うしろのうえはらさん (羽沢ちゅぐみ)
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はじめましてのうえはらさん
週一か多くて3の投稿になります 本当にゆるい感じのになるのであしからず
4月
いよいよ俺も花の高校生活が始まる。新しい友達を作って沢山遊んで、そして彼女を作って絶対に勝ち組になるんだ!
なんて入学するずっと前から意気込んでいた。
「はぁ〜、ねみーよー」
俺はまだピカピカの新しい机に突っ伏して眠気と戦う。春休み気分が抜けないので昨日も結局夜更かししてしまった。寝ようとは思ったけれどいざ布団の中に入ると逆に目が冴えてしまってついつい携帯でkyutubeを見てしまった。
俺の通う新しい高校、羽丘学園は都内でも有数の進学校。偏差値はそこそこ高い方で猛勉強してなんとか受かった。
教室はどこの学校でもあるような普通の教室。黒板の上には一生懸命・文武両道と書かれた額縁が飾られている。これもありふれたキャッチフレーズだ。
教室内にはまだ半分くらいの生徒は来ていない。多分下のクラス分けの書いてある看板を確認しているのだろう。時間もちょうど混み合うくらいの時間なのでそろそろ集団で来るんじゃないかと予想。
「蘭だけ別のクラスか〜......残念だなぁ」
ほらきた。4人組の女の子がぞろぞろと仲良さそうに話しながら教室に入ってきた。中学の時からの知り合いなのだろうか?友達みんな同じ高校に受かるとは珍しい。
4人のうちの2人は俺の後ろの2席に座った。真後ろは髪がピンクの女の子で見た目は結構可愛い部類に入る。髪の両サイドがふわっとしたように見えるからか見た目全体的にふわふわとした印象。その後ろには髪の長い女子、赤い髪でロックバンドでもやっていそうなかっこいい系の印象。男って言ってももしかしたら信じてしまうかもしれない。
そして4人のうちの1人は俺の目の前の席、白髪で後ろの2人に比べたらちょっと髪が短い。そしてその手にはメロンパン。昼休みでもないというのにパクパクと食べている。
最後の一人は少し離れたところの席に座った。見た目は幼さを残した美少女。正直ちょっと見とれてしまった。不安そうにキョロキョロと周りを見回している所も可愛い。
それから特に何事もなく入学式が終わり、教室へ戻ってきた。
(あ〜...疲れた、話聞くのだりぃ〜)
くでーっと机に寝そべり体の力を抜く。校長の話がめちゃくちゃ長く、姿勢を崩さずに聞くのにかなり体力を消耗してしまった。
「ねえねえ、きみきみ」
トントン、と肩を軽く叩かれた。俺が振り向くとピンク髪の女子の顔がすぐ近くにあって咄嗟に身を引く。
「あ、ごめんごめん。ほら、せっかく前後の席になったのに話をしないのもあれだと思ってさ。私、上原ひまり、君は?」
「俺は、イルダ・赤城。親がハーフでこんな名前だけどれっきとした日本人だから」
「赤城くんね!かっこいい名前〜!」
上原ひまりはパッと目を輝かせて俺の顔を見る。あまり人にジロジロ見られるのは好きじゃないから顔を逸らす。
「私のことはひまりって呼んで!前のモカと私の後ろの巴、あとあっちのつぐとは私たち幼馴染なんだ〜!」
「どうも〜モカちゃんでーす」
「うっす!よろしくな!」
聞いてもないことをペラペラとひまりは喋る。モカとかいう子は戻ってきた瞬間からまたフランスパンを食べ始めていた、何個あるのだろうか。巴という子はなんというか、かなり印象通りだ。とりあえず俺も挨拶を返しておいた。
「あともう1人別のクラスにも幼馴染の子がいるんだけどまた後で紹介するよ!あ、あとねあとね......」
俺の入る隙を与えないくらいべらべらとひまりは喋る。
なるほど、どうやらひまりはお喋りらしい。俺は仕方なしにひまりの話を相槌を打ちつつ聞いてやった。話は担任が来るまで続いた。
こうして花の高校生活がスタートした。
ひまりちゃんを好きになろうぷろじぇくと
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おひるやすみとうえはらさん
4月 2週目
「ふぅ......やっと終わった」
今日も嫌いな古典の授業が終わり待望の昼休み。本日のお昼はコンビニでサンドイッチとおにぎりを買ったので小説でも読みながら食す。
入学から1週間が過ぎたがすぐに学校には慣れた。特別仲の良い友達がいるわけでは無いがクラスにもそこそこ馴染めてはいる方だろう。
「ねねね、あかぎ!一緒にご飯食べよっ!」
あぁ、そういや特別俺に喋りかけてくる女子なら居た、ひまりだ。いつもなら幼馴染達と食堂で弁当買って食べてるのに今日は珍しく1人で教室にいる。
「いつものメンツで食べないのか?」
「今日は赤城と話したくてみんなとは別行動だよ〜、お弁当も作ってきたんだ〜」
そう言って取り出したのは女の子らしく黄色いひまわりのロゴがプリントされたプラスチックのお弁当箱。中は春巻きや卵焼きといった普通のメニューだ。
「なんだ、ハブられたのか?」
「ちーがーうー!みんながそんな酷いことするわけないもん!」
ぷんぷんと怒るひまりだが女の子だし黙ってれば可愛い顔をしてるので特に怖くはない。
「はいはい、そんな般若みたいな顔するな、可愛い顔が台無しだぞ」
8割冗談交じりな言葉を吐きながらひまりの頭を撫でる。ひまりは顔を赤くして照れながら、
「わ、わかればいいのよわかれば......」
なんて事を言ってる。チョロいやつだ。
「そんな事より私とお話しようよー!赤城いっつも無視するんだもん!」
「当たり前だ、授業中に後ろから構ってほしそうにシャーペンで背中をつんつんすんな。制服に穴が空いたらどうすんだ」
「そんなことで穴なんて空かないよ〜!」
ひまりは嫌いな授業の時や暇な時など、ことある事に俺の背中を軽く叩いたりつんつんしたりして遊んでいる。正直集中出来ないからやめてほしいが多分言っても聞かないんだろうな。
「そんなことよりもさっさと食べないと時間無くなっちまうぜ、あ、卵焼き貰うな」
「えっ、ちょっとぉ!?」
油断しているうちにひまりの卵焼きを1つ取って頬張る。若干甘過ぎるような気もするが味は普通に美味しい。
「ふむふむ、美味いなこれ」
「ちょっとー!勝手に取ったんだから私にも何かちょーだい!」
「ほれ」
俺は手に持ってた食べかけのサンドイッチを近づけるとなんの躊躇いもなくひまりはパクッとひと口食べた。しかもその一口が割とでかい。
「ん〜!美味しい〜!」
「そうかそうか、ならハンバーグ貰うな」
次はハンバーグを割り箸で一口サイズに切り取って食べる。ふむ、これまた柔らかくハンバーグにしてはふわふわとしていて美味しい。これは、
「豆腐ハンバーグ?」
「正解!ってそうじゃなくて勝手に取らないでぇー!」
「悪い悪い、もう取らないから」
箸を自分の机に置くと自分のサンドイッチを食べ進める。こうして食べ比べてみるとひまりの弁当の方が美味しく感じるな。
「そういえばさ、赤城は部活入らないの?」
もしゃもしゃと弁当のレタスを食べながらひまりは聞いてくる。せめて物を飲み込んでから話せよと思う。
「俺は入らねーよ、部活とか興味無いしめんどい」
「えー、入ってみたら楽しいかもしれないよ?」
「この高校の野球部が強けりゃ入ったかもしれないけどここ公立だからそこまで強くないんだよな、勝てるとこじゃねーとやらない」
「赤城野球やってたの?」
「ああ、小学生の時からやってた」
プロ野球選手に憧れて、というありふれた理由で中学までずっと頑張ってきた。ただ親に私立には行かせられないと言われたので俺の野球人生は短くも終了した。ちなみにキャッチャーで3番を打っていたので実力はそこそこあったと自負している。
「えー、入りなよー勿体ない」
「いいんだよ、それにお前だって入ってないじゃねーか」
「私は......だってほら、不器用だし運動苦手だから入れそうな所がないっていうか......」
「入ってみたら楽しーかもしれないぜ?」
「心がこもってないー!」
わーわーと騒がしい奴だ。リアクションがいちいちオーバーなので余計うるさく感じるが特に悪い気はしない。むしろもうちょっと弄りたくなる。しかし緩急というのは大事なのでたまにはいいことを言ってご機嫌をとるとしよう。
「まあ、自分が楽しいって思うことをやればいいんじゃないか?」
ポンッとひまりの頭に手を置いてそのまま撫でる。ちょうどいい位置に頭があるためかなり撫でやすい。みるみるうちにひまりの顔が真っ赤に染まっていき、そのまま顔を隠すようにうつ伏せになってしまった。
「そんなの反則だよ......」
何かひまりが呟いたような気がしたが俺の耳には届かなかった。ただひまりが照れ隠しで何か言ったのだろうと勝手に判断して俺はひまりの頭を撫でつつおにぎりを食べ続けた。
<<10分後>>
昼ごはんを食べ終えて一息つく。時間はまだもう15分くらい残っていてもうちょいゆっくりできそうだ。
後ろのひまりさんはというと弁当箱も片付けずに俺に頭を撫で続けられたまま、すやすやと寝息をたてて寝ている。
「仕方ないな......」
流石に弁当箱が落ちそうになっているので蓋をしてひまりのバッグの中にしまっておく。中身を見ると怒られそうなので特に何も見ていない。そもそも何が入ってるかなんて興味も無い。
無防備にも顔を横にして寝ているので寝顔が俺には丸見えだ。幸いにも窓際で窓は開けてないので廊下の外には見えていない。
こうして見ると本当に黙ってれば可愛いと思う。騒がしい奴だが寝顔を眺めているとその可愛さに少し胸が高鳴る。
(ほっぺたが饅頭みたいで柔らかそうだな)
試しに優しくつまんでみる。ぷにぷにとしていてとても柔らかい。そのまま揉んだり撫で回したりしてその柔らかいほっぺたで時間を潰す。よほど鈍いのか、単に昨夜寝ていないだけなのかわからないがひまりは起きる様子もなくむしろ気持ちよさそうに寝ている。
ひまりが目を覚ますとその傍には学校一顔が怖いと評判の数学の教師。
「上原ァ〜、最後に何か言うことは?」
「あぅ......お、おはようございます......?ふにゃあ!?」
教科書の硬い部分が頭にクリーンヒットしてひまりのお昼休みは終わりを告げた。
ひまりちゃんをだいすきになろうぷろじぇくと
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恋する乙女のうえはらさん
4月 3週目
早くもひまりと付き合っているんじゃないかという噂が広まってしまっていた。誰が言い出したのかは知らないがとにかく毎日他の男共から冷やかされたりしてうんざりだ。
当の本人はというと女子から囲まれて色々と質問攻めにあっているようだ。
「イルダくんって何が好きなの!?」
「本当に付き合ってるの!?」
「モカちゃんのメロンパンは〜?」
「もうデート行ったって本当!?」
「キスはもう済ませたの!?」
何か変なのが混じってた気がするが一度にこう質問されてはアホなひまりの頭がもつはずが無い。
「ち、ち、ち...違うからぁ〜!そんなの全部誤解だよ〜!!!!」
最近は毎日こんな感じだ。そのためひまりとはここ数日あまり話せていない。
別にそれがどうとかでは無いがちょっと寂しい気もする。まあ授業中に邪魔されないだけマシだとは思うが。
結局この日も会話を交わすことなく放課後を迎えた。
部活も入らなかったので家に帰ったら何をするか考えつつ帰り支度を進めていると、後ろから久しぶりに肩をトントンとつつかれる。
「赤城.....その、今日一緒に帰っちゃダメ...かな?」
上目遣いでこちらに視線を向けているひまりはなんとも可愛いものだった。一応断っておくが俺も男だ、いくら相手がひまりだからといってもそういう言動を取られてドキッとしないわけない。
「ああ、いいよ。また冷やかされる前に行こうか」
俺とひまりはクラスの皆に気づかれる前にさっとバッグを持つと教室を後にした。幸い巴とモカ以外には気づかれなかったようで何事もなく校門の所まで出ることができた。ひまりは膝に手をついてゼーハーゼーハー言いながら肩で息をしている。そういえば運動音痴だったのをすっかり忘れていた。
「は...速いよ...!死ぬ...」
「このくらいで何息切らしてんだよ、とりあえず止まってると余計きつくなるから歩くぞ」
ひまりの腕を引いて近くの自販機のところまで連れていく。150円のポカリを購入して蓋を緩めてひまりに渡した。
「あ、ありがとう...」
ごくごくとラッパ飲みでポカリを飲んで少しは落ち着いたらしく、笑顔でありがとうと言ってきた。なんだか今日は妙にひまりの事を意識してしまう、今も胸が高鳴ってまともに視線を合わせられない。
「とりあえず帰るぞ、そういやひまりの家はどの辺なんだ?」
思えばひまりがどの辺に住んでるのかとか家族のことはまだ聞いたことがなかった。俺も教えてないのでおあいこだが自分だけ知っていいものなのだろうか。
「んー......教えてもいいけど、赤城の家に行ってもいいかな?」
「はい?何を言ってんだ?」
「だからー、赤城の家に行ってもいいなら教えてあげるー」
突然何を言い出すんだこの女の子は。女子が男子の家に行くなんて、しかも今の時間親はまだ仕事中で兄弟はいないので実質2人きりの状況になる。恋人同士ならまだしもそれはちょっと不味いだろう。
「いや、何で俺の家?」
「だって私だけが教えるなんてふこーへーだよ!先に赤城の家に行かせてくれたら私だって教えてあげる!」
「いやいや、それなら俺だって教えるだけ...」
「やだ!私は赤城の家に行きたい!」
グイッと顔を近づけて頬を膨らませる。ちょうど髪の毛あたりが鼻の高さにあるので柔らかくて甘いシャンプーの匂いが鼻についた。
「行きたい行きたいー!」
「子どもかよ......」
<<それからどうした>>
それから15分くらいひまりにわがままを言われ、結局家に連れてきてしまった。
俺の家は2階建てで、俺の部屋は2階の1番広い部屋だ。テレビ、ベッド、タンス、本棚と置いてあるものはごく普通の物ばかりだがドアの横に飾られたアスチルベの花が申し訳程度に部屋を彩っていた。
「わあー!すごーい、ひろーい!」
ひまりは部屋に入るなり子どものように目をキラキラとさせてはしゃいでいる。まったく、こちらはひまりが帰るより前に親が帰ってこないか心配しているというのに呑気なものだ。
「あんま散らかしてくれるなよ、掃除すんの面倒だから」
「わかってるー、けどもう少し散らかってると思ったから意外!綺麗好きなんだね」
部屋を常に綺麗に保つのは普通だと思うが、むしろ汚い部屋になど住みたくもない。
俺は着替える為に部屋着をタンスから取り出した。ただこの部屋にはひまりがいるわけでまさか目の前で服を脱ぐのは躊躇われる。
「あっちで着替えてくるからちょっと待ってろ、ついでに飲み物も取ってくるから」
「うん!ありがとうー」
1階のリビングで着替えることにした。俺はサッとリビングで着替え、来客用のトレイにお茶とコップを乗せると部屋に戻る。お菓子も何か持っていきたかったがあいにく今はストックが無かったので今回は諦めた。ひまりは本棚に置いてある本をじーっと眺めている、野球漫画と適当な小説ばかりで面白くないと思うが......
「ひまり、お茶置いとくぞ」
「うん、ありがとう。ねーねー、赤城って一人っ子?」
「ああ、兄妹はいない。親も大抵7時過ぎまで帰ってこないし暇を持て余さないようにテレビとか置いてんだ」
1人は気楽だがたまに弟や妹がいたらどうなんだろう、と考えたことはある。やはり憧れは持つものだ。
「部屋にテレビあるのはいいなー、羨ましい」
「そうか?あっても特になにか見るようなもの無いだろ」
「あるよ〜!月9とかお料理番組とかさ!」
それはお前の個人的な趣味だろ、と心の中でツッコミをいれる。俺は野球以外はあまり見てこなかったのでそういったのには興味はない。強いて言うならクイズ番組はちょいちょい見ているくらいだ。
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しばらくひまりと話し込み、1時間くらいが経った。俺たちはベッドに腰掛けて割といい雰囲気で話をしていた。
「それでねー、モカが蘭にねー」
話をしている、というよりはひまりのマシンガントークに相槌を打ちながら聞いてあげているというのが正しいかもしれない。一度喋り出すとポンポンと話が出てきて止まらなくなる。ある意味ではそこがひまりの良いところかもしれない。
俺の心情としてはこうして2人きりなのを意識してしまいどうも落ち着かない。外面は話を聞いているかのように振舞ってはいるが内心かなり緊張していて胸はドキドキしっぱなしだ。ただ、ずっとひまりの右手が俺の左手を触ってきてるのでもしかしたら内心では本人も意識しているかもしれない。
「はー、もうほんとさ、みんな面白いよねー」
「そうだな、けどひまりが1番面白いんじゃないのか?空気読めないし」
「それは関係ないー!もー、赤城のいじわるー」
ドサッとベッドの上で仰向けに倒れ込む。ひまりは制服のブレザーは脱いでいるので今はブラウスだけを来ている状態、なのでどうしても視線は胸元の2つの豊満な膨らみへといってしまう。
(こいつ、こんな胸デカかったんだな......)
あまり意識しないようにしてきたがこんな無防備な状態でベッドに横たわれると意識するなという方が無理な話だ。まじまじと見つめているとひまりもそれに気づいたのか顔を赤らめながら腕で顔を隠す。俺もサッと視線を逸らすが時既に遅し、部屋にはなんとも気まずい空気が流れる。
「赤城.....いいよ?」
ドクンっ、と今日1番の動悸、喉から心臓が飛び出てくるんじゃないかと思うくらい胸がドクンっドクンっと高鳴っている。
「わ...私だって女の子だもん......好きな人と2人きりで、期待しないわけないよ......」
いつもの元気な声とは違う、儚くて恥じらいを帯びた弱々しい声。ひまりは顔を赤く染めあげ俺に視線を送る。このまま動いたらもう後には戻れないだろう。
「い、いいのかよ......俺で」
「赤城じゃないと嫌......」
俺はひまりの上に覆い被さるように重なる。ひまりの顔とは数センチしかなくお互いに息は荒い、もう俺の理性は崩壊寸前だった。
「ひまり、好きだ...俺の恋人に、なってくれるか?」
人生で初めての告白。俺の言葉に、彼女は目から一筋の涙を流して小さく頷いた。自然と顔が更に近づいて唇が重なる。
彼女の唇は暖かく、とても柔らかいものだった。
そこからはもう理性なんてものは無い。お互い裸で初めて愛を求めあった。
終わったらどっと疲れに襲われる。ひまりは既に俺の胸の中でスヤスヤと寝息をたてていて、寒くないように布団を被せてやった。初めてできた彼女、そう思うと顔がにやけてしまう。
時計は夜の7時半を回っている。そろそろ親が帰ってくる時間のはずだ。とりあえず服を着て散らかっているひまりの服を畳んでバッグの上に置いてやるとリビングに向かう。
リビングでは、両親がニヤニヤと俺の方を見て、
「お盛んなのはいいけど勉強もちゃんとするのよ」
「赤城、お前もついにそんな歳になったか」
と、全てバレてしまっていた。
ひまりちゃんすきになろうぷろじぇくと
アスチルベの花言葉は、『恋の訪れ』
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スイーツ大好きうえはらさん
4月 4週目
今日もコンビニで買った300円のサンドイッチとおむすびを食べて腹を満たす。昼間はあまり食べない代わりに朝と夜はガッツリ食べるようにしている。運動する機会が減ったので体重だったり体型だったり気にしないとすぐに太ってしまうからだ。
そんな俺の後ろの彼女は何種類かのコンビニで買ったであろうプリンやケーキといった、いわゆるコンビニスイーツを机に並べてパクパク食べている。
「ん〜!!美味しい〜!」
幸せそうにチョコレートケーキを頬張るひまり、この女にはダイエットや体重を気にする、という言葉は無いのか?
「あんま食ってると太るぞ」
「大丈夫だよ!その分運動すれば問題ない問題ない!」
「運動音痴が何言ってんだ、後で太って泣いて後悔しても知らねえからな」
付き合い初めてからわかったがひまりはかなり大食いで、しかも甘い物には特に目がない。彼氏としてはこの先ブクブクと太っていかないか心配なところだ。
「はい赤城、あーん」
ひまりはケーキを切り取り、俺の口元に近づける。別に食べたいなんて言ってないけどな、まあ俺だって甘いのが嫌いなわけではないので食べる。味は普通に美味しい。
「どう?ここのコンビニのケーキ美味しいんだよ〜」
「うん、美味い」
「でしょー!」
笑顔でパクッと頬張る姿はなんとも可愛らしい。一度付き合うとその人への見る目が変わると聞いたことがあるが、割とその通りなのかもしれない。
「お二人さん〜、お昼からアツアツですなぁ〜」
チョココロネ片手にモカは相変わらずのねっとりとした口調、この子もこの子でいつもパン食べてるな。
「モカ〜!みんなと一緒じゃないの?」
「2人の邪魔でもしようと思って〜」
「えぇー!」
いじわるそうにニヤニヤと笑うモカ、ひまりは顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらモカの胸をぽかぽか叩いている。かなり楽しんでいるようだ。
「赤城も何か言ってやってよー!」
こっちに振ってきやがった、ちょっと面白そうだし俺も弄ってみるか。
「ほどほどにしとけよー、まあこれでもひまりは嬉しがってるけどな」
「ひまーそんな趣味があったんだねー」
「ちーーがーーうーー!!!」
バタバタと否定する、確かにこれは面白い遊びだな。なんと言っても可愛いところが見れる、何よりの幸せだ。ただやり過ぎると本気で怒りそうだし注意せねば。
「それはそうとしてー、蘭が最近ひまが来ないって怒ってるよー?彼氏にベッタリなのもわかるけど、たまには私たちともご飯食べようよー」
確かに付き合う少し前くらいからずっと俺とお昼は一緒で幼馴染達の所へは行ってない気がする。というより誰にも言ってないはずなのにもうバレてるのか。
「だってぇ〜!......離れたくないし...((ボソッ)」
「ん〜?だって〜?」
「な、何も無いー!わかった行くからー!」
「おー、じゃあ彼氏さんちょっと愛しのひまを借りて行きますね〜」
「いってらー」
モカに引きずられるようにひまりは幼馴染達の元へ行ってしまった。1人になって少し寂しいが随分と久しぶりな感覚を楽しむとしよう。
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「あっ......!んんっ!あん......!」
2人だけの世界、こうやって肌を重ねるのはもう何回目になるだろう。一心不乱にただ愛する人だけを求めて体を動かす。
いつもの元気な彼女とは違う甘くとろけるような顔、それでいてもっと求めるかのように喘いでる。
やがて快感は絶頂を迎えた。
2回ほどやった後に休憩がてらひまりと横になる。明日は休みなので遅くまで起きていても多少問題ないので彼女と夜更かしの予定だ。
「ねえ赤城、来週は昼休み一緒にお弁当食べれないかも」
「ん?何で?」
「蘭に『彼氏にうつつを抜かすのもいいけど私たちとの時間ももう少し大切にしてよ』って怒られちゃって、ごめんね」
「今日青葉さんが言ってたやつか......わかった、友達は大事にな」
俺とのことも大事だがそのせいでひまりが友達と険悪な関係になるのは少しいただけない。まあ少しの間だけだし我慢するとしよう。
「赤城......」
甘えた猫のような声で、まだもの足りないのか期待するような眼差しをぶつけてくる。まったく、仕方ない奴だ。軽くキスを交わして再び彼女と肌を重ね合った。
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5月
昼休み、今日もコンビニで買ったおむすびとサンドイッチ。
ただ後ろの席に彼女はいない、みんなで食べると別のクラスに行っている。なので久しぶりのぼっち飯だ。
いつも同じものを食べているはずなのに今日はやけに素朴な味に感じる。なんだかあっという間に食べ終わってしまった、気分転換に購買でパンでも買おうかな......。
「はい、これ」
後ろから白い雪のような肌をした腕が俺の前まで伸びてきた。声色も女の子にしては少し低い声、見ると少し大人っぽさを纏った髪に赤いメッシュの入った女の子、ひまりの幼馴染の美竹蘭だ。その手にはシュークリームが握られている。
「サンキュー、みんなは?」
「まだ食べてる...ひまりから渡してきてって、自分で渡せばいいのに......」
なるほど、気の利いた彼女である。シュークリームを受け取って一口頬張る、中はチョコレートクリームで控えめな甘さがとても美味しい。
「悪いな、わざわざ持ってきてもらって、ほいこれ」
俺は一口サイズに取り、蘭の口元にシュークリームを近づける。だが蘭はぷいっとそっぽを向いてしまった。
「いらない、私はそれ持ってきただけだから。それと...赤城くん」
蘭はこっちを向いたかと思うと突然、乱暴にひまりの机を両手で叩いた。ダンッ!!という音が教室に響いて周りのクラスメイトが何事かというような目でこちらに注目した。
「ひまりのこと、私は絶対に認めない!」
そう言い残して去って行った。どうやら、面倒なことになりそうだ......。
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