ラブライブ!サンシャイン!!短編 (かなま)
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ようりこ「ずっとあなたと」
第1話


まずは、ようりこから。


あなたとずっと一緒にいたかった

 

「だーーーーーーーーいすきっ」

 

「私もっ」

 

『あははははははは』

 

昔の記憶が急に溢れてくる。

 

「曜ちゃんは…あの時、どんなつもりで言ったのかなぁ……」

 

私は今、ヨーロッパはオーストリア、ウィーンでピアニストとして活動している。

高校卒業後に音大に入って、ずっとピアノに打ち込んできた結果だ。最初はただの留学だったけど、留学先の街にあったオーケストラのピアニストが引退してしまい、力試しで受けたオーディションに合格。気がついたらデビューしていた。

 

「あ、いけない! バイトの時間!」

 

急いで支度をして部屋を出る。ピアニストとしてデビューはしたものの、まだピアノだけでは食べていけないので、街角のカフェでバイトをしている。

「いらっしゃいませ。 お好きなお席へどうぞ」

 

必死に勉強して覚えたオーストリアジャーマンを使って接客をこなしていく。留学する前は、音大でドイツ語を勉強していたのでなんとかなると思っていたのに、オーストリアはオーストリア独特のドイツ語だと知った時は驚いた。いや、音楽を勉強していたのに知らなかった方がおかしいのか。

 

「あっはははは! 梨子ちゃんらしいや」

 

頭の中に私の想い人の声が過ぎる。彼女が知ったらこうやって笑われるのだろう。それすら私には心地好い。

 

「曜ちゃん……」

 

私は、彼女にずっと恋をしていたのだと気がついたのは……

 

 

ウィーンに来てからだった。

 

 

~日本~

 

「曜ちゃーーーん。 いつまでそうしてるつもりー?」

 

「……ずっとであります」

 

「はぁ……おーーーい! 梨子ちゃーーん! 日本に帰ってきてーーー! 私の幼馴染がこのままじゃみかんになっちゃうーーーー!」

 

「どうせならみかんになりたいであります」

 

「……っ!? ツッコミすらしてくれないなんて!」

 

梨子ちゃんが留学してから、私はずっとこの調子。大好きな人に、大好きだと伝えられず、また今度また今度、次に会ったら伝えようと先延ばしにした結果。

 

私の想い人は海の向こうへ行ってしまった。

 

「うぇ……ぐす……梨子ちゃん……」

 

「あー! ほらほら涙拭いて……もう……曜ちゃんいつから泣き虫さんになっちゃったの?」

 

「ウィーン……」

 

「返事になってないよ……別に今生の別れじゃないんだから……」

 

「難しい言葉を知ってるね」

 

「あ、そこは反応するんだ…。って! チカを馬鹿にしたなー!? 国語の先生なんだからこれくらい知ってるよ!」

 

私の幼馴染の千歌ちゃんは、中学校で立派に国語を教えている。それに比べて私は……

 

「…代表選考に落ちたであります」

 

「まだ落ちたって決まったわけじゃないじゃん! てかこれから結果発表じゃん!」

 

「あんな演技じゃ確実に落選であります」

 

「だーーーーーーー! ネガティブ曜ちゃんめんどくさっ」

 

「うぇぇ……私は面倒臭い女なんだぁ……」

 

「あぁもう! すぐに泣かないの!」

 

私は今、プロの飛び込み選手として活動している。しかし、梨子ちゃんが留学してから成績は伸びず、向こうでピアニストとして活動を始めたと知った時からはどんどん身体が鈍ってきている。

 

「代表に合格したら……ウィーンで国際大会だったのに……」

 

そう、次の世界水泳はウィーンで開催するのだ。代表になれば向こうへ行ける。梨子ちゃんに会える。

 

「なのに……もし落選したらどうしようってずっと頭の中で考えちゃって……全然練習できなかった……」

 

ついさっき、私の演技は終わった。今は点数の発表待ち。付き添いで来てくれた千歌ちゃんが私を励ましてくれているけど、結果は演技をした自分が1番把握できている。

 

『渡辺 曜選手の結果発表です』

 

場内アナウンスがなる。テレビでも放送されている全国大会。この大会で1位になれば……

 

「ウィーンに行けたのに……」

 

『わぁああああああああああ』

 

会場が歓声に包まれる。私の演技順は1番最後だった。ゆえに私の結果が表示された時点で1位の人が代表に決まったのだろう。この歓声の具合からして、さっきまで1位だった人がそのままウィーンだ。

 

「帰る準備をしよう」

 

そう呟いて立ち上がった瞬間

 

「やったね曜ちゃん!! すごい! すごいよ! 日本記録だって!!!!」

 

千歌ちゃんが私に飛びついてきた。

 

「うん、凄いね1位の人。 この前と同じ人でしょ」

 

「違うよ! いつまで馬鹿になってんの! 曜ちゃんだよ! 曜ちゃんが! 日本新記録で! 1位なの!」

 

「……ふぇ?」

 

「ほら!」

 

千歌ちゃんは、私の頭を掴んで会場の特大液晶に向ける。

 

1.渡辺曜 ……○○○.○○点 日本新記録

 

「は?」

 

「は? じゃないよ! 目を覚まして! ウィーンだよ! 梨子ちゃんに会えるよ!」

 

信じられない。あの演技で……。

 

私は自分の演技のハイライトが流されている液晶に齧り付く。

 

「綺麗……」

 

自分で言うのもあれだが、凄く綺麗だった。顔は真剣で、回転の回数もたりてる。入水角度も完璧だ。

 

「曜ちゃんね、凄く真剣だったよ。 オーラが違った。 絶対にウィーンに行くんだって気持ちが伝わってきた。 曜ちゃんはもっと自分を評価してあげて?」

 

千歌ちゃんは、私の頭を撫でながら優しく語りかけてくる。

 

「曜ちゃんが着水したあと、しーんっと会場が静まり返ったでしょ? 曜ちゃんはそれで勘違いしたの。 下手な演技しちゃったんだーって。 だけどね違うの」

 

そうだったのか……。

 

「あれはね」

 

私は……。

 

「みんな、曜ちゃんの演技に見蕩れて声が出なかったんだよ」

 

ウィーンに行くんだ。

 




続きは後日。


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第2話

よろしくお願いします。


「千歌ちゃん! 準備できた!? 行くよ! ウィーンだ! 」

 

「ちょっと待てぃ」

 

「なに!? 急いで! ウィーンなんだよ! 全速前進ヨーソローなんだよ! 」

 

「世界大会は2ヶ月後だからね? ウィーンに行くのもそれくらいだよ? 」

 

そうだった。私、焦ってたや。

 

「えへへ。 確かにそうだね。 でも2ヶ月かぁ。 長いなぁ……。 楽しみだね、ウィーン! 梨子ちゃんと3人でどこ行こっか! 案内してもらおうよ」

 

「ほぇ……? チカは一緒に行けないよぉ。 授業もあるし、そもそも曜ちゃんは日本代表なんだからスタッフさん達と一緒でしょ~」

 

「は?」

 

「いや、は? じゃなくて……」

 

「え?」

 

「そういうことじゃあないでしょっ」

 

千歌ちゃんが……一緒に……来れない……?

私はどうすればいいの……?

 

「とにかく、まずは着替えなよ。 いつまで水着なの? 風邪ひいちゃうよ」

 

「うん……」

 

私の頭の中は、いろいろなことで一杯だった。

 

 

~ウィーン~

 

「梨子! あなたの友達でしょ? 凄いじゃない! 」

 

ピアノの練習をしていたら、同じオーケストラの楽団員達が新聞を持って駆け寄ってきた。

 

「え? どうしたの? 」

 

私はなんのことかわからず、きょとんとする。

 

「新聞見てないの? 今度の世界水泳! 日本代表の1人、You Watanabe! あなたの友達でしょ」

 

「いつもご飯の時、うっとり眺めているじゃない」

 

「そうよねぇ。 梨子ったら、スマホの画面ずーっと眺めてご飯食べてるもの」

 

「なにみてるのー? って話しかけても上の空の返事でさ」

 

「気になって覗いたら、可愛い女の子と梨子のツーショット! 青春ねぇ」

 

「新聞見ていたらその子が載っていたの!もうびっくりよ! 」

 

「え!? 待って!? 見られてたの!? やだぁもぉ……」

 

私は恥ずかしくなって楽譜で顔を隠す。いや、待ってほしい。この子達はなんていった!?

 

「ちょっと見せて!」

 

新聞を奪い取り、スポーツ欄を凝視する。そこには

 

『日本の高飛び込み代表はYou Watanabe。 高難易度の前逆さ宙返り3回半抱え型を見事に決めて日本新記録。 2ヶ月後にウィーンで開催される世界水泳に、日本から期待の若き刺客が飛び込んでくる。 』

 

眩しい笑顔で、表彰台の1番高いところに堂々と立ち、金メダルを掲げているのは……

 

「曜ちゃん……」

 

間違えるはずがない。私が今1番会いたくて、1番傍にいたくて、1番傍にいて欲しくて、1番大好きで、1番想いを伝えたくて……

 

「1番会いたくない人……」

 

「え?」

 

私が最後に漏らした日本語は、他の楽団員達には聞き取れなかったみたいだった。

 

~日本~

 

「渡辺ー。 そろそろ練習終わりにすっかぁ」

 

「はーい! ありがとうございましたー! 」

 

プールからあがって、身体を拭く。

あれから1ヶ月。私はどんどん技の精度に磨きをかけていった。身体が最高のパフォーマンスを発揮する波を掴み、そのタイミングを本番にぶつける為に調整を続けている。

 

「あと……1ヶ月。 梨子ちゃんに会いに行くんだ 」

 

好きという気持ちを、何度も何度も身体に乗せてプールに落とし込む。そんな日々を送っている中で、一つだけ不安なことがあった。

 

「返信……来ないなぁ。 忙しいのかな」

 

代表に決まった数日後、私は梨子ちゃんにLINEを送った。

 

「代表に選ばれたの! ウィーンに行くよ! 」

 

それに対して、返事はただ一言。

 

「おめでとう」

 

私は

 

「どこかのタイミングで会えないかな? ご飯でも」

 

と返信をした。しかし、それ以来梨子ちゃんから返事はない。

 

練習が終わったら毎回スマホをチェック。LINEの通知が来ていると一気に気分が高揚してすかさず開く。

 

「なぁんだ。 今日は善子ちゃんか」

 

しかし、私が望む人からのLINEではない。毎回、毎回、毎回、毎回、毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回、スマホを開く度にテンションが浮き沈みする。

 

「私からで悪かったわね」

 

「うわぁ!? 」

 

「久しぶりね、曜。 ほら、迎えに来たわよ」

 

「びっくりしたぁ……。 驚かさないでよ」

 

「あんたがボーッとしてたんでしょうが!」

 

今日は日本にいるAqoursメンバーとご飯だ。私の代表選抜祝いをしてくれるらしい。

 

「ごめんごめん。いやぁ、久しぶりだね善子ちゃん! 」

 

「善子言うな! ヨハネー!さっさと車に乗りなさい! 」

 

「お、久しぶりの堕天使。社会人になったからって卒業したんじゃなかったの?」

 

「く……っ! 封印されし堕天使の力が暴走してしまったみたいです。 まだまだ修行が足りぬか……」

 

「修行って……」

 

「久しぶりに曜達に会うのよ。 昔みたいに……その……あの頃は楽しかったから……」

 

そう言って俯く善子ちゃんの頭を私は撫でる。

 

「頑張ってるもんね、善子ちゃん。 今日くらい良いんじゃないかな。 自分の"好き"を隠さなくてもさ」

 

「ありがと……って、頭撫でるなー!」

 

「あははははは」

 

「あんたも自分の"好き"、いい加減に隠すのやめなさいよね」

 

「う゛……」

 

痛いとこをつかれた。隠しているつもりはない。だけど、抑え込んでいるという部分では、ある意味隠していることになるのだろう。

 

私は遥か海の向こうにいる、想い人に向けて心の中で呟く。

 

 

会いたいよ、梨子ちゃん




続きは後日。
感想等、お待ちしております。


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