブタイトルは毎回悩みますね
良いタイトルが浮かべば、そちらに変えるかもしれません


吹雪「なんですか! なんなんですかさっきの! 説明してください!」プンプン

 

鳴上「い、いや、だから……」

 

吹雪「あんな話信じられません! ちゃんと! 説明!」

 

>困った……

 

明石! 連絡網の手伝いお願い!

 

はいはい~っと、にしても問題はいつも重なってくるよねぇーもう!

 

吹雪「……って、執務室が騒がしいですね……。吹雪です! 入ります!」コンコン

 

鳴上「俺も」

 

吹雪「……」ジトー

 

吹雪「……吹雪と鳴上の二名入ります!」ガチャ

 

間宮「お握り握ってきました。置いておきますね……あら?」

 

大淀「はい……はい……」

 

明石「今すごい忙しいから! 吹雪ちゃんもこっち手伝って!」クイクイ

 

間宮「お帰りなさい鳴上さん」

 

鳴上「これは?」

 

間宮「なんでも、急に各地から艦娘の被害報告が増えたって」

 

間宮「中には艦娘が行方不明になった……、なんていう報告もあるみたい」

 

鳴上「つまり、鎮守府から鎮守府へ連絡が飛び交っていると」

 

間宮「そう、私も皆さんのお手伝いをしないといけませんから、失礼しますね」ペコリ

 

鳴上「こちらこそ、引き留めてしまってすいません」

 

間宮「いえいえ、……あ! 良かったらお握りどうぞ?」

 

>……

 

>お握り、いただきます

 

―――

 

大淀「……、ふー……」ガチャン

 

明石「やっと落ち着いてきたぁ……」グデー

 

間宮「はい、ではそのように……、わかりました」

 

吹雪「間宮さんすごい……」

 

明石「そういえば、間宮さんはそっちも本職だったっけ……」カキカキ

 

>……

 

鳴上「なぜ俺も……」カキカキ

 

明石「緊急事態で猫の手も借りたかったの、許して?」

 

鳴上「なるほど」

 

>手を貸すのは構わないのだが

 その、軍事機密とかそういうのは……

 

明石「……他言無用、ですよ?」(冷や汗)

 

>ですよねー

 

大淀「……厄介ね。霧が晴れてないのに、新手の深海棲艦が現れるなんて……」

 

鳴上「……その深海棲艦なんですけど、特徴とかは……?」

 

大淀「これも他言無用ですよ? まず多く現れたのが丸くて舌を出した裏表に顔がある、とのことです」

 

吹雪「それって……!」

 

大淀「続けます、他にも……イルカ? 鳥類、大きなカブトムシ、人の手……十字架……サイコロ……テーブル……」

 

大淀「……」ポー

 

間宮「大淀さん!? 何か口から抜けてますよ!?」

 

大淀「……っは!?」

 

大淀「なんですか……、なんなんですかこの報告は……!」

 

明石「でも、うちに届いたどの連絡も全部そんな感じでしたねー」

 

吹雪「あ、あの! 私も見ました、その舌が出ている深海棲艦!」

 

鳴上「同じく」コクリ

 

間宮「み、見たって、大丈夫だったんですか!?」

 

吹雪「い、いや……、それが」(目配せ)

 

鳴上「…」メソラシ

 

吹雪「なーんーでー! 目を反らすんですか!?」

 

>そっとしてくれ……!

 

吹雪「無理です! ちゃんと説明して下さい!」

 

鳴上「だ、だから……」

 

大淀「……話して、くれますよね?」ニコッ

 

鳴上「いや、あの……」

 

明石「大丈夫です、悪いようにはしませんから」

 

>それは完全に脅し文句では……?

 

間宮「明日からご飯抜きですよ?」

 

>飢える……!?

 

鳴上「吹雪に話した通りなんですけど、信じてもらえなくて……」

 

大淀「聞きましょう、話してください」

 

鳴上「は、はい……」

 

>事のあらましと、自身が行ったこと

 そして断片的だが思い出した記憶の事を話した

 

鳴上「つまりあれは、自分の知る限り『シャドウ』という存在で、俺は『ペルソナ』を使って撃退した」

 

鳴上「自分が言えるのはこれだけです」

 

大淀「……」(頭抱え)

 

明石「な、なるほど……」(目が点)

 

間宮「うーん……」(微妙な顔)

 

吹雪「……」ツーン

 

>あ、信じてもらえてないなこれ……

 

吹雪「当たり前です!」

 

大淀「でも鳴上さんは記憶が無かったとなると……」

 

間宮「作り話なんてするでしょうか? 記憶喪失なのに……」

 

明石「い、いや~……、でもなぁ~……」(頭抱え)

 

明石「……あ、ちなみにそのペルソナっていうの、今出すことは出来ます?」

 

鳴上「お望みであれば」

 

明石「え、ちょっと待って、出来るんだ、出来ちゃうんだ、ま、待って待って!」

 

大淀「ちょ、ちょっと、心の準備を……」

 

>待ちます、いくらでも

 自分の為ですから……

 

―――

 

鳴上「じゃあ……」

 

鳴上「――ペルソナ!」バリィン!

 

シュウウゥゥゥ……

 

イザナギ「……」

 

間宮「あらあら……」

 

大淀「これが……?」

 

明石「ほ、ほんとに何か出た……」

 

吹雪「このイザナギ……さん? と鳴上さんのおかげで私は助かったんです」

 

吹雪「で、でもこれがどういう原理なのか分からないです」

 

鳴上「げ、原理か……」(困り顔)

 

>なんと言えばいいだろうか……

 ……そもそも言葉に迷っている時点で、どう伝えても駄目なのでは……?

 

>……!

 そうだ、話は逸れてしまうがこれもあった!

 

鳴上「この眼鏡をかけて外を見てください」スッ

 

大淀「め、眼鏡ですか?」

 

>そう、眼鏡

 今日自然とこの眼鏡を使用し、効果が分かった

 恐らく過去にも、この眼鏡を使って霧の中でシャドウと戦っていたはずだ

 

大淀「……! 霧が……!」スチャ

 

間宮「霧? 霧ならまだ出ていますよ?」

 

大淀「いえ……、この眼鏡をかけてください」

 

間宮「なんですか大淀さんまで、……あっ!」スチャ

 

間宮「き、霧が晴れて見えます! すごい……!」

 

明石「な、なんですとー!?」

 

―――

 

吹雪「うー……」

 

>吹雪を含め納得出来ないという顔をしている

 そっとしておこう……

 

大淀「……現状では、鳴上さんの言うことは鵜呑みには出来ません」

 

大淀「出来ませんが、その……」

 

イザナギ「……」

 

大淀「……出来れば戻して頂けますか?」

 

鳴上「仰せのままに」シュウゥ

 

大淀「えー……状況が状況な中で、有力な情報と戦力?が舞い込んだ」

 

大淀「今私はこの状況をそう判断しました。そうしました」プシュー

 

明石「パンク寸前……」

 

大淀「なので現状の鎮守府の指揮を鳴上さん、あなたに頼もうと思います」

 

吹雪「……え?」

 

間宮「……んん?」

 

鳴上「……は?」

 

明石「……あれー? もしかしてもうパンクした後だったかなー?」

 

大淀「鳴上悠、現時刻を以て貴方を『八十神鎮守府の提督』として迎えます」

 

吹雪「いやいやいや!? 大淀さん!?」

 

明石「大丈夫? 修理する?」

 

間宮「高速修復材はどこに置いたかしら……」

 

>落ち着け

 

大淀「私は本気です、あと正気です」

 

>落ち着いてた……

 

大淀「鳴上さんの言動から察するに、シャドウとの交戦方法を心得ている。そうですよね?」

 

鳴上「まぁ……」

 

>確かに自分が言った通りならそうなる

 だがそれだけで……?

 

大淀「いいえ、『それほど』なのです」

 

大淀「私達は現在指揮官がいない状況です。その上得体の知れない敵が味方を攻撃しています」

 

大淀「その敵は海の上だけでなく、鎮守府……、つまり陸上のものに攻撃した個体もいた。そういう報告があったのです……」

 

大淀「そんな状況でも、艦娘は『指揮官がいなければ動けません』。常に受けの体制になってしまいます」

 

大淀「加えて艦娘という存在は、指揮官がいない状態では、性能が100分の1になるとまで言われています」

 

大淀「実際はそこまでではありませんが……、確かに力を十分に発揮出来ないのは事実なのです」

 

鳴上「そこで俺が現れた」

 

大淀「はい、都合が良すぎる、曖昧すぎる展開、ですが……」

 

大淀「……私達は藁にも縋り、現状を打破しなければいけないのです。どうかご理解ください」

 

鳴上「……」

 

吹雪「わ、私は反対です!」

 

吹雪「今日起きたばかりで明らかに学生さんの一般人、しかも記憶喪失なんですよ!?」

 

大淀「彼は提督としての資質を持ち得ています。吹雪さんも確認済みですね?」

 

吹雪「そ、それは……」

 

大淀「提督の資質を持っている方は、そう多くは居ません」

 

間宮「だとしても、無茶が過ぎるんじゃないかしら?」

 

明石「そうですよ! 無茶も無茶だって!」

 

大淀「……鳴上さんは?」

 

鳴上「俺……、俺は……」

 

>以前にもこんなことがあった気がする

 ……最初こそ簡単に決まってしまったが、後にその役目が重要で、重くなっていった

 そんな記憶があった気がする

 

鳴上「――俺でよければ、……皆が力を貸してくれるのなら」

 

明石「案外乗り気!?」

 

間宮「……本気ですか?」

 

鳴上「はい、本気です」

 

吹雪「考え直してください鳴上さん!」

 

鳴上「吹雪」

 

>今回の条件は確かにおかしい

 ――だがなぜだろう、断ったら、何もかもがそこで終わる気がするのだ

 

>別に責任を感じているわけじゃない

 己惚れているわけでもない

 ただ、大淀からの思いに応えたい

 

>ただそれだけで今の自分は動いている

 

鳴上「任せろ」ニッ

 

吹雪「……」

 

鳴上「……」(凝視)

 

吹雪「……、うー……」

 

大淀「……決まりですね」

 

大淀「では『鳴上提督』、私達は可能な限り提督のサポートを」

 

大淀「加えて現時刻から、新たな深海棲艦を八十神鎮守府では『シャドウ』と呼称します」

 

大淀「先ほどの連絡から、現在はシャドウの動きも減少しているとのことです。……今日は明日に備えて休息を」

 

鳴上「……分かった」

 

>正直提督と呼ぶのは止めて欲しいが……

 とにかく大淀に言われたように、明日から『提督』としての生活が始まる

 いつ終わるのかも分からない、記憶も戻らないままだが……

 

>自分が出来ることを一つ一つこなしていこう

 そのために今日はもう休んだほうが良いだろう……




予約投稿にしてみました。上手く出来てるといいですが……
そして今回の投稿で、書き溜めの半分程になりました
もうそろそろ更新ペースが落ちるやもしれません、ご了承いただければと思います

もっと砂糖吐くような展開を書きたいですが、まだ先になりそうですね……


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八十神鎮守府

pipipi!…… pipipi!……

 

鳴上「ん……」ムクリ

 

>知らない天井だ……

 という冗談はさておき、今日から新しい一日が始まる

 気を引き締めよう……!

 

>身だしなみを整えた後、自分の部屋を後にした……

 

―――

 

吹雪「あ、おはようございます!」

 

鳴上「おはよう、吹雪」

 

吹雪「今日から私が秘書艦として、司令官をサポートしますね!」

 

>……?

 妙なニュアンスだ。秘書艦?

 

吹雪「はい! 一応艦娘の一人が、提督の補佐を行うことになってるんです」

 

鳴上「じゃあ吹雪は、もしかして……」

 

吹雪「はい! 今は自由に動ける艦娘が私しかいないので、新しい方が来るまでは私が担当秘書艦です」

 

鳴上「」

 

吹雪「あ、あの……、もしかして嫌でしたか……?」オズオズ

 

>そういうことではない

 吹雪が艦娘だったことに驚いているのであって……

 

鳴上「ま、まずは勉強からだな……」

 

吹雪「あ、その……、な、鳴上さん!」

 

鳴上「ん?」

 

吹雪「き、昨日は助けていただいて、ありがとうございました!」(お辞儀)

 

吹雪「えっと、よくわからないことが起きて気が動転して、お礼を言うのを忘れてしまって……、その……」

 

鳴上「……助けるのは当然、だろ?」

 

吹雪「……!」

 

鳴上「今日から俺も頑張るから、一緒に頑張ろう」

 

吹雪「はい! 司令官!」

 

―――

 

吹雪「事務などは私もサポートが必要そうなので……、まずは鎮守府の施設を覚えていきましょうか」

 

吹雪「ではまず、私達が今いるのが執務室です。奥の扉は司令官の個室になってますね」

 

吹雪「基本的には司令官はここに籠りきりになると思います」

 

鳴上「えっ」

 

吹雪「移動しながら説明しますのでついてきてください」

 

>しかもスルー……!

 

―――

 

吹雪「各艦娘もこの建物の個室で、何も指令がない場合は待機しています。……現在は全員別々の場所にいますけど」

 

吹雪「吹雪です! 大淀さん、入っても大丈夫ですか?」

 

大丈夫ですよ、どうぞ

 

吹雪「ここが通信室です」ガチャ

 

大淀「提督、おはようございます。今日から頑張ってくださいね?」ニコ

 

鳴上「善処します」

 

大淀「ここでは主に他所からの通信を受信、此方の情報の発信を行っています」

 

大淀「といっても、昨日は情報が多すぎて、私たちが行いましたけどね」ハハ……

 

通信妖精s「あなたがあたらしいてーとくさんです?」フヨフヨ

 

鳴上「」

 

大淀「基本的に24時間、通信妖精さんが交代制で管理していますので、あまり来ることはないかと」

 

通信妖精s「ぶらっくー」

 

大淀「ブラックではないですよ!?」

 

>そっとしておこう……

 

吹雪「で、では次に行きましょう」

 

―――

 

間宮「ようこそ! お食事処間宮へ!」

 

吹雪「ということでここは、間宮さんが担当する『食事処 間宮』です」

 

給糧妖精s「わたしたちもいますですー」

 

間宮「ええ、妖精さん達もここで私のお手伝いをしてもらってます」

 

吹雪「……司令官? 大丈夫ですか? なんか上の空ですけど」

 

>……自分がおかしいのだろうか

 やっぱり記憶が……

 

鳴上「……なんでもない」

 

間宮「鳴上さんもいつでも来てくださいね?」

 

給糧妖精s「きてくだしあー」

 

鳴上「はい」(上の空)

 

―――

 

工廠妖精s「きょーからおしごとです?」

 

工廠妖精s「じゃあいままでは?」

 

工廠妖精s「おちんぎんないです」

 

鳴上「」フラッ

 

吹雪「し、司令官!? 大丈夫ですか!?」

 

>大丈夫大丈夫、多分忘れているだけでこういうことは当たり前なんだ

 目眩がするのも気のせいなんだ……

 

明石「来ましたね、ようこそ明石の万事屋へ!」

 

明石「艦の建造・改修・兵装更新! 他にも必要なものがあれば色々受け付けますよー!」

 

吹雪「工廠は私達艦娘にとって生命線でもあります。此処での作業は必ず覚えていてくださいね?」

 

鳴上「わかった」

 

工廠妖精s「あたらしいてーとくさんー」ペタ

 

工廠妖精s「ダテオトコさんです?」ピト

 

工廠妖精s「おしごといらいくだしあー」ピタッ

 

鳴上「ウーン……、ウーン……」

 

吹雪「だ、大丈夫ですか……?」

 

>もう、どうでもいい……

 そっとしてくれ……

 

明石「そうだ、折角ですし戦力増強していきませんか?」

 

鳴上「……というと?」

 

明石「先ほど述べた通りですよ、お勧めとしてはやはり建造ですね~」

 

明石「現在の戦力は実質吹雪さんだけですし……、私も艤装があれば……」

 

明石「や、やっぱ無理! 艤装あっても無理です!」

 

鳴上「落ち着け」

 

明石「あ……、そ、そうですね」

 

明石「とりあえず現八十神鎮守府の艦娘は四名ですけど、連動する艤装のシステムが存在するのが吹雪さんだけです」

 

明石「まずは他にも戦力として、艦娘システムを持った方を増やすのが吉かと」

 

鳴上「……なるほど」

 

>今の戦力は吹雪のみ、それではさすがに吹雪への負担が掛かり過ぎる

 というかさらっとスゴイことを言われた気がするが……?

 

鳴上「一つ聞きたいんですけど」

 

明石「なんですか?」

 

鳴上「明石さん、艦娘なんですか?」

 

明石「えっ」

 

吹雪「えっ」

 

鳴上「……えっ?」

 

明石「あ、あー……、基本的に鎮守府にいる女性は艦娘じゃない方が珍しいです、ね?」

 

鳴上「」

 

吹雪「……」(分かってると思って説明省いた人)

 

鳴上「じゃ、じゃあ建造、お願いします」

 

明石「は、はーい! 資源はどれほど……と、まずはこれも説明ですね」

 

工廠妖精s「じゃあせつめいしますです」

 

工廠妖精s「よっつのしげんと、きちょうなしざいをつかいます」

 

工廠妖精s「しげんのりょうで、しゅるいをしぼりますです」

 

工廠妖精s「かんしゅもせつめいします?」

 

吹雪「それは後で私が説明します」

 

工廠妖精s「てまがはぶけたー」

 

鳴上「資源はどのくらいあるんだ?」

 

工廠妖精s「……えーと」

 

工廠妖精s「……すずめのなみだ?」

 

工廠妖精s「ないにひとしい」

 

工廠妖精s「ごくひんせいかつ」

 

>独特な口調から生々しい現実が突き付けられた……

 

鳴上「少ない量でも建造は……」

 

工廠妖精s「えー」

 

工廠妖精s「どうせならぱーっと」

 

明石「こ、こらこら……」

 

吹雪「確かに資源に余裕はないですけど、最小量資源の建造なら大丈夫ですよ」

 

吹雪「……多分」

 

>不安が募る……

 

鳴上「じゃあそれで」

 

明石「了解です! それでは時間が経ってからまた来てください。一応連絡もしますので」

 

工廠妖精s「はつしごとー」

 

工廠妖精s「いまからでんせつがはじまるー」

 

工廠妖精s「しょくにんのあさははやい」

 

鳴上「……」

 

>摩訶不思議だ……




今見たら説明ばっかりじゃ……



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※高校生です

彼は高校生だという事を念頭にご覧ください


吹雪「では、今からは建造が終了するまではココ、執務室で座学です」

 

鳴上「お手柔らかにお願いします」

 

吹雪「出来るだけ解り易くなるよう私も努めます」

 

吹雪「座学内容は私達艦娘についてです」

 

吹雪「昨日も話しましたけど、今日は更に掘り下げていきますよ」

 

吹雪「艦娘システムは深海棲艦に対抗するべく開発され、現在では性能こそ深海棲艦と互角となったと言われています」

 

吹雪「戦闘力は基盤とされる軍艦の能力アップさせ、さらに小型化に成功しているため場所を取らず、メンテナンスも簡単に」

 

鳴上「すごいな」

 

吹雪「はい、ですが話した通り男性が装備することが出来ない上、女性だとしても誰でもシステムが同期するわけでは無いんです」

 

鳴上「つまり吹雪は、艦娘システムに同期した女性なんだな」

 

吹雪「そーです!」フンス

 

吹雪「……ゴホン、艦娘のユニットですけど、機関部と主機が基本となってます」

 

吹雪「基本兵装として主砲と副砲、機銃や魚雷などがありますね」

 

鳴上「……」カキカキ

 

吹雪「この基本兵装も艦種によって異なりますが……、では司令官!」

 

鳴上「はい!」(起立)

 

吹雪「なんでも良いので、軍艦の艦種を答えてみてください」

 

>軍艦の艦種……

 戦艦や潜水艦、が一般的に知られた軍艦だろうか

 

吹雪「はい、正解です!」

 

吹雪「軍艦の代表格である戦艦や、現代ではイージス艦……護衛艦ですね。あと日本は今でも、潜水艦などの技術が優れています」

 

吹雪「では先ほどの建造に必要な情報として、大きく分類しますが、各艦種は……」

 

吹雪「戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦・潜水艦になります」

 

鳴上「……」カキカキ

 

吹雪「あくまで大きく区分した上、建造で艦娘システムが応用可能な艦種として挙げたものですから、本当はもっとありますよ?」

 

鳴上「わかった」

 

―――

 

――連絡、明石です

建造が終了したので、工廠まで来てくださーい

 

吹雪「――ではキリもいいので今日はこのあたりで、続きは次の機会に」

 

鳴上「ふー」(突っ伏し)

 

吹雪「司令官、だらしないですよ?」

 

※高校生です

 

―――

 

鳴上「……」

 

夕立「んー……?」

 

夕立「提督さん……の、息子さんっぽい?」

 

鳴上「いや、俺が提督」(自身を指差し)

 

夕立「なにそれー、冗談キツイっぽい」ニコニコ

 

夕立「……え? ホントっぽい?」

 

吹雪「本当です」コクコク

 

明石「我らが提督です」

 

鳴上「よろしく」

 

夕立「ぽ、ぽいいぃぃ~!?」

 

―――

 

夕立「あ~、む」モグモゴ

 

夕立「ん~! 美味ひい~!」

 

鳴上「……」モグモグ

 

>美味だ……

 

間宮「お口に合ってよかったわ、お昼時だしそろそろ来ると思ってたの」

 

夕立「むぐ、……む?」

 

鳴上「……」(凝視)

 

夕立「な、なにかご用っぽい?」

 

夕立「もしかしてさっき息子さんって言ったの、気にしてるっぽい……?」

 

鳴上「いや、それは別に……」

 

>艦娘の平均年齢はどのくらいなのだろうか

 吹雪や夕立のような年齢の女性が多いのか……?

 

鳴上「これから、頑張ろうな……」

 

夕立「ぽい?」キョトン

 

吹雪「でもこれで、戦力増強は出来ましたね!」

 

夕立「夕立がいれば百人力っぽい!」

 

鳴上「頼りにしてるよ」

 

間宮「では、今日はあと何をする予定なんですか?」

 

吹雪「あとは事務処理を少しと……、えー……」

 

間宮「一応、備品のチェックもした方がいいんじゃない?」

 

吹雪「そうですね、じゃあ出撃ドッグも見てもらって……」

 

アーダコーダ

ソレモソーダ

 

>話し合いが始まってしまった……

 

夕立「あぶれたっぽい……」

 

鳴上「だな……」

 

>窓の景色を見ると海にはまだ霧が掛かっている

 海の霧は晴れることはないのだろうか……?

 

夕立「霧、濃いっぽい」

 

夕立「出撃する時、ちょっと面倒っぽい……」

 

鳴上「確か艤装を使うんだっけ?」

 

夕立「うん! 艤装を使って、海を走るっぽい!」

 

鳴上「……うん?」

 

夕立「だから海を……、んー……滑る? こう、スイー! バシュー! って……」

 

>船の話……、だと思うが

 どうも自分のイメージとは少し違うようだ

 

夕立「実際に見た方が早いっぽい、出撃ドッグに行くとき見せてあげる!」

 

>不安だ……

 

吹雪「――ありがとうございます間宮さん。とりあえずこのスケジュールでやってみます」

 

間宮「ええ、立派な提督になって頂かないといけませんものね?」

 

鳴上「精進します」

 

吹雪「では食事の後は、他の回っていない細かな施設を先に見に行きましょう」

 

夕立「夕立もー!」

 

―――

 

吹雪「ここが入渠ドッグになります。医務室の近くにありますが、ここを使用するのは基本艦娘です」

 

夕立「私達艦娘用の、医療用のお風呂っぽい」

 

鳴上「なるほど」

 

>女、と書かれた暖簾が掛けられている

 無論、隣には男の暖簾はなかった

 

吹雪「あと、ここに運ばれる『高速修復材』、通称『バケツ』なんですけど、あくまで艦娘用のものなので、司令官はむやみに触ったりしないようにと……」

 

鳴上「分かった」

 

―――

 

吹雪「ここが出撃ドッグです」

 

夕立「私達艦娘が海に出るときに使うっぽい! 周りには艤装やその備品が保管されてるっぽい」

 

鳴上「これが……」

 

>確かに吹雪が言っていたように、小型化された砲塔や魚雷などが厳重に保管されている

 中には身の丈に合わないだろうほどの大きさの武器もある

 

吹雪「……っと、よし」ガチャン

 

鳴上「な、何を着けてるんだ?」

 

吹雪「え、だってこれを着けないと」

 

鳴上「何ゆえ?」

 

吹雪「では少しだけ待っててください、艤装の点検としてそのドッグの目の前を少し周るので」

 

夕立「見て見て! ほら、浮いてるっぽい!」ピョンピョン

 

鳴上「……!」

 

>た、確かに海に浮いて滑っている……

 一体どういう原理なんだ……

 

>……というか

 海の上を地面のように跳ねるとはこれいかに……

 

>小型化とは聞いていたが、まさかここまでとは……

 

夕立「それじゃ行って来るっぽい―!」バシュー

 

>そっとしておこう……

 

―――

 

鳴上「ここは?」

 

吹雪「共用の娯楽部屋です。ソファとかお茶請け等もあるので、休憩するならうってつけですね」

 

夕立「すごーい、おっきいテレビっぽいー!」

 

吹雪「一応ゲーム機なんかもあるんですよね。置いていても良いんでしょうか……?」

 

鳴上「テレビ……、ッ……!」

 

>急に頭に痛みが……

 

>テレビ……、なんだろう

 テレビを見ていると何か引っかかる……

 

吹雪「大丈夫ですか!?」

 

鳴上「あ、ああ……、大丈夫……」

 

夕立「提督さん、具合悪いっぽい?」

 

鳴上「平気だ、もう何ともないよ」

 

吹雪「何度も言うようですけど、無理しちゃダメですからね?」

 

吹雪「何かあれば言ってくださいね?」

 

鳴上「……わかった」

 

夕立「提督さんは病気か何かなの?」

 

>そういえば夕立には自分の事を話していなかった

 夕立にも自分の事を話しておくべきだろう

 

鳴上「早速ここで休憩にしないか?」

 

吹雪「そうですね、じゃあ私お茶入れてきます」トテテ

 

―――

 

夕立「ぽいー……」プシュー

 

吹雪「パンク寸前ですね……」

 

>無理もないだろう……

 この鎮守府にきて早々、自分の事を含めたこの情報量だ

 

夕立「えーっと、提督さんは記憶喪失の高校生で、大淀さんから提督に任命されて……」

 

鳴上「シャドウとの闘いを想定して、俺を指揮官としてここに置いてくれたんだ」

 

夕立「そのシャドウがよくわからないっぽい。夕立見たことないから……」

 

夕立「霧とシャドウは、何か関係があるっぽい?」

 

>霧とシャドウの関係性については、まだわからない……

 

吹雪「この不気味な霧、何時になれば晴れるんでしょうか」

 

夕立「天気予報を見ればわかるっぽい」ピッ

 

……突如として発生した濃霧ですが、明日からは天候も回復するでしょう

ですが現在も濃霧は発生しており、こちらの該当地区に住む方々は十分に注意を

では明日の各地の気温ですが……

 

夕立「原因、わからないっぽい」

 

吹雪「でも明日から晴れるって言ってましたね。よかったぁ」ホッ

 

鳴上「何かあるのか?」

 

吹雪「何かあるってわけじゃないんですけど、やっぱり艦娘は海へ出撃するものですから」

 

夕立「視界が悪いと色々良くないっぽい」

 

>確かにあの状況では海に出た途端、周りが分からなくなる

 海に出て行動する場合死活問題になるだろう……

 

吹雪「明日から出撃や遠征等、私たちが海に出て行う行動の説明をしますね」

 

夕立「明日から出撃できるっぽい? やったー!」

 

吹雪「よ、喜ぶ事でもないと思うんだけど……」

 

吹雪「えっと、じゃあ休憩もそこそこにして、また鎮守府の施設を説明した後、座学と執務を……」

 

>まだそんなに……

 

>提督業とは、なかなかハードなんだな……

 

>……

 

>鎮守府の残り細かな施設の説明を受けた……




ぽいぬ参戦!
スレッドでは大人気でしたね、フラグも一番に立ちました

補足ですが、登場する艦娘は安価で参戦した子は確定で出す予定です


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大淀の判断は

区切りの良い所で切ってるだけで、本当は1日目2日目とかで分けたかったんですよね
まぁ書き溜めが無かったので、出来なかったんですけども


吹雪「えー続けて座学の時間です、が……」

 

吹雪「夕立ちゃんも受けるの?」

 

夕立「うん、勉強する!」

 

>学友が増えることはいいことだ

 

吹雪「わ、わかりました」

 

吹雪「では午後からは私達の敵である深海棲艦についてです」

 

吹雪「深海棲艦は突如海上に現れ、海とその上空を侵攻していきます」

 

吹雪「その勢いは衰えることを知らず、今では海域をほぼ制圧下に置いている……といっても過言ではないでしょう」

 

吹雪「見た目の特徴としては黒と白の色合いと、あちらにも艦種がある……と思われます」

 

吹雪「また人型を模している深海棲艦ほど、より強い能力を持っています」

 

吹雪「私は見たことはありませんが、只ならぬオーラを纏った深海棲艦も存在するようです…」

 

鳴上「オーラ?」

 

吹雪「えーっと、……おそらく深海棲艦の中でも、より上位の存在だと推測されます」ピラピラ

 

吹雪「では司令官、復習問題です」

 

吹雪「我々が使用する艦娘システムですが、使用者の特徴を挙げてください」

 

鳴上「……たしか、女性しかいない?」

 

吹雪「正解です! 司令官には簡単でしたか?」

 

吹雪「艦娘システムには、女性しか適合者がいません」

 

吹雪「その原因は、金型として使用された深海棲艦の技術が一因なのでは? と考える方もいるそうです」

 

吹雪「深海棲艦も、男性の姿は今まで確認されていません」

 

吹雪「……とまぁ、分かっているのはここまでですね」

 

吹雪「以上、まだ謎の多い存在の深海棲艦の情報でした!」

 

>おつかれさまでした……

 

>……そういえば?

 

鳴上「夕立?」

 

夕立「ぽひー……」スピー

 

吹雪「最初の辺りから、既に首がカクンカクンしてましたよ?」

 

>なるほど……

 

―――

 

鳴上「……」カキカキ

 

大淀「……」ピラピラ

 

吹雪「……」ウーンウーン

 

>……

 

>皆、真剣に書類と向き合っている

 

>どうやら、明日から提督が着任したという事で、任務が次々と発令されるらしい

 

鳴上「……ふぅ」

 

大淀「どうです? 書類整理は学業とは違いますか?」フフッ

 

鳴上「特に平気……ですね」

 

大淀「あ、あれっ、思った以上に余裕がありそうですね」

 

鳴上「いえ、大淀さんが目を通した後ですし、判断が難しいものは吹雪がやってますから」

 

大淀「そうですけど……」

 

大淀「……いえ、そう言って頂けると此方としても嬉しいですね。有難う御座います」

 

>お礼を言うのはこちらの方だ

 

大淀「あと、私の事も大淀で構いません」

 

大淀「口調も自然になさってください。私は立場と性格上こんな感じですけど……」

 

大淀「これから会う艦娘の皆さんも、恐らく自然に振舞われた方が好印象に映るかと」

 

>そういう事であれば、自然体でいることにしよう……

 

鳴上「ありがとう、大淀」

 

大淀「はい、何時でも頼ってくださいね」メガネクイッ

 

吹雪「大淀さぁん……、これはどうしましょう……」ゲンナリ

 

大淀「見せてください。えっと、これはですね……」

 

>夜の事務作業はまだまだ続きそうだ……

 

―――

 

元帥『――して、八十神鎮守府の指揮を執っているのは』

 

大淀「はい、鳴上悠、という方です」

 

元帥『私が気にしているのは名前などではないよ』

 

元帥『確か彼の事を高校生だと、そう言ったね?』

 

元帥『おまけに記憶が曖昧だというじゃないか。そんな彼を、何故?』

 

大淀「……新型の敵艦が各鎮守府を襲撃したという報告は」

 

元帥『聞いている、その報告は耳にタコが出来るくらい聞いているとも』

 

元帥『君たちの鎮守府には大きな影響はなかったそうだね。正直安心したよ』

 

大淀「その襲撃に、……彼と八十神鎮守府所属の吹雪さんが、その場にいたんです」

 

元帥『何? 大淀、君は鎮守府に被害は無かったと……』

 

大淀「はい、彼が撃退したからです」

 

元帥『となると、吹雪の指示を鳴上悠くんが咄嗟に行ったと?』

 

大淀「いえ元帥、鳴上さんが敵の迎撃に当たったのです」

 

元帥『馬鹿な! 生身の人間が深海棲艦と戦い、勝ったと!?』

 

大淀「先ほど申し上げた通り、私は撃退した場に居合わせませんでした」

 

大淀「その後、彼は弁解の為に、敵を退けた力の一端を私達に見せてくれました」

 

大淀「彼には、私達にも分からなかった力があります」

 

元帥『……君は、冗談の言える性格ではなかったね。その力という言葉に引っかかりを覚えるが……』

 

元帥『まぁ、仮にそうだったとしても、到底信じられる話ではないよ』

 

元帥『思い直してほしいというのが実直な考えだが、現在こちらも新型の対策に追われていてね……』

 

大淀「責任は……、私が負います」

 

元帥『何を言うかと思えば……、君一人で責任なんて負えるわけがないだろう? 全く……』

 

元帥『……現在そちらに回せる人材はない。申し訳ないけどね』

 

大淀「重々、承知しております……」

 

元帥『……』ハァ

 

元帥『他でもない君の頼みだから、とりあえず様子を見ておくよ』

 

大淀「元帥……!」

 

元帥『但し! 責任は君たちだけじゃない、我々にも及ぶと考えてほしい』

 

元帥『なにせ高校生を提督にするなんて前代未聞だからね。学徒出陣とは……、全く……』ハァ

 

大淀「はい、深きお心に感謝致します。元帥!」

 

元帥『……くれぐれも、だからね! では連絡終わり』ブツッ

 

大淀「……」ガチャン

 

大淀「……なんでここまでしちゃってるんだろう、私」

 

大淀「悪い気はしないのよね……、うーん」

 

大淀「……いやいや、悪い事ではあるんだけど、うん」

 

大淀「でも鳴上さんに任せると言った時、妙な安心感と納得感があったし……」

 

通信妖精「れんらくおわったか?」

 

大淀「……念のため、明石に診てもらおうかしら」ツンツン

 

通信妖精「わあぁー、つぶれるー」

 

大淀「そこまで強く押してないですよ、もぉ……」




二日目終了です
座学などのパートは、ゲーム版ペルソナ4から授業受けてるイメージで書いてます
そのうちペルソナっぽさも出てくると思いたい……

書き溜めが減ってきたので、改めて投稿ペースが落ちそうという事を報告しておきます
ご了承ください


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どうせならぱーっと……

工廠妖精s「おさえきれぬしょうどう」


pipipi!…… pipipi!……

 

鳴上「うん……?」

 

>朝だ……、正直まだ眠い……

 

>書類整理の後、仕事自体は終わったのだが、どうも気持ちが落ち着かなかった

 

>なので所謂自習というものをしていた

 おかげで昨日教わった部分は、なんとか身に着いた

 

>……多分

 

夕立「提督さーん! おはようっぽいー!」

 

>ドア越しでも少しうるさいくらいだ……

 

>早く身支度を済ませよう……

 

―――

 

吹雪「霧が晴れてよかったね!」

 

夕立「ぽい! これで安心して出撃出来るっぽい!」

 

>外を見れば、確かに霧が晴れている

 

>……だが、なんだろう

 この言い表せない奇妙な感覚は……

 

大淀「……はい、わかりました。こちらでも協力致します。では……」ガチャン

 

大淀「依然、行方不明の艦娘は見つかっていないそうです、各鎮守府へ捜索任務として協力要請が来ています」

 

鳴上「此処にも?」

 

大淀「勿論です。ですが駆逐艦二隻での捜索となると、かなり範囲が限定されますね……」

 

鳴上「何故?」

 

大淀「練度もありますが、単純に人数と戦闘力の問題ですね。昨日の見回りのように近海であれば、ある程度大丈夫だと思います」

 

大淀「ですが深海棲艦は、此処から遠くに行くにつれて警戒網を強めています」

 

大淀「なので当然、遠くへ行けば行くほど、強い敵艦に遭遇するのです」

 

大淀「そしてこちらは遠くに行くために燃料が必要ですし、戦闘があれば弾薬を消費します」

 

大淀「目的地が遠ければ遠いほど、こちらにとって不利になるのです」

 

鳴上「なるほど」

 

>駆逐艦二隻では遠出するのに危険らしい

 となると……

 

鳴上「建造……、かな」ピラ

 

大淀「大本営からの任務ですね。任務を行えばそれに見合った援助も大本営から届きますので、いい手だと思います」

 

夕立「なにかするっぽい?」

 

大淀「ええ、もう一度建造を行います。吹雪さん、お願い出来ますか?」

 

吹雪「勿論です! さぁ司令官、行きましょう!」

 

夕立「夕立もついてくっぽい~」

 

―――

 

明石「鳴上提督! 朝早くにどうしたんです?」

 

>やっぱり提督はこそばゆい

 

明石「あ、ちょっと照れてます? 表情がぎこちないですよ」ニシシ

 

鳴上「建造をしようと思って、あ……」

 

吹雪「?」

 

>そういえば昨日……

 

>鳴上「資源はどのくらいあるんだ?」

 

>工廠妖精s「……えーと」

 

>工廠妖精s「……すずめのなみだ?」

 

>工廠妖精s「ないにひとしい」

 

>工廠妖精s「ごくひんせいかつ」

 

>鳴上「」

 

鳴上「あー……」

 

明石「どうしました?」

 

鳴上「資源に、余裕が……」

 

明石「ああー、昨日も建造したからって、そういう事ですか?」

 

>そういうことです

 

明石「大丈夫ですよ。鎮守府には本当に微々たるものですが、資源の自動生成機能があります」

 

明石「無理に使わない限りは、早々枯渇なんてしませんよ」

 

>自動生成機能! そういうのもあるのか!

 

>ともかく、大淀が言うには戦力がまだ足りないという事だった

 駆逐艦より強力な艦種が必要だろう

 

明石「行方不明の艦娘捜索……ですか。なるほど、確かに今の戦力で行うのは危険かもですね」

 

明石「妖精さん達に、巡洋艦クラスの建造をお願いすると良いんじゃないでしょうか?」

 

鳴上「わかった」

 

工廠妖精s「はなしはきいたぜ」

 

工廠妖精s「つよいかんむす、よわいかんむす、そんなのひとのかって」

 

工廠妖精s「ちからがほしいか」

 

吹雪「相変わらずですね」ニガワライ

 

夕立「妖精さんっていつもこうなの……」

 

>話を聞いていたらしいが

 ……というか、すでに背後が慌ただしいのだが

 もしや、勝手に建造が開始されている……?

 

工廠妖精s「おれにー、まーかーせーとーけー」

 

>すごい妖精だ。

 

明石「さてさて時間は……、え゛っ」

 

明石「こ、これって長門型……?」

 

吹雪「うぇ!? 長門型!?」タタッ

 

鳴上「どうかしたのか?」

 

夕立「ぽい?」

 

明石「せ、戦艦クラスを引き当てました……」

 

鳴上「巡洋艦ではなく?」

 

明石「さ、最低でも五時間は掛かると言われてますね……」

 

>五時間で戦艦が出来るのか……

 

吹雪「建造レシピは……、やっぱり巡洋艦狙いよりも多いですね」

 

明石「と、とにかく戦力としては最高クラスでしゅっ……」アタフタ

 

鳴上「落ち着け」

 

明石「い、いきなり長門型戦艦を引き当てるなんて……、何者ですか……」

 

>鳴上です

 

>とにかく、戦艦の建造にはかなり時間がかかるという事なので、別業務へ移ることとなった

 工廠妖精さん達が吹雪と明石に叱られている……

 

>そっとしておこう……

 

―――

 

>話が長くなりそうだったので、先に執務室へ戻った

 

鳴上「ただいま」

 

夕立「ぽいー!」

 

大淀「お帰りなさい提督、……吹雪さんが見当たりませんけど?」

 

夕立「吹雪ちゃんなら、明石さんと一緒に妖精さんを叱ってるぽい」

 

大淀「叱る? 何かあったのですか?」

 

鳴上「戦艦が建造されるみたいで」

 

大淀「せ、戦艦ですか!?」

 

鳴上「は、はい」

 

>戦艦というだけで皆驚くのはなぜなのか?

 戦力としては最高クラスらしいが……

 

夕立「長門型って言ってたっぽい、大当たりっぽいよ提督さん!」

 

鳴上「そうなのか?」

 

大淀「な、ナガトガタ……?」フラッ

 

鳴上「お、おい!」ガシッ

 

>危うく、大淀が倒れてしまうところだった

 

大淀「す、すいません……」

 

大淀「しかし、随分羽振りよく資源を使用したみたいですね」

 

>自分がしたわけではないのだが

 だがこの場合、監督不届きとして自分が責任を負うのか……

 

>提督になって、早々に躓いてしまったようだ……

 

夕立「妖精さんが勝手にレシピを変えちゃったっぽい」

 

大淀「妖精さんが? ……ふーむ」

 

>何やら考え込んでしまったようだ

 それならこちらでやるべきことを進めよう

 

鳴上「夕立、手伝ってくれるか?」

 

夕立「勿論! あ、でもあんまり難しいのはわかんないっぽい……」

 

鳴上「大丈夫だよ、一緒に考えよう」

 

>今回のプランは、あくまで捜索を兼ねた鎮守府近海の警戒警備になる

 戦力を補強出来たので近海なら問題ないだろう

 

夕立「海図にも、別に危険なポイントは書いてないっぽい」

 

鳴上「どのあたりまで捜索する?」

 

夕立「小島とか、陸地があるならそこを優先して捜索して~」

 

夕立「……あ、えっとね? 陸地なら深海棲艦も基本的には追ってこないから、隠れて救助を待つなら一番の手段ぽい」

 

>深海棲艦というのだから、海からやってくるのだろう

 つまりは陸地への危害は加え辛い為、逃げるなら小島等の陸地がうってつけという事か

 

夕立「えっとー、んー……、遠くてもこの辺りまでが限界っぽい」

 

夕立「後は妖精さんと、羅針盤が向く方向に~っぽい!」

 

>羅針盤が向く、とは

 風の向くままという言葉は聞いたことがあるが

 

>ちら、と時計を横目に見てみるが……

 

鳴上「建造にはまだ時間は掛かりそうだな……」

 

夕立「早く出撃したいっぽい……」ムー

 

―――

 

大淀「先ほどは失礼しました、提督」

 

鳴上「考え事の方は大丈夫か?」

 

大淀「……また後で考えることにしました。……コホン」

 

大淀「今回の建造の件もあり、吹雪さんにはそのまま工廠で明石と別の事に当たってもらっています」

 

大淀「なので、今回の座学は不肖ながら、この大淀が受け持たせて頂きます」

 

鳴上「宜しくお願いします」

 

大淀「そうですね……、今回の授業はどうしましょうか」ピラピラ

 

鳴上「先生」

 

大淀「はい、大淀です。なんでしょうか提督」

 

>戦艦を建造した時の、皆の驚き様が気になったことを伝えた

 

大淀「なるほど、では今回の題材は建造にしましょう。と言っても私達に分かっている範疇での説明になりますが……」

 

大淀「まず私達艦娘は、艦娘システムを使用できる女性だという事は学ばれましたよね」

 

大淀「建造はその艦娘の艤装、そして艦の魂を呼び戻すこと……」

 

大淀「とどのつまり、戦闘可能な艦娘をサルベージする工程の事を指します」

 

鳴上「魂を、呼び戻す……」

 

大淀「はい、建造の説明は受けられましたよね? 資源を調整して、望んだ艦種の艦娘をサルベージする準備をする」

 

大淀「後は妖精さん達が働いてくれますので、現在のようにただ待つだけになります」

 

鳴上「なるほど」

 

大淀「提督は艦種がどれだけ存在するかご存知でしょうか?」

 

>吹雪の説明では大まかに、戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦・潜水艦が存在すると教えてもらった

 

大淀「そうです。中でも現在建造中の戦艦クラスになれば、戦闘に関してトップクラスの性能を備えています」

 

>そうなれば、近海の捜索も可能だろう

 これで一安心だ

 

大淀「反面、行動に消費する資源の量がとても多いので、繰り返し行うような行動……遠征や哨戒にはあまり向きませんね」

 

>駄目じゃないか……

 

大淀「先ほど吹雪さんに大まかな資源状況の確認と、私達艦娘が扱う装備の点検をして欲しいと伝えました」

 

大淀「建造後すぐに任務行動に移れるか、こちらで備蓄の計算などしておきますね」

 

鳴上「お願いします……」

 

大淀「ちなみにですが、戦艦と空母は戦力的に強力な反面、入手難度が非常に高いんです」

 

大淀「二回目の建造で戦艦を引き当てるなんて、凄い事なんですよ?」

 

>そうだったのか……

 喜ばしい反面、この状況なので素直に喜べないが……

 

大淀「簡単な説明になってしまいましたが、今回はここまでにさせて頂きます」

 

大淀「分からない部分があれば、遠慮なく仰ってくださいね?」

 

>ありがとうございました……

 




投稿してから一週間が過ぎましたね
稚拙な文章ですが、読んでくださっている方に感謝……!



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不信

今回キャラの心情部分を、地の文で入れています
『>』も付けていません。これを着けるのは番長だけです


>長い建造時間が終わりに近づき、連絡が届いたので工廠まで訪れた

 

明石「来ましたね、お待ちしてました」

 

工廠妖精s「こっちでまっときんしゃい」

 

工廠妖精s「ゆっくりしていってね」

 

>湯呑でお茶を飲んでいるようだ

 

明石「落ち着いちゃってまぁ……、こっちは緊張でドキドキなのに」

 

工廠妖精s「のむか?」

 

>妖精さんサイズは小さすぎて飲めない

 ……あ、茶柱が立ってる

 

工廠妖精s「いいおちゃですねぇ」

 

工廠妖精s「おまんじゅもありますよ」

 

工廠妖精s「おしごとたいへんでしたねぇ」

 

明石「あのお饅頭、私が取っといた奴じゃ……」

 

>それは、お気の毒に……

 

>……?

 

鳴上「……明石」

 

明石「はい?」

 

鳴上「妖精さん、増えてないか?」

 

明石「あー……、よくあることなんで気にしないでください」

 

>よくある!?

 

明石「彼女?達の事はあまり深く考えない方がいいです……」

 

>妖精さんは深淵か何かなのか……

 

???「随分妖精さんの数が多いな」

 

吹雪「今朝方から、また居ついちゃったみたいで……」

 

???「良いじゃないか、妖精さんは居心地の良い場所に移り住むと聞くし……、む?」

 

???「工作艦明石とお見受けしたが、其方は?」

 

明石「……大きな艤装ですね~」ボソッ

 

>吹雪と夕立が身に着けていた艤装よりも、大きな砲塔が取り付けられている

 主兵装だけで自身の背丈ほどありそうだ……

 

明石「お見受けされた通り、私が工作艦の明石です! ……で、こちらが」

 

鳴上「今現在この鎮守府で提督をしている、鳴上悠です」

 

>自己紹介と共に握手の為、手を前に出した

 ……だが、目の前の彼女は怪訝な視線を送ってくる

 

長門「……戦艦、長門だ」

 

長門「聞き間違いだろうか、貴殿が提督と、そう言ったのか?」

 

>頷き、視線を返す

 すると渋々ながら、握手には応じてくれた

 

長門「……、鎮守府の内情把握をしたいのだが、それに精通した者は?」

 

吹雪「秘書艦は私です。一番詳しいとなると大淀さんですけど……」

 

鳴上「大淀なら、後で備蓄の確認に此処へ来るらしい」

 

長門「なら、私もここに残ろう」

 

長門「聞きたいことが幾つか出来たのでな、……構わないか?」

 

明石「え、えぇ、私は大丈夫ですけど……」

 

>……明らかに不審がられている

 

>とにかく現在は戦力が足りていないこと

 そして別鎮守府から、艦娘捜索の任務が来ていることを話した

 

長門「なるほど、それでこの長門を……」

 

長門「……いや待て、それならば巡洋艦等の燃費の良い艦で捜索するのが妥当ではないか?」

 

長門「そうでないとしても索敵に長けた、空母や軽空母が狙い目だったのでは……」

 

吹雪「建造依頼をしたのは司令官ですけど、建造依頼を聞かずに妖精さん達が貴方を呼んだんです……」

 

工廠妖精s「ひとりはみんなのため」

 

工廠妖精s「みんなはひとりのため」

 

工廠妖精s「きてくれてぐらしあす」

 

>はは~、と長門を囲んでフヨフヨと浮いている

 それを聞いた後、長門も大淀と同じように暫く考え込んでしまった……

 

―――

 

長門「大淀」

 

大淀「はい?」

 

彼がいなくなった後、入れ替わりで工廠へやってきた大淀に声を掛ける

理由は勿論、彼が本当に提督としての責務を負っているのか、それを確かめる為だ

 

長門「彼の言葉はその、本当なのか?」

 

大淀「疑われるのも無理はないと思います」

 

大淀「……ですが、本当ですよ」

 

長門「……戦況はそこまで悪化しているのか? 見た所学生……、高校生くらいだろう?」

 

大淀「悪化するにしても少し先の話になりそうですが、その為に私が彼を提督に推薦したんです」

 

長門「少し先……?」

 

……違う、違和感の正体はそこじゃない

 

長門「推薦した、と言ったか?」

 

大淀「はい、状況を鑑みて適任だと判断しました」

 

長門「学徒出陣……、分らないわけではあるまい? その意味も、学生たちが辿った最後も……」

 

大淀「……」

 

長門「……彼は若すぎる。学があったとしても、それに伴った結果が出せるとは限らん」

 

長門「そして提督というものは、一朝一夕で成れるほど簡単な職務ではない」

 

大淀「現在鎮守府総出で彼の手助けをしながら、技術と心構えを教えている最中です」

 

長門「だとしてもだ。第一、彼には軍人らしさが感じられない」

 

長門「それに此方は提督に命を預ける身、彼にその責が負えるとは思えん」

 

長門「……信用ならんというわけではない。唯、心配なんだよ」

 

半分は建前だが、もう半分は本音だ。寧ろ本音の部分が大きい。

……提督とは、艦隊指揮を任され、上に立つものとして部下の命全てを背負い、敵を討たなければならない

失敗すれば、最悪の場合全滅し、自分が背負っていたもの全てを失う。その時には、自分自身さえ失うかもしれない。

まだ学生である彼に背負わせるには、あまりにも重すぎるのだ。

 

大淀「分かって、います」

 

大淀「……ですがこの鎮守府の現状から、彼に頼るしかなかったのです」

 

長門「なら、その理由を是非聞かせてほしい」

 

大淀「現状説明から入りますが、長くなりますよ?」

 

長門「元より、それを聞くために此処に残ったんだ。構わないさ」

 

―――

 

間宮「……あら? 貴方が長門さん?」

 

長門「む……、間宮か?」

 

間宮「はい、間宮です。建造されるとは聞いてましたけど、此方に顔を出して頂けるとは」

 

長門「いやまぁ、成り行きでな」

 

大淀「すみません間宮さん、此処へお連れしたのは私なんです」

 

間宮「いえいえ! 構いませんよ、……お昼まだでしたよね?」

 

大淀「そうなんですけど、先に長門さんとお話があるので……」

 

長門「そういう事なんだ、場所を借りるが……」

 

間宮「ではお好きな席へ、お茶出して来ますね」パタパタ

 

大淀「あの、提督達も食事を取られてないので、差し入れをお願いしてもいいでしょうか?」

 

間宮「はーい! じゃあ妖精さん達、お仕事ですよー」

 

給糧妖精s「おいしいしょくじつくります?」

 

給糧妖精s「あれがよろしいかと」

 

給糧妖精s「あれですな」

 

給糧妖精s「「「びふてき、さけ、びふてき、さけ、びふてき……」」」

 

給糧妖精s「かくしあじは?」

 

給糧妖精s「「「まぜてある! うぇいぱあー!」」」

 

間宮「滅茶苦茶じゃないですか!? ちゃんとお仕事してください!」

 

給糧妖精s「びふ……さけ……」

 

長門「……大丈夫なのか?」

 

大淀「あれで平常運転なんです……」(溜息)




妖精さんを見ている時、妖精さんもまた貴方を見ているのだ……


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おやくだち?

夕立「っぽーい!」ガシャアン



明石「此処が武器倉庫なんですけど、ちょっと手が足りてなくて……」

 

>武器倉庫と言われた、文字通り倉庫な建物の中にいるわけだが……

 

吹雪「兵装のチェックを頼まれたので、これでもお手入れはしたんですけど……」

 

夕立「散らかり放題っぽい」

 

鳴上「だな……」

 

>まず、思った以上に物が多い。収納スペースが機能せず、床に転がっている兵装もある

 他にも、錨やらの鎖は絡まって個別に取り出せそうにないし、足の踏み場を探す方が大変かもしれない

 

鳴上「手が足りてないだけで、ここまで酷くはならないのでは……」

 

明石「め、面目ない……」タハハ

 

明石「で、でもでも! 一応私が分かるようには並べてあるんですよ?」

 

吹雪「私達が把握できないと意味ないですよぉ」

 

明石「……ですよね」

 

>ですよねー

 

>とりあえず分かったのは、片付けから入らないと作業自体が困難だという事だ

 ならば……

 

鳴上「片付けと整理からやろうか」

 

夕立「えー……」

 

吹雪「この量を今からですか……」

 

>すごく嫌そうな顔をしている……

 しかし、こればかりは放置していても始まらない

 

>ここはビシッと決めなくては……

 

鳴上「放っておいても、何も解決しないだろ?」

 

鳴上「今やっておけば、今後大変な思いをしなくて済むし、な?」

 

夕立「……でも提督さんも面倒くさそうな顔してたっぽい」ジトー

 

鳴上「え、いや」

 

吹雪「してましたね」ジトー

 

鳴上「……」

 

>面倒くさがってもいいじゃないか、にんげんだもの……

 

夕立「それにぃー……、今から点検までやるなら、出撃出来ないっぽい……」

 

>今から点検作業まで漕ぎ付く場合、出撃中に日が暮れるのは目に見えている

 今回の出撃では練度の問題もあり、夜間の捜索は行わない方針だった

 

>というか既に、今日の出撃自体が難しいのだが……

 

鳴上「とりあえず、大淀からの連絡があるまで足の踏み場くらいは作っておかないか?」

 

吹雪「……まぁ、仕方ないですよね」

 

夕立「ぽい~……」

 

>渋々だが、何とか了承は得られたようだ……

 

鳴上「明石は……」

 

明石「あ、はい……。勿論手伝わせていただきます……」

 

明石「一応なんですけど、私、片付けが出来ないとか、そんなんじゃないですから……」

 

>凄くメンタルに響いていたようだ……

 

―――

 

>片付けを始めてから幾ばくかの時間が経った

 途中で間宮が差し入れを持ってきてくれたおかげで、士気も十分である

 

>そして本来なら、この作業は次の日まで持ち越しだろうと考えていたが、思わぬ助っ人が現れた

 

工廠妖精s「これはどこにおきます?」

 

吹雪「それは夕立ちゃんが今一纏めに仕舞ってるので、持ってってあげてください」

 

工廠妖精s「がってんしょうちのすけ」フヨフヨ

 

>妖精さんって、なんなんだろう……

 

>自身の体よりも大きいものを、何人も集まって運搬している

 

>運搬の際は浮いているお陰で、足場を気にしなくていい

 その為、自分が運ぶより効率よく行動してくれている

 

工廠妖精s「ていとくのあにき」

 

鳴上「……ん? どうしたんだ?」

 

工廠妖精s「……おこってない?」

 

鳴上「……?」

 

>今朝の事だろうか……?

 

鳴上「怒ってないよ、今日も有難うな」ナデナデ

 

工廠妖精s「わあぁー」ゴロゴロ

 

>アーゴクラクー、モットナデナデシテーと喜んでくれたのは良いが、他の妖精さん達も集まりだしてしまった……

 

工廠妖精s「ろうどうにはたいかがひつよう」

 

工廠妖精s「ただではころばぬさきのつえ」

 

工廠妖精s「つまりなでなでしてー」

 

>どういうことだ……

 それにしても数が多い、一体どこに隠れていたのだろうか

 

明石「ほらほら、片付けが終わらないと提督さんも困っちゃいますよー」

 

工廠妖精s「それはこまりんこ」

 

工廠妖精s「ふぁー……ぶるすこ……ふぁー……」

 

>わあぁー、と皆片付けに戻っていった

 

明石「妖精さんがここまで懐いているのは初めて見ました。何かコツでもあるんですか?」

 

鳴上「いや、特には……」

 

>寧ろ懐かれている理由をこっちが知りたいくらいだ

 提督は皆妖精さんに好かれるとか……?

 

明石「提督という役職で、妖精さんが気を許すわけではないですよ。……多分」

 

明石「少なくとも、鳴上提督には特別懐いてると思います」

 

鳴上「そうなのか?」

 

明石「妖精さんを撫でられた方は、あまりいないと思いますよ?」

 

鳴上「そうなのか……」フーム

 

明石「っとと、あんまり話してると今日中に終わりませんね」

 

鳴上「確かに、……あと少しだ、頑張ろう!」

 

>点検作業が終わるまで、残り数時間……

 

>夕立がずっと口を尖らせていた以外は、順調に作業は進んだ……

 

夕立「っぽーい!」ポーイ

 

明石「危ないから投げないで!」アセアセ

 

>順調? に進んだ……

 

―――

 

大淀「……」(唖然)

 

長門「……」(目が点)

 

>……

 

妖精s「われわれおやくだちです?」ピッタリ

 

妖精s「あしたもおやくだちします?」ベッタリ

 

妖精s「なでなですればもっとおやくだちですが?」ガッチリ

 

>どうにかしてくれ……

 

大淀「え、えーっと、妖精さん達? 提督さんが困ってるので……」

 

妖精s「ぶー」

 

妖精s「ぶーぶー」

 

長門「ここまで妖精さんに好かれた提督も居ないだろうな……」

 

大淀「懐かれてますね、提督」

 

>見てないで助けて……

 

>執務室まで移動することが、ここまで困難になるとは……

 妖精さんに体中に引っ付かれて、動きづらい……

 

間宮「大淀さん、妖精さんの姿が見えないんです……が……」

 

間宮「だ、大丈夫ですか!? 提督さん!?」

 

>……

 

>……!

 

>……、……!

 

鳴上「た、助かった……」

 

長門「何故あそこまで妖精さんを引き連れていたんだ? 大変だっただろうに……」

 

鳴上「こっちが知りたい……」

 

大淀「あまり提督さんを困らせては駄目です。分かりましたか?」

 

>ぶー、と妖精さん達は膨れている

 

妖精s「われわれがんばりました」

 

妖精s「なでなでをしょもう」

 

妖精s「なでぽもじさない」

 

大淀「どこでそんな言葉を……」

 

>妖精さん達のお陰で色々助かったのは事実だ

 改めてお礼はしなければと思うが……

 

間宮「……お礼を考えてるなら、お菓子がいいですよ」コソ

 

鳴上「お菓子?」

 

間宮「妖精さんでも食べられる小さめの……」

 

鳴上「……金平糖とか?」

 

間宮「はい、今度お持ちしますので、配るのを手伝って頂けませんか?」

 

>そういうことなら、勿論協力します

 

>妖精さん達にもその事を伝えると、上機嫌で帰っていった……

 

―――

 

鳴上「今日は大変だったな……」

 

大淀「作戦の立案から倉庫整理まで、本当にお疲れさまでした」

 

>仕事ですので……

 

大淀「本来なら倉庫整理は私達で行うものだったんです……、申し訳ありませんでした……」

 

鳴上「妖精さんも手伝ってくれたから、大丈夫」

 

>……で、だ

 恐らく此方が落ち着くまで待っていてくれたであろう、長門の方へ視線を送る

 

長門「うむ、……事情は大淀と間宮から聞いた」

 

長門「まずは非礼を詫びよう。……すまなかった」

 

長門「提督の資質を持った人物は、慢性的に不足しているのは知っていた」

 

長門「此方への人材を割けないという中で、貴方が此処へやってきた事でこの鎮守府が陥落しなかった」

 

長門「……そう考えられる程、今回の襲撃は非常に危険なものだった」

 

長門「吹雪共々、この鎮守府を守ってくれた事、次も守ると意志を固めてくれた事、……感謝している」

 

>……どうやら懸念していた蟠りは、大淀が上手く取り持ってくれたようだ

 ここまで感謝されるとは思っても見なかったが……

 

長門「だが同時に別の疑問がある。貴方の、提督のいう『シャドウ』と『ペルソナ』について知りたい」

 

長門「その、私にもペルソナを見せては貰えないだろうか?」

 

鳴上「勿論」

 

>心を研ぎ澄ませ、自身の力の顕現をイメージする……

 

>だが……

 

鳴上「……?」

 

長門「……どうした提督? 心の準備ならとっくに出来ているが」

 

>で、出ない……!?

 

>ペルソナが……、使えない……!?

 

大淀「あの力が使えないんですか?」

 

長門「……どういうことだ大淀」

 

大淀「私は嘘は伝えていません! 現にシャドウとの交戦記録は、各鎮守府に伝達されているじゃないですか……」

 

長門「新型の深海棲艦だという連絡だったな、……となると」

 

長門「うーむ、……疲労が原因か?」

 

>確かに疲れはしているが、それが原因なのだろうか……

 

鳴上「……分からない」

 

長門「記憶が無い、というのも厄介だな……」

 

長門「……問い詰めたようで悪かった。今日はゆっくりと休んで欲しい」

 

長門「ああそれと、次の捜索任務なんだが……」

 

>そう、未だ問題は残したままである

 捜索任務を始めることが出来ず、「出撃したかったぁ~」と夕立が残念そうにしていた事を思い出す

 

長門「今回、というより当分になるかもしれないが、この長門を運用する事は難しいそうだ」

 

鳴上「そうなのか……」

 

大淀「資源を確認しましたけど、戦艦を恒常的に運用するとなると、資源が枯渇して鎮守府が機能しなくなりそうなんです……」

 

>やはり資源の問題が出てきた

 提督不行き届きで申し訳なく思う……

 

大淀「ですが、今日の建造任務の内容を大本営に送っておきました」

 

大淀「長門型戦艦の建造成功には彼方も驚いていたようで、援助も申し分なく受け取れそうです」

 

鳴上「それは良かった」

 

>ただではころばぬさきのつえ……

 

>いやいや、妖精さんが移ってしまった……

 援助が受けられるなら、今後の行動もしやすくなるだろう

 

大淀「なので、私達からの立案として、提督に意見具申があります。それは……」

 




今更ですが、妖精さんのイメージは某人類が衰退したアレです
完全に寄せてるわけではないので、あくまでイメージ程度
何処からともなく現れ、鎮守府に住まう人々に手助けします


今回で書き溜めを使い切りました。
構想は練れてるので、後は文章に変えるだけなんですが……
なので、毎日投稿が途切れたり途切れなかったりすると思います。


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助力

pipipi!…… pipipi!……

 

>カチャリ、と目覚ましのアラームを止める

 カーテンを開ければ見事な快晴だ

 

鳴上「眩し……」

 

>となれば、今日も今日とて!

 

長門「……提督? もう起きているか?」

 

長門「昨日説明した通り、大本営から援助物資が届いているぞ」

 

>……絶好の、仕事日和か

 

鳴上「……慣れないなぁ」

 

―――

 

明石「おはようございます提督! 今日も早いですねぇ」

 

鳴上「おはよう、明石」

 

明石「ということは……、やっぱり今日も建造ですか?」

 

>こくりと頷き、明石には『資源最低限』で建造を依頼する

 というのも、二日続けて朝早く工廠へ来たことには理由がある

 

>当初の問題として、行方不明の艦娘捜索任務に従事する為に出撃をするのだが、練度も人数も足りていない

 そこで新たに建造を行い、長門という新しい仲間を得ることが出来た。

 

>だが戦艦を運用するには鎮守府の資源が足りず、結局行動が出来ず仕舞い……

 

>ここまでだけを見れば、悪い事ばかりだが……、実はそうでもないのだ

 

明石「いやー! これだけの資源があれば、最低限建造なら問題なく実行できますね!」

 

鳴上「援助をくれた大本営の人達に感謝しないとな」

 

明石「ですね! ……じゃあ妖精さん達に伝えておきますね!」

 

>長門の建造成功報告が受理され、そのおかげで新たに資源を入手することに成功したのだ

 正直対応が此処まで早いとは思ってなかったが……

 

>長門の建造成功は、こうなる程の功績だったようだ

 

>そして今日の行動は、大淀からの意見を参考に行動するつもりだ

 その大淀からの提案とは……

 

―――

 

前日、執務室にて

 

大淀「なので、私達からの立案として、提督に意見具申があります。それは……」

 

大淀「もう一度建造を行って、新たに駆逐艦、若しくは巡洋艦と邂逅した上で、出撃を見合わせる。というものなんですが……」

 

長門「まぁそれが最善策だろう。結局の所、私は戦線へ出られない」

 

長門「そうなれば当初の予定にあった戦力強化は出来ないまま、吹雪と夕立を戦わせることになる」

 

>だが、それでは意味がない

 だからこその、倍プッシュ……!

 

大淀「巡洋艦クラスを含めた三隻での出撃であれば、恐らくは問題なく海域を捜索出来ます」

 

長門「いざとなれば後追いで私が出撃しよう。その場合は当分鎮守府は機能停止するが、万が一ということにも備えておくべきだ」

 

鳴上「……わかった、明日からはその通りにやってみる」

 

―――

 

>……至らない自分に、二人は惜しみなく助力をくれた

 

>なら今度は、自分が報いる番だろう……!

 

工廠妖精s「きのうのともはきょうもとも」

 

工廠妖精s「そうとはかぎらないのでは?」

 

鳴上「今日もよろしく!」

 

工廠妖精s「おー……?」

 

工廠妖精s「……きらきらしてますな」

 

工廠妖精s「ぴかぴかです」

 

>キラキラ……?

 

工廠妖精s「ならわれわれもほんきだします?」

 

工廠妖精s「はおうしょうこうけんをつかわざるをえない」

 

明石「資源最低限で……、はい。……大丈夫ですね!」

 

>内心ほっとした……

 今回も盛大に建造されたらどうしようかと……

 

工廠妖精s「うおぉー」ボオォォォ

 

工廠妖精s「もやせーもやせー」ボオォォォ

 

工廠妖精s「こすもをもやせー」ボオォォォ

 

明石「ちょっとおおおおおおおおおおおお!?」

 

>なんだ!? 今度は何事だ!?

 

明石「建造ドックからエライことにぃ!? も、燃やしてる!? 燃やしてるんですかコレ!?」

 

>建造ドックから……、光が逆流する……!?

 

>これは、また問題発生なのか……

 ……仕事、向いてないのかもしれないな

 

鳴上「……泣けてきた」

 

明石「泣いてないじゃないですか! ……あ、止まった?」

 

???「ゲッホ、ゲホ……、ど、どういうことクマ……」

 

球磨「球磨を呼んだのは誰クマ! こんな建造の仕方あんまりだクマー!」プンプン

 

明石「え、えええ!? け、建造終わったんですか!?」

 

工廠妖精s「もうしょうぶついてるから……」

 

工廠妖精s「われわれはかしこいので」

 

球磨「ク゛マ゛―!! 無視しないで欲しいクマー!」

 

>ヴォオオー! と叫び声を出している彼女は……

 確か名前を……

 

鳴上「……クマ?」

 

球磨「そークマ! 球磨は球磨クマ!」プンスカ

 

球磨「……? ちょっと言い方が変クマ。『球磨』クマ」

 

>……?

 何か引っかかるような……

 

鳴上「……球磨?」

 

球磨「何度も言ってるクマ! とりあえず責任者出てこいクマ!」ヴォー!

 

鳴上「えっと、俺がこの八十神鎮守府の提督」

 

球磨「……」

 

球磨「マジクマ?」

 

>マジマジ

 

明石「わ、我らが提督です」

 

球磨「ク、クマー!?」

 

―――

 

球磨「~♪」

 

>綺麗に箸で魚の骨を取っていく……

 

球磨「あーむ」パクリ

 

球磨「んまいクマ―!」テッテレー

 

>美味だ……

 

間宮「鮭の塩焼き、白菜の浅漬け、お豆腐のお味噌汁に……」

 

>所謂、日本の朝食そのものだった

 

間宮「美味しそうに食べてくれると、こちらも作った甲斐がありますね」

 

球磨「此処に呼び出されて良かったクマー、美味しいごはんサイコークマ」モグモグ

 

>つい先ほどまで、「あんなに急かされて呼び出されるとは、考えもしなかったクマ!」と怒っていたのに……

 

吹雪「おはよーございます司令官」

 

夕立「おはよーっぽい……」ウツラウツラ

 

鳴上「眠そうだな……、大丈夫か?」

 

吹雪「あっ、はい! これ位ならなんともないですよ」

 

夕立「ぽい!」

 

>昨日の倉庫整理は結構な重労働だったにも拘らず、返事を返した二人の様子は疲れを感じさせない

 

球磨「此処の艦隊の子クマ?」

 

吹雪「はい! 私、吹雪って言います。で、こっちが」

 

夕立「夕立だよ! よろしくっぽい!」

 

球磨「元気があって大変よろしいクマ、これで全員クマ?」

 

吹雪「後は、昨日建造された戦艦の長門さんを含めて、出撃可能な艦娘は全員ですね」

 

球磨「なるほどクマ」

 

鳴上「事情は説明したと思うけど、力を貸してほしい」

 

球磨「仕方ないクマー、まぁ大船に乗ったつもりで任せておくクマ」フンス

 

>じゃあ早速、今日の作戦の方を……

 

球磨「もう出撃するクマ!?」




次回初出撃!
スレッドではシステムがうまく組めず大変だった覚えががが……

今回投稿間隔が開いちゃいました
纏めて投稿するか、出来た分をさっさと投稿するか迷ったんですが、出来た分を投稿するようにします



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初出撃

球磨の心理描写にクマを入れたせいで、球磨がクマクマ言い過ぎになってクマったクマ


鳴上「準備は?」

 

>軽巡洋艦を旗艦とした水雷戦隊

 今回は球磨を旗艦とし、吹雪と夕立が随伴艦だ

 

球磨「OKクマ―、球磨の水偵で色々探してみるクマ」

 

吹雪「私達も頑張ります!」

 

夕立「やっと出撃? 待ちくたびれたっぽい!」

 

大淀「夜になる前に戻ってきてくださいね? あくまで捜索が今回の任務ですから」

 

>今日は霧も出ていない

 これなら問題なく捜索任務を遂行出来るだろう

 

球磨「後で無線飛ばすクマ! 行って来るクマー!」バシュー

 

>……

 

>三人は行ってしまった

 海の上なので自分は一緒には行けない……

 

長門「私の兵装も問題ないな、後は皆の無事を祈るか」

 

鳴上「……やっぱり俺は海には出られないのか?」

 

長門「まぁ……、艤装が使えない以上は船で移動するしかないが……」

 

長門「鎮守府付近ならともかく、私たちが出向くような前線には行けないな」

 

長門「現役の軍艦でさえ深海棲艦への対抗は厳しい。民間用の船なんて以ての外だ」

 

鳴上「……だよな」

 

大淀「皆さんが心配なのは分かりますけど、提督は他にも業務がありますから。ね?」

 

>他の業務……?

 

大淀「あ、あの……、昨日の分だって残ってるんですよ? 大量の書類とか……」

 

鳴上「」

 

大淀「昨日は点検を手伝って頂けてとても助かりました」

 

大淀「ですけど、提督にしか出来ないこともありますので……、その……、そちらを優先して頂けると今後も助かります」

 

>恐らく昨日の分の仕事が丸々残っているんだろう

 大淀の顔には若干の焦りが見える……

 

>吹雪「基本的には司令官はここに籠りきりになると思います」

 

>……籠りきりになるのか(諦観)

 

鳴上「……長門」

 

長門「な、なんだ提督?」

 

鳴上「……事務仕事は得意か?」ニコリ

 

長門「……私にはここで万が一に備える任務が」

 

鳴上「ならここで出来る分を一緒にやろうか」

 

長門「そ、そんな……」

 

大淀「書類、持ってきますね」タタッ

 

鳴上「……そういう事で」

 

>お、横暴だ……と長門が呟いた

 だが自体は急を要する……、観念してほしい……

 

―――

 

鳴上「……」カキカキ

 

長門「何故私まで……」カキカキ

 

大淀「でも苦手というわけではないんですね?」ピラピラ

 

長門「ま、まぁな……」

 

長門「だが出撃前まで書類と向き合わされるとは……」

 

長門「……ん、この書類群は終わったぞ」

 

大淀「……本当に速いですね」

 

>嫌がっているようだったのに、自分より何倍も処理が速い……

 

長門「慣れだよ提督、それに大淀の方が速い」

 

鳴上「なら、まだまだ頑張らないとな……」

 

長門「あぁ、是非頑張ってくれ」ハハ

 

通信妖精s「てーとくさん」ツンツン

 

通信妖精s「へやをあかるくして、もにたーからはなれてみるです」

 

>球磨達からの無線通信だ

 無線聞いていたので、音声のみだと思っていたが……

 

通信妖精s「すいてーさんからのえいぞうです」

 

球磨『聞こえるクマー?』

 

鳴上「聞こえてるよ、状況は?」

 

球磨『クマ―……、なんの進展もないクマ』

 

球磨「水偵の映像は見えてるクマ?」

 

>見えてはいるが、海しか見えない……

 

球磨『波も穏やかで、風もいい感じクマ』

 

球磨『もし艤装に燃料が残っているなら、いなくなった艦娘は近くの陸地に移動してると思うクマ』

 

球磨『幸いこの辺りには敵艦も見当たらないし……、これ以上は進軍許可が欲しいクマ』

 

大淀「敵と交戦などは?」

 

球磨『あったらもっと前に無線送ってるクマ。とにかく何もなくて退屈な位だクマ』

 

長門「油断はするなよ、此方の練度問題は確認しただろう?」

 

球磨『わ、分かってるクマ』

 

>敵との交戦もないまま、連絡のポイントまで辿り着いたらしい

 

鳴上「問題ないようなら、進軍しよう」

 

球磨『了解クマ~、じゃあ何かあればまた連絡するクマ』

 

>プツリ、と映像も途切れる

 

>捜索に進展はないようだ

 こちら側に行方不明の艦娘が来ていないだけならいいのだが……

 

―――

 

球磨「連絡終了クマ、周囲の状況はどうクマ?」

 

夕立「……何も無いっぽい」

 

吹雪「同じく、敵影も友軍も発見出来ずです……」

 

球磨「じゃあ進軍開始クマ、時間はたっぷりあるクマ」

 

むー、変クマ。友軍艦が見当たらないのは、陸地に上手く隠れているからとも考えられるクマ。

だけど敵影が見当たらないのは不自然クマ。この辺りでも、逸れた敵艦が稀に入ってくる事も有るはずクマ。

しかも八十神鎮守府は、今回の出撃が初めてのはずクマ。なのに今回はそんな逸れ艦の気配もないクマ。

水偵にも球磨センサーにも何も引っかからんクマ……、どうなってるクマ?

 

吹雪「球磨さん、この辺りに小島があったはずです」

 

海図には、ある程度の目星をつけたポイントがマッピングされてるクマ。

今回はその中で、此処から一番近い小島に向かうことにするクマ。

 

球磨「手ぶらで帰るのも味気ないクマ、そこに向かうクマ!」

 

夕立「おー!」

 

吹雪「お、おー!」

 

―――

 

鳴上「終わったな……」フー

 

>出撃ドックの控室に運び込んだ山の書類は、長門と大淀の手伝いもあり事なきを得た……

 

長門「案外早く済んだな」

 

大淀「此方に運び込んで出来る分はこれで全部ですね」

 

>その様子だと執務室にまだあるってことですよね……

 

大淀「ええそれはもう、たっぷりと」

 

>……

 

鳴上「……長門」

 

長門「まだまだ頑張るんだったな? 提督?」

 

鳴上「……」

 

鳴上「……」カチャリ

 

大淀「提督? なぜ徐に眼鏡を掛けたんです?」

 

>いや、何となく本気を出すなら掛けないとなって……

 

工廠妖精s「あーていとくさん」

 

>……?

 工廠に住む妖精さんが、なぜ此処へ……?

 

工廠妖精s「ちょっとはいしゃく」

 

工廠妖精s「いただきんかー」

 

>眼鏡を取られてしまった……

 

工廠妖精s「これはこれは……」

 

工廠妖精s「しばらくおかりしますが?」

 

鳴上「えっ」

 

工廠妖精s「あでぃおすあみーご」フヨフヨ

 

>……

 

長門「その、なんだ……」

 

長門「手伝うから、そんなに落ち込むな提督……」ポンポン

 

>め、眼鏡……

 

長門「そんなに落ち込むことか……?」ボソッ

 

大淀「眼鏡は大事なものなんです!」ボソリ




スレッドの方をやっとこさ見終えました
自分が何年も前に書いたものを見直すのは、その、悶絶ものですね(瀕死)

書いてる間に朝六時を過ぎてしまったので、今回は夕方六時にお送りしております……


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発見

今回ちょっと長いです
ふ、筆が乗って……、許して……





吹雪「……」

 

球磨「……こりゃ酷いクマ」ウーム

 

球磨を旗艦とした水雷戦隊は、先ほどの連絡ポイントから、近くの小島へと航路を取っていた

敵との交戦もなく、快適な航海を続けていたのも束の間、陸地まで辿り着いた先には異様な光景が広がっていた

深海棲艦との交戦が無かったのも、この惨状を見れば合点がいく

 

夕立「これ……、深海棲艦の艤装っぽい?」

 

吹雪「うん……」

 

ボロボロになり、修復も不可能――尤も、修復方法は不明だが、使い物にならないだろう深海棲艦の艤装

海岸には少なくない数が流れついていた。恐らく、付近に潜んでいた逸れ艦隊の物だと考えられる

 

球磨「クマー……、水偵で島の回りを回ったけど……、どこもこんな感じクマ」

 

球磨「提督に連絡取るクマ、二人は警戒と捜索頼むクマ」

 

吹雪・夕立「了解!(ぽい!)」ビシッ

 

球磨「いい返事クマ、じゃあ任せたクマ~」

 

吹雪「……んー」

 

吹雪「とは言ったものの……」

 

夕立「鬱蒼としてるっぽい……」

 

本土から離れた小島、当然の如く手入れなどはされていない為、草木が生い茂っている

 

吹雪「とりあえず誰かいた形跡がないか、砂浜辺りから探してみよっか?」

 

夕立「ぽい!」

 

???「その必要はねぇよ、……っと」ガサガサ

 

吹雪「ぽい!?」ビクッ

 

???「救助に来ておいてその声はねーだろ……」

 

???「もう一人いるんだ、手ェ貸してくれ」

 

吹雪・夕立「……」

 

吹雪「……い、行こっか?」

 

夕立「びっくりしたっぽい……」

 

―――

 

>……つまり?

 

球磨『今言った通りクマ、多分鎮守府近海の逸れ艦隊は壊滅してるクマ』

 

球磨『しかも艤装が海に沈まずに残ってるなんて、相当珍しいクマ』

 

>珍しい……?

 

球磨『アイツら海から生まれて、海に還っていくって言われてるクマ』

 

球磨『……もしかして知らなかったクマ?』

 

鳴上「たった今知った」

 

球磨『世間はそれを知らなかったというクマ……』

 

球磨『まぁつまり、陸地に近づくこと自体が珍しいって事クマ。相当追い込まれながら戦ってたんじゃないクマ?』

 

>深海棲艦を陸地に追い込む……

 そんなことが出来るのか? 出来るとしたなら、それはもしや……

 

>……シャドウ、だろうか?

 

球磨『暫く小島の周りを水偵に周回させるクマ、映像資料としてそっちで記録してほしいクマ』

 

大淀「了解しました。妖精さんも手伝って下さい」

 

通信妖精s「あいあいさー」

 

>海岸には黒々とした液体が漂い、深海棲艦の艤装が散乱している

 その艤装が受けた傷は単一的ではなく、様々な方法で攻撃を受けたと推察できる

 

球磨『音声通信は一端切るクマ、そっちも何時でも出られるようにしといて欲しいクマ』

 

鳴上「わかった、気を付けてくれ」

 

球磨『クマー』プツッ

 

>……なんというか、球磨と話していると緊張感が薄れる

 こう、主に語尾のせいで……

 

大淀「これだけの数が一つの島に流れ着いているなんて……」

 

通信妖精s「てーへんです?」

 

通信妖精s「てーへんだーてーへんだー」フヨフヨ

 

鳴上「俺にもなんで珍しいのか教えて欲しい」

 

大淀「球磨さんが言った通りなんです、端的過ぎますけどね」

 

大淀「深海棲艦は此方とは違って、海を根城にしています」

 

大淀「私達が母港へ帰還することと同じで、深海棲艦も海へ帰還するのです」

 

>誰かが実際に見たわけではないですが……、と大淀は付け足す

 

>深海棲艦は、此方の行方不明の艦娘と同じく、霧の中では自身の拠点に戻ることが出来なかった

 そしてシャドウと交戦して敗れたのだろう

 

大淀「ひとまずは通信があるまで待機ですね」

 

鳴上「だな……」

 

>執務室での缶詰め状態はまだ続きそうだ……

 

―――

 

>……

 

>要救助者発見の連絡が届いて、幾分か時間が過ぎた……

 

>……!

 

吹雪「――着きました! 早く響ちゃんを!」

 

夕立「長門さん! この子お願い!」

 

長門「任された!」

 

長門「明石、付いてきてくれ、入渠ドックを使う!」

 

明石「はいはーい!」

 

天龍「……いや驚いたな、腑抜けてる鎮守府かと思ったけど、いい手際だ」

 

>酷い言われ様だ……

 だがまぁ、おおよその原因は……

 

球磨「……クマ? なんで二人でこっち見るクマ?」

 

天龍「……あーまぁ、助けてもらった事には本当に感謝してんだ」

 

天龍「なんせ霧ん中あの島に着いた時点で、残りの燃料も弾薬も何もかも、空っからだったからな!」ハハハ

 

天龍「とにかく助かった、……えー」

 

鳴上「八十神鎮守府の、鳴上悠です」

 

天龍「おう! オレは横須賀鎮守府所属の天龍だ!」ニカッ

 

大淀「横須賀鎮守府!?」

 

天龍「あンだよ? ここから近いし、驚くこともないだろ?」

 

大淀「いやまぁ、そうなんですけど……」

 

天龍「それとも、オレを見てビビっちまったか? ……フフ、怖いか?」フフフ

 

鳴上「全然」

 

天龍「馬鹿な!?」

 

球磨「阿呆クマ、それより天龍も入渠ドックに早く行くクマ!」

 

>先ほど運ばれていった響という艦娘もそうだが、目の前の天龍も少なからず怪我をしている

 

>気丈に振舞ってはいるが、辛そうだ……

 

天龍「あー……」

 

天龍「そうだな、今回ばっかりは仕方ねーな……」

 

天龍「オレにビビらなかった鳴上に免じて、入渠してやらぁ!」

 

鳴上「ゆっくりするといい」

 

天龍「おう! じゃあ後でな!」

 

大淀「て、提督の事、呼び捨て……」ワナワナ

 

>正直、名前で呼んでくれる方が助かるのだが……

 

球磨「まだ捜索するクマ?」

 

鳴上「いや、もう日が落ちる」

 

球磨「そうクマね、今日はおしまいクマ」

 

夕立「提督さん! 夕立頑張ったっぽい! ……戦果は無かったけど」

 

吹雪「深海棲艦、今はこの辺りの海にはいないですね」

 

>帰路も交戦は起こらず、結局深海棲艦とは出会わなかった

 

>海図には1-1と書かれていた海域には深海棲艦はいない、と海に出た三人は推察しているようだ

 

鳴上「二人が回復し次第、話を聞いてみよう」

 

大淀「そうですね。恐らくあの霧の中で交戦していたようですし、シャドウに関して情報が増えるかもしれません」

 

夕立「……もう! 無視しないでほしいっぽい!」

 

夕立「提督さん! 褒めて褒めてー!」ピョンピョン

 

鳴上「……」

 

>夕立の気が済むまで、頭を撫でた……

 

吹雪「……」

 

>ジッと見られていたので、吹雪も頭を撫でた……

 

吹雪「そ、そんなつもりじゃなかったのにぃ」ポワポワ

 

>キラキラしている……

 

>……

 

>その後の話し合いで、二人が入渠中の間に、此方で出来ることをすることになった

 

大淀「では、横須賀鎮守府へ報告しておきますね」

 

鳴上「任せた」

 

吹雪「その間、私たちは残った仕事を終わらせちゃいましょう!」

 

>そう、提督の職務は……

 

>終わらない……!

 

―――

 

>食事処には、いい匂いが漂い始めている……!

 

>二人の体調も問題ない様なので、食事を取りながら話を聞くことになった

 

天龍「完全復活した天龍サマだ!」デン

 

響「同じく、不死鳥の如く復活した響だよ」

 

響「貴方が司令官だったよね? 助けてくれてありがとう」ペコリ

 

鳴上「あ、ああ……」

 

>不死鳥の如く……?

 

響「助けてもらった上、此方の食事と補給まで用意してくれるとは」

 

鳴上「困った時はお互い様だ」ニコ

 

間宮「そうですよぉ、一日近く何も食べてないなら、慌てずゆっくり食べてくださいね」コトン

 

天龍「おぉー! 旨そう!」グゥー

 

間宮「クリームシチューです。やけどしないように食べてくださいね。」

 

間宮「まだ他の料理も持ってきますけど、遠慮なくどうぞ?」

 

響「……Спасибо」グゥー

 

鳴上「……?」

 

>日本語ではなかったが、何語だろう……?

 

間宮「あら、ボルシチかシチーの方が良かったかしら?」

 

響「そんなことはないさ、有り難く頂くよ」

 

>ボルシチ……?

 では先ほどの言葉はロシア語だろうか?

 

鳴上「……じゃあ、いただきます」

 

天龍・響「いただきます!」

 

>……凄い食べっぷりだ!

 自分も負けていられない!

 

>……!

 

>……ものの見事に完食した!

 

天龍「いやぁ、やっぱ美味かった……」

 

響「鳴上さんもすごい食べっぷりだったね」

 

鳴上「少し本気を出してしまった」

 

響「間宮さんの料理は、やっぱり格が違うね」ムフー

 

天龍「横須賀の飯も美味いんだけどなー……」

 

>二人とも満足したようだ

 

響「……さて、本題だね」

 

響「その前に、横須賀鎮守府の被害は確認できるかな?」

 

>横須賀鎮守府に関しては、二人が行方不明になった以外は何もなかったはずだ

 

>仮にあったとしても、此方より規模の大きい鎮守府なら、多少の事であれば『問題なし』と答えるのだろう

 

天龍「そりゃよかった。ま、そんなトコだろうとも思ってたけどな」

 

響「だね、改めて聞いて安心したよ」

 

天龍「じゃあこっちの情報だな。……といっても霧が濃い上に戦況は滅茶苦茶だったからなぁ」

 

天龍「なんせ深海棲艦同士で戦ってたんだぜ?」

 

響「正しくは深海棲艦と、見たことない……恐らく深海棲艦だろうって奴らが戦ってたんだ」

 

天龍「でも飛んでたしなぁ……」

 

響「艦載機にしては大きかった、しかも霧の中を飛行するなんて正気じゃないね」

 

>恐らくシャドウの事だろう

 やはり深海棲艦とシャドウが交戦していたようだ

 

天龍「……? なんか知ってる風だな?」

 

響「八十神の司令官は、何か心当たりがあるのかい?」

 

>……

 

>信じられなくてもいい、自分が知っていることは話すべきだろう……

 

>自分の境遇と、今日までの事を手短に話した

 

>そして少ない情報だが、自身の知るシャドウ、そしてペルソナについて話した

 

天龍「……お前」

 

天龍「真顔で冗談言うの止めろよな、ちょっと反応に困るぜ……」

 

響「……うん、ちょっと信じられない」

 

>ですよね

 

鳴上「少なくとも自分の境遇も含めて、すぐ信じて貰えるとは思ってないけど……」

 

鳴上「霧が出ている間は気を付けた方がいい」

 

天龍「そこに関しては同感だな、アレはヤバい」

 

響「私達の攻撃があまり聞いていなかったようだし、シャドウ? に関しては出会わないように注意するしかないね……」

 

鳴上「艤装の攻撃が効かなかったのか?」

 

響「有効打にはなってないね、飛んでるから魚雷も当たらないし……」

 

天龍「オレの対艦刀も、懐に入れば問題ないが、飛んでるしなぁ……」

 

>二人ともシャドウに対して決め手が無いことに唸っている……

 

大淀「提督ー? いらっしゃいますか?」ガララ

 

>ここにいるぞ

 手を振ると大淀が気づいたようで、此方へ駆け寄ってくる

 

大淀「後で横須賀鎮守府へ再度連絡をお願いします。なんでも、救助してくれた提督とお話したいとのことで」

 

>そういう事なら、素直に応じよう

 

響「私達も一緒で良いかな?」

 

鳴上「構わないよ」

 

天龍「助かる、……多分どやされるな」ハァ

 

響「すぐ連絡しておけばしないより多少マシさ」ドンヨリ

 

>……厳格な人なのだろうか

 ちょっと緊張してきた……




スレに出た子を出すとか言っておきながら、別鎮守府枠で別の子を出す畜生

文章に書いた通り、次回は横鎮の提督を出す予定です。所謂オリキャラですね
そういうのが苦手な方がいたら申し訳ないですが、ご了承ください
肌に合わないと思ったら見るのをやめてくださいね! 読むことは義務ではないです!



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横須賀の司令官

改めて、こっからオリキャラも出ます
苦手な人はご注意をば


>受話器を手に取り……

 

>……いざ!

 

通信妖精s「そこからさきはじごくだぞ」

 

>……

 

天龍「……いやさっさと掛けてくれ」

 

響「怒ったら確かに怖いけど、私達の司令官は鬼じゃないから」

 

鳴上「……妖精さん」

 

通信妖精s「あいー」ガシャコン

 

???『――はい! こちら横須賀鎮守府なのです!』

 

>……女性の声?

 所属している艦娘だろうか

 

鳴上「八十神鎮守府の鳴上という者です」

 

???『はっ! はわわ!? し、司令官さん! 八十神鎮守府から電文なのですー!』ドタバタ

 

>受話器を置いて走っていったようだ……

 

響「……この様子だと、出たのは電みたいだね」

 

天龍「……」(頭抱え)

 

???『――八十神鎮守府だな?確かあそこは……』

 

???『……お、おい、繋ぎっぱなしで呼びに来たのか?』

 

電『はわ!? ご、ごめんなさいなのです……』

 

>電話越しから遠めに話声が聞こえる……

 

???『すまない、此方の艦娘が何も言わずにこの場を離れたようで……』

 

鳴上「いえ、気にしないで下さい」

 

???『そうか? あー……、じゃあ……』ゴホン

 

東堂『横須賀鎮守府に所属している、提督の東堂だ』

 

東堂『今回此方の所属艦である天龍と響を保護して下さり、横須賀鎮守府を代表して感謝の意を述べたい』

 

鳴上「此方で出来ることをしただけです」

 

東堂『……新型深海棲艦のお陰で、上層部はてんやわんやで取りつく島もねぇ』

 

東堂『そんな中、俺の鎮守府も指示が行き渡らずに、こんなことになっちまった……』

 

東堂『俺達の大切な仲間を助けてくれて、本当に有難う……』

 

>その言葉からは、自身の仲間を想う温かい感情が伝わってきた

 

東堂『八十神鎮守府の……おっと、名前も聞いてなかったな』

 

鳴上「鳴上です、此処には」

 

東堂『鳴上……? 聞いたことねぇ名前だな……』

 

鳴上「……実は」

 

東堂『最近の適正検査で着任したのか?』

 

鳴上「いや、検査は……」

 

>検査らしい事は此処へ来てから、一度もした覚えがない

 仮に寝たきりの時にしていたとしても、自分はその結果を聞いたことが無い

 

>というか、此方からの話が通らない……

 

東堂『そういえば八十神鎮守府が動き出したのも、急な話だったな』

 

東堂『色々訳ありで、面倒が重なってる訳だ……』フム

 

響「……そろそろ代わって貰ってもいいかな?」(耳打ち)

 

>こくりと頷き、響達に電話を代わる

 

響「司令官、響だよ」

 

響「……うん、天龍もここにいるよ」

 

天龍「よォ提督! オレのいない間大丈夫だったか?」

 

>馬鹿! こっちが心配してんだろうが! と受話器から怒号が飛ぶ

 暫くの間、そっとしておこう……

 

―――

 

>通信を終え、執務室へ帰ってきた

 

鳴上「ただいま……」ガチャ

 

吹雪「おかえりなさい! 横須賀の司令官さんは何て言ってました?」

 

天龍「へっ、さっさと帰ってこい馬鹿だとよ」ヘヘ

 

響「全く、司令官は素直じゃないね」クスクス

 

夕立「……じゃあ二人とも帰っちゃうっぽい?」シュン

 

天龍「いやー、それがな……」

 

響「……近々、またあの霧が出るみたいなんだ」

 

>現状、霧とシャドウの関連性は不明だ

 だが他の鎮守府では、霧の出る日に出撃を控える方針を固めているようだ

 

>その理由として、行方不明の艦娘が発見され始めており、その殆どが霧とシャドウの危険性を訴えているらしい

 艦娘捜索任務も霧が再発するという情報から、打ち切りという形で終了するかもしれない……

 

天龍「霧を懸念して、オレ達は陸路で帰ることになるんだとよ」

 

響「海に出ている間にまた霧が出れば、前回の二の舞だからね」

 

大淀「陸路という事は車ですよね? ……誰が運転するんです?」

 

妖精s「よばれてとびでて」

 

>お呼びではない……

 

妖精s「らしんばん、まわすよー」

 

>羅針盤は回すものではない……!

 

響「迎えが来るんだ、それまで此処にいるよ」

 

吹雪「そっか、ゆっくりしてってね響ちゃん」ニコー

 

響「そうするよ、吹雪姉さん」ニコ

 

天龍「ま……、迎えは明後日だけどな」

 

夕立「えー……、横須賀のお話色々聞きたいっぽいー」ブー

 

天龍「おー構わねぇぞ、幾らでも話してやるよ」

 

夕立「じゃあじゃあ! 娯楽室行こ! ほら吹雪ちゃんも!」グイグイ

 

吹雪「で、でもお仕事が……」

 

大淀「あー……」

 

大淀「それがですね……、お仕事、終わってます……」

 

吹雪「えっ!?」

 

大淀「提督と長門さんが、物凄い勢いで書類を片付けてしまって……今出来ることはないんです」

 

吹雪「だ、だってあんなに山になってたのに……、わっ、ホントだ……」(唖然)

 

鳴上「皆が頑張っているのに、自分だけ胡坐はかけないからな」

 

>自分と長門だけではなく、大淀も勿論手助けしてくれた

 その甲斐あって、溜まっていた書類群は一網打尽になっていたのだった……

 

吹雪「司令官、……実は凄い人だったりします?」

 

>そうでもない

 

鳴上「……今日はやることがないから、後は自由時間だ」

 

夕立「ほらー、吹雪ちゃーん」

 

吹雪「う、うん、……じゃあ行ってきます!」

 

鳴上「行ってらっしゃい」

 

>……

 

>とはいったものの……

 

>出撃を控える方針になった以上、此方の打つ手も無くなってしまった

 明日になるまで行動ノルマもないだろう

 

>となると……

 

鳴上「暇だな」

 

大淀「ひ、暇って……」

 

―――

 

>暇なので工廠までやってきた

 

長門「……提督? こんな時間にどうした?」

 

鳴上「やることがないから、……見回り?」

 

長門「あぁ……、まぁそうだろうな……」

 

長門「私は眠れる獅子を起こしてしまったのかと、不安で仕方がないよ……」

 

鳴上「……?」

 

球磨「うへー……、どれもこれも、ドロドロのボロボロクマ……」

 

明石「んー駄目ですね、どれも完全に機能停止してます」

 

長門「期待はしていなかったが、やはり駄目か……」

 

>どうやら、発見した深海棲艦の艤装を持ち帰っていたようだ

 現在それを解体して、情報を引き出そうとしていたらしい

 

工廠妖精s「ほねおれたー……」

 

工廠妖精s「そんしたー……」

 

工廠妖精s「くたびれたー……」

 

>わあぁー、と妖精さん達は疲れた様子で、何処かへ飛んで行ってしまった

 

鳴上「大変そうだな」

 

明石「うわぁっ!? て、提督!? いらしてたんですか!?」

 

球磨「ついさっきからそこにいたクマ」

 

球磨「妖精さんの言う通り、骨折り損のくたびれ儲けだったクマ」

 

明石「すみません……、何か見つかればと思ったんですけど……」

 

>謝ることはない、寧ろ頑張ったと褒められる事を明石達はしたのだ

 

鳴上「いや、ありがとう」

 

明石「んぇ? ……なんで感謝されてるんです?」

 

球磨「クマー」

 

長門「その返事はどう捉えればいいんだ……」

 

明石「……あ、そういえばなんですけど、天龍さんと響さんの艤装、しっかり直しておきました!」

 

明石「お二人ともしっかり改修されてて、練度も申し分なしとは……」

 

長門「流石、横須賀鎮守府所属というわけだな」

 

長門「この長門も早く実戦に出たいものだ……、なぁ提督?」

 

鳴上「霧が出るから、暫く出撃は控えるつもりなんだ」

 

長門「」

 

球磨「仕事が減って、球磨的にはホッとしたクマ……」

 

明石「暫くは出撃に遠征にと、大変そうですもんね」

 

球磨「ほんっとに他人事クマ! 球磨の代わりに出撃するクマ?」

 

明石「む、無理です……」

 

工廠妖精s「てーとくさん」

 

>……?

 飛んで行ったはずの妖精さんが戻ってきた

 

工廠妖精s「おかえしします?」

 

工廠妖精s「さしあげさしあげ」

 

>……眼鏡が返ってきた

 

明石「あー、何か妖精さん達がその眼鏡見ながら唸ってましたよ?」

 

鳴上「そうなのか?」

 

明石「終始楽しそうでしたけどね、……ただ」

 

>ただ?

 

明石「そういう日の後って、決まって鎮守府の資源が減ってたりするんですよね……」

 

>……

 

>妖精さんが裏で何かしているのだろうか

 それは、止められない……?

 

明石「む、無理です……」

 

球磨「返答がさっきと変わってないクマ……」

 

>不安が残る中、鎮守府の夜は更けていく……

 

―――

 

――海域深部、某所

 

???「……」

 

???「キヒヒッ……」ニタ




番長が番長に戻りつつあります(意味不明)

完全日常パートとか、戦闘だけとか、早く書きたい
展開がノロノロしてて、砂糖吐くのマダカナーって人には申し訳ないっす……


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八十鎮の日常 その1

今回は日常パート寄りです、ちょっと満足
なのでサブタイも日常と題しました。へへ……


>今日も今日とて、朝がやってきた

 

>窓から見える景色は、霧は出ていないようだが、天気は後々崩れそうな雰囲気だ……

 

天龍「鳴上ー! 起きてるかー?」

 

天龍「総員起こしだ! 天龍サマがいる間は、二度寝なんてさせてやんねーからな!」

 

>元気溌剌といった様子だ

 

>手早く身支度を済ませ、皆の元へ向かった

 

―――

 

>執務室へ着くなり、横須賀の二人が待機していた

 

響「……うん、時間ぴったりより少し早い」

 

天龍「五分前行動は身についてるみてーだな、うっし……」

 

天龍「じゃあ次だ…… コレが今日の仕事」ドサ

 

>仕事は良いのだが、なぜ二人が?

 

天龍「何となくな…… 此処に来たばっかりだったら色々大変だろうし」

 

響「天龍は世話焼きなんだ。どうやっても治らないから、大目に見てくれないかな?」

 

天龍「うるせーよ」

 

>響の後ろに回った天龍が、両手で響のほっぺを押さえている……

 これは……

 

響「はにゃしへふへ、へうりゅう」グニグニ

 

天龍「お前がどれ位出来る奴なのか、オレがしっかり確めて横須賀に報告する」ムニムニ

 

天龍「まぁ昨日聞いた感じだと、問題なさそうだけどな」

 

>横須賀鎮守府に報告されるのであれば、頑張る他あるまい

 

鳴上「じゃあ、頑張らせてもらう!」

 

>早朝は事務作業で潰れそうだ……

 

―――

 

鳴上「……」シパパパ

 

響「……凄いね」

 

天龍「あれが来て数日の奴がする動きかよ……?」

 

響「手際だけなら、私達と変わらないんじゃ……?」

 

>……気づけば半分以上の書類を片付けていた

 

>ふと時計に目をやったと同時に、誰かが執務室をノックする

 

間宮「……提督? 此方にお見えにならないので、お食事持って来ちゃいました」ガチャ

 

吹雪「え゛」

 

大淀「食事を取らずにお仕事されてたんですか!?」

 

鳴上「あ……」

 

吹雪「あ……、じゃないですよぉ! ちゃんとご飯は食べてください!」

 

>集中していて、完全に食事の事を忘れていた……

 気づいた途端に空腹感が……

 

間宮「お仕事熱心なのは結構ですけど、体を壊すような真似は駄目ですよ?」

 

鳴上「す、すいません……」

 

響「……これは私達のせいでは?」

 

天龍「後で謝っとくか……」

 

間宮「もう、数日前は寝たきりだったんですから…… 気を付けてくださいね?」

 

>気を付けます……

 

響「あ、あの話本当だったの……?」

 

天龍「いや、ありえねー……」

 

>用意してくれた食事を取った後、執務に戻った

 結果を言えば昼前には作業は終了し、その結果天龍と響に呆れられていた……

 

>何故……

 

―――

 

明石「提督ー! 今日も来られたんですね!」

 

鳴上「勿論、今日も頑張ろう」

 

天龍「で、此処に来たのは?」

 

>此処に来た理由は、まぁ……

 

鳴上「妖精さんが……」

 

天龍「妖精さん……?」

 

響「妖精さんに何か用なのかい?」

 

鳴上「明石、その……」

 

明石「えぇ、分かってます提督」

 

明石「でももう遅いです……」

 

>遅かったか……

 

工廠妖精s「おそかったじゃないか」

 

工廠妖精s「いちまんこうねんおそいぜ」

 

>一万光年は時間じゃない、距離だ……

 

工廠妖精s「さしあげー」

 

>……これは、何?

 ペンギン? と、綿?

 

>……なんなのだこれは、どうすればいいのだ

 

明石「開発、失敗しちゃったみたいで」

 

鳴上「何をどうしたらこうなるんだ?」

 

天龍「開発を頼んでたのか? まぁこうなんのはよくあることだな」

 

鳴上「よくある……!?」

 

響「よくあるのは困るんだけどね……」

 

>困っているのは別の理由なのだが……!

 

>鎮守府の謎が、また一つ増えたのであった……

 

鳴上「……二人の艤装の調子を見ておこうと思ったんだけど」

 

明石「そうでしたね、お二人とも此方へー」

 

>後は明石に任せよう

 自分はこのペンギンをどうするか考えねば……

 

―――

 

工廠妖精s「いらっしゃいませー」

 

天龍「どれどれ……、うおぉ!?」

 

響「こ、これは……!?」

 

工廠妖精s「しんじんか? かたのちからぬけよ」

 

工廠妖精s「ここはじめて? さーびすしましょか?」

 

響「凄い数の妖精さんだね……」

 

天龍「いや多すぎだろ……、何でこんなに居るんだ」

 

明石「気づいたら居ついてるんですよ、もう考えるの止めました」キッパリ

 

響「横須賀の工廠にもこんなに妖精さんは居ないね、というか多すぎる」

 

天龍「多いどころじゃねーだろこれ……、タンポポの綿毛みてーに大量に飛んでるぞ……」

 

工廠妖精s「ふふ…… こわいか?」

 

天龍「こえーよ!」

 

工廠妖精s「ぎそうはこちらよ」

 

工廠妖精s「さしあげさしあげ」

 

天龍・響「……」

 

天龍「……なんというか、うん」

 

響「……いい仕事してる」

 

―――

 

鳴上「艤装はどうだった?」

 

響「凄かった……」

 

天龍「ハンパねぇよ……」

 

>そうか……!

 明石達の修理は上手くいったようだ!

 

明石「問題ない様で何よりです、……で」

 

鳴上「うん、建造と開発をもう一度頼みたいんだ」

 

明石「あー…… 今現在は備蓄は無いわけではないですが……」

 

>そのあたりも今回、抜かりはない

 

>軽巡洋艦球磨の建造成功、初の出撃、捜索任務の達成

 多くの事をこなしたことで、すぐではないが援助が決定している

 

明石「なるほど、先を見越した上での建造なんですね」

 

明石「開発は何故?」

 

>どう失敗したらああなるのか知りたい

 ……とは言えない

 

鳴上「に、任務項目にあったから」

 

明石「なるほど、確かにありましたね」

 

>とは言ったものの、開発とはどういったものを優先すればいいのだろうか……

 

天龍「なんか足りてない装備とか無いのか?」

 

明石「装備自体は結構あるんですよ? しいて言うなら……」

 

響「言うなら?」

 

鳴上「……戦力不足?」

 

天龍・響「あぁ……」

 

天龍「……! 確か長門が備蓄不足で運用出来ないとか言ってなかったか?」

 

>備蓄が無いことも、そのせいで長門が前線に出られないことも事実だ

 

天龍「あー、ならあれか?」

 

響「うん、あれだね」

 

>……アレ?

 

――ー

 

工廠妖精s「さしあげー」ゴロゴロ

 

>こ、これは……

 

天龍「まぁ見たまんまだ、ドラム缶だな」ゴン

 

響「私達が遠征で資源を持ち帰る際、その資源をこれに貯め込むんだ」

 

響「そうすれば、一度に持って帰る資源が増える寸法だね」

 

明石「装備枠がドラム缶で埋まることは注意ですね」

 

天龍「開発資源も最低限と殆ど変わんねーし、比較的置き場所にも困らない」

 

天龍「運ぶのも転がせばラク、意外と良いもんだろ?」

 

>確かに、多くのメリットを見出せた

 

>たかがドラム缶だと思ったが、意外と侮れないんだな……

 

鳴上「参考になった、ありがとう」ニコ

 

天龍「ま、良いってことよ!」

 

明石「じゃあ建造の方はまたお呼びしますので、期待して待っててください」

 

鳴上「あ、ああ……」

 

>何事もなく建造に成功してほしい……

 

>ただ純粋にそう思った……




一応6時に書き終えたんですよ
結局投稿は見直しとかで7時超えちゃったけど……、ぐおぉ……

次回もこんな感じです
他鎮守府の子が出番多いのは、多分ですが当分の間、出番が無くなっちゃうからです
天龍サマと響ちゃん成分はここで補給してって下さい


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八十鎮の日常 その2

またちょっと長くなったので、休憩の合間とかに見る方はご注意をば


吹雪「なんだか私が授業するのも久々な感じがしますね」

 

鳴上「今日も宜しくお願いします」

 

吹雪「勿論です、じゃあ今日は……」

 

吹雪「……」

 

夕立「長門さんも球磨さんも、授業受けるっぽい?」

 

長門「他にやることもないのでな」フンス

 

球磨「……お昼寝してていいクマ?」

 

>真面目に授業を受けなされ……

 

吹雪「どんどん増えますね……」

 

吹雪「で、では…… 新しく球磨さんが着任されたことですし、水雷戦隊についてお話しておきますね」

 

吹雪「水雷戦隊というものは、私達駆逐艦が2人~4人程の艦隊に、球磨さんの様な巡洋艦が艦隊の旗艦として編成された艦隊を指します」

 

吹雪「高機動且つ高火力の雷撃能力は、私達駆逐艦や軽巡洋艦がピカイチなんです!」

 

吹雪「それを活かした任務は、前線部隊もそうですけど、自軍主力艦隊の露払いもその一つですね」

 

吹雪「じゃあ司令官! 問題ですよ!」

 

吹雪「水雷戦隊は先ほど述べたように、水雷戦が主な戦いでは群を抜いて強力ですが、もう一つの観点でも重要視されています」

 

吹雪「そのもう一つの観点とは、何でしょうか?」

 

>もう一つの観点……?

 

夕立「夕立達駆逐艦は、低燃費で行動出来るっぽい」コッソリ

 

>低燃費で行動できる……?

 という事であれば……

 

鳴上「……遠征?」

 

吹雪「もー、夕立ちゃん! ヒント駄目ですよー」

 

夕立「な、何も言ってないっぽい!」

 

吹雪「……ふふ、じゃあそういう事にしておきます」ニコ

 

吹雪「司令官が考えた通り、遠征で黒字を出しやすいという事が、別の重要視されているポイントです」

 

吹雪「私達艦娘は四つの資源を消費して行動しています、ですが枯渇すれば艤装は使用できません」

 

吹雪「なので資源を確保する手段である遠征任務などに、水雷戦隊を当てるというのは一つの選択肢というわけですね!」

 

長門「反面、知っているとは思うが、戦艦は資源を多く消費する艦種だ」

 

長門「遠征に必要になる事は稀にあるが、基本的には資源が赤字になる」

 

鳴上「なるほど……」カキカキ

 

球磨「そして球磨はこき使われる運命だったクマ……」ドンヨリ

 

>……なるべくゆとりを持ったペースで行動できる様、考えてみよう

 そのためにも、戦力増強は必須になるだろう

 

―――

 

>軽めの昼食を終え、間宮と少し話した後、執務室まで戻ってきた

 

天龍「何話してたんだ? 球磨も間宮のトコに残っちまったし」

 

鳴上「後でわかるよ」

 

天龍「……?」(首傾げ)

 

響「じゃあ後で分かることは置いといて、ミーティングだね」

 

長門「……で、私達を集めて伝えたいものとは?」

 

天龍「ああ、コレだよ」スッ

 

大淀「こ、これって……」

 

吹雪「この鎮守府近くの海域マップじゃないですか!」

 

>確かに、球磨が書き記した1-1海域と酷似した海図がある

 他にも資料で見た海域に似た海図ばかりだ

 

夕立「という事は……、私達先越されちゃったっぽい!?」

 

天龍「海域攻略までには至ってねぇよ、ほらよく見ろ」

 

吹雪「……ホントですね、書かれて無い部分が結構あります」

 

響「敵艦と遭遇した場合、私達は撤退していたからね」

 

長門「何故だ? お前達程の練度なら、この辺りの深海棲艦とも十分に渡り合えただろう?」

 

天龍「提督からの指示…… もとい、大本営からの指示なんだよ」

 

大淀「別鎮守府の近海付近に現存する敵性勢力海域、その1-1から1-4までの海域への干渉を可能な限り避ける、ですね」

 

>干渉を避ける? 深海棲艦を海域に残したままにしておくことに、何の意味が……?

 

天龍「いきなり着任した新米に、今の激戦地に放り出しても死にに行かせる様なモンだろ?」

 

天龍「それで新米の提督が指示出したって、戦力になんねーよ」

 

響「私達だって、急に死地へ出向けなんて言われても、そんな命令には従いたくない」

 

響「……まぁ命令されれば、此方は従うしかないけどね」

 

鳴上「……命令されたのか?」

 

響「まさか、東堂司令官はそんなことはしないよ」ニコ

 

天龍「オレが戦わせろ! って言ってんのに、無理やりにでも帰還させる奴だしな」

 

響「それは…… うん」

 

>明らかに被弾が多いからじゃ……? と小声で響が言う

 

吹雪「じゃあ私達でも戦える様な敵を、あえて残してあるってことですか?」

 

天龍「半分(建前)はそーいうこった、経験を積むのは誰でも必要ってわけだな」

 

>毒を持って毒を制す…… とは少し違うか

 ワクチン注射のように、敵性を体に残し、それと戦う事で免疫力を上げるというものだろうか

 

大淀「もう半分(本音)は、深海棲艦の勢力が強すぎるからですね」

 

響「そう、私達が攻略した海域だって、今も深海棲艦が出現したりしてるからね」

 

夕立「倒しても増えちゃうから……、無限沸きっぽい?」

 

長門「無限に近いだろうな、忌々しい限りだ」ギリ

 

天龍「深海棲艦の終わらねぇ議論も置いといてだ。オレ達が持ってきた情報はこの海図と、資源集積地の場所だ」

 

長門「……なるほどな」

 

夕立「資源集積地って……、遠征目標のアレっぽい?」

 

天龍「そうだ、とりあえずこっちで把握した分は全部鳴上に伝える、この海図もだ」

 

響「今回のお礼という訳じゃないけど、横須賀からの最初の支援として、受け取ってくれないかな?」

 

鳴上「……ありがとう、二人とも」

 

天龍「良いってことよ! それに出撃出来ないってのは結構苦痛なんだぜ?」

 

>そう言われて、長門の方へ視線を移す

 

長門「そうだな、退屈で死んでしまうかもしれん」クス

 

鳴上「悪いとは思ってるんだ……」

 

長門「分かっているよ、私が来てからも提督は良くやっていると思う」

 

>そう言ってくれるだけで、本当に助かる……

 

大淀「では遠征を主軸に、資源確保と戦力増強が今後の目標になりますね」

 

吹雪「でも霧が出る以上は、少しの間お休みですね……」

 

夕立「うぅ…… 残念っぽい……」

 

天龍「じゃ、オレ達からは以上だ」

 

>ミーティングは終了だ

 今後の方針が固まり、霧で行動出来ないことに歯痒さを覚えるが、今は我慢しよう……

 

―――

 

工廠妖精s「あとさんぷんまて」

 

工廠妖精s「もうまてない……」

 

明石「はいはい、待っててください……」ツンツン

 

わあぁー潰れるーと妖精さん達がはしゃいでます……

ホントに、今回は順調に建造が進んでよかった……

 

明石「そろそろ提督にご連絡を、と……」

 

工廠妖精s「にふんくらいでもうたべられます?」

 

工廠妖精s「かためくらいがちょうどよいですので……」

 

即席麺じゃないんですから……

油断も隙もありませんね、妖精さん達……

 

明石『あーあー、業務連絡ですー、間もなく建造が終了します』

 

明石「……これで良し」

 

工廠妖精s「よし!」ビシッ

 

なんですかその指差しポーズは、どことなく駄目な気がするので止めてください

 

RRR……! RRR……!

 

むぅ? このタイミングで内線? 提督からかな……

 

工廠妖精s「でんわー」

 

明石「ですねぇ、どうしたんだろ……」ガチャ

 

明石「明石です、どうされま」

 

鳴上『あ、明石か!? 今手が離せな…… うわぁ!?』ベチャ

 

夕立『っぽーい!』 

 

間宮『止めてぽいしないで!』

 

長門『大量に必要なのだろう? なら火力を上げて素早く作れば……』

 

吹雪『そうですね、じゃあ……』カチ、ゴオオォォ……

 

球磨『クマー!? 炭になるクマァー!?』

 

天龍『なんで此処は戦場と化してんだよ!? う、うわっ!?』ベチャ

 

響『天龍、撤退しよう。此処は危険すぎ――』ベチャ、バタン

 

天龍『へ、ヘッドショット…… 響がやられた!?』

 

給糧妖精s『どうして…… どうして……』ベチャ

 

この電話の向こうでは、何が起こってるんでしょうか……

明石は、彼方の惨状を考えたくありません……

 

鈴谷「なんだろ? 取り込み中なの?」

 

工廠妖精s「もうだめかもしれん」

 

工廠妖精s「わしらにはすくえぬものじゃ……」

 

鈴谷「えぇ……」

 

―――

 

>ここは、食事処間宮の厨房……

 

>だった場所……

 

明石「……て、提督ー? 大丈夫ですかー?」

 

鈴谷「なんで厨房に恐る恐る入るのさ?」

 

鈴谷「鈴谷を出迎えに来ないなんて、提督はすいぶ…… ん……」(唖然)

 

鳴上「どうして……」グッタリ

 

間宮「む、無念です……」

 

球磨「手に負えないクマ……」バタリ

 

夕立「クッキー第一号! 完成っぽいー!」ピョンピョン

 

吹雪「やったね! 美味しく出来てればいいけど……」

 

明石「何ですか、あの黒い塊は……」

 

鈴谷「ココアクッキー…… とか……?」

 

天龍「奴らが作ってたのはバタークッキーだった……」

 

響「うーん……」

 

鈴谷「や、奴ら……」

 

>そう、ココアもチョコも入れていない

 正真正銘、バタークッキーだ

 

>そんなクッキーが、どうして……

 

夕立「妖精さん、味見どーぞ?」

 

給糧妖精s「たべものじゃねーです」

 

給糧妖精s「すみ」

 

夕立「ヒドイ!」

 

吹雪「司令官、お一つどうです?」

 

鳴上「えっ」

 

>そ、そんな…… ご無体な……

 

>吹雪に差し出されたクッキーは、その……

 やっぱり、炭……

 

吹雪「……?」

 

>な、南無三……!

 

鳴上「……」パクリ

 

鳴上「げ、げっほ! げほ! げほ……」パタリ

 

明石「て、提督!?」

 

鈴谷「は、配属先の提督が、クッキーで殉職しちゃったんですケド……」

 

―――

 

鳴上「み、皆お菓子作り初めてだったもんな」(ダミ声)

 

球磨「声変クマ」

 

>そっとしてくれ……

 

間宮「迂闊でした…… 球磨さんは普通に調理されてたので、各自に任せてしまったのが原因です……」

 

球磨「普通と言われてムッとするとこだけど、今すっごく安心したクマ」

 

鈴谷「初めてでもこうなるのは、一種の才能じゃ……」

 

長門「何が良くなかったんだろうか……」

 

吹雪「何でしょうね……?」

 

>戦艦並みの火力が駄目だったのは間違いない

 焼き加減を見る暇もなく炭と化していた……

 

>もう見た目では分からないが、夕立も何やら生地に色々入れていたので、それも問題だろう……

 だが炭になったお陰で? その問題はスルーされていた……

 

>妖精さんにお菓子を贈ろうと考えたのが事の始まりだが、よもやこんな事にになるとは……

 

鳴上「お菓子はまた今度にしようか……」

 

妖精s「えぇー……」

 

妖精s「でもすみはたべれませんので……」

 

妖精s「いたしかたなし……」

 

>そして……

 

鳴上「鈴谷、だったよな?」

 

鈴谷「そうだよー、最上型重巡洋艦の鈴谷ね」

 

鳴上「その、色々あると思うけど、宜しく……」

 

鈴谷「だろうね…… まぁ賑やかでいいと思うよ?」

 

鈴谷「絶対大変だろうけど……」

 

天龍「最上型って確認されてたか?」

 

響「艤装だけで、多分確認されてなかったと思う……」ウーン

 

天龍「……大丈夫か?」

 

響「鳴上司令官よりは大丈夫だと思う……」




スレッドの方を参考にしながら書いてるので、メシマズ艦とか結構います
事務能力などで判定とってましたね

ある程度人物とかの紹介が安定してきたら、短めに各艦をピックアップした話とかも入れていきたいですね

安価も良きですが、自由に書くのもすんばらしいっす


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舞鶴からの来訪者

???「八十鎮ktkr!」


電「んぅ……」スースー

 

龍田「……寝ちゃいましたねぇ」

 

東堂「此処の所、あまり眠れてなかったみたいだからな。緊張の糸が解けたんだろう」

 

東堂「悪いが寝かせてやってくれ、確かその辺に毛布が……」

 

龍田「はいはい毛布ですね~」ガサゴソ

 

東堂「はい は一回だ」

 

龍田「はぁい……」

 

龍田「……でもそれを言うなら提督もですよ~、天龍ちゃん達は大丈夫って言っても、ちぃっとも聞いてくれないんだからぁ」

 

東堂「お前がなんでそう言い切れるのか、俺には全く分からんな」

 

龍田「ん~? 勘、かしらぁ……?」

 

東堂「……そりゃ分からんはずだ」

 

東堂「まぁ、霧が出る前に見つかったのは僥倖だ。最悪霧が出ようが捜索する羽目になった」

 

龍田「捜索は中止しないんだ~? こんなに提督に思われて……、二人は幸せ者ね~」クスクス

 

東堂「やかましい、貴重な戦力を失う訳にはいかんからな」

 

龍田「そうでしたね~」クスクス

 

東堂「しかし、八十神鎮守府に拾われるとはなぁ……」(項垂れ)

 

龍田「最近になって稼働したらしいですねぇ」

 

東堂「最近どころか、受け入れ態勢が出来てからまだひと月も経ってない」

 

東堂「それにあの鳴上とかいう提督、名前すら聞いたことがねぇ」

 

龍田「ふ~ん…… 通信では問題なさそうに聞こえましたけど~?」

 

東堂「……そうだな、どうせ明日には帰ってくるんだ」

 

東堂「こっちに着いたら色々話を聞かにゃならんか……」

 

龍田「そうですね~」ジー

 

東堂「……」

 

東堂「あー分かった、俺ももう寝る、お前も電連れて早く寝ろ」

 

龍田「ふふ、はぁい」

 

東堂「……あぁそれと、明日真壁の奴がこっちに来るのは知ってるな? 準備どうだ?」

 

龍田「大丈夫ですよ~、だから早く寝てくださいね~?」

 

―――

 

>……霧だ

 

>お菓子作りの後、片付けを終えれば良い時間帯だった

 取り急いでする事もなく、各々自由に行動するよう伝えた後、自分は早めに就寝した

 

>その為なのか、早めに起床し、現在窓からうっすらと霧がかった景色を眺めている

 漠然とした、耐え難い不安感が心に刺さる……

 

>今日は天龍・響の二人が横須賀に帰る事になっている

 迎えが来るらしいが、何時頃だろう?

 

>また、昨日慌ただしかった為に、鈴谷へ何の説明もしていない

 時間を作ってこの鎮守府などの話をしよう

 

>静かな朝だ、支度をして執務室へ向かおう……

 

―――

 

大淀「……あら? 提督?」

 

>執務室へ着いてみれば、大淀が既に本日付で送られてきた書類を纏めてくれていた

 

大淀「今日は随分早いんですね?」

 

鳴上「そう言う大淀もな」

 

大淀「んー……? 確かに、気が付いたら大体この時間にはお仕事してますね……」

 

大淀「皆さんがまだ起きてこないこの静かな時間が、なんだか好きなんです」

 

>早朝独特の静けさは、確かに心地よく感じる時間だと思う

 

鳴上「手伝おうか?」

 

大淀「駄目です。これ以上提督に手伝われたら、私のお仕事が無くなりますから」キッパリ

 

鳴上「……そっか」

 

大淀「仕事しないでと言って、普通残念そうにしますか……」

 

>少なくとも大淀は残念にしそうだ……

 

大淀「むむ…… 否定できませんね……」

 

大淀「長門さんと私が色々お仕事の事を教えた後、効率が目に見えて上がったのは良いんですけど……」

 

大淀「私達の立つ瀬がないというか、ちょっと複雑です……」

 

鳴上「俺が出来ることは、出来るだけやろうと思って」

 

大淀「無理だけはしないで下さいね?」

 

>皆一様に無理をするなと釘を刺してくる

 それほど無茶をしているように見えるのだろうか……?

 

>今後は程よく力を抜いて、物事に取り組む事にしよう……

 

―――

 

>今日は朝食などもしっかりと頂き、問題なく朝の仕事を進めている

 

天龍「……昨日に比べると手が遅いな」コソッ

 

響「昨日のクッキーが効いてるのかな?」コソッ

 

通信妖精s「ていとくさん」

 

>妖精さん……?

 今回は何だろうか……

 

通信妖精s「らいほうしゃ、あらわる」

 

>……!

 横須賀の二人の迎えだろうか

 

鳴上「二人とも」

 

響「うん、行こうか」

 

天龍「待ちくたびれたぜぇー!」ノビー

 

―――

 

天龍「……」

 

響「まさか、ね……」

 

漣「やーやー! 横須賀の水雷戦隊筆頭のお二人ー!」

 

漣「漣ちゃんがお迎えに上がりましたぞ?」

 

吹雪「ありがとうね漣ちゃん」

 

響「う、うん、ありがとう漣……」

 

漣「いいのいいの! 同じ特型のよしみだし? おねぇちゃんみたいなものだしー?」

 

響「う、うん……」タジ

 

>なんというか、独特な雰囲気の子だ……

 天龍は固まり、響は押されている……

 

漣「あーっと貴方がここのていー…… んー?」

 

漣「んー……?」ジー

 

鳴上「な、何……?」

 

漣「いやー、若いなーって」

 

>そ、それだけか……

 

???「すいません、車を停めていたら遅れてしまって……」

 

漣「ご主人様遅いー」

 

>ご主人様!?

 

???「はいはいゴメンって……」

 

>しかもスルー……

 

>車でやってきたのは漣と名乗る艦娘と、車を運転していた方と、……二人だけだろうか?

 

???「あー悪いんですけど、此処の提督さん呼んできて貰えます?」

 

鳴上「はい、八十神鎮守府提督の鳴上悠です」

 

???「はいはい鳴上さんね、うん」

 

???「じゃあその鳴上さん呼んできて貰えます?」

 

鳴上「……えっと、俺がその鳴上です」

 

???「……ハイ? 冗談キツイですって……」

 

鳴上「冗談ではなく……」

 

吹雪「ホントに司令官です……」

 

天龍「ぷっ……」フフ

 

>後ろで天龍が声を抑えて笑っている……

 

漣「……うっそー」

 

???「……」

 

???「しっ、失礼しましたー!」

 

真壁「わ、私舞鶴鎮守府の真壁って言います! ま、まさかこんなに若い子が提督になってるとは……」

 

漣「ご主人様が初見さんを見間違うとは……」

 

真壁「いやいやいや! 若い子とは聞いてたけど! 私より若いと聞いてたけども!」

 

真壁「学生さんとは想像つかない!」

 

漣「まぁ確かに……」

 

吹雪「思いませんよね……」

 

吹雪「……今日来られたのはお二人だけですか?」

 

漣「うんうん、ご主人様と二人だけー」

 

鳴上「提督さんは一緒では?」

 

真壁「へ?」

 

鳴上「艦娘でも運転出来る年齢の方がいるんだな……」

 

漣「……お前は何を言っているんだ?」

 

真壁「コラ」ゲシッ

 

漣「あてっ!」ペシン

 

吹雪「し、司令官さん?」

 

鳴上「うん?」

 

吹雪「真壁さんは、その、真壁司令官です……」

 

>……うっそー

 

>だ、だって鎮守府に居る女性は艦娘じゃない方が珍しいって……

 

漣「面白くなって参りました……!」

 

天龍「煽るな煽るな……」

 

響「どうどう……」

 

真壁「か、艦娘に間違われるとは……」

 

鳴上「す、すいませんでした……」

 

真壁「い、いやいやお互いね……? 間違っちゃったし、うん……」

 

>女性の提督も存在するんだな……

 適性が云々と言っていたが、女性でも適性があれば提督になれるという事か……

 

漣「でもご主人様? 最初から女性として見られたのって初めてでは?」

 

真壁「初めては言い過ぎだから……」

 

天龍「オレも最初男と間違えそうになったっけ……」

 

響「東堂司令官は間違えてたね」

 

>真壁提督は確かに中性的な顔立ちをしている

 髪も伸ばしているわけでもなく、肩に掛かるかどうか位の長さだ

 

>どちらかと言えば背丈も高い

 男性用の服装であれば、確かに見間違えたかもしれない……

 

吹雪「……あれ? でもなんで横須賀のお迎えに舞鶴の方が来られたんです?」

 

>確かに、通常であれば横須賀から迎えが来る方が自然だ

 なぜ別の鎮守府である舞鶴から……?

 

>というか、自分の事を予め誰かから聞いていた様な口ぶりだったが……?

 

真壁「うーん、今回横須賀の二人を送り届ける為に来た」

 

真壁「……のは間違いなくそうなんだけど、別の理由が本命だったりするよね」

 

漣「いかにも! 今日は此処へ視察官もとい、視察艦として来ますた!」

 

吹雪「し、視察!?」

 

>視察か……

 八十神鎮守府はまだ運用されて間もない鎮守府なのだが……

 

真壁「元帥さんから直々に連絡があってね、悪いけど色々チェックさせて貰うね?」

 

吹雪「こ、この事、大淀さんに伝えて来ましょうか?」

 

>大淀には伝えておいた方が良いハズだ

 ではこの事は吹雪に任せておこう……

 

吹雪「はい! 任されました!」

 

真壁「というわけで、二人はもう少し此処に居ることになるけど……?」

 

天龍「視察…… 視察ねぇ……」

 

響「此処に来た先客として一言だけ」

 

真壁「うんうん、何かな?」

 

響「普通が通用しない」

 

真壁「はい?」

 

響「私はもうクッキーが怖くて仕方がない……」

 

天龍「オレは工廠だな…… あの数は二度と忘れねぇ」

 

漣「何言ってんだおまいら?」




投稿ペースが目に見えて落ちてますが、理由は多々あります。
執筆の時間確保を怠って全然書けてません、頭の中で構想は練れてるのに……

後これは若干関係の無い話になるんですが、執筆に使用しているソフトの話です
「Art OF Words」という某赤い弓兵の方の宝具名に若干似てる奴を使ってます
時系列とか展開とか、管理がコレ一つで出来ます
展開に名前つけたりも出来て、そこからサブタイを引っ張ったり……
ちなみに、前回のお菓子作りシーン名は「ファーストブラッド(炭)」です


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視察艦(官)の採点

おお……ざーみー……
あの眼鏡を真壁提督に届けてくれよ……
あれはいいものだ……!


球磨「しかしよりにもよって、なんで霧の日に視察クマ?」

 

>確かに霧の日は危険だ

 自分の鎮守府から離れてしまって、問題ないのだろうか……

 

鈴谷「ホント凄い霧だよね……。最近こうなの?」

 

明石「ずっとこうですよおっ、とと……」ガコン

 

真壁「今は何をされてるんです?」

 

明石「これですか? 余り気味で使用しない装備の解体作業中です。……ほっ!」ガランガラン

 

漣「結構ありますなぁ、開発状況も問題なし?」

 

真壁「そうだねー。建造に関しても計画的にしてるみたいだし……」

 

漣「初期投資は結構性格出ますけど、鳴上提督はガンガンいこうぜタイプ?」

 

>そういった意図はない

 しいて言うなら、妖精さんが恐れを知らないタイプ……

 

漣「そ、それは……大変ですなぁ。あんなに大量だと指示も行き渡らないのでは?」

 

鳴上「勝手に暴走します」

 

真壁「ちゃんと妖精さんの手綱握って!」

 

明石「無理!」ニッコリ

 

鈴谷「おぉい……」

 

真壁「……そっちの黒い奴は?」

 

明石「あぁーこれですか? 深海棲艦の艤装です」

 

漣「ちょ……」

 

真壁「こ、これ全部?」

 

球磨「球磨達がこの辺りの近海で持ち帰ったクマ」

 

真壁「近海で……?」

 

球磨「そうクマ。小島に大量に流れ着いてたクマ」

 

真壁「……今度うちの近海も、改めて調べ直した方が良いかもね?」

 

漣「左様で御座いますかー。お仕事増えちったー……」

 

工廠妖精s「ていとくのだんなー」

 

鳴上「うん?」

 

工廠妖精s「さしあげー」

 

工廠妖精s「これはよいものだ」

 

>……これは、眼鏡?

 

>……まさか

 

鳴上「……!」

 

>やはり、霧が透けて見える……!

 妖精さん達は、自分の持っていた眼鏡を複製しようとしていたのか……

 

漣「なんで眼鏡掛けてんです? でも似合ってますねぇ」

 

真壁「妖精さんに眼鏡の開発させてるのは……、うーん……」

 

工廠妖精s「さしあげー」

 

真壁「えっ、わ、私に?」

 

工廠妖精s「めがねは そうびしないと いみがないぞ」

 

真壁「じゃ、じゃあ……」スチャ

 

真壁「……」E:鼻眼鏡

 

漣「ブッフォwww」

 

真壁「なんか、違わなくないですか……」

 

工廠妖精s「おにあいですぞ」

 

真壁「」

 

鈴谷「提督はもう眼鏡持ってたじゃん? なんで二個目がいるの?」

 

鈴谷「というか普段眼鏡掛けてないよね?」

 

>自分が頼んだわけではないのだが……

 

>しかし霧の中で行動するには、この眼鏡は重宝するのではないだろうか

 

鳴上「試しに掛けて見てくれ」

 

鈴谷「……? いいけど」スチャ

 

漣「良い眼鏡ですなぁ、……なんか言い方がしっくりこない」

 

漣「んー、……お」ピコン

 

漣「ハイカラですね」

 

>ハイカラですね……!

 何だろう、凄いしっくりくる……!

 

鈴谷「……わっ! これ凄い! 霧が晴れて見える!」

 

真壁「確かに、これは一体どういう技術が……」E:鼻眼鏡

 

漣「ま、真面目な声出さないで……ww」ゲラゲラ

 

真壁「……」ズーン

 

鳴上「これは皆の分も作れそうか?」

 

工廠妖精s「できなくはない」

 

工廠妖精s「かもなくふかもなく」

 

鳴上「そうか……! なら」

 

大淀「てっ……てて!てい、提督!」ガタタタ

 

鳴上「な、何だ!?」

 

大淀「か、開発資材! 開発資材がないんです!」

 

明石「え゛っ!?」

 

工廠妖精s「ばれましたな」

 

工廠妖精s「しかたなしでござる」

 

工廠妖精s「ここらでおいとまです」

 

明石「あっ! コラ! 妖精さん!」

 

>いつもより速いスピードで、妖精さん達は飛んで行った……

 

鈴谷「あー……」

 

鈴谷「多分、コレだよね……」スチャ

 

>多分でもなく、眼鏡だろうな……

 

>そんなにコストが重いのか、この眼鏡……

 

漣「これは……」

 

真壁「うん、減点だね……」

 

>私は悲しい……

 

―――

 

真壁「……なんというか」

 

漣「普通ですな、工廠のアレ以降目立ったトコもないですし」ペタペタ

 

真壁「妖精さんは確かに多かったね。なんでだろ……」

 

漣「偏に人徳では?」ペタリコ

 

真壁「……それ結構傷つくんだけど」ズーン

 

長門「……何故触られているんだ」

 

漣「いやー、ホントに長門型さんが建造出来てたとは」

 

真壁「失礼だから、ほどほどにね……」

 

長門「報告書まで疑っていたのか? 全く……」

 

真壁「書類だけで判断出来ませんから、しっかりとこの目で確かめますんで!」

 

漣「いよっ! ご主人様!」

 

>元気だなぁ……

 

長門「提督は何処へ行っていたんだ?」

 

>明石と間宮に連れられて、先程まで色々と検査を受けていた

 後ほど検査書類は真壁さんにも提出するらしい

 

>健康状態は問題無し、健康そのものだそうだ

 妖精さん達も手伝ってくれたお陰で、検査は早めに終了した

 

長門「そうか、健康ならば何よりだ。後は記憶が戻ればな……」

 

鳴上「そうだな……」

 

大淀「――はい、それで最後ですよ」

 

吹雪「やっと終わった~……」

 

鳴上「殆ど任せて悪かった。お疲れ様」ポン

 

吹雪「ふへぇ……ありがとうございます……」ベター

 

>机に突っ伏した吹雪がどんどん溶けていく……

 

吹雪「大量の書類は、あんまり見たくないですね……」

 

吹雪「でも今日は司令官のペースもゆっくりだったんで、助かりましたぁ……」

 

真壁「いつもはもっと速いんですか?」

 

>今日はゆっくりとしたペースだったが、普段が速いというわけでは……

 

長門「正直速いと思うぞ?」

 

大淀「凄く速いです」

 

漣「……男性相手に女性が早い遅いとか言うのって」

 

真壁「セイッ!」ベシッ

 

漣「あふんっ」コツン

 

真壁「ま、まぁ視察自体はこの辺りで終わりだね。霧も気になるし、予定も詰まってるし……」

 

真壁「緊張せずに普段通りにしてくれたお陰で、こっちも助かりました」ペコリ

 

鳴上「此方こそ、有難う御座いました」

 

バァン!

 

夕立「提督さん! 此処!?」ゼーゼー

 

>息を切らせながら夕立が執務室へやってきた。その表情から、緊急の何かだと伺える……

 

夕立「た、大変っぽい! 外にあの……しゃどう? が近づいてるみたいなの!」

 

大淀「何ですって!?」

 

>霧が出ている以上、もしかしたらとは思っていたが……

 

吹雪「司令官……」

 

鳴上「分かってる。真壁さん達は舞鶴鎮守府に連絡を」

 

真壁「ちょ、ちょっと待って、しゃどう?」

 

漣「何かあったんです?」

 

夕立「漣、艤装は?」

 

漣「ぎ、艤装……? ホントに何が始まるんです?」




書き溜めちょっとあるんですけど、話の繋がりが変になりそうなので短めになっちゃいました

多分明日も投稿します


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もう一つの影

戦闘回です


――警告、シャドウの出現を確認。鎮守府周囲の警戒を厳とせよ!

 

――繰り返す、シャドウ出現、警戒を厳とせよ!

 

>鎮守府内には大淀の放送が響き渡る

 妖精さん達も慌ただしく飛び回り、シャドウの侵攻に向けて準備を進めている

 

>前回は七里海岸の離れた場所だったが、今回は本丸の鎮守府に出現した

 先の戦いとは、勝手が違う

 

鳴上「シャドウは!?」

 

明石「分かりません! ですけど、此方の警戒網には引っかかってます!」

 

明石「……うぇ!? なな、なんですかこの反応!?」

 

明石「て、敵の方向、指定できません!」

 

長門「分からないだと!? どういう事だ!」

 

明石「分かんないんですー! 霧のせいなのか……敵の数が多すぎるのか……」

 

天龍「……うっし、艤装展開出来たぜ?」

 

響「此方も、何時でも行けるね」

 

夕立「霧で何も見えないっぽい……」

 

鈴谷「マジで何も見えないね…… それに敵の位置も分からないなんて……」

 

球磨「球磨センサーも役立たずになってしまったクマ」

 

鈴谷「球磨センサーって何……」

 

吹雪「お、遅れました! 吹雪、何時でも行けます!」

 

漣「同じく漣! 馳せ参じましたぞー!」

 

>この鎮守府を守るべく、艤装を使用できる艦娘が集結した

 総力戦だ……!

 

真壁「鳴上君! 舞鶴は問題ないわ!」

 

鳴上「分かりました。じゃあ真壁さんは……」

 

真壁「現場の指揮を執ります。鳴上君こそ安全な場所へ」

 

鳴上「そ、そういう訳には……」

 

夕立「……来た!」

 

真壁「各自応戦開始! 鎮守府と味方への誤射だけはしちゃだめよ!」

 

球磨「無茶言うクマ……」

 

天龍「ぼやくなよ! 砲戦開始だァ!」ドォン

 

>戦闘が始まった……

 

>……自分もペルソナを使えるか試してみよう

 

工廠妖精s「おまちになって」

 

鳴上「よ、妖精さん?」

 

工廠妖精s「ひみつへいきをさしあげです」

 

工廠妖精s「かならずおやくだちですので」

 

鳴上「ちょ、ちょ……」グイグイ

 

真壁「鳴上君!? どこ行くの!?」

 

>こっちが知りたい……!

 

鳴上「す、すぐ戻ります!」

 

―――

 

――これは、戦闘なのか?

私が知っている艦隊戦とは程遠い。こんなものが戦闘であってたまるか……!

 

鈴谷「うりゃー!」ドォン

 

吹雪「当たってください!」ドォン

 

???「グオオオオォォ!」ヒュン

 

鈴谷「ま、また外れた……!」

 

漣「やっぱ霧の中じゃキツイっすー!」

 

球磨「テーブルが飛んでるクマー!」

 

漣「というかシャドウ不気味ー!」

 

???「……!」ジオ!

 

夕立「わ、わっ!?」バシャン

 

夕立「な、なにさっきの!? 危なすぎっぽい!?」

 

霧の中を艦娘達は懸命に索敵し、敵を砲撃するが、当たらない

なのに新型――此方ではシャドウと呼称されていたか

シャドウは霧の中で、的確に此方の位置を把握し、高速で移動する

そして何もない空間から、炎や電撃を自在に生み出し、艦娘達を追い詰める

 

……滅茶苦茶だ。霧の中での交戦、敵の攻撃方法

全てが分からない。私の今までの経験は、何の役にも立っていない……

 

天龍「チッ、やっぱ此処の練度じゃキツイか…… 響!」

 

響「ん…… 了解」チャキ

 

天龍「オラオラァ! そんだけフラフラ飛んでりゃ幾らでも当たらァ!」ドォンドォン!

 

響「……遅いよ!」ドォン!

 

???「ギッ、ギギ……」フラ…

 

天龍「長門!」

 

長門「主砲斉射! ……ってぇー!」ドゴォン!

 

???「ギッ!?」ドガァン!

 

真壁「……!」

 

真壁「や、やった! 一体倒した!」

 

天龍「……あぁ」

 

長門「一体だけ、な」ギリ

 

……そうだ、敵は一体ではない

 

明石「何ですかこれ!? た、大量に敵影確認!」

 

新型の深海棲艦がここまでの物だったとは……

……いや、これほどの物だと分かっていたんだ

霧の中から生還した艦娘達は皆、口を揃えて「霧の中は危険だ、新型は近づかない方が賢明だ」と話していた

問題は、それを軽んじていた私達提督の責任なんだ

 

真壁「……こんなの」

 

目の前で対峙して、彼女達が言っていた事が本当の意味で理解出来た

こんなもの、こんなのもは、勝ち目が……

 

鳴上「皆待たせた!」ザアァァ

 

鳴上「 ペ ル ソ ナ ! 」カッ

 

―――

 

吹雪「う、うえぇ!? し、司令官!?」

 

漣「ブーッ!?」(吹き出し)

 

響「な、何であの人海に出てるの!?」

 

長門「あ、アレは艤装か!? い、いやそれにしては小型すぎる。脚部部分しかないじゃないか!」

 

球磨「両腰に何かちっこいの付けてるクマ。……というかそういう問題じゃないクマ!?」

 

鈴谷「あ、あれ何!? あの背後のひ、人? とにかく何!?」

 

夕立「あれが提督さんの言ってた『ペルソナ』っぽい!?」

 

鳴上「天龍!」ビュン

 

天龍「お、おう!?」パシッ

 

鳴上「その眼鏡を使って指揮を頼む!」

 

天龍「……!」スチャ

 

天龍「中々粋な事するじゃねぇか! いいぜ! 任されてやる!」

 

天龍「後で話は聞くからな!」

 

鳴上「説明しただろ!」

 

天龍「……そーいえば」

 

響「あの話、本当だったんだ……」

 

鳴上「俺は出来るだけ、シャドウを引き付ける!」

 

???「グギャオオ!!」スラッシュ!

 

???「ガアアアアアア!」アギ!

 

>敵は多い。此方の戦力を遥かに上回る量だ

 だがそんな事で諦めるほど、自分は潔くない!

 

鳴上「――行くぞ!」

 

>妖精さんから託されたこの艤装があれば……!

 例え海の上だろうが……!

 

鳴上「届く!」

 

イザナギ「……!」斬!

 

???「グガッ!?」ブシュウゥ

 

鳴上「そこだ!」マハジオ!

 

イザナギ「……!」

 

>腕を振りかざし、力の収束を広範囲へと拡大させる

 

>皆の周囲を取り囲むシャドウに、これ以上近寄らせないよう雷撃で牽制する!

 

>距離が近ければ砲戦を行う艦娘は不利な点をこれでカバーする。霧で敵が見えないという不利は……

 

天龍「漣! 三時と六時方向! 吹雪、夕立! この前教えた通りに動け、狙われてるぞ!」

 

漣「ほいさっさー!」ドォン!ドォン!

 

吹雪「こ、こんな霧の中で!? や、やるしか……!」ギュン!

 

夕立「りょ、了解!」ググン!

 

球磨「凄い暴れっぷりクマ……」

 

長門「まさか提督が一番の戦力とは……」

 

長門「い、いや、戦況は覆りつつある!」

 

天龍「そうだぜ! 鳴上に続くぞ!」

 

―――

 

鳴上「……くそッ!」

 

???「ギギギギギ!!」ディア!

 

鳴上「またか……!」

 

球磨「か、回復してるクマ……」

 

響「……ジリ貧だね。どうする?」

 

天龍「どうも出来ねーだろ……、くそ」

 

>会敵から幾ばくか、確実にシャドウの数を減らしている

 恐らく、いや確実に、半分は倒したはずだ

 

>なのに敵の物量による侵攻は、艦娘達の燃料を、弾薬を、士気をも減らしていく……

 そして自分も、無傷で立ち回れるほど器用ではなかった……

 少なからず自分を含め、艦隊では負傷したものがいる

 

>加えて此方は霧の影響を緩和出来たとはいえ、同士討ちと鎮守府への被害を抑えるべく立ち回っている

 そんな中で負傷者だけで済んでいるというのは、ある種幸運だとも言える

 

>だがそんな幸運は何時までも続かない……

 響の言う通り、このままでは……!

 

鳴上「うおおおおお!!」タルカジャ!

 

イザナギ「……!」ギィン!

 

>どう動くにしろ、自分が先に折れてしまえば、そこで戦線は崩壊する

 自分だけは、絶対に倒れてはいけないんだ……!

 

漣「うぇへぇ…… お借りした追加艤装が……」ボロ

 

球磨「ぢくしょーグマ……」ボロ

 

真壁「私は……」

 

真壁「何も……、何も出来ない事が、こんなにも悔しいなんて……」

 

夕立「うう…… で、でも! これ以上は近づけさせないっぽい!」ドォン!

 

長門「その意気だ! まだ提督は戦っている! 私達も諦める訳には……!」

 

明石「ぜ、絶望的です…… こんなにひどい戦いになるなんて……」

 

鈴谷「……?」

 

鈴谷「ね、ねぇ? なんか変な音しなかった?」

 

吹雪「お、音ですか……?」

 

>……確かに聞こえる。戦闘音と波の音に隠れて、唸るような風切り音が確かに

 なんだ、これは……?

 

鈴谷「シャドウじゃない、何というか…… 」

 

吹雪「……艦載機?」ボソリ

 

響「……!?」

 

響「敵機艦載機接近! 対空警戒!」

 

天龍「霧の中だぞ!? 艦載機発艦させるなんてどうなってやがんだ……!?」

 

明石「シャドウの後方から、敵艦隊の影を確認!」

 

明石「も、もう…… シャドウだけで手一杯なのに……!」

 

天龍「……ヤベェ、マジにヤバくなってきた。あの敵艦隊、ありゃあ……」

 

響「フラグシップ……!」

 

>シャドウの後方、艦載機が飛び交うその奥

 そこには頭部部分が大きいシルエットに、霧の中でもハッキリと分かる程の黄色のオーラを身に纏う

 自分は知識でしか知り得ていないが、あれは恐らく……

 

>空母ヲ級、そのflagshipだ……!

 

>駄目だ。シャドウだけでさえ、これだけの被害が出ている

 これ以上敵味方入り混じった戦闘など、出来るはずがない……!

 

長門「全員、爆撃と雷撃に備えろ!」

 

>瞬間、海上は凄まじい爆音と共に、至る所で海水が弾け散る

 その瞬間は酷く長く感じとることが出来、生きた心地がしなかった

 

>……頼む。誰一人、ここで欠けてくれるな……!

 

―――

 

>霧の中を、攻撃を終えた艦載機達が主の元へ戻っていく

 その風切り音は、自分は生き延びたと感じさせると同時に、他の思考を覚醒させる

 

鳴上「皆! 大丈夫か!?」

 

吹雪「だ、大丈夫でーす……」ヨロヨロ

 

鈴谷「こっちも、だぃ、じょうぶ……」フラフラ

 

漣「し、死ぬる……」

 

夕立「い、生きてるっぽい……」

 

長門「皆、無事の様だな……」

 

>……全員無事、奇跡だと思った

 本当に良かった……!

 

天龍「……のヤロー、どういうこった……?」

 

響「……当ててこなかった、何故?」

 

>当てて、こなかった?

 意図してこちらに当てなかったと……?

 

響「此方にあるはずの雷撃行動が無かった。……端から狙われてなかったのかもしれない」

 

球磨「そー言えば爆撃も、こっちが巻き添え食った感じだったクマ」

 

鳴上「狙ったのはシャドウだけ、ってことか」

 

響「あり得ないけど、それなら辻褄が合う」コクリ

 

>その言葉通り、シャドウは先ほどの攻撃以降、此方へ襲ってこないどころか、姿形が一つもない

 

ヲ級「……」

 

>一体、どういうつもりなんだ……?

 

>黄金に輝く冷たい目は、此方の様子を見つめた後、やがて踵を返し霧の中へと姿を消した……

 

鳴上「助かった、のか……」

 

>実感の無いまま、二度目の霧の戦闘は終了した

 今回の戦いの真相は、この霧のように深く、酷くぼやけた幕切れとなった……




ヲッヲー
キリの良い所で切ろうとしたら、今度は少し長くなりました
なんだかジワジワと閲覧数など伸びてくれてて、嬉しい限りです
この先も見るぜ!っていう奇特な方は、コンゴトモ、ヨロシク……


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鎮守府被害報告纏め

何故か五千字を超えた
又長めの文章になるので、時間のある時にどうぞ


真壁「……」ブロロロ……

 

漣「んぁー……、疲れた……」グデー

 

漣「もう舞鶴に帰りません?」

 

響「それはない」

 

天龍「横須賀にも用があんだろ? ちゃっちゃと送ってくれ」

 

真壁「……分かってますよ」

 

漣「お二人とも割と元気? 漣はもうクタクタのヨレヨレなんですが……」

 

響「……そう見えるかい?」

 

漣「割とそうでもない?」

 

天龍「今回……あー違うな、シャドウと戦うのは二度目か」

 

天龍「とにかく、あのシャドウっつー奴との戦闘はオレも流石に堪える……」フー

 

響「善戦出来ていたのも、鳴上司令官がいてくれたお陰だったからね」

 

漣「そー! それなんですよ。あの方何者? 話聞いても記憶が無いとかであやふやな部分が多いし……」

 

天龍「鳴上自身が言った通りだったって事だろ。シャドウと戦闘経験があって、何らかの関わりがある奴」

 

響「ペルソナもそうだね。……間近で戦闘を見せられれば、信じない訳にもいかないし」

 

真壁「だとしても理解し難いですね。しかも男性なのに艤装を使用出来ていましたし……」

 

響「特注品なんだって、妖精さんが一から作ったみたいだよ?」

 

漣「はぇー……」

 

響「……にしても、強かったね。彼」

 

天龍「だなぁ、あれは戦い慣れてる動きだ。流石に海の上は初めてだったんだろうが、それも問題なさそうだったな」

 

漣「思った以上に武闘派?」

 

響「そういう感じじゃないかな……、しいて言うなら……秀才?」

 

響「対シャドウ戦術、自分の体の動かし方、分かる部分の出来る事だけを最大効率で行動してる」

 

天龍「あーわかる。天才っつーよりは秀才だ。大湊の奴と似て非なるっつーか……」

 

真壁「確かに大湊の彼は皆が言う風に、直感とかそういうセンスのような部分が抜きん出てます」

 

真壁「対して鳴上君は、積み重ねた技術が体に染みついたというか、そういう感じ」

 

真壁「でも記憶、無いのよね……?」

 

天龍「無いんじゃないか? 何か隠してる様子もなかったし」

 

真壁・漣(……記憶無くてあれかぁ)

 

漣「……まぁ被害こそあれど、誰も欠けることなくで良かったんじゃないですか?」

 

響「全然良くない」

 

漣「おりょ、なして?」

 

響「これから先、霧が出ればシャドウは鎮守府にまでやってくる可能性が増えた」

 

響「恐らく霧とシャドウの出現には関係がある。だけど霧を止める手段なんて私達は持ち合わせてない」

 

響「しかも、シャドウは此方が防衛しきれないほどの量でやって来る」

 

漣「……詰みですか?」

 

真壁「実際そう判断した大湊の彼は、鎮守府を最悪放棄すると大本営に即座に進言していたわね」

 

真壁「彼がそう采配を下すなら、現状打つ手が無いという事が如実に表れてるのかも……」

 

響「真壁提督は?」

 

真壁「……正直、今日の戦いで私も防戦すら危ういと判断したわ」

 

真壁(大湊に倣う訳じゃないけど、鎮守府放棄に関しても決断しないとかもだし……)

 

真壁「鳴上君の様な対抗手段がある場合は兎も角、現状どの鎮守府も非常に危険な状態ね」

 

天龍「そーいや、八十神鎮守府以外にシャドウの襲撃が無かったのは、何でだろうな?」

 

真壁「それに関しては、何とも言えないわね……」ウーン

 

漣「鳴上提督目当てだったりて? ペルソナとか使えますしおすし?」

 

天龍「……ありえなくはない。けど決定打としては弱い気がする」

 

天龍「……全っ然わかんねー!」ウガー

 

響「うん、分からない事ばっかりだ」

 

真壁「最後に現れたあの深海棲艦の艦隊も気になります。横須賀で色々話さないといけませんね……」

 

真壁「……後これとか、はい」スッ

 

漣「何です? ……これをどうしろと」

 

真壁「装備しないと、意味がないわね?」

 

漣「……何でですか」スチャ

 

漣「……ご主人様」E:鼻眼鏡

 

天龍「ブッフォ!」(吹き出し)

 

響「……」プイ

 

漣「オォイ響ィ! なぜ顔を背けるゥ!」

 

漣「コッチヲミロ!」グイ

 

響「……! っぷ、ぷふ……!」(吹き出し)

 

響「は、反則……! それは反則だから……!」

 

真壁(……運転中だし、私は見ないようにしなきゃね)

 

―――

 

妖精s「ちんじゅふひがいほーこくです」フヨフヨ

 

夕立「で、こっちが艦隊の被害報告書っぽい」

 

鳴上「ありがとう」ピラ

 

>先の戦闘の後、真壁提督達は横須賀の二人を連れて、車で去っていった

 横須賀へ向かい、今回の件も含めて話し合いを進めるそうだ

 

>一方で八十神鎮守府やその所属艦娘は、大きな被害を受けていた……

 

鳴上「流れ弾多数、鎮守府への被害有り……」

 

>味方への誤射は無かったが、鎮守府への被害は流石に防ぎきれなかった

 主にシャドウの攻撃が、鎮守府の壁や堤防などを破壊してしまったらしい……

 

>工廠などにも被害が出ているようだ

 後で詳しい話を聞いておこう……

 

鳴上「で、こっちが……」

 

>此方の艦隊被害に関する報告書だ

 

>八十神鎮守府、第一艦隊

 小破: 長門 夕立

 中破: 吹雪 鈴谷

 大破: 球磨

 

 続き、横須賀鎮守府所属艦娘二名

 小破: 天龍 響

 

 続き、舞鶴鎮守府所属艦娘艦娘一名

 中破: 漣

 

>被害の大きい球磨から順に、入渠ドックの使用をするよう指示している

 鎮守府の資源は出撃分の消費を含めて、本当に僅かしか残らないだろう……

 

>このまま霧が晴れることを祈るのみだ……

 

夕立「提督さんは大丈夫? 痛いとこ無いっぽい?」

 

鳴上「ん、ああ……、これ位なら……」

 

>自分にも目立った外傷はない

 ……が、あくまでも目立たないだけだ

 

>ペルソナによる戦闘は、どうやらペルソナのダメージが自身にフィードバックするようだ

 ペルソナが受けた傷は体に残ることはない。だが、痛みはしっかりと体に残っている

 

夕立「無理してない? 大丈夫っぽい?」

 

鳴上「俺は大丈夫、それに後でしっかり休むから」

 

夕立「……ぽい」シュン

 

鳴上「……落ち込むことなんてないさ。頑張ったよ、皆」

 

>皆の力が無ければ、八十神鎮守府は陥落していたかもしれない

 そう思うと、素直に喜べはしないが、今回の結果は十分なほど良い結果なのだ

 

夕立「……夕立、もっと強くなる! 強くなって、提督さんがケガしないように頑張るっぽい!」

 

鳴上「ああ、一緒に強くなろう」ニコ

 

>とは言っても、当分出撃はできないだろう……

 修練を積むには訓練の方法を考えないといけない

 

>……ところで、何故夕立が報告書を?

 

夕立「吹雪ちゃんが入渠中だから、渡せる分だけ夕立に任されたっぽい」

 

夕立「夕立は損傷が少なかったから、入渠は後回しにしてもらったの」

 

鳴上「なるほど、……皆の様子はどうだった?」

 

夕立「……うーん」

 

―――

 

鈴谷「ふい~……」ザプーン

 

球磨「あ゛~……、生き返るク゛マ゛ァ~……」ザプーン

 

鈴谷「大丈夫~? ……こことか」ツン

 

球磨「い゛っ!? き、傷口は突くなクマ!」

 

吹雪「はぁ……、大変だったなぁ……」チャプン

 

明石「皆さん、入渠ドックのお湯加減は大丈夫ですか?」

 

球磨「だいじょぶクマ、極楽クマ~」

 

明石「では私は離れますので、何かあれば妖精さんにお願いします!」スタタ……

 

吹雪「……忙しそうですね」

 

鈴谷「私らが出来ない事、明石さんが奮闘してるみたいだねぇ」

 

鈴谷「小破組もまだ動けるって言って色々やってくれてるみたいだし……、凄いね」

 

吹雪「本当に頭が上がりませんね。早く回復してお手伝いしたいんですけど……」

 

球磨「焦ってもどうにもならんクマ。肩まで浸かってのんびりしとくクマ」

 

吹雪「ですね、ガマンガマン……」

 

鈴谷「……二人とも、何機落とした?」

 

球磨「……確認出来たのは一機クマ」

 

吹雪「私も一機です。と言っても砲撃が入り乱れてましたから、確実とは言えないですけど……」

 

鈴谷「私は確認取れずでスコア無し、当ててはいたんだけどなぁ……」

 

吹雪「今回の殆どの戦果は、司令官と横須賀の二人が上げてましたね」

 

鈴谷「提督が戦果上げるって字面には頭痛がするけど、実際そうだったよね……」

 

球磨「半数は提督が蹴散らしたクマ、その上で提督自身は傷一つなかったクマ」

 

鈴谷「ペルソナ? は攻撃受けてたよね?」

 

球磨「そうクマ、でもペルソナにも傷はなかったはずクマ」

 

鈴谷「それって無敵ってこと? ……ヤバくない?」

 

吹雪「さ、さすがに無敵ではないと思いますけど……」

 

球磨「でも矢鱈強かったのはこの目で見たクマ」

 

鈴谷「だねー……このままだと私達居る意味が無くなっちゃうかも」

 

鈴谷「……なーんて、ね?」

 

吹雪・球磨「……」

 

鈴谷「アハハ……、冗談だって……、それに私達は出来る事やってくしかないじゃん?」

 

球磨「この雰囲気にした本人がそれ言うクマ?」

 

鈴谷「わ、悪かったって……」

 

吹雪「暫くは資源回復に努めて、その間にシャドウへの対策が出来れば直良し……という感じになりそうですね」

 

球磨「球磨達も訓練して強くなるクマ!」フンス

 

鈴谷「あの眼鏡とかもあれば便利かもだね」

 

吹雪「ですね、色々考えておかないと……」

 

―――

 

大淀「―――、――」

 

長門「――、――――――」

 

>工廠の被害を見に夕立とやってきたが、何やら話し込んでいるようだ

 

大淀「……工廠の復旧状況はどう?」

 

明石「あまり芳しくないです。というのも……」

 

工廠妖精s「ぐえー……」

 

工廠妖精s「あー……」

 

長門「どうしたのだこれは……」

 

明石「先程の戦闘でこんな感じなんです。それで復旧作業自体、私しか動けてなくて……」

 

工廠妖精s「われわれつかれました」

 

工廠妖精s「あぶないものをひなんさせました」

 

工廠妖精s「でもここはあなぼこだらけになったます……」

 

大淀「なったます……?」

 

明石「元気がないというか、生気がないというか……」

 

鳴上「皆お疲れ様」

 

大淀「提督、其方こそお疲れ様です」

 

>妖精さんが地べたに溶けている……

 

鳴上「……大丈夫なのか?」

 

工廠妖精s「おー、てちおくさん……」

 

>てちおくさん……?

 

工廠妖精s「しんでしまうとはなさけない……」

 

鳴上「死んでないぞ」

 

夕立「こんな状態でも相変わらずっぽい……」

 

長門「妖精さん達がこの様子では、確かに復旧はままならないだろうな……」

 

>鎮守府内で妖精さんは、所謂作業員の役割を果たしている

 人的リソースが無い状態では、復旧作業を始められないだろう……

 

>どうしたものか……

 

夕立「妖精さんも元気ないっぽい? どうすればいい?」

 

工廠妖精s「あなぼこ」

 

明石「屋根とか壁とか、穴開いてますね……」

 

夕立「穴が嫌なの?」

 

工廠妖精s「きりがはいってくる」

 

工廠妖精s「きりきりまい」

 

工廠妖精s「ぎりぎりあい」

 

>意識が溶けている……

 

>妖精さんが元気がないのは霧が原因なのだろうか

 だとすれば霧が晴れるまでは、霧の中の妖精さんは行動出来ないという事になる

 

大淀「でも、通信室や食事処の妖精さんは元気でしたね?」

 

鳴上「……」ウーム

 

>霧が晴れるまでの間、復旧作業は中断するべきだろう

 工廠の復旧が遅れた場合の損失は、どれぐらいあるのだろうか?

 

明石「資源の自然回復が滞ります。それに新たに資源を入手しても、管理する妖精さんがこれでは……」

 

長門「後は……今は論外だが、当然建造も出来なくなる。それに今回の損傷した我々の艤装修理は……」

 

明石「あぁそっちは大丈夫です! 私が何とかやっておきますので」

 

明石「ですけど私だけで作業しますから、時間は掛かると思ってください……」

 

長門「……というわけだ」

 

>八方塞がりとはこういう事か……

 

>恐らく霧が出ている間に壁や屋根の修理をしても、霧が出ている間には終わらないだろう

 

>どうやら本格的に何もできない状態の様だ……

 

大淀「上層部と連絡を取ってみます。何か支援が受けられるかもしれませんし……」

 

鳴上「分かった」

 

夕立「長門さん入渠まだっぽい? 大丈夫?」

 

長門「それを言うなら夕立もだろう。……そうだな」

 

長門「……初陣がこんな形で終わるとは考えもしなかったが、一先ずは休息か」

 

鳴上「そうしてくれ、有難う二人とも」

 

長門「……有難う、か」

 

長門「礼を言うのは此方の方だ。それにペルソナというのも見ることが出来た」

 

夕立「ぽい! すっごくカッコよかった!」

 

長門「現状打つ手が無い以上、提督に頼ることになりそうだ。その時は宜しく頼みたい」

 

鳴上「……勿論!」ニコ

 

>その後少し状況整理の話し合いを進めた後、長門と夕立は入渠ドックへ向かった……

 

明石「……ところで提督」

 

鳴上「うん?」

 

明石「この提督が使ってた艤装、どうやって弄ればいいんです?」

 

鳴上「俺に聞くのか!?」

 

明石「だってわかんないんですもん! 完全オーダーメイドじゃないですかー!」

 

大淀「損傷は無い様に見えますけど?」

 

明石「損傷を受けた時に手入れ出来ないと困るじゃないですか!」

 

>目を輝かせて反論する明石

 恐らく理由はそれだけではないのだろう……

 

明石「どうすればいいかな……。私達と同じような感じですし、勘でイケるかな……?」

 

>不安が募る……




この辺りから、ある程度シナリオ内の日数を、間隔開けたりしながら書こうかなと考えております
数日後……とか挟んだりするかもですが、シナリオ破綻しない程度にするつもりです
当初は毎日描写しようと思ってたりしたんですが、ネタが足りなくなりそうなので……

さて今回の話でシャドウの脅威というものが多くの八十鎮所属の艦娘に知れ渡りました
恐怖や不安は周囲へ伝染するものです。心の陰りから生まれるものは……なんでしょうね?

すぐにフラグを回収出来るわけではないですが、こうご期待!


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