騎士王、異世界での目覚め (ドードー)
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出現

(ここはどこだろうか?)

 

  一瞬そんな思考がよぎった、しかしよく見るといつものギルドであることがわかる。

 

  今日はユグドラシルというゲームのサービス終了の日であり、今この時既に終了していなければならない。しかし自分は今もここに立っている。凛々しい騎士王の姿で…

 

  違和感を覚えたのはそれだけではない、いつも使っているギルドの部屋見え方が僅かだが確実に違う。光の反射や色合い、雰囲気が明らかに変わっていた、一瞬とはいえこの場所が何処なのかと疑問に思ったのはこれが原因だろう。

 

  アップデートだろうか?、と思ったがサービス終了直前でやることではない、というよりサービスは5分ほど前に終了しているはずだ。

 疑問に思いながらもギルド内を歩き回ろうとして足を踏み出し新たな違和感を覚える。

 

  まるで現実の世界で歩くような感覚である、一歩踏み出したまま自分の右手を持ち上げ握ったり開いたりを繰り返す、あまりにも現実味のある感覚でありゲームの中とは思えない。

 まさか……嫌な予感がする

 

  僅かな恐怖と混乱に言葉も出ず若干パニックぎみに運営にコールしようとするが何故かコントロールパネルから消えている。

 

「どういうことだ!」

 

  声を荒げてはいるが頭の中には冷静な部分があることがしっかりと認識できている。

 

  そして慌てているはずの自分だが何故か冷静に状況を把握し始めている。

 

(おかしい、自分はこれほど冷静沈着な人間ではないと思ったが)

 

  しばらく色々考えたが、とりあえず今出来ることを確認しようという結論になり、ギルド内や自分の身体を確認し直した。

 そうこうして1時間程経ち出た結論は嫌な予感そのままのゲームの世界に来てしまったということだった。

 

  一度状況を理解してしまえば、次は何をすべきか考えを巡らせる。どうやらこの身体もアバターを作る時に考えた設定どうりであり、それは身体だけでなく頭のスペックも高いようだ。

 

  今自分のいるギルドは洞窟型のギルドであり最下層のこの部屋を除けば広大な洞窟となっている。

  そしてその中には下級から最上級のドラゴンで埋め尽くされている。

 その為ドラゴンのダンジョンと言っても差し障りなく最下層を守る自分もドラゴンを混ぜ込んだスピリットという設定であり、まさにドラゴンしか居ないダンジョンである。

 

  とりあえずこのままでは情報が足らなすぎる為小型のワイバーンに外の偵察に行かせることにした。

 

(外の世界もユグドラシルのままであれば状況も把握しやすい)

 

  そう考えたのだが、ワイバーンの視界と繋げて見た景色は自分の知っている景色とは大きく違っていた。

 

(ユグドラシルとは全く違うなこの感じではプレイヤーも私だけの可能性もだいぶ高い。どうする、とりあえず周辺の国から様子を見ていくか)

 

 

 

 

 

 

 

  情報収集を始めたから1週間が経ちある程度のことが分かった。

 このダンジョンから一番近くにあるのが帝国という国でありその他にも国があるということ、そしてこの世界にも人間のほかに亜人がいること。

 

  さらにこのダンジョンの入り口が若干目立つところに出来てしまった為、帝国の冒険者などが調査に来ていることである。

 

  とはいえ、いくらダンジョンに似てるからと言ってダンジョンではなくギルドであり、当然ダンジョンコアなるダンジョンにありがちな弱点もない、むしろ最下層にはこのギルド最強の自分がいる為攻めに来た場合もっとも危険な場所である。

 

(さて、冒険者は男2、女2のよくありそうなパーティーだな、

 初めてこの世界の人間との接触になるかもしれないが最下層であるここまで来れるとはとても思えない。

  かと言ってわざわざ手心加えてまでここに招く意味もなし、か、たかだか冒険者相手にこちらが動く必要はないだろう。死んだらそれまでここは様子見か)

 

 

 

 

「ここが例の洞窟か、思ってたより随分とデカイな」

 

 圧巻といった感じで呟くドーバ

 

「そうだね、突然現れたって聞いたから何かの拍子に崩れて入り口が出てきたのかと思ってたけど、たしかにこの様子だと崩れたというより現れたって感じだね。」

 

 それを聞いたクロアが同意する。

 

「これだけの大きさならワイバーンが出たと言うのもあながち間違いでもなさそうですね」

 

「……そうですね」

 

 後ろの二人も同意する

 

  ここにいる四人は帝国を拠点として活動してる冒険者であり、『銀鋭の剣』と名乗るプラチナ級冒険者である。

  アダマンタイトやオリハルコンなどの化け物級の冒険者を除けば冒険者の中では上位であり、ランクを上げてからプラチナ級として二年ほど活動しているためそれなりにベテランである。

 

  今回の依頼はゴールド級以上を対象にした国からの依頼であり、突如現れた洞窟の調査である。

  本来であればこの程度の調査にゴールド級以上などという条件は付かずカッパー級でなければ特に問題はないはずなのだが、この洞窟からワイバーンが出て来たという情報が入り対象のランクが引き上げられたのだった。

 

  ただの洞窟でただの雑魚モンスターが出てくるのとワイバーンが出てくるのでは大きな違いであり、例え情報通りにワイバーンがいたとしてもしっかりと撃退または撤退出来る条件としてゴールド級以上となっている。

 

  そして今回前の依頼が終わり一段落した後に選んだのがこの依頼である。

  この依頼は飽くまで調査である為無理にモンスターを討伐する必要が無く、例えワイバーンが出て来ても撤退するだけであれば問題ないだろうということで受けることにした。

 

「じゃあ行くか」

 

 リーダーのドーバを先頭に洞窟の中に入る、洞窟の入り口は直径二十メートル程の大きさだったが百メートルも進むと洞窟全体が大きく広がっていて天井は鍾乳洞のような氷柱状の物が垂れ下がっており洞窟の所々にはエメラルド色の鉱石が輝き洞窟全体を薄く照らしている。 まさに人の手が入っていない秘境の様な光景だ。

 

「すげぇ……」

 

「きれい……」

 

「これは……」

 

「…………」

 

  本来ならただの洞窟のはずが鉱石の光加減や洞窟自体の広さもありとても幻想的に映る。

 

  僅かに呆けていたが自分達が何をしに来たのか思い出し再び進み始める。

 

「しかし凄いところだな、人が初めて入る洞窟ってこういうもんなのか?」

 

「どうでしょう、これだけ広大な洞窟自体珍しいのでは?、あの光る鉱石も見た事もありませんし、あの鉱石が取り尽くされてもただの洞窟とは流石に言えないと思いますよ?」

 

 ドーバの疑問にヘドが答える。

 

「それにモンスターの気配を感じないわね、いるのかしら?」

 

「…周囲にモンスターの気配は感じません。ですが洞窟自体がいきなり現れた以上珍しい鉱石の洞窟で終わる、ということはないと私は思います。」

 

「なるほど、確かにねー」

 

  ある程度の緊張感を残し話をしながら歩を進めていく四人、そしてなんだかんだで一キロ弱歩いた頃突然変化が現れる。

 

「…大きなモンスターの気配です!、この速さ多分飛んでます!」

 

  ルーナが叫ぶ、気配察知の得意なルーナが言うのだから間違いはないだろう。

 

  すぐさまヘドはドーバの横に移動し後ろの二人を守る様に陣形を取る、ドーバも盾を前に突き出し臨戦態勢を取り、ルーナはパーティーの身体強化の魔法の準備、クロアは攻撃魔法の準備にかかる。

 

  そして数秒後それは姿を現す、ワイバーンである。

 

「…なっ!!」

 

  ただそのワイバーンは一般的な物より最低でも二倍大きくとても最下級の竜には見えない。

 

  そもそもワイバーン自体とても強力なモンスターであり、下級と言ってもそれはドラゴンという強靭な種族の中での話で、モンスターという枠組みの中では間違いなく中級以上の実力を持つ、しかも通常より大きいとなると上級に届きかねない。

 

「やばいっ、撤退するぞ!ルーナ!」

 

  まずい!撤退しなければ、この一体ならまだしも二体三体出て来たら間違いなく全滅する一瞬でその思考にいたりドーバは叫ぶ

 

「了解です!クイック・マーチ!」

 

 ルーナもドーバの考えを読み取り移動速度上昇の魔法を仲間にかける。

 

「ショック・ウェーブ!」

 

  ルーナが支援してる間にも近づいてくるワイバーンに対してクロアが大気を打ち出す攻撃魔法を発動させる。

  しかしワイバーンはまったく意に返さず地面を砕く勢いでパーティーの前に着地する、その衝撃で地面が揺れ風圧が襲うまるで通常の竜種と戦う様な感覚にさせる。

 

 ギガァァァァァァーーーー

 

 そしてワイバーンの咆哮

 

  恐怖を駆り立てる咆哮になんとか受けきり牽制のための一撃を入れる。

 

「うおぉぉぉ!」

 

  振るった剣の刃がワイバーンの鎧のような鱗に打ちつけるが甲高い音を鳴らすだけで肉まで刃が通らない

 

 一撃二撃と入れるが弾かれる、とてもじゃないがまともな傷を与えられない。

 

(ダメかっ、なら攻撃をなんとかいなしながら撤退するしかない)

 

  ワイバーンは腕を持ち上げ叩きつけたり、頭突き混じりの噛みつきなどで攻撃してくる。

 

「マジック・アロー!」

 

  そこへクロアの魔法の矢が飛びワイバーンの攻撃の出鼻を挫く、魔法自体の威力は低いがその消費量と速射性に優れている為後退しながら打ち込むのには最適である。

  クロアの支援もありヘドもドーバもなんとか攻撃を受け流せている。

 ルーナも回復と移動支援の魔法をかけているため比較的軽傷で入り口付近の洞窟が広くなる手前まで来れた。

  何故かワイバーンの攻撃頻度も下がっているためこのままなら撤退できそうだと思ったところでふと疑問に思った。

 

  さっきまで進んでいた奥の方から何やら此方に飛んで来ているのが分かる。

 

「…はっ?」

 

  それが大量のワイバーンの群れだと気づいた時には唖然とした。

 

(死んだか?)

 

 そう思った、いや悟ったと言った方が正しいかも知れない。

  しかし洞窟の入り口近くまで来るとさっきまで戦っていたワイバーンも含めてワイバーン達は洞窟の奥に戻り始めた。

  その後五分もせずに最初に見た幻想的な景色に戻っていた。

 

「…はぁ…助かった…のか?」

 

「…そうらしいですね」

 

 ドーバにヘドが答える。

 

「ねぇ、さっきの群れ全部ワイバーンだったよね?」

 

「ああ、多分そうだろう、というかあんな事ってあんのか」

 

「……ワイバーンがあんな風に群れをつくるなんて初めて知りました」

 

  緊張が解けたのかクロアとルーナも話し始める。

 

「洞窟の奥までは全然だがこれだけでも大きな情報だろう、この依頼はここで打ち切りだ問題ないよな?」

 

「当然です、報酬より命が惜しい」

 

「賛成よ」

 

「…賛成」

 

  こうして冒険者達は洞窟から出て行った。

 

 

 

 

 

 



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観察

見直すと手直ししたくなって話が進まない。
上手く話を転がせる人は凄いですね。


「ご報告申し上げます」

 

  秘書官ロウネ・ヴァミリネンが話しかけているのはバハルス帝国現皇帝のジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。

 

  ここはバハルス帝国帝城の一室、眉目秀麗と言う言葉が似合う青年ジルクニフは椅子に腰掛けたまま窓の外に視線を向けながら秘書官の報告を聞く

 

「北部に出現した洞窟について、冒険者からの情報ですが強力なモンスター、主に竜種の巣の様な状態とのことです。今回オリハルコン、プラチナ、ゴールド級の各一パーティーが依頼を受けましたがオリハルコンとプラチナ級からは通常の倍ほどあるワイバーンの群れ、少なくとも五十体ほどの群れの確認と、オリハルコン級から完全な上位竜の確認が取れております。ゴールド級の冒険者は現在まで帰還していないとのことです」

 

「また厄介な問題が出てきたな」

 

  ジルクニフは目を瞑りながら呟く

 

「また洞窟内部には未発見の鉱石、内部の広さは非常に広大であり最下層までどれほどあるか確認出来なかったとのことです。」

 

「中のトカゲどもを殺すことができれば、広大な土地と未知の資源を得られるかも知れないが、藪をつついて出てくるのが竜である以上無闇とつつけんか」

 

  自らは鮮血帝などと呼ばれ無能な貴族を片っ端から処刑していった皇帝ではあるが、それは所詮人間相手の話せめて話の通じる相手ならともかく、いや仮に通じても価値観が違い過ぎるかと考え直す。

 

「取り敢えずその洞窟のある近くの町にある程度の軍を配備しておけ、いつ町を襲い始めるは分からん」

 

「それについて報告にあった事なのですが、洞窟の入り口付近また外では冒険者を襲わないとの報告がオリハルコン、プラチナ級両方の冒険者から来ています」

 

「なに?、……町にも被害は出てないのか?」

 

「今のところ報告されていません」

 

  ジルクニフはしばらく沈黙し、言葉を発する

 

「…そうか、ならその洞窟を管理出来るように準備を進めろ」

 

「管理ですか?」

 

「管理と言っても大仰なものでは無い、無闇に人を近づけぬように整備し、入る人間もこちらで管理出来る様にするだけだ。鉱石はともかく竜種の素材は高価だからな、馬鹿な貴族が欲をかいて町が潰れたら笑えん」

 

「了解しました」

 

「それと竜どもが洞窟の外と中で明確に殺す対象を選んでいるのか確認しろ、死刑囚を使ってかまわん」

 

「…分かりました、そちらも進めておきます」

 

(さて、良くも悪くも話が出来る存在がいる可能性が出てきた、ただ竜どもの縄張りというだけなら簡単な話だが外で人間を襲わない理由にならない、竜を操れる存在、そういう存在がいるのなら何か意図があるはず、……考え過ぎか?、今のままでは何とも言えんな)

 

「じい、どう思う?」

 

  ジルクニフは目の前に腰掛けている同じく話を聞いていたであろう老人に話しかける。

  勿論ここにいる以上ただの老人である訳がなくこの人物こそ帝国が世界に誇る偉大な魔法使いにして英雄を超えた逸脱者の一人、フールーダ・パラダインである。

  この者が与えて来た叡智は帝国の発展に大きく影響し、一旦戦闘となれば単騎で軍をも凌ぐ実力者であり、皇帝の数少ない相談相手でもある。

 

「さてさてどうでしょうな?実際に見てもいないのでなんとも言えませんが、その洞窟が特殊な環境下にあるのは確かでしょうな」

 

「特殊な環境下?どういう意味だ?」

 

「中は竜の巣のようだとの事でしたが、それはつまり竜しかいない環境だったのかもしれませんな」

 

「なるほど、人間を初めて見た可能性もある更に言えば人間をエサと認識していない……と言うのは流石にないと思うがない訳ではない。その場合これから人間を襲い始める事になるな」

 

「通常種より大きいのも共食いで育ったのが原因かもしれませんし、もしかしたらこのまま共食いしかしないかもしれませんな」

 

「もしそうなら尚更入る者を制限しなければならないな、あまり人間の味を教えるわけにはいかん」

 

「もう一つの可能性は陛下も考えた可能性でしょう。もっとも、そのような存在があり得るかと言われると可能性上あり得ると言えるだけでしょうが。ですが先日私と同等以上の魔法詠唱者の存在が見つかったばかりですので案外いるかもしれませんな」

 

  フールーダは実に楽しそうにもう一つの可能性について話す。

  自分と同等以上の魔法詠唱者がいるかもしれないとなってからこの手の話題がとても楽しいらしい。

 

  楽しげな老人を横目にジルクニフはまた思考に浸り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー洞窟の最下層ー

 

「人間とは贅沢なものだ」

 

  青いドレス状の鎧を着込んだ少女が呟く、少女の容姿は美しく薄い金髪に病的なまでに白い肌、髪と同じく薄い金色の瞳、しかしその目には感情を写さない。

 

  最初こそ新鮮な感覚と物珍しさがあったものの今ではほとんど慣れこの一室に関しては若干の飽きがきている、しかし裏を返せばこの状態への適応能力を示しておりアバターの設定が順調に自分を侵食していることを指す。

  一ヶ月も経たずに性格の一部が確実に変わっていることを自覚できる、だがそこに拒否感はない自分の意思を残しつつ考え方の傾向が変えられた感じだ。

 

「そういえばもう人間では無かったな」

 

  改めて自分のアバターの設定を見直す。

『アルトリア・ペンドラゴン』

  このアバターは自分の好きな古いゲームキャラを引っ張り出して作ってあり、その装備は勿論設定は自分好みに若干の上方修正を加えながら作った最高傑作である。

 

「こんな世界に来てしまった今にして思えば、収入の半分をつぎ込んできたトチ狂った自分を褒めておくべきか」

 

(全くの未知の世界だ、備えはいくらあっても足りん、それにスキルやステータスもそうだが設定がかなり細かく反映されている。この分ならステータス以上の戦闘も出来そうだ)

 

  外を眺めると広大な湖が広がり、十メートル四方の巨大な立方体の鉱石結晶なが湖から突き出しており、それが僅かな隙間を開けつつ連なることで城への道となっている。

  ここはこのギルドの最下層、湖があり奥に城かありそこへの一本道があるだけの場所。

  ただ湖には水竜が泳ぎ空中にはワイバーンの群れに上位竜、そして城の門の前には最上位の竜が陣取っている、さらに中にいる自分の方が怪物だというのだから攻める方は手に負えないだろう。

 

  そして自分がよくいる部屋に入る、そこには円卓と椅子が置かれた広い部屋であり自分のお気に入りの場所でもある、だがその数ある椅子はギルド創設以来空席であり自分以外の者が座ったことはない。

 

「円卓があるのに騎士が私だけとは、一人きりの王様か…、これが最強ギルドの一角であるキャメロットとは、ふっ…なんとも締まらないな」

 

  アルトリアは自虐的に笑う

 

「まあ、精々竜達の王として君臨するとしよう」

 

(では王として仕事をするとしよう。最近ギルドの入り口付近が騒がしいしな、何やら面白い事を始めているようだ)

 

  ワイバーンを外の洞窟の上を旋回させつつその視界を使い外の様子を伺う。

  入り口付近には簡易的な建物が建てられ、そこでは同じ鎧を着た人間が何十人も忙しそうにしていた。

  おそらくこの国の軍なのだろう、つまりここは国が管理するという事、そして一番違和感のあるのが一箇所に集められた首輪や手錠をされた人間達、そのほとんどが男で顔や身体に傷がありお世辞にも善良なとは言い辛い。

 

(おそらく犯罪者か奴隷あたりだろう、何に使う気だ?)

 

  何人かの騎士が奴隷のような人間を数人連れて洞窟の入り口前まで来る、そしてそこに奴隷達(仮)を繋ぎ騎士たちは離れた場所まで移動した、しばらくすると偵察用のワイバーンが洞窟から出てくる。

 

「嫌だぁぁぁぁー!!、こんなっ、こんっなっ!」

 

「たずげでぐれぇぇー、しにだぐないっっ」

 

「食われて死ぬなんて嫌だぁっ」

 

  ワイバーンには外では無闇に人を襲うなと命令してあるがそれを知らない奴隷達(仮)は必死に逃げようと半狂乱になりながら繋いである鎖を引っ張る。

  ワイバーンはまったく意に返さず進み奴隷達(仮)を押し退け洞窟の外に出る。

  そのまま翼を広げ飛び立っていく、奴隷達(仮)は食われこそしなかったものの押し退けられた時に倒れそのまま踏まれて腕や頭を潰された者もいる。

 

  それを何度か繰り返し確認した騎士達は今度は奴隷達(仮)を追い立てて洞窟の中に送り込んだ、無論中まで入って来た輩まで情けをかけるつもりはないため中ではワイバーン達に行動の制限はしていない、ある程度進んだところでワイバーン達が襲いかかる。

 

『グギァァァァーー』

 

「ぎゃあぁぁぁーっ、かすkグシャ

 

『グガァァァーー』

 

「こんなところで何で死ななきゃなnぐわぁっ」

 

  五分もせず十人以上いた奴隷達(仮)は全滅し、それらを確認したかのように騎士達は何やら話、最終的に建物の中に入っていった。

 

(何がしたかったのだ、ここの竜達の性質調べていたのだろうが、随分と過激なやり方だな、それだけこの国のにとって重要ということか、ワイバーンでこの騒ぎなら軍事力はあまり高くないのか、いやこのワイバーン達は最高ランクまで上げたのだったな、なかなかの脅威というのも納得できないこともないか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーバハルス帝国帝城ー

 

  バジウッド・ペシュメルは皇帝の居る部屋を目指し帝城内を歩いている。

  彼は元々平民の出であり更に言うなら裏路地で生活していた身である、しかしその後騎士を目指しジルクニフの目にとまったこともあり、今では帝国最強の四騎士の一人と言われるまでになった。

 

  そのジバウッドであるが昨日まで北部で発見された洞窟の調査に行っていた、そこでの結果を伝えるべく今日首都に戻って来たのだ。

 

  少々荒っぽくノックして扉を開ける。

 

「陛下、報告に来ました」

 

  ノックだけでなく言葉も荒くとても一国の皇帝への話し方ではない。

 だがジルクニフも周りの者も指摘しない、いや指摘しても意味ない事を理解しているのだ。

 

  ジルクニフ自身はまったく気にした風もなくジバウッドに報告を促し、ジバウッドは死刑囚を使った実験の結果を報告した。

 

(思った通りの結果か、だからといって何か分かる事あるわけではないんだが、情報の真偽を確認するのも必要だろう、ここまできっちり線引きされるとなると何かしらの力が働いているのを疑いたくなる。若干だが例の存在の可能性も上がった)

 

  その話を聞きジルクニフは長考したのち軽いため息とともに喋り始める。

 

「ふぅ…しばらくは放置だな、外の人間を襲わない以上今は放っておいても問題あるまい、まだ実害を受けてないのだ時間はあるだろう、それまでに対策を考えるとしよう」

 

  そこでジルクニフは話を変えながら薄く笑う。

 

「それより別の問題がある」

 

「例の大森林にある大地下墳墓の話ですか?」

 

「そうだ、じいと同等かそれ以上の魔法使いいる可能性があるならこれ以上王国の後手に回るわけにいかない、早めに接触しておきたい」

 

「帝国最高の魔法使いよりってのは、あんまりピンと来ませんね」

 

「そう決まったわけではないがな、どちらにしろ近いうちに会いに行くことになる。おまえにも付いて来て貰うからな、準備をしておけよ」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロットの最下層ー

 

「あれから一週間、人間達に変化無しか、ワイバーンを使った偵察では情報収入に限界があるな。こんなことなら一人ぐらい人型のNPCを作っておくべきだったな」

 

  どうするか?しばらく考えるがこのキャメロットには言葉を話せる人型が自分自身しか居ないという現状は変わらない。

  手持ちのアイテムを漁りながら考えていると、ふと一つのアイテムが目に留まる。

 

  魔導人形(オートマター)、文字通り魔力で動く人形であり外見は人間に見えるが関節部などに人形らしさが残っている、簡単な指示をこなせる自動操作と細かい行動ができる遠隔操作が出来るアイテムだ。

  ゲームでの使用用途はほぼモンスターへの囮兼簡易戦闘員として使われるのがほとんどであるが、元々NPCが優秀な為そもそも使われること自体が少なかった。

  遠隔操作した戦闘能力も決して低すぎず雑魚モンスターであれば容易に蹴散らすことができるが、それでも自分で戦った方が遥かに早く終わるので遠隔操作はまず使われず自分も使った記憶がない。

  しかし今はこれほど都合の良いものは他にない、今こそこの機能を使う時だと、この世界で使う為にあったのだと、そう思えるほど今の目的に最適だった。

 

「これなら街に送れるか?、フードを被せて手袋と首元に布でも巻けばわからんだろう、旅人を装えば国の様子や情報も聞き出せるかもしれん。よし、これなら街の中でも動けそうだ」

 

  少し地味な服装と若干整ってはいるものの地味目な顔に設定したオートマターを地上に転移させる、帝国首都から少し離れた森に転移したオートマターに同調し遠隔操作を始める。視界の共有後身体をゆっくり動かしながら動作を確認する。

 

(問題なく動くようだがこれなら違和感なく行動出来るだろう、取り敢えず街に向かうとしよう。この身体なら休む必要もあるまい、宿も取らずとも良さそうだ。いや、情報を得るなら宿に泊まるのも一つの手だな)

 

  取り敢えず首都に向かいたいところだ、道を探しながら林と岩場が混ざったようなところを進み続ける。

  しばらく進んでいると距離をおいて尾行されている事に気づく、人間ではない、獣のようだ、おそらく肉食の獣型のモンスターだろう、そのようなことを考えているとちょうど道に出たので道なりに街を目指す。

  獣のモンスターも木や岩の陰を伝いながら私と並走するように林の中を移動している、おそらく狩りをするタイミングを図っているのだろう、 私はわざとモンスターがいる方とは反対側に顔を向け無防備な状態にする。

  無防備にしつつもオートマターに付けておいた片手剣の位置を確認しておく、しかしなかなか襲ってこない、疑問に思っているとモンスターの気配が増える。

 

(なるほど、仲間を待っていたというわけか)

 

『グルルゥワヴッ』

 

  そう思っているとモンスターが別方向から三匹襲いかかってくる。見た目はでかいオオカミ、それらが時間差をつけて噛み付いてくる。

 

  腰から抜いた片手剣を逆手持ちで抜きながら一閃、一匹目の首を斬り飛ばす。

 

「ふっ」

 

 ザシュッ

 

  小さな音と共にオオカミの首が飛ぶ、そのまま片手剣を普通に持ち直し二匹目を剣の腹で弾き、三匹目の首を飛ばすべく剣を振り抜く。

 

 バシュッ

 

  また首が飛び二匹の首無し死骸が転がる、弾かれた奴が態勢を整える前に近づき脳天を突き刺す。

 

 ドスッ

 

『キャウッガァァ』

 

  転がる死骸が三匹に増えると、勝てないと分かったのか林の中でこちらの様子を伺ってた残りの奴らも唸り声を上げながら逃げていった。

 

「思ったより柔らかかったなこの程度の武器でも簡単に斬り飛ばせるとは、モンスターが弱いのか?それともこの世界ではこの程度の武器でもそれなりの性能なのか?そのあたりも街の武器屋に行けばわかるだろう。」

 

  そうして目の前の死骸を見下ろす。

 

「せっかくだ、この世界での初戦闘の素材として一応持っておくか」

 

  アイテムボックスに素材を入れた後、再び首都に向かい歩を進める。

 

 

 

 




アインズとジルクニフのやりとりは多分カットします。
そこまで書く根気か……


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接触

一応説明しておこうかと思いまして、
アルトリアの容姿ですが、目や髪、肌の色はセイバーオルタですが、
服や鎧、聖剣などは青セイバーと一緒です。
面倒くさい設定ですみません。


 ーバハルス帝国首都ー

 

「ここが首都か…」

 

  あれから数日かけてようやく首都にたどり着いた。

  すでに門を通り首都内に入ったが、その景色は何処かで見たようで見たことのないそんな景色だった。

 

  街の通りには昼時という事もあり人が溢れている。

  ここ一ヶ月ほど人とは全く関わらない生活をしていたため新鮮な感覚で人々を眺める。

  勿論街並み自体も自分にとっては珍しい物ばかりだ、あまりキョロキョロとしないように目的の場所に歩く、目的地は冒険者ギルドまずはある程度の資金が無ければ行動するにしても不便だ。

 

  別に冒険者登録出来ずともモンスターの素材を売ることが出来るだけで随分助かるのだが登録出来るかまだ分からない、もし登録時に魔道具に手をかざしたり、血を垂らしたりでステータス確認などするシステムだったらオートマターでは誤魔化しきれない、なので最悪素材だけでも売れればいいと考えている。

 

  そのようなことを思いながら冒険者ギルドに入り受付に向かう、

 そこの受付嬢が自然な笑顔で挨拶をしてくる。

 

「冒険者ギルドへようこそ、本日はどのようなご用件でしょうか」

 

 顔をフードと口元の布でほとんど隠していても問題なく対応してくれる。

 

「冒険者登録をどうするか考えているのだが、登録する場合どのような手続きが必要になるのだろうか?」

 

「はい、もし登録となりますとまず必要書類料として5銀貨頂きます。それからこのような書類にご自身の冒険者としての能力、つまりスキルなどを書いていただきます。そして最後に講習を受けていただき登録完了となります。これが登録する際の大まかな流れとなっていますが何か質問はありますか?」

 

  どうやら心配していたことは取り越し苦労だったようだ 。

 

「いや、登録については特にない、それとは別なのだが登録していなくてもモンスターの素材などは買い取ってもらえるのだろうか」

 

「はい、それについては問題なく買い取らせていただきます。ですが登録していないと買い取り額が安くなってしまうのでご注意ください」

 

「了解した、だが登録に関してはまだ保留にしておく、先に買い取りをお願いしたいのだが、素材はここで確認してもらえるのか?」

 

「はい、こちらで確認させていただきます。素材はその袋の中でしょうか?」

 

  受付嬢が指したのは私が担いでいる袋だ、この世界ではアイテムボックスがどのような位置付けなのか分からないためこちらに移しておいたのだ。

 

「狼のようなモンスターの素材なのだが」

 

  袋の淵を少し開き中を見せる、中にはくる途中に狩った狼の足と頭そして皮が一匹分入っている。

 

「えぇと…あっこれはっ、…あの、こちらはお一人で狩られたのでしょうか?」

 

「そうだが?…ああ、なにぶん一人旅なのでな、それなりの腕はある」

 

  どうやらこの狼は駆け出しで狩れるほど優しいモンスターではないらしい、取り敢えず適当な理由を付ける。

 

「なるほど冒険者登録はしていないですが、戦闘自体は初心者ではないのですね。魔狼をお一人で狩れるのであれば是非登録をお勧めします。では素材を確認しますので少々お待ちください」

 

  受付から離れ査定を待ちながら状況を整理する。

 

(さて、取り敢えず資金のあてはできた、となればこれからどうする?、まずこの国と周りの国の情勢、この国の人種や職業での階級や立場、キャメロットの扱い、これが分かるととても助かるんだが、……しばらく酒場を回り続けるか、だがその前に…)

 

  査定が終わったのかさっきの受付嬢が受付に戻ってきた。

 

「査定が終わりました。先程の素材のですとこれぐらいになります、よろしいですか」

 

「ああ、それで構わない、それと少し聞きたいんだが」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「ああいや、ギルドの事ではないんだがさっき言った通り旅をしているからこの辺りはあまり詳しくない、この国のことを軽く聞いておきたくてな」

 

  そう聞くと受付嬢は少し悩みながら。

 

「ん〜…この国こと…ですか〜、私はずっとこの国に住んでるんで周りの国と比べてとかはあまり分からないですね〜、ただ住みやすい国だと思いますよ、数年前に貴族が次々処刑されてしまったりと不安な時期もありましたけど、何だかんだ今の皇帝陛下は優秀という噂ですし、何より平民でも貴族でも実力で評価して下さるらしくて、四騎士の……あー、四騎士というのは帝国でもかなり位の高い騎士達なんですけど、その中にも確か平民出の方もいらっしゃった筈です。あと変な貴族が出しゃばらないので平民としては安心できますね。その辺は王国は大変と聞きましたが」

 

「なるほど、ではしばらくこの国にいるとしよう、また世話になるだろうがよろしく頼む」

 

 これ以上話を聞いていると仕事の邪魔になってしまいそうなので話を切る

 

「いえいえ、こちらこそ」

 

  その言葉を聞き、私はギルドを出る。

 

(さて、酒場を探すとしようせめて酒場の場所ぐらいは聞いておくべきだったな。まあいい時間はあるゆっくり探すとしよう)

 

  少し歩き出してふと止まる。

 

(まて、そもそもオートマターで酒を飲めるのか?不味いな流石に酒も飲まずに酒場にいるのは不自然以前に軽く営業妨害だぞ、くっ、こんなところで問題が出てくるとは、仕方ないな最後に使いたかったんだが別な方法でいくか)

 

  そうしてまた歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーバハルス帝国ー

 

  そこに走っているのは6台の馬車、ただの馬車ではないのはその豪華さからよく分かる、さらにその周りを飛ぶヒポグリフにまたがる騎士達、これだけでこの馬車には重要な人物が乗っているのが分かる、そしてこの馬車はトブの大森林から帝国首都に帰る途中である。

  馬車の中にはバハルス帝国皇帝が乗っているが行きの時に一緒に居た秘書官と帝国最強の魔法使いの姿がない。

 

(くそがっ、あの化け物め!先に諸国との同盟の可能性を潰してくるとは)

 

  ジルクニフは苦虫を噛み潰したような顔をしながら心の中で悪態を吐く、だがそれでも歴代最高の皇帝、文句もほどほどに今後行動をどうするかに切り替える、そこへバジウッドが話しかける。

 

「この後、どうするのですか陛下?というかあんな化け物どうにかする方法なんてあるんですか?」

 

  そんな言葉を聞いてジルクニフは皮肉げに返す。

 

「ないことはない…と思いたいな。少なくとも今考えてる策が無駄ではないとありがたい、なにせあの化け物は力だけでなく知略にも長けているおまけにじいまであのざまだ」

 

  ジルクニフがいつもの調子で話すので若干の安心感が戻ってくる

 

「確かにこんな一大事なのに頼りになる帝国最強の魔法使いの席が空席になるのは大分痛いですね。それはそうと策とは?」

 

「北部の洞窟だ」

 

「うん〜、確かにあそこの竜どもは他とは格が違いましたが戦わせるにしても、さすがにゴウン辺境侯を相手にするのは流石にきついのでは?」

 

「他より少し強いだけのモンスターに用は無い、用があるのはその主だ」

 

「…っ、あの洞窟にもあんなのがいるんですかっ?」

 

「元々怪しかったが現実味のない話だったからな、だがアインズのようなのが居たんだ同じような奴が居てもおかしくない、それにアインズと同じ時期に出てきたからな関連性があるにしても無いにしても確認しないわけにはいかない、同じ様な奴がいればもしかしたら潰し合わせることが出来るかもしれないしな」

 

(問題なのはそいつがアインズの配下だったりすると最悪という事だ)

 

「そういう事だ、帝都に戻ったら今度は北部の洞窟に行く準備をしておけ」

 

「わかりました、出来ればもう心臓が潰れる様な思いはしたく無いですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーバハルス帝国首都ー

 

  既に日が暮れ昼間の賑わいが嘘のように街の中には静けさが漂う、そこで一人の人影が歩いていく、大きさは比較的小柄で女性だろう、その黒髪黒目の外見、アルトリアが操作するオートマターである。

 

  そしてそのまま路地裏に入る、ただ入る訳では無い背後をつけている連中をしっかりと引っ張り入れ、ゆっくり歩いて追いつかせる。

 

「何か用か?」

 

  付いてくる三人に向かって問う

 

「アンタ、こんな夜に不用心だぜ、狙って下さいって言ってるようなもんだ」

 

  三人ともナイフをちらつかせながら近づいてくる

 

「悪く思わないでくれ、アンタはたまたま不運だった。そういう事だ」

 

 アルトリアも呟く

 

「ああ、確かに不運だな」

 

「何だ潔いな、まぁこっちとしては助か『ゴハッ』

 

  アルトリアは一瞬で距離を詰め片手で首を絞め上げる

 

「ぐがっががぎぃっはぁっかっ」

 

  首を絞められた一人は必死に手を解こうとするが外れず、慌てて残りの二人か助けようとアルトリアに襲い掛かる。

 

「くそっこいつっ」

 

  振り下ろしたナイフを持つ手の手首を受け止め、そのまま親指に力を入れ手首を折る。

 

『ゴキッ』

 

「ぐあああぁぁぁっ」

 

  手首を抑えてふらついてる男の顔面を掴み壁に叩きつける。

 

『ガッ』『ググッドサッ』

 

  そのまま壁に血の跡を引きずりながら身体が崩れ倒れ込む、と同時に首を絞めて動かなくなった男も地面に落とす。

 

「ひっなんでっ」

 

  残った男が悲鳴を上げ後ずさる、勿論逃がすつもりもなく間合いを詰める。

 

「こっ殺さないでくれっ、まっ待って、頼むっ」

 

「死にたくなければ私の質問に答えろ」

 

「わっ分かった、なっなん、なんでも、言うからっ」

 

  こうして今日も情報を得る、何故わざわざこんな時間に出歩いているのかというと情報収入の為である。こうやって夜中に出歩き馬鹿が引っかかるのを待つ、引っかかった馬鹿から情報を強制的に引き出す。

  これをここ数日繰り返してある程度の情報は集まっている。

 

  この帝国という国は思いの外優秀である、皇帝の影響も大きいだろう何というか実力主義のような皇帝の思想ありながらそれでいて国自体は平民にとって過ごしやすく国として比較的高いの生活水準を保っている。王国とはいつ戦争なってもおかしくないらしい。

 

(なかなかいい国だ皇帝の考え方も嫌いではない、アルトリアになってから国や王のあり方に少し敏感になっている気がするな、まあいい、それ以外ではエルフの奴隷もいるようだな本物のエルフは見てみたいな奴隷を買うのもいいかもしれん、しばらくは冒険者として行動して様子を見るのも悪くないな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット最上層入り口ー

 

「さて、ここが例の洞窟かナザリックに雰囲気が似ている気がするな」

 

  ナザリックに行った時と同様の豪華な馬車から降りてきた皇帝ジルクニフがキャメロット入り口から少し離れた所で感想をもらす。

 

「確かに、言われてみればそんな感じがしますね。ですが洞窟とか地下に行く道ってのは独特な雰囲気がありますけどね」

 

  ジルクニフの感想にバジウッドが答える。

 

「彼の言うことは間違いではありませんが、私はナザリックの所為で先入観があると言うのが大きいと思います。」

 

  と答えるのはバジウッドと同じ四騎士のレイナース・ロックブルズである。

  彼女は前回ナザリックの中までは入らなかった為アインズ自身には合っていないがフールーダが弟子入りしたなどの話を聞いて少し後悔していた。

  弟子入りが認められたのであればもしかしたら自分の顔にかかった呪いも頼めば解いてくれたかもしれない、いくら相手が人間では無く化け物でもフールーダ以上の魔法使いだ、話が通じる以上頼んで見るべきだった、そう考えている。

  よって今回は中までついていくと決めている。

 

「それで陛下どうやって中に入るんですか?」

 

  バジウッドがジルクニフに尋ねる、それもそのはず何故なら今回はメイド待っていて案内してくれる訳ではない、洞窟からはたまにワイバーンが出てくるだけである。

 

「今回は案内してくれるメイドも居ませんし、まさか俺たちだけで最下層まで行くとかじゃないですよね」

 

「案内なら出てくるではないか」

 

「出て来るってワイバーンですかっ?流石に陛下が言うことでもそれは…無茶では?」

 

「別に案内が出来なくとも良い、意思の疎通は出来るはずだ、そうでなければおかしい、ともかくワイバーンに襲われないところまで入るぞ、案内しろ」

 

「分かりました、まあ襲われないところまでであればどう転んでも問題ないでしょうし、こちらです」

 

 

 

 

 

 ーキャメロット最下層ー

 

「ん?」

 

  キャメロットに侵入した者がいることを感じオートマターから本体へと意識を戻す。

 

「久しぶりの侵入者だな」

 

  帝国が洞窟入り口を管理しているためここ一ヶ月誰も入って来ていない。

  そこへ来て豪華な馬車からの護衛を連れた人物の登場である、何かあると思うのも当たり前である、その人物もワイバーンが襲わない一歩手前まで来てずっと何かを待っている。

  恐らくこちらの対応を待っているのだろう、いくら護衛がいるからと言って随分と度胸があるな、対応を待っていると言うことは私の存在を知っていることでもある、どうやら頭も回るようだ。

 

「どれ、では挨拶と行こうか」

 

 ワイバーンを一体送り込む

 

 

 

 

 



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対話

正直満足なできとは言えない

やりたいこととかも書くとなるとこれほど難しいとは
会話の内容がなんか薄い


 ーキャメロット最上層入り口ー

 

「陛下っあれはっ」

 

  バジウッドが指を指しながら叫ぶ、その方向からはワイバーンが一体飛んでくる。

  そしてそれは我々から少し離れたところに着地し、ゆっくり歩いてこちらに近づいてくる、これは外に出るためでなく明らかにこちらに用があるようだ、目の前まで近づくと慌てて騎士達が私の前に出ようとするか手で制す。

  ワイバーンは私の目の前で止まり何かを待っている、いや待っているのは私の反応だろう。

 

「私はバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。この洞窟の主である者と対話を望みたい、案内して貰えないだろうか」

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット最下層ー

 

  まさかの皇帝直々である、流石のアルトリアも僅かに固まる、がすぐに思考を巡らし対応を考える。

 

(皇帝直々とは、そこまでキャメロットを重要視しているのか?いや幾ら何でも皇帝自身を危険に晒す必要性はどこにも無い、使者を送れば事足りる。

 皇帝自身が動くほどキャメロットを危険視しているのか、国を潰せる存在が多く居るのはあながち間違いでは無いがそこまで情報は晒していない筈だ。

 対応があまりに早すぎる、私という存在が居ると確信を得るにはまだ時間掛かるはずだ、この洞窟が客観的に見て特異なのは認めるがそれでも特殊な洞窟が出来ただけだ。

 国が動くほどの規模があるかも分からない状態で……プレイヤー…まさかプレイヤーか?皇帝…いや、皇帝の背後にプレイヤーがいるのか?確認するべきか?そのためには接触するしかない…リスクが高いな、しかしあちらは既に見当がついているのだろう。

 どちらにしろ時間の問題だな、ならば早々に手を打った方がいい)

 

「会うとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット最上層入り口ー

 

  ジルクニフの言葉を聞いたようにワイバーンが二、三歩下がり踵を返す、するとワイバーンの少し前に魔法陣が浮かび上がる、ワイバーンはその魔法陣までゆっくりと歩くと魔法陣に乗る、魔法陣が一瞬輝きを増しワイバーンは姿を消す。

 

「恐らく、転移魔法だと思われます」

 

  レイナースが答える。

 

「なるほど、歓迎して貰えるらしいな、ならば行くしかあるまい」

 

「正直もうあの恐怖は味わいたくないですがね」

 

「何だ?バジウッド?今度はお前が馬車の番をするか?」

 

「いえっ、俺は陛下について行きますよ、お守り出来るかは怪しいですが」

 

「相手が相手だ、そこまでは求めん、さて余り無駄話するわけにはいくまい、行くとしよう」

 

  ジルクニフが先頭に立ち四騎士の二人と騎士と魔法使い数人が後に続く、そして魔法陣に乗り数秒後にはそこに居た全員が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット最下層ー

 

  ジルクニフ一行は最下層の入り口付近に転移される。

  そこに映し出されるのは広大な湖、そしてそこから突き出た立方体の結晶が連なる大きな一本道、そして道の先にある巨大な城。

 その幻想的な光景はまさに絶景である。

 

「「「…っ……」」」

 

  誰しも息をのむ、この光景は果たして人類で作り出せるのか?無理だろう、だがここにある、広大でありながら幻想と神秘が混ざり合い調和したこの場所、人間ではない何かが住む場所、そうそれは竜の住む秘境である。

 

  ワイバーンの群れと上位種の竜が飛び交い、湖には大型の水竜、そして城の前には最上位と思われる一際巨大な竜が陣取っている。

 

(何だここは、私はどこの世界に迷い込んだのだ、なんとも残酷な光景だ、幻想的で神秘的だからこそその残酷さがよくわかる。

 城の前のあの竜がただ歩くだけで国の首都など簡単に落とせそうだ。まったくアインズの時ので慣れたつもりだったのだがな、いや慣れたからこそこの程度の動揺で済んでいるのか?)

 

「惚けるのはここまで、進むぞ」

 

  歩き出すジルクニフの言葉に我に返った騎士達は慌てて後を追う。

 

「ナザリックも凄かったですけど、こっちもやばいですね、こう言ってはなんですが警戒しようという気が起きません」

 

  結晶の道を歩きながらバジウッドはジルクニフに話しかける。

 

「確かに警戒しても無意味だろう、……凄いとしか言いようがない、ここまでくると逆に単純な言葉しか出てこないものだな」

 

「ははっ、確かにそうですね、」

 

  結局喋る事もなくなり無言で道を歩く、それは喋るために口を動かすよりこの景色を目に焼き付ける為かもしれない、巨竜の前に着く前に巨竜は羽ばたき道を開ける。

  そのまま進み城の前まで来ると自動的に門が開く。

 

「入れということか、いよいよだ行くぞ」

 

  城に入ると中もとても豪華である、豪華でありながらどこか気品を感じる作りであり外の景色に勝るとも劣らない美しさがある。

  まるで芸術品であるかのような城内を歩いていくと、行く先でいくつかある扉の中から一つが開き道を示す。

 

  そうして何度か扉に案内されるままに進むと一つの大きな部屋に着くその部屋には円卓が置かれている。

  その席はどれも空席であるがその一つに座っている人物がいる。

  けして幼いわけではないが大人というには若い、金髪で雪のように白い肌、青を基調としたドレスのような鎧を着ている、そして存在自体が神聖なものであるかのような雰囲気があり彼女の身体からは僅かに黄金に輝く細かい粒子が飛び交っている。

 

「我が城にようこそ、私と対話を望む者よ」

 

  凛とした声で少女はたしかにそう言った、そう、この少女こそここの主なのである。

  失敗は出来ないここが正念場である、ジルクニフは気を引き締め口を開く。

 

「私はバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスという、初めに望み聞き入れこの場を設けてくれたこと、感謝する。宜しければ名を聞かせてほしいのだが」

 

「私の名か?……アーサー・ペンドラゴンだ」

 

(聞いた事のない名だ、突発的現れたのはアインズと同じ、やはり関係者か?)

 

「ではアーサーと呼んでいいだろうか、私の事はジルクニフと呼んでもらって構わない」

 

「好きにするといい」

 

  出だしは上々会話もしっかり成立する、圧倒的上位にいながらこちらにへり下ることを強要しないあたり人格にも好感が持てる。

 

(これはかなり運がいいかもしれん)

 

「ではそう呼ばせてもらおう、ところでアーサーはここの洞窟が我が帝国領にあるのはご存知かな?」

 

「ああ、知っているとも、なんだ?勝手に領内を使われては困ると言いたいのか?」

 

「いや、そうではない、確かに帝国領内に出られてはいろいろとこちらも動かなければいけなかったのは事実だが、それでも出現してしまった以上仕方のない事、無理に争う必要はないと思うんだがどうだろう?」

 

「同盟でも組みたいと?」

 

 アルトリアの問いにジルクニフは僅かに沈黙し思考を巡らす。

 

(食いつきはあまり良くないな)

 

「その通りだ争うより手を取り合った方が有意義だと考えている。

 アーサーも争う事は好まないのではないかな?、ワイバーンに外の人間を襲わないようにしていてくれたのだろう?」

 

「確かに、争う事自体嫌いではないが、今のところはそういった予定はない。」

 

「なら尚のこと同盟はお互いに悪くないと思うんだが、そうすれば帝国としていろいろと便宜を図ることも出来る」

 

「便宜?」

 

「ああ、無闇に侵入者を入れないようにそちらの基準で制限をかけたりなど管理もできる、勿論何か要望があれば言ってくれれば最大限配慮しよう」

 

「対価は竜達の戦力か?」

 

「そうだな、だがそこら辺はもっと友好を深めてからいろいろ聞くとしよう。

 お互いにとって有意義な同盟となるように考えていきたい、まずはそうだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ジルクニフの言葉を聞きながらアルトリアは思考を巡らす。

 

(どういうことだ?背後にプレイヤーがいるにしては随分と話が遠回りだな、慎重なのか、いやここまで押しかけておいて慎重になる意味はない、皇帝には何も教えていないように感じる、さっさとプレイヤー同士の核心に触れた方が良くも悪くも話がまとまりやすい、プレイヤーがただの馬鹿という可能性があるにはあるが、それなら皇帝を使う事は出来ないだろう、だが皇帝はプレイヤーを知っているはずだでなければ私の存在を感知できない。

 ……帝国と敵対関係、またはそれに近いプレイヤーがいるのか、それなら筋は通るな、この皇帝の事だ真っ向から敵対はしないだろうどちらかといえば自国に取り込もうとする筈、……まさか取り込み損ねたか?敵対はしていないが決して味方とも思っていないのだろう。

 皇帝はプレイヤーの情報を知らない、知っているのは恐ろしく強いというだけ、だから同じような存在の私を引き入れたいというわけか、そのプレイヤーに接触される前に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そろそろ茶番はやめにしないか?それともそんなくだらん事の為にここに来たのか?人間」

 

  言葉に魔力が乗ったような威圧感が広がり空気が痺れる。

  いきなりアルトリアの様子が変わる身体に纏う黄金のオーラと粒子が赤黒く禍々しくなり、白銀の鎧にも血のように赤い血管のような線が入りそこから鎧を黒く侵食していく、その元の姿を反転したように禍々しくなるもその中にすら神聖を感じてしまうほどその高潔さはうしなわれていない、いや元よりこちらが本当の姿だったのだろう。

 

「なっ…」

 

(くっ、なんて禍々しさだ、これではアインズといい勝負だいや最初の印象が印象だっただけにこちらの方がより恐ろしく見える、ここまで来て交渉の機会を失うわけにはいかん、どうする?)

 

「なるほど、噂通り優秀らしいな、私の魔力の圧に当てられても思考を止めんとは、だがそれでも焦りは隠せていないな、何を焦っている?私の竜達を見たからその脅威に恐怖したのか、いや違うな貴様は洞窟に入ってきた時から焦っていた。

 そう私ではなく別な存在による脅威によって焦っていたのだろう。

 貴様はその存在と私が接触する前に私と会う必要があった。

 その存在に対抗するためには私との同盟が絶対条件だった、違うか?」

 

(この短時間でそこまでっ…誤魔化しはききそうにないな、ならば仕方あるまい)

 

「そこまで見抜かれるとは思っていなかったな、その通りだ、今帝国にとって脅威となる存在がいる」

 

「中か?それとも外か?」

 

(そこまで読んでいるのか、だが聞いてくるという事はまだ終わった訳ではない話し自体問題なく進んでいる)

 

「中にいる」

 

「成る程、つまり国としては動きにくいというわけか」

 

(この少女は雰囲気と魔力の質で禍々しくあるものの、その在り方は見た目通り騎士のそのもの、誠意を見せればあるいは)

 

「いまその脅威にによって帝国は窮地に立たされているといっても過言ではない。

 今の帝国にそれと戦えるだけの戦力が無いのだ、あれが力を示せば帝国は呆気なく崩れるだろう。

 帝国を守る為にはその力に対抗できる存在が必要不可欠だ。

 

 くだらん探り合いは無しだ、率直に言わせてもらう私と同盟を結んで欲しい」

 

 

「何を求める?」

 

 

「力だ」

 

 

「何を望む?」

 

 

「バハルス帝国の繁栄だ」

 

 

「何を差出せる?」

 

 

「私が差出せるもの全てだ」

 

 

 

 

「………………ふっ、面白い、いいだろう同盟を結んでやる、せいぜい足掻け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット城ー

 

  ここはキャメロット城の一室である。

  同盟が成ったという事で改めて話を詰めるため円卓の部屋から別の部屋に移り話を進める、せっかく円卓のがあるのだからそこでもいいと思ったのだが、アーサーは円卓には誰も座らせる気はないとのこと、

 何か意味があるらしい。

 

「ではアーサ「アルトリアだ」」

 

「は?」

 

「アルトリア・ペンドラゴン、私のもう一つの名だ、こちらの方が気に入っている。

 まあ、呼び方は貴様の自由だ好きに呼ぶといい、同盟者」

 

(気に入った名を教える程度には認められたという事か)

 

「ではアルトリア、こちらも改めて名乗ろうバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス、気軽にジルクニフと呼んでくれて構わない」

 

「ああ、そう呼ばせてもらおう同盟者」

 

  全く呼ぶ気がないアルトリアに若干の溜息をしつつも、ジルクニフはこの状況まで持ってこれたことにとても満足している。

 

(一対一の対話ではかなりヒヤヒヤさせられたが一度同盟を結んでしまえばだいぶ態度が軟化したな)

 

  ようやくこれからである、帝国が未来に前進した気がした。

 

 

 

 

 

 

 



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対話2

 ーキャメロット城内ー

 

「さて、同盟を結んだわけだが勘違いされては困るぞ。

 同盟を結んだのは貴様であって帝国ではない」

 

  アルトリアが口を開きさらに続ける。

 

「貴様ら人間と私では生きる時間が違いすぎる。

 貴様が死んだ後の帝国が健在である保証などない、貴様が優秀でも貴様の後釜まで優秀とは限らんしな、故にこの同盟は貴様と私との間での話だ。

 そしてこちら今のところ求めるのは情報一択だ、これまでの歴史から今の国々の情勢、一般的な常識、特別なアイテム、モンスターなど全てにおいて貴様の知り得る情報を要求する。

 無論貴様が対価を払う以上こちらは力を振るってやろう」

 

「…わかったそれで構わない、帝国内部と争うことになる以上そちらの方がいいかもしれん、どちらにせよ状況に左右されるがな」

 

  ジルクニフにとって同盟などただの建前に過ぎない、大事なのはこの存在と協力関係を築けたことであり、その力がこちらに向かない事である。

 

「内部にの敵に関してだが帝国の西にトブの大森林という広大な森がある、そこにあるナザリック大地下墳墓に大勢力の組織があり、そこの主と交渉した。

 国を作らせるつもりだったんだが帝国に潜り込まれた。

 おそらく帝国の中で準備したのちに自分の国を建国するつもりだろう。力もそうだが知略も化け物級だ」

 

「ナザリック……(嫌な予感がする、記憶が正しければ人外どものギルドだったはずだ、同盟者はよくそんな相手と敵対しようとする、実は馬鹿なのか?同盟を結んだ以上私も争う事になるかもしれん、一応やり合った事はあるが勝負がついた事はなかった、確かあそこは30いや40人ぐらいだったな、殴り合うならともかく余りにも手数が違いすぎる。

 帝国の守りにまで手が回るか怪しいところだ)」

 

「その主の名がアインズ、アインズ・ウール・ゴウンと名乗っていた。

 見た目はスケルトンのアンデットだが只のリッチーなどではない筈だ、正直強いのは分かるんだがどれぐらいか言われると分からんとしか言いようがない、雰囲気も恐ろしくその禍々しさから死の化身と言われても信じるだろう。

 奴自身も強大だがその従者達もまた同じだろうアインズには及ばないんだろうが、それに従者達の忠誠心も高そうだったな、どちらかというと崇拝に近いのかもしれんが、…ん?そういえば禍々しさで言えば君もアインズといい勝負だな、君も死の化身かなにかなのか?」

 

  ジルクニフは最後に冗談を交えながらアインズについて語る。

 

「死の化身か…残念ながら私は首をはねるぐらいでしか死を与えてやれん」

 

  口ではそう返すが思考はますます深まる。

 

(アインズ・ウール・ゴウン?、いやその名は知っているがそれはあくまでギルド名の筈だ、その様子だとおそらくギルドマスターが名乗っているのだろう、あそこのギルドマスターはガイコツのアンデットだった筈だ。

 それに従者?NPCの事か?それはいいが他のギルドメンバーは居ないのか?同盟者が会っていないだけか?……もしかして奴も私と同じようにこの世界に来たのか?、ゲームのサービス終了時に。

 それなら1人はなくても多くて4、5人といのはありそうだ。

 40人は流石にきつかったが4、5人なら特に問題はなさそうだな、…それにしても従者か、やはり人型のNPCは便利そうだ、こうなることがわかっていれば沢山作っておいたんだが、せめて1人は作るべきだったな、非戦闘員のメイドでも、いれば違った気がする)

 

  このキャメロットにいるNPCは見た目が完全な純竜種のみであり竜人すらいない、そもそもユグドラシルのプレイヤー達が純竜種のNPCを作らないのには理由がある。

  使いづらい、それに尽きる、その攻撃方法が肉体を使った打撃とブレスのみであり、きっちり育ててようやく状態異常の付与効果といったところでサポートが全くできない、その巨体により戦闘時に邪魔になったり、巨体故の小回りの効かなささ、アイテムを自分で使うことが出来ず、装備出来るアイテムも他と比べ少な過ぎるなど、出来ることが限られるのが大きい。

 

  純竜種の最大の利点は広範囲高威力の攻撃とその絶対的な耐久性だがNPCをある程度まで育てればモンスターを狩るには耐久性はそこまでいらず、高火力も最後まで育てればプレイヤークラスまで上がるが育成に時間がかかる。

  だったら他のNPCにサポートさせプレイヤー本人が戦った方がよほど効率的である。

 

  これらによりユグドラシルでは純竜種のNPCは不人気だった、だがこれがギルド同士の対戦においては別であった、その必要以上の高火力は只のモンスターに効率が悪いがNPCを削るに最適であり下手に中途半端なNPCは2、3体簡単に沈む、更に耐久性も高い対魔力と対物理を備えているためなかなか削られない。

 

  そこまで育てるのが大変な純竜種が多くいる為このキャメロットはギルドメンバー1人にして最強ギルドの一角へとなり得たと言っても過誤ではない。

  ギルド同士の対戦であるはずなのに相手のダンジョンでボスモンスターが湧くようなものである。

 

(さて、私がナザリックのことを知っていることを話すべきか?、出来ればナザリックには私の存在は隠しておきたい、その為にも知る人間が少ない方がいいが、どちらにしろ探られれば同じか。

 …うむ…やはり情報収集能力がキャメロットはあまりに低い、ゲームでは気にならなかったが現実となるとここまでとは、総力戦ならともかくこちらには器用に立ち回れるNPCが居ないからな、自分で動くか同盟者頼りとなるな)

 

  ある程度考えがまとまり口を開く。

 

「ナザリックについて色々聞かせてもらったが、私はナザリックのことを知っている」

 

  ジルクニフの表情にあまり変化はない、驚かなかったというより予想内だったのだろう。

 

「どういうことだ、やはりこことは関係性があったのか?」

 

(まさか今更アインズとは友好的な関係だ、などと言うなよ)

 

  ジルクニフの口調は落ち着いているが内心はひどく動揺している。

 

「そう睨むな、知っていると言っても大した情報はない、べつに同盟を結んでいた訳でも特別敵視していた訳でもない。まあ戦争した事はあるが」

 

「おい、最後にとんでもない事言っている自覚はあるのか?私としては安心できるが、どういう状況なら特に敵視してないところと戦争になる?」

 

「まあ色々ある、それより聞きたいことがある、アインズ・ウール・ゴウンとはそもそも奴が所属する組織の名前だった筈だ。確認するがその名を奴の一個人の名前として名乗っていたのか?」

 

「ああ間違いない、自分の名前として名乗っていた」

 

「では従者以外で奴と同格のやつはいなかったか?、

 元々奴の組織は奴含めて40人ぐらいで構成されその下に従者どもがいるはずだ、まあおそらく40人はいないと踏んでいる、多くても4、5人だと考えているが」

 

(40人だとっ!ふざけるなっ、従者どもですらあの数で危機に瀕しているのにアインズのようなのが40人もいたら3日いや1日で世界が終わってしまうではないか!…ん?)

 

「ちょっと待て、さっき君はアインズの組織と戦争した事があると言ってなかったか?」

 

「ああ、決着はつかなかったがな」

 

「この化け物めっ!……………すまん、心の声が漏れた」

 

「正直な奴は嫌いではないぞ」

 

「いや、とても頼もしい限りだ……とにかく奴と同格はいなかったはずだ」

 

「建前でカバーするには本音が大き過ぎる気がするが、まあいいこれが私の知る程度のナザリックの情報だ、他にも細かくあるが今日のところはこんなところだろう」

 

「そうだな私もいつまでもここに居るわけにもいかない、そろそろ帝都に戻らなければならないしな」

 

「それは構わんが私の望む情報を寄越せ、今はとりあえず世界の情勢などのでいい後で人を送れ」

 

「それには及ばない、このレイナース・ロックブルズを置いていく、…レイナース、アルトリアへの情報提供を任せる」

 

「……了解しました」

 

「そういうことだ聞きたい事はレイナースに聞いてくれ」

 

「私としては別にいいが大丈夫なのか?、大事な護衛だろう?」

 

「それについては多少は痛いがそれよりもこのことを知る人間を増やすことの方がリスクが大きいからな、さて地上には転移させてもらえるのだろう?」

 

「ああ、キャメロット最上層に送ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ジルクニフを地上に送りひと段落したした後にレイナースに向き直る。

 

「改めて名乗ろう、アルトリア・ペンドラゴンだ好きに呼ぶといい、貴様のことはレイナースと呼べばいいのか?」

 

「はい、それで構いませんアルトリア様」

 

「では付いて来い、貴様の部屋に案内してやる」

 

  アルトリアは歩き出しレイナースがそれに従い付いて行く、そして歩きながらアルトリアが説明する。

 

「しばらくここに滞在するらしいが、基本的に貴様の世話はオートマターがする、人形のマジックアイテムだ、食事などの必要なものは持って行かせるしある程度の必要なものは元々部屋にもあるはずだが、

 もし他に足らないものがあったら人形に言いつければ用意するだろう、城内は基本的に何処でも出歩いていいが円卓のある部屋には入るな、それと城外にでるのはあまり勧めん。

 情報については明日からゆっくり聞くとする、取り敢えず今日は休め」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

  部屋に着き明日の予定を軽く話し立ち去ろうとするがレイナースに呼び止められる。

 

「お待ちください」

 

「ん?、何か用か?」

 

  アルトリアは振り返って答える、レイナースは少し迷っていたようだが意を決して話し始めた。

 

「…実はお願いがあるのですが」

 

「同盟者からか?」

 

「いえ私個人のお願いです」

 

「言ってみろ」

 

  そう言うとレイナースはおもむろに顔にかかっていた前髪を持ち上げる。

 

「…………」

 

  隠れた右半分の顔は醜く、痣や火傷とも違う、どちらかと言えば病気のような痕があった、元の顔が整っているだけに余計にその醜くさが際立つ。

 

「……その顔は?」

 

「呪いです、モンスターを倒したときに受けました。死の目前にモンスターが私の顔に呪いを放ったのです」

 

「…なるほど、死に際の呪いか厄介だな」

 

「はい、帝国最高の魔法使いでもこの呪いを解くことは出来ませんでした。……なので…アルトリア様ならこの呪いを解く手段をお持ちではないかと」

 

「同盟者はこのことを知っているのか?」

 

「元々この呪いを解くために四騎士になりました。

 陛下とは自分の身を優先していいという条件で仕えています。」

 

(その条件で騎士にするとは、優秀であれば問題ない同盟者らしい考え方だ。

 さてどうする、治してやってもいいがどこまでのアイテムを使うかによるな、いや、だがここで助けておくのは大きいか?こんな条件で皇帝と取引するぐらいだこの娘にとっては重要な事なのだろう、助ければ恩は大きいもしかしたら使い勝手のいい手駒ができるかもしれん、場合によっては同盟者にも恩を売れそうだ)

 

「そうか、まあ解けるかどうかは分からんが、試してやろう」

 

「あっありがとうございますっ」

 

「まだ解けると決まったわけではないがな」

 

  アルトリアはそう言いながら虚空に手を伸ばす、手首まで虚空に消え再び現れる時には手に小瓶が握られている、それをレイナースに差し出す。

 

「使ってみろ」

 

  その差し出された小瓶を受け取る、それは細部まで装飾された小瓶で中には青い液体が入っていた、おそらく何かのポーションなのだろうが、それが何なのかレイナースには分からなかった。

 

(おそらくポーションなんでしょうが何のポーションかは分からないですね、それに容器だけで価値がありそうです)

 

「はい、では使わせていただきます。」

 

  そう言ってレイナースはポーションを顔にかける、その後しばらく待つが顔に変化はない。

 

(状態異常を治すポーションだったんだが、効果はないなもう一つランクの高いものを出すか)

 

「駄目か、次だな」

 

  そうやって段々効果の高いものを使っていくが一向に結果は出ない。

 

(呪いの付与状態と認識されてない可能性がある。呪いが継続してかかっているのではなく、すでにかけ終わっているから意味が無いのか?、これでは仕方がないな諦めるか)

 

 そう思ったとき一つの可能性が頭をよぎる。

 

(……使うか?アレを…)

 

  少し迷い考える、ふとレイナースを見ると失望したような顔だ、その失望は私にではなくその可能性にだろう。

  僅かに開いたと思った道が再び閉じたのだ、今度こそ、今度なら、そんな思いがあったのだろう。

 

(なんだかんだ言って使わないのだ、ならここで使っても惜しくはあるまい)

 

  言い訳じみた事を思いながら一つの箱を取り出す、その箱は掌より少し大きく真紅のような赤に金の装飾がされている、その蓋を開けるとそこには銀の指輪が二つ丁寧に収められている。

  流れ星の指輪(シューティングスター)

  ユグドラシルでもトップレアクラスのアイテムである。

  また課金アイテムでありこれを手に入れようとすると半端な額では全然足らない、自分は偶々運が良く二つ手に入れることが出来たがそんなことは普通起きない、それでも結局サービス終了まで一回も使わなかったのだ、ならここで使ってしまおう。

 

  指輪を一つ取り出し指にはめる。

 

「星よ我は願う、我が願望を実現にせよ」

 

  指輪が輝きその光に吸い寄せられるように風が吹く、

 アルトリアを中心に僅かな風が取り巻きその風がレイナースへと流れる。

  風は数秒でやみ元の状態にもどる、そうレイナースの顔も呪いを受ける前の元の状態に戻っていた。

 

  顔に違和感を感じたのか、いや違和感が無くなったのを不思議に思ったと言った方が正しいのかもしてない。

  レイナースは右手を顔に添える、掌を確かめるが膿は付いていない慌ててまた右頬を撫でる。

 

「ない……膿が傷が、消えてる……」

 

  言葉自体は弱々しいがその瞳には明らかな歓喜で染められている。

 

「あっ…ありがとうございますっ、私の願いを聞いて下さりありがとうございます、これ以上の喜びはありません。感謝致します」

 

  慌てて跪き感謝の言葉を繰り返す。

 

「よい、ならばこちらでの仕事もその分の誠意を見せよ」

 

「はいっ私の出来る限りのことをさせていただきます」

 

「ではな」

 

  そう言ってレイナースの部屋から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 




一応web版を基にしていますが多分アルベドは出します。
出した方が話を作りやすいと思うので、まあまだまだ出そうにないですけど


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従者

 ーキャメロット城内ー

 

  キャメロット城内を歩くアルトリア、先程レイナースと別れ円卓の部屋へと向かっている。

 

「フフッ」

 

  思わず口から笑いが漏れる。

 

(シューティングスターまさかこれ程の力を持っているとは願ってみるものだ、まるで願望器だな都合が良すぎるいい意味で予想を裏切ってくれる、これなら一から作れたかもしない)

 

「同盟者に頼まなければいけないことが増えた、だがどちらにしろレイナースの話を聞いてからか」

 

 

  一方与えられた部屋にいるレイナースは備え付けてあった鏡の前から中々離れられない、時々ニヤニヤしながらがら鏡に映る自分の顔を眺める、別にナルシストと言うわけではない自分の悲願が叶い元の顔を取り戻したのだ当然と言えば当然だろう。

  もう何度目かわからないほど右頬を撫でて治ったという事実を確かめている。

 

(フフッ、これが現実…中々実感がわきませんね、でも身体が熱くなり顔から違和感が薄れるあの感覚今でも思い出せますね、身体もついでに回復されたのでしょうか随分と軽い気がします。

 …それにしてもこの部屋豪華ですね)

 

  その部屋は一人で使うには広く中にベッドに机、テーブル、椅子、姿見などなど他にもあるがそのどれもが高級感と上品な質を持った品ばかりであり、元貴族の自分でもこれほどの物は中々見たことがない、先程運ばれて来た食事も絶品であり陛下でも口にしたことがないのではと思う物もいくつかあった。

 

(いざ顔が治ったら何をするか色々考えてたはずなのにどれもしっくりこないわね、それにあの指輪一体どんなマジックアイテムだったのでしょうか?大魔法使いフールーダでも治せなかった傷を治すなんて、まあフールーダ様は元々治癒魔法だ得意ではありませんでしたが。

 アルトリア様も感情の起伏が感じにくいだけで会話自体は普通に出来ますしそこまで価値観の相違も無さそうですね。絶対的な味方というわけではありませんが陛下と同盟を結んだ以上敵にはならないでしょう)

 

  初めてその姿を見た時は思わず見入った、何というか自分とは正反対だと思ったのだ、その優れた容姿は人間としても女性としても完成された美でありその雰囲気に高潔さと神聖さを持っていて儚げな容姿をしながら圧倒的な存在感があった。

  誇りを捨て呪い解くために生きてきた過去が余計に彼女とは反対だと誇りを拾い直してもこうはなれない、そんな嫉妬のような感情だった。

 

  だが彼女は反転した…白く神聖な印象は黒く禍々しく変質した、彼女と比べて反対の黒だと感じていた私が白く感じるほど彼女の黒は深かった。

  しかしその中には邪悪な意思は無く高潔な騎士という印象は変わっていなかった、これだけ極端に変わっても美しくあるその姿に憧れた。

 

(どちらにせよここまでして貰ったんですから何かお役に立ちたいものです。しばらく滞在との事ですけどこれを機にアルトリア様に仕えることは出来ないでしょうか?明日頼んでみるとしましょう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット城内ー

 

  ジルクニフが来た次の日、一室にてレイナースによる情報提供が行われていた。

 

「以上が特に帝国近辺に出るモンスターの強さです。勿論例外的なものもありますが大体はこのような感じです」

 

「なるほど、大体わかったではワイバーン程度でも結構な脅威というわけか」

 

「はいそうなります、王国と比べると帝国は冒険者も少ないですし、何よりキャメロットのワイバーンは通常種と比べても倍以上ありますから住民にとってはさらに脅威でしょう」

 

「そうだな、まあどちらにしろワイバーンでの偵察は要らなくなるしな、……知りたい情報は大体聞けたから満足だ、貴様はこれから同盟者との連絡役としてしばらく残るのだろう?」

 

  ジルクニフには連絡が取れるようにマジックアイテムを渡してありもう片方をレイナースに持たせてある。

  ジルクニフからレイナースはと言うよりはレイナースがジルクニフと連絡を取るためというのが大きいキャメロットについての報告を行うためである。

 

「それと私から一つよろしいでしょうか?」

 

「ん?なんだ?」

 

  相変わらずアルトリアの瞳は感情を映さない、レイナースは若干戸惑いながらも口を開く。

 

「…この顔の呪いを解くことは私の悲願でした。

 呪いを受けてから私はその事に固執して来ました、昨日言ったように帝国の四騎士になったのもその為です、実は呪いが解けたら何をしたいかなどを日記に付けるのが習慣でしたがどうもそれらをやりたいとは今は思いません。

 今は呪いを解いて下さった恩を返したいと考えてます。

 従者でも騎士でもなんでもいいので仕えさせて頂けませんか?」

 

 一瞬空気が張り詰め僅かな沈黙が流れるがすぐに終わる

 

「………フフッ、構わない我が従者として歓迎しよう」

 

  相変わらず感情がわからない瞳をこちらに向けているが

 アルトリアは僅かに笑みを浮かべてながら答える

 

「…ありがとうございます」

 

  空気だ緩み元の雰囲気に戻る。

 

(もう少し時間をかけるつもりだったが案外早くこちらに流れたな)

 

「だが同盟者はどうする?大事な四騎士とやらが欠けては困るだろう」

 

「それについてもお願いがあります。

 立場としてはこれまで通り四騎士として陛下に従います、勿論優先順位はアルトリア様優先で動きますがもう暫くは陛下の騎士としての仕事をしたいと考えてます。

 

  陛下には少なからず恩もありますし陛下が居なければここへ来る事も無かったでしょう。

 それである程度したら陛下の元を離れこちらに戻らせて頂きたいのです、それまでには陛下にその旨を伝えておきます」

 

  レイナースとしてもジルクニフには恩を感じており、ジルクニフのおかげで自分を裏切った者たちへの復讐も果たしている。

  四騎士の中では一番忠誠心が低いとはいえ呪いが解けたから『はいさよなら』と言うほど忠誠心が無いわけではない。

 

「どれぐらい自由に動けるんだ?」

 

「ここしばらくはこちらに滞在なのでアルトリア様の指示で動けます。帝国に戻ってからは帝国内でしたらある程度の時間的な制限はありますが動けます」

 

「そうか…わかったそれについてはそれでいい、私としても同盟者とは溝を作りたくない今のところそちら優先でいい、……それとまだ聞きたいことがあるのではないか?」

 

「はい」

 

  レイナースは朝起きてから身体に明らかに変化があったのだ、昨日は顔の呪いが解けたことの興奮と気分の高揚で気付きにくかったのだが一度興奮が冷めると身体から僅かに漏れ出す魔力に気づいた、意識して出すとそれまで感じたことのないような膨大な魔力が巡り放出される。

  これほどの魔力は扱ったことは当然なく、その原因は顔の呪いを解いた時しか思い当たらない。

 

「明らかに魔力の質と量が変わっています。魔力の付与もしてくれたのでしょうか?」

 

「いや違う、そもそも顔の呪いも治癒したのとは少し違う」

 

「治癒ではない?」

 

「例えるなら魔力で呪いを塗りつぶしたような感じだ、貴様の身体に竜の因子を埋め込んだ」

 

「竜の因子ですか?」

 

「竜の性質その起源のようなものだ、どういう状態になったかと簡単に言えば竜の力を振るう事が出来る人のままでな、もっとも人間か問われると怪しいところだが竜の属性を持つ人間というのが最も適した表現だろう、竜人というわけではない竜化は出来ないはずだ」

 

「竜ですか…」

 

  レイナースは自分の掌を眺めながら呟く。

 

「不満か?」

 

「いえ不満ではないと…思います、すいませんあまりのことなので中々認識が付いてこなくて…」

 

「確かに仕方がないことかもしれん」

 

「これほどの力を与えて頂き感謝します。早くこの力を使いこなしお役に立てるように頑張ります」

 

「しばらくは身体に慣れるのが先決だな、城の地下に訓練として使える広場がある自由に使うといい」

 

「ありがとうございます、では私はこれで」

 

「ああ」

 

  そう言ってレイナースが退室し部屋の中はアルトリア一人となる。

  時間がかからずにレイナースが手に入ったのは予想外だが手に入ったのは予定どうり、人型のNPCがいないキャメロットでは中々に貴重な存在だ、まあシューティングスターの再現性の高さが予想外でありもう少し劣化した再現度かと思っていた。

  これほどの性能なら既存のNPC強化に使えばゲーム時代とは隔絶した力を持つNPCに出来るかもしれない。

 

「願望器もそうだが令呪みたいな使い方もできそうだ、まあ令呪のような一時的な強化に使うのはどうかと思うが選択肢が多いというのは悪くないだろう」

 

  ひとまずシューティングスターの性能はわかったし、ある程度自由に出来る手駒も手に入ったが、それでもやはり少ない、奴隷でも買おうか?オートマターも遠隔操作出来るのは一体のみ数はあっても自動操作ではろくに会話もできない。

  出来る事なら手駒を帝国各地にはなっておくのが理想だ、勿論送れるなら他の国にも送りたいがまだまだ先の話、これからもナザリックとの接触は同盟者を挟んで間接的になるだろう、あちらから接触して来るならまた話は別だが。

 

「そうだ、後でレイナースに新しく鎧と武器を渡してやらなければな、何がいいだろうか?どうせ使えるNPCがいないからな、確か魔力を喰わせて効力を発揮するやつがあった筈だな」

 

 そう言ってアルトリアはアイテムを漁りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット城地下ー

 

  レイナースは現在キャメロット城地下に来ている、その広場で今の自分の力を確認するためだ。

 

「これだけ広いなら問題ないでしょう、とりあえずいつも使っているのから確かめていきましょう」

 

火球(ファイヤー・ボール)

 

  それは最高火力と言わないまでも使い勝手が良く元々魔力の高かった自分が使えばそれなりの威力が出た、が、そこから発せられたの木を燃やす程度の舐める火ではなく、大木をなぎ倒す程の巨大な火球、その後轟音が響く。

  右手から放たれた火球は明らかに大きくそれが放たれた瞬間に危険を感じ瞬時に身構えた、轟音と共に広がる熱風を無意識に纏った魔力で遮る。危機が去り一二歩下がって我にかえる。

 

  地面自体には傷らしきものは無いものの大きな焦げ跡が付いている

 

「は…ははっ、ふぅ…これはいけませんね、竜の因子とやらを甘く見ていました。これ程の力早急に使いこなさなければこれからの行動に支障をきたします。アルトリア様に無様な姿を見せるわけにはいきませんし」

 

  その後も魔法を使い威力の調整や体を動かし身体性能を調べてみるも身体の魔力は底をつかず、明らかに人間では無理な身体性能を確認し自分という存在が人間とはかけ離れていることを改めて認識した。

 

「あれだけ動いても息が乱れない…凄いですこの身体、…らしくないですが高みを目指してみましょうか?あの方の元でなら目指せる気がします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーバハルス帝国帝城ー

 

「ふぅ、ようやく戻ってきたって感じですね陛下、ナザリックもそうでしたけど肩が凝りそうです」

 

  ジルクニフが豪華な椅子に腰を下ろすのを見計らってバジウッドが話しかける。

 

「おい、分かっているとは思うがあそこの事は大事な手札の一枚だ、同行した者には秘密保持を徹底させろ」

 

「大丈夫です分かってますよ、それにしても最初と後で正反対でしたね印象が」

 

「確かに印象は随分変わったがおそらく奴の本質は変わっていないぞ、変わってないというより元からと言った方が正しいかもな」

 

  黒い鎧に身を包んだ彼女の姿を思い出す、奴は自分の意思とある一定の基準を元に行動している、合理性を欠いたとしてもその範囲であれば多少手間でも手を差し伸べる。

  裏切らないはずだ同盟を結ぶ限り奴は、アルトリアは約束を守る。

 

 

 

「でも良くレイナースの奴あそこに残りましたね拒否しそうなものですが、まあ相手はそこそこ友好でしたが」

 

「ああ、レイナースとしても一か八かだったのだろう、望みと危険を天秤にかけてな」

 

  望みですか?とバジウッド言いかけた時ノックもなしに勢いよく扉が開く

 

「陛下お久しぶりですな、と言ってもそこまで経ってはいないですが師の元にいると珍しい物ばかりで時間が経ったように感じますな」

 

  失礼極まりない入室をしたのはフールーダ、アインズを師として崇めている魔法使いだ

 

「じい帰っていたのか、どうしたんだアインズの元で魔導の探求をするのではなかったのか?」

 

「いえ師からは友人の部下を引き抜いては申し訳ないとの事でこちらに戻って来ました。それにここにいても師からの課題も取り組めるので問題ありません」

 

「そうかそれは助かるな(全く良く口が回る、これではただのスパイではないかそれもよりにもよって帝国最強の魔法使いこの上なくタチが悪い、これで余計に動きづらくなる)」

 

「ほほっ、お任せ下さいこれからも力になりますぞ」

 

「ああ、期待している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レイナースをNPCの立ち位置で使いたい
オリキャラを出すのがあんまり好きじゃないんですよね
出来れば主人公だけがいいんですけどそれも難しいですね
オリキャラはモブ程度で済ませたいなー


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冒険者

 ーバハルス帝国首都ー

 

  早朝の冒険者ギルド、朝からいくつもの依頼が貼り出される、主に昨日受理された依頼でありそれを掲示板に追加し、自分の受け持つ受付を整理して冒険者ギルドの受付嬢としての仕事が始まる。

 

「さて、今日も一日頑張るとしましょう」

 

  今日も今日とて仕事、私がこの仕事もついてすでに四年目であり慣れた手つきで書類の整理終わらせ冒険者の対応をする、早朝といえど冒険者は来る生活がかかっている冒険者にとってはより楽でより報酬のいい依頼を探す為当たり前といえば当たり前、なので朝来る冒険者は意外にも多い、そして昼に近づくにつれ冒険者は減り夕方には依頼を終えた冒険者でまた溢れる。

 

「はい、こちらの依頼ですね。少々お待ちください」

 

  いつものように事務処理を進め昼に近づいた頃一人の冒険者が現れる、その姿はマント、フード、手袋さらに首元から布を巻きつけてある一見すると怪しい姿だが最近はよく依頼を受けに来るドールという冒険者だ。

 

  以前魔狼の素材を持ち込んだのが初めで次来た時に冒険者登録した冒険者、一人旅というしおそらく女性なので警戒するのもわかるが、ここは帝国首都なんだしそこまで警戒しなくてもと思うも人それぞれ事情はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が二回目にギルドを訪れ冒険者登録した日の事である。

 

  その日はギルド長が出かけており更に上司が休みとあってとても忙しい一日だった、いつもなら夕方に入る前には自分の仕事は終わるはずがそれ以外の仕事もしなくてはいけなく同僚達と手分けしても中々終わらず結局はかなり遅い時間に帰ることになった。

 

  いつも人が行き交う道も人気はなく静まり返っている、不気味な雰囲気さえ感じる道を早足で歩くがふと立ち止まり顔を横に向ける、目を向ける前には建物同士の間にある月の光さえも届かない暗い道がある。

 

 

  この道は裏道であり私の家まではこちらを通った方が早い、普段なら通らないがどちらにしろ今は夜、暗いのも同じ人気がないのも同じ、ならいいかそう思ったのがいけなかった。

 

 

  裏道を小走りに近い早足で家まで急ぐが物が乱雑に積まれた物陰からのっそりと大柄な男が現れる。

 

「ヒッ」

 

  思わず小さな悲鳴が出る、すると更に後ろから足音が聞こえ振り向くと、何処にいたのか複数の男が歩いてくる、心臓の音が聞こえ冷や汗が流れる。

 

「あ、あのちょっと通りますね」

 

 震えた声で前の男に話し掛けながらその横を通り過ぎようとするが男の横まで来て腕を掴まれ口を抑えられる、分かっていた事でも縋る思いだった、もしかしたら偶然人がいただけで人攫いではないのだと、でも現実は非情だった。

 

 

「そういうのは、あまり好きではないな」

 

 

  しかし幸運でもあった。

 

 

  その空間に声が響く、私を抑えている男が体ごと振り向いたため私の目にもその人物が映った、頭から足元まで隠すその異様な姿と凛とした声、確か今日冒険者登録した人だ、たしかドールさんだっけか、ふとそんな事を思い出した。

 

  そこでようやく男が動き出した、私を捕まえているのがリーダーらしく声を出さずに顎で指して指示を出していた、すぐに後ろの男達がナイフなどの武器を抜きながら襲いかかる。

 

 特に構えることもせずに流れるような動作でかわす、腰の片手剣にすら手を伸ばさずにただかわし続ける、焦りと苛立ちから大振りな攻撃をした男が勢い余ってよろめく、その瞬間ドールさんは片手で相手の肩を抑え腹に強烈な膝蹴りを打ち込む、鈍く重い音がした相手はかすれた息を吐きながな倒れ動かなくなる。

 

 一人沈んだ、その事実に思いのほか動揺した残りの男達は更に焦る、相手が武器すら抜かないのが余計にプレッシャーとなっているのだろう、残りも最初の男の焼き回しのように一人二人と確実に倒され、最後の一人は片手で首を締め上げられて動かなくなった。

 

「さて、お前で最後だ」

 

  あっという間に一人となったリーダーの男はゆっくりと近づいてくるドールさんに向けて私をおもいっきり突き飛ばし逃走を図る、地面にぶつかることを覚悟して身を硬くするが優しく勢いが殺される、抱き止められたのだと分かるころにはふわりと宙を舞っていた、私を抱え飛んでいるんだと理解したのはドールさんが蹴りでリーダーの男を壁に叩きつけた後だった。

 

  抱えられた時にフードが浮かび僅かに見えた顔は黒目黒髪の美人さんだったと思う、なにぶん夜月の光で僅かに見えただけなのだそこまで確証はない、腕の中から降ろされた時は少し残念で名残惜しかったがそういう訳にもいかない早くお礼を言わなければ、その後すぐにお礼を言ったが。

 

「気にするな、私が偶然通りかかった貴様の運が良かっただけだ」

 

  そんな事を言われてしまった。

 

「そんな助けて頂いてそういう訳には…」

 

「と言ってもこれといって…ん?貴様、もしかしてギルドの受付にいた…」

 

「あっはいそうです、貴方の冒険者登録をさせて頂いた受付嬢でタリアと申します」

 

「そうか、それならいずれまた、ギルドで世話になる。その時に、恩を返してくれればいい」

 

「あ、あの」

 

「ああ、その男共もこちらでどうにかしよう。さあ夜も遅い早く帰るといい」

 

「そ、そうですか、ではお言葉に甘えて、今日はありがとうございました。ギルドには必ずお越し下さい、私の出来る限りお役に立ちますので」

 

「ああ」

 

 そうして私はドールさんと別れて家に帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 その後しばらくドールさんはギルドに来ることがなかったが最近は連日依頼を受けにギルドに来ている。

 

「こんにちは!ドールさん。今日も、依頼を受けに来たのですか?」

 

「ああ、昨日は助かった、中々悪くない依頼だった。今日も頼む、何かいい依頼はあるか?」

 

  冒険者ギルドでは掲示板に貼ってある依頼と受付に強さを目安に依頼を出して貰うやり方がある、出して貰う方は初心者であれば冒険者にとってありがたく、上級者であればギルドにとって処理してほしい依頼を受けて貰うことが出来る、ドールさんはその後者である。

 

  口調こそ高圧的であるがその物腰は柔らかくこちらの仕事に対する敬意を感じられとても仕事が進めやすい、同僚達は怪しい外見からあまり接したがらないが私はドールさんは恩人だし悪い人ではないと思う、それに周りは知らない秘密を知っているようでちょっぴり優越感もある。

 

「いえ、ドールさんの腕があっての依頼です。確か…あった、これなんてどうでしょう?ドールさんであれば大丈夫だと思いますが」

 

 ドールさんのために選んでおいた依頼書を束の中から引っ張り出して見せる。

 

「トロールか、もう少し報酬のいいのはないのか?多少危険でも構わない」

 

「残念ながらこれより報酬がいいのとなると、これとこれぐらいしかないんですよ」

 

 そう言って二枚の依頼書を見せる。

 

「どちらも、報酬がそこまで高い訳でなく。何より距離があるので、これが一番いいかと」

 

「なるほど、いや悪いな、一番いいのを出してくれたのか。ではこれにしよう、頼めるか」

 

「いえいえ、仕事ですから。ではこちらの依頼ですね、少々お待ちください」

 

 手早く依頼書の手続きを完了させる。

 

「はい、手続き完了です」

 

「では、討伐に行ってくるとしよう」

 

「はい、いってらっしゃいませ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在私はオートマターを使って帝国首都で冒険者として活動している。

 目的はいろいろあるがあえて挙げるとすれば冒険者としてのある程度の立場が欲しいのが一つ、帝国では冒険者の立場はそこまで高くないが王国などに行く場合には便利なものとなる。

 それなりに上級の冒険者になれば行動の信憑性や信頼性が高まるのでより円滑にことを進められるだろう、同盟者に頼むのもいいんだが皇帝と関わりのないそれなりの立場というのも大事だ、何でもかんでも同盟者ではあっという間に繋がりがバレる。

 

 それに冒険者ギルドはなかなか情報が入る、情報収集を兼ねて夜徘徊していた時に偶々助けたタリアには随分懐かれ、そのおかげで最近の噂話から依頼の傾向なども教えてもらえる、レイナースからも聞けるのだが情報源が多いことに越したことはないだろう。

 

(それはそれとして、依頼をさっさと終わられておきたい。いつも通り、目撃場所から探知を広げて探すとしよう)

 

 首都から出て道沿いに目撃場所を目指す、人目のないところまで行き走り出す、本来の体ではないが使っているのはオートマター走ればそれなりの速度が出る目撃場所までそれほど距離もない走り続ければすぐに着く。

 

 トロールは最近そこにやって来たらしく縄張りにしようとしているらしい、すでに複数回人が襲われてるらしくその内の生き残った商人が依頼を出した。

 逆に言えばトロールはそこから離れ難く依頼を受ける方としては探索も容易にで有難いものだ、そうただ行って近くを探し見つけて狩るそれだけのはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 四人の冒険者、男二人に女二人、その中の男の一人が気まずげに口を開く。

 

「いや、その…悪かったな」

 

 

 

 

 事の起こりは目的地に着いた後、目撃場所の近くを探索してトロールを見つけたのだがすでに狩られた後だった。

 トロールを殺し素材をどうしようかなどと話しているところに私が現れたのだ、素顔が見えずほぼ全身を隠している私に四人とも警戒しながら何の用だと尋ねてきたので、冒険者プレートを見せながらトロール討伐を受けた冒険者だと伝えると今度は警戒心を抑えて若干申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。

 

 先に狩られてしまったものは仕方がない、依頼を横取りしようという意図はないのだし冒険者しかモンスターを殺してはいけない決まりがあるわけでもない、ましてや命を守るための防衛手段だったかもしれないのだ文句は言えないだろう。

 

「いや、仕方ないだろう、知らなければどうしようもない。今回は、私の運が悪かったという事だ」

 

 そう言うとホッとしたような顔をした

 

「そう言ってもらえると助かる。こちらとしても、悪意があったわけではないしな、全部は無理だが、少しなら素材を譲るが」

 

「いや結構だ、私が仕留めたわけではないしな。依頼を理由にたかるような、大人気ない事はしたくない」

 

 とりあえず一旦落ち着き私が首都に帰ると言うと冒険者達もそこに帰るところだったと言う話になり、せっかくだし一緒に行かないかと誘われ同行することになった。

 

 首都に向かいながらいろいろ話を聞かせてもらった、彼ら四人はフォーサイトというチームらしく冒険者ではない、彼らは自分達で依頼者を探し直接交渉して依頼を受けるらしく彼らみたいな者をワーカーと呼び、そんなワーカーの中でもベテランのチームとのことだ。

 ワーカーは冒険者ギルドを挟まないことでより多くの報酬で稼ぐことができるというのが利点だがその分リスクや手間は増える、冒険者と比べても一長一短どちらがいいとは言えないだろう。

 

「それにしても、あんたソロで依頼を受けてるのか?依頼を選ぶか、ある程度なんでもこなせないと、なかなかできないよな。いざという時も、カバーしてくれる仲間もいないしな、すごいと思うぜ」

 

 チームのリーダーだというヘッケランという男が話しかけてくる。

 

「まあ元々一人旅で、冒険者登録したのも、ここ二週間くらいの話なんだがな」

 

「へ〜、じゃあもっとすごいな、たった数日でもうシルバーまできたのか」

 

「運が良かったのだろうな」

 

「ははっ、謙遜することもないんじゃないか」

 

 

 

 

 

 そんな話もしながら首都の入り口まで来る。

 

「そうだ俺たちこれから飯なんだが、せめて飯ぐらい奢るが、来ないか?」

 

「気にしすぎだ、それにこの後は用事がある悪いな。食事の代わりと言ってはなんだが、時間が合えばお前達のこれまでの話なんかが聞きたいな」

 

「それくらいならお安い御用だ、なあ」

 

「ええ、そうね」

 

「ではそのうち会おう」

 

「おう、じゃあな」

 

 そんな挨拶をしてフォーサイトと別れる、ああ言ったがとくに用事があるわけではない、この体では食事が出来ないのでそれを回避するための方便だ。

 それはそれとしてなかなか悪くない繋がりを持てたかもしれない、冒険者とは違うワーカーという存在ワーカーとしての情報もあるだけ便利だろう、冒険者では受けられなくてもワーカーに回ってくる仕事などもあるだろう、まあナザリックなどの核心に迫る情報はそうそう転がってはいないと思うが。

 

(しばらくは冒険者として情報収集と息抜きがてらゆっくりするか)

 

 

 

 

 

 

「なあ、あいつのことどう思う?」

 

 ヘッケランがチームの皆に尋ねる。

 

「私は予想に反して付き合いやすい人だと感じたけど、見た目はあれだけど素材を断ったあたりも人ができてそうだし悪い感じはしないわね」

 

「そうですね、第一印象と比べればいいと思いますよ。声からしても女性でしょうし、ソロでシルバーというのもなかなかです、付き合いを持っておいてもいいと思います」

 

 ロバーデイクがイミーナに同意する。

 

「アルシェはどう見えた?」

 

 ヘッケランの質問がアルシェだけ違う意図に聞こえる、それには理由があるアルシェは特殊な目を持ちその目で見る事で相手の魔力を視覚的に測ることができる、つまり見るだけでどの程度の魔法詠唱者か分かるのだ。

 

「とても変な感じ、普通の見え方ではなく靄がかかっているような感じだった。実力は高いと思う、おそらく私以上」

 

「なっ、アルシェ以上!」

 

 イミーナが驚く、それもそのはずアルシェは第三位階魔法を使える魔法詠唱者それ自体がそもそもいないのだ、それ以上となると冒険者ではまずいない

 

「なるほど、冒険者になったばかりというのは本当らしいな」

 

「確かにそこまで出来てシルバーはないでしょう、すぐに上がりますよ彼女」

 

「場合によってはワーカーに誘うのもありだな、金に頓着してないから厳しいか?」

 

「まあ今日見た限りでは冒険者で十分という感じでしたね」

 

「そういえば靄がかかっていたってのは?」

 

 ヘッケランはロバーデイクとの話を切りアルシェに尋ねる。

 

「分からない、何かのマジックアイテムで隠していたのかも」

 

「まあ顔まで隠してるしな、それだけの魔法詠唱者なら実力を隠そうとするのも頷ける」

 

「ねえ、とりあえずいつものとこで話にしない」

 

「そうだな、腹も減ったしそうしよう」

 

 そうしてフォーサイトはいつもの拠点に戻る。

 




ナザリックはいつ出せるのか自分でも分からなくなってきた


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依頼

投稿も遅く、話の進行も遅くすみません



 ーバハルス帝国首都ー

 

「おーい、こっちだ」

 

 ヘッケランが奥の席で片手を軽く振りながら入り口にいるドールを呼ぶ。

 ここは笑う林檎亭、フォーサイトと別れてからしばらくして、ヘッケランから時間があれば少し付き合ってくれないかと誘われたのだ。

 フォーサイトの集まっているテーブルに近づき空いている席に座る。

 

「悪いな呼び出して」

 

 フォーサイトの四人は食事を終えて一休みといったところだろう、グラスだけをテーブルに残し寛いでいる。

 

「いや、私も用事があったわけではない。この前言ったとおり、私もいろいろ聞きたいしな」

 

「そりゃ良かった。なんか食うか?ここの飯は美味いぜ」

 

「食事はもう済ませた」

 

「そりゃ残念、アンタの顔を拝めるチャンスかと思ったんだがな」

 

「それで?私を呼び出した理由は?」

 

 ヘッケランは寛いでいた格好から姿勢を直し、少し声をおとしてドールに質問する。

 

「それほど大した理由じゃないんだが、いや、アンタが知ってれば結構大事な話なんだ。最近、受けるつもりの依頼があってな、それについての情報があればと思って声を掛けたんだ。アンタ旅をしているって言ってたろ、王国にある遺跡なんだが、何か知らねえか?」

 

「遺跡?」

 

「ああ、トブの大森林にあるらしいんだ。依頼の情報ではな」

 

「ほう、遺跡調査か?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「わざわざ私を呼び出すとは、依頼に何か怪しいところでもあるのか?」

 

「結構報酬がいいんだ。こういうのは疑って掛からねえと、痛い目見るからな。俺らで集めた情報では、そこまで怪しいのはなかったが、用心しといて損はないからな」

 

「ヘッケランの言うように、依頼自体には罠などはないと思われます。しかし、何故依頼が必要なのか?依頼の目的が分からなかったり、肝心の遺跡がどのようなものかも全く分かりません。だから調査なんでしょうが、それにしても情報が少な過ぎます。記録として残っているものがありません。そこが少々腑に落ちない感じなんですよ」

 

 ヘッケランの隣に座っていたロバーデイクが依頼の不審なところを指摘する。

 

「出来れば遺跡に関して分かると助かる。いい情報にはそれなりの情報料を出すぜ、安全が金で買えるなら安いもんだ」

 

「まあ待て、トブの大森林はいいが、森の中から遺跡を探すのか?あの広大な土地を?」

 

「いや、遺跡の場所は大体分かってる。森の中にある、ナザリック大地下墳墓ってところだ。なんか知らねえか?」

 

 それを聞きドールはゆっくりと背もたれに背を預けしばらく沈黙したのち口を開く

 

「はぁ、なるほど……ナザリック…か」

 

 ドールは呟くように言うが、その言葉から感情は読み取れない。

 

「…知ってんのか?」

 

 自然と声をひそめるヘッケラン。

 

「その前に聞いておきたい。依頼主は?」

 

「フェメール伯爵」

 

 今まで黙っていたアルシェが答える。

 それに合わせてドールがアルシェの方を向き更に質問を重ねる。

 

「伯爵の独断か?」

 

「そこまでは分からない。フェメール伯爵の宮廷内の状況はあまり良くないらしい、皇帝にも無下にされているという噂もある」

 

「まあ、だからこの依頼と何か関係するのかと言われると、そう言いきるだけの理由も根拠もないがな。伯爵がこの遺跡調査に何を求めてるかは不明、金銭的にも困ってないらしいしな、と、そんなところだ」

 

 アルシェの後にヘッケランが情報を補足する。

 

「他のワーカーにも依頼が出ているのか?」

 

「ああ、俺らの情報では他の4チームにも話がいったらしい」

 

 ヘッケランは少し体を前に乗り出し情報をねだる。

 

「そろそろナザリックの情報を教えて欲しいんだが?」

 

「喋らせておいて悪いが、ナザリックについての情報は、あまり無い」

 

「おいおい、勿体ぶっといてそれはないだろう」

 

「まあ聞け、確定事項は教えてやる」

 

「確定事項?」

 

「お前達では、現時点でナザリックは攻略不可能という事だ」

 

 黙り込むフォーサイトの面々。

 

「面と向かってそんなこと言われるとはな。これでも俺たちはワーカーの中じゃ結構優秀なつもりだ。それに攻略は絶対条件じゃない、あくまで調査だからな、無理そうなら撤退する」

 

 怒りの感情を出さずにあくまで冷静にドールに言葉を返す。

 

「勘違いするなよ、侮辱している訳ではない。ナザリックはそういうところという意味だ」

 

「だが、具体的な理由も無しにそんな事言われても困るぜ。今しがた、俺等の中では依頼を受ける事に決まったんだが、取りやめるならそれなりの理由が欲しい」

 

「生憎だが、出せる情報は無い。だが面白い話を聞かせて貰った礼はする」

 

 そう言ってドールは1本の杖を取り出しテーブルの上に置く。

 杖は金属製で控えめな装飾が施され鈍く光っている。

 

「これは?」

 

「マジックアイテムだ。これには転移魔法が込められている」

 

「…っ、なんだそりゃ、それが本当ならやべーアイテムだろ、それだけで結構な金になる」

 

 転移魔法はそもそも使い手がいない、第三位階魔法を使える魔法詠唱者であるアルシェですら使えないのだ。

 それがアイテムで使えてしまうという事がどれだけの価値があることか嫌でも理解する。そしてそのアイテムの金銭的価値も計り知れないだろう。

 

「忠告はしておくが、どうせ行くのだろう。なら持っていくといい、貸してやる」

 

「…いいのか?絶対に返せる保証はないぜ。こんな物渡されるほどの話はしてないと思うしな」

 

「それとこれも渡しておこう」

 

杖の隣に一つの指輪を転がす。

こちらも装飾がされており銀に輝いている。

 

「阻害耐性のアイテムだ。魔法行使に対しての阻害効果を弾く事が出来る。一度、運が良ければ二度使える、使えば砕ける使い捨てアイテムだがな」

 

「絶対に転移しろって事か?」

 

「そこまでは言わないが、保険があれば調査も捗るだろう?」

 

「はぁ、だがいいのか、俺らにこんな投資して?」

 

「構わない、私としてはそこまでのアイテムではないしな。それに、便利とは言え杖にも回数制限がある、無駄遣いはしない事だ」

 

「アンタ何者だよ、こんなのぽんと出せる奴普通いないぜ。それにやっぱりアンタもナザリックの情報が欲しいのか?」

 

「詮索は無しだ。お互い利があるのだから問題ないだろう」

 

「そりゃまあ、そうだな。そんじゃ有り難く借りておく」

 

「ではそろそろ私は行く」

 

 そう言ってドールは席を立つ、相変わらず顔も分からないが、フォーサイトからすれば怪しいところが増えただろう。

 

「話はいいのか?」

 

「ああ、今回の依頼の話で十分…、なかなか面白い話だった。……そうだ、この依頼後もしかしたら、私からフォーサイトに依頼をするかもしれない。その時はよろしく頼む」

 

「依頼?まあ報酬次第では受けるが、どんな依頼だ?」

 

「それは次に会った時だ、それまで生きていればな」

 

「おっと、流石に縁起でもねえぞ。そう簡単にくたばってやるつもりもねえしな」

 

「そう願っておこう、ではな」

 

「おう、またな」

 

 そうしてドールは笑う林檎亭より立ち去るが、フォーサイトの話は続く。

 

「まったく、怪しいかぎりだ。それでも不思議と不快にならないのはいいな、これからそれなりの付き合いになるかもしれないしな」

 

「そうね、そこは同意するわ。でもまずはこれでしょ」

 

 そう言ってイミーナがテーブルの上の杖を指す。

 

「これマジもんだと思うか?」

 

「普通に考えれば、とても怪しいですがおそらく本物でしょう。何より、一度試せばその性能も分かってしまいます、すぐにバレる嘘をつく意味はないでしょう。彼女はナザリックを知っていたようですし、何か意味があって調べたかったのでしょう。そこへ我々が調査に行くので、アイテムで手助けして後で情報を聞きたい、と言ったところではないでしょうか」

 

「それでも転移の杖だぜ、そこまでするか?」

 

「ナザリックの危険性を知っているのでしょう。もしかしたら、彼女自身高位の魔法詠唱者で転移を使える、という可能性もあります、極論ですが」

 

「なるほど、アルシェより上の可能性があるからな、なくはない程度だが、あり得るかもな。せめてアイツが何者か分かればな、もう少しまともな推測が出来るんだが、まあしょうがない、とりあえず杖の性能は後で確かめておこう。アルシェ、お前が持ってろ、お前なら使えるだろ」

 

「分かった。とりあえず私が預かる」

 

「よし、今日はこれで解散にするか。依頼と杖についてはまた後日にしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーキャメロット城内ー

 

 そこでは剣が打ち合わされ、火花が散り、空間が歪むほどの魔力の圧が削り合う。

 

 アルトリアは余裕ある足運びで悠々と攻める、雰囲気はとは別にそこから繰り出される剣撃は一薙ぎ一薙ぎが空気を裂く、その攻撃をなんとか受け流しながらしのぐレイナース、攻撃のタイミングを計りアルトリアの纏う魔力空間を自身の魔力放出で割り込みながら剣を打ち込む。

 互いに打ち合い距離をとれば斬撃を飛ばして攻撃、レイナースが左手から火球を飛ばしながら距離を詰める、アルトリアは魔力を練りこんだ風の結界で火球を防ぎレイナースを待ち受ける。

 レイナースが下から切り上げるがアルトリアは左手で剣を受け止め自分の剣を地面に刺したかと思うと空いた右手をレイナースの腹あたりに合わせ魔力放出で吹っ飛ばした、そのまま後ろの壁まで飛び盛大に叩きつけられる。

 

「ゴハッ」

 

 しかしすぐに立ち上がり態勢を立て直す。

 

「いい、とりあえずここまでだ」

 

 アルトリアが制しレイナースは臨戦態勢を解く。

 

「はぁ…ふぅ、それでいかがでしたか?」

 

 現在アルトリアとレイナースはキャメロット城の地下にある広場に来ている、いつもはレイナースの訓練に使われているが、今はレイナースの実力を測るためにレイナースとアルトリアで試合をしていた。

 

「期待以上だ。この短期間で竜の力をそこまで自分のものに出来るとは、私としては申し分ない。あとは出来る手札は増しておく事だ、特に魔法関係は出来る事が格段に増えている筈だ。転移は戦闘中でも技として使えるようにしておけ、だが相手の背後に転移するだけだとすぐ読まれるからな、安易な使い方はやめろ」

 

「ありがとうございます。転移自体はもう出来るので、もう少し練習すれば戦闘中に使えるようになるかと」

 

「優秀だな結構な事だ」

 

「いえ、全てはアルトリア様よりいただいた力によります」

 

「そんなことはないと思うがな。少なくとも、与えられた力を使いこなすだけの才能はあるだろう。まあいいでは精々励むといい」

 

 そう言って立ち去ろうとするが足を止め、レイナースに歩み寄る。

 

「そういえば、いい加減渡しておかなければと思っていた。これだ」

 

 虚空に手を入れるとそこから一振りの剣を取り出す。

 

『聖剣デュランダル』

 

 ユグドラシルのワールドアイテムの一つ、外見は特筆すべきところはなく、見た目は普通の剣で取り回し使い易さは悪くないだろう。

 だがその性能は絶対的であり、魔力を喰わせ続ける事で全ステータスを80%上昇効果を持ち、高い攻撃と攻撃を耐えうる防御どちらにも使え、何より高いのはその破壊耐性、たとえ破壊能力を持つワールドアイテムでも破壊されることはない。

 魔法が放てるなどの効果が無くとも剣を武器としている者からすれば信頼でき使いやすいだろう。

 

 デュランダルをレイナースの前に突き出す。

 

「受け取れ」

 

「は、はい」

 

 レイナースは恐る恐る剣を受け取り持ち手を握ると。

 

「抜いても?」

 

「ああ」

 

 ゆっくり引き抜き、一振り。

 空気の裂ける音が響き剣先がピタリと止まる。

 

「変な癖がなくて、使い易そうです。凄い剣ではあるのでしょうが、ある程度手に馴染むまでは分からないですね」

 

「そこは仕方ないだろう、だが使い始めればすぐに気づく。その剣の名はデュランダル、魔力を与える事で使い手の能力を上げる効果があり、バランスも良く強力な破壊耐性を持つ、切れ味が落ちることはない」

 

「なっ、切れ味が落ちないっ、それはまた、能力上昇というのも気になりますが、よろしいんですか、そのような貴重な物を私などに」

 

「ここで剣を使えるのは私と貴様だけだ、使わずに腐らせておくよりはいいだろう。その剣ももう持たないだろう、早々にデュランダルで慣らしておけ。今の貴様の力とデュランダルがあれば、岩など容易く両断できるだろう」

 

 レイナースが使っている剣はすでに3本目、最初の剣は竜の因子を得た彼女の力に耐えきれず、軽く打ち合っただけで砕けたのだ。

 よってランクの低い剣を与え、使わせていたがそれももう持ちそうにない。

 

「…………ありがとうございます、デュランダル必ず使いこなしてみせます」

 

 岩を切れると聞き、目を見開き驚きながらもそう答える。

 

「驚くのも分からないでもないが、ここキャメロットは、外の世界と比べれば頑丈な物しかない。自分の力の変化を認識しているつもりだろうが、そこには大きなズレがある事を自覚しておけ。貴様は自分が思っているより強くなっている。いずれ鎧も用意しておく、今のところはそれだけだ。ああそれと、私が渡しておいた連絡用のマジックアイテムを貸してくれ、同盟者と連絡を取りたい」

 

 そう言ってレイナースからマジックアイテムを借り、地下の広場から出て行く。

 

 

 




ワールドアイテムの上昇効果は後からいじるかもしれません
正直何%ですごい効果に見えるのか分からないので

もしかしたら時系列がおかしくなるかもしれません

少し修正させていただきました。
感想でご指摘いただいたナザリックの転移阻害なんですが、自分でも投稿前から気になっていたんですが、あまりいい案が浮かばなかったのでこのようになりました。
正直ご都合主義な感じが否めませんがこれが無いと更にご都合主義になってしまうと思い修正しました。

ネタバレになっている気がしますが元々原作があるのでそこは許してください。

様子見で上昇効果を80%に修正しました


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侵入

遅くなりました
最近仕事が忙しくなりまして一カ月に一回投稿できるかどうかといった感じです。
これからも投稿ペースは速く出来ないと思うので気長に待っていただければ幸いです。


ーバハルス帝国帝城ー

 

 そこは豪華な一室、煌びやかな品々が飾られ床には厚い絨毯が敷かれている。

 その部屋の例に漏れず細やかな彫刻が彫り込まれた上質な長椅子に腰掛ける部屋の主、バハルス帝国皇帝ジルクニフ。

 

 自分が処理しなければならない案件の書類に目を通し、次の書類に手を伸ばしたところで手が止まる。

 ふと自分の胸元を見ると彼の胸にある首飾りが僅かに発光し、持ち主を呼んでいる。

 マジックアイテムの反応を確認すると、近くに控えていたバジウッドに指示を出す。

 

「レイナースからの連絡だ。この部屋に誰も入れるな、誰もだ。例外はない」

 

「分かりました」

 

 レイナースからの連絡ということで僅かに反応したもののバジウッドは部屋の扉の外に出て扉の前を陣取る。キャメロットが関わることは今の帝国にとって最高機密であり、情報が漏れるのは避けなくてはならない。

 

 ジルクニフはそう指示を出すと、マジックアイテムに手を添えて相手からの声を受信する。このアイテムはアルトリアから貰ったものでありレイナースとの連絡を取る為のものである。

 

『聞こえるか?私だ』

 

 そこから聞こえてきたのは予想していた声ではなかった。

 

「…っ、まさか君からだとはね。……何か私に用だろうか?」

 

 アルトリアの声に僅かに驚きはしたものの、すぐに冷静さを取り戻し質問を返す。

 

『なに、少々確認したい事があってな。同盟者が何か企んでいるのなら別にいいのだが、そうでないなら、と思ってな』

 

「わざわざ私に確認を?」

 

『ああ、ナザリックについてなんだが。ワーカーにナザリックの調査依頼が回ってきていてな、何か意図があるのか?』

 

(なに?……どういう事だ?そんなものを指示した覚えはない)

 

「それは本当か?残念なことに、私に心当たりはない。第一に、これ以上奴に余計な手札を与えるつもりはない。依頼の元は把握しているのか?」

 

『ワーカーの情報では、フェメール伯爵という人物からの依頼だそうだ。まさか、すでに帝国を侵食されているのではなかろうな?』

 

(アインズの手がすでにここまで…。いや、流石に私に気づかれずにここまで広げるのは無理だろう、そこまで無理をして帝国を動かしても、やっていることは調査の派遣だ。ならば違う、おそらく目的は、手頃な人間が欲しかったと言ったところだろう、糸を引いているのは、じいか?まったく厄介な)

 

 僅かに思考を巡らせる答えを出す。

 

「その心配はない、奴もそこまで大胆な行動は起こさないだろう、今のところはな。だが情報は助かる、礼を言う。……それはそうと、レイナースからの情報提供は満足して貰えたかな?それとも、レイナースはすでに君の手中か?」

 

『なんだ、やはり分かっていたのか、分かっていながら、なぜこちらに残した?』

 

 予想通りの返答ではある、しかし、分かってはいても貴重な戦力が無くなるのは痛い。

 

「私としても手放したいわけではない。あそこで手放さなければ、敵になる可能性のある味方を抱えることになる。なら味方のまま手放したほうがマシと考えただけ、というのもあるが、大きな理由はそれがレイナースとの契約した条件というだけだ。そこまで大した理由はない」

 

『ならば有り難く貰っておこう。なかなか優秀でな、気に入っている』

 

「これから君には大きな借りを作る、私としては少しでも先に返しておきたい」

 

『だが数少ない手駒が減るのは困るだろう?こちらとしても、まだレイナースに頼みたいことはない。同盟者に預けておいてもいいが?』

 

 ジルクニフとしても、使える手駒が減るのは困る。それが四騎士となれば、代わりはなかなか見つかるものではない。だがここで大事なのはアルトリアの対応だ。

 

(少しつついてみるか)

 

「私の監視役が欲しいと?」

 

 僅かに緊張を覚えながらその言葉を吐く、あくまで冗談の範囲で取り消せる言葉だ。

 

『分かってて言っているだろう、くだらん事を言うな。同盟者が何を企もうと、私の知ったことではないし、お互いの利になるならば、その企みの上で踊ってやるのも吝かでない』

 

 言葉からはこちらを勘ぐる感情は読み取れない、聞かれたから答えるという単純な返しだ。

 その返答は予想内であるものの、内心の安心感と確信をさらに強めるのに役に立った。

 

(やはり、基本合理的なのだろうが、約束や同盟さえ結んでしまえば、それを前提として動いてくれる騎士としての姿勢は有難い。この分ならレイナースを手の内で使っても大丈夫だろう。……まあ、どちらにせよどこかで妥協せんと何もできんか)

 

『私としては別にどちらでもいい、確認したかったことも確認できた。あとは直接レイナースと話して決めればいい。レイナースは、受けた恩は返したいと言っていたが』

 

「所詮は取引だがな」

 

『取引でも望む結果がともなえば、それを恩と感じるものだ、と思うが?』

 

「確かに、そういうものかもしれないな」

 

『私の用は済んだ。レイナースに代わる、しばらく待て』

 

「ああ、分かった」

 

 そしてアルトリアとの会話は途切れる。

 

(アインズめ、わざわざワーカーを引っ張り出してまで、いったい何をするつもりなのか。ただ人間が欲しいだけなら、ここまで回りくどいことをする必要は無いはず。それにしても、分かってはいたがじいはかなり厄介だな、出来るだけ権限は取り上げておきたいところだ)

 

 会話が切れても思考は頭の中で続く、そうして考えを巡らして5分ほど経ったところで聞き慣れた部下の声が聞こえる。

 

『陛下、私です。アルトリア様から、陛下から私に話があると聞きましたが?』

 

 レイナースの声である。久しぶりに聞いた気がするが、声からは特に変わったところは感じられない。

 

「レイナースか、久しいな。顔の呪いは解けたのか?」

 

『はい、アルトリア様に頼んで解いていただきました。今はアルトリア様に仕えさせていただいています』

 

「私の手を離れると?」

 

『ご不満ですか?』

 

「まさか、元々そういう約束だろう。お前を失うのはなかなか痛いがな」

 

『ありがとうございます。ですが、陛下のおかげでここまで来れたのも事実です、その恩は返します。アルトリア様から今まで通り陛下のもとで動いていいと、承諾していただいてます。どうされますか?』

 

「…………」

 

『陛下の考えていることはなんとなく分かります。アルトリア様側の人間になった私を、自分のそばに置くことに、抵抗があるのではありませんか?』

 

「分かるか?」

 

『これでも陛下の騎士でしたので。私が言っても意味はないかもしれませんが、そこまでアルトリア様を警戒する必要はないと思います。アルトリア様はバハルス帝国に興味を持っています、陛下が帝国の為にアルトリア様を利用しても、怒ることはないかと、もちろん限度はありますが、それを計れない陛下ではないでしょう』

 

 今まで騎士として仕えていたレイナースより不思議と今の方がレイナースという人間が分かる気がした。

 

「アルトリアが人間臭いところを持っているのは気づいている。だからといって、それをあてにし過ぎるわけにはいかない、が、お前がそこまで言うのであれば、あてにしてみよう」

 

『では?』

 

「ああ、一度こちらに戻ってくれ」

 

『はい、分かりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット城内ー

 

 マジックアイテムの会話を切ると目の前のアルトリアに向き直る。

 

「本人を目の前に、意外と神経が太いのではないか?」

 

「なにか間違ったことを言ったでしょうか?」

 

 レイナースは澄まし顔、というのは少し違うがそんな表情だ。

 

「いや、間違ったことは言ってない。私が帝国に興味を持っているのも、その為に利用されてもいいと思っていることも、どちらもな」

 

「ある程度腹を割って話さなければ駄目でしょう。陛下はそういう人間ですので」

 

「だからこそ、歴代最高の皇帝と言われているのかもしれないからな。まあ嫌いではない」

 

「では明日にでも帝国首都に向かいます」

 

「ああ、同盟者の護衛は任せる。いざとなれば同盟者を連れてここに転移すればいい」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都ー

 

(低レベルの武器でも売ればかなりの金になるな)

 

 ドールは先程武器を売った金額を考え満足げに歩いていた。

 ドールの体でも使える程度の《クリエイト・アイテム/道具創造》で作った簡易なアイテムでも武器屋で売ればいい感じに金になる。

 

(これなら無理に冒険者で金を稼ぐ必要はないな)

 

 そう考えながら、ふと見えた奴隷の市場に足をのばす、奴隷商と言っても様々で、その商品の用途によって売り方も異なる。

 

(チラホラとエルフらしきのもいるな、どれも耳を切り落とされているが何か理由があるのか?)

 

 そんなことを考え眺めていると一つの商会の前に一台の馬車が止まる、そして目の前で馬車の扉が開き、中から奴隷と思われる子供が連れられて出てくる。

 

(物心ついた頃には奴隷か、憐れだな。これを間近で見ると、つくづく自分は恵まれていたと実感する。)

 

そんな事を考えながら眺めていると一瞬目が止まる。

 

「……?」

 

 ふと馬車の窓から見える中の子供の中に何処かで見たような顔が映る。

 

(何処かで見た気がする顔だな、とくに目元が)

 

 双子であろうその子達が馬車から降りるときに思い出し、つい口に出す。

 

「アルシェか」

 

「「え?」」

 

 その小さな呟きにも近いそれを双子は聞き取りこちらを見る。

 

「えっと、お姉さまの知り合い?」

 

 僅かな沈黙の後に双子に問い掛ける

 

「……お前達はアルシェの妹か?」

 

「「う、うん」」

 

 子供からすれば、このような怪しい格好は恐怖感を煽るのだろう、改めての問いに躊躇しながら答える。

 どういう状況なのかと考えようとすると奴隷商の人間が割り込んでくる。

 

「おい、なにやってんだ、さっさと来い」

 

 そう言って双子の手を引いて連れて行こうとするがそれを遮る。

 

「まあ待て、少し話が聞きたい」

 

 そう言って手持ちの銀貨を握らせる。

 

「おい邪魔すっ…ん?…チッ、しょうがねえ少しだぞ、なにが聞きたいんだ?」

 

 少なくない金を握りしめ渋々といった感じでこちらを睨む。そんな奴隷商を双子から離し、声を抑えて質問する。

 

「その双子についてだ」

 

「ん?あいつらか?馬鹿な父親に売られた憐れな双子だ。あいつらの父親は自分がとっくに没落した事に気づいていない、未だ過去の栄光にすがってるのさ。そうして借金していって貴族としての見栄を張る、俺には分からないねーそういう考えは。すぐに取り返せる、だから今子供を手放しても、すぐに連れ戻せるそう考えてるわけだ。確かもう一人娘がいて借金返す為にワーカーやってるはずだが、まあ俺が知ってんのはこんくらいだ」

 

「そうか」

 

(随分と面白い巡り合わせだな)

 

「ああ、じゃあな」

 

離れようとする奴隷商の肩に手を置き引き止める。

 

「待て」

 

 奴隷商は再び呼び止められイライラしながら文句を言う

 

「おい、知ってることは話したぜ、あんまり無駄な時間を使うと俺も上に怒られる」

 

 手のひらに金貨を数枚見せながら答える

 

「客だ、私が買おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーナザリック大地下墳墓ー

 

 現在ナザリックの調査依頼を受けたワーカー達は各チームに別れ探索をしている。

 一度情報交換した際にこの遺跡には多くの宝が転がっているのが分かり、各チーム共にモチベーションを高く保ち探索をしているが、相変わらずここがどういったところなのか、謎が深まるだけである。

 

「たくっ、よく今までこんなに宝があるのに放置されていたな」

 

「同意ですね、もしかしたら過去の時代の遺跡なのかもしれませんね」

 

 ヘッケランとロバーデイクが会話しながら先に進む。

 

「今のところ、モンスターは大したことない。どうにでもなるレベル」

 

「アルシェの言う通りね。この遺跡は色々とチグハグで不気味だけど」

 

 その後ろをアルシェとイミーナが追う。

 

「おっと、そう言ったら早速お出ましだ」

 

 そう言うヘッケランの視線の先にはグールが数体こちらに向かってきているのが見える。

 

「さて俺が前に出る、援護頼む、…っ」

 

 二本のショートソードを構え、そう指示出したところで4人の足元に魔法陣が広がる、気づけばそこはさっきの場所ではなく、状況の飲み込めないフォーサイトは、しばらく硬直し周りを観察する。

 そこは通路であり通路の先は巨大な広場に繋がっている、まるで帝国の闘技場のような作りをしている。

 

「ここは?」

 

「俺らはどうしたんだ?」

 

「おそらく転移。それも複数となるとかなり上位の」

 

 各々状況を確認し理解していくが、理解すればするほど状況が悪いということが嫌でも分かる。

 

「とりあえず敵は近くにはいねえみたいだが、どうする?」

 

「ここに転移したということは、きっとそういうことなのでしょうが」

 

 そう言いつつ、ロバーデイクは闘技場の広場があるであろう方向を見る。ここの主はフォーサイトと何かを闘わせたいのだろう。

 

「ここで転移で離脱するか?」

 

「それが最も安全」

 

「ここにいる以上覗いてからのほうがいいんじゃない?どうせむこうには把握されてるんでしょ」

 

ここに転移された以上相手はすでにこちらの情報を掴んでいる事になる、情報という面でもこちらは圧倒的に不利だ、もし対話出来るのであれば、逃げた後の事も考え、相手を知っておきたい。

 

「そうだな、絶対転移出来るようにお膳立てもして貰ったしな。まったく、アイツの言ってる事が、ようやく分かった気がするぜ。アルシェ、俺が合図したら、転移出来るようにしておいてくれ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 




やっとここまできました


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遭遇

ゴールデンウィークに投稿できないというていたらく
遅れて申し訳ない


ーバハルス帝国首都ー

 

「早まった感は、否めないな…」

 

 ベッドで寝息をたてる幼い姉妹を眺めながら、ため息混じりにそう呟く。

 

 ここはバハルス帝国首都にある宿屋であり、ドールとして活動するための拠点でもある。

 泊まるだけなら安く、少し金を出すだけで昼食や夕食を出してくれる、味はそこまでではないらしいが、そこは冒険者、しかも駆け出しが多い、安くてそこそこの量であれば満足する。

 

 ドールとしてもこの宿は都合がいい、変にいいところに行くと、食べもしない料理や無用のサービスが付いてきて困る、体がオートマターである以上必要なのは拠点としての場所だけである。

 

 そして現在は奴隷商から買い取ったアルシェの妹二人を連れて宿に帰ってきたところである。

 全身黒で顔も隠している為、宿の人間にとってみれば、怪しい奴が幼い奴隷を連れてきた事になるが、声で前から女性というのが分かっていた為かそこまであからさまな視線は受けなかった。

 

(フォーサイトにはいい貸しが出来ると思ったが、どこの奴隷商にいるという情報でも十分だった気がするな。金はいくらでも増やせるからタダみたいなものだが…)

 

 椅子に座りながらそんな事を考え、寝息の聞こえるベッドに再び視線を移した。

 

(無差別に手を差し伸べてるわけでも、利がない訳でもない。今回は良しとするか)

 

 

 

 

 

 

ーナザリック第六階層ー

 

 ここはナザリックの内部、大森林にある闘技場。その闘技場の観客席には大量のゴーレムが並べられ、その中央にある広場には四人の人間と一体のアンデッドが対峙していた。

 

「うっぷ…くぁっ………ふぅ、はぁ…はぁ……」

 

 四人の人間、その内一人が地面に両膝と片腕をついてもう片方の手は吐き気を抑える為に口元を押さえている。

 

 軽く剣を交えただけで恐ろしいアンデッドだと分かったが、それはまだまだ甘く、アンデッドは剣と鎧を捨てマジックキャスターの格好をとったのだ。

 そして認めたくない現実を否定するとアンデッドは答えるように指輪をはずした。

 

「アルシェ!大丈夫かっ?」

 

 ヘッケランがアルシェに声をかけるが、それが聞こえていないかのように、呟くような叫ぶようなそんな言葉をもらす。

 

「無理無理無理っ、勝てないあんなの勝てるわけないっ、逃げなきゃ…みんな早く逃げなきゃ……」

 

「落ち着けっ!…何を見た?」

 

「あの……あ…、化け物…アレは見ないと…分からない…」

 

 大声で叫ぶヘッケランの声が聞こえたのかようやく言葉を絞り出す。

 

「なるほど……つまりそれほどってわけか、理解できないのは幸か不幸かは別としてな」

 

 なんとか軽口をたたきながら仲間を見渡す。

 

 アインズが指輪を外した途端に崩れた仲間を見て慌てたが、ようやく状況を把握したヘッケランは急いで考えを巡らす。

 

(やるだけやってみるか。やらなきゃ死ぬだけだしな)

 

 仲間を手で制し武器を降ろさせ、自分も武器をしまう。武器のない両手を広げ、対話を試みる。赤く浮かぶ眼光が相変わらず不気味に光り、目を合わせるだけで恐怖が精神を侵食する。

 

「私達は貴方と戦う為にここに来た訳ではありません。私はヘッケランと申します、失礼ながら名をお聞かせ願いたい」

 

「……アインズ・ウール・ゴウン」

 

 臨戦態勢だった気配を僅かに潜めアインズは名乗る、それをチャンスと考えヘッケランは続ける。

 

「感謝します。ではアインズ・ウール・ゴウン殿、こちらも理由はあれど侵入してしまいました、貴方が怒るのもごもっともです。宜しければそれなりの謝罪をさせてほしい」

 

 対話が出来るのであれば、まだ望みはある。しかし

 

「ならん。貴様らはすでに侵入している。誰の許可もなく、このナザリックに、断じて許されることではなく、許したことはない」

 

 それは取りつく島もない返答。

 

(一か八か。これを使えば後戻りは出来ない)

 

「…その許可があったとしたら?」

 

 

 

 

「………………何?」

 

 明らかな間があり雰囲気が変わった。

 

「そんなはずは…………、いや、ありえないことは…ない」

 

 そこには僅かながらに困惑が伝わる。そして問う。

 

「誰だ?誰が許可を出した?」

 

 その問いは光、生還という可能性の光だった。許可を出せる存在がいて、それを向こうは確認できていない。ヘッケランは時間が稼げると確信し、生き残る可能性を探す。

 

「名は名乗っていませんでした。顔も隠していたので人型というぐらいしか分かりません」

 

 慎重に特定できないような言葉を選ぶ。

 

「くだらん、それではただの世迷い言だ」

 

(確定的な否定をしないということは可能性はある)

 

「ですが預かってきたものはあります」

 

 即座に切り捨てようとするアインズの言葉にヘッケランが食らいつく。

 

「……見せてみろ」

 

 此方を値踏みするような視線を受けながらヘッケランはロバーデイクとアルシェに視線を移す。

 

「ロバーデイク、アレを出してくれ。アルシェもだ」

 

 その一瞬でロバーデイクはヘッケランの意図を理解し、アルシェを気遣いながらも立たせる。困惑気味だったがそこへきてアルシェも理解し、転移の杖を取り出し始める。

 

「一つ目はこちらのマジックアイテムです」

 

 ロバーデイクが取り出した下位アイテムを手のひらに乗せながらアインズに見せる。

 

「指輪か?」

 

 アインズが興味を示す。だがこの指輪は大したアイテムではなく、ロバーデイクが時間稼ぎとアルシェの準備、そしてアルシェから視線を外す為の真っ赤な嘘である。

 

「はい、私達ではこのアイテムの価値は分かりませんが、渡せば分かると言わ「転移/テレポーテーション」

 

 そしてアイテムについての説明をしている最中、突如アルシェの詠唱が割り込む。言葉の途中という最も不意をつく形で放たれた詠唱に、流石のアインズも止める間も無く…いや、もしかしたら止める余裕があったかもしれない、ここが転移出来ないナザリックで、止める必要性を感じなかっただけで。

 ともかく転移は成功した、魔法陣が浮かび上がったと思えば、フォーサイトの四人はナザリックから掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都ー

 

「はぁ…はぁ……、逃げ…られたの…か?」

 

 首都の外に転移した四人は、転移するなり地べたに座り込む。

 ナザリックではあまりのプレッシャーの中にいた為脱出出来たと認識した途端脚の力が抜けてしまった。

 

「アルシェ、ここは?」

 

「帝国首都、おそらく首都の壁の外」

 

 なんとか気持ちを落ち着かせ状況を整理する。

 

「あ…ああ、確かにそうだな」

 

 首都入り口の門が見えるのを確認し答えるヘッケラン

 

「まったく、察しのいい仲間を持てて俺は運がいい、じゃなきゃ死んでたぜ」

 

「頭の回転が速いリーダーのおかげですよ。そういえば私達以外はどうしたのでしょうか?」

 

 自分達以外のワーカーがどうなったのかとロバーデイクが疑問を口にする。勿論、言った本人も大体の予想はしている。

 

「あんな奴らがいるところだ、おとなしく返してはくれないだろう。十中八九死んでるだろうな、俺達は運が良かった、ドールに会ってなきゃって思うと、想像したくねーな」

 

「あんな存在、信じたくない。ありえていいはずがない」

 

 アレの存在を思い出したのか、アルシェは肩を抱きながら化け物の存在を否定する。

 死が纏わりつくというより、アレが垂れ流す気配が、死と呼ぶものなのではないかと思うほど恐ろしい存在だった。

 

「まったくね。まだ上手く脚に力が入らないわ」

 

「たくっ…ドールの奴、知ってたならもう少し強引にでも止めやがれっ」

 

「まったくです。一体どこまで知っていたのか、転移の杖があってギリギリとは酷い冗談です」

 

「あ…」

 

 ポツリと呟いたアルシェの方を全員が見ると、壊れた指輪が転がっている。

 ドールに渡された魔法阻害耐性の使い捨てアイテムであり、壊れたということはそれが役割を果たしたということだ。

 

「やっぱりギリギリじゃないですか」

 

 そんな言葉を聞きながらようやくヘッケランは立ち上がり、そして全員を見渡す。

 

「取り敢えず今日はここまでだ、もう遅いしな。今日はこの後解散、話は明日集まって改めてしよう。ドールも問い詰めないとな」

 

「賛成」

 

「それがいいでしょう」

 

「このままじゃどうせまともな判断出来ないしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーナザリックー

 

 フォーサイトが転移で消えた後、アインズはアルベドに命じナザリック内の探索をした。

 

 友人の存在を脱出する為のダシに使われ、一時は怒り狂っていたがそれもアンデットの特性によりすぐに抑制され、今は大人しくアルベドの報告を待った。

 

「どうだ?ナザリック内の転移か?」

 

「未だ見つかっておりません、おそらくナザリックの外に転移したと思われます。他の人間は捕縛もしくは殺害しましたが、先ほどの四人はナザリック内にはいません」

 

(どういう事だ、何故転移出来た?ナザリックで転移出来ないのは既に確認済みだ。ならば転移阻害の対策があったのか?どんな場所かも分からないところに行くのだから、対策と言えばそこまで不自然ではないが、そもそも転移自体が珍しい世界のはずだ。転移限定ではなく魔法阻害アイテムか、ならば珍しくてもそう不思議ではないのか?)

 

「意外とマジックアイテムは流通しているのかもしれんが、それにしては装備が貧弱だったな」

 

「申し訳ありません。その場に居ながら侵入者を取り逃がすなど、アインズ様が命じてくだされば、すぐにでも捕らえてその首を持って来ましょう」

 

「よいアルベド、逃したのは私も同じだ。それにそもそもの目的は達した。だが捜索はしておかなければな、使用したアイテムは聞き出さなければなるまい、今は放って置け」

 

(ナザリックの転移阻害を無視できるとなると、そこまでちゃちなアイテムではないだろう。確認しておく必要はあるな)

 

 アルベドを手で制し話を続ける。

 

「今はそれより重要なことがある。さて人間どもは殺してもいいが、原型は分かるようにしておけよ。どうこうするのは要件が済んでからだ」

 

(ナザリックをすり抜ける転移は厄介だな。ワールドアイテムといい、この世界のアイテムは馬鹿にできない。前いたプレイヤーがばら撒いた可能性もあるしな、…セバスにアイテム収集も頼んでおくか)

 

「デミウルゴス」

 

「はい」

 

 アインズが呼ぶと一人の男が現れる。

 スーツ姿に丸眼鏡という、一見すると現代人の様な出で立ちをしている。

 

「どうだ?取り敢えず人間どもを招いてはみたが」

 

「はい、帝国へのカードとしてはいささか弱いですが、きっかけとしては十分かと」

 

「建国への一歩か」

 

「いずれアインズ様を頂点としたその国が世界を支配する。至極当然であり必然です」

 

(順調に世界征服の準備を始めてしまっている。……そんなつもりは無かったんだがな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都帝城内ー

 

「お久しぶりです、陛下。ただいま戻りました」

 

 帝城の一室にてジルクニフの前で礼をとるレイナース。

 以前とは違い質の高い鎧を着込み、マジックアイテムと思われる物もいくつか身に付けている。

 質の高いと言っても前着ていたものは帝国から支給されたもので、四騎士として最高のものであったが、それすらも下位と言わしめるほどレイナースが着ている物は違い過ぎる。

 

 しかしさらに驚異的なのは、装備によって強さを示しているわけではなく、その鎧などの装備があくまで装備であるように振る舞うレイナース自身の雰囲気である。

 強者特有の威圧感は不自然に潜めており、落ち着き払った余裕を持つ姿は以前とは別人、もはや別の存在がレイナースの形を取っていると言われた方がまだ納得できる。

 

 ジルクニフの後ろで控えている四騎士の三人も、声は出さないまでも顔に驚きが張り付いている。以前のレイナースを知ってるからこそ驚きも大きい。

 

「ああ、久しぶりだな。…こう言ってはなんだが、本当にレイナースか?」

 

「陛下の言いたい事は分かりますが、これが今の私です」

 

「分かっている、言ってみただけだ」

 

 若干諦めを感じさせるジルクニフの返答。

 

「アルトリア様より陛下を守るように指示を受けています。それ以外は今まで通り四騎士としてお使いください」

 

 長椅子に深く座り直ししばらく沈黙したのち、ジルクニフは口を開く。

 

「正直驚いた、随分と変わったな」

 

「そうおっしゃる割に、表情にさほど変化はありませんでしたが」

 

 淡々と喋るレイナースに皮肉げに返すジルクニフ。

 

「アインズなどの化け物共を見た後ではな、それなりに耐性がつく」

 

「確かにそうかもしれません」

 

「それより呪いを解いて貰ったと聞いたが、それだけではないのだろう?」

 

「はい、身体の性能を上げてもらいました。簡単に言うと私の身体に竜の力を植え付け、その魔力で呪いを塗り潰すといった感じと聞きました。そのおかげで今までとは比にならない程の戦闘能力を発揮でき、今となっては呪いが消えたのがついでの様になってしまいましたが」

 

「ほう、竜の力か。どれぐらいのことが出来るんだ?私は戦闘に関しては全く分からないからな。分かりやすく説明してほしい」

 

 優秀な皇帝とはいえジルクニフは戦士ではない戦闘に関しては素人同然。

 

「そうですね……、今の私であればフールーダ様が相手でも問題なく勝てます」

 

「なっ」

 

 その衝撃的な言葉に後ろに控えていたバジウッドが反応する。他の二人も声に出さないまでも驚愕している。

 

「ッ……じいにか?」

 

 フールーダ・パラダイン。それは帝国の最高戦力であり、国相手に戦争できる戦力でもある。

 

「はい。陛下を守りながらでも勝てるでしょう」

 

(アインズと会ってから国家戦力並みの存在がごろごろと、全く笑えん)

 

「それは頼もしい限りだ。実際、じいは役に立ちそうにないからな」

 

「そう言えばフールーダ様はナザリックでしたね」

 

「いや、こっちに戻って来ている」

 

「ここにですか?」

 

「そうだ」

 

「では魔力を抑えておいて正解でした。フールーダ様であれば一瞬で私の存在がバレてしまいますし、それは陛下としても困るでしょう?」

 

「そうだな、別に困るほどではないが、わざわざ切らなくてもいい手札を切ることはない」

 

(元々戦いにすらならない相手だったのだ。それが今では知略を巡らす意味が出てきた程度には、此方の手札が揃ってきた)

 

「さて、では今まで通り四騎士として頼むぞ。じいには姿を見せるな」

 

「はい、あとアルトリア様からいくつかアイテムを預かっています」

 

「私にか?」

 

「はい、アレと敵対するならこれぐらいは必要だろう、との事です。意外と気に入られてるのでは?」

 

 ふとアルトリアの顔が浮かぶ、整った顔立ちで何を考えてるか分からない、感情の抜け落ちた眼がこちらを覗く。

 

「ふっ、それはありがたい。そう願っておこう」

 

(思えば対等に話せる奴などいなかったからな。同盟者…か、意外と友人なんてこんなものかもしれんな。まあ、人ではなさそうだが)

 

 

 




アインズ様の登場シーンは盛大にカット
申し訳ない、上手く書けなかった


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捜索

ーバハルス帝国首都ー

 

「はぁはぁはぁ…っ」

 

 アルシェは息を切らしながら走る。向かう先は笑う林檎亭、ナザリックの調査の後、解散したフォーサイトは翌日の今日に集まって話し合いをする予定だった。

 

 予定ではもう集まる時間から一時間も過ぎている為、アルシェは先を急いでいる。アルシェ自身こんなに遅れたのは初めてで基本的に時間にルーズな訳でも、ましてや寝坊したなどの理由ではない。事はナザリックの調査の日、家に帰ってから起きた。

 

 

 

 

 

「ただいま…」

 

 扉を開けて帰りを告げる。いつも出迎えてくれる妹達は来ない、昼ならまだしも深夜近い時間帯では仕方ない、もう寝てしまっただろう。

 

(私も今日は流石に疲れた、ただの遺跡調査ならそこまででもなかった。早く寝よう明日も集まるし)

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

 そこへこの家に長年仕えた老執事のジャイムスが顔を出す。

 

「ん…わざわざこんな時間に出迎えはいら………何かあった?」

 

 小さな光源しかなく顔がよく見えなかったが、じきに苦虫を噛み潰したような顔をしているのに気づいた。

 

「申し訳ありません、お嬢様。私ではお止めすることが出来ませんでした」

 

 深く頭を下げ、かすれるような声で謝罪を口にするジャイムスに驚くアルシェ。

 

「なに、どうしたの?父がまたなにか買ったの?はぁ、まったく、でもそれは別に貴方のせいではない。私からも言っ「違います」……え?」

 

「そうではありません。落ち着いて聞いてください」

 

 そんなに酷い内容なのか、ジャイムスは若干目を泳がせながらも決意したようにゆっくりと口を開く。

 

「クーデリカ様とウレイリカ様が……奴隷商に売られました」

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 思考が停止する、言葉の意味が理解できない。

 

「……え?ちょっと待って、…え?え?」

 

 アルシェは片手で顔を抑えながら言葉を理解しようとする。

 

「お、落ち着いてください、お嬢様」

 

「……………どういうこと、どうしてそんなことに!」

 

 段々と声を荒げるアルシェをなんとか落ち着かせようとジャイムスも焦る。

 

「今回は止められなかったのは、私が至らなかった所為ではあります。ですが今はどうか落ち着いて下さい」

 

 彼の必死な懇願に幾分冷静さを取り戻す。

 

「はぁはぁ…ふぅ………ごめん、取り乱した」

 

 深呼吸をして謝罪を入れる。

 

「いえ、お嬢様にとっては致し方ないことですので」

 

「それで、奴隷の件は父が?」

 

「はい、なんでも少し前に知り合ったという奴隷商を連れてきて、その奴隷商がクーデリカ様とウレイリカ様を見た時に、その見た目をいくらの価値があるなどと言い始め、一時的に買い取ろうと言い出したのです。私はどうかそれだけは、とお止めしたのですが、金ができたら買い戻せばいいなどと奴隷商に言われてしまい、旦那様は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在笑う林檎亭に向かっている。

 朝早くに家を出て、奴隷商関係の場所を片っ端から当たっていたのだ。もちろん父にどこの奴隷商なのかと問い詰めたが、返答を渋り答えようとしない。おそらく奴隷商に教えないよう言われているのだろう、奴隷商は金を返せないと分かっている為、二人を返す気は無いのだろう。もしかしたら借金しているところの回し者かもしれない。

 

 そうこうしている間にに約束の時間はとうに過ぎ遅刻することになる。本当であれば約束をすっぽかして妹達の探索に時間を使いたいがそういうわけにもいかず、取り敢えず一度訳を話して探索を続けるつもりだ。

 

 

 

「はぁはぁ…みんなごめん、遅れた」

 

 すでに集まって話をしていた三人はアルシェが来たことに気づく。息を切らしながら謝るアルシェに片手をひらひらさせながら座れと促すヘッケラン。

 

「おっと珍しいな。アルシェが寝坊か?まあ確かに、俺も中々眠れなかったけどな。アルシェは直にあいつの力が見えちまうしな、しょうがないっちゃしょうがないが」

 

 そんな軽口を聞きながらもは一向に座ろうとしないアルシェにヘッケランは怪訝な顔をする。

 

「どうした?」

 

 そんな様子に違和感を感じたのか他の二人も視線を向ける。

 

「ごめん、少しやらなきゃならないことがあるから今日は集まれない、遅れて来てこんなこと言うのもあれだけど許してほしい。後で埋め合わせは必ずする」

 

「ん?何か用事があるのか?」

 

「…………」

 

 ヘッケランがたずねると俯いて黙ってしまう。

 

「あー、言いにくい事なら別にいいぞ。無理に答える必要はないしな」

 

「や、その……、妹達が…奴隷商に売られた」

 

「「は?」」

 

 ヘッケランとイミーナの声が重なり、ロバーデイクも目を見開いて驚いている。

 

「だからこれから探しに行かないといけない」

 

「探すって、何処の奴隷商かわからないのですか?」

 

「奴隷商を知っているのは父だけ、その父も答えようとしない」

 

「本当にクソ野郎だな、一発ぶん殴ってやろうか?」

 

「時間の無駄。それよりそう言う事だから今日は無理、ごめん」

 

 そう言って頭を下げる。

 

「確かにそれならこんなことやってる場合ではありませんね」

 

「ま、しょうがないわね」

 

 そう言いながらイミーナとロバーデイクが椅子から立ち上がる。

 

「へ?」

 

「なに惚けているんですか。探しに行くのでしょう」

 

「え、でも」

 

「どうせアルシェがいないと打ち合わせも出来ないし。手伝うわよ」

 

「昨日の事で迷惑かけたばかり、これ以上迷惑はかけられない」

 

「あの依頼の事はチーム全員の合意の上でしょ。それに助けが必要なんでしょ?大人しく甘えておきなさい。構わないわよねヘッケラン」

 

「構わないぜ。アルシェそう言う事だ今回は頼れ」

 

「…………ん、ありがとう、すごく助かる」

 

「よし。そうと決まればロバーデイクとイミーナも手分けして奴隷商を当たってくれ」

 

 小さく頷くアルシェに満足したのか、二人に軽く指示を出す。

 

「そういえばドールはどうするのですか?呼んでいるのでしょう?」

 

「ああ、だから俺はひとまずドールが来るまでここに居る。ドールに訳を話してそのあと俺も探索に加わる。各自昼になったら此処に集合だ、情報があっても無くてもな」

 

「了解です。では行きましょう」

 

 ヘッケラン以外がある程度奴隷商の集まるところに目星を付けて探索に向かったあと、ヘッケランは一人ドールを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 帝国首都にいくつかある奴隷市を周りながらアルシェは妹達を探す。ヘッケラン達の協力を得られ心持ちは幾分楽になったものの中々目的の奴隷商は見つからない。今妹達がどうなっているのか考えると焦る気持ちを抑えるのは難しい。

 

「少し話を聞きたい。双子の奴隷を知らない?私を小さくしたような見た目、背丈はこのくらい」

 

 売り物である奴隷達の中に妹がいないか探しながら近くにいた男に話しかける。朝から何十回と繰り返して来た言葉で奴隷商の下っ端と思われる男に聞く。

 

「ん?双子の奴隷?そんなこと言ったって毎日何人見てると思ってる。覚えてねーよ」

 

 素っ気ない返事だがそれでもなお問い詰める。

 

「最近奴隷になったばかりだ。なんでもいい心当たりはないか?多少金も出す」

 

 金を出すと言われ、不本意ながらもアルシェを眺めてそれと似た奴隷がいたか頭を捻る。

 

「あー、見たかもしれねーな」

 

しばらく黙っていたが期待できる返答だった。

 

「ほ、本当?」

 

「お前あれか、あの没落貴族のとこの娘か?」

 

「…そうだ。じゃあ二人のこと知ってるのか?」

 

「ああ、確かウチで扱ってたぜ。小綺麗な双子の奴隷」

 

「…っ!なら私が買い戻す。金もある程度ある。足りなければすぐ集めるから他に売らないでほしい」

 

 反射的に男に詰め寄る。

 

「悪いが、そりゃ無理だ」

 

「な、なんで?金が無いと思ってるのか?金貨150枚くらいであれば出せる」

 

「そういう問題じゃねえんだ。もう買われちまった」

 

「なっ…」

 

(遅かった。すでに買われていたなんて。こうならないように急いでいたのに)

 

 今にも掴みかからんとしていた手は力なくたれ全身から力が抜けていく錯覚を覚える。

 

「………誰?誰が買った?」

 

 まだ諦める訳にはいかないと質問を続ける。

 

「それこそ分からねーな。相手は顔も隠してたし、ちょうど奴隷を店に運ぶ時に話しかけられて売ったんだ。その場で買うなんて余程気に入ったんじゃないか。もしかしたら貴族のお忍びだったのかもな、金も持ってたし」

 

 どんどん嫌な方向に話が転がっていく。もし相手が貴族で妹達を気に入って買ったならただ同額程度の金を積んだだけでは手放さないだろう。

 

「分かった、情報ありがとう」

 

 そう言って力ない手で僅かな金を渡しその場を去る。昼も近くなった為、どうすればいいか考えながら笑う林檎亭に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、来たか」

 

「なんだ、お前しかいないのか?」

 

 笑う林檎亭に来たドールにヘッケランが応える。

 

「呼んどいて悪いんだが少し急用ができちまってな、他の連中はそれでちょっとな」

 

 それを聞きながら、別に気にしないという風に席に座る。

 

「てっきりお前以外は死んだと思った。まあ別にいいが、それよりよく生きて帰ったな、運がいい」

 

「全くその通りだ。そもそも、お前がもっとしっかり引き止めてくれれば、あんな思いはしなくて済んだんだがな」

 

「だが実際に見なければ納得はしなかっただろう?」

 

「それは認めるが」

 

「会ったのか?」

 

「アンデッドかどうかも怪しい化け物にな」

 

「詳しく聞かせてもらおう」

 

「ああ、と言いたいところだが、さっき言った通り急ぎの用事があってな、またの機会にしてほしい」

 

「そんなに急いでいるのか?なら仕方ない、今度にしよう。だが、集まるのは早めの方がいいぞ、お前達はナザリックからは逃げ出せたがアレから逃げ切ったわけではない」

 

「それは、どういう…」

 

 ドールの言葉に悪寒のような感覚が背筋を流れる。そんな馬鹿なと言う言葉とやっぱりかという予感が入り混じったような状態だった。

 

「お前達が捕まっていないのは、ただ優先順位が低いだけだ。アレがその気になれば直ぐに捕まる。そうならない為の対策と選択肢をやる、選ぶのはお前達だ。だがそれも間に合わなければ意味がない」

 

「それ程のやつか?アレは?」

 

「自分の目で見たはずだが」

 

 一瞬あのアンデッドの顔が浮かぶ。

 

「………分かった、近々集まれるようにしよう。その時は頼む」

 

 ここまで言われてしまえば考えないわけにはいかない。なによりドールの助言なのだ、あの後ではとても無視出来る事ではない。

 

 それを聞きドールは席を立つ、出口に向かいかけた時、ふと思い出したように立ち止まり振り返る。

 

「そうだ、さっきの話とは関係ないんだが伝えておくことがあった」

 

「伝えておくこと?なんだ?」

 

 ドールは考える素振りをしながら。

 

「名前はなんと言ったか、お前の仲間に金髪の娘がいただろう」

 

「ああ、アルシェの事か?」

 

「そうだ、そのアルシェに妹がいるはずなんだが、奴隷として売られていた」

 

「…ッ!何処だ!何処の奴隷商だ!」

 

 まったく関係ないところから、今まさにといった情報に思わず立ち上がる。

 

「慌てるな、私が買い取った。偶然街を歩いていたら見かけてな、妹達に聞いてアルシェの妹だと分かった。そのうち引き取りに来い」

 

「なっ、…いいのか?金を払ったんじゃないのか」

 

「アレに会った以上、変な取引は必要ないだろう。貸し一つだ。」

 

「はは…、そりゃ怖いな。今度は何をやらされるのか」

 

「妹達は私と同じ宿にいる」

 

「分かった。いや今回は助かったぜ礼を言う」

 

 それだけ聞くとドールは再び出口に向かう。一方ヘッケランはアルシェにいい報告が出来そうだと、椅子に深く腰掛けた。

 

 

 

 

「あ、しまった。アルシェの妹が見つかったなら、ドールに待ってて貰えばよかったな」

 

 つい、そうこぼしてしまったのは、ドールが出て行ってしばらく経ってからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼時になり捜索に出ていたフォーサイトの面々は笑う林檎亭に集合する。イミーナ、ロバーデイクの二人も結果は芳しくないようで難しい顔をして帰って来た、最後に来たアルシェも良い結果ではなかったようだ。

 

「私のところは収穫なし、それっぽい奴隷もそういう話もなかったわ」

 

「こちらも同じようなものです」

 

「私のところは情報があった。妹が売られた奴隷商を見つけた」

 

「見つかったんですか!なら後は買い戻すだけですね」

 

 求めていた情報が見つかりロバーデイクは喜びを見せるが、アルシェの表情が暗いままであるのを感じ表情を曇らせる。

 

「何か問題があったんですか?」

 

「…既に買われてた。誰に買われたかは不明、しかも相手は貴族かもしれない」

 

「「………」」

 

 その言葉に二人とも黙ってしまうが、そこへヘッケランが口を挟む。

 

「俺の方でも情報がある。買った人物についてだ」

 

「え?!」

 

 まさかヘッケランが自分のその先の情報を知っているとは思わず、驚いて声を上げる。

 

「誰が買った?」

 

「ドールだ」

 

 

 

「え?」

 

 再び同じ声を上げる。それはあまりにも以外な人物だった。

 

「偶然見かけて話したらお前の妹だと知ったそうだ。アイツと同じ宿にいるらしい、後で引き取りに来いと言っていた。金はいらないらしいが貸し一つだそうだ」

 

やれやれと言いたげな表情で話す。しかし、アルシェからすればそれはとても都合の良い話だった。

 

 妹達の安否が確認でき、それを認識できた事でようやく強張っていた表情も元に戻る。遠のいていた二人の存在が戻って来た気がした。

 

「はぁ……」

 

 安心して気が抜けたのか目の前の机に突っ伏す。

 

「なんというか、面白い巡り合わせね」

 

「まったくです。友好な関係は大事だと、こういうところで感じさせられますね」

 

 突っ伏したアルシェを見ながら残り二人も肩から力を抜く。

 

 

 




この話だけで一話使うとは思わなかった。


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勧誘

ーバハルス帝国首都ー

 

「さて、お前達の用事とやらも終わった事だし、本題に入ろう」

 

「おう、悪いな待たせちまって」

 

 ドールとフォーサイト、5人がテーブルを囲み話し合いを始める。

 ここ、笑う林檎亭の隅の席、あるのは蝋燭の小さな光だけで夜も遅いためここにいるのもこの5人だけである。

 

 あれからアルシェの妹達を引き渡すはずが、アルシェはもうあの家に預けることができないと言い、アルシェの宿が決まるまで僅かな間預かる事となった。その事を話し終え、いよいよ本題に入る。

 

「ヘッケランには軽く話したがお前達はアレと対峙した。一度敵対した以上、たとえ逃げ延びてもそれは一時的なものに過ぎない。そこまでアレは甘くないだろう」

 

「確かに、向かい合っただけであれほど恐怖を感じたのは初めてでした」

 

「……ん」

 

 ロバーデイクの言葉にアルシェも軽く頷いて同意する。

 

「そこで、私の勢力下に入る気はないか?」

 

 フォーサイトの面々は黙り込みヘッケランに視線を送る。それを受けてヘッケランが口を開く。

 

「…勢力下というと、どこの組織なんだ?」

 

「どこのと言われても少々困るな。明確な所属は無いしな、名前を言っても分からないだろう。……そうだな、あえて言うなら、この国の皇帝と同盟関係にある組織と言ったところだろうか」

 

「皇帝陛下と?!……ちょっと待て、言い回しが気になる。帝国の組織じゃないのか?」

 

 ヘッケランは少し声を荒げてしまったが声を潜めて問い直す。

 

「違うな」

 

「何というか組織の立ち位置がよく分からないが、この話を飲めばその保護下に置かれると言う認識でいいのか?」

 

「ああ、そう言う事だな。まあ簡単に言えば、アレでも軽々と手出しできない後ろ盾が出来ると言ったところだ」

 

「帝国でなければ法国とかか?あんたの組織は静止力になるのか?」

 

「法国でも無い、今一番肩入れしているのが帝国だ。力はそれなりにある、例えアレでも私と軽々しく戦争はしたく無いはずだ」

 

 それを聞いてもヘッケランの顔は難しいままだ。

 

「俺の勘だが、あの化け物は一国と戦争できる力があると、そう感じた。1つの組織でどうにかなるとは思えない」

 

「私もそう思う。私が見てきた中で一番のマジックキャスター、帝国が誇る最高戦力フールーダ・パラダインの比じゃなかった。帝国最強が霞む存在、例え帝国と組んでも危ういかもしれない」

 

 実際にはその魔力を見たアルシェもヘッケランに賛同する。

 

「…………お前達の言いたいことは分かる。別に今すぐどうこうとは言わない。お前達の言うところの私の組織を見てもらってからで構わない」

 

 そう言われ、腕を組んで少し黙り込む。

 

「そうか、まあ見てからでっていうなら、そうさせてもらおう。それでいいよな?」

 

「ええ、いいわよ」

 

「同意」

 

「はい、それで構いません」

 

「よし、じゃあそんな感じだ」

 

 ヘッケランがフォーサイト全員の合意を確認し返事をする。

 

「分かった、では少し遠出してもらう。都合のいい日を後で連絡しろ」

 

「了解、じゃあそれでよろしく」

 

 

 

 

 

 

 

 ドールが立ち去った後もしばらくフォーサイトの話し合いは続く。

 

「何というか、中々一段落しませんね」

 

「そうだなー、やっぱり怪しい依頼は受け無い方がいいな。まあ下調べして問題無しと判断した訳だが、今回は運が悪かったな。ドールのおかげで最悪にはならなかったが」

 

「でもそれを運が良かったかと捉えるのは微妙よね。あ、そう言えばアルシェ、もう妹ちゃんたちとは会えたんでしょう?連れてこなくて良かったの?」

 

「ん…もう会った。元気そうだったから大丈夫、私も家を出る準備をしてるから預かってもらってた方が助かる。それにそんなに時間をかけるきはない」

 

「まあその辺りは丸く収まった感じだが、何というかきな臭くなってきたな」

 

「助けられてるから印象自体は好印象だけどドール自体のことは未だに謎が多すぎよね」

 

「どこの所属でも無いと言っていましたが、やはり法国あたりが後ろ盾になっているのでしょうか?」

 

「帝国と同盟とまでいかなくても、一時的な利害一致で取り引きでもしたのかもな」

 

「国が出張る事態になってるなら、なおの事介入したくないわね」

 

「そっちの事もだけど、私は未だにナザリックの事が納得できない」

 

「確かにな。転移魔法仕込んだ罠なんて初めてだったし、あの闘技場もそこに居たゴーレムなんかも、よくよく考えたらヤバイものしかなかったな。国が動く理由としては中々ありえそうだ」

 

 

 その後もいろいろ話し合ったがフォーサイトとしての方針は纏まらず、とりあえずドールの組織を見てからもう一度話し合う事に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この辺りでいいだろう」

 

 ドールが歩みを止め、それに合わせフォーサイトも一旦足を止める。

 ここは帝国首都より少し離れた林の近く、まだ首都の外壁が辛うじて見える距離でありそこまで離れているわけではない。

 

「ここからは転移で飛ぶ………転移/テレポーテーション」

 

 

ー帝国北部ー

 

 キャメロット最上層洞窟の前に魔方陣が浮かび一瞬輝くとそこにドールとフォーサイトの4人が現れる。

 

「やっぱり転移魔法使えたんですね。予想が当たりましたね」

 

「それも複数転移だ。こんなこと出来るマジックキャスターなんて数えるくらいしか居ないんじゃないか?」

 

「なんとなく予想はしてた。それよりここ何処?」

 

 アルシェ以外の面々も場所が気になるのかあたりを見回すがやはり一番気になる洞窟に目を向ける。

 

「おいおい何の組織か知らないが、まさか天然の洞窟使ってるのか?近くに町は無さそうだし、あまりにも利便性が悪いだろ。……で?ここは何処なんだ?」

 

「そのまま答えるなら、帝国北部にある洞窟だな」

 

「ほぉ〜〜、ん?それって最近発見された翼竜の洞窟か?ワイバーンが住むってやつ」

 

 ヘッケランは興味なさげに応えるも、心当たりがあったのかそれとなく聞いてみる。

 

「どう呼ばれてるかまでは知らないが恐らくそれだろう」

 

「ちょっと待て、俺たちろくな装備してないぞ。ワイバーンなんか相手にできないぜ」

 

 ヘッケランの言葉に仲間にも緊張が走る。

 

「安心しろ、争いに来たわけじゃない。万が一の時は私がなんとかしよう。さて、付いて来い」

 

 そう言って洞窟の中に歩き出し、しばらく進むと更に大きく開けた通路に出る。

 

「凄えな、この景色だけで一見の価値はありそうだ」

 

「まさに誰も手をつけてない秘境って感じですね」

 

「確か此処は、入るのが制限されてたはず」

 

「おや?そうなんですか。たしかにこれだけ資源が有りそうなのに綺麗なままなのも納得ですね」

 

 足を止めたドールが振り返える。

 

「ここからもう一度転移で飛ぶ」

 

 すぐに転移魔法を発動させ、キャメロット最下層に移動。最下層入口に転移する。

 

 

 

 

ーキャメロット最下層ー

 

 広大な湖と城があるキャメロット最深部。

 

「……っ…なんだ、どこだ…ここ…?」

 

 ヘッケランの第一声がフォーサイト総意の言葉だった。

 

「お、おいドール。何処に転移したんだ?」

 

「まあ、疑問に思うのは仕方がないと思うがな。お前達と入って来た洞窟の最下層だ」

 

「天井が動いてる?」

 

「違うわ!あれ全部ワイバーンの群れよ」

 

 上を見上げていたアルシェの疑問に同じく見上げていたイミーナが指をさして応える。

 

 それを聞いてヘッケランやロバーデイクも慌てて上を見直す。神秘的とも言える景色だが、よく見るとそこら中に竜がのさばっている。

 

「ドール、ここは何だ?」

 

 ヘッケランは驚愕の表情から真剣な顔つきに戻り、若干問い詰めるように問う。

 

「いろいろな考えが頭を巡ってると思うが。あまり難しく考えるな、ここは私の住んでいる場所、ただそれだけだ」

 

 そう答えるも、納得した様子はないフォーサイトの4人。その様子に溜息をつきながら言葉を続ける。

 

「お前達はナザリックでアレに遭遇しただろう。私はアレと同じ様な存在だ。アレは死者を使うことに長けていた様に、私は竜を使う事に長けているそれだけの話だ」

 

「ここの竜、全て貴女が従えてるの?」

 

「そうだ」

 

 ふと口を挟んだアルシェに応える。

 

「……貴女も魔道具か何かで力を制限してるの?」

 

「少し違う。この体そのものがそもそも魔道具だ」

 

 そう言って手袋を外して見せる。その手首には人間にはない人形の様な関節があり生身でないことがわかる。

 

「オートマターという人形の魔道具だ。魔力を使って自分の体のように遠隔操作出来る。私はこの人形を使って、別の場所から行動していただけだ。本当の私はあの城の中だ」

 

 そう言って視線を送る先には湖の上にそびえ立つ城がある。

 

 

 

 

 結局、来た方が早いと言いながら多少強引にフォーサイトを城まで連れて行き、円卓の部屋の前まで案内し扉を開ける。

 

 ドールとしての私はフォーサイトを円卓の方に向かわせた後、扉の横に待機して機能を停止させた。

 

 

 

 

 

 

 ヘッケランはドールに促された通り、仲間を連れて円卓に近づく。そこには空席の連なる円卓があり、唯一奥の席だけに人が座っていた。

 

 それは人間らしくも人間離れした美しさを持つ少女が一人。その容姿であれば高価なドレスでも着れば映えるであろう事は明らかであるが、身に纏うのは黒く禍々しい鎧。しかしそれでもなお神聖な雰囲気に陰りはなく不思議な調和を果たしている。

 

 閉じていた目が開き無機質な視線が向けられる。

 

「一応挨拶をしておこう、この姿では初めてだからな。私の名はアーサー・ペンドラゴン、ドールとは人形の時の偽名に過ぎない」

 

「あ、ああ、分かってると思うがヘッケランだ。えっと、ドールとしての俺たちに接触していたのはあんたで良いんだよな?」

 

 若干雰囲気にのまれ言葉がぎこちないが、とりあえず確認する。

 

「ああ、今まで通りドールでもアーサーでも好きに呼ぶといい」

 

「そ、そうか、それは助かる。じゃあ今まで通りドールと呼ばせてもらう」

 

「さて、実際ここまで足を運んでもらった訳だが、特に説明する必要はないだろう。ここまでの短な道のりでもこの組織の力はある程度分かったと思うが?」

 

「ああ、国を落とせるだけの力はありそうだ。後ろ盾としては問題ないだろう、ナザリックのアレと同類というのもよく分かる。ただこれだけの力を持ちながら、何故俺たちを必要とする?」

 

「最もな疑問だ。見て分かる通りここは竜で溢れている、武力としては何の不満もないが、それは食い散らかし破壊するだけだ。ここには小回りの効く人材が居ない、特に街に偵察には入れる者がな」

 

「……ナザリックへの偵察が欲しいと?」

 

 途端にヘッケランは表情が険しくなる。

 

「望めるならだが、そこまで無茶を要求する気は無い。基本的に他国への偵察、情報収集を頼むつもりだ。任務と言うほど堅苦しくやって貰うつもりも無い。毎回依頼を受けるかは任意、ワーカーとしての延長上でやってくれればいい」

 

「俺たちとしては後ろ盾で、お得意様ができた程度の認識でいいと?」

 

「その認識で問題ないだろう」

 

「ナザリックへの制止力は?」

 

「私の組織の紋章の様なものを身につけて貰う。要は私が後ろにいるということが分かれば何でもいい。一対一ではまず間違い無くアレでは私に勝てない。戦争になれば勝てても再起不能になる可能性もある。である以上、無闇に手は出せないだろう。もちろん身を守る最低限のアイテムは支給しよう。いずれは私の組織と深く関わっていくかもしれないが、それこそお前達次第だ、私から強制することはない」

 

 

「…………」

 

 中々悪くない条件、これからの事を考えると実に都合がいい。だからといって安易に返答は出来ない。

 

「ここで答えを出す必要はない。後でゆっくり仲間と話し合うといい。転移で送ろう」

 

「分かった、改めて答えを出す」

 

 

 

 

 結局その二日後、フォーサイトはキャメロットの勢力下に加わる事に同意。帝国以外の国の調査を中心とした依頼を受けることとなった。

 




見切り発車だから終着点が全然分からん
書籍の内容も分からないからこれからの立ち回りもよく分からん

どうすればいいんだー


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戦闘

すみません遅れました!!

全然進まなかったんです

一応エタるつもりはありません……更新遅いですが


「あっぶな〜〜、流石に焦った〜ふふっ」

 

 黒いフード付きの外套を被り一人歩く影がある。そのフードからはボブカットの金髪と色白の顔がのぞいていて、その顔にはニンマリとした笑みが貼り付けられている。

 彼女の名前はクレマンティーヌ、現在王国から帝国への山脈を越えたところであり、まだしばらくは山道が続きそうだ。

 

(でもまさか漆黒聖典が動いていたなんて、ほんとかな〜?)

 

 元漆黒聖典であり、現ズーラーノーン12高弟の1人。その肩書きから分かるように一人の戦士としての戦闘能力は高く、彼女とまともに戦える人間は数える程だろう。

 

 彼女がなぜこんな所にいるかというと、その彼女が負ける可能性がある数少ない存在、漆黒聖典が王国で動いているという情報を同業者のカジット・デイル・バダンテールから聞いたのである。本来であればカジットが起こすであろうアンデッド騒動と共に迎え打ってもいいのだが、その準備の時間を考えて今回は大人しく身を引く事にしたのだ。

 

 この判断が正しかったかはともかく、王国ではアンデッド騒ぎは起きていない。実行予定の時期を考えても今の今まで事が起きていないのはおかしい、もしかしたら本当に漆黒聖典が関わっているのかもしれない。

 

 もっとも、この騒ぎがモモンという冒険者によって収められたのをクレマンティーヌは知らない。

 

(しばらく大人しくしてたから、ちょっと遊びたいよねー)

 

 漆黒聖典を警戒してここしばらく王国の帝国側の山脈の手前付近で大人しくしていたためクレマンティーヌとしてはストレスが溜まっている。少し発散できることを探しているが彼女の好きな事が拷問や殺人となると周りはたまったものではないだろう。

 

 そんな彼女の前に若干新しい家というより小屋に近いような建物が見えてくる。この人が通らないであろう山道の傍にあり日が暮れてきた為か中の蝋燭か暖炉の光が扉の隙間から漏れている。恐らく人がいるのだろう。

 

「ふふん、ふふふ」

 

 そんな光景に思わず彼女から笑いが漏れる、ちょっとしたオモチャを見つけたような笑みを貼り付けて

 

 

 

「こんばんは〜、誰かいる〜?」

 

 扉の前に立ちノックをしながら声を掛ける。すると扉の向こうで音がしてこちらに近づいてくる、人が居るのは確かなようだ。扉が僅かに開き、家の主が顔を出す。その人物は深くフードを被り口元まで布で隠している、隠れていない目もフードを被っているせいかこちらからは良く見えない。

 

 クレマンティーヌもこんな山道を女一人で歩く自分も怪しいのを理解しているがこの家の主はもっと怪しい、こんな所でいったいなにをしているのか。

 

「こんな所に客人か、何か用か?」

 

 その姿では顔はもちろん性別すら分からなかったが、その声から女性という事がわかる。

 

(こんな人目を避けた所にいるなんて、もしかして私たちの同類?)

 

 人前で出来ない事だからこそ、こういった所で禁忌を研究する魔法詠唱者は少なくない、しばらく前まで協力関係だったカジットなんかがそうだ。そういう事からもクレマンティーヌは自分と同じ裏側の人間ではないかと思ったのだ。

 

「訳あって今山を降りてるんだけど結構暗くなっちゃって〜、一晩お邪魔させてくれないかな〜」

 

 その言葉に相手は考える仕草をするもすぐに了承する。

 

「まあいいだろう、あいにく何も無いが好きに使うといい」

 

「ふふっ助かる〜、ありがと」

 

 そう言って開かれた扉の中に入る。

 

「まだ名前を言ってなかったわね。クレマンティーヌって言うの、よろしくねー」

 

「私はドールだ」

 

 意外とすんなり入れたのは拍子抜けで部屋の中にも特にこれといったものはない。

 

 ただ眠るだけのために横になれる場所、簡素な机と椅子、それらがただ置いてある部屋で、きな臭いものは見当たらない。

 

(あらら、何か面白い事がありそうだと思ったんだけどなさそーね。まあそれならそれで…いいけどね)

 

「どうかしたのか?」

 

 部屋を観察しているのを不思議に思ったのだろう、ドールが質問してきた。

 

「ん〜、どうもしないよ。それよりちょっと聞きたいんだけど、貴女ってここで何してるわけ?」

 

 ニンマリと笑みを浮かべながら独特の猫撫で声で聞く。

 

「別にここに用があったわけでは無い、ここよりもっと奥に用がある」

 

「奥?この山の?」

 

「ドラゴンが住んでいるらしい」

 

「へーそれはそれで面白そう、でも…んふふっ、いまは貴女で遊びたい気分なのよね〜」

 

 そう言いながら腰から引き抜いたスティレット右手で弄ぶ。

 

「…………」

 

 ドールは沈黙しその雰囲気は剣呑なものに変わっていくが、クレマンティーヌはさらに煽るように笑みを深くする。

 

「私ってさ拷問とか殺人が大好きなの、貴女にはちょっと私に付き合ってくれるだけでいいの、いいでしょ?んふふ」

 

「……………」

 

 ドールは応えない、腰の後ろにあるであろう片手剣らしき武器に手を添えてただ無言でこちらの様子を伺っている。

 

「あーら、やるきなの?これでも私、元漆黒聖典第九席次で今はズーラーノーンていう組織にいるの、と言ってもわからないよね〜」

 

「漆黒聖典?」

 

「そっ、でも今は関係ないかもね、取り敢えず私はオモチャで遊びたいの、貴女っていうオモチャでね。優しくしてあげるから安心して、ああもちろん…抵抗してもいいよ、んふふっ」

 

 クレマンティーヌは両腕を広げてゆっくりと近づいて行く。右手にはスティレット、足取りはゆったりと余裕を持ち、それでいて獲物を追い詰めるように。それに合わせてドールはじりじりと下がる、表情は分からないものの雰囲気から焦りを感じる。

 

「んふふ、そんな逃げなくても、きっと楽しいよ……私が…ねっ!」

 

 そんな言葉とともに右手を突き出す。不意打ちでありながらその一撃は手を抜いた攻撃で相手がギリギリ避けられる事を想定した速さだ。

 

 案の定ドールは服に僅かな切れ目を入れられながらも躱す。

 

「あら、おっしー」

 

「くっ」

 

 瞬時に突き出したスティレットを逆手持ちに持ち替えそのまま斬りつける。甲高い音が響きドールが咄嗟に防御の為に出した片手剣を弾く、ドールは剣こそ手放さなかったが腕ごと弾かれた為姿勢が崩れる。

 

「はははっ」

 

 更に左手でスティレットを引き抜きながらドールに斬りかかり、ドールは横に転がってそれを避ける。

 

 ドールは即座に壁を背にして立ち上がり、空いてる方の手を後ろ手で魔法を唱える。

 

「衝撃波/ショック・ウェーブ」

 

 ドールの背後の脆い壁が打ち砕かれ穴が開く、そこからいち早く外に出るドールにゆらゆらと余裕を見せながらクレマンティーヌが追う。

 

「ふーん、魔法も少しはかじってるんだ」

 

(まあ、それだけじゃどうにもならないけどね。でもまだまだ遊べそう、ふふ)

 

 ドールは片手剣を前に突き出しながら森に向けてじりじりと退がる。

 

「あはっ、追いかけっこ?」

 

 ある程度距離が開くとドールは背を向けて森の中に逃げ出し、クレマンティーヌはそれをしばらく眺める。その背中が見えなくならない程度の距離でクレマンティーヌは走り出す。

 

「能力向上」

 

 武技によりクレマンティーヌの身体能力が上がり勢いを増しながら追いかける。

 

 ある程度距離を詰めると逃げているドールの前の木に跳び、三角飛びの要領でドールの前に躍り出る。

 

 そこからは近接戦闘、ドールも逃げるのを諦めたのかクレマンティーヌに応戦するが小さい傷が増えていく防戦一方の戦い、それに対してクレマンティーヌは未だに傷はない。

 

(ふふっんふふっ、やっぱりこれよね、堪らなーい」

 

相手の攻撃は一向にこちらに届かない、がこちらの攻撃は届く、これこそ実力の差、相手はこちらの攻撃を捌く事で精一杯。

 

 それからしばらくクレマンティーヌは相手が防げるか躱せるギリギリの攻撃で翻弄し、ドールがなんとかそれを捌くという闘いが続く、いや闘いというより狩りに近いだろう。

 

(中々弄り甲斐のあるオモチャだったね、そろそろ壊しちゃおっ)

 

 実際の実力の4割程度しか使っていなかった力を徐々に引き上げて止めに持っていく。

 

(ん?)

 

 そこで問題が起きる。5割、6割、7割と引き上げていくのだが致命的な一撃が一向に入らない。攻防自体はこちらが有利に攻め込んでいるのだがそれ以上に攻め込めず、攻撃が入っても軽い傷を残す程度にとどまる。

 

(おかしい?何かおかしい?)

 

 嫌な予感が頭を掠める、それは僅かな可能性、それでも気のせいにしてスティレットを振るう。

 

(違う、そんなわけない)

 

 ついには8割の力を出しても若干の優勢から均衡は崩れなかった。

 

(クソッ!こいつ、こいつまさかっ)

 

 一気に力を解放し全力で背後に回り込む、さらにこれまた全力でスティレットを突き出す。

 

 甲高い音と火花が散りドールが前を向いたまま背中に回した片手剣で防がれたことを知る。そこには今まで逃げ腰だったドールの姿はなく余裕を持って攻撃を防いでいる。

 

「クソがっ、クソクソクソクソクソクソ」

 

 防がれたのを知るや、そのまま突き刺そうとスティレットを無造作に振るうが全て弾かれる。

 

 ドールは若干強めに弾くと振り向きざまに片手剣で横一線、なんとか身体を逸らしてそれを躱すクレマンティーヌに一歩近づいた上での手刀が襲う。本来であればスティレットなりでガードすればいいのだがそれを受けてはならないとクレマンティーヌの本能か警告を鳴らしている、それに従い地べたにしゃがみ込んだ頭の上を手刀が通り過ぎ背後の木を切り飛ばす。

 

 切り倒すではなく切り飛ばす、その木が決して巨木ではないが小さいわけでもない、そんな木の切り口から上が空を舞うというのは異常だ。

 

 そんな光景に一瞬行動が止まり、そこへドールが切り込む、クレマンティーヌはすでに躱す余裕を失い仕方なく武器で受けるが、その衝撃は抑えられず身体ごと吹っ飛ばされる。

 

「がっ」

 

 10メートルほど飛ばされ木に叩きつけられ止まる、なんとか身体を起こし体勢を立て直す

 

(クソがっクソがっ、こいつ今まで私に合わせて戦っていやがった、ふざけやがって!)

 

「超能力向上」

「超回避」

「水流かs

 

 武技を唱えているとドールが片手剣を投げてくる、慌てて避けるも左肩を僅かに切られ武技を中断される。

 

「くっ…はぁ…はぁ」

 

 若干息を上げながら見る方向からドールが歩いて来る、その手にあった片手剣は投げてしまったので素手なのだが全く油断出来ない。

 

 こちらに歩いてくるドールの足元が光ったと思ったら姿が見えなくなる。何かの魔法で視界を阻害されたと予測した直後、背後から地面を踏みしめる音が聞こえる。

 

(まずいっ!)

 

 咄嗟に振り返りながら後ろに跳ぶ、そこにいたドールの振るった腕が守った腕に食い込みながら再び吹っ飛ばされる。

 

(こいつ一体何っ?転移まで使うなんて)

 

攻防逆転、先程とは立場が真逆となりこっちは相手の攻撃から逃げようとする事で精一杯。

 

 そうして飛ばされた先に転移で先回りされて守る暇もなく攻撃を受ける。そうして何回か転がされ最後には最初の建物まで戻り壁を背にして座り込んだ。

 

 左腕は折れ、左脚も引きずっている。すでに戦えるだけの状態ではない。

 

「は…ははっ、自分で…仕掛けておいてこのざま。ここにもこんなバケモノが」

 

 いつもの強気な言葉は出ず、乾いた笑いと自虐的言葉しか出てこない。

 

 そこにドールが歩いてくる、クレマンティーヌの前まで来ると立ち止まり静かに見下ろす、月の逆光で顔も表情も分からない。

 

「あんたの言いたい事ぐらい分かるよ、噛み付く相手を間違えたって言いたいんでしょ、ふふ…」

 

 クレマンティーヌはドールから足元の地面に視線を移し言葉を続ける。

 

「認めてやるよ。あんたは強い、少なくとも私よりはね。でもそれだけ…この世界にはあんたみたいなバケモノじみた連中は他にもいるの、ふふ…」

 

「漆黒聖典か?」

 

「そうね……まあいいかちょっと教えてあげる、漆黒聖典は法国の作った組織の一つあそこにいるのは本物のバケモノ、あんたでも勝つのは無理」

 

「だから諦めたのか?」

 

 その言葉に目を見開きドールを睨みつける。

 

「はあ?何を言ってるの、諦める?アレは人間じゃない競うだけ無駄。ちょっと私より強いだけで何様のつもり、なに?偉そうに説教?はぁ……もういい、ほらさっさと殺せばいいでしょ」

 

「お前は常に強者でいたかったんだろう?法国のルールに縛られその上自分が絶対勝てない存在がいるのが気に入らなかったんじゃないのか?」

 

「うるさいっ黙れっ、さっさと殺せって言ってんだよっ殺すぞクソがっ」

 

 ドールはその言葉を軽く流しながら回復ポーションを取り出しクレマンティーヌに差し出しながら言う。

 

「そこで一つ提案したい、私に力を貸してみないか?」

 

 

 

「はあ?」

 

 クレマンティーヌの口から呆れたような惚けたような、そんな声がこぼれる。

 

「勧誘のつもり?あれだけ力を見せつけておいて、今更力を貸して欲しい?ふざけるのも大概にしろ」

 

煽るようなに口を歪めるが目は殺意を込めて睨みつけている。

 

「殺すには惜しい、そう感じた」

 

「はっ、笑わせるな力を見せれば従うと?」

 

「今の私と渡り合えるだけの力を約束しよう」

 

「…っ」

 

「明確な上下関係はない、お前はお前のやりたいようにすればいい」

 

 再び目を見開きまくし立てていた言葉が詰まる。そして沈黙したもののようやく言葉を吐き出す。

 

「そんな保証どこにあるっての?くだらない話はうんざり、さっさと消えろ」

 

「…………」

 

 ドールは諦めたのか、しゃがみ込むとクレマンティーヌの前にポーションを置くそして立ち上がると

 

「バハルス帝国の北部にある洞窟、翼竜の洞窟と呼ばれる場所がある。私はそこにいる、気が向いたら足を運べ、歓迎しよう」

 

 そう言ってこの場を後にする。クレマンティーヌはドールが去ったほうを見る事は無かったが、ドールの置いていったポーションを静かに眺めていた。

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都ー

 

 ここは城内の一室。向かい合っているのは城の主であるジルクニフとその配下アインズであり、建前上はそれが正しい。しかしその雰囲気は逆であり、ジルクニフには緊張感が漂いアインズには余裕が感じられる。

 

「我が帝国に貴族として招いて早々、フェメール伯爵が悪かったな」

 

「なにたいした事はない、いきなりどこの誰とも分からない奴が貴族になればそういったやっかみごとは出てくるだろう」

 

(白々しい、じいを使って裏から手を回しておきながら)

 

 ジルクニフとしては言ってやりたい事はあるが、それを言うわけにもいかず適当に返すしかない。

 

「そう言って貰えると助かるが、皇帝としてはやらなければならない事もある。フェメール伯爵は既に処刑した、これは君に妙な事をしようとする者への見せしめでもある。アインズ、君からは何か要望はあるかな?迷惑をかけたからね多少の事であれば融通するが」

 

「そうか、そう言って貰えるなら少し話があるんだ。…実は建国しようかと考えている」

 

「建国?」

 

 斜め上の答えに思わず聞き返す。そもそも建国はアインズと会った時にジルクニフが提案したものである。

 

「最初に君の下に就くといいながら今更なんだが、協力して貰いたい」

 

「君という優秀な配下が消えてしまうのは惜しいが、他でもない友である君の願いだ、出来る限り協力しよう」

 

(建国するなら最初からすればいいものを、一回でも帝国の中に入ったというのは中々痛いな)

 

「おお、そう言って貰えるかジルクニフ、とても心強い」

 

「それで具体的にはどう考えているんだ」

 

「それなのだが、帝国は毎年この時期に王国に攻め込んでいると聞いたんだが」

 

「ああ、攻め込むと言っても形だけのようなものだ。王国の余力を削るのが目的でね」

 

「今回の侵攻を私に任せて貰いたい」

 

「君にかい?」

 

「侵攻で大きく王国の戦力を削り、エ・ランテルの地を我が所有地だったとしてその地の返却を要求したい」

 

「んー…」

 

 ジルクニフはアインズの考えを聞き考えを巡らせる。

 

(初期の頃の予定とはだいぶ寄り道をしたが、結果としては悪くない

 )

 

「王国とは君だけで戦うのかい?」

 

「私兵も出すだろう、私としては手出しはされたくない。なに負けることはないから安心してくれ、ちょっとした私の力を披露する場と思ってくれればいい、良ければジルクニフも来るといい」

 

「君の勝利は疑っていないよ。君の力も気になるが行けるかどうかは分からないな。…………いいだろうアインズ、今回の侵攻は君に任せよう、ただあまり追い詰めて交渉の余地が無くならないようにしてくれ」

 

「そうだな、気をつけるとしよう」

 

 

 その後、ある程度話を詰めアインズがナザリックに戻る為部屋を出た後ジルクニフは自室に戻りアルトリアとの連絡用のアイテムを取り出す。本来の連絡役であるレイナースがジルクニフの護衛としている為渡されたアイテムである。

 

「聞こえているだろうか、私だ、ジルクニフだ」

 

『ん、同盟者か、なにか用か?』

 

 円卓の席で静かに寛いでいたアルトリアはジルクニフからの連絡が入り耳を傾ける。

 

「確認したい事がある。君はアインズらの戦力を把握出来ているか?」

 

『アインズ本人の能力は大体分かるが』

 

「その側近達のは?」

 

『細かくは分からない。純粋な戦闘能力だけ比べてもピンキリだ』

 

「ではレイナースはどこまで出来るんだ?アインズら相手に」

 

『平均以上ぐらいであれば側近相手でも渡り合えるはずだ。そのくらいの力はある』

 

 ジルクニフはしばらく沈黙し考える。そして意を決して、

 

「………他の四騎士も強く出来ないか?レイナースの様に。なんなら君の配下にしてくれても構わない」

 

『どうしたんだ。随分と大胆というか開き直ったことを言うな』

 

「腹を括っただけだ、いつまでも逃げる足を残していても前に進めん。これで君に裏切られたら私の見る目が無かったということだ。私は、帝国は、アルトリア・ペンドラゴンを軸にして生き残る」

 

『同盟者らしからぬ決断だな。私に帝国を乗っ取られても知らんぞ』

 

「それは問題ない、そもそも皇帝というのも帝国を存続させる為のパーツの一つに過ぎない、君も私が治める帝国だからこそ興味を持ったのだろう?それにもはやどの国がどうのと言っている場合ではない、私は人類の危機に直面していると思っている」

 

『壮大だな、確かに実現しかねないのも事実だ。……中々面白い話を聞かせて貰ってからで悪いが、強化は無理だ』

 

「…っ」

 

 なかなか有効な手段と思っていただけに顔を険しくする。

 

『私としてはそこまで気にしていなかったんだが、レイナースに使ったアイテムが予想以上の効果を発揮したのでな、希少アイテムでもあり使用を慎重にすることにした、回数に制限もあるしな』

 

「そうか…、それならば仕方ない。実はアインズが近々建国に向けて動き出す、私としては帝国の戦力を一段階上げておきたかった。最低でもフールーダ程の力が無ければ戦力として数えられないほどの開きがあると考えている。今のところまともに戦えるのは君から借りているレイナースだけだ、これでは余りにもきつい」

 

『そう聞くとどうしようもないな。私が居なかったらどうするつもりだったんだ?』

 

「法国や近隣諸国で連合を組むつもりだったさ、それで倒せるかは怪しいが幸いこの国には君が居る、不幸中の幸いだな。まあそれは置いておいて具体的な話をしたい、君以外でキャメロットの戦力を戦場に置きたい場合はどうすればいい?出来ればキャメロットの存在は隠しておきたい」

 

『手頃な戦力としてはワイバーンだ。あれならレイナースでも容易に扱えてある程度戦力になる、数に限りもない。それ以上の戦力は上位竜なる、こうなるとキャメロットの存在を感知される可能性が高い、私を隠す意味がなくなる』

 

「兵たちにワイバーンを扱わせることは出来ないか?」

 

『さてどうだろうな、そこは試してみないと何とも言えない。アレが建国するというのは都合がいいのだろう?私としては表立って戦争になればそちらの方が戦いやすいが』

 

「無理に戦争がしたい訳じゃないさ。……あまり焦る必要はないか、今回はアインズの力を見ておくだけにしておこう」

 

『問題は建国後だろう、帝国がアレの国と対等な立場を保つのが課題だな』

 

「それは正直気にしていない、君がいる以上下手に出る必要はないからね、向こうがいくら此方を下に見ようと無理な要望は突っぱねるさ。まあ対等な立場と友好的な関係はまた別だ、さっきも言った諸国との連合も必要だろう。アインズの建国は此方の足掛かりの一つでもある」

 

『そう言えばどう建国させるつもりなんだ?帝国から領土を譲るのか?』

 

「いや王国を攻めて、元はアインズの領土だったとして返還を求めるつもりだ」

 

『王国を落とすのか』

 

「一部領土の返還、エ・ランテルを貰う予定だ。私としても落としきられては困る」

 

『少し聞きたいんだが、連合の同盟国として法国を優先しているように感じるが理由はあれか?』

 

「諸々理由はあるが一番はスレイン法国という国の性質だな」

 

『人間至上主義というやつか』

 

「そうだ。人類最強の大国でありアインズがエ・ランテルで建国した場合の周辺国であり、何よりアインズを排除するために最も動く国だ。いや、おそらくもう動いてはいるだろう」

 

『ならばもう同盟の準備は出来ているのか?』

 

「いや、アインズが建国し帝国から離れてからにするつもりだ」

 

『………なら私を使者として使ってみる気はないか?』

 

 アルトリアを使者として、という意外な申し出に若干困惑する。

 

「…君が帝国の使者として同盟を?」

 

『なに、ただの挨拶がわりだ。帝国皇帝の意思を伝えるだけだ、話に聞く法国には興味があってな、ついでに同盟者の言葉を伝えようと。どうだ?』

 

『しっかりとした会合を前に、悪くないと思うが?』

 

「……………興味というのは?」

 

『どうした、不安か?らしくないな、別に同盟者や帝国から興味が移った訳ではないぞ』

 

「そういう訳ではない」

 

『ただ純粋にだ、帝国は同盟者を含め優秀な国だと思っている、其れこそ少し前まではフールーダという大魔法詠唱者がいたのだろう?だがその帝国を凌駕する人類最強の大国と謳われる国というのを見てみたくてな、その最強の人類というのも気になるしな』

 

「少し時間をくれ」

 

『ああ構わない、私も私で法国に歩みを進める準備をするとしよう』

 




クレマンティーヌ、書籍とwebの登場時期の差が激し過ぎる


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