つらたん刑事(デカ) (ヒイラギP)
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つらたん刑事(デカ)

サイキック逮捕ぉ!


それはいつも食べていた焼いてバターを塗った食パンを寝坊して食べそびれた日だった。

 

---PI!PI!PI!---

 

警察署の最寄の駅を出て、すぐに電話が鳴る。辛田は急がなくては遅刻してしまうという焦りから、少しばかり不機嫌そうに電話に出た。

 

「もしもし、辛田です」

 

「つらたん!事件だ!地図を送るから現場に急行してくれ!!署の駐車場に車があるから!」

 

「わかりました!すぐに向かいます!」

 

辛田はいつもの5倍くらいのスピードで署に走る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…朝ご飯も食べれない上に事件だなんて…つらたん」

 

辛田の仕事は案外大変なのだ!!!!ついでに朝飯に関しては辛田が完全に悪いのだ!!!!!!!

 

 

 

辛田はサイレンを掻き鳴らしながら、1秒でも現場に早く着ける様に車を飛ばした。この速度ならあと30分程度で着くだろう。

 

---PPPPPPPP---

 

曲がり角で速度を落とした時、辛田のパトカーの無線機に入電が来た。その声は先ほど電話をかけてきた、楽加(らくか)のものであり、内容はこの様なものであった。

 

「犯人は男、サイキックはパイロキネシスで、かなりの精度だ。念動県立銀行に強盗に入ってそのまま立てこもっている。偵察カメラの映像から、SKタグを付けていない事がわかった。恐らくは犯罪組織の一員では無いかと考えている」

 

辛田は、最近見なくなったサイキック犯罪が発生したことに、嫌な予感を感じたが、今は現場に急行する事を最優先にする事にした。

 

なんたってサイキック犯罪に安全に対抗できるのは、辛田を入れて日本に12人しかいないのだから。

 

 

現場に到着した辛田。やはり空気は張り詰めている。KEEP OUT と印刷されたテープを越えようとすると、他の警官に止められてしまった。

 

「ちょっとあんた!このキープアウト見える?何?警官?……すいませんでしたぁ!」

 

へへへ、警察手帳で一発だったぜ!と意味もなくゲスさを出しながら、楽加がいるだろうテントへと向かっていく。

 

「楽加はいるか?」

 

ラーメン屋かなんかで やってる? と尋ねるかのような気楽さで相方の名前を呼ぶ。一応ここは立てこもり強盗の事件現場であるので、周りの視線が厳しくなるのも必然のことだろう。

 

「おいおい、ここはラーメン屋かなにか?いくらつらたんが対サイキック能力者だとしても周りの士気に影響を及ぼす様な姿勢は感心しな…ごほん。説教は事件が解決してからにする。さっさと対策聞きに行ってこい」

 

今年で42歳になる楽加は、まだ精神的にも肉体的にも若い辛田を見ていると甥っ子を見ている様で、説教くさくなってしまう。

幼少期に親をサイキック犯罪で亡くした辛田にとって楽加の態度は最初はうざったかったが今はどこか心地よく感じている。

 

「わかった、相手はパイロキネシストだろ?すぐに終わらせて見せるさ。あと、つらたんって呼ぶな!署内で流行り始めてるじゃないか!」

 

 

作戦は簡単だ。犯人は15分後に飯を持って来させようとしている。そこで辛田に飯を持って行かせて、入り口に潜伏させた透明化のサイキックを持つ警官が不意打ちでフラッシュバンを投げる。辛田は半径十メートル内のサイキックの発動に自動で干渉して、そのサイキックの内容を《自身に苦痛を与える能力》に変更するサイキックを所有している。フラッシュバンが不発でも、一瞬気を取れればそれでいいのだ。

 

「作戦開始2分前だ。つらたん、緊張とかしてないか?」

 

「過保護かよ。確かにサイキック犯罪の対処は久しぶりだけど、鈍ってない自信はあるし、信じてよ」

 

そう、辛田はサイキック犯罪を許さない。そのため毎日事件解決のためのイメージトレーニングは欠かさないし、実際2年前のサイキック犯罪の連続発生では一度の失敗もなく、数多のサイキック犯罪者を逮捕してきた。

 

「時間だ。始めよう」

 

---PI!PI!PI!---

 

辛田がそういうのと同時に、作戦開始を知らせるアラームが鳴った。

 

 

 

場面は変わり、ここは銀行内、時間は少し遡る。

 

「へへ、さすがボスだぜ!パイロキネシストの俺なら金庫だって溶かし切れる。もし俺が捕まってサツが俺に手錠を掛けたって、サツごととかしてやるぜ!」

 

この男、萌木 縁斗(もえき えんと) ハイレベルなパイロキネシストで組織のボスが、この念動県の至る所にある仕掛けをする為に知らされずにして囮となった可哀想なやつ。

 

「へへ、頼んだご飯まだかなぁ」

 

男縁斗、逮捕まで残り10分

 

 

 

場面は戻り、銀行に入る辛田。上手いこと隠れている警官にサムズアップをかますと、警官の目が早く行けと急かしてきた。辛田のサイキックが効いてとっても辛いのだ。

 

「へへ、おい!お前がご飯係か?早くしてくれ〜。俺もう腹が減って動けないぜ〜」

 

銀行の奥から犯人と思わしき男の声が聞こえる。かなり余裕を持ってくつろいでいるらしいその男は、自身に自信を持っている(激ウマギャグ)か又は只の阿呆か…ネタバレをすると後者だ。圧倒的に後者だ。

 

「わかった。すぐ行く。くれぐれも俺のことを燃やそうとはしないでくれよ」

 

しれっと自分は対抗手段を持っていない事をアピールする辛田。普通はこんな事で警戒を解いたりしないし、飯は自分から離れたところに置かせるのがセオリーなのだが。

 

「え!?お前サイキッカーじゃないのか?なら安心だぜ!早く飯置いていってくれよな〜」

 

50点だ、後者野郎。あからさまに警戒を解いた犯人を辛田が見逃すはずがなく、速やかにハンドサインが送られる。

 

サインを受けた警官によってフラッシュバンが投擲された。

 

---KIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII---

 

凄まじい光と音に辛田以外の動きが止まる。何故辛田が無事なのかというと、そこには楽加の能力が関係してくる。

 

楽加の能力は《一つのものに一つ限り性質を追加する能力》である。辛田は楽加お手製の、〔フラッシュバンの光の効果を受けない性質を持つコンタクトレンズ〕を目に入れていたので、フラッシュバンの音にはやられても視界は良好であった。もちろんコンタクト作成時には、辛田は楽加に近づく事を禁じられた。

 

「なんだこりゃぁぁぁ!?!?っておい!離せ!誰かわからねぇけどやめろ!溶かすぞ!いいのかぁ!?…っ、おええええええええ」

 

辛田のサイキックに囚われた犯人は、あまりの苦痛に嘔吐した。辛田もその光景でもらいゲロしそうになったが、気合いで耐えて手錠を掛ける。その手錠はサイキックの能力を封じる効果を4時間だけもたらすというもので、これでもなんの変哲も無い手錠を使っていた2年前からしたらすごい進歩である。

 

「おっしゃあ!犯人確保ぉ!!!」

 

辛田は与えられた仕事をきちんとこなした。

 

 

「お疲れ様、つらたん。この後飯でも食って署に戻ろう。奢るよ、いい店があるんだ」

 

この楽加の提案に辛田は舞い上がるほど喜んだ。

 

何故なら、この男朝から何も食べていないのである。空腹の状態で犯人に対して豪華な食事を運ぶという拷問を受け、イラついた辛田は、腹いせに犯人の腕の関節をわざとキツめに決めていた。このように腹ペコが加速していた辛田にとって、これは砂漠のオアシスを見つけたかのような幸福感をもたらすのである。

 

「もちろん行く!めっちゃ行く!!すぐに行こう!!!」

 

はしゃぎまくる辛田に少々引いた楽加ではあったが、辛田が成人してまだ3年しか経っていないという事を思い出し「このエネルギーが若さか」とうなだれた。それは違うぞ楽加。あいつは空腹でおかしくなっているだけだ。

 

なんだかんだで楽加オススメのお酒の店に向かう2人。いいのか公務員。だが、そんな2人を待ち受けていたのは驚愕にして残酷な現実だった。

 

「すまんつらたん!今日定休日だった!」

 

「つ、つらた、ん…」

 

辛田は朝昼と飯を抜いて仕事をしたために倒れた。

 

 




長編かけない病にかかった。

ダメダメ絶対ダメ絶対!(許してよぉ〜)


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