レジャーヨット部隊 (ブルーな雛菊)
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沿岸戦線異常なし

読み専でしたが
ふと思い立って投稿!
艦これも兵器も知識ないですが
面白い作品に出来たらなと思います


世の中 何が起こるかわからないものである

 

例えば宝くじがあたったり

地震で落下したガラス片が脳天に直撃したり

 

異世界に転生することもあれば

目が覚めたらTSしてた

なんてこともあるだろう

 

ドライブ中にアイスバーンでスピンし

谷底にダイブした私が艦娘の存在する世界に

[魚雷挺]として転生するという事も

あり得ない話ではないのかもしれない。

 

魚雷挺‥‥軍艦の中でも小型とされる駆逐艦を

遥かに下回る船である

駆逐艦の排水量が300トンクラスに対して

魚雷挺の排水量は100トン未満ということから

その小ささが伺える

 

魚雷挺の艦娘となった私にも

そのスペックが反映されており

現在は小学生低学年程度の身長しかない

黒髪ロング 紅眼 つるぺた幼女……

‥‥まさか[見た目は子供頭脳は大人]を地でいく羽目になるとわ

 

そんな私が現在置かれている状況はあまり好ましいものではない

 

建造されたばかりの私を何の説明もなく

鎮守府 最奥の日当たりの悪い部屋に叩き込むという

(見た目)幼女に厳しい仕打ち!

これが前世なら即通報ものである

 

尚 提督には一度も会っていない

私達を視界に入れるのも嫌なのだろう

 

毛嫌いされている理由を上げるとこうだ

・航続距離が短く沿岸周辺でしか作戦を行えない

・艦砲直撃で大破すっ飛ばして即轟沈

・圧倒的火力不足

 

前世では魚雷挺も活躍していた

喫水の浅さを利用し兵隊の揚陸作戦援護や

重機関銃や迫撃砲を持ち込みガンシップ化

川沿いの敵勢力の殲滅など

しかし、此方の世界では敵勢力が人から

深海棲艦となったため7.7mm機関銃では

全く歯が立たないという

残念な性能の艦娘となってしまっている

 

ただでさえ より大きな船体を

より強力な艦砲をという

大艦巨砲主義の風潮の強い世の中で

他の鎮守府から魚雷挺の建造報告が一切無いにも

関わらず、無能と思われる艦娘を30隻も建造してしまったのだ

 

彼は焦ったのだろう

解体こそ行わなかったが

建造履歴及び魚雷挺の関わる作戦行動を

改竄し隠蔽した

 

提督の嫌悪を鎮守府内の艦娘達は察知し

それは瞬く間に伝染していく……

結果 私達孤立した

 

私達に与えられる任務はただ一つ

鎮守府周辺の哨戒任務のみ

 

近海をプカプカ浮かぶその様を見て彼等は

[レジャーヨット部隊]と呼び嘲笑う

   ・

   ・

   ・

   ・

今日も変わらず哨戒任務をこなす

 

建造された艦娘は艦だった頃と今の体違いに戸惑い

スムーズに体を動かす事が難しい

通常は戦闘や日常生活の中で動作を最適化していく

正確な動作 これを示す値を軍では[練度]と呼ぶが

元人間の私達には関係のない話である

海の航行の仕方や偏差射撃のタイミングも

全て艤装が教えてくれる

(自分の中にあるもう一つの記憶が覚えていると言う方が正しいかもしれない)

 

最初はおっかなびっくりだった自分や後輩も

今では海面でトリプルアクセルを出来るまで

上達している

 

(もし目撃されていたならば異常な光景だっただろう

ろくに戦闘を行っていない部隊が最強と畏れられる大本営の艦娘を遥かに越える錬度を有しているのだから

艦これ原作に登場する事ない艦種

転生者だけで構成された部隊 所詮この世界の異端なのだ)

 

波しぶきをあげながら私を追い越す親友(PT-109)と妹分(第一号型魚雷挺 2号)

 

深海側の駆逐艦を1~2隻ほど沈める簡単なお仕事

 

提督への報告はいつも決まっている

[沿岸戦線異常なし]

 



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平和な日常

まだ世界観説明みたいな回です


初めに自己紹介を

第一号型(T-1型)魚雷挺 1号

艶のある黒髪ロング

(作戦中は邪魔になるのでポニーテールにしている)

切れ長の紅眼

白い肌

 

(幼女らしからぬ冷ややかな印象を与える容姿の為

黒のゴシックドレスを着ていたら深海側と間違うと

笑いながら友人が話していた)

 

艤装は黒に塗装された長方形の木製ボックス

ベルトでポーチの様に固定するタイプで

その比較的小型な箱の中には

64式水冷航空エンジンが2機内臓されている

(国産の艦船用エンジンの開発が間に合わなかった為に航空機用のエンジンを流用したらしいが軽量化した艤装の効果もあり速力38ノットを叩き出す事が出来た)

 

兵装は太ももに固定する形で45cm魚雷を2機

対航空機用に7.7mm機銃(見た目SIG P220)を2丁

 

服装は白黒チェックのスカートに濃い藍色の園児服……

 

 

これが今世で私に与えられた名前と体である

 

 

 

月明かりと揺らめく炎で薄く照らし出された海面

遠くで波が岩を叩きつける音が聞こえる

 

ゆっくりと沈みゆく戦艦ル級をぼんやりと眺めながら今日も今日とて意味のない報告を無線で伝える

 

[沿岸戦線異常なし]

 

……今となってはお決まりになった報告だ

[異常なし]……つまり、ここでは戦闘は行われていないということだ

 

この報告はこれからも決して変わる事はないだろう

例え姫級の敵が表れようとも…

例えどれ程 魚雷挺の仲間達が戦死しようとも……

 

私達は提督の真意に気付くのか遅すぎた…

 

日に日に勢いを増していく鎮守府への攻撃

(本当に平和だったのはいつだっただろう?)

 

失ってしまった懐かしい日々を思い返す…

     ・

     ・

   ~2年前~

     ・

     ・

 

[此方沿岸警備 周囲に敵影はありません]

[此方指令部、状況を確認した。引き続き警戒しつつ帰投せよ]

 

何もない水平線を見つめながら定期連絡をいれる

 

この鎮守府私が建造され早3カ月となるが深海側のお客さんをお目にかかる事は少ない。少し前に行われた大規模作戦が項をなしたのか深海側の動きはめっきり少なくなった

 

 

この鎮守府は深海側のせいで分断された本国と大国を繋ぐ重要な海路上に存在する中継基地であり最前線の前哨基地でもある

大戦時代に使用されていた基地を修復して使用しているため古めかしい外見ながらも前哨基地とは思えないほどの設備が整っている。

そして一番の特徴としてはこの島の周辺には見渡す限り陸地がない[絶海の孤島]ということだろう。

鎮守府に見切りをつけて皆でこの島から脱走しようという案もあったが魚雷挺の航続距離を遥かに上回る為断念した

(まるでアルカトラズだわ)

 

唯一の救いは提督が私達に無謀な作戦を強要しない事だ

何だかんだで警備に必要な弾薬や燃料も工面してくれてるのは有難い

意外なことに提督は艦娘達から慕われている

艦娘を只の兵器としてではなく一人の人間として見てくれていると人気らしい(例外なのは魚雷挺だけのようだ)

若手ながらも最前線を一人で任せられるほど有能な人物だ

(私達も無能ではないと提督に証明出来れば少しは待遇も変わってくるのだろうか)と少し考えてしまう

 

「早く帰るよ!」

「置いていくよ~」

 

先を進む金髪ツインテールと私に似た顔立ちの黒髪幼女

戦友(PT-109)と妹分(T-1型 2号)だ

火力不足を補う為1チーム3人編成で私は彼女達と共に常に行動している

 

妹の横に並びまったりと帰路を辿る

 

途中横をすり抜ける金の影

振り返る友の顔は楽しそうだ

幼きながらも端正な顔立ちで思わず見とれてしまう

呆気にとられる姉妹を見て更に彼女の口角は上がる

 

「おっそ~~い!」

 

彼女の顔はいわゆる[ゲス顔]の様になっている

某駆逐艦の台詞を言うのはあえてだろう

 

「「‥‥‥‥‥‥‥」」

 

軽量な体に3600馬力のエンジン

幼い体に精神年齢を引っ張られた大人達の

熱いドラッグレースが今始まる…




次回から徐々に戦闘を入れていきたい所ですが
自分の想像を文章に表せれるか心配です

箇条書きみたいな書き方になってしまってますが
よくよくは読み手に風景や人物の感情がわかるような
書き方が出来れば良いなと!


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早期警戒機(簡易式)

主人公チームのメンバー及び愛称

PT- 109(リーダー くー
T1型1号(主人公 一姉(いちねぇ)
T1型2号(妹   ふー 


~鎮守府 魚雷挺寮~

 

哨戒任務を終え自分達の寮に戻る

 

現在この鎮守府にいる魚雷挺は総勢30名

6人で1部屋 計5部屋魚雷挺の部屋として割り振られている

 

「ただいま~!」

 

「お!お帰り~」「「お疲れ様~!」」

 

扉を開けると元気な労いの言葉が帰ってくる

ルームメイトのS208とS212 乙型魚雷挺T-35 483号の三人だ

3人お揃いの猫耳付きヘアーバンドがとっても可愛らしい

 

(魚雷挺は姉妹艦がとても多い、PTボートは300隻 乙型魚雷挺など500隻ほど建造されているという話だ

これだけ姉妹が多いとそれぞれ違う顔立ちだったとしても髪色など特徴が被ってくる子もいたりする

そこでその子がどの部隊に所属しているか一目でわかるようにチーム専用アクセサリーを決めて着用しているというわけだ

 

アクセサリーはそれぞれのリーダーの好みで決定した

例えば黄色帽だったりランドセルだったり……

 

実のところこの鎮守府自体には30人しかいないので其処までする必要はないのだが獣耳や尻尾を付けた幼女達を見るは数少ない癒しなので誰も辞めようとは口にしない

 

因みに私達のチームは右手首に鈴付きリボンを巻いている

隠密行動を行う事もあり音がならないように鈴の中の玉は抜いてある)

 

「くーちゃん(PT109)達も一緒に資材賭けてポーカーするかい?」

 

「いいね~!やるやる!」

「駄目!」

「リーダーはすぐに顔にでるから大敗する!」

 

「……そこを何とか!」

「却下だ!異論は認めない!」

「リーダーはまず私達に借りた物返してからだよね~」

「それとも体で返す?(労働)」

「ちくしょー!鬼姉妹め!」

 

提督は魚雷挺の装備や改造に資材を使用することをよしとしない

その為私達は仕留めた深海棲艦を陸地まで引き揚げ解体することで資材を獲得している

陸地が近くにある沿岸警備ならではの利点だ

 

「あらら~ではまた今度かな?」

「くーちゃん!ちゃんと返すんだぞ~」

「あっ!夕方の巡回私達だから接敵したら援護よろしくね!」

 

ポーカーを続ける猫耳ズ

夜警明けの心地よい眠気が私を襲う

 

「少し寝るね ふー(T1-2号)何かあったら起こして」

「了解 お休み一姉~」

      ・

      ・

      ・

      ・

「一姉~朝ですよ~」

 

「………後五分」

 

「一姉~猫耳ズから援護要請来てるよ~」

 

「………(あの子達なら)大丈夫だ、問題ない」

 

(一姉……それ、フラグだよ!?)

 

「一姉~知ってる?最近長門さんが清掃員のかわりにこの部屋を掃除しに来るってよ~ このまま起きないと……うっかり長門さんにお姉ちゃんの無防備な姿見られちゃうかもね~~」

 

……目が覚めた。満足そうに微笑む妹の顔を傾き始めた太陽が茜色に染め上げている。

先程衝撃的な告白を聞いた気がするが気のせいであってほしい

 

「今の話本当?」

 

「ん~何の話し?(ニヤニヤ」

 

体が震えてしまうのはきっと気温が下がったせいだろう

 

「それより援護要請!早く行こう?」

 

「…わかった」

 

 

 

埠頭では既に暖気運転を済ませたくーちゃん(PT109)が手を振って待っていた

 

「おはよー良く寝れた?」

 

「うっ……うん……」

 

「?? 状況説明するね

 私達が装備開発したのはいいが重すぎて装備出来なかった電探あったよね?」

 

「覚えてる~あのブイに細工して固定レーダー化したヤツね!」

「それで複数個浮かべてデータリンクしてましたね。もう稼働始めたのですか?」

 

「うん!昨日くらいから~ 

 で!そのレーダーに駆逐4 軽巡1の影を捉えてね

 哨戒任務中の猫耳ズが急行してるとこ」

 

(確かに3人では心もとないかも(残弾的に))

 

「沿岸40km付近で合流して叩こうって事です!」

 

「「了解」」

 

リーダーが背筋を延ばす

この動作は大抵ネタかろくでもない事を言う前触れだ

妹も隣で苦笑いしてる

 

「……私には猫耳ズには大きな貸しがある(主にポーカーで)このまま放置するわけにもいかないだろうよ(勝ち逃げは赦さん)」

 

「さぁ同士諸君 劇鉄を起こせ!」

 



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幼女の皮を被った何か

戦闘回
長くなります
言ってることはテキトーです(笑)



~鎮守府沿岸 合流地点~

 

「「「お待たせ~!」」」

「敵さんの動きはどう?」

 

 

「順調に此方に向かってるよ~ 

 後20分も経てば彼方さんも気付くと思う~」

 

 

「了解 戦法はどうする?」

 

猫耳ズが顔を見合せ全員で私を見る

……嫌な予感しかしない

 

「この前のあれをもう一回お願いします!」

「見てて爽快だし!」

「(私達は)安全だし!」

 

的中した……

思わずため息が出てしまう

 

「良いけども 資材の取り分割増でね?」

 

「「「Ok!」」」

 

「それじゃ 始めますか!」

 

私を残し左右に展開していくメンバー達

辺りは既に真っ赤に染まっており後1時間しないうちに日が暮れるだろう

魚雷挺の本領発揮は夜間だが私の役目は日没前にどうしてもしなければならないことがあった……

 

再度ため息がもれる

内燃機関の出力を50%(20ノット)にあげ

ゆっくりと敵部隊に向けてまっすぐ進む

 

水面に写し出された顔が楽しそうに歪められていたのは本人も含め誰も知らない……

 

~深海棲艦 ホ級said~

全ては順調だった

艦娘という裏切り者達が人間に味方するまでは

戦況は次々と覆され遂には自分の住みかだったこの海域を追われる結果となっている

 

我が姫達はいつか来る反撃の刻の為力を蓄えているがその間

艦娘達を野放しにするつもりはないようだ

 

[敵鎮守府への威力偵察]

 

正直気が進まない

 

「モウスグ モクテキチダ」

「ケイカイシロ」

 

ちゃんと意志が通じてるのかあやしい部下達

 

「キュイキュイクーン」

 

何を見つけたのか駆逐艦が何かを必死に訴えているが言葉がわからない 

鯨かイルカか知らないが声を出す事は出来ないのか?

 

駆逐艦が見ている先に目を凝らすと人影が1つ近づいて来ているのがわかる 隣で唸っている駆逐艦よりも小柄だ

距離にして15km 十分艦砲の射程に入ってる

 

隣の駆逐艦を見る

心無しか表情が笑っているように見える

吊られて笑いが出てしまう

 

(あのイカダ程度の船に何ができる)

皆に命令を下す

 

「シズメロ」

 

~T1型1号 said ~

ようやく彼方さんも私の存在に気付いたようだ

笑い声がここまで聞こえそうな顔をしているのに少し腹が立つ

 

(まぁ 解らなくはない

体格が2倍以上ある軍艦に私のような豆粒が正面から向かって来るのだから)

 

(自殺願望者か気が狂ってるて普通は思うでしょうね)

(‥‥案外間違ってはいないかもだけど)

 

前方でマズルフラッシュが見えるがそれを気にすることなく同じ速度で進み続ける

 

(まずは観測射撃ってところかな 着弾まで17秒程度)

 

次々と周辺に水柱が上がるが構わず進む

 

(そもそも貴方達は気付いていない)

 

次弾装填され次々と砲棟が火を吹く

 

(修正1射)

 

先程の着弾位置から誤差を修正し砲撃する

相手の速度も計算に入れ丁度目標が通過するタイミングで着弾するように

 

先程よりも近い位置で水柱が上がるが私はまだ機関の出力を上げる事はしない

 

(修正2射)

 

修正1射の弾着位置から更に修正を入れる

私を確実に沈める為に狙ってきているのをひしひしと肌で感じる

 

(だけどこれも当たることはない)

(良い腕ではあるけれど練度の他に決定的な所を見逃している)

 

近くで着弾するが彼女の表情が曇る事はなかった

 

修正3射……深海側からの動揺が見てとれる

 

…彼等は経験と実績から長距離の観測射撃を選んだ

 

4射……それで確かに幾多もの船を沈めてきたのかもしれない

 

5射……でもそれはその姿になってから積んだ実績なのかしら?

 

両艦の距離は10kmを既に切っている

駆逐艦が使用する艦砲の初速は910m/s 着弾までおよそ10秒

 

既に被弾してもおかしくない状況

6射 7射と砲撃を繰り返し行われた砲撃は確実に船体を貫いていただろう……

それが全長214mの戦艦や118mの駆逐艦だったならば……

 

(貴方達は私達の交戦距離に……

 艦ではなく艦[娘]ということに気付く事はない…)

 

小銃を装備した軍隊の交戦距離はおよそ200~500m

狙撃銃ならば700~2000オーバー

戦車同士の戦闘でも2000m程度

 

今まで軍艦サイズの標的を相手に戦っていたもの達が

いきなり人間サイズの者を射撃する…(過去の常識を捨てきれないままに……)

己の体も変わり船体への波の受け方も安定しなくなった

立て続けに斉射された砲身は熱で膨張し誤差が大きくなる

 

(万力で固定された銃でさえ100ヤード(90m)では2cmの集弾率なのに10kmで人間台の目標に命中するとでも?)

 

(電子制御の火気管制システムなんて持ち合わせていないでしょ?)

 

交戦距離5km

……ここからが艦娘の戦場だ

 

正面からの砲撃を最小のステップでかわす

真横を熱量をもった物体が通過する

 

混乱する敵に私は笑顔をむける

 

~ホ級said~

(何なのだあれは

一体あれは何なんだ)

 

一発でも当たれば消し飛びそうな体にもかかわらず次々上がる水柱の中それはゆっくりと近付いてくる

 

観測射撃も何度も修正を加えたにもかかわらず未だに有効打を与えることが出来ていない

 

震えが止まらない

全身が目の前のモノは危険だと警鐘をならす

前髪で隠れて表情は見えないが

それが一層不気味さを際立てる

 

5km……(シズメシズメシズメシズメ!)

僚艦と共に弾幕を張るように斉射する

 

視界を遮る砲煙が晴れたさきには

無傷のソレが佇んでいた

 

笑顔でカーテシーをする

酷く歪んだ笑顔…されどそれは美しく魅了するものがあった

 

「皆様こんばんは そして…ごきげんよう」

 

張り上げた声でもないのに

ソレの清んだ声はよく通った

 

左右の駆逐艦が被弾する音が鳴り響く

 

~T1型1号said~

私が敵を引き付けている間にチームが左右から挟撃

駆逐艦を2隻撃破

 

残りの駆逐艦はパニック状態

 

(彼方は放置でも良さそうね チームに任せましょう)

 

正面のホ級に向き直る

彼女?はまっすぐ此方を見ている

 

(待っててくれたみたいね)

動きがあるようならばすぐに反応したが

 

お互いに頷く……

 

残りの駆逐艦が撃破される音と共に内燃機関を最大出力まではね上げる

 

3km……魚雷の射程まで後1km

 

この距離になったら発射を見てからの回避は間に合わない

 

ジグザグにスラロームしながら敵の射線をきる

 

2km…私の搭載している魚雷の最大射程だが……

 

予備の魚雷は持ち合わせていない

相手が砲撃を外した事…それは私達にとっても例外ではない

艦ではなく的の小さい深海棲艦なのだ

 

(敵の次弾装填まで後3秒)

 

スノーボードでいうカービングという滑り方のように最大までバンク角をつけ左手を海面に突っ込み抵抗で左腕にブレーキがかかる

艤装の出力を上げ鋭角な航跡を残しながら切り返す

 

残り1km……時速70kmオーバーからのフルブレーキ&ターンは

ホ級の砲棟の旋回速度では間に合わない

 

500m……このまま死角に入り込むことも出来るがあえてしない

トップスピードで距離を縮める

 

200m……ホ級が体ごと旋回し正面から向き合う形となる

 

(残り100m……次弾装填まで……3秒!)

 

ホ級まで30m……スライディングで滑り込むように艦砲の射線をきる

 

(クソッ!すぐには撃たなかったか)

 

20mホ級の勝ち誇った顔が見える

装填は終わっている筈だ

 

(まだまだ!)

 

スライディングの体制から脚をクロスしそのまま海面に振り落とす

時速50kmからの急制動

 

脚を軸に体が羽上がる

クロスした脚を開放する際に生まれる回転を利用して斜め上方に飛び上がる

 

回転する体 背中越しに砲弾が通過するのを感じる

 

10m 2本の魚雷を続けざまに投下する

 

2回に渡る爆発音

1発目の着弾地点から侵入した2本目の魚雷が内部で炸裂した

 

   ・

   ・

   ・

 

「…………」

黙祷を捧げる

 

仲間達が近寄ってくる音が聞こえる

 

(私にはまだ帰る場所がある……)

 

(………そちらに私が行くことがあればまた喧嘩しましょう)

 

 

水平線に沈む赤はもう見えなくなっていた




うまく戦いの様子が伝わったのなら良いのですが…

一姉は主に接近主体の戦闘方法です
死神の鎌を携えた絶対回避能力付きの囮です

そして一姉のやるべき事とは……
正面から殴りあい敵に混乱と恐怖を与えること
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

おかげで挟撃したチームが魚雷最大射程で安全に沈めることが出来ました!って感じです


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悪夢

長門さん視点
変態です
不愉快な思いをされる方もいるかも……(ブラウザバック願います

一姉のトラウマ

一応R18にはならないはず!(未遂


「諸君!私は少女が好きだ」

「諸君!私は少年が好きだ」

「諸君!私は駆逐艦が大好きだ!」

 

「海上で

 山岳で

 平原で

 学園で

 海外で

 

 この地上にいるありとあらゆる少年少女が大好きだ」

 

「体操着を着た園児達がスタートの合図と共に一生懸命走り出すのが好きだ」

 

「笑い声を上げながら犬と戯れる少女を見たときなど心が踊る!」

 

……そう 彼女はロリコンだった

 

「つるぺた幼女のスクール水着姿など絶頂を覚える!」

 

……しかも重度の

 

「見守るはずだった少女が憲兵と共にやってくる様はとてもとても悲しいものだ」

 

……純粋な駆逐艦の少女に目をつけ子供好きなお姉さんを装い近づいた

それに気付いた周囲の大人達が憲兵に通報したのである

最近では駆逐艦に目を向けただけで憲兵が反応する始末だ

彼女の抑圧された精神は限界を迎えようとしてた。

 

そんな時だった天使に出会ったのは

 

早朝 鎮守府から離れた防波堤の周囲を散歩してた時に一定のリズムで地面を叩く音が聞こえた

駆逐艦にも満たない幼女が一人で仮想敵を相手に格闘戦の練習をしているようだった

 

踏み込みからの掌底 

ローキック 勢いをそのままに回転しながら空中3段蹴り

着地と同時に(相手の居るであろう場所の)背後をとるように反転しながら回り込む

 

背後から後頭部に一撃

膝カックンの要領で相手の脚を蹴り抜き

首を掴み地面に引きずり倒しマウントをとる

 

流れる様な一連の動作

まるで踊っているような鮮やかさ

 

彼女に心を奪われるのは必然だった

 

 

「こんな朝早くに熱心だな」

 

訓練生に話しかける教官の様な体(てい)を装う

 

振り返る少女とも幼女ともとれる女の子

爛々と輝く紅眼が特徴的だった

 

「おはようございます。私達は持てる弾数が少ないので……」

 

身に付けれるものは身に付けたいのだと彼女は笑う

 

「それは良いことだ。だが鍛練もシャドーばかりじゃ限界があるだろう?手合わせしようか? 」

 

下心のない純粋な興味から少女に手伝いを申し出る

 

「ありがとうございます。では胸を御借りします」

 

模擬戦が始まる

少女は速度重視の攻撃を得意としているようだが

仮にも[ビックセブン]と呼ばれる私には軽いものだった

 

お互いに艤装は付けておらず[装甲値]は関係していない

ただ単に体格差……大人と子供の質量の違いである

 

(とわいえども 一方的に殴られ続けるのは堪える)

 

反撃しようにも中々相手を捉えることが出来ない

まるで少女がワープしている錯覚すら覚える

 

艦娘にとって艤装(服)はいわばダメージを肩代わりする防弾チョッキの様なもの

一定のダメージで効果は消える(大破)

その後 生身で砲弾を受けることがあれば…想像はお任せする

 

艤装を外した艦娘は人間の体の構造と大差ない

呼吸をしなければ窒息し

絶食すれば餓死する

当然ダメージも蓄積される

 

(肉を切らせて骨を断つか)

 

ダメージを受けた際にわざとよろけて隙を作る

チャンスとみた少女は大振りの一撃を加える

 

(ここだ!)

「!!」

 

伸びきった腕が引き戻される前に掴み取り

自身の質量にものを言わせて強引に押し倒す

……これが間違いだった

 

唖然とした少女の顔

仄かに香るの髪

その匂いを嗅いだとき理性が弾けた

 

「うっぁ……ッ!?」

マウントをとったまま少女の首もとに噛みつき白い首もとに私の歯形を残す

まるでコレは私の物だと示す証の様に思えて独占欲が満たされる

 

少女は驚愕から怯えにかわりカタカタと震えだすがその姿が更に長門の心に火をつける

 

首もとから徐々に上へ優しく舐め上げると共に

腰の服の間から手を入れる

 

「長門さん?おはようございます。お早いですね」

 

「!!」

 

振り返ると大鳳がいた。朝のジョギングだろう

流石にこの場面を見られるのはマズイ

留置場行きは免れないと思いなかばパニックになりながら少女を見るが其所には既に人影はなかった

 

「どうかされました?」

 

 

「………あ……ああ…何でもない」

「掘り出し物を見つけてね…」

「まだ手には入れてはいないのだが…いずれ…必ず……」

 

首を傾げる大鳳

だが世の中には知らない方が良い事もある

(主に上司が変態だったとか)




現実では決して行わないで下さい(憲兵さん!この人です


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夜戦

魚雷挺を語る上で夜戦はかかせない気がします~


嫌な夢を見た

一回目に体験した死

そしてそれに劣らぬ恐怖…長門さんとの邂逅

今でも鮮明に思い出す

震えが止まらない

 

隣で眠る妹に抱き付き瞼を閉じる

温かさが心地よい

妹は少し寝苦しそうだが……

 

「たまには私にも甘えさせて…ね?」

 

夜はまだ長い

 

 

~近海~

猫耳ズこと 私S208は今チームメンバーと共に哨戒任務にあたっている

夜間は魚雷挺にとって絶好の戦場だが

敵さんも深夜帯に連絡も入れずいきなりお邪魔しに来るのはマナーとして如何なものかと場違いな愚痴が出てしまう

 

「ねーむーいー」

「………………」

 

やはりメンバーもご立腹のご様子だ

 

「さっさと終わらせて帰りましょ」

 

「同意」

「…………zz」

 

「……おい!起きるんだ!」

 

(コイツ海上で立ったまま寝てやがる)

器用なものだ

 

今回のお客さんは空母1 護衛で軽巡1 駆逐1

本来空母などとやりあうのは命がいくつあっても足りないが夜間に至っては話は別だ

私達にとっては的でしかない

 

所持している魚雷は私とS212が各2本+予備4本ずつ

483か2本の計14本

3隻沈めるのには充分だろう

 

「それじゃ手筈はいつも通り」

「「了解」」

 

私達は黒と濃藍の迷彩が入った防水フード付きコートを羽織り闇と同化する

(改2になれば艤装(服)の装飾が変わる子も居るらしいが通常の服を艤装の上から着込む位なら誰でも出来る、特に私やS212みたいに髪色が金や銀で夜間では目立つ色なら尚更だ

魚雷挺以外の艦娘達は何故かしようとはしないが)

 

固定レーダーの情報から敵艦の位置は特定出来てる

後は発見されないように慎重に近づくだけだ

 

メインエンジンを切り補助エンジンだけで静かに忍び寄る

 

(一姉が居たらこんなことすらする必要ないのにな~)

(ワンパンで此方が沈むのに真っ正面から殴り合うなんて頭のネジが外れている様なこと私達には出来ないし)

 

今はぐっすり寝てるであろう友を思う

 

(私達は私達の戦い方をしましょ)

 

 

~ヲ級said~

先日消息を絶った軽巡の捜索を任せられた

鎮守府の威力偵察を任務としていた為失敗した場合生存している可能性は低いだろう

 

ギリギリまで捜索を続けているがそろそろ限界だ

もうすぐ鎮守府側の哨戒の範囲に入ると思われる

夜間になった為偵察機の出番もない

捜索打ち切りの判断をそろそろ下さねばならない

 

[ドゴン!]

突然の爆発音

軽巡の被弾がみてとれる

 

「ケイカイ!ヒガイ ヲ ホウコクセヨ」

 

「ヒダン!チュウハ セントウゾッコウデキル」

 

駆逐艦は無事だ

周囲を見回すが敵影を確認する事は出来なかった

 

「キライニ ヒッカカッタンダロウ」

「ソウサク ヲ ウチキル」

「キトウスルゾ」

 

背を向け帰路を辿ろうとしたとき後ろから次々と爆発音

私も背中側から衝撃を受けた

状況を確認しようと振り返るが既に護衛艦の姿はない

 

夜間の空母は無力だ

傷を負った脚を引きずりながら必死にかける

 

……何かがおかしい

追撃がこない

 

新月が近い為か僅かな月明かりしかない夜の海上

事態が好転するわけではないが つい背後を振り返ってしまう

 

(……上手く敵を撒けたか…?)

 

追手は確認出来ない

依然として私しかいない海上

どうやら暗闇が私の味方をしてくれたようだ

 

緊張の解けた後の安堵から来る疲労

 

(軽巡が撃破された事……護衛が一瞬で無力化された事……

姿すら見えない敵……姫の脅威になり得るかもしれない)

(生き残ってこの情報を伝えなければならない)

 

 

正面に向き直った私が見たものは

私に近づいてくる6本の雷跡だった

 

 




実際の戦法のようです
魚雷発射後は全力で離脱するか
その体格の小ささを利用してその場に留まりやり過ごす

どちらにせよ乗員は肝が据わってますね


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終わりの始まり

~執務室~

乱雑に広げられた海図と書類

普段は清潔に保たれている机の面影は既にない

飛び交う報告と指示が現在の状況を物語っている

 

「被害報告!味方戦艦小破 空母2大破 駆逐1轟沈」

「これ以上の作戦続行は困難と判断。撤退の許可を!」

 

無線を通して現場の緊迫した状況が伝わってくる

砲撃や悲鳴などが微かに聞こえる

 

「艦隊は速やかに撤退せよ」

 

……前日、近海でこの鎮守府に寄港する予定だった貨物船が突然と消息絶った

大国から本国への貿易物資を積んだ貨物船……

この鎮守府で護衛を引き継ぎ本国へ送り届ける手筈だった

国家間の信頼関係にも関わる為早急に調査する必要があった

 

早朝 特別捜索部隊を編成して連絡の途絶えた地点へ急行させる

 

今まで目撃情報すらない新種の深海棲艦を発見したと報告があり交戦を許可する

……敵との実力差に気付く事のないままに

 

「駄目です!追手です! 追撃されています」

 

(どうやら藪をつついたら蛇どころかバジリスクが出てきたようだ)

眉間に寄った筋肉を揉みほぐす

 

「周辺の艦隊を応援に向かわせる

追手は支援部隊に任せ旗艦らは速やかに鎮守府に帰投せよ」

 

(第二 第三艦隊を呼び戻すにも時間がかかる

帰還した艦隊が再度出撃するための準備時間も必要だ)

 

秘書艦に今後の指示をしなければならない

 

「哨戒任務にあたっている魚雷挺達を現地に向かわせろ!出来るだけ多くだ!」

 

 

「しかし魚雷挺では……」

 

秘書艦の言いたい事はわかる

アレ達では勝ち目などない

 

「構わない……詳細は伝えるな」

 

(アレが沈んだところで鎮守府の損失にはなり得ない

無様に逃げ惑って少しでも時間を稼いでくれればよい)

 

時刻は18:00 魚雷挺の長い10時間が始まる

 

      ・

      ・

      ・

 

~鎮守府 工廠~ 1時間前 T1-1号

 

私は今 前回の戦闘で取得した資材で新しい装備を調達しに来たところだ

妖精さんに依頼し作って貰うのは良いのだが……

何が出来上がるかは…[神のみぞ知る]状態だ

 

酸素魚雷チューンセットが出ることもあれば重量過多で装備出来ない水上レーダーが出る事もある……

私としては魔改造(軽量化)された35mm2連装高射機関砲 L90とか出てくれるなら嬉しいところだが……

 

しばらく待っていると妖精さん達の作業が終わったのか奥に来るように手招きしてるのが見えた

 

(さて……レア物でるかな?)

 

出来上がった装備は2つ

1つは刃渡り20cm フルタングのナイフ

ダマスカス鋼の様な美しい模様がついていて目を奪われる

 

もう1つは25cmくらいの鉄製の円柱容器

ボタンとコックが付いておりコックからはチューブが延びている

 

(これ…なに?)

 

私は首を傾げながら容器の中身を確認する……

 

(どうやら2つとも無駄にはならなかったようね)

 

中身の正体が解った 笑いが込み上げてくる

 

(御誂え向き 私の為だけの装備みたいだわ)

彼女は一人満足げに鼻歌を唄いながら工廠を後にした

    ・

    ・

    ・

 

~近海~

 

こんにちはいつもの日課の哨戒任務だ!

チームメンバーと共にまったりと海上を滑る

 

「そう言えば装備追加したんだー!」

「本当だーナイフとか一姉らしいね!」

 

メンバーには何も言わずちゃっかり持ってきたのだけど意外とバレてしまうものだ

 

「まぁね~ 酸素魚雷とかだったなら純粋に火力UPはしたのだろうけど」

 

とは言うもののこの装備に不満はない

 

「それじゃ追加で私から姉さんにプレゼント!」

 

満面の笑みで探照灯を渡す妹

 

(夜間強襲がうりの魚雷挺が隠密のアドバンテージを捨てる状況ってあるのかしら)

少々反応に困る

 

「ありがとう!大事に使うよ(多分)」

 

サムズアップをする妹とリーダー

 

 

珍しく鎮守府から無線が入る

 

[哨戒中の全ユニットに告ぐ

これから指定するポイントに直ちに急行せよ]

[任務はおって連絡する]

 

(これまで私達より早く鎮守府側が敵の接近に気付くことは一度もなかった)

(ここで悩んでいても仕方ないか…)

 

不安と困惑が滲み出ているリーダーに頷き返し

指定の場所へ進路をとる

 

静か過ぎる海が不気味だった

 



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魚雷挺の意地

次回戦闘


~近海 作戦予定地点~

 

作戦予定地点へ到着したが辺りは魚雷挺で埋め尽くされていた

 

明かに異常な光景だった

哨戒中の2チームだけではなく寮で睡眠をとっていた者達まで叩き起こし

何の情報も与えずこの場に向かわせたと言う事だ

何か録でもない事を悟った少女達の空気は重い

 

遠くで微かに音が聞こえる

 

視線を向けた先には艤装から黒煙を上げながら此方へ向かって来る満身創痍の艦娘達が見えた

 

[任務を説明する 現在鎮守府の艦隊が敵勢力に追われている

諸君らはその場で敵勢力と交戦して反撃迄の時間を稼げ]

[尚 敵前逃亡は戦犯とみなし即座に解体処分を行う]

 

今更ながらの無線の任務説明

 

敵勢力を視認出来た魚雷挺の顔が絶望にかわる

「戦艦棲姫 離島棲姫 駆逐水鬼……」

 

(あれがどの様な者達なのかはわからない

ただ、万が一にも勝ち目など無いことは理解出来る)

 

30km離れているにも関わらず周囲を圧倒する威圧感

これまで対応した敵を遥かに凌駕する存在感が其所にはあった

 

拳に力がはいる

 

(何故提督が私達を放置していたか今になってやっと解った

あの人が 建造すぐに解体を行わなかったのは他の艦娘達に不安を与えないため

 

艦種だけで解体を行ったら駆逐艦や軽巡が「次は私達かもしれない」と思い始めるかもしれない

 

だけど命令違反 又は逃亡者への制裁とするならどうだろうか?

きっと「あの子達の落ち度」で済ませられる

 

冷たく接し無能と罵り間接的に「鎮守府に不要な存在」という印象を周囲にすりこませた)

 

(邪魔者同士を戦わせる 勝っても負けて戦死しようが構わないのだろう

この戦いの後にはどちらかは消えるのだから)

 

既に握り締めた拳からは血が滲んでいた…

 

 

[………本当に足止めだけで良いのか?別に倒してしまっても構わんのだぞ?]

 

リーダーが皮肉を込めた言葉を無線に向かって告げる

…勿論返答などありもしないが

 

「ここで突っ立っていても仕方ない……少なくても私は二度目の人生に感謝しようと思う」

リーダーの独白染みた一人言

泣いてるのか笑ってるのか既にわからない

 

「そうだね…じゃぁ 私も皆と巡り合えた奇跡に感謝しないとね」

妹がそれに続く

 

「退屈で平和だった日常に感謝を」

「前世で守ってくれていた人々に感謝を」

「糞ったれな状況を提供してくれた提督に感謝を」

 

皆がそれぞれ続く

 

空を見上げる

「親愛なる提督殿はどうやら私達が心底邪魔らしい

しかしその願いを叶えて上げるほど私はお人好しではない

私達は殺されにいくのではない

私達は私達であるために戦う」

 

決して皆が諦めない様に言葉を繋ぐ

 

「我々の任務は何だ!」

「「「コロセ!コロセ!コロセ!」」」

 

「生きて帰るぞ!」

 

一斉に内燃機関の火がともる

まるでその心の内を示すような立ち込める轟音(エンジン音)

 

日は落ちて一寸の光もない

 

新月の闇夜に紛れ少女達は進む

 




若干中二入ってますね~
でも熱い展開とか好きなのです


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故に問うなかれ

原作知らないと艦娘や深海側の性格やセリフがわからないからツラい


たった3人に味方空母や戦艦が一方的に攻撃されているのは印象的だった

 

(私達の戦闘にはいる前に射ち尽くしてくれれば良いのに…)

 

味方艦隊が攻撃を受けているが私の知ったことではない

鎮守府が私達を処分したいように

私の中でも鎮守府の艦娘達は同居人から他人もしくは敵までに認識が変わってしまっていた。

 

(あれらを仲間とは認めない、仲間なのは魚雷挺の皆だけだ)

(私達が配置に着くまでもう少しサンドバッグになってて貰いましょう)

 

その認識は周囲の者達も同じのようだった

今まで散々冷遇し罵倒されてきたのだ

今更手のひら返して[仲間の為に勝利の為に死ね]だと綺麗事を抜かすのだ

虫がよすぎる

 

全ユニットの展開が完了し攻撃を開始する

 

サンドバッグに夢中になっている敵の横っ面から魚雷を浴びせる

最大射程からの雷撃

各個撃破を目標にして駆逐水鬼を優先して攻撃を行う

 

20にも及ぶ雷跡……これで生きてたらこの世を作った神様のステータス設定ミスだろう

 

全弾命中示す派手な水飛沫と轟音

 

本来なら畳み掛けるようにして攻撃を行うべきだったのだろうがどうしても攻撃の効果を知りたかった

どれだけ相手にダメージを与えられたか…

圧倒的なステータス差があっても2vs30ならまだ可能性があるかもしれないと期待してしまう

 

着弾の水飛沫と爆煙の晴れた先に佇んでいたのはほぼ無傷の戦艦水姫だった

着弾直前で駆逐を庇ったのだろう

 

「……ツッ! 散開! 次弾装填出来次第ありったけ撃ち込め!」

 

リーダーの号令と共に蜘蛛の子を散らす様に一旦距離をとりランダムで動き回る

 

(足を止めたらその瞬間死ぬ!)

 

そう確信出来るほどの威圧感

 

「お家帰りたい………」

「一姉言葉に出てる!」

 

戦艦への攻撃は固すぎてほぼ無意味

駆逐は接近しないと避けられる

ゴスロリ少女に至っては魚雷が着弾する前に自壊

 

詰んでる……どう考えても勝ち目などない

 

ゴスロリの艦載機に機銃で応戦する猫耳ズが見えるが

いくら撃っても落ちる気配がない

 

「浮遊砲台を艦載機なんて呼ぶな!

と言うか何でお前が此所にいるんだよ!」

 

「アラ……アナタタチガコナイカラ……

ワザワザムカエニキタノヨ?」

 

救いなのはまだ大した反撃をしてこない事だ

強者の余裕か楽しんでいるのか……

悔しいがそのおかげで私達はまだ生きている

 

……それも飽きるまでの時間の問題でしかないのだが

 

「一姉!駆逐艦だけでももっていくよ!」

「了解」

 

リーダーに援護を任せ駆逐に妹と二人で接近する

駆逐からの牽制がてらの5連装魚雷

 

(私もこんな気軽に撃ってみたいわね…)

 

避けるのは容易いが何がひっかかる……

こんな無駄弾にしかならない使い方をこの敵はするのだろうかと

 

「……! VT信管! 退避!」

 

磁気に反応する近接信管が搭載された魚雷が存在する事を前世の記憶で知っている

私や妹みたいに木製で作られた艤装ならいいが魚雷挺の中には金属で作られた艤装を持つものいる

 

いつもの様にギリギリで回避しようとすると信管が艤装に反応して目標付近で炸裂し破片をばら蒔きダメージを与える兵器だ

 

私の声に反応した仲間が次々回避行動をとる

 

「ヘエーキヅイタンダーデモ……ヨソミハカンシンシナイ」

 

いつの間にか接近されていた

腹部に衝撃がはしりそのまま体ごと吹き飛ばされる

内臓が傷ついたのか吐血した

 

辺りは地獄だった

浮遊砲台からは砲弾の雨が降り注ぎ

戦艦からは榴散弾でまとめて吹き飛ばされていた

 

「撤退する」

 

リーダーが静かに呟く

魚雷は尽きて有効打を与える方法もない

時間もそれなりに稼げた筈だと

 

「ドイツ艦のS208とS212は航続距離が他のものより長い

483連れてこの混乱に乗じて離脱せよ

鎮守府には戻らず安全な場所に行け!」

 

(リーダーの言葉通り戻っても居場所はない)

「私が撤退の時間を稼ぐから行って!」

(これぐらいしか私には出来ないから)

 

私の殿を反対する妹を殴って黙らせる

気絶した妹をリーダーに任せて見送る

(きっと新月でなかったら逃げ切れなかったでしょうね)

 

  ・

  ・

  ・

 

探照灯のスイッチを入れる

先程殴られた衝撃でレンズは割れており反射体も歪み本来の役目を果たしていない

弱々しい点滅をゆっくりと繰り返す

(再び追撃を再開しようとする敵に自らの存在をアピールするには十分かな)

(死が間近にあるのに不思議と落ち着くものね)

 

 

 

「私には貴女達の様な力はないけど…最後までお付き合いさせていただきます」

 

カーテシーを行う

 




魚雷挺現在の状況
戦死者12名
逃亡者3名(後に戦死者15と報告予定)
生存者 残り15

離島……移動要塞かな?
艦載機+(浮遊)砲台小鬼 敵側がチートでした!
次回[一姉大暴走]……というか次回からが本編?


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誰かが為に鐘は鳴るやと

(この新月だ一旦見失えば再び発見するのは難しいだろう

私は航跡が消えてしまうまで足止めさえしていればいい)

 

航跡を辿って追い付かれる訳にはいかない

自らを囮にして気を散らせる

ハエの様に飛び回ればいい

しつこく何度でも何度でも……私の命が燃え尽きるまで

 

空になった魚雷発射装置を捨てて軽量化する

 

ナイフを引き抜き構える

(まさか実戦が初使用になるなんてね)

 

一寸の光もない暗闇のなか

頼りの探照灯は頼りない

(きっと相手からは丸見えなんだろうな)

(圧倒的に此方が不利なのに更に縛りプレー ドMも真っ青ね)

 

視界から情報を集めるのを諦め他の感覚に集中する

(せめて一泡吹かせてやりますよ)

 

砲塔の旋回音 上空には浮遊砲台 投下される魚雷の音

 

最大戦速にスロットを上げると同時に全身のバネを使用して真横に飛ぶ

 

(艦砲はおそらく榴散弾 信管は時限式 爆発前に抜ける)

 

速度をそのままに慣性のベクトルを変えて前進する

 

弾が3メートル右を通過し背後で炸裂する

内部に敷き詰められた小弾が広範囲に広がる

 

(装甲があってないような私には脅威ね)

(次弾はもっと手前に信管をセットしてくるはず)

 

仮に手前にで炸裂すれば逃げ場はない

 

(だから次は撃たせない)

 

放線上に放たれ広がった5連装魚雷の一部を飛び越えて着水 更に加速体勢をとる

 

(最大戦速38ノット 性能の限界だけどまだ足りない!)

 

鉄製の円筒……新しく製造した装備のコックをひねりスイッチを押す

管の中を内包された液体が通り抜け艤装ボックスの内燃機関に流れ込み規定限界以上出力を叩き出す

 

ナイトラス・オキサイド・システム通称nosやニトロと呼ばれるものだ

亜酸化窒素がエンジンの熱で化学変化を起こし窒素と酸素に分解される

この分解で得られる酸素は大気の2.5倍でこの高密度の酸素と共に燃料を燃焼して更なる出力を得るというシステムだ

ストリートレース映画で使われるあれである

 

(元々航空機が酸素の薄い上空で安定した出力を確保するためのものだったみたい 

偶然だけど私の艤装の内燃機関は航空機のエンジンが入ってる!出来ないことはないでしょ)

 

体を持っていかれそうな位の加速

けたたましく鳴り響くエンジン音

 

(エンジンの寿命を削ってるのは知っている

だけど気にしてる暇などない)

 

青白い探照灯の光を残しながら39…40ノットと加速していく

浮遊砲台からの砲撃が彼女の通った後を雨のように降り注ぐ

チューニング次第では2倍近くの出力を増加させることが出来るものだ

突然の加速に艦載機の攻撃は間に合わない

 

(もっと早く!もっと鋭く!)

 

45……46ノット……戦艦の砲台が此方に照準を向け始める

47!減速など一切せずに眼前の駆逐水鬼の腹部にナイフを突き立てる

 

(ここまでしても装甲を抜けないか)

軽度のダメージだが怯ませるには充分だったようだ

 

駆逐の腕をつかみ取り戦艦の射線に誘導する

直後 砲撃音 吹き飛ばされそうな衝撃

 

(流石に戦艦の攻撃は通るか……)

 

盾にされ砲撃を受けた駆逐の装甲は破損している

大破手前といったところだ

 

駆逐の傷ついた白い背中に全く役にたたない7.7mm機関銃を押し当て引き金を引く

瞬く間に弾丸を数百発吐き出し地味に装甲を削ってくれた

 

大破した駆逐の腹部に回し蹴り つきだした顎に飛び膝蹴り

そのまま頭を太ももでホールドして相手の背中側に倒立前転する要領で戦艦に投げ飛ばす

 

(後2人)

 

投げ飛ばす際に駆逐から拝借した魚雷を戦艦の艤装砲身に叩き込み

砲弾の誘爆を誘う

 

(後1人)

 

砲台の攻撃を避けながらゴスロリとの距離を縮める

背中の艤装が火を吹きそうな位熱い

 

(Nosの連続使用時間は48秒程度……時間オーバーしてるけど…どこまでもつか)

 

 

 

~離島棲姫~

退屈だった

深海棲艦達の統制も

私を殺しに来た艦娘達も

手応えないまるで蝿みたいな存在だった

 

その者も初めは他と大差無かった

違和感に気づいたのは探照灯をつけた辺り

 

それまでの動きとは比べ物にならない速度であっという間に味方を無力化した

 

艦載機の攻撃を避けながら近づいてくる

とても鮮烈だった

 

故にこの幕切れは残念に思う

 

私に後一歩というところで艤装が壊れた事も

決着を付ける際に射線上に少女が

割り込みかわりに撃たれた事も

笑いながら私達と殺し合った少女が泣きながら自分を殺すように懇願してきたことも……

 

今日はこれ以上引き金を引く気になれない

気絶した仲間を回収して帰るとしよう

 

    ・

    ・

    ・

どれ程時間がたったのだろう

彼女は「また会う日を楽しみにしている」と言い残し去っていった

 

私はまだ動けずにいる

だって私の腕の中には可愛い妹が居るから…

 

冷たくなっていく体を抱き締めながら




戦死者13名
消息不明3名
残り14名

途中で意識を取り戻した妹は
仲間の制止を無視し単身で姉の元へ戻ります


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其は汝が為に鳴るなれば

金剛が好きな方はお気をつけ下さい
この鎮守府の艦娘は悪役です
イメージが崩れる恐れがあります

(嫁艦が金剛の方は申し訳ないです
この話はとばしていただいた方がいいかも…


結局支援艦隊がくることはなかった

報告では特別捜索艦隊が敵勢力を撃破

駆逐艦1人轟沈したとだけ記載されていた

 

~工廠前~ 提督

「提督~ワタシがいない間に大変だったみたいですネー」

 

金剛が飛び付いてくる

第2艦隊で出撃したせいで前夜の防衛戦に間に合わなかった娘だ

 

「お怪我はありませんデシタカ~?」

 

彼女は良く私の事を気にかけてくれている良い娘だ

他の艦娘達の纏め役でもある

戦力も申し分なく頼もしい限りだ

 

「まったく、私の提督を傷つけようなんて不届きな深海棲艦ですネ」

「録な反撃も出来ずにこの鎮守府を危険に晒した遊撃部隊も同罪デス」

 

工廠の片隅で茫然と海を見つめる魚雷挺を見つけた金剛が話しかける

 

「HEY!其所のお前!昨日は何処で油を売っていた?」

 

少女の反応はない

 

「全くそんなんだから16隻も轟沈するんだ たかが駆逐艦、戦艦、軽巡程度に…恥を知れクズども」

 

体格が軽巡程度だったと報告があっただけで本当に其であったかは謎だが其については指摘しない

 

「金剛其処まででいい。コイツらは少しは役にたってくれた」

 

「もう……提督は優しすぎるのデス。仕方ないデスね私が直々に出来損ないを教育してあげるのデース」

 

「HAHAHAそれは良い!丁度間引いた所だし少しは骨のあるやつが残ってるだろう」

「足手まといが居なくなると本当らクネ」

 

相変わらず少女の反応はない

 

「15:00から実弾を装備して今から指定するポイントにくるデース」

 

言い終えた金剛は去っていく

反応のない少女を見る

 

(どうせ昨日が初の実戦とかで死ぬのが怖くなったのだろう)

と当たりをつける

 

(こんなやつが生き残ったんだ、昨日の第一艦隊は不意を突かれただけだろう)

 

~  ~

私の艤装は昨日の戦闘で完全に壊れた

修理出来るかもわからない

 

私は……やり残した事を終わらせよう

 

   ・

   ・

   ・

~沿岸60km地点~

 

「ちゃんと逃げずに来たことは誉めてあげるネ!」

 

今更話し合う気にもならない

………私は探照灯に火を灯す

 

「それじゃ はじめ!」

 

(……私は……コイツらを許せない!)

 

正面からの艦砲

相手との距離5km

流石に戦い馴れしてるだけあって狙いは正確だ

初弾にもかかわらず直撃のコースを辿る弾が5発

 

1発目……前進しながらサイドステップ 

2発目……ステップ後の不安定な体制のまま相手に背を向ける形で着水する

同時に海面に蹴りを入れ反動で回転しながら宙を舞う

 

3発目……地を這うように着地した頭上を砲弾が通る

 

4発目…飛来する弾丸にナイフで撫でる様に沿わせる

弾丸とナイフの交わる場所を軸にして回転する形で自身の体を砲弾の進路上から外す

 

5発目…手榴弾型の機雷を砲弾にぶち当て爆発で弾道をかえる

 

いつもに比べ無駄の多い回避だったがそんなことはどうでもいい

 

機雷の爆発煙が残って視界を塞いでる間に距離を縮める

模擬戦闘と言うなの実戦

躊躇なく実弾を放つ相手に遠慮などするつもりはない

 

煙の先には既に装填の終わった金剛が待ち構えている

 

スラロームしながら接近する

所々緩急をつけることで相手の感覚を狂わす

 

斉射を行わず常に砲声を絶やさないようにしているのだろう

息継ぎする事なく次々と砲弾が吐き出されるが当たることはない

 

砲身の向き角度を冷静に分析する

発射レートを覚え込む

かすかな視線の動き 反動に耐える為の足の力みから発射タイミングを判断し回避する

 

弛い弾幕では無いはずだが私にはそれらが酷くゆっくりと動くように感じた

 

~金剛~

 

名前も知らない少女は探照灯のスイッチを入れていた

 

(まだ日もくれていないのにバカですネ)

お互いに視認性は良好であり探照灯の灯りをつける必要性など全くなかった

 

開始の合図と同時に海上を滑る事もなく

少女はゆっくりと[歩いて]いた

 

(救いがたいバカですネ 沈めてしまった方が皆の為デスね)

(どのみちあの程度の魚雷なら私の艤装は耐えれる

ゆっくりと料理シマショウ)

 

少女を葬る為に彼女は引き金を引く

 

 

~ ~

既に20mを切っている

逃げればいいものを戦艦の矜持か後退しようとはしない

 

魚雷2発…使い方次第では戦艦を沈める事も出来る

だがそんな簡単に終わらせる気はない

 

金剛に機雷を投げ機関銃で撃ち抜く

唯の目眩ましだ

 

同時に艤装の出力を上げて肉薄する

 

艦娘は艤装がダメージを肩代わりするため魚雷なしでは魚雷挺が戦艦の装甲を抜く事は難しい…本来であれば

 

相手の胸に掌底を見舞う

膝を正面から蹴り抜きへし折る

 

(装甲は防弾チョッキを着ている様なもの…衝撃までは吸収出来ない)

実際にチョッキ越しにマグナム弾で撃たれた人間がその衝撃で肋骨を骨折した事例がある

 

 

慌てて殴り飛ばそうとする金剛の右拳を掴み

そのまま自身の体を支点がわりにしテコの原理で肘の関節を破壊する

 

そのまま相手の顎を裏拳で弾き

脳を揺さぶる

 

(反撃の余地など与えない)

 

再度胸に膝蹴りを入れ肺に溜まった空気を吐き出させる

空気を吸い込む前に首を鷲掴みし海面に顔から叩きつける

 

背中からマウントをとり相手の頭が海面から出ないように押さえ込む

 

~金剛~

勝負は一瞬だった

瞬く間に手足を折られ海面に顔を押さえ込まれる

 

胸に打撃を受け呼吸も録に整っていない

 

肺に水が入り反射的に咳き込む

例え水の中でも

 

結果更なる水を吸い込むことになりパニックになる

 

 

一方的だった

模擬戦でも勝負でも殺し合いにすらなっていない

 

時折空気を吸わせた後 再度水の中へ入れられる

何時間も何時間も続いた

 

上からの圧力が消えて慌てて顔を上げる

必死で呼吸して息を整える

顔は自分の意志とは関係なく涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってしまっているがそれを気にする余裕などなかった

 

当たりを見回すと辺りは暗くなっていた

新月が過ぎて間もないため辺りに光などない

……目の前で探照灯をつける少女を除いては

 

「こんな事をしてタダで済むと思っているのデスか!?」

 

 

「……私と仲間達はこんな奴等の為に命をかけて戦った

私達の意志など関係なく強制させられた

虐げられ 守るべきものに価値などなく 唯一私達が持っていた物すらお前達は奪っていった」

 

(…成る程 目的は復讐だったか

確かに報告は上がっていないが犠牲が出たことは知っている)

 

「戦場では犠牲は付き物デス 先に逝った子達も貴女が仲間の血で手を汚すことは望まないデショウ

こんな事をしてもムナシイだけデス」

 

 

少女はクスクスと笑いながら振り返る

闇に溶け込む黒髪

探照灯の明かりを全く反射しない紅眼

開いた瞳孔

 

「そうね…あの子やあの子達はこんな事を望んではいないでしょうね

人は復讐者を止めるときよく「何も残らない、虚しい、望んでない」とか口にするけど……

その人達は其をわかった上で復讐をしてるのよ?

悩んで…苦しんで…哭いて…どうしようもない感情と向き合って

それでも復讐を選んでるの」

 

「私が血を流しながら泣いているのに奪ったお前達は楽しそうに笑っている」

 

弱々しい探照灯の明かりのせいか

園児服のシルエットが心なしかゴシックドレスのように見えた

微かに透き通った鈴の音が聞こえる

 

少々は膝をつく私の顔を覗きこむ

 

「ねぇ、知ってる?」

「死者にとって生者は羨ましくて…妬ましくてどうしようもないものなのですよ?」

 

少女は笑う

 

「ねぇ……どうして貴女は……

 

少女は嗤う

 

 

「………まだ生きてるの?」

  ・

  ・

  ・

  ・

私は逃げたした

折れた手脚を引きずりながら

 

光の元から逃げるように

 

 

 

何分か何時間かもう時間の感覚はない

追手の気配はなく辺りは静寂に包まれていた

 

(私は夢をみていたのでしょうか?)

 

折れた手脚は痛むけれど普通に考えると

魚雷挺が戦艦を沈めるなんてあり得ない話だ

 

[チリン]

 

微かに鈴の音が聞こえる

遠くで探照灯の弱々しい光が見える

 

(あちらは私の位置に気づいていはいはず)

(回り込んで至近距離から砲撃すれば倒せるはず)

 

違和感に気づく

(あの探照灯…全く役目を果たしていない)

 

その光には直進性はなく

割れたレンズ 歪んだ反射体は光を乱反射している

出力の低下したユニットは弱々しい光を出し使用者の足元を照らす程度であった

 

[チリン]

 

(まっすぐ近づいてくる!)

 

[チリン]

 

待ち伏せを断念し

再び息の続く限り走り出す

 

[チリン]

 

光がおってくるのがわかる

    ・

    ・

    ・

    ・

灯台の光が見えた

もうすぐで鎮守府周辺だ

 

元より砲撃の流れ弾で被害が出ない程度にしか鎮守から離れていない

 

後ろを振り向き追手がないことを確認する

 

(やっと帰ってきたんだ……)

 

[チリン]

 

安堵する彼女の耳元で

音のなる筈の無い鈴の音が終わりを告げた

 

 

 

 




人は皆繋がりを持って生きています それは他人とて同じことです

[故に問うなかれ誰かが為に鐘は鳴るやと]
誰かが亡くなった時に鳴る鐘を他人事の様に感じてはいけません

[其は汝が為に鳴るなれば]
それは貴方にとっても繋がりが消えてしまった事を告げる悲しい音色なのですから

ヘミングウェイの一説ですね


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天使とダンス

終盤にむけて急ぎ足…(申し訳
次回は2話纏めて更新


[戦艦金剛行方不明事件]

 

彼女は演習へ行くといったきり戻ることはなかった

相手の艦娘は自身の艤装は損壊しており航行は不可能と供述している

彼女の証言の通り艤装は当時修理しており動かせる事は不可能と思われる

 

また全艦娘の使用した弾薬を確認したが

その日発砲された形跡はない

 

以上の事から

戦艦金剛は演習地点に向かう際に敵勢力と遭遇し撃沈された可能性が高いと判断する

 

相手の艦娘は演習を受けることに承諾していない事が後に判明したため今件に対する罰則は行っていない

 

引き続き周辺の捜索を行うものとする

 

 

 

[とある噂]

「ねぇねぇ~最近 怪奇現象起こるって聞いた?」

「それ、知ってるぽい~」

「え?なになに?」

 

「何でも青白い鬼火がでるらしいよ~」

「その鬼火は深い憎しみの中沈んだ艦娘の魂で近くに寄った艦娘や深海棲艦を無差別で海底に引きずり込むんだって」

 

「深海棲艦は深海に引きずりこまれても大丈夫なんじゃないの?」

 

「さぁ?二度と上がって来れないくらい深いんじゃないの?」

 

「私の聞いた話とは少し違うぽい~」

「おぅ?そっちはどうなの?」

 

「何か言い伝えみたいな感じだったよ

月明かりの無い夜に青い光を見たら気をつけろ

その光が足元くらいしか照らし出せない壊れた探照灯の物だったら戦闘を止めて息の続く限り逃げろ

そして……もし……耳元で鈴の音が鳴ったら全てを諦めて神に祈れ

その音色は空気とは別のものを通して音を伝える」

 

「「きゃー」」

茶化す様な無邪気な声が響く

 

 

~鎮守近海~

[沿岸戦線異常なし]

 

意味の無い報告だ

きっとこの言葉を報告するのも最後になるだろう

 

 

 

寮に戻った私は自身の少ない荷物をバックに詰める

提督からの任務を受けた魚雷挺達が行う儀式の様なものだ

 

ある日 主要艦隊と共に魚雷挺が一人だけ随行するようにと命令がおりた……艦隊帰還後その娘を探したが見つかることはなかった

 

それから時折妙な命令が降りてくる

[艦隊と共に出撃せよ]と

 

1人目は知らなかった2人目は気付けなかった3人目が消えたとき私達は全てを悟った

 

危険度が日に日に増していく鎮守近海

毎回損害を受け撤退してくる状況に業を煮やした提督は私達を[盾]や[囮]として使う事で艦隊の生存率を上げようとしていた

 

4人目からは提督からの呼び出しがあった時は自身の荷物を一つに纏めて出撃するようになった………残された者達が己の荷物を整理するとき悲しまないですむように

 

今日、私にも呼び出しがあった

   ・

   ・

   ・

~執務室~

「知っているとは思うが、現在この海域周辺は深海勢力によって包囲されている

物流、情報共に外部からは完全に寸断されており危機的状況だ

今回の任務は夜間に行う。 

敵の包囲網を突破して、外部にこの状況を伝えることだ

食料、弾薬共に備蓄は少ない

仲間達の命運は君達の肩にかかっている

心して任務遂行するように!」

   ・

   ・

   ・

兵糧攻め…海上封鎖……

四方が海に囲まれたこの島ながらの攻略法だ

敵はただ、包囲して逃げ出さないようにすればいい

 

感情をつい最近手にいれたばかりの艦娘達が飢えと、何時襲撃されるかわからない恐怖に耐えて、秩序を保つ事が出来るとは思えない

後は勝手に内部崩壊するだけだ

 

一度誰かが引き金を引けば、たちまち狂気は伝染し暴徒と化す

 

 

荷造りが終わり部屋をでる

 

(この部屋も随分と広くなってしまった)

皆がいた昔が懐かしく感じる

部屋の扉に軽くお辞儀をし、お世話になった寮を去る

 

「私には何も言ってくれないのかい?」

「今晩は、リーダー……」

 

建物の壁に背中を預ける彼女の表情は見えない

 

「悪いことは言わない共に行こう」

 

魚雷挺達もただ死を待つつもりはなかった

深海棲艦を解体した際の燃料を無人島に備蓄しており

その島で補給後本国へ逃亡する手筈だ

常に夜間任務をしていた身だ、他の艦娘に比べ成功率が高い

 

 

「いえ……ここで任務を抜けて怪しまれる訳にはいかない」

 

「そうか…今まで世話になった」

 

「これ……良ければ持って行って…私にはどうしても捨てれなくてね」

 

艤装を渡す、金剛との戦闘で使用した艤装 妹の形見を

 

「大事に使うよ…健闘を」

 

「貴女も……先に逝って待ってるけど、急いで追いかけなくていいから」

 

それじゃ、と笑顔で別れる

背後で嗚咽が聞こえた気がした

 

    ・

    ・

    ・

 

~近海 夜間~

 

夜の闇を無言で進む

誰も言葉を発せず唯、波を切る音だけが聞こえてくる

 

軽巡1 駆逐3 魚雷挺1の寄せ集めの速度重視の艦隊

臨時のチームでちゃんと編隊行動出来るのか怪しいところだ

 

(………懐かしい音が聞こえる)

遠方で微かに聞こえる音 

心に刻み込まれて決して忘れる事が出来なかった音が……

 

無言で巡洋艦の真後ろにぴっちりと詰める

(狙いも信管の時間もあの時は正確だったな…)

 

10m先で炸裂 遅れてキャニスター弾が周囲一面に降り注ぐ

計20発の榴散弾の雨が降りやむ頃には、立ってる者は私一人だけだった

 

盾にした巡洋艦の影から離れる

(この人達は私を盾にするつもりだったのだろうけど…

まさか自分がなるとは……皮肉ね)

 

「オマチシテイマシタ」

 

いつかのゴスロリ達……また、わざわざ会いに来てくれたのだろうか

 

「お逢いしにきました」

(この子達が此処にいるということは皆は無事に脱出できそうね)

 

首を傾げるゴスロリ……何だか可愛らしい

 

「モット イヤナカオサレルト オモッテマシタガ」

 

(確かに妹の仇ではあるけど憎いとは思わない)

 

「貴女となら…悪くないと思いまして」

 

クスクスと笑い合う

 

「デハ ハジメマショウカ」

優雅なカーテシーを行う離島に面を食らう

(敵ではあるけれど友人の様に思える)

 

「お手柔らかに」

此方もカーテシーを行う

 

 

 

まるで舞う様な戦闘が始まる

どちらか一方が燃え尽きるまでダンスは終わらない




戦死者13名
消息不明9名
生存者8名

今回は戦闘はカットです(笑)

一姉の殺意は全て、妹の名誉を踏みにじり存在した事実すらもみ消した提督に向いてます


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御礼参り(最終話)

主人公チートはご恒例でしょうか?
お待たせしました超強化(←遅すぎる


~PT- 109~

私達は奇跡的にも誰一人かけることなく封鎖海域を抜けて本国にたどり着ける事が出来た

先にたどり着いていた猫耳ズが孤島鎮守府の現状を説明した為私達の受け入れはスムーズに行われた

 

魚雷挺達の情報から孤島鎮守府へ救出部隊が編成させたが

深海側の抵抗は激しく包囲網を突破する頃には内部で暴動が起き

当時鎮守府に居た艦娘の3分の1まで人口が減っていたと連絡があった

 

私達の前提督は島では発見されていない

彼は本部への建造履歴報告を隠蔽、捏造し不明艦を多数所有していた事

又、その不明艦を戦闘に投入し練度を上げていたと本国は判断し兵器集結罪 国家反逆予備罪として彼を全世界で指名手配を行っている

 

 

私は本国の小さな鎮守府で皆と共に活動している

ここの提督は魚雷挺でも一人の部下としてちゃんと扱ってくれているので好感を持てる

 

 

……時々 元チームメンバーを思い出す

情報を知っている同行していた艦隊は既に暴動で死亡している為

彼女を含めた6名の消息は依然として掴めていない

 

(けれど戦死したとは思えないんだよね…)

 

少し離れた場所で猫耳ズの話声が聞こえる

「ねぇねぇ知ってる?海上に漂う青白い光の話~」

 

彼女達とはどこかで会える……そんな予感がする……

 

 

 

 

     ・

     ・

     ・

~孤島鎮守 暴動時 提督~

「くそっ!何でこんなことに!」

ギリギリと噛みしめた奥歯から音がなる

 

頼みの綱の艦隊は消息を断つ

ある日妖精さん達は突然と姿を消し

飢えた艦娘達は己が生き残る為に暴動を始めた

 

「提督、此処は危険です脱出しましょう」

 

理性を失った暴徒達はあること無いことでっち上げ

責任をとらせようと執務室の前まで殺到しているようだ

 

私は今夜

信頼のおける部下達 3名と共にこの島を脱出する

 

暴動の中なんとか手にいれた

なけなしの燃料をいれた私のクルーザーに乗り込む

 

(今のところは順調だ)

 

島から私が消えた事を悟られていないようだ

追手の気配はまだない

 

 

「提督!前方に人影!」

 

部下の声に応じクルーザーを減速させる

 

「司令官 弾薬 燃料共に心もとないです

音で周囲の敵が集まるかもしれません

迂回しましょう」

 

部下の意見に賛同しルートを変える

 

(おかしい…まるで誘導しているようだ)

途中数回に渡り進路を変更する

 

 

「コンカイハ アノコニ ユズリマショウ」

クスクスと嗤うゴスロリの呟きは彼等に届く事はなかった

 

  ・

  ・

  ・

最後に敵に遭遇し進路を変えてから1時間がたつ

そろそろクルーザーの燃料が尽きそうだ

 

「前方に船影」

 

目の前には傾いた貨物船が見えた

どうやら鎮守にたどり着く前に襲撃された物のうちの一つのようだ

 

「乗り込んで燃料と食料を確保するぞ」

 

天の導きか どうやら神は私を見捨ててはいないようだ

 

 

不気味に静まり返る船内の中を探照灯の明かりで進む

船が遠くの物を確認するために使われる物だ

明るすぎる位の光量で暗闇への恐怖感はない

 

機関室に向けて探索する

(これがタンカーだったのなら楽だったのだろうな)

 

物音はなく周囲には誰もいない

唯 首元にチリチリと焼ける様な感覚がある

(この船の雰囲気と極度の緊張のせいだな)

 

自身に言い聞かせ納得する

(私には最高練度の護衛が付いてる)

 

「提督!ここです!」

 

「良くやった! 燃料を回収するぞ」

 

一人廊下に見張りで立たせ私と残りの2人で燃料を汲み上げる

 

(もうすぐ包囲網も突破出来る位置だ補給が完了したら逃げ延びれるだろう)

 

燃料を確保出来た安堵からか部下顔にも笑顔が見える

 

 

満タンになったドラム缶2つを部下が抱えながら廊下に出て見張りの肩を叩きながら撤収を伝えるが……

その後の光景を理解するのに少々時間がかかった

 

崩れ落ちる体…切断された首…既に瞳孔が開いてる瞳…驚愕に染まった表情……

 

切断面から溢れでる血で床が染まる

むせかえるほどの血の匂いで私は嘔吐した

 

彼は訓練を終えそのまま提督となり指揮をとっていた若手だ

故にこの時まで戦場に立つということ 

部下を送り込むということや死を根本的なところで理解してなかった

 

 

[チリン]

微かな鈴の音と共にクスクスと笑い声が聞こえる

 

「ク○ッタレが!」

部下が音の方へすかさず艦砲射撃を行う

 

密閉された船内で口径127mm 7.6kgの装薬が至近距離から放たれる

着弾の爆風と艦砲射撃の衝撃波で私の体は木の葉の様に吹き飛ばされる

 

「やめろ!此処では撃つな 提督が持たない」

 

  ・

  ・

  ・

先程の砲撃で水が浸水し始め船が傾きはじめている

元来た道は崩れ 仕方なく別のルートで上階を目指す

部下一人がドラム缶を2つ引きずり

一人が警戒している為進行速度は遅い

 

 

「駄目だロックがかかってる」

 

「私が開けます 艦娘の力なら可能です」

 

部下が扉を掴み無理やりこじ開ける

 

「行きましょう!」

 

振り返ると…

天井からバタつく足が見えた

抵抗は弱くなり力なく垂れ下がる

足を伝い滴り落ちる尿 やがて[バツッ]という音と共に首が切断された部下が地面へ落とされる

 

「つッ!」

 

ドラム缶を一つだけ抱えながら私の手をとり走る部下

 

 

 

暗い廊下を走る

瓦礫に足をとられ2人共に倒れる

探照灯が艤装から外れ転がり落ちる

 

光の無い暗闇のなか

水が私の手を濡らす

 

「おい!大丈夫か?何処にいる!?」

 

返事はない

 

  ・

  ・

~本国 鎮守府~

「ねぇねぇ知ってる?青白い光の話~」

「なになに?~」

「夜間に青白い光を見つけたら気を付けろ」

  ・

  ・

 

 

 

遠くで青白い光を見つける

 

「おい!こっちだ!来てくれ!」

 

転んだ際に破損したのだろうか

光はとても弱々しい

 

 

 

  ・

  ・

「それが索敵する事が出来ない位の弱い光しか放てない探照灯とわかったら息の続く限り逃げろ」

  ・

  ・

 

 

 

(水が生暖かい……)

違和感に気づく

水にしては暖かく少し粘つきのある液体

今日……先程何度となく嗅いだ独特な香り……

 

月明かりが窓からさしこみ辺りを照らす

部下だった者の亡骸……それと……

 

[チリン]

 

(じゃあ あの光は一体……)

 

[チリン]

 

再び雲が月を覆い光は途切れる

私はドラム缶を諦め息の続く限り走り続ける

 

(あの顔……知ってる)

 

一瞬ではあったが彼は襲撃者の姿を見ていた

黒い髪 紅眼 右手に巻き付けられたリボンと鈴 

そして…黒いドレス

 

金剛があの日話しかけた少女

私が死地に送り込んだ少女……

 

扉を蹴り開け船内から転げながら逃げ出す

貨物船に侵入するときに使用した垂れ下がったロープも使わずに海に飛び込む

結構な高さがあり着水は痛みを伴ったが気にしてる余裕などない

 

燃料は僅かでこのままでは漂流することが確定しているが

(あんなところに残っているよりはマシだ!)

 

クルーザーのエンジンをかけて貨物船を後にする

 

 

     ・

     ・

     ・

「でも もし耳元で鈴の音が聴こえたら…………」

     ・

     ・

     ・

 

 

[チリン]

 

彼女の殺気を通して玉の入ってない(鳴る筈のない)鈴の音が

彼の耳元で鳴る

 



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舞台を降りた者達

長門さんとか、提督にドナドナされていく幼女達の姿を詳しく書こうかと思うこともありましたが、自分ではグダグダになりそうな気がしたので省略しました(ヽ´ω`)


~???~

 

波一つない不思議な海上

不純物が極度に低く透き通るような海水

光は海底の白い砂に反射してまるで鏡の様に青空を写し出している

 

その常世とも思える幻想的な空間にはテーブルと2席の椅子

そして2人の少女が座りお茶をしていた

 

「タイクツデスネ」

 

と一人の少女はため息と共に愚痴をもらす

彼女達は退屈していた

他の者達を遥かに越える実力と経験

立ちはだかる敵などとうにいない

 

「……そうですね」

 

ゆっくりと紅茶を飲みながら私も彼女に同意する

退屈だった

それはまるで全面クリアしたゲームの様に

育ちすぎたRPGの主人公のように……

例え戦闘になっても心踊る様な戦いは既になく

あるのは[処理]というなの単純な作業

それに意味など見いだせる筈もない

 

「コノタタカイ イツマデ ツヅクノデショウカ?」

 

「…さぁ? ただ…簡単には終わらないでしょうね」

 

大義があるのならまだいい

でもこの戦争は既に憎しみだけで満たされはじめている

復讐は復讐をよびその連鎖が続いていく

 

「デハ カリニヘイワニナッタトシテ ソレハツヅクトオモイマスカ?」

 

(それもあり得ない話だ)

私は無言で笑みを深くする

(人が人である以上決して戦いが無くなることはない)

 

「ワタシタチハ ドウスル?」

 

「他の方々を見守ってみますか?」

 

かつて、老いも死という概念もない神々が人を作った。

人々の紡ぐ物語を見守り、己の退屈をまぎらわせたように

そう……まるでドラマや映画を観賞するかのように

 

時に導き、狂い始めた物語を修正し

時に姿を変えて、英雄として戦いの先陣をきる

彼等は人々の物語に触れることで自らの物語とした

 

私達も他の者達のストーリーに触れることで退屈を凌ごうと提案する

 

「ワルクハナイカモシレナイ」

 

お互いの顔を見つめクスクスと笑い合う

 

(私も魚雷挺の皆が幸せになる物語を見たいしね)

 

 

ゴスロリの少女が懐から懐中時計を取り出して時間を確認する

針は動いておらず時計の役目を果たせていない

 

「そろそろ時間でしょうか?」

 

「アア パーティーヲ ハジメヨウ」

 

席を立ちこの場を離れていく友人の姿を見送った

 

 

紅茶を飲み干し、ため息と共に空を見上げる

私の心の中の様に雲一つない……何もない……青空が広がっていた

 

(私はきっと壊れてしまっているのでしょうね)

かつての優しい彼女の面影は既にない

 

(いまだに私は、この不思議な世界であの子を求めてさ迷っている)

正気ではないと苦笑いをうかべる

 

世の中、何があるかわからないものである。

地震で落下した瓦礫が脳天に直撃することもあれば、異世界で艦娘娘として戦場を駆けることもある。

 

ならば、喪った者達と再び出会う事があっても、おかしくはないだろう。

(また逢える……そんな気がする)

 

 

探照灯を灯し

透き通るような鈴の音を響かせながら席を後にする

 

「今回の標的(ブラック鎮守府)は西部だったね」

「それじゃ報告は[西部戦線異常なし]かしら?」

 

………彼女の通った後には何も残らない

[西部戦線異常なし]

……ただの皮肉である

 




一姉の物語はこれでおしまいです
(他の方々の物語で幼女達(魚雷挺)が登場したら嬉しいなと( ノ^ω^)ノ

初投稿で読みにくいところも多々あったかと思いますが
ここまで読んでくださった皆様に感謝!


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